くにさくロゴ
1981/11/25 第95回国会 参議院 参議院会議録情報 第095回国会 内閣委員会同和問題に関する小委員会 第1号
姉妹サイト
 
1981/11/25 第95回国会 参議院

参議院会議録情報 第095回国会 内閣委員会同和問題に関する小委員会 第1号

#1
第095回国会 内閣委員会同和問題に関する小委員会 第1号
昭和五十六年十一月二十五日(水曜日)
   午後一時二分開会
    ―――――――――――――
昭和五十六年十月八日内閣委員長において本小委
員を左のとおり指名した。
                伊江 朝雄君
                板垣  正君
                林  ゆう君
                矢田部 理君
                中尾 辰義君
                安武 洋子君
                柄谷 道一君
                秦   豊君
同日内閣委員長は左の者を小委員長に指名した。
                林  ゆう君
    ―――――――――――――
   小委員の異動
 十月二十六日
    辞任          柄谷 道一君
 十一月二十日
    辞任          秦   豊君
 十一月二十四日
    補欠選任        柄谷 道一君
    補欠選任        秦   豊君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    小委員長        林  ゆう君
    小委員
                伊江 朝雄君
                板垣  正君
                矢田部 理君
                中尾 辰義君
                安武 洋子君
                柄谷 道一君
                秦   豊君
    内閣委員長       遠藤  要君
    政府委員
        内閣総理大臣官
        房同和対策室長 水田  努君
    事務局側
        常任委員会専門
        員       鈴木 源三君
    参考人
        部落解放同盟中
        央本部書記長  上杉佐一郎君
        全日本同和会事
        務局長     谷平  武君
        全国部落解放運
        動連合会書記長 中西 義雄君
        同和対策協議会
        会長      磯村 英一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○同和問題に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小委員長(林ゆう君) ただいまから内閣委員会同和問題に関する小委員会を開会いたします。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 私は、去る十月八日の内閣委員会において、皆様の御推挙により小委員長に選任されました。
 本小委員会の運営につきましては、円滑公正に行ってまいりたいと存じますので、よろしく御指導、御協力くださいますようお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#3
○小委員長(林ゆう君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 本日の小委員会に、同和問題に関する調査のため、参考人として同和対策協議会会長磯村英一君、部落解放同盟中央本部書記長上杉佐一郎君、全日本同和会事務局長谷平武君、全国部落解放運動連合会書記長中西義雄君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○小委員長(林ゆう君) 御異議ないと認めます。
    ―――――――――――――
#5
○小委員長(林ゆう君) 同和問題に関する件について調査を行います。
 本日は、本調査のため、参考人の方々から御意見を聴取することといたしております。
 この際、参考人の方々に小委員会を代表して一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本調査の参考にいたしたいと存じます。
 これより参考人の方々に順次御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上お一人十分程度お述べ願いたいと存じます。あらかじめ御了承をお願いいたします。
 それでは、上杉参考人にお願いいたします。上杉参考人。
#6
○参考人(上杉佐一郎君) 私は、部落解放同盟中央本部書記長上杉であります。
 私は、いまから意見を申し述べるのは、特別措置法の法律が来年三月三十一日、三年延長お願いしたのが切れるわけであります。そういう点で、特別措置法の延長並びに新立法の制定、これはいずれでも構わないと思うんですが、法の存続の必要性がある、そしてその法の存続の期間は最低五年は必要であるという前提に立って御意見を申し上げたいと思います。
 まず第一に、特別措置法が制定されまして十二年半になるわけですが、十二年半の中で成果の問題として、率直に申し上げて環境改善は相当進みました。それから教育、雇用の一定の前進が見られたことも事実であります。さらに、国民的課題にならなければならないという啓蒙啓発の問題にしても、地方自治体の取り組み、企業の取り組み、労働団体の取り組み、宗教団体の取り組みなどなど広範な同和問題の啓発取り組みがなされて、一定の前進を見たことは私ども率直に認めるところであります。
 しかしながら、まだ未解決の問題がたくさん残されております。その一つとして、いままで十二年半の間で全く同和対策をやっていない県がございます。これは昭和十年総理府調査による記録でございますが、山形県で四ヵ所、福島県で八ヵ所、山梨県で二十三カ所、石川県で四十七カ所、富山県で二百三十三カ所同和地区があるとされておりますが、この五つの県は十二年半の間で全く同和対策事業を一つもやっていない県であります。
 さらに、三年前の段階から少し取り組みをしたところが、神奈川、愛知、長崎、宮崎。これはその地方自治体の報告を見ても一割程度の進行しか見ていない、こういう現状に置かれておるわけであります。
 進んだところと言われます大阪府、福岡、和歌山、京都府の状況、これは地方自治体の報告を見ますと、福岡県があといまからしなきゃならない事業量だけで三千二百九億、大阪府が二千七百八十億、和歌山が六百八十五億、京都府が五百六十億、奈良が千三百八億という、五つの県だけでもいまからやらなきゃならない事業量というのは相当なものになっているわけであります。
 さらに、教育の水準の問題でありますが、特別措置法ができる以前の昭和三十八年、全国の一般高校進学率は六六・八%でありました。同和地区の高校進学率は三〇%であって、一般の高校進学率の半分を下回る状況でありました。ところが、特別措置法ができることによって、昭和五十四年には一般の高校進学率九四%、同和地区が八九%、五%の開きまで縮まることができました。しかしたがら、これはいろいろ私ども論議をしておるわけでありますが、入学するときに進学率の統計をとるべきか卒業するときにとるべきかというのは、今日同和地区の中で高校中退者が一二%を占めておるという現状でありますから、八九%高校進学率があるといっても一二%卒業していませんから、そういう点では問題になっているところであります。
 しかし、ここで私たちが特別措置法の存続強化を要望する一つの大きな問題として、私ども組織の実態を調査いたしました。その実態調査によりますと、特別措置法が切れて奨学資金がなくなりますと、一般の高校進学率は九七%ぐらいになると言われております。ところが、同和地区の高校進学率は五〇%を下回るということが私たちの調査の中で明らかになってきました。これは非常に今後の日本の運命を決する重大な問題と私は考えております。
 雇用の状態にしても、一般常用雇用が全般的に五九%、同和地区は三九%、臨時日雇いが六%、同和地区が一五%というような状況を示しております。
 生活保護率は、これは厚生省の五十年調査でありますが、十の府県の調査をしたデータを見ますと、生活保護の率は一般が一二%であるのに同和地区は五三%という生活保護率の比重を持っているということが明らかになっております。
 さらに、今日大きな問題であります差別事件の問題であります。いろいろ後の参考人と大きな食い違いがあると思いますのは、差別はだんだん解消しつつあると言う方々もおられますが、私たちは今日差別は拡大の一路をたどっておあと。これは国会の中で法務大臣も率直に差別のここ近年拡大というものを認められておるのであります。そういう点では、国並びに地方公共団体が取り扱った件数は一九七九年で千七百四十三件とされております。日弁運の「人権通信」によりますと、一九七二年三万一千六百八件であったものが一九七九年には六万百七十二件になっておるという、これは日弁連の調査であります。約二倍になっておるという現実であります。
 さらには地名総鑑の購入企業も、今日地名総鑑が九種類、購入企業は二百十九社に及んでおるわけであります。私たちは、結婚差別の問題というのが、これは非常に複雑で組織の中にも行政にも報告されない問題でありますが、そういう問題を含めますと、今日一年間に十万件を下回らない差別事件が存在をしている、こういうふうに思うところでございます。
 そこで、その差別事件が特に悪質化をしておるという問題は、先生方に先般国会の中で参考資料を差し上げておりますけれども、一つだけここで御披露をいたしますと、「おまえらは一かたまりになって一地域に住んでたらええのじゃ。幕府の死刑執行人が。おまえらの近くにいったら臭うてたまらんわ。「非人連合」なんか解散せよ。エッタはエッタかわりないわ。」というような投書、落書き、こういうものが大阪、滋賀、奈良、福岡等全国各地で大書された落書き事件が起きております。これは私ども偶然にして起こっておる問題ではなくして、やっぱり今月の国民の生活不安やいろいろな不安、そういう問題がこういう部落民に対する差別助長の要因をつくり上げておる大きな問題であろうというふうに考えております。
 そこで、これから私たちはこういう情勢を踏まえて法でどういうふうに重点を置いてもらいたいかということであります。
 差別が今日非常に拡大しておると言われておる要因は、私ども団体に大きな責任があるかのように言われる方々もおられます。しかしながら、私たちも全くいままでの運動が完璧であると考えておりません。二十四万人を有する会員でありますから、その二十四万人の会員を一定の方向に間違いなくやはりしていくということは一朝一夕にしてでき上がることではございませんので、不十分さがあることは率直に認めます。
 しかしながら、基本的な問題は十二年半前にできた同和対策事業特別措置法、私はここに問題があると思います。私どもはそのときから指摘しました。事業をするだけで、部落の環境をよくするだけで部落問題は解決しない、差別の要因である部落の人たちが教育の機会に恵まれて、そしてどこにでも働く労働の機会が認められるようになることが大切である。
 さらには、長い間国民の中に深くしみ込んでおるところの差別、心理的差別をなくする啓発運動、こういうものに法律の中心が置かれなければならぬということを要求したのでありますが、不幸にして事業法という形になったところに、部落だけが一定の事業が進み部落周辺がくぼんでいる、こういう現象の中で国民にねたみ、そしり、そういうものを与えたり、または一つの政党や団体が全国的に差別助長のキャンペーンを繰り広げるという形の中から差別が非常に増大し、悪質化の一路をたどっておるという点から、今回の新法律なり延長なりの中で部落差別の本質をなくする。環境改善も先ほど言うように大事でありますけれども、それよりも教育の機会、雇用の機会、そして国民の啓発をよくする、こういうところにひとつ重点を置いていただきたい。
 それから第二点の問題としては、どうしても事業という名前がつきますと時限立法になるという可能性があります。ところが、私たちは心理的差別――事業の方はある一定の段階で私は完了すると思いますが、心理的差別、日本の国民の中に長い間深くしみ込んだ心理的差別の解消というのは三年、五年で解決する問題ではないと思います。そういう点で事業法と心理的差別を解決する、私どもから言うと差別撤廃法というのか基本法というのか、これは無期限の法律と、事業の問題が有期限という、言うなら二本立ての法律をつくっていただけるならば非常に幸いだというふうに考えております。
 さらに、私ども地名総鑑などの差別事件が拡大する中で法規制を要求してきました。これは風民の一人一人の差別事件を法律で罰せよということは、私ども六十年の運動の中で一回も言ったことはございません。ただ、今日のやはり地名総鑑をつくる探偵社、興信所、こういうもの、プライバシーを侵害する営業が、どこの認可制でもどこの許可制でもないというところに問題がある。だから、今日の差別をつくり上げるところの探偵社、興信所をやはり通産大臣なり法務大臣なりの許認可制にして、一定の歯どめを加えてほしいというのが私たちが要求している法規制の内容であることを申し上げて、私の意見を終わりたいと思います。
#7
○小委員長(林ゆう君) ありがとうございました。
 次に、谷平参考人にお願いをいたします。谷平参考人。
#8
○参考人(谷平武君) 私は、全日本同和会の事務局長を務めております谷平でございます。
 ただいま上杉参考人が申し上げられたいろいろな意見と食い違いは、大して差はないと思いますが、私は全国的視野と申しますかそういう立場にも立ちますが、裸のいまの実態を私が組織として感じたことを申し上げたいと思います。
 まず、ただいま申し上げられた十二年間の特別措置法の効果について私たちが感じたことと申しますと、住環境整備についてはなるほど格段の進歩があったと思います。しかしながら、地域指定その他これは重要なことではございましょうが、少数散在部落においては非常に現行の法律で放置されておるという面で、地方自治体――各府県、市町村にまで格差が非常にあるということが残存の大きな原因ではなかろうかと思います。
 いま一つは、先ほど上杉参考人から差別事象の問題点の話がございましたが、この点につきましても、ねたみといいますかそういう面につきまして勘案しましても、また行政上の問題としましても、整合性がこれからの法律の非常に大事な役割りを果たすのではないか、かように考えておるものでございます。
 それといま一つ、行政対策としましては、過去十三年間にありましたものについて経済対策が非常に希薄であったと。たとえば通産省の同和高度化資金等については、ある意味での進展は見られましたが、中小でなしに小規模の事業者、零細事業者または日雇い労働者等に対しての経済基盤の確立がなってないと。幾ら住環境整備ができておっても、経済的な問題が確立せなんだらこの問題の解消の一つの大きなもとが取り除けない、かように考えるわけでございます。この行政対策においてのただいままでのものに対して、住環境重点、消費重点主義と申しましょうか、これからは消費だけではこの問題は解決できないので、今後の法の強化、改定にはぜひこれを御勘案いただきたい、かようにお願いしたいと思います。
 それと含めまして、ただいま上杉さんからも申されましたが、進学、就職ということもございますが、人間開発と申しましょうか、これからの教育まだこれからの社会というものに専門的な分野が非常に開けられるのではないかという展望もありますので、人間開発というものも、教育を含め、また社会的な開発に伴っての必要性が生まれてくると。運動団体といたしましても、地域を引っ張っていくと申しましょうか、リーダー的な存在という者を育成をせねばいけないということを振り返って、法並びに運動の経緯を考えてわれわれは考えておるものでございます。
 次に、教育におきましては、先ほどからたびたび上杉参考人のお話を言うようでございますが、啓発に対しては非常な大分の効果があったという評価でございましたが、啓発啓蒙に関しては三年間の延長がございましたが、私は各所においてペーパープランの域を出ていないという評価をしておるものでございます。
 たとえば普通、婦人の立場で申しましても、婦人が話を隣の人と、差別をする者と差別をされる者としておる場合でも、一歩外へ出てよその場所へ行きますと知らぬ顔をしておると。どう申しますか、如実に感覚での差別感というものは非常に厳しいのが現状であります。というような面からも考えまして、いまの啓発啓蒙は、今後はコミュニティー等々を強力に進める上で婦人の役割りというものも非常に強いのではないかというように考えております。
 また、学校教育におきましても、いろいろな史実は、日本史的ないままでの教科書というものも出まして今日までやっておりますが、いろいろ世代の感覚を大切にしようと、大事にせねばいけないという意味合いのことはわれわれも考えておりますが、たとえば大変失礼なことなんですが、教師の質、またこの問題に対しての、同和教育に対しての基本、指導要領というものがなければいけないと思います。
 と申しますのは、狭山事件におきましてこれを云々することは、大人の段階ではこれはよいと思います。しかしながら学校の子供、まだこれがどちらかこちらか判断もつかない子供がゼッケンをつけ、また現在の大事な三権の一つであります司法に対して、尊厳たる裁判を否定し、また警官を悪者扱いと申しますか、悪者というような感覚で物をとらえることは、次代の国民として非常に問題ではなかろうかと。教員の質と申しますか、この問題を取り扱う教員、また小学校、中学校、高校、大学の一貫した同和教育の方法、私立におきましては同和教育はない、公立に行けば同和教育があるというような、極端な例を申しますと。というような教育のあり方では、学校教育も暗然とするものがあるというような意味合いで、今後の教育は中立公正なやはり教育が施されねばならないと、かように思っておるものであります。
 次に、先ほど地名総鑑という話がありました。これも私も申し上げますが、これは地名総鑑でなしに、差別事象に対してただいままでは団体が糾弾をするという意識が非常に強かったと。これはいたし方がなしに、いままで団体で糾弾をした時代もございました。しかしながら、今日においてはそういう人民裁判的なことが、国民に対して、国民的課題としてとらえられるかとらえられぬかということを勘案してみますと、やはりこれを法令化して法務省で対応を十二分になされる必要があるんではないかということを考えるものであります。
 以上申し上げましたが、申し上げました時点での問題点は、国及び地方公共団体の主体性が非常にないということも一つの要因になっておるんではなかろうかと、かように思います。
 それと、先日も申し上げたんですが、総理府の同和対策協議会に対象者の委員が不在であると、オーバーの上から物をかくような委員会であるんではないかと、大変ここに磯村先生がおられるのに失礼な言い分なわけなんでございますが、やはりその身になった、痛みを感じた委員がおらなければいけないのではないかと――いけないという観点から申し上げておきます。
 最後におきましては、団体の責任を非常に感じておりますので、われわれは今後やはり自浄作用も起こし、十二分に対応していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。簡単なものではございますが、私たちの全日本同和会としての試案と申しますか、今後の法律へこれだけを入れていただきたいという資料をお手元へ出しましたので、御熟読いただきまして、お願いを申し上げたいと思います。
 以上をもちまして私の意見を終わらせていただきます。
#9
○小委員長(林ゆう君) ありがとうございました。
 次に、中西参考人にお願いいたします。中西参考人。
#10
○参考人(中西義雄君) 全国部落解放運動連合会書記長の中西でございます。
 結論から申し上げますと、法の改正による一定期限、長くとも五年の再延長を要望する立場がら、私の意見を述べたいと思います。
 小委員の皆さん方にお配りしました同和対策協議会への意見書の中で詳しく述べておりますように、法施行後の同和対策事業は、対象地区住民の努力と相まって、住宅、生活環境の改善、産業基盤の整備、教育条件の充実、職業の安定化などで一定の成果を上げて、地区住民の社会的経済的地位向上に寄与したと私どもは評価しておるわけであります。
 特に住環境の整備改善は、多くの地区でかつて専用のトイレも水道もなかった部落スラムの姿を一掃し、一応健康的な生活を営むことができる状態をつくり出しました。
 また、義務教育での不就学問題は基本的に解消し、高校進学率も昭和五十四年には八九%になり、一般との格差も大きく縮めることができたわけであります。このような若い世代の高学歴化は、近代的産業部門を含めて職業、雇用の機会を拡大する条件となっております。
 心理的差別の典型である結婚差別の問題では、神戸市が本年二月に行った調査を見ましても、年齢が若くなるにつれて地区内外の通婚がふえており、二十九歳以下では五三%にも上っております。このことは、部落差別が最も強く残っている結婚問題にしましても差別意識が次第に解消しつつあることを示しております。
 では、法的措置に基づく同和対策事業の必要性がなくなったのかといいますと、そうではありません。住環境の改善や公共施設、道路の整備などの事業が終結に近づいている地区もある一方で、事業主体である地方自治体の姿勢や財政基盤の強弱、あるいは対象地域の実情などによって、事業が大幅におくれているところも少なくありません。
 たとえば京都駅前の東七条地区、名古屋市にある二つの地区、北九州市の北方地区など、大都市の大型混住地区ではほとんどの事業が進んでおりません。また、山口県岩国市の約二千世帯が混住する川下地区も、ようやくこのほど事業計画をつくり上げて、年内にも地区指定の陳情を政府に行おうとする段階であります。さらに茨城、栃木、千葉、島根、宮崎、鹿児島などの小規模地区では、これから事業が本格化するところであります。愛知県には三十数地区がありますが、事業対象になっているのはわずか九地区であります。ここでは賎私語を書き連ねて部落住民を罵倒し、国外へ追放するぞと侮辱する匿名の差別文書が全解連と解放同盟の県連組織に送りつけられてきております。文字の筆跡から見ますと、これは低学力の人ではなくて、非常に知的な労働に従事している感じがするわけであります。
 さらにまた、愛知県下では企業の就職差別問題が相次いております。さらに、名古屋市内におきましても、来年度から廃止されることになりましたが、大都市のど真ん中に一クラス四、五人の部落学校がことしまで残っておりました。さらに豊橋市などでは、祭りのときには中世の賤民同然の屈辱的な清め役をいまだに部落住民がやらされているという実態もなお残っているわけであります。このような部落差別の存在は、愛知県下における同和対策事業のおくれと無関係ではありません。
 このような差別意識、偏見は、全国的に解消の方向に進みながらも、まだ強く残存していることは言うまでもありません。そういう観点から、啓発事業が今後きわめて重要な課題になってきております。さらに、部落住民の社会的経済的地位を高めるための教育対策、中高年対策、就労、産業対策などは引き続いて強化する必要があると私どもは考えております。
 このような時期にもし法的措置が打ち切られたとするならば、今日もなお必要とする施策を不安定なものにして、地方自治体を混乱させ、部落差別の解消という国民的課題を挫折させる結果になりかねません。
 ところで、十三年に及ぶ同和対策事業は、このような成果とともに多くの重大なゆがみをもつくり出して国民的な批判が強くなっております。たとえば国の消極性による地方財政の重い負担の問題があります。私どもの調査では、市町村段階では同和対策事業費の三分の二近くを市町村が負担をさせられているという問題が明らかになっております。さらに、自治体によっては際限のない事業の肥大化、デラックス化に伴う国民への逆格差、逆差別、部落住民に対しては窓口一本化の行政差別、北九州市で明るみに出た十五件に及ぶ土地転がしや利権あさり、不正融資、狭山闘争強制による同和教育の混乱などの問題があります。これらは、特定団体の介入によって行政の主体性、公共性、公平性の原則が損なわれたこと、同特法そのものにも不備、欠陥があり、国の施策運用には多分に消極的な問題があったことに起因するとわれわれは考えております。
 したがって、法的措置の延長に当たっては、これまでの同和行政の総括に基づき、ゆがみを是正することが国民の合意を得る大きな前提となっております。そして行政の主体性で、地区の現状に即して住民の自立を促進し、公正で効率的に実施できるよう法改正を行う必要があります。
 その際、同和行政が部落差別を解消させるための一般行政を補完する過渡的な措置であることと、事業の範囲が部落内外の格差是正であることに限定し、属地的な対策を原則にした施策にしなければなりません。また期限は、冒頭に申し上げましたように、どんなに長くても五年以内とし、この間に国の責任で同和対策事業を基本的に終結させることを明記していただきたいと思います。
 また財政は、国が実質三分の二を負担するとともに、現在約一兆円の地方債償還に苦慮している地方自治体に対しては、その適切な事業費については援助措置を特別に行うべきであると考えます。
 住環境の整備改善事業につきましても、おくれた地区を重点的に実施することであります。この場合、周辺地域との整合性を重視して、地区外をも含めた町づくり、地域づくり計画を立てることが今後の施策としてこの問題の解決に特に重要になっているというように考えるわけであります。
 ところで、奈良県の御所市では人口、世帯数の四分の一が対象地域になっております。昭和五十五年度以降の住環境整備事業だけでも残事業が二百四十二億円、そのほかを含めると四百四十一億円にもなり、一地方都市の貧弱な財政では手に負えません。また、山口県岩国市の川下地区でも、住環境の整備改善事業だけでも六百億から一千億円も見込まれております。
 このような状態に置かれている地区はまだまだ多くあります。したがって、こうした自治体に対しては、国と府県の責任で事業を急速に進展させるための骨例措置を講ずる必要があると考えます。
 さらに、物的施設につきましては、周辺地域にも開放し、共同利用できる条件をつくることがこの問題の解決にとってきわめて重要な課題になっております。
 個人給付事業につきましては、今日の時点に立って見直すことが重要になっております。進学や就労、中高年者対策など社会的経済的地位を高めて自立を促進する事業につきましては、施策の充実や改善、所得制限を導入するなど合理的なものにすることが大事であります。その他の施策につきましては、一般行政の水準を引き上げて、そこで重点的に対応することも考えられなければなりません。
 産業対策などの融資制度は、これまで無審査で貸し付けられてきたために焦げつきがひどくなり、宮崎県のように貸し付けを中止するという弊害も起こっております。したがって、融資制度につきましては一般施策に準じて適正化し、経営指導と結びつけて行う必要があります。
 また、同和高度化事業につきましては、山口県の商工部長が告白しておりますように、限度額の規定がなく、完全返済しなくても二度借りできるなどの弊害が各地で起こっていることを重視して、適切なものに改善することが重要です。そして、その事業が対象地区に経済効果が還元されるものに限定しなければなりません。
 今後の施策で、教育、啓発活動が特に重要になってきていることは言うまでもありません。この場合、同和教育の特殊化、偏向化の弊害を是正し、教育の中立性と主体性を確保することが大前提になっております。啓発事業も、強制研修とか特定のイデオロギーを押しつけるようでは、住民の反発や批判を受けて、この問題をタブーにすることがあっても問題の解決には役立ちません。国民が抵抗なく自発的に参加し、自由に発言することを保障するなど、みんなが納得し、相互理解を深める場にしていくことが必要であります。
 最後に、部落差別の解消には、地区住民がすべての国民と自由で対等にまじり合う条件をつくり上げることは欠くことができません。そのためには、社会教育活動を強めて、文化と教養を高め、人間性を豊かにするための条件整備を行政として特に力を入れていただかなければならないと考えます。
 私たち全解連は、未来永劫に同和行政が続くことを望んでおりません。地区住民が一日も早く同和行政から自立して、特別な措置を必要としない時代をつくるために活動することを強調して、私の意見を終わります。
#11
○小委員長(林ゆう君) ありがとうございました。
 磯村参考人には、御多忙中のところ当小委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。
 これより御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上お一人十分程度お述べ願っておりますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。
 それでは、磯村参考人にお願いいたします。磯村参考人。
#12
○参考人(磯村英一君) このような機会を与えていただきましたことに厚くお礼を申し上げたいと思います。
 すでにお話があったと思うのでございますけれども、私には同和対策協議会の委員であるという一つの背景がございます。そこの立場というものもある程度踏まえました上で意見を申し上げたいと、こういうふうに思います。
 まず、いわゆる通称同特法の効果ということでございますけれども、この問題は、日本のいわゆるこういう社会的な課題に対しまして国が法律をもってきわめて短い期間対応した、その結果から申しますると、この同特法の効果というものは私はきわめて高く評価されてよろしいと、こういうふうに思うわけでございます。もちろん、国内にございまするまだいわゆる地区と言われるそういう環境が存在していることは事実でございますけれども、かなりの環境の改善というものはなし遂げられたと私は思うわけでございます。
 これとともに、もう一つ見逃すことのできないのは、いわゆる教育的な課題でございまして、現在では国の基礎的な教育の中におきまして同和問題というものを正しく位置づけをいたしまして、これを国民の教養の中で明らかにしているということも、これもこの同特法施行に伴いまする間接的な効果であると同時に、非常に大きな役割りを果たしたものと思うわけでございます。
 ただいま私が非常に大きな効果を上げたと、こう申しまするこれを逆にとりますると、いわゆる同和行政あるいは同和対策というものが国民の中にかなり大きな速度をもって進んだ結果というものは、従来同和問題に対しまして持っておりました国民の認識の上から言えば、それは一体どういうものであるかという疑問を生んだことも事実でございます。中には、いわゆる逆なお考えをそこに生んだんじゃないかと、こういうふうに言われるのでございますけれども、私はこれを、それだからこの同特法のあり方が間違っていたとは全く考えませんでございます。
 これだけの政府なりあるいは地方自治体の、そしてここにおられる民間団体の協力があって非常に対策が進んだから、国民の中にそれになじまない結果がそういう言葉あるいはそういう感触になったと思うのでございまして、したがいまして、私はその点からいきますると、もしこの現在までの法律の施行の中で、あるいはこれから先に向かいまして非常に重要なのは、この法律も言っておりまする文字どおりの国民的課題にする努力というものに焦点を当てていかなければならないんじゃないかと思います。
 同和対策というものは、決して役所と団体の中だけのものではございません。先ほど同対協の構成の中に団体の方がないからという御指摘がございましたんでございますけれども、それはむしろ団体側自身が反省をしていただくべき問題でございまして、私どもは、本当に国民的課題であるということをこの身に十分感じました上で、本当に命をかけて現在この問題に取り組んでいるということをこの際はっきり申し上げておきたいと思うわけでございます。そうお考えにならないと、決して国民的課題にはなりませんでございます。
 したがいまして、そういう点から申し上げますると、いわゆる現在この法律があったからどうこうというマイナスの面の御指摘というものは、そういう団体の面での御反省と、それからこの問題の取り上げ方をいわゆる文字どおりの国民的な課題とするという視点から出発すべきであると私もはっきりこの際申し上げておきたいと、こういうふうに思うわけでございます。
 それでは、法律がなくなったならば一体どうなるんだと、こういう問題でございます。この法律のあるないの問題につきましては、協議会で現在本当にこれは前向きに検討中でございます。恐らく、その構成している委員の全員がそういう態度であるということを国会の皆様方にはっきりこれも申し上げておくわけでございまするが、ただ何分にいたしましても、先ほどからお話がございまするように、いろいろの凹凸のある問題がまだあるわけでございます。特に、財政事情の厳しいという国の方針の中でこの特別な措置というものをさらにこれから続けていくということのためには、十分現在の国の政策を支持している国民全体の意識というものを背景にして新しい法律への意見を申し上げなければならないと思うので、まだその結論は出ておりませんでございますけれども、最も近い時期におきましてその御意見を総理に向かって申し上げる考えでいるわけでございます。
 それならば、まあ同対協といたしましてはそういう態度でございますけれども、しかしそこで検討された中におきましては、これもはっきり申し上げておきます、いわゆる法律がなくなってもという考えも全然なかったとは言えませんでございます。その場合におきまして、それでは法律がない場合においてはどういうことになるかと申しますると、これは恐らくここにおいでになりまする各省の方々は、この同和問題に対しましてのいわゆる行政交渉という中におきましてどういう対応をなすっておられるかということを御反省なさいましたならば、その統一した法律がなくなった場合におきましては、各省縦割り的な折衝の結果といったようなものがさらに自治体にこれが移されました場合におきましては、自治体はその判断なりその対応に非常なむずかしさを感ずるわけでございます。恐らく現在、この法律がなくなりまする段階において、何らかの形において法律が欲しいということを考えておりまするのは、団体の方だけではなくて、最も感じているのは地方自治体の方々ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
 したがいまして、同和問題に関しまして、考えようによっては地方自治体の固有事務としてそれぞれの主体性でやれと、こうおっしゃいますることは確かにそのとおりでございます。しかし、もし同和問題が国民的課題であるということを、十三年やってまいりまして、突然法律がなくなって後は固有事務としてやれと、こうおっしゃいますることは、まさにこれは地方自治体に向かって国の責任というものを転嫁させるものとあえて申しても過言ではないんじゃないかと私は思うわけでございます。
 したがいまして、一番困難を感じまするのは地方自治体でございます。現に、もし法律がなければ、団体の方々はそれぞれ別々に条例を要求されまして、その条例でもってそれぞれの自治体がやるということになりましたならば、何と申しますか、むずかしい事情というものは十分におわかりが願えるんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。
 もう一つの問題は、先ほど申したように、この教育的な効果といったようなものがかなり上げられているわけでございます。ただし、この教育的な効果は、その対象になる地区の生徒なり学生というものの進学率がよくなったということだけで、私はそれでは不十分だと思うわけでございます。その成績がよくなったといったようなことが、対象を受けない人たちも喜んでその進学を祝ってくれるというような気持ちにならなければ、いわゆる教育に対する個別的な援助というものもこれは本当の教育的価値にはならないんじゃないのか、私はこういうふうに思います。
 そういう点から申しますると、やはり法律に根拠があって、その法律というものは日本人の人権を守るための措置であるということを、いつも教師なりあるいはそれに関係なさる団体の方々も、そういう説明で、君たちはこの一つの措置を受けるんだという説明になれば、同和問題というものは本当に解決の道に向かっていくのではないかと私ははっきり申すわけでございます。
 したがいまして、もし法律をお考え願えるんでございましたならば、先ほど申し上げましたいわゆる環境整備というものはかなりよくなりました。したがいまして、この面の環境整備については、もうある程度まで限度があるんだということをお示しになって結構と私は思うわけでございます。しかし、先ほどから申し上げておりまするように、まだ本当の国民的課題になっていないわけでございます。そのいないということは、それは日本の人権思想といったようなものと同和問題が本当にまだ結びついていないわけでございます。何か文化人とおっしゃる方が人権人権とおっしゃるのでございますけれども、同和問題ということを申し上げると口をつぐんでしまう。こんなことで日本の同和問題の解決なんかは私はあり得ないということを考えますると、そういう面での精神的な一つの柱をぜひつくっていただきたいということでございます。
 したがって、先ほどから申し上げておりますように、若干この対策が急速に進んだために国民の理解を得られない面もございます。しかも国民の生活も厳しい中におきまして、所得の限度であるとか、あるいは一般の施設との調和といったようなものは、当然これは行政の施策の中で考えられてよろしいと思うわけでございます。
 したがいまして、時間でございますので、最後にもう一回申し上げます。
 昨日も同和対策協議会を開き、特別小委員会を開き、現在、私がいま申し上げましたようなことを内容にして、速やかにひとつこの総理からの御諮問にお答えすべく、いま懸命の努力をしておりますということを申し上げまして、報告にしたいと思います。ありがとうございました。
#13
○小委員長(林ゆう君) ありがとうございました。
 以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。
 ただいまから参考人の方々と懇談に入りたいと思いますので、速記をとめてください。
   〔午後一時五十七分速記中止〕
   〔午後二時二十四分速記開始〕
#14
○小委員長(林ゆう君) それでは速記を起こしてください。
 参考人の方々には、有益な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト