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1980/05/25 第94回国会 参議院 参議院会議録情報 第094回国会 本会議 第20号
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1980/05/25 第94回国会 参議院

参議院会議録情報 第094回国会 本会議 第20号

#1
第094回国会 本会議 第20号
昭和五十六年五月二十五日(月曜日)
   午前十時二分開議
    ―――――――――――――
#2
○議事日程 第二十号
  昭和五十六年五月二十五日
   午前十時開議
 第一 銀行法案(内閣提出、衆議院送付)
 第二 中小企業金融制度等の整備改善のための
  相互銀行法、信用金庫法等の一部を改正する
  法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第三 証券取引法の一部を改正する法律案(内
  閣提出、衆議院送付)
 第四 銀行法の施行に伴う関係法律の整備等に
  関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第五 農業者年金基金法の一部を改正する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、裁判官訴追委員予備員辞任の件
 一、裁判官訴追委員予備員の選挙
 一、緊急質問の件
 一、国家公務員法の一部を改正する法律案、自
  衛隊法の一部を改正する法律案、国家公務員
  等退職手当法の一部を改正する法律の一部を
  改正する法律案及び地方公務員法の一部を改
  正する法律案(趣旨説明)
 以下議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 亀井久興君から海外旅行のため八日間の請暇の申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(徳永正利君) この際、お諮りいたします。
 藤井裕久君から裁判官訴追委員予備員を辞任いたしたいとの申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#7
○議長(徳永正利君) つきましては、この際、裁判官訴追委員予備員一名の選挙を行います。
#8
○真鍋賢二君 裁判官訴追委員予備員の選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#9
○小山一平君 私は、ただいまの真鍋君の動議に賛成いたします。
#10
○議長(徳永正利君) 真鍋君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、裁判官訴追委員予備員に降矢敬雄君を指名いたします。
     ―――――・―――――
#12
○議長(徳永正利君) この際、緊急質問の件についてお諮りいたします。
 青木薪次君、多田省吾君、市川正一君、栗林卓司君から、それぞれライシャワー元駐日米大使の発言に関する緊急質問が提出されております。
 これらの緊急質問を行うことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。順次発言を許します。青木薪次君。
   〔青木薪次君登壇、拍手〕
#14
○青木薪次君 私は、日本社会党を代表いたしまして、非核三原則、すなわち日本の平和と安全の根幹に触れる基本的な問題について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 先般、ライシャワー元アメリカ大使は、「核兵器を積んだアメリカの艦船が日本に寄港あるいはその領海を通過しているのは常識であり、日本政府も口頭了解している」というショッキングな発表をいたしました。日本国民はたちまち恐怖のどん底に陥ってしまいました。
 鈴木総理、あなたは、日米首脳会談の結果、戦後外交史上初めて「日米同盟」という言葉を共同声明の中に入れました。そして、「軍事色は全くない」と強弁しておられますが、同盟というきな臭い言葉の中に、総理の言う「憲法を断固として守る」「集団自衛権は憲法違反である」という立場をどこどこまでも貫くことができるか、国民は不安に思っておりますので、まず質問いたしたいと思います。
 総理、あなたは人柄のいい人と理解していますがゆえに、強いアメリカを指向するレーガン大統領に兄貴とたたえられ、遠いワシントンで美酒に酔う鈴木総理の顔はいつになくほころび、「大統領と私との友情と信頼は完璧である」と内外記者団に発表されたのでありますが、事態は全く甘くありません。「日米防衛の役割りと分担」は、「日米同盟」の締結を含めて、外務省の官僚により、総理の出発前に「共同声明」ができ上がっておったのであります。むしろ総理はピエロのように動かされ、あなたがどんなに不満を漏らそうとも、国民はどうせ役人外交だと受け取っているのであります。
 総理はガバナビリティがないと言われていますが、この辺で官僚主導による外交の現状から脱却しなければ、あなたの言う政治生命をかけた行革も絶対にできないと思いますが、決意のほどをお聞かせください。
 アメリカの国防総省核問題専門調査員エルズバーグ氏は、二十年前のこととはしながらも、「全面核戦争に備えた有事の場合は、すでにある岩国の地下核爆弾と数百機の軍用機で戦う。この場合、条約違反もやむを得ないし、事前協議の取り決めも破る場合がある。日本の同意がなくても緊急発進ができる」と言っているのであります。このことについてどう思いますか。宮澤長官は昔のことだと言っておりまするけれども、核戦争の危機が叫ばれる中で、余りにも不用意な発見であります。在日米軍基地における核の点検はどうするのか、総理と外務大臣にお聞きいたしたいと思います。
 エルズバーグ氏は日本の国会で証言してもいいと言っておりまするが、証人として喚問するために日本へ招聘する気持ちがあるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
 また、ライシャワー発言に続いて、ジョンソン元国務次官が岩国基地から数百メートルの海上に停泊していた上陸用舟艇に核兵器が貯蔵されていたことを明らかにし、それぞれ事前協議がなくても核兵器を運び込むことになっておったのであります。北九州の山田弾薬庫や岩国に核兵器が置かれていたことは動かしがたい事実となったのであります。かくして、沖繩と並んで核の持ち込みに関する事前協議制度が全く空文であったことに強い怒りを覚えるのであります。事前協議がなかったから核は持ち込まれていなかったなどという白々しい説明はもう通らなくなりました。歴代自民党内閣は国民を欺瞞し続けてきましたが、許されません。これでも、通り一遍の、いまでもアメリカを信頼しているからという、その場限りの答弁で済ましますかどうか。改めて事前協議に対する政府の決意をお聞かせください。
 日米首脳会談の解釈をめぐり、政府部内の不手際の責任をとる形で伊東外務大臣が辞任いたしました。すなわち、共同声明の内容をめぐって鈴木総理と伊東外相の同盟解釈が食い違い、追い打ちをかける形で、総理、あなたから共同声明作成と発表手続についての不満が漏らされたのであります。すなわち、レーガン大統領との二度目の会談が終わらないうちに共同声明を出すのはおかしいと言い出し、しかも二度目の会談の中身が共同声明に十分に反映されていないというのであります。外務省首脳の直接的責任を追及したのでございます。総理、最も重要だと言われる二度目の首脳会談の中身が共同声明に反映されなかったのはどの部分か説明してください。
 総理、あなたが最も批判した高島外務次官は伊東外相とともに辞表を出しましたが、今度は問題は一つもないからやめることを思いとどまってくれと平身低頭お願いいたしまして辞任を撤回してもらったそうであります。しかしながら、総理、「同盟という以上、安全保障を度外視できないし、軍事的側面を持つことは当然だ」として、「軍事的意味合いは全くない」というあなたの見解と厳しく対立をいたしました。そして、最高の外務省首脳の一人であることは間違いございません。一たん辞表を出したのに、頼まれたから、やめるのをやめるというのは全く不自然です。御答弁ください。
 総理、あなたも御記憶のことでありましょう。一九六〇年一月十九日、岸内閣は国民の強い批判をよそに新たな日米安保条約を調印し、事前協議制を発足させたのでありまするけれども、それ以来、歴代自民党内閣は、だから日本への核持ち込みはないと主張してきたのであります。六七年十二月には、当時の佐藤首相が「核はつくらず、持たず、持ち込まず」との国会答弁を行い、その答弁に基づいて非核三原則の国会決議が全党一致で採択されたことは周知の事実でございます。ところが、今回のライシャワー発言では、空母、巡洋艦などのアメリカの核積載艦艇や航空機が日本への寄港、通過を日本政府が知っていたにもかかわらず、これを黙認しており、日本国民には事実を知らせないで非核三原則を盾にしてごまかすことは、もう許されないぞと警告を発しているのであります。
 総理、このライシャワー発言は、わが国の国民的合意である「非核三原則」を有名無実なものにし、日本国内への核持ち込みのみならず、日本の核保有化に道を開こうとするレーガン大統領の企図を代弁しているもの以外の何物でもないと考えるのであります。私は、このライシャワー発言を考えるとき、今回の共同声明における「日米両国の同盟関係」について、日米首脳間における合意と国民向け発言を使い分けるという二枚舌を許すことはできません。鈴木総理、あなたはよもや二枚舌は使われないと思うのでありますが、そうだとするなら、ライシャワー発言の真相を究明するため、訪米を含めて調査し、国民の信頼にこたえることが必要だと考えます。知日家で有名なライシャワー教授の権威ある発言です。一私人の思いつきの発言だから取るに足らないということでは国民は納得しません。私の質問に明確に答えてください。
 また、ラロック退役元米軍少将によれば、太平洋に配置された米軍戦略核及び戦術核弾頭は合計二千発を超え、その運搬手段は艦艇百二十二隻、航空機六百八十四機と数えられております。これらの艦艇及び航空機は日本周辺を通過したり寄港したりしているのみならず、横須賀の市民が写真に撮って記録したところによれば、核弾頭が陸揚げされ、弾薬庫に輸送されたということまでが報道されております。こうした事実はこれまであったのかなかったのか、あったとすれば事前通告があったのか、明確に答弁していただきたいと思うのであります。
 次に、総理は、これまで核を積んだ艦艇や航空機の通過または寄港があったかどうか、アメリカ政府に照会することを拒否しております。これは明らかに真相究明をしようとしない姿勢であると言わざるを得ないのでありますが、鈴木総理、あなたはアメリカ政府に照会して真相究明をする意思があるかどうか、お答えいただきたいのであります。
 また、総理は、核を積載した艦船の寄港や航空機の通過については、事前協議の道が開かれており、日米間で現実的に対応すると述べられたのでありますが、この真意は何かということであります。仮にアメリカ側から事前協議に基づいて核積載の艦艇を日本に寄港させるという通告のあった場合、総理はイエスと言うのかノーと言うのか、明確にしていただきたいのであります。
 そして、人類史上初めて核被爆を受けた国民として、また平和憲法を持つ国民として、非核三原則が国の平和と安全の基本であります。日米安保条約にて核のかさに依存しながら、一方で非核三原則を国是とし、事前協議ではノーと言うこの非核政策について、総理と外務大臣は矛盾すると考えないかどうか。私は核のかさから脱却することが平和と安全のために必要だと考えますが、見解を承りたいと思います。
 また、総理は、わが国が集団的自衛権を行使し得ないのは明らかだと言いながら、周辺海域という表現で、事実上グアム島以西、フィリピン以北にほぼ等しい海域の防衛を分担すると発言いたしました。結果として集団的自衛権の行使につながるおそれはないのか、この点もあわせてお伺いいたします。
 総理は、ナショナル・プレスクラブで周辺数百海里、シーレーンにして一千海里という具体的な防衛範囲を明らかにいたしました。これは日本国内でしばしば言っている言葉だと言われても、首脳会談において日米軍事同盟と日米防衛分担関係が約束されたと思っているアメリカ国民が多い中で発言したのでありますから、貴重な約束と映るのは当然です。シーレーン防衛に対する総理の見解をお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、日米共同海軍演習及び原子力潜水艦ジョージ・ワシントン号の当て逃げ事故についてお伺いいたします。
 まず、秋田沖、北海道積丹沖において漁民のマスはえなわ漁網を不当にも連日にわたって切断し、漁民の生活と生命を脅かしたアメリカ艦隊は、あえてオホーツク海を通って日米海軍合同の演習のために日本海に入ってきたのであります。この事実の示していることは、ワインバーガー米国防長官がアメリカ上院の軍事委員会で証言しているように、ペルシャ湾岸でソ連が武力攻撃に訴えた場合、米海軍は北太平洋並びに北大西洋においてソ連に対して同時多発の報復を行う訓練だそうでありますが、いかがですか。
 総理並びに防衛庁長官は、きわめて狭い日本海を演習場として選んだ理由と、演習中止決定から演習中止まで十九時間も費しております理由。私たちは、昨日、日本海のサケ・マスはえなわ漁業協同組合の皆さんと三時間にわたって懇談をいたしました。三十六隻のはえなわ漁船団の中にアメリカの軍艦が突っ込んでくる、そうして、はえなわをズタズタに切ってくる。魚をとるよりも自分の命がこわいから逃げた、逃げるにも逃げられなかったということを実感として、このことをぜひ国会で発言していただきたいと私たちは要請を受けたのであります。みずから、はえなわが今度切れたら責任をとると言明いたしました大村防衛庁長官は、どんな責任をとるのか。よもや、うそをつかないと思うのでありますが、漁網切断に対する補償とあわせて責任のとり方について説明をしてください。
 また、原潜当て逃げ事故について、総理は中間報告のあったことを大きく評価しておられますが、問題のすれ違いです。たとえ交戦時に相手の艦船を沈めても、人道的立場に立って人命救助をするのに、今回は当て逃げで、犯罪的行為です。状況の正確な確認と補償を強く要求いたします。
 総理、「勁松は歳の寒さに彰わる」と言います。松は風雪に耐え、敢然として緑をたたえるのであります。安易に時流に流されることなく、日本の平和と安全のためのリーダーシップを発揮してください。すなわち、一切の核の寄港、通過を含めて、国民の不安が一掃され、問題の解明されるまで、あらゆる艦船の日本寄港及び軍用機の飛来を拒否すべきでありますが、最後に総理の御答弁を要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、集団的自衛権についてお尋ねがございました。
 これまでも国会においてしばしばお答えしておりますとおり、わが国の憲法のもとで認められている自衛権の行使は、わが国に対する急迫不正な侵害に対して、これを排除するためとられる必要最小限度のものに限られるわけでありますから、それは当然個別的自衛権に限られるということになります。すなわち、わが国は、憲法上集団的自衛権の行使は認めていないとするのが政府の一貫した考え方であります。
 なお、青木議員御指摘の、私のワシントンのプレスクラブにおける発言は、わが国周辺海域における必要最小限の防衛力整備の目標に言及したものであり、国会でもしばしば御説明してきているところであります。いずれにせよ、集団的自衛権とは無関係のものであります。
 次に、エルズバーグ氏を証人として国会に喚問せよとの御意見でありました。
 この問題は、最終的には国会の御決定になることでありますが、エルズバーグ氏の発言は、基本的には伝聞や記憶に基づく一私人の発言であること、核の持ち込みについての事前協議に関する約束については、米国もこれを誠実に履行していることについては何ら疑いを入れないと考えられること等の理由により、その必要はないものと考えております。
 次に、日米共同声明についてであります。
 日米共同声明につきましては、これまで国会においてたびたび申し上げているとおり、その内容につきましては、私も十分目を通し、私の責任において最終的に決裁したものであります。その内容も、相互安全保障の視点、わが国の防衛問題、軍備管理及び軍縮の問題、自由貿易体制の堅持など十分私の考え方が取り入れられており、満足いたしております。
 次に、伊東君の辞任問題につきお尋ねがございました。
 伊東外務大臣の辞任につきましては、私と伊東大臣との間に考え方の相違などがあったわけではありません。したがって、伊東君に対しては私より強く慰留した次第でありますが、それにもかかわらず、辞任という事態になったのはまことに残念なことでありました。しかし、これはあくまでも国内問題であり、これによりわが国の対外関係に大きな影響があるとか、ましてや国際的信用に影響が出てくるといったことはありません。この点は明確に申し上げておきます。
 次に、核に関する事前協議制度についてお答えいたします。
 安保条約の核に関する事前協議制度のもとにおいては、いわゆる艦船による核持ち込みを含め、核の持ち込みに該当する場合はすべて事前協議の対象となっております。これは日本政府の従来からの見解であり、いまも変わっておりません。二十日にマンスフィールド大使が園田外務大臣に対し、今回のライシャワー発言という背景の中で、昭和四十九年十月にラロック発言との関連で当時のインガソル国務長官代理によって表明された米政府の見解をみずから確認しております。
 政府は、以下申し述べたところから、これまで核持ち込みが行われたことはないことを確信しております。したがって、米国に調査団を派遣するなどの措置も必要ないものと存じます。
 政府として非核三原則を今後とも堅持していくことは、従来から国会においても答弁申し上げてきているとおりでありまして、核持ち込みについての事前協議が行われた場合には、いかなる場合にも常にこれを拒否する所存であります。
 他方、核の脅威に対する抑止力につきましては、これを米国との安全保障体制に依存するとの方針に変わりはなく、非核三原則とこのようなわが国の国防の基本方針の間に矛盾があるとは考えません。この点は米国も十分理解しているものと考えます。
 最後に、今回の日本海における日米共同訓練についてであります。
 日米共同訓練は、わが国の安全のために必要なものでありますが、今回の訓練実施の時期に漁具の破損事故が発生するという結果が生じましたことはまことに遺憾なことであります。今後はこのようなことがないよう、訓練と漁業とを円滑に両立させるため適切な措置をとるよう指示いたしたところであります。
 なお、漁業者の被害の補償については、関係省庁で綿密な検討を行い、国民の納得が得られるよう努力していきたいと考えております。
 残余の点につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(園田直君) 重複を避けてお答えをいたします。
 高島次官は、伊東前大臣と時を同じゅうして辞表を提出しておりましたが、外交問題が山積をしておる今日、事務次官まで交代することは大変なことでございますので、総理並びに私の慰留に基づいてその任にとどまることになったわけであります。
 次に、ライシャワー発言にあるような核積載艦船、航空機の寄港、領海通過は事前協議の対象としないという口頭了解は存在いたしておりません。
 次に、原潜の問題でありますが、原潜の問題は、すでに経過の報告については潜水艦の責任者から方面艦隊司令長官に提出をされ、方面艦隊司令長官からワシントンに提出されて最終の整理をしている段階ということがマンスフィールド大使から私に話がありました。補償についても当然これは事務的にそれぞれ進めておりまするから、こちらの期待するとおりに進むものと考えております。
 はえなわの問題についても、すでに米国政府からは補償、損害、具体的ないろいろな問題等についてその資料を提出してもらいたいという申し出をしておるので、それがあり次第、米政府でもこれを検討するということでございます。(拍手)
   〔国務大臣大村襄治君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(大村襄治君) 日本海における日米共同訓練についてお尋ねがございましたので、お答えを申し上げます。
 まず、なぜこの時期この海面を選んだのかというお尋ねでございますが、訓練計画の作成段階から今回の訓練海域周辺で漁船が操業していることは承知していたところでありますが、戦術技量の向上のためには異なった条件の時期及び海域で訓練を行うことも必要でありますから、日米双方の訓練日程の調整の結果、この時期この海域で訓練をすることとなったのであります。したがいまして、今回の訓練は対ソ戦略といった特別の意味があるわけではございません。
 なお、この際、漁船の操業に極力影響を避けるという観点から、大和堆を避けて海域を決定し、当初予定していた射撃訓練も中止した上で訓練を実施することといたした次第でございます。
 次に、被害状況についてお尋ねがございました。
 水産庁からは、本年五月十四日からこれまでの間、北海道積丹沖等において、はえなわ切断で七十四隻、流し網切断で六隻に被害があったとの情報を得ております。
 これらの事故は、自衛艦によるものではないと考えられるものの、日米共同訓練の後半に参加する米軍艦艇やソ連艦により発生した可能性があると言われており、事実とすればまことに遺憾であります。防衛庁といたしましては、先ほど総理から御答弁もございましたとおり、被害者の方々への補償が速やかに行われるよう関係省庁と緊密な連絡をとりながら最善の努力を払うほか、今後の日米共同訓練の実施に当たっては、米側に対する漁業情報の提供に努める等できる限りの措置を講じてまいりたいと考えております。
 なお、防衛庁としては、諸般の事情を慎重に検討しました結果、今回の共同訓練について五月二十二日十六時をもって中止したところであります。
 次に、この訓練に関する私の責任についてお尋ねがございました。
 私といたしましては、被害者の方々への補償が速やかに行われるよう、関係省庁と緊密な連絡をとりつつ最善の努力を払ってまいりたいと考えております。
 また、諸般の事情を慎重に検討しました結果、私の責任と判断により中止の方針を決定し、米側とも調整した上で、今回の共同訓練を五月二十二日十六時をもって中止することとしたところであります。
 なお、今後このような訓練を実施する場合には、諸般の事情を十分考慮の上、国民の理解と協力を得て円滑に行えるよう措置していくのが私に課せられた責任であると考えております。
 次に、中止措置以降の経緯について時間がかかったではないかというお尋ねがございました。
 五月二十一日の午後九時ごろに日米共同訓練の中止の方針について日米双方が合意しましたので、直ちに中止態様の細部調整に入り、五月二十二日午前三時に調整を終了し、日米それぞれの部内手続を経て午前七時に訓練部隊へ命令を伝達し、同日十六時をもって訓練を打ち切ったものでありますが、決定から中止に至るまでに時間を要しましたのは、精緻に計画された訓練を突然打ち切ることには困難と危険を伴うので、かなり先に中止時期を設定し中止に向けての体制をつくること、及び指揮権が別個である米軍との間の調整を行うことが必要であるという理由からでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(徳永正利君) 多田省吾君。
   〔多田省吾君登壇、拍手〕
#19
○多田省吾君 私は、公明党・国民会議を代表して、核持ち込み等に関する問題について、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。
 このたびのライシャワー元駐日大使のわが国に対する核持ち込みの発言に加えて、新たにジョンソン元国務次官、エルズバーグ氏等により、日米安保改定後も岩国沿岸に水爆が持ち込まれていたという衝撃的な事実が明かされ、さらに緊急事態の場合には、安保条約を無視しても日本を核兵器の発進基地にするという計画があったことが暴露され、非核三原則の崩壊、安保条約違反という重大問題が相次いで明らかにされております。もしこれが事実なら、日米安保条約の事前協議も非核三原則もすべて虚構であったことになり、二十一年間、歴代の自民党政府は、国民の平和と安全にとって最も重要な核持ち込みで、国民を全面的に欺いてきたことになるのであります。
 わが国は世界でただ一つの核被爆国であり、核兵器全廃と国是とも言うべき非核三原則の厳守は、まさに、平和憲法を持ち、平和を求める日本国民の悲願であります。核持ち込みの疑惑がいよいよ深まるこのとき、いまこそ鈴木総理は従来の無責任な対応を改めて、国民の悲願である非核三原則の堅持と厳守について重大な決意を持って対処し、核不安を一掃するため積極的な行動を起こすべきであると強く要求いたしますが、総理の決意を伺いたいと思います。
 次に、二十二日の衆議院本会議でわが党の矢野書記長が、ジョンソン元国務次官及びニッツ元国防次官が一九六一年に米軍岩国基地から数百メートルの海上に停泊した上陸用舟艇に原爆が積載されていた事実を明らかにしたことについて、直ちに政府に調査を要求し、総理も外務省に検討させると確約いたしましたが、調査はどのように進んでいるか、報告いただきたい。
 その後のジョンソン氏やエルズバーグ氏等の証言やメモによれば、岩国沿岸の核兵器とは水爆であり、その発見者はライシャワー大使で、マクナマラ国防長官が沖繩基地にその水爆を移そうとしたところ、パーク海軍作戦部長の抵抗で移せず、水爆はそのまま岩国沿岸に少なくとも一九六七年まで配置されており、一部は岩国基地に陸揚げされたという事実が明かにされております。
 さらに、エルズバーグ氏のメモによれば、安保改定後の一九六一年当時の米核戦略は、緊急事態の場合、日本政府が事前協議でノーと言っても、安保条約を無視しても、日本を核戦略に組み入れ、日本国土を核兵器の攻撃発進基地にする計画であったという恐るべき陰謀を暴露し、この核戦略がいまも続いている可能性をも示唆しております。
 鈴木総理は、これらの重大問題を米国に正式に照会するのは当然のこと、レーガン米大統領に直接ただすなど、積極的に解明に努め、国民の前に真実を明らかにする責任があります。特にジョンソン氏は米国の職業的外交官であり、駐日大使、国務次官も務めた影響力の大きい方であり、いろいろ言いわけをして米国への照会を拒否するのは断じて許せません。非核三原則の国会決議の重要性も踏まえて、総理の断固とした対応を重ねて強く要求いたします。
 従来、わが国に対する核持ち込みの疑惑については、わが党も昭和四十三年の米軍基地総点検に続き、昭和四十七年、四十九年、五十年等にわたり、沖繩の知花弾薬庫、嘉手納基地、山口の岩国基地等に核兵器、MK101核爆雷ルル等が貯蔵されていたことを指摘してまいりましたが、最近も各方面から核持ち込みの疑惑が相次いで出されており、米軍基地周辺の方々はもとより、全国民の不安はつのる一方で、政府不信の声も高まっております。
 しかも、沖繩や岩国には核兵器を貯蔵できる厳重に警戒された施設が残されており、核事故想定の防災訓練等も行われております。このように、現在も核持ち込み、貯蔵について疑惑の強い沖繩、岩国、横田、横須賀、北九州の山田弾薬庫等の米軍基地の総点検を政府の責任で行い、国民の不安を一掃すべきであると思いますが、総理に明確な方針があるかどうかお伺いしたい。
 次に、ライシャワー元駐日大使の、日本政府も核の寄港や通過を知っていたという、いわゆる核持ち込み発言に驚いて、鈴木内閣は躍起になってこれを否定し、宮澤官房長官は、ライシャワー氏の病気、老齢化を理由に記憶違いと決めつけております。
 しかし、ライシャワー教授は、安保改定直後の駐日大使として日米の実情には特に詳しい方であり、すでに本年一月発刊の四百三十ページに及ぶ有名な著書「日本・一つの国の物語」第三版にも次のように明らかに核持ち込み問題を述べております。すなわち、その要旨は、「核兵器の持ち込み、イントロダクションという言葉に米国政府と一般日本人の間の解釈に相違がある。日本政府は余りにも憶病過ぎて、核持ち込み禁止は領海通過の米軍艦に適用されないという米国側の正しい解釈を説明することができず、ただ米国は協定に忠実に行動するだろうという逃げ口上的な声明だけが頼りであった」とその本に書いており、すでにここでも、日本政府は憶病のゆえに、承知の上で日本国民をだまし続けてきたのだと言っているのであります。
 このようにライシャワー教授が心を込めて執筆している内容といい、最近の確信に満ちた一連の核持ち込み発言といい、相当の決意と信念と責任を持ったものであって、きわめて信頼性が高いと思われます。その後もライシャワー氏発言は、日米関係に詳しい米国務、国防両省の元高官等によって次々と証明されております。総理はそれでも全然信用できないと断定されるのですか。
 また、昭和三十八年当時のライシャワー大使が、本国の訓令に基づき、大平外相に核積載艦の寄港について申し入れた会談の内容を報告した、ファイルされた公電があり、それを米元政策担当者が読んだと証言しておりますが、この問題も、隠すのではなく、速やかに米国に照会して真実を確認すべきであると要求いたします。
 そして、これら一連の核持ち込みの事実解明のために、ライシャワー氏、ジョンソン氏、エルズバーグ氏の来日と国会での証言を求め、解明を要求いたします。先ほども言われましたように、すでにエルズバーグ氏は求められれば日本の国会に出席して証言する用意があると語っております。自民党総裁としての総理の所見を求めます。
 次に、今回のライシャワー氏発言の根幹である「核持ち込みの中に、寄港、領海通過が含まれるかどうか」という具体的な問題に肝心の日米合意が明確になされているかどうかきわめて疑わしく、日本政府は、その根拠として、昭和三十五年の安保条約第六条の実施に関する交換公文と、昭和三十五年からあったとして昭和四十三年に明文化された藤山・マッカーサー口頭了解及び昭和五十年の米側へ照会した英訳文などを挙げておりますが、そのいずれにも「寄港、通過も核持ち込みになる」とは明文化もなく、確認もされておらず、結局、政府は、「米側も了解しているはずだ」とか、事前協議の前提が疑わしいのに「事前協議がないから核持ち込みはない」と繰り返しているのは、全く国民を愚弄する詭弁であると言わざるを得ないのであります。
 昭和四十三年三月十五日の衆議院外務委員会で、三木外相は「核の領海内通過は持ち込みにならない」と答弁しておりますが、昭和三十五年に確認されていたのなら、このような答弁が一時的にせよ出るわけがありません。
 政府が引き合いに出す昭和三十五年四月十九日の赤城防衛庁長官の核の寄港は事前協議の対象という答弁も、詳細に会議録で文脈を検討し、またその後の経過を見ますと、米側と合意しているのかどうか、はなはだ疑わしいのであります。
 一九六八年四月一日、米国は、ラテンアメリカにおける核の禁止に関する条約、いわゆるトラテロルコ条約の第二議定書に署名したとき、当時のハンフリー米副大統領は、「核兵器の領海の一時通過は持ち込みに相当しない」との留保宣言を付して、その執念を示しております。
 したがって、わが国が米国にさらに確実に確認をとるためには、この際、「寄港も通過も核持ち込みになる」という新しい日米合意文書をつくって、少なくとも非核三原則の内容を揺るぎないものにするよう、重ねて総理に要求いたします。
 最後に、軍事色のある日米同盟を盛り込んだ日米共同声明の作成手続で、総理は閣議、参議院本会議という公式の場で外務省を非難し、伊東外相の辞任となった経過は全く総理の責任であり、私は、総理は否定しておりますけれども、単に国内問題にとどまらず、明白に国際的信用を失う結果になったと思いますが、総理はこの責任をどう感じておられるのか、再度お聞きしたい。
 また、日米合同演習の再三にわたるはえなわ等の漁網切断事故の被害に対する補償問題についてお伺いいたします。
 補償は、単なる見舞い金でなく、漁民の方々が納得できる完全補償であるべきだと思いますが、現在どのように進んでおりますか。
 さらに、日米合同演習の中止の際の不手際、中止まで十九時間もかかり、やるべきことは全部やってしまったというようなことは全く納得できないものがありますが、そのいきさつと今後の対策について説明願いたいと思います。
 以上、わが国の重大な平和維持にかかわる核持ち込み問題を中心に質問いたしましたが、総理並びに関係大臣の真摯な答弁を強く要求いたしまして、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 わが国は、平和国家として、これまで国連等の場において核軍縮の促進を強く訴えてきていることは、多田議員も御承知のとおりであります。また、非核三原則につきましては、わが国が誠実に遵守すべき基本政策の一つとして、これを引き続き堅持してまいる決意であります。
 次に、岩国基地やエルズバーグ発言に関する報道についてお尋ねがありましたが、安保条約の核に関する事前協議制度のもとにおいては、いわゆる艦船による核持ち込みを含め、核の持ち込みに該当する場合はすべて事前協議の対象であります。これが日本政府の従来からの見解であり、いまも変わっておりません。
 この点につきましては、従来より申し上げているとおり、事前協議に関する交換公文の規定及びいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解からして十分に明らかであると政府は考えており、また、米国政府が安保条約上の誓約を遵守することを繰り返し確言していることは御承知のとおりであります。
 また、去る二十日、マンスフィールド大使が園田外務大臣に対し、今回のライシャワー発言という背景の中で、昭和四十九年十月にラロック発言との関連で当時のインガソル国務長官代理によって表明された米政府の見解をみずから確認してきております。したがいまして、これまで米側が事前協議を行ってきていない以上は、核が持ち込まれたというような事実はないと考えております。
 なお、矢野書記長が提起された問題につきましては、その後事務当局に検討させた結果、御指摘の発言は、基本的には伝聞や記憶に基づくものであると考えられますので、この問題について米国に確認する必要はないと考えております。エルズバーグ発言につきましても同様であります。
 次に、沖繩、岩国等の基地の総点検を実施せよとのお話でありましたが、すでに述べましたとおり、安保条約上いかなる核兵器の持ち込みも事前協議の対象とされており、事前協議に関する約束を履行することは米国にとって安保条約上の義務であります。政府としては、安保条約が日米両国の信頼関係に基づいている以上、米国のかかる約束が履行されていることに何ら疑いを有しておりません。
 また、米政府は、従来から安保条約及び関連取り決めに基づく日本に対する約束を誠実に遵守してきている旨明言してきております。したがいまして、政府としては、米軍に提供している施設区域の総点検を行うようなことは考えておりません。
 また、ライシャワー氏等の国会における証言を要請する問題につきましては、これは最終的には国会がお決めになることでございますが、私としては、以上申し上げました理由により、また、これらの発言がいずれも一私人としての発言であり、具体的には伝聞や記憶に基づいて行われたものでありますことにかんがみまして、その必要はないと考えております。
 次に、伊東外務大臣の辞任についてでございますが、先ほど青木議員にお答えを申し上げたとおりでございますので、御了承をいただきたいと思います。
 残余の問題につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(園田直君) お答えを申し上げます。
 去る二十日、マンスフィールド駐日大使が私と会った際、向こうから、いま総理がおっしゃいましたとおりに、ライシャワー発言という背景の中で、昭和四十九年十月にラロック発言との関連で当時のインガソル国務長官代理によって表明された米政府の見解をみずから確認してきた次第であります。ライシャワーあるいは元米国政府高官の発言、そういう意味でありまして、特に元米政府高官の発言はまた聞きと記憶によるということでありますから、米政府はこれは一民間人の発言であるからノーコメントであると、こういうことを申しておりますので、私の方からこの問題について照会する考えはございません。また、新たなる交換文書をつくることも考えておりません。
 はえなわの補償については、御指摘のとおりでありますから、農林水産大臣、防衛庁長官、関係大臣等と十分協力をして、速やかに行われるように努力をいたします。(拍手)
   〔国務大臣大村襄治君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(大村襄治君) 日本海における日米共同訓練の被害状況等についてお尋ねがございました。お答えいたします。
 水産庁から、本年五月十四日からこれまでの間、北海道積丹沖等において、はえなわ切断が七十四隻、流し網切断で六隻に被害があったとの情報を得ております。
 これらの事故は、自衛艦によるものではないと考えられますものの、日米共同訓練の後半に参加する米軍艦艇やソ連艦により発生した可能性があると言われており、事実とすればまことに遺憾であります。防衛庁といたしましては、総理大臣並びに外務大臣からお答えございましたが、被害者の方々への補償が速やかに行われるよう関係省庁と緊密な連絡をとりながら最善の努力を払う所存でございます。
 また、中止が決まってから行われるまでに時間がかかり過ぎたではないか、こういう御質問でございますが、防衛庁といたしましては、諸般の情勢にかんがみ、五月二十一日の午後九時ごろに日米共同訓練中止の方針を決めたのでございます。その点につきまして米側との間の合意にも到達いたしましたので、直ちに中止態様の細部調整に入り、二十二日の午前三時に調整を終了し、日米それぞれの部内手続を経て午前七時に訓練部隊へ命令を伝達し、同日十六時をもって訓練を打ち切ったものであります。
 時間を要しましたのは、精緻に計画された訓練を突然打ち切ることにいたしますると、かえって困難と危険を伴うことになりますので、ある程度幅を見て先に中止時期を設定し中止に向けての体制づくりを進めること、及び指揮権が別個である米軍との間の調整を行うために時間が必要だったという理由からでございます。
 防衛庁といたしましては、今後の日米共同訓練の実施に当たっては、海上自衛隊が漁業の安全操業に配慮することは言うまでもないところでございますが、米側に対する漁業情報の提供に努める等、事故防止のためできる限りの措置を講じてまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣亀岡高夫君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(亀岡高夫君) お答え申し上げます。
 ただいま農林水産省といたしましては、補償の基礎になりますところの被害の実態の調査を急いでおる次第でございます。この被害調査ができ次第、ただいま外務大臣、防衛庁長官、総理からも御答弁がありましたとおり、できるだけ漁民の諸君の納得のいくような補償をしていかなければならないと、こう考えておる次第でございます。
 御承知のように、公海上の補償問題漁業補償の問題は、被害者から加害者へ要求をして解決するという性格のものではありますけれども、今回の場合には、加害船が外国のものであるというふうに見られておりますので、特に米側からは、確立した経路を通じて処理したい旨の回答も来ておりますので、損害補償は被害額の確定を急いで在日米海軍法務部を通じて要求することになろうかと思います。できるだけ速やかに、十分な補償のできますように全力を尽くしてまいりたいと考えます。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○議長(徳永正利君) 市川正一君。
   〔市川正一君登壇、拍手〕
#25
○市川正一君 私は、日本共産党を代表して、核兵器持ち込み問題に関し、総理並びに外務大臣に質問いたします。
 いま、核兵器に関する事前協議制の虚構と非核三原則のじゅうりん、核持ち込みの事実が次々と明るみに出ているにもかかわらず、なおかつ総理は、本日もそうでありますが、何を聞いても、「事前協議がない以上、核兵器の持ち込みはあり得ない」「アメリカ政府を信頼しており、確かめる必要はない」、この一本やりで欺瞞の論理を繰り返すだけであります。しかし、事柄は、アメリカの原爆によって広島、長崎で数十万人のとうとい命を奪われたわが国が、いまそのアメリカの核戦略の拠点にされているかどうか、まさに日本の平和と安全、国民の生命に直接かかわる重大問題であります。総理にそういう認識が本当にあるならば、国民の疑惑と不安に一国の宰相としてまともに答えるべきであるということを、まず厳しく指摘しなければならないのであります。
 最初に、核兵器の通過、寄港は、政府が言うように、日米間で明確に事前協議の対象になっているのかどうかの問題であります。
 その第一点、政府は、岸・ハーター交換公文、藤山・マッカーサー口頭了解、インガソル国務長官代理による米国政府見解等々を挙げて、事前協議にかけられると述べています。しかし、そのどれをとっても通過、寄港については明記されておらず、二十一日の国会答弁で外務省自身、「領海通過と特定して取り上げた合意はない」と言明しているではありませんか。それでも通過、寄港も対象だというなら、それは一体どこに明示されているのか、いつ、どういう交渉を通じて日米側の合意を見たのか。日本政府の一方的解釈ではなしに、具体的な説明を求めるものであります。
 第二点。あくまで核の通過、寄港が日米間で事前協議の対象だと合意しているというならば、事前協議なしに核の通過、寄港が行われた場合、それが日米安保条約及び関連取り決めのどの条項、どの文言に違反するのか、政府の見解を明確にしていただきたい。
 第三点。鈴木総理は、核持ち込みの事前協議に対し、たとえそれが有事の際でも「ノー」だと言明されたが、そのことをアメリカ政府に公式に伝え、アメリカ政府もそれを了解しているのかどうか。
 第四点、ライシャワー元大使は、一九六三年一月、訓令に基づく公式会談として当時の大平外相と会談し、「イントロダクションには領海通過、寄港は含まれない」との米国政府見解を伝え、大平外相も「わかった」と答えたという事実を明らかにしています。しかも、この会談の結果は国務省に報告し、記録が残っているとも語っております。これは通過、寄港をめぐる日米交渉の重要な記録の一つでありますので、この際アメリカ側に照会し、提供を求めることを要求するものであります。
 第五点。アメリカの空母ミッドウェーが六月五日横須賀に入港すると伝えられております。国際的にも権威あるジェーン海軍年鑑は、ミッドウェーについて、「一九四九年以降、核兵器を貯蔵、組み立て積載するよう改造された世界最初の核軍艦」、こう記述しております。現にクレーター米海軍長官も、「ミッドウェーは、核攻撃用航空機の母艦としての役割りを果たしてきた」と一九七八年の議会で証言をしております。しかも、ラロック元提督は「核積載可能艦艇は、通常、常に核兵器を積んでいる」と証言しております。また、さきのライシャワー発言も、核兵器を積んだ空母が入港していたことを明らかにしております。しかも、きょうの報道によれば、平和・安全保障研究所が防衛庁の委託研究としてまとめた調査報告書の中で、ピーチャー米国防次官補が、「一般的に空母には核兵器が積載されているし、入港の際も外すようなことはない」と証言したことが明らかにされているではありませんか。いま、寄港、通過問題があいまいにされたもとで、少なくともこのミッドウェーの寄港については、これを認めない、そういう毅然とした態度をとるべきであると考えるが、総理の決意を示していただきたい。
 以上、五点について、総理並びに外務大臣の答弁を求めるものであります。
 第二に、具体的な問題として伺いたい。
 二十二日の衆議院本会議で、わが党の不破書記局長は、一九七五年に現に沖繩の嘉手納基地に核爆弾B61が持ち込まれていた事実を明らかにいたしました。この第四〇〇弾薬整備中隊の週間整備計画書には、司令官初め三人のサインもあります。また、その後の調査によって、この部隊は、さきのわが党訪米調査団が入手した米国防総省の核文献で、公式に核兵器支援任務を持つ部隊として明記された米空軍弾薬整備部隊の一つであります。核文献とは、アメリカ国防総省の基本法に当たる指令書の第五二一〇・四一号、一九七四年七月三十日付のもので、核兵器の貯蔵や整備、管理、輸送に関し、全核部隊に遵守を義務づけたものであります。第四〇〇弾薬整備中隊は、まさにこれに基づいて任務づけられたものであります。報道によると、政府は外務省を通じてアメリカに照会するとされていますが、これは事実かどうか伺いたい。その際、従来のように、ただ、通り一遍のもので済ますのではなしに、今度は徹底的に真相を究明すべきであると考えますが、総理の責任ある答弁を求めるものであります。
 第三の問題は、岩国への核持ち込み問題であります。
 ジョンソン元国務次官の証言でも明らかになった一九六一年に核を積んだLSTが岩国沖に停泊していたという事実は、わが党のこれまでの調査と指摘を完全に立証したものであります。重要なことは、一九六〇年に事前協議制がとられたそのときから、すでにそれが破られていたという事実であります。しかも、これは事実上の貯蔵であり、アメリカ側の解釈からしてもとうてい容認することのできない背信行為であり、公然たる安保条約違反ではありませんか。政府は、特に総理は、これでも米政府を信頼するというのですか。
 さらに、先般のわが党の訪米調査によって明白となった核弾薬専門の整備部隊MWWU1の存在、同部隊による核兵器組み立て作業所の常設などの事実は、岩国の米軍基地に核戦争の任務づけが与えられているということを裏づけるものであります。同時に、そのことは、今回ジョンソン元国務次官が証言した六一年の事態が現在になお引き続いていることを物語るものであります。政府は、アメリカの当時の当事者が言明した岩国における事実関係及び今日のMWWU1の実態について、その全貌と責任を明らかにするよう米政府に要求すべきであります。総理の答弁を求めます。
 最後に、総理、核を持たず、つくらず、持ち込まさずの「非核三原則」は、日本国民の悲願と決意によって国是となったものであります。いまこそ非核三原則の完全実施のため、この法制化を行い、内外にその姿勢を鮮明にするとともに、核軍縮のため積極的役割りを果たすべきときではありませんか。総理の見解を伺いたい。
 今日の危険な事態は、アメリカの核のかさのもと、日本がアメリカの核戦略の拠点に仕立て上げられようとしているところから生じているものであります。日本の平和と安全のため、日米軍事同盟をなくし、アメリカの核のかさから外れ、非同盟、中立の日本の実現を目指して全力を尽くす日本共産党の決意を表明し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、いわゆるイントロダクションなる文言についてでありますが、イントロダクションの中に寄港、通過が含まれていることにつきましては、米合衆国軍隊の装備における重要な変更を事前協議の対象とする交換公文、いわゆる岸・ハーター交換公文の規定及びこれを受けた藤山・マッカーサー口頭了解からして十分に明らかであり、ましてその点に関し日米間に了解の違いはないと考えております。
 また、去る二十日、マンスフィールド大使が園田外務大臣に述べましたように、米政府が安全保障条約及び関連取り決めに基づく日本に対するその約束を誠実に遵守するとしていることは御承知のとおりであります。
 次に、有事の場合についてお尋ねがありましたが、安保条約の核に関する事前協議制度のもとにおきましては、核の持ち込みに該当する場合はすべて事前協議の対象であります。政府としては、非核三原則を今後とも堅持していくことは従来から答弁しているとおりでありまして、核持ち込みについての事前協議が行われた場合には、いかなる場合であろうと常にこれを拒否するというのが政府の一貫した考え方であります。なお、米国政府も、事前協議にかかわる事項について、日本政府の意思に反して行動する意図のないことを保証しておりますことは、安全保障条約締結時の岸・アイゼンハワー共同声明からも明らかなところであります。
 次に、ジョンソン元国務次官等の最近の発言についてでありますが、御指摘の発言は、いずれも一私人としての発言であり、また基本的には伝聞や記憶に基づくものと思われます。
 安保条約の核に関する事前協議制度のもとにおいては、いわゆる艦船による核持ち込みを含め、核の持ち込みに該当する場合はすべて事前協議の対象とされており、事前協議に関する約束を履行することは米国にとって安保条約上の義務であります。政府としては、安保条約が日米両国の信頼関係に基づいている以上、米国のかかる約束が履行されていることに何ら疑いを有しておりません。また、これまで米側が事前協議を行ってきていない以上、米軍による核の持ち込みがあったというような事実はないと考えております。
 最後に、非核三原則についてであります。
 非核三原則を堅持することは政府の一貫した政策であり、この政策はすでに内外に周知徹底されております。また、この問題については、国会における諸決議により国会の意思も明確に表明されており、これを改めて法制化するなどの措置をとる必要はないと考えます。
 なお、核持ち込みがあったとの報道が種々行われておりますが、これらの発言は、すでに述べましたとおり、基本的には伝聞や記憶に基づくものであり、政府としては、これまで核持ち込みが行われたようなことはないと確信しております。
 なお、残余の問題については所管大臣より答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 御発言の中に、参議院の委員会で寄港、通過について特別の契約、規約はないと課長が言ったがという発言でありますが、これはその前に、総理や私がしばしば申し上げまする規定、条約、各会談等で、事前協議の対象に変わりはありませんということを答えた上で、これだけ抜粋した契約はないとこう言っているわけでありますから、答弁の食い違いはございません。
 次に、艦船による核持ち込みを含めて、この核持ち込みは事前協議の対象となることはしばしば言ったとおりでありまして、交渉の過程の個々の日米間のやりとりの詳細については外交慣例上公表しないのが通例でございますから、御理解を願いたいと思います。
 次に、非核三原則、これが寄港、通過、これが対象となっていることは総理から言われたとおりでありますから、これは繰り返すことはいたしませんが、その後、しばしば会談、かつまた二十日のマンスフィールドから私に発言されたことから言いましても、米国は日本との約束を遵守しているものと私は考えます。
 ライシャワー発言で言われるところの核に関する大平・ライシャワー会談は承知しておりません。ライシャワー氏は駐日大使を務められた方でありますけれども、現在は責任のない一民間人でありますから、これについて照会する考えはございません。
 佐藤・ニクソン共同声明第八項で言われているのは、米側が沖繩のいわゆる核抜き返還を実施することをうたったものであり、この中で「事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく」と言っておりますのは、返還後の沖繩への核兵器の持ち込みは、日本の他の地域の場合と同様、安保条約に基づき事前協議の対象となる問題であることを米国政府の立場として念のために確認したものでございます。
 次に、しばしば言いますとおりに、寄港、通過は事前協議の対象でありまして、今後もいささかも変わることはございません。したがいまして、政府は、核の持ち込みについては不明確な点はなく、いままでいろいろ会談をいたしました結果、従前どおりでよいと考えております。
 ミッドウェーの問題でありますが、安保条約の核に関する事前協議制度のもとにおいては、いわゆる艦船による核持ち込みを含め、核の持ち込みに該当する場合はすべて事前協議の対象であります。これが日本政府の従来の見解であり、米政府もこれを理解するところであります。したがいまして、ミッドウェーの問題については、従来から申し上げましたとおり、事前協議に関する交換公文の規定及び藤山・マッカーサー口頭了解からして十分に明らかであると考え、その上に、マンスフィールド大使が二十日、私に対して、今回のライシャワー発言という背景の中で、昭和四十九年十月にラロック発言との関連で当時のインガソル国務長官代理によって表明された米政府の見解をみずから改めて確認してきた次第であります。そこで、ミッドウェーの寄港については、従前どおりでよろしいと政府は解釈をいたしております。
 次に、三月の予算委員会における質問で、外務省は、核弾頭のコンポーネントは事前協議の対象になると答弁しております。これは御承知のとおり、政府としては、ニュークリア・コンポーネントとは、基本的には、核兵器の構成部分のうち、その核爆発を生ぜしめる核分裂物質または核融合物質が含まれている部分のことであると理解しておりまするから、これは当然核兵器であり、事前協議の対象となっていることは明らかであります。以上の点については、念のため在京米大使館を通じ米国政府に照会しましたところ、米国政府としても同様の理解を有している旨申し越した次第でございます。
 以上、お答えにかえます。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○議長(徳永正利君) 栗林卓司君。
   〔栗林卓司君登壇、拍手〕
#29
○栗林卓司君 私は、民社党・国民連合を代表して、非核三原則に関する諸問題等について総理に質問をいたします。
 まずお尋ねをしたいのは、米軍岩国基地沖での核兵器貯蔵問題であります。
 最近、真相を知り得る立場にあった人たちから相次いで事実関係が述べられております。この問題について政府はどういう見解をお持ちでございますか。
 事前協議に関する交換公文が署名されたのが一九六〇年一月十九日。しかるに、その後も数年間にわたって、岩国基地の沖合いといっても岸からわずかに百数十メートル、まさに陸上にも等しいところに多数の水爆が持ち込まれていたという発言は聞き捨てにしておける問題ではありません。国民の代表として、真相の解明を強く求めておきます。また、日本国民に対して真相解明の責任を負う者は、日本政府あるいは米国政府のいずれであるのか、お答えをいただきたいと思います。
 この水爆持ち込みについて、エルズバーグ氏はこう言っております。「当時米軍はこう考えていたようです。この水爆は一九六〇年以前からそこに存在していたものです。だから、新たに持ち込まれたものではない。したがって事前協議の対象にはならない。要するに「持ち込み」すなわちイントロダクションをめぐる理解の食い違いが原因だったと言えるでしょう。」、そう述べているわけですが、そういう事実があったのでありましょうか。
 この「持ち込み」という言葉は、非核三原則の中で最も厳密な理解が求められている部分であります。
 なぜなら、「持たず」「つくらず」というのは、日本政府がみずから決意すれば済む問題であります。しかし、「持ち込ませず」というのは他の国が絡んだ問題であります。したがって、「持ち込み」という言葉の定義は、日米間で、あるいは国際的にも明確にしておかなければなりません。しかし、これまでは、あいまいなまま放置されてきたのでありましょうか、お尋ねをいたします。
 ライシャワー博士が米国側の「持ち込み」すなわち「イントロダクション」には「領海通過」も「一時寄港」も含まれていないと発言されて以来、にわかに言葉の問題が脚光を浴びてまいりました。現在政府は、辞書を片手に防戦これ努めているようであります。しかし、これはまことに愚かなことと言わなければなりません。元来、英語という言葉は彼らのものであります。日本人のものではありません。彼らがその意味は入っていないと言ったら入っていないのであります。
 一方、日本語で言う「持ち込み」の意味は、持って入るということですから、領海に持って入ることも港に持って入ることもすべて含まれます。もともと幅の広い言葉であります。では、この広い意味を持った言葉を全く言葉の違う外国人に伝える場合、政府は一体これまでどれほどの努力をしてきたのでありましょうか、お尋ねをします。
 福田元総理がジャパン・ソサエティーで演説をした際には、「イントロデュース」を使い、外務省の海外広報誌「ジャパン・オブ・ツデー」では「エントリー」を使っております。英語の使い方もまちまちであります。しかも、ところで、これだけ広い意味を持った言葉を説明するのに、たった一つの単語だけで十分だったのでしょうか。ちなみに、領海及び接続水域に関する条約では、領海通過はトラバースであり、海洋法あるいは公海条約における一時寄港はコールであります。したがって、単にイントロダクションと言うだけではなく、トラバースあるいはコールという言葉をとにかく並べ立てながら、「持ち込み」という日本語の意味をできるだけ正確に相手国に伝える努力をすべきではなかったのでありましょうか。
 言葉の異なる国家間にあって、国の意思を間違いなく他国に伝達することは政府の重要な責務であります。しかも、非核三原則はわが国が国是として採択した方針であります。しかるに、この非核三原則について、ときどきの気まぐれな翻訳はあっても、政府の権威と責任において決定した正式の翻訳は存在しないのであります。ということは、総理、非核三原則というのは、要するに国内向けの文章にすぎないのでありましょうか、お尋ねをしたいと思います。
 次に、この際、物議の種となりました総理の発言問題について、若干真意を伺いたいと思います。
 まず、共同声明について、その重要性をどのように認識しておられるのか伺います。
 本来、内容を公表する目的で作成する厳格な文章であります。その中に「同盟関係」という言葉が新たに挿入された点について、これは画期的であり、評価に値するとお考えでしょうか。また、共同声明は、発表することにより、その中身を実行する重大な政治的責任が生まれるとお考えでしょうか。しかるに、発表後、ワシントンで「軍事的意味合いはない」ことを強調され、共同声明に水をかける態度をとられたのはなぜでありましょうか。
 また、総理は、帰国後も共同声明に対して不満を漏らされ、首脳外交時代にふさわしい共同声明のつくり方を要望されました。しかし、その新しい共同声明のつくり方とは、具体的に言ってどういうものなのでありましょうか。もしかしたら、総理は、レーガン大統領との会見の議事録のようなものをつけ加えて出せと言いたいのかもしれません。しかし、総理と大統領は通訳を通して会談してこられたのであります。その通訳の記録がそのまま発表できるものでないことは、いまさら申し上げるまでもありません。また、もしそれを発表しようとしたら、恐らく共同声明の作成に匹敵する時間と努力と手続が必要になるに違いありません。要するに、従来からの共同声明づくりに戻るわけであります。
 また、総理は、日米の役割り分担、特に防衛圏の拡大の問題について、アメリカの肩がわりをかたくなに否定され、自分の庭先ぐらいは自分で守れと説明されました。では、その庭先とは一体どこのことでありますか。辞書によれば、庭先とは縁側に近い庭のことであります。海でたとえれば、浜辺に近いところにある海ということでありましょう。周辺海域数百海里、航路帯千海里を説明する言葉としては、庭先は不適切であります。国民はむしろだまされたとさえ思うのではありますまいか。お尋ねします。
 しかも、一体何を守るのか。油は日本にとって死活にかかわる重要物資であります。しかし、ペルシャ湾から日本へ向かうタンカーの四割は日本の船ではありません。では、その外国船籍の船をも守るのか、それとも日本の船だけを守るのか。日本の船だけを守っていて油の供給に不安はないのか。個別的自衛権の行使にかかわる問題としてお尋ねをしなければなりません。
 また、共同声明には「防衛力」と書いてあります。レーガン大統領が読む場合と総理が読む場合では意味が違うのか同じなのか。
 また、共同声明では、六月の安全保障問題に関する日米会議に対して、米大統領と総理が期待をすると書いてありますが、では総理は一体何を期待するのでありましょうか。
 切りがない質問と思われるかもしれません。しかし、総理から率直に、しかも納得のいく説明が聞けない国民の方がもっとみじめなのであります。
 核の持ち込みに対する総理の発言にしてもまさにそうであります。二転三転したのを目の当たりに見せつけられたのであります。また、有事の際の核持ち込みはどうかという新聞記者の質問に対して、「有事を考えるのは非現実的だ」とさえお答えになりました。しかし総理、一国の総理として有事の際を考えない方がよほど非現実的かつ無責任なのではありませんか。
 米国が有事における核兵器の配置計画を作成するのは当然であります。したがって、総理は、その計画と日本とのかかわり合いを明らかにすべきであります。お尋ねします。
 現在、不幸なことながら、米国及びソ連が艦船用あるいは航空機用として開発をした戦術核兵器の種類はそれぞれ十種類を超えております。軍事常識に従えば、米国及びソ連の艦船、航空機に搭載されているものということになります。これらの艦船、航空機が何らかの事故によって日本に緊急避難を求めてきた場合、総理としてはどうする御所存ですか、これは人道問題であります。
 もともと非核三原則は唱えてさえいればよいというものではないはずであります。いかなる政策でも実施に当たっての問題点を煮詰め、個々に解決していって初めて現実に機能し得る政策になるのであります。これは主として政府の責任であります。しかし、政府は、口では非核三原則を誓いながら^この三原則を現実化するための努力を怠ってきたのではありませんか。もしそうでないというのなら、一体これまで何を詰めてきたのか、これから何を詰めていこうとするのか、具体的に説明していただきたい。
 現在、政府は、核の持ち込みについて端的に言ってノーという態度をとり続けているようであります。では、他国がわが国に無断で国の領土、領海、そして港湾に核を持ち込んだ場合、これをどのようにして検証し、排除するのでありましょうか。これも具体的にお尋ねをしたいと思います。
 最後に一言申し上げます。
 ただいま問題とされているのは総理に対する国民の信頼、政治に対する信頼、国会に対する信頼そのものであります。信頼を失ってはすべてを失います。このときに当たり、総理として、政治家として、どのように対処されようとするのか、率直な御答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 岩国基地沖のLSTに核があったというジョンソン元国務次官の発言やエルズバーグ博士の発言などについては、私も報道を通じて承知しております。しかし、これらはいずれも基本的に伝聞とか記憶に基づいて発言がなされているものであり、政府といたしましては、この種の事柄について一々米国側に照会を行う考えはありません。
 なお、いわゆるイントロダクションの中に、寄港、通過が含まれていることにつきましては、米合衆国軍隊の装備における重要な変更を事前協議の対象とする交換公文、いわゆる岸・ハーター交換公文の規定及びいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解からして十分に明らかでありまして、この点に関し、日米間に了解の違いはないものと考えます。
 また、もともと存在していた核については、いわゆる持ち込みに当たらないのではないかなどの議論が一部にありますが、そのようなことは考えられないことであります。いずれにせよ、純理論的に申せば、仮にもともと存在していたといたしましても、それはその後設けられた事前協議制度によって、その時点で排除されることになるというのが政府の考え方であります。
 次に、いわゆる持ち込みという言葉についてお尋ねがございました。
 この問題をめぐっていろいろ議論があるようでありますが、この場合、日本語の持ち込みは英語のイントロダクションに当たり、そこには領海通過も寄港も含まれているということにつきましては、すでに御説明したとおりであり、日米間に了解の違いがないものと考えております。
 もとより、栗林議員も御指摘のとおり、お互いに使用する言語を異にする他国との外交交渉におきましては、言葉の持つ重要性は大きく、この点を十分考慮しなければならないことは当然であります。
 なお、非核三原則の翻訳につきましては、御指摘の持ち込ませずという点を含め、その趣旨が十分明確に伝わるよう遺漏なきを期してまいったところであります。
 次に、先般の日米共同声明についてお答えいたします。
 今日の日米関係は、民主主義及び自由とい自由世界が共有する基本的理念の上に築かれていること、そうして日米両国は、今日の多難な国際社会において互いに協力して、世界の平和のために貢献していく責任を有しております。今回の共同声明では、このような責任を有する両国の特別に緊密な総合的関係を同盟関係と表現した次第であります。これは、いわば当然のことを確認したものであり、今般日米関係を同盟関係と表現したからといって、それが現在の日米関係の枠組みを変えるような新たな軍事的意味を持つものではございません。私がワシントンで述べたのも同様の趣旨でありまして、新たに同盟関係という言葉を用いたからといって、日本が集団的自衛権を容認したとか、あるいは日米関係がいわゆる攻守同盟を意味する軍事同盟的なものになったということではないということを強調したかったからであります。
 なお、今回の共同声明について、日米両国間でその解釈をめぐって疑義があるなどということはありません。
 また、今回の共同声明の作成には相当の時間を要するため、両国政府間で事前に十分な協議を行い、またその間、随時私及び外務大臣が指示を与えつつその内容を確定していった次第であり、その内容につき何ら不満があるわけではございません。
 次に、共同声明に言ういわゆる役割り分担の問題についてお答えいたします。
 共同声明で述べている役割り分担の考え方は、従来に比し新しいことを述べたものではありません。
 わが国が集団的自衛権を行使し得ないことは憲法上明らかであり、したがって、共同声明に言う極東の平和と安全のための日本の役割りは、政治、経済、社会、文化の各分野における積極的平和外交の展開に重点が置かれることとなります。
 また、お尋ねの庭先とは、私がナショナル・プレスクラブにおいて周辺海域における防衛力の整備目標を述べた際に、右海域が日本に近いところのものであることを比喩的に述べたものであります。
 なお、わが国の周辺海域とは一般的な表現であり、その具体的範囲を云々し得るようなものではありませんが、政府は従来から、わが国周辺数百海里、航路帯を設定する場合はおおむね千海里程度の周辺海域において、わが国船舶の海上交通の安全を確保できることを目標として海上防衛力の整備を行っていることは、これまでもしばしば国会でも御説明申し上げているところであります。
 なお、わが国は、わが国周辺海域における自衛権の行使に当たっては、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、すでに述べたとおり、集団的自衛権の行使が憲法上許されないことは言うまでもございません。
 また、わが国の防衛力につきましては、わが国としては、自主的に、かつ憲法及び基本的な防衛政策に従ってその整備を図っていく所存でありますが、これに対しレーガン大統領は、共同声明にもあるとおり、理解を示しております。いずれにせよ、わが国の考えている防衛力の改善と、同大統領が日本に期待している防衛力の向上は、基本的に同じものと承知いたしております。
 なお、今後予想されている日米安保事務レベル協議、大村防衛庁長官の訪米等の場においては、私といたしましては、日米両国が共通の関心を有する安全保障問題につき、首脳会談の趣旨を踏まえ、日米間で率直な意見の交換を行い、相互理解の増進に資することを期待しております。
 次に、わが国の非核三原則についてであります。
 非核三原則は、わが国の平和憲法の精神、また、史上唯一の被爆国たるわが国の歴史的体験と強い国民世論、核戦争がもたらす被害の大きさなどの認識に基づくものであります。政府としては、こうした認識を踏まえ、今後とも非核三原則を堅持してまいる所存であり、これはいわゆる有事たると否とを区別するものではありません。
 また、わが国は、全面核戦争を回避し、世界の平和と安定を確保していくため、平和国家としての基本的立場を堅持しつつ、積極的な平和外交を展開しているところでありますが、わが国への核持ち込みは、いかなる場合であっても認める考えはありません。緊急避難のごとき場合にも非核三原則を堅持することに変わりはありません。
 米国政府が、事前協議に係る事項について、日本政府の意思に反して行動する意図のないことを保証していることは、安保条約締結時の岸・アイゼンハワー共同声明からも明らかなところであります。
 非核三原則は、平和国家たるわが国が誠実に遵守すべき最も重要な基本政策の一つであります。このことはすでに世界的に周知のところでありまして、かかるわが国の国是を侵して他国がわが国に核持ち込みを行うようなことは、あるとは考えておりません。
 なお、政府としては、非核三原則の実効性をさらに確保するため、今後ともこれを内外に表明し続けていくことが肝要であると考えます。
 なお、米国との間では、安保条約の核に関する事前協議制度のもとで、いわゆる艦船による核の持ち込みを含め、核の持ち込みに該当する場合がすべて事前協議の対象であることは明らかでありますので、米国と新たに交渉するような必要があるとは考えておりません。
 非核三原則は、わが国歴代内閣が堅持してきたところであり、今後ともこの方針を堅持していくことに変わりのないことはすでに述べたとおりであります。私は、かくすることが国民の信頼にこたえるゆえんであると考えます。
 また、米国との信頼関係も、すでに揺るぎないものになっており、今回の事態でこれが影響されるようなことはありません。
 虚構の答弁を繰り返しているとの御発言でありましたが、そのようなことはありません。
 以上、申し述べたところにより、私の考えを御理解いただきたいと存じます。(拍手)
     ─────・─────
#31
○議長(徳永正利君) この際、日程に追加して、
 国家公務員法の一部を改正する法律案、自衛隊法の一部を改正する法律案、国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び地方公務員法の一部を改正する法律案について、提出者から順次趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○議長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。中山国務大臣。
   〔国務大臣中山太郎君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(中山太郎君) 国家公務員法の一部を改正する法律案及び国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 初めに、国家公務員法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 国家公務員については、大学教員、検察官等一部のものを除いて、現在、定年制度は設けられていないわけでありますが、近年、高齢化社会を迎え、公務部内におきましても職員の高齢化が進行しつつあります。したがって、職員の新陳代謝を確保し、長期的展望に立った計画的かつ安定的な人事管理を推進するため、適切な退職管理制度を整備することが必要となってまいったわけであります。このため、政府は、昭和五十二年十二月に国家公務員の定年制度の導入を閣議決定し、政府部内において準備検討を進める一方、この問題が職員の分限に係るものであることにかんがみ、人事院に対し、その見解を求めたのであります。人事院の見解は、一昨年八月、人事院総裁から総理府総務長官あての書簡をもって示されましたが、その趣旨は、より能率的な公務の運営を確保するため定年制度を導入することは意義があることであり、原則として定年を六十歳とし、おおむね五年後に実施することが適当であるというものでありました。
 政府といたしましては、この人事院見解を基本としつつ、関係省庁間で鋭意検討を進めてまいったわけでありますが、このたび、国における行政の一層の能率的運営を図るべく、国家公務員法の一部改正により国家公務員の定年制度を設けることとし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 改正の第一は、職員は定年に達した日から会計年度の末日までの間において任命権者の定める日に退職することとし、その定年は六十歳とするというものであります。ただし、特殊な官職や欠員補充が困難な官職を占める職員につきましては、六十五歳を限度として、別に特例定年を設けることとしております。
 改正の第二は、定年による退職の特例であります。これは、任命権者は職員が定年により退職することが公務の運営に著しい支障を生ずると認める場合には、通算三年を限度とし、一年以内の期限を定めてその職員の勤務を延長することができるというものであります。
 改正の第三は、定年による退職者の再任用であります。これは、任命権者は定年により退職した者を任用することが公務の能率的な運営を確保するため特に必要がある場合には、定年退職の日の翌日から起算して三年を限度とし、一年以内の任期でその者を再び採用することができるというものであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 改正の第四は、内閣総理大臣は定年に関する事務の適正な運営を確保するため必要な調整等を行うというものであります。
 改正の第五は、国の経営する企業に勤務する職員の定年制度であります。これらの職員については、原則定年六十歳を法定し、特例定年の対象の範囲、勤務の延長の基準等は当該企業の主務大臣等が定めることとしております。
 改正の第六は、以上の改正に伴う経過措置等であります。すなわち、任命権者、人事院及び内閣総理大臣は、この法律が施行されるまでの間、定年制度の円滑な実施を確保するため所要の準備を行うものとすること、この法律の施行の日の前日までにすでに定年を超えている職員は、施行の日をもって退職するものとすること、ただし、これらの職員につきましても、定年による退職者の例に準じて、勤務の延長及び再任用の措置をとることができるものとすること等であります。
 以上の改正は、昭和六十年三月三十一日から施行するものとし、円滑な実施のための準備に関する規定は、この法律の公布の日から施行することといたしております。
 続きまして、国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 国家公務員等の退職手当につきましては、民間における退職金の実情にかんがみ、これを是正する必要があると認められますので、政府としては、このたび、国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律について、所要の改正を行おうとするものであります。
 次に、法律案の内容についてその概要を御説明申し上げます。
 第一に、職員が二十年以上三十五年以下の期間勤続し、勧奨等により退職した場合に法第三条から第五条までの規定により計算した額に百分の百二十を乗じて得た額の退職手当を支給するものとしていたのを、百分の百十を乗じて得た額を支給することに改めることといたしております。
 第二に、職員が退職した場合に支給する退職手当の基準については、今後の民間事業における退職金の支給の実情、公務員に関する制度及びその運用の状況その他の事情を勘案して総合的に再検討を行い、その結果必要があると認められる場合には、昭和六十年度までに所要の措置を講ずるものとすることといたしております。
 以上のほか、附則において、この法律の施行期日及び経過措置について規定しております。
 以上が国家公務員法の一部を改正する法律案及び国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございますが、国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきましては、衆議院において、題名及び施行期日並びにその経過措置に関する修正が行われたほか、修正案に言う指定機関等へ出向した職員の在職期間の通算について修正が行われたところであります。
 以上、よろしく御審議をお願いいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#34
○副議長(秋山長造君) 大村国務大臣。
   〔国務大臣大村襄治君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(大村襄治君) 自衛隊法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 自衛官については、現在、自衛隊法において停年制度が設けられておりますが、自衛官以外の隊員については、その制度がなく、一般職の国家公務員と同様の退職管理を行っているところであります。
 このたび、一般職の国家公務員について、国家公務員法の一部改正により定年制度が設けられることに準じて、これと同様の理由から、自衛官以外の隊員についても自衛隊法の一部改正により定年制度を設けることとし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の概要について御説明いたします。
 第一は、自衛官以外の隊員は定年に達した日以後における最初の三月三十一日または防衛庁長官のあらかじめ指定する日のいずれか早い日に退職することとし、その定年は六十歳とするものであります。ただし、これらの隊員が特殊な職や欠員補充が困難な職を占める場合には、六十五歳を限度として、別に特例定年を設けることとしております。
 第二は、定年による退職の特例であります。これは、任命権者は自衛官以外の隊員が定年により退職することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認める場合には、通算三年を限度とし、一年以内の期限を定めて当該隊員の勤務を延長ずることができるとするものであります。
 第三は、定年による退職者の再任用であります。これは、任命権者は定年により退職した者を任用することが公務の能率的な運営を確保するため特に必要があると認める場合には、定年退職の日の翌日から起算して三年を限度とし、一年以内の任期でその者を再び採用することができるとするものであります。
 第四は、以上の改正に伴う経過措置等であります。すなわち、防衛庁長官は、この法律が施行されるまでの間、定年制度の円滑な実施を確保するため所要の準備を行うものとすること、この法律の施行の日の前日までにすでに定年を超えている自衛官以外の隊員は、施行の日をもって退職するものとすること、ただし、これらの隊員についても、定年による退職の例に準じて、勤務の延長及び再任用の措置をとることができるものとすること等であります。
 以上の改正は、昭和六十年三月三十一日から施行ずるものとし、円滑な実施のための準備に関する規定は、この法律の公布の日から施行することとしております。
 以上が、自衛隊法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#36
○副議長(秋山長造君) 安孫子自治大臣。
   〔国務大臣安孫子藤吉君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(安孫子藤吉君) 地方公務員法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 現在、地方公務員につきましては、国家公務員と同様、定年制度は設けられていないのでありますが、近年、わが国人口の年齢構成が急速に高齢化しつつある現状に照らし、地方公共団体におきましても、高齢化社会への対応に配慮しつつ、職員の新陳代謝を確保し、長期的展望に立った計画的かつ安定的な人事管理を推進するため、適正なる退職管理制度を整備することが必要でございます。
 地方制度調査会等政府関係の調査会においても、つとにその答申におきまして定年制度の必要を認め、また、地方公共団体からも定年制度実施の要望が繰り返し行われてきたのでありますが、国家公務員につきまして定年制度を設けるための国家公務員法の一部を改正する法律案が提出されましたので、地方公務員につきましても、行政の一層の能率的運営を図るべく、これと同様の定年制度を設けることとし、この法律案を提出いたした次第であります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 まず第一は、職員は、定年に達したときは、その定年に達した日から会計年度の末日までの間において条例で定める日に退職することとし、職員の定年は、国の職員につき定められている定年を基準として条例で定めることとするものでございます。ただし、特殊な職や欠員補充が困難な職に任用されている職員につきましては、条例で別の定めをすることができることといたしております。
 第二は、定年による退職の特例であります。
 任命権者は、職員が定年により退職することが公務の運営に著しい支障を生ずると認めるときは、一年以内の期限を定めてその職員の勤務を延長することができるものとし、必要がある場合におきましては三年を限度として更新することができることとするものでございます。
 第三は、定年による退職者の再任用であります。
 任命権者は、定年により退職した者を任用することが公務の能率的運営を確保するため特に必要があると認めるときは、一年以内の期限を定めましてその者を再び採用することができるものとし、その任期は更新することができるが、定年により退職した日の翌日から起算して三年を超えてはならないこととするものでございます。
 第四は、以上の改正に伴う経過措置等であります。すなわち、定年制度の円滑なる実施を確保いたしますため、任命権者及び地方公共団体の長は所要の準備を行うものとすること、定年制度が実施される日の前日までにすでに定年に達している職員は、この制度が実施される日に退職するものとし、これらの職員につきましても定年による退職者の場合に準じて勤務の延長及び再任用の措置をとることができるものとすること、県費負担教職員につきましては、その身分及び任用の特殊性を考慮し、これを再任用すべき地方公共団体を都道府県内のすべての市町村とすることであります。
 これらの改正は、昭和六十年三月三十一日から施行するものとし、定年制度の円滑なる実施のための準備に関する規定は、この法律の公布の日から施行することといたしております。
 以上が地方公務員法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#38
○副議長(秋山長造君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。本岡昭次君。
   〔本岡昭次君登壇、拍手〕
#39
○本岡昭次君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました国家公務員法、自衛隊法並びに地方公務員法の一部を改正する三法案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 わが国は世界に例を見ないスピードで急速に高齢化社会に向かいつつあり、わが国の経済、社会や国民生活など、あらゆる方面に大きな影響を及ぼそうとしています。労働力人口の高齢化に伴い急増する高齢者の安定的就業体制を根本的に整え、将来に向かってその生活不安を解消していくことが焦眉の急務であります。高齢者の雇用保障は、高齢者が直面している深刻な生活不安を解消することによって、国民生活の安定を図るとともに、扶養する人口と扶養される人口とのバランスの改善にも役立つと考えられます。
 いま、わが国は、平均寿命が男子七十三歳、女子七十九歳と世界の最長寿国となっています。いわば人生八十年時代に直面しているのであります。人生八十年時代に適合した高齢者の雇用、新しい人事管理制度の検討に早急に着手し、公務員の定年問題もその一環として考えていくべきであります。政府は、こうした人生八十年時代における高齢者の雇用と生活保障という今後社会的に最も重要な課題の解決に対しどのような具体的な政策と展望を持っているのか、国民の前に明らかにし、国民の不安を取り除いていただきたいのであります。
 いま議題となっています定年法制化とは、「任期の定めのない職についている職員が一定の年齢に達したときに画一的に法律によって労働関係を終了させる制度」であります。
 わが国の公務員には、一部の公務員を除き、一般的には戦前戦後を通じて定年制が存在していなかっただけでなく、戦後、民主的公務員制度が確立し、その身分は国公法や地公法などによって保障されてきたのであります。このことは、職務の公平、中立、安定性という要請から公務員の身分を保障する必要性があるからであります。さらに重要なことは、団交権や争議権を不当に剥奪されている公務員の労働条件が労使の団体交渉によるものでなく法定主義をとっているために、使用者である政府の恣意によって一方的に身分が剥奪されることのないようにするためであります。
 今回の法改正は、こうした公務員法制下の終身的身分保障制度を一方的に破棄する年齢による雇用上の差別であり、公務員労働者の労働権の侵害であると考えますが、政府の見解を明らかにしていただきたいのであります。
 また、民間企業の定年に準拠して公務員の定年制が強行されようとしています。しかし、民間企業の労働者と異なり、先ほど申し上げましたように団体交渉や争議権を不当に剥奪されている公務員に、民間準拠ということで定年制を強要する理由にはなり得ません。現行の公務員法制のもとでの公務員の退職管理は、退職勧奨制度によって職員の新陳代謝が図られ、人事管理が順調に機能しています。その結果、六十歳以上の雇用率は、国家公務員でわずか二・四%、地方公務員で〇・八%となっているのであります。
 現行法制下において、労使が知恵を出し合って生み出し育ててきた勧奨退職の合意や協定を評価し、活用していくことこそが定年問題について民間企業と公務員とが同一歩調をとることになるのではないでしょうか。政府は、退職勧奨制度をどのように評価していますか。このささやかな身分保障さえ奪うことは公務員にとってまさに耐えがたき基本的権利の制限であり、否定であると考えます。
 日本における労働者の労働基本権は、憲法第二十八条において明確に定められております。公務員といえども憲法第二十八条に規定する労働者であります。ただ、昭和二十三年以来、政令二〇一号によって不当に労働基本権が奪われ、法律によって制限されているにすぎないのであります。定年制法制化は、公務員労働者に対し合意を求め、協議することなく、一方的に法律によって労働関係を断ち切るものである以上、それはもはや現憲法下における民主的な労使関係はなく、古い昔の身分関係に逆戻りさせるものと断ぜざるを得ないのであります。総理に、現憲法の示す労働基本権と今回の定年制について、納得のいく説明をお願いいたします。
 また、公務員の労働基本権の代償機能であり、公務員法、公務員制度の番人としての人事院の機能について、どのような認識をお持ちか。そして、仮に定年制を強行するのであれば、当然労働基本権の制約を解除して、公務員にも憲法第二十八条の全面適用を図るべきだと考えますが、あわせてお尋ねをいたします。
 政府が公務員制度や公務員法の根本精神である終身的身分保障を顧みることなく、さらには賃金を初めとする労働条件の整備、労働基本権の確立の問題を抜きにし、本来次元の異なる問題である行政改革、行政経費削減の一環として定年制を利用しようとする政府の驚くべき便宜主義を私は許すことができないのであります。総理の、本法施行の真意と、立法論として確信のあるお考えをお尋ねいたします。
 以上のように、政府の公務員定年制法制化は、憲法上最低保障されている公務員労働者の労働基本権を侵害するものであり、高齢化社会への展望を欠いております。また、雇用政策上から考えても、一貫性もなければ政策的整合性にも欠けているものと言わなければなりません。むしろ、いま雇用問題として政府が実施すべきは、高齢化社会との対応からして、もっと積極的な雇用政策としての年齢による雇用差別禁止法の制定であると考えます。
 政府の見解をお聞かせ願いたいと考えます。
 次に、改正法案の内容に関連して三点質問いたします。
 第一は、公労法上の問題点についてであります。
 今回の法改正は、定年制を国家公務員法の分限条項とし、五現業労働者にも適用させようというものであります。五現業労働者には、公労法も適用されており、労働条件については団体交渉権が認められています。したがって、今日まで二十数年間、退職問題は労働条件として勧奨退職が労使間の完全合意によって行われてきたのであります。民間労働者と同じく労働基準法の全面適用となっている五現業労働者の定年問題を一方的に法制化する合理的な理由が法的に実態的にどのように説明できるのでしょうか。
 改正法は、そういう意味で、憲法で保障した団体交渉権を五現業から理由なく剥奪することになると考えます。加えて、地公労法適用、準用の地方公営企業職員あるいは地方現業職員も地公労法適用と大きな基本権上の格差を生じ、現行法体系の抜本的な改悪となってまいります。
 さらに、公労法は、五現業だけでなく、三公社職員にも適用されております。同一法律でありながら、五現業と三公社に働く職員に差別をつける理由はどこにあるのでしょうか。また、人事院の見解では、「企業としての自主性等を考慮すると、別に法律をもって定めることが望ましい。」と述べています。企業の自主性はどのように考慮されたのですか。これらの諸点について明確な答弁をお願いします。
 第二は、定年六十歳についてであります。
 人事院の諸外国の定年制度の実情調査によると、二十二カ国のうち、アメリカ、ソ連、メキシコ、ブラジルにおいて一般職に定年制は実施されておりません。アメリカは、一般職について最近まで七十歳定年が行われていましたが、一九七八年九月三十日以降、年齢による雇用差別禁止法改正法により定年制度は廃止されています。六十五歳以上について見れば、デンマーク、スウェーデンが七十歳であり、カナダ、西ドイツ、フランス、イタリアなどそれぞれ十三カ国が六十五歳以上と圧倒的に多数を占めています。
 このように、六十五歳以上の高齢者の雇用保障、年齢による雇用差別の禁止がいまや国際的潮流になろうとしており、先ほど申し上げましたように、人生八十年時代を迎えたわが国の実態とも考え合わせると、今回の六十歳定年は高齢化社会に向かう時代の流れに逆行するものと言わなければなりません。政府の見解をお伺いいたします。
 第三は、地方公務員法改正による定年の条例問題についてであります。
 改正地公法の第二十八条の二の二項部分に、「定年は、国の職員につき定められている定年を基準として条例で定めるものとする。」とあります。地方自治体は三千五百もあり、それぞれの地域事情、職員構成、組織機構に応じて自治体がいま退職管理を行っています。地方自治体が条例で定年を定める際、国の六十歳定年を基準とするということになりますが、基準とは法律的にどのような意味を持つものでしょうか。私は、地方自治の本旨に基づき、自治体の自主性を尊重して条例の制定を考える立場からの基準であるべきだと考えます。
 以上、私の質問を終わりますが、最後にいま一度強調しておきたいことは、本日提案された定年制の法制化は、公務員の重大な労働条件であり、また公務員制度の根幹にかかわる問題であるということであります。公務員といえども、定年は労使交渉による合意があくまで前提であるべきであります。労使の交渉、合意を抜きにした定年制は、まさに公務員の一方的首切り以外の何物でもありません。
 私は、ここに改めて、政府に対し、公務員労働者の労働基本権を回復せよ、公務員労働者の基本的な労働権を侵害する本法案を撤回せよということを厳しく要求して、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 わが国は、急速に高齢化社会が進みつつあります。その中で、活力ある社会を維持していくため、雇用、社会保障など各般の問題に新たな角度から取り組み、高齢化社会への備えを固めていく必要があると考えております。
 このような見地から、雇用面については、六十歳定年の一般化を初め、高年齢者の雇用機会の確保に努めているところであります。また、社会保障の面については、年金制度の計画的な改革、総合的な老人保健医療対策などの老人福祉対策を推進していかなければなりません。私は、今後ともこれらの施策の一層の推進に努めるとともに、雇用対策と社会保障政策の有機的な連携を図ることにより、高齢者の雇用と生活の安定を図ってまいる所存であります。
 次に、公務員の定年制導入と身分保障との関連についてでありますが、公務員は、法律に定められた事由に該当しない限り、恣意的に身分を奪われることはないという意味において身分が保障されておりますが、これは、合理的な理由がある場合に、新たな退職事由を設けることを禁止するものではないと考えております。
 今回設けようとする定年制度は、職員の在職期間に一定の枠を設けて新陳代謝の促進と計画的な人事管理を行い、公務の能率的運営を確保しようとするものでありまして、制度自体に合理的な理由があるのであります。したがって、身分保障を理由なく一方的に破棄するものではなく、また、合理的な理由のない雇用上の差別を行おうとするものでもありません。また、定年制度は、国などとの雇用関係を終了するにとどまり、勤労の権利そのものを否定するものではないことは言うまでもございません。
 次に、定年制の導入と労働基本権との関係についてお尋ねがありましたが、御承知のように、現在、公務員の労働基本権が制限されているのは、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務するという公務員の身分の特殊性に基づくものであり、その制約の代償として人事院制度等が設けられているところであります。
 定年制度は、職員の新陳代謝を促進し、計画的かつ安定的な人事管理を確保するために、一定の年齢に達した者は自動的に退職していく制度であります。そして、新たな分限条項を設けようとするものでありますので、人事院制度が設けられている趣旨にかんがみまして、その見解を求め、その意見に沿って公務員法について所要の改正を行おうとするものであります。したがって、定年制度を導入するからといって、労働基本権の制約を見直す必要はないと考えます。
 最後に、行政改革の立場から定年制度を導入することはおかしいとの御意見がありました。
 政府は、現在、行政の簡素効率化を図るために行財政改革に取り組んでいるところでありますが、定年制度は、適正な人事管理を通じて行政の能率の維持向上を図るという観点から、まさに行政改革の一環であると考えております。したがって、行政改革に関する閣議決定の際に定年制の導入を決定し、法律案として国会で御審議をお願いしている次第であります。
 私は、わが国の将来のためにも、行財政改革は避けて通ることのできない緊要な課題であり、国民世論の強く望む課題であると考えております。行財政改革は、とかく総論賛成、各論反対になりがちでありますが、今後行財政改革が円滑に実施されていくためにも、本法案の御審議が速やかに進められ、その成立が図られるようお願い申し上げる次第であります。
 残余の点につきましては所管大臣から答弁いたします。(拍手)
   〔国務大臣藤尾正行君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(藤尾正行君) お答えをいたします。
 総理大臣から非常に詳しい適切な御答弁がございましたので、私はこれとダブらないところを補整をさしていただく意味の御答弁を申し上げたいと存じます。
 まずもって、定年延長の法制化等、年齢による雇用差別禁止法というようなものを制定してこの問題に対処してはどうかという御提案があったわけでございまするけれども、御案内のとおり、私どもの国の雇用の慣行は終身雇用制度でございまして、この終身雇用制度に年功的な雇用賃金慣行といいまするものがこれと並行して採用されておるわけであります。したがいまして、こういった制度を法律によってやっていくということになりますと、その前提といたしまして、このような雇用賃金慣行といいまするものをまず見直すということがなければならないわけでございまして、今日この段階におきまして立法措置を講ずるということには私は多大の問題が先にあろう、かように考えるのでございます。
 なお、定年延長に関する法制化問題につきましては、本年一月十九日の雇用審議会の答申におきましても、「定年延長の進展の動向を見極めつつ検討を続ける」、こういうことになっておりまするので、その検討の結果を見ましてこれに対処したいと考えておるわけであります。
 五現業の職員あるいは地方公営企業の職員、こういった方々について定年制を行うということは、団交権というものとの間に非常な食い違いがあり、場合によればいろいろな面で憲法違反というようなおそれはないか、こういう厳しい御批判でございまするけれども、五現業の職員につきましては、国家公務員法上の身分保障規定が適用されており、法律に定める事由によらなければ本人の意に反してその地位を失うことはないのでありまするけれども、したがいまして、国家の行政の運営上、この活力を維持し、かつ効率化をしていこう、こういう必要があってこの身分保障規定に一つの制約を加えるということでございまするので、当然ここに法律による改正ということが行われておるわけでございまして、今回の定年制の導入に当たりましては、五現業の職員につきまして団体交渉権がいままでも認められておるということも考慮いたしまして、特例定年の範囲等につきましては十二分の団体交渉が行われる、こういうことになっておりまして、団体交渉の対象となっておるということを申し上げたいと存じます。
 なお、三公社の職員につきましても、これは各公社法によりましてその身分保障規定が認められておるわけであります。したがいまして、ここでは、法律による定年制が、この法律運用の適用にはなっておりませんけれども、仮にこれを導入するということになりましたならば、各公社法に対しましても定年制を導入をするという必要があろうと存じます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣中山太郎君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(中山太郎君) 本岡議員にお答え申し上げます。
 まず第一のお尋ねでございますが、この定年制度にかわるものとして現在の公務員の退職管理は退職勧奨制度で順調に行われている、どう評価するかということでございますが、現在までのところでは勧奨制度で私は大変うまく機能してまいったと考えております。しかし、これから高齢化の波が押し寄せてくる中で、やはり現在の勧奨制度というものは職員個々人に対する退職を慫慂するという事実上の行為でございまして、法的規制というものがございません。そこで、高齢化になるという中で、私はやめないと言う人がおれば、この人を無理にやめさせることはできない。こういうことで将来の姿を見ていくと、相当なスピードでやってくる高齢化社会の中で、公務員の制度の中にもやはり長期的な人事管理の制度というものを確立する必要があろうかと、こういうことで今回この法案の御審議をお願い申し上げておるようなわけでございます。
 私どもといたしましては、この法律案が成立さしていただくという時点で、公務員の方々の社会、やはり六十年六十歳という一つの年限が決まるわけでございますけれども、もしこの制度がなければどうなるかということになれば、高齢化する公務員の一つの社会の中で、若い公務員の諸君が将来自分はどうなるだろうかと。つまり、ただいまのような年功序列型終身雇用制の人事管理の中では若い公務員の人たちが意欲を失うことになるのではないか、こういうことも考えまして、きわめて充実した公務員生活を送っていただくためにも定年制度を導入いたしたい、このような方針で今回法案を提出させていただいたようなことでございます。
 次に、人事院制度の機能というものをどう思っておるかというお尋ねでございますけれども、国家公務員に定年制を導入することは、国家公務員制度の根幹をなす職員の身分保障に関することでございます。このことに関連しまして専門的、中立的な中央人事行政機関としての人事院を国家公務員法のたてまえから設けておりますけれども、この意見を求めることが必要であるという認識に立ちまして、昭和五十三年二月に総理府総務長官から人事院総裁あての書簡を発信いたしたようなことでございます。
 これに対し人事院からは、一年半にわたる慎重な検討の結果、昭和五十四年八月に人事院総裁の書簡という形式でその意見が表明されたわけでございますが、この書簡というものは、人事院の公式な意見の表明というふうに理解をいたし、その内容の実質的な重みを尊重いたしまして、右人事院の見解に沿って法案を取りまとめて国会における御審議をお願いしておるようなことでございます。
 第三の、人事院の言う企業の自主性の尊重はどうなったかというお尋ねでございますが、五現業職員の定年制度については、非現業職員と同様、その基本的な枠組みについては国家公務員法の規定を適用することといたしておりますが、特例定年の対象及び年齢その他の事項につきましては、当該企業の主務大臣が決定することができるように配慮をいたしております。これは、国の経営する企業としての自主性、現業職員に団体協約締結権が認められていることに配意をいたしたものでございます。
 第四のお尋ねは、六十歳定年というものは国際的な潮流、日本の実態に逆行するのではないかというお尋ねでございます。
 各国とも公務員制度を持っております。しかし、各国にはそれぞれその国のいわゆる労働慣習というものがその民族性に根差してあることは御案内のとおりでございまして、わが国は、やはり終身雇用型、年功序列型のいわゆる雇用体系というものを持っております。こういうことで、政府におきましては各省庁における勧奨の実態を調査いたしましたが、との勧奨の実態というものは省庁によってばらばらに行われているような傾向が見られております。
 また、民間企業におきましては九七%定年制が導入されている。世論を調査いたしますと、六〇%以上の国民がやはり公務員に定年制を導入すべきだという意見が出されております。また、人口の高齢化に対しても総合的に判断をすべきであるということでございます。このようなことで、政府は、すでに民間企業に対しましては、新経済社会七カ年計画及び雇用対策基本計画第四次案を決定して、昭和六十年には民間においても六十歳定年を施行することが好ましいというふうに国全体の労働政策を誘導しているところであることをひとつ御理解いただきたいと思います。
 第五のお尋ねは、定年問題は労使交渉による合意が前提として行われるべきであり、本法案はその合意に基づいていないから撤回すべきではないか、こういう御指摘でございます。
 定年制度というものは、職員の身分に関する問題で分限事項でございますから、国民の代表である最高機関の国会で御審議を賜り、法律を決定していただくということがきわめて重要な基礎的条件であろうと考えております。私どもといたしましては、ただいま本法案を撤回する意思は持っておりません。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣安孫子藤吉君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(安孫子藤吉君) 勧奨退職に対する評価と申しますか、そういう意味の御質問でございましたが、一般的にはいま総務長官からお答えを申し上げたとおりでございますが、地方団体におきましては現在勧奨退職をやっているわけでございまするが、それはそれなりの効果を上げておりますけれども、しかし、これはその職員の意思というものが前提になるものでございます。それで、その機能にはおのずから限界がございます。現在はその応諾率というものもだんだんと低下しておるのが現状でございます。
 したがいまして、国家公務員におきましてこの措置を講ずる、定年制度をしくこの機会におきまして、やはり地方公務員についても、その整合性に配慮してこの問題を確定することが必要であろうと考えております。そしてこの問題は、地方団体は、すでに前から申し上げましたとおりに、非常に強い要望を繰り返し提出されておる問題でございます。さような点でひとつ御理解を願いたいと思うわけであります。
 それから地方公営企業労働関係法の適用職員及びその準用職員について団体交渉権を尊重しているかどうか、こういうお尋ねでございます。
 この問題は、条例で定める事項で国の五現業職員について団体交渉の対象となるものにつきましては、地方公営企業労働関係法第七条第四号に基づいて当然団体交渉の対象となるものでございまするので、団体交渉権は尊重されるものと考えております。
 また、地方公務員の定年制度の導入に当たりまして、地方公共団体の自主性について尊重しているかというお尋ねでございます。
 今回導入しようとする定年制度は職員の身分保障の根幹にかかわる分限に属しまして、これは公務員制度の基本的な事項でありますため、その導入及び勤務延長、再任用等の制度の基本的な事項につきましては法律で定めることといたしておりますが、定年年齢、定年退職日等定年制度の実施に関する事項につきましては、各地方公共団体の条例で定めることといたしておるわけであります。このように、今回導入しようとする定年制度につきましては、各地方公共団体の実情に応じた退職管理ができるよう配慮されておるのでありまして、地方自治の本旨にも適合するものと考えておるわけでございます。
 定年制度の導入は労使の交渉による合意を前提とすべきではないかというお尋ねでございますが、定年制度は、職員が一定の年齢に達したことを理由としまして、その意思にかかわりなく退職する制度でございまするので、職員の身分保障の根幹にかかわる分限に属するものでございます。現行法上、分限事項として新たな退職の事由を定めるに当たりましては、法律及びこれに基づく条例で定めるとされておるのでございまして、労使の自由な話し合いにより決定することとはされておらないわけであります。
 今回の改正案の立案に当たりましては、国家公務員に設けられようとしておる定年制度との整合性の確保に配慮いたしますとともに、職員団体等の意見を承ってまいったところでございますが、今後も定年制度の実施に当たりまして、必要に応じ同様に対処してまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#44
○副議長(秋山長造君) 矢田部理君。
   〔矢田部理君登壇、拍手〕
#45
○矢田部理君 私は、日本社会党を代表して、国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について強く反対する立場を明確にした上、総理初め関係大臣に質問いたします。
 総理、あなたは行政改革が鈴木内閣の最大の課題であると強調しています。確かに、行政の簡素化や効率化に反対する者はないと思いますし、その意味では行革の翼賛的情勢づくりに成功しているかに見えます。しかし、その内実を検討してみますと、急速にやってくる高齢化社会など国民の求める時代の変化に対応する行革や、公正で民主的な価値ある政府を国民の立場からつくろうという姿勢に立たず、政治の機能を軍事と治安に矮小化し、他を切り落として市場原理にゆだねるいわゆる小さな政府、安上がり政府論を選択しつつあるのではないでしょうか。
 今日、行革とは、いかに政府を小さくし、安上がりのものにするかではなくて、いかに国民にとって価値ある政府をつくるかであり、福祉と軍事をめぐる価値の選択と優先順位の決定を求めるものであります。まさに、そこでは福祉優先、生活重視、軍備縮小の道か、福祉切り捨て、企業優遇、軍備拡大の道をとるのかの政治路線の選択が迫られているのでありますが、総理は後者の道を決定したように思われてならないのであります。事実、鈴木内閣としてその立場を鮮明にしたのが今国会の特徴であり、終盤国会の運営にも端的に表現されています。すなわち、延長国会における最大の政治課題は、日本の将来をかける危険な日米軍事同盟の誓い、核持ち込みの事実上の容認、軍備の増強など一連の軍事優先路線を本格的に選択するのかどうかであり、私たちは日本の運命を左右する重大な岐路に立っているのであります。
 総理、あなたは、外交は苦手だと米側や外務官僚に追随して、その作文を棒読みすることではなく、日本の真の平和と安全を守るために、アメリカの核戦略体制に組み込まれつつあるこの差し迫った事態に対し、身を賭して立ち向かっていくべきであり、政治生命はそこにこそかけるべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 それをせずして、公務員二法を来るべき行革の試金石と位置づけ、これを延長国会の最重点課題と考え、そこに政治生命をかけようとするようでは、日本の次代の選択を誤ることとなり、平和と国民生活にとって悲しむべき事態となることは必定であります。のみならず、このでんでいけば、今後の行革の方向は、すでに指摘しましたように、軍隊と警察だけが正当性を持ち、他の支出はすべて切り落とし、軍事優先、福祉大幅後退の一大軍事国家を目指す危険が高いと見なければなりません。
 総理及び行政管理庁長官の今日の状況についての基本認識と率直な見解をただした上、各論について若干の質問をしたいと思います。
 政府は、退職手当削減の理由を官民格差に求め、昭和五十二年度の人事院の調査を裏づけにしています。しかし、それは今日的に当を得たものではありません。
 なぜならば、第一に、人事院の調査は四年前のもので、今日の実態に即しているとは言いがたく、古証文で公務員等を恫喝するたぐいのものであるからであります。しかも、調査が旧聞に属するというだけではなく、調査の対象も行(一)、つまり事務系職員のみで、もとより三公社等は調査すらしておらず、また他省庁の資料を使ったりして、比較そのものがちぐはぐで合理性がないと言わなければなりません。
 第二には、昭和五十四年十二月十日、参議院内閣委員会で藤井人事院総裁は、「官民の比較検討は大変むずかしい。慎重にやらないと大問題になる」と述べています。ところが、その舌の根も乾かぬ翌年二月、政府は本法案を国会に提出しました。この間わずか二カ月であります。したがって、慎重に検討した形跡もなければ、もとより調査もしていない。言うならば、総理府が明白な根拠も十分な資料もないまま、財政再建の一助にと拙速で取りまとめた法案で、これでは結構ですと言う方がおかしいのであります。
 そこで、総理府に提案をしたい。公務員等の退職手当がみずからの所管だと言うのであれば、四年も前の借り物の資料、各機関の寄せ集めの資料によるのではなく、みずからの責任で、あるいは正式に人事院に委嘱をして、全体を調査し、実態を十分把握してから出直すべきであると思います。
 官民比較の問題で第三に指摘しておきたいのは、仮に本法案が成立いたしますと、昭和五十七年度以降、官民の関係は官低民高型となり、逆格差が生じるという点についてであります。衆議院段階で激変緩和措置がとられましたが、それによっても問題の基本的な解決はなされておりません。そもそも退職手当の額は、俸給月額をベースとし、これに支給率を乗じたものということになりますが、政府は、さきの不十分な調査をもとに官民格差を試算し、支給率を八・三%減ずれば格差はなくなるとして本法案を提出いたしました。
 ところが、今後の退職者は支給率を下げられるだけではなく、五十七年度より人事院通達で退職手当計算の基礎となる俸給月額そのものも切り下げられ、少なくとも昭和五十九年度においては両面で退職手当は大幅に改悪、削減されることになります。これを三十五年勤続、六十歳で昭和五十九年に退職した者のケースで試算いたしてみますと、本来受け取るべき退職手当に対し、金額にして約二百九十万円、率にして一六%の削減となり、民間に比べても実に百四十万円もの低額となり、官民格差は逆転現象を生むことになるのであります。このような逆格差は、政府の言う民間準拠にも明白に反するもので、断じて認めるわけにはまいりません。
 総理、あなたはその内容をどこまで御存じなのでしょうか。また、このような状態をいまから十分に予測できるのにそのまま放置してよいのでしょうか。
 本法案では、六十年には見直しをするという規定を置いておりますが、その間に谷間に落ち込む人々をどうされるおつもりか、具体的にお聞きをしておきたいと思います。
 引き続き、退職手当の性格や扱いについて、総理及び総務長官にただしておきたい点があります。
 その一つは、退職手当の法的性格についてであります。
 政府は、退職手当を「長期勤続の報酬」であるとし、恩恵的なものと性格づけております。しかし、政府の言う長期勤続の報酬というのであれば、在職わずか一年の者にもこれを支給していることを説明できないばかりか、退職手当の本質を見誤っています。
 労働基準法は、「名称のいかんを問わず、労働の対償として支払われるものは賃金である」とし、これを受けて判例は、最高裁を初め、退職手当は「労働の対償」であるから賃金であり、その後払いであると説明しています。したがって、それは恩恵で給付されるものではなく、労働者の権利そのものなのであります。そうだとすれば、すでに在職中の公務員等につきましては、既定の率と計算に基づいて支払いを求める権利が発生しているのでありまして、その権利を後になって削減、剥奪することは、労働条件の一方的な不利益変更ともなり、許されない性質のものであります。その意味では本法案そのものに問題があると考えますが、いかがでしょうか。
 第二には、退職手当は、すぐれて労働者の生活と権利にかかわる労働条件、勤務条件そのものであります。この点を政府はまず認められますか。
 労働条件であるならば、それは本来労使の自主的な交渉によって決定されるべき事項であり、少なくとも労使交渉を土台として法制化すべきものであります。とりわけ三公社五現業等については、それは団体交渉事項であり、労使の話し合いに基づいて労働協約で決定すべきものであります。現に公共企業体等労働委員会は、かつて退職手当を団体交渉事項であると明示しています。したがって、少なくとも三公社等については、団交、協約のルートに乗せるのが本筋であり、公務員と労働法制を異にするにもかかわらず、一律に法律で縛りをかけるのは労働基本権否認の思想であり、憲法二十八条違反のそしりを免れません。この点、総理らはどう考えておられるのか伺っておきたいと思います。
 第三に、政府は、公務員については労働基本権を大幅に制限し、協約締結権すら認めておりません。そのための代償措置として人事院を置きました。その人事院は、国家公務員法で法令改廃に関する意見申し出権や勤務条件事項変更に関する勧告権を有しております。ところが、人事院は本法案に関し意見の申し出すらしておりません。また、退職手当は重要な勤務条件であるにもかかわらず、それが総理府所管だからと称して勧告も行っていない。そうしますと、労働基本権剥奪の代償機能すら退職手当については否定するということになり、法案や制度そのものに問題があるとも言わざるを得ません。総理及び総務長官の見解を明らかにしてほしいと思います。
 質問の締めくくりとして一言申し上げます。
 今日、わが国は急速に高齢化社会を迎えることになります。政治の本格的な対応が求められておりますが、特に働く者の老後設計は退職手当と年金であり、これらの帰趨に強い関心が寄せられております。しかも、物価高で目減りが指摘をされている今日、退職手当の大幅削減ということになれば、働く者の老後はきわめて不安定となり、鈴木内閣の非情は五百万公務員の怨嗟の的となることは必定であります。
 かつて一九二九年恐慌の直後、時の浜口内閣は財政難を理由に官吏の一割減俸を断行しようとしました。ところが、裁判官、検察官を初め各省官吏の猛烈な反発を呼び、鉄道省職員の一斉辞表提出などの鋭い抗議を受けて、ついに撤回せざるを得ず、ようやく二年後に高級官僚と一般との間に減俸率に差をつけるなど大幅に原案を緩和して実施したのであります。しかも浜口内閣は、一方で軍備の縮小を重要な政策として掲げ、官吏にだけ犠牲を求める方針をとりませんでした。
 総理、あなたのように、軍備は拡張、軍事予算は特別枠、公務員などには無差別に犠牲を求めるやり方は、戦前ですらとれなかったのであります。いまからでも遅くありません。歴史の教訓に学び、過ちを改め、公務員二法を直ちに撤回されることを重ねて強く要求する次第であります。
 最後に、本日は外交、防衛問題について緊急質問も行われたことにかんがみ、国会はいま何をなすべきか、何を最重点課題とすべきかについて、同僚議員の各位、特に議長に申し上げたいのであります。
 それは、公務員二法の審議どころではなく、今日わが国の進路と将来にとってゆゆしき問題が提起されているからであります。総理の理解すら超えた日米関係の本格的な軍事同盟化の問題、相次ぐ米要人の核持ち込み発言など、日本の運命を左右する喫緊の事態が続発しております。それらについて鈴木内閣の責任はきわめて重大であると言わなければなりませんが、国権の最高機関としての国会が、政府の責任を追及するだけで任務が果たせ、未来に責任を持った態度をとったと言い得るでしょうか。
 とりわけ核の持ち込みにつきましては、国会の非核三原則の決議に違反しているかどうかが問われており、国会の権威そのものが問われている問題でありますから、国政における最優先課題としてその究明と措置を国会自身がとるべきではないでしょうか。そのために、国会はみずから国政調査権を発動し、当該基地の調査、証人喚問、派米調査などあらゆる方法でその実を上げ、国民の疑惑と不安にこたえ、日本の進路に過ちなきを期すことが今日国会の緊急かつ最大の任務ではないかと申し上げたいのであります。議長の勇断と、議員の皆様方の御理解を期待し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#46
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、行政改革より防衛の問題、特に核問題についての国民の疑惑を晴らすことが当面の最大の課題ではないかとの御質問がございましたが、最近の日米安保条約の核の事前協議制度のもとにおけるいわゆる艦船による核持ち込みに関連してのライシャワー発言等の問題につきましては、先ほど来るる御説明申し上げておりますように、非核三原則をあくまで堅持してまいるとの政府の考えは終始一貫いたしておるところでございます。一方、行財政改革は国民的課題でありますので、核問題等の一連の問題が論議されているからといって、行財政改革の手を抜くというようなことはできないのであります。
 次に、行革と公務員二法とは性格が異なるのではないかとのお尋ねでありますが、国家公務員の定年制度の導入は、行政の簡素効率化を図るという行政改革の趣旨に合致するものとして、従来から行革関連法案として位置づけられておりますし、また、退職手当法改正案は、人事院の調査結果に基づくいわば官民格差の是正を行おうというものでありますから、広く行財政改革に寄与するものと理解いたしております。
 次に、退職時特別昇給制度の一部廃止の問題でありますが、現在、民間においても厳しい給与、退職金制度改正が進められており、民間より厳しい切り下げであるとの御指摘は当たらないのではないかと考えます。いずれにしても、今回の改正は、昭和五十二年度現在での官民退職金についての格差の是正を図るものであり、五十三年度以降の官民双方の退職金水準の変化というような問題は、今回の改正法案に昭和六十年度までの見直し規定を設けてありますので、それに従って検討される問題であります。
 退職手当の削減は、人事院の給与制度の見直し、第二次臨時行政調査会の検討などを待ってはどうかとの御意見でありますが、第二臨調での検討結果なども、必要があれば昭和六十年度までの見直しの中で検討してまいりたいと存じます。
 退職手当は労使交渉で決めるべきではないかとのお尋ねでありますが、国家公務員の退職手当は国民の負担によって国が支給するものでありますので、従来から法定主義によっているところであります。また、国民の負担のもとに支払われるという性格上、民間における退職金の実情を十分考慮してその水準を決定してまいる必要があると存じます。
 今回の措置が公務員の老後の生活を脅かすことになるがどうかとのお尋ねでありますが、今回の措置は民間とのバランス上講ぜられるものでありますので、公務員の退職金のあり方について広く国民の納得を得るため必要な措置であることを御理解いただきたいと存じます。
 なお、退職される方々にとって急激な処遇の変化にならないよう配慮いたしまして、経過措置を設けているところであります。
 官吏減俸令の前例に照らしても一律削減はおかしいのではないかとの御質問でございました。
 官吏減俸令は俸給についての措置でありまして、退職手当に関するものではございません。御承知のとおり、退職手当の算定方法は、勤務年数に応じた支給率に最終俸給を乗じるという画一的な方法がとられておりまして、これは民間においても同様な算出方法が用いられております。
 いずれにいたしましても、今回の公務員二法案はきわめて妥当なものであり、政府としては、その早期成立をお願いしてやまないところでございます。
 その他の点につきましては所管大臣から答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣中山太郎君登壇、拍手〕
#47
○国務大臣(中山太郎君) 矢田部議員にお答えを申し上げます。
 公務員二法は行革の試金石と言われているが、行革と公務員二法はそれぞれ性格が違うじゃないか、こういう御指摘でございます。この点はいま総理からもお答えがございました。
 私どもといたしましては、公務員二法の行政改革における位置づけ、この点につきまして、現在の最大の日本の課題である行政改革を実行する、こういう中で、やはりこの法案はその一環の大きな柱であるというふうに認識をいたしておりまして、速やかな御審議の上、早期成立を期待しているところでございます。
 公務員二法は、公務員の勤務条件の切り崩しではないかというお尋ねでございますけれども、私どもは、公務員というものは国民全体への奉仕者であり、その給与、退職金というもの、あるいはまたその処遇については、絶えず主権者である国民の納得のいくようなことでなければならない、そのためには正すべきところは正すという基本姿勢を堅持してまいることが政府としてはきわめて重要であろうと考えております。
 第二のお尋ねの、人事院の五十二年度民間調査は、現在までに状況が変わっており、もう時期的に古いのじゃないかという御指摘でございますけれども、四十八年の改正におきましても二年間のずれがあったことをひとつ思い出していただきたいのであります。四十八年の場合には、民間と比べて退職金が二割低いということでこれの引き上げをやりましたのでございますけれども、この場合も調査が二年かかっておったわけでございまして、私どもといたしましては、今回の提案は決して古いものではない。必要な調査、統計、分析をやるには最低これだけの日限が必要であるということを御理解いただきたいと思います。
 また、昭和五十二年から五年後の昭和五十七年ごろを基準にさらに民間調査を行い、その結果に基づきまして再度官民比較を行い、昭和六十年度までに退職手当の再見直しをいたしたいと考えております。
 次に、対象には三公社五現業の職員が含まれているのに、一般職非現業のみについて官民比較を行ったのはおかしいじゃないかという御指摘でございますが、退職手当法の対象は、非現業職員、五現業職員、さらには三公社の職員と非常に幅が広うございまして、官民比較に当たりましては、一般職非現業職員の約半数を占める行政職(一)の職員で、さらに行政職(一)の約三分の二を占める高等学校卒業の職員を民間における高等学校卒業の事務、技術に従事している方々と比較し、これは昭和四十八年に二割増しをしたときと同じシステムでやっておるということを御理解いただきたいのであります。
 なお、三公社五現業の職員の退職手当につきまして官民比較をする点については、これらの職員の多くが中学校の卒業者で現場で働く方々でありますから、中労委及び労働省の調査による民間の中卒の生産工程労働者の退職金と比較してみましたところ、その結果はいずれも三公社五現業が民間よりも高くなっておるのでございます。
 結論といたしまして、二〇%引き上げをいたしました昭和四十八年の調査のシステムと同じシステムをとった結果に基づいて、今回一〇%の引き下げを行うというふうに政府が法案を提出さしていただいたということを御理解いただきたいと思います。
 次に、高齢者の特別昇給の廃止は俸給の一号、二号切り下げとなり、今回の支給率の削減と合わせると五十七年度には民間より引き下げとなり問題となるが、この点はこう認識してよいのかということでございますが、公務員の昇給制度の変更のうち、御質問のあった退職時の特別昇給は、高齢による昇給延伸等により影響を受けている職員で勤務成績が特に良好な者が勧奨により退職する場合に認められている特別昇給と思われます。これは現在も行われているものであり、これが来年の三月三十一日をもって廃止されることになっておるところでございます。
 なお、これとは別に、勤続二十年以上の職員で勤務成績が特に良好な者が退職した場合に認められている特別昇給は、今後とも存続をいたすことといたしております。
 他方、民間におきましては、特に石油危機以後、退職金制度の修正は急激でございます。昭和五十二年の民間調査以後におきましても、退職金をベースアップをする以前のいわゆる月給に焦点を合わせるというようなことを民間でやっておりましたり、また、定年年齢の延長に伴う退職金を満五十五歳水準に抑えるというのが最近の民間の傾向であるということも調査の上であらわれております。その点もよろしく御理解を賜りたいと思います。
 次に、人事院総裁が官民比較の検討は慎重に行うべきであると言っているのに、財政再建のために二カ月後に法案化する等拙速過ぎるじゃないかというおしかりでございます。
 今回の退職手当法の改正作業は、昭和五十三年十月からすでに人事院において民間退職金の調査を開始しており、また、昭和五十四年三月二十八日の参議院予算委員会におきまして、当時の三原総務長官が人事院に民間退職金調査を依頼していると答弁いたしております。本改正作業は、御指摘の五十四年十一月の閣議決定の約一年以上前から進められておりましたもので、決して二カ月という短期間で拙速に法律案を御審議いただくようにいたしたのではないことを御理解いただきたいと思います。
 次に、退職金は賃金の後払いであり、その削減は許されない、政府は公務員の退職手当は勤続報償であるとしているが、そうだとすると、短期在職者に退職手当を支給するのはおかしいではないかと、こういうお尋ねでございます。
 民間企業の退職金の性格は、功績報償説あるいは賃金後払い説、生活保障説等の諸説がございます。国家公務員の場合は、職員が長期間勤続して退職する場合の勤続報償であるというふうに認識をいたしております。
 次に、退職手当は勤務条件であり、労使の交渉で決めるべきであり、特に三公社五現業は労働協約権が認められているのに退職手当は法定主義とされ、団交権が否認されている、退職手当は公務員と区別すべきではないかという御指摘でございます。
 退職手当法は、広く三公社五現業の職員のみならず、非現業の一般職公務員、国会職員、判検事、裁判所職員等、司法、立法、行政の各分野の公務員にも適用され、対象範囲がきわめて広く、その算定方法は、勤続年数に応じた支給率に最終月俸を掛けるという画一的な方法であることは御承知のとおりでございます。
 日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社につきましては、従前はその職員は国家公務員として退職手当法の適用を受けていましたが、その後、国から三公社に移行した後も従前どおり国家公務員と同様に退職手当法の適用を受けていることを御理解いただきたいと思います。
 昭和四十八年の官民比較による公務員の退職手当法の改正に関しましては、三公社五現業の職員を含めて退職手当の改善を行っておりますし、今回も同様に官民比較によって退職手当の是正を行っているものでございまして、三公社五現業職員も他の公務員と同様に取り扱うことが適当であると考えております。
 最後のお尋ねでございますが、退職手当は勤務条件なのだから、その改正は労働基本権制約の代償機関たる人事院の勧告を待って行うべきと考えているが、人事院勧告を受けたのか、勧告を受けるべきでなかったのかという御指摘でございます。
 国家公務員の退職手当の基本的な性格は、職員が長期間勤続して退職する場合の勤続報償である。退職手当法の対象は非現業の一般職国家公務員及び五現業職員のみならず、広く特別職国家公務員、さらには三公社職員を包含する。第三点は、総理府では従来からおおむね五年ごとに中立的な第三者機関である人事院に民間退職金調査を依頼いたしております。その調査結果により官民対比等を行い、昭和四十八年に行ったように、比較是正の必要がある場合は、人事院の勧告を待たずに二割引き上げてまいりました。このような経過から見ましても、今回も従来同様、人事院の勧告を受けずに改正案を提出したことを御理解賜りたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#48
○国務大臣(中曽根康弘君) 人事院といわゆる臨時行政調査会との関係についてお答えいたします。
 人事院は、国家行政組織上独特の立場を有する国家機関でございまして、公務員制度を主として所掌しておるわけでございます。しかし、このことは第二臨時行政調査会におきまして公務員制度を検討することを阻害するものではないと思います。臨時行政調査会は法律により設置されておりまして、国家の行政制度及び機能等を調査する使命を託されておるわけであり、総合的な見地から、いまの国家制度全般の一環として公務員制度に関しても検討を進めておる次第なのでございます。
 臨時行政調査会から答申がありました場合に、これを実行するのは政府の責任でございます。しかし、その答申の内容によりまして、政府みずから策案をして法律案として提出するものもございましょうし、あるいは内容によりましては、人事院に要請いたしまして検討と策案を要請する、そういうものもあると思います。これらはおのおの所定の手続に従って行わるべきものであると考えております。
 以上でございます。(拍手)
#49
○副議長(秋山長造君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#50
○副議長(秋山長造君) 日程第一 銀行法案
 日程第二 中小企業金融制度等の整備改善のための相互銀行法、信用金庫法等の一部を改正する法律案
 日程第三 証券取引法の一部を改正する法律案
 日程第四 銀行法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上四案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長中村太郎君。
   〔中村太郎君登壇、拍手〕
#51
○中村太郎君 ただいま議題となりました四法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
 まず、銀行法案について申し上げます。
 本案は、経済社会情勢の変化に対応して、銀行の健全経営を確保し、国民経済的、社会的に要請される銀行の機能の適切な発揮に資するよう、銀行制度の整備改善を図るとともに、法文を体系的に整備し平明化するため、銀行法の全部を改正しようとするものであります。
 その内容は、法の目的を明らかにし、営業年度の半年から一年への変更、休日及び営業時間の弾力化、証券業務その他の業務の明確化等を図るとともに、同一人に対する信用供与の制限、業務及び財産の状況に関する説明書類の縦覧の規定を設け、あわせて金融の国際化に対応して、外国銀行支店に関する規定を整備する等の措置を講じようとするものであります。
 次に、中小企業金融制度等の整備改善のための相互銀行法、信用金庫法等の一部を改正する法律案は、経済社会情勢の進展に即応して、中小企業金融制度等の整備改善を図るため、相互銀行、信用金庫及び同連合会、信用協同組合及び同連合会、並びに労働金庫及び同連合会の業務または事業の範囲を拡充するほか、信用金庫の会員資格の要件を緩和する等の措置を講じようとするものであります。
 次に、証券取引法の一部を改正する法律案は、最近における証券市場の変化に対応し、その健全な発展を図り、あわせて投資者保護に資するため、銀行等が公共債に関する証券業務を営もうとするときは、大蔵大臣の認可を要することとする等の措置を講じようとするものであります。
 最後に、銀行法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案は、銀行法の施行に伴い、貯蓄銀行法等を廃止するほか、長期信用銀行法その他の金融に関する法律について銀行法の改正内容に準じて所要の規定の整備を図るとともに、銀行法の改正に関連して休日について定める手形法その他の法律の規定について、所要の改正を行おうとするものであります。
 委員会におきましては、四案一括して質疑を行い、銀行の証券業務についての実施面での指導のあり方、大口信用供与規制の具体的内容、開示制度を国民のニーズに合致したものにするための方策、銀行等の週休二日制早期実現のための対策等について質疑が行われたほか、参考人より意見を聴取いたしましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終了し、四案を一括して討論に入りましたところ、日本共産党を代表して近藤忠孝委員より四案に対し反対する旨の意見が述べられました。
 討論を終わり、四案を順次採決の結果、四案はいずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、銀行法案に対し、個人、中小企業との金融取引の適正化の推進に配慮すること等六項目の附帯決議が付されました。
 以上、御報告いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#52
○副議長(秋山長造君) これより四案を一括して採決いたします。
 四案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#53
○副議長(秋山長造君) 過半数と認めます。
 よって、四案は可決されました。
     ―――――・―――――
#54
○副議長(秋山長造君) 日程第五 農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長井上吉夫君。
   〔井上吉夫君登壇、拍手〕
#55
○井上吉夫君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
 本法律案は、経営移譲年金等年金給付及び一時金の額を引き上げ、保険料を改定するとともに、特定後継者の保険料を引き続き軽減すること等の措置を行おうとするものであります。
 委員会におきましては、農業者年金の農業構造改善に果たす役割り、財政再計算に基づく農業者年金財政の実情と今後の見通し、保険料の改定に伴う農家負担への配慮、経営移譲年金に係る後継者移譲と第三者移譲の実態、年金未加入者の加入促進施策、農村婦人の年金加入問題等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
 質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本共産党下田京子君から反対の討論があり、採決の結果、本法律案は賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 また、本法律案に対し、全会一致をもって附帯決議を行いました。
 以上、御報告いたします。(拍手)
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#56
○副議長(秋山長造君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#57
○副議長(秋山長造君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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