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1981/10/01 第95回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第095回国会 本会議 第5号
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1981/10/01 第95回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第095回国会 本会議 第5号

#1
第095回国会 本会議 第5号
昭和五十六年十月一日(木曜日)
 議事日程 第四号
  昭和五十六年十月一日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の
   続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
 中央社会保険医療協議会委員任命につき事後承
  認を求めるの件
 電波監理審議会委員任命につき事後同意を求め
  るの件
 法制局長の任命承認の件
    午後二時八分開議
#2
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑   (前会の続)
#3
○議長(福田一君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。浅井美幸君。
    〔浅井美幸君登壇〕
#4
○浅井美幸君 私は、公明党・国民会議を代表して、行財政改革問題を中心に質問をいたします。(拍手)
 まず、冒頭に申し上げたいことは、行財政改革に対する政府の基本姿勢であります。それは、総理の所信表明を伺って、なお、何のための行財政改革かという政府の認識、目的意識が、依然としてあいまいなままにあることであります。
 もし、鈴木内閣の行革に対する認識が、単に財政再建の達成だけにあるとするならば、それは大きな誤りであると申し上げねばなりません。
 総理、大きな国民の負担による行政改革、財政再建が達成されたとして、その次にどんな施策が行われるのか。三年あるいは四年後に、仮に財政に余裕ができた段階で、政府は、何を目指そうとされるのか。福祉か、公共事業か、それとも防衛費か、そのいずれを選択するかは、きわめて大きな問題であります。にもかかわらず、ポスト行革のビジョン、八〇年代の日本の進路に対する政府の基本方針は、依然として不透明のままにあります。
 総理は、所信表明の中で、行政改革は国家百年の大計であり、その目指す方向は活力ある福祉社会の実現であると強調されました。わが党も、すでに「生きがいと活力のある福祉社会トータルプラン」を策定しており、日本の未来像としては同じ言葉であるかもしれません。
 しかし、総理、問題はそこに至るための手段であります。総理の言う中身は、もっぱら責任を国民に転嫁されているにすぎません。もちろん、国民の自助努力も必要でありますが、それにふさわしい政治による環境づくりも必要ではないでしょうか。
 加えて、現実に行われようとしている行財政改革が、総理の言われる理念ないしは目標にふさわしい内容であるかどうかについては、率直に疑問を持たざるを得ません。政府の基本方針、行財政改革と日本の未来像との関連において、理念、目標との整合性は認められず、むしろ逆行さえしているのであります。
 そこで、総理に伺うものでありますが、活力ある福祉社会の具体像をどう描いておられるのか。さらに、活力ある福祉社会と行財政改革をどのように整合させ、実現への努力をなされようとするのか。行財政改革の出発に際し、まず、この点を明確にしていただきたいと存じます。(拍手)
 次に、質問を特例法案の問題に移す前に、本格的な行政改革の問題に触れておきたいと思います。
 総理、行財政改革の核心は、何といっても行政の簡素化、効率化にあります。第二臨調は、そのための基本答申を来年の六、七月ごろまでに行うようであります。この臨調の答申を受けて実施する行政組織、機構、行政領域、行政手段等の見直し、国、地方の事務・事業の再配分と、財政構造などを通じての行政の合理化、効率化、定員管理、公務員制度の改革など、いわば本格的な行政改革の実施について、政府はいかなる決意を持たれておられるのか。また、政府は、改革すべき課題をどのように把握されておられるのか。この問題は、名目だけの機構いじりでは断じて許されるものではありません。あわせてお答えを願うものであります。
 また、増税なき財政再建を五十七年度に限ることなく、五十八年度以降も堅持される決意があるかどうかを伺うものであります。
 われわれは、増税なき財政再建は、まず景気を維持安定させ、税の自然増収を図ることによって可能になると考えておるものであります。
 さらに、総理、増税なき財政再建は行政改革と不可分のものであり、総理が政治生命をかけるとまで断言された公約であります。そして第二臨調の設置目的の大きな柱でもあり、当然、五十八年度以降も大衆増税なき財政再建を貫くことになると思うのでありますが、大型物品税など、しばしば話題が出ておりますので、確認の意味を込めて、この際、改めて総理の決意をお示し願いたいのであります。(拍手)
 次に、行革関連特例法案について、質問をいたします。
 行革関連特例法案による歳出削減は二千四百八十二億円にすぎません。これは、政府が五十七年度予算編成で、財政の中期展望による要調整額二兆七千七百億円を削減しようとしていることから見れば、十分の一に満たないのであります。しかも、その歳出削減の大半は、社会福祉関係の削減によるものであります。
 この政府の姿勢は、今日の財政危機の第一の原因を社会保障費等の支出拡大にあるとする認識に立っていることを示すものであります。
 わが国の福祉水準が、社会保障への移転支出の対国民所得比における国際比較や、老人、身障者に対する福祉施策において、いまなお西欧先進国の域に到達していない現状に、政府はあえて目をつぶろうとされております。
 この法案の中身からすると、総理の言われる活力ある福祉社会とは、まさに弱い者に対する思いやりはそこそこにと受け取れるのであります。もし、より充実した福祉社会を目指すというのであれば、提出された法案の中身とは少し矛盾すると思いますが、総理はどうお考えでしょうか。
 そこで、具体的にお尋ねいたします。
 厚生年金等の国庫負担金を減額しようとされておられますが、たとえ財政再建期間中であっても、厚生年金等の保険給付に係る国庫負担金の繰り入れを減額することは、制度の重大な変更として疑問を持つものであります。もし、財政再建のための緊急避難的措置というのであれば、六十年度以降の一般会計からの繰り入れ措置を具体的に明示し、また、保険料率の引き上げ等、国民の不安に対しても納得できる説明と、その保障責任を明確にすべきであります。政府の所信を明確にしていただきたいと思います。
 また、老後の安定と保障には、年金収入がきわめて重要な問題であります。社会保障制度審議会の答申にもあるように、高齢化社会に対応する年金制度のあり方、展望と、行財政改革の中における年金制度の位置づけのかかわりについて、明確に示していただきたいと思います。
 次に、児童手当制度の問題について質問をいたします。
 今回の行革関連特例法案において、児童手当制度に対する公費負担の削減が図られようとしております。しかし総理、わが国はいま、出生率が激減し、急速な勢いで高齢化社会を迎え、老人の社会的扶養、介護の問題について、長期的、かつ、きめ細やかな対応が迫られているのであります。
 この問題と、将来の社会の担い手である児童の健全な育成の問題は、表裏一体の関係にあり、ここから児童は「社会の子」であると位置づけられ、児童の健全な育成は、国の活力の維持、民族の興隆、発展を左右するきわめて重大な施策でさえあります。しかも、児童手当制度は、その施策の中で主要な柱として、制度発足以来国民生活の中に大きく根をおろし、定着をしておるのであります。
 総理、児童手当制度をばらまき福祉であるとし、その後退を図ろうとするのは、きわめて重大な問題であると指摘せざるを得ません。政府は、特例法案で「児童手当制度に関する検討」として「特例措置の適用期限を目途として必要な措置が講ぜられるべき」としておられるが、「必要な措置」とは具体的に何を意味するのか、政府の方針を明らかにしていただきたいのであります。
 以上、私は、行革関連特例法案について、その重点的な問題に限って質問をいたしました。行財政改革は推進すべきであるというのが、われわれの基本的姿勢であります。その中にあって、行革関連特例法案に対して申し上げた幾つかの点を、政府がここで再考されることを特に切望し、総理の誠意ある答弁を求めるものであります。
 次に、私は、行財政改革を政府が推進するに際し、特段の配慮がなされなければならない幾つかの問題についてただしたいと存じます。
 各種年金の物価スライドの実施時期の五カ月の繰り下げは、半年の遅配となり、年金生活者に生活苦を強いることになるのであります。この実施時期については従前どおりとすべきことを、強くこの際要求いたします。
 また、高額医療費自己負担限度額の大幅引き上げは、高額医療を余儀なくされている患者の経済的負担を著しく増大することになります。
 総理、そもそも医療費の問題は、その適正化が臨調答申の中で指摘されているとおり、この医療費節減の努力は、政府みずからに厳しく課せられた問題であります。したがって、自己負担限度額の大幅な引き上げは行うべきではありません。
 さらに、国民健康保険給付費、児童扶養手当、特別児童扶養手当についての国庫負担の一部を都道府県に肩がわりさせることは、国の負担を地方自治体に押しつけるだけでしかありません。国民から見るならば、ただ国税か地方税かの違いだけで、税負担の軽減とは無縁のものであり、こうした措置は行政改革の名に値しません。
 以上の諸点について、この際、政府が見直しされることを強く要求し、総理の答弁を求めたいのであります。
 次に、臨調答申でも指摘されています不公平税制の是正についてでありますが、私は、行財政改革の一つの柱として、さらに、行革を行う前提としても、国民負担の公平化は不可欠の要件であると強く主張いたします。
 そこで、租税特別措置並びに企業等における各種引当金留保の現状には国民の強い批判がありますが、この点についてどう是正されるのか、まず明らかにしていただきたいのであります。
 また、源泉徴収制度によって一〇〇%所得捕捉されているサラリーマンと、それ以外の所得捕捉の格差から生じている不公平な徴税方法に対しては、国税庁も実態調査を実施するとしておりますが、この税負担の不公平が社会保障給付などの面において新たな不公正を生んでいることから、国民は一日も早い税の公平化を望んでおります。
 総理が所信表明の中で、制度面だけでなく、税徴収の執行面の改善努力を特に強調されたことは、総理が抜本的改革を決意したものと評価し、今後の具体的方途を明確に示していただきたいのであります。
 次に、行革大綱の柱の一つでもある国家公務員の定員削減について質問をいたします。
 本来、人件費抑制のあり方は、定員の実質減と給与等の適正化によって図られるべきであり、その意味から、五年間で国家公務員を五%、約四万五千人を削減する政府の計画を、純減すなわち実質減の数とし、これに合わせて総定員法の見直しを要求いたしますが、政府の所見を求めるものであります。
 前国会、参議院で継続審議となった公務員二法については、今国会で早期に成立を図るべきであります。
 仲裁裁定や人事院勧告は、憲法で保障された労働者の基本的権利の規制代償措置であるとともに、給与の適正化を図る機能を持つ法的制度であり、仲裁裁定や人事院勧告による給与の適正な改定が示された以上、これを完全実施することはこれまた当然であります。なお、公共企業体職員や国家公務員が全体の奉仕者としての立場にあることに配慮し、公務に専念する勤労意欲の向上という観点からも十分に配慮されるべきであります。この仲裁裁定と人事院勧告の早期実施について、総理の決断を示されたいのであります。(拍手)
 以上の諸点は、中道四党合意の共同要求に基づくものでありますが、ここに改めて政府の再考を求め、誠意ある答弁を期待するものであります。
 さて、行財政改革と景気とのかかわりについて、国民は強い関心を寄せております。私は、行財政改革によって現在の景気情勢を悪化させることを憂慮し、幾つかの問題を質問いたします。
 まず、政府は、行財政改革と景気との関連をどのように認識しておられるか。また、私は、公共事業の質的改善などによって景気に影響を及ぼさないよう配慮すべきだと考えますが、総理のお考えを承りたいのであります。
 第二に、政府は、今後どのように内需中心の景気回復を図っていかれるのか。そのために経済対策を打ち出す考えがおありかどうか、あるとするならば、どのような内容を盛り込まれるのか、伺いたいのであります。
 第三に、総理、国民はいま買いたいものがあっても、それを買い控えて、生活防衛に懸命であります。それは、世論調査の結果を見ても、国民の中流意識の中にかげりが出ていることに端的に示されております。
 その要因の一つは、増税なき増税と言われている問題と考えます。その中でも所得税は、五十二年度以降課税最低限度額が据え置かれ、サラリーマンなどの給与所得者に著しい実質増税が課せられているのであります。実質増税を放置することは、総理の言われる増税なき財政再建という言葉に反します。この現状に照らし五十七年度においては、課税最低限度額の引き上げによる所得税減税を断固実施すべきであります。総理の率直な御所見を求めるものであります。
 第四点として、停滞を続ける民間住宅建設にてこ入れするため、地価の抑制など、実効ある住宅対策を打ち出すお考えが政府にあるかどうか、伺いたいのであります。
 また、住宅金融公庫金利の引き上げを内容とする弾力化は、住宅取得に大きな影響を与えることは必至であります。私は、特例適用期間中といえども、あくまでも現行制度並びに現行金利を存続すべきと考えます。政府に、この問題についての再考を求めるものでありますが、お答えいただきたいと思います。
 さらに、内需不振によってもたらされている構造的不況業種の業績悪化、さらには、この七月には千四百件台にも及んでいるように、中小企業の倒産が増加の一途をたどっていることに対し、政府はどのような具体策を講じようとしておられるのか、この点もあわせてお答えいただきたいのであります。
 第五点は、物価問題であります。
 物価は鎮静化をたどりつつあるものの、その先行きは決して楽観できません。特に懸念されるものは、需要期に入った灯油価格の高騰であります。灯油価格の安定のために、有効かつ機動的な施策を用意すべきであると思いますが、政府はどのように考えておられるのか。
 また、財政再建は痛みを分かち合うものとして受益者負担が強調され、公共料金の軒並み値上げが予想されておるのであります。すでに運輸省が概算要求に国鉄運賃の約七%値上げを盛り込んだほか、医療費、国立、私立大学の授業料、消費者米価等の値上げが予想され、予算編成の過程では国民健康保険など、医療保険の値上げが浮上しそうであります。
 総理、一体、政府には公共料金を抑制する意思がおありになるのでしょうか。また、政府規制と物価の関係についてどのように判断されておられるのか、あわせてお答えいただきたいと思います。(拍手)
 次に、防衛費の問題について伺うものであります。
 総理、西欧諸国は、わが国と同様に財政の窮状に迫られております。そして、アメリカのレーガン政権でさえ、当初の国防計画の見直しを行い、八三、八四両年度で約三百億ドルの削減を打ち出し、さらに西ドイツでは、NATOが申し合わせている三%の防衛費増という目標は達成できず、実質的に前年度に比べマイナスとなることが伝えられております。
 わが国の財政再建がいまや緊要な課題とされる中で、五十七年度予算編成における一般歳出の伸び率は実質的にゼロに抑制されております。その中で、防衛費概算要求額は対前年度比七・五%増の二兆五千八百億円にも上り、その後年度負担額はついに二兆円の大台を突破し、二兆二千五百九十億円となり、年間防衛予算額に近づいておるのであります。このことは、危機的状況にある財政を一層圧迫することは明らかであります。後年度負担が予算額に匹敵するような増大は、防衛費をGNPの一%以下とするという限界を突破する原因となり、軍事力増大の歯どめを政府が放棄することにつながります。
 わが党は、現行憲法下において、わが国の領域における自衛権の具体的裏づけとして、領域保全に限る最小限度の能力の保持は、独立国家として国民の生命と財産を守るため必要であり、憲法の範囲内として許容されるものであると考えております。しかし、専守防衛を逸脱し、他国への脅威となる際限のない軍拡路線、防衛力の増大については反対であることを明確にするものであります。
 総理、防衛費をGNPの一%以下とするという方針を今後とも堅持されるのか、この際、改めて明確にお示しいただきたい。また、臨調答申では行革に聖域なしとしているにもかかわらず、政府は、なぜ防衛費を特別扱いとされるのか。さらに、財政再建期間中を通じ防衛費については特別扱いをする方針を今後も持続されるのか、この点もあわせて明確に御答弁を願いたいのであります。
 次に、日米軍事技術協力問題に関し防衛事務レベル間の合意が成立したと言われており、その内容は、相互技術交流にとどまらず、兵器の共同研究・開発の検討まで含むとも伝えられております。
 総理は、日米軍事技術協力で従来の政府方針である武器輸出三原則の手直しあるいは変更を考えておられるのか。もし変更をなさるとするならば、これはわが国としてとるべき態度ではないと考えるものでありますが、この際、総理の所信を明確に示されたいのであります。
 さて、私は、核軍縮の問題について政府の姿勢をただすものであります。
 総理は、昨日来の質疑の中で、今日の核拡散の状況を人類に対する脅威であると答弁されました。
 そこで、伺うものでありますが、まず非核三原則堅持に対する鈴木内閣の決意を改めて披瀝していただきたいと思います。また、核拡散防止条約に明記されている核保有国の核軍縮義務が守られていないことは、きわめて遺憾であります。わが国は、唯一の核被爆国として、核保有国に対し、その怠慢な姿勢を強く追及すべきでありますが、総理が人類に対する脅威と認識されるのであれば、総理みずからが国連の軍縮総会に出席して、アメリカとソ連に対し、核軍縮を迫るべきでありますが、どう決意されておられるのか、伺うものであります。(拍手)
 さらに、核廃絶のために、わが国政府はいかなる方途を考えておられるのか、これらの点をあわせて明確にお示しいただきたいと思います。
 次に、私は、当面する外交問題について二、三お尋ねするものであります。
 過日、三年ぶりに日韓閣僚会議が開かれました。韓国側の五年間六十億ドルの経済協力要請の背景には、朝鮮半島情勢に対する厳しい認識があることは言うまでもありません。南北双方の不信、不安、対立が増幅することは、双方の軍拡競争につながり、アジアの緊張を高めることにほかならないと思うのであります。南北朝鮮の緊張緩和のために、わが国として果たすべき役割りを真剣に考えるべきだと思うのでありますが、この問題について政府は具体的にどう考えておられるのか、明らかにしていただきたいのであります。
 次に、日ソ関係でありますが、ニューヨークでの日ソ外相会談で、中断されていた定期外相会議並びに事務レベル会議の再開が合意されたことは、ここ数年来硬直化してきた日ソ関係の改善のための窓口が一応開かれたものと言うことができると思うのであります。
 そこで、日ソ外相会談の具体的内容、今後の対ソ外交並びに北方領土返還問題に関する政府の対応について、それぞれ伺いたいと思います。
 最後に、先般の台風十五号、十八号、異常豪雨などによる被災者の皆様に、この席から心からのお見舞いを申し上げ、災害復旧対策について政府の対応をただすものであります。
 わが党は、被災地域において被災者の激励と救援活動を展開するとともに、被災状況についてつぶさに調査してまいりましたが、その状況は大変深刻であります。そこで、次の諸点について政府の考えを明らかにしていただきたいのであります。
 まず第一に、これらの被害が広範にわたり、かつ大規模であることにかんがみ、激甚災害特別措置法に基づく激甚災害の指定措置を早期に講ずべきだと考えます。また、天災融資法の早期発動の措置もあわせて講ずべきと考えますが、政府の対応を明らかにしていただきたいのであります。
 第二に、災害復旧事業については、再び被災が重なることを防ぐために、利根川支流の小貝川堤防の決壊などの教訓を生かして、原形復旧にとどめることなく、現地の実情に即応した改良復旧事業を積極的に推進するよう、十分に配慮すべきだと考えます。
 これらの諸点について総理の御答弁を求めるものであります。
 さて、この災害復旧と、さきに言及いたしました公務員給与の改定のために、当然今国会に対し補正予算の提案がなされなければならないと考えますが、この点についていかように考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
 以上、私は、行財政改革を中心とし、当面する外交も含めて重点的課題について質問をいたしました。
 総理、あなたが、今国会の審議に避けて通れない国民的課題があり、国家百年の計に立つとされるならば、私の投じた疑問、そして質問に真っ正面からお答えいただきたいことをあえて申し上げ、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 浅井議員にお答えいたします。
 まず、行財政改革の必要性、理念等につきましてお尋ねがございました。
 最近における資源・エネルギー及び環境の制約、人口構成の高齢化、国際社会での役割りの増大など、新たな時代の要請に的確にこたえてまいりますために、簡素で効率的な行政を確立し、また財政の健全性の回復を図って、新しい政策課題に対して積極的に取り組んでいく、そのためには、行財政の対応力を回復強化することは、わが国の将来の発展の基盤を固める上で欠くことのできないものでございます。
 このため、私は、組閣以来、すでに国政の中で最も緊要な課題として行財政の改革に取り組んでまいりました。今国会では、行革関連特例法案等を提出し、御審議をお願いしているところであります。
 申すまでもなく、今般取りまとめた改革措置は、行財政改革に関するいわば第一次の着手と言うべきものであり、今後引き続き第二次、第三次と行財政の抜本的改革問題に取り組む決意でありますが、行財政改革の達成により、国内的には活力ある福祉社会を実現し、対外的には国際社会に一層貢献していくための基盤を固めたいと考えております。
 活力ある福祉社会の具体像についてのお尋ねでありますが、臨調の第一次答申でも述べられているように、自由経済社会の創造的活力を基礎として、個人の自立自助の精神に立脚した家庭や近隣、職場や地域社会での連帯を基礎としつつ、適正な負担のもとに福祉の充実を図るという社会であると理解をいたしております。このような社会の実現を目指して行財政改革を進めてまいる所存でございます。
 次に、来年の臨調基本答申後の本格的な仕事減らし、人減らしを実施する政府の決意についてお尋ねがございました。
 今般の行財政の改革措置に次ぐ今後の抜本的改革への取り組み方につきましては、引き続き臨時行政調査会からの答申等にも注目しつつ、検討、具体化を進めていく方針でありますが、所信表明演説で申し上げたように、行政改革に対する国民の期待と関心にこたえ、全力を挙げて推進してまいる決意であります。
 今後改革すべき課題についてのお尋ねでありますが、今後における臨時行政調査会の審議の方向ともかかわる問題でもあり、政府部内における検討を進めていくに当たっては、各方面からの御意見も十分承って、一つずつ着実に取り組んでまいりたいと思いますので、ぜひ建設的な御意見をお寄せくださいますようにお願いを申し上げます。
 増税なき財政再建を、五十七年度に限ることなく、五十八年度以降も堅持する決意であるかとのお尋ねがありましたが、昭和五十七年度予算の編成に当たっては、増税に頼らず、行財政改革による歳出の削減によって財政再建を進める方針をとっておりますことは御承知のとおりであります。
 五十八年度以降におきましても、引き続き財政再建を進めていく必要がございますが、そのためには、毎年度の予算編成において、財政の関与すべき分野、行政サービス水準と負担のあり方などについて幅広い角度から検討を行い、国民各位の御理解を得ながら財政再建を進めてまいりたいと考えております。
 行革関連特例法案は、その中身からすると、活力ある福祉社会を目指すことと矛盾するのではないかとのお尋ねがありましたが、行革関連特例法案に盛り込まれた措置は、直ちに行政水準の低下や福祉政策の基本に及ぶものではなく、この行財政改革の推進のため、まず当面の財政収支の改善に資する欠くことのできない施策の一環であり、将来における活力ある福祉社会を実現するための第一歩の措置として御理解を賜りたいのであります。
 厚生年金等の国庫負担の特例についてのお尋ねでありますが、今回の措置は、当面の財政負担の軽減に資するために行う臨時特例措置であり、特例適用期間経過後において、減額分の繰り入れ等の適切な措置を講ずることとしておりますので、年金制度の基本を変更するものではなく、今回の措置によって保険料率に影響を及ぼすことにはならないと考えております。
 特例適用期間経過後の繰り入れの具体的な内容、方法については、年金財政の安定を損なわないよう配慮しつつ、国の財政状況を勘案しながら、関係省庁間で十分協議をさせ、適切に対処してまいる所存でございます。
 次に、年金制度についてでありますが、今後の年金制度の改革につきましては、高齢化のピークを迎える三十年ないし四十年後におけるわが国の社会経済情勢に適合した安定的な仕組みとなるように、公的年金制度の構造的な水準、支給要件等について長期的な視点に立った検討を行っていく必要があると考えております。
 今回の行革関連特例法案による措置は、当面の財政負担の軽減に資するために行う臨時特例措置であり、今後の年金制度の改革は、これとは別個の問題として、積極的な前向きの検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、児童手当制度に関しまして、行革関連特例法案の中にある「必要な措置」とは何かとの質問でございました。
 今回の特例措置は時限的な措置であり、また、児童手当制度のあり方につきましては、従来からさまざまな意見が出されているところでありますので、これらの意見を踏まえて、制度全般について検討を行うことを考えております。この検討の結果、三年後を目途として所要の措置を講ずることといたしております。
 行革関連特例法案に関連して、各種年金の物価スライド実施時期の繰り下げ、高額医療費自己負担限度額の引き上げ、国保、児童扶養手当など国庫負担の一部地方への肩がわり等の措置を見直せとの御意見がございました。
 御指摘の諸点につきましては、今後予算編成の過程等で政府としての成案を得ることになります。
 まず、年金の物価スライドの実施時期につきましては、年金を生活の主な支えとしている受給者の立場を十分配慮しなければならない問題でありますが、ゼロシーリングによる予算要求という厳しい財政状況にあることを御理解願わなければならないと考えます。
 また、高額医療費自己負担限度額については五年間据え置かれており、この間の所得の伸び等を勘案して、その額を引き上げる必要があると考えております。
 国民健康保険、児童扶養手当等の給付費の一部を都道府県が負担する問題については、臨時行政調査会の指摘を踏まえて本年末までに検討を加え、結論を得たいと考えております。
 次に、税制に関する御質問にお答えをいたします。
 まず、租税特別措置については、税負担の公平確保の観点から、これまでに徹底した見直しを行ってきているところでありますが、今後とも、社会経済の実態に即して、その見直しに一層の努力を払う所存でございます。
 なお、引当金制度は、法人税の課税所得を合理的に計算するために設けられているものでありますが、その繰入率等について絶えず実態の見直しを行っていくことが必要であるとの考え方には賛成であります。けれども、引当金制度を不公平税制と考えるかどうかは、また別の問題であろうかと存じます。
 次に、所得捕捉の公平の問題でありますが、私も浅井議員同様この点を重視しており、申告水準の向上という観点からの制度面における改善策等について、引き続き検討いたしたいと考えております。また、執行面においては、今後とも誠実な青色申告者の普及、育成等により、さらに納税環境を整備するとともに、可能な限りの調査事務量を確保し、税務調査の充実に一層努めてまいる所存であります。
 公務員の削減計画は純減とせよとの御提言がございましたが、御承知のとおり、政府は、今般第六次定員削減計画により、五年間で五%の削減といたしまして定員削減計画の強化を図ったところであります。
 お説のとおり、国家公務員数については、少数精鋭主義に基づき、必要最小限度にとどめるべきであると考えており、増員要請については厳しく抑制してまいりたいと考えております。
 なお、総定員法は有効に機能していると思いますので、これを改正することは考えておりません。
 公務員二法の早期成立を図れとの御意見でございました。
 御指摘の公務員二法は、国家公務員等の退職手当の是正を図るための退職手当法改正案と、地方公務員について、さきの通常国会で成立させていただいた国家公務員の定年制度に準じた定年制度を導入するための地方公務員法改正案でありますが、いずれも、その速やかな成立が望まれるところであります。ぜひ、この国会で成立をさせていただきたいと存じます。
 仲裁裁定を完全実施せよとの御意見がございましたが、仲裁裁定の取り扱いについては、現在までのところ、国会に付議した当時の状況に格別の変化が認められないと存じますので、引き続き国会の御判断にゆだねることといたしたいと存じます。
 また、人事院勧告の取り扱いについては、これまで維持されてきた良好な労使関係、現下の厳しい財政事情等、諸般の事情を総合的に勘案して慎重に判断する必要がありますので、引き続き給与関係閣僚会議において検討を行うことといたしております。
 行財政改革の景気全般に及ぼす効果についての御質問でありますが、来年度予算の規模、内容等が確定していない現段階においては、具体的に申し上げることは困難であります。一般論として言いますと、歳出規模の圧縮は公共部門による需要の抑制となりますが、反面、公共部門の縮小により民間部門の活力を高めることや、財政の対応力が回復すること等のメリットがあるものと考えられます。
 いずれにしても、行財政改革はぜひとも実現すべき重要な課題であり、民間活力を重視した経済運営を通じて、行財政改革を円滑に実施し得るよう努めてまいりたいと存じます。なお、その際、公共事業等の執行に当たっては、そのときどきの経済情勢を見ながら機動的に対応していく所存であります。
 次に、内需中心の景気回復策に関してでありますが、わが国経済は現在緩やかな回復過程にありますものの、その内容は外需中心で、内需の拡大テンポが緩慢であり、業種別、地域別、規模別の跛行性が見られるのが実情でございます。
 このため、わが国経済を中長期的安定成長路線に定着させ、息の長い成長を持続させるよう、現在、政府部内で、物価安定、均衡ある内需回復、不況産業対策、貿易の拡大均衡などに関する具体策を検討中であり、明十月二日の経済対策閣僚会議で決定することといたしております。
 所得税減税を実施せよとの御意見がございました。
 所得税については、昭和五十三年以来課税最低限が据え置かれておりますため、所得税負担が増加してきているというのは御指摘のとおりでありますが、それでも個人所得に対する所得税負担の割合は、わが国が四・五%に対しまして、アメリカ一一・一%、イギリス一二・六%、西ドイツ九・四%、フランス四・六%となっており、国際的に見ても相当低い水準にあります。
 一方、わが国の財政は、五十六年度においても歳入の二六%以上を公債金収入に依存するという異常な状態にあり、このような財政を再建し、五十九年度までに特例公債から脱却することが緊急の国民的課題とされていることは、浅井議員御承知のとおりであります。したがって、所得税減税の問題については、今後特例公債脱却の明白なめどがつくという事態にならない限り、なかなか困難な選択であると考えておりますが、行財政改革を推進することにより減税が可能となるような状況がつくり出されることを、私も心から望んでおります。(拍手)
 住宅対策についての御質問でありますが、御承知のとおり、本年三月、昭和五十六年度を初年度とする第四期住宅建設五カ年計画を閣議決定いたしました。この計画の的確な実施を図るための方策を検討するため、住宅・宅地関係閣僚連絡会議を設けまして検討を進め、住宅金融の充実、市街化区域農地等の宅地化の促進など、住宅建設の促進及び宅地供給の円滑化に関する九項目の基本的事項について意見の一致を見ております。今後、住宅宅地に関する施策の推進に当たり、これら基本的事項に十分配慮してまいりたいと存じます。
 なお、住宅金融公庫の貸付金利につきましては、特例法案の成立を見、政令を策定する段階におきまして、個々の貸付金の社会的、経済的必要性と国の財政負担との調和が図られるよう考慮しつつ、慎重に検討を進めることといたします。
 次に、構造不況産業の業績悪化、中小企業の倒産増加に対する具体策についてお尋ねがございました。
 現在、わが国経済は緩やかな回復過程にありますが、総じて国内民間需要の回復の足取りは緩慢でありまして、こうした状況を背景に、基礎素材産業の中には業況が悪化している業種もかなり見られること、地域的にも一部で景気の回復のおくれが見られること、中小企業の業況は大企業に比べて必ずしも良好でないことなど、景気の動向には業種別、地域別、規模別の跛行性が見られる状態であります。
 このため、構造不況産業に対しましては、当面需給バランスの改善に努めるとともに、エネルギー、原材料価格の上昇、その変動の国際的差異等の構造問題に対処して、中長期的観点から各業種の国民経済上の位置づけを明確にしつつ、所要の施策について検討を進めることが必要であります。
 また、中小企業につきましては、倒産防止対策の機動的運用を引き続き図るなど、十分な配慮を払うことが必要でございます。
 右のような観点に基づきまして、明日の経済対策閣僚会議で、それぞれの個別的対策を決めることといたしております。
 経済問題の第五点の御質問として物価の問題を挙げられました。
 まず、灯油につきましては、需要とバランスのとれた供給を確保することが、その価格安定のためきわめて重要であります。また、灯油価格自体につきましても、原油価格上昇等によるコストアップ分が市場を通じて適正に反映されることはやむを得ませんが、この過程で便乗値上げなどの不当な行為が行われないよう、所要の価格監視を実施してまいる所存でございます。
 灯油につきましては、以上のような考え方のもとに、明日の経済対策閣僚会議で、その円滑な供給確保等につき決定する予定であります。
 次に、公共料金につきましては、経営の徹底した合理化を前提とし、物価及び国民生活に及ぼす影響を十分考慮して、厳正に取り扱う方針でございます。
 また、政府による規制と物価の関係でありますが、政府による規制は、それが行われている理由や態様において種々のものがあり、物価との関係について一概に論ずることは困難でございます。しかしながら、政府による規制のうち、価格や料金に直接かかわるものにつきましては、その運用に当たり、物価及び国民生活への影響を十分考慮することとしております。
 次に、防衛費についてお尋ねがありました。
 まず、防衛関係費の総額がGNPの一%を超えないことをめどとして防衛力の整備を行うという方針につきましては、現在これを変更する考えはございません。
 また、防衛費の概算要求枠につきましては、防衛関係費を特別扱いしたわけではなく、また、今後の行財政改革に当たり防衛を聖域とするつもりもありませんが、わが国の防衛については、一貫して、憲法及び基本的防衛政策のもとで、自衛のため必要最小限度の防衛力を着実に整備していく方針をとってきており、今後も、この方針を堅持してまいりたいと思います。
 次に、防衛技術の日米間の交流につきましては、防衛庁と米国防省との会談で、米側から、これまでの一方的な技術の流れを相互的な流れに変えていくべきであるという一般的な期待の表明が行われたようでありますが、米側から特定の技術について具体的希望が表明されているわけではありません。したがって、本件につき何らかの結論を出したというような事実はございません。
 政府としましては、武器輸出三原則及び政府統一方針は今後ともこれを堅持してまいりますが、米国との間には日米安保条約等との関連もありますから、この点につき目下関係省庁で研究しているところでございます。
 次に、核の問題についてお答えいたします。
 非核三原則につきましては、政府としては、平和憲法の精神及びわが国が唯一の被爆国である等の事実を踏まえ、非核三原則を今後とも堅持していく方針であることは、これまでも国会等でしばしば申し上げておるとおりであります。
 また、国際場裏において、わが国は従来より軍縮分野における最優先課題として核軍縮に取り組んできており、さきの国連総会においても、外務大臣より特に米ソ両国に対し核軍縮努力を要請し、各国の共感を得た次第であります。
 わが国としては、核兵器の究極的廃絶を目指して、実現可能な具体的措置を一歩一歩積み重ねていくべきであるとの立場から、特に包括的核実験禁止を主張してきており、来年の第二回軍縮特別総会においても、その早期実現を強く訴える所存であります。
 明年の軍縮特別総会に私自身出席せよとのお話につきましては、今後の問題として検討させていただきたいと思います。
 最近、韓国の全斗煥大統領は南北対話について積極的な提案を行いました。また、浅井議員御指摘の国連への南北同時加盟についても、韓国側は積極的な関心を有していると承知しております。しかし、残念ながら対話の一方の当事者はこれに否定的な反応を示しているようであります。私は、実質的な南北対話の実現は、朝鮮半島の緊張緩和に大きく役立つものであり、こうした対話の実現のため、引き続きじみちな努力が続けられるべきものと考えております。
 わが国といたしましても、南北対話の再開や国連への南北同時加盟、南北間の緊張緩和のための諸方策について、韓国を初め友好諸国の立場をも十分踏まえながら、日本としてできることがあれば協力してまいりたいと考えております。
 次に、日ソ関係についてお答えいたします。
 ニューヨークにおける先般の日ソ外相会談は良好な零囲気のもとで行われました。まず園田大臣より米ソ間の軍備競争について懸念を表明し、軍縮交渉を手始めに米ソの対話を進めるべきである旨強く主張いたしました。これに対しグロムイコ外相は、軍備規制について米国と交渉する用意がある旨述べた由であります。
 北方領土問題につきましては、園田大臣よりわが方の立場を繰り返し述べたのに対し、ソ連側は従来の立場は変わらないとして、遺憾ながら議論は平行線でありました。
 ただし、今回の会談において日ソ間の対話の必要性について双方の考えが一致した結果、事務レベル協議及び外相協議の開催が合意されました。私はこれを、日ソ間の具体的対話をさらに進める糸口ができたという点で評価をいたしております。
 ただし、日ソ間の真の友好関係の確立のためには、北方領土問題を解決しなければなりません。政府は、北方領土返還に対する国民の総意を踏まえ、今後とも通すべき筋は通しつつ、息長い姿勢で粘り強く対ソ折衝を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
 次に、先般の台風十五号などによる災害対策につきましては、担当大臣が被災地に赴くとともに、関係省庁の対策会議を開催し、復旧対策に全力を傾注しているところであります。
 激甚災害の指定及び天災融資法の発動については、被害の実情に即し、適切に対処すべく目下検討を進めているところであります。
 なお、災害復旧事業については早期にこれを実施するとともに、被害の状況によっては、原形復旧にとどまらず改良復旧を進め、災害の再発防止に努めてまいる所存であります。
 今年度の補正予算についてのお尋ねでありますが、五十六年度の追加財政需要として考えられる項目は、災害復旧等事業費、義務的経費の精算及び仮に人事院勧告を実施することとした場合には給与改善費の追加などがございます。しかし、これらの追加財政需要がどの程度になるかについては、現時点では不確定要素が多く、何とも申し上げられません。したがって、補正予算についても確たることを申し上げられない状況でありますので、御理解を賜りたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(福田一君) 永末英一君。
    〔永末英一君登壇〕
#7
○永末英一君 私は、民社党・国民連合を代表しまして、行政改革推進のあり方並びに安全保障問題に関し、鈴木総理の政治姿勢に対して質問を行いたいと存じます。
 質問に先んじまして、この夏被害を受けられました方々に対し、心からお見舞いを申し上げる次第であります。
 さて、第一の質問は、行政改革に関してであります。
 票田を培うため経済成長に悪乗りをいたしました自民党政治は、行政の肥大化をもたらしました。石油危機の前後から減速経済に切りかえられたにもかかわらず、依然として自民党政治の悪弊はやまず、ために巨額の赤字国債を発行せざるを得なくなりまして、表面を糊塗しようと図りましたが、ついに財政は麻痺し、行政改革は待ったなしの天の声になったのであります。(拍手)
 わが民社党は、これまで一貫して行財政改革の断行を主張してまいりました。すなわち、昭和五十二年には政府への第一次提言、五十四年には第二次提言を行い、昨年末の民社、自民両党首会談並びに本年の通常国会における佐々木委員長の代表質問におきまして、増税によらない財政再建を行政改革の断行によって行えと主張いたしました。政府は、第二臨調の二年後の最終答申まで何事もなさないで漫然と日を送るのではなく、第二臨調をして五十七年度予算編成前に第一次答申を提示せしめ、行革の理念、方向を明示するとともに、五十七年度予算は、この線に沿って編成せよと主張したのであります。
 鈴木内閣がわれわれの主張に沿って作業を進め、七月十日に第二臨調の第一次答申を出さしめて、これに基づき今回の臨時国会に臨んだ姿勢につきましては、一応評価をいたします。しかしながら、本臨時国会に提案されました行政改革関連特例法案や、また、政府の五十七年度予算編成方針、さらに首相の所信表明や御答弁を伺っておりますと、政府の行革に取り組む姿勢には、二つの点において基本的な欠陥があると言わなければなりません。
 第一の問題は、行革の理念についてであります。
 けさ総理は、理念よりも実行と参議院で言われた様子でございますが、総理、あなたは目標も定めずに船を動かすのですか。われわれは、目標と、それに至る計画とを含めて理念と呼んでおります。第二臨調答申には、いささかこれに類するものが書かれてありますが、政府の「行革大綱」にはいかなるビジョンも展望も明記されておりません。(拍手)
 政府は、この際、国家の任務を厳しく反省し、最小限度に切り詰めた組織でその任務の達成を図るべきだと考えます。内に治安を維持し、外に安全を図るのは国家の基本的な任務です。十九世紀の半ば以来、福祉社会の建設が国家の基本的な任務の一つになってきたことを銘記する必要があります。しかも、わが国は今後急速に高齢化社会に突入せざるを得ません。この高齢化社会における福祉に活力を与え得る行政をつくることが行革の目的だとわれわれは考えます。そのためには、年金、雇用、医療、社会福祉等についてのナショナルミニマムをしっかりと確保し、必要度の高い福祉施策は行革の中でも発展させるという、総理のかたい決意を国民に示すべきであります。(拍手)
 行政改革特例法案は、法律による補助金、負担金を五十七年度から三年間削減することを定めるだけであって、予算による補助金の一割削減とともに、財政措置すなわちつじつま合わせやツケ回しにすぎず、仕事減らしや組織減らしという行政減量にどう結びつくか、全く明らかではありません。(拍手)
 第二臨調は、来年夏ごろに基本答申を出すよう審議を再開いたしておりますが、総理は、この結果を待つことなく、総理として、この際、行革の理念並びに行政の減量規模、さらに行革を実現するプログラムと年数について、あなたの信ずるところを国民に率直にお答えを願いたい。特に、この行革は国家百年の大計と総理御自身がおっしゃっておられるのでありますから、百年のビジョンを明確にしていただきたい。
 総理は一体国民の福祉についてどう考えておられるのでしょうか。以下の諸点について明確にお答えをお願いいたします。
 一、厚生年金等に係る国庫負担繰り入れ減額分は、後年度に完全補てんされるのか。
 二、各種年金の物価スライドの実施時期は現行どおりとするのか。
 三、高額医療費自己負担限度額の大幅引き上げは行わないようにするのか。
 四、住宅金融公庫の五・五%貸付利子は今後とも維持するのか。
 明確に答えられたい。
 また、答申に述べられております不公正税制の是正等、歳入面の対策は先送りされて全く不明であります。所信表明でも内容はわかりません。
 私は、不公正税制の是正について、この際、二つの問題を提起したいのであります。
 このほど国税庁は、昨年の民間企業の企業実態の調査結果を発表し、サラリーマンに重い税金の実態を明らかにいたしました。これによりますと、昨年の民間企業の給与総額は前年比で七・三%ふえましたが、所得税の総額は一四・八%も増加いたしております。一人当たりの収入は五・七%増でありましたが、所得税は一二・三%もふえているのであります。中堅所得者の例をとりますと、所得税は実に二〇%を超える増加になっております。過去四年間に民間企業のサラリーマンの平均年収が一八・四%しかふえなかったのに、所得税は四八・七%も増加しているのは異常と言わなければなりません。(拍手)
 このように、勤労者の所得を税金が食い荒らしているような状況では、国内需要の六割を占める個人消費支出が停滞し、景気の好転はとうてい見込まれません。この四年間、勤労者の課税最低限をくぎづけにしてきた暴虐な自民党政治の結果と言わなければなりません。(拍手)総理に、サラリーマン減税を行うよう強く要求いたします。お答え願いたい。
 次に、中小企業会社の相続税問題について伺いたい。
 日本経済の特色は、底辺を支える中小企業の底力によって発展してきたことは何人も認めるところでありますが、戦後は、これら中小企業が会社形態をとり、その数は百六十万にも及ぼうといたしております。これらのほとんどは非上場株式会社であり、同族会社であります。そしていまや、戦後の経済混乱期と経済成長期を刻苦勉励してきた中小企業経営者は年をとり、世代の交代期を迎え、相続税問題が続発いたしておるのであります。
 政府は、取引相場のない株式の評価は、大会社につきましては類似業種比準方式、小会社については純資産価額方式をとっております。類似業種比準方式につきましても、その分類や計算方法は全く恣意的であり、合理性を欠いておりますが、特に問題なのは小会社の場合であります。
 小会社は、個人営業者とのバランスをとるという理屈で、個人の場合は死亡で相続が開始されるのだから、会社は解散したと想定して精算し、その資産評価を行い、それに一定率を掛け、株数で割って株式の評価がなされておりますが、近年、土地価格の異常な高騰に伴い株式評価も異常に高くなるため、税負担にたえられず、事業の継続をあきらめるケースがふえております。このようなやり方が続けば、小企業会社は、経営者が死亡すれば軒並みに事業ストップに追い込まれることになります。日本経済の一大問題と言わなければなりません。
 わが党は、数年前からこの問題に取り組み、株式評価に際し収益還元方式の加味や、物納を認めさせることなど、若干の改善を見ましたが、根本的な解決は放置されたままです。
 総理は、これら中小企業会社の相続株の評価を改善する意思があるかどうか伺いたい。
 第二は、行政機構の合理化、簡素化についての姿勢であります。
 行政改革とは、変化する行政需要に適切に対応し、必要な行政サービスを確保するため、不必要に肥大したぜい肉を落とすことであります。このためには、国の行政機構、特殊法人、地方自治体の全面的な見直し、合理化、効率化を最優先課題として取り上げねばなりません。五年間で五%の国家公務員の定員削減と新規採用の抑制による縮減をうたっていますが、これは四万五千人実質削減でなくてはなりません。先ほど総理のお話がございましたが、総定員法の見直しをしなければならぬのです。それをやられる決意があるかどうか、改めて伺いたい。(拍手)
 今回提案の、法律による補助金や負担金の期限つき削減も、予算による補助金削減も、すべて地方団体に負担を押しつけるものであります。一体政府は、これによって制度、機構を簡素化するつもりか、それとも複雑化するつもりか、まことに疑わしいと言わなければなりません。
 われわれは、制度、機構の変革は地方分権を志向しつつ進めるべきだと考えていますが、政府のやり方は、まるでかじを失った船が漂流するようなものであります。補助金の整備合理化は、単に金額を削減するだけではなく、補助金制度全般の抜本的改革を断行することでなければなりません。
 この観点から、わが党は、補助金交付に伴う膨大なむだと労力を省き、地方の自主性を生かすため、まず建設関係補助金を一括して交付する第二交付税制度を導入すべきであると主張してきたところでありますが、これらの諸点について鈴木総理の見解を伺いたい。
 次に、前国会以来継続審議になっている仲裁裁定並びに人事院勧告について質問いたします。
 政府は、第二臨調答申が「本年度の給与改定について、適正な抑制措置を講ずる。」と述べている点をとらえ、これらを国会駆け引きの道具に使ったり、あわよくばこれを値切ろうと考えている節があります。けしからぬ話であります。政府は、答申が「行政の合理化、効率化の推進」の項で述べているすべての問題に誠実に対処しないで、この項だけを金科玉条のように振り回していまだに態度を決定しないやり方は、こうかつきわまりないものと言わなければなりません。(拍手)答申も認めているように、これらは労働基本権の制約と見合いつつ、労使間の多年の慣行によって成熟してきたものであります。
 わが党は、公務員退職金の抑制、定年制の実施、共済年金の是正、成績主義の導入、定員の実質削減など、国家公務員に対し、国民の立場から、あえてつらいことを要望し、その一部は実現を図っているところであります。
 政府は、仲裁裁定を完全実施し、人事院勧告制度を尊重し、今回の勧告を誠実に実施する最大限の努力をすべきであります。総理の所見を伺います。(拍手)
 次に、安全保障問題に関する総理の基本的な見解をお伺いいたします。
 五月の日米首脳会談、これを受けて行われた六月のハワイ安保事務レベル協議、さらに大村・ワインバーガー会談を通じまして、日米間にどのような意見の一致と食い違いがあったのか、この際、国民の前に明らかにせられたい。
 総理は、日米共同声明第八項において「日米両国間における適切な役割の分担」を合意し、これに続いて「日本の領域及び周辺海・空域における防衛力を改善するため、なお一層の努力を行う」ことを確約いたしております。これは、どのような情勢分析の合意の上に成り立ったものなのでありましょうか。
 鈴木総理は、共同声明において、ソ連の軍事力の増強について、レーガン大統領とともに憂慮の念を示しております。
 一九六〇年代以来続行されたソ連の軍事力の強化は、核戦力においても通常戦力においても、いまや西側を凌駕し、ソ連は多正面同時作戦を行う能力を持つに至ったと言われております。
 これに対してアメリカ側の西太平洋における戦力は、一九七九年のイラン事件以後に見られたように、第七艦隊の基幹空母兵力はすべてインド洋に移動し、沖繩における海兵隊も緊急展開部隊の一部として南西アジアを指向しております。
 本年九月、下田会議に出席したアメリカの元国務次官補代理は、アメリカがアジアにおいて十分な地域戦争遂行能力をもはや保有していないにもかかわらず、日本の防衛庁は、地域核戦争の脅威、通常侵略が、現在の日米合同計画下で、日米軍の組み合わせにより何とか対処できるかのごとく想定していると述べ、わが国の防衛政策が虚構の想定に基づいているときめつけておるのでありますが、さきの一連の日米会談で、ソ連による同時多発の戦争が、いやなことですが起こって、日本が極東ソ連軍から攻撃を受けた場合、日本支援のためのアメリカの来援はきわめて限られ、時間的にも間に合わない可能性が強いことを、アメリカ側が日本側に述べたと伝えられておるのであります。
 鈴木総理が共同声明で「役割の分担」を承知したのは、このような情勢認識を持ったからではありませんか。現に鈴木総理は、レーガン大統領との会談後の記者会見で、日本周辺海域数百海里、航路帯千海里は、日本の庭先であるからこれを守ると明言しておられるのは、これを証明するものであると言わなくてはなりません。
 政府は、五六中業において、まず五十一年策定の「防衛計画大綱」の水準に達したいと述べていますが、さきに述べた国際情勢の判断は、五十一年大綱作成時の国際情勢の判断とは全く違ったものだと言わなければなりません。
 われわれは、この際、基盤防衛力構想などという、ひとりよがりの理屈の上に立った「防衛計画大綱」を見直して、現状に合った防衛方針を早急に打ち立てねばならないと思いますが、総理の所信を明確にされたいのであります。(拍手)
 また、さきのハワイ協議で日本側に示されたと伝えられるアメリカからの装備要請は、その大部分が米国製の武器、装備の輸入につながりかねないものであります。基本的には、政府が武器開発に対する研究費を出し惜しみ、また、装備は使えなくならなければ新しくしないという損耗更新の思想にしがみついている防衛庁の現状からすれば、自衛隊の装備が世界の水準からおくれるのは、いやなことですが当然だと言わなければなりません。
 わが国独自の開発による航空機の比率は、五十五年、五十六年平均一一%、また誘導武器は一八%にすぎません。武器の輸入率はきわめて高いのが現状です。しかし、外国の武器を輸入するだけでは、とうてい自衛隊の継戦能力を培うことはできません。自衛隊の装備が、わが国民の技術開発力によって生み出され、しかも、それが世界の水準を抜くものである場合、初めてこれらの装備が抑止力を発揮するのであります。兵器生産の位置づけについて、総理は一体どうお考えか、お答えを願いたい。
 総理は、共同声明の第七項で、「先進民主主義諸国は、西側全体の安全を総合的に図るために、整合性のとれた形で対応することが重要である」と述べ、同様のことをオタワ・サミットでも主張いたしました。これは、総理持論の総合安全保障の考えを述べたものだと言われておりますが、問題は、総合安全保障の名において、さきの「役割の分担」の場合、日本は軍事的な役割りを分担するのではなく、非軍事的役割りのみを分担するのだなどと、まさか総理は考えてはおられないだろうと思いますが、この際、明確にしてください。
 さらに鈴木総理はレーガン大統領とともに「朝鮮半島における平和の維持を促進すること」に意見の一致を見ています。こうした背景がありながら、九月に行われた日韓定期閣僚会議はついに合意に達することができず、異例の共同新聞発表で、双方の意見の食い違いをあいまいにしたまま閉会しました。
 鈴木総理の総合安全保障の観念が、国際的には政治、軍事、経済等の広範囲にわたり、また、共同新聞発表にあるように、「日本側閣僚は、韓国の防衛努力が朝鮮半島の勢力均衡に寄与していることを高く評価」したのなら、安保絡みの経済協力はごめんだなどというしゃしく定規な態度に固執して会談を不調に終わらしめたことは、首尾一貫した態度とは言えないと思います。鈴木総理のこの点についての見解を伺いたい。
 総理は、総合安全保障をしばしば口にされておられますが、それは、単に国際的な意味だけではなく、わが国の安全に対する政府全体としての対処の姿勢に焦点を当てたものであると考えられます。
 さきに閣議了承のもとに発行された本年度版の「日本の防衛」いわゆる防衛白書においては「民間防衛」について四ページ半が費やされております。これまで民間防衛については半ページ程度であったのに比べますと、まことに画期的なことです。これは防衛庁が民間防衛の重要性を認識した結果であると存じますが、内容は、諸外国の事例を紹介するのみであって、わが国につきましては「国民のコンセンサス」が必要であると述べるにとどまっております。しかし、民間防衛は防衛庁のみでできる問題ではありません。まさに総理のリーダーシップのもと、各省庁が協力して行う総合安全保障にかかわる問題だと言わなければなりません。総理の御見解を承りたいのであります。(拍手)
 同時に、安全保障に関しては、問題は提起されたがそのまま放てきされていることが多々あります。たとえば、昭和五十三年栗栖発言で問題化した奇襲対処について、政府は慎重に検討ということで、すでに三年もたっていますが一歩も前進しておりません。このような、国民の生命がかかり、寸秒を争う問題に、政府がその場しのぎの無責任な答弁を繰り返すだけでは、国民の政治不信を増幅するだけであります。これら二つの問題について、総理の見解を伺います。(拍手)
 次は、北方領土問題、対ソ外交についてであります。
 総理が、先般、北方領土を初めて視察されたことをわれわれは多としています。しかし、北方領土に関する情勢は一段と厳しさを増しております。たとえば、北方領土四島のうち三島には、ソ連の自動車化狙撃師団に準ずる部隊が駐とんしていると言われています。自動車化狙撃師団は、二百八十八両の戦車、四百七十五両の歩兵戦闘車、兵員輸送車等を持っております。
 これに対応する北海道東部を警備するわが第五師団は、実員五千名の乙師団、六一式戦車二十四両、七四式十一両、合計三十五両と、十名乗り兵員輸送車十三両にすぎません。また、対空兵装としましては、スイス製の三十五ミリL90三基六門、四十年前の戦争でアメリカが使いました七十五ミリ高角砲四門だけであります。こんなありさまで、どうして国が守れるのでしょうか。北海道防衛のために、集中すべき航空力、海上打撃力、陸上力等について真剣に対処すべきときが来ていると言わなければなりません。(拍手)十分な排除力を持って初めて抑止力となるのであります。総理のお考えをお伺いしたい。
 このような準備の上に、北方領土四島返還を内容とする平和条約交渉のため、日ソ間のハイレベルの政治会談を、あらゆるチャンスをとらえて呼びかけることが必要だとわれわれは考えております。特にいま必要なことは、日本の防衛努力と相まった平和戦略の推進であります。
 わが党の考える平和戦略の問題点は、本年の通常国会で、この演壇で佐々木委員長から詳しく述べたところでありますが、緊張緩和のための平和戦略について、総理としてはどのような展望をお持ちなのか。また、どのような具体策を進めようとしておられるのか。私どもの佐々木委員長は、そのために現在訪米中でもありますが、この際、総理の考えを具体的に伺っておきたいと存じます。
 また、先般、国連総会に関連して園田・グロムイコ会談が行われました。定期外相会議の開催について合意に達したと総理は言われましたが、だといたしますと、ソ連軍のアフガニスタン即時無条件全面撤退を条件にしたのかどうか。また、これに関して日本のソ連への経済制裁を中止するつもりかどうか、明らかにしていただきたいのであります。
 経済水域二百海里設定以後、道東地区漁業は衰退し、あきらめと焦りが「領土より魚を」という悲痛な声をすら出さしめていることも事実です。根室を中心とする道東の地域経済振興策を確立することが不可欠と考えますが、これらに対する総理の所見を承りたい。
 最後に、総理の外交に対する基本的姿勢について伺いたい。
 六月、ハワイ協議の前に鈴木総理は、五十七年度防衛予算七・五%増を決めて、これをアメリカに知らせました。レーガン政権は、成立の当初、軍事予算の増額を決めましたが、このほど百三十億ドル減額を発表しました。この結果、わが国の防衛予算増に対するアメリカ側の期待は一層強くなるものと思われます。
 昨年、大平首相存命中の訪米でカーター大統領との会談に基づいて、鈴木内閣は、一たん次年度予算で九・七%防衛予算を増加すると決めながら、結局七・六一%増にとどまったことに対し、アメリカ側が非常な不信の念を持ったことは天下周知の事実であります。ことしもまた、私から言わせれば言わずもがなの数字をアメリカに伝えたため、五十七年度予算編成の結果七・五%を割れば、アメリカの対日不信感が倍増することは必至と言わなければなりません。行革のさなか、総理は一体どうするつもりか、伺いたい。
 さらに問題なのは、去る六月二十日、マニラにおける園田外相の発言に対する総理の態度であります。
 新聞報道によれば、同行記者団の共同インタビューで、五月の日米共同声明に対し、これは外交上拘束力がないとか、いまどき共同声明があるのがおかしいとか、これからはあんなものはなくなるとか、まさに一国の外務大臣の発言としては不謹慎と思われる言葉が出たと伝えられております。
 外務大臣は、これらの発言を、その五時間後取り消したとのことでありますが、しかし、事は重大であると私は思います。しかも、その訂正の記者会見の際も、共同声明は今後なくなるとの発言はそのままで結構だと、いわば開き直ったような態度であったと伝えられております。私は、これらの一連の発言を見逃すわけにはまいりません。
 総理は、このマニラ発言を一体どう受けとめておられるのか。また、それについて、その後どのような措置をとられたか。さらに、今後日米間において共同声明を出さない方針なのか、国民の納得のいく答弁を承りたい。(拍手)
 総理、あなたははからずも総理に就任されて一年以上を経過いたしました。この一年の軌跡を見ると、あなたは自分の信条と行為とが食い違うために、つぶやき首相だとか、行きつ戻りつ首相だとかいう異名を進呈せられております。これは、きわめてあなたにとって不本意なことであると思います。
 私が本日提起した諸問題に対して、あなたがこの異名をきれいさっぱりとぬぐい去り、文字を読むのではなく、あなた御自身の心から出てくる言葉で御答弁をいただくよう期待して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#8
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 永末議員にお答えをいたします。
 まず、今回の行革の理念についてお尋ねがございました。
 私は、最近における資源・エネルギー及び環境の制約、人口構成の高齢化、国際社会での役割りの増大など、新しい時代がわが国に要請をしておるわけでありますが、これに応じて、簡素で効率的な行政の確立、財政の健全性の回復を図り、行財政の対応力を回復強化することが急務であると考えております。このため、行財政の改革を、国政の中でも特に緊要な課題と位置づけて、これに取り組んでいるところであります。
 申すまでもなく、今般取りまとめた改革措置は、行財政改革に関するいわば第一次の着手と言うべきものでありまして、今後臨時行政調査会における審議の方向にも十分注目を払いつつ、各方面の御意見をも承り、引き続き行財政の抜本的な改革問題に取り組まなければならないと考えております。
 私は、行財政改革によって、国内的には活力ある福祉社会を実現し、対外的には国際社会に一層貢献していくことの可能な行財政の基盤を確立することが必要であると考えており、今後行財政のあり方についての国民一般のコンセンサスの方向を見きわめつつ、行政の根本的改革の推進に当たってまいる所存でございます。
 国民の福祉に関して、最初に、厚生年金等の国庫負担繰り入れ減額分は後年度に完全補てんされるのかというお尋ねがございましたが、今回の措置により年金財政の安定を損なうことのないよう、特例適用期間経過後において、国の財政状況を勘案をしながら、減額分の繰り入れ等の適切な措置を講じたいと考えております。
 所得税減税についてお尋ねがありましたが、今後、歳出歳入両面の抜本的見直しを通じて、特例公債脱却の明白な目途がつくという事態にならない限り、なかなか困難な選択であると存じます。
 中小企業の株式の評価に関する問題でありますが、相続税の財産評価は時価によることを原則といたしております。これは、事業用財産であれ、居住用財産であれ、財産の種類、用途を問わず、共通の尺度である時価でとらえて課税するのが最も公平であるとの考えによるものでありまして、中小企業の株式に関する現在の評価方式は、国税庁が学識経験者の意見を聞いて慎重に決めているものであると聞いております。今後とも、実態に即した評価について心がけてまいりたいと存じます。
 定員削減の問題でありますが、政府は、臨時行政調査会の答申を踏まえ、定員削減計画を改定強化し、昭和五十七年度から六十一年度の五年間に、事務・事業の合理化、効率化、簡素化等により、国家公務員を五%削減する第六次定員削減計画を今般策定をいたしました。
 国家公務員数は、少数精鋭主義に基づき、必要最小限度にとどめるべきであると考えており、増員要請については厳しく抑制してまいる所存でございます。
 しかし、御提案が五%純減の計画とせよということでありますと、それは現実の問題としてなかなか困難ではないかと存じます。
 なお、国家公務員の総数を規制し、その範囲内で弾力的な省庁間の定員管理を可能としている総定員法は、現在有効に機能していると考えておりますので、特に見直しを行うことはいまのところ考えておりません。
 次に、補助金を一括交付する第二交付税制度を導入すべきであるとの御意見がありました。
 補助金交付に伴うむだや労力を省くという御趣旨は理解できるのでありますが、第二交付税の御提案については賛成いたしかねるのでございます。
 たとえば、公共事業については道路、河川など各種の事業があり、それぞれの事業は、全国的観点から整合性をとりつつ計画的に実施されているところであります。したがって、地方に財源を一括して付与し、その使途を地方に任せるということについては、種々慎重に検討すべき問題があると考えられます。
 なお、補助金の問題につきましては、第二次臨調等において国、地方の事務配分問題の一環として御議論いただくのも一法かと考えられますが、御提案の趣旨も踏まえ、地方の自主性を生かすよう、補助金等の統合、メニュー化は今後とも推進してまいる所存でございます。
 次に、仲裁裁定の取り扱いにつきましては、再々申し上げておりますとおり、現在までのところ、国会に付議した当時の状況に特別の変化が認められませんので、引き続き国会の御判断にゆだねることとしております。
 人事院勧告の取り扱いにつきましては、これまた再三申し上げておるとおりでありまして、これまで維持されてきた良好な労使関係、現下の厳しい財政事情など、諸般の事情を総合的に勘案をして慎重に判断する必要がありますので、引き続き給与関係閣僚会議において検討を行うことといたしております。
 次に、日米安全保障問題についてお答えいたします。
 去る五月の日米首脳会談の後、日米安保事務レベル協議、大村防衛庁長官の訪米など、安全保障問題については日米間で率直な意見交換を行ってきております。日米双方とも、最近の国際情勢がその厳しさを増しているとの共通の基本認識を踏まえ、おのおのがその安全保障上の努力をより一層進めていくことが必要であると考えており、安全保障問題をめぐり、日米間に基本的な食い違いがあるとは考えておりません。
 政府といたしましては、憲法及び基本的防衛政策に従って自主的にその防衛努力を進めていく考えであり、今後とも、日米間の安全保障問題につきましても米側と緊密な意見交換を続け、日米間の相互理解を深めていきたいと考えております。
 次に、「防衛計画の大綱」の見直しについて御意見がございました。
 最近の国際情勢が、昭和五十一年の同大綱の策定期と比べて厳しくなっているのは事実でありますが、わが国の防衛力は、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準にいまだ到達していない段階でありますので、それを可及的速やかに達成することが必要であると考えているところでありまして、いま直ちに大綱を見直すことは考えておりません。なお、自衛隊の装備品の調達について御意見がございました。
 この問題については、一律に国産するとか輸入にするとかいうのは適当ではなく、国産、輸入のそれぞれの長所、短所を十分に勘案し、効率的かつ経済的な方法で調達する必要があると考えます。
 その際、防衛の本質から見て、国を守るべき装備はできる限りわが国の国土、国情に適したものをみずから整えるとともに、防衛生産の基盤及び技術力の維持、育成を図るという観点から、装備の自主的開発及び国産を推進することについて十分留意しているところであります。
 次に、いわゆる役割り分担の問題についてであります。
 さきの共同声明で述べている役割り分担の考え方は、従来に比し新しいことを述べたものではありません。わが国が集団的自衛権を行使し得ないことは憲法上明らかであり、したがって、極東の平和と安定のための日本の役割りは、日米安保条約の円滑な運用のほか、政治、経済、社会、文化の各分野における積極的平和外交の展開に重点が置かれることとなります。
 なお、わが国が自国の防衛上の観点から自衛力の整備を進めることは当然であります。
 先般の日韓定期閣僚会議は三年ぶりに開催されたものでありますが、韓国の新しい世代を担った新政権との意思疎通を促進し、日韓関係をさらに信頼に結ばれた関係に導いていくための基礎をつくったものとして有意義であったと考えております。
 韓国の政治的、経済的、社会的な安定は、朝鮮半島の平和と安定に不可欠であり、朝鮮半島の平和と安定は、わが国の平和と安全に深いかかわりがあります。この意味で、対韓経済協力はわが国の総合安全保障に資するものであります。
 しかしながら、これは韓国の安全保障の一環ないし防衛費の肩がわりとしての経済協力を行うことではなく、わが国としては、あくまで、隣国の友邦たる韓国の経済社会開発と民生安定のために、その国づくりに協力していくとの立場であります。政府としましては、今後ともこうした立場を踏まえつつ、わが国の経済協力の基本方針のもとにできる限りの協力を行う方途につき、韓国側と誠意を持って話し合っていく所存でございます。
 次に、いわゆる民間防衛の問題でありますが、この問題は、国民の生命及び財産の保護に直接結びつく重要な問題であると考えておりますが、同時に、国民的コンセンサスを得ながら対処していかなければならない問題であります。政府全体として、今後とも慎重に検討してまいりたいと考えております。
 次に、奇襲対処の問題についてお尋ねがありましたが、御承知のとおり自衛隊法は、外部からの武力攻撃のおそれがある段階で防衛出動を命ずることができることと規定するなど、奇襲に対処するための基本的法制はできているところであります。
 したがって、奇襲対処問題については、何よりも、実際上奇襲を受けることがないようにすることが最も重要であるとの基本的な考え方に立って、従来から諸施策を進めているところであります。
 また、万々が一、奇襲の事態が発生したような場合において自衛隊がとるべき方策については、その被害を局限するとともに、文民統制のもとに整々と任務を遂行することが重要であるとの観点に立って、鋭意詰めを行っていると承知をいたしております。
 次に、北海道防衛について真剣に対処すべきであるとの御意見がありました。
 わが国は、「防衛計画の大綱」に基づき、わが国を防衛するための質の高い防衛力の整備を行っているところでありますが、北海道防衛についても、その地理的特性にもかんがみまして、陸海空各自衛隊の装備の更新、近代化等により、その防衛能力の向上に努めているところであります。
 次に、国際平和の問題についてお答えいたします。
 今日、国際社会は政治、軍事、経済の各分野において種々の不安定要因を抱えており、いかにして国際秩序の安定化を図るかは、まさに人類に課せられた最大の課題であります。わが国の平和と繁栄も、世界の平和と安定がなければ確保し得ないことは、繰り返し申し述べているとおりであります。
 このような観点から、わが国としては、平和は与えられるものではなく、みずから主体的に追求していくべきものであるとの基本的認識のもとに、国際社会における安定勢力として、また、自由と民主主義を基本理念とする諸国の一員として、積極的に国際秩序の安定化のための役割りを果たしていくことが最も肝要であると考えております。
 私は、このような基本認識のもとに、具体的には、たとえば全面完全軍縮に向けての積極的貢献、開発途上国に対する経済協力の強化、世界経済の安定的拡大への寄与あるいは第三世界における地域的紛争や対立の解消のための外交活動を強化するなど、政治、経済面において一層積極的な活動を展開してまいる考えであります。
 日ソの関係についてお答えいたします。
 先般の園田・グロムイコ会談において、日ソ双方は、日ソ間の対話を行う必要性について共通の認識が得られましたが、その際、日本側からは、北方領土問題を含め話し合うものであるというわが方の立場を強調いたしました。その結果、日ソ事務レベル協議及び日ソ外相間の協議の開催について、原則的な合意が達成された次第であります。
 今後、日ソ間で協議が行われる場合、わが方として北方領土問題を取り上げることは当然でありますが、さらにわが方としては、このような対話の場を通じ、ソ連がソ連軍のアフガニスタン即時無条件全面撤退を行うよう、働きかけていきたいと考えております。
 なお、アフガニスタンの事態に関連しての対ソ措置につきましては、アフガニスタン情勢に基本的変化が見られない現在、当面、従来のわが方の基本的立場を変更する考えはございません。
 根室を中心とする道東の地域経済振興策についてでありますが、私は、去る九月十日、歴代総理として初めて北方領土の視察を行い、根室等の地域経済や住民活動、生活の実態を目の当たりにしてまいりました。現地における懇談で、地元の生の声を直接伺う機会を持ったのでございます。
 北方領土隣接地域の安定振興対策につきましては、昨年十二月に関係省庁の連絡会議を設置し、地元の要望に対して、現行制度の中で最大限の配慮を行ったのでありまして、これにより根室地域の安定振興の要請にこたえてきているところであります。
 今後とも、根室地域の安定振興策につきましては、連絡会議の場を通じて地元の要望を十分把握し、積極的に対処していく所存であります。
 次に、防衛費が予算編成の結果で七・五%を割ればアメリカの対日不信感が増すのではないかとの懸念を表明されましたが、五十七年度の防衛費につきましては、今後政府部内で調整の上政府原案が作成されるものであり、七・五%増というのはあくまで概算要求のシーリングであることは当然であります。
 日米間においては、防衛問題について相互理解を図るため、五十七年度の概算要求のシーリングや、その内容についても適宜米側に説明しておりますが、その際、このようなわが方の予算編成の方式について十分説明していると聞いており、この点について米側に誤解はないと考えております。
 最後に、日米共同声明について、お尋ねの点についてお答えをいたします。
 外務大臣のマニラでの発言の真意は、一般論として言えば、首脳会談の都度必ず共同声明を発出する必要も慣例もないということ、また、共同声明は条約とは違うが、当事国にとって政治的、道義的にきわめて重要な文書であり、これは先般の日米共同声明についても同様であるとの趣旨を述べたものであると承知しております。
 私も外務大臣よりそのように報告を受けており、また、大臣の発言の真意については、外務省より米側にも説明し、十分な理解を得ていると聞いております。
 なお、将来共同声明は出すのか出さないのかということでありますが、将来のことにつきましては、そのときどきの状況を踏まえつつ、その必要性を両国間で検討協議の上、決定すべき問題であると考えております。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(福田一君) 村上弘君。
    〔村上弘君登壇〕
#10
○村上弘君 私は、日本共産党を代表し、鈴木総理の所信表明に関連して幾つかの質問を行います。
 初めに、先日、衆参両院の国際軍縮促進議員連盟が、国会で原爆写真展を開くことを全員一致で決めました。第二次放射能の被爆者の一人でもある私は、心から賛同の意を表しますとともに、広島、長崎、全国の皆さんとともにその実現を願うものであります。(拍手)
 戦後三十六年、いま世界は、戦争か平和かの重大な岐路に立たされております。今日、政治に携わる者の最大の責務は、二度と戦争への道を進んではならないということであり、とりわけ核戦争への動きは、どんなことがあっても食いとめなくてはならないということにあると思います。(拍手)
 ところが、このたび政府が行政改革の名において強行しようとしていることは、軍備増強のために福祉、教育を無慈悲に切り捨て、国民に総がまんを押しつけようとするものにほかなりません。
 私がまず第一に総理に伺いたいことは、政府は一体何のために行政改革を行うのかというこの問題であります。
 軍備増強、福祉の切り捨ては、現に行革の名のもとにどんどん進められております。あるお年寄りの方は、ぜいたくは敵だと言われた戦前を思い出すと言われ、ある障害者の方は、十年、十五年、二十年かかって積み上げてきたものが音を立てて崩れていく思いがすると訴えています。
 財界首脳の一人である日向方斉関経連会長が、行革で経費を浮かしたら防衛費を大いにふやすべきだと露骨に今次行革の真のねらいを語り、総理自身も、五月の日米首脳会談の席上、一九八四年度、つまり昭和五十九年度に国債依存を脱却できれば、財政面では防衛予算が立てやすくなると語ったことが伝えられています。
 来年度予算概算要求における国民向け支出の大幅削減計画と防衛予算の異常な突出ぶりの中に、こうした意図はすでに冷厳な数字となってあらわれているのであります。
 一般歳出の伸び率一・九%、厚生省二・四%、文部省〇・九%、農水省〇・二%、社会保障関係費のごときは七千億円も大幅に削減されようとしている中で、防衛庁だけが伸び率七・五%、千八百億円も増額され、総額二兆五千八百億円、いわゆる後年度負担を含めると実に五兆円、五年前の二倍以上にもなろうとしているのであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 総理は、昨日、防衛費の伸び率が社会保障費よりも少ないと言われました。しかし、問題は、世界一とも言えるこの異常な軍拡のテンポにこそあります。F15戦闘機は、当初の予定三十二機を四十三機にふやし、P3C対潜哨戒機も十二機を十七機に、七四式戦車も六十両を八十両にと、大幅にふやすことになっております。F15戦闘機は一機百五億円であります。四十人学級凍結分五十六億円の倍であります。
 総理は、国の借金が国民一人当たり七十万円を超えていると声を大にし、歳出の抑制が急務であり、すべての国民が行革の痛みに耐えるよう強調し、一刻のおくれがさらに困難を増大させると警告しました。それならなぜ、この一刻を争うときに、あえて軍事費だけはこれほどまでの大盤振る舞いをするのですか。
 これはどんなにごまかそうとも、今次政府行革が、軍備増強のために国民に総がまんを押しつけるためのものであり、そこにこそ中心眼目が置かれているのだということは、明らかではありませんか。(拍手)
 しかも、総理は、三年間で財政危機を抜け出すかのように言っておりますが、百八十九兆円という天文学的な国債の元利償還は、いよいよ四年後から始まるのであります。国民のために財政再建の急務を訴え、そのために行革を訴えるのであるならば、軍事費の大拡大をやめ、その抑制を求める国民多数の世論にいまこそ従うべきではありませんか。(拍手)明確な答弁を求めるものであります。
 第二に問いたいのは、総理が財政再建の中核として強調している国債減らしの具体的内容についてであります。
 今日の財政危機が、歴代自民党政府による大企業てこ入れ政策、とりわけ第一次石油危機以来の安易な国債乱発政策に由来していることは明白であります。当時、わが党は、今日の事態を予見し、警告し、値上げ、増税、国債増発に頼らない日本経済と財政の国民本位の再建策を提唱し、今日もまた、八項目の行政改革案と二兆円の経費節減策を提起しております。
 しかし、政府は、無謀な大企業擁護政策をとり続け、昨年度、大企業は、国家財政の危機的状況をよそに、上位五十社の所得合計だけでも四兆六千億円、前年度比五割以上増という、史上空前の利益を上げているのであります。他面、中小企業の倒産と失業は、これまた史上最高水準を続けております。今日の財政危機の裏で、だれが大もうけをしてきたのか、したがって、だれが財政再建の主な負担を担うべきなのか、これは明らかではないでしょうか。
 ところが、いま政府行革が実際にやろうとしていることは全く逆であります。政府は、本国会で老人保健法案を成立させ、五百万人の老人医療を有料化し、お年寄りとその家族に、まずツケを回そうとしております。各省庁一割の補助金削減、総額一千六百億円の八割以上も福祉、教育、農業関係であります。大臣給与の一部返上を除く六項目三十五の法律も、すべてが国民に負担を転嫁するものであります。四十人学級制の凍結、地域特例の切り下げなどなど、すべてそうであります。
 総理は、夏の風水害の被災者に本壇上でお見舞いの言葉を述べました。もし、それが真実の声であるならば、大型プロジェクトの公共投資を減らして、災害復旧費はもとより、二度とかかることのないように治水予算の増額によってこたえるべきではありませんか。(拍手)
 厚生年金国庫負担の引き下げが一時的なものでないことも、臨調答申が年金制度の抜本改悪を要求していることを見れば明らかであります。
 このような国民生活への負担の転嫁は、来年度予算概算要求の中では、より全面的にかつ過酷に展開されております。政府がつくり出した財政危機の責任はたなに上げ、国民が願っている行革は行わず、ツケはすべて国民に転嫁する、それが総理の言う国債減らしの中身なのですか。はっきりお答えいただきたいと思います。(拍手)
 しかも、その突破口として、三十六の法案を、性格も背景も無視して無理やり一本にし、一特別委員会で強行しようなどということは、全く許されないことであります。
 わが党は、このような反国民的一括法案の撤回を強く要求するものであります。(拍手)
 ところで、大企業、財界の方はどんな負担をするのでしょうか。
 補助金一つとっても、コンピューター開発事業や民間航空機のジェットエンジン開発の補助金など、削るどころかふやしているではありませんか。一方で住宅金融の利子の引き上げまで策しながら、外航船舶建造融資の利子補給のごときは、もうけ過ぎた日本郵船などが制度の適用を受けられなくなるというので、運輸省はわざわざ船舶建造積立金という制度を新たにつくってまで利益金を少なく見せかける手助けをしておるではありませんか。臨調事務局の集計でさえ、大企業への補助金は直接分だけでも二千三百億円に上っており、これは、一括処理法による国民向け支出削減二千四百億円とほぼ同額であります。
 総理、これで痛みを公平に分かち合っていると言えますか。ツケは真っ先に財界に回すべきではありませんか。はっきりお答えいただきたいと思います。(拍手)
 第三にただしたいことは、総理の言われる増税なき財政再建の実体であります。
 これも中身は大うそであります。すでに連続五年の所得税課税最低限の据え置きにより、来年度も実質三兆円の増税になるわけであります。その上、臨調第一次答申の実行によって、国民はこれから二兆円もの莫大な負担を押しつけられるのであります。合計で五兆円、四人家族では年十七万円もの新たな負担であります。あの悪名高い一般消費税導入で予想された四人家族十万円の増税をさえ、はるかに上回るではありませんか。これで増税なしと言えますか。
 その上、八月二十六日、渡辺大蔵大臣は、福祉目的税という名目での一般消費税導入を改めて示唆しております。総理は、この種新税の導入を将来にわたって提案しないと約束できますか。
 他方、大企業の方は、昨年度法人所得番付第一位のトヨタ自動車工業のように、過去六年間に合計六回、額面五十円の株式を千数百円の時価で発行し、八百七十億円もの差益を手に入れておりながら、非課税措置で一円の税金も払っておりません。
 総理は、「税負担の公平の確保は重要な課題である」と述べましたが、総額四兆円にも上る大企業優遇税制に、今次行革で法人税法本法にも立ち入った本格的なメスを入れる決意がありますか。国民の側の課税最低限を引き上げ、所得減税を実行すべきではありませんか。そうでなければ、増税なき財政再建とは、大企業に増税なき、国民負担の財政再建であると正直に言うべきであります。あわせて総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 この際、いま政府が計画している農地の宅地並み課税拡大についてもただしておきたいと思います。
 大企業が保有する膨大な遊休地には手をつけず、都市勤労者に生鮮食料を提供し、災害時の避難場所でもあり、貴重な緑の都市空間でもある近郊農業を壊滅させる宅地並み課税は、都市政策そのものから見ても重大な誤りであります。私は、宅地並み課税の拡大に反対するだけでなく、その撤廃を要求するものであります。
 また、全国の地方自治体財政を圧迫している同和事業、同和予算の不公正、乱脈な浪費の実態について、全国的総点検を政府に要求するものであります。行革をめぐる第四の質問は、公務員と行政機構にかかわる問題であります。国民は、わが党も提起してきたように、公務員労働者が真に全体の奉仕者として国民のために働いてくれることを強く期待しています。窓口サービス改善など、公務員労働者みずから、この立場に積極的に立つことが必要であります。政府に求められることは、公務員が全体の奉仕者として、情熱と創意を発揮して働ける条件をつくることであります。政府は、国立病院の医師、看護婦から大学教官、消防署の職員、労働基準監督署、職安、郵便局など、国民サービスを低下させる大幅な人減らしをやろうとしておりますが、これは、国家公務員の四分の一を占める自衛隊の削減を含めて、根本的に再検討すべきであります。
 仲裁裁定と人事院勧告を行革問題に絡ませることは根本的に間違っております。この制度は、もともと公務員労働者から、憲法が保障した労働基本権を不当に剥奪した、せめてもの代償として設けられた制度であります。政府と自民党は、直ちに仲裁裁定を実行すべきであり、本国会に給与法案を提出すべきであります。
 第五番目に明らかにしなければならないことは、臨調と政府の言う今後の本格的行革なるものがどのようなものになるかという点であります。
 政府は、今次行革がさしあたりは国民に痛みを与えるけれども、これを乗り越えれば、やがて春が来るかのような幻想をばらまいております。だが、これこそさらに大きな欺瞞であります。すでに明らかなように、それは軍備の大増強であり、大企業の特権の強化であり、臨調答申も述べているように、「国家と国民を合わせた国全体の歩み」がこの方向に大きく変わっていくということであります。
 総理の言う「活力ある福祉社会」なるものは、臨調答申も述べているように、「自立・自助の精神、自己責任の気風を妨げるような過剰な関与を厳に慎む」という社会であります。それは憲法第二十五条が規定している社会福祉に対する国の責任を放棄し、これを救貧政策に後退させる社会であります。(拍手)それは、軍備増強に都合のよい社会であり、大企業にとって活力のある社会ではありましょう。
 財界は、電電公社、専売公社など、もうかる事業の民営化を要求し、公害規制や独占禁止行政など、大企業の活力を弱めるようなことは骨抜きにすることを要求しております。その上、府県制の廃止と道州制の実施さえ要求しております。
 要するにこれは、財界や自民党政府が、これまで長い間やろうとしてやれなかったことを、行革の名において一挙にやろうということではありませんか。(拍手)
 総理の言う「活力ある福祉社会」がそのようなものでないならば、具体的にどのような社会なのか、明確にされるよう求めるものであります。
 総理、私は、ここで原点に立ち返って、一体国民が願った行政改革とは何であったのかということを伺いたい。
 それは、ロッキード疑獄、鉄建公団、KDD汚職など、政界、財界、官界の癒着が引き起こした汚職、腐敗の根を断って、清潔で、むだや浪費のない行政、簡素で効率的な行政、大衆増税なしに財政再建を進める行政の実現ではなかったでしょうか。
 総理も昨年秋、本壇上で、内閣の最重要課題の第一に政治倫理の確立を挙げたはずであります。あれから一年、いよいよこの問題に正面から取り組むべき本臨時国会の所信表明から、政治倫理確立の言葉さえなくなってしまったのはなぜですか。
 つい最近も、教科書問題をめぐる黒い霧が問題になっております。歴代の文相経験者、文教族と言われる与野党政治家が教科書会社から多額の政治献金を受け取り、現職の文部次官がゴルフなどの接待を受けていたなどということは、文部行政にあるまじきことであります。
 なぜ総理は、企業、団体の政治献金や高級官僚の天下り禁止措置を真っ先に取り上げようとはしないのですか。もっと行政の実態を国民の前に明らかにするために、情報公開法の制定などこそ急ぐべきではありませんか。教科書疑惑の全容も政府の責任で解明し、国会に報告するべきであります。
 以上、答弁を求めます。(拍手)
 最後に指摘しなければならないことは、国民が強く願ってきた行政改革の中身が、なぜこれほどまでにゆがめられたのかということであります。それは、行政改革が、財界の、財界による、財界のための行革になっているからであります。(拍手)
 臨調委員九名中六名までが財界、大企業の代表または高級官僚出身者であります。顧問、専門委員、参与等合計九十名のうち五十三名、約六割までが財界、大企業の代表、高級官僚出身者であります。ここに、政府行革が徹頭徹尾国民の願いに逆行するものとなる決定的な根拠があります。
 いまからでも、国民の声を正しく反映するような委員構成に抜本的に改めるよう、強く求めるものであります。(拍手)
 次に、私は、今次行革と不可分の関係にある平和、安全、民主主義の問題について質問いたします。
 今日の世界の緊張が、米ソ相対立する二つの軍事ブロック間の核軍拡競争の悪循環によって加速されているとき、そのいずれかの一方の側に加担することが、その悪循環を一層加速させることにしかならないことは自明のことではないでしょうか。
 鈴木内閣が政治生命までかけて国民に総がまんを押しつけ、軍拡の道を進み、軍拡競争の片棒を担いでいることは、世界の平和にとっても、日本の安全にとっても、国民の暮らしにとっても、百害あって一利なきことではありませんか。(拍手)
 来年は第二回国連軍縮特別総会が開かれますが、日本政府は、どういう基本的態度で臨むつもりですか。昨年の国連で決議された核兵器使用禁止決議等に、なぜ日本政府は反対したのですか。今後も反対を続けるのですか。
 私は、平和憲法を持ち、唯一の被爆国であるわが日本こそ、第一に、破滅以外に出口のない米ソ双方の力の均衡論に反対し、第二に、民族自決権の擁護、軍事ブロックの解消を要求し、第三に、今日の日本をこれほどまでにあらゆる面で危険で破局的な状態に陥れている、その根源になっている日米安保条約を廃棄し、みずからも非核、非同盟、軍縮の道を進み、この方向を全世界に呼びかけるべきであると確信するものでありますが、以上三点についての総理の決意と見解を伺いたいと思います。(拍手)
 いまヨーロッパでは、ヨーロッパが米ソの戦域核戦争の戦場になることに反対する大運動が起こっております。しかし、これはよそごとではありません。ライシャワー証言以来、日本への核兵器の持ち込みの疑惑は決定的であり、岩国のMWWU1に続いて、沖繩の第一二海兵砲兵連隊には、わが党が明らかにしたように、核兵器専門の補給部隊が存在していることが公式に確認されております。核兵器専門部隊の存在は、それ自体非核三原則と矛盾するものではありませんか。日本もまた、米レーガン政権の戦域核戦争構想のアジアにおける最前線にされているではありませんか。日本は、アメリカの核のかさで守ってもらっているのではなく、逆にアメリカ本国を守るための盾に使われているのではありませんか。(拍手)
 私は、日本が核戦争の戦場になることを拒否するため、核兵器を積んだ艦船などの寄港、通過を含む一切の核兵器の持ち込みに反対し、非核三原則を法制化し、中性子爆弾の製造と極東への配備に反対し、わが国が核兵器全面禁止の先頭に立つことを強く要求します。(拍手)戦争と平和に対する厳粛な責任の自覚に立った総理の答弁を求めるものであります。
 先般の日韓閣僚会議において、韓国側は六十億ドルもの巨額の借款を要求しております。全斗煥政権が国民の民主化要求を銃剣で圧殺し、国家予算の三五%まで軍事費に注ぎ、それが韓国経済の重圧となっているとき、韓国への借款がどんな名目であれ、全斗煥軍事ファッショ政権の軍事大増強を手助けするものにしかならないことは明白であります。私は、借款拒否はもちろん、このような性格を持った日韓協議の中止を強く求めるものであります。
 残念ながら、今日わが国は、軍拡と戦争への道を速いテンポで進みつつあります。本年八月の靖国神社への閣僚の集団参拝、昨年来の自民党、右翼勢力、勝共連合等による乱暴な教科書攻撃もその危険なあらわれであります。
 すでに、憲法が禁じている検閲まがいの検定によって、高校の教科書「現代社会」は、二十一冊にわたって、実に一万カ所に及ぶ訂正が行われ、原爆反対の平和行進の写真が削られ、憲法違反の自衛隊は合憲が明記され、安保条約は平和に寄与するものと書きかえられました。
 国民を戦争の方向に思想的に動員するための靖国神社国営化の策謀や、反動的な教科書検定体制の強化をやめ、今回の社会科教科書検定の経過と内容を明らかにすることを要求します。(拍手)
 最後に、去る九月十九日、アメリカでは五十万人の大デモが行われました。鈴木総理が手本とするレーガン流行革は、米議会と国民の猛反発のもとに、早くも破綻を示し始めております。西ドイツでも、近く開かれる核兵器反対平和大集会に、ブラント前首相が党除名も覚悟で参加するとの意向が報道されています。イギリスのサッチャー政権も、軍事費を前年度以下に抑えざるを得なくなっております。
 鈴木内閣は、それでも西側への国際的貢献のために反動的な行革を強行し、軍備拡大、戦争と破滅の道に国の歩みをあえて変えていくつもりでしょうか。
 今日ほど、暮らしを守ることと平和を守ることが一つに結び合わされているときはありません。いまこそ総理は、勇気を持って、平和と暮らしを守るあたりまえの道に立ち戻るべきではありませんか。(拍手)
 総理の誠意ある答弁を求めるとともに、わが党はこの道を進めるために闘い抜くことを表明して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 永末さんの御質問に対して答弁漏れがございますので、お許しを得て、追加をいたします。
 第一は、年金の物価スライドの実施時期についてであります。
 年金を生活の主な支えとしている受給者の立場を十分配慮しなければならない問題ではありますが、ゼロシーリングで概算要求を行っているという厳しい財政事情にあることを御理解願わなければならないと考えます。
 また、高額医療費自己負担限度額についての御質問でありますが、この限度額は五年間据え置かれており、この間の所得の伸び等を勘案して、その額を引き上げる必要があると考えます。
 住宅金融公庫の五・五%貸付金利につきましては、国民の住宅需要及び住宅建設の現状にかんがみ、行革関連特例法制定後、政令を策定する段階で、当該貸付金の社会的、経済的必要性と国の財政負担との調和が図られるよう考慮しつつ、慎重に検討を進めることにいたしたいと考えます。
 以上、補足いたします。
 村上議員にお答えをいたします。
 まず、何のための行財政改革であるかとのお尋ねでありますが、時代の要請に応じた簡素で効率的な行政の確立と財政の健全性の回復を図り、行財政の対応力を回復強化するための行財政改革でありまして、お説のような軍備増強のためのものではございません。明確に申し上げておきます。
 また、行財政改革のため防衛費を抑制せよとの御指摘でありますが、わが国の防衛については、一貫して、憲法及び基本的防衛政策のもとで、自衛のため必要最小限の防衛力を着実に整備していくとの方針をとっておりますので、もとより行財政改革に当たり、聖域とするつもりはありませんが、さりとて防衛費を特別に、これを最低位に削減をするというようなことも適当ではございません。
 次に、治水予算についての御意見がありましたが、わが国は地形、国土利用上、災害の発生しやすい状況にあり、かねてより安全な国土づくりに努めているところであります。今後とも必要な治水投資を計画的に行い、災害の防止を図ってまいりたいと考えております。
 政府がつくり出した財政赤字の責任をたな上げして、ツケをすべて国民に転嫁するのかというお尋ねでありますが、私はこの国会でも詳細に申し上げましたように、石油危機による景気後退に対処して、民間経済を下支えし、国民生活の安定を確保するため、財政が積極的な役割りを果たし、ツケを一身に背負った状態にあるのが今日の財政ではないかと考えております。そのツケを国民がみんなで分かち合って、新しい時代の要請にこたえることができるよう、財政の対応力を回復しようとする試みが財政の再建であり、また行財政の改革であります。
 性格の違う法案を一本化し、一つの特別委員会で強行しようとするのは許しがたいとの御意見でありましたが、行革関連特例法案は、臨調の第一次答申の指摘事項であるとか、昭和五十七年度から五十九年度までの臨時特例的措置であるとかの共通の性格を持つ措置をまとめたものであり、国民の総合的な御判断をいただくためには、一括法案とすることが適当であると考えます。
 特別委員会の設置など、国会の御審議のあり方については、国会の御判断に属する問題でありますが、行革関連特例法案の国会における総合的な御判断を期待しており、これを撤回するつもりはございません。(拍手)
 財界の要求に応じてできた赤字国債のツケは大企業に回すべきであるとの御意見でありますが、現在の巨額の財政赤字は、石油危機後の税収の伸び悩みにもかかわらず、社会保障等の各種の施策水準の引き上げや、景気の回復などの施策に努め、やむを得ず生じたものでありまして、大企業のみのためという性格のものではないわけでございます。
 次に、増税なき財政再建に関する一連の御質問にお答えいたします。
 まず、行財政改革による歳出削減を増税と同一視することには賛成できません。
 また、課税最低限が据え置かれているため、このところ所得税負担が増加していることは事実でありますが、そのことと、国民に新たな税負担を求める増税とは別であり、また、わが国の個人所得に対する所得税負担の割合は、国際的に見ても相当低い水準にあるのが実情であります。
 私は、歳出の削減や税の自然増収があるから、増税なき財政再建でないという考え方には賛成できません。
 大型新税の導入につきましては、目下そのようなことは考えておりません。
 不公平税制の見直しには今後とも一層の努力を払ってまいりますが、何をもって不公平税制と見るかについては種々の見方があるようでございます。
 来年度所得税減税を実行せよということでありますが、目下増税に頼らずに五十七年度予算の編成に全力を挙げているととろでありまして、特例公債からの脱却もできない段階で、所得税減税はなかなか困難な選択であると考えております。
 また、いわゆる宅地並み課税について御意見がありましたが、昭和五十七年度以降の市街化区域農地に対する固定資産税の課税の適正化措置につきましては、昭和五十四年度末の税制調査会の答申などを踏まえ、十分検討してまいりたいと考えております。
 次に、同和対策事業のあり方について御意見がありましたが、今後における同和関係施策を進めるに当たりましては、国及び地方公共団体が実施すべき施策の内容や運営について十分な検討を加え、その適正化と効率化を図ってまいりたいと考えております。
 仲裁裁定及び人事院勧告につきまして実施を急げとの御意見でございましたが、この点につきましては、昨日来繰り返し申し上げているとおりでありますので、省略さしていただきます。
 定員削減計画に自衛官を含めよとの御意見でありますが、自衛官の定員は、部隊の編成及び装備等との関連において決定さるべきものであり、他の公務員とはおのずから定員決定の事情が異なっておりますので、一般の公務員と同列に扱うことは困難であります。
 今後の本格的行革に当たり、軍備の大増強や公害、独禁行政の骨抜きなど、政府・自民党の長年の課題を行革の名で一挙にやるのではないかというお疑いをお持ちのようでありますが、政府・自民党は、もっと純粋な気持ちで国家、民族の将来のため行財政改革に当たっているのでありまして、御指摘のような卑しい気持ちはありません。(拍手)
 「活力ある福祉社会」とは何かとのお尋ねでありましたが、臨調の第一次答申にございますように自由経済社会の持つ民間の創造的活力を生かし、同時に、個人の自立自助の精神に立脚した家庭や近隣、職場や地域社会での連帯を基礎としながら、適正な負担のもとに福祉の充実を図っている社会でありまして、決して救貧社会に後退するというようなことではございません。
 次に、所信表明において政治倫理の確立に言及しなかった点を取り上げ、いかにも私がそれを軽視しているかのごとき発言をされましたが、まことに心外であります。(拍手)
 政治倫理の確立は緊要な課題であると考えておりますので、独断的な偏見を持たないようお願いいたします。
 次に、企業や団体の政治献金のあり方について、最初から企業献金が悪であると決めてかかるのはどうかと思いますし、また、いわゆる高級官僚の天下りを禁止せよとの御意見にも、にわかに賛成できません。
 情報公開制度の問題につきましては、臨時行政調査会の検討テーマにもなっておりますので、その審議の結果を参考にして慎重に対処してまいりたいと考えております。
 そのほか、教科書会社と政治家や文部省職員との間に疑惑があるかのごとき発言がありましたが、私は、そのようなことはないと承知しておりますので、調査する考えはございません。
 臨時行政調査会の委員、専門委員等の構成についての御批判を承りましたが、臨調の委員、専門委員等は、いずれも国民各界各層を代表するすぐれた識見をお持ちの方々でありまして、国民の声を十分反映できるものになっており、改める必要はないと考えます。
 今日、米ソを中心とする東西関係が、ソ連の一貫した軍備増強と第三世界への進出を背景として不安定化していることは事実でありますが、他方、米ソの間で戦域核制限交渉の開始が合意されるなど、対話を通じる東西関係安定化への努力も行われ始めており、わが国としても、このような努力を評価するものであります。その進展に期待をいたしております。
 今日、世界の平和と安定に必要なものは何かという命題に対する回答は、軍縮か、さもなくば軍拡という単純な二者択一ではないのであります。
 政府といたしましては、引き続き日米安保体制の円滑かつ効果的な運用及び節度ある質の高い防衛力の整備に努め、わが国の平和と安全に遺漏なきを期するとともに、米ソを中心とする関係国の軍備管理、軍縮への努力を広く強く働きかける等、平和の創造者としての役割りを探求してまいる所存であります。
 特に軍縮問題につきましては、わが国は、明年に予定されている第二回軍縮特別総会が、こうした軍備競争への傾向を是正するための一層真剣な国際的努力を行う契機となることを強く期待しております。
 そのような観点から、政府は、この特別総会を重視し、準備委員会にも副議長国の一つとして積極的に参加しておりますが、そのような活動を通じ、核軍縮を中心とする軍縮、特に包括的核実験禁止及び化学兵器禁止の実現を強く求めていく所存であります。
 国連における核不使用提案になぜ反対したのかというお尋ねでございますが、わが国の場合も含め、国際の平和と安全が核抑止力にも依存している現下の国際社会において、御指摘の国連決議にあるような核不使用の提案に対し、直ちにこれを支持し得ないことは明らかであります。わが国は、核不使用というよりは核軍縮そのものがより重要であると考えており、そのような考え方にも基づき、今後とも、あらゆる機会を通して、具体的かつ実効性を伴った核軍縮措置の促進を主張してまいりたいと考えております。(拍手)
 国際情勢に対処するに当たりまして、われわれは理想を追求する余りに現実から遊離することになれば、わが国の努力は国際社会においてむしろ説得力を失い、ひいては理想から遠ざかる結果を招くものと言わざるを得ません。厳しい国際社会の現実を十分踏まえて、一歩ずつ理想に近づこうとするじみちな努力が最も大切であると考えます。
 村上議員が主張される諸点につきましては、今日の国際社会における平和が、基本的には米ソを中心とする東西間の力の均衡によって保たれていることは否定できない事実であること。かかる現実を踏まえ、わが国は、軍縮問題については、より低いレベルに力の均衡を抑えるための努力を関係諸国に求めるなど、じみちな努力を粘り強く続けることが肝要であること。また、日米安保条約は今日のわが国の平和と安全を支える最も重要な基盤であって、同条約の廃棄は、わが国のみならずアジア、ひいては世界全体の平和を危うくするものであり、わが国のとるべき道ではないことの三点を申し述べたいと思います。(拍手)
 沖繩の米海兵隊には、核兵器を整備する能力を有している分遣隊が存在していることは承知しておりますが、そのような能力を有することと実際に核兵器が存在することとは全く別個の問題であり、同分遣隊の存在と非核三原則とが矛盾するとは考えていません。
 わが国は、核の脅威に対して、わが国の安全を維持するために、安保条約に基づき米国の核抑止力に依存していることは御承知のとおりであり、わが国が米国本土を守るための盾に使われているということではありません。
 なお、従来から御説明申し上げておるとおり、安保条約の核に関する事前協議制度のもとにおいては、いわゆる艦船による核持ち込みを含め、核の持ち込みに該当する場合はすべて事前協議の対象であります。これが日本政府の従来からの見解であり、いまも変わっていません。また、政府としては、核持ち込みについての事前協議が行われた場合には、常にこれを拒否する所存であります。
 中性子爆弾の製造に反対せよとのことでありますが、現実の国際関係における軍事的均衡が、あらゆるタイプの核兵器を含む各種の兵器体系により維持されていることにかんがみ、核兵器の中から特定の兵器のみを取り出し、それについて製造中止を要請する等の意思表示を行うことは必ずしも適当ではないと考えます。
 いずれにせよ、わが国は、中性子爆弾を含め、あらゆるタイプの核兵器の究極的廃絶を目指し、現実の国際関係において実現可能な具体的措置を一歩一歩進めていくこととしており、今後とも軍縮委、国連等の場において核軍縮を強く訴えていく所存であります。
 なお、非核三原則につきましては、国会決議等で、すでに内外に十分に周知されているところであり、改めて法制化を行うことは必要ではないと考えます。
 次に、韓国に対する経済協力の問題についてお答えいたします。
 わが国は相手国の経済、社会の開発を支援し、もって民生の安定、福祉の向上に貢献することを目的として経済協力を行っておりますが、これは韓国に対しても同様であります。
 わが国のこうした形の経済協力が、朝鮮半島の緊張を助長してきたなどということはあり得ないことであります。政府としては、こうした考え方に基づき、今後とも南北間の緊張緩和が望ましいとの基本的立場を維持しつつ、韓国の経済、社会開発と民生安定にできる限り寄与していく方針であり、今後とも、この問題について先方との協議を継続していく方針であります。
 靖国神社の国営化をやめるべきではないかとの御意見がありましたが、私は、靖国神社を国営化するという話は聞いておりません。また、閣僚が私人として靖国神社に参拝することは問題ないと考えております。
 教科書検定制度についてもいろいろ御意見がありましたが、政府としては、今後とも教科書検定制度を維持、充実するとともに、それを通じて教科書の改善と充実に努めてまいりたいと考えております。(拍手)
 なお、教科書検定の具体的な過程や内容を公開することは問題がありますので、従来から差し控えているところでございます。
 なお、最後に、私の国政に対する基本姿勢にかかわる問題についてお尋ねでございましたが、私の考え方は村上議員の述べられたようなものとは全く無縁のものであることは、私がこれまで国会においてたびたび述べているところであります。御理解をいただけるものと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○副議長(岡田春夫君) 河野洋平君。
    〔河野洋平君登壇〕
#13
○河野洋平君 私は、新自由クラブ・民主連合を代表し、鈴木総理に対し、行政改革を初め当面の課題について若干の質問を行います。
 このたび、新自由クラブと社会民主連合は、この衆議院において院内統一会派を結成いたしました。この統一会派は、硬直した旧来の政治状況を転換させるためには、昔ながらの保守、革新の枠にこだわらない新しい政治集団の結成が急務だという両党の間の確固たる合意に基づくものであります。国民の間の多様化した価値観を敏感に感じ取り、特定の組織や集団のための利益を優先させるのではなく、あくまでも大多数の国民のために広く利益を求め続けることが、今日の政治及び政党に課せられた使命だと考えます。
 私たちは、こうした基本認識のもとに、第一に、ともすれば軍事力に基づく恐怖の均衡によって平和を維持しようとする、米ソ両大国を初めとする力の政治に反省と再考を促し、また、当面の行政改革についても、あくまで納税者である国民の立場に立って最善の方途を探るという政策的合意に基づいて前進をいたしたいと考えております。国民の皆様を初め、議員各位の御理解をお願いを申し上げます。(拍手)
 さて、質問の第一は、行政改革についてであります。
 私たちは、今回政府が提案された行政改革案について、当面の緊急対策としては大筋でこれを支持するものであります。しかし、私たちは、いま行政改革に取り組んでいる政府の基本姿勢に若干の疑念を抱かざるを得ないのであります。
 いわゆる行政改革は、時の政権が、国民の行政に対する要求を的確にとらえつつ、簡素で効率のよい政府をつくるよう絶えず配慮を加え、実施に移すべきものだと考えます。不断の努力を怠っておいて、その結果膨張した行財政の行き詰まりを打開するために、あわてて鳴り物入りで調査会をつくり、その答申にすべてをゆだねるというものであってはなりません。
 総理は、行政の役割りと限界、さらには開かれた政府の実現などを考慮しつつ、絶えず行政改革が行われるべきであるという基本認識をお持ちかどうか、まず最初にお尋ねをいたしておきます。
 さらに、私たちが指摘したいのは、今回の政府の行政改革が、目的を国家財政のつじつま合わせに置いたために、中央官庁の組織や予算にほとんどメスを加えずに、地方財政や国民生活にそのツケを回す結果になるのではないかという危惧の念であります。今日の国民の不満は、行政改革とはいっても、しょせんは国のかまどがにぎわうだけではないか、民間の血のにじむような合理化などの努力に比べて、お役所はまだまだ努力も工夫も足らないのではないかということだと思います。
 そこで、総理に伺います。
 さきの国会で継続審議とされた公務員の退職金削減法案の早期成立、公務員給与制度の根本的な見直し、より厳しい高級官僚の天下りや渡り鳥の規制強化を初め、公務員の定員削減などについて、思い切った措置をとる御決意があるか、お答えを願いたいと思います。いわゆる官民格差の是正という観点なくして、行政改革に対する国民の支持、協力はあり得ないと考えるからであります。(拍手)
 と同時に、三公社、特殊法人などを含む中央官庁の統廃合、民営移管にも勇断をふるうべきではないでしょうか。総理の所信表明演説が、こうした行政制度の本質的な改革に全く青写真を示さずに、すべてが臨調の答申待ちであるという姿勢に終始していることに、私たちはきわめて不満であります。総理が言われた二十一世紀を展望する国家の大計の内容をぜひお示し願いたいと考えます。
 私たちは、思い切った行政改革を推進するための改革の第一歩は、国会がまず率先垂範、改革を断行することだと考えます。国会がみずからを改革しつつ行政府の改革を進め、最後に国民の理解と協力を求める、こうした手順を踏まずに、どうして行政改革が説得力を持てるでしょうか。
 私たちは、こうした考え方に立って、国会の改革について幾つかの提案を行いました。恐らく総理は、それは国会の自主性にゆだねるとお答えになるでありましょう。しかし、国会の改革のために政府みずからが主導権をとれる問題もあるはずであります。
 たとえば、公職選挙法に絡む問題もその一つであります。衆議院は、一票の重さのアンバランス是正を名目に、十九人あるいは二十人と二回にわたって合計三十九人の議員をふやしてまいりました。いずれも政府提案の公職選挙法の改正による増員であります。私たちは、国民の間に国会議員の数が多過ぎるという声が強いことも考え、すでに衆議院議員の定数を四十人減らして、公選法の本則が定めているとおり四百七十一人として、その枠内で各選挙区への割り振りを考えるべきだ、そう提案をいたしておりますが、政府としてどのように御判断されるか、御答弁を願いたいと思います。(拍手)
 と同時に、今日の衆議院選挙における一票の重さの格差は、昭和五十五年国勢調査によりますと一対四・五四となっておりまして、五十年に定数を二十人ふやした際の理由とされる昭和四十五年国勢調査の一票の重さの格差一対四・八三とほぼ同程度とすでになっております。
 司法当局の判断を待つまでもなく、国民の選挙権の平等を保障するために三たび一票の重さの格差是正が必要な事態をもうすでに迎えているわけでありますが、政府は、その格差是正のために、またまた議員数をふやそうというのか、それとも私たちの提案に沿って議員を減らすつもりがあるのか、明確な考えを示していただきたいと思います。(拍手)
 このほか私たちは、国会がみずからのえりを正すという意味から、国鉄無料パスの返上や議員互助年金の五割に上る国庫負担のカットなど、議員特権の行き過ぎ是正を中心とした国会の改革について提案をしておりますが、自民党総裁という立場も踏まえて答えられるよう求めておきます。そして私は、この場から、お互い立法府に席を有する私たちが、国会の来年度予算についても、議員歳費の引き上げ凍結を含めて、その要求に節度を示すのは当然であるという合意を確認をしておきたいと考えるものであります。
 次に、財政に関する問題点について二点だけ伺っておきます。
 一つは、税の不公平についてであります。今日民間サラリーマンに不当と言わざるを得ないほど重くのしかかっている所得税は、ぜひ是正されねばならないと思います。
 先日公表された国税庁の調査によれば、民間サラリーマンの実質収入は二%余りの完全な減収であり、その逆に、所得税はこの三年間でおよそ五〇%の増加を示していると伝えています。
 問題は、この所得税の捕捉の不公平にあると思います。同調査によりますと、サラリーマンの納税者割合は九〇・五%にまでふえております。しかし、自家営業者その他の職業の納税者割合は三五%から一五%前後と言われ、いやおうなく源泉徴収によって網をかけられているサラリーマンの不満が高じるのは当然だと思います。総理も所信表明演説で、制度面だけでなく執行面でも改善に一層努力する旨述べておられますが、所得捕捉の格差の実態を改めて示していただきたい。と同時に、徴税の執行面でどう改革をされるのか、大筋だけでも伺っておきたいと思うのであります。
 たとえば、米国などにおきましては、税の公平確保のために、一定の額以上の収入のある者に対しては、すべての収入の申告書を提出するよう義務づけた総収入申告制を採用していると言われています。この制度は、あらかじめ収入から諸経費を差し引いた額の申告を義務づけているわが国の制度に比べて、いわゆる所得隠しがむずかしくなり、所得税の捕捉はかなり前進すると言われております。早急にこうした制度を検討するお考えはないか、お答えをいただきたいと思います。(拍手)
 もう一点は、相次ぐ公共料金の値上げについてであります。
 総理は、行政改革に絡んで、誇らしげに増税なき予算をつくると宣伝されておりますが、しかし、これは日々の家計を預かる主婦の目から見れば、大変なまやかしと言われても仕方がないかもしれません。言うまでもなく、相次ぐ公共料金の高騰が家計簿を直撃しているからであります。
 経済企画庁のまとめでも、昨年四月以降の公共料金の値上げは、二年続きの国鉄運賃を初め、電気、ガス料金、国立大学の授業料、たばこ、NHK、郵便、医療、米と麦、塩、大手私鉄運賃、タクシーといったぐあいに引きも切らず、これに地方自治体の公営交通や上下水道料金などの引き上げがまだまだメジロ押しに続いているではありませんか。所得税の上では実際に増税が行われているのに加えて、根強い消費者物価の値上がりもあって、政府の言う増税なき予算とはうらはらに、実質的な負担増に家計はあえいでいるのが実態ではないでしょうか。
 総理、あなたがあくまで増税なき予算を強調なさるのであれば、あわせて、これら公共料金の値上げ抑制にも決意を示すべきではないでしょうか。極力抑制するなどという紋切り型の答弁ではなくて、家庭の主婦が納得するような具体的な対策をお示し願いたいと思うであります。
 次に、外交、防衛問題についてお伺いをいたします。
 私たちは、日本の平和と安全のためには日米安保体制が必要であり、自国防衛のための自衛隊の存在は欠かせないものだと考えております。自衛隊が専守防衛の枠内で装備の近代化に努め、隊員の質の向上を考え、もし侵略があるならば、それに敏感に反応する精強な態勢を整えることも当然だと考えております。
 しかし、最も大事なことは、これまでもたびたび指摘しているとおり、制服の独走は許さないというシビリアンコントロールの確立であると思うのであります。その意味で私は、政府が来年度予算で、防衛費をゼロシーリングから外して、聖域として取り扱おうとしていることに危険性を感ずるのであります。
 政府・与党筋からは、アメリカへの配慮から、今年度の七・六%増しと同程度の防衛費増額は何としても必要なのだという声が聞こえております。だとすれば、こうした、内容よりも計数のみに重きを置いた発想は、結果としてほとんどまるごと制服組の主張を認めたことになってしまうのではないでしょうか。防衛費の聖域扱いはシビリアンコントロールの弱体化につながることにはならないか、総理の御見解を伺っておきたいと思います。
 もう一つの問題は、防衛費に絡む巨大な後年度負担についてであります。防衛費の七・五%増要求をそのまま認めれば、後年度負担は、五十八年度以降の支払い必要額として対前年度比六七・四%増の二兆二千七百億円に上ると言われています。向こう五年間の防衛費を拘束することになるというのですから、国家財政の赤字を解消しようというかけ声とはうらはらに、いわば借金のツケを五十八年度以降に残して、財政硬直の原因となりかねない要素を抱え込むというのは、どう見ても矛盾だと思いますが、いかがでしょうか。(拍手)
 一体、五十八年度の防衛費がげたをはくような形で予算化せざるを得ない後年度負担の金額は、正確には幾らなのか、明示してほしいのと同時に、五十八年度以後も防衛費特別扱いの方針をとるおつもりなのか、もしとるというなら、それはいつまで続けられようとしているのか、お答えを願いたいと思います。
 もう一点ただしておきたいことに、軍縮問題があります。
 今日、世界の情勢は、東西対立の時代へと逆流する傾向を強めつつあります。ことしの国連年次報告書を見ましても、世界の軍事支出は五千億ドル、約百十五兆円という恐るべき巨額に達しております。これに対して、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から、将来の世代を救うためと設立された国連の今日の年間予算は約六億六千万ドル、一千五百億にしか過ぎないではありませんか。
 国の安全保障を考える上で大切なことは、まず平和外交の推進が基本であり、次いで専守防衛の範囲内での防衛力の整備であり、軍備の縮小均衡を図るための国際的努力であると私は考えます。防衛力の整備と軍縮の問題は、一見矛盾するように見えますけれども、決してそうではありません。世界の現状を冷静に見るとき、これらは常に車の両輪のようなものであると思います。軍備の拡張のみが声高に叫ばれている今日のような世界情勢の中にあってこそ、軍縮への努力をないがしろにしてはならないと思います。(拍手)
 唯一の被爆国でもあり、軍事力を紛争解決の手段とは認めないという現行憲法の精神を世界に広め、核の廃絶を初めとする軍縮のために積極的に行動することは、あなたの言う国際的責任の第一ではないでしょうか。
 今月二十四日からは国連軍縮週間が始まります。来年には第二回目の国連の軍縮特別総会も予定されています。こうした時期をとらえて、政府としては、世界の軍縮のために、ただ期待をするというのではなくて、具体的な行動を起こすべきではないでしょうか。総理のお考えを示していただきたいと思います。
 私は、たとえば総理が、広島、長崎などで、核軍縮交渉であるとか、全面的核実験禁止の国際会議を開くように呼びかけるぐらいの積極的な姿勢をぜひ示してほしいと思うのですが、いかがでございましょうか。(拍手)
 最後に、教育問題について伺います。
 最近問題になっている校内暴力について、私は、昨年も総理にこの場から御質問をいたしましたが、総理からは、大変遺憾である、教師と生徒の好ましい関係が肝要だという、きわめて通り一遍の答弁しかございませんでした。しかし、その後、報告されている数字だけを見ましても、ことしは昨年に比べて激増し、悪質化の一途をたどっております。
 次代を担う青少年のこうした行動は、一体何が原因なのか、何に影響を受けているのか、真剣に考えてみるべきであります。単に教師、父兄に問題の解決をゆだね、期待だけしてよいとは私は思いません。政治、行政に携わる人間が、青少年のため、よりよい環境を整える努力をするべきでありましょう。
 滋賀県のある町で、アンケート調査に基づいて、未成年の非行に走る大きな原因と指摘された、たばこ、酒、雑誌などの自動販売機の制限を、町長さんが先頭に立ってやって成功をさせたという記事が、ある雑誌に出ておりました。この記事には、たばこの自動販売を夜間はやめるようにという町民会議の要請を、専売公社が抵抗してなかなかやめない。最後に、この町に限り認めるということにして、この町では夜間のたばこの自動販売をやめたと書かれております。
 私は、町民の努力を高く評価するとともに、こうした試みがもっと広がりを見せるように当局も支援すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。学歴偏重社会と言われる今日の社会構造を直す積極的な行動をとるとか、入試制度を見直すとか、暴力団の行動にもっと毅然とした態度をとるとか、政府のやるべき仕事はたくさんあるのではないでしょうか。御意見を伺いたいと思います。
 近年、青少年の行動に最も大きな影響を与えているものの一つにテレビがあると思います。もちろん、自由社会の保障する自由の中で一番大切なものは表現の自由であり、権力を持つ者がその表現の自由の尺度を一方的に決めたり、あるいははかったりするということは、厳に慎むべきものであることは当然だと思います。
 しかし、その前提に立ちながらも、あえて私はこの場から、近年行き過ぎた商業主義と大人の興味、好奇心が、子供の心に生命のとうとさ、本当の意味の自由、こういったものを間違えて伝えている点があるのではないか、そう考えるのです。(拍手)お互いにみずからに問い直すことが必要である。いまお互いに、子を持つ親としてみずからに問い直そう、そういう時期に来ていると私は思います。
 総理の御所見と、この問題に対する率直な御感想を最後に求めて、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#14
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 河野さんにお答えをいたします。
 行財政改革に関する御質問がございましたが、まず、行革が絶えず行われるべきものと考えているが、どうか、こういうお尋ねであります。私もそのように考えております。
 これまで怠ってきたのではないかとの御指摘ですが、私は、組閣以来、行財政の改革を当面の緊急の課題として取り上げ、真剣にこれに取り組んでいることは、河野議員も御承知のとおりであります。今後とも行財政改革には全力を挙げて、これを推進してまいりますので、御協力をお願い申し上げます。
 今回の措置は、国家財政のつじつま合わせではないかとのお尋ねでございますが、今回の行財政改革に当たっては、さしあたり緊急に実施すべきものから着手し、時代の要請に応じた簡素で効率的な行政の確立と、財政の健全性回復に向かって確実に進む決意でありまして、その基本は、聖域をつくらず、あらゆる部門を適正に見直すことであります。決してつじつま合わせでもなく、また特定の部門にしわ寄せをする考えもございません。
 なお、社会的、経済的弱者に対する真に必要な施策は確保していく考えであります。
 国家公務員等の退職手当の是正を図るための退職手当法改正案については、公務員に対する国民の理解と納得を得るためにも、その速やかな成立が望まれるところでありますので、河野議員の御意見のとおり、ぜひこの国会で成立させていただきたいと存じます。また、そのように努力いたします。
 公務員の給与制度については、中立的第三者機関たる人事院が、昨年の勧告に際し、総合的再検討を行う旨表明し、すでに調査研究に着手しているところであります。政府としても、昨年十月二十八日の勧告の取り扱い方針の閣議決定に基づき、人事院にその検討を可及的速やかにお願いを申し上げておるところであります。
 天下りの問題でありますが、国家公務員の営利企業への就職については、国家公務員法の規定により、第三者機関たる人事院の承認がない限り就職できないという厳しい制限が課せられております。
 また、特殊法人の役員人事につきましては、広く各界有識者の中から適任者を人選するとの見地から、昭和五十二年十二月の閣議決定及び昭和五十四年十二月の閣議了解において、民間からの登用の積極的推進及び特殊法人相互間のたらい回し的異動の規制を定めているところであり、今後とも、この方針にのっとって努力してまいる所存でございます。
 公務員の定員削減を強化せよとの御意見がございました。
 政府は、臨時行政調査会の答申を踏まえ、定員削減計画を改定強化し、昭和五十七年度以降五年間に、事務・事業の合理化、効率化等により国家公務員を五%、約四万五千人削減する第六次定員削減計画を作成したところであります。国家公務員の数は必要最小限度にとどめることが望ましいと考えられますので、今後の増員要請については、少数精鋭の考えのもとに厳しく抑制してまいる所存であります。
 臨調答申を待つまでもなく、行政改革の青写真を具体的に示すべきではないかとのお尋ねでありますが、政府としては、行財政の改革を積極的に推進してまいる決意であり、目下当面の方策としては、七月十日の臨調第一次答申の趣旨にのっとり、行革関連特例法案の国会提出を初め、所要の措置を実施に移そうとしているところであります。
 言うまでもなく、行財政の抜本的改革を進めるためには、今後なお各種制度の見直しを進めていく必要があります。行政の制度及び組織体制等の基本的な改革はなかなかに困難な課題ではありますが、政府としても、臨時行政調査会における御検討と並行して、御指摘の問題を含め、引き続き検討を加えていきたいと考えます。
 行政改革推進のためには、国会が率先して改革を行うことが先決であるとの御意見でありました。
 まことにごりっぱな見解であり、臨調第一次答申でも、国会の合理化、効率化の努力が要望されているところであります。
 政府としては、国会改革の議論の展開を十分関心を持って見守ると同時に、政府として必要な御協力は惜しむものではございません。いずれにせよ、河野議員も御指摘のとおり、これらの問題は、国権の最高機関である国会で御判断いただくものと考えております。
 次に、衆議院議員の選挙区別定数についてでありますが、この問題は、従来各党間で合意を見た線に沿って、不均衡の著しい選挙区について是正が図られてきたという経緯がございます。
 この問題を論議する場合は、御指摘のように総定数をどうするか、そのいかんによっては、選挙区画をどうするのかなど、基本的問題との関連を十分考慮してかかる必要もあります。私は、やはり選挙の基本的なルールづくりの問題として、各党間の合意に基づいて改善していくことが最も民主的かつ現実的であると考えますので、今後、各党間で論議を尽くしていただきたいと存じます。
 次に、所得税についての御質問でありますが、まず職業別に見た納税者の割合であります。
 所得が課税最低限以下の場合には納税者に該当しないこととなりますので、あるグループの納税者割合が低いからといって所得の把握率が低いということに必ずしも結びつくものではありませんが、御質問の割合について昭和五十四年分で推計して申し上げますと、給与所得者約八一%、農業所得者約一五%、農業以外の事業所得者約三六%となっております。
 執行面における税負担の公平確保のためには、今後とも誠実な青色申告者の普及育成等により、さらに納税環境を整備するとともに、可能な限りの調査事務量を確保し、税務調査の充実に一層努めてまいる所存であります。
 また、税負担の公平確保を図るため、申告水準の向上という観点からの制度面における改善策等についても、幅広い検討を進めてまいりたいと存じます。
 なお、総収入申告制を御提案されておりますが、わが国に同様の制度が導入された場合、納税者に十分遵守されることになるのかどうか、国民の記帳能力や納税モラル等、幅広い観点から今後検討していかなければならないと考えます。
 中央のみならず、地方をも含めた公共料金の値上げ抑制を明言せよとの御意見でありました。
 公共料金の改定に当たりましては、経営の徹底した合理化を前提とし、物価及び国民生活に及ぼす影響を十分考慮して、厳正に取り扱う所存でございます。
 次に、防衛費の取り扱いについてお尋ねがありました。
 わが国の防衛力の整備につきましては、最近の厳しい国際情勢にかんがみ、他の諸施策との調和を図りつつ、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準を可及的速やかに達成することを基本として、質の高い防衛力の整備に努める必要があると考えております。
 毎年度の防衛関係予算は、政府部内の編成過程における検討はもちろんのこと、国防会議の審議や政府原案に対する国会の審議が行われておりますので、御指摘のように、シビリアンコントロールの面からのチェックが弱体化するというような心配は当たらないと考えます。
 なお、五十七年度予算編成に当たっては、財政再建が現在の緊急課題であること、必要最小限度の防衛力の整備充実を図っていく必要があることなどを総合勘案し、防衛関係費の後年度負担についても、今後の予算編成過程で十分慎重に検討した上で、適切な規模のものとしてまいりたいと考えております。いずれにしても、防衛予算のみを特別扱いする考えはございません。
 軍縮問題についてお答えいたします。
 近年、国際情勢は不安定化の傾向を見せ、軍備競争が強まっておりますが、かかる状況においてこそ、軍縮の果たすべき役割りはますます重要になってきていると考えます。
 このような基本的認識に基づき、わが国は、特に包括的核実験禁止及び化学兵器禁止の実現を軍縮分野における優先課題として取り組んできており、今次国連総会においても、外務大臣よりその促進を強く求めるとともに、特に米ソ両国の核軍縮努力を要請し、各国の共感を得た次第であります。
 なお、本邦における軍縮会議開催につきましては、一九七八年、地下核実験探知制度を確立するための努力の一環として、東京において地震専門家会合を開催しましたが、今後とも御指摘の趣旨を念頭に置いて努力してまいりたいと思います。
 次に、御指摘のように校内暴力などの青少年の非行が多発しておることは、まことに遺憾でございます。非行の原因や背景には、家庭、学校のあり方や、あるいは河野議員御指摘の自動販売機、テレビなどの社会的環境などが複雑に絡み合っていると考えられますが、学校、家庭、社会がそれぞれこの問題を真剣に受けとめ、青少年の健全な育成に努めていくことが必要であります。今後とも最善を尽くしてまいりたいと存じます。(拍手)
#15
○副議長(岡田春夫君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 中央社会保険医療協議会委員任命につき事後承認を求めるの件
 電波監理審議会委員任命につき事後同意を求めるの件
#16
○副議長(岡田春夫君) お諮りいたします。
 内閣から、
 中央社会保険医療協議会委員に高橋勝好君を、
 電波監理審議会委員に岡村総吾君及び舘野繁君を
任命したので、それぞれその事後の承認または同意を得たいとの申し出があります。
 まず、中央社会保険医療協議会委員の任命について、申し出のとおり事後の承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○副議長(岡田春夫君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
 次に、電波監理審議会委員の任命について、申し出のとおり事後の同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#18
○副議長(岡田春夫君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 法制局長の任命承認の件
#19
○副議長(岡田春夫君) お諮りいたします。
 本院の法制局長に大竹清一君を議長において任命したいと存じます。これを御承認願いたいと思います。御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○副議長(岡田春夫君) 御異議なしと認めます。よって、承認するに決しました。
     ――――◇―――――
#21
○副議長(岡田春夫君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  鈴木 善幸君
        法 務 大 臣 奥野 誠亮君
        外 務 大 臣 園田  直君
        大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君
        文 部 大 臣 田中 龍夫君
        厚 生 大 臣 村山 達雄君
        農林水産大臣  亀岡 高夫君
        通商産業大臣  田中 六助君
        運 輸 大 臣 塩川正十郎君
        郵 政 大 臣 山内 一郎君
        労 働 大 臣 藤尾 正行君
        建 設 大 臣 斉藤滋与史君
        自 治 大 臣 安孫子藤吉君
        国 務 大 臣 大村 襄治君
        国 務 大 臣 鯨岡 兵輔君
        国 務 大 臣 河本 敏夫君
        国 務 大 臣 中川 一郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 中山 太郎君
        国 務 大 臣 原 健三郎君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 角田禮次郎君
ソース: 国立国会図書館
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