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1949/02/08 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 通商産業委員会 第7号
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1949/02/08 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 通商産業委員会 第7号

#1
第007回国会 通商産業委員会 第7号
  公聽会
――――――――――――――――
昭和二十五年二月八日(水曜日)
   午前十時五十一分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○特別鉱害復旧臨時措置法案(内閣送
 付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(小畑哲夫君) これより公聽会を開きます。本日の公聽会の、主題は特別鉱害復旧臨時措置法であります。本法案は前国会に政府より提出されまして、当通商産業委員会に予備審査として付託されたのでありますが、審査の進行に伴いまして、現地調査と公聽会の必要を認めました。ところがその時日がありませんで、同様の事情によりまして衆議院においても審議未了となりまして、去る十二月二十三日に政府から再提出されたものであります。当委員会といたしましては愼重審査の必要を認め、十二月九日には、島、廣瀬、鎌田の三委員を九州地区に派遣し、次いで一月十一日には中川委員を山口地区に派遣して、具さに被害現地の状況を視察し、それぞれ委員会に報告されておるのであります。本日の公聽会では、法案の複雑なる性格から、お手許に配付された印刷の通りに、十三名の公述人からお話を承ることになつております。それを本日一日で洩れなく公平に承るためには、御一人の発言時間を十五分間に厳守して頂きたいと存じます。その範囲内において、單なる陳情に流れずに法案の実体に即して、それぞれのお立場から忌憚のない適切なお話をお聞かせ下さいまして、我々委員会における審議の参考として頂きたいと希望する次第であります。
 尚公述人一人々々のお話に対する委員側からの質疑は、時間の関係から簡單なものだけに止めまして、その他は、被害者側五名終了後、炭鉱側五名終了後、及び公述全部終了後の三回に区切りたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(小畑哲夫君) 御異議ないと認めます。それでは名簿の順に従いまして、先ず福岡県知事杉本さんにお話をお願いいたします。
#4
○公述人(杉本勝次君) 私は福岡県知事杉本であります。県下に百五十の炭鉱を持つておる福岡県といたしましては、この鉱害の問題は県政上極めて重要な問題でありまして、これが対策のために県の機構の中に特に鉱害事務局を作つており、又官民を一丸としたる鉱害対策協議会があるわけでありますが、今般の法案につきましては前の臨時議会以来愼重なる御審議を頂き、又先には当委員会から現地の視察団を御派遣頂きましたことに対しまして、先ず深く御礼を申上げたいと存ずるところであります。この鉱害が如何に深刻且つ悲惨であるか、而も広範囲に亘つておるものであるかということはこの現地の御観察において一応御認識を得ておることと存じております。この委員会におきましても、これまでいろいろ論議の事柄につきまして、聊か承知いたしておりますが、私はこの特別鉱害復旧の法的措置としては、この法案は最低限の線であると存じております。公団プール資金制度のあの一陣年来の方式を以て、特別鉱害に対する復旧事業が取上げられまして僅かに一年三ヶ月、漸く被害の一割程度を復旧しただけで、昨年の九月配炭公団の廃止と共にこれが今日において全く工事をストツプしておる。若しこのブランクの状態で事態を放任するならば、これは実に容易ならざる社会問題であるということを私は断言いたしたいのであります。この鉱害の現状が如何に悲惨なものであるかということを耕地、河川、提防、橋梁、道路、鉄道、上下水道、井水、宅地、建物、墓地等に亘りまして詳細に御説明いたしますことは、時間の関係上私は省略いたしたいと思います。併しながら今日までのこの惨憺たる跡を見るときに、何らかの救済策を急速に講じなければならないということは、一度現地を視察された方の等しく痛感されるところでありまして、この法案に反対せられる人と雖も、この点については何らの異議はないことと存じておるのであります。この法案の対象とする特別鉱害と一般通常の鉱害との区分につきましては、後に少しく触れるつもりでありますが、そもそもこの特別鉱害の救済をどういう方法でやるかということは、いろいろなる條件、又戦後の事情におきまして簡単には論定し得ないものがあることを私も了承いたしております。第一、この特別鉱害の責任論について考えましても、国の責任はどうであるか、鉱業権者の責任は如何、地元公共団体に責任があるかということについては、先ず国が戦力増強の必要からして至上命令的に強行した採炭の跡始末であるから、全面的にこれは国の責任であるという論は一応正論であると信じますけれども、職時補償一切打切の線からすれば、この国の責任も解除せられる形であります。一般鉱業権者につきましては、鉱業法上の賠償責任は勿論ありますけれども、これは原則として金銭賠償に限定せられており、現状回復の義務はないものであります。況んや鉱害の発生を無視して強行出炭を要請せられた点については、不可抗力的な要素が加わつておりますので、鉱業法の第七十四條の二の規定によるところの賠償義務をそのまま適用するわけにも行かないと思うのであります。更に関係の県或いは市町村については、これは全く被害者の立場でありまして、賠償の責任を負うべき筋合いの旭のとは思わないのであります。このように考えで来ると、責任の所在が先ず問題になりますけれども、この冷い責任論を以てしては、この問題の実態を解釈すること、これを解決することは不可能であります。問題の実態は厳存しております。絶対に放置し得ざるこの惨状は、速かに且つ計画的に復旧しなければならないところの差迫つた社会問題であると確信するのであります。従つてこの法案に多少の欠陥があるとするならば、これをよりよく修正して頂くことはもとより結構でありますけれども、今日までの復旧工事の継続に大きな支障を来すような扱いをされることは、私共としては誠に遺憾に存ずるのであります。私共の立場は、この法案を速かに通して頂きたいということであります。問題はいわゆる無加害炭鉱にも等しく納付金を課するという点、尤もこれは二十二條の減免規程に関連を持つて来ますが、このことが第一不都合であるという議論が強硬に一部論議されて来たようでありますが、若しこの論を徹底して申上げるならば、加害炭鉱だけに納付金を限定せよという議論であります効併しながらその加害炭鉱も、その與えた鉱層の程度に応じて考えるならば、納付金に厚薄をつけねばならん、従つてこの無加害納付金を出さない。復旧事業には関係しないということになるのでありまして、これではこの法案の意図するところは全く没却せられ、この法案が社会立法としてその第一條及び第三條に公共の福祉と謳つておることも全く意味のないこととなると思うのであります。言うまでもなく、この鉱害の程度というものは〇%から一〇〇%までの段階があるわけでありますから、この論を推し進めて行く場合には、この加害炭鉱だけで復旧団を設けて納付金をプールするということになりまして、結局自分の山の鉱害は、一自分の山だけで復旧しなければならんという結論であります。それで果して問題の解決が期待し得るかどうかど私は思うのであります。以下は私の議論でありますが、ことで二つのことを申上げたいと思うのであります。
 第一点は国の責任ということに関連して、職時補償打切という問題に関するものでありますが、この戰時補償打切ということは、本質論としては元来無理な原則であると私は思うのであります。唯現実に国の財政からして他に如何様にも仕方のない問題であるという理由からのみ、この原則も止むを得ないとされるものでありますが、これを基準としてすべて右に倣えということになれば、そこにいろいろな無理が生じて来るということは必至であります。国が特別鉱害のために補助をするということは、戰時補償の一種ではないかという論があつたとも聞いておりますけれども、これは他の一般の場合と相当の区別ができるのではないかと私思うのであります。福岡県で申せば六十二市町村に亙るこの鉱害は、その地方一帯の社会的不安を釀成しておる重大なる問題であります。単に個人の財産に対する補償というのではなく、差迫つた社会不安の除去のためにするところのものであり、このことのために、国ができるだけの援助をするといふことは決して筋の通らん話ではないと私は信じております。この法案にもその性格は出ておると思うのであります。
 第二点は、無加害炭鉱の納付金負担の関係でありますが、私は法律的な言い方は別として、むしろ社会感情に訴えて次の諸点を十分考慮して頂きたいと念願するのであります。戰時中、殊に戰争末期におきまして、北海道には八十万トンの貯炭がありました。この石炭を本州に運搬することができない、当時機械設備の一部と数万の労務者が九州、山口に送られて参りました。ここに無理な採炭が要請せられました。現在福岡県では全国出炭量の四〇%を出しておりますが、戰時中に案に六〇%を引受けておりました。そしてその影にこのような災害、いわゆる特別鉱害を残しております。我が国すべての石炭鉱業に要請せられたる犠牲が、特に福岡県の鉱山には重く負荷せられ、その犠牲、その復旧についての跡始末を、我が国のすべての鉱山が力を合せて引受けて貰うことができないか。これは戰後のことでありますが、宇部興産の沖ノ山炭坑に一昨年災害がありました。炭鉱が水没しましたときに、その復興のために業界は如何なる運動をされたか。炭価の中に相当の考慮が拂われ、一億八千三百万円がこの山のために注ぎ込まれたと聞いております。これは全く業界の協力の精神によるものと私は思うのであります。大体石炭企業の性格からして戰時中より傾斜生産方式が採られております。国のお世話を受けたことも極めて多いのであります。その石炭によつて戰時中は戰力を持ちこたえ、戰後は経済再建の基盤が築かれ、而もその後にこのような災害を残して、多くの人の迷惑をかけておる。この事については国も業界も及ぶだけの力を貸してその復旧を援助しようという素直な考え方が願わしいと私は思うのであります。原因は完全に統制経済時代のものでありますが、今日の問題が自由経済時代の論であるために、いろいろここに利害の対立が出ておるわけでありますけれども、今後と雖も業界としては共同の利害を主張して、相協力して立つべき場合が必ずあるであろうと思うのであります。憲法論につきましては別に專門家の公述もあることでありますから、私としてはむしろ差控えたいと思いますけれども、私としては以上述べたような事実問題からしても、十分この点の説明はつくと思う。又生きた政治としては尚更問題はないと確信するのであります。
 次に一般鉱害と特別鉱害の区分につきましては、これも、專門家からの公述があると思いますが、私としては度々この点についての話も聞いておりますけれども、間違いなく大体の見当はつけ得るものと申上げたいのであります。荷特別鉱害に便乗して一般鉱害の復旧もやるのではないかという疑念に対しましては、現地御視察の際にも十分御説明を申上げまして、さような誤解は今日においてはないことを確信しおりますが、この事は尚次の点からも御了承頂けるものと思います。即ち一昨年九月関係各省の共同調査による福岡県の鉱害復旧費総額は百三十億円、内八十九億円がいわゆる特別鉱害ということになつております。福岡県のもののみて尚且つ八十九億である。九州、山口の分を合せまするときには九十八億円と査定せられております。これを今回の措置におきましては大体五十億円と押さえております。これでは余程の圧縮と申さねばなりません。特別鉱害に便乗して一般鉱害の復旧をやるという余地は全くないものと思うのであります。以上を以て私の公述は終りますが、私共は戰時中の戰力増強、職後の経済再建のために多くの犠牲を拂つて来たつもりであります。固より国のために奉仕するということは、我我の素志であり本懐であります。併しながらその後の始末については国も国民も考えて貰わなければなりません。当時の政府が何を我々に約束したかということは、ここでは申しません。観点を変えて二の実害の認識の上に、社会問題化しておる現地の不安の除去のために、新しく公共の福祉のために、国民経済復興の名において厚意にこれが解決を望みたいのであります。本法案は右の見地からして極めて重要なる社会立法であると信じ、これが成立を福岡県被害民百万の熱望を以て強く要望いたす次第であります。
#5
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。何か簡単な質疑がありましたら……。
 それでは引続いて福岡県鉱害対策被害者組合連合会副会長栗田さんにお願いいたします。
#6
○公述人(栗田數男君) 私は福岡県下鉱害被害関係六十二市町村を以て結成いたしておりまする被害者として一言申し述べさして頂きます。
 炭鉱の強行採炭が原因となつた地上被害の悲惨な状況につきましては、先頃国会より特別委員の方々が現地にお出で下さいまして被害地の一部を親しく御調査願いましたので、被害の実状は大体御承知のことと存じまするが、被害者の苦しい現状をもう一度お聽き願いまして皆さまの御参考に供したいと存じます。
 福岡県におきましては、炭鉱の強行採炭により耕地が陥落して水没又は傾斜のために甚大なる損害を蒙つておる面積は約一万三千町歩に及んで、二十三年九月の閣議に報告せられました関係炭坑の明瞭なるものは、その中一万一千三百町歩であります。これらの耕地は、それは主として田面でありまするが、一部落一村のすべてに亘つておる場合が多く、即ち炭鉱が国の至上命令により強行採炭を行なつた特殊地域であつたために、そこの被害地農民は一般の人々の予想にも及ばない窮状に立たせられておるのであります。一例を私の村に取つて見ますると、相先伝来の美田が三百六十二町歩の中三百三十三町歩、九割が被害を受け、その中水没田二百二町歩、不安定耕地が百三十町歩でありまして、残りの耕地即ち被害を受けていない面積は地味の悪い三十町歩に過ぎません。又專業の農家が三百三十戸で、一戸当り平均、耕作面積は一町二反歩であつたものが、現在ではその四分の一即ち二反七畝平均となつて、この結果は、日常の生活において漸く一年中の食糧を確保し得るものが百三十七戸、一部保有農家が百九十三戸で、田植や田の草を取つて手入れをして粒々辛苦作り上げたものが、一粒の米も得ることを得ずして、前年に引続いて配給を受けねばならん農家が十三戸もあるというがごとき事態で、このような惨憺たる実状は恐らく全国の農村においては予想もできかねる事実であろうと思います。かかる事態に陥らんためには、私共は、炭鉱業者とも連絡して、過去における被害地については、これまでの被害の安定した地域三十町歩を復旧する等の努力を盡しましたが、この度の強行採炭によつて再び水没するがごとき個所も出まして、以上のような惨状を呈するに至つたのであります。かくのごとき村や部落などは県下到る所に散在しておる実状であります。更に家屋の被害は二万千二百十三戸でありまして、これらの住宅は常時水浸しとなつておるか、又は僅かの雨で浸水し、雨天の際は傾いた屋根のどこからでも雨漏りがして非常な惨澹たる実状で、一家の主婦は長靴を履いて炊事をするという状態も珍しくないのでございます。如何に被害者が窮状に陷つておるかを証するものでありますが、殊に寒い冬場では、戸や障子が立たないので寒風が家の中に吹きすさびまして、その寒さに慄えておるのであります。農家は秋には籾乾場を失い、商家は日々の商売ができませず、安んじて生活ができないのであります。又最も寒心に堪えないのは小学校の校舎が受けた被害で、柱は傾き、壁は落ち、窓は満足に立たない、床は段々ができておる状態で、危險甚だじいもので、多数の児童を収容しておる所に万一の事故が発生すれば誠に大変なることになる。今日までにこの地方に地震等の事が起らなかつたことが幸いでありますが、若し地震なり暴風のごとき天災があれば、恐るべき悲惨な事が起るでありましよう。
 次に日常の飲料水についても又想像以上の事態が発生しております。即ち水道は土地の陷落に伴う給水管の損傷、水圧の低下等にて給水が不能の地域がだんだんとできて参つております。又井戸も地下水の異変によりまして全くなくなり、到る所に水飢饉を呈して、或いは汚濁水が出まして使用の用をなさず、主婦は一日の大部分を水汲みにかかつておるというような、労力と衛生上誠に遺憾とすべきのみならず、若しその部落に火災等があれば、直ちに防火用水に事欠くという状態で、被害地住民は常に戰々兢々としておる次第でございます。又道や河川についても到る所に被害が発生しておりまして、特に梅雨時の大雨には非常に苦心をいたしております。又相当の被害を受けておる炭鉱の中心筑豊の遠賀川の堤防が若し決潰することがあれば、沿岸の耕地数千町歩は潰滅して、更に鉄道の幹線は杜絶する、人畜も多大の損害があるばかりでなく炭鉱自体も浸水によつて廃坑となることは必定でございます。目下道の復旧が中途で停止されておるために、交通上非常な苦労をいたしております。極端なる事例でありまするが、遠賀郡中間町の七十戸程の一部落のごときは、三本の幹線道路が全部陷没いたしまして、車馬交通が全く杜絶えたために、目下供出米の出荷命令を受けながら供出することもできず、家計に甚だ苦痛を與えておるような現状であります。このように物質的な困苦に悩まれると共に精神的な打撃を被つておる具体的な問題には墓地の被害がございます。即ち祖先伝来の墓石が水の中に浸しまして、お墓詣りもできない状態で、そのために折々の法要や盆祭りに際しては、道がないので板橋を掛けて、水浸しのお墓に橋の上からお詣りをしたり、或いは又墓地まで船を出して墓詣りをする、いつた悲壮なる事実もありまして、物質上精神上蒙る被害の苦難は、一度この土地に足を踏み入れて頂けば十分お察しがつくのでございます。このような悲惨な状態とならないよう、現地にあつては、炭鉱に対しまして従来より陷落防止について嚴重なる交渉を重ねていたのでありますが、戰時に負けるか負けないかの重大危機に立つた際のことであり、当時の情勢としては、国家に協力しなければならないという考えで炭鉱が行なつた強行採炭に協力して来たのであります。勿論これが單に一炭鉱、一会社のために採られた行為であるなら、決して我々は協力しなかつたのでありまして、国のため炭鉱が無理をしてでも石炭の増産をするというので協力を惜しまなかつたのであります。つまり我々が今日までの鉱害に対し、我慢に我慢を重ねて来たのは炭鉱のためではなく、全く国家のためでありまして、従つてこの鉱害は国家全体のため、我々被害者が背負つた犠牲であります。故にこれが復旧に当つては、当然国と全国の炭鉱において負担復旧して貰うべきものなのであります。若しもこれを国と加害炭鉱のみにて負担し復旧するようなことになれば、経済再建の途上、企業合理化の進められておる今日、加害炭鉱の負担は余りにも多過ぎまして、無理である。又我々としても確実に復旧して損害の補償を行なつて貰えるかどうか不安を持たざるを得ないのであります。この故に、政府においては、一昨年行政措置を以て全国炭鉱より炭価の一部をプールし、その資金を公共事業費予算に見込みまして、被害地及び被害物件の一部復旧に着手せられましたので、我々被害者としては一応愁眉を開いたのであります。然るに昨年九月半ばにして、配炭公団の廃止に伴う右のプール資金は消滅して、ために復旧工事は全く中止の止むなきに至りました。過去においては被害地の炭鉱経営者の大方が全国屈指の大資本家でありましたために、被害者も或る程度の信用を置いて安心しておりましたが、職後における財閥の解体等によつて全く信用が置けなくなるに至りました。その結果として被害地住民は非常に動揺して、遂には過激な言動や行動が各地で起りました。破壞的な思想がようやく広まらんとしておつて、誠に寒心に堪えないのであります。これらの運動なり行動が、被害民としても、又炭鉱業者としても、決してためになり利益になることではなく、却つて損失の多いことは十分分つておりまするが、被害地の復旧対策が確立しない限りこれを阻止する道がないのであります。このような状況は直接間接に炭鉱の操業にも影響を與えておりまして、一般には、炭鉱は地下作業を主とするものであるから地上権者等は何ら加害を蒙らないというように思われますが、実際には地上権者の理解と協力がなくしては事業の成績は全く挙らないことは、業者の方の十分御承知のことであります。
 以上の観点よりいたしまして我々被害者は、ここに政府の提案せられておる特別鉱害復旧臨時措置法案、即ち被害者を犠牲とすることなく、公共の福祉を確保して、併せて石炭鉱業の健全なる発達を目的とする点において、種々の議論はありましようが、占領下における我が国の現状としては最も時宜を得た適切なる法案であるということを信ずるものであります。願わくば急速に御審議を願い、一日も早く国会を通過せしめられ、福岡県下百万人の被害者が蒙つているこの不安、その他あらゆる物質的、精神的困難を一日も早く取除いて、我々を救済して頂くことを懇請申上げる次第であります。
 聞くところによりますれば、一部の炭鉱業者においては、本法案に反対して審議を阻止せられている由でありまするが、不幸にしてそれらの業者が、過去における多くの事例に見るごとく、我利々々主義の資本家的観念に徹して、困苦に悩む被害者を踏みつけ、人が倒れても自分の利益を得ればよいというようなことであるならば、誠に遺憾この上もなく、今全国の炭鉱関係の農民が、又地上権者はこの法案の成行に十分なる注目をしているのでありまして、私が全国各地の農民の方々より激励を受けている次第でございますることを申添えまして、私の公述を終りたいと思います。
#7
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。御質疑ございませんか。
 それでは次に長崎県鉱害対策協議会常任幹事の山口さんにお願いいたします。
#8
○公述人(山口正之君) 私は長崎県の立場から、特に先般当院より派遣になりました調査団が、日程等の都合によりまして遠く長崎県の現地までおいでを願えなかつた意味合からも、長崎県の特殊なる鉱害という意味におきまして一応御説明申上げたいと思います。
 長崎県におきましても、耕地におきましても、更に一般土木関係におきましても、或いは水道、私財産等におきましても、福岡県と同様に被害を受けているのでありまするけれども、長崎県としての炭田の特殊性よりして、聊か異る現れ方を示しているように見受けられるのであります。それは福岡県に見るような広大な地域や市街地等に、炭山の中心区域が少くて、むしろ山間僻遠の地や離島地区に多いのと、更に薄層炭田である、こういうことが一応その特性を示す結果になつているのではないかと思われるのであります。特にこの地形的に僻遠であるというところからして、長崎県といたしましては、いわゆる捨石の堆積よりするところの鉱害、俗にボタ山と称されておりまするが、これが堆くあの巨大なピラミツト型に堆積されておりまして、これから生ずるところの鉱害というものは、道路や田畑、更に河川に入りましては河底を浅くして、これがためにひとたび水害でも起るならば、その氾濫よりするところの脅威は実に恐るべきものがある実情にあるのであります。尚又薄層炭田であるというところよりいたしまして、福岡県に見るような大きな水没地帶が比較的に少いのであります。特に先程申上げましたように農耕地の乏しい長崎県におきましては、山間部と雖も隈なきまでに耕地化されまして、特に水田等は傾斜田が多いのでありまして、これは丹念に構築されました溜池等によりまして賄われておるのでありまするが、この溜池が一度被害を受けますると、その関係町歩に及ぼす影響は実に大きな被害となつて現れているのでありまして、この意味から農民の生活上の大きな脅威となつておるのであります。更に先程申上げましたように離島地区に多い。こういう点よりいたしまして、海岸地区に大きな陷没地帯もありまするけれども、そのために平均水面よりも三メートル沈下しておるような海岸地区の部落もあるのであります。例えば北松浦郡の福島地区であるとか、西彼杵郡の崎戸地区などそうであります。そうして一度風浪でも起るならば、そのために生命の危險にまで曝される危險があるのであります。尚離島地区に関連いたしまして一言申上げたいと思いますることは、水の脅威でございます。固より離地区は従来より水に恵まれてはおりませんでしたけれども、僅かに頼つておつた井戸水が涸渇し、更には海岸地帶に部落が密集しておる関係から、海岸地区の井戸水は地盤の沈下によりまして海水が浸入いたしまして、これは飲用に堪えないのであります。他に水源の求める途がないこれらの地区の人達は、時たま降る雨を利用いたしまして、いわゆる天水箱を作つて、雨水を飲んでいるような実情にあるのであります。これを救う途は、どうしても本土から遥々水船を利用して、水を運んで離島へ送り給水をせざるを得ない実情にあるのであります。尚水に関連して一言申上げたいと思いますることは、北松浦郡の福島村へ吉井村等におきましては密集部落四十数ヶ所の井戸が現在全滅に瀕しております。昨年も夏におきまして、アイスケーキ屋は商売をやめております。それから保健所がこの水を使つておりましたが、これも保健所自体の水が使えなくなつて衛生上の大きな問題を現在起している次第であります。又同じく調同時のこと含におきましても一昨年、昨年伝染病が流行したのも汚ない水を飲んでいるためであると思われるのであります。以上大体におきまして長崎県の特殊な事情について申上げたと思うのであります。
 更に引続きまして、私はこの法案に対する賛成の立場を執る関係から私の意見を申上げたいと思うのであります。この法案に対しまして、一部方面から反対が唱えられておるということを聞いておるのでありまするが、私はその反対の理由の主なるものは、いわゆる鉱害関係のない無鉱害の地域において関係炭鉱と同様の負担を課せられ、更にこれを強制徴収されるところに反対の理由があると臆測いたすのでありまするけれども、而も私はその反対の理由を、言い換えますと、関係の鉱業権者において当然法律上の責任がありながら、今日の時代に至つて、負戰に堪えないから同じ業者の立場からこれに対して犠牲的に寄附をするのであると、こういうことは誠に怪しからん。こういうような意味合が多分に含まれておるのではないかと思うのでありますが、私はそういう意味からは、或いは不公平の誇りを免れないかも知れませんけれども、私は関係炭鉱において、いわゆるこの特別鉱害に対しては責任はないのだと、こういう考えを持つておるのであります。従いまして責任のない点からいたしますれば、寧ろ関係の地域におきまする納付金の問題にいたしましても、立場においては正に同列であろうと思うのであります。その理由を申上げますと、現在の法律といたしまして、いわゆる鉱業法中の鉱害賠償規定がございますが、この賠償規定の根本趣旨をなすものは、当時学者間に画期的とまで言われましたいわゆる民法上の敵意過失の原則を遥かに破つて、いわゆる無過失賠償責任を取つておるのであります。而もこの無過失賠償責任の根拠はどこにあるかと一言いますと、これ又学者の説によりますれば、いわゆる鉱山事業というものは、石炭鉱業というような巨大事業は当然その大きな企業よりいたしまして危險も亦負担しなければいけない。こういうところからこれを企業責任或いは報償責任と言われておると私は承知いたしておるのでありますが、その意味におきまして私はいわゆる特別鉱害というものの原因は強行出炭ということになつておると思うのであります。而もその強行出炭は如何なるものであるかは、種々なる資料等によつてはつきりと証明されると思うのであります。然らば私はこの強行出炭によりましてその企業性を喪失せしめられた結果に基く鉱害であるならば、いわゆる報償責任の根拠は私は正に失われておるのであつて、この意味から当然鉱業法の鉱害賠償規定の埒外にある特別鉱害の問題であると考えるのであります。こういう意味合から、私は関係炭鉱に責任はないのである。従いまして寧ろ関係地区の石炭業者の方々が九州の鉱業地区のために犠牲になるのだというお考えは当らないのではないかと思うのでありまして、その意味合からは、いわゆる立場は同列であつて、寧ろ石炭鉱業全体にかかる問題として考えなければならないのじやないかと思うのであります。然らば一体これは誰の責任であるのか、こういうことになりますと、いろいろ議論もあると存じますけれども、苟くも強行出艇を命令した者は国家であれば、当然国家は全責任を以てこれに対して全額国庫補助を以てこれを解決すべきであるという、こういう議論も多くあることも如つておりますけれども、成る程その責任論の如何を問わず、この鉱害全体の特別鉱害について全額国庫補助の道の開かれることは我々の望むところではありますけれども、御承知のごとく今日の事態はこの論によつて、との全額国庫補助の案によつて救われない。実状はそれ程切迫しておるのでありまして、この意味におきまして私は理想案に止まるのではないかと思われるのであります。尤もこの点につきましては先般臨時国会の衆議院の通産委員会におきまして、たしか今泉議員さんの質問であつたと思いますが、鉱害に対して国家責任はないのである、このように政府側から答弁がなされておると思つております。而もその根拠は、戰時補償を打切つておるのである、こういうところが国家責任論が成り立たない理由とされておると聞き及んでおりますが、いずれにいたしましても、国家全額負担によるこの立法化の問題は、望ましいけれども今日に間に合わないということを繰返し申上げたいと思うのであります。尚又特別鉱害は直接戰争に上る被害ではないのでありまして、この意味におきましては、私は戰災とは嚴重に区別されるべき問題であると思うのであります。然らば私はそうした意味合から、成る程人為的にいわゆる石炭の掘採に伴う被害であるという意味合から、これは人為的な原因でありまするけれども、現われた結果、御覧になりましたならばよく分りますように、正に深刻なる災害の態様を示していると思うのであります。私はこの鉱業権者の責に帰すべからざる理由によつて生じたところの鉱害というものはいわゆる一般の災害と同様に取扱わるべきものではないかということを考えるのであります。この意味合から私は少くとも、事ここに至りましてはこの復旧費の財源問題を如何にして捻出するか、この点にかかつていると思うのでありまして、こういう点から私はここに只今福岡県の県知事からも申されたように、社会立法のいわゆる特別鉱害復旧臨時措置法案の生まれざるを得ない理由があるのではないかと思うのであります。従いまして、時間の余裕を持ちませんのでいろいろと申上げることは省略いたしまするが、何とぞ先程申上げましたような立場から、反対業者も、單に九州の犠牲になるというのじやなくして、同様の、同列な立場からこの問題は災害としての鉱害を、むしろ領土復興なり、更に民生の安定なり、法律に言われておりまするように、公共の福祉を確保する、こういうような社会的な見地から、国も費用を出さなければならないし、地方公共団体もこれ亦負担いたしまするし、同時に又この立法の狙いでありまするように、生産者が一応負担をするけれども、それがいわゆる全国民が負担をする意味において消費者負担ということにも考えられるのでありまするから、この際国民的にこの問題を解決するという見地から、私はいわゆる国も地方も公共団体も、場合によつては被害者も当然一半を負わなきやならないという点からするならば、石炭鉱業という立場から、生産者もこれ亦欣然これに参加して、この問題を国民的に解決されるようにお願いする次第であります。以上を以て終ります。
#9
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。引続き熊本県荒尾市長の寺田さんにお願いいたします。
#10
○公述人(寺田佐平君) 私は熊本県の荒尾市長の寺田でございます。御承知の通り荒尾市は熊本県の西北端で西は有明海に面し、北は福岡県の大牟田市に隣接をいたしまして、三井三池炭鉱の鉱区内にあり、市内に万田、四山の両炭鉱がありまして、特別鉱害を受けた所であります。私はここに市民の被害者の代表といたしまして、特別鉱害の実情をお話し申上げる。これが市民の生活問題にどんな重大な影響を與えているか、又民心がどんなに極度の不安と焦燥に駆られているか、将又市政面に取りましても致命的な重要問題であるということをお話し申上げて、この法案が一時も早く議会を通過いたしまして復旧の運びに至りますようにお願い申上げる次第でございます。
 第一に荒尾市における特別鉱害の実情を申述べます。この地域は幕末時代に九ヶ町村の農民が一丸となりまして頑強な石垣で築堤をいたした干拓新地であります。特に市内における農産物の宝庫でありまして、この新地が戰時中の濫掘によりまして全面沈下をいたしまして、全部海底より低くなつて、その大半は沈下二メートル近くに及びまして、海水が浸入して、農作物は皆無どころか一面海となりまして、魚貝が住んでいるものでございます。桑田碧海の例もありましようが、荒尾の唯一の美田は毎朝毎夕市民達がこの変り果てた様子に歎息を漏らしているのでありまするが、特に取立てて申上げたいことは、この新地の堤防が特別鉱害を受けまして決潰寸前にあるということでございます。参議院の視察団の方々がお出でになりました節は、時間の関係上新地の堤防も、海に面した危險な所へ御案内はできませんで、大島川に臨みました応急の補修をやつた所で水没の状況を御覧に入れただけでございますが、衆議院関係の方々の場合は、海に面した一画まで御案内申上げまして、石垣の上にセメントで補強いたしました部分に大きな亀裂を生じている所や、堤防の下部が折柄の満潮によりまして漏水をいたし、それが急流のように流れ込んでいる所や、堤防の上部が大部風水によりまして内側の土砂が浸蝕をされ、海に面した石垣やコンクリートが骨を曝している所、満潮の時、風水の甚だしい時にはいつそれが転げ落ちて決潰するか分らないような脆弱な、恐ろしい場面を御覧に入れた次第でございます。
 第二に、私は、荒尾市の死活問題がこの堤防にかかつていることを申上げたいのであります。六万市民の過半数がこの鉱層地区に住んでおります。一度この堤防が決潰をいたしましたらば、海岸平野一帶約南北四キロ、東西一キロ乃至一キロ半の低地帶にあります市の中枢部は海底に呑まれるのであります。市役所も警察署も、郵便局も停車場も、商店街も農地も、一切が泥水に化するのであります。市民の生命も財産も一朝にして脅やかされるのであります。正に荒尾市発生以来の一大悲劇が展開されるのでありまして、荒尾市の政治も経済も、交通も産業も、一切のものが止まる状態にあると思います。両院の視察団の方々がお見えになつた時も、福岡の座談会にも、市長みずから出掛けまして特にその苦境を申上げておりますのも、市政の最も大事な重点を取上げて、この復旧をお願い申上げるからでございます。全く荒尾の情勢は一刻も楽観を許さない状態にあります。昨年のジユデイス或いはフエイの台風の時には、幸いに風向が東の方から吹きまして、海から吹かなかつたということでその堤防は切れなかつたのであります。一度は丁度干潮時でありまして、最烈風の時は干潮時でありましたので、全くこれは天佑で助かつたのであります。で今年あたり若し夏の大潮の時、ちよつとでも風が荒れるような場合があつたならば、この堤防は切れるに違いないと予想されるわけでありまして、市民は全く戰々兢々といたしまして、心配をいたしておるわけであります。百年間一度も切れなかつたこの堤防が昭和十七年の大風の時に一度それが切れたのでありますが、その時の様子は数字的に申上げられませんが、やはり一キロ離れました鉄道線路に及んでおりますので、西の方にあります町並は殆んど全部溝かつておるし、市役所も水浸しになり、その楼上には百余名の避難者を収容いたしております。或る農家の語るところによりますれば、馬の腹まで海水に漬かつたと言つております。晴着は全部用をなさなかつたと言つておるし、箪笥は緩んで使えないようになつたと苦衷を訴えておるのであります。泥海に化しました田畑はその年の収穫は皆無でありますが、一度漬かつた所は約二年間はすつかり駄目でありまして、たとえ乾燥いたしましても地力の回復はむづかしいと言つております。この決潰した堤防は、炭鉱が中心になりまして、労務者は勿論のこと、青年団或いは婦人会まで総動員をいたしまして補修をいたしました。夏の暑い日、二里も離れた小代山という山の中から雑木や羊歯類を、小学生が一列にずつと並びまして、そうして二里余りの所をリレー式に運んだことも語り草に残つておるのであります。その翌年昭和十八年には、その新地に稻の苗を植えたのでありますが、とうとう稻の葉先は水の上に成長いたしませんで、沈んでしまいました。秋の収穫はすつかり駄目でありました。お芋もとうとう水浸しになりまして、一物も穫れず、そのまま新地は海底に沈んでしまつたのであります。今や祖先以来の遺骸を納めている大島区民の納骨堂、これにも亀裂が生じまして、水が浸入する状態になつております。尚この新地の西方、海一帶は、曾ては一年に何千万円の收穫を挙げました魚介類のよく穫れる遠浅の海でありますが、四キロも干潟となつて、姥貝やボラやグチなどのよく穫れたその海の幸が、海底の陥没によじまして四五尺もゆらゆらした泥の海底にカバーされております。全然危くて海には入れません。魚を穫るための投網も、或いは地引網もできぬ。この海の異変に対しまして、区民達は泣くにも泣けぬ苦しみを嘗めているのが、この荒尾の現状であります。この救済もない、施策もない、産業の振興もない、民心の安定もないということを、市長といたしましては特に憂慮をいたしておる次第でございます。
 第三に荒尾市の特別鉱害を通じまして、この特別鉱害臨時措置法の御審議に際しまして意見を述べさして頂きます。特別鉱害に対する狙いは復旧にございます。いわゆる復旧というのは、日本の土地の復旧であり、これによりまして不幸な人達を救済し、その不安を一掃して頂くことでございます。北海道であろうと九州であろうと、土地を回復して美田に返すところに何の不法がございましようか。当分海外にも行けず、狭い国土に八千万の入口がうようよしておる今日、到る所に山を拓き海を干して、国土の開拓をやつているのは喜ぶべきごとでございますが、ましてや何百年来、先人の魂と汗の結晶で開拓された耕地や、祖先の遺骸が葬られている墳墓の地や、将又市民の福祉をもたらす家屋や道路や、鉄道とか、用水路とか、そういうものを復旧する法案にどこに不都合なところがございましようか。私は法理論的な説明は別といたしまして、常識的な社会通念の上から考えと見まして、その復旧ができぬところに民心の不安焦燥があり、種々雑多な社会問題が湧いて来て、人心も乱れ、政治もやれん状態に立至るのではないかと憂えておるのであります。失礼な申分ではございますが、どうぞ一党一派に偏せられることなく、超党的な立場から立法の府一体となられまして、虚心坦懐、これが救済のために御審議をお願い申上げたいのであります。敗戰日本の再建は、お互い権利を主張することばかりでは立つて行けません。日本人として困つておる者があれば、これを救つてやるという道義心、即ち相互扶助の精神が大切であると存じます。米国の国民の方方が日本人を救つて下さることを考えるとき、我々はその人類愛の非常に大きなものであるということを反省いたしたいものであります。日本の一人一人が日常生活の上にこの寛容の精神、博愛互助の精神が発揮されましたならば、平和日本も順調に生成発展して行くものと深く喜んでおる次第でございます。この法案に対し、特別の鉱害を與えると否とを問わず、齋しく同業者であるという立場から同調をされましたとき、初めて日本の基礎産業である炭鉱業者として明日の発展があるのではないかと信ずる次第でございます。特に地理的の位置や採掘の難易、或いは炭質の良否などによりまして、強行採掘の国家の至上命令が或る炭鉱には飛び、或る炭鉱には至らなかつたということが明瞭である以上、たとえ戰時中の問題でありましても、今日害毒が及んでおる以上、鉱害の有無に拘わらず、齋しくその一部の責を負うべきことは、八千万国民の名におきましてもはつきり申上げることができると存ずるのであります。
 私はかくのごとき国力の復旧や民心の安定を基調とする大問題につきましては、議会も政府も同業者も、八千万同胞挙国一体となつて、日本再建のために大乗的な見地から御努力をして頂かなければ日本の復興は望まれないと極論主張をいたすものでございます。
 最後に、荒尾市の特別鉱害の復旧は、先程申上げますように速急を要する事柄でございます。一日の偸安も許さない状態に立至つております。何卒利害の衝突や法理論などで徒に法案の審議に日時を費されることなく、原案無修正で断々乎として通過さして頂きたいと私は特に懇願をする次第でございます。
#11
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございます。被害者側の最後としまして、山口県鉱害対策組合連合会書記長和田さんにお願いいたします。
#12
○公述人(和田滿惠君) 私実は発熱をいたしまして、立つたまま陳述をするということが少し困難のように思いますが、大変恐縮ですが、この席のまま陳述をさせて頂けませんでしようか。
#13
○委員長(小畑哲夫君) 結構でございます。
#14
○公述人(和田滿惠君) 私は山口県鉱害対策組合連合会書記長和田満惠でございます。大変恐縮でございますが、体が不調しておりますので、この座席のまま公述させて頂きます。失礼を何卒お許し下さいませ。
 先ず最初に私共一言御礼を申上げたいと思いますのは、過ぐる一月上旬に当委員の現地御視察の反響とでも申しますか、さような点にちよつと触れて見たいと思います。外でもございません。参議院の皆様が親しく現地を御視察して頂きまして、あの悲惨な被害者の立場を救つてやらなくてはならない。いろいろないざこざはありましたけれども、こういう結論に到達もし、山口県といたしましても、当局はそこに話がまとまりもし、又議員の方もさようお話を承つたのでありますが、丁度只今は供出の時期でございます。御承知かとも思いますが、我が山口県は最も供出の成績が惡いのであります。これはあながち山口県が鉱害地が多いというようなことが、その最も大きい原因だとは言えないかも分りませんけれども、少くとも山口県の小野田、宇部地区におきまして、最も多い鉱害地のある小野田、宇部地区におきまして供出成績が惡いということは、これは取りも直さず、鉱害田であるということは、これは嚴たる事実でありまして、私自身が鉱害田を耕しておる一人といたしまして、その皆様が直接親しく現地をお調べ下さいました影響の一端を述べますことは、本当に些細のことで、誠に一笑に付されるかとも思いますが、その鉱害田の多い供出に困難をしている被害農民が、自分の食べる米はもし供出を敢行するならば明日の日からない。さような被害農民が続々と供出を完遂いたしておりまして、我が宇部地区におきましても私の隣り部落が岡田屋と申しまして、最も大きい被害田を持つておりますが、供出を完遂しておるのでございます。どんどん供出の完遂に協力しておりますのは、とにかく我々の被害地を御視察頂いて、我々の被害地はやがて復旧して頂けるのだと、かような心構えになつておるのが大きな私は原因をなしておると想像しておる次第でございます。尚御視察になりましてからの被害者の農民の人達の顔には、誠に今までの暗さというものがなくなつておる。次第に朗らかにいきいきとしている。かようなことは親しく現地を御視察になりましたまあ影響とでも申上げましようか。親しく現地御視察のときにもお礼を申上げたかと思いますけれども、さような状況の一端を御報告いたしまして、今度から被害者を代表いたしまして厚く深謝の意を表する次第でございます。
 さて私共被害者といたしましては、特に山口県下の被害状況につきましてそれぞれ各市町村なり、関係当局の方々がしつかりした基礎資料を持つておられますから、私はさような計数的な問題には触れずに、本当に私自身が鉱害田を作つておる関係上、具体的に小さい例でありますけれども、如何に被害農民が困難をしておるかという一、二の例を申上さして頂きまして、御参考までに御賢察を願いたいと思うのでございます。先程各地の被害者の方々が申されましたごとく、この鉱害を受けました田というものは、或いは傾斜し、酷いのになりますと、陷没いたすのであります。殊に傾斜しておる田を作ります場合には、これを極端に申上げますと丁度山の傾斜の面に畑がありますが、あれに水を受けるようなものでございまして、私は第二雀田炭鉱の鉱害田二反四畝一歩の田を作つております。これを十三本の手畦というものを作るのでございます。手畦というのは自然の畦でない、わざわざその田の中を幾つにも仕切りましてそれに水を当てる。水当て口が高い場合は尚よろしゆうございますが、不幸にして当て口の方が陷没をしておる場合は水を当てるだけでも非常な至難を感ずるのでありまして、かような田に恐らく朝から晩まで、日に三度ぐらい行つて水を当てなければ、而もその努力を稻が相当の生長まで、盆過ぎまでは継続しなければその田から収穫が得られないのであります。併し作るに土地のない、住むに家のない被害民は、止むを得ず黙々とこの土地と取組んでおるのであります。ここで私は農民の立場から、土地に対する認識をちよつと述べさして頂きたいと思いますが、一体百姓というものはその耕地に対しては、これは生きものだ、国のお宝である、かように考えているのであります。それはとにかく、たとえ天災が来ようと肥料をやり、一生懸命に土地と取組んで、土地と共に生きておりさえすれば、自分一代でなしに、子孫に至るまでその土地からなんぼかの生産を挙げるのでありまして、石炭産業とちよつと違う点は、石炭事業はその埋蔵量の石炭とそれを掘り出す費用を計算いたしましてそこに利潤があればその事業は成立つのであります。さような一時的な問題ではない、農民の土地に対する愛著の念というものは根本的に違つているのであります。かような面から我々といたしましても被害者の立場になつていろいろ炭鉱と交渉して来たのでありますか、なにしろ憲兵が戰時中炭鉱へ直接おいで下さいまして、劍とピストルを持つて採炭夫の方々や仕繰夫の方々をピストルでおどかして炭を掘らしておられますから、やはり被害者の立場を申上げる余裕がなかつた。そういうような現実の問題から今日に至つている実情でございます。その他もう少し例を挙げまするならば、私共の部落に中村という人が長伸炭鉱の鉱害田を作つておられるのでありますが、それは二枚で三反二畝ぐらいありますが、丁度一生懸命になつて水を当てているのに水が引いてしようがない。長伸炭鉱の水が、鉱害水があまり綺麗であるから、この水でもいい、当ててやつたら稻によくはないかとちよつとお考えなさいまして、二度ほどその長伸炭鉱の水をお当てになつたために、収穫直前になりまして全部枯死しておるのであります。一粒の米も穫れないのであります。かような被害の実況は私がここで縷々申上げるまでもなく枚挙に遑ないのであります。従つてわが宇部地区におきましては、さような被害に泣いている農民が、皆様現地御視察になりまして非常な希望を持つておるということは疑を容れないのであります。どうぞ、我々被害者といたしましては一日も早くこの被害が治りまして、喜こんで食糧増産、安んじて仕事に就かして頂くように、篤と御懇願を申上げる次第でございます。勿論山口県におきましては加害炭鉱、無加害炭鉱の間にいろいろと御意見もあるかのように私考えるのでございます。この点につきまして私共被害者の立場から少し言過ぎがと考えますけれども、我々被害がよくなりますということは、取りも直さず石炭産業に対する我々の協力ということができ、尚一般社会人の認識も深めるという、目に見えないプラスの面を業者も御考慮して頂きまして、そうなることは結局日本が再建できるのだ、かように、あくまでも国家という見地から本問題に対して御考察を仰ぎたい、老婆心までに申添えておきたいと思います。両出品炭田といたしましてはドツジラインの強化によりまして、低品位炭の関係もありまして、現に休廃炭鉱が続出している実情でございます。それらの被害者たちは誠に暗澹たる懊悩にその日その日を過しているわけであります。さような戰時中の強行出炭によりました被害は何卒洩れなく救済をして頂きたい。併せてお願いを申上げる次第であります。それに附加えまして冀わくは折角復旧をして頂きますならば、我々被害者の声が復旧と直結するような、つまり我々被害者農民の納得の行く復旧をして頂きたいという点も附加えてお願いしておく次第でございます。要するに我々被害者といたしましては、非常にをこがましいお願いかとも思いますけれども、復旧を一日も早く、時間的に一刻も早くやつて頂きたい。尚この時間的にという面で先程から幸いということを盛んに申されましたけれども、我が宇部地区の厚南平野大百町歩も殆んどその三分の二まで全面的に土地が沈下しておるのでありまして、ただ厚東川の堤防一つによつて海と接しておりますが、昭和十七年八月二十七日、思つても生々しいあの風水害の際にこの堤防が決潰いたしまして、百数十名の人が死んでしまつたのであります。尚続いて昭和二十年八月十七日の災宅にも、この度はお晝でありました関係上、死傷者は出ませんでしたけれども、非常な災害を蒙つたのであります。かような時間的兵災害とこの鉱害との関連性を特にお考え下さいまして、特段の皆々様方の御協力をお願いをしたいと特に御懇願申上げる次第であります。
 最後に我々被害者のよくなるこの法案が、どうぞ皆々様方の全面的支持によりまして、従つて被害が復旧して、被害農民が安んじて食糧増産に邁進し、延いてその結果は石炭業界に対する認識を高め、更に日本の再建ができるという面を御想像して頂きまして、どうぞ是非この法案が通過いたしますように切望して止まないのであります。かようなことは勿論全然ない、万が一にもないとは信じますが、若し万一本法案が通過いたしませずして、我々全国の被害者有数十万人が、只今現地御視察になりましたごとく非常に不利な環境下に未来永劫浮び上れないというような事態を招来したといたしましたならば、皆様一体この責任は誰にあるのでございましようか。宜しく被害者もよくなる、石炭産業もよくなる、日本の国家も再建できる、かような施策を政府御当局の皆々様方が採られなかつたならば、いつの日にか日本の再建が有り得るでありましようか。宜しくこの点を御賢察いたして頂きまして、本法案がめでたく通過いたしますように切願いたしまして、山口県の被害者を代表し、本公述人の公述を終らして頂きます。終り。
#15
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。委員の方で何か御質疑ございませんか、只今まで五人の公述人の御発言に対しまして……。それでは午後の一時から開会いたします。それまでこれで休憩いたします。
   午後零時十三分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時十三分開会
#16
○委員長(小畑哲夫君) 休憩前に引続いてこれより会議を開きます。炭鉱側の代表といたしまして、北海道炭鉱汽船株式会社常務取締役の萬仲さんお願いいたします。
#17
○公述人(萬仲余所治君) 大変奇妙な名前をいたしておりますので、名前から申上げますが、マンチュウヨソジと申します。北海道炭鉱汽船株式会社の常務取締役をいたしております。兼ねて夕張鉱業所の所長をいたしております。尚本日は炭鉱汽船会社の役員としてお呼び出しに與つておりますが、私北海道石炭協会の会長もいたしております。今日申上げますることは、炭鉱汽船会社の役員として申上げるのではございますが、それがそつくり北海道石炭協会の会長としての発言としてお取り下すつても差支ない内容を申上げます。
 先刻来被害者代表の方々五人の方々のお話を承りましたが、この二十六年間、北海道の山の中で生活をいたしておりますが、九州の炭鉱へは一遍も伺つたことがございません。併しながら北海道の山の中の炭鉱でも、第三者に損害を與えるか、自分の持物に損害を與えるかの相違はありますけれども、形の上に現れた鉱害に類するものは相当にあります。ありまするが故に、その被害状況が如何に悲惨なものであるか、如何に社会問題を構成する内容を持つておるかということは、或る程度承知いたしておるつもりであります。只今いろいろお話がありました実情を承りまして、誠に鉱害、特に戰時中に特別な條件の下に行われた採掘によつて起つた鉱害というものは、一日も早く復旧せねばならんということには全く同感でございます。然るにも拘わりませず、この法案をそのまま通過することに反対せざるを得ないことを誠に遺憾に存じます。只今から反対の理由を申上げます。
 先ずその先に申上げたいことは、先刻どなたかの御発言の中にもありましたが、この法案に対して炭鉱業者の一部に、或いは我利々々的な自己の利害ばかりを考えるような意味合で反対をしておる者があるかも知れんというようなお話でございました。かも知れんとおつしやいますから、私も真顔になつては申上げませんけれども、若しあるとおつしやるならば、私の方からは真顔になつて申上げねばならんのであります。逆に申しますと、私共の方から申しますと、やつらは不都合である、この社会問題をどうするか、やつらが反対しておるためにこの法案が通過しないということによつて、重大なる社会問題ができるんである、彼らは実に不都合だというかのごとき言説がどこかに行われておるかも知れませんことによつて、私共が相当に誤解を受けておるということを甚だ遺憾に存ずるものであります。私共は特別鉱害の一日も早く復旧されねばならんということについては少しも異議を挟みません。先刻も申しました通りであります。併しながらこの法案の中に盛られておる特別鉱害の復旧費の負担方法について異議があるのであります。この点において修正されない限りは、私共はこの法案に反対せざるを得ないのであります。この点が我々の求めるような修正がされるならば、一日も早く通過せんことを望むものであります。先刻もお話がありましたように、大体この特別鉱害というものは、法案の三條に載つていますように、大東亜戰争中に起つた鉱害であつて、自分で自分の計算の下に操業する際には決してやらないという、国家の非常要請によつてやつた鉱害であつて、而も特急に早く復旧せねばならぬものであるということでありまして、この責任たるや国家自体が負担しなければならぬということは最もはつきりしていることであります。この点は、県知事さんもおつしやつていらつしやいました。併しながら諸般のいろいろな問題があるから、理屈は理屈としてその通り行かないということをおつしやつていらつしやいます。それもその通りであります。併しながら、先刻も県知事さんがおつしやつていらつしやつたように、戰時補償は打切られておる。その職時補償というものと、この鉱害がそれに当るかどうかという点については私共相当の疑問を持つておる。相当どころか、これは当らんと私は考えておるのでありますが、そういう点でいま少し、時期的にはうんと早くやらにやいかんけれども、この問題はもつともつと検討を要すると考えておるのであります。で、先刻も申しましたように、理屈からいえば国家の責任である、併し国家はそれをどうしても全部負担することができないというような事柄があるということも考えまして、我々炭鉱業者は昨年の六月、やがて配炭公団もなくなりはしなやか、又統制もやがて撤廃されるようになるだろう、その一部はすでに撤廃されたというときに、私共が集まりまして、それまで統制された炭価の一部に入つておつたこの特別鉱害の復旧費用をどうしようということを協議しました結果、理屈は飽くまで政府負担然るべし、併しながらどうしても政府が全額負担できない場合も考えて、六月二十九日に関係官庁に陳情いたしております。日本石炭協会の名によつて陳情しております。その陳情の中には、万止むを得ないときには三分の三を国家で御負担願いたい、残る三分の一は関係炭鉱で負担止むを得ませんということを申上げておるのであります。この関係炭鉱と申しますのは、この議場でいろいろ言われております加害炭鉱であります。昨日も話しておつたのでありますが、加害炭鉱、非加害炭鉱ということは非常に不穏当な言葉である。加害という言葉はそれ自体すぐに何かそこに加害者の責任ということが考えられるけれども、加害というべきでない。私は関係炭鉱、無関係炭鉱とこう称しております。今申しましたように、六月二十九日に我々石炭業者、日本全体の石炭業者が一本になつて、何とかして頂かなければならん、早くやつて頂かなければならん、そのためには、理屈を言えば国家負担も然るべしではあるけれども、どうにもならん場合を考えた場合には、自分のところで起つた事故である以上、万止むを得ませんから、理屈は合わんけれども、関係炭鉱において三分の一は負担止むを得ませんということを申し出ておるのであります。ここにおいて配炭公団がなくなることが明瞭になりました後、九月九日に更に再陳情をいたしまして、六月二十九日付でこういう陳情はいたしておりますけれども、早く一つやつて下さいということを申しておるのであります。私はそれ故に、九州は負担然るべし、北海道は負担然るべからず、こういう理屈を言うためでもなんでもありません。先刻からも、北海道は負担しなくてもいいのだ、九州は負担せねばならんというような理屈を言うやつがおるということも仰つしやつたわけでありますが、私共はそれ故に、九州負担然るべし、北海道は負担すべきでないというようなことではありません。国家全額負担然るべし、併し万止むを得ない便法としては、目分のところで起つた事故であるから、止むを得ないが、理屈には合わんけれども、関係炭鉱で三分の一は負担しましようということがお互いの間で了解されたのであります。こういう根本原則に基いて、政府がこの法案を立案されれば問題はもつと簡單に、もつと早く解決したと思うのであります。どうして我々の陳情をお取上げにならなかつたか、どうして我々の陳情の線に副つた解決方法をお取りにならなかつたかということ心問題の第一点があるのであります。そうでありますから、法案が出ますと問題が全然別個なものになつて来るということも考えられるのであります。併し業者側においては、この陳情の趣旨というものは今以て変つておりません。本法案が提案されましてから臨時議会において、何回かいろいろな場面において立案当局の方の御説明を承つております。私自身も承つたのもあります。聞いたのもありますか、御説明の一つに、これは配炭公団があつたときに、炭価の一部に盛られておつて、これが消費者に転嫁されておつたという、このやり方と同じ趣旨である、統制はなくなつたのだけれども、同じ趣旨で生産業者は一体負担するものを、これを各消費者に転嫁されたらいいのだ。それと同じ趣旨であるというような説明がなされております。これは或いはそういうふうに見えるかも知れません。統制のあつた時代における炭価なるものと、統制が外された自由経済時代における炭価なるものとが、如何なる状態にあるか、如何なる状態の下に取り決められるかということを考えますれば、一顧の値もない理論であると思います。
 第二番目には、相互扶助の精神によつてお互いに持つたらいいじやないかという議論があります。法律を離れた理論でありますれば、相互負担ということもいろいろな面で考えなければならん面も出ましようが、苟くも一国の法律として決めるという際の相互扶助論というものは、ここに限度があります。私は先刻も申しましたように、この責任は政府にあるんだ、政府が全額負担然るべしである。政府は全額負担に力められたと思います。力めた結果できなかつた。できなかつたが故にいろいろの方法も考えたのかも知れませんけれども、最も易き方法として、全炭鉱業者負担然るべし、その議論は相互扶助論であるということで若しあつたとすれば、でないことを希望するのでありますが、若しあつたとすれば、そういうふうな簡便な方法を法律で決めて、而も強制徴收の方法、罰則の適用というようなものがくつついているというようなやり方が、若し今後行われるならば、私共は重大な、由々しき問題であると考えております。新憲法下民主国家の国民として、我々は若しそういうことが軽々に行われるならば余程考えなければならんと思つております。更に先刻もお話がありましたが、私はこれは申上げたくないのでありますけれども、戰争が段々進むに従つて、北海道の石炭は余り役に立たなくなつた、九州、山口に非常に強化された、それ故に北海道は楽をしたのだから、片方に重荷のかかつた所へ幾らか相互扶助の精神を出していいんじやないかということもその御議論にあつたように思いますが、これは私へ何も九州の方々を攻撃する意味でも何でもありませんけれども、これは実情をよく申述べたいと思います。私は先刻も申しましたように北海道にずつと住んでおつたのでありまするが、途中十一年ばかり東京の本社に勤めましたけれども、昭和十八年の六月更めて夕張鉱業所の副所長として赴任しまして、それからずつと北海道におりまする十九年に樺太の石炭、北海道の釧路の石炭というものが軍需関係のいろいろな理由によりまして止められることになりまして、その労働者の大部分が九州に移り、一部は北海道の同系の会社に移る、機械、施設その他は北海道の同系会社に移る、九州に一部行つたかも知れません、ということが行われました。それはもうなくなつた。なくなつたんじやありません。操業を中止したのであります。ですから、その石炭は出ておりません。けれども、その北海道における炭鉱の石炭は相変らず増産をいたしでおつたのであります、終戰に至るまで同じ程度の増産をしておつたのであります。私現に夕張鉱業所の副所長をしておりまして、その状況は具さに知つております。ちつとも外に比べて手を弛めたとかなんということはないのであります。それじやどうして片方に鉱害が起るかという問題になりますが、これは北海道の炭鉱と九州の炭鉱、山口の一部の炭鉱の状況が違うのであります。何れこれは学識経験の方もありますから御説明があるかと思いますが、條件が違う。こういう戰時といろいうことがなくても、九州には鉱害というものが附たりにあるもので、北海道、東北の炭鉱は、如何に非常増産をやつても、少しも戰時中……今後非常に北海道が人口増加し、又都市が増加しまして、炭山の天頂までも都市ができるというようなことがありますれば別でありますが、少くとも現在まで、殊に戰時中に如何なる非常増産をやろうとも、たまにはみずからの社宅を害したか、みずからの施設を害することがあつても、みずからで修繕しております。第三者に被害を蒙むらしむというようなことは絶対に出て来ない。出て来なかつたのであります。この点が齟齬しているんです。ですから、こういうものを特別鉱害の山元で負担しろというのではありませんが、そういうふうに状況が違う。お互いに十分に努力し合つたのであります。お前のところは弛めて楽をしたということはないのであります。私は現場におつて、終戰直後働いておつた人間として申上げて置きたいと思います。何もこれは九州を誹謗するという意味でも何でもないことは只今申上げた通りであります。そういう意味合におきまして、私は北海道は負担すべからず、九州は負担すべしという議論を一つもしておるのではありません。全額国家負担然るべし、併し万止むを得ない時には地元で極く僅かのものを出しても差支ないということが我々の間で取決められておりますから、その程度における負担をなさつても止むを得ないのじやないかと、こう申上げておるので、その点を誤解のないようにして頂きたいと思います。そういう意味で私はこの負担は、少くとも我々の方から申しますれば、北海道負担すべからず、九州負担すべしということは、逆に申しますと、他の府県に重点がかかるということでなくて、そのギヤツプは政府が負担すべし、政府がそれだけ努力しなければならんということを申したいのであります。
 以上公述を終ります。
#18
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。では九州石炭鉱業協会の会長、小西さん。
#19
○公述人(小西春雄君) 只今萬仲君から至極明快な公述があつたのでありますが、私時間の制限もありますので、勢い荒筋を申上げるに止まつて、この問題を論ずるのに、二十分や三十分で論ずることは到底不可能なのであります。要点だけを申上げて、若し御疑問の点があれば、御遠慮なく御質問をお願い申上げたいと思うのであります。
 結論から最初に申上げますと、私はこの法案の成立に賛成するものであります。今日鉱害を一般鉱害、特別鉱害、こんなふうに言つておりまするが、特別鉱害というものは本来あるべきものではない。ない筈のものなのであります。これは全く戰争の結果できた特産物、戰争が残した厄介千万な負債であります。先般親しく現地を御視察下さつた方々は、高松炭鉱その他で、一般鉱害と特別鉱害との区別をはつきり御認識頂いたことと存じます。一般の場合、鉱害が起ればその復旧、又は損害賠償ということは、その仕事をした加害炭鉱がいたさなければならないのであります。又常にそれを実行しておるのであります。従つて炭鉱では鉱害防止ということには非常な苦心と努力をいたしておりまして、易々と掘れる部分の石炭でも、鉱害防止のためにはみすみす掘らないことが相当に多いのであります。ところが支那事変以来、国家は次々に無煙な増産を要求し、大東亜職に入りますというと、炭鉱に軍需官が乗り込んで、そこを掘れ、ここを掘れと命令をする。命令に従わないと軍需会社法によつて重役も、萬仲君のような業務担当者も解任又は処罰されるのであります。査察使が参ります。これこれ増産をしろ、査察使の命令は即ち陛下の命令だということで、警察も参ります。憲兵も来ます。随分いろいろ官憲からも干渉を受けたのであります。割当てられた数量を掘り出しませんと、出炭が少いというので、労務の充足の割当を今度は減らされる。或いは又炭鉱労働者に取つて絶対必要な石鹸とか、地下足袋の配給も減らされるというような状態でありまして、このような強行採炭によつて起りましたこの災害でありますから、国家がこれに任じなくてはならない。即ち国家が起させた鉱害であるということが、この特別鉱害というものの実体であります、そこで今萬仲君からも話がありましたように一今日私は加害者代表として呼ばれましたけれども、加害炭鉱という言葉が使われておりますけれども、加害者の代表ではない。むしろ害を蒙つた被害炭鉱の代表なのであります。従つて今後関係炭鉱、或いは非関係炭鉱というような用語を一つ用いて頂きたいと思うのであります。加害炭鉱ということは直ちに何か加害者というような感じを連想するのであります。問題の真相はそうじやありません。
 この点につきまして東條内閣の顧問山下龜三郎君が査察使として朝鮮へ参りまして、その帰途福岡へ立寄つて、如何にすれば石炭の増量が可能かというので、私と貝島、麻生、大正の各社長、それに中島徳松君を加えて五人が査察使に呼ばれて、いろいろと、或いは炭価の面から、或いは金融の面から、その他資材労力と言ういろいろの面から意見を出して、増産の議論をやつたのであります。その際に公害地を掘れば九州で百万トンぐらいの増産は可能だという話が出たのであります。ときの福岡県知事でありました九州総監の吉田茂、今の総理ではありません。あの厚生大臣や軍需大臣をやつたあの吉田茂氏が、それだそれだ、早速やるべしだと卓を叩いて喜んだのであります。公害地というのは鉱害防止のために掘らないで置く地域で、公はオオヤケという字が書いてあるのであります。この公害地を掘れというわけであります。そこで、それを掘れば鉱害が必至だ、その尻拭いは一体誰がして呉れるのだ、こう私が申しますと、吉田総監は「君は駄目じやないか。今いくさは勝つか負けるかの瀬戸際にあるのだ。その際にまだ算盤を彈いているのか。だから実業家は駄目なんだ。」と大喝したのでありますが、「どつこい、そうは行かない。知事は辞令一枚或いは電報一本来れば、それ石転任か辞任すれば済むが、我々はやつた仕事に対して責任を持たなければならない。しつかりした裏付けがなければやれないのだ。」と申しますというと、吉田知事は「よし、それでは俺が命令する。命令する以上は責任は俺が持つ。」というような大変なりみ方であつたのであります。当時の強行出炭の模様の一端がこの話で想像がつくと存じます。
 終戰後行政措置による配炭公団のプール資金制度で、一応の復旧策ができて実行されて来たのでありますが、昨年の九月十五日限り打切りとなつた。そこで被害者が如何に困惑、呻吟しているかは先刻来の午前中のお話で十二分に御認識のことと存じます。国家的見地から申しましても、民生の安定、交通の確保、食糧減産の防止など、幾多の重要な問題が、この法案の通過如何にかかつているのであります。万々一にも前議会のごとく、これが審議未了又は流産というようなことになりまするならば、殆んど政治は全くないという外ないと確信するものであります。本法案につきまして違憲論が出たとかも聞きましたけれども、それは大体解決がついたという話でありまするから、そういう畠違いの議論は私は止めまして、二三申上げて見たいことがあるのであけます。第一は戰災による災害の補償はしないという、この打切り問題とこの問題との関連如何という点につきましては、理屈は申上げませんが、結論的にこれは全然その議論には当らないと私は確信するものであります。そこで結局この法案によつて国土の復旧という、公共の安定というような結果がたまたま個人に反射するに過ぎないと信ずるのであります。個人の損害を賠償しようという案ではないと思うのであります。
 第二は、非加害炭鉱が、この賠償費は加害炭鉱だけで持つべきで、非加害炭鉱で持つべきではないと言つておるのであります。この言廻し方がどうやら今の萬仲君の話でちよつとはつきりしませんでしたが、私共は実態的にさよう解釈しておるのであります。これは職時から配炭公団廃止までの石炭界の歴史と仕組みということを御存じない方々には一応尤もらしく聞える議論であります。是非この点は根本的に明らかにして置きたいと思います。戰時中の炭鉱は各会社それぞれ独立しておるのでありまして、全国一本の下に統合されたわけではございませんが、御承知の通り一方において統制会方式によりまして、政府では石炭界を殆んど一本のような取扱いをいたして参つたのが実状であります。例えば、今年度の全国の生産の目標は何ぼにする、これこれだけは是非掘らなくてはならない。個々の会社の生産能力というようなことよりも、事業の面から割出して行く。これだけは是非掘れ、こうなつておるのでありまして、北海道の出炭が思わしくないと、それだけの荷が自然九州にかかつて出さなくちやならんことになつて来る。勿論その逆の場合もあるのでありますが、今萬仲君も話されましたように、釧路方面の各炭鉱は敵艦の出没と鉄道輸送力の関係から、その設備及び労働者をそつくり九州に移したような事態もあつたのであります。比喩で申上げますと、恰も国家という絶対権を持つた船舶運営会というようなものが船を自由にしたのとよく似ております。九州は勿論、北海道も、常磐も、山口も、何れも先程申上げたような強行採炭をさせられたのであります。そこで特別鉱害は全国各地に起り得るわけでありますが、これも今お話がありましたように、御料林の下ばかり掘つておるとか、或いは炭層の傾斜が非常に角度が大きいとか、或いは岩盤の状態が違うとかいうような、いろいろな立地條件の相違から、北海道や常磐にはこの特別鉱害が起らなかつた。九州に最も多く、山口県の一部にもそれが起つたのであります。国家という船舶運営会が全国の大小の船に対しまして、この船はどこそこへ行けと申しますというと、船長達が自分の船は吃水が深いからその命令航路に就けば、船底を損する覆れがある、坐礁するかも知れない、それで敢て荷主に御迷惑をかけるかも知らんから嫌だと言いますというと、命令だから行けというので結局実行いたしまするというと、船底を損じ荷物を濡らしてしまつたが、吃水の浅い方の船は無事でしあつたというようなもので、この場合の船長は即ち炭鉱の鉱業所長、吃水の深い船と申しますのは九州の炭鉱、浅いのは北海道や常磐で、荷主は申すまでもなく鉱害の被害者に当るのであります。さてこの場合荷主に対する損害賠償は一体誰がするか。勿論船舶運営会だと思います。船舶運営会に当る国家が配船した結果、十分な賠償ができない、そこで多少の補助金は出すのだが、荷主も少しは損害を認めてくれ、船会社の方も金を出してくれ、こう言つておるのがこの法案の姿であります。勿論俺の所は荷主に迷惑をかけてはいないのだという船会社もありましようが、国家といたしましては海上輸送という広い立場から、皆さんで御負担が願いたい、清算事務もそれでやりたいという主張だと存じます。
 第三は、加害炭鉱と非加害炭鉱の賛否状況はどうなつているかということを申上げます。九州は賛成一本にまとまつておりまするが、九州の中にも非加害炭鉱が随分沢山あるのであります。でありまするが、それらのうちの或る鉱主のごときは、この法案が成立いたしまするというと、自分共も負担金をやらなくてはならない、損であるが、あの悲惨な被害地の状況を見ておる自分共としては、反対する勇気がないと申しております。北海道、常磐、宇部三地区のそれぞれの一部には、法案反対の声もありまするが、これは全く一部の声でありまして、これを日本全体の出炭の数から観察いたしますと、全国出炭の七五%強が本法案の成立に賛成しておるのであります。殊に北海道では石炭協会として反対の決議をしたという模様でありまするが、私は敢てこの席上で断言いたします。その決議傘後におきまして、北海道にも炭鉱を持つておる三井、三菱、井華、明治というような東京四社は、それぞれその本社におきまして本法案の成立を希望するという最後的の態度を決定いたしておるのであります。常磐でも古河は反対しないとその責任者が言明いたしておるのであります。しかのみならず反対の立場にある或る中小炭鉱の有力者の中には、国庫負担の割合を公団時代の倍額ぐらいに増して貰つて、又法案を民主的なものに改めて、減免規定のごときも判然と規準をして貰うことができるならば、必ずしも反対するものではないと、はつきり私に申出た者もあるのであります。私は今申上げた程度の修正が行われましたならば、業界は極めて円満に行くものと確信をするものであります。
 最後に、この特別鉱害復旧団というものにつきまして、大体各種の公団が今日まで極めて成績が惡くて、赤字だらけで失敗続きであるから、今度の復旧団もどうだろうかという御懸念の方もあるやに承つておりますが、これは全く今度の鉱害復旧団と申しまするものは、簡單な事務的の処理機関であります。私の想像によれば、その所要人員のごときも、中央地方を通じて百人足らずで十分にやつて行けるものと信じます。でありまするから、復旧団というものに対する御懸念は御無用ではないかと存じます。尚附加えて申上げまするが、各地の反対論者も鉱害復旧の急務ということと、法案の必要性ということは十二分に認めておるのであります。何ら異議はないのであります。ただ負担と方法について疑義が起つておるのであります。言葉を換えて申しますると、反対論ではなくして修正論に過ぎない、こう御承知を願いたいのであります。
 以上法案の積極消極両面から一応の検討をいたしたのでありますが、私は社会公共のため、又民生の安定、食糧減産の防止というような点から、焦眉の急に応ずる処置として本法案の速やかな通過を念願して止まないものであります。時間が少し長くなつたかも知れませんが……。
#20
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました、引続き宇部興産株式会社常務取締役の上田さんにお願いいたします。
#21
○公述人(上田十一君) 御挨拶なり前置を省略いたします。お許しを願います。
 宇部地区におきまして宇部興産以下数十の炭鉱が、この法案の成立に対しまして、全面的に反対をしておる、成立を阻止しておるという噂なり、或いは又今日の公述の皆様の口頭からも、そういう雰囲気が多分に見取られたのでありますが、これは全く誤解であります。我々といたしましては、寧ろこの案によりまして災害が復旧されることを念願しておるものであります。この法律を潰してしまい、鉱害は鉱害として必要であるから変つた法案によつて作れというようなことを考えておるものでなしに、この案をうまく練つて頂きまして、被害者も、或いは関係炭鉱も、非関係炭鉱も、共に成立のできるような法案を作つて頂きたいとかように考えるものであります。ただその誤解の生じましたことを推察いたしますると二部のこの案の修正案は即ちこの法案を葬ることになるのではないかという御懸念から出発しておると思うのでありまするが、我々は我々の信頼を申上げる、眼前にもこうした委員会の選良がおられるわけでありまして、その政治力によりましても、さような些細のことは容易にでき得るものだと、かように確信をするものであります。本会議の出発に当りましても委員長から特に御注意があつたように考えまするのは、委員の参考になる、そしていい法律のできるような意見をどんどん出したらどうかという御注意があつたくらいでありまするから、この法律をいい法律にするように我々は御進言を申上げたいと考えるのであります。寧ろ我々といたしますると、先程杉本知事さんからもお話がありましたし、この法案が戰後の職時補償が一切打切られておる、この問題に如何に触れるかという問題も、多分に懸念されるところでありますが、一切の戰時補償が打切られておるために、我々は実に暗い感じがするのであります。国民はこの冷い厚い大きな、何と申しまするか、氷のカーテンによりまして、国民の幸福を阻害しておるという感じを受けるのであります。たとえ戰争におきまして被りました被害であるにいたしましても、順次その悲惨なものの最たるものから取上げられまして、救われて行くその一段階としても、この鉱害が取上げられるものならば、喜ぶところでありまするし、又同時に明るい温い政治であると思うのであります。
 我々の希望いたしまする要点は、この法案にも多分に矛盾があると考えるのであります。又宇部としまして特殊の事情がありまするために、この法案そのものを我々も納得することができないのであります。その要点を拾い上げますると、先ず第三條でありまするが、この点は将来実施される面におきまして一番の癌をなすものではないかと考えるのであります。但し政府におかれましても、いろいろの施設なり方法なりによりましてこれに善処するとお考えのようでありまするし、又当委員会といたしましても視察におかれましても、その点を非常に愼重に御視察なり御審議願つたようでありまするし、又この問題を極端に私が批判いたしまするならば、この法そのものに根本的に反対するように誤解される懸念もありまするために、ただこの第三條が将来重点になる法律であるということを特に申上げます。この運用如何によりまして鉱害成金が出ないように、又本当にこの法律に便乗することによりまして悪法とならないように、御善処が願いたいと思うのであります。
 次に、この負担を如何にすべきか。先程来いろいろの議論が出ましたが、私は当然国家の責任であると考えるわけであります。いろいろ考え方もありましよう。いろいろ説明の仕方もありまするが、二言にして申上げるならば、国家の強制命令による採炭ということは当時から言われたことでありまするし、何も固有名詞ではなしに、今日尚国家の強制命令によつての採炭から生ずる鉱害ということが調われております。強制命令ということは何を意味いたしますか。半面におけるその責任は当然附いて回るものでありまして、国家の強制命令による裏附の責任は当然国家にあるものだと考えるのであります。然るにこの法案が国家のみによつて賄われないために、全炭鉱に共同負担をする、この不合理であります。その政府の趣旨は、業者の相互扶助による、こういうお考えのようでありまするが、今日石炭鉱業は全く自由経済に移行しておるのであります。青天井の下におきまして、猛烈な競争をしておる次第であります。御承知のように配炭公団は尚今日数百万トンの貯炭を擁しております。更に政府が掘れ掘れ、荷足りないのだというために、現在の出炭は現在の需要を遥かに超過しております。いかでかこういう情勢の下において、激しい競争が防がれましようか。猛烈な競争裡にあるのであります。その競争裡にある自由経済の下におきまして、相互扶助ということは極めて我々の納得し難いものであります。更に相互扶助と申しますれば、字で書いてそのまま示しますように、お互いに助けるのだ、今日は助けるのだ、明日は助けられることがあるのだということが即ち相互扶助であります。然るにこの法案は、助けられる者は永久に助けられるのだ、助ける者は飽くまでも助けて行かなければならんという結果に、明らかになると思うのであります。明らかに相互扶助でなしに、一方的な扶助であります。先程から公述人の中に、大きな気持で石炭鉱業一本のために助け合つて行け、こういう御説も出たわけであります。我々も石炭鉱業に携わる者といたしまして、将来の石炭鉱業が如何に行くべきかということは、常に念頭から離れないものでありまして、石炭鉱業一本といたしますれば、脱線することなく、大きなレールの上を走らなければならんわけであります。但し相互扶助のかような問題におきまして、相互扶助の名前に便乗いたしまして、自立経済を怠り、他に依存心を起させる結果になるだろうと思うのであります。飽くまでもこの不況なときに、我々は自立経済の確立のために心血を注いで努力しておるわけであります。むしろ理屈もないのに大きい意味で助けてやれということこそ、お叱りを蒙るべき性質のものではないかと思うのであります。互いに本当に自立経済のために努力し、助けるべきものでないものは飽くまで助けないのだ。そうしてお互いに石炭鉱業ははつきりした自分の確たる基盤の上に立て。なまはんかなことで助けたり助けられたりするなよ。むしろはつきりする。その点において我利々々亡者だというお叱りを蒙らずに、むしろ私は褒められて然るべきものではないかと、かように考えるわけであります。その意味におきまして、私は全炭鉱にこれが負担をかけるということは最も不合理である、相互扶助でも何ものでもないということを強調したいのであります。
 次に非関係炭鉱は除くべし、除いて頂きたいとかようにお願い申上げる次第であります。これは一般鉱害と特別鉱害との判別がむずかしいと同時に、又実際に戰時特別鉱害の中におきましても、いろいろのものがあるのだということは先程御説があつた通りであります。宇部地区におきましては、この度の問題で救われまする特別鉱害に関係しておるような炭鉱は、戰時中における救われない特別鉱害を蒙つておる炭鉱が多いのであります。そういたしますると、非関係炭鉱は自分で戰時中に救われざる特別鉱害を受けながら、他人の特別鉱害を扶助しなければならんという二重の苦痛が出るわけであります。この点詳しく申上げますと、坑内水の出水のために非常に困難をしておりますのが大濱炭鉱であるし、或いは戰時中宇部炭は水洗の必要はないのだ、とにかく宇部炭はその水洗機を九州の炭鉱へ持つて行けという絶対命令のために、水洗機を取上げられまして、九州へ持つて行かれたのであります。これこそ全くただ命令によつてこの特別鉱害以上に、ただ命令によつて人為的に動かしたものであります。それがために今日これの復旧をするためには、長い間品質不良の石炭を出して、そうして更に設備費に数千万円を要するこういうような不合理もあるのであります。その他幾多の特別鉱害によらざる戰時中の鉱害があるわけであります。特にこの問題は私は申上げないというつもりでありましたが、先程杉本知事からお話が出ましたから、止むを得ず弁明をいたします。先程杉本知事さんのお話は、宇部興産は戰時中ではないが、特に大水害を起した、そのために一億八千三百万円……とおつしやいましたを他の炭鉱の犠牲によつて鉱害を復旧したのじやないが、こういうお話であつたのであります。私は知事さんの小股を掬う、足を取る意味ではないのでありますが、事実がかなり影響するために弁明を強いていたしますが、杉本さんのお気持では、宇部興産は災害を起したときには、他の炭鉱の犠牲においてそれを復旧したのじやないか、然るに今日このような大被害を救うために、相互扶助の精神によつてやろうじやないかというときには一番先逃げるじやないか、こういうお気持であろうと思うのであります。事実は全く相違であります。成程沖ノ山炭鉱の被害のために今日まで要しました金額は二億一千万円に余るのであります。そのうちで一億八千百万円余りを復金から借りてあるわけであります。他の三千五百万円を赤字補償のために補填して貰つておるわけであります。この復旧はそれで完成したわけでありません。尚今後に多額の復旧費を要します。余分ながら、蛇足ながら申上げて置きます。今申上げるように、一億八千余万円は復金から借用しております。三千五百万円を赤字補償で填補して貰つております。但し赤字補償の填補は、大水害のために出炭が出なくなつた、ために上層炭を採りまして、悪質の石炭を僅かずつ出して行く、而も復旧費に可なりの期間を要する、ために我々の炭鉱も赤字を出さざるを得んようになつたわけであります。配炭公団時代に赤字補償と申しました意味は皆様御承知のことと思いますが、この赤字補償で三千五百万円救つて貰つておるのでありまするが、これは何も他の炭鉱の犠牲において救つて貰う性質の金が赤字補償でないということは、十分御承知のことであろうと、考えます。その点を明らかにいたします。かねて両三日以前から杉本知事がこういうお説を方々へお出しになるのだということも聞いておりました。それは併しデマであろうと我々は考えておつたのであります。少くとも九州一の知事であると我々が尊敬、いたしまする杉本知事におかれまして、而もこの政治の檜舞台において、さような御発言が出ようとは夢にも思わなかつたわけでありまするから、特にこの点を弁明を申上げます。杉本知事の口害であると私は申上げたいのであります。よく事実をお調べ願いまして、明日の衆議院の委員会では、若し私の申上げるのが事実でありまするならば、その点は御発表、御公述にならないようにお願いを申上げるわけであります。
 更に今一つ申上げたいのは宇部炭の事情であります。これは先程から申上げましたように、特殊な事情もあります。と申しますれば、宇部炭は全国の大部分の無煙炭を持つております。これは今日非常に貨車廻りが悪いというために、常にそうでありますが、地域的の関係で常にそうでありますが、可なりの貯炭を常に抱いておらなければならない。或いは一般の有煙炭にいたしましても、すでに石炭が、先に申上げましたように余る時代であります。そのために炭価の統制が解けましたから、要するにいい石炭は勿論値段が上つて行くわけであります。悪い石炭は炭価が下るわけであります。今日炭価の面におきまして、宇部の最も下級炭は千円をくぐるような石炭があるわけであります。九州、北海道のいい石炭は五千カロリーを突破しておることは御承知の通りであります。この点につきまして、二十円というものが販売価格に織込まれるということをお考えになれば、これは全然事実はそうならない。この三十円はトンに掛ければ販売価格に織込まれるのだ、消費者価格になるのだという考えは絶対にその通りにならないのであります。以上を以ちまして終ります。
#22
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。次に小野田炭鉱鉱業所総務部長の吉田さんにお願いいたします。
#23
○公述人(吉田章一郎君) 私は山口県の宇部炭で、僅か六、七百の工員を以ちまして、戰時中は一万トン乃至一万五千トンの月産、現在は約五千トンぐらいに落ちております。鉱害は大体八十町歩を抱いて苦しんでおるいわゆる小山でございます。
 結論といたしまして、この法案については絶対に賛成である、無修正で即時成立を希望するものでございます。
 大体、従来宇部地区のこの種鉱害に対する声が非常に小さい、我々の叫びが中央の皆さんに届かない、宇部は熱意がないのじやないか、こういうふうな声をまま、耳にするのでありまして人によりましては宇部地区の鉱害を九州地区に比べて刺身のつまくらいなものだ、こういうふうな話も聞いて、私案に遺憾千万に存じておるものであります。
 実を申しますと、御承知の通り宇部炭田はその出炭の主力を一二の有力な巨大な資本力を持つ会社が海底を採掘いたしまして、その海底から、鉱害のない海底からの出炭が過半数を占めております。そういう関係でその大炭鉱が大きな集中された経済力、政治力、文配力、そういう力によりまして、我々は我々の叫びを全く局部的な問題として取上げて貰えず、石炭協会といたしましても、殆んど一部分の問題としてこれを一本化して中央に取上げるということが少かつたので、私共の声が非常に小さかつたように思われるのでありますが、被害の範囲は小なり雖も、その度合いにおきまして、深刻さにおきまして、実質において、或いはその切実さにおいて、決して九州に勝るとも劣らないと私は考えております。
 先般来の参衆両院からの調査団の御視察の結果、十分この点は御認識賜わつたことと確信いたしておるものでございます。その調査団の御視察のときに、被害者の立場になつてこの法案を審議しろ、こういうお言葉を承つたのであります。これこそ実にこの法の精神を明らかに表現せられましたものと、私共は了解いたすものでございます。決してこの法案は炭鉱の救済、蔵持補償、そういう問題は観念外といたしまして、現実に存するこの被害を復旧しよう、この大きな荒廃された被害地を復旧し、民生の安定を図ろう、この事実問題から立脚して取り上げられた問題でありまして、先程ちよつとお話がございました強行採炭の結果によつては爾後の炭鉱の坑内條件が悪化した、或いはその外いろいろな炭鉱自体に負わされるべき影響についてのお話もございましたが、そういうものは一切考慮をしないで、とにかく善意の第三者に與えた被害を復旧しよう、こういう事実問題から立脚した法案であると私は考えておるのであります。我々炭鉱といたしましては、先程海底炭鉱がおつしやつたように坑内條件の悪化、その他の條件、強行命令による影響は、海底炭鉱と同じように陸上炭鉱もいろいろな影響を受け甘んじておる。更にそれに加えまして、この鉱害地に対して年々米麦の不毛又は減收による損害補償を與えておる。この負担は決して海底炭鉱にないものでありまして、その分も甘んじて我々は受けておるのでありますが、それを今回補償してくれというような要求をするのでは断じてございません。現実のその被害地を復旧してくれ、これを目的としたのがこの法案でありまして、飽くまで事実問題が先行しておる。先般前国会におきまして、いろいろ法理論が出たのでありまするが、一般の法律、例えば民法とか、刑法とか、或いはいろいろな労働法のごとく、一応法律というものによつて範疇を作り、その中でいろいろな事実問題を当てはめるというのと違いまして、この問題は飽くまで事実問題から出発しておる。終戰後澎湃として起つた被害地の声に即応しまして、各省から連合して御調査、再三の御調査、詳細なる御調査があり、その結果は二十三年四月九日の閣議によつて、行政措置によつてこの対策をお取り上げになつた。その後続いて行政措置が行われておつたのであります。この事実問題を今回法制化しようというがこの問題でありまして、法理論は飽くまで私共第二義的なものだと考えるのであります。事実問題と法理論ということにつきまして少し脱線いたすかも知れませんが、私は常に彼の大岡裁判、これを今連想されるのでございます。大岡裁判、このような封建時代の話を現在の民主主義的な法治国家である現在に適用するのはおかしいかも知れませんが、大岡裁判上いうものは飽くまで事実問題から出発しておる。例えば三両の金を落した者と拾つた者との係争に対して、大岡越前守がもう一両自分の金を足して四両にして両者に二両づつ分け與えた。そうして三方が一両づつ損だと言つて解決した。これは明らかに法理論は無視した問題であるが、名裁判とされております。これを私この法案に当てはめて見まして、先程申されましたように、この特別鉱害については非関係炭鉱は我関せず焉とおつしやるでしよう。関係炭鉱と雖も、強行命令だから責任はないのだ、国家は国家で戰時補償は打切つてあるから責任はないと。皆責任はないけれども、この被害見るに忍びずして皆が一両づつ損をしよう。二十円づつ出し合つてこれを復旧しようじやないか。これがこそ本当の、真に活きた法律であり、活きた政治であると私共考えでおるのでございます。尚鉱害、この特別鉱害というものにつきましては、考えによりまして、石炭鉱業全体へ対する大きな不信ではないか、言換えればむしろ石炭鉱業全体が被害者の立場ではないかと私共は考えるのであります。この石炭鉱業全体の不信を排除するためには、石炭鉱業全体が協力一致して努力しなければならないとこう思います。飽くまで国の一時的な需給のアンバランスはありましても、石炭鉱業たるものは飽くまで国の基礎産業である、国の再建の原動力であるという点を考えまして、この法案にもはつきり目的が書いてございます。石炭鉱業の健全なる発展に資するためには、業者が飽くまで協力一致、相携えて邁進して行かなければならない。一部論者が相互扶助を強制するものだとか、一部これは相互扶助じやない、一方的な扶助である、こういうお話もございましたが、私共はこの法案は相互扶助と解するよりは、むしろ協力しようという現れではないかと、こう考えるのであります。同一賦課金を全部の出炭、全部の石炭にかけるということは、丁度二十円の收入印紙をはるようなものである、全部の石炭に同一條件が加えられるというふうに解せられるのでありまして、決してこれは不平等じやない。このことによつて消費者に全面的に転嫁される可能性があると私共は考えております。むしろ一部の炭鉱を免除するということこそ、逆に他の炭鉱よりも有利な販売條件を獲得しようという商取引的な打算的な要求であると、私共は解釈されるのであります。いろいろ修正論が出ております。全額国庫負担にしろ、いわゆる非関係炭鉱は免除してくれという修正論が出ておりますが、前国会の審議中にも政府委員の方から、縷々御説明がありましたように、全額国庫負担ということについては予算的関係からも、或いはその外の客観的情勢からも、いろいろの関係で不可能だと、こういうふうに私共聞いております。不可能なものを不可能と分りながら、その修正論をいつ迄も主張されるということは、口に被害地は復旧しなくちやならんということを主張されて、結果においてその法案をぶつつぶそう、被害地の復旧に妨害しようというふうに取られはしないかと、私共考えるわけでございます。非関係炭鉱は免除して呉れという問題も非関係炭鉱を免除するという論法から行きますと、加害炭鉱にも加害の程度が…  関係炭鉱です。加害の、鉱害の程度がピンからキリ迄ございます。例えば五円で済む山もございましようし、五十円かかる山もございましよう。それを一率に三十円ということも、その非関係炭鉱を免除するという論法から行けばおかしい。飽くまで非関係炭鉱全部が一本の、同一金額を出すのでなければ、この法の構成そのものが根本から崩れてしまうと、私共は考えております。敢て申します。修正論、被害地を復旧しなければならんということは賛成だけれども、修正してくれと言われることは、結論において無理な修正、不可能な修正を主張されるという形になつて、法案の通過を反対する、被害地の復旧を妨害しようという形になるのではないかと私共考えております。
 尚最後に私だけの立場を述べさして頂くことを許して頂きたいと思います。私共は、昨年の九月十六日に配炭公団の廃止によりまして、自立態勢を取るように要求されのであります。これは国の自立再建のために止むを得ない施策と思われますが、過去の特別鉱害という大きな荷物を背中に括りつけたまま、二本の竹馬を取り上げて自分の足だけで立て、これは少し無理じやないかと考えるのであります。一応過去のこの荷物をこの法案によつて除けて頂いて、然る上みずから合理化を図り、能率を向上して、自分の足でしつかりと歩め、こういうふうに教えられることこそ、真に止むを得ないと我我は了承するものでありまして、その意味におきまして、是非この法案を通してこの大きな荷物を取り外ずして頂いて、我々しつかり大地に両足を踏みしめまして、堂々と前進濶歩し、石炭鉱業の健全なる発展に直進しますることを最後にお願いして、私の公述を終ります。
#24
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。炭鉱側の最後としまして常磐石炭株式会社常務取締役社長の大越さんにお願いいたします。
#25
○公述人(大越新君) 私は東部の石炭協会の副会長も務めております常磐石炭社長の大越でございます。
 私共の立場は先般北海道の萬仲さんからお話がございましたので、大体似通つたところが非常に多いのでございます。従いまして重複の煩いを避けまして、極めて簡單に要点だけを三点申上げたいと存じます。
 我が東部協会は昨年末の十二月二十一日に管内百五十炭鉱の連署を以ちまして、衆参両院議長宛に請願書を提出しております。この度の特別鉱害復旧臨時措置法案に対する態度は、それで明確に謳つておるわけでありますが、その要点を掻摘まんで申上げますと、先ず第一に、苟くも本法案は勿論国法である。その本法案に謳つてあるところのいわゆる特別鉱害の復旧に対する費用は、これは戰時中特定期間政府の要請によりまして鉱業権者が止むを得ず強制させられた、そのためによつて起る鉱害でありまするから、これは挙げて国家が負担すべきである。これが第一でございます。併しいろいろな事情もございまして、どうしてもそれもできないということならば、これは我々全国石炭業者の意思を代表する日本石炭協会が、去る昨年の六月二十九日、これも先般萬仲さんからお話がございましたが、その決議によりまして大蔵大臣、経本長官、資源庁長官並びに鉱害対策委員会にまで陳情書を提出してありまするが、即ち三分の二国庫、三分の一関係炭鉱の負担においてやるべきだ。従つて我々東部協会の所属鉱業経営者としては、負担の義務なしと断じ、本法案より明確に除外されることを主張するものでございます。
 尚次に申上げますことは、本会委員の方々に特にお聽取り願いたいと存じますが、我が国におきまする鉱業法の第五章、鉱害賠償の規定におきまして、二つ以上の鉱業権者が採掘によつてできた鉱害は連帯して責任を負う、鉱害賠償の責任を負うということになつておりまするし、又そのいずれであるか判定のつかない場合においても、連帯して責任を負わなければならんということになつております。思うに、先程来福岡県知事さん並びに栗田さんから御説明もありましたが、凡そ九州地区におきまして、殊に北九州におきましては、あの広大なる炭田地区において、相隣れる炭鉱が沢山あるのでございまして、而もその炭鉱が今日まで、個々に起りました鉱害も、やがては発展いたしまして、これがいわゆる総合的な鉱害現象を呈するに至り、遂には先程来御説明のありましたように、極めて社会的な重大なる問題を惹起するに至るということは、少くも私共今日まで、炭鉱の採炭技術者として携わつて来た以上、これを想像するに難くないのであります。果して、こうした総合的な鉱害が発生した場合は、いずれが如何にしてその賠償の責任を負うべきや、これは実に大きな問題であると考えられます。これを察するに、現在における日本の鉱業法の、いわゆる賠償規定の不備の結果か、或いは又行政措置の遅延と申しますか、手遅れのためにできたことだと考えられるのでございます。かく思いまするときに、尚くも、たとえ今日の政府御当局におかれたといたしましても、誠に御苦労ではございますが、奮起一番、この責任を負うて、地方関係団体並びに関係炭鉱と相協力されまして、将来を慮り、且又先般来縷々御意見が出ましたが、戰時補償打切り云々とは全く切離して、この際抜本塞源的な根本対策を立てられまして、一日も早くこの復旧をいたさるることこそ極めて重大なことと考えます。苟くも厳正なるべき国法をして誤りなからしめられるよう、委員各位におかれましても、特段の御配慮をお願いいたしましに私の公述を終ります。
#26
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。委員の方にお諮りいたしますが、十分程休憩したいと思いますが如何ですか。
#27
○中川以良君 続行したらどうです。
#28
○委員長(小畑哲夫君) 続行するについて、ここで質疑をいたして貰いましようか。
#29
○中川以良君 やつてしまつてから質疑をしたらどうですか。
#30
○委員長(小畑哲夫君) では続行いたします。
 次に労働組合側から、福岡県遠賀地区炭鉱労働組合協議会事務局長江副さん。
#31
○公述人(江副敏夫君) 私只今御指名を受けました福岡県の遠賀地区炭鉱労働組合協議会の江副でございます。本日は労働組合を代表いたしまして、御意見の発表のできる機会を頂きましたことを厚くお礼を申上げます。時間の関係がございますので、要点だけ御意見申上げさせて頂きたいと存じます。
 先ず第一番に、私達の住んでおります筑豊地帶が、炭鉱の鉱害によるところの被害が一番大きいという点でございます。御承知のように筑豊三市四県に跨がりまして、南北四十六キロ、東西二十六キロに至り、ひどい所になりますと二メートルの沈下を来たしておりまして、この全体がまるで洗面器の器のような地形を呈しておるのであります。昨年の八月のあの台風によりまして二瀬町の伊岐須におきましては、家の倒壊したもの或いは流失したものが三十戸ございましたが、この三十戸の戸数と、更に家の壊れたところが二百六十戸ございます。こうした被害を見たものも、これは原因といたしましては堤防の決潰が原因でございますが、もつと根本的なものといたしましては、即ち陥落によるところの地盤の弛みがしからしめたものであります。更に飯塚市におきましても、西菰田総戸数六百戸の中、やはり台風によつて二百八十戸が床の上六七尺も浸水を見ておるような状況でございます。又私達の住んでおります遠賀川の堤防の問題にいたしましても、雨が降る毎に非常召集をやりまして、堤防の警戒に当らなければならないというような、誠に生活の不安な状態を来たしております。いろいろここに御説明申上げたいのでありますが、先程被害者代表の方から縷々御説明がありましたから私はこの点は省略させて頂きたいと思います。ただ一つ申上げたいのは、筑豊線目尾附近では、鉄道の匂配がひどいのでありまして、電柱が水平線から約一尺しか出ておらないというような、要するに地盤の沈下を見ておるひどい状況でございます。鉄道の沿線におきましても大きなカーヴができまして、そのために鉄道の輸送が十分なる活動ができないというような現象を来たしておることを御参考までに申します。とにかく事態は切迫いたしておりまして、私達は一日もこうした復旧につきまして善処して頂きたいことを要望するものでございます。
 それから先程杉本知事さんも、福岡県下の予算につきまして大体御説明がありましたが、二十三年の十月には福岡だけで百三十五億四千六百八十万円が復興費として必要であるということを知事も申されましたが、こうした大な予算が十分に遂行されないという点からいたしまして、私達は非常にこの問題に対しまして関心を持つておるのであります。
 次に農村の耕地被害の年額が米と麦で二十二万八千石で、これを本年度の買上げ価格から見ても約十億円の損害になつております。このうち殆んどの被害は筑豊三市四郷だと言われておりまして、その中で遠賀郡、鞍手郡、嘉穂郡、特に遠賀郡あたりにおきまして、最もひどい現象を来しておることを申し上げたいと思います。
 次に今度審議されております特別鉱害復旧臨時措置法案に対しまして、結論から私は申上げますが、大体本案の提案並びに立案の趣旨目的には賛成でございます。だが併し一応趣旨から行きまして、全面的に賛意を表するものでございますが、何か二三点私達が意見を申上げたい点がございますので、この点を十分にお含み置きを願いたいと思います。第一番に復旧費の問題でございますが、先程から各委員の方から縷々強調されておられましたが、大東亜戰争の期間中に相当軍部によるところの強行出炭を命ぜられまして、その結果無茶掘りをされておる。その無茶掘りをされましたその影響が鉱害の面に現れて来ていると、こういう御説明をいろいろ拜聽いたしましたが、これによつて生じた鉱害の復旧に対し、中小炭鉱の業者が負担をさせられるということは、今日中小工業の業者の立場を考えて頂きましたならば、無理であるかどうかということが一応お分りになると思います。御承知のように三九原則実施以来、ドツジラインの強行によつて労務員に対する賃金の遅配或いは棚上げ、或いは最近では全面的に引下げが強行されておりますが、こうした問題と更に坑内の保安を十分に確保しなければならないのに、その資金の関係で坑内の保安の維持ができなくして、毎日々々多くの炭鉱労務者の負傷者を出しております。この点私がここで数字的な御説明を申上げるまでもなく、災害統計によつて御存知のことと思いますので省略いたしますが、次にこの施設も維持のできない中小炭鉱におきましてはどんどんと倒壊を見ているような状態でございます。ここで又沢山の人員の整理によりまして、最近統計を見ましてもお分りの通り、約一千万人に近いところの家族を含めた失業者が氾濫しているというような状態でございます。そういうような事態を今日招来いたしまして、中小炭鉱の復興ということにおきましては相当困難な現状下にありますときに、かかる負担をかけられるということが、果して日本の産業の復興のために貢献し得るかどうかということを、私達は疑問を持つものであります。小さい例でございますが、最近では配炭公団の廃止と石炭統制の撤廃によつて、現在までプール資金を頂いておつた点が停止されました関係で、鉱害は甚しくなつて来る、そのために応急策としていろんな復旧の費用が嵩むわけでありますが、これに対しましても業者側は、いろんな会社の経理上無理をいたしましで応急策を講じでおるような状態であります。勢い労働者の生活費にこういう問題が影響して来ておるような状態でございます。かような見地から鉱害の責任に私は国家にあるものであるというふうに考えまして、政府は責任を持つてこの問題の援助をすべきものであると、かように考えておるものであります。併し先程からいろいろと強調されておりますが、現実問題として何らかのそこの特別な理由によつて、それが早急に実施することが困難である、こういうようなことでございますならば、その一部を法的、或いは何らかの処置によつて従来採られたるような消費者の負担の形の枠内において賄つて頂きたい。こういうようなことも実は要望しておるような次第でございます。
 次に特別鉱害復旧団の設置の問題でございますが、この点は私非常に結構だと思います。だが併しこの構成につきましては、やはり広く民主的な方法を採られる意味からいたしましても、各地方におけるところの民主団体の代表をこの機構に取入れて頂きたいということをお願いしたいと思います。次に予算の問題でございますが、大体この法案によつて伺いますと、五十億の予算が五ケ年間に亘つて消費されるというようなことを伺つておりますが、二十三年度の九月に政府の調査によるところの大体特別鉱害に類する額といたしまして、約百億の予算を見込まれたということを聞いております。正確な数字で九百九十八億ですか、そのうち現在プール資金があつたうちに、約一億程二十三年二十四年度に流されておりますが、残額は八十七億、この八十七億に対しまして、現在のこの法案で行きますと五十億を見積つておられますが、こういうような予算を減らされることによつて、果して今日莫大に拡がつておるところの鉱害の復旧ができるや否や。私共の予想からいたしましても計画の半分もできないのじやないか、こういうふうに心配するものでございます。どうぞこの点を十分御参考とされまして、本問題に対する審議を早急にお願いしたいと思います。結論といたしましては私の要望といたしまして、かかる現状によつて、終戰後食糧の確保、重要産業の根抵をなす石炭の確保が軌道に乗りつつある現状下におきまして、本案が今申上げました点について考慮されることなく、若しこれを無視されましてなされた場合においては、将来に及ぼす社会的、又経済的にも相当の影響があるということを私は考えるものであります。やはりこの復旧工事の迅速なる完備によつてこそ、石炭産業の発展もあり、食糧問題の解決もあり、又社会生活の安定を図ることにもなるとかように私考えております。甚だ概略的でございますが、時間がございませんので、これを以ちまして私の意見といたします。
#32
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。では東京大学教授青山さんお願いします。
#33
○公述人(青山秀三郎君) この度の特別鉱害の問題でありますが、これは私共の立場、採炭技術ということから申しますと、可なり面倒な問題の一つであります。一応天然にできましたその石炭を掘つて乗る。そのために士に影響を與えるということは今日の問題であります。中に入つて掘る者から見ましても亦同様の苦しみを受けるのであります。できるだけ相互にそういう危害を及ぼすことは少くしたいということは、いろいろな立場から十分研究もいたし、又いろいろな方法を講じておるのでありますが、やはりどういたしましても人間の力の及ぶ限界がありましてこういう問題が湧いて来るのであります。殊に我が国は御承知のように、殊に北海道、九州炭鉱のあります所に、その地表にはそれぞれ変つた影響をもたらします。現に名前をお調べになりましても、我が国では前は炭田と申しておりました。北海道では炭山、炭の山となつております。その炭山と申す所もありますが、九州では昔からこれを炭田、支那では煤田、煤の田と言つております。それで石炭を採ると、上の田圃に何らかの影響を及ぼすということは必然的に起つて来るのであります。この問題につきましては、アメリカではそれ程深くは理論的には進んでおらないのでありますが、もう百年も前からドイツ、殊にルール地方の炭田では相当深い研究も進められ、イギリスも同様であります。日本でも二三十年来いろいろそのための調べをいたしておるのでありますが、如何にせんまだ十分な結論まで行つておらないと私は思うものであります。日本におきましては炭層の上の地表が特に美田で覆われておりますので、炭鉱の仕事といたしましては、余程考えなければならんと常々思つておるのでございます。どうしてその影響を少くしようかということは、無論炭鉱技術者は日夜忘れないところであります。下で掘ります炭層の拡がりなり、厚さなり、どういうふうに傾いている、又炭層から地表までの地層がどういうふうになつているかということはよく承知いたしております。そういう場合には、どうしたならば自分達の仕事にも影響が少くなり、又地表の他の産業に対しても影響を與えないようにするかということは、日夜忘れない問題であるのであります。であるにも拘らず、どうしても起つて来る一例を申しますと、掘つたままにして置けば、十尺掘りますればやはり地表にそれに近い影響を與えて参ります。八尺落ちるとか九尺落ちる。只今いろいろな方法で掘つた跡を充填いたしておりますが、この充填をいたしましても、やはり人間が手で填める、或いは機械で填めるのでありますから、天然の水の力で固めるようには到底参りません。従いましてやはり三〇或いは四〇%といつたような影響を地表にもたらすのであります。又その掘りました場合に、直ぐ真上の所はただ水準が落ちるということで終るかもしれませんが、その周辺には非常に亀裂を生じたり、到底その地域にはおることもできないというような所さえできるのであります。どういう範囲にそういう影響を及ぼすかということも、一応は地層その他の関係から取決められておるのであります。大体が地表から三百メートル程度までの所が最もいけない所と私は思つております。三百メートル以上に深くなりますと、及ぼす影響は段々少くなつて参るのであります。千メートルも入りますと、今度は地表に対する影響よりも、自分達中に入る者の方が困ることがより多くなります。地圧が殖えるとか、いろいろなものを送る、或いは送り出すということに非常な不便を感じますので、ここで考えなければならんのは、むしろ三百メートル以上の浅い所にある石炭を掘る立場にあるものと思うのであります。そういうものを掘つたときに、一体いつ頃上に感じて来るだろうということは、いろいろ考えなければならないのでありますが、先ず只今問題になつております北九州附近でありますれば、先ず平均いたしますと一日に五メートルくらいの早さで伝播して来るものと思うのであります。例えば三百メートルの所で掘りますと、一日に五メートル、従つてまあ六十日、二月くらい経てば、その掘つたところの影響が地表に感受される、不安定な状態が伝わつて来るわけであります。それからあといよいよもうこれで落着いたといつて安心できますまでには、まだそこに相当の期間を要するのでありますが、地層その他深さによつて又変るのでありますが、早いところでも一年或いはその前後まだ影響が及んでおる。二年三年と自然にその虞れがなくなるのであります。非常にゆつくりした所であれば、四五年経つてもまだ僅かながらその名残りを感ずるということもあるのであります。大体まあ日本の例で申しますれば、二三年も経てば掘つたその場所の地表に対する影響は先ず安定するのではないかと、こんなふうに考えておるのであります。今度の問題であります戰時中、十六年の終りから二十年の夏までのあの間にどこを掘つたかということは、それぞれの炭鉱につきましては記録もあり、いろいろな処置が残されておることと思うのでありますが、それが只今申しましたような関係で、地表に影響を及ぼして来ると私は想像するのであります。従いましてそれが果してこの特別鉱害に属するものであるか、或いは然らざるものであるかということの区別は、そこに今申しましたように、この採炭の技術では相当困難な問題でありますが、その中間にあつて、いずれがいずれなりやということの判断がつきにくいことも無論あろうと思いますが、相当明瞭なものもあることは理論的にはつきりすることと思うのであります。
 それでこの法案を拜見いたしますと、第三條に復旧のため鉱害の対策に対する審議会の設置が謳われております。その審議会も実際の面に当られますと、相当困難な或いは面倒な、或いは甚だ処置に迷われるような場合もなきにしもあらずと思われるのでありますが、できるだけその專門の関係の方をお集めになつて、十分な御審議をして頂きたい。さように進めて頂ければ特別鉱害という意味が、形が具わるのではないか、この運用に対して期待されるものであります。
 次にこの鉱害に対してこの度の復旧団の組織でありますが、今申しましたように、そういつた戰時中の特別な生産に対して割当てられて、及んだ国家の命令であるから、御尤もと思うのですが、如何なる国家の命令が下つた場合でありましても、それに国民として従うというのはむしろ当然でありますが、そこにやはりおる立場としましては、できるだけそれを上手に掘つて来る、できるだけ無理のないように、技術的にも合理的な方法で掘つて来るということは考えなければならない。遺憾ながらいろんな資材資金の面で思うように行かなかつたこともあつたろうと思うのであります。従いましてこの復旧に対して全部これが国の責任である跡始末も全部国にして貰わなければ困るということは、私少し行き過ぎではないかと思うのであります。やはり或る程度までは、これに関係した、或いはこの仕事をした者も、この際責任を以て後の復旧に努めるという考を、私持つて貰いたいと思うのであります。その比率は初めの三億、一億、六億という配分が適当であるか否か、それは国家のそれに当られております方の御配慮に待ちたいのでありますが、もう少しその中に対しての御考慮はお願いしたいとは思うのでありますが、これを全部国又は公共団体の負担に持つて行くことは、私は賛成いたしかねるのであります。又この負担を今度関係の鉱業権者において考えられまして、これは第二十二條にもその運用がちよつと匂つておるのでありますが、二十円以内にということになつておりますが、この査定は相当むずかしい問題であります。今日も賛否或いは修正いろいろ御意見を伺つておるのでありますが、私はこれを一律にすべての関係の方面に負担を持つて行くということは、少し無理があるのじやなかろうかと思うのであります。やはり減免、還元の程度は、宜しきを得なければ、折角の法案に対しての成績が挙がらないのではないかと思うのでありますが、かくして、できるだけ鉱業の関係にありますものが一致して他産業に対する影響を少くする、殊に今度の復旧のことにつきましては、もう過去一年近く手を下されておるのであり、それが又昨年の秋以来止つておるのであります。こういうことは工事の関係の方は篤と御承知と思うのですが、時間が延びれば延びる程、前の折角の投資が無駄になる虞れも少くない、できるだけ速やかにこの工事は継続されて、その程度にはいろいろ軽量があると思うのでありますが、重要な部分にできるだけ速やかに復旧の産業をお始め頂きたい。そうして鉱業の我々としても職責を盡し、又被害者、加害者となつておりますが、こういう恐しい字句でなくても、できるだけ他の産業に対して鉱業が與える悪い影響を少くして、鉱業も発達し、関連の他産業の円満なる発達を期待したいと思うのであります。
 ついでに申上げたいと思いますが、近く国会に提出されます鉱業法の審議等におきましても、そういう問題があります。私共は、自分が鉱業に関係いたす者でありますが、一応は鉱業の立場から離れての水産等のことも考えて、法案を見なければならない。鉱業はむろん重要な基礎産業でありますが、他を顧みないということは許されないことだろうと思いますので、鉱業に関係いたします者も、十分他に対する影響を考慮しまして進むべきものと思うのであります。できるだけこの法案に対して只今のような考慮をお加え頂いて、速やかにこの法案が成立いたしますことをお願いいたしたいと思うのであります。余計なことを申上げたと思うのでありますが、この際関連のことを多少拡げまして御参考に申上げておるのであります。
 各位の御審議によりまして、この法案が審議が開始され、又通過されることをお願いいたしたいのであります。
#34
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。それでは最後に建設省の河川局長の目黒さんにお願いいたします。
#35
○公述人(目黒清雄君) 私の立場は建設省の河川局長として申上げることは差控えたいと思いますが、過去におきまして福岡県の土木部長を拜命して、知事の下にこの問題を経験いたしました関係から申上げたいと思うのであります。もうすでに御承知の通りに、この被害は相当な被害であります。家屋にいたしましても、水道の問題にいたしましても、その他三千町歩以上の農地という問題、更に公共的な施設、河川、道路の荒廃というようなことになりますと、なかなか捨て置き難い問題であります。殊にこの河川の被害が、最近全国的に河川の被害を受けまして、荒廃しました関係上そうであると同様に、福岡県の鉱害地の河川は、一朝この状態において豪雨でもありますれば、この被害は、出炭の問題は勿論でありまするが、非常に被害が甚大であるということが想像できるのでありまして、一刻も早くこの復旧をいたさなければならん、こういうことと我々は考えておるのであります。従つてこの法案はそれ自身には多少意見がありまするが、この法案そのものを通過頂きまして、早くこれらの復旧をいたしまして、民衆の安定を図ることが得策ではないか、必要ではないかと我々は考えておるのであります。今青山先生からお話がありましたが、この鉱害そのものの特別鉱害であるか、或いは他の原因による鉱害であるかという認定の問題は、我々も携わりましたが、なかなか困難な問題であります。従つて鉱害審議会におきまして、これを認定いたされる場合には、相当愼重にいたさなければならんと思うのであります。福岡の例を取りますると、曾ては被害者と言いますか、鉱業権者が自己の負担におきましてこの復旧をやつて参つたのでありますが、終戦後この被害の状況が著しく現れて参つたのであります。これがいわゆる特別鉱害と考えられるものでありまするが、その間の時間的な問題はどこに線を引くかというようなことは、只今青山先生のお話の通りに、なかなか困難な問題だと思います。そこで我々といたしましては、この実際に認定いたしまする審議会におきましては、相当愼重にこの範囲を決めて頂きたい、こう思うのであります。更にこの特別鉱害の将来の……特別鉱害と言いますか、鉱害全体の対策といたしましては、特定のものはこの法案のうちに織込まれて取上げられるかも知れませんが、併し厖大なる耕地が陥没し、多くの人家が傾くというような問題を、ただ一片のこの法律のみによつてこれを解決するということは、私は困難ではないかというふうに考えております。この地方の将来の発展、国家に及ぼす産業上の関係を考慮いたしますれば、他の方法を以てこの問題を考える途があるのではないかというふうに考えられるのであります。従つてこの特別鉱害の範囲の認定の結果によりましては、そういう問題が起きて来るのではないか、と申しまするのは、如何にしても厖大な耕地をそのまま原形に復旧するということは、不可能である箇所も相当あると思われるのであります。これに対しては別な方法を以てそれらの農地の生産を上げるという途が考えられるのではないか。或いは飲料水の、ガスの問題にいたしましても、單に一時的な応急的な復旧のみでは将来の発展に対して齟齬を来すというような問題もありますので、これは積極的に水道建設という点まで考えなければ、本当の意味の鉱害復旧には相成らんと思うのでありますが、その辺のところが特別鉱害の範囲であるかどうかというようなことは、将来のこの委員会の問題に相成ると考えておるのであります。いずれにいたしましても、この法案は先程申上げました通りに、一刻も猶予のできん非常に緊急のものであると我々は信ずるものでありますから、この点は十分御考慮を願いたいと思うのであります。
 更に国と地方公共団体、更に被害者と言いますか、関係炭鉱と言いますか、こういうものの分担の割合でありますが、現在の行き方といたしましては、公共的な施設に対しては、三分の二の公共事業費の補助で以て賄つて行こうということに相成つておりまするが、住宅、水道の問題ということになりますると、まだその辺が未解決と言いますか、それはこのプール資金によつて解決するという方途を講じておりまするので、これらの負担関係はそういう施設の公共性というものから割り出しまして、国が如何なる部分を持つかということに相成ると思うのであります。強制出炭を命じたために、それによつて起つた弊害は国が持つのだというような意味とは違いまして、その地方の産業上の価値から判断しまして、公共施設に対する補助は出すべきだというふうに我々は考えておるのであります。更にその被害者、或いは関係炭鉱の負担の割合につきましては、相当合理的な研究をお願いいたしまして、私はこれだけ簡單に申上げて置きます。
#36
○委員長(小畑哲夫君) ありがとうございました。これで十三名の公述人のお話を一通り承つたのでありますが、尚他の公述人のお話をお聽きになつて、この際話をして置きたいという方がありましたならば、極く短時間におやり願いたいと思うのでありますが、これ又一通り参りますと、夜中になりますから、どうしても必要だという方はお述べを願います。
#37
○公述人(萬仲余所治君) 北海道の協会としても同意見であるというように申上げて置きましたのですが、次にお立ちになつた小西さんから、北海道でも一部は本案に賛成であるというような御発言がありましたので、その間のいきさつをはつきりさして置きたいと、こう存じております。
#38
○委員長(小畑哲夫君) 極く簡單にお願いいたします。
#39
○公述人(萬仲余所治君) 私申しましたように、今月はその意味でお召しを頂いておらないのであります。けれども、ちよつとその点を明らかにさして頂きたいと思います。協会といたしましては、本法案の負担方法には反対であるという決議を昨年いたしまして、今も変りありません。ありませんが、その後東京へ参りまして、東京の協会としていろいろ議論されました際に、その中間的に出ましたのが、九州と北海道の両方に炭鉱を持つておる会社は、その中で御承諾になつたところと御承諾にならんところがありますけれども、或る会社は北海道の出炭量に対しても、本案のような復旧費を納めても差支ないという申出のあつた会社が二、三あります。そういう意味合から北海道というものが一致していないというような御意見もあつたのでありますが、協会における問題は依然としてそのままであります。その点申上げて置きます。
#40
○公述人(小西春雄君) もう意見は述べませんが、委員会の方では、公聽会を衆議院が明日、明後日あるそうでありますが、それが済みましたらいつ頃本会議にかかるか、この問題の終結がいつ頃になるかというようなことを、実は非常に関心を皆持つているわけであります。大体のお運びのお見込みでも伺うことができれば仕合せです。
#41
○委員長(小畑哲夫君) お答えいたします。只今この法案は御承知のごとく衆議院の方にかかつておりまして、参議院の方では予備審査ということになつております。そこで御承知の通りに、第六国会にすでにこの法案は出まして、政府当局の資料も取りまして、可なり委員会では取上げて研究をしております。ただ今日の最初に申上げました通りに、現地の調査であるとか、或いはこうした公聽会であるとかいうものを開かなければ、非常に重要な法案でもあるからというので、この会が終りましたならば、尚委員の方と皆さんの方の御陳述を基礎にしまして、審議を数回重ねれば結論が出るかと私は考えているのであります。いずれ衆議院を通過、向うで結論が出る時分にはこちらも並行して進めると、こういうつもりでございます。
#42
○公述人(栗田數男君) 只今北海道の萬仲さんからお話がありましたが、私は形式上はどうなつているか知りませんが、実質上におきましては、私共両炭鉱に関係のある鉱山の責任ある社長さん、並びに常務の方にお会いしまして、本法案は絶対これは支持ということを承つております。その線におきまして、その後におきましても、私共承わるところによりますと、上京中の炭鉱の関係の市町村の方々におきましても、本法案賛成ということを北海道の常磐、全九州の方々が一応御賛成の意思を表していることを承知いたしております。附加えて申上げて置きます。
   〔公述人萬仲余所治君発言の許可を求む〕
#43
○委員長(小畑哲夫君) 公述人間の議論討論をやつておりますと、ちよつと本会の目的に添いませんので…。
#44
○公述人(萬仲余所治君) ただ間違いをそのままにして置けないということだけでありますが、今の点違つております。それだけ申上げて置きます。
#45
○委員長(小畑哲夫君) 結構でございます。
 それでは委員の方何か御意見ございますか……、委員の方御質疑ございませんか。ちよつと委員の方にお諮りいたします。公述人の発言を終つたのですが、今日公述の申込みが、御希望が前からありました金政君というのが、国鉄労働組合小倉支部の方で、是非関連があるからこの場所で意見を述べさして欲しいという申出があるのですが、如何取扱いましようか。
#46
○島清君 異議ありませんが、時間がありませんから…。
#47
○委員長(小畑哲夫君) 金政君時間はどのくらい要求しますか。
#48
○参考人(金政六四郎君) 長くて二十分か、十五分くらいあればよろしいと思います。
#49
○委員長(小畑哲夫君) 成るべく十分程度で、他の正式の公述人の方が十五分で限られたのですから、十分間許可いたします。
#50
○参考人(金政六四郎君) 私は国鉄小倉支部の執行委員長をやつております金政であります。御調査にお見えになつた方はすでに御承知だと思います。今まで公述人の方から申上げられました被害の実相でございますが、地区は異りますが、概ね田地、田畑、或いは建物というような被害の状況であります。従つて私は交通機関でありまする鉄道に及ぼしておる鉱害について特殊な実例、或いは意見を申上げたいと思います。私の小倉支部は筑豊炭田を全部包含しております。筑豊炭田が平地帶にあるために、鉄道と言わず、耕地と言わず、或いはその他の建物、道路、橋梁、すべてのものに被害を及ぼしておりますが、これが早急に復旧されることは、筑豊地方地元民の必死の願いであります。而もこれは国家的な見地からしても重大な社会問題である。祖先より受継いだところの僅かな耕地が不毛地となつてしまう。或いは商人は家屋が倒壊、或いは傾斜しまして、その修理費が税金と共に大きな生活を脅かす要素になつておる。その他公述人の方々からいろいろ申述べられました被害は鉄道の職員にも同じようにあるわけでございます。それ以外に鉄道の運転、列車を運行いたします面より見たところの特殊な被害についてのみ申上げます。
 先ず鉄道の鉱害の特徴としましては、被害地を常に重量な列車が驀進しておるということであります。静止していない。この列車の本数は筑豊地方におきましては、毎月々々列車数を殖やして行つております。ダイヤ改正ごとに殖やしております。これらの列車が夜となく晝となく走つておるということ。次に被害箇所の復旧は瞬時もゆるがせにできない。これは運転事故の起因をなすものでありますから、ゆるがせにすることはできないということ。次に貴重なる人命財産を常に危険状態に曝しておるということ、これは旅客列車の場合なんか特にそうであります。次に従事員の勤務に極めて超過労働を及ぼしておる。この点につきましては徐行箇所が非常に多いわけでございます。で管内におけるところの徐行をやつております箇所は全部で二十一線区あるうちの七線区、徐行箇所十五ケ所、軌道の延長にいたしまして十二キロ百メートル、こういう割合になつております。それから駅舎、建物の被害、これらもすでに調査団の方は御承知と思います。それからずつと以前より写真を添附いたしました資料をお配りいたしまして、いろいろ御説明しておりまするが、赤池の駅、これは伊田線でございますが、地図も持つて来ておりますので掲示して説明するとよく分かますが、時間がございませんので省略いたします。赤池の駅のごときは一メートル七十から陷没しております。線路の高さが概ね駅舎の軒の高さになつておる。これは最初から駅舎を低い所に建てたのではなくして、普通のこの附近の駅のように線路よりも駅が上にできておつた。ところが段々下りて、線路はレベルを保持するために逐次工事をやつておるので、それが家の方が段々下つて遂に軒の近所まで線路が上つた、こういう状態であります。
 次に鉄道における被害を受ける人員は、あの附近の住民全員がその被害を受けておると言えるのであります。これは交通機関を利用する者が全部被害者であります。それから特別鉱害と一般鉱害との関連性が極めて重大でありまして、これを区別することが困難である。それは何故かと申しますと、予算の今までの復旧工事の状態を見ればよく分るのでございます。で昭和二十三年度におきましては概ねプール資金によつて、これは特別鉱害として行わた。ところが昭和二十四年度におけるプール資金が極めて少い。鉄道復旧費で、これは九州全体ではありません、筑豊炭田だけでございますが、三百四十一万一千円しか来ていない。これに対する復旧の必要予算は幾らか、九千五百四十万円であります。従つて鉄道としましては普通の工事経費より千七十二万円、それから鉄道の経費から五百三十五万五千円、これだけを支出いたしまして特別鉱害を復旧しております。結局言い換えれば、他の線路の補修費が特別鉱害の方に傾注されたために、他の線路補修の程度が極めて低下しております。これはどういうことになりますかと言いますと、昭和二十四年度におきましては、プール資金から千百九十五万三千円、これが出ております。これに対して国鉄が負担したのは千四百五十万円負担しております。そのために他の鉱害以外の線路の程度が低下いたしまして、その経費が現在見積つたところで九千万円を要する、こういう現状であります。それから列車の徐行を要する区間、つまり徐行箇所或いは速度制限箇所が多いために、機関車はずつと速度を落します。次に又徐行箇所を通過いたしましたならば、又速度を出すために要する石炭の費用、或いは制動をたびたびかけますために制輪子の減耗、これが馬鹿にならないものでありまして、年間に千四百四十七万四千円、これがこの鉱害のための運転に要する費用であります。これは純然たる損失であります。こういうふうに、まだ更に申上げれば幾らでもありますが、この被害の軌道延長が筑豊だけで現在五十七キロ百二十メートルであります。これは全長三百十九キロ四百四十八メートルに対して一七%の割合で、被害箇所は三千七ケ所でございます。これは勿論一般鉱害と特別鉱害を含んでおりますが、二の特別鉱害に予算を少しでも頂くことによつて、他の一般鉱害或いは鉱害以外の鉄道の線路補修というものが救われるわけでございます。この点を、便乗するわけでは決してございませんが、せめて特別鉱害に属するものだけでも予算を見て頂きたい、これが現地の我々の念願であります。こういうふうに見て参りますと、この鉄道が一般住民の方々が常に列車に乗つて安心しておられるその足の下が、大きな鉱害のために危険状態にある、これにはちつともお気づきにならないということであります。これを補修いたしますために現在全然予算がございませんので、一般経費の方から人員を割きまして、そうして現在八十一名の老がかかつておりますが、これの予算というものは純然たる経営費から出ておりますために、経営費で保有すべきところの定員を割つている、こういうような状態でございます。
 そこで最後に私が申上げたいことは、今までの公述を聽いておりました。で、北海道の方の御意見も私は十分拜聽いたしました。併しながら筑豊地方が今まで戦時中は補償を受けた、こう言われますが、私は北海道の方こそ補償を受けておる。
#51
○委員長(小畑哲夫君) ちよつと証人に注意をいたします。あなたの方は参考人と申しますと別でありますから、こちらの公述人の意見に対して発言するところの資格がないわけであります。
#52
○参考人(金政六四郎君) 分りました。そこでこういう問題が、まあそれぞれの意見によつて、この法案の成立が延期すればする程、国鉄としましては厖大な予算を日々消費しているという、もう一面違つたところの被害者の立場にあるわけであります。下つて行く被害と、更に延期するために予算を消耗するところの被害、両面の被害を国鉄としては負担しております。従つて一日も早くこの法律案が通過することを私は主張するものであります。
 尚一つ申上げたいことは、この法案の中に私が聞くところによれば、この第三條の第一項というものは第一号に限定される、こういうふうに私は聞きましたので、運輸省で聞いたのです。これは私が普通の條文を解釈する場合に、そういうことはあり得ないと考えるわけであります。でこの第一号の「昭和十六年十二月八日から二十年八月十五日までの間に」云々、これが基本になつて、この中の二項三項、こういうふうに適用されるということを聞きましたので、この点は特にこの條文から参りまして、一号、二号、三号、これらの中から認定されるものである、このように私は確認をしたいと思います。そういう意味合で、この法案に賛成するものであります。以上であります。
#53
○中川以良君 本日皆様方から誠に尊い御意見を沢山承りまして、私共が嚴正なる立場におきまして、本法案の審議をいたしまする上に、極めて有益なるところの示唆を與えて頂きましたことは誠に感謝をいたしております次第であります。私は現地を親しく拜見をいたしておりますので、今更お尋ねを申上げることもないのでありますが、ただ私といたしましては一日も早く現在の復旧工事が着手されまして、多数の被害者の方が救われることをひたすら念願をいたしておりますことは少しも変りはないのであります。ただ私はこの法案によりますると、第三條におきまして、いわゆる特別鉱害というものは大東亜戰争の勃発の昭和十六年十二月八日から終戦時の二十年八月十五日までに起つたところの鉱害ということに相成つておるのでありまするが、これは先程青山博士の御指摘になりましたごとく、極めてこの判定が困難なるものが多々各方面にあるのではなかろうかと存じます。かような意味におきまして、この法案が出ますと同時に、特別鉱害を受けてないところの人までが、この法案において救われるとみずから信じておる。又これら被害者を代表していろいろお世話になつております方々が、お前の所も必ずここに入るのだというようなことで、極めて不明朗なことがあるのではないかと懸念いたします。それはいずれ審議会で決定をするのでありますが、かようなものであるといたしますならば、将来いろいろ社会問題を起し、これがために折角の法案の趣旨が踏みにじられるという点も起きやせんか、又一方においては、先程和田さんのお話かとも存じますが、終戰後においても強行出炭をドツジ・ラインで責められた、これらの損害もやはり救われるべきだというような御意見もあつたかのごとく承つたのであります。これらの点に混同したところがないかどうか、この点が私共非常に懸念されるのでありますが、被害者側におきまして、こういう点は明確に区分をしておられ、又多数の被害者の代表になつておられる御指導的な立場にある方が、こういう点もよく御指導になり、こういうむずかしい区別等を知らないような多数の農民等に対しまして、御説得が十分に行つているかどうか、こういうような点を一つ承りたいと存ずるのであります。
#54
○公述人(和田滿惠君) 只今中川委員さんのお話ですが、一言御参考までに申上げたいと思います。先程どなたかから特別鉱害の認定がむずかしいというお話もあつたごとく、私共被害者の立場からお願いできれば勿論一般鉱害も直して頂きたいのでありますが、さような御無理なことは毛頭申上げたいとは思つておりません。ただ実際上の問題といたしまして、戰争が終りました昭和二十年当時に起つておりました鉱害が、その地質によりますと、ただ一年くらいには影響が起きない、二年三年くらいでその影響ができて来るというような実際の例もあるのでありまして、そついう面につきましては、私共素人がこの面にタツチするということは多少おこがましいことかと思いますし、只今中川委員さんのおつしやいましたことについては、全面的に私共了解しております。ただ炭鉱といたしましては、石炭局なりそれぞれの施業案なり、明確なる資料によつて採掘をやつておられますから、そういう面を調べ上げられまするならば、相当程度この特別鉱害というものが私はスケールが分つて来るかとかように思料しておりますから、そういう面で一つ御研究を願いますように簡単でございますがお返事申上げます。
#55
○公述人(栗田數男君) 中川先生に御覧願いましたように、全耕地が厖大な被害を受けておりますが、説明のうちにも申上げましたように、約三十町歩の耕地は一応復旧しております。それが職時鉱害によつて更に水没しておる。墓地附近並びに人家附近は絶対鉱山は掘らないというようなことを約束しましたのが、掘つておる。而も先程東大の先生のおつしやるように、下つて来る時期的な問題、そうい方ものを私共が現地に徴しましたものと、地質上見られましたものとか相一致いたしております。掘りまして五六十日の間と、それからどの程度掘つて静止しておるといろ事態についての、年々私共の方で被害補償を受けまするところの資料が鉱山側にも農民側にも持つております。それでそれらのものは技術的にも実際の被害者の取引の上におきましても明瞭であるから、而も先程来申しますように、全被害の総額は私共は三百億―四百億だと思います。そのうちに閣議決定が百二十九億、それで更に五十億に圧縮されますものでございますから、私共は審議会においてこの問題を検討される際に、一部考えられております便乗というような、そういうことは私共は毛頭考えられないということを申上げます。
#56
○委員長(小畑哲夫君) まだ質疑もあろうかと思いますけれども、公聴会はこれで終了したいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#57
○委員長(小畑哲夫君) 終りに臨みまして公述人の方に一言御挨拶申上げます。本日は御多忙のうちを早朝から長時間に亘りまして熱心に御意見を開陳せられまして、私共の委員会といたしましては、法案審議に裨益するところが非常に大きなものがあつたのであります。只今小西さんから委員長に対して御質疑がありましたように、非常に急ぐ法案だということは我々も十分承知しておりますが、先程来の皆さん方の御意見にも、一致点もあり、両第三條、第二十二條等において多少の研究の余地もあるかというふうに承つたのであります。従いまして本日の皆様方の陳述につきまして、我々委員会はこれを資料として今後速やかに審査を進めて行きたいと、かように思つております。この席から厚くお礼を申上げて置きます。
 これを以て本日の公聽会は散会いたします。
   午後三時三十九分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     小畑 哲夫君
   理事
           島   清君
           廣瀬與兵衞君
   委員
           下條 恭兵君
           小林 英三君
           中川 以良君
           小杉 繁安君
           阿竹齋次郎君
           鎌田 逸郎君
           宿谷 榮一君
           山内 卓郎君
           結城 安次君
           駒井 藤平君
  公述人
   福岡県知事   杉本 勝次君
   福岡県鉱害対策
   被害者組合連合
   副会長     栗田 數男君
   長崎県鉱害対策
  協議会常任幹事  山口 正之君
   熊本県荒尾市長 寺田 佐平君
   山口県鉱害対策
   組合連合会書記
   長       和田 滿惠君
   北海道炭鉱汽船
   株式会社常務取
   締役      萬仲余所治君
   九州石炭鉱業協
   会会長     小西 春雄君
   宇部興産株式会
   社取締役    上田 十一君
   小野田炭鉱鉱業
   所総務部長   吉田章一郎君
   常磐石炭株式会
   社常務取締役社
   長       大越  新君
  労組側
   福岡県遠賀地区
   炭鉱労働組合協
   議会事務局長  江副 敏夫君
   東京大学教授  青山秀三郎君
   建 設 技 官
   (河川局長)  目黒 清雄君
  参考人
   国鉄労働組合小
   倉支部執行委員
   長       金政六四郎君
ソース: 国立国会図書館
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