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#1
第096回国会 本会議 第3号
昭和五十七年一月二十七日(水曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和五十七年一月二十七日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時三分開議
#2
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(福田一君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。飛鳥田一雄君。
    〔飛鳥田一雄君登壇〕
#4
○飛鳥田一雄君 私は、日本社会党を代表して、鈴木総理の施政方針に関し、国民の切実な関心が集中している若干の問題点について御質問をいたしたいと存じます。(拍手)
 まず、その第一は、今日の世界を覆う核戦争の危機に対処してわれわれは何をなすべきか、際限なき軍拡競争の流れを核軍縮、核廃絶の方向に切りかえるための日本の役割りは何かという問題であります。
 昨年以来、レーガン米大統領を初め、米政府、米軍の権威筋が、いわゆる限定核戦争の可能性を強調し、通常兵器による攻撃に対してすら核兵器で対抗する用意がありと再三言明したことがヨーロッパの諸国民に重大なる衝撃を与えました。すなわち、米ソ両国の本土には全く傷をつけず、核兵器を使いやすくしてヨーロッパ域内だけの限定核戦争を考えるという核超大国の身勝手な戦略プランを知ったとき、西欧のすべての主要都市で二十万、三十万あるいは五十万という空前の規模の反核闘争が展開せられたのであります。その情勢に押されて米ソ両国が核兵器削減交渉のテーブルに着かざるを得なくなった事情も、総理は十分に御承知のことと存じます。
 しかし、これは単に遠いヨーロッパだけの問題ではありません。すでに米政府の高官は、将来、戦域核兵器を日本、中国を含むアジア地域に配備すると言明しておりますし、明年十月以降、巡航ミサイル搭載の戦艦が極東に配備される予定となっております。総理は、こうした発言や報道をどのように受けとめておられるのでありましょうか。あなたは、どんなことがあっても日本と東アジアをヨーロッパのような戦域核の舞台にはしないとの断固たる決意をお持ちであるかどうか、まずこのことを伺っておかなければならないところであります。(拍手)
 ロンドンの国際戦略研究所が言うように、そもそも核戦争とは、何人にもコントロール不可能な戦争であり、それを地域的に限定できるなどと考えること自体が幻想にすぎません。限定から全面核戦争へのエスカレーションに歯どめはきかないのであります。
 昨年以来ヨーロッパに生じた事態の意義は、これまでのいわゆる核抑止論を破綻させ、核の傘のもとにあることが決して安全なのではなく、逆に核の傘のもとにこそ最も危険なものがあるという事実に、幾百万、幾千万の民衆が気づいて立ち上がったというところに特徴があります。(拍手)政府は、このヨーロッパ民衆の自覚をどのようにお考えですか。依然として核の傘は必要だ、核兵器がなければ安全は保たれないとの時代錯誤的見解をとっておられるのでありますか。これも伺っておきたいと考えます。
 総理は、施政方針演説の中で、核軍縮を中心とした軍縮の促進を訴えるため、みずから本年六月の国連軍縮総会に出席する意思を表明されましたが、私は、その趣旨に賛同をいたします前に、幾つかの点をお尋ねしておかなければなりません。
 日本の政府は、御承知のように、核軍縮の方向に沿っていままで国連総会が行った数多くの決議に対して、最近はほとんどの場合棄権または反対の態度をとっております。一例を申しますと、核兵器の不使用及び核戦争防止の決議に対しては、一九六一年には賛成しておきながら、その後は棄権に回り、そしてついに最近の二回は反対の態度をとっているのであります。昨年十二月の総会でも、百二十一カ国が賛成したのに反し、わが国政府はアメリカに追従して、たった十九カ国の反対両雄に加わったのであります。あまつさえ、同時に採択された中性子爆弾禁止の決議に反対票を投じておられます。一体これはどういう意味でしょうか。(拍手)国民は、このままではだれ一人として総理の核軍縮の促進などという言葉を信ずることはできません。明確なお答えをいただきたいと思います。(拍手)
 私は、わが国が非核三原則を堅持しつつ、さらにこれを発展させるため、日本を含む東アジア、さらにはアジア・太平洋地域における非核武装地帯の創設に努力することがきわめて緊急かつ重要な課題であると考えています。前国会においてもこれを主張いたしましたが、総理は、現実的な条件がまだ整っていないとして消極的な態度を示されたのでありました。だが総理、これはのんびりと条件が整うのを待てばいいという問題ではありません。わが国民とアジア諸国民の死活にかかわる火急の課題であります。条件が未成熟ならば、それを熟させるためにいまこそあらゆる努力を注ぐべきではありませんか。
 私はまた、この際、非核武装地帯設置の課題にあわせて、核を保有しない国に対しては、核による威嚇及び攻撃をしないという国際的保障を取りつけるために、総理がこの総会で全力を傾注して活動されることを提案いたします。(拍手)同時に、わが国の非核三原則堅持を前提として、ワシントンともモスクワとも直ちにそのための交渉を開始すべきであります。そのことは現実的に可能なはずであります。
 わが党もまた、この二つの緊急の課題の達成のために諸国民との民際外交、国民運動を通じて、最大限度の努力を惜しまず、断固として闘う決意でありますが、総理の御見解はいかがでありましようか。(拍手)
 すなわち、八〇年代の世界は、核兵器の途方もない発達のあげく、核保有国が勝利はおろか生き残る見込みもない袋小路に入り込み、自分自身ではそこから抜け出せなくなっているところにこの上もない危険な特徴があります。いまや核戦争の危機を救うには、核を持たない国の役割りが決定的に重要であります。
 わが国は、核超大国に依存し追従することをきっぱりとやめ、世界の非核の国々と団結して核廃絶の立場に徹し、人類の危機を打開しなければなりません。このことこそ、非武装平和の憲法を持つわが国と国民の世界史的な使命だと考えるのでありますが、総理はいかがお考えになりますか。(拍手)広島の経験は、今後生かされなければなりません。
 第二の問題は、総理は再三軍事大国にはならないと説明しておられるのでありますが、現実には歯どめなき軍拡路線を走り始めているのではないかという国民の不安の問題であります。
 本国会に提出された政府予算案は、防衛費の伸びが社会保障費の伸びの一挙に三倍以上、七・七五四%という異常な突出ぶりを示したところに大きな特徴があります。ゼロシーリングと言われながら、こうして防衛費の伸び率のみがエスカレートした理由は、一体何を意味するのでありましょう。しかも、一兆七千五百億円という後年度負担の膨張とあわせて、鈴木内閣の軍備増強に対する並み外れの執着ぶりは何のためだろうかと、国民は一様に疑惑と危惧の思いを寄せております。
 総理、わが国を取り巻く国際環境の中にあえて軍備の急増を必要とする特段の事態が生じたのでありますか。それとも、何か特別の外圧が存在するのでありましょうか。
 政府予算決定の直後、米国の国防総省が、日本の防衛費突出について高く評価すると、異例の特別声明を出し、国務長官からも感謝の書簡が寄せられていますが、このあたりの事情を総理は国民に向かってどのように説明せられるのでありましょう。一体、自衛隊はアメリカ軍の下請軍なのでしょうか。納得のいくようにお答えをいただきたいと思います。(拍手)
 また、このまま防衛費増額の傾向が続くならば、五年前の閣議決定以降政府が守ってきた対GNP比一%以内とする防衛費の枠が破られるのは、もう時間の問題であります。わが国は、かくて坂道を転げ落ちるように軍国主義の大道に転ずるのではないか。総理は、一%の枠をすら外そうとするのか、軍備増強の歯どめをどこに設けるのか、明確なお答えをいただきたいと思います。(拍手)
 さらに、私は、わが国の防衛関連の諸決定が、実質的にはまず日米制服組の間で行われ、次いで政府がこれを追認し、最後に国会の場に持ち出されるという仕組みが、いつの間にかつくられているということに非常なる懸念を感ぜざるを得ません。現に一例を挙げれば、きのう、きょうの新聞に暴露されております昭和四十一年六月締結の武器研究開発に関する覚書などは、まさに国民に何も知らせないまま、みごとに武器輸出禁止原則を破っているではありませんか。(拍手)そうでなくても、安保ただ乗り論とか安保税を取れといったひとりよがりの発言に対して、政府の態度は余りにも弱腰であります。わが国平和憲法の規定は、そういう外圧の直射をかわすためのアメリカへの弁解の道具となってはならないのであります。
 総理、どうぞ世界の軍事大国の実情をごらんください。総額三百数十兆円にも上る軍事費増強五カ年計画を決めたアメリカは、その陰に戦後最大の一千万人近い失業者とインフレ、財政赤字に悩んでおるのであります。他方、軍事的にそれと拮抗しているソ連の側も、経済成長の落ち込みの中で五カ年計画の下方修正を余儀なくされ、三年続きの農業不振に苦悩しているのが実情ではありませんか。
 こうしたときに、平和憲法のもとで軍備を抑制し、それによって労働力、資金、技術、資源等を効率的に活用し、高度な経済成長を遂げてきた戦後日本の歴史的経験は、過大な軍備負担にあえいでいる各国から見て、魅力に満ちた教訓を含んでいるはずであります。(拍手)すなわち、平和憲法のもと、日本の経験は、いまこそ軍備増強と安定した社会経済開発は両立し得ないとか、軍縮は経済成長の最大の要因だという国連軍縮専門家会議の報告を具体的に裏づけているはずであります。
 私は、わが国こそこの点に自信を持ち、胸を張って軍事大国の軍拡政策をたしなめ、世界の軍縮の先駆者たることを目指すべきだと考えるのでありますが、鈴木総理の決意はいかがでありましょう。承りたいと存じます。(拍手)
 ところが、いまの現実では、ソ連脅威論や極東有事への備えといった虚構を盾にずるずると軍事大国の道に流され、戦後日本の平和的発展の模範とされてきた憲法体制すら突き崩されようとしているのであります。
 私は、伝えられる極東有事研究は、朝鮮半島を主な対象に、わが国の港湾、空港その他の施設を米軍が使用し、物資調達等を含むかつての三矢作戦計画を公然化し、憲法違反の集団安保への道を開くものだと考えます。また他方では、現在日米共同作戦体制が着々と進み、那覇市の軍用地返還訴訟など、県民挙げての抗議にもかかわらず、沖縄を極東・中東戦略の拠点とする目的で大規模な日米合同演習さえ計画されている実情であります。
 こうした方向では、結局のととろ日本がアメリカの極東戦略に巻き込まれ、核戦争となるおそれを強め、総理の言ういわゆる専守防衛論とか日本列島ハリネズミ論などは、およそ無意味なものにならざるを得ないのではありませんか。御見解を伺っておきたいと存じます。と同時に、総理は、こうした基地沖縄の現実と将来をどうお考えになるのか、これもあわせて伺いたいと存じます。
 第三には、矛盾を深め、手詰まりに落ち込んでいるわが国最近の経済、財政状況の問題についてであります。
 すなわち政府は、来年度経済成長を名目八・四%、実質で五・二%と見通し、五・二%のうちの国内需要を四・一%、輸出を一・一%に切りかえると言われておりますが、いかなる具体的な政策手段で目標を達成されようとするのでしょうか。最近の統計では、内需はマイナスであります。本当におやりになれる自信がおありなのか、改めて伺います。
 御承知のように、今日の不況はすでに国民各階層の生活に大きな影響を及ぼしつつあります。昨年の春闘賃上げ率は七・七%でありましたが、零細企業に働く人々は五%、パートタイマーは四%のアップで、格差は広がっているのであります。しかも、勤労者全体の税金と社会保険料の負担は増加する一方であり、手取りの所得は低下の傾向を示しています。その上、勤労者には五年間も所得税の物価調整が行われず、その結果、来年度予算では二兆円を超える実質増税を強いられようとしておるのであります。このため、大衆の購買力は落ち込み、それにかかわる中小零細企業の経営も苦しく、昨年の夏場からは設備投資すら前年に比べてマイナスとなっています。もちろん住宅の建設も進んでおりません。
 住宅建設については、政府は今年度、百三十万戸の見通しを立てておられるのでありますが、地価の高騰を最大のマイナス要因として、国民の住宅取得能力は一昨年以来低下の傾向にあります。せっかくの政府の土地税制緩和策も、大企業を喜ばせるだけで、結局は地価の抑制に逆行する効果しか生みませんでした。
 民間設備投資についても、中小企業の投資意欲が問題となっております。
 こうした国内経済の低迷を打開し、対外経済摩擦を緩和していくには、私は、まず大幅な賃金アップと一兆円以上の減税によって個人の消費能力を高め、その面から内需を喚起する以外にはないと考えますが、総理の御見解を伺いたいと思います。(拍手)もちろん、この際、直接税を大衆的間接課税に切りかえるというような手品が許されるはずがないことも御承知のとおりであります。
 次に、財政問題でありますが、総理は、財政再建に政治生命をかけるとしばしば主張してこられました。ところが、赤字国債の削減についてすら、すでに今年度予算の補正で三千七百五十億円という追加発行に追い込まれ、政府の財政再建計画には大きな支障が生じてきたのであります。
 しかもなお、最近の税収動向を見ますと、今年度内には一兆円に及ぶ歳入欠陥が生ずると言われ、さらに来年度もし五・二%の実質成長が実現せられないようなことがあれば、歳入欠陥は一層ふくれ上がることが予想されます。もし総理が国民に公約した財政再建ということが実現できなかった場合、総理はいかなる責任をおとりになりますか。改めてお伺いをいたしておきたいと思います。(拍手)国民を苦しめるだけ苦しめておいて、後は知らぬ顔では通りません。当然、責任をおとりになるべきであります。
 また、臨時行政調査会の答申では、不公平税制の是正、特に租税特別措置の見直しが指摘されました。ところが、政府が来年度の税制改革案で整理合理化を図るものは、現在の企業向け租税特別措置のわずか三分の一にしかすぎません。また政府は、日本の所得税の累進率は国際的に高いと言い、金持ち重点の減税を考えているようでありますが、年収一億の高額所得者は、収入のほとんどが資産所得であり、分離課税や各種の減免措置で負担を軽くされているのが実態であります。なぜ勤労所得が主である中以下の所得層を中心に減税をしようとはお考えにならないのですか。お伺いをいたします。
 さらにまた、政府は、補助金の一律カットを唱えながら、建設省の公共事業関係は据え置きにして、厚生省関係のものを最大削減の対象といたしております。全国で千七百万人のお年寄りが首を長くして待っている年金の物価スライドアップを政府は一カ月おくらせましたが、その額は百八十億円、わずかP3Cの一機半分にしかすぎません。福祉切り捨てのあらわれでなくて何でありましょうか。(拍手)
 渡辺蔵相は、親を老人ホームに入れる親不孝者が多いから財政負担がふえていると語ったと言われております。鈴木内閣が福祉切り捨ての政治々やろうとしていることが、大蔵大臣のこの正直な発言で一層はっきりいたしました。
 総理、あなたは、いま全国で寝たきりの人が六十万人もおり、その介護に疲れ果てた家族が自殺するというような悲惨な事件がしばしば起きていることを御存じでしょうか。こういう庶民の苦しみを解決していくのが政治ではありませんか。(拍手)
 財政赤字をふくらませた元凶が、大企業や大金持ち優遇の不公平税制の温存であり、保守党の選挙基盤に注がれるむだな補助金のばらまきであることは、いまや明らかであります。(拍手)その上、軍事費を聖域として突き出したことがこれに拍車をかけました。不公平税制、むだな補助金ばらまきにメスを入れ、軍事費を削減し、その上に立って、福祉充実と一兆円所得減税を当面最大の政策課題とすべきであります。
 この点、政府は、国民の切実な要望にこたえ、潔く予算の修正を行うべきではありませんか。(拍手)ここに鈴木総理の姿勢をはっきりとお伺いしておきます。
 第四に、政治の腐敗、社会の荒廃について、総理の姿勢を問いたいと存じます。
 一昨日、総理は、政権を担当して以来、行政改革と財政再建を内閣の最重点課題にしてきたと言われました。しかし、鈴木内閣発足後間もない一昨年十月三日、政府が緊急に取り組むべき課題として掲げられたのは、第一が政治倫理の確立、第二が財政再建、第三が行政改革という三原則であったはずであります。この第一の政治倫理の確立が、最重点課題からいつの間にか消えてなくなってしまったのは、なぜでありますか。しかし、これはきわめて重大なことであります。
 今年は、ロッキード事件の判決が行われる年であり、現に、きのうも小佐野判決に続き、若狭有罪判決が言い渡されました。国民は、これら事件を機に、政治が金権腐敗、汚職体質と訣別し、政治倫理を確立し得るかいなかについて大きな関心を持っております。
 かつて、三木元総理は、真相究明だけでは事件の教訓は生かされない、自民党の体質を思い切って改革するとおっしゃり、続いて、福田元総理も、解党的出発を説き、事件の再発を防ぐ有効な歯どめを考える再発防止法を検討するとさえおっしゃっておったのであります。ところが、現に、一昨年の自民党の運動方針には、厳しい政治倫理の確立と、その徹底的実践という言葉が、たとえ言葉だけでもありました。だが、今度の自民党の運動方針には一切その言葉はなく、鈴木内閣も最重点課題からそれをすっぽり欠落させてしまっておられるのであります。
 いま国民は、ロッキード事件の刑事被告人に率いられた勢力が自民党内で力を伸ばしていることを苦々しく思っております。(拍手)鈴木総理が、その勢いに屈して、政治道義に背を向けた党内人事を行ったのではないかとの不信を国民は強めております。総理は、政権維持にきゅうきゅうとする余り、国民の政治に対する信頼回復の重大性を忘れていらっしゃるのではないか。なぜ総理は、政治倫理の確立を最重点の政治課題とせられないのか。そして、そのためにいかなる具体的な手段をおとりになるのか。これは国民に対して総理がじかにお答えをいただきたいのであります。(拍手)
 政治道義の退廃は、社会の荒廃につながります。最近の建設業界の談合問題、大学入試をめぐる不正、数々の汚職など、金権腐敗の横行はまさに目に余るものがあります。この腐敗の根が政官財の癒着の政治構造にあることはもはや明らかであり、汚職隠しを許さない、国民に開かれた政治の確立なしに金権政治の一掃はできないのであります。政官財の汚職、腐敗を見逃したまま、青少年非行の増加や教育の荒廃を解決することも困難であります。
 ところが、鈴木内閣は、逆に愛国心や国防教育を叫んだり、教科書に対する検定や官僚統制を強めたり、自由と民主主義に逆行する反動的、国家主義的施策を強めております。選挙の洗礼も国民の審査も受けない文部省の検定官がきわめて政治的に教科書の検閲行為を行うことは、教育の民主化と研究の自由に対する侵害ではありませんか。
 総理、金権腐敗を一掃し、民主政治の回復のために、政官財癒着の構造汚職の根を絶つ勇気がいまこそ日本国の総理大臣たるあなたに求められているのであります。一体あなたはその資格ありと自称せられますか。日本の民主政治を守るためには、自己の政権維持よりも国民の政治への信頼回復を最優先に考える姿勢を貫かれるお考えですか。ここに日本の将来を憂える国民の声を代表して、鈴木総理の誠意ある措置と信念をお聞きしたいのであります。(拍手)
 また、公正にして明るい政治を確立するためには、さまざまな差別と格差の解消にも意を尽くさなければなりません。
 さきに批准をいたしました国際人権規約に照らしても、差別の問題を放置することは断じて許されないのであります。そのためにも、部落差別、障害者差別、在日外国人差別、女性差別等を解消するための施策を確立する必要があります。特に、続発する悪質な差別事件にかんがみても、期限切れの迫る同和対策事業特別措置法強化改正並びに部落解放基本法を制定すべきだと私は考えます。
 以上、種々伺ってまいりましたが、最後に私は、八〇年代におけるわが国政治の基調をどこに置くべきかということについて触れたいと思います。
 最近の内外情勢に生じているさまざまな衝撃的な出来事、すなわち、戦域核の登場に伴う核戦争の脅威、ポーランドの事態、欧米の大量失業を含むスタグフレーションの深まり、経済摩擦、南北問題、資源エネルギー問題の深刻化、さらには産業界におけるエレクトロニクス、ロボット革命の進展など、それらはいずれも世界人類が史上一度も経験したことのない重大な歴史の曲がり角にあることを示唆するものであります。このときこそ、私たちはそれだけに何よりも平和の大切さ、自由と人権、民主主義のとうとさ、人間一人一人の自立と、そして連帯の意味を改めてかみしめなければならないのでありましょう。(拍手)このことを忘れてはならないのであります。すなわち、平和憲法のそれは理念であります。
 総理、あなたが日本の進路を誤るとき、わが国民にどんなに大きな災厄をもたらすかを為政者として真剣に考えるべきときであります。(拍手)
 かつて日本の軍部は、満州は日本の生命線と称して軍国主義化への道を暴走し、国民を敗戦の惨禍に導き入れました。いま韓国は日本の防波堤という同じ思想が台頭し、極東有事即応体制が進められようとしています。これらを前提とした経済協力は、安保絡みと言わざるを得ません。そこでは韓国の民主化、朝鮮の自主的平和統一の大義すら踏まえない国家支配者のエゴイズムが露骨にあらわれているのであります。平和の道筋、平和創出の憲法原理が見失われているのであります。この国家エゴイズムの姿勢そのままでは、南の国々との真の協調も、先進諸国との摩擦解消はもちろんのこと、八〇年代を軍拡から軍縮の道へと転ずる水路を開くことも不可能であります。
 また、国内においても、政治が温かくきめ細かな気配りを欠くところでは、自由と人権、人間尊重の民主主義は窒息させられるしかありません。
 政府の経済、財政運営の失敗から、いま不況が深まり、失業者がふえ、ロボットで無人化された工場の傍らに、生きがいもなく、疎外感に打ちひしがれている青年や中高年齢労働者の不安な生活実態が広がっております。
 総理は、一方で減反を強いられ、他方農業では食えないために家族と離れ離れの出稼ぎ生活を送っている農民の嘆きをどうお考えですか。農業を貿易摩擦の犠牲にし、農民の生産意欲を失わせては、食糧自給率の向上は望めません。
 こうした状況のことごとくは、わが国の保守政治が、政治の原点である日本国憲法の理念に背き、国民と時代の要請から遊離してきたことの帰結と言わなければなりません。ところが、総理が総裁を兼ねる自民党は、自主憲法制定を運動方針に掲げ、平和憲法の改定を企図しているのでありますが、総理は、一体、この時代錯誤もはなはだしいたくらみをきっぱりと拒絶する決意をお持ちでしょうか。(拍手)
 わが党は、もちろん改憲阻止、護憲の課題に向かって党の総力を挙げて断固として闘い抜くことを国民の皆さん方に、ここにお誓いをいたすものであります。(拍手)
 総理、いかがでしょうか。わが国の政治をその原点である平和、人権、民主という憲法の基本に立ち戻らせる決意を固めていただけないでしょうか。その御決意のほどをお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 飛鳥田社会党委員長にお答えいたします。
 まず、レーガン米大統領のいわゆる核兵器の限定的使用等についての発言でありますが、政府は、これは基本的には米国としていかなる攻撃に対してもこれに対応し得る有効な態勢をとることをその抑止力の基本としているという趣旨を述べたものと認識しております。
 また、戦域核の極東配備についてお話がございましたが、米国政府がそのような具体的計画を有しているということは承知しておりませんし、また、巡航ミサイルにつきましても、実際の配備はいまだ行われていないと承知しております。
 いずれにせよ、わが国との関係におきましては、従来から国会で御答弁申し上げておりますとおり、安保条約上いかなる核兵器のわが国への持ち込みも事前協議の対象であり、また、事前協議が行われた場合には、政府は常にこれを拒否する考えであることをはっきりと申し上げておきます。
 次に、いわゆる核の傘の問題についてお尋ねがございました。
 政府は、今後とも非核三原則を堅持するとともに、わが国はもとより、その他の地域においても核兵器の使用をもたらすこととなるような事態は断固回避していかなくてはならぬと考えております。他方、今日の国際社会において、力の均衡及びそれに基づく抑止が安定維持のための重要な要素となっていることも否定できない事実であります。欧州についてのお話がございましたが、欧州諸国としても、このような基本認識のもとに、核を中心とする力の均衡の維持に努めるとともに、可能な限り低いレベルでの均衡達成につき、最大の関心を寄せている次第であります。今日の国際情勢を考えますとき、わが国としても、核の脅威に対しては引き続き米国の核抑止力に依存していく必要があるということにつきましては、多くの国民が認めるところであると考えます。(拍手)
 次に、核に関する国連での決議案につき、わが方代表の投票態度についてお答えいたします。
 政府は、これまで国連における核軍縮関係の決議案に対しては、これが真に核軍縮を促進し、世界の平和と安全に資するか否かという観点から、是々非々の態度で臨んでおります。
 たとえば飛鳥田議員御指摘の、これまでの核不使用決議につきましては、右決議に言う核不使用条約なるものが真に実効性を有するか否か、また、それが安全保障上いかなる意味合いを持ち得るかを考慮しつつ、そのときどきの決議案の内容、提案国の意図、国際情勢との関連などを総合的に勘案して投票を行ってきた次第であります。
 また、中性子兵器の決議につきましては、現実の国際関係における軍事的均衡が、あらゆるタイプの核兵器を含む各種の兵器体系により維持されているという事実のもとでは、核兵器の中から特定の兵器のみを取り出し、禁止することは必ずしも適当ではありません。
 なお、政府は、これまでも具体的な核軍縮措置につきましては、たとえば核実験の全面禁止、丘器用核分裂性物質の生産停止などについて、みずから進んで共同提案国になり、決議案の成立を図るなど、核軍縮の促進に積極的に取り組んできておりますことをこの際申し上げておきたいと思います。
 アジア・太平洋地域における非核武装地帯の設置につきましては、これまでもたびたびお答え申し上げているとおり、遺憾ながらいまだそのための現実的条件は整っていないと考えます。ただし、私は、一般的な構想としてはそのような考え方を十分理解するものでありまして、今後とも適切な条件が一歩ずつでも醸成されるよう外交努力を行ってまいる所存であります。
 なお、御指摘のような非核兵器国に対する国際的な保障については、ジュネーブ軍縮委員会において検討が行われているところであり、わが国もその検討の促進に努力していく所存であります。
 次に、核廃絶のために努力せよとのお話がございましたが、私としても、核廃絶に向けて努力することが、平和憲法を有するわが国の大きな使命であると考えております。
 政府といたしましては、今後とも、国際的に核軍縮の促進を強く訴えるとともに、米ソ両国を初めとする核保有国に対して、自制と責任を求めてまいる所存であります。
 次に、防衛問題について、歯どめなき軍拡路線ではないかとの御意見がありましたが、わが国は、あくまで憲法の範囲内で必要最小限度の防衛力を整備するものであり、このため、政府は、専守防衛に徹し、近隣諸国に軍事的脅威を与えることなく、かつ非核三原則を堅持しつつ「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準にできるだけ早く到達させるよう努めているところであります。今後とも、みずからの国はまずみずからの手で守るとの決意のもとに、着実な防衛力の整備を行ってまいりたいと考えております。
 なお、政府は、当面各年度の防衛関係経費が当該年度のGNPの一%を超えないことをめどとするという昭和五十一年十一月の閣議決定を現在のところ変える考えはございません。
 なお、先日来報道されているいわゆる共同研究開発に関する覚書につきましては、これは昭和四十一年に日米防衛当局間で行った研究開発に関する覚書のことと思われますが、これは当局間の資料交換などを効率的に行うための担当者間の考え方を述べ合ったことの議事録的なものであると理解しております。したがって、飛鳥田議員の制服が先行し政府が追認するという御批判は当たらないと存じます。
 私は、飛鳥田委員長が御質問の中で、わが国が憲法のもとで軍備を抑制し、労働力、資金、技術、資源等を効率的に活用し、高度な経済成長を遂げてきた戦後日本の歴史的経験を率直に評価されたことに敬意を表するものであります。しかしながら、この平和と繁栄は、一部の人の非武装中立政策によってもたらされたものではなく、今国会の施政方針演説でも明らかにいたしましたように、日米安保条約を主軸に憲法と基本的防衛政策にのっとり、軍事大国にならず専守防衛に徹するとの方針のもと、必要最小限度の防衛力を自主的に整備してきたことが、戦後三十数年にわたりわが国が平和と安定と繁栄を享受してきた基盤であったという歴史的事実もまた同時に御評価をいただきたいと存じます。(拍手)
 わが国は、すでに申し述べたとおり、平和憲法のもとで非核三原則を堅持し、軍事大国とはならず、わが国の防衛のため必要最小限度の範囲内で防衛力の整備に努めるとともに、その持てる力を世界の平和と繁栄のために用いることをもって国の基本方針といたしております。政府は、かくのごとき立場に立って、これまでも国連などの場を通じ、現実の国際関係の中で実現可能な具体的軍縮措置を一歩一歩進めていくための国際的努力が必要であることを強く訴えてきております。
 その意味で、さきの施政方針演説でも述べましたように、来る第二回国連軍縮特別総会は、このような国際的協力を一層強化するための契機となるべきものであり、私自身これに出席して、平和国家としてのわが国の立場から、核軍縮を中心とした軍縮の促進を強く訴えたいと考えております。(拍手)
 いわゆる極東有事の研究についてお尋ねがございました。この研究作業は最近開始されましたが、いずれにいたしましても、この作業においては、わが国の憲法解釈上認められない集団的自衛権の行使を前提とするような研究を行うことは全く考えておりません。このことは、日米間においても合意されているところであります。また、この研究は、特定の地域の事態を想定しているものでもありません。
 いずれにいたしましても、この研究は、日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合に、わが国が米軍に対して行う便宜供与のあり方に関する研究をしようとするものであり、御指摘のような御心配は当たらないものであります。
 沖縄における米軍基地問題についてお尋ねがございました。
 沖縄県においては、米軍施設、区域の整理統合を求める声がかねてより強いことは私も十分承知しております。このため、政府としても、現在まで日米間で了承された米軍施設、区域の整理統合計画の実施に努めてきたところであります。
 政府としては、日米安保条約に基づく米軍の存在は、わが国の安全を含め、極東の平和と安全に寄与していると考えており、今後とも安保条約の目的達成との調整を図りつつ、県民の要望にこたえるよう努力を傾けてまいりたいと考えております。
 なお、飛鳥田議員御指摘のような沖縄における大規模な日米合同演習の計画があるとは承知しておりません。
 次に、経済運営についてのお尋ねにお答えいたします。
 昭和五十七年度におけるわが国経済は、第二次石油ショック直後の五十五年度、五十六年度に比べ好転することが期待されますが、さらに機動的な金融政策の運営、住宅建設の促進など適切な経済運営に努めてまいる所存であります。これによって、五十七年度の実質経済成長率は五・二%程度となるものと見込まれますし、特に国内需要の過半を占める個人消費については、物価の安定などを基礎として相当程度伸びが高まるものと見込まれます。
 御指摘の減税と賃上げについてでありますが、たびたび申し上げておりますように、財政再建は現下緊急の課題であり、財政の対応力の回復を図ることが、わが国経済の安定した成長を中長期的に確保する上からも重要であると存じます。
 また、わが国の個人所得に対する所得税負担の割合は、国際的に見てもまだ低い水準にあるという事情もございますので、所得税減税についてはこれを見合わせざるを得ないと考えております。
 なお、賃金の引き上げについては、労使の自主的な交渉によって決めらるべきものであると考えております。
 次に、財政問題についてのお尋ねにお答えいたします。
 まず、五十六年度の税収減に伴う三千七百五十億円の特例公債の追加発行でありますが、これは物価の予想以上の安定など、年度当初には予想できなかった要因によるものでありまして、まことにやむを得ないものであります。しかしながら、これによって財政再建の基本路線を変更するつもりはございません。五十九年度特例公債脱却という基本目標の実現に向けて最大限の努力を尽くしてまいります。
 次に、歳出の内容の修正と所得減税を行うようにとの御意見でございました。
 五十七年度予算は、臨時行政調査会の第一次答申といわゆるゼロシーリングを主軸として編成いたしましたが、補助金など各般の歳出の徹底した削減に努める一方、極力財源の重点的配分に努め、中長期的視点から充実を図る必要のあるエネルギー対策、科学技術の振興、経済協力、防衛力の整備には特に配意いたしました。また、社会保障、文教などについては、きめ細かく配慮し、経済的、社会的に恵まれない人々に対する施策の充実を図っております。また、税制面においては、租税特別措置の整理合理化、交際費課税の見直しなどを行いましたが、所得税減税につきましては、先ほども申し上げましたが、現下の厳しい財政事情のもとでは、これを見合わせざるを得ないことを御理解を願いたいのであります。
 いずれにいたしましても、政府としては、御提案申し上げている五十七年度予算が最善のものと考えております。十分御審議を賜りまして、ぜひ御賛同をいただきたいと存じます。(拍手)
 政治倫理についてお尋ねがございました。
 政治倫理の確立は、政治への国民の信頼確保のための基盤であり、原点であります。御指摘のありましたように、行政改革、財政再建を国民の理解のもとに実現するにも政治倫理の確立が必要であり、この点、今回の施政方針演説でも強調したとおりであります。
 私は、政治倫理の確立を図るためには、公正で、お金のかからない選挙制度の確立が急務と考え、就任直後の第九十三回国会で政治資金規正法の改正をお願いし、その通過、成立を見たほか、第九十四回国会におきましても、選挙運動規制のための公職選挙法の改正が行われたところであります。また、今国会におきましても、参議院全国区制の改革が引き続き審議されることとなっておりますが、速やかな改善措置がとられますよう切望いたしております。
 さらに私は、政治倫理の確立を図るため、党総裁として、国会における倫理委員会の設置、議院証言法の検討などにつき、党執行部にかねてから要請をいたしているところでありまして、もとよりこの問題は国会でお決めになることでございますが、各党各会派の御協議の速やかな進展を希望するものであります。もとより政治倫理の問題は、個々の政治家の良心の問題に帰着いたします。この意味で、政治に携わる者は、私を含め、絶えず自粛自戒し、政治倫理の一層の確立に努めてまいりたいと思います。
 最後に、八〇年代のわが国政治の基調と憲法の問題等についてお尋ねがございました。
 御指摘のように、時代は大きく変わろうとしております。しかし私は、飛鳥田委員長のように、それを暗い側面ばかりからは見ておりません。もとより国際的緊張の高まり、世界経済の停滞、国際経済摩擦、財政収支の不均衡など、厳しい面の多々あることは事実でありますが、一方において、軍縮への動き、技術面でのニューフロンティアの拡大、脱石油の進展など、明るい側面も見逃してはなりません。
 特にわが国は、比較的高い成長率と低い失業率、安定した物価が組み合わさって、良好な経済的成果をおさめております。この成果は、平和のうちに民主主義と自由が保障され、国民がその活力と創意を最大限に発揮してきたからこそ、この成果が生まれたのであります。
 そして、この平和と自由の枠組みは、わが国憲法、なかんずくその平和主義、民主主義及び基本的人権の理念によって確保されてきたことは申すまでもありません。自由民主党は、現行憲法の問題について調査研究を行っておりますが、右の三原則を堅持することは党の政綱に明記されているとおりであります。
 鈴木内閣が現行憲法をあくまで遵守してまいることは、就任以来、この壇上からもしばしば申し上げているところであり、内閣のこの方針が不動であることをここに改めて明確に申し上げて、私の答弁といたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(福田一君) 田中六助君。
    〔田中六助君登壇〕
#7
○田中六助君 私は、自由民主党を代表して、鈴木総理の施政方針演説に対する質問を行いたいと思います。
 総理は、施政方針演説の冒頭で、わが国が、今日、世界の中で最も恵まれた状況のもとで、平和と、自由と、そして繁栄を享受しているとの認識を示されたのであります。そして(発言する者あり)その事実の上にのっとって、一層成熟し、かつ、開かれた社会を建設しなければならないとの意思を表明いたしました。私は、国民の英知と努力の成果であるわが国の現状について、全体として総理と認識をともにするものでございます。
 しかし、総理も言われましたように、われわれがこのような成果を維持し、さらにその発展を図っていくためには、いまや政治、経済、社会の全般にわたって新たな対応が求められているものでございます。
 総理は、われわれが特に緊急に取り組むべき課題として、行財政改革の推進と国際的な経済摩擦の解決の二つを取り上げられております。
 行政機構の改革に対しては、国民のニーズに応じて不断に取り組むべき課題でございます。また、経済摩擦につきましても、わが国の対外貿易の規模から考えれば、この点に対する措置も十分常にとらなければならない問題でございます。しかし、今日この二つの問題がここに取り上げられますのは、現在の問題に対応して国民の意識の改革を求められているからでございます。(発言する者あり)すなわち、われわれは従来、ややもすれば、みずからの利益のみを求めるということが許容されると考えがちでございましたが、現在、この考え方の転換を求められているのであります。(発言する者あり)
 その意味において、これらの問題の解決を中心として、新しい物の考え方や手法を取り入れるには、新たなる時代への深い洞察力と強い政治的リーダーシップが求められるのであります。この点に対し、総理の所信をお伺いしたいと思います。
 私は、以上のような基本的認識に基づいて、われわれが直面している幾つかの重要な問題について質疑を行い、総理の所信をただしたいと思います。
 まず、最近の国際情勢と、わが国の厳しいとるべき基本的立場についてであります。
 欧米主要先進国は、現在、第二次石油危機につきまして、いまだにその解決に至っておりませず、景気の停滞とインフレの高進、失業問題の増大に苦しんでおります。他方、わが国は、戦後一貫して努力を傾けてきた生産性の向上と、石油危機の円滑な調整などの成果として、貿易において強い競争力を獲得するに至っております。今日における通商摩擦の背景には、このような事実が二重、三重にも重なって存在するものと考えられます。戦後において自由世界の発展をはぐくみ、今後も世界全体の発展を支える基本的条件である自由経済及び貿易秩序の崩壊をもたらす保護貿易主義の台頭を抑えることは、国際社会の一員として、わが国の責務であると考えられます。
 このためには、世界経済全体の再活性化を図ることが必要であり、わが国も機会を求めて、そのための方策について積極的に話し合っていくべきであると考えます。(発言する者あり)
 また、わが国自身も、従来のような受け身の受益者でなく、みずから国際社会の責任ある一員として、節度ある輸出に努める一方、国内市場の開放のためにも最大限の努力を払い、世界経済全体の均衡に対して資する措置が必要であると考えます。(発言する者あり)
 昨年十二月、政府は、東京ラウンドの合意に基づいて関税の段階的引き下げを行い、(発言する者あり)二年繰り上げる措置をとりました。(発言する者あり)そして、市場の開放、輸入の拡大に向けて勇断を示されました。特に今次の関税引き下げ措置は、千六百五十三品目、平均引き下げ率一〇・四%に及ぶ(発言する者あり)
#8
○議長(福田一君) 静粛に願います。――静粛に。
#9
○田中六助君(続) 画期的なものであり、私は、総理の御決断に敬意を表するものでございます。
 わが自由民主党といたしましても、党内に国際経済対策特別調査会を設置して、非関税障壁の撤廃を含めて、輸入拡大等の方策について、引き続き全力を挙げて取り組んでおります。
 市場開放等につきましても、相応の犠牲と苦痛が伴うものであります。私は、国民各位の理解と協力を得つつ、わが国の国際的な責務を遂行すべきものと信ずるものであります。この際、総理の強力な御指導を期待するものであります。この点に対する問題について総理の御所見を伺いたいと思います。
 経済協力の充実により、開発途上国の経済的発展と社会的安定を図ることは、わが国の最も重視すべき国際責任の一つであります。総理は、昨年十月、メキシコでの南北サミットに出席し、南北問題の改善について大きな役割りを果たされました。また、政府開発援助につきましても、五カ年間にさらに倍増以上とするとの新しい中期目標を踏まえ、五十七年度予算におきましても、五十六年度を一一・四%も上回る予算が計上されているところでございます。この目標は、国際的な約束であり、ぜひとも実現しなければならない問題でございます。
 今後の問題は、わが国の経験と蓄積を生かすことなどによって、いかに有効かつ適切な経済協力を強化していくかということでございます。これらの点について総理の御見解を尋ねるものでございます。
 次に、国際政治におけるわが国の外交政策についてお伺いいたします。
 本年は、サンフランシスコ平和条約の発効と日米安保条約の成立以来、満三十周年に当たります。すなわち、わが国が欧米諸国ともども、自由と民主主義の陣営に入って、政治、経済、社会の基本理念を自由と民主主義に求めてきたのでございす。その西側先進民主主義諸国との連帯を外交の基軸とすることになったのであります。この基本路線のもとで、わが国は、平和と安全を確保しつつ、今日の輝かしい繁栄を築き上げてきました。
 講和条約を締結した故吉田総理は、今日の繁栄あるわが国の存在は、国民が、最も苦しい時期において、心の奥底に希望の光を失わず、現実を見つめつつ、世界に目を向けて、民主主義と自由主義の精神を吸収することに余念がなかったためであると書き残しております。
 わが国と米国は、国内に多様な意見を認める民主主義国家であり、日米間の幅広い接触の過程で率直にそれをぶっつけ合う関係になっております。したがって、種々のぎくしゃくした問題が展開するでありましょうけれども、多彩な意見の交換をめぐって、両国の関係は、より一層成熟した強いきずなとなっていく方向にあると考えるのでございます。
 日米間のこの関係について、総理の基本的な所信をお伺いしたいと思います。
 わが国は、アジアの一員として、そしてまたアジアの先進工業国としての、大きな余裕――アジア地域における平和と発展について貢献することはきわめて重要なことであります。
 これらの諸国との間には、昨年以来種々の問題が展開しております。特に韓国との間には、経済協力に関する問題が大きな課題となっておるのであります。先日の事務レベルの協議において話し合いが進められたことは、今後の日韓両国関係に対して、私どもは大いに歓迎するところでございます。この問題の解決により、日韓関係が全体的に幅広い国民との交流となり、深い相互間の信頼の上に立っていくことは、私どもの強く期待したところでございます。
 本年は、中国との国交回復、正常化して以来、十周年を迎えようとしております。鈴木総理と趙紫陽総理との相互訪問が約束されておりますが、この友好関係のきずなが強くなることは喜ばしいことでございます。かかる状況を踏まえて、中国との間の友好関係の一層の発展を希望するものでございます。
 ASEAN諸国につきましては、いままでの努力に対しまして、さらに一層の支援をわが国は進める方針でございます。これらの諸国との友好関係をさらに強化し、進展させていく必要があると思います。(発言する者あり)
 また、中近東との問題におきましては、西側諸国とともどもこれらの問題の解決に努力しておりますが、特にわが国は、中近東諸国のうちアラブ穏健派諸国の動きを支援して、中近東の和平の実現、そしてパレスチナ問題の解決に尽力すべきものと確信しております。
 アジア諸国及び中近東の地域に対するわが国の外交の進め方について、総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。
 一方、日ソ両国の関係でございますが、ソ連の北方領土における軍事力の増加、アフガニスタンへの軍事的介入、さらに最近のポーランド情勢に対する関係などで両国関係の改善は困難になっていることは、まことに遺憾なことでございます。日ソ間の相互の信頼を醸成するためにも、まずこのような事態の是正が必要であります。
 さらに、真の日ソ間の関係改善に当たっては、北方領土問題を解決して、平和条約を締結することが不可欠の条件であります。先般行われた第二回日ソ事務レベル協議の成果を踏まえて、今後の日ソ関係改善の見通しについて、総理のお考え方をお聞きしたいと思います。(拍手)
 次いで、わが国の安全保障政策についてお尋ねいたします。
 今日の複雑に入り組んだ国際社会において、一国の安全を脅かす要因は、単に軍事面のみではございません。この意味では、総理が安全保障の問題を広く総合的に考えておられることに賛成の意を表します。
 しかし、反面、国防が国家の存立にかかわる重要問題であることもまた明らかでございます。
 政府は、五十七年度予算においても、厳しい財政事情のもとで、装備の近代化など、防衛庁の中期業務見積もりの達成へ向けて、着実な努力を傾けております。この点は、最近とみに防衛意識を強めております国民の理解を得ているものと信ずると同時に、また、西側諸国の世論からも評価されていると考えます。
 総理は、今後とも「防衛計画の大綱」の水準の早期達成について努力するとの決意を表明されております。(発言する者あり)
 私は、防衛力の整備は、毎年毎年の予算のあり方もさることながら、本来、中長期的な観点からこの防衛予算には取り組むべき性格のものと信じております。
 本年は、防衛庁においても新しい中期業務見積もりが策定される時期でございます。この取り組み方について、政府の考え方についてお伺いしたいと思います。(拍手)
 総理は、本年六月の第二回国連軍縮特別総会に出席し、核軍縮を中心とする軍縮の促進を訴える旨明らかにされました。世界の平和と安全のためには、限りない軍備増強の悪循環を断ち切ることが必要かと存じます。われわれも軍縮総会で新たなる軍縮の努力の方向が打ち出されることを期待しておりますが、総理のこれに対するお考えをお尋ねしたいと思います。(拍手)
 次に、行政改革及び財政問題についてお伺いしたいと思います。
 総理は、就任以来、行財政改革こそ二十一世紀への足固めとして最優先に取り組むべき政治課題であると述べられ、果敢にこれに取り組んでおられます。
 行政改革は、世界諸国の例を見ても、また、わが国の歴史の中に照らして見ても、大きな政治的な課題として、困難な問題となっております。しかし、国がなすべき分野と国民がみずからの責任において行うべき分野の境界を見直し、われわれの政府を簡素にして効率的なものにつくり上げていく作業は、今日われわれが行わなければならない大きな問題でございます。私は、この困難ではあるが避けては通れない改革に、敢然として政府・自民党が挑んでおることに対し、国民は強い関心を寄せると同時に、その実現について熱い支持を示しておるものと確信しております。(拍手)
 行政改革は、これからの臨時行政調査会の作業の進展などに応じて、いよいよ正念場に差しかかっておりますが、われわれは、確固たる決意をもってこれに取り組み、国民の期待にこたえていかなければならないと考えます。(拍手)総理のこれまでのリーダーシップに対し心から敬意を表するとともに、重ねて総理の御所信をお伺いしたいと思います。
 次に、財政問題についてお尋ねいたします。
 五十七年度予算において、公債の減額による財政再建を最重点といたしまして、これに対応して歳出面では一般歳出の伸び率を一・八%に圧縮するとともに、歳入面でも、景気回復のおくれなどに伴う歳入不足を、税外収入と現行税制の枠内での増収等によって補てんすべき措置が講じられました。しかし、その限られた歳出を重点的に配分し、エネルギー対策並びに対外経済協力、防衛、科学技術の振興、中小企業問題、さらに農林水産業など、国民経済が将来に発展する基盤を整備することを図りました。さらに、社会福祉、住宅、そして教育など、国民生活と密接な関連をする分野においてもきめ細かい配慮がなされておるのであります。
 私は、現在われわれの置かれている状況のもとで、五十七年度予算に示されている選択は最善のものと確信するものであります。(拍手)
 この際、今後の財政運営についてお伺いしたいととがございます。
 その一つは、五十六年度補正予算において、公債、特に特例公債の追加発行のやむなきに至ったことに関連いたしまして、財政再建は既定方針どおりの日程で実現するのかどうかということでございます。
 その第二は、財政再建と財政の景気調整機能との関連でございます。一方において、この両者は両立するという意見もありますが、また他方においては調整は不可能という意見もございます。私どもは、この点に対する政府の見解をただしたいと思います。
 その三は、所得税減税の問題でございます。所得税については、五十三年度以来制度改正を伴う減税が実施されていないことから、納税者には重税感が伴っておるという考えでございます。
 また、税収構造の上で、間接税に比べ直接税の比率が過度に高まっているという批判でございますが、私どもは、この点に対する政府の見解もお伺いしたいと思います。
 また、最近の景気対策として、個人消費を刺激するためにも、この所得税の減税が適当であるとの観点から減税が求められておる議論がございます。私は、五十七年度において所得税の減税が実現するというふうには思っておりません。全く、むしろ財政的余地はないと確信しております。しかし、政治を預かる者として、国民から提起された問題について解決の展望を示すこともまたわれわれの心がけねばならない問題であると考えます。(拍手)この点についての政府の方針を伺うと同時に、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
 次いで、当面の経済運営についてお尋ねいたします。
 現在、わが国の経済が最も問題としているのは、景気の不振と地域別、あるいは業種別、あるいは規模別なばらつきが見られることでございます。経済成長も外需依存になっておることについての問題でございます。この問題を解決するために、政府は五十七年度における実質経済成長率の伸び率を目標五・二%としておりますが、このような目標には限りある点がございます。政策努力としては、私どもがこれを標榜して完遂に努力しなければならないと私は思います。(拍手)私は、この考え方はきわめてむしろ適切であると信じております。ただ、現在われわれが活用し得る政策の手段はきわめて限りあるものでもあるとは思います。このため、今後の経済運営の基本は、民間の活力を最大限に引き出し、民間の創意工夫を生かすように努力しなければならないと思います。
 その意味で、今回、住宅・土地税制の画期的な改正と住宅金融制度の大幅な改善が行われたことは、民間の住宅建設の促進に大きな役割りを示すものと期待しております。(拍手)
 これと並んで期待したいのは、金融政策の問題でございます。ことに、中小企業の設備投資が企業収益の不振によって抑えられていることは、私どもが気になることでございます。国際的な金利動向や、また、為替相場の推移などを勘案しなければなりませんけれども、私どもは、金融面における一層機動的な政策の展開が強く望まれるところでございます。
 また、財政の役割りは大きな期待はできないにしても、財政の執行で工夫を要する点が多くあると思います。たとえば公共事業についても、対象事業の選択や執行時期の繰り上げなどによって、最大の経済効果を発揮することもでき得ると思います。
 私どもは、これらの努力によって、財政の運営にも希望を託するものでございます。
 この点について、総理の御見解をお伺いしたいと思います。(拍手)
 次に、教育問題についてでございます。
 最近、頻発する学校内やあるいは家庭内の暴力の原因がもし教育の欠陥にあるとするならば、きわめてゆゆしい問題であります。
 教育は、わが国の歴史を通じて見ても、いかなる時代においても、われわれに大きな力を与えてまいりました。戦後の繁栄においても、教育は中心的な役割りを果たしてきているのであります。すぐれた教育のもとにおける人間訓練が、戦後のいかなる危機にも対処していく支えとなってきたことは、私どもの熟知しているところでございます。
 しかるに、将来の日本を担うべき青少年がこのような非行に走ることは、私どもの最も心を傷めるところでございまして、この暴力問題が基本的な人間の訓練の不足から来るものとするならば、これまた私どもが十分考慮しなければならない問題でございます。
 わが党は、このような現況にかんがみ、引き続き健全な青少年の育成に向けて国民運動を展開する所存でございますが、この問題についての総理の取り組み方について、御所見をお伺いしたいと思います。(拍手)
 以上、私は、わが国が直面する重要な問題について、みずからの考え方を述べつつ、総理の御意見を求めてまいりました。
 質問を締めくくるに当たって、この重大な変革期の政治のあり方について申し述べたいことがございます。
 つまり、政治とは、本来、情熱と見識を持って、かたい板に穴をあけていくような強い忍耐力が必要でございます。(拍手)私どもは、不可能なことを可能にする努力がなければ、常に歴史というものは築かれておりません。(拍手)総理が施政方針演説の冒頭に述べられております行政改革と財政再建及び国際経済摩擦の二つにつきましては、私どもが不屈の精神を持って解決しなければならない大きな問題でございます。これには種々の困難が伴うでありましょう。
 しかし、不可能なことをなし遂げようとする努力がなければ可能となることもなかったというのが歴史でございます。常にどういう事態に陥ろうとも、「それにもかかわらず、それにもかかわらず」という不屈の精神こそ、日本に今日をもたらした大きな原因でございます。
 私どもは、この点こそ、政治を天職とし得る人間、本当に職業としての政治家に必要な点だということを心から感ずるものでございます。
 私は、わが党及び政府が不屈の精神をもって問題に挑戦し、世界の中の日本という認識に立って、国際社会における責務を果たしていくことを心から念願するものでございます。総理の御決意のほどをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 田中六助議員にお答えをいたします。
 まず、私の施政方針演説で、わが国が当面する特に緊急な課題として、行財政改革と国際経済摩擦の解決の二点を挙げたことにつきまして、これらの問題の解決は国民の意識の変革を伴うものであると御指摘がございました。
 いまや世界のGNPの一割を占める経済大国となったわが国の立場と、わが国の高度経済成長を支えてきた諸条件の変化を考えるとき、二十一世紀に向けてわが国の発展の基盤を確かなものとするためには、行財政改革、国際経済摩擦の解決という二つの課題には、国を挙げての努力が必要であると考えます。広く国民各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。
 具体的な御質問の第一点として、非関税障壁の撤廃など、市場開放問題などに関してお尋ねがございました。
 政府は、すでに昨年十二月十六日の経済対策閣僚会議におきまして、市場開放対策、輸入促進対策、輸出対策など五項目の対外経済対策を決定し、目下その推進に努めているところでありますが、特に輸入検査手続に関しましては、御質問でも触れられましたように、自由民主党の国際経済対策特別調査会の並み並みならぬ御努力により、今月三十日の経済対策閣僚会議で大幅な改善措置を決定する運びとなっております。また、今後につきましても、輸入検査手続などに関する苦情を迅速に処理するため、市場開放問題処理推進本部を政府に設置するなど、体制を整え、この問題に対処していきたいと考えております。
 次に、経済協力についてお答えいたします。
 わが国は、平和国家として、また、自由世界第二位の経済大国として、経済協力を通じて世界経済の発展及び世界の平和と安定に貢献するとの観点から、経済協力の積極的拡充に努めております。政府といたしましては、今後とも新中期目標の達成に努力していく所存でありますが、具体的な援助の実施に際しましては、開発途上国の経済社会開発に対する自助努力を支援するとの立場に立ち、調査団の派遣、先方政府との協議などを通じ、相手国の真の開発ニーズを十分に踏まえるとともに、わが国の経験をも生かしつつ、これを行っております。
 また、現下の厳しい財政事情のもとで、より効果的かつ効率的に援助を実施するとの観点から、援助効果の評価も積極的に行っており、より適正な援助の実施に努めている次第であります。
 次に、日米関係についてであります。
 日米関係は、戦後一貫してわが国外交の基軸であり、両国国民が日米間の友好親善関係の強化のために、互いにたゆまぬ努力を続けてきた結果、現在きわめて良好なものとなっております。
 今日、日米両国は自由世界の主要な構成員として、おのおの国際社会の中できわめて重要な役割りを担うに至っております。わが国は、今後とも米国と連帯協調し、国際社会の平和と繁栄のために積極的に貢献してまいる所存であります。
 なお、現在、両国間には貿易問題などの懸案がございますが、このような問題につきましては、これまで築き上げられてきた信頼関係を踏まえ、密接に協議しつつ、日米間の全般的な友好協力関係を損なうことのないよう措置してまいることが必要であると考えております。
 アジアにおきましては、カンボジア問題中越の対立、朝鮮半島における南北の対峙、ソ連の軍事的プレゼンスの増大などの不安定要因が引き続き存在しております。しかし、他方においてASEANの発展、中国の安定、アジア中進国の経済的ダイナミズム等は重要な安定化要因となっており、地域全体としては比較的安定した状況にあると申せましょう。
 わが国は、この地域の平和と安定のため、中国、韓国、ASEAN、南西アジア諸国等との友好関係や協力関係の増進に努めてまいりますとともに、カンボジア問題及び難民問題の解決に積極的に貢献しつつ、同地域における良好かつ安定した国際環境の醸成に寄与してまいりたいと考えております。また、アジア諸国との貿易、投資関係の一層の発展、積極的な経済協力の推進など、経済面においても特段の努力を払っていく考えであります。
 次に、中東情勢についてであります。
 最近の中東情勢はきわめて流動的でありますが、この地域の平和と安定はわが国にとって大きな関心事であります。わが国とこれら諸国の相互依存関係は、石油その他の貿易分野を中心に近年とみに深まりつつありますが、このような見地から、わが国はこれら諸国に対する経済技術協力の推進、人的交流の促進に努めるとともに、中東和平実現に向けてわが国としても応分の貢献を行うべく、国連その他の場において努力を行っているところであります。政府といたしましては、今後ともこのような努力を継続していく所存であります。
 日ソ関係は、北方領土における軍備増強、アフガニスタンへの軍事介入、ポーランドの情勢などにより、困難な局面にあります。
 先般の日ソ事務レベル協議においても、これらの問題について、わが方の基本的立場をソ連側に伝えたところでありますが、政府といたしましては、北方領土問題を解決して平和条約を締結し、両国間の真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することを対ソ外交の基本と考えており、今後とも引き続きソ連側に対し、北方領土問題を初めとする日ソ間の問題の早期解決を強く働きかけていく所存であります。(拍手)
 次に、わが国の防衛問題についてでありますが、御指摘のように、防衛力の整備は、毎年毎年の予算のあり方もさることながら、本来中長期的な考え方で取り組むべき性格のものと考えます。昭和五十八年度から六十二年度までを対象とするいわゆる五六中業につきましては、昨年の国防会議で了承された方針に基づき、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準を達成することを基本とし、極力財政負担の軽減に配意しつつ、防衛庁において作成作業を行っているところであります。私としては、わが国の防衛力を「防衛計画の大綱」に従い、その水準にできるだけ早く到達させるよう努めてまいる所存であります。
 軍縮問題についてお尋ねがございました。
 近年、国際情勢は厳しさを増し、軍備競争が強まっておりますが、私は、田中議員も御指摘のとおり、このような状況においてこそ、力の均衡を維持する努力と並行して、その水準をできる限り低くすることを目指して、真の軍縮の促進に向け不断の努力を行うことが必要となってきていると考えます。(拍手)
 先般の施政方針演説でも申し述べたところでありますが、本年六月の第二回国連軍縮特別総会は、このような努力を国際的に一層強化するためのまたとない機会であり、私自身特別総会に出席して、平和国家としてのわが国の立場から、核軍縮を中心とした軍縮の促進を強く訴えたいと考えております。
 次に、行政改革と財政関連の御質問にお答え申し上げます。
 行財政改革は、施政方針演説でも申し述べましたとおり、当面内閣に課された最重要課題の一つでありますので、引き続き全力を挙げて取り組んでまいります。特に今年は行政改革について臨時行政調査会の基本答申が出される予定でもありますので、臨時行政調査会の審議の動向その他の情勢を踏まえながら、行政改革の基本的課題に関する施策の立案、推進に一層努力してまいります。
 次に、財政運営に関するお尋ねでありますが、まず、昭和五十六年度補正予算で六千三百億円の公債の追加発行を行いましたが、これは巨額に上った災害の復旧と、年度当初には予想できなかった物価の安定等による税収の減少に対処するためにとった真にやむを得ない措置でありまして、これによって五十九年度特例公債脱却を目指す財政再建の基本路線はいささかも変わるものではございません。
 次に、財政再建と財政の景気調整機能との関係でありますが、御指摘のとおり種々議論はございます。しかし、財政の現状は、五十七年度予算で一兆八千三百億円の公債減額を行っても、なお十兆四千四百億円の公債を発行せざるを得ず、五十七年度末には公債残高が約九十二兆円、実にGNPの三分の一に当たる額に達するというような状況でありまして、このような大量の公債発行を続けることは、経済にインフレ要因を持ち込むなど、国民生活の安定を損なうおそれがあります。したがって、現下の緊急の課題は、財政の公債依存体質を改めることでありまして、財政に本格的な景気調整機能を求めることは当面困難であると思います。むしろ財政に景気調整といった対応力を回復させるためにも、基本路線に沿って特例公債依存という現状を脱却しなければならないと考えます。
 しかしながら、そのような中でも、五十七年度予算におきましては、景気の維持拡大にできる限りの配慮をいたしました。住宅建設の促進、公共投資の事業量の確保など、きめ細かに工夫いたしております。
 次に、所得税減税についてでありますが、今日の厳しい財政事情のもとでは、残念ながら所得税減税は見合わせるよりほかいたし方がございません。しかしながら、所得税の現行課税最低限と税率構造を長期にわたって固定することは適当でないと思いますので、将来、条件が整えば減税を検討したいと考えております。
 その際の条件としては、歳出歳入両面にわたる徹底した見直しを進め、五十九年度特例公債脱却の明白な目途をつけること、所得税減税の財源の手当てが可能であることが必要であると考えております。
 次に、当面の経済運営についてのお尋ねでありますが、わが国経済の安定的かつ持続的な発展を確保するため、引き続き適切かつ機動的な政策運営を図り、国内民間需要を中心とした景気の着実な拡大を実現していきたいと考えております。
 お尋ねに沿って具体的に申し上げますと、まず住宅建設の促進のため、昭和五十七年度予算において、住宅金融公庫の貸付限度額の引き上げなど住宅金融の改善、土地住宅税制の改正などの諸施策を講ずることとしております。
 次に、金融政策につきましては、先般公定歩合など金利水準を全般にわたって引き下げましたが、その効果を見ながら、内外の経済動向を総合的に踏まえて、引き続き適切かつ機動的な運営を図っていきたいと考えております。
 公共事業につきましては、財源の効率的配分、地方単独事業の拡充、民間資金の活用などにより事業量の確保に努めることとしておりますが、その執行は、経済情勢を踏まえながら、予算の成立を待って機動的に対処していきたいと考えます。
 次に、次代を担う青少年の健全な育成について御意見がありましたが、御指摘のように、校内暴力や家庭内暴力がなお増加していることは、きわめて憂慮すべき問題であります。その要因としては、学校における教育指導のあり方や家庭におけるしつけの問題があり、さらに、社会の風潮として、青少年の豊かな心をはぐくむ面に欠けるところがあることなどが考えられます。
 いずれにしても、このような問題を解決し、わが国の将来を担う青少年の健全な育成を図るためには、家庭、学校を初め社会全体でこれに当たらなければならないものでありますし、政府としては、このために積極的な対策を講じていく所存であります。
 もとより教育は国家百年の大計であり、国政の礎でありますので、学校教育においては、教育の内容を一層充実するとともに、学校全体が一体となって児童生徒の指導に努め、このような事態の解消に努力していかなければならないと考えます。(拍手)
 以上、田中議員の御質問にお答えいたしましたが、御質問の最後に、政府及び自由民主党が、不屈の勇気をもって、わが国に課された諸般の問題に挑戦し、国際社会における責務を果たしていきたいという力強いお言葉がありました。私も全く思いを同じゅういたすものでございまして、決意を新たにして国政に携わる所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(福田一君) 岡田利春君。
    〔岡田利春君登壇〕
#12
○岡田利春君 私は、日本社会党を代表しまして、飛鳥田委員長に続き、政府施政方針に対して質問を行うものであります。
 鈴木総理は、政権担当に当たって、和の政治を理念として掲げ、ロッキード事件を初め、続発した構造的汚職事件に反省を込めて、政治倫理の確立と綱紀の粛正を図る強い決意を述べられました。
 また、財政再建の痛みを国民等しく負担するとみずから訴え、行財政改革に政治生命をかけると語り、さらに、今年度予算編成を前にしては、増税なき財政の再建を国民の前に約束いたしたのであります。
 しかし、一年半を経過した今日、国民の大多数は、総理の公約とその政治の行動の間に、余りにも大きな落差のあることを見せつけられたのであります。(拍手)そして、あなたの和の政治とは、確固たる政治理念とは異なり、その場しのぎの政治運営のテクニックにしかすぎないことを思い知らされ、鈴木政治に対する不信の声は、いま大きな高まりを見せているのであります。(拍手)
 その第一の理由は、第九十四通常国会の予算委員会において、私の日米首脳会談に臨む政治姿勢の質問に答えて、「日本は、平和憲法の理念のもとに、軍事大国にはならない。専守防衛に徹する。非核三原則はあくまで堅持していく。日本は平和国家であり、軍事的役割りの期待は間違いである」と言明したのにもかかわらず、レーガン米大統領と会談するや、いとも簡単に日米同盟に合意され、その顕証として、五十七年度政府予算原案作成に当たっては、アメリカの強い圧力に何らの抵抗も示さず、大蔵内示原案を上回る前代未聞の突出防衛予算を裁断するという、国民に背を向けた政治行動に対するものであります。(拍手)第二には、戦後最大の構造汚職であるロッキード事件に対する反省が言葉だけに終わって、みずから灰色高官を党の要職に選任するという、いまや開き直りとも受け取られる政治モラルの欠如に対するものであります。
 今日、国民の共感を得られる議会制民主政治の確立は、金権腐敗の体質や政官財の癒着構造にきっぱりと訣別できるかどうかにかかっているのであります。昨年末の小佐野賢治の実刑判決に次ぐ、きのう行われた若狭得治を初めとする全日空ルートの全員に対する有罪判決は、今後予定される一連のロッキード事件判決の行方を予見させずにはおかないのであります。(拍手)
 いまこそ、航特委の復活、政治倫理委員会を早急に設置し、議院証言法を改正し、政治家の資産公開法を制定することが、まさしく天の声であると知るべきであります。(拍手)
 第三に、鈴木総理は、再三再四にわたって憲法は改正しないと言明し、その遵守を約束してまいりました。しかし、あなたは、自由民主党の総裁として、自主憲法制定の方向を打ち出し、報道によれば、憲法改正草案の作成にも承認を与えておるのであります。その一連の政治行動は、だれの目にも、たてまえと本音とを使い分けつつ、憲法改正への地ならしを公然と行っているとしか映らないのであります。(拍手)
 鈴木総理は、今年初頭に発表された世論調査におけるあなたの指導力や、行動力に対する評価について御存じでしょうか。そして、鈴木総理の交代を望む声が過半数を超えておるという事実を、あなたはどのように受けとめられますか。私は、内外の諸情勢が波乱に満ちている今日、あなたのこれからの政治行動が、秋の自民党総裁選挙における再選のための和の政治などではなく、わが国の平和と、経済の破局回避に向けて、常に国民との連帯の輪を築くために、道理にかなった政治を確立することにあると考えます。鈴木総理の明確な所信をお伺いいたしたいのであります。
 次に、経済の運営に関する諸課題についてお伺いをいたします。
 五十六年度のわが国経済は、五十五年度の成長三・七%、うち外需三・三%の実績を引き継ぎ、経済の跛行性を拡大しながら、外需主導型で低迷して、景気回復のテンポも期待を下回るきわめて緩やかなものにとどまり、政府の二度にわたる下方修正の末の実績見込み四・一%成長を下回ることがいまや確実となりつつあります。
 また、五十七年度経済見通しについても、想定される円高、海外景気の低迷、貿易摩擦の高まりなどから輸出の伸びは鈍化し、その反面、交易条件の改善、在庫の一巡に加えて、公定歩合の引き下げを含む景気対策などから、景気パターンは内需主導型への変化が予想されるものの、そのテンポは緩やかなものにとどまると判断されるのであります。したがって、政府見通しのように、積極的な政策努力を払ったとしても、内需四・一%を含む五・二%の成長は過大であり、不可能に近い目標であると指摘をせざるを得ないのであります。
 しかし、内需の回復は貿易摩擦の解消に不可欠の要件であります。同時にまた、雇用の確保、産業、企業及び地域間格差の解消、また税収の面からもきわめて重要であります。特に、個人消費水準の引き上げと住宅建設の促進は、中小企業の収益を改善し、民間設備投資の五ないし六割を占めると言われる中小企業の設備投資を促すことと密接不可分の関係にあり、まさしく内需拡大の決め手であります。(拍手)
 そのためには、第一に、今年度名目可処分所得の伸びが五%以下になっていると推計されている雇用者所得をふやすために、経済の運営にも大きな責任を持っている財界、企業に対して、積極的な協力を要請することがまず緊要であります。
 第二に、一兆円の所得減税、すなわち、一世帯三万円の減税を今年度実施すべきであります。わが党がすでに明らかにしていますように、その財源は、租税特別措置の整理、会社臨時特別税の復活、医師優遇税制の廃止など、一連の不公平税制の是正を行うことなどによって確保できるものであります。いまや国民の圧倒的多数は、税負担の不公平感を強く訴えておるのであります。
 ある民間機関の予測によれば、一兆円の所得減税と公定歩合の引き下げを併用すれば、五十八年度には二兆八千億円程度の赤字改善の効果があると推計いたしておるのであります。いまや所得税減税は、保守、革新の枠組みを超えた全国民的な声であることを総理は銘記をすべきであります。(拍手)
 第三は、住宅政策についてであります。
 政府は、五十七年度予算案においてある程度の政策配慮を払ったと述べていますが、住宅金融公庫の金利引き上げなどの改悪が盛り込まれ、しかも、土地、住宅と所得の分離が都市においては七倍とますます拡大をし、景気の先行き不安を感ずる今日、百三十万戸の着工には大きな疑問を投げかけざるを得ないのであります。
 土地税制の改正も中途半端なものになり、都市における土地の需要と供給のアンバランスも解消できないままでは、逆に土地価格の高騰を呼ぶ危険性もなしとしないのであります。すでに住宅戸数が世帯数を上回り、住宅の需要が低所得層にシフトされている今日、改めて土地問題を基調とした総合的政策を再構築することが求められておるのであります。
 わが党は、住宅基本法案の国会提出、住宅の公的保障を目指す住宅保障法の制定を強く要求するものであります。
 第四に、産業間の格差の高まりについてであります。
 加工組み立て産業は、技術革新や新なたる需要開拓で、ほぼ一本調子の拡大が続いております。これに対して不況産業は、需要の停滞と石油価格の高騰の影響を受けて、企業は生き残り作戦に必死の状況にあり、雇用不安も大きく高まりつつあるのであります。
 政府は、特定不況産業安定臨時措置法を抜本的に改正し、不況産業の立て直しと雇用の確保を図るために、その対策を明らかにすべきであります。
 第五に、地域間格差の問題についてであります。
 アルミ、紙・パルプ、木材、合板、砂糖などの不振産業の立地している地域と、自動車、電機、電算機、集積回路などの産業が立地しておる地域とでは、従来に見られなかった経済活動の格差が顕著にあらわれておるのであります。
 また、公共事業費の三年間据え置きが、公共事業依存率の高い後進県の土木建築業界に与えた影響は決して小さくないのであります。
 特に東北、北海道では、減反、乳価の四年連続実質引き下げ、二年連続の凶作が経済の停滞に一層の拍車をかけておるのであります。
 政府の経済運営には、こういった問題に対するきめ細やかな配慮を見出すことができないのでありますが、その対策についてお伺いをいたしたいのであります。(拍手)
 行政改革の推進の機運の中で、政府の考えている景気対策の効果はきわめて乏しいと言わなければなりません。勤労国民の実質所得の伸び悩み、経済の先行き不安の解消が経済の動向を大きく左右することは、間違いのない事実であります。
 以上、私は、総理並びに関係大臣の見解をお尋ね申し上げる次第です。
 次に、財政の再建についてお伺いいたします。
 政府は、五十六年度予算において、二兆円の赤字国債の減額を大義名分に物価調整減税を見送り、新たに一兆四千三百五十億円の大増税と、各種公共料金の軒並み値上げを実施したばかりであります。
 しかし、経済の動向は、さきに述べましたとおり、財政的には赤字国債三千七百五十億円の増発を含む補正予算を組まなければならないという公約違反を犯したのであります。しかも、十二月からの税収を前年度対比二〇%増と見込んだとしても、税収は約一兆円の減収となることは明らかであります。
 政府は、そのような場合、決算調整金と、不足分については国債償還財源の取り崩しを予定していると言われていますが、これは明らかに粉飾決算であります。財政節度の観点からいっても、素直に再度補正予算案を編成して国会に提出することが常道であります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 また、このような膨大な歳入欠陥が生ずるとすれば、その政治責任はきわめて重大と言わなければなりません。総理の責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)
 また、五十七年度においても、経済の成長が四%以内にとどまったと仮定すれば、税収において二兆円程度の減収が予想されるのであります。この際、五十年代の名目成長率はすべて政府見通しよりも下回っていることを改めて指摘をしておかなければなりません。
 財政再建に対する総理の最近の言動は、急速に失速状態に陥り、五十九年度限りで財政の赤字国債依存から脱却するという公約を達成するどころか、その前に墜落するのではないかと心配でたまりません。総理の決意のほどを重ねてお伺いをする次第であります。(拍手)
 次に、福祉政策の問題であります。
 本年は、福祉元年から十年目に当たります。しかし、五十七年度予算案は、これまでの平和憲法のもとにおける西欧型の高度福祉社会の創造という国民合意の目標を切り捨てて、個人の自助自立に名をかりた受益者負担の一方的増大という、根本的な理念の変更が行われたのではないかという国民は大きな危惧を深めておるのであります。それは社会保障と防衛費の伸びが大きく逆転をして、福祉の削減分がそっくり防衛費に増額されたことで明白であります。国民の名において、このような福祉の後退は断じて容認することができないのであります。(拍手)
 わが国の福祉政策は、行き届かなければならないところにもまだ行き届いていないのが実態であります。たとえば、障害者雇用促進法があっても、民間企業の身障者実雇用率は、法定雇用率の一・五%とはほど遠い一・一八%で、この五年間に、国際障害者年を迎えたのにもかかわらず、わずか〇・〇九%の伸びにとどまっているのであります。政府は、障害者に対しては予算上配慮したと述べていますが、その施策は、他の福祉政策とともに、まだまだ西欧に比べて大きな立ちおくれをしておることを素直に認めるべきであります。
 また、全国に千七百五十カ所も存在する無医地区の解消と僻地の医療水準の向上も遅々として進まず、国民皆保険の体制といいながら、保険料を納めても満足な医療を受けられないという、命にかかわる不平等も一向に改善されていないのであります。(拍手)政府の見解をただすものであります。
 次に、教育の問題についてお伺いをいたします。
 青山学院の不正入学事件に見られるように、受験地獄の深刻化が招いた教育の荒廃は、将来の日本を担う青少年の心を深くむしばんでいます。しかも、四年前に、その受験地獄の解消を標榜して、国公立大学の共通一次試験が見切り発車しましたが、現行制度には重大な欠陥があると言わざるを得ません。
 まず第一に、国立大学の入試期日が一元化された結果、受験生は国立大学を一回しか受験できないこと。第二には、負担の重い五教科七科目が画一的に課せられていること。第三に、受験シーズンが一月中旬に早まり、高校の教育現場に混乱々与えていることであります。
  この結果、高校を卒業すると同時に大学に進学する比率が低下し、競争がかえって激化しているのが現状であります。このような矛盾を覆い隠すように、大学入試センターでは、昨年の二月三日、共通第一次試験の全科目総平均点並びに理科と社会科の科目別平均点を極秘のうちに人為的操作をして発表いたしたのであります。数多くの教育関係者は、直ちに発表内容の異常さに気づきました。さらに、学術的な検証も公表されて、すでにこれが定説となっているのであります。大学入試センターの責任はまさしく重大であります。去る十六、七日に行われた共通一次試験においても、社会科における科目間格差はさらに拡大し、政経の配点調整が行われるとの報道が今日流されておるのであります。
 小川文部大臣、事実はないことを信じているなどというその場しのぎの答弁では済まされない問題であります。三十三万四千人分受験者と父母に対して責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)
 また、最近の調査の結果、高校三年男子生徒に対する自衛隊の執拗かつ強引な入隊勧誘の実態が明らかにされております。判断力がまだ十分でない高校生には、直接的な求人活動を規制するというのが職業安定法の精神であります。いかに職安法の適用除外と抗弁しようとも、学校の就職指導を無視した家庭訪問等による勧誘などは、言語道断と言わざるを得ません。このような行き過ぎた隊員募集は、学校教育の不当な干渉であり、直ちに改めることを要求するものであります。
 次に、いま全国各地で問題化しています公共事業の入札談合問題についてお伺いをいたします。
 公共事業費は、中央地方を含めると二十兆二千億程度と言われておるのであります。しかも、この入札は、法令上競争入札が原則であることは御承知のとおりであります。しかし実態は、指名入札が九二%、随意契約が七%、競争入札はわずか〇・七%と推計されております。
 また、建設業界では、裏ジョイント、ペーパージョイントも半ば公然と行われ、下請の五ないし六段階の重層的構造も珍しくはないのであります。いま政官業界の癒着ぶりは国民の目に余るものを感じさせているのであります。もちろん企業の規模別の配慮を講じなければならないことは当然であります。しかし、談合には、断じて民主的な談合はないのであります。
 私は、当面緊急な対策として、第一に、指名入札の場合は業者数をふやすこと。第二に、予定価格及び業者の入札価格を事後に公表する。第三に、予定価格を漏らした者の制裁を明らかにする。第四に、競争入札をできるだけふやす。以上の四点は速やかに実行に移すことが重要であります。本来、行政改革が一番必要とされているのはまさしくこの問題ではないでしょうか。国民経済の立場に立った総理の明確な見解を求めるものであります。(拍手)
 私は、この機会に、去る十月、ガス突出事故で大惨事を引き起こし、その後会社更生法を申請した北炭夕張炭鉱の問題について、いまだ水没の坑底に眠る四十四名のみたまに弔意を込めてお伺いいたします。
 私は、今次災害に当たって、企業に罪あり、山に罪なし、地下なる資源は国民の宝であるということを改めて感じさせられたのであります。夕張炭鉱はわが国で最も新しい炭鉱であります。政府は、遺体の収容の万全を期するとともに、地域経済社会を守るためにも、第七次石炭政策を補強し、山の再建を図るべきであると存じますが、確たる見解を承りたいのであります。(拍手)
 政府は、先鋭化する経済摩擦の解消のためにその諸対策を進めておりますが、その中でもアメリカ側の農産物市場開放の要求は、わが国の大きな農政問題としてクローズアップされておるのであります。
 さきの国会では、食糧の自給率向上に関する決議が満場一致で決定されました。しかし、五十五年度のわが国の穀物自給率はついに三〇%の大台を割り、二九%となってしまったのであります。特に牛肉、オレンジの自由化の要求が強いと思われますが、牛肉、柑橘類の主産地は、さきに述べた地域間格差に落ち込んでいる南北の農業県であります。もし自由化されれば取り返しのつかない打撃が予想されるのであります。政府は、わが国の実態を正しく相手方に知らしめる努力をまず払うべきであります。そして総合的にわが国の輸出に関する構造政策を確立すべきであります。総理の見解を承りたいのであります。(拍手)
 沖縄は本土復帰十年目を迎えました。沖縄の県民所得は依然として全国最低に位置しています。軍事基地は、この間、わずか一割程度返還されたのみであります。軍事基地の縮小の努力と、引き続ききめ細やかな施策の充実が望まれますけれども、所信をお伺いいたしたいのであります。
 また、わが党がかねて要望いたしておりました関係者一千万人と言われる戦後未処置の問題に対して、政府は、調査検討費を予算に計上し、その取り扱いを民間有識者懇談会に一任するとしてあります。このことは、さきの原爆基本問題懇談会の例に見られるように、民意をかりて、これを否定しようとするお考えなのか。それとも、この際、戦後の処理を見直しをするというおつもりなのか、この際、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 私は、ここで改めて一票の重さについて触れなければなりません。
 一昨年の十二月、東京高裁が衆議院議員一人当たりの有権者の比率が二対一を超えるような格差は違憲との判決を下しておることは、御承知のとおりであります。司法の判断を待つまでもなく、国権の最高機関である国会みずからが、議会制民主主義の土俵のゆがみを直さなければなりません。このことは、いかなる選挙制度の改正にも優先するのであります。議会に多数を占める自由民主党の責任はまさに重大であります。自民党総裁でもある鈴木総理の決意のほどをこの機会に伺っておきたいのであります。
 鈴木総理は、演説の中で軍縮問題について触れられました。昨年十二月十五日閣議報告の八一年度世界経済白書の「むすび」には、軍備に向けられた資源を解放し、第三世界の開発や自国経済の再活性化のために活用することが、世界の平和と世界経済の発展のために強く望まれるとうたい上げておるのであります。これはまさに軍縮アピールそのものであります。私も、深く賛意を表するものであります。願わくば、この言葉がたてまえだけで終わることなく、誠実な総理の政治行動として現実に花開きますよう、国民とともに祈念してやまないものであります。総理の厳粛にして確固たる決意を国民の前に明らかにされますよう強く求めて、私の質問を終わる次第です。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#13
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 最初に、私の公約と政治行動との間に落差があるのではないか、防衛、政治倫理、憲法の問題を引用しての御意見がありました。しかし、私の政治姿勢は、総理就任以来不動であります。(拍手)
 私は、岡田議員がいみじくも述べられたとおり、内外の諸情勢が波乱に満ちている今日、わが国の平和と経済の破局回避に向け、常に国民との連帯の輪を築くために、道理にかなった政治を確立することに日夜腐心しているところであります。私は、今日のわが国が享受している自由と平和と繁栄を何としても将来とも確保していかなければならない、そのための基盤を確かなものとするため、全力を尽くす決意で日々の国政に取り組んでいるのであり、わが国の進路に誤りなきを期したいとの一心で、それ以外の私心などはございません。(拍手)このことは明確に申し上げておきたいと思います。
 次に、経済運営についての御質問でありますが、政府は、昭和五十七年度の経済運営について、物価の安定を基礎とし、国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を促進して雇用の安定を図ることとしております。
 所得税減税についてはこれを見合わせることといたしましたが、他方、民間活力が最大限に発揮される環境を整備し、生産性の向上を図る必要がありますので、金融政策の適切かつ機動的な運営を図るなどのきめ細かな経済運営を行い、また、住宅建設五カ年計画の的確な実施を図るとともに、個別不況産業対策、中小企業対策などの円滑な推進に努めることといたしております。
 このような経済運営によりまして、昭和五十七年度の実質経済成長率五・二%、そのうち内需が四・一%となることが見込まれますので、内需中心の経済成長が実現できるものと考えております。
 次に、財政再建に関する御質問にお答えいたします。
 まず、昭和五十六年度の税収見積もりについての御質問でありますが、申すまでもなく、歳入予算は、見積もりの時点における利用可能な資料という限界の中で、最大限の努力を傾けて、最も適切と思われる見積もりを行っているものであります。
 五十六年度の税収も、五十六年度予算編成の際、最善と思われる見積もりを行い、五十六年度予算の審議の際は、むしろ過小見積もりではないかとの御議論もあったほどでありますが、その後の五十六年度の経済動向が予想以上の物価安定を示したことなどによりまして、約四千億円の減収が避けられないことが五十七年度予算の編成過程で明らかになってまいりました。このため、五十六年度補正予算ではその分を補正減額見合いに三千七百五十億円の特例公債を追加いたしました。まことにやむを得ぬことでありますので、御理解を賜りたいと存じます。
 財政再建に対する私の決意をお尋ねでございましたが、私の決意はいささかも変わりません。五十九年度特例公債脱却は政府の基本方針であり、その実現に向け最大限の努力を続けてまいります。
 次に、福祉政策についてのお尋ねでありますが、わが国の社会保障は近年充実が図られ、制度的には西欧諸国と比較して、ほぼ遜色のない水準に達しております。
 今後は、高齢化社会を控え、社会保障が国民生活の基盤であるとの認識に立ち、また国民の将来の負担をも考慮しながら、社会保障が長期的に安定し、有効に機能していくよう、その効率化を進めていく必要があると考えます。
 五十七年度社会保障関係予算については、こうした観点から、老人、心身障害者を初め経済的、社会的に恵まれない人々に対する施策等を充実するとともに、給付と負担の見直しを行い、その合理化、適正化を図りました。
 この結果、社会保障関係予算の増加額は二千四百八十億円となりましたが、これは一般歳出増加額全体の約四四%に当たるものでありまして、全体としての福祉水準は維持されていると考えております。
 心身障害者の雇用促進については、雇用対策の最重点課題の一つとして取り組んできたところでありまして、国際障害者年を契機に、身体障害者の実雇用率も従来に比べ相当の伸びを示しております。今後は、特に重度障害者に重点を置き、その特性に応じたきめ細かな対策を推進したいと考えております。
 僻地における医療の確保につきましては、僻地中核病院の整備、巡回診療の実施など、各般の施策を総合的に講じているところであります。
 次に、談合問題についてでありますが、昨年来、公共事業の発注に関連してさまざまな疑惑が指摘されていることはまことに遺憾であります。政府といたしましても、かねてより建設業界に対し、建設大臣より関係法令の遵守を指導してきたところでありますが、今後とも指導の徹底強化に努めてまいりたいと考えます。
 公共事業に係る入札の合理化対策等については、建設大臣より中央建設業審議会に調査審議をお願いしているところであり、この審議状況を参酌し、できるだけ速やかに所要の是正策を講じてまいりたいと思います。
 次に、国際経済摩擦対策、特に農産物についてお尋ねがございました。国際的な経済摩擦の解消は、わが国が当面する緊急な課題であり、政府は、昨年十二月十六日の経済対策閣僚会議におきまして、市場開放対策、輸入促進対策、輸出対策など五項目から成る対外経済対策を決定し、その推進に努めております。すでに、東京ラウンドの合意に基づく関税率の段階的引き下げの二年前倒しを決定し、また、来る一月三十日に予定している経済対策閣僚会議には、輸入検査手続などの改善措置が諮られることとなっております。
 このような全体的努力の中にあって、お尋ねの農産物につきましては、わが国農業の実情や、これまでの農産物の輸入拡大措置について、今後とも諸外国に十分説明し、その理解を得ながら適切に対処するとともに、長期的展望に立って、農業生産の再編成と農業の生産性の向上に努め、総合的な食糧の自給力の維持強化を図ってまいります。
 次に、沖縄県が抱えている問題についてでありますが、沖縄に所在する米軍施設、区域は、わが国の安全並びに極東の平和及び安全に寄与していると考えております。しかし、施設、区域について整理統合を図る必要があることは認識しており、かねてより、日米安保条約の目的と沖縄振興開発計画等との調和を図りつつ、日米間で了承された施設、区域の整理統合計画の実施に努めてきているところであります。
 また、沖縄の経済社会の厳しい現状についてはよく理解しておりますので、沖縄の事情も十分勘案し、引き続き必要な施策を講じてまいりたいと存じます。
 次に、戦後未処理問題についてのお尋ねでありますが、さきの大戦により犠牲を余儀なくされた方々に関しては、これまで戦没者遺族、戦傷病者等について一連の援護等の措置を講じてきたところであります。政府としては、これら一連の措置をもって戦後処理に関する措置は終了したものと考えており、改めて戦後処理問題の見直しを行うことは考えておりません。
 しかしながら、戦後処理問題については、戦後三十六年を経た現時点において、一部に所要の措置を図るべきであるという強い要望がありますので、民間有識者による公正な検討の場を設け、これらの問題をどのように考えるべきかを検討していただくこととしたものでございます。(拍手)
 次に、国会議員の選挙区別定数の問題につきましては、選挙制度上きわめて重要な問題であると認識しております。御承知のとおり、この問題についてはこれまでも各党間の合意に基づいて是正が行われてきたところでありますので、事柄の性質上、今後とも各党間において十分論議を尽くしていただき、その合意に基づいて改善していくことが最も民主的かつ現実的な方法であると考えております。
 次に、軍縮問題についてお尋ねがございました。
 わが国は、平和憲法のもとで非核三原則を堅持し、軍事大国とはならず、その持てる力を世界の平和と繁栄のために用いることをもって国の基本的な方針としております。このような立場に立って、政府は、これまでも国連などの場を通じ、現実の国際関係の中で実現可能な具体的軍縮措置を一歩一歩進めていくための国際的努力が必要であることを強く訴えてまいりました。
 来る第二回国連軍縮特別総会は、このような国際的努力を一層強化するためのまたとない機会であると考えます。私は、私自身これに出席して、平和国家としてのわが国の立場から、核軍縮を中心とした軍縮の促進を強く訴えたいと考えております。(拍手)
 以上、岡田利春議員の御質問にお答えいたしましたが、残余の点につきましては、所管大臣より答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#14
○国務大臣(河本敏夫君) 経済問題についてお尋ねがございましたので、順次お答えをいたします。
 第一点は、内需拡大のための方策いかんということでございますが、これに対しましては、先ほど総理から、金融政策、物価政策、公共事業に対する考え方、住宅政策あるいは個別政策等についてお答えがございましたので、この点は省略をいたしまして、私から二点だけを追加して申し上げたいと思います。
 一つは、経済運営の背景をなしておりますエネルギー問題でございますが、昨年来、エネルギーの需給関係は小康状態が保たれておりまして、この点はわが国の経済政策もある程度過去二カ年に比べましてやりやすくなっておるということでございます。
 第二点は、最近の先進工業国各国政府並びに権威のある国際機関の経済見通しの発表を見ますと、第二次石油危機が起こりましてからちょうど三年目になるわけでありますが、昨年とことしの前半が最も経済状態の悪い時期であって、ことしの後半から各国とも順次回復の方向に行くであろう、こういう見通しを出しておりますが、この点は、私どもの経済政策がやはりある程度やりやすい背景でなかろうかと考えております。
 次に、第二点は、雇用者所得の問題についての御意見がございましたが、雇用者所得の問題につきましては、これは労使双方の交渉にゆだねることになっておりますが、政府といたしましては、労働生産性の向上とか、あるいは構造不況業種の解消のための個別政策、こういう政策を進めることによりまして、労使関係、特に労使交渉が順調に進むような、そういう背景づくりのための産業政策を進めたいと考えておるところでございます。
 第三は、減税問題でございますが、この点につきましては、先ほど総理からお答えがございましたから省略をいたしますが、(発言する者あり)まあ基本的な考え方を申し上げますと、五十七年度は所得減税をすることは大変むずかしいということでありますが、しかしながら、できるだけ早く所得減税ができるような条件を整備するような、そういう政策を進めるというのが政府の考え方でございます。
 第四点は、住宅政策でありますが、住宅政策を総合的にどのように進めようとしておるのか、こういうことでありますが、一つは、住宅金融につきましてきめの細かい積極的な対策を進めております。また、土地税制の改革及び土地の供給が拡大するような、そういう土地政策を進めておるということでございます。また、中古住宅の建てかえのために積極的な政策を用意いたしております。
 以上のような対策によりまして、五十七年度には住宅建設がある程度回復に向かうであろうと期待をしておるところでございます。
 第五点は、産業間のばらつきの問題、地域のばらつきの問題についてのお尋ねでございますが、これを解消するためには、やはり全体としては景気の回復が前提条件になろうかと思いますが、さらにそれに加えまして、個別的な不況業種対策、さらにまた、中小企業対策、不況地域に対する個別対策、こういう政策をきめ細かく、かつ強力に進めてまいりたいと存じております。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇〕
#15
○国務大臣(安倍晋太郎君) 岡田議員の第一の御質問は、特定不況産業安定臨時措置法を抜本的に改正して、不況産業の立て直しと雇用の確保のために、その対策を明らかにすべきである、こういうことでございますが、現在、御承知のように、基礎素材産業は非常に深刻な不況の状況に陥っておりまして、その対策の実施は、国民経済上きわめて重要な課題と考えております。このために、いま通産省では、産業構造審議会におきまして、各産業ごとの対策を鋭意検討して、実施し得るものから順次実施をいたしておるわけでございますが、特安法につきましては、これらの検討結果を踏まえまして、法律上の措置の必要性を具体的に検討いたしまして、新しい事態に対応した基礎素材産業全般の対策のために必要なものにすることが適切ではないかと考えておりますが、その時期、タイミングにつきまして、いま考慮をいたしておる段階でございます。
 なお、新夕張炭鉱の再建の問題についての御質問でございますが、北炭夕張社の再建につきましては、現在、同社が、更生手続開始の申し立てによりまして、裁判所の管理のもとに会社の更生の可能性が探られておるところでございますが、政府としては、同社が、会社更生法の定めるところによりまして、労使の努力を基礎として、遺体の収容に万全を期しつつ再建への道を見出すことを期待をいたしております。
 私は、本日、御承知のように、一部の再開が行われたわけでございますが、これが再建へつながるように念願を特にいたしております。
 しかし、裁判所を初め関係者の再建につきましての理解を得るためには、御指摘のように、まず会社当事者及びその関連グループの熱意と努力を基礎として、鋭意説得力のある長期展望を明らかにすることが必要であると考えられるわけでございますが、そのためにも、特に企業において真剣な努力を行うように現在促しておるところでございます。
 再建のための財政支援につきましては、司法判断によりまして更生計画が認可、決定されるなど、再建の見通しが立った段階で所要の検討を行う考えでございますが、当面の資金調達につきましては、御承知のように、資産の処分、関連グループの支援などの自己調達が基本でございますが、政府としても、地方公共団体等の協力を求めつつ、現行制度の中で可能な限りといいますか、許容される範囲内におきまして、全力を尽くして支援を現在講じておる次第でございます。
 なお、昨年八月の石炭鉱業審議会第七次答申においては、石炭鉱業をめぐる内外の諸条件から見まして、石炭鉱業による自助努力を前提とすれば、現存炭鉱において現在程度の生産、約千八百万トンを維持することは可能であり、さらに、今後の石炭企業の体質改善や石炭需給の好転に伴い、増産の可能性も期待されるといたしておるわけであります。このような答申の基本的な考え方は、現在不幸な北炭の問題がございますが、これをもってしても変化はない、こういうふうに考えておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣小川平二君登壇〕
#16
○国務大臣(小川平二君) 共通一次試験に関連して御質疑がございましたが、大学の入学者の選抜は、大学教育を受けるにふさわしい能力、適性を公正妥当な方法で選抜すべきことが基本であり、国公立大学において、長年にわたる調査研究に基づいて昭和五十四年度入試から共通一次試験を実施していることは御高承のとおりでございます。
 大学入試の改善を図りますためには、学歴偏重や有名校偏重の社会的風潮の是正、さらに国公私立の各大学について特色のある質的な充実を図るなどの施策を総合的に講ずる必要がありますが、入学者選抜に関しては、同一の試験問題で一斉に実施する共通一次試験を取り入れ、衆知を集めて難問奇問を排除し、高等学校の基礎的な学習の達成度を評価することといたしました。各大学の二次試験の工夫、改善とあわせてさらに入試方法の改善、充実を図っていくこととしております。
 昭和五十六年度の共通一次試験の採点に際して、大学入試センターが人為的に科目間の配点操作をしたという疑惑が一部に持たれておりますが、同センターにおきましては、教科専門委員会においてあらかじめ配点基準を設定いたしまして、採点は厳正に行われております。伝えられるような事実はございません。同センターにおきましても、今日まであらゆる機会にそのような誤解を払拭いたしますための説明を行ってきているところでございます。
 今後とも、国公私立大学を通じて、大学入試がさらに改善されまするように、文部省といたしましては関係者の一層の努力を期待しているところでございます。
 次に、自衛隊員の募集についての御質疑でございますが、文部省におきましては、労働省と連携をいたしまして、高等学校の新規卒業者の就職にかかわる手続が適切に行われますよう、求人申し込みの受理の期日や選考開始の期日等について、学校や企業に対しかねてから指導を行っております。
 自衛隊員につきましては、自衛隊法に基づいて、防衛庁が直接募集を行うことが認められておりまするが、新規卒業者につきましては、防衛庁に対しましても、文部省、労働省の指導方針に協力をしてくれるよう求めているところでございます。
 文部省としましては、教育的観点から、求人活動は所定の時期に学校を通じて、また学校の協力のもとに行われることが適当と考えておりますから、防衛庁とは今後とも必要に応じて協議を遂げてまいるつもりでございます。(拍手)
#17
○小里貞利君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十八日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#18
○副議長(岡田春夫君) 小里貞利君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○副議長(岡田春夫君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十八分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  鈴木 善幸君
        法 務 大 臣 坂田 道太君
        外 務 大 臣 櫻内 義雄君
        大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君
        文 部 大 臣 小川 平二君
        厚 生 大 臣 森下 元晴君
        農林水産大臣  田澤 吉郎君
        通商産業大臣  安倍晋太郎君
        運 輸 大 臣 小坂徳三郎君
        郵 政 大 臣 箕輪  登君
        労 働 大 臣 初村滝一郎君
        建 設 大 臣 始関 伊平君
        自 治 大 臣 世耕 政隆君
        国 務 大 臣 伊藤宗一郎君
        国 務 大 臣 河本 敏夫君
        国 務 大 臣 田邉 國男君
        国 務 大 臣 中川 一郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 原 文兵衛君
        国 務 大 臣 松野 幸泰君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 角田禮次郎君
        外務省条約局長 栗山 尚一君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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