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1949/04/04 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 農林委員会 第19号
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1949/04/04 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 農林委員会 第19号

#1
第007回国会 農林委員会 第19号
昭和二十五年四月四日(火曜日)
   午後三時零分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
三月三十日委員徳川宗敬君辞任につき
、その補欠として伊藤保平君を議長に
おいて指名した。
本日委員伊藤保平君辞任につき、その
補欠として徳川宗敬君を議長において
指名した。
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○農業協同組合における報奬物資帶貨
 問題に関する件
○植物防疫法案(内閣提出)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(楠見義男君) これより農林委員会を開会いたします。先ず農業協同組合における帶貨問題を議題にいたします。ちよつと速記を止めて。
   午後三時一分速記中止
   ―――――・―――――
   午後三時十九分速記開始
#3
○委員長(楠見義男君) 速記を始めて下さい。
#4
○山崎恒君 いろいろ経済関係の政務次官の方々に本問題につきまして各段の御骨折を頂いておりますことを、誠に私共感謝に堪えないのでございまするが、本問題が急速に解決を要望し、而も三月末が全国一斉にこの農協関係の決算でありますので、少くも三月三十一日までに、その大綱を御決定願いたかつたのでありますが、未だ最後の線に致達しないことを遺憾とするのであります。当初この報奬物資の趣旨につきましては、数回に亘つて本委員会で私共その苦衷を述べておりますので、十分御了承のことと存じまするが、とにかく今回一応採られた措置が十八億の資金を以て資金融通を一応して、帶貨処理方法を講ずるという線は、恐らく政府としては、先ず第一に農協関係が発行したところの手形の処理を、これによつて一応目鼻を付けられておるという趣旨で、この案が御決定になつたと、かように心得ていいかどうか。その点を一つお聽きいたしたいのであります。
 次にさようであるといたしますれば、大体政府といたしましては、当初我々がこの線までは飽くまでも値引きを、補助を決定して頂きたい。併しながらいろいろの関係機関等の関係もあるので、予算的措置はなかなかむずかしい。併しながら各関係省との複雑な問題があるとしたならば、この問題は農林省関係一本で一つ出して頂いたらどうか。とにかくその趣旨といたしましては、戰後五ヶ年に亘るところの最も凄惨を極めたところの食糧問題の解決が、大体におきまして今日明るい見通しがついて参りましたので、恐らく報奬物資という形はもうこれによつて打切られる。そういうことになりますれば、最後の報奬物資の結末を付けるために、先程も小川委員からもお話がありましたように、長い間統制を続けたところの木炭にいたしましても、すでに五十四億というような赤字を生じて、前国会において、これが一般会計から支出されておるというような情勢でもありますので、少くも八千万の同胞が死ぬか生きるかという食糧問題を解決して来ました今日、この最後の線に到達した報奨物資の結末でありますので、政府は少くとも我々が最低線の要望いたしましたところの三割、約十六億円くらいのものは、各関係省との折衝ができませなんだときには、食糧管理管の特別会計を以てこれを処理して頂く方法を講じて頂きたいという強い熟望をいたしておるのでありますが、農林大臣といたしましても、お説はよく分る、ただその問題について、予算的措置がはつきり講じられますれば、特別会計から出すのも吝かでないというようなことを申されておりのでありますので、通産省、安本、或いは大蔵省等の各関係の経済各省の政務次官会議でも、非常に再三に亘つて、この問題を熟心に今日までやつて頂いたのでありますが、少くとも一応配給された農民のものにつきましては、これは売買という観念で、取引だからすでに終つたものはよろしいのだというような観念では、これはもう我々は納得できないのでありまして、報奬物資そのものの性質から鑑みまして、これは売ろう買おうというような相対づくの商法から来たところのものではありませんので、少くともこの供出したものに対しましては、乏しいながらも、その少い貴重な線製品等を報奬の形で出す。而も価格はマル公を嚴守するという建前で来たのでありまするが、時たまたま経済界のかような変動のために、甚だしいものは少くとも半額、或いは半額以上の差を生じてしまつたと、こういうような状況であります。ところが醇朴な農村といたしましては、新潟県を筆頭に、すでに早く供出完了の所は年内に、十一月以降からすでにもう報奬物資はずんずんと配給されておる。かような次第でありまして、とにかく醇朴な農民程先に品物を引取つておる。かような情勢であるのでありますので、これは恐らく政務次官会議でも、主務省の農林政務次官は、十分皆さんに納得の行くように御説明されたと存じまするが、さような点でありまするので、これは恐らく二十四年度の報奬物資全体につきまして、全額、この約三割十六億何がしになるかと思いまするが、これはいろいろのその筋の方面がむずかしいという点がありましようと存じますので、これははつきりとした線がお答えできなくても、とにかく何らかの線でそれを出す方法を一つお示し願いたいと、かように思うのであります。さような点でとにかく今回の、先程私が申しました手形を処理するために、一応安本政務次官から申されましたあの処理の方法、一応品物は返さなくても、帶貨しておる品物についてそうした処置を採る。その他渡された、引受けしたものに対する処置というものは第二段に、直ちに私が申しましたような線に沿つて考えて下さるのかどうか。その点を一つお伺いいたしたい。
 それから自転車その他の雑品の問題でありまするが、この問題も先程農林政務次官からもお話がありましたが、これも同様な線に沿つて御処理願うことに進めて下さるのかどうか、その点を一つお聽かせ願いたい。こう思うのであります。
#5
○委員長(楠見義男君) 速記止めて下さい。
   午後三時二十七分速記中止
   ―――――・―――――
   午後三時五十六分速記開始
#6
○委員長(楠見義男君) 速記を始めて下さい。
 それは報奬物資の問題は懇談の際にお聽き及びの通りでありますから、本日はこの程度にいたしたいと思います。明日は大蔵大臣の出席を求めまして、この問題をもう一度この委員会で取上げることにいたしたいと思います。
#7
○北村一男君 大蔵大臣ばかりでなしに農林大臣、安本長官と三者揃わんと又逃げられる虞れがありますから……
#8
○委員長(楠見義男君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#9
○委員長(楠見義男君) 速記を始めて。
 そはでは北村さんの御希望もありますので、大蔵大臣、農林大臣、安本長官の三大臣の出席を求めてこの問題を取扱う。若しそのうちの一人でも差支がありますれば、三大臣揃うたときに始めることにいたします。
  ―――――――――――――
#10
○委員長(楠見義男君) それでは日程に従つて本日は植物防疫法案を議題にいたします。他に公報に四つの法律案が載つておりますが、いずれも予備審査でありますが、この植物防疫法案だけは本委員会に本付託になつておりますので、この方を先に御審議を願うことにいたします。
 最初に政務次官から提案理由の説明を伺うことにいたします。
#11
○政府委員(坂本實君) 植物防疫法案につきましてその提案理由を御説明申上げないと思います。
 農業生産の安全を確保し、更にその増進を計りますためには、国内の防疫を行うと共に、海外からの新らしい病害虫の侵入を防止して、作物のかかる病害虫による損害を防止いたしますことが重要な要素なのであります。海外からの病害虫の侵入防止につきましては、従来輸出入植物検疫法によりまして植物の輸出入に伴う検疫事業を実施して来たのであります。又国内におりまする病害虫の対策としましては、明治二十九年制定せられました害虫駆除予防法がありますが、この法律の制定当時は、病害虫の防除に対する知識水準が極めて低く、農業者の自主的防除を期待することが困難でありましたので、現在からすれば一般的な病害虫を対象といたし地方長官がその防除方法を定めて農業者に防除を行わせるということが建前とされましたので、特殊な病害虫を絶滅し、又は蔓延を防止するために特別の措置を採るというようなことは、全く考慮されていなかつたのであります。その結果、新しく国内に侵入した病害虫や其他の特殊な病害虫に対しまして、国又は地方公共団体が必要な措置を講ずることができなかつたために、幾多の病害虫が蔓延土着して農作物に重大な損害を與えるようになつたのであります。この法律は以上のような欠陷を補うため、害虫駆除予防法を改廃いたしまして、馬鈴薯輪腐病のような新たに海外から侵入したもの又は蜜柑蠅、馬鈴薯凋萎病のようなすでに国内の全く一部に存在している恐るベき病害虫につきまして、その伝播蔓延を防くのみでなく、更にこれらをその存在地区内で絶減するため、国におきまして強力な防除措置を講じ得るようにしたのであります。
 又国内の種苗の移動に伴つて恐るべき病害虫が伝播蔓延することが多いので、これを防止するため、このような惧れのある種苗の検疫を実施しうるようにいたし、これに従来の輸出入植物検疫法を若干強化改正いたしまして整理統合し、国際的、国内的な植物の防疫に関する一貫した法律を立案したものであります。
 以上がこの法律を提出した理由でありますが、何とぞ愼重御審議の上速かに御可決あらんことをお願いいたします。
#12
○委員長(楠見義男君) 一応提案理由は伺いましたが、技術的の部分も多いと思われますし、尚従来の法律二本をこの法律に統合しておる関係もありまして、細かい点について事務の方から事前に説明して頂くと、審査上都合がいいと思うのですが、どうぞ説明して下さい。
#13
○政府委員(藤田巖君) お手許にお配りをしております資料は植物防疫法提案理由、植物防疫法の要網、植物防疫法案、法案中議員修正依頼の件、これは後で御説明いたします。それから植物防疫法対象の病虫害被害状況と輸出入植物の種類、数量、植物防疫法案関係予算一覧表、動植物検疫所定員配置予定表、植物検疫所機構図、害虫駆除予防法、輸出入植物検疫法関係法律條文拔萃、こういうふうなものであろうかと思います。
 大体この植物防疫法の主な点を御説明を申上げたいと思います。先程政務次官から提案理由の御説明にもございました通り、この法律は従来ございました輸出入植物検疫法、それからもう一つは明治二十九年に制定せられました古い法律でありますが、害虫駆除予防法、前者は輸出入の植物に伴う検疫事業であります。後者は国内の病害虫の対策でありますが、最近の情勢に対応いたしまして、この二つの法律を一つにまとめまして、内外打つて一丸とした一貫したところの防疫、防除態勢を確立したいということが、この植物防疫法の主な理由であるわけであります。法案につきまして、ちよつとお開きを頂きまして主な点を御説明して参ります。
 第一章の総則、第一條でございます。ここにこの法律の趣旨が書いてあるわけであります。大体この植物防疫法の狙いは三つございまして、一は国際植物検疫、二は国内植物検疫、三は緊急防除、この三つであるわけであります。で一番初めの国際植物検疫と申しますのが、従来の輸出入植物検疫法と大体その骨子は同様であります。若干不備な点を補いまして新しく規定をいたしたのであります。それから国内検疫及び緊急防除の点につきましては、新しい事態に即しまして、新規の規定が追加されておるわけであります。それでこの定義でございますが、第二條に定義がございましてこの法律で「植物」とは、顯花植物、しだ類又はせんたい類に属する植物で、次項の有害植物を除くものをいう。」こういうふうに書いてございます。農作物、樹木等の顯花植物の外、しだ類、或いはせんたい類に属する植物、及びその部分、種子、果実は勿論、明かに種子としての原形を有しております「むしろ」とか「こも」とか、そういうふうな簡單な加工品も含めまして、その対象にいたしております。それから有害植物、これは「真菌、粘菌、細菌、寄生植物及びバイラスであつて、直接又は間接に有用な植物を害するものをいう。」こういうふうに規定をいたしておるわけでありますが、ちよつと例を申上げますと、例えば真菌と申しますのには、例えばいもち病の菌でございますとか、或いは稻の胡麻葉枯病菌でありますとか、麦のさび病の菌、或いは甘藷の黒斑病の菌、こういうふうなものでございます。それから粘菌と申しますのは、これは大根、菜種、白菜等十字科植物の根瘤病菌。それから細菌と申しますのは、稻の白葉枯病、大豆の細菌性斑点病菌、それから馬鈴藷の輪腐病菌、林檎の根頭癌腫病菌、こういうふうなもの。それから寄生植物は、これはやどり木、土たおし、豆たおし、南蛮きせる、こういうふうなもの。それから間接に有用な植物を害するものと言いますのは、例えば媒病菌でありますとか、地衣類等がこれに該当するものであります。その次にこの法律で「有害動物」と言いますのは、「昆虫、だに等の節足動物、線虫その他の無脊椎動物又は脊椎動物であつて、有用な植物を害するものをいう。」とございますが、昆虫というのは、これは例えば螟虫とか、貝殻、虫とか、こくぞう虫等であります。だにと言いますのは、こなじらみ、麦の赤だに、果樹のさびだに等、それから線虫は、これは例えば稻の線虫、心枯、それから麦の穀実の線虫、甘藷の根腐線虫、こういうふうなもの、それから脊椎動物としてありますのは、これは野風でございますとか、もぐらでございますとか、野兎、こういうふうなものを予定しております。こういうふうなものを全部包含いたしまして、この法律にいわゆる有害植物と有害動物の対象といたしております。
 次にこの第三條、第四條及び第五條は、これは植物防疫官及び植物防疫員に関する規定でございまして、先程申しました国際植物検疫、或いは国内植物検疫、緊急防除、これらの仕事に従事させるために、植物防疫官を農林省に設置をいたす。従来これは輸出入植物検疫法に基きまして、輸出入植物検疫に従事をいたしておりました植物検疫官、これを今度植物防疫官と改称をいたしましたのであります。それから尚この植物防疫官の外に、第三條の二項にございますように、防疫の仕事は、これは事業の性質上年間を通じて必ずしも事業量が一定しておりませんし、又特定の時期に非常に沢山の人間を必要とするというふうな場合もございますので、「植物防疫官が行う検疫又は防除の事務を補助させるため、農林省に植物防疫員を置くことができる。」とこういうふうな規定があるのです。現在防疫員はどのくらいあるかと申しますと、これは先程申上げました資料のうちで、動植物検疫所定員配置予定表というものをお配りしてございますが、二十四年度の大体動植物検疫所は、横浜、神戸、門司、この三つの検疫所が、本所がございまして、それにそれぞれ出張所がついておるわけです。二十四年度の職員数は全部で二百九名でございましたが、今回の植物防疫法の制定に伴いまして、四十四名増加を認められまして、二十五年度の職員数といたしましては二百五十三名、こういうふうに増加をいたしております。
 それから次にこの植物防疫官の権限のところでございますが、これは病菌、害虫等の発見及びそれに伴う防疫措置を採らせるために、植物防疫官に、住居を除きまして必要な場所へ立入検査する、或いは質問をする権利、或いは資料の蒐集をする権利、こういうふうなことを與えました外、必要があります場合は、関係者に消毒を命じ得るというふうな権限を與えております。この新しい植物防疫官の権限と、従来の輸出入植物検疫法の規定による植物検疫官との権限を較べますと、職務権限が減つております。従来の植物防疫官では廃業をする処分をしますとか、廃業をする権利でございますとか、或いは輸入の禁止をいたしますとか、その外必要な職務の権限があつたのでございますが、今回のこの植物防疫官はただ消毒以外の処分はできない。消毒をすることができる、かように相成つております。それから更にこの消毒の結果によりまして、通常生ずべき損失がございますれば、これは損失を補償をしなきやならない、かような規定に相成つております。これが第四條の三項。それから尚、従来は植物検疫官は司法警察官吏の職務が行えるわれでありまして、例えば臨検、検査、捜査、差押、こういうふうな権限があつたのでございますが、今回の植物防疫官はそのうちの限られた権限でございまして、いわゆる犯罪捜査のための仕事、こういうふうなものは、捜査、差押等の仕事はできないのでありまして、これは必要があります場合は、いわば司法警察官吏の協力を求めてこれをやる、こういうことにならなければならんと考えております。従つてここで、「第一項の規定による立入検査、質問及び集取の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」つまり犯罪捜査の目的で行うものでないということを特に明示しております点が、従来の植物検疫官と今回の植物検疫官との権限上の差違でございます。
 それから尚その外五條にございます証票の携帶及び服制の関係、これは従来と大体同じような規定でございます。それが総則でございます。
 その次の国際植物検疫、これが第六條から第十一條までが国際植物検疫の規定でございます。この規定の内容は、先程申します通り、現行法の輸出入植物検疫法とほぼ同様でございます。主として條項の整理に止めておりますわけであります。
 改正をいたしました主な点を申述べて見ますと、その主な点の一つは、輸入検疫を行います植物の範囲を拡張をいたしまして、食糧、例えば米、麦、雑穀等の食糧、藁、こも等の加工品というものを新しく追加をいたしまして、それが範囲が拡張されております。更にこれらの輸入については、原則として外国の検疫証明書を添付を要求する、そういうふうにこの新しい第六條の第一項に規定されておる点が変つております第一点であります。それから第二点は、輸入禁止品のうちで省令で定める植物、例えば果物でございますとか、或いは馬鈴薯でございますとか。そういうふうなものにつきましては、省令で植物を決めます場合に、農林大臣が予め、公聽会を開いてこれを決定する。特に輸入を許可いたします場合は、それに條件を附するということを明らかにいたしたのであります。これが第七條の第二項及び四項がそれに関係する規定であります。それから第三点は、芋類でありますとか、或いは球根類のパイラス病のようなものはこれは輸入港、つまり海港又は空港、つまり飛行場において規定の検査を行いますだけではどうしても分らないものもありまして、一定の期間栽培をいたしまして、それによつて初めて病菌をが発見されるということであります。單に海港又は空港における規定の検査だけでは検易の目的が達せられませんので、止むを得ない措置といたしまして、隔離栽培を保なつてこれを検易するという制度を新しく規定いたしました。それが、第八條の第七項がこれに該当する規定であるます。その他若干の点につきまして、詳細な規定を置きますとが、或いは又一定の事項について公聽会を開くという規定を置きました点が相違点でございまして、それ以外は大体従来の輸出入植物検疫法とほぼ同じでございます。
 それから次は第三章でございますが、この第三章は十二條から十六條まで、これが第三章でございます。これはいわゆる国内植物の検疫の問題でございます。病菌、害虫の中には種苗、種によつて伝播するものが非常に多いのでありまして、優良な種苗を確保してこれらの伝播を防止するということが、農作物の損害を防止するために極めて重要であるわけであります。このために農林大臣が先ず第十三條によりまして、予め公聽会を開きまして、検疫を行う必要のあるものと認める種苗の指定をいたすわけであります。そうして指定を受けました種苗の生産者は、毎年その種苗の栽培地で栽培中に、植物防疫官の検査を受けなければならないというふうにいたした外、その検査に合格したものでなければ他にこれを讓渡したり、又は他府県へ移動してはならない。尚この検査だけで目的を達することができません場合は、生産物等についても検査を併用する。それから又以上の規定の効果を確保いたしますために、これらの規定に違反して移動いたしました植物があるときは、これを廃棄することができる。それから又農林大臣が「検査の手続及び方法並びに検査の結果行う処分の規準」を定める場合は、公聽会を開いてこれを決定する。このような考え方で国内の植物検易を行うというふうにいたしておるわけであります。現在これに指定する種苗として考えておりますものは、馬鈴薯、或いは甘藷の苗木、こういうふうなものを考えておりますわけであります。尚この章の規定によります検査には、実費を超えない範囲におきまして、手数料を徴收することができるというふうに考えておるわけであります。大体それが国内植物検疫のやり方であります。
 次に緊急防除でございます。これは第十四條から大体第二十一條までが緊急防除の規定でございます。これは海外から新しく侵入をいたしました病害虫、又は国内の一部に存在しておる病害虫が外の地方に蔓延をする、そうして農業に重大な損害を與えるという虞れのある場合、つまりまだ一部しか発生していないが、抛つておけばそれが非常に拡大する虞れのある場合、又は国内に存続する病菌害虫等のために植物の輸出が阻害される、外国のクレームがつきまして、日本から輸出することを禁止されるという虞れのある場合、こういうふうな場合には防除区域でありますとか、或いは期間、或いは種類、内容等の事項を告示いたしまして防除を行うということにいたしております。この防除の目的は、今後農業生産に測り知れない損害を與える心配のある病害虫の広い範囲に蔓延するのに先立つて、これを局部的な場合に、局部的な段階において絶減する、又その蔓延を防止して禍根を絶つ、こういうふうな考え方でございます。農林大臣が必要な限度において、作付の制限又は禁止或いは増反制限又は禁止又はその他必要と認めるものの消毒、除去、廃棄処分等の命令を行うことにいたしたのであります。その規定が、第十八條の第一項、第二項がその命令を出し得ることを書いてあるわけであります。但し止むを得ない場合におきましては、前記の公表を省略いたしまして、植物防疫官に直接消毒或いは又廃棄等の処分を行わせることができるというふうにいたしております。この緊急防除のところが新しい規定に相成つております。尚これらの防除を行うに当りまして、必要があるときには、これは十九條の第一項、第二項等によりまして、都道府県農業協同組合或いは共済組合というような、農業者の団体でありますとか、或いは又防除業者に協力をすることを命令して、協力させることができる。その場合には、この第三項によりまして防除の協力をさせたときには、国はその使用を弁償しなければならん、そういうふうにいたしております。更にこうした防除の処分によつて損失を受けたものに対しましては、申請に基きまして通常生ずべきところの損失を補償する、かような規定が二十條の本文に書いてあります。補償金額を定めます場合は、ここにございますように、その地区の農業者を含む三人の評価員を選定いたしまして意見を聽く、そうしてその金額を決定する。この場合補償を伴う処分は予算の範囲内においてのみ、予算上の金額を超えない範囲内でしなければならん、かように相成つております。これは補償金額というものが、やはりこれを国が義務として支出いたします場合は、やはり国会の議決を経た予算の範囲内で金を出す外ないというふうなことからいたしまして、かような規定をおいておるわけであります。併し一方は予算がなければ、そうすると緊急な場合に間に合わないのじやないかというふうな意見も又出ようかと思つておりますが、やはり現在の財政需要から申しますと、全然予算を組まないでどんどん処分をいたしまして、これに伴う補償を無條件に出すということも現在の財政上からちよつとできないような感じがございますので、これはやはり予め予算を計上いたしまして、その範囲内におきまして処分をする、こういうような建前になつております。実際問題といたしましては、この緊急防除はひの性質上先程申しましたように、全国的に広く拡がつたのじやなくして、広く拡がる場合に、これを食い止めると、こういうふうな考え方でやつておりますわけであります。そうさして実際には多額の補償を要する場合は極めて少いと考えております。現在二十五年度に取られております予算の中で、害虫驅除予防費というものが約九百六十万円ばかり計上されております。そして我々の考え方といたしましては、一応この九百六十万円の一部をこれに当てようと考えております。尚この病害虫の発生の状況によりましては、必要があります場合は更に別途予算を要求いたしまして、これを取りたいと、差当り簡單なものでございますれば、この九百六十万円の範囲内において害虫を防除するということは、当然でき得るというふうに考えております。現在この緊急防除を実施する対象といたしまして考えておりますのは、例えば甘藷の根腐線虫でありますとか、或いは馬鈴薯の輸腐病でありますとか、馬鈴薯の凋萎病、萎びるという凋萎病、或いは蜜柑蠅等も考えております。それから又情勢によつてはアメリカシロヒトリもこれに入れなければならんと思つておるわけであります。その他いろいろこれに入れることについて研究をいたしておりますもの、例えば野菜の象虫でありますとか、或いは大豆の新病害等があるかと思います。こういうふうな最近新しい病気も段々発見をされますので、そういうふうなものが発見されますれば、これが蔓延しない先に、先たつてこの緊急防除によつてこれを絶滅さしたいというふうに考えております。それから又緊急防除をしなければならないような有害な動植物は、いつどこに発生するか分らないわけでありますから、この二十一條によりまして都道府当知事に報吉の義務を負わせる。そういうふうな虞れがあると認めました場合には、この旨を農林大臣に報告しなければならんということに報告の義務を課しまして、国の処置が手遅れにならないように措置をして参りたいと思つておるのであります。
 それから現在問題になつております松くい虫、これにつきましては従来から日本の普遍的におりました害虫でございまして、而もその防除の方法は本法で対象とする有害動植物の場合と趣も異つておりますので、これは本法の規定を適用いたしませんで、別な法律で防除措置を採る。これは別途この国会において御審議になり、或いはすでに成立したかと思いますが、松くい虫等その他の森林病害虫の驅除予防に関する法律によつて規定されるということに考えております。
 それからその次は都道府県の防疫であります。これも都道府当も独自の立場から植物の防疫に関する條例を制定いたしまして、必要な防疫事業を行うというふうなことは勿論であります。この種の規定によつてこれの重要性を強調するというふうに考えております。尚これについては二項のような規定を置いておるわけであります。都道府県のこの防疫につきましては「他の都道府県において生産された種苗その他の物の正当な流通を妨げないように留意しなければならない」というように趣旨を明らかにいたしております。
 それから六章はこれは不服の申立、それから七章は罰則でございまして、これはお読み頂けば大体分ると思いますので省略をいたします。
 それから附則についてちよつと申上げて置きたいと思いますが、この法律は昭和二十五年四月一日から施行すると、かように相成つております。実は相当前から期間の余裕を存しまして、司令部方面にアプルーヴアルの申請をいたしたのであります。当初といたしましては、この四月一日から施行することができるものとして進めたのでありますが、手続の都合上非常に遅れましたので、アプルーヴアルを得ましたのが極く最近でございます。最月四月一日施行ということも事実上これはできないことに相成りますので、これは何とかこれを提案をいたします前に期日を変更をして頂きたいということを関係方面にお話をしたのでございますが、手続その他の関係もあるから、国会で一つこれは直して貰えということに相成つておりますので、甚だ恐縮でございますが、よろしく御審議を頂きまして、適当な御訂正を頂きたいというふうに思つております。
 それからこのうち、経過規定の中で農業災害補償法の改正をいたしております。これは「農業共済組合は、その組合員が植物検疫法の規定に違反した場合には、当該違反行為の結果通常生ずべき損失の額については、当該組合員に対して共済金の支拂の義務を有しない。」組合員が当然この検疫法に違反したような場合においては、その共済金支拂の義務は負わないということを明らかにいたしたわけであります。
 それからその次に物品の無償貸付及び讓與等に関する法律の改正、これは「地方公共団体、農業者の組織する団体又は植物の防疫事業を行う者に対し植物の防疫を行うため必要な動力噴霧機、動力散粉機、動力煙霧機その他の防除用機具を貸し付けるとき」にこれは無償で貸し付けることができるというふうな規定にこれを改正いたしました。つまり無償貸付の條項の中に、この一項を附け加えましたわけであります。これは昭和二十五年度の予算に……予算に、これは予算の関係、予算一覧表を御覧頂けば分りますが、このうち、備品津の千六百四十九万四百円というのがございますが、このうち千六百十万円というものが動力噴霧機及び動力煙霧機というものを、国が約二百三十台購入をいたします費用であります。それを国が購入をいたしまして、適当な場所に備え付けをさせて置きまして、そうして一旦稻熱でございますとか、うんかでございますとか、いろいろ防除をする必要が起きました場合に、これを無償で貸し付ける。公共団体或いは農業者の団体、その他のものに対してこれを無償で貸し付ける。そういうことによつて徹底的に、機動的に一済防除を実行したいというふうな趣旨で考えておりますのであります。その際の無償貸付の規定が必要でございますので、これを附則において書いておるというようにいたしましたわけであります。
 大体以上が今回提案をいたしております植物防疫法の概略でございます。
#14
○委員長(楠見義男君) それでは本日はこの程度にしまして、尚詳細御検討の上、明日から質疑を始めることにいたします。本日はこれで散会いたします。
   午後四時三十九分散会
 出席者は左の通り
   委員長     楠見 義男君
   理事
           羽生 三七君
           石川 準吉君
           藤野 繁雄君
   委員
           門田 定藏君
           北村 一男君
           深水 六郎君
           山崎  恒君
           岡村文四郎君
           小川 久義君
  政府委員
   農林政務次官  坂本  實君
   経済安定政務次
   官       西村 久之君
   農林事務官
   (農政局長)  藤田  巖君
ソース: 国立国会図書館
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