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#1
第096回国会 本会議 第18号
昭和五十七年五月十四日(金曜日)
   午後一時二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十八号
  昭和五十七年五月十四日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(昭和五十五
  年度決算の概要について)
 第二 民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正
  する法律案(内閣提出)
 第三 船舶の所有者等の責任の制限に関する法
  律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
  院送付)
 第四 日本放送協会昭和五十四年度財産目録、
  貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関す
  る説明書
 第五 土地区画整理法の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第六 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への
  加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正す
  る法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第七 勤労者財産形成促進法の一部を改正する
  法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、公職選挙法の一部を改正する法律案(参第
  二号)(趣旨説明)
 一、日程第一より第七まで
 一、常任委員長辞任の件
 一、常任委員長の選挙
 一、裁判官訴追委員辞任の件
 一、裁判官訴追委員及び北海道開発審議会委員
  の選挙
     ―――――・―――――
#3
○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 公職選挙法の一部を改正する法律案(参第二号)について、発議者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。宮之原貞光君。
   〔宮之原貞光君登壇、拍手〕
#5
○宮之原貞光君 参議院議員選挙の全国区制改革を内容とします日本社会党提出に係る公職選挙法の一部を改正する法律案について、その提案の理由並びに法案の概要を御説明いたします。
 全国区制の改革につきましては、すでに選挙のたびに選挙費用の過重な負担、候補者に対する過酷な労力などを理由に改正論議が高まってきておりますが、こうした選挙状況を顧みますとき、われわれは早急に全国区制の抜本的改革を図る必要があると思います。しかしながら、全国区制の改正は選挙制度の基本に関する問題であり、その改正は候補者における事情のみで判断すべきものでないことは当然でございます。
 わが党は、議会制民主主義の発展のため、かねてから改革の方策を模索し、すでに六年前に拘束名簿式比例代表制の導入を提唱し、各党の動向を注視してまいりました。一方、自由民主党は、昨年第九十四回通常国会に全国区制度改正案を提出し、秋の臨時国会に再び提出をされて継続審議となっており、今国会でその成立を図ろうとしております。
 選挙制度の基本的な仕組みを改正するに当たっては、他党の理解を得るため最大限の努力をいたすべきことはもちろんでありますが、すでに自由民主党による単独提出がなされ、その実現の意図が現実のものとなった以上、野党第一党としてわが党は、年来の主張を法的に具体化し、公党の責任を果たさなくてはならないと考え、あえて地方区の定数是正など緊急課題と切り離し、日本社会党独自の全国区制改革案を提出した次第であります。この際、われわれは拘束名簿式比例代表制を根幹としつつも、自由民主党案との相違点を明らかにし、議会制民主主義の発展に資したいと考えるものであります。
 そもそも全国区制は二院制の特色を発揮するため採用されたもので、全国を一体としてとらえる考え方は今日もなお存在理由を失っておりません。したがって、全国区制改革の課題は、少数代表の原理に立ち、現行制度の弊害を是正しつつ、国民の公正な判断を議員の選挙に反映させることにあると思います。
 わが党は、慎重にかつあらゆる角度からこの問題を検討した結果、今日政党が国民の政治意識に着実に定着しておるものと判断し、また将来にわたるその機能と役割りを評価し、拘束名簿式比例代表制を選択することといたしました。
 わが党が提案しております改正は、特に次の諸点に留意いたしております。
 第一は、憲法問題についての論点を整理し、合憲性を十分確認の上、なお具体的制度の法制化に当たっても疑念のないよう最大限の配慮をしたことであります。名簿届け出政党等の要件、議席の配分等について小政党等に特段の配慮をし、そのため参議院における現在の各会派が名簿届け出政治団体としての適用が図られるようにいたしておるのであります。
 第二は、わが国における選挙の実態を踏まえ、名簿登載者と有権者との結びつきを重視し、選挙運動の方法を拡大したことであります。すなわち、名簿登載者たる候補者が全く選挙運動を行わないで議員となることには、有権者との触れ合いや選挙区選出議員候補者の選挙運動とのバランスの上からも問題がありますので、政党本位の選挙の本旨にもとらない範囲で、名簿登載者の選挙運動を認めることといたしました。
 以下、改正の大要を申し上げます。
 その第一は、候補者名簿についてであります。比例代表選出議員の候補者を順位を付して記載した候補者名簿は、一定の要件を備えた政党その他の政治団体に限り届け出ることができるものといたしております。
 一定の要件とは、三人以上の所属の国会議員を有すること、直近の衆議院議員総選挙または参議院議員通常選挙において全有効投票の二%以上の得票を得たものであること、五人以上の所属の比例代表選出議員候補者及び選挙区選出議員候補者を有することの三つのいずれかの一つに該当することであります。これは参議院における政党政治の現況を踏まえ、いわゆる立候補の自由に関し配慮したものであります。候補者名簿に記載されることができる者は、参議院議員の被選挙権を有し、かつ当該政党その他の政治団体に所属する者であるか、所属しなくても当該政党その他の政治団体からの推薦がなされた者であればよいことといたしております。名簿登載者の選定及びその順位の決定は、当該政党その他の政治団体が任意に行うことといたしておりますが、名簿登載者の選定機関に関する必要な事項を届け出なければならないものといたしております。
 第二は、供託金についてであります。まず、比例代表選出議員の選挙における供託金の額を名簿登載者一人について三百万円とし、政党その他の政治団体がこれを供託しなければならないといたしております。なお、国政選挙におきましては供託金の額を現行の一・五倍に、地方選挙におきましてはその額を現行の一・五倍ないし一・二倍程度に引き上げることといたしております。
 第三は、投票の方法についてであります。投票は、選挙区選出議員選挙及び比例代表選出議員選挙ごとに、それぞれ一票を投票するものとし、比例代表選出議員選挙におきましては、政党その他の政治団体の名称を記載して行うことといたしております。
 第四は、当選人の決定についてであります。これにつきましては、候補者名簿を届け出た政党その他の政治団体の得票数に比例して、修正サン・ラグ式により、それらの政党その他の政治団体ごとに当選人を決定し、それぞれの候補者名簿に記載された順位により当選人を定めることといたしております。これは小政党等への配慮のあらわれであります。なお、欠員が生じた場合に当該名簿届け出政党の次順位者の繰り上げ補充を認めることといたしております。
 第五は、選挙運動についてであります。比例代表選出議員の選挙における選挙運動は、候補者名簿を届け出た政党その他の政治団体が行うたてまえでありますが、当然その政党その他の政治団体を代表して、名簿登載者及びその四倍に相当する員数の幹部が中心となって行うのであります。その選挙運動の態様は、おおむね現行参議院全国区制で認められたところに従い、その規模は現行の三分の一程度のものを考えております。
 第六は、選挙運動費用についてであります。比例代表選出議員の選挙につきましても、出納責任者を選任することといたしております。選挙運動に関する支出の金額は、比例代表選出議員の選挙では、名簿届け出政党一につき、名簿登載者の数に応じた額と一定固定額とを合算した額を超えることができないものといたしております。
 第七は、確認団体の政治活動についてであります。十人以上の所属候補者、その中には名簿登載者を含んでおりますが、そうした候補者を有する確認団体の政治活動は、現行どおりといたしておりますほか、十人未満の所属候補者を有する名簿届け出政党は、確認団体として選挙運動期間中、政談演説会を開催できることといたしまして、選挙の平等に配慮いたした次第であります。もちろんこの政談演説会の告知のため、またはその会場内に使用するポスターの掲示等所要の措置も講じているのであります。
 第八は、罰則についてであります。名簿登載者の選定の重要性にかんがみ、名簿登載者の選定に関し、請託を受けて、財産上の利益を収受、要求もしくは約束した選定機関の構成員その他の選定の職務を行う者、これにはその職務を補助する者も含めておりますが、それらの者につきまして、他方財産上の利益を供与いたしました者につきましては、いずれも罰則を設けております。
 以上のほか、選挙区選出議員の選挙につきましては、現行の地方区の選挙制度の例によるものといたしております。
 最後に、施行期日につきましては、この法律は、公布の日から施行し、改正後の公職選挙法の規定は、施行後初めて行われ参議院議員の通常選挙から適用するものといたしております。
 以上、公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第でございます。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(徳永正利君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。太田淳夫君。
   〔太田淳夫君登壇、拍手〕
#7
○太田淳夫君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま趣旨説明のありました日本社会党提出の公職選挙法の一部を改正する法律案について、発議者に質問をいたします。
 社会党提出の全国区改正案は、自民党案に対する独自案というように伺っていたのでありますが、改正案を拝見いたしますと、名簿提出政党等の要件の引き下げ、議席配分方法に修正サン・ラグ方式の導入及び選挙運動の主体と態様について技術的改革が加えられ、少数会派に配慮をされたことについての御苦心のほどはうかがわれますが、制度の基本的仕組みについては、個人の立候補を禁止した拘束名簿式比例代表制という根幹では自民党案と異なるところがないのは大変残念であります。
 そこで、最初に、発議者が本法律案提出に至った基本的な考え方についてお伺いしてまいります。
 第一は、本法律案提案の前提として、今日まで参議院の独自性、自主性を宣揚していくためにどのような努力がなされたかということであります。
 御承知のように、参議院改革協議会において、発議者の社会党を含め全政党が参議院の存在意義を高からしめるため熱心に議論が進められているところであります。また、以前に参議院が良識の府としていかにその使命を果たせるかとして公募した「参議院に何を望むか」という論文で応募者のほぼ全員が指摘していたことは、政党化をこれ以上強めないこと、全国区比例代表制度反対等の意見でありました。私どもも、政党本位の選挙によって参議院を衆議院以上に政党化を強めることは、参議院の本質、機能、役割りを損ねるのではないかと非常に危惧をしております。しかるに、社会党の改正案は、このような要請にこたえようとする努力が見られず、残念ながら自民党案と根幹においては同じものと言わざるを得ません。
 そこで、本法律案が独自案と言われるならば、参議院に対する憲法的要請、歴史的要請にどうこたえようとされているのか、今日までの検討された経緯と内容について国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
 第二は、さきの自民党案もそうですが、本法律案を出すに至ったその手続の問題であります。
 選挙制度の改革というものは議会制民主主義の根幹でありますゆえに、国民の立場で出すのが当然であります。国民の知らないところでの議論は最初から軌を逸していると言わざるを得ません。したがって、少なくとも選挙制度審議会、あるいは第三者機関の答申を経たものをもって選挙制度案とするのが当然であります。全国区の改正については、第六次並びに第七次選挙制度審議会でも審議されましたが、結局は、第六次では具体的内容について審議を尽くすに至らなかったとし、第七次でも実質審議が行われずに終わったとの中間報告しかなされておりません。さらにその上に、選挙制度の改正に当たっては各党の合意も当然必要であります。したがって、本法律案の提出は拙速ではなかったかと思いますが、いかがですか。
 また、今後の審議においても、少なくとも中央公聴会、地方公聴会等を開催し、また第三者機関の設置と付託を行うなどして広く国民の意見を求めるべきであると思いますが、いかがお考えでしょうか。
 次に、自民党案については、憲法違反及び議会制民主主義を揺るがす重大な問題を含んでいることをわが党は強く指摘してまいりました。したがって、その骨格を同じくする社会党案についても、残念ながら憲法違反の疑いがあると言わざるを得ません。特に社会党は、日常、憲法擁護を党是として信念ある活動を進められていることに敬意を表するものであります。したがって、違憲の疑いが少しでもあるものについては、みずからの良識ある御決断によって断固排除されるものと期待するものであります。
 そこでお伺いいたします。
 まず第一は、憲法第十四条の「すべて国民は、法の下に平等」であるとの条項及び憲法第四十四条に違反していることであります。
 本法律案には、自民党案と同様に個人の立候補を禁止しています。御承知のように昭和四十三年十二月四日の最高裁大法廷判決は、全員一致で「憲法第十五条第一項には、被選挙権者、特にその立候補の自由について、直接には規定していないが、これもまた同条同項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきである」と、被選挙権及び立候補の自由については、単に自由を保障するというだけではなく、それ以上の重要な基本的人権として保護しなければならないと明確に述べています。しかるに、日本社会党中央執行委員会の発表した「公選法改正法案に関する日弁連の意見書に対する見解」では、より多く憲法学者の意見を取り入れて、いやしくも最高裁判決を事実上否定するということは本末転倒と言わざるを得ません。
 最高裁判決は、憲法第八十一条に基づくものであって、国会議員としては第九十九条の現行憲法と同様に尊重し擁護しなければならない義務があり、これに違反する法律は無効であると憲法第九十八条に規定しておりますが、この点、発議者はこの最高裁判決についてどう心得ていられるのか、明らかにしていただきたいのであります。
 また、このような最高裁判決がありながらも、自民党案は個人立候補の禁止、いわゆる無所属、諸派の候補者を締め出しております。これらの方の得票は前回は一七・三%まで回復し、候補者数も四〇%も占めていますが、個人の立候補を禁止した拘束名簿式比例代表という制度の枠組みから、憲法第十三条及び四十四条から許容された合理的制限という説明をしておられますが、社会党も同様に、重要な基本的人権である立候補の自由を制限しても構わないと考えていられるのかどうか、お伺いしたいのであります。
 第二は、私たちは拘束名簿式比例代表制には反対でありますが、本法律案及び自民党案ともに、それぞれ提案の枠の中で理論的にも現実的にも個人の立候補を認めることができるはずであります。しかし、社会党は自民党と同様に、個人の立候補は一切認めておりません。発議者は、個人立候補の本法律案への導入について、その可能性をどう考えていられるのか、お伺いしたいのであります。
 第三は、憲法第二十一条の結社の自由の問題であります。
 自民党案の発議者は、「政党要件が結社をしない自由に対する制約となるといたしましても、この憲法に適合する合理的なものであると考え、この制度も憲法の許容する範囲である」と、このように解釈しています。同じく社会党も、公共の福祉ということで制限できると考えていられるのかどうか。もしそうならば、あらゆる基本的人権は公共の福祉の名のもとで制限されることになりませんか、お伺いしたいのであります。
 第四は、先般、日本弁護士連合会が公法学者に対するアンケートを行った結果、大勢が違憲の判断を示していることであります。
 全国区選出の参議院議員の選出方法について、個人の立候補を禁止した拘束名簿式比例代表制案を採用することは憲法に違反するかとの問いに対して、違反すると判断するが五十一名、違反しないと判断するが二十四名となっており、違憲性があるとする意見が圧倒的に多く占めていますが、発議者の御意見を賜りたいと思うのです。
 次に、参議院の機能と役制りについて伺います。
 政党政治の状況が衆議院だけでなく参議院も同じ程度に及んでいて、参議院の政党化はやむを得ないとお考えのようでありますが、この改正によれば、参議院は衆議院以上に政党化が強まることになってしまいます。両院制のもとで国民が政党化を前提にした二つの代表を出すことが避けられないというのであれば、もはや両院制の意義はなく、初めから国民は一つの政党化された代表を出せば事足りるということになります。
 われわれは、両院制というのは、国民が異なる二つの代表を出す、すなわち衆議院は政党代表、参議院は個人的高度の専門家の直接代表を前提にしているものであると考えるものであります。すなわち、憲法改正案に対する附帯決議にも、参議院が「衆議院と重複する如き機関と成り終わるととは、その存在の意義を没却するものである。」と警告しているのであります。新しい憲法のもとで参議院が発足し、種々の検討を重ねた結果、現在の全国区制度が最もよい制度であるということから発足した経緯があります。個人立候補を制限している本法律案に両院制の機能と役割りがどこに発揮できると期待しているのか、明らかにされたいのであります。
 次に、本法律案の具体的内容について伺います。
 第一は、名簿作成についてであります。
 これについては統一的規定が何らありません。自民党案は、法的規制は必要最小限度の枠組みを規定し、それ以外は各政党の良識により順位が決定されるとしています。しかし、結局は、名簿作成に当たり順位決定とその維持などをめぐる競争が激化し、かえって派閥争いや金がかかることになることを憂慮する人も少なくありません。野党第一党の社会党はこの点厳格な姿勢を貫かれると思いますが、発議者は名簿登載者について、一般党員、有権者の意思の反映、推薦候補者の決定、さらに期待される合理的な順位の決定についてどう考えていられるのか、お示し願いたい。
 第二に、本法律案は、比例代表制の趣旨に反しない限り少数政党に対し十分配慮し、個人選挙の現実を考慮したいとしております。いわゆる政党要件を前回得票で二%以上と引き下げたことであります。つまり、五千万投票総数で百万程度まで広げたとしており、少数政党に配慮をされた御苦心はうかがわれますが、個人立候補の道が開けたことになりません。この点どう考えておられますか、お伺いしたいと思います。
 第三は、選挙運動について個人選挙の現実を考慮したとしていることについてであります。
 本法律案は、現行の個人本位の選挙運動の態様をそのまま踏襲しております。たとえば現行のはがきを候補者一人につき十万枚、最高一政党で二百五十万枚出せるというのは、全く個人本位の運動の態様であります。名簿提出は政党、投票も政党でありながら、運動だけが個人本位であって、しかも個人の立候補が禁止され、また候補者個人に投票すれば無効になるというのは、さらに一貫性がはなはだしく欠けたものになっております。何ゆえに選挙運動だけ個人にしたのか、その理由をお伺いしたい。
 第四は、本法律案を拝見して危惧の念を抱きますのは、かつてイタリアの比例代表選挙で政党の数が六十七にも及んだことがあります。この場合、非常に類似した同じような紛らわしい政党名がたくさん出ますと国民が大変混乱しますが、その防止策はありますか。
 また、それらの多数の政党がそれぞれ競争し、また得票を押し上げるために個人本位の運動をそのまま踏襲して争った場合、運動が困難であるだけでなく、事前の政治活動などにも従来以上の多額の費用を必要とし、政党の数が多くなることから選挙人の選択もかえって容易でなくなると思いますが、いかがでしょう。
 第五は、選挙制度の改革発想が、選ばれる側の政党などの都合だけで、選ぶ側の国民一有権者を念頭に置いた姿勢が見られないのではないかということであります。
 現行制度で金がかかるということも、候補者が金をかけ過ぎるのであり、選ぶ側の本当の要請は政治資金のガラス張りや金権候補の根を絶つことにあるのであります。また、有権者から見れば、個人で立候補ができない、また候補者個人に投票すれば無効になるなどという制度は、大多数の国民は全く納得できないと言っております。候補者個人に投票して無効になるという選挙は、全世界に全く例がなく、このような最も政党本位の選挙制度を、しかも参議院全国区に導入することは政治不信につながることになりますが、どうお考えでしょうか。
 最後に、選挙制度の諸問題について伺います。
 その第一は、定数是正の問題であります。
 さきの自民党案の本会議の趣旨説明に対して、日本社会党の質疑は、冒頭に衆参の定数是正の問題を取り上げ、有権者の権利にかかわる問題であり、一刻も猶予が許されない問題であると強く主張し、さらに政治資金規正法の附則八条の政治資金規制の見直しも、法律事項であるのに検討すらなされていないと厳しく指摘されていることは全く同感であります。特に、定数是正については、昭和四十九年から五十一年にかけて公選法特別委員会に小委員会をつくり、すべてに最優先にして至急に定数是正すべきことを各党一致で定めた経過がございます。しかるに、今回の社会党案でも、現在の改革の最優先であるべき定数是正については何ら触れられておりませんが、これはいかなる理由と見解によるものか、御説明願いたいと思います。
 第二に、参議院に拘束名簿式比例代表制を導入する自民党の真意は、衆議院に小選挙区制を導入する突破口であるということについてであります。
 先般の自民党案に対する質疑の中で、鈴木総理は小選挙区制導入について、「現時点では各党間の話し合いが行われるまでに至っておらず、その機が熟していないという認識を持っている」と答弁し、導入についてぼかしております。しかし、衆議院でも、政党本位の選挙の名のもとに、かつて党議でも決めた自民党が今後小選挙区制導入を図ることは目に見えておりますが、発議者の小選挙区制導入へのお考えをお伺いしたいと思います。
 以上、発議者の誠意ある御答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔宮之原貞光君登壇、拍手〕
#8
○宮之原貞光君 太田議員から相当広範囲にわたります御質問でございますので、一問一問というよりは、場合によりましてはまとめた形で答弁をさせていただきたいと思います。
 まず第一点は、参議院の機能と役割りと本法案との関連性ということに集約されるところの御質問が二、三点ございました。
 御指摘のごとく、わが参議院は第二院としての衆議院への抑制、補完という機能を持ち、そのことからくる自主性、独自性を持っておるわけでございます。このことと本法案の成立による参議院の政党化ということは、決して相矛盾するものではないと考えておるものでございます。議会制民主主義における国の政治的意思形成過程におきます政党の役割り、任務という現実を直視しました場合、わが参議院もまた衆議院同様にその面の役割りを持っておるわけでございますから、参議院の政党化ということは決して否定されるものではなく、むしろ当然であり、自然の流れと言えると思うのであります。
 それだけに、政党化という前提の中で、御質問にもありましたように、いかにして参議院の機能と役割り、それに基づく自主性、独自性というものを高めるかということが最も大きな任務だと思うのでございます。ただ、その点率直に申し上げまして、この現状は種々の問題点があることは事実でございます。ここに参議院の機構改革が天の声であると言われておるところのゆえんがあります。それだけに、わが党もそのために全力を尽くすことについては決して他党にひけをとるつもりはないのであります。
 この点、わが党は公選特別委員会の審議の中でも再三にわたりまして強調してまいりました。特に、第六次選挙制度審議会におきます参議院の機能を高めるための五項目、さらには参議院改革協議会の遠藤小委員会の報告の実現にはお互い全力を挙げて努力する必要があると思うのであります。ただ、この点率直に申し上げさせていただきますけれども、肝心の与党自民党の熱意が余り多く見られないことは、わが党としてもやはり率直なところ感じておるわけでございます。それだけに、この問題を放置いたしまして選挙制度の改革のみに熱中するということは非常に問題があると思うのであります。したがいまして、わが党といたしましては、いわゆる参議院の政党化という現実を踏まえて対処するところの選挙制度の改革という問題と参議院の機構改革ということは、まさに車の両輪であり、両者とも精力的にやらなければならない課題をわれわれは背負っておる、このように考えるところでございます。
 第二の手続の問題でございますが、選挙制度の改革ということは、事、議会制民主主義の基本ルールの問題でございます。それだけに、御指摘のように各党間の協議と合意が基本になって進められなければならない点は、これは質問者と全く同じ考え方でございます。過去七次にわたります選挙制度審議会で議論をされてきたゆえんのものもまたその考え方に立ったからだと思うのでございますが、今回の場合は、自民党は他党の理解を得るためにさしたる努力もしないままに、昨年の第九十四回通常国会に提出し、今国会でその成立を図ろうとすることが明確になった以上、この現実を踏まえてみた場合に、ただこの問題について、わが党としてもやはり自分の党の持つところのこの選挙制度の改革の問題について具体的に提起をしていくということは、公党として私どもは当然だと思っておるのであります。
 したがいまして、私どもといたしましては、今次国会にこれが提出されておる中から、いわゆる自民党案と対置をさせる中で十二分に審議をしていただきたいと思うのであります。そういう意味におきましては、御意見のように中央公聴会、地方公聴会等を開催するなどして広く国民の意見を求め、可能な限り各党の合意が得られるよう努力をしなければならない問題だと思っておるところでございます。
 第三は憲法問題でございますが、まず太田議員の方から、わが党の護憲の党としての活動に敬意を表していただいておることにつきましては感謝を申し上げたいと思うのであります。御指摘のように、私どももこの点を最も重視し、党内の論議を進めてまいりました。そして、提案をしているところの内容は合憲であるとの確信を持ってここに提起いたしておるわけでございます。
 まず、憲法十四条、十五条、四十四条にかかわる問題でございますが、憲法十五条はいわゆる選挙権、被選挙権を含む包括的な参政権を定めており、その選挙権、被選挙権の具体化については第四十四条において規定をされておるものだという理解に私どもは立っておるのであります。なお、御質問の四十三年の公職選挙法違反にかかわりますところの最高裁の判決主文は、当然尊重し遵守されなければならないことは申し上げるまでもないわけでございますが、その最高裁大法廷における判決要旨にありますところの「憲法十五条一項には、被選挙権者、特にその立候補の自由について、直接には規定していないが」云々と述べておりますように、私どももこのいわゆる被選挙権等について規定をしておるものは第四十四条であるという解釈に立っておるのであります。
 なお、憲法には御承知のように選挙権という文言はなく、第四十四条において「選挙人の資格は」と言っておりますように、いわゆる選挙権は、すべての国民が人なるがゆえに当然有する権利、すなわち自然法的な人権、超国家的な人権ではなくして、国家機関としての選挙人団の構成員としての地位と資格を有する国民に与えられたところの国法上の重要な権利であるという理解に立っており、したがいまして、いかなる範囲の国民に付与するかということは、御承知のように四十四条の規定によって定めるという形に相なっておるのでございます。この点は被選挙権も同様でございまして、四十四条が「議員の資格」と言っておることは、このことを示しておるのでございます。
 第二十一条の結社の自由の問題でございますが、確かに、結社しない自由も憲法二十一条の結社の自由に含まれておると解しております。しかし、その自由も無制約ではなく、政党本位の選挙制度を設けるという合理的な理由により一定の制限を受けることはやむを得ないものではないかと考えております。
 また、無所属の立候補という問題にかかわりますところの信条の問題、第十九条の問題にいたしましても、同じような立場に立っておるということをこの機会に申し添えておきたいと思うのであります。
 次に、個人の立候補にかかわる問題でございますが、理論的には一人一党制の政党要件というものは拘束名簿式比例代表制の中にはあり得ると考えております。しかし、本改正案は、政党が国民の意思を形成する最も有力な媒体であることに着目し、その媒体機能を活用しようとするのでありますので、いわゆる一人一党制ではこのことが大きく期待できません。そこにわが党が政策的に、いわゆる政党要件としてあのようなことを採択いたしておる次第でございます。
 御質問の日弁連のアンケートの問題でございますが、日弁連から送付の資料によりますと、全国の登録された公法学者の五百三十人にアンケートを配付し、その約一六%に当たる八十六名から回答があり、その回答の内訳が御説明をいただいたとおりでございます。それだけに私も貴重な資料としていただいておるところでございます。
 次に、衆参両院のあり方の問題と関連をいたしまして、衆議院は政党代表、参議院は個人的高度の専門家の直接代表として規定づけられて、参議院の政党化に否定的な立場であるようでございますが、私どもはその見解を異にすることをこの際申し上げておきたいと思うのであります。
 第四は、法案の具体的内容にかかわりますところの諸問題でございますが、名簿作成の手続につきましては、それぞれの政党はその政党の運営ルールに従いまして、与えられたところの役割りの重要性を自覚し、自主的、主体的に、適正な民主的な選定手続によって定められるわけでございますので、これを法律の面で統一的に規定をする必要はないと私どもは考えておるのであります。
 恐らく各政党におきましても、日常の政治活動等によって把握をいたした有権者の意思、あるいは一般党員の意思が反映した名簿を作成されるであろうと考えておるのであります。いやしくも御指摘のような派閥力学とか金が物を言うようなことに相なりますと、その政党は国民の審判を厳しく受けざるを得ないわけでございます。私は、その意味におきましては、本改正法案は政党の自浄作用に大きな役割りを果たしてくれるに違いないとさえ思っておるところでございます。
 第二の二%条項でございますが、御指摘のように前回の参議院通常選挙の実績によりますと約百十二万票前後になるわけでございますが、御承知のように当選後の欠員補充が六年間有効であるということや、選挙運動、供託金のあり方からいたしまして、どういう小さな諸政党、諸団体でございましても、選挙戦術としては複数の立候補を擁することになると判断をいたしておりますだけに、いわゆるこの二%条項で個々に出られるという方がそう多くないという判断をいたしておるわけでございます。
 第三の選挙運動だけなぜ個人にしたのかということでございますが、長年個人中心の選挙制度になじんできたわが国では、自民党案のように政党本位の選挙だからといって選挙運動を全面的に禁止をするというやり方は、私どもとしてはむしろ国民の間に戸惑いと政治との遊離をもたらすことになるのではないだろうかということを懸念いたしております。そこに可能な限り名簿登載者と国民の直接的な結びつきを重視しなければならないとして、現行の選挙運動のあり方を基本にし、これにいろいろな要素を加えて提示をしてあるというのがわが党の特色であるわけでございます。
 しかし、はがき、ポスター等のいわゆる配布量は、現行法を基準としたわけではございますが、これはむしろ個々人というよりは政党本位に取り扱い、効率的に扱うということが私どもは非常に望ましいことだという考え方に立っておるのであります。
 第四の類似政党の続出によるところの混乱防止策でございますが、これは本法案の中にもありますように、既成政党の告示制度を設けて防止策を講じておりますし、かつ一定要件を備えた政党本位の選挙運動でありますので、御指摘のように、また従来以上に非常に費用がかかるということは私どもは全然考えておりません。
 第五の選ぶ側の要請の諸問題でございますが、本改正案は、現行全国区選挙における選ぶ側と選ばれる側とに係る各種の弊害をむしろ除去することになり、政治資金にまつわる諸問題や金権候補の解消にもむしろ役立つのではないだろうかという判断をいたしております。また、個人への投票を認めないという点につきましても、国民の意思を正確に反映するためには拘束名簿式で政党への投票のみを認めるといういわゆる合理的な案でありますだけに、その点は憲法の許容するところの範囲だと言えると思います。
 最後の御質問は、選挙制度の諸問題でございますが、御承知のように、定数是正に係ります国民の訴訟件数は、すでに衆議院関係が五十件、参議院で九件に上り、違憲判決が四つも出ており、立法府といたしましても、御指摘のように一日も早く着手をしなければならない問題でございます。この点は質問者もお触れになったように、本院におきましても、あるいはまた公選法の委員会におきましても私どもも強く指摘をし、その実施のための努力を働きかけておるところでございます。また政治資金規正法の見直しの問題も同様に、同法第八条がその方向性をすでに明示をしておりますし、かつ見直しの年限をすでに過ぎておるわけでございますので、私どもとしても急がなければならない課題だと思います。そういうような意味合いにおきましては、質問者と全く同様に、定数是正の問題あるいはまた政治資金規正法の問題は緊急の課題だと考えておるわけでございます。
 ただ、率直に申し上げまして、いわゆるこの問題ではなく、すでに別の問題として選挙制度の改革の案が自民党から提出をされ、提出されておるものを何ら審議しないでこの問題が先だというわけにはまいりません。成立を期そうとしているだけに、これに対しますところの私どもの考え方ということも率直に提起し、やはりこの議論を踏まえていくという考え方に対して私どもは対応しておりますだけに、政治資金規正法なりあるいは定数是正の問題を先にやらなければこの問題は審議できないという立場には立っておらない点は御理解をいただきたいのでございます。
 また、小選挙区制の問題でございますが、比例代表制と小選挙区制とは理念的には相反するものであることは御理解いただけるものだと思います。したがいまして、私どもは参議院の全国区制の改革が衆議院の小選挙区制導入の突破口になるのだという考え方には立っておりません。しかし、それにもかかわらず、もし与党自民党の方があくまでもこれを導入しようとする意図があるとすれば、これはまさに党利党略以外の何物でもありません。それだけに私どもといたしましても皆さん同様、絶対反対の立場からこれに対決して闘うところの決意があることを申し添えまして、答弁を終わらせていただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(徳永正利君) 山中郁子君。
   〔山中郁子君登壇、拍手〕
#10
○山中郁子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました日本社会党提出の公職選挙法の一部を改正する法律案について質問いたします。
 一月二十九日の本院における代表質問において、わが党の宮本委員長は、参議院全国区制問題について、「自民党の改悪案を強行するならば、内容、手続の両方で参議院の自殺行為になる」と警告いたしました。四月二十八日の本院公選法特別委員会における質疑打ち切りの強行は、まさにこの警告が単なる杞憂ではなかったことを示す事態にほかなりません。言論の府である国会で、自民党がこのような問答無用の暴挙を行ったことをわが党は断固糾弾するものであります。
 そこで、まず発議者に伺いますが、選挙制度という議会制民主主義の基本ルールの改正は、各党間の十分な協議と合意を基礎として、主権者である国民によくわかる方向で進めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。いやしくも十分な協議もないままに法案を提出し、しかも審議も尽くさないで一部の党派の賛成だけで成立を急ぐなどは断じて行うべきではないと思いますが、抽象論ではなく、具体的に見解をお示しください。
 また、いま選挙制度について緊急になすべきことは、いわゆる逆転区さえ生まれている参議院地方区及び違憲判決が出されている衆議院の定数是正を図ることではないでしょうか。発議者は、有権者の一票の価値の著しい不平等が生じている今日の事態を是正することが、何にもまさる緊急かつ最重要の課題とお考えにならないのか、改めて見解をお伺いするものであります。
 次に、小選挙区制との関連についてお尋ねいたします。
 自民党は、参議院全国区に拘束名簿式比例代表制を導入することを、衆議院に小選挙区制を導入するためのいわば突破口にしようとする意図を依然として捨てていません。発議者は自民党の一党支配の永久化をねらうファッショ的な小選挙区制についてどんな認識をお持ちなのか、これは明確にお答えを願います。
 次に、法案の内容に即してお尋ねいたします。
 わが党はかねてから、選挙制度は議会制民主主義の基礎をなすものであり、真に民主的な選挙制度とは主権者である国民の選択が公正で民主的に議席に反映するものでなければならないと主張してまいりました。この立場からわが党は、比例代表制こそがこれにかなう選挙制度であることを先駆的に主張してきたものであります。しかし、今回の社会党案には、自民党案同様、この制度の本来の理念に照らして憲法にもかかわる重大な問題点があることをまず指摘せざるを得ません。社会党案は、すでに審議されている自民党案の重大な改悪内容に比べれば、これを若干緩和した内容になっています。しかし、次の二つの点で共通する大きな問題点を持つものであります。
 第一に、比例代表選挙に候補者名簿を提出できる政党等の資格について、立候補者数、所属議員数、直近の選挙での得票率などにかかわる三要件を設けて少数政党を選挙から排除し、無所属、無党派の立候補を禁止していることであります。これは、わが国の憲法が保障する「結社の自由」や「法の下の平等」を著しく侵害するものであると言わなければなりません。発議者は社会新報の紙上などで、「比例代表制を採用することが憲法上禁止されていない以上、この制度によって選挙権の制限を受けることになるにしても、それを違憲と見るべきでない」と述べています。しかし、比例代表制を導入することを理由として、無党派、少数政党の排除をもたらす要件を持ち込むなどは絶対に許されるべきではありません。
 そこで伺いますが、これらの要件で選挙そのものに参加する資格を制限することが比例代表制に欠くことのできないものとお考えなのかどうか。このような規制要件を設けて少数政党や無党派の人々を排除すること自体、国民の中に現にある多様な政治的意思を国会に公正、民主的に反映させる比例代表制本来の理念と矛盾するのではありませんか。どのようにお考えか、明確にお答え願います。
 なお、この点で言えば、かつて社会党の佐藤観樹選挙制度特別委員会事務局長は「拘束名簿式比例代表制にしても無所属を排除しない」との態度を表明しておられましたけれども、今回の法案はこれとも異なるものであります。社会党は、いつ、どのような検討を経て無所属立候補を禁止するに至ったのか、あわせてお伺いいたします。
 主権在民の原則を定めるわが国の憲法のもとで、参政権が重要な基本的人権の一つであることはいまさら論ずるまでもないことであります。ところが、現在までの委員会審議などで自民党案の発議者などは、いわゆる「公共の福祉」なるものを口実として、選挙権や被選挙権を法律で大幅に制限できるかのように主張しています。もしもこのような論を認めるならば、基本的人権の保障は有名無実になりかねません。そこで、この点についての発議者のお考えを伺います。
 憲法第十三条は、国民の基本的人権について、「公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とうたっています。したがって、もしこの問題で公共の福祉論を持ち出すならば、無所属の立候補や少数政党の存在はわが国の憲法が言う「公共の福祉」に反するものであるということになるではありませんか。社会党案が無所属立候補の禁止、少数政党排除の要件を盛り込んでいる意味はその点にあるのですか。事は憲法にかかわる重大問題でありますので、はっきりとした責任ある答弁を求めるものであります。
 また、政治団体に加入しなければ立候補を認めないのは結社の自由を保障した憲法第二十一条に反するという主張に対して、社会党はすでに公式に発表している本法案の説明文書で、「拘束名簿式比例代表制の導入は憲法の国会の立法裁量の範囲内として許容し得るものであるので疑点はない。なお、非政党主義、つまり無所属主義は政治上の立場ないし主義ではあり得ても、憲法に言う「信条」に当たらない」という趣旨の反論を展開しています。しかし、これはとうてい受け入れられない議論であります。
 わが国の憲法の保障する結社の自由は、戦前の暗黒政治の苦い経験に立って、国民がその信ずるところに従って結社することを保障し、国家権力の弾圧、規制を厳禁することを主要な内容とするものであります。このことは同時に、国民がいかなる結社にも加わらないでいることをも当然のことながら認めているのであります。したがって、政治団体に加入しなければ選挙に立候補できないとすることは国民の結社へ参加しない自由を侵害するものであって、先ほどの御答弁にあった、これが制限される場合もあるなどは憲法第二十一条の趣旨に全く反するものと言わなければなりません。社会党は常々護憲を党是としていることを主張しておられますが、このような明白に憲法に抵触する法案とその党是なるものとは真っ向から矛盾するではありませんか、見解を求めます。
 次に、法案作成の経過について伺います。
 一九七七年、第八十国会に自民党が提出した法案は、特別な政党要件を定めない無党派、無所属の立候補も認めるものでした。
   〔議長退席、副議長着席〕
ところが、委員会審議でわが党がすでに明らかにし、自民党もその存在を認めた自民党の内部文書では、少数政党や無党派の立候補を認めると「有権者が魅力ある個人や有名な少数の会派に流れる」などとしているのであります。そのデメリットやリスクを解決する策を求めたのが、少数政党と無党派の排除を盛り込んだ党利党略の一票制案でした。この一票制案は、わが党などの追及や国民の批判によって国会に提出することができませんでしたが、一票制案に盛り込まれたこれらの要件は現在の自民党の法案に明らかに引き継がれております。この党利党略で固めた自民党案のたどった経過についてどのような見解をお持ちですか。
 また社会党案も、緩和しているとはいえ本質的に同じような内容の三要件を定めていますが、自民党案に共通する目的や動機があるのかどうか、伺います。
 次に、社会党案の第二の問題である選挙運動の規制について伺います。
 本法案の運動規制は、自民党案に比べれば若干緩和されているものの、個人ビラ、ポスター、拡声器など現行法が認めている言論宣伝戦の手段を大幅に規制するものになっています。政党が前面に立つ比例代表制を導入するというのであれば、政党とその候補者の言論による活発な選挙運動、政治活動の自由を保障することこそ必要です。先進諸国に例のない言論の自由をがんじがらめに規制した、べからず選挙とも言うべき現行法の規制をさらに強化しようとする本法案は、国民の知る権利を奪い、暗やみ選挙の弊害を一層大きくするものであります。この点についての発議者の見解を求めます。
 選挙運動について、社会党はさきの説明文書で、「わが党は常に選挙運動を本質的には政治闘争であるとの確認に立って選挙運動の自由の拡大を主張している」と述べています。しかし、社会党は、昨年の通常国会に自民党が提出した言論規制を内容とする公選法改悪について、これを成立させないという立場に立った断固たる態度をとりませんでした。また、一九七五年の公選法改悪の際には、自民党とともにこれを積極的に推進したのであります。これらの態度と、今回の法案の厳しい選挙運動規制の内容を見るならば、社会党の「選挙運動の自由の拡大を主張している」との言葉が、国民には全く空虚なものとしてしか映らないことは余りにも当然ではありませんか。
 日本共産党は、議会制民主主義の発展を願い、戦後いち早く比例代表制を提唱し、選挙制度の民主化に一貫して力を注いできた政党として、小選挙区制を初め選挙制度改悪のあらゆる策動と闘うとともに、真に民意の公正な反映を保障する民主的な選挙制度実現のために今後とも全力を尽くす決意を表明して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔宮之原貞光君登壇、拍手〕
#11
○宮之原貞光君 前の質問者と重複する点は可能な限り割愛させていただきたいと思います。
 第一点の選挙制度の改革の問題は、先ほどもお答えいたしましたように、議会制民主主義の基本を支えるところのきわめて重要な問題でございますから、各党の協議と合意が得られるように最大の努力をしなければならないことは当然でございます。そういう意味におきましては、先般とられました自民党の強行採決は、われわれとしては厳しく糾弾をしなければならないと思うのであります。
 ただ、わが党が本法案の提出に踏み切ったゆえんのことについても先ほど申し上げたわけでありますが、いわゆる自民党案に対置するものとして提起をしたわけでありますから、言うならば共通の土俵が具体的な案を出すことによってできたわけでございますから、ここで十二分に審議をするということが大事じゃないでしょうか。反対だと言いながら、案が出ないと審議の土俵がないのです。そこのところはお互いにやはり理解をし合って、慎重に進めるために具体的にどうするか。したがって私は、そういう意味合いにおきましては共産党の方からもぜひともひとつ具体的に提起をしていただきまして、お互い共通の中で十分に議論ができるようにしていただきたいと思うのであります。
 次に御質問の定数是正の問題でございますが、これは私どもも御質問者が指摘しておりますように、緊急かつ重要な課題だということで認識をいたしております。それだけに、この問題については共産党同様、お互いにこれが物になるように最大の努力をしなければならないと思っておるわけでございますので、どうぞひとつ今後ともその点は十分連携をし合いながら行動をとらせていただきたいと思うのでございます。
 次に、小選挙区制の導入問題も、これまた先ほどお答えいたしたようでございました。ただ、やはりあくまでも小選挙区制を導入するというのは、まさにこれは一党独裁の体制づくりでございますから、議会制民主主義のあり方が基本的に異なるものであるということは明白でございます。それだけに、日本社会党としても皆さん同様、全力を尽くして断固排除のために闘いたい、こう申し上げておるわけでございますので、その点は御理解をいただきたいと思うのであります。
 次に、政党要件の設定と比例代表制の理念とは矛盾をしないかという問題でございます。結論から申し上げますと、私どもは矛盾をしないという立場に立っておるのであります。そもそも比例代表制というのは、国民の多様な政治的な意見を可能な限り公正に政治に反映をさせるところのものでございますから、言うならば拘束名簿式比例代表制というのもまさにその一環であるわけでございます。それだけに問題は、その政党要件が一体どうなのかというところが非常に問題になると思うのであります。
 私どもは、先ほども申し上げましたように、国民の政治的意思が政党を媒介として形成されているという事実に着目し、この拘束名簿式比例代表制の導入に当たって、政党が団体としての力をある程度出し得るという限界がいわゆる政党要件としての三つだという形で提示をしておるわけでございます。御質問者は、言うならばさらにこれを広げていきますと一人一党制ということも理論上はあり得る、それは私断りましたように。したがいましてそのことは、一人一党制をも前提とした拘束名簿式比例代表制を採用するのか、それとも政党要件として一定の限界を設けてやるかということが政策上の問題になるわけであります。それで私どもは、先ほど申し上げたように、いわゆる一人一党という形の政党要件ということでは政党としての機能を十分果たし得ない、こういう立場からそれを採択しなかったわけでございますので、その点は御理解をいただきたいと思うのであります。
 なお、社会党内部のさまざまな意見についてのいろいろ御指摘があったわけでありますが、わが党は何しろ幅の広い党でございますから、さまざまな議論は過程の中ではやります。しかしながら、さまざまな議論をしますけれども、結論が出たならばそれに従う、これがわが日本社会党の民主政党であるところのゆえんであるわけでございます。したがいまして、過程の中では御指摘のようにさまざまの議論が起きたことは事実でございます。御指摘のように、無所属候補をも含めた拘束名簿式をとったらどうかという議論は、言うならば先ほど私が申し上げました一人一党制ということをも踏まえたところの一つのやはり立論の立て方であったわけであります。また、御紹介申し上げましたように、それ以外にも、政党も投票の際によろしい、個人の名前でもいいじゃないか。ただし集計をするときには、個人の名前を書いたものはその個人の所属をする政党に加算、計算をしてやるという方法もあるのではないかという議論も率直のところありました。
 しかし、さまざまの議論の中から私どもとしてはいま提起を申し上げておるところの結論等を得たわけでございますので、その根拠は、先ほども申し上げましたように、政党としての機能を発揮し得る条件のぎりぎりの状態はどういう条件なのか、そこのところを政党要件の私どもは一つの判断の基礎にいたしたという点を御理解をいただきたいと思うのです。
 次に、自民党のいわゆる公共の福祉論、実はこれは私どもいただきかねるのです、率直に申し上げまして。労働者の基本的な権利や学問研究の自由の問題で事ごと私どもは自民党と対決してまいりました。それだけに、これを認めることになるとするならば今後さらに拡大をされるのでないかという危惧さえ持ちます。それだけにわが党はいわゆる公共の福祉万能論は断固として排しておるのであります。私どもの立場は、日弁連の意見書にも明白にありますように、明白な合理的な理由があるのかないのか、合理性があるのかないのか、ここを判断の基礎にして、明白な合理的な基礎というものがある場合には一定の制限はやむを得ないのじゃないだろうか、こういう立場に立っておるということをこの機会に申し上げておきたいと思います。
 なお、二十一条の問題は、先ほど公明党の太田議員の質問にお答え申し上げたとおりでございますので、そのように御理解をいただきたいと思います。
 なおまた、自民党の無党派の問題についてもさまざまな御指摘がありました。私どもも余りにも自党本位の立場からこの選挙制度というものはいじるべきでないという物の考え方でございます。したがいまして、時間がありませんので多くは申し上げませんが、わが党が、たとえば当選人の決め方の問題につきまして、あえてドント式をとらないでいわゆる修正サン・ラグをとったというこの一事でも、私はわが党が党利党略に立っておらないのだと、その点は御理解をいただけるのじゃないだろうかと思うのでございます。
 それから選挙運動の自由、政治活動の信条の問題、いろいろ自由の問題の最後の御質問でございますが、私どももこの政治活動並びに選挙運動の自由ということは、いつ、いかなる場合でもきわめて重要な問題だと思っております。それだけに、先ほども申し上げましたけれども、拘束名簿式比例代表制のその中でも、幾ら政党本位だといっても、いわゆる個人の選挙運動の自由を可能な限り認めていこうという立場に立っておるのはそのことだということで御理解をいただきたい。したがいまして、私どもは、今後さらに選挙運動の自由あるいは政治活動の自由の保障というものは、御質問者同様に前向きに対処してまいらなければならぬと思います。
 特に、私どものところで議論になりましたのは、いま大きな問題になりつつありますところの戸別訪問の自由という問題は、当面の緊急の課題として皆さん方と一緒になってこの解決のために図らなければならないと考えておるということを申し上げまして、答弁を終わらせていただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○副議長(秋山長造君) 栗林卓司君。
   〔栗林卓司君登壇、拍手〕
#13
○栗林卓司君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案について、発議者に対し若干の質問をいたします。
 昨年の十一月二十四日のことであります。日本青年団協議会、全国地域婦人団体連絡協議会、主婦連合会、理想選挙推進市民の会、日本婦人有権者同盟、以上五団体による拘束名簿式比例代表制に反対する市民集会が開催されました。この集会に各党の代表が招かれ、見解を求められました。公明、共産、民社の三党及び二院クラブ、一の会はそれぞれ担当の議員が出席、自民党は欠席、社会党は議員ではなくて事務局の人が代理出席をしておられました。
 そこで、この集会の雰囲気を改めて御報告いたしますが、全体が反対一色であったことは当然として、集まった人たちがこもごも立って訴えられたことはこういうことでした。「私たちは、これまで社会党を支持して選挙のたびに票を投じてまいりました。その理由は、社会党は憲法を守ってくれる政党だと信じてきたからです。その社会党がどうして今回憲法違反の公選法改正案に賛成するのですか。私たちは社会党に幻滅するしかないのでしょうか。お願いですから考え直してください」。大略、以上のとおりであります。
 当時、社会党は、自民党案に対する態度を正式に決めておいでではありませんでしたが、今回、独自案として公選法一部改正案を御提出になりました。独自案といっても、その内容は従来の自民党案と同工異曲であり、改正の根幹において何ら変わるものではありません。もちろん、自民党案に比べて国民固有の権利に対する制約が若干緩和されていることは認めるにやぶさかではありません。しかし、問題は、国民固有の権利に制約を加えることであって、若干緩和したからといって問題の性質が何ら変わるものではありません。いわば五十歩百歩であります。
 そこで、私もまたお尋ねをしなければなりません。社会党は、憲法を守ること、すなわち護憲政党であることを信条にしてこられた政党であります。その社会党が、今回はどうして国民固有の権利を制約する側に加担されたのでありましょうか。憲法公布以来三十余年、国民を取り巻いている状況は日々に変化しております。したがって、その変化に合わせて憲法も柔軟に解釈する必要があると主張されるのでありましょうか。
 主権在民の民主憲法のもとで、議員を選びあるいは議員に立候補する権利は国民の固有の権利であり、奪うことは許されません。民主社会において、選挙権、被選挙権及び立候補の自由は根本的人権の一部を構成していると理解すべきであります。年齢その他の事情で仮に制約することがあるとしても、それは必要最低限にすべきであります。
 これに対し自民党は、選挙権、被選挙権は国民固有の権利、すなわち基本的人権というよりも法律によって与えられた法的資格と見るべきものであり、合理的な理由があれば奪うことも許されるという立場をとっているようであります。時々の変化に応じて憲法を拡張解釈し、いずれは改正することを目指している自民党にとって、時勢の移り変わりに従って、合理的な説明さえつけば国民固有の権利が制約されることもあり得るという立場をとられることは別に不思議はありません。
 では発議者は、改憲政党である自民党と同じ立場にお立ちになるのでありましょうか。また社会党は、国民の権利を守る問題について、これからはどのような態度をおとりになるのでありましょうか。情勢の変化によっては国民の権利を守らないこともあり得るのか、さらにまた選挙権、被選挙権及び立候補の自由は基本的人権と考えているのかいないのか、明確にお答えをいただきたいと思います。
 さて、発議者は、情勢の変化としては、今日、政党が国民の政治意識に着実に定着してきていることを挙げ、また憲法違反の批判に対しては、政党が、わが国の議会制民主主義のもとで国民の政治意思を反映させるための媒介として重要かつ不可欠の機能を果たしていることを強調されているようであります。したがって、拘束名簿式比例代表制というまさに政党本位の選挙制度を導入し、その結果として、有権者が自由に候補者を選ぶ権利や無所属で立候補する権利を有権者から取り上げてもやむを得ないと主張しておられるようであります。
 確かに、御主張のように、今日、政党が重要な機能と役割りを果たしているのは事実であります。国民の政治意思を反映させるための媒介として、すなわち仲介者として機能するものが政党しかないというのならお立場も理解できないことはありません。しかし、国民の政治意思を反映させるための仲介者は政党だけなのでありましょうか。この点について、発議者も引用されている最高裁大法廷の判示は、「政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒介である」とは言っていても、唯一の媒介とは言っていないのであります。すなわち裏返して言えば、国民の政治意思を形成する媒介、すなわち仲介者は政党のほかにも存在するという指摘であります。
 では一体、その他の仲介者とは何なのか。そして、そうしたもろもろの媒介もまた厳然として存在し、国民の政治意思を形成する仲介者としての役割りを果たしていることは間違いないのであります。市民団体、労働組合、経済団体、宗教団体、各種団体と、数え上げていけば幾らでも思い当たるのではありますまいか。無所属という立候補の形式もまたそれに当たると思います。しかし、発議者が主張する政党本位の選挙、すなわち拘束名簿式比例代表制は政党以外の媒介をそぎ落としてしまうことになります。一体これが正しいやり方と言えるのでありましようか。
 昭和五十五年の参議院全国区選挙の場合、諸派、無所属は四名の議員を当選させ、得票割合は全体の一七・三%に達しました。また、昭和五十四年の新聞世論調査によると、支持政党なしと答えた者が全体の二〇・七%、しかもこの数字は年ごとに増加しているのであります。一体この数字は何を物語るのでありましようか。有権者の一七・三%の人は諸派、無所属に投票することによっていかなる政治意思を表明したのでありましょうか。端的に言えば、既成政党に対する痛烈な批判票だということではありますまいか。そして、この批判に対して胸に手を当てて考えるのが正しい対応なのか、拘束名簿式比例代表制で全部そぎ落としてしまうのが正しいのか、発議者の見解を伺いたいと思います。
 次に、望ましい選挙法改正のあり方について、特に憲法違反とのかかわりについて発議者の御見解を伺いたいと思います。
 すべての法律案がそうではありますが、特に選挙法の場合、憲法違反の疑いは極力回避して立法するのが当然の配慮だと思います。もし仮に憲法違反の疑いのある選挙法改正案が成立し、施行された場合、政府はこれを合憲のものと推定して誠実に執行するほかに道はありません。したがって、合憲か違憲かは最高裁の判断にまつほかはありませんが、もし違憲と判断した場合は憲法九十八条により法律は自動的に無効となり、その間に実施された選挙も無効、またその間に国会で成立した法律案も有効に成立したか否かが争われるという大問題を引き起こすことになります。したがって、特に議員立法として選挙法改正を提案する場合には、国権の最高機関らしく、慎重な検討とあわせて憲法違反の疑いは極力回避する配慮が必要だと思うのですが、いかがでしょうか。また、憲法違反の問題を真剣に考えた場合、選挙法の改正として優先すべきものは定数是正ではありませんか。
 発議者は、拘束名簿式比例代表制、すなわち政党本位の選挙の重要性を強調しておられますが、率直に言って政党は日本の風土の中で政党本位の選挙にたえるほど成熟をしているとお考えでしょうか。議員中心の教党を脱却して国民に根をおろした政党に発展しているというのなら、あるいは政党本位の選挙にたえられるかもしれません。世論調査によれば、選挙の際、政党を基準として選ぶ人が三二・三%であるのに対し、人を基準として候補者を選ぶのは実に四七・六%であります。また、政党の本来の支持基盤は市町村だと思いますが、市会議員の約五〇%が無所属、町村議会議員の九〇%が無所属議員、市長、町村長を見てもその約九割が無所属であります。こうした実態のどこに政党本位の選挙を担い得る政党の姿がありますか。
 私も政党に属している議員であります。その立場から見ると、御提案の拘束名簿式比例代表制は、既成政党にとってまことに都合のいい制度であることは間違いありません。政党自身が努力をしなくても、有権者は政党を通してしか自分の政治意思を表現できないのであります。端的に言えば、既成政党同士が不況カルテルを結んだようなものであります。そして、何よりも楽をするのが名簿登載議員であることはいまさら申し上げるまでもありません。
 しかし、選挙とは一体議員にとって何なのでありましょうか。選挙は洗礼だとよく言われます。表現のよしあしは別にして、選挙をする前と、した後では人間の生き方が変わってくるという意味では確かに洗礼なのかもしれません。鈴木東京都知事は選挙が終わったとき、「これはいままで私が知らなかった世界だ。この得がたい感動が経験できただけでもありがたい」と記者団に語っておられました。もちろん当落が判明する前のことであります。
 私自身のささやかな経験からしても、最初にたすきを身につけたときの緊張感、町を行き過ぎる人の顔、握手のぬくもり、支援者との深い共感と感謝、疲れ切ったときにもらう花束のありがたさ、それまでの高慢な鼻がへし折られて、有権者に対してとめどもなく謙虚になっていくあの選挙運動の経験は、私にとって得がたい人生修業でありました。私がもし仮に議員として多少の役に立つことがあるとしたら、その原因は選挙の体験であり、数え切れない人たちが私に与えてくれた教訓のたまものだと思っております。したがって私には、選挙経験のない議員が存在することになるというのが信じられないのであります。この点、発議者は選挙についてどのような体験をお持ちでしょうか。今回御提案の中で若干選挙めいたものを御追加になりましたが、政党選挙の枠の中でというのでは本来の選挙とは似て非なるものがあります。
 さらに、現実の日本の政治風土を考えた場合、拘束名簿式比例代表制、すなわち、有権者にとってはだれに投票したのかわからない、議員にとってはだれから支持されたのかわからない。その間をつなぐものは、ドント方式であれ、修正サン・ラグ方式であれ、要するに計算機の御厄介になるというやり方が、本当に国民の支持を受け、定着していくとお考えでありましょうか。日本人は理よりも情が勝った国民であります。肌の触れ合いを最も大切にする民族であります。しかし、今回改正案による名簿登載議員は選挙民と触れ合う機会を失った議員であります。一体だれのために働くことになるのでありましょうか。だれと共感を分かち合いながら仕事をしていくのでありましょうか。
 現在の全国区について、金がかかり過ぎる、すなわち銭酷区である、あるいは肉体を酷使し過ぎる、すなわち残酷区であるとよく言われます。しかし、本当に一般的傾向としてそうであるかどうかは、それはいまだ一度も検証されたことがないのであります。発議者はどうお考えですか。全国区候補も地方区候補も一日二十四時間であります。比べてみれば、地方区の方が大変だという声さえよく聞きます。また費用の方も、組織選挙を心がけている限り、全国区は地方区あるいは衆議院の選挙に比べて同じ程度の費用しかかかっていないというのが正直なところではありますまいか。手弁当選挙をやらずに、金つき、弁当つきで選挙をしようとしたら、それは幾らあっても足りるものではありません。しかし、それは全国区という選挙制度のせいではなくて、そうした選挙のやり方に問題があるのではありませんか。御所見を伺います。
 最後に三点伺います。
 どの政党であれ、選挙法改正を提出する限り、その陰に党利党略がないということはありません。とすれば、発議者はこの案がどの点で社会党に有利だと考えておられますか。
 仮に完全な政党選挙に移行するのが目標であるとしたら、理の当然として、衆議院を現状の個人本位の選挙のままほうっておいていいということにはなりません。本来の政党選挙を妨げている最大のものが現行の中選挙区制であります。では、小選挙区制比例代表制を将来採用する用意がおありかどうか、そうでなければ首尾一貫いたしません。完全な政党選挙に移行するための将来計画をお聞かせいただきたいと思います。
 その際、参議院の政党化が進んでも参議院の機能は低下しないし、むしろ向上すると言われるのなら、そのための将来計画を具体的に伺いたい。その際、党議拘束の緩和という政党にとっての重大問題に逢着することになりますが、これをどのように解決されるのでありましょうか。
 以上お伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔宮之原貞光君登壇、拍手〕
#14
○宮之原貞光君 栗林議員の御質問はきわめて多岐多方面にわたっておりますので、可能な限り集約をしながらお答えをさせていただきたいと思います。
 まず、わが党を護憲の党として非常に評価されながら、なぜその護憲の党が違憲の疑いがある改正案を出したかということでございますが、わが党といたしましては、再三申し上げておりますように、法案の合憲性についてはあらゆる角度から検討し、確信を持って違憲の疑いはないという立場からこの法案を提出しておるということを、この機会に申し上げておきたいと思うのであります。
 なお、質問者は、すべて前提をこの法案は違憲であるという立場からのさまざまの御指摘でございますが、私はまた逆に合憲であるという立場からいろいろお答えをさせていただきたいと思うのであります。
 わが党の今後の憲法を擁護し、国民の権利を守るところの運動についてどう考えておるのかということも御質問の中にあったわけでございますが、わが党は結党以来、現行憲法を一貫して守り、これに基づくところの国民の権利ということについて他党に率先をしてまいったという自負を持っております。それだけに、今後もこの決意はいささかも変わることは私どもはないのでございます。
 選挙権、被選挙権の問題につきましていろいろあったわけでありますが、よく選挙権は基本的な人権かどうかという論議が委員会でも行われます。その場合には、やはり基本的人権という概念規定から明確にしておきませんといろいろな混乱が生ずるのであります。私どもは、人なるがゆえに当然有するところの自然法的、超国家的な人権を基本権と言うならば、選挙権、被選挙権はそれに該当しないと思います。しかしながら、いわゆる人権の中でもきわめて重要な人権であるという立場からの基本的人権論であるならば、私どもも基本的人権に該当するものだという理解に立っておるわけであります。
 それにいたしましても、これらの問題をどのようにして制約し、あるいはどうやっていくかというものは、憲法のやはり制約の許容の範囲の合理性があるかないか、ここのところが一番の焦点になるわけでございますから、ここのところの相違点が、栗林さんと私ども提案者との意見の根本的な違いが御質問の中に各所に出てきたのではないだろうかと考えておるわけであります。
 私どもといたしましては、国民の政治的意思を国会に反映させる媒介としての政党の役割りはいささかも変わるものではないという考え方なので、すべてがそれだとは申し上げませんけれども、きわめて重要な部分がこの政党である、このことは間違いないと考えておるところでございます。
 国民の政治意識の多様化あるいは無党派という問題に関連をいたしまして、政党本位の選挙というのはそれを無視することにならないかという御指摘があるわけでございますが、私どもは、この無意識層、いわゆる無党派層というものは、言うならば国民の価値観の多様化という問題と既存の政党に対する不信、不満、この二つが影響し合っているだけに、この根本のものを除去しながら政党政治ということを基本に踏まえてやっていくならば、決して相対置するものではなくして徐々に解決できるものだという考え方に立っておるということを、この機会に明確に申し上げておきたいと思うのであります。
 なおまた、政党選挙は日本の政治風土の中に一体熟しておるのかどうなのか、こういう問題でございますが、私どもは、戦後三十七年の間におきますところの政党政治が行われてまいりまして、すでに国民の中に政党の政治というものは定着はしつつあると思うのであります。それが完全に定着しておるとはもちろん考えません。それだけに、今後議会制民主主義をさらに発展させていこうとするならば、やはりこの政党の役割りということを最大重視し、これをさらに発展させるという立場を踏まえながらこの選挙制度の問題については対応していくという基本に立たなければならないのじゃないだろうか、このように考えております。
 なおまた、選挙民を知らずに当選をするところの議員は一体だれのために働くのか。これは御承知のように当選されてきた者は全国民を代表するわけでありますから、国民を代表して国会で活動していただいていることは申し上げるまでもないことであります。ただ御指摘のように、拘束名簿式比例代表になると、いわゆる選挙しないで上がってきたところの議員だというきめつけ方でありますが、私どもは決してそうとは思わないのであります。特に私どもは、国民の前にそれぞれの政党が推薦するところの候補者の名簿として提示をされて、国民はやはりその個人ということを念頭に入れて政党を選ぶわけでありますから、少なくともその人が全然考慮されないままに議員として出てきたものとは毛頭思いませんし、加えてわが党は、自民党がそれ一本に頼って、いわゆる個々の選挙運動、選挙民との接触ということを断絶をしておるわけですから、そこは非常に問題があるぞと。したがって、選挙ということを考えてみた場合に、政治家と有権者とが常に結びつく人間の触れ合いするところをつくるということは、きわめて政治を発展させるためには大事なことでございますだけに、この点はやはりどうしても私どもはわが党の法案の中の根本として皆さん方に御理解いただかなければならないと思うのであります。
 先ほど御自分の選挙体験を通じていろいろありました。私もまた栗林さん同様全国区という立場でいろいろ選挙をしてまいりました。それだけにいろいろな経験もしたわけでございますが、とりわけいまのところで申し上げますならば、やはり候補者とそれぞれの有権者との触れ合い、このことが日本の政治に大きく貢献するものであるということは、これは御指摘のとおりでございます。そこにわが党が拘束名簿式比例代表制をとりながらも、選挙運動として、いわゆる名簿登載者もこういう運動をして直接有権者と肌を合わせ、そのものを通じてやはり自分に対する、政党に対する協力、理解を得られることであるというところの選挙運動面を私どもが強く打ち出したゆえんもそこにあるという点を、ぜひとも御理解をいただかなければならないと思うのでございます。
 次に、今後の選挙展望あるいは将来計画という問題でございますが、私どもは、参議院の拘束名簿式比例代表制を全国区制にかわるものとして導入したからといって、直ちに衆議院にもその方式を導入すべきだとは毛頭考えておりません。それは、衆議院は衆議院のいろいろ歴史的な経緯がありますから、その経緯の中で、それぞれの立場の中で検討さるべきものであって、これをやったから次は衆議院だ、どこだというそういう計画にはもちろん立っていないわけであります。したがいまして、ずっと理論的に発展をさせていきますと、政党選挙になるのだから政党法もおまえたちはつくるのじゃないだろうか、こういう一つのやはり議論、疑念も出てくるだろうと思いますが、私どもは、政党法なるものは日本の政治風土あるいは現実の政治実態から見まして、それは検討される課題ではありましょうけれども、これを導入するという状況にわが国はない、こういう判断をいたしておるわけでございますだけに、この拘束名簿式比例代表制を全国区制の問題について導入したから、直ちにすべての選挙あるいはそういうものが完全に政党化されていかなければならないという展望に立っておらない、このことだけは計画としてもないということを申し上げておきたいと思うのであります。
 次に、参議院改革の問題にいたしましても、先ほど来御質問がありますように、私どもはやはり参議院をより参議院の第二院としての特性にふさわしい機能を発揮させるためには、全国区制の選挙のあり方について改革を加えると同時に、いま提起されておる参議院の機構改革という問題は積極的に行っていく。これが両輪の輪として実現をしたときに初めて参議院らしい参議院というものが実現できるのだ、こういう考え方に立っているという点を御理解いただきまして、答弁を終わらせていただきたいと思います。(拍手)
#15
○副議長(秋山長造君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#16
○副議長(秋山長造君) 日程第一 国務大臣の報告に関する件(昭和五十五年度決算の概要について)
 大蔵大臣から発言を求められております。発言を許します。渡辺大蔵大臣。
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(渡辺美智雄君) 昭和五十五年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 昭和五十五年度予算は、昭和五十五年四月四日に成立いたしました。
 この予算は、公債発行額をできる限り圧縮して財政再建の第一歩を踏み出すとともに、国民生活の安定と経済の着実な発展に配意することとして編成されたものであります。
 さらに、農業保険費、災害復旧等事業費等について所要の措置を講ずるとともに租税収入の増加等を見込むこととし、補正予算が編成され、昭和五十六年二月十三日その成立を見ました。この補正によりまして、昭和五十五年度一般会計予算は、歳入歳出とも四十三兆六千八百十三億円余となりました。
 以下、昭和五十五年度決算につきまして、その内容を御説明申し上げます。
 まず、一般会計におきまして、歳入の決算額は四十四兆四百六億円余、歳出の決算額は四十三兆四千五十億円余でありまして、差し引き六千三百五十六億円余の剰余金を生じました。この剰余金は、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計の昭和五十六年度の歳入に繰り入れ済みであります。
 なお、昭和五十五年度における財政法第六条の純剰余金は四百八十四億円余であります。
 以上の決算額を予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額四十三兆六千八百十三億円余に比べて三千五百九十三億円余の増加となるのでありますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れが予算額に比べて増加した額六千四百十億円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、昭和五十五年度の歳入の純減少額は二千八百十七億円余となるのであります。その内訳は、租税及び印紙収入、公債金等における減少額三千七百六十二億円余、雑収入等における増加額九百四十五億円余となっております。
 一方、歳出につきましては、予算額四十三兆六千八百十三億円余に昭和五十四年度からの繰越額六千三百四十二億円余を加えました歳出予算現額四十四兆三千百五十五億円余に対しまして、支出済み歳出額は四十三兆四千五十億円余でありまして、その差額九千百五億円余のうち、昭和五十六年度に繰り越しました額は五千三百九十一億円余となっており、不用となりました額は三千七百十四億円余となっております。
 次に、予備費でありますが、昭和五十五年度一般会計における予備費の予算額は三千五百億円であり、その使用額は二千五百二十億円余であります。
 次に、昭和五十五年度の特別会計の決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十八でありまして、これらの決算の内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。
 次に、昭和五十五年度における国税収納金整理資金の受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は二十七兆七千二百四億円余でありまして、この資金からの一般会計等の歳入への組み入れ額等は二十七兆六千八百二十億円余でありますので、差し引き三百八十四億円余が昭和五十五年度末の資金残額となります。これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。
 次に、昭和五十五年度政府関係機関の決算の内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。
 以上が、昭和五十五年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書の概要であります。
 何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○副議長(秋山長造君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。目黒今朝次郎君。
   〔目黒今朝次郎君登壇、拍手〕
#19
○目黒今朝次郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十五年度決算について、鈴木総理初め関係大臣に質問いたします。
 第一に、政府の経済運営について質問します。
 五十五年度当時の政府の経済見通しによれば、当該年度の経済運営の二大目標は物価の安定と景気の回復となっておりました。五十五年度の政府経済運営はこの公約どおり実行されたでありましょうか。実績は公約とは全然逆の結果となっております。すなわち、消費者物価は当初見通しの六・四%が実績は七・八%、卸売物価は当初見通し九・三%が実績は十三・三%であります。また、これら両物価は前年度実績以下の上昇率に抑制するという政府見通しでしたが、いずれも前年度を大きく上回って異常な物価高を招き、日本経済のインフレ体質を強め、国民大衆の生活を破壊したのであります。
 次に、景気の回復につきましては、当初見通しの実質成長率四・八%は辛うじて達成したものの、その中身は国内経済の停滞を貿易で稼ぎまくって穴埋めするといったもので、これまた政府の国民への公約とは大きくかけ離れたものであります。
 第二次石油ショックのホームメード・インフレ防止の政策目標は適切な当を得たものでありましたが、国内景気に大きなかげり現象が生じたのに、これを無視して、公共事業費の伸び率は前年度まで数年続いた二〇%台から一・七%と異常抑制の予算を編成した上、その執行を手控えぎみに行ったほか、景気との関連が大きい金利政策も、年度当初九%の高率公定歩合は年度中に二回の引き下げが行われたものの、そのいずれもがタイミングを失し、景気を悪化させたことは明らかであります。こうした政府の政策運営のまずさが、今日、日本経済の潜在成長力をそぐことになり、国際摩擦、内需不振、財政窮迫の三すくみの苦境に追い込まれてしまったと判断されるのであります。
 物価上昇と内需の低迷によって、五十五年度以降三カ年間にわたる消費不況、住宅不況に象徴されるように、国民大衆の生活は大変苦しくなっております。経済は先行き不透明、国民生活は先行き不安という今日の状態の根源は、誤った五十五年度の財政経済運営にあったと考えられます。こうした五十五年度経済政策の失敗を政府はどう反省され、これを五十七年度の困難な経済運営に生かそうとされるのか、総理並びに経済企画庁長官にお伺いしたいのであります。
 第二に、国債発行減額政策について質問します。
 五十五年度の財政運営の最大目標は公債依存体質からの脱却であり、そのため当初予算で一兆円の国債発行減額を行ったことはそれなりに評価できるのであります。しかし、年度を通じる国債発行減額は、年度当初、五十四年度が一兆七千九百八十億円であるのに対し、五十五年度は一兆一千億円とした国債発行減額政策も実行の点では前年度を下回っております。すなわち、決算段階の国債発行済み額は、五十四年度十三兆四千七百二十億円、五十五年度十四兆一千七百二億円と、国債発行減額政策を打ち出した五十五年度の方が逆に多額の国債を発行しているという状況にあります。このように国債依存体質からの脱却の政府の努力は、なお不十分と言わざるを得ません。
 その上、五十六年度を見ますと、当初予算で二兆円の国債発行減額を大々的に宣伝し、財政再建の切り札と言っていたのに、補正予算で六千三百億円の国債増発に追い込まれたばかりか、補正後の税収見積もりに三兆三千億円に近い大穴があくことになり、五十六年度の国債発行減額政策は水泡に帰し、国債減額の政策はまさに破綻に瀕しております。
 五十五年度以来の国債発行減額政策が行き詰まりの状態にある原因は何か。また、鈴木内閣の最大の公約である「五十九年度までに特例公債脱却」の方針は実行不可能というのが世論であり、現実はこのことを余すところなく証明していると思われますが、総理大臣並びに大蔵大臣の見解を求めます。
 第三に、租税収入の過大見積もりの責任について質問いたします。
 五十五年度の経済運営の失敗は、政府自身が見込んだ租税収入が六年ぶりに二千七百六十三億円も不足するという失政を巻き起こしました。五十五年度の税収不足は、五十五年度補正で経済動向を全く無視して七千三百四十億円の税収増加を見込んだ結果生じたもので、租税収入過大見積もりの鈴木内閣の責任は免れません。
 五十五年度の税収不足は、税外収入などをかき集めることで決算のつじつま合わせが行われておりますが、鈴木内閣の税収過大見積もりの悪癖は、五十六年度予算で全く抜き差しならない事態を招いております。五十六年度には、先ほど述べたとおり三兆三千億を超す税収不足を生ずると大蔵省自身も苦しい告白を行っており、これは五十六年度租税収入予算のほぼ一割にもなることから見て、財政的に大問題であることは論をまちません。財政再建途上の大失態であり、財政運営の無能ぶりをさらけ出したもので、鈴木内閣の政治責任はきわめて重大であります。総理の答弁を求めます。
 さらに、五十五年、五十六年度に税収の過大見積もりをした原因を説明願うと同時に、適正な税収見積もりの確立にどのような工夫と努力をされるのか、大蔵大臣の答弁を求めます。
 次に、五十六年度の巨額の税収不足に対処して、決算調整資金の取り崩しや国債整理基金からの借り入れが取りざたされておりますが、政府の方針を示していただきたいと思います。
 赤字決算禁止の財政法の精神を受けて決算調整資金制度が五十二年度に設けられた経緯及び法文上からは、こうした税収不足の補てん策として決算調整資金が使われることは私どももよく承知いたしております。しかし、決算調整資金法制定当時の国会の論議を通じて、財政当局は、この資金使用の前提条件として二つのことを示し、みずからの手を縛っていることはお忘れでないと思います。その一つは、年度末の三月ぎりぎりまで補正予算を編成して国会に提出して、予算面で赤字決算をしなければならない事態を回避するよう最大の努力をすること、二つ目は、決算調整資金使用の際の税収不足は、当然に「年度終了後の出納整理期間中に生じた予知せざる事態に伴う真にやむを得ないものである」こととなっております。
 五十六年度のこの巨額な税収不足は、五十五年度の税収に穴があいたことにかんがみ、年度当初から歳入欠陥の危険が指摘され続けており、特に補正予算審議の際、社会党及び各野党こぞって税収見積もりの甘さに警告を発していたのに、渡辺大蔵大臣初め財政当局は言を左右にして税収見積もりは適正である旨の強弁を続けたのであります。補正予算によって収支均衡を図り、赤字決算回避の当然の任務を怠って三兆三千億を超える税収不足を生じた五十六年度の場合は、決算調整資金制度を利用できる前提条件を欠いた欠陥予算執行と言わざるを得ません。そのため決算調整資金を使うことが許されるかどうか、大臣の見解を聞きたいと思います。また、国会軽視と財政民主主義を無視した鈴木内閣の政治責任はまことに重大と言わなければなりません。これらを含めて総理並びに大蔵大臣の所見を求めます。
 第四に、決算の不正不当事項について質問します。
 五十五年度決算検査報告を見ますと、会計検査院から指摘された事項及び批難金額が後を絶たないばかりか、依然として高水準にあり、悪質化しており、国民の血税を預かる政府の予算執行にまず猛省を促したいのであります。
 五十五年度決算の会計検査院指摘事項の数は二百三件、金額で五千百三億円、さらに事業の効果が上がっていないと指摘された特記事項五件を加えると、国民の血税のむだ遣いは一兆八千六十四億円にもなるのであります。この額は、今日臨調などで政治問題化されておる国鉄の五十五年度の決算赤字一兆五百七十二億円を大幅に上回っておるわけであります。この検査院の検査実施率はわずか八%であり、不正不当の指摘はまさに氷山の一角にすぎません。そうした中で、公共事業に関連した過大積算、手抜き工事等の不正経理が数多く指摘されており、これらは先般大問題となった公共事業を食い物にする談合入札の温床とも深いかかわり合いがあり、政官財の癒着による血税のつまみ食いで、この根絶は緊急の課題であります。
 財政事情の悪化と財政再建の真っただ中にある今日、政府はこうした検査院の数多くの指摘をどう受けとめているのか。また、指摘事項の再発防止にどのような対策をとっているのか。また、例年類似の不正不当事項の指摘があるところから見ると、見つかったのは運が悪かったという考え方が政府部内に蔓延しておる危険があるのではなかろうか。予算の有効適切な執行に当たる財政当局はもちろんであるが、各省庁はどのように取り組み努力をしておるのか、総理及び大蔵大臣の答弁を求めます。
 さらに、談合入札防止の政府対策の進捗状況について大蔵大臣の答弁を求めます。
 最後に、伊藤防衛庁長官の国民誹謗の発言問題について質問いたします。
 長官は、五月六日、財界主催の防衛懇談会の席上、「日本国民は平和になれ過ぎて、国家に求めるものは、ゆすり、たかり、おねだりだ」と非難された上、「国民の連帯感は福祉や生活向上ではなく防衛だ」と主張されたそうですが、国民を暴力団まがいの扱いをなさったことはまことに遺憾であります。主権在民の民主主義の政治原理を認めず、憲法の基本原理を否定するもので、断じて許されるものではありません。
 長官は、私の郷土、生まれ故郷の宮城県から七回も当選されておりますが、あなたは「ゆすり、たかり、おねだり」の代表者であることをみずから認めるのですか。政治家はみずからの言論、行動に責任を負うのは当然であります。天に向かってつばする行為でありますが、せっかくの御指摘でありますから、「国民のゆすり、たかり」の事実を具体的に本会議で明示されることを要求いたします。
 国民を誹謗中傷することは民主主義の破壊者であると同時に、防衛庁が常日ごろ唱えておる「国民とともにある自衛隊」「国民に愛される自衛隊」という方針を長官みずからがほごにしたものであり、行政庁の長たる素質にも欠けるものと言わざるを得ません。また、こうした不見識きわまりない方を防衛庁長官に任命した鈴木総理も同罪の罪を免れることはできないと存じます。総理の政治責任の追及と、伊藤長官はみずから辞任してその責任を明確にすることを要求し、総理及び長官に見解を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、昭和五十五年度のわが国経済についてでありますが、第二次石油危機がもたらしたインフレ圧力とデフレ圧力によりまして、物価が上昇する反面、景気にかげりが生じ、内需の拡大テンポは緩やかなものとなりました。しかし、機動的な政策運営の実施によりまして、諸外国に比べ第二次石油危機の影響を軽微なものにとどめ得ましたことは御承知のとおりでございます。
 最近におけるわが国経済は、物価が安定した動きを示す一方、景気の回復は依然緩やかなものとなっており、このため政府は思い切った公共事業等の前倒しを行うとともに、金融政策の機動的な運営、住宅建設の促進などを行うことといたしております。今後につきましても、適切かつ機動的な経済運営を通じ、国内民間需要を中心とした景気の維持拡大に努めてまいりたいと考えております。
 次に、五十五年度以来の国債減額についてお尋ねがありましたが、御高承のとおり、五十五年度当初予算で一兆円、五十六年度当初予算で二兆円、五十七年度当初予算で一兆八千三百億円の国債減額を行いました。このため、一般会計の歳出から国債費と地方交付税を除いたいわゆる一般歳出で見て、五十三年度が一九・二%、五十四年度が十三・九%といった伸び率でありましたものを、五十五年度は五・一%、五十六年度は四・三%、五十七年度は実に一・八%と厳しく抑制してきております。このような努力にもかかわらず、第二次石油危機による世界的な景気後退の影響により、税収が見込みどおりに確保できないという厳しい情報下にありますが、五十五年度以来の歳出抑制、公債減額の努力の手を休めることなく、五十九年度に特例公債依存体質を脱却するという政府の基本方針に沿って最大限の努力を続けてまいります。
 税収欠陥の問題でありますが、五十六年度の税収不足が予想外に大きなものとなりそうな情勢となっていることはまことに残念でありますが、現在なお法人税の三月期決算の申告が残されており、具体的な減収幅が固まっておりません。一方、税外収入とか歳出の不用とかの額も次第に固まってまいりましょうから、歳入歳出を通ずる全体の決算見込みを踏まえ、現行制度の中で適切に事後処理をしてまいりたいと存じます。
 次に、決算の不正不当事項の再発防止についてのお尋ねですが、毎年度会計検査院の指摘を受けているということはまことに遺憾であります。今後とも、このような指摘を受けることのないよう各省各庁において従来以上に指導を徹底し、また、研修などにより国及び地方公共団体を通ずる関係職員の資質の向上を図るよう努力してまいりたいと存じます。
 最後に、先日の伊藤防衛庁長官の発言問題についてでありますが、その表現の一部に不適切な点があり、論議を呼んだことはまことに遺憾であります。長官の発言は、国民の防衛意識の高揚等を強く訴えようとしたものでありますが、国の防衛を預かる責任者としての熱意からとはいえ、真意が伝わらなかったことは好ましいことではなく、私も国会等に対して発言の真意を誠意をもって説明するよう指示し、あわせて不適切な表現があったことについても注意をいたしました。伊藤長官も深く反省し、遺憾の意をあらわしており、私としても今後再びこのようなことのないよう注意を促し、これまでどおりわが国の防衛の責任者としての職責を全うしてもらいたいと考えております。
 残余の点につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(河本敏夫君) 五十五年度経済につきましては、当時は成長率につきましてまだ旧指標を用いておりましたが、政府の目標四・八%成長に対しまして実質は五%成長が達成できております。ただし、御指摘のように、この成長の内容が外需中心でございまして、内需がきわめて弱かった、こういう点は御指摘のとおりでございます。また物価につきましては、六・四%という目標に対しまして七・八%と目標をオーバーしておりました。この点は大変遺憾に思っております。しかしながら、幸いに最近は物価は安定の方向に行っておりますので、内需中心の景気回復を図るべく、政府の方ではただいま公共事業並びに公的住宅の技術的可能な限りの最大限の前倒しを進めておるところでございます。
 最近のOECDあるいはIMF等の経済見通しを見ますと、一九八二年度、昭和五十七年は第二次石油危機の厳しい影響が最も深刻に出ておりますので、ほぼゼロ成長に近い先進工業国の状態でございますが、後半からだんだんと回復の方向に行きまして、来年は三%弱の成長になる、こういう見通しが最近発表されておりますが、そういうことを背景にいたしまして、わが国の経済を軌道に乗せるべく政府の方ではただいま全力を挙げておるところでございます。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えいたします。
 まず、国債発行減額の問題について、なかなか減額しようと思って努力しても減額できないではないか、減額政策が行き詰まってきているのじゃないか、一体原因は何かということでございますが、なかなか努力をしても思うようにいっていない、これは事実でございます。最大の原因は世界の景気の停滞、わが国においても同様でございます。
 五十九年度までに脱却ができないのじゃないかという世論があるが、政府の見解はどうかということでございます。いろいろな見方がございますが、われわれといたしましては、予定どおり脱却すると。ともかく臨調答申等もあって、要するに歳出の削減をもっとやれというような世論が強い。したがって、そういうときに大型増税とかあるいは国債をもっと出すのだという気持ちよりも、そういうことは念頭になく、むしろ財源を少なくするんだ、そうでなければなかなか歳出削減といってみても、非常につらいから抵抗が多くてできないのじゃないかという心配の方が強い。したがって、われわれといたしましては、やはり五十九年度までに赤字国債は発行しませんという目標はこれを掲げて、最大限の努力をしていくという考えでございます。
 そこで、五十五年、六年の税収の過大見積もりというのはどういうところに原因があったのかということでございます。これは一口で申しますと、五十五年度の税収については、三月期の決算法人の延納率の低下というようなことも技術的にはございます。耐久消費財の需要の落ち込みというようなこと等もございまして、補正後予算額に対して、五十五年度でも二千七百六十三億円の減収になったことは事実でございます。また、五十六年度の問題も、輸出の予想外の鈍化、企業の活動の伸び悩み、円安、物価安定、いろいろな原因が考えられるわけでございます。
 税収の見通しというものは経済見通しと同じく、どこの国でもなかなかそうぴしゃっとは実際当たらない。経済見通しも、日本ばかりでなくIMFでもやっておりますし、OECDでもやっておりますし、それぞれの国でもやっておりますが、現実にはぴしゃっと当たらないというのが、これは残念ながら現実の姿ではございます。ただ、傾向的に申しますと、思ったよりも物価が非常に急上昇したというようなときには、特に卸売物価が急上昇してきた、予算を組むときにたとえば二%ぐらいしか年度間で卸売物価は上がらないのじゃないかと思ったら二二%も上がった、こういうような昭和四十八年というようなときには、当初予算に対して二〇%も要するに過小見積もり、つまり税金の取り過ぎという問題が起きますし、昭和五十年のように、たとえば当初予算を組むときに卸売物価は七・九上がるだろうと思って組んだところが結果は一・九しかならなかったというときには、逆に二〇・七%も過大見積もりになった。結局税収不足、二〇%の食い違い。
 そんなことが大きいのではあるわけでございまして、五十六年度の場合も、GNP当初九%、九・一の見積もりでやったわけでありまして、その中でたとえば卸売物価四・一と予定したところが、結局は一・四ぐらいになってしまった。それから消費者物価五・五ということにしたら四%ぐらいでおさまるのじゃないかというようなことで、なかなかこの問題は、物価の安定することはありがたいことなんです、庶民生活にとっては非常にありがたいことだ。ありがたいことだけれども、税金というのは名目所得、名目売り上げ課税をいたしますものですから、そこが違ってくると食い違いが出てくるという場合が往々にしてあるわけでございます。そういうようなこと等の要するに見通しというものについて的確につかめなかったということは事実でございます。
 その税収見積もりを適正に確立する何かうまい方法はないかということでございますが、なかなかこれはうまい方法が実際はどこの国でもない。ことにわが国のように、消費というものは大体年々決まったものが消費されるのですが、直接税の法人税とか所得税というようなものは、そのときの景気動向によって非常にむらがある。いまのように七割以上が直接税に依存する日本の税体系というものは、世界の景気変動によってえらいむらが出てくるというような悩みもございます。間接税が多い方が実際は見通しはやさしいのです。直接税中心ということになりますと、もうからなければ税金は払わない、もうかる場合は払うということですから、景気にえらい影響があるのでむらがどうしてもあって、それだけに一層むずかしいことも事実でございますが、何かうまいやり方がないものかと思って、今後もさらに一層工夫をこらしてまいりたい、そう考えております。
 五十六年度の税収不足の穴埋め策として決算調整資金、それから国債整理基金からの借り入れが取りざたされているがどうなのかということでございますが、ともかく五十六年度のものも、物価が安定するということは一つの心配条項ではあるけれども、現実にはこれは比較的に五十六年の十二月、一月というようなときには法人税の収納状況が、大法人が十二月収納、九月決算なんか二〇%伸びたわけですから、これはいいなと思っておったところが、非常にむらがあって二月以降ぐんと下がってきたというようなことで、それが四月の初めにならなければ統計が出てこない。そういうような点から、結局非常に予見しがたい、実際正確に幾ら足りなくなるということが予見しがたい。
 そういうようなことの関係上、制度上からも、まあそういうこともあるだろうということで国会においてちゃんと法律をつくっておいてくださって、そういう場合には決算調整資金から借り入れをしなさい、国債整理基金がある場合はそこから自動的に埋めてもよろしい、しかし一年たったら返すんだよというような規則になっておることは事実でございますから、もし決算をやった結果、ともかく支払いがつかないというようなことは困るわけでございますので、そういうような法律上で決められた制度はそれは活用してまいりたいと考えております。
 それから財政再建の折に相変わらず多くの不当事項が会計検査院から指摘されておる、けしからぬ話である、私もそう思います。まことに遺憾に考えておるわけでございます。こういう厳しい財政事情でもございますから、そういうように指摘されたことは二回も三回も繰り返さないように、各省庁に対しては一層、大蔵省といたしましても予算の配賦の都度やかましくこれから言っていきたいと考えております。また会計事務職員の研修、地方決算研修、あるいはいろいろな会議等を通しまして、直接そういう金銭、物品等を取り扱う職員の綱紀粛正、あるいはむだにならないように、意識の高揚というものを高めてまいりたいと考えます。
 また、不正経理、談合入札の温床というようなものがいろいろ言われておって、これも国会でいろいろ実際の実例等も挙げられて御指摘を受けておるわけであって、まことに遺憾にたえない次第でございます。これらの公共事業の入札の適正化という問題につきましては、建設大臣より中央建設業審議会に調査審議をいま依頼中だということでございますから、一緒になりまして、会計法令に従った契約事務が適正に執行できるよう今後努めてまいりたいと考える次第でございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣伊藤宗一郎君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(伊藤宗一郎君) お答えいたします。
 私は、御指摘の防衛懇話会の講演では、戦後三十余年にわたり平和を享受してまいりましたわが国において、平和は努力して得られるものであるとの意識がややもすると見失われつつある現状にかんがみ、このような意識を向上することの重要さを述べたものであります。しかしながら、表現の一部に適切を欠くところがあった点については取り消し、必ずしも十分に真意を伝えるところとならなかったことについて深く反省するとともに、遺憾に思う次第であります。
 私の申し上げたかったことはただいま申し述べたとおりでございまして、国民を直接誹謗したり中傷したりする気持ちなどは毛頭あり得ないことでございます。したがって、国民とともにある自衛隊、国民に愛される自衛隊という従来の防衛庁の方針をほごにするなどの意図は全くございません。表現に適切を欠いた点を反省し、遺憾の意を表明するとともに、総理の御注意の趣旨を体し、発言の真意を誠意をもって御説明することによって防衛意識の向上に努めることが、わが国の防衛を預かる責任者の務めであると考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○副議長(秋山長造君) 中野鉄造君。
   〔中野鉄造君登壇、拍手〕
#25
○中野鉄造君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和五十五年度決算について、鈴木総理並びに関係大臣に質問いたします。
 まず、昭和五十五年度当初予算では、政府は、特例公債を含む大量の公債に依存した状況から脱却するため、歳出を厳しく見直し、公債発行額を前年度当初比一兆円を減額して財政再建の第一歩を踏み出したのであります。そうして五十五年度の経済成長率は名目九・四%、実質四・八%を見込み、先進各国の中では最も高いものと自負したのであります。ところが、決算では、所得税の伸びが低く、五十五年度の租税収入は補正予算額に対し決算額は二千七百六十三億円も少なく、結局、これまで最高の特例公債七兆二千百五十二億円を含む十四兆一千七百二億円の公債発行をする結果となり、財政再建はスタートでまずつまずいたのであります。こうした事実をどのように反省されたのか、総理並びに大蔵大臣に御答弁を求めます。
 私は、この五十五年度の決算を見るとき、今日のわが国を取り巻く世界の諸情勢、なかんずく逼迫した財政事情を思い合わせ、国家財政、国民経済の前途に危惧すべき事態の到来を深く憂うるものでございます。その意味から、当面した財政経済問題について数点お尋ねいたします。
 五十六年度では、法人税などで一兆四千億円の大増税をし、補正予算では赤字国債を増発し、税収見積もりを下方修正したにもかかわらず、税収不足は現時点で三兆二千億円を超えるような巨額になることが確実になっております。
 五十六年度の歳入欠陥は、決算調整資金の取り崩しや国債整理基金からの一時借り入れで切り抜ける方針のようでありますが、この歳入欠陥は単年度だけのことではなく、後年度にも禍根を残すことになります。巨額の税収不足を生じた五十六年度を基礎として見積もられた五十七年度も多額の税収不足は避けられず、また国債整理基金への返済は五十八年度までと義務づけられておりますから、五十七、五十八両年度の財政をも圧迫するのであります。総理はこの憂うべき事実をどう認識しておられるのか、また、その政治責任をどうおとりになるお考えか、明確なるお答えをいただきたい。
 次いで、五十八年度予算編成についてお尋ねいたします。
 総理は、先般の決算委員会で、五十七年度以上に歳入歳出を徹底的に見直し、思い切った発想の転換をしなければならないと述べられ、また、増税なき財政再建の考えは変わらないことも言明されました。政府は五十八年度は史上初めてのマイナスシーリングで歳出カット先行型の予算編成をする方針と聞いておりますが、五十七年度で厳しい歳出見直しをした後では歳出カットにも限界があり、歳入不足を補う相当の対策がなくては予算編成は困難であろうと考えます。
 総理は、五十八年度予算編成についてどのような方針で臨まれるのか、発想の転換とはどういうことか具体的にお示しいただきたい。また、公約の「増税なし」とは大型間接税の導入なしということであって、企業増税は含まれるのか含まれないのか。企業増税の場合、財界の反対や臨調の「増税なき財政再建」路線とどう調整なされるのか、お伺いいたします。マイナスシーリングとされる場合、マイナス幅はまたどの程度にするおつもりなのか。大蔵大臣にもこれらの点についての御答弁を求めます。
 さらに、総理は、「五十九年度赤字国債脱却」の公約は不動であるとの決意をたびたび表明されております。本当に五十九年度には赤字国債脱却の具体的な見通しがおありか否か。これまでのように当初予算では補正で増発する含みで赤字国債を減額し、年度途中で増発しても、当初予算の段階では公約を達成したと大手を振って言われるようなことはないと思いますが、総理の所信を改めてお伺いいたします。
 次に、グリーンカード制度についてお伺いいたします。
 十三日の新聞報道で、自民党税制調査会ではグリーンカード制度全面見直しを決定し、秋には議員立法による所得税法改正案を提出する方針であるようですが、総理は、自民党総裁としてこの事態をどのようにとらえておられるのか。
   〔副議長退席、議長着席〕
 最近、グリーンカード制度実施反対の言動が活発化してきております。グリーンカードをめぐる問題は、内閣が法案を提出し、国会が議決した法律であり、それがまだ実施もされないうちに、自民党が中心となってこれを廃止しようといった尋常を欠いた事態となっております。
 こうした事態は国民から見たら許しがたい問題であり、渡辺大蔵大臣は、所得税率を見直し、高額所得者の負担軽減を図るなどとした代案により事態収拾を図ろうとしているやに報道されております。現在起こっているグリーンカード制度実施に対する反対の意見を要約してみると、反対理由は、制度を廃止するという結論が先にあって、後からつけられた印象を逃れないのであります。グリーンカード制度を実施すれば、資産所得者、高額所得者等からある程度の反発は政府・自民党においても法案提出の時点で十分予想されたはずであります。
 政府は、グリーンカード制度導入の目的を再確認すると同時に、当初の予定どおり五十九年一月から実施すべきだと考えます。総理並びに大蔵大臣の御決意をしかと承りたいのであります。
 また、自民党内にあるグリーンカード廃止論に対して、総理は自民党総裁としてどう対処されるのか、お伺いいたします。
 次に、行政改革について何点かお伺いいたします。
 まず、中央省庁統廃合についてであります。過去の行政改革を今日振り返ってみますと、このような各省庁の再編成、統廃合については、官僚組織がそれぞれの縄張りを主張し、猛反対に遭っていずれもやみに葬り去られてしまったのであります。現に北海道開発庁の国土庁への統廃合については、すでに公然と反対する現職閣僚もおられるようであります。これを実現するためには挙げて内閣の指導力、とりわけ総理の決断と実行が求められるのであります。臨調答申を受けて総理はその実現にいかように臨まれるのか、この際その御決意を確認しておきたいと思います。
 次に、専売公社の改革についてお伺いをいたします。同公社を当面国と民間による特殊会社とし、将来は民営にする。また外国たばこの販売は自由化するという内容が伝えられております。現在、国産葉たばこの価格、あるいは葉たばこの過剰在庫などが挙げられていますが、国内葉たばこ生産者や既存の国内のたばこ販売者等への影響が考えられる中で、専売公社改革についてどのようにお考えか、中曽根行管庁長官の所信を伺いたい。
 また、電電公社についての改革についてお尋ねいたします。同公社については、臨調審議過程では種々な案が検討されてまいりましたが、伝えられるところでは、特殊会社への移行五年をめどとした分割・民営化ということが打ち出され、競争原理を導入するとされています。さらに最終的には政府が持ち株を時価で手放すことによってかなりの収入が期待されるとしているようでありますが、政府としてどのような態度で電電改革に取り組んでいくおつもりなのか、あわせて行管庁長官の御答弁をお願いいたします。
 行政改革最大の焦点である国鉄改革の問題でありますが、国鉄改革は急務であると言われながら、今日まで抜本的な対策がなされないまま、本年度末の累積赤字十六兆円という膨大な金額になっております。これまで放置していた政府並びに国鉄の責任はまさに重大であります。いずれにしても、国鉄が惨たんたる経営状態に陥ってしまった要因は、今日さまざまなことが取りざたされている中で、期せずしてそれらを証拠づけるがごとき不祥事の頻発や不正の発覚は、ひとしく国民のひんしゅくを買っております。このような実態にかんがみ、わが党は国鉄改革について、六十年度までに経営基盤の整備と経営組織の分割を行い、六十一年度以降は地域別特殊会社とし、その後民営化を目指す三段階方式を提言いたしております。一方、臨調、運輸省においてもそれぞれ国鉄改革案がまとめられ、いまや国鉄問題は国民の大きな関心事となっております。
 政府は、これら国鉄改革案を真剣に受けとめ、国民が納得できるよういまこそ強い指導力を発揮するときであります。総理並びに行管庁長官、小坂運輸大臣の明確なるお答えをいただきたいと思います。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、税収欠陥の問題でありますが、先ほど目黒議員にお答えいたしましたとおり、予定したとおりの税収が得られなかったことはまことに残念に存じております。しかしながら、五十五年度以来の歳出抑制、公債減額の努力の手を休めることなく財政再建に最大限の努力を続けてまいりたいと存じます。
 五十八年度の予算編成につきましては、シーリングも含めまして、今後の経済、財政事情の推移、臨調における審議の進展などを勘案しながら検討してまいりますが、その際、何よりも歳出の節減合理化に努力を傾注してまいりたいと考えております。大変厳しい予算編成になりましょうから、旧来の発想を脱し切れないままでは予算の編成はできないのではないかと思います。衆知を集めてこの難局を乗り切り、五十九年度に特例公債依存体質を脱却するよう最大限の努力をする所存でございます。
 グリーンカードの問題でありますが、新聞などで報ぜられた五月十二日の自由民主党の税制調査会には政府側は呼ばれておりませんので、今後政府側が説明の機会を得た場合には、政府としての考え方を十分説明していきたいと存じます。政府としては、現在定められている法律に従って、従来の線で諸般の準備を進めてまいる所存であります。
 中央省庁の統廃合など行政組織の改編について臨調がどのような答申をお出しになるか、何分にもまだ検討中のことでありますので、しばし審議の動向を静かに見守りたいと存じますが、いずれにせよ臨調の答申を最大限に尊重しながら行政改革に取り組むことは政府の一貫した基本的方針であります。その点変わりはございません。国鉄の改革につきましても、臨調の正式な答申を待って、これを尊重し、その内容を十分検討して適切に対処してまいります。
 以上お答えをいたしましたが、残余の点につきましては所管大臣から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えいたします。先ほどの答弁とかなりダブったところもございますので、その点はなるべく簡潔に申し上げます。
 第一は、五十五年度の国債発行一兆円を減額しながら、それもなかなかうまくいかなかったじゃないかというようなことでございます。しかしながら、決して財政再建に逆行しておるわけではございませんので、後で、思ったよりも減額した以上にまた追加国債発行したという事実はございますが、それによって歳出規模がふえたというわけじゃないわけです。一〇%も一般歳出あるものが、あるときには八か七としていって四・三、一・八というように歳出規模は毎年これは小さくしておるわけで、赤字国債が追加発行されたとしても、歳出規模は大きくなったのじゃなくて、それは予定どおり一定しているわけです。ということは、着々と財政再建はそういう意味では進んでおるということができるのじゃないか。たとえば五十四年は一三・九、一般歳出の伸びがあったわけですが、五十五年は五・一、五十六年は四・三、五十七年は一・八と、こういうことで、三十一年の二・八以来二十年ぶりの一・八という小さな歳出規模というものは小さな政府をつくるというためにやっておるわけであって、これは実効が上がっておるわけであります。
 したがいまして、われわれとしては、それには途中で赤字国債を出しては何にもならぬじゃないかというお話でございますが、最初から借金しますよと、よけいに大きく借金しますと言えば歳出はなかなか切れないのです。借金する方は小さくして、財源ありません、財源ありませんと。したがってそこの中に押し込んでやってみて、結果的には税収が足らなかったり何かすると、歳出はふえないのだけれども、税収見積もりが大きかったというようなことで追加発行することはありますが、最初から借金をよけいすると、よけいやっぱり使い込んでしまう。したがって、借金はぎりぎりどうしても足りないときだけ後から多少借りることもあるというのも事実でございます。
 それから整理基金の返済は五十八年じゅうにこれは返さなければなりませんが、そういうようなことで五十六年の税収が見積もりより少ない、それを土台にして経済見通しで考えた五十七年もいまよりもへこむのじゃないかというような御心配でございます。
 そういう御心配は別にないわけではなくて、新聞あるいはその他でいろいろ言われておりますが、われわれといたしましては、五十七年度予算というのはいま始まったばかりでございますし、ともかく五十七年度前半においては公共事業の前倒しを初め景気対策にも政府は本腰を入れるということでやっておるわけだし、また世界経済の見通しを言っても、これは当たるか当たらないかという話もございますが、各国とも五十七年の前半は悪いが、五十七年の後半からはよくなって、しかし全体としては〇・三ぐらい、OECD諸国で平均では横並びよりもちょっとよくなるという見通しをいま持っております。幸い日本はそんなに落ち込まない。五十七年の前半は公共事業の前倒しその他をやりながら、後半においては世界景気の上昇の気流に乗って一緒に経済の維持発展を図っていこうということでございますので、いまのところはともかくまだ幾ら足らなくなるというようなことを考えておるわけではありません。
 その責任をともかく追及するというお話でございますが、これはもう世界じゅう景気はつながっておりまして、幸い日本は経済成長においても、思ったより少なかったけれども、先進国の中じゃ非常にいい方とか、失業、倒産があるといっても失業者は二・三%程度で、アメリカの九とかイギリスの一二とかいうのより問題にならない。インフレ率も、先ほど言ったように卸売物価は四・一上がると思ったのが一・四におさまった。その結果税収不足になったが、消費者物価も五・五が四%におさまって、その結果は民生が安定をして、春闘も一〇%要求と言ったのですが、七%あるいは六・八でも、労働者の方々は非常に見識が高いし世界じゅうのことを知っていますから、したがってストライキもなく春闘も平穏に終わり、世の中が落ちついておるということは、政治が悪い、失政であるというお話もありましたが、私は決して悪いとは実は思っておらないわけでございます。
 それから五十八年度の予算編成の方針ということでございますが、これについては国会が終わり次第早急に内部で相談をして、どういうふうにこれを片づけていくか、実は大問題があるのです。ところが、毎日国会でくぎづけなものですから、まだ相談をしていない。私ども大蔵省の方は法案が上がるわけですから大蔵省関係の法案が片づき次第に、おかげさまできょう明日中には私の方は全部終わるわけですから来週早々からでも早急にこれは方針を決めてまいりたい、さように考えておる次第でございます。
 それから最後に、グリーンカードの問題についてお答えを申し上げます。
 これは政府は法案を出して国会で御承認をいただいたわけでございますから、この方針は、政府は憲法と法律に従う、閣僚は忠実にこれを守るという立場にございますし、私としては宣伝不足、誤解を与えている点等がかなりございます。ございますが、こういうことは極力ほどいていって、また環境整備等について足らない点もなきにしもあらず、これは私はする必要がある。
 五十九年実施ですから、まだ時間があるわけですから、そういう点で皆さんに御心配をおかけしないで、しかも不公正の是正ができて、ともかくもう五千万とか一億とか非課税貯蓄にぶち込んで、ときどき見つけるんですよ。見つけるのですが、残念ながら大蔵大臣としては具体的にだれのだれさんがこうだというようなリストを発表できない、したがって説得力がないわけです、これは守秘義務がありますから。しかし、現実にそれを乱用している人がいることも事実でございますので、少なくとも非課税貯蓄については一人九百万円という枠だけは守ってもらいたい、それを担保するためにやる制度でございますから、私はこれはそういうことで心配をかけないように、安心させながら納得をしてもらいたい、そういう努力は引き続き続けたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(中曽根康弘君) 国鉄以下三公社の改革について御質問をいただきました。
 この三公社の改革は、今次行政改革の中でも最重要の課題であると心得ております。臨時行政調査会の第四部会におきまして策定中でございますが、十七日を目途に最後の調整に入っております。いま最後の詰めをやっておる重要な段階でございまして、委員会の独自性を尊重したいために、私がここで発言することは差し控えさせていただきたいと思っております。
 なお、答申が出ましたならば、これを検討いたしまして、内閣の基本方針のとおり最大限に尊重して速やかに実行に移す、この態度を貫いてまいりたいと思っております。(拍手)
   〔国務大臣小坂徳三郎君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(小坂徳三郎君) お答えを申し上げます。
 国鉄の現状は、経営的にもまた財政的にも非常な危機状態であるというふうに考えておりまして、私も過日来、小坂私案を取りまとめたところでございますが、この改革につきましては目下臨調で検討が進められております。七月には正式答申がなされると聞いておりますので、臨調の正式答申を待ちまして、これを尊重して、内容を十分検討した上で適切に対処してまいりたいというふうに考えております。(拍手)
#30
○議長(徳永正利君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#31
○議長(徳永正利君) 日程第二 民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。法務委員長鈴木一弘君。
    ―――――――――――――
   〔鈴木一弘君登壇、拍手〕
#32
○鈴木一弘君 ただいま議題となりました二法案につきまして、法務委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
 まず、民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案は、裁判事務の実情にかんがみ、送達手続の合理化等を行い、民事訴訟手続等の適正円滑な進行を図ろうとするものであって、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、訴訟が裁判によらずに完結した場合においては、当事者が一定期間内にその作成を請求した場合を除き、裁判長の許可を得て証人調書等の作成を省略することができるものとすること。第二に、簡易裁判所以外の裁判所においても、いわゆる簡易呼び出しの制度を新設するものとすること。第三に、送達を受けるべき者の住居所等が知れないとき、またはその場所において送達をするにつき支障があるときは、送達は、これを受けるべき者の就業場所においてもすることができるものとすること。第四に、判決書の事実摘示欄に証拠に関する事項を記載するには、訴訟記録中の証拠の標目を引用することができるものとすること。第五に、証人の不出頭に対する制裁としての過料及び罰金等民事訴訟法及び民事調停法中の過料及び罰金の多額をそれぞれ相当額に引き上げるものとすること等であります。
 委員会におきましては、裁判事務の現状と今回の法改正の理由、証人調書等の作成が省略される場合の要件と訴訟当事者の利益、就業場所への送達手続の新設の理由とその送達の要件等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して山中委員より反対の意見が表明され、続いて、日本社会党を代表して寺田委員、公明党・国民会議を代表して小平委員より、それぞれ賛成の意見が表明されました。
 次いで、採決の結果、本法案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法案に対し、寺田委員より、就業場所への送達に当たっては当事者のプライバシー保護に配慮すること等を内容とする各派共同提案に係る附帯決議案が提出され、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 次に、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案は、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約への加入に伴い、船舶の所有者等の責任の制限に関して所要の規定を整備しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、責任の制限主体として、新たに救助者及び被用者等を追加すること。第二に、船舶の所有者等の責任限度額を引き上げるとともに、その算定の基礎となる船舶のトン数を国際的に統一された基準によって算定すること。第三に、責任限度額の単位は、国際通貨基金の定める特別引き出し権によることとし、従来の金価値による定めを改めること。第四に、制限債権を人の損害に関する債権、物の損害に関する債権及び旅客の損害に関する債権に分けて、責任制限の効力の及ぶ範囲及び責任限度額を定めること等であります。
 委員会におきましては、救助者を責任制限主体とした理由、船舶所有者等の責任制限阻却事由と重過失、船主責任保険の活用の現状等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終わり、別に討論もなく、採決の結果、本法案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#33
○議長(徳永正利君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#34
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、両案は可決されました。
     ―――――・―――――
#35
○議長(徳永正利君) 日程第四 日本放送協会昭和五十四年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長勝又武一君。
   〔勝又武一君登壇、拍手〕
#36
○勝又武一君 ただいま議題となりました日本放送協会昭和五十四年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書につきまして、逓信委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本件は、日本放送協会の昭和五十四年度決算に係るものでありまして、放送法の定めるところにより会計検査院の検査を経て内閣から提出されたものであります。
 その概要を申し上げますと、同協会の五十四年度末における財産状況は、資産総額一千八百八十三億九千百万円、負債総額八百三十八億一千四百万円、資本総額一千四十五億七千七百万円となっております。
 また、当年度中の損益は、経常事業収入二千百九十一億七百万円に対し、経常事業支出二千二百九十六億六千四百万円であり、差し引き経常事業収支は百五億五千七百万円の欠損となっており、これに固定資産売却損益等の特別収支を含めた事業収支は百十三億四百万円の欠損となっております。
 なお、この欠損金は資本収支の差金をもって補てんされております。
 本件には、会計検査院の「記述すべき意見はない」旨の検査結果が付されております。
 委員会におきましては、収支予算等が適正かつ効率的に執行されたかどうかを初め、経営内容の公開、放送衛星の活用と受信者負担の軽減、公共放送としての番組編集のあり方、視聴者意向の吸収反映、協会財政の展望などの諸問題について政府、会計検査院並びに協会当局に質疑を行い、慎重審議の結果、本件は全会一致をもってこれを是認すべきものと議決いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#37
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 本件は委員長報告のとおり是認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#38
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、本件は委員長報告のとおり是認することに決しました。
     ―――――・―――――
#39
○議長(徳永正利君) 日程第五 土地区画整理法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。建設委員長吉田正雄君。
    ―――――――――――――
   〔吉田正雄君登壇、拍手〕
#40
○吉田正雄君 ただいま議題となりました土地区画整理法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、土地区画整理事業の一層の推進を図るため、地方住宅供給公社を施行者に加えるとともに、土地区画整理事業の換地計画に関し専門的技術を有する者の養成確保等を行おうとするものであります。
 委員会におきましては、区画整理事業による効用増が周辺地価に及ぼす影響、事業施行地区の市街化促進、技術検定の趣旨及び内容等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して上田委員より反対の旨の意見が述べられ、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、坂野理事より五項目にわたる各会派共同提案の附帯決議案が提出され、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#41
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#42
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
#43
○議長(徳永正利君) 日程第六 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長河本嘉久蔵君。
    ―――――――――――――
   〔河本嘉久蔵君登壇、拍手〕
#44
○河本嘉久蔵君 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、国際復興開発銀行に対する出資の額が増額されることとなるのに伴い、わが国が当該出資の額の増額に応ずるための措置を講じようとするものであり、政府は、同銀行に対して十六億六千六百七十万協定ドル、現在の合衆国ドルで約二十億一千万ドルを追加出資することができることとするものであります。
 委員会における質疑の詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#45
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#46
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
#47
○議長(徳永正利君) 日程第七 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長粕谷照美君。
    ―――――――――――――
   〔粕谷照美君登壇、拍手〕
#48
○粕谷照美君 ただいま議題となりました勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本法律案の内容は、高齢化社会に対応した勤労者の計画的な財産形成の一層の促進を図るため、勤労者財産形成年金貯蓄制度を創設するとともに、勤労者財産形成持ち家個人融資の貸付限度額を引き上げること等であります。
 委員会における質疑の詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、討論はなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 なお、本法律案に対し、附帯決議が全会一致をもって付されております。
 以上御報告いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#49
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#50
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
#51
○議長(徳永正利君) この際、常任委員長の辞任についてお諮りいたします。
 社会労働委員長粕谷照美君、逓信委員長勝又武一君、建設委員長吉田正雄君、決算委員長和田静夫君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。
 いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#52
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 よって、いずれも許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#53
○議長(徳永正利君) つきましては、この際、欠員となりました常任委員長の選挙を行います。
#54
○野田哲君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することの動議を提出いたします。
#55
○堀内俊夫君 私は、ただいまの野田君の動議に賛成いたします。
#56
○議長(徳永正利君) 野田君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#57
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、社会労働委員長に目黒今朝次郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
 逓信委員長に八百板正君を指名いたします。
   〔拍手〕
 建設委員長に片岡勝治君を指名いたします。
   〔拍手〕
 決算委員長に竹田四郎君を指名いたします。
   〔拍手〕
     ―――――・―――――
#58
○議長(徳永正利君) この際、お諮りいたします。
 戸叶武君から裁判官訴追委員を辞任いたしたいとの申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#59
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#60
○議長(徳永正利君) つきましては、この際、
 裁判官訴追委員、
 北海道開発審議会委員各一名の選挙を行います。
#61
○野田哲君 各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#62
○堀内俊夫君 私は、ただいまの野田君の動議に賛成いたします。
#63
○議長(徳永正利君) 野田君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#64
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、裁判官訴追委員に小谷守君を、
 北海道開発審議会委員に丸谷金保君を、それぞれ指名いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時十七分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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