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1980/05/15 第94回国会 参議院 参議院会議録情報 第094回国会 本会議 第18号
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1980/05/15 第94回国会 参議院

参議院会議録情報 第094回国会 本会議 第18号

#1
第094回国会 本会議 第18号
昭和五十六年五月十五日(金曜日)
  午前十時八分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十八号
  昭和五十六年五月十五日
   午前十時開議
 第一 第二十四回オリンピック競技大会名古屋
  招致に関する決議案(斎藤十朗君外十八名発
  議)(委員会審査省略要求事件)
 第二 国際民間航空条約第五十条(a)の改正
  に関する千九百七十四年十月十六日にモント
  リオールで署名された議定書の締結について
  承認を求めるの件(衆議院送付)
 第三 航空業務に関する日本国とフィンランド
  共和国との間の協定の締結について承認を求
  めるの件(衆議院送付)
 第四 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避及び脱税の防止のための日本国政府とシン
  ガポール共和国政府との間の条約を改正する
  議定書の締結について承認を求めるの件(衆
  議院送付)
 第五 千九百六十四年十一月二十七日にパリで
  署名された所得に対する租税に関する二重課
  税の回避のための日本国政府とフランス共和
  国政府との間の条約を改正する議定書の締結
  について承認を求めるの件(衆議院送付)
 第六 昭和五十四年度一般会計予備費使用総調
  書及び各省各庁所管使用調書(その2)(衆
  議院送付)
 第七 昭和五十四年度特別会計予備費使用総調
  書及び各省各庁所管使用調書(その2)(衆
  議院送付)
 第八 昭和五十四年度特別会計予算総則第十条
  に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経
  費増額調書(その2)(衆議院送付)
 第九 昭和五十五年度一般会計予備費使用総調
  書及び各省各庁所管使用調書(その一)(衆
  議院送付)
 第一〇 昭和五十五年度特別会計予備費使用総
  調書及び各省各庁所管使用調書(その1)
  (衆議院送付)
 第一一 昭和五十五年度特別会計予算総則第十
  一条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所
  管経費増額調書(その一)(衆議院送付)
 第一二 昭和五十四年度一般会計国庫債務負担
  行為総調書(その2)
 第一三 各種手数料等の改定に関する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第一四 電波法の一部を改正する法律案(内閣
  提出、衆議院送付)
 第一五 郵便為替法及び郵便振替法の一部を改
  正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第一六 国民年金法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第一七 社会保険労務士法の一部を改正する法
  律案(社会労働委員長提出)
 第一八 住宅・都市整備公団法案(内閣提出、
  衆議院送付)
 第一九 昭和四十二年度以後における国家公務
  員共済組合等からの年金の額の改定に関する
  法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、
  衆議院送付)
 第二〇 昭和四十二年度以後における公共企業
  体職員等共済組合法に規定する共済組合が支
  給する年金の額の改定に関する法律等の一部
  を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第二一 商工組合中央金庫法の一部を改正する
  法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第二二 商工会の組織等に関する法律の一部を
  改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第二三 昭和四十四年度以後における私立学校
  教職員共済組合からの年金の額の改定に関す
  る法律等の一部を改正する法律案(内閣提
  出、衆議院送付)
 第二四 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関
  する法律の一部を改正する法律案(趣旨説
  明)(前会の続)
 第二五 国務大臣の報告に関する件(内閣総理
  大臣の帰国報告)(第二日)
 第二六 国務大臣の報告に関する件(農業基本
  法に基づく昭和五十五年度年次報告及び昭和
  五十六年度農業施策、林業基本法に基づく昭
  和五十五年度年次報告及び昭和五十六年度林
  業施策並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和
  五十五年度年次報告及び昭和五十六年度沿岸
  漁業等の施策について)
 第二七 食糧管理法の一部を改正する法律案
  (趣旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。
 日程第一 第二十四回オリンピック競技大会名古屋招致に関する決議案(斎藤十朗君外十八名発議)(委員会審査省略要求事件)
 本案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、これを議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 よって、本案を議題といたします。
 まず、発議者の趣旨説明を求めます。斎藤十朗君。
   〔斎藤十朗君登壇、拍手〕
#5
○斎藤十朗君 私は、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党及び民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました第二十四回オリンピック競技大会名古屋招致に関する決議案の趣旨説明をいたします。
 まず、決議の案文を朗読いたします。
  参議院は、来る昭和六十三年(千九百八十八年)第二十四回オリンピック競技大会を名古屋市・東海地域に招致するため、その招致運動を強力に推進するとともに、その準備態勢を整備すべきものと認める。
  右決議する。
 以上であります。
 オリンピック競技大会が、世界各国のスポーツの発展とともに、スポーツを通じて民族の相互理解や青少年の国際性の向上や世界の平和への貢献などに輝かしい成果を挙げてきたことは、昭和三十九年の第十八回東京大会の開催、また、過去二十二回に及ぶ世界各国の開催により万人のひとしく認めるところであります。第二十四回オリンピック競技大会より、オリンピック憲章の改正により、複数都市での広域開催が認められることになったことを受けて、日本列島の中央に位置する名古屋市、愛知県、岐阜県、三重県の三県一市が、二十一世紀に向けて一つの方向づけをするような秩序ある実質的な大会となし、国際オリンピック運動の発展に貢献したいという理想のもとに開催しようとするものであります。
 昨年十一月二十一日、政府は、名古屋市・東海地域が昭和六十三年(一九八八年)第二十四回オリンピック競技大会を招致することを了解し、名古屋市・東海地域は、同年十一月二十六日、国際オリンピック委員会に正式に立候補いたしました。
 この第二十四回オリンピック競技大会には、名古屋市・東海地域と大韓民国ソウル特別市が立候補しており、本年九月末にはドイツ連邦共和国で開催される国際オリンピック委員会総会において開催都市の決定がされますので、招致実現に向けて努力すべきであります。
 わが国でオリンピック競技大会を再び開催することは、国際親善とスポーツ振興にとってきわめて意義深いものであり、平和と友好裏に成功をおさめた東京、札幌両大会と同様に、オリンピック精神を最高度に発揮した大会が開催されますよう、この際、政府、地方自治体及び民間が一体となって万全の受け入れ態勢を確立すべきであります。
 何とぞ、ここに満場一致をもって御賛成いただきますようお願い申し上げ、趣旨説明といたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#7
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって本案は可決されました。
 ただいまの決議に対し、文部大臣から発言を求められました。田中文部大臣。
   〔国務大臣田中龍夫君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(田中龍夫君) 第二十四回オリンピック競技大会を名古屋市・東海地域に招致いたし、再びわが国で平和と友好の大会が開催されますことは、まことに有意義であり、喜ばしいことであると存ずる次第でございます。
 政府といたしましても、ただいまの御決議の趣旨を十分尊重いたしまして、昨年十一月に閣議了解されました方針に従いまして、招致の実現並びに準備態勢の整備に最善の努力を払ってまいる所存でございます。(拍手)
     ―――――・―――――
#9
○議長(徳永正利君) 日程第二 国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百七十四年十月十六日にモントリオールで署名された議定書の締結について承認を求めるの件
 日程第三 航空業務に関する日本国とフィンランド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
 日程第四 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件
 日程第五 千九百六十四年十一月二十七日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件
  (いずれも衆議院送付)
 以上四件を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。外務委員長秦野章君。
   〔秦野章君登壇、拍手〕
#10
○秦野章君 ただいま議題となりました条約四件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
 まず、国際民間航空条約の改正議定書は、国際民間航空機関の加盟国数の増加に伴い、同機関の理事会の構成員の数を三十から三十三に改めるというものであります。
 次に、フィンランドとの航空協定は、わが国とフィンランドとの間の定期航空業務を開設することを目的とするものでありまして、業務の開始及び運営についての手続、条件等を取り決めるとともに、両国の指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めております。
 次に、シンガポールとの租税条約の改正議定書は、シンガポールの税制改正に伴い、使用料及び芸能人等の所得に対する課税の規定を改めること、みなし外国税額控除制度の内容をシンガポールの最近の税制を反映したものに拡充すること等、現行条約に所要の改正を加えるものであります。
 最後に、フランスとの租税条約の改正議定書は、フランスの税制改正に伴い、わが国の一般投資家がフランスの法人から配当を受け取る場合に、フランスの法人が支払った法人税の一部還付を受ける権利をわが国の投資家に認めること、利子及び芸能人等の所得に対する課税の規定を改めること等、現行条約に所要の改正を加えるものであります。
 委員会における質疑の詳細は会議録によって御承知を願います。
 昨十四日質疑を終え、別に討論もなく、採決の結果、国際民間航空条約の改正議定書及びフィンランドとの航空協定はいずれも全会一致をもって、また、シンガポールとの租税条約の改正議定書及びフランスとの租税条約の改正議定書はいずれも多数をもって、それぞれ承認すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 まず、国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百七十四年十月十六日にモントリオールで署名された議定書の締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国とフィンランド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を一括して採決いたします。
 両件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#12
○議長(徳永正利君) 総員起立と認めます。
 よって、両件は全会一致をもって承認することに決しました。
 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件並びに千九百六十四年十一月二十七日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件を一括して採決いたします。
 両件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#13
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、両件は承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#14
○議長(徳永正利君) 日程第六 昭和五十四年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)
 日程第七 昭和五十四年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)
 日程第八 昭和五十四年度特別会計予算総則第十条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その2)
 日程第九 昭和五十五年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その一)
 日程第一〇 昭和五十五年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その一)
 日程第一一 昭和五十五年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その一)
  (いずれも衆議院送付)
 日程第一二 昭和五十四年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)
 以上七件を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。決算委員長野田哲君。
   〔野田哲君登壇、拍手〕
#15
○野田哲君 ただいま議題となりました昭和五十四年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)外六件につきまして、決算委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
 これら七件の内容は、昭和五十五年一月一日から同年十二月三十一日までの間に決定されました一般会計、特別会計の予備費関係及び国庫債務負担行為に係る経費でありまして、主な項目として、災害復旧、外国旅費、国際分担金等の支払い、衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査関係及びスモン訴訟における和解の履行に必要な経費などが挙げられております。
 委員会におきましては、これら七件を一括して審査いたしましたが、質疑の内容につきましては会議録によって御承知願いたいと存じます。
 質疑を終了し、採決の結果、予備費関係六件につきましては多数をもって承諾を与えるべきものと議決され、また、国庫債務負担行為一件につきましては全会一致をもって異議がないと議決された次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 まず、日程第六、第七、第九及び第二の予備費使用総調書等四件について採決をいたします。
 四件を承諾することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#17
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、四件は承諾することに決しました。
 次に、日程第八及び第一〇の予備費使用総調書等二件について採決をいたします。
 両件を承諾することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#18
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、両件は承諾することに決しました。
 次に、日程第二一の国庫債務負担行為総調書について採決をいたします。
 本件は委員長報告のとおり異議がないと決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#19
○議長(徳永正利君) 総員起立と認めます。
 よって、本件は全会一致をもって委員長報告のとおり異議がないと決しました。
     ―――――・―――――
#20
○議長(徳永正利君) 日程第一三 各種手数料等の改定に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長中村太郎君。
   〔中村太郎君登壇、拍手〕
#21
○中村太郎君 ただいま議題となりました各種手数料等の改定に関する法律案について、委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
 本法律案は、国の行政事務に係る各種の手数料等について、行政コストや物価動向等の観点から費用負担の適正化を図ろうとするものであり、不動産の鑑定評価に関する法律等の三十四法律に規定されております各種手数料等の金額または金額の限度額について、その引き上げを図ろうとするものであります。
 委員会におきましては、各種手数料等の改定を一括提案した理由、手数料間の整合性の問題等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終わりましたところ、藤井裕久委員より、手数料等の定額を法定しているものの改定部分に係る施行期日「昭和五十六年五月一日」を「昭和五十六年六月一日」に改める等の修正案が提出されました。
 修正案は、予算を伴うものであり、政府として一は、異議はない旨の意見が述べられました。
 次いで討論に入りましたが、発言なく、修正案並びに修正部分を除く原案について順次採決の結果、いずれも多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決定いたしました。
 なお、本案に対し、各種手数料等の基本的性格を明確にし、その整合性を図り、より合理的なものとすること等二項目の附帯決議を付しております。
 以上、御報告いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 本案の委員長報告は修正議決報告でございます。
 本案を委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#23
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、本案は委員長報告のとおり修正議決されました。
     ―――――・―――――
#24
○議長(徳永正利君) 日程第一四 電波法の一部を改正する法律案
 日程第一五 郵便為替法及び郵便振替法の一部を改正する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長福間知之君。
   〔福間知之君登壇、拍手〕
#25
○福間知之君 ただいま議題となりました二件の法律案につきまして、逓信委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、電波法の一部を改正する法律案は、最近における無線局の免許申請者及び無線従事者国家試験の受験者の増加に対応し、行政事務の簡素合理化を図るため郵政省令で定める無線設備について技術基準適合証明制度を新設し、これを郵政大臣の指定する者にも行わせることができることとするとともに、この証明を受けた無線設備のみを使用する無線局については、簡易な手続により免許を付与できることとすること、特殊無線技士等無線従事者の一定資格の国家試験の実施に関する事務を郵政大臣の指定する者にも行わせることができることとしようとするほか、諸外国の動向にかんがみ、一定の条件のもとに外国人にもアマチュア無線局の免許を付与することができることとすること、及び違法な無線局の増加に対処するため、免許を受けないで無線局を開設する者を処罰することができることとしようとするものであります。
 委員会におきましては、技術基準適合証明業務等の民間委託、不法無線局の取り締まり強化、テレビ放送会社に対する外国性の排除、電波・放送両法の抜本整備等の諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終わり、採決の結果、本法律案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
 次に、郵便為替法及び郵便振替法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法律案は、現在実施しつつある為替貯金業務の全国オンライン化計画の進展に伴い、それを活用して郵便為替及び郵便振替のサービスの改善を図る等のため所要の改正を行おうとするものでありまして、その主な内容は、郵便為替及び郵便振替における払渡郵便局指定の廃止など払い渡し方法等の簡素化を図ること、郵便為替証書等の一枚当たりの金額の制限を現行の十万円から百万円に引き上げるとともにその料金について所要の調整を行うこと、また、一時に多数の為替または振替の利用申し込みをするものなどについて料金を低減できるようにすること等であります。
 委員会におきましては、改正によるサービス改善の具体的内容、オンライン計画の進捗状況、金利決定の一元化など郵便貯金をめぐる諸問題等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終わり、採決の結果、本法律案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○議長(徳永正利君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#27
○議長(徳永正利君) 総員起立と認めます。
 よって、両案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#28
○議長(徳永正利君) 日程第一六 国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 日程第一七 社会保険労務士法の一部を改正する法律案(社会労働委員長提出)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告及び提出者の趣旨説明を求めます。社会労働委員長片山甚市君。
   〔片山甚市君登壇、拍手〕
#29
○片山甚市君 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、老人、心身障害者、母子家庭及び児童の福祉の向上を図るため、福祉年金、児童扶養手当、特別児童扶養手当及び福祉手当の額を引き上げるほか、所得の低い者についての児童手当の額を増額するとともに、厚生年金等の拠出制年金について物価スライドの実施時期を繰り上げて年金額を引き上げること等を主な内容とするものであります。
 委員会における質疑の詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、新政クラブ及び一の会共同の修正案が提出されましたが、採決の結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 なお、本法律案に対し附帯決議が全会一致をもって付されております。
 以上、御報告いたします。
 次に、社会保険労務士法の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 近年におけるわが国の産業、社会事情の急速な変化に伴い、国民の労働・社会保険制度への関心は一層高まってきており、また、その重要性は増しつつあります。
 さらに、労働・社会保険諸法令の整備充実に伴い、その内容も複雑かつ専門的なものとなっており、社会保険労務士の果たす役割りは、量的、質的に著しく拡大されております。
 このような実情にかんがみ、昭和五十三年には、それまでの社会保険労務士制度の発展と実績を踏まえて、業務の拡大充実、法定団体の設立等に関する規定の整備が行われたところであります。
 また、その際、衆参両院の社会労働委員会において、「できるだけ早い機会に、登録制度への移行措置を講ずる」旨の決議がなされたところであります。
 その後、全国にわたって法定団体が設立され、社会保険労務士の組織化が進展し、かつ、全国社会保険労務士会連合会の事務処理能力も著しく向上しております。
 社会保険労務士制度の以上のような実情等を考慮すると、業務のより適正な運営に資するためには、懸案の諸点について、この際、制度を整備充実する必要があり、ここに本法律案を提出する次第であります。
 以下、本案の内容の概要を申し上げます。
 第一に、職責の明確化を図るため、社会保険労務士は、品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で誠実に業務を行わなければならないこととしております。
 第二に、社会保険労務士会の会員である社会保険労務士は、すべての申請書等の提出に関する手続を行うことができることとするとともに、省令で定める申請書等で他人が作成したものにつきこれを審査した場合、その審査した事項等を書面に記載して申請書等に添付し、または申請書等に付記することができることとする等業務内容の充実を図ることとしております。
 第三に、資格要件を整備し、社会保険労務士となるためには、社会保険労務士試験の合格に加えて、二年以上の実務経験を必要とすることとしております。
 第四に、現行の免許制を登録制に改め、登録事務は全国社会保険労務士会連合会が行うこととし、所要の登録手続について規定することとしております。
 なお、現在すでに免許を受けている者については、経過措置を講ずることとしております。
 第五に、社会保険労務士会の会員でない者は、他人の求めに応じ、報酬を得て、申請書等の作成事務及び提出代行事務を業として行うことができないこととしております。
 なお、この改正によって、税理士、行政書士が法令の定めるところにより行ってきた既往の業務内容に何ら変更を加えるものではないのであります。
 以上がこの法律案を提出する理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#30
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 まず、国民年金法等の一部を改正する法律案の採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#31
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
 次に、社会保険労務士法の一部を改正する法律案の採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#32
○議長(徳永正利君) 総員起立と認めます。
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#33
○議長(徳永正利君) 日程第一八 住宅都市整備公団法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。建設委員長宮之原貞光君。
   〔宮之原貞光君登壇、拍手〕
#34
○宮之原貞光君 ただいま議題となりました住宅・都市整備公団法案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、日本住宅公団と宅地開発公団とを統合して、新たに住宅・都市整備公団を設立し、住生活の安定向上と都市環境の一層の整備改善を図るため、大都市地域等において集団住宅及び宅地の大規模な供給、市街地開発事業等の施行、都市公園の整備等の業務を行わせようとするものであります。
 委員会におきましては、参考人の意見を聴取するとともに、両公団が統合されるに至った経緯、本案の目的条項、住宅・土地政策の基本、特に大都市における公共賃貸住宅の供給、両公団の事業実績と長期保有土地、保守管理住宅等の早期解決、新公団の新規業務、新公団における職員の労働条件等について熱心な質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
 質疑を終わり、日本社会党を代表して茜ケ久保理事より、日本共産党を代表して上田委員より、それぞれ提出された修正案について説明を聴取した後、討論に入り、日本社会党を代表して赤桐委員より、原案及び日本共産党提出の修正案に反対、日本社会党提出の修正案に賛成、自由民主党・自由国民会議を代表して増田理事より、原案に賛成、両修正案に反対、また、日本共産党を代表して上田委員より、原案に反対、日本共産党提出の修正案に賛成の意見が述べられました。
 討論を終わり、採決の結果、両修正案は否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し、十項目にわたる附帯決議案が提出され、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#35
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#36
○議長(徳永正利君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
#37
○議長(徳永正利君) 日程第一九昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案
 日程第二〇 昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長林ゆう君。
   〔林ゆう君登壇、拍手〕
#38
○林ゆう君 ただいま議題となりました二法案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 共済関係二法案の内容は、まず第一に、国家公務員及び公共企業体の各共済組合から支給する既裁定の年金につきまして、すでに本国会で成立している恩給法等の改正措置にならって、本年四月分以降平均四・四%増額することとしております。
 第二に、退職年金等の最低保障額を恩給における措置にならって改善するとともに、国家公務員共済組合法及び公共企業体職員等共済組合法に基づく遺族年金に加算される寡婦加算の額を、厚生年金及び恩給等における寡婦加算の額との均衡を勘案し増額することとしております。
 なお、遺族年金を受ける妻が、同時に退職年金等を受給することができる場合には必要な調整を行うこととしております。
 第三に、組合員期間が十年以上の者の配偶者について、組合員期間が十年未満の配偶者の場合と同様に、死亡した者との生計維持関係を遺族の要件とすることにしております。
 第四に、昭和五十四年十二月三十一日以前に退職した高額所得を有する年金受給者について、昭和五十五年一月一日以後に退職した年金受給者と同様に、退職年金等の支給制限を行うこととしております。
 以上のほか、国家公務員の共済組合制度につきましては、掛金及び給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額を引き上げるとともに、各共済組合間における短期給付の財政調整事業を行うため所要の措置を講ずることとしております。
 なお、二法案とも、衆議院におきまして、施行期日等について所要の修正が行われております。
 委員会におきましては、以上二法案を一括して審査し、共済年金制度の今後のあり方、遺族の範囲、国鉄共済年金財政及び短期給付の財政調整事業等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終わり、討論なく、採決の結果、以上二法案はいずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、二法案に対し、各派共同提案に係る共済年金の財源措置及び整合性の確保の検討等四項目にわたる附帯決議が全会一致をもって付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#39
○議長(徳永正利君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#40
○議長(徳永正利君) 総員起立と認めます。
 よって、両案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#41
○議長(徳永正利君) 日程第二一 商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案
 日程第二二 商工会の組織等に関する法律の一部を改正する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。商工委員長金丸三郎君。
   〔金丸三郎君登壇、拍手〕
#42
○金丸三郎君 ただいま議題となりました二法案につきまして、商工委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
 まず、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案は、商工組合中央金庫の債券発行限度額を自己資本の二十倍から三十倍に引き上げるとともに、新たに都市再開発法に基づく市街地再開発組合を商工組合中央金庫の所属資格団体とすること、及び一所属団体が有することのできる出資口数限度について、これを現在の五万口から所属団体の出資総口数の百分の一に引き上げること等を定めたものであります。
 次に、商工会の組織等に関する法律の一部を改正する法律案は、商工会及び商工会連合会の事業活動を促進するため、商工会の目的に社会一般の福祉の増進に資することを加えるとともに、事業範囲の拡大、会員資格の緩和、理事定数の増加等を行おうとするものであります。
 委員会におきましては、以上二案を一括して議題とし、最近の中小企業の景況、金融対策、倒産対策並びに商工組合中央金庫への政府出資の増額、同金庫の貸出金利引き下げ、商工債券の引き受け及び商工会の財政状況、経営指導員の増員、研修、待遇改善等の諸問題について質疑が行われましたが、詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終わり、討論なく、順次採決の結果、以上二法案はいずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#43
○議長(徳永正利君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#44
○議長(徳永正利君) 総員起立と認めます。
 よって、両案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#45
○議長(徳永正利君) 日程第二三 昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。文教委員長降矢敬義君。
   〔降矢敬義君登壇、拍手〕
#46
○降矢敬義君 ただいま議題となりました法律案について、文教委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、国・公立学校における教職員の年金の額の改定に準じて、私立学校教職員共済組合が支給する年金の額及び最低保障額の引き上げを図るとともに、標準給与の上限及び下限の額の引き上げなどを行おうとするものであります。
 なお、衆議院におきまして、施行期日等について修正が行われております。
 委員会におきましては、長期経理の財政状況、長期給付に対する国庫補助率の引き上げ及び日太私学振興財団と都道府県の補助の充実、共済組合員資格等に関する問題のほか、学校法人立以外の幼稚園の助成のあり方等私学助成問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終わり、討論もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、長期給付に対する公費助成の拡充と遺族年金の給付改善に関する各派共同の附帯決議案を全会一致をもって委員会の決議とすることに決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#47
○議長(徳永正利君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#48
○議長(徳永正利君) 総員起立と認めます。
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。
 これにて休憩いたします。
   午前十時五十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時四十六分開議
#49
○議長(徳永正利君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 日程第二四 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(趣旨説明)(前会の続)
 前回の寺田熊雄君の質疑に対し、内閣総理大臣から答弁の補足があります。鈴木内閣総理大臣。
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(鈴木善幸君) 先日の寺田熊雄君の日米首脳会談についての質疑にお答えいたします。
 私は、レーガン大統領との間で、国際情勢の基本認識につき胸襟を開いて意見交換を行いました。また、それを踏まえ、世界の平和と繁栄を目指し、日米両国がいかに協力していくかにつき、率直かつ真剣に話し合いを行いました。
 防衛問題につきましては、憲法並びに基本的な防衛政策に従って、率直にわが国の立場を明確にいたしたところでありまして、レーガン大統領もこれに理解を示したところであります。
 なお、共同声明は、最終的に私が決裁をしたものであり、内容的にも私が了承したものであります。
 ただ、今回の件は別として、一般論として、これからの外交はいわゆる首脳外交の時代を迎えようとしております。今後、共同声明一般のあり方についても、そのような時代によりよく即応するよう一段と工夫、研究する余地もあるのではないかと感じました。
 次に、同盟関係という文書についてでありますが、日米関係は、民主主義、自由という自由世界の共有する基本理念に立脚しており、今日の多難な国際社会において、両国は互いに協力して世界の平和のために貢献していく責任を有しております。今回の共同声明では、かかる責任を有する両国の特別に緊密な相互関係を同盟関係と表現した次第であります。
 次に、御指摘の日米共同声明第二項における対ソ認識は、ソ連の軍事力の増大、アフガニスタンへの軍事介入等に対する従来からのわが国の現状認識を改めて示したものにすぎません。これをもってソ連を仮想敵国視しているという見方は当を得たものではありません。
 中東、なかんずく湾岸地域については、米国が外からの脅威に対し確固たる姿勢を示し、また同地域の安定の回復と自由世界共通の利益の確保に大きな努力を払っていることを認め、その旨共同声明第四項で明らかにした次第であります。いずれにぜよ、米国が域内諸国の意思を無視して一方的に武力行使を行い、緊張を高めるようなことはないと理解しております。
 また、エルサルバドル情勢、南部アフリカ問題等、中米、アフリカ地域においても、世界の平和に影響を及ぼす事態が存在していることにつき、私と大統領との間で認識の一致を見ました。
 第七項では、今日の国際社会には政治、軍事、経済の面で不安定要因が存在することを認識し、西側全体としての安全を確保するためには、おのおのの国がその国力と国情にふさわしい役割りを担い、整合性のとれた対応を行うことが重要であるとの考えを明らかにいたしました。
 第八項は、従来に比し新しいことを述べたものではありません。わが国は、軍事力によっては極東の平和と安定に直接的に貢献することはできず、貢献する考えもありませんが、政治的、経済的な面では、わが国が重要な直接的役割りを演じてきていることは周知のとおりであります。
 経済協力につきましては、わが国は新中期目標のもとで援助の拡大に努める旨、また難民に対する援助を今後とも実施していく旨の意図を明らかにいたしました。
 米原潜の衝突事故につきましては、米側が、レーガン大統領の私あての親書において約束したとおり、中間報告を出したこと、また、すべて今回の事故の責任が米側にあることを認め、補償の問題についても努力していることを私は十分理解しております。他方、わが国においても海上保安庁による調査を行っており、この調査報告も参考として、国民の納得できるような最終報告が出されることを期待しておるところであり、首脳会談において私からこのことを強く要請をしております。
 なお、今回の日米首脳会談において、わが国の財政負担を新たに大きく増大させるような約束は全くいたしておりません。
 最後に、今次首脳会談において、私もレーガン大統領もお互いの考え方を率直に披瀝いたしました。私は、今次首脳会談はわが国の立場を最も十分に主張した会談の一つであったのではないかと考えておりまして、米側に引きずられた云々の御懸念は無用でございます。
 以上お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#51
○議長(徳永正利君) 質疑を続けます。中野鉄造君。
   〔中野鉄造君登壇、拍手〕
#52
○中野鉄造君 私は、公明党・国民会議を代表して、提案のありました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、鈴木総理大臣並びに関係大臣に質問いたします。
 昭和二十年八月、広島、長崎のあの日、それは人類史上例を見ない悲しむべき日でありました。あの惨禍の中、三十万人に及ぶ方々がとうとい生命を犠牲にされ、ようやく一命を取りとめ得た人々も、悲惨な後遺症によって数万人の方々が苦難の闘病生活の末、次々と亡くなられました。謹んで御冥福をお祈り申し上げます。しかも今日、体の中に、心の中に、あの恐ろしいつめ跡を残し、今日なお闘病生活を送っている方々も数多くおられるわけでございます。原爆が投ぜられてから早くも三十六年の歳月が過ぎ去りましたが、わが国が非核三原則を国是として、私ども日本人こそが核兵器なき平和世界の建設に努めるべき崇高な責務があると確信いたします。
 私は、ただいま本法案を質問するに当たり、まず総理にお尋ねいたしますが、今回の日米首脳会談に臨み、世界でただ一つの被爆国の宰相として、また非核三原則を堅持する立場から、核兵器なき世界平和実現に米国が主導権をとるよう主張されなかったことは、はなはだ遺憾に思うものでございます。すなわち、今回の共同声明を読む限り、われわれ国民の核兵器廃絶への宿願はほとんど反映されておりません。あの十六項目にわたる長文の声明の中で、核兵器についてはわずか五十四文字の短文で、きわめて申しわけ程度に触れられているにすぎません。総理は、果たして今回の会談の中で核廃絶についてどのように主張されたのか、まずお答えをいただきたいと思います。
 次に、国が国民に強制した戦争は、人道上許すことのできない悪魔の兵器の出現と、それによる瞬間無差別大量殺戮という残酷な結末をもって終結いたしました。この重大な人命の損失こそは、とうてい償えるものではありません。このかけがえのない生命の尊厳を守り、二度と再び核兵器による残酷な悲劇が世界人類の上に起こらないように叫ぶそのあかしとしくせめてこれら被爆者に対し国家補償に基づく被爆者援護法の制度の制定をすべきであると思いますが、総理いかがでしょうか。あわせてお尋ねいたします。
 次に、厚生大臣に伺いますが、今回の原爆被爆者対策基本問題懇談会意見書は、従来、国のとってきた被爆者対策を社会保障ではなく広い意味の国家補償であると位置づけながら、国には完全な賠償責任はなく、「相当の補償」を認めるべきであるとし、「他の戦争被害者に対する対策に比べ著しい不均衡が生じては、国民的合意が得がたい」と述べておりますが、政府自身の被爆者対策に対する基本的理念はどういうところにあるのか、また、基本問題懇談会の意見とはどういうところに相違点があるのか、お示しいただきたい。
 第四に、意見書の見解と政府の態度についてお伺いいたします。意見書は、原爆被爆を「特別の犠牲」としながら、他の戦争被害者との不均衡を強調し、被爆者の悲願である弔慰金、遺族年金創設などを退けています。しかし、国民的合意は、戦争被害者、特に被爆者の救済を厚くすることではあっても、その救済を否定することではないはずであります。この際、政府の考え方を明確に説明願います。
 第五に、被爆者の健康と、そのための医療の充実強化策についてであります。すなわち、被爆者特有の余病あるいは特異症状があることは調査によっても明らかであり、この被爆者でなくてはとうてい理解できない肉体的、精神的な苦しみに対して、できる限りの手厚い援護を行うべきであると思います。この現実に対し、政府は被爆者医療の充実のためにいかなる施策を推進されようとしているのか、明確にしていただきたいと思います。
 同時に、被爆者医療の研究、調査、治療のための機関の一元一体化の問題であります。現在、広島と長崎におきましては、健康管理の面は原爆対策協議会の被爆者健康管理所が行い、治療の面では原爆病院、そして調査、研究の面は放射線影響研究所や大学の研究機関が行うこととなっておりますが、被爆者のためにはこれら機関の一元一体化が必要であります。研究、調査、治療の一元一体化推進のためどのような御努力をしようとされているか、伺いたいと思います。第六に、原爆医療法による医療給付あるいは特別手当の支給のための認定の問題であります。申すまでもなく、原爆被爆者の疾病が医学的に病気と放射能との因果関係が完全に解明されていないこと、また治療を受けながら治療法を見出すという状態であります。したがって、認定は、被爆者には対応できない現代医学を物差しにするのではなく、その運用は当然「疑わしきは被爆者の利益に」という原則でなされるべきであると思います。この際、認定制度運用に対し、政府のとってきた方針について再検討を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 第七に、外国人被爆者の救済問題であります。五十三年三月の最高裁判決により、外国人被爆者について医療の道が開かれつつあるといいながら、そのためには、日本への渡航費を用意し、日本にいる間のみずからの滞在費と留守家族の生活の問題を解決せざるを得ません。こうして見ると、辛うじて開かれた道は、多くの外国人被爆者にとってきわめて狭く、著しく困難なものと言わなければなりません。この外国人被爆者の窮状に対し今後どのような措置をお考えになっているか、お示しいただきたい。
 最後に、私は、国家の戦争行為を原因として生じた原爆被爆を国家の責任で補償するということは、被爆者を再びつくってはならないという全国民の意思の表明でもあり、非核平和の未来への証左でもあることを申し添えまして、質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#53
○国務大臣(鈴木善幸君) まず、被爆者援護法を制定すべきではないかとの御質問からお答えいたします。
 私は、昨年十二月に出された原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見においても指摘されておりますように、被爆者対策として弔慰金、遺族年金等を支給することは一般戦災者との均衡上むずかしいと考えており、したがって、そのような措置を内容とする原爆被爆書援護法の制定は困難であると考えております。
 次に、私は、現下の国際情勢において、平和で安定した国際環境をつくり出すための努力の一環として、核軍縮を中心とする軍備管理、軍縮に向けての国際的努力の重要性及びその役割りを十分に認識し日米首脳会談に臨み、私より、国際情勢全般についての認識、平和憲法のもとでのわが国の基本的姿勢などについて率直に説明をした次第であります。かかるわが国の積極的姿勢は、共同声明において、真の意味での軍備管理、軍縮に向けての国際的努力の果たすべき役割りについての認識、及び核兵器の拡散防止の重要性の再確認として十分に反映されていると考えております。
 以上、お答えいたしましたが、残余の点につきましては所管大臣から答弁いたします。(拍手)
    〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#54
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 基本懇の答申は、社会保障の理念から国家補償の理念に大きく切りかえたところに評価すべき点があると心得ております。この補償については、原爆という特別の被害を考えて相当の補償をやれと言っているわけでありまして、そのほか数点いろいろ国民との合意あるいはその他困難な問題が書いてありますが、それを否定しておるわけではないと私は考えます。したがって、基本懇の答申は、これを受けて今後の施策に取り入れていく所存でございます。
 次に、基本懇は国家補償を認めながら、弔慰金その他被爆者の団体が望んでおったことが実行できなかったと、こういうものでありますが、これは先ほお申し上げましたとおり、それをやってはならぬと否定はしていないわけでありますから、逐次国民との合意あるいは困難な問題等をそれぞれ考えながら進めていきたいと考えております。
 次に、原爆の被爆者の健康の確保と医療のために放射線研究所、それから他の研究機関、原爆病院、こういうものを一元化すべきではないか、そのとおりでありまして、逐次これは横の連携を強化しながら一元化の方向に持っていくべきであると考えております。
 次には、認定について、現在の段階で学問的な認定でこれを断定するのは少しおかしい、疑わしいというものは考えたらどうかと、こういうことでありますけれども、やはりこれは専門家の判定によって学問的見地から認定を行うという基本は大事であると考えております。しかしながら、いまおっしゃったような問題もございまするので、原爆放射線に起因する可能性が否定し得ないと考える場合においては認定をただいまでも行っているところでありますが、今後ともこの認定の運営については十分考慮して行う所存でございます。
 外国に在住する被爆者の救済、これは日本国政府に対しそれぞれの国から外交ルートを通じて具体的な協力要請があれば、その段階で検討したいと考えております。現に在韓被爆者については、昨年十一月に十名の患者を受け入れ、行ったところであります。今後も被爆者については、昭和五十二年から医師団を派遣し健康調査等を行っておりまするから、これは外交ルートによって逐次解決をしてきたと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#55
○議長(徳永正利君) 立木洋君。
   〔立木洋君登壇、拍手〕
#56
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、原子爆弾被爆者に対する特別措置法改正案に関し質問いたします。
 一九四五年八月、広島、長崎に投下された原爆によって一瞬のうちに両市を廃墟と化し、人間の想像を絶した地獄を現出し、数十万の非戦闘国民を殺傷したのであります。「両手とも指先から肘まで肉がついたまま、くるっとはがれている。両方の膝坊主も黒い皮がめくれている。このまま死ぬのだろうかしら……」、これは当時十九歳の女子挺身隊員の記録であります。このような無数の惨状、地獄図は、いまだに被爆者四十万人とその家族に大きな傷跡を残しております。
 原爆が人間の命、暮らし、心の全面にわたって大きな被害を与えたことに対し、現行法が被害の特徴を放射線による健康上の障害にとどめているととの不当性はきわめて明白であります。本改正案は、医療特別手当、原子爆弾小頭症手当の創設や諸手当の引き上げを図ろうとする内容であり、確かに現行法の若干の手直しではあります。しかし、同時にそれは、長年にわたる被爆者を初め広範な国民が要求してきた国家補償の立場に立つ被爆者援護法の制定を政府が拒否したことを意味します。
 政府がその論拠としている原爆被爆者対策基本問題懇談会の答申は、原爆投下の国際法違反を免罪した上、国が国民に強制した侵略戦争によって生じた被害に対する政府の補償責任も、また日本政府のアメリカへの賠償請求権放棄の責任をも免罪しているのが際立った特徴であります。
 そこで、お尋ねいたしますが、被爆者はこの答申に賛成したでしょうか、また、答申後、被爆者援護法制定要求の声はなくなったでしょうか。援護法制定要求の声はなくなるどころか、「答申を乗り越え援護法制定のために前進しよう」と被爆者の怒りは燎原の火のごとく広がっているのであります。この批判と怒りをどう受けとめられるのか、明確に答えていただきたい。
 この要求は、サンフランシスコ条約で対米賠償請求権を放棄した政府こそが補償の責任を負うべきだという当然のものであります。政府はあくまで国家補償の責任はないと言い続けるのか、総理並びに厚生大臣に明確な答弁を求めるものであります。
 すべての野党が共同して衆議院に提出している原子爆弾被爆者等援護法案は、国家補償の立場から、全被爆者に障害の程度に応じて被爆者年金を支給することとしておりますが、政府はなぜこの措置がとれないのでしょうか。また、被爆者援護法案では、死没者の遺族に特別給付金を支給するものですが、総理が述べていた「原爆被爆者の犠牲はきわめて特殊性の強いもの」という認識が本当であるならば、せめて遺族に弔意を表する対策をとるべきではないでしょうか、はっきりと答えていただきたいのであります。
 世界で唯一の被爆国日本の被爆者の願いは、国家補償とともに「再び被爆者をつくるな」ということであります。また、このことは日本民族の平和の要求でもあります。ところが、アメリカのポラリス原子力潜水艦の当て逃げ事件は、わが国近海が核ミサイルの発射基地とされ、わが国が米核戦略のただ中に取り込まれているという危険きわまりない実態を示しています。
 総理は、訪米に際し、アメリカ側にわが国の国是である非核三原則の立場を徹底させると述べていたにもかかわらず、共同声明には一言も明記されていません。総理、持たず、つくらず、持ち込ませずの非核三原則は、被爆者の心からの願いであり、また唯一の被爆国の国是でもあります。あなたは、徹底させると述べていた非核三原則をどうして共同声明に明記させなかったのか。そして、ポラリス潜水艦がわが国領海を自由に通航している疑惑についても、はっきりと「通航は認めない」と表明をされたのかどうか。また、不誠実な中間報告を評価さえして、なぜ抗議しなかったのか。明確に答えていただきたい。
 さらに、核持ち込みの疑惑は、被爆者を初め多くの国民にとってきわめて重大なことであります。さきの党首会談で、わが党は広島のすぐ隣の岩国基地における核兵器専門部隊MWWU1部隊の撤去をアメリカ政府に申し入れるよう強く求めました。その後、わが党の訪米調査団の調査によって、このMWWU部隊は実戦用の核爆弾の整備と組み立てと試験を任務とし、三十日間以内なら核爆弾の一時貯蔵を行う責任をも有しているということ、また、岩国基地の核放撃飛行隊A4スカイホーク、A6イントルーダー部隊と一体となって、いつでも核攻撃が行えるようにするため、四六時中、最高の可動状態に置かれていることが明らかになったのであります。さらに、岩国基地内には、この部隊によって核爆弾の組み立て作業所が常設されているという重大な事実も判明したのであります。
 総理、あなたはワシントンの首脳会談で、この重大な核兵器専門部隊の撤去をレーガン大統領に直言したのでしょうか。岩国基地にこのような核攻撃のための核兵器整備部隊とその施設が置かれているのを許すということは、今度は岩国が発進基地となってアジアのどこかで広島と長崎が繰り返され、被爆者をつくり出すということを容認することに通じるではありませんか。総理の責任ある見解を明確にしていただきたいのであります。
 日本原電敦賀発電所で明らかになった事故とその事故隠しは、ずさんな安全管理体制を端的に示すものであります。これらの一連の事故によって原発内の労働者が少なからぬ被曝を受けており、しかも被曝した者が仕事を続けるために被曝の実態を隠さざるを得ないという状態すら存在することは許しがたいことであります。このことを一体どう考えておられるのか。政府の管理責任のずさんさについてどう受けとめ、従来のずさんな安全審査体制をどう改めていく方策なのか伺いたいのであります。
 さて、全世界の核兵器は、国連のワルトハイム報告でも四万発を超え、地球上の人間一人一人に対してTNT火薬ミトン以上に相当するという膨大な量に達しております。このような核軍拡競争の中で、わが国は日米安保条約によってアメリカの核戦略の拠点とされ、事前協議も有名無実となりつつあるなど見逃すことのできない憂慮すべき状態にあります。なかんずく、昨年の国連総会でも核兵器使用禁止や核配備禁止などの決議に日本政府が反対したということは、わが国の国是である非核三原則及び核兵器使用禁止を求めた国会決議に背くものであり、広島、長崎において犠牲となった数十万に上るとうとい生命と、三十数年間の苦難を生き抜いてこられた被爆者を初め、平和を願う日本民族への無責任きわまりない態度と言わなければなりません。総理の責任ある答弁をお聞きしたいのであります。
 今日、世界では、フランス大統領選挙にいたしましても、イギリスの地方選挙にしましても、その結果が軍拡路線への厳しい批判を示しているように、また、ことしの非同盟外相会議でも明確なように、まさに、軍拡ではなく、核兵器禁止を初め軍縮への大きな流れとなっていることは明白であります。総理は、この世界の流れにまで逆行してレーガン政権に追随し軍拡の道を歩み続けようとされるのか、それとも被爆者の切実な声をしっかりと受けとめて、平和を求める日本国民とともに歩むつもりなのか、明快な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#57
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、非核三原則についてでありますが、共同声明第八項にもありますように、首脳会談においてわが国の防衛政策につき説明し、わが国としては自主的に、かつその憲法及び基本的な防衛政策に従って防衛力整備の努力を行っていく旨述べましたのに対し、レーガン大統領は私の発言に理解を示されたところであります。また、別途、伊東外務大臣より、ヘイグ米国務長官との会談の際にも、わが国が非核三原則を堅持していることを十分説明したところであります。
 次に、原潜の領海通航問題でありますが、安保条約上、核兵器のわが国領海を含め領域への持ち込みは事前協議の対象とされており、政府としては、米国政府がかかる事前協議を経ることなくわが国に核兵器を持ち込むようなことはあり得ないことについては何ら疑いを有していないところであります。
 米原潜の衝突事故については、米側は誠意をもって対処してきており、さらに首脳会談において私より、日本側の調査報告をも参考として、日本国民の納得できるような最終報告が出されることを期待している旨を強く求めております。これに対し米側は、原潜問題の早期解決に努力していることを再確認し、レーガン大統領自身もこの問題に個人的に注目を払い、関係当局に十分な調査方督励している旨の発言がありました。
 岩国飛行場の海兵航空団第一武器隊につきましては、今国会、政府が累次にわたって答弁してきておりますとおり、米国政府に確認したところ、当該部隊は化学ないし核兵器を整備する能力を有しているまでであって、このことによってわが国に核兵器などが存在することにはならない旨の回答を得ております。いかなる核兵器の持ち込みも事前協議の対象とされており、事前協議に関する約束を履行することは米国にとって安保条約上の義務であります。政府としては、安保条約が日米両国の信頼関係に基づいている以上、米国のかかる約束が履行されていることに何ら疑いを有しておりません。
 なお、日米共同声明においては、わが国の憲法及び基本的な防衛政策に従うことを明らかにされております。
 ミッテラン次期フランス大統領下で軍縮問題を含め具体的にどのような政策が進められるかにつきましては、今後同国との協議をも通じ見きわめていきたいと考えておりますが、わが国としては、現下の国際情勢において平和で安定した国際環境をつくり出すための努力の一環として、軍備管理、軍縮に向けての国際的努力の重要性及びその役割りを十分に認識しているところであります。今般の日米首脳会談に際しても、私はかかる認識で臨み、日米共同声明においてこのようなわが国の積極的姿勢は明確に反映されていると考えております。
 以上、お答えいたしましたが、残余の点につきましては所管大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#58
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 基本懇の答申には被爆者の方々の御期待と相入れない点があると考えておりますけれども、しかし、この答申によって被爆者対策の基本的な理念、基本的な方針が明確にされたことは、私は高く評価をいたしております。
 したがいまして、今度の改正案で、いま御発言がありましたように、各種手当額の引き上げ、医療特別手当、小頭症の患者手当の創設をし、かつこれら手当に対する所得制限の撤廃をしたところでございます。いろいろ困難な問題はありますが、指摘された困難な問題を逐次克服しつつ、被爆者対策を充実強化していくべきものであると考えております。
 したがいまして、国家補償を前提とした原爆援護法の制定は、総理がお答えになりましたように、現在においては大変困難でございます。(拍手)
   〔国務大臣田中六助君登壇、拍手〕
#59
○国務大臣(田中六助君) 立木議員にお答え申し上げます。
 日本原電敦賀発電所の今回の事故の発生はまことに遺憾でございまして、いままで安全性を主張してきた国民の信頼を大きく裏切るものでございます。
 いま四月十日と四月三十日に立入検査の結果の報告を受け、また同社からも、てんまつ書の提出を受けて検討しております。これらの結果を待ちまして、私どもとしては所要の措置を講ずるとともに、安全管理体制の確立、そういうものを十分に検討してまいりたいと思います。
 私も、国会の承認を得られれば、すぐさま現地に飛んでこの目で十分観察をしてまいりたいと思います。
 今後とも、政府といたしましては、原子力発電所の安全性について十分検討し、あるいはこれを考究してまいる所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#60
○議長(徳永正利君) 柳澤錬造君。
   〔柳澤錬造君登壇、拍手〕
#61
○柳澤錬造君 私は、民社党・国民連合を代表して、去る十三日提案となりました原爆被爆者特別措置法について、総理並びに関係各大臣に御質問をしてまいります。
 まず第一に、原爆被爆者特別措置法に対する政府の基本的理念をお聞きいたします。
 昨年十二月十一日、原爆被爆者対策基本問題懇談会が広島、長崎の被爆者の生の声を聞いてまとめた意見として、「これまでの被爆者対策の発展の跡をたどると、被爆者対策の対象が逐次拡大され、全体的に一律平等総花主義になってきているように思われる。ただ、いたずらに、こういう傾向を推し進めることは、社会的公正を確保するゆえんではない」とうたっております。政府は、この意見をどのように受けとめているのでしょうか。人道上許されざる原爆によって残虐無比の被害を受けて今日まで苦しみ続けてきている被爆者のことを政府は本気になって考えてあげているのかです。
 基本懇のこの意見は、全く冷たい法律的判断ばかりをしており、血の通った人間の心が失われています。むしろこの意見こそ、人道的、社会的公正さを欠くものと断ぜざるを得ません。
 いまの時代は昭和二十年代ではありません。あの戦争が終わって三十五年有余も過ぎており、本年なども四十六兆七千八百八十一億という膨大な予算を組むまでになった経済大国です。とするならば、国として、この被爆者の方々にも、もっと温かい愛の手を差し伸べて、できるだけのことをしてあげるのがわれわれの果たすべき人の道であり、それが政治であると思うのですが、総理並びに厚生大臣の御答弁を求めます。
 第二としては、被爆者援護法についてであります。
 昭和三十一年以来、被爆者の皆さんが訴え続けてきていましたが、いまだに実現しません。なぜでしょうか。
 確かに、日本人はだれもが多かれ少なかれ戦争の被害を受け、犠牲になりました。しかし、この三十五年間を静かに顧みるならば、戦争犠牲者の救済、外地における遺骨の収集、亡くなった人々の慰霊祭など、いずれも十分なことをしていないのであって、むしろそのことをわれわれは反省すべきです。最近の社会情勢を見ましても、考え方が変化をしてきており、衝動的通り魔によって発生した殺人などの被害に対しても特別給付金が支給されるようになりました。これは法律以前の政治家の良心が実現させたものと言えましょう。
 私は、常日ごろから、人間の尊厳を政治の理念としておられる園田厚住大臣に対して心から尊敬し、感謝をしております。この機会に申し上げたいのは、被爆者援護法の制定について、諮問機関を設けて諮問し、御検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。厚生大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
 次に、この機会に核に関連して二点ほど質問をしてまいります。
 まず第一に、アメリカの原潜が日本の商船日昇丸に衝突し、沈没させた事故についてです。もちろん、日本とアメリカは日米安保条約を結んでいる同盟関係にある国であり、この友好と信頼の関係を損うことはよろしくないと考えております。そうであればこそなおのこと、日米首脳会談で次の点をどのように話し合われたのか、明らかにしていただきたい。
 このアメリカの原潜事故は鹿児島県下甑島の西南西三十七海里と報じられておりましたが、宇治島からは二十二海里であり、領海からならわずか十海里しか離れていないわが国の玄関先で起きたことです。また、アメリカの原潜が、なぜあのような地域にいたのか。何らかの演習か訓練をしていたのは明らかであり、それをアメリカ政府は事前にわが国の外務省にも防衛庁にも何らの連絡もなかったことです。加えて、午前十時半という昼間であったにもかかわらず、遭難した船員の救助もせず、ジョージ・ワシントン号は行方をくらましてしまったことです。これが日米安保条約を結んでいる相手国に対する態度と言えましょうか。
 総理は、アメリカ大統領から納得のできる説明を聞かれたのか、最終報告はいつ出すと約束されたのか、国民が納得できるように具体的に総理の御答弁を求めます。
 第二としては、専守防衛と非核三原則についてお聞きします。
 この事故がなかったなら、日本の玄関口まで外国の潜水艦が来て行動していたことがわからなかったのであり、そのようなことでわが国の防衛体制は万全であると言えるのでしょうか。国民が安心して生活のできる、そのようにするため今後どのような対応をするのか。
 また、昨年八月には、ソ連の原潜が沖繩で二時間三十五分にわたってわが国の領海を侵犯して通航した事件がありました。このようなことでわが国の非核三原則は守られているのか、今後も守り抜く決意を持っているのか、総理並びに防衛庁長官の明確なる御答弁を求めます。
 最後に、いまや日本の周辺は、アメリカの原潜だけでなく、ソ連の原潜も五十隻から配備されており、核兵器は原潜に積まれて海中にもぐってしまい、われわれ日本人が知らないだけで、米ソの核弾頭ミサイル潜水艦が海中で火花を散らしていると言えましょう。そのような情勢にあるとき、鈴木総理はあえてアメリカで「日本の周辺数百海里とシーレーン一千海里は日本みずから守る」と言明されたのは、どういう意味を持つのでしょうか。
 このグアム以西からフィリピン以東の海域を守るというのは、日本船の安全航行だけのことか、アメリカ第七艦隊がインド洋に移動したことから、その後をアメリカ原潜まで含めて守ることを意味しているのかです。特に、わが国の安全保障に対する認識が合意されないまま、「シーレーン一千海里を守る」という考え方を展開していくことは、結果としてわが国が危険な核戦争の渦に巻き込まれてしまうということにならないのかです。これはきわめて危険の伴う重要な選択であるだけに、総理はどのような情勢認識を持ち、いかなる判断をされてこのような結論を持つに至ったのか、また、今後これを具体的にどのように実践されていくのか。この際、鈴木総理の考えておられることを率直に本音で国民の前に示されることを求め、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#62
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、原爆被爆者の救済をもっと積極的にせよとの御意見であります。
 原爆投下による被爆者の犠牲は悲惨なものであり、被爆者の方々は放射能による健康被害という一般の戦災者とは異なる特別の犠牲をこうむられたものと認識いたしております。このため政府は、従来から原爆医療法及び原爆特別措置法に基づき被爆者対策を推進してまいりましたが、今後とも障害の実態に即応した適切な措置を講じてまいりたいと考えております。
 米原潜の衝突事故については、当方より米側に対し、本件事故は日米双方にとって予想しなかったことで、まことに残念であるが、米側がレーガン大統領の親書において約束されたとおり中間報告を出したこと、今回の事故の責任はすべて米側にあることを認め、補償の問題についても努力していることは私も十分理解しており、わが方においても海上保安庁による調査を行っているので、この調査報告をも参考として、今後、日本国民の納得できるような最終報告が出されることを期待している旨申し述べました。レーガン大統領も、このことに対しましては、ぜひ日本側の調査もわれわれはこれを参考にして、そして早急に最終的報告を提出したい、こういうことを約束されたのでございます。
 核の持ち込みについての事前協議制度のある米国についてはもとより問題なく、また、米国以外の国についても、非核三原則はわが国の基本政策として繰り返し天下に公表されており、当然これが尊重されるものと考えております。
 ナショナル・プレスクラブにおける外国人記者の質問に答えた私の発言は、周辺海域におけるわが国の自衛力の整備目標を述べたまでであって、何ら新しいことを述べたものではありません。
 わが国が自衛権の行使に必要な防衛力について、その整備に努力していることは御承知のとおりでありますが、このことは、何もわが国が集団的自衛権の行使を前提とするような軍事的な役割りを分担するといったようなことを意味するようなものでは全くありません。また、わが国がこのような努力を行うことによって核戦争に巻き込まれる危険性があるとも考えられません。
 政府は、わが国船舶の海上交通保護について、従来から、わが国周辺数百海里、航路帯を設定する場合はおおむね千海里程度の海域において行うことができることを目標に海上防衛力の整備を行っているところであり、このため、今後とも防衛計画の大綱に基づき、海上交通保護のための防衛力の改善になお一層努めてまいる所存でございます。
 残余の問題につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#63
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 基本懇の答申は、被爆者対策の基本理念と基本的なあり方を明確にしたということで私は評価をいたしております。かつまた、今後やるべき問題等はこれを列挙して、これをやる際に注意すべきこと、困難な点等条件を挙げられたというふうに解釈いたしております。したがいまして政府はこの基本懇の答申を踏まえて逐次対策を充実していくべきであると考えますが、とりあえず今年度の予算では、国家財政厳しい折から諸手当の増額、新しい手当、所得制限の撤廃等をやったわけでありますが、逐次困難な問題を克服しつつ強化をしていきたいと考えております。したがいまして、諸般の情勢、財政の問題も含む現在において、被爆者援護法を制定することはなかなか困難でございます。
 したがいまして、基本懇の答申が出た直後の今日、援護法制定のための諮問機関を設けてはどうかということでありますが、御意見でありますけれども、私は、援護法制定の困難な諸条件を逐次克服して援護法ができるという環境をつくることが先であって、御意見ではございますけれども、いますぐそういう機関をつくる考えはございませんので御理解をいただきたいと存じます。(拍手)
   〔国務大臣大村襄治君登壇、拍手〕
#64
○国務大臣(大村襄治君) 柳澤議員から私に対しまして、米原潜事故にかんがみ、わが国の防衛体制は万全と言えるか、今後どのような対応をするかという趣旨のお尋ねがございました。これに対してお答えをさしていただきます。
 平時における海上警備につきましては、第一次的には海上保安庁任務とされているところでありますが、防衛庁といたしましては、有事における対潜水艦作戦のために潜水艦を探知する手段として、海上自衛隊の対潜哨戒機、対潜ヘリコプター、水上艦艇及び潜水艦を有しており、これらの手段を組み合わせて運用することにより、わが国周辺における潜水艦の探知を行うこととしております。現状では必ずしも十分ではないと考えておりまして、このため対潜装備等の近代化を進めているところでございます。(拍手)
#65
○議長(徳永正利君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#66
○議長(徳永正利君) 日程第二五 国務大臣の報告に関する件(内閣総理大臣の帰国報告)(第二日)
 去る十三日の報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。植木光教君。
   〔植木光教君登壇、拍手〕
#67
○植木光教君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、総理の訪米、訪加に関する報告に対し質問を行います。
 私は、まず、総理と外務大臣が米国とカナダを訪問され、特にレーガン・アメリカ大統領との間で、現下の激動する国際情勢につき大所高所から意見の交換を行い、両国の揺るぎない協力関係を構築して、日米両国が連帯して世界の平和と繁栄のために努力していくことを確認してこられた御労苦に対し、深甚なる敬意を表するものであります。
 総理が述べておられますように、日米両国は自由世界の責任ある構成員であります。のみならず、今日わが国の国民総生産は世界の一一%を占め、その大きな経済力のゆえに、自由世界においてはもちろんのこと、世界全体に対しても強い影響力を持つに至ったのでありまして、それだけにわが国の役割りと責任は重くなったと言わなければなりません。
 総理は、ニューヨークにおける演説で、幕末のぺリー艦隊の来日を契機にわが国が近代化への歩みを始めたことを「第一の出発」とし、また、敗戦後、米国の助けで国際社会に生きる道を歩み始めたことを「第二の出発」と呼び、さらに今日の日本について、「国際社会における受動的享受者から能動的創造者となる」という決意を明らかにされ、これが「第三の出発」であると述べておられます。この言葉は、わが国が世界の平和と繁栄のために積極的に責任を果たしていく決意の表明としてきわめて適切であり、まことに感銘にたえないところであります。
 さて、今回の日米共同声明において両国間の確固たる同盟関係の存在を初めて明記いたしました。これに対し、一部において、これは新たに両国が軍事的同盟関係を結んだものであると非難しておりますが、わが国と米国は早くから安全保障条約を結んでおりますし、自由と民主主義という共通の価値観をもって自由世界に貢献している間柄でありますから、これを同盟関係と呼ぶのは至極当然のことであります。
 総理、今回の共同声明で日米間の同盟関係がうたわれたのは、むしろ遅きに失していること、これにより日米関係に新たな軍事的色彩が加わったものではないこと、また、わが国がアメリカの軍事的戦略に組み込まれたものでもないことをこの際はっきりと御説明いただき、無理解からくるいわれなき批判に対して明確なお答えをいただきたいのであります。
 総理は、レーガン大統領との首脳会談において、世界の平和と安定について広く意見の交換を行われました。その際総理は、日本のアジアや世界の平和に果たすべき役割りについて詳細にわたり述べられたと伺っておりますが、どのようなことをお話しになったのか、その内容についてお尋ねいたしたいのであります。
 東西関係については、最近のソ連の一連の動きに対し強い憂慮の念を表明し、ソ連の他国への介入には厳しい態度で臨むことを再確認されました。これはまことに当を得たものであり、われわれもまたソ連の反省を強く求めるものであります。他方、この巨大な隣人との間に対話の窓を閉ざさないことが必要であるとも思いますが、政府は今後の対ソ外交をどう進めようとされるのか、お伺いしておきます。
 なお、総理が世界の軍備管理、軍縮の努力を行うことが重要であることを強調され、両者の合意を見たとのことでありますが、平和国家日本の総理としてのこの御主張を高く評価するものであります。
 次に、わが国の防衛並びに極東における平和と安定を確保するため、日米両国間において適切な役割りの分担が望ましいことを確認されました。この「役割り分担」について、その解釈が争われましたが、総理の御報告にありますように、わが国が集団的自衛権を行使することができないことは憲法上明らかであります。わが国の役割りは、個別的自衛権の範囲でのわが国みずからの防衛力の整備充実と日米安全保障条約の効果的な運用、そして政治、経済、文化等各般の平和外交の展開にあると思います。したがって、わが国の分担すべき役割りは多岐にわたるものでありますが、軍事的役割りは、従来どおり、安全保障条約の運用及びわが国の領域と周辺海空域の自衛力整備に限られることは明確だと存じますが、総理の御見解をお聞きしておきたいのであります。
 なお、わが国の防衛政策について、第二回の首脳会談で総理から長時間にわたり、率直かつ詳細に説明されたとのことでありますが、その具体的内容について伺っておきたいと存じます。
 総理は訪米前、わが国の防衛努力につき、できることとできないことをはっきりさせると言っておられました。できないことについてはいかなることを述べられたのか、できることについてはいかなることを述べられたのか、そしてこれに対するアメリカ側の対応ぶりはどのようなものであったかも伺っておきたい。
 そして、総理は、わが国防衛力の整備を自主的に進めていく旨表明されましたが、今後どのような努力をせられる御決意であるか、お尋ねしておきたいのであります。
 経済協力に関しましては、共同声明で、日本政府が新たな中期目標のもとで政府開発援助の拡充に努めるとともに、世界の平和と安定を維持するために重要な地域への援助を強化すると述べておりますが、経済援助を南北問題の視点からとらえ、あるいは人道的、道義的見地から実施するばかりではなく、激動する国際情勢のもとで、平和と安定の維持に役立つ援助をも行うという方針を明らかにされたことは、総理の強調される総合安全保障の考え方にも合致するものであり、今後のわが国の経済協力を律する重要な理念の一つになるものと考えられます。この点について総理の御意見を承りたいと存じます。
 なお、今回の会談において、エネルギー問題の取り組みについて合意を得たこと、原子力の平和利用の促進とわが国再処理問題の早急かつ恒久的な解決について意見の一致を見たことは特筆すべき成果であり、高い評価を惜しまないものであります。
 総理は、今般の訪米、訪加において、レーガン大統領、トルドー首相と、来る七月二十日及び二十一日の両日オタワで開催予定の主要先進国首脳会議、いわゆるサミットについて意見の交換をされてまいりました。私は、過去六回行われてきたサミットは、世界経済の運営に誤りなきを期するとの目的を十分に果たしてきたものと確信しております。特に一昨年六月の東京サミットは、故大平総理の司会のもとに、エネルギー問題に適切な対応を示し、世界のエネルギー問題の展開に画期的な足跡を残したことは、いまだに記憶に新しいところであります。
 世界経済の発展が国際社会の平和と安全に大きなかかわりを持つことを考えますとき、来るべきオタワ・サミットにおいて日本を代表する総理が果たされる責任と役割りはきわめて大であると申せましょう。総理は、オタワ・サミットに出席されるに当たり、どのような所信をもって臨まれるのか、また、どのような具体的貢献をされようとお考えになっているか、率直な御見解を伺いたいのであります。
 また、私は、サミットは重要な国際経済問題について自由な意見交換を行う場であるべきだと考えておりますが、七カ国の首脳が一カ所に集まられるわけでありますから、経済問題に限らず、その他の関心事項についても十分な論議を交わすことが必要であると考えます。民主主義を共通の価値として持つ七カ国の首脳が一堂に会するのは、この場をおいてはほかにありません。したがって、この機会をぜひ積極的に活用すべきであります。この点についての総理の御所信をあわせてお尋ねしておきたいのであります。
 最後に、私は、今回の訪米、訪加を契機に、鈴木内閣がわが国に課せられている国際的な責任を一層自覚され、国際社会の平和と繁栄に貢献する強力な外交を展開されることを祈念いたしまして、質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#68
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、同盟関係について御説明いたします。
 日米関係を同盟関係と表現したことは、一昨年及び昨年五月の大平総理の二度の訪米の際にも行われたところであり、この表現自体は新しいものではありません。
 共同声明にいう日米両国間の同盟関係の意味は、民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれた総合的な日米間の関係をとらえて表現したもので、日米関係を同盟関係と表現したからといって、それが現在の日米関係の枠組みを変えるような新たな軍事的意味を持つものではありません。また、わが国が米国の軍事的戦略に組み込まれることを意味するものではないことは明らかでございます。この点をこの際明確にいたしおきます。
 次に、首脳会談についてでありますが、私よりは、現下の厳しい国際情勢の中で世界の平和と安定を確保するためには、政治、軍事、経済等の諸分野において先進民主主義諸国はおのおのその国力と国情にふさわしい役割りを担い合い、整合性のとれた形で対応することが必要であると考える旨指摘いたしました。また、その際、平和憲法のもと専守防衛を旨としているわが国として果たし得る役割りは政治、経済、社会、文化の各分野での努力を中心としたものとなる旨をあわせ述べたことに対し、レーガン大統領はこれに理解を示されたところであります。
 今般の日米共同声明における対ソ認識は、一貫したソ連の軍事力の増大、アフガニスタンへの軍事介入など動かしがたい客観的事実に対する従来からのわが国の現状認識を改めて示したものであり、かかる基本的認識につき米国の見解と一致した次第であります。
 しかし、基本的認識において一致したからといって、個々の具体的対応ぶりについてもこれを同一にするということではもとよりなく、両国がおのおの独自の立場から対ソ政策を推進することは当然であります。わが国としては、ソ連との間に通すべき筋は通しつつも、いたずらに対決を求めることなく、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することを基本的課題として対処しており、御指摘のソ連との対話もそれなりに必要であると考えております。
 共同声明で述べている役割り分担の考え方は、従来に比し新しいことを述べたものではありません。わが国が集団的自衛権を行使し得ないことは憲法上明らかであり、極東の平和と安定のための日本の役割りは、日米安保条約の円滑な運用のほか、政治、経済、社会、文化の各分野における積極的平和外交の展開に重点が置かれることとなります。
 さらに、わが国の防衛に当たって共同対処する日米両国の間に役割り分担が生ずることは自然なことであり、また、わが国が自国の防衛上の観点から自衛力の整備を進めることは当然であります。
 わが国の防衛努力につきましては、共同声明にもあるように、首脳会談において、わが国としては自主的に、かつその憲法及び基本的防衛政策に従って防衛力の整備の努力を行うものであることを明言し、大統領はこれに理解を示しました。
 政府としては、自主的に、かつ憲法及び基本的防衛政策に従い、最近の厳しい国際情勢にかんがみ、防衛計画の大綱に定める防衛力の水準をできるだけ早く達成すべく、世論の動向、財政状況、他の諸政策との整合性、近隣諸国への影響なども勘案しつつ、なお一層の防衛努力を行ってまいる所存であります。
 開発途上国の経済的混乱は政治的、社会的不安定を惹起し、国際的な紛争の引き金ないし国際的緊張の原因ともなりかねません。今回の共同声明にあるように、世界の平和と安定の維持のためには開発途上国の政治的、経済的及び社会的安定が不可欠であると考えます。したがって、経済協力を通じ開発途上国の経済社会開発を支授し、民生の安定、福祉の向上に貢献することは、これら諸国の政治的、社会的安定をもたらすとともに、広く国際間の緊張を緩和することに貢献することに相なります。
 以上の認識を踏まえ、わが国は、平和国家として、また自由世界第二位の大きな経済力を有する国として、経済協力を通じて世界の平和と安定に積極的に貢献していくこととしており、私は、経済協力をわが国の総合安全保障の重要な一環として位置づけております。
 七五年の第一回ランブイエ会合以来六年間、常に世界経済の情勢には厳しいものがあったにもかかわらず、サミットは、首脳間の直接かつ緊密な話し合いを通じて世界経済の展望に対する信認の回復、ひいてはその安定と発展のために大きく貢献してまいりました。
 わが国は、サミットのかかる意義を一貫して高く評価し、その実質的成功のために積極的役割りを果たしてまいりましたが、オタワ・サミットにおいても、南北問題、自由貿易体制の維持強化を初めとする諸問題に真剣に取り組みたいと考えております。
 また、サミットは、沿革的には経済問題の討議を主体とするものではありましたが、何といっても世界の主要国首脳が一堂に会し、直接に話し合う場としては現在確立された唯一のものであり、経済にとどまらずその他の共通の関心事項についても首脳間の自由な意見交換を行うことが、今日の流動的な国際情勢に照らし、当然かつきわめて有意義なことと考えるのであります。
 最後に、私は、今後ともわが国の国際責任の大なることを自覚し、国際社会の平和と繁栄のため強力な外交を展開すべく微力を尽くしてまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#69
○議長(徳永正利君) 吉田正雄君。
   〔吉田正雄君登壇、拍手〕
#70
○吉田正雄君 私は、日本社会党を代表し、鈴木総理に対し、日米首脳会談を中心に質問いたします。
 質問を行う前に、私は、一昨日十三日、わが党の寺田熊雄議員の質問に対し総理が答弁を保留され、審議が空転をしたことに抗議いたします。
 しかし、議事がストップし、壇上に長く放置された総理のお姿を拝見して、ひそかに同情の念を禁じ得なかったのも事実であります。日米共同声明をめぐり、政府部内の不統一が露呈し、官僚に振り回された指導性なき総理として国民の目に映り、そこに最高権力者の孤独な一面を見たからであります。
 さて総理、国民はあなたの帰国報告に対し、「同盟関係」や「防衛面での役割り分担」をめぐり政府部内の見解の不統一が表面化し、総理自身が不満を述べたと伝えられている事態に対し、さまざまな疑問と不安を抱いております。事柄が国の運命を決する重大事だけに、先ほどの寺田議員に対する抽象的な答弁でなく、明確、具体的な答弁を期待して質問に入ります。
 まず、総理は、今回の日米首脳会談に臨むに当たって、わが国外交の基本姿勢をどのような立場に求めたのか、明確にしていただきたいのであります。
 米国の外交は、レーガン大統領になってから、ソ連に対する姿勢は緊張緩和というより緊張を強める方向に進んでおります。わが国は、こうした世界の平和に逆行する米国の対ソ姿勢に対して、これをたしなめ、軍縮を目指す国際環境をつくり上げていくための説得をする立場にあったと思うのであります。ところが、共同声明に盛られた内容は、軍事力を背景とする米国外交にわが国が組み込まれてしまったと断ぜざるを得ないのであります。
 ところで、改めて言うまでもなく、わが国の外交姿勢は、憲法の基本理念である平和主義に立つならば、世界の政治、軍事、経済上の諸問題については、武力を背景とせず、軍縮を進め、話し合いによって緊張を緩和することを基本とすべきであります。日米関係において友好を強めることは重要であります。しかし、それはあくまでも対等平等の立場に立って行うべきであり、米国の世界観、外交姿勢に屈服することではありません。
 私は、今回の共同声明に接し、外務省当局の対応を見るとき、日本は、大統領側近がいみじくも言ったように、漂流している米国、苦悩しつつ、目標を持たず、助けなしに、史上最も混乱した時期に向かっているアメリカにより、イコールパートナーからフルパートナーに昇格させられたのであります。これまでの平和憲法に基づく全方位外交と対等平等という外交理念を放棄した責任はきわめて重大であります。
 ところで、同じ質問が繰り返されるのは、総理、あなたの明確な答弁がないからであります。あなたは、レーガン大統領に、できないことは何であり、また、何に対してノーと言われたのか。もしあったとすれば、それは何についてであったのか、明確にしていただきたいのであります。ことに、対ソ認識や防衛力増強など、論議を呼ぶ問題で実質的な話し合いがあったのでしょうか。そうではなくて、もっぱら社交的、儀礼的な話し合いにとどまり、共同声明も両国の外務、防衛官僚の手によってつくられたと思われるのでありますが、明確にしていただきたいと思います。
 第二は、今回の共同声明において、日米安保条約及び防衛政策が明らかに変質させられた問題についてであります。
 まず、共同声明における「同盟関係」という表現は、わが国が対ソ脅威論に立つレーガン大統領の世界戦略の一翼を担おうとするものであり、これまでの片務的な安保条約から双務的軍事同盟に積極的にのめり込み、軍事大国としての日本の役割り分担を明確にさせたと見るのが常識的であります。
 総理は、外務省高官の発言と伝えられる「軍事的な関係、安全保障を含まない同盟はナンセンス」ということをどう考えられますか。日米同盟の軍事的色彩に対する世論の厳しい批判を恐れて、あなたは国民に対する報告をごまかそうとされたのではありませんか。むしろ、外務省高官の言うことの方が日米同盟の意味する内容を正しく伝えているのではないでしょうか。日米同盟関係は、軍事的なものを含まず、全方位外交を転換したものでないと主張されるのであれば、ここで改めて明確にしていただきたいのであります。
 ところで、共同声明はその第八項で、極東の平和及び安定を確保するため、日米間の適切な役割り分担が望ましいことをうたっております。極東の範囲と役割り分担の具体的内容を明らかにしていただきたいのであります。また、日本の領域及び周辺海空域における防衛力を改善しとありますが、その範囲と改善の内容を明らかにしていただきたい。
 伝えられるように、周辺海空域を一千海里にまで拡大したとすれば、憲法で禁止する集団自衛体制に一歩踏み込んだものと断ぜざるを得ません。どの程度にまで軍備を増強させるおつもりでしょうか。また、在日米軍の財政的負担をさらに軽減する努力を行うと述べてありますが、防衛費はとうていGNPの一%以内におさまるはずはありません。総理は行財政改革に政治生命をかけると主張されていますが、国民に負担増を押しつける中で軍事費の増強を図ろうとすることは許されません。米国との約束と、一体どちらを選択されるおつもりですか 明確に答えていただきたいのであります。
 次に、先般の米国海軍原潜ジョージ・ワシントン号が日昇丸に当て逃げした事件に対するアメリカ側の態度は、まことに無責任きわまるものであり、憤りを覚えるものであります。総理の先ほど来の答弁を聞いておりますと、まさに通の一遍の頼りなさと、いら立たしさを感ずるのは私一人ではないと思うのであります。私は、この事件を金大中氏事件のように政治決着でうやむやにするのでなく、文字どおり国民の納得のいく解決を米国に強く迫るよう総理に約束していただきたいのであります。
 第三に、日米原子力協力をめぐる問題についてお伺いいたします。
 総理は帰朝報告で、原子力の平和利用問題については、日本の再処理についての見解に大統領の支持が表明された旨述べられましたが、総理は共同声明第十四項に盛られた内容を本当に理解しておいでになるのでしょうか。声明は、核兵器の拡散防止の死活的重要性にかんがみ、国際的な努力の必要性を再確認したとありますが、レーガン政権の誕生を後ろ盾に韓国、台湾の核武装化の動きがさらに強まっています。これについて意見交換をされましたか。さらに、これを突破口に、日本国内における核開発に向けての研究、世論づくりが急速に進んでいることをどのように釈明されましたか。
 先般、私たちが入手した「わが国における自主防衛とその潜在能力について」なる秘密レポートは、日本の核兵器生産の技術的能力、工業力について研究したものです。その内容から見て、自衛隊関係者、原子力に関係する政府、民間の中心的な人たちによって一九六八年ごろひそかに書かれたことが推測できます。総理はこのような研究が行われていたことを御存じでしょうか。知らないで核拡散防止を話し合ったとすれば、これほどナンセンスなことはありません。改めてこの機会に、日本が軍事大国の道を歩まず、核武装を行わないこと、また、核武装に向けてのいかなる研究も政府として認めないことを明言すべきであります。総理の決意をお聞かせください。
 共同声明は、さらに、新たな再処理施設の建設等の懸案事項の早急かつ恒久的な解決について意見が一致したと述べていますが、総理、あなたはその詳細な内容や背景についてどの程度認識されておるのでしょうか。
 レーガン政権の国防長官、原子力政策の責任者など有力ブレーンが、世界最大のエンジニアリング総合会社であり世界唯一の原子力一貫企業であるベクテル社の社長、副社長であることは御存じでしょう。日米原子力協力は、戦略産業である原子力産業分野でヨーロッパ勢に対抗して東南アジアや中国、さらには第三世界、開発途上国を制覇する目的を持っています。そして、アジア・太平洋地域で生ずる使用済み燃料をパルミラなど太平洋の小島に一括貯蔵し、核廃棄物を太平洋に投棄する計画を含んでいます。
 世界初の非核平和憲法を成立させたパラオのベラウ共和国、五月十八日日本の核廃棄物の太平洋投棄に反対する国会請願を行うため来日する北マリアナ連邦共和国のカマチョ知事など、環太平洋諸国は、人類の生存を脅かし、アジア・太平洋の平和にとって危険なこの政策と計画に強く反対しています。総理、訪米の重要な目的の一つは、アジア・太平洋地域を非核平和地帯に創設することではなかったのでしょうか。核の加害国になることを避けるため、これらの投棄計画などは中止すべきであります。あなたの御見解をお聞かせください。
 最後に、敦賀原子力発電所の一連の事故に関して、政府の安全行政、安全審査のあり方、電力会社への指導、対応についてお尋ねいたします。
 事故は、TMI事故同様、巨大科学の持つ本質的、潜在的危険性に目をつむり、相も変わらず砂上の安全神話に寄りかかってきた当然の結果であります。政府は、事故の真相、全体像を徹底的に調査研究し、結果を国民の前に明らかにするとともに、原電の事故隠し、住民や労働者に対する安全軽視について厳正な措置をとるべきであります。同時に、政府の行政責任についても同様、明確にすべきであります。今後かかる事故を発生させないため、全原発を停止し、安全性について徹底的に再点検、再審査を行い、法令の改正を含め全般的な見直しを行うべきであります。総理の誠意ある回答を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#71
○国務大臣(鈴木善幸君) まず、国際情勢についてでありますが、ソ連の一貫した軍備増強と、これを背景とするアフガニスタン軍事介入に見られる同国の第三世界への進出が世界の平和と安定にとって大きな不安定要因の一つとなっていることは事実であります。このような国際情勢のもとで平和と安定を確保するためには、西側諸国がその国力と国情にふさわしい役割りを担い合い、整合性のとれた形で対応することが必要であると考えます。
 わが国としても、西側自由主義諸国との連帯と協調のもとで、わが国の国力と国情に応じたふさわしい役割りを積極的に果たしていくことが重要であります。今回の訪米に際しては、このような基本姿勢のもとでレーガン大統領との会談に臨みましたが、同大統領も基本的に同様の見解を示し、両者の間に意見の一致を見たものであります。
 レーガン大統領との会談において、私は、わが国の国民の間に防衛力を整備すべしとの関心も高まりつつあるが、その整備に当たっては世論の動向、財政の状態、他の政策との調整などを考えつつ行いたいこと、また、憲法の枠内で自主的に整備していきたい旨述べました。
 また、共同声明第二項にあるように、私とレーガン大統領はソ連の軍事力増強等に対する憂慮の念を示したことは御承知のとおりであり、この点に関しては日米間において認識の一致がありましたが、このような認識の一致があったからといって、わが国の基本的防衛政策を変更する必要があるとは考えておりません。
 日米共同声明は、その作成に相当の時間を要するため、両国政府間で事前に十分な協議を行い、随時、私及び外務大臣の指示をも受けつつその内容を確定していきました。最終的には私及びレーガン大統領の決裁を得たものであります。したがいまして、内容的には何ら異存はありません。
 御承知のように、今日首脳外交が活発に展開をされております。今後の厳しい国際情勢下におきまして、この首脳間の往来、首脳間の会談が随時持たれることと思うわけでございます。その際におきまして、一般論といたしまして、首脳がひざを突き合わせて率直に意見の交換をする、そして国益を踏まえていろいろ意見を闘わす場合におきまして、そこから両国の政策というものが生まれてくる場合があることは私は期待できるのであります。そういう際におきまして、私は、やはり首脳外交ということを踏まえて、今後の共同声明の調整、あり方等について研究の余地があるのではないか、工夫をこらすべき点が多々あるのではないか、このように一般論として考えておるわけでございます。
 今般の日米共同声明の同盟関係の意味については、それは共同声明にもあるとおり、民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれた総合的な日米間の関係をとらえて表現したものであります。このような総合的な関係の中には、政治、経済、文化等の関係とともに、日米安全保障条約に基づく日米安保関係があることは客観的な事実であります。
 今般の共同声明の同盟関係という表現の部分はこのような当然のことを確認したものであって、日米関係を同盟関係と表現したからといって、それが現在の日米関係の枠組みを変えるような新たな軍事的意味を持つものではございません。
 なお、安保条約が日米双方による集団的自衛権の行使を前提とする条約に該当しないことは明らかであり、また、日米双方とも、安保条約の性格をいかなる意味でも変える考えのないことは一致しているところであります。
 共同声明の述べている役割り分担の考え方は、従来に比し新しいことを述べたものではありません。わが国が集団的自衛権を行使し得ないことは憲法上明らかであり、極東の平和と安定のための日本の役割りは、日米安保条約の円滑な運用のほか、政治、経済、社会、文化の各分野における積極的平和外交の展開に重点が置かれることになります。
 政府は、防衛計画の大綱にのっとり、わが国を防衛するための必要限度において、わが国及びわが国周辺海空域においてのわが国に対する武力攻撃に対処するための防衛力の整備に努めているところでありますが、今回の日米首脳会談において従来からのわが国の防衛力整備の考え方を変更したことはなく、今後とも自主的に、かつ憲法及び基本的な防衛政策に従い、防衛計画の大綱にのっとり、なお一層の防衛努力を行う所存でございます。
 次に、原潜の衝突事故についてのお尋ねでありますが、米側が、レーガン大統領の私あての親書において約束したとおり中間報告を出したこと、また、今回の事故の責任がすべて米側にあることを認めつつ、補償の問題についても努力していることを私は十分理解しております。他方一わが国においても海上保安庁による調査を行っており、この調査報告も参考として、国民の納得できるような最終報告が出されることを強く求めておるところであります。
 今般の会談におきましては、核拡散防止につき一般的に国際協力の必要性を再確認したのであって、特定の国、地域の状況について話し合いを行ったわけではありません。
 次に、核兵器に関する秘密のレポートがあるとのことですが、私は、そのレポートについては承知いたしておりません。
 なお、わが国の国是とも言うべき非核三原則を堅持していくことにつきましては、繰り返し申し上げているとおりであります。また、自衛隊の装備に関する研究開発に際しては、今後とも非核三原則を踏まえて行うことは言うまでもありません。
 わが国は、特にウラン資源の有効利用の観点から、使用済み核燃料を再処理し、そこから得られるプルトニウムを原子力発電に再利用することを従来から原子力政策の基本方針としておりまして、レーガン大統領との会談においても、私からかかるわが国の基本方針をるる説明し、同大統領もとれを十分理解できる旨明言した次第であります。他方、原子力平和利用の拡大に伴う国際的な核拡散の危険については、日米協力してこれを防止すべきであるとの点についても双方で意見の一致を見たところであります。
 非核地帯は原子力の平和利用を排除するものではないと理解しておりますが、一般的には適切な条件がそろっている地域において、その地域の国々の提唱により非核地帯が設置されますことは、核拡散防止の目的に資し得るものと考えております。しかしながら、アジア・太平洋地域に御指摘の非核平和地帯を設置するための現実的な条件はいまだ整っておらず、そのような客観的情勢にもないと考えます。
 次に、日本原子力発電株式会社の敦賀原発事故につきまして、今回の事故は国民の原子力発電への信頼を揺るがすきわめて遺憾な事故でございます。このため、政府としては、同社に対し厳正な措置を講ずる所存でありまして、安全管理行政につきましても、一今回の事故の教訓を十分踏まえ、できるだけ早く結論を得、逐次実施していく所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#72
○議長(徳永正利君) 渋谷邦彦君。
   〔渋谷邦彦君登壇、拍手〕
#73
○渋谷邦彦君 日米首脳会談に関て私は、公明党・国民会議を代表して、その内容につき総理に見解を求めるものでございます。
 今回の首脳会談における際立った特徴は、先ほど来から総理が何回となく答弁されております共同声明に初めて盛り込まれたやはり同盟という言葉であります。これはいろいろな受けとめ方があろうかと思いますが、率直に両国間の新たな位置づけが確認されたのではないかと思えるのであります。なぜならば、同盟の持つ意味は、安保条約のように片務的なものではなく、双務的性格を持つものであり、過去のもろもろの事実や国際的通念の上からも軍事的役割りを含むと解するのが常識だと思うのでありますが、重ねて総理の答弁を求めるものであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 なるほど総理はこの点につき、先ほどもそうでございましたように、繰り返し軍事的意味合いは持っていないことを強調されましたことも知っております。しかし、五月十三日の自民党外交調査会において外務大臣の軍事関係も含まれるとの発言と大きな食い違いが生じ、疑念を増幅させましたことは否定できない事実であります。そのため政府は統一見解として、安保条約があるという意味で軍事的側面を持つ、安保条約は片務的なもので同盟条約と言うか否かは同盟の定義によるとの含みのある判断を示されたのであります。国民の疑惑を取り除く上からも、この際、安保条約の変質のおそれはないのか、同盟についての定義はどうなのか、論理的に説得力のある説明をしていただきたいのであります。
 また、日米同盟の基軸になっておりますのは共同声明第八項に象徴されており、軍事的関係が色濃く出ていると読み取れるのであります。すなわち、日本の防衛並びに極東の平和及び安定を確保するに当たり、日米両国間に適切な役割り分担が望ましいとあり、特に第四項の中東条項と深くかかわり合っていることを見逃すわけにはいかないのであります。
 中東湾岸地域の平和と安全の維持が全世界の平和と安全にとりきわめて重要であり、米国の確固たる努力が安定を回復することに貢献とは、米国がかねてより強く要請しているシーレーン確保のため日本がその役割り分担に応ずべきだということに通じるものであります。総理自身、米国のプレスクラブにおいてこの点につき積極的に言及されたことが伝えられておりまして、米国の軍事上の期待に進んでこたえる姿勢ではなかったのか。そうなりますと、安保条約の片務性が崩れ、集団防衛体制に向かうことになりはしないかと懸念されるわけでありますが、重ねてこの点確認をさしていただきたいのであります。
 次に、憲法及び基本的な防衛政策に従って、日本の領域及び周辺海空域における防衛力の改善とは、将来の日本本土周辺とする考えから海空域を拡大、つまり北西太平洋でのソ連に対抗するため新たな軍事的協力関係を構築する前ぶれではないのか。そうなれば専守防衛の枠を大きく逸脱することになりかねないと思いますが、この点についてもあわせて述べていただきたいと思います。
 たとえば、対潜哨戒機P3Cについて見ますと、全地表上に対ソ戦略を展開しております米国でもその保有機数は二百機ぐらいと言われております。日本は発注済みを含めて昭和六十三年までに四十五機購入することを決定していることは、米国の肩がわり防衛にやはり踏み込むのではないかという心配が出てまいります。この点についても御答弁をお願いしたいと思うのであります。
 一方、米、英、西独、仏四カ国戦略グループの共同報告として、西側の安全保障につき、米欧に日本を加え、負担の公平化による共同防衛の必要性を提唱、さらにこれと符節を合わせるように、総理の訪米直前、ワインバーガー国防長官は、日本における種々の制約を認識しながらも対日防衛力強化を要請、この一連の積極的な期待感は日を追うにつれ高まりを見せております。政府は従来の基本方針を不動のものとして貫ける確信があるでしょうか。
 また、在日米軍の財政負担をさらに軽減する点につきまして、政府は、すでに労務負担は限度いっぱいであるが、施設費はなお負担が可能であるとの見解を示しております。昭和五十四年度では百四十億余円、五十五年度では約二百二十七億円、五十六年度二百七十六億余円と伸びており、もはや限界に達していると思いますが、具体的に負担可能の見通しについて見解を伺いたい。
 以上述べた点を集約いたしますと、米国は対ソ脅威論を背景として、対ソ軍事優位を回復するためあらゆる手段を講じようとしていることがうかがえるのであります。同盟国の日本として、米国の世界戦略の中にいやおうなしに組み込まれていく危険はないかどうか、この点についてもお伺いするわけであります。
 総理は、訪米直前、平和国家の立場から、平和と活力ある国際社会を目指すとも、できることとできないことをはっきりさせたいとも言明されました。特に、われわれが要望しました非核三原則、非軍事大国について共同声明に明記されなかったのはなぜでありましょうか。
 軍備管理及び軍縮についてわずかながら触れられましたことは評価いたします。しかし、この項目こそ、核廃絶を初め、より具体的に示すべきではなかったでしょうか。これこそ世界平和への顕著な手がかりになるからであります。
 また、ソ連のアフガニスタンへの軍事介入以来、米ソ間はもとより西側にとりましても急速に関係が冷却化、改善へ向けての糸口すら見出せないようなありさまであります。このままの状態が続いている限り、平和への願望は遠のくばかりであります。西欧や中南米もこの冷戦路線を警戒しているときだけに、緊張緩和のため日米が具体的に何をしようとしているのか明らかにされなかった理由は何でありましたでしょうか。
 ブレジネフ書記長は、第二十六回党大会において八項目にわたる平和提案を行いました。米国の対応はどうであったかお伺いをするわけであります。
 日本の場合、先ほども若干質問が出たようでありますが、この対ソ関係について米国と同一歩調をとるのか、独自の立場を貫くのか、あわせて明らかにすることが望ましいと思います。
 最近、米国は、国連や海洋法会議において非協力的であることが指摘されております。国連重視の立場を推進する日本としてどのような話し合いがなされたのか、伺っておきたいのであります。
 総理は、南北問題について、日本は従来どおり南北の格差是正を中心に進めることを表明され、援助政策の基本が必ずしも米国と一致しなくてもよいとする方針でありました。南北問題の解決こそ平和に寄与する対応のはずでありますが、この件についていかなる話し合いがあったのでしょうか。
 最後に、ASEAN諸国に対し首脳会談の模様について伝えられた由であります。中国を含めその反応はどうであったかをお尋ねいたしまして、私の質問を終わることにいたします。(拍手)
  〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#74
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、同盟関係の意味についてでありますが、それは共同声明にもあるとおり、民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれた総合的な日米間の関係をとらえて表現したものであります。このような総合的な関係の中には、政治、経済、文化等の関係とともに、日米安全保障条約に基づく日米安保関係があることは客観的な事実であります。このような理解について、日本政府部内で考え方に不一致な点はございません。
 日米安保体制をその基盤とした日米関係は、自由と民主主義という基本的価値の上に立脚しておりますが、この二国間関係の今日の国際社会における責任の重要性はきわめて大きいものがあります。自由主義諸国で第一、第二の経済大国である日米両国の友好協力関係は、今日、両国国民のみならず世界の平和と繁栄を図る上できわめて重要な役割りを果たしており、かかる観点から、この日米間の特別に緊密な関係を同盟関係と表現した次第であります。
 なお、この同盟関係なる表現は、一昨年及び昨年の大平総理の訪米の際にも使われたところであり、この表現自体は新しいものでないことは周知のとおりであります。
 なお、共同声明第八項が日米の安保関係で従来と違った考え方を表明したという認識は持っておりませんし、この点は米国の認識と違いもありません。
 また、共同声明第八項で、レーガン大統領自身、日本が憲法及び基本的な防衛政策に従って防衛努力を行っていくことに理解を示しており、日米関係を同盟関係と表現しても、これが現在の日米関係の枠組みを変えるような新たな軍事的意味を持つものでないことは明らかであります。
 次に、対ソ戦略の役割り分担としてP3Cの配備を急いでいるのではないかとのお尋ねがありましたが、P3Cの整備については、昭和五十二年の国防会議の決定によって、対潜哨戒機の更新、近代化を図るため五十三年度以降逐次その整備を進めておりますが、これはあくまでわが国の防衛のため必要な防衛力として整備しているものであって、御指摘のように米側の肩がわりというものではございません。
 なお、米国の対ソ戦略に組み込まれるのではないかとの御心配でありますが、共同声明第八項から明らかなとおり、わが国が今後とも防衛努力を行うに当たっては、わが国の憲法及び基本的な防衛政策に従い、わが国として自主的に対処していくものであって、米国の対ソ軍事戦略に組み込まれるというようなことは全くございません。
 また、最近の厳しい国際情勢にかんがみ、わが国としてはなお一層の防衛努力を行っていく考えでありますが、これはあくまでもわが国自身の問題であり、自主的に行っていくべきものと考えております。
 共同声明の第四項は、米国が外からの脅威に対し確固たる姿勢を示し、また、同地域の安定の回復と自由世界共通の利益の確保に大きな努力を払っていることを確認したものであります。
 貿易、海運に大きく依存するわが国は、主要な通航ルートにおいての航行の自由が確保されることを重要視しており、そのための米国の努力を高く評価しております。いずれにしても、わが国としては、シーレーンの確保につきましては、沿岸諸国を含めあらゆる諸国との友好関係を増進し、平和外交を推進することによって円滑な国際航行を確保してまいりたいと考えております。
 在日米軍経費につきましては、従来から述べておりますように、労務費については、地位協定の解釈上はこれ以上わが国で負担する余地はありませんが、他方、施設面においては、地位協定の枠内でまだ努力する余地は残されていると思われます。
 次に、わが国の基本的防衛政策についてお尋ねがありましたが、わが国の防衛は、平和憲法のもと専守防衛に徹し、軍事大国にはならない、さらに非核三原則を国是とすることをその基本方針としているところであります。私は、今後ともこの方針を堅持し、自主的な防衛力整備と日米安保体制の円滑な運用によってわが国の安全を確保していく決意であります。
 なお、わが国が非核三原則を堅持し、また非軍事大国として国際社会における役割りを果たしていくことについては、従来より米側に対してわが国の基本的立場として説明してきており、米国も十分認識しております。今回の共同声明においては、これらの点について「憲法及び基本的な防衛政策に従って、」と表現しており、その上に立って世界の平和と安定のための方策を述べたものであります。
 また、私は、現下の国際情勢において、平和で安定した国際環境をつくり出すための努力の一環として、核軍縮を中心とする軍備管理、軍縮に向けての国際的努力の重要性、その役割りを十分に認識し日米首脳会談に臨んだところであります。かかるわが国の積極的姿勢は、共同声明において、真の意味での軍備管理、軍縮に向けての国際的努力の果たすべき役割りについての認識、及び核兵器の拡散防止の重要性の再確認として十分反映されていると考えます。
 私は、今回の訪米に際し、米側との間で国際情勢全般につき幅広く意見交換を行い、その中で、特にヘイグ国務長官との会談で、欧州における戦域核の規制問題、中南米情勢についても話し合いました。これらの議論をも踏まえ、私とレーガン大統領は、世界の平和と安定を前進させる上で、軍備管理及び軍縮に向けての国際的努力の果たす役割りの重要性につき共同声明において確認し合った次第でございます。
 今般の首脳会談におきましては、米側より、米国としては軍備管理等につきソ連と話し合いを続けていく用意があるとの立場が示されました。わが国としても、米ソ両国間の関係が改善され安定的なものとなることは、東西関係のみならず世界の平和と安定に重要な意義を有するものとの認識を有しております。わが国としても、ソ連との間で通すべき筋は通しつつも、いたずらに対決を求めることなく、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立すべく引き続き努力してまいる所存であります。
 次に、南北問題についてであります。
 すべからく経済協力を通じ、開発途上国の経済社会開発を支授し、民生の安定、福祉の向上に貢献することは、これら諸国の政治的、社会的安定をもたらすとともに、広く国際間の緊張を緩和することに貢献することに相なります。私はこのような認識のもとに、わが国としては、平和国家として、また自由世界第二位の経済力を有する国として、経済協力を通じて世界の平和と安定のため積極的に貢献していくこととしており、今後とも新中期目標のもとで政府開発援助の拡充に努めていくこと等について米側と話し合った次第であります。
 米中関係については、レーガン大統領より、米国は中国との友好関係の増進を引き続き図っていく旨発言がありました。これに対し私より、わが国としては中国が穏健な政策のもとに西側との協調関係を維持していくことを歓迎しており、かかる観点より中国の近代化政策に引き続き協力していくとのわが方の考え方を表明いたしました。
 最後に、私は、昨日、ASEAN各国首脳とそれぞれ二、三十分間にわたりまして電話で連絡をとり、訪米の模様について報告をいたしました。各国首脳は、いずれも私が訪米直後にみずから電話で報告したことを喜んでおりました。また、訪米の際、私からレーガン大統領に対し、日本が今後ともASEAN諸国の発展に協力する旨述べるとともに、ASEAN側から伝達方を要望されたところの点につきまして、米国がアジアに対し一層の関心を示すことを表明したことをお伝えした次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#75
○副議長(秋山長造君) 上田耕一郎君。
   〔上田耕一郎君登壇、拍手〕
#76
○上田耕一郎君 今回の日米首脳会談と日米共同声明は、激動の八〇年代に自民党政権がきわめて重大な選択に踏み切ったことを示すものとなりました。これは恐らく一九五一年の単独講和、六〇年の安保改定に続く、日本国民に不幸をもたらす危険な選択となるでありましょう。
 私は、日本共産党を代表して、鈴木総理と関係閣僚に幾つかの質問を行いたいと思います。
 第一は、日本外交の基本姿勢についてであります。
 政府はこれまで、言葉の上では「全方位外交」とか「自主外交」とか繰り返してきました。ところが、共同声明、ナショナル・プレスクラブでの演説が示すものは、レーガン戦略への完全な組み込まれと徹頭徹尾の対米追従以外に何もないではありませんか。西側先進民主主義国、すなわち紛れもない帝国主義陣営の一員としてレーガン政権の指揮棒に従い、社会主義諸国、第三世界の民族解放運動を敵視し、日本の軍備拡張と軍事分担を引き受け、日本経済の自主的基盤を掘り崩す約束が盛りだくさんに羅列されているだけであります。
 党首会談でわが党が提起した岩国の核部隊撤去の申し入れや核兵器禁止の核軍縮提案はおろか、日本国民の多くが抱いているレーガンの超タカ派路線に対する危惧や批判も何一つ見当たらないのはどういうわけですか。総理は、レーガン政権の対外政策に何らの自主的批判を持っていないのか、せめて西ヨーロッパ諸国並みの警告ぐらいは一言でも口にしたのかをまずお聞きしたい。
 第二は、日米共同声明に対する総理の政治責任と見識についてであります。
 異例なことに、今回の共同声明は、第二回首脳会談に先立つ八時間半前に事実上公表されました。総理は帰国後、その内容と作成経過に不満を漏らし、本日の閣議でも、「共同声明が会談を反映していない、官僚主導のやり方を再検討する」と述べたと夕刊に報道されています。一体、総理は、声明全文に責任を自覚して承認を与えたのか、承認しても意味がわからなかったのか、それとも外務官僚の手で完成され、最終的承認を待たずに公表されてしまったのか。いずれにせよ、日本の首相としての識見と資格、政治責任にかかわる前代未聞の奇怪な事態であり、国会にその真相及び本日の閣議内容を明らかにすべきであります。
 第三は、すでに日米間、また政府部内での不一致が暴露された日米の「アライアンス」、「同盟関係」の意味についてであります。
 この規定は、日米共同声明では初めてのことであります。しかも、総理は第七項で「国際的挑戦」に対する西側全体としての「防衛」対処を留保なしに誓い、プレスクラブ演説では米国中心の「平和維持戦略」について語り、日米安保体制を「国際政治の枠組みの重要な柱」と位置づけました。同盟という言葉が日米軍事同盟のNATO化、すなわち憲法九条改正を前提とした安保条約双務化の方向と受け取られるのは当然でしょう。総理の言う「第三の出発」とは、この方向を目指すものなのか。そうでないと言うなら、集団自衛権条項を含む稲葉試案を土台として自民党憲法調査会が進めている改憲草案づくりを自民党総裁として直ちに中止させるべきではありませんか。
 第四は、軍事分担の問題であります。
 共同声明八項には、「日本の防衛並びに極東の平和及び安定」のための「適切な役割りの分担」が明記されました。安保条約の評価に続く文脈からいっても、その意味が軍事的分担であることに疑問の余地はありません。安保条約第六条の極東条項でこれまでもっぱら米軍が当たっていた分野を新たに自衛隊が肩がわりすることは、日本をアメリカの戦争に巻き込む安保体制の危険性をさらに大きくすることにほかなりません。この問題に関し、総理は内外の記者に対してきわめて重大な発言を行っております。
 そこで、総理並びに外相にお聞きしたい。「第七艦隊がインド洋、ペルシャ湾に移動した留守を守る」と言われたが、それなら第七艦隊の肩がわりそのものであります。伊東外相流に言えば、結果として西北太平洋でアメリカの艦船を守ることもあるのですか。安保条約の範囲をさえ逸脱した集団自衛権発動の約束を総理はアメリカと取り交わしたことになるではありませんか。
 総理は、また「周辺海域数百マイル、海上輸送路一千マイルをわが国の自衛の範囲内として守る」、「国土、領海、領空、周辺海域、固有の自衛のための防衛だ」と答えています。これまで「作戦行動範囲」としてきた政府答弁を覆すこのような重大な対米表明を総理自身がなぜ行ったのか。そして、グアム以西、フィリピン以北と重なる広大な公海を日本の庭と称して、新たに「自衛の範囲」と規定する国際法上の明確な根拠をお伺いしたい。
 第五は、軍拡大増税という問題です。
 すでに総理がワインバーガー国防長官との会談でもシーレーン千海里防衛の決意を表明した事実も確認されています。この周辺海空域の防空、対潜哨戒に当たるにはどれだけの規模のP3C、F15などの新装備が必要になるのですか。その具体化が六月の二つの日米会談に期待されるなら、結局GNP一%を超える軍拡大増税は避けられないと思うがどうか。
 総理、レーガン政権の対日要求の一つは、平時編成の防衛計画大綱を戦時にふさわしいものに見直せというものだったという報道は事実ですか。今後、大綱の昭和六十二年以前の繰り上げ達成と見直しもあり得るのかどうか。防衛庁長官にあわせて答弁を求めるものであります。
 第六は、この第八項と密接な関連を持った第四項の中東条項についてであります。
 総理は、中近東、湾岸地域の「米国の確固たる努力」なるものを「貢献」とみなし、それにより日本にも「裨益」していると認めました。それでは、昨年来アメリカが提唱し、今回のNATO国防相会議でも大問題となったこの地域の西側多国間共同部隊設置やそのための基金構想について、日本が何らかの協力を将来行うこともあり得るのですか。総理並びに外相の責任ある答弁を要求します。
 今回の会談と声明を契機として、日本は戦争準備と軍拡、軍事大国化への危険なレールの上を走り始めようとしています。鈴木内閣と自民党並びにその追随勢力は、その全結果に対し全責任を負わなければなりません。私は、こうした事態を生む根源が、まさに三十年間わが国をアメリカに縛りつけてきた日米安保体制にあることを強く指摘するものであります。
 総理は、先日の訪米報告で、わが国に対する国際的期待の高まりについて触れられました。私も同じ感想を持っています。しかし、日本に期待されている国際的役割りの中身は、あなたが考えているものとは正反対であります。平和憲法、非核三原則を持つ世界唯一の被爆国として、日米安保条約を廃棄し、非同盟中立の道を選択し、平和と軍縮、すべての軍事同盟解消、新国際経済秩序の実現に貢献することにこそあるという日本共産党の深い確信を表明して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#77
○国務大臣(鈴木善幸君) 私は、上田さんの個人的御見識については敬意を持っておる一人でありますが、今回の日米首脳会談の分析と評価につきましては、残念ながら共産党的偏ったものであって、国民の大多数はこのようには見ていないということを私は確信いたすものでございます。
 次に、共同声明そのもの認識については、先ほどお答えをいたしたとおりでございます。
 まず、わが国外交の基本姿勢についてお尋ねでございます。
 政府としては、これまでも自由と民主主義という理念をともにする米国との友好協力関係を基軸とし、自由主義諸国との連帯強化に努め、これを基盤として世界の国々との友好協力の輪を広げていくとの外交を進めてきております。かかる外交の基本姿勢には何ら変わりはありませんので、御指摘のごとき危惧には及ばないものと考えます。
 私は、核軍縮を中心とする軍備管理、軍縮に向けての国際的努力の重要性及びその役割りを十分に認識し日米首脳会談に臨んだ次第であります。その点は共同声明にも明記されております。もっとも、政府としては、御指摘の核兵器の全面禁止は現実的でなく、現下の国際情勢において実現可能な公平かつ相互的な具体的措置を一つ一つ積み重ねることが肝要であると考えております。
 なお、政府としては、米国が安保条約及び関連取り決めのもとにおける約束を履行してきておることについては何らの疑いも有しておらず、岩国に核兵器があるといったことはありません。
 国際情勢について、レーガン大統領との間では東西問題、アジア情勢を中心にそれぞれの立場から幅広く意見交換を行いました。現下の厳しい国際情勢に対する基本的認識については一致を見ましたが、これにどのように対処するかについてはそれぞれの国のやり方があります。私は、この点について、レーガン大統領との間において率直な意見交換を行った次第であります。
 共同声明の日米両国間の同盟関係の意味とは、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれた総合的な日米間の関係をとらえて表現したものでありまして、日米関係を同盟関係と表現したからといって、それが現在の日米関係の枠組みを変えるような新たな軍事的意味を持つものではありません。私がニューヨークの演説で述べた第三の出発も、御指摘のようなことを意味するものではないわけでございます。
 なお、自由民主党の憲法調査会の検討作業を中止しろとの御意見でありましたが、自由民主党の憲法調査会は、現行憲法に問題点があるかどうか、ありとすればどの点かということを、いわば白紙の立場で調査研究しておるのであって、国民政党である以上憲法について勉強することは当然であり、検討作業を中止させるつもりはありません。
 共同声明の述べている役割り分担の考え方は、従来に比し新しいことを述べたものではありません。わが国が自国の防衛上の観点から自衛力の整備を進めることは当然のことであります。しかし、わが国がいわゆる集団的自衛権を行使し得ないことは憲法上明らかであり、極東の平和と安定のための日本の役割りは、日米安保条約の円滑な運用のほか、政治、経済、社会、文化の各分野における積極的平和外交の展開に重点が置かれることになります。
 上田議員は、役割り分担によって防衛計画の大綱の見直し、前倒し達成は軍事費のための大増税が続くと国民を惑わすような発言をされましたが、共同声明に述べている役割り分担は従来に比べて新しいことを言っておるのではございません。政府は、従来から防衛計画の大綱に定める防衛力をできるだけ早く達成することが必要であるとのことは繰り返し申し述べているところであります。しかし、財政、国民世論、各般の情勢等いろいろの政策との整合性を持ちながらこれを着実に進めてまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣伊東正義君登壇、拍手〕
#78
○国務大臣(伊東正義君) 上田さんにお答え申し上げます。
 私につきましては大体二点の御質問でございますが、私が何か集団的自衛権があるような、海域分担に通ずるようなことを言ったということをおっしゃったのでございますが、私はそんなことを毛頭言った覚えはございません。役割り分担の中には何も新しいことがないのでございまして、これは従来の役割りを書いただけでございます。でございますので、集団的自衛権を前提にした海域分担というようなことは全然ございませんから、誤解のないようにお願いを申し上げます。
 それから中東の問題でございますが、中東の問題については、これはアメリカがあの地域の安定の確保と自由世界の利益確保に努力しているということを認めたことは声明に書いてあるとおりでございますが、上田さんがおっしゃるような、西側の多国間の共同部隊でございますとか、あるいは防衛基金とか、こういう問題につきましては、具体的な要請はございませんし、まだ内容もつまびらかにしておりません。日本としては、これは軍事面の協力ができないことはもうはっきりしているわけでございますから、この地域に対しまして、外交あるいは経済協力という面でこの地域の安定あるいは発展に協力していくというのが日本の中東地域に対する考え方でございます。(拍手)
   〔国務大臣大村襄治君登壇、拍手〕
#79
○国務大臣(大村襄治君) 上田議員の御質問に対してお答えいたします。
 まず最初に、周辺海域の防空対潜哨戒能力には、P3C、F15など、どれだけの装備が必要になるのかという趣旨のお尋ねでございましたが、政府はこれまでにたびたび申し上げておりますように、わが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の周辺海域において海上交通の保護が行い得ることを目標にいたしまして、防衛計画の大綱に基づき防衛力の整備を行っているところであります。このための具体的装備につきましては、装備の更新、近代化等、今後五六中業等において検討してまいる所存であります。
 次に、六月末予定の大村・ワインバーガー会談では、防衛計画の大綱の見直し、大綱水準の六十二年以前の達成、GNP一%以上の軍事費を約束することがあり得るのかというお尋ねでございますが、日米両国の防衛責任者が日米安保条約の円滑な運用に関し十分意思疎通を図っておくことは重要なことであります。私の六月末の訪米に際しましては、総理訪米の結果を踏まえ、憲法及び防衛に関する基本的政策にのっとりながら米側と素直に話し合い、相互理解を深めたいと考えております。
 なお、私の訪米に際してどのような問題について話し合うかについては現在なお検討中でありますが、御質問のような点についてはまだ具体的なことを考えているわけではございません。(拍手)
    ―――――――――――――
#80
○副議長(秋山長造君) 木島則夫君。
   〔木島則夫君登壇、拍手〕
#81
○木島則夫君 私は、民社党・国民連合を代表して、日米首脳会談に関する政府の報告に対し、総理並びに関係大臣に対し質問をいたします。
 戦後三十六年、わが国は平和と安定を享受しながら成長を続け、いまや世界第二位の経済力を持つに至りました。その大きな前提となったのは、言うまでもなく世界の平和が維持されてきたからであります。わが国が今後も安定的な発展を図ろうとするならば、何よりもまず世界の平和が維持されなければなりません。そのためには、これまでのように平和の恩恵だけを得ようとする受け身の外交姿勢ではなく、世界第二位の経済大国としての自覚と責任を持って積極的に世界平和をつくり出していく努力を進めなければなりません。その場合、自由で民主的な社会体制を基調とするわが国は、同様の価値観に立つ西側と連帯し、その一員として世界の平和と安全に自主的に貢献をしていくことは当然の義務と考えます。
 世界はいま、ソ連のアフガニスタン侵攻以後の米ソデタントの後退、中東情勢の不安定化、さらにはポーランドをめぐる緊張等によって国際情勢はきわめて複雑かつ厳しい状況を迎えています。こうした中で、アメリカのレーガン政権がこういった問題にどう対処するかは世界の安全と平和にとって大きなかぎを握っていると言えましょう。そのアメリカは、七〇年代、ベトナム、ウォーターゲート、イラン問題などを抱え、最も力の低下した時期でありました。八〇年代を迎え、西ヨーロッパでは、まずアメリカに自信を回復させ、それによってソ連との力関係を対等になし、そこから徹底した話し合いを含む平和戦略の展開、つまり安全保障即デタントであるという認識のもとに平和と安全を確保しようというのがわれわれの認識であります。したがって、七〇年代のデタントと八〇年代のデタント指向とは本質的に意味を異にしています。こうした状況の中で行われた日米首脳会談は、これまでにない広範かつ重要な意義を持つことは当然でありましょう。
 質問の第一点は、今回の共同声明で初めてうたわれた日米の「同盟関係」という点です。
 同盟関係とは具体的にいかなる関係を指すか。今回初めて「同盟関係」と公式に規定した理由は何か。従来から取り交わされた「友好関係」とどのような違いがあるのか。総理は国民に率直に語り、理解を求める責任があります。
 特に、再三にわたって指摘されているように、「同盟関係」に軍事的要素が含まれるかどうかについて、総理と外務大臣の発言に食い違いが見られることはきわめて重要な問題です。同盟関係の基盤が日米安保条約にある以上、安保条約の範囲内で軍事的要素が含まれるのは当然で、さきの衆議院(しゅうぎいん)予算委員会でわが党議員が、訪米した前大平総理と前カーター大統領との会談後の演説で使った「日米同盟」の意味合いをただした際、鈴木総理は「軍事的色彩」をお認めになっておられるわけであります。
 政府は、これまでわが国の外交、防衛政策について、とかく対米発言と国内向け発言とを使い分けてまいりました。こうした姿勢こそ逆に日本とアメリカの友好を損ない、わが国の安全保障へのコンセンサスづくりに水を差し、これがひいては政治不信にもつながっていくことを厳に戒めるべきであると思います。この際、総理並びに外務大臣から軍事的要素が含まれるのかどうか、率直にお聞きをしたい。
 質問の二点目は、同盟関係に伴う「日米両国間の適切な役割り分担」についてであります。
 先ほども触れたように、七〇年代のデタント指向と八〇年代のデタント指向は本質的に異なります。八〇年代のそれは、アメリカの自信回復を図る、そのことでソ連と対等な話し合いを展開し、ここから積極的な平和戦略の推進が可能になるという認識です。
 さて、総理は、共同声明において、役割分担に伴うわが国の領域及び周辺海空域における防衛力の改善に努力することを表明されておられます。これは役割り分担の重要な内容となると思われますが、総理はどのような御認識をお持ちなのか。
 また、総理は、首脳会談後の記者会見において、周辺海空域の範囲を領土周辺数百海里、航路帯一千海里と言明されました。そのための防衛体制はいつまでにどのようにして整備されるのか。政府は、防衛大綱の見直しは行わない、また防衛費の対GNP一%の枠も維持すると再三にわたって言明をされておられるが、本格的に周辺海域、空域の防衛力整備を進めようとするならば、こうした制約の見直しなくして実現可能なのかどうか。
 わが国の防衛力整備を具体的に規定する防衛大綱、対GNP一%の枠と今回の共同声明とが相互の関連性においてもまた整合性においても問題があり、わが国の憲法そのほかの制約を厳守した中で、本格的な海空域の防衛力整備がなし得るものかどうか。新たな国際情勢に対応した防衛力整備の方針を具体的にお示しいただきたいと思います。
 なお、周辺空域に航路帯上空も含まれるのかどうかについても外務省と防衛庁で見解の不一致のあったことは遺憾であります。この点も含め、これらの問題に対する総理並びに関係大臣の明確なお答えをいただきたい。
 質問の第三点は、今後のわが国の平和戦略についてであります。
 厳しい国際情勢に対応し、日本が自国の防衛に一層の努力を払うとともに、アメリカを中心とする西側との連帯協力関係を強化すべきは当然です。と同時に、世界の緊張を緩和し、積極的に世界平和に貢献する努力、つまり平和戦略の進展がなくてはなりません。共同声明で見る限り、平和戦略推進の努力はきわめて不十分だったのではないか。総理は、米ソのデタント回復、米ソの核軍縮の推進等について、アメリカ側にどのような進言をされたか。また、一連のソ連の行動に対し「憂慮の念」の表明がありましたが、日米間の対ソ認識に食い違いはなかったか。そして、日本として今後どのような対ソ政策を進めていくか。
 また、共同声明では重要地域への経済援助の強化がうたわれております。これまでの南北問題解決の見地から行ってきた経済援助を、今後は安全保障的見地から進めるという方針転換なのかどうか。平和戦略の上からも重要な点でありますので、方針転換か否かをはっきりとお示しいただきたいと思います。
 同じく共同声明では、カンボジア問題の政治解決の重要性が表明されました。カンボジアでの反ベトナム統一戦線の構築とも絡み、今後のわが国の対応が注目されます。カンボジア問題解決に果たすわが国の役割りと実行について伺います。
 厳しさを増す国際情勢のもと、平和戦略の推進にしろ、西側との連帯の強化にしろ、日本の国情と国力に見合った自主的かつ積極的な対応は当然であります。対ソ制裁措置を真っ先かけて呼びかけたアメリカは、自国の都合により穀物の禁輸を解除しました。鈴木総理への事前協議がなされませんでした。パートナーをもって任ずる日本政府にはショックであったと思います。その背景に日本外交の独自戦略の欠如があったこともさることながら、アメリカ外交のしたたかさと、このことが緊張緩和にも貢献する現実を直視すべきであろうと思います。日米のより緊密な結びつきと、その中で独自の戦略に立つ日本外交の自主的運営を厳しく要請して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#82
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 共同声明の日米両国間の同盟関係の意味とは、民主主義及び自由という両国が有する価値の上に築かれた総合的な日米間の関係をとらえて表現したものであります。このような総合的な関係の中には、政治、経済、文化等の関係とともに、日米安全保障条約に基づく日米安保関係があることはこれは紛れもない事実であります。日米関係を同盟関係と表現したからといって、それが現在の日米関係の枠組みを変えるような新たな軍事的意味を持つものではありません。
 共同声明の日米両国の同盟関係は、友好関係に比し基本的な相違があるわけではなく、友好親善関係をさらに強調し、世界の平和、繁栄という共通の目的のもとに緊密に連帯協調しているという意味合いを含む密接な関係を特に示した表現でございます。
 共同声明で述べている役割り分担の考え方は、従来に比し新しいことを述べたものではございません。わが国が集団的自衛権を行使し得ないことは憲法上明らかであり、極東の平和と安定のための日本の役割りは、日米安保条約の円滑な運営のほか、政治、経済、社会、文化の各分野における積極的な平和外交の展開に重点が置かれることとなります。また、わが国が自国の防衛上の観点から自衛力の整備を進めることは当然であります。
 次に、周辺海域の防衛体制についてでありますが、わが国の海上交通の保護については、政府は、従来からわが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合はおおむね一千海里程度の海域において行うことができることを目標に海上の防衛力の整備を図っているところであります。このため、今後とも防衛計画の大綱に基づき、海上交通保護のための防衛力の改善になお一層努めてまいる所存であります。
 今回の日米首脳会談では、世界の平和と繁栄を目指し、両国がいかに連帯協力していくかにつき率直に意見の交換を行いました。わが国としては、現下の国際情勢において、平和で安定した国際環境をつくり出すための努力の一環として、核軍縮を中心とする軍備管理、軍縮に向けての国際的努力の重要性及びその役割りを十分に認識しており、かかるわが国の積極的姿勢については米国側の理解を得られたものと考えており、共同声明にも反映されております。
 また、私はレーガン大統領との間で、現下の国際情勢に対する基本認識についても意見交換を行い、東西関係については、ソ連の軍事力増強、アフガニスタンへの軍事介入などの第三世界におけるソ連の動きに対し憂慮の念を示すとの認識において意見の一致を見たところであり、このような基本的な現状認識については日米両国の考え方に差はありません。
 日ソ関係につきましては、政府としては、従来よりしばしば明らかにしているとおり、ソ連との間でいたずらに対決を求めることなく、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することをわが国外交の重要課題の一つと考えており、今後ともかかる方向で対処していく考えであります。そのためには、ソ連の側において、現在の日ソ関係を阻害している要因を除去するための努力を見せてもらいたいと考えております。
 経済協力についてでありますが、開発途上国の経済的混乱は政治的、社会的不安定を惹起し、国際的な紛争の引き金ないし国際的緊張の原因ともなりかねません。今回の共同声明にあるように、世界の平和と安定の維持のためには開発途上国の政治的、経済的及び社会的安定が不可欠であると考えます。したがって、経済協力を通じ、開発途上国の経済社会開発を支援し、民生の安定、福祉の向上に貢献することは、これら諸国の政治的、社会的安定をもたらすとともに、広く国際間の緊張を緩和することに貢献することになります。
 以上の認識を踏まえ、わが国は、平和国家として、また自由世界第二位の大きな経済力を有する国として、従来より経済協力を通じて世界の平和と安定に積極的に貢献していくこととしております。したがって、今回の共同声明により、わが国の援助政策に新たな転換があったわけではございません。
 以上、お答えをいたしましたが、残余の問題につきましては所管大臣からお答えをいたします。
 なお、先ほど上田さんに御答弁申し上げたことについては、そのとおりでございますので、確認をいたしておきます。(拍手)
   〔国務大臣伊東正義君登壇、拍手〕
#83
○国務大臣(伊東正義君) 私には二問でございますが、同盟関係の中に軍事が入っているかどうかという御質問でございますが、これは総理が詳細お答えになりましたので、同じでございますので御答弁を省略させていただきます。
 もう一つは、カンボジアの問題を共同声明に書いているわけでございまして、日米両国とも、国際会議を開いてなるべく早く政治的な解決を図るように努力しようということを両方で話したのでございますが、カンボジアの中で起きております第三勢力の問題につきましては、これはカンボジア人自身が決定をすべき問題でございますので、どの勢力がいいとか悪いとか、どの勢力を支援するとか、そういうことを日本が言うことは適当でないというふうに考えております。
 なお、第三勢力がソン・サン元首相とかシアヌーク殿下とか、いろいろ名前が出ているわけでございますが、民主カンボジア政府が国内の基盤を民主的に拡充していくということ、内外の基盤を広めていくということは結構なことでございますので、日本としましてはこの動きに対して好意的に見守っている、アメリカ側も同じような意見で話し合ってまいったところでございます。(拍手)
   〔国務大臣大村襄治君登壇、拍手〕
#84
○国務大臣(大村襄治君) 私に対するお尋ねは三点ほどあったかと思います。
 まず第一、防衛計画の大綱の見直しについてでありますが、政府は、現在防衛計画の大綱にのっとり、わが国を防衛するため必要な限度において、わが国及びわが国周辺海空域においてわが国に対する武力攻撃に対処するための防衛力の整備に努めているところでありますが、まだ防衛計画の大綱に定める防衛力の水準に到達していないのが現状でございます。したがいまして、同水準の可及的速やかな達成を図ることが必要であると考えており、いま直ちに防衛計画の大綱を改正することは考えておりません。
 また、政府といたしましては、当面、各年度の防衛関係費はGNPの一%を超えないことをめどとしてこれを行うという昭和五十一年十一月の国防会議及び閣議における決定に基づいて防衛力整備を行っているところでありまして、現在これを変える考えは持っておりません。
 次に、防衛力整備の方針についてのお尋ねについてでありますが、今般の総理訪米における共同声明及び総理発言に述べられておりますように、自主的に、かつ憲法及び基本的な防衛政策に従いながら、世論の動向、財政事情等を勘案しつつ、防衛庁といたしましては、現下の厳しい国際情勢にもかんがみ、防衛計画の大綱に定める防衛力の水準を可及的速やかに達成するため鋭意防衛力整備を行っているところであります。この点につきましてはたびたび申し上げてきているところでありますが、今後ともこの方針に基づいて、なお一層の努力を払ってまいる所存であります。
 最後に、周辺空域についてお尋ねがございましたが、政府は、わが国を防衛するために必要な防衛力の整備を図るに当たりまして、わが国の周辺空域における自衛権の行使に必要な防衛力につきましても、その整備に努力しているところであります。本来、周辺空域とは、航空自衛隊が航空侵攻等に対処するために必要な範囲を一般的に指すものでありまして、サイト・レーダーの探知距離、要撃戦闘機の行動半径などによりおのずから制約されるものでありますが、一定の空域を具体的に特定して考えているわけではございません。
 また、海上自衛隊においては、周辺海域数百海里、航路帯を設定する場合は千海里程度の海域における海上交通の安全を確保できることを目標として、航空機を含む防衛力の整備を図っており、このような観点から、このような海域の上空についても、そこにおいて行動する海上自衛隊の航空機の整備に当たって考慮されているものであります。このことにつきましては、外務省と防衛庁との間で見解の不一致があるとは考えておりません。(拍手)
#85
○副議長(秋山長造君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#86
○副議長(秋山長造君) 日程第二六 国務大臣の報告に関する件(農業基本法に基づく昭和五十五年度年次報告及び昭和五十六年度農業施策、林業基本法に基づく昭和五十五年度年次報告及び昭和五十六年度林業施策並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和五十五年度年次報告及び昭和五十六年度沿岸漁業等の施策について)
 日程第二七 食糧管理法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 以上両件を一括して議題といたします。
 まず、農林水産大臣の報告及び趣旨説明を求めます。亀岡農林水産大臣。
   〔国務大臣亀岡高夫君登壇、拍手〕
#87
○国務大臣(亀岡高夫君) 農業、林業及び漁業の各昭和五十五年度年次報告並びに昭和五十六年度において講じようとするそれぞれの施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、農業について申し上げます。
 農業基本法制定以降のわが国農業の動向を見ますと、農業は、増大する食料需要に対応して生産を伸長させ、生産性を高めつつ国民の基本食料の大部分を供給するという役割りを果たすなど、国民経済の発展と国民生活の向上に寄与してまいりました。
 しかし、農業生産は、畜産物、野菜、果実等が大きく増加しましたが、麦、大豆は減退し、米は供給過剰状態が続いております。また、農業の製造業に対する比較生産性は大幅な是正には至っておりません。他方、農家の生活水準については、農家の一人当たり家計費は、勤労者世帯のそれを上回っておりますが、これは、主として兼業所得の増加によるものであります。農業構造の面では、中小家畜、施設園芸等では経営規模の拡大が進みましたが、稲作等では農地価格の上昇等から経営規模の拡大が停滞的に推移してまいりました。
 最近の農業をめぐる情勢を見ますと、穀物等の国際需給は、昨年の世界的な異常気象の影響等により逼迫に向かい、穀物の在庫率は近年になく低い水準にあり、また、長期的にも楽観できない状況にあります。
 食料消費につきましては、経済の安定成長下において、国民の実質所得の伸びの低下等に伴い食料消費支出の伸びの鈍化が見られます。また、わが国の食生活は、米、魚、野菜を中心に畜産物等を組み合わせた日本型食生活が形成されつつあり、平均的に見た国民の栄養水準はバランスのとれたものとなっておりますが、脂肪分の多い食品が高いテンポで増加を続けるならば、栄養の偏りが問題となるおそれもあります。
 農業生産につきましては、畜産、園芸等が順調に伸びておりますが、五十五年には記録的な冷害により米を中心に大きい被害が発生いたしました。
 農産物の需給は、米の過剰が続き、牛乳、ミカン等多くの農産物も需給緩和傾向が続いており、農産物の生産者価格は低迷いたしております。
 こうした中で、農家経済を見ますと、五十四年度の農業所得は前年度を下回りましたが、農外所得の伸び等により農家総所得は前年度を上回っております。また、五十五年には、冷害の影響により農業所得は前年をさらに下回って推移しておりますが、農業共済金の早期支払い、農外所得の増加等により農家総所得はなお増加いたしております。
 水田利用再編対策は、五十四、五十五年度とも目標を上回って実施され、麦、大豆、飼料作物等の作付が大幅に増加しておりますが、今後とも転作等の一層の推進と定着化を図ることが必要となっております。
 農業構造の面では、借地による農地流動化の兆しが見られ、基幹男子農業専従者のいる農家を中心に規模拡大等経営の発展を図る動きが見られます。
 このような農業の動向の中で、農政の当面する重要な課題は、第一に、農業生産の再編成等を通じ、総合的な食料自給力の維持強化を図ること、第二に、農産物価格及び農業生産資材価格の安定を図るとともに、流通加工の合理化を進めること、第三に、農地の流動化等農業構造の改善を一層推進するとともに、農村の計画的整備を図ることであります。
 このような最近の農業の動向を踏まえ、五十六年度の施策としては、食料の総合的な自給力の維持強化を図ることを基本として、地域の実態に即した構造政策の推進、需要の動向に即応した農業生産の振興、農業生産基盤の整備、住みよい農村の建設と農業者の福祉の向上、農産物の価格安定、流通加工の合理化と消費者対策の充実、農業技術の開発と普及事業の拡充、備蓄対策の推進、国際協力の推進等各般の施策を進めることとしております。
 第二に、林業について申し上げます。
 まず、木材需要は、五十四年には増加したものの、五十五年には住宅建設の著しい不振から減少が見込まれております。一方、供給は、外材のシェアが七割近くを占め、その内容については製材品輸入の増加が目立っております。
 次に、木材価格は、五十四年から五十五年にかけて大幅な上昇と下落を示しましたが、五十五年の価格の下落、取引量の縮小は木材流通加工部門に深刻な不況をもたらしております。
 林業生産活動につきましては、五十四年には、丸太生産量は増加しましたが、造林は依然として減少を続けております。また、五十五年末から五十六年初めにかけて、東北、北陸地方を中心に大規模な雪害が発生し、その早期の復旧が課題になっております。
 さらに、現在不況に見舞われている木材流通加工部門につきましては、木材需給両面のさまざまな変化に対応し、住宅部門との連携、間伐材の有効活用等により、合理化、近代化の方向を見出していくことが必要となっております。
 このような状況のもとで、今後の重要な課題は、第一に、間伐の促進等森林資源の整備と国土保全対策の充実を図ること、第二に、木材の需給及び価格の安定と国産材供給体制の整備を図ること、第三に、活力ある山村の育成と林業の担い手対策の充実整備を図ることであります。
 以上のような最近の林業の動向を踏まえ、五十六年度におきましては、林業生産の増進、林業構造の改善、林産物需給の安定及び流通加工の合理化、林業の担い手対策の強化、国有林野事業の経営改善等各般の施策を推進することといたしております。
 さらに、雪害につきましては、先般、いわゆる激甚災害法の一部改正をいただき、森林災害復旧事業が制度化されたところであり、その適切な運用により森林被害の早急な復旧を図る所存であります。
 第三に漁業について申し上げます。
 最近におけるわが国漁業をめぐる情勢は、海洋新秩序の形成が進む中で、水産物需要の停滞、燃油価格の高騰等きわめて厳しいものがあります。
 水産物の生産量は、一千万トンの水準を維持しておりますものの、今後、その安定的供給を確保していくためには、わが国沿岸域での生産振興ときめ細かい漁業外交が必要となっております。
 水産物の需要は、経済の安定成長への移行の中で、食生活の変化等によりその伸びは鈍化し、今後は消費者の嗜好に合った水産物を安定した価格で供給していくことが重要となっております。
 一方、漁業経営は、燃油高騰の影響の浸透により厳しい環境に直面しております。
 このような状況のもとで、今後の重要課題は、第一に、わが国周辺漁業の振興、きめ細かい漁業外交の展開等と流通加工の合理化を進めること、第二に、漁業経営の合理化を図るとともに、生産構造の再編について取り組むこと、第三に、豊かな漁村づくりと漁業従事者の福祉の向上を図ることであります。
 以上のような最近の漁業の動向を踏まえて、昭和五十六年度におきましては、わが国周辺水域における漁業の振興、水産業経営対策の充実、漁業生産基盤の整備と豊かな漁村の建設、海洋水産資源の開発と海外漁場の確保、水産物の流通加工、価格、消費対策等の充実、漁業従事者の養成確保と福祉の向上、漁場環境保全対策等各般の施策を進めることとしております。
 以上をもちまして、農業、林業及び漁業の各年次報告並びに講じようとする施策の概要の説明を終わります。
 次に、食糧管理法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 食糧管理法は、昭和十七年に制定されて以来、戦中戦後を通じその時々の食糧事情等の変化に対応しつつ国民食糧の確保と国民経済の安定に重要な役割りを果たしてまいりました。このような基本的役割りは、中長期的には楽観を許さない食糧事情を考慮すれば、今後ともなお重要な意義を有するものと考えられます。
 しかしながら、食糧管理法は、食糧の絶対的不足時を念頭において制定されているため、厳格な配給制度に見られるように、消費者需要の多様化等現下の種々の経済環境の変化に弾力的に対応しがたい側面を有するとともに、規制内容と経済実態の乖離が生じ、法律の条項が遵守されがたいという問題も生じております。
 したがって、政府が国民の必要とする米穀を自主流通米も含めて管理するという現行制度の基本は維持しつつ、需要動向や流通実態に即応し、過剰、不足いかなる需給事情の変動にも的確に対応し得るよう管理制度の内容を改正する必要があります。これにより、稲作農業の安定を図りつつ国民の必要とする主食たる米穀を安定的に供給するという食糧管理制度の基本的役割りを、今後とも政府が責任を持って全うすることが可能になるものと考えております。
 以上の理由により、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一は、通常時における厳格な配給制度の廃止及び緊急時における配給の実施等のための規定の整備であります。
 現行制度における消費者までの配給割り当て及びこれを基礎とした配給計画並びにこれらを担保するための購入券規制を内容とする厳格な配給統制につきましては、通常の需給事情のもとでは存続させる意義が認められず、また、国民一般にとって遵守しがたい規制となっておりますので、これを廃止することとしております。しかしながら、需給が逼迫する等により米穀の安定供給に著しい障害が生ずるような事態においては、現行制度のような公平配分の考え方に基づく配給統制の仕組みを発動し得ることとし、このための所要の規定を設けることとしております。
 第二は、需給調整その他の法目的遂行のための米穀の管理に関する基本計画の樹立及び消費者に対する米穀の供給計画の策定であります。
 厳格な配給統制を廃止した状況のもとで国民に対する米穀の安定供給を実現していくためには、政府が生産者と消費者との間に立って、品質等の要素にも配慮しつつ責任を持って時々の需給変動に対応するという考え方のもとに、政府の米穀の管理の方向づけを明確にする必要があります。
 このため、農林水産大臣は、毎年、米穀の管理に関する基本方針等を内容とする基本計画を樹立し、公表して、米穀の生産、流通、消費に関する基本的な指針とすることとしております。
 また、との基本計画に即して消費者に対する適正かつ円滑な米穀の供給を確保するため、農林水産大臣は、毎年、都道府県知事の意見を聞いて、都道府県段階までの米穀の具体的な供給計画を策定し、その概要を公表することとしております。
 第三は、米穀の流通業者の地位と責任の明確化であります。
 生産者から消費者までの米穀の流通を実際に担うのは集荷業者及び卸、小売の販売業者でありますが、品質面も含めた必要量の確保、価格の安定、流通の円滑化等による国民に対する米穀の安定供給を図る上で、これら流通業者の適正な活動を確保することが重要な意義を有することとなっております。このため、集荷業者については農林水産大臣の指定、販売業者については都道府県知事の許可を要することとして、その地位と責任を法律上明確にするとともに、これら流通業者の効率的かつ活発な活動の展開を期待することとしております。
 第四は、これまで申し上げてまいりました主要な改正に伴い、またはこれらと関連して行う改正事項であります。
 すなわち、第一条の目的規定につきまして、その用語を今回の改正の趣旨に即したより適切な表現に改めること、自主流通制度につきまして、基本計画及び供給計画とも関連づけて法律上の位置づけを明らかにすること、政府の米穀の売り渡しの方法につきまして、随意契約を原則といたしますものの例外的には競争契約にもよるととができるという道を開くこと等の改正を行うこととしております。
 以上が食糧管理法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#88
○副議長(秋山長造君) ただいまの報告及び趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。坂倉藤吾君。
   〔坂倉藤吾君登壇、拍手〕
#89
○坂倉藤吾君 長時間の御審議で大変お疲れのことと思いますが、お許しをいただきまして、私は、ただいま報告をされました農林漁業三白書並びに趣旨説明のありました食管法の一部改正につきまして、食管法の改正にしぼり、日本社会党を代表して、鈴木総理及び関係大臣に質問をいたします。
 政府は、この改正案は、現行食管法の理念並びに制度の基本を変えるものではなく、実態との乖離を埋めるための現状追認にすぎない旨の説明を盛んに展開されておるわけであります。
 そこで、第一の質問は、この改正案の持つ性格についてであります。
 果たして、これが説明をされているような単なる現状追認なのでしょうか。私は、政府の説明が軽々しさを主張すればするほどに、生産農民と消費者をたぶらかす重大な政治的意図を感じるのであります。なぜならば、生産米は政府が全量を買い上げて管理するのが現行法の基本であります。ところが、近年、行政指導の名であえて強行してきました予約限度数量制や、水田利用再編と称して、再編の伴わない減反の押しつけという法律違反行為を免罪にし、正当化しようとしていることであります。
 また、第三条第一項ただし書きは、政府買い入れ米以外の米について実質的管理を放棄しようとするもので、明らかに制度そのものの後退であります。なお、基本計画は、用途別、品質別、流通態様別に需給見通しを策定することになり、加え七、予定価格や入札制度が絡むことから、その結果、重大な価格格差の拡大と混乱を持ち込むことであります。これは明らかに食管制度の骨格と理念の変更であり、現状追認の範疇ではありません。改正の性格とねらいについて、総理並びに農水大臣の確たる所見を求めるところです。
 第二の質問は、食管のあり方についてであります。
 確かに、最近の米需給は、生産者への過酷な減反の強要によって辛うじて均衡を維持するという過剰基調であります。そのために、現行法の厳格な統制諸規定が現実にそぐわなくなっていることは否定をいたしません。しかし、食管制度が国民食糧の確保と経済安定に大きな役割りを果たしてきましたし、今後なお重要であることは政府も述べられているとおりであります。
 今日、世界の食糧需給に関する展望は、白書でも報告をされたとおり、決して明るいものではありませんし、近年の世界的な異常気象の多発、政情不安、食糧の戦略物資化、さらにわが国の外貨保有の見通しなどを考えますとき、食管制度はますます重視、拡充されなければなりません。拡充強化こそが食糧自給力強化に関する国会決議の具体的実践を義務とする鈴木内閣の基本的態度でなければならないはずではありませんか。いわんや、わが国の食糧供給構造は、一〇〇%自給の米と全く輸入に頼る小麦、飼料穀物、これに代表されますように、まさに両極に分かれて併存する二重構造であります。食糧の安全保障の必要性、これを一本の柱として強調いたしました昨年秋の農政審答申の根拠も、こうした状況を踏まえてのことであります。
 わが日本社会党が、食糧自給促進と備蓄のための農業生産振興法の提出準備をしながら、本国会に総合食糧管理法案を提出いたしましたのも、大局的な見地から一日も早くその備えを確立すべきだと、こういうふうに考えるからであります。
 私は、本改正案のように、食管機能を部分化し後退させることは、時代逆行、情勢無視の暴挙であり、国の安全にとっても憂慮すべきことと考えます。かつて農林大臣を担当され、第一期水田再編を計画して減反を実施された鈴木総理に率直な御見解を承りたいと同時に、食糧安保の観点に立った農産物輸入の問題等について日米首脳会議に臨む基本的態度はいかなるものであったのか、それに対し具体的に会談が行われたのか、その詳細について報告を求めるものであります。
 第三の質問は、米の中間流通過程における競争原理の導入についてであります。
 第四条第一項の入札制度の導入を前提とする予定価格の設定は、米の流通に一般競争原理を公然と迎え入れることになり、卸売業者の自由選択を大幅に認める商取引に移行するものと予測をされます。その結果、特に四類、五類米の価格を押し下げ、政府買い入れ価格にもはね返ることは当然であります。
 また、自主流通米の分野ではこの傾向が強く顕在化をして、特別自主流通米などの生産原価をも度外視しての売り込みを誘うような結果にもなりかねないのであります。そして、価格政策は崩れ、産地間では品質、価格の両面での激しい敵対性をあおって、生産者の不信と不安を増大させ、生産意欲をも喪失させて、国民主食の安定供給をも揺るがすことになりかねません。これは競争原理の正しい導入ではなくて、分断支配の典型となる危険性が濃厚であるというふうに言わざるを得ません。どのような施策をもって適正な競争原理を活用されるのか、農水大臣にお尋ねをいたします。
 第四の質問は、日経調等の食管なし崩し論についてであります。
 日本経済調査協議会、すなわち岩佐委員会が食管の部分管理への移行、正米市場による米価形成などを内容とする制度改革案を提起しておりますけれども、この提言にどのような見解で対処されますか。
 本年度の食管会計への繰入額は、過剰米処分に伴う損失八百四十七億円を含めても六千五百二十億円で、一般会計予算に占める率は一・四%にしかすぎません。四十年度が三・二%、四十五年度が四・六%であったことと比べましても、その負担は大きく軽減をされておるはずであります。まして、国民主食の大宗である米の安定供給を確保する重大な使命のために、この程度の経費の投入がどうして過大な負担であり、むだだと言えるのでしょうか。生産者の経営と生活安定、国民主食の安定供給の約束という最重要な制度の裏打ちをする経費としては、食管予算は大いにその効果を発揮しているものではありませんか。
 なるほど、今回の改正に際し、財政負担の軽減に関して一切の提起がありません。しかし、昨年産米から四、五類を自主流通米に組み込み、今回の改正案で、自主流通量の拡大に通じる部分管理、間接統制に持っていこうとの対応は、明らかに財界の主張にこびまして、筋を曲げ、負担軽減のための改正案であります。
 この際、総理並びに農水大臣に確固たる所見を求めると同時に、食管予算に関する見解を大蔵大臣に、そして、仮に食管体制が崩れ、国民食糧がその量と価格に不安定をもたらすとき一般経済にいかなる影響を与えるものか、その意味での現食管制度に対する評価を経企庁長官にお尋ねをするところであります。
 第五の質問は、緊急時と称する配給統制を発動する条件についてであります。
 通常の需給条件下では配給統制を廃止し、緊急時のみ復活させようとする規定、すなわち第八条ノ四は、その発動条件の厳しさから、結局は抜くことのない伝家の宝刀的性格と考えますけれども、この緊急時の判断を含めた発動条件を農水大臣にお尋ねをいたします。
 第六の質問は、やみ米規制についてであります。
 国民が遵守できる食管法にしようというのが今回改正のたてまえでありますが、果たして、流通秩序が回復して、やみ米は消滅をするのでしょうか。贈答米、縁故米を認め、自主流通のパイプを太くし、さらに二重米価の特性を弱める逆ざやの解消は、不正規流通を増加させる条件づくりを改正案が果たすことになりかねません。やみ米防止体制をどのような対策に求めようとしておられるのか、農水大臣に明らかにしていただきたいのであります。
 第七の質問は、消費者サイドからの競争原理の貫徹に関してであります。
 卸、小売業者は都道府県知事の許可を得ることになりますが、この運用は全面的に政令事項となっております。消費者と直接にかかわり、かつ米の消費拡大のかぎを握る部署だけに、その許可条件、運用条件に競争原理の正しい反映とその貫徹が望まれます。卸、小売間の結びつき登録制度や、商圏域による小売業者の新規参入規制等、従来の措置を競争原理に照らしてどのようにされるのか、農水大臣の考えを示していただきます。
 第八の質問は、生産者米麦価政策についてであります。
 生産者米価は、需給実態を価格に反映させ、生産抑制的な運用を行う必要ありとする考え方、また、長期的には中核農家の生産費にシフトした価格を目指すべきだとする考え方が財政制度審の建議や農政審の「八〇年代の農政の基本方向」に示されておりますが、政府は今後こうした考えにどう対応されるおつもりなのか、総理並びに大蔵大臣、さらに農水大臣に明らかにしていただきたいのであります。
 値上がりの激しい生産資材、農地三法改定に伴っての統制小作料の廃止、五十三年産米以降据え置かれている米価、この間におきます他産業労働者の賃金上昇という生産をめぐる諸条件を見るとき、ただ財政事情、需給事情を理由にこうした厳しい条件変化の事実を無視をすることは許されないというふうに考えますが、この際、五十年産米価についての基本的態度を農水大臣に明らかにしていただきたい。
 なお、生産者麦価算定方式の改悪が準備されていましたが、今回は見送られたと聞き及んでおります。ところが、政府と生産者団体及び自由民主党との間で、ここ数年のうちには改定をする旨の基本的了解に達しているというふうにも承っておりますので、その真偽のほど、農水大臣の釈明をきちっと求めるものでございます。
 第九の質問は、標準価格米に関する態度についてであります。
 最近、五十五年産米が冷害の影響等から大量の低品位米を生じたため、特例標準価格米が新設をされ、すでに十七都府県では従来の標準価格米の販売が中止をされたとの報道がなされました。昭和四十七年に物価統制令適用廃止に伴って設けられました標準価格米は、現在、年間米消費量のおよそ三分の一に上り、国民の間に定着をしておるのであります。それが小売店の店先から姿を消すという事態が広範囲に生じている実情に対しまして、政府の対処方針をお聞かせいただきたい。また、今後、標準価格米の常置及び行政指導価格の継続、こうした問題はどのようにされるのか、あわせて農水大臣にお伺いをいたすところであります。
 以上、九点について尋ねてまいりましたが、最後に、米過剰の深刻化、食管財政負担の増大という課題に当面しております食管制度に対して、財界等は農業過保護という立場でのとらえ方から攻撃をしてきておるのであります。こうした攻撃への安易な迎合ということは、食糧安全保障体制の確立、こういう面から国民的要請に反逆をするものであり、農政百年の伝統と歴史に重大な禍根を残すこととなる点を重ねて指摘をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#90
○国務大臣(鈴木善幸君) まず、今回の改正に関しまして、食管制度の基本を変更するものではないか、また、厳しい世界の食糧事情を考えれば、改正の方向は時代に逆行するものではないかとの二点の御質問がございました。
 今回の食管法改正は、先ほど農林水産大臣の趣旨説明にありましたように、現行食管制度の基本を維持しつつ、国民の主食である米について過剰、不足、いかなる食糧事情にも的確に対応して安定的に供給できるよう制度を再編しようというものでありまして、生産調整の強制とか部分管理への移行とか、制度の基本の変更を意図するものではありません。むしろ、昭和十七年の法制定という四十年近い歴史を持つ食管法のうち、現状に適さなくなった部分、いわば現状から遊離した部分の改正を主目的としたものでありますから、御懸念のように時代に逆行するものではなく、時代の要請に沿った改正であると考えております。
 今後の米価政策でありますが、生産者米価の決定は、食管法の定めるところに従い、米の需給事情その他の事情に配慮しながら、米穀の再生産の確保を旨として行っているところでありまして、今後ともそのような基本的な考え方のもとに米価の決定を行ってまいりたいと存じております。
 次に、日米首脳会談についての御質問にお答えをいたします。
 私とレーガン大統領との会談では、農産物問題は特に取り上げられませんでしたが、別途、米側経済閣僚と会談の際、米側より、牛肉、オレンジ等農産物の市場開放につき日本側の配慮を得たいとの発言がありました。これに対し私からは、牛肉、オレンジについてはすでに一九八三年度までの輸入枠について合意を見ているところであり、かつ、その合意を誠実に実行している旨を述べるとともに、日本は米国にとり最大の農産物輸入国であるのではないか、小麦四百万トン以上、大豆四百万トン、また飼料作物一千万トン以上、そのような大量の農産物を安定的に毎年買っておる、米国農民にとっては最大の日本はお客である、こういう立場から、個々の細かい問題で日本の農民を泣かせるようなそういう要求はやめてもらいたいと、こういうことをはっきりと申し上げた次第でございます。
 私は、今後も日本農業の立場を十分考えながら、農産物輸入につきましては慎重な対処をしてまいりたい、こう考えております。
 なお、残余の問題につきましては所管大臣からお答えさせます。(拍手)
   〔国務大臣亀岡高夫君登壇、拍手〕
#91
○国務大臣(亀岡高夫君) お答えいたします。
 今回の食管法の改正は、現行制度に生じております種々の問題に対処するため、自主流通米も含めて国民の必要とする米を国が責任を持って管理し、その安定供給を図るという現行制度の基本を維持しながら、過剰、不足、いかなる食糧事情にも的確に対応し得る制度に再編成しようとするものであって、その意味で制度の基本を何ら変更するものではありませんし、私としては、むしろ制度の基本を維持、再生するためにも今回の改正が必要であるという認識を持っておる次第であります。基本計画の樹立や自主流通の法定もこのような趣旨から行うものでありまして、御指摘のような生産調整の強制や、あるいは部分管理への移行などを意図しておるものでは絶対にございません。
 政府売却に入札制を導入したのはいかぬではないかという御指摘でございますが、今回の食管法改正においては、政府米の売却は国民食糧の安定供給ということの重要性にかんがみ、随意契約によることを原則とし、これによることが不適当なケース、たとえば古米を処理するという場合に限り例外的に入札制をとることができるようにしたわけでありまして、通常の主食用に採用することはございません。
 日経調の提言に対する所見いかんということでございますが、日経調の提言の基本的考え方は、政府が一部の米のみを管理して、大宗の米は市場機能にゆだねるということにあると存じます。しかし、そのような仕組みでは、過不足両面に対応して国民に対する米の安定的供給と稲作農家経済の安定という食管制度の持つ重要な役割りを果たし得なくなるのではないかと考えます。したがって、この日経調の提案は現実的な方策ではないというふうに考えております。
 食管の財政負担についてのお尋ねがございましたが、制度の持つ重要な役割りに十分配慮いたしますとともに、現下の厳しい財政事情にも配慮して、その食管の財政の健全化を図る必要があると考えております。すなわち、財政負担の発生原因は米の需給均衡のバランスがとれておらないことが原因でありますので、米の需給均衡の早期回復を図り、両米価の適正な決定をしてまいり、集荷、保管、運送等各般にわたる業務運営の改善合理化のほか、機構、定員につきましても引き続き社会経済情勢の変化等を踏まえた簡素合理化を図る方向で努力してまいりたいと存じます。
 緊急時とは、いかなる場合かというお尋ねでございますが、たとえば小麦あるいは飼料等の麦類の輸入が輸出国の異常な凶作や国際紛争等によって途絶し、その影響が米に及んでその需給が逼迫するといった場合であります。そのような場合における本条の発動に当たっては、需給不均衡の度合いがどの程度か、その事態がどの程度の期間続くと見込まれるか、代替食糧確保の見通しはどうか等を総合的に勘案して、本条に規定する要件に該当するかどうかを判断してまいりたいと考えております。
 不正規流通の防止についてのお尋ねでございますが、需要に見合った米の計画的な供給、適切な販売業者制度の運営、米流通についての的確な情報の収集管理等の措置により、不正規流通の余地を少なくしていく所存でありますが、なお不正規営業を営む者に対しては、関係省庁とも協議をいたしまして、実効ある取り締まりの方法を行ってまいりたいと考えております。
 次に、消費拡大のかぎを握るのは販売業者である、競争原理を導入し、販売業者の活動の活発化を図るべきであると考えるがとの御指摘でございますが、販売業者制度の改善に当たりましては、流通業者の自立的な商業活動を通じて、消費者のニーズにこたえられる適正な流通を実現することが基本であります。その運用の検討に当たりましては、制度改正の趣旨及びこれまでの制度内容との連続性に配慮するとともに、地域における米流通の実態を十分考慮し、関係者の意向を十分に取り入れまして慎重に進めてまいりたいと存じます。
 本年度の生産者米価の取り扱いについては、いまのところ、まだ具体的に何も決めてはおりません。御指摘のような事情も十分考慮をいたしまして、しかも食管法に定めてありますところの趣旨を尊重して、米価審議会の意見を十二分に聞いて決定してまいりたいと考えます。
 麦価規定の改正が今回見送られた件についてのお尋ねでございますが、麦価規定の改正に関しましては、現行規定の問題点を解消するため所要の法律改正を行いたいと思っておりましたが、改正の必要性について、理解が相当深まりはいたしましたものの、下部まで浸透するに至っておりませんために今回は見合わせることといたした次第であります。今後の扱いにつきましては、水田利用再編対策の第二期対策との関係など諸般の事情を考慮した上で判断してまいりたいと考えております。自由民主党云々との御指摘でございましたが、私はそのようなことは承知いたしておりません。
 標準価格米についてのお尋ねでございますが、標準価格米制度につきましては、一般消費者の間にある程度定着いたしておるわけでありますので、法改正に関連して直ちにこの制度をなくしていくということは考えておりません。当面存続してまいるつもりでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#92
○国務大臣(渡辺美智雄君) 一つは、日本経済調査会提言に対する所見いかんと、これは農水大臣とほぼ同じでございます。しかし、全部は賛成できない。一万二千円出してつくりたい人は幾らでもつくれというようなことはいかがなものかと、むしろ過剰生産がふえるじゃないかという気がいたします。
 それから、食管繰り入れが八百四十七億円で、コスト全体として六千五百二十億円出しているじゃないかと、食管繰り入れに。食糧安保という点からこの程度は必要じゃないかということでございますが、何が何でも必要だというのなら私は差し支えないと思いますが、六千五百億円も出さなくても済むのでありますから、済む以上はもっと減らした方がいいのじゃないか、そう思っておるわけでございます。
 過剰米をつくらないようにするとか、あるいは政府の販売にいたしましても、現在はコストがらみだと一食分四十四円十六銭かかっておるわけです。それを売り渡し三十三円五十銭、十円六十六銭という差がこういう大きな金額になるわけですから、一挙にこれはなくすというわけにはいかぬと思いますが、こういう時期でもございますから、税金で穴埋めをするのも一つ、しかし、米を食わない人もそれはやっぱり穴は埋めてもらわなければならぬという問題もございまして、やはり受益者が持つのも一つでございます。したがって、これは受益者負担の原則というものをもっとはっきりさせる必要があると、そう思っております。両面からこの是正を図っていく必要があると、かように考えます。
 それから五十六年産米米価につきましては、これは農林大臣ともまだ何の相談もいたしておりません。ただ、結果的には生産費、物価、米の需給の状況その他の経済事情、いろいろしんしゃくして決めることになっておりますが、やはり大変な過剰基調にあることも事実でございますので、抑制的な運用が必要ではないかとおぼろに思っておる程度でございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#93
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は食管制度の評価いかん、こういうことでありますが、現行の食管制度が、戦中戦後の食糧不足の時代以来、食糧の安定供給、それから物価の安定、そういう面で果たしてまいりました役割りは、これはもう高く評価しなければならぬと考えます。
 ただ、最近は国民生活のパターンが大きく変わっておりまして、そのために米が不足の時代から過剰の時代に変わってまいりました。そういう背景がございますから、実情に合うような改正が当然必要になるわけでありますが、今回の改正もその趣旨に合ったものであると理解をいたしております。(拍手)
    ―――――――――――――
#94
○副議長(秋山長造君) 中野明君。
   〔中野明君登壇、拍手〕
#95
○中野明君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま農林水産大臣からの報告並びに食糧管理法の一部改正案の趣旨説明に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 まず初めに、食糧の安全保障の確保を図る上から総理にお伺いをいたします。
 総理は、日米共同声明において「同盟関係」を明記されました。これはソ連脅威という共通認識に基づいた対ソ連への同盟的な性格を持っており、レーガン政権の軍事政策、世界戦略に日本が巻き込まれる危険性がきわめて高いと指摘せざるを得ないのであります。共同声明の内容から見て、軍事、防衛問題が中心的課題となっていることは否めない事実であります。このような米国と軍事、防衛優先の同盟による安全保障ではなく、食糧の安全保障を含む「総合安全保障政策」こそわが国のとるべき道であると考えますが、この点について総理の御見解をお伺いいたします。
 また、米国は、昨年一月に、ソ連のアフガニスタン軍事侵攻への制裁措置として、ソ連に対し穀物の輸出禁止措置を講じたわけでありますが、このことは食糧が戦略的な外交手段として使用されることが明白になったことを意味いたします。
 国際穀物需給事情が憂慮されている現況下にあって、米国は、先月、わが国に相談もないまま対ソ穀物禁輸措置を解除したとの報道がなされています。今回の訪米中に、このことについての話し合いが米当局よりなされたようでございますが、その内容はいかなるものであったのか、総理から御報告いただくとともに、農林水産大臣からは、当面する国際穀物の需給事情や価格に懸念されるような影響はあり得ないのか、見解を承りたいのであります。
 いまや、わが国は、世界一の農林水産物輸入国であり、特に穀物の輸入においては、輸入量の六割も米国に依存しているのが現状であります。さらに、昨年秋、閣議決定した政府の「農産物の需要と生産の長期見通し」でも、穀物の自給率は、現在の三三%から昭和六十五年には三〇%にダウンさせる見通しから見ても明らかなように、農産物の輸入依存度がますます高まることを暗示しているのであります。
 したがって、食糧の輸入先が特定国に偏っていることは、それだけ戦略性を高め、有事にあって国の安全を脅かされることから考えてみても、昨年末訪問されたASEAN諸国との一次産品交流をも含めて、輸入先の多元化を促進させ、食糧輸入の安定確保を図るべきと思います。あわせて、わが国の穀物自給率の向上対策も含め、総理の明快なる御答弁を承りたいのであります。
 次に、白書について質問をいたします。
 第一次産業としての農林漁業は、国民の生存にとって最も基本的な食糧の安全を確保する上から不可欠な産業であることは言うまでもありません。そればかりか、自然環境の維持保全や地域社会の安定的発展並びに豊かな人格形成を図るなどの上からも、多様で重要な機能を発揮しているものと言わねばなりません。また、その重要性のゆえにこそ、農林漁業に関する年次報告を白書として国会へ報告することが義務づけられているものと考えます。第一次産業の農林漁業が持つ重要性にかんがみ、改めて、わが国における農林漁業の位置づけについて、総理から確たる所信をお伺いいたします。
 各白書は、いずれも昭和三十六年から三十九年にかけて、「農林漁業と他産業との格差是正」を図ることを唯一の目的として制定されたものであります。しかし、申し述べるまでもなく、これら基本法の制定以来、わが国農林漁業は、高度経済成長政策下においてはもちろん、減速経済へ移行した今日においても、産業的地位は後退に次ぐ後退、衰退の一途を続けているのであります。今回の農業白書においては、作成以来二十回を数えるに至っていることもあり、過去二十年間にわたる基本法農政の展開について若干の総括がされている節はありますが、農林漁業を荒廃衰退させている現状に対する反省はきわめて不十分であると痛感するものであります。
 総理は、それぞれの基本法制定以降の農林漁業行政をどう評価され、あるいは反省されておられるのか。さらに、農林漁業の再建へ向けて今後いかなる施策を講ずる用意があるのか、お答え願いたいのであります。
 次に、漁業についてお伺いいたします。
 現在、わが国漁業もまた、石油ショックに伴う漁業用燃油価格の高騰と産地における魚価の低迷により、深刻な危機に直面をしております。ことに、遠洋マグロや大型、中型のイカ漁業にあっては、年間の売上額を上回る膨大な負債を抱えている現状となっております。もはや、政府がこれまで対応してきた融資措置などといった場当たり的な対策のみでは完全に行き詰まっているものと言わなければなりませんが、いかがですか。
 マグロ、イカなど特別な経営部門については、構造政策を含め、この際、危機に瀕する漁業経営に対する抜本的な救済等を講ずべきであると考えますが、総理並びに農林水産大臣の見解をお伺いいたします。
 次に、食糧管理法の一部改正案についてであります。
 周知のとおり、現行食管制度は米の不足基調を背景とした統制色の強いもので、今日のような米の過剰基調には弾力的に対応できないことから、法のたてまえと現実との乖離、ないしは違法行為の横行等といった形で、現在多くの矛盾を露呈していることも事実であります。したがって、今回の改正が現状追認程度とか、部分的改正あるいは運用面での改善程度にとどまるものであれば、食管法への国民の信頼を高め、かつ守りやすい食管とするためにも、それは必要な措置と考えるものであります。
 しかし、さきにも触れましたように、世界における食糧事情の変化には予断を許さないものがあります。万一食糧危機が到来することになれば、米はわが国の農業生産や食生活の上からも最適なものであるだけに、わが国としては、米への依存を強め、たちまちにして米の不足基調を招来することになると考えます。そのような意味からも、今後とも米不足の場合において、米の公正かつ安定的供給の確保、そのための備えとして平素から適正な米価を補償し、農業経営基盤を盤石なものとしておく必要がありますが、こうした現行食管制度が持つ重要な機能は堅持すべきであり、安易に改廃するべきではないと考えます。
 以上の基本的な考え方に立って、以下簡潔に質問をいたします。
 第一に、今回の改正においては、「食管制度の基本は維持しつつ必要な改正を行う」ということになっておりますが、この「食管制度の基本」とは何を意味するのか、これまで政府が表明してきた「食管法の根幹」とは異なるものになるのか、明確な答弁を求めます。
 第二に、基本計画についてであります。この基本計画は、これまでの配給計画に需給調整色をも帯び、今後の米の流通管理の基本となるものでありますが、結果的には減反の強化並びに生産者米価の抑制等といった形でわが国農業、食糧政策に重大な影響が及ぶのではないかと懸念されています。果たしてこのような心配はないと断言できるのかどうか。また、それだけに基本計画の内容策定に当たっては、米価審議会を初め生産、流通、消費にかかわる各関係者の意見を十分反映させる必要があると考えますが、どうですか。
 なお、減反政策に協力しても、かつ余り米が大量に発生した場合は、国の全量管理の原則からこれを取り込む形で基本計画を再検討する必要があると考えますが、どうですか。
 第三に、自主流通米についてであります。今回の改正によって自主流通米が法律で明定されることになりますが、この自主流通米の取扱量の安易な拡大は食管法の形骸化を促進するものと憂慮されます。したがって、自主流通米は「国が間接にではなく直接に全量を管理する」という基本に立って運用すべきだと考えますが、いかがですか。
 第四に、違法行為の取り締まりについてであります。改正後は、縁故米や贈答米に名をかりた不正流通が発生することも予想されますが、これらを含め、違法行為については厳重に取り締まれる確信をお持ちであるのかどうか。万一十分な取り締まりが不可能となれば、「守れる食管」とすべく改正した意図に反することになるばかりか、部分管理化への移行を促進する大きな要因となることが心配されます。農林水産大臣並びに国家公安委員長の答弁を求めます。
 最後に、昨年九月、日本経済調査協議会は、部分管理の考え方を基本とした食管制度の抜本改正と題するいわゆる「クーポン食管制度」なるものを提言しています。これをどう評価されますか。また、政府は今後とも部分管理、間接統制化への移行を全く考えないと断言できるのか、このことについて総理の明確な答弁を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#96
○国務大臣(鈴木善幸君) お答え申し上げます。
 まず、総合安全保障の問題と食糧の確保の問題を関連さしての御質問でございました。
 私は、かねがね申し上げておりますように、最近の国際情勢とわが国の立場を顧みるとき、わが国の平和と安全を確保するためには、単に防衛力の整備のみならず、広く外交、内政等の諸政策を総合的に、かつ整合性を持って進めていくことが肝要と考えております。今後ともかかる観点に立って総合的な安全保障政策を進めてまいる所存でありますが、特に食糧問題は基本的な安全保障にかかわる問題でありますから、食糧の安定的確保、すなわち自給率の向上と輸入先の多元化など十分配慮してまいらなければならない、このように考えております。
 次に、米国の対ソ穀物禁輸の解除についてお尋ねがございました。
 この問題につきましては、首脳間で私はその経過等をよくただしたところでございます。この穀物の禁輸解除はレーガン大統領の選挙の公約でもあり、いずれの日かこの解除があるものと私も考えておったのでございます。その後における推移を見ておりまして、米国のこの輸出禁輸にもかかわらず、その他の食糧生産国等において輸出が逐次広がってまいりました。その禁輸の効果というものが大きく減殺をされてまいったようであります。そしてまた、一面、アメリカの農民に対するところの犠牲、これが非常に大きいものが出てきておったようでございまして、その結果レーガン大統領はこの穀物の禁輸解除に踏み切ったと、こういう経過でございますが、私は、ソ連に対するアフガニスタン侵攻に対処しての経済制裁措置につきまして西側陣営と十分協議をしながら実行に移したことであり、わが国も相当大きな犠牲を払っておることであるから、今後そのような場合には十分事前に協議をしてもらいたい、入口で協議をして実行した以上、出口でも十分協議をすべきである。今後いろいろの場合につきましてはそのように緊密に連絡をとり協議をしてやっていきたいということをレーガン大統領もはっきり確約をいたしたところでございます。
 次に、今後の農林水産行政についての考え方でありますが、農業基本法等制定以後の農林水産業の動向と施策の展開を踏まえまして、農業につきましては、需要の動向に応じた農業生産の再編成の推進、経営規模の拡大を軸とする生産性の向上、林業につきましては、林業生産基盤の整備、間伐対策の推進、水産業につきましては、わが国周辺水域における漁業の振興、漁業経営安定対策などに重点を置きまして、今後の施策を強力に講じてまいりたいと考えております。
 米の部分管理、間接統制への移行を考えていないと断言できるかとのお尋ねでございましたが、そういうことは考えておりません。
 残余の件につきましては所管大臣から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣亀岡高夫君登壇、拍手〕
#97
○国務大臣(亀岡高夫君) 米国の対ソ穀物禁輸解除の国際穀物需給事情に及ぼす影響についてお答えいたします。
 今回の禁輸解除措置の需給への影響につきましては、この措置によってソ連が直ちに大量の穀物を買い付ける状況にはございません。この状況は総理からただいま答弁のあったとおりでございます。したがいまして、目立った相場の変動はなく、また価格については、解除の動きが事前に伝えられていたために、実勢上ある程度織り込み済みということでありまして、本年の穀物の作柄が昨年に比べまして比較的良好な見通しも加わりまして、解除後も平静に国際相場は推移いたしておる次第でございます。
 食糧の自給率向上と輸入先の多元化についてのお尋ねでございます。
 この点については中野委員と全く同じ考え方でありまして、その線に沿って強く進めてまいりたいと存じます。
 基本法農政の件につきまして、農林漁業再建への施策をどう考えておるかということでございますが、これも総理から御答弁がございました。
 林業につきましてつけ加えさしていただきますと、造林が比較的おくれてきておりますので、この造林に対する施策を強化してまいらなければならない、それがためには林道の計画的な整備を図ってまいりたい。同時に、今年から特に計画的に実行するための予算措置を講じたわけでありますが、間伐促進のための総合的対策を強力に実施してまいりたい。と同時に、業界を指導いたしまして輸入材の抑制を図ってまいりたい。
 次に、水産業につきましては、やはりつくり育てる漁業の振興と遠洋漁場の確保、この二点に力を入れておるところでございますので、この点を今後さらに強化してまいりたいと考えます。
 特に、この漁業の構造的不況に対する抜本的施策のお尋ねがございましたが、漁業をめぐる情勢については中野委員御指摘のとおりと私も認識をいたしておるわけであります。このような情勢の中で、政府は漁業経営関係金融措置を大幅に改善強化いたしておりまして、業界が自主的に行う生産構造の再編事業に対し、これを円滑化するための助成措置も講じたところでございます。
 これらの対策に加えまして、わが国周辺漁場の整備開発、栽培漁業の推進等の施策をさらに進めるほか、遠洋漁業につきましては、きめの細かい漁業外交の展開を図るとともに、新漁場、新資源の開発に努め、漁場の確保を図る等の施策を今後とも強力に進めてまいる所存であります。
 食管法の基本を今後とも維持する考えかというお尋ねでございますが、食管法の基本ということは、自主流通米も含めて国民の必要とする米を国が責任を持って管理をすることにより、生産者に対してはその再生産を確保し、また消費者に対しては安定的にその供給を果たすということが食管制度の基本であると考えますので、今後もこの基本を維持してまいりたいと存じます。
 基本計画が減反の強制や生産者米価の抑制につながるのではないかと、こういう御指摘でございますが、その懸念はございません。
 それは、この基本計画は政府による米の流通管理の指針でありまして、生産者あるいは消費者、あるいは流通関係業者がこれを指針として活動を行うことを期待しておるわけでございまして、生産、消費活動を直接拘束するものではありません。したがって、先ほど申し上げましたように、生産調整を強制したり、あるいは生産者米価に関して影響を持たせるというようなことは全然考えておりません。
 なお、この基本計画をつくるに当たりましては各界の意見を聞けという御趣旨をお述べになりましたが、私どももそのように考えておりまして、米価審議会の懇談会等を開き、あるいは生産者、消費者等の意向も十分聞いて定めてまいりたいと考えております。
 また、自主流通米について、いままでは政令で行っておったものを今回法定することといたしたわけでございます。自主流通米は、御承知のとおり、食管制度の枠組みの中で政府が買い入れる米と一体となって国民の必要量を満たしてまいりますとともに、品質に応じた価格形成、需要の維持増大等を図る見地から重要な役割りを果たしてきておるわけであります。今回の法改正におきましても、消費者に対し適正かつ円滑なる供給がなされるものとして位置づけておりますので、御心配のような点はございません。
 余り米につきましては、これは基本計画ではなく供給計画を定めるととになっておりますので、供給計画で処理をしてまいります。
 それから不正規流通米の違法行為についての取り締まりをきちんとやれということでございますが、御趣旨のとおり私どもも考えておりますので、各省庁間で十二分に意思疎通を図り、打ち合わせをいたしまして、そうして、やみ米のばっこの絶滅を期していきたいと、こう考えておる次第でございます。
 以上で終わります。(拍手)
   〔国務大臣安孫子藤吉君登壇、拍手〕
#98
○国務大臣(安孫子藤吉君) 不正流通米の取り締まり対策いかんというお尋ねでございますが、米穀等の流通秩序の維持につきましては、所管行政官庁と緊密なる連絡をとりまして、米穀の正常なる流通を著しく阻害するなどの悪質な事犯を重点にした取り締まりを行うなど的確に対処してまいる考えでございます。(拍手)
#99
○副議長(秋山長造君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後七時五十三分散会
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ソース: 国立国会図書館
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