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#1
第096回国会 社会労働委員会 第5号
昭和五十七年四月六日(火曜日)
    午前十時三十分開議
 出席委員
   委員長 唐沢俊二郎君
   理事 今井  勇君 理事 大石 千八君
   理事 丹羽 雄哉君 理事 深谷 隆司君
   理事 金子 みつ君 理事 森井 忠良君
  理事 平石磨作太郎君 理事 米沢  隆君
      古賀  誠君    斉藤滋与史君
      白川 勝彦君    竹内 黎一君
      戸沢 政方君    長野 祐也君
      葉梨 信行君    浜田卓二郎君
      船田  元君    牧野 隆守君
      山下 徳夫君    池端 清一君
      川俣健二郎君    川本 敏美君
      田邊  誠君    永井 孝信君
      草川 昭三君    浦井  洋君
      小沢 和秋君    菅  直人君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 初村滝一郎君
 出席政府委員
        労働大臣官房長 松井 達郎君
        労働大臣官房審
        議官      寺園 成章君
        労働省労政局長 吉本  実君
        労働省労働基準
        局長      石井 甲二君
        労働省労働基準
        局賃金福祉部長 望月 三郎君
        労働省婦人少年
        局長      高橋 久子君
        労働省職業安定
        局長      関  英夫君
        労働省職業安定
        局高齢者対策部
        長       加藤  孝君
 委員外の出席者
        公正取引委員会
        事務局取引部取
        引課長     植木 邦之君
        文化庁文化部文
        化普及課長   石井 久夫君
        林野庁職員部職
        員課長     町田 英憲君
        通商産業省産業
        政策局商務・
        サービス産業室
        長       江崎  格君
        中小企業庁計画
        部下請企業課長 姉崎 直己君
        運輸大臣官房観
        光部整備課長  高橋 克彦君
        労働大臣官房統
        計情報部長   江田  茂君
        労働省労働基準
        局監督課長   岡部 晃三君
        労働省労働基準
        局安全衛生部長 林部  弘君
        労働省職業訓練
        局訓練政策課長 野崎 和昭君
        社会労働委員会
        調査室長    河村 次郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月六日
 辞任         補欠選任
  西中  清君     草川 昭三君
同日
 辞任         補欠選任
  草川 昭三君     西中  清君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第二八号)
 労働関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○唐沢委員長 これより会議を開きます。
 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田卓二郎君。
#3
○浜田委員 本日は、高齢者対策を中心にお伺いをいたします。そして時間が許されればパートタイマーの問題、それから大学就職協定問題について触れたいと思います。私の所要時間は四十分でございますので、すぐ終わってしまいますから、ひとつ答弁の方は簡潔にお願いしたいと思います。
 高齢者の雇用安定を図るということで、六十年六十歳定年の実現をいま労働省は目指しておられるわけでありますけれども、その定着状況につきましてちょっと教えていただきたいと思います。
#4
○関(英)政府委員 昨年の一月現在の数字しか現在のところわかっておりませんが、雇用管理調査によりますと、六十歳以上の定年制を採用する企業の割合は四二・六%となりまして、五十五歳定年制を採用する企業の割合の三八・〇%よりは上回るようになってまいりました。同時に、その時点で今後六十歳定年を予定している、あるいは検討しているという企業を加えますと、六十歳以上の定年制は、近い将来五三・七%と過半数を超えると見込まれておりますし、特に五千人以上の規模の企業では七三・五%と、大多数の企業が六十歳定年に移行することが予定されているということが言えると思いますが、約一年以上前の数字でございます。ことしの一月の数字は六月ごろ明らかになると思います。
#5
○浜田委員 また後で話題にするわけでありますが、六十歳定年というのはまだ入り口であると私は思っているわけです。したがって、いまの定着状況、いろいろ労働省も苦心しておられると思うわけでありますけれども、なおまだ低いと思わざるを得ないわけであります。
 具体的に定年制の定着につきましてどういう手だてを労働省としてとっておられるか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
#6
○関(英)政府委員 六十歳定年を実現いたしますために、一つにはおくれた業種につきまして、労使の代表に集まっていただきまして業種別労使会議を開きまして、そこで問題点等を検討し、定年延長へのコンセンサスの醸成を図る、これが一つでございます。それから定年延長研究会というものを開催いたしまして定年延長に当たっての問題点の解明に当たる。あるいは高年齢者雇用率制度というのがございますが、これを達成していくためにはどうしても定年延長が必要でございます。この達成の行政指導に当たって定年延長を指導していく、こういったことをやっております。
 また、いろいろな助成制度がございます。定年延長奨励金とか高齢者の職場を確保するための融資制度、あるいはまた賃金コストの計算をサービスしていくとか、そういった援助措置を活用する。さらに本年度からは三カ年計画で、六十歳定年にいまだ達していない企業のすべてについて計画的な個別行政指導を展開していきたいと考えております。
#7
○浜田委員 まず六十歳定年の定着であると思いますけれども、労働省が調査されました定年到達者調査というのがございますね。これによりますと、六十歳を超えた人であってもそのほとんどは就職を希望しておられる。さらに六十五歳を超えた人でも実に六三%が、できたら七十歳まで働きたいのだという希望を出しておられるわけであります。さらにその中身を見ますと、六十五歳以上の方でも二一・二%の方は、できたら七十歳以上になっても働きたいという希望を現に持っておられる、そういう結果が出ているわけであります。
 私は、まず六十歳定年の定着でありますが、さらに六十歳台層の雇用対策という問題も真剣に取り組んでいただかなければならないと思うわけでありますが、この点につきまして労働省の考え方並びに対策というようなものをお聞かせいただきたいと思います。
#8
○関(英)政府委員 先生御指摘ございましたように、日本では高齢者の労働力率というのは諸外国に比べて非常に高くなっております。それにはいろいろな理由があろうかと思いますが、年金制度の成熟の問題あるいは働くことに生きがいを見出すとかいろいろな理由はあろうかと思いますが、調査結果は先生御指摘があったとおりでございます。
 昭和六十年を過ぎますと、人口の年齢別の増加の非常に大きな波が、六十年までは五十五歳から六十歳台層でございますが、六十歳台前半層が人口が大きく増加する、そういう時代に入ってまいります。そういう意味で、先生のお話ございましたように、まずは六十年までに六十歳定年を何としても実現していくことが大事でございますが、その後の人口増加に備えていまから六十歳台前半層の雇用対策を進める必要があろうかと思います。
 その場合の考え方といたしまして、いろいろな調査によって見ますと、六十歳台前半層になりますと就労に対します意識も非常に多様化してまいります。従来どおりフルタイムの雇用労働を続けたいとする者ももちろんございますし、それはまたその人にとって六十歳を過ぎてもなお活力を持って働けるということでございますので、一番望ましいことではございますが、しかし人によってはフルタイムの就業でなく短時間就労を希望する方もおられます。あるいは任意的といいますか臨時的といいますか、そういう就労を希望される方もおります。そういう意味で非常に多様化しております。一律の対策で済むというわけにはまいりません。そこで六十歳台前半層対策はその人々の希望に応じた多様な対策が必要だろうと思います。
 そのまず第一は、従前の職場で引き続き雇用が継続できる人はできるだけ引き続き雇用が確保されることが望ましいわけでございます。そこで、この一月一日から高齢者雇用確保助成金制度というものを発足させまして、六十歳を過ぎても再雇用なり勤務延長なり、もちろん定年延長ができればそれが一番望ましいわけでございますが、そういった制度をつくりまして引き続き雇用が確保されることを助成していく、これが第一でございます。
 それからパート雇用を希望される方も出てまいります。そういった方々に対しましてパートバンクを整備していく、そういったことによって対応していきたいと思います。
 また任意的、臨時的な就労を希望される方もおりますが、それらの方々に対しましてはシルバー人材センターというような制度をとってまいりました。これを本年度もさらに拡充していきたいと考えておるところでございます。
 また、やむなく離職された方の再就職の促進のためにはいろいろな助成制度を活用して努力していきたいと思っております。
#9
○浜田委員 雇用者の頭を切りかえていただく、それといろいろな労働慣行についても高齢者に適した体制をとってもらう、いずれにせよ時間が大変かかる問題だろうと思うのです。ですから私は、いまはそれほど深刻な、まあ深刻でありますけれども、この深刻の度合いというのはますます高まっていくわけでありますから、十分に問題意識を持って対応していただきたいと思うわけです。
 昨年暮れに厚生省が人口推計統計を新しくされたわけでありますけれども、これを私ども拝見いたしますと、実に高齢者社会の展望というのは深刻なものがある。この深刻さがまだ十分に認識をされていないのじゃないかということを、私は声を大にして言っているわけであります。六十五歳以上の人口比率が御承知のように昭和八十五年から九十年ぐらいにかけましては全人口の二割を超える。いま世界で最も高齢化している国はスウェーデンであろうと思いますけれども、これでも一六・三%にすぎない。したがって、われわれがこれから経験しようとしている高齢化社会というのはいわば人類が初めて経験をする未曽有の高齢化社会である。ですから、その具体的なイメージといいますか人口構成、それに応じた社会構成というものを十分に考えた対応を私どもはいまからとっていかないとこの時代は乗り切っていけないのじゃないかと思うわけであります。
 たとえば年金問題等を私ども声を大にして議論しておりますけれども、こういった諸制度の改革の前提に、私は雇用問題というものがこなければならないと考えているわけです。いまのお答えで、六十歳定年制の定着あるいは六十歳台の雇用確保ということにつきましていろいろ労働省も苦心をしておられるというのは理解できたわけでありますけれども、私は問題はさらに進めなければならないと思うわけであります。
 そこで、大臣のお考えを伺いたいわけでありますけれども、いまわれわれが持っている生涯設計といいますか、これは要するに六十まで働いて、六十からは年金をもらうんだ、そして各種の社会保障制度もそれに対応した形で組み立てられているわけでありますが、問題は、こういう生涯設計の図式というものがだんだん当てはまらなくなる、そういうことにあると思うわけでありまして、より踏み込んで六十五歳定年あるいはさらに六十五歳を超えても働いていけるという職場の確保、雇用慣行の確立ということが私は緊急の課題だと思うわけであります。六十歳定年すら、先ほどお話しいただきましたように、全体として見ればまだ四割ちょっとしか定着をしていないという実情でありまして、大変時間がかかっているわけであります。ですから、昭和七十五年とか八十年とかは先だと思っておりましても、私はそんなに時間の余裕があることではないと考えております。より踏み込んだ定年の延長、高齢者の雇用機会の確保という点につきまして労働省としてどういう取り組みをされていくか、ひとつ大臣の御所見を伺いたいと思います。
#10
○初村国務大臣 いまお話がありましたとおり、高齢化社会が急速に来るわけでございますから、高齢者に対する雇用、就業機会を確保することが私は一番まずもって大事なことではなかろうか、かように考えます。
 そこで、そのためにはどうするのかということでございますが、何といっても個別指導、それから集団指導によって定年制を定着させる、六十年六十歳定年を定着させる、これが一番大事ではなかろうか。
 それから、六十歳といっても六十歳台前半、要するに六十歳から六十五歳ぐらいまでの前半層の方々の就職希望に応じた対策をする必要がありはしないか。
 それからさらに、離職した高齢者対策ですが、再就職の促進をするための積極的なお世話をすべきではなかろうか、これも大事であろうと思います。
 したがって、いまいろいろと安定局長が申したとおりに、六十歳定年という問題をなるたけ早く定着させて、そして六十歳台前半層の雇用対策を強力に推し進める。そして、いま先生も申されたとおりに、七十歳までも働けるような総合的な高齢者対策を強力に推進していかなければならない、こういうような考え方をいたしております。
#11
○浜田委員 重ねて申し上げるので恐縮でありますけれども、たとえば年金制度を例にとってみますと、すでに六十歳からの支給開始ということであっては将来の財政の維持というものがむずかしくなってきている、これはもう明らかに厚生省もそういう展望を出しているわけであります。したがって、六十歳まで働いて六十歳以降は年金だという生涯設計が成り立たないということは、もうすでにこの時点で私は明らかだろうと思うわけであります。したがって、六十歳の定年制の定着が先決だ、そのとおりでありますけれども、どうも行政が後手後手になって追いつかないということであってはどうしようもないわけでありまして、より先を見詰めて、六十五歳あるいはそれ以上というような定年制あるいは雇用の確保というものに労働省がもっと強力に取り組んでいただきたいということを私は御要望申し上げるわけであります。
 これに関連いたしまして、今度の機構改革で高齢者対策部が職業安定局に創設されているわけであります。私はこのこと自体は大変前向きであると受けとめておりますけれども、ともすれば同じ労働省の中でも行政というのは縦割りになってしまうわけでありまして、職業安定局の問題あるいは訓練局の問題あるいはさらに定年制全体、高齢者の雇用につきましては全体的なアプローチというものがどうしても私は欠かせないと思うわけでありまして、これは単に職業安定局の中の対策部ということにとどまらず、それは組織の問題ありますけれども、ひとつ縦割り行政の弊を排して、労働省としてこの問題には総合的に取り組めるということを私はぜひ実現していただきたいと思うわけでありますが、その点についてはいかがでございましょうか。
#12
○松井(達)政府委員 御存じのとおり、労働省設置法を改正していただきまして高齢者対策部を職業安定局に設けたわけでございますが、先生御指摘のとおりそれだけではございませんで、高齢者の問題につきましては、たとえば職業訓練の問題もございますし、それからまた、今回労働省から提出しております財形法におきましても個人年金ということで高齢者の退職後の所得の保障ということも考えておりまして、私どもとしましては高齢者の対策は総合的に進めていかなきゃならない、多角的に進めていかなきゃならないというふうに思っております。
 それで、私どもこれにつきましては省内の衆知を集めてこの問題に取り組んでいかなければならぬということで、たとえば私のところに関係各局の担当の課長さんを集めまして、ときどきこの問題につきましては具体的な対策につきましても、あるいはこの問題は先生御指摘のとおり長期的、総合的な観点が必要でございますので、そういう長期的な方向につきましても議論しておるところでございます。
 先生御指摘のようにもっと総合的な体制が必要なのではなかろうかという点がございますが、それは私どもも全く同感でございまして、現在機構の問題につきましてはいろいろと厳しい情勢ではございますけれども、先生の御理解ある言葉もいただいたわけでございまして、一層効率的な、総合的な体制をつくるためにどうしたらいいかということを工夫、検討してまいりたいと思っております。
#13
○浜田委員 この問題は労働省だけにとどまらず、先ほどちょっと例に出しましたけれども、年金制度を初めとする各種の社会保障制度体系との整合性ということも十分考えていかなければならないわけで、ひとつ厚生省ともよく連携をとっていただいて、積極的な高齢化社会に向けての具体的な取り組みというものを私はぜひ進めていただきたいとお願いをするわけであります。
 高齢者問題につきましてもう一点だけ伺いたいわけでありますが、賃金研究会というところで高齢化社会への対応の一つの形として退職金の形態とか役割りも検討すべきではないかということが出されているわけであります。そうなりますと、これは私は一つの方向だろうと思うわけでありますけれども、たとえば一時的に支払われる退職金を年金と同じように長期にわたって支払っていくとか、いろいろな形が考えられると思うわけであります。そうなりますと、企業のそういう退職金債務を将来にわたってどうやって安定的に維持していけるか、それを受け取る方からすればそういう安心感をどうやって持たせてもらえるかとか、いろいろな問題が出てくるかと思うわけでありますけれども、この退職金の形態、役割りについての再検討ということにつきまして、労働省はいま具体的にどう受けとめて、どのような検討をしておられるのか、お考え方を聞かせていただきたいと思います。
#14
○石井(甲)政府委員 先生御指摘のように、これからの高齢化社会、特に老後の問題を含めまして大変重要な段階を迎えているわけでございます。昨年十一月に大臣の私的諮問機関でございます賃金研究会から「高齢化社会における退職金制度について」という報告をちょうだいいたしました。その基本は、高齢化社会になりまして、いわゆる老後生活をどう安定的に確保するかということでございますが、同時に、企業の側でも大量の高年齢者が退職するということが当然のことながら起こってまいりますので、その負担を平準化するということも含めまして、できるならば退職金の一部を年金化する方向に持っていくことがこれからの方向に沿うのではなかろうかというのがその内容でございます。さらに、御指摘のように当然一時金という問題もございますが、できれば労使が話し合いの中で年金化を進めるということについて検討すべきではないか、こういうことでございます。
 したがいまして、労働省としましても基本的にはそういう方向に沿いまして退職金制度の改善について指導していきたいというふうに考えておりますし、また、先ほどお話ございましたように、全体の公的年金を踏まえまして、財形における個人年金制度も同時に並行的に施策として展開してまいりたい、こういう態度でいま進めているところでございます。
#15
○浜田委員 それでは、時間の関係もありますから、次の問題に移らせていただきたいと思いますが、パートタイマーですね。近年著しく増加しているというふうに聞きます。また、私どもも身近にそういうパートタイマーとして働いておられる主婦の皆さんとかを多く見かけるわけでありますけれども、現在どういうような増加の状況にあるのか。そしてまた、そういう増加の背景といいますか、そのあたりをどのように分析をしておられるか、お考え方を聞かせていただきたいと思います。
#16
○江田説明員 それではお答え申し上げます。
 パートタイマーでございますが、パートタイマーをいかなる労働者ととらえるかという点、若干定義上いろいろ問題があろうかと思います。一応総理府統計局の労働力調査の週間就業時間数が三十五時間未満の者で非農林業の雇用者というとらえ方によって見ますと、昭和五十一年の三百十四万人からこのところ年々増加をしてまいっております。昭和五十六年には八十万人増の三百九十四万人というように、約一・二五倍というような増加の状況でございます。この間の雇用者の増加の程度、これが一・〇九倍でございますので、これをかなりパートタイマーの方は上回っているというような状況になっております。そのために、雇用者全体に占めます割合も、五十一年の八・七%から一〇%と、一割を占めるような状況になってまいっております。
 内容をさらに男女別に見てみますと、女子のパートタイマーの伸びが非常に著しいという状態があらわれてまいっております。昭和五十一年の百九十二万人から五十六年には二百六十六万人、七十四万人の増加でございます。先ほど申し上げました八十万人のうちのほとんどが女子によって占められている。約九三%ばかりが女子の増加で占められているというような状況でございます。したがいまして、女子のふえ方は五十一年に対しまして約一・四倍、女子雇用者全体に占めます割合も一八・四%から一九・六%と約二割近い増加になっております。こういうような状況でございまして、最近のパートタイマーの伸びは女子が非常に著しい、こんなような状況でございます。
#17
○浜田委員 私は今後もパートタイマーは増加していくだろう。ヨーロッパ諸国の例を見ましても労働市場における相当なウエートを占めているという例も見られるわけでありまして、このパートタイマーの問題というのは今後の労働政策を考えていかれる場合にも相当大きなウエートを持ってくるんじゃないかと思うわけであります。
 しかし、現状を見ますと、いろいろ労働条件をめぐるトラブルも多いわけでありまして、苦情も少なくないというふうに聞いております。これは労働省が行われた調査だと思いますけれども、パートタイマーで現実に書面による契約を取り交わしている企業は全体の六割ぐらいにしかすぎないという姿がございますし、まだ労働基準法が一応適用されると考えてよろしいわけでしょうが、雇われる方もまた雇う方もそのあたりの認識が必ずしも徹底してない面があるんじゃないかという気がするわけであります。
 そこで、このパートタイマーをめぐるもろもろのトラブルとか苦情が少なくないという現状、これをどのように労働省としてはとらえておられるか。またそれに対してどのような対策を具体的に講じていかれるつもりなのか。そのあたりを聞かせていただきたいと思います。
#18
○石井(甲)政府委員 パートタイマーにつきましては、先ほど実態を統計情報部長から申し上げましたが、基本的にパートタイマーの数が増大するということのほかに、質的に需給関係から見ましても、パートタイマーが企業の側から言いましてもある意味で基幹的な労働力としての位置づけが実態的にされているといいますか、実現されているような時代であるという認識が重要だと思います。もう一つは、供給側からしましても家事の都合その他によりましてまさにパートタイマーであることが一つの最もいい条件であるという需給両面がある意味で適合したような状態というのが現実の姿であろうと思います。
 そこで労働条件につきましては、そういう実態、基幹労働力的な状態になりつつあるにもかかわらず、企業の側からすればともすれば昔の不安定雇用あるいは臨時的な雇用というような意識がまだ抜けておらない。いまそういう過渡的な状況でなかろうかと思います。
 そこで当然のことながら、労働基準法は一人でもどういう状態でも雇用従属関係があれば労働基準法の適用を受けるわけでございますので、これは明らかにパートタイマーといえどもすべて労働基準法の適用を受ける労働者でございますが、いま私が申し上げましたような過渡的な状況から、労働基準法の適用を受けない労働者でないかというような誤った認識も一部残っておるかと思います。また、少なくとも現状においてパートタイマーというものが労働力としてかなり重要な役割りを果たすという認識が社会全体の中でまだ成熟していないという面もございますけれども、そういう状態であろうと思います。
 労働省といたしましては、労働基準法についてパートタイマーが適用対象になるということは当然でございますので、これについて周知徹底を図っていきたいということ、またパートタイマーに関する就業規則の整備につきまして労働条件の明確化を含めましてこれを広げていくといいますか、定着させる、また事業主によるパートタイマーの労働条件の自主点検という一つの行政手法がございますが、これもさらに徹底させていくという従来の手法を拡大するとともに、五十七年度からはそういう労働条件の明確化を強化するために雇い入れ通知書という制度の普及を図ることにいたしたいと思います。つまり、雇う場合に労働条件あるいはその他休日、休暇を含めた雇い入れ時の労働条件の明示をいたしましてその徹底を図るという、新しい雇い入れ通知書制度の普及を図りたいと思います。また、パートバンクを現につくっており、さらに拡大しようとしておりますが、そこに専門相談員を配置をいたしましてパートタイマーあるいは事業主からの全般にわたる相談に応ずる、そういう体制を同時につくり上げていきたいというふうに考えております。
#19
○浜田委員 いまの御答弁の中にも出てまいりましたけれども、第三次産業で調査した例によれば、パートタイマーの仕事の内容として四四・五%までは一般社員と同じであるという答えが出ているのですね。要するに、これはもちろん働く方にも便利だし雇う方にも便利だ、ですから普通の雇用内容の最も弾力的な部分だというようなとらえ方が多分にあると私は思うのです。そこでどうしても労働条件の面がおろそかになってきてしまうということだろうと思うわけです。いま雇い入れ通知書ということをおっしゃられましたけれども、これをよく徹底をして、そういう便利だから労働条件はどうでもいいんだ、そしてまた、どうもまとまりが悪いからまとまった権利の主張もできないというようなことが続いていかないように、これからより増加していくだろうと私は考えますので、そのあたりをしっかりやっていく必要があろうかと思います。
 そこでもう一つ、単にいま労働条件だけの面で申し上げたわけでありますけれども、パートタイマーがふえていくと、たとえばデンマークですか、全体の一七、八%にまで労働市場の中で割合を占めているというようなこともあるようですが、そうなると従来の労働政策というものがかなり変質してくる面があると思うのですね。ですから、日本はまだそこまで行ってないということだろうと思いますけれども、そういう全体の労働政策的な面からパートタイマー問題について労働省はどう考え、どう取り組まれるか、ちょっと抽象的な質問で恐縮ですけれども、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
#20
○石井(甲)政府委員 御指摘のように、パートタイマーという一つの就業形態がかなり定着をし、かつ、質的にもかなり重要な役割りを果たすという展望がございます。日本のパートタイマーの場合には、特に労働時間は外国より長いわけでございますが、いずれにせよ労働条件の面あるいは労働環境の面におきまして一般の労働者と特殊な別のものだという観念、これは対応としてはきわめて問題がございますので、少なくともパートタイマーという就業形態が一つの重要な要素として定着をし発展するわけでございますから、これに対する労働者保護あるいは企業の取り組み方、そういうものについて特別な何か非常に流動的かつテンポラリーな形態であるという認識をこの際去って、行政としても厳正な態度で臨みたい、こういうふうに考えております。
#21
○浜田委員 時間がございませんので、最後にもう一つだけお伺いをしたいと思います。
 大学卒業者の就職協定の問題でありますが、労働省は昨年十一月に大学就職協定に不参加を表明をしておられるわけであります。しかし、労働省は抜けたということでありますけれども、本年一月に、中央雇用対策協議会の民間三団体ですか、これは監視機能とかその他の規約は廃止しつつも五十七年の協定を行う、そしてそれに大学側も参加する、協定を維持するということにしたというふうに伝えられているわけであります。
 大学就職協定は、これは紳士協定でありますから、あるだけでなかなか守られない、そういうことはいままでも絶えず言われてきたわけでありまして、労働省もそれに参加していることに伴っていろいろめんどうな話が多かったのだろうと私どもは推察をしているわけであります。しかし、その大学就職協定をつくるときの問題点というのは依然として解消はしていないわけでありまして、また、もうがまんできないから抜けたということであるとすれば、その実態はよりむずかしいことになっているのじゃないか、そうなれば、人材の一部企業への独占をさせない、いわゆる青田買いをできるだけ自粛させるとか、いろいろなトラブルについて今後よけい野放しになっていってしまうのじゃないか、私どもはそういう危惧を持つわけであります。現に二月の末のサンケイ新聞に大きな記事が出ておりまして、「監視役去り就職戦線泥沼化」ということで、何か日大の理工学部の一部の教室のようでありますけれども、四月から求人受け付けをしますよという案内書を企業にもうすでに配付したりというような状態が出てきている。
 もう間もなく五十八年度の卒業生になりますか、そういう動きがこれから出てくるわけだろうと思いますが、その撤退の真意といいますか、それから今後についてどういうふうに考えておられるのか、御答弁をいただきたいと思うわけであります。
#22
○関(英)政府委員 先生お話がございましたように、大卒者につきましては職業安定法で本来大学が職業紹介機関となっておりまして、求人者は自由に求人を大学側に出し、大学側が紹介といいますか推薦をし、就職が決まっていくという形態になっておりますが、青田買いが非常に横行し、関係者からの要請もあって労働省も一枚加わっての就職協定というのがあったわけでございます。その後、それがなかなか守られないということで、業界団体と労働省で監視委員会なるもの、通称でございますが、決議の遵守を図るための委員会も設けて遵守活動もやってまいりました。
 昨年秋、その協定から労働省は撤退したいという見解を表明したわけでございますが、それに至りますまでには、紳士協定としてできたこの協定を守っていくためにお互いに努力しようではないかということで大学側、企業側に労働省としては大変な努力で呼びかけをしてまいりました。しかし、そうすればするほど、協定に反しないような形で非常に深く潜行した形での採用選考が行われ、採用選考自体にゆがみも出てまいります。また、監視委員会でも、私どもにそれだけの機構、定員があるわけではございませんので、結局は学生のいわば通報といいますか密告に頼るわけでございまして、たまたま密告がありまして、それを認めた企業のみが、認めないと私どもには証拠がないわけでございますので、認めた企業のみが警告を受けるようなまことに片手落ちな処分になってしまう。どうも形式的によろしくない。私どもとしては、これをこのまま続けると行政の公平性も失いかねないし、就職戦線にゆがみも残して、協定を信用した学生には迷惑をかける、こういうようなことになるので、もう一遍関係者で十分考え直してもらいたい。そういう意味で、労働省としてはいままでの協定からはもう抜けます、こういうことを申し上げたわけでございまして、その後先生からお話ございましたように、企業側、大学側、それぞれ非常に真剣な議論をいたしまして、その結果ことしに入りまして、とりあえず来年春、五十八年春卒業生については一つの協定ができたわけでございます。その後のことはさらにことしの秋までに話し合うということになっております。
 非常に真剣な議論の上に新しい協定ができましたので、従来以上に私はこれに対する遵守が図られると思っておりまして、日大工学部の事件はいままでにもありませんし、今回でも非常に異常なことでございまして、そういったような大変な事態が一般的に広がるとは見ておりませんし、私どもとしては関係情報誌に自粛を要請するというような環境整備、あるいは中小企業の求人をできるだけ集めて学生に提示していく、あるいは地方の求人をUターン希望学生に提示していく、あるいはまた身障学生の職業紹介には私どもがお手伝いをしていく、そういうような大学側では手の回らないところにできる限りの努力をして大学生の就職が円滑にいきますようにこれからも努力していきたいと考えておるところでございます。
#23
○浜田委員 時間が参りました。
 最後に、労働政策のウエートというのは今後ますます高くなっていかなければならないと私は思っておるわけです。こういう経済の効率性、能率性を維持していく上でも、労働政策というのは非常に重要な政策でありますし、さらに高齢化社会という深刻な事態をわれわれは目前にしているわけでありまして、そこをどう乗り切っていけるかということも、その高齢者の雇用の問題を中心にした労働政策の比重というのは非常に大きいと考えているわけでありまして、初村労働大臣以下皆さんの御奮闘をお願いをいたしまして質問を終わりたいと思うのです。どうもありがとうございました。
#24
○唐沢委員長 次に、金子みつ君。
#25
○金子(み)委員 やっとこの時間が来まして、労働大臣が所信表明をなさいましてから大変長い時間がたっているわけでありますけれども、きょうが初めての審議日でございますので、労働大臣がせんだって所信表明なさいました件につきまして幾つかお尋ねをさせていただきたいというふうに考えるわけでございます。
 まず最初に一言お尋ねしたいと思っておりますことは、この所信表明の中にもうたわれておりますが、「労働行政がまず第一に取り組むべき課題は、高齢化社会の進展に対応する労働政策を総合的に推進すること」であるというふうにおっしゃっています。もちろん言うまでもありませんけれども、「経済社会の活力を維持、発展させていくためには、まず高年齢者に安定した雇用の場を確保することが重要であります。」私は、重要であると同時に、高齢者自身の健康維持のためにも必要なことだというふうにあわせて考えるわけでございます。さらにそのことのために「六十歳定年が早期に一般化を見るよう、対応のおくれている企業に対する個別指導を一層強化してまいります。」このようにおっしゃっていらっしゃるわけでありますが、これに関連してお尋ねをしたいと思うわけです。
 労働省からいただきました資料を拝見いたしますと、高齢者の雇用のためには、雇用促進法で法定雇用率が決められておりますね。それで六%ということになっているわけですが、それがどの程度に実現できているかという資料をつくっていただきましたのを拝見いたしますと、大臣御存じだと思うのでございますけれども、法定雇用率未達成企業というのがあります。この未達成企業が五十六年六月一日、昨年の六月時点で四九・四%、際どい数字ですが約五〇%、半分でございますね。ですから、半分しか達成されていない、あとの半分はまだできていないのだ、こういう実態がわかっているわけでございます。
 この実態が、細かくしている時間がございませんので一言だけ申し上げますと、企業別に考えてみますと、何と理由をつけていただけるかわからないのですけれども、未達成企業の割合が大規模ほど悪いのですね。たとえば百人かち二百九十九人という小さい企業でございますと約半分まだできていない。それからその次、三百から四百九十九といきますと六〇%は満たされていない。五百から九百九十九になると六七%。そして何と千人以上の大きな企業になりますと七三・七%も未達成だ、こういうわけですね。ですから言葉をかえれば、小さい企業ほど一生懸命になって高齢者を採用している、けれども大企業は高齢者はできるだけ採用したくない、こういうふうな結果が出ているような数字をいただいたわけです。
 同じような問題でここでお尋ねしたいと思っておりますのは、どうしてこういう数字が出てくるんだろうということなんです。現在約半分になったわけなんですが、この半分になるのにどれくらい時間がかかってきたんだろうということをまず伺いたいと思いますことと、今後どういうふうに指導していらっしゃるんでしょうか。この所信を拝見いたしますと、一層強化していくというお話なんですけれども、具体的にどういうふうに強化なさるのか。
 たとえば、この問題は企業を指導することではありますけれども、法律があるわけですからね。法律のたてまえがございますので、これを生かしてかなり強力に達成させるように指導ができるはずじゃないだろうか。強制的にという言葉は正しいとは思いませんけれども、法律違反をしているのをそのまま見過ごしておくというのもどうかと思いますので、これを具体的にたとえば年次計画を立てて三年先にはどこまで達成させる、何年先にはどうというふうなことでもせめてお考えになっているのかどうかということを、まず伺いたいと思います。
#26
○関(英)政府委員 まず、高齢者の雇用率未達成企業の割合が過去どういうふうに変化してきたかという最初のお尋ねの点でございますが、たとえば五十三年の数字では未達成企業の割合が五七・三%でございまして、五十四年、五三・九、五十五年、五一・八、そして五十六年が先生のお話のございました四九・四%、こういうような推移でございます。少しずつ改善はしてきているわけでございますが、現状はまだ半分近く未達成でございますし、規模別に見ると大規模ほど悪い。
 なぜだろうかというお話ございましたが、御承知のように大企業ほど定年制がいままで確立されておって、その多くが五十五歳定年でございまして、五十五歳以上が高齢者でございますから、五十五歳定年ですとどうしても高齢者の雇用率というのは低くなるわけでございます。しかもその上、大企業ですと新規学卒者が採用しやすい。そういう意味で、中高年齢者を中途採用するというような雇用慣行が余り多くないというようなことが原因であろうと思います。
 そういう意味で、この中高年齢者雇用促進の特別措置法に基づきます法定雇用率六%を企業に達成していただきますためには、まず第一に、定年を五十五のままで据え置いたのでは無理でございますので、どうしても六十歳定年を早期に実現していただくことが第一でございます。そして計画的に年次計画で達成していただこうということで、私ども非常に高齢者の雇用率の悪いところには、計画をつくってください、そして提出してくださいということをお願いしております。法律上の言葉で言えば、計画作成命令を発したわけでございます。現在までに六百七十三の企業に命令を出しまして、雇用計画を提出していただいております。また自主的に計画をつくって提出していただいた企業がそのほかに千百六十八企業ございます。まだその計画の年次の途中でございますが、先ほど申しましたように、定年延長を実施して、そして高齢者の雇用率を高めていくように、この計画に沿って個別の企業指導をしていきたいというふうに思っております。
#27
○金子(み)委員 高齢者の問題と一緒にいま関連しておりますけれども、六十歳定年のことをいま局長おっしゃいましたが、六十歳定年の実現度を見ましても、大企業、それから中小企業あわせてみますとどれも大体半分くらいというところで、まだなかなか達成し切っていない。
 そこで、今回四月一日から高齢者対策部が労働省には新しく設置されたわけですね。それで、この新しい高齢者対策部がこれらの問題を所管されることだろうと思うのでございますけれども、具体的に五十七年度ではこの対策部はこの問題についてどのような計画をお立てになっていらっしゃるのか。いまお話し願えれば項目だけで結構ですし、そうでなかったら後ほど教えていただきたいと思います。
#28
○関(英)政府委員 高齢者対策部におきましては、まず第一に定年延長が一番大きな仕事でございます。昭和六十年六十歳定年の一般化ということを第四次雇用対策基本計画で定めて閣議決定をいただきまして、そういう目標に向かって私ども努力しているわけでございますが、いまお話しございましたように、昨年の数字ではまだ半数程度が六十歳定年でございまして、十分な進展状況とは言えませんが、昨年以降おくれていると言われました金融関係あるいは電力、証券、そういったようなところで定年延長が進んでまいりました。したがいまして、ことしの一月の状況はもう少し改善を見ていると思いますが、六十年六十歳定年をどうしても実現していくためには、六十歳定年を定めていない企業すべてにつきまして私ども計画的な行政指導をする必要があろう、こういうふうに考えまして、三百人以上で六十歳未満の定年を定めています企業すべてにつきまして、大臣名で定年延長をお願いすると同時に、今後の三年間の計画をお出しいただくということをお願いしてございます。五月半ばまでにその計画を企業側から出していただくことにしておりますが、その内容を十分把握いたしまして、私ども三年間の計画的な個別企業に対します行政指導を進めていきたいと思っております。これが高齢者対策部のまず第一の仕事でございます。
#29
○金子(み)委員 時間がないですから簡単にお願いします。
#30
○関(英)政府委員 それから六十歳台前半層対策も進めていかなければなりません。そういう意味での六十歳過ぎての雇用延長制度の普及促進、あるいは六十歳以降任意就業したい方のシルバー人材センターの拡充、あるいは離職された高齢者の方々の再就職の促進、そういったことに取り組んでいきたいと思っております。
#31
○金子(み)委員 時間を急ぎましたので十分説明してもらえなかったのだと思いますけれども、これから出発する高齢者対策部ですから、いろいろなものを落とすことのないようにしっかり計画を立てて進めていただきたいと思っております。五月の中旬あるいはその先でまた伺わせていただくことがあるかと思いますが、その点はひとつしっかりとお願いしたいと思います。
 続いて障害者の雇用の問題をお尋ねしたいと思います。
 昨年は国際障害者年の出発年でございまして、ことしは二年目に入ったわけでございますが、向こう十年間の政府の行動計画というのがこのたびできたということも承知いたしております。この障害者に対する対策というのは、いろいろな労働政策の中でもいままで非常に立ちおくれていたものだというふうに考えるわけでありますが、今度の政策は、今後は大変に緊急重要な問題だと考えております。障害者は過去十年間で五割もふえているわけですね。それで約四百五十万人と推計されております。これは人口比にすると二・四%になるそうですが、十年後は二・七、二十年後は三・〇というふうに障害者の数は非常にふえていくであろうということが推測されているわけでございます。
 そこで、従来は障害者の方々に対する対策というのは、生活保護その他で、援護する形と申しますか保護をする形でもって取り扱ってきておりますけれども、障害者の方たちの対策につきましては、彼らはそういうことは望んでいないわけでありまして、新しい所得保障制度として自立するための雇用の充実拡大、こういうことをそれぞれ非常に望んでおられるのは当然のことだと思います。私どもはそういう立場から、立ちおくれている労働行政の中の障害者に対する対策を非常に重要視していかなければならないのじゃないだろうかというふうに考えております。
 それで、身体障害者雇用促進法というものもできたわけですけれども、この法律に基づいて雇用の状況はどうかということになりますと、これまた先ほどの高齢者のときと同じような形で、企業の定められた障害者の人たちの雇用促進状況は、未達成企業というのが民間企業の場合は四六・六%、それから特殊法人の場合五一・五%とやはり半分にしかなってないですね。どうも進捗が余りよろしくないということが言えるわけでございます。
 それで、国あるいは地方公共団体等官公立の施設ではどれくらい達成していらっしゃるかということなども数字でいただきましたので、私が申し上げなくてもおわかりだと思いますが、労働省はちゃんと達成していらっしゃるのでしょうか、ちょっと一言だけ聞かせてください。
#32
○関(英)政府委員 大変ぎりぎりの達成でございますが、達成しております。
#33
○金子(み)委員 四九・九%かもしれませんね。この問題は、労働省が持っていらっしゃると申しますか、諮問機関として持っていらっしゃる身体障害者雇用審議会というのがございますね。この審議会でも答申が出ておりますですね。そして強力な指導を進める必要があるというふうに審議会ではおっしゃっております。私もそのとおりだと思うのですね。
 それで、法律もあることでございますが、先ほどの高齢者の場合と同じようにやはり大企業ほど低いという問題、私はこの点は非常に残念だと思うのです。大企業がなぜこういうことをするのだろう。まあ利潤追求の方に力が入り過ぎるのかどうか知りませんけれども、いずれにしましてもここら辺は労働省の御指導が必要なところだというふうに思うわけでございます。
 従来その指導の一つのやり方として、雇用調整金でございますとかあるいは奨励金と申しますか、これを交付しておられますですね。それから、もし雇用しなかった場合には納付金を逆に納めさせるというような方法も講じて、罰ではないでしょうけれども、課徴金に似たような形で納付させていらっしゃる。このようにしてあめとむちの方法をとっていらっしゃるのだろうと思うのですけれども、その効果がどの辺まで上がっているかというのはいまの数字で示されているわけですから、余り効果はなかったのじゃないだろうかという気がするのです。この特別な方法について、金額が適正でないのか、あるいはこの方法がベストなのか、そこら辺のことをお考えになったことがあるかどうかということをお尋ねしたいわけです。
 たとえば、こういうことを私ども聞くわけですね。障害者の人を雇用するよりも納付金を納めた方が安上がりだし、それから生産性も上がるのだからというような風潮を私どもは耳にするわけです。そうだとしますと、せっかく労働政策として特別にいろいろと考えられたことが、そのようなふうに企業側が受けとめているとすれば、これは問題だと思うのですが、この点、労働省としてはどうお考えになっていらっしゃるか、続けてこれをおやりになるのか、あるいは検討を加えようとお考えになっているのか、その辺、もっと効率的なことを考えられるのかということを教えていただきたいと思います。
#34
○関(英)政府委員 納付金制度につきましてお話がございましたが、身体障害者雇用促進法で考えております納付金制度は、身障者を雇用するとしないとで違う経済的な負担の調整を図ろう、こういうことで、雇用しない方につきまして納付金を納めていただく、そして雇用していただく方の助成をしていく、その原資とする、そういうことによって経済的負担の調整を図ろう、こういう制度でございます。一方で法定雇用率が決まっておりますので、雇用義務というのはこの納付金を納めたから、納めないからということで変わりがあるわけではございませんで、やはり法定雇用率は達成していただかなければならない。
 そういう意味で、未達成企業につきましては、達成のための計画の作成を命令し、その適正実施の勧告をする。その勧告にもかかわらず、どうしても雇用が進まない場合には、最終的には企業名の公表もあり得るということで、私ども、いま法定の手続を進めているわけでございますが、まず民間企業に率先垂範すべき国、地方公共団体、市町村、そういった公の機関、それから特殊法人につきまして、現在、勧告に応じまして十分な措置をとっていない機関を最終的には公表しようということで進めております。
 それで最近、特に昨年の国際障害者年を契機といたしまして、国の機関は全部達成しておりますが、地方公共団体、市町村、それから特殊法人も未達成のところは非常に改善されまして、私ども、最終的には公表することもあり得るということで行政指導しておりますと、たとえば、ことしの四月一日の新規採用で達成いたしますというところも非常にふえております。そういう意味で、公の機関はもとより、民間企業につきましても、この雇用促進法に定める雇用率達成のための筋道を段階を踏んで進みながら雇用率達成に向けて行政指導を進めていきたいと思います。
 なお、納付金制度の金額のお話がございましたが、これは制定以来五年ぐらいたちましたので、昨年秋、身体障害者雇用審議会で御審議をいただきまして、答申をいただきまして、ことし四月一日から引き上げを図っておりますが、そういうことで、この経済的負担の調整は調整として今後とも実施し、その財源をもとに雇用促進を図っていきたいと思っております。
#35
○金子(み)委員 一つお尋ねしたいのですが、いまの御説明の中に、達成されているところもある、と。確かに達成されているところもあると思いますが、達成されているところがあるということですと、達成されていないから一生懸命するということになっていたのですが、達成された企業は一応そのままにしておくわけでしょうか。さらに基準を高めて、そして雇用をさらに促進させるという方針はおとりになるでしょうか。
#36
○関(英)政府委員 達成された企業に対しまして、法定雇用率以上の雇用をお願いできればこれにこしたことはございませんが、もちろんそういうこともやっておりますが、それより重要なことは、一たんある時点で達成さえすればそれでいいんだということではございませんで、私ども労働省もみずから常に戒めておるわけでございますが、やはりいろいろな形で退職される方もおられるわけで、雇用率を法定雇用率達成の状態で維持していくためには、常に新規採用に努力していきませんと、この法定雇用率を割ってしまうわけでございます。一度達成したら安心だということでは決してございません。そういう意味で、身障者の新規雇用、これには毎年熱意を持って取り組んでいかなければならないわけでございます。
 もちろん、さらに雇用率を高めていただくにこしたことはございません。先生も御承知かと思いますが、東京都その他各県で特別枠を設けまして、雇用率を法定雇用率以上に達成していくために新規採用に努力しているというような公共団体あるいは企業もあらわれているわけでございます。そういう意味で、未達成のところは計画的に達成していただかなければなりませんけれども、達成したところはもうそれでおしまいだということではございません。
#37
○金子(み)委員 障害者の雇用の問題で一つ大変気になることがありますが、それは、従来は身体障害者の方々の雇用ということに重点が置かれ、それがずっと進められてきているわけですけれども、精神障害者並びに精神薄弱者に対する問題というのは、取り扱いが大変むずかしいということもよくわかります。審議会もそれに触れていらっしゃいます。けれども、具体的な政策はまだ何も打ち出されていないわけですね。
 そこで、一つだけお尋ねしたいと思いますのは、この精神薄弱者あるいは精神障害者の雇用についてどういうふうに考えていらっしゃるのか、その取り扱いについてどのように基本的に考えていこうとしていらっしゃるのか、そのことだけひとつお話しいただきたいと思います。
#38
○関(英)政府委員 精神薄弱者あるいは精神障害者につきましては、雇用促進法上、雇用率として義務づけられてはおりませんが、雇用促進のための施策はすべて適用されているわけでございます。雇用率が適用されていないわけでございます。私ども、雇用促進を図る上で、身体障害者と別扱いということは考えておりませんで、精神薄弱者あるいは精神障害者についても取り組んでいるところでございますが、ただ、まだまだ精神薄弱者等につきましては、その職業能力の判定あるいは障害の程度の判定、あるいはまた、実際雇用につきます場合に、雇用上の問題点だけでなく、生活上の問題点、そういったこともいろいろ伴ってまいりますので、なかなかむずかしい問題がございます。そういう意味で、これを雇用率適用にまで持っていけるようにいろいろな調査研究も必要でございますし、まだ実際の雇用を進めていくことも必要でございます。私ども、相談員の増あるいはいろいろな就職援助措置、そういったものを含めまして、今後も取り組んでいきたいと思いますが、具体的には審議会から答申もいただいておりますので、さらに関係団体の意見も聞きながら、今後どういうふうに具体的に取り組んでいったらいいかを十分研究していきたいと思っております。
#39
○金子(み)委員 それからもう一つですが、これもやはり審議会も触れておられますし、特別研究会ができていて、そこからの報告も出ておりますね。重度の障害者の問題です。重度の障害者というのは、これまた一般障害者とは大変に違った取り扱いをしなければならないこともあるということはわかるわけでございますが、そこで、重度の障害者の特別雇用対策ということについて、この報告書は「今後の障害者雇用対策の中心は重度障害者に置かれるべきものと考える。」というふうにはっきりおっしゃっておりますように、確かにこれからは高齢化するであろうし、重度化するであろうしということは想像にかたくないわけでございます。そこで、この重度の障害者の雇用の問題についてどういうふうにお扱いになろうとしていらっしゃるかという問題です。
 たとえばこの報告の中にも、あるいは審議会の答申の中にも出てまいりますが、「保護雇用」の問題とそれから福祉工場の関係も出てまいりますね。これらの関係をどういうふうに考えられるのかということ、それから厚生省所管になっている福祉対策がございますね。この重度に対する厚生省所管の福祉対策と、それからこの特別重度障害者の対策とをどういうふうに関連づけていこうとしておられるのかというような問題など、大変絡んでくると思うのです。ですから端的に、簡単にはいかないと思うのですけれども、そこら辺をどのように考えていこうとしていらっしゃるのか、御方針を聞かせていただきたいと思います。
#40
○関(英)政府委員 身障雇用促進法におきましては、重度障害者のためには、採用した場合に、ダブルカウント、二倍に、一人を二人として勘定していくとか、重度障害者に対する助成措置としては特に手厚いものにするとかいろいろやってきておるわけでございますが、こうした対策でもなお直ちには一般の雇用につけない重度障害者をどうするかということが今後の重要課題でございます。この新しい身障者雇用促進法施行以来特に昨年の国際障害者年を契機として身障者雇用についての事業主の理解は非常に深まったわけでございますが、とかくいますぐ働ける、十分活用できる中度、軽度の障害者の雇用には非常に熱心でございますし、その点は進んできている。ある意味では雇用率達成のために中軽度の身障者の方は求人が殺到するという状況がございますけれども、そういう現状のもとではこれからの施策の最大の課題は重度障害者ということになるわけでございます。
 重度障害者につきましては先ほど言いましたようにいろいろ施策はあるわけですが、なかなか雇用が困難でございますし、また厚生省の方で福祉対策として就労対策をいろいろしていただいております。わが国の保護雇用の一形態としての福祉工場も厚生省でやっていただいておるわけでございます。そういうことで私ども福祉対策の施策の対象となっている重度障害者にいままで余り手を出していない、そういう面がございましたが、どうもそれでは十分ではないのではないか、こういった福祉対策の対象となっている方々の中にも一般雇用につき得る人々がいるのではないか。そういう意味で、たとえば施設の中での能力開発、こういうものを企業とタイアップしてやってみて、そして福祉施設の中での能力開発を通じて一般企業への雇用を促進する。あるいは保護雇用の一形態としての福祉工場を厚生省でやっておりますが、労働省としてもたとえば報告の中で第三セクター方式による雇用というものを検討してみてはどうかと言われておりまして、すでに岡山吉備高原で例が出ておりまして、兵庫、大阪と三例ほど第三セクター方式の例ができようとしております。そういったものを各地に広げていくこと等に取り組んでいきたいと思っております。
    〔委員長退席、大石委員長代理着席〕
 また、重度障害者になりますと、たとえばサリドマイド児のような両上肢障害者は就職が非常にむずかしゅうございますし、視力障害者あるいは全身性の脳性マヒの方等いろいろ重度障害者はその障害の種類によっても対策を変えていかなければなりません。そういう意味で、そういった障害の種類に応じた対策というものを、従来行っておりませんものを、今後取り組んでいかなければならないだろうと思っております。
#41
○金子(み)委員 重度の障害者というのは定義もむずかしいと思うのですけれども、従来は重度の障害者は雇用できないという考え方が一般的であったと私も記憶しております。しかし御承知のように国民皆雇用時代でございますし、だれもが自分の能力を発揮するということが必要なことでありますし、それによって自立していくということを促進しなければなりませんから、それぞれのそれなりの生き方というものがあっていいはずだと思うわけであります。ですから、同じにできないと思いますから同じようにする必要はないかもしれませんが、いま御説明のありましたような形で、種類あるいはそれぞれの程度に応じた対策というものをきめ細かく考えていく必要があるのではないかと思います。これからの問題かと思いますけれども、これからの問題としてはぜひ重度の障害者の雇用に対する政策は重点的に促進的にやっていっていただきたいと思うのでございますけれども、この点についての大臣のお考えはいかがですか。
#42
○初村国務大臣 雇用問題がやかましくなっておるわけでございますが、特に五十七年度からは重度身障者、特に手足上部等の障害者については重点的に取り組んでいくように大体省の方針も考えておるわけでございます。
#43
○金子(み)委員 次に問題を変えますが、所信の御説明の中で労働時間の問題を政策としてお出しになっていらっしゃいます。「労働時間対策を推進するため、従来に引き続き、週休二日制等労働時間対策推進計画にのっとり、週休二日制の普及等に積極的に取り組んでまいります。」こういうくだりがございます。いまさら申し上げるまでもないわけですが、日本は経済大国、働き中毒と言われておりまして、週休二日制はおろか時間外労働が非常に多くて本当にきりきり舞いをさせられているというような状態が今日ある。それでもなおかつ生活は楽にならない、じっと手を見る、啄木の詩ではございませんけれども、いまはそういうような時代じゃないかしらと思うわけでございます。
 それで私は時間の関係もございますのでいろいろと申し上げるあれがないのですが、いま春闘では賃金の問題を取り上げておりますけれども、賃金と労働時間というのはうらはらの関係だと私は思うのです。それでこれは労働条件の二つの大きな基本だというふうにも考えます。長いこと、もう十年も前から労働省は一生懸命やるのだ、やるのだということをおっしゃっておりますね。昭和六十年度までには週休二日制を実現するのだという方針ももういまから十年前あたりにおっしゃっているわけです。そういうふうにいろいろとおっしゃっておられるけれども、一向にこれが進んでいかないのはどういうわけであろうと考えるわけですが、六十年度までに本当にこのことが達成できるように労働基準法の改正などを含めて実際にやるつもりでおいでになるのかどうか、改めて聞かせていただきたい。
#44
○石井(甲)政府委員 労働時間の問題につきましては、御指摘のように労働行政の重点の一つとしてこれまで継続的に行政展開をしてきたわけでございます。長い目で見ますと、日本の総労働時間、一人当たりの労働時間を見ますと、昭和三十五年の二千四百三十二時間というのが一番長いところでございます。現在五十六年が二千百一時間でございますからこの間に三百三十一時間減少したということがございます。つまりかなり長い目で見ますと、日本の労働時間も着実に減少の傾向をたどってきた、こういうことが言えるかと思います。
 ただ問題は、その中身を見ますと、週休二日制あるいは休日の増加、言ってみれば所定内労働時間の減少が大きくこれに作用しているということでございます。ただ最近の状況を見ますと、一つは週休二日制が特に大企業あるいは中堅企業以上においてかなり普及してまいりまして、それがたとえば大企業でありますと、千人以上でありますと、週休二日制を何らかの形でやっている労働者の割合が九割を超えているという状況でございます。言ってみればある程度やれるところは次第にやり尽くしたという、まだこれからの問題はございますけれどもそういう状況でございまして、主として中小企業を中心とした分野が停滞状況に入っているということが最近の総労働時間の停滞現象の要因になっている感じがいたします。
 そこで、五十五年十二月に推進計画を立てまして、六十年を目標にいたしまして西欧段階にキャッチアップしようという行政努力をしているわけでありますが、この労働時間問題には目標が三つございまして、一つは週休二日制の普及、二つ目はいわゆる残業といいますか時間外労働の短縮、第三は年次有給休暇の完全消化、この三つの方向がございます。
 週休二日につきましては、これも先生御存じのようにやや停滞ぎみでございますので、この際一つの対応といたしまして、銀行の週休二日制を促進しようという努力を行っております。これに対しましては、銀行側も、全体を含めましてこれに積極的に取り組もうという渦中にいまございます。これを何とか押し上げていく努力をしてまいりたいと思います。
 それから、第二の時間外労働につきましての問題でございますが、これまでもいろいろ時間外労働の問題については、たとえば三六協定の協定当事者として、労働組合がない場合のその過半数を代表する労働者が適正な者であるかどうかとか、一定の、一週間あるいは一カ月等のくくりで残業時間をどう考えるかという指導を行ってきたわけでありますが、ただ所定外労働という時間の場合には、日本の場合に非常に特殊な環境がございまして、いわゆる雇用慣行と非常に関連をし合った一つの状態をつくり上げておりまして、当然労働者保護という面は必要でございますが、そのほかの、景気調節あるいは失業防止というような役割りも同時に果たしているということがございまして、大変むずかしい性質を含んでおります。しかし、この問題につきましてさらに行政指導を具体的に推進するために、この際、三六協定において協定する時間外労働の上限時間につきまして、一定の目安といいますか、ガイドラインを設定することを検討をいたしておりまして、現に具体的な実態調査の結果を踏まえながら、その具体策についてこれから設定することを検討していきたいというふうに考えております。
 それから、年次有給休暇の消化率が現在約六一%ぐらいだろうと思います。これも非常に日本的な要素が絡まり合ってなかなかむずかしい問題でございますけれども、個人の問題と同時に、職場全体の問題としてどう受けとめるかという点を、この際突っ込んだ行政展開をしてまいりたいということでございまして、推進計画に即しましてその三点の方向をさらに進めてまいりたいというふうに考えております。
#45
○金子(み)委員 労働時間の短縮というのは、労働者の働く条件を改善するという意味から非常に重要な問題だと思って、賃金との兼ね合いでぜひこの問題は積極的に進めていただきたいと思いますが、それだけでなくて、もう一つそれに関連のあることとして、労働時間を短縮していないために、週休二日制が行われていないために労働災害が非常に多いということを、前の労働省の事務次官で北川さんとおっしゃる、いま中央労働災害防止協会の理事長さんですか、この方がおっしゃっているのですね。
 この方は、労働省にいらっしゃるころは安全衛生部長を務められた方でございますから、その辺は非常に詳しくわかっていらっしゃる方のようでございますが、その方の御発言で、週休二日制がおくれていることと労働災害が多いことは無関係ではあり得ないというふうにおっしゃっています。私もそうだろうと思います。ですから、そういう労働者の健康の問題からも考えなければならないし、ただ単に時間を短くすればいいという問題ではなくて、基本になる健康が非常に問題になっているわけですから、そういうことも考えの中に入れて、六十年に達成したいという御計画でいらっしゃれば、それをぜひ実現していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょう、六十年に達成していただけますでしょうか。
#46
○初村国務大臣 労働災害というのは、企業にとっても労働者にとっても一番大事なことでございますから、何といっても重点的に考えなければいけない。それには、労働時間の短縮を図って十分に休養を与え、そういう災害が起きないようにするのが私どもの務めであろう、かように考えております。
#47
○金子(み)委員 それでは労働時間の関係とちょっとつながりますが、日本ではまだ行われていないことなんですけれども、こういうことは考えてみるというふうにお考えにならないでしょうか。
 家族の中で子供が病気である場合、あるいはその子供のめんどうを見てくれている人が病気で倒れてしまった場合とかいうときに、病気看護という時間が、たとえば外国ではスウェーデンとかあるいは中国とか、そのほかの国にあるわけですね。こういうことが考えられるかどうかということなんです。日本ではそんなことはとてもだめだよとおっしゃるかと思いますが、この病気看護休暇とでも申しますか、それは何も母親だけがとるのではなくて、母親でも父親でもいずれかが子供の病気の場合に休暇がとれるということについての考え方です。そういうことを考えてみようというふうにお考えになるかどうかということを聞かしていただきたいのです。
#48
○石井(甲)政府委員 子が病気の場合あるいは家族に病気の方がおられるという場合、労働者がこれに対応するときにいろいろ困難な問題があることは確かでございます。ただ、いわゆる個人的な側面で、いろいろな要因を労働者のみならずそれぞれ背負っておるわけでございますが、これは、労働基準法等によりまして使用者に所定労働時間の短縮を強制するということの性格のものとはちょっと考えられないのじゃなかろうかと思います。したがいまして、このような問題の解決は、やはり個々の企業におきまして労使が自主的に対応するのが自然ではなかろうかというふうに、現在のところ私どもは考えておる次第であります。
#49
○金子(み)委員 いずれそういうときが来るかもしれません。よく考えておいていただきたい。似たような問題が幾つもあるのですけれども、きょうは時間がありませんので省きます。
 次に、婦人労働の関係で一つ、二つお尋ねしたいと思うことがございますのでお願いします。
 それは、いま問題になっております婦人のための差別撤廃条約、これを批准するということが大きな目的になっているわけでありますが、これを批准するための計画として、労働省ではいろいろなことを考えてきていらっしゃるというふうにも私どもは承知いたしておりますが、その中でも問題になるのは、差別撤廃でありますから男女の平等の問題になってくるわけで、日本の場合ですと、労働基準法で同一労働同一賃金だけは決められておりますけれども、そのほかのものはございません。
 そこで、雇用における実質的な男女平等ということについて、労働省ではガイドラインを作成する計画があるというふうに承っておりますが、そのガイドラインの作成はおできになったのかどうか。この三月でおできになるようにも伺っておりましたが、あるいはそうでないのかもしれませんが、そのことが一つ伺わせていただきたいと思うことでございます。
#50
○高橋(久)政府委員 雇用における男女平等を確保していくということは、私どもとしましても、婦人労働行政の最重点として進めているわけでありますが、先生がガイドラインというふうに言われましたのは、私どもが現在専門家の方々にお願いしております男女平等の具体的な姿ということであろうかと存じます。実は婦人少年問題審議会におきまして、男女平等をさらにより確かなものにするためにいろいろ検討しております過程で、平等の具体的な姿というものにつきましては、平等を確保するという必要性についてはみんな異論がないわけでございますが、その具体的な姿については皆さんに大変さまざまな考え方がございますので、その点をまず明らかにしていくということがさらに平等を進めるために必要であるということになりまして、過去約二年近く、その検討を専門家の方々にお願いして進めてきております。実はこの三月末までに御報告をいただきたいというふうにお願いしておりましたのですが、その作業がいま最後の段階になっておりまして少し時間的に延びておりますが、遠くない時期にいただけるものと私どもは期待している次第でございます。
#51
○金子(み)委員 そのガイドラインが労働省の方に提出された暁には、それをもとにして法的整備を進めていこうとなさっていらっしゃるというふうに理解していいでしょうか。
#52
○高橋(久)政府委員 男女平等の具体的な姿が明らかになってまいりました段階におきましては、それを確保するのにどうすればいいかということで、法的整備も含めまして婦人少年問題審議会の中で諸方策を検討していく、このようになっております。
#53
○金子(み)委員 五十五年に出た労働白書というのがございますね。これを拝見していて一つちょっと腑に落ちないし疑問だしお考えを聞かせていただきたいと思いますのは、いろいろと分析をされておりまして、その一つ一つについてもお尋ねしたい点もございますが、時間がなくなってきましたので全部はお尋ねできないのですが、その一つに女性の能力に応じた就業分野の拡大というのがあるのです。私これを読んで、はて、おかしいなと思ったのですが、男性の能力に応じた就業分野というものがあるのかしらと考えたのです。女性の能力をどう評価してこういうことを白書の中でおっしゃられているのかということがどうしても理解できません。これはやはり雇用の差別があるためではないだろうかい底を流れているものは差別じゃないかと思うのです。一層差別を意図的に固定してしまおうとこの白書で考えていらっしゃるみたいに思えるのですけれども、いかがですか。
#54
○高橋(久)政府委員 白書で申しておりますのは女性の能力に応じて就業分野を拡大する必要性を言っているわけでございまして、現在私どもが見ておりますと、働く婦人は大変ふえてまいりましたけれども就業分野が限られているという傾向が見受けられるわけでございます。その背後には婦人の能力、特性に対する偏った評価とか男女の役割り分担意識が残っている、また婦人自身にも新しい分野へ積極的に進出しようとする意欲が必ずしも十分でない、そういうことから婦人の分野が大変限られているという状況がございまして、こういう中では大変能力のある婦人もその能力が十分発揮できる職場に自由に行けるという状況がないわけでございます。でございますので、婦人の能力を高めていくということを一方で行っていく必要性は申すまでもございませんけれども、能力のある婦人がその能力に応じて、その能力が十分に発揮できる場所に進出できるようにその就業分野を広げていくことが必要であるということが白書で言っている趣旨でございますし、私どもが現在そのような対策をとっているゆえんでございます。
#55
○金子(み)委員 婦人少年局長がおつくりになればこんなおかしな誤解されるような文章はお書きにならなかっただろうと私は思いますね。だから、女子の労働の中心は依然として低賃金の単純作業や高度な知識、技術の要らない職種に限られているというところが非常に問題だと思いますね。いま局長が言われたような考え方であるならば、労働白書にこんなことを書かれるはずはないと思うのです。
 私は、白書というものは毎年書き直されるものだと思っておりますから、五十六年度の白書では絶対ここを直していただきたいと思うのです。これがありますと、したがって女子の賃金は男子の半分にすぎないという結果になるわけなのですよ。そのことも白書に書いてありますけれども、確かにそのとおり。全労働者の三分の一を占めている女子労働者はこれからどんどんふえていくと思いますが、現在なお二分の一、五〇%前後にその賃金が低迷しているというのは、やはりこういう就業の場所、部門あるいは就業の範囲がおのずから規制されていて、結果的に半分になるようになっているわけなのです。そのもとはと言えば、いま申し上げたように女子の能力に応じた職業分野なんというようなことを言うからこういうことになるわけだと私は思います。ですから、今度おつくりになるときにはどうか婦人少年局長を先頭に立ててしっかりとつくっていただきたいものだと私は思います。
 こういうことは一事が万事で、その先に行ってもまた出てくると思うので、その点はぜひしっかりと大臣にお願いしておきたいと思います。
 いまの労働基準法は、先ほど申し上げたように一カ所だけ四条に同一労働同一賃金の規定があるだけで、あとは何もありません。ですから、採用の不平等が非常にあるわけですね。ですから、いまの差別撤廃条約を批准する問題についても雇用の不平等というのがどうしてもひっかかってくるわけです。ですから、雇用平等法というものを私どもいま計画を進めておりますけれども、これがなければ本当に一緒になりません。
 それともう一つは、採用された後の昇進、昇格あるいは定年といったものに関しても平等ということはどこにもうたわれていないわけです。これは労働基準法の三条の中にそのことが書かれているのですが、三条は男性のためにしか書かれていない文章でして、ここに性を入れていないものですから、性の差別をしてはならないということにならないようにできていますので、非常に問題だと思います。
 ここに、三条に性別を入れることによってこの問題は解消すると私どもは考えておりまして、労働基準法の改正は別途努力をしたい、私どもの方でも考えておりますが、労働省ではその三条に性別をうたわれることについて、今度改正の準備としてどう考えていらっしゃるでしょうか。
#56
○石井(甲)政府委員 労働基準法第三条に性を入れるかどうかということでございます。
 現在、雇用における男女平等を確保するための諸方策について婦人少年問題審議会で審議の最中でございますが、雇用における男女平等は、わが国における長年の社会慣行あるいは雇用慣行、女子の意識の状況等にかんがみまして、社会的なコンセンサスの形成とか諸条件の整備を図りながら弾力的な方法によって実現が図られるべきものと考えます。したがいまして、労働省といたしましては、基準法第三条に性を入れることによって刑事罰をもって雇用における性差別を一律に禁止することは適当ではないと考えております。
 また、基準法におきましては、先生御案内のように女子の労働に関して特別の取り扱いを規定しており、これとの関連も考慮する必要があると考えております。
#57
○金子(み)委員 議論する時間がありませんので私はいまは申し上げませんけれども、ガイドラインの結果その他について、労働基準法の改正をいずれは手がけなければならないことになるだろうと思います。ですから、その際にその問題をもう一度検討していただくようにいまから強く要請をしておきたいと思っております。そしていまの問題もぜひ大臣、労働基準法の場合には考えていただきたいと思います。
 最後に大臣に一言伺いたいと思っておりますことは、この所信表明の中にも出てまいりましたが、産業構造が変化してきたということと雇用問題の関係なんです。
 産業界に最近出てまいりました産業用ロボットなどに例を見るように、マイクロエレクトロニクスが利用されて技術革新が非常に進められてくるということは、もう黙っていても進んでいくだろうと思うのです。人間にかわる機械、そして省力化をたてまえにしていることだと思いますので、結果的には直接雇用その他に大きな影響が出てくると考えられます。労働状況全体にいろいろな関連の影響が予想されるわけでありまして、言うなれば労働界の一大革命だと考えられると思いますが、これに対処して労働省はどういうふうになさるおつもりでいらっしゃるのか、労働行政の対応としてどのような政策を持って処理しようとしていらっしゃるのか、一言お尋ねいたしまして質問を終わりたいと思います。
#58
○初村国務大臣 まず最初に、男女の性の問題の労働基準法の改正の問題でございますが、これについては審議会の答申を待って、そして法を改正する必要があれば前向きで検討することで御了解賜りたいと思います。
 いまお話がありましたロボット、技術革新、こういうことについてでございますが、近年非常に産業界に産業ロボット、ME等が発展したわけですね。いま世界の状況をながめますと、日本がその中でも一番多くロボットを持っておるということで、現在の時点で調査したところでは、要するに配置転換あるいはいろいろなことを研究して、雇用にはそう大した影響はないというような結論が出ておるんですけれども、私はそうは思わない。やはりこの産業用ロボットの普及は今後どんどん進んでいくわけでございますから、さらに高齢化など労働力供給構造の変化のもとで雇用面に非常な影響が出てくることは間違いない。そういうことで、労働省としては技術革新が雇用の面にどういうふうに影響するのか、五十七年度の予算を幸いもらいましたので、通過しましたので、これと本当に取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。
 そこで、先般も産業労働懇話会でもいろいろととの問題が大きく取り上げられましたので、そのお話を踏まえて雇用問題政策会議において関係者の意見を聞く、特に政労使一緒になって会議を開いて十分な意思の疎通を図って、将来こういうふうになるであろうということに真剣に取り組むようにいたして、まず第一回の会議を開いたわけであります。したがって、近いうちに第二回目を開いてどういう実情にあるかを十分検討した上で、今後のロボットあるいはME問題についての考え方を定めていきたい、かように考えております。
#59
○金子(み)委員 終わります。ありがとうございました。
#60
○大石委員長代理 午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時四十二分開議
#61
○唐沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 労働関係の基本施策に関する件について質疑を続行いたします。池端清一君。
#62
○池端委員 私はまず最初に、先般のホテル・ニュージャパンの火災問題に関連をして、二、三お尋ねをしたいと思います。
 三十二名というとうとい犠牲者を出しましたホテル・ニュージャパン火災の背景には、このホテルの横井社長の安全軽視、人命無視の経営姿勢があるというふうに私は思うわけでございます。また、ホテル従業員に対する徹底した人間性無視の労務政策、人減らし合理化の押しつけ、こういうようなきわめて前近代的な労務政策、これがあることも私は見逃してならない、こう思うわけでございます。
 そこで、具体的にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、今日まで労働省として、労働基準法違反を初めとする法律違反について、当該事業所に対して監督した件数は何件に及んでおるのか、その点からまずお尋ねをしたいと思います。
#63
○石井(甲)政府委員 ホテル・ニュージャパンにつきましては、これまでも所轄の労働基準監督署におきまして、昭和五十四年以降でございますが、十数回にわたり監督指導を実施しております。その中で労働基準法等の関係法令違反が認められた場合には、当然のことながら是正勧告をいたし、これを是正させておるわけでございます。
 その是正勧告を行った事項のうちの主なものを申し上げますと、退職金、賞与の支払いに関するもの、あるいは減給の制裁に関するもの、解雇予告手当に関するもの、時間外労働に関するもの、これらが主要なものでございます。
 そこで、ホテル・ニュージャパンにおきましては、この是正勧告に対して一応それぞれの是正措置を講じてきておるところではございます。
 なお、是正勧告のうち、退職労働者に対する退職金の支払いにかかわるものが一件ございまして、再三にわたり是正勧告に従わなかったために、所轄監督署におきまして、昭和五十七年二月五日、同社及び代表取締役である横井英樹氏に対しまして、労働基準法違反被疑事件として東京地方検察庁に対しまして書類送検をいたした、こういう事情でございます。
#64
○池端委員 労働基準監督署としては、今日まで十数回にわたって監督指導をしておるということでございますが、私の承知する限りにおきましては、これは労働基準法第百四条に基づくところの労働者の申告によってこういう監督指導がなされた、こういうふうに承知をしておるのでありますが、この点についてはいかがでしょうか。
#65
○石井(甲)政府委員 そのとおりでございます。
#66
○池端委員 労働省として、これまでホテル・ニュージャパンに対して、法律第百一条に基づく独自の臨検や尋問等を行ったことはございますか。
#67
○岡部説明員 ただいま申し上げましたのは、五十四年以降の監督歴から拾いましたものでございますが、そのほとんどのものが申告監督でございます。しかしその中で、再監督と申しますか、私どもの方の自主的な着手によりまして監督したものもあるわけでございますが、おおむねは申告に基づくというような状況でございます。
#68
○池端委員 おおむねは申告に基づくものである。おおむねと言っても、私はほとんど九割以上が申告監督だと思っておるのでありますが、私が疑問に思いますのは、このように法律違反を次から次へと公然と行っている問題の事業所であります、この問題の事業所に対して、労働省が主体的に行政上、司法上の権限を行使したのではなくて、いずれも労働者の申告に基づいて行われている、こういう点でございます。
 もちろん、労働基準監督官の数は圧倒的に少ない、そして事業所がこれまた圧倒的に多いという現状で、手が回らないということも十分理解はいたします。しかし、これほどまで労基法違反の事実が次から次に明るみに出ている。賃金の遅配欠配、不法な賃金カット、そして三六協定違反等々、実に広範多岐にわたる違反事実であります。それだけに、常に監督の目を光らせる、そして違反行為の発生を防止し、違反行為が発生した場合にはそれを早期に是正させ、さらに違反者を立件し、罰則の適用を求める、そして違反防止に当たるというのが労働行政の任務ではなかろうか。そういう観点から考えますと、労働省として、このホテル・ニュージャパンの問題については怠慢のそしりを免れないのではないか。ちょっと言い過ぎではなはだ恐縮でありますけれども、私はそういう気がするわけでございます。
 そういう意味で、これらの問題についての大臣の御見解なり所信をひとつ承りたいと思うのであります。
#69
○初村国務大臣 いまお尋ねのとおりに、ホテル・ニュージャパン問題について労働者から申請があって、ほとんどの件数をニュージャパンの経営者の方に勧告したということを聞いたわけでございますが、私どもは関係の労働基準局を督励して、みずから進んでそういう事態がどうなったのかということを労働省として積極的に調べるべきではなかったろうか、こういうところを考えた場合に、反省のところは反省しなければいけない、かように考えます。したがって、今後の問題については、法規に照らして、できるだけその法に従っていろいろな問題を解決しなければならない、かように考えております。
#70
○池端委員 次に、先ほど局長からもお話ありました退職金支払いの問題についてお尋ねをいたしますが、このホテル・ニュージャパンでは昭和五十五年の二月以降、退職金の支払いについては印紙代の要らない額面九万九千円、いわゆる九九手形というもので手形分割の支払い方式が行われておるわけであります。支払い期日は毎月月末、長い人では六年払いの六十六枚の手形が交付されるというまことに非常識きわまりない措置が行われているわけであります。
 これは賃金支払いの方法に関する労働基準法第二十四条、すなわち通貨払い、直接払い、全額払い及び定期払いの四原則に違反する行為だ、このように思うわけでありますが、どうでありましょうか。
#71
○石井(甲)政府委員 退職金につきましては、まず労働基準法第十一条に規定する賃金に該当するわけでございまして、したがいまして、賃金と解される限りにおきましては労働基準法第二十四条第一項の適用がございます。すなわち、通貨でその全額を直接労働者に支払わなければならないということでございますから、手形は通貨には該当しないものでございますので、労働基準法第二十四条第一項の通貨払いの原則に違反するというふうに解されます。
#72
○池端委員 そのうち、先ほど御報告ありましたように女性従業員一名の退職金四百四十七万四千六百二十二円未払いのために東京中央労働基準監督署は二月五日に東京地検に書類を送検をした、こういう手続を今日とられておるわけでありますが、退職金未払いはこれだけに限らないわけでありまして、あと二十三名分、約二千七百万円が未払いになっているわけであります。
 一名分についてはこういう手続をとったわけでありますが、この二十三名分二千七百万円、これも明らかに法律違反でございますが、それではこれについては一体どういうふうに措置をされるお考えなのか、この点をお尋ねしたいと思います。
#73
○石井(甲)政府委員 御質問の二十三名の労働者のうち九名については、昭和五十七年三月三十一日までに支払いがすべて完了したという確認を得ております。そこで、十四名の者、不払い合計金額千六百九十二万九千円でございますが、それにつきまして本日まで支払いが完了しておりません。
 そこで、これらに対して先ほどの労働基準法上の問題を踏まえまして私どもの対処の仕方を申し上げたいと思います。
 これらの事案につきまして、これを司法処分に付さなかった理由でございますが、賃金不払い事案については何よりも現実にその不払い賃金の支払いがなされるということが肝要であろうと思います。また、この十四名につきましては、不払いを受けた労働者の側面から言えば、それぞれ違法ではございますがこの労働者が手形による支払い解決に同意をしておるという経緯がございます。そういうことを踏まえまして、この不払いの履行確保ということに現実的な解決点を見出そうという観点から、当面の間その履行について十分な監視を続け、その約束が履行されなかった場合には監督機関としてこれに厳正に対処する、こういうのが現実的な一つの対処の仕方であろうというふうに考えておる次第でございます。
#74
○池端委員 同意した、こういうふうに言われましたけれども、実態は必ずしもそういう状況ではなくて、最終的にはやむなくといいますか、泣くに泣けない気持ちで同意せざるを得なかった、こういう状況なんです。しかし、法律違反であるという事実は厳然としておりますから、これについてはこれからの十分な監督をひとつやっていただきたいということを強く申し上げておきます。
 次に、運輸省にお尋ねをいたしますけれども、ホテル・ニュージャパンは、昭和三十五年にオープンをいたしました当時、社員は八百人おりました。ところが、この社員の数がだんだん減少を続けてまいりまして、昭和四十四年には五百名、昭和五十年には三百名、そして現在は百三十八名という大変な人減らし合理化が行われてきたわけでございます。また、火災の発生当日の夜勤者は、消防庁に届け出しておる者は四十五名、こういうふうになっておるようでありますが、実際には、社員は仮眠中の者も含めて九名、そのほかにガードマンが、これも仮眠中の方も含めて五名、こういう状況であります。五百の客室を持つ大ホテルとしては全くもう信じられない数字なわけでございまして、部屋数に対する従業員の割合も〇・二七と極端に低いわけでございます。
 そこで、私は都内の主要ホテルの従業員数等をいろいろその後調査をしてみました。ホテルによって非常にアンバランスがございます。登録ホテルだけでございますけれども、アンバランスがある。しかし、ニュージャパン程度の従業員しかいないホテルも若干見受けられる、こういう現実が存在をするわけであります。これはお客さんの安全の面からも、そこに働く労働者の労働条件の面からもゆゆしい問題ではないか、私はこう思うわけでございます。
 ここに運輸省大臣官房観光部が発行いたしました「ホテル業の現状と問題点」という小冊子がございます。これを私しさいに読まさしていただきました。百四十二ページのパンフレットでございますが、この中に安全という表現があったのはただの一カ所でございます。そのほかはすべてホテル業界は合理化、省力化に向けて積極的に推進をしなければならないということで満ち満ちているのであります。こういう姿勢が今度の火災に結びついた、こういうふうに言わざるを得ないと思うのであります。防災、安全面が欠落している。そういうことから、今回の火災を契機にしてここに書かれておるような方針はもう見直していかなければならないのではないか、これは登録ホテルでありますから国際上の問題でもございます。そういう観点から私は当然この方針は見直すべきである、こう考えるわけでありますが、これについての御見解はいかがでしょうか。
#75
○高橋説明員 ただいま先生のお示しのございましたホテル白書は、間違いなく運輸省観光部が昭和四十五年十二月に発行したものでございます。これは当時のホテル産業の実態を分析いたしまして、ホテルの将来の方向につきまして一つの問題提起を行ったというふうに考えております。わが国に対します国際理解の増進策として国際観光の振興が必要であるということは私どもかたく信じておるところでございますが、そういう点からいたしますと、ホテルの宿泊利用客のために宿泊利用料金面からも容易に利用できるというふうなことをすることが望ましいということで、このためにはホテル経営全般にわたる合理化が必要だという考え方は現在でもなお意義を持っていると思っております。
 しかし、宿泊利用客の安全を度外視した合理化というのはあり得ない話でございます。安全確保が第一であるということを私どもも考えております。したがいまして、ホテルの防災面での安全確保という点からの必要人員につきましては、基本的には消防法に基づく消防計画についての消防機関のチェックあるいは指導ということにより確保されるべきものと考えますが、運輸省といたしましても宿泊利用客の安全確保のために、先般設置いたしました国際観光ホテル整備法防災問題検討委員会の場におきまして、防災管理の面についても十分検討してまいりたいというふうに考えております。
#76
○池端委員 昭和二十四年に国際観光ホテル整備法という法律ができましたね。それを見ましてもきわめて今日の時点にそぐわない不備な点が多く見受けられるわけでございます。いまいろいろ委員会を設置をして検討している、こういうことのようでありますが、私はその際、人的な配置の問題も含めてひとつ抜本的な検討を行っていただきたい。そしてお客さんが本当に安心して泊まれるようなホテル、しかもそこに働く労働者、従業員が過酷な労働条件にさらされないで勤務できるようなそういう体制を、ぜひ運輸省としても労働省と十分協議しながら今後進めてもらいたいということを強く要望申し上げておきます。
 そこで大臣、このニュージャパンの問題はこれで終わりますけれども、いま七名の組合員の方々が昭和五十五年の六月十日に不当に解雇されるという事態が起きておりまして、これは明らかな不当労働行為ということで組合側が地労委に提訴をしておりまして、先般中労委は七名の組合員を復職させることを条件として労使の話し合いによって解決するようにという和解の勧告を実は出したわけでございます。これについてはさすがの横井社長も受諾せざるを得なかった。もちろん労働者側もこれを受諾いたしました。労使双方、この勧告を受諾したわけでございますが、問題は、この労基法違反や不当労働行為を今日まで公然と相次いでやってきた人物でありますので、今後この和解の交渉がスムーズにいくかどうか、私はきわめて疑問視するわけであります。予断を許さない状況があると思うのであります。そういうこともございますし、さらに現在百三十八名の従業員全員の解雇という話も出ておるわけでございまして、従業員の不安ははかり知れないところがございます。
 ですから労働省としても事態を重視をして今後十分な行政指導を行ってもらいたい、このことを申し上げたいと思うのでありますが、大臣いかがでしょうか。
#77
○吉本(実)政府委員 先ほど先生お話しのございました組合委員長ら七名の解雇について不当労働行為事案として東京地労委を経、中労委に再審査をされ、現在和解の話が出ておるということも私ども承知しております。中労委がせっかくそういった形で進めておりますので、労使が十分話し合ってそういう点がうまくいくように私どもも期待しておるところでございます。
#78
○池端委員 それでは、次に問題を進めます。
 中小企業に働く労働者の実態の問題でありますが、御承知のように八二春闘はまさに山場を迎えようとしているわけであります。ことしの賃金引き上げの要求は、二年連続の実質賃金の目減り、可処分所得の減少という中でその要求はきわめて切実なものになっているわけでございますが、とりわけ中小企業に働く労働者の置かれている環境というのは、この厳しい不況の中できわめて厳しい、特に厳しい、こういうふうに言わざるを得ない、こう思うのであります。特に大企業労働者との賃金格差はますます拡大する方向にある、こういうことでございます。
 そこで、まず最初にお尋ねをしたいのは、労働省として大企業と中小企業の賃金格差が今日どういう傾向をたどっており、どうなっているのか、そういうような実態調査等があったならば明らかにしていただきたい、こう思うわけであります。
#79
○江田説明員 大企業と中小企業の賃金格差につきましては、私ども毎月勤労統計調査結果でもって御説明申し上げますと、オイルショック以降調査産業計の現金給与総額につきまして、事業所規模五百人以上を一〇〇といたしました場合に、規模百人から四百九十九人では、昭和四十八年の八六・二から五十五年には八四・七となっております。五十六年には八四・八%と、五十五年と比べましてほぼもち合いというような状況でございます。また、三十人から九十九人では、四十八年の七九・八から五十五年には七七・三、五十六年には七六・七、わずかながら格差が拡大をしているというような状況でございます。
 以上でございます。
#80
○池端委員 労働省の毎勤統計からの発表があったわけでありますが、これは労働省の調査のみならず総評なりあるいは同盟、それぞれの組合で大企業と中小企業との賃金の比較を行っておりますが、大体同じような傾向が出ておるわけであります。高度成長期にあっては賃金格差は逐次縮小の傾向を見せておりましたけれども、オイルショック以降はまたこの格差が拡大をする、こういう方向をたどってきておるわけであります。これは単に賃金ばかりではございませんで、労働時間の問題にしてもまたしかり、あるいは労働災害についても中小企業の場合は度数や強度等考えてみましてもはるかに高い発生の状況でございます。
 このような格差の拡大を、単に産業の二重構造の問題だと言って手をこまねいている問題ではない、きわめてわが国の経済政策の重要な課題、この格差の解消は重要な課題だ、こう思うわけであります。労働政策の面でこういった格差の問題についてどのような手だてを講じて解消されようとしているのか、労働政策の観点からひとつお尋ねをしたいと思うのであります。
#81
○石井(甲)政府委員 労働条件の問題を日本の企業規模別に見ますと、先生御指摘のように中小企業、特に企業の規模が小さいほどこれが低いという、全部ではございませんが、そういうことに構造的になっておると思います。
 たとえば賃金の問題につきましては、労使が決めることでございますが、労働行政といたしましては、最低賃金法によりまして毎年一回地域別に各都道府県で最低賃金を決定しております。それから産業別にも大くくりの最低賃金を設定いたしまして、そういう設定を通じまして、いわば最低賃金という角度から労働条件の底上げをしていくという行政的な施策をしているわけでございます。そのほか労働災害につきましても、特に中小企業の中でも建設業関係が非常に問題でございますので、目標をその中小企業の特に建設業等に置きまして、行政の重点を志向しているということでございます。
 さらに、言ってみれば労働省全体といたしまして、労働条件あるいは環境の確保という面から見ますと、行政の志向の形はやはり中小企業をきめ細かく指導し、かつ援助し、これを引き上げていくというのが基本的な姿勢であろうと考えております。
#82
○池端委員 最低賃金の問題を初めとしていろいろな重要な課題がございますので、この問題について積極的に労働省としても取り組んでいただきたいということを強く申し上げておきたいと思うのでありますが、中小企業の中でも特に現在苦しみが深刻であるのは下請の中小企業でございます。私は室蘭市という北海道の工業都市の出身でございます。鉄鋼や造船の町でございますけれども、いま深刻な不況の中で特に下請の中小企業が大変な苦しみ、塗炭の苦しみを余儀なくされているという状況でございます。
 実はこれは朝日新聞の三月十九日の夕刊に載った「ルポ山形」という記事でございますが、下請単価が非常にいま問題ではないかという一例といたしまして、昨年の初め、東京の大手機械メーカーが金属製品をある社に百五十万円で発注した。これが関東の下請、孫請、曽孫請の三社を経て、最終的には山形市の第四次下請零細企業が九十五万円で受注した。ところが実際はこの製品の原価は百万円で、第四次下請は五万円の赤字受注だった、こういうことが一例として載っておるわけであります。
 こういうふうに赤字であろうと何であろうと、仕事欲しさに、仕事をやめるわけにいかぬということで受注をするというのが今日の実態なわけでございます。下請代金支払遅延等防止法なんという法律がございますけれども、こういった不況になればなるほど買いたたきというようなことが行われるわけであります。
 こういう深刻な下請中小企業の実態、とりわけ下請単価の実態調査などを、これは通産省にお尋ねした方が適切だと思うのでありますが、行ったことがあるのか、またあればそれはどういう実態になっておるのか、その点をお尋ねしたい、こう思うのであります。
#83
○姉崎説明員 お答えいたします。
 私ども中小企業庁におきましては、下請中小企業の取引状況につきまして、毎月約千五百社の製造業の下請中小企業を対象にいたしまして調査を実施しておるわけでございますが、下請受注の単価につきましては、全体の平均で見ますと、昨年の三月以降前年同月比を下回る水準に下降しております。
 今日の不況といいますのは業種別あるいは地域別に跛行性があるというのが特徴だと言われておりますが、たとえば繊維業につきますと、一昨年の冷夏あるいは豪雪といったような影響を受けまして悪かったのが、昨年の春以降比較的堅調に推移している。一方、それまで好調と言われておりました精密機械でありますとかあるいは自動車を初めとする輸送機械関係の下請単価につきましては、昨年秋、九月くらいから前年同月比で下回るという状況になっております。
 また企業規模別に見てみますと、一次下請の場合は大体前年同月比でマイナス一%程度の状況である。それに対して二次、三次以下の下請になりますとマイナス三ないし四%下回るという状態に最近の傾向としてはなっております。
#84
○池端委員 そういう状況の中で、下請中小企業を保護するという立場から、具体的に中小企業庁としてはどういう対策を進められようとしているのか。特にこのような、私に言わせれば買いたたきとも言うべき不当な下請単価を規制する具体的な措置が今日当然なされてしかるべきではないか、こう思うのでありますが、この点についてはどうでしょうか。
#85
○姉崎説明員 下請取引の適正化につきましては、先生御指摘のように下請代金支払遅延等防止法に基づきまして、公正取引委員会と私ども中小企業庁で協力いたしまして書面調査を行い、またこれに基づく立入検査を行って、親事業者に対する改善指導を行っているということで対処しておるわけでございます。
 下請単価につきましては、下請代金支払遅延等防止法第四条一項三号で不当な値引き、それから同じく第五号で不当な買いたたきということの禁止が規定されております。この厳正な適用を図るために、公取及び中小企業庁におきましては、二年前、五十五年四月でございますが、値引き等に関する運用基準を定めまして、それ以降親事業者に対してこの普及徹底に努めてまいったところでございます。
 したがいまして、先生御指摘になりました下請単価の規制につきましては、この下請代金法に基つきます親事業者、それから親事業者に関係いたします下請事業者双方への書面調査に基づきまして、書面調査の結果、基準に照らして違反容疑があるという親事業者については立入検査を行い、改善指導をするということで対処しておりまして、特に昨年五十六年度からは新たに値引き等に関する特別調査という予算措置を講じまして、この単価問題に対する対策の拡充を行ってまいったところでございます。また五十七年度につきましても、中小企業庁におきましては代金法の書面調査の対象あるいは立入検査の対象の拡充を行う、あるいは検査担当職員の増員を図るといったような前年度比約二一%増という予算措置を講じまして、財政状況厳しい中ではありますが、下請取引適正化対策につきましては中小企業庁といたしまして抜本的な拡充の対策をとっているところでございまして、今後とも引き続きこの方針を堅持してまいりたい、かように考えております。
#86
○池端委員 中小企業をめぐる問題は非常に山積をいたしておりまして、ここで短時間で論ずることはできませんから、また改めて機会を得ましてお尋ねもしたいと思うのでありますが、ともあれ、日本経済を支えているのは中小企業の皆さん方であります。中小企業がこけたら、もう日本はこけるわけでありまして、そういう意味でも、深刻な不況に悩んでいる下請中小企業者の保護育成、そしてまた、そこに働く労働者の労働条件の改善のためにも積極的な施策をひとつ打っていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。
 次に、政労協関係の問題についてお尋ねをいたします。
 政府関係特殊法人の職員、言いかえますならば、政府関係特殊法人労働組合に所属する労働者の労働基本権はどのように保障をされておりますか、その点をまず最初にお尋ねをしたいと思います。
#87
○吉本(実)政府委員 政府関係特殊法人の職員につきましては、先生御高承のように、団結権、団体交渉権及び争議権のいわゆる労働三権が保障されているところでございます。また一方、政府関係特殊法人につきましては、給与の支払い基準に関します主務大臣の承認制度等が設けられておるわけでございまして、これらは特殊法人の公共的性格にかんがみ設けられているものでございまして、これはやむを得ない措置であるというふうに考えている次第でございます。
#88
○池端委員 局長は余り先走って答弁をしないでいただきたいと思うのでありますがね。
 確認いたします。団結権、団体交渉権、争議権、いわゆる労働三権が完全に保障され、労働組合法の適用を受けている労働組合である、こういうふうに理解してよろしいですね。
#89
○吉本(実)政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
#90
○池端委員 さらに確認をいたしますけれども、政労協所属の労働者は、労働条件が法律で決定をされている非現業の国家公務員の場合や、また公共企業体労働者に対して公労法第十六条という規定がございますが、この公労法第十六条のような協約の効力を制限する、そういう特別の法律上の根拠は何ら存在をしない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
#91
○吉本(実)政府委員 法律制度としまして、そのようなことでございます。ただ、先ほど言い過ぎたと申しましたが、いわゆる給与の支払い基準に関する主務大臣の承認制度等が設けられているということでございます。
#92
○池端委員 承認制度が設けられているということは、労使の自主交渉を否定するものでありますか。
#93
○吉本(実)政府委員 それは支払い基準が一つの承認制度にかかわらしめているということでありまして、労使の交渉が直接それによって制約を受けるというような性質のものではないというふうに理解しております。
#94
○池端委員 いま御答弁ありましたように、労働三権が完全に保障をされている。承認制度という問題はございますけれども、賃金についても労使の自主交渉にゆだねられている。であるのに、政府関係特殊法人の職員の賃金決定について、政府が介入するのはなぜですか。
#95
○吉本(実)政府委員 政府関係特殊法人の職員の給与改定につきましては、ただいま申しましたように給与支給基準の承認制度等のもとにあるわけでございますので、従来から、国家公務員に関する人事院の給与勧告の取り扱いについての閣議決定の後で主務大臣からこれに準拠した内容のいわゆる内示が行われまして、これを受けて関係労使が交渉を行う、そして給与改定の内容を具体的に確定する、こういうふうに運用されていると理解しておるわけでございます。
#96
○池端委員 その閣議決定が大変な問題だと私は思うのであります。今日まで、公務員の給与改定に関する取り扱いという閣議決定が毎年なされておりまして、その資料を私、ここに持ってきております。
 昭和四十四年当時の閣議決定では、この特殊法人の問題については何ら言及をしておらない。何も触れておりません。
 ところが、その後の経緯を見ますると、昭和五十一年の閣議決定であります。昭和五十一年という年は、人事院勧告で夏期手当が〇・一カ月分、年末手当が〇・一カ月分、合計〇・二カ月分減額された年でございます。その年の閣議決定では、この政労協所属の組合に対する賃金については、こういう規定になっているわけですね。「国家公務員の期末、勤勉手当の減額措置に準じて措置されるよう期待する。」こうなっておるのです。これは昭和五十三年の閣議決定でも同じ表現になっております。
 私は、政府が期待するというのであれば、百歩譲ってこれは理解もできます。政府としてはこういうことを望んでいるんだ、期待をしているんだというのであれば、それは理解しないわけでもございません。
 ところが、昨年の十一月二十七日に行った公務員の給与改定に関する閣議決定ではどうなっているか。自主交渉を認められ、賃金についても労使の自主交渉にゆだねられているにもかかわらず、「公庫、公団等の職員の給与については、これまでの経緯等にかんがみ、国家公務員の例に準じて措置されるよう対処する。」こういう表現に実は変わってきているわけです。「措置されるよう対処する」ということは、措置しなさいということですね。これは労働基本権が完全に保障されている政労協の組合に対する政府の明らかな介入でありまして、労使交渉否定以外の何物でもない、私はこう思うのでありますが、それについてはどうですか。
#97
○吉本(実)政府委員 政府関係特殊法人の職員の給与につきましては、先ほど来申し上げておりますように、給与支給基準の承認制度等のもとにおきまして、従来から国家公務員給与に準拠したいわゆる内示が行われておるということ、また、特別給につきましても国家公務員の水準に近づけるよう要請されているところでございます。こういったような経緯を踏まえまして、昨年度の人事院勧告の取り扱いを決定いたしました御指摘の閣議決定の内容でございますが、それも、特殊法人職員の給与に関する政府の対応の方針というものが決定されたものだというふうに理解しております。
 したがいまして、各特殊法人は、こういった政府の対応というものを踏まえまして、最終的には労使の交渉によって給与等の問題の決着を見た、このように承知している次第でございます。
#98
○池端委員 内示ということを盛んに強調されますが、それでは、内示というのはどういう性格なんですか。
#99
○寺園政府委員 先ほど来局長が説明いたしておりますように、政府関係特殊法人の給与につきましては主務大臣の承認、その主務大臣が承認いたしますときには大蔵大臣と協議するという定めがございます。したがいまして、特殊法人の職員の給与を改定するに当たりまして、支給基準の改正ということが必要になるわけでございますけれども、その支給基準の改正については主務大臣の承認が必要であるということになるわけでございます。
 したがいまして、どのような範囲のものであるならば主務大臣として、あるいは大蔵大臣として協議あるいは承認の申請があったときに承認をするかということを事前に知らしておくという、いわば行政的な措置であろうというふうに理解いたしております。
#100
○池端委員 その内示というものを金科玉条のように言われておるのでありますが、私は、ここに大きな問題がある。そのことをあなた方が主張すれば主張するほど、閣議決定や内示というものが労使の協定に優先をする、こういうことになるわけですよ。労使協定をほごにする、そういう思想につながっていくということを私は申し上げておきたいのです。
 それで内示の問題について、たとえば昭和五十年の二月、中労委が「特殊法人理化学研究所事件に関する中労委命令書」というものを出しております。この中で中労委は何と言っているか。「監督官庁の内示が研究所の説明するようなものであるとしても研究所の主張する内示による拘束ないし制約はそれをもって労働組合との団体交渉を法律的にも事実上も無意味なものとすることはできない。」こういうふうに述べておりますが、この見解について労働省はどう思いますか。
#101
○寺園政府委員 中労委の命令におきまして、先生がいま御指摘されました記述があることは事実でございます。ただ、そこの命令の読み方はいろいろあるような感じがいたします。と申しますのは、そのすぐ次のくだりにおきましては、「研究所は管理運営の権限上かくあるべしとの判断のもとに、内示枠の範囲内では自由に組合と交渉することができる」というくだりがございます。
 したがいまして、中労委の考え方は、いま私が申し上げました点を含めて理解をすべきものではないかというふうに考えておるところでございます。
#102
○池端委員 あなた、勝手な読み方をされるわけですが、その後をまた読んでいないでしょう、あなたはいま。その後に何と書いていますか。
#103
○寺園政府委員 その後に引き続きまして、「必要がある場合には内示枠についても前記付帯決議の趣旨を十分尊重した上でその自主的判断に基づき、組合との交渉経過に即して、監督官庁に対し積極的に折衝するなどの努力をして然るべきものと考えられる。」という記述があるわけでございます。
#104
○池端委員 やはり、そういうふうに正確に読んでもらわなければ……。皆さん方、都合のいいところだけつまみ食いされてそれで答弁されたのじゃ、それが何か中労委の見解のようにとられますから、やはりもう少し正確に答弁はしてもらいたい、こう思うのであります。
 しかし、私が申し上げたいことは、こういった閣議決定なり内示を行う――労働三権が保障され、協約の締結権もある。もうすでに夏期一時金については協約を締結しているのです。すでに協約を締結したものについて、この内示によって過去に締結したものをほごにする、いわゆる内示優先ということは現実に行われている。労働者の保護あるいは労働条件の改善、これは労働省設置法第三条に明確にうたわれているわけであります。労働大臣はその立場に立って労働者を守っていかなければならないのに、あなた、なぜこんな従来と変わった閣議決定にオーケーされたのですか。従来は、少なくとも「期待する。」という表現にとどまっておった。今度は「措置されるよう対処する。」こうなっている。労働大臣、いかがですか。――いや、大臣に聞いているんだよ、閣議に行ったのは大臣だから。
#105
○初村国務大臣 今回の閣議決定は、特殊法人の職員の給与、一時金が国家公務員に準拠して決定されるという従来の経緯、特に現下の厳しい国家財政の状況、世論の動向にかんがみて行われたものと理解しておるわけでございますので、私は、やはり従来の慣行に従って承知した、了解したということであります。
#106
○池端委員 従来の慣行ではないんですよ。従来の方針とは全く別の方針が昨年十一月二十七日の閣議で決定されているんですよ。だから私は問題にしている。従来のような態度で臨むのであれば、私は何もきょうここで議論しませんよ。従来と違った扱いをしているところに大きな問題があるわけであります。
 ですから、いま皆さん方が言われたことを要約いたしますと、労働三権は完全に保障されている、こうは言うけれども、一たん内示が出れば、内示が優先をして労働協約は完全にほごになる、全く矛盾した措置が行われているわけなんです。労働三権というものは絵にかいたもちに等しいというふうに言わざるを得ないわけですよね。これは明らかに不当介入ですよ。賃金は労使交渉で自主的に解決するものというようなことを表面上は言っておきながら、明らかに介入している措置だ、こう言わざるを得ないと思うのですが、どうですか。
#107
○吉本(実)政府委員 先ほどから大臣も申しましたし、私も申し上げたように、こういった公務員に準拠していくという問題については、一つの政府の対応の方針ということでございまして、それを受けて労使の交渉がなされるというふうに私ども理解しておるわけでございます。
#108
○池端委員 重ねてお尋ねしますが、対応の方針ということは拘束力を持たない、こういうことですか。
#109
○吉本(実)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、いわゆる内示制度というものもございますが、先ほどの中労委の見解にもございますように、そういった内示制度のもとにおきまして、それをどのようにして労使で解決をしていくかということも言われているところでございまして、先ほど来申したような形で、労使が結果的にはお互いにそれを結んでいくというふうな結末になっていくというふうに理解するわけでございます。
#110
○池端委員 先ほど大臣が言われましたように、今日、特殊法人をめぐる情勢はきわめて厳しいものがあります。しかし、それは一般の職員の問題ではないのです。きのうの新聞にも出ておりました。ここにも政労協の「天下り白書」、こういう本がございますが、この中にその実態が出ている。高級官僚の天下り、そして渡り鳥、退職金の二重取り三重取り、もうざらでしょう。こういうものに対する国民の世論というものはきわめて厳しい。しかし現場第一線でがんばっておられる職員の皆さん方は、本当に営々として、歯を食いしばってがんばっているんですよ。それをみそもくそも一緒にするようなやり方、ちょっと表現は汚いですけれども、そういうやり方は政府としてとるべき措置ではない、私はこう思うのであります。
 しかも、職員の皆さん方は、退職金についても、あるいは年金についても、公務員よりもはるかに劣悪な状況に置かれている。しかも、今日、特殊法人が置かれている環境というものを十分理解しながら、最小限度の要求をしている。そんな法外な要求をしてこれはもうけしからぬというような、そういうものでない、最低ぎりぎりの要求なんですよ。それすらも、内示がどうのこうの、閣議決定がどうのこうのということで締め上げる、締めつけるというやり方は、これは完全に労働基本権を尊重しなければならない労働省みずからが労働基本権をじゅうりんしている、こういうかっこうになっているわけなのです。
 大臣どうですか。大臣は、へその緒を体に埋めて大いにがんばっておるようでありますが、やはりこういうことにがんばってもらわなければならない。労働者の今日置かれている賃金の実態、生活の実態というものを踏まえて、やはり労働者を擁護するという姿勢で閣議にも臨んでもらわなければならないと私は思うのであります。少なくとも、前労働大臣藤尾さんはそういう立場で再三閣議でも強力な主張をされておった。私は、初村大臣にもそのことを強く望みたい。政労協の賃金問題、期末手当の問題はまだ解決しておりません。この問題の解決のために一段の努力をしてもらいたいということを強く申し上げて質問を終わりたいと思いますが、いかがですか。
#111
○初村国務大臣 私は、何といっても労働者の収入が多くなるということは非常に喜ばしいことと思います。特に可処分所得が少なくなっておるということは、やはり今日の所得減税のやり方、これを例年ずっと累積関係で何年かやっておって可処分所得が低くなっておるということはもう忍びない。したがって、労働賃金が上がることは労働大臣として非常に大きい関心を持っておるわけでございますが、何といっても労働賃金というものはあくまでも労使の交渉で円満にやっていただくというのが一番筋が通ると思うわけでございます。偏って一部の方に対してきつい措置をするということはいかがなものであろうか、かように考えます。したがって、労働賃金というものは働く方々の基本の給料でございますから、これについて物価とにらみ合わせたりあるいは経済の流れ等を十分考慮して、十分に配慮してやるべきではなかろうか。いま前大臣の話を申されましたが、私としても事あるごとにそういう点を十分考慮して閣議等でも発言をして、労働者のためになるようにということで鋭意がんばっておるわけでありますから、今後ともそういう気持ちで努力したいと思います。
#112
○池端委員 時間が参りましたので、終わります。
#113
○唐沢委員長 次に、永井孝信君。
#114
○永井委員 いま同僚の池端議員からも質問がございましたけれども、春闘の大きな山場を迎えまして、もちろん賃上げ闘争そのものも大きな問題でありますけれども、この春闘の時期に集中して、いまもお話がございましたように労働者の労働基本権にかかわる部分について幾つかの侵害事件といいますか不当労働行為というものが起きてくる、これは毎年のことであります。私は、そういうことを踏まえながら質問をしていきたいと考えるわけであります。
 まず一つは、いまの春闘の状況の中で景気がきわめて不況な状態にある、俗な言葉で申し上げますと、景気に深いかげりが出てきている、こう言われているし、私たちもそう見ているわけであります。そこで、景気にかげりが出てまいりますと、当然のこととして企業に活力がなくなってくる、総体的に低下をする、これは否めない事実であります。そうなってまいりますと、賃上げを求める、労働条件の向上を求めるというこの春闘の段階で、やはり企業の活力低下ということを労働者にどうしても転嫁しやすい、これは否めない事実だと思うのであります。これは公共企業あるいは民間企業を問わずに出てくることだと思います。
 そこで、大臣は、せんだっての所信表明の中で幾つか重要な問題について触れられているわけでありますが、その中で、「雇用を初め労働面全般に影響が生じることが予想されるため、その及ぼす影響、問題点について、総合的な調査研究を進めてまいります。」このように触れられているわけであります。そしてそのことは、景気のかげりが労働者の雇用に不安を落としてはならない、こういう決意からその所信表明がなされたと私は率直に受けとめているわけであります。
 雇用の確保という立場から、いま私が申し上げましたように企業の活力が低下し景気にかげりが出てきた、このことについて、それでは具体的に雇用あるいは労働者の労働条件を守るための労務管理というものについてどのように指導をされていこうとしているのか、大臣が所信表明をされたことについて、ちょっと掘り下げて、まず見解を承っておきたいと思います。
    〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
#115
○初村国務大臣 私は雇用問題を最も大事に取り上げておるわけでありますが、先ほども産業ロボット等の話がありまして、いま労働省に入っておる状況では、現在のロボットあるいはMEですか、雇用等について余り大した影響はないということでありますけれども、私はそうは思わない。いまからそういう科学技術の進歩、技術革新、ロボット等が発展してくれば、必ず雇用に影響があると思うわけです。そういうことで先般来私どもも会議を重ねて、将来これが雇用問題にどういうふうにつながっていくか。私はやはり雇用の問題を重点的に取り上げることが労働省の最も重要な政策の一つではなかろうかと考えるわけであります。
 もう一つは、今日、世界的にながめた場合でも、失業情勢等からながめても、日本が一番雇用率はいいわけです。だからといって、これをほうりっ放す、そのままやりっ放しにするということはできませんから、そういう点を十分に考えて将来の雇用問題を解決していかなければいけないというふうな考え方を基本方針として持っております。
#116
○永井委員 雇用の問題についてはきわめて重視をするという立場で御答弁をなされたと思うのでありますが、それでは、たとえば企業の利益を擁護するためにあえて労働者に強圧的に、雇用を奪っていくといいますか首を切るといいますかそういう問題が出てきたときには、労働省としてはそれに対して、雇用確保という立場で、いま大臣が表明されたような重要な認識と指導の精神に基づいてどのように具体的に対応されるのか、お答えいただけますか。
#117
○石井(甲)政府委員 特に中小企業等におきまして解雇問題というものが出る場合に、労働省はどういう対応をするかということでございますが、日本の場合には、先生御承知のように、失業という問題についてあるいは解雇という問題について、事業主は大変な一つの配慮といいますか、そういう全体の社会的な慣行をつくり上げている世界でも類のない国だと思います。そういう意味では、そういう慣行をできるだけ維持するために努力をするのが行政の役割りだと思いますし、また、基準法上から言えば解雇予告、解雇手当という形を通じてそれが出てまいりますが、解雇については、その条件をできるだけ整えるように行政的な措置をするのが労働省の考え方でございます。
#118
○永井委員 もう一つ大臣にお伺いいたしますが、大臣の所信表明の中で、わが国の労使関係はきわめて良好な状態にあるというふうに触れられているわけですね。「わが国の良好な労使関係」ということは、一体具体的にどういうことを指しておられるのか。
 たとえば、いまの私たちの認識では、完全失業者が百三十万人程度ですか、潜在失業者を入れるとかなりの数に上ると思うのです。それが単に仕事がないという単純な事柄よりも、企業が企業自体の防衛策として労働者にしわ寄せを求めていくといいますか、結果としてそういうことが雇用不安を引き起こしてきたと思うのでありますが、そのために幾つかの労働争議も起きてきているわけですね。そういうことも踏まえて考えてみますと、景気の悪いときは労働者はしんぼうしろ、会社が困ったときは労働者は首を切られてもやむを得ないということで、弱い者いじめと言ってはなんでありますが、労働者にしわ寄せをされることをすべて受忍しなさい、企業の方が大切であって、そこで働く労働者が受忍することはいまの状況の中では当然だ、そういう前提でいまの労使関係が良好だというふうに判断されておるのか、大臣、ひとつ明らかにしてください。
#119
○初村国務大臣 私の「良好な労使関係」ということは、率直に言うて、労働者に対する報酬、賃金を要求にあったものを与えるべきである、あるいは労働時間とか労働衛生環境というものも十分に与えるようにしなければいけない。そこで初めて労使が協調して企業の発展も成っていくわけでございますから、労働者を苦しめるような賃金制度、こういうことをやってはいけないというような考え方から、良好なる労使関係というものは、そのときの物価高に応じて賃金も上がっていくだろうし、あるいは生活環境もそれによってよくなっていくだろうし、そういうことを、百点満点で百点ということではないけれども、それに近いものを労働者に与えなければいけない、そうして初めて良好なる労使の関係が持たれるという意味でございます。決して労働者に変な考え方を押しつけるような考え方を持っておることではございません。
#120
○永井委員 それでは具体的にお聞きをしてみたいと思うのです。
 労働者を苦しめること、そういうことではないという立場での所信表明であったというふうに言われているわけでありますが、たとえばいま企業が苦境を切り抜けるために、言いかえるなら企業の利益を確保するために、労働者に対するどれだけの不当労働行為が行われているか。これは、労働省は専門の監督官庁でありますから当然掌握済みの話でございますけれども、私はここに資料を持っておりますが、その資料で見ますと、たとえば地労委にかけられている不当労働行為事件というのは、申し立て件数が年々増加をしてきているわけですね。労使が良好な関係にあるのなら、こういう不当労働行為の地労委提訴の件数はふえてこないと思うのでありますが、年々新規の申し立てもふえてきている。もちろん繰り越しの分もずいぶん累積として残されている。
 数字で申し上げますと、地労委に申し立てられたのが、五十三年度が六百八十五件、五十四年がちょっと減りまして五百六十三件、五十五年は七百七十八件、ずいぶんふえてきているわけですね。そうして、では中労委にどれだけかかっているか。五十三年が六十四件、五十四年が八十三件、五十五年が八十四件、これも年々増加をしてきているわけです。いま大臣の言われているように、良好な労使関係が保たれているし世界に類を見ないように雇用が確保されているのであれば、なぜこういう地労委や中労委への申し立て件数はふえてくるのか。
 この中には労働者の雇用を剥奪するような件数もかなり含まれていると思うのでありますが、この中身について労働省は分析をされていますか。
#121
○寺園政府委員 ただいま先生から五十三年以降の新規の申し立てあるいは中労委への再審査の申し立ての件数がございました。その三年で見る限り、若干数字のでこぼこはございますけれども、残念ながら増加ぎみであるということだと思います。もう少しロングで見ますと、申し立て件数が多かった時代もあるわけでございます。ただ、いずれにしても、こういうような不当労働行為事件というのが起こり、労働委員会の審査の対象になるということは決して好ましい事柄ではないというふうに思っております。
 不当労働行為のそれぞれの、一号、二号、三号各号の件数の状況につきましては、現在数字を持ち合わせておりませんので、後ほど御報告申し上げたいと思います。
#122
○永井委員 ついでのことに申し上げますが、これだけ申し立てられた件数の中でいままで命令決定がなされた内容、これも申し上げてみますと、地労委の関係では、五十三年に百二十一件の命令決定がなされているわけでございます。五十四年には百四十一件、五十五年には百二十五件の命令が出されている。これは全部労働組合の申請内容を認めて救済命令が出されているわけですね。これをその申し立てられたもので具体的に出されたものを割って率で見ますと、五十三年の百二十一件の命令というのは、処理をされた中の九一・七%、五十四年は九〇・七%、五十五年は八三・二%、これだけが組合の救済請求を全面的に認めているわけです。いわば地労委や中労委に提訴されている中身というのは、ほとんどが経営側にその非があるということが認定されている。
 中労委の関係で申し上げますと、五十三年には処理がされておるのが十二件でありますが、そのうち十件が組合の申し立てどおり命令として認められているわけです。五十四年は同じく十二件に対して十一件、五十五年は十八件に対して十八件、組合の要求が一〇〇%認められているわけです。
 この中できわめて重視をしなくてはいけないことは、賃金上の紛争と本来の労働組合の権利にかかわる問題があります。賃金上の争いというのは、紛争中のものについて救済命令が出ればさかのぼって救済することができるわけです。回復措置をとることができる。しかし、権利上のものについてはその間の損失は取り返すことができないのですよ。その間のものをさかのぼって取り返すことができない。ましてや労働組合をつぶす目的を持って不当労働行為をかけられたものが、地労委、中労委を経過して命令が出された時分に、肝心の労働組合はつぶされてしまっているというケースも間々あるのですよ。これは大変なことですね。
 だから、救済措置はとられているといってもその実効を伴わないというケースが非常に多い。こういうことは、救済命令が出される前にそういう不当労働行為が起きないような施策、あるいは不当労働行為が起きた時点で迅速に問題の処理が監督官庁の指導も受けて行われるようにされなくてはならないと思うのでありますが、これに対して労働省側の決意やこれからの対応を簡単にお答えいただけますか。
#123
○寺園政府委員 法律で明確に禁止されております不当労働行為があってはならないことは当然でございます。したがって、労働省といたしましては、これら禁止された行為の内容あるいはそういうことが起こらないようにという教育、啓蒙活動をいろいろな形を通じてやっております。特に、問題がよく発生しますのは、中小企業におきまして経営者がいまだ十分に労働関係法規を承知しておらないというようなことから発生する事例もございますので、中小企業を一つの中心としながら不当労働行為の発生を防止するための教育、啓蒙活動を続けておるところでございます。何はともあれ不当労働行為が起きないということが絶対の要請であるわけであります。
 不幸にして不当労働行為が起きましたときに、最終的な判断は労働委員会が行うということになるわけでございますが、いま先生が御指摘のようにその審査の過程が非常に長くて、実際上組合の人たちあるいは労働組合自身が不利益を受けてしまうということが考えられるわけでございます。そのためには労働委員会における審査の促進ということが大変重要な課題になってまいります。そういう観点から、現在私どものところにございます労使関係法研究会に不当労働行為の審査の促進方の方策について御研究をお願いいたしております。近く結論をちょうだいできるものと期待をしておるところでございます。
#124
○永井委員 いまの御答弁を聞いておりますと、こういう不当労働行為が起きやすいのは主として中小企業に多い、だからこの中小企業に対して教育や啓蒙を行っているということが触れられているわけですね。必ずしもこういう不当労働行為は中小企業に限られるということにはなっていない。
 そこで、私は一つの例を挙げて具体的に労働省の対策をお伺いしていきたいと思うのでありますが、この間も衆議院と参議院で通過いたしました総合甘味対策の法案、砂糖の価格安定等に関する法律の一部を改正する法律というのが成立をいたしましたね。これはもちろん国産糖の保護育成とか国内の価格安定という大きな行政面からの必要性からこういう法律が生まれてきているわけでありますが、この甘味対策を進める上で過去何回か砂糖産業界にかかわる不当労働行為の問題が国会で実は取り上げられてきているわけです。もちろんいま私が指摘しましたようにたくさんの不当労働行為が地労委や中労委にかかっていく、こういう現実にはあるわけです。その中で、具体的に何回かこの衆議院の社労あるいは参議院の社労においても取り上げられたこの砂糖産業界の不当労働行為問題、これが実は一向に改善をされていない。国会という国権の最高機関で取り上げられて、労働省もそれなりにその対策については措置をするというふうに答弁をされてき、対処されてきたはずなのに、この問題については一向に改善が見られない、これは私は大変なことだと思うのです。いま初めて取り上げる問題ではないだけに、継続的な問題であるだけに、私は大切な問題だと思うのです。
    〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
 そこで、今回のこの法律が成立をする際に、衆議院の段階でも参議院の段階でも附帯決議がつけられているわけでありますが、この産業界の特質を考えて附帯決議の中に、「雇用の安定、労働条件の改善等についての業界段階における労使の話合いが円滑に行われるよう指導すること。」これが衆議院の附帯決議であります。参議院の附帯決議では、産業界の「体質改善を進めるに際しては、業界段階における労使の話合いが円滑に行われ、労働者の雇用の安定、労働条件の改善等が図られるよう万全の指導を行うこと。」こういう附帯決議がつい先ほど可決されているわけであります。
 ここにこういうことを書かなくてはいけないほどこの産業界の関係について問題が生じてきておったわけでありますが、たとえば神戸精糖問題、これは昭和五十五年の三月に衆議院、参議院でそれぞれこの不当労働行為問題が取り上げられているわけであります。しかも、いまの答弁では、簡単に言うと、不当労働行為が主として中小企業に偏りがちだ、だから中小企業に特に集中して教育、啓蒙を行うのだと言っているわけでありますが、この神戸精糖の問題について言えば、日本で屈指の大商社が結果的に不当労働行為をリモコン操作をしている。このことはこの当時から明らかにされてきているわけであります。
 その当時のやりとりについてはいまさらあえて繰り返して申し上げませんけれども、そういう衆参両院で取り上げられたことを受けて五十五年の十二月に、労働省の指導もあったのでありましょうが、ようやく労使間で合意書ができました。
 その合意書はここに私は持ってきていますが、「双方の諸権利を相互に尊重し、相互信頼を高め、円満な労使関係の確立することを認め合い別記事項を確認し、」こうなっているのでありますが、この別記事項の中に、たとえば地労委へ提訴している事案については組合としてはこれを取り下げる、そして「労働協約・協定については双方の人格尊重が基本でなければ信頼も労使の安定化もなく、現在までの紛争の経過から相互に強い不信感があり、共通の理解と信頼を回復するまで労使協議会を設置し」当たっていくということが、この確認事項の中に盛り込まれているわけであります。
 ところが、それから一年ちょっとたっているわけでありますが、いまだにこの合意書に基づく労使協約ができていないのですよ、大臣。国会でまで取り上げられて労働省に指導いただいたのでありますが、この協約ができていないのです。
 ところが、ここで大きな問題は、この合意書をつくるときにこの合意書の調印の当事者であった――当時は商社の丸紅相手に労使紛争が結果的に起きたわけですが、この丸紅でそのとき担当部長をしておった鈴木さんという方が調印に立ち会っているわけです。ここに鈴木さんの署名と判が押してあります。この鈴木さんが、合意書ができた後で、この系列下の問題の起きている神戸精糖の社長に就任されているのです。そうすると、常識的に考えると、合意書に調印をした張本人が社長に就任したんだから、まず何はさておいてもこの合意書を忠実に実践するという態度をとるのが普通ではないんでしょうか。ところが、その社長が、ここにもたくさんの労使間の議事録を持ってきていますが、全く労働組合を認めようとしない。私も現地へ調査に入りました。労働組合そのものを形の上では認めているんだが、実体的には認めようとしない。とりわけ現在この神戸精糖では去年の九月に、合意書ができた後ですね、去年の九月に三百六十六名中の百九十九名について首切りの提案をしてきた。雇用を確保しということでお互いに相互信頼を持って交渉に当たろうと合意書を取り交わしたその後で、ぬけぬけと百九十九名の首切りを提案してきたわけです。これでは合意書に基づく話などできるわけがない。そうでしょう、大臣。そう思いませんか。
 さらに、この首切りに出る前には、夏期一時金も一部の仮払い、去年のベースアップは未解決、いまだに未解決、年末手当はゼロ回答、こういう状況なんですね、賃金上から見ても。
 そして、時間が制約されておりますのではしょって恐縮でありますが、団体交渉の席上では組合が首切りを認めない限り一切の協約は締結しないというのですよ。合意書に基づく協約は締結しない、これで大臣、正常な労使関係と言えますか。あるいは、いま審議官がお答えになりましたけれども、言葉じりをとらえて悪いようでありますが、中小企業に対して主として教育啓蒙を行うと言っておられるのですが、相手は神戸精糖でありますが、神戸精糖は丸紅の系列下の企業であります。すべて丸紅が操作をしているわけであります。だから、この前の労使紛争では直接丸紅とやりとりがあった。だから、合意書にも丸紅の砂糖部長としてこの鈴木敏通という方が署名調印をされている。それが、その人がいま社長なんですから。これは労働省、一体どう受けとめられますか。
 これはきょう初めての問題じゃなくて、いままで何回も国会で取り上げられてこの場で議論されてきた問題だけに、そのことの経緯が踏みにじられておるということは、労働省の行政指導が軽んぜられている。言いかえれば労働大臣が無視をされたことになってくる。ひとつこれは黙っておれぬという立場で指導してもらわなくてはいけないと思うのでありますが、どうでございましょうか。
#125
○吉本(実)政府委員 ただいま先生から神戸精糖の事件につきまして御説明ございました。まさに先生のおっしゃるとおりでございます。
 人員削減等の経営合理化の問題をめぐって新しい労使紛争が生じているわけでございますが、やはり労使双方が合意書を調印した時点の原点に返って、そういう気持ちで十分話し合いをして、円満に紛争を解決するようにしていかなければならぬと思いますし、私どもといたしましても、地元兵庫県とも連絡をとりながら必要に応じてその話し合いの努力に対して助力をするというようなことをいたしながらこの解決に持っていきたい、このように思っておる次第でございます。
#126
○永井委員 とりわけ三百六十六名の組合員のうち百九十九名、これは二人に一人になるわけですね、こういう首切り提案をしてきたということは、この雇用の確保、大臣の所信表明、これはちょっとそのとおりになっておらないわけですよね。大臣の決意はいいんだけれども、そのとおりになっていないわけだ。この雇用の問題について、それを否定するということ、それが絶対条件で初めて労働協約を結ぶということは、明らかに労組法の第一章第一条に違反すると思うのですが、これは一言で答えてください。
#127
○吉本(実)政府委員 個別の事案について違法かどうかと、こう言われますと、私どもはちょっとその見解は差し控えさしていただきたいと存じます。
#128
○永井委員 私が申し上げておるのは、雇用の確保が損なわれる。百九十九名、二人に一人という大量の首切り提案がされている。これを認めないと一切の労働協約を結ばないというわけだから。
 繰り返して恐縮でありますが、この合意書では、相互信頼に立って労働協約を締結するために双方が努力をするということをわざわざ確認をしているわけですね。そうして会社は組織介入を一切これから取りやめ、協定破棄を撤回し、誠意を組合に示す。そのかわり組合は地労委に提訴している問題については取り下げる、こういうことで合意書をつくってきたわけですね。
 ところが、団体交渉の議事録を見ましても、会社は、鈴木社長は、この解雇を認めない限り一切協約を結ぶ意思を持っていない、このことを団体交渉の席上で言っているわけです。これは労組法の第一章第一条に抵触しないか。まず雇用を解消しますよ、それで協約を結べといって組合が協約を結べますか。
 これはいまの局長の答弁では私は納得できません。もう一回答えてください。
#129
○寺園政府委員 今回の紛争におきまして、さきに合意書が締結されましたことにつきましては先生が御指摘のとおりでございますが、その合意のもとになりました調停書を見ますと、「紛争の最大原因は相互の不信感と思考される。」という記述がございます。相互に不信感がありましたならば物事の解決というのはなかなかできていかないと思います。相互の不信感を除去するための努力としてひとつ十分その話し合いをしていくということが必要であろうかと思います。
 話し合いの場としては、団体交渉という場もございましょうし、あるいは、調停案にもございますように、協議会という場もあろうかと思います。
 最近私どもの承知しております情報といたしましては、このままでは争点の整理もできない、十分話し合おうではないかという組合からの呼びかけに対しまして、話し合いの場としては協議会という場を活用したいという会社側の意向のようでありますけれども、いずれにしても、この問題について十分話をしていこうという機運が盛り上がり、それがまた実行されていくようになっていただきたいものだ、そのために私どもとしてお手伝いができることがあればお手伝いをしてまいりたいというふうに思っております。
#130
○永井委員 もちろんそういう御努力は願わなくてはいけないのでありますが、繰り返して恐縮ですが、首を切ることを認めないと労働協約を結ばせぬと言われて不信感が除去できますか。
 大臣どうですか。大臣、ひとつ率直に大臣のお考えを聞かしてください。
#131
○初村国務大臣 話を聞けば、相当長い経緯があったと思います。しかも、協約をした当事者の鈴木さんが社長になった。なった途端に、三百六十六名の中の百九十九人の解雇をしなければいろいろな交渉に応じない、手の裏を返すようなことのように私は直観するわけです。したがって、これが労組法にどうだこうだということは私の立場で言いにくいけれども、何といっても労使が最初話し合ったような気持ちに早くなって、再度円満な解決をしていただければ幸せかと思います。
#132
○永井委員 いま大臣が答弁されたそのとおりだと私思うのですね。手のひらを返したような対応だと思うのです。
 ついでのことに申し上げますが、この神戸精糖が他の同じ精糖会社と比べて経営が必ずしもよくない、それは私たちも承知をしているわけです。
 ところが、経営がよくないという内容をいろいろ資料を集めて分析してみますと、実は原糖を買い入れるときの相場に失敗しておるわけですね。同じときに各精糖会社が輸入したときの買い入れ価格を全部見てみますと、神戸精糖だけが異常に高い値段で購入してしまった。それが結果的に経営の悪化につながっていった。それがストレートに、労働者の責任かのように簡単に首を切るということは許せないことだと私は思うのです。同じ時期にずいぶんあちこちの精糖会社で労働紛争が起きておったわけでありますが、解雇の提案をした企業もいまは全部撤回をしています。神戸精糖だけが頑としてがんばっているという状況なんですね。
 そうして、もう一つ問題点を申し上げますと、これも国会で取り上げられたことでありますが、不当労働行為が神戸精糖で続発した当時に、いわゆる労務屋といいますか、よくあることなんですけれども、労使紛争を解決するということで乗り込んできて、結果的に組合つぶしを行う、こういうケースが間々あるのですね、近代国家と言われておる日本でも。そんな例は枚挙にいとまがないほどあるのでありますが、この神戸精糖で言いますと、当時、近代労研から役員が労務担当として派遣をされて問題になりました。
 お断りしておきますが、近代労研は、実は去年年末に一応表向きは解散をしているわけであります。そのときに、この近代労研の方から神戸精糖に派遣された役員の問題をめぐって労働界でもかなり問題になりまして、その当事者間で、ここにその和解書を持っているわけでありますが、遺憾なことであったということで全部和解のための合意書が策定されたわけです。この中身はここでは省略をいたしておきます。そうして、近代労研は表向きは解散されたことになっている。ところが、事実上近代労研の思想あるいはその業務というものが神戸精糖の中に生かされてきている。
 それはどういうことかというと、そのときの近代労研の最高責任者といいますか筆頭株主が、実は神戸精糖の会長になって乗り込んできているのですよ。当時、近代労研をめぐって国会でも問題になったのですが、その近代労研の筆頭株主が、鈴木社長のもう一つ上の会長になって乗り込んできている。いわば問題を起こした張本人が会長であり、合意書に調印をした張本人が社長であっていまの状態なんですから、恐らくその中身は推測していただけると思うのですね。
 さらにもう一歩突っ込んで申し上げますと、この近代労研の株主は、当時、去年の暮れに表向きは解散をしているのですよ、近代労研の株主は全員が丸紅の役員であります。いわば丸紅がみずからつくった近代労研で神戸精糖の労使問題を起こし、そして後始末と称して、その筆頭株主と丸紅の砂糖部長であった鈴木氏が社長として乗り込んでくる。そうしていまのような問題が起きてきている。これは一体、どう対処したらいいのか。
 労働省として、私のいまの質問を受けてどうお考えになりますか、お答えいただけますか。
#133
○吉本(実)政府委員 先生のただいまの、一つは、経営難の原因が相場の問題だとか、あるいは役員構成が丸紅並びに近代労研の方というような形でございます。率直に言って、私ども、この問題がなかなかむずかしいというのもまさにこういったところに原因があるのではないかと思いますので、そんな事実関係を十分調査しながら、何とか解決の糸口を見出してまいったらいかがか、こういうふうに思う次第でございます。
#134
○永井委員 こういう不当労働行為問題は、この春闘の時期に集中してくるのですよ。私の知る限りでもずいぶんあります。私が直接手がけた企業もずいぶんあります。いわば春闘の要求を提出した時点で会社側から分裂行動が始まったとか、悪い言葉で表現すれば、飲まして食わして、幹部を抱き込んでしまって組合を解散させるとか、いろいろなそういう悪質なケースもあるのですが、それらは主として、さっき審議官が言われましたように中小零細企業に多いのですね。しかし、天下の丸紅と言われておるような丸紅、そしてその系列下にある神戸精糖というれっきとした企業がこういう問題を起こしているわけでありますから、いまの局長の答弁で、これからさらに努力をしてもらわなくてはいけないと思うのでありますが、とりわけ国会のいままでの討議の経過もあり、モデルケースとしてひとつ指導してもらいたい。そうして、速やかに雇用不安が除かれ、安心して労働者が神戸精糖で働くことができ、そのことを通して神戸精糖そのものが立ち直ることができるように、ぜひお願いをしておきたいと思います。
 加えて、いま砂糖産業界は全部五大商社に系列化されています。ここにその資料も持っているわけでありますが、本当にびっくりしますね。三井物産、三菱商事、日商岩井、丸紅、住友商事、伊藤忠商事、大洋漁業、これだけに全部系列化されてしまった。これは最前、私が申し上げましたように、この砂糖産業を保護育成するための特例法の成立を受けてこういう系列化が進んできたことは否めない事実なんですね。国内産糖の保護あるいは国内価格の安定という大切な目標は持っているんですが、そのことが商社のつけ込むところとなってしまって、系列下におさめられて、結果的にどこかの企業の下請、孫請じゃありませんけれども、精糖会社そのものがいわば甘い汁、砂糖会社だから甘い汁が出ると思うのですが、甘い汁を吸い取られて労働者が痛められる、こういうことがあっては、政府としても不本意だろうと思います、この法律をつくったたてまえから言って。だから、モデルケースとしてひとつ徹底的に指導し、一日も早い解決がされるように強く求めて、次の質問に入っていきたいと思います。
 時間がありませんので、はしょって恐縮でありますが、春闘問題で一つ二つお聞きをしておきたいと思います。
 去年の春闘で、民間の賃金の相場が決まって、そして公共企業体に対して、民間賃金に準拠するというたてまえが貫かれて、仲裁裁定が出された、また人事院勧告も出された。しかし、その取り扱いは、御承知のとおり去年の臨時国会の終盤までもつれ込みました。政府が全部一律に議決案件として国会に上程するという、私から言えば、あえてそういう暴挙を行ったために解決がずれ込んだ。解決がずれ込んで困るのはその公共企業体で働いている労働者であり、人事院勧告で言えば公務員なんですね、国家公務員、地方公務員を含めて労働者が一番困っているわけであります。
 去年、私はこの同じ社労の委員会で、民間賃金に準拠すること、仲裁裁定や人事院勧告を尊重すること、一時間にわたって当時の藤尾労働大臣とやりとりをいたしました。そして、労働省の態度として、基本的に民間賃金準拠方式というものは変えない、そして、仲裁裁定や人事院勧告を尊重するのは当然なことであるということの答弁をいただいたのでありますが、結果として経過を見るならば、私から言えば、暴挙とも言えるような取り扱いがなされてきた。まして、つい最近では年度末手当について、政府が直接年度末手当の支給額を引き下げる、抑制するような内面指導を行ったことも問題になって、異例の与野党の国対委員長会談が何回か開かれる、政府からも文書で釈明文が出る、こういう状態があったわけですね。
 ことしはいま春闘の本番を迎えようとしておるのでありますが、よもや去年のようなことは新しい労働大臣はされないと思うのでありますが、労働大臣、いかがでございますか。
#135
○初村国務大臣 ときどきの政府の方針でいろいろと賃金問題が変わっていくということはいかがなものか。したがって、ことしの賃金ベースについては、やはり民間準拠というようなたてまえがありますよね、それに従ってどうこうというふうにあるんですよ。だから、私どもはやはりことしの賃金等についても、労使があくまでも円満に交渉をして自主解決をしていただくことが一番よろしい。したがって、民間の賃金に公共企業体、三公社五現業、そういうものが準じていくと思いますが、よもや去年のようなことは新しい大臣はしないだろうねというような質問でございますが、私はやはり法に従って、たとえば公労委に持っていって、公労委裁定が出れば、それを尊重してやらなければいけない。いつまでもぐずぐずするようなことはいたしたくないというのが私の気持ちでございます。
#136
○永井委員 労働大臣のその決意どおりに速やかに問題の処理を図ってもらいたいと思うのでありますが、先ほども同僚の池端議員から問題が提起されておりましたけれども、これは私の率直な感じですが、いままで春闘の前になると、労働者の労働条件を確保するために労働省が積極的にいろいろな意味で、よい意味で動いている動向というものがマスコミにも載ってくるのですけれども、残念ながら、ことしは一向にそういう記事はお目にかかることができないのですね。新聞記者が取材をしていないのか、あるいはそういう事実が存在しないのかわかりませんけれども、この春闘の段階を迎えたときには、だれよりも労働大臣の発言が新聞をにぎわすくらいの積極的な姿勢があってしかるべきではないか、これは私の率直な感じですから、まず申し上げておきます。
 そこで、ことしも公共企業体やあるいは公務員に関しては賃上げの原資はたしか一%程度しか組み込まれていないのですね。去年は一%の原資しか組み込まれていないから、結果的に、民間賃金に準拠するということで対処するにしても、予算上、資金上云々ということで議決案件に持ち込まれたという経緯が存在しているわけですね。そのことを承知しながら、きょうは大蔵省ここにおりませんけれども、依然として一%しか原資が計上されていない。これでは幾ら物価が安定化の方向をたどっているといっても、まさか一句以内におさまるほど物価の安定が望まれる条件はいまない、私はこう見ているわけでありますが、そういう一%というこの予算上の賃上げ分に対して、労働大臣はどうこれを受けとめておられるのか、あるいはなぜもっと後で問題が起こらないようになさろうとしなかったのか。
 時間がございませんから詳しいことを申し上げるわけにいきませんけれども、たとえばもう一つつけ加えて言うなら、民間の場合なら団体交渉で結論が出ればそれで終わり、公共企業体で言えば、団体交渉でまず有額回答を示してもらうことである。去年の私の質問に対して労働省は、有額回答が最近は出てくるようになった、前進をしてきた、こういうふうに答弁で評価されているわけでありますが、ことしもまず有額回答を出してもらうこと、しかもそれが積極的な有額回答でなければいかぬ。そうして、仮にそこで団体交渉がまとまらなかった場合に公労委へ調停申請をする。公労委が調停を出す。場合によっては仲裁裁定を出す。本来そこで問題の決着がつけられなくてはいけないのでありますが、場合によって去年のように国会まで持ち込まれる。こうなってくると、その場所には労使の力は全く及ばないわけですね。及ばないとなってくると、労働大臣の積極的なそれに対する対応というものが、労使の及ばない力関係にかわるものとしてなされなければならない。
 ここのところの大臣の見解、決意を聞かせていただきたいと思います。
#137
○初村国務大臣 原資を一%出して、それでよもやどうこうという話がありまして、なぜそのときに労働大臣として発言をしなかったかというようなことがまず冒頭にありました。私は総理府総務長官がその担当でございまして、一%の予算を五十七年度に組むときに総務長官が発言した後で手を挙げまして、一%では良好なる労使関係は保たれませんよ、将来必ずこれは問題になりますよということを特に発言を求めてちゃんとしております。
 第二番目は、公労委に持っていった場合に、それが仲裁裁定が出るわけですね。その間、労働組合側としては取りつく島が労働大臣しかないじゃないか、労働大臣は積極的にそういう点を何とか努力する考えはないのかということでございますが、これはできるだけ労使であくまでも円満に話し合っていくということが主体でございますから、そういう考え方で、ここで公式に申し上げられませんけれども、できるだけ私は私なりに努力していきたい、こういうふうに考えております。
#138
○永井委員 労働大臣のそういう閣議における発言あるいは予算編成時における発言が実体的に生きてくるようにやってもらうことが労働大臣のこれからの仕事だと私は思っておるのですよ。極端に言えば労働大臣しか閣僚の中で頼るところはないのだから、そこはひとつふんどしを締め直してやっていただきたいことを申し上げます。
 そしてさらに、仲裁裁定が出された時点で、去年のようにもともと一%しか原資を組まぬでおって、予算上、資金上支出が困難だということで、公労法の十六条適用だということで国会に問題を持ち込む。これでは公労委の権威がなくなってしまう。ましてや、労使という立場をそれぞれ代表されている委員はそれぞれのよって立つ基盤がありますけれども、公益委員の立場にすれば、おれらを一体何と思っているんだということになると思うのです。なぜならば仲裁裁定は公益委員が出すのですから。だからこの公益委員の権威にかけても、仲裁裁定が出されたら出された時点で問題の処理を行ってしまう。そのときにでっかく大臣の発言が新聞やテレビで報道されるぐらいの決意をもって対処してください。よろしゅうございますか。大臣、決意だけ一言。
#139
○初村国務大臣 やはりこれは仲裁裁定が出たならばそれを守らなければならないという規定があるわけですから、規定を守って努力をいたします。
#140
○永井委員 時間がなくなってきましたので、この問題を引き続き追っかけるわけにいきませんので、いまの大臣の決意で、これを全面的に信頼をしたい、そういう私の強い期待を込めて一応この問題については終わっておきます。
 最後に、最前の池端議員の質問の中でも、地域最賃によって労働条件の底上げをという労政局長の答弁がありました。私はそのことに関連をしてちょっと申し上げてみたいと思うのであります。
 私たちは全国一律最賃制というものを求めている、なかなかそれが法制化されない、こういう問題がありますけれども、しかし御指摘のように、地域にそれぞれ地域の実情に基づいた最賃制がしかれておりまして、確かにこのことが全体の労働者の労働条件の底上げになってきていることは間違いないのであります。
 ところが、それが全面的に守られなかったらどうなるのか。私はいままでもこの社労でパート問題を取り上げて質問をしたことがあるのですが、いまパート労働者、いわゆるアルバイト、パートという労働力人口は物すごくふえてきていているわけです。あえてきょうはこの中身については申し上げませんけれども、まして婦人労働者というのはずいぶんパートの面ではふえてきているわけです。そういう中で、本来の常用労働者よりもそういうパート労働者などの労働条件を守っていかなければいかぬ、それが守れないようでは全体の労働条件を向上さすことはできぬ、こういう現実に置かれておると思うのです。
 ところが、これはおとといの新聞の切り抜きでありますが、これは全労働省労働組合兵庫支部、神戸職業安定所内、この労働省の職員でつくっている組合の調査によって発表された数字でありますけれども、まず一つはパートの人たちの就職のルートというのは職安を通すものはほとんどいない。新聞のチラシとか縁故、こういうもので就職していくんですが、最低賃金すれすれの時間給というのがきわめて多い。すれすれ、法律に抵触していないと言えばそれまでだけれども。そして一日の労働時間は五一%の人が八時間の勤務についている。常用労働者と全く変わっていない。一週間の労働日数は五日、六日というのが八〇%、ほとんどもう常勤労働者と変わってないのですよ。
 そういう中で、この地域最賃が完全に守られておればいいのですが、たまたまちょっと私の目の届く範囲で調べたところによると、ここに二十ほどの事業所を調べてみたのでありますが、この事業所で、決められた地域最低賃金を守っていない企業がこの二十ほどの中に四つも出てまいりました。そこの労働者に聞くと、その最低賃金制が幾らになっているかということは知らしてもらったことがない、雇用主が故意に知らせないということもあるんでしょうね。知らせてもらっていない、あるいはそういうものが広報として出されているのを見たことがないという労働者がかなりありました。もう一つは、知っているんだけれどもこの地域最賃に到達していないことはおかしいと言えば、あしたから来てもらわなくてもいいということになっては困ると、パートであるために。ここが大事なところですよ。だから言いたいけれども言えない。だからといっていまの仕事になれているからこのままこの職場でパートを続けたい。そういう中で、実態はこの最賃が踏みにじられているというケースがあるのですよ。
 これを調べてみましたら、一番原因はどこかということはわかりました。労働基準監督署なら労働基準監督署の監督官が少な過ぎる。労働基準監督署へ行って私調べてみたのですよ。いろいろ調べてみましたら、手が回らぬことは事実です。一つの労働基準監督署に三人や四人の労働基準監督官で一体何ができますか、正直申し上げて。私の調べた高砂労働基準監督署でも一万二千を超える事業所を抱えているのです。一万二千を超える事業所に監督の目は届かない。残念だけれども全部を掌握することはなかなかできないという実態がわかってまいりました。
 私は、これは労働省を責めるというよりも、このパートなんかの本来最賃制を一番最初に守ってもらわなくてはいけない一番底辺に置かれている労働者の労働条件を守るための労働行政のあり方として余りにも問題ではないかと思いますので、どうやって地域最賃を守らせるか、守らせるために労働省の機関、組織がいまのままで果たしてよいのかどうなのか、お答えをいただきたいと思います。
#141
○石井(甲)政府委員 最低賃金につきましては、御指摘のように毎年地域最賃あるいは産業別最賃を設定いたしまして、特に地域別最賃につきましては各都道府県基準局長が決定するということになっております。それが公労使三者構成による審議会方式をとっておりますが、そこで問題は、これが履行されないという面についての問題であろうかと思います。
 現在私ども調べてまいりましたところが、五十六年における監督結果によりますと、最低賃金額に満たない賃金を支払っている事業所が一七%ということでありまして、まことにこれは大変なことであろうと考えております。この履行確保につきましては、これまでも特に十一月下旬に最低賃金周知旬間、大体十一月になりますと賃金が改定されるものですから、そこを周知旬間ということで一つの行政的な活動を行っているわけでありますが、それをさらに徹底をさせる、あるいは都道府県の知事部局と連絡をとってこの周知を図るというようなことをさらに徹底するというようなことにいたしたいと思います。また、特に労働基準局あるいは監督署にいわゆる基準協会という事業主集団の一つの団体がございますので、そこを通じても徹底的に周知徹底を図るという活動を展開をいたしたいと思います。当然のことながら、監督によりまして最低賃金に満たない、つまり違反事業所につきましては、是正勧告をいたしまして、これまでも厳正に改定をさせましたわけですが、これもさらに徹底をいたしたいというふうに考えております。
 それからもう一つは、何分にも監督官の数が少ないではないかということでございます。私どもも、先生御存じのように定員削減という大きなあらしが吹いておりまして、行政全体としても監督官以外を含めまして大変な定員削減を実際に行っているわけでありますが、ただ監督官につきましては、そういう基準行政全体の定員の減少の中でもいろいろやりくりをいたしまして、機械化その他をいたしまして監督官だけはふやしているという現状でございますので、これからもできるだけその面に沿って監督官の増員を確保していきたいというふうに考えております。
#142
○永井委員 時間が来ましたのでおきますが、不当労働行為の絶滅、春闘の闘いの中で労働者の労働条件が守られるように、私幾つかの問題点をきょうは取り上げたわけでありますが、ひとつ労働省、大臣を先頭に労働省の存在価値がより高まっていくように、労働者からも信頼されるような労働行政をしてもらうために、今度新しく大臣になられた初村さん、ぜひがんばっていただきますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
#143
○唐沢委員長 次に、草川昭三君。
#144
○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。
 最初に春闘問題、次に中小零細に働く、特に新聞配達にまつわります諸問題についてお伺いをしていきたい、こう思います。
 新聞等で私どもも拝見するわけでありますけれども、春の恒例のベースアップ問題もいよいよ大詰めになってきておるように伺うわけでありますが、景気というものから見ますと、非常に先行きが不安である、あるいは伸び悩みがある。あるいは企業側の方も企業収益を背景になかなか厳しい春闘だと伝えられておるようでございます。いずれにいたしましても、わが国の賃金水準については、労使関係が基盤ではございますが、労働省としても重大な関心を持ってみえることは事実だと思うのですけれども、問題は、経済の成長率が非常に低い中での賃金引き上げということについては、労働側の方もかねて来より政策要求あるいは制度要求という形で勤労者の生活を守るといういろいろな訴えをしておるわけでございます。その意味では減税についての対応というものが非常に重要ではなかったか、こう思うのです。先ほどもこの減税問題についての御意見があったと思うのですが、今次予算案の審議の中で、昨日、参議院の方でこれは成立をしたわけでございますが、労働大臣として、減税問題についてどのようなスタンスで閣議の中に臨んでおみえになったのか、基本的な問題としてひとつその姿勢をお伺いしたい、こう思います。
#145
○初村国務大臣 減税問題について、今度の国会で各党が国対委員長会談等で取り上げて、結論は、予算委員会が済んでから衆議院の大蔵委員会で小委員会をつくって、その結論に政府が従う、こういうことになっておるわけであります。私は、労働大臣に就任して以来、現行課税最低限が長期にわたって固定され、しかも可処分所得がずっとそのままになっておるということはいかがなものであろうか、これは近い将来においてやはり考えなければいけない。当初、五十七年度予算編成も済んでおったものですから、五十七年度の減税は無理であってでも、五十八年度には考えざるを得ない、したがってその環境づくりに労働大臣として非常に関心を持っておるから、その環境づくりには努力をいたしたいというのが私の気持ちであります。
#146
○草川委員 五十八年度をにらみながら、あるいは五十七年でもぜひというお立場でがんばっていただいておると思うのですけれども、問題は、これからいよいよ大蔵の小委員会で各党の知恵を出し合うということになるわけでございますし、いずれにしても、最終的には大蔵の方の言質をとっていくということになると思うので、一層の、ひとついまの延長線の発言をお願いを申し上げたいと思うわけであります。
 二番目に、もう一つの問題は、今度の労働組合側の主張なんかを見ておりましても特徴的なのは、外需依存型の経済からの転換ということをそれぞれの賃金白書等でも触れておるわけでありますが、国際経済との関連を重視をしてみずからの賃金問題も考えなければいけないというのは、これは非常にりっぱなことでもございますし、いいことではないだろうか。いいことということよりも、それだけ問題が深刻であるというふうに言わざるを得ないと私は思うのでありますけれども、貿易摩擦問題で、最近新聞でも連日この問題が出ておるわけでありますが、ごく最近、ヨーロッパの労働組合の方あるいは国際的な労働組合の関係でアメリカもあるわけでございますが、日本の労働者の労働条件というものが少し過酷ではないだろうか。ヨーロッパに比べると、たとえば労働時間が長い、あるいは有給休暇の消化率が悪い、あるいは残業時間が大きいというところの、いわゆる公正な労働基準というのを設定して同じ条件で働かない限り、日本の方の輸出産業の方が強いというような国際批判が上がってきておるように私ども承るわけですが、この点になりますと、これは労働省としてもちょっと放置ができない、間違っておるとするならば正しいPRが必要でありますし、また、意見交換をする点はしなければいけませんし、労働省としても、労働時間問題等については過去何回かいろんな働きかけをしておりますから、そのことは私認めますが、今日的なこの貿易摩擦の問題点の中からどのような対応を立てられるのか、お伺いしたいと思います。
#147
○吉本(実)政府委員 ただいま御指摘のような、欧州金属労連といったような労働組合の方々、そのほかヨーロッパ並びにアメリカ等の労働組合の方々から、最近におきまして、いろいろ貿易摩擦等のことに関連してわが国に対する批判も高まっているということは確かに否定できない点でございます。このことに関しましては、かねがね私どももそのようなことのないようにと思いながらやっておりますが、その問題解決ということは、先生いま御指摘のように、わが国の雇用なり賃金慣行等の労働事情というものをよく理解していただくということが一番肝心であろうと思いますし、また、それによって、従来もいろいろと御理解を得ながら進めてきたところでございますので、これからもそういった点をさらに進めたいと思っておる次第でございます。
 特に国際交流の事業等を通じてそういった問題をやるとか、あるいは私どものいろんな、労働組合も入った政労使の三者構成での多国籍企業労働問題連絡会議というものがございますが、そういったようなところでいろいろ意見交換しながら、その合意に基づいて諸外国の労働組合なり経営者にも理解を深めさせていく、こういうふうにしてまいっているわけでございますし、今後ともそういった点を十分徹底さしてまいりたいというふうに思います。
#148
○草川委員 労働省はOECDにも労働アタッシェを送っておられると思いますし、ILOにも見えるわけでありますし、西ドイツにもお見えになると思うのですが、そういう意味での労働外交というのですか、国際外交というものの重要性は、役所は役所としてもう少し、予算をどのように持つかという問題もあるわけですが、積極的なPRを展開しないといけないと思いますね。その点でのセンター、日本の労働事情を紹介するセンターというものが在外公館に行ってもないわけですよね。私ども非常に残念に思うので、そういう意味で、いま局長がおっしゃったようなことを現実的に目で見るとかPRをするような文書をぜひ在外公館なり日本を紹介するセンターには設置をすべきであるということを、この際付随して私は申し上げておきたいというように思います。
 そこで、問題はさらに深刻化していくわけでございますが、外需依存型の日本経済の体質を内需拡大にしなければいけないということは、ほぼ国民的な合意ができておるわけですけれども、現実にいま労働省がつき合っておるところの労働組合というのはやはり大手なんですよね、総評、同盟、中立を問わず。ここらあたりは全部、労働力も資金も、輸出産業が中心になっておるわけであります。内需ということになりますと、勢い建設関係ということになりますし、それから、あとは公共投資ということになります。そのほか、卸売だとか小売業だとかサービス業だとかいうことになりますが、ここいらは労働生産性というのは非常に低いわけです。零細企業の低い労働条件というものをどのように押し上げていくか、これを押し上げない限りは内需拡大ということにはつながらぬわけでありますから、非常にむずかしい問題になってきておるわけです。
 そこで、実は公共企業体等労働委員会の中立委員をやられております金子さんなんかの論文ですか、つい最近、新聞では、金子さんも個人的な見解とは言いながら、大幅賃上げをしない限りは内需刺激にならぬというような御意見を出し、経営者側の方からはかなり痛烈な批判が出ておるわけですが、私は非常に一つの検討すべき御見解ではないだろうか、こう思っておるわけです。
 その点について、労働省の方はどのようにお考えになっておられるのか、お伺いしたいと思います。
#149
○吉本(実)政府委員 金子美雄先生が三月十五日の朝日新聞の紙上で記者のインタビューに答えて述べておちれるわけでございますが、それは一人の賃金問題研究家という個人的立場で、一般論としてことしの賃上げについて述べられたもの、こういうように理解している次第でございます。
#150
○草川委員 一般論、それはそれでいいのですけれども、労働省として、紹介をしておるのではなくて、これは大臣に聞いた方がいいと思うのですが、私は一つのりっぱな御意見だと思うのですよ、私のいま前段で申し上げたことについて。ここが非常に重要な点ですから、紹介だけではなくて、見解を賜りたいと思うのです。
#151
○初村国務大臣 私は人柄を余りよく知らないわけでありますが、後でどういう方なんだと聞いたのです。日本でも非常に権威のある賃金関係の研究者であるということを聞きまして、なるほどなあ、そういう方の見解であるなあと、ただ感心をしております。決して中傷しようとは思いません。したがって、そういう方が公益委員としておりますから、適当な意見を吐いて、将来の日本の労働賃金については相当な貢献度があらわれるのじゃなかろうか、かように考えております。
#152
○草川委員 いまの大臣の見解は正直で非常に結構なんですが、われわれは本当は労働大臣にあのようなことを言ってもらいたいわけです。そこにまさしく日本の労働大臣のあり方があると思いますし、これは最後に締めくくりで申し上げたいと思うのですが、西ドイツの首相あたりは労使を積極的に私宅に呼んであっせんをするとか、労使の問題でございますからもちろん表ではあれですけれども、労働省のあり方というのはそのようなところに非常に国民的な信頼感というものがわくのではないだろうか。これは個人で結構ですから、労働大臣個人として、せっかく金子さんがあのようなことをおっしゃっておるわけですから、大臣は感心しているだけではなくて、自分も同列でぜひ対処をしていただきたいということを、これも私の要望ですけれども、お聞き願いたいと思います。
 そこで、賃金問題の最後になりますけれども、実は中小零細企業は、労働省の統計から言いますと五人から二十九人、三十人以下と、千人とか五千人とか一万人との間の給与の格差というものがますます広がっているのではないだろうかという心配を持つわけであります。ここが先ほど来から私が指摘いたしております内需拡大につながらないという問題なのでございますけれども、労働省の方の統計で御報告願いたいのは、五十年からでもいいのですけれども、ごく大ざっぱなところで、三十人以下の企業の現金給与総額の対前年度増加率の年次別、それと三十人以上の企業との比較を簡単にしていただきたいと思うのですが、よろしゅうございますか、答えられますか。もしあれなら私の方が言いますから、それで言っていただいてもいいのですが。
#153
○江田説明員 三十人以下の規模の賃金でございますが、これは私どもは、毎月勤労統計調査でとっております。これによりますと、五人以上二十九人までの規模でございますが、五十年の平均で十三万三千四百三十六円、五百人以上に対しまして約六六%ばかりというような状況になっております。それから五十六年でございますが、五十六年は、五人から二十九人のところが二十万九百六十七円に対しまして五百人以上は三十二万八千五百三十八円、率は余りその間大きく変わっていないという状況でございます。
#154
○草川委員 同じ数字ですけれども、これも毎月勤労統計の資料でございます。私、これは経済企画庁の方からもらってきた数字ですが、現金給与の総額だけの対前年度比率を見ますと、五人から二十九人のところは、たとえば昭和五十年度のときには一三・一%上がっておるのです。三十人以上の方は一二・四でかえって低いのです。これは中小企業の方が人が少ないものですから高く上げたということですが、それがずっと伸びまして、昭和五十五年度になりますと三十人以上の場合は六・六上がっておるのです。ところが、三十人以下は五・九より上がりません。それが五十六年になりますと、三十人以上は六・四上がっているのに、三十人以下は五・二、すなわち五人から二十九人までのところですが、これがうんと減ってまいりまして、五十七年の一月は、三十人以上は五・四上がるのですけれども、五人から二十九人の場合は三・八というように、五人から二十九人の方の伸び率が非常に低くなってきておるわけです。これは非常に重要な点なのですね。
 もう一つ、これも最後にもう一回念を押そうと思うのですが、いまのうちに言っておきますけれども、大手の会社が賃上げをやりますと、どうしてもその賃上げ原資を合理化で消化をしなければなりませんから、下請単価の切り下げということになるのですよ。その下請といいましても二次、三次、四次と来るわけですから、この間で勢い単価が切り下げられまして、五人から二十九人までのところはもう賃上げがほとんど不可能になってきておるわけです。ですから、今次賃上げが終わったら、これは労働大臣にお願いしたいのですが、通産省だとか産業省庁に、賃上げは結構だけれども下請にそのしわを寄せるなということだけは、ぜひ閣議で申し入れをしてもらいたいと私は思うのです。これは言うところは労働省しかないのです。中小企業庁もありますが、最後はパートタイマーのおばさんのところに行くとか、後ほど申し上げますけれども、そういうことになってきますから、この点だけは労働大臣、ひとつ約束をしてもらいたいと思うのですが、どうでしょう。
#155
○初村国務大臣 そういうことを規定外発言として発言して善処したいと思います。
#156
○草川委員 それはぜひお願いを申し上げたいと思うのです。
 そこで、きょうは、その五人から二十九人までの一番零細な事業者の方々の例を少し申し上げておきたいのですが、たくさんの零細企業があるわけですけれども、その中でも新聞を配達してみえる労働者の問題というのを取り上げてみたいと思うのです。これは、使用者側は新聞販売店ということになります。そしてラインとしては新聞を発行する発行本社、日本で言うところの一流の各新聞社ということになるわけであります。
 きょうは公正取引委員会にも来ていただいておるわけでございますが、私ども、新聞は毎朝自宅で見るわけであります。布団の中で新聞が手に入るというのは日本だけで、サービスが非常にいいわけでありますから、これは感謝をしなければなりません。日本の新聞というのは、情報が非常にりっぱでありますし、過度というぐらいに情報が多いわけです。社説等も、われわれが尊敬をするりっぱな社説が書いてあるわけですが、問題は、その販売ルートということになりますと、恐ろしく、もう誇りもくそも何もなく、かなりひどい販売合戦がやられておるわけであります。いわゆるなべかま合戦、あるいはトラブルの非常に多い販売軍団と称する特殊なオルグというのですか販売部隊が、流通機構の中でかなり露骨なことをしておるというので問題があるわけでありますが、結局それのしわが販売店に寄せられてくる。同時に、その販売店で働くところの従業員に劣悪な労働条件を強いておるのではないだろうか。だから、販売店労働者の実情は労働省でカバーをする以外にないと私は思うのです。それはもう少し労働省としても実態を調べていただいて対応を立てていただきたいという趣旨でいまから申し上げるわけでございます。
 まず公正取引委員会にお伺いをしますけれども、公取は今日まで、新聞業界の不公正な取引の是正あるいは販売、流通の中で景品表示法違反での排除命令等もたくさん出しておるわけでございますが、過去どのような対応を立ててきておるのか、まずお伺いしたいと思います。
#157
○植木説明員 お答えいたします。
 公正取引委員会は、先生がおっしゃいますように、新聞の発行本社が販売店に新聞を流しますことにつきまして非常に不公正な取引方法があるということでございまして、過去不公正な取引方法ということで、たとえば押し紙というものを指定しておりますし、あるいは景品表示法に基づきまして拡材を供与するということを不当なことであるとして禁止しているわけでございます。
 それで、先生御指摘のように、こういうような行為がなかなか後を絶たないということがございますので、私どもといたしましては、一昨年から販売店さんにつきまして調査を行いまして、これは四千四百六十の販売店に調査票を送ったわけでございますが、そのうちの千三百九十一、約三一%でございますが、この回答がございました。
 それによりますと、拡材というのは日常茶飯事に行われているというような回答もございますし、それから押し紙につきましても、販売店の注文どおりに新聞が送付されてくるというのは六八%ほどございますが、本社が決定して、注文した以上の部数を送ってくるというようなのが三一%ほどもございます。さらに、残紙、注文部数以上の紙が残るというのもかなりございましたわけで、それで、私どもとしましては、昨年の二月に発行本社を呼びまして、このような事態は非常に嘆かわしいことであるので抜本的な改善策をとってほしいということを申し入れた次第でございます。
 それで発行本社は、私どもの申し入れもあったということでございまして、昨年の中ごろから新聞の部数増減管理センターというのをつくって、そのように新聞の部数がなぜふえたか、なぜ減ったか、ふえた場合にはこれは違反行為でふえたのじゃないのかというようなことを調べて、不当行為を是正しようというようなことを行い始められまして、現在六十八支部があるわけでございますが、その中の六十三につきまして増減管理センターというのが一応できておりまして、現在動き出しましたのが五十くらいでございます。
 私どもは、この発行本社さんの動きで一体どういうことになるのか、不当行為が是正されるかどうかということを注目しているわけでございますが、私どもとしましても、こういう動きを促進するという趣旨で、たとえば具体的な違反行為がありましたら警告などを行うという措置をとることにしておりますし、そのように今後もいたしていきたいと思っている次第でございます。
#158
○草川委員 きょうは公取の方から植木取引課長がお見えになっておられますので少しお伺いをしたいわけですが、その前に、新聞発行本社に対していわゆる役所はどこが一番近いのかということで、問題は発行本社でございますから、発行本社に対する対応はどこの役所が近いのかといっていろいろとわれわれお伺いをするわけですが、直接的な監督というのは余りないのですね。それは当然のことながら新聞は公正自由でございますし、基本的な言論機関でございますから、役所の統括というのですか、統制のもとに入ること自身がおかしいわけでありますから、私どももその点は非常に慎重にこれからも対応をして質問したいと思うのですが、それにしても、私は何回か申し上げますけれども、一番末端の零細な労働者というものあるいは末端の零細な販売店というものを泣かせることの正当性にはそれはならぬわけでありますから、その意味でちょっと議論の前に、どこの官庁が一番新聞社に対して物が言えるのか。それは新聞の内容じゃないのですよ。何回か言いますけれども、一番末端のエンドの労働者の保護を申し入れる場合にどこの役所が一番近いのかということで、きょうここに文部省がお見えになっておられますので、文部省とのかかわり合い、それから通産省とのかかわり合い、それから強いて言うならば労働省とのかかわり合い、こういうことになりますが、それは基準局になると思うので、これは後で申し上げますから、通産省とそれから文部省で、新聞社とのかかわり合いのルートというのですか、ラインは一体何か、限界は何か、それをまずお伺いしておきたいと思います。
#159
○石井説明員 お答えいたします。
 私の方からお答えした方が適当かどうかわかりませんけれども、先生いまお話しされましたように、新聞社につきましては会社法人でございますし、ある特定の官庁が総括的に所管するということにはなってないと思いますが、活動の態様に応じましてそれぞれ所管省庁が出てくると思います。私ども文化庁といたしましては社団法人の日本新聞協会を所管しているわけでございます。
 新聞協会につきましては、新聞、通信、放送の倫理水準の向上を図るということで、主として新聞界に共通いたします編集面、報道内容面に関する活動を行うことを目的といたしまして昭和二十一年に設立されました社団法人でございます。現在全国の新聞社百十五社が加盟いたしております。そういうことでございますが、主として新聞の倫理水準の向上ということから私どもはこの社団法人に関係を持っております。
#160
○江崎説明員 私どもと新聞関係との関係でございますが、新聞発行本社との関係は、先生が御指摘になりましたような発行本社の競争あるいはそれから出てくるいろいろな弊害について直接の権限はございませんでして、行政指導的なことはどうかということですが、これも相手の御協力を得て行政指導というのは行われるわけですが、新聞発行本社と私どもの関係というのは必ずしもそういう状況にない状況でございます。
 新聞販売協会というのは私ども所管しておりまして、そちらの方からいろいろお伺いしました実情等につきまして、いまお話が出ましたが新聞協会の方にはいろいろ御連絡するというルートはできておりますが、まあその程度にとどまっておるという状況でございます。
#161
○草川委員 いま文部省と通産省の方のお話を聞き、また過去の国会でのいろいろな質疑なんかを聞いておりますと、どっちにしても私がこれから指摘をしようとすることを強く業界に反映できるのはやはり公取しかなくなってくるわけですよ。個別の労働条件の問題については基準局からまたやっていただくわけですけれども、また、公取も一つの事件が発生をしないと縁がないわけでありますから、私、これは非常に盲点の問題ではないか、こう思うのです。
 じゃ一体なぜ新聞販売店がこのような過当競争をしてなべかまのような――なべかま実際持っておりませんね。いまはデジタル時計だとか毛布だとかかなり高額な添付なんかをしてトラブルが起きているわけでありますけれども、乱売合戦という意味で俗称なべかまという言葉を使うわけでありますけれども、非常に問題があるわけです。そこでそれをずっと追及をしていきますと、やはりABC協会というものが出てくるわけです。これはいわゆる広告料金を決める場合に発行部数がどのようになっているのかという一種の統計をとる団体があるわけでございますけれども、ABCレポートというものとのかかわり合いが、実は新聞の押し紙がたくさん出てくる。とにかくたくさん印刷をすることによって、その量に応じて広告料というものは決まるわけですから、勢い売れても売れなくてもある一定のものは発行する。そしてとにかく押し売りというのですか、押し紙というものが出てくる。
 そこで販売店は泣く泣く押し紙を承知の上店を経営する。残った分だけが残紙ということになりますが、残紙の負担分がえらくて販売店が倒産をするという例がある。消化ができない、能力のない販売店に対しては、親会社の方が新しい販売店を近接地域に準備をする。そこである日突然その販売店は契約解除になり、新しい販売店に経営が移る。これがこわいものですから、販売店はなかなか正直なデータを公取の調査にも出していないという問題も一方ではここで出てくるわけでございます。それがいま六八%の押し紙の数字であり、あるいは本社からは注文以上のものが出るという三一%になる。これを合わせた方がいいのかどうか、いろいろな意見がありますけれども、とにかく九割以上の方々は、率直なことを申し上げて、実際読者の方から集金をしてくる紙以上のものを店頭に何らかの形で引き受けておるということを言わざるを得ないと私は思うのです。これが堂々と親会社に対して文句が言えないというのは、親会社の方が一方的な契約の力を持っておりますから、能力なしと断定をするならば新しい店を選ぶという力を持っておりますから、これは公取の方にもこの点についての意見を聞かなければいけないところでありますけれども、非常に問題があるわけであります。
 こういうABCレポートというのは非常に問題だと私は思うのですが、ABCレポートというものに対して公取なり通産省の商務・サービス産業室というものは影響力を持つのかどうか、二つの省からお伺いしたいと思います。
#162
○植木説明員 お尋ねの点でございますが、私どもとしましては、ABCに載る部数でございますね、これがどうなるかということにつきましては一切タッチしておりません。
#163
○江崎説明員 ABC協会、この団体の性格でございますけれども、これは広告の媒体であります新聞ですとか雑誌というものの正確な部数を調査いたしまして、これを公表することによって広告とか宣伝料の合理化に役立てようという団体でございまして、この団体は私どもが所管しております。
#164
○草川委員 そうすると、これは通産で所管をしておるというならば、通産の役割りはここだと私は思うのですね。実はABCレポートによって広告料金が決まるわけですから、ここの部数が正確であれば問題がないわけですよ。しかし、ここのABCレポートというもの、これは社団法人としての公益性というのが一応あるわけでありますから、正しい実態を評価することが大切だと思うのですが、たまたまABCレポートというものが去年の八月からでございますか、全国の四十七都市において口座別、すなわち店別、銘柄別の部数報告を行うというような指導をしておるようであります。これは一見非常に明らかなようですけれども、販売店にしてみれば、手の内をお互いに明らかにすることになりますから、これはもろ刃のやいばというのですか、いい面で言うならば確かに積極的な是正にはなりますけれども、逆に言うならば強者の論理で弱いところをつぶすとか、あるいは弱い力があるならばほかの方法でやるとか、片一方では拡張の軍団と言われる拡張軍団が依然として残っているわけです。この拡張軍団というのは、増減センターをつくったって、いまでもある地域においては、トラックが行く、そしてそのトラックの上には山のようにいろいろな添付する商品を積んでいく。そしてその後に数台の軍団、オルガナイザーというのがいるわけですよ。これが弱い地区へ一斉に行きますと、一日で二百部、三百部というのを落として、その軍団を派遣した特定の会社の本社の新聞というのが半年とか一年契約でやられる、こういうわけでありますから、その軍団が押し寄せたところの店主というのはもうつぶれてしまうわけですよ。だからそこで働く新聞配達の従業員にしわが寄るという理屈になるわけでありますけれども、このABCレポートのあり方について通産省はいま一度点検をし直してもらいたい。
 たとえば東京中日という新聞がありますけれども、ここは全く正直な数を、お客さんからお金をいただく部数だけを報告した、こういうわけですね。そうしたらこのABC協会は、いや君のところは、逆に言うならばもっとたくさん売れておるにもかかわらず低い数字を報告したというので、認証保留という制裁をしておるわけです。認証しないわけですよ。君のところは神奈川県では何部売れておるということを協会が認証しない。ということになりますと、広告主との間でいろいろなトラブルがあるという、これは逆な現象なんですね。多過ぎてもいけない、少な過ぎてもいけないわけです。ここの場合には正直なことを言ったがゆえに認証が保留をされておるという一つの例であるわけです。
 ABCレポート、社団法人としての公益性が議論をされておるわけでありますけれども、このレポートは一体どうなっていくのか。大変な権限を持つ協会ということになるのですが、通産省は今後このABCに対する対応をどのように考えられますか、お伺いしたいと思います。
#165
○江崎説明員 このレポートのあり方につきまして、実は昨年五月でございますが、発表されております数字の中に、これは各家庭に配達された新聞の部数の合計であるというような印象を与えるという御指摘が当時ございまして、その後私どもABC協会を指導いたしまして、これは発行本社が販売店に売り渡した部数の統計であるということをむしろレポートに明記するようにという指導をいたしました。実は先生御指摘のように販売店から各家庭に配達されるものの合計がとれれば一番いいわけでございますが、これは全国に非常にたくさんございます販売店の集計が事実上非常にむずかしいということで、むしろ誤解を与えないようなことを明記をするということでレポートの数字を受け取っていただくというふうに指導したところでございます。
 今後も調査の仕方その他につきまして、このレポートが発行本社の競争をあおることがないようにわれわれとしても十分指導してまいりたいと考えております。
#166
○草川委員 簡単にこの協会の動きを見ることなく、事の非常に深いレポートを発行することになるわけですから、ぜひ慎重な対応をしていただきたいと思います。
 これは前に聞けばよかったかもわかりませんけれども、なぜこのレポートがこわいのかということは、結局いまの新聞社の収入の中で新聞発行の収益、売り上げと広告収入との割合のバランスが崩れたからこそ問題があると思うのです。
 これは公取にお伺いしますが、現在の平均的な数字でいいですから、広告収入と販売収入との比率はどのようになっておりますか。
#167
○植木説明員 御指摘の点でございますけれども、これは新聞協会さんがお調べになって発表されている資料でございますが、まず五十五年のところまで推定という数字が出ております。これによりますと、新聞の販売収入が四八・七%、広告収入が四〇・九%、その他の収入、これは出版とか事業の収入でございますが、それが一〇・四%ということでございます。
 この数字は若干年によって変動するようでございますが、それほど大きな変動はないように思われます。たとえばその前年の五十四年について見ますと、販売収入が四七・九%、広告収入が四一・七%、それからその他の収入が一〇・四%、これは同じでございます。そのようになっております。
#168
○草川委員 いずれにいたしましても、広告収入が新聞社の収入に非常に大きいだけに、このABCレポートというものが重大な役割りを果たすことになるわけでありますし、やはりいまのままでいきますと大きいところが勝つわけですよ。いま宇宙時代になりまして、やがて放送衛星が打ち上がる、あるいはテレビも文字多重時代になりました。文字多重時代になりますと、自分の好きなチャンネルの中から任意に株式であろうとスポーツであろうと取捨選択ができる。しかもそれをコピーできる。だから、自分の家でやがては新聞というものが手に入る時代になるわけですよ。そういう時代になりますと、いまのように新聞販売店が競争をしておるとするならば、あるいはまた新聞販売店に競争させるような営業政策を新聞社の販売局がやっておるとするならば、これは自滅行為につながることは間違いはないと思うのです。新聞はやはり新聞の社説で、あるいは新聞社のイデオロギーで、あるいは新聞社の持つ性格で読者に購入を求める、こういう時代が来ておるので、それを忘れる限り、せっかく世界に誇るべき新聞をつくっても私はだめだと思うので、これはとりあえずは通産省の指導と、公取は過当競争防止の協議会をつくれということを言い、新聞社の間でも過当競争防止の協議会をつくっておるわけでありますから、これを徹底的に私はやっていく以外に解決はないと思うのです。
 そういう意味で、公取から今後の指導についていま一度決意をお聞かせ願いたいと思います。
#169
○植木説明員 先ほどもお答えいたしましたが、私どもといたしましては、新聞協会と申しますか新聞協会の中にあります新聞の公正取引協議会に抜本的な対策を講ずるようにということを申し入れておりまして、さらに個々の違反行為があれば取り締まる。それから、増減管理センターはきちんとやっていただきたいということで再三再四要望しておりまして、その線に沿ってやっていく所存でございます。
#170
○草川委員 最後になりますが、そういう中で実は新聞配達の従業員というものは朝四時あるいはひどい場合になりますと三時半に起きて、雨の日も雪の日も個別に新聞を配達するわけであります。そして、夜は夜で夕刊を配達し、たくさんの交通事故に遭いながら苦しんでおみえになるわけでございますし、その中には女子の従業員の方も非常に多くのパーセントを占めるようになりました。
 そこで、ここからは労働省に聞いていただきたいし、答弁を求めたいわけでありますけれども、労働組合ができている大手のところだとか、そういう組合の方々ばかりのおつき合いではなくて、このような新聞配達をやっておみえになるような零細な事業場で働く、たとえば学生の方々あるいは専門の従業員の方々にももっと耳に手を当てていただきたい。そして、賃金というのはせいぜい年間二百二、三十万だというのですよ。これは大の男の人でも年間二百二、三十万だというわけで、これは相当な意味で力を入れて関心を持たないと零細な人たちの労働条件というのは上がりません。専従従業員というのはだんだん少なくなりましたので、販売店は女子の従業員を採用しようとするわけであります。
 もう一つは、学生アルバイトを採用するわけです。特にこの学生アルバイトの場合は、アルバイトというよりも、どういうやり方をするかといいますと、奨学生、いわゆる大学へ入る場合の入学金あるいは学費というものを奨学金でつって販売従事をさせようとするわけです。私、ここに日刊アルバイトニュースを持ってきましたけれども、このアルバイトニュースを見ようと新聞を見ようと全部書いてあるのですけれども、何々新聞奨学生募集と書いてあるわけです。それで、月給は七万四千円ですよ、将来は大学を卒業できますよ、外国旅行もさせますよ、まあいいことばかり書いてあるわけですよね。
 しかし、いま申し上げたように、新聞社は物すごい拡販運動をやるわけですから、生きるか死ぬかの非常に厳しい状況の中ですから、朝と晩だけの新聞配達じゃ困りますよ、集金もやってもらいたい、あるいは集金だけではなくて拡販もやってもらいたい、こういうわけで学生が昼日中から拡販運動をしなければいかぬわけですよね。これは大変つらい話です。われわれのところへ新聞社が来たって買いませんよ。しかし、あえてその仕事をしなければいかぬということになりますと、結局学業を放棄せざるを得ない。そこで店主に、もう私はようついていけません、もうこれで勘弁してもらいたいと言いますと、では直ちにここで入学金を返せ、五十万円返しなさい、あるいは毎月の学費を返しなさいということになりますと、七十万、八十万というお金を返さなければいかぬわけです。そうすると、それを返す能力がない。返す能力がないと結局学業をやめざるを得ぬわけですよ。学業をやめて、結局新聞販売店の専従になってしまうという例が実はかなりたくさんあるわけですよ。
 きょうはこの点について少し申し上げるつもりでございますが、余り時間がないので順番からいきますと、全国で新聞販売従業員というのは何名おみえになりますか、まずその数字からお伺いしましょう。
#171
○石井(甲)政府委員 新聞配達員の就労実態について申し上げます。
 日本新聞協会の調査によりますと、昭和五十六年二月現在新聞販売店従業員の総数は四十一万三千人となっております。その内訳は、いわゆる新聞少年が十七万七千人、満十八歳以上の者が二十三万六千人という数字になっております。
#172
○草川委員 いずれにしても四十一万の人がおみえになるわけですね。そういう人が朝の三時半、四時から働いておみえになり、非常に苦労しておみえになるわけですから、もう少し労働省はこの点についても深い関心を持っていただきたいというように思います。
 そこで、女子の従業員がこの中に二五・八%いるという数字があります。女子の従業員は早朝勤務というのが今日の基準法からいってできませんから、日本新聞協会の販売委員会の方からは女子年少者労働基準規則六条の「女子の健康及び福祉に有害でない業務」に指定してもらいたい、早く言うならば女子も四時から仕事をやってもらいたい、本人たちも希望しておるからという申し入れをしておるのですが、私はこれは認めるべきではないと思うのです。それは少し問題があるじゃないか。安易にお母さん方にしわを寄せるということはかえって本質的な解決にならないという意見を持っておるわけでございますが、二回にわたって協会はこの申し入れを労働省に出しております。
 労働省は認めるお気持ちでございますか、どういうような態度ですか、お伺いをします。
#173
○高橋(久)政府委員 女子につきましては深夜業が原則として禁止されているわけでございます。新聞協会の方からこの女子につきまして早朝の四時から労働ができるように特例を設けてほしいという要望をいただいておりますが、この女子保護規定を含めまして、今後の婦人労働法制のあり方につきましては現在婦人少年問題審議会において審議をしております。この審議の観点といたしましては、雇用における男女平等を確保するための諸方策について審議が行われているわけでございますが、この中で女子の保護のあり方も含めまして議論がされてまいりますので、労働省といたしましてはその結果を踏まえて対応してまいりたい、このように考えております。
#174
○草川委員 そこで、私は女子の従業員の対応については、これは普通のキャリアウーマンの対応とちょっと違いますから、別に一項起こして検討してもらいたい、こう思うわけです。私、この基準法改正についてはキャリアウーマンの立場からはまた別の意見を持っておりますが、ここだけは違うということを申し上げておきたいわけです。
 奨学会のことですけれども、俗に言うところの育英資金というものは公益法人によってあるわけですよね。大学に入りたい、あるいは家庭の条件が悪ければしかじかかくかくの条件で卒業後何年に返済をするという育英資金というのはあります。ところがいま新聞社で、新聞販売店でやっておるところの奨学事業というものは、実は労働条件から言うならば前借に近いわけですよ。前払いに近いわけですよ。よし、金が要るなら百万円出してやるよ、それで入学金払いなさい、そのかわり三年間がんばったら免除してあげますよ。そのかわり一年でけつを割ったら返しなさいよという個別契約になるわけですよ。
 だから、基準法から言うところの、俗に言う十六条の法律についていろいろ労働省からお伺いをしておるのですが、詰めていくとどうも十六条じゃひっかからないようなんですね。ですから、何らかの形で、ひっかかると言うと言葉が悪いのですけれども、労働省として関与できる、ちょっとかわいそうじゃないか、おかしいじゃないか、めんどう見ようじゃないかというものはないだろうかという意味で、各新聞社がやっている育英奨学会を一回洗っていただいて、何らか私が言うような行政上のフォローができないかどうか、これをちょっとお伺いしたいと思います。
#175
○石井(甲)政府委員 新聞販売学生の奨学金ということで募集をしているわけでございます。新聞販売学生が奨学金を受けて、働きながら勉強するというそのこと自体は決しておかしいわけではございません。問題は、御指摘のように途中で何らかの理由によりましてこれをやめる場合に、いわばそれを返済しなければならぬという場合に、大変御苦労な問題が起きてきます。この奨学金自体につきましては、いろいろ条件をとりまして、お互いにそれを容認し合って入るだろうと思うのでございます。そこで問題は、途中で退職する場合に一括返済させるというのは、普通一般の学生にとってはいかにも大変なことでございます。
 そこで、どういう形をとり得るかということでございますが、現実を調べてみますと、民法三十四条の公益法人として労働省が、労働大臣が認可をしているものに、新聞販売従業員共済会というのがございます。これは大体朝日系が加入しているようでございます。この中には、途中でやめる場合には分割でこれを返済してもいいような規定が入っております。したがいまして、こういう認可法人であれば、直接監督機関としての立場からいろいろ関与はできるわけでございますが、そのほか各新聞社ごとに同じような、言ってみれば独自の制度がそれぞれ置かれているのでございますが、これに対しては、いま先生御指摘のように、基準法の問題ということもはっきり明定できないようなことでございます。
 ただ、労働省といたしましては、いわゆる勤労学生の福祉等の観点から返済条件の弾力化等について、いま設立されております各新聞社の任意の関係の奨学会に理解を促して、これをそのように持っていくように働きかけをいたしたいというように考えております。
#176
○草川委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、非常に積極的な前向きの答弁をいただいて私もありがたく思うわけでございますが、一つは労働大臣の認可法人は直接そう言っていただく。さらに入っていない、認可されていない他の新聞社に対してもこの機会に、一括返済を弾力的にしなさい、これは非常に重要なことだというのを働く勤労青少年を守る立場からぜひやっていただきたい、こう思うのです。
 この点について最後に大臣の方から見解を賜って私の質問を終わりたい、こう思います。
#177
○初村国務大臣 できるだけ趣旨に沿うように努力いたします。
#178
○草川委員 以上でございます。
#179
○唐沢委員長 次に、米沢隆君。
#180
○米沢委員 私は、先般行われました労働大臣の所信表明に関連いたしまして若干の質疑を行い、当局の見解をただしたいと思います。
 さて、まず第一は今後の雇用対策の重要性にかんがみまして、完全雇用を目指す総合的な積極的な雇用政策の展開につき当局に検討方を要請しつつ、質問をいたしたいと思います。
 御承知のとおり、完全雇用の達成は福祉社会における基本的な条件であり、国の施策の究極の目標とすべきものであると考えます。現にわが国の雇用対策は、昭和五十四年八月閣議決定されました第四次雇用対策基本計画に基づきまして、昭和六十年度までの計画期間中において安定成長下において完全雇用を達成するとともに、来るべき本格的な高齢化社会に向けての準備を確実なものとする。このことを課題として鋭意努力がなされつつあります。しかしながら、今日の雇用環境は失業率、有効求人倍率ともに依然として厳しい情勢にあり、今後の経済成長率の相対的な低下に加えまして、資源、エネルギーの制約、国際経済環境の厳しさ、変化等による産業構造の転換、一方では労働力人口の急速な高齢化が進むなど、雇用不安は一向に好転する状況にはありません。またマイクロエレクトロニクスを軸とする第三次産業革命の到来によりまして生産態様、労働態様は激変しつつありますが、このような変化はすでに雇用構造に深刻な影響を及ぼしつつあることは御案内のとおりであります。
 そこで、まず当局にお伺いしたいことは、現下の雇用情勢の実態につきどのような認識をなされておるのか。
 第二に、今年度の雇用情勢はどのように推移していくと予想されているのか、二点だけまず最初にお伺いいたします。
#181
○関(英)政府委員 現在雇用情勢は弱含みといいますか、足踏み状態を続けておるわけでございまして、第二次石油危機以降、雇用情勢は非常に悪化したわけでございますが、昨年やや回復基調が見られたもののまた足踏み状態になって現在に至っております。昭和五十七年度につきましては、政府としては国内民間需要、これの回復を目指しつつ安定成長に持っていこうということで経済政策をやっておりますので、そういった経済政策の効果によりまして政府見通しのような経済成長が図られるならば、五十六年度よりは五十七年度、雇用の改善が図られるものと思っておりますが、御承知のように雇用状態といいますのは経済の動きと多少のずれがございます。そういう意味で、五十七年度いっぱいに相当の改善を見るかということになりますと、五十六年度よりはやや改善するものの、まだまだ不十分さが残るのではなかろうかと思いますが、先生御指摘のように、第四次の雇用対策基本計画は、昭和六十年までの見通しを立てておるわけでございまして、その間全体をならして五%程度の経済成長が図られるならばわが国の雇用情勢としては完全雇用の状態に持っていけるのではないか、また、そうあらねばならないと思っているところでございます。
#182
○米沢委員 私は昨年もこの問題を質問をさせていただきましたが、そのときの局長の答弁も全くいまと同じで、いまは大変厳しい状況にある、しかし経済対策等を閣議で決定してその運用のよろしきを得るならばまたよくなるであろう、そういう答弁をなされておるわけでございます。しかしながら、どうも現在の経済の動き等を見ておりますと、昨年よりもいいという感じになるかとこう問われたならば、去年よりも逆に厳しい状況になるであろう、じゃ来年はどうかと問われたならば、ことしよりもまだ厳しい状況に入っていくであろうということで、少なくとも昭和六十年に向けて完全雇用の目標を達成しようという意欲にもかかわらず、実際の経済そのものはきわめて厳しい状況に推移していると言っても過言ではないと私は思います。
 そうなりました場合、いわゆる第四次計画で目標にしておりました完全失業率一・七%程度以下とか、あるいは有効求人倍率一・〇倍に近い水準というものは、現在のような雇用情勢の延長線に描いたならば、非常に厳しい、目標達成不可能に近くなりつつあるのではないかと危惧をするわけでありますけれども、その点はどういうふうに御判断いただいておりますか。
#183
○関(英)政府委員 確かに現在のような経済情勢、雇用情勢がなお続いていくものとした場合には、目標といたしました求人倍率なり失業率を達成することは非常にむずかしくなると思いますが、五十七年度、たとえば公共事業の前倒しを含め民間住宅建設促進等々の経済政策が実施されようとしておるわけでございまして、私どもとしてはそういった政府の努力によりまして経済状態がやがて改善していくものというところに期待をかけ、また、それに合った雇用対策を進めていきたいと思っております。
#184
○米沢委員 いまの政府の雇用対策というのは経済成長任せという部分が非常に多過ぎる。御承知のとおりこの第四次計画の基礎となりました新経済社会七カ年計画の経済成長率は毎年フォローアップされておりますね。しかしながら、フォローアップされるたびごとに、当初は御承知のとおり五・七%経済成長、それから五十四年の時点では五・五%、五十五年の時点では五・五%、五十六年では五・一%、ことしまたフォローアップをやったならばこれは五%を必ず切りますね。そういうかっこうで下方修正がなされて、実際の経済成長の実績というのは毎年政府見通しよりもいずれも低い状況にあるわけでございます。
 五十六年度も、御案内のとおり当初見通しは五・三%、新基準で計算し直したら四・七%だということでありますけれども、これが四・一%の見込みに変わり、実際いまささやかれているのは三%前後ではなかろうか、こういうふうに言われておるわけでありまして、ということは従来の経済成長依存中心型の雇用政策では完全雇用の実現というのは大変困難になってきた。経済成長率が見通しに比べて低くなりましたので完全雇用は達成がむずかしくなりましたでは、実際これは済まないわけですよ。その点を一体どういうふうに考えられるかという問題であります。
 毎年、雇用につきましても御承知のとおりフォローアップがなされていると聞いておりますけれども、いまや第四次計画そのものはやはり抜本的に見直しが必要になってきている時期ではなかろうか、そのためにはやはり昭和六十年の完全雇用を目指す総合的な雇用対策の新しい展開が必要になってきておるという認識を労働省は持つべきだ、私はそう考えるわけであります。
 そこで、その新しい展開の着眼点の一つは、高齢化社会に対応した政策体系、あるいは雇用政策と産業経済政策とが有機的につながった政策体系、すなわち八〇年代の雇用環境の変化を見通した雇用政策へぜひ転換を図っていかねばならない。そのことをめどに各般の雇用情勢に対応して政府が雇用そのものを創出していく方向を確認すべきである。同時に、わが国のいかなる産業政策の策定にも雇用の安定確保という観点から労働省が積極的に参加できる体制をつくることであると考えるわけです。もし行政指導に限界があるならば、時によっては法律を制定してでも雇用秩序を確立していくという決意を新たにすることではないかと私は信じておりますけれども、大臣、いかがですか。所信を述べてもらいたい。
#185
○関(英)政府委員 多少私から御説明をさせていただきたいと思います。
 抜本的に基本計画を見直すべきだ、そういう時期に来ているというお話でございますが、先ほども申し上げましたように五%程度の成長を続けることができれば、私どもその目標達成は可能だろうというふうに推測しておりますし、毎年のフォローアップの際に、経企庁と共同いたしまして、単に経済成長の見直し、フォローアップだけでなく、就業者数、失業率、そういうものを含めて見直しを行っておりますが、まだ経済社会七カ年計画あるいは第四次雇用対策基本計画の目標を変えなければならないところには来ていない。フォローアップの都度見直してはおるわけでございます。ただ、今後の経済成長なりあるいは先生のおっしゃった産業構造の変化なりいろんな問題をもう一度見直して、この辺で経済政策についても抜本的見直しが行われるとすれば、常に経済政策と調和をとってつくられるべき雇用対策基本計画についても見直しをしなければならぬ、そういう問題だろうというふうに思っておるわけでございます。
 また、高齢者の雇用対策というのは今後の雇用対策の最重点事項でございます。単に経済政策の後追いというだけでなく、積極的に雇用という観点かち経済を考えていく、こういう観点も非常に重要でございまして、私ども経済計画あるいは毎年の経済見通しの際に積極的に経済企画庁と連携をとりまして、いまや必ず雇用の安定という言葉がまず第一に経済計画なり毎年の見通しの中に入ってくる、そういう時代に私はなってきたと思っております。
#186
○米沢委員 いまの答弁を聞いておりますと、いまだに経済成長。確かに雇用情勢というのは経済成長と無縁ではありませんし、密接不可分なものでありますけれども、どうも経済成長がよろしきを得さえすれば雇用情勢はまともにいくのだというその発想から余り出ておられないところに私はちょっと問題があると思うのだ。八〇年代というのは、いままでの六〇年代、七〇年代の、経済成長をどんどん追いながら労働量がふえていく、質的に何かあったならばそれに対応していこうという、そういう発想から、まさに雇用をつくっていかなければならない時代であり、同時に産業政策がいままでのような状況以上に激変し、急変していくというそういう中にあっては、ただ経済計画の中で雇用安定の言葉が書いてあるとかそんな議論ではなくて、もっともっと産業変革というものに対して先見性を持って、そして雇用そのものは大変な影響を受けるというそういう観点から、いままで以上にそういう経済政策づくりの中にまともに最初から入っていくというそういう体制がつくられないと、雇用そのものの情勢は、六十年の完全目標を達成することもできないし、今後ますます深刻な状況になっていくのではないか、そう考えておるとこう申し上げておるのです。
 大臣、いかがでしょうか。
#187
○初村国務大臣 今後の雇用政策の展開に当たっては、やはり高齢化社会の急速な到来を初めとして、産業構造の変化、それから技術革新の進展、労働力需給等の両面における急激な変化に適するように対処していかなければならない。そして、わが国の経済社会の活力の維持発展を図るとともに、働く人々が安んじて働くことができるようにすることが一番必要ではなかろうかと私は思うわけなんです。そのためには、さっきから問題になっております第四次雇用対策基本計画に沿って関係政策との連携を図りながらいろいろな雇用対策を推進してまいりたい。
 それには、まず第一に、高齢化社会の進展に対応していま問題になっております六十歳定年の早期一般化、あるいはまた六十歳台前半層に対する多様な就業機会の確保、そして生涯訓練の理念に立った中高年齢者の職業能力の発達向上、こういうことを第一に取り上げなければならない。
    〔委員長退席、大石委員長代理着席〕
 第二には、産業構造の変化や技術革新の進展に対して適切な経済成長の確保と機動的な雇用対策の実現を図らなければならない。そして発展が予想されるところの第三次産業の雇用の実情に即した対策の推進を考えなければいけない。特に産業用ロボット等の技術革新の雇用への影響の掌握、これは大事ではなかろうか。こういうことを考えて、雇用、職業に関する情報の整備や地域雇用問題の取り組みに大いに努力すべきである、これが今後の雇用対策を進める方針であります。
#188
○米沢委員 私どもはこれまで、御承知のとおり雇用創出機構をつくってもらいたいとかあるいは定年法をつくるべきだとかあるいは中高年齢者の雇用保障法の制定をやるべきだ、こういう幾つもの要求を掲げてまいりましたけれども、残念ながらいまだその合意を得ないままに雇用を取り巻く情勢だけが急速に変化、展開しつつあることは、大変私たちは遺憾に存じておるわけであります。
 この際、労働省は、主に高度成長期を背景に制定され、あるいはその間改定されてきました現在の雇用対策等の関係諸法規、十七本ありますね。私は、この十七本について抜本的な見直しをする必要がある、先ほど私が言いましたような観点に立って、現行の複雑多岐にわたる雇用対策の再編整備を図って時代の要請に応じた新しい総合的な雇用政策というものを確立すべきではなかろうか、そう思っておるわけです。
 確かに従来の現行法規をいろいろ活用しながらもそれはある程度情勢に対応できていくかもしれませんけれども、私はこんなに厳しい情勢になってきましたときには、あんなに複雑で、どの法律を読んだらどこに何が書いてあるかわからぬようなそういうものではなくて、使う方も使われる方ももう少し見やすい法律、そしてまた、時代の要請に応じた内容のものにまた再編整備していく、そういうことが必要ではないかと私は思うのですが、いかがお考えですか。
#189
○関(英)政府委員 雇用政策を総合的に特に今後の労働力需給両面にわたる構造変化に対応したものとして進めなければならないということは、先生御指摘のとおりでございます。そういった観点で私どもやっているつもりでございますし、またさきには、複雑多岐にわたる給付金の整理統合を図りましてこれからの高齢化社会に活用されやすいものに変える等努めてきているところでございます。
 現在の法制、確かに数は多うございますが、そのほとんどは特別対策としての立法でございまして、基本的な法律がそう数多いわけではございません。そういう意味で、時代の進展とともに常に見直しをしていかなければなりませんし、これからもしてまいりますが、現在の法体系を抜本的に改めるというような点が本当に必要かどうか。それだけの改正がなくとも十分現在の体系のもとで私どもとしては対応できるのではなかろうかと思いますが、今後の変化、そういうものを常に注意しつつ、必要があれば私どもいつでも法律改正に取り組む覚悟はいたしておるところでございます。
#190
○米沢委員 私は、先ほどから言っておりますような総合的な雇用政策を立案するに当たりまして、六つ問題があると思っておるのです。
 一つは、安定的な持続的な経済成長を確保しなければならない。その必要は言うまでもありませんけれども、まず労働時間の短縮、ワークシェアリングの実施等によって労働力の需要を増大させて雇用の安定確保を図ること、これに努めなければなりませんね。
 第二に、いま御承知のとおりわが国の経済構造を見ましたときに、産業間の跛行性あるいは規模の大小による跛行性とともに、地域経済間に大きな格差を生じつつあるということが指摘をされております。そういう意味では、地域に密着した雇用機会の開発、地域潜在需要の開拓等によって雇用創出政策を推進することである。
 第三に、定年の引き上げ、六十歳台前半の雇用保障制度の確立など、中高年齢者の雇用安定、あるいは技術革新、職業構造の変化に対応した職業訓練システムの拡充など、高齢化社会に対応した政策体系が確立されなければならない。
 第四に、特定不況業種や特定不況地域対策を初めとして、経済変動、産業構造の変化等に対応するために、いろいろな雇用政策を一元化してもっとかかる事態に後追いではなくて前向きに対処できるように、機能的に効率的に対応できる体制をつくり上げることではなかろうか。
 第五に、産業、地域間の雇用機会のアンバランスの是正、高齢化や女子労働力の増大などの労働力変化に対応するため、職業情報の充実や労働力移動の促進など、労働力需給の円滑な調整政策を実施することである。
 第六に、経済、産業政策と雇用政策の有機的結合による政策の実行。どういうことかといいますと、経済、産業政策というものはもともと雇用の安定に裏づけられて初めて実がなるわけでありますが、従来の行政パフォーマンスを見ましたときに、どうも雇用政策はつけ足し的にしか参加してない。これを是正してもっと有機的結合ができるように政策体系を確立すべきである。
 この六つの点を確実に労働省がおのれの一つの課題としてやっていただいたならば、ある程度の雇用情勢の変化にも相当力強い対応ができるのではないか、私はそう思うのでございます。
 概括的にお伺いしたいのでありますが、この六つの点について、大臣、どういうような御見解をお持ちですか。
#191
○関(英)政府委員 私からまず最初に答弁させていただきたいと思います。
 六つの点、いずれもごもっともな御提言であろうかと思います。労働時間の短縮も労働省として計画的に取り組んでおるところでございますし、地域間雇用開発についても、初めてのことでございまして私ども手探り状態ではございますけれども、過去三年の研究成果をもとに今年度からこういった事業をモデル的に実施してみたいと思っておるところでございます。
 また高齢者対策についても、この委員会でも取り上げられておりますように、最重点課題として取り組んでいるところでございます。
 経済変動に対しまして失業の予防という観点から、現在の給付金制度をこの前の国会で見直していただきまして、活用されやすいものにして対処しているところでございますし、雇用情報の充実、労働市場の円滑化、こういったところにも努めておるところでございます。
 また、経済政策につきましては、労働省として積極的に経済計画の策定等には参画をして今日までやってきているわけでございますし、必ず経済政策と調和をとった雇用対策基本計画を同時につくるように努力もしてきたところでございます。
 事務的な点だけまずは私から御答弁申し上げました。
#192
○初村国務大臣 いま委員から列挙して六つの問題の要望があったわけでありますが、私どもはそういう提言されたことを十分考慮してできるだけ労働行政として取り組んでいきたい、こういう基本的考えを持っております。
#193
○米沢委員 私はこの六つを指摘をいたしましたが、その中で、先ほどから何回も言っておりますように、八〇年代を見通したときに、労働省としてもっと力を入れてもらわねばならぬのは、雇用の創出という問題だと思います。御案内のとおり、五十四年からでしたか、中央と地方に雇用開発委員会をつくって、そこでいろいろと雇用創出に関する議論を重ねてこられた。五十六年は答申が出るということで、その答申の内容いかんによっては即実行に移すのだという、昨年は労働大臣の発言までいただいておるわけでありますが、この雇用開発委員会はどういうかっこうでいま雇用創出の推進というものに関連してどんな動きをやっておるのか、その経過と今後の方針を聞かせてもらいたいと思います。
#194
○関(英)政府委員 先生からお話しございましたように、地方雇用開発委員会というのを三年前から逐次、たとえば当初不況地域とかいうふうに類型的に三年間にわたって置いて、関係者、行政当局、公益側、労使それぞれ御参加いただきまして、調査、検討、研究を重ねていただきまして、一番最初に設置しました五県について、いまその報告書がまとまったところもございますが、まとまりつつある段階でございます。その中では、その県の雇用に関しますいろいろな状態、労働力の供給状態あるいは産業界の実態、そういうものを十分分析、検討していただいた上、今後雇用の供給状況に応じて発展が見込まれる分野としてはどういうものがあり、それに対してどういう施策を講ずべきかということについての提言がまとまったり、あるいはまとまりつつあるわけでございます。
 そこで、本年度からそういった地域におきまして、それを具体化するために現実の労働市場圏、公共職業安定所が一つの労働市場圏に一つあるというのが大体の例でございますが、そういう労働市場圏に具体的にその提言を生かして雇用開発を進めていくための地域雇用開発推進事業というものを行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
#195
○米沢委員 もうそういう研究だとかいう段階を通り越して、結局そちらの方にただ預けておるだけでは私はいい芽はそう出てこないと思いますね。もっと政府が介入すべきだと思うのですよ。もっとつくる方向でがんばってくれというくらいの激励がない限り、研究段階に終わって一向実行に移されませんね。私は、そういう意味でもっと大臣、力いっぱい、この雇用開発委員会等のいままでの研究成果を踏まえて、もう今度は雇用を創出する実行の段階である、そういう状況ができるようにもっと馬力を上げて雇用創出に力を入れてもらいたいと思うのですが、大臣、いかがですか。
#196
○初村国務大臣 いま局長からいろいろとお話がありまして、中央地方に雇用開発委員会というものをつくってその意見をどうこうと、なるたけそういう意見を早く出してもらって、できるだけ今後の雇用拡大に努め、積極的にそれを活用していくことが一番大事ではなかろうか、かように考えます。
#197
○米沢委員 ぜひ力を入れてもらいたいと思います。
 それから定年延長の問題でありますが、これはけさほどからいろいろと議論になっておりますけれども、定年延長が高齢化社会における雇用基盤形成のかぎとなることはもう御案内のとおりです。そういうことでいろいろと行政指導を強化されてなされておりますけれども、現時点においては、これは雇用管理調査、昭和五十六年一月現在の結果でありますが、労働者三十人以上の規模の企業で一律定年を定めているもののうち六十歳以上定年制を採用しているものは四二・六%、六十歳以上定年制が主流となりまして、あるいは改定を予定または検討中の企業を加えた六十歳以上定年制の普及状況は五三・七%、五千人以上規模では七三・五%と見込まれる、六十歳定年は着実に前進しておる、こう言われておるのです。
 問題は、六十年に近づくに従って、いままではすっと上がってきたのですよ。あとさあ六十年という本当の間近になったときに、残された企業は一体どうするのだという問題が出てくると私は思います。それなりの理由があってそうなっておるのかもしれない。また、もう完全に行政指導なんか余り受けたくないということで、逆に定年延長なんかわれわれのものだ、勝手にさせてくれという気持ちで残っておるのかもしれない。私は、六十年が近づくに従って、少なくとも五十八年前後からは相当大きなウエートを持って一体これをどうするかという問題が出てくると思うのですね。
 定年延長をしない、またはできない理由として、退職金や賃金制度の見直し問題、職務再編成等の人事管理上の問題のほか、再雇用、勤務延長制度の存在、現行定年制で十分だという判断等々が挙げられておるということなのでありますが、このあたりは一体どういうふうに片づけていくのですか。
#198
○関(英)政府委員 本年度から三カ年計画で、六十歳未満の定年制の企業について、個別指導によりまして六十歳定年の早期一般化のために努力してまいりたい、こういうふうに考えております。現在まで取り組みのおくれている企業の理由としては、先生挙げられましたようなことでございますが、特に立ちおくれの見られるのが三百人から九百九十九人程度のところでございます。そういったところには再雇用なり勤務延長制度なりがあって、実質的に希望者は六十歳あるいはそれを超えてもなお雇用しているのだからいいのだ、こういうようなお話がよくあるわけでございますが、私ども、一定年齢をもって自動的に雇用契約が終了してしまう年齢というものはどうしても六十歳にしていただかないと、年金との関係からしても現状ですでに問題があるわけでございますし、将来はさらに年金財政のことを考えますと六十歳台前半層の雇用対策もやらなければならない。そのための基礎としての六十歳定年でございますので、そういった点を十分企業側に御理解いただいて、もとより労使の自主的な話し合いによって延長は決めらるべきものでございますが、三カ年の計画で六十歳定年に達していない企業のすべてについて個別の行政指導でやってまいりたいと思っているところでございます。
    〔大石委員長代理退席、委員長着席〕
#199
○米沢委員 いままでも個別の指導をなされてきて、まだ個別指導が全然行き渡ってないところはないでしょう。少なくとも網はかぶせたわけですよ。そうしていまだに五三・七%の普及ですね。これから五十八年、五十九年に向かうに従って六〇とか七〇くらいになるかもしれないけれども、二、三割はやはり昭和六十年度前後で私は残ると思うのです。そうした場合、個別の折衝あるいは労働大臣が手紙を書くとか通達を出すとか、労働省の方が行ってよろしくお願いします、ということでは片づかない時期が必ず来ると私は思う。
 これは完全に行政の限界だと思うのです。少なくともいままでは行政指導でここまでやってきた。それは労働省の行政指導にのっとってやってきたのだから許したとして、残った部分については行政の限界を感ずる時期が必ず来る。そうなったらば法的措置をとらなければいかぬのじゃないかという気がするのですよ。
 その点いかがですか。
#200
○関(英)政府委員 確かに五十六年一月の状態は先生お述べになりましたような数字でございますが、たとえば私ども中央の労働省で直接担当した業種あるいは企業につきましては、五十六年以降定年延長をすでに実施しているところもございます。そういう意味でことしの一月現在の数字はさらに改善が図られると思いますし、三百人以上の企業で六十歳未満のところすべてについて五月十五日までに三カ年の今後の取り組み計画を出していただきまして、それに基づいて三カ年計画で私ども行政指導を実施していこうと考えておりますので、この行政指導に最大限の努力をいたしたいと思っております。
 なお、どうしても残るところがあるじゃないか、そういうものについて法制をというお話でございますが、先生御承知のように、この問題につきましては、国会の御論議を踏まえまして雇用審議会で諮問に応じて現在審議が行われているわけでございます。法制化問題につきましては私どもその雇用審議会の答申を得て対処していきたいというふうに考えておるところでございます。
#201
○米沢委員 そういうことで御努力いただくことは結構だと思いますが、昭和六十年の時点で本当に六十歳定年は一般化するんですね。何%くらいになると思っているの。一〇〇%になるの。
#202
○関(英)政府委員 一般化をパーセントで申し上げるわけにはちょっとまいりませんが、私ども先ほど申し上げましたことによって、一般化と先生方に認めていただけるような状態に十分できるというふうに思っております。
#203
○米沢委員 四捨五入して一〇〇%なんというのはないわけですね。よろしく頼みますぜ。
 それから高年齢者の雇用を保障する諸政策、いろいろと給付金等を活用されて努力をしていただいておりますけれども、聞くところ、余り効果がない、あるいは定年延長奨励金なんというのは定着率に余り結びついていない。定年を延長させるそのものに定着していない、こういうふうに指摘なされておるのですが、いろいろな限界があると思いますけれども、中高年齢者の雇用開発給付金、特定求職者雇用奨励金ですか、これが一緒になりまして特定求職者雇用開発助成金になったのですか。一体この実績だとか受給状況に関して何か問題があるのじゃないですか。
#204
○関(英)政府委員 まず定年延長奨励金制度につきましては、従来定年延長が余り進まなかった段階ではその実績も伸びなかったわけですが、最近の定年延長の推進を反映いたしまして、その実績は非常に伸びてきております。
 なお、あるアンケート調査で、この制度があるから定年延長するわけではなくて、定年延長というのは労使の話し合いがまず第一で、組合からも要請があるし、経営者側も必要だと思ってやります、こういう答え等があるものですから、奨励金については余り効果がないのではないかというような意見も出たわけでございますが、私ども、給付金の見直しの際に、そういったことも関係者、労使、公益の間で十分御議論をいただきましたところ、確かに、これがあるからやるわけではないが、この制度があることが定年延長に踏み切る一つの助けになっていることも事実だし、そういう意味で早々にこれを廃止してもらっては困る、と。私どもは、昭和六十年に廃止したい、そのことも法律に盛り込んで考えていきたいというようなことも提案したわけですが、それはやはり六十年時点の定年延長の推進状況も十分見きわめないと、いま決めるのは問題であり、やはりこの制度は非常に効果的だというような審議会での御意見でございました。
 そういう意味で、私ども、いろいろの問題点があれば常に率直にそれを反省をし、見直しをし、関係者の御意見を審議会等でお伺いしながら改めていくつもりでございますが、これからもそういった奨励制度を活用して、定年延長なり中高年齢者の雇用に努めていきたいと思っております。
#205
○米沢委員 ぜひがんばっていただきたいと思います。
 それから職業訓練についてちょっとお伺いしたいのですが、先ほどから何回も述べておりますように、雇用と職業訓練というのはまさに密接不可分といいましょうか、そういう関係にあるわけでありまして、このごろ職業訓練もかなり充実の方向に努力をされておることは率直に認めたいと思うのでありますが、やはり私は、この時代になったら、職業訓練を希望する労働者は、行政上の責任においてその期間をすべて確保できる、それぐらい職訓については行政上の対策を強化されねばならないと考えるわけでございます。
 産業部門の技術の高度化、多様化等に対応し得る公共職業訓練の質の高度化が果たして図られておるのであろうか。訓練教科の多様化あたりが実際本当に図られておるのであろうか、そこまでくるとちょっと疑問ですね。幅は、手は広げた。しかしその中身については、特にもう変転きわまりないこの技術革新というものに対応できるような職訓がなされておるか、そんな教科があるかというと、この部分は一番弱いところですね。昔の部分はいいですよ。大工さんだとか電気工だとか自動車板金工だとかそんなのはいいですけれども、いまやそんなことばかりで世の中成り立っているわけじゃないのですから、逆に言うたら職業訓練のあり方ももっともっとスピードを上げて、この技術革新についていけるぐらい力を加えてもらわないと、何か最終的には職訓なんかに行っても何にもならない、そういう時代がひょっとしたら来るかもしれないということを私は危惧するわけでございます。
 そういう意味で、技術革新に対応した職業訓練施設の充実ですね。それから地域の特性を踏まえた職訓ですね。そういうものを念頭に置いて、この職訓の充実、再編成というものにこれからどう取り組んでいこうとされておるのか。私は、その意味では職訓法の見直しも必要だと思うのですが、局長の答弁を聞かしてもらいたい。
#206
○野崎説明員 高齢化社会へと急速に移行する一方、先生御指摘のように、技術革新が非常に進んでまいるわけでございます。そういう意味で、私どもの方も職業訓練については今後とも大いに力を入れていかなければならないと思っております。
 そこで、その場合、日本の実態から申しますと、まず必要なことは、民間企業が行っております職業訓練を充実することではないかというふうに考えておりまして、昭和五十七年度から新たに、民間の事業主の方が生涯訓練の見地に立ちまして行います中高年齢者の職業訓練に対して助成措置を講ずることにしております。
 それから公共職業訓練でございますけれども、従来から、たとえば高校卒業者を対象に高度の技能を付与する職業訓練短期大学校の設置等も進めております。さらに、技術革新に対応いたしまして、施設設備の整備でございますとか、指導員の資質の向上等にも努めております。ただ、御指摘のとおり急速な技術革新の進展にはなかなか追いつかないという面も確かにございますけれども、さらに努力してまいりたいと思っております。
#207
○米沢委員 昨年九月の、行管庁がやりました行政監察結果を読んでみますと、いま、民間の企業の職業訓練に力を入れていくという話をなさいましたけれども、たとえば定年退職予定者に対する職業訓練というのは、全然問題にならぬぐらい低調ですね。これは一体どういうことですか。うらはらじゃないですか。
#208
○野崎説明員 御指摘のような公共職業訓練施設の行います定年退職予定者に対する職業訓練というのは、そこにも指摘されておりますように、それほど活発であるとは言えないわけでございます。したがいまして、今度五十七年度から改めます給付金制度におきましては、定年退職予定者の受けます訓練の先を公共職業訓練施設だけではなくて、民間の教育訓練施設で訓練を受ける場合も助成の対象にする、こういう改善を講じているところでございます。
#209
○米沢委員 まだ労働省関係はたくさん残っておりますが、時間もありませんのでちょっと話題を変えまして、公企体の賃上げについて若干の質問をしたいと思います。
 御承知のとおり、現行の公労法は、スト権にかわる公共企業体等労働者の救済手段として調停、仲裁の制度を設けております。しかし、ややもすると、たとえばさきの三公社五現業の年度末手当決定について、政府が労使交渉にゆだねておくと言いながら、実際は政府の介入が行われていた、こういう事実はまことに遺憾であると私は考えます。財政再建の最中でありますから、政府の人件費圧縮の気持ちはわからぬでもないのですけれども、政府が、公労法に定める調停、仲裁制度の遵守に疑いを持たせ、あるいは仲裁裁定に圧力をかけるがごとき態度を軽々に示すことは、公労法の本質にかかわる問題であり、事は重大であると言わねばならないと考えます。また、かかる事態が放置されるならば、違法スト等を排除しなければならない政府の立場を放棄するものだと私は考えるわけであります。
 そこで、政府を代表して労働大臣に伺いたいのでありますが、一つは、公労法に定める調停、仲裁制度の精神を尊重し、その権威を侵さぬためどのような反省をなし、今後どのような方針で臨まれるのか。
 二つ、仲裁裁定で決まったものについては、早期完全実施をやるという方針をこの際明確にし、速やかに平和解決を図らせることに関し、大臣はどのような所信を持たれるか、まずこの二点について御答弁をいただきたい。
#210
○初村国務大臣 公労法に定める調停、仲裁制度の精神をという、いろいろありますが、公労委というものは、公共企業体等の労使紛争の解決を図るために公正な第三者機関として設けられているものでありますので、その結論が出た場合には、政府としてこれを尊重するよう、基本姿勢に変わりはありません。
 それから、仲裁裁定が決まったものは早期完全実施と言われましたが、やはり私どもも、仲裁裁定の取り扱いについては、仲裁裁定が出された段階で検討することになるが、公共企業体等労働関係法の三十五条には、政府は裁定が実施されるようにできる限り努力をしなければならない、こういうふうな規定がありますので、この精神を尊重してできる限り努力したいということでございます。
#211
○米沢委員 その三十五条の解釈論になるといろいろと、もう時間がありませんのでできませんが、やはり公労法でこのような仲裁裁定の制度を決めて労使紛争の平和的な解決を図ろうというこの趣旨については、まさに完全実施をでき得るならば一〇〇%近くやってあげようという気持ちのあらわれなんでありまして、ここらをマイナスの方向に解釈するのかプラスの方に解釈するのか、それによってかなり違うわけですから、プラスの方向に解釈できるように閣内においてぜひ労働大臣は労働者の味方としてがんばってもらいたい、そのことを申し添えておきます。
 それからもう一つは、いやしくもいまわが国は民主主義体制の国であり、現行の社会秩序を尊重して遵法精神の確立を強力に推進することは政府の最大の課題であると考えます。いま公労協がまた十三日に半日ストライキ、十五、十六日、二十四時間ストを計画していると伝えられるのでありますが、政府はこれにどう対応するつもりか、これが第一点。少なくとも、公労法制定の経緯がどのようなものであれ、正当な手続によって定めた公労法に対し、あくまでもこれを守らせることが法治国家の最小限の義務だと私は思うのでありますが、大臣の意見をお聞きしたい。
#212
○初村国務大臣 公労協が民間と呼応して十三日に云々というような情報がありますが、これはもう私はこれを黙視するわけにはいきません。そこで政府としては従来から違法なストライキが行われないように努めてまいったところでありますけれども、今後もその姿勢に変わりありません。
 なお、違法ストが行われた場合には厳正な措置を講ずることは当然である、かように考えております。
#213
○米沢委員 いままでも違法ストライキが行われないように努力をしてきたとおっしゃいますが、努力にもかかわらず毎年出ておるのです。そこが問題なんですよ。だから終わった後ストライキ参加者を処分するという、そこでお茶を濁してその前段階の努力がやはり何かどこか欠けておるのじゃないかという気がしますね。答弁は要りませんけれども、努力をしておるという一通りの答弁では納得できないですね。何かもやもやが私はありますね。
 一方、働く者の権利として、労働基本権の確立のため公労法を改正して条件つきスト権を付与するよう私たちは政府に求めてきておるのでありますが、この際労働基本権の確立について一体いまどうなっておるのか、どういう方針を持っておられるのか、聞かせてもらいたい。
#214
○吉本(実)政府委員 三公社五現業の労働基本権問題につきましては、御承知のように五十三年六月の公共企業体等基本問題会議意見書、これによりまして現時点においてその意見を認めることは適当ではない、こういう結論が得られておるわけでございます。政府といたしましてはこの問題に対しましては五十三年六月の意見書の趣旨を尊重して対処する、こういうことにしておるわけでございます。いろいろ臨調等で御議論があるようでございますが、現在の経営形態に変化がない限り意見書がその意見を認めるべきでないとしている理由、またその基礎となっている諸条件については同様であろうと考えておる次第でございます。
#215
○米沢委員 次は賃金の格差是正について伺ってみたいと思うのですが、御承知のとおりいま民間賃金準拠方式ということで公労委調停のもとに官民格差是正の問題について労使協議中である、こう聞いておるわけでありますが、ところが林野の特別会計職員の給与水準につきましては、官民格差どころか一般公務員と比較しまして官官格差が著しい、こう聞くのでありますが、実態はいかがなものでありますか。月額、期末手当、退職金、年金、生涯所得の差額について制度間の比較でも結構ですし、モデルの比較でも結構でありますが、御教示いただきたい。
#216
○町田説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘の国有林野事業職員の賃金の一般公務員との格差の問題でございますけれども、賃金水準の比較につきましては比較対象あるいは比較要素をどうするかなどむずかしい問題がございますが、国有林野事業に所属いたします定員内職員と行政職(一)、行政職(二)の俸給表適用の一般公務員につきまして、最も一般的な比較方式でございますラスパイレスの手法によりまして学歴及び経験年数の二要素で比較をいたしますと、五十五年度の場合、国有林野事業職員一〇〇に対しまして一般公務員が一〇九・一六ということでございまして、九・一六%上回ってございます。なお、これを金額におきますと一万七千九百六十円の差となっておりまして、これに扶養手当の差七千七百三十三円を加えますと二万五千六百九十三円という差になってございます。
 その他退職手当あるいは年金等の関係につきましては、いま申し上げましたラスパイレスの数値は五十五年度の単年度のものでございますので、職員個人の勤続全期間を通じます数字につきましては技術的になかなかむずかしい問題もございまして、数字としては把握をいたしておりません。
#217
○米沢委員 確かにモデルをどういうふうに設定するかによって違うと思いますが、少なくとも職員の平均的な勤続年数、平均的な昇進をたどっていくとした場合に、私がいただいた資料の中では、退職金の差額で約二百八十六万ぐらいの差ができ、年金で三百四十七万ぐらいの差ができる。生涯所得に直しますと、約二千五百四十七万ぐらい国有林野職員は一般公務員に比べて生涯所得の損失がある。これはいろいろな計算の仕方があるでしょうが、少なくともこれ前後の生涯所得の差があるというのは、僕はゆゆしき問題だと思うのでございます。
 そういう意味でこの官官格差の是正についていまどういう方針で取り組まれておるのか、また是正財源は一体どれくらいのものになるのか、その点をちょっとお聞かせいただきたい。
#218
○町田説明員 この問題につきましては現在労使間におきまして協議を続けているところでございますけれども、林野庁当局といたしましては、国有林野職員の給与水準が一般公務員のそれに比較いたしまして著しく均衡を失するということは、給与特例法の精神からいたしましても好ましくないという基本的考え方に立っているところでございまして、これまでの間も年々の配分等に際しましてその改善について可能な限り意を用いてきたところでございます。
 ところで、国有林野事業の置かれております現況及び近く予想されます第二次臨調の答申等踏まえまして、今後の国有林野事業につきまして長期の改善方策について検討していく必要があると考えておりますので、その過程におきまして国有林野事業を担う職員の給与等のあり方につきましても、それにふさわしいものとなるよう検討を進めてまいりたいと考えております。
 それから格差を是正するための財源がどのぐらいかというお尋ねでございますけれども、実は先ほど約二万五千七百円という格差の数字を申し上げましたけれども、この数字はあくまでも先ほど申し上げましたとおり学歴と経験年数という二要素のみによってラスパイレス手法によったものでございまして、御存じのとおり国有林野事業の職員の年齢構成が四十五歳以上が六十数%を占めるという極端に高齢職員の比率が高いという特殊な年齢構成、さらには役付者の比率がきわめて低いという国有林野の特殊性を勘案しますと、この二万五千七百円が即是正すべき格差というふうには実は考えてないわけでございまして、そういう問題はございますけれども、仮に二万五千七百円を単純にこれを是正するということで計算をいたしますと、人件費総額で約百九十億円の財源を必要とするというふうに計算をいたしております。
#219
○米沢委員 ところで、たとえば公労委で調停や仲裁がなされますね。その場合に、林野庁としては格差是正についてどういう意見を公労委に諮られておるのか、その点を聞かしてもらいたいと思うし、林野庁に聞くのは酷かもしれませんが、公労委そのものがこの官官格差についてどういう認識を持っておるのか。いままでの交渉あるいは調停、あっせんの過程で感じられる公労委の官官格差の是正についての感触を、ちょっと教えてもらいたいと思います。
#220
○町田説明員 この問題につきましての公労委との関係についてでございますけれども、実は、これまでに公労委の方から、労使間でさらに協議するようにという趣旨の調停案等も示されておるところでございます。これらを受けまして、労使間で現在協議を進めているところでございまして、先ほども申し上げましたけれども、年々の配分等の中で可能な限り意を用いてきておるところでございます。
 また、例年の新賃金に関します調停委員会の場等におきまして、国有林野の給与水準の実態あるいは林野庁当局の基本的考え方につきましては、その都度公労委に対しまして御説明を申し上げてきているところでございます。
 なお、公労委のこの問題に対します感触ということでございますけれども、これは新賃金に関係した場合でございますけれども、五十六年度の新賃金に関します公労委の仲裁裁定におきましては、国家公務員給与との均衡につきましては、種々の角度から検討した結果、格別の措置を要しないものと認めたという趣旨の公労委の判断が示されております。
#221
○米沢委員 もう時間が来たので終わりますが、いずれにしましても、先ほどある試算を取り上げましたが、生涯所得で大体二千五百万前後、先ほどの林野の特殊性を差し引いても、半分に見ましても、一般職員であるのと特別会計の職員であるのとでは一千万近いお金の差が出てくる。これは是正方を早急にやってもらうべきものである。私は、少なくとも別枠で議論をしていくぐらいの強さを持って官官格差の是正について取り組んでもらいたいということを注文をつけまして、終わりたいと思います。
#222
○唐沢委員長 次に、浦井洋君。
#223
○浦井委員 大臣の所信表明に対する一般質問ということでございます。
 まず最初に、今春闘でも、各労働団体いずれも、労働時間の短縮というのを運動の柱の非常に大きなものにしておるわけでありまして、労働時間問題についてお尋ねをしたいと思います。
 それに応じられたのでしょうが、大臣のこの間の所信表明の中でも「労働時間対策を推進するため、従来に引き続き、週休二日制等労働時間対策推進計画にのっとり、週休二日制の普及等に積極的に取り組んでまいります。」というふうに言われておるわけなんです。これは、週休二日制であるとか残業の規制、あるいは有給休暇の完全消化というようなことを柱にして、トータルで年間総労働時間二千時間の目標を早く達成しなければならぬ、こういうことで覚悟を決めておられるだろうと思うのですが、ひとつこれは大臣に決意をお聞きしておきたいと思います。
#224
○初村国務大臣 労働時間の短縮については、諸外国から、日本は労働時間が長いじゃないかといういろいろな批判があるわけでありますけれども、年次、労働時間の短縮は見ておるわけでありますが、私どもは、最終的には二千時間というものを達成するようにあらゆる努力をしておる。その手始めとして週休二日制を、特に銀行に完全週休二日制をいまお願いしておるわけでございますが、大体それができる見通しになっております。したがって、私どもとしては、銀行のみではなくて全産業における週休二日制の一般化を図って、そして労働時間の短縮を図っていくということの決意に変わりはございません。
#225
○浦井委員 要するに、週休二日制を先頭に立ててあらゆる努力を払って、六十年までですか二千時間を達成したい、こういう御決意に変わりはないわけですね。もう一遍。
#226
○初村国務大臣 その決意に変わりはございません。
#227
○浦井委員 そうしたら、年間の総労働時間の数字はもうすでにこの委員会でも何回も出てきておりますが、五十四年に二千百十四時間、五十五年に二千百八時間、五十六年に二千百一時間、こういうことですね。確かに減ってはきておりますけれども、さあ、このテンポで行きまして、六十年に二千時間実現は非常にむずかしいのではないですか。
 大臣、どうですか。
#228
○石井(甲)政府委員 御指摘のように、労働時間の全体の趨勢を見てまいりますと、昭和三十五年の二千四百三十二時間というのが一番長い時間でありまして、その後、これまで毎年急速に減ってまいりまして、五十六年現在で二千百一時間、すなわち、その間に三百三十一時間程度の減少を見たわけであります。このいままでの労働時間が短縮した一つの大きな要因といたしましては、週休二日制が急速に日本の土壌の中に普及してまいったことが大きいわけでございまして、その他、休日を含めまして所定内の労働時間の減少が多かったわけであります。
 ただ、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、最近やや停滞ぎみでございます。その原因といたしましては、週休二日制が特に大企業においてはかなりの普及を見ておりますが、中小企業においてはまだ非常に低い。すなわち、ある自然の流れによって週休二日制が普及したことが、いわば頭打ちの段階に来たというような感じを持っております。そこで何らかの突破口を開こうということで、一つは、先ほど大臣が申し上げましたように銀行の週休二日制につきましてやってまいりたい、こういうことでございまして、現在二千百一時間でございますが、努力をしてまいりたいと思います。
#229
○浦井委員 素人と玄人の違いといいますか、別に大臣が素人だとは申し上げませんけれども、非常に歯切れよく、あらゆる努力をして二千時間を達成したいと言われる。私はそれが正解だと思う。それが労働省のお役人になると、何だかんだと言いわけをして自己の立場を弁解されておられる。私はこれはあながち皆さん方の本音でないことはないと思うのですよ。
 一つ証拠をお見せしたいと思うのですが、監督課長さんおられますけれども、去年の十一月十一日に、労働基準局監督課長さんが日経連の特別委員会で「今後の労働基準行政の基本方向と当面の対策」という表題で講演をされた。その中でちょっとこれは見逃せぬようなことを発言しておられるわけです。ちょっと大臣、それから岡部さんもよく聞いておってください。
 この二、〇〇〇時間を、労働基準監督官が、
 個々の事業所に行って指導をするような形の施
 行はしない、ということになっている。各業界
 の方々でそのような方向で検討していただけな
 いか、というお願いの段階に過ぎないのであ
 り、政府として方向づけを行って労使の御参考
 に供するという性格のものである。従ってこの
 二、〇〇〇時間計画は経済計画の一種のような
 ものであり、それを強権をもって個々の企業毎
 に実現を図っていくという性格のものではもと
 もとない。
  ところが、若干の地方においで二、〇〇〇時
 間が一人歩きをはじめたという傾向もなきにし
 もあらずだが、それは、そのようなことではな
 いということを、更に全国に趣旨の徹底を図っ
 ている。例えば、五十六年十一月十日に全国の
 局長を集めて労働時間問題、労働時間行政につ
 いて指示をしたが、その中でもこの二、〇〇〇
 時間が一人歩きしないように、それはあくまで
 も労使に対する御参考であるとの性格を明確に
 した次第である。こういうようなことを監督課長は言われておるわけなんです。
 これは私は岡部さん一人の御意見であるようには思えないわけなんです。どうもいまの時点で専門的に労働行政に携わっておられる方の本音のような感じがして仕方がないわけですが、それが本音だということになりますと、これは大臣、大分ニュアンスが違いますね。どうですか、ひとつ大臣の御答弁を……。
#230
○初村国務大臣 私どもは二千時間という目標を立てておるわけでございますから、そのための手法としていま銀行を初めとする週休二日制をやっておるわけです。したがって、これを法的に圧力をかけるということはしない、自主的にやってもらいたいということで督励をしておるわけですから、その督励の方針に変わりはない。いま監督課長がいろいろ話したと思うが、そこはそこの何かの一つの考え方があって話したと思いますけれども、私の方針としては変わらない。
#231
○浦井委員 だから、日経連という経営者の団体へ行って労働省の責任ある地位の方がこういうようなことを言われるのは、やはり不謹慎といいますか、ちと言い過ぎではないか。よく読めばなるほど本音がわからぬこともないわけなんですけれども、ざっと読めばこれは二千時間どうでもいい、ひとり歩きせぬようにしておいてくれというようなことでありますから、これではぐあいが悪い。ですから、そういう点で、大臣は少なくとも在任中、当初私の質問に答えて言われたように二千時間を断固として実現をするということで属僚を指導、監督課長も監督しておってください。
#232
○初村国務大臣 そういうことで指導をいたします。
#233
○浦井委員 もう一つ、いまの週休二日は局長は中小企業がおくれておるということでありますが、残業規制はむしろ大企業の方がおくれておるということになるわけですね。そこで、外国でもかなり厳しく残業規制をやっておるわけです。それから労働省の五十七年の基準局の運営方針でも「著しく長い所定外労働時間の改善を促進するため、三六協定において定める時間外労働の限度時間についてガイドラインを設定し、全国的指導基準とすることとする。」こういうことで先ほど午前中の質問の中でもこれが出てまいりましたし、このガイドラインをつくられるということでありますが、いつどういう程度のガイドラインを出されるつもりなのか。
#234
○石井(甲)政府委員 残業問題、いわゆる時間外労働の問題でありますが、御案内のように日本の法制、基準法はいわゆる三六協定ということでございます。労働時間の残業規制の問題については、特に日本の場合には非常にむずかしい問題が内包しておりまして、午前中もお話ございましたが、いわゆる雇用慣行というものと非常に結びついております。したがって、景気がよくなれば労働時間が上がっていくという要素もございます。また、一つの実態としては、賃金に残業が繰り込まれているという要素もございまして、行政の展開に当たって非常にむずかしい、いわば質的な問題が含まれております。
 そこで私どもは、しかしながら現在の情勢を見ますと、時間外労働についていわゆる八時間労働という基準法の原則からしても非常に過長な、著しく長い、しかも恒常的なものは、この際一つの上限というか目安というかガイドラインを設定をして、これを行政的な目安にいたしたいという考え方を持っておるわけでございます。ただ御指摘のその上限の水準あるいは実施の方法等ガイドラインの内容については、残業の実態を全国的に把握いたしましてこれをいま集計し分析している最中でございますので、これを見ながら、実態に即した水準の設定あるいは実施の形をつけてまいりたい、こういうのが現状でございます。
#235
○浦井委員 どうも歯切れが悪いわけなんですが、またもう一度監督課長の御発言を借用いたしますと、同じ講演の中でこういうふうに言われておるのです。
 一部の新聞に法定超えて月四十〜五十時間の線
 を労働省が設定するのではなかろうかと、憶測
 記事が流れたが、これはあくまでも憶測であ
 る。
  只今実施中の調査結果をふまえて、しかも結
 果をまとめて、だいたいのラインを作り、それ
 から各産業毎に経営者側との充分な打ち合せに
 入りたいと考えている。
  その際考えの基礎としては、どこから見ても
 いたずらに長い残業について規制をする、とい
 う考え方で、ガイドラインを設定したいと考え
 ている。決して平均的な姿の残業というものを
 規制をするという形はとりたくない。まず経営者側と十分な打ち合わせに入ってということで、これもけしからぬわけなんですが、ここで言われておる「いたずらに長い残業」というのはどのくらいを指しておられるのか、それから「平均的な姿の残業」というのはどれくらいを頭に思い浮かべながらここでしゃべられたのか、一遍監督課長に聞いておきたいと思います。
#236
○岡部説明員 残業規制の具体的な内容につきましては、これから調査結果をまとめて、全国、全産業的に結論を出してまいろうという段階でございます。それが五十時間がいいのか四十時間がいいのか、これはその結果を見なければ何とも申し上げることはできませんが、考え方の基礎としては、いたずらに長い、言うなれば病的に長い残業を規制するということが今回の措置の眼目、政策の柱でございます。わが国の残業というものはやはりわが国の雇用慣行からいたしましてある程度存在することは統計の示すところでございます。平均的な残業まで規制するということになりますと、わが国の産業が成り立っていかないということは当然のことでございます。したがいまして、従来の時間短縮行政の柱でございます過長な残業の規制ということに今回も焦点を合わせたいと考えている次第でございます。
#237
○浦井委員 それぐらいしか出ないだろうと思います。
 そこで、ガイドラインを設定しますわね。これは秋ごろだというような新聞報道がありますが、これを超えるような協定が提出された場合に一体どうするのか。
#238
○岡部説明員 このガイドラインの施行方法につきましては、いまだ成案を得ていないわけでございます。たとえばこれにつきましては通達でやるものか、あるいは何らかの規則でやるものかということすらもまだ青写真ができていないということでございます。したがいまして、このガイドラインを超える三六協定が提出されました場合の措置につきましても、これからいろいろと詰めてまいりたいと存じますが、これは監督署の窓口でございますので、そういう場におきまして行政指導を中心といたしましてこの履行を確保していくということが基本的な考え方になろうかと存じます。
#239
○浦井委員 窓口で、言うたら受理をしないというようなかっこうでもう一遍再考を促すというようなだけでは不十分であって、やはり徹底するなら徹底して、どういいますか、そういう指導に従わない企業については企業名を公表することであるとか、あるいはこの際思い切って法改正をすることであるとか、そういうことをもうタイムスケジュールとして考えておかなければならぬのではないか。でなければ、大臣がかたい決意を表明されたように、せっかくの年間の総労働時間の短縮という問題が、もう一番の基礎のところでずっとざるになってしまう、こういう決意のもとにやっていただきたいと思うのですが、ちょっとその私が尋ねた二点について。
#240
○石井(甲)政府委員 実施方法につきましては、先ほど来申し上げましたように、その実態をどういうふうに持っていくかということの一環として検討をしていきたいと思いますが、御指摘のように、この問題をやる限りにおきましては、やはりそれが確保できるような方法をもってやっていきたいということだけは申し上げられると思います。
#241
○浦井委員 きょうはそのくらいにしておきまして、次に、港湾労働に関連をした問題をひとつ取り上げたいと思うのです。
 大臣も港湾の多いお国でありますのでよく御承知だと思うのですが、港湾労働というのは、これをごらんになっていただきましたら、写真ですが……。港湾労働の態様というのが非常に変わってきておるわけですよね。神戸港なんかある意味で一番進んでおるのですが、コンテナ化が物すごく進んできておるという中で、もう労働態様が一変してきておるわけです。
 そういう中で、きょう私取り上げたいのは、どんどんコンテナ化が進む、そのコンテナを運ぶために、たとえばそこに写真をお見せしましたように、ストラドルキャリアーというようなものが港湾の中で横行しておるわけですよ。それをごらんになったらわかるように、縦が七メートルあります。そして問題は、運転席から視界が非常に悪い、死角が多い、こういうことなんですよね。
 ここへ私、表を持ってきておりますが、大臣ごらんになっていただきたいのですが、コンテナを抱え込まないときは赤線のことが運転席から死角になるわけです。で、コンテナを抱え込むと、赤線はもちろんのこと、黒くごうかいであるこれが全部死角になる、視界がなくなる。だから、そういう中でストラドルキャリアーによる事故、死亡事故です、これはほとんど。擬死ですね。その大きなタイヤで人をひき殺すというような恐ろしい事故が去年とことしですでに四件起こっておるわけなんです。
 これはもう私の方から言いますけれども、ストラドルキャリアーというのはもうほとんど港湾で使われて、全国で二百七十台しかないわけです。だから、そこで去年とことしで四件死亡事故が起こっておるわけでありますから、これは車両の事故件数としては物すごい数字なんですよね。一般に市中を走っております車が、乗用車やらトラック合わせますと大体三千七百三十三万台だと言われておる。二百七十台で四件ですから、これを直しますと、それがもし事故が起こるとしたら何と五十万人が二年間で死ぬというような形になる。物すごい事故率なんですよ。
 だから、そういう点でストラドルキャリアーの規制というものをもっと厳重にしなければ、これからどんな悲惨な事故が起こるかもわからぬ。最大の欠陥は視界がないといいますか、特にコンテナを抱えたときには全く見えない。その写真でおわかりのように、運転者というのは七メートル上に座っておるわけです。そしてカニの横ばいのように、東西に動くときでも前を向いて座っておるわけです。こう横に動くのです。カニの横ばいみたいにして、こういうようにしながら運転をしなければならない。そうしたら、そこのタイヤの先にちょっと人が入ってももう見えない、こういうことなんですよ。
 で、労働省の方はいろいろな告示によって規格をつくっておりますというようなことになるかもわかりませんけれども、そんなもの、規格をつくってみたところで――読み上げてみますと、「ストラドルキャリヤー構造規格」というところに、「(運転に必要な視界等)」ということで第七条「ストラドルキャリヤーは、運転者が安全な運転を行うことができる視界を有するものでなければならない。」というふうに書いてあるだけなんですよね。だから、現場ではもう恐ろしくてそばへ近寄れぬ。で、その作業をやっているところには他の職種は入らないということをできるだけ災防協会なんかで取り決めをして守っておるわけですが、今度はストラドルキャリアーの監視員の人が轢死で、ひかれて死亡するというような事故が神戸港でも起こっておるわけなんです。
 だから、そういう点でひとつこれは実情を十分に調べることと、それから大臣、長崎でも佐世保港やら長崎港、たくさんあります。恐らくストラドルキャリアーが何台かあると思います。一度見ていただきたいと思う。もう轟音を立ててかなりな高速で狭い港のヤードを走り回る。それがなければいまのコンテナ荷役というのは先へ進まない、必須のものになってきておるわけです。ところが、どんどん人を殺す。どんどんと言えば少々オーバーかもわかりませんがね。しかし、事故率からいったら乗用車やトラックに比べると非常に高いわけです。
 これについて、まずひとつ実情を把握されておるのかどうか、ちょっと聞いておきたいと思う。
#242
○林部説明員 いま先生の御指摘の中でも数字が出てまいりましたが、現在ストラドルキャリアーが港湾荷役の関係で稼働しておる台数は、おおむね二百ないし三百台くらいであろうと推定されております。
 港湾荷役における死亡の実態でございますが、私、現在手元に持っております数字は四十五年以降のものでございますけれども、御指摘のように、五十六年の三件と五十七年に入りましての一件、直近この二年間で四件という数字は確かに稼働台数の割には多い数字でございますが、実際こういうようなきわめて大型の港湾荷役の装置というものが稼働し始めました経緯を眺めますと、四十五年に一例、四十七年に一例、それから五十一年に一例というのが実は私どもの把握している数字でございまして、昨年とことしに四例ということで、現在まで七名の死亡という状況でございます。
#243
○浦井委員 だから、四十五年から始まったと、四十五年といまと労働の態様が違ってきておるのですね。コンテナ化がどんどん進んでいって混在作業場になる、そして、一方で国内的な消費不況が起こる、一方で貿易摩擦が起こる、商社や船主にしごかれて、港運業者やそこで働く労働者というのは文字どおりてんてこ舞いしているわけですね。これは大臣もよく御承知だと思うのです。そういう中で最近ぐっと死亡事故がふえてきておるというふうに理解するのが正当ではないかと私は思うわけです。
 そういう点で根本的には、現場の声を聞いてみますと、昔、市電や都電がその先に網をつけていたんですね、ああいうものをつけよとか、それから一時間の作業量、コンテナの扱う個数を制限せよとか、いろいろな意見が現場で出てきております。
 しかし、一番根本は、これは欠陥機械ではないかと私は思うのです。荷物を運ぶという点では確かに有用かもわからぬですけれども、しかし、安全という点では欠陥機械ではないか。だから、ひとつ大臣、よく調べて、これは早急に基準局長督励をしていただいて、構造ももう一遍検討といいますか、かなり大幅な構造改善をやらなければならない。労働省に言わせますと、五十四年に規格をつくりましたと。確かに、それ以前にできたものは遡及しません、それ以後はやっていますということを言うんだけれども、実際に調べてみますと、五十四年以前と以後と全く何も変わらないわけです。そういう点で、ひとつ大臣の善処方をお願いしたいと思うのです。
#244
○初村国務大臣 私どもは何といっても労働安全衛生というものを守らなければいけない。それだけ危険性のあるものが、なぜ現在二百七十台あって稼働しておるか。これは機械の優秀性というか何か特性があってやっておると思いますけれども、二百七十台あって四人も殺しておるということであれば、これは非常に重大な問題である。したがって、実態をよく調査して、改めるところは改めて指導していきたい、かように考えております。
#245
○浦井委員 ひとつそれは厳重にかつ早急にやっていただきたい、このことをお願いをしておきたいと思います。
 それと関連をいたしましてもう一つ、これも大臣よく御承知だと思うのですが、港のヤードというのは混在職場であるわけですね。元請、下請、それからストラドルキャリアーあるいはフォークリフトのような危険な運搬機械が横行しておる、そして危険職場であるわけです。
 労働安全衛生法の十五条に特定元方という項があって、そこでは統括安全衛生責任者というのが置かれて、現場全体を責任を持って安全と衛生を管理するということになっておるわけです。それには建設業ともう一つは造船業があるわけですね。この港湾運送業といいますか港湾荷役業、これなんかもそういう意味では混在であり、危険であるという点で、特定元方事業主制度みたいなものに適用させる方がこの際よいのではないかと私は思うのですが、ひとつ。
#246
○林部説明員 御指摘の点でございます、確かに港湾という限られたヤードでいろいろな業者がそれぞれの目的に従って作業をしているわけでございますけれども、この特定元方の考え方というのが建設業あるいは造船業の場合に適用されております背景と申しますのは、一言で申しますと、元方が作業を一括して請け負い、それを重層構造の下請と申しますか、下請にそれぞれの作業を分割して、重層下請の形で請け負う、こういうような形になっている場合に、その下請作業者の中で発生する災害を防止するということが本来のねらいでございまして、そういう観点からそういう協議組織と申しますか、元方が中心になって全体の災害を減らすための有効な施策を進める上で、こういう考え方が有効であるというところから出てきた考え方でございます。
 したがいまして、港湾荷役の場合にも、確かに限られたヤードで、作業そのものはいろいろな業者が混在して作業をする面もあるわけではございますけれども、作業全体を元方が一元的に請け負って、それを下請が分割して、重層構造の下請によって行うという形とはかなり趣が違うということがございますので、港湾における作業の場合に、御指摘になりましたような建設業あるいは造船業と同じような形の適用が、直ちに最も有効であるということには必ずしもならないのではないか。
 先ほど御指摘がございましたような新しい大型の港湾荷役の機械、近代化によってそういう機械化が進んできているわけでございますが、そういう問題によって災害が起こってくるということと、建設業あるいは造船業において、そういう特定元方によって一括して行うということとには若干問題点に差があるわけでございますので、われわれの現在の考え方といたしましては、先ほど大臣からもお答えがございましたけれども、近代化されたそういう機械はそれなりに有用性もある、しかし、それに伴って危険性もあるということでございまして、その辺についての施策を十分に浸透させる、そのために災防団体のようなものが中心になって関係者の中を取りまとめて、災害の防止を進めるというような方法で現在やっておるわけでございますから、実態としてはむしろそういうような形の方が現在の実態にはより適合しているのではないかというように、現在の段階では考えているところでございます。
#247
○浦井委員 大臣、そういうお答えなんですが、長崎港であるとか佐世保港なんか見ていただいたらおわかりになると思うのですが、一定の現場がありまして、確かに造船業や建設業のような典型的な重層下請でないかもわかりません。しかし、ほぼそういうかっこうになっているんですね。
 神戸港の例をちょっと申し上げますと、いまポートアイランドの中にコンテナヤードがあります。それを一定の広さに区切って、全体の船主とか荷主は商船三井がやっておるわけです。これは大会社ですよね。そして、それの下請会社の港運部門を担当しておる商船港運が一つを請け負い、一つは上組が請け負う。上組、御存じでしょう、これは港運業者の最大手ですよね。その下に甲陽であるとか、住井運輸であるとか、大西とかいうように、ずっとあるわけですね。だから、総括安全衛生管理者組織をここへ導入するのは決して無理な要望ではないというふうに私は思うわけです。
 いま部長はそういうお答えでしたけれども、大臣、もう一遍よく考えていただいて、せっかく建設業、造船業に適用されておる、まあそれが役に立つかどうかはやってみて、それがきちんとやられなかったらどんな制度をつくってもだめですけれども、やはり一遍検討するようなことを考えていただけませんか。
#248
○石井(甲)政府委員 要するに、各種の立場にある、あるいは業者として対等の立場にある業者間が混在しているわけでございまして、普通の重層下請とはまた形態を異にするわけであります。また、たとえば岸壁等の作業場所も地方自治体等の管理でございまして、その上に総括管理者あるいは荷役の元請請負という形での統括管理を義務づけるということは、実際上の問題として非常にむずかしい問題であろうと思います。それだけを私から……。
#249
○浦井委員 ひとつ大臣、よく検討してみていただきたいと思う。やってやれぬことはないと思うのです。
#250
○初村国務大臣 一応私の方で調査して、検討してみて、いいか悪いか、やれるかやれぬか、その結論を出してみたいと思います。
#251
○浦井委員 そこで話題を先へ進めますけれども、その総括安全衛生管理者の問題に関連をして、SSKの問題をちょっと取り上げてみたいと思うのです。
 これは大臣は私なんかよりよく御承知だと思うのですが、三月十八日の午後に、鉱石運搬船だそうですけれども、バラウニ号がSSKのドックに入って船体修理、改装工事中に火災を起こした。それで十人の方が亡くなられたということなんですが、大体新聞報道などを総合いたしますと、これはそのバラウニ号の船尾の底の方にあるところの機関室で船主直雇いのインド人船員がアセチレンガスバーナーでさびたボルトを焼き切る作業をしていて、その火花が船底にたまっておるスラッジに引火をして、火災を起こして、十人の方が死亡されたということですね。大体そうだと思うのです。
 私がもう一つ例として取り上げたいのは、去年、昭和五十六年十一月十九日に、これは神戸の三菱造船所でありますが、サタン・ダイヤモンド号というこれも外国船ですが、同じかっこうで火災を起こしているわけです。これは台湾人のエンジニアがガスバーナーで切断したボルトをスラッジの上に落としたために火災が起こった、こういうことになっているわけです。労働省からいただいた資料でも、この三菱神戸造船所の事故原因というのはそういうふうに推定されるということになっておる。
 この神戸の場合は、たまたまその機関室に主軸のスクリューを抜いていたものですから穴があいていた。だから六十人おられたのですけれども皆脱出できたわけです。ところがSSKの場合には、その脱出口がきわめて不備であったために、十人の方が残念にも亡くなられておる、こういうことです。
 問題は、船主の直雇いの人の場合です。SSKは、いまも局長やら皆言われたように、重層下請できちんとなっている。きちんとなっていると言うたらおかしな言い方ですけれども、そうなっていますね。だからこれは統括安全衛生責任者がおるわけです。ところが、外国人にしろ、日本人にしろそうですが、船主直雇いの船員が作業をするのはこの統括責任者の中へ入らないわけなんです。そこで、同じようなかっこうで事故が起こって、片一方は大きな脱出口が偶然あいていたものですから逃げられた。SSKの方は逃げられなかった。こういう作業態様が造船業では最近きわめてふえているわけです。昔は、船が港に入る、それで造船所へ入って修繕する、そうしたら船員は上陸して、まあ言うたら休養とか遊んでいたわけです。ところがいまは合理化の中で、船員もどんどん働かせということで、片一方で工事を請け負った造船所の方の作業員がやるのと同時に、船員も何らかの仕事を一緒にやる場合が普通になっておるわけです。その場合に、この人たちは統括安全衛生責任者の管轄外になっている。
 だから私が言うておるのは、そういうような人たちの扱いをどうするのか。事故の一番の原因というのはこれなんですよ。しかも外国人ですから言葉もわからぬしということで、勝手に、もう全然無関係に同じ場所で作業をしている。そこで火気を扱う。だから火気取扱何と言うのですか、あの規則にも違反をしておるだろうし、いろいろなことはあるだろうと思うのですが、どないにも手のつけようがない。
 こういうことなんですが、これについてひとつ率直なところを大臣に御意見をお伺いしたいのです。
#252
○初村国務大臣 船舶が造船所に入って修理をする。その場合に、造船所そのものには総括安全衛生の係がおるわけですね。ところが船主側になると、仕事の中の一部分でも自分の雇用しておる直接の雇用の方々に仕事をさせる。修理代が若干でも安くなればこれは船主としていいことですから。しかし、それを取り扱うために労働安全というものの知識がない。したがってそこに、いろいろないま言うたようなSSKなりあるいは三菱神戸造船所において事故が起こった。こういう問題でありますので、これは造船所側に責任があるとばかり言えない、やはり船主側にも責任があるのではなかろうか、私はこう思うわけなんです。したがって、そういうところの扱いをどうするか、労働基準法等に基づいてよく研究してみたいと思います。
#253
○浦井委員 これはかなり古い話でありますが、昭和四十年十月十三日に基準局から、これは照会ですかね、基収第五九一七号というのでもって、この問題に関連した回答が出ているのです。それで「元方事業主である造船業者は船舶所有者の労働者も統括管理に服するよう船舶所有者に要請する等適当な措置をとられたい。」ということです。だから、やはり造船業者の方が船舶所有者の方に要請するというようなことを労働省としてはかつて言われておるわけです。これは四十年ですからかなり古いです。それで四十九年の基発第六七三号通達、それから第六七三号の二通達でも、一言で言えば同じようなことを言っておられるわけです。
 だからこの際、私が言いたいのは、やはり統括責任者が統括をできるようなそういう位置に船主直雇いの労働者も入れなければ、こんな事故は何ぼでも多発するのではないか。それなんですよ。問題はただ一点だけなんです。
#254
○林部説明員 本筋としては先ほど大臣からもお答えしておるわけでございますが、先ほど先生が御指摘になりました事例二例のうち、後の神戸の例は確かに外国籍の船員によって起こった事故であるということが明らかでございますが、佐世保重工の問題につきましては現在まだ調査中でございまして、確かに先生おっしゃいますように、原因につきましては、火災発生当時インド人の船員二名が機関室内でガス切断作業を実施していたのではないかという証言もあるわけでございますけれども、現在まだ確定しておりません。
 そういうようなことでございますから、二例たまたまお話が出たのでございますが、片方の場合には作業の場所に外国人だけがいた、それから佐世保重工の場合には、もし日本人と外国人が一緒に混在して作業をしていて事故が起こったということになってまいりますと、外国人に対する法令の適用上の問題はなかなかむずかしい問題がございまして、現在私どもも関係省庁等とも相談をしながら、その辺の適用問題については検討中でございます。
 したがいまして、先ほど先生が読み上げられましたように、船主協会あるいは造船工業会に対して、私どもが過去に災害をなくするためにいろいろな協力要請をいたしておるわけでございますけれども、外国の船主に対してどういう形で要請をするかということについては、いま申しましたように適用上もいろいろむずかしい問題がございますから、もちろん行政指導の形で協力の要請をするということは現実にはできるわけでございますけれども、事が外国の船主、そして外国の船員ということになりますと、法令の適用上いろいろむずかしい問題がございますので、特に今回の佐世保重工の事例に関しましては現在まだ調査の最終的な段階に達しておりませんので、調査の結果が明らかになった時点で、確かに先生御指摘のような事態に対して最も有効かつ適切な対策がどのような形のものであるかということについてはやはり慎重に対処する必要があるのではないか。
 率直に申し上げまして現在私どもが考えております考え方といたしましては、先ほど大臣も御答弁いたしましたように船主側にももちろん責任はあるわけでございますけれども、現実の問題としては、調査の結果が明らかになりました時点で、具体的に定期修理のためにわが国のドックに入ってまいります外国の船の補修等担当いたします造船工業関係の業界とよく話し合って有効な方法というものを模索してまいりたいというのが現在の段階での考え方でございます。
#255
○浦井委員 これで終わりますけれども、有効な方法を模索している、その間に何人の人が死ぬかわからないわけですよね。だから早くやらなければいかぬわけですよ。だから私は外国の船員がどうのこうのというようなことはいま言ってないわけなんです。これは韜晦の論理ですよ、そんなことを言うてはぐらかすのは。私は船主の直雇いの労働者が一緒に造船所の中で働いておる場合に、統括責任者の中に入れなさいということを言っておるわけです。これは大臣の方がわかりがいいと思う。そういう点で私は、これはもうこんな事故は探せばほかにもあっただろうしこれからも起こるので、ひとつ造船所の総点検をやるぐらい、それで労働安全衛生法の安全衛生規則の中にいろいろ書いてありますけれども、一遍大臣よくよく点検していただいて、そしてこれではあかんというところを、たとえば脱出口を確保することであるとかあるいは見張り、安全監視員というのがあるのですが、それも統括責任者の権限外ですからあっても役に立たぬわけですよね。だからそういう点で早急に見直しをやっていただきたいと思うのですが、最後に大臣の決意を聞いて、私終わりたいと思います。
#256
○初村国務大臣 いま労働安全衛生の面からいろいろ話があったわけでございますが、まあ事務的な方は一応外国人ということで非常にきついことを言うようでありますが、要は労働災害をなくすることなんだから、やはりそれに前進するように検討してみたいと思います。
#257
○浦井委員 終わります。
#258
○唐沢委員長 次に、菅直人君。
#259
○菅委員 きょうは、労働大臣の所信に対する質問ということでありますけれども、二十二分という限られた時間ですので、私はいわゆるパート労働、パートタイマーの問題について少しいろいろとお聞きをいたしたいと思います。
 パートタイマーの問題は、きょう朝も他の委員の質問の中でもいろいろと出ておりましたけれども、近年大変にパートの増加ということが言われておりますし、また同時に、その構造が相当に変わってきているといいましょうか、産業構造的に見ても、第二次産業における臨時工としてのパートという形に加えて、第三次産業におけるスーパーとかチェーンストアなんかのパート労働というものが大変に拡大してきているということも言われているわけですけれども、そういう変化に対して現在の労働行政というものが的確に対応できているかどうか、そういった問題についていろいろな角度からお尋ねをいたしたいと思います。
 まず現在のパート労働の実情といいましょうか、そういうことについて、パートについての定義もいろいろな形があるようですけれども、パートの定義、そしてパート労働のこの数年間の総数の変化、わかればそれを産業構造の中で第二次産業、第三次産業という形で分類をしていただいて、どういうふうな変化になっているのか、まずそういったところからお尋ねをしたいと思います。
#260
○江田説明員 お答え申し上げます。
 パートタイマー労働者の定義でございますが、ただいま御指摘ございましたように、必ずしも統一をされているわけではございません。その調査の目的に応じてそれぞれ定義を行っているという状況でございます。ちなみに労働省の行っております統計調査におきましては、大きく分けまして二通りの定義がございます。
 一つは、一日の所定労働時間がその事業所の一般の労働者より短いか、あるいは一日の所定労働時間が同じてあっても一週間の所定労働日数が一般の労働者より少ない者、こういうような定義に基づきまして調査を行いますものといたしましては、雇用動向調査とか賃金構造基本統計調査などがございます。
 もう一つは、企業においてパートタイマーあるいはパートと呼ばれている者という、その企業の中の処遇という面に着目をして定義をいたしておりますものが、雇用管理調査あるいは第三次産業の雇用の実態調査、これは昭和五十四年だけにつきまして行っております。こういうような定義がございます。
 このほかパートタイム労働者を文字どおり短時間就労の労働者とみなすものといたしまして、総理府の統計局が行っております労働力調査がございます。これは、一週間の就業時間数が三十五時間未満の雇用者、こういうような定義になっております。
 そのパートタイマーの推移でございますが、全体をつかみますものといたしまして、最後に申し上げました総理府統計局の労働力調査がございます。週間の就業時間三十五時間未満の非農林の雇用者数で見ますと、その総数が昭和五十五年平均で三百九十万人でございます。五十六年では三百九十四万人というような状況でございます。これが五十一年の数字で申し上げますと、三百十四万人であったわけでございまして、五十六年までに約八十万人が増加をしている状況でございます。また、三百九十四万人のうちの二百六十六万人が女子というような構成になっております。
 次に、産業別に見ますと、短時間雇用者というのはその約三分の二に当たる二百五十九万人が第三次産業に雇用されております。産業大分類別に見ますと、これは五十五年の数字でございますが、卸売・小売業で百三万人、サービスで百万人、製造業九十六万人といったところがその多くを占めているというような状況でございます。
#261
○菅委員 いまお聞きしますと、いわゆる第三次産業が三分の二ということですけれども、第三次の伸びというのはわかりますか、いますぐ。
#262
○江田説明員 ただいますぐには、ちょっとわかりかねる状況でございます。
#263
○菅委員 それでは結構ですけれども、こういう大変な、急激な増大の中で、現在のいろいろな労働法規等が十分に対応できているかどうかという点について、いろいろな角度からお尋ねをしたいのですけれども、まず労働基準法の中で、多分一番関係の深いのは労働契約の問題、また解雇の問題、それから休暇の問題等ではないかというように思うわけですけれども、それぞれについて、現在たとえばこういった問題が発生しやすいんだとか、そういうことが報告されているとか、それに対して何らかの対応をしているとか、きょう、朝の論議の中で雇い入れ通知書制度の問題も出ておりましたけれども、これを実施することで労働契約ということが十分に行われるようになるということだと思いますけれども、いままでどの程度、労働契約の問題について言えば守られてきたのかというようなことですね。
 ちょっと、あれこれたくさんになりましたけれども、とりあえず労働契約と解雇の条件、休暇の条件等について、現状について何か問題があるならあるで、また対応なら対応についてちょっとお尋ねをしたいと思います。
#264
○岡部説明員 パートタイマーにつきましては、まず雇いますときに、または雇われますときに、そのまま口約束で就労が決定するということでございまして、労働条件につきましての明確な取り決めがないというのがほとんどの実情でございます。
 就労いたしました後に、就業規則があればそれはそれで労働条件のよりどころになるわけでございますが、これもパートタイマーについて就業規則が整備されておると見られますものは半数程度でございます。したがいまして、パートタイマーにつきましてトラブルが多く発生をするようになってきております。賃金関係では、たとえばベースアップがあるかないか、賞与、手当をもらえるのかもらえないのか、それから一般社員との賃金格差についてのトラブル、それから労働時間の関係では、果たして年次有給休暇がどれぐらいもらえるか、あるいは割り増し賃金の計算の起算点はどこかというふうな問題、あるいは労働、社会保険に加入しているか否か、それから離職あるいは解雇に当たってのトラブル、このようなものが発生している状況でございます。
 これにつきましては、私ども、その多くは雇い入れ時の労働契約がしっかりしていれば解決されるものと考えられますので、先生御指摘のように、雇い入れ通知書方式を本年度の新政策として全国的に施行いたしたいと考えているわけでございます。そのほか、相談体制等も整備してまいりたいと考えているところでございます。
#265
○菅委員 この雇い入れ通知書というのは、多少具体的に言うと、どういう形でどういう規模でやられる予定ですか。
#266
○岡部説明員 雇い入れ通知書といいますが、これは見方を変えれば労働契約書ということになるわけでございます。これにつきましては、十人以上の規模でパートタイマーを一人でも雇っている事業は、現在、全国で三十七万事業所あるわけでございますが、そのすべてに、私どもこの雇い入れ通知書のひな形を作成いたしまして、これを渡したいと考えております。これをモデルに、パートを雇います際には、その空欄のところを記入していけばそこで一つのいい労働契約書ができ上がるというふうな形のものをこれから考案してまいりたいと考えております。
#267
○菅委員 それと、いまの年次有給休暇の問題で、この場合は、たとえば二カ月とか六カ月で更新をして一年以上継続をして働いている場合についても、当然年次有給休暇が与えられるというふうに解釈をしていいわけですか。
#268
○岡部説明員 パートタイマーの契約期間が更新されてまいりまして、それがたとえば一年以上になりました場合には、通常これは継続して勤務したものとみなされるという考え方をとられるわけでございます。そうなりました場合には、その次の年から労働基準法上の定めによる年次有給休暇請求権が発生するというふうに考えるべきであろうと考えます。
#269
○菅委員 労働基準法以外の、労災保険の問題、雇用保険の問題、社会保険等の問題があるわけですけれども、労災と雇用保険というのは、これは両方とも確実に加入を強制といいましょうか、パートもすべて加入されていると考えていいんでしょうか。それとも、加入しない場合があるとすれば、どういう場合に労災、雇用保険について加入のない場合があるのか、お尋ねをします。
#270
○石井(甲)政府委員 労災保険につきましては、現在全部適用でございまして、すべての雇用関係にある者がその適用を受けるわけでございます。仮に、労災保険につきまして使用者がその保険料を万一支払っておらない場合でありましても、その被災者は労災保険から補償を受けるという仕組みになっております。すなわち、全部適用でございます。
#271
○関(英)政府委員 雇用保険について申し上げます。
 雇用保険も、たてまえは全面適用でございますが、パートタイマーの実態が非常に多様でございますので、結論から申し上げますと、一定の基準を設けまして、その基準以上のものについてはすべて適用する、こういう考え方をとっております。と申しますのは、雇用保険は主として賃金をもって生計を維持しようとしている人についての保険でございますが、非常に臨時、内職的に就労するにすぎない者については、適用することがかえってその労働者の利益にならないという場合も考えられます。パートタイム労働をされる方の中には、たとえば家庭の主婦の中で夫の被扶養者としての地位をそのままにして、したがって各種社会保険――労災保険はもちろん除かれますが、いまお話のあったとおりでございますが、各種社会保険の上で被扶養者として扱われていたいというような希望をされる方もございます。ただ、その御本人の希望だけでというわけにもまいりませんので、そこで私どもとしては、その者の労働時間、賃金、その他の労働条件が就業規則で明確に定められておりまして、一週の所定労働時間が当該事業において同種の業務に従事する通常の労働者の労働時間のおおむね四分の三以上で、反復継続して就労するような場合には被保険者とするというような基準で適用いたしておるところでございます。
#272
○菅委員 雇用保険についてはある程度の基準が必要という事情もわかるわけですけれども、社会保険に関して、いま被扶養者扱いの問題がありましたけれども、場合によると、一種の被扶養者扱いをやや前提として雇い入れるといいますか、そういうことも中にはあるやに聞くわけですけれども、この基準なりが、基本的には加入させるということを原則として、例外的に一定の条件ないし本人の希望を含めて配慮するという、そういう加入を原則として考えるべきだというふうに思うわけですけれども、その点はいかがですか。
#273
○関(英)政府委員 雇用保険については、先ほど申し上げましたように、やはり雇用保険の被保険者として保険料を納めていただき、そして失業したときには失業の認定をして再就職を促進する、こういう立場から適用というものを考えていきませんと、逆に問題も起こる場合がございます。そういう観点から先ほどのような基準を設けて、その基準に達した者は適用するという考え方のもとに私ども運営しているわけでございます。
 社会保険については、私ども労働省でお答えするのはちょっといかがかと思いますので、お許しいただきたいと思います。
#274
○菅委員 それからもう一つ、これは労働省の管轄ということではないかもしれませんけれども、税法上現在七十九万円を超える賃金があった場合は被扶養者の扱いを外されるということで、実際には、配偶者の賃金がかなり高い場合はそれを外されるために、配偶者の方の扶養者控除が外れた方が逆に言うと経済的に損をするというために、七十九万円以上働くとだんなの方の税金と勘案して考えれば損をしてしまうので、それ以上は働かないという形をよく聞くわけです。
 これは考えようによったら、雇っている方にとっても、また雇われている本人にとっても、働く意欲がある場合には何か非常に不合理な、社会的な意味での損失ではないかというふうに思うのですけれども、この点について何らかの対応を考えておられるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
#275
○高橋(久)政府委員 先生が御指摘のように、パートタイム労働者につきましては、年間七十九万円を超える所得がございますと本人に所得税がかかりますし、配偶者に対しまして、夫が配偶者控除を受けられなくなるという問題がございます。この七十九万円という金額につきましてどの辺にその水準を引くかというようなことは大変むずかしい問題でございまして、労働省といたしましては、所得が低い者の税負担の軽減を図っていきたいというふうに考えているところでございますが、こういった所得の限度額をどういう水準にするかということにつきましては、いろいろな事情を考慮しながら、あくまでも所得の低い者の税負担の軽減を図るという姿勢に立ちながら関係各省と十分連絡をとっていきたいというふうに考えているところでございます。
#276
○菅委員 これは大臣にもお聞きいただきたいのですけれども、せんだっての減税問題の議論の中でも、実は各政党間でこの額をどうしようという議論があったわけです。いわゆる税制全体の立場からのバランスということももちろんあると思うのですが、先ほど言いましたようにパート労働というものが、もっと働いてもいいと思い、またもっと働いてもらいたいと思っている当事者がいながら、この制度のために制約されているというのは非常にむだです。これはもうちょっと検討しなければいけないと思いますけれども、たとえば百万円までは分離課税を選択的に認めるとか、一五%なら一五%を払えば配偶者控除については別に影響ないとか、そういったパート労働というものを生かすという立場での何らかの方策を労働省としても検討されて、必要なところに提案をされるということもあっていいのじゃないかと思うのですけれども、その点についてもう一度、何らかの対応があるのかどうか、それとも税制が変わるまでは仕方がないということなのか、いかがでしょうか。
#277
○初村国務大臣 いま、パートの方が年収七十九万円働けば、それ以上のものについては課税される、したがって、もうそれ以上働かないよというような風潮があることは、労働力の必要な時代に逆行化するのじゃなかろうか、これは労働力の関係から私はそう思います。何さま税制というものはなかなかむずかしいものがたくさんあるようでありますので、私どもとしては何らかの手当てをして、いま菅さんが言われたとおりに分離課税制度をやったらどうかというようなことも検討してみたいと思います。
#278
○菅委員 時間も来たようですので、最後の質問にしますが、現在のパートタイムのいわゆるパート労働というものは、人数が非常にふえているというだけではなくて、その就労意識も非常に変化しているということがいろいろなデータに出ているわけです。ここにも政策推進労組などが調べたいろいろな報告書があって見ていたのですけれども、たとえばこういうパート労働につく理由として、経済的な理由にほとんど並ぶ形で、場合によってはそれ以上に、社会に参加をしたいという意識が非常に強くて、そういう形になっているということも出ております。そういった意味では、これからの労働力の中でどう見るか。また、もう一つの意味で言えば、パートパートと言うと何か一時的な、部分的な労働というふうにも聞こえるのですけれども、業態によってはメーン労働になっている。これも時間があればお聞きしたかったのですが、ある種の業態においてはパート労働がメーンで、その補完をフルタイマーの人がやっているという業態もたくさんあらわれているわけで、そういう中での労働条件などは、これまでのようないわゆる臨時雇い的発想だけでは処理できないのじゃないかと思うわけです。
 そういった意味で労働省においても、このパート労働について全面的な再検討を含めてこれからの対応をお考えいただきたいと思うのですけれども、この点について最後に大臣に、どういうふうにお考えになっているかお尋ねをして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
#279
○初村国務大臣 産業構造の変化に伴いまして労働力に占める女子あるいは高齢者の方々が非常にふえておる。したがって今後もますますふえるであろうということは、私どもも見込んでおるわけであります。そういうことで労働省としては、このパートタイム労働者については非常に重大な関心を持っておるわけであります。したがって、いま言われたような労働条件の適正化対策あるいはまた雇用対策のより一層の充実に今後努力してまいりたい、かように考えております。
#280
○菅委員 終わります。
     ――――◇―――――
#281
○唐沢委員長 次に、内閣提出、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。初村労働大臣。
    ―――――――――――――
 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#282
○初村国務大臣 ただいま議題となりました勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 勤労者財産形成促進法は、資産の保有面で立ちおくれが見られる勤労者生活の実情にかんがみ、勤労者の財産形成を促進し、その生活の安定を図るとともに国民経済の健全な発展に資するため、昭和四十六年に制定されたものであります。
 この法律による勤労者財産形成貯蓄制度は、発足後十年を経過し、現在、財形貯蓄を行う勤労者は一千三百万人に達し、その貯蓄額は五兆円を超える等、勤労者生活に広く定着してきているところであります。
 しかしながら、この貯蓄資金を活用して行う勤労者財産形成持ち家融資につきましては、その利用状況ははなはだ低調であり、このままでは、勤労者の生活の安定のみならずわが国経済の発展にとっても重要である住宅建設を十分に促進することができない実情にあります。また、高齢化社会の進展に対応して勤労者の老後生活の一層の安定を図るためには、在職中におけるそのための財産形成を促進する必要がありますが、現行の制度では、制度上十分に対処することができない現状にあります。
 政府は、このような実情等にかんがみ、厳しい行財政事情のもとではありますが、勤労者財産形成促進制度を見直し、貯蓄及び住宅の両面にわたる施策の大幅な充実、強化を図りたいと考え、そのための案を勤労者財産形成審議会に諮問し、その答申をいただきましたので、ここに勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案として提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。
 第一は、勤労者財産形成年金貯蓄制度の創設であります。
 勤労者が老後生活のための計画的な貯蓄を行うことを促進するため、勤労者財産形成貯蓄制度に、年金の支払いを目的とする一定の貯蓄を勤労者財産形成年金貯蓄として加えることといたしております。また、勤労者がこのような年金貯蓄を行う場合に事業主が勤労者財産形成給付金制度等を利用して援助を行うことができることとすること等所要の措置を講ずることといたしております。
 なお、この法律案による勤労者財産形成年金貯蓄の利子等について退職後も引き続き非課税とする措置につきましては、すでに租税特別措置法の一部を改正する法律案に盛り込んで御審議を願ったところであります。
 第二は、勤労者財産形成持ち家個人融資制度の拡充であります。
 勤労者の住宅の取得を一層促進するため、勧労者財産形成持ち家個人融資の貸付限度額を財形貯蓄の額の三倍に相当する額から五倍に相当する額に引き上げることといたしております。
 なお、この融資につきましては、このほか、予算措置により新たに利子補給を行い、返済負担の大きい当初五年間について貸付利率を引き下げることとし、他の公的住宅融資の利用と相まって、勤労者の住宅建設に効果的な施策を講ずるようにいたしております。
 その他、この法律案におきましては、その附則において、勤労者財産形成年金貯蓄制度の創設等に伴う経過措置を規定いたしますとともに、関係法律の所要の規定の整備を行うことといたしております。
 以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#283
○唐沢委員長 これにて趣旨説明は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 次回は、明後八日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時四分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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