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#1
第096回国会 外務委員会 第7号
昭和五十七年四月九日(金曜日)
    午前十時三十分開議
 出席委員
   委員長 中山 正暉君
   理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君
   理事 奥田 敬和君 理事 川田 正則君
   理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君
   理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君
      石原慎太郎君    北村 義和君
      鯨岡 兵輔君    竹内 黎一君
      浜田卓二郎君    山下 元利君
      井上  泉君    井上 普方君
      河上 民雄君    林  保夫君
      野間 友一君    東中 光雄君
      伊藤 公介君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 櫻内 義雄君
 出席政府委員
        外務政務次官  辻  英雄君
        外務大臣官房審
        議官      藤井 宏昭君
        外務大臣官房外
        務参事官    都甲 岳洋君
        外務省北米局長 淺尾新一郎君
 委員外の出席者
        法務省民事局参
        事官      稲葉 威雄君
        外務大臣官房審
        議官      藤田 公郎君
        外務大臣官房審
        議官      小宅 庸夫君
        外務大臣官房領
        事移住部領事第
        二課長     岩崎 允彦君
        大蔵省銀行局保
        険部保険第二課
        長       松田 篤之君
        国税庁直税部所
        得税課長    入江 敏行君
        農林水産省農蚕
        園芸局種苗課長 谷垣 孝次君
        農林水産省農林
        水産技術会議事
        務局連絡調整課
        長       高谷  守君
        特許庁総務部総
        務課長     佐藤 満秋君
        特許庁審査第二
        部審査長    平木 祐輔君
        特許庁審判部審
        判長      飯塚 文夫君
        運輸省海運局総
        務課長     山本 直巳君
        運輸省海運局外
        航課長     宮本 春樹君
        運輸省海運局監
        督課長     井上徹太郎君
        運輸省船員局労
        働基準課長   亀甲 邦敏君
        運輸省船員局船
        舶職員課長   小和田 統君
        海上保安庁警備
        救難監     吉野 穆彦君
        海上保安庁水路
        部水路通報課長 佐藤 一彦君
        労働省職業安定
        局雇用政策課長 中村  正君
        外務委員会調査
        室長      伊藤 政雄君
    ―――――――――――――
四月九日
 千九百八十年の国際ココア協定の締結について
 承認を求めるの件(条約第五号)(参議院送
 付)
 第六次国際すず協定の締結について承認を求め
 るの件(条約第六号)(参議院送付)
 千九百八十一年九月二十五日に国際コーヒー理
 事会決議によつて承認された千九百七十六年の
 国際コーヒー協定の有効期間の延長の受諾につ
 いて承認を求めるの件(条約第七号)(参議院
 送付)
 アジア=太平洋郵便条約の締結について承認を
 求めるの件(条約第八号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 千九百七十八年の船員の訓練及び資格証明並び
 に当直の基準に関する国際条約の締結について
 承認を求めるの件(条約第九号)
 千九百七十六年の海事債権についての責任の制
 限に関する条約の締結について承認を求めるの
 件(条約第一〇号)
 千九百七十二年十一月十日及び千九百七十八年
 十月二十三日にジュネーヴで改正された千九百
 六十一年十二月二日の植物の新品種の保護に関
 する国際条約の締結について承認を求めるの件
 (条約第一一号)
 投資の促進及び保護に関する日本国とスリ・ラ
 ンカ民主社会主義共和国との間の協定の締結に
 ついて承認を求めるの件(条約第一二号)
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び
 脱税の防止のための日本国とインドネシア共和
 国との間の協定の締結について承認を求めるの
 件(条約第一四号)
 南極地域の動物相及び植物相の保存に関する法
 律案(内閣提出第六〇号)
     ――――◇―――――
#2
○中山委員長 これより会議を開きます。
 千九百七十八年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約の締結について承認を求めるの件、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約の締結について承認を求めるの件及び千九百七十二年十一月十日及び千九百七十八年十月二十三日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件の三件を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲垣実男君。
#3
○稲垣委員 時間に制約がございますので、早速質問に入りたいと思います。
 まず海事関係二条約についてでありますが、これらが締結されるに至った世界的ないわば背景というものは何かということでありますが、簡潔に、御説明を願いたいと思います。
#4
○小宅説明員 お答えいたします。
 初めに海事債権の条約から入りますが、船舶所有者の責任につきましては、各国とも伝統的に責任制限制度というものを採用してまいりましたが、その方式が国によって異なっていたということで、つとに統一条約を作成する必要が感じられていたわけでございますが、これが大正十三年ブラッセルにおきまして海上航行船舶の所有者の責任の制限に関するある規則の統一のための国際条約、一九二四年条約というのが作成されました。ところが、この段階におきましては依然として条約上責任制限の方式が複雑で、船主責任制限制度というものの統一という目的を達成し得なかったわけでございます。かつ、締約国の数も非常に少なかったということでございまして、第二次大戦が終わった後、再び船主責任制限制度を統一しようという機運が生じてまいりまして、これが一九五七年に千九百五十七年の海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約という形で実ったわけでございます。この条約は、責任制限の方式といたしまして最も合理的であると言われておりました金額責任主義というものを基礎にしておりまして、その後各国にもこれが広く受け入れられ、締約国数は現在三十四カ国に達しておるわけでございます。わが国も昭和五十一年にこれを批准し、参加したわけでございます。ところが、一九五七年以降相当な時期がたちましたので、その間のインフレーションの進行あるいはそれに関連するいろいろな海事関係の条約の締結等これとの調整の必要も生じましたので、これの専門機関であるIMCOのイニシアチブによりまして一九七六年にロンドンで新たな条約をつくるという会議が行われましてこの条約が作成されたということでございます。
#5
○稲垣委員 一九七八年の船員訓練、資格証明、当直基準条約について関連してでございますが、海上におけるいわゆる人命、財産の安全というものは信頼の上に立って初めて成り立ち得るものだと思います。羽田沖の日航機の事故というものは機長の病的な欠格による事故だと言われておりますし、まさに人災であります。こういったことを考えてみますと、船舶の安全性を信頼して船を利用する立場から、この条約の締結によって船員のいわゆる質的な向上が図られる、安全の確保が十分期待されるかどうかということでありますが、この点についていかがですか。
#6
○小宅説明員 お答えいたします。
 ただいまお答えした海事債権責任制限条約と違いまして、この船員の技能等に関する条約は新しい条約でございます。これは、タンカーの事故等がございまして、戦後になりましてIMCOの枠内でつくられたわけでございますが、私どもといたしましては、こういうふうな船員の技能に関しまして国際基準を設定するということによりまして人的な面において海上における人命及び財産の安全を確保するということができれば、これは大変国際社会に貢献するものと考えております。この条約に各国が入ることによりまして、船員の技能の水準が必ずしも高くない多くの国がこの条約に定められています一定の要件というものを満たすようになりますと、最初に申し上げました海上における人命及び財産の安全の確保に大いに貢献するものと考えている次第でございます。
#7
○稲垣委員 きのうの衆議院の本会議で船員法及び船舶職員法の一部を改正する法律案が可決されましてこの条約の発効に備えることになったと思いますけれども、このほかに電波法の一部改正が関連しますが、これらの法律によって果たして十分に国内的な手当てができるのかどうか、私は疑問を持っておるわけであります。そしてまた、これが実施されますと船員に対して相当過度な負担を強いることになりはしないか、心配しているわけですが、この点についてどうですか。
#8
○小和田説明員 お答えいたします。
 いま御指摘のとおり、この条約を日本国内で実施いたしますためには船員法それから船舶職員法もう一つは電波法の三つに一応かかわるわけでございますが、まず船員法関係で申し上げますと、航海当直の基準を定めること、それから航海当直を行います部員の要件を定めること、それからこの条約のきっかけがタンカー事故であったということにかんがみまして、タンカー乗組員についての必要な要件を定めることといった事項が新しく追加されることになるわけでございますが、まず最初の当直の基準につきましては、これは従来からわが国では船内におきまして日常行われておりますいわば船員の乗務と言われるものでございまして、特段これで新しく従来の基準が変わるということではございません。
 それから二番目の、当直を担当します部員の要件につきましては、条約が発展途上国の船員のレベルを上げるということを目的にしていることもございまして、いままでのわが国の船員の訓練の基準といったものから考えまして、特段これによって大きな負担がふえるというものではございません。
 それからタンカーの乗組員につきましては、一応これらの者に必要な専門的な教育訓練といったものにつきましては現在国内で実施する体制を整備中でございまして、負担を極力かけない形でやるつもりでございます。
 それからもう一つの船舶職員法関係につきましては、現行のわが国の船舶職員の資格の中身は国際的に見ましてもきわめて高いものでございまして、条約の中身を取り入れますために、いままで行っております試験のたとえば試験科目といったような点につきまして若干整合を図る必要がございますけれども、これまた途上国の船員のレベルを上げるということの条約の目的からいたしますと、基本的には従来の海技資格の中身と大きな変革はないと考えております。
#9
○稲垣委員 次に海事債権責任条約の締結について、わが国が負うことになるいわゆる義務が生じてまいると思いますけれども、この点について簡潔に説明を願いたいと思います。
#10
○小宅説明員 お答えいたします。
 この条約を締結することにおきまして、わが国におきましては、この条約において責任を制限することのできる者として認められた者が、わが国の裁判所におきまして自分の責任を制限しようとし、あるいはわが国の管轄内で船舶その他の財産の差し押さえの解除あるいは担保の取り消し等を求める場合にこの条約を適用する義務を負うということになります。
 簡単に申し上げますと、その方法としてまず第一に、船舶所有者等の責任を制限することのできる者が、この条約の規定に従って自己の責任を制限するために制限基金の形成を可能とするというのが一つの義務でございます。それからまた、その場合、債権者と債務者の関係をこの条約の一連の規定に従って規律をするということでございます。それからまた、制限基金が他の締約国で形成された場合におきましても、この条約の規定に従いまして責任の制限を定めるということが義務となるわけでございます。
#11
○稲垣委員 そうしますと、船舶事故による被害についてでありますが、この条約によって非常に適切なといいますか、妥当かつ完璧な救済が確保できるということでありますが、私もなかなかその辺、考究してみますと大変疑問に思うのですが、その点についていかがですか。
#12
○小宅説明員 お答えいたします。
 この条約は、責任者に対する責任限度額というものを大幅に引き上げるということによりまして、被害者保護というものに十分な配慮を払っていると考えております。
 この仕組みといたしましては、その責任限度額の算定の基礎となる船舶のトン数というものを国際的な統一基準によって算定していくわけでございますが、今度の条約によりまして新しい算定方式にされました結果、船舶のトン数が一割から四割ぐらい高く査定されるということになります。
 それから、債権のうちでも旅客の死傷に関する債権につきましては、独立の責任制限制度というものを設けまして、これに特別の、一層高い責任限度額というものを定めたわけでございます。
 それからまた、わが国の国内法におきまして、内航船舶にかかる旅客の死傷、損害におきましてはこれを無限責任とすることにして、これまた被害者の保護を図っているわけでございまして、従来の制度に比しますれば、被害者保護の点では一層徹底されておるというふうに考えております。
#13
○稲垣委員 櫻内外務大臣が御出席になっておられますので、私は海事関係二条約を締結されるに当たってひとつ大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
 御承知のように、わが国は無資源国でありまして、今日わが国が経済大国と言われておりましても、あらゆる産業の原材料の大部分、また食糧の多くも輸入に頼っております。そして、これらの原材料を加工して製品にして輸出をしております。貿易立国としていわば成り立っているわけでありますが、いまこの貿易上の問題で摩擦を起こしているのはきわめて残念でありますけれども、とにかく海に囲まれている日本としては海上輸送にその多くを依存しておるわけでありますから、人命とその財産の安全を確保するという、シーレーンを守るということが非常に大切であると思います。国防上の観点からもこのことが論じられるわけでありますが、私は、平和的な外交的観点から、そして技術的、制度的な観点からしまして、国際協調的な立場から、あえて言いますならば、いわば主要海運国としてきわめて重要な役割りを果たしておる日本として、今後もそういう意味での国際協力を一層推進する必要があると思います。国際的にもっと積極的に指導的な役割りを果たすべきだと考えておりますけれども、この海事関係二条約を批准するに当たりまして、平和外交を推進するわが国の外務大臣としてどういうふうに考えておられますか、お伺いをしたいと思います。
#14
○櫻内国務大臣 海上における人命及び財産の安全の確保並びに海洋環境の保護のためには、広範かっ強力な国際協力関係を構築することが必要であると思います。世界の商船船腹量の約一〇%を占める主要海運国であるわが国としては、かかる国際協力を促進するに当たり、積極的に指導的な役割りを担うべき責任を有しておると考える次第であり、また、かかる国際協力が促進されることは、とりもなおさずわが国の利益に合致するものであると思います。今回御審議を願っている海事関係二条約をわが国が締結することは、かかる意味合いにおいて海事関係の国際協力に関し、わが国の積極的な姿勢を示すものとしてきわめて有意義なものであると思います。
#15
○稲垣委員 ただいま大臣の大変賢明なお考えを承りまして非常に満足しております。
 次に、植物新品種保護条約に関連して質問をいたしたいと思います。
 時間があとわずかしかございませんので、数点にしぼって質問をしたいと思いますが、食糧の確保はその国の総合的な安全保障につながるわけでありまして、そういう意味で国際的に非常に重大な課題であると思います。ここで画期的な増産効果を持つ、たとえば優良品種というものができた、これがある一国に独占されるということは非常に好ましいことではないと考えるわけでありますが、そういう場合、新品種の公開というような点についてこの条約で果たして期待できるかということ、それからこの条約が適用された場合、直ちに国益上から見て、またわが国の農業者や育成者に何か著しく悪い影響を与えるのではないか、あるいは著しい被害を与えることになるのではないか、こういう疑念が生ずるわけでありますが、その点について説明をお願いしたいと思います。
#16
○小宅説明員 お答えいたします。
 この条約は新品種の育成者の権利を保護する条約でございますが、これとともに、育成された新品種の普及を図ることによりまして農業の発展に寄与するということも目的にしております。したがいまして、この条約を通じて優秀な新品種の国際的な交流が図られるということになりますので、一国がこれを独占するというようなことではなく、むしろ全締約国、多くの締約国の国民に対して優秀な新品種の利用の道が広く開放されるという効果が期待されているわけでございます。この考え方は、要するに新品種の普及を図るというこの考え方につきましては、条約上も公共の福祉及び品種の普及を図るために育成者の権利を制限することが条約の九条で認められておりますので、解釈としても正しいのではないかと思います。
 わが国に対する関係でございますが、わが国がこの条約を締結いたしますと、この条約の定める国際的な統一ルールというものを遵守することになりますが、その結果種苗の分野におけるわが国の信用を高めるという効果が一つあると思います。また海外から優秀な新品種がわが国に入りやすくなる、導入されるということになりまして、わが国の国民にとりましてもこれらの品種を育成の材料として利用する道が開かれるということでございます。また、一方におきまして、わが国が育成した品種を海外向けに普及する、そしてひいてはわが国の国民が諸外国の農業の発展に寄与するという効果もあわせあるものと考えられます。
#17
○稲垣委員 この条約の中で第二条に「保護の方式」というのを定めておりますけれども、これを見ますと、「この条約に定める育成者の権利を、特別の保護の制度により又は特許を与えることにより承認することができる。国内法によりこれらの二の方式の双方による保護を認める同盟国においては、同一の種類の植物の保護は、一の方式により行われなければならない。」こういうように書かれておりますが、わが国としてはいかなる方法でこれを保護しようとしているか、説明を願いたいと思います。
#18
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 わが国におきましては、この条約に対応する国内法として種苗法が制定されておりまして、品種登録制度が設けられております。品種登録制度は、新しい品種を育成した者がありますと国に登録申請をいたします。登録申請出願がありますと、農林水産省におきまして審査して、その結果その品種が既存の植物との区別性、品種と言えるだけの均一性なり安定性を有するかどうか、それから出願前に売られていないかどうかという未販売性の要件を満たしておって、また適切な名称が付されている、こうした要件を具備すると判定されますれば、農林水産大臣が登録するということになっておりまして、この登録が行われますと、登録を受けた者の許諾なしにその登録品種を種苗として生産販売することができないということを内容としたものでございます。
 以上の制度の内容は、条約で定めております育成者の権利の保護の要件とか保護すべき権利の内容などをすべて条約と同一の内容で規定しておるものでございまして、わが国は種苗法で対応しておる、こういうことでございます。
#19
○稲垣委員 現在諸外国から相当数の出願あるいは登録があるということでありますが、これはどういうぐあいになっておるか。そしてまた、こういった条約が締結されて新たに適用されるということになりますと、相当諸外国からの出願が殺到して増加するということが想定されますが、わが国の審査体制がこれに十分対応できるかどうか、その点についてひとつお伺いしたいと思います。
#20
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 外国で育成されました品種の出願は、昨年末までで合計三十八件ございます。このうち登録いたしましたものは五件でございます。野菜、草花、観賞樹木でございます。今後外国からの出願は、今回の条約加盟に伴って増加すると予想されるわけでございますが、その数は全体の国内の出願件数から見ましたらその一部でございまして、それほど多いものではないと思われます。したがいまして、外国からの出願が今後増加いたしましても、審査上支障はないと考えております。しかしながら、今後とも国内の品種、海外の品種ともども出願品種の審査体制に抜かりがないよう、その整備に努めてまいりたい、このように考えております。
#21
○稲垣委員 この条約でこのように保護されるということになりますと、種苗の輸出入というものがきわめてふえてくると思いますが、わが国としても、相当研究者が多いわけでございますので、これからこういった種苗の輸出というものが相当伸びるであろうと思うわけでございますが、この輸出振興について当局はどのように考えておるか、聞かせていただきたいと思います。
#22
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 わが国の近年の種苗の輸出は、年々ふえております。昨年の一年間の実績で見ますと六十三億円の輸出がございます。野菜が三十億でほぼ半分を占めておりまして、それに次いで果樹等の苗木、穂木のたぐい、それからユリ、チューリップ等の球根類、花の種、こういったものが中心でございます。こうした特にわが国から輸出される野菜の種子、花卉の種子は高度の育種技術と採種技術を必要とする一代交配種、いわゆるF1種子でございますが、このF1種子を中心にして伸びておるわけでございまして、この技術集約型の種子の輸出は今後とも増加すると見込まれておるわけでございます。
 今後の輸出の振興につきましては、外国の気象条件、栽培条件にも適応する優秀な品種の育成に努めますとともに、野菜、花卉等の一代交配種の種子のように高度の採種技術を必要とするものとか、あるいは果樹、観賞樹のような苗木類につきましては、手先の器用な日本人が得意とする技術分野でございまして、こうしたものについては国際競争力もございますし、こうしたものを中心として優良な種苗の輸出を振興してまいりたい、かように考えております。
#23
○稲垣委員 あと時間わずかでございますので、最後にお尋ねしたいのは、最近遺伝子組みかえによる技術、バイオテクノロジーといわれておりますが、この開発が非常に盛んであります。これとこの条約との関係がどのような関係になるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
#24
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 遺伝子組みかえ技術は、現在基礎的な研究段階でございまして、特に高等植物につきましては実用化に至っていないわけでございます。しかし、将来研究蓄積がなされるに従いまして発展する可能性を有している技術分野でございまして、このような技術を利用した育種方法によって品種が育成されるという可能性が出てまいるわけでございます。他方条約は、育種方法のいかんを問わず、あらゆる種類の植物に適用するということになっておりまして、したがいまして、遺伝子組みかえ技術により育成された新品種につきましても、保護の要件を満たしている限りこの条約の保護の対象となる、このように考えております。
#25
○稲垣委員 最後に、外国では民間育種が非常に盛んであると聞いておりますが、わが国においては植物の育種は国公立の機関が中心となって大体行われておるということでありますが、これから民間育種の助長を図っていくことが非常に必要だと思うわけでございまして、この条約の期待する、またこの保護の方法としてもこのような適切な方法が行われるということでありますから、これからひとつ役所としても、民間育種の助長を大いに図っていただきたいと思うのですが、最後にこの点についてお考えをお聞きしたいと思います。
#26
○高谷説明員 お答えいたします。
 農業が国民食糧の安定的な供給を確保するという国家的使命を担っていることにかんがみまして、作物生産の基礎をなす育種についてその役割りを十分に発揮し得るよう格段の配慮をすることが国の責務であろうと考えております。
 一方、育種は、通常の場合、その成果を得るまでに長期間を要するわけでございます。たとえば水稲で言えば、交雑いたしましてから新品種になるまで十年から十五年ぐらいかかるわけです。それと同時に、人的にも物的にも多くの投資を必要とするために、一般的には商業ベースに乗りにくいという性格を持っているわけでございます。また、主要作物の育種成果というもの、具体的に言えば品種でございますが、これは広く農業者全体に活用の道を開いておくべき公的性格を持つものであろうということがあるわけです。
 以上の観点から、作物の育種は基本的には国が責任を負うべきものでありまして、他の公的機関あるいは民間等との連携を十分考慮しながら実施しているところでございます。したがいまして、民間育種につきましては、諸外国の例と同様にわが国におきましても野菜、果樹、花卉等の分野で商業ベースに乗る作物を中心に行われているのが現状でございまして、こういうふうに民間で対応できるものにつきましては今後とも助長を図っていこうというふうに考えておるわけでございます。
#27
○稲垣委員 十分に理解できました。質問を終わります。
#28
○中山委員長 次に、井上泉君。
#29
○井上(泉)委員 きょうは、くしくも日昇丸がアメリカの潜水艦に当て逃げされた日に当たるわけです。その交渉の経過、いろいろな経過を踏んでいわば落着したということになっているわけです。この落着の成果にいまのままで外務大臣は満足していますか。
#30
○櫻内国務大臣 御指摘のように昨年の四月九日に、日本の貨物船日昇丸と米原潜ジョージ・ワシントン号の衝突という不幸な事故が起きたわけでございます。その際、昨年の八月三十一日に、マンスフィールド大使より園田外相に対してこの事故についての最終報告書が提示されております。米側はこの報告書の中で、本件事故についての全責任を負うとし、米海軍として遺憾の意並びに陳謝の意を表しておる次第でございます。米海軍がこのような陳謝ということは異例のことだと思います。政府としては、これを米側の誠意と日米友好関係の維持発展に対する熱意を示すものとして評価しておる次第でございます。
#31
○井上(泉)委員 この問題が起こった当初、当委員会でもずいぶん論議をしたわけです。その当時にはアメリカ側は、いま大臣が言われたような全面的責任というようなことを言わずに、いろいろと理屈を並べて当て逃げということを否定するような行動をとり、それに対して外務省も何か追随するような姿勢にあったわけです。その間海上保安庁においては、この乗組船員からいろいろ事情聴取する等の中で、この事故原因というものをアメリカの原潜の当て逃げであるというはっきりした調査報告がなされて、そのことが一つの大きな要素となってアメリカも認めざるを得なかったと私は思うのです。そこで、海上保安庁の方としての調査の経過というもの、乗組員等に聞くところによると、非常に親切に、そうして事実を十分書いていただいた、こういう話を聞いたわけでありますけれども、やはりアメリカ側が取り調べをする場合には、何かしら圧力を受けるような感じの中で、非常にいやな思いの中でアメリカ側の事情聴取を受けた、こういう報告をされたわけであります。
 そういう経過をたどる中で、これだけはっきりとアメリカが、全面的に責任がある、こういうことを意思表示をしたこの事故補償について、提示をされた補償内容というものが、私は、日本人の命というものをえらい安くアメリカは評価をしたものだ、自分の国がやっておいてえらい安く評価したものだと思うわけですけれども、この補償金額についても満足していますでしょうか。
#32
○淺尾政府委員 井上委員御承知のとおり、補償の問題は、当事者の乗組員の方を代表する弁護士とアメリカの海軍との間で話し合いをされて、最終的に決着された金額でございます。したがって、その金額について私たちが少ないとか多いとか言う立場にはございません。ただ、過程の中でいろいろ弁護士の方が努力されましてアメリカ側と話をされて、当初のアメリカ側の提示から上乗せしたということがございます。そういう経緯を私たちは承知しているわけでございまして、その間において弁護士の方から、アメリカ側との接触に際していろいろ便宜を図ってほしいという御要望がございまして、私たちも側面からアメリカ側とのアポイントメントの取りつけその他について努力をしてまいったわけであります。
#33
○井上(泉)委員 私はこの亡くなった船長の奥さんからの話を聞きました。奥さんの方としては、弁護士に頼んで弁護士がアメリカ側と交渉ということではなしに、やはりこれはアメリカがやった行為であるし、アメリカを相手の交渉に、弁護士が交渉せなければいかぬ、その弁護士との交渉で問題を解決するような形でやられると――弁護士になりますというと、やはり一つは自分の、これは悪い表現かもしれませんけれども、商売です。つまり営業である。だから、かなり落着せぬと弁護士としての任務はできないから、あなたたちもう勝手にやりなさい、こういうふうな話もされ、これに対してもっと国が折衝に力を入れてもらったら非常によかった。それは金額があるいは満足する金額でなくとも、やはり国の責任においてアメリカとの交渉をちゃんとしてもらったらよかった。それが残念でたまりません。これではもうアメリカのために殺されたも同然であって、こんな私は嘆かわしいことはない、こう言って奥さんは私にも話をされた。そうしてまた同僚の井上普方君も、奥さんの話によるとずいぶん心配していただいて、いろいろ相談をしてもらったけれども、弁護士を立ててきて外務省、日本政府は何もしてくれない。私は、外務省というものはだれのために存在するかと言えば国民のために存在するのだから、もっとこういう遺族、被害者の気持ちというものを大事にしてアメリカ側とわたってやるべきであって、普通の行きずりの殺人事件のように当事者同士というような形でやったことについては問題があろうかと思うわけですけれども、その点についての反省はないですか。
#34
○淺尾政府委員 私たちとしても、この事件、非常に不幸な事件というふうに感じておりまして、そういう観点からアメリカ側に対して、事故の原因の究明と同時に補償が一日も早く解決するようにということを再三申し入れてきたわけでございます。ただ、こういう事件の解決のやり方として、やはり当事者を代表する弁護士さんとアメリカの海軍との話し合い、こういうルールがございますので、そのルールを乗り越えてまいるということはできないわけでございますが、それに対してわれわれとしては側面から援助をしてきた、こういうことでございます。
#35
○井上(泉)委員 政治にしても行政にしても、やはり愛情というものを国民に持って接するのが本来のあるべき姿であろうと思うのです。そこで愛情の表現として、こういうことについてたとえば船長の葬儀のときに、日本の国民がアメリカのために被害を受けた、だから日本政府としても遺族に対してはまことにお気の毒千万だということで、たとえば弔意の花輪をささげるとか献花をしたとか、そういうことはやったのですか。
#36
○淺尾政府委員 葬儀に際しては外務大臣から弔電を打つと同時にお花をお供えした、こういうことでございます。
#37
○井上(泉)委員 ちょうど一周忌に当たるわけですから、この乗組員が皆集まって、そして船長の供養をした、こういうことを聞くわけであります。
 いま局長は担当者に聞いたわけですけれども、これは大事件だったのですから、弔電を打ったとか花輪を出したとかということは係に聞かぬでも、役人としての常識としてそのぐらいのことは承知しておってもらわないと、これは愛情のある外交行政が行われておるとは思わぬわけです。そういう点でも外交というものは国民の地位を守る、そのことが外交の大きな任務だと私は思うわけで、その国民の地位、生命、財産が相手の国の者にやられたとするならば、外務省としてもその被害者に対しては深甚な弔意を表し、その補償等については十分なお世話をするのが任務としては当然のことではないかと私は思うわけですけれども、そういう任務はないと依然としてお考えでしょうか、そういう任務は持つべきだというお考えなのか、その点もう一回承りたいと思います。
#38
○淺尾政府委員 まず最初に、私は正確を期すために相談したわけでございまして、私の頭の中には大臣がそのときに弔電を打ってお花を差し上げたということは覚えておりましたけれども、より正確を期すために係の者の確認を得たわけでございます。
 ただ、いまの井上委員の御提案でございますが、この補償の問題については、アメリカだけでなくて、こういう事件についてはそれぞれの国の法律の体系がございます。したがって、補償の問題については弁護士の方と当事者、相手の海軍との話し合い、しかし外務省としてそれを見るということだけでなくて、先ほど来申し上げたように、その弁護士の方がアメリカ側との話し合いについていろいろの便宜を図ってほしいということについては、今回の事件については何回も弁護士から御相談を受け、それに対してわれわれとしてできる限りの力をおかししたということは事実でございます。
#39
○井上(泉)委員 この当時、日昇丸の事件と相前後してはえ縄を破ったという事件があって、そのことについてもこれは日本の漁師のはえ縄が切断された。そういうことで、日本政府としてはこの漁民に対しては八千六百万か何かの補償を支払ったということですが、これはやはり日本政府に責任があるからやったのでありますか、それともこの補償金はアメリカからもう支払いを受けたのかどうか、その辺の経緯について。
#40
○淺尾政府委員 日本政府がお払いしたのは責任があるということでなくて、こういう事件について日本政府としてもしかるべき行為を示す必要があるということでございます。
 他方、アメリカ側に対しては、本件について事件発生以来、この補償の問題について話を進めてきているわけでございまして、アメリカ側もアメリカ側の責任のある分については十分調査した上、払うようにしたいということでございまして、若干長くなりますけれども、まず昨年の七月の末、被害者側を代表して日本海さけ、ます延縄漁業協同組合の御一行が在日米海軍法務部に対して水産庁を通して取りまとめた被害の総額を提示してアメリカ側に対して損害賠償の請求をしております。
 本件の会合については、その前から内閣において関係当局が集まっていろいろ話をしているわけでございますが、この最初の会合について外務省、水産庁からも係官が同行してやっているわけでございます。
#41
○井上(泉)委員 そのはえ縄の補償については、日本政府がサケ・マスの漁業組合に支払って、その金については米当局からはまだ支払いを受けてないということですか。それは大体いつごろ決着がつく見込みですか。
#42
○淺尾政府委員 結論から申し上げれば、まだアメリカ側が支払っておりません。というのは、何しろ膨大な資料でございまして、日本側がまず日本語で出しましたので、アメリカ側でその翻訳をやりまして、さらにアメリカ側としてもUSサルベージ会社による独自の調査報告もやりまして、それをあわせてワシントンにおいて検討が行われているわけでございます。
 外務省としても、五月以来もう日も相当たっておりますので、在京米大使館に対して速やかな補償額の支払いないし処理ということを求めているところでございまして、最近は、昨日もアメリカ大使館に申し入れておりまして、われわれの得ている感触によりますと、アメリカ側においても本件の事故についてはすでに早急に取り進めておりますので、近く結論が得られるのではないかというふうに考えております。
#43
○井上(泉)委員 これは日本海における日米の合同演習の中でアメリカ側の船によってはえ縄の漁網が切断された。そういうときに何かソ連がどうのこうのというようなことを持ち出してきたりするわけですが、そういうふうに発生原因がはっきりしておるので、それをソ連がどうのこうのというようなことは当たらないと思うわけです。それをソ連も関係をしておるかのごとく言われるのですが、その考えはいまも持っておるのでしょうか。
#44
○淺尾政府委員 当時の状況から申し上げれば、アメリカの海軍の艦艇が行動していた付近にはソ連の艦艇もこれを監視する形で行動していたわけでございます。したがって、外務省としては、ソ連側に対しても何らかの被害を与えている場合には補償しろということを申し入れているわけでございますが、残念ながらソ連の方は、いまのところ日本側の要請に対してソ連艦艇の関与については明らかにしておりませんし、その後再三ソ連側に要請しておりますけれども、いまだに回答はございません。われわれとしてはこのソ連側の回答ではまだ納得できないところがございますので、引き続き調査方をソ連側に申し出ているわけでございます。
#45
○井上(泉)委員 大蔵省、来られておるでしょうか。――まだ来られてない。そうですか。
 そこで私は、補償金の問題についての質問は後にいたしまして、こういうように日本近海というものは至るところ危険がいっぱい、こういうことになっているわけで、こういう危険がいっぱいなところで日本の漁師は営々として操業を続けておるわけです。
 そこで海上保安庁にお尋ねするわけですが、たとえば高知県のリマ水域、そこで絶えず演習が行われておるわけですが、その付近は屈指の漁場ということでたくさんの漁船が出ておるわけですが、こういう漁船の安全確保ということについては、海上保安庁としてはとるべき手段を十分とっておるのかどうか、その点承りたいと思います。
#46
○吉野説明員 海上で演習、訓練、そういうものが行われます場合には、海上保安庁といたしましては米国のハイドロパックその他いろいろなところからの情報を得まして、水路通報等によりまして周知を図っております。それで、リマ区域につきましては米軍の常時訓練区域になっておりまして、これにつきましては、日本近海の演習区域を記載しました一覧図、海図がございますが、こういうものを発行したり、あるいは水路通報でもってこの演習区域を毎年二回周知のために出しております。それからまた、各出先管区本部におきましても、各管区の航行警報というようなもので周知いたしております。
#47
○井上(泉)委員 海上保安庁は、私は前段にも申し上げましたように、米原潜の当て逃げに対しても、やはり私はいろいろな圧力があったんではないかと思うわけですけれども、そういう圧力をはねのけて毅然として正しい調査報告をなされ、そのことが結局アメリカをして、これの自己責任というものを一〇〇%認めざるを得なかった、私はその経過というものを考えて、海上保安庁の職務態度というものに深く敬意を表するものであります。特に、こういうふうに日本の近海は大変な危険がいっぱいという、いつどういう事件が起こるかもわからないようなそういう条件の中にあるわけですから、そういう不測の事態に備えて、保安庁として十分救援体制のとれるような条件を整備しておるべきだと思うわけですが、その点については十分でしょうか。
#48
○吉野説明員 海上保安庁といたしましては、海難発生に備えますために遭難通信、これを常時聴守しておりますほか、この遭難通信が出ましたときにどちらの方向から無線が来ているかというようなものをすぐはかれるような救難用方位測定局というものを全国に二十四カ所設けております。さらに、昭和五十六年末現在でもって、全国百四十六の基地に巡視船艇三百四十三隻それから航空機五十三機、これを配備いたしまして、海難発生に対する即応体制をとっております。今後ともその充実を図っていきたいと思っております。特に気象、海象状況とかあるいは海上交通のふくそうしている状況とかあるいは漁船の出漁状況とか、そういうものから見まして海難が多発するということが予想されるような場所には、あらかじめ巡視船艇をその付近に配備して、これを前進哨戒と言っておりますが、巡視船艇をそういうところに配備しまして緊急事態に対応できるようにということでやっております。
 なお、さらに海上保安庁といたしましては、巡視船艇、航空機の整備を図って、より一層わが国周辺海域における航行の安全を確保し、また海難が発生した場合に迅速な対応がとれるように努力してまいりたいと思います。
#49
○井上(泉)委員 そこで、これは日本の近海じゃないけれども、わが国の漁船団というものは遠く海外にも出ておるわけです。それで、いまアルゼンチンと英国との間において紛争が起こり、それはすでに戦争水域という形で宣言をされておるわけですが、この地域についても日本の船舶というものはかなりな数が往来をしておるんではないか、こういうふうに私は思うわけですが、その点はどうでしょう。
#50
○櫻内国務大臣 イギリスのとりました戦争水域と申しますか、それにつきましては、昨日在日イギリス大使が外務省の方へ見えまして口頭で申しました中には、この戦争水域のことはございませんでしたが、長文の英文の文書を置いていかれまして、その翻訳によりますと、これはけさほどその翻訳について内容を知ったんですが、その水域に対して相手国のアルゼンチン以外の船舶、艦船に対して何らかの措置をとる、こういうようなことはその文書の中には出ておりません。ただ、その文書だけでございますから、この水域に出ておる日本の船舶についてどうという直接の表現はございませんが、私どもの解釈からいたしますと、別段これらの水域における漁業などについての支障はないんではないかというふうに受けとめております。
#51
○井上(泉)委員 これは海外、いわゆるその水域あたりを通航しておる日本船舶はどれくらいあるとかというようなことは、それを確認するような手だてというのは海上保安庁にもないですか。どこでどういうふうに船が動いているかわからない。つまりそういう地域になりますれば無線とか何かで、こういう状態になったから危険だから注意をしなさいとか、そういうことの呼びかけはしないですか。
#52
○吉野説明員 海上の船舶の交通安全を担当しております海上保安庁といたしましては、一定の区域におきます船舶の動静というもの、それから海上交通に関係のあるいろいろな情報というものはぜひ把握したいというふうに思っておりますが、現在のところ非常に遠くの方の船舶の動静というところまでは把握しておりません。
 これからの計画といたしましては、大体太平洋の西部地域、日本の周辺海域におきますところの船舶の航行につきまして船舶から船位の通報を受けて動静を把握する、それからいろいろの交通安全に関係のある情報を把握して必要な場合には注意喚起をするというような一つのシステム、海洋情報システムというものを今年度から三カ年計画で整備してまいりたいというふうに考えております。
#53
○井上(泉)委員 そこで私は最初の質問に戻るわけですけれども、たとえば日昇丸の補償金をいただいたわけですが、その補償金について、たとえば船長に対する補償金、これ等に対していわゆる税金がかかるかどうか、これはもう端的な質問ですから端的にお答え願いたいと思います。
#54
○入江説明員 そのような事故が起きました場合に、いわゆる人身に係る補償金として幾らかの補償金が出るということがあるかと思いますが、いまの所得税におきましては、心身に加えられた損害に対して支払われる慰謝料その他の損害賠償金というのは非課税ということになっておりますので、恐らくそれに該当いたしまして、原則として非課税になると思います。
#55
○井上(泉)委員 非課税であるということは結構なことですから、あえてこのことについては質問いたしません。
 そこで、最後に私は大臣に御質問申し上げるのですが、いま申し上げましたような原潜の当て逃げにしても、はえ縄の切断事件にしても、日本という国がもっと自主的に行動するようなことでなければならない。その当時の、日昇丸の事件なんかのときでも、外務省は海上保安庁の調査よりもアメリカの言うことを聞くような形で、アメリカから、こういうふうな質問があったらこういう答弁をしなさいよ、そういう国会における問答集のようなものまで出されてきておる。日本の自主性が全く侵害されたような形の中で当初は進められたという事実があるわけです。こういうことはあってはならないことでありますけれども、これからもいろいろな地域において日本の船舶あるいはまたその他の物的損害、人的損害等を受ける可能性はあると思うのですが、そういう場合に、アメリカに遠慮するのじゃなく、ソ連に遠慮するようなことでもない、日本国として自主的な決断をし、権威を貫くような形でこうした問題には対処してもらいたいと思うわけで、その点、外務大臣の決意を聞かせていただきたいと思うわけです。
#56
○櫻内国務大臣 日昇丸事件、はえ縄の切断事故、こういうようなことがたびたび起きたのでは大変なことでございますが、これらの事件を顧みまして、井上委員からいろいろ御注意、御所見をちょうだいいたしました、私どももこういう苦い経験に基づきまして、反省すべき点は反省し、今後このような事態がかりそめにも起きるということは考えておりませんけれども、起きた場合にはこの苦い経験を生かして遺漏のない対応をしてまいりたいと思います。
#57
○井上(泉)委員 終わります。
#58
○中山委員長 次に、土井たか子君。
#59
○土井委員 ただいまの井上泉議員の御質問に続きまして、私は、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約と、もう一本、千九百七十八年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約について質問をさせていただきたいと思います。これを二つともやるというのは大変なことでありまして、しかも二つともそれぞれかなり問題点があるようであります。そこできょうは、この船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約の方に重点を置きまして、あと残余の時間で、片方の海事債権についての責任の制限については、ここでひとつ定義を確かめておきたいというふうに考えています。
 さてさて、船員の訓練、資格証明の問題につきまして、中身に入る前にちょっとお尋ねしたいことがあるのです。
 昭和五十五年の九月にイラン・イラク戦争が勃発しまして、これはいまだに解決のめどが立ってないのですね。ただいまも長期化の様相を呈しております。言うまでもなく、わが国の原油輸入量の七〇%以上がペルシャ湾岸地域から輸送されて日本に運ばれてくる。ホルムズ海峡を通航するわが国の商船隊の月間の隻数というのはタンカーが非常に多く、約百九十隻ぐらいというふうにも言われておりますが、その他のいろいろな貨物船なども含めて考えていきますと、大体二百八十隻ぐらいにも上ると言われているのですね。したがって、ペルシャ湾をめぐりまして国際緊張がわが国に及ぼす影響というものは非常に大きい、特に海運貿易に及ぼす影響は非常に大きいということが言えると存じます。
 いまそのためにイラン・イラク紛争の解決に向けてどのような御努力を外務大臣はなすっていらっしゃるかというあたりを、基本的な問題でございますから、その点をまず承らせていただきたいと思います。いかがでございますか。
#60
○櫻内国務大臣 イラン、イラク二国間の紛争状態については深く憂慮をいたしておるところでございます。つい最近におきましてもイラク大使の訪問を受けておりますが、日本といたしましては機会あるごとにこの紛争の早期解決について日本の期待を表明しておるわけでございますが、こういう紛争について何か両国に対して積極的に案を出す、そういうようなことにつきましては、イラン、イラクいずれも背景がいろいろあると思うのであります。具体的な何かということになりますとそれらのことも考慮しなければなりませんから、また、しっかりした見通しのないままに何か提案するということもこれはいかがかと思うのでありまして、いまのお尋ねは私、どのように取り上げていいかちょっと戸惑っておるわけでございますが、こういう紛争状態というものが好ましくないことは言うまでもないのでありますから、機会があれば早期の解決を期待するというような、そういう期待の表明の範囲が私が就任後の経緯でございます。
#61
○土井委員 外務大臣、非常に正直だと私は思うのですよ。これは戸惑われるわけですね。打つ手がない、期待を込めて静観をするということしかどうもないというかっこうであるというのは非常によくわかるわけで、まことに正直な外務大臣だと私は思うのですが、このイラン・イラク紛争に巻き込まれまして現在なお危険水域に閉じ込められているわが国の船舶があるのです。これは現在どういうことになっているのですか。この船舶の中には船を置き去りにして総員引き揚げをしてしまっている船舶が多うございます。中には便宜置籍船のような場合には、そこに船員を二、三人置いたまま日本人の乗組員はもう引き揚げてしまっているというかっこうになっている船もあるようでありますが、こういう船舶の脱出について政府は積極的に努力を払う必要があるのじゃないですか。どうなんですか。関係国に対していろいろの働きかけをなすったのですか。今後どういうふうになさろうというのですか。何にもなさらないのですか、お伺いしたいと思います。
#62
○岩崎説明員 ただいまの土井先生の御質問にお答え申し上げます。
 現在イラン・イラク紛争水域に閉じ込められておりますわが国の関係船舶は五隻でございます。このうち四隻が日本船籍でございまして、残りの一隻は外国船籍でございます。これら五隻の船舶の船主は、ちょうど紛争が発生いたしまして一年を経過いたしました昨年の九月ごろからそれぞれの船の保険会社に対しまして保険金の支払いの手続を請求いたしまして、これはそれぞれの会社の経理に関する事項でございますので私ども必ずしも詳細を教えてもらってはおりませんけれども、現在までにすでにすべて保険金が支払われているというふうにわれわれは聞いております。そういうことでございまして、船舶の財産価値につきましてはすでにそのような保険の措置がとられておるわけでございます。
 他方、その残されました船はすでにそういう形で財産的な価値は低くなっておるわけでございますが、なお管理の必要がございますので、五隻のうちの二隻につきましては保守要員が派遣されて船の内部にとどまって保守に当たっております。残りの三隻につきましてはイラク側のこういった管理を受け持つ会社に委託してそれらを行っておるわけでございます。
 それから、御質問の中にございましたこれら船舶の出航の努力に関しましては、先ほど櫻内大臣からも御説明申し上げましたように、紛争発生以来日本政府といたしまして最大限の努力をいたしております。特に国連事務総長のパルメ特使のミッションのこれら船舶の出航に対する働きかけの努力に対しましては、私どもの国連代表部それからジュネーブの国際機関代表部等を通じまして万般の支援の努力を行いまして、特に日本関係船舶の関係者の意向を強く伝えて、これら国際機関による解決努力に対しまして支援をいたしてきております。
 以上でございます。
#63
○土井委員 いまの御答弁の中にあります五隻というのは、その船名がわかりますか。当初ペルシャ湾内に閉じ込められていた日本商船隊というのは七隻であったのです。いつの間に五隻になったのかちょっとわかりませんから、この船名というものを明らかにしてもらいたいのです。
#64
○岩崎説明員 土井先生御指摘のとおり、イラン・イラク紛争発生の時点におきましては七隻でございました。そのうちの二隻につきましてはすでに船の所有権の関係その他が日本関係から離れたわけでございます。それで現在日本と関係のございます船の名前は、日本船籍が四隻でございます。かめりあ丸、さつき丸、シルバークレーン、からたち丸、以上四隻でございます。それからリベリア船籍がヤングステーツマンでございます。それから、過去において日本と関係のございましたのは箱崎丸でございますが、これは現在リベリア法人に所有権が移転されております。それから、パナマ船籍のウィステリアという船がございましたが、この船はもともとパナマ船籍の船を日本側が用船をしておったわけでございますが、これは紛争発生の時点にさかのぼってこの用船契約が解除されております。したがいまして、現在日本と何らかの意味で法的な関係のございますのは五隻でございます。
#65
○土井委員 先ほど保険の問題が出たのですが、これは外国船籍になっているのですね。船の取り扱いというのはおのずと、保険の問題についても違うだろうと思うのですよ。どういう種類の保険を問題にされて先ほど保険ということをここで御答弁になったのですか、いかがです。
#66
○岩崎説明員 私ども必ずしも船の掛けております保険のことについて詳しくは教えてもらっておりません。これはそれぞれ各企業の企業秘密に関することでもございますので、詳しい資料もございませんので、即座にお答えすることはできない次第でございます。
#67
○土井委員 そういうことがはっきりしないでおいて、ここにあるところの船員の訓練を強化したり資格証明を云々したりしてみたって始まらぬのじゃないかと思うのですね。やはり船員に対しての待遇というものが十全であって初めて訓練も意味をなすし、資格証明の問題も意味をなすだろうと私は思うのです。それからすると、いまの保険に対してよくわかっていないというのはどうも私は解せないのです。これは船の安全とか船に対しての保証というものは、船員の待遇とか船員の権利というものを保障するということと密接に結びついた問題じゃありはしませんか。大臣、これはどういうふうにお考えになりますか。聞いていらっしゃって、大臣の御感想をひとつ承って次に進みましょう。
#68
○櫻内国務大臣 いま承っておりまして、土井委員の御批判もなるほどと思うのですけれども、それを条約との関係でどう結んでお答えすべきかちょっと申し上げにくいところでございます。
#69
○土井委員 大臣御承知のとおりに、条約上審議については条約の条文だけを読んでああでもないこうでもないという解釈をやって事済ますという問題ではどうもないので、やはり当外務委員会においてはいまのような背景というか、よって来るべき根拠といいますかゆえんといいますか、その背景にあるところの情勢というものは非常に大切だと私は思うのです。そういうことからしますと、それはどうも企業秘密に属することだから言えませんというようなことを言ってみたり、よくその辺はわからないということじゃちょっとこれは困るのですね。やはり、少しその辺もしっかり押さえた上で当委員会には臨んでいただきたいと私は思います。
 さて、そういう問題と少し関連することを先に進めてみましょうか。
 便宜置籍船というものは現在何万トンぐらいあるのですか。そしてそれは世界の船腹量の何%ぐらいを占めているのですか。その中でわが国の便宜置籍船について、一体どれくらいあってどういうふうに政府としてはその便宜置籍船に対する認識を持っていらっしゃるか、それをまず承りましょう。
#70
○宮本説明員 お答えいたします。
 便宜置籍船についての御質問でございますが、便宜置籍船と申しますのは先生御承知のとおり、リベリアとかパナマのような、船舶の登録要件が緩やかで外国人または外国法人が所有する船舶でも自国船として登録できる国に置籍されている船舶のうち、実質的には外国人があるいは外国法人が所有している船舶を通常便宜置籍船、そう言っているわけでございます。これがどのくらいあるかという問題でございますが、まず実質的な船主はだれかということを判定することが一般的には非常に困難でございます。したがいまして、なかなかその正確な数字がワールドワイドにどのくらいあるのかということをお答えすることは非常に困難でございますが、海運界におきましては一般的には世界の船腹量の三割程度が便宜置籍船ではないか、そのように言われております。ちなみに、リベリアとかパナマというような先ほど申し上げましたような国に置籍されている船腹量は約一億総トンでございまして、世界の船腹量の約二五%に当たります。
 次に、ではわが国の関係する便宜置籍船はどのくらいあるのかという御質問でございました。これにつきましては、わが国の海運企業の関係する便宜置籍船の正確な把握ということは、同様な理由で困難なわけでございますけれども、わが国でいわゆる仕組み船と言われているものがございます。これはどういうものかと申しますと、日本の海運企業が長期用船をする目的で日本の造船所の船台を外国の海運企業にあっせんいたしまして建造いたしました船舶のことを言っているわけでございますが、わが国の便宜置籍船の多くはこれであると思われるわけですが、この仕組み船につきまして、わが国の海運界の中の中核になります中核六社について調査したものがございます。これによりますと、昭和五十六年央でこれら中核六社が持っている仕組み船というものはおよそ百八十隻、五百万総トンあるということがわかっております。
 以上が、便宜置籍船の船腹量についての想定でございますが、次に、これらの便宜置籍船がどういう問題があるかということについて、あるいはその対策はどうかということについてのお尋ねがございました。
 これにつきましては、便宜置籍船のかかわる問題についてはいろいろな問題がございまして、いろいろな国際機関で討議が行われております。大きく分ければ二つに分けられるのではなかろうかと思うわけであります。
 一つは、便宜置籍船のもたらします弊害と申しますか、そういうものをどうして除去していくかという問題で、弊害と申しますのは、一つは安全の問題、あるいは環境汚染の問題、あるいはそこで働く船員の労働条件の問題、そういうものが非常に劣悪なのではないかという議論がしばしばなされております。これにつきましてはわれわれといたしましても、船がどういう船でございましても安全の確保とかあるいは海洋汚染の防止とか、あるいは船員の労働条件の向上とか、そういうことは図らなければならないことでございますので、関係する国際機関におきまして統一的な基準を設けまして、各国がその条約に入りまして、一定の基準をみんなが守っていくということで便宜置籍船のもたらす弊害をなくしていくということで現に努力が行われ、この問題はかなり改善している、解決の方向に向かっているのではないか、そのように考えております。
 それから、便宜置籍船のかかわりますもう一つの問題は、発展途上国から主として言われることでございますけれども、発展途上国側の言い方によりますれば、先進国が本来海運についての国際競争力を喪失しているにもかかわらず、リベリアとかパナマというような国に置籍することによって、あるいは安い船員を配乗させるとかその他いろいろな手段を講ずることによって、本来発展途上国が所有できるような船が先進国側にある、発展途上国の海運の振興が図られない、彼らの海運の進展を妨害しているものである、そういうような主張が行われているわけであります。これにつきましては、日本を初めとして海運先進国の間では、そういう主張はとうてい容認できない、海運企業、国際海運の特色というのは、資本とか労働とかあるいは貨物の輸送とかということがいろいろな国にまたがって行われるということによって国際海運の企業としての特色があるわけでございますから、そういうことによってまた安い運賃で経済なり国民生活の安定のために物が輸送されるということもあるわけでございますから、そういう原則はやはり保持されなければいかぬということで、そのような発展途上国側からの要請に対しては見解を異にしているというのが、現在の便宜置籍船問題の状況でございます。
 それから、今後どのように対処していくかということにつきましては、発展途上国側の海運を振興したいという要望はよく理解できるところでありまして、そのようなことにつきましては途上国側のそういうような基礎的条件を整備することに先進国側が協力することによって徐々に解決を図っていくということが適切ではないか、そのように考えておるわけであります。
#71
○土井委員 いまの御答弁を承っていますと、だんだん改善の兆しが見えているみたいな御答弁ですね。この手元にある「海上保安の現況」、五十六年八月に出されている海上保安庁のこれは海上保安白書なんですが、これを見ますと、いまの便宜置籍船がどういう状況になっているかということが書いてあるのですが、一向これは改善の兆しというところは見当たりませんよ。むしろこれは深刻化していっていますね。つまり要救助船舶隻数全体に占める割合からいったら、これはどんどんふえていっているのです。しかも小型よりも大型化していっているのですね。最近三年間におけるその隻数を見ていくと、日本の港に入港する船に対して見た場合に、これが日本船舶の約三倍だというのです。どんどんふえてきているのですよ。はっきり「便宜置籍国の一部に高いものがみられる。」と書いてあるのです。どこにこれは改善の兆しがあるのですか。どういう改善の努力をなすっているのですか。こういうことに対して何とか改善しようという努力、ひとつ努力が具体的にどういうかっこうでなされているかということがあるならばお知らぜいただきたいと思いますね。聞かせてください。
#72
○宮本説明員 お答えいたします。
 海上保安白書を引用されましたが、それは海上保安庁の責任者もおりますので御説明はあると思いますけれども、私が申し上げました便宜置籍船についての安全の確保とかあるいは海洋汚染の防止あるいは船員の労働条件の改善、そういうことにつきましては関連の国際機関におきまして、リベリアとかパナマとか、そういう国も含めまして一定の国際基準をみんなが守るようにするということで、そのための条約とかそういうものがIMCOとかあるいはILOとかそういうところで作成され、それにみんなの国が入って一定の基準をみんな満たすようにしようじゃないかという方向で国際的に解決するということで努力されていることは事実であり、現にそういう条約ができておるということも事実でありまして、そういう意味で改善の努力が払われており、着実に効果を上げつつあるということを申し上げているわけであります。
#73
○土井委員 よろしい、それなら言いましょう。
 昨年のUNCTAD海運委員会に日本からも運輸省の代表の人が出席されたようであります。五月二十七日からジュネーブで開かれた特別会議でこの便宜置籍船の段階的廃止を求める勧告というのを採択しているのですが、その後、その出席された運輸省の課長はどういうことを言われているか。ほとんどの先進海運国が反対した現実から見て今後簡単に進まないだろう、まだまだ相当時間がかかるから日本としても動く必要はないということを言われているのですよ。これは何ですか。おっしゃっていることと矛盾するじゃないですか。むしろ便宜置籍船の問題というのは、リベリアとかパナマとかいうふうな船の検査を受けなくていい、船舶税も要らない、そういうところに船舶国籍を移すといううまみがある。また、ペーパーカンパニー、つまり幽霊会社をつくって船をその国に売ったようなことにして検査や税金を免れるといううまみがある。そしてその船には日本の法令も何にもわからないそういう外国の船員が乗っかって日本の船主の船を動かしている、こういうかっこうなんですよね。すべてこれは船会社にうまみがある問題じゃないですか。そういう立場で運輸省というのは終始一貫いつも物を言われているように私には受け取れますよ、ずっといままでの経過を見ますと。便宜置籍船に対して、何とかこれを解消しようという努力があるなんということはどうも見当たらないのです。これはいまも少し御説明の中に出ましたけれども、途上国の商船を整備する上で便宜置籍船というのは阻害要因となっているということで、一定の期間内に廃止すべきであるということを途上国は主張しているわけですね。そして、それに従って先ほど申し上げた五十六年五月のUNCTAD海運委員会で登録要件を強化することによって通常の置籍へ徐々に転換を推奨するということが決議されたはずであります。そうしてことしの政府間準備会議、国連全権会議、この開催に向けてこのことを具体化するという決議の採択がなされたはずでありますが、日本としてはこれに対してどういう考えを持ってお臨みになるのですか。これには先進国の中でいろいろ思惑が動いているようです。日本も先進国なんでしょう。どういう姿勢でこれにお臨みになるのですか。
#74
○小宅説明員 お答えいたします。
 先ほど来運輸省から説明がございましたとおり、この便宜置籍船という問題は国連ではUNCTADにおきまして南北問題という観点から論議されております。海運委員会という委員会がありまして、ここで従来議論されていたことはいま先生おっしゃったとおりでありますが、このための政府間準備会合というものが来週から開かれることになっております。しかし、私どもが承知している限りでは、この置籍船問題を今後UNCTADでどういうふうに取り上げていくのかということにつきましては、事務局あるいは先進国、開発途上国、あるいは開発途上国の中でも必ずしも一本のまとまった考えというのはまだ出てきておりません。恐らくそういう準備会合を重ねまして一つの方向づけがなされていくものと思います。
 私どもといたしましては、日本は主要海運国の一つでありますが、もちろん他方におきまして開発途上国からの考え方には十分理解を示し得る立場にありますので、この辺は各国の意見を参考にしながら、この準備会合に今後積極的に取り組んでいきたいと考えております。
#75
○土井委員 いまのお答えを聞いていたらちょっとはっきりしないのですが、日本としては便宜置籍船というのを解消する方向で臨まれるのか、それともそれを相変わらず置くという方向で臨まれるのか、どうなんですか。
#76
○小宅説明員 開発途上国の側に便宜置籍船をある一定の期間内に廃止するべしという考え方があることは承知しております。しかし、仮にこれを排除をいたしましても、その結果必ずしも開発途上国の経済にプラスになるとは限らないわけでありまして、先進国の間ではこの開発途上国の主張に対しては強い反対論がございます。したがって、現時点におきましては、私どもはそういういわば強硬な意見にはくみし得ない、そういう立場で会議には参加することになると思います。しかし、これは大きな意味で南北問題の一環をなしている問題でありますので、その点は幅を持って今後の動きを見守っていくべきであろうと考えている次第でございます。
#77
○土井委員 それはさっぱり従来どおりこの問題に対しての取り組みの姿勢を変えないというふうな向きがいまの御答弁から出てくるわけであって、漸次それはうまくやっていく、改善する方向で努力すると先ほどおっしゃったこととちょっと矛盾するのですよ。これはどうなるのですか。この条約の審議に当たりまして説明書を見ると、この「経緯」の中には開発途上国も含めてこの条約に対しては参加をしたということが意味ありげに書いてある。さもそっちの立場からいろいろ言われていることに対しても日本は考えて対処しなければならないというふうな含みもあって、この条約についての理解を外務省は示しつつ、われわれに対してどうぞ御審議をと言われたに違いないと私は思っておったのですが、いまの答弁を聞いたのではさっぱりそうでもなさそうですね。これは運輸省が先ほどおっしゃったことと矛盾しますよ。
#78
○小宅説明員 ただいま御審議いただいておりますこの千九百七十八年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約。これにはリベリアも実は参加しております。したがって、私どもとしましては、便宜置籍国を含むできるだけ多くの国がこの条約に参加することによって、便宜置籍国も含め各国がより高い水準でこの船員の訓練とか資格証明の基準を満たすことによって、ひいては海上の安全とあるいは海運業の発展に寄与する、そういうふうに考えておりますので、私どもといたしましては便宜置籍船問題があることはもちろん認めておりますけれども、他方この条約にできるだけ多くの国が入るということによって、できるだけ便宜置籍船のいわば弊害といいますか、そういう面が解消されることを期待している次第でございます。
#79
○土井委員 それはどういう努力をなさるのですか。これは大体船会社の方からすれば、乗組員、船員の賃金が安いといううまみは最大のうまみなんです。日本人の乗組員と比較すると、置籍船で外国の船員を乗組員とするという場合は二分の一くらいの賃金で済むということが、大体見ていくと常識じゃないですか。その乗組員にどういう訓練をされるのですか。いま海上保安庁の方でもはっきり言われているのは、わが国の海事関係法令、航法、沿岸海域における船舶運航上の注意事項等について必要な情報が全く不足しているということを率直に認めて、これは非常に重大な問題だという認識を持っておられるのですが、こういうことに対してどんな努力を払われるのですか。
 これは笑い事じゃない話があるのですよ。東京湾に入ってきた便宜置籍船で、千葉県を相変わらず安房国と書いた海図を持っていた外国船があるのです。上総、下総、安房国、こういう海図を頼りに日本の港に入ってくる、相変わらず。どういう指導をなさるのですか。どういう努力をされるのですか。外務省が努力をすると言われるのだから、ちょっと私は外務省に聞きたい。
#80
○小宅説明員 この条約の締約国になりますと、その条約の十条でございますが「監督」の規定というのがございます。附属書にも監督についての定めがございます。こういうものに基づきまして、締約国は自国に入港いたします船に対して資格証明等についてそれをチェックするということを含めた監督を行使することができます。それからまた仮に、その進入の過程で事故を起こしたような場合には、果たして必要なその当直等を十分していたのかという、その当直能力の確認ということを含めまして監督行為をすることができます。こういうことでございますので、先ほど申し上げましたけれども、この条約に盛られているような水準に各国、特にリベリアのような便宜置籍国も達すれば、おのずと便宜置籍船の持つ先ほどの弊害というものの一部は解消されるものと考えております。
#81
○土井委員 解消されませんね。いまおっしゃったようなことは、現在でも行われていることではありませんか。国によってはこの便宜置籍船の入港を拒否している国だってあるでしょう。御存じのとおりなんです。日本はそういう措置は講じないのですよ。どうぞ、千客万来です。だから事故も万来だ。それに対していつも後追いをいまおっしゃったようにやっては苦しんでいる。海上保安庁の資料を見ると、深刻なありさまがずっと書いてあります。以前といまの御答弁では何ら変わらない。これはそんなことをやってみたって始まらぬですよ。
 ちょっとお尋ねをします。
 先ほど開発途上国の方からそういう要求があっても、わが国としては消極的でその開発途上国の要望には乗れないというふうな趣旨の外務省からの御答弁、その中に、やはり資本の国籍移動というものは原則として自由だということが内容として先進国の中でお互いに認め合ってきたということも理由として認識されているのでありましょうが、私はちょっと気にかかる話があるのです。これは何かというと、いまのアルゼンチンのフォークランド島占領の問題であります。
 ちょっと外務省にお尋ねしたいのですが、このフォークランドというものの領土権はアルゼンチンにあるとお考えなんですか。どうなんですか。それに対して武力行使を行ったということの是非はこっちにおきますよ。これは領土権自身はいずれに帰属しているのですか。日本としてはどういうふうに理解をされていますか。
#82
○都甲政府委員 本件につきましてはイギリス側及びアルゼンチン側にそれぞれ長い非常に複雑な歴史的な経緯があるようでございまして、日本国といたしましては、これらの長い歴史的な経緯のある事実につきまして特定の見解を表明することは差し控えるべきであるというふうに考えております。
#83
○土井委員 日本としてはわからないということなんですね。領土権について、いずれに帰属するかわからない、こういう姿勢で外交をおやりになるわけですね。これは一体どっちを相手にしていいか、この地域についてはわからない、こういう外交なんですね。そう理解してよろしゅうございますか。
#84
○都甲政府委員 事実関係につきましてはいろいろ把握しておりますけれども、それをどう評価すべきかということにつきましては、それぞれの歴史的な重みその他が双方の主張の中にありますでしょうから、それについて日本としての立場から断定的な評価を下すのは適当でないという考えでございます。
#85
○土井委員 そうすると、実効支配をしている国を相手にここの領土権の行使は考えるというかっこうになるのですか。それは大変おかしい話になりますよ。それでは、たとえば竹島は韓国のものになっちゃいますよ。
#86
○都甲政府委員 まさにいまのような事実もございますけれども、そのようなものにつきまして法的にどういうふうに判断を下すかということにつきまして、評価を差し控えるのが適当であると考えているわけでございます。
#87
○土井委員 これはこの問題についての理解のABCじゃないかと思いますね。どう対処するかは、それについてはっきりさせない以上は何も出てこない。そうすると、この問題については日本はうんでもなければすんでもないのですね。何がどうあろうと言うことができないから、ただただ黙っておりますという姿勢をずっとおとりになる、このように理解してよろしいか。
#88
○都甲政府委員 本件につきましての領土権の主張につきましては私がいま申し上げたような評価でございますが、今後の解決の方法につきまして当事者間での交渉が行われると思いますので、私どもとしてはそれを十分に注目していきたいということになるわけでございますけれども、いずれにしましても、武力の行使が行われたという事実は事実として、その評価の上に立って、たとえば国連の安保理における日本政府の態度を決めたわけでございますので、そういう評価はあろうかと存じます。
#89
○土井委員 その評価の上に立ってと言われる日本語の「その」の中身はちょっと私にはよくわからない。武力行使を指して「その」とおっしゃっておられるのか、領土権の主張を指して「その」とおっしゃっておられるのか、いまの御答弁、ちょっとよくわからないのですよ。
#90
○都甲政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、領土権の主張につきましての評価につきましては、先ほどから申し上げましたように、複雑な歴史的な経緯もあるし、それからそれぞれの主張の中にさまざまの要因もあろうかと思いますので、それに対する評価を下すことは適当でないと考えておりますので、私が申し上げました「その」というのは実力行使が行われたという点でございます。
#91
○土井委員 つまり、刻々と変わる事情変更によって日本の認識も変更していく、こういうことであろうと思います、いまの御答弁を承っておれば。確固とした認識はない、ただ事情が刻々変わっていくことによって日本としては考えさせていただきましょう、こういうことだろうと思います。
 ところで、イギリス政府はこのフォークランド諸島奪回に出動しているのですが、海軍機動部隊が燃料が足らなくなってきたわけです。のろのろのろのろ行くわけです。とうとう燃料が足らない、補給しなければならない。そこでどうなったかといったらタンカーを徴発し始めた。隻数はただいまのところ明らかにされておりませんが、相当数に上るだろうと言われている。
 さてそこで、まさか日本の便宜置籍船がこの徴用に応じて行くはずはなかろうと思われますけれども、そこのところはわからないとお答えになるだろうと思いますよ、便宜置籍船の問題は押さえてらっしゃらないんだもの。そして現に日本の船主であって、リベリアだ香港だ、パナマだという船籍の船はたくさんあるわけですね。徴用されないという保証はありませんよ。船主はだれかと言ったら日本だ、こうなるのです。そうなってくると全くこの問題に加担しないということにはならない。そういう場合について万事ないと断言できますか。どうですか。これは私は断言はむずかしかろうと思いますが、どうです。
#92
○宮本説明員 お答えするのが大変むずかしいわけでございますけれども、いまのお話、先生の御質問の仮定に即して考えますと、イギリスが自国の艦隊に燃料を補給するために民間のタンカーを徴用するというお話でございますので、常識的に考えますと、それはイギリスの政府の支配下にある、支配することのできる船舶ということでございますから、通常イギリス船を徴用するというふうに考えるのが普通だろうと思います。その場合、イギリスは通常便宜置籍国と言われておりませんから、そういうイギリス政府に日本の海運企業が実質的に所有している船舶が徴用される可能性があるかという問いと考えれば、そういうことは消極的に解しているというふうにお答えせざるを得ないと思います。
#93
○土井委員 甘いですよ。イギリス側はこのフォークランドに出動することのための経費は大変なものになるということは覚悟の上でやっておるのです。少しでも持ち出すお金を減らさなければならないですよ、第一船員の賃金を。先ほど言ったことをもう一度思い起こしてください。それからこれは危険が伴いますよ。それからするとどういう船を使うかということもひとつ冷静に考えてみてください。私は便宜置籍船というのがここで用船として使われない保証はどこにもないと思う、日本の船主の船の中で香港籍というのがあるんですからね。これがイギリスの支配下にないと言えないでしょう。どうです。外務大臣、もしそういうことが起こってくる場合どうなさいますか。これは十分にあり得ますよ、事実としてある。どうですか。
#94
○櫻内国務大臣 大変難解な問題でございまして、私からお答えするとすれば、そういう場合があるかもしれぬ、こういうことなんですが、私としてはこの時点ではそういう場合はまあないんではないか。しかし、あるという前提での土井委員の御質問ですから、ある場合はどうかということは考えさしていただきます。
#95
○土井委員 これからお考えになるんですか。これからお考えになる。いままでは全くそういうことをお考えになってらっしゃらないから、そういうことをお考えになったことがないので、それじゃあいまから考えてみる、こういう御答弁と受けとめてよろしゅうございますね。
#96
○櫻内国務大臣 そのとおりでございます。
#97
○土井委員 これはぜひひとつ当たってみていただきたいと思います。これは本当に全く無関係じゃないです。そしてそれに対して外務大臣、全くいままでお考えの外であったようでありますから、事情がこれは推移しておりますけれども、現実の問題でございますから、ひとつこれについてもお考えを向けていただいて、日本としてはきちっと姿勢を持っていただかないと、これは思わぬところで思わぬことになるという可能性もございます。よろしゅうございますね。
 時間の方が私大変気になるので、あとたくさんの質問があるのですが、せっかく労働省に御出席いただきましたからちょっと一つ聞きたいのですが、マルシップというのがあるのです。これはいまの便宜置籍船とは全く別。船籍は日本であって乗組員は外国人というマルシップというのがあるんですね。(「この間事故を起こしたやつだ」と呼ぶ者あり)お隣からこの間事故を起こしたやつだというやじが飛んでおりますが、そのとおりでありまして、「へっぐ」の場合まさにマルシップなんです。裸用船とも言うわけであります。このマルシップに乗っている乗組員の人たちの状況というのは、大体船員の資質であるとか、技能とか、それから海難事故とか海洋汚染というものに対して認識が非常に低いということが一般に言われているんですね。
 そこで、労働省にちょっとお伺いしたいのは、労働省とされては、いままでいろいろな日本の職場における外国人労働者の規制というものを閣議決定でされてきているのですが、これは日本の船籍ですかられっきとした日本の職場です。そこに外国人の乗組員が雇われて、そして仕事をするということは、本来労働省のこの趣旨にもとるんじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
#98
○中村説明員 確かに、雇用基本計画を閣議でお決めいただくときに、外国人労働力の問題についてはこれを導入しないのを原則とするということで御了解いただいておりますが、しかし、船員の問題につきましては、残念ながら私の所管ではございませんので、お答えいたしかねます。
#99
○土井委員 日本船というのは日本の領土の延長なんですよ。外国船というのはどこを航行していようと、それは外国の主権の延長なんですよ。だから日本の船の船上というのは日本の国内にある職場と同じように考えなければならないんですよ。労働省、もう一度御答弁願います。
#100
○中村説明員 確かに、それは日本船の上だということではございましょうけれども、船員の問題は、官庁の縦割りをがたがた言うわけじゃございませんけれども、やはり運輸省が所管でございますので、私のお答えは差し控えさせていただきます。
#101
○土井委員 乗組員の労働条件とか、労働実態とか、それから労働者としてのいろいろな約束されているはずの権利等々についても、全部運輸省ですか。労働省は全く関係がございませんか。
#102
○中村説明員 御質問のとおりでございます。
#103
○土井委員 同じ労働者であってそういう取り扱いになったというのは、どういうふうなことがその理由になっていますか。なぜそういう取り扱いになったのです、船員の問題は全部運輸省というのは。全く労働省に関係ないというのは。
#104
○中村説明員 現在私の立場で歴史的なことを深く掘り下げてお答えする資格はございませんけれども、歴史的な経緯によりまして、船員の問題につきましては運輸省、こういうことになっております。
#105
○土井委員 いまの御答弁ではちょっと答弁にならないですね。歴史的な経緯についてそうなっているが歴史的な経緯を私は知らない、これで答弁になりますか。まるで答えてないに等しい。
 これは労働省、次回に私、十六日にもここで質問いたしますから、もう一度このところの答弁は整理して答弁し直してくださいね。歴史的な経緯があるんだったら、そこを整理して出直してください。よろしゅうございますか。いや、それはもう運輸省は運輸省で結構ですよ。労働省に私は言っている。運輸省の方を指さしてどうぞなんということは、私はあなたに対してそれは言ってない。それはあなた自身がちゃんとしてくださらないと困る。労働省、よろしいですね。私は突然お呼び立てしたんですが……。
#106
○中村説明員 運輸省と協議の上、御返答いたします。
#107
○土井委員 それで、もう時間ですから急ぎますけれども、「へっぐ」の場合を見ているとひどいんですね。
 船長は甲種船長の資格、航海士、機関士も日本の免状をそれぞれが必要なはずが、どうもあの銃撃事件の際に発覚したわけでありますけれども、船長は二ランク下の甲種二等航海士の資格しかない、二、三等機関士は日本の免状を持っていない、こういうことで、日本の国籍を持っている船に雇用をされてそれぞれの乗組員がその船で仕事をしているというかっこうになるわけなんです。
 そこで、今回、この条約によっていろいろ訓練の問題なり、資格証明書の問題もございますけれども、それに先立って尋ねたいことがあるんです。なぜILOの百四十七号条約というのは日本は批准できないんですか。なぜ海洋汚染防止条約というのが批准できないんですか。幾らこういうマルシップに乗っている乗組員に対しての訓練だの、やれ資格証明だのと言ったって、それに対して再三再四私は言うように、状況を整備しておくということは何より大事ですよ。なぜ私がいま申し上げたような条約が日本としては批准できないんですか。
#108
○小宅説明員 いま土井先生、二つの条約を挙げられましたが、そのうちの一つの海洋汚染防止条約でございますが、これは一九七三年にできて、七八年の議定書で多少改正されたものでございますが、これにつきましては、関係の国内法令の整備を含めまして広範にわたる国内的実施体制の整備を必要とするということで、現在いまだに締結に至っておりませんが、できるだけ早く締結するべく、所要の準備と検討を行っている段階でございます。
 もう一つのILOの第百四十七号条約につきましては、この条約にはわが国の入っていないIL
O条約等も引用されているわけでございますが、いずれにいたしましても、国内法制との整合性等なお検討するべき点がありますので、引き続き現在検討を続けている段階でございます。
#109
○土井委員 これは二つともに対して外務省の消極的な姿勢を聞けば聞くほど、今回、批准すべき条約をほったらかしにしておいて、この船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約でもあるまいという気が私はします。その場しのぎで何とかやれば済むというような問題じゃないですよ。きょうの御答弁を聞いていたって、どうもこれは大盤石とは言いかねますね。どうにもならない。答弁を聞いていたって心もとない限りです。
 もう時間が来ましたから、次回十六日に大事な問題は譲ります。あと大事な問題は続々ありますよ。
 以上、ありがとうございました。
#110
○中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三分開議
#111
○中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。高沢寅男君。
#112
○高沢委員 私は、午前中に引き続きまして、植物新品種の保護条約、これについてただいまから御質問をいたしたいと思います。
 まず総論的なお尋ねでありますが、この条約は国際的な統一原則に基づいて植物の新品種の育成者の権利を保護する、こういう目的で作成された条約でありますが、この条約ができた経緯及び日本がこれに加盟するどういうメリットがあるのか、こういうお尋ねをいたしたいと思います。
#113
○小宅説明員 お答えいたします。
 植物の新品種の保護につきましては、すでに一九六一年に条約が成立をしております。この条約は、農業の分野におきまして良質の、多収の、かつ耐病性にすぐれました新品種を育成し、普及するということが農業の発展のためにも重要であるという認識に立ちまして、植物の新品種の育成者の権利を国際的な統一的な原則で保護しようということで作成されたものでございます。
 ところが、この一九六一年条約におきましては、その育成者の権利を保護するに当たりまして、二つの方式のいずれかによれ、特許ないしは品種保護、いずれかによるということをかたく義務づけていたこと、それからその条約に十三の品目を別添いたしまして、これに対して品種保護を与えることを義務づけていたこと、こういうことがありましたものですから、アメリカが加入できなかった。アメリカの国内法制との関係上加盟がむずかしかった。それで、六一年条約には最終的には十二カ国参加したわけでございますが、必ずしも十分の国が入らなかった。したがって、米国の参加を確保するとともに、今後は開発途上国を含めましてより広い参加を確保しようという観点から、新たにこの一九七八年の条約がつくられたわけでございます。
 そこで、この新しい新品種保護条約に加入するメリットでございますが、一つには、この条約に基づく権利義務を国内法で担保していくことになりますが、この結果、わが国は国際的な統一ルールを遵守するということになります。したがって、種苗の分野におけるわが国の信用を高める、わが国の品種保護制度が海外にも紹介される、この結果、海外からの優秀な品種がわが国にも入りやすくなる、それから、これらの品種を材料とした育種というものが国内で可能になる、こういうことで、ひいては国内の農業の発展に役立つということが言えるかと思います。
 次に、この条約に加入することによりましてわが国の国民が育成する品種が海外においても、外国の締約国におきましても保護されるということになりますので、わが国の海外向け育種というものが促進され、これもひいては世界における育種の促進、ひいては農業の発展というものに寄与することになるのではないか、こういうところにこの条約に加入するメリットがあるというふうに考えております。
#114
○高沢委員 いまの御説明で、六一年条約ではアメリカが加入できないというネックがあった、それでその後改正を加えたというふうな経過の御説明があったわけですが、六一年にできた条約、その後七二年、七八年と改正を加えて今日に至っておる。この全体の長い期間にわたってわが国は加盟しなかった、今回加盟する、こういうふうになってきたいきさつは一体どういうことでしょうか。
#115
○小宅説明員 この条約が発効いたしましたのは昨年の十一月でございます。この発効いたしましたのは、発効の要件として六一年条約の締約国三カ国を含む五カ国がこの条約の締約国となったということによってその条件を満たした後一カ月たって発効したわけでございます。
 各国の加入の状況を振り返ってみますと、最初にこの条約の締約国となりましたのがニュージーランドで、これがおととしの十一月でございます。次にアメリカがおととしの十一月。したがって、昨年のいまごろの時点におきましては締約国は二カ国であった。しかも旧条約の締約国は一つも入っていなかった。こういう状態であったわけでございますが、昨年の春から夏にかけましてアイルランド、スイス、南アフリカ、デンマーク、この四カ国がこの条約の締約国となりました。このうちスイス、南ア、デンマークは六一年条約の締約国でございます。こういうふうに急速にここ一年ほどの間に動きがありましたので、政府といたしましては可急的速やかに入ることが望ましいとの観点から今回の条約に締結承認をお願いすることとした次第でございます。
#116
○高沢委員 いまの御説明も最近の、ここ一、二年のそうやって次々に締約国がふえてきて、それで政府も加入の決意をした、そういう御説明があったわけですが、私が先ほどお尋ねしたのは、六一年条約ができて、それからいままでもうすでに二十年を越しているわけですが、この間日本が入ってなくて今回入る、こうなってくるというのは一体どういうわけだということをお尋ねしているわけです。
#117
○小宅説明員 失礼いたしました。わが国が六一年条約を締結しなかったのは、国内法制上条約を実施し得る体制になかったということでございます。わが国におきましては昭和二十二年に農産種苗法というのが制定されておりますが、これは一九六一年条約に定める権利を育成者に与えるものではなかったということでございます。その後、国内におきましてこの農産種苗法というものを改正いたしまして、新たな種苗法を制定する、その種苗法の中身として、先ほど御説明いたしました植物新品種条約を新しくしていく、そういう動きと内容的に一致させるということになりまして、この種苗法は五十三年にたしか成立をしたわけでございますが、その結果、事実上、政府といたしましてはこの六一年条約といいますか、その新品種の国際的な保護制度に参加する準備がかなり整ったわけでございます。そこで先ほど申し上げましたとおり、この条約が発効するに至りましたので、種苗法に若干の修正を加える形で今回承認をお願いした、そういうことでございます。
#118
○高沢委員 そこで今度は、実態として、わが国と諸外国との間の種苗の流通状況ですね。日本から諸外国へ日本で育成した種苗が出ていく、外国で育成した種苗が日本へ入ってくる、こういうふうな流通状況の実態はどうだったのか。それと、今回この条約に加盟した場合に、そういう流通状況にどういう変化が出てくるのか、ひとつこの辺の御説明を願いたいと思います。
#119
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 海外との種苗の流通は、近年輸出入とも年々増加してまいっております。具体的な数字を昨年一年間の数字で申し上げますと、種苗の輸出の総額は六十三億円でございます。近年輸入の伸びがちょっと多いものでございますから、輸入総額は百二億田でございますけれども、輸出入双方とも伸びておるわけでございます。試みに手元にある資料から五十二年の数字と比較しますと、それぞれ二割、五割と伸びてきておるわけでございます。
 さて、これを輸出について見ますと、輸出先につきましてはオランダが多うございます。全体の二割を占めております。次いでアメリカ、西ドイツ、韓国、ブラジル、こんなところでございまして、輸入先ではアメリカが多くて六割を占めており、次いでオランダ、韓国、台湾、スウェーデン、デンマーク、こういう順序になっております。
 種苗の種類別に見ますと、輸出では野菜の種子が半分近く、約三十億円を占めております。次いで果樹等の苗木、穂木のたぐいが十四億円、次いでユリ、チューリップ等の球根類、花卉の種苗、こんな順序でございます。輸入につきましては、飼料作物の種子が全体の約四割に相当する三十六億円の輸入、こうなっております。次いでトウモロコシ等の作物の種子二十四億円、野菜の種子が二十三億円、キウイフルーツ等の苗木、穂木、チューリップの球根、こういうようなことでございます。
 さて今後UPOV条約、植物新品種保護条約に加入しますとどうなるかという件についてでございますが、加盟いたしますと、種苗の国際交流が一層円滑化いたしますものですから、外国からの種苗の導入も増加すると予想されますし、他方輸出もふえていくだろう、こう考えるわけですけれども、基調的にはわが国が技術的に得意なものは輸出して、自然的、経営的条件により不利なものは輸入するという形で、輸出輸入ともふやしていくということで取り組んでまいりたいと考えております。
 これまで条約に入らなかったことに伴う問題という点でのお尋ねの件につきましては、種苗の輸出入は品種保護制度の適用を受けないで行う限りにおきましては、何ら問題はないわけでございますが、もちろん植物防疫法の適用とか、それは各国共通の問題でございますけれども、事条約との関係で申しますと、そういうことになるわけでございますが、この品種保護制度に関係いたします場合には、この品種保護制度を必要とするというのが一般でございます。したがいまして、五十三年の種苗法の制定以前は、わが国は花卉とか野菜といったものの優良品種の種苗を導入しようとしたところが、わが国には品種保護制度がないために、わが国への輸出をお断り申し上げますということで輸出を拒否されたという事態があったわけでございますが、種苗法の制定によりわが国も諸外国並みの種苗制度を持ったことになりました以降は、このような問題も解消したわけでございます。条約に未加盟であったがためにわが国からの種苗の輸出が拒否されたという事例はいまのところ聞いていない次第でございますけれども、しかし相手国の法の運用次第ではわが国の業者が不利をこうむるというおそれがないわけではございません。したがいまして、今回の条約の発効を機会にこれに加盟することとした次第でございます。
#120
○高沢委員 条約第十六条についてお尋ねいたしますが、これは加盟いたしますと、この同盟国は理事会を構成する、ここにわが国も加盟をすれば代表を任命して派遣する、こうなるわけですが、代表、代表代理、それから顧問、随員、こういうふうに規定されておりますが、これはわが国の官庁ではどういう官庁からどういう人がこういう理事会へ出られるのか、御説明を願います。
#121
○小宅説明員 お答えいたします。
 この十六条に基づく代表及び代表代理につきましては、外務省と農林水産省の両省間で協議をいたしまして、両省関係者を中心とした代表団を派遣したいと考えております。そのほか顧問、随員等につきましては、まだそこまで詰めて考えておりません。
#122
○高沢委員 それじゃいまの点は、これから外務省と農水省の間で検討、相談して決められる、こういうことですか。
#123
○小宅説明員 そのとおりでございます。
#124
○高沢委員 条約第二条へ戻りますが、第二条では、加盟した同盟国は、この条約に定める育成者の権利を、特別の保護の制度、それからもう一つは特許の制度、こういう二つの方法による保護をやっていい、こうなっておるわけですが、ただし同一の種類の植物の保護は一つの方式で行う、こういうふうなことになっております。しかし国内法によってこれらの二つの方式の双方の保護を認めることもできる、こんなふうな規定づけになっておりますが、わが国の場合はこの二つの方式の選択をどうされたか、それからまたほかの加盟国で国内法の関係で二つの方式をともに使うというふうなやり方をとっている国は具体的にはどういう国があるのか、それからその国がそういう方式をとる理由は一体何か、この辺の説明をひとつお願いをいたしたいと思います。
#125
○小宅説明員 お答えいたします。
 この条約に基づく育成者の権利の保護というものにつきましては、出願者の立場から当然単一の制度によって行うことが望ましいわけでございます。特に、同一の種類の植物につきまし二つの方式によって保護が行われます場合には、同一の品種について異なる育成者がそれぞれの方式で権利を与えるというような場合に、その権利が相互に抵触をするという問題が生じますので、この条約の考え方といたしましては、同一の種類の植物に対しては二重保護を禁止しているわけでございます。したがって、わが国におきましては種苗法による品種保護に統一をしているわけでございます。ところが、アメリカにおきましては、従来から特許によるやり方と品種保護によるやり方が併存をしておりまして、同一の種類の植物に対して、たとえば無性繁殖の植物に対しては特許法というものにより、他方有性繁殖の植物につきましては品種保護法により保護をしていたわけでございます。したがって、アメリカのこういう事情を配慮いたしまして、この条約に特例として第三十七条というのが設けられました。したがって、アメリカはこの第三十七条を援用いたしましてこの条約への加入受諾に当たりましてその旨の通告を行い、今日に至っている次第でございます。
#126
○高沢委員 そうすると、いまの御説明では第三十七条通告ですね、二つの方式を併用して使うということを通告する、この規定はアメリカのために設けた規定である、こう理解していいわけですか。ほかに加盟国でもってこういう規定に該当するようなのがあるのかどうか、その辺はいかがでしょう。
#127
○小宅説明員 ただいま申し上げました特別のやり方をとっている国は、アメリカのみでございます。したがって、この三十七条というのはアメリカの条約への参加を容易にするために設けられた規定でございます。
#128
○高沢委員 条約第二条へ戻りますが、第二条の(2)ですね、(2)の方ではこういうことが規定されていますね。「同盟国は、特定の種類の植物については、特定の方法により繁殖する場合又は特定の用途に供される場合に限定してこの条約を適用することができる。」これは、われわれのようにこういう植物関係素人の者にはなかなかわかりにくい規定ですが、これは何を意味しているのか、またなぜこういう規定が入ったのか。この第二条の(2)は今度新しく入った規定である、こう聞いておりますが、その辺はどういうことでしょうか。
#129
○小宅説明員 お答えいたします。
 わが国におきましてはキノコ類、たとえばアラゲキクラゲ、エノキタケ、キクラゲ、シイタケ等等ございますが、こういうキノコ類につきましては子実体の生産、つまり食料用の生産のために栽培される場合に限りまして保護を種苗法上与えております。この二条二項の規定は、そういう形の規定を可能にする条項でございます。
#130
○高沢委員 いまの御説明、私まだ残念ながらよくのみ込みかねるのですが、これは何か植物の種の存続の関係とか、それが一代雑種というふうなものが生まれるとかというような関連も考慮して出た規定であるのかどうか。その辺のところを農水省の方から、もしできたら少し御説明願いたいと思います。
#131
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 いま御指摘の方法と目的の二つがあるわけでございます。まず方法の点につきましては、具体的にはアメリカがたとえばF1品種は除く、一代交雑の方法によるというようなものは除くというのがこれに該当するかと思います。それから目的で限定するという方法としては、先ほど外務省の方からお答えがございましたように、わが国においてキノコ類について子実体の生産目的ということに限定しておるというのが例でございます。
#132
○高沢委員 この条約にわが国が今回加盟するということになるわけですが、昭和五十三年に種苗法の改正が行われました。この種苗法の改正は、もちろん国内政策としての農産種苗に対する政策をより改善する、こういう目的もあったでしょうが、同時にもう一つの目的は、この条約に加盟するための国内条件を整備する、こういうことでもって種苗法の改正が行われた、こう私は理解するわけですが、その五十三年の種苗法の改正の際に、いま言いました保護のやり方を種苗法でやるというやり方、一方では特許でやるというやり方と、その間の調整が政府部内でなされた。そこでもって特許庁と農水省との間の合意事項がつくられておる、こうお聞きしておるわけですが、その合意事項の主なる内容をひとつ御説明願いたいと思います。
#133
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 両省庁間で話し合いましたことは、基本的には種苗法と特許法との今後の運用の問題についてでございますけれども、種苗法の法案は植物新品種の保護に関する国際動向等にかんがみ立案されたものであるということ、つまり新しい条約への加盟ということを背景にして立案したものであるという認識を確認するとともに、特許制度、品種登録の制度は保護の対象、態様を異にするということと、それから植物新品種それ自体の発明があったときには、特許される可能性は理論的には否定し得ないが、農林水産植物については工業製品と比べて特殊性を有すること、品種登録制度では登録要件が緩和されるために大部分が品種登録の出願によるものと予想されることなどにより、新品種それ自体を対象とする特許発明は従来もなく、今後も事実上まれであろうと考えられることと、それから今後条約へ加盟するに際しては相互に協力するとともに、両制度の相互の円滑な運営について情報の交換その他十分な連絡を行っていくということを話し合ったものでございます。
#134
○高沢委員 いま農水省の方から御説明があったわけでございますが、これについて特許庁の側からも実は御見解をお尋ねしたいと思うわけです。
 この植物新品種の保護条約のいわば権利保護、この面は種苗法でやりましょう、こういう申し合わせがいま説明された内容だと思うわけですが、ただ現実にこの植物新品種を発明したときに、その発明の特許を求める、それを特許法によって扱うということは理論上はあり得る、しかし現実には非常にまれであろう、こういうことになっております。いまの申し合わせの中でも理論上はあり得るという規定になっているわけであり、また仮にそういう立場に立って植物新品種の出願があれば、これは従来どおり特許の審査の対象にするというふうなこともこの中に書かれているわけですが、特許の行政を扱う特許庁としてはこの申し合わせをどういうふうに理解され、あるいは位置づけされておるか、それをちょっとお尋ねしたいと思います。
#135
○佐藤(満)説明員 お答えいたします。
 先ほど農林省の方から御説明のありました申し合わせ事項につきましては、特許庁といたしましては、今日においても種苗法を制定いたしました五十三年当時と事情は変わらないというふうに考えておりまして、当時合意されました考え方は引き続き有効であるというふうに考えております。
 それから、先生の二番目の御質問の育成者が特許庁に申請した場合という点でございますが、先ほど農林省からも答弁がありましたように、種苗法の品種登録の対象となる農林水産植物について植物新品種それ自体を対象とする発明が理論的には考えられますが、植物の特殊性ということを考えますと、特許要件としての新規性、進歩性というものを満たすことはきわめてまれであるということで、今日までは植物の新品種についての特許はございません。それから出願もきわめてまれであるということでございます。しかしながら、新品種の育成者が特許庁に適式な発明の出願をしてくるという場合には審査を行いまして、特許要件を満たす場合には特許するというふうに考えております。
#136
○高沢委員 では、いまの御説明を受けてお尋ねしますが、現在特許庁に対して植物新品種の特許の出願というものが出されている件数はどのくらい現実にありますか。それから、その出されておるものの現在の審査の状況はどういうふうになっているか、その御説明を願います。
#137
○佐藤(満)説明員 お答えいたします。
 本年二月までの公開公報、要するに公になりました出願につきまして見ましたところ、植物新品種の発明の出願の件数は、これは四十六年の新法以降でございますが、累積で四十二件出ております。そして、先生御案内のとおり審査請求のありましたものにつきまして審査をいたすというたてまえになっておりますが、このうち審査請求のありましたのは二十九件ということになっております。現在までの処理状況を申し上げますと、特許にならないという形で拒絶査定になりましたものが五件、それから出願の段階で取り下げをいたしましたのが一件というような中身になっております。
#138
○高沢委員 いま出願なり審査なりの状況の御説明がありましたが、先ほどの御説明によると、植物の場合には新規性であるとか進歩性であるとかいうふうな面において特許の認められる可能性は非常にまれであろうということであります。そうすると、いま出願して審査を求めておる人たちに対しては、結果論から言えば、どうもむずかしいよ、なかなかそうはいかぬよということになるのか、その辺はいかがでしょうか。
#139
○佐藤(満)説明員 先ほどお答えいたしましたように理論的には可能であるという前提でございますが、植物は他のものと比較いたしますと特殊性を持っております。先ほど農林省からも工業製品とは違うという話がございましたが、その特殊性と申しますのは、植物につきましては、それぞれの植物の基本的形質はその植物の属する種ごとに同一であるというようなことですとか、植物の品種は極の基本的形質を失わない範囲での形質上の変異であるというふうなことから、進歩性、新規性というもののいわゆる特許要件を満たすのがなかなかむずかしいということで先ほどのようなお答えをしたわけでございます。
#140
○高沢委員 午前中の稲垣委員の御質問の中で遺伝子工学という問題について触れられまして、私もこれは大変重要な問題であると実は考えるわけです。この遺伝子工学というものが全面的に採用され、展開されていくということになりますと、いままで考えてきた農水産植物の考え方とかなり次元の違う発展あるいは次元の違う新しい発明というようなものが将来続々と出てくるのではないかと実は私は思うわけです。これは将来の問題だと言われればそれまでですけれども、いわゆる植物学の種の枠を超えるような、属の枠を超えるような新品種がつくられてくるというふうなことになってくると、特許の対象としてこれを認めていくというふうなケースが将来非常に多く出てくるのではないのか、こんなふうに思いますが、この辺は特許庁はどういうふうにお考えでしょう。
#141
○飯塚説明員 お答え申し上げます。
 遺伝子の組みかえ技術につきましては、現在のところ基礎的な研究段階でございまして、特に高等植物につきましてはまだ実用化段階には至っておりません。そういうことで、特許公開されたものも一件もないという状態でございます。しかし、将来研究蓄積がなされるに至って急速に発展する可能性を有している技術分野でございますので、そのような技術を利用した育種方法によって新品種が開発される可能性が高まることが考えられます。特許庁といたしましては、こうした技術の発展及び各国の動向等も十分注視しつつ、将来の問題としてその時点で的確に対処してまいりたいと考えております。
#142
○高沢委員 昭和五十三年の種苗法改正に当たっての農水省と特許庁の申し合わせ事項では、植物品種の場合に特許の対象になるものは理論上はあり得るが現実はまずないでしょうというふうな合意になって、それは現在も有効であるというお答えが先ほどあったわけです。しかし、いま言ったように将来の遺伝子工学の発展によって事態が変わってくるというふうなことを展望した場合には、そのときはまた農林水産植物の特許という面が出てくる可能性は大いにあると見なければいかぬと私は思います。そういう点において、種苗法による新品種の権利の保護という側面とまた別な次元で特許の行政が働かなければならぬ、大いに機能を発揮しなければならぬ、こういう将来への可能性というものをひとつ政府として、あるいは特に特許庁として十分そのことを腹に据えて、これからの行政に当たってもらいたい、こう思いますが、その辺の決意なり展望をひとつもう一度お聞きしたいと思います。
#143
○佐藤(満)説明員 お答えいたします。
 われわれも、先生のおっしゃったような方向で今後の科学技術の進歩があると考えておりますので、そのような事態になりましたところで、先ほど申しましたように的確に対処してまいりたいというふうに考えております。(井上(普)委員「どのぐらい先だ」と呼ぶ)私も実は技術の分野に余り詳しくないものでございますので、的確にいつごろということではお答えしかねますが、いずれにしろ先生のおっしゃったように……(「不規則発言に答えなくていいよ」と呼ぶ者あり)そうですが、どうも……。
#144
○高沢委員 私が質問すべきところを井上委員に質問してもらって恐縮しましたが、私もこういう科学技術の関係は全くの素人でありますが、しかし、いまの日進月歩のこういう情勢の中では、たとえば五年先、ましてや十年、こういえば、いまから予想もできないようないろいろな変化が大いに出てくることはあり得る、こう思いますので、いまのそういう将来に向かっての特許庁の心構えというものは、決して将来いずれ来るだろうというものじゃなくて、かなり目の前に迫った問題としてひとつお考えをいただきたい、こう思います。
 そこで、いまのあれに関連しますが、この種の新しい発明の保護というふうな場合の特許法による特許権、こういう保護のやり方と種苗法による登録権、こういうやり方は全然次元の違う問題である、こういう前提でこのきょうの審議になっておりますが、その次元の違う二つの保護が、しかし現実にはかなり境界線において接点がある、そこで重なり合う、そういう権利関係もあろうし、あるいは相互にぶつかり合って排斥し合う、こういう権利関係もあろうし、そういうことがあろうと思いますが、この辺をどういうふうに交通整理をされるか。これは農水省また特許庁、それぞれひとつ御説明を願いたいと思います。
#145
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 先ほど来申し上げておりますように、植物の品種について、特許法上の物の特許は理論的にはあり得るとは申せ、現実の問題として特許法上の特許要件を満たすケースはまずなく、今日まで植物新品種それ自体について特許を付与されたものはございません。このため、両制度間には調整規定は設けられていないわけでございますが、従来から両省庁間で協議してきており、今後とも実際上問題が生ずることのないよう十分協力し合うことといたしております。
 遺伝子組みかえ技術等につきましては、現在基礎的な研究段階であって、実用化には至っておりませんが、今後実用化に至るような場合におきましては、将来の問題として、その時点で関係省庁と協議して検討してまいりたい、このように考えております。
#146
○高沢委員 特許庁からもお答え願います。
#147
○佐藤(満)説明員 ただいま農林省の方から御説明したとおりでございまして、先ほど申しましたように、五十三年の種苗法の制定以来三年たちましたが、その間に一回もトラブルのようなケースは起こっておりません。今後も、先ほど農林省から御説明がありましたように、緊密な連絡をとりつつ、このような事態が起こらないように十分対処してまいりたいと考えております。
#148
○高沢委員 そうすると、私は素人ですから、ひとつ実例でお尋ねして、この場合はどうだということで御説明願いたいと思いますが、私はまだ食べたことはありませんが、何か聞くところによると、トマトとポテト、この二つのものを合わせてポマトというものができておる、こういう話であります。私は、残念ながらまだそれを食べたことはないのです。
 しかし、こういうケースの新しいものが生まれたときに、これは一体特許の対象になるのか、これは種苗法の対象になるのかというふうな実例でひとつ御説明を願いたいと思います。
#149
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘のポマトは、トマトとジャガイモとを両親といたします新しい植物でございます。自然の状態では、トマトとジャガイモは種が違うものですから交配することはできないので、裸の細胞、つまり細胞壁を酵素で除去した細胞でございまして、これをプロトプラストと申しておるのでございますけれども、この裸の細胞同士を合体させまして、双方の植物の血を引く細胞をつくり、それから根とか茎、葉を再生させるという技術をもって作成されたものでございます。
 具体的には、西ドイツのメルシェル一派が昭和五十三年につくり出したものでございますけれども、具体的に育成過程を申しますと、トマトとジャガイモの体細胞をそれぞれ取り出しまして、酵素を使って細胞壁を取り除きます。そうした上で特別な条件下で融合させて、融合した細胞を無菌的に培養して植物体を再生させる、こういうことでつくり出されたものでございます。
 実際にできたものは、その塊茎、つまりイモに相当する部分はごくごく小さいものであります。地上部にできます果実、つまりトマトに相当するものは小さな果実でございます。明らかに両親の形質を受け継いでおるということは言えようかと思うわけでございますけれども、種子が形成されたということはないわけでございます。
 一般に、植物が太陽エネルギーを固定して得た代謝産物の量には限度がございます。したがいまして、地上部に大きなトマトをつける、他方地下にも大きなジャガイモをつけるということは不可能でございます。そういうことで、実用化にはなっていないわけでございますけれども、理論的には種苗法の適用関係で申しますと、ナス属またはトマト属に属する植物体に該当するわけでございますので、したがって仮の問題として、種苗法上の品種登録の要件を満たすというものであります場合は登録になるということでございますけれども、実際問題としてそうしたものが実用化されるに至るのかどうか、今後の技術の発展の動向を見たい、このように考えております。
#150
○高沢委員 非常に詳細な御説明をいただいてありがとうございました。ただ端的に言って、あなたは食べたことがありますか。その辺をちょっと教えてください。
#151
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 日本には入ってきておりません。それから、食べておりません。
#152
○高沢委員 そうすると、これは西ドイツで開発しているという御説明だったのですが、それを今度は日本で入れよう、こういうふうな場合に、入ってきたとした場合には、先ほどの御説明では、可能性としてはどうも種苗法の対象になる可能性が大きい、こういうふうに理解していいわけですか。
#153
○谷垣説明員 先ほど申しましたのは、理論上その品種登録要件に該当いたしますればということで申し上げたわけでございますけれども、現実問題としてそのようなものが品種登録をしてくるとも考えられません。現に育成した人自体も、さしあたりは実用化をねらったものではないということでございます。そのように理解いたしております。
#154
○高沢委員 そうすると、これは非常にいい果実が出たというような場合には、これは今度は特許の対象になりますか。特許庁、いかがでしょうか。
#155
○飯塚説明員 ただいまのポマトについては農林省の方の御説明のとおりでございますが、もしもその技術につきまして特許出願がございますれば、われわれは特許法に基づいて審査をするということになるかと思います。
#156
○高沢委員 なるほど、審査はする、しかし結果はまだ実物が出てこなければ何とも言えぬ、こういうことですね。
#157
○飯塚説明員 そうでございます。
#158
○高沢委員 それでは次へ進みたいと思います。
 条約の第四条で、「この条約は、あらゆる種類の植物について適用することができる。」こうあって、それから、これに加盟した国はできるだけ多くの植物についてこの条約を適用させるようにすべきだ、こうあって、その後には、何年たったら幾つ適用しろ、このように年と適用の植物の数まで規定されておりますが、わが国が現在この条約の適用作物にしておるものはどのくらいの数があるか、それから他の加盟国は大体どのくらいの数を対象にしているか、これを概略的に説明を願います。
#159
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 わが国が保護の対象といたしております植物は現在三百八十三種類でございます。実は植物分類学の分類に従いまして属、種、亜種という形で指定いたしておりますものですから、したがって属としてカウントするのもその下の分類である種としてカウントするのも一種類と考えての計算でございまして、実際上の種に分解いたしました場合、なかなかこの計算がむずかしくなるわけでございますけれども、一応指定したそれぞれに即しましてカウントいたした数字でございます。
 さて、諸外国の例との比較でございます。諸外国も同じように属、種で指定している国が多うございますげれども、国によってはその上の科で指定する国、さらにはその上の目で指定しておる国がございまして、これまた一概に比較することはなかなかむずかしい面があるわけでございますけれども、これを日本と同様に指定してある植物の種類に即しまして単純に比較いたしてみますと、イギリスでは三百七十二種類でございますから日本と同じ。これはさらに目とかで指定しておるものもございますから、数えようによっては日本より多いのかもしれません。それから西ドイツが百六十一、デンマークが百二十七ということで、西欧諸国は大体百以上、こんな感じでございます。アメリカでございますけれども、これは逆に対象としない植物の種類を掲げておるわけでございます。したがって、その残されたものがどのくらいの数になるかというカウントがむずかしゅうございまして、ちょっとその数をはっきりお答えはできません。
 以上でございます。
#160
○高沢委員 いまの御説明で大体わかりましたが、現実に加盟国の間で対象品目の数が違う、そのためにお互いの相互の交流に支障がある。たとえば日本は非常に多いというと日本は損をする、こういうふうなことは現実にないのかどうか、その辺はどうでしょうか。
#161
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 各国、保護の対象植物の指定をするに当たりましては、その国において主要な作物の種類から対象にするのが通例でございます。わが国もそうでございますし、ほかの国の実態を見ましてもそのような実態にあるわけでございます。したがって、その国が外国と国際交流を図ろうとするものについてはその対象としているのが普通でございますので、保護対象植物が若干少ないからといって国際交流に支障が生ずるという懸念はないかと考えております。
#162
○高沢委員 もう一つ、わが国は対象植物の数が非常に多い、またこういう種苗の新品種の育成で、一言で言えばわが国は先進国に入る、こう私は思いますが、そういう日本の立場では、こういうことが考えられませんか。そうやって新しい種苗ができた、新品種ができた、それを登録権によって保護する、こうなるわけですが、その保護をむしろやめて開放して、よその国でもいいものはどんどん使ってくれ、こういうふうに開放するということは、日本が国際的な農業の発展に非常に貢献するというふうなことになると思うわけです。そうすると今度は、その新品種を育成した日本の権利者は、それによって外国においていわば損をするというふうなことも出てくると思いますから、その場合にはそういう損をする権利者に対して日本の国が適当な補償をするというようなことでやりながら、国際的には日本のそういう進んだ種苗の育成というものが非常に大きく貢献する、こういうふうなことがあっていいと思うのですが、こういう点はいかがですか。
#163
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 わが国で育成されたすぐれた品種の種苗を海外の農業の発展に役立てるということにつきましては、発展途上国に対する援助の観点からいたしましてもきわめて重要なことであると考えておりまして、これまで国の成果の民間における新品種の育種への活用の促進を図って、それを通じて海外にいい種苗が出ていくように期待いたしますとともに、熱帯農業研究センターによる研究者の派遣あるいは国際協力事業団等による海外技術援助によって、いろいろな種苗の育種の面についても栽培の面についても援助活動をやってきておるところでございます。今後ともこれをさらに促進したいと考えておるわけでございますけれども、発展途上国の場合、一般に種苗の国内流通の事情がまだ確立されていないのが実態かと思います。具体的には自家採取が大部分であるという実態にありまして、したがって、種苗を他から購入してということに持っていくには、そのための基礎的な生産基盤の整備、灌漑排水施設の整備などの農業基盤の整備と並んで、流通の整備など育種以外の部面での整備が必要なわけでございますけれども、あわせてその国の試験研究機関の整備等幾多の課題が残されておるわけでございまして、これらについてあわせて援助活動をしてまいりたいと考えておるわけでございますけれども、その過程で今回の新しい条約も、たとえば必須作物というのを限定しておったのをやめることによっていろいろな国が参加できるようにするということとともに、特にモノカルチャーの国なんかを配慮いたしまして、初年度五とか八年度は二十四とかというような対象作物の最低の種類につきましても、さらに特別な生態的あるいは経済的事情のある国につきましては緩和することができるというような条項を織り込むなど、開発途上諸国が入りやすくなるような条約にしたところでございまして、わが国としてもこうしたことについて協力していきたいと思っておるわけでございます。
 さて、先生御指摘の種苗の開放につきましては、今後とも新品種の開発途上国への供給について努めていきたいと考えておるのですけれども、開発途上国の実態は先ほど申しましたような実態にある上に、実際問題として農業経営の特性とか農業技術の水準のほかに食生活の様式、水準というのもございまして、先進国のように新しい品種であればいいという事情には農業事情がないような感じがいたします。したがって、新品種登録を受けたようなものよりも、むしろ従来からあるような既存の品種であって、しかもその中から開発途上国にとっていいものを見つけ出していく、それの方が単価も安うございますし、現実問題としてこれらの開発途上国の自然条件にも合っておる、経営条件にも合っておるということでございますので、そうしたものを中心にやるのがさしあたりの課題ではなかろうか、こう考えておりまして、今後さらに将来の課題として御指摘のような点も含めて検討してまいりたい、こう考えております。
#164
○高沢委員 開発途上国にそういう日本のすぐれた品種、種苗を普及するのは相手の基礎条件が整わなければなかなかむずかしい、この事情はわかりました。そうすると、たとえばヨーロッパ諸国、EC諸国、いま日本とEC諸国は貿易摩擦、貿易不均衡で日本は盛んに文句を言われる立場ですが、オランダとか西ドイツとかいうような国々に日本のすぐれた品種を大いに使ってよろしいと開放する。そのときにその品種を育成した権利者の権利は損なわれることになりますから、そうすると、日本の政府としてその権利者に対して一定の補償をする。さっき私はそのことをお開きしたわけです。そういう補償のやり方は私はやるべきだと思いますが、やるとすればその権利をどういう評価でやるのかとか、いろいろな問題が出ると思いますが、その辺はどうでしょうか。
#165
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 新しく育成された品種に限らず、すべての品種はそれぞれの経済価値によって、それから育成コストによって決まっていくのが実態でございまして、この品種はこれだけの価値があるということを国が一方的に決めるというのは適当でないと考えております。
 そこで、自然の需給関係の中で相互の品種に対する認識、理解、評価を通じて価格が形成されていっておるわけでございますけれども、これについて国としても全くの自由にしておくということも混乱が起きた際に問題があるということで、自主的な民間団体の活動を通じて、許諾料その他種苗価格の水準についてトラブルが生ずることがないよう指導してまいっておるところでございます。
 現実の問題として、種苗法施行以来、民間の種苗団体におきまして自主的な種苗価格の問題についての調整というのがうまく機能いたしておりまして、法の施行後一時期、新制度へのふなれから生じた問題も間もなく解消いたしまして、円滑に制度が運用されることになっております。したがって、海外との問題についても、こうした民間団体がさらに海外に目を向けていくということに国としては期待してまいりたい、こう考えております。
#166
○高沢委員 もう時間が来ましたから、この一つで終わります。
 国の試験場とか研究所あるいは都道府県、こういう公的な研究所、試験場で新品種の開発、研究をやって新しい品種ができた。こうした場合に、これは当然、日本の一般の農家がそれを大いに活用して日本の農業がよくなるように、このために国や県はそういう研究をしているわけですから、こういう新しいものができたらどんどん利用をさせる、開放する、こうあるべきだと思います。同時に一方、そういう新しい開発を国がやった、何何の県がやったというようなことでもって国や県がその登録権、権利を確保するというようなケースもあり得ると思いますが、いまのそういう開放と権利の確保、この辺は国の立場ではどういうふうに整理をして使い分けをしておられるか、それを御説明を願います。
#167
○高谷説明員 お答えいたします。
 国が育成しました系統のうち優良な品種につきましては、農林水産大臣が農林水産省の新品種として命名、登録、公表しておるところでございます。また公表に当たりましては、品種の特性とか試験成績とか栽培上の留意事項等、新品種の増殖あるいは農家の栽培に必要なデータ等を十分提供してまいっておるところでございます。また都道府県において育成されたものにつきましては、当該知事が独自に新品種として公表しているわけです。
 いずれにいたしましても、これら新品種につきましては、農家が農業経営をやる上に必要な作物の種子として供給しているということが前提になっておるわけでございます。したがいまして、公表された新品種については都道府県において、当該地域の気候とかあるいは土壌に適した優秀な品種を奨励品種として選定して、その普及を図っており、それらの種苗の確保と供給については作物の種類によっていろいろ異なるわけでございます。
 たとえば水稲について言いますと、都道府県の原原種圃、原種圃において増殖して、これを配布していくというような形をとっておりますし、また野菜、果樹、花卉等の新品種につきましては、たとえば種苗業者あるいは都道府県等が主体になりまして増殖配布していっているというような形になっておるわけでございます。したがいまして、野菜、果樹、花卉等の新品種の民間への配布でございますが、これに当たりましては大手の種苗業者とかあるいは個人とかそういう区分なくて、平等に最終的には農家にその種子が渡るようなかっこうで配慮しておるところでございます。
#168
○高沢委員 最後に大臣に御答弁をお願いしたいと思いますが、農林大臣も御経験されて農業に大変詳しい大臣でございますので、こうした新しい品種の開発、育成、そしてそれを通じてわが国が国際的な農業の協力に貢献していく、同時にまた日本の国内農業の発展を促進していく、こういう趣旨が今回の条約であり、またそれを受けた種苗法という国内法があるわけですが、こうした新しい品種の開発、育成、こういうふうな行政全般がいまや非常に国際関係を持ってきておる、こういう状況の中での大臣のこの条約運用についての御見解を最後にお尋ねして終わりたいと思います。
#169
○櫻内国務大臣 新品種の開発に寄与するこの条約でございまして、やはり農業分野におきましても技術の進歩というものが図られていく、こういう時代でありますので、この種の条約が新品種を保護もし、将来の育成の上に寄与する大変重要な条約であるということできょうは御審議をいただき、いずれ御承認をちょうだいするものと思いますが、よろしくお願いいたします。
#170
○高沢委員 それでは、以上で終わります。どうもありがとうございました。
#171
○中山委員長 玉城栄一君。
#172
○玉城委員 ただいま議題になっております三条約につきまして一括して質疑をいたしたいと思います。
 これまでの御質疑と多少ダブる点もあろうかと思いますが、お答えはひとつ御丁寧に御説明をいただきたいと思います。
 まず最初にSTCW条約、これについてお伺いしたいんですが、海上における船舶の航行の安全確保のため、船舶を運航する船員の資格、訓練等その技能に関する国際基準を定めようというこの条約は大変結構なことだと思います。特に主要海運国であるわが国の立場からは大いに締結、推進していくべきではないかと思います。
 そこでお伺いをしたいのでありますが、この条約の附属書の第五章には、石油タンカー、化学薬品タンカー、液化ガスタンカー船長、職員及び部員の訓練等に関する条項がありますが、今後は油以外の有害危険物質の海上輸送による海洋汚染、火災、爆発等の事故の発生が予想され、また現にそういう事故もあるのではないかと思うわけでありますが、このIMCOにおいてこのような損害に関する新しい責任条約の制定について何か検討がされているのかどうか、されておりましたら、その経過の概略を御説明いただきたいと思います。
#173
○小宅説明員 お答えいたします。油につきましては油濁につきましての条約がございますが、油以外の有害危険物資にかかわる汚染、火災、爆発による損害につきましては、被害者保護の充実を図るという観点から新しい責任条約を検討する動きがIMCOで始まっております。このIMCOの法律委員会でこの検討が進んでおりまして、一昨年の第四十二回法律委員会、これが一つの境目でありましたが、おととし以来、この新責任条約作成の作業が具体化しております。私どもの見通しといたしましては、来年あるいは再来年に外交会議の開催、そこで条約案の検討という方向へ進むのではないかというふうに考えております。
#174
○玉城委員 そうしますと、いまおっしゃいました来年あるいは再来年検討ということになりますと、当然わが国としてもこういう条約について積極的にあるいは消極的に、どちらの面で対応されようとするおつもりであるのか、その辺もあわせてお伺いします。
#175
○小宅説明員 お答えいたします。
 わが国は主要海運国の一つであり、かつIMCOの主要メンバーとして先ほど申し上げましたIMCOの法律委員会の検討には積極的に参加しております。当然私どもといたしましても一外交会議ということになりますれば、そういう観点から積極的に会議に対処したいというふうに思っております。
#176
○玉城委員 そこで、この条約につきましてはアメリカの方はまだ締約国になっていないわけですね。それで、米国は世界最大の貿易国であり、米国をめぐる海運問題は、わが国を初め欧州諸国等の伝統的な海運国にとってその動向は非常に関心のあるところであります。レーガン大統領は米国海運の再建、国際競争力の回復等海運政策の見直しを公約し、そのため行政府内に特別審議会、タスクフォースというのを設け、海運政策の見直しを進めていると言われておるわけでありますが、この特別審議会の動向についてあわせて、アメリカがこの締約国になってないという問題と一緒に御説明をいただきたいと思います。
#177
○宮本説明員 お答えいたします。
 米国政府は昨年の四月に関係省庁の幹部十四名から成りますタスクフォースというものを結成いたしまして、海運政策の見直しのための作業を進めております。本年の二月になりまして、ルイス運輸長官がパックウッドという上院の商業科学運輸委員長あてに書簡を出しまして、新たな海運規制政策というものを発表いたしました。その主な内容といいますのは、海運活動に対しまして政府の介入を極力少なくする、そういうことを基本的な原則といたしまして、定期船同盟の自律的機能の尊重でありますとか、あるいは同盟協定等に対する規制は海運法、シッピングアクトと言いますけれども、海運法のみによって行って独占禁止法の適用を除外するでありますとか、あるいは海運法に基づき同盟協定等に対する規制を行っております連邦海事委員会という組織がございますが、そこの処分手続の迅速化を図る、そういうようなことが中心になっております海運規制政策というものを内容とする書簡を上院の委員長あてに出しておるということが一つであります。
 なお、引き続きまして、同タスクフォースにおきましては米国の海運の振興策につきまして現在検討を進めておる、そのように聞いております。
#178
○玉城委員 外務省の方、この条約に対する米国の対応。
#179
○小宅説明員 お答えいたします。
 アメリカはこの条約の署名国でございます。私どもの承知している限りでは、米国政府もこの加入を検討しているというふうに考えております。
#180
○玉城委員 次に、東欧諸国は最近商船を急速に拡大し、特にソ連は、ギリシャ、パナマに次ぐ世界第三位の船腹量を有し、自由諸国の海運企業がこれと競争することはきわめて困難であると言われております。運輸省の方になると思いますが、これについて何か対策を考えていらっしゃるのか、その辺をお伺いいたします。
#181
○宮本説明員 お答えいたします。
 ソ連を初めといたします東欧圏海運は、日本関係の航路におきまして、たとえば特定の品目に非常に低い運賃を提示して活発に集荷を行うというようなことで、定期船同盟に加入しないで、いわゆる盟外船社として活発な活動を行ってまいったわけであります。特にその中で、ソ連の国営船社でございますFESCO、極東船舶公社と訳しておりますが、そういう国営船社がございます。それが非常に活発な活動を行っていたわけでございますが、先般のアフガニスタン問題に絡みまして、米国におきましてそれに抗議して港湾労働者がソ連船のボイコットを行うというようなことが行われまして、それを契機として、昨年の初めごろから日本−北米航路からは全面的に撤退いたしております。しかしなお、日本−豪州あるいは日本−東南アジア等の航路におきましては、依然として盟外船として活動を行っている、そういう状況でございます。従来ほどは活発ではないということが現状ではなかろうかと思います。
 しかし、先生からお話しのございましたとおり、こういう東欧圏の海運活動に対しましては、日本を初めとして先進海運国の海運企業が商業的基盤に立って競争するということはきわめて困難である、そういう状況にございますので、わが国を初めEC等の先進海運国は共同して、東欧圏海運の活動を厳重に監視する、あるいはあらゆる機会をとらえてそういう企業も同盟等の先進国のつくっている秩序の中に加わってくるように働きかける、そのような対策をとっておるところでございます。
#182
○玉城委員 向こう側の方は国営的なもの、こちら側は民営ということで、向こうの監視もさることながら、やはりこちら側の対策というものは当然必要だと私は思います。
 次に、中国との間にはすでに昭和五十年に海運協定が締結されているわけですが、両国間の海運問題の現状について、概略御説明いただきたいと思うのです。
#183
○宮本説明員 お答えいたします。
 日中両国間には、先生お話しのございましたとおり、四十九年十一月に日中海運協定が締結されまして、五十年六月に発効いたしております。その海運協定で、互恵平等の原則に従いまして両国の海運の発展を図るということになっておるわけでございます。この協定に基づきまして、海運業務に関しましては、両国が指定した民間の協議団体というものがございます。日本側は日中海運輸送協議会というものがございますし、中国側は中国遠洋運輸総公司というものがそれぞれ指定されております。これらの指定された団体相互間で海運問題について協議をしていくということになっております。現在まで、この協議が四回にわたって行われたようであります。主として、貨物定期航路の開設問題ということが問題になって協議がされておるわけでありますが、現在のところ、定期航路開設に伴います運賃率の統一というようなことについて相互の合意に達していない、そういう状況にございまして、なお引き続き検討が行われておる、聞くところによりますと、本年六月ごろに、さらにこの協議が行われる予定になっておるようでございます。
#184
○玉城委員 次に、マラッカ海峡は日本の生命線とすら言われておるわけでありますが、マラッカ海峡の航行の安全問題について、日本はマレーシア、シンガポール等の諸国とどのような協力関係をこれまでしておられるのか。特に、油濁事故発生の際の防除活動費に充当するための基金が設立されることになっていると聞いておるわけでありますが、その経過もあわせてお伺いをいたします。
#185
○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。
 マラッカ海峡はわが国の主要な海上交通路としてきわめて重要でございまして、このための航路の安全確保についてさまざまな手段を講じております。
 大別しまして二つございまして、一つは航路整備、もう一つが油濁事故対策でございます。いずれも、先ほど先生御指摘の基金を除きまして、昭和四十四年に設立されました財団法人であるマラッカ海峡協議会等の民間団体を通じて種々対策を講じております。具体的には、航路整備につきましては水路測量、統一海図作製、潮汐流の調査等を実施してきております。
 それから油濁事故関係でございますが、集油船の寄贈、それから回転基金の設立があるわけでございます。回転基金につきましては、昭和五十年に発生いたしました祥和丸座礁事件を契機といたしまして海峡沿岸のインドネシア、マレーシア、シンガポール三国とわが民間との話し合いに基づきまして昨年の三月に四億円の基金を寄贈いたしまして、この三カ国にその基金の運営を委託しているわけでございます。
 この目的は、船舶起因の油濁事故の際の迅速な海洋汚染の防除ということでございまして、具体的には初期の防除費用を保険金が支払われるまでの間立てかえるということでございます。
 現在までのところ、いまだその事案は発生しておりませんけれども、今後事案が発生した場合には効力を発揮するものと期待しております。
#186
○玉城委員 同じく運輸省の方にお伺いいたしますが、わが国の外航船の船腹量は現在どのような状況にあるのか、そして船員は日本船に十分な人員が確保されているのか、船腹と船員の今後の問題についてお伺いをいたします。
#187
○井上説明員 お答えいたします。
 日本の外航船の船腹量は、昭和五十六年央で三千四百五十万総トンございます。日本船による昭和五十五年度の積み取り比率は、輸出で二〇%、輸入で三七%でございますが、わが国の経済安全保障の観点から、少なくともこの程度の積み取り比率を維持していくということにするとするならば、六十年度においても現状程度の船腹量を確保する必要があるのではないか、かように考えております。
#188
○玉城委員 船員の関係につきましては今後どのように見ておられますか。
#189
○小和田説明員 わが国の船員の将来の需給見込みにつきまして全般的に計算をしたというものはございませんけれども、外航船に乗り組む船員につきまして申し上げますれば、本年二月に今後の日本の練習船教育をどのようにするかということを関係の審議会で答申をいただいたことがございますが、その際、基礎となる船員数の養成見込みを出したわけでございまして、今後の船舶の建造見込み等からいたしますと、年間大体七、八百人程度の養成が必要であろうということになっております。いま申し上げました数字は、現在、外航船に乗り組みます船舶職員の養成機関であります商船大学二校、それから商船高等専門学校五校ございますけれども、ほぼその養成人員と見合うものでございます。
 それから職員ではございません部員の方につきましては、これも一般的な試算はなされておりませんけれども、一般的な傾向といたしましては、年齢的に高齢化している傾向がございますので、その辺の事情を考慮いたしますと、今後とも年間五百人前後の養成が必要であろうというふうに考えられております。
#190
○玉城委員 この乗組員関係のことにつきましては、伺うところによりますと、だんだんそういう船に乗りたがらない傾向にある。そういう傾向が非常に強くなっていくのではないかという話も聞いておるものですから、主要海運国として運輸省とされても力を入れていただく必要があるのではないかと思います。
 次に、この条約の附属書には、船長、職員などの海上航行業務に対する適性を維持するため種々の要件が規定されているわけでありますが、非常に専門的で、われわれ素人には全くわからないので、概略わかりやすくどういうことなんだということを御説明いただきたいと思います。
#191
○小宅説明員 私も専門家ではございませんが、私なりに御説明いたしますと、この附属書には条約を補足する一般的な規定、たとえば監督の手続とか船舶職員の訓練あるいは資格証明、当直に関しての基準を甲板部、機関部、無線部、そういうふうに船の部別に割りまして細かく説明をしております。かつ、そのほかタンカーにつきましては特別の規則が設けられております。また救命艇につきましても、簡単ではございますが、特別の規則がございます。
 この一連の規則の中で一番大事だと思われますのは、当直の際の基本的な原則がいかにあるべきかということが第一。次に、各種船員が資格を取得する場合に満たすべき要件でございます。それから三番目に、各種船員が適性をそれぞれ維持するための要件、この三点につきましてかなり細かく詳細な規定が設けられております。
 この三点につきまして簡単に御説明申し上げますと次のとおりでございます。
 当直の際の原則といたしましては、甲板部及び機関部の当直に当たり当直体制の編成の仕方あるいは航行設備の効果的な使用あるいは見張りの任務、機関とか設備の点検ないしは操作、こういったことにつきまして基本的な原則が設けられております。
 次に、船員の資格証明の要件でございますが、これは船長及び甲板部、機関部あるいは無線部で別々の規定がありまして、船長及び甲板部におきましては船長、一等航海士及び当直担当の職員のそれぞれにつきまして船舶の大きさに応じて年齢あるいは身体適性、海上業務の経験並びに試験をするべき知識及び能力に関する最小限の要件、こういったようなものが一連の附属書に細かく規定されております。また、機関部の職員につきましては同じようにそういうふうに年齢、身体、職員別に詳しく書いてあるわけでございます。
 三番目の船員の適性維持の要件、これはいわば訓練のあり方というものについて簡単に書いてあるわけでございます。
#192
○玉城委員 どうもありがとうございます。
 次に、海事債権についての責任の制限に関する条約について若干お伺いいたしますが、この条約は船舶所有者等に対し有限責任制度を与え、これら船舶所有者の海上における企業活動の維持に役立てようとしていることは明らかでありますが、この制度は特定の海運企業、船舶所有者を保護するだけのものではないんだ、そのように理解していいんでしょうか。
#193
○小宅説明員 お答えいたします。
 この条約に定められております船主責任制限制度は、エアクッション船等の特殊な例外は別として、一般に海運企業に適用されていることはいま先生御指摘のとおりでございます。
 条約上内水の航路を航行するよう定められております船舶あるいは三百トン未満の小さな船舶及び掘削船といった特別の船舶、こういうふうな特定の場合におきまして、各締約国は自国の法令によって特別の責任制限制度を定めることが一応認められてはおりますが、条約上これらの船舶が特別に保護されているわけではないというふうに考えております。
 また、いま申し上げたような船舶以外の普通の船舶につきましては、先生御承知のとおりこの条約の規定が広く適用されるということになるわけでございます。
#194
○玉城委員 わが国は一九五七年条約を昭和五十一年に批准しているわけですが、今回この条約を締結することによって、現行の船主責任条約に比べどのような利益、メリットをわが国として受け、どのような点が改善されることになるのか、簡単に御説明をしていただきたいと思います。
#195
○小宅説明員 この条約が現行の条約に比べていかなる点で利益及び改善があるかという点にお答えいたします。
 まず第一には、責任限度額の引き上げでございます。船舶のトン数によって責任限度額は変わってまいりますが、一九五七年の旧条約に比較いたしまして一・四倍から六倍のところまで引き上げられております。
 それから、人の死傷に対する損害につきましては、今回の条約で新たに別の限度額というのが設けられました。これは、船舶の定員一人当たり、大体円にしまして一千二百万円くらいの水準に決められております。
 次に、この条約で改善された点といたしまして、責任を制限し得るものの範囲が拡大をしたわけでございます。新たに「救助者」というものが加えられました。この結果、船舶の救助活動中に生じた損害あるいは救助船によらずに作業している場合において生じた損害に対しても責任を制限することが可能になったわけでございます。
 このほかの改善点といたしましては、たとえば限度額を表示する単位といたしまして、非常にフラクチュエートしがちな金フランという古い制度にかわりまして、新たにSDRを採用したということ。それからこの条約の起草に当たりまして、一九五七年条約発足以来でき上がりました関連の海事関係の条約、たとえば油濁の損害に関する条約とか原子力に関する損害に関する条約とかあるいは船舶のトン数に関する条約とか、こういうものによる進歩改善点をこの条約の中に組み入れたということでございます。
 以上の点がこの条約の改善点でありますので、この条約を締結することによりまして、船舶事故により生ずる被害に対しまして、従来より以上に妥当な救済が確保される、かつあわせて主要海運国と歩調を合わせた合理的な船主責任制限制度というものにわが国も入ることによって、わが国海運業の安定的な発展が図られるというふうに考えております。したがって、こういうメリットもございますので、この条約の加入について御承認をいただいている次第でございます。
#196
○玉城委員 ただいまのお答えにもございましたが、この条約には計算単位としてSDRを採用しておられる。このことにつきましては法務省の方が詳しいということでせっかくおいでいただいていると思うのですが、先ほどこのSDRの採用というものが非常に有利であるということですが、なぜそうなのかということを御説明いただきたいと思うのです。
#197
○稲葉説明員 国際条約に基づいて責任限度額を各国において一律に定めようとする場合には、各国通貨についての共通の基準が必要になることは言うまでもないことでございます。これはいま外務省からもお答えがございましたように、従前は金を単位にしていたわけでございますが、金につきましては通貨との兌換性が失われたわけでございまして、その評価については、現在金市場による価値しかあり得ないということになっております。これが非常に安定性を欠いているということは先生御承知のとおりでございまして、七百ドルもしていたものが三百ドル近くまで落ち込むというようなことになっているわけでございます。これでは、とても共通の尺度として換算基準とすることにたえられないということから、現在最も安定的な共通の通貨として、また基軸通貨として考えられておりますSDR、IMFの特別引き出し権というものをここで共通の基準として採用した、こういうことでございます。
#198
○玉城委員 わかりました。
 次に、責任制限が行われる国の通貨への換算は事故発生の日で行われるのが妥当ではないかと考えるのですが、この条約では、基金形成の日、弁済の日または供託の日の換算レートでなされるということになっておるんですが、その辺がちょっとわかりませんので御説明いただきたいと思います。
#199
○稲葉説明員 このSDRの国内通貨への換算の関係につきましては、先生の御指摘のように事故発生日で固定するという考え方があるわけでございます。これは法律関係がその時点で非常に明確になるという利点がございますし、また為替相場の変動を見定めて弁済をするとかあるいは責任制限をするとか、そういうことが避けられるということから一つの利点があるわけでございます。ところが、事故の日に直ちに弁済するということは通常考えられませんので、相当時間たってから弁済するということになるわけでありますが、その間に為替相場が下落してきている、SDRとの対比において通貨の価値が下がってきているというようなことになりますと、その時点では前に比べてずっと低い、本来言えば多額の自国通貨を積まなければならないにもかかわらず、その固定された通貨で弁済がされてしまうということもあり得るわけでございます。これはどちらが被害者にとって有利か不利かということは必ずしも一概には言えないわけでございまして、為替相場の変動によって差があるわけです。ただ被害者に関する関係におきましては、できるだけ弁済を受ける時期に近い時期での共通の基準としての責任限度額に近い価値の弁済を受けられるという意味では、むしろ弁済時の為替レートで換算してもらった方がより実質的である、こういうことも言えるわけでございます。ただ、これは技術的に非常にめんどうだという問題がございまして、日本はたしか、この条約の採択会議におきましては、事故のときを基準にすべきだというふうに主張したはずでございます。これは、先ほど申し上げました明確化と申しますか法律関係の明確化ということを重点に置いたわけでありますが、諸外国においては実質的な被害者に対する弁済の確保ということを主眼に置くという考え方が強くて、このように弁済の日、あるいは、それに担保とか責任制限のための基金を積むというような場合には、弁済に最も近い時点でございます基金形成の日や担保提供の日を基準にすることにした、かように考えております。
#200
○玉城委員 この条約について最後にお伺いしておきたいのですが、十八条に留保の条項があります。いわゆる二条一項の(d)、(e)ですね。これをわが国は留保を予定しているということですが、この理由について伺いたいのです。
#201
○小宅説明員 お答えいたします。
 この条約の十八条一項に、いずれの国も加入の際に第二条1(d)及び(e)の規定の適用について留保することができる、このように書いております。わが国といたしましては、この条約の締結に際しまして、この点について留保を付す予定でございます。その理由といたしましては、沈没した船舶の引き揚げ等につきましてわが国の国内法上、港則法第二十六条あるいは海上交通安全法第三十三条でございますが、これらの国内法によりまして、船舶航行の円滑化を図り、かつその危険を防止するという見地から、当該船舶の除去を国が船舶所有者等に命令をすることができるということになっております。しかるに、この除去に関する債権がこの条約上の制限債権ということになりますと、必ずしもその命令にかかわる義務の履行が十分確保できないおそれがある。それからまた普通、船舶の引き揚げに要する費用はいつも相当高いものでございますから、仮にこれを制限債権ということにいたしまして、制限が基金というものにかかわらしめますと、ほかの基金つまりほかの債権者に回る分配額が減ってしまう、影響される。したがって、被害者、債権者の救済にも支障を生ずるおそれがある。こういう二つの観点から、わが国といたしましては十八条一項を援用いたしまして、留保するということを考えている次第でございます。
#202
○玉城委員 次に、植物の新品種の保護に関する国際条約について伺いますが、この条約の説明書によりますと、この条約を締結する意義は外国で育成された新品種の導入や日本で育成された新品種の国際的な保護が円滑に行われ、国際交流が促進されるとのことであります。条約未締結の現在においても日本は種苗法に基づいて相互主義により諸外国との間で保護を行ってきているわけでありますが、今回この条約に加盟することによってどれくらいの交流がさらに促進される見込みであるのか。たとえば花卉、果樹、穀類など、どういう作物の種類がこの条約の締結により最も保護を受け、また発展することになるのか、概略御説明いただきたいと思います。
#203
○谷垣説明員 御説明申し上げます。
 今回の条約加盟によりまして種苗の国際交流の促進が見込まれる作物分野といたしましては、野菜、果樹、花卉等の園芸作物、牧草等の飼料作物及びてん菜等の工芸作物の分野が考えられます。稲、麦類、在来の野菜、果樹等につきましては国内の育種体制が整備されており、わが国の気象条件、栽培条件に適合した品種の育成が進められておりますので、育種素材として導入することは当然考えられますが、外国品種の利用は一般的には少ないのではなかろうか、このように考えております。
#204
○玉城委員 これは前の御質疑にもあったかと思うのですが、勉強不足でよくわかりませんのでこの機会にお伺いしておきたいと思うのです。
 たとえば米だとかサトウキビだとか基幹作物で新品種が発見されて、単収も上げ、いわゆる生産量も増加する、そういう新しい品種が外国にいく、そういうことによって今度は逆にわが国農業の立場から圧迫を受ける、その辺とこの条約との関係、ちょっとわかりやすく御説明いただきたいのです。
#205
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 今般条約に加盟することによりましてわが国の種苗の国際交流が一層円滑化いたしまして、外国からの種苗の導入も増加することも当然予想されるわけでございますが、わが国の気候、風土、農業生産あるいは農業経営の状況というのは諸外国のそれとはかなり異なっておりまして、そのようなわが国の実情に応じた育種が従来から国内において盛んに行われております。したがいまして、外国人の品種登録が増加することによってわが国の種苗の生産、流通業者が打撃を受けるとは考えられないのではなかろうかと思うわけでございます。
 また、新品種保護制度によって外国からの育種素材の導入が円滑になると考えられます。したがって、むしろこれらを利用してわが国の気候、風土に合った新品種の育成が行われやすくなるという意味におきまして種苗の国内自給つまり農業生産の発展に寄与するのではなかろうか、このように考えております。
#206
○玉城委員 この条約の前文に「同盟への加盟を容易にするため」とあるわけですが、現在の一九六一年条約のどこが加盟を困難にしていたのか、それが今回どういうところを改正したために加盟が容易になるのか、また、これにより新たに加盟する国が増大する見込みがあるのか、その辺をお伺いいたします。
#207
○小宅説明員 お答えいたします。
 一九六一年条約は二つ大きな問題点がございまして、まず第一に、六一年条約では育成者の権利を保護する場合に、特別の保護制度か特許のいずれかによって保護すべしということが絶対的な原則として掲げられていたわけでございます。この結果、アメリカのように特許と品種保護と二つの法律を有している国の加入が妨げられたということがございます。
 もう一つ、一九六一年条約におきましては品種保護すべき植物のリストが別添されておりまして、そこに十三の植物が掲げられていたわけですが、この中には小麦とか大麦とかバレイショとか書いてあったわけです。この結果、気候あるいは風土等の条件によりこういう植物を栽培できない国の加入がいわば阻まれたということがございました。こういうことがございましたので、新たな一九七八年の条約におきましては、先ほど来議論になりましたが、条約に三十七条という一項を起こしまして、二つの方式による保護も認めたわけでございます。この結果アメリカの加入が可能になったということでございます。
 また、他方、保護対象植物につきましては、前条約のように十三種を義務づけるということではなくて、各国が自由に選択されるということになったわけでございます。アメリカはすでにこの条約の締結国となっておりますが、そのほかにこの条約に加盟すると見込まれる国といたしましては、イギリス、フランス、西ドイツといった一九六一年の締約国及びこのほか六一年の締約国にはなっていなかった国としてカナダ、メキシコがあります。メキシコにつきましては、これは開発途上国でありますので、一つの新しい動きとして私どもとしては歓迎できるところではないかと思います。
#208
○玉城委員 これから加盟の予定されている国をおっしゃいましたけれども、いずれにしても発展途上国というのが非常に少ないですね。現在十六カ国の署名国のうち開発途上国が見当たらないのですが、同時にわが国の隣であります韓国、中国あるいはソ連のこの条約に対する態度はどうなのか、あわせてお伺いいたします。
#209
○小宅説明員 お答えいたします。
 一九六一年条約が改正されてからまだ日も新しい、この条約が発効いたしましたのもつい昨年のことでありますので、これから開発途上国の関心が高まることをわれわれとしては期待するわけでございますが、たとえばケニアにつきましてはこの条約に関心を有していると私どもは承知しております。他方、御質問になりました韓国、中国、ソ連でございますが、これら三国は六一年の同盟の加盟国でもありませんし、特に私どもとしてどういう態度をとっているか現時点では明らかにしておりません。
#210
○玉城委員 この条約には留保が認められていないのですが、それはどういう意味か、簡単に御説明いただきたいと思います。
#211
○小宅説明員 これは先生御案内のとおり植物新品種の保護統一のルールに従って保護していこうということでございますので、その条約の目的にかんがみて留保というものは認められていないというふうに解されます。
#212
○玉城委員 新品種として登録され育成者が保護されるためには、条約上もその申請に際してかなり条件がつけられており、審査されることになっているわけであります。実際上この申請や審査はどこでだれがどのくらいの期間で行うことになるのか、あわせて審査を的確、効率的に行うためにコンピューター等の導入も必要ではないかという意見もあるわけですが、いかがでしょうか。
#213
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 まず第一に審査当局でございますが、出願品種の審査は農林水産省農蚕園芸局におきまして首席審査官の統轄のもとに審査官九名以下その他の職員によって実施いたしております。審査のやり方でございますけれども、出願者から提出された出願品種の試作データ等をもとにして行う書類審査が一つでございます。二つ目は、試作を現にやっておる現地に赴いて現物を調査確認する現地調査でございます。三番目は、農蚕園芸局自身あるいは県に委託して実際に栽培試験を行うこと、この三つの方法でやっておるわけでございますけれども、栽培試験につきましては出願品種の作物の種類とか試作データの整備状況等を検討いたしまして省略できるものは省略するということでやっております。したがって、御質問の審査期間がどのくらいかかるのかという点につきましては一概に申し上げることはむずかしい面があるわけでございますけれども、一般的に申しまして一年あるいは二年程度、こういうことが言えようかと思います。試作データの整備が十分なものは早く済みますし、栽培試験を二、三年継続せにゃいかぬというものはそれだけ多く年数がかかるという次第でございます。
 次にコンピューターの活用でございますけれども、やはり審査の能率化ということからこれについてはかねてより大きな関心を持っておるところでございまして、現に、五十三年に種苗法が発足したわけでございますけれども、私ども、それに先駆けまして昭和五十一年度からコンピューターを利用した品種に関する情報の収集、整理、その情報を利用した類似品種の検索などの実施による審査業務の能率化あるいは精度の向上ということを図るとともに、いろいろな必要書類の作成等のコンピューター処理による審査、登録事務の円滑化を図るために、種苗情報収集整備システムの開発を進めてきたところでございまして、幸い現在までにおおむね審査に必要とする情報処理システムの開発を終了いたしまして、本年度からコンピューターの端末処理機を設置することとなった次第でございます。これからその活用を図りまして審査の迅速化に努めてまいりたい、こう考えております。
#214
○玉城委員 時間ももうすぐでありますが、あと二問お伺いしたい。
 七一年にアジア蔬菜研究開発センターが台湾に設置され、日本も五十六年度に十万ドルの拠出をしているわけでありますが、センターの設置経緯と概要を説明していただきたいと思いますとともに、あわせて、現在日本と台湾というのは正規な国交関係がないのですが、別に問題がないのか。それと、この研究開発センターの視察にわが国から行きましたときに、大事なところは見せてくれない、肝心なものは見せてくれないというようなこともありますので、これだけ拠出もしていますし、わが国農業にどういう効果をもたらしているのか、その辺もあわせてお願いします。
#215
○藤田説明員 お答え申し上げます。
 まず最初にアジア蔬菜研究開発センター設立の経緯でございますが、これは一九六三年にアメリカの開発援助庁、AIDがアジア人の食生活の改善、でん粉質優先からビタミン等の均衡のとれた栄養をとるようにという考えから呼びかけを行いまして、その後関心のあります国が集まりまして七、八年協議をいたしました結果、一九七一年六月に台湾の台南に設立されました。メンバーは現在までのところ日本、米国、タイ、フィリピン、韓国、台湾及び国際機関としましてアジア開発銀行が入っております。この目的は具体的には蔬菜の研究ということでございますが、主として熱帯地域における野菜の重要性というものに注目いたしまして、熱帯産の野菜の品種改良、病虫害対策等々についてメンバー国間の意見交換それから応用研究の援助、研修員の訓練等々を行っております。
 それから第二の先生御質問の台湾に存在するということについての問題点でございますが、設立されました一九七一年の翌年一九七二年の九月、御承知のように日中間の国交正常化が行われまして、台湾との間の公式の関係は断たれることになったわけでございますが、本件のごとききわめて科学的、非政治的な多数国間の取り決めに基づいて設立されたものであるという観点から、たまたま場所が台湾の台南にあるということで、わが国はその後も拠出、それから専門家の派遣等の協力を続けてきております。問題はないのだろうかという御懸念はよく理解できるところでございますが、喜ばしいことには二年前、一昨年になりますが、昭和五十五年にこの蔬菜センターが主催いたしましてわが国でハクサイに関するセミナーを開催いたしましたところ、中華人民共和国からも農業学者の参加が見られまして、そのセミナーにおいては非常になごやかな意見交換が行われたということ。それから昨年の夏でございますが、このセンターの所長、これは米国人でございますけれども、このセンターの所長という資格で中国に招待をされまして、今後のこのセンターと中国との研究のあり方、協力のあり方というような話し合いも行われておるということで、きわめて専門的かつ科学的な分野であるということで政治的な問題というのは生ぜず、むしろより気にしていた国国も安心して協力をしているというのが現在の状況でございます。
 それから最後に、見学に行かれまして重要な部分を見学できなかったという御指摘でございますが、私ちょっとその点は承知しておりませんので、早速調べまして、どういう経緯であったのか、調査をさせていただきたいと思います。
#216
○玉城委員 時間が参りましたので、これで質問終わります。
#217
○中山委員長 次に、林保夫君。
#218
○林(保)委員 ただいま議題となっております三条約について、若干の質問をいたします。
 まず、千九百七十八年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約に関する質問から始めたいと思います。
 言うまでもなく、わが国は海洋国として海なしでは生きられない国でありますが、いろいろな戦後の施策の歴史を見ましても、やや海がなおざりにされておる、こういう感じを禁じ得ないのでございます。先ほど来質疑応答を聞いておりましても、六十年度の展望は現状と余り変わらぬだろう、船舶量も積み取り比率もそんなに違わぬだろう、こういうようなことでございましたが、果たしてそれでいいのだろうか、こういうことも含めまして御質問申し上げたいと思います。時間がございませんので、ひとつデータをはっきりとお答えいただきたいと思います。また、重複があるかと思いますが、これまたしっかりお答えをいただきたいと思います。
 まず第一に、この条約の作成の契機となったのは、昭和四十二年に英仏海峡で発生したタンカーのトリー・キャニオン号の座礁事故と承知しておりますが、これまでこの分野での国際的な規制の動きはなかったのかどうか。また、この条約の作成にはかなりの時間をかけておりますが、どうしてそのように長くかかったのか、条約の作成交渉の過程における主な問題点を含めて御説明を承りたいと思います。
#219
○小宅説明員 お答えいたします。
 林先生からただいま御指摘ありましたとおり、この条約作成の契機となりましたのは、昭和四十二年に英仏海峡で発生したタンカーのトリー・キャニオン号の座礁事件であったわけでございます。それまでは、この分野での国際的な規制の動きというものはなかったということが言えると思います。この大きな理由といたしましては、各国の船員の制度が大幅に異なっていたということではないかと考えられます。
    〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
その後、この問題が政府間海事協議機関、IMCOで取り上げられまして、そこで十年余りの年月を経ましてお手元の条約の作成にまでこぎつけた次第でございます。
 この間にありましてどういうふうなところが大きな問題となったかという御質問でございますが、大きな問題点を若干指摘させていただきますと、まず第一に監督の規定というのがございます。これは本文の第十条及び附属書の一−四というところに書いてありますが、締約国が自国内に入ってくる船に対して監督権を行使する、この問題でございます。これに対しては、自由な国際海運活動に支障を与えるという観点からこれに懸念を表明する国と、それから他方、この種の本条約の実効性を担保するためには必要不可欠であるという二つの見解の対立がありまして、最後までこの点は問題になったわけでありますが、最終的には監督権を行使した結果、出航停止を行うことができることになるわけですが、その出航停止を行う条件というものを明確にする、かつ出航停止措置がとられた場合に求償する権利を認めるという形で、この監督権をめぐる問題は最終的には収拾された次第でございます。
 それからもう一つ、沿岸航海の問題があります。この沿岸航海というものを条約上どういうふうに規定していくかということで、これを広く考えようとする国と限定しようとする国との意見がこれまた対立をしたわけでありますが、結局最終的には、この点は条約上は何らの定義を設けず、一切各締約国の判断にゆだねるということで決着を見たわけでございます。
 それから三番目に証明書の様式、この問題につきましても、船員が受有する証明書の様式を国際的に統一するべしという主張があったわけでございますが、最終的には証明書の様式は各国に任ぜる、そのかわり裏書の仕方を統一するということになったわけでございます。
 以上が、この条約作成の過程で特に問題になった点ではないかと思われます。
#220
○林(保)委員 この条約の趣旨にもあるように「海上における人命及び財産の安全を増進すること並びに海洋環境の保護を促進すること」、こういう目的そのものは高い評価をしていいと思いますが、先ほど問題点として指摘されましたものは三点でございますけれども、いろいろ問題があったやに聞いております。
 まず、第一に御指摘になりました監督権の問題から入りますが、この第十条で新たに監督規定がこの条約の中心とも言えるような問題だと思います。現在まで日本ではどういう措置、監督をしておられたのか、そして今度はどのように変わるか、この点をはっきりと御説明をいただきたいと思います。
#221
○小和田説明員 お答えいたします。
 わが国に参ります外国船について航行の安全ないし汚染の防止という観点からの監督は主として海上保安庁が行っておりますけれども、本日担当の者がおりませんので私が知っている限りで申し上げますと、年間六千隻程度の船舶についてそのような監督、具体的には立入検査ということでございますが、それを行っているはずでございます。ただし、その際、乗り組んでおります船員の資格あるいはその者の能力といったような点につきましては従来国際的にもこれを監督するという趣旨の取り決めもございませんし、国内法的にもそういうことがございませんので、その点についての監督はなされていないというふうに承知しております。
 それから、今後この条約を批准し国内法化いたしますと関係する法律として船員法、船舶職員法の二つがございますけれども、そのそれぞれに、日本船はもちろんでございますが、外国船につきましても条約に沿った監督をするという趣旨の規定を入れる改正案を現在別途国会で御審議いただいておりまして、それが成立いたしますれば先生御指摘のような監督が今後は外国船についても国内で行われることになるわけでございます。
#222
○林(保)委員 いまもお話しの六千隻といったら大変大きな数だと思うのでございますが、検査の仕方にもよりましょう。しかし、なおこれからどのぐらいの人手をふやさなければならぬのか、そうしてまた、どの程度まで外国と水準をそろえてやれるのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
#223
○小和田説明員 今後の監督体制の点につきましては現在海上保安庁の方とも相談中でございますけれども、ただいま申し上げましたように、年間六千隻程度の外国船について立入検査をしているわけでございますので、その検査の一環としてこの条約に規定されておりますような内容についても立入検査をしてもらうということが十分可能だと思っております。
 なお、船員法につきましては船員労務官という制度がございまして、これは船員法上規定されております内容が守られているかどうかということを監督するものでございますけれども、これにつきましても現在の厳しい財政事情の中ではございますが、今年度二名の増員をしております。
#224
○林(保)委員 何名ですか。ちょっと聞き取りにくかったのですが。
#225
○小和田説明員 五十七年度に新しく二名の増員をいたしまして、合計で百二十八名になるはずでございます。
#226
○林(保)委員 いろいろと御工夫をなさっておられると思いますが、次に、この条約は船員が海上業務を行う上に必要な能力を備える、こういうことのために訓練とか資格証明及び当直に関する国際基準を設けることを目的としておりますが、一般に外航船の船員に必要な資格、能力、この国際水準を、運輸省ですが、どのように判断され、わが国の船員がどのような水準にあるのか、それぞれ違いましょうけれども、なお概括的に御説明願います。
#227
○小和田説明員 お答えいたします。
 たいへんむずかしい御質問でございまして、各国が持っております船員教育の制度あるいは海難の発生の状況その他から総合的に考えるしかないわけでございますけれども、たとえば海上保険について世界的なデータを収集しておりますロイドという保険協会がございますが、そこの統計等を見ますと、日本を含めましていわゆる先進海運国の事故率は全体として当然低くなっております。これに比べまして発展途上国に登録されております船舶の場合は比較的事故の状況も多いようでございますので、その点は今回この条約が発効し実施されますと、そのような条約に入っていない国も含めて監督をしていこうというのがこの条約の一つの柱でございますので、大変効果があるのではないかというふうに考えております。
#228
○林(保)委員 そうあらなければならぬと思います。海洋国日本の船員がそういうことをやってはいけません。
 先ほどおっしゃったようなロイド統計から言いますと、どれくらいの差があるのでございましょうか。発展途上国あるいは三国船での輸送もいろいろございますし、そういう面から見て、観念的でも結構ですから、ちょっと御説明いただけますか。
#229
○小和田説明員 手元にあるデータは一九七九年のものでございますが、百トン以上の商船についての事故の統計でございます。日本は隻数の割合で申しますと〇・二二%の事故を起こしております。これに対しまして、たとえば同じように先進海運国と言われておりますイギリスが〇・三七、ノルウェーが〇・四三というような数字になっております。
 これに対しまして、高いところといたしましてはギリシャが一・七五それからパナマが二・〇八といったようなところがございます。
#230
○林(保)委員 ありがとうございました。
 そこで、私もここへ海技免状受有者数等一覧表というのを持ちまして、甲船長ですか五十五年度末の免許状受有者、それから甲一航、甲二航とずっとありまして、丙航まであって、トータルで二十万二千三十九名でございますか、それから甲機長から以下ずっと丙機まで十九万一千三百二十二など、こういうデータを持っておりますが、これらの人は大変高い教育をかつて受けておる。現在もまたその技能を持続しておると私は考えるのでございますが、この点で本条約ができまして五年ごとの更新でございましたか、こういう人たちが資格を失ったりあるいは更新するときに支障のあるような問題が、この条約を批准して日本が受け入れるといたしますとあるのでございましょうか、ないのでしょうか。
#231
○小和田説明員 先生がいまおっしゃいました更新制は、条約の趣旨といたしまして船舶に乗り組む者は常に最新の海技知識なり技能を持っていなければいけないという考え方に基づくものでございまして、いままでのわが国の制度では、これは船舶職員法でございますけれども、一度免状を取りますと終身有効だということになっております。この点は今回の条約批准に伴います法律改正の中で、免状には有効期限をつけるということをしております。免状を取ったということ、資格そのものは終身有効でございますけれども、免状の効力が五年で切れるということでございます。したがいまして、たとえば長い間陸上生活をしていた船員がまた海上に戻るというようなときには、当然その間必要な最新の知識を持たないということが起こり得ますので、そういう場合にはあらかじめ一定の講習を受けていただくことによりまして新しい免状を差し上げるという手続を予定しております。
#232
○林(保)委員 そこで、これはよその国は別といたしまして、この条約の頭から「船員の訓練及び資格証明並びに当直」こういうようなものが柱として出ております。したがいまして私が質問いたしたいのは、この職員の訓練ということについて運輸省はどのような仕方をこれからお考えになっておられるのか、お答え願います。
#233
○小和田説明員 わが国の商船に乗り組んでおります職員につきましては、通常はいわゆる船舶職員になるための養成機関、具体的には商船大学とか高等商船専門学校とかいうふうな教育機関を卒業した者がほとんどでございまして、そのような学校でのカリキュラム、それから今後海技資格を与える場合の国家試験、その試験科目、そういうものも条約に合わせて現在見直しをしております。
 それからまた、タンカー等に乗り組む者については別途の講習会をやるように現在準備中でございます。したがいまして、そのような手段を講ずることによりまして、条約の要求しております内容をわが国の船舶職員が今後とも保有するように措置することは十分可能であると考えております。
#234
○林(保)委員 その点は後でまた質問するといたしまして、わが国はどのような証明書をどういう手続で発給するのか、またその裏書きをどうするのか、お聞きしたいと思います。
#235
○小和田説明員 船舶職員としての仕事を行います場合には、法律に基づきまして海技免状を持たなければいけないということになっておりまして、この免状のフォームは今回の条約の批准に関しまして一部手直しをする必要がございます。現在そのためのプログラムのつくり直しをやっているところでございます。申しおくれましたけれども、この免状の発行枚数は、先ほど先生もおっしゃいましたように小型船の乗組員等も入れますと実は全部で二百万件近い件数がございまして、これを処理するために電算化されておりますので、それのプログラムの手直しが必要だということでございます。
 それから裏書きの点は、条約がたとえば船長だとか機関長だとかの仕事をするに当たってどのような知識が必要かということを決めているのに対しまして、各国の海技資格体系が必ずしもそれと合っていないという事情がございますので、それを裏書きという形でほかの国にもわかるようにしようという趣旨のものでございます。いま申し上げましたように、今後発行いたします海技免状にはその裏面を使いまして、この免状の持ち主が条約のどの規則を充足する資格を持っているかということが外国政府にも明らかになるように、これも条約に裏書きのフォームが決められておりますので、それに沿った処理をする予定でございます。
#236
○林(保)委員 これもちょっと後にしまして、細かいようですけれども、安全な航海を維持するために当直についての規定がここにいろいろ出ております。これはやはり海技免状を持っていないと当直もできないというように理解しますが、この点について従来とはかなり変わった対応が実際上必要になると思います。運輸省はどうお考えでございましょうか。
#237
○亀甲説明員 お答えいたします。
 航海当直につきましては甲板部あるいは機関部でそれぞれ行われるわけでございますが、職員につきましては、先ほど来お答えがございましたように運輸大臣が試験をして免状を持った者が当直するわけで、すでにその試験の時点におきまして必要な知識、能力のチェックはされておるわけでございます。その次に部員が行います当直につきましても、この条約でもって一定の資格要件等が要求されておりますので、今回この国会に別途提出しております船員法の改正が通過いたしますと、その船員法に基づきまして一定の資格要件を要求し、その要件を満たした旨の証明をその人たちの持っておる船員手帳に証明いたしまして、そういうチェックを受けた人でないと当直に立てないということになりまして、これでもって職員、部員ともいわばちゃんとした能力を持った人が当直する体制ができるわけでございます。
#238
○林(保)委員 口で言うのはやさしいのですが、そうすると、実際問題として一つの船にそういうふうな資格を持った人が一人、二人いるのか何人いるのか知りませんが、やはり増員をしなければ現状のままではいかぬ、こういうことでございましょうか。
#239
○亀甲説明員 お答えいたします。
 職員につきましては、船舶職員法に基づきまして必要な人数の乗り組みが義務づけられておりますし、また部員につきましても、甲板部の部員につきましてはやはり船員法に基づきまして一定人数の部員の乗り組みが義務づけられているところでございまして、当直体制としては現在の乗り組み体制でもって十分対処していけるというふうに考えております。
#240
○林(保)委員 私はそれが本当にいけるのかなという疑念を実は禁じ得ないのですが、それでは、船員法そのほかを変える予定は現在ないわけなんですね。
#241
○亀甲説明員 乗り組んでおります部員の資格要件等につきましては、先ほど申し上げましたように条約に基づく一定の資格要件を要求するわけでございますが、乗組員の人数につきましては、今回この条約に伴っていろいろ変更するというようなことは特に予定されておりません。
#242
○林(保)委員 その点は実地を調べまして追ってまた質問をしたいと思います。
 外国船に対する監督というのはなかなかむずかしい問題があろうかと思いますが、今度この条約を批准いたしますとやはりどうしてもやらなければならぬ、これをやることがすなわちこの条約の趣旨にも沿うゆえんだと思いますけれども、運輸省はどのように対応を考えていらっしゃいますか。
#243
○小和田説明員 実はこの条約の大きな柱の一つは外国船についての監督規定を置いたことだと私ども考えております。特に、条約締約国相互を拘束するだけではなくて、この条約に加入することの効果として、条約に入っていない国の船を含めましてそれぞれの国に外国船がやってきた場合には、少なくとも条約レベル以上の船員が乗っているということを締約国の義務として監督をするということになっておりますけれども、これはこの条約の非常に大きな特色だと考えておるわけでございます。したがいまして、わが国の周辺海域における安全あるいは汚染の防止ということを向上させるためには当然日本の船員の能力の向上だけでは不十分でございますし、外国船を含めまして人的側面の安全向上という意味で、今後この条約に基づいた監督権限というものを遺漏のないように措置していきたいと考えております。
#244
○林(保)委員 その辺が第二の問題といたしまして非常に問題だと思います。
 時間がありませんので急ぎますが、本条約でもいわゆる旗国主義といいますか、フラッグ中心のあれを考えているようでございますけれども、これに抵触するマルシップはどのくらいあるのでございましょうか。三百隻とか四百隻とか言われたりしておりますが、これらに対する対応は運輸省はどのように考えておられますか。
#245
○小和田説明員 お答えいたします。
 実はマルシップというものの確立された定義がございませんので正確なお答えはなかなかしにくいのでございますけれども、一般的に言われておりますのは、日本に登録されている船舶であって、外国にいわゆる裸用船された船に外国の船員を配乗させた形で日本の船会社が運航するという、そういう概念のものだと考えますけれども、海上運送法におきましては、日本船舶を外国に貸し渡す場合には許可という手続が要ることになっております。したがいまして、その手続を受けました船から推定いたしますと、一口に三百隻前後あるのではないかというふうに言われております。残念でございますけれども、いま申し上げましたような事情で明確な数字は私ども持っておりません。
    〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
#246
○林(保)委員 いや、私の聞いているのはその数字と、もう一つはこの条約との関係は一体どのようになるのかということなんです。
#247
○小和田説明員 大変失礼いたしました。日本船に乗り組む乗組員につきましての現在の法規制は、船舶職員法と船員法とで異なっております。船員法、つまり船内で働く乗組員の仕事の基準あるいは労働条件といったものを規律する法律におきましてはすべての日本船に対して従来から適用されており、その点は今後も変わりません。一方、船舶職員法、これは船舶の中で職員としての仕事を行う者についていろいろ規定している法律でございますけれども、こちらの場合には従来、外国に貸し渡された船舶には適用しないという規定がございます。言いかえますと、ある船についてどのような船舶職員を配乗するのが適当であるかという点につきましては、実際にその船を動かし、使っている国がその国の法律を適用するのが妥当であろうという一つの考え方がございまして、配乗国主義というふうに呼ばれておりますけれども、いままでの船舶職員法はそういう制度を採用していたわけでございます。したがいまして、逆に外国から裸用船した船には日本の船舶職員法が適用されるということもございます。しかしながら、そのような制度は相手の国が、つまり貸し渡された先方の国がその船について十分な監督を行うという前提があって初めて効果があるわけでございますけれども、残念ながら最近では各国とも旗国主義、つまりその国に登録された船について監督を行うという考え方がほとんどでございまして、今回の条約もそういう考え方でできているわけでございます。したがって、この条約批准に当たりまして船舶職員法の改正をいたしまして、今後は日本籍の船であれば外国に貸し付けられているか否を問わず日本の船舶職員法を適用するということにしたわけでございます。その意味では、従来のように外国に貸し付けられて、裸用船されてしまえば日本の船舶職員法の適用が外れるという意味でのマルシップというものはなくなるというふうに私ども考えておるわけでございます。
#248
○林(保)委員 第三条にこの条約の適用範囲を定めておりまして、軍艦とか軍の補助艦及び漁船の船員、これが除かれておる。これはどういうわけでございましょうか。また、これらの船員については国際的にどういう規制があるのでございましょうか。また、そういう動きが出ているのでしょうか。
#249
○都甲政府委員 お答え申し上げます。
 条約の三条によりますと、確かに軍艦また非商業的目的のための公船、漁船等が除かれておりますけれども、軍艦及び公船につきましては、特に軍艦につきましては当然のことながら運航態様とか任務の態様というのが通常の船とは大いに違っているという点がございますし、それから軍艦、公船を含めましてこのような国家の権能のもとで運航される船というものは、通常、国際法上、管轄権から除外されておりますので、港に入ってきたときに、この条約で決めてありますような監督に服するということは適当でない、こういう特殊な事情がございますので、軍艦が除かれているというのは、これは一般的にこのような条約から除かれるということが行われておりますけれども、この条約でもそういう見地から除かれたものと思っております。
 それから漁船につきましては、当然のことながら漁船の運航というのは通常の船とは違いますし、それから漁業に従事するということで就労条件も違いますので、そういう観点からここに書かれていることを全部適用するのは適当でないという観点から除かれているという経緯がございます。
 漁船につきましては現在、IMCOにおきまして、その漁船に乗り組む乗組員の資格要件につきましてこれの基準をつくるということの検討が別途行われております。
#250
○林(保)委員 急ぎますが、ここに「技術協力の促進」という第十一条がございます。「開発途上国の特別の必要性を考慮した上、機関と協議し及び機関の協力を得て、可能な場合には国、小地域又は地域を単位として、」云々、こういうことが出ております。これは日本が技術協力として手を差し伸べる余地のあるものでございましょうか。また、そうだとすればどのようなことをお考えになっておりますか。――時間がありませんので、その辺をしっかりやっていただきたい。それこそが私が冒頭申し上げた海洋国日本の海運としての、あるいはりっぱな資質を持つ船員ががんばっておる、それをどのようにやっていくかということでございますが、いかがでしょうか。
#251
○小宅説明員 お答えいたします。
 条約十一条は、本分野における技術協力の推進につきましての一種のプリンシプルズ、原則を書いてあるわけでございますが、わが国といたしましては、この十一条に定められた事項に関しては、従来二国間あるいは多数国間、いろいろな形で技術協力をしております。研修員の受け入れ、専門家の派遣あるいは海運関係のいろいろなプロジェクトに対する機材の供与――時間の関係もございますので細かいことは省略させていただきますけれども、従来二国間ベースでこの種の経済協力をしている次第でございます。
 他方、IMCOも国連システムの一員でありますので、たとえば国連開発計画、UNDPの枠内でかなり大きな規模の技術協力が実施されておりますが、日本もこのUNDPには多額の拠出をしておりますので、間接にIMCOの担当する分野での技術協力にも多数国間ベースで日本も参加しているということが言えると思います。
#252
○林(保)委員 海は昔から海賊、さらにはいまでもいろいろなことが海にはございます。それだけにこういうものができることは私どもは大賛成なんです。そしてまた、それがきっちりと統一された国際基準で船が安全に、しかもまた船員の皆さんも喜んでやれるという状況になることを期待するわけでございます。そういった中で日本は、先ほどもありましたように世界第一の、先ほどのお話では三千四百五十万トンの外航船舶を持っておる国として、しかも高い資質を持った船と船員があるわけですから、むしろこういうところにこそ積極的な協力をやるべきである、この条約の批准の最大のメリットは私は実はここにあるのではないだろうかとすら思って質問を申し上げたわけでございます。ぜひひとつ、これからでも遅くございませんので、外務省と運輸省とが御研究なさいまして、やれるところはぜひ大きくやっていただきたいと思います。御要望を強く申し上げておきたいと思います。
 それから二番目に、これと関連いたしましていつも問題になっておりますILOの百四十七号条約、批准が大変おくれておりますが、これはどうしておくれているのか、いつごろやるのか、簡単で結構ですからお答えいただきたいと思います。
#253
○小宅説明員 お答えいたします。
 ILO未批准条約につきましては、昨年の国会における決議の次第もございまして、政府部内におきまして何とか進展をできないか事務的な検討を重ねている次第でございます。いま御指摘のありました第百四十七号条約もその検討の対象となっております。しかしながら、現在のところでは依然として国内法制との整合性の問題がございまして最終的な結論を得るに至っておりません。
#254
○林(保)委員 国内法制はわれわれ日本人の手で直せるわけで、国際条約としてすでに発効しておりますので、ひとつきっちりやって、これまたみんなが安心してよその国、港へ出かけられるようにするのが日本政府としての親心だと思います。強く要望申し上げたいと思います。
 それからもう一つ、欧州各国が連帯していま実施しようとしているポート・ステート・コントロールというのでございますが、内容はいろいろあるようでございますが、これに必要な措置は運輸省はどのようにお考えになり、日本としては対応しようとお考えになっておりますか。
#255
○小和田説明員 ただいま御質問のポート・ステート・コントロールと申しますのはIMCO関係の安全ないし環境保護にかかわりのある幾つかの条約につきましてヨーロッパの国々が共同して入港船舶に対してコントロールしようという趣旨の申し合わせでございまして、本年七月くらいからたしか実施するように聞いております。これが実施されますと、日本船舶の場合には、今回のSTCW条約、それから百四十七号条約の関係を除きますと一応原則的にはカバーされているのではないかと私は考えますけれども、その際、STCW条約につきましては、条約の所定の様式によります裏書きがついた海技免状を持っておりませんと、他国において果たして条約の基準に合った船舶職員であるかどうかが明確にわからないという問題がございますので、この点は海技免状の様式をなるべく早く改めたいと考えておるわけでございます。
 それからもう一点、この条約との関連におきまして、条約が成立をいたしました後にIMCOでは、船舶にどのような乗組員が配乗をされているべきであるかという点について、配員の原則に関する勧告というものをまとめております。先生が御質問になりましたのは恐らくその点に絡んでのことだと思いますが、ある船にどのような乗組員、職員ないし部員が乗っていればいいかということについて、これは日本船については日本の法律で決めることでございますが、個々の船について、この船はこういう人が乗っていれば十分であると日本政府としては考えるという旨の証明書を出すというのがその勧告の中に盛られている内容の一つでございます。これは勧告ではございますけれども、ヨーロッパ等におきますポート・ステート・コントロールの際に日本船が無用のトラブルを起こさないようにするためには、日本政府としてもいま申し上げた配員証書というものを発行することを検討する必要があるのではないかと考えておりまして、現在その具体的な検討に入るところでございます。
#256
○林(保)委員 これはまさに七月一日実施でございますので、皆さん大変心配しておられます。ぜひひとつ早い対応をお願いいたしたいと思います。
 それから、同じように心配と言えば、この間からフォークランド諸島をめぐる紛争が起きておりますが、これについていろいろな陳情も出ている、このように聞いております。運輸省はどういう措置をとっておられますか、一言お聞かせください。――それでは質問を変えまして、外務省はどのような対応をしておられますか。
#257
○小宅説明員 このフォークランドの問題につきましては、紛争が平和裏に解決されるよう、安保理事会でもわが日本政府の態度を明らかに表明したわけでございますが、安保理決議の筋に沿いまして、当事国間の交渉により問題が解決されることを期待している次第でございます。
#258
○林(保)委員 当面、日本人及び日本船に対する心配はございませんでしょうか。もしあれば、どういう指示をなさっておられますか。
#259
○小宅説明員 お答えいたします。
 私の直接の担当ではございませんのではっきりしたことは申し上げかねますけれども、私の承知している限りでは、あの海域は日本の船の航路帯には入っていない、しかし、水産庁を通じまして、日本の漁船その他に対して注意喚起を図るよう措置をしていると承知しております。
#260
○林(保)委員 時間がございませんので、続いて、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約に質問を移します。
 この条約を批准することによりまして、わが国が具体的にどのようなメリットを得られるのか、そしてまた、この条約の発効の見通しについて簡単に御説明願います。
#261
○小宅説明員 お答えいたします。
 この条約のメリットといいますか改善の点は、先ほど来御説明いたしましたが、海事債権に対する責任限度額の引き上げ、それから旅客、人の死傷に対する責任限度額を別途設定したということ、それから責任を制限することのできる者として船主のほかに新たに船舶の救助者を加えた、それからその限度額の表示単位といたしまして、より安定性のあるSDRを採用したということでございます。
 この条約は海事債権の責任制限制度に関します統一的な制度を定めたものでありますので、わが国がこれに加入することによりまして、一方ではその被害者の救済に対して妥当な措置が図られるということに加えまして、主要海運国として、国際協調ひいては海運業の発展に寄与するというふうに考えます。
 この条約の発効の見通しでありますが、先生御案内のとおり、この条約は、十二カ国が締約となった時点で一年たちますと発効いたします。現在は五カ国が締約国となっております。私どもの承知している限りでは、北欧の四カ国、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク及びその他の西欧諸国に早期締結への動きがありますので、かなり早い時期に、たとえば昭和五十八年じゅうには発効要件を満たし、五十九年じゅうに発効するという可能性はあるものと見ております。
#262
○林(保)委員 最後に、植物新品種保護条約につきましてお伺いしたいのでございますが、端的に、一九六一年の条約が一つ残っている、これによる同盟がある、またここに新しく今度の条約で同盟が出てまいる、これはどういうような枠どりといいますか、あるいは重複するというか、そういったものになるのでございましょうか。それぞれの同盟の運営なり組織なりとの問題点を御説明いただきます。
#263
○小宅説明員 簡単に申し上げますと、条約が二つ、同盟は一つ、その一つの同盟が、一つの予算、一つの事務局、一つの事業計画で活動するということになると思います。
#264
○林(保)委員 分担金は同盟に対して幾らになりましょうか。
#265
○谷垣説明員 お答え申し上げます。
 スイス・フランで払うことになっておりますから、そのときどきの日本円とのレートの変動によって変わるのでございますけれども、現在のところ、本年度予算に約二千七百万円を計上いたしております。それは、当初のいわば加入金、積立金に相当するものを含めてでございます。
#266
○林(保)委員 時間が来ましたので締めくくりますが、大臣、お聞きのように海の問題は、外交政策上もゆるがせにできぬ問題だと私は思うのです。今日の日米間の経済摩擦にいたしましても、これは日本人に物を買えと言ったって、原料がちゃんと日本に届く、資源を出してくれる国がなければならぬ、海上輸送がしっかりしなければならぬ。そのために大臣はシーレーンなんかの問題も取り上げられるのだと思いますけれども、なおやはり日本は、良質な船と良質な船員を持って、りっぱな資格を持っていく、リーダーシップをとるだけの力があるのでございますが、どうも外務省を見ておりますと、必ずしも、そういう問題ごとのセクションがないのはあたりまえかもしれませんけれども、体制上遺憾だと思われる点が多いと思うのでございます。
 私どもが非常に強く前々から主張しております海洋、海底資源の開発、海洋開発法でございますが、これらも提唱しているのに、これはなかなか鈴木内閣では進みませんね。一体それはどういう原因なんでしょうか。海に対する認識、資源に対する認識を含めまして、最後に、大臣の本条約にかける積極的な御意思を承っておきたいと思います。
#267
○櫻内国務大臣 申すまでもなく、わが国は主要海運国でございます。この種の条約による国際協力を促進するに当たって、積極的な、指導的な役割りを担うべき責任を持っておる、こう思います。このような国際協力が促進されることは、また同時にわが国の利益に合致するものである、こういう見地の上に立って積極的な姿勢をとってまいる考えでございます。
#268
○林(保)委員 火事の起こっている摩擦の問題でなくて、基本的な問題をもう一度しっかり外務省並びに運輸省にぜひやっていただきたい。私どももそういうことでがんばらせていただきたい、こういうことをお誓い申して、ひとつ終わりたいと思います。ありがとうございました。
#269
○中山委員長 次に、野間友一君。
#270
○野間委員 いまから質問するわけですが、時間の制約がありますので、簡潔にお答えいただきたい。答えがなかったり、あるいは直接その質問に答えがない場合には、実際に審議が進みません。挙げて政府の責任ですから、あらかじめそのことを申し上げておきたいと思います。
 植物の新品種の保護に関する国際条約、これからお聞きをいたしたいと思います。
 午前中にも答えがありました五十三年当時の特許庁と農林水産省との種苗法案に関する話し合い事項、これはこの条約の批准後もそのまま引き継がれ維持されるわけかどうか、この点についてお伺いします。
#271
○谷垣説明員 考え方に相違はございません。
#272
○野間委員 時間がありませんので中身については省略しますが、八項目ですね。すでに会議録に出ておると思います。
 次にお聞きしたいのは、この条約の第二条、「保護の方式」でありますが、具体的にこの条約の批准に伴って、わが国としてはどういう保護の方式を考えておるのか、いかがですか。
#273
○谷垣説明員 この条約に対応する国内法としては種苗法が制定されておりまして、品種保護制度が設けられておるところでございます。
 この品種保護制度は、新しく品種を育成した者は、国、つまり農林水産省に登録の申請をする。申請いたしまして、一定の種苗法に定める要件に該当いたしますと登録する。登録いたしますと、登録された品種を、登録を受けた者の許諾なしに勝手に増殖販売することはできない、こういう効果を生ずるということを内容とした制度でございまして、この内容は条約の定める要件等にすべて合致したものでございます。
#274
○野間委員 聞いたのは、この保護の方式について、国内法は何なのかと聞いただけですから、種苗法なら種苗法と言えばいいわけですよ。
 そこで聞くわけですが、この種苗法ですが、これは私も見たのですが、条約では「育成者の権利」こうありますね。ところが、種苗法によります権利というのは一体何なのか。私は法律を見たのですけれども、権利という言葉は出てこないわけですね。
 恐らく排他的に使用する権利、たとえば専用して使用する権利、その侵害に対しては損害賠償とかあるいは使用差しとめとか、さまざまな権利が出てくると思うのですけれども、ところが、種苗法そのものの中にはないわけですね。これはいわゆる相手方に対して行為を規制することによる反射的な利益、こういう考え方をとっておるからでしょうか、どうなんでしょう。簡潔に。
#275
○谷垣説明員 条約上で言う「育成者の権利」とは、育成者の許諾なくして無断で増殖販売することができないことを言うということで、逆に言えば許諾を要するということでございます。
 したがって、これに対応して現行の種苗法でも増殖販売、生産販売する際には許諾を要するということにしておりまして、その際にこれに反した場合については、差しとめ請求権、損害賠償請求権を設けるとともに、刑事罰も科するということで担保いたしておりまして、条約の定める権利といささかの違いもございません。
#276
○野間委員 種苗法の中になぜ権利という文言を入れなかったのかということを聞きたいのですけれども、また長々とやられたら困りますので、別の機会にいたしまして、聞きたいのは、そうしますと特許という言葉もこの中に出てくるわけですが、この特許について、これはどうなんですか、この条約との関係でいいますと全然別ということになるのでしょうか、どうなんでしょうか。
#277
○佐藤(満)説明員 お答えいたします。
 特許は、先生御案内のとおり、自然法則を利用した技術的思想の創作ということで、種苗法の対象としているものとは、対象、態様が異なっております。それで、この条約を受けます国内法の器といたしましては、種苗法があるのみでございます。
#278
○野間委員 そうしますと、この条約を具体的に国内で実施する場合には、国内法としては種苗法以外にはない。そうしますと、現に特許法、特許関連の権利、法律があるわけですけれども、これはこの条約のらち外と申しますか、全然別個に独立して、それはそれで存在する、こういうことになるわけですか。簡潔に。
#279
○佐藤(満)説明員 先ほども申しましたように、この条約を受けました、育成者の権利を保護する国内法は種苗法でございます。
 それでは、植物品種についての権利を特許にできるかどうかということにつきましては、理論的にはそれはあり得るということでございます。
#280
○野間委員 話し合い事項の中にもそういう趣旨のことが書いてあるわけだし、いまの話でも一つの物を種苗法による登録、同時に同じ物を特許法による登録と、両方理論的には可能だということですね、これは前からずっと論議がされておりますけれども。
 そうしますと、次にお聞きしたいのは、この条約を素直に読めば、ここで言う育成者の権利、これについての保護の方式として、一つは種苗法による特別の保護の制度、「又は特許を与えることにより承認することができる。」こういう制度ですね。この二つの制度ということで、国内法としては特許法と種苗法、これを当てはめれば最も素直に解釈できると私は思うのです。しかも、この三十七条との関係で、これは事務局長に通告をすれば一向に矛盾しないし差し支えないわけですね。私はそれが素直な条約の解釈だと思うのです。
 ところが、日本政府はそうではなくて、この二条に言う特許、これは日本の特許法とは関係ないのだ、これはアメリカのことを指して言うのだというようなことを言っておるようですが、それが国際的に通用する解釈なのかどうか。私は、これは国内の裁判所の裁判になれば敗れると思うのですけれども、こういう政府のいま考えておる考え方、これは国際的に通用する考え方になるのかどうか、これは外務省にお伺いしたいと思います。簡単にやってくださいよ。
#281
○都甲政府委員 条約の第二条は、各国におきましてこの保護をどういう方式で行うかということについて、選択を全く各国の判断にゆだねたものでございますので、わが国として一つの方式によってこれを行うということに判断を行ったことについては、条約上全く問題がないだろうと考えます。
#282
○野間委員 国際的にこの条約の客観的な解釈として、どうもいびつな考え方じゃないかというふうに私は思うのです。
 次にお聞きしますのは、理論的に両方で登録が可能だということを前提にして、これは政府も認めておりますからお聞きするわけですけれども、植物の新品種の同じ物を、一つは種苗法で登録の手続、一つは特許法で手続をする、これは別人がですよ。別人が同時にそれぞれの手続をするという場合に、一体これをどう調整するのか。
 もう一つは、同一人が種苗法と特許法で同時に登録の申請手続をする、これが認められる。ところが、種苗法あるいは特許法、どちらかの権利の一方を他人に譲渡するという場合に、その権利の優劣なり、この関係はどうなるのか、これは非常に大きな問題だと思うのですね。これについて何かいろいろと答弁しておりますけれども、実際に種苗法と特許法という現に法律なり権利があるわけですから、その関係をどう考えるのかということですね。客観的に政府の考えを確定しなければならぬ、こう思うのですが、いかがですか。
#283
○都甲政府委員 この条約の第二条によります育成者の権利につきましての、この条約が予定しています保護の方式は、私は実態をよくわからないので、実態に即して考える必要があると思いますけれども、現在、実態は種苗法の保護で十分であるというふうな判断で一つの方式が選択されたものと承知しております。でありますから、多分特許法でこれが問題になります場合には、実態が、ここに言う育成者の権利の保護というものとは離れた、技術そのものを保護するということになるのではないかと私は予想しておりますけれども……。
#284
○野間委員 それは大問題になりますよ。この話し合い事項の中身とは全然違うことになるわけですよ。これは特許庁、それでいいのですか。要するに、その植物の新品種について、これは特許法の関係での登録の対象にもなるし、種苗法の登録の対象にもなる、こう理論的に認めているわけでしょう。じゃ、条約の締結によって変わるのかと言ったら、変わらない、こう言った。ところが、いまの答弁によりますと、どうやら、これは種苗法だけの手続しかできないやに聞いたわけですけれども、特許庁、どうですか、これは。
#285
○佐藤(満)説明員 お答えいたします。
 先ほど農林省の方からお返事がありましたように、申し合わせ事項は現在も生きておるとわれわれは考えております。申し合わせ事項の中にございますように、先ほど申しましたように、条約を受けました育成者の権利を保護する国内保護の器としては種苗法があるということを申し上げたわけでございまして、先ほど申しましたように、植物品種それ自体の物の特許、これが発明として特許出願があった場合には、理論的に特許になり得る、ただし植物の特殊性からいたしまして、新規性、進歩性の要件を満たすことが非常にむずかしいということで、現実にはまれであろうということを申し上げたわけでございます。
#286
○野間委員 現実にまれかどうかということではなくて、理論的に聞いているわけですよ。現に、二つの法律があるわけでしょう。同一のものが両方にできるわけですから、その競合した場合にどうするか。いま外務省が言ったでしょう。これは外務省の解釈でいいのですか、どうですか。簡単に言ってください。――いや、特許庁に聞いておるのです。あなたは農林省でしょう。
#287
○佐藤(満)説明員 お答えいたします。
 われわれはあくまでも、先ほど申しましたように、申し合わせ事項が現在も生きておりまして、植物品種に関するその物の物としての特許については、理論的に特許になり得るというふうに考えております。
#288
○野間委員 外務省、どうしますか。
#289
○都甲政府委員 条約に決めております権利の保護というものは、やはり実態に即して国内的な体制が整えられることが予想されておるものだと思います。
 先ほどからの御説明によりますと、実態におきましては種苗法による保護ということが予想される大体のケースであるというふうに伺っておりますので、理論的な可能性があるということにおきましては、確かに特許法による場合もあると思いますけれども、現実の事態におきましては、種苗法による保護を行うということでこの条約の目的が達せられているというふうに私は考えております。
#290
○野間委員 どういう根拠に基づいてそういうことが言えるのですか。理論的には――もちろん私は理論的な問題を聞いているわけです。まれかどうか、そんなことは別な問題ですよ。
 そうすると、どちらに優劣をつけるかということについて、法律上の根拠は、種苗法にも特許法にもないわけですね。何で勝手にそんなことが言えるのですか。その根拠は何でしょう。
#291
○谷垣説明員 先ほど来、理論的にはあり得るとおっしゃっておりまして、しかし、従来までに一件も特許法で植物品種それ自体についてやった例はないということでございまして、現実の問題として、両方で行われるということはこれまでございませんし、先ほど特許庁の方から御説明ございましたように、特許要件を満たしにくいという理由によって今後もまずまれであろう、こういうことで種苗法は制定されておりまして、以来、この三年余りにわたる運用経過を見ましても、不都合な点は一切ございません。
#292
○野間委員 そんなことは聞いていないですよ。将来も、あってもまれかどうか、こんなことは別の問題ですよ。両方で登録した場合に、優劣ですね、これはどうなるのかということ、これは二つの法律があるわけですから、当然聞くのはあたりまえでしょう。まれかどうかというのは、理論的にはまれだってあり得るわけですから、その場合に、優劣が、法律上根拠がないわけですよ、いま種苗法云々ということがありましたけれども。これはやはり一つの大きな問題じゃないかというふうに僕は思うわけです。
 関連して聞きますけれども、五十三年の六月十六日の参議院の農水委、この委員会の質疑の中で、内閣法制局の第四部長ですか、両方の調整について、条約加盟その他いろいろな問題が出てきた場合には、法律改正が必要であるということになった場合にはどう調整するのか、政策的な配慮も十分聞いた上でいろいろ検討したいということを言っているわけですね。だから、これは、法律上根拠がないものを勝手にそんなことをつくってもらっては困るので、これはきちっと整理をしてほしいということ……。
 それから、条約の関係で、特許法の中身についても若干聞いておきたいと思いますが、特許法の二十六条ですね、ここでは「特許に関し条約に別段の定があるときは、その規定による。」こうありますね。そうしますと、ここで言う「条約」と本条約とはどういう関係にあるのかということが一つ。それからもう一つは、特許法の第四十九条、拒絶の査定の問題ですね。ここで「審査官は、特許出願が次の各号の一に該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。」「その特許出願に係る発明が条約の規定により特許をすることができないものであるとき。」こういうふうにあるわけですね。ここで言う「条約」は本条約とはどういう関係にあるのか。この二点についてお伺いしたいと思います。
#293
○佐藤(満)説明員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、特許法上の「その特許出願に係る発明が条約の規定により特許をすることができないものであるとき。」というのがございまして、拒絶査定をすることになっておりますが、先ほど来申し上げておりますように、条約の保護の対象、態様と特許法の方の対象、態様とは異なっておりますので、この条約が特許法第四十九条で適用されることはないというふうに考えております。(野間委員「二十六条は」と呼ぶ)ちょっと条文を持ってまいりますので、申しわけございませんが……(野間委員「いま言われたことと同じ解釈ならそれでいいのですけれども」と呼ぶ)二十六条につきましても全く同じ解釈でございます。
#294
○野間委員 次に進みます。
 新品種の特許、これは午前中にも質問がありましたけれども、現にいままで四十二件の申請を受けておる。うち審査請求が二十九件というふうに聞いております。これはこれで特許法に基づいてやって、そして法が許容するならば特許していくということになると思うのですけれども、そのことについて確認です。イエスかノーだけで結構です。
#295
○佐藤(満)説明員 先ほど申しましたように、植物品種のそれ自身の物の特許につきましては、それが出願されまして特許要件を満たす場合は特許になります。
#296
○野間委員 農水省に聞きますが、種苗法十二条と条約との関係です。つまり、先ほどからも話がありましたが、種苗法で別表として三百八十三種類定めておるわけです。これは相互主義というか、日本の場合条約を締結したらまず五品種を開放するということになっているようですね。種苗法の十二条ではこれはどうなるのか。つまり三百八十三種ですね。こういう関係でなければ相互主義に基づいて開放できないのか。それともそうでなくて、その外国でその本国と外国のと同じ扱いをしておけば品種が数が多い少ないとは全く無関係なのかどうか。この十二条の解釈について一言だけ。
#297
○谷垣説明員 種苗法の十二条は、条約で言う作物別相互主義に相当する規定を設けております。したがって、品種の数というのは恐らく対象植物の種類の意味ではないかと思われるわけでございますけれども、植物の数、種類の数では比較いたしておりません。その作物の種類を相手国でも保護しておるのかどうかということでございます。
#298
○野間委員 この条約についてお聞きすることがたくさんあるのですけれども、時間がありましたらまた最後にお聞きするとして、次に進みたいと思います。
 次にお聞きしたいのは海事債権についての責任の制限に関する条約であります。
 最初にお伺いしたいのは、日本政府はこの条約の成立過程にずっと参加をされております。そしてその当時のいろいろな人が書かれた本を読んでみますと、この条約の四条、この中に過失、特に重過失ですね。これは原案にあったものが削除されるということで、被害者を擁護するという点からこれは納得できないということで、この条文についてわが国は棄権したということ。それから責任限度額も、かなりの改善はあるけれども不満だということで、これも最後に条約がつくられた後で特別に発言を求めてこの点についての批判、不満も表明した、こういうことですけれども、この点についてまず確認しておきたいと思います。
#299
○小宅説明員 お答えいたします。
 わが国がこの条約の採択会議において条約の採択後に行った発言の内容でございますが、骨子は次のとおりでございます。
 重過失がこの責任制限阻却事由に明示的に含まれなかったということは不満である。これが第一点。
 次に、小型船に関します最低責任限度額がわが国が主張したところに比べて低かったということが問題であったという点。
 それから三番目に……
#300
○野間委員 私が聞いたことに答えてもらったらいいのです。聞いてましたか、あなた。一つはいまのでいいのですよ。本条文について四条で棄権したということでしょう。それからもう一つは、責任限度額についてこれはかなり改善をされたけれども不満だ。これは特別に発言を求めたわけでしょう。そのことをイエスだけでいいのです。
#301
○小宅説明員 そのとおり発言いたしました。
#302
○野間委員 私も早口でえらい申しわけないのですけれども、時間をせいておりますので、よく聞いておいてください。
 この条約に棄権した国は米、仏、ギリシャ、インドネシア、スイス、イラン、こうですね。そしてアメリカの場官もこれは責任限度額が非常に低いということのようですけれども、この棄権した国、いま六カ国ということは事実だろうと思いますが、いかがですか。
#303
○小宅説明員 本条約の条約案全体に対する採決の結果、棄権は六カ国でございます。
#304
○野間委員 ちょっといま聞き漏らしたのですが、いいです。
 責任制限の阻却の問題についてお伺いしたいと思います。
 現行と比べまして、これは責任を制限するケースが非常にふえた。それは要するに船舶所有者、これに過失がある場合でも、これは責任制限の対象になるということですね。船舶所有者、つまり加害者側の責任が軽減されたということであるわけですが、ここで問題を提起と申しますか、お聞きしたいのは、一条の四項の規定とそれから四条の規定、これとの関係をどう考えるかということです。この四条についていいますと、これは故意並びに未必の故意、そして認識のある過失、こういうものが含まれているように思うのです。
    〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
そうしますと、この一条の四項、ここでの過失ということとちょっと何か概念の混同があるやに思うのですが、わが国の故意、過失の概念と条約上のあれとは違うのかどうか。この点についてのお伺いです。
#305
○稲葉説明員 条約上の概念につきましては、英法の概念を多分援用している点があるのではないかというふうに思っておりますが、基本的には注意義務の懈怠があるかどうかということが過失の本質でございますから、本質的には変わりはないと思いますけれども、表現上はいささか日本の法とは違っているというふうに考えております。
#306
○野間委員 そうしますと四条は、故意、これは未必の故意も含めて故意と、それから認識のある過失ですね。これも含めておるのか。それとも、未必の故意だけなのか。この点いかがですか。
#307
○稲葉説明員 認識のある過失を含んでおると考えております。
#308
○野間委員 そうしますと、先ほどちょっと申し上げたようにこの一条の四項、ここでは過失という表現がありますけれども、この過失の中で認識ある過失がこの四条の中に入れ込まれる。この四条の過失の中身がそれだけ制限される、こういうことになるわけですか。
#309
○稲葉説明員 一条四項はその船舶所有者または救助者の被用者がどういうことによって過失の責任を負うかという規定でございまして、それに対しまして四条の方はその船舶所有者等自身において過失等があった場合に責任制限ができるかどうかという問題でございまして、ややディメンションを異にしているのではないかと思っております。
#310
○野間委員 わかりました。
 それはそれとしても、そうしますと、従前の、つまり現行の責任制限から、新しい四条によりますと、責任制限される場合が非常にふえたということになるわけですね。つまり、本来的な船舶所有者の過失、これについても責任が制限される、こういうことになったわけですね。これは大きな変化ですね。
#311
○稲葉説明員 理論的には、軽過失の場合もいままでは責任制限ができなかったのに対しまして、今後は軽過失の場合であれば責任制限ができることになった、こういうことでございます。
#312
○野間委員 そうしますと、被害者救済という観点から、これは条約の成立したときの論議にも関係するわけですけれども、いろいろと問題があるというふうに私は思います。
 次にお伺いしたいのは、そういうことを前提として考えた場合、最近通信機関等の発達で船主、特に海運大企業の船主が船長等を指揮監督することが容易になって、船長の代理権は縮小しておるというのが一つの特徴ではないかというふうに思うのですね。したがって、その分船主の責任が大きくなっておる。そうなりますと、先ほどの、要するに加害者側の責任の緩和ということとの関係で、これからは船主の責任あるいは過失を問われるケースが一般論として非常にふえるのではないかと思うわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
#313
○稲葉説明員 現実にいままで問題になったケースにおいて船舶所有者の過失の有無が論議された事件は、少なくとも日本法に関する限りはないわけでございます。その場合に、船舶事故の態様はいろいろあるわけでございますけれども、操船ミス等につきましては、これはその場その場の船長等の対応によるわけでございまして、余り指揮監督の問題は起こらないと考えます。問題は、荒天等をついて出航するという場合にそういう問題が起こるかということでございますけれども、その荒天の事情を十分伝達がされている以上は、それが、通常人であればとうてい出航を命ずべきでなかったということであれば、当然条約の四条の無謀な行為ということになりまして、責任制限ができないということも十分考えられるというふうに考えております。
#314
○野間委員 しかし一般論としては、それだけ制限される範囲がふえたということは間違いないでしょうね、理論的に。
#315
○稲葉説明員 理論的にはそのとおりでございます。
#316
○野間委員 次にお聞きしたいのは、責任制限主体の保険者の立場ですが、この一条の六項とそれから責任制限の援用との関係ですが、船舶所有者等が援用しないという場合に、この六項で保険者の責任は一体どうなるのかということなんです。六項からいいますと、援用しなくても、制限の範囲内でしか責任を持たないということになるやに読めるのですけれども、その点、いかがですか。
#317
○稲葉説明員 この六項の規定は、保険者に対しまして被害者が直接請求をする場合の規定でございまして、被保険者と保険者との間の関係を規律するものではないというふうに考えております。
#318
○野間委員 そうしますと、お聞きしたいのは、責任制限を援用しない場合ですね、つまり、無制限に責任をとる場合ですね、これはそうすると保険者のてん補する額とはどういう関係になるわけですか。
#319
○稲葉説明員 責任保険の場合におきましては、てん補額については必ず保険約款でその点については手当てをしておるはずでございまして、それによって一時的には処理がなされるはずでございます。もしその点について手当てがされておりませんでして、被保険者が全額の賠償を自発的にした、それについて全面的にてん補をするという約束を保険契約上しておりましたら、それは、その場合の保険者はこの条約の規定あるいはこれを受けました国内法の規定を盾にとって責任制限をすることはできない、かように考えております。
#320
○野間委員 要するに、責任制限の範囲内でしか保険会社はてん補しないケースがいままで非常に多かったやに私思っておるのですけれども、この条約の締結によって、そういうことがさらに大きくなって、被害者の救済という点からしてもとるのじゃないかという感じがしますが、この点、いかがでしょうか。
#321
○稲葉説明員 いまもお答え申し上げましたとおり、その点は保険約款でそういうふうに定めておるということから来る問題でございまして、この新しい法律がそれを認めたということは、これはあくまで保険者に対する直接請求を認めるという国があることをおもんばかったためのものでございまして、わが国に関します限り、それが被害者について特段の問題を起こすということはないと考えております。
#322
○野間委員 しかし、こうなりますと、その保険約款、これは大蔵省から資料をいただきましたけれども、従前の保険約款も全部責任制限の範囲内でしか責任を持たない、これが典型的な約款だと思うのです。そうなりますと、結局、責任制限の援用の有無にかかわらず、とにかく保険会社はその限度しか出さない。五十年の審議のときにもいろいろそういう点が問題になりまして、それで実際に責任制限があったとしても、それについてのてん補は行政指導で保険会社に対して実際実損に対して見合うようなものを払うべしということを指導するんだということを、大蔵省、この前のときたしか答弁しておったと思うのですけれども、この点について従前そうなのかどうかということの確認と、これからはでは一体どうするのか、この点について、大蔵省、いかがでしょうか。
#323
○松田説明員 船主の権利として、海事責任の制限に関する条約並びにその国内法によりましてその責任を制限することができるという権利があるわけでございますから、この権利の行使をそういった行政指導であるとか、そういったものによって制限することは適当でないと考えております。
 ただ、不当な値切り方をするとか、そういったことは妥当ではないので、そういったことについては行政指導いたしたいと五十年の審議の際にお答えしておりますし、そういう指導もいたしております。
#324
○野間委員 そうですね。そうすると、それから、責任制限について、その限度額のアップですね、これはいろいろあるわけですが、これでも実際に実損との関係で考えてみますと、まだまだ実損には足らないというケースが、いままでもあったし、今度の限度額のアップにおいても見通しとしてはある。
    〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
これは恐らくきょうの法務委員会の中でもそういうふうに政府は答えていると思うのです。この点についての見通しも含めて、いかがでしょうか。
#325
○稲葉説明員 これまでのケースを見てまいりますと、先生御指摘のとおり、実損に比して非常に責任限度額が低いというケースがあったことは否定できないわけでございます。また、その点があるからこそ六倍ないし一・何倍という限度額の引き上げという改善をしようとしているわけでございます。ただ、責任制限の趣旨と申しますのは、やはり責任制限ができる場合があるから責任制限の意味があるわけでございまして、およそ責任制限の適用がないというのならそういう制度を設ける必要はないわけでございます。その点から、責任制限の適用があるという事態が起こるということはやむを得ないわけでございますけれども、今回かなりの程度責任限度額が引き上げられましたので、これによってカバーされないというケースはいままでに比してかなり減少するというふうに考えております。
#326
○野間委員 減少するかどうかは、それは引き上げるわけですから減少しなければおかしいとは思うのですけれども、かなり減少する、しかし実損との差は依然としてあるということをいま稲葉さん認めたと思うのです。このことが現に条約を締結する際に政府がわざわざ採決の後に発言を求めて、これについては依然不満だ、今後改善しなければならぬ、これは実態を踏まえた上で外務省はそのように評価――いま私が持っておりますのは運輸省の川上さん、直接参加した人ですね。この人が政府代表として行ったわけですが、この人がそういうことをちゃんと書いてあるわけです。ですから政府自体がこの実態に照らして考えた場合も、先ほど稲葉さん言われましたけれども、被害者の救済という点からして、限度額を上げたところでこれでもまだまだ不満なんだ、これが日本政府の態度でもあるわけです。これは運輸省いかがですか。
#327
○山本説明員 お答え申し上げます。
 日本政府提案とでき上がりました七六年条約との差は、確かに小型船舶についてございます。ただ、日本政府提案は、逆に大型船につきましてはでき上がりました条約の方が大きいわけでございます。そういう意味でプラス・マイナスございまして、総合的に判断したわけでございますけれども、基本的に日本政府といたしまして、小型船についてもう少し配慮しなければいけないという意向は同じでございます。
#328
○野間委員 大蔵省にお伺いしますけれども、PI保険ですね。この付保額について、細かい点聞きますと時間がありませんので、一言お聞きしたいのは、このPI保険についてはかなりのものが限度額を上回って掛けておるのではないかと思いますけれども、実態はどうでしょう。
#329
○松田説明員 限度額を超えて支払う場合以外に過失の場合というのがございまして、あるいは条約の締結をしていない国の海域において起きた場合には当然限度額は問題にならないわけでございますから、支払う場合がございますので、そういった場合に備えて限度額を超したものを掛けておるものがございます。
#330
○野間委員 ですから、実態としては限度額を超えて、付保額としては現にたくさんあると思うのです。制限された限度額ですね。特に今度またこの中で、さらに船舶所有者の過失の問題で、これが責任制限の範囲に入ってくるということになりますと特に顕著になるのではないかという懸念をするわけです。いろいろ資料を見てみますと、現に企業の方も、われわれ業者は保険を掛ける際でも今度の条約によって責任限度額に比較的安心して依存できるであろう、その点結果的にはこの条約は業者の考え方が世界の大勢と同じだったということで、この業者の考え方がこの条約の中身になっておる。逆に言いますと、被害者の方という点から、やはり日本政府が態度表明したように、私は問題があるのではないか、こういうふうに思うので、その点について指摘をしておきたいと思います。
 それではえらいはしょりましたけれども、次にSTCW条約について質問に入りたいと思います。特許の関係はもうお帰りください、時間がないようですから。
 本条約が生まれるようになった経緯ですけれども、先ほどもお答えになっておりましたが、リベリア船籍の大型タンカー、トリー・キャニオンの座礁事件を契機として生まれたという経緯があるわけですね。そこで土井委員の方からも話がありましたけれども、便宜置籍船、この点についても船員の資質が低いということからこれも問題になったと思いますし、これを廃止しなければならないというふうに私も思うのですけれども、この点については一体議題となったのかどうか。その点、いかがでしょう。
#331
○小宅説明員 お答えいたします。
 この条約は便宜置籍船の事故というものを契機として作成されたものであります。したがって、開発途上国の船員の技能の向上ということも大きな目的の一つとなっているわけでございます。したがって、便宜置籍国を含む開発途上国ができるだけ多くこの条約の加盟国となることによりまして、便宜置籍船につきましても船員の一定の水準の技能が確保されるということになれば、御指摘の便宜置籍船の弊害の一部は少なくとも解決されるわけでございます。しかし、この条約の作成交渉の過程におきまして、便宜置籍船の問題につき正面から議論は行われていなかったと承知しております。
#332
○野間委員 公海条約第五条、「船舶は、その旗を掲げる権利を有する国の国籍を有する。その国と当該船舶との間には、真正な関係が存在」しなければならぬ、こうありますね。ここで言う「真正な関係」とは何なのか。
#333
○都甲政府委員 この真正な関係につきましては、これを採択する会議におきましていろいろな議論がございましたけれども、実際にいかなる国籍を船舶に与えるかということにつきましては各国の国内法に任された面が多かったわけでございますけれども、それを実態的にどのようにあらわすかということにつきましていろいろ議論がございまして、結局最終的には真正な関係という形で、実態的に旗と国籍とが結びついているということを理念的にあらわすよりしようがないだろうという妥協の結果として、こういう「真正な関係」という表現が使われたわけでございますけれども、その意味するところは、実質的に実態的な関係がなければならない、そういうところだろうと思います。
#334
○野間委員 その点、便宜置籍船の問題について質問を続けますが、たとえばリベリアの問題ですが、これは聞きますと乗組員はそのすべて、ほとんどでなくてすべてが他国からの外国人という実態のようですね。そうしますと、旗国、これが船員に対して「行政上、技術上及び社会上の事項について有効に管轄権を行使し、」規制を行うということができるのかどうか、非常に困難な場合が多いと思うのです。この点についてはどうでしょうか。
#335
○山本説明員 お答えいたします。
 確かに便宜置籍船というのはいろいろございまして、その旗国との関係、大分幅があると思います。ただ、いま先生例におっしゃいましたけれども、リベリアはSTCW条約にもすでに入っておりますし、それからSOLAS条約、船舶の安全、いろいろな条約に入っておりまして、そういう安全面、それからいま言った船員の問題、すべて完備されて国内法で整備されておるわけでございます。
#336
○野間委員 船員の資格等水準を一定限度のものに確保するということとの関係で、この条約のシステムで果たしていいのかどうか、非常に弱いと言わざるを得ないと思うのです。
 そこで具体的に一つ聞きますと、自国を旗国とする船舶の船員の資格証明、たとえばリベリアの場合に一体どうするのか、いかがでしょう。
#337
○小和田説明員 この条約で言っております旗国主義といいますのは、たとえばリベリアに登録されている船の場合でございますと、リベリア政府の発行した海技免状を持った人が船舶職員として乗らなければいけないということでございます。その際に、その免状を持った人の国籍がどうであるか、つまりリベリア人であるかどうかについては条約は何ら触れておりません。
 リベリアの制度につきましては、私どもの知っている限りで申し上げますと、リベリアは海技資格につきまして国内法を整備しておりまして、それに基づいてリベリア政府の海技免状というものを発行しております。
 それからもう一点は、リベリアの場合には外国政府のしかるべき免状を持った人に対してはそれと同等のリベリア政府の免状を発行するという、私どもが互認と呼んでおります制度を採用しております。
 以上でございます。
#338
○野間委員 しかし、旗国主義、この立場を推し進めた場合に、そういう互認制度というものは許容できないと私は思うのですけれども、その点、いかがでしょう。
#339
○小和田説明員 条約が言っておりますのは、ある国に登録されております船舶の船舶職員につきましては、当該国が、登録されておりますその国が責任を持って船舶職員として必要な知識、技能を持った者が乗っているかどうかということを規定しているわけでございまして、その国の人であるかどうかということは、それぞれ各国のいろいろな社会事情その他の別途の配慮で国内的に決める問題だと考えます。
#340
○野間委員 日本の場合、条約で言う免状のチェックシステム、これは具体的にはどうなっておるのかお聞かせいただきたい。
#341
○小和田説明員 御質問が国内船に対するものであるか外国船に対するものであるかはっきりわかりませんので、あわせて御説明をいたしますが、まず日本船につきましては、今回この条約の批准に合わせまして船舶職員法を改正しておりますので、今後は日本に登録されております船舶に乗り組む船舶職員は日本政府の発行した免状を持たなければいけないということになります。それから外国船につきましては、たとえばリベリアの船舶に乗り組んでいる職員につきまして、リベリアはすでに条約を批准しておりますので、条約の所定の要件を満たした免状を持っているかどうかということ、つまりリベリア政府の公認した海技免状を持っているかどうかということについて、たとえば海上保安庁なり私どもの海運局の職員がそれをチェックするということになるわけでございます。
#342
○野間委員 審議に協力する点ではしょりまして、肝心な点が幾つか抜けておるのですけれども、きょうはこの程度で時間が参りましたので終わりたいと思います。
     ――――◇―――――
#343
○中山委員長 次に、投資の促進及び保護に関する日本国とスリ・ランカ民主社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とインドネシア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件並びに南極地域の動物相及び植物相の保存に関する法律案を議題といたします。
 政府より順次提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣櫻内義雄君。
    ―――――――――――――
 投資の促進及び保護に関する日本国とスリ・ランカ民主社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とインドネシア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
 南極地域の動物相及び植物相の保存に関する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#344
○櫻内国務大臣 ただいま議題となりました投資の促進及び保護に関する日本国とスリ・ランカ民主社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この協定につきましては、昭和五十三年にスリ・ランカ民主社会主義共和国側より締結したい旨の申し入れがありましたのでその後両国政府間で交渉を行いました結果、昭和五十七年三月一日にコロンボにおいて、両国政府の代表者の間で、この協定の署名が行われた次第であります。
 この協定の主な内容としまして、投資の許可について、最恵国待遇を相互に保障しているほか、事業活動、出訴権等に関する内国民待遇及び最恵国待遇、収用、国有化等の措置のとられた場合の補償措置、送金等の自由等について定めております。
 この協定の締結により、わが国とスリ・ランカ民主社会主義共和国との間の投資及び経済関係が緊密化されるものと期待されます。
 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
 何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とインドネシア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 政府は、インドネシア政府との数次にわたる交渉を経て、昭和五十七年三月三日に東京において、両国政府の代表者の間でこの協定に署名を行った次第であります。
 この協定は、できる限りOECDモデル条約案に沿ったものであり、従来わが国が諸外国との間で締結した租税条約または協定とほぼ同様の内容となっております。
 この協定の主な内容としまして、まず、事業所得につきましては、企業が相手国内に支店等の恒久的施設を有する場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する所得に対してのみ相手国で課税できるものとしております。船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる所得につきましては、相手国において全額免税することとなっております。また、投資所得に対する源泉地国での税率につきましては、配当に関しては、原則として、一五%、利子及び使用料に関しては、一〇%を超えないものとしております。
 この協定の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は、一層促進されるものと期待されます。
 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
 最後に、南極地域の動物相及び植物相の保存に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 南極地域の動植物は、学術的にきわめて貴重であり、南極条約の原署名国であるわが国としては、これらの動植物の保存についての国際協力を積極的に推進すべき立場にありますので、今般、南極条約協議国会議が勧告した動植物の保存に関する措置を承認するに当たり所要の国内立法を講ずることとしたものであります。
 この措置は、南極地域に固有の哺乳類または鳥類を殺し、傷つけまたは捕獲すること、南極地域に固有でない動植物を南極地域に持ち込むことまたは南極地域の特別保護地区において植物を採取すること等の行為を規制しておりますので、これを受けて、本法律案においては、南極地域における日本国民の行為を規制するために必要な事項につき規定することとしております。
 以上が、本法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
#345
○中山委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
 各案件に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 次回は、来る十四日水曜日午後一時理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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