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1980/01/30 第94回国会 参議院 参議院会議録情報 第094回国会 本会議 第4号
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1980/01/30 第94回国会 参議院

参議院会議録情報 第094回国会 本会議 第4号

#1
第094回国会 本会議 第4号
昭和五十六年一月三十日(金曜日)
   午前十時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第四号
  昭和五十六年一月三十日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 第二 特別委員会設置の件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。二宮文造君。
   〔二宮文造君登壇、拍手〕
#4
○二宮文造君 私は、公明党・国民会議を代表して、さきの総理施政方針並びに政府演説に対し若干の質問をし、その所信をただしたいと思います。
 鈴木内閣誕生以来、政治の最高責任者としての総理の指導性が云々される場面がしばしばありました。また、自民党は自民党で絶対多数、しかも向こう二年間ぐらいは国政選挙もない。この際、まだ国民の合意が調っていない懸案事項も一挙に片づけようとする党利党略むき出しの姿勢が目立ってきています。
 世論の批判の強い改憲論議が、総理の再三の言明にもかかわらず、党内はおろか閣議や国会で、その言明をはみ出すかっこうで取り上げられたり、防衛力増強、参議院全国区制改悪、小選挙区制導入など、数を頼むおごりの姿勢がきわめて顕著になっています。また、五十六年度予算編成に見られる財政再建に名をかりた福祉の後退・切り捨て、物価値上げ、大衆増税のごり押しなどがそれです。
 総理の言う「和の政治」とは一体何か。マスコミで言うように、改権維持のための、党内融和のためのシンボルにすぎないのかどうか。与党多数下の政治並びに国会運営の基本姿勢について、総理の明確な答弁を望みます。
 これに関連して、第一に、総理は「現在においては憲法改正を政治日程にのせることは考えていない」と言ってきましたが、先日の自民党運動方針では、実に五年ぶりに「自主憲法制定問題は、党の正式機関で検討を進め、世論の喚起に努める」となっています。しかも、全会一致で可決したようですが、鈴木総裁は、これを支持し、賛同されたのかどうか。また、この時期に改憲問題を運動方針に盛り込む必要ありとお考えになったのかどうか。昨日も竹入委員長が質問しましたが、答弁がすれ違っています。自民党云々ではなく、鈴木総裁の見解をお伺いしたいと思うのであります。
 第二に、長年大きな政治課題として国民が要求してきた議員定数是正については、先ごろ東京高裁で、議員定数の不均衡が一対二を超す場合は違憲であると、きわめて具体的な数字を挙げての判決がありました。現在、衆議院は、格差四・五四倍を筆頭に、判決を基準とすれば百の選挙区が該当します。参議院地方区では五・七三倍となり、人口と定数の逆転現象も十七道府県に増大しています。そこで、いたずらに最高裁の判決待ちというのではなく、第三者による国会議員定数委員会を設置して早急に対処し、国政に公正な民意が反映できるようにすべきだと考えますが、どうですか。
 なお、小選挙区比例代表制導入や参議院全国区制度の拘束名簿式比例代表制には反対です。また、事実上全国区を廃止する一票制は憲法上も疑義があり、反対の立場を明確にしておきます。
 第三に、去る五十年の政治資金規正法改正の際、その附則第八条に、施行後満五年を経過した時点で、政治資金の個人拠出を一層強化するための方法、会社などの政治資金拠出のあり方を検討すると明記しています。いまそのときに当たりますが、どうしますか。
 本来、政治資金は個人に限るべきですが、金権腐敗は後を絶たず、最近も川上千葉県知事をめぐる問題が疑惑を深めています。政治家個人が受け取る政治資金について、特に支出の届け出と公開、罰則の整備など、金権支配から国民に信頼される方向に改正すべきだと思いますが、どうですか。
 第四に、航空機輸入調査特別委員会が自民党の数によってついに廃止されました。総理の政治浄化への節操が一段と薄れたわけです。また、総理は、かねて公約の倫理委員会の設置につきまして、各党各派の合意にゆだねていますが、これは責任回避です。あわせて所見を伺います。
 さて、世界は、一昨年末のソ連軍のアフガニスタンへの軍事侵攻、イラン・イラク戦争、ポーランド情勢の緊迫化、ベトナムのカンボジア侵入、アフリカの混迷など、緊張要因は現在まで継続され、長期化の様相を呈しています。その上、アメリカのレーガン新政権が「力による平和」を訴えていることも注目を要する問題です。
 一方、わが国は、三十年間平和の中で、かつては世界の二%にすぎなかった国民総生産が現在では一〇%を占めるに至り、工業先進国の一員として責任を負うべき立場を要請されています。そのことは、国際社会の中で日本が発展途上国への援助、難民の救済などでおくれをとって非難を浴びたことに対する反省、あるいは世界的不況と貿易摩擦にどう対処するかなど、主要国としての役割りをどう果たすかが迫られるということです。そして、日米友好関係の維持強化を基盤としながら、日本は平和に徹した中にしか生きる道はない。アジアと世界の平和、緊張緩和にいかなる貢献ができるかという自主外交の展開にかかっています。その意味で、まず総理の基本的な外交方針を伺って、各論を続けます。
 第一に、ASEAN訪問に続く今年いっぱいの総理の外遊スケジュール、外国首脳の訪日予定など、見込みも含めて発表願いたい。首脳外交を通しての対処を期待するゆえんです。
 第二に、日本外交の基本が国連中心主義であることは当然です。しかも、日本は安保理事会の非常任理事国に選出されました。そこで、国際紛争解決のネックになっている常任理事国の拒否権の抑制、あるいは核全面禁止を含む核軍縮など平和維持のための提案に積極的に努力すべきだと思いますが、どうですか。
 また、国連の平和維持活動に自衛隊を派遣する構想が自民党内で論議されていると聞きますが、総理の考えはどうですか。それよりも、むしろ国連の下部機関、たとえば軍縮センター、ユネスコなどの支部機構を誘致して平和外交の一環にすることを提案しますが、どうでしょうか。
 第三に、総理の先ほどのASEAN諸国歴訪に際し、各国の歓迎の裏には日本の軍事力強化への警戒がうかがえますが、総理の認識はどうでしたか。
 また、総理は、アジアの平和維持のため、日本の政治的役割りを痛感したと述べていますが、その意図するところは何でしょうか。この際、アジアの平和と安定のため、アジア各国の参加による国際会議を提唱される考えはないかどうか、ぜひ承りたい。
 第四に、国際経済協力については、これまでも欧米各国が人道的、道義的な援助に積極的だったのに対し、日本の場合は資源確保、海外市場拡大を目指す援助に傾き過ぎるとの非難が出ていました。昨年末で終了した政府開発援助三年倍増計画にもかかわらず、GNP比率では援助国平均の〇・三五%にも及ばない状態です。これでは南北サミットで批判を避けることはできません。総理は、今後五年間にさらに倍増を言明しましたが、それで日本の責任を果たし、諸外国の理解を得られる内容なのかどうか、伺いたい。
 第五に、中東紛争、ソ連軍のアフガンへの軍事侵攻を契機に、西側諸国にソ連脅威論が高まり、日本も対ソ経済措置に加わるなど、EC、アメリカとの結束を強めてきました。しかし、日ソ関係は北方領土という特殊の政治問題を抱えています。強硬策よりはむしろ日本の持つ経済力、技術力で理解を深める平和自主外交に徹することがかえって関係改善に役立ち、ひいては世界の緊張緩和にも役立つと思いますが、どうですか。
 すでにフランス、西ドイツなどは、それぞれ独自の思惑、判断から対ソ経済措置をなし崩し的に緩和しています。日ソ経済協力プロジェクトは、現在継続中のものが四件、新規実施検討中のものが六件あり、いずれも凍結中と承知していますが、これらの取り扱いをどうしますか。
 さらに、日ソ定期外相会議の再開や、ソ連最高首脳との会談の見通しなどを含め説明を求めます。
 この際、特に総理の見解をただしておきたいのは、安全保障についての基本方針です。
 周知のように、日本は加工貿易立国です。海洋国家として地政学的にも余りにも守りに弱い国です。食糧も穀物自給率三二%で、国会で食糧増産を決議したほどの輸入大国です。世界の平和の中でしか生きる道はない日本です。もちろん、世界に普遍的な集団安全保障体制が確立されていない現段階、わが国からの一方的な完全非武装は現実的とは言えません。しかし、政府・与党が進めようとしている歯どめのない防衛力増強による安全保障政策は、安全を増すどころか、近隣諸国や他国の脅威と警戒心と反発を強め、かえって安全を損なう危険をさえ招きます。総理は、日本は軍事大国にならないとASEAN訪問の際も各国首脳に説明していますが、何をもってそう言われるのか、軍事大国にならないという歯どめ、尺度を説明願いたい。
 また、財政再建最優先のいまのときに、しかも社会保障費への予算配分比率を超えて何ゆえに防衛費を増額しなければならないのか、総理が考える必要な防衛力とは何を言うのか、何が脅威なのかなどなど、国民に対し明確かつ具体的に説明を求めます。
 あわせて、最近、武器半製品の輸出が発覚し、それとは別に武器輸出規制の緩和を求める声が一部財界で強まっているようです。わが国は、三原則など、一口で言えば武器は売らないという方針に立っています。わが党はかつて武器輸出禁止法を提案しましたが、政府は禁止規制を厳しくし、平和秩序建設に対する姿勢を明確にすべきです。所見を伺いたい。
 続いて、財政経済問題に移りますが、総理は、五十六年度予算編成に当たり、二兆円の国債減額、歳出の一けたの伸び、年内編成の三つを指示し、その全部を達成したと言っています。しかし、財政再建の手順、方法に多くのひずみを残し、増税元年の幕あきとして、ことしに始まる増税の不安を国民に押しつけようとしています。
 第一に、国債減額とは言っても、それは一兆四千億円に上る空前の大増税によるものです。大幅増税と言われた五十四年度でも四千三百四十億円ですから、実に三・二倍の増税です。それに電電公社、競馬会納付金などを加えますと、減額分の八〇%に当たります。政府は、当面の財政再建策として赤字国債を五十九年度にはゼロにすると言いながら、中期財政計画は発表せず、さきの選挙でもその方法、施策を国民に隠していました。そしてこの大増税です。これは民主政治のルールに反しますが、総理の見解はどうですか。あわせて、公明党がこれまで要求してきた中期財政計画の策定はどうなっていますか。第二に、歳出面を見て、一般経費の増は一兆三千百六十八億円となっています。政府はこれまで、四兆五千億円と言われる自然増収のうち一般経費に向けられるのは、サマーレビューでは三百億円にすぎないとか、十二月初めには二千億円とか言ってゼロリストや歳出百科を発表し、福祉切り捨ての弱い者いじめの宣伝に利用してきました。一体、ゼロリスト、歳出百科などの考え方がどこまで実行されましたか。三百億円が結論的に一兆三千億円を超える伸びになったからくりは何ですか。そのからくりによって、一方では圧力団体への党利党略的な配分を生み、経費節減がかすんだことになりませんか。説明をいただきたい。
 第三に、一けたの伸びとは言っても、たとえば公務員給与引き上げ財源を一%、六百四十億円の計上にとどめています。このことは、人事院勧告を予算案の線に抑え込む、また、勧告は出ても一%以上は認めない、そういう政府の決意を示したものですか。しかし、今年度は当初二%、さらに勧告の不足分を補正に計上しています。
 もう一つ、住宅金融公庫の利子補給金でも、一般会計で計上すべきものを財政投融資に振りかえたのはなぜですか。このように、一けたの伸びは、義務的経費を値切るという予算の大原則を踏みにじってでき上がったのではないでしょうか。
 関連して伺います。総理はさきに公務員の定員大幅削減を約束しましたが、実情はわずかに百一人の純減にすぎません。また、さきの閣議決定で、特殊法人の廃止は日本航空機製造株式会社ただ一つです。第二臨時行政調査会の答申待ちというのではなく、各種審議会、地方出先機関の整理などを含めて、政府の独自性を発揮した行政改革を推進すべきではないでしょうか。
 二つには、会計検査院は五千七百億円に上る経理不適正、予算のむだ遣いを指摘し、公費天国の実態をさらけ出しています。しかも、これは氷山の一角にすぎないとも言われていますが、綱紀粛正をどう実現しますか。
 さて、本題に戻って、第四に、政府の財政収支試算によれば、公債金収入は五十八年度に十三兆四千億円、五十九年度には十一兆六千六百億円となっています。そして、五十六年度は二兆円の減額で十二兆二千七百億円の国債発行となり、国債減額のテンポは五十八、五十九年度の中間まで早まってきています。政府は、このように財政再建の繰り上げができていることをお認めになりますかどうか。
 第五に、にもかかわらず、さきの政府税調の答申は、財政再建のため今後国民総生産の二%相当の増税が必要とし、消費に着目した課税ベースの広い間接税を提唱しています。これは国会決議で反対した一般消費税そのものです。仮に答申を実行すれば優に八兆円を超え、五十六年度増税一兆四千億円の五倍以上の負担増になるのです。政府は五十七年度導入を考えているようですが、国民生活を無視した財政再建はあり得ません。国会決議との関連も含めて、総理の見解を伺いたい。
 さらに、税制の問題です。
 ここ数年、所得減税がストップさせられた結果、年収が八%ふえると税負担率は二七%もふえます。またサラリーマン層の納税者の割合は、五十年度では百人のうち七十一人でしたが、五十五年度には八十二人にふえ、税率の高い、上の課税ランクに移されています。このようにサラリーマンの名目賃金のアップはそのまま実質的な増税となっていますが、政府税調は、物価調整減税はもちろん、課税最低限の引き上げも六十年度までの再建期間はやる必要がないと述べています。総理、自然増収四兆五千億円のうち、二兆円は源泉所得税の増収であり、物価調整のための所得税減税は当然実施すべきではないですか。
 また、法人の益金不算入や、過大計上と言われる退職給与引当金、貸し倒れ引当金を初め、株の売買、土地成金といった資産所得優遇の不公平税制の再検討をどうしますか。
 政府は、五十六年度の経済見通しを、実質成長率は今年度の四・八%から五・三%に上昇する、成長の主役は個人消費と企業の設備投資に置き、財政はわき役としています。また、貿易摩擦への懸念から輸出の伸びを控え目に、物価上昇率は卸売物価四・一%、消費者物価五・五%と、ともに今年度を下回る計算です。要するに、成長率は高く物価は低くというバラ色の展望になっていますが、果たしてどうでしょうか。
 今年度の実質成長率は政府の当初案の四・八%になるようですが、部門別には当初見通しと実績見込みの間で大きな狂いが出ています。個人消費支出は三・七%から二%に、民間住宅投資は一・七%からマイナス九・七%にそれぞれ落ち込み、消費者物価は六・四%から七%に上昇。これらの数字はそのまま国民生活の厳しさを物語っていますが、政府の説明はどうですか。
 以下、問題点を挙げて伺います。
 第一に、個人消費支出ですが、大幅増税はする、物価調整減税はしない、公共料金は値上げする。さらに、前代未聞の約一年にわたる実質賃金の目減り後遺症などで、国民生活センターの調べでは、主婦百人のうち七十五人が物価高を訴え、むだなものは買わない、買ったものは最後まで使う、このように節約をすると答えている主婦が百人のうち五十二人おります。こういう苦しい家計のやりくりの中で、今年度の二倍以上の実質四・九%の伸びが見込めるのでしょうか、その根拠を尋ねます。
 第二に、政府は今年度消費者物価上昇の見込み違いについて責任を明らかにすべきです。五十六年度もまた米麦を初め一連の公共料金値上げを予定しています。これら公共料金値上げによる影響を政府は〇・二六%程度と楽観的な見方を持っているようですが、民間機関では実勢に照らして一・一%程度は避けられないとしています。その上、酒税、物品税、あるいは四十ドル原油によって小売物価への波及も心配です。政府はどのような施策をもって五・五%を実現しますか。
 第三に、民間設備投資について、政府は、今年度の実質五・一%増の実績見込みに引き続き、五十六年度もそれを上回る七・三%増としています。しかし、景気はかげり現象を見せ、さきの日銀調査では、中小企業の経常利益は五十五年上期では前期比一三・五%、下期は三・二%と、それぞれ減益見込みのようです。また企業倒産は史上二番目、年間一万七千七百件という高い水準を示しています。この中小企業の実態が大企業に波及する不安もあり、設備投資は前年比マイナスという見方さえも出ていますが、それを回避するためには、金融政策を初め中小企業向けの融資対策など、きめ細かい施策が必要と思いますが、どう対処しますか。
 第四に、輸出を抑え輸入を拡大して貿易摩擦の解消を目指していますが、それでも貿易収支の黒字は倍増する計算になっています。国内需要が伸びなければ輸出に集中的なドライブがかかるというのがこれまでの実績でした。経済問題が直ちに政治問題化する今日、二国間の貿易不均衡の拡大、わが国の特定品目の輸出急増、わが国市場の開放という問題について、対アメリカ、対ECなど、政府はどのように対処しますか、説明を願います。
 第五に、政府は、十年後、昭和六十五年度に必要なわが国のエネルギーを石油換算七億キロリットルとし、現在七五%の石油依存率を五〇%にまで引き下げることを目標にしています。残り三億五千万キロリットル分はそのまま代替エネルギーによるものとし、石炭、原子力、天然ガスに大きな比重をかけていますが、脱石油の着想は理解できるとしても、その実現は至難ではないでしょうか。
 たとえば原子力発電です。目標は現在の能力の三倍以上、五千百万から五千三百万キロワットに設定しています。これは現在建設中のもの及び環境調査中のものまで含めても、なお千三百万から千五百万キロワットが不足する計算です。安全性、使用済み燃料の処理もまだ未解決です。説明をいただきたい。
 また、石炭火力にしても、現在の五倍強という目標については、立地条件、公害防止の面からも疑問の多い青写真となっています。総理答弁のように単に努力目標というのでは余りにもこの計画の権威がなさ過ぎますが、どうでしょうか。
 さらに、石炭液化実用化について、さきには西ドイツが、いままたアメリカのレーガン新政権がプロジェクトへの出資を見直す意向と伝えられていますが、見通しはどうですか。
 なお、政府は五十六年度のわが国の石油及び石油製品輸入量を日量五百三十万バレルに抑え、また、石油節約の目標を二千五百万キロリットルにするとのことですが、備蓄の現況及び五十六年度の需給見通しについて説明を求めます。
 関連して、IJPC、イラン・ジャパン石油化学合弁事業は、イラン・イラク戦争の長期化もあって中断したままとなっていますが、政府間の約束もあり、今後どう対処する考えか承りたい。
 総理は、さきの演説で、「二十一世紀への足固め」を基本テーマとし、内政面では来るべき高齢者社会に対応した「ゆとりと思いやりの社会」をうたい上げていますが、国民には財政再建に名をかりた大増税、福祉後退の大合唱が響くばかりで、先行きへの不安が一層高まっています。
 それは、まず社会保障に対する政府の姿勢に明らかです。高齢者社会に向かう過程で財政支出がふえるからと、各種福祉政策の本質的にあるべき姿を論議することなく、政治判断だけで予算を削減編成しています。所得制限の強化がそれです。児童手当では十五万人が支給対象から外れようとしています。また、老齢福祉年金では、限度額は据え置きながら二段階とし、給付に格差を導入しようとしています。元来、所得制限を云々するならば、まず所得の把握が厳正に行われるのが前提ですが、クロヨンとかトーゴーサンとか税把握が十分でなく、そのまま福祉面にまで不公平を持ち込んでいますが、どう考えますか。予算案の各種所得制限の強化をどのように説明し、国民の納得を得ようとするのか、あわせて総理の社会保障についての基本姿勢を明らかにしていただきたい。
 第二に、富士見産婦人科病院で発生した不正診療を中心に、医療の荒廃を象徴する事件が続発しました。政府も当面の対策はとったようですが、医療に対する信頼回復のためにはどうするか、具体的な処方せんを示していただきたい。
 また、薬づけ、検査づけは十二兆円にも上る医療費増大の原因と言われています。特に、実勢価格を大幅に上回っている薬価基準の引き下げはどうなっていますか。
 さらに、五十六年度創設を意図する老人保健医療制度について、予算編成の際財政当局との間に約束があるそうですが、その内容と本制度についての政府の基本的な考え方を説明願います。
 第三に、本年は国連で定めた国際障害者年です。「完全参加と平等」のメーンテーマのもとに行事が計画されていますが、問題は障害者対策の大幅な前進をどうするかです。公明党は、さきの党全国大会で、国立職業リハビリセンターの整備拡充、障害者控除の引き上げなど七項目の決議の実行を政府に求めていますが、見解を伺いたい。
 また、障害者が運転使用する自動車について、物品税などは免除、減税の措置がとられていますけれども、自動車重量税、ガソリン税は対象外となっています。検討を求めます。
 第四に、国連難民条約の批准に伴い、在日外国人に国民年金を初め社会保障諸施策が適用されるよう国内法整備が検討されていると聞きますが、どうですか。その際、国民年金の三十五歳以上加入切り捨てが大きな問題となっていますが、沖繩方式に準じた特別措置を講じてはどうでしょうか。
 なお、関連して、国公立大学の教授、助教授、常任講師など、専任教員への在日外国人を初め外国人の任用についてどのように考えますか。
 第五に、労働白書によれば、労働力供給は、五十年から六十年にかけて十五歳から二十九歳層が二百八十万人減少する反面、五十五歳以上の高年齢者は六百四十万人ふえて、総数二千四百三十万人になるとしています。しかも、今日、四十五歳以上の中高年齢者は求職者十人に対して三・二件の求人しかない状態です。まさに高齢者社会への移行に伴う厳しい雇用情勢を物語るものであり、六十歳定年延長の法制化を今国会で実現するとともに、中高年者の雇用の維持拡大のための施策が必要ですが、対策を承りたい。
 また、今日の厳しい経済情勢、家計の実態から、主婦を初め働く婦人の増加は顕著となっています。しかし、パートタイマーなど悪い労働条件と安い賃金は一向に改善されていません。雇用機会と待遇上の男女平等の確立、パートタイマーの待遇改善のため、労基法の改正が要請されていますが、どうですか。
 以下、国民生活に関連する課題について順次質問を続けます。
 第一に、住宅問題につきましては、昨日、わが党の竹入委員長が具体的提案を含めてきめ細かく質問しましたが、今日、国民にとってマイホームの実現は絶望的です。地価の上昇、建築資材の値上がり、実質賃金の伸び悩み、高い住宅ローン金利などのためです。こうした中で公的住宅の戸数削減や住宅金融公庫融資に所得制限を導入することには賛成できません。撤回を求めます。むしろ、公的資金による低利の頭金貸付制度を設けるとともに、公庫の融資限度額を実情に見合うよう引き上げるべきです。
 また、既存の中古住宅融資は、新築並みの金利とし、対象地域を全国に拡大し、木造一戸建て住宅も融資対象に加えるべきではないでしょうか。
 さらに、地価抑制のため、国土利用計画法の規制区域の指定要件を見直して弾力的運用を図るとともに、住宅事情の深刻な三大都市圏の市街化区域内農地に限って固定資産税の選択的宅地並み課税方式を導入すべきではないかと考えますが、どうですか。
 第二に、最近特に問題になっている校内暴力など、一連の青少年非行問題に政府はどのように対処されるのか。
 次に、予算編成の際、教科書問題が論議を呼んだようですが、言うまでもなく、教科書無償は憲法第二十六条の義務教育は無償とするという精神を具体化したものであり、かつ制度として国民の間に定着してきたものです。無償据え置きの継続について、政府の確固たる決意を承っておきたい。
 なお、関連して、私立幼稚園、各級学校の入学金、寄付金が連年高騰しています。実情を調査の上、是正改善を指導していただきたい。
 また、五十八年度に始まる高校生急増について、高校新設の総事業費は一校当たり平均三十三億円以上に上ると言われ、都道府県財政の大きな負担になっています。この際、用地取得に対して国庫補助制度を創設すべきだと思いますが、どうですか。
 第三に、国鉄の地方ローカル線は国鉄再建という大前提のもとに一方的に廃止されようとし、すでに政令基準の検討も始まっています。
 まず、国鉄再建法審議の際の本院運輸委員会の附帯決議の趣旨、全国知事会の選定基準に関する決議を政令基準にどのように反映させるのか。また、見解に食い違いがあった自治省など政府部内の意見統一はできますか。
 さらに、除外事項とされた代替輸送道路の冬季積雪による不通期間十日間を豪雪の経験から見直す必要はないかどうか。あわせて、政令基準の作成時期を明らかにしていただきたい。
 第四に、政府はさきに大規模地震対策特別措置法を制定し、観測体制の整備、地震予知の実用と防災体制の整備を進めることとしていますが、首都東京を含む南関東地域が地域指定から外れている理由は何ですか。すでに、地震予知連絡会は南関東地域を観測強化地域に指定し、気象審議会も監視体制強化を答申しています。答弁をいただきたい。
 また、千三百万人の人口を抱えている東京都では独自の対策を進めていますが、避難場所、交通並びに食糧の確保など、地域によるばらつきもあり、政府は進捗状況をどのように評価していますか、説明を願いたい。
 第五に、今回の北陸、信越地方を中心にした日本海側各地での豪雪の被災者の方々、また関係地域の皆さんに心からお見舞いを申し上げます。
 わが党は、昨年以来、現地調査と、微力ながら救援活動を展開してまいりましたが、これらの地域の様相はまことに深刻で憂慮にたえません。政府は、激甚災害の指定措置を急ぎ、除雪や災害復旧事業に多額の財政負担を強いられている被災市町村に対し特別交付税の増額を実施すべきです。また、被災家屋の建てかえのための融資、中小企業の救済、農家に対する天災融資法の早期発動など対策を急ぎ、さらに所得税あるいは住民税に雪寒控除制度を創設すべきだと考えますが、どうでしょうか。
 終わりに臨みまして、戦後処理の一環として、一つには硫黄島問題がございます。戦後三十五年、本土復帰後十二年を経過した今日、戦時中の強制疎開のまま帰島を許されない硫黄島の旧島民の処遇はどうしますか。これまでに総合調査団の派遣など種々提案をし、政府も一部実施はしてきましたが、調査完了及び最終方針決定の目途はどうなりますか。
 二つには、元日赤従軍看護婦の方々に引き続いて、元陸海軍従軍看護婦の方々にも慰労金制度が講じられましたが、恩給制度に準ずる措置とはかなりの格差を生じています。
 再検討を要請しますとともに、来るべき二十一世紀を目指すこの八〇年代、一党支配の悪弊に陥ることなく、真の平和国家、公正な福祉社会建設のため、総理の決意と実行を求めながら質問を終わります。
 長い時間ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(鈴木善幸君) 二宮議員にお答えいたします。
 最初に、与党多数の政治、国会運営の基本方針につきまして申し述べます。
 私は、従来より国会は話し合いの場であって対立抗争の場であってはならないと考えており、あくまで論議を尽くし、民意を吸収し、話し合いによって国民の納得する結論を出すことが議会制民主主義の本旨であると考えております。私は、今国会におきましても、この議会制民主主義のルールにのっとり、国民の負託にこたえていく決意であります。これがかねて申し上げておる和の政治であると存じます。
 次に、自由民主党の運動方針についてであります。
 自由民主党は、政党である以上、国民の要求にこたえていろいろな問題について検討しており、その一つとして憲法問題について検討しているわけであります。私も党総裁として、平和主義、民主主義及び基本的人権の尊重の原則を堅持しながら、憲法の問題を自主的にいろいろ研究していくことはこれは差し支えないと考えております。
 なお、党の憲法調査会は、白紙の立場で、現行の憲法に問題があるのか、あるとすればどの点をどのようにすべきか等の調査研究をしておるのでありまして、具体的にどの条項をどうするということが言える段階ではないことを申し添えておきます。
 次に、議員定数問題についてでありますが、昨年末の東京高裁の判決は、衆議院議員の定数配分について違憲となる具体的基準を示した初めての判決であるという意味において、最高裁判所がどう判断をするか、今後の裁判の成り行きを見守る必要があります。しかしながら、定数是正の問題は、本来、立法府みずからの権限と責任において処理すべき問題であり、これまでも各党各会派の御協議によって不均衡の是正が行われてきた経緯もございます。事柄はまさに選挙のルールづくりそのものの問題でありますので、御提案の第三者機関の設置をどうするかという問題を含めて、今後、各党各会派の間におきまして十分論議を尽くしていただきたいと存じます。
 政治資金のいわゆる五年後の見直しについては、今後の選挙制度の問題と関連してきますし、また各党のよって立つ財政基盤がそれぞれ異なりますので、まず各党各会派の間で十分論議を尽くしていただくようお願いし、各党や各方面の御意見を承りながら見直し作業をさせてまいりたいと考えております。
 また、政治家個人が受け取る政治資金についての公開、罰則の整備などの問題につきましては、政治家個人の政治資金の収支報告制度などを内容とする改正法がさきの臨時国会で成立したばかりでありますので、当面はこの改正法の施行状況を見守ってまいりたいと考えます。
 次に、航特委の廃止について御意見がありましたが、いわゆる航空機輸入に関連して指摘された疑惑に関しては、すでに司法当局において解明が終わり、航特委の任務が終了したものと承っております。また、倫理委員会の設置については、国会自身の問題でありますので、各党各会派の御協議をお願いしているのであって、責任を回避しておるわけではございません。
 次に、外交問題についてお答えをいたします。
 私は、ただいまの二宮議員のお話にもありましたように、わが国としては、政治経済両国において国力に応じた国際責任と役割りを積極的に果たし、世界の平和と安定のために意義ある貢献を行っていきたいと考えております。
 また、具体的外交施策の展開に当たっては、米国との友好協力関係を基軸とし、その他の自由主義諸国との連帯強化に努めながら、これを基盤として世界の国々との友好協調の輪を広げていくとの外交を進めてまいります。
 次に、私の今後の外国訪問予定についてお答えをいたします。
 まず、訪米についてでありますが、私は、今後先方の都合も見きわめつつ、国会の御了解が得られれば、できるだけ早い時期に訪米し、レーガン大統領と会談したいと考えております。
 また、六月、メキシコで開催が予想されている南北サミットにはわが国も招かれると理解しており、その際はこれに参加する考えであり、さらに七月二十日、二十一日にオタワで開催される主要国首脳会議にも出席を予定しております。他方、外国首脳の来日予定といたしましては、タンザニア大統領、デンマーク女王の来日がすでに確定しており、その他の首脳の来訪についても内々打ち合わせが行われております。
 なお、国連の常任理事国の拒否権の問題につきましては、わが国は、拒否権制度そのものの存続の必要性は認めるにいたしましても、可能な限りその乱用を制限することは安保理の平和維持機能を高めるゆえんであると考えており、昨年の国連総会においてもこれを提唱したところであります。
 また、御提起のありました核軍縮の問題につきましては、包括的核実験禁止や核拡散防止など、現下の国際情勢において実行可能な具体的核軍縮措置の促進に引き続き努力してまいる所存であります。
 次に、国連の平和維持活動に対する自衛隊の派遣問題についてお尋ねがございました。
 国連の平和維持活動への自衛隊の参加は、その目的、任務が武力行使を伴わない場合であっても、現行自衛隊にそのような任務を与えていないので、これに参加することは許されないと考えております。
 他方、わが国は、国連の平和維持活動が国連の第一義的目的である国際の平和と安全の維持に重要な役割りを果たしていると認識しており、かかる観点から、国連の平和維持活動に対し従来から実施している財政面における協力に加え、現行法令のもとで可能な要員の派遣、資機材供与による協力を検討していきたいと考えております。
 国連の下部機関のわが国への誘致につきましては、わが国は一九五六年の国連加盟以来、一貫して国連の諸活動に積極的に協力を行ってきており、かかる観点からすでに国連大学、国連地域開発センター等をわが国に誘致しております。
 なお、二宮議員より具体的に御提案の点については、国連事務局、関係機関及び他の加盟国の意向等も十分勘案する必要があり、慎重に検討さしていただきます。
 ASEAN諸国の間にわが国の防衛努力に関し警戒心があるとのお話でありますが、先般これら諸国歴訪の際、私より各国首脳に対し、あるいは記者会見の場において、平和国家としてのわが国がとっている安全保障政策につき説明を行い、改めて理解を深め得たものと確信しております。
 アジアの平和維持のためのわが国の役割りにつきましては、当面、たとえばカンボジア問題の平和的解決のための貢献などのことが考えられるのではないかと思いますが、わが国としては、カンボジア問題について外国軍隊の全面的撤退等を求めた国連総会決議にのっとり、同問題の早期平和的解決がもたらされるよう今後ともASEAN諸国とともに積極的に努力してまいる考えであります。すでに国連事務総長に対してカンボジア問題解決のための国際会議開催に向け早急に必要な措置をとるよう働きかけを行った次第でございます。
 次に、わが国の経済協力についてお答えをいたします。
 わが国の経済協力につきましては、従来の三年倍増は各国から高く評価されてきました。政府といたしましては、来るべき新たな中期目標も、三年倍増の結果拡充されてきた実績を踏まえ、今後五カ年間における政府開発援助実績の総計を二百十四億ドル程度以上とするよう努め、そのために今後五年間における政府開発援助に関する予算の総額をこれまでの五年間の倍以上とすることを目指すなどの措置を講じていくものであり、このような措置は、わが国の政府開発援助拡充に対する積極的姿勢を維持するものとして、国際的にも十分評価されるものと信じております。
 日ソ経済関係を推進せよとのお話がございました。
 政府としましては、日ソ関係は政治経済等の分野を含め全体としてとらえるべきものであると考えております。無原則な政経分離はとらざるところであります。もとより政府としましては、わが国の重要な隣国の一つであるソ連との間にいたずらに対決を求めるのではなく、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することを望んでおりますが、そのためにもソ連の側において誠意ある態度を示すことが望まれます。
 なお、対ソ経済措置につきましては、従来より明らかにしておりますとおり、米国初め他の友好諸国とも協調しつつ、わが国として適切に対処してまいりたいと考えますが、具体的案件につきましてはケース・バイ・ケースで慎重に検討いたしたいと考えております。
 日ソ定期外相会議についてお尋ねがございましたが、次回協議はグロムイコ外相の来日を得てわが国で行う順番となっております。グロムイコ外相の来日を実現して、先方との対話を継続することは、日本側としても重要と考えておりますが、現在、日ソ関係は御承知のような情勢下にあり、本件協議が具体化する見通しは立て得ない状況にあります。したがって、首脳会談につきましても、これを早急に行い得る状況にないと考えます。
 次に、軍事大国にならない歯どめは何かとのお尋ねでありますが、わが国の防衛政策の基本は、専守防衛に基づき、あくまでもわが国の防衛のため必要最小限度の範囲において防衛力を整備しているものであり、具体的には、性能上もっぱら他国の壊滅的破壊のためのみ用いられる攻撃的兵器は保持しない、海外派兵は行わないなどの原則を堅持しております。わが国の防衛のため必要とする範囲を超え、他国に脅威を与えるような強大な軍事力を保持することになれば、それは軍事大国と言うべきものでありますが、わが国が目指しているところでないことはたびたび申し上げておるところでございます。
 次に、わが国の防衛力整備の目標は、昭和五十一年に策定された防衛計画の大綱に示されているところであります。現在の防衛力は同大綱の定める水準にいまだ達しておりませんので、同大綱の水準にできるだけ早く到達するよう、その整備に努めているところであります。
 なお、脅威というのは、侵略し得る能力と侵略の意図が結びついて顕在化するものでありまして、この意味でのわが国に対する差し迫った脅威が現在あるとは考えておりませんが、意図というものは変化しますので、防衛を考える場合には、わが国周辺における軍事能力について配意する必要があると考えております。
 国債減額二兆円の八〇%は増税と電電公社及び中央競馬会の納付金ではないかとの御意見でありました。
 私は、二宮議員みずから御指摘のとおり、来年度予算編成の基本として、まず公債の二兆円減額を決めたのでありますから、四兆四千九百億円と見込まれる自然増収をまず優先的に特例公債の減額に充てたと御理解いただきたいのであります。しかる後、極力歳出を抑制いたしました。その結果、一般歳出の伸び率は四・三%と、実に二十五年ぶりの抑制になりました。しかし、福祉とか文教とか国民の御要望の強い分野の行政水準を維持していくためには、なお相当の財源を確保する必要があることが明らかになりました。そこで、まず電電公社の特別納付金など政府部内で増収を図るべく努力をし、なお不足する額につき、現行税制の枠組みの中で増収をお願いしているものであります。
 私は、こうした措置が個人にとっても企業にとっても厳しいものであることは十分承知していますが、現状のような不健全な財政状況を放置しておけば、やがては国民にとってより大きな負担となることを憂えざるを得ないのであります。この点広く国民の皆様の御理解を賜りたいと存じます。
 予算に関するそのほかの御質問には、後ほど大蔵大臣から答弁をいたします。
 行政改革につきましては、かねて申し上げておりますとおり、積極的に一層の推進を図ってまいる所存でございます。
 昭和五十六年度予算との関連では、昨年末の閣議決定において、行政事務事業の整理委譲など行政の減量化を中心とする新たな角度からの行政改革を実施する方針を決定いたしましたが、逐次これを推進してまいります。
 また、基本的な行政改革案を策定するため臨時行政調査会を設置することとしておりますが、年度内にもこれを発足させ、財政再建等に関連して改革を急ぐ問題については、必要に応じ中間答申等を求めて、早期にその実施を図ることといたします。
 官庁綱紀の粛正についてでありますが、先般、会計検査院から不正経理等について指摘されたことはまことに遺憾に存じます。私は、その直後の閣議において、公務員の法令遵守意識の高揚と適切な人事管理により不正の防止を図るとともに、管理監督者の責任も厳しく問うよう指示いたしました。今後とも公務員が常に自戒の念を持って事に当たるよう、その徹底を図ってまいる所存でございます。
 消費に着目した課税ベースの広い間接税は、昨年十一月の税制調査会中期答申において避けて通れない検討課題であるとされたところであります。政府としては、今後の税制のあり方について、昭和五十四年末の国会における財政再建に関する決議の趣旨に十分配意するとともに、今国会における御論議、今後の財政経済の見通しなどを踏まえながら、幅広い観点から検討してまいりたいと考えております。
 所得税減税についてのお尋ねでありますが、わが国財政の現状は、二兆円の公債減額を織り込んでいる昭和五十六年度予算について見ても、歳入の二六%以上を公債金収入に依存し、特例公債だけでも五兆五千億に上るという状況にあり、国民生活の安定のためにも、また、財政の対応力を回復するためにも財政の再建は緊急の課題であります。
 一方、わが国の所得税の課税最低限は主要諸外国の中で高く、その負担水準は国際的に見て相当低位にあり、夫婦子二人年収三百万円のサラリーマンを例にとると、所得税額は年間六万六千円、月額五千五百円でありまして、イギリスの九分の一、西ドイツの四分の一、アメリカの三分の一、フランスの九割程度にすぎません。御承知のとおり、昭和五十三年以来所得税の課税最低限を据え置いておりますので、その後の所得や物価水準の上昇によって所得税負担率が上昇してきているとして、これを引き上げるべきであるとする御意見や、実質賃金が低下する場合には所得税減税で補うべきであるとする意見があることは承知しております。上述のような財政の現状や負担水準の実情を考慮すれば、課税最低限の水準をさらに引き上げることは見合わせるほかはなく、物価調整減税を含めて所得税減税はしばらく御勘弁をいただきたいと存じます。
 次に、経済問題についての御質問にお答え申し上げます。
 昨年末までのわが国経済は、国内需要の拡大テンポの鈍化傾向が続いておりましたことは御指摘のとおりであります。しかし、ことしの一−三月期の経済情勢は物価の安定化傾向が進展し、個人消費支出の伸びが堅調さを回復すると見込まれるなど経済活動が活発化し、次第に好転することが期待されます。こうした上向きの基調は五十六年度においても続くものと見込まれるほか、多くの先進諸国で年後半から景気の立ち直りが予想される事情もあり、わが国の景気もこうした内外の動向に対応して五十六年度にはしり上がりによくなってくるものと考えております。このようなわが国の内外経済情勢を勘案すると、五十六年度五・三%程度の実質経済成長率と五・五%程度の消費者物価上昇率は実現可能なものと考えております。
 社会保障についての私の基本姿勢を示せとのことでありましたが、わが国においては、高齢化社会を間近に控え、国民生活における年金、医療等の社会保障の役割りはますます重要になると考えます。このため、これらの社会保障制度について、高齢化社会にふさわしい給付の実現と負担の公平を図っていく必要があると思います。
 このような観点に立って、来年度予算においては、厳しい財政事情の中で、ある程度所得の高い人々にはがまんしていただくが、社会的、経済的に真に恵まれない立場にある人々に対しては、一層きめ細かな配慮のもとに重点的に福祉の充実を図ることとしているところでございます。
 なお、所得制限の問題について、詳しくは後ほど厚生大臣より答弁をいたさせます。
 医療に対する信頼回復のための具体的な処方せんを示せとのことでありました。
 厚生省において、すでに各都道府県に医療相談コーナーを発足させたほか、医療法の改正等医療に関する諸問題について検討が進められているところであり、今後逐次必要な改善措置を講じてまいりたいと存じます。
 国公立大学の教授等に外国人を任用することは、大学をより国際的に開かれたものとしてその発展を図る観点から、かねてより検討すべき課題であると考えておりますが、国家公務員制度に絡まる種々の問題もありますので、さらに検討を重ねてまいりたいと思います。
 定年延長の法制化問題でありますが、一月十九日に提出された雇用審議会答申において、今後定年延長の進展の動向を見きわめつつ検討を続けることとされており、その検討の結果を待って対処したいと考えております。急速な高齢化の進展のもとで、高年齢者の雇用の安定を図ることは雇用政策上の最重要課題であると思います。このため、昭和六十年度までに六十歳定年が一般化するよう強力に行政指導を進めるとともに、中高年齢者の再就職の促進に努めてまいります。
 また、今後、高齢化の波が移っていく六十歳代前半層について、定年延長を含めた雇用延長の促進を初め、これらの年齢層の多様な就職希望に応じた対策を進めてまいります。
 婦人の職場進出が進んでいる現状にかんがみ、政府としては、同一労働における男女同一賃金の原則の徹底、男女別定年制等の解消、婦人の就業分野の拡大を重点に男女平等対策の推進を図っているところであり、今後ともさらに一層努力してまいります。
 なお、男女平等を確保するための法的整備については、今後関係審議会の審議を踏まえて検討してまいりたいと存じます。
 パートタイマーの労働条件については、労働契約及び労働時間管理の適正化指導、労働基準法の厳格な適用等を通じ、その改善向上に努めてまいります。
 住宅問題についての御質問にお答えいたします。
 まず、公的住宅の戸数については、現在策定作業中である第四期住宅建設五カ年計画の初年度として、昭和六十年の居住水準目標を達成するために必要な戸数を確保することとしております。
 住宅金融公庫の貸し付けについてでありますが、所得制限の導入の考え方は、国民の平均所得を大幅に上回る者に対する貸付金利を財投金利並みの金利に引き上げることとし、厳しい財政事情のもとで効率化を図ろうとするものであります。貸付限度額は、最近建築費が安定していることから、この際据え置くこととしたものであります。また、頭金貸付制度を創設せよとの御意見でありますが、この点については、従来からの公庫の長期低利融資により十分対応できていると考えております。
 中古住宅に対する貸し付けは、住宅ストックの有効利用という観点から逐年その改善に努めておりますが、貸付金利の引き下げ等御指摘の点については、現下の厳しい財政事情のもとでは困難でございます。
 国土利用計画法の規制区域制は、御承知のとおり、土地投機の集中による急激な地価上昇という緊急の事態に対応するために、地域と期間を限定してきわめて強い規制を行う制度であります。当面の問題は実需要に基づく地価上昇でありますから、これに対して強権的な措置を適用するというのは、効果に乏しいばかりでなく、土地取引を混乱させ、円滑な土地の供給を阻害するという問題があり適当でないと考えます。現状では各般の措置を講じつつ宅地供給の促進を図ることが急務と考えております。
 市街化区域農地に対する固定資産税の課税の適正化措置につきましては、当面、昭和五十六年度までは現行制度を維持することとしております。昭和五十七年度以降の取り扱いについては、昭和五十四年末の税制調査会の答申等を踏まえ、二宮議員御指摘の点も含め、今後十分検討してまいりたいと存じます。
 次に、青少年問題についてでありますが、青少年の非行を防止し健全な育成を図るためには社会全体で取り組むことが必要でありますが、その中心は何といっても学校教育であります。学校教育においては、教師が一人一人の生徒に対して深い愛情を持って指導に当たるとともに、教職員が一体となって児童生徒の育成指導に努めなければならないと考えます。政府といたしましても、青少年の非行防止について関係省庁の連絡会議を開催するなど協力して、学校における生徒の指導が十分効果を上げるよう努めてまいります。
 教育関係の御質問でありますが、義務教育教科書の無償給与制度については、御承知のとおり、昭和五十六年度予算においても存続することといたしました。なお、今後につきましては、各界の意見にも耳を傾けながら対処してまいりたいと存じます。
 次に、私立学校の入学時の納付金の動きでありますが、ここ数年鎮静化の傾向にありまして、昭和五十五年度の対前年度上昇率はここ十年間で最低となっております。これは経常費補助の拡充等によるものと考えられますが、私立学校みずからの経営努力により、修学上の経済的負担の軽減について一層の努力を尽くすよう期待いたしております。
 また、高校生急増対策として、昭和五十六年度予算において建物新増設に対する国庫補助制度の延長を図りました。用地取得について補助制度を創設してはどうかとの御意見でありますが、用地は建物と異なり非償却資産でありますので、一般的には地方債で措置されてきているところであり、現在、児童生徒急増市町村の公立小中学校用地取得費に対してのみ例外的に国庫補助が実施されている実情でありますので、高校用地費に対する国庫補助を行うことは考えておりません。
 国鉄に関する御質問にお答えをいたします。
 国鉄の地方交通線対策の実施につきましては、御指摘のとおり、法案審議に際し附帯決議が行われ、また全国知事会からも要望が出されております。それらの御趣旨を勘案をし、また先ほどの二宮議員の御意見や国会での御論議を参考にしながら、政令案について運輸省を中心に関係省庁間で鋭意調整を行っております。国鉄再建は三K赤字の一つとして真剣に取り組まなければならない課題であり、政府としては、政令を早急に制定する必要があると考えております。
 次に、東京都を含む南関東地域が大規模地震対策特別措置法の強化地域から除外されている理由をお尋ねでございました。
 同法は、予知可能ないわゆる東海地震が起こった場合に大きな被害が出る震度六以上の地域を指定しており、その場合、東京は震度五程度と予想されるため地域指定から除外されているものであります。
 なお、お尋ねの東京都においても、国が策定した防災基本計画に基づき地域防災計画を策定して、各種の震災対策を着実に進めていると理解しております。政府としては、今後とも東京都における震災対策が一層推進されるよう指導援助してまいりたいと考えております。
 次に、この冬の豪雪対策についてお答えいたします。
 天災融資法、激甚災害法の発動につきましては、被害の調査結果が判明次第速やかに検討いたします。
 除雪費が著しく多額になった地方団体については、普通交付税措置額、積雪量などを勘案して特別交付税により措置する予定であります。
 また、住宅被害を受けた被災者、中小企業者、農林漁業者につきましては、災害復興住宅貸付あるいは災害復旧貸付の適用などの金融措置を講じております。
 なお、雪寒控除制度の創設につきましては、地域ごとに課税最低限を定めるのと同じになり、問題があると考えております。
 次に、硫黄島の旧島民の問題については、昭和五十五年度から三年を目途に、同島への帰島及び開発の可能性などについて総合的な調査を進めており、その結果を踏まえて同島の取扱方針を定めてまいりたいと考えております。
 旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金は、女性の身でありながら召集を受け戦地に派遣され、陸海軍の戦時衛生勤務に従事したという特殊事情を考慮し、その労苦に報いるために支給されたものであります。これによって所得の保障を図るという年金的な性格を有するものではございません。このような慰労給付金の性格から現在の支給額は妥当なものと考えております。
 以上、お答えをいたしましたが、残余の点につきましては所管大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(渡辺美智雄君) 問いの一、二、三、関連がありますから一緒にお答えをいたしたいと存じます。
 財政再建を最優先して、社会保障費の予算の配分を抑え防衛費を増額してと、こういうような御御質問でございますが、別に増税の財政再建ではないのです。かねて私が言っているように四兆五千億円ぐらいの自然増収はございます。しかし、二兆円の国債収入を減額いたしますから、使える金はあとおおよそ二兆五千億円しか残りません。ところが、これについては当然にその国債費、つまり利払い、それから地方交付税がふえます。そこで四兆五千億円はちゃらになってしまいます。収入が大体ツーペイになってしまいますということを申し上げたわけです。ところが、一方では一兆六千億円以上の当然増といいますか、抑えようとしても抑えがたい経費がございます。たとえば老人がふえれば年金がふえるとか病気がふえるとか、あるいは学校で子供は三十万人ふえますから教室がふえます。したがって先生が一万人ふえますとか、これは抑えられない。そういうのが一兆六千億円以上ございます。そうすると、どうしてもそれだけの金をほかに見つけなければならぬということで、ぎりぎり抑える経費は抑えたけれども、どうしても一兆三千億円ないし四千億円足らないということから、約一兆四千億円弱の増税をしたことは御承知のとおりでございます。(「どうして弱なんだ」と呼ぶ者あり)一兆三千八百億ですから一兆四千億弱と言ったわけです。
 それは何に使われたのだということになりますと、社会保障費と恩給、遺族年金とか、そういうもので約六割使っています。七千八百七十六億円余分にふえておるわけですから、それで約六〇%使っています。それから文教とか科学技術で二千百七十億円余分にかかっています、エネルギー、経済協力で千百六十二億円かかっていますよということになると、その増税の一兆三千八百億円のうち三千億円からの金は地方交付税で行ってしまうわけですから、増税したといっても一兆三千億円みんな使えるわけじゃない。一兆三千八百億円のうち一兆九百七十九億円しか政府は使えない。そこで一兆三千億円の歳出をやるのですから、当然それにはこれは税外収入、先ほどおっしゃった競馬会からもいただきますし、電電公社からもいただきます。そういうのを持ってきて、そして一兆三千億円の歳出をつくったわけです。その歳出の中で、いま言ったようなもので八三%はもう消えてしまうわけですから、防衛費も確かに千六百九十八億円がその中に入っていますよ。ですから、あとの残りは二百六十六億円。
 しかし、考えてみると、農林だって新規予算は二百六十六億円よりもりとあるのじゃないか、どこで手品があるのかと。それは手品があるわけです。それはどうしてかと申しますと、当然のことながらもっと新規の費用もかかっているのです。その費用は、いままでのものをやめて、あるいは少なくして、新しいことと入れかえてということをやっておりますから、それは二百六十六億円の増税の中へみんな入ってもできるのです。でありますから、決してこれは財政再建を増税でやって福祉後退でという話ではございませんということをひとつ知っていただきたいわけでございます。
 その次は、公明党がこれまで要求しておった中期財政計画の策定はどうなっているのですかと。これは私はいろいろ検討してきたのですが、将来にわたっての財政再建のための実行計画のようなものをこしらえて、将来もその中で縛ってしまえと。これは言うべくして非常にむずかしい。一つは、社会の変動が非常に激動の時代で、いわゆる不確実性の時代でありますから……(「そんなことない」と呼ぶ者あり)いやいや、本当にそう。実際問題として、それはそういうようなことで固定をして経費ごとに縛ってしまったのではなかなかむずかしい。したがって、それはできない。しかしながら、将来の展望について何とかうまい目安のようなもの、手がかりになるものができないかということで、結局この七カ年の経済計画という経済見通しがありますから、それを一つ土台にする。もう一つは、現在の制度、現在の政策というものを直さない。直さないという前提に立って、そこでどれくらいGNPが伸びて、どれくらい物価が上がってという積み上げ計算を大体やってみる。そういうようなことで財政の中期展望というものを一つの試作品としてつくってみました。それはきょうの閣議で発表いたしました。いろいろ御批判があることと存じます。これは五十六年度予算における制度の施策を前提として、その運営方針に変更がないという一定の仮の条件のもとで、これを将来に投影する後年度負担額推計を基本とするものとしてつくってみたのです。どれくらい経費がふえるか、老齢化社会で老人の数がどれくらいふえていくか、いままでの推定値から病気がどれくらいふえるか、年金がどれくらいふえるかというものでつくってみました。その結果は、きょうの閣議にかけて、いずれ国会にも提出させてもらいますから、ひとつ御批判をちょうだいしたいと、かように思っております。
 それから福祉問題でございますが、老齢年金等につきましても、決して切り捨てというのではなくして、非常に厳しい財政事情でございますが、同じお金を出すに当たりましては、裕福な御家庭はたくさんというわけにはいきません、がまんしてくださいと。しかし六百万円未満の家庭については千五百円老齢福祉年金をベースアップいたしますが、六百万円−八百七十六万円の比較的裕福な御家庭については、こういうふうな増税もしなければならないときなので、五百円でひとつ勘弁してくれませんかというようなことで、めりはりをつけたことは事実でございます。しかしながら、障害年金のようなものについては、たとえば所得制限等は、そういうような裕福な家庭は所得制限を適正化したけれども、障害者のようなお気の毒な方の年金については、二人世帯で本人の所得制限がいままで二百十六万円であった。それじゃお気の毒であるということで、これは三百万円まで所得制限を緩和するというような措置はとりました。
 それから児童手当の問題についても、確かに四百九十七万円から四百五十万円というふうな適正化をいたしましたけれども、しかしながら、これもボーダーライン層の住民税非課税というような方については、逆に手当の方は六千五百円から七千円にベースアップをする、本当に恵まれない方には乏しい財源の中でもできるだけ配慮をいたしましょうということをやってきておるわけでございます。御了承を願いたいと存じます。
 それから先ほどお話があった、前の発表では一般経費が三百億円しかふえないということになっておりながら、一兆三千億円も何で今度は歳出が伸びるようなからくりができたのだということについては、すでに私はもうお話をいたしましたから省略させていただきます。決して党利党略的な配分など毛頭いたしておりません。
 それから公務員給与の問題ですが、一%しか見込んでいない、では今後いろいろなことで人事院勧告があっても一%しか公務員の給与改善はやらないのかというお話でございます。これは毎度のことでございますが、余裕のあるときには五%ぐらいずつ予算に盛り込んだことがありますけれども、余裕がなくなってまいりまして、今回は当面財源の見通しもないので一%全部平均に盛り込んだということは事実でございます。しかし、人事院の勧告等の取り扱いについては、これは出たからといって別に一%以上は絶対出さないよという意図をはっきりしたものでは実はないのでありまして、それは人事院の勧告が一%出るか、三%出るか知りませんけれども、出たときの経済社会の情勢、財政事情等、諸般の事情を勘案いたしまして、そのときどきに判断をしていくといういままでの手法と同じようにやらせていただきます。
 それから住宅金融公庫の利子補給金の問題ですが、これを一般会計からカットして借金の方へ回したのじゃないかと、これは御指摘のとおりでございます。率直に認めます。住宅金融公庫に対する補給金は、五十六年度予算で二千百七十億円を実は一般会計から出しておるのです。二千百七十億円、かなりのものです。しかし、その中で六百六十一億円についてだけは、一般会計の財政事情が苦しいために、暫時、お金は出しますが、財投に資金運用部の資金がありますから、それで一応立てかえて借金でやっておいてくれませんかということで、結局支障はないようにしてあるということでございます。
 それから国債減額のテンポを速めたのではないかということでございますが、これは確かに財政試算の表におきまして、五十五年度のときに財政収支試算という表を皆さんにお配りいたしましたが、そのときは五十六年度の特例公債は六兆七千四百億円ということだったじゃないか、ところが、ことしは五兆五千億円に減らした、一兆円もよけい減らしてテンポを速めたのじゃないかということでございます。これは要するに四カ年を出してありますが、このとおりやりますと言ったわけじゃないのです、これは。五十九年度でゼロにしますよということを示しただけでございまして、ただ今回は二兆円の減額をするということを決定したものですから、そういう点で五十六年度は一年前に配った表よりも国債減額が多少多くなっております。これは事実でございます。
 それから所得税減税については、先ほどの総理の答弁のごとく、残念ながらその余裕がございませんということでございます。
 それから身体障害者の運転する自動車の税金あるいはガソリン税、自動車税等を安くしろと。安くしろというか、免税にしろというのか、減免をしなさいということでございますが、これは自動車重量税、そういうものは自動車の使用に従って課税されるものでございまして、これを身体障害者は別、何は別ということにしますと、いろいろな問題が出てまいりまして非常に複雑になってしまう。したがって、身体障害者の方には別に障害年金を初めその他の福祉施策をもってこれは対応していく。これについてはやはり一般と同じで、そのかわり福祉対策は身体障害者の方にだけ別に差し上げるわけでございますから、そういうことで御勘弁をいただきたいと、かように考えております。
 雪寒控除の問題につきましては、これはいままでは所得の一〇%を超えた人だけしか控除しませんよと。それでは七十万円しか収入のない未亡人が六万円も金がかかったのに御利益ないじゃないかという話になります。そこで、これについては、年間に出した金が五万円を超えた場合は所得の一〇%未満であっても雑損控除の対象にいたしたいということで今回所得税の改正案を提案したいと思っておりますから、何とぞ御賛成のほどお願いを申し上げます。
 それから所得制限の問題については、先ほどお話しいたしましたように、めりはりのついた、乏しい財源の中ですから裕福な方はひとつ御勘弁を、本当にお困りの方にはできるだけ配慮をということで所得の適正化を図ったのも事実でございます。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(河本敏夫君) 経済成長と、それから物価、個人消費、こういう問題についてお尋ねがございましたので順次答弁をいたします。
 まず第一に、政府の経済成長目標でございますが、一昨年八月に昭和五十四年から昭和六十年までの新七カ年計画を決定いたしまして、その間平均五・五%の経済成長を続けながら雇用問題を解決し、同時に日本経済の国際競争力を維持していこう、あわせて財政再建の背景もつくり上げる、こういうことを目標にいたしまして新計画がスタートいたしましたが、御案内のように、五十五年度は第二次石油危機の悪い影響が相当出ておりますので、目標よりも低く四・八%成長を目標にいたしました。
 それから五十五年度は五・三%成長を目標にしておりますが、この五・三%成長ができるのかできないのかと、こういう御質問でございます。
 わが国の経済は世界経済と不可分の関係にございますが、OECDの見通しなど最近発表されておりますが、それを見ますと、現在の時点が一番悪い状態である、第二次石油危機の影響が世界全体に広がっておって一番悪い状態であるが、ことしの上半期はやや回復をいたしまして、OECD全体平均一%見当の成長に回復する、後半は二%台、来年の前半はほぼ三%と、こういう水準で回復するであろうと、このような見通しを立てております。そういう背景の中にありましてわが国が五・三%成長をするわけでございますが、五十五年度もほぼ目標は達成できるものと期待をしております。
 ただ、現在の時点は非常に流動的でございますので、やはりこの流動的な動きに対応いたしまして、金融政策あるいは産業政策、財政政策を機動的に実情に合ったように運営をしていくということが絶対に必要であろうと思います。そういう運営をしながら目標を達成することは十分可能であると、このように理解をいたしております。
 それから第二に物価の問題でございますが、昭和五十五年度の消費者物価は、年度当初は六・四%を設定をいたしましてずっと努力を続けてまいりました。しかしながら、昨年の九月にイラン・イラク戦争が勃発をいたしまして、さらに十二月のバリ島OPEC総会におきましては非常に大幅な石油の値上げが決定される、したがって石油価格が政府見通しよりも非常に急上昇いたしました。また、異常気象がずっと続いておりまして、生鮮食料品、特に野菜が出回ってこない、こういうこと等もございましたので、残念ながらこの目標を修正いたしまして七%程度という目標に置きかえたということ、大変遺憾に思っております。
 しかしながら、大勢は消費者物価は安定の方向に進んでおると思います。特に五十六年度は卸売物価からくるところの影響が非常に少なくなる。卸売物価は昭和五十五年度は一四%台と考えておりましたが、昭和五十六年度は四%強の水準に落ちつくものと考えております。その影響が非常に減少するということでございます。
 なお、これからの物価対策といたしましては生活必需物資の安定供給、これを引き続いてしっかりやっていく必要があろうかと思います。幸いに生産の能力がございますから、物の需給関係等を十分監視しながら適切な対策を立ててまいりたいと考えております。
 それから並行いたしまして基本的な物価対策、たとえば低生産部門への投資、あるいは公共料金の厳正な取り扱い、それから競争政策の推進、あるいは情報の迅速な提供、こういう基本的な対策は引き続いて進めてまいるつもりでございます。
 それからなお個人消費でございますが、個人消費は昭和五十三年度は六・二%でございました。昭和五十四年度は五%、昭和五十五年度はずっと低くなりまして二%前後であろうと想定をしておりますが、五十六年度は物価の安定等も期待できますし、それから家計所得もある程度ふえるものと期待できます。そういうことから、五十三年、五十四年度の水準までは回復はいたさないかもわかりませんが、ほぼそれに近いところ、四・九%見当の個人消費は期待できるであろうと、そういうことを想定いたしまして経済見通しを立てたのでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣田中六助君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(田中六助君) 二宮議員にお答え申し上げます。
 第一は、武器輸出の問題でございますけれども、武器は国際紛争を助長するようなしろものでございますし、政府は武器輸出三原則、それから昭和五十一年二月二十七日に衆議院の予算委員会で表明しました武器輸出に関する内閣の統一見解、そういうものにのっとってあくまで私ども決めたことを続けていきたいと強い決意で貿管令の実施を考えております。
 それから国際経済摩擦につきましてのお尋ねでございますが、わが国はあくまで自由貿易、開放経済。保護主義の経済を排除していかなければならない基本方針がございますので、経済的摩擦が即政治摩擦にならないように用心すると同時に、各国が保護主義貿易に陥らないように、あくまで自由主義の開放経済、これを基本の方針としておるのが現実の政府でございます。
 しからば、どういう方策をとるかということでございますけれども、これは私どもたとえば残存輸入制限品目につきましても、この輸入制限の残存品目はちょうど昭和三十一年が四百六十六品目でございましたが、現実にいまそろっているのは二十七品目でございまして、そのうち工業品が五品目でございます。これは世界的に見ますと、たとえばフランスがいま二十七品目、それからドイツが十一品目でアメリカが六品目でございます。したがって、日本の五品目は非常に低い段階になっておりますので、この点もオープンマーケット、市場開放の一つの例じゃないかと思います。
 さらに、東京ラウンドと関連いたしまして、日本の実行税率――関税率でございますけれども、日本は現在六・九%でございます。アメリカが八・二%、ECが九・七%、このように私どもは自由開放経済を目指していっております。向こうから輸出ミッション、こちらからは輸入ミッションあるいは見本市の開催あるいはいろいろなフェア、つまり展示会、そういうような開催も心がけております。ただ、余り日本が悪い悪いと言ってばかりはおれません。たとえば自動車の問題にいたしましても、安くてよくて、しかも燃費がかからないというような日本の品物がいい場合、あるいはカラーテレビもそうでございますが、やはり主張すべきところは堂々と主張しなければならないという考えは持っております。
 それから中小企業の問題でございますけれども、まさしく現在中小企業者の一千万円の負債額で倒産件数が十月でちょうど千六百六十八件、それから十一月が千六百六十四件、それから十二月が千六百五十四件と非常に多い。暦年の一月から十二月をとりますと、実に一万七千八百八十四件という日本の史上第二番目でございます。これも私ども頭の痛いところでございます。特に冷夏あるいは豪雪というようなことも加味して非常に倒産率が多いわけでございますけれども、これに対処するために政府三機関のことしの一−三月でございますが、これの融資をちょうど一兆一千二百億円ぐらい用意しておりまして、これをうまく利用してもらいたい。そのほか中小企業の体質改善あるいは体質改善の助長制度というものを利用して、これは御承知のように県と国、市町村がそれぞれ応分の負担をして融資するわけでございます。その他すでに貸し付けております高度化資金あるいは近代化資金の返済繰り延べその他いろいろな措置をとっておりますけれども、いずれにしても大きな政策を早めにやらなければ景気が冷え込むのじゃないかという懸念は持っておりますし、これはそれぞれ経済閣僚が十分相談をした上、この対処にますます進んでまいりたいというふうに考えております。
 それからエネルギーの問題でございますけれども、これはいま二宮議員も御質問の中に言っておりましたけれども、私ども十年後に石油の依存率を五〇%に下げる、そのために努力目標として七億キロリッターのエネルギーを十年後目標に置いておりまして、その半分、つまり三億五千万キロリットル、これを代替エネルギーで措置しようということでやっております。
 こういうところから備蓄の問題をお尋ねでございますけれども、現在、民間備蓄がちょうど九十八日分、それから政府備蓄が九日分ございますので、それを合わせて百七日分で、まあそれは十二月末の備蓄でございまして少し減っておりますけれども、現在、御承知のように、ちょうどガソリンやその他が要る段階になっておる割りに、例年に比べますと非常に備蓄の度合いというものは厚くなっております。
 石油の代替エネルギーにつきましてどういう展開をするかということでございますが、やはり原子力発電所というものが大きく私どもの頭にございます。と申しますのは、原子力発電所は他の火力、水力発電所に比べましてコストが約半分で済むというふうに計算されておりますし、いま原子力発電所の日本で稼働しているもの及び建設中、建設準備中のものは三十五基、キロワットにいたしまして約二千七百八十八万キロワットでございますけれども、これをさらに助長するにはどうしたらいいか。
 御承知のように、日本はアレルギーがございますので、その対策、安全保障というようなことも考え合わせまして、その点は原子力安全委員会のダブルチェックというような、安全性を十分考えつつ対処していきますけれども、私どもの原子力発電所の将来の見通し、十年後には御指摘のように五千百万から五千三百万キロワットという目標を立てておりますけれども、いま言ったようなことで、なかなかそれがうまくいくかどうか疑問の点もございますけれども、石炭、LNGあるいは地熱その他のものでこれをカバーしていかなくてはいかぬというふうに思っております。
 次は、石炭火力の問題でございますが、油から石炭に転換するということにつきましても、私ども五十六年度予算にお願いしているわけでございますけれども、電源開発促進税という、つまり一キロワット当たり三十銭を取るわけでございますが、これを多様化勘定と立地勘定に分けておりますけれども、立地勘定の中のつまり交付金ということでいろいろな対処をして、火力発電も原子力発電も立地交付金を交付して発電所の推進に持っていかなければならないというふうに思っております。
 それから石炭に関係いたしましてSRCIIの問題が指摘されておりますけれども、西ドイツもアメリカも、現在のところ、これを共同開発を引き揚げるというような空気はございません。予定どおり、アメリカが五〇%、日本が二五%、西ドイツが二五%、十四億ドルをそういうような配分で分けるということに現在のところ変わっておりません。
 それからIJPCの問題でございますけれども、これはまだイラン・イラク紛争というものが行われておりますし、爆撃の度合いがどの程度かということも十分解明されておりません。しかし、私どもは既定方針どおりにこのプロジェクトはやっていく。というのは、総合安全保障というような観点からも、これら中近東で行っておる政府プロジェクトをやめるということは、イラン政府あるいはイランの国民が非常に熱望している大きなプロジェクトでございますので、これは従来どおりの方針で私どもは推進していきたいと思います。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 所得の実態を把握することは御発言のとおりきわめて大事でございます。現在は、税の対象として把握される所得を基礎としておるわけでございます。
 所得制限については、総理、大蔵大臣から詳細に答弁をいたされましたから省略いたします。
 薬価の基準改定は、できる限り早く行う予定で、ただいま鋭意作業を急いでおります。
 今国会に御相談をする予定でおります老人保健医療制度について、大蔵大臣と厚生大臣が何か約束をしておると、約束いたしております。文書でございます。これは主なものと言えば老人医療、健康。これは非常に大事な問題で、将来のすべての制度のスタートになる、そこで総合的に研究しておる。その要旨は、老人の医療もさることながら、強い老人――ここには老人はおらぬぞというような老人をつくろう、こういうわけで、予防、健康管理、健康づくりと、こういうことに重点を置いてやろう。次は、大変なことになるから給付の公平ということを十分考えよう。三番目は、予算編成中問題になっておりました老人医療の問題でありますが、財務当局はこの老人医療を今年から一部負担にしてつまみ食いをしたいという考えがあったようでありますが、つまみ食いは困る、こういう総合的な研究をするときにもう一遍研究しようと、こういうことを文書にしたことでありまして、私と渡辺君が署名をいたしております。秘密の文書ではありませんから後で先生のところへお届けをいたします。
 次に、公明党の全国大会で決議された七項目の障害者福祉施策の充実についての決議、詳細拝見をいたしております。特に、その中で障害者の日の制定、それから実行行動十カ年計画の制定、こういうことはすでに具体的に検討準備を進めておるところでありまして、あとの項目についてもよくよく拝承をして、これを参考として万遺憾なきを期したいと存じております。
 国連条約の問題でありますが、これは難民問題に対するわが国の国際協力を一層促進する見地から、これに留保なしで加入するという方向で関係省庁がいま検討して、大体目標を達成しつつあるところでございます。
 なお、国民年金の三十五歳以上の加入切り捨て、これは非常に大きな問題となっておると、こういう御意見でありますが、難民条約加入に伴って内国民待遇を実現するために、必要な限度で内国民待遇を実現するよういま検討しておるところでございます。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
#10
○議長(徳永正利君) これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四分開議
#11
○副議長(秋山長造君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。宮本顕治君。
   〔宮本顕治君登壇、拍手〕
#12
○宮本顕治君 私は、日本共産党を代表して、政府の施政方針演説について質問いたします。
 まず、世界の現状をどう見るか、またどういう展望を持つかという問題であります。
 二十一世紀の世界のあり方として、私は、すべての国の主権の確立と尊重、軍事ブロックの国際的解消による集団安全保障、外国の軍事基地と外国軍隊の撤去、核兵器の全面禁止、徹底した軍縮による膨大な軍事費の大幅削減、地球上からの飢餓、ひどい貧困の一掃、これらを展望するものであります。これは、国連憲章の理想、国連の諸決議にも、また国連参加国の多数の意向とも一致する方向であります。
 ところが、総理は、「二十一世紀への足固め」とか「世界の平和と安定に寄与」とか言っておられますが、具体的な強調点としては「日米安全保障体制を基軸」とするという方向であります。そして、残念ながら世界平和と進歩への建設的、積極的構想は示されていないのであります。総理、あなたは私が挙げた二十一世紀に望むものについてどうお考えか、承りたいのであります。
 なお、来年の国連軍縮特別総会に向けてことし行われる準備会で、日本政府は具体的にどういう態度をとるのか、これをお示し願いたいのであります。
 一九七〇年代を世界平和の立場から反省した場合、私は、アメリカのベトナム、カンボジア、ラオス侵攻、及びソ連のアフガニスタン軍事介入を大国の大きな誤りとして指摘せざるを得ないのであります。わが党は、アメリカのインドシナ侵略について厳しい批判を展開いたしました。また、ソ連のアフガニスタン軍事介入については、それが民族自決権及び社会主義の大義に反することを一貫して批判し続けております。これらはいずれも基本的には大国中心の軍事ブロック政策による覇権主義の誤りであります。
 ところが、アメリカでもわが国でも、こうした事態から逆に、軍事ブロックの強化をひたすら叫ぶ右翼的潮流が強まっていることは、まことに残念であります。
 アフガニスタン介入を絶好の口実として、ソ連がいまにも日本に攻め込むかのような誇大宣伝をして、日米軍事同盟強化と軍事費の急速な拡大をあおるという飛躍した論法はその一つであります。自民党大会で決定した運動方針は、「わが国に対する直接的な侵略の脅威をも想定せざるを得ない」と断定しております。自民党総裁である総理として、この想定の具体的内容と根拠を御説明願いたいのであります。
 レーガン政権が、アメリカの国際的な地位の低下、国内経済の悪化に面して、超軍事大国化の道を急ぎ、場合によっては核戦争も辞せずとの姿勢のもとに、アメリカ中心の軍事ブロック政策を強化する立場から、同盟国、特に日本の役割りにきわめて大きな期待を繰り返し表明していることは世界周知のことであります。
 このとき、総理が施政演説で、米国が国際的に「強力な指導力を発揮することを強く期待」するとされ、また「わが国に期待される役割りを果たしていく」ということを公約したことの意味はまことに重大であります。
 アメリカが熱望しているのは、資本主義世界第二位の経済大国にふさわしいとされる日本の軍事大国化への道以外の何物でもありません。首相、外相の訪米日程もすでに報じられている今日です。この時期にこの国会の場で、アメリカに対して「どうぞ強力に指導してください」「大いに期待に沿います」と確約することは、結局、アメリカの言いなりになりますという総括的約束の表明と同じことにならざるを得ないではありませんか。
 総理、あなたが「平和憲法」を言われ、また、自主的にとか、軍事大国にならないと言われても、それは結局こういう経過の中では責任のない空言とならざるを得ないではありませんか。はっきりお答えを願いたいのであります。
 しかし、今回の予算編成の実態が示しておりますように、軍事費は別枠とする軍事優先の方針は、来年度予算案だけでなく、その先までの軍拡を約束したものであります。
 わが国の軍備の実体は現在すでに世界第八位の第一流国であります。自民党大会は憲法の改定も方針として公然と決めております。総理が今度の施政方針演説でいかに言いつくろわれても、それは、あなたが昨年末ブラウン米国防長官との会談でいみじくも言われたように、軍事費大増強という大きな魚をつるために、さしあたっては「着実」に振る舞おうとするポーズではありませんか。そして、早く世論を導いてアメリカの期待に沿うようになりたいというのが自民党と政府の本心ではありませんか。率直にお聞かせ願いたいのであります。
 次は核兵器の問題です。
 総理は「非核三原則を国是とする」と述べられました。しかし、昨年十月に公表されましたアメリカの上院軍事委員会の聴聞会議事録には、岩国の米軍基地に核兵器部隊が存在するということを明確に立証する米国防次官の証言があります。この重大な内容を持つ議事録は政府にもすでに入っていると思います。このような部隊に対して撤去を直ちに求めるのは当然ではありませんか。
 次に、見逃すことができないのは、総理が東南アジア五カ国訪問について、「わが国の平和と安全がこの地域の平和」と「深くかかわっている」と述べられている点であります。
 これは、わが国の安全保障地域の対象をこれら東南アジア地域にまで広げたという点でまことに重大であります。日米軍事同盟を軸とする方針の行き着くところを示したものと言わざるを得ません。総理は、バンコクの演説で、日本の「過去の選択の重大な誤り」ということについて述べております。この前の侵略戦争は「日本の生命線」と称して、いわゆる国防ラインをアジア一帯に広げたものであります。総理の立場は、この歴史の明白な教訓に背くものではありませんか。
 次に、国内の現状認識の問題について伺います。
 総理は、わが国の「安定と繁栄」の問題につきまして、これをすこぶる楽観的に述べられております。自民党大会のあいさつでは、わが国が「今日、政治・経済・社会面のいずれをとっても、世界で最も安定した国として高い評価を受けて」いるとまで述べているのであります。これはまことに驚くべき認識と言わざるを得ません。
 政治的にはどうか。確かに昨年の同時選挙で自民党は過半数を制しました。しかし、衆院選の得票率は過半数を割っているのです。これによって議席を比例配分すれば、過半数以下の二百四十五になるのであります。しかも、その得票率も、二十年前の得票率五七%よりも一〇%近く低く、正確に見れば自民党の長期低落傾向はなお否定できないものであることは明白であります。これは二十年来の自民党の基本路線と国民の願いとの矛盾の根深さを示すものであります。その上、ロッキード、ダグラス、グラマンなど、政財界をめぐる疑獄と綱紀紊乱事件の相次ぐ頻発もあります。これで一体、安定した政治などと言えたものでないことは明白ではありませんか。総理の見解を求めます。
 経済的にはどうでしょうか。確かに大企業は大いに繁栄しております。しかし、昨年の勤労者の実質賃金の低下を裏づけるように、最近の政府の世論調査によりましても、生活が苦しくなったという人が過半数であります。農民は相次ぐ減反政策に加え冷害、雪害で苦しんでおります。中小企業の倒産や失業者百万人以上の長期記録も、重大であります。
 国際的に比較してみますると、日経連の調査によりましても、購買力を加味した製造業労働者の賃金は、西ドイツの半分、イギリスの約七割という水準であります。労働者の労働時間も日米欧五カ国のうちで最長です。過密労働も最高であります。経済の状態を、ただ成長率と企業収益だけでなく、主権者である国民の実態から見れば、国際的に「最も安定している」などと決して言えないものであることは明白ではありませんか。総理の見解を求めます。
 社会的にはどうか。下水道普及率では、日本は、アメリカ、イギリス、西ドイツなどの約三分の一にすぎません。東京の公園面積もロンドン、ニューヨークの十分の一から二十分の一です。住宅の貧弱さは国際的にむしろ有名なくらいであります。これらは、歴代自民党政府が大企業向けの公共投資には熱心だったが、国民のための社会資本の充実には冷淡だったことの反映であります。また、婦人の賃金の平均は男子の五割から六割という低さであります。これでも総理は、わが国が社会的にも世界で「最も安定」したなどとあえて言い続けられますか、答弁を求めるものであります。
 総理、資本主義諸国の中で経済成長率がましだということと、その国の富の配分が国民に公正に行われているかということは全く別の問題であります。広く世界を見れば、物価や雇用でわが国よりはるかに良好な国は社会主義国の中にも幾らでもあるのであります。わが国の現状についての自画自賛は自民党政府のおごりを示すものにほかなりません。このような安易な姿勢からは、営々と働いている庶民のための抜本的改革はおろか、政府としての真剣な責任感もとうてい生まれてくるはずがありません。このような現状認識を根本的に改める気はあるかどうかということを伺いたいのであります。
 来年度の予算編成について質問いたします。
 政府は種々苦心談を述べていますが、一番足りないのは主権者である国民への奉仕の精神ではないでしょうか。この問題については、わが党はすでに「国民のための財政百科」という財政再建と国民生活防衛の基本方針を出しております。詳しいことは避けますが、政府も十分参照願いたいものであります。
 なぜ膨大な公債が発行されたのか、これは大企業本位の高度成長政策のために、大企業向けの公共投資に狂奔したからではありませんか。わが国の軍事費はこの十年間、いわゆる先進資本主義国の中で最大の速度で伸びております。それに加えて、さらにここに重点を置くというのは国民のための緊急政策軽視で、実際は「西側の一員」という意識からではありませんか。
 安い政府のための行政改革が必要ということが本意であるならば、自衛隊員やスパイ公安警察などは、なぜ増員が野放しにされているのでありますか。総理、これらの疑問や批判をいかにお考えですか。
 結論として、わが党は軍事費の大幅な削減を求めるものであります。また、大企業優遇の税制を改め、民主的な行政改革を徹底するなどのことによりまして国民生活を守るための財源をつくることです。そして、生活密着型の公共投資を盛んにして、日の当たらない中小企業者、農業者、失業者及び教育、福祉等への予算の充実を切に求めるものであります。
 次に、若干の個別問題について聞きます。
 国際障害者年に当たり、欧米から大きく立ちおくれた日本の現状を転換させる契機としなければなりません。
 一例を挙げます。いま脳性麻痺者の間で「歯の治療が受けられない」という痛切な叫びが上がっております。法律や制度が整備されていないために、障害者のための本格的な歯科診療の体制を整備した病院は東京でもわずか十五カ所にすぎません。全国的にも国公立病院その他に障害者歯科医療体制を早急に確立すべきであります。万事、こういう血の通った施策と予算配分が必要ではありませんか。
 総理は、農業の「自給力強化」を図ると述べておりますが、政府による「長期見通し」では、穀物の自給率を現在の三三%から三〇%に下げることにしております。
 自給力強化を言うなら、農民への減反押しつけをやめ、主な農産物に対する物価保障措置などをとることです。また、私は、一つの具体的な方策として、減反を強いられた水田で無理に他の作物をつくらなくても、すでに食用米の二倍の生産が可能となっているえさ用稲を実用化することを提案するものであります。真剣な御検討を求めます。
 次は、大変の学費の問題であります。
 七年連続の値上げで国立大学の学費は十年間に二十一倍になろうとしております。私立は国立の約三倍という高さであります。国際人権規約の第十三条(C)項は、「高等教育は」「漸進的に無償教育を導入することによって、すべての人々に等しく開放されなければならない」と規定しております。ところが政府はこの条項については批准を保留し、世界の流れに逆らっているのであります。政府は速やかに人権規約第十三条(C)項への留保を撤回して、この精神を実行すべきであります。
 次は領土問題であります。
 政府は「北方領土の日」を下田条約を結んだ二月七日と定めましたが、わが党は、一八七五年平和的に全千島が日本領となった五月七日がふさわしいと考えております。福田内閣の当時から私は党首会談などで、自民党政府がサンフランシスコ条約で千島放棄という誤りを犯したことを後から正当化すべきではないということを述べたことがあります。わが党はもちろん択捉、国後の返還も求めるものでありますが、二月七日と政府が決めたのは、日本国民は全千島返還は要求すべきでないという見地からであるかどうか。はっきり政府の所見を伺いたいものであります。
 最後に、昨日、衆議院の質問者の中で、自衛隊について国会で合憲決議をすべしという提案がありました。これはあらゆる点で非常識きわまるものであります。自衛隊は憲法違反の存在であるだけでなく、現実には対米従属の軍隊であります。現在わが国でも、安保条約と自衛隊の評価について、国論にも政党間にも大きな分岐があることは明白であります。このとき、満場一致を前提とすべき国会決議を多数決で強行するなどということは、議会制民主主義のファッショ的破壊にほかならないのであります。これこそ憲法無視の暴挙と言わなければなりません。日本共産党は、対米従属下の軍国主義復活に断固反対して、平和、中立、国民本位の政治革新のため奮闘することを強調して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(鈴木善幸君) 宮本さんの二十一世紀への展望と課題につきまして御高見を拝聴いたしましたが、私は政権を担当する責任者として、現実を踏まえ、二十一世紀に向かって内外の諸施策を一歩一歩着実に進めてまいりたいと考えております。
 まず、今後の国際社会におけるわが国の果たすべき役割りについてでありますが、わが国としては、国際情勢の現実を十分踏まえ、その中でわが国と共通の理念を有する米国その他の自由主義諸国との連帯と協調を図りつつ、世界の平和と繁栄に寄与してまいりたいと考えております。このため、わが国は積極的な政治的、経済的役割りを果たしていく決意であります。たとえば経済協力については、中期目標についてその具体的考え方をすでにさきの施政方針演説でお示ししたところであります。また、軍縮に対する私の積極的な考え方につきましても、これまで国会等の場においてたびたび申し上げてきておるところであります。
 なお、国連軍縮特別総会につきましては、わが国は明年の第二回特別総会に向けて、年内の同準備委員会に副議長国として積極的に参加する所存でございます。
 なお、わが国を取り巻く国際情勢について一言いたします。
 今日の国際情勢は、ソ連の軍事力増強やアフガニスタン軍事介入などに見られる第三世界への進出を背景として、米ソを中心とする東西関係が後退の様相を呈するとともに、インドシナ、中東等の地域で対立と抗争が続くなど不安定要因が増大しており、全体として厳しさを増しております。わが国としては、米国を初めとする自由主義諸国との連帯を強化し、かかる事態に適切に対処していく必要があり、積極的な外交努力と並んで、節度ある質の高い防衛力の整備に努め、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図ってきているところであります。しかしながら、現在のところ、わが国に対する差し迫った脅威があるとは考えておりません。わが国の防衛政策については、平和憲法のもと専守防衛に徹し、軍事大国にならないことをその基本方針としております。かかるわが国の立場についてはレーガン政権も十分承知しているものと考えており、わが国が軍事大国となることを同政権が求めることなど考えられません。
 なお、施政方針演説における御指摘の私の発言は、一層成熟した日米関係の構築に努力してまいりたいとの政府の方針として述べたものであります。
 五十六年度の予算編成に当たって、防衛関係費だからといって特別扱いすることなく、財政事情、他の経費とのバランス等を考慮しつつ、真に必要な経費に限って計上する旨、再三申し上げてまいりましたが、その方針にいまでも変わりはございません。五十六年度の防衛関係費の伸び率は七・六%であり、これは防衛計画の大綱に従い、わが国の防衛力の着実な整備のために必要最小限度の経費を計上したものであり、防衛関係費を特別扱いにしたものではございません。
 次に、わが国とASEANとの関係についてお答えをいたします。
 わが国の安全と繁栄は、世界の平和と安定があって初めて確保されるものであります。私はかかる基本的考え方を踏まえ、わが国と地理的にも近く、経済的にも密接なかかわりを有するアジア地域、なかんずくASEAN諸国の平和と発展が、わが国の平和と安全にとって重要であるとの一般的認識を申し述べたものでございます。
 国内の現状認識に関し、政治的安定かどうかの評価について御意見がございましたが、まず、自由民主党の得票率についてまで御心配いただき、大変恐縮に存じております。二十五年間の長きにわたって一つの政党が政権にある場合、通常その国の政治は安定していると評価するのが常識であると少なくとも私は思います。自民党もそう考えているのでありますが、ただ私は、国会の場でそのような認識を他党の議員に強制するつもりはございません。
 次に、経済面についてでありますが、わが国経済は二度にわたる石油危機に対しすぐれた対応力を発揮し、その影響克服に努めつつ、国際的に見ても高い成長を遂げてきたことは宮本議員もお認めになることと思います。この結果、一人当たり国民所得は、アメリカ、西ドイツの約八〇%ないし九〇%となり、イギリス、イタリーを上回る水準に達しており、失業者も国際的に見てきわめて低い水準にとどまっております。国民生活安定の基本要件である消費者物価につきましても、政府見通しを上回りましたが、国際的に見れば前年比上昇率は西ドイツとともに最も低位にあります。
 次に、社会的な面からわが国の国民生活の状況を見ますと、住宅、下水道、公園等の整備水準や、男女間の賃金格差についてはなお不十分でありますが、世界でも一、二位を争う平均寿命、高い教育水準、犯罪発生率の低さ、所得分配の平等など、全般的に見れば日本社会は欧米諸国と比べ遜色のない水準に達してきておると考えるものでございます。
 以上述べましたような幾つかの要因で、わが国は、その繁栄と安定につき多くの国から高い評価を受けているわけでありまして、そのこと自体は紛れもない事実でありますから、現状認識を変えるつもりはございません。もとより、私は、国際的に高い評価を受ければそれで十分だなどと申し上げておるのではございません。施政方針演説で述べましたとおり、私は、わが国が七〇年代から引き継いできた多くの課題等の解決に、厳しい自制のもと、身を挺して当たる所存でありますので、よろしく御協力をお願いいたします。
 予算編成においては、広い観点から財政が現在及び将来にわたって国民生活の安定向上に資するものとなるよう最善の努力を傾けておりますが、今後においてもそのように努めてまいりたいと存じます。
 石油危機以降、公債発行が急速に増大したのは大まかに言って三つの要因があると思います。一つは租税収入の水準の落ち込み、一つは失業を初め不況による種々の問題を解決するため景気回復を目指して公共事業を中心に財政が積極的役割りを果たしたこと、さらにもう一つは国民生活の安定を図るため社会保障、教育等の各種施策水準の引き上げや制度改善を行ってきたこと、この三つが主な要因ではないかと思います。大企業向け公共投資等に狂奔した結果であるとの御見解は当たらないと存じます。
 次に、昭和五十六年度の防衛関係費につきましては、わが国の防衛上必要最小限度の経費を計上したものであります。同様に、自衛隊、警察の要員につきましても、国防、治安を確保するため必要な要員が配置されているのであって、宮本議員とは見解を異にするものであります。
 高等教育において私立学校が大きな割合を占めているわが国で、漸進的にせよ無償化の方針をとることは、学校教育制度の根本にかかわることであり、適当でないと考えられます。
 なお、詳しくは文部大臣から答弁をいたさせます。
 次に、北方領土の日についてでありますが、北方領土の日を二月七日としたのは、この日が北方四島はわが国の領土であることを両国間で初めて平和裏に法的に確認した日露通好条約調印の日であるからであります。
 なお、岩国の米軍基地の問題も含め、残余の点につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣伊東正義君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(伊東正義君) 軍縮特別総会につきましては総理から御答弁がありました。来年開かれますが、今年は五月と十月、二回準備委員会を開く予定でございます。議題等はそこでいろいろ協議されるわけでございますが、わが国は世界で唯一の被爆国としての独自な立場から、核兵器の軍縮ということを最も重点として主張するということは、これはもちろんでございます。
 それから岩国地区への核兵器の持ち込みの問題でございますが、いままでも共産党の方々が米国議会の議事録を引用されまして、岩国の施設区域に核兵器の持ち込みがあるのじゃないかという御質問をよくされるのでございますが、核兵器の持ち込みは安保条約上事前協議の対象になっていることは御承知のとおりでございまして、米国政府が事前協議なしに日本に核兵器を持ち込むということは、これはもう考えられないことでございます。
 この問題、御提起のあるたびに政府では調査をしまして、その結果、核兵器の持ち込みがないということの御説明を累次いたしておるのでございますが、いま御提起でございますから検討はいたしますが、いま私の述べました確信には変わりないということを申し上げてお答えといたします。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(園田直君) 国際障害者年を単なるお祭りや行事の年にしない、これを転機として、さらに新しい時代に向かっての長期の対応策の出発点とすることは御意見のとおりでありまして、全力を挙げる所存でございます。
 脳性麻痺その他肢体障害者の歯科治療のお話がございましたが、これは一つの問題がありまして、脳性麻痺、肢体障害者の方の歯科治療は簡単ではありません。歯と脳の神経が非常に近寄っておる、あるいは直接関連し合っておるので、歯科医師だけで治療すると全身に変調を来したり生命に異状のあることがありますので、ここに困難があるわけであります。幸い地域歯科医師会等ではこれを真剣に研究されて、休診日に一般医師会と相談をしてこの治療に乗り出すなどの傾向があらわれていることはありがたいことであります。厚生省としましても、都道府県、歯科医師会が設置する口腔保健センター等に障害者の方の歯科治療の部門を整備し、かつまた各種施設に巡回診療などを行っておりますが、御意見のとおりでありますから、五十六年度においてはさらに新たに、こういう施設の入所者の方々の歯科の治療を確保する、ために歯科医療機関と密接に充実した体制をつくる準備をいたしております。今後とも十分努力をいたします。(拍手)
   〔国務大臣亀岡高夫君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(亀岡高夫君) お答えいたします。
 総合的な食料自給力の維持強化を図る上で、国民の需要の動向に応じて過剰なものから不足なものへ農業生産の再編成を図るということは、これは緊要な課題であるわけでございます。このため、五十六年度から五十八年度、三年間にわたってさらに第二期水田利用再編対策を実施いたしてまいるところでございます。押しつけているというようなお話もございましたけれども、これはいままでのこの事業も農業団体、農家並びに県市町村の全面的な理解と協力のもとに進めてまいりましたし、第二期対策も政府は十分農家の立場を配慮してやってありますので、農家からの協力を受けて着実に実行していけると考えております。
 えさ米の点、御指摘があったわけでございますが、総合的な食料自給力の維持強化に寄与し得るという意義があるわけでございますけれども、反面、収益性がまだきわめて低いわけでございます。えさとして家畜にやるという場合には、米のような価格ではとてもこれはやれないわけでありますので、そういう面からも、えさとしての収益性から考えますと、もっともっと超多収性のえさ米としての品種を改良造成していく必要がある。
 さらに、現在のえさ米というものは、水田を利用するということにおいては確かに一つの将来の大きな課題であるわけでありますけれども、脱粒性が非常に強いわけでございます。せっかくつくっても、脱穀機にかけるまでに、圃場から庭先に運んでくるまでにぼろぼろ落ちてしまう。この点が農林省としていま品種改良に最も心を砕いておるところでございます。当面、技術陣を督励いたしまして、やはり将来えさを水田から安く生産することができるということになれば、これは御指摘のように自給力を強化していく最もいい方法であるわけでございますので、脱粒しない超多収品種の育成、造成に試験研究陣を動員いたして取り組んでおる次第でございます。この所要の予算も五十六年度には確保をいたしまして、筑波の本場で調整をとりながら全国の農業試験場を動員してやっておりますことを申し添えて、答弁といたします。(拍手)
   〔国務大臣田中龍夫君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(田中龍夫君) お答えをいたします。
 総理からまことに簡潔明快に御答弁がございましたので、これを補足する意味におきまして若干お答えをいたします。
 ただいまの御質問の内容は、国際人権規約の第十三条(C)項、つまり高等教育の機会の確保のためにとられました手段の一つといたしまして、締約国が無償化を漸進的に実現することを求める、こういう内容でございます。御案内のとおりに、高等教育につきましては、わが国の状態は私立学校の占める比率が非常に高いのでありまして、学生で申すならば七五・一%、学校数で七一・五といったような非常に私立学校の多い内容でございます。日本におきましても、本規定の趣旨を尊重いたしまして、高等教育の機会の確保のために、かねてから私学助成、あるいは育英奨学の資金でありますとか授業料減免措置等の充実等を図ってまいっておるのでありますが、今後ともにこの方針は充実してまいるつもりでございます。ただし、私立学校を含めましての無償化を図りますことは私学制度の根本にかかわることでございまして、したがいまして、従来の方針を変更いたしまして漸進的にもせよ無償化の方針をとりますことは適当でないということで保留をいたしておる次第でございます。御了承いただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○副議長(秋山長造君) 田渕哲也君。
   〔田渕哲也君登壇、拍手〕
#19
○田渕哲也君 私は、民社党・国民連合を代表し、鈴木内閣の所信をただしたいと思います。
 まず第一は、財政再建についてであります。
 大蔵大臣は、一月六日の記者会見で、「今度の予算は財政再建一年目の予算としては満点」と胸を張られたのであります。私は、これは大臣一流の自己宣伝かジョークだろうと思っておりました。ところが、先日の財政演説を聞きますと、本気でそう思っておられると知って愕然としたのであります。なぜならば、五十六年度予算案について何らの問題意識もない人がこれから本格化していく財政再建に担当大臣として取り組まれますことに大きな不安と危惧を感ぜざるを得ないのであります。
 五十六年度予算案に見られる財政再建のやり方には重大な欠陥があります。
 その一つは、財政再建についての理念が欠落していることであります。
 財政再建とは、単なる収支のつじつま合わせではありません。まず第一は、ふくれ上がった行政機構のむだを省き、効率的なより小さな政府につくりかえることです。第二に、慢性化し惰性化した政策により多額の出費がなされながら政策効果が十分でないものを洗い直し、財政の効率化を図ることであります。このことこそ財政再建の柱となすべきでありましょう。この点について、政府は一体どれだけのことをなし得たのか、また、これからどれだけのことをしようとするのか、全く不明確であります。
 行政改革はほとんど進まず、国家公務員の定員百二十万名に対し、削減は一万分の一にも満たない、たったの百一名であります。大蔵大臣は、「七千名ほど削ったが、医大等の新設でふえた分があったから仕方がない」、このように言っておられますけれども、年々新しい行政需要がふえるのはあたりまえのことではありませんか。問題は、余り必要でなくなった部署の整理が決定的に不足しているのであります。これでは行政改革の名に値しません。さらに、金ばかり食って効果の上がらない老朽化した政策は山ほどあるではありませんか。財政のむだの代表的存在である三Kの赤字問題は数年前から叫ばれているのに、何の前進も見られません。
 大蔵大臣は、補助金の大部分は法律事項だから切れないと言っておられますけれども、それならば、なぜ法律改正案を提出されないのでありますか。大蔵大臣、増税も法律事項ですよ。増税については平気で増税案を提出されながら、補助金削減案については法律だからできないと言うのは筋が通らないのではありませんか。これでどうして「財政再建を本格的な軌道に乗せることができた」とか「財政再建元年予算」と言えるのでしょうか。総理並びに大蔵大臣の責任ある答弁をお願いいたします。
 二つ目の欠陥は、不用意な増税を先行させたことであります。
 鈴木総理は、当初二兆円程度の国債発行減額を提唱しておられましたが、途中でこの「程度」を外して、国債減額二兆円という歯どめをかけられました。それはそれで結構ですが、結果としては行財政の改革は進まず、国債発行減額分のほとんどが増税と公共料金引き上げで賄われ、歯どめが逆に作用して、国民の負担増にのみしわ寄せされることになったのであります。
 しかも、一兆四千億円という史上最大の増税を行うならば、当然、税負担の公平の見地から、既存の税体系を見直し、不公平の是正を行うべきであります。しかるに、それをせず、既存の税制の枠の中で、とにかく取れるところから取れというような、なりふり構わぬ増税が行われ、税のひずみを一層拡大する結果を招いております。
 本来、資力のある人が購入するぜいたく品にかけるべき物品税が業務用に使われる品物や必需品とみなすべきものにまで拡大され、大衆課税化している例を見ましても、税体系の混乱は明らかであります。このような不用意な増税を行い、大衆負担を増大し、税のひずみを拡大させながら収支のそろばん合わせをした五十六年度予算は、まさに史上最悪の予算と言っても過言ではありません。
 三つ目の問題は、経済運営との整合性がないことであります。
 政府は、五十六年度の経済成長は民間経済に期待すると言っております。しかし、増税、公共料金の引き上げ、土地・住宅政策の無策等、これに逆行することばかりではありませんか。経済見通しと予算はまことにちぐはぐで、まさに精神分裂症型予算と言わざるを得ません。
 以上の諸点について、総理、大蔵大臣、経済企画庁長官の明快な答弁をお願いいたします。
 また、総理、大蔵大臣は、これらの点について十分反省され、国会審議を通じて予算の修正に応じられるよう強く望むものであります。
 同時に、今後の財政再建の方針について要望いたします。
 五十七年度以降、さらに財政再建への取り組みは本格化するものと思いますが、五十六年度予算の過ちを繰り返さないためにも、次の四点について提案を行います。
 まず第一点は、財政再建について、赤字国債の発行がなくなるまでの期間についての中間計画を作成することであります。
 それは、政府が提出を予定している財政中期計画のように、歳入歳出についての見通しを示すだけではなくて、経費の節減や補助金の整理などによる歳出削減の目標額を設定することであります。
 また、不公平是正を中心とする税制改革による歳入増加の目標額を明示することであります。
 大蔵大臣は、再三不確実性の時代だからそれはできないということを言っておられますけれども、レーガン政権は八一年度に百五十億ドルの歳出削減の計画を立て、それを遂行しようとしております。そして、その反面では減税を行おうとしておるのであります。西ドイツにおいても財政再建法を成立させ、年間六十億マルクに及ぶ経費削減をやっておるわけであります。民間企業においても経営再建のためには経費削減の目標をまず設定するのが常道であります。これをやらないのは日本の政府だけではありませんか。
 第二に、行政改革についてでありますが、できるものからやるということは、できないもの、抵抗のあるものはやらないということと同じであります。財政再建という非常事態にとるべき態度ではありません。
 政府は第二臨調を発足させることになりました。行政管理庁長官の言われる行政改革哲学に基づく抜本的な改革も大切ですが、すでに財政再建のしわ寄せが一世帯当たり年間十万円の負担増という形で国民の台所にひたひたと押し寄せているのであります。五十七年度以降の財政再建に大増税を避けるためにどれだけ行政改革が寄与できるのか、目標額を明示し、定員の削減、経費の節減などについて具体的プランを立てていただきたいのであります。
 第三点として、三K問題については、国鉄の赤字たれ流し年間一兆七千億円がいつになったらどれだけ減るのか、医療費の国庫負担年間三兆数千億円は乱診乱療の改善でどの程度減らせるのか、政策的に行き詰まりつつある食管制度、減反政策を初め、年間三兆七千億円に及ぶ農業関係補助金がもっと効果的に使われ、合理化できないのか、以上について財政再建期間に合わせたプランをつくり、国民に明らかにすることを要請いたします。
 第四点は、税の不公平を是正することであります。
 長者番付には毎年のように土地長者、お医者さんなどがずらりと上位を占めております。それにもかかわらず、医師優遇税制は五十四年に申しわけ程度手をつけただけで放置され、土地税制の優遇も、土地吐き出しという政策効果を上げないまま土地所有者を利するだけに終わっております。これらについてどうするのか、明確な答弁をお願いします。
 また、問題は、税の徴収についての不公平であります。現在、給与所得、事業所得、農林水産所得のそれぞれの捕捉率の間には、俗にクロヨンとかトーゴーサンとかの格差があると言われております。大蔵大臣は実際にはそんな差はないと言っておられますけれども、国税庁統計年報書と国民所得統計年報との対比から割り出した数字によれば課税所得の捕捉率は、給与所得で九四%、事業所得は二二%、農林水産所得は八%となっております。クロヨンどころかもっと開いているのであります。
 もう一つのデータがあります。国税庁の課税実績を調べてみると、法人税だけについて見ても、税務職員が実際に帳簿を調べる実調率は、五十四年度で全体のわずか一〇・四%であります。それだけで申告漏れ所得八千四百八十七億円が発見され、税額にして三千億円が追加徴収されております。このデータから推定すると、法人税の申告漏れ税額は約三兆円、個人所得も加えると五兆円近い税金が捕捉されていない計算になります。もしも徴税が公平に適正に行われるならば、増税などしなくても、それだけで財政再建はできるのであります。この点について大蔵大臣はどのように考え、また、この改善のために今後どのような措置をとられるのか、はっきりと答えていただきたいのであります。
 以上、四点について提案いたしましたが、それぞれの項目についてどう対処されるのか、また、これらを実行すれば増税は要らなくなりますけれども、政府はどうしても増税は不可欠と考えるのか、責任ある答弁を求めます。
 第二に、外交、安全保障政策についてであります。
 わが国に対し、その力にふさわしい国際的役割りを求める声は日増しに高まりつつあります。そして、それは単に経済的役割りにとどまらず、政治的さらには軍事的役割りまで要請されるに至っております。
 総理は、ASEAN諸国歴訪の中で、「わが国は軍事大国にならない、わが国に対し国際社会における軍事的役割りを期待することは誤りである」と明言されました。私はこれに対し心から賛意を表するものであります。
 しかしながら、過日の自民党大会で採択された運動方針には「自主憲法について真剣に検討し、世論を喚起する」とうたわれております。自民党の言う憲法改正の理由と意図は何なのか。鈴木総理は、改正の具体的内容は述べる段階にないと答弁されておりますが、少なくとも理由や意図がないのに世論を喚起する必要はないはずであります。この点を明らかにしていただきたいと思います。
 また、理由も内容も明らかでない憲法改正論議の喚起は国民に対して無責任であるばかりでなく、政権政党のこのような動きは、総理のASEANにおける言明にもかかわらず、わが国の防衛政策について諸外国の誤解を招く結果になりかねません。総理の見解をお伺いいたします。
 民社党の昨日の衆議院本会議の質問に対し共産党から抗議がありましたけれども、これは言いがかりもはなはだしいのであります。憲法第九条に対する最高裁の判決は、自衛力の維持は統治行為としており、共産党の言うように憲法違反とはしていないのであります。民主主義においては異なった意見を調整し統合することが必要であります。そして、その最高の場が国会であると確信するものであります。もし統治行為論とするならば、これは国権の最高機関の国会で決めるのが適当ではないか、これは一つの憲法に対する国民の意見をまとめるための案として言ったにすぎないのであります。共産党が抗議されるならば、どのような方法で現在の憲法についての国民の意思の統合をすればよいのか、代案を示していただきたいのであります。
 次に、レーガン政権は強いアメリカを目指し、ソ連に対する力の優位の確保による世界の安定を指向しております。これに対し、西独を初めヨーロッパ諸国は、防衛努力は行いつつも、むしろ米ソの力の対決のエスカレートを警戒し、デタントの推進と第三世界に対する大国の介入を避けることを基本としております。同じ西側のメンバーでもアメリカとヨーロッパ諸国の間には微妙な差があることは御承知のとおりであります。
 総理は、施政方針演説の中で、アメリカが国際社会の中で強力な指導力を発揮することを強く期待すると述べておられますが、これはレーガン政権の強いアメリカ政策を支持し、わが国もそれに協力することを意味しているのでありましょうか。
 また、アメリカはわが国の防衛努力を強く要請し、レーガン政権は、自由主義陣営の軍事的優位確立のため、「日米欧三者による防衛力整備のガイドラインについての協議」や「日米の防衛分業体制」を求めようとしております。総理は、これらの動きに対してどういう態度で臨まれるのか、明らかにしていただきたいのであります。
 また、防衛庁長官は、従来、防衛計画の大綱の見直しは考えていないと言明してこられましたが、最近の日本記者クラブにおける講演では「レーガン政権の政策によっては大綱の見直しの必要性も出てくる」と述べられました。大綱の見直しが行われるとするならば、それはどのような理由に基づくものか、また、どのような場合にそれが行われ、従来の基盤的防衛力構想をどのように変えていこうとするのか、お伺いいたします。
 私は、世界の平和の維持はきれいごとではだめで、従来のデタントそれ自体も力のバランスが前提となって実現した事実を否定するものではありません。したがって、極東の平和とわが国の安全のためには、自衛力の整備と日米安保条約が有効に機能する状態を確保することが肝要であると思います。しかし同時に、わが国が平和主義、専守防衛の立場に立つ以上、できることとできないことがあり、その限界をはっきりとさせながらレーガン政権との話し合いに臨むことが大切かと思います。総理の見解をお伺いいたします。
 また、ソ連に対しアフガニスタンからの撤退、北方領土の返還を求めていくのは当然としても、日ソ関係の打開についてはソ連の誠意に期待すると言うだけで、具体的な方法が明らかでありません。対ソ関係の修復は、あくまでソ連のアフガニスタン軍事介入、北方領土の軍備強化などの是正についての具体的行動が前提となるのか、あるいはアメリカの政策変更いかんによるのか、お伺いをいたします。
 次に、経済援助についてであります。
 総理は経済援助に力を入れていこうとの方針でありますが、しかし、政府の作成した経済協力の中期目標は財政事情からトーンダウンしました。この計画では、政府開発援助の国際基準であるGNP対比〇・七%にわが国が到達するのはいつか、また内容の改善について総合グラントエレメントの目標八六%を達成する見通しはどうか、お尋ねいたします。
 また、この程度の経済援助で、軍事費にGNPの五%前後の多額を費しているアメリカやヨーロッパ諸国に対し、「わが国は軍事費のかわりに経済援助で」と、こういう主張が説得力を持ち得るのかどうか疑問であります。経済大国であるわが国が軍事小国としての立場を維持するためには、経済援助についてもっと思い切った増額をし、少なくとも国際基準には早急に到達することが必要と思いますが、いかがでしょうか。
 以上の諸点に対し、政府の具体的かつ明快な答弁をお願いして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 財政再建のためには、まずもって行政改革を推進していくことが重要でありますが、このため政府は、昭和五十五年行政改革に基づき、特殊法人の整理合理化、地方支分部局、附属機関等の整理合理化など、行政機構の簡素合理化を着実に実施してきたところであり、さらに昨年末には、行政の減量化を中心とする新たな角度から行政事務事業の整理委譲、法令の整理、廃止、許認可等の整理など、いわゆる仕事減らしを推進することといたしました。政府としても、今後ともこれらにつき着実に実施し、行政の簡素効率化に努めてまいります。
 一方、五十六年度予算編成に当たっては、経費全般にわたり根底から見直しを行い、厳しく縮減を図るなどにより、歳出の伸びを極力抑制いたしました。今後とも財政再建のため歳出面において徹底した節減合理化を推進してまいる所存でございます。
 政府としては、現に御審議いただいている昭和五十六年度予算が最善のものと考え御提案いたしたところでありますので、各党各会派の御理解をいただけるものと確信いたします。
 財政再建中期計画をつくれとの御提案でありましたが、将来にわたる財政再建のための実行計画ということであれば、それを現時点で策定することは、変動の大きい社会経済情勢等を考えると、実際問題としてきわめてむずかしいのではないかと思います。しかし、今後の財政運営のあり方について検討を行う上での一つの手がかりとなる財政の中期展望を策定いたしましたので、御検討の上、建設的な御意見をいただきたいと存じます。
 次に、自由民主党の運動方針について御質問がありました。
 自由民主党においては、現在、党の憲法調査会で憲法の問題をいろいろ研究しているところでありますが、国政の基本である憲法の問題は国民的基礎において検討せらるべき問題でありますから、政党である自由民主党が国民の要求にこたえて憲法のいろいろな問題を研究し、あわせて国民の自由な論議を望むことも何ら差し支えないと考えます。
 改憲論議の内容が不明確との御意見ですが、同調査会では白紙の状態で、現行の憲法に問題があるのか、あるとすればどういう点かなどを調査研究しておるのであって、具体的にどの条項をどうするという段階ではありませんので、具体的な内容を明確に示すこともできないわけでございます。
 次に、御指摘の日米欧三者によるガイドラインについてでありますが、もしお話しの点が先般の一米上院議員の東京における講演の際の発言を指しているとすれば、同議員は、あくまでも日米欧の専門家が安全保障上の共通の関心事について幅広く意見交換をすることの必要性について一般的に述べたものにすぎないと承知しております。
 いずれにしましても、政府は、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を期するという観点から日米防衛協力に関する協議を進めてきておりますが、これを拡大して、日米西欧間において共同防衛計画のごときものを協議の対象として取り上げることなど考えられません。
 次に、わが国の防衛努力の問題についてお答えいたします。
 わが国は、世界の平和と安定のための積極的な外交努力を行うとともに、節度ある質の高い防衛力の整備を進め、日米安保体制のより円滑かつ効果的な運用を図ることによりわが国の平和と安全を確保していく考えであります。わが国の防衛は、あくまでも平和憲法のもと専守防衛に徹し、軍事大国にならず、さらに非核三原則を国是とするといった原則の枠内で国民のコンセンサスを得つつ行っていくものであり、この点は従来よりたびたび内外に明らかにしてきたところであります。
 次に、わが国の経済協力についてお答えいたします。
 わが国は国際社会の有力かつ責任ある一員として、世界の平和と安定のためにその国力にふさわしい国際的責任と役割りを積極的に果たしていく所存であります。ただし、その場合、わが国として軍事面での協力はなし得ないことは明らかであり、経済協力を通じ世界の平和と安定に寄与することこそ最もわが国にふさわしい道であると考えます。このような基本認識のもと、わが国としては新たな中期目標を掲げ経済協力の積極的な推進に努めることとしております。その間にあって、政府開発援助の対GNP比率については引き続きその国際目標達成に努め、当面これを速やかに先進国水準にまで高めることを目指すこととしております。
 次に、国際政治における米国の役割りについてであります。
 一九八〇年代の国際情勢には厳しいものが予想されますが、かかる間にあって国際秩序の維持のため大国としての米国の責任、また自由主義諸国のかなめとしての米国の役割りはきわめて大きく、私といたしましても、かかる米国の責任と役割りに大いに期待している次第であります。このような考え方から、わが国は、米国に対しわが国の考え方を率直に申し入れるとともに、米国の政策で積極的に支持すべきものは支持し、互いに協調しつつ世界の平和と安定のために貢献してまいりたいと考えております。
 次に、日ソ関係についてでありますが、最近の日ソ関係の冷却化は、北方領土における軍備強化、アフガニスタンへの軍事介入など、もっぱらソ連側の行動に起因したものであります。私といたしましても、ソ連との間に真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することをわが国外交の重要課題の一つと考えており、このため誠意をもって対処する考えであります。しかし、このような日ソ関係発展への展望を開くためにも、まずもってソ連側が、今日の日ソ関係を招来した原因除去のため、その誠意を具体的行動をもって示してほしいということであります。
 わが国外交の基本方針についてお尋ねがございました。
 わが国は、平和国家としての基本的立場を堅持しながら、世界の平和と安定のため、政治面での貢献、経済協力の積極的推進など、国力にふさわしい貢献を政治経済両面において積極的に果たしていく決意であります。
 かかる外交努力を展開するに際しましては、理念を共有する米国を初めとする自由主義諸国との連帯と協調を強化していくことがわが国にとって最善の選択であり、対米追随云々は全く当たらないところであります。
 残余の点につきましては所管大臣より答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(渡辺美智雄君) 田渕議員から大変痛烈な御批判をちょうだいをいたしまして、本当に私も、できるものならば、あなたのおっしゃるように、首尾一貫をした予算をつくりたい、私も全く同じ意見でございます。
 しかしながら、決して、そういうことは御批判であって、現実の問題として……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。現実の問題として、その経費の削減と申しましても、物には限界があるわけでございます。
 われわれは……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。われわれも、たとえば補助金の整理合理化にいたしましても、九百六十六件について廃止、減額をいたしております。その金額は千六百八十八億円でございます。
 しかるにかかわらず、六千五百四十七億円の補助金がさらに増加をすると、こういう点が、私から、御批判をされるとすれば、減額だと言いながら精神分裂的ではないかと、こういうような御批判だろうと、私は想像をいたしたわけでございます。しかし、それにはそれなりの理由があってふえるわけでございまして、社会保障関係費にいたしましても、極力われわれは抑えるようにいたしておりますが、それでも三千三百七十五億円もふえる。したがって、社会保障費は全体で五兆円の、要するに補助金だけで額がふえるわけであります。
 文教問題にいたしましても同様でございまして、たとえば四百億円ぐらい施設でカットをしましても、さらに千三百三十七億円もふえると、こういうようなことであります。こういうものの積み重ねが十四兆五千億円というような補助金になってくるわけでございますから、それは決して政府が怠っておるものではないのです。
 しからば、そういうようなものもカットの法案を出したらいいじゃないかという御批判でございますが、これにつきましても、われわれは予算編成の際も各党との党首会談もやり、政調会長会談もやっております。その中においては、各党派からそれぞれ御要望がいっぱい出されておるわけであります。いずれも、これを切れ、あれを切れ、切れという具体的項目は、ある政党もありますよ。軍事予算はこれを切ってしまえという政党もございますが、それ以外にはなかなかこの項目で大幅に幾ら切れという要望書は出ておりません。
 総理大臣もおっしゃるように、できるだけ多くの政党の意見を入れて、そしてなるべく納得できるものについては国民の意見を入れて予算を持っていこうと、こういうような考えを持ってこの予算は組まれておりますから、したがって、ただいたずらに全部切るというばかりにはなかなかいかない。ですから、そういう点はひとつ御了承をいただきたいと考える次第でございます。
 したがって、私といたしましては、まことにりっぱな御主張ではございますけれども、民社党からも増額要求がいろいろ出ているわけです。したがって、そういうものも極力われわれは取り入れてやっておるのだということをまず御支持をしていただきたいと考える次第でございます。(発言する者あり)いま後で申し上げます。
 それから、その次のことでございますが、たとえば国債発行の二兆円減額というのは、先ほどもお話をいたしましたように、これは自然増収の中でわれわれは吸収したものと考えております。したがって、自然増収のほかに、当然増というものがこれはあるわけでございますから、自然増収は地方交付税とそれから国債減額と国債費によってもう余裕がない。したがって、その他の問題については、どうしてもやむにやまれずある程度の増税が必要であると、そういうような点から各税目にわたって少しずつ国民に御負担をお願いをするというようになったわけでございます。
 物品税の問題についても、自動車税等について、確かにこれは二・五%一律に引き上げることをお許し願ったわけでありますが、御了承を賜りたいと考えるわけであります。
 なお、もう一つは国鉄問題につきましても、これも一万一千人というような大変な人数を合理化で削減する、こういうようなことをしておりますので、これについてもできるだけの御了承を願いたいと存じます。しかしながら、それでも国鉄はどうしても七千四百億円ぐらいの補助金がなければこれはとうてい運営ができない、こういうようなことでございますので、運輸省と相談をいたしまして七千二百四十四億円の補助金も出しておる。こういうかなり大型な補助金も出ておるわけでありますから、それらの点も御了承を賜りたいと考える次第でございます。
 三K問題につきましても、これは御承知のとおり、医療費の問題についても年々増加をするわけでございますが、これらにつきましても、極力執行の面においてむだのないような処置を講じていただくと、こういうようなことで対処してまいっておる次第でございます。
 さらに、食管制度の問題につきましても、これは制度がある限りにおいてはどうしても政府は負担すべきものは負担せねばならない、こういうことであります。一方、食管制度は守れという声も非常に大きなわけでございますから、いま直ちにそれを廃止する法案を出す、あるいは改革案を急に出すというようなことはなかなか現実性がないということで、それらについても、まあ御批判はございますが、やむを得ないものと考えておるわけであります。しかし、われわれといたしましては、これによって御指摘のとおり全部財政再建が成ったわけでもないし、第一年度でございますから、極力われわれはそれらの処置をするために今後とも層一層の努力はしていかなければならない。
 医師税制の問題等についても、これはおととし直したばかりでございますから、今回はのせないことにいたしたわけでございます。
 それから捕捉率の問題につきましては、農業は八%しか捕捉されておらないという私は御批判を受けたようにいま思ったわけでございますけれども、これは違った統計を比べられましても、そのとおり必ずなるものではないと私は思うわけでございます。農業所得者が八%しか申告しないというような問題ではなくして、これはもともと所得が少なければ申告をしなくていいわけでありますから、したがって、それらの点につきましては、農業関係が非常にその所得が脱漏しておるというようには私は考えておらないわけであります。しかしながら、御指摘のように営業所得その他において申告漏れがある、脱漏があるというような問題もあろうかと存じます。したがいまして、それらについては極力今後とも脱漏を捕捉するように努力してまいりたいと存じます。
 なお、四つの提案につきましては貴重な御意見として拝聴いたしました。できるものは十分採用するように今後も努力していきたいと、かように考えてまいる次第でございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(河本敏夫君) 財政政策と経済政策が整合性を欠いておるのではないかと、こういうお話でございますが、五十六年度の経済成長見通しを作成をいたしますときに、財政に多く依存することはできません。また対外貿易等に多く依存することもできません。そこで、経済成長の中心を内需の拡大に置いて五十六年度の経済政策を進めることにいたしたのでございます。
 内需の拡大をするためには政策の機動的な運営が必要でございます。たとえば公共事業の執行方法に工夫を加えるとか、あるいは物価の安定を進めることによりまして個人消費を拡大するとか、あるいは金融政策を機動的に運営することによりまして投資の拡大を図るとか、このような政策が必要でございまして、そういう政策を適宜進めることによりましてことしの経済政策を展開する予定でございます。そういうことでございますから、財政と経済政策がそごを来しておる、そういうことはないと考えております。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(中曽根康弘君) 田渕議員の行革に計画性と目標を持てと言われる点につきましては、私も全く同感でございます。
 本年度の行革につきまして、大体私の心構えでは、いろいろなものを合わせまして約五千億円程度の経費を節減したいと、そういう目標を実はつくりました。本年度におきましては、特殊法人、電電公社以下の国庫納付金あるいは競馬会からの納付金、あるいは定員や特殊法人の役員の節減あるいは補助金の整理、そういうものを合わせまして大体四千五百七十億円程度の節減を行いました。これでもしかしまだ目標には達しておりませんので、鋭意努力したいと思います。
 なおまた、五十五年行革以降、いままでの既定計画でどの程度の節減が行われ得るかと計算してみますと、五十五年から五十九年まで定員削減あるいは特殊法人の役員の節減そのほかを含めまして、これは補助金を除いた数字で、五十五年ペースで計算いたしまして約五千百億円の削減を見込んでおります。補助金の削減は大体年一千七百億円弱で二年間推移しております。
 御指摘のように、行革は一時の思いつきや短期的な視点で行うべきでなくて、中長期の計画を持って、適当な目標を立てて努力すべきものであると思います。今回、臨時行政調査会もできましたので、一体、政府はいかにあるべきかという根底から洗ってもらいまして、中長期の行革の全体像、それからそれを実現するための順序と段取り等につきましてもぜひ御検討願いたいと希望しておる次第で、答申ができ次第実行いたしたいと思う次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣大村襄治君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(大村襄治君) 田渕議員の御質問に対してお答えいたします。
 私は、前国会におきましても、また去る一月十九日の記者クラブの講演会におきましても、将来防衛計画の大綱を見直すことがあるとすれば、国際情勢の変化、国内諸情勢の動向、大綱の達成状況等を勘案することになろうと述べましたが、いずれにしても、現在、大綱を改定することは考えておらず、大綱に定める防衛力の水準を可及的速やかに達成すべく努力していきたいと考えております。
 御指摘のあった私の講演会における発言は、以上の内容の講演をいたしました後、質問者の質問に答えて、仮定の問題として将来検討の対象となり得るかもしれないという趣旨を述べたものでございまして、具体的な内容を含んでいるものではございません。
 いずれにいたしましても、現在、防衛計画の大綱を変える考えは持っておらないことは繰り返し申し上げているとおりでございます。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#25
○副議長(秋山長造君) 穐山篤君。
   〔穐山篤君登壇、拍手〕
#26
○穐山篤君 私は、日本社会党を代表し、鈴木総理の施政方針に関し、特に内政問題にしぼり質問をいたします。
 まず、鈴木総理が最大の政治課題と言われました財政問題について質問をいたします。
 いまさら強調するまでもなく、国民生活を安定させ、危機に瀕した国の財政を再建のレールに乗せることは重要な課題であり、国民すべて重大な関心を持っております。
 そこで、次の四点についてただしたいと思います。
 第一に、歳入歳出全般にわたる徹底的な見直しにどれだけ真剣に取り組み、増税回避のためにどんな努力をいたしましたか。
 第二に、安易な国債発行に依存した財政運営を厳しく反省し、将来計画をどう立てられましたか。
 第三は、将来にわたって国民の納得できるサービスの提供と公平な負担にどのように心を砕かれましたか。
 第四に、乱脈をきわめ、国民から多大の批判を受けました経理を正す見地から、会計検査院法の抜本改正に今年度は着手なさいますか。
 総理は、これらの点に責任を持って全力を尽くし、リーダーシップを発揮する御決意があるかどうか、お考えをお聞かせをいただきたいと思うわけであります。
 さて、この三日間、財政問題に対する鈴木総理初め関係大臣の答弁は、まず補助金の整理など歳出の圧縮は非常に困難であるとの見解を示す一方、所得税減税の措置はぜひ猶予してほしい、また各種増税には国民の協力を願いたいと、一方的なものでありました。また、昨日の大蔵大臣の答弁も、「財源は有限、欲望は無限」とか、今後の財政見通しについても不確実性が高いなどと全く無責任な態度に終始し、多くの国民を失望させました。
 言うまでもなく、財政再建の前提条件は、まず国自身が減量経営に徹することであります。したがって、徹底的な行政改革並びに不公正税制の是正を断行し、歳出の縮減、歳入の厳格適正な増加を図ることであります。特に、増収のある場合には国民に直接還元するという政治的勇断にあると確信をするものであります。これなくして国民の納得と協力を得ることは全く不可能ではないでしょうか。
 そこでお伺いをいたします。
 第一は、五十五年度消費者物価六・四%の当初見込みは、わが党が指摘したとおり、実績見込み七%に改定をされ、賃上げも物価に食われ、実質所得と個人消費は年間を通してマイナスという異常事態となったわけであります。この政治責任をどうおとりになるつもりでありましょうか。五十五年度の所得税自然増収分七千億円についても国民に還元するという発想に立つべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 第二は、不可解な点はサマーレビューと実際の予算編成との関係であります。昨年、サマーレビューの際は、一般経費は三百億円程度と発表しましたが、一挙に一兆三千億円にふくれ上がった理由は何でしょうか。国民に期待を持たせましたサマーレビューとは、何の効果が上がったのでありましょうか。
 第三は、来年度の経済見通しであります。政府は、実質成長率五・三%、個人消費支出四・九%、消費者物価上昇率五・五%の見通しに立っています。これを達成する手だては全くないと言っていいほどなく、五十五年度と同じ甘い観測と言えます。特に、個人消費支出につきましての伸び率を対前年度比二倍に引き上げる政府の個人消費支出計画が実現するとは考えられません。また、中小企業の倒産を防止することは可能でありましょうか。あわせてお伺いをいたします。
 第四は、十四兆円に及びます補助金の徹底的見直し、不正経理、財政支出の究明、不公正税制の是正、トーゴーサンの所得の把握、これら厳格適正な徴税によって大幅な増収が可能と考えますけれども、いかがでありましょうか。
 第五は、自然増収四兆五千億円で最小限度の歳出を賄ったといたしましても一兆円近い国債減額は可能であったにもかかわらず、逆に一兆四千億円の増税を行う根拠は何であったでしょうか。党利党略の予算確保であるのか、あるいは国債減額のためであるのか、大いなる疑問と不満を残していると断言できますが、いかがでありましょうか。
 総理は、国会の予算審議を通して欠陥や不合理が明らかになった場合、予算修正に応ずる決断ができますかどうか、お伺いをいたします。
 百歩譲りまして、今回の増税が国債発行減額のためのものならば、五十九年までの期限に限定するとともに、国債減額のファンドとして特定する考え方があるのかどうか、見解を明確に示していただきたいと思うわけであります。
 財政の実態と財政再建の枠組みを国民の前に提示しないまま、単に財政再建のスロー・ガンだけで増税とサービスの切り下げを押しつけるやり方は、全く数を頼りの傲慢な態度であります。私は、再度、租税負担率、新規増税の必要性、財政再建の年次別見通しを一体とした計画を提示することを求めるものであります。先行き不確実と言うのでは、国民は安心して税金を払う気持ちにはとうていなりません。
 次に、公共交通政策の確立並びに国鉄の再建問題について伺います。
 政府は、高速道、関西国際空港建設、本四架橋など大型プロジェクトに手厚い保護政策をとっています。財政再建の最も厳しいとき、抜本的な政策の見直しがことしこそ必要ではないでしょうか。地方の交通は、毎年バス路線の統廃合、鉄道輸送の縮減合理化などによって地域住民の足を奪い、公共交通は瀕死の状態にあります。これによって地域住民の生活は一変し、地方振興対策や住民福祉、独自の地方文化活動は挫折し、かつ地方自治体の財政負担も増加の一途をたどっているわけであります。
 都市圏におきます交通問題も従来に増して大きな課題を持っております。交通渋滞、交通事故、振動騒音などに対します交通環境の整備は効果的な成果を上げておりません。特に、今回の豪雪の影響は、改めて公共輸送手段の確保について警鐘を鳴らしたものと思います。そこで、各交通機関の持つ特性や機能を生かした総合的な交通政策の確立が必要であります。これを実現するためには、現在ばらばらとなっております交通行政と財政基盤の一元的確立を図ることが急務であると確信をいたしますが、御所見をお伺いする次第であります。
 次に、昨年十月、地域における公共交通機関の維持整備計画が明示されましたが、行財政上の措置や強制力が全く見られず、これによる効果は期待できません。この際、一歩進めて行財政上の措置を整備することが必要であると考えますが、いかがでしょうか。
 第三に、都市部における公共交通を確保するため、自動車の総量規制、省エネ化、交通環境整備に関する新たな制度を確立すべき時期にあると思うが、見解を明示していただきたい。
 次に、国鉄問題に移ります。
 昨年、政府・与党は、わが党の真剣に検討しました修正提案を拒否し、いわゆる国鉄再建法を成立させました。周知のとおり、国鉄再建法は、鉄道輸送の公共的使命や輸送需要の展望など全く無視し、もっぱら財政的見地のみを強調した欠陥法であります。それゆえに、いまだに政府部内でも特定交通線の対応さえも決めかねているではありませんか。また、国鉄自身の改善計画もいまだに策定されていません。しかもまた、今回も九・七%という物価上昇を大きく上回る運賃値上げを計画しております。国民の負担を重くし、旅客離れを増幅し、国鉄再建どころか国鉄破滅の道をたどろうとしているのは断じて許すわけにいきません。
 そこでお伺いをいたします。
 まず、構造的欠損、公共負担分について、政府の政策責任を明らかにし、予算措置を明確に行うこと。次に、四千キロメートルにわたる特定地方交通線は、廃止前提の政令基準の作成を中止し、地域住民の足を確保するためいかに活用機能させるかという立場で関係協議会の協議を開始すること。次に、無謀な運賃値上げを断念し、都市圏の定期代の大幅修正など運賃政策について思い切った再検討を行い増収対策を図ること。第四には、再建に意欲的に取り組むため、労使間の重要課題の解決を促進する必要があります。以上につき総理の御見解を伺います。
 次に、障害福祉についてお伺いをいたします。
 本年は国際障害者年に当たり、そのテーマは「完全な参加と平等」であります。現在、わが国の十八歳以上の身体障害者は約二百万人に上り、その数は十年前に比べ一・五倍となっております。十八歳未満の障害児並びに精神障害者などを合わせますと、全体で四百万人を超えると思われます。障害者の発生原因を見ますと、その二五%が労働災害、交通事故によるものであり、約六〇%は公害、薬原病、多量な注射など、疾病による障害者であり、その障害の程度も漸次重度化の傾向にあり、また高齢化も顕著であります。これらの障害は天災によるものでなく、まさに人災であります。また、重度者の介護、経済的、精神的負担は限界を超えているのが実態であります。言うまでもなく、障害者の福祉は、社会全体の価値観を変革し、広く国民的視野に立って心身障害者対策基本法の趣旨を発展具体化することであります。さらに、今後の命題は、新たな障害者を人為的につくらず、障害者を発生せしめない政策努力が必要だと考えるわけであります。
 そこでお伺いをいたします。
 第一に、総合化した障害福祉の目標を設定し、あわせて年次の振興計画を国民の前に明示する準備がありましょうか。
 第二に、新たに障害者を人為的に発生せしめないために、いかなる具体策を用意されておりますか。
 第三は、雇用の拡大と所得向上について今年度の計画は提示できますか。
 第四は、「不具廃疾者」など不快用語をすべての法律、政令等から追放することについて、本年度事業として実現する決意があるかどうか、総理の決断を伺いたいわけであります。
 次に、同和対策問題について伺います。
 同和対策事業特別措置法につきまして、一昨日、総理は、「延長の際の審議の経緯や附帯決議の趣旨を尊重し、早期解決を図るため所要の検討を行う」とされましたが、国際人権規約や部落地名総鑑に見られる厳しい差別の実態を踏まえ、可及的速やかに結論を出さなければならないと思いますが、総理の御見解をお伺いをいたします。
 最後に、戦後処理についてお伺いをいたします。
 本年は、かの侵略戦争を開始して以来ちょうど四十年、敗戦から三十六年の歳月を経過しました。しかしながら、現在に至るも戦争の惨禍を背負い、国からも補償や救済が放棄され、戦後処理がなされていないものが広範にあり、国民の間に不満は非常にうっせきをしております。政府は、理由といたしまして、常に国との身分関係、他との均衡論、そして線引きのむずかしさなどの理由を挙げています。こうした無責任な姿勢が続く限り、戦後は終わったとは言えないと思います。かつて故佐藤総理は「沖繩の施政権返還なくして日本の戦後は終わらない」と言明しましたが、私は、まず北方領土の返還、竹島施政権返還の実現を果たすことにあると確信いたしますが、いかがでしょう。
 そして、次の諸点についてもお伺いをします。
 まず、国家補償の原理に立脚をしました原爆被爆者援護法の制定の実現であります。
 第二は、戸籍法などの改善による復権を図りながら、かつ恩給欠格者、海外への派遣者、戦災者、抑留者に対する援護救済の措置がまさに必要だと考えるものであります。
 以上の諸点を総理にお伺いをするわけですが、ことごとく事務的な問題ではありませんので、総理の勇断を要求すると同時に、代表質問を終わる次第であります。ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(鈴木善幸君) 穐山議員にお答えをいたします。
 まず、財政問題でありますが、昭和五十六年度予算におきましては公債の二兆円減額を基本方針として、まず歳出面においては、経費全般にわたり厳しい見直しを行い思い切った節減合理化に努めました。この結果、一般会計予算の伸び率を二十二年ぶりに一けたに抑え、特に一般歳出については四・三%と二十五年ぶりの低い率にとどめました。また歳入面においては、まず税外収入について特殊法人からの国庫納付などの増収措置を講じることとしております。しかし、このような歳出削減努力と税外収入の見直しを行ってもなお必要とされる歳出面の施策を賄うのに不足する財源については、既存の税制全般にわたって徹底した見直しを行い、税の増収措置をお願いしているところであります。財政再建に何よりも必要なことは国民の皆様の御理解でありますから、諸般の問題について国民の皆様に十分理解と納得が得られるよう努力してまいります。
 厳しい財源事情のもとにおいて歳出内容の質的充実に努め、サービス向上を図ることはきわめて重要であります。私が常々きめ細かい配慮をということを申しておりますのも、そのような見地からであります。どんどん歳出をふくらませてサービスをするというのであれば簡単でありますが、そのような財政事情にない現在のような状況にありましては、負担の適正化と並んで行政サービスの質的充実に万全を期してまいりたいと存じます。
 会計検査院の充実については、政府としても検査体制の増強等に配慮してきております。しかし、御質問の趣旨が、会計検査院に政府関係金融機関の融資先企業などに対する強制調査権限を与えるための法改正をすべきであるということであれば、これについては自由主義経済体制下においては公権力の過剰介入となるとの議論もあり、また、政策金融の円滑な遂行との兼ね合いなど立法政策上の重要な問題を含むものでありますので、政府としては引き続き慎重に検討してまいります。
 五十五年度の消費者物価につきましては、第二次石油危機の影響を最小限度にとどめるよう数次にわたる総合物価対策を強力に推進するなど、できる限りの努力を重ねました。五十六年度経済見通しの作成に当たり改定せざるを得なかったことは残念であります。しかしながら、最近の消費者物価は総じて落ちつきの方向にあり、国際的に見ても西独と並ぶ良好な推移を示しております。政府としては、これまでの一連の物価政策の成果を踏まえ、引き続き通貨供給量の監視に努めるとともに、各般の対策を総合的かつ機動的に推進することによって、現在の物価の落ちつき傾向をより確実なものとし、五十六年度の消費者物価上昇率が五・五%程度におさまるよう、引き続き努力してまいる所存でございます。
 中小企業の倒産防止につきましては、政府系中小企業金融三機関の資金枠の確保、中小企業倒産対策貸付の拡充などにより機動的に対処しているところであります。また、信用補完制度につきましても、建設業等百三十業種を不況業種として指定するなど倒産関連保証の活用に努めております。
 予算修正に応ずる意思はあるかとのお尋ねでありますが、政府としては、現に御議審いただいている五十六年度予算が最善のものと考え御提案したところであり、各党の御理解をいただけるものと確信しております。
 総合交通政策につきましては、従来から各交通機関の特性などを考慮しつつ推進してきたところでありますが、行政の一元化、財政基盤の一元化まで必要であるかどうか、いろいろ問題が多いと思いますが検討さしていただきます。
 国際障害者年に当たってのわが国の長期行動計画については、国際障害者年特別委員会の中で調査、審議が進められております。政府はその結果を待って効果的な施策を推進するつもりでございます。
 心身障害者の雇用につきましては、さらに一層推進していくため、特に身体障害者の雇用率が低い大企業や特定の業種等を重点に、雇用率の達成指導を強力に推進いたします。
 また、身体障害者職業訓練校の整備、一般の職業訓練校への入校の促進など、公共職業訓練の充実を図るほか、民間の活力を生かす観点から事業主等による能力開発事業の拡充等にも努めてまいりたいと存じます。
 次に、同和対策につきましては、現在鋭意検討を進めているところであり、可及的速やかに結論を得ることができるよう努力してまいる所存であります。
 ソ連との間に真に安定した良好な関係を構築するためには北方領土問題の解決が不可欠であることは、私が昨日の国会においてもたびたび申し上げたとおりであります。
 なお、竹島につきましても、歴史的事実に照らして、また国際法上もわが国固有の領土であることは明白であります。政府は、韓国政府が竹島に各種施設を構築し、不法占拠を続けていることはまことに遺憾であると考えております。このようなわが方の考え方は、種々の機会をとらえて韓国側に伝えております。政府といたしましては、竹島の領有権に関する日韓間の紛争は、あくまでも平和的手段によって問題の解決を図るとの基本的立場に立って、外交努力を通じて今後とも粘り強く紛争の解決を図っていく所存であります。
 次に、国際児の国籍問題についてでありますが、国際児、特に日本国民の子でありながら無国籍状態になる児童が生じている問題については、すでに国籍法の改正のための準備作業を開始しているところであります。
 ただ、この問題には、近隣諸国との関係で種々の問題があると思われますので、慎重な検討を要するものと考えております。
 さきの大戦はわが国にとって未曽有の事態であって、すべての国民が程度の差こそあれ戦争により何らかの犠牲を余儀なくされたのであります。このような戦争損害については、これを完全に償うことは実際上不可能であって、国民の一人一人にそれぞれの立場で受けとめていただかなければなりません。
 しかしながら、戦没者の遺族や戦傷病者あるいは生活の基盤を失った引揚者など、一般の国民と異なり特別の施策を必要とする方々につきましては、政府は援護等の措置を講じてきております。これまで講じてきた一連の措置をもって戦後処理に関する措置は終了したものと考えております。したがって、今後、戦後三十五年を経過した現時点において、戦争による被害について改めて特別の措置を講ずることは考えておりません。
 以上、お答えいたしましたが、残余の点につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(河本敏夫君) 先ほどのお尋ねは、五十六年度の経済見通しに無理があるのではないか、たとえば五・三%成長、物価の目標は五・五%、個人消費四・九%、いずれも少し無理があるように思うがどうかと、こういうお尋ねでございますが、経済成長目標につきましては、世界経済も一九八〇年の後半が第二次石油危機からくる悪い影響を受けまして最悪の状態であったと思います。平均いたしましてOECD全体でマイナス成長である。これがいま順次回復の方向に向かっておりまするし、そういう中におきましてもわが国経済は五十五年度四・八%という実質成長を達成し得る見通しでございます。それを背景にいたしまして五・三%成長を目標として設定いたしましたので、この目標は実現できると確信をいたしておりますが、何分にも激動期でございますので、財政政策あるいは産業政策、金融政策を実情に合ったように機動的に運営していくことが必要であろうと存じます。
 また、物価につきましては、消費者物価に一番大きな影響を及ぼしますものは卸売物価でございますが、これがだんだんと安定の方向に向かっております。五十五年度は平均一四%ぐらいな卸売物価の上昇でございましたが、五十六年度は四%そこそこと考えておりますし、その他の条件もだんだんとよくなっておりますので、五・五%という消費者物価の目標を達成することも可能であると考えております。
 また、個人消費につきましては、昭和五十三年度と五十四年度は五%ないし六%の水準でございました。しかし、五十五年度に至りまして物価が急上昇したこと等もございまして二%そこそこの水準に落ち込んでおりましたけれども、五十六年度は、おおむね五十三年度あるいは五十四年度の水準に近づくのではないか、その見当まで回復をするのではないかと、こういう想定をいたしまして経済見通しを立てたのでございまして、いずれも達成可能の目標であると考えております。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えいたします。
 四兆五千億円もの自然増収がありながら、二兆円の国債減額をやって、あとの残りはどこへ行ったのか、増税しなくても済むじゃないかと、こういうような御質問であります。
 実際問題として、先ほどもお答えいたしましたように、四兆五千億円の自然増収は最初から予定をしておるわけです。そこで、二兆円の国債減額に充てますから、あとの二兆五千億円につきましては国債費と地方交付税でなくなります。一方、一兆六千億円にも及ぶ当然増の要求がございます。これを切り込んでもなかなかもう全額はどうしても切り込めない、ぎりぎりのところでやっぱり一兆三千八百億円程度の増税が必要でございます。一兆三千八百億円の増税のうち実際は地方交付税で三二%取られてしまいますから、政府の手元には約一兆一千億円しか残りません。この一兆一千億円と税外収入の一千八百億円とで、そして今回の一般歳出の伸びを賄ったわけであります。
 その内訳は、社会保障・恩給費で七千八百七十六億円、文教・科学技術費で二千百七十億円、エネルギー・経済協力費で千百六十二億円、これだけで実際は一般歳出の八五%になってしまいます。そこに防衛費とその他のものが入りますから、それで一〇〇%になって使われた。金に色目はないわけですから、そういう説明もできるわけでございます。そういうようなことでございますが、しかしながら、これはもう緩やかなものでなくて、極力切るものは総理から御説明のあったように切り込んで、そして、その他の項目でも新規の要求がたくさんございますから、その新規の項目についてはスクラップ・アンド・ビルドでやらせていただくようにしてまいりましたということでございます。
 それから、先行きがわからないで増税を求められても納税者は納得いかぬ、将来の展望を明らかにしろと。
 これは全く私はごもっともな御要求だと思うのです、実際のところ。しかしながら、非常に激動する時代でございますから、予算項目について固定的な見通しはできませんが、現在の制度、既存の制度、現在のそれが物価の値上がりとか、あるいはGNPの伸びという一定の想定のもとに、ある程度の後年度の負担の推計、これを基本とした財政の見通しというようなものはできます。したがって、いろいろ勉強いたしました結果、五十五年度から五十九年度までの財政の中期展望という仮名をつけまして、きょうの閣議にお諮りをいたしまして、近々予算委員会等で御披露をさせていただきたい。それによりましていろいろな御議論が出てまいります、これは。そんなに収入が一体あるのかとか、そんなに経費がどうしてかかるのかとか、差額はどうするのだとか、御議論がいろいろ出ます。私は大いに出してもらって結構であって、その中で本当に国民の理解を求めながら財政再建をする以外にはないと、さように考えておる次第でございます。
 サマーレビューで何をやったのかということでございますが、これは御承知のとおり、サマーレビューの結果いろいろな要求が出たのでございますが、約三兆円ぐらいの要求があるわけです。それを一兆三千億円にその一般歳出を抑え込んで、二十五年来のもう一番小さな伸び率にしたというためには、サマーレビューの勉強の結果がなければできないわけでございまして、四・三%というのは二十五年ぶりの非常に小さな伸び率であるということもひとつ御理解を賜りたいと存じます。
 それから最後に、五十九年までにやはり何とか赤字国債は解消をしていきたい。六十年から償還が始まるものですから、それ以上延ばしたくないというような考えで目下進めておるところでございます。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣塩川正十郎君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(塩川正十郎君) 交通運輸関係に関する御質問が四つございましたので、お答えいたしたいと存じます。
 まず最初に、地方交通確保のために今後具体的な行財政上の措置を強力に講ずべきではないかと、こういう御質問でございます。
 地域交通政策を充実するために、その基本となりますところの長期展望に立った交通計画、これはどうしても必要でございまして、そのために昨年陸運局に対しまして、地方陸上交通審議会、ここにおいて関係の地方公共団体の意見を十分くみ取っていただきたい、こういうことで意見を申し上げる場をつくっておるのでございまして、そこでその地域に合った交通計画を策定していただきたいと、こう思っておるのでございます。この計画は今後の陸運行政の指針として策定するものでございまして、それを具体化するためには毎年の予算を初めといたしますところの行財政上の措置を積み重ねていかなければならぬと思っております。現在、財政も非常に窮迫いたしておる中でございますが、五十六年度予算編成に対しまして、この点につき強力なる実績を確保していきたい、こう思っておるのであります。
 それから国鉄ローカル線の廃止を前提とした基準づくり、これはやめたらどうかというお話でございますが、再建計画は三K赤字の一つとして真剣に取り組まなければならない課題でございまして、国鉄地方交通線対策も国鉄再建対策の重要な柱の一つとして、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法、この法律に基づきまして政令を定めその基準をつくる、こういうぐあいになっておるのでございまして、鋭意各省庁と協議をいたしまして調整も図り、早急にこの政令を定め基準を設定いたしたいと思っておるところでございます。
 それから次に、運賃を上げて客離れがひどくなるのではないか、特に大都市等においては、いっそのこと、少しは運賃を下げたらどうか、こういう御提案であろうと思っております。
 私たちも、確かに運賃の高騰は極力抑えるべきだと努力いたしております。しかしながら、御承知のように、やはり職員には所定のベースアップはしていかなければなりませんし、それから燃料費が上がりますし、諸物価も上がってまいりまして、その中にありまして政府助成は五十六年度も七千三百億円という多額な助成にやはり依存せざるを得ない状況でございます。したがいまして、五十六年度におきましては約二千億円の改定による増収を見込まざるを得なくなってまいりました。しかし、われわれといたしましては、今後一層の合理化に努めていきまして、そして基本的には売上増をどうしても図る、そして経費の節減を図るということによりまして、今後運賃の増収をするについては、できるだけ営業努力によって確保する方法を打ち出していきたいと思っておりますが、しかしながら、来年度にはとりあえず二千億円ほどの値上げを改定して増収を図らなければならぬ、こういう事態になってまいりましたので御了承いただきたいと思うのであります。
 それからなお、今後は輸送需要等も相当変わってまいりますので、他の交通機関との整合性も十分考えていきたいと思っております。
 それからもう一点、国鉄の公共負担、それから構造的欠損について政府の責任を明確にせよ、こういうことでございまして、これにつきましては、従来から国鉄に対しまして政府は多大の助成をいたしておりますが、その中におきましても、それぞれの分野における負担をカバーし得るものも含まれておるものもございますし、また全然別個の項目として考えなければならぬものもございますが、しかしながら、現在、当面構造的に解決しなければならぬ問題といたしましては共済年金対策、これがございますし、また運賃上の公共負担の軽減ということもございます。これらにつきましては、先刻御承知のように、共済年金につきましては、現在関係省庁の間で専門家によりますところの検討が進められておりますし、その結論を相まちましてこの解決を図っていきたいと思っております。
 また、運賃上の公共負担の軽減でございますが、これは先ほど申しました国鉄が公共機関とし七当然やらなければならぬものに対する政府助成の中にも、こういう公共負担の一部が含まれておると私たちも理解いたしておりますが、しかしながら、なお関係省庁間におきまして御協力を得てこの軽減に一層の努力をしてまいりたいと思っております。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(園田直君) 障害者に対する問題で、これを未然につくらないようにやるということは重大な問題である、しかもその半分以上は人為的なものであるという御意見、全くそのとおりでありまして、これは大事なことであります。幸い、障害年を迎えて内閣で障害者の問題に取り組んでおりますから、これは単に厚生省だけの問題じゃなくて、環境庁、運輸省すべての省にわたり内閣全般として取り組む問題でありますから、この場所で御意見を実現するよう努力したいと考えております。
 原爆被爆者の問題でありますが、御承知のごとく、原爆被爆者対策基本問題懇談会で結論を出されまして、それに応じまして五十六年度予算では医療特別手当及び原爆小頭症手当の創設、これらの手当の所得制限撤廃、その他被爆者相談事業の充実、原爆放射線の影響の調査研究、慰霊祭の旅費等の援助等予算を組むことができましたが、弔慰金、遺族年金等を支給するに至っておりません。したがって、これに立つ援護法の制定ということも、残念ながら、いまなおその運びに至っておりません。
 用語の問題は、今国会でこの用語を訂正するよう法律を出す準備をいたしておりますので、御指図どおりにいたします。
 なお、私の所管以外の問題は各省庁の連絡協議会でいま検討を進めておるところでございます。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#32
○副議長(秋山長造君) 松前達郎君。
   〔松前達郎君登壇、拍手〕
#33
○松前達郎君 私は、日本社会党を代表し、さきに行われた政府演説に対し国内外の重要課題、特にエネルギー、外交、教育問題にしぼって質問するものであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 わが国にとって資源エネルギー問題はきわめて重要な課題であり、その確保は、産業が生み出す付加価値によって生きるわが国の繁栄のかぎとなっていることは言うまでもありません。しかも、今日、資源エネルギーは国際戦略の武器とすらなっているのであります。とりわけエネルギーについては、その自給体制の確立が望ましいが、残念ながらわが国ではこれが不可能であります。したがって、エネルギー政策は、エネルギーの安定確保を目指し、諸外国との協調協力のもとに推進されるべきであって、このような見地から、まずエネルギー並びに外交政策について総理並びに関係閣僚に質問いたします。
 まず、エネルギー問題についてであります。
 エネルギーについては、ともすると表面的に見て、単に熱換算量や経済性のみで評価する傾向がありますが、重要なことは、各種エネルギーの質的相違と役割りを考えた上で対応するべきであります。
 今日、政府が強力に推進しようとしている原子力エネルギー開発については、石油にかわるエネルギー源であると言われてはおりますが、しかし、その核燃料については、現在のペースで原子力発電が進み、たとえ高速増殖炉の実用化が行われたとしても、二〇三〇年ごろにはウランの需給バランスが崩れるとも言われているのであります。ウランもまた石油と同じ道をたどるおそれがあるのであります。
 また、原子力発電が広く世界に実用化されてきますと、原子力発電により生成されるプルトニウムの核兵器への転用、すなわち核拡散が人類の大問題となるのであります。
 さらに、原子力エネルギー開発の宿命的な問題、放射線が人類の生存に与える脅威はぬぐい去ることはできないのであります。
 質問の第一は、原子力開発に関する基本的法律である原子力基本法に述べられていますように、原子力開発は平和利用に限られ、民主的運営のもとに自主的に行い、その成果を公開して国際的協力に資するとありますが、政府は核の平和利用に対する担保として、今後ともこの原子力基本法を厳守していくつもりかどうか、非核三原則を含め総理にその決意をお伺いしたいのであります。
 特に、最近、防衛論議の中で、核兵器の導入は防衛のためであれば許されるといった見方が行われておりますけれども、全く危険な考えであることは言うまでもないのであります。またさらに、安保条約のもと、事前協議があればアメリカの核持ち込みを認めるつもりかどうか、その点も含めて総理の所見をお伺いしたいのであります。
 さらに、原子力発電は、取り扱う物質が持つ性質から見まして、他のエネルギー開発よりはるかに高い信頼性が必要であります。しかし、今日、いまだに高い信頼度のもとにおける標準化が確立されていないばかりか、生成する放射性廃棄物の処分問題なども解決されておりません。現状で原子力発電を性急に推進するということは、大きな落とし穴に落ち込む危険性があることを知らなければなりません。政府は、万一大事故が発生した場合の対策、さらに放射性廃棄物の処分問題など、全く見通しがつかない問題を一体どう解決していくつもりか、総理並びに科学技術庁長官の所見をお伺いしたいのであります。
 次に、高速増殖炉の問題でお伺いしたい。
 今日、軽水炉から生じる使用済み燃料の再処理が思うようにいかず、さらに高レベル廃棄物の処理、処分が確立されていない現状で、より困難な問題を抱える高速増殖炉という一段高いステップのエネルギー開発はより危険なものであるとともに、核拡散、核武装につながる危険すら持っているのであります。高速増殖炉の導入について手控えるべきと思うがどうか。もし高速増殖炉の導入を推進するというのであれば、燃料の再処理にどのような対策と確信をお持ちなのか、科学技術庁長官にお伺いしたいのであります。
 次は、わが国の貴重な国内資源である石炭生産についてであります。
 わが国と同様、石油を国外に依存しております西ドイツは、わが国以上に石炭の高価格政策をとり、国内石炭資源を保護しつつ、かつ開発してきたのであります。また、アメリカ・メジャーは次の時代のエネルギー資源としての石炭に着目し、世界じゅうの鉱区権に次々と手をつけており、その結果として将来石炭価格が急速に上昇していくことであろうことは明白であります。
 政府は、国内石炭政策の基本的姿勢を転換し、国内炭二千万トン以上を柱に、現状維持から着実な増産、すなわち拡大政策に踏み切るべきであります。国内におけるエネルギー資源は、海外にあるものより数倍の値打ちがあるということは今日の国際エネルギー情勢が示すところであります。この際、総理は決断すべきだと考えます。総理並びに通産大臣の所信をお伺いしたいのであります。
 次に、省エネルギー問題に関連して、わが国のエネルギーの長期エネルギー需給暫定見通しについてお伺いいたします。
 昨今の石油価格の大幅な上昇によって産業界の省エネルギーは顕著なものがあり、政府のエネルギー需給の見通しは、もはやその消費について過大なものであることが明らかになりつつあります。昭和六十年の石油消費が一日当たり六百三十万バレルという水準は、省エネルギーの実態からしても、また産油国の実情からしても全くの空論にしかすぎないことも明らかであります。このような数字を今日なお掲げていることは、国際的にもわが国のエネルギー政策への信頼を失うことになると思います。政府はこの見通しを早急に改める必要があると考えますが、総理並びに通産大臣の所信を伺います。
 次は、エネルギー自給率の向上にきわめて重要な役割りを持つローカルエネルギー開発についてであります。
 エネルギー政策として、総理は省エネルギー並びに代替エネルギー関係投資と関係技術開発について述べられました。エネルギー政策として分散型エネルギー生産の推進が重要課題であると思います。また同時に、生産するエネルギーの質の問題も考えねばなりません。たとえば、質の高い今日のわが国の電力を照明や熱源としてそのまま使用していることは、蒸留水を水洗トイレに使用するようなもので、大きなむだがあるのであります。ローカルエネルギーの問題はエネルギーの質の問題と密接な関係があるのであります。今後、政府として、分散型エネルギー生産であるローカルエネルギー開発にどう取り組もうとするのか、また、これに伴って電気事業法など電力関係法の見直しが必要であるかどうか、総理並びに通産大臣にお伺いいたします。
 次に、ソフトエネルギー開発における問題点について総理にお伺いいたします。
 わが国において独自に開発できるソフトエネルギーの利用は、本来その用途に応じた総合的なエネルギー供給を意図するものであり、その趣旨からして一つのトータルシステムを形成するものであります。しかし、今日の行政の現状は、電力は通産省、農業利用は農林省、地域開発は自治省、国土庁と、全くの縦割り行政に縛られているのであります。たとえば風力利用の技術的開発などを例にとりますと、科学技術庁、通産省あるいは農林省といったように、ばらばらに行われているのが現状であります。およそ行政改革とは、ただ財政の面からチープガバメントを目標とするだけではなくて、これからの打開策を打ち出すことにあるのではないでしょうか。行政改革の一つには行政のシステム化があります。いま挙げたのはほんの一例にすぎませんが、他の分野でも同様に、一事が万事このような現状の行政の実態をどう考えておられるのか、総理にお伺いいたします。
 次に、エネルギー開発における国際協力についてであります。
 石炭を見直し、再びこれを利用することについての問題点として、わが国の国際協力の姿勢に反省を求めるものであります。わが国が常に先進諸国間だけで問題を解決しようとする姿勢が見られるからであります。
 いま、仮にオーストラリアとの関係で石炭の利用計画を立てるとした場合、わが国とオーストラリアの二国間のみでは解決できない問題があるのであります。すなわち、日本とオーストラリアの間に存在するアジア諸国の協力を求めざるを得ないことになることであります。たとえば液化プラントの建設にしても、輸送の中間地域に建設するのが輸送上得策であり、しかもアジアの諸国のエネルギー供給にも大きく寄与し、まさに政府の言うエネルギーの各分野での援助とエネルギー面での国際協力につながるものと考えるのであります。この点について、西ドイツの外交政策ははるかに進んでおり、わが国の政策は、石炭利用の拡大では生産国との関係のみを重視、外交面ではるかにおくれているのであります。今後、エネルギー利用についての国際協力の面で、特に発展途上国に対する協力を重視すべきだと考えますが、総理並びに外務大臣の所見を伺いたいのであります。
 また、エネルギー資源の確保の面からも、わが国とソビエトとの友好関係はきわめて大きな意義を持つものと思います。現在、エネルギー未開発地域として残されているアフリカ、カナダ、シベリアのうち、シベリア開発に協力できるのはフレートメリットの面から考えてわが国が最も有利であります。しかるに、今日、日ソ間に横たわる大きな課題として北方領土の問題があり、この返還を含む平和条約締結、さらに善隣友好関係の確立が対ソビエト外交の大きな課題であろうと思います。そして、いまや日ソ関係は突っ張り合いに終始し、冷え切った状態にあります。政府は口を開けばアフガニスタン問題を言いますが、アフガニスタン問題はアフガニスタン問題として国際世論による強い反省を求め、日ソ両国間の共通の課題はそれなりに進展させるのが外交ではないでしょうか。ヨーロッパ先進国の対ソビエト外交を勉強するべきだと思います。政府は、一体、対ソビエト外交を具体的に始めようとする気があるのかどうか、成り行き任せなのか、あるいはアメリカに気がねして時をかせいでいるのか、総理の意向を伺いたいのであります。
 また、外務大臣、あなたは外務委員会において私の質問に対し、北方領土問題を「平和条約の中で解決する」と答弁され、これは議事録にも載っております。しかし、外交演説では「北方領土問題を解決した後平和条約を結ぶ」旨述べられておるのであります。一体どっちなんですか。非常に重大な問題なのでここではっきりさせていただきたい。
 外交は非軍事防衛力として最も重要な役割りを担うものと確信します。わが国のように独特の地政的条件を持つ国として、外交は独自の立場に立って方針を打ち出すべきであります。かつて政府は全方位外交を打ち出しましたが、この方針はがらりと変わってしまったのでしょうか。総理のお考えを伺います。
 次は、民間外交についてであります。
 私自身、文化交流、学術交流、スポーツ交流などを通じ何度も体験したのですが、わが国の外交の実態は、総理がASEAN諸国訪問の際述べられたと報じられている「心が通う交流は人と人との触れ合いの問題である」ということとは、ほど遠いものであります。政府機関の形式外交、たてまえ外交、縄張り外交では「人と人の触れ合い」はむずかしく、まして「心が通う交流」は行えません。心が通う交流はむしろ民間外交の方が成果を上げているのであります。政府は、いわゆる役人の縄張り根性から生じる民間外交への障壁をどう認識しているのか、また民間外交をどう評価しているのか、さらに今後民間外交へのバックアップをどのように推進するのか。総理並びに外務大臣の所見を伺います。
 また、総理は施政方針演説で、「単に防衛力の整備のみでわが国の平和と安全を確保することが困難」と述べられました。外交に当たって、その背景に強力な軍事力を持っていることが外交上有利であるといった感を受けるものであります。力の外交は、アメリカ、ソビエトのような軍事大国のとる外交であり、わが国のように、軍事力を行使する段階ではすでにわが国の繁栄と国民の安全が崩れ去っているような国での外交のあり方ではないと思います。言いかえれば、軍事力を必要としないほどの強力な平和外交の展開が必要なのであります。この点につき、総理の所見を伺います。
 次は、外交の展開に当たっての情報能力の問題であります。
 外交の展開に当たり情報の収集が重要であることは外務大臣も指摘されております。私も体験上そう思う一人であります。「軍事小国ほど長い耳と敏感な聴力と総合的な判断力、分析力を持つべきである」と言われますけれども、情報収集に当たっては、特にゼネラリストよりもスペシャリストの養成と配置、特に長期間の配置が必要だと思うのであります。また、在外の民間の諸機関、個人などの多角的な情報もきわめて重要だと思います。ハードである軍事力とソフトである情報能力は同等の価値を持つものであって、総理は、わが国は決して軍事大国とならないと世界にアピールした以上、あらゆる面での国際情報収集能力及び分析能力の飛躍的向上を図るべきであります。この点についてどう考えておられるか、総理並びに外務大臣にお伺いしたい。
 最後に、私は青少年の非行問題に触れておきたいのであります。
 校内暴力、登校拒否、自殺など、いま青少年の非行といわゆる落ちこぼれの問題は深刻な状況にあります。こうした問題の社会的背景としては、両親や教師をも含む経済第一主義の社会的風潮があり、物質文明の欠陥がさらけ出されていると考えてよいと思います。またさらに、右傾化や軍国主義化を鼓吹する体質を持った社会の状況にあるということが多くの識者によって指摘されてまいりました。こうした事態を打開するためには、政治に倫理を回復していくことは当然のことでありますが、同時に、学歴社会や受験地獄などをなくすことや、政治や文化の腐敗と退廃を食いとめていかなければならないのであります。そのため、当面緊急な課題として教育の現場の充実を図っていく必要があります。
 いま教育の現場で、幾つかの中学、高校では登校拒否をしたいのは教師の方であるという笑うに笑えない事態さえ起こりつつあるのであります。小学生のうちから落ちこぼれが始まり、中学生の中には基礎的な問題すら理解できていない生徒が多くなっていると言われております。義務教育の過程においてさえ受験勉強と点数主義が始まり、こうした落ちこぼれが非行を生み出していることはどう理解すべきでありましょう。歴代の文部大臣は何をしてきたのでしょうか。
 文部大臣、いまあなたに直ちに実行にかかれる三つの提案をいたしますが、ひとつ国民的立場に立って、親の身になって積極的な答弁をいただきたいのであります。
 その一つは、義務教育の過程における学級の定数を、確かに財政的な困難はありますが、教育を担当する大臣として四十人以下にすることであり、その二つは、私立高校も含めて高等学校の増設を行い、希望する者はすべて適性に合った学校やコースに進学できるようにすること、そして三つ目は学校を管理された場から教育の場にしていくこと、これが最も重要だと思うのであります。文部大臣の決意を伺うものであります。
 以上、私の質問を終わりますが、議会の討議を充実させ、国民の信頼を回復するためにも、前向きに発展する答弁を求めるものであります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(鈴木善幸君) 松前達郎さんの御質問にお答えいたします。
 まず、原子力の平和利用についてお尋ねがありましたが、御承知のとおり、わが国の原子力開発利用は原子力基本法、非核三原則及び核兵器不拡散条約に基づき、平和利用に徹して進めてきたところであります。もとより、純粋な法律論からすれば、憲法上は、核兵器であっても自衛のための必要最小限度の範囲内にとどまるものであれば、その保有が禁止されているわけではありませんが、政策上の方針としては、政府は核兵器はこれを保有しないこととしてきたところであります。私はこの機会に、これまでの方針を受け継ぎ、核兵器の保有は一切これを行わないことを含め、非核三原則を堅持してまいることを明確に申し上げておきます。
 原子力発電の安全の確保につきましては、原子炉等規制法及び電気事業法に基づいて厳重に安全審査などを実施するとともに、原子力安全委員会が行政庁の行った安全審査をダブルチェックするなど、安全の確保に万全を期しているところであります。
 放射性廃棄物につきましては、現在、発電所の敷地内に安全に貯蔵保管して処理しておりますが、将来においては陸地処分と海上処分をあわせ行う方針で準備を進めているところであります。
 国内の石炭政策を転換し増産に踏み切れとの御意見でございましたが、国内炭は貴重な国産エネルギーの一つと考えているところでありまして、今後のあり方については、現在石炭鉱業審議会で鋭意御審議いただいておりますので、その答申を踏まえ適切な措置を講じてまいりたいと思います。
 石油代替エネルギーの開発に当たっては、原子力、石炭、LNG等のほかに、これまで未利用であった。太陽、地熱、バイオマスや廃熱などのいわゆるローカルエネルギーについても、環境の保全に留意しながら地域の特性に応じた開発利用の促進を図っていくことが望ましいと考えております。このため、政府としても、ローカルエネルギーについて技術開発、事業化等に補助金を交付するほか、地方自治体にも支援を行うなど所要の措置を講じ、積極的に取り組んでいるところであります。
 行政の重複を回避し統一性を確保することは、行政の簡素化、効率化を実現する上からもきわめて重要であります。エネルギー行政につきましても、その重要性にかんがみ、昭和四十八年に既存機構の合理的再編成によって資源エネルギー庁を設置し、わが国のエネルギー行政の体制整備を行うとともに、昭和五十二年以来、総合エネルギー対策推進閣僚会議を設けるなど関係省庁の意思統一を図っているところであり、これらの機構は効果的に機能していると考えております。
 エネルギー資源の大半を海外に依存しているわが国としては、エネルギー問題の国際的な解決を図ることが、ひいてはわが国へのエネルギー資源の安定供給確保に資するとの観点から、エネルギー開発分野での国際協力を積極的に推進することが重要でございます。このような認識のもとに、先般のASEAN訪問に際しても、エネルギー開発面での協力を重点事項の一つとして取り上げたところであります。もとより、具体的に協力を進めるに当たっては検討すべき問題点も多いわけでありますが、今後ともケース・バイ・ケースで前向きに対処してまいります。
 最近の日ソ関係の冷却化は、私がたびたび国会において申し上げているとおり、北方領土の軍備強化、アフガニスタンへの軍事介入など、もっぱらソ連側の行動に起因したものであります。私も松前議員同様、ソ連との間に真に安定した良好な関係の構築を希望するものでありますが、ただいま申し上げたような遺憾な事態に対しソ連側が今日まで誠意ある対応を示していない以上、わが国の方からいわゆる対ソ修復論を唱えることは筋が通らず、国民の納得を得ることも困難であると考えます。私のさきの施政方針演説でも申し述べたところでありますが、真の相互理解に基づく安定した日ソ関係発展への展望を開くためにも、ソ連側がその誠意を具体的行動をもって示すことを強く希望する次第であります。
 なお、わが国の外交姿勢についてお尋ねがございましたが、私は、今日のような厳しい国際情勢のもとにあって、わが国外交にもおのずからアクセントを求むべきものと考えております。政府は、これまで政治経済上の理念を共有する米国との友好協力関係を基軸とし、自由主義諸国との連帯強化に努め、これを基盤として世界の国々との友好協調の輪を広げていくとの外交を進めてきておりますが、かかる外交の基本姿勢を今後とも堅持してまいりたいと思います。
 また、今日のような厳しい国際情勢のもとにおいて、わが国の平和と安全を確保していくためには、わが国の置かれた状況からいっても、何よりもまず強力な平和外交の展開が必要であると考えます。ただし、それだからといって防衛面での努力がおろそかにされてよいとは考えません。
 なお、強力な外交の展開に当たっては情報収集機能の強化が何よりも必要なことは御指摘のとおりでございます。そのためには外交実施体制の一層の強化を図っていく必要があり、このために可能な限りの措置を講じていく方針であります。
 次に、民間外交についてお答えいたします。
 私は、すべからく一国の外交はそもそも国民全体の支持と協力のもとに進められなければならないと考えます。このため、経済、文化、教育、学術、科学、スポーツその他あらゆる分野にわたり、あまねく諸外国の国民との交流を拡大し、それによって諸国民の間に真の理解と友好を深めていく必要があります。このような形でのいわゆる民間外交は、特にわが国の平和外交を進める上で重要な要素であり、政府としては今後ともこれを可能な限り支援していくつもりであります。
 校内暴力、登校拒否等の児童生徒の非行を防止し、その健全な育成を図るためには、深い愛情と信頼と、これに裏づけられた厳しさをもって、社会全体でその健全育成に当たらなければならないと考えます。特に、私は、教育の大本は、親子、師弟の情愛にあると考えます。学校にあっては、教師が児童生徒の一人一人に対して深い愛情を持ち、児童生徒との間に世代を超えた強い信頼感を生み出すことが大切ではないかと考えます。
 以上、松前君の御質問にお答えいたしました。残余の問題については関係閣僚から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣中川一郎君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(中川一郎君) 原子力行政の基本的なことについてお尋ねがあり、総理から答弁がありましたが、補足をさしていただきます。
 まず、原子力発電の安全対策と防災対策についてでありますが、現下最も重要な原子力発電の推進に当たっては安全性の確保が何よりも重要であります。このため、原子炉規制法等に基づき厳重に安全規制を行い、その結果をさらに原子力安全委員会がダブルチェックを行う等、安全対策には万全を期しているところであります。その結果、わが国におきましては原子力発電所の周辺住民に影響を及ぼすような事故は一切起きておりません。また今後も起きることはないものと確信いたしております。
 一方、政府におきましては、米国スリーマイルアイランドにおける原子力発電所事故の経験を踏まえ、万々一に備え、中央防災会議及び原子力安全委員会の決定に従って、防災対策についても充実強化を図ってきているところであります。
 次に、高速増殖炉の導入問題についてお尋ねがございましたが、原子力開発利用については、高速増殖炉の開発を含め、原子力基本法に基づき、厳に平和目的に限りその推進を図ってきているところであり、また、核兵器不拡散条約に基づき、国際原子力機関の厳しい保障措置を受け入れているところであります。したがって、高速増殖炉の導入が核拡散や核武装につながることは絶対あり得ないところでございます。
 高速増殖炉は、現在使用されております軽水炉に比べますと、ウランの利用効率が数十倍にも達するものであり、今後原子力発電を長期にわたり推進していく上で、ウラン資源に乏しいわが国にとって必要不可欠のものであります。このため、わが国では、高速増殖炉の開発を国のプロジェクトとして推進してきており、現在では電気出力二十八万キロワットの原型炉「もんじゅ」を建設する段階にまでなっており、昭和七十年代の本格的実用化を目指し、引き続き研究開発を積極的に進めてまいるつもりでございます。
 また、高速増殖炉から出る使用済み燃料の再処理について御指摘がありましたが、この点についても計画的に研究開発を進めており、高速増殖炉の本格的実用化の時期には再処理技術についても十分確立し得る見通しを持って着々実施研究を進めておるところでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣田中六助君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(田中六助君) 松前議員にお答えいたします。
 まず、わが国の石炭の二千万トン体制をもう少し拡大生産したらどうかという御意見でございます。
 これは御承知のように昭和五十年七月に第六次答申が石炭鉱業審議会からあったわけでございまして、その中に二千万トン体制をキープするということを書かれて、ずっといままでまいっておるわけでございますが、実態は二千万トンを実は切っておりまして、一千八百万トンさえ切っておるのじゃないかと思いますが、それほど生産拡大をするだけの炭量――埋蔵量はございますけれども、御承知のように、非常に日本の坑道あるいは掘進、そういうものはむずかしい状態にございまして、二千万トン以上は出るかどうかきわめて疑問でございます。ただ、私どもいま石炭鉱業審議会に第七次の答申をお願いしておりますので、ことしの夏、まあことしの半ばごろには第七次答申がございますし、それによって私どもはさらに態度を決めたいというふうに考えております。
 それから長期エネルギー需給暫定見通しを改定するつもりはないかということでございますが、結論から申しますと、ただいまのところ改定する腹はございません。と申しますのは、この長期暫定見通しは、われわれサミット七カ国で、大体どうしようと、ある程度の計画を決めようじゃないかというようなこと、それからIEAの会議におきましても、やはり各国とも一応の目安を立てようじゃないかという、国際的な取り決めではございませんけれども、そういう意図もございますし、それから国内におきましても、エネルギーの安定需給あるいは国民生活の向上というようなものから見まして、一応長期、中期の暫定見通しを立てるのは私は悪いことではないというふうに思っております。松前議員御指摘のように、きわめてこれを実現することはむずかしい環境にございます。しかし、私どもは、努力目標としてこの長期エネルギー暫定見通しというものを標捜して一生懸命努力していきたいというふうに考えております。
 それからローカルエネルギーの問題でございますが、これを分散型にしろ、あるいは電気エネルギー化するなという御意見でございますが、私は全く松前議員と同じ意見でございまして、私ども代替エネルギーのLNG、総理もいま指摘しておりましたように、石炭あるいはその他の代替エネルギーのほかに、ローカルエネルギーといたしまして地熱、太陽熱、海洋あるいは風もあるでしょうし、その他廃棄物のエネルギー、そういうものもございますが、そういうことにつきまして、私どもはこれをそれぞれ地域の特性に応じたローカルエネルギーとしての特色を発揮したい。そのために風力あるいは太陽熱におきましては、すでに冷暖房あるいは温熱と申しますか、給湯と申しますか、そういうことに利用しておりますし、それから畜産物の廃棄物におきましてもメタンの利用というようなこともやっておりますし、分散型は頭に入れていきたいというふうに考えております。
 次に、このローカルエネルギーと電気事業法との関係を御指摘でございますが、私どもは、電気事業法をいま改定しなくても、このローカルエネルギーの一つの役割りでございます自家用の消費、それから第三者に対する供給あるいは電力会社に対する売電と申しますか、そういうような方法を講じておる現実におきまして、これの安全保証と申しますか、安全性が十分考えられることになれば、電気事業法はむしろ基本法でございますので、それを中心にうまく回っていけばいいのじゃないかということを考えておりまして、したがって電気事業法を現在改定するというような考えはございません。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣伊東正義君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(伊東正義君) 第一番目のエネルギー問題の国際協力の基本的なことは総理からお答えがありましたが、豪州炭をASEANで中間処理したらどうだという具体的な御提案があったわけでございます。確かにエネルギー問題、一国だけでもう解決できない、国際協力が大切なことはもちろんでございまして、どういう国際協力が一番いいのかということにつきましては、いま御提案のありましたことは、これは豪州、ASEANの諸国にも関係ありますし、国内の民間企業との関係もございますし、先生の御提案も含めてどういうのが一番いいかということは検討させていただきたいと思うわけでございます。
 それから次に、日ソ関係の基本的な日本の立場につきましては総理からお答えがございました。先生はシベリア開発のことをおっしゃったのでございますが、これは従来日ソの経済措置につきましては友好国と協調を図りながら対処してまいったわけでございますが、政府ベースの新しい信用供与ということにつきましては、互恵の原則ということをもとにしましてケース・バイ・ケースで認めるものもあり、そうでないものもありということでやってきたのでございますが、特にエネルギーの安定供給の問題でございますとか森林の問題でございますとか、そういう非常に日本と関係あることについては、いままでも認めるということでやってまいったのでございまして、こういう問題につきましてはケース・バイ・ケースで考えていくという方針でございます。
 それから領土問題につきましてお話がございましたが、平和条約が締結できません日ソ間の唯一の原因は領土問題が未解決だということでございまして、したがって、これは領土問題の解決こそ平和条約を締結する不可欠の前提だというふうに私は考えておるわけでございます。
 それから情報収集能力の強化ということについて先生の御意見がありました。私もこれは全然同感でございます。平和国家としての外交を強力に進めていくという場合に、情報というものをいかに収集し、それをいかに解析していくかということは、これは非常に大切なことでございますし、また、その情報も、これは政府機関だけでなくて、広く各界の情報を集めなければならぬとおっしゃること、そのとおりでございます。このためには、先生おっしゃったような地域別、機能別の専門家、長期的にそういう人を置けというお話もございましたし、われわれとしましては、やはり外交機能の強化ということで、職員の訓練でございますとか、あるいは適正配置でございますとか、能率向上をしまして、情報の収集、外交機能の強化ということには、これは一生懸命努力をして、ことしの定員の場合も管理庁長官の御了解、御配慮を得ましてある程度の解決を見たわけでございますが、今後やっぱり長い目でこの問題と一生懸命取り組んでいくというのがわれわれの考え方でございます。(拍手)
   〔国務大臣田中龍夫君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(田中龍夫君) 松前議員にお答えいたします。
 いろいろの問題はあるが、最も重大な問題は教育の問題ではないかという大変厳しいお話でございました。なお、総理大臣から、校内暴力あるいは登校拒否や落ちこぼれの問題等、当面いたしました教育の問題につきましてはすでに基本的なお考えをお述べになりましたので、私に対しましては、むしろ三点にしぼられまして、具体的な問題、すなわち受験地獄や学歴偏重等の問題を抜本的に改めるためには、まず義務教育の定員の是正、四十人学級の早期実現でありますとか、あるいはまた高校急増の問題に対処するための高校建設の早期実現でありますとか、さらに基本的には学校の教育、楽しい教育の行われる学校にしろと、こういう問題でございます。
 お答えいたしまするが、第一点の問題でございます。私も全く御同感でございまして、先生の御意見のようなことを早期に実現することが何より必要だと存じますが、今日の厳しい財政状況下におきまして、四十人学級の早期実現という問題につきましても、昭和五十五年度から十二年間の計画的な目標を立てまして、そうして今後これを円滑に実現をするということに全力を挙げて努力しなければならぬ。
 また、高校急増対策の問題につきましても、今日志願者の大体九八%を超える者が高校に入学いたしております。しかしながら、文部省といたしましても、この高校急増につきましては、五十六年度の予算の編成に当たりまして、昭和五十一年度から五カ年間の時限で立法いたしましたのをさらに五年間延長いたしまして、この国庫補助によりまする予算の計上を特にいたした次第でございます。
 最後に、学校は、適切な指導管理のもとに、正しい秩序の中で活力のある教育活動が営まれまする場でございますために、これが運営に当たるべき者につきましては、今後重大な関心を持ってこれが運営に当たってまいりたい、かように考えております。
 以上、お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#39
○議長(徳永正利君) 宇都宮徳馬君。
   〔宇都宮徳馬君登壇、拍手〕
#40
○宇都宮徳馬君 私は、参議院新政クラブの個性豊かな同僚議員たちを代表いたしまして、また、暗い、危ない現在の世界情勢の中でひたすらに平和をこい求めている多くの人々にかわりまして、そして広島とか長崎の、あるいは沖繩の、さらには満州の、あるいは樺太の、そこで無数の非戦闘員が殺され、辱められた歴史を思い起こしながら、主として、狂気じみた世界の軍備拡張競争がつくり出している危険について、鈴木首相初め関係閣僚の皆様に質問したいと存じます。
 第一に、ソ連のいわゆる脅威の問題であります。
 ソ連のアフガン侵攻以来、ソ連の脅威が改めて強調され、それが防衛費増大の理由となり、国民に深刻な不安感を与えております。そして、SS20ですか、その威力なども言われておりますが、政府はソ連の脅威についていかにお考えになりますか。これは外務大臣あるいは防衛庁長官にお答え願いたいと思います。
 それから、それと中国との関連でございますが、中国とソ連は、蒙古、外蒙古を入れますと七千キロ以上の国境で接しております。その北方に兵たん線を維持しなければならないソ連の日本への攻撃力、これは日中平和友好条約の成立以後むしろ減じていると私どもは存じております。防衛庁長官あるいは外務大臣にお答え願います。
 第三に、前述の見地からも日中友好関係の前進は重要でございます。日中戦争の被害を大きく受けた中国が、賠償も取らずにわが国と平和友好条約を結び、ソ連との攻守同盟を破棄したことは、改めて評価すべきであります。中国は現在、苦難に満ちた近代化路線を進んでおりますが、日本は、極東の平和の立場からも、経済その他の支援を強化すべきであると存じますが、これは特に総理の御意見を伺いたいと思います。
 第四に、朝鮮の問題でありますが、中国の外交的なポジションを支援する意味から言いましても、日本は北朝鮮との関係を改善し、朝鮮半島の緊張緩和に努力すべきでありますが、同時に、それは日本の安全に最も深くかかわる問題でありますから、もはや具体的な日程を考えるべきときと存じます。総理の御意見を承りたいと存じます。
 第五に、金大中の問題であります。
 金大中事件は、政府の努力はそれなりに評価しますが、死刑の判決が無期になったからといって少しも解決したわけではありません。彼の現在の境遇は、日本から暴力によって不法に拉致されたためであり、日本政府が彼の人権を守る責任は依然として残っておるわけであります。このままでは新しい韓国との関係も利害だけで結ばれた形だけのものとなりましょう。もっとすっきりした解決を忍耐強く求めるべきであると思います。第一次政治決着の内容は金大中氏の身柄の自由を含むと言った前首相大平さんの墓前に行って私は訴えたいような気持ちがいたします。首相の答弁を求めます。
 第六に、軍拡を軍縮傾向に変える問題であります。
 ソ連も、十分な名分なしに日本を奇襲する確率は多いとは思いませんが、それよりも、米ソ両大国を中心とする核兵器を含む狂気の軍拡傾向が大変心配であります。通常兵器の競争は、その性能を絶えず高め、旧式になった兵器が第三世界を中心に売り込まれ、それがアジア、アフリカの局地戦争を多発させております。たとえばイラン・イラク戦争のような狂気の雰囲気の中の主導権争いが米ソ両国の核戦争の引き金となることが心配されるのであります。日本は、狂気な軍核傾向に歯どめをかけ、兵器売り込み競争にブレーキをかけるため、国連その他の場で忍耐強い、スケールの大きな外交活動を行うべきであると思います。
 昨日、本院で質問に立たれた社会党の瀬谷議員も同様の意見を言われました。敬意を表したいと思います。
 また、その際、日中平和友好条約において約束した反覇権主義の同志国として、中国との協力の道を探求すべきであると思います。特に外務大臣にこれはお尋ねしたいと思う次第です。
 第七に、軍縮と経済の問題です。
 世界の軍拡傾向を軍縮の方向に変えることは、世界の経済を正常化し、各国の国民生活を破滅から救うために残された唯一の道とも言えるのであります。世界の経済はすでに五千億ドルを超える軍事費の負担にまいっており、その結果がアメリカの異常な高金利となり、またポーランド事件の背景となっている国民生活の困窮となってあらわれているのであります。日本の経済成長が少ない軍事費を一つの条件としていたことは明らかですが、いまや増税と福祉の切り捨てが要求され、今後国民生活を圧迫するおそれがあります。それゆえ、グローバルな軍縮政策は空想でも理想でもなく、緊急な現実政策となりつつあると私は思います。経済企画庁長官の御所見を承りたいと思います。
 第八に、日本の民族的な戦争体験と憲法との関係について申し上げたいと思います。
 日本人は、第二次世界大戦を最も長期間戦い、結局ほとんどすべての都市は焼かれ、広島、長崎は原爆の洗礼を受け、沖繩、満州、樺太では地上戦闘で無数の非戦闘員が殺され、また婦人は辱めを受けました。この血みどろな戦争の体験を通じて多くの日本人は、敵すなわちアメリカ人、ソ連人を憎むよりも戦争そのものを憎むことを学び、また、身寄りの女、子供のむごたらしい死を悲しく激しい嘆きを通じて、みずからの地獄の経験を、日本人はもちろん、アメリカ人、ソ連人をも含むすべての世界の国民に再び経験させてはならないという悟りの心境に達したのであります。それが平和憲法を受け入れた国民的基盤であることを忘れてはなりません。
 その米ソ両国民がお互いに戦争抑止力と称して無際限に軍備を拡張し、アメリカが広島、長崎で、ソ連が満州、樺太で犯した蛮行を全世界で繰り返そうとしているのです。私は、このばかげた軍備競争の中に割って入り、待ったをかける資格と責任が日本人、特に日本の政治にあると存じますが、いかがでしょうか。
 平和憲法は日本人の平和のための戦いに役立つ大事な武器でございますから、おろそかにしてはなりません。特に鈴木首相のお考えを聞きたいと思います。
 第九に、自衛隊について申し上げます。
 私は、いままでの所論にもかかわらず、自衛隊の存在を否定するものではありません。無統制な武装集団がわが国を襲って国民の生命財産を脅かす可能性も否定できないからであります。しかし自衛隊は、いわば国民の護身用の短刀であって、そのようなものとしての能力と規律が求められていると存じます。「何ごとぞ花見る人の長刀」と江戸の町人は武士の長刀をあざけりましたが、核兵器、大型空母等の大型攻撃兵器はやがて廃止されなければなりません。総理の御所見を承りたいと思います。
 第十に、環境行政についていささかお尋ねしたい。
 いままでは主として平和と軍縮についてお聞きしましたが、戦争は最大の資源浪費であり、最大の公害であることは間違いありません。戦争は急激に環境を破壊しますが、近代社会には緩慢な環境破壊が自然と人間を傷つけています。それゆえ環境行政は厳しい方がよいのですが、企業などがこれに反対する場合もあります。しかし、日本の現在の小型自動車輸出は、環境庁の厳しい排ガス規制の強化によって低燃費の小型車が開発されたためであります。現在の環境行政について、まず総理大臣から環境アセスメントの法制化についての御所見、また環境庁長官から、環境アセスメントの法制化に向けて、これまでの経過及び今後どのように進めていくかについて、それぞれ御所見を承りたいと存じます。
 以上で私の質問を終わります。御清聴を感謝申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(鈴木善幸君) 宇都宮議員にお答えをいたします。
 まず、中国との関係についてであります。隣国中国との間に平和友好関係を維持し発展させていくことは、わが国外交の一貫した主要な柱であります。現在、中国は穏健な政策のもとに平和で安定繁栄した国づくりを目指しており、このような中国の路線はわが国を含め西側諸国にとって好ましいものと考えられます。
 この中国の近代化のための努力に対してはできるだけの協力をしてまいる所存であります。かかる方針に基づき、政府ベースにおいても他国に先駆けて円借款の供与、技術協力など、経済あるいはその他の分野での協力が積極的に進められつつあるわけでございます。
 朝鮮半島の平和はアジアの平和と安定のため不可欠であります。私は、かかる観点から南北の政府当事者が話し合いを行い、平和的統一のためにあらゆる努力をなすべきことを念願してやまない次第でございます。
 金大中氏拉致事件については、これまでのわが国の捜査結果によれば、韓国側の公権力の行使があったと断定するに至っておりません。金大中氏の裁判の問題は、基本的に韓国の国内問題であり、わが国としてこれに介入しているがごとき態度をとることは適当でないと考えます。
 環境アセスメントの問題についてお尋ねがありましたが、環境保全を進めていく上で今後の重点は環境汚染の未然防止でありますから、政府としては環境影響評価制度の確立について引き続き努力してまいりたいと思います。
 なお、このため環境影響評価法案について自由民主党において審議をいま進めておる段階でございます。
 最後に、現在の平和憲法を堅持すべしとの御意見がありましたが、国民は戦争の悲惨さを身をもって体験してきただけに、平和のたっとさ、自由のありがたさをよく理解し、国民の中に根強い平和主義が浸透していると思うのであります。私は、繰り返し述べているように、鈴木内閣においては改憲は全く考えておりませんし、現行憲法に掲げる平和主義、民主主義及び基本的人権の尊重は、その理念は将来においても堅持してまいりたいと存ずるものであります。
 残余の点につきましては所管大臣より答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣大村襄治君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(大村襄治君) 宇都宮議員の御質問に対してお答えいたします。
 第一点は、中国とソ連の関係についてのお尋ねでございます。中ソ対立によって相当規模のソ連軍事力が中ソ国境正面に拘束されておることは御指摘のとおりと考えております。ただ、七〇年代前半を中心にして行われましたソ連の中ソ国境に対する地上軍の大幅な増強は、主として中国に向けて行われましたと見られる一方におきまして、最近の極東ソ連軍の増強は北方領土への地上軍配備、ミンスク・グループを初めとする近代化した海空軍の増強等に見られますように、必ずしも中国向けだけとは言い切れないものがございまして、わが国にとりまして潜在的脅威の増大であると考えている次第でございます。
 その次に、自衛隊の存在と性格あるいは自衛隊の能力、規律についてお尋ねでございましたが、この点につきましては、御指摘の国連警察軍がいかなるものを指すのか必ずしも明確ではございませんが、わが国に対する外部からの侵略に対して国際連合が有効にこれを阻止する機能を果たし得ない限り、わが国は独立国家として固有の防衛力を保持すべきものと考えております。このためわが国は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とする自衛隊を保持しているものでございまして、政府はその任務を全うするため必要な自衛隊の能力を整備し、また規律のある訓練を図っているところでございます。(拍手)
   〔国務大臣伊東正義君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(伊東正義君) ソ連の脅威の問題につきましては、いま防衛庁長官から、ソ連軍の一貫した増強ということの客観的事実に基づいて、その動向を潜在的脅威と判断しているというお答えがございました。私どもも、それはそう見ております。ただ、それはソ連を敵視するというものじゃないということだけは申し上げておきます。われわれとしましては冷静にこういう問題には対処する。二国間に真の相互理解に基づきました安定的な関係を確立するということが最も重要な課題であるというふうに私ども考えております。
 それからもう一つ、世界の通常兵器の売り込みにブレーキをかけるように外交的にも国連の場で積極的に動いたらどうか、あるいはその場合に中国とも同調してやったらどうかという御質問でございました。
 通常兵器の国際的移転につきましては、過去においても国連の場で何回もこれは審議されている問題でございます。一九七六年でしたか、三十一回の総会でも外務大臣が出まして決議案も提出したことがありますが、あのときはインドが反対して、そういう審議は延ばせという反対があったのでございます。その後、七八年にも国連の軍縮の特別総会で、当時の園田大臣が御出席になりまして、通常兵器が無統制に国際移転されることを抑制すべきだという御発言もされ、日本としては主張し、何回もこの問題は日本以外の国でも決議を出すとかいうことがあるわけでございますが、大体、非同盟の諸国初め東欧諸国もそうでございますが、各国とも自国の安全保障に非常にこれは関係のある問題だということで、どちらかというと非常に慎重な態度でございまして、国連でも通常兵器の国際移転ということにつきましては、先生御期待のような結論がなかなか出ないというのが現状でございますが、しかし、先生おっしゃったような御意見、また、日本としては累次、園田外務大臣も当時御発言にもなっておりますし、われわれとしましても、軍縮の特別総会があるわけでございますから、核兵器の軍縮ということが中心でございますが、当然こうした問題もその総会で問題にすべき問題だというふうに考えております。
 中国の同調も求めてというお話がございましたが、実は中国もこの問題につきましてはなかなか慎重な態度をいままではとっているということを御参考に申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(河本敏夫君) 軍備拡張と経済の関係をどう思うかと、こういうお話でございますが、私は、先ほど御指摘の年間五千億ドルを超える世界の軍事費というものが世界経済を混乱させ、各国の国民の大きな負担になっておるということは御意見と同じでございます。
 一言つけ加えさせていただますならば、私は、なおもう一つこの軍拡のほかに世界の経済を混乱させております大きな背景は、二年前から中東の動乱と戦争を背景にいたしまして急上昇いたしました石油価格にあると思います。石油価格はおよそ三倍に急上昇しておりまして、その上昇価格の総額は五千億ドルにも達しております。この二つがやはり世界各国の国民の非常に大きな重圧になっておると、これは全く同意見でございます。
 そのためには今後まずどうすればいいかということでありますが、この軍拡問題につきましては、やはり平和の基礎を拡大するということが一番大きな対策でなかろうかと思います。その方法はいろいろあろうと思いますが、日本としてなし得る具体的な方法といたしましては、国連の場で軍縮を強く主張する、これも一つでございましょう。あるいはまた、世界の緊張の大きな背景が一つは発展途上国の貧困にあるということ、あるいはまたエネルギー問題も背景になりまして世界の政治情勢が非常に緊張しておるということ、そういうことを考えますと、世界的な規模でエネルギーの需給緩和にわが国が努力をするということ、あるいはまた世界の発展途上国の貧困の原因を除去するためにわが国が経済協力を拡大していくということ、そういう分野でわが国はこれからさらに積極的に大きく貢献をし努力していくことが必要であろうと、このように感じております。(拍手)
   〔国務大臣鯨岡兵輔君登壇、拍手〕
#45
○国務大臣(鯨岡兵輔君) 戦争は急激に環境を壊す、これはもうとんでもないことで、何としても戦争はやってはいけない、こういう先生の御決意は全く同感であります。
 しかし、近代社会は緩慢に環境を壊すおそれがある、そういうお話でございますが、私も全くそう思います。現にわが国はこれだけの経済成長を国民の努力の結果なしたのですが、その陰にはとうとい生命とか健康というものを犠牲にしてきたという苦い経験があります。それは国会でも非常に心配なさって、また国民全体が心配して、ずいぶんいろいろ規制をしてよくなってまいりましたが、これからもどんどん経済は進展していかなければなりません。特に、昭和六十五年には石油に依存することを五〇%にしようというのですから、並み大抵の努力ではありませんから、やっぱりその陰の苦い経験を踏まえて、もう二度とそういうことがあってはならぬと、こういうことで環境影響評価というものが問題になりまして、五十年の十二月に中央公害対策審議会に諮問をいたしまして、五十四年の四月に三年余の御審議を経て答申がありました。それから政府はいろいろ関係閣僚会議、さらには各省庁の詰め合わせをやりまして法案がまとまりました。
 去年の五月二十日に、当時の環境庁長官が閣議で発言をいたしまして了承を得ておるのですが、やはり重要な法案でありますから、いま自由民主党の政務調査会長のところに預けられてさらに御審議をいただいていることは、先ほど総理御発言のとおりでございます。御了承いただきたいと思います。(拍手)
#46
○議長(徳永正利君) 先ほどの田渕哲也君の質疑に対する渡辺大蔵大臣の答弁中、不適当な発言があれば、速記録を調査の上、議長において適切な措置をとります。
 これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#47
○議長(徳永正利君) 日程第二 特別委員会設置の件
 当面の物価等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る物価等対策特別委員会を、
 公職選挙法改正に関する調査のため、委員二十名から成る公職選挙法改正に関する特別委員会を、
 科学技術振興に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る科学技術振興対策特別委員会を、
 公害及び環境保全並びに交通安全に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十五名から成る公害及び交通安全対策特別委員会を、
 エネルギーに関する諸問題を調査し、総合的かつ長期的な対策樹立に資するため、委員二十五名から成るエネルギー対策特別委員会を、
 沖繩及び北方問題に関する対策樹立に資するため、委員二十名から成る沖繩及び北方問題に関する特別委員会を、
 また、日米安全保障条約及び自衛隊等国の安全保障に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十五名から成る安全保障特別委員会を、
 それぞれ設置いたしたいと存じます。
 まず、物価等対策特別委員会、公職選挙法改正に関する特別委員会、科学技術振興対策特別委員会、公害及び交通安全対策特別委員会、エネルギー対策特別委員会並びに沖繩及び北方問題に関する特別委員会を設置することについて採決をいたします。
 六特別委員会を設置することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#48
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 よって、六特別委員会を設置することに決しました。
 次に、安全保障特別委員会を設置することについて採決をいたします。
 本特別委員会を設置することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#49
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、本特別委員会を設置することに決しました。
 本院規則第三十条により、議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。
    ―――――――――――――
#50
○議長(徳永正利君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十一分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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