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1980/04/16 第94回国会 参議院 参議院会議録情報 第094回国会 社会労働委員会 第8号
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1980/04/16 第94回国会 参議院

参議院会議録情報 第094回国会 社会労働委員会 第8号

#1
第094回国会 社会労働委員会 第8号
昭和五十六年四月十六日(木曜日)
   午前十時十五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月十五日
    辞任         補欠選任
     小笠原貞子君     沓脱タケ子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         片山 甚市君
    理 事
                遠藤 政夫君
                佐々木 満君
                高杉 廸忠君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                斎藤 十朗君
                関口 恵造君
                田代由紀男君
                田中 正巳君
                福島 茂夫君
                森下  泰君
                丸谷 金保君
                安恒 良一君
                渡部 通子君
                沓脱タケ子君
                柄谷 道一君
                前島英三郎君
                山田耕三郎君
   国務大臣
       労 働 大 臣  藤尾 正行君
       国 務 大 臣
       (内閣官房長官) 宮澤 喜一君
   政府委員
       労働大臣官房審
       議官       松井 達郎君
       労働省労政局長  細野  正君
       労働省労働基準
       局長       吉本  実君
       労働省婦人少年
       局長       高橋 久子君
       労働省職業安定
       局長       関  英夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
   説明員
       行政管理庁行政
       監察局監察官   堀江  侃君
       厚生省公衆衛生
       局地域保健課長  北川 定謙君
       厚生省保険局保
       険課長      川崎 幸雄君
       林野庁林政部森
       林組合課長    安橋 隆雄君
       林野庁業務部業
       務課長      田中 恒寿君
       郵政省人事局保
       健課長      渡辺 民部君
       労働省労働基準
       局監督課長    岡部 晃三君
       労働省労働基準
       局補償課長    林  茂喜君
       労働省労働基準
       局賃金福祉部企
       画課長      小村 雅男君
       建設省計画局労
       働資材対策室長  清水 一郎君
       会計検査院事務
       総局第四局審議
       官        坂上 剛之君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働問題に関する調査
 (振動病対策に関する件)
 (公共企業体等の賃金問題に関する件)
 (婦人労働者の増加に伴う保育施設等の改善に
 関する件)
 (年次有給休暇の完全消化、労働時間短縮等に
 関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(片山甚市君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 労働問題に関する調査を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○丸谷金保君 私は、振動病の問題についてお伺いをいたしたいのですが、実はこの問題、十数年来国会でもうしばしば取り上げられ、さらに、特に林野庁、労働省等ではもう非常にたくさん通達を出しております。こんなに出ているのかと思うくらい毎年毎年、きわめて厳しく規制をしていかなきゃならぬというような通達も出ております。さらにまた、歴代労働大臣が、こういうことがあってはならぬから予防をまず重点に行政を進める、最近の例でいいますと、五十五年四月十五日に藤波労働大臣がこのことを、特に予防に重点を置くと、さらにまた十一月六日には、かわられた藤尾労働大臣が同様、そういった病気にかかられる方がなくなるように指導することが先決だということで、予防に重点を置くんだという姿勢を明らかにしております。にもかかわらず、どうも振動病というのは、林業を中心にしてさらに末広がりに各業種にふえつつあるという現況、実は大変私どもこれだけ国会で長年にわたって指摘をし、歴代大臣が決意を披瀝し、行政各機関がそれを受けて厳しい通達で予防措置を講ずるように努力をしていながら一向に減らない、一体どこに根本的な欠陥があるんだろうかと、深刻に実は受けとめて、私なりに考えてまいりました。
 そうして、これは関係各行政機関が決意を持って、たとえば事業主の責任を明らかにして処断していく。あるいはまた、振動病の原因となるような各種の工具を使う場合には、いわゆる山林における出来高払いというふうな方針を改める。それから監督体制を強化する。この三つをきちっと大臣がおやりになる腹を決めれば、これだけで相当数の患者が出ないで済むんではないか、大臣のおっしゃっているような予防が実現するんでないかというふうに考えておりますので、まず、こういった問題と具体的に取り組む決意があるかどうか、大臣からお伺いをいたしたいと思います。
#4
○国務大臣(藤尾正行君) 非常に厳しい振動病の現状といいまするものに脚注日をいただいて、どうするかというお尋ねでございますけれども、仰せのとおり、かつまたいままで政府が何回も言ってまいりましたように、こういったチェーンソーというような機械、器具、そういったものに原因をいたします特殊な振動病というようなものがふえていくということは、こういったものの業種を指導をいたしておりまする林野庁とされまし保ても、また総体的にお働きになられる方々をお預りをしておりまする私ども労働省といたしましても、また病気といいまするものに直接対処しておられまする厚生省とされましても、こういった病気を無為にして放置をしておくというわけにはまいらぬわけでございます。でございますから、御注意のとおりあらゆる施策を、私どもがとり得るものすべてをとってまいりまして、これの発生を未然に防ぐという予防のために、全力を挙げていくのは当然だろうと思いますし、私どもの責任でもある、かように考え、これに対して厳しい措置をこれからもさらに前進させるということをお約束をさせていただきたいと、かように思います。
#5
○丸谷金保君 大臣、厳しい措置をこれからもとっていくと、いままでもとっていたということを前提にしての御答弁なわけです。ところが、いままでとっていないんです、厳しい措置を。法的にできること、あるいは行政の執行面でやればできること、これをやっておられておりません。ですから、私は具体的に事業主の責任あるいは出来高払いの問題、監督の強化という三つの問題にしぼっていまお伺いいたした次第です。
 以下、どうして大臣がおっしゃるように厳しい措置ができていないか、それからこれからも、どうもこのままではやはり全体として、そういう措置ができていかないんでないかという点についてじっくり取り組んでいきたいと思いますので、ひとつその点御了承いただきたいと思います。
 よく答弁の記録を見ておりますと、そこで答弁して、後はそれなりになっている問題がたくさんあります。ですから、私はこの振動病の問題、これから労働一般日のある限り、いま申し上げたこの三つの点がきちっと行われるまではやめないで、毎週追及していきますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
 たとえば五十五年の十一月六日に、同僚の高杉委員が数字の問題で質問いたしております。特に、このときは片山委員長からも注意がございまして、検討して提出するということになっておりますが、きょう現在高杉委員に聞きましたところ、記録はそうなっているし、そういう答弁があるんですが、まだ行われておらないそうです。これは一体どうなっているんでしょうか。原補償課長がこのとき答弁しておりますが、いかがですか。
#6
○説明員(林茂喜君) 私、原課長の後にことしになりましてかわりました林でございます。
 ただいまおっしゃられました高杉先生の御質問の件につきましては、もう少し実態を調査してから先生の方に御報告を申し上げるつもりでございます。現在のところあの趣旨から申しますと、茨城県で振動病患者がほとんどないのじゃないかということから、潜在振動病患者の数はどうなっているんだという御質問であったわけですが、実際、現在のところ、昨年度振動病患者としての申請認定の数はございませんでした。今後ともそうした潜在障害者がわかりました折には、速やかに申請の手続をとるよう指導をしてまいりたいと思います。
#7
○丸谷金保君 本当にやったんですか。きょうはこれでとどめておきますが、次回までに、何月何日どういう方法で、どれだけ調査したという明細をひとつ出してください。よろしいですね。昨年の十一月からですからやっていないはずはないんで、どういう方法でやったか。
 それじゃ、前に進ませていただきます。郵政省おいでになっていると思いますが、郵政職員の振動病患者というふうなものの現況、それからそれに対する対策等がありましたらお知らせを願いたいと思います。
#8
○説明員(渡辺民部君) 郵政省でございます。
 郵政省では、昭和四十九年に初めて振動障害につきまして公務災害の認定の申請がございまして、それ以来昭和五十六年三月までに、四十件の公務災害の認定をしております。
 それから、モーターバイク乗務による振動障害につきましては、いろいろと研究をしてまいっているわけでございますが、その発生の機序といいますか、メカニズムといいますか、因果関係がいまのところはっきりわかっておりません。でありますが、対策といたしまして、振動障害と診断をされた職員につきましては、まず何よりも健康管理を担当しております医師と十分連携を図りながら、症状に応じた治療といいますか、そういうものを進めることが大事であるというふうに考えており、また、同時にモーターバイク乗務からおろしていくことが一番いいのではないかというように考えておりまして、モーターバイク乗務からおろしまして、自転車とかあるいは徒歩による作業などに変更をいたしまして、病気の早期回復に努めているような次第でございます。
 それから振動緩和対策といたしまして、モーターバイク自体の振動を減少する必要があるというふうに考えまして、モーターバイクの改良とか、それからモーターバイクに乗ったときにスピードの出し過ぎを抑制するとか、それから悪路といいますか、悪い道をできるだけ避けて通るとかというような走行方法上の指導等もやりまして振動緩和対策を進めている次第でございます。さらにいろいろの調査研究の結果、寒冷といいますか、寒さといいますか、そういうものも非常に影響があるというようなことでありますので、防寒ぐつとかあるいは防寒ズボンとか、あるいは防寒手袋とかというようなものを準備いたしまして、それを着用していただくというような形で、防寒保温対策を講じているわけでございます。私どもといたしましては、職場から病気をなくしまして、職員が安心して職務に精励できるような生き生きとした職場づくりというものに今後とも努力をしてまいりたいと、かように考えております。
#9
○丸谷金保君 すでに四十五年の四月九日の当委員会におきまして、これは保険の外交員、一日に三時間くらいづつ約三年間バイクに乗って発病しているという例が報告されております。そして、そのことがこの委員会で指摘されております。ですから大臣、これは林野のチェーンソーの問題だけでなくて、こういうふうな広がりを見せておるんだということをまず御認識いただきたいと思います。
 次に建設省でございますが、所管の土木建築業界における振動病の発生状況、あるいはこれに対する建設省としての取り組み、直轄及びその他の業者にやらしている請負――請負というか入札その他いろんな形で、全国的に多数の事業を行っておりますが、これらのそうした振動病の状況等についてお知らせください。
#10
○説明員(清水一郎君) お答え申し上げます。
 昭和五十四年度におきます建設業における振動障害による業務上の認定された者の数につきましては四百五十九名というふうに承知いたしております。
 それに対しまして、建設省で一体どんなことをしておるのかということでございますが、まず第一点は元請・下請合理化指導要綱というものがございまして、これによりまして建設業の元請、下請全体を通じ、さらに元請に対しましては下請に対する指導援助をすべきことまで含めまして、労働災害の防止について努力するよう指導しておるところでございます。
 また、所管公共事業の執行に際しましては、これは毎年度、たとえば五十六年度の公共事業の執行に際しましてはこの四月八日に発しておりますけれども、事務次官の通達をもちまして建設労働者の健康の保持あるいは災害の防止といった観点から、適正な工期、工程を設定するようにしろというふうなことも含めまして、労働災害の防止についての指導を、所管発注官庁に対していたしておるところでございます。
 さらにまた、工事の実施に際しましては、公共土木の共通仕様書におきまして、そういった安衛法その他の工事に関する諸法規を守るべきであるということが書いてあるわけでございますが、そういうものによりまして請負業者に対して、労働災害の防止について特段の努力をするよう指導しておるところでございます。
 以上でございます。
#11
○丸谷金保君 林野庁にお伺いしますが、林野庁の方は数字それぞれ発表になっておりますので押さえておりますし、対策もいろいろ行っております。たとえば林業労働安全衛生対策として振動障害対策に二億二千五百五十万のこれらに対する諸策、さらにまた労働安全衛生管理改善事業として九千三百万というように相当多額の予算を林野庁自身が出して行っておると。問題は、にもかかわらず決して全体として減る方向にないということは、一体どういうわけなんでしょうか。林野庁からお伺いいたします。
#12
○説明員(安橋隆雄君) 林業におきます特に民有林の振動障害認定患者数が、減る傾向にないのはどういうことかというお尋ねでございますが、私どもの考えでおりますところでは、最近林業労働者自身の林業の振動障害に対します関心が高まってまいりますとともに、特別の健康診断事業というようなものも拡充実施しているということで、従来潜在的にありましたものが、顕在化してきたものではないかというふうに考えておる次第でございます。
#13
○丸谷金保君 いま、潜在的にあったものが顕在化したと。それで、労働省は茨城県で潜在的なものはないとおっしゃいましたね。一方では、潜在的なものが出てきているからふえているんだという答えが出ているんです。大臣、こういう矛盾がこれからしばしば出てきますから、ひとつ十分御留意いただきたいと思います。このことについてはもっとさらにまた後の時間でやります。
 それで、実は林業の中において直用が意外と減ってきております。患者数は決して減らないんですが、毎年起きる発生件数、これが非常に減ってきておるんです。その数字をこう見てまいりますと、昭和四十年から四十四年まで、特に四十四年には五百五十八件という認定患者が発生しております。これは国有林直用の部でです。この年に労働組合が強い闘争を組みまして、二時間のチェーンソー使用というふうな協定を結んだんです、労使の。途端に四十五年には百三十九件、四十六年には七十件というように減ってきました。これは当局の行政指導じゃないわけですね。むしろ働く者の方の強い要望によって、強い闘いによって、闘いの結果こういう協定を結ばれて、そのことによって減ってきた。ところが、また四十八年、四十九年とふえてきたんです。これはなぜか。これらもそれぞれ多いままでの委員の中で質疑が繰り返えされておりますから、その問題の究明は後におきますが、こういうことが行われてまたふえてきたと。それで今度は昭和五十年に二時間なら二時間の中における使用条件、何分やったらかわりなさいとか、十分とか、そういう使用条件、こういうものをまた労働組合が強い闘いをして闘い取ったわけです。しかも、この年はまた高知において告発闘争も行われております。途端にまた五十年から減り出したんです。
 この二つの節目を見ておりますと、すべて行政の側が、大臣の言うように積極的に行った結果でなくて、労働者の側の強い反発によって規制が協定され、そうすると減ってくる。五十四年は七十三件、さらに五十五年はもっと少なくなって三十件くらいというふうなぐあいに急激に減ってきております。ですからね、この数字を見ておりましても、やりようによってはこの病気は皆無にできるんだという一つの指針がここへ出ているわけなんです。こういうふうにして国有林直用ではそういうふうに減ってきておりますが、今度は逆に一般の民間の山林労働者の間ではウナギ登りにふえてきております。一体この原因はどこにあるのかということについて林野庁からひとつお答え願いたい。
#14
○説明員(安橋隆雄君) ただいまも御説明いたしましたように、労働者の方のこの問題に対します関心の深まりと受診体制の整備によりまして、受けてみようというようなことで健診を受けて、その結果認定される方々が出てきているというようなことでございます。
 民間の林業労働者の振動障害対策といたしましては、先生御指摘のとおり、林野庁といたしましても、チェーンソーの使用時間の規制が徹底して守られるような巡回指導対策の充実でございますとか、あるいは振動の少ないチェーンソーの開発、あるいは代替機械の開発、その他もろもろの対策を講じてきているところでございます。
#15
○丸谷金保君 あなたは前の答弁の繰り返してございましてね、要するに潜在的にうんとあったやつが受診するようになって出てきただけだと。どうして私は潜在的にそんなにあるのかと、この十何年もかかって。国有林の直用の方は減っているのに、減らないんだということなんですがね。それはどうなんですか、潜在化したのが出てきたのはわかるんで、問題はどうしてそういういままで潜在してそんなにたくさんあったのだということなんです。
#16
○説明員(安橋隆雄君) チェーンソーにつきましてのたとえば使用時間の規制は、昭和四十五年の労働省からの通達で二時間以内とすることというようなことが出されたわけでございます。それから、振動の少ない機械の開発というようなことは、そういったものとあわせて研究開発の対策を講じてきたわけでございますが、そういう結果、新しく病気にかかるというような段階はもう過ぎ去ったのではないかというふうに考えているわけでございますけれども、そういう対策が効果が出てくる以前に、すでに何らかの症状が出ている、そういう方々が検診の結果、現在認定患者としてあらわれているのではないかというふうに考えている次第でございます。
#17
○丸谷金保君 郵政省、建設省、きょうはもうよろしゅうございますので、どうぞお引き取りください。
 二時間の規制が守られているからというふうにいまおっしゃいましたね。ところが、私はそれが守られていないという報告を実は受けておるのです。
 行政監察局来ておりますね。行政監察局が昭和五十四年の十月から十二月、和歌山県において民間林業労働者の振動障害対策に関する監察を行っております。この中で明らかに二時間作業は実際に守られていないと、たくさんあると、こういう報告を労働省に出しておりますが、間違いございませんね、行政監察局。
#18
○説明員(堀江侃君) お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、和歌山行政監察局におきまして調査の結果、二時間以内の遵守という問題につきましてはなかなか徹底をしないという指摘をいたしております。その結果につきましては、関係機関に御通知を申し上げたところでございます。
#19
○丸谷金保君 これは労働組合の方で北海道で発生した認定患者八百六十三名について調査した資料でございます。そうしますと、もう最近では民有林で発生している、どこでということ、これ具体的に出ております。それぞれの支局ごとの数字が出ておりますが、圧倒的に多くなってきております。それでやはり実際に個々に当たってみると、これらはチェーンソーの時間が守られていないという報告がたくさん出ているのです。林野庁、それ守られているというのはどういう根拠なんです。行管も守られていないと言っているし、われわれの調査でも守られていないのですよ。守られているから潜在的なもので、これから発生するのはないだろうなんてそういう答弁どこから出てきます。
#20
○説明員(安橋隆雄君) 私ども四十五年のチェーンソー使用時間の規制につきましては、守られるように巡回指導事業等で使用時間規制の趣旨の徹底を図ってまいりたいというようなことを申し上げたわけでございます。その結果、巡回指導事業等の指導事業が五十五年度では百三十一市町村、五十六年度はそれを二百六十市町村にふやしまして、振動機械の多い市町村につきまして、指導の徹底充実を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございまして、もしこういった対策が効を奏しました場合には、だんだんと守られてくるようになるだろうというふうに考えている次第でございます。
 私どもの方で昭和五十四年度時点でチェーンソーの使用時間規制の実態を調べましたところによりますと、一日の使用時間二時間以内ということで時間内の使用をしている人が全体の五二%、二時間から三時間未満の方が二九%、三時間以上使っている方が一九%というようなことになっているわけでございまして、半分をやや上回る程度の方は五十四年度時点で守っているのではないかというふうに認識しているわけでございますけれども、先ほど御説明しました巡回指導事業等の徹底によりまして、この数字を逐次上げていきたいというふうに考えているわけでございます。
#21
○丸谷金保君 ちょっとそこにそのままいて。あんたね、さっきの答弁と違うじゃないか、それじゃ。逐次今度は上げていきたいという話だろう、いまの話は。さっきは、減っているし、潜在的なのが出てくるだけで、もう現在ではありませんと言った。二時間が徹底していると。どうなの。そういう、こちらが具体的な数字を出したら途端に答弁の内容が変わってくるというようなそういう不見識な答弁というのはあるかい。先に言ったことと全然違うでないか、いま言っていることと。
#22
○説明員(安橋隆雄君) 上げていきたいと申しましたのは、使用時間規制を守る方々、つまり五十四年度では五二%という数字でございますが、この数字を上げていきたいというふうな趣旨で申し上げたわけでございます。
#23
○丸谷金保君 だからまた減ってはいないんでしょう。これからも発生する可能性あるということをあなた言っているわけだね。どうなの。さっきはないと言っていたんだよ。どっちなの。
#24
○説明員(安橋隆雄君) 新たに振動障害の病気にかかる方というのは少なくなるだろうということでございますけれども、潜在的に病気を持っておられる方々が、検診事業の充実等によりまして今後しばらくの間は出てくる可能性はあるということでございます。
#25
○丸谷金保君 潜在的なものがこれからは――二時間守られてないとあなた言っていながら、実際にはあれでしょう、全林野との協定の中では二時間ということでもって非常に労働者の強い要求で決めてがたっと減ってますわね。しかし、その他の民間の労働者の中では守られてないのはあなたいまでも半分あると言った。それでこれからも出ないのかい、潜在のだけ。そんなばかなことないでしょう。
 それから、このことについては一番最近の資料、これは京都府からもらってきました。京都ではもう一番早くから検診やっております。ですから新たに検診したんじゃないんですよ。何回か検診受けて、しかも五十五年度、だからもうごく最近です。これはまだトータルができたばっかりだというところへ私は一昨日京都府庁へ行ってこの書類をもらってきたんですが、これでも決して減ってないんです、京都の総体的なトータルで見ますと。受診者数というのはずっと三百、三百、四百、四百、五百、五十四年も五百、ことしも五百です。これは労働者の数から言うとほとんど毎年受けている人が多いんです。いいですか。日吉町で聞いてみますと、ことしも二十九人いて二十九人全員受けましたと言うんです、山労に入っている労働者。それで新規発生がやっぱりことしもたくさん出ているんです、八十三件も。何もあなたの言うようになってないじゃないですか。しかしそれはまだこれからやります。あなたの言うようになってないということだけは明確にしておきたいと思うんです。
 そこで、私は特にここで問題にしたいのは、直用で林野庁がやっている分についてはそういうことは減ってきております。しかし、北海道の調査見ましても、林野庁が請負に出している国有林の伐採事業どこれらの労働者の振動病患者というのは依然として直用のように激減していないんです。この原因は何かというと、請負業者が出来高払いという制度で労働者に仕事を渡すからなんです。ただ、この場合も林野庁では非常に厳しい計画書を出させております。その計画書によってヘクタール当たり何人工だというような積算がなされて、それで請負に出すわけです。ところが実際に行管が調べたように守られてないのですから、請負金額の積算よりは少ない人工で仕事が進むことになります。積算をする場合には林野庁は二時間という枠の中で伐木にチェーンソーが使われるということを前提として組んでいますから。それが三時間、四時間というふうに使うことになれば、必ず能率が上がることになるのです。出来高払いという制度で、それは労働者にも一部いきますが、請負をする事業主のところにも相当のものが入ることになる。
 会計検査院、この場合ですね、請負金額このもの、それから契約の内容に照らして、明らかに私はこれは財政法上問題があるんじゃないかと思うのですが、この種の問題について会計検査院は調査したことございますか。
#26
○説明員(坂上剛之君) お答えいたします。
 従来、このような観点から検査をしたということはございません。いま先生のお話をお聞きいたしますと、まあ林野庁では積算の場合に一律二時間で積算なさっておりますけれども、実際はそういうことはないというようなことをお聞きいたしましたので、この乖離でございますね、積算と実態との乖離、これを調査したいと、こういうふうに思っておりますけれども、私どもそういう事態がございました場合に、それを歩掛かり的にと申しますか、人工的に、それから価格的に詰めていかなければならぬ。そういう場合に、それを裏づける資料がありやなしや。そういう点が非常に困難であるように存ぜられますけれども、御指摘もございますので、十分にまず見て、それから問題を詰めていきたいと、こういうふうに思っております。
#27
○丸谷金保君 林野庁は、素材生産の請負の場合に契約書を取り交わしておりますね。この中で請負経費の内訳書、それから事業計画書を作成して十日以内に提出する。この中では、そうしたチェーンソー何時間使うから何人工だというふうな内訳書というのはついているわけですね。
#28
○説明員(田中恒寿君) お答えします。
 事業計画書を出させまして、その中でその事業主はどういう具体的やり方で、いわゆる二時間規制についてこれが守られるような手だて、手段を講じておるか、そういうものを知るためにとるものでありますから、いろいろなやり方がそこにはあるわけであります。交代制をとっておるとか、いろいろな目安を設けまして、全部同じやり方ではございませんが、それぞれの業者によっていろいろ創意工夫もこらして、極力この二時間規制が守られるような手だてを講じておる。それを知るために、私どもは事業計画書をとっているわけであります。
#29
○丸谷金保君 この事業計画書以上にチェーンソーを使用して、そのために請負単価との間に乖離が生じます。この場合は会計検査院としては対象になりますか、証拠があれば。
#30
○説明員(坂上剛之君) その乖離がございました場合に、これは逆の意味で非常に能率が上がったということになります。それから、それはひいて申しますと、請負金額は低くなる、あるいは、立木の価格を高く売るというような結果になりますが、その額が即われわれが会計検査上問題になる額になり得るかどうか、これは検査した上で検討しないとわからないと思います。
#31
○丸谷金保君 会計検査院、ひとつそこのところは、証拠になるような書類、林野庁はそろっております。こういう契約書もとっておりますし、明細書も出しております。そうして、それが実際に守られていないという具体的な例があればその分だけ能率が進むことになるんですから、そうしますと、これは請負単価が当然低くてもしかるべきものを、虚偽の契約書ができている、こういうことになるわけですから、十分調べていただきたい。
 それから問題は、こうした予防対策につきましては、林野庁の問題だけでなくて、労働省はいろいろそういう点で通達を出して、チェーンソーその他振動病を誘発しそうな工具等についての厳しい、「労働衛生のしおり」というふうなものの中で細かく指示しております。しかし、そういう指示をしましても、ただこの通達だけではなかなか守られないというのがいまの一連の問題提起の中でおわかりいただけたと思うんです。しかし、林野庁は、こういうことについてはもう少し厳しい監督、規制をしていく必要があるんじゃないか。ところが、実際にはなかなか監督が行き届かないということのためにこういう問題が出てくるので、監督体制ということをきちっとやっていただかなければならない。
 それから、林野庁は減っていると言いますが、山林労働者の中では決して減っておりません。特に未組織労働者、山林労働者の中にもたくさんありますし、その他もあるんです。これらについては検診さえも行われてないという実態が各所にあります。
 これは京都府下の日吉町、ここで助役、産業課長、保健婦、この三人に私は会ってきました。そうしましたところ、今年度は和気町というところで検診が行われました。ところがここには、あなたたちは組織に入ってないし、これをやっているのは組織でやっているんだからということで検診すらも断られた実例があるんです。保健婦さんが非常にこぼしております。ずっと地域を巡回して年に二回やっているんだそうです。振動病の多発地帯ですから、あなた、それは行ってみたら、検診受けたらどうかと言われて行きましたところが、これは林災協でやっているので、それらの組織に入っていない人はきょうはもういっぱいだからだめだと、私たちが一生懸命行け行けと言ってもこういう状態では困ってしまうと、一体厚生省、こういう問題について、地域の保健所はどういう取り組みをしているんです。保健婦さんたちがこうやって一生懸命やっても、それが実際に検診も受けられないという事実があるんです。この保健婦さんは私の名前を言ってもいいと言いました。吉田さんという保健婦さんです。非常に熱心にこの種の問題と取り組んでおりまして、こういう悩みを訴えていたんです。
 保健所行政の中では、振動病に対する取り組みは労働省所管だとかなんとかということにいかないんですよ。地域に行くと底辺はずっと広がっているし、いま申し上げましたように、各省庁各職種にわたって起きてきておるんです。
#32
○説明員(北川定謙君) 厚生省といたしましても、従来、この振動病の問題については、主として林野労働者の健康診断というような場面で、地元の保健所を中心として御協力を申し上げておるところでございます。
 保健所としてはいろいろな対応の仕方があるわけでありますけれども、たとえば、高知、大分、和歌山等比較的こういう問題がクローズアップをされた地域の関係する保健所にいろいろな検査の機器を整備をする、あるいは保健婦さんあるいは保健所の医師が検診に参画をするというような形で御協力を申し上げておるところでございます。もちろん、保健所はその地域の健康問題につきまして健康を守るという責任を持っておるわけでございますから、どこの地域でも、そういう問題が大きくなれば、そういう検診の体制あるいは保健の教育の体制等を当然組んでいってしかるべきだと思っております。
 ただいまお話にございました京都のような場合に、やはり事前に関係者の間で十分協議が行われまして、そういう一般の方、いわゆる未組織の患者さんの検診も受けられるような体制をあらかじめつくっておく必要があろうかと思います。
#33
○丸谷金保君 京都府というのは大変振動病とも熱心に取り組んで、先ほど申し上げましたように、昭和四十四年にすでにもう三百数十名を検診、そういうふうに毎年三百から五百、十カ所で十年間ずっと続けてやってきておる。しかも、京都は林務課で四百万の予算まで組んでやっておるんです。しかし、これは林務課の予算ですから山林労働者だけということになります。ところが、この日吉町はそういう点で町を挙げて大変熱心です。広報のチラシなんかで、振動病の検診が何月何日どこでありますから行きなさいと全町民に知らせるというふうに、町ぐるみ大変熱心に取り組んでおるところなんです。
 そして、そういうところで保健婦さんが言うには、京都でも、最近は下請けで縫製の仕事を奥さんたちがもらってきて内職をやっている、こういう人たちにも実はそういう徴候があらわれている、これは一体どこへ持っていったらいいんでしょうという悩みを訴えられてきました。
 これは一体、労働行政でもって引き受けるんですか、それとも保健所として、いわゆる厚生行政の中で取り上げていかなければならない問題か、どちらなんでしょう。私もちょっと返事に困って帰ってきたんです。
#34
○説明員(北川定謙君) 労働問題に関しましては、また労働省さんの方からお答えがあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、どこも取り上げていただけないような問題、これは、やはり地域の健康の問題という観点から当然最終的には保健所がそういう問題を取り上げて、関係者との間で十分協議をしながら、それぞれの組織をつくって対応していくべきものだろうと考えております。
#35
○丸谷金保君 振動病は職業病に認定されておりますから原則として労働省所管と。これは、四十五年ごろですか、窓口一本化ということの各省間の話し合いでそういうことになっておるようでございまして、その点では労働省ということになりますけれど、しかし、そして厚生省の方では医務局中心です。きょうはその医務局にも来てもらっておりますけれども、そこの治療の問題まで入れませんので、予防だけでいっぱいなので、そちらまで入ることできませんが、労働省サイドだけでもいかなくなってきている。そういう振動病というのは末広がりになってきているんです。
 そこで、大臣、これらはやはりもう一遍、振動病というふうなものの非常に広がっている、林業の労働者が問題意識として投げかけて、そして闘いの中にいろんなものを積み重ねて取ってきましたけれど、労働行政の中で百の通達を出しても、具体的なこういうふうにどんどん末広がりになってくるものは、押え込まれるような状態でないんです。林野の中だけでもまだ問題がありますし、これは次回に譲りますけれども、こういう点もう少し全体的に踏み込んで検討し直していただきませんと、予防、予防ということで大臣がいかにここで強調されても、実態はなっていないということはいまの一連の事実関係でおわかりになったと思うんです。どうかひとつその点についての御所見を承りたいと思います。
#36
○政府委員(吉本実君) 振動障害の予防対策につきましては、先ほど来先生御指摘のとおりでございますが、まさに関係する機関が一緒になってこれをやっていかなきゃならぬというふうに考えております。現在も中央段階におきまして三省庁、林野、労働、厚生でございますが、連絡協議会を設けて、関係省庁でいろいろ協議検討をしておるということでございます。また、地方の段階におきましても、林業関係の予防対策の協議会を持ちまして、関係機関含めて、そこには各森林組合等のそういった関係者も入れて、具体的な悩みがどこにあるのか、どうやったら解決できるのかということで鋭意努力をしておる次第でございますし、今後ともただいま御指摘のようなことで、さらに充実さしてまいりたいというふうに思います。
#37
○国務大臣(藤尾正行君) ただいま政府委員からもお答えをいたしましたけれども、私は御指摘のとおり、振動病といいますものは振動のもとであるモーターを使うところは全部あるということだと思うんでございます。それで先ほど来林野庁でも、これは先生もそうでございますけれども、二時間というような一つの基準をお置きになられて、二時間以内ならばそれがないのかと、こういうことになりますと、私はそうではなくて、体質的にも、あるいは病気の程度が違っておりましても、振動あるところ必ずその影響があるということであろうと思います。そうでございますから、一切のそういった振動病に対する予防措置をやりまして全部ゼロにしてしまうということになれば、モーターを全部取り去ってしまう以外にない。しかしながら、そういうわけにはこれまいりませんので仕方がございませんから、中間的なこの程度ならということが目安になりまして、いろいろな措置が行われておるんだろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、まずもって、私どもで管掌いたしておりますこの振動病に対しまする研究所あるいは大学、こういったところで徹底的な研究をやっておりますから、そういったことをもとにいたしまして、しからば、そういったものでどの程度にどうすればどうなるかということを、やはりこの際は徹底的に調べ上げていかなければならぬのじゃないかと、かように思います。
 先ほど厚生省の方から、最終的には保健所等においても十二分に考えなければいかぬのじゃないかというようなことを言っておられましたけれども、これは最終的にもヘチマもないわけでございまして、初めから、はなからしまいまで政府といたしまして国民の健康を守るための措置は、これはやっていかなければならないわけでございますから、まず当面、発生的にもまた量的にも最大限度に達しておりまする林野、特に一番初めはこれは国有林中心でございましたでしょうけれども、そういったことでとどまらず、民有林はもとよりのこと徹底的にやはり検診を進めてこれはどの程度だと。これは一体職業病として当たっておるのかないのかというような重度の、これはもう動かしがたいというようなものだけでなくって、もっとその手前にありますものに至りますまで、私は検診の一つのデータを積み重ねられて、その上でやっていかなければ、なかなかならぬ。そのためには大がかりな対策を、これからもいままで以上にとっていかなければならぬ、かように考えます。
#38
○丸谷金保君 時間がありませんので、問題の提起だけしておきます。
 ゼロにしている事業主体があるんです、いいですか、たった一名だけで。十勝管内の池田町。私が事業主であって一名出ました、森林組合に。あと六年間ないんです。きのうも帯広労働基準監督署へ電話しました。私はこの人一人しか知らないんだけれど、あと森林組合では起きているかと。町の毎年百町歩くらいずつやる植林、伐木、そういうことの請負させているんです。そうしたら、いやあ先生そんなことはありませんよと。十勝だけで五百人出ているんだと。二十カ町村ですから、単純に計算したって相当の数字があるわけなんで、あと出てないということないと思いますと。調べた後から、やっぱり先と言うとおりでしたと。いいですか。これは大臣ね、事業主がちゃんとその気になればチェーンソーを使わせながら、一名出たっきりであと何年、六年です、池田町の森林組合で使っている山林労働者から一人も出ていないんです。そして、それは事業主体である町が厳しい規制をきちっとしておると。簡単なんです、これもう一人出たら森林組合に対する下請やめさせるよと。全部町が直営でやると。たったこの一言だけで六年間出ていないんです。林野庁もそれくらいの気になれば出ないんですよ。いいですか。大臣いろんなこと言われるけれど、出てないちゃんと実例あるんだから。次回にこの問題中心にしてやりますので、しっかりひとつ勉強しておいていただきたいと思います。いまのような答弁じゃ全然それは知っていませんよ。
 以上で終わります。あと答弁は次に聞きます、時間ありませんので。
#39
○安恒良一君 私は、昨日、二公社五現業に対してことしの賃上げに対する有額回答が出されておりますから、そのことについて御質問をして、政府の所見をただしたいと思います。
 まず、公共企業体労働者の賃金は昭和三十九年、当時の池田総理と太田議長の会談に基づきまして、自来、民間賃金準拠によって決められてきているのが歴史的なことだと思いますが、まず私は労働大臣に、民間賃金の準拠ということはどういうことなんだろうか。その政府のお考え方をひとつお聞かせをお願いをしたいと、こう思います。
#40
○政府委員(細野正君) お尋ねございました民間賃金準拠でございますけれども、先生もよく御存じのように、三公社五現業の職員の給与に関します各公社法等の規定の中には、国家公務員給与あるいは民間賃金、生計費等これを考慮して決定すべきと、こうなっているわけでございますが、いま先生も御指摘のように、三十九年の確認におきまして、公労委におきます新賃金紛争の処理につきましては、このうち民間賃金を重視した方式でいく、こういうことが確認をされ、かつ現在までそういう形で慣行がつくられてきているということでございまして、これが、いわゆる民間賃金準拠の方式というふうに呼ばれているものであるというふうに理解をしております。
#41
○安恒良一君 私は労働大臣にお聞きをしているんですが、ですから、歴史的に太田・池田会談の中から、公共企業体等の労働者の賃金は、民間賃金に準拠して今日まで決められてきていることは事実であります。
 そこで労働大臣にお聞きしているのは、政府として民間賃金準拠ということはどういう中身なんでしょうか、どういうことを意味しているんでしょうか。いま局長が答えられたのは、そういう歴史的な経過を説明された。私は政府として、労働大臣として、民間賃金準拠ということはどういうことなんでしょうかと、こういうことをお聞きしているわけです。
#42
○国務大臣(藤尾正行君) 言葉でございますから、民間とは何だということもなかなかこれはわかりませんし、一体その準拠というのは何だということになりますと、これは、かくかくしかじかであるという定義を私が申し上げるわけにもいかない、まあ非常に微妙なものがあるわけでございますね。でございますから、民間賃金とはということも何も決まっておりませんし、また準拠とは何だということになれば、それはイコールが準拠であるのか、あるいは多少とも相似をしておるということが準拠であるのかというようなことに厳密な意味でなりますと、これはなかなかむずかしゅうございます。しかしながら、観念といたしまして民間準拠と言っておりますのは、大体通り相場の民間賃金にならって、余り大きな違いがあってはならぬというようなことを指しておられるのではないか、さように私は推察をし、政府のほかのそれぞれの閣僚がどのように考えておられるかはともかくといたしまして、まあ大体私と似たようなものじゃないかというような感じでおるわけでございます。
#43
○安恒良一君 私は、公労懇でいま問題になっていますね、たとえば民間の企業は何人以上をとればいいのかとか、性別、それから学歴別、それからいわゆる年齢ですね。大体こんなところまではある程度意見が一致しておるようですが、金属をその中に入れるか入れぬかということが議論されていることは聞いて知ってます。
 私は、きょうここで民間賃金準拠のその細かい中身を労働大臣とやりとりをする気はないわけです。それは公労懇なんかでもかなり議論がずっと続けられてきているところなんですから。ただ、私がいまお聞きしていることは、民間とは何かわからぬなどとおっしゃいますけれども、しばしばいままで政府自体も公労協の職員の、三公社五現業の賃金を決めるときには民間準拠という言葉は使われているわけですよ、まあ、藤尾さんが使われてないかは別にしまして、いままでの歴代の労働大臣なり官房長官なり。というのは、私が国会議員する前に、しばしばそういう政労交渉の場に出て仕事を長く総評でしておりましたものですから、そのときにいつも問題になるのは、三公社五現業の賃金は民間準拠だ、こういうことで政府みずからがお使いになっているわけです。ですから、私はいわゆる政府のお考えになっている民間準拠というのはどういうことなのかということで、いまお聞きをしますとあれですね、そうすると、大体民間に対していま回答が出されております、また妥結もされています。もしくは妥結に向かっているのもあるんですが、そういうものをお考えになって、いまあなたは通り相場とこう言われましたけれども、そういうことなんでしょうか。少なくとも政府みずからが民間準拠という言葉を使っておられるから、じゃ政府としては、民間準拠というのはどういう考えなんだと。ただし、ここで五百人がいいか、千人がいいか、そんな議論をきょうしようとは思っていません。それはまた改めてゆっくりやる場があると思いますから。
 民間準拠というのは、大体たとえば今日なら今日、民間の鉄鋼であるとか電機であるとか、いろいろすでに回答が出、妥結の方向に向かっているところもあります。また私鉄のようにまだこれからというところもありますが、すでにいろいろ回答が出たり、もしくは解決の方向に向かっている。そういうものを横にらみににらみながら、やはり政府として決めていく、こういうことでいいんですか、民間準拠というのは、どういうことですか。政府が使っている言葉ですから、そっちの方で正確に言ってもらわないと。
#44
○政府委員(細野正君) 一般的に民間賃金準拠ということについては、いま大臣がおっしゃいましたように、内容について必ずしも固まった観念があるのではない。ただし、公労委における新賃金紛争の調整の場合の原則として民賃準拠という言葉が、これはかなり先ほど申しましたように歴史的にも確立された中身がございまして、その中身は先ほど安恒先生がおっしゃったような中身で、これはまあ公労委においては、一応民間とは何であるというようなことはある程度固まっている考え方でございます。
#45
○安恒良一君 私は、公労委のことを聞いているのじゃないんです。あなたたちがしばしば労使交渉の場において、政労交渉の場において民間準拠という言葉を使われるから、あなたたちが考えられている民間準拠というのはどういうことなのかと、公労委のことを聞いてない。公労委きょう呼んでないんですからね。公労委がそういうことをやっていること私、百も承知していますよ。政府がしばしば労使交渉の場なり、政労交渉の場において――まあ交渉という言葉がいやなら話し合いでも結構ですが、そういう場において、過去の労働大臣なり官房長官なり労政局長なり、いろいろ公労協との交渉をやったり、総評との交渉をやったときにいつも民間準拠という話が出るんだから、あなたたちが考えておられる民間準拠という中身についてお聞かせを願いたい、こう言っているわけです。それをここで答えてください。
#46
○政府委員(細野正君) 先ほど申しましたように、三公社五現業の賃金紛争が公労委の場におきまして、民間賃金準拠という形で調整が行われる、そのことを政府も、そういう意味での民間賃金準拠というものについての考え方を申し上げている、こういうことだと思います。
#47
○安恒良一君 大臣ね、答えにならないんですよ。じゃこれからあなたたちは、民間準拠という言葉は使ったらいけませんよ。公労委が使うのはわかるけれども、あなたたちが勝手に公労委に行く前に政労交渉のときに賃金どうしてくれるかと言ったら、民間に準拠してできるだけ決めたいから、ひとつ平和的に片づけてくれとか、ストライキはやめてくれとかいう話は公労委に行く前出るわけですよ、いつも。そのときに、あなたたちは民間準拠という言葉を使っているわけよ。いまになると、いやそれは公労委でのことであって、おれたちは使ってないと。じゃこれから使いませんか、民間準拠という言葉は。あなたたち自身は使いませんか。いままでは、私は公労委における民間準拠のことは知っています。
 それから政府自身が三公社五現業の賃金を決めるときには民間準拠でやりたいと、また太田・池田会談はそのことを当時の政府、総理が約束したんですよ。民間にこれから賃金を準拠して決めますという約束を、当時太田・池田会談はやったわけなんです。私は、その会談に立ち会って知ってますよ。太田・池田会談はそうです。それに基づいてずっと公労委が歴史的にやってきたことを私は何も否定をしてない、ただし政府自身も、それと同じように民間準拠、準拠とおっしゃるから、政府が民間準拠と言う中身は何でしょうと。それを今度あなたは公労委の方にすりかえて答弁するから行き違いになる。政府自身で考えられている民間準拠というものはどういうことなんでしょうか、そのことを聞かしてくださいということを言っている。
#48
○国務大臣(藤尾正行君) 労政局長は専門家でございますから、あなたがこの後どのようなことをお聞きになられるかということをあらかじめ考えられて、それで勝手に先を読んで勝手なことを言っているんだろうと思いますけれども、そういうことではございませんで、私どもがそういった民間準拠というような言葉を使い、あるいは世間的にそういった言葉が現にある。それは私が先ほど申し上げましたように、やれ百人以上がどうだとか、千人以上がどうだとか何とかかんとかいうようなことでなくて、もっと漠然としたものであっても、大体そのときその時点におきまする民間賃金といいまするものを、そういったものを頭に置いて、大きく上へ飛び上がるわけでもなければ下へ落ち込むわけでもない、そういったものを概念的に想定をして、そうしてそれを民間賃金、民間と言い、それに準拠をすると言うんでございますから、大体それを横にらみににらみながら、並んでいるかなというようなところを考えて言っている言葉ではないか、私はさように思いますし、今後ともさようなつもりでこの言葉を使うなら使う、さように考えます。
#49
○安恒良一君 それではこれはこれぐらいに、大臣答弁はそういうことで承っておきます。
 そこでお聞きをしたいんですが、きのう二公社五現業が有額回答をしました。それを見ますと、いわゆる二公社五現業の有額回答は単純平均で四・四四%であります。まあ定期昇給の取り方のところによって大体昨年よりも少し、〇・〇幾ら上回っているとかいろいろ解説がされていますが、ほぼ昨年並みと、こういう回答になっているわけですが、いま大臣が言われました民間準拠の思想から、考え方から言いまして、どうも私は、きのう回答されたことが非常にわからないわけです。そこで私は、ぜひきょうはこの場に、できることなれば二公社五現業の職員局長に来ていただいて、回答されましたその理論根拠について承りたいと思ったのでありますが、紛争の当事者だからそれは出せないということに理事会でなったそうでありまして、労働大臣が責任持って答えると、こういうふうに承っておりますから、ひとつ、いま私が申し上げたような観点から、昨日回答がされましたいわゆるその算出の根拠についてお聞かせをぜひお願いをしたいと、まずこう思います。
#50
○政府委員(細野正君) 昨日の有額回答は、これは先生も御案内のように各当局が行われたものでございまして、したがいまして私どもの方は、先生からもきのうお話もございまして、各当局にどういう考え方でこれを出したのかということを問い合わせをして今日ここに臨んだと、こういう状況でございます。
 そこで、お尋ねがございますれば各個別に申し上げますけれども、とりあえずのところはまとめて概略申し上げさせていただきますと、御案内のように昨日、公共企業体の各当局から有額回答を行いたいという申し出がございまして、給与閣僚会議を開きまして有額回答することにつきまして了承をしたと、こういうことからスタートをいたしまして、それで有額回答が行われたわけでございますが、各公社の考え方を先ほど申しましたようにまとめて申し上げますと、公共企業体等の経営の徹底した改善、合理化を求める国民世論の動向に留意しましたというのがかなり共通の項目として出ております。それから、公共企業体等の賃金問題の早期、平和的な解決を図るためにこの時点で回答をすることが適当であるというふうに考えて、こういう内容の回答をしたんですというふうなことが書かれておりまして、回答につきましては各当局がそれぞれ諸般の事情を考慮しながら、労使関係の安定を図る立場から十分検討して出したもので、精いっぱいの努力をした結果でございますというふうな御報告を受けております。
#51
○安恒良一君 いまお聞きして私は非常におかしくてならないんですがね。労使関係の長期安定を図ると、こういうことなんですが、実は私はこういうふうに思うんですし、またそのことをお聞きしたいんですが、すでに現実の姿として鉄鋼各社、それから造船、家電、自動車等々に具体的な回答が出ておる。そして、妥結の方向に。現在ある。まあ、いろいろありますが、大体七%から八%、もしくは八%ちょっと出たところもありますが、これらのいわゆる金属大手、ほぼ全体的に妥結の方向へ行ってますね。それと比較いたしまして、あなたが言われた民間準拠の思想から言いましても四・四四ということは余りにもかけ離れがあるんじゃないか。それから、いま一つ重要な要素として、予算委員会で私はあなたとやりとりをしたんですが、実質賃金が過去、年度を通して一%下がったのは、わが国の労働統計始まって以来だと。このことは予算委員会の席上で大臣も御認識いただき、お認めになりましたし、現実にその後、物価も大体五十五年度七・八ということがほぼ確定をした。実質賃金は一年間、年度間通じて下がりっ放し。そうして、あのとき大分議論いたしまして、物価が上がったのは労使の責任ではないんだと、政府の責任だと、政府として強く責任を感じている、こういう論争も実は大臣との間にやった覚えが私はある、最近のことですから。
 そういう角度から考えまして、いやそれは当局がやったことだから知らぬというふうにお逃げにはならないでほしいと思うんです。当局がやったから、それは二公社五現業が、当局が回答したんだからおれたちは知らぬということじゃないと思うんです。それはなぜかというと、きのうの関係閣僚会議の中でも、いわゆる具体的なことについて、そういうことの回答を出すことについては了承したと。後から官房長官にお聞きしますが、官房長官は官房長官なりに、経営の合理化とか財政事情とか民間賃金の動向とか、労使関係を含めた総合勘案した立場でこのことを了承するということで、あなたもこの関係閣僚会議の一員として、その中に御参加されておったんですね。御参加されておった。有力な一員ですね。当面の担当大臣だと思う。本当にいまあなたが、局長が答えたように、またあなたが民間準拠というあなたの考え方を述べられましたが、その観点から考えられまして、昨日回答をされたことをどうお考えでしょうか、この金額。
 それから、いま局長が労使の安定のことを考えたとか、合理化に協力をしてもらわなきゃならぬとか、そんなことが、ほとんどの民間が七から八もしくは八ちょっと過ぎて妥結の方向に行っているときに、二公社五現業の労働者に四・四四を出して、本当に合理化に一生懸命協力する気持ちを持ってしょうか。労使関係が安定の方向に行くでしょうか。また、厳密な意味の民間準拠についてはお互いの論争のあるところだろうと思いますが、民間準拠で三公社五現業の労働者を決めると、こういうことで昭和三十九年以来一貫をして今日までやってこられたことに、このことは合致するんでしょうか。これは大臣のお考えをお聞かせを願いたい。もちろん私は、大臣が閣僚会議の中でいろいろ努力を少しされたことは新聞を通じて知ってますよ。知っていますが、現実にこういう姿になっておりますから、あなたもその公共企業体給与関係閣僚会議の中で、有力な閣僚として最終的に了解をして、その線で回答することはよかろうと、こういうことになっていますから、労働大臣として、いま申し上げた諸点からどういうふうにお考えでしょうか。
#52
○国務大臣(藤尾正行君) これは安恒さんのことでございますから、一切何もかも御承知でございますから、その点は明確にしておいた方がよろしいと思いますけれども、昨日の給与関係の関係閣僚で相談をいたしまして、有額回答をそれぞれの企業体経営者から要求をせられまして、それでやっていいだろうかというお問い合わせに対しまして、私どもがやった方がよかろうということを決めたことは事実でございますし、私がその中におきまして、かなり大口をたたく方でございますから、かなり影響力のある閣僚であることも間違いございません。しかしながら御案内のとおり、この公共企業体等の労働条件、とりあえずその賃金というようなものを、これを決めます際に、本来ならばこれはまあお互いの通念といたしまして、労使間で一切初めからしまいまで全部お決めを願う、これが私は当然のことであろうと思いますしそうあってほしい、かように思いますけれども、
   〔委員長退席、理事高杉廸忠君着席〕
しかしながら、現行のこのこういった法に基づく制度のもとでは、また歴史的にもそういう結果を来たしておるわけでございますけれども、公共企業体等労働委員会という一つの調停機関、こういうものがございまして、そうしてそこにおきまして最終的な賃金決定といいまするものが決められるわけでございます。でございますから、いわば昨日各企業体がどのようにしてどのようなものをお出しになられたかということにつきましては、私ども関知いたさないわけでございますけれども、ともかくも先生言われるとおり、新聞等で拝見をいたしましても四・四四%というような程度の前後の回答をいたしておるということも考えてみましたならば、これは私は、今後の双方の折衝、そういったことのための一つの足場を、まず最初にそこでお示しをされたのではなかろうかと、かように考えるわけでございまして、それですべて全部というようなことをお考えになっておられるかもしれませんけれども、また今後の推移におきまして、そのようにもしならぬというようなときには、これは公共企業体等労働委員会にそれぞれのお立場で御相談になられまして、そうして、そこでいろいろな御調査を重ねられた末、これは先ほど来先生が御指摘になられた池田・太田会談というようなものに発しましたいままでたどってきました一つの方向、民間準拠という言葉でよろしいわけでございますけれども、私どもがいままでも使わしていただいておりましたそういった言葉を頭にお置きになりながらこれを決めるということに恐らくなろうと思いますし、
   〔理事高杉廸忠君退席、委員長着席〕
いままでもなってきておる。いわばいまは折衝の初めにかかったという段階でございますから、この段階で、それでは一切それがどうであるこうであるという御議論になられますのは、これはまあ安恒先生のことでございますから、十二分に御承知の上で言っておられることだということは私にもわかりますけれども、この段階では、折衝にかかったその一番初めの一つの踏み台であろう、さようにお考えをいただく方が、この問題を正しく御判断をいただくのに適切ではないか、かように考えます。
#53
○安恒良一君 大臣ね、私本当にあなたがおっしゃっていること、かなり矛盾があって理解に苦しむんです。それはどういうことかというと、本来賃金は労使で決めるべきだと、それならそれで、公共企業体の三公社五現業に当事者能力を与えなきゃいかぬわけですね。たとえば回答することですら、きのうの公共企業体給与関係閣僚会議の了解が出ないとできないんでしょう。そうでしょう。皆さんが回答してよろしいという了承をされてから回答されているわけで、だからあなたが言っておられることは矛盾しているわけです。私は賃金というのはやっぱり労使で、三公社五現業の場合もお互いが当事者能力を持って労使で決めるべきである。そこに政府が介在したり、公労委に持っていくというのはこれは最後の手段なんですから、何も公労委に持っていかなきゃ決まらぬということじゃないんですよ。
 たとえば私の出身の私鉄は昔はいつも中労委へ行っていましたが、いま中労委にお世話になりません。最後まで労使でやってちゃんと決めてますよ。また公労協の諸君もそれでやってやりたいと、こう言っているんだ。ただ、どうして公労委に行くかというと、当事者能力がないからですよ。いまあなたが言っていることは全く矛盾している。労使で決めるべきだと言っておきながら、回答することですら関係閣僚会議が開かれて、官房長官が座長になって関係閣僚を集めて、三公社五現業によろしいと、これで回答してよろしいと言って、それを受けて三公社五現業はこうして持ってくるわけだ。そうして今度はここで聞きますと、いやあれは三公社五現業が回答したことだからおれたちは中身は知らぬのだと。それじゃ世間が通らないんじゃないですか。本当に労使でやらせるならば、三公社五現業に一切当事者能力を持たせる。それでもうまくいかないときに、公益企業ですから公労委に行くという場合はあり得ますよ、これは。組合がら持っていく場合もあるでしょう。当事者から持っていく、経営者側から持っていく場合もあるでしょう。そのことを私は何も言ってない。しかし、現実は当事者能力をお与えになってないんですよね。ですから私が聞いているのは、当事者能力をお与えになってないのに回答を出して平均で四・四四ということが出ると、いやその中身のことはおれたちは知らぬのじゃと。そういうことにならぬじゃないですか。
 新聞ではいろんなことを書かれているわけですよ。たとえば、大蔵官僚なり大蔵大臣は大変渋いことを言ったと、ところが労働大臣は、それじゃやはり労使慣行があるじゃないかと、せめていままでの労使慣行を守らにゃいかぬということで、労働省なり労働大臣ががんばったことは毎日のように新聞に報道されているんですよ。私は、そのことはそのことで評価をしているわけですよね。
 しかし、そうは言いながらも、現実的に民間準拠という考え方から考えてきて、ステップだといっても、あなたから言わせると、これから公労委へ行って上積みすりゃいいじゃないかということでしょうけれども、本当に労使の安定を願ったりこれから合理化に協力をさせようとするならば、まず第一次の回答が私は重要だと思うんです。あなたがおっしゃったような世間並みの回答をまずする、その中で、ひとつどうだ、労使安定しようじゃないかとか合理化に協力してくれぬかど、こういう話ならわかるけれども、全然世間並みとは全く外れた回答をいかに第一次回答であろうと、これがステップであろうと、四・四四を出してそれで労使が安定するはずがないじゃないですか。どうして合理化に協力せいということが言えるんです。それが民間の相場が出てないときならどうにもなりませんよ。ところがすでに大手金属はもう全体に妥結の方向にいっているわけですから、それで民間のことしの春闘相場というのがかなり出ているわけでしょう。それ等考えたときに、まあ私は労働大臣は労働大臣なりに若干の努力をされたことは新聞で見る限りわかりますけれど、それにしても、とにかく公労委があるからいいじゃないかということじゃないと思う。公労委というのは、どうしてもうまくいかないときに持ち込む方法であって、最初から公労委に行くんだから第一次回答は、まあいいかげんと言うたら失礼ですが、適当にやっておけばいいじゃないかということでは、私はいつまでも三公社五現業における労使の安定という、それから本来賃金というのは労使の中で決めていくという慣行ができていかないと思うんですが、そういう点大臣どうお考えになりますか。
#54
○国務大臣(藤尾正行君) これは安恒先生おわかり過ぎでいらっしゃいまして、本当に私は申し上げているとおりなんでございます。私どもは本当にこの四・四四%とか、一%上がるとか下がるとか、そんなことを議論をしたことは一回もございません。ただ、先生が言っておられるように、私は私の労働大臣といたしましての私の使命から申し上げまして、先生がおっしゃられておられるとおり、当事者能力を与えるべきである。そして当事者間でこれは決定すべきである。そこまで持っていきたい。しかしながら、それは私の理想でございまして、現実にたとえば国鉄なら国鉄、林野なら林野というようなものを考えてみました場合に、いまのふところ勘定ではとても工やありませんけれども、これはもう回答が出てくるわけがないわけでございますね。これはどなたがお考えになられましてもそうだと思うんです。
 そういうことを考えられて、そのしりがどこへ行くかということを十二分に知っております大蔵大臣等々の立場からいきましたならば、そういうものには本当に大蔵省自体にいたしましても、たとえば給与関係のベースアップは一%しかこれは予算に組んでおりませんとか、あるいはこれから先、行政改革第二臨調には補助金等々どういうことになるのかしりませんけれども、削減をお願いをして国民の各層に御協力を願わなきゃなりませんとか、そういった政治環境にあるときに、さて、おまえが言うように労使の双方に当事者能力を与えて、そちらで勝手に決めると言って決めて持ってこられても、そうはいきませんよと言われるそのお気持ちといいまするものは私にもわからぬではない。
 そういうことがございまして、結局、ここに、そういった回答をしたいがどうだという要請をされてこられたときに、回答をするかしないかということがまずこの会議の議題でございますし、そういったものを想定をいたしまして、私は私なりに労働大臣といたしましてどのようにこれを進めていったらどうなるかということも考え、これから先に、私が発言をいたしておりますることがどのように影響していくだろうかということも考えていきまして、その場でそういうことをどんどん何かくちゃくちゃ言っているわけじゃございませんで、私は、それまでのいままでの過程の中で、当事者能力を与えるためには少なくとも昨年の一つの慣行、一つの結論というものが一つの土台としてあるわけでございますから、そういったものよりは今日、先生が御指摘になられましたとおり、消費者物価もこれだけ上がり、それに対する政治責任も私どもが十二分に監督をしておるということを、これは何といったって何らかの形で国民の皆様方にお示しをしなきゃ困るではないかという意味で、それはバロンデッセといいますか、これぐらいのことは考えたらどうだというようなことを、その場その場で私が私なりに言ってきた、そういったことでございまして、この場で決して私が何%にしろというようなことを要求したこともございませんし、またそいつは高過ぎるとか安過ぎるとかいうことでまけるとかまけまいとかいうような議論があったわけでもないわけでございます。
 そうして、総じて政府の姿勢といたしましてそういった財政当局の言い分、あるいは私どもの労使関係を重んじ、場合によれば、ことしはできませんでしたけれども、将来に向かって当事者能力を与え得るような、そういう方向に一歩進んだという姿を見せるためにはどうすべきかということについていろいろ御勘案になられて、その決着点が、ともかくも有額回答を出さなければならぬ、同時に、その有額回答の決定については、昨年の一つの結論といいますよりも、少なくとも幾らかはとにかく誠意のほどを見せておかなければならぬというのが、私はそういった考え方の基調になっておったのではないか、さように私は現在推察をいたしておる、こういうことでございます。
#55
○安恒良一君 まあ、少なくともこれだけの官房長官が主宰をして関係閣僚が集まられて、子供であるまいし、有額回答を出すか出さぬかだけの議論じゃないと思うんですよね。それも一つの議論でしょうけれど、有額回答を出すに当たってはどうかということで、三公社五現業の方としてはそういうことを含めて、というのは当事者能力がないわけですから、いまはね。ですから、有額回答を出したいと、それは大体おおむねこれぐらいのことを出したいということの、それであなたたちはそれを了解をされているわけであって、そしてこういう公式の場になると、いや、有額回答を出すことだけはおれたちは了解したけれど、中身は一切おれたちは知らぬのだ、それは三公社五現業の問題だ、こう一方で言いながら当事者能力、そんな国民の前で子供だましのことは通用しないんですよ。
 だから、私がいま聞いているのは、いわゆる二公社五現業に対して四・四四という回答が出ている、物価は政府の公約から大きく離れて七・八%も上がったじゃないかと、また御承知のように、すでに民間の大手がほとんど昨年に比べて悪いところでも〇・五%、いいところでは一%以上上向きに妥結をしつつある、そういう状況の中でいわゆる昨年と同じ回答を、これは定昇の取り方によって若干、プラスアルファという見方もあるけれど、大体昨年と同じ回答をしておきながら、労使安定であるとか、これからの行政改革その他を含めて合理化に協力してくれとか、当事者能力を持たせるとか、そんなことを言っても、回答を受けたこの二公社五現業の諸君はもちろんのこと、国民が見ておってもおかしいじゃないかということになるんじゃないでしょうか。
 私は何回も言うように、本当にあなたたちが当事者能力を持たせるとか、もしくは労使安定をやるとか、こういうことになるならば、いわゆる民間準拠といえば、あなたも言われた世間並みの通り相場、そんなものがある程度回答された中で、それでまた話し合いがさらに続けていかれるというなら、だんだん当事者能力を持たせる方向に、あなたが理想とされている方向に行くし、労使安定の方向にも行くだろうと私は思うんです。ところが、全く去年の妥結金額から比べても、去年の妥結金額は二公社五現業の単純算術平均から比べても、いわゆる全然今回の回答の金額とは違うわけですから、そういう回答を、まあ一次回答だからいいじゃないかと、どうせ公労委に行くからと、こういうことで本当に労使が安定するんでしょうか、もしくは当事者能力を持つことになるんでしょうか。私は少なくとも労働問題の担当の大臣としては、そういうあり方はやはり間違いだとお考えになっているんじゃないでしょうか。少なくともやはり世間並みの回答をした中で組合に協力を求めると、これなら一つの私は方法だと思うんですが、どうせ公労委に行って決まるんだから、この際は上積みが公労委であるんだから、とにかく物価の上昇もはっきりしているし、民間の妥結状況もほぼはっきりしておっても、それでもいいから、これで決めりゃいいということじゃないんじゃないでしょうか、どうですか、大臣。
#56
○国務大臣(藤尾正行君) 本当に、先ほど来私が申し上げておることは全く本当でございまして、いままでかつてこういった会合の給与関係の閣僚が集まりまして話し合いをいたしましたときに、これが高いとか安いとか何とかかんとかというような話をした歴史はないんでございますな。いつもその歴史の過程におきまして、こういう会議におきましては、有額の回答をしてよろしいか、それはやむを得ぬだろうとか、あるいは積極的にすべきだとかいうことはともかくといたしまして、それではやってもらいましょうという、ゴーということだけがこの議題になっておりまして、しかるがゆえにこの会合におきましても、その経過時間なんというものはほとんどございませんし、その会議の中で何か議論をしたというようなことはほとんどないわけでございます。それが事実でございますから。
#57
○安恒良一君 官房長官がお見えになりましたから……。
 官房長官、いま労働大臣との間にかなりのやりとりをしておったんですが、官房長官にかかわるところについて、まずちょっとお聞きしますが、きのう公共企業体等給与関係閣僚会議、官房長官が主宰をされて関係閣僚の間で御決定されたというふうに聞いていますが、新聞にはいろいろなことが書いてあります。たとえば官房長官としては、これを決定する要素に当たって何点か言われているようでありますが、たとえば経営の合理化、財政事情、民間賃金の動向、労使関係を総合的に勘案した立場から了承するというふうに新聞の報道によりますと、官房長官が最後おまとめになったということですから、昨日の関係閣僚会議でおまとめになった経緯、中身について、この新聞は正しいのかどうか、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
#58
○国務大臣(宮澤喜一君) 昨日給与関係の閣僚会議を開きましたその後、私、記者会見をいたしましたが、その会見の趣旨は、有額回答を行いたいとの各公共企業体等当局からの申し出について閣僚会議で検討をいたしました。その結果、公共企業体等の経営の改善、合理化を求める国民世論の動向、また他方で、逼迫した財政事情、民間賃金の動向等、それらのものを総合的に勘案して、労使関係の安定を図るとの立場から有額回答の申し出を了承する、こういう決定をした、こういう趣旨の記者会見をいたしました。
#59
○安恒良一君 わかりました。
 そうしますと、そこで、いま私は労働大臣に盛んに聞いておったんですが、あなたがいまおっしゃったように、民間賃金の動向とか労使関係の安定とか、もしくはこれからの経営合理化を労働組合にしてもらいたいと、こういう考えがあったということがいまはっきりしたんですが、それにしますと、きのうの回答ですね、いわゆる単純算術平均で四・四四%なんですね。民間の、すでに妥結の方向に向かっております金属大手の一斉回答を見ますと、大体七%から八%ちょっと出ていますね。そういう状況なんです。それから物価は、官房長官御承知のように、政府公約どおりいかなくて、大体五十五年度七・八になると。そこで実質賃金も、残念ながら労働省の統計始めて以来、一年間一%下がりっ放しと、こういう実情にこれはあるわけですね。そういう実情にある中で、この四・四四という回答について、あなたがいま新聞記者に談話を発表されたことから考えて、どういうお考えをお持ちでしょうか。私はちょっと、あなたがおっしゃっていることと時そうすると、ここになるとすぐ、いや、それは二公社五現業が決めたことだと、おれたちは率は知らぬことだと、こう言ってお逃げになるんですがね、それじゃいけないわけですね。率を全然知らないで、労使の安定ができるとか、民間賃金の動向を勘案してなどということにはならぬわけですから。ですから、今回の四・四四ということについての回答がされたということを、私はきわめて遺憾に思うわけですが、その点について、いわゆる関係閣僚会議の全体をお取りまとめになった官房長官として、どうお考えでしょうか。労働大臣の所見はいまさっき承りました。
#60
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたように、閣僚会議においては、回答の具体的な内容について決定をいたしたわけではございません。いわんや、その内容をどう考えるかということにつきましては、これは私が申し上げるべきことではないと思います。
#61
○安恒良一君 閣僚会議の中では、いわゆるパーセントについては議論しなかった。じゃ、議論しなかったことは、それじゃそれとしまして、したしないを幾ら議論したって意味がありません。それじゃあなたは、あなたの談話にある経営合理化、財政事情、民間賃金の動向、労使の関係を総合的に勘案をした立場からということですが、それで、四・四四がそういうことになるんでしょうか。労使の立場を、いわゆる関係なんかを総合的に判断をした結果、民間賃金の動向も考えたと、こういうことですが、それで、そういうことになりますか。私はそのことを聞いている。私は、関係閣僚会議の中で議論した、議論しないということは水かけ論になりますからやめますが、あなたが談話を出されている項目に照らして、官房長官として、この四・四四であなたが望んでいる方向にいくことになるんでしょうか。経営の合理化にも組合は一生懸命協力する、労使関係も一生懸命安定させると、そういう方向に、この四・四四でいくことになるんでしょうか。あなたは談話を出されているわけですから、そのことをあなたにお聞きしているわけです。
#62
○国務大臣(宮澤喜一君) 私が談話を出しましたのは、何ゆえに有額回答を了承するということを閣僚会議が決めたかという談話を出したのでありまして、四・四四%云々というようなことについて談話を出したのではありません。
#63
○安恒良一君 いや、だから四・四四で出していなければ、私はいまあなたに、その後そういう談話の後に四・四四というのが出ていますからね。出ていますから、さらに私はあとから聞かなければならぬことは、あなたはそのほかに、いわゆるこういう回答をさしておきながら、今後の違法スト中止についての談話まで出されているわけですよね。違法スト。ですから私は、ここをお聞きしたいのですが、四・四四を出しておって、それは当局が出したことでしょう。世間的には、ことしの春闘相場というのは八%前後になっておって、四・四四を出しておって、そうして違法スト中止の談話を早々とお出しになるということは、どういうことなんですか。せめて世間並みの回答がされた中で、組合がストライキをやるときに違法スト中止の談話をお出しになるのはわかるけれども、全然去年の実績にも及ばない。物価は七・八も上がっている。世間の回答は七から八%ちょっと超えて回答が出ている。二公社五現業は四・四四を出しておきながら、そして、それで早々と違法スト中止の談話をあなたがお出しになる、その神経がわからない。そこのところをお聞きしているわけです。それはどういうことなんですか。
#64
○国務大臣(宮澤喜一君) 違法ストはあくまで違法ストであって、状況の変化によってそれが合法になるというものではないと思います。
#65
○安恒良一君 いや、私は違法スト論をやっているわけじゃないのですよ。組合もまだやってないわけですからね。組合はやっているわけではないのですから、少なくとも組合は、自分たちの満足な回答がない場合にはやらざるを得ないということを言っているのであって、違法スト論をここでやっているわけじゃないのです。せめて池田・太田会談以来、政府の三公社五現業に対する態度は、民間準拠でいきましょうと、こういうことで歴史的に今日までやってきたことは事実なんです。そういう状況がきちっとされた中でストライキをやられるときに、あなたが違法ストだと言われるのはわかりますが、いま違法スト論をやっているわけじゃない。政府としては、国民生活に重大な影響を与えるから、ストライキをやめてもらいたいというのはわかりますよ。ところが、やっている回答は四・四四%ぽんとぶつけさしておいて、それは二公社五現業がやったことです。それで、すぐ追っかけて、いわゆるストライキ中止を要請するような談話を出されるのは、余りにも片手落ちじゃないでしょうか。世間並みの賃金が払われ、しかしそれでもストライキをやられるというなら、これはやっぱり問題があると思いますね。だから私は、いま労組法上の違法ストとか、違法ストでないということを言っているのではない。少なくともストライキ中止ということを早々とあなたがなぜ談話を出すのですか。
 それからその次、一つお聞きしておきますが、あなたがこの談話の中で、いわゆる公労委その他におけるところの平和的紛争処理を望まれていますね。それなら二公社五現業についてはなぜ調停申請しないのですか。組合はきょう調停申請することを決めましたね。当局側は決めていませんよ。あなたがそういうふうにおっしゃるならば、少なくともこのあなたの談話を見ますと、公共企業体関係組合各当局は、努力と良識をもって、公渉による解決が困難な場合には、法の定めにある「紛争調整手続を活用して問題の平和的解決」云云と、こう言われていますね。そうしますと、少なくとも組合は早々と、公労委の二公社五現業については回答を受けた後持っていくという意思表示をしておりますが、当局側はしておりませんが、そういう状況の中において、ちょっとあなたの談話というのは、やや片手落ちじゃないでしょうか。国民が見ても公平を失すると思いますが、官房長官、どうですか、そこのところ。
#66
○国務大臣(宮澤喜一君) 談話で述べておりますとおり、公労協が四月二十三、二十四の両日、違法ストライキを計画しておるようであるが、状況が変われば、この違法ストライキが合法になるのかと言えば、そういうことはあり得ない。違法ストライキは違法ストライキである。そういうことをしないように要望すると言ったまでであります。
#67
○安恒良一君 何回も聞いているように質問のとおり答えてください。私は違法とか違法でないという議論をしているのではないのですよ。あなたの談話の中に、いわゆる政府は、関係組合が各当局の努力を良識をもって受けとめ、交渉による解決が困難な場合には、法の定めによる紛争処理手続を活用してと、そして問題を平和的に云々と、こうおっしゃっているわけですね。そうしたら、公労委を利用してと、こういうことだとこれは思うんですよ、法の定める手続というのが一つ。そこで私があなたに聞いているのは、組合側はすでにもう公労委に持ち込むことを決めていますよと、当局側は持ち込まないんですよと、決めてないんですよと、そういう状況は片手落ちじゃないですかと、こう聞いているんですよ。そのことあなたは一つも答えてないじゃないですか。
#68
○国務大臣(宮澤喜一君) それは、私にお尋ねがちょっと無理であって、所管しております政府委員からお聞き取りを願いたいと思います。
#69
○政府委員(細野正君) 先生御指摘の、各公共企業体等におきまして合意の申請でいくか、それとも他方だけの申請でいくかというのは、これは全く当事者間における交渉の中で決まるべき問題でありまして、これにつきまして、なぜやらぬかということを政府にお尋ねになりましても、これはちょっと政府としてもお答えのしようがないと、こういうふうに考えるわけでございます。
#70
○安恒良一君 いや、私は電電のことを言っているわけですよ、電電は労使でやろうということを言っておられますからね。私が聞いているのは、そうでないところについて、いわゆる法の定めによる「紛争調整の手続を活用して問題の平和的解決を」図ってもらいたいと、そして違法ストライキはできるだけ避けてもらいたいと、こう官房長官は言っておるんですからね。そうすると四・四四では不満だと、こういうことで組合側は拒否をして、公労委に組合側は持っていこうと、こうしている。二公社五現業の方はどうしているんですかと、こう私は聞いている、これを聞いているんです。
 それからいま一つ聞いていることは、少なくともこういうことを言う以上は、それは回答は当事者がするんでしょうが、大臣もおっしゃったように、あなたたちは当事者能力を認めてないんだから。当事者能力を持たしたい持たしたいと大臣も一生懸命。せめて世間並みの回答を出して、それで、ひとつ良識ある解決をと言うならこれはわかるわけですよ。世間並みの回答を出した、民間に準拠して。民間に準拠しない、とんでもない外れた回答を出しておって、早々とそっちの方だけを言うところに、いや、それはあくまでも労使だ労使だと言いながら当事者能力は持たせない、そして政府が介入すると、こういうことにこれはなるんじゃないですか。それで私たちが聞くと、いや、これはあくまでも労使で決めることで私たちは介入しません介入しませんと言っておきながら、現実は介入していることじゃないですか。少なくともせめてそういう回答が出て、そして公労委なら公労委に行くものは行く事態を見た中で、何らかの意思表示をされるという場合はあり得ると思いますが、回答はきのうしてよろしいと言って、すぐさまいまの話を聞く限りにおいては、回答の額はわからぬままこの談話は出たというふうに理解できますね、回答の金額はおれたちは知らぬとおっしゃるんだから。
 回答の金額も知らぬで何で談話が出るんですか。回答の金額は知らぬというのだから、大臣も宮澤長官もどっちも四・四四なんというのはおれたち知らぬのだ、とにかく回答を出すことだけ了解したんだと。何ぼ出るかも知らぬかったと言うんですからね、あなたたちは。何ぼ出るかもわからぬ人が、何でこういう談話になるんですか。少なくとも談話を出す以上は、回答を見て、労使の動きを見て、それから談話をお出しになるのがあたりまえじゃないですか、あなたたちは金額知らぬというのだから。とにかく、おまえさんたちは回答だけせいと、こう言ったと。そして回答が出ない前に、官房長官が早々ともう記者会見をされてそこだけが強調されるというのは、それはちょっと、労働大臣、あなたどう思いますか。少なくとも、回答を見て相手側組合がどういう事態に出るのか、当局がどういう動きをするのかを見る中で、それはやっぱりストライキをやめてもらいたいということを政府が言われることは私はあり得ると思いますし、そのことについて言ったことをけしからぬと言っているわけじゃないですよ。どうですか、大臣。
#71
○国務大臣(藤尾正行君) 私にお尋ねでございますから、私からお答えいたしますが、御案内のとおり、そういった私どもが有額回答をして、お互いの交渉を前に進めてくださいよと申し上げましたその前の時点で、国鉄の組合とかあるいは動力車の組合等々は、ともかく二十三、二十四日にストライキをいたしますよと、そういうこともありますよということを予告しておられるわけでございますね。私ども国民の立場に立ちまして、国民に寸毫も御迷惑を与えてはならぬという立場で私どもは当たっておるわけでございますから、そのようにまだ話が煮詰まってない段階で、気に入らなきゃストライキをやるんだというような姿勢をおとりになっておられな。姿勢をおとりになっておられるということは、これはやるかもしれぬという意思表示でございましょうからね。そういう何もやりもしないことを意思表示されるはずはないわけでございますから、そういう意思表示をやられるようなことになってもらっては困りますよということを、その有額回答をされる機会に官房長官として非常に御親切に私は御注意をなすったんじゃないかというふうに、私の立場から見ればそのように思います。
#72
○安恒良一君 大臣ね、交通関係のストライキというのは突然やるわけにいかぬのですわ、やる場合にね。満足いかなかったらいわゆるやる場合があるということはあるわけですから。満足いかなかったらやる場合があると、こういうことなんですよ。ですから、その限りにおいて私は、組合側が早々と意思表示をしておったと。そのことのいい悪いをここで議論しようと思っていません。そういうことがあったと。しかし、少なくとも私は、当事者能力が完全に与えられているならまた別ですけれども、当事者能力が完全に与えられていないことは大臣も前段にお認めになっているわけです。そういう中で世間並みの回答がされない。私は、世間並みの回答をされた中で、やはり国民の生活に重大な影響を与えるから、そういうストライキは回避をしてもらいたい、回避しなさい、また平和的手段でやりなさいと、これならわかると言うんです、私は。わかると言うんです。ところが、四・四四出しておって、それだけが先行することで、本当にあなたたちが考えているような労使の安定につながったり、合理化に協力するということになりますかと聞いている。私は決して無理なことを言っているわけじゃない。世間並みに回答するものはした上で、それであなたたちが考えている違法ストライキなら違法ストライキはやめなさいと言うなら、これは国民もわかると言うんですよ。ところが、世間並みの回答は全然しないで、そちらの方の談話だけが先行する。
 それから、いま一つ私が盛んに聞いていることは、せめてそれならば公労委なら公労委に少なくとも持っていくなら持っていくという方法で平和的にやろうとする、組合は公労委に持っていくわけですから。それなら当局側も公労委に持っていってやろうとすればいい。そうしたら、そこになったら今度は三百代言のように、それは各当局が決めることですと、こう言って逃げるわけでしょう。それでつじつま合いますか、世の中は。合わないじゃないですか。せめて平和的に解決しようと言うなら、電電を除いたところについて組合側が調停申請の意思表示をすれば、当局側も公労委に持っていって、公労委の場において片づけようと、こういうことならこれはわかるわけですよ。こういうことならわかるわけです。しかし、それじゃどうですか。
#73
○国務大臣(藤尾正行君) 私は、きょう局外者でございますから、私がどうこう言ったということがどうこうということじゃございませんけれども、しかし、私の立場から見ますと、国鉄などというのはとにかく一兆円の国民の血税をその中に注ぎ込んで、そうしてどうやらこうやらつじつま、そろばんが合うか合わぬかということで、税金払っておられます国民のお立場から考えれば、私は、この際一兆円の国民の税金をもらっている方々が賃金上げろというようなことを言い出される立場にないと思うんです、経営から考えれば。でございますから、常識的に言えば、ゼロであるという方がむしろ通り相場といたしましてはわかりいい、さように思いますよ。しかしながら、何といいましても、そこで再建という一つの昨年の十一月の国鉄のお決めになられた方針に従って、労使ともこれを一生懸命やるんだ、国民の皆様方に御迷惑をかけても、ローカル線をぶち切ってでもとにかくやるんだということでやっておられるわけでございますから、そういうさなかの組合の方々に、今後ともその再建計画に御協力をいただかなければならぬ、そういうためには労使関係といいまするものがゼロということで、それでは物価もこれだけ上がっているのに暮らしは立たぬじゃないかというような状況にしたのでは、それでは酷に過ぎるではないか。そこで有額回答をやっても結構ですよということになったわけでございまして、いまのこの段階では、私は安恒先生は先生のお立場とされて、この四・四四%というのは確かにいまの通り相場から考えてきわめて低い、だから不満だと。所定の手続に従って公共企業体等労働委員会にその調整をやってくれということで組合はお考えになっておられる。
 それはそれでいいといたしまして、きのうの時点で、これがよろしいということで各当局がそれぞれお考えになられましてお出しになられた。そのお出しになられた手がまだ引っ込むか引っ込まないかという段階で、これはとてもじゃありませんけれども私どもも納得ができませんということで、不満でございますということでこれを調停に持っていかれるというのでは、私が考えましてもその企業体等の責任者、企業側という当局は余りにも当局的に責任をお感じになっていない姿勢、態度ではないか。当然自分たちが考えられたこの時点におきまして、このようなことでぜひおさめたいと言われたお立場を、やはりできればできるだけ貫きたいという姿勢をおとりになられるのは、これまた私どもから考えて無理からぬところもあるのではないかというような感じがいたしますよ。
#74
○安恒良一君 もう時間が過ぎましたからこれで終わります。
 私はいまここで、二公社五現業の一つ一つのこを議論しようと思っていません。国鉄には国鉄の主張がありますからこれはおきましょう。ただ、私は官房長官それから大臣に最終的にお聞きをしておきたいことは、少なくとも三公社五現業の場合に、民間準拠という形でいままで決めてきたことは事実です。そういう中で、ことし赤字であろうとなかろうと、政府は公約をはるかにオーバーして物価は上がって、労働者の実質賃金が日本の歴史始まって以来一年間下がりっ放しになっているんですよ。そういうことに責任を感じないまま、とにかくそれは当局が四・四四出したんだからしようがないじゃないかとか、それは責任を持って――だから調停に行くのはおかしいとかおかしくないとか、そんなことは天井向いてつば吐いているようなものなんですよ。当事者能力を持たしてから言うべきで、当事者能力はない、持たせにゃいかぬ、おれの理想だとあなたは言っているんだよ。当事者能力のない人のことについて、またそこでいろいろのことを言うたらいけません。
 だから私は、明確にしておかなきゃいけないのは、やはり少なくとも公労委の場に行きましたから、私は公労委の場の中において公共企業体の賃金の実態が明らかにされ、そして賃金水準も明らかにされ、民間並みにやっぱり引き上げられる、それから民間に準拠して賃金が決められる、そういうぼくは努力をぜひともやってもらいたい。そういう方向でいかないと、ただ単に平和的解決解決と言葉だけで、せめていままでの歴史的な、民間に準拠して決めてくるというこのルールだけはきちっと守って、事態が円満に解決されるように、特に労働大臣は所管大臣ですから、御努力されることを要望しまして、いまあなたたちとこのことについて細かい論争はやめたいと思う。
 それから、官房長官に一言だけお願いしておかなければなりませんのは、官房長官の時間の御都合が十分だということはけさになって私は聞いたんです。きのうあなたの秘書官や政府委員とかなりやりとりしましたときに、当初は、最初新聞記者会見があるから初めの三十分は無理だと、残りの三十分と、こうおっしゃいました。そこで私は、残りでは非常にやりにくいから、じゃ、できるだけ新聞記者会見に協力しますと、ですから最初来てください、そのとき時間がなかったんです。ところが、けさになって十分という話がきました。そこで私は、それは十分では足らぬよと言ったら、できるだけ御協力をというやりとりになっていますから、そういう連絡はきのう何か私が帰った後、私の事務所にされたそうです、五時過ぎに。私の宿舎は明らかでございますから、どうか宿舎の方にぜひひとつ御連絡をいただいて、余り後でがたがた理事会でしないようにひとつしていただきたい、こう思います。
 以上です。
#75
○渡部通子君 最初に、労働時間の短縮の問題と雇用情勢につきまして大臣に若干の御質問をいたします。
 昭和五十年以来五年間の総実労働時間、所定内及び所定外労働時間の推移、これをちょっとまず伺いたいんですが。
#76
○説明員(小村雅男君) 統計的な事実でございますので、事務的に申し上げさせていただきます。
 昭和五十年一年間総実労働時間千六十四時間、以降毎年二千九十四時間、二千九十六、二千百二、二千百十四、五十五年が二千百八ということで、五十四年まで若干増加してきておりますが、五十五年になって減少に転じております。
 また、内訳でございますが、こういうふうな変化の主たる理由といたしまして、所定外労働時間、これが五十年間百二十七時間、以下百三十九時間、百四十四時間、百四十八時間、百五十八時間、百六十二時間ということで、この五年間少しずつでございますが、所定外労働時間がふえてきているということで、所定内労働につきましてはほとんど変化がない、あるいは若干減りぎみだというような形でございます。
#77
○渡部通子君 いま御報告がございましたけれども、五年を通してずっと推移を見てみますと、やはり労働時間はふえてきているという、これがおしなべての五年間を通しての傾向だと思うわけです。総労働時間が三・七時間増加、所定内が〇・八時間ですが、所定外に至っては二・九時間、いずれも増加をいたしてきておりますけれども、この五年間の推移について、原因等について大臣はどういう所感をお持ちでございますか。
#78
○国務大臣(藤尾正行君) 私は就任をいたしましてから、西欧各国の皆様方が誤解をなさらないように、できるだけ二千時間に近づくように努力をしろということを言い続けてきておるわけでございます。そういったことで五十五年はただいま御報告を申し上げましたとおり、わずかではございますけれども、二千百八時間ということで若干減ってきた、私はそれなりによかったと考えておりますけれども、それにはただいま報告をいたしましたとおり、所定外のつまり残業と申します労働時間が非常にふえてきておるというために総労働時間が余り減らないという結果になってきておる、かようなことであろうと思います。したがいまして、この所定外労働時間、残業といいまするものをできるだけ詰めていかなければならぬということが当然今後の私どもの課題でございます。
 これは御案内のとおり、最近の私どもの国の経済といいまするものが石油ショックというものを受けまして、そうして減量経営に徹しなければならぬのだということで、その減量経営の中で労働時間といいまするものが組み込まれておったということだろうと思いますけれども、そういった経営の実態の中で世界景気との関連とわが国の各企業のその仕事の多少忙しさと申しますか、上昇といいますか、景気の上昇といいまするものを含んで、やむを得ずその所定外残業時間の増加をもつてこれに充ててきた、私は決していいことではない、かように思いますけれども、企業としてはまたやむを得ないところもあったのかなという気もいたすわけでございます。
#79
○渡部通子君 わかりました。それでいま各国から批判を受けないようにと、こういう大臣のお話もありましたけれども、各国の比較においても、たとえば一週間の労働時間は日本とアメリカでは五時間、西独とでは八時間、日本はきわめて長く働いているという、こういう状況でございます。年間の総労働時間を見ても、日本のみが二千百四十六時間、二千時間をオーバーしているのはわが国だけという、西独と比べて四百時間の差がある、こういう状況でございまして、いま大臣の御答弁にもありましたけれども、労働省は一生懸命労働時間の短縮、週休二日制、これを行政指導の中心に据えて行っていらっしゃるわけでございますけれども、週休二日制はまだしも、労働時間の短縮ということはなかなかこれ実現されておらないという状況でございまして、ある意味では、週休二日制をとりながらむしろその分だけ残業がふえているのではないか、こういうことも考えられるわけでございまして、まして週休二日制のとれるのは大きな企業、こういう状況があると思うんですね。それで、行政指導というものが限界に来ているのではないか、こういう感がいたしますけれども、いかがでございますか。
#80
○政府委員(吉本実君) ただいま先生御指摘のように、私どもは一昨年の新経済社会計画あるいは雇用対策基本計画等におきまして、昭和六十年までに西欧圏並みの労働時間の水準に持っていこう、こういう政府の決定に従いまして行政指導を展開しているところでございます。昨年の十二月に策定いたしました週休二日制等労働時間対策推進計画におきましても、先ほどの計画を実際に運用していくという立場から平均的、一般的労働者としての年間の総労働時間が二千時間を割る、こういう姿を想定して行政指導を進めていくというふうにしておるわけでございます。
 労働時間につきましては、先生御指摘のようにやはりこれはなかなかむずかしい問題がございます。特に、労使のコンセンサスの形成というものがなされておらなければなかなかいかないというふうに思うわけでございまして、そういった意味でこの計画の内容もいろいろな角度から、たとえばいろいろグループ別に業態を分けまして、それぞれのグループに対応した施策を提示するというようなことで、今後の労使の散り組みの指針にしていただく、こういうふうな趣旨でやっておるわけでございますが、行政の対象といたしまして一番肝心なところは、やはりおくれておる中小企業の分野だということで、中小企業に対しましては、私どものできる範囲のところで行政指導を展開しておるというふうにしているわけでございまして、今後ともそういった形で積極的に行政を進めていきたい。特に、地域あるいは業種というもので一つのまとまった形のところに対して、そういう問題点なり対策の方向なりをいろいろ議論し合ってそこを進めていくように持っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#81
○渡部通子君 努力なすっていることはわかるんですが、そこで労働大臣に御決意を伺っておきたいんですが、当面二千時間の目標でございますね、これは実現させる見込みがおありなのかどうか、その辺を伺っておきたいと思います。
#82
○国務大臣(藤尾正行君) 私が申し上げておるわけでございますから、私はやらせるわけでございます。
#83
○渡部通子君 五年間の推移を見ますと、なかなか困難ではないか。だから、決意のほどとしてはわかりますけれども、見通しはいかがでございますか。
#84
○国務大臣(藤尾正行君) 困難でございましてもやらせます。
#85
○渡部通子君 もう一点伺います。
 雇用保険の休業手当の問題ですが、最近雇用情勢の悪化で急増をいたしております。五十三年九月以降の高水準と、こう新聞報道にもあるわけでございまして、この雇用情勢の悪化の原因というもの、さらに雇用保険の支給件数の増加によりまして雇用保険の財政が圧迫され、本年四月にせっかく引き下げられた雇用保険料というものが、五十七年には再び引き上げざるを得ない、こういう状態だと伺っておりますが、これに対する大臣の御見解を承りたい。
#86
○政府委員(関英夫君) 雇用保険におきましては、失業者に対する給付を行う事業と、それから別に、雇用者の雇用状況を改善する、あるいは失業の予防をする、あるいは能力の開発をする、あるいは福祉の増進を図るといったような四つの事業を行っておりまして、中で勘定を分けております。で、失業給付の部分につきましては、昭和五十三年以来の景気の動向あるいは雇用失業情勢を反映して受給者がふえるというような事態もございますが、現在そのことによって財政が悪化して保険料を引き上げるとかいうようなことはないと言っていいと思います。
 もう一つの四つの事業、これは事業主だけの保険料負担で行っておるわけでございますが、その中で特に、中高年齢者の雇用を促進するために中高年雇用開発給付金といったような非常に手厚い助成制度を緊急の措置としてとりました。そういったものの支出が非常にかさみまして、積立金と比較して十分な保険料があれば引き下げる、なければ引き上げるというようなことをやるわけでございますが、自動的に変更するわけでございますが、中高年雇用開発給付金等を始める前におきまして積立金が相当程度、四事業の関係の積立金といいますか雇用安定資金でございますが、これが相当程度になりましたので本年度引き下げたわけでございますが、中高年雇用開発給付金の支出が進んでいきますと、これは積立金との関係で、自動的に引き下げたものがもとへ戻るであろうというふうに私ども予測はいたしております。しかし、失業給付の方の労使で折半負担する方の保険料について、ここ当分改定をせざるを得ないような状況にはない、こういうふうに考えております。
#87
○渡部通子君 まあ景気の回復がおくれている、雇用情勢が悪化している、これは一般的になってきているわけでございますが、この悪化傾向がどのくらい続くと見込んでいらっしゃるのか。それが何とか改善の方向へ向かうかという見通し、並びに失業者の増加に伴う改善策というものについて伺っておきたいと思います。
#88
○政府委員(関英夫君) 雇用情勢は、昨年中ごろまで改善傾向を続けてきたわけでございますが、その後の経済の状況を反映いたしまして改善傾向に足踏みが見られ、求人倍率で申しますと五カ月ぐらい〇・七二というのが続きまして、二月に至りまして〇・七一というふうにまた〇・〇一ポイント下がるというようなことになっております。そういう意味で非常に楽観を許さないわけでございますが、そういう経済情勢あるいは雇用情勢に対処いたしまして、政府といたしましては三月の中旬にいわゆる総合経済緊急対策を決定いたしたわけでございまして、金利の引き下げ、あるいは公共事業の前倒し、その他いろいろな経済対策を総合的に行うと、こういうことにいたしておりますので、私どもこの政策の効果が徐々に雇用面にも波及してくるんではなかろうか、こういう意味で、本年度におきましては年度後半におきまして次第に雇用情勢も改善してくる、年度全体として見れば、五十五年度よりも多少改善するのではなかろうか、こういうふうに見込んでいるわけでございます。
 雇用問題といいますのは、基本的にはやはり経済の動向に左右されますので、適正な経済成長を図っていくことがまず第一でございますが、私どもといたしましても、やはり現実の求職者の実態に合わせて求人開拓を実施する、あるいはいろいろな雇用奨励策、助成策、そういったものを活用する、あるいは公共事業の前倒しに対応してそういったところへの就労の確保を図る、そういった形で、雇用政策といたしても、現状に対処して機動的に積極的に運営をしてまいりたいと考えておるところでございます。
#89
○渡部通子君 いま局長の方から、年度後半には上向くのではないかという御答弁がありましたが、これは重ねて大臣もそういうお見通しであるかどうか、念を押して伺っておきたい。
 それからもう一つ、労働省は昭和六十年には完全失業率を一・七%に下げ、雇用の安定を図ると、こういう目標を設定しておられますけれども、五十年以降の五年間は二%を超えておりまして、二%を割ったことがないわけですね。特に最近では二・二%から二・四%、こういう状況で推移しているわけでございますけれども、労働大臣は本当に昭和六十年に一・七%に下げるとお約束ができるのかどうか伺いたいと思います。
#90
○国務大臣(藤尾正行君) まず前段の景気見通してございますけれども、私どもは決して日本だけの趨勢で物を言うわけではございませんで、世界の景気といいまするものを絶えずフォローアップしておるわけでございますが、御案内のとおり、OECD等におかれましても五十六年度の後半には薄明かりが見えてき、そしていままでほとんど経済成長の兆しがなかった西欧社会におきましても、二%程度からそれを超える程度の経済成長が多分達成できるのではないかという見通しをされておられるわけでございます。でございますから、そういった世界景気の一つの流れ、そういったものと対応いたしまして、そこに阻害要因が、どういったものがどのように出てくるかということは別にいたしまして、これを総合的に考えていけば、私どももまた、今日ただいまのこの景気状況といいまするものがむしろ底でございまして、これから先、景気対策といいまするものの浸透とともに世界の景気動向とも並行をいたしまして、後半加速度的に上がっていく方向にいってほしい、またいくのではないか、かように考えておるということを申し上げておきます。
 それから、昭和六十年までに失業率といいまするものを一・七という目標を据えて、そこに持っていくようにやっており、またやるわけでございますけれども、それが達成できるかというお話でございますが、これはワークシェアリングと申しますか、ただいま冒頭に御指摘になられました時間外労働というようなものもできるだけお慎みをいただいて、それをやはりこれから働きたいというような方々と分かち合っていく、こういう一つの私どもの願い、こういったものがだんだん浸透をしていけば、ただいま二%を超えて非常に困った状態にございますけれども、そういった失業情勢といいまするものを改善をして、一・七に持っていくということは必ずしも不可能ではない、それを実現をしていかなければ政策はないんだということになっていくだろうと、かように思います。
#91
○渡部通子君 大臣の御決意として承っておきますが、残業時間をなるべく減らしてもらって就職口を分け合ってと、そうなることは本当に理想だと私も思いますけれども、こういう状況になりますと、さらに残業しなければ食べていけないというような状況が一面ふえているということも現実でございますので、この議論はここでとどめますけれども、今回は大臣のその御決意だけを伺って、どうかそういう方向に持っていけるように、鋭意御努力をお願いしたい。これでこの質問をとどめます。
 次に、ベビーホテルに関係をいたしまして、労働省サイドのことを若干伺っておきたいと思います。
 ベビーホテルの最近の状況というものは、すでにことごとく御承知のとおりでございまして、厚生省が一生懸命所管としてやっていただいているところでございますけれども、女性の就労というものがこれほど進出をしてきて、しかも第三次産業へが目覚ましくて、働く時間も多様化し、幅も広くなり複雑になってきている。こういった中で、どうしても需要が高まっているのはいたし方のない傾向だと思います。特に保育園が足りないというばかりではなくて、保育時間が女性の労働時間に対応していかないと、これが大きな原因になっていると思うんです。こうなってまいりますと、やはり労働省としても決して見過ごしてはならないことでございまして、大臣としては、このベビーホテル問題に基本的にどういう認識をお持ちかをまずちょっと伺いたいと思います。
#92
○国務大臣(藤尾正行君) まことにいまの人口動態から考えてみましても、非常に狭い意味で労働力需給というような観点から考えてみましても、これから先細りになっていくこの高齢化社会の中におきまする需給に対応する一つの仕方といたしましては、私は御婦人が職業戦線にどんどん御進出をいただく、そういう傾向になることは避けられないのではないか、かようにまず考えております。
 そういった際に、御婦人、女性の御就労というものの中で、それぞれ御家庭がしっかりした後見者がおありになられて、赤ちゃんを見ていただけるという状況にあればよろしゅうございますけれども、そういったものがまだ本当に跛行的に――私は、これは高齢化社会に対しまする政府の姿勢全体がゆがんでおる、これは認めざるを得ないと思います。立ちおくれでございます。そういった立ちおくれの中に、いま御指摘になられました女性の進出、それに伴います赤ちゃんの保育機関といいまするものがまるっきり足りないという一つの矛盾の中に、このようなベビーホテルというようなものが誕生せざるを得なかった。まことに、これは一つの社会のひずみ、ゆがみでございまして、このような事態があるということは非常に恥ずかしいことだ、かように考えるわけでございますけれども、そんなことを言いましても、現実にお働きになっておられる御婦人の方々が赤ちゃん抱えられてどうするんだということになっておられるわけでございますから、当然、これに対しまして私どもは、これから地域的に、また企業的にそういった受け入れ施設といいまするものを補完をしていく、そういう努力は努力としていたさなければなりませんけれども、とりあえずこの現実に存在をいたしておりまするベビーホテルといいまするものを、御心配のないようなものまでにその質を高めていかなければならぬ、これは並行的にやっていかなければならぬ暫定的、緊急の私は施策ではないか、厚生省がそのようにお考えになられて御努力になっておられる、もっともっと努力をしてもらいたいものだ、私はかように考えております。
#93
○渡部通子君 そこで、ベビーホテルに――これ、ベビーホテルという言葉はちょっと当たってないんですね。ベビー収容所みたいな現実がある中で、ホテルというとどうもデラックスなイメージがあって、仕方ない、慣例語として申しますけれども、ベビーホテルにお子さんを預けていらっしゃるお母さんの就労の業態、これを労働省としては把握をしていらっしゃるのかどうか伺います。
#94
○政府委員(高橋久子君) 昭和五十五年の労働力調査によって女子の雇用者の割合を配偶関係別に見てみますと、配偶者がいる方が五七・四%、それから、死別、離別された方が一〇%となっておりまして、大変既婚者がふえているわけでございます。
 就業構造基本調査によりまして、子供の年齢別に女子の有配偶者が就業しているかどうかいうことを見てみますと、末の子供がゼロ歳から五歳という方で働いていらっしゃる方々は三六・二%いらっしゃる。末の子供が……
#95
○渡部通子君 いまベビーホテルに預けているお母さんの就労の業態を把握していらっしゃるかと聞いているんです、一般論ではなくて。
#96
○政府委員(高橋久子君) 失礼いたしました。
 ベビーホテルに実際に預けている方を、ベビーホテルサイトから労働省で調査したものはございませんが、労働省におきましては、働く婦人が子供を持っているかどうか、何歳ぐらいの子供を持っているのか、そうして、そういう子供の保育はどのように行っているのかというような実態の把握に努めているところでございます。
#97
○渡部通子君 これほど問題になっておりますので、厚生省としても、昨年の段階ですけれども、一応ベビーホテルという、件数まで挙げて実態調査をしていらっしゃるわけですから、せめてその中の実情だけでも、お母さんかどういう働きをしているのか、その就業状況については、労働省として実態調査をしてきちっと把握すべきだと思いますけれども、それをなさるおつもりはございませんですか。
#98
○政府委員(高橋久子君) ベビーホテルという側面から調べていきますものにつきましては厚生省が調査をしておりますので、その調査結果を私どもも共同で活用していきたいというふうに考えているところでございますが、私どもの方といたしましては、ベビーホテルに預けるというのは大変極限の状態でございますけれども、働く婦人全般が子供の保育についてどういうふうに対応しているのかというようなことを把握していくことによって、ベビーホテルというような形で子供を預けなくて済むような対策を考えていかなければならないというふうに考えておりますので、婦人労働者全般の保育を把握していくということで、これから対応していきたいと考えているところでございます。
#99
○渡部通子君 それは当然なことでございますけれども、やはり、ベビーホテル対策をこれだけやらなければならないという取り組みをしている最中でございますし、それから、預けなければならない働く女性の労働環境の整備、労働形態の複雑化に対してどう対応をするかという労働省としての対策の面から考えましても、ベビーホテルに預けざるを得ないというお母さんたちが、一体どういう業種でどういう労働条件のもとで働いている人たちなのかということを実態調査をすることは、もう基礎的に大事なことではないかと私は思います。それがありませんと、やはり、遊ぶために預けたとか、あるいは、保育に対する女の無責任さの傾向というようなものが指摘される風潮もあるわけでして、私はそういうのが皆無とは申せません、若干はあるかもしれません。しかしながら、大部分のお母さん方はそうではないという、そういう実情を浮き彫りにすることは大事なことだと思いますけれども、厚生省任せでよろしいんでしょうか。
#100
○政府委員(高橋久子君) 厚生省がベビーホテルを調査をいたしましまして、そのベビーホテルに子供を預けているお母さんということで、そういう調査方法をとっているわけでございます。
 ベビーホテルに預けているお母さんの労働実態につきまして、私どもは厚生省からいろいろ資料を提供していただいておりますけれども、その実態につきまして、なお深く調査をする必要があるというようなことでございましたら検討してまいりたい、このように考えるところでございます。
#101
○渡部通子君 これはTBSが調査をして出した実態調査でございますけれども、対象は四百五十人ですから非常に限られた、しかも東京都内、若干の関東地域で調査したものでございますけれども、ここでい母親の職業というものが、一つのサンプル調査ですけれども、明瞭に出ているわけでございます。
 それで、会社員というのが二三・六%、水商売が一七%、自営業が一〇%、教育者とか保育者とか医者とかいうのが何と七%近い。店員が六・七%、自由業五・一%、公務員二・九%、こういうような正規の職業で、働かなければならない、きちっと働いているという人たちが九〇%を超えているわけでございまして、こういう実情というものが浮き彫りになってきますと、やはりベビーホテルの深刻さというものが非常にわかりやすくなってくるのではないか、そういう資料を提供するのは私は労働省の役割りではないかと思うわけです。しかも、この調査によりますと、預けた赤ちゃんの年齢の何と四〇%がゼロ歳児である。したがって、赤ちゃんを産んで産褥が明けたら、さあ困ったということになって、さしあたってということで預けてしまう場合が四〇%もあるのではないかと想像されるわけです。こういう中から本当の労働省の対策というものは、私は生まれてこなければならないと思うわけです。
 そういった意味で実態調査をきちっと掌握をして、お母さんの就労の業態というもの、働く形態というものを世間にきちっと知らせるということは私は大事なことだと思う。それを一つのベースとしてやっていただきたいということを重ねてお願いをしたいと思います。
#102
○政府委員(高橋久子君) 先生の御指摘十分に承りまして今後検討させていただきたいというふうに思います。
#103
○渡部通子君 そこで、やはりできれば、ゼロ歳児などというのは母親が抱いて育てるということが最高でございまして、そういう立場からいいますと、育児休業制度というものがもう少し企業種へ波及していいのではないか、そうしていただくことがベビーホテルに対する労働省側としての最大の一つの施策になるのではないかと私は考えます。
 そういった意味から、育児休業制度というもののいまの実施状況、あるいは助成給付金の実績というものは、概略で結構ですけれども、どういうことになっておりますか。
#104
○政府委員(高橋久子君) 育児休業制度につきましては私どもが普及を図っておりまして、次第にその普及率は上がってきておりますが、残念なことにまだ、昭和五十三年現在で六・六%という状況でございまして、十分とは言えないわけでございます。
 したがいまして、先生おっしゃいますように、これからの働く母親の保育の問題というものを考えてまいりますときに、この育児休業制度をぜひとも普及を促進してまいりたいと考えておりまして、育児休業奨励金制度というものを私どもは設けております。これは、育児休業制度を導入いたしました企業に対しまして二十五万円ないし三十万円という金額を支給して育児休業制度の普及を図っているわけでございます。また、特定職種育児休業利用助成給付金制度と申しますのは看護婦さん等につきまして、事業主が、看護婦さんが育児休業制度を利用しやすくするための制度でございます。こういった制度を私どもは進めているわけでございますが、なお、育児休業の普及が十分ではないというようなことも認識いたしまして、育児休業普及指導員というものを昭和五十五年度から設置をすることにいたしました。
 このような指導員制度、奨励金制度等を活用いたしまして、これから育児休業の普及を図っていきたい、このように考えているところでございますで
#105
○渡部通子君 いま六・六%という話がありまして、助成金の実績についても非常に低いわけです。私いま具体的に数字を持っておりますが、時間の関係で申しません。よく御承知のとおりでございまして、まだ知られてないんではないかと思われるくらいに実績としては低いわけでございます。
 そうして、いま普及指導員制度があみという、ただし、それは十名なんですね。ことしふやしたという話ですけれども、七人から十人になった、十都道府県の婦人少年室に配属をされておりまして、非常勤の国家公務員、一日の手当てが三千五百円、こういうふうに伺いましたけれども、十人程度でどのくらいの指導がしていけるのか。私は、お金の使い方というものが、こういう中途半端な使い方をしたのでは非常にもったいないし、効果は上がらないと思うんですね。ですから本当にベビーホテル問題に端を発して、いま施策が全部ライフワークに対応してないんだという労働大臣のお話もあったくらいなんですから、これを一つの焦点といたしまして、本当にこれだけでも、育児休業の制度だけでも大いに普及していこうというその御意図があれば、重点的に私は予算を使って、十県に一人ぐらいで非常勤で、日当でやっていらっしゃるというのはかえって焼け石に水かけるみたいなもので、非常に私はお金の使い方もったいないと思うんですね。ですからその辺もう少し重点的にやれないものかと、これを強く要望もしたいし、御提案もしたいわけです。別に国家公務員といっても、これは身分保障があるわけではないでしょうし、退職金を必要としないんでしょうし、日給で終われば終わりなんですから、特に性差別撤廃条約の批准に向けて第一年をスタートしたところでございますし、育児休業制度などというものは徹底してこの一、二年の間に周知徹底せしめると、実効を上げるという、そのくらいの施策があってもいいのではないかと思うんですけれども、これに対してはひとつ大臣のお考えをお聞かせください。
#106
○国務大臣(藤尾正行君) まさに御指摘のとおり、日本国じゆうで十人ぐらいの普及員をつくって一体何しているんだというおしかりをちょうだいいたしますれば、まことに恐れ入りましたと言わざるを得ないわけでございますけれども、ともかくもそういった制度を始めたという意味だけは、これは婦人少年局長初め皆さん方にそういう意図があるということのあらわれでございまして、今後ともお教えに従いまして一生懸命やらせますから、どうぞひとつ御勘弁のほどをお願いいたします。
#107
○渡部通子君 それでひとつ、企業種への拡大という方向へ向かって行政指導をなさるなり、あるいは育児休業法の制定というものをお考えいただくなり、それに対する御回答をいただきたい。
#108
○政府委員(高橋久子君) 普及を図っていくということ、私どもは全婦人労働者に、育児休業がとりたい方はとれるようにしていきたいということでいま普及に努めているわけでございますが、先生おっしゃいます育児休業法の問題でございます。御承知のようにただいまのところは、国公立の施設で働く特定業種の方々には育児休業の請求権がございますけれども、それ以外の方につきましては、各事業におきましてそういう制度を導入しているという実態でございます。この育児休業請求権につきましてはすでに労働基準法研究会の方から、現在、育児休業請求権が認められている婦人労働者以外の者につきましても、育児休業請求権のあり方について検討していくべきであるというような御報告をいただいているところでございまして、私どもはいま、婦人労働法制全体について見直しをしているところでございます。ちょっと全体の見直しでございますので時間がかかっておりますけれども、婦人少年問題審議会でこの育児休業のあり方も含めまして御審議をいただいて、その結果に基づいて対策を立てていきたいというふうに考えているところでございます。
#109
○渡部通子君 ベビーホテル問題に関連してもう一点伺っておきますが、企業内保育の促進あるいは産後休暇ですね、それを十週間なりに延ばすと、そういった検討というものをぜひお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。
#110
○政府委員(高橋久子君) 企業内保育につきましては、企業内においてそういう保育施設が整備をされるというようなことを私どもが期待をいたしまして融資制度というのを設けております。融資をいたしまして、そういう保育施設をつくっていただくということをやっておりまして、その保育施設における子供の玩具等につきましても、購入の場合には融資をするというような制度がございます。このように、事業主にそういうことを進めているところでございますが、なお育児休業制度が普及いたしますように努めていきたい。
 それからもう一つ、産後休業の延長という問題でございますけれども、産後休業につきましてもこれは婦人労働法制全体にかかわる問題でございますので、先ほど申し上げましたように、婦人少年問題審議会における婦人労働法制のあり方というものを御検討いただく中で、そういう問題もあわせて検討をしていただきまして、その結果に基づいて対策を立てていきたいと、こういうことで取り組んでいるところでございます。
#111
○渡部通子君 その婦人問題審議会という中でいろいろ法制の見直しをやっていらっしゃるという、いまお話ですけれども、それはいつ結果が出るとか、どういう報告が出てくるとかという見通しはどうなっているわけですか。
#112
○政府委員(高橋久子君) 婦人少年問題審議会にこういうことをお願いしておりまして、審議会におきましては、この育児休業や産後の休業の問題と何時に、雇用における男女平等の確保の問題ということが密接に絡んでおりますし、重要な問題でございますので、こういう問題をあわせて検討していただいているわけでございます。私どもは、先ほど開かれました審議会の総会におきまして、国連婦人の十年の後半期を迎えまして、差別撤廃条約の批准というようなことも踏まえて、ぜひともむずかしい問題ではあるけれども、できるだけ早く御検討結果がいただければ幸いであるということをお願いした次第でございます。
#113
○渡部通子君 大変理路整然とお答えいただいたんですけれども、中身何もないんですね。私は、いつも御答弁で審議会の答申を待って待ってと、こう言われてしまうと、やはり審議会が一つの隠れみのになっているのではないかと、こういう疑念を持たざるを得ないわけです。そんなぐずぐずしておりますと、たちまち後半期の十年も終わってしまうわけでございまして、それに対してはもう少しめどをきちっとつけて審議会を督促をして、そして結論を得るようにしていただきたい、これは要望だけにしておきます。
 ぜひ、それを答弁の盾にお使いいただかないように、何らかの意味でもう少し審議会は審議会としても、担当の労働省としては労働省としての、おつもりなり見通しなりというものをもう少しお述べいただきたいと、こう思うわけなんです。
 大分時間が過ぎて、私の持ち時間はまだあるんですけれども、大臣にはなるべく早く退出をしていただくようにという人道的な問題もあると思うんですけれども、もうちょっとひとつお願いをしたいと思うんです。
 私は実を申しますと、性差別撤廃条約へ向けてのいろいろな点についてきょうは細かく伺うつもりでおりました。しかしながら、やはりいまの御答弁でもわかるように、審議会の答申とか専門家会議の結果を待ってという、前回の委員会でもそういう御答弁をずっといただいてまいりましたけれども、いまだにその状況が続いているということを承知をいたしております。したがって、ここでやたら時間を使っても、それを超えた御答弁はいただけないのではないかと、こういうことをあらかじめ言ってしまっては何にもならないんですけれども、早く終わらせるという、それに協力をする意味で、それを前提として若干お伺いをしておきたいと思います。
 労働基準法三条の改正問題というものは長い間議論されてきたところでございます。ここに何とか性別ということを入れなければ、憲法とも違反するではないかと、こういう議論が長々と続いてきたわけでございます。今日において、かなり状況というものは変化をしてきていると思いますが、これに対する動きとか見通しとか、そういった点については、何か御答弁いただけるものをお持ちでございますか。
#114
○政府委員(高橋久子君) 労働基準法の三条に性別を入れるべきではないかということは、男女の平等ということを法制化するということであろうかと思いますが、この点につきましては御承知のように、労働基準法の中に、婦人に対しましてはいろいろな特別な規定が設けられているところでございます。それとの関係をどのように考えるかということがいろいろ問題でございまして、この三条に性別を入れるという件も含めまして、男女平等のあり方というのは一体どういうあり方であるべきか。男性と女性というのは質的に異なった存在である。その質的に異なった存在である男性と女性の平等の姿というものは、一体どういう姿であるのかということが大変まだコンセンサスが得られている状況ではございませんので、そこのところの議論をしていただいて、その議論の結果を踏まえて、男女の平等ということをどのような方法で確保していくのかということが、いま私どもが男女の平等を確保していくための筋道として考え、専門家会議なり審議会なりにお願いしているところでございます。したがいまして、基準法三条に性別を入れるかどうかという問題も、その中で含めて御検討をいただいているということで御了解をいただきたいと思います。
#115
○渡部通子君 コンセンサスがまだ得られていないというお話ですけれども、かなり前進はしてきているのではないかと私は思います。すでに性差別撤廃条約等においても、保護と平等というものは両立すべきものだという理念で貫かれているわけでございまして、その保護の中身が細かく検討はされていないという、それはあるといたしましても、保護と平等というものが女が生む性を持つ以上、当然のこととしてそれは両立すべきもので、それは違反することではないという、その程度のコンセンサスというものは当然私はでき上がってきていると思うわけですね。これに対しては御答弁は要りません。
 いまも専門家会議の結論を待ってというお話がありました。これがネックになっているということは私も重々承知しておりますので、この専門家会議の結論というものは一体いつ出るものなのか、大体何年かかっているのか、これはいかがですか。
#116
○政府委員(高橋久子君) 専門家会議は一昨年の十二月に委員をお願いいたしまして、第一回が開かれましたのが昨年の一月でございます。大体一年とちょっと検討をしているところでございますが、私どもは専門家会議の先生方にも、できるだけ早い機会に御報告がいただければというようなことはお話を申し上げているところでございます。
#117
○渡部通子君 そうすると、一年かかるか二年かかるか、三年かかるかもわからないと、これではやはり国連婦人の十年終わっちゃうわけですね。それで、もし雇用平等法などは要らないなどという結論が出たら、一体それに労働省は従っていかれるおつもりなのかどうか。それはそれとして、性差別撤廃条約に向けてのワンステップというものは労働省としては当然進めるべきであって、こんないらいらさせる話というものはないわけでございまして、どうか専門家会議は会議として、労働省としてはどう取り組むおつもりでいらっしゃるのか、あるいはそんなぐずぐずしていらっしゃる専門家会議に、一体いつごろまでをめどにして結論をおまとめになるのか、その辺はいかがですか。
#118
○政府委員(高橋久子君) 差別撤廃条約の批准につきましては、昨年の世界会議で署名をするのに先立ちまして、婦人問題企画推進本部におきまして、国連婦人の十年の後半期の重点課題として、これの批准のための国内法制の整備等を行っていくという申し合わせをしているところでございます。したがいまして、私どもはこの申し合わせに従って、国連婦人の十年が終わるまでの間に、いろいろな法制の整備ということをやっていかなければならない、そういった時期のめどがあるのだというようなことは、審議会なり専門家会議なりの先生にお願いいたしまして、この期間内にぜひとも条件が整備されるようなスピードで御審議をお願いしたいということを申し上げているわけでございます。この十年が終わる段階ででき上がればいいというものではなくて、できるだけ早い機会にということでございますが、私どもは最終のめどといたしましても、国連婦人の十年の間ということが政府の申し合わせであるのだということは再々申し上げているところでございます。
#119
○渡部通子君 大臣にお願いをしておきます。専門家会議の最終報告、これと労働関係国内法の整備、これを大体どういうめどで労働省はお進めになるのか、大臣としてのお約束をひとついただきたいと思います。
#120
○国務大臣(藤尾正行君) いま婦人少年局長がるる申し上げておるわけでございますから、私が別のことを申し上げたのではこれは婦人少年局長困っちゃうわけでございますが、私は原則といたしまして先生御指摘のとおり、まず平等法といいまするものは確立しなければいかぬ、かように思います。それに対しまして、御婦人を保護しろという話が別途あるということになっているわけでございますけれども、それは御婦人に、つまり平等である御婦人を保護しろということではなくて、そういった御婦人が赤ちゃんをもうけられたり、あるいは肉体的条件で生理現象があったりというようなときに、そういった特別の事情といいまするものを考慮して、そして生まれてこられる赤ちゃんでありますとか、あるいはその赤ちゃんの生まるべき母性といいまするものを保護していくということだと私は考えておるわけでございます。
 でございますから、先生御指摘の、これは矛盾しないということもそのとおりで、そんなもの矛盾してごったにして考えている方がよほどどうかしているんじゃないかというように思いますけれども、それは非常に雑駁な私のこの程度の頭で考えていることでございまして、なかなか専門家の先生方からいろいろ御検討になられれば、この場合はどうなるとか、この場合はどうなるとかということで、やかましい議論はたくさんございまして、婦人少年局長もそれで困っておるんじゃないかというような私は感じがいたします。いずれにいたしましても、一つの国連婦人の十年の後半期という有限の時間が設定されており、その設定の中で、現に私どもがその中で国際的にお約束をいたしましたことをきちんと処理するということが、これは国家といたしましての対外的責任でございましょうから、この辺のところはきちっと踏まえまして、先生が御指摘になっておられる方向に進ませねばならぬ、かように思います。
#121
○渡部通子君 終わります。
#122
○委員長(片山甚市君) 本調査に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後三時まで休憩いたします。
   午後一時十七分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時三分開会
#123
○委員長(片山甚市君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、労働問題に関する調査を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#124
○沓脱タケ子君 それでは、きょうは労働時間に関連をいたしまして、幾つかの質疑を申し上げたいと思っております。
 まず、ゆとりのある生活のために、また雇用対策上も労働時間の短縮というのはきわめて必要なことだと思いますし、また有効でもあります。ところが、残念ながらわが国の長時間労働というのは有名でございまして、午前の質疑の中でも数字等が言われましたが、国際比較を見ましても明らかに西ドイツの労働者の実に三カ月分よけいに働いていると、こういうことでございます。
 それで、これにつきまして労働大臣が過日の衆議院の予算委員会でわが党の不破書記局長にお答えになって、日本人というのは働く習慣があってというふうな御意見がございましたけれども、私どもはそういう程度のことではないんじゃないかと思うわけです。むしろそうではなくて、今日の日本の労働時間の延長というんですか、長時間労働というのは歴代政府の姿勢に問題がなかったかということを、この機会にやはり深く検討してみる必要があるのではなかろうかと考えるわけでございます。
 その一つは、ILO一号条約でございますけれども、これはもうよくわかっていることなんですけれども、これの批准のできない理由、これをひとつ事務当局からお伺いをしたいと思います。
#125
○説明員(岡部晃三君) ILO一号条約は、御承知のとおり一日八時間、週四十八時間の原則を定めますとともに、一日の労働時間を九時間、つまり残業を一日一時間というのを原則的に定めており、さらにまた、変形労働時間につきましても三週間を単位とする等々ございまして、私どもの労働基準法四十条に基づきます特例の廃止を先般いたしましたが、これによりまして八時間労働原則、四十八時間労働原則にはわが国はこれでなる道が開かれたわけでございますが、幾つかの点につきまして若干の問題がまだ残っておって、批准はなお検討を要すると、こういう段階でございます。
#126
○沓脱タケ子君 これはもう明らかに、残業時間の規制がわが国の基準法にはないというところに問題点があるわけでございます。ところが、このILO一号条約というのは一九一九年、実に六十二年前の条約でございまして、これが今日批准ができていない。それで、ILO百三十二号条約、これは一九七〇年の条約でございますが、これは有給休暇三労働週以上ということが規定をされていますが、もちろんこれも批准ができていない。
 それで、ILO条約で労働時間に関連をいたします条約というのは何条約あって、わが国ではそのうち批准をしているのは何本ありますか。
#127
○説明員(岡部晃三君) 直接的に労働時間に関します条約は十一条約でございますが、わが国は一つも批准をいたしておりません。
#128
○沓脱タケ子君 だから、批准がゼロという状況でございますが、これはやはり冒頭に申し上げたように、こういう政府の姿勢が長時間労働の根源の一つになっているのではないかと思うわけでございます。
 たとえば東芝の実例を見てみますと、東芝では残業協定、いわゆる三六協定は原則月四十時間の残業であるにもかかわらず、四十時間を超えて残業させられている者が何と、これは去年の一月から六月まで見ますと、全労働者の、一月が二二・四%、二月が二九・六%、三月が三二・八%、大体三割内外というのが四十時間を超えて残業しておるわけです。それで個人最高の人は二百時間を超えています。二百七時間というような、あるいは二百八時間というのがあります。しかもその上に、休日出勤率を見てみますと、これは五十五年の一月から六月までのデータを見てみますと、これまた一月は五五・七%、二月は五八・三%、三月は六八・一%、四月は五八・九%というふうに、六〇%内外の休日出勤率になっています。これでは週休二日制のせっかく制度を設けましてもたてまえだけになるわけでございます。ですから、こういう状態だから当然年休もとれないわけです。出勤率が九六%から七%でしばられていますから、これは労働時間の短縮というのは、こういう実態にメスを入れなければ実効が上がらないのではないかと考えるわけです。そこで、実態調査を労働省もおやりになるようですけれども、こういうものについての御指導をどういうふうに進めていくか、それについてちょっとお伺いをしておきたい。
#129
○説明員(小村雅男君) 先生いま御指摘の数字は、私ども同様の状況を電機労連のデータから伺って承知してございます。そういう三十六条の原則あるいはそれの休日出勤等との問題があるということで、労働組合の皆様方が、真剣にこの問題を解明すべく取り組むという形で実態調査をおやりになっているということでございますので、私どもも、日本の代表的な大企業なり大産別の労働組合の熱心なお取り組みというものを御期待申し上げておる。労働省といたしましては、むしろ労働組合のないような中小企業の労働時間問題、それについての行政指導を展開していくというような基本的な立場でおるわけでございます。
#130
○沓脱タケ子君 大企業はよく知っているとおっしゃっておるんで私多くを申し上げませんが、確かに松下などの電気産業でも同じですね。
 これたまたま松下の組合の機関紙があるんですね、「ユニオン」という。これにも書いてありますわ。「とくにビデオや部品関連部門では、人員・設備の不足で残業、休日出勤、交替制勤務の導入など職場は過熱気味です。そして、これらの部門では四〇時間を超える長時間残業や、常態化した生産残業さえ出てきています。」というふうに組合の機関紙でもお述べになっておりますように、電気産業、自動車産業等が恒常的な所定外労働時間の延長が出てきております。
 そこで私は、労働省から五十三年六月二十三日、基準局長名での通達が出ておりますけれども、これによりますと「恒常的な所定外労働により通常業務を処理しているもの」と、これらの問題についての「不合理な長時間労働の排除」というのがこれ御指導の中に出ているんですけれどもね。「不合理な長時間労働を常態として行っているものが見られるので、これらに対しては、増員又は交替制の採用等について指導すること。」というふうに指導されておりますけれども、これまあ基本的には増員が必要だと思うのですが、これはまあ年休のところでも御指摘を申し上げたいと思いますが……。
 で、こういう企業を調査をして、増員等の指導をして長時間労働を解消させるようにしなければ、これは世界の統計と比べて日本は労働時間が長い長い言っていても片がつかないのではないかと思うんですが、その点はいかがですか。
#131
○説明員(小村雅男君) 御指摘のような残業の実情が、幾つかの企業にあるということは私ども実情を承知してございますが、非常に昭和五十年以降の、石油ショック以降の厳しい経済運営の中で日本の企業あるいは産業というものをどう守っていくか、発展さしていくかということで、非常に厳しい状況がここ数年来続いてきておると、そういう事実の中での現在の残業時間の水準ということにつきましては、残念ながらやむを得ざる面もあろうかと。
 ただ、最近の労使の動きを拝見しておりますと、もう残業の問題を真剣に取り組む時期ではないかというような動きというものが各産業に芽生えてございまして、残業が五十年以降ふえる一方だというような状況が、最近の五十六年に入りましてからの毎月勤労統計など見ておりましても、残業時間は減少傾向というような新しい段階へ入っておるというふうに見られますもので、私どもそのような労使の御真剣な取り組みというものを期待してまいりたいと、このように考えております。
#132
○沓脱タケ子君 そうするとあれですか、厳しい経済環境の中でやむを得ざるということで、所定外労働時間がふえてもやむを得ないと。労使が一生懸命考え出しているから労使に征しておくんだと。労働省何しますか、それなら。なくてもええやないですか、それだったら。
#133
○説明員(小村雅男君) 賃金とか労働時間と申します労働条件の基本の問題でございます、こういうものにつきましては、私どもあくまで労使が自主的なお話し合いの中で解決されるべきものと、このように考えております。もちろん、それぞれのものにつきまして、たとえば最低賃金でございますとか労働時間につきましての基準法の規制、そういうふうなものに違反するものにつきまして、厳正に対処するのは当然のことでございますが、それを上回る問題につきましては、労使の真剣なお取り組みの中で解決されるべきものというふうに考えております。
#134
○沓脱タケ子君 それでね、労働時間を短縮するということについては、労働省の大方針として週休二日制の推進、年休をきちんととらせること等等ちゃんと指導しているんじゃないですか、それは労働条件に関することだから、労働省は踏み込んではならないということで知らぬ顔しているんですか、どっちなんです。あなたの話聞いているとわからない。
#135
○説明員(小村雅男君) 基本的なあるべき姿論といたしまして、労働時間の問題で問題がありますのが、週休二日制の普及がおくれている、あるいは残業時間が長い、あるいは年休の消化状況が悪い等々の大筋のことにつきまして労使に呼びかける、これは当然労働省の責務として私どもやっております。個別的な解決につきまして、しかも御指摘のような大企業での問題につきまして、私ども個別にどうこう申し上げるというのはいかがかと、基本的な線はちゃんと踏まえて私ども物言っていることは先生御承知のとおりでございますが、個別問題へ、しかも大きな企業のりっぱな労働組合あるところまで私ども直接物を言うというのはいかがかと、そういうことを申し上げているわけでございます。
#136
○沓脱タケ子君 あなたのところの、さっき言うた五十三年六月二十三日の基準局長名での通達ではそんなことないですよ。「不合理な長時間労働の排除」、「不合理な長時間労働を常態として行っているものが見られるので、これらに対しては、増員又は交替制の採用等について指導すること。」と、ちゃんと通達出しておるじゃないですか。何言っておるんですか、あなた。局長はこんな通達出して、課長はあんなこと言ってたら話にならぬです、どっちが本当ですか。あんなもの、課長もういいですよ。あなたの話と違うじゃないですか。局長が通達を出しておるんです。何言ってますか。
#137
○説明員(小村雅男君) 私どもが行政の対象として……
#138
○委員長(片山甚市君) まだ指名していませんよ。
#139
○説明員(小村雅男君) 失礼いたしました。
 私どもが行政として力を注ぐべきものは、労働組合がないような中小企業の中での労働条件の問題、それにつきまして指導申し上げるということはございますが、大企業につきましてまで、御案内のような監督官の数でございます。そこまでお世話申し上げられるという立場にもございません。
#140
○沓脱タケ子君 ちょっとえらいこと発見したんですけれども、そうすると、大企業にはこれはもう全然労働省はさわらぬということですか、局長、どっちです。あのね、この通達はそうすると中小企業対策ですか、これは。これにはどう書いてあるかというと、「また、改善指導の結果、増員等が必要となる事業場については、求人開拓に資するため、その具体的な情報を職業安定行政機関に提供すること。」という、こんなに具体的なあれですよ、通達が出ているんですよ。大企業にはやらぬの、中小企業向けですか、これ。そこだけはっきりしておきましょう。
#141
○政府委員(吉本実君) 先生の御指摘の通達につきましては、まさに全産業についてそういう方針を打ち立てているわけでございます。
 いま担当課長が申し上げましたのは、一つの行政指導の行き方としましてそういうウエートを置いてやっていくという趣旨でございます。
 また大企業につきましても、産業別に中央におきまして労働時間会議というものを持ちまして、労使それぞれの代表の人たちとそういった定期的な会合を持ちながら、ただいま御指摘のような問題についても議論をし、それを是正するような形で進んでおるというのが実態でございます。
#142
○沓脱タケ子君 もうちょっとこの辺は大事だからやりとりしたいんですが、それは大企業は労使に征しています、中小企業のお世話だけ見ていますというような話は、そんな話だったらちょっと話違うんですよ。それなら方針を変えて、大企業にも同じく指導しなさいと言わざるを得ない。局長の話で全体をカバーするというものだというふうに言われたから、それはそれとしまして、しかし問題はなぜこういう非近代的な長時間労働がまかり通るかということなんです。いろんな要素が考えられるとは思いますけれども、その根本にはさっき冒頭にお聞きしたようにILO一号条約が批准できないという残業についての規制がないというのが重要な要素でしょう。ことに、その上にいわゆる三六協定ですよね。これが、三六協定はあるけれども、例外規定等があって青天井になっておる。ここにメスを入れなかったらこれはとまらないんじゃないかと思うんですね。私幾つかの三六協定を拝見しておりますけれども、ちゃんと時間数等は決めてますよね。三六協定には時間外労働時間数等は決めていますけれども、あらかじめ組合支部と協議したらそれを超えてもよろしいとか、そういう例外規定があるわけですね。ダイハツの場合にも――私これいま見ているのは東芝のですけれども、ダイハツでもそういうことになっているんです。特に悪いのはダイハツの場合にはこの三六協定を労働者に見せてないんですね、労働者に。これは例外規定があったら、三六協定せっかくやっても残業時間というのは青天井にもう歯どめなしになるわけですから、だからむしろこれだけの三六協定ではだめで、これは協定をやる場合に、青天井になるような例外規定については協議をし直すように、ひとつ勧告をするというふうなことをやったらどうなんだろうか。例外規定を許さないんだという点に歯どめをせめてかけるという指導はできませんか。
#143
○説明員(岡部晃三君) 労働省におきましては、不合理な長時間労働の排除を図るということを目的にいたしまして、昭和五十三年にこの通達が出ました機会に三六協定の届け出様式の一部改正を行ったわけでございます。そこで従来一日についての残業の限度というものと同時に、一定期間における残業の時間を書かせる等々の工夫をいたしまして、その三六協定の適正化を図ろうとしたわけでございます。
 で、このまた機会にこの届け出を、三六協定を届け出をしていただくわけでありますが、その届け出の機会を利用いたしまして監督署の窓口におきまして不適正な三六協定のチェックを行うというふうにしてまいってきておるところでございます。このチェックにつきましては、法律に適合しない不適法な内容のものはもちろんこれはチェックするわけでございますが、著しく長い時間外労働の時間数を書いてきたものにつきましても、必要に応じましてひとつ労使で考え直してくれないか、その上で再提出をしてくれというふうな指導を現に行っております。
 ただ、この指導につきましては全国画一的に行っているというよりも、その地方局管内それぞれにおきまして地域の実情に応じつつ、それぞれの局の工夫をもってやっているという実情でございます。
 一般的にこの協定の時間外労働の長さというのは、これは場合によりましては恒常的な長時間労働を誘発するおそれがあるというものもございまして好ましくないわけでございますが、いずれにいたしましても、三六協定の締結というのは労使間の話し合いによって行われるものでございまして、個々の事業場におけるそのときの事情、背景等もあろうかと思われます。そういうものを踏まえまして、ケース・バイ・ケースで各地域の実情に応じ、指導を行うという方針でまいってきているところでございます。
#144
○沓脱タケ子君 例外規定まで設けるなという指導はやってないということですよね。せめてそのぐらいのことはやらぬといかぬと思うんです。
 余り時間がありませんからもう一つ、長時間労働の恒常化の中で、やっぱり残業賃金の割り増し率の問題があると思うんですね。
 労働白書によりますと、所定外労働の賃金割力増し率というのはわが国では二五%ですね。アメリカでは五〇%が八九・二%ですから、五〇%未満ないんですよね。イギリスでも三五%以上の企業がこれで八〇%ですね。三五%未満の企業というのは六%にすぎない。二五%というのはわが国ぐらいですね。フランスでも五〇%。こう見てまいりますと、わが国の労働時間というのは安かろう長かろうという結果になっていると思うんですが、これは単純に労働時間短縮だけの問題では解決しないと思うんですね。やっぱりその辺もきちんと改善をさせるということが必要ではないかと思う。特に大企業は労働生産性の引き上げ、向上という点では世界一ですよね。だから、労働者にせめて残業の割り増し率を大きくするということが望ましいのはあたりまえだと思うんですね。基本的にはそれは大幅賃上げというのはきわめて大事ですが、先進諸外国と比べてこんなに違いが出てきているという所定外労働の賃金の割り増し率、これを引き上げるような指導あるいは必要な法的措置、そういうことのお考えはありませんか。
#145
○説明員(小村雅男君) 法制上の割り増し率につきましては、わが国はILO条約と同じ一・二五倍で、アメリカの場合は法制が一・五倍になっておるわけでございます。イギリスにつきましては、成人につきましては割り増し率の規定なし、御存じのとおりでございますが、そういう中でわが国の実情を申し上げてみますと、時間外労働につきましては、五十四年のデータでございますが、法定どおりというものが八九%ということ、法定を上回るものが残りの一〇%強、それから休日労働につきますと、法定どおりと申しますものが八三%、残りのものが法定を若干上回っているというような実情がございます。
 そういう中で、御指摘の割り増し牽引き上げの問題でございますが、非常に所定外労働、時間外、休日労働を抑制するという効果も片方に議論としてございますが、やはり賃金が欲しいというような現場での切実な声というふうなものも片方にあるという中で、これは時間外労働の抑制と労働時間短縮にこの問題が役に立つのかどうか。実は五十四年に労働基準法研究会で、この賃金関係の御議論をいただき、報告をいただいてございますが、その場でも、非常に学者先生方の御意見もまとまらない。で、当面法制上の手当て、割り増し率の引き上げというのはそういう労働実態から見ても問題あるのではないか。むしろ労使の間で残業割り増し率がどのようにあるべきか、もう少し議論を深められることを期待するというような報告をいただいておりまして、現在そのような立場で私どもはこの問題見ておるわけでございます。
#146
○沓脱タケ子君 課長の御説明では、政府としては上げるように指導をするというつもりはないと、労使で相談してもらうんだということなんですな。しかし、アメリカでもイギリスでもフランスでも、もう三五%以上あるいは五〇%ということになって、わが国では一番長かろう安かろうという残業手当でしょう。上げるということを考えるべきだということを私は申し上げておきたい。
 それから、年休消化の問題を次にちょっと言いますが、わが国では年休というのがもともと、年次有給休暇というのは少ないんですね。これは皆さん御承知のとおりだから、諸外国と比べて格段に少ないというのはもう申し上げませんけれども、大体よそでは、少ないところで三労働週以上ですね。現在では四労働週あるいは五労働週というふうになってきていますよね。わが国では、基準法では六日でしょう。
 その少ない年次有給休暇が、実績を見ますと、総数で、労働省の統計を見てみますと、半分もとれてないですね、六〇%の人たちが半分以下しかとっていない。だから、総数が少ない上に取得率が物すごく短かい。この年休がとれない根源は何かということが非常に大事だと思うんですね。労働省は、年休は請求権があるのだからとらぬ方が悪いのだと、あるいは中高年の人は年休を活用する習慣が乏しいんだというようなことを言ってるようですけれども、そんなことではないと思うんですよ。
 労働者は年休がとれない理由をどう見ているかといいますと、これは日立電機のアンケートですが、年休のとりずらい原因を三つ以内回答せいというグラフが出ているんです。それを見ますと、第一の理由は人手不足。第二の理由は出勤率の管理。第三の理由は職制がいやな顔をする。第四は査定に響く。
 年休を行使しやすくするための対策はどうだと言ったら、一はムードづくり。二番目は交代要員を確保。三は制度を上司がもっと理解するべきだ。四は必ずとれるように義務づける。こういうふうに思っていると。これはこういう傾向というのは、恒常的な長時間労働の職場では共通した認識になっています。
 問題の核心というのは人手不足なんですね。だから、それを前提とした生産計画と出勤率、たとえば出勤率九六%から九七、八というのは、ここを打開しなかったら年休取得あるいは年休の消化というのはできませんですよ。それは企業は、まあ予算を組む場合に所定外労働賃金もちゃんと予算に組むわけでしょう。年休については前年度実績を基礎にして予算を組んで出勤率定めるんですから、結局前年度年休がとりずらいままでその実績に基づいて組むんだから、これはもう繰り返しになるわけですね。
 たとえば私、大阪の池田に本社のあるダイハツ工業の例を調べてみますと、向こうでは出勤率は九六%ないし九八%なんですね。これで労働者が計算してみると、年休の完全消化はとてもできない。ここは十八日だそうですけれどもね、九六%では十日しかとれないと言うんですよ。十八日あるけれども、初めから八日間は除外されているんだ、出勤率管理の中で。完全に年休消化するためには出勤率九二%・九二%になったら十八日とれるわけです。だから年休の計画的消化なんというようなことを、労働省は方針として御指導になっておりますけれども、こういう生産計画、出勤率まで実情をつかんで御指導になって、あなたの方の局長通達にもあるように、必要であれば人員増も含めて、人員増も指導しなかったら年休取得の徹底した指導というのは実は上がらない。ここまで踏み込んで指導をするべきだと思いますけれども、これはどうです。
#147
○説明員(小村雅男君) 年次有給休暇が、その休暇制度を設けられた本質によりまして消化されるというのが望ましいことは、申し上げるまでもございません。
#148
○沓脱タケ子君 簡潔に。
#149
○説明員(小村雅男君) はい。
 労働省といたしましては、年休の本来の趣旨からいたしますと、連続した長期の方向、ただそれはヨーロッパのような状況と違いますので、日本的な夏休みあるいはゴールデンウイークの暦の間を年休を使ってべた休みにすると、年末年始に年休を使って年末年始の休みを長くする、そういうふうな一斉のとり方というのが非常に職場としてとりやすい休み方ではないか。そういうような具体的な方法を示して年休の消化の――先ほどの先生御指摘のアンケートのムードと、みんなが一斉に休むんだというムードができませんと、やはり職場の左右を見てとりにくい、休みにくいということございますので、そういうものを一斉でやることによって解決できるじゃないか、そこにウエートを置いて行政指導をやっております。
#150
○沓脱タケ子君 本当にそういう出勤率あるいは生産計画にまで踏み込んだ指導ということをお考えにならないと、どうにもならぬなと思いますのは、いま実例を挙げましたダイハツ工業の場合には、年休取得がボーナスだけじゃなしに昇給、昇格の査定の対象になっている。労働省通達で言う不利益取り扱いになっているんですね。労働省基準局長通達では精皆勤手当、賞与の額の算定ということだけを挙げておられますけれども、昇給や昇格にも影響するということになれば、これは労基法三十九条の精神に反するでしょう。不利益取り扱いの是正のために、これは具体的に監督指導するべきだと思いますが、いかがですか。
#151
○説明員(岡部晃三君) 年次有給休暇は一般的に労働者の権利でございます。これを、事実上抑制するような取り扱いがなされることは好ましいことでないことはもちろんでございまして、労働省といたしまして、そのような制度がありますれば、改善方鋭意指導を行っているところでございます。
 御指摘のダイハツ工業でございますが、これは昨年の一月三十日、沓脱先生、小巻先生、橋本先生、その他衆参両院の共産党の先生方から、大企業の労働基準法違反の問題ということで、労働大臣あて申し入れがなされた経緯がございました。その中にダイハツ工業につきましても問題が書かれておりまして、たとえば、現在先生の御指摘になりました出勤率九六%問題等々もございました。私ども早速五十五年三月に監督を実施をいたしたところでございます。その結果、ダイハツ工業につきましては、その三六協定をめぐる法違反の問題がございましたので、これにつきましては是正勧告を行い、是正せしめたところでございます。
 そのほか、労働時間関係について幾つかの点につきまして、これは違反というわけではないけれども、指導を要すると認められた点がございましたので、労働時間管理の適正化ということを中心に置きまして指導を行ったところでございます。
#152
○沓脱タケ子君 それで私は、大企業の生産計画、出勤率についてですが、やはり実態を調査して御指導にならなければならないんじゃないかと思うんです。
 これはちょっと実例を示しますが、豊田系のダイハツ工業の全従業員が持っているカレンダーなんですよ。これには、工場別に皆違うんですけれども、二直制で昼勤組と夜勤組というのでちゃんと丸がついてある。一月から十二月まで、何月何日は自分が昼勤、夜勤というのがわかるように丸がついてあるんです。ちょっと一遍見せましょうか。見ていただいたらいいんです。これはちょっと焼いた分がありますからごらんください。それで、昼勤というのは八時から四時四十五分まで。それから、恒常的な所定外労働時間が一時間半から三時間。夜勤は夜の九時から朝の五時四十六分まで。それで所定外労働時間は、勤務始めに三十分、勤務が終わったときに三十分ないし一時間。こんな、この昼勤組と夜勤組というのは一月から十二月まで自分はたとえばきょうの四月十六日だったら黒丸だから昼勤やと、皆縛られてあるわけです。年の始めに、十二月まで一年間の自分の昼勤、夜勤全部これ決められてしまっているわけです。
 それで、これ大臣おもしろいのは、四月二十九日というのは祝日でしょう。ここは四月二十九日はそんなのはもう全然関係ないんです。祝祭日なんてないんです。勤労感謝の日の十一月二十三日も祝祭日にはなっていない。それをごらんになっていただいたらわかります。こういう状況ですからね。労働大臣、こんなのむちゃくちゃだと思いませんか。もう一月の初めに十二月まで、私は何月何日昼勤、私は何月何日夜勤というのをぱちっと決められて、これはみんな労働者、全従業員持たされているんですよ。そこへ二枚分の資料をお出ししておりますのは、本社工場と京都・滋賀・多田というそれぞれの工場の分をもらっているんですけれども、こういう状況なんです。ですから、こんなことでやっておりますから、なかなか年休なんかとれない。
 だから、ここの工場では驚異的に生産を伸ばしております。労働者一人当たりの生産台数で言いますと、昭和五十年が四十七台、これが昭和五十五年には六十二・三台、三二%ふえている。これだけ見ても、どれだけ合理化、労働強化がひどいか。国際的な自動車戦争の陰に超過密労働があるということです。当然合理化や技術革新もありますが、その主な要素というのは、労働者の超過密労働――ライン労働者及び間接部門労働者も含めてそういう過密労働の中で、半数以上と言いたいですけれども、本当に六割から七割までの労働者というのは腰痛を訴えている。それで、若い労働者なのにはりをしたり電気かけたり、そういう治療を受けざるを得ないというのが実態になっている。こういうこの過密労働の中で、ダイハツ工業では労災隠しと思えるようなことが依然としていまも続いています。
 これちょっと、これも資料を……済みませんが。私が二年前の当委員会で実は御指摘を申し上げたんですが、本社工場で、あれは全社だったか、届け出の労災が五件。ところが職場での安全衛生課の調査では三十件ということになっておるが、労災隠しがあってはならないから調査をしなさいという、調査をして指導するようにということで二年ほど前に御指摘を申し上げました。ところが依然としてそうなんですね。これも資料差し上げましたけれども、こんなのどうなっているのかなと思いますのはね、この差し上げた資料の二枚目、この上から四番目なんか、これは「左瞼上」まぶたの上に裂創を起こして二針縫うている。その下は「右手第一指切創」、これも六針縫うているというからかなりひどい切り傷です。ところがこれ「赤チン」と書いてある。その次のページを見ますと五十六年一月度です、一月度。この一番初めの「顔部額裂傷」というのも「赤チン」なんですね。三番目には「左手第二指亀裂骨折」これも「赤チン」なんです。その下は「両膝切創」、「赤チン」と書いてあるんですが、この両ひざを金属板ですぽっと切ったんですね。だから四針縫うたがら一週間休んだそうです、恐らく歩けないでしょうからね。ところがこのランクは「赤チン」となっている。ここの工場おもしろいのだけれども、「赤チン」、「不休」、それから「休業」と三つのランクがあるらしいのです。「赤チン」というのはどうも赤チンをちょろっとつけたらいいようなすり傷とか、そういう軽微な負傷という意味でしょうけれども、骨折まで赤チンになっているでしょう。
 その次のページを見ましても、第一の「左手第四指指骨亀裂骨折」ですね、手の指。それから三番目も「左手示指骨骨折」です、これは不休ですわね。まあこれ骨折をしたような患者というのは、そんなに手を包帯してもらってぶらぶら振って歩けるような状態と違いますよ、痛くて。これは私前回も申し上げましたけれども、そういう状態というのがずうっと続いているんですね。これは時間の都合で資料全部申し上げられませんけれども。そこで、私は「不休」とかあるいは「赤チン」ということで済ましているというのが余りにも多いと思いますし、これは届け出の義務がないということになるんですが、そうなってくると治療は一体どうしているかということになるんですね。で、労災として扱わないということになりますと、治療は当然しなければならないので、治療は健康保険で治療している疑いがあるわけですね。
 で、厚生省おいでいただいていると思いますが、ちょっとお伺いをしたいと思いますけれども、業務上の疾病で健康保険で治療はできますか。
#153
○委員長(片山甚市君) 時間が来ましたから簡略にお答えを願いたいと思います。
#154
○説明員(川崎幸雄君) 健康保険は業務外の傷病を給付の対象にいたすものでございますので、業務上によって発しました傷病については給付をすべきではありません。
#155
○委員長(片山甚市君) 時間が来ましたから簡単に。
#156
○沓脱タケ子君 時間ですので、まとめますから。
 業務上の疾病を健康保険で診療しているということになれば、これは明らかに法違反だと思うんですが、これはまあ時間もありませんから、厚生省では一遍そういう疑いがありますから調査をしていただきたい。
 それから労働省にお聞きをしたいんですが、その点については依然として労災隠しのおそれがあります。また健康保険で治療している疑いがあるんです。これは時間がありませんから詳しく言いませんけれども、職場の安全衛生委員が負傷者を連れていっているんです、病院へね。これは労災にしてくれ、これは健康保険にしてくれと、現に言っているんだから、その疑いは濃厚なんです。
 そこで、労働省としてもそういうことをやめさせるようにしませんと、きちんと指導しませんと、明らかに労災隠しになったら労災の掛金安くて済むでしょう。しかも統計には出てこないわけだから、労炎の実態というものが明らかになりません。負傷した、労災で受傷した労働者が心身を守られるということもできません。そういう点でこれは厳しく実態を調査をして指導するべきだと思いますが、いかがですか。
#157
○政府委員(吉本実君) 一昨年の先生の御指摘を受けまして、現地の所轄局署で十分指導しているところでございますが、労災隠しということは私どももあってはならないことでございまして、そういうことの撲滅のためには十分配慮していかなければならぬと思います。ただいま御指摘の内容につきましては、さらに重ねて現地にも連絡して指導させるようにしていきます。
#158
○柄谷道一君 労働行政の当面しております重要な諸課題につきましては、去る四月九日の本委員会の質疑の中でも私が指摘したところでございますが、本日は今後の労働基準行政等のあり方を中心として質問したいと思います。
 現行の労働基準法は戦前の工場法の伝統を受け継いで立法化されたという経緯があり、端的に言いますと、本工を主たる政策対象とした工場労働者法と、そういう傾向が強いと認識をするものでございます。法律の組み立て、法の解釈、適用もこれを中心に据えて運用されてきたという、そういう受けとめ方をするのは私はかりではないと思うのでございます。
 しかし、一九八〇年代の労働市場の構造の変化、特に私は四月九日の本委員会におきまして、今後の高齢者の継続雇用の形態につきましてはきわめて多様な姿があらわれてくるのではないかと指摘をいたしました。たとえば欧米等を見ましても、本工に比べまして休日数が非常に多いとか一日の労働時間数が短いとか、そういう形での継続雇用形態が非常に多くなっておるのは欧米の実態でございます。また、臨時、パートタイマー、社外工、派遣労働者の増大、これは大きな変化の実態でございますし、かつ労働基準法制定当時と比べますと、第三次産業雇用労働者が非常に増加しておりますことも大きな変化であろうと思います。このような雇用関係、労働の態様、勤務時間帯、休日休暇制、賃金形態等の面におきまして、製造業の本工をモデルとして賃金、労働諸条件の公的規制と保護を行うことがきわめて困難な実態になりつつあるというのが実態であろうと、こう思うのでございます。こういう大きな変化の中で実効を上げるということは、現行基準法をもってしては限界にいま達しているのではないか。今後ますますそういう傾向が強まることが予想されておるのでございますから、私はこの際、新しい労働態様の現実に即した労働基準法のあり方に改めていく、それが必要な時期ではないかと思いますが、まず大臣の基本的な御認識をお伺いいたします。
#159
○国務大臣(藤尾正行君) すべての法はそうでございますけれども、法をつくりましたとき、そのときからその法律はもうおくれていっておる、情勢の進歩の方が早いということはございますから、おっしゃられるとおり三十年前につくられました基準法といいまするものが、あらゆるその後の経済的社会的諸条件、こういったものに適応できるというようなものでは私はないと、かように考えます心したがいまして、その時点時点におきましてこれを補完をいたしましたいろいろな考慮が必要であるということはもちろんでございますけれども、さてここで、それでは基準法自体を基本的に考え直すかということになりますと、これは労働法規といたしましては最大の法典でございますから、これを変えるということはよほどの準備と、そうしてその過程におきまする詰めを必要とすると、かように考えます。
 したがいまして、このことは恐らく労働省におきましても十二分に考えてその準備は進めておろうと思いますけれども、いまのところはこの三十年前の労働基準法を補完をいたしまして、できるだけその時勢におくれることのないようにという配慮を持って当たっておると、かように考えております。
#160
○柄谷道一君 大臣の認識は承知をいたしました。
 そこで、日本の代表的民間産業の労使代表と中立委員たる学者をもって構成されております社会経済国民会議が昨年三月二十五日、私がただいま申しましたような労働市場の大きな構造変化に対応するために、臨時工、パートタイマーに対して提言を行っております。その内容によりますと、「展用契約の文書による締結を促進し、賃金・労働時間・交替制・雇用期間などの明示を使用者に義務づけると同時に、この種のタイプの労働者の労働の実態に適合性をもつ「特別就業規則」の制定の行政指導を政府は強める必要がある。これによって労働基準法上の労働者保護や各種の労働立法の適用が可能となる途が開けることは確かである。」労使、公益一体の提言でございます。このような提言を行いまして、基準法の法条文の整備、改定、その運用を改めるべきであると求めております。
 この政策提言に対して労働省はどう評価し、これをどう受けとめて対処しようとするお考えか、お伺いいたします。
#161
○政府委員(吉本実君) ただいま先生から御指摘の社会経済国民会議からの提言の趣旨につきましては、まさに八〇年代の労働行政の運営に当たって大変貴重な参考と思いまして、そういった御意見として拝聴しているところでございます。
 提言でも指摘されておりますように、近年、特に第三次産業を中心にしましてパート等の短時間労働者が増加しているわけでございまして、労働省としてもこれに対応して、これらの労働者の労働条件の確保のために、労働条件の明確化ということを重点に、労働契約なりあるいは労働時間管理の適正化、また就業規則の作成、こういったことについて指導監督に努めているところでございます。
#162
○柄谷道一君 指導監督に努められましても、なかなかこの解決ができないんですね。私はしたがって、この提言にあります特別就業規則の制定等はやはり法条文の中に明示する、それが今後の方向ではないかと、こう思いますが、いかがですか。
#163
○政府委員(吉本実君) 先ほど申しましたように、パート等の短時間労働者の問題につきましては、そもそも労働時間管理自体のところから出発していかなきゃなりません。そういう意味で、就業規則の作成そのものから始めていくというような形で、現在、そういった方向で指導をしているというところでございます。
#164
○柄谷道一君 締めの意見は最後に申し上げたいと思います。
 これに関連いたしまして同社会経済国民会議は、現行の基準法で定める各種の女子労働者への保護規定につきまして、出産保護などの母性保障の充実を求めますと同時に、保護規定の緩和ないし撤廃の方向を示しております。これによりますと、「女子が保護されていることは、男子が差別されていることを意味しているから、女子を男子並みにするのではなく、男子を女子並みにする方向で労働基準法を改正することである。労働時間の短縮と、ワーク・シェアリングによる雇用の拡大が強く社会的に要請されていることをふまえるならば、男女ともに週四〇時間制に変更すると同時に、労基法三六条によって、ほとんど無制限に時間外労働を延長できる現状は改めなければなるまい。それは現行の女子並みとはいかないまでも、残業時間の上限規制を加えることが必要である。深夜業については、医療・電力・ガス・水道・運輸・通信業などの公益事業や社会福祉関連事業と、一部の装置工業について例外的に認め、原則禁止が労基法の改正方向とならう。」、具体的に男女を同一という方向に沿う基準法改正の方針を、これまた公益労使三者が一体となって方向を示唆しておるわけでございます。これに対する御評価をお伺いいたします。
#165
○政府委員(高橋久子君) 婦人労働者の問題から申しますと、先生が御指摘のように労働基準法制定当時から、大変実情が変わっているわけでございます。そのような状況の中で、この社会経済国民会議から出されました提言というのは、大変今後の法制のあり方に対しまして多くの示唆に富む御意見であるというふうに考えているところでございます。私どもも、現在の婦人労働法制のあり方というものは、最近の婦人労働の実情を踏まえて法制のあり方というものもあるべきであるというふうに考えられますので、現在、審議会において審議が行われているところでございますので、この審議会の御審議の結果を踏まえて、婦人労働法制が現状に即したものになっていくようにということで考えているところでございます。
 なお、女子につきまして特別の措置をとるということがいろいろ問題があるので、それを男子並みにするかどうかということでございますが、この点につきましては、言うまでもなく、労働条件一般が向上していく中で、男性と女性の規制のあり方というものも考えていくという方向につきまして、私どももそのように考えているところでございますが、男子一般の労働条件につきましては、私からお答えするのは適切ではないと存じますので、以上の御答弁にとどめさせていただきます。
#166
○柄谷道一君 いま大臣、私二つの点から問題の指摘を行ったわけでございますけれども、両局長とも、きわめて今後の方向を示唆する価値のある提言であると、こう評価されたわけでございますけれども、私も全く同感でございます。この際大臣としてのひとつこの二点に対する御意見を賜りたいと思います。
#167
○国務大臣(藤尾正行君) 不敏でございまして、私はこの社会経済国民会議からの御提言といいまするものをしさいに検討したことはございませんのでよく知りませんけれども、しかしながら、ともかく専門家の基準局長なり婦人少年局長が高く評価すると、こう言っているんですから、私どもといたしましても当然高く評価しなければならぬ、こういうことであろうと思います。ただ、私はちょっと気に食いませんのは、男女平等という原則を私どもは推進していくのはごくあたりまえのことだと考えておりますけれども、そのために、男性の就業基準といいまするものを女子並みにせよというようなことが仮にあるとすれば、それはきわめておかしいわけでございまして、私は逆に、できれば御婦人の立場も、母性保護といいまするものを除きまして、やはり平等の立場にお立ちになられるならば、女子の方を逆に男性並みに変えていただくという御配慮があってしかるべきではないかという私は感じがいたします。
#168
○柄谷道一君 これは感じで私が反論しておりましたら、これだけで時間がとられてしまいます。これだけりっぱなものができているんです。このメンバーをごらんください。本当にこれ超一流の労使と学者が集まっての提言です。私は大臣が日を通しておられないで、勘で言われることに対してなかなか反論ができませんので、これは大臣ひとつ、すみからすみまで目を通していただいて、今後のこれが労働基準行政の方向を一体どうしていくかというきわめて貴重な提言でございますから、それを熟読された上での、改めてのまた大臣の御所見を、機会を改めてお伺いをいたしたい。ただいまの大臣の御所見につきましては、聞きおく程度にとどめておきたいと思います。
 そこで私は、育児体職制度の問題について質問しようとも思っておったんですが、公明党の渡部委員から質問がございましたので重複を避けます。しかし、最近勤労婦人の増大、職場進出という実態を考えますと、片やベビーホテルの横行、こういった一般の情勢を考えますと、私は基準法で有給ということを規定するかどうか、これは非常にむずかしい問題でございますけれども、一歩後退をして、有給、無給の扱いは仮に労使間の交渉にゆだねるとしても、育児体職制度そのものをやはり法制化して明文化する、これはやはり、今後の大きな婦人対策の基本にならなければならないと、こう思うのでございます。果たして奨励措置だけでいいのかどうか、このことに対しても私はメスを入れなければならぬ時期に至っているのではないか、こう思います。この点に関しましては関連でございますので、私の意見ないしは指摘だけにとどめておきたいと、こう思います。
 そこで今度は、労政局長にお伺いするわけでございますが、これは労基法とは直接の関連はないと思いますけれども、「労働組合は、臨時、パートタイマーの組織化に努めることが強く期待される。その際同一事業所内で働くものについては、本工を含めた雇用・解雇協定を経営と締結し、同一組合員とすることも十分配慮すべきだ」、これもこの経済国民会議の提言の中に盛り込まれているわけでございます。もちろん労働組合の組織、範囲をどうするか、これは労働者みずからが決定すべき問題ではございますけれども、私は臨時、パートタイマーの雇用の不安定というものを取り除くためには、そういう視点からの行政指導というものがあってしかるべきではないか、こう思うのでございます。この点、局長いかがでございます。
#169
○政府委員(細野正君) いま先生からお尋ねがございましたように、一般論なりあるいは労働組合の運動論、組織論という立場から見まして、いま御指摘のように臨時工やパートの労働者を含めまして、その身分の安定のために、本工と同一の労働組合に加入ができるようにするということが望ましいという議論は、十分あり得る議論であるというふうに私どもも考えるわけでございます。しかし、同時にこれまた先生もよく御存じの上でおっしゃっているわけでございますけれども、労働組合がどういう範囲を自分の組合員にするか、それから、労働者がまた逆にどういう労働組合への加入を選ぶか、これはいずれも労働者の自由であり、かつ労働組合の自治の問題でございますので、先生のお話のように、政府が指導するというのはやはり適切ではないんじゃなかろうか、そういうふうに考えるわけでございます。
#170
○柄谷道一君 指導がまずいということであれば、一つの方向を参考として示すということは考えられませんか。
#171
○政府委員(細野正君) 公の立場におきまして、これに対していずれにしても介入の印象を与えるような方法をとるのは適当でなくて、むしろいろいろな接触の機会に、そういうことも検討の一つの問題ではないかというふうな、そういう接触の場を利用したやり方が、一番この種の問題としては望ましいんじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。
#172
○柄谷道一君 私は、労働省はいろいろ産業の代表と懇談をする機会を持ち、そういう機会を通じて労働時間の問題、定年の問題、いろいろこれも定年制と言えば労使で決めるんですよね、これね。労働時間の問題も労使で決めるんですよ。しかし労使で決めるべき問題であっても、そういう方向が望ましいということを話しつつ、あるべき方向に労使関係を誘導していく。これは間違った方向に誘導するならば問題でございますけれども、私はそういうことに対して、何もちゅうちょする必要はないと思うのでございます。これも水かけ論になるかと思いますけれども、せっかくの貴重な提言でございますから、こういう労使、公益の機関がこういう提言をされておるんだよと、これを参考にして皆さんお考えなさいということぐらいは、私は労政局長として機会を得てPRすることは、当然職務の一つではないかと、こう思いますから、ひとつ勇気を持ってこれはがんばってください。注文しておきます。
 そこで、次に問題を進めまして、これも私は三月三十一日の予算委員会の分科会で派遣労働者問題について、主として職安局長を中心に御質問したわけでございますが、抜本的な関係法規の見直し、検討はいま精力的に進められていると思います。しかし、私はこの基準行政の中においてもやはり、就業規則制定の義務づけとか、請負契約書写しの提出義務。就職前健康診断と安全教育、常用雇用契約の義務づけ。さらに賃金台帳、労働者名簿への記載の問題。雇用契約書の締結の問題。派遣労働者の派遣先の明記の問題。雇用管理者の選任の問題など、労働基準監督行政を強化する中で、この問題の改善を図っていくという道はまだまだ多く残されているのではないかと、こう思います。必要に応じてこれは労働基準法を整備し、使用者としての責任を明確にすることを目指しながら、当面の行政というものについてもさらに強化を図るべきではないかと、こう思うんでございますが、いかがでございますか。
#173
○政府委員(吉本実君) 労働者派遣事業の問題につきましては、ただいま先生御指摘のように、公労使等で構成されております労働者派遣事業問題調査会、ここで鋭意検討が続けられているところでございます。その中の基本的視点の一つとしまして、派遣労働者の権利利益の保護、こういった問題も取り上げておられるわけでございますので、こういった点の御議論を踏まえまして、私どもも対処してまいりたいというふうに思っております。
#174
○柄谷道一君 次に労働時間の問題でございますが、労働白書によりますと、年間総労働時間は欧米諸国と比べてきわめて長いと、こう指摘されております。ところが、この二月に発表されましたILO調査によりますと、アメリカやスウェーデンに比べると長いが、他の先進諸国より日本の労働時間は短いという調査結果が発表されております。事実、真実は一つしかございません。にもかかわらずこの二つの見方が出ておるわけでございますが、労働白書とILO調査との間で相違が出てくるのは、どこに原因があるんでございますか。
#175
○説明員(小村雅男君) 技術的な問題でございますので私から御説明さしていただきますが、ILOはみずから統計調査をやる力を持っておりませんで、各国政府がそれぞれの国で調べた労働時間の数字を報告いたします。それを整理するということをやっているわけでございます。したがいまして、各国の労働時間の統計がどのようになっておるか、時計の針は二十四時間でございますが、労働時間の統計は国によってまちまちでございます。
 一、二のたとえだけ申し上げさしていただきますが、実際の労働時間を調査している国、これはわが国がそうでございますが、アメリカとか西ドイツは年次有給休暇として賃金を払った時間を実際の労働時間にオンして調査してございます。これは労働時間の定義の区分でございます。
 それから労働時間をいつ調べるかということでございます。わが国とかアメリカとか、これはもう毎月調べている、非常に正確に調べでございます。国によりますと、特定の十月一カ月だけとか、あるいは四半期に一回だけとか、しかも、四半期に一回というような調査はわりあいヨーロッパに多いのでございますが、一番皆さん夏休みで休む七月、八月というのは大体調査時期になっていない。各国の調査はこのようにまちまちでございます。
 したがいまして、ILOの統計をそのまま横並びに数字だけ見るということは意味がないということで、この二月の二十日でございますか、各紙の夕刊に出ましたILOの数字というものは、私どもは、それぞれの国の動きを見るというのに有効であるけれども横並びの比較は適当でないと。このことは十数年来前から労働省では指摘しておりまして、そのために各国のデータを使いましたいろんな推計をやっております。そのような状況でございます。
#176
○柄谷道一君 いま課長か言われたような事情はあると思うんですけれども、私はそのほかに、欧米諸国と日本との間に差が出てくるということには、一つは欠勤率の相違、日本は欠勤率が低いわけですね。それから第二には、完全週休二日制の普及率が低い。日本は二三・五%、欧米は約八五%でございますからここに一つの要因がある。第三には、年間所定外労働時間が長い。第四には、年次有給休暇日数が少なく取得率が低い。こういった事情も絡まってきているのではないか、こう理解しておるのでございます。
 そこで、週休二日制の普及定着を推進する、これはもちろん必要でございます。と同時に、昭和六十年度に年間絵労働時間を二千時間以内に抑えるという労働省の目標を達成するためには所定外労働に対するあり方にメスを入れる必要があるのではないか、こう思います。労働省の統計を見てみますと、昭和五十一年までは年間総労働時間は順調に減少してきております。ところがそれ以降は、一転して増加基調に転じておるということが明らかでございます、私は、これは第二次石油ショック以降企業が減量経営のために努力した、景気が回復しても雇用を増さずに既雇用者の残業、休日出勤等の実労働時間の延長で対処してきたということを傾向として物語っていると受けとめるのでございます。私は、こういう実態の中で適正な労働行政の指導がなければ、労働省の時短の目標は果たして達成されるのであろうか、こういう大きな疑問を抱かざるを得ないわけでございます。さきに労基法そのものの見直しを指摘したわけでございますけれども、これらに対する御所見はいかがでございますか。
#177
○政府委員(吉本実君) 昨年十二月に策定いたしました週休二日制等労働時間対策推進計画におきまして、昭和六十年までに到達すべきわが国の労働時間の水準というものを平均的一般的労働者として年間総実労働時間が二千時間を割る、こういう姿を想定しているわけでございます。先生ただいま御指摘のように、年休の消化あるいは所定外労働時間のチェック、そういったこと、またそういったことを中心としながら行政指導を進めていくわけでございますが、何にいたしましても労働時間に対します労使のコンセンサスの形成がやはり重要でございます。従来の賃金だけではなくて、労働時間についても、そういった点が十分配慮されるというようなことで改善が進みますれば、こういった二千時間以内という姿に到達することも、労使の積極的な取り組みで十分可能ではないかというふうに思っている次第でございます。労働省としましても、こういった方向にいくように環境を整備し、おくれているところの行政指導を強めていく、こういうふうに考えているわけでございます。
#178
○柄谷道一君 私は、民間産業が二回にわたる厳しいオイルショックを乗り切るために努力しておる、これは実態でございます。しかし、労働省の昭和六十年までの雇用目標、これ片や二千時間を割るように労働時間を短縮しよう、そしてこれを雇用の創出と結びつけながら、完全失業率というものを漸次改善していこう、これは二者一体の目標なんですね。したがって、軌道を大きく修正させていくためには、やはり私は強力な行政指導というものがない限り、この目標を達成することは非常にむずかしいと思うんです。こういう点で、御努力を全然、私否定するものではございませんけれども、もっとこれは馬力を入れてぐいぐい引っ張っていくという姿勢を示さないと、これできるものじゃないですよ。この前大臣は、定年についても昭和六十年に必ずやってみせますと、大変な勇気ある発言をいただき、きょうも他の委員に対して非常にそういうトーンの高い答弁をしておられましたけれども、大臣の声の大きさだけでは達成できるものではありませんから、具体的な私は行政指導というものを強力に積み重ねていただきたい、こう思います。局長どうです。
#179
○政府委員(吉本実君) 先ほども申しました週休二日制等労働時間対策推進計画を一つのてこにいたしまして、労使がそういった積極的な取り組みにいけるような環境を整備をしていくということを基本にしておるわけでございますが、私どもも当然いろいろな方面にそういった点の行政指導を強めていく。たとえば中央につきましては、中央のいろいろな業種別の労働時間対策会議、労使を交えてのいろいろ問題点を整理し、どうやったらこれは解決できるかということを探求し、またその改善策を図っていくということ、あるいは地方の段階におきましても、地域的あるいは業種別の会議をグループ別につくりまして、そこで具体的な、実際にどうやったら進むのかというところに着限をしながら行政指導を進めていく、また、何と申しましてもこの問題は労使の取り組みを促進する場合に、やはり国民一般の御理解も得なければならないということで、そういった方面のPR等にも十分努めていかなけりゃならぬということでございまして、先生おっしゃるように、私どもとしましても馬力を上げてこれに取り組んでいくという姿勢でございます。
#180
○柄谷道一君 次に、年次有給休暇の問題でございますが、取得率が低い、これはもう現実でございます。私は、基本的にはやはり適正要員の確保ということがその基本に据えられなければならぬと思いますが、そのほかに第一の理由は、年次休暇を利用すると賃金、労働条件に不利な影響が及ぶということが挙げられるんではないか。これは労働省が昭和五十三年に実施いたしました労働時間等に関する調査監督結果、これを見ますと、調査対象事業場の一・七%が、年次休暇の取得が賃金等に不利な影響を及ぼす、としておるということを、これは問題視しなければならぬと思うのでございます。これは厳密に言いますならば、明らかに労働基準法の違反ということになろうと思います。しかし、そういう実態がなおかつあるというのが動かし得ないこれは事実でございます。
 それから第二の理由は、私傷病休暇の保障がないために、年次休暇をその予備として保留しているという現実に留意しなければならぬと思うのでございます。この三月に政策推進労組会議が発表いたしました地方行政調査を見てみますと、地方公務員には有給の特別休暇は四十種類以上ある。私傷病休暇は九十日から百八十日、看護休暇が二ないし三日、研修会等のスクーリング休暇六週間、つわり休暇七ないし十日間、このように民間で普及していない休暇制度が非常に多いわけでございます。
 片や、年次有給休暇の取得すら労働条件に不利な影響をもたらすんではないかというような気持ちで、年次休暇の取得すらためらっておるというこの民間の実態に比べまして、地方公務員、これは余りにも大きな官民の格差ではないかと思います。こうしたあり方につきましては、私は本日の直接のテーマではございませんし、別途行財政の改革の中でいかなる姿が望ましいのか、これにつきましてはメスが入れられるべき問題であろう、こう思いますけれども、年次有給休暇のこの取得の実態ということを踏まえますならば、私はせめて民間に対しても有給の私傷病休暇、これは年間せめて三日ないし七日程度の休暇を制度化する、そのことによって年次休暇の取得を容易にするという配慮が実態論から見て必要ではないか、こう思うんでございますが、いかがでございますか。
#181
○説明員(岡部晃三君) お尋ねの第一点は、賃金、労働時間に不利な影響が及ぶから年次有給休暇が取得しにくい、できないというふうな御指摘でございます。これは労働基準法違反であるというふうにおっしゃるわけでございますが、これは私ども相当議論をした点でございますが、そのことは、直ちには労働基準法違反にはならない。なぜなれば、その年次有給休暇をとらせないということであれば違反を構成いたしますが、直接的な効果ではございませんので、違反ではない。しかしながらこれは基準法三十九条の精神に照らして好ましいものではないという割り切りをいたしまして、御指摘の五十三年の通達におきましてもその旨を明示いたしまして、その改善指導方につきまして通達をしたところでございます。この努力は今後とも当然続けてまいる所存でございます。
 それから第二点の、私傷病に対しまして保障がないために、年次有給休暇を予備として留保しているのではないか、その点は確かにおっしゃるような実態があろうかと思います。ただ、この私傷病の休暇制度を設けるかどうかということにつきまして、これは大きな問題でございまして、これは有給無給を問わず、相当のコンセンサスを得なければそのような制度化ということは、法制度としてはいまのところなかなかお答えをできる用意はないわけでございます。当面はそれぞれの企業の実情に応じまして、労使間において検討を続けていただきたいというふうに考えているところでございます。
#182
○柄谷道一君 次に、労働基準法第四十条で特例措置が講ぜられておりました職種の労働時間につきましては、一月二十一日の中央労働基準審議会の答申を踏まえまして、経過措置のほか、施行後二年間の指導期間を置く等の配慮が加えられてはいるが、原則として特例を廃止してほぼ企業種にわたって一日八時間労働の原則を実施するという方針が打ち出されたと理解いたしております。
 もちろん労働者十人から五十人の商業・サービス業、小規模郵便局、警察官、消防職員は五十八年四月一日施行、一人から九人の商業・サービス業や運輸貨物関係も特例はその後も認められますが、これも昭和六十年三月末をもって特例がなくなる、この時点ではすべて特例が廃止されるわけですね。
 そこで、私お伺いしたいのは、労働省は昭和六十年度年間総労働時間二千時間以内という政府目標を設定されておりますね、この六十年度には特例業種全くなくなってくるわけです。これとの関連で、一体どのように今後御指導されるわけですか。もう特例を廃止してあとは八時間でいい、これなら二千時間達成されませんわな、これはいつまでも捨て子で置いておかれるのかどうかということでございます。
#183
○政府委員(吉本実君) 週休二日制等労働時間対策推進計画の目標でございます昭和六十年度に二千時間を割るということを言っておりますが、これはあくまでも一般的、平均的な姿でございまして、全産業ごとにこの水準の実現を求めるというわけではございません。計画では、産業なり企業の実情の違いに応じまして、制度面なり実態面からして労働時間の改善を進めていこうと、こういうふうにしているわけでございます。
 それで、ただいま先生お話しございましたように、私ども制度的に他の業種よりも長い労働時間を認めておりました特例対象業種につきまして、労働基準法施行規則を改正して、法制上も他業種並みにしていくというふうにしているわけでございますが、こういった特例対象業種は、この新しい推進計画におきましてはそれぞれの企業の段階に応じましていろいろグループ分けをしておりますが、いわゆるDグループに属しておりまして、特例廃止はDグループの労働時間対策としても有意義であるというふうに思っておるわけでございます。
#184
○柄谷道一君 私がお伺いしていますのは、いわゆる特例外の業種ですね、いまの特例。外の業種は、労働省は一年間二千時間以内という目標で指導されていくわけですね。一方、おくれて今度は特例業種が六十年度には完全に最低週四十八時間労働制がしかれると、いわゆる一歩おくれてきておるわけですね。問題はそれでいいのですかということですよ。その後引き続いて特例ではないという位置づけですから、やはり他の産業並みに二千時間、そして他の産業がさらに短縮されれば、それに見合って今度は一列に並んでいけるように指導していくというのが労働行政のあり方ではございませんか。
#185
○政府委員(吉本実君) 特例業種の問題につきまして法樹上の整備をしているということは、こういった推進計画を実施していく流れの一つとして考えているわけでございまして、そういう意味で、先ほどDグループに属して、その中で全体として労働時間の改善を図っていこうと、こういうふうに考えているわけでございます。
#186
○柄谷道一君 私は時間の関係で、きょうは非常に主要な点だけ質問をいたしまして、今後の労働基準行政のあり方について御意向を賜りました。この一つ一つの指摘、いずれもこれ重要な問題を含んでおるわけですね。しかし、勇気を持ってこうした問題にメスを入れ、確かに労働大臣言われましたように、労働三法の一をなすきわめて重要な法律ではございますけれども、やはり時代の変化というものに対応する法律というものに改めていかなければ、労働基準法の目的とする労働者の保護というものを全うすることができない、こう思うのでございます。理状に流されることは容易でございます。しかし、時代の変化に即応していこうということについては、大変な勇気と決断を要する問題であろうと思います。
 いま直ちにとは申しませんけれども、私は労働大臣が労働基準法の抜本的見直し、あるべき基準法の姿を求めて、その検討を強力に進められるように要望するものでございますけれども、これに対する御答弁をお伺いいたしまして、時間が参りましたので質問をこれで終わりたいと思います。
#187
○国務大臣(藤尾正行君) 冒頭に申し上げましたとおり、法律を絶えずアップ・ツー・デートの情勢に適合せしめるということは当然の私どもの任務でございますから、それを、法律を絶えず直していくということによってやるのか、あるいは法律の基本自体を変えていくということを考えるのか。その辺のところは、これはそれぞれの労働省の専門的な者がおるわけでございますから、これらに命じまして万遺憾なきを期せしめます。
#188
○柄谷道一君 終わります。
#189
○委員長(片山甚市君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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