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1981/10/14 第95回国会 参議院 参議院会議録情報 第095回国会 本会議 第7号
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1981/10/14 第95回国会 参議院

参議院会議録情報 第095回国会 本会議 第7号

#1
第095回国会 本会議 第7号
昭和五十六年十月十四日(水曜日)
   午前十時二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第六号
    ―――――――――――――
  昭和五十六年十月十四日
   午前十時 本会議
    ―――――――――――――
 第一 公職選挙法の一部を改正する法律案(趣
  旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 以下 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 高木健太郎君から海外旅行のため来る十九日から八日間の請暇の申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(徳永正利君) 日程第一 公職選挙法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 本案について発議者の趣旨説明を求めます。金丸三郎君。
   〔金丸三郎君登壇、拍手〕
#6
○金丸三郎君 公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 参議院議員選挙制度につきましては、ここ十年以上にわたり各界各層において論議されてまいりましたが、全国区制度について改革を要するとするのが大方の一致した意見であると存じます。
 われわれも、ここ数年にわたり全国区制度の改革について綿密なる研究討議を重ねてまいりました。そして成案を得るに至りましたので、法律案として提出するに至った次第でございます。
 全国区制度の改正については、まず参議院にふさわしい人を、より得やすい制度にすることが必要だと考えます。さらに、現在の全国区制度が国全体という広大な地域を選挙区とし、八千万人の有権者を対象とする個人本位の選挙となっているので、有権者にとりまして候補者の選択が著しく困難であること、また、多くの候補者にとって膨大な経費を要すること等、これらの問題点の解消を図ることが必要であると考えます。加えて、政党が議会制民主主義を支える不可欠の要素となっており、また、国民の政治的意思形成の媒介として重要な機能を果たしておる現状に目を向ける必要があると存ずるのであります。これらの諸点を総合的に勘案して、現在の個人本位の選挙制度から政党本位の選挙制度に改めることが適当であるとの結論に達したのであります。
 この結論のもとに、現行の参議院議員の選挙制度の仕組みを根本的に改めることとし、都道府県を単位とする選挙区選挙と拘束名簿式比例代表制選挙とから成る新しい参議院議員選挙制度を設けることといたしました。
 参議院議員選挙にこの比例代表制選挙を導入することにより、従来の全国区制度が個人本位の選挙であったことから生ずる各種の弊害を是正することができ、さらに、比例代表制選挙における候補者名簿に登載することにより参議院議員にふさわしい人材を得ることが、より可能になり、また有権者の意思を適正に国政に反映することができるようになるものと考えるのであります。
 以下、その大要を申し上げます。
 その第一は、候補者名簿についてであります。
 比例代表選出議員の候補者を順位を付して記載した候補者名簿は、一定の要件を備えた政党その他の政治団体に限り、届け出ることができるものといたしております。
 一定の要件とは、五人以上の所属の国会議員を有すること、直近の衆議院議員総選挙または参議院議員通常選挙において全有効投票の四%以上の得票を得たものであること、十人以上の所属の比例代表選出議員候補者及び選挙区選出議員候補者を有することの三つのいずれかの一つに該当することであります。
 候補者名簿に登載されることができる者は、参議院議員の被選挙権を有し、かつ、当該政党その他の政治団体に所属する者であるか、所属しない者であっても当該政党その他の政治団体が推薦する者であればよいことといたしております。
 名簿登載者の選定及びその順位の決定は、当該政党その他の政治団体が任意に行うことといたしておりますが、拘束名簿式比例代表制における名簿作成の重要性にかんがみ、政党その他の政治団体は、名簿登載者の選定機関に関する必要な事項を届け出なければならないものといたしております。
 第二は、供託金についてであります。
 まず、比例代表選出議員の選挙における供託金の額を名簿候補者一人につき四百万円とし、政党その他の政治団体がこれを供託しなければならないものといたしました。
 なお、各種選挙につきましても、供託金の額を現行の二倍に引き上げることといたしております。
 第三は、投票の方法についてであります。
 投票は、選挙区選出議員選挙及び比例代表選出議員選挙ごとに、それぞれ一票を投票するものとし、比例代表選出議員選挙においては、政党その他の政治団体の名称を記載して行うことといたしております。
 第四は、当選人の決定についてであります。
 これについては、候補者名簿を届け出た政党その他の政治団体の得票数に比例して、ドント式により、それらの政党その他の政治団体ごとに当選人数を決定し、それぞれの候補者名簿に記載された順位により当選人を定めることといたしました。なお、比例代表選出議員に欠員が生じた場合には、当該候補者名簿の次順位の者を繰り上げるものといたしております。
 第五は、選挙運動についてであります。
 比例代表選出議員の選挙における選挙運動は、候補者名簿を届け出た政党その他の政治団体が行うものとし、公営によるテレビ及びラジオの放送、新聞広告並びに選挙公報によるものといたしております。なお、選挙区選出議員の選挙に係る選挙運動が、公職選挙法において許される態様において比例代表選出議員の選挙に係る選挙運動にわたることができることといたしております。
 第六は、公職選挙法上のいわゆる確認団体についてであります。
 まず、候補者名簿を届け出た政党その他の政治団体を確認団体とすることにいたしました。
 次に、この政党その他の政治団体は、確認団体の政治活動として認められているポスター及びビラを当該政党その他の政治団体の選挙運動のために使用することができるものといたしました。また、確認団体の政治活動として認められておる政談演説会及び街頭政談演説において、当該政党その他の政治団体の選挙運動のための演説をもすることができるものといたしております。
 以上、比例代表選出議員選挙制度の概要を申し上げましたが、選挙区選出議員の選挙につきましては、現行の地方区の選挙制度の例によるものといたしております。
 最後に、施行期日につきましては、この法律は、公布の日から施行し、改正後の公職選挙法の規定は、施行後初めて行われる参議院議員の通常選挙から適用するものといたしました。
 以上、公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(徳永正利君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。福間知之君。
   〔福間知之君登壇、拍手〕
#8
○福間知之君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、わが国の選挙制度の歴史において初めて本格的な審議の対象となる比例代表制による選挙制度であるという意味において大変重大な意義を持つものと考えますので、この法律案の提案者並びに自由民主党総裁としての鈴木総理及び関係大臣に対し、この提案の持つ意味合いと問題点を明らかにする立場から、以下、諸点について質問いたします。
 まず第一に、今日、わが国の選挙制度をめぐる諸問題には、もちろん参議院全国区制度のあり方という問題も含まれており、大変重要なテーマではありますが、それにも増して緊急に対処すべき最優先の課題として、衆議院及び参議院地方区の定数不均衡是正の問題があり、また、法律によって課せられた政治資金規制における政治献金のあり方の見直しの問題があると存ずるのであります。
 衆議院の定数不均衡については、去る五十五年十二月の東京高裁判決によって違憲とされた状況は、いまだに放置されたままになっております。また、参議院地方区の定数是正につきましては、去る五十年の選挙二法の改正に際して早急に是正措置を図るべき最大の問題として、各党の意見が一致していたところであります。しかも、これらの不均衡の実態は、昨五十五年の国勢調査の結果、五十年国勢調査に比して、衆議院においては一対三・二七であったものが一対四・五四に、参議院地方区においては一対五・五〇であったものが一対五・七三と一層拡大してきているのであります。
 この問題は、特に有権者の権利にかかわる問題であり、一刻も猶予が許されない問題であります。また、政治資金規制の見直しについては、法律の附則八条に、改正法施行五年後、つまり昨昭和五十五年における見直しの規定が置かれており、すでに昭和五十五年は経過しているにもかかわらず、検討の結果はおろか、検討の手順すら明確にはされていない実情にあります。これらの優先課題を避けて、今回あえて全国区に比例代表制を導入しようとする法律案を提出されたわけですが、これらの諸問題について鈴木総理はどのような具体的な提案をお持ちになっておられるのか、この際、そのスケジュールを含めて見解を明らかにしていただきたい。
 特に、参議院地方区の定数是正につきましては、先国会の公職選挙法改正案審議の際にも各党から強い主張が表明されており、これに対して、その節の提案者から、全国区改正案を提案する際にはせめて地方区定数の逆転現象の解消は一緒にやるべきだろうと考えている旨が答弁されていたにもかかわらず、今回の法案には定数に関して全く影も形も見当たらないのは一体どういうわけなのか、その経緯を明らかにすべきであると思いますので、明確な御答弁を求めます。
 自由民主党が、昨年のダブル選挙以降、非常に積極的に党の選挙制度調査会等で選挙制度の検討を続けてこられたことは新聞等を通じて承知をしております。その中で、参議院全国区制度の改革については、ことしの二月の段階で拘束名簿式比例代表制一票制案なるものが党の機関で承認され、要綱も公表され、法文化するところまでいっておりましたはずのところ、わが党を初め各野党の批判に加えて、ジャーナリズム、学界等からも一票制案の持つ違憲性が強く指摘されました。そういうこともあってか、突如として一票制案を放棄して二票制に切りかえたということが伝えられ、そして先国会の閉会間際に二票制案が国会に提出されたのであります。今回再び二票制案が提案されているのでありますが、そのように当初一票制案をとろうとされたその理由、次にその一票制案を放棄して二票制案に切りかえられた理由を明らかにしていただくとともに、一票制と二票制というのは、そう簡単に切りかえられるほどにどちらでもいいようなものなのかどうか、そのあたりを明確に御説明いただきたいのであります。
 この問題は、私には選挙制度の本質的なものと十分にかかわり合いを持っているように考えられるのであります。初めに考えられていた一票制の選挙においては、元来が比例代表制とは無関係の地方区選挙、改正案でそれは選挙区選挙と呼ばれていますが、それへの投票を同時に比例代表選挙への投票として計算してしまおうという、まさに暴挙とも言えるやり方であったわけです。現在の地方区の選挙は二十六県における一人区、つまり一人一区の小選挙区制と、二十一都道府県における二人区ないし四人区という中選挙区制とが混在している選挙制度であります。
 すでにここにおいて多数代表と少数代表という異なった原理が一つの選挙の中に存在しているところに、さらにその投票に比例代表といういわゆる公平の原理を持ち込もうとしているのでありますが、これでは選挙人はそのいずれの投票原理に従って投票してよいのか、大変な混乱を招いて当然と言えるものであったわけです。さすがに、当初伝えられた厳格な一票制はその批判に耐えられるところでなく、比例代表選挙における異党派投票を認めるという一・五票制ないしは実質二票制と評されるところに後退していき、結局一票制案は放棄され、二票制案が提案されたということになるのでありますが、自民党総裁でもあられる鈴木総理並びに提案者から、その間の経緯を含めてわかりやすい答弁を求めるものであります。
 さらに、この問題と関連してお尋ねをいたしますが、先ほども申し述べたように、現在の参議院の選挙制度は地方区において選挙定数の関係から一人一区の小選挙区制と、定数が二ないし四人の中選挙区制とが並存しており、さらに別の選挙形態として全国区という大選挙区制の選挙が同時に行われているのであります。したがって、一人一区の選挙区を除いて、衆議院と同様、大選挙区単記非移譲式投票制が実施されており、大方において少数代表制の考え方で形成されていると言えるのであります。
 そして、現在、地方区の選挙区定数が創始以来の急激な人口移動の結果、極端な投票価値の不平等な状態が生じている状況にあると言えると思いますが、今回の自民党案は、一方において地方区における投票価値の不平等はそのまま放置しておいて、全国区を比例代表制に転換することにより個人選挙から政党選挙に切りかえ、その部分においてのみいわゆる公平の原理によらしめようというものであります。しかし、いまもし現在の地方区、改正案では選挙区選挙と称していますが、これの定数不均衡の現状をそのままにしておき、提案された比例代表選挙をもってよしとするならば、単一の組織体としての参議院として整合されたものであると言えるのかどうか疑念を感ぜざるを得ないのであります。単一の組織の構成員として、現在ほどの一体感を持ち得るかどうかという不安さえ感ずるのであります。このような複雑な選挙制度が果たして好ましいかどうか。諸外国の例ともあわせて、この点について提案者の御答弁をいただくと同時に、総理からも御見解を伺わせていただきたいものと存じます。
 次に、比例代表制についての基本的な問題点の幾つかについて提案者の見解を伺います。
 比例代表制そのものにつきましては、わが国においてもかなり以前から論議はされてきたようでありますが、これらはいずれも衆議院の選挙制度の問題として考えられていたのではないでしょうか。比例代表制は、申し上げるまでもなく政党の得票数に比例して議席を配分しようとするものであり、最も公平で合理性を持つ選挙制度と言われてもきたのであります。したがいまして、小選挙区制に代表される多数代表制及び現在衆議院で採用されている中選挙区制の中に含まれます少数代表制のいずれに比較しましても、死票の数が少なくて済み、一票の投票価値が平均化される選挙制度なのであります。
 しかし、一面におきまして、投票が政党による名簿式投票ということになりますと、従来の個人名による投票と異なり、候補者と直接結びつかない、いわば非人格的なものとなり、長く候補者と結びついた投票になれてきた有権者にとって違和感を抱かせるものとなるものでもあります。また、選挙される政党の側におきましても、比例代表制による選挙の実施に十分こたえられるだけの近代的政党としての組織、構成、秩序などの確立が必要だと思われるのであります。
 この点につきまして、古くは昭和二十年当時、参議院議員選挙法案の審議に際して、わが党の先輩鈴木義男代議士の全国区に比例代表制を採用してはどうかとの質問に対して、当時の大村清一国務大臣が、「今日――つまりその当時――のわが国の政党の発達の程度をもってしてはとうてい比例代表制は採用できない」旨の答弁をしておりますが、それは一面を示していたものと言えましょう。参議院全国区の比例代表制導入の論議は、選挙制度審議会においても、昭和四十一年当時の第五次審議会からかなり行われてきておりますが、この背景には、過去の参議院議員選挙における個人選挙の弊害に対する世論その他の批判と、公選による政党化の必然性などに関する議論があるからなのであります。
 今回の自民党案提出の背景にも、同様に金と労力がかかり過ぎる現行の実態というものがあると考えられますが、他面におきまして、第二院として、衆議院に対するチェック機能を持つ良識の府としての参議院本来のあり方から、衆議院のカーボンコピー化を促進させるような政党化は避けるべしとして、比例代表制の導入に対する強い批判があることもまた事実であります。したがいまして、参議院全国区に比例代表制を導入する場合、幾つかのクリアにしなければならない課題があると考えます。
 そのまず第一は、憲法における公選規定と比例代表制の問題であります。この問題については、学問的にも比例代表制は合憲とされるのが通説となっているようでありますが、提案者は比例代表制と憲法四十三条をどのように理解されているか伺いたいのであります。
 拘束名簿式比例代表制と憲法との関係を見るとき、二つの面があろうかと思います。一つは、選挙人の側から見て、選挙人が直接候補者に投票するのでなく、名簿イコール政党に対して投票することが公選規定上妥当かどうかという問題であります。名簿によって各政党の候補者名は明らかにされているので、氏名は特定されないとしても直接選挙たる性質を失うことはないとも言われるようですが、憲法上何ら明文の根拠を持たない政党に対する投票をもって公選たる性格を持ち得るのかどうかということでございます。さらに、これを候補者の立場から考えますと、公職の候補者たる資格をすべて政党にゆだねてしまうことが結果的に可能であり、また、それは適当なことなのかどうかという問題にもなるのでありますが、これらの問題をどのようにお考えになっているのか、提案者及び法務大臣の御見解を承りたいのであります。
 第二に、比例代表制の導入が、ただ単に金のかからない選挙制度実現というだけでなく、提案理由にも述べられたように、参議院議員にふさわしい人材を得ることが目的とされるならば、この目的を実現し得る道が制度的にも確保されるのでなければ、憲法における民主主義の原則に照らして問題であろうかと思うのであります。ただ政党化を必然のものとして肯定するのでなく、政党化から生ずる弊害を除去することが必要であり、真に議会人としてふさわしい人材を選び出すための政党倫理の確立こそ必要だと思うのでありますが、提案者は、このような政党倫理の確立についてどのようにお考えになっておられるか、また、参議院にふさわしい人材を得るため、どのような方途が考えられているか伺いたいのであります。
 第三は、第二の問題とも関連してまいりますが、選挙における政党の役割りが大きくなり、政党の立場が強くなってまいりますと、政党の法的地位をより明確にするために政党法の必要性という声も高まってくるかと思われますが、政党法の必要性をどのように考えているか、この点については総理並びに提案者から明確な御答弁をいただきたいのであります。
 次に、改正案に関して若干お伺いをいたします。
 特に拘束名簿式比例代表制においては、その制度の死命を制するものは候補者名簿の作成にあるとも言われております。改正案では、政党その他の政治団体は、名簿登載者の選定機関、選定手続などを選挙長に届け出ることになっております。そこには、政党のどういう機関がどういう基準で候補者を選定し、登載の順位を決定するのか、その手順も明らかにされることになりましょうが、いわばそれだけで名簿づくりの困難さが解消するものではありますまい。提案者は、御自身の所属される政党で、どのような選定機関がどのような手続で名簿登載者を選定し、何を基準に順位づけをなさるとお考えになっておられますか、大変に興味があると言っては失礼かもしれませんが、大変に関心を持たれるところでありますので、この際ひとつ御開示をお願いしたいものであります。
 ちなみに、これに関して、新聞社の調査によると、自民党の所属議員の過半数は、名簿は「当選回数、現役優先、過去の実績など」によって決まり、さらには「派閥の力による」と考える人がほぼ三分の一を超えたと伝えられております。提案理由の正面に押し出されているところの「参議院にふさわしい人を得やすい制度にする」ということが実現するのでなければ、純粋な意味での比例代表制を全国区に導入する意味はなくなるとさえ言えましょう。当選回数、現役優先、過去の実績によって名簿の順位が決まり、さらにそれが派閥の力によって左右されるとするならば、改正案の意図するところはほとんど空疎なものになってしまいます。せっかく改正案に盛り込まれた推薦候補者の名簿登載も含めて、この点、鈴木総理・総裁はどのようにして参議院にふさわしい人の選定名簿作成に臨まれようとしているのか、御決意のほどをお伺いしたいと思います。
 次に、無所属候補者の取り扱いについてであります。自民党案では、候補者名簿を提出できる政党その他の政治団体は、一つには、国会議員五人以上が所属する政党、二つには、直近の衆議院の総選挙または参議院の通常選挙で有効投票総数の四%以上の得票を得た政党、三つには、十人以上の所属候補者を有する政党、以上の三つの要件を挙げ、そのいずれかに該当しなければ候補者名簿は提出できないとしております。
 一つ目の五人以上の国会議員が所属する政党の要件は、現行の政治資金規正法上の政党、政治団体の定義に見られるものの一つであります。三つ目の十人以上の所属候補者という要件は、現行公選法上の参議院議員通常選挙における確認団体の要件と同じものであります。しかし、二つ目の四%という要件は、他に例を見ない新たな規定であり、たとえば前回のダブル選挙における全国区の有効投票約六千万票に当てはめますと、およそ二百四十万票程度ということになりますが、その四%というものの根拠は一体何なのか、その合理的な考えはどこにあるのか、お伺いをしたいのであります。
 自民党案では、この三つのうちのいずれかに該当しない限り候補者名簿を提出できないので、いままで無所属で立候補していた者は現職の国会議員がとにかく五人集まって政治団体をつくるか、あるいは十名の立候補者を集め、四千万円の供託金を供託しない限り、立候補する道は閉ざされることになります。今日までの参議院の歴史は一面において政党化の歴史であるとさえ言われており、第一回通常選挙においてこそ無所属議員の当選は全国区五十七、地方区五十四、合わせて百十
 一人の多きを数え、緑風会を結成して相当の政治的勢力となり、国会の運営においてかなりの影響力を持っていたのでありますが、選挙の回を追うに従い緑風会はその勢力を減じ、いまから十六年前の昭和四十年六月、第四十八回国会の閉会とともに緑風会はついに解散となり、その後緑風会に代表される無党派の議員会派の伝統は、参議院において、たとえば第二院クラブのような形で辛うじて継続されていると言えるのではないでしょうか。
 ところで、現在においても、無所属の立場で個人としてのその資質と能力によって議席を獲得されておられる方々は、各選挙ごとに数名を数えられており、これらの方々に一定の敬意を表するにやぶさかではありませんし、現に少ない発言の機会の中で個性豊かな議員活動をと御努力されており、これはまた参議院の参議院らしさの一面を形成しているとも思われるのであります。自民党案ではこれらの無所属候補者の立候補の道をほとんど閉ざしてしまう結果になるようですが、これは法のもとの平等を規定した憲法十四条、あるいは議員及び選挙人の資格における差別を禁止した憲法第四十四条の規定に抵触するおそれはないのか、この点、提案者及び法制局長官の所見を承りたいと存じます。
 比例代表選挙には立候補できなくても選挙区選挙に出られるのだからいいのだという説もあるようですが、現にそれぞれ別の選挙として投票が行われるのであり、他の選挙に立候補できるのだからといって比例代表選挙から締め出すようなことは妥当なものとは考えられないのであります。また、個人であればどれほど大量の得票があっても他に移譲することができず、比例代表の原理に反するとする説もありますが、自民党案においても議席の配分は名簿登載の数を限度としており、仮に名簿登載者の数を超えて配分を受けられるだけの得票を得た政党があった場合にも、個人が大量得票をした場合と同じように、名簿の人数以上の配分は受けられない仕組みになっておりますので、この説にも十分な説得力があるとも考えられないのであります。つまりは、無所属候補者の立候補がより容易になるために、今回の提案で果たしてよいのかどうかという見解を承っておきたいのであります。
 次に、選挙運動についてであります。改正案では、比例代表選挙において、名簿届出政党等は、公営による新聞広告、ラジオ、テレビの政見放送及び選挙公報による選挙運動を行うほかは、確認団体として公選法により認められた政治活動を選挙運動のために行うことができるとされているのでありますが、確認団体が使用できるポスターの枚数、ビラの種類、自動車の数、政談演説会の回数など、現行のままで果たして足りるとするのかどうか、提案者及び自治大臣の御所見を承りたい。
 次に、供託金についてでありますが、今回の改正案で供託金の金額を二倍に引き上げようとしております。供託金については、わが国のように選挙の公営が相当行われている場合、売名的な立候補者による国費の乱費を避け、泡沫的立候補者の乱立を防止するために必要だと説明されるのでありますが、今回の二倍の引き上げは相当大幅なものであり、適当であるかどうか疑問であります。何を基準に二倍の引き上げが必要とされるのか承りたい。
 昭和四十四年の公選法改正において、供託金は、たとえば衆議院議員の選挙でそれまで十五万円であったものが三十万円に、参議院全国区が三十万円から六十万円にと二倍に引き上げられ、それがさらに五十五年の改正において衆議院議員百万円、約三・三倍に、参議院全国区二百万円、これも約三・三倍になったのであります。一方、その間に五十五年改正により選挙の公営も拡大され、選挙における国費の支出も増加していることは事実でありますが、他方で、参議院全国区の選挙運動費用は四十三年当時で六百五十万円だったのが昨五十五年には三千八百万円と約六倍程度になったことから見ましても、提案の供託金額はいささか引き上げ率が負担として大き過ぎるようにも思えるのでありますが、いかがなものでしょうか。
 次に、連座制についてであります。改正案では、比例代表選挙においては連座制の適用はないものとされているのでありますが、確かに連座制をそのまま適用すれば、その政党の当選議員全部の当選が無効になるなどいささか影響するところが大であり、それによって選挙人の意思の反映が損なわれる結果すら生じかねないということはわかるのでありますが、さればといって、連座制が働くほどの選挙犯罪が現に行われた政党に対して全くペナルティーが課されないというのも、一面大変片手落ちの感を免れません。この点何らかの措置が必要と考えられますが、御所見を承りたい。
 最後に、私は、二つの点について鈴木総理の明確な御答弁をいただきたいのであります。
 その第一は、総理は、さきの所信表明における代表質問に対する答弁などにおいても、再々、選挙制度については各党間でよく話し合ってほしいと言ってこられたが、たとえば修正などを含めて話し合いを行い、その結果が一致しなければ法案が成立しないこともやむを得ないと理解してよろしいか。
 第二点は、今次提案が参議院に政党化を促し、あるいはまた多党化の可能性をもたらすものでもあるけれども、選挙の公正を原理とする比例代表制を導入しようとする観点において、選挙における公正を尊重する立場からすれば、多数代表制である小選挙区制は絶対にとり得ないものであり、今後も衆議院において小選挙区制を導入しようとする意図は全くないことを明確にすべきであると思うが、いかがなものか。
 以上の二点について鈴木総理の率直明快な御答弁をお願いして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
   〔金丸三郎君登壇、拍手〕
#9
○金丸三郎君 お答えを申し上げます。
 第一点は、一票制から二票制に変わった理由についての御質問でございます。
 御承知のように、私どもの間ではここ十年来、参議院の全国区制度の改正について綿密に検討をいたしてまいったのであります。方向としてやはり拘束式の比例代表制をとらざるを得ないのではなかろうか、その前提のもとに一票制をとるべきか二票制をとるべきか、同時に検討をいたしておりました。政党による政党本位の選挙制度であるということを徹底して考えますというと、地方区における候補者に対する投票によって全国区のいわば比例代表制によります選挙の得票としてもよろしいのではなかろうか、これがいわゆる一票制でございました。
 この点につきまして綿密な検討を加えていったのでございますけれども、わが国の国民の選挙意識の実情から考えまして、地方区の投票と全国区の投票と異なる場合がございます。いわゆる異党派投票がございます。やはりこれを認めざるを得ないであろう、こういうことになりますというと投票の方法が非常に複雑になってまいります。その結果、開票の際における事務が大変にめんどうになってまいるということも考えなければならないことに相なってまいりましたので、やはりこの際は選挙民の立場からいたしまして簡明な二票制の方が妥当であろう、こういう結論に達して二票制を採用いたしたわけでございます。根本は、全国区につきまして政党本位の選挙制度、拘束式の名簿の制度をとるという点については同様でございますので、一票制と二票制との間に私どもは根本的な差異があるとは考えておりません。
 次に、参議院の組織の整合性についてのお尋ねでございます。
 地方区の制度は現在の選挙区の制度をそのまま存続しよう、こういう考えでございます。理論的にはこれが少数代表とか多数代表とか言われる点はございますけれども、私どものこの案におきましては、現行の地方区はそのまま残そうという考えでございまして、全国区についてだけ政党本位の拘束名簿式比例代表制をとろうとするものでございます。したがいまして、私どもは、従来とその点におきましてはさしたる変わりはないのではなかろうか、かように考えております。
 なお、外国の例についてのお尋ねでございますが、西独の連邦議会は比例代表制を基本としつつ、小選挙区制を加味いたしておることは御承知のとおりでございます。
 次に、比例代表制と憲法四十三条の公選の規定との関係についてのお尋ねでございます。
 比例代表選挙の当選人は、政党の得た得票数に従いまして、名簿の順位によって決定されるものでございます。これは究極のところ当選人を国民が決定しておるものであります。したがいまして、憲法四十二条に言う「選挙された議員」であるということにつきましては、私どもは何ら疑いがないものと思っております。
 また、政党への投票は、実態といたしましては候補者の集団に対するものであります。政党名はその徴表として使われるものでございますので、これが公選制に違反するものとは考えておりません。
 さらに、候補者となることが政党にゆだねられるという点でございますが、これは拘束名簿式の比例代表制をとります以上、やむを得ないものでございます。
 次に、参議院議員としてふさわしい人材を得ることについての制度的な保障、政党倫理の確立に関するお尋ねでございます。
 比例代表選挙におきましては、参議院議員にふさわしい人材としての候補者の選定は、まず第一には、何と申しましても各政党が公党として責任を持って民主的に適正に選ばれるところでございますが、私どもは、この制度におきましては名簿の作成の機関を法定いたしております。やはりこの選定が非常に重要でございますので、必要な限度におきまして法律上の枠を設け、そこで公正に候補者が選定されることを担保し、かつ候補者として選ばれるにつきましては、提案理由においても申し上げましたように、党員のみならず一般のりっぱな識見を持っておる人でも名簿に登載ができると、このような制度を考えておるわけでございまして、参議院議員にふさわしい人材を得るに欠くるところはないと考えるのであります。
 政党倫理の問題は、法的な規制の問題よりも、むしろ各政党におかれてそれぞれ御努力に相なるべきところではなかろうかと、かように考えます。
 次に、政党法の問題でございます。
 わが国の政党の現状から申しまして、私どもはいま直ちに政党法を設け、それによって実際活力のある政党の活動が制約されるようにすることはむしろいかがであろうか、なおこの点は実態を見きわめながら今後検討すべき問題であろうと、かように考えておるところでございます。
 次に、政党要件のうち四%の得票率というものを採用した理由についてのお尋ねでございます。
 比例代表選挙はいわゆる政党選挙でございます。国民の政治的な意思の形成の媒体となるにふさわしいものが現在わが国においては政党でございます。したがいまして、いわば政党らしい政党のみがこの比例代表制の選挙に参加し得るようにいたしますことは当然であろうと考えるわけであります。
 そこで、どのようなものを政党らしい政党と申すかということでございますが、一方におきましては五名の国会議員を有する政党、また現在の政治団体の規定からいたしまして、十人以上の候補者を擁する政治団体ということを要件といたしました。そのほか、できるだけやはり選挙に参加し得ることが適当であろうと考えますので、少なくとも二名の議員を当選させることができる程度の過去において得票のありました政治的な団体を政党として認めることが適当であろうと、かように考えたわけでございます。これは当選点を考えまして、約二百万、四%程度が適当であろうと、こういうような結論に達したわけでございます。
 次に、名簿作成につきまして、私にもお尋ねがございましたのでお答えを申し上げます。
 名簿の作成はきわめて大事な選挙の手続でございますが、主体が政党でございます。政党はわが国におきましてもいろいろとそれぞれの御事情がございます。一律にこれを規定いたすことは私どもはむしろ不適当であろうと、かように考えまして、名簿の作成につきましては枠組みだけを法律に規定をいたしております。どのような機関、組繊あるいは選定の基準によって名簿を作成なさるか、これはそれぞれの政党におきまして十分にお考えになることが至当でございます。あるいは人物、識見、過去の政治的な活動とか経歴とかいろいろなものが選定の基準として考えられてまいりましょうが、これはそれぞれの政党におきまして十分にお考えいただくことが適当であろうと考える次第でございます。
 次に、無所属候補を締め出すのは憲法第十四条及び第四十四条に抵触することにならないか、無所属の立候補が容易になるように修正する考えはないかと、こういう趣旨のお尋ねでございます。
 この法案は、比例代表選挙を導入するものでありまして、比例代表選挙において候補者名簿を提出できる主体を一定の要件を備えた政党その他の政治団体に限っておりまして、個人が単独で立候補することはできないことになっております。このことが憲法の平等の原則に反するのではないかという御趣旨かと存じます。
 ところで、このたびの拘束名簿式比例代表選挙制度の導入は、国民の政治的意思を形成し、国会へ反映させる媒体としては政党が最も有力な存在であるという政治的現実を憲法が容認するものであることを踏まえて、参議院議員の選挙を政党本位の選挙制度とするものであり、これは憲法が国会の立法裁量の範囲内として認めたものであるということができると考えます。そうであるとすれば、この制度に必然的に伴う差別は、合理的な差別として憲法上当然に許されるものと考えてよろしいと思っております。
 最後に、無所属の立候補が容易になるように修正する考えはないかとの御質問でございますが、私どもといたしましては、現在の案を一番妥当なものと考えて提案いたしておる次第でございます。
 次に、政党の政治活動の範囲は現行のままでよろしいかという趣旨のお尋ねでございます。
 私どもは、公職選挙法における政治活動の規制が選挙運動期間中に限定され、日常の政治活動につきましては自由が保障されていることをも考慮いたしまして、選挙運動期間中において認められる政治活動の範囲につきましては、現行のままで十分であると考えておる次第でございます。
 次に、供託金の引き上げの問題でございます。
 供託金につきましては、昭和五十一年一月一日にそれまでの額から約三・三倍に引き上げられております。自来、改正されずに今日まで至っておるのでございます。この間の物価上昇等諸般の事情を考慮いたしまして、昭和五十八年には現行の供託金の額の二倍程度に引き上げることが妥当であろう、またやむを得ないであろうと、こういう判断に達したわけでございます。
 次に、連座制の問題でございますが、結論的に申し上げますならば、連座制は個人本位の選挙になじむ制度でございまして、政党本位の選挙のように組織をもってする選挙にはなじまない、かように考えまして連座制を採用いたさなかった次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えをいたします。
 具体的な御質問にお答えする前に、今回の参議院全国区制改正案の審議につきまして一言申し上げます。
 私は、かねてから、全国区制の改善は当面する緊要な課題であると考え、その旨しばしば申し上げてきたところであります。自由民主党がまずこの問題を取り上げ、数年来いろいろな観点から検討を重ねて改正案を取りまとめ、今回提案いたした次第であります。各党におかれてもいろいろ検討を行っていると承っておりますので、改正案につきまして十分論議を尽くしていただき、可及的速やかに全国区制の改善が実現されますよう心から念願をいたします。
 改正案の趣旨、憲法との関係等につきましては提案者から答弁がありましたので、私から定数是正、政党法等の選挙制度全般にかかわる事項についてお答えをいたします。
 最初に、衆議院及び参議院の定数是正を先行させよとの御意見がありましたが、今回の改正案は、現行の全国区制がとりわけ早急に解決を迫られている多くの課題を抱えており、各党におかれてもこれまで改善策について鋭意検討されてきた経緯もありますので、当面まずこの問題を取り上げて御論議を願うことが必要ではないかと考えて提案したものと承知いたしております。
 もちろん、衆参両院の定数問題や政治資金規正法附則八条の問題につきましても十分な関心を持っているところでありますが、これらの問題は、これまでもたびたびお答え申し上げておりますとおり、選挙の基本的なルールづくりの問題として、まず各党間で十分論議を尽くしていただくべき問題であり、その動向を見きわめながら結論を出すべきものと考えております。
 次に、政党法についてでありますが、政党選挙である比例代表制の導入のために最小限度必要と考えられる政党に関する規定は改正法案において措置されていると承っております。その上にさらに政党法の制定を必要とするかどうかにつきましては、何分問題が議会制民主政治の根幹に触れる重大な問題であるだけに、政党制度、選挙制度の基本的なあり方についての今後の論議の推移を見ながら、慎重に検討すべきものと考えております。
 また、候補者名簿の作成について自由民主党総裁としてどのように考えているかとのお尋ねがありましたが、候補者の選定に当たりましては、参議院議員にふさわしい人物を公党の責任において民主的に選び、国民の負託にこたえていく所存であります。
 なお、各党間の話し合いがつかない場合にどうするつもりかとのお尋ねですが、冒頭申し上げましたように、全国区制の改善は緊要な課題であると考えておりますので、改正法案について各党間で十分論議を尽くしていただき、ぜひとも全国区制の改善が実現されますよう念願いたしております。
 最後に、衆議院の小選挙区制についてでありますが、衆議院の選挙区制の問題につきましては、選挙の基本的なルールづくりの問題として各党間で十分な論議をお願いし、その動向を踏まえながら結論を出すべきものと考えておりますが、現時点では各党間の話し合いが行われるまでに至っておらず、その機が熟していないという認識を持っております。
 以上、お答えいたしましたが、残余の点につきましては所管大臣から答弁いたさせます。(拍手)
   〔国務大臣奥野誠亮君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(奥野誠亮君) 私は選挙制度を担当している者ではございませんけれども、せっかくのお尋ねでございますので、そのような立場でお答えをさせていただきたいと思います。
 第一点は、憲法四十三条の「選挙された議員」に当たるかどうかということでございました。
 候補者名簿には具体の氏名が書かれておるわけでございますし、投票します場合には具体の氏名を見ながら投票するわけでございますので、「選挙された議員」に当たると、こう考えております。
 第二点は、選挙人の立場から見て、政党に投票することの是非をどう考えるかということでございました。
 政党を構成するものは個人でございますし、個人の集団が政党を動かしてまいります。したがいまして、どういう個人が多くなるかによって政党の活動には変化が出てまいると思います。そういう意味では、私は、選挙人の立場から見ますと、個人に投票する方が安心できると、こう思います。しかし、そういう事情を踏まえながら、現状ではたくさんの中から一人を選び出すことが困難であり、むしろ政党が責任を持って各界の権威者を参議院に送る方がベターではないかというのが提案者の立場であろうと考えております。
 第三点は、候補者の立場から考えて、一身を政党にゆだねることの是非をどう考えるかということでございました。
 私たちが二院制を頭の中で考えます場合に、衆議院が政党対決を深めていく、参議院は良識の府として政党の影響力をできるだけ受けないようにする方がベターだと、私はそう考えております。提案者は、しかしながら、参議院の現状を見まして、今度の改革によっていま以上に政党の影響力を増強させるものではないという判断に立っておられるようでございます。(拍手)
   〔国務大臣安孫子藤吉君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(安孫子藤吉君) 政党の政治活動の範囲についてのお尋ねがございました。
 今回の改正案におきましては、比例代表選挙において名簿を届け出た政党、政治団体は、当然に確認団体となって、現行の確認団体と同様の政治活動及び選挙運動を行うことができるものとされておるほかに、別途、政党、政治団体の選挙運動として、公営による政見放送、選挙公報、新聞広告という手段が認められておると承っておるのでございまして、政党、政治団体が選挙に関し選挙人に働きかける方途といたしましては十分に確保されておるのではなかろうかと考えておる次第であります。
 供託金の引き上げ幅の問題についてお尋ねがございました。
 最近におきます供託金の額の引き上げは昭和五十年改正の際に行われたところでございますが、当時と同様の考え方に立ちまして、戦前の衆議院議員選挙の供託金の額二千円を現在の貨幣価値に換算をしてみますと約二百万円となります。現行の百万円の二倍程度でございます。さらに、最近におきまする総選挙の選挙公営に充てられました経費は、候補者一人当たり約八百四十万円にも上っておることからいたしまして、衆議院議員の選挙の供託金の額を二倍に引き上げ、これに準じて参議院の選挙を含む他の選挙における供託金の額もこの程度に引き上げることは、真に当選を争う意思のない候補者の乱立を防止するという供託金制度の本来の趣旨から申しましてもやむを得ないものであろうと考えております。
 連座制についてのお尋ねでございます。
 連座制は、候補者の選挙運動というものを前提として考えました場合に、総括主宰者等候補者と一体的な関係にある者が買収等の悪質な選挙犯罪を犯したときには、その犯罪は当選人の当選に相当の影響を与えておるものと推認をされ、したがって、その結果は選挙人の自由に表明された意意によるものとは言いがたいので、選挙の公正を確保する見地から設けられておる罰則制度でございまするが、今回の改正案のように比例代表選挙という政党が主体となって行う選挙について考えました場合に、およそ政党が組織的に悪質な選挙犯罪を犯すということも考えられませんし、また、たとえそのような事態が生じたといたしましても、それによって当選人全体の当選を無効とするということが選挙人の意思に適合するとも考えられないのでございまして、連座制は政党選挙にはなじまないものと考えておる次第でございます。(拍手)
   〔政府委員角田禮次郎君登壇、拍手〕
#13
○政府委員(角田禮次郎君) 私に対する御質問は、無所属の者の立候補を認めないことが憲法第十四条及び第四十四条に抵触するかどうかという問題であったと存じます。
 立場上、一般論として申し上げますが、参議院.全国区選挙制度の実態及び国民の政治的意思を国会に反映させるための媒体としての政党の役割り等にかんがみ、政党本位の選挙制度を導入して無所属の者の立候補を結果として制限することが事柄の性質に即応して合理的と認められる以上、憲法に抵触することにはならないと考えられます。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(徳永正利君) 大川清幸君。
   〔大川清幸君登壇、拍手〕
#15
○大川清幸君 私は公明党・国民会議を代表して、ただいま趣旨説明のありました自由民主党・自由国民会議提出の公職選挙法の一部を改正する法律案について、発議者並びに総理及び関係大臣に質問をいたします。
 選挙制度は議会制民主主義の根幹にかかわる問題であり、その制度の改革及び運用いかんによって民主主義を死に追いやる結果を招くことは、これまた歴史の上から見ても明らかなことであります。また、選挙制度は国民の意思をできるだけ正確に議会に反映させるための議会制度の根本法則であるとともに、一部の政党だけが有利となる党利党略的なものでなく、各党共通の土俵でなければなりません。したがって、その改革に当たっては、国民の納得を得ることはもちろん、各政党の合意の上に慎重に行わなければならないと考えます。
 しかるに、自民党提出の公選法の一部改正案の提出の経緯及びその内容を見たときに、憲法違反及び議会制民主主義を揺るがす重大な問題を含んでいることを指摘せざるを得ません。今臨時国会は、国民注視の行政改革法案を審議する国会としては会期も短いものとなっております。しかるに、自民党は野党の強い反対を押し切ってこのような選挙制度改悪案の審議を強行しようとすることは、良識ある参議院の審議のあり方に重大な影響を及ぼすものと考えます。
 そこで、以下省略して自民党案と申し上げますが御理解願いたいと思います。自民党案に対する問題点について質問を進めてまいります。
 まず初めに、本法案の最も大きな問題点である憲法違反の点について伺います。
 まず第一に、憲法第十四条違反についてであります。自民党案は、拘束名簿を提出できる政党、政治団体を大きく制限し、いわゆる無所属及び諸派候補者は個人では立候補できないことになっております。現在、これらの諸派、無所属の候補者は候補者の四〇%を占め、その得票率も一五%に達しております。自民党案は、これらの国民の意思を完全に無視しているばかりでなく、国民の基本的人権である立候補の自由や選択の自由をも制限するもので、憲法第十四条の「すべて国民は、法の下に平等であって」「政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」という条文に違反しており、断固撤回すべき性質の法案であると思います。
 また、自民党案の名簿提出政党等の要件によると、五人以上の所属の国会議員、あるいは直近の衆議院議員総選挙または参議院議員通常選挙において全有効投票の四%以上の得票を得たもの、あるいは十人以上の候補者が所属していることとなっておりますが、これらの要件は一度規定されると制度自体がひとり歩きすることになり、将来この拘束力がどれほど威力を発揮することになるか、はかり知れないものがあります。仮にある政治団体が十名の候補者を立て全員落選した場合、供託金四千万円が没収されることにもなり、実質的な少数会派締め出し案になるため、参議院における少数意見を反映させる機会が奪われることになるわけであります。
 以上のことは私が第二番目に指摘したい点で、憲法第四十四条の議員資格の差別禁止の条文に違反するものであります。
 第三は、自民党案の拘束名簿式比例代表制は、政党が拘束名簿をつくり、かつ当選順位まで決定するもので、国民、有権者が選挙を通じて順位も変更できず、当選者も自由に選択できないことになります。上位にランクされた者は国民の審判によって事実上落選させることができないことにもなるわけで、このように国民の審判の機能を奪うもので、憲法第十五条の「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」という条文に違反することが明らかであります。
 第四には、憲法第四十三条の「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」という条文に違反するものであります。これも政党が候補者を選び、国民が候補者個人、すなわち議員を選べないという本法案の欠陥であります。このように立候補の自由を奪い、国民の固有の権利を無視し、かつ参議院における少数意見の反映の余地も残さない憲法違反の改悪は、有権者の選挙に対する関心を失わしめ、民主主義の活力を著しくそぐことになるのは明らかであります。
 したがって、このように欠陥が多く、しかも民主主義を形骸化させることが明らかである拘束名簿式比例代表制を参議院に取り入れようとすること自体、後代に汚点を残すものであると考えるものであります。したがいまして、拘束名簿式比例代表制の提案を撤回することを強く要求するものでありますが、総理並びに発議者は撤回する意思ありやなしや、お伺いをいたします。
 また、憲法第十四条、第四十四条、第十五条、第四十三条違反について総理の御見解を伺いたい。
 さらに、選挙制度にもかかわる問題でありますので、自治大臣の御所見も伺っておきたいと思います。
 なお、政党等の要件は一種の制限規定であるが、いかなる根拠に基づくものであるか、総理並びに発議者より御説明をお願いいたします。
 また、軽視できない問題は、名簿登載者は政党投票の陰に隠れて全く国民の審判を直接受ける機会を持たず、いわゆる選挙の洗礼を受けないという奇妙な形になるわけであります。このことは地方区、いわゆる選挙区の候補者と大きな格差を生ずることになります。ある政党の中では役員にしないとか大臣にしないとか、いろいろうわさがありますが、この辺に根拠があるのではないでしょうか。このこともまた憲法第十四条、第四十四条に違反するが、総理の御所見いかん。
 次に、参議院の機能と役割りが著しく損なわれることを指摘したいと思います。
 本法案は、現在、参議院改革協議会において、発議者である自民党の代表者や各党の代表者の間で、参議院の存在意義を高からしめるために熱心に推進している趣旨に著しく逆行することは明らかであります。それは、全国区を廃止して政党に投票する比例代表制を採用することは、明らかに参議院の政党化を決定的にし、衆議院以上に政党化を強めるものであります。
 言うまでもなく、二院制の存在意義は、政党政治である衆議院と、衆議院の行き過ぎをチェックするいわゆる良識の府としての参議院の両者をあわせて初めて国民代表議会が構成されるとの立場に立っております。したがって、自民党案のように参議院の政党化を衆議院以上に決定的にしてしまう改悪案は、参議院本来の機能を失わせ、もう一つの衆議院をつくることにほかなりません。このことは、両院制そのものを否定し、ひいては議会制民主主義の破壊につながる暴挙と言わざるを得ないのであります。この点、発議者はどうお考えでございますか、伺っておきます。
 しかも、わが国において拘束式比例代表制を参議院に導入することについて、選挙制度審議会などの第三者機関に検討をゆだねられたことすらありません。国権の最高機関である国会の機能に重大な影響を与える制度改革が、第三者機関の検討もなく、また、国民合意も取りつけずに提出するということは、まことに理解しがたいことと言わざるを得ないのであります。また、世界的に見ても拘束比例代表制は過去の遺物でありまして、現在の民主主義国家でこれを採用している国はございません。このように必要な手続や努力を怠ってまで提出に踏み切ったのはいかなる理由によるか、発議者の真意を伺いたい。
 また、第三者機関に諮るとか国民の合意を取りつけることは、法律案の性格から見て当然と思われるが、総理並びに自治大臣の御所見を伺っておきます。
 次に、政治資金規正法に関連して伺います。
 自民党案の提案理由に、これまでの選挙の「有権者にとって候補者の選択が著しく困難であることと、膨大な経費を要する」という問題を解決するとともに「参議院議員にふさわしい人材を得ることが、より可能になる」と言っております。しかし、自民党は全国区制廃止の最大理由として金のかからないことを掲げておりますが、すでに有識者は、比例代表制は代表分布の公平を期するものであって、本質的に選挙費用の問題とは全然没交渉なものであるという説を述べております。金のかかる、かからないの問題は政治資金規正法上の問題であって、たとえば衆議院選挙において世間を騒がした事例もあるように、公職の候補者は選挙期間中はもちろん日常の地盤培養などに、金がかかるというよりはむしろ金をかける傾向が強いのが実情ではないでしょうか。
 それに加えて、自民党案によると、名簿作成に当たり、順位の決定とその維持などをめぐる競争のためにかえって金がかかるようになることが目に見えております。金がかからないという言い分は、自民党の党略的な拘束名簿式比例代表制を強行しようとするための方便にすぎないと思うのであります。この問題は、現行全国区制の選挙方法と運動及び政治資金規正法上の問題を改善することによって十分解決できるものでありますが、この点についての総理並びに自治大臣の御見解を伺いたいと思います。
 次に、企業献金は、特定かつ具体的な目的のもとに授受されることが必然であることから、政治資金のあり方が問題となり、五十年改正の際、規正法附則八条で企業献金から個人献金強化への移行を規定したのであります。しかるに総理は「企業にも政治活動の自由があり、企業献金が悪とは考えない」と述べており、これと相呼応して自民党内には、附則八条の趣旨に逆行して企業献金の制限緩和の声が次第に強まっているのであります。これは問題の多かった四十年代への逆戻りであって、金権政治の復活への画策とも見られるものでありまして、許しがたいものであると言わざるを得ません。いまこそ国民の政治不信を払拭するための政治資金規制の具体策を国民の前に明らかにすべきでありますが、この点に対する総理の御所見を伺っておきたいと思います。
 次に、自民党案の制度的欠陥について伺います。
 拘束名簿式比例代表制は、言うまでもなく政党が当選順位を決定し、名簿を作成するものであります。しかしながら、今回提出の自民党案にはこれについての統一的規定がありません。発議者は一体名簿登載者について、一般党員、有権者の意思の反映、推薦候補者の決定、さらには期待される合理的な順位の決定方法についてどのように考えておられるのか、発議者よりお示し願いたいと思います。
 名簿作成についての統一的規定を欠いている自民党案は、党内において当選順位決定をめぐって派閥抗争を引き起こすことは必至であると言われておりますが、総理は自民党総裁として名簿作成ができる自信がおありになるかどうか、この際伺っておきたいと思います。
 次に、自民党案は、政党の得票配分に当たってドント式議席配分方法をとることにしております。選挙制度は得票率と議席の配分ができるだけ比例するものでなければなりません。議席の比例配分について最も単純比例に近い結果となるのは、現行の全国区制なのであります。この点から見て自民党案は、比例代表制とは名ばかりで、第一党には極端にまで有利な結果となります。今回の自民党案のねらいはここに目をつけた党略的なものであるという批判は、まさに当を得たものと言わざるを得ません。昨年の同時選挙によって自民党が安定多数を得たからといって、このような党利党略をむき出しにした改悪を強行しようとすることは、鈴木総理の政治理念である「和の政治」に全く逆行するものであり、自民党案は撤回すべきことを重ねて要求するものでありますが、総裁並びに発議者の見解を伺いたいと思います。
 次に、拘束名簿式比例代表制は政党投票をその要件としているのでありますが、政党党員が国民の約一〇%も存在する西ドイツでさえ政党投票は無理だと言われているのであります。しかるに、わが国の政党党員は有権者数の一%にも満たない状態であり、そして支持政党なし層は世論調査の結果によれば二五%前後もいるのであります。こうした状態から考えると、いわゆる政党投票は国民の実情をいかに無視した制度であるかが明らかでありますが、この点に対する見解を自治大臣並びに発議者に求めるものであります。
 このように、現在のわが国の実情から見て、いわゆる政党投票の機が熟さない上に、自民党案は、その運動方法及び態様についても、現行の個人本位の運動の主体を単に政党、政治団体に置きかえたにすぎず、運動の方法及び態様について政党討論会などを含む制度の運用に必要な整備を行うべきでありますが、こうした基本的な条件すら示しておりません。これは、発議者自体がまさに拙速と無責任を絵にかいたようなものであると言わざるを得ないのであります。総理並びに発議者はこれらの点についてどのように考えておられるか、御答弁をいただきたい。
 言うまでもなく、拘束名簿式比例代表制は政党が国民抜きで選挙前に当選者の順位を決めてしまう制度であります。選挙前に国民抜きで当選者の順位を決めてしまう、ここが問題であります。何ゆえにこの制度が、趣旨説明にありましたように「参議院議員にふさわしい人材を得ること」になるのか、全く理解できません。これほど国民の立場を軽視し、有権者を愚弄した表現はないと思うのであります。いかなる根拠から自民党案が「参議院議員にふさわしい人材を得ること」ができるのか、総理並びに発議者に伺いたいのであります。
 今回の自民党案は、いままで述べたように欠陥の多い制度というよりむしろ民主主義に逆行するものであり、参議院の存在価値をみずから低下させる制度をつくり上げる結果になることを発議者は気がついていないものと思われますが、いかがでございますか。
 また、自民党の真のねらいは、いずれは衆議院の小選挙区制を実施するための布石ではないかどうか、この点について総裁としての見解をお伺いしておきます。
 ところで、鈴木総理は、この改革案の成否をめぐって各党で十分論議を尽くされたいと述べておられますが、その具体的な意味、内容は、単に修正に応ずるということを意味するのか、あるいは拘束名簿式比例代表制案そのものを撤回して、他の方法も検討する用意があるということなのかどうか、伺っておきたいと思います。すなわち、現行全国区制は参議院の独自性を支えるすぐれた特性を持つものであり、したがって選挙方法や選挙運動を改善することによって、金がかからず、国民も選びやすい方法は幾らでもあるわけであります。こうした制度、方法についての検討にも応ずるということなのかどうか、伺っておきたいと思います。
 さて、現行の選挙制度における緊急かつ重要な問題点は、衆議院及び参議院地方区の定数不均衡の是正及び政治資金など、まさに問題は山積しております。総理はこうした優先順位の高い問題から取り組むべきであると考えるものでありますが、こうした問題を放置して何ゆえに全国区の改悪に精力を注がれるのか、その真意を伺いたいのであります。また、こうした問題点に対する今後の具体的取り組みについてお伺いをいたします。
 現在、衆議院で四・五四倍、参議院地方区で五・七三倍を超し、しかも逆転現象が拡大しつつあるという重大な定数不均衡問題は平等の原則にかかわる憲法事項でありますが、これについてどう措置されるつもりか、総理及び自治大臣の明確なお答えを願いたいのであります。
 あわせて、定数是正の具体的措置は次の通常国会で衆参両院ともに行うのかどうか、率直に御答弁を願いたいと思います。
 以上、自民党案に対する大筋の問題について何点か質問いたしましたが、全国区拘束比例代表制を採用しなければならない理由は全く認められないのであります。自民党案が万が一実施された場合、その利益は自民党の両院支配のための議席増だけでありまして、国民は逆にその代償として政党化した参議院を押しつけられるだけであります。
 すなわち、自民党の拘束比例代表制は、太平洋戦争というはかり知れない犠牲を払い、しかも戦後三十六年間営々として築き上げ、これからもさらに守り育てていかなければならない民主主義に対し、国民の少数意見を封じ、一党支配体制をつくり上げる党利党略のための改悪にすぎないものであり、憲法に違反し、わが国の民主主義を根底から覆す結果を招くことは明らかであります。われわれは、こうした観点から、提案されている自民党案に対し断固反対することを表明するとともに、重ねて撤回を強く要求いたします。発議者及び総理、関係大臣の明快な御答弁をいただきたいと思います。
 以上をもって代表質問を終わります。(拍手)
   〔金丸三郎君登壇、拍手〕
#16
○金丸三郎君 大川議員の御質問に対してお答えを申し上げます。
 お尋ねの第一の憲法十四条、十五条、四十三条、四十四条等に関します点についてお答えを申し上げます。
 憲法十四条は法のもとにおける平等を規定し、十五条は個人の立候補に関するものでございます。しかし、御承知のように、わが国の憲法の国民の基本的人権でございますとか基本的自由でございますとかいうようなものは決して無制限ではなく、憲法第十三条に規定いたしております公共の福祉の制限に制約されるものであるとするところでございます。私どもは、今回の参議院の選挙制度の改正は、全国区の実情からいたしまして、提案理由で御説明を申し上げましたとおり、最も合理的な参議院の選挙制度の改革案と考えております。したがいまして、その制約のもとにあるべきことは当然であると考えます。
 なお、四十四条の規定は議員の資格に関する規定でございます。これは基本的人権とかそのようなものではございませんで、憲法四十七条に議員の選挙、投票等に関する事項は法律で規定すると明確に定められておるのでございまして、この公職選挙法案は四十七条に基づいて制定をいたそうとするものでございますから、憲法の四十四条に違反するということはないと私どもは確信をいたしております。
 なお、四十三条につきましては、先ほど法務大臣等の御答弁もございましたとおり、私どもは、政党が提出する候補者名簿を見て政党に投票いたすものでございますから、直接投票であり、それによって当選をして出てこられる国会議員は憲法第四十三条に言う国民代表であると、かように確信をいたしております。
 次に、参議院の機能、役割りとの関係についてお尋ねでございますが、今回の改正は参議院制度全般の選挙に関する部面の改正を行おうとするものでございまして、参議院の機能と役割りは従来どおりであります。これを別に変更しようとするものではございません。むしろ、党の内外に人材を求めて候補者名簿に登載し得るという点では、参議院にふさわしい人材を得うると、私どもはかように考えております。
 参議院の機能の発揮につきましては、私から申すまでもなく、現在、参議院改革協議会におきまして鋭意検討中でございます。参議院の独自性でございますとか、参議院の運営を効率的にいたしますとか、これは議院の構成や運営の面からも行うことができるのでございまして、私どもは協議会とは別個に参議院の選挙制度の改正を図ろうとするものでございますから、協議会の趣旨に逆行するようなものではございません。
 次に、第三者機関に諮らなかったのはどういう理由かというお尋ねでございますが、政府におきましても六次、七次と選挙制度審議会が行われ、そこで比例代表制についての意見がいろいろと出されておりますことは御承知のとおりでございます。私どもはここ数年来綿密な検討を続け、またいろいろな改革案も出ておりますので、こういうものも参考にさせていただいて、成案を得ましたので提出をいたしたのでございます。どうぞ各党におきまして十分な御審議をお願いいたす次第でございます。
 次に、金のかかる、かからないの問題は、選挙運動の方法や政治資金規正法の強化改善によって十分解決できないかという趣旨のお尋ねでございます。
 私どもは、参議院の全国区に巨額の経費を要するということは、大方の一致した意見であると思っております。これが、参議院の全国区の改正がほぼここ十年間各方面において非常に論議されておる大きな理由の一つであると思っております。したがいまして、いかにしてそのようなことを避けた選挙ができるか。私どもは、その点につきまして、選挙運動方法の改善や政治資金規正法の改正ではとうてい目的を果たし得ない、やはりこの際抜本的に全国区の選挙は党本位の拘束名簿式の比例代表制をとる以外には解決できないと、こういう結論に達してこの法律案を提出した次第でございます。
 なお、候補者の順位の決定につきましては、先ほどもお答えを申し上げましたとおり、それぞれの政党におきまして最も重要な問題として真剣に私は検討されるであろうと期待をいたしております。法的な規制は必要最小限度の枠組みを規定をいたしまして、各政党の良識にまって、りっぱな候補者が選定され、順位が決定されるものと期待をいたしておるところでございます。
 次に、政党員が少ない現在の状況におきます政党投票はなじまないのではないかという趣旨のお尋ねでございます。
 なるほど、政党に所属しておる有権者は、わが国の約八千万の有権者のうち大きな比率は占めておらないかもわかりません。しかし、現実に衆議院、参議院とも国会議員の選挙は政党選挙であります。私は、国民もその点は十分に考えて、どの政党に所属するかは別といたしまして、それぞれ考えて、革新的な政党を選ぶ国民もあれば保守の党を支持する有権者もあるわけでございまして、現実のわが国の選挙は政党中心になっており、これはまた参議院の全国区の改正について各方面から論議されておるところも、選挙のこの実態を踏まえての結果であると考えておりますので、政党投票になじまないということはないと思っております。
 以上申し上げましたような考え方からこの法律案を提案いたしましたので、何とぞ十分に御審議を賜りたいと、かように存ずる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 最初に、今回の改正案について、憲法との関係、参議院の機能や役割りへの影響などについて御意見がありましたが、私もそのような御意見なり御批判があることは承知いたしております。改正案は、候補者個人にとって余りにも金がかかり過ぎるとか、有権者にとっても候補者の選択がきわめて困難であるといった現行の個人中心の全国区制が抱えている問題を抜本的に解決するため、憲法との関連はもとより、いろいろな問題についてあらゆる観点から論議し検討を尽くした上で提案されたものと伺っており、御指摘の点も、政党の責任において選挙を行う制度をとる以上、それに伴うやむを得ない合理的な制約であると考えます。
 憲法の条文に照らしての御質問につきましては、法制局長官並びに関係閣僚から御答弁を申し上げます。
 また、公選制度をとる以上、ある程度参議院の政党化は避けられないものと思いますが、この全国区制の改正によって必ずしも参議院本来の機能を発揮することができなくなるとは私は考えておりません。
 次に、金のかからない選挙を実現したいのであれば、選挙運動方法の改善や政治資金規正法の強化で十分ではないかとの御意見もありましたが、私は、金のかからない選挙の実現のためには、基本的にはやはり個人本位の選挙から政党本位の選挙に移行していくことが必要であると考えており、今回の改正案もそのような観点に立って提案されているものと承知いたしております。もちろん、御指摘の選挙運動のあり方、政治資金のあり方も密接な関係を有する問題でありますので、機会あるごとに各党間で十分論議を尽くしていただきたいと思います。
 次に、今回の改正案によってりっぱな人物が選ばれるかどうかという点につきましては、ひとえに政党の良識にかかってくるわけであります。政党の責任において選挙を行う仕組みをとる以上は、政党としても責任を持って国民に推薦し得るようなりっぱな人物、国民全体が納得するような識見を有する人物を候補者として選定し、名簿を作成されることになると思います。また、公党として当然そうすべきものと考えます。
 最後に、衆参両院の定数是正を先行すべきではないかとの御意見についてでありますが、もとより衆参両院の定数問題につきましても十分な関心を持っているところでありますが、これまでもしばしばお答えを申し上げたように、との問題は、選挙の基本的なルールづくりの問題として各党間で十分論議を尽くしていただきたいと存じます。
 残余の点につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣安孫子藤吉君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(安孫子藤吉君) 今回の改正案と憲法との関係についてお尋ねがございました。
 改正案は、現行の個人中心の全国区制が抱えておりますところの各般の問題を根本的に解決するために、御指摘のような憲法問題も含めまして、いろいろな問題点について慎重な論議検討を尽くされました上で提案されたものと承知をいたしております。
 次に、この案は参議院の機能と役割りを考慮したものであるかどうか、また、国民的合意をどのように取りつけるのかというような御質問でありました。
 改正案は、候補者個人にとって余りにも金がかかり過ぎる、有権者にとりましても候補者の選択がきわめて困難であるといった現行の個人中心の全国区制が抱えておりまするいろいろな問題を抜本的に解決いたしますために、御指摘のような参議院の果たすべき役割りという問題をも含めまして、いろいろな問題点について慎重な論議検討を尽くした上での結論であると伺っておる次第であります。
 次に、第三者機関の検討もなく提出に踏み切った理由はどうかと、こういうことでございます。
 第三者機関についての御質問でございますが、このように早急に解決を迫られておる基本問題についてその実現を期するためには、結局は立法府を構成する各党間において十分に御論議をいただくことが最も望ましい方法であると考え提案されたものと承知をいたしております。
 また、金のかからない選挙、あるいは政治資金制度の改善等そういう方法で十分ではないかというお尋ねでございます。
 金のかからない選挙実現のためには、基本的にはやはり個人本位の選挙から政党本位の選挙に移行してまいりますことが必要であり、今回の改正案もそのような観点に立って提案されたものと承知をいたしております。
 政治資金の今後のあり方につきましては、選挙制度のあり方の問題と密接な関係を持っておりまするだけでなく、各党のよって立つ財政基盤がそれぞれ異なることからいたしまして、現実問題といたしましては、今後の各党の政治活動そのものに直接関連してくる問題があるわけでございまするので、まず各党間におきまして十分に論議を尽くしていただくよう願っておるのでございまして、各党各方面の御意見を承りながら検討してまいりたいと考えております。
 次に、今回の改正案をめぐりまして、長年の間個人投票になれ親しんでまいりましたわが国において政党投票はなじまないのではないかという御意見がございましたし、そういう御意見を承っておるわけでございますが、今回の提案は、現行全国区制に伴う諸種の弊害を除去するためには、名簿式比例代表制を採用して、有権者は政党の候補者名簿を点検した上で政党名を書いて投票するという方式が最も適当であると判断されたものと伺っております。現行制度は有権者にとりましても候補者の判断が困難であると言われておることでもありまするし、今回の改正の趣旨を有権者に十分周知して御理解を得れば、政党投票への移行もさしたる支障を生ずることなくスムーズに運用されるのではないかと考えておる次第であります。
 なお、衆参両院の定数是正についての御質問がございました。
 現行の全国区制は、とりわけ早急に解決を迫られておりまする多くの課題を抱えており、各党におかれましても、これまで改善策については鋭意検討されてきた経緯もあるので、この問題をまず取り上げて今回の改正案が提案されたものと承知をいたしております。もちろん、衆参両院の定数問題につきましても十分な関心を持っているところでございまするが、この問題は、これまでもしばしばお答え申し上げておりますとおり、選挙の基本的なルールづくりの問題としてまず各党間で十分に論議を尽くしていただき、その動向を見きわめながら結論を出すべきものであると考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(徳永正利君) 近藤忠孝君。
   〔近藤忠孝君登壇、拍手〕
#20
○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表いたしまして、議題となりました法案について、総理、関係大臣並びに発議者に質問いたします。
 去る十月二日の本会議代表質問におきまして、わが党の上田議員は、「全国区制改革案は政党法的規制の導入、無所属立候補の事実上の禁止など、憲法違反の疑いが強いので再提出しないよう」強く求めました。これに対し鈴木総理は、「各党も検討を重ねていると聞くので、論議を重ね、可及的速やかに改正が実現するよう望む」と答弁されたのであります。
 元来、民主主義の根幹にかかわる選挙制度の改革は、全政党、各会派の合意のもとに進められるべきものであり、法案提出に至るまでに十分な協議や相談がなされてしかるべきであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
ところが、自民党はこれを怠ったばかりか、野党の強い反対を押し切って本法案を提出し、その成立を急いでおります。これは議会制民主主義の原則に反することであり、国民と野党に対する重大な背信行為ではありませんか。総理並びに提案者の答弁を求めます。
 自民党が本法案の前に準備いたしました「一票制」は、地方区への投票で比例代表議員を決めてしまうなど、憲法違反の内容と余りにも強い党利党略性のゆえに世論の厳しい批判を浴び、撤回を余儀なくされたものであります。ところが、今回の二票制案もまた政党の要件を限定して無所属を排除する規定など、一票制の中の反民主主義的な中心点を引き継いでまいりました。自民党の全国区制プロジェクトチームの検討の際「選挙に勝つかどうかが制度改正のキーポイントだ」と言われたと伝えられておりますが、これでは自民党強化のための党略性がむき出しではありませんか、提案者の答弁を求めます。
 ところで、自民党はなぜこのような党利党略の公選法改悪を押し通そうとするのでしょうか。それは、総理がいま異例の意気込みで推し進めようとしております臨調路線と無関係ではありません。すなわち、汚職腐敗の一掃と簡素で効率的な行政とを求める国民の声を逆手にとって鈴木内閣が進めようとしております行政改革なるものは、日本の軍事大国化、福祉切り捨ての企てであり、国民が戦後から取ってまいりました民主的権利と諸制度に対する全面的攻撃の方向に国の歩みを変えようとするものであります。行政改革という名で、財界の戦略とレーガン戦略への協力という立場で、国の政治経済のあらゆる分野でこれまでの政策や制度の抜本的見直しをやり、一挙に反動的再編を強行しようとしておりますが、本法案はこの中で選挙制度の反動的再編の役割りを果たそうとしているのではありませんか。
 この法案が強行されるならば、それは現行選挙制度成立以来三十年余、初めての抜本的な制度改悪となり、戦後、政府・自民党が繰り返し策してまいりました選挙制度の全般的改悪への突破口となる危険を指摘せざるを得ないのであります。それは、自民党首脳や閣僚が再三言明してきた衆議院での小選挙区制導入を最終目的とし、憲法改悪を展望した選挙制度の抜本的な改悪の重大な一環ではありませんか。総理の見解を求めるものであります。
 このように国民のために行ってはならないこととは逆に、緊急になすべきことがあります。その第一が、衆議院及び参議院地方区の定数を国勢調査の結果に基づいて是正することであります。
 国民の意思が正しく政治に反映されていないことに対する怒りと批判が高まる中で、選挙制度への発言を避けてまいりました最高裁ですら「各投票が選挙の結果に及ぼす影響においても平等であることを要求せざるを得ない」として、衆議院議員定数不均衡違憲判決を下したではありませんか。総理も提案者もこの判決を尊重し、この趣旨に沿った改正をこそ第一に着手すべきだと思いますが、その意思はありますか。
 また、戦後、参議院が設けられて以来、人口密集地区と過疎地との間に著しい格差が生まれながら、一回の是正措置もとられていない参議院地方区の定数是正も緊急の必要があるのではありませんか。
 あわせて、個別訪問禁止規定は選挙運動の自由を保障する立場からはすでに時代おくれとなっております。日弁連の調査に対する国会議員の回答者の八八%が廃止すべきだとしているではありませんか。総理並びに提案者に対し、個別訪問禁止規定を削除することを求めるものであります。
 なすべきことには手をつけず、全国民どこに住んでいても一票の価値に変わりのない全国区制を廃止し、種々の改悪を加えようとしているのはもってのほかであります。以下、法案の重大な問題点について質問いたします。
 第一に、政党規制という議会制民主主義の根幹にかかわる問題についてであります。
 政党は、本来、議会の発展とともに国民の政治意思を形成する最も有力なる組織体として、議会制民主主義を支える不可欠の要素として発展してまいりました。政党が時の権力によって弾圧され侵略戦争への道を突き進んでいった事実は、日本国民が忘れてはならない重要な教訓であります。だからこそ、戦後の民主憲法のもとでは第二十一条、結社の自由はこれを保障するとし、大政党であれ少数の結社であれ、民主主義を守る基本として最大限尊重することにしているわけであります。
 ところが、本法案は、候補者名簿を提出することのできる政党及び政治団体の要件を定め、それに合致しなければ名簿提出を認めないという、結社の自由を侵す政党法的規制を導入しているのであります。すなわち、国会議席五人以上、直近の国政選挙での得票率四%以上、参議院選挙立候補者十人以上という三要件は、政党に対する不当な規制をわが国の制度に初めて持ち込むものであり、結社の自由を保障した憲法の規定と理念に反するばかりではなく、戦後、反動勢力が一貫して追求してきた政党法制定への突破口となる重大な内容を持つものではありませんか。総理並びに提案者の明快な答弁を求めます。
 さらに、候補者名簿作成にかかわる党内買収罪及び名簿選定機関の虚偽宣誓罪を設けている点であります。政党が時の権力によって内部干渉を絶対に受けないという保証はありません。提案者はそういうことはないと断言できますか。自民党は、この規定がないと、買収により名簿登載をさせようとする者や、順位を上位にさせようとする者を排除することができないのでしょうか。みずからの金権買収選挙を根絶することができない政党の基準によって日本の民主主義の根幹にかかわるような立法をすることは、断じて許すことができません。
 第二に、無所属、無党派の立候補を事実上制限し排除している点であります。
 少数政党の議席を抹殺した悪名高い西ドイツの五%阻止条項でさえ、得票率の結果について作用するものであって、一定の有権者の署名を集めることによって選挙への立候補は可能であります。ところが、本法案は、政党の三要件によって、これに合致しない無所属無党派や小政党からの立候補自体を禁止し、いわば門前払いをするものであります。無党派、無所属議員の議会進出への道をも保障することは、少数意見を含むあらゆる民意を正しく反映し、政党支持の自由を守る上できわめて重要であります。
 たとえば、清潔な選挙をモットーとして多くの有権者の支持を得てこられた故市川房枝議員が、昨年の選挙で得た票は二百七十八万票に上ります。総理並びに提案者は、このような多数の国民の意思表示の道を本法案によって封殺してしまおうというのでありますか。
 また、小政党の発展の可能性を保障することも議会制民主主義と国民の参政権を守る上で重要であります。真理が少数意見の中にもあり得ること、おごれる多数者が少数に転落していくこと、これは古今東西の歴史が示すととろであります。小政党の伸びる芽を法の規制によって摘み取ってしまおうとすることは、国民の選択する権利を奪うものであり、独裁政治につながるものと言わなければなりません。政党法的規制にあわせ、無所属や小政党の立候補を禁止しようとするのは、自民党が現状維持を目指すだけではなく、悪政から身を守るための国民の変革の意見をも拒否し、その可能性を抑えて、大企業とアメリカに奉仕する現状の支配体制をより強化しようとしているからではありませんか。これは国民主権に対する重大な侵害であって、断じて許せないものであります。
 憲法前文は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」とうたうととむに、憲法十五条に「国民固有の権利」として選挙権を保障しております。昭和四十三年十二月四日最高裁大法廷では「被選挙権者特にその立候補の自由も憲法十五条一項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきである」との判断が示されています。しからば、この憲法の保障する基本的人権が、所属政党の大小により、または政党所属の有無によって侵害され差別されるのは、法のもとの平等を定めた憲法十四条、及び人種、信条などによって被選挙権の差別を禁じた憲法四十四条に反することは明らかではありませんか。憲法二十一条一項の結社の自由は、政党に加入し、または加入しないことの自由を保障するものであり、いずれの政党にも加入しないことで立候補を認めないのは、明らかに結社の自由を侵害するのではありませんか。総理並びに提案者の明快な答弁を求めるものであります。
 提案者は、十名の候補者をそろえれば立候補できるから憲法違反でないと説明しています。しかし、本法案は、各種選挙における供託金を現行の二倍の額にし、供託金を比例代表選出議員の選挙については一人四百万円という莫大な金額にするとともに、当選者の二倍の立候補者の供託金を除いて残りを没収するとしています。こうした多額の供託金を強要し、厳しい没収規定を設けられては、事実上立候補を断念せざるを得なくなるのであります。自治大臣と提案者にお尋ねいたしますが、さきに指摘いたしました名簿提出の三要件に加え、二重三重の立候補制限にはなりませんか。
 第三に、本法案が選挙運動について大幅な規制を新たに導入していることであります。
 民主主義を支えるものは言論の自由の保障であり、特に政策を掲げて国民の審判を仰ぐ選挙に際しては、それが最大限保障されるべきであります。ところが、現行の公職選挙法自体、第二次大戦前の専制政治の時代の規制を少なからず引き継いだ上、たび重なる改悪によって、戸別訪問の禁止という先進諸国に例のない規制を初めとして、言論による選挙活動をがんじがらめに規制するものとなっているのであります。
 これに加えて、本法案では、現行全国区の候補者の選挙運動として認められていた言論宣伝戦の手段を一切禁止した上、政党の選挙運動も、選挙公報、新聞広告、テレビ、ラジオ政見放送のみにするという大改悪であります。有権者の側からすれば、どんな候補者が名簿に登載されているのか、その候補者がどんな政策や識見を持っているかなど知る権利があります。また、候補者も、自分が所属する政党の政策や自分の政見を有権者に広く伝え、登載名簿への支持を訴えることは当然の義務ではありませんか。政党自身も政策を高く掲げ、名簿への積極的支持を訴えることこそ、政党の厳粛な使命ではありませんか。政党の活動は多種多様、広範囲にわたって認められなければなりません。総理並びに提案者、こうした選挙の基本である有権者の「知る権利」を保障する選挙運動がほとんど禁止される本法案は、民主主義に対する重大な挑戦ではありませんか。
 第四に、当選人決定方式でありますが、一人区など地方区で多くの議席をまず確保した上、比例代表制もまた自民党に有利なドント方式で決めようとしております。党利党略きわまれりというべきであります。
 今回の自民党案であるドント方式で過去六回の全国区の自民党の得票数を計算すると、実際の当選者に比べ一議席から六議席といずれも議席増をもたらすことになり、まさに自民党に有利な方式にほかなりません。多数党に特に有利であることは国際的にも明白であり、だからこそスウェーデンやノルウェーなどでドント方式を排し、他の方式を採用しているではありませんか。提案者の見解を求めます。
 提案者の説明によれば、全国区制度の改悪も、選挙運動禁止の理由も、結局は現行選挙制度に金がかかり過ぎるからだというのでありますが、一体どこに金がかかるのか。金をかけているのは一体だれなのか、金をかけている者はその改善を本気でやろうとしているのか、このことの解明が先ではありませんか。糸山英太郎派による十億円とも言われる空前の大買収事件、利益誘導の国鉄ぐるみ事件、後藤田正晴派事件等々自民党候補による買収事件は後を絶たないどころか、ますます巨額化、悪質化しております。この事実は、金がかかるのは選挙制度に原因があるのではなく、自民党などの金権腐敗体質によるものであり、これを改めない限り、比例代表制にしても金権選挙はなくなりません。
 総理並びに提案者にお尋ねします。これを一掃することこそ、金のかからない選挙を実現する第一歩だとは思いませんか。
 その絶滅のためには事実を明らかにすることが必要です。国家公安委員長に対し、昭和五十一年以降の国政選挙における買収事件数の党派別内訳を明らかにすることを求めます。
 次に、大企業から献金を受け、それに有利な政治を行っていることこそ、今日の悪政の根源であり、選挙に金を使う温床であります。ところが、政府・自民党は、政治資金規正法の五年後の見直し規定を逆手にとって、企業献金を拡大しようとしているではありませんか。これは政治倫理に反し、「金をかけない政治」に逆行します。鈴木総理は、企業献金や団体献金の禁止をする勇気を持つべきではありませんか。
 以上、あれこれの理由は挙げても、結局本法案が自民党の党利党略に基づき、わが国の議会制民主主義を一層危険に追い込むものであることが明らかであります。
 わが党は、全国区制度が、現行の国会議員選挙制度の中では有権者の選択がより公正かつ民主的に政党の議席数に反映し、無党派議員進出をも可能にしてきた制度であると考えます。また、わが党は、「今後、衆議院小選挙区制導入の突破口とするような党略的策謀と絡めることなしに全国区制の改革が公式に提起され、しかも現行制度に比してより合理的な方法と内容が示され、国民の選択の公正な反映が侵されない保障がある場合には、拘束名簿式の全国一区比例代表制の検討に反対するものではない。」という態度も表明してまいりました。ところが、本法案は「比例代表制」の名を用いながら、その内容はわが党が考えている本来の民主的な比例代表制とは全く異質のものであり、明らかに参議院制度の抜本的改悪であり、衆議院小選挙区制導入への突破口としようとするものであって、とうてい認めることはできません。直ちに本法案を撤回することを総理並びに提案者に強く求めて質問を終わります。(拍手)
   〔金丸三郎君登壇、拍手〕
#21
○金丸三郎君 できるだけ簡潔にお答えを申し上げたいと存じますので、御了承をいただきたいと思います。
 第一の、提案に関連してのお尋ねでございます。
 私どもは、この法律案を取りまとめる過程におきまして野党の方々にも御説明をさせていただいたのでございますし、また、年来の検討を経て最善の案としてこの法律案を提案いたしたものでございます。どうぞ今後十分に御審議をいただき、私どもも御意見は十分に拝聴するつもりでございますので、議会制民主主義に反するようなことにはならないと、かように存じております。
 次の、党利党略に基づく案ではないかという趣旨のお尋ねでございました。
 私どもが提案いたしております法律案は、相当長期にわたって検討をいたし、現在の段階におきまして最も合理的な最善のものと確信をいたしております。比例代表制は、むしろ多数政党よりも少数政党に有利な制度というのが欧州各国におきましても常識でございます。比例代表制は、ヨーロッパにおきましては少数政党がいわばかち取った選挙制度で、多数党から出すということはきわめて例外で、比例代表制は多数と少数とを問わず最も合理的な議席配分の制度だと、かように考えております。
 衆議院議員定数の最高裁判決に関しますお尋ねでございまするが、私どもは参議院の選挙制度の改正の提案をいたしておりますので、この点についての御答弁は差し控えさせていただきます。
 次に、地方区の定数是正の問題でございます。
 私どもも検討すべき重要問題としての認識は持っておりますけれども、今回は全国区制の改革が緊急の課題と考えて提案をいたしたのでございます。
 戸別訪問の禁止の規定でございますが、撤廃せよという強い意見がございますことは私も十分に承知いたしております。一方に撤廃せよという強い意見があり、また一方に維持すべきであるという強い意見がございます。今回は参議院の全国区の制度の改正を中心とする提案でございますので、この問題につきましては、全般的な選挙運動の改正の一環として十分に御論議をいただくことが適当であろう、かように考えます。
 次に、名簿提出の政党三要件につきまして不当な規制ではないかという趣旨のお尋ねでございますが、先ほど来御答弁の中で申し上げておりますように、比例代表選挙に参加し得る政党の要件を、わが国におきます現在の政党の実情に照らし、かつ政治資金規正法等を踏まえて結論として出したものでございまして、全く妥当なものと考えております。不当な規制をする考えは毛頭持っておりません。
 次に、名簿作成についての罰則の規定でございます。
 名簿の作成が今後のいわば全国区の選挙につきまして非常に重要な意味を持っておりますので、その公正を担保するために必要最小限度の規定として設けたものでございます。
 次に、無所属、無党派の立候補が事実上締め出されることになるのではないかという趣旨のお尋ねでございました。
 先ほど福間議員にもお答えを申し上げましたとおり、無所属につきましての立候補の制約は、政党本位の比例代表の選挙制度を憲法に適合する合理的なものとして選択いたします以上、私どもはやむを得ない制約と考えております。また、憲法上は決してとれに違反することはないと、かように確信をいたしております。
 次に、政党の三要件が憲法の十四条、四十四条、その他御指摘の規定に違反するのではないかという趣旨のお尋ねでございます。
 先ほど大川議員に一々お答えを申し上げたつもりでございますが、拘束名簿式比例代表制度は、憲法が国会の立法裁量の範囲内――私どもは憲法四十七条がその根拠と考えております。その範囲内のものとして許容され得る合理的なものと考えておりますので、比例代表選出議員も憲法前文第一段に言う「正当に選挙された」代表者であると、このように考えております。
 お尋ねの第二点、平等の原則、第三点、選挙の資格の問題でございます。これらは、政党要件に適合する団体のみに名簿の提出を認めるということは平等の選挙の原則に違反するのではないかという御趣旨かと存じますが、すでに申し上げましたとおり、憲法に適合する合理的な制度である拘束名簿式比例代表選挙制度を採用いたしますとすれば、必然的にこれに伴ってまいる差別でございまして、憲法の許容するところであると思っております。
 憲法二十一条の結社の自由の問題でございますが、これも先ほどお答えを申し上げましたとおり、国民に対し結社することを強制するものではございませんから、結社しない自由の制約にはなりません。なお、仮にこの制度の政党要件が結社しない自由に対する制約となるといたしましても、すでに申し上げましたように、この制度は憲法に適合する合理的なものであると考えておりますので、その制約もまた憲法の許容するところと私どもは考えておる次第でございます。
 供託金の問題は、供託金制度が適切に機能するための妥当な措置であると、私どもはかように考えて提案をいたしております。
 候補者の選挙運動に関する言論の封殺等ではないかという趣旨のお尋ねでございますが、政党本位の選挙でございますけれども、名簿に登載される候補者は当然にそのお考えなり人柄なりを国民に訴えるべきでございましょうし、恐らく各政党とも、名簿に登載される候補者の人物や識見をあるいはテレビ、あるいは新聞、あるいはラジオ、いろいろな方法によって周知される努力をなさるものと考えております。
 ドント式についてのお尋ねでございますが、ドント式は私どもは最も簡単明瞭な議席配分の方式だと、かように考えております。何ら党利党略とは考えておりません。この点は十分に委員会等におきまして御論議をいただきたいと思います。
 次に、金のかからない選挙についてのお尋ねでございますが、現在の参議院の全国区の選挙は、正常に選挙のためのいろいろな活動を行うにいたしましても多額の経費がかかっておるわけでございます。これを踏まえて今回の改正案を提案いたした次第でございます。
 以上申し上げました理由から何とぞ十分に御審議をいただきたい、かように存ずる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 最初に、今回の改正案は野党との話し合いがつかないまま提案したのはおかしいとの御意見がありましたが、御承知のように現行の全国区制は多くの問題を抱えており、各党におかれてもこれまで改善策について鋭意検討されてきた経緯もありますので、自由民主党においては、みずから取りまとめた改正案を各党にも十分説明し、御検討をお願いした上で提案したものと承知いたしております。したがって、提案の経緯について議会制民主主義に反するとの御意見はいかがかと思いますが、いずれにいたしましても改正案について十分論議を尽くしていただきたいと思います。
 次に、改正案は民主主義に反するとの御意見がありましたが、今回の改正案は、議会制民主主義の担い手である政党の選択した候補者名簿によって選んでいただくという仕組みになっておりまして、有権者に、とっても選択しやすいというように、有権者の立場をも考慮して提案されておりますので御了解いただきたいと思います。
 次に、衆議院の小選挙区制の問題につきましては、先ほどお答えいたしましたように、選挙の基本的なルールづくりの問題として各党間で十分な論議を尽くし結論を出すべきものであると考えておりますが、現時点ではいまだ各党間の話し合いが行われるまでに至っておらず、その機は熟していないものと考えております。
 また、まず買収選挙を一掃せよとの御意見がありましたが、もちろん買収等の悪質な選挙犯罪を一掃することは、選挙の公正、明朗化を図る上から最も重要な課題と考えており、引き続き民間諸団体の協力を得て啓発活動等の充実に努めてまいる所存であります。
 最後に、政治献金のあり方についてでありますが、金のかからない選挙の実現を図る必要があり、この全国区制度の改正案提出の理由の一つも一の点にあると考えており、事柄は、選挙制度のあり方と密接な関係を持っているだけでなく、各党のよって立つ財政基盤がそれぞれ異なりますので、最初から企業や団体の政治献金が悪であるときめつけるのはいかがかと思います。今後とも各党各会派間で十分論議を尽くして煮詰めていただきたいと存じます。
 残余の点につきましては関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣安孫子藤吉君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(安孫子藤吉君) 党派別の違反状況についてのお尋ねでございますが、警察庁におきましては党派別の違反の統計は集計いたしておりませんので、お答えいたしかねます。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○副議長(秋山長造君) 柄谷道一君。
   〔柄谷道一君登壇、拍手〕
#25
○柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました参議院全国区に拘束名簿式比例代表制を導入しようとする公選法の一部を改正する法律案について、発議者並びにこれを総理就任の際公約として掲げられた鈴木総理及び関係閣僚に対しただすものであります。
 言うまでもなく、参議院は、国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会の一翼を担い、立法に関して積極的にその責務を果たすとともに、二院制を採用した憲法の趣旨にのっとり、いわゆる良識の府として衆議院に抑制と補完の機能を果たさなければならない使命を負っております。
 参議院が先般公募した「参議院に何を望むか」という論文では、応募者のうち、十人が十人といってよいほど指摘していたのは、党議拘束の緩和を初めとする非政党化であり、人中心の運営でありました。そして、六年という参議院議員の任期にかんがみ、国政の基本的事項を中長期かつ総合的な観点から政策審議を深め、これを提言する特性への期待であったと言えましょう。そして、参議院改革協議会は、いま、こうした広範な国民の世論と期待にこたえるべく、真剣かつ前向きの検討が続けられているのであります。
 しかるに、今回自民党より議員立法として提案された拘束名簿式比例代表制では、全国区を完全に政党化することになります。議員にとって選挙は一つの洗礼とも言えましょう。候補者は自分の政治信条と政策を直接有権者に訴え、自分を信任してくれた有権者に対し責任を持ち、その負託にこたえるべく日夜精進することがわれわれの責務と信じますが、今後は有権者に対してではなく、拘束名簿に自分の名前を書き込み、しかも上位に位置づけてくれた「政党」や「総裁等の決定権限を持つ者」に対して忠誠を尽くせばよいということになりましょう。衆議院よりも一層完璧な形で参議院が政党化することを決定的に助長し、かつ固定化させる本提案は、国民の期待と世論に背を向け、参議院がみずからその存在理由と機能を否定し、放棄するものと言わなければなりません。それは参議院としての自殺行為とも言うべきであります。
 総理及び発議者は、第二院たる参議院の機能について何を求めているのか、国民の期待をどのように受けとめておられるのか。また、参議院の政党化が問題となり、「衆議院の複写機」という国民の批判を受けている現状に対し、どうこたえようとしておられるのか、明確な基本的認識をまず国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
 次に、以下具体的に数点について伺います。
 第一は、拘束名簿式比例代表制と有権者の意思との関係についてであります。
 拘束名簿式の大きな欠点は、「人」を選ぶという余地がなくなるということであります。政党に対する投票がそのまま名簿に掲載された候補者名及び順位に対する全面的かつ無条件の支持とみなすことはとうていできません。今日、比例代表制を採用している国でも、その欠陥を補うため、たとえば有権者は各党が作成したリストの一部を抹消したり順位を入れかえたりしてもよいという国もありますし、またスイスのように、一部を異党派の候補に差しかえてもいいというように補完措置をとっているのが実情であります。しかし、今回の自民党案にはそれが全くありません。
 私は、現行の選挙制度は、有権者は投票に当たって、党派の選択もさることながら、人の選択をきわめて重視しているものと考えます。属人性を重視しております。このことは、昨年六月に施行された衆参両院同時選挙において、財団法人明るい選挙推進協会が集約した実態調査で、候補者自身を選択の基準としたものが四〇%を占め、政党重視が四六・七%であったという結果や、また、昨年三月に自民党みずからが行った一万人世論調査でも、全国区への政党本位の投票はわずか三八・一%であったことがこのことを立証いたしております。
 選挙は、言うまでもなく有権者の意思を確かめる最大の政治的行為であります。ところが、それにもかかわらず、選ばれる側の勝手な都合で有権者の意思を強引に、しかも勝手に推定し、きめつけることは、民主政治の根本に反する本末転倒のやり方であると言わざるを得ません。総理並びに自治大臣の所見を承りたいと思います。
 第二点は、今回の法案と国民の選挙権、被選挙権との関係についてであります。
 今回の法案によれば、立候補、つまり名簿に記載され得るのは、党員及び政党より推薦を受けた者だけであります。このことは、現在、参議院に立候補できる国民の数が六千百万人もいるにもかかわらず、そのうち、全政党合わせてもわずか四百数十万人と言われる党員とその関係者のみに立候補する権利を与えることを意味するのであります。このことは、国民の選挙権並びに被選挙権を大きく制限することになり、憲法四十四条で「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。」と定めていることに触れる疑いがあると言わざるを得ません。
 現に、過去七次にわたって設けられた選挙制度審議会においても、三次、五次、六次、七次の各審議会でこの憲法上の疑義について議論されており、たとえば六次審では、元内閣法制局長官の林修三氏が、「立候補は完全に政党あるいは政党に準ずる団体からの推薦制あるいは名簿制で割り切ってしまえということについては、若干憲法上の問題がそこに残るのではなかろうか」と重大な疑問を投げかけているのでございます。この点に関し総理並びに法務大臣はどのようにお考えか、明快なる答弁を求めます。
 第三点は、今回の法案と政党の位置づけについてであります。
 拘束名簿式比例代表制による選挙は文字どおりの政党選挙であり、政党が選挙制度に完全に組み込まれることになることは明らかであります。したがって、比例代表制を導入している西ドイツなどでは、政党の位置づけを明確にするため政党法がつくられていることは周知のとおりであります。しかし、わが国では、憲法では政党について全く触れておらず、また政党法も政党に関する慣習法も存在しません。本案による候補者名簿を届け出ることができる政党その他の政治団体が政党の定義のすべてということが言えるのでしょうか。それははなはだ疑問と言うべきであります。政党本位の拘束名簿式比例代表制を導入するのなら、当然政党法の制定とワンセットであるべきであります。そうでなければいろいろの不合理が生まれてくることは明らかであります。
 特に、今回の法案では、拘束名簿は順位をも含めて各政党が任意に作成してよいということになっておりますが、これで果たして最も利害関係が集中する名簿の作成について国民的な監視が行き届くかどうか、政党によっては大きな問題を残すと言わざるを得ません。党首への阿諛迎合がふえたり、総理総裁に権力が集中するといった問題が生じ、さらに運用を誤れば党内の派閥抗争を激化したり、現役優先という無難な方法を選べば新人の進出を妨げ、院が沈滞し、高齢化するおそれがあることをわれわれはもっと厳しく考えなければなりまません。
 さらに、一定の要件を備えた政党その他の政治団体に限り候補者名簿の届け出を認めることは、わが国の選挙制度において、参議院の全国区に限り、現在言うところの無所属候補を一切締め出す結果となります。それが許されるのか。また、それが本当に日本の政治をよくし、参議院を改革する道なのかどうかであります。この点について総理並びに発議者に伺いたいのであります。
 第四点は、今回の法案に基づく拘束名簿式比例代表制と多党化という今日の政治状況との関連についてであります。
 端的に言って、今回の提案は多党化という今日の政治状況に逆行し、少数党の切り捨てをもたらす、まさに国民の意思に反する改正と言わなければなりません。大政党にとっては、今回の法案に基づく拘束名簿式比例代表制が導入されれば、全国区の選挙活動は事実上消滅すると言わざるを得ません。しかし、これまで全地方区に候補者を立てられなかった政党の場合は、従来の全国区の運動とあわせ、全地方区での選挙活動が不可欠となるでありましょう。となれば、各地での選挙が熾烈になり、政党間の選挙協力は至難となり、さらに無所属候補は戦いにくくなるなど、選挙戦が激しさを加え、国民の批判を浴びている選挙に金がかかり過ぎるという問題点もさらにエスカレートすることは必至であると言わなければなりません。
 自民党は、もともと、現在の参議院全国区選挙は金がかかり過ぎるので、これを是正するために改革案を検討してきたのではないでしょうか。事はまさに逆と言わなければなりません。しかも、今回導入せんとしているドント方式による票の案分は、端数を一律に切り捨てる方式であり、これが少数政党に不利に働くことは周知のとおりであります。
 鈴木総理、総理は金のある大政党だけが生き残れば日本の政治はよくなるとお考えかどうか。また、今回の法案によって従来よりも本当に金がかからない選挙になると断言できるのかどうか、この際御所見を承りたいと思います。
 第五点は、今回の法案と今日の国民の政治意識についてであります。
 有権者の負託を政党に対してのみでなく、候補者本人にも与えるというこれまでのわが国の選挙制度の原則は、国民の中に定着し、いわゆる脱政党層も含めて選挙に参加させ、投票率を高めるという役割りを果たしてきたと言えましょう。今日、無党派層が国民の三分の一に達すると各種世論調査で明らかにされており、これが今後ますます進行するであろうと思われます。われわれは、よしあしは別にして、国民の政治意識の傾向としてこれを直視しなければなりません。それが民主主義であります。
 しかし、今回の法案では、有権者に政党のみの選択を強要するものであり、国民の意思に逆行するものと言わざるを得ません。このままでもし強行すれば、全国区の棄権率は膨大なものに達することは必至でありましょう。支持政党なしという有権者に棄権や白紙投票を押しつける結果となるとするならば、事は重大な問題であります。現行制度では金がかかり過ぎる、運動量が大変だという選挙運動をする側の理屈で有権者の選択の基準を奪い、有権者にとっては選びにくい選挙制度を押しつけることは、有権者無視、主客転倒の発想と言わざるを得ませんが、総理及び発議者の所見を承りたいと思います。
 質問の第六点は、参議院の構成と運営についてであります。
 自民党提案のごとく、全国区は拘束名簿式比例代表制、地方区は従来どおりとなった場合、有権者は、前者は政党に、後者は人に投票するという結果になりますが、こうした選出対象を異にする議員によって構成する参議院がどういう民意を反映する院なのか大きな疑点を残すことになり、院の運営にも混乱を生ずるおそれがあると考えますが、総理及び発議者の明快な解明を求めたいのであります。
 質問の第七点は、この法案と地方区制度との関連についてであります。
 私は、参議院の選挙制度上最も矛盾を露呈し、国民の権利に不当な差別を強いているのは地方区の定数アンバランスであると考えます。五十五年の国勢調査で見て、神奈川と鳥取では一対五・七ものアンバランスがあり、三倍以上のアンバランス区は九つにも上っております。一昨年、東京高裁が「人口と議員定数との間に逆転現象が生じていたのは、憲法の選挙権平等の要求に反する」との判決を下したのも当然と言わなければなりません。
 同時に、地方区制度の問題点としてわれわれが放置できないのは、その区割りであります。一人区二十六、二人区三十、三人区十二、四人区八という現行制度は、第一党と第二党に圧倒的に有利であり、それは、国民の価値観が多様化し、多党化している現状に全くそぐわないものになっております。事実、第十二回参議院選挙で、地方区の場合、自民党の得票率四三・二%に対し議席獲得率が六三・二%を占め、特に現在参議院の構成が、一名区の場合、五十二名中自民党が四十八名を占めている事実は明らかにこれを物語るものであり、有権者の意思を正しく反映しているものとは言えません。また、二名区の場合も、今後各党が全地方区に候補者を立て、選挙協力が妨げられることから、第二党の優位性も崩れ、ますます第一党の優位を助長する結果を招くことは明らかであります。したがって、私は参議院の選挙制度については地方区と全国区をあわせ同時的に抜本改革すべきであると考えますし、われわれはすでに具体的改革案を用意しておりますが、総理並びに自治大臣の所見を承りたいと思います。
 最後にただしたいことは、この法案の処理に対する総理の基本姿勢についてであります。
 選挙制度は、言うまでもなく、参政権行使による国民代表のあり方を決定する重大問題であり、民主政治の根源でもあります。それは決して一党一派の党利党略によって決せられるものでは断じてないはずであります。本提案は、以上述べてきたように、日本の風土になじまないばかりか、参議院に本来の役割りを果たすことを期待する限り余りにも問題点の多い内容を含んでおり、また、各政党会派の勢力、有権者の選択などに著しい変化をもたらすことは必至であり、政権党の思惑だけで決せられるべき問題では断じてありません。それは、広く国民的なコンセンサスを形成し、党派を超えた理解と賛同を得て行われるべきものであり、仮にも数を頼んで強行突破を図ろうとするがごときことがあれば、それは自民党のゲリマンダーであるとして国民大方の非難を受けることは必至であると信じます。総理就任以来、和の精神を政治信条とされてきた総理の、本法案の処理に関する基本的姿勢をお伺いし、本案に対する反対の意思を明らかにして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔金丸三郎君登壇、拍手〕
#26
○金丸三郎君 お答え申し上げます。
 第一点の、参議院の政党化に関するお尋ねでございますが、参議院の政党化は、現実問題として公選を前提といたします以上、厳然たる事実であり、私どもはやむを得ないものと考えております。この法律案によって参議院に比例代表選挙を導入いたしましても参議院の独自性は発揮できる、これは現在と同様と考えております。この法律案では、参議院にふさわしい適当な人材で政党に属しない者でも名簿登載者になることができることといたしております。また、参議院の改革につきましては、独自性を発揮すべく現在参議院改革協議会において鋭意検討されておるところに期待をいたします。
 次に、今回の法案と政党との関連でございますが、先ほどお答えを申し上げましたように、いま直ちに政党法を制定いたしますことは、まだ時期尚早ではなかろうか、かように考えまして、名簿の決定がきわめて重要でございますので、名簿の決定に関連いたします必要最小限度の規定を選挙法の中に取り入れようと、このような考えに到達いたしたわけでございます。
 次に、無所属の方々の立候補の問題でございます。
 私どももこの点はきわめて大事に考えてまいりました。したがいまして、私どもの検討の過程におきましても、非拘束式の名簿制度をとるか、拘束式の名簿制度をとるか、あるいは一票制、二票制、いろいろと検討をいたしてまいったのでございますけれども、提案理由の説明等でるる申し上げましたような理由から、私どもは、わが国の実情にかんがみまして、現在の全国区の制度については政党本位の拘束式比例代表制をとることが妥当であろう、そういう結論に達しましたので、個人の方々の立候補がおできにならなくなることは、地方区はもちろんおできになるわけでございますけれども、やむを得ないと、かように考えておる次第でございます。
 次に、議会制民主主義のもとにおきます国民あるいは選挙民の投票の意識の問題でございます。
 お尋ねのような点は確かにあると思います。しかし、また一面から申しましたら、およそ八千万人の有権者、百名前後の候補者がございまして、ただ一人しか選べないというのが現在の全国区の制度でございます。わが国のあらゆる選挙制度の中で、有権者の立場から考えました場合、候補者と投票する人の間のかかわり合いのきわめて薄い、その点がなかなかむずかしい選挙制度である。したがいまして、私どもは、政治に責任を持つ政党が責任を持って候補者を選定し、それを天下に公表し、そして国民に人物も紹介し、いろいろな方法によって候補者を知ってもらうようにいたしますことが現在においては最も適当ではなかろうか。これは自治大臣からも御説明がございましたように、今後政党本位の選挙制度として国民になじんでいっていただけるのではなかろうか、またそうすることが私は妥当であろうと、このように考えております。
 それから参議院の構成と運営の問題でございます。
 私どもは、参議院に比例代表の選挙制度を導入することによりまして、参議院が異質なものによって構成されるようになるとは考えておりません。比例代表選挙によって選ばれる議員も選挙区選挙によって選ばれる議員も、選出方法は異なっておりましても同じ国民を代表する議員であると、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 最初に、参議院の選挙に比例代表制を導入すれば参議院が政党化し、その存在理由を否定することになるのではないかとの御意見がありました。
 私も、そのような御意見、御批判があることは承知はいたしておりますが、参議院につきましても公選制をとっている以上、現実問題としてある程度の政党化は避けられないところであると思いますが、この全国区制の改正によって必ずしも参議院本来の機能を発揮することができなくなるとは考えておりません。自由民主党では、政党化は避けられないということを前提にして、現行の全国区制の弊害を除去し、かつ衆議院に対する異質性を発揮し得るような選挙制度を採用すべきであるという立場に立って、改正案を取りまとめたと承知いたしております。
 次に、一連の具体的な問題について御意見がありましたが、個別の問題につきましては後ほど所管大臣から答弁をいたしますので、私からは基本的な考え方についてお答えをいたします。
 今回の改正案は、政党が主体となって選挙を行うことを前提としておりますので、御指摘のように、投票方式、候補者資格等具体的な選挙の仕組みも従来に比べて相当異なることになると思いますし、各政党の選挙に対する取り組みも従来とはおのずとその様相を異にするところになろうと思います。
 本改正案は、候補者個人にとって余りにも金がかかり過ぎる、また有権者にとっても候補者の選択がきわめて困難であるといった現行の個人中心の全国区制が抱えている問題を抜本的に解決するため、御指摘のようないろいろな問題点について慎重な論議検討を尽くした上で提案されたものと伺っており、御指摘の各種制約も政党の責任において選挙を行う制度をとる以上、それに伴うやむを得ない合理的な制約であると考えております。
 また、比例配分の方式につきましても、ドント式は各候補者名簿の得票数に忠実に比例して当選人を配分する最も簡潔な方法であると考えますので、御理解いただきたいと存じます。
 最後に、選挙制度は民主政治の根幹にかかわる問題であり、一党一派の思惑で決めるべきではないとの御意見がありましたが、私も同感であります。
 繰り返し申し上げておりますように、選挙制度の改善は、選挙の基本的なルールづくりの問題として各党間で十分な論議を願い、その動向を踏まえながら結論を出すべきものと考えております。したがいまして、今回の改正案につきましても、各党各会派の間で十分論議を尽くしていただき、国民の納得できる結論が得られることを念願いたしております。
 残余の点につきましては所管大臣から答弁いたさせます。(拍手)
   〔国務大臣安孫子藤吉君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(安孫子藤吉君) 比例代表制を導入すると個人を選ぶ余地がなくなるのではないかという御意見でございます。
 改正案は、現行の全国区制がきわめて多数の候補者の中から一人の個人を選ぶという個人中心の仕組みになっていることから出てくる諸般の問題を根本的に解決するために、政党選挙である比例代表制を導入しようとするものでありまして、政党の責任において選挙を行う仕組みをとる以上、投票方法についても、それにふさわしい方法を取り入れることはまた当然の帰結であろうと考えております。もっとも、拘束名簿式比例代表制におきましても、選挙人が人に投票しないで政党に投票することになっていると申しましても、投票に当たりましては、各政党からあらかじめ順位を付して提出された候補者名簿を点検して、そのいずれがに投票することになるのでありまするから、候補者個々人についても十分判断した上で投票するわけでありまして、民主主義の原理に基づいた選挙制度であるという、そこの点は変わりがないと考えております。
 また、選挙制度の改革は、全国区、地方区をあわせて抜本的改革を行うべきであるとの御意見でございます。
 参議院選挙制度改正の問題は、御指摘のように、基本的には全国区と地方区をあわせて参議院の選挙制度全体のあり方の問題として検討されるのが望ましいと考えておりまするが、現行の全国区制は、余りにも個人に金がかかり過ぎること、選挙人にとって候補者の選択がきわめて困難であることなど、とりわけ早急に解決を迫られている多くの課題を抱えており、各党におかれましてもこれまで改善策について鋭意検討されてまいりました経緯もありまするので、自民党では当面この問題をまず取り上げて御論議を願うことが必要ではないかと考えて提案されたものと承知をいたしております。改正案につきまして十分論議を尽くしていただき、速やかに全国区制の改善が実現されるよう念願をいたす次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣奥野誠亮君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(奥野誠亮君) 立候補を実質的に制限することになるのが憲法四十四条に違反するのではないかというお尋ねでございました。
 四十四条には、議員及び選挙人の資格はこれを法律で定めると書いてあるわけでございまして、この規定は、合理的な理由があって資格に制限を加えることまで排除しているものではないと、こう考えております。
 今日、国民の政治意思を反映させる媒体として政党が国民生活に根づいたものになっておるわけでございまして、提案者はいろいろな理由があって全国区制を個人本位の選挙制度から政党本位の選挙制度に改めたいと考えておられるわけであります。その結果として無所属立候補ができなくなる。それが、賛成である、反対であるは別にして、それなりに理由のあることでございますので、私は憲法四十四条に反するものではない、かように考えているわけであります。(拍手)
#30
○副議長(秋山長造君) これにて質疑は終了いたしました。本日は、これにて散会いたします。
   午後一時十一分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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