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#1
第096回国会 本会議 第7号
昭和五十七年二月十九日(金曜日)
    ―――――――――――――
  昭和五十七年二月十九日
    午後二時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  及び租税特別措置法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後二時三分開議
#2
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(福田一君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 江崎真澄君、加藤紘一君、倉成正君、丹羽兵助君、林義郎君及び村山達雄君から、二月二十日より二十七日まで八日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。
    ―――――――――――――
 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#5
○議長(福田一君) この際、内閣提出、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣渡辺美智雄君。
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#6
○国務大臣(渡辺美智雄君) 法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 初めに、法人税法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
 法人税につきましては、最近における社会経済情勢の推移及び現下の厳しい財政事情に顧み、法人税制の整備合理化を行うことといたしております。
 まず、法人税の延納制度について、縮減の措置を講ずることといたしております。
 また、適格退職年金契約の範囲に、全国共済農業協同組合連合会が締結する生命共済契約を加えることといたしております。
 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
 租税特別措置につきましては、最近における社会経済情勢の推移及び現下の厳しい財政事情に顧み、租税特別措置の整理合理化、交際費課税の強化を行う一方、長期安定的な土地住宅税制を確立するとともに、土地供給及び住宅建設を促進する等の見地から、土地住宅税制について所要の措置を講ずる等の改正を行うことといたしております。
 すなわち、第一に、企業関係の租税特別措置につきましては、適用期限の到来するものを中心に見直しを行い、価格変動準備金制度について、価格変動の著しい物品以外の物品を対象から除外するほか、特別償却制度及び準備金制度等の整理合理化を行うことといたしております。また、登録免許税の税率軽減措置につきましても所要の整理合理化を行うことといたしております。
 第二に、交際費課税制度につきましては、今後三年間の措置として、中小規模の企業に対する定額控除を残した上、交際費の全額を損金不算入とし、課税の強化を図ることといたしております。
 第三に、土地住宅税制につきましては、土地譲渡所得の長期、短期の区分を所有期間が十年を超えるかどうかによることとし、長期譲渡所得については、特別控除後の譲渡益四千万円超の部分を二分の一総合課税とするほか、所有期間十年超の居住用財産について買いかえの特例制度を創設する等の措置を講ずることといたしております。
 第四に、同居の特別障害者について五万円の特別控除を認めることとするとともに、年金形式で支払いを受ける一定の勤労者財産形成貯蓄の利子等については、退職後も引き続き非課税とする措置を講ずることといたしております。
 第五に、国際科学技術博覧会出展準備金制度を創設するとともに、適用期限の到来する租税特別措置について、実情に応じその適用期限を延長するほか、所要の改正を行うことといたしております。
 以上、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#7
○議長(福田一君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。野口幸一君。
    〔野口幸一君登壇〕
#8
○野口幸一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に若干の質疑を行わんとするものであります。
 まず、わが日本社会党は、今日、すべての国民が注目しているいわゆる税制のあり方について、その不公平を是正するよう、再三にわたり政府に要求してまいりました。そして、そのことは行政改革や財政再建の基本になくてはならないと主張してまいりました。
 言うまでもなく、税は国民の義務でありますが、同時に、課税正義の原則や犠牲平等の原則を踏み外してはなりません。乏しきを憂えず等しからざるを憂うという鉄則を忘れた税制は、国民の協力を得られないものであります。
 さて、政府は、五十七年度予算において、その税収見込みは三十六兆六千二百四十億円とし、対前年伸び率二二・四%としております。政府は、昨年十二月、当初見込んだ税収の達成が困難であるとして、四千五百二十四億円の減額補正を行い、その税収見込み額は三十一兆八千三百十六億円として、対前年比一八・五%増と修正いたしました。
 また、十一月現在の五十六年度税収累計は十四兆九千五百八十二億円でありまして、対前年比九・八%にとどまっております。十二月にはやや好転したと言われておりますものの、政府の言う税収伸び率で計算いたしましても、年度末にはさらに九千五百億ないしは一兆円の税収不足を生ずるものと見られ、五十六年度の税収総額は三十兆八千億円前後にとどまるものと推定できるのであります。
 この五十六年度の税収をベースにいたしまして、五十七年度の税収見積もりを考えてみますと、一七・九%の伸び率を必要といたします。また、増税分を除く過去五カ年間の対前年増収率の平均は約一二%でありまして、五十七年度の想定増収率は約五割増しという過大な見込み率となっているのであります。これは全く不可能に近い数字を並べているとしか言いようがありません。言葉をかえて言うならば、まさに粉飾予算と言っても過言ではないと思うのであります。
 総理は、五十六年度の税収の見通しをどう考えておられますか。また、補正後の再修正は全くあり得ないと言明されておられますが、そのことは、この場においても、なおそのように考えておられるのか、確固たるお返事を賜りたいのであります。(拍手)
 なお、仮に今後におきまして、五十六年度補正を上回る税収が不足し、再補正の必要を生じた場合には、今年度中に第二次補正を国会に御提出されるお考えがございましょうか。この点も明らかにお答えをいただきたいのであります。
 そこで、五十七年度の経済見通しにおきまして、このような大幅な増収が可能であるという予想が立てられるのでしょうか。政府の言う実質五・二%という経済成長率は全く空論に近いしろものであると言わなければなりません。私は、本年度の成長率は三・九%程度と見ておりますが、仮に本年度が、政府の言う四・一%達成されたとしても、五十七年度により高い上昇は全く考えられないのであります。作為的な数字としか受け取れませんが、その意味を御説明いただきたいと存じます。OECDの予測は三・七五%であり、民間も大方三ないし四%前半にしか考えておりません。総理は、この経済成長率実質五・二%の達成が可能と考えておられますか。政府の算出の根拠をお尋ねしたいのであります。(拍手)
 御存じのように、実質成長率は就業者増加率プラス生産性向上率という図式で表現されますが、仮に就業者増加率一・一%と見たとき、生産性向上率は四・一%となるのでありまして、経済界の言う、五十七年度における生産性向上率は二・八%程度とし、民間の経済成長率の算定は三・八ないし四・二%程度と見込んでおりますが、これが政府見通しとの対比においていかなる見解をお持ちであるか、お聞きしたいのであります。同時に、その達成のための重点施策は何に求めておられるのか、あわせて河本経済企画庁長官にも御見解を賜りたいと存じます。
 次に、減税問題についてお尋ねいたします。
 いまや国民は一兆円減税に耳目を傾けております。政府は五・二%の成長率達成のため、さらに貿易摩擦の生じている現状にも照らして、内需の増高を求めておられます。そのために若干の税制の措置を講じて住宅建設の促進等を図っておられますが、今日、異常に高い土地代の上に建築をすることは並み大抵のことではありません。現在の状況のもとでは全く至難のわざであると言っても過言ではありません。いずれにしましても、購買力の増加と、はずみをつけることが大切であります。この引き金は減税しか残されていないと考えますが、いかがでしょうか。この際、政府の言う財政再建も国民の協力なくしては達成できないことでもあり、国民の要望する一兆円減税に踏み切ることを再度提言いたしますが、いかがでございましょうか。総理並びに河本長官の御見解を明快にお願いをいたしたいと思います。
 政府は、私どものこの要求に対して財源がないと口癖のように言われます。もちろん、財源は天から降ってくるものではありません。財源はつくるものであります。やろうという決意さえあれば財源は生まれるのであります。要は決断であろうと存じます。大蔵大臣、いかがでしょうか。大臣の詳細かつ納得のいく御答弁を期待いたします。(拍手)
 そこで、財源対策におよそ三つの方法があると考えられます。
 一つは行政改革の徹底によること、すなわち、補助金、交付金、一般経費の削減を初め節約によって財源を求めるやり方、二つ目には、税制の抜本的改革であり、記帳制度の導入などを含めまして不公正を是正し、税制の改正によるものであります。三つ目は、大蔵大臣がひそかに考えておられます増税でありますが、財源対策として政府はどのように考えておられますか、この際、伺っておきたいのであります。
 また、予算委員会等におきまして、五十七年度は無理だ、五十八年度において間接税等の導入とセットで考えたいというような意味のお答えが大蔵大臣からあったと聞いておりますが、そのようなお考えがございましたら、この際、明らかにしていただきたいのであります。
 さらに、このお考えは、直接税対間接税の対比において発想され、いわゆる直間比率は現在七対三だが、理想は五対五だと言い、当面六対四にしたいとその構想をお述べになっておりますが、そのための間接税は何をどのように課税するのか、また何と何を増税しようとするのか、これも明らかに御答弁いただきたいのであります。
 次に、本年の収入財源に充てるために御提案になりました法人税の延納の縮減について伺います。
 本案は、五十七年度の税収を補うために五十八年度の税収を先食いしようというものでありますが、この考え方は全く姑息な手段であり、つじつま合わせの産物であります。むしろ、貸し倒れ引当金の法定繰り入れ率の引き下げを大幅に行う。さきに大蔵省が考えておられました退職給与引当金やギャンブル税、広告税などの改正は一体どうなったのでしょうか。それこそこの際提案されてしかるべきものと考えますが、大蔵大臣の御見解を承りたいのであります。
 また、延納の縮減は、特に中小零細企業にとってその経営を圧迫するものであります。縮減による納付は、ほとんどが借金をして納付することになるのでありますが、中小零細企業には、もはや担保力もなければ借り入れ能力もありません。この改正によって、中小零細企業は一層の負担増加となり、かえって滞納者がふえるのではないでしょうか。大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。
 次に、土地税制の改正でありますが、この改正の特色は、一言で言えば、土地所有者に対しささやかなむちを打ち、大きなあめを与えることによって、土地の供給の改善を図ろうとするものでありますが、御存じのように、宅地並み課税の目的は、農地売却や宅地化を促進するために考えられたものでありまして、実際には、市街化区域の大部分が市町村の減免措置によって実効を得ていないということから思いつかれたものでありましょうが、そんな甘いものではありません。仮に、農地の保有税を完全に宅地並みといたしましても、これは土地供給向上につながると考えるのは無理な話であります。土地所有者が宅地並み課税に驚いて土地を売却し、金にかえたといたしましても、その利子が土地価格の上昇率より低いだけに、その利害は明白であります。
 さらに、譲渡所得税の軽減なども同様でありまして、これはすでに五十三、五十四、五十五年の三年連続の軽減措置が、宅地の供給増と地価の抑制につながらなかったということから考えましても、今回の改正も、税の不公平だけが拡大されただけに終わるのではないでしょうか。
 いま大切なのは、何といっても勤労者の住宅取得能力の向上にあることを強く考えるべきであります。ましてや、法人の土地譲渡益の重課税や市街化調整区域内の特別土地保有制度は、その保有期間十年以上の場合は適用しないこととなっておりますが、これは大地主と土地の買い占めの企業救済のための措置とも言えるのであります。
 特に大企業の持っている売り地の大部分は、昭和四十四年から四十八年にかけて、その土地投機の最盛期に取得されたものが多く、保有期間十年を基準にして重課税をやめ、保有税もかけないとする本改正案は、まさに大企業の税負担を軽減するだけにつながるものであります。
 このような措置が、宅地の供給増と住宅建設の増加をどのような理由によって期待をされておられるのか、建設大臣にその見解を求めるものでございます。
 以上、今回提案されました法案についての質疑をいたしましたが、国民に対し、その全般にわたり誠意ある御答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 野口幸一議員にお答えいたします。
 まず、五十六年度の税収見積もりについてでありますが、税収の見積もりは、見積もりを行う時点における利用可能な資料に基づいて、税の専門家たちが最大限の努力を傾けて見積もりを行っているものでありますが、利用可能なデータにはどうしても限りがありますから、なかなか見積もりのとおりの結果にはなるとも言い切れない性格を持っております。
 お尋ねの五十六年度補正後予算の税収見積もりにつきましても、現段階において最善の努力を行った結果であることをぜひ御理解を賜りたいのであります。仮に今後税収不足が生ずるような場合には、歳入歳出を通ずる全体としての決算の状況を踏まえ、適切に対処することといたしたいと考えております。
 次に、五・二%成長の達成のための重点施策についてのお尋ねでありますが、政府の経済運営の基本的態度にもお示ししてございますが、金融政策の適切かつ機動的な運営を図ることに加え、民間活力が最大限に発揮される環境の維持整備に努めること、住宅金融の拡充、宅地供給の促進など、住宅建設の促進を図ること、個別不況産業対策、中小企業対策等の円滑な推進に努めることなどによりまして、きめ細かい経済運営を図ってまいりたいと考えております。
 個人消費の動向が注目されておりますが、消費者物価の安定に加え、実質所得の回復を背景として、消費も相当程度伸びが高まるものと見込まれますし、また、御承知の財政事情に加えて、わが国の個人所得に対する所得税負担の割合は、国際的に見ましてもいまだ低い水準にありますから、五十七年度の経済運営に関して、所得税減税という方法によることは残念ながらできないと考えております。
 その他の質問につきましては、所管大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#10
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えをいたします。
 一兆円の減税の財源対策として御提案がございました。一つは、行政経費を徹底的に抑えろという話でございます。
 これは私どもやってまいりまして、ともかく二十数年来にない非常に伸び率の低い、一般歳出一・八%しか伸ばさないという予算を組んだわけですから、いまの段階でこれ以上もっとばっさり切れ、いざどこを切るかということになりますと、総論賛成だけれども、各論になるとなかなかこれはまとまらない。私は、切った、抑え込んでも――社会保障でも文教でも伸びてはいるのですよ。それでも文教、福祉を切ったとか抑えたとかと言われておるわけですから、そういうようなことで、現実の問題として、今後とも歳出の削減、合理化には努めてまいる所存でございます。そう簡単に割り切れるものではないわけでございます。
 その次のことは、記帳義務等の導入、不公正税制の見直し、これらにつきましては、今回も特別措置の洗い直しということをかなりやってきたわけであります。御承知のとおり、特別措置の減税額はおおよそ一兆一千億円程度、こう見られておりますが、そのうちの大部分、八千数百億というものは、これは個人関係でございまして、マル優とか特優とかというような、いわゆる非課税利子等が大部分なわけであります、個人住宅取得とか。そういうようなことで、こういうようなものも、こういう時世なんだから全部一遍、非課税制度というものは抜本的に考え直すべきではないか、これは一つの御提案かと思います。しかし、現在はそこまではまだ考えておらないわけでございます。しかし、細かなものでありましても、目的を果たしたいろいろな減税ですね、そういうようなものは、今後とも徹底的に洗い直しは続けてまいりたい、そう思っております。
 それから、増税のお話がございまして、大蔵大臣は何か間接税でも増税をするのかというようなお話がございました。私は、増税するということは言っていないのであります。
 ただ、現在の日本の税制度、枠組みというのが、だんだん間接税のシェアというものがうんと小さくなってきまして、二〇%台になってしまった。年々一%ぐらいずつ減ってまいります。二七%ぐらい、あと七二%ぐらいは直接税、こういう税率構造でございますと、いやおうなしに、社会保障費や何かはどうしても伸びますから、その負担は法人税と所得税で全部持ってくれ、ほとんど持ってくれということになります。
 これは、本当の問題として好況不況もございますし、法人税などの場合は好況不況があって、景気のいいときは入るが、景気の悪いときは入らない、社会保障費は景気がいい悪いにかかわらず守っていかなければならぬ、むしろ景気の悪いときの方がよけいかかるかもしれない、そういうような構造という問題が果たしていいのだろうか。昭和九年から十一年までは、大体六五%ぐらいが間接税であったのです。昭和二十五年から高度経済成長時の四十年、四十五年ごろまでは、大体間接税の比重が四五%ないし四〇%ぐらいございました。これがいまは三〇%を割って二〇%台で、年々落ち込んでいく。諸外国を見ましても、大体フランスの間接税は六〇、それからイギリス、ドイツあたりは四〇から四七、八、日本は二〇%台、果たしてこれでいいのかどうか、非常な疑問がありまして、これは、こういう点については……(「はっきり言えよ」と呼ぶ者あり)いえ、これは国民の問題ですから。所得税でいっぱい仕事をしていった方がいいと言う人もあるし、いや、そうじゃなくて、もっと広く薄くした方がいいと言う人もありますから、今後の問題として、これは税調等では検討されている問題だということを申し上げただけでございます。
 それから、法人税の延納の問題。これは、そういうことをやったって仕方がないじゃないか、こそくな手段だということでございますが、これは所得税の延納とのバランス、所得税よりも法人税の方が延納を優遇されているというようなことは困る。したがって、そういう点のバランスから、この際は訂正をさせていただいたということが一つ。
 それから、貸し倒れ引当金等をもっと法定繰り入れ率をいっぱいにふやせということでございます。これも実は、繰り入れ率を数次にわたって直してきておることでありまして、今回も、金融保険業以外の業種につきましては二年間にわたって二割程度の繰り入れ率の引き下げということを提案させていただいておる次第でございます。
 退職給与引当金も、これは四〇%なんと言わないでもっと下げてしまえ、これは議論なんです。実はそういうような議論があります。しかしながら、今後これにつきましては、今後における企業年金制度の動向なども見きわめながら、基本的な検討を行っていくべきだ。これは労働組合の中からも、退職給与引当金をばさっと下げるということについては反対のところもあるのです、かなり大手でも。それは年金との関係なんです。したがって、そこらのところの検討をしながら、私は、今後さらにそれは深度を深めていきたい、そう思っております。しかし、今回はいじらないことにいたしました。
 広告課税、ギャンブル課税の問題につきましては、これは新税でもございますので、五十七年度では見送ることにいたしたのであります。この問題も、個人的には賛成者がいっぱいあるのですが、政党になるとなかなかこれはまとまりにくい点もございまして、そういう点で、別に特定な党をどうこうと言うわけではございませんよ、自民党も含めてでございますから。そういう点も今後は、しかし検討はしていきたい。
 それから、延納を延ばした結果、滞納ができるのじゃないかという御心配でございます。これにつきましては、現在の状況は、滞納の発生割合というのは五十五年度分で二・二%ぐらいあります。しかし、延納制度ができた昭和二十六年次は四七・九、四八が滞納しておったというのは、まるきり時勢が違っておる。それから、いまは非常に金融も緩和しておるというような状態もございまして、それによって大きく滞納がふえていくというようには考えておりません。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#11
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は三つございます。
 その一つは、民間調査機関では経済成長見通しを三・八%ないし四・二%と想定をしておるが、政府の見通しは五・二%である、なぜそういう差ができておるのかということでございますが、民間経済機関の見通しは、おおむね昨年の十一月から十二月の前半までに出ておるのでございます。それで、政府は、十二月の下旬に五十七年度の経済運営の基本方針を発表いたしまして、それに基づきまして、景気回復を主眼にいたしました予算を編成をいたしました。特に住宅政策などに対しましては非常に配慮を加えたわけでございますが、民間の調査は、この政府の予算が決まる前の結論でございますので、その点で若干の違いがあろうかと思います。
 ただ、しかしながら、政府の目標を実現をいたしますためには、これからも引き続いて政策努力が必要だと考えております。特に、いま世界経済の激動期でもございまして、その影響は日本経済も当然受けることになりますので、経済の変化に即応いたしまして、機敏でかつ適切な政策の運営をしていかなければならぬと考えております。
 それから、第二点は、日経連がいろいろな数字を発表しておるが、政府はどう考えておるかということでございますが、結論を申し上げますと、いろいろの計算がございますが、政府の発表しております雇用者所得の計算の基準と日経連の考え方が、全然基準が違っておるということでございます。政府は、御承知のように、五十七年度の雇用者一人当たりの伸びは六・九%と想定をしております。また雇用者の増加も考えられますので、雇用者所得全体の伸びは、五十七年度八・六%と想定をしておるのでございます。
 第三点は、減税問題でございますが、これは先ほど総理並びに大蔵大臣からも御答弁がございましたが、五十七年度の減税は、私どももこれはなかなかむずかしいと思っております。
 ただしかし、長い間所得税率を据え置いておりますので、やはり五十八年度以降できるだけ早く減税ができるような、幾つかの条件がございますが、その条件を整備することが政府のこれからの大きな課題である、このように理解をいたしております。(拍手)
    〔国務大臣始関伊平君登壇〕
#12
○国務大臣(始関伊平君) 土地税制改正の効果についての御指摘でありますが、現行土地税制の基本的部分は、昭和四十七、八年当時の異常な土地投機の状況を背景に整備されたものでありますが、このような投機が鎮静化した今日においては、これが土地の流動化を阻害し、近年の宅地供給停滞の一因となっていると考えられます。
 今回の土地税制の改正においては、住宅建設及び宅地供給の促進を図りますために、個人の譲渡所得課税における四分の三総合課税のいわゆる重課措置の撤廃、それから第二に、優良な住宅宅地供給を促進する見地からの臨時的な税の軽減、五十七、五十八、五十九と三カ年を限りまして、臨時的でありますが、かなり思い切った税の軽減をやる。それから第三に、住みかえを促進する見地からの居住用財産の買いかえ制度の創設、さらにもう一つ、いわゆる宅地並み課税の拡充等を行うこととしており、これらの改正を通じて、住宅宅地供給の促進に相当の効果を上げるものと私どもは期待いたしております。
 なお、建設省といたしましては、土地税制の改正とあわせて総合的なその他の施策を講ずることにより、住宅宅地供給の促進に一層の実効を上げてまいりたいと考えております。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(福田一君) 鳥居一雄君。
    〔鳥居一雄君登壇〕
#14
○鳥居一雄君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に対して、若干の質問を行うものであります。
 まず第一に、税制改正と経済財政運営の関連から、五十六年度の歳入欠陥について伺います。
 総理は、五十六年度を財政再建元年として、赤字国債の減額二兆円を公約されておりました。また、財政再建を口実に、国民には史上最大の一兆四千億円の増税、所得税減税見送りによる実質増税、公共料金の値上げなど負担増を強いられたのであります。
 しかし、政府の経済財政運営の失敗は、税収不足を招き、赤字国債三千七百五十億円の追加発行に至りました。これは総理の公約違反であり、まことに遺憾であります。この点について総理の所見を求めます。
 同時に、五十六年度の税収不足は、すでに昨年の夏ごろから十分に予測できたにもかかわらず、政府は何ら具体的な対策を講じないままで、突発的に赤字国債に踏み切ったことも納得できないのであります。あわせて答弁願います。
 また、政府は、税収不足に陥った原因を物価安定など景気動向の見込み違いにのみ押しつけております。私も、景気動向が税収に及ぼす影響を否定するものではありません。しかし、税収が落ち込んだ原因には、政府が財政再建のみを優先し、経済や国民生活の実情を無視して、史上最大の増税や減税見送りによる実質増税を強行したことも含まれるのではないでしょうか。この増税がもたらす景気動向への影響についてはどう認識し、どう分析されているのか、この際明確にしていただきたいのであります。
 さらに、所得税減税について伺います。
 総理、所得税減税の実施は、国民的要求であるとともに、わが国経済の浮沈のかぎを握っております。
 政府は、五十七年度の実質経済成長率五・二%の達成を目指しておりますが、仮にこの目標達成が不可能な場合、わが国経済は、失業者の増加、経常収支の黒字拡大、税収不足、地域間格差の拡大、構造不況業種の深刻化など、五重苦を背負うと言われております。また、民間の経済研究機関の経済予測では、実質成長率を政府並みの五%台としているところは皆無であります。
 総理、政府経済見通しの達成には対策が不可欠であります。政府が行える対策とは、所得税減税、公共投資の拡大、公定歩合の引き下げでありましょう。このうち、公定歩合の引き下げは、円安傾向が続く現状では、対外金利との関係から円安を加速させることにもなりかねず、困難と考えられます。残る公共投資と所得税減税を比較した場合、五十六年度の極度の内需不振の最大の原因が勤労者の可処分所得の伸び悩みにあったことから、やはり所得税減税を優先すべきであります。
 総理、所得税減税の実施は、五十八年度の課題ではありません。いまや五重苦に落ち込もうとするわが国経済を救い、国民生活を防衛する唯一の道、これが所得税減税の実施であり、五十七年度の緊急課題であります。この際、総理の英断をお聞かせ願います。
 次に、租税特別措置の改正について伺います。
 政府は、長年の懸案である総合的な土地政策を示さずに、長期譲渡所得など土地税制を大幅に緩め、宅地供給の決め手として宣伝されております。しかし、私には、土地価格と所得水準の乖離、地主の富裕な経済状況、ごく一部を除いて、いわゆるむちの効果のない今回の改定などから、五十七年度に土地供給が積極的に進むとは考えられませんが、政府が土地供給に大幅効果ありとされる明確な根拠を示されたいのであります。
 また、給与所得者など所得税の課税最低限を五年間も据え置きながら、一部の土地保有者のみに行う大幅減税措置であります。もし大幅な土地供給増がなかった場合は、重大な政治責任であります。どう責任をとられるのか、伺っておきます。
 今回の土地税制の改正は、長期安定税制と言われております。つまり、土地供給に対する税制の役割りは一段落したとも考えられます。総理、残る道は総合的な土地政策の確立であります。今後どう対処されるのか、お聞かせ願います。
 さらに、法人税関係の退職給与引当金及び貸し倒れ引当金の縮小について伺います。
 退職給与引当金は五十七年度の税制改正の対象になる、こう報道をされてまいりましたが、見送られて、まことに残念であります。政府は、現行の無税繰り入れ率を将来とも据え置かれるのか、あるいは改正されるのか、伺っておきます。
 次に、貸し倒れ引当金の法定繰り入れ率は、引き下げられたものの、なお税務資料などによる貸し倒れ実績率と比べますと大きな開きがあり、優遇との感が払拭できません。たとえば卸売業及び小売業では、法定繰り入れ率一・三%に対し、貸し倒れ実績率は〇・五%です。同じく製造業も、法定繰り入れ率一%に対し、貸し倒れ実績率は〇・三%です。もう少し段階的に貸し倒れ実績率に沿って縮小していく方法もあったのではないかと考えますが、見解を示していただきたいと思います。
 また、法人税の延納制度の縮減は、大企業に比べて資金調達力の弱い中小企業の経営に打撃を与えることが懸念されておりますが、所見を示していただきたいのであります。
 最後に、総理は、財政再建のために大型間接税の導入はしないとの約束をされました。しかし、政府内には、総理の発言を故意に曲解し、所得税減税との抱き合わせならば大型間接税の導入もあり得ると判断する向きもございます。私は、所得税減税の財源はやはり行財政改革の徹底と不公平税制の是正を基本とすべきであると考えます。したがって、この際、総理の大型間接税の導入はしないという公約は、財政再建も所得税減税も含めてのことと明らかにしていただきたい盆であります。
 以上申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 鳥居一雄議員にお答えいたします。
 まず、五十六年度の二兆円公債減額の問題についてでありますが、御承知のとおり、五十六年度当初予算の編成に当たりましては、歳出の厳しい抑制と、また現行税制の枠内ではありますが、一兆四千億円の増税によりまして特例公債の二兆円減額を見込んだのでありますが、その後の五十六年度の経済動向、すなわち、予想を超えた物価の安定、内需回復のおくれなどによりまして、約四千億円の税収の補正減を行わざるを得ないこととなりました。これに伴い、三千七百五十億円の特例公債を追加発行いたしました。まことに残念でありますが、やむを得ない仕儀でありましたので、何とぞ御理解を賜りたいと存じます。
 しかしながら、これによって五十九年度特例公債脱却という財政再建の基本路線は、いささかも変わるものではございません。今後ともその実現に向けて最大限の努力を払ってまいります。
 所得税減税についてでありますが、先ほど野口幸一議員にもお答えいたしましたが、わが国の財政の実情、国際的に見た所得税負担の水準、また財政再建という、わが国の将来にとってきわめて重要な課題に取り組んでいるさなかであることなどの諸事情を考えますと、五十七年度の所得税減税は残念ながら困難であると考えております。
 なお、将来の所得税減税との絡みで大型間接税についてお尋ねがありましたが、私は、将来所得税減税を行い得るための条件としては、一般消費税のような大型新税を念頭に置かず歳出歳入両面にわたる徹底した見直しにより、五十九年度特例公債脱却の明白なめどをつけるとともに、その財源の手当てがっかなければならないと考えております。
 具体的にどのような方法によりその条件を整えるかにつきましては、広く各方面の御意見を伺いながら、幅広い角度から検討を進めてまいりたいと存じます。
 以上、お答えいたしましたが、残余の点につきましては、所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#16
○国務大臣(渡辺美智雄君) 鳥居議員にお答えする前に、先ほどの野口議員の質問の中で、五十六年度の第二次補正をやるのかやらないのかという御質問がございましたが、これにつきましては、総理から答弁がありましたように、第二次補正は考えておりませんということをつけ加えさせていただきます。
 それから、鳥居議員の御質問でございますが、去年の夏ごろからこのように税収不足になるということはわかったのではないかという御質問でございますが、これはとても夏にはわからないわけであります。夏のころは、災害が起きたり何かをしておったことで、ともかく二、三カ月ぐらいしか税収を見ないで、一年分なんてとてもわからない。やはり暮れになって、ともかくこれは少し足らぬということがわかったので、納付状況等を調べた上で補正をさせていただいたわけでございます。
 それから次は、要するに、去年の増税というようなものがむしろ景気の足を引っ張ったのじゃないかという御趣旨に私は解釈をしたわけでございますが、私はそうは思っておらないのでございます。やはり何といいましても、非常に国内の消費節約、それから物価安定、それからアメリカの高金利、こういうようなものが景気回復のおくれというようなものの形にもなっておりますが、いずれにいたしましても、そういう総合的な問題のために思ったより税収が入らなかったということでございます。しかしながら、今後機動的な経済運営を行っていけば、すでにもう在庫調整等もほぼ終了しておるというように見られておることから、私は景気の着実な回復が期待される、さように考えておるわけでございます。
 次に、土地税制の問題でございますが、土地税制だけで宅地供給がうまくいくというようには、私は思っておりません。それを補完する手段として税制が使われるということでございます。したがって、長期安定的な土地税制を確立することによって、税制の緩和期待に基づく売り惜しみというようなものはなくしていくということは必要でございます。
 それから、所得の長期、短期の区分を所有期間が十年を超えるかどうかによることといたしました。これは、長期譲渡について、特別控除後の譲渡益八千万円超の部分を四分の三の総合課税から二分の一の総合課税とするということによって、売ってもほとんど全部が取られてしまうんだということになると売りませんので、そういう点を緩和させていただいたわけでございます。
 それから、退職給与引当金の無税繰り入れ率、これを将来とも置くのかどうか。これは野口議員のときにも、私お話をいたしましたが、私は、この退職給与引当金自体は優遇税制と思っておりません。これは労働者といいますか、従業員がやめれば当然退職金を払うのですし、労働協約とかあるいは就業規則、そういうものによって契約が会社とできているわけですから、何年勤めたら幾らと、そのときの準備としての引き当てをするということで負債性のものだ、そう思っておりますが、しかし現実の問題として、引き当てただけ退職者がいない、したがって、そこにギャップがあるんだから、それをもっと詰めてもいいじゃないか。これは私はごもっともな御趣旨である、こう思っております。しかし、理論を申しますといろいろむずかしい理論がございまして、その論争が実際はまだ続いておるのです。
 これは年金との絡みの問題も一つ出てまいります。退職引当金を非常に少なくしてしまうと、今度は組合の方からは、そんなに少なくなったら、退職金制度そのものがなくなるのじゃないかというような不安のあることも事実なんです。そういうような不安も起こさせないようにしながら、年金制度、要するに、退職金をやめちゃって、任意年金の掛金をやっているところも会社によってはあるわけですから、そういうものとの大きな絡みの問題もありますので、そういう問題も踏まえながら、これはこのままでは置かない、今後さらに検討さしていただきたい、そういうことを申し上げておきます。
 それから、貸し倒れ引当金の法定繰り入れ率の引き下げ、これにつきましても、もっと大幅にやれということでございます。このことにつきましても、実情に即して実は見直しをしておるわけであります。しかし、これは二年間で二割程度下げるということを決めておるわけでございますが、状況を見ながら、まだ余裕があればさらに下げるということは、今後ともこれは目を離さずに実態に即したことをやってまいりたい、そう思っております。
 法人税の延納制度の問題、これは先ほどもお答えいたしましたとおり、現在は二・二%程度の滞納、この法人税延納制度ができたときは四七・九%の滞納、現在は二・二%の滞納で済んでいるというようなことで、あの当時は重税でもっと重かったということもあるのかもしれません。
 それからもう一つは、何といっても金融問題が現在は緩和されておるというふうな状態でもございますから、これによって法人税滞納がふえるというふうには考えておりません。(拍手)
    〔国務大臣松野幸泰君登壇〕
#17
○国務大臣(松野幸泰君) 鳥居議員の御質問にお答えいたします。
 合理的な土地利用の確保と適正な地価の形成を図るため総合的な土地政策を推進することは、国民生活の安定と経済発展を図る上で重要な課題であると考えております。
 このため、国土利用計画法の的確な運用等により、適正かつ合理的な土地利用の確保と投機的な土地取引の抑制を図りつつ、市街化区域内農地の宅地化の促進、住宅宅地関連公共公益施設の整備の促進、既成市街地の高度利用の促進、土地税制の活用等により宅地供給の促進を図る等必要な施策を総合的かつ積極的に講じてまいります。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(福田一君) 中井洽君。
    〔中井洽君登壇〕
#19
○中井洽君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案につき、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 言うまでもなく、この二つの法律案は、五十七年度の予算編成段階における歳入不足額のうち三千四百八十億円を法案改正によって補おうとするものです。
 ここ数年、政府は増税一本やりの政策をとり続け、財政のやりくりをしてきたのであります。特に五十六年度においては、一兆四千億にも及ぶ大増税さえ行ったのでありますが、幾ら増収を図っても、実際には計画どおり入ってこないのが現状であります。五十五年度は補正予算に対して二千七百億の税収不足が生じ、五十六年度はすでに三千七百億円の赤字国債を増発し、まだ税収減が心配されている状態であります。これは五十五年度実質経済成長見込み四・八%に対し三・七%の実績、五十六年度は五・三%に対し四・一%の実績見込みと、政府の経済成長率の約束が達成されなかったところに最大の原因があります。政府自身の経済運営の失敗によるものであります。
 しかるに政府は、来年度五・二%の高い成長率見込みをもとに来年度予算を編成し、財政のつじつまを合わせているのであります。私は、現在の経済状況の中では、五・二%の成長率達成は無理であると思いますし、また、国民の大半も、とうてい達成できないであろうと考えています。過去二年と同じく経済成長率が達成されないときには、莫大な税収不足が生じ、政府の財政再建計画はますます実現不可能となるのであります。総理は、どのような見通しと政策運営によってこの五・二%の経済成長を達成され、税収を確保されようとするおつもりか、お尋ねをいたします。
 言うまでもなく、とこ数年間、日本経済は外需によって辛うじて支えられてきました。しかし、近年、諸外国との貿易摩擦が増大し、これ以上外需の伸びを期待することはできません。したがって、わが国は内需拡大型の政策をとらざるを得ないのであり、また、政府もたびたびこの考えを言明されてきました。しかし、公共事業費の増大は望むべくもなく、個人消費の回復の動きは緩慢であり、民間住宅投資も大幅に低下している現在、大幅減税を実行せずして、どうして内需拡大型の景気回復ができましょうか。(拍手)
 民社党は、こうした観点から所得税の実質増税が著しく進んでいる現実を考え、たびたび所得税を中心とする大幅減税を求めてまいりました。総理に、重ねて大幅減税の実行を求め、御所見を承ります。
 同時に、大幅な減税の実施による景気刺激の効果について、総理はどのようにお考えか、承りたいと存じます。
 わが国の財政にとって、入るをはかり出るを制するという言葉の実行こそいま一番必要であると考えます。入るをはかる、これは決して増税策ではなく、税の公平化を実行することであります。租税特別措置の整理合理化も、不公平税制是正の大きな柱でありますが、政府は、今回の改正案でほぼ整理合理化がおおむね一段落したと考えておられるのか、あるいはさらに厳しい見直しが必要とお思いなのか、大蔵大臣のお考えをお尋ねいたします。
 出るを制す、これは行政改革の実行であります。鈴木総理の御熱意にもかかわらず、残念ながら行革の実行は遅々として進んでいないのが実情であります。政府の財政再建方法は、国鉄再建と同じ道を歩もうとしているのであります。両者ともに、毎年毎年増税、値上げを実施しているにもかかわらず、計画どおりの増収を確保できず、また、行政改革による合理化が全く手抜きされ、支出はふくらむ一方であります。このままでは、国の財政再建、国鉄再建、ともに失敗に終わるのは目に見えているのであります。国鉄のようにずるずると泥沼に突入しないためにも、税の公平化と行革断行による財政再建の実行を強く求め、総理の御所見を承ります。
 次に、法人税法の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。
 この改正は、法人税の延納制度を変更することにより、五十七年度だけ千四百四十億円の増収で他年度の増収にはならないという、全くこそくな改正であると言えます。資金調達能力の劣る中小企業が、今回の改正により、さらに資金面での圧迫を受けることを懸念いたすものであります。大蔵大臣のお考えを承ります。
 また、現在苦しんでおる中小企業に対し、かねてわが党の主張いたしております事業承継税制についてのお考えと、その早期実施についての通産大臣の御所見をお伺いいたします。
 次に、貸し倒れ引当金の法定繰り入れ率の引き下げについてお尋ねをいたします。
 今回の改正は、貸し倒れ引当金の法定繰り入れ率と貸し倒れ実績率との大幅な乖離の是正を図ったもので、一歩前進と評価をいたしますが、まだまだ不公正な状況が温存されているのも事実であり、今後ともさらにその見直しを実現すべきと考えますが、大蔵大臣はいかがお考えでしょうか。
 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。
 昨年の交際費支出は三兆円と言われ、配当金が二兆円であるのに比べ異常に多額な金額と言わざるを得ません。本来、交際費の抑制は企業経営者のモラルの問題であり、税による抑制はあくまでも補完的な役割りを果たすにすぎないものでありますが、増加し続ける交際費に対する社会的な批判も多く、わが党も交際費課税の強化を主張してまいりました。今回の改正で課税が強化されましたが、特別措置で損金に認めないという立場での改正であります。この点から、まだ交際費課税強化の余地があると考えておられるのかどうか、あるいはまた三年間限りの改正ということにしたのはなぜか、大蔵大臣のお考えをお尋ねいたします。
 同時に、損金に扱われておる広告費についても、その金額増大や交際費とのバランスから政府内部で課税の検討がなされていると聞いております。大蔵大臣のお考えをあわせてお尋ねをいたします。
 次に、土地住宅税制の改正についてお尋ねいたします。
 今回の改正は、冷え切っている宅地住宅供給を税制面から促進しようとするものであり、一応の評価ができるものと考えます。しかし、地方税を含めた改正案では、譲渡税関係だけが大幅に緩和され、保有税の強化が不徹底であり、期待ほどの宅地供給拡大にはならないのではないかと危惧いたしますが、建設大臣のお考えを承ります。
 また、住宅貯蓄控除の廃止も同時に提案されています。五十七年いっぱいで住宅貯蓄控除を廃止し、かわりに財形持ち家融資額の引き上げと金利に対する利子補給を行おうという改正案であります。持ち家融資の引き上げと利子補給制度の創設を高く評価するものでありますが、現在の住宅貯蓄控除を制度の上にさらに加えられてこそ、大きな政策効果を生ずるものであり、あくまでも政府は、住宅貯蓄控除を維持し、住宅建設の増大を図るべきと考えますが、建設大臣のお考えはいかがでしょうか。
 言うまでもなく、ここ数年間、民間住宅投資は低迷を続け、政府の住宅建設見通しも大きく外れ、来年度の百三十万戸という目標は、いまのままではとうてい、これまた達成されないと思われます。今回の税制面での改正あるいは現在の住宅金融政策等ではとうてい大幅な住宅建設促進はできません。景気対策の面から、また、国民の持ち家に対する願望の強さを考え、わが党は、かねてから大胆な土地住宅政策の転換を図るべきだと主張してまいりました。住宅取得に伴う勤労者負担の軽減、土地税制の根本的な見直し、開発等に伴う負担金や手続の簡素化等であります。
 建設大臣のお考えを承り、土地住宅問題の抜本的解決に対する発想の転換を強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#20
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 中井洽議員にお答えをいたします。
 五十七年度の実質経済見通しにつきましては、政府は五・二%程度と見込んでおりますが、さきに閣議決定した昭和五十七年度の経済運営の基本的態度に基づきまして、機動的かつきめ細かな経済運営のもとに、今後とも民間活力が最大限に発揮できる環境の維持整備に努めるなど、景気の維持拡大を心がけてまいりたいと存じます。
    〔議長退席、副議長着席〕
 経済見通しと税収見積もりはもちろん密接に関連しておりますが、必ずしも単純に経済成長率そのものに基づいてはじき出しているというものではありません。政府経済見通しにおけるもろもろの指標や課税実績などを基礎に、個別税目ごとに積み上げているものと思います。経済の動向が税収に及ぼす影響は、個別税目の税収に複雑多岐な影響をもたらすと思います。逆に所得税減税が景気に及ぼす効果につきましても、それが実施される状況によっていろいろ違ってまいりますので、具体的に申し上げることがむずかしいと思いますが、所得税減税の消費拡大効果につきましては、貯蓄率の高いわが国におきましては、限定されたものとならざるを得ないと思います。
 また、減税をして、他方で赤字をふやさないことにしますと、当然、支出をカットしなければなりませんから、財政支出減少による景気に対するマイナス効果があらわれてくると思います。減税をするのに財政赤字をふやすということでは、現下の急務である財政再建に逆行することになります。その財政再建を進めるに当たりましては、しばしば申し上げておりますとおり、歳出の節減合理化に最大限の努力を傾けてまいる決意であります。あわせて、税の公平確保につきましても、今後とも努力を重ねてまいります。
 以上、お答えをいたしましたが、残余の点につきましては、所管大臣から答弁いたさせます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#21
○国務大臣(渡辺美智雄君) 中井議員にお答えをいたします。
 税の公平化と行革の断行による財政再建、全くそのとおりでございまして、われわれといたしましては、先ほど総理からお答えいたしたように、歳出の削減合理化、これには今後とも引き続き徹底的にメスを入れてまいりたい、そう考えております。税の公正化、合理化、これも当然のことでございます。
 それから、法人税の延納制度の縮減は中小企業の経営を圧迫するかどうか。この問題につきましても、昭和二十六年当時、企業の資金繰りが非常に苦しかった、滞納が非常に多かったという時代と、現在はかなり変わっておりますので、個人の所得税等とのバランスもございますから、個人の方が滞納がきつくなっておる、滞納といいますか延納が余り認められていない、法人だけ緩くなっているというのは、バランス上もこの際直したいということで、直したわけでございます。
 それから、貸し倒れ引当金の繰り入れ率の引き下げ、これは結構だが、もっと見直すつもりはないかということでございます。これにつきましては、とりあえず二年間で二割程度の引き下げを行うということにいたしておりますので、この実施状況を見て、さらに検討をしてまいりたいと考えます。
 交際費の課税強化を三年間だけにしたのはどういうわけだ。まあ交際費といいましても、一銭も交際費というものは認めないのだ、交際費という経費は一切認めないといいましても、交際費それ自体は、本来はこれは損金でございますからね。ただ、特例措置で使い過ぎはだめよということで認めない、こうやっておるわけですから、それを一切認めないということがあたりまえの状態にするということは、どうもここはむずかしい問題なんです。したがって、一切認めないということは、ある一定のもの以上は一切認めないということですよ、今度の改正案は。これについては、したがって三年間という一応区切りをつけたわけでございます、財政再建期間。
 それから、広告税につきましては、これはいろいろ議論のあるところでございますが、五十七年度では税制調査会の答申等もございまして、実は見送ることにさしていただいたわけでございます。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇〕
#22
○国務大臣(安倍晋太郎君) 中小企業に承継税制を確立すべきであるという中井議員の御意見、全く同感であります。(拍手)
 中小企業におけるところの事業経営の継続と、後継者への円滑な事業継承が図られるよう、相続税の面での改善につきましては、ただいまも努力を行っておるところでございますが、特に中小同族会社の株式の評価方法の改善につきましては、その必要性を十分認識しておるところでございまして、中小企業者の要望が反映をされて、できるだけ早い機会に実施されるように、関係省庁と協力をしつつ今後とも努力をしてまいりたい、何とか実現をしたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣始関伊平君登壇〕
#23
○国務大臣(始関伊平君) ただいま税制及び融資制度の改善だけでは五十七年度の住宅建設目標百三十万戸の達成はむずかしいのではないか、景気対策の上にも大変重要な住宅建設を促進するためにもつと積極的に施策を推進すべきであるということで、いろいろと御指摘をいただきました。
 これは内需拡大の一番大きな柱の一つでございますので、五十七年度の住宅建設促進のためには、いま政府が駆使し得る政策手段のすべてをとこに集約したというような感じでございますけれども、御指摘の点等をも考えまして、さらに積極的に推進いたしたいと存じております。
 金融と税制が主でございますが、金融の方につきましては、一方において公的住宅金融というものがございまして、これは住宅金融公庫などを初めとして、ほかにもあるわけでございますが、これにつきましては、融資枠の拡大、貸付限度額の引き上げというようなことによりまして、住宅を求めておる国民諸君の住宅取得能力の向上を図ることといたしております。
 また、土地住宅税制の改正によりまして、住宅の供給、既存住宅流通の円滑を図る、中古住宅につきましても税制上、金融上の便宜を与える、これらがやはり新しい住宅の建設につながるだろうというようなことをいたしております。
 また、いわゆる公的住宅金融によりまして建設されます住宅のほかに、もう一つ民間住宅金融による住宅建設、つまり銀行ローン等でございますが、こちらの方につきましては、やはり住宅ローンの引き下げ、その他物価の安定など的確な経済運営を図ることによりまして、住宅建設が一層促進されるものと期待をいたしておる次第でございます。
 また、ただいま保有税の問題についてお話がございました。宅地を取得いたしまして、直ちに住宅の建設に着手いたしませんものについては、かなり小さい面積のものについても保有税を課するというふうなことにいたしました。
 なおまた、財形持ち家融資と住宅貯蓄控除についてのお話がございました。両方残すことができれば非常にいいのでございましょうけれども、財源の関係等もございますので、私どもは、財形持ち家融資というものの拡充をいたしまして、片方は残念ながら取りやめるというような結果になったわけでございますが、これはもうすでに御指摘がございましたように、財形持ち家個人融資につきましては、初年度、二年度に二%、またあと三年間は毎年一%ずつの利子補給をする。それから貸付限度額でございますが、これは、従前は大体貯蓄額の三倍ということでございましたが、これを五倍に引き上げる、つまり千五百万円から二千万円に引き上げるというようなことをいたしたわけでございまして、財形貯蓄はかなり大きな貯金の残額も持っておりまして、この財形制度の大きなねらいが住宅持ち家取得の促進でございますので、その方面において寄与してまいりたい、かように存じておる次第でございます。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○副議長(岡田春夫君) 野間友一君。
    〔野間友一君登壇〕
#25
○野間友一君 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました法人税法及び租税特別措置法の両改正案について、総理並びに大蔵大臣に質問いたします。
 今日、税制の民主的な改革は、圧倒的多数の国民が強く要求する緊急の課題であります。最近実施した国税庁の世論調査によりましても、七割を超える人々が、重税による生活の困難と不公平を訴えているではありませんか。
 今回の税制改正に求められたものは、この国民世論にこたえ、第一に、大企業、大資産家優遇の不公平に抜本的なメスを入れること、第二に、当面する深刻な消費不況に税の面からも手を打つこと、第三に、泥沼の財政危機、とりわけ五十六年度、五十七年度に予想される巨額の税収欠陥に対処することでありました。ところが、政府が提出した法案は、この三つの課題に全くこたえなかったばかりか、国民には五年連続の減税拒否による実質大増税を押しつけ、逆に不公平を拡大しているのであります。
 そこで、まずお尋ねしたいことは、税制問題に対する総理の基本的な考え方、思想そのものについてであります。
 あなたは、昨年七月号の「月刊自由民主」に掲載された座談会で、レーガン政権の経済政策を口をきわめて褒めたたえた上、私は「企業減税については、民間の活力を高めるという意味合いから非常に効果があるし、適切だとは思うんですがね。」と明言しておられます。これには出席者の一人も驚いて、「どの国の大統領も総理も、それは怖くて言えなかった。」「「企業減税こそ必要である」と言われた方は鈴木総理のほかにありません」と述べるほどであります。一方、所得減税に対しては、「これが消費のほうに行って、インフレを助長するようなことにならないか」と、きわめて懐疑的な態度を表明しておられるのであります。
 国民への所得減税よりも大企業への減税こそ望ましい、こういう考え方にいまでも変わりはないのか、これがあなたの税制の思想なのか、明らかにお答えいただきたいと思います。(拍手)
 財界、大企業に弱い総理の態度は、今回の税制改正の過程でも改めて浮き彫りにされております。
 総理は、昨年十一月に、大企業優遇の退職給与引当金を含む制度の見直しを指示しましたが、その退職給与引当金はいつの間にか消え去り、かわって、中小企業に打撃を与え、しかも一年限りの増収にしかならない法人税延納制度の縮減が登場したことがそれであります。一体、どのような圧力によってみずからの指示を取り消されたのか、この際、明らかにされるよう求めるものであります。
 次に、今国会の焦点の一つであり、国民が税制改正に最も期待している所得税減税問題についてお伺いします。
 大企業、大資産家を優遇する一方での国民への重税、これこそ不公平の最たるものであります。五年連続の減税拒否で、五十七年度の所得税の国民負担は、五十二年度に比べ二・三倍、八兆四千億円もふえることになります。これは納税者一人当たり実に二十万円に当たるものであります。この間、雇用者所得は名目でわずか五一%しかふえていませんし、また、家計調査報告によれば、勤労者の収入に対する税金と社会保険料などの比率は、五年前の約一〇%がいまでは一五%に上昇しているのであります。これらは実質増税の物すごさを如実に示す以外の何物でもありません。総理、これらの数字を見聞きして胸が痛まない人には、政治家の資格はないと言わなければなりません。(拍手)
 そこで、三点に限ってお伺いします。
 第一点。政府は、来年度の経済成長の原動力を内需に求め、その柱を国民消費支出の実質三・七%拡大に置いています。ところが、雇用者所得の伸びは、平均して名目で六・九%、実質では二・一先にとどまるというのであります。減税拒否で、実質可処分所得の伸びがもっと下回ることは言うまでもありません。減税を抜きにして、どうして消費支出の拡大が可能になるのでしょうか。手品の種を明らかにしていただきたい。
 第二点。新経済社会七カ年計画の想定では、国民所得に対する租税負担率は、六十年度に二六・五%に達するものとされておりました。しかも、これは一般消費税導入を前提とした数値であります。しかし、実際には、五十七年度に二六%台に乗せて、五十八年度には早くも目標値を大きく突破する勢いであります。七カ年計画を変更して国民にさらに負担を強いるのか、それとも減税を断行して計画内にとどめるのか、明確にお答えいただきたいと思います。
 第三点。減税を拒否するばかりか、新たな大増税さえ意図されていることは、今国会の総理と大蔵大臣の答弁にもかかわらず、政府が国会に提出した「財政の中期展望」や、新聞が伝える大蔵省首脳発言なるものがはっきりと示しております。五十八年度以降将来にわたって、一般消費税はもとより、大型間接税など国民への増税は一切行わない、減税を増税のための取引道具に使わないときっぱりと約束されるのかどうか。
 以上、総理並びに大蔵大臣の答弁を求めます。(拍手)
 大企業、大資産家優遇税制にメスを入れることは、不公平をなくするためにも、減税の財源を確保するためにも、さらに財政危機打開のためにも、緊急の課題となっております。ところが、政府の法案は、貸し倒れ引当金、交際費課税などにわずかばかりの手直しを行ってはおりますが、三兆円をはるかに超える不当な優遇税制のほとんどが全く手つかずで残されております。そればかりか、エネルギー投資減税の拡充、土地税制緩和など、優遇措置の新たな拡大さえ図っているのであります。
 そこで、法案に即して大蔵大臣に若干伺います。
 貸し倒れ引当金制度の恩恵を最も受けているのは、言うまでもなく銀行などの金融保険業であります。実際の貸し倒れ発生が千分の一にしかすぎず、しかも大部分が担保を取っているにもかかわらず、金融保険業に千分の三の繰り入れを認め、今回改正案でもこれを放置しているのは一体なぜでありますか。また、多国籍企業化し、全世界をまたにかけて大もうけを続けている大企業に、なぜ三月末で期限の切れる海外投資等損失準備金制度、これをわざわざ延長してまでサービスしてやる必要があるのでしょうか。
 さらに重大なのは、土地税制の骨抜き緩和の問題であります。
 昨年秋の臨時国会で、土地税制緩和は宅地供給増にもつながらず、大資産家優遇であり反対だとはっきり述べていたのは、大蔵大臣御自身ではなかったでしょうか。政府税調の答申でさえ重大な疑問を呈しているこの改悪になぜ同意したのか。国会に責任を負うことが憲法に明記されている閣僚として、お答えをいただきたいと思います。(拍手)
 大企業優遇の仕組みは、各種引当金、準備金、特別償却制度、利益の多少を問わない一律の法人税率、受取配当益金不算入など、多岐にわたっております。私は、特に最近、目に余るまでになっている大企業、大資産家の資本取引上のもうけ、これに対して税制上の網が全くかかっていない、このことを指摘せざるを得ません。
 その一つは、額面額を大幅に上回る株式の時価発行によるぬれ手にアワのプレミアムが、資本取引という口実で全く非課税とされている問題であります。昨年一年間の時価発行によるプレミアムは、トヨタ自工の九百五十六億円を筆頭に、全体では一兆三千億円にも達しております。これに課税するだけでも五千億円を超える法人税収が得られます。
 戦前の税法では厳格に課税対象とされていましたが、戦後の混乱期に、経済再建のために資本蓄積を促進するとの理由で、「当分の間」との限定つきで非課税とされたのであります。いまでも経済の混乱状態が続いているのですか。「当分の間」とは、いつまでを指すのですか。日本経済は上できだと得々と繰り返しておられる総理の答弁を求めるものであります。(拍手)
 その二は、個人の株式の売買による利益が、所得税法で原則非課税とされている問題であります。
 わが党の指摘で若干の改善措置がとられたとはいえ、現実に課税されているのは、毎年百人にも満たないというありさまであります。勤労者が額に汗して得た収入には過酷なまでの重税を押しつけながら、このような典型的な不労所得をなぜいつまでも放置しておくのでしょうか、大蔵大臣の納得のいく説明を求めるものであります。
 最後に、もはや確実となった巨額の税収欠陥問題について質問いたします。
 わが党の論戦が明らかにしたように、十二月末までの税収実績は前年度比一〇・三%増にとどまり、このままいけば補正後予算に二兆円前後の大穴があくことは必至であります。しかも、五十六年度の歳入欠陥は、五十七年度税収に拡大されて引き継がれるのであります。ところが、総理も大蔵大臣も、六月にならなければわからないとか、専門家が算定したのだから信用せざるを得ないなどという無責任きわまる答弁で、国会と国民をごまかそうとしてきました。
 総理並びに大蔵大臣、この際はっきりさせていただきたい。兆円規模の税収不足になることは絶対にないと保証できますか。六月段階に戦後初めての歳入欠陥が明確になった場合、出処進退を含めた政治責任をとるのかとらないのか、その場逃れの答弁でなく、イエスかノーか明快にお答え願います。(拍手)
 日本共産党は、今後の審議を通じ、一兆円規模の所得減税を初めとする国民生活の防衛、大企業、大資産家優遇税制の抜本的な改革、軍事費一兆円以上の削減のために、国民とともに闘い抜くことを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#26
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 野間友一議員にお答えをいたします。
 まず、「月刊自由民主」の私の発言についての御質問がありましたが、対談の内容をよくお読みいただくとおわかりいただけると思いますが、昨年五月の訪米の際、米国の経済閣僚と朝食会を行いました際に、リーガン財務長官から、米国の経済再建計画について説明がありました。
 その中で、所得税減税で貯蓄を拡大をし投資を刺激するという趣旨の説明がありましたので、私は、所得税減税が貯蓄につながるかどうか疑問を呈してみたわけであります。投資を刺激して民間の活力を高めるという目的のためになら、むしろ企業減税の方が直接効果があるのではないか、特に米国はわが国と違って消費性向が高いので、意図したところと異なり、所得税減税が貯蓄ではなく消費に回ってしまってインフレを助長することにならないのかというのが私の米国の経済政策に対する疑問であったのでありまして、そのことが「月刊自由民主」の誌上に私の発言として載ったところでございます。
 退職給与引当金の見直しを私が指示したり、その指示を取り下げたりしたとのお話でありますが、そのような個別的な指示をしたものではありません。
 一般消費税、大型間接税などの増税を行うなとの御意見でございましたが、財政の再建を進めるに当たっては、何よりも歳出の節減合理化を第一に考えてまいりたいと考えております。
 なお、所得税減税との絡みでも増税をするなとの御意見でありましたが、この点につきましては、先ほど鳥居議員にお答えをしたとおりであります。
 税収欠陥を生じた場合どうするつもりかとのお尋ねでありましたが、これも先ほど野口議員の御質問にお答えしたとおり、与えられた資料のもとで最大限の努力をして税収見積もりを行っているのでありますが、仮に今後税収不足が生ずるような場合には、歳入歳出を通ずる全体としての決算の状況を踏まえ、適切に対処するつもりであります。
 以上でありますが、残余の点は所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#27
○国務大臣(渡辺美智雄君) 野間議員にお答えをいたします。
 消費支出の増大策として減税を実行せよということでありますが、消費拡大のための減税ということになりますと、かなり大規模なものでなければ二百七十兆のGNPには余り影響ありませんから、かなりの大型のものでなくちゃならぬ。そういうような大きな減税をする財源は持ち合わせがないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
 それから、経済七カ年計画――租税負担率の実績がいまわかってきておりますけれども、国民経済計算ベースで、五十四年度二二・五、五十五年度二三・四となっています。今後租税負担率がどうなるかということは、経済は生き物ですから非常に経済情勢は不確定要素が多い。したがって、これを予測することは困難でございます。
 経済計画において、六十年度における国民経済計算上の租税負担率を二六カ二分の一程度と想定しております。しかし、これは六十年度における国、地方の両方を含めた公的部門全体としてのマクロ財政の姿でございまして、これは一般会計の歳入歳出の姿がどのようになっているかなどについて具体的に示しておるものではございません。一般会計の中の歳入歳出がどうだこうだというものを言っているのじゃないんです。地方を含めた国全体のマクロの姿を一応想定したものでございます。そういうことを御理解いただきたいと思います。
 それから、一般消費税、大型間接税などの増税を将来ともやらないということを約束せよということでございますが、これはとりあえずわれわれは大型増税は念頭になく、歳出カット、そういうことで大いに一生懸命やらしてもらいます。そこから先々のことまではお約束いたしかねます。
 それから金融保険業の貸し倒れ引当率を据え置いたのはなぜであるか。ほかのものは洗い直して、何でこれだけ残した。それは、ことしやったばかりだから続けてはできない。しかも、いま措置の適用期間中ですから……(「できなくはないでしょう」と呼ぶ者あり)だから、それが終わってからですよ。実際ことしは、したがってやらないということでございます。
 それから、海外投資等損失準備金を延長する理由。これは、大企業といえば全部悪いようなことをおっしゃいますが、資源エネルギー対策、科学技術の振興、中小企業対策等の重要な政策目的にかかわる措置については、現行制度はそのまま延長しました。やはり重要政策ですから。
 その中で、海外投資等損失準備金は、資源探鉱事業法人、そういうのがあるのです。それに対する投資額の一定割合の積み立てを認める制度でございます。国内資源に乏しい日本の国にとって、海外での資源エネルギー開発等を促進することは大切なことでございますので、こういうものを延長することにいたした次第でございます。物の考え方の相違でございます。
 それから、昨年の国会で、大蔵大臣は土地税制の緩和に反対をしたではないか。なるほど速記録を読んでみたら、私が反対したように書いてあります。
 これは、所得税の税金を安くする、緩和するというだけで宅地供給にはならないということを私が言っております。しかしこれは、それだけではだめですよと……(「生き物だから」と呼ぶ者あり)いや、生き物じゃなくて、そのほかに、一緒になって効果のある手をやる場合は別ですよ。だから、私の言ったことは、緩和するには供給促進効果が期待できなければいけませんと。
 したがって、今回は地方税において市街化区域農地に係る固定資産税等の課税の適正化措置に加えて、特別土地保有税の活用をすることにしました。譲渡された土地に住宅が建てられない場合は、そこへ課税を強化しますよ、一方で、売る方は安くするけれども、買った方が金もうけでそれを遊ばせておいたら、そこは重課をします、そういうふうな両方が、あめとむちと言ったらしかられるかもしれませんが、めりはりのついた制度ですから、それならば結構ですということを申し上げたわけです。したがって、譲渡所得課税、保有課税を通じ全体としてバランスのとれたものとなっておるから、私は、土地供給、住宅建設の促進に今度の土地税制は役立つものだと思いましたので、あえて反対をしなかったわけでございます。
 それから、株式の時価発行差額、昔は課税していたのを、いまは何で課税しないのだ。これは法律が変わったからでございます。それは商法の改正、法人税の改正で、昭和四十年に法人税法の全文改正によって、一般的に資本等取引の非課税が定められて今日に至りました。この法人税法は、商法の考え方を受けて決まったものであって、いまは昔の商法と違うんだから。いいですか。資本非課税の基本的立場からプレミアムを非課税としているものでありまして、戦後の経済再建のためとか、「当分の間」という考え方はないんです。したがって、主要諸外国においても、プレミアム課税を行っている例はないと聞いております。
 個人の株式売買益原則非課税について、なぜこれを放置するか。これもいろいろ議論がございますが、有価証券譲渡益については、総合課税の強化、総合課税の対象とすることが望ましい。しかし、有価証券取引を把握する体制が十分整備されていないまま総合課税に移行する場合には、新しい不公平を招くおそれがある。
 有価証券譲渡益課税については、年五十回かつ二十万株以上の取引から生ずる所得のほか、昭和五十四年度の改正で、一銘柄年間二十万株以上の株式の譲渡を課税対象に加えるようにしました。こういうことなど、課税の強化を実は図ってきておるところであります。
 今後は、この改正の結果を見きわめながら、つかまえなければだめなわけですから、把握体制の整備の問題を含めて、引き続き段階的に課税をするという方向で幅広い角度から検討を続けてまいる考えでございます。(拍手)
#28
○副議長(岡田春夫君) これにて質疑は終了いたしました。
#29
○副議長(岡田春夫君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  鈴木 善幸君
        大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君
        通商産業大臣  安倍晋太郎君
        建 設 大 臣 始関 伊平君
        国 務 大 臣 河本 敏夫君
        国 務 大 臣 松野 幸泰君
 出席政府委員
        大蔵省主税局長 福田 幸弘君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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