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1980/03/19 第94回国会 参議院 参議院会議録情報 第094回国会 社会労働委員会 第4号
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1980/03/19 第94回国会 参議院

参議院会議録情報 第094回国会 社会労働委員会 第4号

#1
第094回国会 社会労働委員会 第4号
昭和五十六年三月十九日(木曜日)
   午前十一時一分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         片山 甚市君
    理 事
                遠藤 政夫君
                佐々木 満君
                高杉 廸忠君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                斎藤 十朗君
                関口 恵造君
                田代由紀男君
                田中 正巳君
                丸茂 重貞君
                村上 正邦君
                森下  泰君
                対馬 孝且君
                安恒 良一君
                沓脱タケ子君
                柄谷 道一君
                前島英三郎君
                山田耕三郎君
   国務大臣
       労 働 大 臣  藤尾 正行君
   政府委員
       内閣総理大臣官
       房同和対策室長  小島 弘仲君
       厚生省年金局長  松田  正君
       社会保険庁年金
       保険部長     新津 博典君
       労働大臣官房長  谷口 隆志君
       労働省労政局長  細野  正君
       労働省労働基準
       局長       吉本  実君
       労働省職業安定
       局長       関  英夫君
       労働省職業安定
       局失業対策部長  加藤  孝君
       労働省職業訓練
       局長       森  英良君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働問題に関する調査
 (労働行政の基本施策に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(片山甚市君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 労働問題に関する調査を議題とし、労働行政の基本施策に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○高杉廸忠君 私は、労働大臣の所信表明に関連をいたしまして、労働行政に関する諸問題について御質問をいたしたいと思います。
 大臣は、去る三日の本委員会における所信表明において、わが国をめぐる内外の環境は依然として厳しいものがあるとし、また、わが国がこれまでの繁栄を今後とも維持発展させていけるかどうかの岐路に立っていると述べられましたが、これを具体的に御説明を願うとともに、内外の厳しい環境にいかに対応するかのその諸施策についての基本方針を、まずお伺いをするものであります。
#4
○国務大臣(藤尾正行君) お答えをいたします。
 私が所信表明の中で、わが国をめぐる内外の環境が厳しいということが続いておるということを申し上げましたのは、先生もすでに御高承のとおりでございまするけれども、内にございましては私どもの経済環境といいまするものが、これは外との関連におきましてもさようでございまするけれども、石油価格の高騰でございますとか、あるいはイラン・イラク戦争の勃発でありますとかいうような環境から、非常にいま不安定になってきておる。さらには、過去一年間の推移を見まして、冷夏でございますとか豪雪でございますとか、私どもは本当に予期いたしておりました以上の厳しい自然環境といいまするものにさらされまして、御案内のとおりの消費者物価の高騰、実質賃金の低下というような問題を、何とか解決をしなければならぬというところまで追いやられてまいりました。このことは、御案内のとおり、昭和二十七年私どもが統計をとり始めまして以来、初めての実質賃金の低下という現象でございまして、そのことが示しておりまするように、それは非常に異常な事態であるということを言わざるを得ないと思います。私どものこれの基盤となっておりまする経済環境、こういったものが、それが示しますように、それだけの非常な厳しさを持っておるということでございましょうから、私どもといたしましては当然その厳しさに耐え抜いて、それを踏み越えていくという覚悟をしなければなりませんし、その努力を最大限に傾注、発揮をしていかなければならぬ、かようなことであろうと思います。
 なお、外といいまするものにおきましては、OPECといいまするものの発動にかかわりまするエネルギーの価格変動といいまするものが、依然としてここで終わりというような状態にはなっていない。これは価格もそうでございますし、その産出量といいまするものの規制、こういったことがなお予期できない、そういう情勢にあり、仮にそういうことが起こりましても私どもといたしましては全く無抵抗に等しい、こういう状況にある。
 また、これはまあ非常に残念至極なことでございまするけれども、私どもの国民努力によりまする産業経済の発展によりまして生産性も非常に伸びておりますし、またそれに伴いまして、私どもの工業製品といいまするものが非常に質を高めております。そこで、対外的に私どもが意図してどうこうということはございませんけれども、どうしても外国の消費者各位がその商品をお選びになられます際に、安くて優秀な性能を持っております日本の製品がよろしいということで御選択あそばします。そういうことによって引き起こされてまいります貿易摩擦というような問題も、私どもといたしましては無視のできない、非常に大きなこれからの私どもの前に立ちはだかってくる要素であろうと考えますし、これも、私どもがこういった非常に厳しい、苦しい環境を踏み越え、かつまた踏み越えていくということによりまして、さらに大きな私どもの前進を世界的にかち取っていかなければならぬ、かような問題であろうと思います。
 したがいまして、こういったことを考えてまいります際に、私ども日本国民を取り巻きます経済状況、またこの経済状況から導いてこられます社会状況あるいは政治情勢というようなものは、なまやさしいものでないということをこの所信表明の認識の中におきまして、偽らず隠さず申し上げたというわけでございます。
#5
○高杉廸忠君 いま、大臣から基本方針についての姿勢が述べられましたが、最近の防衛力の強化、それから大幅増税などといった動きの中で、国民の実生活の低下が問題となっていることは、大臣もいまお認めになったわけでありますが、相次ぐ公共料金の引き上げを初めとする諸物価の高騰や、実質賃金の目減りなどについてのお話もありましたし、これは厚生省が行った五十五年の国民生活実態調査の中でも、現在の暮らしが苦しいと訴えていることが明らかになっているわけであります。
 そこで、勤労者世帯の生活の維持改善についての積極的な施策を今後いかに推進をしていくのか、これもあわせて労働大臣の所見を伺いたいと思うんです。
#6
○国務大臣(藤尾正行君) まあ私は一労働大臣でございますから、いま先生御指摘のような問題は、内閣総理大臣が考えるべき問題でございまして、そこまで私が申し上げることがいいか悪いかという判断ございますけれども、私が労働大臣としての立場から述べさしていただければ、私どもといたしましては、私どもの経済環境を打開をしていきますための諸条件の整備は、どうしてもやっていかなければならぬということでございまして、まず、私どもがその諸条件の整備の中で最も考えていかなければなりませんのは、この五十五年中に私どもが引き起こしました消費者物価の思わざる騰勢といいまするものをとどめるということでございまして、私どもが五十六年度の目標といたしておりまするような物価五・五%目標、あるいはこれからの経済の伸び率を五・三%にひとつ寄せていきたいというような考え方はどういたしましても私どもといたしまして貫徹をしていかなければならぬ至上課題である、かように考えておるわけでございまして、その実現のために必要なあらゆる手だては私どもといたしましてとっていかなければならぬ問題であろう、かように考えております。
#7
○高杉廸忠君 大臣はまた、高齢化社会に対応する施策がまず第一に取り組むべき課題であると述べられておられるわけです。
 高齢者を取り巻く若干の問題についてお尋ねをしたいと思うんですが、五十四年度に改善をしました雇用情勢も五十五年後半以降悪化をしていること、それから本年一月の完全失業者は百二十三万人に達しておる、前年同月比で十万人も増加している現状、特に中高年齢者の失業の増加と著しい休職超過、これはその厳しさを示していると思うんです。
 まず、最近の雇用失業情勢の特徴とその対策及び今後の見通しについて伺いたい。
#8
○政府委員(関英夫君) 最近の雇用失業情勢でございますが、昨年前半改善基調にございましたものの、年央からやや雇用失業情勢改善状態に足踏みが見られまして、最近におきましては、たとえば求人倍率は連続して横ばいというような形で改善傾向に足踏みが見られるところでございます。
 しかし、また一方で雇用者数は百万人を超えるような大幅の増が続いておりますし、完全失業者も百万人は超えておりますが、最近季節調整値で見ますと率としてはやや低下傾向にあるというような形で、全体といたしまして昨年前半に見られた改善基調が、現在足踏み状況にあるというのが最近の雇用情勢ではなかろうかと思います。
 私どもこういった最近の状態から見まして、今後経済の安定的な成長を図る――火曜日に緊急の総合経済対策、こういったものも閣議決定されたところでございますが、そういったものによりまして経済の改善を図り、それと同時に私どもも中高年齢者等特に雇用の厳しい者に対する対策を、従来以上に積極的に進めることによって今後に対処していきたいと考えておるわけでございます。
#9
○高杉廸忠君 雇用失業情勢についてのお答えがありましたが、失業者のほか、不安定就業者の増加と労働条件の低下などが指摘されると思うんです。失業者及び不安定就業者は一千万人とも一千数百万人とも言われています。これは臨時、日雇い労働者、短期間就労者、内職の従事者等、それぞれの実態を労働省の方ではいかに把握をされていますか。特にこれらの者のうちの中高年齢者の実数についてはどういうように把握されているのか。また、これらの者に対する安定した雇用確保対策及び労働条件の維持改善についていかなる施策を講じていますか。これを伺いたいと思います。
#10
○政府委員(関英夫君) 労働力調査によりますと、昭和五十五年におきまして非農林業の雇用者三千九百万人余でございますが、雇用形態別に見ますと、その中で臨時の雇用というのが二百五十二万人、それから日雇いというのが百二十三万人と、こういう数になっております。ただ、これこの数すべてを不安定就業と見るかどうかは非常に問題があるんではなかろうかと思っております。
 戦後の一時期におきます臨時、日雇い形態の者は不安定就業であるというような一般的な考え方は、その後高度成長を経まして、そういった臨時あるいは日雇い雇用形態の者が少なくなってまいりました。で、その後最近またふえてきている。その中には家庭の主婦等、自分の都合でそういう雇用形態を選んでおり、そして就業希望意識を調べましても、たとえばそういう雇用形態を継続することを希望している者が七割というような点も出てまいりまして、みずからの希望でそういう雇用形態を選んでいるという者も非常に多いわけでございます。したがいまして、いま申し上げました数字がすべて不安定就業者だという断定はいたしかねると思いますが、雇用形態別に見れば、非農林業の雇用者三千九百万人余のうち、臨時雇用が二百五十二万人、日雇いが百二十三万人、こういう数字になっております。
 それから、別に今度はフルタイムと短時間就労と、こう分けてみますと、三十五時間未満の短時間就労者は三百九十万人、こういうことになっております。
 それから、中高年齢者がどうなっているかという御質問でございますが、非農林業の雇用者一千二百二十万人の中で中高年、つまり四十五歳以上の臨時雇用の者が八十四万人、日雇い雇用の者が六十万人、こういったような数字になっております。
 それから、家内労働従事者についてのお尋ねがございました。五十四年十月の労働者の調査によりますと百四十四万人という数字になっております。そのうち五十歳以上の者が三十四万人となっております。
 で、こういった就業形態の者すべてが不安定就業とは言えないというふうに申し上げましたけれども、やはり就業形態によっては常用雇用の労働者に比べて劣るというような現状ある点も事実でございまして、私どもフルタイムへの就業を希望する者に対する職業指導、職業訓練あるいは職業紹介に努めることはもちろんでございますが、こういった臨時、日雇いあるいはパートタイムといったような雇用形態についての雇用管理の改善、こういったことが非常に重要であろうかと思います。そのために、労働基準法なり最賃法なり、あるいは家内労働法といったような保護法制の徹底、そういった指導、監督、そういったものに努めていきたいと考えているところでございます。
#11
○高杉廸忠君 雇用失業情勢を地域的に見ますと、特に民間企業の活力の乏しい特定不況地域等においては、中高年齢者の雇用問題は一層に深刻であると思うんです。で、これらの地域での公共事業に伴う中高年齢者の吸収率ですね、制度の実績及びこれら地域での雇用確保対策、こういうものはどういうように推進されておりますか。
#12
○政府委員(関英夫君) お尋ねは中高年齢者雇用促進法に基づく特定不況地域の公共事業吸収率制度のことだと存じますが、五十四年四月から九月までの公共事業の吸収率制度の運用状況でございますが、安定所に提出された施工通知書の件数が五千三百六十四件、これに係る無技能者の吸収人員は、延べでございますが、四十万六千六百四十八人日という数字になっております。で、この制度は公共事業におきます機械化なりあるいは省力化が非常に最近進展しておりますし、また公共事業の施工業者がみずから手持ちの労働者を抱えておる。もう一方で失業者が必ずしも最近公共事業への就労を余り希望しないという面もございまして、なかなかこの実績を上げることに困難がございますけれども、さらに一層関係機関との連携を強めまして、こういった事業への紹介に努力してまいりたいと思っております。
#13
○高杉廸忠君 大臣、いまお答えのように、実態は、政府の非常に御努力、諸施策にもかかわらず中高年齢者を取り巻く雇用失業情勢の厳しさというものを、その限界を示しているものだと思うんです。今後、政府の言う民間の活力を基本とする雇用政策とともに、公共の機関がより積極的に雇用創出政策を推進していくことが必要だと考えます。大臣の所見を伺いたいと思います。
#14
○国務大臣(藤尾正行君) 本当言いますと、これは非常にむずかしい御質問でございまして、私どもといたしましてはできる限り、いま政府委員から申し上げましたとおり、非常に安定をした雇用関係についていただくということを目標にいたしましてあらゆる施策をするということが原則でございますが、どうしても御指摘のとおりのような状態が地域的に出てきておるということでございますから、これを公共事業に結びつけていくという努力もやっておるわけでございますけれども、御案内のとおり、私どもの政府事業の中におきます公共事業といいまするものも、そう毎年毎年伸ばしていくわけにはいかないという制約もあるわけでございまして、特段とこういった仕事に対しまするいろいろの資材あるいはその他の人件費等の単価が上がっていく中で、公共事業関係の予算の伸びがないということは、この仕事自体が決して末広がりに広がっていくという傾向にないことを示しておるわけでございます。これまた私はいまの、当面の国家の財政支出といいまするもの、あるいは地方財政の一つの形態の中でやむを得ぬところもあるであろう、かように考えるのでございますけれども、しかし、そういった一般論は一般論といたしまして、特定の地域にそれが集中多発をするということになりますと、これを放置しておくというわけにはまいらぬわけでございまして、何とかしてその間の矛盾をどのように克服できるか、調整をするかということについての努力を続けていかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
#15
○高杉廸忠君 次に失業対策事業問題について、重要でありますから伺おうと思いましたが、余り時間の制約の関係でできないかと思いますし、同僚の安恒委員から、後ほど御指摘もあろうかと思いますからそれへ譲るにして、私は次に、沖縄県における雇用失業対策について若干お伺いをいたしたいと思っております。
 先般本委員会は、沖縄の雇用情勢等の実態、実情調査を行いました。これに関連して二、三伺うわけであります、
 まず第一に、沖縄における失業率及び求職倍率は全国平均の約二倍から三倍以上という厳しい状況が依然として続いているわけであります。雇用確保対策として、何といっても、産業経済の振興による沖縄県内の労働需要の増大を図るための諸施策が必要である、こういうふうに考えるわけであります。まず、今後の産業経済政策と雇用確保対策について、大臣どういうふうにお考えになっておりますか、伺います。
#16
○政府委員(関英夫君) 沖縄の雇用失業情勢につきましては、先生御指摘のとおりでございますが、こういったものを改善していきますためには、御指摘のとおり、まず沖縄におきます産業の振興、それによる雇用需要というものを興していくことが何としても重要でございます。
 で、事務的なことでございますので私から先に答弁させていただきますが、現在、沖縄県におきまして第二次の振興計画、これを策定しようということで努力しているところでございます。したがいまして、労働省といたしましては、その第二次の振興計画の中で沖縄におきます労働力人口の状況、いわば供給側の状況に照らし合わせた形で、十分な雇用が確保できるような産業振興、こういったものを計画していくことが非常に重要であろうと思います。そういう意味で、産業の振興と直結して雇用対策を推し進めていこうということで、現在関係省庁を密接な連絡を持ちながら、そういった振興計画についても十分検討していきたいと考えておるところでございます。
#17
○高杉廸忠君 御承知だろうと思うんですが、沖縄では失業者のうち三十歳未満の若年失業者が六〇%超えている現状ですね。この対策が重要な課題となっていると思うんです。本土への広域職業紹介の強化だとか、年間三千人近くに達しているUターン者の防止策について、国としてより積極的な施策が必要であると、こう思うんです。いかがでしょう。
#18
○政府委員(関英夫君) 御指摘のとおり、沖縄におきます失業者は、高齢者はむしろ本土よりも比率が低くて、若年者が先生のおっしゃるとおり、十五歳から二十九歳といった若年者で総数の六割を占めている現状でございます。で、現に学校を出ましてからすぐ就職せずに沖縄県の中でとどまっている者、あるいは本土就職をしても非常に短期間でUターンする者、そのUターンする場合にほとんどの者が沖縄におきまして雇用される見込みがないと、見込みがというか、雇用先が決まっていないという者が九四%を超えるというような状況でUターンする。そういった結果、若年者の失業率が非常に高くなっているわけでございます。
 で、これを改善していきますためには、やはり現在も本土の求人者に直接沖縄に出向いてもらいまして、そしてそこで相談会といったようなものを開いておりますが、そういったものをさらに強力に推し進めるほかに、援助策として広域求職活動費、それから移転資金の支給、それから就職資金を貸し付けるというようなことを行っているところでございますが、さらに沖縄の人が本土の実情を知らないということで、本土の就職に不安があるのでなかなか広域紹介に乗らないという面があるかと思いまして、これらの障害を除去するために、本土で求職活動を行いながらといいますか、求職活動として一週間程度職場で実際に働いてみるというような短期の職場適応訓練というのを、希望する事業所で行えるような方式も新たに導入して、そうして単に面接だけじゃなくて、実際にちょっと働いてみるというようなことも含めて本土への就職を促進したいというふうに思っております。また、本土就職後の指導といいますか、そういった面を強めて、当てもないのに短期でUターンするということをできるだけ少なくしていきたいと思いますが、公共職業安定所はもとより、雇用促進事業団の各支部にございます就職援護相談員、こういったものの活動を通じまして、いろいろな生活相談、職業上の相談に応じまして定着を図り、またUターンする場合にもUターン後のことを十分考慮した上で帰るというような指導に力を尽くしていきたいと思っております。
#19
○高杉廸忠君 時間の関係で、沖縄に関する関係をもう二、三点申し上げますから、まとめてひとつお答えいただければありがたいと思いますが、沖縄における厳しい雇用失業情勢下においては、特に中高年齢者及び身体障害者の雇用確保というのはきわめて困難な実情にあると思うんです。これらの者についての雇用率達成指導の強化、それとともに沖縄振興開発特別措置法に基づく失業者吸収率制度など、特別の施策をより強力に推進していく必要があると、こう思うんです。その今後の施策についてまず伺いたい。
 次に、沖縄の職業訓練校においては定員を常に応募者が上回るという状況にあるわけですね。また、職業訓練と雇用とをいかに結びつけていくかというのが基本的な問題だと思うんです。これらの状況から、高等職業訓練校あるいは職業訓練センターの設置などを行うべきだと、こういうふうに思うんです。この点をひとつ第二点としてお答えをいただきたい。
 第三点として、沖縄は御承知のとおり復帰後十年を迎えようとしているんです。すでに第二次の沖縄振興開発計画の検討というのが行われていると言われているわけです、この際、大臣に特に伺うんですが、政府は、沖縄における総合的な雇用政策を明らかにする、そして、より効果的な諸施策を積極的に推進していくべきではないかと、こういうふうに考えますが、これは大臣からひとつお答えをいただきたい。
 以上です。
#20
○政府委員(関英夫君) 第一点の、中高年、身障者の雇用率達成問題でございますが、これは本土におきましても、あるいは沖縄におきましても、私どもの職業安定行政の最重点として取り組みを行っているところでございますが、特にまず高齢者の雇用率の問題といたしましては、未達成のところは大企業に多いわけでございます。それは一つは定年制が原因でございます。そういう意味で、未達成の、あるいは雇用率の低い大企業に対しまして、雇用率を達成するためにはまず定年を延長する、そのほか雇用率達成のための指導を年間計画をつくって具体的に行っていくというようなことを行っておりますが、身障者につきましても、未達成企業につきまして特に悪いところは、達成のための計画をつくらせるというようなことで、これらの指導に当たりましては、行政の幹部がみずから率先して直接これに当たるというようなことを特に指示をし、行わせているところでございます。年間の計画を立てて計画的に行うことと、幹部みずからがこれに当たることを特に指示しているところでございます。
 沖時法に基づきます吸収率制度のお話がございました。沖縄におきましては六〇%という非常に高い吸収義務を義務づけておるわけでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、最近の公共事業が非常に機械化されている、あるいはまた手持ち労働者がおるということ、それからもう一つは、失業者が必ずしも公共事業への就労を希望しないというような面がございまして、実績は必ずしも十分上がっていると言うことはできないと思いますが、今後とも関係機関との連携を強めて、こういったことについても力を入れていきたいと考えておるところでございます。
#21
○政府委員(森英良君) お答えいたします。
 現在、沖縄県におきましては県立の訓練校二校、それから雇用促進事業団立の訓練校二校を設けまして、養成訓練、能力再開発訓練等を実施しておるところでございます。沖縄の訓練生の応募状況あるいは入校状況が非常によいということは先生御指摘のとおりでございまして、私どもも常々考えておるところでございます。
 労働省としましては、従来から沖縄県における公共職業訓練校の充実につきましては努力いたしておりまして、近年におきましても県立の那覇職業訓練校の移転を行うことといたしまして、五十四年度、五十五年度の二カ年にわたりまして施設、設備の建設、それにあわせまして訓練科の増設も行いまして、五十六年度から浦添職業訓練校という形で開校する予定になっておるところでございます。
 訓練校の新設あるいは増設につきましては、やはり当該地域における職業訓練についての需給関係と申しますか、訓練校への入校を希望する者の数でありますとか、あるいは訓練修了者に対する企業等の需要のような面につきまして、やや長期的な見通しというものについても考慮しなければなりませんし、また、既設の訓練校の配置状況等についても、地方の実情をよく考えて検討しなければならないと思っておりますが、今後こうした点を含めまして、また、沖縄県の方でもいろいろ考えておるようでございますので、県とも十分相談をしながら今後の同県の職業訓練の一層の充実につきまして配慮してまいりたいと考えております。
#22
○国務大臣(藤尾正行君) 沖縄の雇用の現状といいますのは、先生御指摘のとおりでございまして、私どもの場合と逆転をいたしまして若い方々が非常にたくさん雇用から外れておるという実情があるわけでございまして、沖縄振興対策といいますものは、したがいましてこの雇用をいかにして増大をするかということを重点にして考えられていかなければならぬということでございます。当然これは沖縄問題を所轄をいたしております総理府あるいは沖縄県当局等々と十二分に相談をいたしまして、その計画の中に盛られてまいります雇用の増大をどのようにすればどのようにふえるかということを、具体的にこれは進めていかなければなりませんので、こういったことを沖縄県当局あるいは、当然これは総理府がおやりになられるわけでございますけれども、それに加えまして私どもも担当官を特別に沖縄に派遣をいたしまして、私どもとして、このようにやっていけばこのようにふえるではないかというような具体的、実質的な指導も加えさしていただいて、私どもの意見を十二分に取り入れていただけるようにそういう特別の努力をしてまいりたい。かように考えるわけでございます。
#23
○高杉廸忠君 持ち時間が残り少なくなりましたから、十分お聞きしたかったのですが、次回に譲るとして、最後に、心身障害者対策について私の方では要望を含めながら申し上げてみたいと思います。
 私は、前国会において心身障害者対策について確認的に本委員会でも質問を行いました。特に本年、国際障害者年においてはその諸施策を具体化する、実現をすることである、こういうふうに思うんです。特に障害者の雇用対策においては重度障害者及び精薄等の対策、これも重要だと思うんです。私は、本年中に精薄の方も法定雇用率に含めるように措置すべきではないかと、こういうふうに考えますし、また保護雇用制度を導入すべきではないか、こういうふうに思うんです。で、国際障害者年は従来の私は懸案事項を、この際、積極的に実現をしていくところに意義がある。こういうふうに思います。今後の具体化、推進に当たって大臣の御決意と所見を伺い、持ち時間が参りましたから私の質問を終わりたいと思います。
#24
○国務大臣(藤尾正行君) 国際障害者年になりましたから、特別にこれをやらなきゃならぬということではないわけでございますけれども、私どもが従来とも心がけてまいりました努力がまだまだ足りないということで、この機会を一つの踏み台にいたしまして、これからの十年を充実をした年に、これを積み上げていかなきゃならぬその第一年であるということは十二分に心得ております。
 その精薄者等々の組み入れの問題等の方につきましては、これは私どもといたしましても放置のできない問題である、かように考えまして、ただいま審議会にお願いをいたしまして検討を願っておるわけでございますから、その検討が進み次第、私どもといたしましては、そのためにお願いをしておるわけでございますから、ぜひともこれを実現をするように努力をしてまいらなければならぬ、かように考えております。
#25
○安恒良一君 私は、大臣の所信表明の中の失対問題に、時間の関係がありますから、しぼってお伺いをしたいと思います。
 まず最初に、大体承知しておりますからごく簡単に最近の失対の現状について御説明ください。
#26
○政府委員(加藤孝君) 現在の失対事業の事業主体数――これは昨年九月末現在の数字でございますが、事業主体数は六百四十四、就労者数は約十万人、平均年齢が六十三・六歳で七十歳以上の割合が二五・三%と、六十五歳以上の方の割合が四八・一%と、こんな年齢構成になっております。また平均の就労期間が二十年六カ月、それから賃金につきまして一人平均一日当たり、五十五年度で三千三百八十八円というような状況でございます。
 事業といたしましては甲事業と乙事業に分かれておりまして、甲事業については比較的体力、能力のやや低い方ということで清掃とか除草とか、あるいは屋内における軽易な物品づくりと、こんなような仕事でございます。また乙事業につきましては一般の方でございまして、道路の新設、改良あるいは不陸直しと、そういったようなことをやっていただいておると、そんな状況にございます。
#27
○安恒良一君 そこで今度は大臣にお聞きをしたいんですが、研究会の報告が出ました。これを大臣としてはどのように具体化をするのか、また具体化するに当たっての大臣の考え方を、これもごく簡潔にひとつお願いいたします。
#28
○国務大臣(藤尾正行君) 私は、この研究報告といいまするものはそれなりに非常に専門家の方々がおやりになっておられるわけでございますから、まずこの研究報告を高く評価をして研究報告の御指示のように事を進めていきたいということを考えておることが第一点でございます。
 それからいま一つは、何といいましても戦後三十年間続いてまいりましたこの特異な雇用形態とい。いまするものを、そろそろもう、戦後ではないという意味で、それを正常なところにいち早く、できるだけ早く雇用を戻していければなあということで努力をしてまいりたいと考えております。
#29
○安恒良一君 問題は、正常なところに戻す戻し方にある。それはなぜかというと、あえて私が失対の現状を言わせましたのは、失対にいまは従事してらっしゃる方は非常に高齢化されていますから、若い方なら正常な戻し方というのは私は簡単だと思いますが、そこで以下のことについてこれからお聞きをしていきます。
 まず、六十五歳に線引きをされる。こういうことで失対から五年間の経過措置はつけられておりますが、やめてもらおうと、こういうことになっていますが、まず私は法律的に言いまして緊急失対法には年齢の規定がない、法的根拠が私はないと思いますし、また緊急失対法は高齢者の就労事業の実施を定めていると思いますが、この点がどうかということが一つ。
 第二番目には、四十六年、国会で中高法の審議の際に衆議院、参議院でそれぞれ附帯決議がつけられています。またその際に政府も将来にわたって就労を保障しています。中身を読み上げる時間ありません、御承知おきだと思いますから。
 それからいま一つは、線引きで強制退職というのは国民の勤労権、生活権、たとえば定年があるというのは労使のこれは約束なんですから、ここでは約束がないわけでありますから、定年設定というのは労使でおのずから話し合って決めていることなんで、そういう問題についての侵害ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 それから、昨年労働省が高齢者の就業等の実態調査をしています。その中で見ますと、五十五歳から六十九歳の男子七六%が仕事についている。仕事につぐ理由は何か、生活維持のためが八〇%近いのであります。こういう非常に高齢者が働いているという現状の中でこのような強制的な線引きをされる理由は何だろうか。それから全国市長会からも年齢線引きを行わないようにという強い要望書が大臣のところに、というのは、一定の年齢によって強制的に線引きするということは個人差があるのだ。個人差があるのだから、そういう意味から言って全国市長会からも、一定の年齢で強制的にやることについては行わないようにという強い要望書が私どものところにも送ってきておりますが、こういうような点で六十五歳による線引きに失対から排除という問題について、私は以上申し上げたような問題点があると思いますが、こういうことについての考え方を聞かせていただきたいと思います。
#30
○政府委員(加藤孝君) まず第一に法律的な根拠の点でございますが、確かに緊急失対法におきましては高齢者就労事業というものを規定をいたしておりますが、これは六十歳以上、こういう言い方をしておるわけでございます。それからまたこれにつきましては、現実には非常な就労者団体等の反対等もいろいろございまして実施をしていない、こういうような事情にもございます、法律的に確かに何歳までという上限は法律にはございませんが、逆に法律的にそういう何歳で区切っちゃいかぬというような規定もないわけでございます。要はその人に労働力として失業対策事業の紹介を続けていくということについて、合理的な上限というものは当然やはりなし得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。現実に一般の民間におきましては六十歳を含めまして六十歳以下の方が、六十歳以下の定年制ということで九七%程度の方々が六十歳以下の定年でやめておられる、こういう事情もあるわけでございます。そういう中で六十五歳というような一応の線引きをすることが合理性があるのではないか、こう考えておるわけでございます。
 それから第二の附帯決議の関係の問題でございます。確かに御指摘になりましたような趣旨の附帯決議があることは十分承知をいたしておるわけでございますが、その附帯決議の趣旨に基づきまして、その後十年間この事業をやってきたわけでございます。その結果が、研究会の報告にも指摘されておりますように、高齢病弱者が増大していく中で労働政策の事業としてこれを運営していくことがもう限界に来ておるというような状況を生じつつあるわけでございまして、そういう中でこの事業を今後労働政策の事業として維持、継続していく、こういう前提に立った場合に、こういう一定の年齢制限というものを考えなければならぬのじゃないかと、こういうことでその十年間の運用の現状の中から研究会のこういう報告が出されておると、こういうものでございます。
 それからまた、強制退職は勤労権の侵害ではないかと。定年は労使の約束というような観点からのお話でございますが、確かに特別にそういう約束があって六十五というものではないことは事実でございますが、いろいろそういう事情等も踏まえまして、五年間程度後において六十五歳と、そういうことでひとつこの際やめるという方は特例一時金でおやめくださいと、また、五年程度後にやめるという方については、五年程度の間にそういう今後の生活設計等もいろいろ考えながら対応を考えてくださいと、こういうようなことでお願いをしていくということでございまして、必ずしもそういうことで今回こういう強制退職をしようと、こういうようなものではないわけでございます。
 それから、高齢者の就業の実態調査のお話でございますが、確かに日本の場合には高齢者においても就業を継続しておる、あるいはまた就業を希望しておられるという方が多いことは事実でございますけれども、これもやはり全体での割合から見ますと、やはり六十五歳以上になりますと急速にその辺の割合は低下しておる、こういう状況にあるわけでございます。
 また、全国市長会の要望の点でございますが、これはまあ個人差があるということでございますが、結局、具体的な運用といたしまして、ある人は元気だ、あるいは体力がある、ある人はない、こういうようなことが結局は判別がぴっちりできるというものではなかなかないわけでございます。そういうことで、そういう一定の年齢を限ることなく継続してきた結果がそういう七十歳あるいは八十歳というような方もなお多数就労しておられると、こういう中で事業の運営が非常に困難になってきておると、こういう現状を踏まえたものであるわけでございまして、そういう意味で、こういう特定の人々について体力があるとかないとか、そういう個人差というものをぴちっと決める判断基準がほかにない以上、常識的に、民間でも行われておりますように、一定の年齢を画すという形の中でその辺のけじめをつけていくということはやはり必要なことではないかと、こんなふうに考えておるところでございます。
#31
○安恒良一君 私はいまあなたがおっしゃったことの中に重大な誤りがあると思います。私どもが定年制の現状をここで報告を求めますと、六十歳以上の定年をとっているところが約三九%と報告受けております。そうすると、六十歳までの定年は六〇%ですね、五十五歳定年がこれも約四〇%ぐらいですね、それから五十五歳から六十歳定年が約二〇%程度と、そして残り、ラウンドテンパーしまして六十歳以上定年が約四〇%あるというふうに承って、そこで残りについて六十年までに六十歳にすると、こう言っておられるんですが、あなたは何かいま民間では九七%が六十歳以下だと言われましたが、労働省はあれですか、出てくる人によって報告違うんですか。
#32
○政府委員(加藤孝君) その点は、六十歳定年制を含めまして六十歳以下の方、定年制が九七%で、こういうことを申し上げておるわけでございまして、要するに、六十五歳の定年制というのが二・五%程度あるという意味でございまして、あとは六十歳を含めて六十歳以下の定年制だと、こういうふうに申し上げたわけでございます。
#33
○安恒良一君 大臣、ここで私はやっぱり考えられなければならぬことは、全国市長会からも出て、就労者みずからの選択にゆだねる方法にしたらどうだと、こう言っておりまして、盛んに民間で民間でというけれども一民間は定年制というのは労働組合と会社が労働条件として話し合って、お互いが理解と納得の中で、ある会社は六十歳にしよう、あるところは六十三歳にしよう、あるところは五十七歳と、こうなっているわけですからね。だからそこのところを履き違えてこれを運営すると問題です。ですから、少なくとも私は高年齢になったと、高年齢になったからいわゆるこの事業に適しないからやめていただくという方についても、一方的にあなたたちが線引きをするところに問題があるということを私は言っているわけです。現在、もう平均で二十年六カ月も就労されている方々なんですから、やっぱりその方々と話し合いの中で私は円満に話をつけられるべきであって、民間がこうなっておる、民間がこうなっておる、民間で勝手にそんなことをしたら労働組合怒って大騒動になりますよ。ちゃんと労働協約の中で定年制というものをお互いが労使で決めているんですから。そこのところをまず六十五歳線引きというところについては、だから私は就労者みずからのやっぱり選択にゆだねる方法ということを全国市長会が言っておられるのはそこにあると思うんですね、そういう点について大臣、どうですか。
#34
○国務大臣(藤尾正行君) 私は、先生と小理屈をこねて議論しようという気はございませんけれども、御案内のとおり、筋から申せば、この失業対策事業といいまするのは、毎日毎日の契約によって毎日毎日お働きを願うと、こういう形態をとっておるわけでございます。でございますから、本来でございますと、今日お働きをいただきます場合には、こういう仕事でございますから大体それに耐えられるような方といたしましては、当方はこういう年齢六十五歳以下の方をできるだけお働きを願いたいと思いますと。それについて自分は六十六歳だけれどもどうなんだろうかということが話し合われて、それで決まっていくというのが本来の姿だろうと思いますね。しかし、そういったことが慣行としてバイパスされまして、そして仕事が継続をしておるから二十数年そこに定着をしたのだというような歴史的経過がそこに生まれてきておるわけでございますから、私は常識的に考えまして、私どもが労働政策としてやらなければなりません。つのめどは、これはお隣りに厚生省もおられるわけでございますけれども、人間の生涯の生活内容といいまするものを維持していく上で、この制度といいまするものが途中で切れることのないように、できれば年金といいまするものにつなげていくような雇用といいまするものを確保していくということを考えるのが一応私どもの一つの考え方の基準ではないか、かように考えておるわけでございます。そういったことから考えてみまして、現行の年金制度といいまするもの並びに今後のその推移というものを考えてみましても、一応六十五歳といいまするものを想定をして、その六十五歳まででつながっていく一つの仕組みをそこでつくり上げておけば、当面はいろいろ高齢化社会でございますからそういうことではなかなかいかないということになるかもしれませんけれども、とりあえず私どもの政策目標といたしましては、それで当てはまっていくんじゃなかろうかという考え方が一つございます。そういった考え方がございますのと、現実の失対事業といいまするものにお働きの皆様方、こういった方々の実情といいまするものを、あわせてこれは考えてみまして、現実との妥協で、しかしながら六十五歳で全部打ち切るというようなことはこれはなかなかできるものじゃありませんから、そこで五年間といいまするものを設けまして、まあ七十になるまでの間にいろいろお考えを願いたいと思いますよということをここで申し上げておるということだと、ひとつ御寛容の御解釈を願いたい、かように思います。
#35
○安恒良一君 まあそこはいろいろ私は意見があるところですが、持ち時間制限されていますから、そこで私は希望だけしておきますが、やはり強制的なことはひとつぜひやめてもらいたい。やはりいままでいろんないきさつは、日々雇用形態と言いながら現実に二十年も十年も働いてきている人にやめてもらうときの処置ですから、そのことだけはひとつ明確に申し上げておきます。
 そこで問題は、線引きをした後の対策が私はないんじゃないかと思いますが、たとえばいまやめる人は百万円渡すと、こう言っているんですね、百万円の生活費というのは、せいぜい一年間ぐらいでなくなってしまう。ですから、研究会の報告の発表直後、「就労者の実態を考えるとしゃくし定規のやり方は、それこそ弱者切り捨てにつながる。」ではないかと毎日新聞社の社説。「研究会の建議はこんごの高齢者の雇用対策事業のあり方や、引退する人に対してどのような福祉対策が必要なのか、という肝心な点にふれていない。」これは朝日新聞社の社説。などが出ています。そこで失対を引退した後の対策をどのようにお考えになっているのか、このことについてお聞かせを願いたいと思う。
#36
○政府委員(加藤孝君) 失対引退後の問題につきましては、研究会の報告でも触れておりますように、それぞれ人によりましていろいろなケースがあろうかと存じます。まだ若干体力、能力はあると、こういうような方で希望される方については、たとえばパートあるいは臨時と、こういうふうな形で就労を続けたいと、こんな方があれば、安定所なりあるいはまた高齢者の相談室というようなところでの対応、相談を進めていきたい。あるいはまた、今後若干の生きがい的な面も含めましてそういう追加収入的なものが欲しいと、こういうような方につきましては、現在、労働省で進めておりますシルバー人材センターというようなものでの就労の道もあるではないかというふうに考えております。またこれらによってどうにも生活できない、あるいはまた老人ホームへ入りたいと、こういうような方等につきましては、やはり社会保障対策、老人福祉対策の中で受けとめていただいていくと、こういうようなことになろうかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、そういうリタイアされる方につきまして、私どもとしてはこの研究会の報告も指摘しておりますように、安定所、事業主体あるいはまた福祉関係機関と、こういったものとよく連携をとりまして、そういう相談の窓口というようなものをつくりまして、今後の引退後の生活相談等も進めながら、そういう高齢、病弱者の方々の引退を進めていきたいと、こんなふうに考えておるところでございます。
#37
○安恒良一君 大臣、お聞き願いたいんですが、簡単にパートとか臨時で世話しますと言って、本当に世話できるんですか。労働省自体が御発表になっている高齢者の就職企業と就職率をお考えください。なかなか中高年齢者の就職率というのは、就職希望に比較して非常に悪いんじゃないですか。そういう中でこういう高齢者の方々を、まだ体力が残っておれば、パートとか臨時であなたたちは、十万人かなんかの人間でかなりの人がやめたときに、安定所で責任を持ってその方々に仕事を与えられますね、この答えをひとつ聞いておきたいと思います。
 それからちょっといま生きがい対策を含めてと、こう言われましたが、シルバー人材センターの主要な目標は何でしょうか。生きがい対策を含めてとこう言われたから。私はどうもシルバー人材センターというのは、生計のための雇用対策ではないと思っています、残念ながらあそこは。そういう点をいまあなたは、生きがい対策を含めて場合によればシルバーセンターに行けばいいじゃないかと言われていますが、こういう点。
 それから厚生省にも来ていただいていますから、私がいま一番心配しているのは、これだけの高齢になった方がやめて、年金とうまくつながるんだろうかなという気がしてならない。というのは、御承知のように二十年六カ月平均就労されているわけですから、かつて厚生年金職場にかなり長くおってその後失対に入っておる、こういうのならこれは厚生年金の適用があると思いますし、また国民年金をきちっとある一定の年齢から二十五年かけられておって六十歳になればこれはありますが、ところが恐らく失対なんか行かれている方は、なかなかそう簡単に国民年金をかけておくというわけにもいかぬのじゃないかという問題もありますね。そして高齢者の中で女性が六七%でしょう、女性が。そうすると、私はかなりの無年金者がいるんじゃないか。じゃそういう方々はいまやっていると十歳以上の福祉年金につながるかというと、これも法の規制があってつながりません、だから、そういういまおられる方の年金とのつながりの実態について、労働省はこういう政策を出される以上研究されたろうと思いますが、その実態はどうなっているのか。
 また厚生省いまのことについて、年金局長に来ていただいているのは、これらの問題点について実態をどういうふうに分析をされ、どのような資料をお持ちなのか、また対策をどうお考えなのか、以上の点について聞かせてください。
#38
○政府委員(加藤孝君) 希望すれば臨時、パートをそういう高齢者の方にみんなお世話できるかと、こういうお話でございますが、これは必ずしも臨時、パートに限らず若い方についても一般の中高年の方についても、希望されればどこでもあっせんできると、そんな状況にないことは御承知のとおりでございます。ただ、全然ないわけではございませんので、安定所なり相談室でもいろいろ努力をさせていただきますと、そういう意味で申し上げておるわけでございまして、たとえば五十四年の年間の高齢者相談室での紹介というものでいきますと、六万五千に対して一万九千程度の就職件数というような形で、確かにこれで皆さん全員あっせんできるというような体制にないことは事実でございますが、努力をさせていただきますと、こういう意味で申し上げたわけでございます。
 また、シルバー人材センターについての生きがいの関連でのお話でございますが、地域社会のいろいろ補助的な仕事に就労することによって、それがまた生きがいにもつながると、こういう意味で申し上げたわけでございますので、若干舌足らぬ点はお許しをいただきたいと思います。
#39
○政府委員(新津博典君) お尋ねの無年金になる者が相当出るのではないかという点でございますが、率直に申し上げて業態別のその種の統計をとっておらないので、直接的な数字はわかりません。ただ国民年金の場合、比較的低所得階層が多くて、保険料を納め損なうというケースがございますもので、年金権を確保する意味で過去二回いわゆる特例納付、時効になったものをさかのぼって保険料を納める制度をとりましたわけですが、さらに第三回目として五十三年七月から二年間保険料の特例納付をやりました。この時代になりますと、かなり年金権といいますか、年金についての国民の意識も高くなっておりましたので、これを利用されて救われた方も相当数あるとは思いますけれども、なお率直に申し上げて、相当数の者が無年金として残っている可能性はあるという気がいたします。
#40
○安恒良一君 大臣ね、私はここのところ大切だと思うのは、いま失対事業の平均賃金を言われましたね。ですからこういう賃金の中で、特例納付を過去三回やったからといって、失対で働かれている高齢者の方々がね、私は年金を納められなかったんじゃないか。だから私はいま厚生省が言ったように全く年金のない人が出てくると思うんです。
 ですから、あなたたちがこれだけのことをこの際労働政策上やるという以上、やはりたとえば国民年金の五年年金、十年年金にしても、これとてももうそれぞれその時点のあれですから、そうしますと、私は、労働省として私の質問に失対部長答えなかったけれど、労働省としては――厚生省をわざと私がきょう呼んだのは、厚生省じゃないとわからないだろうと思ったんですが、労働省としても少なくともこういうことをやる以上は、そういう人々がどうなるのかという実態は――失対事業は労働省がやっているんですから、労働省がやっているから、やめてもらったときにその人の年金が、無年金者が出はしないかとか、出る場合はどのくらい出るんだということの実態をつかんで、それはまだわからぬと、やめるかやめないかわからぬからということじゃなくて、あなたたちとしてはそこのところの配慮がないと、だから新聞に後の温い措置がないといって各社説に書かれるのはそこにあるわけなんです。そういう点について労働省としてはそういう実態をつかまれたんですか、つかまれてないんですか。つかんでおるならば、こういう実態です、無年金者はこのぐらい出る予定です、こういうことを言ってください。
#41
○政府委員(加藤孝君) 昨年度、私どもで実施をいたしました失対就労者につきましての抽出調査の結果によりますと、七十歳未満の方でいずれかの公的年金に加入しておられる方が八四・三%、それからまた、七十歳以上の方で何らかの公的年金に加入をしておられる方が九三・四%と、こんな状況になっております。
#42
○安恒良一君 まあいずれにしましても、あくまでもそれは抽出調査ですからあれですが、私は厚生省が心配をしているように、かなりこれ無年金者が、特に女性の場合に私は出はしないかというふうに思います。そういう意味で、この方々をどう救うのかということについては、至急ひとつ私は労働大臣だけではできないと思いますから、労働大臣、厚生大臣の中で、いわゆる労働省の施策に応じて本人がやめられた場合に、無年金者が出た場合の救済策についての早急にひとつ労働大臣と厚生大臣のお話し合いをして、そしてそういう場合の人は、こういうふうに救済しますよということを明らかにしながらこれをやっていってもらいたいと思いますが、大臣、その点どうでしょうか、ぜひ厚生大臣と御相談願いたいと思います。
#43
○国務大臣(藤尾正行君) 仰せごもっともでございまして、これから五年間の猶予期間もあることでございますから、その間にそういった無年金者で行きどころがないというような方々がなくなりますように、臨時応急の措置を厚生大臣にもとっていただくように私からお願いをいたしまして、詰めた施策をやっていただくように御相談をしたい、かように考えます。
#44
○安恒良一君 その点はぜひひとつ、両大臣の中で無年金者をつくらないように、それから、無年金者が出た場合の救済措置をひとつぜひお約束をいただきましたので実現をしていただきたいと思います。
 次に、少数事業の廃止問題についてお聞きをしたいんですが、私どもは少数事業というのはどうしてできたかというのは、いわゆる十年来新規就労を停止していると、その結果出てきていると思います。
 ですから、失業対策としての必要性がなくなったわけではないと思います。しかも、ほとんどが雇用機会の非常に乏しい地域においてあるんでありますが、この少数事業について今後どういうふうにしていくというお考えをお持ちなのか、ひとつ考え方を聞かしていただきたい。
#45
○政府委員(加藤孝君) この就労者がごく少数になりました場合の事業の扱いにつきまして、これはもう研究会の報告でも言っておりますように、これを頭から少数だからやめろということでやっていこうというものではないわけでございます。ただもうごく少数になったと、五人程度とか、三人だとか、そういうような事業主体もあるわけでございまして、そもそも失対事業というのはもう失業者が多数発生して、そうしてどうにももう就労の場がないと、こういう状態の中で失対事業が興されたものであるわけでございます。そういう意味で、こういう五人とか数人の形になって、なおそういう就職への努力あるいは自立への努力というものを全然しないで漫然とやっておるということは問題があるではないか。そういう意味で、そういう小規模の事業主体の方々についてぜひ再就職、自立、そういったようなものの努力をするべきではないか。その努力の結果、みんなそれぞれおさまるべきところへおさまって、結果として小規模事業主体というのがなくなったというような形へ持っていくような努力を極力すべきではないかと、こういう考え方を示されておるわけでございまして、そういうことで私どもも対応してまいりたいと、こう考えております。
#46
○安恒良一君 これも時間がありませんから、四十五年と最近のいわゆる雇用失業情勢がどういうふうになっているのか、この二つについてちょっと御説明ください。
#47
○政府委員(加藤孝君) ちょっと失礼、四十六年でよろしゅうございますか。
#48
○安恒良一君 四十五年が必要なんです、この法律をあれしたときの関係で。
#49
○政府委員(加藤孝君) 申しわけございません。四十五年の数字ちょっといま手持ちございません。四十六年の数字からしか持っておりませんので、いまその四十五年の数字は即答いたしかねますが、仮に四十六年の数字で説明させていただきますれば、有効求人倍率で四十六年は一・一九倍、五十五年で〇・七七倍というようなことでございます。また、中高年齢者四十五歳以上をとりますと、四十六年の四十五歳以上の方の有効求人倍率が〇・四〇、それに対しまして五十五年の有効求人倍率は四十五歳以上の方については〇・三二と、こんなような状況になっております。
#50
○安恒良一君 私の手元にある資料、四十五年で完全失業者が五十九万、五十四年が百十七万、有効求人倍率一・四一倍と〇・七一倍、就職率が一四・八と七・七、中高年齢の就職率が一二・五と五・七、常用就職者が九・四と三・四ということで、全然状況は改善をされてないわけですね。大臣、これはおたくの資料を私が拾い出したわけですから。でありますから、そういう意味から言うと少人数の事業所の休廃止についても私はいま申し上げたような状況の中で、これを強制的にやめさせていくということはいまの失業情勢の中で適当でない、こういうふうに思います。この点はぜひひとつ、お考えを願っておきたいと思います。
 そこで、もう最後に時間がありませんから、問題は今度は今後のいろいろ雇用創出対策についていま言われたような形でやめてもらう、臨時とかパートで働いてもらうとか、シルバーセンターでやるとか、こういろいろ言われてますが、どうも聞きますと余り自信がなさそうですね、自信がなさそうだ。ですからそういう方々についていわゆる今後の雇用創出対策について何かお考えあったらお聞かせください、いまあなたがしゃべった以外に何かありますかと、あなたがおっしゃったことはどうもどれをとっても余り自信がなさそうなんだから、ほかに考えありますかと、こう聞いているんです。
#51
○政府委員(加藤孝君) 今後の雇用失業対策の基本的な施策として、これは民間の活力を生かして、その民間の活力を積極的に生かした形での政策の中で、この雇用失業対策をとるべきだという考え方が研究会の報告からも示されておるところでございまして、今後はそれを基本に進めていくということで、現在また給付金の整備に関する法律等についても御審議を願っておるところでございます。
 なお、研究会で特に失業多発地帯で一定の間国や地方公共団体が何らかの形で関与していかなければならないような地域も発生するおそれがあるであろうと、そういうようなところについては現在の特会事業を、これを一年間のオン・ザ・ジョブ・トレーニングというようなことで、次の民間就職への訓練をするステップとしての役割りを果たすものとしてそういうものを今後検討するようにと、こういう指摘を受けておるところでございますので、そういったものについての検討を今後進めていきたいと、こんなふうに考えておるところでございます。
#52
○安恒良一君 それじゃ、もうあと一分しかありませんから、こちら側から問題を出して、ぜひ大臣ひとつこの点について前向きにお取り組みを願いたいと思います。
 まず一つは、失業者の皆さんがみずから運営します高齢者事業団、こういうものに対して国や地方自治体が法人の認可をし、そしてこういうところに対するやはり補助をうんとしていくと。いわゆる、たとえば仕事の発注であるとか経費の補助であるとか、こういうことでいろいろ助成策をして、失業者みずからで運営しているこういう事業団運営に対して国や地方自治体が積極的な援助をして、その中に吸収していくというのが一つあると思う。
 二つ目は、シルバー人材センターの補助を少し引き上げまして、単なる生きがい対策だけじゃなくして、この中にやはり就職、地方自治体が実施を、補助を引き上げる、そしてこの中で吸収をしていくというのも一つの方法だろう。
 また、地方自治体が実施しています高齢者就業事業がございます。これは地方自治体がそれぞれやっていますが、やはりこれに対する国の助成をふやしていくと、こういうことをひとつ考えたらどうかと。
 それから最近障害者問題が、ことしは国際障害年で非常な重要な問題になっていますが、中高年齢者の障害者がふえています。これはとてもとても民間だけではどうにもなりませんので、こういう人々を対象とした公的就労事業制度を私は国の責任で確立する必要がある。高齢者で身体障害者になった方々がたくさんあるわけですから、そういう点についてぜひひとつ大臣のお考え方なり、まあいますぐ考え方がなければ、これらの問題はひとつ前向きに、私からお願いということで、ひとつ十分前向きに検討していただきたいと思いますが、大臣どうでしょうか。
#53
○国務大臣(藤尾正行君) 非常に具体的な御提案でございまして、ありがたいと思いますけれども、御案内のとおり、ただいま私どもが直面をいたしております最大の問題といたしまして、この補助金その他の整理というようなこともないわけではないわけでございまして、確かに安恒例提案といいまするものの検討価値は十二分にある、かように考えますけれども、いま私がここで大蔵当局のふところの中へ手を突っ込むような話をするわけにもまいりませんので、今後の研究課題にさしていただきたい、かように考えます。
 それから、身体障害者中の中高年齢層の方々、これは本当に御指摘のとおり、一番私は身体障害者対策の中でも非常に苦しい、むずかしい問題であろうと思います。しかしながらそれだけに、国際障害者年の今日、この一番むずかしい問題をどう取り上げていくかということは、それだけに意義深いことでございますから、この問題につきましては関係各省庁と十二分に連絡をとりまして、なるほどそうかと言っていただけるようなひとつ措置がとれますように必ずやっていきます。
#54
○安恒良一君 終わります。
#55
○委員長(片山甚市君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時二十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二十一分開会
#56
○委員長(片山甚市君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、労働問題に関する調査を議題とし、労働行政の基本施策に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#57
○小平芳平君 私は、雇用問題について大臣の所信表明を中心に若干質問したいと思います。
 最初に、ちょっと雇用とは関係ないかもしれませんが、実質賃金の低下であります。で、この点については、労働大臣としまして絶えず経済対策閣僚会議あるいは閣議その他で労働者の実質賃金を向上させるべく、また低下するような政策には、なるべくそういう政策をとらないように御努力なさっているということはニュースなどで聞いております。労働問題を担当していかれる上において、実質賃金が低下していったんではもうあらゆる施策が、と言っても過言でないくらいに意味をなさない。したがいまして、物価の安定あるいは賃金値上げの要求それから交渉、妥結、主として労使関係になりますけれども、そういう点についての大臣のお考えをお聞きしたい。
#58
○国務大臣(藤尾正行君) まあ本当に御指摘のとおりでございまして、私どもは、労働大臣といたしましてはもとよりのことでございますけれども、国務大臣といたしましても日本の経済を安定をさしていく、そうしてその経済の上に国民の皆様方の御生活を安定をし、向上をしていただく、こういうことにとりまして消費者物価が予期よりもうんと高く上がっていくとか、あるいはそのことと連動いたしまして、協定し、達成をされました労働条件によります賃金といいまするものが実際は目減りをしていくというようなことは、これは座視することのできない基本的な問題でございます。でございますから、私といたしましては、そのことが私どもの手の届かないところから起こっておりますエネルギー問題でありますとか、あるいは天候の異変でありますとかというようなことに起因をいたしておるといたしましても、それを手が届かないからといって許容するというわけにはまいらないわけでございまして、全力を尽くしてそのような失態のないように私どもの力を尽くしていかなければならぬ、かように考えるわけでございます。
 雇用の問題、その雇用の原則といたしまする労使の御協定といいまするものは、もとよりこれは使用者側の、各企業体の方々と、そこにお働きにたっておられます労働組合の方々とのお互いの協定でお話し合いを決めていかれるわけでございますから、私どもといたしましては、これに対しまして何らこれに介入することもできませんし、また、そういうことをしてはならぬわけでございます。しかしながら、私どもがその周りの、周辺の状況を安定し、整備するということをいたしませんと、御指摘のような実質賃金が低下をして、そうして何のためにそれでは賃金の協定をしたのかわからないというようなことになったのではこれは大変でございます。これは使用者側の責任でもございませんし、また労働組合の方々の御責任でもございません。これはひとえに一切、挙げてその周辺を整備いたさなければなりません政治の責任でございまして、その政治責任の大部分を、あるいは全部と言ってもいいかもしれません、これを政府が担っていかなければならぬ。当然過ぎるほど私は当然のことだと、かように考えます。したがいまして、今日のように二十七年以来初めてというような実質賃金の低下をここに現出をさせたということは、政治といたしましてはもうお恥ずかしい限りでございまして、何としてでもおわびのしようもない。これを何とか一日も早く、できるだけしかもスムーズに回復をし、それぞれ労使の皆様方に御迷惑をかけないようにそれを整備していくという責任が私どもにある、かように考えておるわけでございます。
#59
○小平芳平君 大臣の御決意はよくわかりました。確かに、健康保険の保険料あるいは年金の保険料が上がるというようなこと、あるいは所得税や住民税の負担が実質的に増加していく、減税がないと実質的に増加していく、こういうことは労働大臣として一人で判断するわけにいかない課題ではありますが、ひとついまお述べになったような趣旨で御努力願いたいと思うわけであります。それから政府の景気対策、三月十七日の経済対策閣僚会議におきましても、公定歩合を引き下げる、公共投資の前倒しというようなことがうたわれておりますが、どれだけの効果があるかなお疑問に思っております
 それで雇用関係は、これは午前中も局長が答弁しておられましたが、総じて安定的に推移しているというふうに言っておりますが、そういう状態が続くかどうか。この経済対策閣僚会議の対策によってこれから動いていきますが、雇用関係の見通しはどういうふうになるか、総じて安定的に推移しているというような状態が続けられるかどうか、どのようにお考えでしょう。
#60
○国務大臣(藤尾正行君) これは大企業と中小企業によりまして私は非常に違っておる、さように思います。私どもがいま一番心配しておりまするのは、昨年の十月以降非常に大きな仕事がなくなったとか、あるいは非常に金利に耐えられないとかというようなことで中小企業が非常に倒産をたくさんしておる。これは一月に例をとりましても二月に例をとりましても、かつて例を見ない一千三百件を超えておるというような状況がずっと続いてまいっておるわけでございまして、こういったところに月々千数百件もの倒産が出るということは、企業者の方々はもとよりでございまするけれども、そこにお働きの皆様方が皆さん職を喪失されるということと同じでございますから、本当に私どもはそういった報道といいまするものを身に痛いように感じていかなければいけないわけでございます。
 ただいま御指摘のとおり、私どもは新しい経済政策といいまするものを緊急にとっていこうということで二つの柱を立てまして、これからそれがどれだけ効果が上がるにせよ、最大の効果を上げるべくやりたいということでお示しをいたしておる、こういうわけでございますけれども、一つは何といいましても物価がいまよりもっと安定的に推移してもらわなければならぬということでございますが、この点は幸いにいたしまして卸売物価はいまや三・九という数値でございますから、これから先を考えてみましても、急速に油が上がっていくとか、あるいは電気料金をそれによって上げなければならぬとかというような大きな衝撃的要素は私は少なかろうと思いますし、また日常の私どもの季節商品にいたしましても、野菜、魚、肉その他考えてみましても、もう本当に申しわけのないことでございまするけれども、去年ごとしと精いっぱい上がってきておるわけでございますから、これが来年にさらにそれよりもっと高くなるなどということは、私どもとしましては対策のよろしきさえ得れば決してさようなことはない、させなくても済む、かように信じ切っておるわけでございます。でございますから、この面につきましては、私は何といいましても物価が一番大事でございますけれども、これは守り切っていくという一つの基礎を築き上げることができると思います。
 ところが、いまの御倒産の非常にたくさん重なっております中小企業の方々等々を考えてみましたときに、いろいろな原因はございます。しかし、いろいろな原因の中で一番大きいのは、仕事がなくなったということと金利負担に耐えられない、こういうことでございますから、その仕事を造出をさしていくということと同時に、直接的にその中小企業の方々の危難を救っていくというためにも、金利を思い切って下げるということが必要でございます。ところが、この金利の引き下げは私どもは言うべくしてなかなか行われがたいと申しまするのは、何といいましてもその金利を下げるのは何でもありませんけれども、その下げる金利が、その原資がやはり預金金利として下がっておりませんと、銀行にみすみす損をして金融をしろというわけにもなかなかこれはまいりませんものですから、その辺の預金金利との関連が非常にむずかしくなりまして、情ないことではございまするけれども、公定歩合にいたしまして一%あるいは一般的な金利水準にいたしましても〇・七五%しか下がっていかないというようなのがいまの実情でございます。しかしながら、ともかくも金利が高くって困ると言っておられます中小企業の方々にとりましては、こういったことを通じまして、政府金融機関の、三機関の金利をあらかじめ下がるであろうということを想定をいたしまして、前倒しに下げていくということができますわけでございますから、これは初めてやったわけでございますが、できましたから、これは即日私は効いていくであろう、かように考えるわけでございます。
 問題はそういった金融の引き下げはそれでよろしいわけでございますけれども、そのこと自体が仕事の造出、雇用の造出ということにどれだけ響いていくであろうかということが一番肝心でございまして、これには私はきょう金利が下がったからあすから仕事が多発していくとか、あるいは雇用がより促進されていくとかということにはなかなかなりにくい。この間、三カ月なり半年なり、場合によりましては十カ月なりというような時間がかかるであろうと思います。そこで、私どもといたしましてはそのような時間の経過ということもあらかじめ考えながら、なおかつそれでも効果が発揮できるようにするためには何かいい方法はないかということで、公共事業にいたしましても、これは年間の公共事業量といいますものは決まっておりますから、前倒しにいたしますれば後半期の仕事の量はそれだけ減るわけでございます。しかしながら、そこのところはとにかく問わないで、とりあえず前倒しの七〇%の公共事業といいまするものでどれだけの衝撃的な効果を与えることができるか、とりあえずそれによってとにかく立ち直っていただきたいということで、つくり出しました方法でございますし、またいま沈滞をきわめております住宅需要というようなものに対しましても、いままでのような住宅金融公庫の貸付範囲というようなことでは十二分に消化されないというようなことがございますから、その貸付先といいますもの、あるいは貸付条件というようなものもうんと広げて、そうして御利用願う、需要を喚起するためにいろいろな方策を練っておるわけでございます。
 もちろん土地価格というような基本的な問題はございますから、先生が御指摘のとおりなかなか効果は上がりにくいよという御注意もございます。しかしそういうことを言っていられない、何でもかんでもやらなきゃならぬというのが今日の情勢でございまして、そういった情勢をひっ提げて、どこまでその効果を上げ得るかというところに政治の一切の力を結集をしてこれに当たっていって、そして国民皆様方の御福祉の向上のために、御生活の安定のために、私どもは雇用機会を造出をしたい。雇用機会の造出を伴わない対策といいまするものは全く無意味だ、かように考えておるわけでございます。
#61
○小平芳平君 次に、雇用情勢の見通しをお尋ねしたいわけです。雇用情勢がより悪くなるおそれはないかどうか、それが一つです。
 それからもう一つは、マイコン革命とか、エレクトロニクスの導入によって人手がごく減らされていくということ、こういう点で、これが雇用市場に大きな影響が出てきはしないか、新聞などを見ますと、むしろヨーロッパなどではこの問題が大きな問題として取り上げられているにもかかわらず、日本はかえってエレクトロニクスを生産する方の側だから、その生産に人手が振り向けられるからそれほど問題にされていないんじゃないかというようなことも言われておりますが、その辺の見通し等についてお聞きしたい。
#62
○政府委員(関英夫君) 雇用情勢は先生の御指摘のとおり、最近やや改善傾向に足踏みが見られます。昨年前半は比較的順調に改善傾向を続けたわけですが、後半に至りまして、経済の情勢を反映いたしまして求職がやや伸び、求人が落ち込み、そういう意味で求人倍率も横ばいを続けるというような事態が続いております。
 今後の見通してございますが、先ほど大臣からお答えございました総合経済対策、こういったものの対策の効果が実体経済面に時間をかけて徐々に浸透していく、そういったことによりまして雇用の改善につながるように期待をいたしているところでございます。政府の見通しといたしましては、昭和五十六年度については五・三%程度の経済成長を目標といたしておりまして、そういうもとでは、完全失業者が昭和五十五年度の百十五万人というものから多少は減少するという形での雇用の改善を期待いたしているわけでございますが、最近の実体経済面の影響が、タイムラグを伴って雇用、失業情勢に響いてまいりますので、何とか経済対策よろしきを得て年度後半に雇用の改善が進み、年度全体として、こういった目標が達成されるように期待いたしているところでございます。
 それから次に、いわゆるマイコン革命と申しますか、そういったものの雇用に与える影響についての御質問がございましたが、確かにヨーロッパ諸国では、特に事務関係等においてオフィスコンピューターの普及により失業者が出るのではないかというようなことが非常に問題になっておるわけでございます。
 一つには、わが国と欧米諸国との雇用慣行の違いといったものもそこにあろうかと思います、わが国の場合は企業内労働市場が非常に自由でございまして、従来の職業が技術革新によって陳腐化していくといいますか、そういうところから新しい技術のもとでの職場に転向せねばならない。そういった場合にも社内における配置転換、教育訓練、そういったことが比較的円滑に行われるような労働市場でございますけれども、諸外国の場合にはそういった職種転換が非常に困難を伴うといったことも、技術革新に伴う雇用面への影響の差としてあらわれてくると思います。また、先生御指摘になりましたように、そういった面でわが国が比較的に欧米諸国よりも先進的にそういった技術を取り入れていく、そういう形での雇用の増があることも事実でございます。ただ、いかにいたしましても技術革新というものは、そこに職業の変化を伴いますし、中高年になりますと、わが国においてもそういった職種転換といったことは非常に困難を伴う場合が多うございます。そういう意味でこの技術革新、その雇用に与える影響というものをわれわれとしても十分検討し、それに対応して中高年齢者が円滑に職業転換がなし得るような、そしてすべての人が新しい時代に即応した能力を身につけていけるような能力開発といったようなことに、今後ますます力を入れていかなければならないだろうというふうに考えておるところでございます。
#63
○小平芳平君 よく言われることですが、経済といい機械化といい、それは手段なんですね。経済を発展させるために、あるいは機械化するために人間があるわけじゃなくて、人間の幸福追求の手段であるわけですから、もちろん言うまでもなく、政府もそういう観点に立って対策を進めていただきたいと思うわけです。
 次に、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法についてですが、中高年齢者の雇用の問題が非常に大事である。労働大臣の所信表明の中でも「高齢化社会に対応する施策の推進」ということを挙げておられます。これは高齢化社会に対応する施策を推進しなければならないということは同感でありますし、十分また労働省もそういう観点で進めていかれると思います。
 そこで私は、ちょっと具体的に伺いたいのですが、この特別措置法は昭和四十六年に制定されたわけですが、四十六年当時と今日との雇用情勢に変化がないかどうか。その変化に対応する施策が必要ではないか。たとえて申しますと、この特別措置法施行規則において第一条に中高年齢は四十五歳以上とありますね。要するに年齢は四十五歳以上とする、それから高年齢者は五十五歳以上とするというふうになっております。このことは四十五歳以上の人たちを対象に労働省として施策を考える、あるいは五十五歳以上の人を対象に労働省として施策を考える、そのこと自体は別に時代おくれとかそういう意味ではありませんけれども、この当時から見ると今日では六十歳以上の人の職業が非常に重大な課題になってきているんではないか、まあ五十五歳以上六十歳がさしあたりは問題になりますけれども、ですからそのこと自体必要ないなんて全然思ってはおりませんけれども、それはそれで進めるとともに、六十歳以上ということが必要になってくるのではないか、少し施行規則が四十六年の段階では時代におくれちゃうことはないか、そういうことを尋ねたいんです。
#64
○政府委員(関英夫君) 中高年齢者雇用促進法の中で中年の労働者については、四十五歳から五十五歳未満、高齢者は五十五歳以上というようなことを定義いたしております。それは四十六年当時決められたものでございますが、四十六年といまとを比較して雇用情勢はどうかということでございますが、先生も御案内のとおり、四十六というのは高度成長のいわば上りつめるちょっと手前のあたりでございますから、非常に雇用関係は求人が多くて殺到しているというような、求人倍率も非常に高い、いわば完全雇用のような状態のもとでございまして、その後オイルショックを経まして非常に雇用情勢は御承知のように悪化したわけでございます。で、その悪化した状態からいま少しずつ改善してきているというような状態でございまして、中高年齢者の雇用情勢について言いますと、まだ四十六年当時ほどには回復し切っていないのが現状でございます。そこまで何とかして持っていかなければならないという、そういう道筋にある段階でございます。
 比較いたしますとそうでございますが、雇用対策を行います施策としての対象者として中年齢者を何歳ぐらいと考えるか、あるいは高齢者を何歳以上と考えるかと、こういう点でございますと、現在の四十五歳あるいは五十五歳という一つの区切りは現在でもなお妥当する区切りではないかと思います。
 しかしながら、先生御指摘のようにこれから先六十歳以上の高年齢者の方がだんだんふえてまいります。現在から昭和六十年ぐらいまでは五十五歳から六十歳層が非常にかたまってふえるという時代でございますが、昭和六十年を過ぎますと、御指摘のとおりに六十歳以上六十五歳未満の層が一番大きくふえる時代に入ってまいります。そういう意味で、定義は定義といたしまして雇用対策の重点として、現在五十五歳から六十歳までの人を何とかしようということで定年延長をとりあえず昭和六十年までに六十歳を言っておりますけれども、いまから六十歳前半層の対策も一生懸命やらなければなりませんし、昭和六十年を過ぎてまいりますと、まさに六十歳前半層の人の雇用対策が最大の一番大きな対策になるというふうに私どもも考えております。
#65
○小平芳平君 いまのと同じ趣旨ですけれども、雇用率の設定ですね、雇用率の設定も、五十五歳以上を一律に定めるために六十歳以上は、非常に深刻な問題となるであろうところの六十歳以上の人というところに観点がいってないわけですね。要するに五十五歳以上全部で幾らということで出ますから。そういう点もあわせて御検討願いたいと思いますが、いかがですか。
#66
○政府委員(関英夫君) 先生も御案内のとおり、この中高年齢者の雇用促進法は、制定当初は中年者の雇用率、それから中年者以上の雇用率というようなものを決めておったわけでございます。ただ決め方が職種別になっておりまして、いまの全職種を通ずるような決め方とは違いますが、そういう決め方になっておりました。ところがその後制定からしばらくいたしまして昭和五十一年当時、その雇用率の適用状況を考えてみますと、わが国の多くの企業が当時まだ五十五歳定年が非常に多かった。そういう時代におきまして、四十五歳から五十五歳の者で率が満たされるというようなことでは余り効果がないんではないかというような反省、あるいは職種別の雇用率制度が余り日本の雇用慣行に合ってないというようなことから、五十一年にこの雇用率制度が高齢者の雇用率制度として、しかも全職種を通ずる一律のものとして定められたと、こういう経緯があるわけでございます。そういう意味で、いま現在はとにかく六十歳前半層を無視するわけでございませんが、五十五歳以上の高齢者の雇用率を高めるということで重点を置いてやっておりますけれども、昭和六十年に六十歳定年というものが一般化すれば、その雇用率指導の重点はやがては六十歳以上というところにどうしても持っていかざるを得ないし、そうでなければまた無意味になってくる、そういうことになろうと思いますし、そういう時代に早くするために私どもは懸命の努力をせにゃいかぬと、こういうふうに思います。
#67
○小平芳平君 次に、人材派遣会社ですね、こういうのが非常に流行しているし、また企業にとっては、ありがたがられているということ、それで労働力需給システム研究会、ここから職安局長に答申が出ておりますですね。それで労働大臣の許可業種は厳しい規制を受けるわけですが、この人材派遣会社となればあらゆる業種にわたって派遣ができる。しかしいろいろなケースがあって、もう時間がなくてちょっと詳しく説明する時間がないわけですが、要するに結論として、労働省は答申に沿った改正をなさるおつもりかどうか。あるいはこういう人材派遣ということで現に有効に機能しているものをやめさせるとかチェックをするのもどうかと思いますし、その辺のお考えを伺いたい。
#68
○政府委員(関英夫君) 昨年労働力需給システム研究会から御指摘の提言をいただいたわけでございます。その提言では、こういった労働者派遣事業は経済の発展段階でそれなりの要請といいますか需要があって生まれてきて、それなりに経済合理性もあるし、また労働者の方もそういうところで働くことを希望する、そういう方もおると、そういう意味で一定の合理性を有する。一方で、一般企業で常用で就職してずっとそこで働く方と比べてみると、派遣されて働く労働者は労働者保護の面で必ずしも十分でない、そういう面がある。
 それからなお行政管理庁の勧告によれば、中には請け負いと称しながら職安法違反の労働者供給事業に該当するようなおそれのあるものもあると、こういうような実態を踏まえてその経済合理性と労働者保護、そういったものを十分踏まえた上で一定の規制を加えて、そしてこういった事業について大臣の許可制をしき、労働者保護を徹底したらどうかと、こういう御提言をいただいたわけでございまして、学者先生のその御提言は、私どもとしてはそれなりに非常に適切なものだとは考えます。しかしながら、これらの事業を直ちにこの提言に沿って立法化して規制するかどうかということにつきましては、先生御指摘のように、それら事業の今日までの経緯もございますし、またこれを取り巻くさまざまの制度がございます。たとえば民営の有料の職業紹介事業あるいは労働組合の行う労働者供給事業、こういうものが現行法の制度のもとで現在行われているわけでございます。これらとの関係もまた非常に重要でございまして、そういったものの存立を危うくするようなことがあってはまた非常に問題でございます。そういう意味で、この問題は非常にいろいろ波及するところも大きくむずかしい問題でございますので、私どもは、この研究会の提言をそっくりそのまま労働省がすぐ法案として作成するということでなく、関係の労使の方あるいは学識経験者によりまして調査会を組織していただきまして、そこで、今後どうしたらいいかということを現在検討していただいているところでございます。その調査会には、現在民営の職業紹介をやっているところなり、あるいは労働者供給事業をやっている組合の方なり、あるいは関係の労使の方なりいろいろお入りいただきまして、現在非常に頻繁に、回数多く議論を重ねている段階でございます。しかし、これがあらゆる産業に波及する非常に大きな問題であるだけに、その議論はなかなかむずかしゅうございまして、一朝一夕に簡単に結論が出るというものでございませんで、時間をかけておりますが、私は、非常に大きな問題だけに慎重にここで御検討いただきまして、コンセンサスが得られて結論が出るならば、その結論に従って必要な立法措置を含む措置をとりたいと、こういうふうに考えているところでございます。
#69
○小平芳平君 終わります。
#70
○柄谷道一君 わが国は、大臣御承知のように、他国に例を見ないスピードで世界一の高齢化社会を迎えることになります。高齢化社会への突入は、私は社会全体に大きな変革をもたらすものであろうと思います。そしてその対応は、雇用、社会保障、福祉といった問題にとどまらずに、企業、家庭、地域社会のあり方にも波及する重要な問題でございます。私たち民社党では、いま、活力ある高齢化社会づくりを目指しまして、総合的かつ計画的政策の樹立のための検討を精力的に進めております。雇用政策につきましても、今後私たちの提言を踏まえて、積極的に諸般の施策に取り組まれるように、まず最初に労働大臣に強く求めておきたいと思います。
 五十六年度、労働省が私たちの要求を入れまして、高齢者の職場環境改善資金の創設など、各種の施策を強化充実しておられますことは評価するものでございますが、私は、必ずしもこれだけの施策でこれから到来する高齢化社会に十分対応できるであろうかどうか、それにはなお検討の余地があると思うのでございます。雇用政策、高齢者の就労機会の確保、これは今後の労働行政にとりましてもきわめて重要な政策課題であろうと思いますが、時間の関係もございますので、簡潔に、労働大臣より基本的所信をお伺いいたしたいと思います。
#71
○国務大臣(藤尾正行君) いま民社党で非常な御勉強をいただいておる、本当に敬意を表するわけでございますけれども、私どもといたしましても、もうすでに、まことに申しわけのないことでございますが、こういった非常な大きなスピードで変わりつつある社会的変革というものに対しまして、いままで対応がおくれておった、これは率直に認めざるを得ないと思います。でございますから、おくれておった対応を、現状に合わしていくだけでも大変な、このスピーディーな、かつ広範な対策を必要とするわけでございますが、私どもはさらに考えてみますと、これから進展する先が、いま小平先生御指摘になられましたように、五十五歳から六十歳などということが高齢者対策なんだということを言っておりましたのでは、もう数年先にはそれは間に合わなくなってしまうということでございますから、もういまからその先のことをあわせ考えて、そのときに悔いのないような施策を並行、同時にこれを進めていかなければならぬ、こういうことでございまして、今後ともそのいままでのおくれを反省をいたしまして、すき間のできないように緻密な、慎重な、そうしてかつ迅速な対策といいまするものを打ち立てていきたい、かように考えております。
#72
○柄谷道一君 私は、やがて大きな課題になると思われる六十歳以上の高齢者、これは個人によっても体力、能力の面で相違がございます。また意識の面でも非常に多様化いたしておりますので、雇用対策につきましても、これら高齢者の実態に即した多様な政策というものが要求されると思うのでございます。そのためには私は、幾つかの新しい法制化の問題、また充実した予算を背景とした労働行政の展開が必要であろうと思います。これらは逐次本委員会で取り上げることといたしまして、本日は時間の関係もございますから、シルバー人材センターの問題にしぼって質問をいたしたいと思います。
 私はかねてから、このシルバー人材センター構想につきまして深い関心を持っておりまして、そうしてその拡充、発展につきましても本委員会で指摘したこともございます、まず、五十五年度予算で百団体分が本年度計上されましたけれども、その設立状況がどうなっているのか、お伺いをいたします。
#73
○政府委員(加藤孝君) ただいま御指摘ございましたようないろいろな観点を受けまして、確かに定年退職後等におきまして、もう人に雇われる、こういうようなことは余り希望しない。しかし、持っている能力を生かして、ぜひ何らかの仕事をやりたい、こういう高齢者が増加しておるわけでございまして、一方また、地域社会においてもいろいろ核家族の進展だとか、あるいは共かせぎだとかいうような状態が広がる中で、そういうニーズとうまくマッチをいたしまして、非常に全国的に好評を博しておりまして、百団体の予定に対しまして、現在九十二団体が発足をしておる、こんな状況にございます。
#74
○柄谷道一君 設置個所につきまして、五十六年予算でどのように措置されていらっしゃいますか。
#75
○政府委員(加藤孝君) さらに五十団体の追加をしていきたい、こういうことで、百五十団体の予算化を図ろう、こういうことでお願いをしておるところでございます。
#76
○柄谷道一君 大臣。五十五年、五十六年の両年度で百五十カ所、これでは私は高齢化社会に十分対応できるとはとうてい考えられません。また現在、労働省ではシルバー人材センターの設置基準につきまして、人口二十万以上の都市としておるということを聞くのでございますけれども、私はこの人口規模にとらわれずに、やはり助成を進めていくべきではなかろうか、こう思うのでございます。たとえばシルバー人材センターは、一市一団体に限って設置する、こういったてまえになっておりますけれども、政令指定都市など人口規模の大きな都市について一カ所では、とうていその機能を発揮することはむずかしいと、こう思うわけでございます。たとえばそういう大きな都市には複数の団体を設けるとか、団体に支部を設置して、支部ごとにセンターの設置を認める、こういった会員の数、ニーズに応じまして、地域の実情に応じて機動的な運用を図るということが、この構想を一層発展させるゆえんではなかろうか、こう思うのでございますけれども、その設置基準について、私の考えに沿って対処されるおつもりがあるのかどうか、これは大臣からお願いしたいと思います。
#77
○国務大臣(藤尾正行君) 御趣旨のとおりでございまして、現在三千余りございます町村というようなものを考えてみましても、いまの戸とか百五十とかいうようなもので対応し切れるものではないわけでございまして、とりあえず、発足の当初でございますから百とか百五十とかいうようなことでやっておりますけれども、決してそれが終局の目標であるはずはないわけでございまして、先生御指摘のとおりニーズのあるところ、必ずその充足のためのセンターをつくっていくというのが趣旨でなければなりませんし、当然政令都市等におきまして複数ができ、あるいは先生のおっしゃられるように、支部の活用というようなこともあわせ考えていく、あたりまえのことだろうと思います。そのように措置してまいるつもりでございます。
#78
○柄谷道一君 まだ本年度から発足したばかりでございますけれども、今後シルバー人材センターが有効な活動を行う、そしてその成果が評価されるに従いまして、全国各地で設立の希望はふえてくると思うんですね。しかし一方、予算にもこれ限界がございます。そこで、予算の大枠を取るということはもちろん必要でございますけれども、やはり増設については計画的に取り組んでいくという視点がなければならないと思うのでございます。今後、増設の方針について当局の御意見をお伺いいたします。
#79
○政府委員(加藤孝君) 確かに、今後計画的に取り組んでいくことが大変に重要なことであると、こう考えておるところでございますが、本年度二十万ということでいたしましたのは、まず地域社会の仕事がある程度確保できると、そういう地域、そしてまたそういうセンターなどに加入して働きたいと、こういう高齢者がある程度おられるところと、こういうようなことで、そういう地域においてまずモデル的につくっていこうと、こういうことで二十万という考え方のもとにスタートをさせたわけでございます。したがいまして、新年度におきましては、その二十万を今度は十万という規模におろしまして、それを予算化するという形で取り組んでおるわけでございますが、逐次こういったものが普及してきます中で、また運営の仕方についてある程度のモデル的なものが確定をいたしまして軌道に乗ってくると。こういうような中で、そういう人口規模等も逐次おろしていくというような形の中で、できるだけ早い機会に全国的にニーズのあるところにはこれが設置されるような、そういう手順でいきたいと、こんなふうに考えておるところでございます。
#80
○柄谷道一君 これは指摘いたしておきますけれども、人口の基準をどんどんどんどん落としていく、これによって拡大を図っていく、これも一つの方法でしょう。しかし、いま大臣が言われましたように、大都市についていわゆる特段の配慮を加えていきませんと、一番取り残されていくのは政令指定都市などの大都市に、人口割りに対比すればきわめて数が少ないということになるわけですから、今後計画的にこれを増設を図る場合は、やはり総合的な視野からの計画、立案というものを求めておきたいと、これはもう要望でございます。
 そこで次に、このセンターに対する助成は具体的にどういう内容になっておりますか。
#81
○政府委員(加藤孝君) 現在、助成の対象といたしましては、まずそこの仕事をもらってくも、あるいはまたその会員との連絡をすると、こういうようなことに伴う職員の人件費、それからまた新しく電話を架設するとか、机を置くとか、こういうようなことに伴う初度調弁費と、それからまた活動費と、そういったようなものにつきまして補助対象にしておるところでございますが、新年度におきましては、さらにこれに一歩加えまして会員の技能講習と、こういうようなものをやる費用につきましても補助対象に加えると、こういうことで対応をいまお願いしておるというところでございます。
#82
○柄谷道一君 私いろいろ実態を調べますと、確かに漸次補助対象の強化を図っておられることは評価するのでございますけれども、しかし、実態果たしてこれでいいんだろうかなと、まだまだ拡充の余地というものはあると思われて仕方がございません。
 こういう点はひとつ御努力を願うこととして、次に、補助金は五年間で打ち切られると、こういうことになっていると承知するのでございます。一体その理由は何なのか。私は、国の補助を打ち切った場合、それではその後シルバー人材センターが完全に自立してその機能を発揮することができるのかどうか、この点よほど見きわめていきませんと、せっかく植えた芽が補助金打ち切りによって自然にしぼんでしまうということがあったのでは、大臣の言われました趣旨は生きてこないと思うのですね。その点大臣いかがでしょう。
#83
○政府委員(関英夫君) 五年間で一応打ち切るといいますのは、政府の方針といたしまして、補助金制度というものがいま行政改革の中で非常に大きな問題になっておる。これを単に惰性的に続けていくんではなくて、新規にこれからつくる補助金については全部五年目で見直しをすると。そういう意味で一応五年と。その時点で見直して、さらに継続する必要があるものは継続していくということでございます。五年ですべて全部やめてしまうという意味ではございません。そういう意味での新規補助金の政府の一般方針として、五年で一応打ち切った上で、存続の必要性ありやなしやを十分検討すると、こういうものでございます。
 ところで、このシルバー人材センターは、地域のお年寄りの方が自主的に集まって、そうして会員となってつくる団体でございます。そういう意味で、つくるのに時間もかかりますし、また、つくった後もその会員の方の拠出でこれを自主的に運営していくことがどこ玄で見込めるかというと、普通の団体と比べてそこには非常なむずかしさがあろうと思います。また、その会員の方がお仕事をされる。それに伴いまして収入が入ってまいりますけれども、その収入の中から会の運営にどこまで割くことができるかということを考えますと、これもそう高くを望めません。そういう意味から言いますと、できるだけこういう自主的な団体が、しかも財政上も自主的に運営していくこと、それが望ましいとは思いますけれども、そこに非常な困難も十分考えられるわけでございます。私ども五年目にはその辺の実態を十分考えまして、存続の必要がある場合には存続をさしていくという考え方で臨んでいきたいと思います。
#84
○柄谷道一君 一応の五年間だと。そうしていま局長は、ある場合は存続させる。私はあると思うんですね。これは大臣一度シルバー人材センターの実態をよく見ていただきまして、私は、これ新しい高齢者の就業対策として非常に注目される一つの試みだと思うんです。これを立ち枯れにさせては私はならないと思います。真にこれを育成していく、その視点に立って、五年先の問題でございますけれども、労働省として十分の対応策を確立されるように、これはお願いをいたしておきたい。
 そこで、しかし私は、いろいろ実態を見ますと、現存の、いわゆる既存の法体系になじまないという面があるんですね。いわゆる根拠法も何もないわけです。そこで私は、今後この制度を発展さしていくためには、立法化を含めて労働省としても御検討されまして、一つのレールに乗せる。そうしてレールの上を走りつつ発展さしていくという体制づくりが真剣に、前向きに検討されてしかるべきではないか、こう思うのでございます。いかがでございましょう。
#85
○政府委員(加藤孝君) 現在このセンター発足したばかりでございまして、また、各地域ごとのやはり高齢者の自主性というものも尊重しながら、いろいろそれぞれの地域に合った運営、そういったものを期待をしておるところでございまして、そういう中でおのずから一応のやはりレールというようなものもある程度出てくるのではないか、そういうようないま試みをしておる段階でもございますので、今後のそういう運営の実情等を見ていく中で、今後そういう立法化問題についても研究をさしていただきたいと、こう思っておるところでございます。
#86
○柄谷道一君 本日は二十分間という限られた時間でございましたので、他の問題に触れることができませんでした。失業対策事業の今後のあり方につきましても質問する予定ではございましたが、他の委員から質問のあったところでもあり、本日はこれを割愛したいと思います。
 ただ、大臣とのやりとりを聞いておりまして、私は、高齢化した失対就労者に対してもやはり政府の総合的高齢者雇用対策の拡充を図ること、そして民間企業や官民合同の企業体づくり、そしてこれに対する雇用の吸収、さらに就労困難な者に対しては、医療、年金、特に無年金者に対する救済措置、生活保護、さらには生きがいの保障など、充実した施策を確立することこそが先決先行されなければならないと私は思います。
 このことを指摘をいたしまして、時間が参りましたので私の質問を終わりたいと思います。
#87
○山田耕三郎君 私は同和問題を通じて政府の雇用対策についてただしたいと思います。
 まず、それまでに一般的問題として同和対策事業特別措置法が施行以来十二カ年の経過を顧みまして、特に地方行政の場における体験を踏まえて、今後の政府の同和行政をただす立場からお尋ねをいたします。
 私は今日までに、政府筋からも、また同和問題の理解者と思われる人たちからも次のことをよく耳にいたしました。
 その一つは、地方は運動側の言いなりになって同和行政を進めており、その財政負担が一般行政を圧迫しておるとのことでございます。果たしてそうなのだろうか。このことについて若干申し述べさしていただきます。
 いま部落の実態的差別をなくするという立場から、環境改善事業を中心としての諸施策が行われております。その事業の中心は住宅改良にあります。小集落事業、さらには住宅改良法によります住宅改善が、投資されます財政負担の約半額を占めておることからして、その事業がいかに大きいかが御理解をいただけると思います。この措置法によりますと、諸事業を通じて市町村は総事業費の十五分の一を負担すればよろしいというのが一般の通説です。けれども、現実は市町村が総事業費の半分、国と府県で半分を持たれるというのが実態でありますと私は思っております。なぜそういうことになるのか。その住宅改良一つとってみましても、不良住宅を除却をするために住宅や宅地を買収をいたします。住宅は不良でありますから、買収価格には限度がございます。ただ、問題なのは宅地であります。措置法に定められるところは坪当たり単価十五万円を限度としておいでになります。ところが、実際にその事業を進めていく市町村にとりましては、村落地帯へ行けばこれは五万円で買収はできます、しかし、市街地へ入ってくれば三十万円を必要といたします。五万円の場合は十五万の限度内でありますから規定に従いまして国、県、市町村が負担をいたします。三十万円の場合は限度を超えます十五万円の金額は市町村負担であります。ですから、こういった場合には全体の六割から七割の負担を背負わなければならない、こういう実態があります。したがって、市町村の財政負担が多いということは、言いなりになっておるからの結果ではなしに、制度的にそのようにならざるを得ない面もありますということを理解をいただきたい。
 二つ目の問題は、濃密行政という名のもとに過剰サービスをして、財政の負担を過重化しておるのではないかという意見であります。それもあるいは当たっておるかもしれませんけれども、こういった実態もあります。いまの改良住宅で申し上げますと、規定に従いますれば一住宅当たりの敷地面積は四十坪であります。都市生活なれば今日四十坪でぜいたくは言えません。けれども、村落地帯で営農をする個々の家庭にとってみますと、大型農機具は共同作業場で収納をいたします。しかしながら種子でありますとか小型の農機具や農具を収容するものが必要になってまいります。どうしても納屋を建てさしてほしい。そうしますと四十坪ではいかなくなります、私の方では六十坪という、二十坪の上乗せをいたしました。その場合、上乗せをした分は市町村の全額の負担になってしまいます。二十年先、三十年先、農村スラムをつくらないでおこうとすれば、これもまた万やむを得ない措置なのではないかとわれわれは考えております。濃密行政を一概に否定することができないということを知っていただくために申し上げました。
 こういう心ない言葉が吐かれていきますがために、一般地区の人たちは、同和地区に多額の財政投資がされるからわれわれが犠牲になってくる。だから、こういったことから逆差別という言葉が生まれてまいります。しかも最近の差別事象の中で、日の出の住民はこれを消せという激越な差別文句まで落書きをされておるという実態でありますけれども、だれが責任だということでなしに、この実態を知っていただいて、関係者みんなで真の解放へ向かって努力をしていかなければならない、このように私は思います。
 もう一つの問題は、こういうこともよく耳にいたします。たとえば、われわれは差別をしておらない、差別はむしろ地区の内部から生産をしておるのではないかという言葉であります。これは重要な言葉でありますし、これに対する施策はまた大変重要であります。私の方で婦人部の部長をしておる人が、母親を連れて都会に参りました。電車に乗りましたら満員でした。ところがよくできた女学生がおられまして、その母親に席を譲ってくれた。ありがとうとさえ言っておけばよろしいのに、私たちの地区で使う特別の言葉で丁寧にお礼を申し上げました。ああ、あの人は部落の人ではないかというように思われたと私は思ってどきっとしました。運動の前面に立っておる人でさえがそのような感覚をお持ちになるまだ今日の段階であります。そして、続けて言われました言葉が重要であります。悲しいことには、私たちは文字を奪われて言葉を習ってきました。口から口への伝えてあります。間違って伝えられたら、それはそのとおりに習っていくということになります。
 一つだけを申し上げましたが、これに類することはたくさんございます。しかも、それは差別のために教育の機会均等を奪われ、就職の機会均等を奪われてきた結果の所産でしかありません。私はこれらのことの三つを申し上げましたけれども、どの一つをとってみても、これは足を踏んでおる側の方からの論理であって、足を踏まれておる側の論理では全然ありませんということだと思います。こういったことからして、やはり同和対策事業に従事をする一人一人はこのことをよく踏まえながら、どうしても足を踏まれておる人の立場になり切ろうという努力をし続けていかなければなりません、このように思っておるのでございますが、このことに対してのお答えはいただこうとは思いません。
 ただ今日、本来この同和対策事業というものは国の責任でありまして、地方自治体はその方針に従って措置をするという立場にあります。けれども、実態的には行政の責任という立場で主体的に取り組んでおるのではないか、このように見ております。したがって、今後は地方が仕事をやりやすくなるように国の対応を私は望むものでありますが、ただいま、特に地方自治体の一部に行政措置について混乱が起こっております。このことだけを一つお尋ねをいたしますし
 それは、同和問題を本当に解決をしようとするなれば、措置法を少しくらい延長するといった措置で済むものではありません。新しい視点に立って新しい法律をつくっていきますとともに、国民の中に依然として根強く残っております差別意識の払拭と啓蒙に法的な根拠を与えてやる必要があります。それにもかかわりませず、一年先には現行法の運命さえ定かでありません。被差別者はその経緯に不満を持っております。とともに、対応を続けていかなければならない地方自治体も途方に暮れております。中央では、法律がなくなれば行政措置の根拠がないからということであるいは済まされることができるかもしれませんけれども、地方にとっては、一部ではあっても事業の積み残しがあります上に、最近頻発いたしております差別事象にどう対応をしていくのか、それすらもわからなくなってしまいます。地方自治体の混乱はこのようなせっぱ詰まった状態の中で起こっておりますけれども、延長三年経過に続くその先の同和問題に対する政府の解決方策について、さらにはそのお取り組みについてお尋ねをいたします。
#88
○国務大臣(藤尾正行君) この問題につきましては、すでに本会議場におきましても鈴木総理大臣が申されておられまするように、いろいろなこと、国会の附帯決議等々頭に置いて各省庁いろいろな関係を取り合いながらその方針を決めていこう、こう言っておられるわけでございますから、これは、私どもといたしましては、総理大臣の御方針のもとにそれに適応できまするような施策を考えてまいるということが当然である、かように考えます。
#89
○山田耕三郎君 ただいま大臣からのお答えをいただきました。いずれにいたしましてもこれは重要な問題であります。さらに、同和対策事業を進めていくためには民間団体の協力は何よりも必要になってまいります。けれども、それらがいま必ずしも同一の考え方で結束をされておるという事態ではありません。けれども、運動の中に分裂があっても、その結果差別が出ておるのではなしに、その前に差別がありますのでございますから、そういった差別を取り除いていく施策は、やはり同和対策特別措置法の精神に基づきまして、国の責任という立場から合うをしていただかなければなりませんと思います。そういった点、事務的にどのようにお進めになっておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
#90
○政府委員(関英夫君) 就職上の差別といったような雇用問題につきましては、特に民間におきます大企業において十分なまだ改善が見られないところでございます、労働省におきましては、事業主がこの問題に対する正しい理解、認識のもとに適正な採用、選考、そして人事管理を行っていくということが必要であると考えまして、五十二年度から、大企業中心に直接採用選考に携わります人事部長、そういった人たちを、企業内同和問題研修推進員というのに専任をさせまして、その研修推進員に対しまして適正な選考採用システム確立のために必要な知識修得させる、そして、継続的に計画的に研修をする、こういうことをやっております。で、その研修員がさらに企業内にそういった考え方を広める、こういうことでやっておるわけですが、そういった百人以上の規模の事業所につきまして設置を勧めているところでございます。
 また、特に最近の就職差別の事象について、特に労働大臣から株式上場企業の千七百社の社長に対しまして、この問題について、正しい理解に基づいた社内体制を確立してもらいたいと、強く大臣から直接書簡をお送りしておるところでございますが、私どもとしては、全国の職業安定機関を挙げて、こういった企業のトップの方々にこの問題の正しい理解と認識を持っていただくように強力な啓発、指導をいたしたいと考えております。
#91
○山田耕三郎君 ただいまは同和問題の一般情勢について申し述べてまいりました。しかし、幸いにも関係の皆さん方の御努力のおかげで、環境改善を中心とする具体的事象の解決についてはかなり進歩をいたしております。で、これからの問題は、心理的差別を解消していく点からの教育の問題が重要になってくると思います。
 もう一つの問題は、部落の経済的低位性を解決をしなければなりません。したがって、産業と就労の問題が重要になってまいります、時間の関係で大変恐縮ですけれども、それらに関連をして次の二点をお尋ねをいたしますが、まとめとして労働大臣からお答えをいただきたいと存じます。
 第一点は、就労の問題でございますけれども、同和地区出身労働者の就労構造は相当改善されてまいりましたとはいいましても、一般地区における常用労働者就職率がすでに七十数%になっておりますのに、部落のそれは半数に達しておりません。それだけ低い状態にあって、残りの人たちは不安定な日雇い労働等に従事せざるを余儀なくされておりますのが実態であります。さらに着目をしていかなければならないことは、その現実は若干の改善はされたと申し上げましたけれども、特に最近に至りましては、むしろ差別の拡大があるように思えてなりません。そして、特に大企業における差別意識の根強さを実証をする事象が幾つかあらわれてきております。それらの具体的差別の事象については申し述べることは避けさせていただきます。しかも、これらは予算委員会等で多く取り上げられ、藤尾労働大臣は毅然とした答弁でその熱意を示しておられますとともに、顕著な差別を行った企業に対しては、すでに厳正に注意を喚起をしておられる措置をとっておいでになると承っております。高く評価をさせていただきますが、ただ、今後ともに差別は絶対許さないという立場から、監督と指導に万全を期していただきたいと思います、重ねて労働大臣の決意のほどを承らさしていただきます。
#92
○国務大臣(藤尾正行君) まことに御指摘のとおりでございまして、本来さようなことがあってはならぬわけでございますけれども、いまだに地区によりまして、御指摘のとおり一般の方々に対しまして半分ぐらいしか固定した仕事におつきになれないというような実態がまだある。まことに恥ずかしいことでございまして、一日も早くそういうことをなくさなきゃなりませんけれども、私は若い方々にはそれはかなりなくなっておる、かように思いますが、中高年の方々になってまいりますと、なかなか一般的にも中高年の方々に対しまする御就労といいますることは非常に困難でございます。そこに地区的に非常に多数滞留しておられますわけでございますから、これをなかなか適切に一つ一つごあっせんをしていくということに非常に時間と、そうして困難を増しておるということを考えますと、ここに何らかの、たとえばその地区地区に特別の就労の機会を与えていただけるような事業所の設置というようなことを私どもが主唱いたしまして、通産その他の関係省庁と話し合いをいたしまして、実現をしていくということをやっていかなければいけないのじゃないかというように考えております。これもおくれておりますこと、まことに申しわけございませんけれども、着実にやらしていただくつもりでございます。
 ただここで、仰せのとおり大企業におきましてそのような差別的な行為が行われておる。事際、事実御指摘のとおり、私は調べてみましたらそのとおりでございますから、もう継ぎ端の言葉もないぐらいで、恥ずかしいと思いますけれども、さようなことがいまだに通用しておるというようなこと自体、私にはどうしても理解ができない。そうして、そういったことのございましたそれぞれの責任者においでをいただきまして話し合いをしてみますと、それを本当に気づかずにおやりになられたとか、やってしまってから、まことに申しわけのないことをやってしまいましたとかいうことで、厳しい御反省をいただいております。恐らく二度と再びさようなことをなさるはずがない、かように私は確信をいたしております。
 またそういったことが、私も全株式上場会社にそのことを通知をいたしましたのも、私はそういうことに気がつかなかったなどということを言わさないためにも、このようにきちんと言ってあるじゃないかということを知らせるためにやりましたことでございまして、こういったことは私が通達をいたしました後で、しかしながら、私の方で残念ながらこのようなことが起こってしまいましたというようなことは、私は言わせるわけにはまいらない、そう思っておるわけでございまして、したがいまして、場合によりましたならば、私の名前で告発をするということも考えております。したがいまして、これは一文書におきまする通達というようなことと違いまして、根本的に私どものこの国、社会、民族といいまするものを立て直すための基本的なことでございますから、どうかひとつ一生懸命やりますから、今後とも御注意をちょうだいをいたしまして御指導をいただきたい、かように思います。
#93
○山田耕三郎君 済みませんが、時間過ぎましたが、一つちょっとお願いします。
 最後でございますけれども、わが国の労働市場の閉鎖性や雇用慣行、さらには活発な企業内教育などの特異性が、逆に企業内同和教育がおろそかになっておる原因をつくっておるように思えてなりません。地名総鑑の購入が明らかになって、初めて企業内同和教育に取り組むというのが今日までの実態でございました。これは地名総鑑を購入をする前に企業内の同和教育が行われるような体制にならなければいけないと思います。地域社会にあっての御婦人は、地域の同和教育の場にたびたびと接する機会があります。職場にあります御主人には、むしろそういった機会がありません。だから、差別を取り除いていく立場からも、企業内における同和教育を制度化するようにして徹底を図っていただきたいことを最後にお願いを申し上げさせていただいて、私の質問を終わります。
#94
○委員長(片山甚市君) 大臣、よろしいか、大臣。
#95
○国務大臣(藤尾正行君) 心がけてまいります。
#96
○委員長(片山甚市君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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