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1980/01/29 第94回国会 参議院 参議院会議録情報 第094回国会 本会議 第3号
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1980/01/29 第94回国会 参議院

参議院会議録情報 第094回国会 本会議 第3号

#1
第094回国会 本会議 第3号
昭和五十六年一月二十九日(木曜日)
   午前十時五分開議
    ―――――――――――――
#2
○議事日程 第三号
  昭和五十六年一月二十九日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る二十六日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。瀬谷英行君。
   〔瀬谷英行君登壇、拍手〕
#4
○瀬谷英行君 私は、日本社会党を代表して、さきに行われました鈴木総理大臣の施政方針演説を初め関係閣僚の演説に対し質問をいたします。
 国会の開会に先立って発表されました五十六年度一般会計予算案は、いままでになく政府の考え方を端的にあらわしている点で特色があります。総額四十六兆七千八百八十一億は、前年度当初予算に比較して九・九%の伸びとなっておりますが、国債の二兆円減額と引きかえに一兆三千九百億という思い切った大増税が待ち構えております。
 このような予算の中で、防衛費の伸びはついに戦後初めて社会保障費の伸びに追いつき、追い越しました。確かに数字の上では、社会保障費、公共事業費、文教科学振興費に及びませんが、後年度に幅を広げて尾を引いていく防衛費の伸び方に不安を覚えないわけにはいきません。
 引き締めの厳しい他の予算に比較をすれば、かつては遠慮がちに補助席に座っていた防衛予算が、いつの間にか特別席におさまるようになったという感じを強くするのであります。やがて特別席から昇格して予約済みの指定席になったら、国民生活はどうなるだろうと心配せざるを得ません。
 渡辺大蔵大臣の言によれば、昭和五十六年度予算は財政再建元年の予算だそうですが、別な言い方をすれば、増税元年であり、また防衛元年でもあります。
 このような予算を念頭に置いて、政府の政治姿勢からまず質問をいたします。
 ことしは太平洋戦争の開戦からちょうど四十年になります。いまや、戦中戦後の苦難と屈辱の時代を知る人は少なくなりました。しかし、われわれはあの苦痛に満ちた体験の歴史を決して忘れてはならないし、繰り返してはならないと思います。
 四十年前の総理大臣だった近衛文麿氏の上奏文が国会図書館にありましたが、それによりますと、この年の十月、前文は省略いたしますが、東条陸軍大臣は近衛総理の意に反し、以下原文のとおり読み上げますと、対米開戦を決意すべきことを主張してやまず懇談四たびに及びたるもついに同意せしむるに至らず、ここにおいて臣はついに所信を貫徹して輔弼の重責を全うすることあたわざるに至れり、これひとえに臣が非才のいたすところにしてまことに恐懼の至りにたえず、仰ぎ願わくば聖鑑をたれたまい臣が重職を解きたまわんことを、とあります。
 ここで近衛内閣から東条内閣にかわり、十二月八日の開戦から敗戦に至る経緯は改めて申し上げる必要もないと思います。近衛上奏文は、シビリアンコントロールのむずかしさを何より如実に物語っております。
 鈴木総理はその演説で、「わが国の防衛は、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国とならず」と述べておりますが、自民党内には憲法を改めて自主憲法を制定すべしとの主張が根強くあると聞いております。閣僚の中にも改憲に熱意を示す人があり、ねらいは九条にあることが公言されております。そして、厳しい制約の中の予算でも防衛費だけは別格にしようとする圧力が内外からあります。将来いかにしてシビリアンコントロールを守り、所信を貫いていかれるのか、再び近衛内閣の轍を踏まないためにはいかにすべきか、総理の決意のほどを伺います。
 太平洋戦争は莫大な犠牲を払い、日本は有史以来初めての敗戦を経験しました。この戦争の責任は、開戦を主張し実行した東条元首相が免れることはできないと思います。ところが、戦犯として処刑された東条総理を初め、この戦争の推進者であり責任者だった人々が、犠牲となった戦死者と一緒に靖国神社に合祀されております。閣僚の靖国神社公式参拝以前の問題としてこのことをどう思われるのか。また、太平洋戦争の犠牲者は軍人軍属に限りません。広島、長崎、沖縄、東京を初め、国内から海外に至るまで実に多くの不幸な犠牲者を出しております。このような多くの戦没犠牲者全部の慰霊の方法を宗教色を離れて考えることが必要なのではないかと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。
 総理は、政治の倫理を確立し、行政の綱紀を維持することを強調されました。まことにそのとおりだと思います。しかし、それならば、なぜ航空機特別委員会の廃止を認められるのでしょうか。すでに衆議院では廃止されました。ところが、ロッキード裁判は終わっておりません。この種の問題は、国民の疑惑を解くためにも、裁判とは別に特別委員会で取り上げてしかるべきだと思います。いま参議院でも、自民党はこの委員会の廃止を主張してやみません。これでは臭い物にふたをすると疑われても仕方がないと思います。総理の言う政治の倫理を確立し云々という所信とは矛盾しないのでしょうか、お伺いをいたします。
 また、建国記念の日に対する政府の対応についてお伺いしたいと思います。
 この日を制定することについては大変論議があったことを記憶しております。提案者側の動機に紀元節の復活があったのかどうかは定かでありませんが、しかし、審議の過程で紀元節の旗色が悪くなっていったことだけは確かであります。第一に、紀元節なるものが、明治になってから時の政府の富国強兵政策と表裏一体となって創設されたものであること、第二に、科学的、歴史的事実関係としてはすこぶるあいまいで信用しがたいこと、第三に、二千六百数十年の年数にしても、神武天皇の神話にしても、事実を証明する方法、資料を求めるすべがないこと等々、要するに野党の追及に対して政府も説得力に欠け、公式記念日とするだけの自信を持ち合わせなかったことから、結局、神話をもとにした建国記念の日ということでお茶を濁すことになったのが経過であります。
 したがって、復古趣味の人が集まってこの日を祝うのは勝手でありますけれども、崩れてしまった神話を復活させて国民に信じ込ませようとしても無理な話であります。ことに、二十一世紀を迎えようとしている昨今、とうてい現代の人々にはなじまないでありましょう。文部省が後援をすれば文部行政の権威を失墜するだけではないかと思うのでありますけれども、政府の見解を伺いたいと思います。
 外交と防衛の関係について質問いたします。
 今回の予算のように、国民に増税と公共料金値上げというダブルパンチを覚悟させながら、防衛費という名の軍事予算だけは優先的にじわじわと膨張を続ける理由は何でしょうか。
 特に不可解なことは、防衛費についてアメリカ政府筋から無遠慮に注文や批判がましい意見が伝えられることであります。日本の国家予算の内容は日本の国民が決めることで、防衛費であれ何であれ、他国の干渉や指図を受ける必要はないはずでありますけれども、総理の見解を承りたいと思います。
 ある新聞の社説に、わが国の防衛にとって大事なのは、他国の軍事的脅威より、むしろアメリカの要求から身を守ることだという笑い話があると書いてありました。しかし、これは日本の国民にとって笑えない笑い話であります。一体なぜアメリカの要請が防衛予算の決定に重要な役割りを果たすのか。これでは専守防衛とは名ばかりで、アメリカの対ソ戦略の一環を担うための軍備ではないかという疑問が出て当然であります。そんなことはないと胸を張って言い切れるかどうか、総理並びに防衛庁長官にお尋ねいたします。
 もしも日本の軍備がアメリカの対ソ戦略の一環を担うものであるということであれば、従来わが国には仮想敵国はないとしてきた政府の答弁はうそになります。従来の答弁がうそではないとおっしゃるならば、最近の防衛白書の中でしきりにソ連の軍事的脅威を強調している根拠は何か。どこの、いかなる情報に基づくものなのか、日米防衛協力小委員会の対象は一体どこなのか。さらに、昨年行われ、来年また行われると伝えられておりますリムパックで、アメリカ艦隊との合同演習に日本から参加することの意味は一体何なのか、あわせてお答えを願いたいと思います。
 日本の防衛にとって最も大切なことは、武力ではなく、食糧の自給体制を確保することと平和を維持するための外交ではないかと思うのであります。世界の二大強国である米ソが対立して冷たい関係にあることは残念なことでありますが、もし日本がこの両国の武力による争いの渦中に巻き込まれることになれば、日本列島は核を含む最新科学兵器の実験場になり、国民生活は一瞬にして破滅をすることを覚悟しなければなりません。石油、電力、水資源、交通、通信が一切停滞途絶した状態の中で、百五ミリ戦車砲を搭載した七四式重戦車三百両が活躍をする余地がどこにあるか、冷静に考えるべきであります。
 日ソの関係について申し上げます。
 きわめて遺憾なことは、憲法改正や防衛力増強の口実にソビエト脅威論がまことしやかに振りまかれることであります。いたずらに無責任なソビエト脅威論を誇張することは、隣人をどろぼうか強盗とみなして刀をみがくに等しく、これでは北方領土問題初め日ソ間の懸案問題の解決は思うように進まないと思います。相互の信頼関係を深めることが何よりも当面の課題ではないかと思いますが、総理及び外務大臣の見解を伺います。
 金大中氏が死刑の判決から無期懲役に減刑されたことを韓国政府の温情と早合点をしてはならないと思います。金大中氏が殺されなかったというだけで、自由を奪われ、拘束をされているという事実に変わりはないわけであります。間違いの第一歩は、金大中氏が日本滞在中、韓国政府機関の者に誘拐されたことにあります。このことで日本政府も重大な責任があるはずです。
 犯人が身のしろ金要求を目的とする単独凶悪犯と違い、韓国政府筋の計画的犯罪行為であったということは、明らかに主権の侵害で許しがたいものがあります。いかに政治的立場が違っても、このような手段と方法をおくめんもなく行使して恥じないのは近代国家に例を見ないことであります。政治的決着などと称するあいまいな話し合いをせずに、この時点で政府は金大中氏の身柄の保障を求め、主権の侵害に対する断固とした態度を示すべきだったと思います。金大中氏が死刑を免れたことは、世界的な世論の厳しい監視があったからだと思います。この点、見て見ないふりをするような及び腰の姿勢を見せた日本政府は深く反省をすべきであります。
 政府は、金大中氏が釈放され、自由が保障されたことを確認するまでは、対韓借款の凍結解除などを急ぐべきではありません。もし隣の国だからとりあえずなどと言うならば、北の朝鮮民主主義人民共和国も承認をし、南と同様に対応しなければ筋が通らないと思うのでありますが、いかがでしょうか。
 内政問題に移ります。
 第一は、経済、財政運営の基本姿勢についてであります。
 今回の予算編成に当たって、政府は、その前提として、わが国経済の安定的成長を期待し、財政運営については景気中立型で行うとしているわけでありますが、まず経済の見通しについて伺いたいのであります。
 政府の実質経済成長率の五・三%という数字は、民間の研究機関等の予測を超えた高い水準に設定されておりますが、その内容は、輸出と民間設備投資と個人消費に比重をかけているのであります。ところが、輸出の増大は、日米間のような摩擦を引き起こしている状況ではなかなか思わしくはなく、内需拡大によって景気の安定化を図るべきであると思います。その点、個人消費を拡大するための施策をまず講ずべきであり、それには物価の安定こそ必要な条件ではないでしょうか。それにはやはり賃金、給料のアップによる収入増が欠かせません。それに加えて財政的には所得税の減税措置が必要であります。
 第一の賃上げにつきましては、労働界は一〇%アップを統一して要求しているわけでありますけれども、財界の主流は昨年並みの七%以下に抑えたいとの意向を示しているのが実態であります。伝えられるところでは、労働大臣は、一〇%要求基準について、「日本経済の情勢などから見て評価できる要求」と発言されたそうでありますが、政府は来年度経済運営に当たって、個人消費が今年度を大きく超えて増大する根拠と、あわせて一〇%のベースアップ要求についての政府の率直な見解を承りたいのであります。
 第二には、所得税の物価調整措置の必要性が経済政策的にも高まってきていることを指摘したいのであります。今回の予算では一兆三千九百六十億円という、かってない大増税が行われようとしております。それに自然増収という目に見えない増税が四兆五千億円もあり、このほかに各種公共料金の値上げに伴う負担を考慮に入れれば、家計の実質収入は物価上昇のいかんによればマイナスになりかねないのであります。特に、今回の税制改正では所得税の分が含まれてはいませんが、自然増収のうち二兆八百億円はサラリーマンの源泉所得税で占められており、これに対する何らかの措置が講じられなければなりません。年収三百万円の夫婦子供二人のサラリーマンが、八%の収入増加があれば所得税と住民税の負担率は二七%も増加し、一〇%収入がふえれば負担は三二%も高まる状態では、家計のひもが緩むことを期待するわけにはいかないのであります。
 財源対策としての税制改正は、負担の公平を期し、他方サラリーマン等の低所得者層に対する減税を並行して実施することが税負担の公平、所得の再配分、さらに経済運営的に見ても適切な施策であります。これに逆行する今回の政府の租税政策では、ますます弱い者に犠牲がしわ寄せされるのは火を見るよりも明らかであり、政府の財政再建の方策は弱い者いじめであると言わざるを得ませんが、総理並びに大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
 第二は、財政再建と行政改革について伺います。
 政府は、今回の予算編成に当たっては、国債発行額を今年度当初比二兆円の削減を目標に据え、その結果、来年度予算の国債発行予定額は十二兆二千七百億円に抑えることができたことから「財政再建元年予算」と自賛しておりますが、それでは政府の言う財政収支バランスの回復、すなわち特例国債依存財政からの脱却は可能かどうかを明瞭にしていただきたい。
 来年度は新規増税によって国債減額が可能となったわけでありますが、再来年以降は今度のような新規増税が必要になるのかどうか。特に租税負担率の上昇は急速であり、政府が一昨年夏に決定した新経済社会七カ年計画に言う租税負担率二六・五%は、来年度税制改正後の状態を持続するだけで六十年度にはその水準に到達するとの見方もあります。となりますと、政府税制調査会が昨年十一月に答申した中期税制答申に言う大型間接税の導入は、負担率の点から見れば必要がなくなるわけであります。したがって、この際、租税負担率の見通しと財政再建の年次別見通し、及び新規増税の必要性と所要額等を一体とした資料を国民に示すべきであると考えますが、それに対する見解を求めるものであります。
 ところで、不公平税制の是正に対して政府はどのように考えられておられるのか伺いたいのであります。
 現行所得税のたとえば四人家族のサラリーマンの課税最低限は昭和五十二年度以来据え置かれたままであり、中期税制答申の言うように、今後三年間所得税減税の必要性はないとなると七年間にわたって据え置きとなります。一般常識的に見ても、物価上昇率に見合う収入増は実質所得の増加がゼロであり、それにもかかわらず税金がかかってくるということになれば、実質収入はマイナスに当然なるわけであります。課税最低限の引き上げ、さらには税率区分の改定などに一切手をつけないことは不公平な税負担をもたらすことになります。政府がこの事実を認めるならば、現在不公平がないとしても今後不公平が生じてくると考えるべきでありますが、いかがなものでしょうか。
 さらに、医師の社会保険診療報酬課税、土地譲渡所得課税、さらには有価証券譲渡所得課税、資産保全のための純金の宗教品物品税の非課税等々、国民の目には割り切れない不公平な税制あるいは課税の方法等、枚挙にいとまがないほど数多くありますが、この事実を放置し、一層不公平な負担をもたらす大型消費税の導入を断念できないのはなぜでありましょうか。政府の真意を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 ところで、財政の立て直しに避けて通れないのが行政機構の改革であります。
 政府・与党の中にも行革を力説する方がおりますが、行政機構が逐次複雑多岐にわたり、いつの間にか関係職員がふえたとしても、それは田や畑の草のように勝手にふえるはずはなく、ことごとく政府の方針に基づいてきたわけであります。
 いまから十年以上前になると記憶しておりますが、いろいろな公団が新設されるので委員会で私は反対の立場に立って質問をしたことがあります。結局、政府・自民党の多数で決まりましたが、結果は高級公務員の天下り先となったところが多かったのであります。大臣にしても、昔はなかった名称の大臣がいつの間にか出現をしております。行政の効率化は足元から率先していただきたいと思います。
 ここで二点触れておきたいと思うのでありますが、その一つは補助金整理の問題です。年末、予算編成期に全国から中央に陳情する人々は相当数に上ると思います。その中には補助金獲得を目指すグループも多いと思います。一概に黒白を決めがたいものもありますけれども、使途、性格に問題のあるものはないのかどうか検討の要があります。その改廃には困難を伴うと思いますが、一般会計の三一%の補助金、しかも八〇%が地方自治体向けと言われている状況からするならば、思い切って自治体への行財政配分計画を示すべきでありましょう。いま一つ、第二次臨時行政調査会の検討課題として、政府は、国政全般に対する監察と行革推進の権限を持つ機関の設置を構想していると伝えられておりますが、具体的にどう進めるおつもりなのか、明確に示していただきたいと思います。
 次に、国民生活との関連で、食糧問題について質問をいたします。
 農林水産大臣を歴任された鈴木総理は、現在の農業、食糧を取り巻く情勢については先刻御認識のことと存じます。八〇年代は世界的な食糧不安定の時代を迎えると言われておりますが、とりわけ日本は深刻となることは必至であります。日本農業は、この間、先進資本主義国に例を見ないほど極端に食糧自給率を低下させてしまいました。現在、食糧が戦略物資化されていることを見ても、安全保障の見地から食糧の自給率の向上は不可欠であります。さきの国会で採択された食糧自給力の強化に関する決議に従って、政府はその具体的政策を早急に明らかにすべきであると考えますが、総理の決意と方針を伺いたいと存じます。
 続いて、中小企業問題に移ります。
 昨年一年間の企業の倒産件数は、負債総額一千万円以上のものだけでも史上二番目を記録しております。中小企業を取り巻く情勢は今年の冬のように冷え冷えとしたものになっております。そこに法人税率が大企業と同率の二%アップという不公平な増税の追い打ちをかけられているのであります。また、一月以来の豪雪によって、豪雪地帯の中小企業は売り上げの減少や原材料が入荷しがたいというような問題から資金繰りが困難な状態となっております。こうした中で、中小企業の倒産を防止するため、中小金融三機関による政策金融の拡充、信用補完制度の強化を図ることが必要だと考えます。
 同時に、これまで地域経済を支えてきた中小の小売商は、スーパー等大規模店舗の進出によって倒産に追い込まれる事態も生じており、大規模店の進出に反対する運動も活発になっております。そこで、現在、大規模店舗法により、進出する場合は届け出が義務づけられておりますが、これを許可制に改正し、中小企業者の生活と営業権を守るべきであると考えますが、総理の見解を伺いたいと存じます。
 最後に、重ねて申し上げたいと思います。
 昨日、社会党の飛鳥田委員長から、平和憲法を持つわが国こそ、一方的軍縮に踏み出し、新しい軍縮の時代のトップランナーになるべきであるという提唱がありました。日本は、地形的にも国情の点からも、一朝有事の場合には武力で守り切れる条件にありません。太平洋戦争当時のように大型爆撃機が爆弾を積んではるばる飛んでこなくとも、ミサイル一発で工業も国民生活も麻痺してしまう弱点を持っております。防衛予算をGNPの何%にしようと、しょせんは気休めの範囲を出ないことは明瞭であります。
 米ソを含む世界の軍縮を実現することは、きわめて有意義なことであると思います。本院議員の宇都宮徳馬氏が、新聞一ページ大の意見広告を成人の日を迎える若者に呼びかけられましたが、軍縮こそは党派を超えて一致できる目標であります。総理は、やはり高い理想と目標を持っていただきたいと思うのであります。事務屋ではございません。どうか、その理想と目標に、むずかしいからといってしり込みせずに、邁進していただきたいということを要請いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(鈴木善幸君) 瀬谷議員にお答えをいたします。
 昭和五十六年度の防衛関係予算は、防衛計画の大綱に定める防衛力の水準にできるだけ早く到達するとの基本方針のもとに編成をいたしました。今後の防衛関係予算については、防衛計画の大綱に従い、そのときどきにおける経済、財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りながら対処してまいることとなりますが、いずれにせよ、今後とも装備の近代化を中心に、節度ある質の高い防衛力の着実な整備に努めてまいる所存でございます。
 次に、シビリアンコントロールについてでありますが、民主主義国家におきましては、政治の軍事に対する優先は絶対に確保されなければならないものであります。
 わが国の現行制度においては、国防組織である自衛隊は、文民である内閣総理大臣、防衛庁長官のもとに十分管理されているほか、法律、予算等については国会のコントロールのもとに置かれております。また、国防に関する重要事項については国防会議の議を経ることになっておりまして、シビリアンコントロールの原則は十分貫かれているものと考えております。
 次に、軍人、軍属の人たちだけでなく、広島の原爆その他で犠牲となられたところの一般の方々を含めて、その霊をお祭りし、そして無宗教の方式で慰霊を行うということについての御意見でございます。
 私は、一つの貴重な御意見として拝聴いたしました。いわゆる靖国神社をめぐる問題については、従来からいろいろな意見や議論があるところでありまして、私は、事柄の性質上、広く国民各層、あるいは国会においても各党各会派の間でよく話し合い、意見を出し合って合意が形成されていくことが望ましいと考えております。
 次に、航特委の廃止について御意見がありましたが、いわゆる航空機輸入に関連して指摘された疑惑に関しては、司法当局においてすでに解明済みと承っております。しかし、政治倫理の確立は当面の緊急な課題でありますから、私は、臨時国会以来検討されている倫理委員会の設置について、各党各会派の間で速やかに合意が得られることを期待いたしておるところであります。
 建国記念日の行事についてのお尋ねでありますが、建国記念日の奉祝式典は各界の有識者から成る運営委員会が主催し、広く国民各層に参加を呼びかけて、国民の祝日である建国記念日を、建国をしのび国を愛する心を養うというその趣旨に沿って祝う行事でありますので、総理府及び文部省が後援することとしたものでございます。
 次に、米国とわが国の防衛費の問題についてでありますが、日米安保条約に従いわが国を防衛する立場にある米国が、わが国の防衛努力に関心を有し、その考えを述べることはむしろ自然であります。これを内政干渉と受け取ることは誤りと考えます。しかし、他方において、米政府は従来より日本の防衛予算はあくまでも日本自身が決定すべきものであるとの考え方であり、この点については、昨年末来日したブラウン前米国防長官も私との会談の際に明確に述べておるところであります。
 ソ連の問題についてお答えをいたします。
 政府は、最近の極東ソ連軍の顕著な増強という客観的事実に基づき、かかるソ連軍の動向を潜在的脅威と判断しているものでありますが、それをもってソ連を敵視するとか、これと対決姿勢を強めるとかいったことではないことは申すまでもないところであります。
 次に、金大中氏の問題についてであります。
 金大中氏に対して減刑の措置がとられたことは、これまでわが国として同氏の身柄について再三関心を表明してきた経緯に照らし、憂慮すべき事態を避けることができたという意味でこれに安堵した次第であります。金大中氏問題がこのような結果となりましたのは、日韓友好協力関係の促進にも資するものと評価をしており、政府としてはこれを踏まえて両国関係に対処してまいる所存でございます。
 なお、北朝鮮との関係につきましては、これまでもたびたび申し上げておりますどおり、政府は今後とも貿易、経済、文化等の分野における交流を漸次積み重ねてまいる考えであります。
 個人消費の伸びについてのお尋ねでありますが、五十六年度の家計所得は、消費者物価の安定化傾向の定着により、実質ベースでは堅調な伸びで推移するものと見込まれます。このような所得の状況に加えて、物価の安定により消費マインドが相当程度回復するものと見込まれること、及び昭和五十五年度に見られた冷夏や耐久消費財需要の鈍化等のマイナス要因が改善されると考えられますので、五十六年度の個人消費支出は、名目九・九%、実質四・九%程度の伸びを示すものと見込まれます。
 一〇%ベースアップについての評価を求められましたが、賃金の引き上げについては、労使が話し合いを通じて自主的に決定すべきものであり、政府としては所見を述べることは差し控えるべきものと思います。今春闘において労使が国民経済的視野に立って合理的な賃金決定が行われるよう期待しております。
 所得税減税についてのお尋ねでありますが、わが国財政の現状は、二兆円の国債減額を織り込んでいる昭和五十六年度予算について見ても、歳入の二六%以上を公債金収入に依存し、特例公債だけでも五兆五千億円に上るという状況にあり、国民生活の安定のためにも、また財政の対応力を回復するためにも財政の再建は緊急の課題であります。
 一方、わが国の所得税の課税最低限は主要諸外国の中で高く、その負担水準は国際的に見て相当低位にあり、夫婦子供二人、年収三百万円のサラリーマンを例にとると、所得税額は年間六万六千円、月五千五百円であり、イギリスの九分の一、西ドイツの四分の一、アメリカの三分の一、フランスの九割程度にすぎないのでございます。
 御承知のとおり、昭和五十三年以来、所得税の課税最低限を据え置いておりますので、その後の所得や物価水準の上昇によって所得税負担率が上昇してきているとして、これを引き上げるべきであるとの御意見や、実質賃金が低下する場合には所得税減税で補うべきであるという御意見があることは承知しております。しかし、上述のような財政の現状や負担水準の実情を考慮いたしますれば、課税最低限の水準をさらに引き上げることは見合わせるほかはなく、物価調整減税を含めて所得税減税はしばらく御容赦いただきたいと存じます。
 租税特別措置の見直しにつきましては、昭和五十一年度以来五年間に社会保険診療報酬課税、利子配当所得課税を初めとして、その主要な項目のほとんどについて改善措置を講じ、特に企業関係の特別措置については全項目の約八五%について整理合理化を行ったところであり、租税特別措置の整理合理化はおおむね一段落したものと考えております。しかしながら、これらの租税特別措置については今後とも社会経済の実態に即して見直しを行う必要がありますので、五十六年度の税制改正においても、そのような観点から洗い直しを行い、その整理合理化を図ることとしております。
 大型消費税はどうしても避けられないのかとのお尋ねがございましたが、御承知のように、昨年十一月の税制調査会中期符申においては、課税ベースの広い間接税は避けて通ることのできない検討課題であり、引き続き論議を重ねることが適当であるとされております。政府としては、今後の税制のあり方について、今国会における御論議も踏まえつつ、今後幅広い観点から検討してまいりたいと考えております。
 補助金等については、整理合理化計画に基づいて個々の補助金等について見直しを行い、廃止、減額、統合、終期の設定などの整理合理化を積極的に推進しております。五十六年度予算においては、補助金等二百九十二件を整理したほか、減額等を加え千六百八十八億円の整理合理化を行ったところでございます。今後とも引き続き積極的に合理化に努力してまいる所存でございます。
 食糧自給の必要性についてお尋ねがございました。
 国土資源に制約がある高密度工業化社会のわが国では、すべての食料について高い自給率を維持することは困難でありますが、国内で生産可能なものは極力国内生産で賄うことができるよう経営規模拡大を軸として生産性を高めながら、総合的な食料自給力の維持強化を図ることが基本的に重要であると考えております。このため、五十六年度から五十八年度までの三カ年にわたる水田利用再編第二期対策を着実に実施するとともに、地域ぐるみの話し合いを基礎とする農用地の有効利用と利用権の集積等による中核農家の育成、農業技術の向上、優良農地の確保等を図ってまいる所存でございます。
 中小企業の倒産防止につきましては、政府系中小企業金融三機関の資金枠の確保、中小企業倒産対策貸し付けの拡充などにより機動的に対処しているところでありますが、さらに信用補完制度につきましても、建設業等百三十業種を不況業種として指定するなど、倒産関連保証の活用に努めております。
 また、今回の豪雪により被害を受けた中小企業に対しては、災害復旧貸し付けを発動するとともに、体質強化資金助成制度を活用し、各被災地域の実情に応じた機動的な融資を行っております。
 さらに、設備近代化資金及び高度化資金の既往貸付金につきましても、実情に即し返済猶予が行われるよう措置しております。
 中小企業の生活権とスーパーの規制の問題に関してお尋ねがありましたが、いわゆる大規模小売店舗法につきましては、一昨年五月改正法が施行され、届け出対象の拡大、地方公共団体の関与の強化などが図られたところでありますので、当面この法改正の適正な運用を図り、大規模店舗の出店の適正化に努めてまいりたいと存じます。
 国際の平和は、現在、御承知のように力の均衡の上に保持されておることは否めない事実でございます。しかし、私どもは世界の真の平和を確保するためには軍縮ということが非常に大事な問題であると考えております。核軍縮を初めとしまして、わが国は平和国家としての立場から、今後とも国際の場におきましてこの軍縮の問題が国際的な世論として喚起され、それぞれの国がこれに前向きで対処することを期待いたしておるわけでございます。今後一層の努力を進めてまいります。(拍手)
   〔国務大臣大村襄治君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(大村襄治君) 瀬谷議員の私に対する御質問に対してお答えを申し上げます。
 まず第一に、今回の予算についてのお尋ねでございますが、政府は防衛計画の大綱に従い、わが国みずから適切な規模の防衛力を保有するとともに、米国との安全保障体制を堅持することによって、すきのない防衛体制を保持し、初めてわが国の平和と安全が保障されるものと考えております。
 米国からわが国の防衛努力につきまして強い期待が表明されているのは事実でございまするが、政府といたしましては、かかる期待を念頭に置きつつも、わが国の防衛についてはあくまでもわが国自身の問題として、わが国の自主的判断に基づき、専守防衛の原則にのっとり、わが国の防衛のため必要な範囲で防衛力の整備を行っているものでございます。したがいまして、今回の予算は専守防衛の原則を堅持しておりまして、御指摘のような意味においてアメリカの対ソ戦略の一環を担うための軍備というものではございません。
 なお、わが国が日米安全保障体制を基軸として平和と安全を維持することは、極東地域の安定勢力として東アジア地域の平和に貢献し、ひいては世界の平和に貢献するものと考えておる次第でございます。
 次に、防衛白書の点についてお尋ねがございました。防衛白書は、各種の情報を総合し、冷静、客観的に国際軍事情勢の判断を行っているものでございます。このような中で、近年の極東ソ連軍の顕著な増強と活発な行動は、北方領土への地上軍部隊の配備、空母ミンスク等の極東配備などに見られる太平洋艦隊の増強、SS20、IRBMやバックファイア爆撃機の配備、さらにはベトナムの海空軍基地の常時使用等に示されるように、客観的事実であり、わが国の安全保障にとって潜在的脅威の増大であると受けとめざるを得ないものでございます。
 なお、日米防衛協力小委員会でまとめました日米防衛協力のための指針に基づきまして、現在、防衛庁と米軍との間で共同作戦計画等の研究作業を実施しているところでありますが、この研究作業の内容等について言及するのは差し控えたいと考えます。いずれにいたしても、わが国はいずれの国をも敵視しているものではございません。
 次に、リムパックについてのお尋ねがございましたが、リムパックは戦術技量の向上を図るための訓練でありますので、海上自衛隊がこれに参加することに問題はないものと考えております。従来のハワイ派遣訓練では得ることのできない米海軍の最新の戦闘技術を習得でき、教育訓練の充実強化に役立つと考えて、昨年春実施されたリムパック80に初めて参加したところでありますが、この訓練参加を通じて大きな成果をおさめたのでございます。以上の経緯にかんがみ、次回のリムパックにも参加したいと考えているところであります。(拍手)
   〔国務大臣伊東正義君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(伊東正義君) 私に御質問のありましたソ連脅威論の問題は、総理から御答弁がありましたので、そのとおりでございます。瀬谷議員が軽々しく誇張すべきじゃないとおっしゃった、これはそのとおりだと私も思いまして、政府としましては、こういう事態に冷静に対処しながら、北方領土問題を解決して平和条約を締結して、日ソ間に真の相互理解に基づいた安定的な関係が樹立できますように今後とも努力してまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(渡辺美智雄君) 財政再建の見通し、それから今後の年次計画などについての考えを述べろと、こういうことでございますが、御承知のとおり、すでに五十五年度末で七十一兆円という国債の累積残高を持っておる。そのうち四十二兆が建設国債、二十九兆が赤字国債。さらに五十五年度では十四兆円の国債を発行しておりますが、そのうちの七兆五千億円が赤字国債ですから、これを四年間で、五十六、七、八、九という間に赤字国債の発行をやめよう、六十年度から国債の償還に入っていく、そういうスケジュールで、ことしはまず二兆円の国債減額をやったわけでございます。
 方法としては、増税で国債の減額をやったと、よくこう言うのですが、私はそうは思わないのです、実際は。これはまず歳出の切り詰めを徹底的にやろうじゃないかと、(「何もやっていないよ」と呼ぶ者あり)いや、これはやっているのです。それはそういうことでやりまして、それでどうしても切り詰められない部分について、当然増経費というものが一兆六千億円、準当然増が三千億円、一兆九千億円ぐらいの新しい経費が出るわけですから、これを詰めるということは、口では簡単だが非常にむずかしい。これは制度を直すという問題をやらない限りは不可能に近い。そこで、われわれとしては極力圧縮することに努めてきたわけでございます。
 その結果が、伸び率が一般歳出四・三%というような、かつて二十五年来やったことのないことをやったわけです。そこで一兆九千億円の当然増経費というものを極力抑えたけれども、そんなに切れない。しかしながら、増税は、二兆円の国債減額をしたほかに確かに一兆四千億円弱の増税をいたしました。これらについては、歳出増の一兆三千億円、その大部分というものは社会保障と恩給、これだけで約六割です。それから文教、科学技術で一六・五%、エネルギー、経済協力が八・八%、この三つで一般歳出の八五%はもうすでに消費されておるということで、防衛についても一二・九%というものはもちろんございますが、そういうようなことで、増税というものについては、国債減額に充てたというよりも、当然増で抑え切れないものについてやむを得ず御負担をいただいたと、こういうように御理解をいただきたいわけであります。
 今後の財政再建のための年次計画を出せということでございますが、これを実行計画というようなことで書いてみろと言われましても、これは不可能に実は近いのです。いわゆる不確実性の時代でございますから、なかなかきちっとしたものを出すことはできない。しかしながら、五十六年度の予算の制度、施策、いままでどおり変えないのですよと。いまの施策で、いまの制度で一年だったらどうなるか。一年たったら年寄りがどれぐらい老齢化社会でふえていくかというようなことは推測できますから、そういう意味での後年度負担の推計というものはある程度できるのです、これは。したがって、その負担推計というものを基本として、財政の中期的展望については目下勉強中ですので、近々のうちにそれは出していきたい、かように考えておるわけでございます。
 したがって、そういうものを出してみましても、なかなか新規増税というものをやらないで、その後年度負担推計による歳出に見合うだけの収入が自然増収だけで賄われるかというと、これはむずかしいと私は思っておる、実際のところ。したがって、これからはやはり、同じことでございますが、負担がふえないようにすることと、最小限度の国民の負担はある程度仕方がないと。それが当然的にふえるような構造的な問題については国会と相談をしながら、そんなに負担できないということになればそういう制度を直していくほかないわけですから、今後のこれは相談の課題でございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(中曽根康弘君) 瀬谷議員御指摘の、昭和三十年代に公社、公団が乱立されたということはまさにそのとおりでございます。三十年代は高度成長の入り口でございまして、そういう必要性からもできたと思いますが、今日は安定成長の時代に入りまして、また、ややもすれば公社、公団が高級官僚の天下りに利用されたという批判も多くある次第でもございます。
 そういうような点もよく考えまして、五十五年度の行革以来、これを整理統合するという計画をつくりまして、十八の公社、公団を統合することがいま進行中でございます。今度の国会におきましても、住宅公団と宅地開発公団を一緒にして統合するとか、あるいは外貿埠頭公団を廃止してこれを主として地方に移管するとか、そういうような法案も提出して御審議を願うことにしております。
 第二に、国政における監査機能強化の問題いかんという御質問でございました。
 最近、商法等の改正にも見られますように、会社等におきまして監査役の機能を非常に強化して厳正なる経理を行わせるようにしていることは皆様御存じのとおりでございます。国政におきましてもこのような監査機能を充実することが必要ではないかという反省も起こっております。
 私、行管長官を引き受けてやらせていただいておりますが、まことに申しわけないのですが、行管庁はまだはなはだ無力でございます。権限といたしましても、勧告するという権限がございます。しかし、相手方が聞きおくということでポケットに入れてしまえば、それ以上何もできません。こういうような状態で、これだけ重要性を持つ行財政の整理というものはできるであろうか。最近オンブズマンの構想が強く唱えられておりますが、これもやはり監査機能を強化せよという声の一つではないかと思うのでございます。
 国政におきましては、金の面におきまして会計検査院がありまして、これを監査しておりますが、これは金のみであって、しかも後追いであります。やはり予防的にも、あるいは常時行政自体をもっと監査強化するという必要が今日あるのではないかということも考えまして、これは今度できます臨時行政調査会におきましても、この監査機能強化の問題をぜひ審議していただきたいと希望しておる次第でございます。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(徳永正利君) 西村尚治君。
   〔西村尚治君登壇、拍手〕
#11
○西村尚治君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表し、総理及び関係閣僚に対し、若干の質問を行います。
 この際、質問に先立って、昨年末以来、北陸地方を中心に日本海側を襲った異常な豪雪により多大の被害をこうむられた方々に対し、心からお見舞いを申し上げたいと存じます。
 今回の豪雪は、昭和三十八年を上回るとも言われ、多数の人的被害があっただけでなく、住民生活も地域経済も完全に麻痺する、きわめて深刻な状態となったようであります。
 この異常事態に対処するために、わが党におきましては、早速異常豪雪対策本部を設置するとともに、激甚災害法の早期発動や道路交通の確保、特別交付税による大幅補てん措置等七項目の対策を決定して政府に申し入れたのでありますが、これらの地域では、むしろこれからが本格的な降雪期になります。政府としては、これが対策に万全を期し、被害の拡大を防ぐとともに、党より申し入れた事項について早急に実施に踏み切られるよう、特に御要望申し上げておきます。
 さて、今年、昭和五十六年は、わが国が自由世界第二の経済大国としての責任を持って、国内的には財政再建、エネルギー問題等山積する重要課題に取り組みながら、進んで国際社会の平和と発展のために貢献する、その役割りが一段と増大する年だと考えるのでありますが、そのような観点から総理の施政方針演説に対し、内政、外交両面にわたる数点について質問を行いたいと思います。
 まず第一は、財政再建についてでありますが、政府は五十六年度予算案の編成に当たって、特例公債を二兆円減額するとともに、歳出の伸び率を一けたに抑えたことは、これはなかなかの英断であったと思います。
 ただ、これに伴って一兆四千億円近い増税を余儀なくされたのでありまして、国民の中には、このことを安易に増税に頼り過ぎるとか、国民にツケを回したとか批判する向きがあります。私はもちろんこの増税は忍ばなければならぬものだと思います。社会福祉水準や各種の必要な行政サービスを維持するためにはやむを得ないものと思うのですけれども、しかし国民の中には、増税の前にまず歳出をもっと思い切って削減すべきだ、行政改革をもっと徹底すべきだという意見が多いのであります。
 ついては、歳出の面で、補助金等の洗い直しを初め、どの程度の合理化を図られたか。歳出の中には、高度成長期以来、肥大化した面もないとは言えませんので、この際、政策に厳密な優先順位をつけて、不急不要に近い経費は極力抑える、そのかわり必要な経費は惜しみなく出す、その姿勢が貫かれておれば国民の納得も得られると思うのでありますが、どうでしょうか。
 なお、昨年発表されました財政再建のための試算によりますと、昭和五十九年度には特例公債の発行をゼロにする計画のようであります。これはただいま大蔵大臣のお話にもあったとおりでありますが、仮に今後の歳出予算の伸びを毎年九%ずっとしましても、昭和五十九年度の歳出規模は約六十兆円となる計算であります。その際、特例公債を一切発行しないとすれば、歳入は何によって確保する見込みでありますか。国民はまたしても大型増税に見舞われるのではないか、そのことを懸念する向きが多いのであります。
 私は、ここ二年連続して四兆数千億円に上る税の自然増収が見込まれて、それが国債依存度の低下に役立ったことを考えますと、今後の財政再建にとって最も大事なことは、まず高額の自然増収を期待し得る安定的経済の運営を図ること、これが最も優先されるべきものであって、経済の停滞を招きかねない大型増税は極力避けるべきだと考えるのでありますが、政府はどのような手順で財政の再建を図ろうとされるのか、また、どの程度国民の協力を求めようとされるのか。ただいまの大蔵大臣のお話では、流動する要素がいろいろあるから、なかなかはっきりした見通しは立てられないような御答弁でございましたけれども、これは非常に大事な国民の関心事でありまするので、いま少しわかりやすい、具体的な御答弁を総理並びに大蔵大臣にお願いをいたします。
 また、この問題に関連して、行政改革についてお尋ねしますが、政府はこれまで審議会を初めとして、特殊法人や許認可事務の整理、定員削減等の行政改革を実施して相当の成果を上げてきたわけでありますが、財政再建が重要な緊急課題となってきました今日、さらに強力に進められるべきものであることは言うまでもありません。これまで民間企業は相次ぐオイルショックや不況の波をかぶりながら、血のにじむような減量経営に徹してこれを乗り切っております。政府にもそれを望みたいというのが国民の率直の気持ちだと思います。
 まず、今後の行政改革に取り組む政府の基本姿勢を伺いますとともに、前国会において成立を見た第二次臨時行政調査会を政府はどのように運営し、その答申による行政改革の具体案をどのように期待しているのか伺いたいと思ったのでありまするけれども、ただいまの行管長官の御答弁がございましたから答弁はよろしゅうございまするけれどもひとつこの問題につきましては、さらに積極的に熱意を持ってお取り組みを願いたいと、そのことを御要望申し上げておきます。
 次に、経済問題について伺います。
 その第一は、当面の景気動向についてでありますが、経済は昨年の夏以来足踏み状態を続けて、まだはかばかしい回復を見せておりません。企業収益は円の高騰でなお高水準を維持してはいるものの、生産活動は伸び悩み、企業の倒産件数は近来になく増加しております。個人消費も落ち込んで景気の低迷に拍車をかけている実情ですが、景気はいつごろ拡大に向かうのか。また、政府は、五十六年度経済の実質成長率を民間調査機関の予測を上回る五・三%と見ておりますが、果たしてこれを達成できる見込みでありますかどうか。最近、金融緩和を要望する声が民間に強まっておるわけですけれども、これに対する考えとあわせて御答弁を願いたいと存じます。
 いま一つ伺いたいのは、物価の安定についてであります。五十五年度は、政府の努力にもかかわらず、消費者物価は当初の見込みを上回って七%程度と改定されたことは遺憾でありました。原油価格の上昇、その他いろいろの理由があったことはわかりまするし、また、欧米諸国における騰貴率に比較すれば、一けたにおさめた努力は大いに多としなければなりませんけれども、しかし、物価上昇によって国民の実質所得が目減りし、景気低迷の要因となることを考えれば、物価の問題はきわめて重要な課題でありまするので、さらに一層の御努力が要望されるのであります。五十六年度は政府見通しのとおり果たして五・五%にとどめ得るかどうか、これに対する政府の御決意をお聞かせ願います。
 なお、この機会にひとつお願いしておきますが、先般、予算編成の段階で設けられました金融問題懇談会につきましては、どうかひとつ、すべからく国民的視野に立って、わが国の金融が抱える諸問題について幅広く検討されることを特に要望しておきます。
 次に、総合安全保障についてお尋ねしますが、その第一は防衛力整備の問題であります。
 国の防衛は国家存立の基本であり、国民全体の問題として広く建設的に議論され、その上で国民的合意が形成されるべきものであることは、総理がさきに述べられたとおりであります。その意味におきまして、五十六年度予算案の編成段階において防衛費の問題が各方面で論議されましたことは歓迎すべき傾向だと思います。
 ただ、今回の防衛費の伸び率七・六一%が社会保障費のそれをわずかに抜いたことをもって、一部には福祉切り捨て、軍備増強の予算案だと非難する向きがありますが、これは当を失した批判だと言わなければなりません。防衛費の伸び率が社会保障費のそれを〇・〇一%上回ったことは事実ですけれども、全体の増加額について見ますれば、社会保障費は六千二百四十五億円、これに対して防衛費は千六百九十八億円と、三分の一以下にとどまっているのであります。言うまでもないことでありますが、国の独立と安全があって初めて国民の幸せがあるわけですから、社会福祉も大事ですけれども、防衛の問題も決しておろそかにしてはならず、みずからの国はみずからの手で守る気概を持たなければならぬと思うのであります。
 しかも、社会福祉は従来とも政府の一貫した政策であり、その結果、日本の社会保障制度は世界的にも遜色のない水準に到達しております。今後は、真に必要とされる中身の充実を考えるべき時期に来ており、予算もかつてのような大幅な伸びを必ずしも必要としない段階に入りつつあると思うのであります。
 他方、日本を取り巻く国際情勢はとみに厳しさを増しております。わが国の防衛の基本は日米安保体制にありますけれども、アメリカの力だけにおんぶしておれない今日の情勢であります。仮にアメリカ側からの要請がなくとも、日本の平和と安全のために必要な防衛力は日本の責任において整備しなければならぬことは当然であります。これは経済大国となったわが国として、むしろ国際的な責任でもあります。とは申しましても、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国を目指すべきではもちろんなく、あくまで憲法の枠内で専守防衛に徹すべきであると考えるのでありますが、防衛に関する総理の基本的な姿勢、考え方をお聞かせ願います。
 次に、総合安全保障の一環として重要なエネルギーの関係についてお伺いいたします。
 エネルギー問題の重要性はいまさら申し上げるまでもありません。世界各国とも国を挙げて真剣に取り組んでいるわけですが、とりわけわが国にとっては重要な深刻な緊急課題であります。幸い、政府の施策と民間の協力の結果として、当面のエネルギー供給には支障はない模様でありますが、問題は今後にあります。政府は、昨年末の閣議で、十年後、すなわち昭和六十五年度におけるエネルギーの供給目標を決定しました。それによると、同年の石油依存度を五十三年度の七三%から五〇%に引き下げ、その他は代替エネルギーをもって賄うこととしております。石油にかわる将来の本格的エネルギー源としましては核融合や太陽熱などの開発に期待しなければなりませんが、その実用化は二十一世紀初頭まではむずかしいとのことでありますから、それまでのつなぎとしては、政府のこの計画によるほかはないでありましょう。
 ところで、この計画によれば、代替エネルギーとして石炭と原子力にかなりの比重が置かれておりますが、特に問題なのは原子力であります。政府計画では、昭和六十五年度までに建設する原子力発電の総発電出力を五千百万ないし五千三百万キロワットと想定しておりますが、このうち半数近くはまだ建設のめどがついていないと聞きます。計画から建設完了までのリードタイムが十年前後もかかると言われる原子力発電が、この状態では昨年の閣議決定も達成困難になるのではないかと深く憂うるものであります。核被爆国として、原子力に対するアレルギーの強いわが国の特殊性はよくわかりますけれども、地域住民の理解と協力を得るためのあらゆる施策を真剣に講じていただきたい。さらに、原子力発電のためには現在三十三の法律が関係し、六十六の許認可が必要とされておりますが、これを緩和して、手続をもっと促進できないものかどうか。
 なお、昨年のベネチア・サミットでは、「代替エネルギーの開発を促進して、八〇年代末までに参加国全体の総エネルギーに占める石油の割合を約四〇%に下げる」との方向が打ち出されております。各国ともそれぞれその線に沿って努力しているものと思われますが、
   〔議長退席、副議長着席〕
こうした情勢の中にあって、自由世界の石油消費量の実に一割を占めるわが国が十年後の石油依存率五〇%ということで甘んじていいものかどうか。経済大国日本の責任を問われることにならないかどうかが懸念されるのであります。それだけに、原子力を初め代替エネルギーの開発導入に対し政府はさらに懸命の努力を傾けるべきだと思うのでありますが、これらの点について政府の御方針を伺います。
 次に、食糧問題についてであります。
 食糧が人類の生命維持にとって必須不可欠の物資であることは言うまでもありませんが、世界の食糧需給は長期的に見て逼迫の方向にあることは、FAO初め各種調査機関の指摘するところであります。さらにまた、食糧が外交の武器として使われる可能性が最近高まってきております。この食糧の供給をどのようにして確保するかは、国家、国民の安全にかかわる重要な問題と言わなければなりません。
 現在、わが国の食用農産物の総合自給率を見ますると、昭和三十五年度に九〇%であったものが、年々低下して、今日では七二%に落ち込んでおります。しかも、その内容は、米が過剰である一方、小麦は九%、大豆四%で、穀物全体としての自給率はわずか三三%にすぎないのであります。今後もし食糧の主要輸出国が異常気象に見舞われるとか、あるいは国際紛争の影響を受けて輸入が困難になった場合、政府はどのように対応されるつもりであるのか。こうした危険性はめったにないことかもしれませんけれども、しかし、万一あった場合にはどう対処されるのか。昨年、衆参両院において食糧自給力の強化に関する決議が採択されておりますが、政府はこれに対しどのようにこたえようとされるのか。
 従来、わが国の農産物価格は外国に比べてかなり割り高になっております。したがって、国内で自給するより安い食糧を輸入した方が有利だとするいわゆる国際分業論があることは承知しております。しかし、現在、米の生産調整のために水田利用再編対策を推進されているわけでもありますから、これとも関連させながら全体としての自給力の向上を目指すべきだと思いますが、以上の諸点についての今後の御方針をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、外交問題についてお尋ねいたします。
 戦後三十数年間、国民のたゆまぬ勤勉努力の結果、わが国は大きな経済的発展を遂げて、いまや国民総生産は世界全体の一一%を占めるという経済大国に成長したわけであります。国際政治におけるわが国の責任はそれだけ重くなったと言わなければなりません。従来、わが国の外交はとかく受け身に回りがちであった印象をぬぐえないのでありますが、この八〇年代は、国力にふさわしい責任を果たすためにも、もっと自主的かつ能動的な外交を展開すべきだと考えます。
 先般、総理はASEAN諸国を訪問されました。ASEAN諸国はわが国と地理的に、また経済的に関係が深く、しかもアジアの安定勢力としてきわめて重要な存在でありますから、総理が最初の外国訪問先としてこの地域を選ばれたことはきわめて適切な措置であったと考えます。特に、各国首脳との会談において忌憚のない意見交換を行い、わが国の考えや方針を率直に述べられるとともに、農業を初めとする各種の開発援助に手を差し伸べられましたことは、これらの国々との連帯感を深める上においてきわめて有意義であったと思い、その御努力に敬意を表するものであります。今回の歴訪を機会に、わが国の経済的、政治的役割りに対する各国の期待は一段と高まったと思うのでありますが、各国首脳から要請があったというカンボジア問題について、総理は今後どのような手を打っていくおつもりでありましょうか。
 総理は、現地で、国際会議開催の道を探りたい、あるいは中国に働きかけたい、こうした意向を示された由ですけれども、インドシナの平和回復に関するこの問題について、日本がどのように努力してくれるかということをASEAN諸国は強い関心を持って見守っていると現地からの報道は伝えております。五カ国訪問の成果とカンボジア問題に対する御方針をお聞かせ願います。
 次に、日米関係でありますが、アメリカがわが国にとって最も重要な友好国であることは言うまでもありません。わが国は、戦後一貫して日米友好協力関係を基軸とし、志を同じくする自由主義諸国との連帯を強めながら、全世界の国々と協調し友好を保つことを基本方針としてまいったのでありますが、そのかなめとも言うべきアメリカに今度新政権が誕生したわけであります。「強いアメリカ」を標榜するレーガン新政権は、わが国に対して今後何かと注文をつけてくるであろうと言われておりまするけれども、注文や要望を持ち込まれる前に、むしろ進んでわが方から話し合いの場を持つべきだと思います。ASEAN諸国を初めとするアジアの情勢を話し、防衛に関する責任分担の問題や、貿易、技術協力、対外援助の問題など、当方の考えと方針を率直に説明していくことこそ、アメリカの信頼を深め、協力関係を強める道だと思うのであります。総理の御所信をお伺いいたします。
 続いて、ソ連との関係についてでありますが、ソ連もわが国にとって大事な隣国であります。隣国であるソ連と友好親善の関係を保持することはもちろん願わしいことであります。しかし、両国の関係は現在必ずしも良好な状態にあると言えないことは残念でございます。それは、わが国固有の北方領土への軍事力配備やアフガニスタンへの軍事介入など、友好関係を妨げる要因がソ連側に多いからであります。特に、北方領土返還の問題が戦後三十五年を経過してもまだ解決の糸口すら見えず、逆にソ連の軍事基地と化していることは遺憾千万なことだと言わなければなりません。わが国のたび重なる返還要求に対してソ連は一顧だにしないのみか、「日ソ間に領土問題は存在しない、ソ連には日本に割く余分な領土はない」などと言っているのでありますが、日本国民の感情を頭から踏みにじって顧みない態度と言わなければなりません。
 ここで忘れてならないことは、去る一九七三年の日ソ共同声明であります。田中・ブレジネフ会談の後で共同声明が発表されて、「日ソ両国間には、戦後まだ解決されていない問題がある」として、その未解決の問題の中には領土問題が含まれるということが、口頭ではありますけれども、繰り返し確認されたという事実があります。しかるに、そうした経緯を無視して、数年前からソ連は日ソ間に領土問題はないと主張し始めたのであります。しかも、それを素通りして善隣友好条約の締結を提案してきているのでありますけれども、北方領土の返還に誠意を示すことなくして何の善隣友好条約ぞや、これが日本国民の率直な気持ちであると思うのであります。私は何もソ連に悪意を持って言っているのではありません。それどころか、私は日ソ友好議員連盟の一員として、両国の関係改善を心から願っている者の一人でありますけれども、領土問題に対するソ連の態度が余りにも一方的ですから、そのことを言っているのであります。
 政府は、過般「北方領土の日」を制定されました。また総理自身も根室に赴いて現地の状況を視察される御意向とのことでありますが、このことは、北方領土問題がソ連の言うごときわが国の一部勢力の画策にすぎないなどというものでは決してなく、その解決が国家、国民を挙げての悲願であることを示す意味できわめて有意義だと思います。私は、総理の先頭に立って行動される力強い姿勢に敬意を表するものでありますが、今後、強力に熱意を持って対ソ折衝を進められることを心から期待しております。
 以上の諸点について総理の御決意をお聞かせ願います。
 次に、科学技術の振興についてお伺いします。
 国土が狭く、天然資源に乏しく、その多くを海外に依存しておるわが国が今日世界の経済大国になったのは、国民のすぐれた資質と高い技術力のたまものにほかなりません。わが国の技術水準は世界各国から高く評価されております。しかし、率直に言って、今日わが国が保有している高度技術のほとんどは先進諸国から導入したものを改良し進展させたものであって、わが国独自で創造し開発したものは皆無に近い状態であります。こうした状態から脱却して、みずから先導的かつ創造的な技術を培って、真の技術先進国として成長することは、資源小国日本の不利を克服するだけでなく、世界人類に貢献する道だと思うのであります。そのような観点から自主技術の開発に対して政府の強力な施策を要望したいのでありますが、従来、わが国の研究開発投資は欧米諸国に比べてかなり低位にあると言われております。
 たとえば、昭和五十三年度の研究投資額は、アメリカの十兆円、ソ連の六兆二千億に対し、わが国は三兆六千億であります。しかも、この金額は政府と民間の研究費の合計額でありまして、その内訳を見ると、欧米においては政府負担額がおおよそ五〇%前後に相なっているのに対して、わが国のそれは三〇%足らずにすぎません。ここはやはり問題だと思います。先導的独創的技術は、未踏の分野に分け入るわけですから、どうしてもリスクを伴いがちであります。リスクを伴いがちな研究開発は、これを民間に期待することは無理でありますので、政府が進んで関係予算の大幅な拡充に努力すべきだと思います。
 続いてお尋ねしたいのは海洋開発の問題であります。
 海洋の問題につきましては、第三次国連海洋法会議の起草委員会が目下ニューヨークで開催されておりまして、本年中にも調印される見込みと言われております。会議の中心議題は、まず第一に、二百海里経済水域を沿岸国の管轄下に置くこと。第二には、深海底に眠るマンガン等の資源は国際的共有物として国際機関の管理下に置こうとするものであります。
 わが国は、言うまでもなく四面海に囲まれた海洋国家でありますが、海洋はまことに大きな開発の可能性を秘めておると思うのであります。陸地だけで見ますると、わが国は世界五十位の小国ですが、沿岸二百海里水域の面積では、米国、豪州等に次いで世界六番目の広さがあり、海陸を合わせると世界十位の大国になるわけであります。しかも、海には無数の魚類が生息し、各種の有用鉱物が埋蔵されていて、二百海里内の海底石油と天然ガスの賦存量は十三億キロリッターと試算されております。また、深海底のマンガン団塊は、国際管理下に置かれることになりますものの、その賦存量は実に一兆七千億トンで、陸地埋蔵量の数十倍に相当すると言われております。
 ただ、現状ではわが国の海洋調査能力と開発体制はきわめて不十分だと言われております。しかも、これには約二十の省庁が関係していて、それぞれの任務とそれぞれの立場で事を進めようとするために、総合的な、また効率的な推進がむずかしい状態にあります。こうした問題の調整を図りながら開発の可能性を最大限に発揮するには、速やかに総合的な推進体制を整える必要があると考えます。また、海洋開発審議会の答申にもありますように、海洋開発には膨大な投資が不可欠でありますが、これらの点に対する政府の御方針と決意をお聞かせ願います。
 次に、国連を通じて世界的問題となっている婦人の社会参加と国際障害者年について伺います。
 長い歴史的な慣習である男女差別を撤廃して、女性の持つ能力を社会に生かすべきであることは言うまでもないところであります。昨年七月、デンマークのコペンハーゲンで開催された国際婦人の十年、中間年の世界会議において、婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約が提案され、世界六十五カ国とともにわが国もこれに署名いたしております。このことは、現に女性が差別を受けている雇用、教育、戸籍等の各面についての国内体制の整備を図り、国会の批准を得ることを世界に宣言したものでありますから、政府としても速やかにこの条約を成立させ、国際的期待にこたえるべきだと思うのでありますが、今後これにどう対処されるのでありましょうか。
 また、本年は国連が決めた国際障害者年であります。私は、障害者の社会参加と平等の観点から、質的に立ちおくれた障害者対策を充実させることとともに、障害者の方々に対する深い理解と、障害者の方々が自然に社会に溶け込める環境づくりが必要であると思います。政府においても、昨年、国際障害者年推進本部を発足させ、各般の準備、対策を講ぜられているようでありますが、さらに今後とも弱者救済を中心とした福祉政策を展開され、公正で潤いのある日本型福祉社会の建設を期待いたしたいのでありますが、これらの点について総理のお考えを伺いたいと存じます。
 次に、多年の懸案であり、総理も就任以来関心を示されております選挙制度の改革について一言お伺いいたします。
 制度改革の方向としましては、政治資金の明朗化、選挙運動の規制等のほかに、参議院全国区制の抜本的改正が検討されておりまして、わが党としては、昨年夏以来、精力的に討議を重ねた結果、一つの方向を出し得る段階に至っております。この問題は、本院創設以来最大の選挙制度の改正となるわけですが、政府自身はどのようにお考えであるか、この際御見解を伺っておきたいと思います。
 次に、教育問題であります。
 わが国が今日世界のどの国よりも自由と繁栄を享受できているのは、ひとえに国民の勤勉と努力とすぐれた資質によるものであります。
 総理は、この八〇年代を二十一世紀への足固めの時代とする決意を述べられたのでありますが、その二十一世紀に向かって、国力の充実を図りながら国際責任を果たしていくためには、何よりも人づくりが肝心であります。とりわけ次代を担う健全な青少年の育成が大事であります。しかるに、最近、各地で青少年の非行が目立っていることはまことに遺憾であります。特に、学校教育の場において、すなわち教師と生徒が愛情と尊敬と信頼によって結ばれるべき場において、教師に対する暴力事件が続発するということは、異常であり嘆かわしい限りと言わなければなりません。速やかに、しかも真剣にこれが対策に取り組まなければならぬと考えるのであります。
 青少年教育については、家庭や地域社会の役割りももちろん大きいと思います。青少年の非行が社会や環境の影響を受けていることは明らかでありますけれども、しかし、私は、やはり何よりもまず第一に、学校教育において適確な対応策を講じていかなければならぬと思うのであります。そのためには、学校全体として校長を中心に一丸となって生徒指導に当たり、また文部省、教育委員会はもとより、関係省庁を初め、まさに国が挙げてこれを支援し、この事態の原因となっている諸問題の解決に当たらなければならないと考えます。
 特に、最近、教科書のあり方が各方面で批判されております。その記述の内容が偏向しているという指摘が多いのでありますが、言うまでもなく教科書の内容は青少年に大きな影響を与えるものでありますから、その内容の公正と充実を図ることもまた急務だと考えます。これらの点について総理の確固たる御方針をお示し願いたいと存じます。
 最後に、靖国神社の国家護持と公式参拝について伺います。
 古今東西を問わず、世界のどの国でも、戦争その他国家の危急に際して祖国のためにとうとい命をささげた人々に対して、国家として崇敬し、その遺徳をたたえ、霊を永遠に祭っております。しかるに、わが国におきましては、戦後、靖国神社は一宗教法人とされて、国との関係を全面的に断たれ、国に殉じた人々の英霊は公に祭られることなく、総理大臣も公式に参拝できないとされております。これでは、祖国に殉じ、靖国神社に祭られることを信じて散っていった英霊に対して申しわけない限りと言わなければなりません。
 今日、わが国が世界で確固たる地位を築き、平和と繁栄を享受できるのは、この幾百万同胞のとうとい犠牲によるものであるのでありまして、このことを思えば、国を挙げてこれらの人々に感謝の誠をささげるとともに、速やかに英霊の国家護持を考えなければならぬ、それが今日のわれわれの責任だと思うのであります。このことは同時に、夫や子や兄弟を祖国のために失った遺族の方々の心からの願いでもあります。
 靖国神社の国家護持や公式参拝が憲法の条項に照らしてどうしても不可能だというのであれば、それを可能にする道を探るべきだと思います。靖国神社を超宗教的なものとして位置づけて、国民こぞって尊崇する霊廟として祭る方法もかつて考えられた経緯もあります。英霊の国家護持、このことを真剣に考えていただくことを特に訴え、総理の御決意を伺う次第であります。
 私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(鈴木善幸君) 西村議員にお答えを申し上げます。
 西村議員から豪雪対策について御要望がありましたが、私も、昨年末以来の異常な豪雪により犠牲になられた方々、また被災された方々に対し、心からお見舞いを申し上げますとともに、引き続き豪雪対策に万全を期してまいる所存でございます。
 財政再建の手順についてでありますが、御承知のとおり、五十六年度予算では四兆四千九百億円の自然増収が見込まれますが、これを優先的に国債減額に充て、特例公債の発行額を二兆円減額し、財政再建を本格的な軌道に乗せたいと考えております。今後も引き続き財政再建を進めてまいる決意でありますが、それが自然増収だけで達成可能かと言えば、なかなかそのようにはまいらないのではないかと思われます。やはり歳出面において、既存の制度の見直しを含め徹底した節減合理化を推進することが必要であります。これが財政再建の基本でありますが、状況によっては、歳入についても幅広い観点から検討を進める必要が出てくることもあり得ようと考えております。この点、歳出歳入両面の施策の水準相互の関連性が問題となりますが、これらの問題を考えていく上での手がかりとするため、現在、財政の中期的展望について検討を進めておるところでございます。
 行政改革についてのお尋ねでありますが、私は、かねて申し上げておりますとおり、この問題に真剣に取り組んでまいります。政府は、昨年末、行政改革の推進の方針を閣議決定いたしましたが、これを着実に実施するとともに、臨時行政調査会を早い機会に発足させ、官業と民業の役割り分担、国と地方の事務配分、府県単位の国の出先機関のあり方など、行政の基本的制度及びその運営について御検討を願いたいと考えております。なお、同調査会で出た結論は十分尊重いたしてまいる所存でございます。
 次に、経済問題についての御質問にお答え申し上げます。
 昨年末までのわが国経済は、国内需要の拡大テンポの鈍化傾向が続いておりましたことは御指摘のとおりであります。しかし、今年の一−三月期の経済情勢は、物価の安定化傾向が進展し、個人消費支出の伸びが堅調さを回復すると見込まれるなど、経済活動が活発化し、次第に好転することが期待されます。こうした上向きの基調は五十六年度においても続くものと見込まれるほか、多くの先進諸国で年後半から景気の立ち直りが予想される事情もあり、わが国の景気も、こうした内外の動向に対応して、五十六年度にはしり上がりによくなっていくものと考えております。このようなわが国の内外経済情勢を勘案すると、五十六年度五・三%程度の実質経済成長率は可能なものと考えております。
 なお、金融政策の運営に当たっては、物価、景気、海外情勢など、経済の動向を総合的に判断して機動的に対応してまいる所存でございます。
 五十五年度の消費者物価につきましては、第二次石油危機の影響を最小限度にとどめるよう数次にわたる総合物価対策を強力に推進するなど、できる限りの努力を重ねてまいりましたが、五十六年度経済見通しの作成に当たり改定せざるを得なかったことは残念であります。しかしながら、最近の消費者物価は総じて落ちつきの方向にあり、国際的に見ても西独と並び良好な推移を示しております。
 政府としては、これまでの一連の物価政策の成果を踏まえ、引き続き通貨供給量の監視に努めるとともに、各般の対策を総合的かつ機動的に推進することによって、現在の物価の落ちつき傾向をより確実なものとし、五十六年度の消費者物価上昇率が五・五%程度におさまるよう引き続き努力してまいる所存でございます。
 次に、防衛の基本方針についてお尋ねがありました。
 私は、施政方針演説で明らかにいたしましたが、わが国の防衛は、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、軍事大国にならず、さらに非核三原則を国是とすることをその基本方針としております。私は、今後ともこの方針を堅持し、みずからの国はみずからの手で守る気概を持って、節度ある質の高い防衛力の整備を図っていく決意であります。
 原子力発電は、最も有望かつ現実的な石油代替エネルギーであり、したがって、国民の理解と協力を得てその積極的な推進を図るべきことは、全く西村議員と同感であります。このため、政府といたしましては、これまでも電源三法の積極的な活用による地元福祉の向上などにより、その推進を図ってまいりましたが、五十六年度におきましては、地元に実質的に電気料金を割り引く制度を創設するなど、施策の拡充に努めているところであります。
 なお、原子力発電に関連する手続につきまして、安全性の確保と環境保全への配慮等に万全を期するため、許認可数などの多いのはある程度やむを得ない面もあろうかと思いますが、今後ともこれらにつき可能な限り迅速に処理するよう努力してまいりたいと思います。
 石油依存率五〇%に甘んじてよいものかどうかという鋭い御指摘がございましたが、昭和六十五年度に石油依存度を五〇%まで引き下げるという目標は、民間の最大限の理解と努力、政府の重点的かつ計画的な政策の遂行を前提として策定したものでありまして、この目標達成自体が決して容易なものではないと考えております。したがいまして、現実の問題として、全体のエネルギー規模を維持しつつ、これ以下に石油依存率を切り下げることはきわめて困難であると考えられます。
 このような事態にかんがみ、政府としては、今後ともこの供給目標の達成に向けて、安全性の確保と環境の保全に十分留意しながら、原子力を初めとする石油代替エネルギーの開発導入に最大限の努力を払い、御質問の趣旨を体して、引き続き脱石油のため全力を傾注してまいります。
 次に、食糧問題についての御高見を伺いましたが、国土資源に制約がある高密度工業化社会のわが国では、すべての食料について高い自給率を維持することは困難であり、国内生産と輸入とを組み合わせて食料を安定的に供給していかざるを得ないと思います。このため、国内で生産可能なものは極力国内生産で賄うとともに、今後とも輸入に依存せざるを得ない農産物については、諸外国との友好関係の維持を基本とする輸入の安定化と備蓄によりその確保を図ってまいりたいと考えております。これとともに、食糧自給力の強化に関する国会決議を踏まえ、過剰なものから不足なものへ農業生産の再編成を積極的に進めるとともに、中核農家の育成、技術の向上、優良農地の確保等により、総合的な食料自給力の維持強化を図ってまいる所存でございます。
 西村議員より自主外交を展開すべしとのお話がございました。
 申すまでもなく、八〇年代わが国を取り巻く国際環境はますます厳しさを増すことが予想され、また、わが国の近年における国力の顕著な向上に伴い、わが国に対する国際的期待も増大しております。このような情勢のもとで、わが国としては、国際社会の有力かつ責任ある一員として、国際社会の直面する諸問題解決のため、自主的な立場を踏まえ、より一層積極的かつ建設的な外交を展開していく決意でございます。
 次に、私のASEAN訪問についてでありますが、私は、今回のASEAN各国首脳との胸襟を開いた話し合いを通じ、アジア、なかんずく東南アジアの平和と安定のため、わが国とASEAN諸国が今後一段と協力関係を深めていくことについて共通の認識と目標を設定し得たものと考えております。また、今次歴訪を通じ、各国首脳との個人的な友好信頼関係を築き得たことも大きな成果でありました。
 私は、こうした成果を踏まえ、かつ約束したことは必ず実行するとの誠意を持って、より成熟した日本・ASEAN関係の構築に向けて不断の努力を払ってまいりたいと考えております。
 なお、カンボジア問題につきましては、国際社会の圧倒的多数の支持により採択された国連決議にのっとり、事務総長が国際会議開催のため適切な措置をとるよう、安保理事国として事務総長の努力に全面的に協力して実現を図ってまいる所存でございます。
 次に、日米関係についてでありますが、日米両国の関係は今日きわめて強固なものになっているのみならず、自由世界の平和と安定にとって真に建設的な役割りを担うに至っております。私もこの観点から、双方の都合を見きわめながら、国会に御了承が得られれば、できるだけ早い機会に訪米し、レーガン大統領を初めとする米国新政権関係者と会い、日米二国間問題及び両国が共通に関心を有する国際社会の諸問題につき、率直な意見の交換をいたしたいと考えております。
 日ソ関係は、現在、遺憾ながら、必ずしも友好なものではありませんが、北方領土返還は国民の総意であり、この問題の解決に対する政府の強い決意は不変であります。政府といたしましては、ソ連側に対し引き続き、この問題の解決が真に安定した良好な日ソ間の確立のために不可欠であるとの認識をあらゆる機会に伝えるとともに、北方領土返還に対するわが国民の総意を踏まえつつ、今後とも息の長い姿勢で粘り強く折衝を進めていく考えであります。
 次に、科学技術の振興についてお答えいたします。
 わが国が今後とも発展を続けていくためには、技術立国を目指すことが不可欠でありまして、御指摘のとおり、政府としても、先導的独創的技術を初め、リスクが大きく民間に期待することがむずかしい分野を中心に積極的に取り組む必要があります。このような考え方のもとに、これまでも宇宙、海洋、新型原子炉、大型工業技術などのリスクの大きなプロジェクトの研究開発を国が資金を負担して進めてきたところでありますし、昭和五十六年度予算におきましても、厳しい財政事情の中で、たとえば次世代産業基盤技術研究開発制度を創設するなど、施策の拡充に努めているところであります。
 四方を海に囲まれたわが国にとって、海洋開発審議会の答申にも指摘されているとおり、海洋開発の推進を図ることはきわめて重要であります。海洋開発には関係する省庁の数が多いので総合的な推進体制を整えることが必要との御指摘がございましたが、現在、内閣官房に海洋開発関係省庁連絡会議を設置し、関係行政機関相互間の事務の緊密な連絡を図るとともに、総合的な施策の推進に資することとしているところであり、今後ともこのような場を活用しつつ、積極的に海洋開発を進めてまいります。
 次に、婦人差別撤廃条約についてお答えいたします。
 私も婦人問題の重要性は十分認識しており、婦人差別撤廃条約につきましては、昨日の国会においてもお答えいたしましたとおり、政府は本条約批准のため、国内法制等諸条件の整備に努めることとし、関係各省庁においてすでにそのための検討を開始しております。
 国際障害者年に関連しての御質問がございました。
 私は、この機会に社会的、経済的に真に恵まれない立場にある人々に対しては一層きめ細かな配慮のもとに福祉の充実を図りたいと思います。
 日本型福祉社会の建設を期待したいとのお話がございましたが、私も日本人の持つ自立自助の精神、思いやりのある人間関係、相互扶助の仕組みを守りながら、これに適正な公的福祉を組み合わせることにより、活力のある、そうしてゆとりと思いやりに満ちた社会を実現してまいりたいと考えております。
 参議院全国区制のあり方については、自由民主党として一つの成案がまとまりつつあると聞いており、また、各党においても改善策をめぐり真剣な検討が行われていると承っております。私は、現行の全国区制は余りに金がかかり過ぎる等の問題が多く、制度改正を図る必要があると考えていますが、何といっても選挙のルールづくりに関する問題でありますので、願わくは各党各会派の合意の上に立って国民の納得が得られることを望んでおり、各党各会派の間において、さらに十分論議を尽くしていただきたいと考えておるものであります。
 次に、青少年問題についてでありますが、将来のわが国の発展と繁栄を図っていくためには、何よりも次代を担う青少年の育成が重要であります。もとより、青少年の健全育成は社会全体で取り組むことが必要でありますが、その中心は何といっても学校教育であります。学校教育においては、教師が一人一人の生徒に対する深い愛情を持って指導に当たるとともに、教職員が一体となって児童生徒の育成指導に努めなければならないと考えます。政府としても、青少年の非行防止について関係省庁の連絡会議を開催するなどして、学校における生徒指導が十分効果を上げるよう努力してまいります。
 教科書のあり方について御指摘がございました。
 御指摘のとおり、教科書が学校教育で果たす役割りはきわめて基本的なものでありますので、今後とも教科書の内容が公正かつ充実したものとなるように努めてまいりたいと存じます。
 靖国神社の国家護持については、従来からいろいろな意見や論議があるところでありますが、事柄の性質上、国民各界各層、あるいは国会において各党各会派の間でよく話し合い意見を出し合ってまとまることが望ましいと考えております。いわゆる靖国神社法案については、従来、国会に議員提案されてきた経緯があるので、政府としてはその推移を見守っていきたいと思います。
 靖国神社への公式参拝についてでありますが、政府としては、内閣総理大臣その他の国務大臣が国務大臣としての資格で靖国神社へ参拝することは憲法第二十条第三項との関係で問題がありますので、従来から事柄の性質上慎重な立場をとり、国務大臣としての資格で参拝することは差し控えるという一貫した方針をとってきたところであります。なお、今後もこの方針を変えることは考えておりません。
 以上、西村議員にお答えをいたしましたが、残余の問題は所管大臣から答弁いたさせます。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えいたします。
 補助金の洗い直しはどの程度行なわれているのかと、これは二百九十二件を整理いたしましたほか、減額を加えまして千六百八十八億円を整理合理化いたしました。しかるに、補助金がふえているじゃないかと、全くそのとおりでございます。御承知のとおり、十四兆もある補助金ですから、千六百億円ぐらい切っても本当に目につかない。しかしながら、補助金を切るということになると本当に騒ぎが大きい。たとえば学校給食で牛乳補助金というのがありましたが、私はこれは少し、ともかくスーパーよりも高く学校に売っているのだから、その分だけでもカットしようと思った、実際は。ところが、ほとんど大部分の政党から苦情が来まして、それは残せと、こういうような状態、一つの例を挙げればそういうものでございます。実際問題として、社会保障関係だけで五兆円の補助金があるわけです。これは極力抑え込んでも、ことしだけで三千三百七十五億円ふえる、社会保障だけで。文教でこれは三兆三千億円の補助金がある、これでやっぱり千三百三十六億円ぐらい補助金がふえるのです。しかしながら、文教関係では、施設整備費で約四百億円余のものは実は今回は減額をさせていただいたわけであります。
 時間があれば私は各項目についてお話ししてもいいのでありますけれども、時間の関係もありますから例示的に申し上げましたが、いずれにいたしましても、制度というものについて抜本的に――これはほとんどが法律事項ですから、社会保障の補助金の五兆円のうち九七%は法律補助になっておるわけです。幾ら大蔵大臣に権限をふるって切りなさいと言ったって、法律を直してもらえなければ切りようがないという問題がございますので、これはどうしても来年以降の財政再建に向けては大変な実は問題なわけでございます。したがって、今後どういう手順で財政再建をやるのか、また増税するのかと。私も税金を取るのは本当は余り好きじゃないのです。これはもう極力税金は少ない方がいい。だれだって同じことであります。
 しかしながら、現在のこの制度を仮にそのまま持続してまいるということになると、大蔵省でも、皆さんからの御要望があって、後年度に経費がどれぐらいかかるのか推計してやってごらんと、こういうので、いまやっているわけです。まだ完全にでき上がっておらない。おりませんが、景気はやっぱり拡大していかなければならぬ。二%以上ずつ経費が仮に毎年伸びていって租税弾性値が一・二と、そこの中で一般歳出を大体一けたぐらいに抑えていくということでも、そして税収が毎年十数%ずつコンスタントに景気よく入ってくるという想定に立っても、一年に何兆円という不足分が出てくる可能性が多いわけなのです、要調整額という形で二兆数千、四兆、六兆と。とてもこれは現在のままではそれの負担には耐えかねるのではないかという気が私はしておるわけでございますので、負担ができなければ制度を変える以外に方法はないわけですから、制度は変えるなと法律でどんどん義務づけておいて、それでその負担はしたくないと言われても、これは困るわけです。したがって、これらの点は今後非常に大きな問題でございますから、予算全体の審議を通しながら、将来の展望については国民の代表である皆さん方と一緒に虚心坦懐に相談をしてまいりたい、かように考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣中川一郎君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(中川一郎君) エネルギー、科学技術、海洋開発について答弁を求められましたが、総理から大方お話がありましたが、補足して答弁をいたします。
 まず、原子力発電についてでございますが、国際的な石油供給の不安定性から、エネルギー問題はいまや世界各国共通の緊急かつ重要な政策課題となっていることは御指摘のとおりであります。特に、わが国の場合は、自由世界全体で消費される石油量の一割を消費しております。しかも、そのほとんどすべてを海外に依存しており、わが国エネルギー総量の七三%にも達しているのであります。このような内外の情勢から見て、代替エネルギー、なかんずくその中核たる原子力の開発利用を強力に推進することを重要な政策とすることは当然のことでございます。
 昨年、私は、わが国と類似したエネルギー事情にあるフランスを訪問する機会を得ましたが、わが国が十年後に発電量の約三〇%を原子力発電により賄うことにしているのに対し、フランスでは七三%という意欲的な計画を立て、しかも着実に実行していることに敬服をいたしましたし、もう一つ感銘を受けましたのは、フランスでは、思想、信条、党派を超えて、国を挙げて意欲的に取り組んでいる姿でございます。わが国といたしましても、こういった情勢から、フランスに学んで、幅広い国民の皆さんの理解を得て対処してまいりたいと意を強くして帰ってきたような次第でございます。
 このように、原子力開発の必要性については論議を必要としないところでございますが、その促進に当たっては安全性について問題があり、まだ国民の理解が得られないことはまことに残念なことでございます。政府といたしましては、特に安全性確保には最善の努力を払い、万全を期しており、原子力発電実用化以来いまだ環境あるいは人身事故等障害事故を起こしていない事実、また、これは世界的に見ても一億四千万キロワット、二百数十基の発電を行っておりますが、いまだ一人の死亡者も出ていない。安全性については定着したものと考えておりますが、幅広い国民の理解を一層得るように最善を尽くしてまいりたいと存じます。また、諸手続についても可能な限り迅速に進めて、原子力開発を強力に進めてまいりたいと思いますので、国民各層の御理解を重ねてお願い申し上げる次第でございます。
 次に、科学技術についてのお尋ねがございましたが、科学技術が資源の少ないわが国にとって重要なことは言うに及びません。この点は総理からも御答弁がありましたが、今年度予算において特別会計を含め九%の伸びとなったことは、いかに政府が力を入れているかを示す証拠だと存じます。
 次に、開発研究投資の増大について、いま二・一五%であるということで、将来についてはこれを二・五%に、さらに長期目標としては三%まで持っていきたいし、また、国の投資比率が三〇%では足りない、こういうこともございますので、これらについても最善の努力をして国の投資比率を高めてまいるようにいたしたいと思っております。
 最後に、ことしの予算につきましては、科学技術振興調整費の創設など、科学技術立国元年としてスタートしたつもりでございます。今後とも息長くやっていきたいと思いますので御協力をお願い申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣亀岡高夫君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(亀岡高夫君) 西村君の御質問にお答えいたします。
 まず、質問を通じて述べられました御意見、御主張に対しましては全く同感でございますので、あらかじめ申し上げます。
 私といたしましては、昨年の通常国会で本院で決議をいただきました食糧自給力強化に関する決議を体しまして、何としても、去年まで自給力が低下しつつあったことはこれは事実でございますので、そういう立場からも十分米の過剰問題を解消する。これが三Kと言われておる食管の中で一番赤字を生む要素になっておりますので、米の過剰解消に努める次第でございます。
 と同時に、やはり米を食べてもらわなければいけません。戦後の学校給食等の関係もございまして米の消費が極端に低下をしてきておる、これはやはり日本国民として十分自覚をしなければならない問題と考えております。政府は、この米の消費拡大に全力を尽くしてまいります。
 と同時に、米の生産過剰を解消するために、生産調整を本年から三年間にわたって実行をしてまいります。六十七万七千ヘクタールの水田に米以外の作目を植えつけるという指導をいたすことといたしたわけであります。これが第二期対策でございます。これも各県市町村、農家並びに農業団体の御協力のもとにいま一応順調に下部浸透がなされておりますので、この機会をかりて敬意を表する次第であります。
 さらに、やはり何としても農業関係は税金からの投資が非常に大きな額を占めておるわけでありますので、やはり農家として、農家の社会的責任という立場から生産性を上げるということに全力を挙げるべきであると、こういう指導をいたしておりまして、そのために、幸いこれも昨年の国会で農用地利用増進法という法律をおつくりいただき、農地法、農業委員会法の改正もしていただいたわけでありますので、この法律の精神を十分に生かしまして規模拡大を図り生産性を上げてまいる、そうして割り安の食糧を生産することのできる体制をつくり上げていくということが国会の御決議に沿うゆえんである、こう考えてやってまいりたいと考えております。
 と同時に、安いものをどんどん外国から買ったらいいじゃないかと、こういう論も一部にはあるが、その論に対してはこれはとるものではないという西村君の御意回でありましたが、とれもやはり国会の御決議による食糧自給力強化という立場から考えましても、また食糧の安全保障という立場から考えましても、この国際分業論というものは十分慎重に取り扱っていかなければならない、こういう立場を私としてはとってまいりたい、かように考える次第でございます。
 総理から詳細に答弁がございまして、国際分業論と生産調整の件について補足をいたして答弁申し上げました。(拍手)
   〔国務大臣伊東正義君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(伊東正義君) お答えいたします。
 西村さんからの御質問、ほとんど総理から日ソ関係その他外交関係はお答えになっておりますので、私は答弁を省略いたします。(拍手)
#17
○副議長(秋山長造君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○副議長(秋山長造君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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