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1949/04/04 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 水産委員会 第12号
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1949/04/04 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 水産委員会 第12号

#1
第007回国会 水産委員会 第12号
昭和二十五年四月四日(火曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○臘虎膃肭獸猟獲取締法の一部を改正
 する法律案(内閣提出)
○水産資源枯渇防止法案(内閣送付)
  ―――――――――――――
   午後一時五十八分開会
#2
○委員長(木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。
 最初に臘虎膃肭獸猟獲取締法の一部を改正する法律案を議題に供します。この前の委員会で委員の御質問は大体終了したと申しましたが、委員外の丹羽議員から発言を要求されております。許可して差支ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(木下辰雄君) 御異議ないと認めます。それでは丹羽委員の発言をお願いします。
#4
○委員外議員(丹羽五郎君) 委員外の発言をお許し願いまして……。
 過日の水産委員会の懇談会におきまして、大体私の考え方は申上げて置きましたので、各委員諸君も十二分にお分りのことと、考えておりますが、過日の委員会の懇談会で論争の焦点になりましたのは、私はかような不必要な法律をここに拵える必要はないじやないかという結論を申上げましたところ、明治四十五年に一つの原始法案即ち現行法、臘虎膃肭獸猟獲取締法があつて、その一部の僅少な訂正をするというお話であつたんですが、この法案を眺めますのに、第一疑点を持つのは、その「おつとせい」の「獸皮若ハ製品ノ所持ニ付之ヲ準用ス」、「おつとせい」の獸皮若くは製品の所持につきこれを準用すると言いますと、「おつとせい」の獸皮は全然日本人は持てないということに相成るのですが、これはこの法を施行して後においての獸皮か、その前の獸皮かという認定は一体どこでこれをやるのですか。
#5
○委員長(木下辰雄君) 水産当局の答弁を求めます。
#6
○説明員(尾崎順三郎君) お答え申上げます。獸皮の所持についての制限の問題でございますが、これは法案にございますように、全部を省令に讓るようになつておるわけであります。従いましてこの獸皮を発見いたしました場合、これが法案施行後に獲られたか、或いは施行後に獲られたかの判別は非常に困難なことであると思います。この点につきましては関係方面とまだ打合せがついておりませんけれども、議論しておる最中でございまして、省令案からは成るべくその点を除きまして施行後に獲られたものについて取締りの対象とするというような考えで折衝いたしております。
#7
○委員外議員(丹羽五郎君) この点は前水産委員会で委員各位が非常に御論争になつたということも実は聞いておるのですが、ただ私はこういうような法律を拵える上においては、相当この点を明確にする必要があるとかように考えておるのですが、それからもう一つお尋ねしたいのは、「らつこ」というものが現在日本にはいない。「おつとせい」は回遊獸ですからおります。現在日本に来ておる「おつとせい」はどこから来るかというと、ブリビロフの「おつとせい」、コマンドルスキーの「おつとせい」、それからもう一つは海豹島の「おつとせい」というのが日本の領海、即ち現在の領海と言いますと、干満の差の中心から三浬ラインが日本の領海でありますが、まだ講和條約もできておりませんが、領海の遵法は現在受けております。これは海上保安庁の規定によりましても、現在この領海は干満の差の中心から三浬というものは日本の領海に認められておりますが、そこに今言つた三拠点の「おつとせい」が来ることは事実です。来るので非常に日本の漁民が「おつとせい」によつての災害が非常に困る。私はこの法案に反対だということも過日申上げておつたのですが、第二点としては「らつこ」が対在日本にはいないのです。現在日本に「らつこ」のおりますのは、アリユーシヤン列島のアッツのはなに幾分おります。それからその次の島、ちよつと私はその名前を記憶を失つておりますが、そこにおるのです。それからコマンドルスキーのカツパイラにおるという「らつこ」と、それからカムチヤツカの一番シムシユ島に近いところ、これが現在の「らつこ」の繁殖地なんです。それから千島には、明治四十五年に制定したときには千島には「らつこ」がありました。併しもう現在、日本が昭和十七年に條約の一方破棄をした折は、殆んど千島にいなかつたのです。現在この領土を失つた日本には一体「らつこ」はいないのにこの「らつこ」の取締る規則を拵えるということは、その法の精神が分らん。卑近な例を挙げれば、ライオンや象や日本に棲息していないところの獸類を獲るなという取締規則を拵えるというのと私は同じことだと思う。一体こういう規則を拵える、法律を拵えてどこに法の価値があるのですか。私は「おつとせい」のこの取締法を拵えるということには百歩を譲つて考えて見ても、この「らつこ」に至つては私もこういうような死文……こういうような法律を拵えるということは一体政府当局の頭を一つ私はお尋ねしたい。さすればこれからの日本においてもライオンを獲るな「鰐」を獲るな、象を獲るな、虎を獲るなというような法律を各省において拵えなければならんように私は考えるが、その点を一つお尋したい。
#8
○説明員(尾崎順三郎君) お答え申上げます。明治四十五年にできました現在の法律は、臘虎膃肭獸猟獲取締法というので、「らつこ」もおつとせいも含んで取締法ができておるわけであります。終戰後千島を失いました関係で、現在の我が領土の附近には「らつこ」はいないわけでございますけれども、これはまだ併し講條條約の関係もございますし、千島が明らかにこちらのものでないということにまだ決つたわけではないと思つておるのでございます。又今度の改正案は従前の臘虎膃肭獸猟獲取締法を一部成るべく詳細に改正しようというのでございまして、従前は独獲だけについて許可制度にしておつたわけでございますが、猟獲されたものの製造、加工、販売というふうな点についても制限できるようにただ改正しようというのでございまして、「らつこ」のおる所が今のところなくなつておりますから、それを除けたらいいではないかという御議論は御尤もでございますけれども、最小限度改正するという点でそこまでは触れなかつたわけでございまいます。
#9
○委員外議員(丹羽五郎君) 今の答弁甚だ私その意を得ないのですが、法は即ち対象がなければならん。日本に「らつこ」のいないのに「らつこ」、おつとせいの取締規則を拵えるということは実にもう非常に奇快至極な法案だと私はかように考えておる。それで要申上げた通り「らつこ」は全然日本の領海にもいません。日本の領海を回游して来る「らつこ」はある。「らつこ」の通有性として游して来る通有性はあるか、「らつこ」は海岸から幾ら沖へ行きましても約十浬以上に行きません。私共の経験、すべての何におきましても、「らつこ」は幾ら長く行きましても、幾ら沖に追い出しましても約三哩までです。さような日本の国の領海に生存していない動物、日本の国にいないもの、而も沖の回游力が明らかに幾ら死にもの狂いで「らつこ」が沖へ走つて見たところが、三哩以上を出ないのです。そういうような通有性を持つたらつこの取締規則が一体…。おつとせいなら私はこの法案について大いに考えられるが、らつこを入れるというに至つては私は言語同断とかように考えるのですが、これは結局別に私は鞭を打つわけじやないのですが、明治四十五年の取締規則をそのまま政府の方で不用意に燒直してこういうように持つて行つたから、臘虎膃肭猟獲取締法というこういう演題を拵えて、而もいない法律の対象をここに拵えていろいろ御丁寧に今度五千円を十万円の罰金刑までここに科せられておるのですが、これは私は刑罰の量定ということは貨幣価値の関係がありますから、十万円以下はこれはまあ相当だとはかように考えておりますけれども、結局この法の精神、ないものを取締るというのは私はこの参議院の水産委員先輩各位がここにおられますが、ここが参議院としての本当の私は性格を持ち、参議院としての私は又專門家がエキスパートとして私はここにこの法案を審議されるのが必要な行為じやなかろうかとこういうように考えております。これは私仮にこの法案が出てもこれは本会議で反対いたします。日本に棲息していない動物を法律で取締るということは私はもつての外だと思う。先開も申上げたことく、何もタイから頼んで日本に持つて来たライオンや象の取締りに猟獣取締規則を拵えたり鰐の取締規則を拵えたりしなければならんということはおかしい。そういう法律は成るべく簡にして明、即これが一般大衆の頭にも入るというのが私は一番立法の精神であると思います。これは私この参議院の水産委員先輩各位に、特に参議院がここによつて参議院の性格性も現われるし、ここによつて私はエキスパートとしての立法府として私は価値があるものだとかように思いますので、どうか委員各位は十分その点を御留意になつて御審議を願いたいと思います。
#10
○委員長(木下辰雄君) ちよつと私から申上げますが、只今丹羽議員の御注意もありましたし、又千田委員その他の御質問もありましたので、今委員会は全員一致の修正を現在作りまして、GHQの方にオーケーをとつておるのですが、それは所持の問題が主なるものであります。「製品ノ所持」を「其ノ製品ノ所持ニシテ臘虎膃肭獣又ハ其ノ獣皮若ハ其ノ製品ノ猟獲、製造、加工又ハ販売ヲ業トスル者ノ為スモノ」という修正を決めまして目下手続中であります。ちよつと速記を止めて。
   〔速記中止〕
#11
○委員長(木下辰雄君) 速記を始めて。
#12
○千田正君 さつき委員外議員の丹羽議員の発言によつて、丹羽議員のお話もありましたが、「おつとせい」が日本の近海に現われて来た場合に、日本の近海に来るところの漁族が相当これによつて災害を蒙つておる。こういう長年の経験から丹羽議員から発言があつたのでありますが、只今我々御配付願いましたところの水産資源枯渇防止法案提案理由というのがありますが、水産資源枯渇というものにも関係するのでありますがこの点においては水産庁としましては、どういうふうに考えておられますか、らつこ、「おつとせい」を捕獲せずに、そうして日本の漁場を荒される。こういう問題に対してあなた方の方ではどういう手を打つつもりであるか。この「らつこ」、「おつとせい」の禁止法というものをここでどこまでも作らなければならないという理由があるのか、その点について一応政府の御意見を伺いたい。それからさつきも、いわゆるらつこは日本の近海にも来ないし、尚、且つ、又曾ての日本領土にも住んでおらなかつた。こういう法律を今後ここで作らなければならないというならば、もう少し法的に相当我々は考えなければならん。ここで、特に私は委員長に申込んで置きますが、これは参議院の法制局の誰か権威ある人に一つ一応委員会において説明して貰いたい。これが外交上に、或いは将来の国際問題の起きた場合において、日本が千島というような問題、或いはこういう問題と関連のある島嶼の問題がどういうふうに響して来るか、この法案が通過した場合にどう響くか、或いはこの法案が否決された場合にどう響くか、こういう問題も愼重に考える必要があると思うのであります。まだ今会期がそう直ぐには閉会にならないと思いますので、希ばそういう面においても愼重に御調査願つて、そうして改めて委員会においてこれを是とするならば是とする方法を考えて頂きたい、特にこの点を申上げて置きます。第一に私がお尋ね申上げました水産庁の方々にお伺いしますのは、水産資源枯渇防止法案というような法案が出て来る。こういうような水産資源の枯渇の原因の一つであるところの「おつとせい」を捕獲してはならないという、或いはそれに対して制度をどの程度加えるか、こういう問題に対して水産庁はどういうふうな考を持つているか、この点について御説明を頂きたい。
#13
○説明員(松任谷健太郎君) 「らつこ」「おつとせい」の猟獲禁止の問題につきましては、御説明申上げました通り、條約破棄といつたようなことを契機としまして、終戦後アメリカ本国において日本が條約を破棄した理由が現実に正しいかどうかということをアメリカが主体となつて調査をするということで、我が国もその調査に協力するという意味でやつているのでございまして、お話の資源関係等から申しますれば、従来我が国が主張しておりました有用魚族が捕食されるというような事実がそこが立証せられ、アメリカ本国においても納得するということになりますれば、「らつこ」、「おつとせい」の許可の問題につきましても、相当緩和を見るというようなことを我々として期待しているのでございます。従いまして資源枯君防止法の関係は一応現在予定しておりますのは、以西底曳でありまするとか、或いは以東底曳でありまするとか、そういつた方面におきまする資源と経営体数と申しまするか、漁船数とのバランスがとれていない、正常なバランスのとれた状態に復帰させまして、恒久的に我が国の事業会社が漁業を愛護しながらやつて行ける、その漁場から得られる魚類を享有し得るという体制の確立に重点があるわけでございまするので、こういう意味合から水産資源枯渇防止法という法案が必要であろうということで進んで参つておりますので、お話の通り関連はございまするけれども、以上申述べましたような関係で、片方は全く條約に基因する国際的な問題で、我が国がとにかくアメリカの心証を得るかないかという点にかかつておる問題でございますので、共々にこういう体制を整えつつ国際信義といつたようなものが高揚されるという点を実は期待しておるのでございまして、そういう意味合からも資源枯君防止という問題と「らつこ」「おつとせい」の取締法の強化という問題とは共々に運用実施して参るというように考えておる次第であります。
#14
○委員長(木下辰雄君) それから先に丹羽議員からこういう質問があつた。「らつこ」というものは明治の四十五年頃にはおつたかも知らんが、その後においては日本の領土内においてはいない。旧領土内にもいない、いないものを対象としていつまでもこの法律を置いておきということは不当じやいなか、「らつこ」という文字をここに残すということは不当じやないかという御質問がありましたが、それに対して御答弁を願います。
#15
○説明員(松任谷健太郎君) 終戰当時「らつこ」につきましては、千鳥を中心にいたしまして二千頭程度の「らつこ」がおつたのでございます。終戰後になりまして、領土の縮小というような関係でお話のような状態になつておるのではございますが、将来講和條約といつたようなものの締結如何によりまして、この問題が再び問題になつて参るということが考えられますので、現在の法規といたしまして削らないで、そのまま存続しておるというような関係になつておるのでございます。
#16
○委員外議員(丹羽五郎君) 非常に不思議なことを聞きますが、終戰当時に二千頭という「らつこ」がおつた。「らつこ」の二千頭というものは大したものなんですがね。而もこの千島というものひ昭和十六年からあすこに軍の根拠地を拵えてしまつて、千島列島は全部陸軍の人、又北千島では海軍の人といので、あすこに重要な軍の基地を拵えた、飛行機は上を飛ぶわ、高射砲は飛ぶわというような状態で、「らつこ」のように極く神経の微妙な働きをする、一マイル先の音、臭を嗅ぎ分けて自分の体を隠すというような「らつこ」が終戰直後二千頭おつたということは、その実証を出して貰いたい。これは動物学的に大いに私共は研究して行きたい。「らつこ」というものはその習性は農林当局も知つておるでしよう。一マイル先、恐らく一マイル半先の臭い、風上の臭い、音には非常に敏感なものなんです。それで自分の休を隠す、それだから「らつこ」という皮が非常に値段が高い。それがあなた千島列島全部日本の海軍の昭和十七年以後においては基地になつて飛行機が上を飛んだりして、二千頭の「らつこ」があすこにおてというようなことこ如何なる方法によつて調査されたか、私はそれは議院の面目において、水産委員の権威に対しても出して貰いたいと思う。
#17
○説明員(松任谷健太郎君) 日本海獸会社等の資料に基きまして、二千頭程度おつたかということを申上げた次第でありまして、尚この点若し御疑問がございますれば、後程その資料の根拠等につきまして書きましてお配り申上げたいと、かように存じます。
#18
○千田正君 私は千島に終戰当時二千頭おつたということは、私の常識では判断できないし、私の曾ての水産資料においてもそれを発見できないのでありますが、何か水産庁においてはこういうふうな海獸を特に保護するようなことを北千島、或いは南千島においてやられたか。或いは保護する政策の下に特に銀狐を飼つたような飼育方法で「らつこ」を飼つておつた事実があるのでありますか、どうですか。その点を伺いたいと思うのでありますそれで私は水産庁には、国際法規関係にも或る程度これは響いて来ると思います。それからこれはやはりらつこがいないというような問題、或いは水産庁の方では二千数百頭おつたというような事実の問題もあると思いますから、今日はこの問題につきましては、水産庁においても十分にこれを立証するだけの資料を整えて、尚且つ委員会としましても、これは今後の国際法規上千島が再び日本の領土に復帰されるかどうかというような非常な微妙な点もありますので、十分に法制当局との間にこの点におきましても研究したいと思いますので、この程度に私は質問を終えて、改めとこの次の委員会において水産庁のそうしたいろいろな点においての研究を御発表願いたいと思います。
#19
○委員長(木下辰雄君) 只今千田委員が私には要望されましたが、法制局長、或いは関係庁を呼びまして、十分委員会において、審議したいと思います。それから水産庁におかれましては、「らつこ」が千島に二千頭おつたという資料並びに資料の出所、その他について詳細に調査をされて、この次の委員会までに御報告を願いたいと思います。臘虎膃肭獸猟獲取締法の一部を改正する法律案はこのくらいで打切ります。
  ―――――――――――――
#20
○委員長(木下辰雄君) 次に水産資源枯渇防止法案を上程いたします。提案理由の説明を求めます。
#21
○政府委員(坂本實君) 水産資源枯渇防止法案につきまして、その提案理由の大体を御説明申上げたいと思います。言うまでもなく資源の保護、愛護ということは、如何なる産業に取つても大切なことであります。特に漁業の方面においては、制限された漁業の内部において多数の経営者が漁業に従事し、すでに飽和状態に達している状況にあるのでありまして、遠洋漁業、近海漁業、沿岸漁業を問わず、稚魚採捕等によつて濫獲の弊を生じ、又は無許可船の繰業等により漁場の紛争が絶ないい有様で、その結果は漁場内の水産資源を枯渇させ、延いては止むに止まれず制限漁区違反というような事態が起るに至つたのであります。由来、総司状部天然資源局におきしては、水産資手愛護策を水産施策の重要な眼目として来たのでありまして、従来、日本の漁業者が侵略的な漁業という惡い印象を国際間に持たれておる点に鑑み、漁業に関する規律を自主的に守り、又資源を愛護することを継続的実行によつて証明しなければ、漁区制限の撤廃の問題も論議に上せ得ない旨をたびたび声明してきたのであります。政府におきましては、先に中国東海、黄海における機船底びき網漁業及び気船トロール漁業につきまして、資源枯渇の弊害が特に著しいことを認め、当業者の自主的な体制において操業漁船の約三割を減船することに決定したのでありますが、ただにこれらの漁業種類に止まらず、全般的に重要な水産資源について科学的な調査を実施し、資源の量に適応した最高の漁獲率を維持して漁業の利益を永久に継続させ、且つ国際信義を高めることの必要を痛感する次第であります。そして資手枯渇の虞れのある種類の漁業につきましては、他に濫獲防止の方法を講じて、止むを得ない場合には、むしろ直截に減船なり操業区域の変更の措置を採つて参りたいと存ずるのであります。このためには許可の取消、国家の補償といつた面において法律的根拠が必要でありまして、講和條約を控えた現在、このような法律を制定して、我が国の漁業者がかくしてまで資源愛護の目的を達成しようと努めていることを国の内外に指し示すことは、我が国水産業の将来にとつて最も適切なことと信ずるのであります。以上が水産資源枯渇防止法案を提案したゆえんでありますが、以下この法案の主要な内容について概略御説明申上げます。先ず第一に、水産資源の枯渇の虞れがあると認められる漁業について資源の関係その他を見合いまして、漁業種類及び海域別に操業漁船の最高隻数を定めるのであります。第二に、この最高隻数を定めた場合に、これを比較して現実に許可を受けている漁船の数がその限度を超えている場合には、超える数の漁船について許可の取消又は操業区域の変更の措置を行うのであります。この措置をとるためには、当該漁業の操業状況、労働條件その他のことを勘案した一定の基準によつて行なつて参るわけであります。尚必要がある場合には、この限度内の漁船についても同時に操業区域を変更する場合があります。第三に、以上のような措置をとつたことによる通常の損失に対しては、予算の関係から現金で拂うことの困難な事情もありますので、交付の方法については、政令で定めることといたしております。尚これらのことを実施するために必要な科学的な資源調査をこの法律を基礎にして、確実にやつて参りたいと存ずるのであります。以上がこの法案の主要な内容でありますが、何とぞ愼重御審議の上速かに御決議あらんことを切望する次第であります。
#22
○委員長(木下辰雄君) 逐條審議をいたす前に、大体その内容について水産当局の御説明を願います。
#23
○説明員(松任谷健太郎君) 水産資源枯渇防止法案につきまして、内容を補足的に御説明申上げたいと思います。只今提案理由の説明にございましたように、本法律案の立法の端緒といたしましては、以西底曳及びトロール漁業の減船整理を確実に実行するために、その法的な裏打ちを必要とするところにあるのでございます。併しながら資源の面なり或いは漁業経営の面なりを考えて見ますると、例えば以東底曳でありまするとか、その他の漁業について見ましても、ほぼ同様な状況にあるのでございまして、広く農林大臣の許可する漁業につきまして本法を実行可能に順に従いまして、漸次適用をして参りたい。かように存じておるのでございます。即ちその適用範囲といたしましては、農林大臣の許可する漁業というところに限定いたしまして適用して参るということになつておるのでございます。第一條に目的が掲げてあるのでございまするが、その目的としますのは、一つの海域なり漁業場を捉えて考えて見ますと、従来往々ありましたように、多数の漁船が我れ勝ちに漁獲の大量といつたような点を競つて濫獲をする、それによつて漁場を荒廃させまして、更に次の漁場に移るといつたような、いわゆる侵略的な漁業方法を止めまして、飽くまで漁場の愛護涵養といつたような立場から適当な数の漁船が経済的に採算的に漁獲をいたしまして、恒久的に漁場が漁業者によつて利用される、それによつて恒久的に漁業による利益が漁業者によつて享受されるという体制が確立するところにあるのでございます。即ちこういつた体制があらゆる漁場におきまして、あらゆる漁業につきましてとられることになりますれば、国際的な漁区の制限、或いは国内的な操業区域というものが法令通りに守られるというようなことも考えられまするし、それと同時にその海域でありまするとか、或いはその漁場でありまするとか、といつたようなものの中で漁業者が経済的に漁獲される、漁場を荒廃させることなしに続けて参れるというようなことを考えておるのでございます。この点は具体的に以西底曳及びトロール漁業に例をとつて見ますると、終戰によりまして以西底曳或いはトロール漁業の漁場が戰前の五分の二に制限された。戰前の漁獲統計から推定いたしますると、その五分の二の漁区内での漁獲可能量は戰前漁獲量に比べまして三分の一以下である、といつたような状態になつておるのでございまするが、その制限漁区内の操業漁船を一方において見ますると、内地根拠のものだけを例にとつて考えて見ましても、昭和十二年におきまして以西底曳の関係が六百八十八隻、トロールが七十隻といつたような状態でありましたものが一番戰前における最高隻数であつたのでありまするが、終戰後の現在におきましては、それよりも遥かに多数の千隻に近い漁船が競つた操業しているというような状態になつたのでございまして、漁場の荒廃して参るということは当然の帰結のようにも考えられまするし、漁区内では漁獲が低下するといつたような関係もございまして、漁区違犯といつたような事実さえ生れて来たということになるわけでございます。そこで先程大臣の説明にもありまするように、司令部関係におきましては、過去において日本の漁業者が国際漁場におきまして、侵略漁業を行なつたというような見方から、非常に漁場拡張等の要求に対しまして、その前提を先ず固めなければいかんというふうなことを指示して参つておるのでございます。即ち第一に漁区違犯を取締るということと、第二に漁区内の水産資源を保持し得る水準まで漁船を減船しろということと、更に過去の日本漁業が資源を破壞し、規則を守らん侵略漁業であるというような意識を拂拭しなければいかんといつたような勧告が実は農林大臣に対して行われたのでございます。従いまして海外漁場を失いましたために、いろいろと漁獲高を恢復するというような意味合から、漁獲生産の安定性の高い、而もまとまつた量が配給に上ぼし得るといつたような以西トロール漁業というものに対しまして、官民共に力を入れた結果が以上のような結果になりましたのは、誠に遺憾ではございまするが、業者の自主的に発案によりまして、その整理案が確定して、御承知のような整理減船の計画の実行ということに具体的に進行しつつあるのでございます。問題は本年度行わるべきその減船整理該当船の許可の取消しでありまするとか、補償でありまするといつたようなものを法律的に裏付けるということが必要でございまして、本法案はそのためにそれを端緒として立案されておるということなのでございます。併しながら一方国内的な漁業について考えて見ましても、以東底曳といつたような問題につきましても、操業区域というものが戰前と比べまして変化が余りないにも拘わりませず、漁船の数というものが相当数量が多くなつておる。例えて申しますると、昭和十二年に約二千隻程度で、そのときにおいてすら十ケ年計画で七百隻に減らそうという計画もあつたのでございまするが、二千隻の当時に比べましても現在は約二千八百隻程度があり、これに無許可船もあるし、類似漁船も相当あるといつたような状態で、誠に以西の関係と同じうよな状況を呈しておるのでございます。従いましてこの点につきましてはいろいろと具体的な調査に基きまして、愼重にその対策を考究中でございまするが、将来その調査の完成なり、或いは対策の樹立化されました場合におきまして、本法案との関係において如何に考慮するかという問題が起つて参るのでございます。次に、法文的に申上げたいと存じます。第一は本法案と漁業法との関係でございます。本法案は漁業法が漁業に関する一般法律である一般法であるというのに対しまして、その特別法をなすというふうに考えておるのでございます。即ち現行の改正漁業法の第五十三條の規定にありまする許可定数の決定方法でありまするとか、第六十四條の規定にあります許可定数の限度でありまするとか、或いは損失補償の規定でありまするとかいうものは、これは指定遠洋漁業のみに適用されるというような体制になつておるのでございますが、漁業法六十五條による農林大臣の許可漁業でありまするところの、例えば五十トン未満の以西底曳でありまするとか、以東底曳網漁業というものに適用がないということでございますので、そういつた意味から広く農林大臣の許可漁業に本法を適用するという意味で五十三條と六十四條を削除して適用範囲を拡大してまとめておるということになつておるのでございます。それから第二点としましては、許可の定数を決定しましたり、或いは定数を減少すると、即ち許可を取消するという規定でありますとか、或いは補償交付の方法といつたような規定でありますとかは、現在の漁業法には具体的には規定されておらずに、單なる根拠法としての規定があるのでございます。従いましてその根拠規定といつたような意味のものをむしろ具体的に規定して参るという必要を生じておりますので、漁業法の関係を拔きまして本法に規定した次第でございます。第三点といたしまして、漁業法に規定されました中央漁業調整審議会というものの審議の権限を定数決定といつたようなことに限定せずに、更に補償額決定についてまで拡充する必要があるというわけで本法案によりましてその審議の権限事項を付け加えておるのでございます。
 以上の諸点によりまして、漁業法の中から特に水産資源枯渇防止に関する規定を取出しまして、更にそれを拡張し、或いはそれを具体的に規定したというような関係になつておるのでございます。
 次に、各條についての御説明を簡單に申上げますと、第一條は目的で、これは先程申上げましたので説明を省略さして頂きます。
 第二條の関係でございまするが、これは許可漁船の定数を如何に決定するかという規定でございまして、先程申述べました農林大臣の許可漁業につきましてその種類別、これは以西の底曳網漁業、或いは以東の底曳網漁業といつたような種類別に、而も海域別に、と申しますのは、以西で申しますと百三十度以西の当該公海の関係の方面の漁業でございますが、そういう海域、以東で申しますと、これは未だ決めておりませんが、数府県に亘る一つのブロツク的な漁場関係が考えられるか、或いは各県別の沖合の漁場が考えられるといつたようなふうの海域別に自然的に、或いは経済的な條件を勘案いたしまして決定するのでございますが、決定の場合におきま島ては、公聽会による利害関係人の意見と審議会の意見の両方とも聞いて決めるということになつておるのでございます。
 第三條の関係は定数の超過によりまする許可の取消し及び変更を如何にして決定するかという規定でございます。手続きといたしましては先ず現在数と定数との差がどれだけあるかということを見まして、第二項によりまする公聽会に諮つたところの基準と申しますのは、この一項の一号から四号までの基準事項を勘案いたしまして具体的に漁船名を予定するのでございます。それで予定しました船主に対しまして取消し変更の期日を指定し、告示するということになるわけでございます。それ以前に文書で理由を通知しまして、更に公開により聽問で弁明もする機会等を與えまして、その期日が来ますれば、取消しなり変更なりが効力を発生するというふうな規定になつておるのでございます。それで第三項で整理されないで残る船でありましても、漁場等の関係からいたしまして、單に操業区域を変更するという場合もあり得るわけでございますので、その規定を規定したのでございます。具体的に申しますると、以西底曳で五十トン未満の底曳網漁業というものを中間漁区というものによりまして、その範囲で操業を認めるというようなことが具体的に予想されるのであります。
 第四條の関係は、損失補償の規定であります。それは憲法第二十九條の関係によりまして国家処分による国民の権利に対するところの補償といつたような意味合の下に、国が補償の義務を負うということを規定したものでございまして、補償の範囲といたしましては「通常生ずべき損失」というふうに限定したのであります。大体以西の例をとりますと、收益の保障、漁船の保全関係の費用或いは乘組員の離職手当といつたような範囲で考えておるのでございます。それから補償額はここにありますように審議会の意見を聞きまして、農林大臣が定めて告示することになつておるのであります。それから交付につきましては、すべて政令で細かく規定するということになるのでございます、この関係は川実上の問題といたしましては、予算額の総額の確定といつたような点につきましていろいろとまで決定しない部面がございましたので、一応政令で決めるというふうに用意をしたのでございます。尚額に不服のある者は、国を被告として訴を認めるというふうなことで、権利者の保護の規定を挿入しております。
 第五條の関係は、漁業従事者に対する措置の規定でございまするが、これは補償というものが経営者に対する補償を建前としておるのでございまして、そのために本條は乘組員保護のために長年慣れた職場を離れるというための手当を支給するように、経営者に義務を負担させるというようなことを規定しておるのでございます。即ち予め予定された補償額を経営者が交付を受けて、その中から従事者に出すというふうな関係を考慮しておるのでございます。
 それから第六條は水産資源調査の規定でございまするが、本法を嚴格に実施いたしまするためには、科学的調査研究というものが常に前提になるのでございまして、そういつた意味合からこの第六條のような詳細な規定を設けまして、定数を決める、苛くも定数を決めるといつたような重要な事項に対しましては、科学的な研究資料に基いて決定するというような処置を取つておるのでございます。この関係は予算の方とも関連いたしておるのでございまして、以西の関係につきましては、本年度二千万円程度というものが資源調査の費用として計上されておるのでございます。
 第七條は報告徴收の関係でございますし、第八條は罰則でございますので、省略いたします。尚附則につきましては、施行の期日を「公布の日から起算して九十日をこえない期間内において、政令で定める。」と書いてございまするが、決実の問題として、以西底曳網漁業の減船整理の第一期の関係が六月末に行われるというようなことをも予想いたしまして、それに間に合うように考えたらどうかということを考慮しておるのでございます。附則二項の関係は先程御説明申上げました漁業法と本法との関係を規定しておるのでございまして、御説明は先程いたしました通りでございますので、省略さして頂きたいと存じます。
#24
○委員長(木下辰雄君) この法案に対して御質問がありましたらお願いいたします。……それでは本日の委員会はこのくらいで閉会します。
   午後三時一分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     木下 辰雄君
   理事
           千田  正君
   委員
           西山 龜七君
           江熊 哲翁君
           矢野 酉雄君
  委員外議員
           丹羽 五郎君
  政府委員
   農林政務次官  坂本  實君
  説明員
   農林事務官
   (水産庁漁政部
   長)     松任谷健太郎君
   農 林 技 官
   (水産庁生産部
   遠洋漁業課)  尾崎順三郎君
ソース: 国立国会図書館
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