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#1
第096回国会 社会労働委員会 第6号
昭和五十七年四月八日(木曜日)
    午前十時三十二分開議
 出席委員
   委員長 唐沢俊二郎君
   理事 今井  勇君 理事 大石 千八君
   理事 丹羽 雄哉君 理事 深谷 隆司君
   理事 金子 みつ君 理事 森井 忠良君
  理事 平石磨作太郎君
      浦野 烋興君    小里 貞利君
      小沢 辰男君    太田 誠一君
      金子 岩三君    鴨田利太郎君
      木野 晴夫君    斉藤滋与史君
      白川 勝彦君    竹内 黎一君
      戸沢 政方君    友納 武人君
      長野 祐也君    葉梨 信行君
      浜田卓二郎君    牧野 隆守君
      山下 徳夫君    池端 清一君
      川本 敏美君    田邊  誠君
      栂野 泰二君    永井 孝信君
      塩田  晋君    浦井  洋君
      小沢 和秋君    菅  直人君
      柿澤 弘治君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 森下 元晴君
 出席政府委員
        外務大臣官房審
        議官      藤井 宏昭君
        厚生大臣官房総
        務審議官    正木  馨君
        厚生省環境衛生
        局長      榊  孝悌君
        厚生省医務局長 大谷 藤郎君
        厚生省薬務局長 持永 和見君
        厚生省社会局長 金田 一郎君
        厚生省児童家庭
        局長      幸田 正孝君
        厚生省保険局長 大和田 潔君
        厚生省年金局長 山口新一郎君
        厚生省援護局長 北村 和男君
        社会保険庁年金
        保険部長    小林 功典君
 委員外の出席者
        内閣総理大臣官
        房参事官    小西  亘君
        大蔵省主計局主
        計官      篠沢 恭助君
        社会労働委員会
        調査室長    河村 次郎君
    ―――――――――――――
委員の移動
四月七日
 辞任         補欠選任
  池端 清一君     上田  哲君
同日
 辞任         補欠選任
  上田  哲君     池端 清一君
同月八日
 辞任         補欠選任
  古賀  誠君     太田 誠一君
  丹羽 雄哉君     浦野 烋興君
  船田  元君     鴨田利太郎君
同日
 辞任         補欠選任
  浦野 烋興君     丹羽 雄哉君
  太田 誠一君     古賀  誠君
  鴨田利太郎君     船田  元君
同日
 理事丹羽雄哉君同日委員辞任につき、その補欠
 として丹羽雄哉君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第三〇号)
 国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第四〇号)
 厚生関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○唐沢委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案に対する質疑は去る一日終局いたしております。
 この際、森井忠良君外三名から、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党四派共同提案に係る修正案が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。森井忠良君。
    ―――――――――――――
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#3
○森井委員 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、昭和五十七年度における障害年金、遺族年金及び留守家族手当等の額の引き上げの実施時期を、昭和五十七年五月から同年四月に繰り上げること。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#4
○唐沢委員長 以上で修正案の趣旨説明は終わりました。
 この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。森下厚生大臣。
#5
○森下国務大臣 ただいまの日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党提出の修正案については、政府としては反対でございます。
    ―――――――――――――
#6
○唐沢委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、森井忠良君外三名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#7
○唐沢委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。
 次に、原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#8
○唐沢委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
#9
○唐沢委員長 この際、大石千八君外六名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合及び柿澤弘治君共同提案に係る本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。大石千八君。
#10
○大石委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合及び柿澤弘治君を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項につき、格段の努力を払うべきである。
 一 国民の生活水準の向上等に見合って、今後とも援護の水準を引き上げ、公平な援護措置が行われるよう努めること。
   なお、戦没者遺族等の老齢化の現状及び生活の実態にかんがみ、一層の優遇措置を講ずるとともに、援護の水準の引上げに伴って被用者医療保険における被扶養者の取り扱いが不利にならないよう配慮すること。
 二 給付改善の実施時期については、従来の経緯を踏まえ、適切な措置を講ずること。
 三 第二次大戦末期における閣議決定に基づく国民義勇隊及び国民義勇戦闘隊の組織及び活動状況等について明確にするとともに、公平適切な措置をとり得るよう検討すること。
 四 満洲開拓青年義勇隊開拓団については、国境及び満鉄警備等に関する事実を調査するため、関係者と連絡を密にし、一層資料の収集に努め、問題解決のため努力すること。
 五 戦没者遺族等の高齢化が進んでいる現状にかんがみ、これら遺族の心情に十分に配慮し、海外旧戦域における遺骨収集、慰霊巡拝等については、更に積極的に推進すること。
 六 生存未帰還者の調査については、引き続き関係方面との連絡を密にし、調査及び帰還の促進に万全を期すること。
 七 中国残留日本人孤児の肉親調査を今後とも積極的に推進するとともに、帰国を希望する孤児の受入れについて、関係各省及び地方自治体が一体となって必要な措置を講ずること。
   また、中国からの引揚者が一日も早く日本社会に復帰できるよう、その対策に遺憾なきを期すこと。
 八 かつて日本国籍を有していた旧軍人軍属等及び旧国家総動員法による被徴用者等に係る戦後処理のなお未解決な諸問題については、人道的な見地に立ち、早急に、関係各省が一体となって必要な措置を講ずるよう検討すること。
 九 原子爆弾による放射能、爆風、熱線等の傷害作用に起因する傷害、疾病を有する者に対する障害年金の支給及び死亡者の遺族に対する弔慰金、遺族年金等の支給に当たっては、現行援護法の適用につき遺憾なきを期すこと。
 十 法律の内容について必要な広報等に努める等更にその周知徹底を図るとともに、相談体制の強化、裁定等の事務の迅速化に更に努めること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#11
○唐沢委員長 以上で趣旨説明は終わりました。
 採決いたします。
 大石千八君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#12
○唐沢委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。
    ―――――――――――――
#13
○唐沢委員長 お諮りいたします。
 本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○唐沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
#15
○唐沢委員長 この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森下厚生大臣。
#16
○森下国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。
     ――――◇―――――
#17
○唐沢委員長 次に、厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森井忠良君。
#18
○森井委員 三月十八日に私から質問をいたしました国民健康保険の十一カ月予算の件について、検討されたことと思いますけれども、その結果をお聞きをいたしたいと存じます。
 第一は、国庫補助と保険者の会計年度区分が異なるのはおかしいのではないかということ、第二は、国保組合の五十七年度予算編成について組合の事務運営に支障がないようにされたいということ、以上の二点について検討結果をお答えいただきたいと存じます。
#19
○篠沢説明員 ただいまの第一の点につきまして私からお答えをさせていただきます。
 今回の措置は、法的なことはともかくといたしまして、行政として必ずしも適当な姿であるとは申しにくいと存じます。そこで、国保事業については国と地方公共団体の会計年度区分が合致していることが望ましいので、今回厚生省におきまして発足いたしました国保問題懇談会における国保制度のあり方についての検討等を踏まえまして、今後できるだけ早く合致させるよう努力してまいりたいと存じます。
#20
○大和田政府委員 第二の問題でございます昭和五十七年度の国保予算につきましては、行政庁の指導の変更によりまして保険者に御迷惑をおかけいたしましたが、国民健康保険組合の予算認可に当たりましては、国保組合の事業運営に支障が生じないよう特例措置を講じまして、弾力的に対処をしていくこととしております。
#21
○森井委員 次に、私はいわゆる第二薬局の問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。
 いわゆる第二薬局につきましては、たしか昨年の三月、本委員会におきまして私から問題提起をいたしました。そのときには大和田保険局長、それから当時の山崎薬務局長、さらに園田厚生大臣からそれぞれ御答弁がございまして、重複は避けさせていただきますけれども、いずれにいたしましても第二薬局はいろいろ問題がある。たとえば医師の所得の分散につながるとか、あるいはまた医薬分業の趣旨に照らしましても、昭和五十年の薬務局長通知、機能的、構造的、経済的に独立をしていないというそういった問題、あるいはまた患者から見ますとよけいな負担を強いられる、あるいはまた薬局選択の自由が侵される、あるいは処方の公開にももとるなどいろいろ問題が提起をされまして、いま申し上げました厚生大臣を初め関係の局長も問題点については十分認識をされたわけでございます。
 その後一年たちました。率直なところ、いままで厚生省が具体的に、そういった問題のある第二薬局、社会的に非難の強い第二薬局について依然として何ら措置をなさっていないということについては、私はきわめて遺憾でございます。その後、今日までの時点で新たに調査をなさったのか、あるいはまた具体的に強力な行政指導等をなさったのか、まず事実関係についてお伺いをしたいと存じます。
#22
○持永政府委員 第二薬局につきましては、先生御案内のとおり五十五年十二月に調査をいたしておりますが、五十五年十二月の調査以後特段の調査はいたしておりません。
 私どもといたしましては、第二薬局についていろいろ御指摘のような問題があることは十分承知いたしておるわけでございますが、薬事法の上からは、薬局の独立性というような形で、許可の申請に際しましてできるだけそういう独立性を保つような薬局の開設を指導するという形での指導強化を図ってまいったところでございまして、全国の担当課長会議その他で、繰り返しこの問題については触れておるところでございます。
 結果と申しては何でございますけれども、第二薬局の開設の状況を見てみますと、昭和五十六年におきましては前年に比べましてかなり開設の件数が減っている、こういうような状況にあるわけでございまして、こういう意味合いで、そういうことを申し上げるのもあれでございますが、指導強化の効果はある程度上がっているのじゃないかというような感じはいたしております。
#23
○森井委員 去年問題を指摘をいたしまして一年経過しておるわけですが、いま特段の調査は、していらっしゃらないということなのですね。特段でなくてもよろしゅうございますが、その後ふえているのか減っているのか、数字をつかんでおる範囲で明らかにしてください。
#24
○持永政府委員 前回、五十五年の十二月の調査で把握いたしましたいわゆる第二薬局の数は、先生御承知と思いますが、千七件でございます。この許可件数を経年的に見てみますと、昭和五十四年、五十五年、たとえば五十四年が二百五十六、五十五年が三百三十九ということで、きわめて多い許可件数でございます。こういった問題もございまして、私どもの方も、先ほど申し上げましたように、申請許可に当たりましての指導を強化してまいったわけでございますが、五十六年におきましては、各ブロックの幹事県を通じて照会した数字でございますけれども、五十五年の三百三十九に対しまして百二十四ということで、かなり減っている状況でございます。
#25
○森井委員 それにしても、あれだけ去年問題になりながらまだ百二十幾つもふえてきておるというのはどういうわけですか。それが第一点。
 第二薬局の定義についてはいろいろございますけれども、少なくとも千七という数字を把握なさったときの仮定義が一応あるわけでございます。さらにその前にさかのぼれば、先ほど申し上げました昭和五十年の薬務局長通達でも一応の規制はできることになっておるわけでございますが、依然としてふえておる。これはどういう理由なのか。本来の調剤薬局というのはふえてくれなければ困るけれども、そうではなくて第二薬局は一件もふえてはいかぬということなのに、なぜ百二十四もふえたのかということが一つ。
 それからもっと問題なのは、これも明らかにしていただきたいのですけれども、健康保険法の第四十三条ノ三で三年に一回更新をするのでしょう。三年に一回更新をする、逆に言えば、いまある第二薬局は三年たてば一応その保険薬局の指定は消滅するのです。ほうっておけばこれは、消滅する六カ月前から何か問題を提起しない限りは自動的に継続するのですけれども、少なくとも法的には三年間で一応切れるというのがたてまえなのです。なぜ切らないのですか。しかもいまあなたがおっしゃったように、千七のうちで約六割に当たる六百くらいは五十四年と五十五年、つまり医師優遇税制がわずかではありますけれども是正をされたときに、急にふえたのです。
 そして、申し上げるまでもありませんけれども医師は処方せん料がかせげる。単価は五点上がって五十五点になって五百五十円、これはほうっておいても医師の手に入るのです。薬局の方は調剤料なり薬価差益なりというものが入るのです。そういったことを別にいたしましても、処方せん料だけでも大きな額でしょう。いま調剤薬局から上がってくるレセプトは、大ざっぱに言うと恐らく七千万枚ということになると思いますけれども、そのうち三分の一、二千万枚強は第二薬局からなのです。いつか申し上げましたが、計算してごらんなさい、これだけで百億以上の金がむだになっているじゃないですか。なぜいままでのものを取り消さないのか。もう更新の時期が来ています、五十四年でしたら五十七年ですから。こんな重大なことをなぜほうっておくのか。私も言いたくはありませんよ。少し肩に力が入って困るから僕もリラックスして話をしたいと思いますが、せめてこれだけはやってほしいということで私はつつましい発言を去年しているのです。
 ですから、なぜまだふえているのかという理由と、二つ目は中央社会保険医療協議会に諮って更新の時期に淘汰をするということができないのか、明らかにしてください。
#26
○持永政府委員 先生お尋ねの件の前段の問題にお答えを申し上げたいと思います。
 いわゆる第二薬局として私どもが調査いたしました定義は、これも御案内のとおり特定の医療機関に隣接して設立された薬局ということと、それから薬局の開設者が特定医療機関の開設者あるいはその配偶者あるいはその親族といったような二つの条件を見まして第二薬局という概念づけをいたし、それによって調査したものでございます。
 それで、薬事法に言いますいわゆる薬局の開設というのは、薬事法の上では保健衛生の上からの衛生法規としての規制をいたしておるわけでございまして、これも御案内のとおり薬局の構造設備でございますとか、あるいは開設者の欠格事由でございますとか、あるいは管理者としての薬剤師の設置、そういった点での規制をいたしておるわけでございますが、いま申し上げました第二薬局というのは確かに医療機関からの構造的、機能的、経済的な独立性という点からいろいろ問題があるということで、開設許可に際しましてはそういった意味での独立性を確保するような指導をいたしておるわけでございます。
 ただ、何せ薬事法の規制というのはいろいろ制約があるわけでございまして、そういう意味合いで、私どもとして開設許可が出たものについてさらに保健衛生上の観点からの制約という面での指導はいたしておりますけれども、ある程度の限界があるというようなことであろうと考えられるわけでございます。
#27
○大和田政府委員 第二の問題につきまして私からお答えをいたします。
 すでに更新の時期が来つつあるものもあるじゃないか、来ているものもあるじゃないか、これをどういうふうにしているのか、そのときに更新を拒否するということができないのか、こういうようなお話だと思いますが、実は、個々具体的な問題といたしましては個々具体的な問題として各県を指導しておるわけでありますし、先ほど薬務局長も申し上げましたが、保険サイドにおきましても全国の保険課長会議であるとか、そういったような会議があります都度に、かなり具体的にそのようなものにつきましての指導をしておるわけでございます。
 ただ、更新の拒否ということになりますと、いわゆる第二薬局の中で独立性が担保されていない、あるいは開放性が担保されていないといったようなものを具体的に把握いたしまして、これを拒否していくということがやはり必要でございます。これはそのような指導を個々にやっておるわけでございますが、ただ、これにつきましてはもっと総合的に詰めまして、そして私どもといたしましては早急に各県に対しまして指導通達を出していきたい、こういうふうに考えております。それによりましてただいま申しました独立性が担保されてない、開放性が担保されてない、あるいは保険薬局としての運営が妥当を欠く、たとえば処方せんを個々の患者に渡さないで医療機関から薬局へ渡してしまうといったようなケースがありましたら、それはやはり適正な運営ではない。これは指導監査を強化することによりまして適正化を図っていくというようなことにいたしまして各県を指導していきたい、指導通達を出してそういうようなことにしてまいりたいというふうに考えておりまして、現在早急に検討を急いでおるところでございます。
#28
○森井委員 保険局長は第二の問題しかお答えになりませんでしたが、私は第一の問題こそあなたがお答えになるべきだと思うのです。言われたように薬務局は、一定の基準がそろえば薬事法上薬局の認可というのはしなければならぬかもわからない。しかし保険局は、薬務局が認可をした薬局を無条件で保険薬局と認める必要はない。これは去年の私の質問に対しても明確にお答えになっていらっしゃいます。だから保険薬局上問題があれば、特に第二薬局と明らかに見られるものについては指定をする必要はない。いままでも実績があるでしょう。つまり薬務局が認可をした薬局について、第二薬局だからという理由で保険薬局としなかった例があるはずでございます。わずかではありますけれども、すでにそういった前進の面が幾つかある。これはぜひあなたの口から明らかにしていただきたい。それが一つ。
 二つ目は、いま保険薬局と指定をしている第二薬局について、あなたはなかなかむずかしいとおっしゃるが、行ってみなさい、ちゃんと敷地があって、病院の入り口と薬局の入り口は違うけれども、調べてみたら開設者は同じ医師であったり医師の奥さんであったり、そういう明確なのが山ほどあるじゃないですか。とりあえずわかる分だけでも数えていってごらんなさい。全国、これは明確です。ぱしっと写真を撮ってこれが第二薬局だなどという典型的なものが山ほどあります。それすらあなた方はいまもって更新の拒否をしようとなさっていない。そういった直ちに目につくものについては取り消す必要があるんじゃないですか。
#29
○大和田政府委員 実績の問題でございますが、つまり薬局について保険薬局として指定をしなかった実績というのはございますけれども、先生おっしゃいましたように、個々の問題といたしましてこれは保険薬局として指定するのは適当でないというものは実は幾つかございます。ただ、私どもは集計はしておりません。各県からの情報として上がってまいりますのは聞いておりますけれども集計をしておりませんので、その点はひとつ御容赦いただきたいと思いますが、先生おっしゃいましたよべに具体的にそれはあるということでございます。
 それで第二番目の御質問でございます。たとえば保険薬局として公道に面していない、つまり先ほど申しましたいわゆる開放性がない、だからどこからでも自由に選択ができるといったような状態にないというのは、確かに保険薬局としては不適当でございます。そこで、先ほど申しましたように、これらの問題を含めましてこれをどのように規制していくかという問題につきまして私どもいま早急に詰めておるところでございますので、しばらく時間をおかしいただきたい、このように思うわけであります。
#30
○森井委員 繰り返すようですけれども園田厚生大臣は、いま私持っておりませんから、原稿なしで話しているのですから表現上は定かには申し上げませんけれども、こんな社会的に問題があるものを放置してはならぬ、もう猶予ならぬ、強力な指導もするが、指導で支障があるのなら法律を改正してでもやりたいと言われたのです。その意味ではあなたの答弁はどうもなまぬるい気がしてならぬのですね。いままでの第二薬局というのは全部居座っておるでしょう。一つも取り消したのがない。ちょっと確認しておきますが、取り消したのはないのですね。
#31
○大和田政府委員 最近におきます例といたしましては、先ほど私申しましたように、第二薬局が適正な運営を欠く、たとえば患者に処方せんを渡さないで医療機関から薬局の方へ処方せんが行ってしまうというようなものは、これは薬局として不適当である、そういったようなことで第二薬局を取り消した例はございます。しかし、いまのところはそれほど多くはございませんけれども。
#32
○森井委員 多くはないとおっしゃいますが、それは新たな申請についてはそうかもしれませんが、具体的な数字を挙げますと、去年の三月に発表した千七という数字が出ておる。第二薬局は千七あります。その千七については取り消したものはないのでしょう。
#33
○大和田政府委員 それはごく少数でございますが、私いま申しましたのはその中の第二薬局でございます。
#34
○森井委員 では、その点については努力の跡を認めますが、先ほど申し上げましたように、一見すぐわかる第二薬局がまだ国内にうようよしておる。これについては局長通達を出すとおっしゃいましたけれども、中身については後でまた御質問申し上げますが、とりあえず地方社会保険医療協議会に諮って、都道府県知事の直接の仕事になりますけれども、いずれにしても更新を拒否する方向で局長通達もお出しになるのですか。
#35
○大和田政府委員 具体的にどういう場合にどういうケースでやるかという問題につきましては、いま詰めておりますが、その方向といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、独立性に欠ける、開放性に欠ける、それから保険薬局としての運営に適正を欠くといったようなものにつきましては、これを指定をしないあるいは更新の際には更新をしないというような方向で指導していくというつもりで、私ども検討しておるわけでございます。
#36
○森井委員 第二薬局というものの定義については、これは確かにむずかしいことはわかります。先ほど言いましたように、見ればすぐわかるものもあります。それから、それ以外にもあなた方がとりあえず仮定義をなさって千七というのをお調べになった、そのときの仮定義が一つ重要な参考でしょう。
 それから、私はこの際申し上げておきますが、いまごろはファクシミリの時代で、電送して患者が行く前に、この患者が行くからこれだけの薬を出せというふうなことを事前に指令ができるような仕組みになっているのですね。ファクシミリによる電送で、事実上医療機関とそして薬局というものが従属関係にある、薬局が従属関係にあるというふうなものもございます。
 そのほかいろいろありますけれども、できるだけ現実に即して、そういった意味では定義はシビアになさってお決めになるおつもりなのか、お伺いしておきたいと思います。
#37
○大和田政府委員 まだ具体的なところまでは申し上げられないわけでございますが、やはり問題といたしましては、先生おっしゃいましたように、たとえば医療機関の開設者の配偶者あるいは親戚がやっておるというだけでは、これはなかなかただいま申しましたようないわゆる取り締まりの対象にはなりにくい。やはりそこで薬局としての独立性なり開放性なりが欠けておる、運営が適正でないといったようなものをつかんでいかなければならぬ、こういうことでございます。これはやはり権利を制限するわけでございますので、慎重にやっていかなければならぬというところにむずかしさもあるわけでございます。いま慎重にそういう意味では検討を深めておるというような段階でございます。
#38
○森井委員 もう一つ問題提起をしておきたいのですけれども、たとえばある国立大学病院のようにかなり歴史のあるものもある。しかし、私は冷静に考えますと、これも事実上同じ建物で処方せん料なり調剤料というものが余分に出ておるわけですから、これも直さなければならぬ。しかし、歴史的な経過もあって、特にあなた方官僚はなかなかそういったものについては直さないというきわめて悪い弊害があるわけですけれども、たとえばそういったものについては、これは第二薬局退治の一つの方法だと思うのですが、保険点数で、幾ら薬局をつくっても点数は院内処方と変わりませんよというような、いわゆる保険点数で抑えるという方法だってあると思うのです。これも検討されますか。
#39
○大和田政府委員 私は、一つの考え方であるというふうに考えておるわけでございます。ただ、ただいま先生おっしゃいましたようなことをしますには、やはり告示で、ある保険薬局に対してはこれだけの点数、ある保険薬局に対してはこれだけの点数ということを明確に決めていかなければならぬ。告示で決めますには、決められる対象である保険薬局、これは第二薬局の定義は何かということを明確にしていかなければならないというむずかしさが実はあるわけでございまして、そういったようなことからいたしますと、検討はいたしますが、なかなか簡単ではないというふうに考えておるわけであります。
#40
○森井委員 ぜひ検討していただきたいと思いますし、しなかったらまたもう一回質問させていただきます。
 そこで、局長通達はいつごろをめどに考えていますか。
#41
○大和田政府委員 早急にいま詰めておりますので、もうしばらく時間をおかし願いたいと思います。具体的に、たとえば四月いっぱいにどうとかいうふうなことはなかなかまだ申し上げられませんが、できるだけ早くこれを完成をさせていきたいというふうに考えております。
#42
○森井委員 最後に大臣にお伺いいたしますが、お聞きのとおりでございます。なかなか役所の人はやらないのですよ。関係団体との協議だとかなんとか言いましてね。いま担当課長会議等は開きましたが、あとは何もしていない。しかし、釈迦に説法になりますから申し上げませんが、まず医療費のむだを省く、これは時の問題ですから、その最たるものの一つに私は例示をさせていただきました。そういう意味で、第二薬局の問題は、ぜひ大臣が直接号令をかけていただきまして、一日も早く正常な姿に戻るように、大臣として政治生命をかけた御努力をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#43
○森下国務大臣 この第二薬局の問題は、ただ薬務行政だけの問題ではなしに、やはり保険医療全般にかかわる問題でございまして、医療費全般の中で薬価の占める割合が三五%とかまた三八%、非常に高額になっておることは事実でございます。特に高齢化社会を迎えるに当たり、この点私ども非常に心配をしております。
 そういう中で、このいわゆる第二薬局と言われるもののいろいろと悪い面についてたびたび国会でも取り上げられておりますし、特に森井議員は歴代大臣にも質問されまして、前向きの答弁をいただいておるように私も実は聞いております。なお、先般も長野議員からもこの問題について御質問を受けました。
 そういうことで、医薬分業の基本は何であるかというこの原点に返ればこれはおのずからよくわかるわけでございまして、当然この第二薬局のような制度をこのまま放置しておくべきでないということで、局長答弁もございましたように、いろいろ指導等をやって、できるだけ早くチェックをしていこうというような方針は持っておるわけでございまして、私もこの点は従来以上にひとつ熱心にやっていきたい。そして本当の医薬分業の実が上がるようにやりたいし、また診療側にとっても、いわゆる診療の収入というものは薬によってもうけるのだという非常に疑惑を与えるような傾向もあると思うのです。これはやはり診療側にとっても、医師の立場にとっても、余りよくないことだと実は思っております。そうでないのだというためにも、私はこの第二薬局のような紛らわしい存在はだんだん少なくしていくべきである。諸外国でもやっておりますように、本当に医薬分業によって独立性、そして開放性のある薬局がたくさんできまして、国民医療の向上に尽くすということが私どもの目標でございますから、ただ大臣答弁で、その場過ごしで過ごすようなことは今後私もいたしたぐないということで、全力を挙げてやることを申し上げて、御答弁といたします。
#44
○唐沢委員長 次に、川本敏美君。
#45
○川本委員 私は、中国残留孤児の処遇の問題について少しお聞きしたいと思うわけです。
 まず最初に、援護局長にお聞きしたいのですが、中国残留孤児と言われるのは、どのぐらいの数の人がまだ向こうに残っておるのか、現在まで里帰りされた人はどのぐらいおられるのか、すでにもう帰国されている方の数はどのくらいおられるのか、この辺の実態がもしわかりましたら、ひとつ。
#46
○北村政府委員 お尋ねの中国残留日本人孤児の概況でございますが、本人から調査依頼のありましたものが千四百八名に上っております。このうちこれまで身元が判明いたしましたものが五百三十八名でございますので、それを差し引きました八百七十名の孤児につきまして現在調査を行っているわけでございます。それで、この五百三十八名判明いたしましたうち、すでに日本に永住帰国いたしましたものが六十五名、一時帰国をいたしましたものが二百三十七名という数字になっております。
 このほかにまだ本人から名のりの出ていないいわゆる潜在孤児がどのぐらいいるかという問題は、なかなかむずかしい問題でございまして、詳細が不明でございます。
#47
○川本委員 いろいろな情報を集めますと、残留孤児の数は三千人とも五千人とも言われておるわけです。この間から、厚生省が肉親捜しのため六十人の孤児を呼び寄せて、大変御苦労いただいて、社会的にも大きなセンセーションを巻き起こした、こういう形で、この問題がその後国民の間にもだんだんと理解されてきておる。私は、この中国残留孤児は戦争犠牲者じゃないかと思うわけです。
 これはいつも申し上げるのですが、ちょうど戦争が終わりました当時、私は、旧満州じゃないのですけれども、内蒙古におったわけですが、八月十五日に戦争が終わって、以来大体三千キロないし四千キロのところを四カ月も五カ月もかかって歩き続けて、ようやく北京に到着したのがもう正月であった。その間一日も家の中に寝たことはない。毎日野宿ですよ。食べる物は何にもない。ようやくありついたとしても、飯ごうのふたに半分ぐらいのものをメリケン粉を練っただんごを入れて塩味をつけたもの、ようやくそれで飢えをしのいできたわけですから、毎日のように、夜寝て朝起きると死人が出ておったわけです。小さい五歳から六歳くらい、小学校へ行くくらいから下の子供は毎日死んでいったわけです。五十歳過ぎの人もたくさん亡くなりましたよね。栄養失調ですから。毎日のように、朝起きて、そういう亡くなった人の死体を処理して、荼毘に付して、その骨をとって、そして肉親または肉親が死んでしまっておらぬ人はだれかがその骨を提げて、そしてまた歩く。歩いて、その晩寝たら、翌日また死んでおるわけですよね。そんなことを四カ月も五カ月も繰り返して私たちは帰ってきたわけですけれども、旧満州はもっとひどかったと思うのです。
 ソビエト軍が人づてきておりますし、そこへ開拓団とか旧満鉄とかというところでたくさんの人がおられたわけで、まして向こうの地理もわからない、言葉もわからない、そういう人たちがたくさんおったわけですから、その混乱の中で多くの人が犠牲になっておるわけです。私は、この犠牲になった人たちの中でも、開拓団の人や、いわゆる満鉄におられた人たちでも、恐らくいま戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用も受けていないと思うのです、戦後、いわゆる軍に協力して行動しなかった場合は開拓団といえどもこの法律は適用されないわけなんですから。
 戦後の混乱した中で亡くなった人は、私は、ほとんどこれは戦争犠牲者であると思うわけです。まして、その人たちが、もうこのまま連れて歩いたら子供が死んでしまう、だから子供を預けなければしょうがない、その子供を中国人に預けたり、あるいは養子としてもらってもらったり、これはだれが責めることができますか、殺すわけにはいかぬのですから。そういう中でいま中国残留孤児の問題が出てきておるわけです。私はこれは、親が預けたということは国が預けたということに通じると思うわけです。日本政府が見捨てたのですよ。だからこれは戦争犠牲者だと私は思うのですけれども、この点について、大臣は、戦争犠牲者だと思いますか。
#48
○森下国務大臣 一言で言えば、そのとおりでございます。
 いま川本議員、内蒙古と言われましたが、恐らく大同か包頭あたりから引き揚げられたと思います。私は張家口におったものですから非常に運よく八月の二十二日には実は北京に帰りました。張家口だけ先に帰って、京包線がとだえたということで大同から奥の人はずいぶん苦労されて、山西の太原を回ってお帰りになったということは実は聞いておりまして、実は感無量の思いであります。幸い張家口の場合は、在留邦人四万全部私どもと一緒に天津なり北京に帰りました。ずいぶん恨まれますし、荷物を全部張家口の駅へ積まして、体一つで帰ったわけで、孤児は出なかったのですが、いろいろと非難はございましたけれども、旧満州に比べるとはるかによかった。
 そういうことで、同じような体験をしておりますから、いまの経済的に繁栄しております日本の国情から考えました場合、また、三十七年間の日本の歩みから考えまして、戦後は終わったということを昭和四十二年に言っておりますけれども、まだまだ終わっておらないし、いまおっしゃいましたような問題も戦後処理の問題である、国の責任である、このように思っております。
#49
○川本委員 そこで、肉親のところへ一時帰国をして、そしてもう一度中国に戻られた方が、今度はもう望郷の念に燃えるということで、しんぼうができないということで、何とかして早く帰らしてもらいたい、こういうことで、泣くように手紙が来るものですから、こちらにおる肉親が、貧乏だけれども、兄弟親類集まってお金を工面して、そして旅費を工面して送って、そして帰ってきたら自費帰国になるわけですね。その自費帰国者については引き揚げ者としての処遇をしておるのかどうか。この点についてはどうでしょうか。
#50
○北村政府委員 国費をもって旅費その他の費用を支弁いたしますのは、原則として、本人あるいは引き受けの身元がお金がないということを前提にしているわけでございます。いまお話しのようなケースにつきましては、五十四年度から再帰国につきましても、実情が、旅費その他の経費を支弁できないというケースにつきましては、国費をもって一時帰国を認めております。
#51
○川本委員 これは戦後、いま大臣もおっしゃいましたが、私は大同から太原経由石家荘回りで帰ったわけですが、全部歩いたのですよ。鉄道線路伝いに歩いたのですよ。ところが、引き揚げ者援護については戦後何の法律もなかったわけですね、引き揚げ者援護法というような法律はなかったわけですから。だから未帰還者留守家族等援護法を準用するような形で、通達によって戦後大量の引き揚げ者がある都度処理されてきた問題ではなかろうかと思うわけです。だから旅費とか帰還手当についてはわずかな金額しか支給されていないわけですが、特に最近私のところへ手紙が参りました、東京の方ですけれども。
 自費帰国で帰ってきたら引き揚げ者証ももらえないというわけですね。引き揚げ者の証明書がもらえないから、公営住宅に入れてもらいたいと言っても優先的には取り扱ってもらえない。一年間くらい待ちなさい、こう言われたそうです。あるいは職業訓練所に入りだいとかいろいろなことを思っても、何の証明書もないので、取り扱いは戦後ずっと日本の国内に住んでおる日本人と全く何ら変わらない。私はこれじゃおかしいと思うのですよ。自費帰国であってもあるいは国の援護によって帰国した人たちであっても、その人たちの処遇の悪さといったら、これはもう戦争犠牲者として考えていない。全く戦争犠牲者という処遇をしていないんじゃないかと思うのです。
 その点どうですか、援護局長。
#52
○北村政府委員 実務上の問題といたしまして、残留孤児を含めまして中国から引き揚げてまいりますときには、当然北京の日本大使館に出頭していろいろと手続をするわけでございます。私ども事前によく連絡をしてございますので、その際帰国についての経費負担ができないというような場合には、このような国費負担制度があるということを十分周知徹底するようにいたしております。親元さんの方で、いや、それには及ばないというケースで自費でお帰りになるケースがあるようでございますが、その実情につきましては、私ども全体について詳細には存じておりません。ですが、帰られてから旅費その他の費用支弁には事欠かないけれども一あるいは職業訓練でありますとか、いまお話にはございませんでしたけれども、日本語を習うとか公営住宅に入りたいとか、そういう御希望のある向きはあろうと思います。
 いまお尋ねの公営住宅の優先入居の問題につきましては、どうしても順番は国費で帰られた方が先になりますけれども、建設省が担当しておりますこの問題につきましても、これまでも自費で永住帰国された方々については、各自治体の協力を得て住宅を確保できるように私どもの方からいろいろとお願いを申し上げている次第でございます。
#53
○川本委員 帰ってきたって言葉もわからないし、仕事も全然変わるわけですし、気候、風土も変わるわけですから、私はこれは大変なことだと思うわけです。それにしてはわずかな帰還手当だけで、語学の問題についても、現在は日本語のカセットテープを渡すだけでしょう。ボランティアで訪問指導したりいろいろやっておるようですけれども、私はそれは見せかけだけで中身が伴わないと思う。商社とか大使館とか領事館とかに行っているわが国の在外邦人の子弟が日本へ帰ってきで日本の高等学校、大学へ進学する際には、文部省は特別の措置をしておるじゃないですか。日本語を勉強したり、あるいは日本の学校になじむような教育程度にするために特別に集団で入学をさせたりして特別の措置を講じておるのに――それは金もうけで行っておるのですよ、仕事で行っておるのですよ。そういう恵まれた人たちにでも国はそれだけの措置をしておるのに、戦争犠牲者である中国残留孤児、あるいはその人が子弟を連れて帰ってきた場合に、その子供の教育にカセットを一本渡す、これじゃ余りにもばかにしておるのじゃないですか。
 私は、何かの施設を国がつくって、希望者は、希望者でなければいけませんけれども、少なくとも一カ年くらいはそこへ入ってもらって、そして語学の勉強と職業訓練をあわせ行って、日本の国内の生活に適応するような訓練機関を設けるというような温かい配慮があってもいいんじゃないか、こう思うわけです。
 その点、そういうことは全然考えていないのかどうか。最近厚生大臣の私的諮問機関か何かで検討委員会的なものを設置されたようですけれども、そういう中でそのような問題も討議されるのかどうか、ひとつ大臣お答えいただきたいと思うのです。
#54
○森下国務大臣 孤児が日本に帰りましても言葉ができないと大変孤独になるというわけでございまして、同じ血が流れておりましても言葉が通じないということは生活上また生存上も大変な問題でございますから、一日も早く言葉を覚えていただくことが日本の風俗、習慣になじんでいけるわけでございまして、カセットテープをただ渡すだけというだけでは実はないと私は思うのです。もっと適切な施設をつくって、ちゃんと教育、その後に職業訓練と、こういう順序でなじんでいってもらいたい。そのために、いまちょっとお話がありました残留日本人孤児問題懇談会が先般発足いたしまして、私もお願いをいたしたわけでございますが、その中にはボランタリーの方も入っておりますし、また同時に、長らく大陸で生活をされて、向こうの実情等をよく知っておる方もお入りになっております。ただ懇談会をつくって時を稼ぐということでは決してございませんので、孤児の心情等もそういう方々からいろいろ聞いて行政に生かしたい。
 たとえば孤児といいましても一番若い人が三十七歳でございます、中には四十歳、もっと以上の人もおって、子供はもちろんお孫さんもおられますし、また養父母の問題もございまして、非常に複雑な事情も実はございますから、そういう点も考えまして、日本に帰られる方、また一時だけときどきお帰りになる方、また養父母等を御一緒に伴って日本にお帰りになる方、いろんなケースが出てまいりますから、かなり慎重に配慮もしなければなりません。ただ一人お帰りになるというだけではございませんので、その点一般の引き揚げ者の方と孤児の問題とは少しく内容が違うわけでございまして、そういう懇談会をつくりまして、御趣旨の方向で万遺漏なきようにやっていきたい、このように思っております。
#55
○川本委員 帰ってこられた孤児もいまおっしゃったように三十五歳以上、四十歳過ぎておる方もおるわけですから年金の問題もあるわけですが、これは私、きょう午後の年金のところで一緒に質問したいと思っておるわけです。
 そこで、この間、四月一日に、前の中国の駐日大使で符浩さんという外務次官の方が日本へ来られたときに、石野厚生事務次官とお会いになって、いろいろ中国残留孤児の問題について厚生省としては感謝の意を表したり協力を依頼したりしたということを新聞で拝見いたしました。そのときに符浩外務次官が言っておられるのには、養父母の扶養の問題とか、ごく限られた一部の帰国者ではあるけれども、妻や子供と縁を切っているというような問題で新しい悲劇が中国側に生まれつつある、こういうことをおっしゃっておったように新聞で拝見したわけです。
 私は、子供をいままでわが子のようにして育てていただいた養父母というものはもう産みの親より育ての親、親の恩は山よりも高い、そういうことでどのような感謝の意を表してもあらわし切れないと思うのです。ところが、その養父母ももう、日本の父母が死んでいって肉親捜しがなかなかむずかしくなるのと同じように、向こうの養父母も年老いていっておるわけですから、その人たちを見捨てて、日本の親、日本の国がすべてだ、自分さえよかったらええわで帰ってくるというのも、これまたどうかと思うわけです。国際的な問題としても、人道的立場からも、そんなことはできないんじゃなかろうかと私は思う。そういう中で、養父母の問題ど子供の問題、そういう義理と人情のしがらみで帰りたくとも帰れない人たちもまたおるんじゃないかと思うわけですけれども、この辺では大変大きな問題をこれから生み出してくるおそれがあると思う。そういう中で、養父母に対する問題がやはりきちっと解決されない限り、見捨てて帰るというようなことは、日本人として断じてすべきじゃない。日本政府としてもそのようなことをさせるべきでない。
 そのようなことは十分本人に納得いくように話をすると同時に、中国政府との了解をいただいて、すべてのものがうまくいくようにすることがまず大切だと私は思うわけですが、その点について大臣、どのようにお考えですか。
#56
○森下国務大臣 そのとおりでございまして、仮にお一人だけ帰った場合に、結局、子供がある、また養父母がある場合には、今度は日本人と中国の配偶者の方との間の子供はまた向こうで孤児になってしまうというような複雑な事情もございますし、その点、養父母の方々やいろいろとお世話になった方々と十分よく相談、また同時に、中国政府ともよく相談して対処しなければ、ただ日本に帰ってくればいい、受け入れたらいいというだけの単純な問題でない、このように思っております。非常に人間関係がむずかしい問題でございまして、そういうことをよくわきまえながら孤児問題に対処してまいりたいと思うわけであります。
#57
○川本委員 養父母がおったりいろいろな関係でどうしても帰ってこられないような方がおる場合には、やはりこれは戦争犠牲者ですから、そういう立場で考えた場合、中国におって日本へ帰ってこなくても日本とのつながりが持てるような措置を何らかの形でつくり上げてやる。そういう形でいつでも帰りたいときは帰れる、往来はできる、そういう往来する場合の旅費ぐらいは政府がめんどう見るよというような、そういう形のものをつくっていかなければこういう問題は解決しないと私は思いますので、その辺については温かい配慮をお願い申し上げたいと思うのです。
 そこで、また新聞の話になるわけですけれども、四月三日の新聞を見ますと、戦後中国や旧満州で親や兄弟と生き別れたり死に別れたりしたが、一緒に同行しておった人たちに連れられて帰ってきたいわゆる孤児が三千人ぐらいおられる。その三千人の方々が、今度は日本へ帰ってきて福祉施設を転々として、そしてようやく成人になっておるわけです。中国に残った方はいま厚生省が肉親捜しをしてくれておる。ところが、そのとき一緒に行動しておった周囲の人に連れられて、手を引っ張られてあるいは背負うてもろうて日本の国まで連れて帰ってもろうた者は、そのまま福祉施設へ入れたままで肉親捜しもせずにほったらかしになっておる。こういうことが報道されておりました。それはあるでしょう。私たちの団でもあったのですから、それはあると私は思います。そういう人たちは帰ってきて日本に戦後適応して生活しておるんだからということで肉親捜しもしてやらないというのは、これはちょっと非情だと私は思うわけです。
 ひとつそういう方々の希望を入れて、厚生省は、希望者があれば肉親捜しをやるというような努力をしてもらいたいと思うのですが、局長、どうですか。
#58
○北村政府委員 お話しのございましたように、終戦後の混乱で日本人に連れられて引き揚げてきた孤児もおりますし、それから日本国内で空襲などで親と死に別れて新橋のガード下で靴磨きをしていたようないわゆる戦災孤児もたくさんいるわけでございます。お話しのようなケースにつきましては、私どもといたしまして、お申し出があれば、厚生省ですでに持っておりますいろいろな資料によって該当する肉親を捜し出す作業のお手伝いは十分やるつもりがございます。現在もうすでに二件ほど、中国残留孤児の問題に触発されたと申しますか、お申し出がございまして、その御本人の情報を頼りにうちの方ですでに作業を開始いたしております。
#59
○川本委員 こういうような状況を見ると、まだまだ戦後は終わっていないという感を私は深くするわけです。
 総理府からお見えいただいておりますね。そこで、この間戦没者追悼・平和祈念の日ということについて答申がございましたね。あれはまだ閣議決定されていないのですか。
#60
○小西説明員 まだ閣議決定はいたしておりません。
#61
○川本委員 八月十五日を戦没者追悼・平和祈念の日ということに大体閣議決定される予定ですか。
#62
○小西説明員 懇談会の報告書の趣旨を尊重してまいりたいというように考えております。
#63
○川本委員 新聞なんかで見ますと、いまごろになって戦没者追悼・平和祈念の日というものを設けるというのは、一部の政党の靖国公式参拝がねらいだといま盛んに報道されておるわけです。私もその点については、いまごろになってそういう日を指定すると言うほど日本の平和が脅かされておるのかどうか、いまごろになってなぜ平和祈念の日というものを戦没者追悼とあわせてやらなければいけないのか、これは一つのデモンストレーション以外の何物でもないわけですよ。
 この間、大阪の箕面の忠魂碑の違憲訴訟の判決がありました。忠魂碑もそうですけれども、戦死したという者は大体私たちと同じ年代の人たちが多いのですよ、特攻隊とかあるいは学徒動員だとかでね。そういう戦死をした人々は、本当に純粋に国のために日本の国土を守り国民を守るためにということで身を犠牲にしたことにおいては、私は間違いないと思う。だから、そういう人たちの純粋な気持ちにこたえるためには、政府が、国が、戦死者や遺族のためにできるだけ手厚い措置を講ずることは当然である。幾ら手厚くしてもその人たちの霊に報いることはできない。ところが、戦没者追悼・平和祈念の日というようなことで、金も出さずに精神的なことでこれをごまかしても、戦没者の霊やあるいは遺族は浮かばれませんよ。手を合わせて拝んでもろうたぐらいで浮かばれるものと違う。ところがこういうことを利用して、靖国神社への閣僚の公式参拝をいかにも正当化しようというような魂胆だけしか私はこの中にうかがうことはできない。もっと中身がなければいけないと思う。
 厚生大臣、八月十五日には靖国神社へ公式参拝されますか。
#64
○森下国務大臣 私は、ちょうど九段の宿舎でお世話になっている関係上……(川本委員「近いさかい行くのか」と呼ぶ)いや、近いというわけではございませんが、非常にいい場所に住ましていただいておりますのでよくお参りをさしていただきますから、あえて八月十五日だけ無理して、肩を怒らしてお参りするということは、特にいま考えておりません。実は春の大祭とか秋の大祭、また夏の慰霊祭、いつも私はお参りさせていただきまして、あなた方の大変な犠牲の上にいまの日本の繁栄もあるし、また大変御苦労をかけましたという謙虚な気持ちで亡き戦友に対してお参りをさせていただきますし、また、遺族の方が大ぜいおいでになったときには奥殿まで御一緒に実は参拝をさせてもらっておりますから、とりたてて一年に一遍、八月十五日だけ公式参拝という名のお参りをしたらいいというふうには実は考えておりませんので、非常に弾力的な考えでございます。
#65
○川本委員 毎年八月十五日には厚生大臣の主催で武徳殿で戦没者追悼式をやっておられますね。あれは宗教的な色彩がなくて、無宗教的な形でやっておられる。私は、戦没者の慰霊というものはそういう形で、仮にキリスト教徒であっても仏教徒であってもあるいはイスラム教徒であっても、本当にお参りができるような戦没者追悼式でなければいけないと思う。そういう点、箕面市の忠魂碑の違憲判決が出たのは、そこに宗教性を帯びておったからだということじゃなかろうかと私は思うわけですけれども、ひとつこれから国や政府、自治体その他がそういう本当に心から、私が申し上げたように純粋な気持ちで国のために殉じた人たちの慰霊をやろうというのなら無宗教で、本当に心の問題ですから、心をどのようにあらわすかということで指導してもらわなければいけない。それと同時にその中身を、やはりこれは金の問題ですから、もっとその人たちに報いるに金をもってしなければいかぬ、生活を安定させなければいけない。その方を忘れて、そういうことだけを表面やろうとするのは、これは将来を問違うものだと私は思いますので、この際、厚生大臣に申し上げておきたいと思うわけです。
 そこで、去る二月二十六日に東京地方裁判所民事第二十六部で判決がありました元台湾兵の訴訟問題についてでありますが、この判決文を読みますと、
 原告ら台湾人は、過ぐる大戦において、同じく日本国民として軍人又は軍属の職務に従事中上記認定の戦死傷を負うに至ったところ、戦後平和条約の発効により自己の意思にかかわりなく日本国籍を喪失し、その際の日華平和条約三条では、日本国に対する住民の請求権処理を両国政府間の特別取極の主題とする旨の合意をみたにもかかわらず、昭和四七年の日中共同声明によつて日華平和条約の失効を招来した結果、現在なお何らの補償を与えられることなく、前記死傷がもたらす労働能力喪失の故に経済上、社会生活上甚だしく難渋を強いられていることが窺われるのであって、原告らの右事情を考えると、当裁判所としても同情を禁じ得ないものがある。
  しかしながら、以上のことから直ちに原告らの本件請求を法律上裏付ける根拠とはなし得ないのである。けだし、三権分立の建前上、裁判所の司法的判断は、本質的に謙抑的性質のものであり、それは憲法を頂点とする実定法の解釈という枠を超えてはあり得ず、かかる問題は、その事柄の性質上、国の国際的外交処理ないし立法政策事項に委ねられるべきものであるからである。
このように書かれておるわけです。
 外務省はお見えいただいておりますね。外務省、この判決どうですか。私は、この判決文は、今日までの歴史的経過を見ると、憲法の解釈等について若干の問題はあるにしても、まあそういうものかなと思うのですけれども、外交的に将来これは処理できるのですかね。現在の日本と台湾との関係を考え、日中間の関係を考えると、これは外交的なルートで将来処理することができる問題だと思いますか。
#66
○藤井(宏)政府委員 ただいまの判決文にも引用されております経緯がございまして、日中国交正常化の結果、台湾との間で日本政府が特別取り決めを結ぶことが不可能になった次第でございます。したがいまして、通常な意味で外交的に今後本件を処理していくということには、きわめて大きな制約がございますし、不可能ということが言えるかと存じます。
#67
○川本委員 そうすると、私もこれはやはり立法政策の問題だと思うわけです。こういう立法政策の問題ということでは、ここでは元台湾兵の人たちが訴訟を起こしていますけれども、朝鮮半島出身の人にもたくさんこれと同じような問題があるわけです。これは日韓地位協定によって一応両国間の政治的取り決めがあったわけですから、台湾とは若干状況が違うと思うわけですが、しかしやはりよく似た問題ではあると思うわけです。そのほかにも、いまだに未解決の問題としては樺太残留者の問題があって、これもいま訴訟中と聞いておるわけです。
 こういうように考えてきますと、まだまだ戦後未処理の問題、未解決の問題がたくさん残っておると思うわけですが、いま、社会党でもそうですけれども、自民党や各政党が、こういう台湾人の元軍人軍属の処遇の問題について議員立法でもどうだろうというようなことで、いろいろ動きをしておられるようですけれども、厚生大臣は、これはどうしたらいいと思いますか。
#68
○森下国務大臣 非常に情的には同情いたしておりますが、法的には、いまの法律のもとでは非常にむずかしい問題でございますし、特に日本と台湾との国交関係、また中国との関係、そういうことを考えました場合に、私は扱いが非常にむずかしい感じが実はしております。いろいろ議員立法の動きがございまして、私も実は個人的な資格で署名はしておりますけれども、なかなかむずかしい問題だな。しかし、裁判の判決でも、同情はできるというようなことも書いてございますし、また、先ほどの附帯決議の中の第八項でも「旧軍人軍属等及び旧国家総動員法による被徴用者等」という言葉もいただいておりまして、朝鮮にも該当者がおいでになるだろうと思いますし、台湾の元日本軍人も含めて何とかしなければいけない、してあげたいという気持ちはございます。
 ただ、私といたしましては、いま厚生省ができる具体案というものは持っておりません。
#69
○川本委員 先ほど来ずっと私が指摘してきましたように、いわゆる戦後未処理と思われる問題はまだたくさん残されておるわけですよ。そういう中で昨年末の十二月二十七日に、いま大臣にちょっとお手元にお渡ししましたが、自民党と政府、総務長官や大蔵大臣の間で戦後処理問題に関する合意文書が取り交わされた、これは御承知のとおりであります。これは厚生大臣、署名に加わっていないんですね。これは、厚生大臣は戦後処理の問題には関係ないということで厚生省は除外されたんですか。軽視されたんですか。発言権がないわけですか。
#70
○森下国務大臣 結果的には、戦後処理問題として五百万円調査費が実はついておる、これに関連してくるわけですが、私は先ほどから申し上げておりますように、戦後処理問題については、やはり川本議員と同じように多くの戦友を亡くしておりますし、またいろいろ戦争の悲劇というものを目の当たりに見て、戦後処理の問題については同じように人一倍熱心な気持ちは持っております。そういうことで、私の名前入っておると思ったものが入っていないものですから、いろいろ事情があって遠慮されたかどうか知りませんけれども、私個人的な立場における気持ちはこれと同じでございます。
#71
○川本委員 その合意文書の中には、戦傷病者戦没者遺族等援護法とかということで、厚生省所管の法律の名前が書いてあるわけですよ。そういうことで、私は本来から言えば厚生省が一枚かまなければ、このような検討委員会ですかというものを設置するための調査検討をして五百万円総理府に予算がついたというわけですけれども、その点については厚生省がこれに対してはどんどん発言をしてもらわなければ困ると私は思っておるわけです。
 先ほどから大臣お話しのように、いわゆる戦後未処理の問題はたくさんあります。先ほど来私が申し上げてきたほかにも、この前私はここでも質問したんですけれども、ソ連に抑留された旧軍人軍属等の問題があります。酷寒零下五十度、骨まで凍るような酷寒の地で、いわゆる捕虜としての重労働に従事させられた日本の元軍人軍属、その人たちの中では六万人を超える多数の死傷者が出ているわけです。ところがこの人たちのその権利というものは、ヘーグ条約の陸戦法規とかあるいはジュネーブ条約でこれははっきりと規定をされておるところでありますけれども、残念ながら日本は日ソ共同宣言第六項の第二文において、国家の財産と化体をしてその請求権を放棄してしまっている。放棄をした段階で日本の国家の賠償財産のような形で化体をして処理されたんじゃないかと思うのです。
 同じように戦後シベリアに捕虜を抑留されたドイツの場合はどうか。敗戦国でありながら、ドイツは三年目にソビエトに乗り込んで、調査をして、そしてドイツ兵の捕虜を帰国させる措置を強引に講じさせただけではなしに、さらにその人たちに対する戦時捕虜賠償法という法律を制定をして、その間の、いわゆる捕虜の期間の抑留中の重労働に服した分についての賠償を国家がやっておるわけです。
 ところが、わが国はそれを国家の賠償財産に化体をしてしまって、国がそれで権利放棄をしておきながら、今日までそのことは全然素知らぬ顔をして、何らの制度もつくっていない。これはいま裁判中の問題ですけれどもね。裁判中の問題ですけれども、裁判中だからほっておいていいという性質のものではない。これも私は早期に政府みずからが解決しなければならぬ責任があると思うわけです。
 そのほかにも、この人たちの抑留期間の今度は軍人恩給とかに計算する場合のいわゆる戦地加算の問題があるわけですが、総理府恩給局はお見えじゃないですね。――恩給局来ていないからいいですけれども、この抑留期間中の計算方法にも問題がある。酷寒零下五十度、そんな酷寒の地で重労働に食べる物も与えられずに服した人たちに対して、戦争が終わって抑留期間中だということで戦地加算が少ないということでは、これは納得できない。まして実役三年以下の人はだめなんですから、軍人恩給ももらえないんですから、私はその辺についての是正も必要だと思っておるわけです。
    〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
 現在の軍人恩給について全般に通じて言えることですけれども、戦争で命がけで国家のために働いたということにおいては、十年おった兵隊さんも、二年おって弾の下ばかりくぐっておった兵隊さんも変わらぬと思う。命がけで働いた。そのことに報いるに、実役三年、最低九年、これじゃ、それ以下の人は何も役に立たなかったのかということになっちゃうわけですから、これに対してもやっぱり公正な処遇というものが必要だと思う。きょうの戦傷病者戦没者遺族等援護法の附帯決議に先ほど大臣言われましたが、先ほど来言ってまいりました中国残留孤児の問題とか、あるいは原爆被災者の問題とか、あるいは戦時災害を受けられた方々の問題とか、あるいはそういう元台湾の軍人軍属を初めとする方々の問題とか、樺太の問題とか、数え上げると切りがないほど、戦後未処理の問題はたくさんある。
 ところが、今度総理府が五百万円で調査検討委員会を設置をしてやろうとしておるのは、実は前の原爆基本問題懇談会のように、いわゆる民意であるという名をかぶせてこれを葬り去ろう、これらの戦後の未処理の問題を昭和四十二年の閣議決定でこれで打ち切った、もう見直す必要はないんだという形の検討委員会にしようという意図であると、私たちは、多くの国民は思っておるわけです。これは総理府でやるわけですけれども、厚生大臣、戦後未処理の問題が今日たくさんあるという実情を踏まえて、閣議には出られるわけですから、ひとつここでの検討委員会ではそのような厚爆基本問題懇談会のような結論を出させずに、やはり前向きで、こういういろいろなもの、もろもろの問題を解決するという姿勢に立ってやっていただかなければいけない、こう私は考えておるわけですけれども、その点について厚生大臣はどのように思われますか。
#72
○森下国務大臣 戦後処理の問題についてのいろんな資料は厚生省にほとんどございまして、これを保管さしていただいております。総理府所管でございましても、そういう資料等については厚生省が相談を受けたり、また資料の提出を求められたり、そういうことで、おっしゃるように厚生省はまさにこの戦後処理の問題には大変深い関係がございまして、厚生大臣としてもぴしっとした考え方を持たなくてはいけない、このように実は思っております。先般の戦後処理問題に関する政府・与党合意、これには名前は出ておりませんが、予算の問題がございますので総理府総務長官が代表したようなかっこうで、この中にわれわれは入っておる、実はこういうように理解しておりまして、戦後処理の問題については厚生省といたしましても積極的に、また私も、戦中派という世代といたしましてそういう一つの覚悟を持って、政治家として、川本委員も同じだと思いますけれども、いわゆる世代的な一つの責任を感じておる、使命感を持って政治活動をやっておる部門もかなり多うございますから、その点においてはまさに意見は一致しておるはずでございますので、一生懸命にやらせていただきます。
#73
○川本委員 念を押すようで悪いのですけれども、昨年の通常国会で、ソ連抑留者の人たちから衆議院、参議院両院に請願書が出されました。その請願書は衆議院も参議院も、両方とも採択されたわけです。ところが、その採択された請願書に基づいて、当然ソ連抑留者の実態調査というものが五十七年度の予算に計上されるべきが至当だと思うのですけれども、十二月の閣議ではこれは取り上げられなかったわけです。これと別個に、自民党の方からもこの実態調査費の予算要求が出されたのですけれども、これも同じ理由で取り上げられなかったというような経過があります。私は、これは全く国会を軽視するものではないかと思うわけです。
 政府は、四十二年の閣議了解事項に基づいて、今日でもなおかつ、四十二年以降は最高裁の判決にあるように戦後処理の問題――あれは引き揚げ者の問題で最高裁が判決を出しておるわけですけれども、戦後は終わった。そしてその中で受忍の限度を超えないものについては、過ぐる大戦における痛みはひとしく分かち合わなければならぬ、こういうような趣旨を書かれておるわけです。
 そこで、問題は受忍の限度を超えるものかどうかということにしぼられてくると私は思うわけです。先ほど来申し上げてきました中国残留孤児の問題や、あるいは台湾人元軍人軍属の問題や、あるいはソ連抑留者の問題や、樺太の人たちの問題、こういう問題一つ一つを見ますと、これはひとしく国民が分かち合わなければならぬ程度の痛みの問題じゃない、これは受忍の限度を超えておる問題だと私は思うわけです。
 だから、この点については、そもそもこの調査検討費が総理府の方につけられて、厚生省は、先ほど来私が指摘するように厚生大臣の署名もない。厚生省がそのらち外に置かれておるということは残念だと思ったのですけれども、森下厚生大臣は戦中派として、私たちと同じ世代の人としての立場から積極的に、この問題については、厚生省の所管しておる仕事の中でも戦後未処理の問題はまだこんなにたくさんありますよ、それをここで、民間有識者という名前で、これをもう見直しをしない、民意をかりてこれを否定しよう、こういうような意図でつくられる調査検討委員会であれば困る、こういうことを断固として押していただかなければいけないと思いますし、それに関連して、今度はその検討委員会の民間人のメンバーの顔ぶれにもよると思う、結論の出るのには。これは総理府総務長官が一人で決めることになるのかどうか私はわかりませんけれども、少なくとも国民の総意を反映できるような立場から言いましたならば、原爆被爆者の代表も入れなければいけない、あるいはソ連抑留者の代表も入れなければいけない、引き揚げ者の代表も入れなければいけない、そういう中ですべての国民の各界各層を網羅した、そして関係者を網羅したような調査検討委員会を設置させるために、総理府に対して厚生省も要求すべきところはどんどんと要求をしてもらうのが、厚生省が本来持っておる仕事の役割り、国民の負託にこたえるゆえんのものではないかと私は思うわけです。
 勇敢な御努力をひとつお願いしたいと思うのですけれども、もう一度大臣にお聞きしたいと思うのです。
#74
○森下国務大臣 こちらからも積極的に働きかけますが、恐らくこの会の方から厚生省に対して人材を紹介せいというようなお話もあるかと思います。いままでのいろいろな御意見の御趣旨を踏まえまして、厚生省が主役であるという気持ちで関係の方々をこのメンバーに加えていただくように私の方からもお願いをいたしたいということを申し上げます。
#75
○川本委員 終わります。
     ――――◇―――――
#76
○今井委員長代理 次に、内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
#77
○永井委員 年金の質問に入る前に一つだけ、別の問題でありますけれども、申し上げておきたいことがございます。
 それは実は、私の出身地でありますけれども、市の市街地の中にいわゆるラブホテルの建設計画が出てまいりまして、地元で住宅地にそういうものを建設されては困るということから反対運動が起きまして、当該の自治体の市長あるいは議会挙げて反対に立ち上がるということが起きてきたのであります。それは兵庫県の高砂市でありますけれども、その高砂市では昨年の十二月に実はそういうラブホテルの建設を規制する市の条例をつくったわけですね。そうして市長を先頭にいたしまして地元の人たち、三千二百人の周囲の住民の署名を集めて、その建設を許可しないように、営業を認可しないようにということで保健所あるいは県当局にも申し入れをしてきているのです。そうしてことしの三月十五日でありますが、市長が先頭に立ちまして地元の人たちあるいは県会議員、市会議員あるいは教育委員会の関係者などが集まって、千二百人集まったそうでありますけれども、建設反対の住民集会を開いているのですね。ところが、そのことも承知しておきながら、その翌日に保健所がその営業を認可してしまったという問題が起きまして、一体保健行政はどこを向いておるのかということが地元の新聞でこのように大きく取り上げられたわけであります。
 私はきょうも朝、連絡をとってみますと、大変なことになって、これはえらいことをしたということになったのでしょうね、市長を初めとして、保健行政を進めるために保健所運営協議会というものがつくられているわけでありますが、ここには市長が会長として入って、もちろん教育委員会あるいは薬剤師会、医師会あるいは労働基準監督署、関係団体のほか自治会や商工会議所、あらゆる人たちがこの保健所の運営協議会に入っているわけでありますが、いわばその保健行政を円滑に推進するために一生懸命協力してきているのに、市長の意向や市条例あるいは地域の住民の反対の意思も無視をして一方的に無断で認可をすることは許せないということから、その保健所の運営協議会から総引き揚げをするということを通告する騒ぎにまで実は発展をしていったわけであります。これは大変だということから、どうやらきのうの晩に県当局がその認可したものを取り消す措置をとるということを記者会見で発表したようでありますが、その経緯について厚生省はお聞きになっていますか。
#78
○榊政府委員 ただいまのお話につきましては、本日、先生から御質問があるという段階で私ども初めて承知をしたわけでございまして、その事情については現在調査中でございます。
#79
○永井委員 行政にとって地域の実情を真剣に考慮すること、あるいは住民運動などが起きたときは――それは住民運動の中にもいろいろあると思いますよ。思いますけれども、住民運動などが起きてきたときにはその原因はどこにあるのかということなども十分に調査をして、その運動自体も重く見ていくという姿勢がなければいかぬ、私はこう思うわけですね。
 したがって、保健所のとった措置というのは、法律に基づいた申請書類の手続に不備がないということからこれは許可をしたというふうに、この新聞を見ましても保健所が言っているわけでありますけれども、しかし法律に基づいたといっても、だからといって地域住民の意思や自治体の意向を無視して何でもそのとおりやってしまえということであってはならぬと私は思うのですね。
 この関係について、保健所そのものは県の監督下にあるわけでありますけれども、やはり保健行政で、単にこれはラブホテルの問題でありますけれども、保健所が扱うべき地域のニーズにこたえる行政は非常に幅広いものがあるわけでありますから、保健所がこういう一つの問題の処理を誤ると地域住民や自治体からも保健所に対する信頼感が失われてしまう、これでは厚生行政を円滑に全国的に推進することは不可能になってくる、私はこう思いますので、この問題についてはひとつ厚生省の方でさらに御調査もいただいて、これからそういうことが二度と起きないように、類似したことが起きないように対処してもらわなければいかぬと思います。
 一応きょうのこの段階ではこれ以上この問題については私は触れませんけれども、大臣、厚生行政の統帥でありますので、大臣からこの種のことについて起こさせないような決意だけ言ってくれませんか。
#80
○森下国務大臣 この問題は風俗営業等に絡む問題でございまして、保健所は保健所という小さなサイドから恐らくこういう間違いがあったような感じが実はいたします。詳細についてはまだ私も報告を受けておらないわけでございますが、かつて私どもも風俗営業のことで、十五年ぐらい前に総理官邸の前にトルコぶろができるというようなことがございまして、地方行政委員会の中に小委員会をつくりまして、風俗営業調査小ということで実は私も選ばれまして、トルコぶろとかヌードスタジオというところに実は調査に行ったことがございます。そういうことでいろいろ審議をいたしまして、やはり保健の問題と風俗営業の問題は違うんだ、教育の問題にも関係あるんだ、総合的な判断でこういう種類のものは認可、許可する。全国にこういうところがあることは事実でございますけれども、いろいろ周囲の環境等、民意の動向等を考えながらこれはやるべき問題である。事実でございましたらえらい申しわけない話でございますけれども、なお十分調査をいたしまして指導をしたい、このように思っております。
#81
○永井委員 それでは年金問題について質問をしていきたいと思うのでありますが、私の手元に持っているのはきのうの毎日新聞でありますけれども、新聞の報道を見ますと、高齢化が進んで今世紀末には日本は深刻な事態に陥る、こういう見出しで実は記事が出ているわけであります。これはすでにいままで何回も高齢化社会を迎えることで議論されてきているわけでありますが、ILOでこの問題が取り上げられた。私は、やはり世界的に日本の高齢化社会というものが注目をされ、一体これに対する日本の福祉行政というものがどういうふうに向いていくだろうということで世界的な関心を持っているのではないかと実は考えているわけであります。
 ちょっと御紹介しておきますと、私たちの調べた数字とは若干違うわけでありますが、このILOの指摘した内容を見ますと、六十五歳以上の高齢者の人口が日本では現在八・九%、欧州諸国の平均一三%、北米の一〇・六%、ソ連の一〇%に比べると、現在では高齢化の進行はそれほどでもない、しかし西暦二〇〇〇年には約一四%、二〇二〇年には二〇%と、これから四十年足らずの間にきわめて急激に高齢化社会が到来をする、こう言ってILOが指摘しているわけであります。そしてそのことから他の先進諸国を上回る深刻な経済ショックに見舞われるであろうということまで実は指摘をしているわけであります。これはいままで私たちの指摘してきたことと数字的には若干の違いはあっても同じでありますし、厚生省が試算をしてきている今後の展望についても大差はないと私は見ているわけでありますが、そういう関係から見て、国民年金あるいは厚生年金あるいは共済年金いろいろありますけれども、年金の将来展望というものは一体どうなっていくのだろうということを、これは厚生省だけではなく政府だけではなく、私たちもまたみずからの問題としていま深刻に考えているわけですね。
 ちなみに厚生年金で申し上げますと、現在三十兆円近い積立金を持っている。そしてなお五年ごとに仮に――仮にですよ、二%ずつ保険料を引き上げていったとしても、十七年後には積立金はマイナスに転落をする、こういう推定数字が出てくるわけですね。国民年金にしても同じことでありまして、昭和五十五年の価格にして毎年三百五十円プラス、これは一年おくれでありますが、物価スライド分、これで保険料の引き上げを行っていく。そういたしましても、この年金制度が後代負担としていま現に被保険者として掛けている人たち、これに与える影響というものはきわめて大きいと思うのですね。厚生省が五十三年の十二月にまとめた被保険者の基礎調査でも、どれくらいまで保険料が納められるか、厚生省自身がこういう調査をなさっていらっしゃるわけですね。それを見ましても、当時の価格、五十三年の価格で四千円か五千円と答えた人が圧倒的に多い、こういう答えが実は出ているわけですね。現在の五十七年度の国民年金の保険料は五千二百二十円ですか、厚生省の試算によると七十五年には五十五年価格で一万一千百五十円になると推定をされている。
 一体これで年金の将来展望が持てるのか。負担能力というものはもはやその時点になると働いている立場からするとはるかに超えてしまって、いわゆる破断界、弓がしなって折れるように、折れる瞬間までは瞬発力がありますけれども、そこで少しでも限度を超えると折れてしまう、もうそれは二度と戻らない、これを破断界と言うそうでありますけれども、その破断界に到達してしまう。これについて政府はどのように政策的展望を持っておられるのか、初めにひとつお答えをいただきたいと思います。
#82
○山口(新)政府委員 年金制度は国民の一人一人にとりましても非常に長い期間かかわりのある制度でございます。それだけに制度そのものに対する信頼感というのが最も重要であろうと思っております。そういう意味におきまして、先生いまおっしゃいましたような二十一世紀には非常にきつい高齢化時代を迎えるわけでございますけれども、そういう時代において多くのお年寄りの生活の保障の問題というのは現在よりもさらに重要な問題になっていると思いますが、そういう時代にこの年金制度が健全にかつ安定的に機能をするということが必要であろうと思っております。こういう基本的な考え方のもとに今後の年金制度の問題に取り組んでまいりたいというのが、私どもの考え方でございます。
#83
○永井委員 いずれにいたしましても、この年金制度の安定ということを考えていきます場合に、やはりその最大の敵というのは私はインフレだと思うのですね。これについては認識一致できますか。
#84
○山口(新)政府委員 その点はおっしゃるとおりだと思います。現在でも、大分鎮静はしておりますが、年々物価が上がっておるわけでございますから、そういう意味で年金の実質価値の維持ということが一番重要な問題であるというふうに考えております。
#85
○永井委員 そうすると、この金融財政政策は政府全体の大きな責任の問題だろうと思いますし、もちろん立法府である国会もその責任の一端を負わなくてはいけない、私はこう思うのでありますが、インフレが最大の敵だということで認識が一致するとするなら、物価の安定ということに最大限の努力を払っていかなくてはならない、これは私は当然なことだと思うのですね。そして、働いている人たちの実質賃金あるいは年金をもらう人の年金価値の低下を防ぐ責任というものを当然負わなくてはいけない、私はこう思うのでありますが、厚生大臣はどうでございましょうか。
#86
○森下国務大臣 同じ考えでございます。ただ、その問題と、年金の問題は給付と負担の関連性、特に給付を受ける方の人口割合、また生産年齢、いわゆる掛金を掛ける方々の人口割合、こういう問題も同時に起こると私は思うのです。いわゆるインフレ問題に次いで大事なのは、人口の年齢別の適正配置。しかしこれはなかなか政治政策ではできる問題ではございませんし、これをいかに政策的にコントロールしていくかということも同時に大事な問題であろうか、このように思っております。
#87
○永井委員 これらの問題をこれから将来に向けていろいろな施策をとっていくときは、もちろん政策上の問題として位置づけていかなければいけないのでありますが、たとえば現在厚生年金で言えば三十兆円近い積立金を持っている。この積立金を、実際後代負担ということに求められてくるわけでありますから、これからの年金の維持のためには。そうしていきますと、実際に働く人々、いわゆる保険料を掛けている人々の負担をできるだけ軽くしていく、総体的に軽くしていくということを考えるためには、ある意味でその積立金を政策的に活用できないだろうか。たとえばの話、勤労者の住宅ローンの金利引き下げのためにその資金を活用するとか、あるいはいまべらぼうに土地が上がっておるわけですね。
 大臣、ちょっとこれは余談になりますけれども、この間国会図書館で調べてみたら、いまから百年前の明治十五年の銀座の五丁目の土地が坪二十円なんですよ。それが昭和五十三年で同じところの土地が千七百四十五万円ですか、そういうところにいま上がってきているわけですね。実に九十万倍に土地の値段が上がっているわけです。大変なことなんですね。そうしてそのほかの物価で見ると、たとえば一番わかりやすいものでいいますと、葉書は当時一銭、これがいま四十円なんですね、四千倍。こう考えていくと、他の物価と比べて土地だけがべらぼうに上がっているのですよ。だから、勤労者が住宅をなかなか建てることができない。土地が上がったためにぼろもうけをする人も一部にはいるのでしょうね、土地成金と言われるような人が長者番付に出てくるのですから。しかし、事ほどさように土地は庶民の手の届かないものになってきている。だから、マイホームの夢を見た人たちからすれば、家を建てるためあるいは土地を取得するために大変な負担を負わなくてはいけない。そういうことになってくると、冒頭に申し上げましたように、これから将来に向けて年金の制度を維持していこうとすれば、破断界になると言われるほど負担が耐えられなくなってくる。そうすると、現在積み立てている積立金などを使って土地の価格の抑制措置をとるとか、幾つかの政策的なものがあると私は思うのですね。
 これは厚生大臣の直接の所管ではないと思うのですけれども、これだけILOにまで日本の将来の問題について御心配をいただいて、こういう指摘がなされて新聞にも記事になるような状態でありますから、そうすると厚生大臣としてやはり非常に言いにくい、むずかしいことかもしれぬけれども、関係の各大臣の協力も得てそういう資金の活用などを考えて、現に保険料を負担する者の感覚的な負担の軽減、この程度なら掛けられるという状況をつくり出すように大臣として御努力を願いたいと思うのですが、どうでございましょう。
#88
○森下国務大臣 やはり年金に将来を託している方は、低負担、高福祉ということが一番の理想的な姿であると考えておることは事実でございます。この掛金をいかに運用してそういう成熟化した場合にその価値を保つかということも、これは年金財政上非常にむずかしい、しかも大事な問題でございまして、御指摘のとおりでございます。ただ預かった金をそのままじっと持っておればいいという問題ではございませんし、その点は厚生省も十分、理財的な問題であろうと思うのですが、目減りしないように、むしろ逆に積極的にそれがふえるような考え方を常に頭に持っておることも必要である。
 ILOで、先ほど永井議員からお話ございましたが、恐らく世界じゅうから日本の将来は年金問題でどうなるのであろうかと、多少激励の意味もあるのだろうと思いますが、お手並み拝見というような気持ちもあると思いますから、私どももすばらしい年金制度が日本でできるように全力を挙げていきたい。いま御注意いただきましたように、インフレの問題とか、それからILOで心配していただいているような高齢化時代に備えて年金対策をどうしていくかという問題につきまして、一生懸命にやらしていただきます。
#89
○永井委員 そこで、少し細かい問題になるのですが、お聞きをしていきたいと思うのであります。
 国民年金の保険料について免除規定がありますけれども、法定免除者と申請免除者と、現在の保険料の免除者数は大まかに言ってどれくらいいるのか、割合としてどのくらいあるのか、お答えいただけますか。
#90
○小林(功)政府委員 昭和五十五年の末におきます数字を申し上げますと、免除者総数は二百三十三万人でございます。内訳は、法定免除が八十三万六千人、申請免除が百四十九万三千人であります。率で申しますと、免除率は一一・八%、内訳を申し上げますと、法定免除が四・二%、申請免除が七・六%でございます。
#91
○永井委員 この保険料は、いまのところは昭和六十年までは引き上げのことが決まっているわけでありますが、昭和六十年で引き上げがとまるわけじゃないのですから、この年金制度を維持していくためにはずっとこれから上がっていくわけですね。そうすると、私の素人考えかもしれませんけれども、保険料を引き上げることによって免除者が当然ふえてくると思うのですが、その見通しはどうなんですか。
#92
○小林(功)政府委員 保険料免除の動きでございますけれども、経済情勢等の動きあるいは被保険者の所得の状況の動き、こういったものにかなり大きく左右されると思いますので、保険料の引き上げがどの程度影響するかという点は、ちょっと正確には申し上げられないと思います。
#93
○永井委員 いまは正確に言えないということでありますけれども、現在の保険料でも免除申請をしなければいけない人がいる。保険料が上がってくる、これは常識的には当然納めることのできない人々がふえてくると見なくてはいけないと思うのです。私はそう思うのでありますが、いま答えることができないというのでありますから、それは後ほどまたわかればお知らせをいただきたいと思います。
 もう一つは、この免除者以外に保険料が納められないで滞納している人、これもずいぶんあると私は思うのですが、その実態はどうでございますか。
#94
○小林(功)政府委員 滞納状況でございますが、滞納者の人数、頭数という面で申しますと、第一線の市町村あるいは社会保険事務所ではどの方が滞納しているか、これはつかんでおるわけですが、それを全国的に統計でとっておりません。ただ数字がつかめますのは滞納の月数、これはつかんでおります。これを申しますと、ここ数年来大体三%が保険料が納まってないという率でございます。
#95
○永井委員 そこで私は一つ問題が出てくると思うのですが、この法定免除者あるいは申請免除者はその期間中三分の一の受給権を持つわけですね。また仮に十年後においてこれを戻入するといいますか追納するといったらいいのでしょうか、十年分をさかのぼって納める場合、これは全部、満額給付の対象になっていくという、いまの法律の中身ではそうなっているわけですね、これは間違いございませんか。
#96
○山口(新)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
#97
○永井委員 そうすると、心ならずも後で納めようと思って納められなかった滞納者は、二年で時効になってしまうと私は聞いているわけです。そうすると、時効になったらその間の分はもちろん無資格になってしまうわけですね。法律はいろいろ不備な点、全部完璧でない、これはもう当然かもしれませんけれども、たとえば自主納付制であるために結果的にそのことが、いま言ったような状態から納められないということ、あるいは自主届け出制であるために届け出をしなかったということなどもあって、無年金者が結果的にずいぶん出てくるんではないか、そのことを私は心配しておるわけです。
 もう一つは、一方任意加入の配偶者については空期間が認められているわけですね。実際の加入は何年であっても一応年金は支給される、こういう矛盾も持っておるわけですよ。滞納者は、法の手続によらないから、納めるものを納めていないのだからそれはもうやむを得ないのだということで、これはもう法律のたてまえから言って切り捨てる、これは本当の福祉じゃないと私は思うのです。納めたいんだけれども納められないという者も出てくる。したがって、保険料の滞納を少なくするための具体策もやはり政府の責任において考えていってやらなくてはいけないんではないか、こう思うのですが、これはどうでございましょう。
#98
○山口(新)政府委員 保険料滞納者に対する措置ということでございますけれども、やはり社会保険の方式をとっておりますと、まじめにきちっと保険料を納められるという方とのバランスという問題があろうかと思います。保険料を拠出してそれの反対給付として年金が支給されるということでございますから、それなりに国民一人一人にも、後で権利は出るのですが、それに対する保険料納付という義務があるわけでございます。その義務違反をした者をどうするかという議論になろうかと思うわけでございます。
    〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
 現在の国民年金の仕組みですと二十から六十歳まで四十年ございますが、その中で二十五年の資格期間というのを要求されているわけでございます。そういう意味で四十年のうち十五年は緩和期間があるわけでございますので、そのぐらいのゆとりを持っている仕組みでございますから、普通の方ならばそれなりの拠出は可能ではないかという考え方を持っております。当初つくりましたときには当然高齢者がおりまして、本来の二十五年という資格期間を満たすのはむずかしいだろうということもございまして、中高年者につきましては二十五年の資格期間を十年ないし二十四年に短縮をするという措置をとっておるわけでございまして、そこら辺がやはり制度の仕組みとしては一応の限界ではないかというのがただいまの考え方でございます。
#99
○永井委員 それで一つ。とはいうものの、納めたくても納められない人もいることも事実ですし、あるいは、じゃ申請免除の適用を受けるために手続をとればいいじゃないかということがあっても、いろんな理由があってその手続をとりたくないという人もいるだろうし、たくさんの人が対象ですから千差万別でいろんな理由があると思うのでありますが、しかし少なくとも滞納者を少なくする、そしてこの年金の本来の趣旨が国民一人一人に及ぶようにしていくということは私は政治にとって大切なことだと思います。
 そうすると、この滞納者をなくするための幾つかの改善ができないだろうか。たとえばいま納付は三カ月方式になっておるわけですね。三カ月ごとに納めるから、十分に収入のある人から見れば、保険料大したことないじゃないか、こういう判断をしても、滞納するような人にとってみれば大変な金額なんですから、そうしていくとこの納付方式を変えて、少なくとも払いやすいように一カ月単位にするとか、あるいは国民保険を掛けている人なら――国民保険は自治体ですね、年金は国ですから、事務上の手続としてはなかなか同じようにいかないということはあろうかと思います。思いますけれども、国保と年金を同時に納める方法をとるとかいろんな幾つかの、滞納をしなくて済むような、納めやすいような方策を少しは考えてやることも必要なんではないかという気がするのですね。
 そうしてもう一つは無年金者、これは現実に私は数が幾らであろうとも出てくることは間違いないと思うのです。そうすると、この無年金者を少なくするために、たとえばいま局長は、二十から六十まで納めるとして四十年間納められる、二十五年で資格ができるのだから、言えば十五年間の余裕がある。確かに数字で見ればそのとおりなんですね。しかし、十五年の余裕があってもなおかつ無年金者になる人が出てくるだろう。そうすると、この資格取得年数をいま少し短縮するようなことができないかとか、あるいは六十歳になって、いままで制度が発足してから期間が短いものですから、その間の特例で期限を短縮されておるものは別にして、これからの話になってきますけれども、あとわずか一年かあるいは二年納めれば二十五年に到達する、それがたまたま自分の家の都合、自分の収入の都合などから心ならずも滞納して二年の時効が過ぎて結局それが無効になってしまった。そのためにあと二年足らぬ、しかしおれはいま六十歳超えたけれども、あと二年間納めることができるというようなときには、その掛金の納入について弾力性を持たせるとかいろんなことを考えて、無年金者をなくしていくということも私は福祉行政にとって大切なことだと思うのですが、これらについてどうお考えになりますか。
#100
○山口(新)政府委員 その点は私どもも同感でございます。年金制度はそもそも、なるべく老後のためにきちっと権利を持っていただくのが本来の目的でございます。先ほどお話ございましたように、制度発足当初と比べまして保険料の月額も相当大きくなってまいりました。そういう意味では三カ月納付をさらに工夫をするというような問題につきましては、社会保険庁の方ともよく相談をしてみたいと思います。
 また納付期限の六十歳という問題につきましても、次の大改正の際には、なるべく納付が確保できるというような方策の一つとしてどの程度まで年金制度の筋論から取り組めるか、やや問題もあろうかと思いますが、積極的にいろいろと研究をしてみたいと思います。
#101
○永井委員 もう一つは、現在労働省の方が六十歳の定年制をしくということで、昭和六十年を目標にして六十歳、数字が非常にこんがらかってややこしいのでありますが、そういうことで努力をするということを繰り返し国会で答弁してきているわけですね。私どももこの定年制の延長問題については、わが党から法律案を提出したりして、いままでこの委員会でもいろいろなことをやってきているわけです。ところが現実には六十歳の定年制がしかれているところはまだまだ少ないわけですよ。数を申し上げればいろいろ数字を指摘することができるのでありますが、たとえば百人以上の企業で見ますと、六十歳の定年制に曲がりなりにも到達しているところは五〇%少ししかないのですね。半分はまだ定年制をそこまで延ばしていない。そういうときに年金の受給と連動しないではないかという問題が依然として残されているわけですね。国民年金にしてもそうでありますし、厚生年金にしてもそうでありますが、とりわけ受給年限の問題については、聞くところによると第二臨調の方でもいろいろ議論されているというふうに私たちは仄聞をするわけでありまして、定年と年金の受給が連動していない現状の中で、なおかつ受給年限を繰り下げるというようなことがあったのでは老後の生活は十分できない、こう思いますので、この関係について政府はどのような考えを持っていらっしゃるか、お答えいただけますか。
#102
○山口(新)政府委員 開始年齢の問題でございますけれども、やはり年金制度も経済社会のいろいろな仕組みの中の一つでございますから、その中の役割りを考えまして機能を果たさなければいけないわけでございまして、年金制度単独で完結するわけではございませんから、そういう意味では、実際に現役で働いておられる期間と年金をもらう期間とがつながっていくというのが本来であろうと思っております。
 わが国の今後の人口構造を見ますと、二十一世紀になりますと生産年齢人口というのはどうしても広がらざるを得ないと思うのでありまして、その時代には恐らく定年年齢もさらに検討される問題になろうかと思いますが、そういう問題と並行して年金の開始年齢も当然に議論されなければいけない、そういう考え方でございまして、年金制度だけが雇用の問題と離れて単独でひとり歩きをするということはいかがかという考え方でございます。
#103
○永井委員 それではその次に入っていきますが、国民年金と厚生年金の関係についてちょっと申し上げてみたいと思うのであります。
 五人未満の零細企業がずいぶんありますね。きのうの夕刊にも出ておりましたけれども、この春闘を控えて賃上げをするどころではない、社長がみずからハンダごてを握って仕事をして一生懸命がんばっている。もちろん大企業から下請、孫請という関係があって大変だ。これは厚生省に直接関係することではないのですけれども、そういう記事もきのう出ておりました。そういう町工場と言われておる五人未満の零細企業、こういうところには現在厚生年金は適用されていないわけですね。したがって、せめてこの五人未満の零細企業の労働者にも、もちろん事業主もそうでありますが、厚生年金の適用を行うことができないか、何とかしてくれないかという要望がずいぶんあるのですよ。
 これについて、厚生年金の場合に五人未満の従業員を抱えている事業主が事業主側の負担分をなかなか負担し切れないということがもし障害になっているとするなら、そこの打開はやはり考えてやらなければいかぬ。私はこれも政治だと思うのですね。それが直接的でなくとも援助の仕方はいろいろあると思うのです。厚生省が所管するそのエリアで援助できないことであっても、たとえば通産省で援助の方策をとることができるとか、大蔵省が直接考えるとか中小企業庁が考えるとか、いろいろな援助の方策があると思うのです。
 これはもちろん厚生省の権限外かもしれません。しかし、五人未満の零細企業に対しても厚生年金を適用してもらいたいという強い要望があるという現実を踏まえて、厚生省はそのことについてこれからどういうふうに考えていこうとされているか、その考え方があったらお聞かせ願いたいし、大臣に繰り返し恐縮ですけれども、もし将来何とかしていきたいという厚生省の方針があるとするなら、大臣として他のところにも働きかけてもらわなければいかぬということを私は考えるわけでありますが、お答えいただけますか。
#104
○小林(功)政府委員 先生も御承知と思いますが、いわゆる五人未満事業所等につきましてはいろいろな問題がございます。たとえば事業所とか従業員の変動がかなり著しい、あるいは賃金体系が不明確であるといった点、それからいまおっしゃいましたように事業主の経済的な負担が大変だといったいろいろな理由がございまして、現在の法律のもとにおきましては強制適用から外しております。ただ、任意包括適用の制度がございますので、私どもとしましては御希望があれば積極的にこれを適用していくという方針でいままでやってまいっておりまして、これはこれからも続けてまいりたいと思います。
#105
○森下国務大臣 社会保障、また社会福祉の考え方は平等であり、あまねくこれを享受しなければいけないという基本的な考え方を持っておりますけれども、そういうふうな中小企業の方の中でせっかくの年金制度の恩典に浴し得ないというような部門が間々ございます。数も五十六年の九月末で五人未満で二十五万カ所、百八十六万、これは決して少ない数ではございませんし、そういう零細企業こそお救い申し上げなくてはいけない。個人個人の福祉も大事でございますが、そういう事業体全般の福祉という言葉が適しておるかどうかわかりませんけれども、これのてこ入れと申しますか、いろいろと助成に努めるのは当然でございまして、御指摘のように通産省関係のこともございますし、また労働省関係等各省にまたがっておる問題でもございます。関係各省ともよく連絡調整いたしまして、厚生省としてもそういう方々が救われるように前向きで取り組んでいきたいと思っております。
#106
○永井委員 大臣の前向きにという決意を伺ったわけでありまして、そういう大臣の姿勢を評価してむしろ積極的に後押しするぐらいの気持ちで私たちもいろいろなことに当たっていきたいと思いますので、ぜひひとつ積極的な取り組みをお願いしておきたいと思います。
 次に、この給付内容の問題について若干申し上げてみたいと思うのでありますが、いま公的年金制度というのは八種類あるわけです。そして年金受給権を得ても、それぞれの制度の違いから給付水準に大きな格差があるわけですね。現在年金受給者総数は千二百万と言われておるのでありますが、そのうち大多数を占める国民年金の六十五歳以上を対象とする老齢年金給付額は、拠出年金で一件当たり月平均二万二千三百五十円ですが、福祉年金が七十歳で二万五千百円。厚生年金で言いますと、厚生年金は受給者の総数の五分の一弱だと思いますが、夫婦世帯を含めて全平均で一件当たり十万八千円、モデル年金では三十年間加入の夫婦で、もちろんこれは平均報酬を得ている人を対象の話でありますが、五十六年度で十四万五千円です。もちろん高負担高給付という原則がありますから保険料を掛けてきた中身の違いはあったといたしましても、八つの公的年金でかなり大きな格差がある。これは国民全部に年金を適用できるようにという趣旨からいくとやはり問題があると思うのですね。制度の違いがそれぞれ多岐にわたっておってもこれは問題があると私は思うのです。
 そこへ持ってきてもう一つ世間一般で言われておるのは、共済と比較をして官民格差がある、公務員や国鉄共済は非常にいいけれども厚生年金や国民年金は悪いということで、官民格差なんという言葉も聞かれるのでありますが、実際は果たしてそうなっているのだろうか、むしろ官民格差というよりも、本来、現状の中で民民格差というものはかなり大きなものがあるというふうに私は言わざるを得ないと思うのです。
 それはどういうことかというと、例の企業年金の問題があります。この企業年金は、昭和五十五年で、株式の一部上場の企業の七十%以上が持っている、二部に上場している企業では六〇%以上、加入者の総数は一千百万人、こう言われているわけですね。この年金基金令の一条によれば、千人以上の事業所が対象となっている。もちろん、この法律の第百十条で複数で設立することが認められていますけれども、現実的に、中小零細企業が、それぞれ企業の中身も違うのに、こう法律百十条で定められているからといって簡単に設立できるような状況にないことも、これまた事実ですね。もちろん、法に基づいて一定の金額を掛金として納入はしていくわけでありますが、企業年金を持っているところと持っていないところ、これが結果的に――企業年金プラス厚生年金、あるいはいろいろなことで併給制度もあるわけですから、そういうことをやっていくと月三十万円年金だって夢じゃない、こうまで言われておるわけですね。
 しかし、そうなっていくと、八つの公的年金の間の格差もさることながら、民間の中における民民格差というものもやはり大きな政治問題ではないかと私は考えるのですが、これについての認識はどうでございましょうか。
#107
○山口(新)政府委員 老後の生活を支える三本柱ということで、公的年金、企業年金、さらに個人の努力というものが言われておりますけれども、そういう中で中核はやはり公的年金であろうかと思います。そういう意味で、公的年金を極力各制度のバランスをとって維持していくということがまず第一だと思います。
 二番目に、いまお話がありました企業年金でございますが、ただ現実には、わが国の場合に、あらゆる意味で企業間の格差があることはもう否定できない事実だと思います。また、企業間の力が同じでございましても、企業年金という仕組みをとるところと、年金をとりませんで退職金をとるというようなところもあるわけでございます。そういう意味で一概にはなかなか言えない部門があろうかと思いますが、私どもといたしましては、せっかく四十年改正でつくりました厚生年金基金の仕組みでございますので、よりその趣旨が生かされますように、今後とも育成のための努力をしてまいりたいというふうに考えております。
#108
○永井委員 そういう御答弁をいただくわけでありますが、この企業年金の問題で一番大きな問題というのは、冒頭から申し上げているように、異常な高齢化社会を迎えようとしているときに、年金の将来展望を持つにしても財政事情がなかなかそれを許さない。納入金と給付金をいまの状態で維持していこうと思えばなかなかその展望が開けない、その実情は痛いほど私たちにもわかるわけですよ。それだけにこの財政事情の厳しさというものを、少なくとも企業年金に依存するということがあってはならぬと思うのですね。
 いま局長は、むしろ公的年金が主流でなければいかぬと、そのとおりなんですよ。しかし現実は、いま私が指摘しましたように、企業年金法に基づいて一千百万人の人が企業年金に事実上加入している。そうすると、これから行財政を改革していこうといういまの政府の姿勢がありますから、そういう議論の中で、何かこの企業年金に依存をしていこうという動きが出てくるのではないかということもちまたで言われているわけですね。それを私たちが知っているだけに、あえてこの問題を提起しているわけです。
 もう一つは、その企業年金はもちろん法に基づいて行われているのでありますから、それはそれでいいのでありますが、私が民民格差と言っていることを基本的に申し上げてみますと、もちろん大企業あり、中小企業あり、零細企業がある。いまちょうど春闘で賃上げ闘争の真っ最中ですね。大企業が一定の相場をつくるところもあるし、それに付随して賃上げを決めていくところもある、それを受けて中小企業が決めていく。しかし、中小企業が現実にいまの時点で賃上げが決まるかといったら、決まらないほど後ろへずれていくのですよ。まして零細企業になったら、町工場の話じゃありませんけれども、賃上げどころではないというところもあるのですね。
 ところが働く側にすれば、新しく就職しようとする場合に、どうしてもいろいろな意味で、福利厚生施設も含めて、中小零細よりも大企業の方が充実していることは事実なんだから、だれしもがいいところへ入りたい。だから大卒者でも、就職試験のときには、大変な競争をして並んでまで面接を受けるというようなことをやるわけですね、会社訪問でも。しかし、だれしもが大企業に入ることはできないのですよ。むしろ全体から見れば、中小零細企業で働く者が多いわけですね。ところが、大企業に入ったために、企業年金もある、具体的に言えば、賃金だって中小零細よりもよろしい、こういうことになってくる。そうすると、求めて中小零細企業に就職するわけじゃない。これは一般的な話です。
 そうすると、憲法二十五条に保障されているように、健康にして文化的な生活を営む権利をだれしもが持っている。持っているのだけれども、いまの社会構造からいって、それが満たされるようなところに仕事、雇用を求めることができないという状況の中で、片方には企業年金があり、片方では企業年金をつくれないという状態が生まれてくる、これは大きな矛盾ではないのか。
 だから、いま局長が言われたように、公的年金を主流に置くことは当然であります。当然の話だれけども、企業年金を設立したくてもできない、法的には複数で設立できるのだから、そういう道はありますよと言ってしまえばそれまでだけれども、現実にはそうはならない。
 そういう中でこの民民格差という問題を考えるときに、年金の問題全体の取り扱いとして、たとえば年金行政の一元化ということも本当に本腰を入れて考えるべきじゃないのか、こう思うのでございますが、どうでございますか。
#109
○山口(新)政府委員 年金行政の一元化という問題になりますと、主としては公的年金の問題になろうかと思うわけでございます。企業年金の問題につきましては、どうしても各企業の自主性ということを否定するわけにはまいらないと思います。
 先生が先ほど数をおっしゃいましたけれども、私どもの方で所管しております厚生年金基金で申し上げますと、五十六年三月末現在でございますが、基金に加入しておりますのが五百九十六万人で、約六百万人でございます。そのうち総合で設立しているものの関係者が二百七十二万人ございます。大企業は大体単独でつくっておるわけでございますが、総合になりますと中小企業が集まってつくっておりますので、その意味では、、約半数が総合設立の関係者でございますから、中小企業の方も企業年金に対して相当意欲が出てきているんじゃないかというふうに見られると思います。
#110
○永井委員 企業年金の設立の数あるいはその加入者の数が、私どもの調査とちょっと数字が食い違っていますけれども、その数字の食い違いはあったとしても、私の申し上げていることについては、数字によって左右されるものじゃありませんから、そのとおりに受けとめていただきたいのであります。
 しかし、この企業年金というものはむしろこれからいろいろな意味で発展していくでしょうけれども、繰り返して恐縮でありますが、その企業年金を設立できないような実情にあるところの労働者は、やはりいつまでたってもそのしわ寄せを――政治の欠陥といいますか政策の薄さといいますか、表現はうまく言えないのでありますが、そういうことが結果としてあらゆる面で中小零細企業に及んでくる。これはやはり政治の場で何とかしてくれという叫びが出てきて当然だと私は思うのですね。だから、この法律があるからその法律に基づいて処置をしているというのじゃなくて、年金全般を見直すということは当然やっていかなければならぬことだ、高齢化社会を迎えるに当たって、これは当然通っていかなければならない道筋だと私は思っているのですね。そういう立場でぜひ受けとめてもらいたい。
 さらにもう一つ、ついでのことにつけ加えておきますが、たとえば障害者年金にしても、大きな矛盾がありますね。先天性の障害者は福祉年金が適用される。労災とか交通事故とかいろいろなことで途中で障害者になられた方は障害年金でスライドがある。これだって、いま国際障害者年二年目に入っているわけですけれども、障害者の方にすれば、あるいは障害者を抱えている家族の方にすれば、何で私のところが福祉年金だけでしんぼうしなくてはいけないのかという問題だって、端的に言ってあるのですよ。
 そうすると、これからの年金のあり方というものは、マクロの立場で再検討するものとミクロの立場で再検討するものと、この両方を、どちらも手を抜くことなく対応してもらわなければいけない、私はこういう考えを持つわけでありますが、結果的にそれがどういう答えになるか、それはこれからの作業にかかってくるのでしょう。しかし、むしろいま問われているのは、政府がこの年金制度について、そういう問題も含めて、どこまで積極的にそれと取り組んでいこうとする姿勢があるかということが一番問題だと私は思うのですね。
 そういうことで、時間もなくなってまいりましたので、最後に大臣の方から、そういう年金行政全般の、私がいろいろ申し上げましたけれども、これは氷山の一角でありまして、社会の実情を見ればもっともっと大きな矛盾点もあるだろうし、もっと救いの手を待っている人もあるだろうし、年金だけがうまくいってあとのことはほっておけということにもならぬし、ほかのことはうまくいっているから年金は少々しんぼうしてくれということにもならぬだろう。やはり全体がそうなっていかないといけませんので、そういう総合的な立場で、年金行政のこれからの進め方、あるいは政策のこれからの立て方などについて、最後に大臣から御答弁をいただきたいと思うのです。
#111
○森下国務大臣 行政は国民の信頼の上に立たなくてはなりません。そのためには朝令暮改ではいけません、政治不信感を与えるわけでございますから。しかし、この年金問題については二十年後、四十年後の長期にわたる問題でございますし、また人口問題、いわゆる高齢化社会を控えまして年金をいかにしていくか、これは先ほど、ILOでもいろいろ話題になったという話もございましたし、また年金加入者がひとしく自分の胸のうちを口に出して話題にするぐらい、きょうの問題また将来の問題、ともに非常に大事な問題である。先ほど申しましたように、社会保障制度は、お互いに助け合っていこう、また国がいかにこれにかかわり合っていくかという、公的な介入という問題、自由経済の中で将来の生活の保障をどうするという非常にむずかしい宿題、問題を抱えておるわけでございまして、この問題はやはりいろいろ審議機関とか、また国会でも御審議をいただいておりますし、またプロジェクトチームをつくっていろいろ検討しておりますけれども、やはり基本問題につきましては見直しの必要もある。遅滞なくこの時代に合ったように、環境に合ったような方向づけをすることも、また年金加入者の安心感を買うし、また老後に対する一つの夢も持てるのだということを踏まえまして、非常にむずかしい問題でございますけれども、自信を持ってやってまいりたい。自信を持つことがまた行政に対する信頼度を高めるゆえんである、このように思っておる次第であります。
#112
○永井委員 時間が参りましたので終わります。どうもありがとうございました。
#113
○唐沢委員長 本会議散会後、直ちに再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午後一時四分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時三十四分開議
#114
○唐沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。
 本日、理事丹羽雄哉君の委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。これより、理事の補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#115
○唐沢委員長 御異議なしと認めます。
 それでは、理事に丹羽雄哉君を指名いたします。
     ――――◇―――――
#116
○唐沢委員長 国民年金法等の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。平石磨作太郎君。
#117
○平石委員 国民年金法の一部改正につきまして御質問申し上げます。
 まず、今回の年金法改正は、いわゆる物価スライド、年金額の引き上げ、これが従来からいいますと一カ月おくれた引き上げの改正案でございます。私どもといたしましても、受給しておられる方々の現在の生活の状態を考えてみたときに、支給が従来に比較して一カ月もおくれるということは大変なしわ寄せがこの方々にかかってくる、こういう立場から反対をするわけでございます。
 国民年金は、公的年金として国民の信頼を得ているわけであります。それはなぜ信頼を得ておるかと申しますと、やはり物価スライドを行っておるということが国民の信頼を得ておる大きな特色であります。したがって、現在のように諸物価の高騰、さらに大きくはインフレといったような時期におきましても、物価スライドが行われ実質的な支給の年金水準を維持していく、こういう制度であるがゆえに、公的年金として国民に対して支給が一月もおくれる、物価が四・五%上がったから四・五%上げる、あるいは六%上がったから六%スライドしていくということが一〇〇%実施されるならば、実施月もやはり同じようにやらないと、そのパーセントは維持されません。したがって、一カ月おくれるということは、そのパーセントの十二分の一はダウンしておるということになるわけです。
 そういう意味から言いましても、私は、物価スライドということはあくまでも従来どおりにやるべきである、こういう考え方を持っておるわけですが、大臣のお答えをいただきたいと思います。
#118
○森下国務大臣 一カ月物価スライドがおくれた、それで大変不満であるというお話でございますが、ゼロシーリングという、昨年八月に出されました財政難の大蔵原案に対しまして、私ども全力を挙げてその回復に努力をしたわけでございます。そういうことで、このスライドの問題は特例措置を適用いたしまして、五%以下でも、四・五%ということでスライドをさせていただくわけですが、いまおっしゃいましたように、一カ月おくれ、七月、八月からというようなことになったことは、一〇〇%の目的は達しなかったかもわかりませんけれども、申し上げましたように、諸情勢の折、ごしんぼう願いたいということでそうなったわけでございます。この点はひとつ御理解願いたい。
 いろいろ社会保障関係、昭和四十八年を元年にいたしまして急成長したことは事実でございますけれども、その後の財政事情で足踏みをしたり、またときにはストップしなければいけない段階も将来あるかもわからない、また以前のように大成長に伴って福祉行政も飛躍増進する場合もあるかもわからないというような、ちょうど過渡的な時期に当たりましてそういう結果になったわけでございます。
 将来は別にいたしまして、問題は、年金制度に対する加入者の不安がなくなるように、また年金に対する期待度が減らないようにすることが私どもの大目的でございまして、一カ月おくれたことにつきましては御了解を得たい、こういうふうに思っておる次第でございます。
#119
○平石委員 今年の一月二日、これは年頭の記者会見だと思うのですが、大臣がこの中で言われておることがあります。それは五十九年度に次期財政再計算が予定されるが、年金水準を維持するため物価スライド制を存続させる、これは当然のことだ、ただ高齢者を支える現役世代の将来の負担の適正化のため、一つは年金加入期間の長い人、それからもう一つは共稼ぎ世帯、これは給付水準を下げる予定だ、こういう発言がございます。
 これはどういうことなんだろうか。私はこの物価スライドに関連してこのことを申し上げるわけなんですが、給付水準を下げていくということについては、これはそれぞれ保険料を掛け、国が支給額に対する三分の一を支出されておるわけです。そして、ゼロシーリングといういまの御答弁がございましたが、そのゼロシーリングという形で即これへそういったスライドを落とさにゃならぬというような、それが理屈として出てくるかどうか、ちょっと私は疑問に思います。大臣のこのお言葉にありますように、やはり物価スライドは維持します、そして物価スライドを維持するということは、即一〇〇%維持するという形でないと、いま私が前段の質問に申し上げたように、最初は実施時期を六カ月落とそうと考えておった。六カ月落としますと、これは四・五%が二・二五になってしまうわけです。ここらあたりを大臣はこの発言の中でやはり考えておったのかどうかということ。
 それからもう一つ、この年金加入期間の長い人、これは当然、これから先は厚生年金にしろ国民年金にしろ非常に長い加入期間が出てまいります。ただし、国民年金につきましては六十歳までです。二十歳から掛ければ四十年掛けることになるのですが、そういうことで、それからこの共稼ぎ世帯の給付水準を下げるということは、物価スライドはやりませんということなのか。現在の現行支給しておるものをダウンさせるのかどうか。この二点、お答えをいただきたい。
#120
○森下国務大臣 この財政事情の非常に悪いときに、私どもが余り長期の見通しについて悲観的なことを言うことはよくないと実は思うのです。といって、余り楽観的なことを申し上げることもいけないし、ILO等からも、日本の高齢化時代に備えて日本の年金制度はどうなっていくであろうかというような御心配というか御忠告というか、非常に関心を、国際的にも実は見詰められておるようでございまして、今後この年金行政をどうやっていくかということが、私どもに対する大きな宿題にもなっておるように思っております。
 公明党さんもそうですが、各党でもこの年金の基本的な考え方、将来構想についての案もいろいろあるようでございます。審議会等でも、基本年金制度をやって、その上に応能と申しますか応益と申しますか、そういうものを加味する、その上にまた企業年金を加味するとか、いろいろお考えがあるようでございまして、いまはまさに年金に対する見直しの準備段階でもあるような感じもいたします。
 臨調でも、もう年金を一本化せいという、少し極端な意見かもわかりませんけれども、将来は、やはり福祉というのは、社会保障制度は平等でなくてはいけないという平等論、平等主義もございますから、そういうものも生かさなくてはいけないというようなことで、私も年頭で、大臣になったばかりでございますから、多少の言い過ぎもあったかもわかりませんけれども、とにかくスライドだけは、これはやはり物価に見合ってやるのが当然である。もちろん特例もいまの段階においては認めてもらわざるを得ない。ということは、公的年金の場合は私的な年金また民間年金と違いまして、やはり物価につれてそれだけ上げていこうというのが何よりの魅力でございます。民間の保険等を見ましても、やはりインフレのためにずいぶん目減りをしている、これに対する国民の不信感が出ておることは事実でございます。この点だけは、絶対にインフレによる目減りはしませんということが年金行政に対する国民の信頼である、私はこういうような考え方を持っております。
 それから、夫婦共稼ぎの場合は、共稼ぎでお二人入っておられる方もございます。それから一人だけ入って、奥さんの方は違う種類のものに入ったり、私的年金に入ったり、いろいろございまして、これもでこぼこがあるわけです。そういう点の見直しをしていこうという意味が切り下げというふうにとられたのじゃないかと思いまして、見直しということはやるべきである、でこぼこ、格差がございますから。そういう意味で私は申し上げたつもりでございます。
#121
○平石委員 追及はいたしませんが、国民年金の場合は個人加入ですから、夫婦がともに入っておるわけですね。だから、自営業をやられて、御夫婦が一緒に散髪屋さんをやって一緒に働いておる。そしてだんなさんも入る、奥さんも入る、こういうような形で国民年金の場合は入っておるのですから、共働きが一概に云々という形はちょっと誤解を招くおそれがありますので、いま大臣がおっしゃったように、ひとつ慎重に発言をいただきたい、こう思うわけです。
 それから、先ほども私申し上げた、四・五%あるいは六%物価が動いたからこれへスライドするということが、実施時期がおくれますと、その物価スライドの率がダウンになるわけです。したがって、実施時期は大変大切だということですね。この意味で私申し上げておるわけですから、同じ四・五%上げるというのであれば、おくれるということは四・五%のスライドではないということになりますので、ここらあたりを、将来実施時期についてはやはり直近でやるのだ、あるいはおくらすということなしにやっていくんだというようなお考えを捨てたのかどうか、今後は来年はもとどおりへ戻しますという形なのか、もう一回お答えをいただきたい。
#122
○森下国務大臣 もとの線に戻したいと思います。
#123
○平石委員 それでは、これはこれで終わらしていただきます。
 次に、婦人の年金権の問題です。特に妻の年金権の問題は、従来当委員会におきましてもだんだん質疑がございました。そのように、妻の年金ということにつきましては、いろいろ制度の上から非常に困難な面も一方にはある、私はこういう感じがいたします。だが、国が公的年金として一応制度をしいておる以上は、日本国民である以上、あるいは男であろうが女であろうが、やはりひとしくこの制度の恩恵に浴し、あるいは制度を利用していく、こういう権利はあるのだ。したがって妻の場合に、厚生年金を考えてみますと、厚生年金は世帯主が世帯単位で加入している、こうなりますと、その妻は扶養家族として、その世帯の一員として入っておる、こういう形になるわけです。独自に奥さんが入るということは、これは制度の上からは許されておりません。
 もう一つ国民年金の方を見てみますと、国民年金はお互いに強制加入ではありますけれども、厚生年金加入の人の奥さんについては、これは任意加入という制度で拾い上げておるわけです。それで原則的に考えてみますと、こういう妻は両制度からは一応、拒否と言うたら言葉がひどいのですけれども、制度利用がストレートにできなくなる。特別の計らいを持たないと、この方々は年金制度の利用ができないわけです。
 これはそうなんですかどうか、一言お答えをいただきたい。
#124
○山口(新)政府委員 主としては、被用者の妻の年金の扱いの問題でございます。
 御案内のように、現行の国民年金法の七条の第三項におきまして、原則は適用除外になっておるわけでございます。しかしながら、その三項でこういう被用者の妻等についての「適用関係については、国民年金制度と被用者年金各法その他の法令による年金制度との関連を考慮して、すみやかに検討が加えられたうえ、別に法律をもつて処理されるべきものとする。」という規定が当初から置かれております。すでに二十一年になるわけでございますが、このための解決が行われていない。そのために、現在の状況は任意加入ということで被用者の妻の約七割ないし八割の方が現実には入っておられます。
 しかしながら、これはあくまでも任意でございます。年金の制度の上では不安定な形になっているのは御指摘のとおりでございます。この点につきましては、私どもは、次の改正の機会には基本的な問題として現在七条の三項に置かれております規定の趣旨に沿いまして、できれば何らかの形で年金制度上の解決を図りたいということで、現在鋭意知恵をしぼっておる段階でございます。
#125
○平石委員 これは、いま局長お答えいただいたように基本的にそういう問題があるわけですね。だから、二十一年たっても妻の年金の問題、いわゆる制度上の問題については明快な解決がつかない。したがって、私が前段申し上げましたように、国民である以上は両性どちらでもとにかく制度利用ができるようなことを制度の上では考えるべきである。
 そして、いま行われておる任意加入、それから受給について空期間。問題になるのは、離婚が非常に多くなってきた。私は、離婚が多くなってきたことを考えてみますと、一緒にずっと夫婦生活をして、そして五十歳を過ぎた、五十歳を過ぎて夫婦が別れたといった場合は、もう国民年金に加入いたしましても十年、あるいは五十五歳で別れますと五年しかない。だから、夫婦の間は空期間で救済はいたしますといっても、これは受給資格の要件だけであって、年金額にはね返りがない。そうすると、わずかに五カ年ぐらい保険料を掛けて年金もらったところでスズメの涙ということに終わりてしまうわけです。ここに問題がある。
 私は厚生省の資料をちょっとここで見させていただきますと、離婚の割合というものが昭和二十五年からずっとこの資料に出ております。これを見てみますと、毎年毎年離婚率はずっと上がってきて、近年特に上がってきておるわけですね。そして五十三年は、この資料は五十三年が最後ですが、これで見ましても十三万二千百四十六人、五十五年は十四万余りになっておったと思います。このように急激に離婚者が多くなってくる。
 そして、この離婚者は、二十五年当時仮に夫婦が別れて、さあこれから保険に加入いたしましょうかと考えて、最低ぎりぎりを考えた場合に三十五歳。三十五歳以上になりますと、もう一〇〇%の制度の恩恵に浴していることはできなくなってきます。四十歳になって別れたといったような方々を二十五年で見ますと、いわゆる離婚者の中で一八・三%あるのです。そういう三十五歳以上、四十歳、六十歳といったような方々のパーセントは一八・三%あります。五十三年を見ますと、これが何と三二・八%になっております。このように急激にふえておるわけです。昭和五十三年の数字を申しますと、十三万二千百四十六人の全離婚者のうちで三十五歳以上の方々が、勘定してみますと四万三千三百四十四人になります。それで五十歳から五十四歳までの離婚のパーセントは二・四%になる。それから五十五歳から五十九歳が一%おります。一%おるということは、十三万ですから一万三千人、五十五歳から五十九歳までの方が別れておるということです。こうなってきますと、この方々は無年金者に落ち込んでくるわけです。
 この前、無年金、いわゆる加入していないという方に特別納付という形で過去三回行ってまいりました。そして無年金者の解消のために手続はとって、まだ完全ではありませんけれども、国はそういう制度をとって一応の救済を図りました。ところが一方で、こういう形に、高齢化してきてから離婚していくということになりますと、これは無年金者に落ち込んでき、無年金者がどんどん出てくるという形になっておるわけです。ここに私は、離婚件数が多くなればなるほど妻の年金権の問題が大きな問題としてクローズアップされてきておると考えるわけです。
 そういう意味でここで取り上げておるわけなんですが、この妻の年金権がこういう形で、もともとの基本的な利用権がありませんから、別れた場合は、無年金者ができるというよりも、もともと無年金になるようになっておる。ここは何とかならないものだろうか、ひとつお答えをいただきたい。
#126
○山口(新)政府委員 現在の国民年金ができました当時は、それほどの離婚の問題を意識してなかったと思うのでございます。いま先生から数字でお示しがありましたように、昨今の状況はやはり相当配慮をする必要がある現象になってきているわけでございます。また、仮に数が少ない状況におきましても、そういうことによりまして一人でも年金による保障に欠けるということが起きますこと自体、元来余り好ましいことではないわけでございます。
 そういう意味で、制度的に何らかの工夫をしてみるということは私も必要であろうというふうに認識をしている状況でございます。
#127
○平石委員 いま厚生省は、審議会の年金保険部会ですか、見直しが行われるということでここの中で審議中のようですが、この中の研究テーマを見てみますと、女性の年金権の問題が出ております。恐らくここで討議がなされておると思うのですが、その中身はどういう状況ですか。差し支えなかったら、ひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
#128
○山口(新)政府委員 現在、検討項目を順次一項目ずつ具体的に資料をもとに検討しておられる状況でございまして、まだ婦人の年金権のところまで立ち至っておりません。問題意識として聞いておりますのは、いまお話のありました権利に欠ける場合、また一応権利はついても、先ほどもちょっとお話しございました空期間が多いために余り実がつかない。また逆に今度は、国民年金ができました当時には余り予想されませんでしたいわゆる被用者の共働き、これによりまして、厚生年金にしましても共済組合にしましても、被用者の年金がそれぞれに出るということになりますと、今度はそれ自体が果たしてそのままの給付でよろしいのかという逆の問題も含めまして、いずれ詰めた検討をしたいということでございます。
#129
○平石委員 まだそれについては検討に入ってない、順次やっておられるようですが、ここで諸外国の例を見てみますと、やはりドイツにしろイギリスにしろ、日本と同じように夫婦で生活しておるわけですから、そこで別れたといったような場合に救済がとられております。私はそういったものも一つの参考にしたらどうかと思うわけです。
 そこで、ベルギーなんか見てみますと、夫の年金受給額の二分の一を離婚妻に分与する、これも
 一つの考え方じゃないかという気がするのですね。離婚の理由に、妻の責任で離婚するのか、夫の責任で離婚するのか、いろいろ問題もありましよう。ありましょうが、全く無年金者になってしまう、あるいは年金をもらっても年金額においてはスズメの涙というようなことでは、これは余りにも不合理がございますので、やはり日本でも離婚をした場合は財産分与をするという制度があるわけですから、そういう財産分与をする場合なんかをいろいろ聞いてみますと、あるいは慰謝料とかいったような形で妻に渡す場合でも、調停が成立しても余りそう実行されてないようなことも一部では聞きます。現実にはかいたもちだ、こういうことを聞くのですが、これは明らかではありません。明らかではありませんが、そういうような制度があるんですから。
 妻が働いて一緒に財産形成に寄与したそして夫の生活を助けてきたのには半分の力があるはずですから、したがって、別れるときはその空期間分をさかのぼって夫が保険料を納める。空期間分はわかるわけですから、その分はさかのぼって夫がまず納めておく、こういう形にでも、さかのぼって取り扱いができるような方途を特別に制度の上でつくってもらったら、妻は安心して別れるとは言わぬ――まあ別れることを私は奨励するつもりはないんですけれども、別れざるを得なくなったときに、さあ年を迎えた、無年金になるというときに、せめて国民年金なら国民年金、厚生年金なら厚生年金の空期間に対して夫が、厚生年金にはないですけれども、国民年金では、別れた妻が、私は国民年金に加入いたします、こうするときには、じゃ空期間分は主人の方から取る、こうすれば安心ができるんじゃないかと思うのです。
 そういう特例といったものをも、やはりいま審議をしておられる年金権の問題についての審議の中ではひとつ参考にしていただきたい。そして諸外国のそういった事例等ももちろん研究しておられると思うのですけれども、ここにイギリス、アメリカいろいろありますけれども、もう時間の関係で申し上げませんが、日本のいまの夫婦が別れるときの処理の問題は、そういう形において処理してはいかがか、私はこう考えるわけですが、ひとつ所見を承りたい。
#130
○山口(新)政府委員 この問題の解決の仕方といたしましては、いろいろなことが考えられると思います。ただいまの先生のお考えもぜひ厚生年金部会の委員の方に御紹介をいたしまして、参考にさせていただきたい、かように存じます。
#131
○平石委員 ひとつそういうことで――婦人の年金権の問題は長い間の問題で、片がつかない。そしていま非常に厳しい状況を迎えて、しかも離婚が多くなってきた。高齢化で、そして長生きするというような状況になってきますと、制度設置の当時から言いますと、様相は変わってきたわけですから、そういった新しい時代に対応できるようにひとつよろしくお願い申し上げて、この問題はおきたいと思います。
 それから次に、海外の滞在者、この問題についてお聞きしたいのですが、これもまことに不合理な話だと思うのですが、五十七年三月二日の新聞で私は見たのです。
  夫の海外勤務に同行したS子さん(四五)。任地で夫を急病で亡くし、失意のうちに帰国した。国民年金に加入していたため、当然、母子年金がもらえるものと思い、受給申請した。ところが、役所の回答は「海外に移り住んだ時点で、国民年金の資格を喪失しています」
こういうお答えなんです。
 この人はどういうことかと言いますと、奥さんが四十七年の五月に国民年金に任意加入したわけです。そして四十九年の七月に夫とともにインドネシアに四年間という約束で海外出張、保険会社のいわゆる転勤で行ったわけです。四年したら日本へ戻ってくるということで、四十九年の七月に転勤をした。ところが、現地へ参りまして、五十年の九月にだんなさんが敗血症で急死をしたわけです。わずか一年で亡くなった。そこで、仕方がないので奥さんはすぐ引き揚げてこられた。そして五十年の十一月にある会社へ奥さんは就職をしたわけです。厚生年金のある会社へ就職をした。
 そしていままで国民年金に加入しておりましたので、ここで厚生年金に切りかえをしたわけです。そのときに、あなたは国民年金に加入しておられたんだからそれは母子年金がもらえますよ、小さいお子さんがおるんですから、こう言われて、その際にそのことがわかったので、直ちに役所へ行った。ところが、いま読み上げましたように、国民年金の資格を喪失しておる、こう言われた。
 そしてこの方は海外へ渡航するときに、固定資産も持っておった関係で納税代理人をつくって、いわゆる納税はしておったわけです。その際その代理人に対して、私は国民年金にも加入しておるので国民年金の保険料も一緒に払ってくださいよということでお願いをして、ずっと掛けてあったわけです。保険料を納めた。そして四十九年の七月に海外へ出て、五十年の九月にだんなさんが亡くなって戻ってくるまで、保険料はずっと掛けておった。ところが、いま言ったように、海外へ出た瞬間においてもうあなたは国民年金の対象者でありません、脱退しています、喪失しております、こういう形になってきたので、役所の方は、四十九年の七月から五十年の十月までの保険料はお返ししましょう、こんなことを言うておるわけです。
 もちろんこの資格要件の中には、日本国内に住所を有する、そして二十歳以上六十歳未満の日本国民は国民年金の被保険者とする、こういうこと。それから、九条に、資格の喪失として「日本国内に住所を有しなくなったとき。」こうなっています。ここで、この方が日本国から住所が海外へ移ったということで、資格喪失になっておるわけです。保険料は掛けてあった。
 これはこの人だけじゃない、もちろん皆――いま海外へどのくらい出ておるかということをこのなにで見てみますと、一昨年の十月現在で外務省の掌握したものでは、六カ月以上長期海外滞在者は約四十四万五千人。このようにいま国際化されて、出働き、その他で出ていく人も非常に多いし、あるいはその他海外の支店、出張所等に転勤していかれる方々が非常に多いわけです。こういうように新しい時代に入ってきた段階でどうかなという気がするわけです。まことにお気の毒である。ひとつ見解をお伺いしたい。
#132
○山口(新)政府委員 ただいまの具体的な事例につきましては、私どもも御同情は禁じ得ないわけでございますが、先生からもお話がありましたように、現行法ではいかんともしがたい。
 今後の問題でございますが、いまお話がございましたように、確かに三十年代に比べまして、海外への渡航がふえておりますし、また交流も非常に活発になっておるわけでございます。そういう意味で、ただいまの御指摘のような問題以外にもいろいろ事例があろうかと思います。そういう問題に対応するためには、どこまでが年金制度上解決できる問題であるかということも制度論として詰めながら、できるだけ年金の権利が生かされるような方向で検討をしてみたいというふうに考えております。
#133
○平石委員 いまのように検討していただくということですから、それでいいのですが、この事例の場合は、やはり年を限って出ていくのです。転勤で行っても、本社にまた復帰があるのだから、もちろん年限を切って出ていくわけです。そういう形で、海外へ永住をしない、移民をしないということがはっきりする人たちは、しばらくの間は資格喪失でなしに、資格を一応停止なら停止――もうあなたはだめだ、こう言われると、これはもう年金権も何もない、資格がないのですから。資格要件から外されて、国民年金の制度の対象外ですよ、ここまでやるというのはちょっと残酷のような気がします、日本国民ですから、日本国籍があるのですから。
 住所要件、いわゆる居住要件というものをつくったには、それなりの当時の考え方があったと思います。だが、いま考えてみますと、余りにも強い住居要件、居住要件を、国際化してきた今日、余り強くやることはどうかな、ここにひっかかるわけです、日本国籍を持っておるのですから。そして、もうあなたは年金制度の対象外の人間になりました、これはちょっと残酷過ぎると思うのです。だから、その間は、一応永住をしない、移民をしないという限りは、やはりしばらく停止をするか、そして戻ってくればそのまま引き継いでいけるか。あるいは税の納税代理人をつくるように、私は四、五年海外へ行ってきます、その間はこの方を代理として保険料を払っていきますので、よろしく頼みます、こういう便法をとってやる必要がある。
 裁判管轄その他の場合は、海外の者は東京都に住所があるというようなことが法律にあるのですけれども、この場合も、永住をしない者は、国籍がある以上はどこかに住居がある。住居要件はどうでも、必要であるものならば日本国のどこかにあるんだという形にみなしてつけておくというようなことをして、代理人に保険料を払わすとかいうような何らかの方法をとっていただければ、こういった形にはならないんじゃないか。住居がなかったがために対象外にせられるというのは、ちょっと残酷過ぎるような気がするわけです。
 これはひとつ大臣からもお願いします。
#134
○森下国務大臣 ただいまお話を聞いた範囲内では、まことにお気の毒な話でございまして、社会保障制度は特に法の解釈を善意にしなければいけない、また運用しなければいけない、このように思っております。この例はまさに何か、ここの落とし穴的な、盲点になるような感じがするわけでございます。
 といって、この例をいまここでどうするかということは私から言えませんけれども、こういう隘路、落とし穴がないように、社会保障制度に当たる行政といたしましては注意しなければいけないし、また、立法の趣旨はそこにあると思います。そういう点で善処していきたいと思うわけでございます。
#135
○平石委員 いろいろ情勢は変わっておりますので、幾つか出しましたが、そういうことでひとつ検討をしていただきたい、こう思うわけです。
 そこから、年金財政の問題でございます。国民年金も非常に厳しい財政情勢になっておるようでございます。厚生年金も同じくそういう状況が生まれておるわけです。これはやはり高齢化というものの入り口に立って、いま日本の社会保障というものが、いわゆる年金社会といいますか、だんだんとそういう形になってき出した。もちろんこれが大きな柱になってくるわけですが、この資料等を見てまいりましても、社会保障給付費の中で年金の占める位置が非常に高くなってきている。したがって、これから先の年金をどう維持していくか。私にもあちこちからよく電話もあるし、話を聞かされるわけですが、いま払ってどうだろうか、この年金をそのまま払うよりも、みずから貯金をしておいた方がむしろ安心ができるかもわからぬ、先でもらえないものを掛けておるような気がしてならぬというような不安があるわけです。これだけの高齢化社会に入ってまいりますと、果たして公的年金として、将来自分の老後の生活の一つの糧になるのかどうかという不安がそこに出てくるのは、これまた当然のことです。
 そのような状況が出てきておるわけですから、私は特に国民年金に限って言うていきますが、この財政問題については、これから先、非常に大きくあらわれて出てくる。そこで、いま国民年金の会計の中で、免除の数はどのようになっておりますか、お聞かせをいただきたい。
#136
○小林(功)政府委員 昭和五十五年度末の数字で申し上げますが、免除者数が二百三十三万人でございます。内訳は、法定免除が八十三万六千人、申請免除が百四十九万三千人でございます。率で申しますと免除率は一一・八%、法定免除が四・二%、申請免除が七・六%になっております。
#137
○平石委員 いま部長さんお答えいただいたように、それだけたくさんの免除が出てきている。しかも、この数字を見てみますと非常に申請免除が多くなってきている。この状況はやはりいろいろな面でこういう形が出てくると思うのですが、もちろん生活の問題、経済の問題等も出てきます。だが、一番端的に考えられることはやはり保険料の問題。年金会計を維持しようとすれば保険料を上げなくてはならぬ。いま国民年金は定額保険料でやって定額給付。定額保険料なるがゆえに、やはりその中には低所得者も含まれております。あるいはお金のない人、所得の上がらない人も含まれておる。そうしますと、なるべくそういった方々が保険料の掛けやすくするためには保険料を努めて抑えていく、これはやむを得ないことなんです。そのように何とか抑え込んで、保険料が上がらないようにして、その人たちに掛けやすいようにしていこうという一方で考えがある。それをしていきますと、一方給付の方は上がらなくなってくる。ここに私は国民年金の会計の大きなむずかしいところがあろうかと思うのです。
 この定額保険料ということが、社会保障の一つの側面である所得の再配分機能、これを果たしていないわけです。所得の高い人も同じ金額、低い人も同じ金額、給付も同じような給付がなされるんですから、そこには所得再配分機能は全然働いておりません。これはまあやむを得ないことです。
 そうなりますと、今後の年金会計を考えたときに、いろいろこれからの厚生省の資料もいただいております。それから受給者と被保険者の率、これなんかを考えてみたときに、私は定額の保険料あるいは定額の云々というようなことが妥当なのかどうなのか、ここらもやはり検討の一つの問題になるんじゃないかというような気がするわけです。
 この国民年金の被保険者を見てみましても、ほとんど八十五年ごろまで動きはありません。むしろ被保険者数は八十五年では落ちております。ダウンしておる。伸びはないんです。ところが受給者を見てみますと、これは二・八五倍にふえてくるわけです。給付費はどのようにふえるかといいますと、三・七一倍になる、こういう状況が厚生省の資料の中で出ております。こういう状況をながめたときに、とてもじゃないが今後の会計維持ということについては大変なことになってくる。そして、厚生省のこの資料の中に、大体昭和八十五年、百年までの定額保険料の推計がございます。この推計を見ましてももう一万円台へ上がっていくというのが目の前です。そして昭和八十五年を見ましても一万四千六百五十円という形で、ざっと一万五千円ぐらいの保険料になるわけです。一人で一万五千円ですから、これはなかなか大変なことです。
 果たしてこのような保険料の支払いができるかどうか。負担の限界、そして会計を維持していくところの一つの限界、ここらはどのようにお考えになっておるのか、お聞かせをいただきたい。
#138
○山口(新)政府委員 負担の限界というお話でございますけれども、要するに年金制度は負担と給付とのバランスの問題が一番大きな要素としてあるわけでございます。そういう意味で、給付水準が現役の保険料を負担する方々の生活水準とバランスのとれるようなところに設定されておれば、負担としてもそう極端に無理のない負担で済む道理でございます。そういう見地から現在の仕組みを、単に負担だけでありませんで給付との絡みで妥当な線としてどういうものが考えられるかということで、やはり見直しをしてみる必要がまず大きな問題としてあろうかと思います。
 いま先生、国民年金のお話があったわけでございますが、これはわが国の人口構造の将来を考えますと、ひとり国民年金だけではありませんで、ほかの公的年金につきましても、多少の相違はありましても似たような要素があるわけでございます。そういう意味で、年金制度全般につきましてやはりこれまでのあり方を一応見直して、給付と負担を老齢年金をもらう世代と現役の世代との関係でどう見るかということから見直してみる必要がある、その上で負担の問題を考えたいということでございます。
#139
○平石委員 いま局長のお答えいただいたことが私も妥当だと思います。
 個々の八つの年金の財政を一つ一つ丹念に見てみますと、もうほとんど破産状態に入りつつあるわけです。一番最たるものがやっぱり国鉄共済、共済の中で。そういう形になってきつつある段階であるから、八つそのものを、あるいは国民年金なら国民年金だけの会計で云々してもこれは始まらぬことになってきておる。しかも厚生省所管のこの厚生年金を見ましても、これはもう昭和八十五年が来たら一切パアです。パアと言うたらちょっと言い方はひどいですけれども、もう積立金もなくなるというような状況に入ってくるわけです。
 こうしできますと、これは私は、いま局長おっしゃったように、それぞれの制度での見直しでなしに制度を通じた一つの見直しをする必要があると思います。ここに、やはり私どもが先年提案をいたしております基本年金あるいは二階建て年金、このことにつきましては、社会保障制度審議会等それぞれの機関からも提言がなされております。それでこの社会保障制度審議会から五十二年に出され、年金制度基本構想懇談会、ここからも厚生大臣に対して出されておる。そして現在社会保障長期展望懇談会、これは有沢先生が会長。いまここでいろいろと厚生大臣は意見を聞いておるわけですが、局長答弁にありましたように、やはり一つの基本年金あるいは基礎年金、いろいろ名前はつけられておりますが、過日、臨調からも、この基礎年金へ三段階で統合するということが三十一日の新聞に出ておった。
 こういうような形で、あちこちからいろいろな団体からあるいは臨調からあるいは政党からそれぞれ、このままではだめだぞ、基礎年金なり共通したものは共通していこう、こういう動きが出てきておるわけでして、まさにこれに対応するようにいまの長期展望懇談会も、内容、中身はそのことではなかろうかというような気がするわけですが、厚生大臣、まさに国民的合意はできたと言っても過言ではない、そういう意味でいつごろをめどにいま局長答弁にありましたような作業がなされて提案されるものか、見通しをお聞かせいただきたい。
#140
○森下国務大臣 年金制度の根本的な見直し、検討につきましては、いまるる御意見を述べられまして、私の方も大変参考になりましたし教えられる点が非常に多かったわけであります。
 そこで、今後の年金体系のあり方につきましては、各制度を一元化することが究極的には望ましい方向でございまして、その際、公明党や社会保障制度審議会、また長期展望懇談会、そういうところからも提言されておりますいわゆる基本年金構想も、検討に値するありがたい提言であると考えておりますし、臨調からも三段階統合という大方針が出されております。そういうことで年金については見直していこうというようなことをやってきておりますし、恐らくこの次の見直しはかなり画期的な根本的な改革がなされるべきである、またすべきである、このように私も実は考えております。
 ただ、過去の沿革とか今日の財政状況等もございますし、それぞれの年金の歴史もございまして、直ちに一元化するということは検討すべき点が多いわけでございますので、各省庁等責任を持って制度間の不均衡の是正を進めながら、臨調初めいろいろ御示唆、またそれぞれから答申が出たり構想を提出いただいております。そういうものを参考にさせていただきまして、制度全体の均衡ある発展を図ることに努めてまいりたい。
 いつまでにということになりますと、私のいまの感じではできるだけ早急にそうすべきである。いわゆる時を稼ぐという策を弄するようなことではいけない、こういう感じでおりまして、厚生省だけの問題でございませんので各関係省庁とも相談をして前向きに取り組んでまいりたい、このように思っておるわけであります。
#141
○平石委員 ここに五十四年から六十年にかけての経済社会七カ年計画があるわけです。この七カ年計画はもちろん経済計画でありますので経企庁がつくったものでございますけれども、閣議決定がなされている。その中にはいろいろな面についての計画があるわけでして、いわゆる社会保障関係が出ております。「具体的施策」という中の「年金部門」の記載を見ましても「我が国の人口構造の高齢化と年金制度の成熟化に対応して、制度の長期的な均衡と安定を目指す必要がある。このため、給付水準、給付体系、支給開始年齢、婦人の年金及び費用負担のあり方、業務処理体制の整備、企業年金の位置づけ等について総合的、体系的な見直しを行い、合理的な理由のない制度間の不均衡を是正し、今後避けられない費用負担の増大に対し財政の安定を図るよう、年金制度全般にわたり計画的に制度の改革を進める。」こういう項があるわけです。
 そして「勤労者が職業生活から所得保障のある安定した老後生活へ円滑に移行していけるような条件を整える必要がある。」と結んでおります。これは七カ年計画で五十四年から六十年を終点としておるわけです。
 ここにあるように制度の全般的な見直しと格差の是正と改革を六十年までに行うのかどうか。もう一回。
#142
○山口(新)政府委員 五十五年改正でもこの七カ年計画の中にあります一部をやったわけでございますけれども、次の再計算期が六十年でございます。私ども事務当局といたしましては、それより前に改正をやりたいと考えておりまして、できればその時点で、先ほど来御議論をいただいておりますいろいろな問題を含めまして、将来に向かっての基本的な改革ができるように改正案をまとめたいという腹づもりでおります。
#143
○平石委員 財政再計算というのは国民年金等についてやるのでしょうけれども、いま私が問題にしておるのは、大臣のお答えにありましたように基本年金、そういうことを目途にお話をしておるわけです。だから、個々の制度の財政再計算ということではございません。もちろんそれもやるでしょうけれども、この閣議決定の七カ年計画の中に記載がなされておる以上は、やはり六十年ごろまでには、少なくともこれだけの世論にもなっておるし、国民の不安にこたえる意味からも、整理統合といったことを段階的にでも進めることに手をつけないといかぬのじゃないかというような気がするわけです。
 この七カ年計画の社会保障負担についても論議をしたいわけでございますけれども、ちょっと時間を余しますが、このことについてはまた次の機会に譲らせていただいて、これで質問を終わりたいと思います。
 大臣、いま言ったように制度が発足してかれこれ二十年、三十年という時を経て情勢は非常に変わってきた。だから、個々のものを見ましても、いま幾つか事例を挙げましたようにまことに不合理な面も出てきております。そういう意味で早く見直しを行って、そして個々の制度についてはこういった失権せられて泣かなければならないような人を救い上げ、制度全体としてはこれからの年金化社会に十分対応できる制度改革を目指してがんばってほしいと思うわけですが、最後に所見を伺って終わらせてもらいます。
#144
○森下国務大臣 昭和四十八年、福祉元年ということで社会保障、社会福祉の面で飛躍的に前進しよう、ちょうどまだ高度経済成長の余韻も残っておりましたし、また内需を拡大することにも社会保障、社会福祉予算がふえることが寄与してきた、そういう面で健康と暮らしというだけの問題じゃなしに、個人個人の福祉を通じて幸せを求める。かつてスウェーデンが昭和の初期に福祉予算をふやすことによって世界経済危機の中から一番先に立ち直ったというような話を聞いておりまして、貢献した感じを実は持っております。
 といって今後そうつながっていくかどうかは別でございますけれども、昭和四十八年度から始まった福祉政策は飛躍的にかなりのスピードで参ったわけですが、いまここで足踏みしかけておることも事実でございます。これは、高齢化社会にそろそろ入っていこう。ただいま御指摘になったような問題も含めまして、ここで一つの転換を図ろう、見直しをしよう。そして悔いを千載に残さないように、いろいろ、御指摘の婦人の年金権の問題を含めまして、格差の是正等、思い切った根本的な改革をすることによって負担と給付の公平な、国民の信頼を得ていこう。こうしなければ年金財政も本当に危機に瀕するような感じもいたしておりますので、勇気を持ってこの問題に取り組んでいきたいということを申し上げて、御答弁を終わらせていただきます。
#145
○平石委員 どうもありがとうございました。
#146
○唐沢委員長 次に、川本敏美君。
#147
○川本委員 年金の問題について私も若干の質問をいたしたいと思います。
 私は、森下厚生大臣というのは歴史上に残る人物になる可能性があると思うのですよ。これは非常に運のいい人ですよね。今度は日本医師会の武見会長もかわりましたし、新しい歴史の変わり目を迎えておるわけですから、将来は総理大臣もやってもらわにゃならぬ大臣ですけれども、ひとつ年金問題については格段の御努力をお願いいたしたいと思うわけです。
 先ほど来各委員が御指摘をされておりますように、わが国の年金財政は大変な曲がり角をいま迎えておると思うわけです。現在すでに六十五歳以上の人口は一千百万人近くで、大体国民の中に占める比率が九%ぐらいになっておる。ところが、これが二十一世紀の初め、紀元二〇〇〇年、昭和で言うたら七十五年ですよ、そのくらいの年になりますと一九〇六万人、大体一四・二六%という老人比率になって、ピークに達する紀元二〇二〇年には二千六百十六万人、一八・八一%。ヨーロッパのスウェーデンとかフランスとかいう先進諸国がそういう一四%から一五%台になって高齢化社会を迎えるまでの間に要した年限から見ますと、三倍くらいの急テンポでわが国の高齢化社会が到来しようとしておるわけですが、これは大変な時期を迎えておると思うわけです。
 そういう中でわが国の年金制度は、先ほど来お話しのようにいま大まかに分けて八つの年金制度に分離をしておるわけですけれども、まずその中で、先ほどもお話ありました国鉄共済というのは一番財政的にも大変な時期でございまして、昭和五十一年度に初めて赤字を出して、掛金率は毎年引き上げてやっと収支の均衡を保っておる。現在国鉄の職員の負担は千分の七十四ですが、これはずば抜けて高い負担だと私は思うわけです。仮に、三十五万人体制ということを最近よく言われておりますけれども、国鉄が三十五万人体制を実施したとしたならば、昭和六十年度には一人の現職が一・一六人の年金生活者を養わなければいかぬ。これはもう不可能です。財政的に破綻を来すことは明らかだと私は思うわけです。
 他の制度について見ますと、現在収支相償っているものの、制度の成熟化とともに財政は年々悪化するばかりだと思うわけです。御承知のように電電の共済は十一年後、一九九三年、昭和六十八年、収支がマイナスに転落をする。専売の共済も四年後、昭和六十一年にはマイナスに転落をする。国家公務員、これも大体十年後ぐらいにはマイナス、郵政も昭和六十五年にはマイナス三百六十五億円、地方公務員については十年後、マイナスになるところが非常に多いと思うわけです。厚生年金は現在、先ほどもお話ありましたように約三十兆円近い積立金がありますけれども、これも、いまの保険料率のままでいくと大体昭和六十六年、一九九一年にはマイナスに転落する。ともかくその辺のところでどの年金制度もみんな収支の均衡が破れてくるわけです。厚生年金は、いまの予定では、保険料率が昭和七十五年、紀元二〇〇〇年になると大体二〇%近いものになるんじゃないか、千分の二百ぐらいになるんじゃないかというふうに言われておりまして、それがさらに昭和九十五年、この年になりますと、計算上は千分の三百五十ぐらいになるということは、この前の私の質問のときにも御答弁をいただきました。
 国民年金はこの間、三月三十一日までは一人の保険料は月四千五百円。いままでの年金の計画でいきますと、毎年三百五十円ずつふやすという計画だったのですけれども、ことしの四月一日からはそこに物価スライドがついて五千二百二十円という掛金になりました。先ほどお話がありましたように五十五年ベースで考えていっても昭和七十五年、紀元二〇〇〇年には月の掛金が一万一千百五十円ぐらい。ところが、ことしから変わってきておるのですから、このときになるともっと変わってくると思うわけです。そして大体紀元二〇〇〇年になりますと、国民年金だけの計算が、当初の率、五十五年ベースで計算しても国庫の負担額は大体六兆一千六百三十六億という計算になっておったと思うわけです。先ほどからもお話がありましたように、インフレになればなるほどこの計算は変わってくるわけですから、インフレほど恐ろしいものはないと思うわけです。
 そこで、先ほどもお話がありました保険料の負担の限界というもの、給付との見合いの問題がありますけれども、私はこの問題については課税最低限を切り込むような保険料負担というものはできないんじゃないかと思うわけです。老人保健法案も関係してきますけれども、社会保険料負担というものが最終的にどのくらいまで認められるのか、こういうことについては厚生省としては確固とした一つの考えを持っておらなければいけないと思うのですけれども、諸外国の負担状況はどうなっていますか。
#148
○山口(新)政府委員 ただいまの保険料の負担の問題でございますけれども、負担というものはやはり本人の所得の状況との見合いもあるわけでございますし、また他の社会保険料や租税との関連もあるかと思いますが、諸外国の場合を参考までに申し上げます。
 これは国によって制度がいろいろ差異がございますので、一番日本に形の似ている西ドイツの場合で申し上げますと、現在労使合わせまして一八・五%、これを折半負担しております。ただ、西欧ではいわゆるボーナスがございませんために、保険料も総賃金にかかっております。そういう意味で、日本の厚生年金のように標準報酬の形で保険料をいただいておるわけですが、そういう形の料率に置きかえますと、ただいまの一八・五%といいますものが約二四%程度というような数字になろうかと思います。
#149
○川本委員 二四%、現在は一八・五%ですね。これは労使折半ですから大体九・二五%ずつ。これは現在のフランスの四・八%、イギリスの六・七五%、アメリカの五・三五%、いろいろ制度は若干違いますけれども、そういうところから見ると西ドイツが負担は一番高額ですね。それがいまおっしゃったように仮に二四%、日本流に計算すると二四%ということですね、それが一つの限界だとすれば、大体ここ四十年足らずの間にわが国においても一つの限界がやってくるということは間違いないと思うのですね。
 そうなりますと、国鉄共済もそうですけれども、現在労使折半という形の保険料負担をしていますけれども、共済なんかの場合には若干違いますね、負担割合が違うところもある。あるいは政府管掌の健康保険料の負担なんかも労使で違う健保組合等もあるわけですね。労使の負担割合も将来の問題としてはやはり考えなければいかぬのじゃないかと私は思うわけですが、その点についてはどう考えていますか。
#150
○山口(新)政府委員 この問題は古くかつ新しい問題でございまして、労働側からは常に負担割合を事業主に重くというような意見が出ますし、事業主側の方は現状でいいじゃないかというようなことでございまして、いままで折半ということでずっときております。企業内のいろいろな福祉関係全部込みにして恐らくは判断される問題だと思いますが、諸外国でも負担割合はまちまちでございます。そういう意味では、私どもは現在の段階では、特に社会保険審議会の中で労使の話し合いが決着しない限りはこれを変えるのはなかなかむずかしいんじゃないかという判断をいたしております。
#151
○川本委員 参考までにちょっとお聞きしたいのですが、最近の合計特殊出生率、ここ四、五年間の特殊出生率はどのようになってきていますか。
#152
○正木政府委員 出生率の御質問でございますが、先生御案内のように昨年の十一月に人口問題研究所から日本の将来人口の新推計が出されております。これで合計特殊出生率、つまり一人の女子が一生の間に産むと推計される平均子供数でございますが、これを見てみますと、昭和四十八年に二・一四でございましたが、四十九年以降だんだん低下をしてまいりまして、昭和五十五年には一・七四というところに来ております。
#153
○川本委員 いままでの人口推計というのは合計特殊出生率を二・一と押さえて、その数字で大体年金の将来の財政問題とか高齢化社会の問題をやってきておったわけですけれども、昨年十一月の人口問題研究所の調査でいまお話しのように五十五年には一人の女性が一生かかって産む赤ちゃんの数が一・七四ということになると、人口は減少していくわけです。一方で老人の平均寿命は延びて、一方で生まれてくる赤ちゃんの数が減るわけですから、急速に高齢化社会がやってくる。負担をする方のパイがだんだん小さくなって、年金の支給を受ける方のパイがだんだん大きくなってくるわけですから、財政がパンクするのはあたりまえ。
 そこで、政府は、鈴木内閣は特に活力ある社会ということを盛んに言っていますが、将来こんな状態が続いていくとすると、二十一世紀の日本というのは活力ある社会にはならぬですよ。若い人たちがだんだん減って高齢者ばかりの社会ができ上がって、日本の国は活力ある社会というものを維持できるかどうか、厚生大臣どう思っておられますか。
    〔委員長退席、大石委員長代理着席〕
#154
○森下国務大臣 おっしゃいますように、いまは大体九・何人で一人の御老人を支えておる、それが二十年後には四人であるとか、もっと綿密な計算をする人は、生産年齢を十四歳から見ておるようですが、本当は二十ぐらいにいたしますともっと比率は下がるわけですね。もう三人でお一人ということで、これは大変な事態になるわけです。これではとうてい若い連中が働くという意欲はなくなります。すなわち活力は必ず低下することは事実でございまして、これは将来の社会保障制度、特に年金問題についてはもう大変な問題でございまして、インフレ問題と同じように大変だ。そこで活力をいかにして求めていくか、大変な宿題を抱えておりますし、これはもういまから手をつけていかないといけないというふうに実は考えておるわけです。
 そういうことで、これはかつてのように産めよふやせよと急に言い出してもそう簡単に、子供さんを育てるためにはなかなか出費もいたしますし、いまでもなかなかいかぬわけでございますから、この点どういうふうにして生産年齢をふやすようにしていくかということが人口問題としても厚生行政の大変重要な部門を占める、実はこのように思っておるわけであります。
#155
○川本委員 二十一世紀のわが国の活力ある社会というのは、鈴木内閣は人間が減ってもロボットがふえるから何とかなるだろうど思っておるのかもわからぬけれども、私はそういうものじゃないと思うわけです。世界的に見ますと、これはお隣の中国とかインドとかやはり人口急増で大変な状態になっておるところもあるわけですし、世界的には人口を抑制せにゃいけないということはありますけれども、私は、やはり二十一世紀の日本を活力ある社会にするためには、いま大臣おっしゃいましたけれども、戦争中の産めよふやせよじゃないけれども少なくとも合計特殊出生率が二・一を割らないような人口政策というものを新たに打ち出す、そういう必要があるのじゃないかと思うのですが、大臣どうでしょう、重ねて。
#156
○森下国務大臣 そのために政府が直接出生奨励策を講じていく必要があるかないかということでございますが、一応見通しとしては、私は非常に心配しておるのですが、統計等を見ますと、大体六十年を底に反転して緩やかに回復する、そしていずれ二・〇九という理想的な姿に到達するであろうというようなデータも出ておるわけなんですが、それはあくまでも見込みでございまして、やはりかなり啓蒙、啓発運動をやってちょうどいいんじゃないだろうか、実はこのように思っておるわけでございます。
#157
○川本委員 そこで厚生省年金局に聞きたいのですが、いずれ現在のような積立方式の年金制度というものは財政的に破綻を来す、そうなればやはり発想の転換をしてこれを賦課方式にでもしない限りいわゆる未来を展望した年金制度とは言えないのじゃないかと私は思うわけですが、そういうことはいま全然考えていない、どうですか。
#158
○山口(新)政府委員 財政方式といたしまして積立方式、賦課方式、よく議論されるわけでございますけれども一成熟化した段階に達しますと、いずれにいたしましても毎年の保険料はすべて給付に振り向けられてしまうわけでございます。そういう意味では、成熟するまでの過渡的な段階において積立金をどの程度持っているかというその差だと思います。特に私どもで所管をしております厚生年金について言いますと、戦後の非常に激しいインフレ時代でありました昭和二十三年に、当時は老齢年金も発生しておりませんので保険料だけいただいてもどうかということで、三%という非常に低い暫定料率をとったわけでございます。二十九年の改正で老齢年金受給者が発生することになりましたので、年金制度としては再建をするということで大きな改正が行われたわけでございますが、それ以来本来の負担へ向けて料率を少しずつ上げてまいったという経過がございます。そういう意味で、二十三年の段階ですでに積立方式としては放棄をしているという言い方ができるかと思います。
 もう一つは、毎年物価スライドをいたしておりますが、そのための財源がどうしてもいわゆる後代負担に頼らざるを得ないわけでございます。そういう意味でも、積立方式という仕組みでは公的年金はなかなか賄い切れない体質を持っていると思います。
 そういう意味で、いずれは賦課式という状態にならざるを得ないというふうに私どもも判断いたしております。
#159
○川本委員 これは早く決断しなければ、早く踏み切らなければ悔いを千載に残すことになると思いますので、その辺についてひとつ早急に検討をいただきたいと思うわけです。
 そこで、話を一歩進めますが、生活保護費の問題についてちょっとお聞きしたいのですが、昨年度に比べて新しい八二年度、五十七年度のわが国の予算では、生活保護費は何%上がっておるのですか。
#160
○山口(新)政府委員 私が承知しております範囲では、六・二%の基準改定というふうに承知しております。
#161
○川本委員 年金局長でも結構ですが、現在七十歳以上の老人夫婦二人であれば、毎月生活保護費は六・二%上がると幾らになるのでしょう。
#162
○山口(新)政府委員 手元にあります数字は生活扶助に老齢加算をした数字でございますが、七十歳以上の夫婦二人の場合で一級地で十一万三千百二十円ということであります。
#163
○川本委員 そういうことで、七十歳以上の夫婦二人で老齢加算をつけますと、生活保護費が月十一万三千百二十円、そうすると年間百三十五万七千四百四十円になると思います。標準世帯の四人世帯の場合で見ますと、月十四万三千三百四十五円、年間百七十二万百四十円くらいの数字になるわけです。これは六・二%上げておるわけですね。生活保護費が六・二%上がっているのに、今度の法案で見ますと、老齢福祉年金は二万四千円から二万五千百円、そうするとスライドする、引き上げる部分は月千百円ですね。率に直しますと大体四・五%くらいですね。七十歳以上の夫婦が二人おって、一年間にもらう年金は六十万二千四百円になるわけですね、一カ月削られておるけれども。
 生活保護費は六・二%上がっておるのに年金は四・五%しか上げないというのは、これは物価スライドだからこうなるのですか、その点はどうなんですか。
#164
○山口(新)政府委員 生活保護基準につきましては、従来から政府経済見通しの中の個人消費支出の伸び率を基準にいたしまして大体改定を行っておるわけでございますが、年金の方は、福祉年金の場合五十七年度は拠出年金に大体相応するということを考えまして、物価スライド相当分を引き上げるということで千百円のアップということになったわけでございます。
#165
○川本委員 私はこういう形のものを続けていくと、年金だけを生活の中心にしておる老人夫婦の家庭というものは、ますます生活が苦しくなっていくと思うわけです。
 老後の生活は何によって維持しますか、あなたは老後何を中心に生活をしたいと思いますかという世論調査の質問に対して、五二%以上の人が年金を頼りにしているというアンケート調査の結果が出ておることは御承知のとおりです。国民の半数以上の人が年金を頼りにしておる今日の社会です。その中で、仮に福祉年金であれば二人で六十万二千四百円しかない。生活保護を受けている方の半分もない。こんなものじゃ、憲法で保障する健康で文化的な生活を維持するということはできないですよね。生活保護費が憲法で保障する人間としての健康で文化的な生活をする最低限だとすれば、やはり年金についてもそれと同等額を保障するような形のものが、何らかの形で保障されなければいけないと思うわけです。ちなみに所得税について見ますと、七十歳以上の夫婦二人世帯では所得税の課税最低限は百三十二万円です。それとの乖離も非常に大きい。
 そういう面において、いままでの制度の欠陥がこういう形であらわれてきて、生活保護、老齢福祉年金あるいは五年年金、十年年金というようなものを含め、障害年金も含めて、だんだんと乖離が大きくなっていくのじゃないかと私は憂える者です。そういう点のことを考えたならば、いままでのような考え方でいくのがいいとは私は思わないわけですが、その辺について厚生省はどう思いますか。
#166
○山口(新)政府委員 現在の段階では年金制度がまだ未成熟でございますので、いまおっしゃいましたようなもろもろの問題が派生していると思います。これはおっしゃるとおりでございます。
 しかしながら、年金の場合には、一定の要件を持っていらっしゃる方には一律のものを差し上げるという仕組みでございまして、生活保護のようにあらゆる資産調査をいたしまして、なおかつ収人との対比で足りない分を差し上げるという仕組みとは、根本的に違っているわけでございます。そういう意味で、現在の年金の体系のもとではやむを得ない事情もあるということではないかと思います。
#167
○川本委員 それでは、話をさらに一歩進めたいと思うのです。
 いまのあの中国残留孤児の引き揚げ者の問題です。もう三十七年たっておって、四歳、五歳という方が多かったわけですから、仮に今後肉親が見つかって日本人として帰ってきても、大体四十歳を過ぎている人が多い。数はいまではわずかですけれども、将来まだまだふえていく。ところがこれは、三十五歳以降二十五年間掛けなければ国民年金はもらえないわけですね。厚生年金だったら二十年間でいいということになるわけですが、この人たちはほうっておけば無年金者になってしまうおそれがある。しかし先ほどお話しのように、これは戦争犠牲者ですよね。この戦争犠牲者が、いままで好きで中国におったわけじゃないわけです。日本の国や親から捨てられて中国で育ったわけです。その人たちが帰ってきた場合に、今度は年がいっても年金がもらえない、無年金者になる、これじゃおかしいと思うわけです。
 さきに沖繩が祖国復帰をした。あのときに、沖繩の人たちにはどのような措置をとりましたか。
#168
○山口(新)政府委員 沖繩につきましては、復帰前の昭和四十二年であったかと思いますが、将来いずれは復帰するであろうということを予測いたしまして、私どもも参画いたしましたけれども、厚生年金、国民年金に相当する制度をつくったわけでございます。そのときにこちらの制度とそごをしないような仕組みでつくっております。したがいまして、四十七年の復帰の際には一それを結びつければ事が済むということでございまして、特に特別な措置をしないでもスムーズに吸収できたという事情でございます。
#169
○川本委員 そのほかにも先ほど来お話しのような在外邦人ですね。民間人が外国へ行ってお仕事をしておって、そこで永住して移民したんじゃなしに、また老後になると日本へ帰ってくる、こういう日本人の方もこれからだんだんふえると思うのです。外国におる間は国民年金も厚生年金も掛けない、そして帰ってきたら今度は老後は年金がもらえない。これは住所要件がそういうことになるわけですけれども、いろいろ問題があると思うのです。
 まず、中国残留孤児が引き揚げて帰ってきた場合に、無年金者にしないためには、特別の戦争犠牲者として扱って一定期間を免除するといいますか、そういう形で法定免除をしてでもこの人たちが無年金者にならないような措置を講ずべきではないかと思うのですが、その点はどう思いますか。
#170
○山口(新)政府委員 戦後処理の問題としてどう考えるかという観点は別にあろうかと思いますが、年金制度の立場から申し上げますと、やはり社会保障の一般的な制度でございますから、特定の要因があるから特別扱いをするということはなかなかむずかしい事情になろうかと思います。
 ただ、先ほども御議論がございましたけれども、現在の国民年金をつくりました当時は三十年代の前半でございますが、一応その段階で中高年の方に対しましては資格期間の短縮をするという特例を設けまして措置をしたわけでございますが、中途で中高年で入る方につきましては、現在の法律の十条であったかと思いますが任意脱退という道をつくりまして、これで対応するという整理をしたわけでございます。
 しかしながら、その後現在に至りますまでの社会情勢の変化を見ますと、いまいろいろ例に挙げられました事例もありますし、さらに海外交流も活発になっておりますから、そういう意味ではまた新しい情勢を前提にしてこの問題を見直してみる必要があるんじゃないかというふうに私どもも考えております。
#171
○川本委員 そこで、在日外国人、特に韓国の方とか朝鮮出身の方が多いわけです。戦前から国策上日本へ連れてこられて戦後そのまま日本に永住をしておる、こういう方がたくさんおられる。こういう方々に対しても国籍要件をなくして国民年金にも入れるようにした。厚生年金はいままで入れたわけですよね。ところが現実には、そういう戦前からおられた方あるいは戦後間もなく生まれられた方、そして今日の日本の発展、繁栄のために今日まで私ども日本人と同じように苦労してこられたそういう在日韓国人や朝鮮の方々、外国の方々がようやくことしの一月から国民年金の加入も認められたわけだけれども、三十五歳以上の人は同じように無年金者になる可能性がある。
 先ほど来の中国残留孤児の問題や、あるいは国際交流で外国へ出かけていく日本人、これもサケは三年たてば母川へ帰ってきますけれども、人間もやはり年老いたらまた祖国へ帰ってくるというのが人情だと私は思うのです。その場合、日本人ですからほうり出すわけにはいかないのですから、やはり何とか考えなければいけない。そしていま申し上げた在日外国人の問題があります。
 こういう方々に対してそういう無年金者にならないような措置を設けるためには、先ほど局長さんから何とか検討したいというようなお話がありましたけれども、大臣、これはやはり早急に何とか結論を出していただきたいと私は思うのですが、ひとつお願いできますか。
#172
○森下国務大臣 国民皆年金という考え方でやっておりますし、特例的にそういう方々を救い上げると申しますか、皆年金に参加していただくための特例的な措置を考えてみたい、早急に検討したい、このように思っております。
#173
○川本委員 明快な大臣の御答弁をいただきましたので、ぜひ早急に結論を出していただきたいと思うわけです。
 そこで小さな問題になるわけですが、実は通算老齢年金というのがありますね。これは現在年二回払いですね。何月と何月に二回払いですか。
#174
○小林(功)政府委員 御指摘のとおり年二回でございまして、六月と十二月に支払いを実施しております。
#175
○川本委員 私は、年金というものだから、年に一回払っても二回払っても年金だと思っておったら大間違い。そのお金で生活をしておる国民の立場に立てば、本当から言えば毎月払ってやるのが一番いいのだけれども、それは事務能力でなかなかできない。現在のところでは、ほかの厚生年金や共済年金等見ましても、コンピューターも発達してきておるのですから、少なくとも年四回払い、三カ月に一回の払いということはやろうという気になって努力をすればできるのではないかと思うのですが、これも受給者の立場に立って年四回払いぐらいを早急に実現することはできませんでしょうか。
#176
○小林(功)政府委員 ただいまの社会保険庁の業務体制でございますけれども、御承知のように受給者が一千百万人、毎年百万人ぐらいずつふえる状況でございます。したがって現在の年金の支払いで手いっぱいというのが正直なところなんですけれども、ただほかの年金が年四回払っておりますし、それから受給者の方の御要望も非常に強いということも考えまして、近い将来年四回払いにするように努力をするつもりでいま準備を始めかけたところでございます。
#177
○川本委員 近い将来というのは時期的には明確でないと思うのです。これはみんなが思っておるのは、近い将来といったら五十八年度からでもできるか、こう思うと思うのですが、その辺はどうですか。
#178
○小林(功)政府委員 まだ十分詰め切っておりませんのではっきりは申し上げられませんが、できれば次の年金の改正に一緒に盛り込むことができたらということでいま考えておるところでございます。
#179
○川本委員 それだったらまだ大分先の話ですね。六十年になるのですか。
#180
○山口(新)政府委員 私は六十年よりは前にしたいというふうに考えております。
#181
○川本委員 できるだけ早く実現できるように御努力をいただきたいと思うのであります。
 次に、厚生年金の還元融資の問題についてお聞きしたいと思うのですが、四国の徳島に大鵬薬品という会社があるのですよ。これは大臣の御出身地ですから、御承知のとおりです。
    〔大石委員長代理退席、委員長着席〕
 この前、昨年十月に、抗炎剤の薬でダニロンという薬を発売して厚生省の薬務局が認可をした、ところがその中に発がん性のあるもののデータを隠しておったということが内部から告発され、それでこのダニロンは発売中止をしたという経過のある会社ですが、この大塚グループの大鵬薬品という会社ですが、ここにちょっと写真を持ってきたのです。これは社内報ですが、社内報にこういう写真が出ておるのです。これは大鵬薬品が五十二年の四月十六日に年金福祉事業団の還元融資を受けて、総工費約三十三億円でつくった潮騒荘という福利厚生施設です。これは国立公園鳴門海峡に面した風光明媚なところですが、その写真を見ていただいたらわかりますように、横に社長邸がある。その写真にここは社長邸、ここは潮騒荘というふうにちゃんと書いてある。そしてこれを読みますと、これは会社の従業員が利用したくても利用できない。多くの場合はお医者さんとか大学の先生とか得意先の人たちの接待用の迎賓館として使われておるわけです。
 厚生年金の還元融資というのは、旅館やホテルのかわりに使うようなそういう迎賓館的なものにも貸すようになっておるのですか。
#182
○山口(新)政府委員 還元融資が昭和二十七年に復活しまして最初に融資対象に取り上げられたのが従業員の厚生施設ということでございまして、その中の従業員のための教養文化施設ということでございますので、その利用の主体はあくまでも従業員の福祉のためということでございます。
#183
○川本委員 こういうのを主客転倒と言うのですね。厚生年金の還元融資だから倒されずに返ってくるところへ貸した方がいいということでしておるのかどうかわかりませんけれども、先ほど来いわゆる厚生年金積立金のいろいろな運用についてもお話がございましたが、やはり少なくとも厚生年金の被保険者の厚生福利を中心にしたものに使うべきであって、そういう大企業が、あるいは中小企業であっても、その資金を利用して自分の金もうけのために使うというようなことになってはこれはおかしいのじゃないか。その辺についてひとつ十分お考えをいただきたいと思うわけです。
 そこで、先ほども申し上げましたけれども、実はこの大鵬薬品という会社は昨年ダニロンという抗炎剤の薬を発売したのですが、その中にがん発生物質があるというマウス実験のデータを隠して厚生省に認可の申請をして、厚生省はそれがわからずに、薬務局はこれを薬事審議会にかけて製造の許可を与えたわけです。後で内部告発が出てきて初めて会社がこれを認めて、みずからこの発売、製造を中止したといういきさつがあるわけです。
 ところで、その後厚生省薬務局は、昨年末かことしの初めに大鵬薬品にこのダニロンの製造許可に関して何かの指示をいたしましたか、薬務局長。
#184
○持永政府委員 先生御指摘の大鵬薬品のダニロンについてはお話しのような経過がございまして、私ども、薬事審議会に提出されていないデータを専門家に調べてもらい、さらに中央薬事審議会の意見も聞きまして、この大鵬薬品のダニロンについて当該会社側に具体的に指示をいたしております。
 それで、これはことしの一月十四日でございますが、最初は、こういったことで評価の対象になり得るような試料を申請に際して出していないということは大変遺憾であるし、このことによって社会問題を惹起したことはまことに遺憾であるというようなことから、こういった事態を招いたことについての会社側における責任の所在の明確化、それから今後試験データの管理の適正が図られるよう管理体制の改善を行う、なおこれらについては厚生省の方に報告してもらいたいというのが第一点でございます。
 それから第二点は、ダニロン錠の発がん性に関してはいろいろと問題があるわけでございますから、さらに発がん性に関する追加試験を行うことによって新たな試料を収集して最終的に結論を得ることが必要だというようなことでございまして、具体的に追加試験の指示をいたしております。
 第三番には、ダニロン錠についてはこういった経過でございますので、このような試料が完備いたしまして、この件についての最終結論が出されるまでの間は引き続き製造と販売の中止を継続されたいというような指示をいたしております。
#185
○川本委員 私は、このダニロンの問題はわれわれ国民に対しても一つの警告を与えたわけですし、薬務行政のあり方についても一つの大きな問題点を提起しておると思うわけです。薬事審議会というところは会社が提供したデータを信用して審査をしておるわけですか、それともそのデータは信用できないと思って審査しておるわけですか。どうですか。
#186
○持永政府委員 薬事審議会におきます医薬品の審査につきましては、世界各国ともそういう形でございますけれども、メーカー側の出されましたデータを中心にいたしまして有効性、安全性についての審査を行っているというのが実態でございます。
#187
○川本委員 今日までのわが国の薬務行政の中で私ども国民の立場から納得のできないことは、発がん性物質とかそういうものが含まれている薬品の製造、販売の禁止等の措置については常に後手後手に回ってきておるわけですよ。それを厚生省自身が事前に発見して製造中止を命じたというような事例がいままであるのかないのか私は不勉強でわかりませんけれども、少なくともこの大鵬薬品のダニロンという薬から見ますと、まず薬事審議会をごまかし、厚生省をごまかそうという意図をもって一部のデータを隠したということは間違いないと思うのですが、どうですか。
#188
○持永政府委員 大鵬薬品の会社側の言い分といたしましてはいろいろあるかと思いますが、薬事審議会においてこの件について調査をいたしましたところ、はっきりとした発がん性があるとは言いがたいけれども、もう少し追加試験をやってさらに検討をする必要があるだろうということでございまして、そういう趣旨と、それからこの問題について国会などでも御議論がございまして大変大きな社会問題になったというようなことを踏まえまして、私どもとしては追加試験を指示した、こういうような経緯でございます。
#189
○川本委員 そこで、先ほどの厚生省の大鵬薬品に対する指示に関連してですが、一月十四日に三点から成る指示をされた。ところが、それを受けて大鵬薬品は一月の二十三日に技術本部あるいは研究管理部ですか、それらの人に対して、厚生省から責任の所在の明確化と管理体制の改善を指示されたということで一斉に全員一級降職という措置が講じられたわけです。さらにその上に立って、いままで研究管理室には二十三人の人が配置されてあったわけですけれども、それを今度は十五名に減らしたわけです。研究管理体制の改善を指示して、改善を指示された方が、二十三人の体制でやってきたのを改善するために二十四人にでもふやしたというのならまだ話はわかりますよ、逆にこれを十五人に減らして、特にその中でダニロンの研究で今日まで中心的な役割りを果たしてきたけれども労働組合の役員をしておるという人は全部ほかへ配転して、降職をしてしまったわけです。
 これは厚生省の指示という美名に隠れて、いま製造中止をしておるけれどもダニロンを何とかして世に出したい、そのためにはもう一度薬事審議会と厚生省をだまさなければいかぬ、だます秘密の研究室をつくり上げるためにはそういうことをあえてしなければならぬ、こういうことが心の奥にあってここの今度の人事は行われたと私は思うわけです。そんな秘密裏にデータをつくって、管理体制を弱体化して、指示に反するようなことをして、出てきたデータを信用しますか。これは前科一犯ですよ。前科一犯の会社がもう一度同じことを繰り返した場合に、僕はこんなものはもうどたまから許可できない、認可できないと言うてあたりまえだと思うのですが、厚生省はそれはできないのですか。
#190
○持永政府委員 このダニロンにつきまして、大鵬薬品の側からは私どもの方に、管理体制、試験研究体制の強化について、私どもの方で実は三月三十一日で医薬品の安全性試験の実施に関する基準、いわゆるGLPを実施いたしておりますけれども、このGLPにのっとってこれからの試験管理体制を確立していきますというような返答をいただいておりますが、そういった意味で、そのGLPにのっとった管理体制のために会社の方でいろいろと機構改革もやったというように聞いております。
 しかし、会社は現在ダニロンの追加試験を行っておりますので、そのデータに基づいて改めての申請があることは先生御指摘のとおり予想されるわけでございますが、このダニロンについては、おっしゃったように過去にこういった経緯がございます。そういった経緯を私どもとしては十分踏まえましてこの問題の審査をやっていかなければならぬと思っておりますが、医薬品というのは、御案内のとおり、有効性と安全性という面に着目いたしましてあくまで科学的な立場、専門的な立場から審査をするものでございます。したがいまして、この会社につきまして十分その安全対策について今後とも指導いたしますとともに、仮にそういった申請が出てきました場合には、そういった専門的、科学的な面からの有効性、安全性について十分慎重なチェックをして安全対策に努力してまいりたいというふうに考えております。
#191
○川本委員 ここに私持っておりますのが大鵬薬品の技術本部の研究体制ですけれども、この中で研究部の安全性試験担当研究員が課長待遇でおられて、その下にいままでは二十三人おられた。二十三人の体制でやってきた。それを今度の新しい体制では、安全性研究室の室長は同じ方がやっておるわけですが、一階級降職されておる。全部降職されておる。そこでわずか十五名にその陣容を少なくしてしまった。その中で労働組合の組合員とか役員は全部ほかへ移してしまったわけです。
 これは言いかえれば今度のダニロンの新しい研究にもしがん発生物質がまじっておるような危険なデータがあっても、それを隠そうと思ったら労働組合員は排除しなければぐあいが悪い、こういう発想であることは私は間違いないと思う。閉ざされた秘密の部屋でそういう作業をしなければならぬようなそんな薬品は国民は――それを飲まされる方は国民ですからね。厚生省が指示をして安全管理体制を強化せいと言った。その指示を逆手にとって、強化せいと言われましたからこのように全員配転をいたします。このような配転を強行してくるということは、一つは労働組合をつぶそうという意図を持っておると私は思うわけです。
 もう一つは、ダニロンが少々薬事審でひっかかるようなものであっても、一度開発した薬でいままで投資した金がたくさんあるからそれを回収するためには少々無理をしてでも何とかして製造販売の許可をとりたい、これが本心だと思うわけです。
 しかし、そのようなことを許すような体制であってはいけないと思うわけです。少なくとも労働組合というものは合法的なものであり、その方々が国民の健康を守る立場から学者の良心にかけて自分のつくったデータが薬事審に出された書類の中から除外されておったということがわかって、これは大変なことが起こる、こう思って内部告発に踏み切った。この人たちを今度は降格をして配転をした。こんなことを厚生省の薬務局が許すようなことがあれば、私は、今後薬務局や薬事審議会、厚生省の薬事行政を国民が信頼しなくなってしまうと思うわけです。何とかして、その指示に基づいてやったという今度の労働組合つぶしとダニロンをもう一度世に出そう、この二つの戦略をあわせ持ったこのようなやり方を厚生省で指導をして、正しいもとのあるべき姿に戻してもらわなければ国民としては納得できないと私は思うわけです。
 大臣、地元ですから、最後に一言決意のほどを。
#192
○森下国務大臣 大塚グループのつくりました潮騒荘、年金事業団の融資でりっぱな施設をつくっておることも存じております。鳴門の淡路に橋のかかる近くでございますが、まだ招待を受けておりませんので残念ながら中に入っておりません。
 それと、ダニロンが問題になりまして、その後徳島に帰ったときに実は労働組合の方とお会いをいたしました。ちょうど一月二十一日でございまして、前田委員長、これは自治労の徳島の委員長でございます。この前田さんほか三名の方とお会いいたしました。もちろん新聞記者の方も入っております。
 大体四項目ですね。第一項目は、そういう疑いのある薬は絶対に厚生省で認可しないように。いまおっしゃったようなことで、そのとおりでありますということ。それから二、三の問題はちょっと私も内容を忘れましたが、これは検討課題でありました。最後の問題は、そういうことがあって、少数の組合員でございますが、組合員を弾圧したり不利益にならぬように御配慮してくれというようなお話も実はございました。これはもちろん厚生省だけの問題でもございません、労働省にかかわる問題でもございますし、その点については不利益にならないようにいたしますというような話でその場は終わったわけであります。用事があればまた私の方へ何でも言うてくださいということを私もちょっとつけ加えて申し上げたように、もう大分日にちもたちますし私は定かに覚えておりませんけれども、そういうことを申し上げるような雰囲気で話をしたわけでございます。
 その後余り話もなかったものですから、私も何とかうまいこといっているのじゃないだろうかという気持ちは持っておったわけです。いまいろいろお話を聞きまして、ダニロンの問題について再度研究をし直して申請するのかどうかという問題、それと組合員であるがためにかなり不利益を受けておるのかどうかという問題について、実はいま聞いたわけでございます。
 そういうことで、大塚というグループの会社は当初は非常に苦労して人材を集めて、しかも社長みずから菜っぱ服を着てということで非常に有望な会社であるし、地元産業としてはもうかなり期待すべきだと思っておったわけでございますけれども、大きくなるといろいろ問題が出てくるわけでございまして、その点非常に残念でございます。そういうことで、地元のことでございますから厚生大臣という立場で余り深く立ち入ってどうこうということはできにくいわけでございますけれども、せっかく国会でこういうふうに御審議をいただいておるわけでございますから、地元なるがゆえに、またほかの方でできないこともできる立場でもございますので、よく御趣旨を体しまして組合員の方々にもそう不利益が起こらないようによく会社にもいろいろとお話をしたい、このように思っております。
#193
○川本委員 ちょっと最後に一つ、要望だけ。
 大臣から大変御懇篤な御回答をいただきましてありがとうございました。いまおっしゃったように地元の関係ですから、厚生大臣と製薬会社という立場だけじゃなしに、地元の人間関係もあろうと思いますから、先ほど来指摘したようなことが原状に、もとの姿に復されない限り、ダニロンというような薬、こんなのは不安で許可できないと思うわけです。その辺について篤と措置いただきますようにお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
#194
○唐沢委員長 次に、金子みつ君。
#195
○金子(み)委員 年金の問題につきましてはけさほど来大ぜいの委員の方々からいろいろと御質問があったわけでございますし、それにいま始まった問題ではなくて、もういままでずいぶんいろいろと意見も出ておりますし、多くの方々が意見を出しておられるところです。いまさら改めて申し上げるまでもないわけですけれども、急速にしかも確実に高齢化社会がやってくるということがまず前提になります。これに伴う高齢者の総合的な生活保障の問題というのは、今日ではもう大変に緊急な社会問題になっているということも事実だと思うのです。そこで社会的な扶養制度の有力な一つと考えられている社会保障、これを実現する公的年金制度の役割りが大変に重視されるようになってきているのも事実でございます。
 その理由としていろいろなことが考えられますが、昭和三十年代の高度経済成長政策の導入、その結果と言えるかどうかわかりませんが、言ってもいいかと思いますのは、急激な核家族化の問題がございます。さらにまた事実上の家族扶養制度がだんだんと崩壊してきていることもありますし、あるいは親類縁者などによって扶養してもらうというそのあり方も大変形が変わってきているということもあります。また核家族そのものが高齢者世帯になっているという問題もございまして、そういうものが原因になっているだろうと考えられますし、それだけでなくまた別の角度から見れば、従来日本の労使関係を支えてきていた生涯雇用の慣行、こういう問題あるいは年功序列的な関係、これも少しずつずれてと申しますか、変わってきているというふうに見ることができると思うのです。それですから、退職後の高齢勤労者層の老後生活保障として公的年金制度は大変に重要だということを改めてまたここで考えなければならなくなっていると思うのです。
 このように今日高齢者の生活保障に重要な役割りを期待されている公的年金制度です。ところが、けさほど来あるいはそれ以前にも幾つか出ておりますように、たとえば無年金者の問題もございます。ですからそういった無年金者をなくす、あるいは国民皆年金を完全に実施する、あるいはいろいろな歴史的経緯があるとは申しましても、今日の公的年金制度は八種類に分かれているというような各種公的年金間の財政調整の問題、その他各般の改革が求められていることは事実だと思うわけです。
 そこで、まずお尋ねしたいと思いますことは、今後の年金体系のあり方についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、聞かしていただきたい。これは五十四年十月に社会保障制度審議会から答申が出されております。いまここで答申を読み上げるまでもないと思いますので読みませんけれども、この答申に基づいてどのようにお考えになっておられるか、まずこれは大臣から政策としてお考えを聞かせていただきたいと思います。
#196
○森下国務大臣 いま国民が一番心配しておるのは自分の寿命が幾らまで延びるか、また自分の老後の生活はどうなるか、これは未来に対する非常に強い関心事でございまして、まさに年金問題は国民一人一人の幸せにつながる問題でございます。
 そこで、五十四年十月に制度審の基本年金構想が出されましたが、これにつきましては今後の年金体系のあり方について各制度一元化することが究極的には望ましい方向である、そういうことが骨子として出されておるわけでございます。その中の基本年金構想も検討に値する一つの提言である、そういうふうに実は考えております。
 いまたくさんの年金がばらばらに機能いたしまして、平等であるべく、また給付と負担のバランスがとれてなければいけないのがそうでないということは、今後非常に検討を要するもう迫られた課題でございますので、各公的年金制度はそれぞれ目的とか沿革とか財政状況が異なっておりますけれども、先ほど申しましたように一元化をしていきたい。しかしそれまでに検討すべき問題点も多い。
 そういうことで、先ほどもお答えしたのですが、各省庁に絡んでおる問題でございますし、各省庁とも十分制度間の不均衡の是正を進めまして、制度全般の均衡ある発展を図っていきたい。そういうことでこれはできるだけ早く、先ほども局長が申しましたが六十年よりももっと早く、そういう基本的な問題について検討したい、実は私もそのように考えておる問題でございます。
#197
○金子(み)委員 私も先ほどの局長の御答弁を伺っていたのですけれども、財政再建が成立すると申しますか一応めどにしている五十九年が終わって六十年ですね、その六十年までに検討したいと局長はおっしゃっていましたね。六十年までに検討したいという意味は、それまでに手がけるという意味なんですか、それともどういう意味なのか、先ほどの御答弁で私意味がよくとれなかったのです。どういうことだったんでしょうか。
#198
○山口(新)政府委員 私どもの方は財政再建期間と余り関連して考えておりません。御案内のように、二十九年以来、少なくとも五年ごとに再計算をするということでやっておりまして、当初は五年ごとにやっておりましたけれども、最近は四年ないし三年で見直しをやっております。その再計算のときに大改正をやっておりますが、できれば六十年より前に、具体案を御提案を申し上げたいということでございます。
#199
○金子(み)委員 この問題ばかりに時間をとっておられませんが、具体案を提案したいということは、厚生省の段階で考えられた具体案、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
#200
○山口(新)政府委員 私どもで所管しておりますのが厚生年金、国民年金、船員保険でございます。いまのわが国の公的年金の九割を占めております。その九割を担当しております厚生省で何らかの考え方を出さない限りは、この問題の進展はないというふうに私は考えております。私どもが考えました案につきまして、ほかの共済組合を所管しておられます省庁も直ちに合意されるということであれば、一挙にということも可能かもしれませんが、それはやはり相手のあることでございまして、私どもの一存では決まらない問題であろうかというふうに思いますが、少なくとも厚生省所管のものにつきましては、次の改正の際に、基本的な問題を含めて改正をいたしたいという腹づもりでございます。
#201
○金子(み)委員 せっかく努力していただきたいと思います。よその省庁がそれにならうような勢いで厚生省が先達になっていただければ幸いだと思いますから、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 その次に、年金財政の問題でひとつお尋ねしたいことがございます。
 厚生省がまとめられた資料を拝見しているのですけれども、厚生年金と国民年金の昭和五十五年財政再計算というのがありますね。その再計算によりますと、年金額の水準をいまのままにして、標準報酬の上昇率を中ぐらいの七%とした場合、厚生年金財政が黒字でいられるのは昭和七十三年ごろまでで、その後は赤字になってしまう。そこで、赤字にしては困るので、赤字にさせないためには、その後は頻繁に保険料率を上げていかなくてはならない。そこでそのように操作していきますと、八十二年には積立金の取り崩しが終わって、やがて男子で三四%以上にしなくてはならないことになる、こういうふうに言っておられますね。三四%の保険料率に、さらに医療保険だとか租税があると思いますが、そういうものの負担が加わっていきますから、大変なことになるだろうということが察しられるわけです。どこまでみんなが耐えられるのかというのは大きな問題だと思うのです。
 国民年金の場合も同様で、この計算に基づきますと、昭和九十年に保険料は月額一万五千七百円というふうに推定される。しかし、この数字は五十五年度価格ですから、それにスライド分を入れましたら、もっともっと大きなものになるのではないかと思います。
 そこで、お尋ねしたいと思いますのは、そんなことになると予想されているわけなので、重要な問題だと思いますが、年金財政の将来、それから給付水準あるいは支給開始年齢と保険料の負担の限度ということについて、どのような方針をこれからお持ちになっていらっしゃるか、それをぜひ聞かせていただきたい。大変心配な問題ですから、ぜひお願いしたいと思います。
#202
○山口(新)政府委員 ただいま先生から御指摘のありました問題は、いずれもこれからの年金制度の改革をする場合にポイントになる問題でございます。厚生年金保険部会でも、現在各項目ごとに検討していただいておりますけれども、要は、給付水準と負担とのバランスをどうするか、つまり、現役の方の賃金による生活水準と、OBの方の年金による生活水準とのバランスをどうとるかというのがまず一つございます。そこのところがまずまずの常識的な線におさまれば、負担の方もおのずから常識的なラインになるのではないか。と申しますのは、日本にとりましては、二十年後の鏡が現在西欧にあるわけでございます。すでに成熟段階に達しております西欧では、それなりの公的な年金が機能いたしておるわけでございますが、その姿が一つの判断材料にはなるわけでございます。そういうものとの比較等も考えまして、いまの給付と負担のバランスというものは当然考えられると思います。
 それからまた、現在の仕組みの中には一面で不十分な点がありますけれども、一面では給付が重複して行われるというような要素もあるわけでございます。こういうものも合理化をいたしますれば、負担の面ではある程度の緩和が図れるという要素もございます。
 それから支給開始年齢の問題でございますが、これは先ほどもお答えを申し上げたのでございますけれども、基本的には、現役は賃金で生活をする、それがだめになった段階で年金で生活の中心を支えるということであろうかと思います。そういう意味で、あくまでも高齢者の雇用の問題を先に対策を考えていただきまして、それとのつながりで開始年齢も検討していく。単純に何歳にするかということだけではありませんで、年金の出し方によりましては、またそれなりの効果を得られる面もあろうかと思います。この問題は、そういうようないろいろな手法も加味して考えてみる必要があるということを、いまいろいろ工夫している最中でございます。
#203
○金子(み)委員 非常に複雑ですし、検討されておられることもよくわかるわけですけれども、いまのお考えと、先ほどお話のありました年金の抜本的な見直しの考えと、どういうふうにマッチさせていったらいいでしょうか。
#204
○山口(新)政府委員 一つの考え方としましては制度審の構想などもあるわけでございますけれども、私どもが現実に考える場合には、現行制度とのつながりをどう考えるか、つまり、新しいことを考えるにいたしましても、現行制度からどういうふうに円滑に移行できるかという問題が一つございます。
 それからもう一つ重要な問題といたしまして、財源の問題がございます。制度審の基本構想の場合には、新税を導入するというようなことで片づけておられるのですが、私どもが考える場合には、その負担の問題につきましても、つまり財源の問題につきましても、具体的な手法がありませんと絵にかいたもちになってしまうわけでございますから、そういう意味で、現在の制度と段差ができて新しいものが考えられるということではございませんので、現在の制度がそれぞれ円滑に移行できるという要素を考えざるを得ませんから、そういう意味では、給付の問題にいたしましても負担の問題にいたしましても、結果は、現在の制度を考えているのと同じ問題に帰着するというふうに考えております。
#205
○金子(み)委員 それはわかったんですけれども、もう一つ関連で聞かしてください。
 そのことと、先ほど六十年までの間に新しい考え方を進めていこうとしているというお話がありましたね。それとの関連はどうなるのですか。それはうまくいかない、という言葉もおかしいですけれども、よって立っている根拠が違いますね。ですから、うまくいかないのじゃないかという気がするのですけれども、片方を進めていくと片方の方が――いまのお話ですと、私がお尋ねしたことについては、いまの決め方を現行制度に基づいて考えていらっしゃるわけでしょう。そうじゃないですか。
#206
○山口(新)政府委員 新しい考え方と申しましても、現行制度の延長に当然なるわけでございます。つまりつながる。何といいますか……(金子(み)委員「切りかえるのじゃないですね」と呼ぶ)そうですね。いま仮に厚生年金と国民年金と二つありまして、新しいのが一つになるとしましても厚生年金なり国民年金なりを引き継いでいるわけでございますから、そういう意味では水準から負担から全部つながる問題であろうということを申し上げたわけでございます。
#207
○金子(み)委員 十分わかったつもりはないので大変残念なんですけれども、もう少し時間をかけて話をさせていただきたいのですが、この問題については検討を進めておられるということでありますから、それはそれとしてぜひ進めていっていただきたいことを要請していまの時点では終わらせておいて、またにさせていただきたいと思います。
 次にお尋ねしたいことは年金の給付額の物価スライドの問題なんですが、先ほどたしか平石委員の御質問でもあったというふうに、私はちょっと席を外しておりましたが、御質問があったように伺っているのですが、その関係なんですけれども、去年、五十六年の一月十六日ですか、社会保険審議会が答申を出しているのですね。「今回諮問のスライド実施時期については、当面の措置としてこれを予承するが、実施時期を四月にすることについてさらに検討を進めるべきである。」というふうに答申をされているわけです。
 私もそのとおりだと思いますし、去年行政改革の一環としてこのスライドの時期が大分揺れ動きましたね。がたがた揺れ動きましたが、結局は、たとえば国家公務員の一般職の給与は四月に戻りましたし、それから厚生年金は六月の分が七月、それから国民年金は七月の分が八月というふうに一カ月おくれになってしまったという結果になったわけですね。この点についてなんですけれども、言ってみれば財政再建計画というのが強く大きく打ち出されてきて、そしてこういう結果になったというふうに私どもは承知しているわけなんですけれども、そうだといたしますと大変残念な問題で、こういうふうにされるということは、たとえ一カ月といっても年金を非常に待ち望んで生活している人たちがいるわけですから、その人たちにとってみれば大変大きな痛手だったに違いないと思うわけです。言葉をかえて言えば、厚生省がいつもいつもおっしゃっている社会福祉行政を進めていくということのたてまえと逆行して、福祉の後退だと言わなきゃならない。大変残念だと思いますし、この問題は一日も早く解決してもらいたいと思うのですが、しかしこれが昨年決まった段階ではこういうことになってしまったのですが、これこそ財政再建絡みの問題なんですけれども、三年たったらもとへ戻すというふうに確認してよろしいことなんでしょうか。
#208
○山口(新)政府委員 ただいま先生からお話がありましたように、昨年の一月十六日付で社会保険審議会から基本的には四月にするようにさらに検討を進めるべきだという御意見をいただいております。それで、この問題はスライドの時期だけではありませんで、指標をどうするかあるいはその基準をどうするかというような基本的なものも、ございます。この問題も次の大改正のときの一つの大きな宿題でございます。
 ことしはとりあえずは現行の方式のもとで行ったわけでございますが、法的には五%を切りますとスライドの義務がないわけでございますけれども、特例的に実施をしようということで、先ほど大臣からもお答え申し上げましたけれども、ゼロシーリング下の概算要求の時点では法定どおりということで、厚生年金で申し上げますと十一月実施ということで要求をしておったわけでございますが、それを暮れの予算のときにほかの年金とのバランス上おかしいじゃないかというようなことで今回御提案をしております線まで何とかこぎつけたという事情がございますので、何とか御理解をお願いしたいということでございます。
#209
○金子(み)委員 いや、理解しないわけにはいかないから一応理解はしているのですけれども、返す返すも残念であるということなんですよね。厚生省の看板が少しゆがんだなというふうに考えられてしまいますので、何ごとも財政が優先していくということは、福祉行政を進める上では厚生大臣としては大変やりにくいとお考えになっていらっしゃるんだろうと、私なんかはどっちかといえばお察しをしている方です。
 次の問題に移ります。
 年金の種類もいろいろございますけれども、その中で無拠出制の福祉年金というのがございますね。福祉年金は公的年金の中でも大変意義の深い年金制度だと私はかねがね考えておりました。保険料を掛けてそれが返ってくるという形が保険制度には違いないとは思うのですけれども、それのできない人たちのためのことを考える、それが厚生省の福祉行政だと思いますから、そういうたてまえからいけば私はこの福祉年金というのは大変に意義が深いというふうに考えているわけです。ところが、この福祉年金の水準が一定の法則性によっていないということは大変不安定だと思うのですね。そうでなくてもこの福祉年金の受給者たちはこれに頼り切っているわけなんですから、そういうことは大変に私は不都合なんじゃないかなというふうに考えているわけです。
 見せていただきました資料で申しますと、拠出制年金のスライドのアップ率と福祉年金の引き上げ率のバランスと申しますかその関係が、大変に不安定で一定していない。たとえば過去五年間振り返ってみますと、五十二年には物価スライドの方は九・四%だったのを福祉年金は一一%に上げてある、高くなっています。五十三年は六・七に対して一〇%。五十四年なんかは三・四%に対して二一%とずいぶん高く引き上げられているわけなんです。五十五年はスライドの方の金額が入っておりませんが、五十五年のスライドは何%だったでしたか、これは別といたしまして、五十六年はスライドの方は七%なのに年金の方は六・七と下がってしまったわけですね。
 こういうふうに上がったり下がったり非常に不安定なんで、私はこの点大変気になるのですけれども、これは何か一定の法則性のようなものと申しますかルールと申しますか基準と申しますか、そういったものが必要なんじゃないかと思うのですけれども、どうなんでしょう。私はそういうものが必要だと考えるわけなんですが、いままではそうしていらしてないという実績はあったんでしょうけれども、私は今後もし続けるんだったらルール化する必要があると思いますけれども、その辺はいかがでしょう。
#210
○山口(新)政府委員 御指摘のとおり、当初からの福祉年金の金額の推移を見ておりますと、その時代時代によりまして非常にまちまちでございます。ただ、現在の段階になりますと、福祉年金も経過的年金の一種でございますが、拠出制の方の十年年金、五年年金は本来の年金とのバランスで年金額が決まっておりますけれども、それとの関連で考えますと、五年年金と三百円差ということでほぼ肩を並べるところまで来ております。
 そういう意味で、今回も拠出制の方が物価スライドをする、それに相応する分を引き上げるという考え方をとったわけでございまして、無拠出の年金の方が拠出の年金よりも上回るということはいかがかと思いますので、そこら辺のところのバランスは、今後はある程度拠出年金の動きにそれなりに連携をとらざるを得ないということになるんじゃないかと考えられるわけでございます。
#211
○金子(み)委員 そうすると、いまのお考えでいきますと、いま過去五年間を見たわけですけれども、過去五年間はいまのお考えと逆になっていますね。そうすると、逆になっているのはまずいから、やはり無拠出の方は拠出制の分よりも高くなるのはよくないということでこれから下がっていくんじゃないかというふうに聞こえたわけです。五十六年のときには下がっているんです、確かに。七%と六・七%ですから、わずかですけれども低いですね。このスタイルがいい、だからこれからもやはりどれくらいの差ができるか、差がつくれるかは別として、とにかく拠出制の分よりも無拠出制の福祉年金の方は低く抑えるべきだ、こういう方針だというふうに理解していいんでしょうか。
#212
○山口(新)政府委員 低くということではございませんで、物価スライド相当ということでございまして、五十六年度の場合にはたまたま予算を組みました段階でほぼ七%組んだわけでございますけれども、拠出の方は実績が七・八%になっております。五十七年度を見ますと予算はそれぞれ四・五%相当で組んでおりますけれども、実績が拠出の方がもし四・五を下回りますと、福祉年金の方がやや高くなるというような、結果として若干の誤差は出るかと思いますけれども、物の考え方といたしましては、物価スライドに相応する程度の引き上げということではないかということでございます。
#213
○金子(み)委員 物価スライドと相当する分をという考えですね。その考え方は、私はわからないわけではございません。
 ただ、そうすると、その年によって動きがありますから、相当するものとして予算を用意しても、ひょっとするとそれが逆になるかもしれませんわね。もし高くなった場合にどうするのか、低くなった場合にどうするのかという手直しの問題は非常にむずかしいことだとは思いますけれども、そういう場合にはそのままにしておくわけですか。
 私は考え方として、無拠出制の年金を受給する人たちは拠出制に比べてたくさんもらわなくてもいいんだというその考え方は非常に残念だと思うのですね、そういう考え方が根拠にあるとすれば。私はやはり厚生行政としてはそうあってはならないというふうに考えているものですから、どうしてもそれが持ち上がってくるのです、その考え、気持ちが。だからそういう考えではなくていらっしゃるのか、その辺をはっきりさせてもらいたいと思うことが一つ。
 それから大体バランスをとって相当額というふうに踏んでいても、違ってきた場合には、それは結果だからそのままでやむを得ないということであって、よほど大きな開きが出ない限りは手直しをしないというふうに進められるんでしょうか。
#214
○山口(新)政府委員 やはり福祉年金の方は金額で法定化されますので、若干のずれはいたし方ないというふうに考えております。
 それから、基本的な問題でございますが、やはり現在の社会保険方式の年金制度を前提にいたしますと、拠出した場合に比べまして無拠出の場合がやや年金額としては下目になるということも、これはいたし方ないんではないか。
 たとえば一つの例で申し上げますと、国民年金の拠出制が発足いたしました当時、五十歳から五十五歳の方は任意加入ができたわけでございます。任意加入した方は、十年拠出をされまして、現在十年年金をもらっていらっしゃいますが、任意加入しない方はそのままで七十歳から福祉年金を受給できたわけでございます。その場合に十年掛金をかけた方と何もしなかった方で差があってはいけないのかということにつきましては、私どもとしましてはやはり拠出された方を優先的に考えるということで整理をせざるを得ない、そういうことでございます。
#215
○金子(み)委員 厚生省のお気持ち、わかりました。大変事務的ですね。まあやむを得ないのかもしれません。事務当局としてはそうお考えになるかもしれませんけれども、御答弁要りませんが、大臣、政策としてはやはりもう少し温かくしていただきたいというふうに思います。
 それから、その次は生活保護家庭です。
 生活保護家庭と福祉年金の関係で、先ほど同僚の川本委員の方でもそれに関連する御質問がありまして、そして御答弁もあったわけで、この関係は先ほどのやりとりでわかりました。
 私はそれとは少し違う形なんですけれども、福祉年金を受給することができる生活保護世帯というのがございますね。ところが、その生活保護世帯の所得がありますね。生活保護世帯といえども所得を持っています。ところが、その所得がやはり非常に影響するらしいですね、福祉年金を受けるについて。生活保護世帯が持っている所得というのは大したものではないと一般的には考えられるわけです。それでもやはり収入認定をするということは、私はちょっと酷じゃないかなという気がするのです。その収入認定をした上で福祉年金をどうするこうするということが決まったり、あるいは老齢加算をするとかしないとかというようなことがあったりするということが現在行われているのですけれども、私は、生活保護世帯に対しては収入認定をしないでやることはできないんだろうか。
 ということは、もともと生活保護世帯というのは、どういう目的でどういう理由でしているかということは明らかですから、その世帯が得ている所得というのを何も一々細々と計算しないでも、この人たちの得ている所得というのはやはり収入認定をしないでいってもいいんじゃないか、あるいはいくべきではないかというふうに私は考えるわけです。それはいかがなんでしょうか。
#216
○金田政府委員 生活保護制度につきましては、先生御承知のとおり、被保護者がその資産、収入等を最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われるわけでございます。要するに、預金とかそういったものがございました場合には、そういったものはすべて使い果たしましてなおかつ足りない場合に生活保護を適用するという制度でございますので、年金等の収入が別途ございます場合は、原則として収入認定を行うということにこれはせざるを得ないわけでございます。
 しかしながら、老齢者とか障害者、母子家庭等、こういった方々につきましては、その生活上特別の需要がいろいろ考えられます。そこで、これに対応するため生活保護制度におきましては、独自に生活扶助の一般基準の一定割合の額を加算することといたしておりまして、福祉年金の額とは直接の関連は持たせてはおりません。この加算額につきましては毎年度所要の引き上げを図ってまいったところでございますが、今後とも国民の最低限度の生活を保障する立場から、必要な水準はぜひ確保してまいりたいと考えております。
#217
○金子(み)委員 それじゃ同じような問題ですけれども、生活保護家庭が得ている所得の問題です。
 いまそういうふうな措置をとっておられるということはわかりました。
 もう一つの考え方として、その所得の額です。収入認定をなさる場合にどういうふうな基準でなさるかということ、というのは、なぜかと申しましたら、課税対象になるような所得を得るということはまずあり得ないと言えないかもしれませんけれども、せめてそこまでの収入が得られるようになるまでは収入認定しないという方針は出せないでしょうか。
#218
○金田政府委員 この年金につきましても、福祉年金といえども、一つの定期的に支給され、かつ生活費に充てられるべき性格のものでございますので、これを、控除とかそういったことと同じような扱いをすることは、やはり税制とは違いますので、そのかわりただいま私が申し上げましたようなこういった加算ということでございまして、現在は、たとえば老齢福祉年金をもらっている方は皆さん七十歳以上でございますので、実際は生活保護の基準といたしましては、六十五歳以上の方については、男女若干の差はございますが、生活にかかる経費、飲食物費等については一定の基準がございます。この基準の男女の平均額の大体半分を従来から加算額として考慮いたしております。
 これにつきましては、老人は飲食物にいたしましても特殊性がございます。たとえばやわらかいものを食べなければいけないとか、そういう老人の特殊な生活形態がございます。近隣とのつき合いとか、老人につきましては特に若い人とも違いますので、そういったこと等いろいろ積み上げ、考慮いたしまして、私ども、中央社会福祉審議会の生活保護専門分科会の御意見も承りながらこの額を決めてまいったわけでございますので、ただいまのところはこういったやり方が妥当であろうかと思っているわけでございます。
#219
○金子(み)委員 それでは、いまの問題について、どれぐらいの金額が、一般的に言って生活保護世帯で、そして老齢福祉加算が行われてということを計算していただいて、いま御答弁いただかなくて結構ですが、後で教えていただければと思います。どの程度になるかということが知りたいわけです。
 では、次に参ります。
 次の問題は、私もどうしてこういうことになったのかなというふうに疑問を持つ問題なんですけれども、それは国民年金の死亡一時金の問題なんです。実はこの死亡一時金というのは、見せていただきましたところが、国民年金制度の制定の昭和三十四年以来そのままになっているのですね。一度ちょっと手直ししておられますが、基本的な手直しではなくて、大した問題ではないわけですが、三十五年間保険料を納付した人に対して交付される死亡一時金というのが五万二千円しかないわけですね。国民年金の保険料というのは五十六年四月から四千五百円になったわけですから、それで計算しますと、一年間納めますと保険料だけで五万四千円になるわけですね。そういう人たちが受け取る死亡一時金が五万二千円、納めた保険料よりも少ない死亡一時金をもらっているということなので、これが私はどうもよくわからないのです。何か釈然としないと申しますか、この制度そのものがこれでは余り意味がないじゃないかという気がするのですね。
 そして、どういう理由でこういうものがつくられたのかということがわかりたいのが一つと、今日的には余り意味がないから、この制度については見直しをする必要があるのじゃないかなというふうな気がするのです。
 それで、もし厚生省でも見直しをする必要があるとお考えになるのだったら、今回の法律改正のとき、あるいは昨年度の法律改正のときにどうしてお出しにならなかったのか。いま毎年毎年改正していますね。だけど、この問題は一度も出てこないんですね。それでこういうものが何となく残っているんですけれども、これはむだと言ってはいけないかもしれませんが、どういう目的でつくられたものか、今日でも五万二千円ぐらいの死亡一時金を受け取ってどういう意味があるのかということがどうしても理解できないのですけれども、そこら辺をひとつ御説明いただけませんか。
#220
○山口(新)政府委員 元来、公的年金制度におきましてはこの種の給付はむしろ異例だと思います。厚生年金におきましても、当初は脱退手当金というのがあったわけでございますけれども、制度の成熟とともに、主としては労働側の御理解を得ましてやっと廃止したわけでございます。国民年金の場合の死亡一時金も似たような性格があろうかと思います。当初は年金制度にまだなじみが薄いという階層に対しての適用でございましたから、掛け捨てを嫌う感情をある程度配慮したということだと思います。
 基本的にはいま御意見ございましたように、見直すべき問題だと思っております。これも次の大改正のときの一つの題材であるというふうに認識しております。
#221
○金子(み)委員 それでは見直すわけですね、なくしてしまうか、なくさないかということも検討するんでしょうね。それだったら、来年度また法律改正があると思いますけれども、そのときにお出しになりますか。
#222
○山口(新)政府委員 やはり制度の全体の構成に絡みがありますので、全体の見直しのときに一緒に整理をしたい、あるいは形を変えて存続することもあるかもしれません。そういう意味での検討をさせていただきたいということでございまして、来年大改正をすれば一緒にということになるかもしれませんが、そうでない場合は来年はお出しはできないと思います。(「後ろ向きの見直しじゃだめなんだよ」と呼ぶ者あり)
#223
○金子(み)委員 いろいろと声が出ていますけれども、やはり同じことを毎年繰り返すなんというのはおろかなことだと思うんですよ。ですから、こういうものは気がついたら手直しをなさっていいんじゃないでしょうか。全体の抜本改正をするときにやります、あれもそのときやります、これもやります、先ほどからのお話ですと、いろいろございますよね。そういうものをみんな一まとめにまとめて一括してやりたいというお気持ち、わからないでもないですけれども、こういうものは私はそんなにむずかしくないはずだと思いますから、一つずつ片づけていったらどうかなと思います。しかし、厚生省はそう考えていらっしゃらないようですから、できるだけ早く抜本改正をやっていただかなければならぬということにむしろなりますね、それはぜひ考えていただきたい。
 時間もだんだんなくなりましたが、女性の年金の問題、もうこの問題は何度も何度も出ている問題でございますから、私はあえてここでいろいろと並べ立てようとは思っておりません。思っておりませんけれども、考えていただきたいことは、女性は男性よりも長生きするんですよ、統計上少なくとも五年は長生きするようになっているんですね。長く生きることはいいことかもしれませんけれども、言葉をかえれば、日本の老人問題というのは、端的に言って、婦人の問題だと考えてもいいぐらいだと思うのです。
 ところが、その婦人が大変冷遇されていて、年金に関してはまことに情けないかっこうになっているわけです。しかし、これからは寡婦がふえるかもしれません。それから、高齢女性が一人暮らしをする人もふえるでしょうし、独身の女性もふえてくるだろうというふうに考えますと、老後の生活のことを考えると、この年金制度の問題は非常に重要な問題になってくると言えると思うのです。
 いまの年金制度では、女性の、独自の年金権がないというところに問題があるわけですね。これは日本の長い封建的な歴史の中から生まれた年金制度で、男社会の中でつくられた年金制度でというふうに考えられると思うのですけれども、女性は常に男性の扶養家族として、独立していないんですね、そういう思想の中でつくられた年金制度ですから、今日に至ってもなおかつ自立した年金権というものを持つことができないようにつくられてしまっているというのが現状でございますね。
 はなはだしいのは、独自の年金を持ちませんから、離婚したら無年金になるという、これは本当に開発途上国にも見られないような後進性がある、全くどこの国に聞いてもこんなものはないので、まことに経済大国日本、先進国日本としては恥ずかしい問題だと思います。それに、すでに女性の差別撤廃条約に日本もサインをして、批准する方向へ向かっていますから、そのことも踏まえて考えてみたらば、これは何としてでも直してもらわなければならないというふうに思います。これはそうすると、年金の抜本改正のときに一緒に直します、こういう返事が返ってくるのじゃないかなというような気がするのですけれども。
 そこで、また同じ答弁が戻ってくるだろうと思いますけれども、ひとつお尋ねしたいのは、国民年金は個人年金ですね。個人年金なんですが、被用者の妻の国年の加入というのは任意加入になっておりますね。これをなぜ強制加入にしなかったのかということを聞かせていただきたいと思うのです。
#224
○山口(新)政府委員 なぜしなかったのかというお尋ねですが、これは非常にむずかしいために、先ほども申し上げましたけれども、本則の中に将来考えるという規定を当初置いたようでございます。それから二十一年たってしまっているわけでございますから、それを何とか今度決着をいたしたいということでございます。そういう意味で、まあ厚生年金の中には一部加給年金という仕組みもございましたので、恐らくそれとの制度的な整理が決着し切れないためにあいまいな形で仕組まれたのじゃないかというふうに推測をいたしておりますけれども、一つの制度として本則の中で特定の問題について改めて法律で検討するということを書くのは非常に珍しい例でございまして、それだけのむずかしい問題が内蔵をしていたのじゃないかというふうに見ております。
#225
○金子(み)委員 推定されますとか、ではないかと思いますという御答弁をいただいて、ちょっとびっくりしたのですけれども、その当時、確かに年金局長は厚生省にいらっしゃらなかったのだから、それはお聞きになったに違いないと思いますけれども、そういうことは行政の上できちっと確実になっていないものなんでしょうかね。その点、私は大変不思議だと思うのです。そういうことは後の人たちが引き継ぎの中できちんとしてないから、そうだと思いますとか、推定されますとかというようなお返事になってしまうので、これは非常に不確実でよくないことだと思うのですね。いまここでそれの御答弁は要りませんけれども、同じ人がいつまでも同じところにいるとは思いませんから、代々引き継いで仕事をしていくことになると思いますが、その場合にはきちっと事務的に、それは得意なんじゃないでしょうか、事務的に処理するということは。だから、そこら辺はきちんとやっていただきたいと私は要請しておきます。
 最後に一つだけ、児童手当の問題です。もう言い尽くされておりますし、時間がございませんからごてごてとは申しませんけれども、現在の子供というのを考えてみていただきたいのです。現在の子供というのは、今後四十年間継続するであろう高齢化社会に中核的生産労働力として、あるいはまた高齢者と今度は自分の子供、自分の次代を担う子供の両方の扶養、わかりやすく言えば親と子供を扶養していかなければならない、そして人生の大半をそれに注いでいかなければならないような人にいまの子供がなるのです。そうでしょう。そのことを考えますと、財政再建、財政再建と言って所得を制限してみたり、あるいは子供の手当を三人のきょうだいの中の第三子だけに出してみたり、そういう出し方をしないで、やはりこういうことを考えればいまの子供は本当に大事な子供ですから、社会の子供として社会的に責任を持って育て上げていかなかったら四十年先日本はどうなるかということを考えたときに、やはりいまが大事だと思うのです。ですから、財政再建は結構ですけれども、私は児童の扶養に対する限り余り財政再建を振り回してもらいたくない、そして子供の扶養についてはきちっとできるようにしていただきたいと思うのです。
 そこで、いろいろ言いたいことはございますけれどもやめますが、お尋ねしたいと思いますことは、所得制限の問題と、それから第三子だけの児童手当を第一子から、これは世界の国々がすでに行っていることですけれども、これと、三年後には、いわゆる財政再建成立後はきちっとまたもとへ戻す。もとへ戻すというのは、所得制限の方は撤廃して戻すということですね。それから第一子から手当を支給するということは、新しくすることになるかもしれませんけれども、これは三年、五十九年までがまんしますが、六十年からはそれをするということを私は確認させていただきたいと思いますが、これは大蔵省の関係もあるようですので大蔵省からの御答弁と、それから厚生省の方の御答弁とがいただきたい。一言で結構です。
#226
○幸田政府委員 所得制限の問題でございますけれども、先般の行革特例法は御案内のとおり三年間の臨時応急的なものでございます。したがいまして、考え方といたしましては、その期間が経過をいたしますれば当然もとへ戻るという考え方に相なるわけでございます。
 ただ、二番目の問題に関連をいたしますけれども、児童手当制度につきましては、この行革特例法におきまして「その全般に関して速やかに検討が加えられた上、」「必要な措置が講ぜられるべきものとする。」こういう規定もあるわけでございまして、私ども関係審議会の意見等も聞きながら、児童手当制度全般について幅広く検討を行ってまいりたい、その上で結論を出したいと考えております。
#227
○篠沢説明員 いま児童家庭局長からお話がございましたことと同じでございますけれども、児童手当制度につきましては行革関連特例法によりまして所得制限というものを強化したわけでございますが、ああいう特例措置の適用期間中に制度全般に関して検討が行われるということになっておりますから、私どもといたしましても各方面の議論をよく伺い、またそれを参考としながら、幅広い角度からいろいろ検討していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
 ただ、財政当局といたしましては、財政事情とか高齢化社会が非常に厳しい姿で進展をしてくるということをいろいろ考えますと、児童手当も含めまして、いろいろな社会保障給付というものの重点化と申しますか、あるいは効率化と申しますか、いろいろと考えていかなければならない点が多々あるというふうに考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、ただいま申しましたように、各方面の議論をよく伺いまして考えてまいりたいというふうに思っております。
#228
○金子(み)委員 それでは時間も参りましたので、最後に大臣にお願いしたいと思います。
 年金制度につきましては、きょうの審議、あるいはこの次も行われますけれども、ここの委員会で審議される問題だけでもかなりたくさんの問題点が出てきているというふうに思います。それらの問題点を改善することのために、大臣は先ほどどなたかのときの御答弁で勇気を持ってやりますとおっしゃっていらっしゃいましたけれども、そのことをぜひお忘れにならないで、年金の問題は、三年たったらやるんだということとは関係がない。それとは無関係だと思いますから、できるだけいろいろな問題を一日も早く解決をしていただきたいと思います。いまやることがすでに遅きに過ぎるとぐらい思うわけなんでして、いままでなぜもっと早くやらなかったかと私はむしろ言いたいぐらいでございますが、しかし済んだことでありますから、これからどうするかということをぜひしっかりと考えて、そして進めていただきたいというふうに思いますので、御決意を伺って質問を終わりたいと思います。
#229
○森下国務大臣 年金問題は、社会保障制度の中でも健康保険と同時に非常に重要な問題でございます。特に高齢化時代に備えましてこの制度をきちっとするということは民生安定のためにも大変重要である。ちょうど高度経済成長が終わって、オイルショックの後、福祉関連ということで昭和四十八年から福祉予算は急速にテンポを速めてきたことは事実でございます。それが現在は足踏み状況になっておるということで、非常に急成長とまた足踏み状態という一つの転換期に際しまして、どういう方向で行けばいいか、また非常に多岐にわたっておる年金制度をいかにして一本化していくか、これは平等の原則でございますから、それと公的給付がどの程度まで行けばいいのだろうかというような問題も含めまして、幸い臨調の方でも方針が示されておりますし、各党でも年金構想はいかにあるべきかというような大変ありがたい構想も出されておりますし、これは六十年がどうこうだという問題でなしに、本日ただいまからでもこの問題に真剣に取り組んでも私は遅くはない、このように実は思っております。
 それから、御婦人の年金が非常に差別があるというふうなお話もございました。これも私もそのとおりだと実は思っております。もう大抵の厚生年金にかかっておる方の奥さん方は国民年金に入って自分の不安を解消しようというお気持ちがあるし、またそうでない方も企業年金とか個人年金まで入っておられる。何か将来に対する御婦人の不安がそういうふうな気持ちに駆り立てておるし、また個人年金なんかでもそれをちょうどうまく利用して、御婦人は非常に差別されておるんだ、だからこういう年金に入っておかないと大変ですよと、いまいろいろお話がございましたようなそういうことをわれわれも具体例として聞かされるわけでございまして、そういういろいろな矛盾点もございますし、多少過去において試行錯誤的な面も確かに私はあったと思います。
 先ほど川本先生から大変なときに厚生大臣になったな、しかしこれをりっぱにやったらりっぱな大臣になるぞと激励を受けたものですから、私もちょっと褒められると調子に乗る方でございますが、これは調子ではございませんので、本当にそのためにわれわれは政治家になったという川本議員と同じような世代でございますので、年金の問題でも全力を挙げることをお誓い申し上げて、答弁を終わります。
#230
○金子(み)委員 これで終わります。ありがとうございました。
#231
○唐沢委員長 次回は、来る十三日火曜日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四十二分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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