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#1
第096回国会 法務委員会 第28号
昭和五十七年八月十日(火曜日)
    午前十時六分開議
 出席委員
   委員長 羽田野忠文君
   理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君
   理事 高鳥  修君 理事 中川 秀直君
   理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君
   理事 沖本 泰幸君 理事 岡田 正勝君
      上村千一郎君    大西 正男君
      佐野 嘉吉君    森   清君
      鍛冶  清君    林  百郎君
      簑輪 幸代君    田中伊三次君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 坂田 道太君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 筧  榮一君
        法務省民事局長 中島 一郎君
 委員外の出席者
        郵政省郵務局業
        務課長     伊藤 修介君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  梅田 晴亮君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  川嵜 義徳君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  小野 幹雄君
        最高裁判所事務
        総局家庭局長  栗原平八郎君
        法務委員会調査
        室長      藤岡  晋君
    ―――――――――――――
委員の異動
八月九日
 辞任         補欠選任
  今枝 敬雄君     斉藤滋与史君
  上村千一郎君     中尾 栄一君
  亀井 静香君     谷垣 專一君
同日
 辞任         補欠選任
  斉藤滋与史君     今枝 敬雄君
  谷垣 專一君     亀井 静香君
  中尾 栄一君     上村千一郎君
    ―――――――――――――
八月六日
 刑事施設法案反対に関する陳情書(浦和市高砂
 三の一六の四五埼玉弁護士会会長柴山眞一郎)
 (第三四八号)
 機密保護法制定促進に関する陳情書外六件(五
 所川原市議会議長寺田義雄外六名)(第三四九
 号)
 スパイ防止法制定促進に関する陳情書外十四件
 (京都府船井郡丹波町議会議長西野幸夫外十四
 名)(第三五〇号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法
 律案(内閣提出第七六号)(参議院送付)
     ――――◇―――――
#2
○羽田野委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所梅田総務局長、川嵜民事局長、小野刑事局長及び栗原家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○羽田野委員長 内閣提出、参議院送付、民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林百郎君。
#5
○林(百)委員 最初に、最高裁判所と法務省民事局の基本的な態度を聞きたいのですが、このたび出されました送達を受ける者の補助者の範囲を広げる、あるいは送達する場所を広げる、それからさらには調書の一部を保留することができるというような改正、これは民事の訴訟関係者、当事者の基本的な権利にかかわる問題であり、こういうものが保障されているからこそ民事訴訟に対する国民の信頼というものがあると思うのですね。
 そこで、こういういま提案されているような法案をつくるという発意は、訴訟を扱っている最高裁判所の方から出たのですか、それとも民事局の方の考えで出たのですか、それとも両方の話し合いというか、これはどちらの都合で出たのですか。
#6
○中島政府委員 法制審議会の民事訴訟法部会において当面の問題点を御検討いただくということになりまして、どういう項目について御審議をいただくかということが問題になったわけであります。そこで裁判所の方にも御意見を伺いましたし、弁護士会にも御意見を伺いまして、もし緊急に取り上げるべき検討事項があるならばおっしゃっていただきたいということをお願いしたわけでありまして、その際に、弁護士会からは特に御意見がございませんでしたけれども、裁判所からは、当面裁判所として懸案になっておる送達の問題その他はどうだろうかというような御意見があったわけであります。そこで、私どもとしても民事訴訟の実態についてある程度承知をいたしておりますし、従来からこの送達の問題その他が懸案事項であるということは承知をいたしておりましたので、これを法制審議会の民事訴訟法部会に御提案をいたしまして、民事訴訟法部会でこれを取り上げるということになったわけでございます。
#7
○林(百)委員 最高裁判所の方では、とりあえず送達でも、でもという言葉を使ったかどうかは別としても、送達でもというのですが、送達というのは、当事者主義を貫く大事な裁判の期日を公平に両方に知らせる大事な訴訟行為の一部ですからね。これをとりあえずどうしよういうのですか。
#8
○川嵜最高裁判所長官代理者 法案作成に至るまでの経過は、ただいま法務省の方からお答えがあったとおりの経緯でございます。
 私どもといたしましては、実務の現場から、最近とみに昼間不在のために訴状あるいは支払い命令その他裁判上の書類の送達ができないケースがふえてきている、これは何とかしなければならないという要望が非常に強く起こっていたわけであります。これは裁判所だけではありませんで、弁護士さんの中におきましても、主として原告代理人の立場になられる方でありますけれども、なかなか送達ができないということで、非常に困ったものだ、何とかすべきだという御意見があったわけであります。そういう裁判所あるいは当事者側の意見も踏まえまして、私どもとしてはどうしても送達がもう少し円滑にいくような方策を考えるべきではないか、このようなことから法務省にお願いをした、こういうことでございます。
#9
○林(百)委員 それでは、最高裁にお聞きしますが、最近とみに昼間の送達がなかなか困難になったという統計は、どこにありますか。この資料にはないのですけれども、どうなっているのですか。資料のどこですか。
#10
○川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げました点につきましての実態の調査を数年にわたって行ったということはないのでありますけれども、これは、先ほど申し上げましたことは、実務に携わる者の経験的な実感とでも申すべきものであります。
 法律案関係資料、お手元にございますが、これの終わりの方に横長の表がございます。「受取人不在の場合の送達実情調査表」というものでありますが、これはただいまの点につきましての一部の庁につきまして若干の期間調査したものであります。これの調査は非常に手間がかかるものでありますので、現地の裁判所にそう手数をかけられないということから、五十六年の十月、十一月と二カ月分、地方裁判所本庁五十庁につきまして訴状の送達を調べたものが上の表であります。下の表は、一番下の注(1)のところに書いてあります十二の簡易裁判所につきまして、同じく五十六年十月から十一月の二カ月間、支払い命令の送達の実情を調べたものでございます。
 この表によりましておわかりのとおり、上の覧から申し上げますが、A覧が二カ月間に送達を行った訴状の数でございます。返されてきたのはB覧にあります。C覧は……(林(百)委員「それは説明がありますからわかりますよ」と呼ぶ)はい。C覧は結局問題になっております昼間不在のために返されたものでございまして、これが約一三%に達するわけであります。支払い命令の方は、そのパーセンテージが二三%に達する、こういうような実情にあるということでございます。
#11
○林(百)委員 ですから川嵜さん、これは五十六年の十月と十一月と二カ月でしょう。二カ月のうち還付された郵便物の数は四千二百四十、これは最近とみにふえたと言うなら、その前からずっとやってみてこの数がふえたとか、そうじゃないと最近とみにふえたという資料にならないのじゃないですか。それはどうなんですか。
#12
○川嵜最高裁判所長官代理者 確かに御指摘のとおりでございまして、この表からだけではそういうことは申し上げるわけにはいかないのでありますが、私ども裁判実務に携わっておりますと、書記官室でどの程度返ってくるかというのは体験的にわかるわけでありまして、これは書記官の体験からもそのとおりなのでありますが、ふえてきているということは間違いがないところであります。書記官の方が昭和四十三年度に送達実務の研究というのをやっておるのであります。書記官研修所において行われた実務研究の一環としてやっておりますが、この中に、昭和四十三年のころからすでに昼間不在者、その原因は核家族化と共働きということのようでありますけれども、そういう原因で還付されてくる例が非常に多くなってきたというふうな指摘が、これは実態調査の結果なされております。すでに四十三年ころからそういうことが言われておるわけでありまして、今日はその傾向はますます、統計的には申し上げられませんけれども、大きくなってきているというふうに言えるかと思うのであります。
#13
○林(百)委員 川嵜さん、われわれは国会で法案を審議するのですから、裁判所の現場の実感がひしひしと迫ってきているといっても、われわれにはわからないわけですね。やはり合理的な数字をちゃんと示してくださって、この数年間このように本来の送達場所へ送達しても受送達者が不在あるいは一家が留守のために送達されないのだという数字をずっと統計的に示していただかないと、実感を国会議員さんよく知ってくれと言われても、われわれはそんな、裁判をやっているわけじゃありませんから、国会議員ですから、それは困るのですね。
 ことに、たとえば調書を省略する問題、これは送達とは直接関係ありませんが、調書を省略するとか、あるいは判決に証拠の摘示をしないとか、あるいは送達の補助者のところへ、補充受送達者のところへ相当広範囲に、送達する場所もそれから補充の送達を受ける者の範囲も広げるということになりますと、先ほどくしくも川嵜さんが言われましたように、ことに原告側からそういう要望が強いという話も耳にしているというお話ですが、しかし、被告の立場に立ってみれば、原告側の都合のいいことは被告の側には利益を害する場合もあるわけなんですから、そうすると当事者主義が公平に貫かれないということになるのじゃないでしょうかね。
 本来、送達は執行官でやるべきだと私は思うわけですが、便宜に郵便事務を扱う者も特別送達でやっておりますけれども、これがだんだん非常に多くなってきているので、これだけでも川嵜さんがおっしゃるようなことを乱している一つのもとになると思うのですが、そうすると、執行官あるいは執行官の事務員をふやすということは、どうしてできないのですか。
#14
○川嵜最高裁判所長官代理者 確かに送達の実施機関といたしましては、現行法上では執行官と郵便集配人、この二つが実施機関になっておりまして、どちらが原則というわけではないと思います。
 現在の執行官法ができたのは四十一年十二月でございますけれども、その執行官法ができる前は、かなりの数の送達を執行官が行っておりました。当時、執行官は執行吏と言っておりましたけれども、執行吏には執行吏代理というのを雇うことができておりまして、その執行吏代理が主としてその送達をやっていたのが実情であります。ところが、執行官法ができまして、執行官の任用資格を高める、公務員性を強めるというようなことが図られまして、送達を主として担当しておりました執行吏代理の制度はやめになりまして、つなぎ的に、執行官臨時職務代行者という身分で執行吏代理をつないできたわけであります。しかし、それは早晩なくなるという前提でありました。このようなことでありますので、ただいまの執行吏代理は、四十一年当時二百四十人ばかりおりましたけれども、現在は二十六人に減っております。
 そういうような法律の方向といいますのは、執行官はできる限り本来の執行事務に専念させる、送達事務のような事務はできる限り郵便に切りかえるという方向に行くべきだという考えが根底にあったからだろうというふうにわれわれは思っておりまして、私どもはその送達についてはできる限り郵便への切りかえという方向でまいったというのが実情でございます。そういうようなことでありますので、送達のために執行官の数をふやすということは、手数料収入の問題もございまして、なかなか簡単な問題ではないということを御理解いただきたいと思うのであります。
#15
○林(百)委員 しかし、郵政業務は郵政業務の本来の仕事がありますから、もし司法裁判所の都合で、執行官臨時職務代行者ですか、何かむずかしい名前ですが、そういうものをだんだん廃止して本来の執行に専念させる、そのことのために特別送達が郵便の方へ行くということになると、郵便の方は郵便のシステムがあるわけですから、何も裁判所のために郵便のシステムがあるわけじゃないのですから、今度は郵便事務の方に業務が重なってくるわけですよ。
 裁判所の送達がむずかしいからそれを補うためにといって、郵政省の方ではそのために特に人員の増加を認められていますか。郵政省にちょっとお聞きしますが、そういう弾力性を持つことができるのですか。
#16
○伊藤説明員 お答えいたします。
 ただいまの先生の御質問でございますけれども、郵政省といたしまして、現在の郵便システムを御利用いただく中でこの特別送達の仕事をしているわけでございまして、このために大幅な要員増ということになりますと、現在の郵政省の要員事情あるいは財政事情から困難と思います。
#17
○林(百)委員 郵政省にもう一つお尋ねします。
 やはり定員法あるいは定員法に準ずる法律があって、人員を一人ふやすにもなかなか容易じゃないわけなんでしょう。たとえば、一カ所配達の原則というようなことで、ある山の奥の方の部落は、そこまで配達をするには一人郵便の業務に携わる人をふやさなきゃならないといっても、その管轄の郵便局で定員が決まっていれば、その部落の都合のため、あるいはペンション部落なんかもありますけれども、ペンション部落の都合のために人を一人ふやすということも容易ならぬことじゃないですか。ちょっとその点、説明してください。
#18
○伊藤説明員 お答えいたします。
 郵便事業全体といたしまして、たとえば郵便物数が増加するとか郵便の事務が増加するというような形で、定員というものを毎年見直しているわけでございますけれども、ただいま先生のお話にありましたような、定員を削減してできるだけ効率的な運営を図るということで運営をしておりまして、要員を増加する、新たな職員を追加するというのはなかなか厳しい現状でございます。
#19
○林(百)委員 坂田さん、いまお聞きのように、臨調や行政改革があって、郵政省は郵政省で、人員を減らせ、費用のかからないようにしろと、今度は裁判所の方は裁判所の方で、いや、執行官が本来の執行の任務に専念するためにはこの仕事から解放してやらなきゃならないと、郵政省の方へかぶせてくる。これは臨調と行政改革両方をやろうとすれば、そこで衝突が起きてしまうわけですよ。
 結局それは、そのことのために民事訴訟の原則である当事者主義だとか弁論主義だとか、そういうものが損なわれていき、そして、原告にはいいかもしれないけれども、被告には、期日を守ることのできない不可抗力の場合もあるし、いろいろの事態が起きてくるわけですね。そして、それは原則として債権者である原告の利益に帰するような場合が、期日の懈怠の場合はあるということになりますと、これは司法に対する信頼が失われてくると思うのですよ。
 だから、そういうことに対して、臨調や行政改革のために、本来司法が持つ任務までできかねてくる、よその行政部門へそのしわ寄せを持っていくというようなことは、法務大臣として好ましい事態だと思いますか、どうですか。二カ月に二万二千五十も特別郵便送達をしなければならないということですから、これは郵政事務にとっては相当の負担だと思うのですよ。しかも、正常に行って配達できない人たちのところへ持っていくわけですから、これを究極的には処理しなければいけないわけですから。どう思いますか。
 われわれは、いまや臨調や行革が司法に対する国民の信頼を失墜させるところまで、司法まで巻き込まれてきているのじゃないかということを非常に心配しているのですよ。書記官はふやさない、事務官はふやさない、裁判官もわずかしかふやさない、それでなるべく仕事は簡潔に省略する。今度のにもありますように、調書を省略する、判決の中に証拠の摘示を省略する、あるいは送達を郵便の方になるべく持っていくということになりますと、じみなようですけれども、これが民事訴訟の根幹、基礎、グラウンドなんですから、ここが頼れなくなってくるということになると、司法全体に対する国民の信頼が失われてくると思うのです。その点、どうお考えですか。われわれはそこを非常に心配しているのですよ。
#20
○坂田国務大臣 法務大臣といたしましては、あくまでも国民の権利を守る、保全に当たらなければならないということは申すまでもないことでございます。一方におきまして、行政改革ということも、いわば政治の最大の課題でもあります。というのは、やはり国民負担の関係もございますから、その両方の均衡をどうやって保っていくかということであって、いやしくも、司法の独立に伴う国民の権利が著しい人員の切り込みによって果たされないということがあってはならないわけでございまして、その点につきましては、私、その衝にある者といたしましては、それなりの最大限の努力をしなければならないというふうに考えておるわけでございます。
#21
○林(百)委員 そこで、ちょっと具体的なことをお尋ねしていきます。
 この百六十二条では、「郵便ニ依ル送達ニ在リテハ郵便ノ業務ニ従事スル者ヲ以テ送達ヲ為ス吏員トス」、これは前からあったわけなんです。さて、この送達を受ける者の勤務先が今度新しく広げられたのですけれども、百六十九条にある受送達者の「其ノ場所ニ於テ送達ヲ為スニ付支障アルトキ」、これはどういう場合ですか。
#22
○中島政府委員 送達の原則は、従来から受送達者の住所、居所、営業所または事務所においてこれをするということになっておるわけでありますので、まずこの住所、居所、営業所または事務所に対して本人あてに送達をするということになります。しかし、住所はそこにあるにもかかわらず、受送達者あるいはその家族等が不在等の理由によりまして送達をすることができないという場合が考えられるわけでありまして、現在送達不能で大変困っておる事態というのも、大部分がこの場合であるということになるわけであります。
 昼間そういう送達をいたしましたが送達できなかったということが裁判所にわかるわけでありまして、裁判所としてはそれ以外の方法を考えなければならない、あるいは場合によればもう一度同じ方法で送達をするというようなこともありましょうが、それ以外の方法を考えるということになります。それ以外の方法ということになりますと、昼間がだめだったということでありますから、今度は夜間送達あるいは休日送達ということになるわけでありますが、これは執行官による送達ということになります。ところが、執行官の配置の都合あるいは執行官の仕事の都合などで、速やかにこの執行官による送達を期待することができないというような場合には、この住所、居所、営業所または事務所においてする送達に支障があるときということになるわけであります。
#23
○林(百)委員 まあ百六十九条の二項の方を質問しているので、答弁も結構で、それにマッチした答弁をされていると思います。
 そこで、新設された受送達者の勤務先の関係者をあて名にしてこれへ特別送達する。そうすると、この場合の「他人」というのは法人も入るのですか。
#24
○中島政府委員 そのとおりでございます。
#25
○林(百)委員 そうすると、法人の住所、居所、営業所、事務所ということ。それから、「他人」というのは自然人ももちろん入るわけですね。そうすると、自然人の他人の住所、居所、そういう場合、具体的には法人と自然人の住所、居所というのはどうなるか、ちょっと具体的に説明していただきたいと思います。法人の場合、おたくの方の関係者とも話したのですが、たとえば三越というような場合は三越の本店でいいのですか。どこの支店に勤めているかわからないにしても、「他人ノ住所」になるから、三越の本店をあて名にして林百郎なら林百郎として送達する、あるいは使用者の社長さんの住所、居所をあて名にして林百郎といって送る、それでもいいのですか。
#26
○中島政府委員 個人、法人を含むわけでありますから、それぞれ、個人の場合には住所、居所が主な場合かと思いますけれども、営業所または事務所という場合もあり得るわけであります。法人についても同様であります。
 いまお尋ねは、本店と支店あるいは出張所というようなものがある場合にはどうなるかという具体的な問題でありますが、あくまでも現実に就業している場所がこの場合の就業場所ということになるわけでありまして、支店において就業しておる場合には支店、出張所において就業しておる場合には出張所というのがその送達場所になるというふうに考えております。
#27
○林(百)委員 そういうことがわからない場合はどうするのですか。たとえば、三越のどこの支店で働いているかわからないという場合、三越の本店へやっても、この法文から言えば違法ではないわけでしょう。三越の本店を営業所または法人の住所と見てもいいでしょうけれども、三越の住所は三越本店と言えるかどうか別としても、本店へやったっていいわけでしょう。あなたの言われるように、どこの支店に勤めているかわかれば、それは結構ですよ。行っても全然わからない。三越に勤めているということはわかっている、社員だから。だから、とりあえず本店へやっておく。ところが、実は北海道かもっと遠いところの支店にいたというような場合はどうなるのですか。それは本店あて名にしてはいけないのですか。
#28
○中島政府委員 送達でありますから、そこで本人に出会って本人に書類を交付するということが本来の形でありますから、本人が常にいるところ、いることが予定されている場所がこの場合の送達場所になるわけであります。そのことから、おのずから本店に勤務する者は本店、支店に勤務する者は支店が送達場所になるわけでありまして、それ以外のところにあてたものにつきましては、これは正しい送達ではないということになるわけであります。
#29
○林(百)委員 しかし、特別送達の場合は郵便でやるのですから、郵便でそこへ置いてくることになるのじゃないですか。たとえば三越に勤めている。だから三越本店に、法人のその営業所として郵便の業務に携わる人が本店へ置いてくる。それでいいのじゃないですか。あるいは持ち帰るか、どっちかになるでしょう。
#30
○中島政府委員 執行官なりあるいは郵便集配人なりが送達の場所に赴きまして、そこで本人に出会って書類を交付するというのが原則といいましょうか、これは本来の姿でありますから、それ以外のところに向けた送達は、これは法律の予定しておる送達ではないということになります。
#31
○林(百)委員 そうすると、百七十一条の二項の場合はどうなりますか、本店の人が二項で受け取ったら。同じ三越の従業員だということでですね。
#32
○中島政府委員 百七十一条の二項は、就業場所に送達に行ったわけでありますが、そこで受送達者に出会わなかった場合に、その送達場所である他人の住所、居所、事務所、営業所において、その他人の法定代理人、事務員もしくは雇い人にして事理を弁別するに足るべき知能を備うる者に対して交付をするという方法を認めておるわけであります。
#33
○林(百)委員 だから、三越に勤めているということを聞いて、本人の本来送達を受ける場所へ行ったら送達ができなかった。そこで、あて名を三越本店として郵便で特別配達したところが、それがあなたのおっしゃるようなことで本人にそこでも会えなかった。しかし、勤めているということは間違いない。そういうことを債権者の方からも申し出がある。そこで三越の本店へもう一度行った。それでは、三越に勤めているというならば、われわれ同じ事務員または雇い人ですから一応受け取っておきましょう。それで受け取ることはできるのじゃないですか。できないのですか。
#34
○中島政府委員 支店に勤務している者に対する送達を本店あてに持っていったという場合につきましては、これは百七十一条の二項の考えている送達ではないということになります。
#35
○林(百)委員 それでは、どの条項による送達になりますか。
#36
○中島政府委員 民事訴訟法が認めておる送達ではございません。
#37
○林(百)委員 送達でないということを別に書いてないじゃないですか、百七十一条二項には。他人またはその法定代理人、事務員もしくは雇い人にして事理を弁別するに足る知能を備うる者がよろしいといって受け取れば、受け取ってよろしいと書いてあるじゃないですか。ただし支店で働いている者は本店の課長かあるいは支店まで管轄する人が受けてはいけないということが、ここには書いてないじゃないですか。あなたの言うようなことは、どこでそう言うのですか。
#38
○中島政府委員 百七十一条の二項に決めてあるとおりの送達でなければ、これは民事訴訟法の予定している送達ではないということになるわけでありまして、それは本店の事務員等がよけいなことをしたといいましょうか、仮に書類を受け取ったということになりましても、それは送達としての効力を生ずる余地はないというふうに理解しております。
#39
○林(百)委員 それは中島さんがそう解釈しているだけで、この条文から言えば、同項の他人の雇い人だっていいわけでしょう。他人と言えば法人の三越、三越の雇い人と言えば、本店だって支店だってみんな雇い人じゃないですか。雇用されている者でしょう。それがどうして支店に勤めている人の特別送達を本店の者が受けてはいけないのですか。あなたがそう解釈するというだけで、解釈するなら、どこにそういう根拠があるというのですか。百七十一条の二項にはそんなことないですよ。ただしそれは当該現実に勤務している者に限るとかなんとかということもないし、また、勤務によっては一月本店に行って、一月北海道へ行き、また一月たって本店へ戻るという場合もあるのですから、あなたがいけないなんと言ったって、それはしようがないじゃないですか。
#40
○中島政府委員 従来から百七十一条の一項という条文があったわけでありまして、これは住居所等において送達をする。本人に出会わないときには、事務員、雇い人または同居者にしてその事理を弁別するに足るべき知能を備うる者に書類を交付することを得ということになっておったわけでありまして、それはあくまでその住居所等において事務員、雇い人または同居者に対して交付するんだというふうに理解をしておりますし、それ以外に理解の方法はないというふうに思っておるわけであります。
 今回それを、就業場所送達というものを新設することになりますが、今度は就業場所に対して送達をいたします。その就業場所において本人に出会えばいいわけでありますが、出会わなかった場合には、その場所において他人、雇い主等の事務員または雇い人等に交付することができるということになるわけでありますから、本来の就業場所以外のところへ行って、その雇い人の事務員等に書類を交付するというようなことは、百七十一条からは出てこないわけであります。
#41
○林(百)委員 そんなこと書いてませんよ、あなた。「第百六十九条第二項ニ定ムル場所ニ於テ送達ヲ受クベキ者ニ出会ハザル場合」であって、前項の場合じゃないですよ。だから、百六十九条の二項といえば、他人の住所、居所。そうすると、三越の本店だっていいじゃないですか。法人の住所、居所になる、あるいは営業所と考えてもいいし。あなた、勝手にそう解釈しているということだけじゃないですか。もし前項の場合といって、百七十一条の二項が前項を受けているなら話は別ですよ。百六十九条の二項を受けるのですから。そうでしょう。あなたの言うようなことになりませんよ。それはそれでいいでしょう。幾らそれをやっていても限りがない。
 そこでもう一つ、レクチュアに来た人との間で問題になったのですが、百七十一条の「同居者」というのがありますね。これはどういう意味ですか。たとえば、例に挙げたのですが、一つの部屋に学生が二人泊まっている、一人の学生が夏休みにどこかに行ったとかあるいは外国に行った、一人の学生がいるという場合、その人に書類を交付してもいいんですか。
#42
○中島政府委員 ただいまのお尋ねは、住居所等における送達の場合というふうに理解いたしましたが……(林(百)委員「百七十一条の一項」と呼ぶ一一項の場合につきましては、同居者であって事理を弁別するに足るべき者に対して補充送達ができるということになっておりますが、この「同居者」というものは、家族その他現に世帯を同じくして同居しておる者というふうに理解をいたしております。したがって、いまの学生のケースにつきましても、そういうことで判断すべきものであろうかと思います。
#43
○林(百)委員 世帯を同じくしている者というのは、法文上どこにあるのですか。
#44
○中島政府委員 この条文の立法趣旨から考えて、判例その他によって認められてきた解釈であります。
#45
○林(百)委員 だから、中島さんの話を聞くと、やたらに解釈で補充受送達者を拡張していって、そこを弁護士連合会なんかも心配しているのです。そういう解釈解釈でどんどん補充受送達者を広げていく。それでは、その広げられた補充受送達者に、受送達者にそういう裁判所の書類を渡すことをちゃんと責任を持ってもらえるのかどうか。その保障はどうするのだ。そこに持っていったらもう送達をしたということに解釈されているけれども、しかし、現実にそれが送達を受ける者のところへ渡ってないという場合もある。
 たとえば、弁護士連合会で言いますと、書類を紛失した場合、あるいは失念して渡さなかった場合、あるいは時宜を、特定な期日があるわけなんですけれども、不変期間なんかもありますけれども、時宜を過ぎて交付するような場合、あるいは受送達者の信用、評価を傷つけ、ときにはほしいままに開封してプライバシーを侵されるおそれもある、こういう場合どうするか、どういう保障があるのですか。
#46
○中島政府委員 住居所等における送達の場合の補充送達というのは従来から認められておったわけでありまして、この点につきましては今回の法案は全く変更を加えておりません、内容につきましては。
 今回、就業場所における送達というものを新設したいというふうに考えておりますが、その就業場所における送達の場合にも、かなり制限された形ではありますけれども、補充送達を認めるということにしたいと思うわけであります。
 その場合には確かに、住居所等における補充送達の場合とは違いまして、書類等が本人の支配下に入ったというふうに見にくいわけでありますので、住居所等における補充送達の場合とは異なりまして、百七十一条の四項という規定を新設しようとしておるわけであります。四項というのは、住居所以外の場所、すなわち就業場所において補充送達が行われた場合には、裁判所書記官はその旨を送達を受けたる者に通知するということになっておるわけでありまして、普通郵便その他の方法によって受送達者本人に念のためにそのことを通知するわけであります。
 でありますから、この就業場所において書類を受け取った第三者がそのことを失念し、紛失し等のことが仮にあったといたしましても、この百七十一条の四項によって受送達者本人としては、裁判所から自分あてに書類が来た、そしてその書類を同僚のだれが受け取ったかということがわかるわけでありますから、それによって確かめることができるということであります。
#47
○林(百)委員 あなたのそれもおかしいと思うのです。受送達者がわからないから、この百七十一条の二項で勤務先の補充受送達者に送達するわけでしょう。それなのに、書記官が受送達者の本人に連絡がつくなら、そこへ直接持っていったらいいじゃないですか、そのぐらいわかっているなら。
#48
○中島政府委員 前提が、住居所等においては、昼間不在等のために、通常の送達方法によっては送達ができないという場合であります。送達は、御承知のように特別送達ということになっておりまして、書留郵便でありますから、昼間不在であれば郵便集配人は文書を持ち帰らざるを得ないわけであります。ところが、この百七十一条四項の通知は適宜の方法でするわけでありますから、たとえば普通郵便で出すということになりますと、受送達者の住所に、昼間不在でありましても郵便受けにほうり込んでくる、そうすると、受送達者が夜間帰ってまいりましてあるいは日曜日に帰ってまいりまして、自分の郵便受けからその普通郵便を取り出して見ることができる、こういうことを予定しておるわけであります。
#49
○林(百)委員 だから、そういうことがあるから執行官に夜間送達をさしたらどうですか、そういう場合。はがきを一枚郵便受け箱の中にぶち込んでおいて、あなたの同僚のこの人に渡してありますから、さよう承知願いたいなんといったって、それじゃ、その人がもし確かめてみて、いや、どこかへ行ってしまってなくなってしまっていると言ったら、どうなりますか。そんなに夜いることが確かで、書記官が連絡がつくなら、執行官に夜間送達をさせれば権利の保障になるじゃないですか。
#50
○中島政府委員 執行官による夜間送達をしないというわけではないわけでありまして、事情が許されるならば執行官による夜間送達も活用するということであります。
#51
○林(百)委員 中島さんが引例しているのは、昼間いないから、だから郵便を出しておけば、夜間は帰ってくるから、多分それを見て承知するだろう、それで二項の欠陥が補充されるだろう、そうおっしゃっているんですが、それほどはっきり、夜間なら大丈夫、郵便箱の中のものを見るということがわかっているんなら、それはそういうところへ執行官が夜間送達したらどうなんですかね。何ではがき一枚入れて、それで済んだことにするんですか。
#52
○中島政府委員 繰り返すことになりますけれども、でありますから、事情が許せば執行官による夜間送達というものも利用する。また、夜間おると申しましても、今晩いるか、あしたの晩いるかわからないわけでありまして、夜間送達ということになりますと、たまたまいるときに出会わさないと執行は功を奏さないということになるわけでありますが、百七十一条四項の通知でありますれば、郵便物は郵便受けにずっと残っておるわけでありますから、どこかで本人が見ることができる、こういうことであります。
#53
○林(百)委員 あなたとその点で論争していても限りありませんから。もともと執行官を執行に専念させるためにこういう法律を設けたと言っているんだから、私が執行官に送達させてはどうかと言っても、そうさせますとは言い切れないかもしれません。
 それで、民訴の百五十九条に「訴訟行為の追完」というのがありますね。今度、送達の場所あるいは送達を受ける者の勤務先の補充受送達者ですね、これを広げることによって、もしそういう拡充された補充受送達者の瑕疵によって本人が訴訟の期日等を守ることができなかった場合は、百五十九条は適用になるんですか、ならないんですか。
#54
○中島政府委員 事案によると思いますけれども、百五十九条の適用によって訴訟行為の追完が許される場合が多かろうと思います。
#55
○林(百)委員 それから、プライバシーの問題なんですが、ことに百七十一条の二項の勤務先の同僚が補充受送達者として送達を受けた場合、内部がわからないようにしてあるというのですが、私の方でこれは参議院でも使いましたが、ホチキスでやっておれば、ホチキスをとれば中のものが見られるんじゃないですか。裁判所から来た中の書類が補充受送達者にはわからないような、そういうプライバシーの保障というのはどうするんですか。しかも、大体何のための送達かもここに書いてあるわけですね。支払い命令正本だとかあるいは略式命令謄本だとか書いてあるわけですね。見たいと思えば、これを見ることもできる。どうやって保障するんですか。
#56
○川嵜最高裁判所長官代理者 現行法のもとにおきましては、就業先への送達は許されておりません。したがいまして、本人の住居所、営業所、いわば本人の支配圏内で送達が行われているという実情でありまして、補充送達の受取人も本人と一定の関係のある人が受け取っているのが実情であります。そういうような実情がありますために、プライバシーの深刻な問題を生ずることはないということ、それから、事件が非常に多くなってきておりまして大量処理に迫られている、そういうような実情を踏まえて、おっしゃるようなホチキスでとめる方式が編み出されてきたものだというふうに理解しております。
 ホチキス方式でありますと、確かにおっしゃるような危険はあります。したがいまして、就業先への送達に関する限りは、少なくとものりづけにして、はがして中身を見られないようにすべきだというふうに考えておりまして、このような処置をとるように、私ども法案ができ上がった暁にはその送達の事務処理要領というようなものをつくりまして、下級裁の方に流しまして、そういう扱いが行われるよう指導を徹底したいというふうに考えております。
#57
○林(百)委員 これは中島さんの方ですか、川嵜さんの方ですか、夜間送達で、郵便による特別送達の場合と執行官による夜間送達の場合と、比率はどのくらいになっているのですか。
#58
○川嵜最高裁判所長官代理者 裁判所の書類の送達というものは、訴状だけではございませんで、いろいろな書類の送達がございます。民事だけではございませんで、刑事の方もございますし、家庭裁判所関係もございます。したがいまして、はっきりした数字はつかめないのできわめて概数でございますけれども、郵便による送達件数はおよそ年間六百万通前後でございます。これはもう簡易裁判所から最高裁まで含めての数でございます。それで、執行官送達はほぼ十万件でございます。そのうちの大体二万五千件くらいが夜間、休日送達ということになっております。
#59
○林(百)委員 だから、夜間送達の場合、郵便による夜間送達と執行官による夜間送達との比率は、夜間送達そのものが二万件ですか、そのうちどのくらいの比率になっているかと聞いているのです。
#60
○川嵜最高裁判所長官代理者 通常の特別送達の郵便物は、夜間には配達がされないわけでございます。でありますので、夜間の送達をしようと思えば、勢い執行官送達によらざるを得ないというたてまえになっております。
#61
○林(百)委員 郵政省にお尋ねをいたしますが、夜間の特別の郵便送達というのは、いま最高裁で言われるようにないのですか。それとも、裁判所のそういう書類だということになると、特別にやる場合があるのか。
 時間の関係で一括してお聞きしますが、一カ所配達の原則というのがあるようですね。これはマンションのような場合は適用しないと言っておりますけれども、たとえば一つのペンション村というようなところがあって、そこで一カ所郵便を受け持つ。そこまで配達するには、どうしても一人配達をする方を、郵便業務に従事する人を一人ふやさなければいけない、しかしなかなか本省の方で許してこないということのために、一括の受け箱を置いてありますね。そういう場合に、こういう特別送達がされる場合はどういうような措置をとるのでしょうか。ことに夜間送達がもしあるとすれば、どういう措置をとるのですか。
#62
○伊藤説明員 お答えいたします。
 最初の夜間送達でございますけれども、現在郵便物は、速達を除きまして夜間は配達しておりません。したがいまして、特別送達が速達になっていれば、夜間配達することがあろうかと思います。
 それから、二点目の一括配達の場合でございますけれども、一括配達の場合には、その一括配達をしてくださる方とのお話し合いによりまして、私は普通郵便だけ一括預かりします、書留は別個の配達をしてくださいとか、そういうことになっておりまして、受け取る方との話し合い、それから同居者の方との同意、こういうものに基づいて実施をしております。
#63
○林(百)委員 時間が参りましたので、私の質問はあと簑輪議員に譲りますが、大臣、いまお聞きのように、いろいろ問題があるわけです。まあ、それは最高裁判所は最高裁判所の都合もあるでしょうし、それからまた、受送達者の方から言えば、パートで働かなければ生活が成り立っていかないという最近の生活の実情からいって、昼間留守だという場合もあると思うのです。そういう場合、勤務先に裁判所のこんなようなものが、だれが受け取るかは別として、どんどん来る。どんどん来ると言ってはなんですが、ということになると、プライバシーとか、一つの精神的な圧力を受けることになるし、悪用しようと思えば悪用することもできる。中を見て、おまえ、大きな顔をしていながらサラ金から金を借りているのかということに使われる場合もあるわけですね。
 だから、先ほど申しましたように、企業の合理化みたいに採算を合わせるために、そういう国民の司法によって受けるべき基本的な権利を傷つけないようにすることは――特に最近のような臨調だ、行革だというようなものは、もうはやり言葉みたいに言われて、何でもかんでもそれに乗っかっていく。司法まで何かその波に乗らなければ取り残されるのじゃないかというような考えを持っているとすれば、これは大変なことだと思うのです。やはり国民の基本的な権利を守るということが何をおいても大事なことだと思うのです。そういう点で今後十分そういう保障をするように、法務大臣としても、最高裁判所は別として、お考えくださるかどうか、ひとつ答弁願って、私の質問を終わりたいと思います。
#64
○坂田国務大臣 法務大臣といたしましての職務としましては、いま林議員がおっしゃいましたとおりでございまして、あくまでも国民の権利を保全していくということに努めなければならないというふうに感じております。
#65
○林(百)委員 終わります。
#66
○羽田野委員長 簑輪幸代君。
#67
○簑輪委員 今度の改正案の中での問題点は多々あるわけですけれども、特に大きな問題と思われますのは、送達の問題だと思うのです。
 それで、それに関連してまず最初に、本来の送達というのは執行官送達、郵便送達ということで住居所にするのが原則であるにもかかわらず、事実上、そういうことが支障がある場合があるという事実に基づいて、方法の方を変えてしまおうという今回の改正案ですけれども、そこに至る前に、まず執行官送達の完全な執行を図るということ、それから郵便の配達においても、現状を是正して送達が十分できるように変えていくことができるのではないかというふうに思います。
 執行官送達の方はさておきまして、郵政省にお伺いしますけれども、こういう送達に当たって、統計を見ましても、二回以上送達した場合には還付が少ないとか、あるいは速達の扱いの場合は到達する割合が高いとかいうような統計が出ておりますし、昼間不在者の問題解決ために、たとえば特別送達の配達日時指定というようなことができるならば、かなりの部分解決するのではないかという気がするわけで、その点での郵政省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#68
○伊藤説明員 お答えいたします。
 配達日時指定の制度を設けたらどうかということでございますけれども、配達日時指定ということになりますと、その配達日時までの整理、保管というような事務の複雑化の問題、それからまた運送便のダイヤ、最近非常に交通渋滞等郵政省でも困っておるわけでございますけれども、こういう運送上の問題、それからまた、書留が一時に大量に差し出されたような場合には事務処理がふくそうするわけでございまして、この日に配達するという配達日指定制度というのは、現在の郵便事情のもとでは困難というふうに考えております。
#69
○簑輪委員 特別送達したけれども受取人が不在であったということで戻される場合には、不在である者に対しての通知書を置いてくるわけで、その通知書にはいつ持ってきてほしいということを書くような欄があるわけでして、日にちを指定することは必ずしも不可能ではないと思うのですが、いかがでしょうか。
#70
○伊藤説明員 お答えいたします。
 ただいま先生の方からお話がありました配達日指定といいますのは、一度配達に行きまして不在の場合に、いま先生お話がありましたように、不在配達通知書というものを置いてくるわけでございまして、その不在配達通知書を置きました郵便物につきまして、この日に配達してほしいという配達希望日を申し出れば、その日に配達するということにしてございます。私が先ほどお答えをいたしましたのは、差出人の方から配達日を指定するということになりますと、前述をしましたような問題が多々あるということでございます。
#71
○簑輪委員 要するに、送達が可能となる方法を郵便局においてもあるいはまた執行官においても十分手を尽くしてこそ、初めて住居所送達という原則に新たに就業場所送達を設けることがつけ加わるということが許されるのだろうと思うんですね。そこら辺の手だてを十分にとりもしないで、簡易、便宜に勤務先、就業場所に送達したらうまく送達できるだろうと原則の方を曲げてしまうのは、大変いかがなものかと私は思います。こういう就業場所への送達を設けた本来の目的は、やはり訴訟を迅速に進行するということと、それから書記官事務の省力化にあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#72
○中島政府委員 いまおっしゃいました訴訟を迅速に進行すると申しましょうか、迅速というよりも、むしろ当然進行すべき速度で進行させるということの障害になっております送達不能の事態を少なくしたい、しかもそれは郵便に付する送達というようなことではなくて、実質、受送達者に対して書類が届くという方法を確保したいということが主眼でありまして、書記官の省力化というようなことは、この改正に関する限り念頭にはございません。
#73
○簑輪委員 訴訟の迅速な進行をということにしても、裁判所の都合によるものと受けとめざるを得ないわけで、この改正に当たっては、日弁連の方からもプライバシー保護に抵触するのではないかということが非常に強く指摘されているわけで、この点に関しては、裁判所の都合によって被告のプライバシー、受送達者のプライバシー保護に多少欠けるところがあってもやむを得ないというふうなことは、とうてい言えないのではないかと私は思うのです。
 川嵜局長も認めておられますように、受送達者にはプライバシーという観点から見て現行より不利になると言っておられますし、プライバシー保護というのは私益であって、裁判の進行を図るのは公益である、このバランスの問題がという答弁が参議院でございましたけれども、これは公益と私益の衝突というよりは、訴訟の進行を求める原告の利益と、それから訴えを受ける側の被告のプライバシー保護という被告の利益との兼ね合いの問題ではないか、それを公益、私益というふうにすりかえるのは間違いではないかと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
#74
○川嵜最高裁判所長官代理者 いささか大上段に振りかぶった御説明であったかとも思うのですが、それにいたしましても、訴訟提起がありました場合に裁判所は送達をしなければならない、これは裁判所の職責でありまして、職権で送達をして訴訟を進めていかなければならない義務があると思うのであります。この義務が尽くせないようでは困るということと、原告は裁判を迅速に受ける権利を持っているわけでありますが、この原告の裁判を受ける権利というものも配慮しなければならないだろう、そういうのをひっくるめて公益というふうに申し上げたのでありますが、そういう裁判所が訴訟の進行を図らなければならない立場、それからいま申しました原告の立場、こういうものを考えると、やや被告側に不利な状況が生じるといたしましても調整上やむを得ないのではないか、こういうことでございます。
 それで、被告の不利益と申しましても、原則として一度は正規の送達をする、その際、先ほど来話にありました不在配達通知書が郵便箱に投げ込まれて、裁判所から書類が来ておりますよということはわかっておるわけであります。そういうような状況を踏まえますと、あながちそのバランスは失していないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。
#75
○簑輪委員 確かにだれでも裁判を起こす権利があり、受ける権利があるわけですけれども、裏返せば、いつ何どき被告になるかもしれない、そして、ときには身に覚えのない訴訟に引っ張り出されるという可能性もある、したがって、その被告の人権が侵されないように細心の注意を払うのは、私は重大な問題だと思うわけです。したがってこの問題は、プライバシーの保護と同時に裁判に対する信頼という意味からいっても、被告のというか、受送達者の権利擁護という点は十分に配慮されなければならない問題だと私は思います。
 裁判所の方が、不在配達通知書があるからバランスがいいとか、あるいは百七十一条四項があるからいいとかいうようなことは非常に弁解がましいわけで、結局はやはりプライバシーが侵害されるということを前提に置いて、これで何とかカバーしようというわけですけれども、ちっともカバーになっていない。そして結果的には受送達者の方が著しい不利益を受けるという危険にさらされるという重大な改正だと私は思うわけです。
 いま御答弁は、まず第一回目は必ず住居所に送達をしてからということだとおっしゃいましたけれども、ほかの場所でのいろいろな答弁を総合して考えてみますと、必ず第一回目は住居所に送達をするということではなくて、原則として一回住居所へ送達を試みるという答弁がございますので、やはり内容証明郵便等によって送達ができなかったということを証明すればその例外になるということを堅持されるのか、それとも、こういう場合も含めて何はともあれ、とにかく第一回目は住居所へ送達をするという方法をとられるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
#76
○川嵜最高裁判所長官代理者 新しい改正法案に言います「支障アルトキ」ということの意味は、先ほど法務省の方から御説明があったとおりだと思います。そのとおりでありますので、理論的な問題としては、御質問の中にあったとおり、訴え提起の段階で、明らかに昼間いない、昼間通常の住居所送達をやっても届かないということがはっきりしている場合は、いきなり就業場所への送達ができるというのが法のたてまえであろうと思います。
 しかし、私どもといたしましては、プライバシー保護の観点から、実務の処理の面におきましては、原則としてと、こう言いますと、また例外があるのかと言われますけれども、いま申しましたような例の場合でありましても、まず一度は正式送達を試みる、そういう取り扱いを徹底していきたいと考えております。
#77
○簑輪委員 次に、就業場所での補充受送達者の問題ですけれども、これは、ただ就業場所での送達を認めたというだけではなく、補充受送達者の範囲によって、問題は一層プライバシー侵害が著しくなると言わなければならないと思うのです。送達についての新たな紛争を巻き起こして、権利侵害が非常に著しくなるという危険を、私は鋭く指摘しておかなければならないと思います。
 書類が受送達者に確実に到達するという具体的保証がこの法文上明らかではありません。事務員、雇い人がこれを受け取った場合、本人に交付をするという法的義務はありませんね。
#78
○中島政府委員 訴訟法上は義務はないというふうに言わざるを得ないかと思います。ただ、民法上の義務といたしましては、少なくとも事務管理の法理による義務は負担するということになるのではないかと考えております。さらに進んで、受送達者と現に書類を受け取った者の間に委任契約あるいは準委任的な契約があるとすれば、その委任の法理による責任をも負う場合があると考えます。
#79
○簑輪委員 受送達者と補充受送達者との間に委任の契約なんということは、普通は考えられないわけでして、いわゆる事務管理の義務があるというふうにおっしゃったわけですが、果たして事務員や雇い人の皆さんが、そういう法的義務があることを承知していながら書類を受け取るということになるのかどうか、私は非常に疑問があると思うのですね。民訴法上のそういう義務がないわけですし、事務管理の義務があるからだなんて後から責任追及されても、その人たちにとってみればとんでもない話ですし、やはりこういうことは問題を巻き起こすもとになると言わざるを得ません。
 受送達者の支配下にない補充受送達者というような言い方を先ほど来されておりますけれども、百七十一条一項の場合は支配下にあると言ってもいいけれども、二項の場合はその支配下にない。そういう支配下にない者に対して、そういう法的義務もない者に対して、多分渡してくれるだろうという期待も込めて答弁もされておりましたけれども、それをたとえば百七十一条四項でカバーすることができるのかどうか。その辺は十分百七十一条四項によってカバーできるとお考えかどうか、お聞かせください。
#80
○中島政府委員 百七十一条の一項の住居所等における送達の場合には、補充受送達者に受領の義務があるわけでありますが、百七十一条二項の就業場所における場合には、「書類ノ交付ヲ受クルコトヲ拒マザルトキハ」ということになっておりまして、第三者は交付を拒むことができるということになっております。でありますから、そういうめんどうなことに巻き込まれたくないというようなことであるならば、交付を拒むということになるわけでありまして、交付を受けた以上は、それが委任であろうと事務管理であろうと、そういうむずかしい法律問題は別といたしまして、要するにこれは本人に渡してやらなければならない非常に重要な書類であるという認識を持って交付を受けるのであろうというふうに思うわけでありまして、それほどルーズな取り扱いが行われるというふうには、私どもは考えておらないわけであります。
 しかし、そうは申しましても、百七十一条の一項の場合とは違いますので、四項というものを新設して、さらに念のために本人に対する通知をするということにしておるわけでございます。
#81
○簑輪委員 拒むことができるんだとおっしゃいますけれども、その都度、配達に行った人が、あなた、これは拒むことができるんですよと告知をして、受け取った以上は渡さなければいけませんよということを一々述べて配達をするというようなことも、確実に期待できるわけでもないと思いますし、それは詭弁だというふうに私は思わざるを得ません。
 それから百七十一条四項、これは「通知スルコトヲ要ス」というふうになっておりますけれども、一体どこに、いつまでに、いかなる方法で通知することになるのか、お答えください。
#82
○中島政府委員 通知する場所でありますが、これは原則として受送達者の住居所あてにということになろうと思います。
 それから、いつまでにというのは、特別に明確な日限というものはございませんけれども、立法の趣旨から考えまして、速やかにと申しましょうか、遅滞なく通知をしなければならないものであろうと思います。
 それから、方法でありますけれども、これは普通郵便がまず考えられるわけでありますが、場合によりましてはその他の方法というものもあり得るかと思います。
#83
○簑輪委員 原則、住居所あてとおっしゃいますが、例外を教えてください。
 それから、速やかに遅滞なくとおっしゃいましたけれども、なぜこれを条文に入れなかったのか。
 それから、普通郵便のほかの方法というのを教えてください。
#84
○中島政府委員 原則的に住居所あてと申し上げましたのは、住居所がわからなくて就業場所だけがわかっておるというような場合が百六十九条の二項に規定してございますので、そういう場合には住居所あてに百七十一条四項の通知をすることが不可能であるというふうに考えたからでございます。
 それから、遅滞なくあるいは速やかにということでありますけれども、これは本人あてに百七十一条四項の通知をいたしまして、その通知によって、まれにあり得るかもしれない第三者の失念その他の場合に、受送達者が裁判所から書類が届いておるということを知って、その第三者に確かめるという機会を保障する必要があるわけでありますから、当然遅滞なく出すことが必要であろうと思うわけでありまして、これは裁判所書記官の行為でありますから、これは百七十一条四項の表現によって、その辺のところは裁判所書記官に十分了解、理解できるものであるというふうに考えます。
 それから、方法でありますけれども、大部分はこれは普通郵便であろうと思いますけれども、あるいは場合によれば何かほかの方法があり得るのかというふうに思いまして、ちょっと自信がなくて、ほかの場合もあり得るというふうに申し上げましたが、普通郵便が原則であるというふうに再度申し上げます。
#85
○簑輪委員 就業場所しかわからないというところでそこへ特別送達をしておいて、それで、そこしかわからないからといってそこへまた普通郵便を出すなんて、非常にナンセンスなことだと思います。
 それから、速やかに遅滞なくをなぜ条文に入れなかったかということに対する明確なお答えではありません。入れても差し支えないどころか入れなければならないものが、裁判所書記官がやってくれるだろうということでこういうふうに答弁をされても、納得できかねます。
 それから、普通郵便のほか思い当たらないと言われながらそのほかの方法があり得ると言われても、ちょっとおかしなわけで、たとえば電話なんかで簡易に連絡をするというようなこともあり得るのかどうかも、明確にお答えいただかなければならぬだろうと思っております。
 いずれにしても、連絡がついたかどうかということについて送達報告書がされるわけではありませんので、後になればそれが水かけ論になる。もらった、もらわない。いいえ、出した、確実に出したのだと言っても、もらった方はそんなものは見たこともない。ときには紛失することもあろうし、場合によっては、よく郵便が間違ってよそのうちへ配達されたりしまして、普通郵便の場合ですと、特にどうということないというものなら、そのままそこのうちの人が処分してしまうということが間々あるわけです。そういうことがあれば何の担保にもならないと思うわけです。気休めでこういうふうなものを出してみてプライバシー保護に欠ける部分をカバーしようとしても、これは決してその役割りを果たさないものであると心配するわけです。
 それから、補充受送達者が失念あるいは紛失その他の理由によって本人に交付をしなかったという場合、それによって不変期間などを徒過してしまったというようなことが起こり得るわけですけれども、その際、百五十九条によって訴訟行為の追完として考えられるという御答弁がありますけれども、たとえば補充受送達者から本人が書類を受け取っていない、そして不在配達の通知書も見ていない、それから百七十一条の四項も連絡を受けていない、こういうような条件がダブル、トリプルで重なった場合、それは「当事者カ其ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リ不変期間ヲ遵守スルコト能ハサリシ場合」と言えるかどうか、お答えいただきたいと思います。
#86
○中島政府委員 ただいま例を挙げられましたような場合には、百五十九条によって訴訟行為の追完が許される場合であろうと思います。
#87
○簑輪委員 従来、訴訟行為の追完ということに対して、判例は非常に厳しい態度を続けてきております。追完の申し立てをした場合に認められる例の方が少なくて、ほとんどの場合拒否されている。追完が認められるのはよくよくの場合であるというようなことが、法学者の中でも言われているわけです。私も判例をいろいろ調べてみましたところ、確かに現行法のもとにおける訴訟行為の追完というのは、よほどの場合でないと認められていないということが言えます。しかし、今度もしこのような改正案が通るということになれば、本人の支配下にない人が交付をしなかったというようなことでありまして、本人の全く知らないところで事が進行するわけですから、当然「其ノ責ニ帰スヘカラサル事由」に当たると私は思いましたけれども、いまの御答弁でそれが当たる場合であるとおっしゃっていただきましたので、この訴訟行為の追完が新しい送達方法のもとでは臨機応変に実情に即して認められるように、ぜひ運用を適切にしていただかなければならないと思っておりますけれども、これは裁判所の方としても御答弁いただけますでしょうか。
#88
○川嵜最高裁判所長官代理者 ただいまの点につきましては、そのような運用が行われますように、司法行政上とり得る措置は十分にとりたいと私ども考えております。
#89
○簑輪委員 この場合、「其ノ責三帰スヘカラサル事由」というのは、当事者の方に主張する責任と立証責任があると言われておりますし、さらに、一たん不変期間の不遵守によって確定してしまった形をとっておりますと、その判決の効力は当然には排除されない、そして執行力があり、既判力があるものとして取り扱われると言われておりますので、この辺も十分にしんしゃくした上で運用していただかなければならないということを指摘しておきたいと思います。
 それからもう一点、調書の省略についてお尋ねをしたいわけですけれども、一つの期日に一調書というのを原則として調書が作成されているわけでございますけれども、今度の調書の省略の規定によって、この原則に何らかの変更があるということはございませんでしょうね。
#90
○中島政府委員 そのとおりでございます。
#91
○簑輪委員 民事訴訟法によれば、当該の期日中に調書が作成されるというのが期待されているわけですけれども、事実上裁判所の現状からそれができないということで、調書がおくれるという実情にあることは私も承知しているわけです。しかし、これは基本的に速やかに調書を作成するという義務があるものだと思うのです。今回、和解等の場合に調書の省略が許されるということになりますと、最初から和解を見越した訴訟指揮あるいは訴訟の進行がなされるのではないかという不安が再々指摘されてきているわけです。和解含みという場合には、ひょっとして和解ができるのではないかということを期待しながら調書の作成がおくれていく、そうすると結果的には、和解の期日に行われた証人あるいは当事者の尋問調書だけではなくて、それ以前の何回かの期日の分もさかのぼって省略されてしまう危険があるわけですけれども、その防止という点ではいかなる手だてがあるのでしょうか。
#92
○川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のような危険性と申しますか、不都合な事態が生ずるおそれ、そういうものはこの改正法が予定しております調書省略の新しい制度がない現在でもあると言えばあるわけでございまして、御承知のとおり、和解が成立いたしますと、まだできていない証人調べはやらなかったことにして、当事者双方の同意によって調書を省略いたしますという扱いが実務で行われております。こういうような実務の慣行と申しますか、これを前提といたします限りは、現在におきましてもそういう危険性が絶無であると断言するわけにはいかないわけであります。これは新しい法律ができても全く同じ状況だろうと思います。
 そういうような和解を見込んで調書の作成を見合わせるという扱いは、しょせん書記官にとりましては、もし不調に終わった場合に自分の手元が破産するということになるわけでありますから、こういうことがないように心がけるのは、初歩的な心構えだろうと思います。こういう新しい制度ができましたならば、そういうことがないようなお一層心がけるべきことを、いろいろな機会を通じて徹底していきたいというふうに思うわけでございます。
#93
○簑輪委員 日弁連も指摘しておりますように、当該証人調べ等がなされた期日中に事件が終了した場合に限るというふうに明確に規定しておいた方がいいのではないか、あるいはそうしなければならないのではないかという御指摘が日弁連からされておりますけれども、その点はいかがでしょうか。
#94
○中島政府委員 通常の場合は、その和解成立当日に行われた手続の調書、あるいは取り下げ、認諾、放棄その他の行為が行われました期日の当日の調書を省略するということになろうと思うわけでありますが、それはその調書がその事件については不必要になったという理由によるものでありまして、その事情は、いまだ作成されてない全期日の調書についても全く同様であろうと思うわけでありまして、訴訟が判決等によらないで終結した時点において判断して、その際、いまだ作成されていない調書すべてを対象にして省略の可否を論ずるということでいいのではないか。ただ問題は、書記官の心構えあるいは裁判長の指導ということではないかというふうに思います。
#95
○簑輪委員 やはりその期日に限定しておかないと、運用がルーズになって、結局のところ権利が侵害される危険があるということが重要な問題だというふうに思います。いま御答弁がありましたように、書記官等の破産の問題があって、自分の問題だからというようなこともありましたけれども、そういう問題ではなくて、基本的な人権の問題として十分徹底していただくようにお願いをしたいと思います。
 それから最近、速記の問題で外部に委託するというようなことを聞き及んでおりますけれども、裁判所において速記を外部に委託するというようなこととか、あるいは速記官の反訳等を外部に委託するというような現状があるのかどうか、実情はどうなっているのか、お答えいただきたいと思います。
#96
○梅田最高裁判所長官代理者 いわゆる外部速記でございますが、期日に裁判所外部の速記者を立ち会わせまして速記させて、証人の供述等を録取させるものでございますが、東京地裁、大阪地裁等の二、三の庁で、昭和四十年後半ごろから利用されているということは承知いたしておりますけれども、これは当事者からの要請あるいは訴訟指揮にもかかわる事柄でございまして、私どもといたしましては、各庁に対しましてその実態の報告を求めておりませんので、全国的にどの程度利用されているかということは、詳細は把握いたしておりません。
#97
○簑輪委員 外部の速記者を入れるということは、根拠はどこにあるのでしょうか。
#98
○梅田最高裁判所長官代理者 民事訴訟法百四十八条、あるいは刑事訴訟規則四十七条一項、四十条でございます。
#99
○簑輪委員 これは外部の速記者でも構わないという趣旨で立法されているようにはちょっと思えないのですけれども、裁判所において裁判長の判断においてそういうことがなされているということは、私は当事者から見ても非常にゆゆしい問題だろうというふうに思います。そしてそのまま実情を、それぞれの庁に任せておいて放置しておくというのは適切ではなくて、基本的には裁判所速記官がその身分と地位の権限において責任を持って速記をし、反訳をし、それに基づき調書がつくられるというふうでない限り、証人あるいは当事者の尋問の信懲性その他いろいろ問題があろうかと思うのです。そういう点で、このまま調査をしておりませんということではなくて、そういう実態を十分に把握し、本来の裁判所速記官にきちんと速記をせしめるべく手だてをとる、必要ならば速記官の増員をするというふうにすべきだと思いますが、いかがですか。
#100
○梅田最高裁判所長官代理者 法令上の根拠がございますので、必要に応じて裁判長が訴訟指揮に基づいて個別的になさる事柄でございますから、私どもとしてそれをとやかく言う立場にはないわけであります。
 ただ、委員も仰せのとおり、裁判所も独自の裁判所速記官を養成しておりますので、でき得ることなら裁判所の速記官を立ち会わせて速記に付するということの方がベターである点は、おっしゃるとおりであろうかと思います。ただいま増員の点もございましたが、御承知かと思いますけれども、速記官の養成には非常に時間もかかりますし、人の適性といいます点でも、当初新規に四十人ぐらい採用いたしましても、二年間の養成期間の間にその数が三十ちょっとというふうに減ってまいるわけでございます。しかしながら、このところ毎年着実に、全体として見ますと二十人ぐらいずつの増にはなっておりますので、今後もその養成に努力を重ねてまいりたいというふうに思います。
    〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
#101
○簑輪委員 外部速記を入れるということは、裁判に対する信頼その他重大な問題があると思いますし、ぜひその点は速記官の養成を行い、採用をふやして必要に対応できるような体制を整えていくべきだと思うのです。
 それから、録音テープというものを利用されることが多いわけですけれども、録音テープそのものを調書にかえて保存しておくというような動きもちらっと聞いておりますけれども、あるのでしょうか。
#102
○梅田最高裁判所長官代理者 証人等の供述を録音テープにおさめまして、録音体自体を調書の一部に引用するということも、きわめて一部ではございますけれども、例があると承知いたしております。
#103
○簑輪委員 これは書記官が調書をとる、あるいは一部速記官に速記の部分を任せるというようなことがあるかもしれませんけれども、基本的には書記官が調書を作成するわけですが、録音テープで調書にかえてしまうというようなことは、何ら法的に問題がないものでしょうか。
#104
○梅田最高裁判所長官代理者 録音体を調書の一部に引用すること自体は、法的には許されていると存じます。
#105
○簑輪委員 当事者としても、録音テープそのものでは訴訟の準備あるいは進行に支障を来すとか、また録音テープそのものの保管等にも問題があるというふうに思いますし、やはり違法の疑いという点では疑問を呈せざるを得ないわけで、その辺のところも、私どもとしては今後こういうようなやり方はぜひやめるべきである、本来調書をきちんと作成して訴訟関係者に供するようにすべきであるというふうに強く指摘しておきたいと思います。
 今後これをふやしていくというようなお考えはあるのでしょうか。それとも、できるだけこれはなくしていくというお考えでしょうか。
#106
○梅田最高裁判所長官代理者 私どもとしては、その辺のところは、現在行われておりますのがきわめて限られた一部でもございまして、訴訟における機械器具等能率器具を使用しての合理化の面もございますけれども、委員も御指摘のとおり、やはり文字化されたものでなくては、実際に関係人が閲覧するといったときの不便等もございまして、長所もあり短所もあるというような状況でございますので、広げていこう、あるいは全くなくしていこうということにつきましては、まだ決めかねている段階でございます。
#107
○簑輪委員 問題があることは十分御承知のわけですから、やはり原則に立ち返ってきちんとした調書作成を強く求めておきたいと思います。
 まだお聞きしたいことが何点かありますけれども、時間もございませんので……。
 この改正案全体に流れている物の考え方というのは、訴訟の増加という問題に対応して訴訟促進、訴訟の合理化というようなことが前面に出てきているように思うわけです。しかし、このような物の考え方は、裁判というほかの分野とは全く異なる分野でございますので、合理化を前面に掲げてそれを一気に追求するということは、当然のことながら関係者の人権を侵害したりという危険が著しいということを、深く深く配慮していただかなければならないと思います。
 そこで、法務大臣に最後にお尋ねしたいのですけれども、訴訟の増加によって審理がおくれてくる、だから促進するためのいろいろな手だてをということでこういう改正案が出されましたけれども、やはり基本的には、裁判所の裁判官とか書記官、速記官の人的な充実あるいはその他の物的な充実、体制の充実をもって対処していくのが本筋であるというふうに私どもは考えるわけですので、そういう方向で進めていただきたいと思いますが、法務大臣の御見解を伺って、終わりたいと思います。
#108
○坂田国務大臣 その点はもう私も同感でございまして、裁判が公正に、しかも国民の権利保全に十分役立つというものでなければならないというふうに思っております。
#109
○簑輪委員 終わります。
#110
○太田委員長代理 岡田正勝君。
#111
○岡田(正)委員 時間が大分超過しておりますので、簡潔にお伺いしますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。
 まず第一点は、今回の送達の方法を変えることにつきまして、プライバシーの侵害になりはせぬかということが中心にいろいろと問題になっておりますが、今度の送達の手続を変えなければならないという事情が出たその事情ですね、送達に支障があるという場合というのはどんな場合なのか。いわゆる本人の住所がわからぬという場合、あるいは住所は一応表示してあってもなかなか本人に届かないという場合だけなのかどうか、あるいはそれ以外に支障のある場合というのがあるのか。それぞれパーセンテージでいいですから、その実態はどうなっておるのか、御説明願います。
#112
○川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま、訴訟に限らず、裁判所の書類の送達が非常にできにくくなっているという実態は御承知のとおりと思いますが、その原因は、郵便は原則として昼間配達されるものですから、昼間いないという家庭がふえてきたということが第一でございます。そのほか送達できない理由としては、転居先不明とかいろいろございますけれども、一番の問題は、いることは間違いないけれども受取人が昼間いないという場合がふえてきた、こういうことでございまして、今回の法改正もそういう実情を踏まえてのものというふうに私どもは理解しておるのでございます。
#113
○岡田(正)委員 私はよく承知しておらないのでございまして、承知してないから質問をしておるのでありますが、いま言うように、配達はなるほど昼間配達でございますね。そのときに昼間配達してもなかなかおらぬ。たとえば共稼ぎその他でおらない、したがって夜間に配達しようと思っても人数が限られておる、しかもそれは大変なオーバー労働になるというような関係もあって、今回の法改正にもっていきたいというのでありますが、いわゆる送達が非常にむずかしいというのは全体の何%か。おおむねそのパーセンテージぐらいはわかりませんか。たとえば一〇〇送達すべきものがあって、そのうちの一%なのかあるいは五〇%ぐらいになっておるのか、というような程度ぐらいはわかりませんか。
#114
○川嵜最高裁判所長官代理者 お手元の法律案関係資料の終わりの方に横長の表がございまして、実態の調査をしたのでありますが、上の欄の表は訴状の送達、下が支払い命令の送達でございます。これを見ていただきますと、五十六年十月、十一月の二カ月間に出された送達書類が二万二千五十件、この中で受取人不在を理由として返された郵便物がC欄にございまして二千八百五十三件、全体の一二・九%というふうになっております。支払い命令につきましては、同じようにその率は二三・一%というふうになっております。これで御承知をいただきたいのでありますが、昼間不在のために配達できない、裁判所の書類が届かないという率はこの程度になっておりますということでございます。
    〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
#115
○岡田(正)委員 よくわかりました。
 そこで、今度の法改正をいたしましたならば、これがゼロ%になりますか。
#116
○川嵜最高裁判所長官代理者 これは正直に申しまして、見通しが立たないのであります。ただ、かなりの成績は上げ得るだろうと思いますけれども、それでは先ほど申しました不送達になった一三%あるいは二三%のうち何%が成功するかということになりますと、これはちょっと申し上げかねるのであります。非常に目の子算で言いますれば、半分ぐらいは成功するのではないかというふうに思っております。
#117
○岡田(正)委員 そこで、就業先に送達をするわけでありますが、この就業先に送達をいたしました場合、たとえば一つの会社に行きますね、会社に行きまして、それが事務ばかりとっているような会社でありましたならば、あるいは受付で本人呼び出しというようなことが可能でありましょう。だがしかし、本人の呼び出しができないような会社というのはずいぶん多いわけですね。そうすると、受付の人に渡すかあるいは庶務課の人に渡すか、何か第三者を経由してお渡しするようなことになりますね。そういう場合に、第三者にお渡しして、その受け取ったという判こをもらって郵政省は帰ってくるわけですから、郵政省はそれで一応の責任は足りたと思いますけれども、さて、その委任を受けました人が引き出しの中に入れっぱなしにして忘れちゃった、あるいは書類の下に隠れちゃってわからぬようになっちゃった、あるいはごみ箱へいつの間にか捨ててしまったというようなことが絶無とお考えでしょうか。
#118
○中島政府委員 私どもは、普通の郵便ではございませんので、裁判所から来た書類であるということははっきりしておりますし、しかも普通郵便ではなくて特別送達による書留郵便でもありますから、そうルーズな取り扱いがされるというふうには考えておらないわけであります。むしろ一〇〇%と言いたいわけでありますけれども、一〇〇%近く本人の手に渡るであろうというふうに期待をしておるわけでありますが、しかしまた、いま御指摘のありましたようなおそれも皆無かと言われますと、そうとは言えないということにもなるわけでありますので、そういう場合には百七十一条の四項という規定を新設しようとしておるわけでございますが、これによって裁判所書記官は本人あてに別途郵便等によりまして通知をすることになっておりますので、本人は、裁判所から書類が届いた、そしてそれは自分がいなかったので同僚の何某という者に手渡されたということを知ることができるようにしております。
#119
○岡田(正)委員 そこのところでございますね。第一義的には必ず本人の住所に通知をする、それがどうしても届かないということがわかった場合に初めて就業場所に送り届けるということをやります、こういうことが何回も質問の中で答弁で繰り返して確認されているわけですね。本人に何遍も――何遍ということはない、恐らく一回でしょうが、第一義的に送達をしようと思っても届かない、届かないから、仕方がないから多少プライバシーの侵害になるおそれはなしとしないけれども就業場所へお届けをする、こういうことを今度は新設をするわけでございましょう。それが、恐らくないと思います、ないと思うが皆無とは言い切れない。そうすると、本人の手に渡らない、本人が出てこない、こういう場合にはどうするかと言えば、もう一遍本人あてに郵便をもって、何月何日〇〇会社の何のたれ兵衛さんに何時何分こういう書類をお渡しした、したがって出てきてもらいたい、あるいは承知してもらいたいということの手続を行うのですといま局長さんおっしゃいますね。それができるのなら、就業場所へ出さなくてもいいわけでしょう。それができぬから、就業場所へ渡すのでしょう。その点はどうなんでしょうか。
#120
○中島政府委員 送達ということになりますと、これは非常に厳格な手続でありますから、書留郵便、しかも非常に特殊な送達報告書つきの書留郵便ということになるわけであります。でありますから、昼間不在であれば、郵便局としてはそれは不在配達通知書を入れておきまして郵便物は持ち帰る、こういうことになるわけであります。就業場所に送達をいたしますと、その就業場所では、本人がおれば本人でありますが、本人がいなくても、同僚がこれを受け取ってくれれば受け取ってもらう、これで送達の効力が発生するわけであります。
 別途通知を出すと申しましたのは、普通郵便その他の方法によって本人あてに通知を出すわけであります。本人の住居所あてに送りますから、本人が不在でありましても住居所の郵便受けにほうり込んでまいります。そうすると、本人がその日なり翌日なり家に帰ってきてその郵便物を見ることができる、こういうことであります。
 それじゃ、いきなり書類の送達を普通郵便でやったらどうか、それならば本人が留守でも郵便受けにほうり込んでくればいいじゃないか、こういうことでありますけれども、最初に申しましたように、送達というものは手続も厳格であると同時に、その送達が確実にこういう形で文書はだれだれに届きましたということを公証する、証明するということが必要でありますから、やはり書留郵便によらざるを得ない、こういうことであります。
#121
○岡田(正)委員 そこで、私は一つの意見を持っておるのでありますが、局長さんのおっしゃることも理が通っております。ですから、私が思いますのは、本人の住居へ昼間書留郵便で特別送達しますね。そのときに本人がおらない、家族の人もおらない、おらぬから届かない、届かないから、仕方がないから就業場所へ持っていくという手続の前に――就業場所へ持っていってもなおかつそこで失念する、あるいは何かのトラブルで本人には渡らなかったという場合には、普通郵便で本人の住居へこうこうこういう手続をもって会社の方に配達をしましたよということを出すのですとおっしゃるわけですね。それは昼間でなくても夜見られるわけですから、その本人が住居に帰れば見れるはずだと局長さんは一つの想定をしていらっしゃるわけです。ということになれば、いわゆる特別送達をして本人が住居におらない、家族もおらない、したがって渡すことができないという場合に、いきなり就業場所へ持っていくのではなくて、普通郵便でその旨お出しになるという、めんどうくさくてももう一遍その段階をお踏みになる必要が、プライバシー侵害を保護するという観点からもそれだけの手続はあってもいいのじゃないでしょうか。いかがでしょう。
#122
○中島政府委員 これは郵便局の方の取り扱いになりますけれども、住居所あてに送達をしまして不在であると、書留郵便を持ち帰るわけでありますが、その際に、御承知のように不在配達通知書というものをそこに置いてまいります。したがいまして、受送達者といたしましては、その不在配達通知書を見ることによって裁判所から書類が届いた、不在のために持ち帰った、そして郵便局に十日間であったと思いますがとめ置いてあるということがわかるわけであります。しかも、その通知書に配達希望日を記入して返送することによって、希望の日に再度配達してもらうこともできましょうし、郵便局へ取りに行けば窓口で渡してくれるという方法もあるわけであります。そういう手続をとろうと思えば非常に簡単にとれるわけでありますが、それをとらなかったために、まあ夜間送達なり休日送達なりということはあり得るわけでありますけれども、その次は就業場所に対する送達ということになるわけでありますから、その前にもう一度普通郵便によって住居所あてに通知をするということは、私どもとしてはそこまでの必要はないのじゃないかというふうに考えておるわけであります。
#123
○岡田(正)委員 どうも私、素人でございますので質問がくどいかと思いますが、そうすると、特別送達で書留郵便を郵便局の方がお持ちになりますね。それで御不在だということになれば、その本人あてに、こういう特別郵便物がありますので郵便局で預かっておりますよ、取りにいらっしゃいよ、あるいは何か連絡をしてくださいということを入れておきますね。それを本人が夜帰ってきたら恐らく見るはずだ、見れば郵便局にまた別の日に持ってきてくれということをお願いをするか、本人が取りに行くか、そういう方法があるわけですね。なおかつそれもやってこない、それもしないという場合には、いわゆる休日配達あるいは夜間配達ということも、やろうと思えばできないことはない。それもやって、なおかつできない場合に就業場所へという意味ですか。
 一番最初の特別送達をいたします。そして、本人はおらぬから不在配達通知を入れている、なおかつ本人から郵便局へ何も連絡がない、そこで十日たった、今度は休日配達をするあるいは夜間配達をする、それでもまだだめだから、それだけの手続を踏んだ上で就業場所へというのですか。休日配達、夜間配達というのはのけて、いわゆる一番最初の特別送達だけをして、不在配達通知を入れておいて、取りにこなかった場合に就業場所、こういうふうにいくのでありますか。そこのところをお願いします。
#124
○中島政府委員 昼間送達ができないという場合には、次には夜間送達なり休日送達なりということを考えることになるわけでありますが、現状では、非常に特別な場合を除きまして、夜間送達なり休日送達なりというものは郵便集配人によってはできないわけであります。これは郵便当局の取り扱いからきておるわけであります。したがいまして、それは執行官による送達しかできないということになるわけであります。
 でありますから、執行官によって休日送達なり夜間送達なりができるかできないかということを書記官としては考えることになるわけであります。執行官は、どの裁判所、どの裁判所の支部、簡易裁判所にも配置されておるというわけではございませんので、執行官の配置されていないところではよその執行官に頼まなければならないというようなこともありましょうし、あるいは自分のところに執行官が配置されておりましても、執行官の本来の仕事であります執行事務がどの程度あるかということによって、すぐに執行官によって夜間送達なり休日送達なりをすることができる場合とできない場合があるわけであります。できる場合は執行官による夜間送達なり休日送達なりをするわけでありますが、それができない場合あるいは困難な場合、非常に時間がかかるという場合には、就業場所における送達というものを次に考えるということになります。
#125
○岡田(正)委員 よくわかりました。
 そこで、いよいよ就業場所へお届けをした。本人の手に渡れば問題ありませんね。ところが、中間の人といいますか第三者にお願いをした、こういうような場合に、冒頭申し上げましたように、その人も神様ではありませんから、正確な機械ではございませんので失念した、あるいは捨てちゃったというような、いわゆる故意によらざる問題で本人の手に渡らなかったという事件が起こり得ると思うのです。特に民間の会社ですからね。そういう場合には一体だれが責任をおとりになるのでありますか。
#126
○中島政府委員 本人とその第三者との間で別途法律問題が発生するということは別でありますが、裁判手続の面で申しますならば、本人の責めに帰すべからざる事由によって本人がその通知のあること、送達のあったことを知らなかった、そのために訴訟行為をする機会を奪われたというような場合には、民訴の百五十九条という規定がございまして、たとえば控訴期間でありますれば、判決の送達を受けたときから二週間以内に控訴をしなければならないわけでありますが、その期間が経過いたしておりましても、事実を知った日から一週間以内に追完を許すということになっておりますので、それによって本人は救済されるということになるわけであります。
#127
○岡田(正)委員 そこで、そういう場合がありましてうまく一週間以内ということで間に合えばよろしいのですけれども、何かの手違いで、世の中というものはトラブルがよく起こりがちなものです。それで、あなたが私のかわりに受け取ってくれたのに、あなたは私に渡してくれぬからえらい不利益をこうむったというので、中間で受け取った人を今度は受け取るべき本人が訴えるというようなことは成り立つのでありますか、そういうものはもう成り立たないことになるのでありますか、どっちですか。
#128
○中島政府委員 その第三者は、本来本人にかわって書類を受け取ってやる義務はないわけであります。しかし、受け取った以上は本人のために最も有利な形でその事務を処理しなければならない。法律的に言うと事務管理というようなことを申しますけれども、そういう事務管理者としての義務が発生するわけでありまして、事務管理者の義務の内容についてはいろいろ考え方があるわけでありますけれども、要するに善良な管理者の注意義務をもって事務を処理しなければならない、こういうことになるわけでありますから、これは本人にその物を渡してやるということがこの義務の内容でありますから、その義務違反が生ずるということになりますと、損害賠償の問題も起こってくるということになります。
#129
○岡田(正)委員 そこでこういうのが、たとえば先ほどの一例では、支払い命令で二三%、それから訴状の関係で約一二%というような比率であるというのですから、相当の数が行くと思います。その場合に、いわゆる善良な事務管理者としての義務がうまく遂行できればよろしゅうございますが、そういう事務に取り扱いなれていない人であった場合には、ついつい失念ということはずいぶん起こり得るケースが多いと私は思うのです。そのときに、第三者として受け取らなくてもいいんだ、私はそんなものは受けられません、本人にじかに渡してくれ、私はそんなめんどうなことは嫌だといって拒否すれば、それは拒否する権利がある。しかしながら、一たんよろしゅうございます、渡しましょうといって受け取った限りにおいては、事務管理上の責任を負わなければならない。そして、それをもし訴えられたならば、やはりこれは損害賠償の責めを受けなければならぬというような事態になってくるということでありますが、その場合、これは郵便法上では一体どうなるのでしょうか。本人に渡さなければならぬものを、第三者に委託して渡すということは許されておるのでありますか。
#130
○伊藤説明員 お答えいたします。
 郵便物を配達する場合に、郵便法令に基づきまして、いま先生御指摘の場合ですと、民訴法の定める手続に従いまして正当に受け取る権限がある第三者に交付をしたとすれば、そこで正当な交付となるわけでございまして、その後の措置につきましては郵便法以外の範囲の問題だ、こういうふうに考えております。
#131
○岡田(正)委員 そうすると、これも私、わかりませんからだめ押しをしておきますが、民訴法の改正によってそれは第三者、いわゆるその会社に関係のある方でございますけれども、本人なら問題ありませんが、代理人、そこの従業員、雇用者、だれであってもいい、そういうことで民訴法の改正があった場合は、もういわゆる当該第三者に手渡したのであるから、郵便法の改正なんということは全然考慮する必要はないということで確認してよろしいですか。
#132
○伊藤説明員 そのとおりでございます。
#133
○岡田(正)委員 そうすると、もう一遍民事局長さんにお尋ねをいたしますが、郵便法では民訴法の改定があれば問題ありませんということになるわけです。そういたしますと、この特別送達を会社に持っていきましたときに、相手方に対してこれをぜひひとつ本人に渡してくれませんかということをお願いするときに、あなた、これを受け取った以上は本人に必ず渡してもらわなければその本人に対して不利益を与えることになるので、将来そういう問題が起きたときには損害賠償の責めを負う場合がありますよということは、何かで本人に知らされるのですか。
#134
○中島政府委員 そういうことを告知するということは、今回の改正法では特に決めておりません。
#135
○岡田(正)委員 私は、めったに起こることではないと思いますけれども、人間というのはお互いの善意を信じ合いながら生きていかなければ、この世の中は本当に砂漠みたいなものですよね。だから、信じ合うということは結構でありますけれども、しかし、いやしくも裁判所の書類が善良な第三者の手に渡った場合、つい忘れた、つい失念した、あるいはついうっかりしてどこかへ失ったというような起こるはずのないことが起きて、訴えられて損害賠償の責任を負わなければならぬような事件が起きてきますと、私はその受け取る第三者に対して非常に不親切なことをしておることになりはせぬかと思うのです。
 ですから、これは法文に書くべきものかどうかは、私も専門家ではありませんからわかりませんが、今度の法改正でも――たとえば被疑者をつかまえて取り調べる場合でも、あなたに不利益になるようなことは一切言わなくてもいいですよということをわざわざ言いますね。その上で取り調べをいたしますね。そこまで相手の人格を尊重しておる世の中でありますから、ついうっかり受け取ってうっかり本人に渡さなかったというふうに、うっかりが二回重なると本人にえらい損害を与えますので、受け取る、受け取らないはあなたの自由ですが、受け取った限りにおいては必ず渡してもらわなければ後で問題が起きますよということは、お願いをするときによくわかるように、お願いをする方の立場から書類を添付しておくか何かする必要があるのではないでしょうか。
#136
○中島政府委員 ちょっと例は悪いかもわかりませんけれども、現在でも勤務場所で郵便が届くという場合がケースとしてはかなり多いのではないかと思います。私につきましても、住所ばかりでなくて勤務場所ではがきが来る、あるいは郵便が来るということはしばしばあることでありますけれども、役所あてに私を名あて人として届いたものはすべて私の手元に届いておるというふうに私は理解しておるわけであります。今回のこの法改正はそれとは違いまして、書類の重要性から考えましても、あるいは先ほども申しましたようにその郵便方法の特殊性ということから申しましても、非常に特殊な郵便でありますから、これが本人に届かないというようなことはもう皆無に近いというふうに私どもとしては考えておるわけであります。
#137
○岡田(正)委員 時間がありませんから次にお尋ねをいたしますが、少年事件などのような場合に職場へ送達ということがありますか。
#138
○栗原最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 少年事件につきましても民事訴訟法の送達に関する規定の準用をいたしておるわけでございますが、実務の扱いといたしましては、そのような送達の方法によらない、いわゆる簡易な呼び出しの方法をとっておりますので、現実の実務において就業場所へ呼び出しをするというようなことはございません。
#139
○岡田(正)委員 刑事事件の関係はいかがでしょうか。
#140
○小野最高裁判所長官代理者 御承知のとおり、刑事訴訟法の五十四条は「裁判所の規則に特別の定のある場合を除いては、民事訴訟に関する法令の規定を準用する。」こうなっておりますので、刑事で何らかの措置を講じない限りは、このまま準用になるわけでございます。
 そこで、私どもこのたびの民事訴訟法の改正に当たりましていろいろ実情を調査いたしましたところでは、昼間不在によりまして送達が困難を生ずるというような場合は、刑事事件につきましても民事事件と同様にあるわけでございまして、その必要性はないわけではないわけでございます。しかしながら、刑事事件におきましては、その性質上プライバシー、名誉とか信用とかという点の保護というものは民事事件と比較いたしまして格段の配慮が必要であろう、こういうふうに考えるわけでございます。そこで私ども、今度のこの民訴の改正に当たりましてどのように対処するかということにつきまして法務省の刑事局ともいろいろ御相談申し上げました結果、法制審議会のこの民事訴訟法の要綱案にございますが、受送達者に異議がない場合に限ってこれを行うということであれば特にプライバシーの侵害というような面もないのではないか、このように考えまして、そのような受送達者に異議のないときに限って就業場所に送達することができる、このようにいたしたいと考えております。
 なお、この点につきまして刑事訴訟法の改正をするかどうするかということでございますが、この点につきましても法務省刑事局と相談いたしました結果、裁判所規則、具体的に申しますと刑事訴訟規則でございますが、この改正をもって足りるのではないかというふうに考えまして、私ども刑事局の方で刑事訴訟規則の改正案をいま準備しているところでございます。
#141
○岡田(正)委員 時間が参りましたのでこれをもって質問を終わらせていただきますが、私は、今回の改正で一番の問題は、事情もよくわかりますけれども、やはりプライバシーの侵害になりはしないかというおそれを持っておることもまた事実であります。そして、訴訟記録の簡略化という問題等につきましても、それはめったにあることではないでしょうけれども、一たん調停ができたものあるいは和解ができたというようなものが、何かの関係で事が不調に終わって、事件がまたぶり返してくるというようなときに、ああ、あの人の証言が記録に残っておればよかったのにと思っても、そのときにはもうすでに遅しというようなこともないとは言えないという危惧もあるわけでありまして、そういう点、ひとつ十分御注意をいただきまして、本法の施行については留意をいただきたいという意見を申し述べまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#142
○羽田野委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時二十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時二十四分開議
#143
○羽田野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
#144
○稲葉委員 この法案について質問いたしますが、昭和五十五年の九月六日に法務省民事局長通達というのが、「民事執行法による供託実務」というので出ているわけですね。これは今度の法案とどういう関係になるわけですか。この法案が通るとこの通達は変わるのですか、変わらないのですか。
#145
○中島政府委員 今回の改正によりまして五百十三条が改正になりまして、供託所といたしまして執行裁判所を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所がつけ加わりますので、その分が変わることになります。
#146
○稲葉委員 しかし、この説明を読みますと、佐藤修市という人が書いた通達の解説ですか、これは個人が書いたのかどうか別として、発令裁判所と管轄裁判所というのですか、それのところで、執行行為に入っている場合は管轄供託所というのは両方だ、発令裁判所と執行裁判所の両方だけれども、この執行行為に入っていない段階では発令裁判所だけの方が合理性があるというふうなことが書いてあるのですが、これはどういうわけですかね。
#147
○中島政府委員 執行裁判所という場合にもいろいろありまして、たとえば金銭債権による執行という場合には、現実の執行が開始されませんと執行裁判所かどうかということがはっきりしないわけでありますけれども、たとえば建物収去あるいは建物明け渡しというような執行でありますと、執行に着手する前から執行裁判所というものが決まってまいりますので、その場合には執行裁判所というものを五百十三条の執行裁判所の中に含めて考えております。
#148
○稲葉委員 しかし、この民訴の条文、これは民事執行法ができたときの説明を見ると、「従前のように、どこの供託所にしてもよいということですと、これは担保権利者に不利益を及ぼしますので、新たに管轄の供託所が定められたわけです。それは、「民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律」の第一条で民訴法第一一二条が改正されたことによります。」そして「民訴法第一九七条において、仮執行又はその免脱のための担保に準用されています。」こう書いてあるわけですね。
 このときは担保権利者に不利益を及ぼすのでこういう規定にしたのだけれども、今度はまた変わってきたということになるわけですか。それはどういうことになるの、理論上は。あるいは率直に言えば、この前の民事執行法のときに準用規定のところのどこかを落としてしまったと言えば語弊があるかもわからぬけれども、まあ法律的なきわめてあれだったということなんですか。こういう理屈が書いてあるんだから、こういう理屈が今度の法律で変わってくるわけはないので、ミスならミスでいいじゃないですか。
#149
○中島政府委員 百十二条の場合の担保の提供に関しましては、その発令裁判所の管轄区域内の供託所がこの供託所としてふさわしいという見解であったわけでありますが、五百十三条ということになりますと執行法が出てまいりますので、そこで執行裁判所というものをつけ加えたわけでございます。
#150
○稲葉委員 余りそれほどの問題でもありませんから、結局この前聞いたとおり、今度の民訴法の中で法務省が関与している部分はどこかと聞いたら、この前御説明があったとおりで、それによると結局、控訴提起に伴う場合の供託所というもの、発令地とそれから執行地ですか、どちらでもいいということになるわけですね。そういう御説明が余りはっきりなかったものですから、そういうふうに承ってよろしいですか。
#151
○中島政府委員 ただいま御質問にあったとおりでありまして、執行裁判所がつけ加わるわけでございます。
#152
○稲葉委員 そこで、この法案の中身についてまずお聞きするときに、あるいは質問が出たかもわかりませんけれども、日弁連の「民事訴訟法の一部改正に関する意見書(その一)」というのがあるわけですね。これは御案内と思いますが。私の見解は、日弁連と協議をして調ったから法案を通してくれという考え方も、私はそのままストレートに受け取るわけにはいかないし、また逆な場合も逆な場合としてわれわれは独自に問題を判断すべきであるというたてまえに立つべきだと思うのです。
 それはそれとして、この十一項目のうちの四項目だけ残って、それで十分話し合いがついたとかいう話なのですが、まず「当事者主義、弁論主義、処分権主義などの基本構造に関連し、これを変革するおそれがある重要な問題を含んでいる。」というのですが、どの点がどうだということは一応抜きにして、まず問題になるのは、現在の民事訴訟法の中で当事者主義というものがどういうふうに貫かれているか。当事者主義とはどういうものであって、どういうふうに貫かれておって、今度の民訴の改正でそれが一体関係しているのか関係していないのかということについて、お伺いをしたいと思うのです。
#153
○中島政府委員 当事者主義ということになりますと、これは民訴を貫く大原則でありますけれども、その言葉の中にどういう意味を持たせるかということにつきましては、広狭人さまざまの考え方をいたしておりますので、必ずしも一概に申し上げることはできないかと思いますけれども、要するに職権主義に対立する主義であろうかと思うわけでありまして、職権でやるのではなくて、当事者の立場を尊重して十分主張、立証を尽くさせる、そのための機会を与え、そのための手続を保障するということであろうかと思うわけであります。
 それと今回の改正ということになりますと、直接それに関係があると言えばあるわけでありまして、送達にいたしましてもあるいは調書の作成にいたしましても、当事者の地位あるいは立場に全く影響を与えないかと言えば、これは影響を与えることでありますが、基本的な問題として影響を与えるかというと、それほど影響を与えるものではないというふうに考えております。
#154
○稲葉委員 当事者主義というものにいろいろ理解の仕方がある、これはわかりました。広い狭いはもちろんありますけれども、しかし、当事者主義に任せっ放しにしておいたのでは、いつまでたっても裁判は進まないということになりますね。それで、それに対して職権主義的な要素を訴訟指揮の中で加味しようということにある程度なってくるのではないかと思うのです。
 そうすると、いまおっしゃったのは、今度の改正では送達と何が当事者主義を制限すると言うとおかしいですが、チェックするというか、そういうふうなものとして理解をしてよろしいのでしょうか。
#155
○中島政府委員 たとえば送達ということになりますと、これは原則として職権で行うということになっておりますので、当事者主義というものを狭く理解する考え方によれば、今回の改正、特に送達の問題は当事者主義の根本に触れる問題ではないということになるわけでありますが、当事者の利益なり立場なりというものに少しでも影響があれば、それは当事者主義に対する影響があるという考え方をとるといたしますならば、送達ということになれば、それは当事者としてはそれによって重要な書類を受け取り、期日の通知を受けるという手続でありますから、全く関係はなくはないというふうに考えておるわけでございます。
#156
○稲葉委員 それは第一回の口頭弁論が始まってからが当事者主義の構造問題に入ってくるので、その前の段階は職権主義であるし、同時に職権調査事項というものがその段階では非常に多いわけですから、おっしゃることが何かちょっと私にはよくわからぬというか、送達そのものは余り関係ないのじゃないかというふうに思うのです。
 それから、弁論主義の問題です。まず、弁論主義というのは、一体どういうことを弁論主義というのか。大変失礼な話ですが、民事訴訟法のテキストか何か読んでいるようで、司法試験の口述試験みたいで恐縮ですけれども、まず、弁論主義というのはどういうことかということです。
 私がなぜそういうことを言うかというと、直接主義との関連があるかもわかりませんけれども、現在の民事訴訟法で弁論主義というのはちっとも行われてないじゃないか。たとえば、あれは直接主義のことを言っているのですかね、兼子一さんが最初「民事訴訟法概論」を書かれましたよね。あのころあの人の講義などを聞いていたときによく出てくるのは、弁論主義と言うから裁判の中では弁論をやるのだとばかり思っていた、ところが何もやらないじゃないか、ただ書面を出して、書面のとおりです、片方も書面のとおりですと言うだけで証人調べは別としていっているじゃないか、これでは本当の生きた弁論主義というのか口頭主義というのか直接主義というのか、その三つのことがどう違うのか、私よくわかりませんけれども、そういう点が現在の裁判制度の中に生かされていないじゃないかということを兼子一さんは盛んに言っておられたのですね。あの人が後で弁護士になられてから変わったかどうか知りませんけれども、そういう話をよく聞いたのですが、この弁論主義との関係でも日弁連の意見書の中では触れていますね。それは今度の民訴の改正の中ではどういう点が関連してくるわけですか。
#157
○中島政府委員 弁論主義についてもいろいろな理解があろうかと思いますけれども、一般的に言われておりますのは民訴の百八十六条、「裁判所ハ当事者ノ申立テサル事項ニ付判決ヲ為スコトヲ得ス」、これが弁論主義を決めたものであるというふうに言われておりまして、当事者が五十万円の支払いしか求めていないのに、百万円貸しているのだからといって百万円の請求を認めてはならないという、量的な問題あるいは質的な問題ということになります。それをもう少し広く理解する考え方は、百九十一条などにもその精神があらわれてくるわけでありますけれども、当事者が主張しない事実を前提にして当事者に権利を与えてはならないということで、少なくとも主要事実については当事者の主張、弁論が要るのだということの理解でありまして、そういうことから申しますと、今回の改正は、弁論主義についてそれを特に変更するとか制限するとか制約するとかというような事項は含まれておらないという理解でございます。
#158
○稲葉委員 しかし、いまの中で最初の段階、十一項目あった段階では、その弁論主義の「基本構造に関連し、これを変革するおそれがある重要な問題を含んでいる。」というふうに言っているのですから、十一項目の中にはあるいは入っていたのかもわからないですね。そういうふうに言っておるわけですから、それでは、それは具体的にどことどこがどういうふうになったのだろうかということを私は聞いておるわけですけれども、率直に言うと、私もこの十一項目を見てみた中で、この言っていることのどれが一体どこに関連しているのかよくわからぬものですから、それで教えていただきたいと思うわけです。
#159
○中島政府委員 十一項目のうちには、「準備手続終結による失権効の強化」ということで、民訴の二百五十五条を見直してはどうかというような項目もあったわけでありまして、考えてみれば、そういう点があるいは弁論主義の根本に若干影響を与えるというような項目であろうというふうに考えておりますが、そういった点につきましてはもっと時間をかけていろいろと審議をして結論を出すべきであるという御意見もありまして、今回はそういう問題は見送ったということでございます。
#160
○稲葉委員 これは裁判所の方かもわかりませんけれども、いまでも複雑な事件について争点の整理の場合は、準備手続をやっている場合もありますね。余りやらないようですけれども、事件によってはやっておる。そうすると、今度の法律ではそういう準備手続に関連するものは全部省いた、こういうふうに理解してよろしいですか。
#161
○中島政府委員 そのとおりでございます。
#162
○稲葉委員 そこで私は、今度は処分権主義という言葉がまた出てくるのですね、これまたよくわからぬ、率直に言うと。「処分権主義などの基本構造に関連し、これを変革するおそれがある重要な問題を含んでいる。」こう書いてあるのですが、さあ、処分権主義というのは、一体何をどういうふうに言うのでしょうか。
#163
○中島政府委員 処分権主義というのもいろいろな意味に使われておるようでありますけれども、一般的には訴訟物そのものを当事者が処分することができる。範囲を決めることも当事者の自由であり、あるいはそれを放棄することも当事者の自由であるということを言っておるというふうに理解しております。
 なお、今回の改正につきましては、そういった主義について関係を持つであろうというような事項は、何も含まれておりません。
#164
○稲葉委員 そこで、本当だとこういうことを聞くわけですね。当事者主義と弁論主義と処分権主義とは相互にどういう関係があるのかというふうなことを聞くわけですけれども、そこまで聞いては失礼ですから、聞くのを御遠慮しましょう。
 そこで、送達についての問題になるわけですが、この送達で、今度のようないろいろな送達の方法を考えるまでにおいて、ほかにどのような方法をいろいろ考えて、その考えた結果として今度の法律のような就業場所への送達ということを考えるようになったのですか。その前の段階ですね。こういうことも考え、こういうことも考えたけれども、結局これ以外になかったということなんだろう、こう思うわけです。そうなれば、その前に考えたことは一体どういうことであって、それはどうしてできなかったのか、そこら辺、よく御説明を願わないと、なかなかこの法案についての理解が十分にできなくなるものですから、お伺いするわけです。
#165
○中島政府委員 住居所がありながらそこに不在であるために送達できない場合の手当てといたしましては、いろいろな方法が考えられるわけでありまして、まず考えましたのは、普通郵便をもっと活用する方法はないかということでありますが、これは送達という厳格な手続とも相入れませんし、公証と申しましょうか、その到達を証明する手段というものに欠けることがありますので、これは採用できないということになりました。
 それから次は、郵便法規を改正して、書留郵便が本人の在宅している時間に届くようにする方法はないかということを考えたわけであります。あるいは日時指定の配達の方法でありますとか、あるいは一度不在であっても二度、三度と送達を試みてもらうというような方法はできないだろうかということを考えましたけれども、これは郵政当局の方の同意が得られませんで、実現に近づくということができなかったわけであります。
 それから、諸外国の制度をいろいろとそれなりに調べてみましたけれども、あるいは近隣の者に渡して、来訪告知書というものを本人の郵便ポストにほうり込んでおくというような方法でありますとか、あるいは文書の写しなりあるいは来訪告知書というものを扉に張りつけておくというような方法なども諸外国の例にあるようでありますので検討いたしましたけれども、どうもわが国の実情には合わないのではないかということになりまして、結局この就業場所の送達ということで法制審議会で御審議願ったわけでございます。
#166
○稲葉委員 いまの二番目の問題、郵便の配達の問題は郵便法を改正しなくても、実際の運用でできるのではないですか。郵便法を改正しなくて運用でできる面と、それから郵便法を改正しなくてはできないものと二つに分けて、郵政省を呼んでなかったから、あなたの方で十分そこまではあれならば別ですけれども、これは裁判所の方がいいかな、どちらがいいですか。
#167
○中島政府委員 郵便法規と申しましたのは、郵便規則の改正を主として考えておったわけでございますけれども、その点については郵政当局におきまして、人員の手当てその他によって現状以上に負担過重となるような送達方法については同意が得られなかったわけでございます。
#168
○稲葉委員 私もいま郵便法というふうに聞いたものですから、あるいは法規と言われたのか、ちょっとわかりませんが、郵便法を改正するというのはおかしな話で、そんなところまで郵便法に規定しているわけじゃありませんから、それで私はいまお聞きしたわけです。
 そこで、実際問題としていろいろな方法があると私は思うのです。日曜に書留を配達できるように指定してやれば実際はできるんだ、こう思うのですが、ただ、それは従業員との関係があってなかなか日曜は、いま速達は配達しておるはずですけれども、元来日曜配達は禁止したいという動きがずっと前からあって、実際普通は禁止しているわけですから、やらないわけですから、なかなかむずかしいところがあると思うのです。
 そこで問題は、就業場所についての送達の前提として、住居の問題がありますね。住所、居所、この問題があるわけですね。住所というのは生活の本拠だ、こういうふうに本に書いてあり、私ども習ったわけですが、そこで、いま法務省当局としては、住所についてはどういう考え方ですか。主観説、客観説がありますね。それから住所については二つ以上持てるとか、いろいろな説がありますが、どちらの説をとっておられるわけですか。
#169
○中島政府委員 住所につきましては民法の二十一条に規定がございまして、「各人ノ生活ノ本拠ヲ以テ其住所トス」ということになっております。これにつきましては、ただいま御質問にもありましたように、確かに主観説あるいは客観説と申しましょうか、当事者の主観に重きを置くのか、あるいは客観的な事実関係に重きを置くのかというようなこともあるわけでありますけれども、やはりその主観、客観相まって生活の本拠たるの実態を備えておる場所をもって住所というふうに考えておるわけでございます。
#170
○稲葉委員 これはいろいろ立法例もあるわけですね、国によって違うわけですが。だから、いまは生活の本拠というのは一つというふうに考えるのですか、二つあってもいいというふうに考えておるわけですか。複数説をとるわけですか。あなた方としてはどちらをとられるわけですか。いまはみんな普通は複数説をとっているのじゃないですか。
#171
○中島政府委員 住所は複数あり得るというふうに考えております。
#172
○稲葉委員 そうすると、それはどうやって送達の場合は調べるのでしょうか。本人が、申し立て人が全部調べなければいかぬわけですか。よくありますね。登記簿上はここにあるんだけれども、現住所、現に住んでいるところはここだとか、そういう書き方をしている場合もあるし、それから住所を二つ並べて書いて訴状に出す場合もなきにしもあらず、こういうことだと思うのですがね。
 そこで、本法の中で問題となっているのは、届かないというのでしょう。届かなかった場合、特に昼間不在者が非常にふえてきて、届かなかった場合の法律としてこの法律をつくっていこう、こういうことになっているわけですね。そして、ただその法律自身には、送達の場合に具体的にあれですか、ちょっと私、よく条文を見てもはっきりしないというか、不勉強なところがありますが、一たん送達をして――住所ですね、居所というのは仮の住所と見ていいんでしょうかな、ちょっとどうなのかわかりませんが、そういうようなところへ一たんやって、だめなときに初めて就業場所にやるということになっておるのですか。その点は、条文上はどこにどういうふうに書いてあるのですか。
#173
○中島政府委員 百六十九条の二項に、「前項二定ムル場所が知レザルトキ又ハ」それ以下でありますけれども、「其ノ場所ニ於テ送達ヲ為スニ付支障アルトキハ」とあります「支障アルトキ」というのは、通常の場合、一応住居所において送達を試みてみたところが受送達者が不在で送達ができなかった、送達に支障があったということでありまして、「支障アルトキ」ということの解釈から、当然一度は住居所における送達を試みるべきであるということは出てまいりませんけれども、多くの場合にはそういうことになるのではないか。そして、裁判所といたしましては、実際の取り扱いとして、まず一度は住居所における送達を試みるように指導する、こういうふうにおっしゃっておるところでございます。
#174
○稲葉委員 いまのその「送達ヲ為スニ付支障アルトキハ」と、特にこの文章を書いた意味はどういう意味なんですか。「送達をなすことあたわざるときは」という書き方ではないですね。特にこれを「為スニ付支障アルトキハ」と書いた意味は、こっちの方の意味はどうも広いようにとれますけれども、どういう意味でこれは書かれたのですか。
#175
○中島政府委員 住居所等における送達ということになりますと、昼間の送達が不能であったという場合には、次に夜間送達あるいは休日送達ということが考えられるわけでありまして、夜間送達あるいは休日送達ということになりますと、現状では原則として執行官による送達ということにならざるを得ないわけであります。そうなりますと、執行官による夜間送達なり休日送達なりを必ず試みてみなければ、住居所における送達が不能であったということは言えないわけでありますので、そこまで強く言うわけではなくて、その送達に支障があるかどうかということによって就業場所における送達が可能になる、許されるというような意味で「支障アルトキ」という表現を使ったわけでございます。
#176
○稲葉委員 そうすると、逆に考えていました。「支障アルトキ」の方が狭い理解の仕方なんだな。だから、いまのいわゆる夜間送達なり休日送達をやらなくても、一遍やってだめならばすぐに就業場所の方にやれるのだと。「送達をなすことあたわざるとき」となるというと、夜間送達なり休日送達なりをやらなければいけないんだ、こういうふうに理解できるのですか。どうかな、そこのところは。
#177
○中島政府委員 「あたわざるとき」という方が「支障アルトキ」よりも厳格と申しましょうか、強い言葉でありますから、要件は厳しくなるというふうに考えます。
#178
○稲葉委員 そうすると、いまの夜間送達なり休日送達、これは具体的には、いまの場合はやろうと思えば執行官送達でやるということになりますね。現実におることがわかっているのですね。たとえばスナックをやっている人なんかよくあるわけです一スナックなんかくるくるかわっちゃって、やらなければなりませんね。そうすると、仮処分の場合には当然これは執行官が行くことになるのですか。あるいは単なる単純な債務の履行、それを求めるだけならば執行官が行かない場合もあるわけですね。債務の履行というのかあるいは不作為のあれだというのか、ちょっとこのごろやらないのであれですが、そういう場合には執行官が行かなくて、書面だけでいく場合も仮処分なんかではありますね。そういう場合はどうするのですか、その仮処分の場合は。
#179
○中島政府委員 いまおっしゃいましたのは、仮処分の決定正本を送達する場合だろうと思いますけれども、送達だけでありますれば、執行官が行ってもよし、あるいは郵便送達もできるわけでありまして、同時に、現実の執行を伴う場合には、同時送達ということで執行官が送達することになろうかと思います。
#180
○稲葉委員 そうすると、執行官が持っていく場合は、仮処分なんかの場合はもちろん執行官が現場に行くわけですね。そのときは同時に執行して、同時にそれを渡せばいいわけですが、夜間の場合は、特別な夜間送達の申請をしなければいけませんね。夜間または早朝かな。それの特別な送達申請をして、あれは裁判官の許可を得るのでしたか、ちょっと忘れましたが、何かそんなようなあれがあったと思いますが、いずれにしても、そういう制度があるというならば、特別送達の場合でも、執行官送達で夜間送達なり休日送達というものを活用すれば、就業場所までやらなくても済むということになるのではないでしょうか。
#181
○中島政府委員 執行官による夜間送達あるいは休日送達が容易に期待できるというような場合でありますれば、それは住居所等における「送達ヲ為スニ付支障アルトキ」には当たらないわけでありまして、したがって、就業場所における送達が許されない場合に当たるというふうに理解しております。
#182
○稲葉委員 執行官が夜間送達なり休日送達を容易になせるというのは、まず、いままでは執行官送達の場合の範囲が決まっておったんじゃないですか。ある本庁所在地からどの程度ということが決まっておったのが、その後なくなったかと思いますが、それならば、これをどんどん活用すれば就業場所への送達をしなくても済むのではないですか。これはどうやって活用したらいいのですか。そうすると、執行官の人数の問題とか、ほかの事件もみんなやるわけですから、そういうような関係、いろんなものがありますから、そう簡単にはいかないと思うのですけれども、容易にこれができる時というのは、たとえば本庁所在地のような場合はわりあいにやりいいのですね。執行官として嫌がるかもわからぬけれども、やりいいと思うのですが、そこはいまどういうふうになって、現実には執行官送達というのは、夜間送達なり休日送達は、どの程度これは行われているのですか。
#183
○川嵜最高裁判所長官代理者 五十六年度の数字で申し上げますが、執行官による送達は、民事、刑事を合わせまして十万一千件余でございます。その中で夜間、休日送達を実施いたしましたものが、三万件余でございます。
#184
○稲葉委員 夜間送達という場合には、距離によって違うけれども、普通の送達とは費用なんかはどういうふうになるのですか。
#185
○川嵜最高裁判所長官代理者 普通の昼間の送達でありますと、送達手数料一件につき七百円、これに旅費が一キロ二十三円以下の割合でつくわけであります。これが夜間、休日になりますと、夜間、休日の割り増しが千五百円プラスされます。でありますから、七百円プラス千五百円プラス旅費ということになりまして、五キロぐらいの程度でありますと、二千三百円ぐらいの金額になるということでございます。
#186
○稲葉委員 私、前にちょっと申し上げましたが、前は執行官送達の範囲が決まっておって、遠くになると行かなかったように私は記憶しているのですが、いまは全部どこでも行くようになったのですか。ところが、実際には本庁所在地におる執行官は、支部にはいないところもずいぶんありますね。執行官の分布状況というのは一体どういうふうになっているわけですか。どこかの例を挙げて説明願えれば。どういうふうになっていますか。
#187
○川嵜最高裁判所長官代理者 執行官は、現在所属の裁判所の管轄区域内を職務執行区域としておりますので、その区域内であれば送達も特に制限があるというわけではございません。
 現在、分布状況というのはちょっと申し上げかねるのでありますが、五十六年末現在、執行官は全国で三百六十三人おります。東京が二十人くらいでありますから、支部等に参りますと、御承知のとおり執行官手数料制でございますので、事件数が少なくて手数料収入が上がらないというようなところになりますと、二つの支部をかけ持ちにする、兼務の発令をするあるいは填補させるというようなことで、常駐していない支部もかなりあることは御指摘のとおりでございます。
#188
○稲葉委員 いま人数を聞きまして、私はもっと多いかと思ったわけなんですが、非常に少ないので驚いたわけですが、なかなか希望者がいないというようなこと、いろいろあるようですが、いまおっしゃったのを聞くと、支部には常駐していないところもあるようですと言うけれども、ほとんどいないところが多いのですね。それから、甲号支部を二つ持っている人もいるし、それから乙号支部にはほとんどいないところが多いですね。乙号支部にもいるところがあるかもわかりませんが、ほとんどいない。
 そうすると、乙号支部でたとえば仮処分をやる。そこで供託のところがあって供託はする。決定はおりる。それでその執行を委任するときには、そこに執行官がいないのですね。どこにそれを頼むのですか。
#189
○川嵜最高裁判所長官代理者 当該乙号支部の執行官に申し立てをするということになるわけでありますが、そこに常駐しておりませんと、常駐しておる執行官のかわりに書記官が申し立てを受け付ける。その限りでは執行官の職務を代行することになりますが、受付をやりまして、それで執行官に連絡をするということになるわけであります。
#190
○稲葉委員 そのとおりなんです。非常に不便なんですよ。だから、支部で仮処分なんかあったときに、では執行を頼むというときに、申請はその支部へ持っていくのです。いまおっしゃったとおり、書記官が受け付けて、受付簿があるわけでしょう、受け付けて、それを今度は本庁へ連絡するわけですよ。それでこちらの方では、いつ行ってもらうかなんということは本庁の方に連絡するわけですから、それで行く日を決めて一緒に行くとかなんとかいう形で実際やっているわけですから、それならば、初めから本庁で執行官の役場で受け付ければいいわけです。
 支部の仮処分の事件についても、支部に常駐していなくても、本庁にいる執行官役場から行くのですから、それを一たん支部の方に書記官がかわって受け付ける手続などしないで、本庁の方で受け付けるようにしていただければ非常に便利で早くいくのですが、非常に日数がかかっちゃうのですよ。おくれるのですよ。これは直せないのですかね。どうなんですか。こういうことを考えたことないですか。
#191
○川嵜最高裁判所長官代理者 仮処分の執行のような緊急を要する事件の処理につきましては、連絡があればできる限り早く処理するように指導しているはずでありますが、あるいはそういう御迷惑をかけるケースがあるのかもしれません。ないとは断言できませんけれども、そういう緊急を要する執行の申し立てを受けたときは、できる限り早急に填補、出張して処理するというふうに指導をしておるわけでございます。
#192
○稲葉委員 御迷惑をかけるかけないの問題ではなくて、受付を本庁でやってどうしていけないのでしょうか、こういうことなんですよ。言う意味わかるでしょう。いまの場合には一たん支部の方に持っていかなければならないわけですよ、執行委任を。持っていくわけでしょう。そして書記官が受け付けるでしょう。そして予納金なんかするわけですけれども、受け付けて、その受け付けたことを今度は本庁の執行官の方に連絡するわけでしょう。そういう手続を経て、そして今度は、こっちの方が本庁の方へ頼みに行ってあれするわけなんですけれども、それより初めから本庁の方に書類を、執行委任を出すようにしたらいいじゃないですかと言うのですよ。それをどうしてできないのでしょうか。こういうことです。何かできない理論的な根拠とか、特別な不便があるわけですか。
#193
○川嵜最高裁判所長官代理者 結局、手数をとるかどうかということは、支部へ申し立てをして支部の書記官が本庁の執行官に、申し立てがあった、緊急を要する事件だ、こういう連絡をいたすだけでございまして、本庁へ申し立てた方が早い、支部へ申し立てれば遅いということにはならないのではないかというふうに思っております。
#194
○稲葉委員 本庁にいる人が一たん支部へ行って執行委任しなければならないんじゃないですか。だから一日、二日どうしてもおくれちゃうんじゃないですか、そこのところは。支部にいる人はいいかもわからぬけれども、本庁にいる人がその場合に一々向こうへ持っていくのですよ、支部へ。郵便で送ったんじゃおくれますから、持っていかなければならないのですよ。持っていってすぐその日にやれるわけじゃありませんから、また持って帰って待っていて、それから本庁の執行官室へ行って連絡をして、日を決めて行くという形になるのですから、初めから本庁の方で受け付けるようになれば、その間手数は省けて早くなるんじゃないですか。こういうことなんですが、これはよく研究しておいてください。いまここであれしてもあれですから。
 だから、執行官が非常にいないのですよ。ことに乙号支部はほとんどいないんじゃないですか。執行官の管轄は裁判所の方ですから、どこに執行官がいるか、配置状況を、きょうでなくていいですから、後で調べて何か書類にして出していただきたいのですね。
 それから、執行官が病気で休んじゃうというか何というか、倒れちゃう人が相当ありますね。これはやはり心労というのかな、神経を使うのでしょうね。心身症になる、のかな、非常に疲れちゃって、病気で倒れちゃう人が相当あるのですよ。そこでなかなか後が補充がつかない、こういうふうになっていますね。そこら辺のところもよく調べていただきたいのです。
 きょうは民事執行法の問題ではありませんから、そこでいまお聞きしたように、執行官の送達を活用すればいいというふうに、私はいま法務省の民事局長からは聞いたわけです。活用すればいいとは言わぬけれども、そういう方法もずいぶんとられているという話を聞いたわけですが、そうすると、普通の訴状を送達して、被告なら被告が受け取るのと比べて、執行官送達の方は、最初から執行官送達をやるわけじゃないでしょう。一たん行って帰って、戻ってきて、そしてそれから執行官送達を頼むということですね。大体執行官は頼んでからどのくらいで行くのですか。その執行官送達の場合に、この訴状や何かの送達の場合に普通は平均どのくらいたった日にちで行くのですか。
#195
○川嵜最高裁判所長官代理者 ただいまの点、全国的に調査したわけではございませんので、十分のお答えになるかどうかわかりませんが、東京の執行官室でありますと、東京地裁の場合は非常に大規模でありますので、執行官送達を頼むケースが各部から出てまいりまして、かなりの数に上るはずであります。これを毎日執行官と書記官室とが受け渡しをやります。それを受けたならば、執行官は東京の場合二十三区を地域で分担しておりますから、その送達を担当する執行官がその担当する区域の分を引き受けまして、一両日中にはやるということになっているはずであります。ただ、執行官に実情を聞いてみますと、夜間送達の場合は、いきなり夜間にあて所のところへ出かけていっても簡単にその住所が見つかるものではない、場合によっては事前、昼間に下検分しなければ届けられないんだというような実情もあるようであります。そういうような時間的ロスも考えていま申し上げたわけでありますが、そのような実情になっておるというふうに思っております。
#196
○稲葉委員 執行官が事件を起こしているという意味じゃございませんけれども、競売に関連して謝礼をもらったとかもらわないとか、あるいは暴力団が競売だとかということでいろいろな問題を起こしていますね。よく起こすのでもないけれども、横浜が典型的と言うとおかしいけれども、横浜が多いですね。多いですねと言っちゃ悪いけれども、横浜ばかりじゃないですけれども。私も一遍行ってみようと思っているのですよ。前もって通知するとだめだから、いろいろな準備をしちゃうからだめだから、裁判所の方も準備しちゃうからだめだから、黙って知らぬ顔して行ってみようと思っているんだ。これは、横浜は金曜日の十時ですか。たしかそうだと思ったな。だから、よく執行官の現状というものを――これは最高裁が監督しているわけでしょう。だから、その実情というものをもう少しよく把握しておいてもらわないといかぬと私は思うのですよ。
 執行官役場で、たとえば女子職員なんか大分おりますね。そういう人たちの給料なんかは一体だれがどうやって払うのですか。あそこにいるのは裁判所の職員ですか。どうもよくわからないのですけれどもね。執行官役場で頼んでいる人なんですか。普通そういう女子職員なんかは、給与や何かはどういうふうにして払っているのですか。
#197
○川嵜最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、執行官の数は全国で三百六十三人、事務員の数が大体同数程度でございます。その事務員というのは、執行官が裁判所の許可を得て雇うということになっております。したがいまして、事務員は公務員ではないわけでありまして、執行官が、これは千差万別であろうと思いますけれども、大きいところになりますと公務員に準じた扱いをとっていると思いますけれども、給与を支払うということになっております。
#198
○稲葉委員 私、きょうは執行官の送達の問題だけを聞いているわけです。執行官送達の問題にも関連するわけですが、執行官の実情というものを私もよく知らぬ。いま三百何十人という数字を聞いて、私はもっと多いように思っておったのですが、私もよく知らないのですが、もう少し実情というものをしっかり把握しておいていただきたいと思うのですよ。これは執行官が事件を起こすという意味じゃなくて、競売に関連していろいろな事件があちこちで、裁判所でも起きているわけですからね。そこら辺のところは十分今後注意をお願いしていきたい、こういうふうに考えておるわけです。
 それから、いま執行官にどういう人が一番なっているのか。裁判所の書記官をやっていた人が一番多いとは思いますが、必ずしもそうでもないようなんです。きょうのあれじゃありませんから、それはいいのです。
 だから、私がいま言ったように、執行官の送達が、いまの休日送達なり夜間送達という形で補えれば、それを最大限やっていただければ、就業場所への送達は相当避けることができるのじゃないかというふうに考えておるから、そういう点についてお聞きをしたわけなんですね。
 そこで、時間もあれですから、これは参議院が先議の法案ですから、そこで附帯決議があったわけです。衆議院でも同じような附帯決議をしたいというふうに考えているわけです。ただ、このどこどこはというのは、私はちょっとぐあいが悪いと思うのですが、頭書きを省いておるのですが、こういうふうになりますね。「就業場所への送達については、あらかじめ住居所等への送達を試みた上で行う等その運用に慎重を期し、当事者のプライバシー保護に欠けることのないこと。」こういうことを本法の施行に当たっては配慮されたい、こういうことなんです。
 このことに関連して、どうやって当事者のプライバシーを保護するか、欠けることのないようにしなければいけないというのですが、どうやったら当事者のプライバシーを保護できるか、こういうことについて具体的にはどういうふうにお考えなんでしょうか。
#199
○川嵜最高裁判所長官代理者 プライバシー保護の点につきましては、新しく設けられます百六十九条第二項の就業場所への送達、ここに要件が定めてあります。問題は、その中の「支障アルトキ」ということの解釈、運用にかかってこようかと思います。この解釈を厳格にいたします。ということは、住居所への送達を試みて、それが成功しなかった。一回はその住居所への送達を試みるのだ、それでできなかった場合に初めてやる、こういうことでありまして、この要件だけを考えますと、純枠に理論的に考えますと、必ずしも一回やる必要はないじゃないか。事前に明らかに昼間いないことがはっきりしておる証拠がそろっておるという場合にまで一遍住居所への送達をやらねばいかぬかということになりますと、この解釈からはそうはならないだろうと思われます。しかし、そういう場合はめったにあることではありませんし、それがはっきり証明できる場合ということになると、ますますそういう場合はないのではないかということで、この制度ができました場合、私どもといたしましては、とにかく一度は住居所へ送達を試みるという運用をする。
 それから、住居所ではなくて就業場所への送達でございますから、就業先での同僚に受け取られて中身が漏れるといいますか、中身が見られるというような心配もないわけではないので、そういうことがないように、送達文書の封は厳重にするというようなことも十分に考えていきたいというふうに考えております。
#200
○稲葉委員 前の方のはわかったのですが、後段の方は、それだけではプライバシーの保護にはならないわけだし、では、現実問題としてどうやったらいいのですか。ただ厳重に封をするだけで、そんなことでこの問題は解決できるわけじゃないですね。就業場所へ行ったときに、受付の人に渡すわけですか。受付の人に渡すわけでしょう。そしてその人が受け取って、あとは本人にどういうふうにするのですか。本人にどうするのですか。就業場所へ送達のときに、具体的には本人に行くまでのプロセスというのはどういうふうに理解されているのですか。
 何か聞くところによると、本人が受け取ったか受け取らないかわからないから、後からもう一遍本人あてにはがきを出すんだというようなことを言っている人もいるんだけれども、そこら辺、全体を含めて具体的にどういうふうにするのですか。
 いまのお話を聞くと、だれかが受付で受け取った人があけちゃいけないように厳重に封をするといったって、厳重に封といったって、あけようと思えばあけられるので、はさみがあるんだもの、それは無理だけれども、それはどうするのかと言われてみても、実現不可能の点は確かにありますよね。あとは人間の善意に信頼する以外にないところもたくさんあるのだけれども、具体的にどういうふうにするのですか。後からはがきを出すというような点も含めて、どういうふうにするのですか。
#201
○中島政府委員 就業場所に持ってまいりまして、就業場所におきましても本人に交付をして送達をするというのが原則であります。しかし、本人が就業場所においても不在であった、出かけておったというような場合に、持ち帰るのか、それとも補充送達が許されるのかという点につきましては、この改正法案におきましては補充送達は許されるという解決を図っております。
 百七十一条の二項でございますけれども、就業場所において受送達者本人に出会わない場合において、その雇い主あるいは雇い主の事務員もしくは雇い人、と申しますから受送達者から見れば同僚であります、が書類の交付を受くることを拒まないときは、これらの者に書類を交付することができるということになっておりまして、一定の限られた範囲内において補充送達を認めております。したがいまして、本人に出会わない場合には、この要件のもとに補充送達が行われるわけであります。
 しかし、これでは住居所等における補充送達とは異なりまして、まだ文書は受送達者本人の支配下に入ったというふうには見れないということから、念のために百七十一条の四項という措置をとることになっております。四項というのは、裁判所が、就業場所において本人交付ではなくて補充送達が行われたという報告書が返ってまいりますと、その場合には書記官が、送達を受けた者本人に対しまして、適宜の方法によりまして、裁判所から書類を送った、そして本人が不在であったので就業場所において同僚の何某にその文書を手渡したということを別途通知することにしておるわけでありまして、これによって本人は、仮に先になされた送達によっての文書が本人に届かなかったといたしましても、この通知によって、裁判所から書類が来て、自分の同僚の何某にその文書が手渡されているということを知り得るような手当てをしてあるわけでございます。
#202
○稲葉委員 いまの話の中で雇い主という言葉が出たけれども、雇い主というのは法律用語なんですか。商法ではどういうふうに書いてあるの。
#203
○中島政府委員 民訴では、「送達ヲ受クベキ者が雇用、委任其ノ他ノ法律上ノ行為ニ基キ就業スル他人ノ住所、居所、営業所」ということで、「他人」という言葉を使っておりますけれども、他人というのが非常にわかりにくいかと思いまして、その他人とは何ぞやと言えば、それは雇い主、雇用主、あるいは委任であればその委任者ということになるわけでありますので、他人というのを雇い主という言葉で置きかえて御答弁したわけでございます。
#204
○稲葉委員 そうですね、どうも雇い主というから法律用語じゃないような気もしたのですが、法律用語である場合もあるのですかな。まあ、それはどちらでもいいですわ。
 そこで、もう一つの問題は、これはこの中にもありますのですが、「訴訟が裁判によらないで完結した場合における証人調書等の作成省略については、調書の速やかな作成を求める法の趣旨にかんがみ、その運用に遺憾なきを期し、当事者の訴訟上の利益を損なわないこと。」こういうふうに配慮されたいというふうに思っているわけですが、これは訴訟指揮の問題にも関連をすることなんで、余り立法府が関与すべきことではないと私は考えるわけですが、まあ、それはそれとして、これは現在は実際は、証人調べがあって、そしてその日にすぐ終わって和解ができてしまったという場合には、大体、当事者が同意した場合には和解調書をつくらない。当事者から意見を求めますわね、その場合にはつくらない。
 このことについては十分に裁判所の方としてもひとつ御配慮を願いたい。私は率直に言って、これは裁判上の訴訟指揮の問題ですから、内容に深くタッチするわけにいきませんし、何かの会同などのときには、立法の趣旨がこういう趣旨だった、こういうふうなことがあったということについて十分わかるように、周知徹底さしていただきたい、こういうふうに考えるわけです。
 いろいろその他お聞きしたいこともないわけではありませんけれども、これで民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案に関する私の質問を終わります。
#205
○羽田野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
 次回は、明十一日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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