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1980/05/15 第94回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第094回国会 文教委員会 第16号
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1980/05/15 第94回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第094回国会 文教委員会 第16号

#1
第094回国会 文教委員会 第16号
昭和五十六年五月十五日(金曜日)
    午前十一時二分開議
 出席委員
   委員長 三ツ林弥太郎君
   理事 谷川 和穗君 理事 中村喜四郎君
   理事 三塚  博君 理事 森  喜朗君
   理事 嶋崎  譲君 理事 馬場  昇君
   理事 有島 重武君
      臼井日出男君    浦野 烋興君
      狩野 明男君    久保田円次君
      高村 正彦君    近藤 鉄雄君
      坂田 道太君    西岡 武夫君
      野上  徹君    船田  元君
      宮下 創平君    木島喜兵衞君
      長谷川正三君    湯山  勇君
      鍛冶  清君    三浦  隆君
      栗田  翠君    山原健二郎君
      小杉  隆君
 出席国務大臣
        文 部 大 臣 田中 龍夫君
 出席政府委員
        文部大臣官房長 鈴木  勲君
        文部省初等中等
        教育局長    三角 哲生君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (社団法人教科
        書協会会長)  稲垣 房男君
        文教委員会調査
        室長      中嶋 米夫君
    ―――――――――――――
五月十五日
 放送大学を設置するための国立学校設置法及び
 放送法の一部を改正する法律案(勝又武一君外
 一名提出、参法第一三号)(予)
同月十三日
 私学の学費値上げ抑制等に関する請願外三件
 (鳥居一雄君紹介)(第四五八八号)
同月十四日
 教科書無償措置継続、教育条件充実等に関する
 請願(岩佐恵美君紹介)(第四八八六号)
 同(金子満広君紹介)(第四八八七号)
 同(榊利夫君紹介)(第四八八八号)
 同(中路雅弘君紹介)(第四八八九号)
 同(東中光雄君紹介)(第四八九〇号)
 同(四ツ谷光子君紹介)(第四八九一号)
 公立学校女子事務職員の育児休業制度適用に関
 する請願(木島喜兵衞君紹介)(第四八九二
 号)
 同(湯山勇君紹介)(第四八九三号)
 同(浦野烋興君紹介)(第五〇八九号)
 同(狩野明男君紹介)(第五〇九〇号)
 同(谷川和穗君紹介)(第五〇九一号)
 同(野上徹君紹介)(第五〇九二号)
 同(船田元君紹介)(第五〇九三号)
 同(宮下創平君紹介)(第五〇九四号)
 同(森喜朗君紹介)(第五〇九五号)
 日本学校安全会の存続に関する請願外一件(木
 島喜兵衞君紹介)(第四八九四号)
 同(栗田翠君紹介)(第四八九五号)
 同外一件(嶋崎譲君紹介)(第四八九六号)
 同外一件(馬場昇君紹介)(第四八九七号)
 同外一件(長谷川正三君紹介)(第四八九八
 号)
 同(山原健二郎君紹介)(第四八九九号)
 同外一件(湯山勇君紹介)(第四九〇〇号)
 教科書無償制度の継続等に関する請願(村上弘
 君紹介)(第四九〇一号)
 教育条件の整備充実等に関する請願(村上弘君
 紹介)(第四九〇二号)
 養護教諭全校必置及び国立養成機関謹直に関す
 る請願(米沢隆君紹介)(第四九〇三号)
 脊髄損傷者に対する学校教育改善に関する請願
 (石橋政嗣君紹介)(第四九〇四号)
 同(玉置一弥君紹介)(第五〇八六号)
 同(春田重昭君紹介)(第五〇八七号)
 同(村山喜一君紹介)(第五〇八八号)
 高等学校等の実習助手制度改革に関する請願
 (五十嵐広三君紹介)(第五〇七六号)
 同(池端清一君紹介)(第五〇七七号)
 同(上原康助君紹介)(第五〇七八号)
 同(小林恒人君紹介)(第五〇七九号)
 同(島田琢郎君紹介)(第五〇八〇号)
 同(塚田庄平君紹介)(第五〇八一号)
 同外二件(馬場昇君紹介)(第五〇八二号)
 同(安井吉典君紹介)(第五〇八三号)
 同(横路孝弘君紹介)(第五〇八四号)
 同(和田耕作君紹介)(第五〇八五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 文教行政の基本施策に関する件(教科書問題)
     ――――◇―――――
#2
○三ツ林委員長 これより会議を開きます。
 文教行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 本日は、教科書問題について、教科書協会会長稲垣房男君に参考人として御出席願っております。
 この際、一言申し上げます。
 参考人には御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 なお、参考人に申し上げます。
 参考人の御意見は委員との質疑応答形式で聴取いたしますので、御了承願います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯山勇君。
#3
○湯山委員 きょうは、参考人に御出席をいただきまして、教科書問題につきまして質疑をいたしたいと思います。
 いま、参考人が全面改訂というのを御発表になって以来、教科書はかってない大きな問題になっております。けさの某新聞を見ますと、自民党の小委員会では教科書法をつくるとか、あるいは先般は学習指導要領の改訂というような御議論があった等々も出ておりまして、こういう事態は、非常に重大な事態だと私は思いますので、以下お尋ねをいたしたいと思います。
 できるだけ簡潔にお答えいただきたいと思いますが、稲垣会長は、四月二十七日に文部省に対しまして、今年度からつい使われ始めたばかりの教科書のうちの中学社会科の公民的分野に関するものにつきまして、五十九年度から全面改訂をするという方針で、文部省にそれを受け入れてもらいたいという申し入れをしたということが伝えられております。どういう申し入れをなさったのか、文部省のだれにお会いになったのか、それに対して文部省はどういう答えをしたか、お伺いいたしたいと思います。
#4
○稲垣参考人 稲垣でございます。
 ただいまお尋ねの件でございますが、改訂作業に当たりまして四分の一を超えるかもしれないという話が、公民科を発行の七社のうちで持ち上がっておりましたので、これはいつもの慣例に従いまして、文部省に四分の一を超えるかもしれないということを申し入れてくれという要望だと思いまして、これを私どもの機関であります評議員会、理事会に諮りまして、そのことを四月二十七日に正式に文部省に申し入れたわけでございます。
 申し入れましたのは、藤村検定課長に申し入れてございます。それは書面ではなく口頭で申し入れております。
 よろしゅうございましょうか……。
#5
○湯山委員 文部省の答えは……。
#6
○稲垣参考人 検討するということでございました。
#7
○湯山委員 いまお尋ねいたしますと、全面改訂、つまり四分の一以上の改訂になるかもしれないというようなことであったということですが、これは簡単なことじゃなくて、ただ漠然とそうなのか、どういう点を改訂するというのを数えたか。その中には誤ったのもあると思うのです、そういうのは、これは間違いだというようなことを検討されて、そういう行動をなさったのか。ただ漠然とそういうふうにお話し合いがあって、なるかもしれないというようなことでなさったのか。その点はいかがでしょうか。
#8
○稲垣参考人 これから改訂作業に入るのでございますが、その場合に四分の一ということに制約されて改訂が十分にいかない場合が考えられる。そういう場合が考えられるので四分の一の枠を外しておいてほしい、こういう要望だと思います。
#9
○湯山委員 要望だと思いますというお答えで、言葉じりをとらえるようで大変恐縮ですけれども、これは会長として責任を持ってなさったわけですから、思いますというのじゃなくて、あなたがどう御判断になったか、それをお聞きしたいと思います。
#10
○稲垣参考人 これは会長とか協会の意思で決定すべき問題ではございませんで、あくまでも発行会社、七社ございますが、これの希望を協会としては取り上げた、こういうことでございます。
#11
○湯山委員 四分の一を超えるという判断は、各社はどうしてしたか、おわかりになりますか。――もう一遍言いましょうか。四分の一を超えるかもしれないから申し入れてほしいという希望であったということですが、各社は四分の一を超えるという判断はどうしてしたか。これは重要な問題でございます。この点は異例のことでございましょう。いま出たばかりのものでございます。四分の一を超える、超えないという判断というのは非常に重要なものなので、いま検定を経て出たばかりですから欠陥はないというのが普通でございますね、出す側もそうでございましょう。お出しになった教科書、出してすぐ、あれは悪いところが多いから四分の一以上変えなければならないというようなことは常識では考えられないことですが、そういう判断をなさったということについては、かなり慎重な検討が要ると思います。
 そこで、評議員会、理事会等をお開きになったと言うのですが、そういう検討をした上での申し入れであるかどうかお伺いします。
#12
○稲垣参考人 普通公民科に限らず、五十九年度の中学校の教科書につきましては、もう改訂作業に入っているわけでございまして、その場合、四分の一の改訂は、従来の例から見ますと、現場の先生方の御意見を取り入れるだけで四分の一はまだ不足のような実情でございます。そこへ公民科に関しましては、各界の批判がその上に重なってまいっておりますので、普通でも四分の一では不足ぎみなのですから、各界の意向をそれに加えて検討するとすれば四分の一を超すことがあり得る、そういう心配がある、こう判断されたのではないかと思います。
#13
○湯山委員 非常に重大なことをお聞きしたのです。普通でも四分の一を超えますか。もう一度その点はっきり……。
#14
○稲垣参考人 大体現場からの意見を聞きますと、四分の一では不足のようなことがかなりございます。それで、かねがねから文部省に、四分の一では少ないので三分の一にお願いできないかということを申し入れている次第でございます。
#15
○湯山委員 文部大臣、いまのはあれでいいですか。あなたが検定をして出して、もうこれなら心配ないというので、使わす権限は著者にも教科書会社にもないんですよ。使用する、しないは大臣の権限です。大臣が措置をしなければ使えない。慣例としては、三年目には四分の一以内ということの方針できておったのが、いま聞いてみると、それはとんでもない、三分の一ぐらいある、こういうことなんです。
 たとえて言えば、大臣が家をつくって、これはまあ十分十年ぐらいは住めます、多少途中で手直しは要るかもしれないと言った家を建てて、入ったとたんに、まだろくに使ってもいないのに、わあこんな家には住めない……(三塚委員「それは欠陥建築だよ」と呼ぶ)欠陥教科書ですよ。いま三塚さんはさすがにいいことを言われる。全くそのとおり。その指摘、いいですか大臣、あなたの責任それでいいのですか。
#16
○田中(龍)国務大臣 御案内のとおりに、この教科書なるものは、民間の企業体であります本屋さんがおつくりになったもので、それに関しまして指導要領の方針に従って検定ということがなされ、さらに審議会の議を経まして、今度は各教育委員会の方で採択なさることでございます。
 いまお話のそのいまの御本が四分の一会々という言葉は、これは法律ではないのでございましょうと存じますが、行政実例として四分の一の限界を設けたといたしましても、それほどまでに時代の進展というものが激しくて、つくりましたものができ上がったころには、もう客観情勢が変わっておるとかなんとかいうふうないろいろなことから、そのおつくりになった本屋さんの方には、そういう要望があるという事実をおっしゃったのでございましょう。しかしながら、私どもは、りっぱな教科書をつくって、そうして子供さんたちに上げなければならないということから申しましても、ただいまの四分の一では足りない、三分の一にしてくれという、そのおつくりになった本屋さんの内部的な御意見、それはそれとして承っておく次第でございます。
#17
○湯山委員 それでは、大臣はいまの申し入れを受け入れる方針ですか。つまり、この次の三年向こうで四分の一以上全面改訂をするという申し入れを受け入れるのですか、大臣のいまの御答弁は。
#18
○田中(龍)国務大臣 受け入れる、受け入れないといったそんな権限的なことではございません。いまのは事実問題の話を、本屋さん同士の中身をおっしゃっただけでございます。(「それをどうするのだ」と呼ぶ者あり)それからまた、それをどうするかということは、これはちゃんと審議会もありますし、それから、いろいろなルールに従いまして、私が軽々にそれを云々する段階ではございません。
#19
○湯山委員 違いますよ、大臣。出たときから決まっておるんですよ、いま言うのは。これ以上になる、受け入れてほしい、こういうことでしょう。それに対して答えぬといかぬでしょう。そうしないと作業にかかれない。審議会はそんなことを決める機関ではありません。結局、検定作業を経て、終わったものがどうなるかというのはあります。しかし、こういう心づもりでやるから、そのつもりで文部省受けてもらいたい、とね、返答せぬといかぬでしょう。どうなんですか。
#20
○田中(龍)国務大臣 いまのお話は、事実問題のお話をしただけでありまして、私の方には、何らそういうことは申してまいっておりません。
#21
○湯山委員 会長は文部省へ申し入れたのでしょう。正規の機関の討議を経て、あなたの方の評議員会、理事会の討議を経て文部省という主管庁へ申し入れたんですね。間違いありませんか。
#22
○稲垣参考人 申し入れたのでございます。
#23
○湯山委員 結構です。大臣、文部省へ申し入れてあるんですよ。大臣、知らぬと言ったって、それはだめです。
#24
○田中(龍)国務大臣 つかさ、つかさがございまして、末端のところにお申し入れがありましたといたしましても、私のところにはまだ報告を受けておる段階ではございませんが、しかし、機構といたしましては、一つの大きな機構でございます。しかしながら、その問題につきましては、いま、ここでもって判断をいたす段階ではございません。
#25
○湯山委員 検定権は大臣にあるんですよ。総理大臣でもできないんですよ。その検定についての申し入れを、正規の機関の正規の討議を経て申し入れたものを、知らぬと言うわけにはいきません。知らぬと言うなら、これは怠慢です。そんな文部省は資格なし。一体、これじゃ審議になりません。そんなことではだめですよ。(「申し入れしたのだから、どうするかということを聞いているんじゃないか。そうしたら、正式な申し入れしていないんじゃないか」と呼ぶ者あり)これはだれの責任ですか。――いやいや、初中局長じゃないですよ。大臣だ。だめです、あなたは。大臣だ。
#26
○田中(龍)国務大臣 ただいま、協会の方の責任者が申し入れたとおっしゃいました。しかし、それは申し入れたという報告をまだ私は、その末端の段階におきまして伺っておりますけれども、そのいまの検定権を持っておりますといたしましても、やはりそこにはちゃんとルールに従いました、いままでの規定をきちんと踏まなければなりませんから、そういうふうなお申し入れがあったといたしましても、その事実は伺ったといたしましても、それをどうするかという措置の段階ではない。
#27
○湯山委員 事務次官が知っておるんですよ、大臣。事務次官には課長から報告があっておるんです。よろしゅうございますね。それから、申し入れしたのが四月二十七日です。きょうは五月十五日、はしなくも五・一五です。こわい日ですよね、きょうは。一体、その間、大臣の耳にも入らない。大臣、新聞でもこのことに関するキャンペーンはずっとあるのです。それもごらんにならないし、それじゃ文部省のあなたの部下は全く大臣を無視しています。これじゃ大臣、責任は果たせませんよ。処分する必要がある、そんなのは。いかがですか。
#28
○田中(龍)国務大臣 お答えいたします。
 それは少し飛躍だろうと思います。と思いますのは、やはり役所には、ちゃんとした行政実例なり、あるいはまた行政慣行なり、あるいは法規、法令に準拠した手続なりその他がございます。でございますから、たとえ業界の方のお申し出がございましても、いまお話に出ましたように、四分の一を三分の一にしろということも一つの御要望でございます。ですから、そういうふうな問題につきましては、つかさ、つかさに従いましておのおの慎重に審議いたしておるでございましょう。しかし私が、さあどうするかとおっしゃって、湯山先生に、はい、こういたしますとお答えをいたす段階ではございません。
#29
○湯山委員 いまのは承っておきます。
 ただ、正規には大臣の耳に入ってないんですよ。判断をどうするの問題は日にちがかかります。ただ、こういう申し入れがあった、それがこんなに大きい問題になっているということを、受け付けた責任者の課長あるいは局長が伝えてないというのは怠慢ですし、この責任追及は残します。――要らぬことを言ったらだめです。あなたに聞いていないのに何を言う。
#30
○三角政府委員 ただいま大臣から申されたように、三分の一にしてくれという要望につきましては、非公式のことでございまして、まだ大臣に御報告を申し上げましたり、大臣のところで御検討を相願うということにはなっておりません。
 ただ、湯山委員の本日の御質問である、いわゆる全面改訂云々の問題につきましては、すでに参議院でも数回御議論があったことでございまして、このことについては、大臣は十分御承知おきいただいておるわけでございますが、三分の一云々ということについては大臣は御存じないことでございます。
#31
○湯山委員 だめですよ。(発言する者あり)まあ、せっかく参考人がおられるのですから、いまの問題は後にします。
 では会長は、文部省が受け入れるということになれば、一体全面改訂できる自信がおありになるのですか。
#32
○稲垣参考人 いまちょっと私、趣旨がわからなかったのですが、全面改訂をやるかどうかということですか。(湯山委員「そうです」と呼ぶ)先ほど申しましたように、これは各社の判断といいますか、改訂作業を進めていく間に、ああこれは四分の一を超したというような事態が起きることを予想して四分の一の枠を外してください、こういうことでございますので、実際編集作業をこれから夏にかけてやりますが、その結果でないとなかなかはっきりしたことは申し上げられないのではないかというふうに考えておりますが……。
#33
○湯山委員 時間がありませんからまとめて聞きますが、部分改訂ならば費用がこれぐらいで済む、全面改訂になれば、白表紙からですから三倍ぐらいな経費がかかる。それから、教科書の著作権というのは著者にある。私は、時間を節約するために文部省の中の著作権課で聞いてまいりました。著作権というのは共同著作であった場合には一人一人にある。だから、そのうちの一人が拒否しても、それはできないということになっておりますね。会社への著作権譲渡はないでしょう、そうすると、それらも含めて大丈夫、できますか。
#34
○稲垣参考人 改訂作業に入っておりますので、時間的には間に合うと思います。
 それから、費用の点でございますが、これは三倍になるとか、そういう大げさなものではございません。たとえば百ページの教科書といたしま、て、四分の一だと二十五ページ、それから残りを全部やったとしましても七十五ページ。一般の製版が高く見積もりまして三千円ぐらいのものだと思います。そうすると、百ページのもので二十万円ぐらいよけいかかるだろう、そういうことは概算的に申し上げられると思います。
 それから、著作権の問題でございますが、これは著者と発行会社との間で出版契約というものを結んでおりまして、その会社とその著者の間の契約によることだ、このように考えておりますので、これは各社それぞれ違うのじゃないかというふうに考えております。
#35
○湯山委員 だから、一人でも拒否すればその教科書は改訂できませんね、それだけ。
#36
○稲垣参考人 そういう会社と著者との関係につきましては、その会社独自のやり方といいますか、その著者との交渉の仕方によるだろう、こういうふうに考えておりますが……。
#37
○湯山委員 そのとおりですが、著者が拒否すれば法的にできないということは、しっかりひとつ頭に入れておいてもらいたいと思います。著作権課の方、きょうはおりませんね、呼んでいませんでしたから。
 そこで、もう一つお尋ねします。今度のことにつきまして、会長は、新聞社に対して、今度の申し入れというのは、普通の場合と違うのだ、特に責任政党である自民党が加わっておる、だから、これはどうしてもやらざるを得ないということを答えておるという記事がありますが、これは間違いですか。
#38
○稲垣参考人 私がその新聞記者に申し上げたのは、こういう各界からいろいろな批判が出るということはいままででもあった、しかし今度は、自民党さんがこういうことを指摘されたので、あなた方はそれでこの問題を大きくしているのではないか、そういうことを申し上げたことはあります。
#39
○湯山委員 いまのでも想像つきますが、「自民党が批判勢力の中心だったからだ。そうでなかったらこんな大騒ぎはしない。そして対応も変わったでしょう。」と言われたとあるのですが、これは間違いですか、そうですかというのだけ。
#40
○稲垣参考人 私のしゃべったことを憶測して書いたのではないかというふうに私の方は受け取っております。
#41
○湯山委員 では、憶測されるような発言をなさったのですね。
#42
○稲垣参考人 最初に申し上げましたように、各界の批評というものはいままででもあった、しかし今度は、自民党さんがそれに加わっておるのであなた方は大騒ぎをしたのではないか、そういうふうに言ったのでございます。それをどのように憶測されたか、私にはわかりません。
#43
○湯山委員 わかりました。
 それではあなたは、そう言うのではないけれども、マスコミの皆さんが自民党が加わっておるから大騒ぎした、こう言われたんですね。(稲垣参考人「はい」と呼ぶ)もうお立ちにならなくても結構です。
 それから、ついでに、暮れの教科書無償が決まったときの祝賀会、文部省でやったそうです。文部省でやる祝賀会に会長がお出になるというのもちょっと変な感じですが、そこへお出になってあなたがいろいろ御指摘になった部分は、三年ごとの改訂を待たず直しますというような御発言をなさったということが伝えられておりますが、これは日教組から質問したのに対して、その回答にもその事実は認めておるのです。間違いございませんね。
#44
○稲垣参考人 ちょうど予算の最終の日でございまして、教科書の無償が、政党の三役折衝に持ち込まれたということを、私、会社が休暇になっておりましたので、うちにいたのですが、そういうことをテレビで見たものでございますので、これは大変だなと思いまして、夕方文部省へお伺いいたしました。そうしたら、そのときに無償は継続になったということを知ったわけでございますが、そのときに自民党さんの代議士さんたちが政務次官室でお集まりになっているということでございましたので、私、それじゃちょっとお礼に行ってきましょうというのでお礼に行ったわけでございますが、その席上で、無償継続ありがとうございましたと言った後で、私が無償制度存続について自民党の代議士さんたちにお願いに上がった代議士さんがおりますので、そのときにいつも教科書の問題困った問題だなというお話を承っておりましたので、それからもう一つは、あれは十月の二十八日だったと思いますが、十月の十九日に協会で会合がございまして、そのときに公民七社の社長さんたちが、自分たちいままで余り教科書を読んでなかったけれども、読んでみたら、やはりちょっと直さなければならぬところがあるよ、それから、それはどういうふうに直すのだと言ったら、正誤修正でかなりいけるのじゃないかな、そういう話を私、聞いておりましたので、その祝賀会といいますかその席上で、教科書の内容について直すべき点があれば正誤訂正、そのときは正誤訂正とは言いませんでしたけれども、直せます、こういうことを申し上げたのでございます。よろしゅうございますか。
#45
○湯山委員 御指摘の点というのは、だれが指摘した点ですか。文部省ですか、いまおられた自民党の人ですか。
#46
○稲垣参考人 それは各界の批判でございます。
#47
○湯山委員 おかしいですよね、各界の……。文部省と自民党の議員さんがおられた、そこで、第三者の御指摘の点を直すなんということはないので、おる人に言ったのでしょう、目の前にいる人にですね。それはもう自民党と文部省しかいないのです。いまのあなたのおっしゃったことは変ですから、そう御指摘だけしておきます、時間もありませんから。
 あなたは、このことを、全面改訂の申し入れを発表されましたね、聞かれてかみずからか。どうして発表されたのでしょうか。そのことが私にはちょっと理解しにくいのですが、それは、この教科書は悪い教科書だから、皆さん使う人は気をつけてくださいという意味か、そうか、悪かったので改めますとおわびの意味で全面改訂しますというのを申し入れたというのを発表したのか、あるいは批判しておる人たちに迎合した、特に自民党に迎合して発表になったのか。さっきの経緯から言えば、自民党の名前が出ているのですから、そのいずれかだと思うのですが、なぜこういうことを、これだけ混乱を招くことを発表になったかということ。
 それから、発表することによって、子供たちは、こんな欠陥教科書かと学習の熱意を失います。先生たちは、教える教科書、研究するのですけれども、そんな欠陥教科書かと研究の熱意を失う。教育に対する非常に重大な影響があるし、また、そろえて直します、御指摘の点直します、これは教科書の画一化です。検定制度の本旨が失われます。教育的な配慮もあったのかどうか、その点だけ簡単に……。
#48
○稲垣参考人 別に私、進んで発表するというつもりはなかったのです。文部省の新聞記者クラブから私に発表しろという要請があったので、いたしましたわけでございまして、四分の一の枠を超えることは過去にもございましたけれども、これは新聞記者さんの要求もございませんし、そのまますんなりと進んできたわけでございますので、別にそういう意図があってやったわけではございません。
#49
○湯山委員 ですから、いま私が申し上げたような、欠陥教科書だけ気をつけてくださいとか、あるいはこんなに恭順の意を表しておるのだからお手やわらかにとか、そういう意図はない、言われたからしたのだとね。ただ、教育的配慮はありませんでしたか。これを発表したときに、これが教育にどういう影響を与えるか、いまのように教える人も使う人もですね。検定制度の根幹に触れる問題です。そういう配慮は全然ありませんでしたか。これも、なければない、あったらあったと……。
#50
○稲垣参考人 四分の一の改訂ということは、各教科三年ごとにいままでやっていることでございまして、これが欠陥だとかなんとかというのならば、四分の一以内にとどめている教科書も皆同じことではないか、そういうふうに私は現在考えておりますし、もう一つ、何でございましたかな
#51
○湯山委員 それで結構です。ですから、その配慮はなかったわけですね。(稲垣参考人「はい」と呼ぶ)異例な措置ですよね。
 それから、わざわざ文部省へ申し入れしなきゃならないこと。しかも、使ってないんですよ。全然まだ使ってない。――局長、局長、何を言っておるのです。(三角政府委員「いま稲垣参考人が手を挙げられましたから」と呼ぶ)いいです。(「そんな怒らぬでもいいじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、怒ります。今度は局長に怒らなければいかぬことがある。いま参考人に物を言っておるときに、後ろから耳打ちするようなことは非礼ですよ。(「一々手を挙げなくてもいいですよという注意をされた」と呼ぶ者あり)いや、いや、いいですよ。委員長がやることです。
 まあそういう配慮はなかったこと、それで結構です。ただ、異例なことをやっておるのですし、記者発表もするし、これだけ問題になっておるんですから。検定制度の根幹に触れる、それから教育に影響がある、それを無視したこと、これは大きい問題です。
 ただ、私は、これらについては、いま欠陥教科書という指摘は、文部大臣、あなたに対する指摘であって、その責任は文部大臣にあるということは、これは局長も予算委員会で認めておるのです。このことは改めて申します、まだ進行過程にはいろいろ機会がありますから。ただ、そのことを大臣はしっかりひとつ念頭に置いてもらいたい。そうしないと、いまのように政・財・官、そういうものが、圧力によって教科書を書きかえていきますと、とんでもない間違いを起こします。
 現に、これからの問題じゃなくて、いまあった問題では、敦賀原子力発電所が、大臣、ああいう事故を起こして、通産省も告発するという問題がございますね。これは、この原子力発電所が、いろいろな意味で、点検とか、機能とか、それから操作、そういうことに手落ちがあったということで、通産省のことはよく御存じですが、告発しようということにもなるし、あれだけ安全委員会がかってない審査をするということになったので、そういう手落ちがあったというのを、大臣、これは違うようですけれども、御感想を伺いたいと思います。
#52
○田中(龍)国務大臣 私も通産大臣をやっておりまして、所管でございました。この安全性の問題だけは十二分に納得のいくように、りっぱな措置をしなければいけない、これはもう一貫した方針でございます。
#53
○湯山委員 だから今度の問題は、調査研究とか対策に不十分な点があったということは事実でございますね、大臣。
#54
○田中(龍)国務大臣 それは今日、私は、所管外のことでございますから、お答えをいたす限りではございませんが、しかし、政府といたしましても、十分に所管大臣が措置をいたしてある、かように考えます。
#55
○湯山委員 会長さん、結構です。
 そこで、この問題について局長は、書きかえのときに「原子力発電の安全性につきましては、これについて慎重な調査研究や対策も行われておりますということ、」を理由にあの書きかえを認めた、安全性についてはこういうことです。この根拠は崩れましたね。ところが、まだあるのです。このことについて私がなお、それでは理由にならない、十六条四号、そうでないということを言いましたし、委員長も注意したのに、局長は、いやもうこれ以上言うことないと突っぱねましたね。しかし、こうなればその根拠は崩れている、あの正誤訂正は誤りであった、そうなりますね。今度は局長、簡単に。
#56
○三角政府委員 今回の事例の問題でございますが、これは原子力発電に限らず、すべての事柄につきまして、管理をきちんとして安全性なり効率性なりというようなことをやっていただくということは、非常に大事なことで、前提でございますが、原子力発電にせよ、教科書で取り上げます事柄につきましては、やはりそれはそれとしてそういった事柄自体についての正確な理解を与えるということを基本にしてやっておる事柄でありますので、こういった今回の事例は、まだ調査中ではございますが、非常に遺憾なことではないかというふうに思いますが、それによりまして教科書の記述の根拠が崩れたというふうには、直ちにそれに直接結びつけるということはできないのではないか、こういうふうに思っております。
#57
○湯山委員 あなたの御答弁は常にそうなんです。いいですか、あなたは、石橋政務次官の答弁に対しては、政務次官はおおらかに読むので直したのと直さないのと余り違わない、こう言われて、その次には、検定の立場からはそうじゃない、検定の立場からはもっと厳密に気を使ってやらなければならぬというふうに、会議録で言いますと――そういうことで、私がさらに言いますと、会社から言ってきたからそのままやった、前後不そろいです。そこで、このことについては文書で事例を挙げてくれと言ったら、あなたはできないということで答えない。そこで委員長に――あれはあなたでしたね、委員長席。(三塚委員「いえいえ、そんなこと違います、私、まだそこまで偉くなっておりません」と呼ぶ)いやいや、待ってください、文教委員会ですよ。あなたが委員長をかわってやっておられて、それで文書で出すことについてはひとつ委員長から計らってもらいたい、三塚委員長代理は「理事会で協議させていただきます。」、こうなっておるのです。していただいたのでしょうね、これ。(馬場委員「してないよ、ぼくは理事だけれども、全然話がないぞ」と呼ぶ)委員長、これは委員長の責任です。委員長に理事会を開いてくれと言ったのではないので、出すように言ってくださいと言ったのを、それを、三塚さんが委員長代理で理事会に諮りますと……。会議録を見せましょうか。ちょっと見てください、会議録。(「それは理事会でお出しにならないからだ」と呼ぶ者あり)いや、それはこっちの関係じゃない。理事会を開いてくれと言ったのじゃない。
#58
○三ツ林委員長 いまの湯山委員の発言は、後日理事会において協議いたします。
#59
○湯山委員 それでは質問できません、そんなことで……。いま局長の重大問題をやっておるのです。そんな話じゃ質問できない。
#60
○三ツ林委員長 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕
#61
○三ツ林委員長 速記を始めてください。
 この際、暫時休憩いたします。
    午前十一時五十分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時三十九分開議
#62
○三ツ林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。有島重武君。
#63
○有島委員 最初に、大臣に御確認を申し上げたい。
 新規改訂にいたしましても、部分改訂にいたしましても、その改訂ということになりますと、そのためのはっきりとした根拠といいますか、何か切実な理由があるべきだ、当然のことであると思うのですけれども、大臣にまずお確かめをさしてもらいます。
#64
○田中(龍)国務大臣 お答えをいたします。
 改訂の問題は、私の方からは何にも申しておりません。
#65
○有島委員 私がいま申し上げておりますのは一般論でありまして、このたびの問題とは別としても、いやしくも改訂をするというならば、それには相当な理由がある、それは当然でございますね。
#66
○田中(龍)国務大臣 その問題でございますと、教科書会社の方から御要望がありますれば、そういうことに相なりますが、しかしながら、御要望がないということなら何にもございません。
#67
○有島委員 そうすると、文部大臣としては、いまのところ改訂の根拠を持ち合わせておらない、その必要は認めておらない、こういうことでございますね。
 そしてもう一遍、くどいようですけれども申し上げれば、改訂という一つの手続については、文部大臣がその権限を持っていらっしゃるわけでありまして、これはどこから言われても、教科書会社から言われようと、ほかのところから言われようと、改訂ということについては、相当なはっきりとした理由、切実なる一つの理由といいますか、根拠、これが当然必要である、それなしに無原則に改訂するということはあり得ない、そういうことでございましょうね。
#68
○田中(龍)国務大臣 私の方で改訂と申しておるわけではございませんので、その点だけははっきりとさせていただきとうございます。
#69
○有島委員 その点ははっきりしている。それはわかっている。私が一般論としてと申し上げておりますのは、この種の問題が去年に起ころうとも、来年に起ころうとも、十年先に起ころうとも、改訂というような手続、これは文部省として所管していらっしゃる大臣がその権限を持っていらっしゃるわけでございますから、そういった一般論として申し上げておるわけです。おわかりになりますでしょうか。
#70
○田中(龍)国務大臣 一般論として改訂を要するという意識は、これは教科書会社の方でそういう意識をお持ちになるなら別でありますが、私の方としては、何にもそういう意識は持っておりません。
#71
○有島委員 先に参ります。
 普通教育のための教科書ということにつきましては、こういったような原則といいますか、こういう方向で行くべきではないかと考えておる。それは二つございまして、大体普通教育の教科書であるならば、その普通教育の趣旨に沿った基本事項の修得という最低限度を充足しなければならない、その余は現場の教師によりまして活用であるとか応用であるとかにまつべきであろう、これが第一番です。第二番目には、いろいろな社会的な変動がある、それに対応して普通教育の教科書を一々に書きかえなければならないというようなことよりも、そうした最新の社会情勢、特にいま問題になっております公民という分野、こうした分野におきましても、こうした非常に変化のあることにつきましては、それは教師が一般図書であるとか雑誌、新聞あるいは最新の統計というようなものを大いに副教材として用いて授業をすべきである、こういうような大体の原則があろうかと私は思うのです。大臣、いかがでしょうか。
#72
○田中(龍)国務大臣 一般論としては、ただいま有島先生からの御意見は承っておきます。
#73
○有島委員 そういう調子で先ほどのも一般論でひとつ伺いたいのですけれどもね。
 そこで、協会の方に承りたいのですけれども、四月中旬でございましたか、中学校の社会科の公民的分野の教科書だけ全面改訂するという措置を協会としてお決めになったそうでございますね。その根拠はどういうことであったのか、世間を騒がせたというふうに伝え聞いておりますけれども、その根拠はどこら辺にあるのですか。
#74
○稲垣参考人 例年のことでございますが、三年先の教科書の編集に着手しなければならぬ時期になってまいりますと、その都度、各教科別に新規検定でいくのか、それとも改訂検定でいくのかということの話し合いが行われるわけでございまして、たまたまことしの話し合いの時期になりまして、公民科だけは四分の一を超えるかもしれない、これからいろいろ検討を始めるのであるが、検討の結果、四分の一を超える場合も予想される、だから、これは新規改訂の窓枠もとってほしいし、それから、会社によって違いますが、四分の一の訂正検定――ではございません、何と言うのだったかな、そういう枠の方もとっておきたい、両方の枠を欲しいというのが公民発行会社七社の意見でございましたので、四分の一の改訂検定の枠と、それから新規検定の枠と二つを申請したわけでございます。
#75
○有島委員 いま伺っているのは、全面改訂という言葉がやや極端かもしれません、新規改訂、四分の一以上というようなところまでいくであろうというような予測をつけられたその根拠はどこにおありになったのか。
#76
○稲垣参考人 各教科について大体四分の一で改訂検定の枠の方へ三年目にはお願いするというのが大体従来のしきたりでございましたが、このたびは従来の現場の批判にこたえるためだけでも大体四分の一というものは使い尽くしてしまうというのが実情でございまして、今度は各界からいろいろな意見がその上に加わってまいりましたので、それだけがよけいに訂正個所がふえるのではないかという思惑といいますか見通しを各社が持ったのだと思います。
#77
○有島委員 各界からいろいろな意見が出てきたということでございますね。世間の批判がある、こういうことであったというように伝えられた。いまも協会長さんから承った。
 そこで、これは教育の問題でございますから、教育をめぐって各界といいますと、私どもは、まず教育現場のことを思いますね、そうすると、それは学習者側である、あるいは父兄の側である、あるいは教員の側である、こういったところからいろいろな批判が起こったのか、このたびはそうではなさそうですね。生徒さんが言い出したわけでもない、先生が言い出したわけでもない、父兄の方々がいろいろ言い出したわけでもございませんでしたね。それから、教育をめぐる各界といいますと、一つは、教育行政側ということがございますね、これが大きな力を持っている一つの世界でしょう。各界の中で大きいところでしょう。
 ところが、いま大臣のお答えのように、このたびは教育行政側からは何にもいろいろな御意見はなかったようでございますね、そうですね。それから、あとは財界だとか政界だとかあるいは学者の世界であるとか、そういうところですかね。もう一つは、教育産業という世界もおありになるでしょうね。まさに教育産業という世界の中での代表としてそちらもきょう来ていただいたわけでございますけれども、各界からいろいろな意見があったというのは、特に財界と政界、それから何人かの学者の方であろうというように私は推察をいたしております。間違いございませんね。特に政界と申しましても、自由民主党一党に限りということでございましたですね。
#78
○稲垣参考人 各界と私、申し上げましたが、それは学者グループもございますし、それから経済界もございますし、広告業界もございますし、そのほか日本貿易会、それからマスコミ関係、そういうものもございますが、そのほかにも、日教組さんが出しております「教科書批判」という本があるわけですが、こういうようなものも、やはり検討の対象にしなければなりませんので、そういう意味で各界と申し上げたのです。
 それから、ただいまの御質問の中で、子供は使っていないじゃないか、父兄も知らないではないかというお話がございました。確かに子供と父兄は知らないのでございますが、私ども規定によりまして六千部少し超したと思いますが、六千部以上の見本をつくりまして、これを教育関係者に、教育関係者と言っても、特に現場の先生方が多いと思いますが、見ていただいておりますので、その現場の先生に見ていただいた段階でいろいろと批判が起きてまいるわけでございまして、そういうものを中心に各教科とも検討をいたしますと、これだけで四分の一の枠はいっぱいであるというのが現実でございますが、そのほかに、いま申し上げました方面からの批判が加わっておりますので、それで四分の一では済まないではないかという心配を発行会社が持ったのではないか、このように考えております。
#79
○有島委員 それから、各方面からのいろいろな意見ということでございますけれども、前に私たちもいろいろな報道をされたもの、あるいはじかに教科書などいろいろ見ました。大体平和と安全保障の問題にかかわるような問題ですね。憲法あるいは議会制民主主義にかかわるような問題、あるいは経済のあり方、広告業の問題であるとか、大企業と中小零細企業の関係の問題の記述であるとか、あるいは家族制度の問題であるとか、それから老人の問題なんか取り上げられておった。それからもう一つは、この教科書の執筆者の問題であるとか、こういうようなことがいろいろと取り上げられた。その各界というのは、いまいろいろおっしゃったけれども、この四分の一を超えるような大幅修正になるであろうと言われた大きなプレッシャーは、やはり財界と自由民主党からの御意見であったのでしょう。
 それで、もしできますれば、各界からいろいろな意見という内容を協会の方で、大体項目別でもいいですから、ちょっと資料にして参考のために御提出いただけないでしょうか。
#80
○稲垣参考人 ただいま、それは手持ちしておりませんので、後日お届けできると思います。
#81
○有島委員 そういうことで、それじゃ委員長からもお取り計らいをお願いいたします。
 そこで、文部大臣にもう一言伺いたいのですけれども、世間のいろいろな批判があった、批判するのは大いに歓迎してよろしいかと思うんですね。それぞれに見識があり、いろいろな事情がある。このたびの場合なんかも、いまできたばかりの教科書でございます。これに対して批判が出た。この批判が出た場合に、その批判を受けて立つのは、これは業界ではなしに検定をなさった文部省ではないかと私は思うのですけれども、いかがですか。
#82
○田中(龍)国務大臣 現在使われております教科書は、文部省が責任を持って検定をいたしましたりっぱな教科書でございます。
#83
○有島委員 だから、業界の方でいろいろと言われるというようなことは、いまのところ、文部省としては、これはむしろ不信きわまりないことであって、いま業界の代表の方に各方面いろいろな批判ということについて、大臣、資料をいただけるようになりましたので、そのことについては、やはり文部省さんの方でも、これを相当御検討なさり、分析なさり、そして判断をしなければならぬと思いますね。
 それで、もしも改訂をするということならば、それは相当な根拠がなければならないし、根拠がいろいろあるということもあるかもしれないけれども、やはり一つの原則、こうした原則のもとにこういう方向に直すということがなければ、改良とか改訂と言いながら、無原則に、世間で騒いだからああする、こうするなどということになれば、これは改良ではなくて改悪に通ずる道である、これは非常に危険であろうと思うんですね。
 それですから、文部省としても、十分事の起こりを検討なさった上でもって検定をするかしないかということを御決定になるべきだ。そうでなしに、向こうから言ってきたのだから、はい検定しましょうということでは、今度の場合は相済まぬのではないかというふうに私は思います。大臣、どうでしょうか。
#84
○田中(龍)国務大臣 ただいま用いております教科書は、文部省の検定を経ました、それがつくられる時点までにおきましては、りっぱな教科書として、また各教育委員会が御採用になったものであります。
 しかし、何と申しましても、法制、ルールに従いまして事は行わなければならぬものでございまして、われわれは、あくまでも少しでも次の世代を担う青少年にりっぱな教科書を上げなきゃならぬ、こういう気持ちでございますので、それはもしいろんな間違った点がありますれば、誤字訂正とか等々のルールに従って改めて検定をすることもございます。
 しかしながら、そういうふうな一般の批判があるという事実は事実として拝聴いたしておりますが、しかし、それはあくまでも法に従った、ルールに従った制度上の問題として処理すべきものでございます。今日は私の方では何もそれに対しまして考えてはおりません。
 ただ、ルールとは何かと申すならば、それを編さんいたします企業としての教科書会社から、改訂をいたしたいという要望が出てまいった暁におきまして、それは正当な手続を経て処理されるべきものでありまして、いまのところでは、私は、有島先生の御質問に対してお答えを申し上げる段階ではございません。ただ、いい教科書を作りたいという念願だけは持っております。
#85
○有島委員 いま大臣にせっかくお答えいただきましたけれども、もう時間がございませんが、ルールと申されたのには、いま二つの意味があるような気がいたしますね。持ってきたら、これは検定すべきです、それは一つの手続を踏んでやっていくのだ、それは定まった手続というような意味のルールでございますね、これは当然としてやっていただく。これは大臣からお答えいただくまでもなく、官僚の方々からそういったお答えをいただければよろしいと思うわけです。
 大臣に特に申し上げておるのは、もし検定をしていくとするならば、その検定の仕方について、いままでも一つのルールをもって、ルールといいますか原理原則をもってやったわけなんだけれども、それは手続だけじゃないですよ、その枠を乗り越えてまた押し寄せてくるわけですから、そこでもう一遍、その点を大いに議論もし、そして、その上でもって検討していかなければならないのじゃないだろうか、やや言葉が尽くせませんけれども。
 あともう一問、協会の方に伺って終わりたいと思いますけれども、こういった事態が起こった場合に、七社の方々もさることながら、ほかにも教科書会社がおありになる、稲垣会長さんのところも教科書会社でいらっしゃるわけでございますね、どうして、これだけいろいろ批判がある教科書ができておる、それでは、うちの方は理想的な教科書をつくろう、こういうふうにならないのでしょうか。七社以外にはつくってはいかぬということはないはずでございますね。よほど新規参入ということがむずかしいような仕組みになっておるのでしょうか。どうしてほかの教科書会社から、いろいろ批判があるから、じゃ今度、うちでもってつくりますという手が挙がってこないのだろうか、このことは非常に素朴に不思議に思うわけであります。これが一つ。
 それからもう一つ、これは著作権の問題、先ほども上がっておりましたけれども、いま出回っておりますこの教科書の著作権者の方々が、いろいろ変えるとかなんとか言うけれども、わしは変えるのはいやだ、こういうことを言った場合にはこれはどうなるのだろうか。
 この二点だけお聞きして、私の時間が来ましたから終わります。
#86
○稲垣参考人 七社以外に、それではおれがこういうのをつくってやろうという会社が出てこないかというお話でございますが、これは出てくるか出てこないかは、まだわかりません。将来出てくるかもしれません。
 それからもう一つ、著作権者が、改訂するのはいやだとおっしゃれば、これはできません。(有島委員「できないことを、何でこんな方針にしたんだよ」と呼ぶ)できないか、できるかは、これから会社と著者と話し合いをするわけでございます。
#87
○有島委員 ありがとうございました。
#88
○三ツ林委員長 三浦隆君。
#89
○三浦(隆)委員 いま大臣よりお答えありましたように、よい教科書であるというふうなお返事があったわけです。これに対して稲垣会長の方は、四分の一改訂どころか、全面改訂をしたいというふうな申し入れをなされたというのですが、教科書を初めとする教育は、本来教育を受けようとする子供たちのためにあろうかと思います。
 いまの御質問にもありましたように、子供が望まない、教員が望まない、親も望まない、文部大臣も望まない、にもかかわらず、会長がその業界の意向を反映されてか、全面改訂をしたいということは、まことに不見識というか、まことに申しわけないせりふではありますが、言ってはならないせりふを少し早く言い過ぎたのではないか、そんな感じがいたしますが、いかがでしょうか。
#90
○稲垣参考人 ただいま申しましたが、子供と父兄は知らないわけでございますが、少なくとも六千という先生方及び教育関係者は、この内容を読んでいるわけでございますので、その六千の方々の意見を検討するだけでも大体四分の一のスペースを改訂に必要とする、こういうのが現状でございますが、そのほかに、先ほど申しましたように、各方面からの意見がそれに加わりますので、四分の一では少し危ないのじゃないかという危惧を発行会社が持ったということでございまして、安全弁をとるために、もう一つ窓枠をこしらえておいてくれ、こういうことでございます。
#91
○三浦(隆)委員 時間もございませんので、ひとつ簡単にお答えをいただければありがたいと思います。
 本来、検定を終えたばかりの教科書に、まさにもう使い始めたかどうかという途端に、しかも全面改訂という言葉が出てきたということは、まさに教科書にとって気の毒過ぎるような気もするのですが、その一つには、今年に入ります昨年段階で、先ほど会長も言いましたように、たとえば社団法人日本貿易会というところでかなり詳細な見解を発表して、文部省にこれこれしかじかでけしからぬというふうな申し入れをされているようであります。また、出版労連の教科書対策委員会の方からも、同じように社会科の教科書はこれこれしかじかでけしからぬ、まさに立場の相違します双方から、この「公民」の教科書に対しての批判が鋭く出ております。恐らくは会長はそれを前取りしたのだろうというふうな気がしますが、会長にお尋ねします前に、初めに文部大臣にちょっとお尋ねをしたいと思います。確認をしてみたいと思うのです。
 いわゆる所定の法令、そして、その手続に従いまして今回の使われております教科書があるわけです。そこで、果たしてこの教科書が本当に正しい教科書と言えるのだろうか、あるいはこの教科書にはどこか欠陥、瑕疵があるものなのだろうかということで、確認の意味で主体、内容、手続、形式、この四点にわたってお尋ねしたいと思います。
 まず第一点は、主体の問題であります。すなわち、この教科書ができますまでには、教科書作成に携わりますところの検定調査審議会であるとか、あるいはまた採択にかかわってくる教科用図書選定審議会とかいろいろなものが途中にあるわけです。そして中には、文部省内におきます調査員を初めとして文部大臣の任命なりあるいは選定委嘱にかかわる人もおるかと思うのですが、そうした人たちに対して、大臣に対して自民党筋なり業界筋なり日教組筋なり、いわゆる強力にこれこれの委員を任命せよというふうなそうした横車的なものがあり得たのかどうか。また、そうして選ばれた人たちによって会が開かれるはずですが、そうした委員に対して招集の、たとえばある一定の人には招集し、ある一定の人には招集を示さないというか知らさないというふうな会議が開かれたことがあったのかどうか。あるいはもし会議というものが定足数を必要とするというものならば、それを外れたいわゆる定足数違反の会議が開かれたことがあるのかどうか。あるいはまた、委員の中に欠格者が参画した会議が行われてまずかった、そうしたようなことが大臣、一度でもあったのでしょうか。
#92
○田中(龍)国務大臣 私は、就任して日まだ浅いのでございますが、現在の教科書というものは、私が就任以前の段階におけるいろいろな手続によって今日世の中に出ておるわけでございます。少なくともそれらの検定の教科書というものが出る時点までの段階におきましては、私は、最善を尽くしてでき上がったものであると想定いたします。しかしながら、その間における事務的な経過についての瑕疵、欠缺の問題は、私は、そういうことはないと信じております。
#93
○三浦(隆)委員 続いて主体の問題でありますが、いわゆる各種審議会等の委員になり得ない立場の者が誤って委員に選ばれたとか、あるいは委員をすでにやめたはずの者が、前に委員であったからということで会議に出席してしまったとか、あるいはまた、何事かを大臣が仮に御決定されるときに、たとえば検定審議会の議を経て決めなければならないというふうな何らかの協力を得なければならないという場合に、それらを一方的に無視されて大臣が決めたことがあるのかどうか。あるいはまた、そもそも発行会社が大臣に対して、うちが教科書会社として教科書をつくりたいというふうな申請から始まろうかと思うのですが、そういうものがない会社に一方的に教科書会社として認めるようなことがあったのかどうか。あるいはまた、本来、検定審議会なりあるいは選定審議会は、それぞれ役割りを異にしておりますが、その相互に役割りを異にする者が事項的無権限というか、別な方に勝手にくちばしを入れて決めたようなことがあったのかどうか。さらにまた、審議会などを開いておりますときに、その審議に携わっている委員が、何らかの理由でいわゆる心神喪失中の行為になってしまったとか、あるいは委員に対して詐欺、脅迫、賄賂、その他不正な行為に基づいて委員の行為を曲げしめるような行為がこれまであったのかどうか。そうしたことについてお尋ねをしたいと思います。
#94
○三角政府委員 ただいまいろいろのお尋ねがございまして、それからさきにもいろいろおっしゃられましたが、いずれもそのようなことはございません。また、あるはずのないことでございます。
#95
○三浦(隆)委員 次は、内容についてお尋ねしたいと思います。
 でき上がった教科書が事実上子供たちに教えることが不可能なような、事実上不能な内容を持っていたものか、あるいはまた、教えることが法律上不可能なというか、許され得ないような内容というものが明白に存し得たものかどうか。あるいはまた、教科書の文章が大変に不明確でありまして、全く何を言っているか理解することができないというふうな内容上の瑕疵があったのかどうか、お尋ねしたい。
#96
○三角政府委員 ただいまおっしゃいましたような極端なことはないと思っております。
#97
○三浦(隆)委員 次に、手続に関してお尋ねをしたいと思います。
 たとえば検定の手続におきまして、全体の手続としては、検定申請あるいは原稿本審査、内閲本審査、見本本審査、そして検定決定といかれるかと思うのですが、そうしてその各審査の手続には、申請者から文部大臣を経由しながら教科用図書検定調査審議会あるいはその分科会あるいは調査員、そうしたようないろいろな一連の手順の中で教科書が検定され、あるいは採択されていくかと思うのですが、そういう手続過程の中で明白なミスというものがあったのでしょうか。
#98
○三角政府委員 すべて手続はきちんと踏んでおります。
#99
○三浦(隆)委員 次に、形式に関する瑕疵についてお尋ねしたいと思います。
 こうした教科書がつくられようとしてから採択、そして使用に至る段階の中で、役所としてそれの様式行為、いわゆるそれが文書による行為か口頭による行為かは別としまして、仮にもし文書による行為のような場合に、そこに署名捺印がたとえば必要であった、だれからだれへというふうに手に渡るような文書の場合に、署名捺印が必要であった、あるいは日付が必要であった、そうしたような形式的要件というものにこれまで欠けていた点があったのでしょうか。
#100
○三角政府委員 これはずっと決まった形式がありますので、私どもの方では、そういう形式どおりの手順を要求いたしますし、各発行会社もそのようにして手続を踏んでくれておる、それが実態でございます。
#101
○三浦(隆)委員 会長にお尋ねしたいと思います。
 先ほど文部大臣がよい教科書であると言われましたし、いまお尋ねしました限りでは、教科書が現在使われるまでに主体、内容、手続、形式のすべての面にわたって全く瑕疵がないような発言があったわけです。これに対して、四分の一どころか全面改正をもというふうな大変穏やかでない発言が出たその理由は何でしょう。
#102
○稲垣参考人 全面改訂というその枠をとっておくというだけでございまして、四分の一を一ぺ−ジ超えても全面改訂、こういうふうになるわけでございまするので、私どもは、四分の一改訂の少し大幅なものになるのではないかということを心配したわけでございます。
#103
○三浦(隆)委員 午前中の会長の御発言によりますと、時代の流れというふうなものを一つお答えになりました。できた時点はともかく、時代の流れが激しく動いているから、そしてまた一欠陥と言えば四分の一でも欠陥なら全面改訂でも欠陥は欠陥だというふうな趣旨のことも御発言があって、自民党席の方からも欠陥の名前が出たというふうに先ほど理解いたしておりますが、それでよろしいですか。
#104
○稲垣参考人 もし改訂することがすなわち欠陥だというような御認識だとそういうことになるのではないか、このように申し上げたと思います。
#105
○三浦(隆)委員 とするならば、先ほど言うように、あえてなぜこのいまの時期に――私は、四分の一改訂ということすら行き過ぎだと思うのです。まだやっと教科書がこれから使われかけようとした時期、そして使ってみてどこがいいか悪いかという評価がなされるのに、満足に使われもしないうちから改訂という言葉だに行き過ぎだ、にもかかわらず、四分の一どころか全面改正をもという、これまでほとんど出てこないようなせりふを言うということは、そこに世間の疑惑が集中して、何らかのよからぬ圧力がここにがかったのではなかろうか、そういうふうに思われる意味合いにおいて、大変に会長の発言は不謹慎きわまりなかった、このように思うのですが、どうでしょう。
#106
○稲垣参考人 現在、教科書の検定は三年周期に行われることになっております。したがいまして、最初に発行した教科書が実際現場で使われる前に次の三年後の教科書の編集に着手しなければならぬということになっておりますので、使用上の結果を待つ前に現場の先生の意見を聞いて改訂をするというのが従来のしきたりでございます。
#107
○三浦(隆)委員 ですから、全面改訂というのが穏やかでないわけですね。
 それで、午前中のお話ですと、欠陥というなら四分の一であろうと全面改訂であろうと同じようなものだ、もし傷があるというなら似たようなものだろうというふうな御発言もあったと思うのですが、そういう考え方自体が大変にまずかったのではないかというふうに思うのです。言うならば、ほんのわずかな瑕疵がある場合と重大明白な瑕疵があるという場合には、はっきり法上は考え方を異にするものだと私は理解をいたしております。ほんのわずかですよ、ちょっと訂正するというふうな問題と、図表が古くなったから図表だけをちょっと取りかえるという手合いのものと、文章全体をそっくりかえるというふうなものとは大変な違いがそこにあるわけです。
 しかも、教科書をつくっていくには、文部省を中心として確たる法令に基づき、確たる人を選んで、これならばいいのだという自信作をもって世に出しておるわけです。そして一年や二年、三年の歳月ではちょっとやそっと変えなくてもいいだろうぐらいの自信を持ってこの教科書は生み出されたものだ、こう思うのです。
 いま私の手元に、吉本二郎編集、明治図書発行の「中学校学習指導要領の展開」といった本がありまして、文部省の方の、お名前を言うのは差し控えますが、その方の序の文章が載っております。「今回の改訂は、その後における急激な社会情勢の変化、学校教育に対するさまざまな要請等に対応し、さらには将来に対する展望を持って、学校教育の本来の姿を実現するべく、」というふうな発想のもとでこうした学習指導要領も書かれ、そうして、それに基づいて教科書というものが慎重な手続の中で生まれ出たものだ、このように考えるわけであります。
 それを一方的にいま変えることが、もし教科書会社としての営利に基づくものであるとするならば、一教科書会社の営利によって、国の文教行政も踏まえ、そこに携わっている数多くの人をきわめて傷つけることになるし、教育本来の姿がどっちに歩もうとするのかがあいまいなことにならざるを得なくなってしまうということにおいて、これはきわめて重要だと思います。
 そこで、お答えをいただきたいけれども先へ進みまして、次に、では四分の一なり全面改訂をこれからされようとするならば、当然、二点について考えなければなりません。
 まず、制度は現状のままとして、執筆者をいかにかえていくか。二点目には、それを審査する立場にある審議会の委員たちのメンバーをどうかえていくのか。あるいは採択の権限を持つ人なり基準を決める大臣そのものをどうかえていくか。全く同じ制度のもとで同じ人がやったとするならば、基本的にはほとんど変わらないであろうと考えるわけであります。
 なぜならば、教科書執筆者にしましても、その人が思想信条の自由を持って、表現の自由も持って、その人にとっては自信を持って書かれていることですから、細かい部分を直すことはいざ知らず、本質的な全面改訂の文章まで、執筆者がその文章を簡単に変えるとは私には思えないわけです。そういう意味で、もし執筆者がかわらないとするならば全面改訂はとてもおぼつかないだろう、このように思います。
 でなければ、今度はそれを審査し、あるいはそれを採択する方といいましょうか、そうしたメンバーをかえなければどうにもならないわけであります。と同時に、またそれが自発的な意思で、私は執筆者をやめないと言ったらどうにもならないのだというのならば、会長の意図とは全く違って、場合によっては企業の意図とは全く食い違って、全く同じ人によってそっくり教科書が書かれるおそれがある、それがどうしても困るのだというのならば、何らかのまた別なる圧力をもってでもこれを変えしめなければならない、そういう事態を招くのじゃないでしょうか、会長。
#108
○稲垣参考人 先ほどから承っておりますと、全面改訂ということを非常に強くおっしゃるのですが、私どもは、四分の一を一ページ超えても全面改訂と称しているわけでございまして、そこに先生のお考えとの差があるのではないかと思います。だから、恐らく著者をかえるとかいうようなことは全く行われないと思いますし、書き直すと言いましても、骨格はそのままなのでございます。そういうような改訂になるわけでございまして、御心配になるような本当の文字づらから来る全面ではございませんので、よろしくお願いいたします。
#109
○三浦(隆)委員 では、次に文部省にお尋ねしたいと思います。
 この教科書をつくるに至ります検定あるいは採択に関する法令、その他この教科書関係の法令をお変えになる気持ちはございますかどうでしょうか。
#110
○三角政府委員 そういう考えは持っておりません。
#111
○三浦(隆)委員 実は、はからずも偶然ですが、本日の新聞で、自民党教科書問題小委員会の先生の方から、教科書法を制定したいというお気持ちのある旨伝えられておるわけでございますけれども、文部省としては、現状時点ではこういうお考えは全く持ち合わせない、こう理解してよろしいのですか。
#112
○三角政府委員 御指摘の今朝の新聞に報道されました事柄につきましては、私どもまだ正式に承っておりませんので、承知しておらないわけでございます。
#113
○三浦(隆)委員 次に、たとえば教科書をつくられるまでには大変な御苦労もあろうかと思うのですが、教科書ができた、やれやれよかったというお祝いの会で、教科書会社の方と自民党の方なり文部省の方と一杯やられるという機会はございますか。
#114
○稲垣参考人 そういうことは一切ございません。
#115
○三浦(隆)委員 一般的な文教の補助金その他の問題とは異なりまして、教科書の場合には、特に公正さが要請されておりますので、いまの会長のお言葉のとおり、その点を厳正にしっかりお願いしたいと思っております。
 特に、いわゆる教育法令だけでなくて、場合によると独占禁止法の対象にもなる、教科書にはそのくらいの問題がある、このように受けとめております。
 そこで、時間でございますけれども、とにかく教科書を全面どころか仮に四分の一でもお変えになりたいと言うのならば、いま言った、制度をそのままにして人をおかえになるか、あるいは制度そのものをお変えになるか、これは立場の相違でして、それがいいというなら、それもやはり一つの御見解だろうと私は思っておりますが、それを自信を持って言われないとすると、きょうの答弁では、これから先に向かって一ないもの、このように私たちは理解してしまうのですが、それでよろしいでしょうか。
#116
○稲垣参考人 三年目に四分の一改訂を従来やっておりましたけれども、過去を探してみますと、三年目に新規検定をやっている年もございますので、将来もまたそういうような事態は起きてくるのではないかと考えております。
#117
○三浦(隆)委員 時間もないのですけれども、教科書会社は、たとえば社会科の公民の教科書をつくる、政治・経済の教科書をつくられますと、それと同じようにその資料集を発行されるわけであります。この場合に、いまは教科書が大変に問題にされておりますけれども、むしろ教科書にはいろいろな意味でいろいろな人の目がかかわってきますが、資料にはそうしたことがございません。しかも中学三年の公民には、これにふさわしい資料集が、あるいは高校三年の政治・経済には、それにふさわしい資料集が伴うことは会長よく御存じであろう、このように思います。そして教科書が問題にされておりますが、問題点があるとするならば、むしろその資料集の方により問題が多く見られるという事実をひとつ御認識賜りたいと思います。
 それから、まださらにそれを超えまして、前回文教委員会で言ったわけですが、教科書がせっかく無償であるのに教科書を片すみに置いて、組合のつくったカリキュラムに従うような独自の教材を使う、そういうことも全国的にはまだ、一部ではあるけれどもある。そうしたこともより問題でございます。そして同時にまた、きょう本会議の方でもいろいろと各党の質疑がありましたけれども、これからのあるべき教科書として、戦後の教科書に大きく欠けていたもの、これは明らかに北方領土の返還問題だと思います。文教委員会でこれも発言したことがありますが、きわめて不十分な取り扱いでございますので、社会科の教科書はもとよりのこと、国語の教科書であれ、歴史・地理、その他万般の教科書を通じて北方領土は日本の領土であること、それがソ連によって不法にも占拠されているということを各教科書会社において明らかに書いていただきたい。そして、それが何年かたったときに、いわゆる力と力との対決の中で返ることでなくて、国民合意の結集ということがより進んで、国連の司法裁判所や何かにも何となく届くような形の中でわが国の領土が戻ってくるように期待したい、このように考えます。
 さらにさらに言いたいこともございますが、残念ながら時間も超過しておるようでございます。そこで最後に、せっかくよくできた教科書でございます、そしてそこには、数多くの人がそれなりによかれと思ってやってきたものでございますから、正すべきは正すとしても、軽はずみに、四分の一どころか全面改正というふうな言葉は言わない方がいいのじゃないかと思います。でないと、どうしてもそこに意図的な、単に教育ということではなくて業界の利益を守るためにと新聞に書いてありますようなことが、きわめて真実らしく私たちの目にも映ってくるということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
#118
○三ツ林委員長 山原健二郎君。
#119
○山原委員 きょうは、参考人御苦労さんです。文部省への質問はまた機会がありますから、参考人に主として質問をいたしたいと思います。
 第一点は、自民党の批判というのが出てきたわけですね。現場の先生方あるいは各界の批判プラス自民党の批判、また新聞によれば、政権政党の批判、それがあるからこういうことにならざるを得ないのですよという会長の御発言もあるわけですが、自民党の、現在の教科書、中学校公民分野に対する批判というのは、どういう形で行われたのですか。たとえば協会に対して文書をもって批判の形態を突きつけられたのか。どういうふうにつかんでおられますか。
#120
○稲垣参考人 自民党の批判があったからわれわれは教科書を直すのだというふうにお取りになると困るのでございますが、私が新聞記者に言いましたのは、毎年各界からかなりの意見は寄せられているのだ、しかし、ことしは自民党さんまでもそういう意見を言われてきたので、それで普通ならばすんなりと済んでしまうものを、政権政党の自民党さんが言ったから、新聞記者の皆さんは大騒ぎをなさるのではないか、こういうふうに言ったつもりでございます。
 それから……(山原委員「どういう形で批判が出てきたのですか」と呼ぶ)自民党さんからですか。(山原委員「はい」と呼ぶ)国会の議事録を読んだのでございます。
#121
○山原委員 国会の議事録といいますと、国会で自民党の発言は、三塚さんがこの委員会でやりましたね。それから衆議院、参議院の予算委員会で、自民党の教科書に対する批判は主として参議院におきまして玉置議員がやられたわけですね、参考人を呼びまして。そのことを指しているのですか。それが自民党の批判として受けとめられておるのですか。
#122
○稲垣参考人 玉置先生の批判ももちろんその中に入っておりますけれども、一番初めに、委員会は私、わかりませんけれども、三塚先生が教科書問題を取り上げられましたのが、自民党さんの意見を言われた最初でないか、私、このように考えております。
#123
○山原委員 協会に対して自民党が項目をつけて、こういう批判があるというのが出たわけではなくて、三塚さんのやられた批判というのは、この委員会でやっているんですね。そして皆さん聞いておるわけです。この中身は何ですか。
#124
○稲垣参考人 詳しくは覚えておりませんが、各項目にわたって御意見があったように思っておりますが……。
#125
○山原委員 批判がありましても、協会として適切な機関を通じてその批判が正当であるかないか、その判断がなされないと、批判を直ちに正当なものとして受けとめるわけじゃないでしょう。だから、どこに批判があるのか、現場の先生方あるいは各界の批判プラス自民党の批判、しかも政権政党の批判だということは、何と弁解されようとも会長の今回の全面改訂の発言の一番大きな原因になっていることは否定できません。その批判とは何なのか。何ですか。
#126
○稲垣参考人 それは先ほど申し上げましたように、各項目にわたって、自民党さんだけではございません、各界から寄せられたものを総合してこれから検討していくわけでございます。
#127
○山原委員 それは、いままでだって現場の先生方の批判とかそういうものはあるわけです。今回特別にこんな重大な問題になって、しかも会長みずから世間を騒がせて申しわけありませんという、これだけの決意を秘めた発言をするためには、自民党のどういう批判が一番あなた方をこういう決意をせざるを得ない状態へ持ち込んだかということは明らかにしていただかなければならぬと思うのです。自民党批判の中の一番大きなものは何ですか。どんなものですか。二、三挙げてください。
#128
○稲垣参考人 批判の中でどれが重要でどれが軽いものか、そういう判断は各会社がやることでございまして、私がやることではございません。
#129
○山原委員 少なくともあなたは協会の会長さんをされているのです。
 それでは、もう時間がありませんから、こちらからお聞きします。愛国心についてはどうなんですか。あなたは記者会見をされまして「愛国心についてはどのように表現すればお気に召してもらえるのか」、また「あからさまに昔のようにはやれないし、でも扱わなければならないのはたしかでしょうし……」、まあ、いわば頭をかしげられた気持ちがわかるような発言をしておられるんですね。そうしますと、この愛国心の問題というのは、今度あなたが新規検定をやられる、あるいは全面改訂と言われる四分の一以上の部類に入っているわけでしょう、愛国心の問題については記述を変える、あるいは検討するというお考えが今度の御発表の中に含まれておりますか。
#130
○稲垣参考人 指導要領に愛国心について書けということがあるのでございますが、愛国心をどのように表現するかということは、各発行会社のやり方でございますので、私は、愛国心というものは――それは私個人の考えでございましたが、愛国心というものの扱い方は、表現の仕方が大変むずかしいのではないか。それで、各界の人たちがこれならいい、りっぱだというような愛国心の表現の仕方というものは非常にむずかしい、そういう各界のお気に入るようなものはなかなかむずかしいものであろうということを、私の感想として新聞記者さんに話しました。
#131
○山原委員 それほどむずかしいものをあえて問題とされているわけでしょう。いままで愛国心の記述の問題についてはいろいろ論議されてきたわけですね。それが今度の決意をなさった中にあって愛国心の問題についても記述を変更する、あるいは書き入れるというお考えがあるんですね。検討されているんですね。その辺はどうなんですか。
#132
○稲垣参考人 先ほど申し上げましたように、私の感じで申し上げましたので、各社でそれを検討しているか、そういうことは私、実はいまわかっておりません。
#133
○山原委員 じゃ、そんなにあいまいなものを持ちながら、何で四分の一以上新規検定をしてほしい、全面改訂をしてほしいなどということまで発展をしたのですか。
#134
○稲垣参考人 これは午前中からたびたび申し上げておりますように、四分の一の改訂は、現場の先生方の意見を入れるだけで精いっぱいだ、それに加えて、公民に限り各界から意見が寄せられておりますので、これを取り入れる、取り入れぬはこれから検討していくわけですが、もし取り入れるとなれば四分の一の枠を超す心配がある、だから、枠だけを何とか取っておいてくれ、こういう七社の要望がございましたので、その旨を文部省にお願いに行ったわけでございます。
#135
○山原委員 協会長としての全く責任のあるお答えをいただけないので大変困るわけですけれどもね。それならば、先ほどあなたの方から御説明になりましたが、かねがね四分の一ではなくて三分の一にしてもらいたいという要望があったわけですね。今度の場合は、たとえば四分の一以上を超せば新規検定を受けるわけですが、それを弾力的に三分の一にしてもらいたい、三分の一程度に広げてもらいたいという要望をかねがねしてきておるという御発表でしょう。三分の一がここで突然今度は消えてしまって、いままでのかねがねの希望が消えてしまって、そして今度は全面改訂と、こうなるわけですね。これはいきさつから言いましても納得できないのです。いままでだって三分の一ぐらいまで伸ばしてくださいと文部省に言ってきている。文部省はそれを拒否してきたのでしょう。それを、今度の場合だっていろいろ問題があるから三分の一というようなことが出てくる、そんなことを飛び越してしまって、いきなり全面改訂だと発表をするというのは、先ほどどなたか不謹慎な発言だとおっしゃったけれども、かなり異常な発言であることは間違いありません。この点はどうですか。(三塚委員「三分の一以上が全面改訂、四分の一以上が大改訂、こう言うんです。ですから、四分の一のわずかでもそうなるんだよ。基礎的なことをきちっと文教委員は理解して質問しなければ混乱しちゃうぞ。大改訂というのは全面改訂じゃないのよ。文教委員会の権威にかけて申し上げている」と呼び、その他発言する者あり)
#136
○三ツ林委員長 発言を差し控えてください。
#137
○稲垣参考人 三分の一というのを、これは全教科を通じてそういうように数年前からお願いをしているわけでございますが、文部省の方でもいろいろ御検討なさってくださっていると思いますけれども、まだそれでいいという段階に至っていないわけでございますので、現在は三分の一ということはあり得ないことでございまして、だから、四分の一を一ページ超えても新規検定、こういう一つの枠の中に入ってしまう、こういうことでございます。
#138
○山原委員 光村図書出版の社長さんを稲垣さんはされておりますので、お伺いしますが、今度小学校二年生のおうちから出されている教科書、これですが、「かさこ地ぞう」というのがございます。これは書き直しをされるということも聞いておるのですが、そういう事実がございますか。検討されておるのですか、どうでしょうか。
#139
○稲垣参考人 私、いまちょっと聞き漏らしたのですが、二年教材の何でございましたか。(山原委員「かさこ地ぞうです」と呼ぶ)これは三月に編集会議を持ちまして、これは四分の一修正でございますから、九月に出せばいいのでございますが、どの教材について直すかというような検討会をやったようでございますが、そのうちで私の聞いておりますのでは、二十三教材、これは訂正したいというのが出ておるのでございまして、その中に「かさこ地ぞう」が入っている、こういうことでございまして、それを直すとか取り除くとか、そういうことは一切まだ決まってもおりませんし、これから検討していくという段階のようでございます。
#140
○山原委員 これはできたばかりですよね。いまおっしゃったのは、この中の二十三教材ですか。
#141
○稲垣参考人 それは一年から六年までを通じてでございます。
#142
○山原委員 「かさこ地ぞう」に対して、いわゆる自民党からの批判が出たんですね。これは御存じだと思います。一つは、石井一朝氏の「憂うべき教科書」の中に「かさこ地ぞう」は、貧しくて暗いということが出まして、そして自民党の出されました「憂うべき教科書」ですか、あのパンフレットの中にも批判としてこれが挙がっているのです。それはそうじゃないとおっしゃるかもしれませんけれども、昨年来の現場あるいは各界の批判プラス自民党の批判というものが、すでにあなたが社長をされておる光村図書出版の場合にも出てきているのじゃないか。
 いまのお話ですと、もう改訂をするための論議がなされている。決定ではないけれども、九月に申請しなければなりませんから、書きかえるとするならば、もうすでに著者を決めるとか書きかえの作業を行うということが行われる時期だと思います。いまの御答弁によると、すでにこれが検討課題になっている。こうなってきますと、いわゆる政権政党の批判がずばり教科書にあらわれてくる。しかも、この小学校二年生の中の「かさこ地ぞう」というのは、教科書の中の最も重要な部分です。これがすぱっと抜ける、そして別のものにかわるということになりますと、どうしても、あなたの全面改訂と発言されたことと、そしてこういう現実にあなたが社長をされている会社の問題等を考えてみますと、政権政党の意見というのがずばり教科書の変更になってあらわれているのじゃないか、否定されるかもしれませんけれども、そういう懸念を持ちます。その点いかがですか。
#143
○稲垣参考人 「かさこ地ぞう」が検討の対象になっている事情を申し上げますと、「かさこ地ぞう」というのは、五つの教科書会社のうちの三つか四つの教科書会社に載っているのでございます。それで、検定教科書であるから、同じ教材が各社に載っているということはどうもぐあいが悪いのじゃないか、そういう観点から検討の対象になっているというふうに編集部から聞いております。
#144
○山原委員 そうおっしゃると思いました。五社のうち四社が使っておられますので、それだけすぐれた内容を持っておると思うのです。ほのぼのとした、貧しいお年寄りの話です。そういうすぐれたものを持っているから、五つの社の中で四社がこれを使っている。しかも光村さんの方もこれを使ってこられたわけですからね。
 そういった非常に重要な部分が今度こぼっとすでに検討の対象になっているということは、昨年来の政権政党の批判、あるいは石井一朝氏などの批判、こういうものが早くも教科書の変質を具現化しているのではないかということは指摘をしておきたいと思います。
 もう一つは、正誤訂正の問題ですが、これは先ほど湯山先生からもお話になりましたように、たとえば原発の記述、商社の記述、これが正誤訂正という形で変えられておる。いままでは正誤訂正というのは、御承知のように十六条の四項目ありますところの規定によって、文部省はなかなか認めなかったわけです。ところが、原発の記述まで変える。商社の記述に至っては一ページぱんと変わるということになりますと、教科書協会としてのお受け取り方でございますけれども、これはいままでの文部省の正誤訂正の考え方とは変わったなというふうに受け取っておられるでしょうか。
#145
○稲垣参考人 正誤訂正の中に四つございまして、教育上どうかと思うような点とか、もう一つ緊急を要するものでしたか、ありましたが、そういう項目に該当するのじゃないかと思ったのですが……。
 それから、一ページ取りかえたというのは、これは商社のことだったと思うのですが、これはリベートがどうとかということが書いてございまして、これはまあ私の本当の個人意見でございますが、ちょっと書き過ぎではないかというふうに感じておったのですが、教科書会社が一ページを全部取りかえましたので、理由を聞きましたら、これは他に掲載されたものを参考資料として載せたものらしゅうございます。それで、自分で勝手に手を加えることができない、そういうようなことから、全然違ったものをそこへ持ってきた、こういうような事情だというふうに聞いております。
#146
○山原委員 教科書協会の会長たる者は、これはもうここの委員会あるいは予算委員会でもものすごい討議になったんですよ、学ぶとするならば、そういうところを国会の討論については勉強してもらいたい。正誤訂正というのは、誤字、脱字とかいう四項目があって、これとてもなかなか変えることができなかった。文部省はがんとして変えなかった。それが原発の記述、商社の記述等は、あるいは科学技術庁から言ってくるとか、あるいは財界の方からチェックがかかってくるとかいうことになって変わったのです。
 そうしますと、正誤訂正ということによって相当の部分まで変えられる。どこまで変えられるかわかりませんよ。正誤訂正によって自衛隊の記述も変えることができる。自衛隊を合憲であると書くこともできる。そういう解釈にまでなってきますと、教科書検定規則というのは、もう雲散霧消に等しいところまで来ているのです。そんなことを知りませんか。
#147
○稲垣参考人 私は、当事者じゃございませんので、自信を持っては言えませんけれども、従来、教育上支障のあるという理由で、かなり変えていただいた覚えがございますが……。
#148
○山原委員 教科書協会の会長さんとしては、本当に私は失礼な言い分だけれども、これは国会の審議にたえませんね。そんなことで変えなかったんですよ。まして原発の記述を変えるなんという、それが緊急なことですか。現に、原発の敦賀の問題があるでしょう。原発反対の住民運動があることは事実でしょう。事実に基づいて書かれているものを、緊急だから変えなければならぬ、しかも検定を合格しているんですよ。見本本で先生方はそれで採用しているのを、合格し、見本本で採択した後で変えるということを知らないとは何事ですか。そんなことで教科書協会の会長さんは、失礼だけれども勤まらないと思いますよ。
 しかも、あなた方の定款を見てください。自律によって教科書出版の倫理を守らなければならぬと書いてあります。自律という言葉も書いてあります。これがあなた方の協会の定款です。そして、あなた方は倫理綱領も出しているのです。自律ということは、他の政界その他のものによって、まさに教育基本法十条の不当な支配に服しないという気構えで教科書協会がつくられているのでしょう。それを代表してここで御発言をなさるのならば、それだけの教科書に対する自負を持って答弁をしていただかなければなりません。残念です、まことに。
 最後に、時間がなくなりましたから、次にお伺いをしますが、高等学校の「現代社会」は、新聞によりますと、いまだに検定が終わっておりません。ある新聞には、教育新聞でございましょうけれども、五月の中旬、もう五月の中旬を過ぎました、きょうは十五日です、まさに中旬、それでも検定は終わってない。しかも見本本、七月には展示会があるでしょう。内閲本、検定がいま終わってないのです。このことについてお困りになっておりませんか。
#149
○稲垣参考人 高等学校の「現代社会」の検定が大変おくれていることは事実でございます。このことにつきましては「現代社会」を発行しております十六社か十七社でいろいろと対策を現在協議しているようでございますが、まだどうしたらいいとかこうしたらいいとかいう結論が出たということは、会長にまで報告が来ておりませんのでわかりません。
#150
○山原委員 教科書協会の会長さんがまずやらなければならぬことは、文部省に対しまして、検定を早くやってください、全面改訂をさしてくださいじゃないんですよ。七月に先生方が展示会に行くんですよ、それが検定がまだ終わっていない。ふだんだったら二月、三月で終わっているでしょう。二月、三月を過ぎ、四月、五月が過ぎようとしている。七月にはもう印刷ができて、展示場に展示されなければならぬわけでしょう。検定がいまだに終わっていない。会社の皆さん検討しているけれども、まだ結論は出ていません、会長にまだ報告がありませんの問題じゃなくて、なぜ文部省は早く検定をやらないのかと、なぜそのことを要求しないのですか。
#151
○稲垣参考人 協会で組織しております検定専門委員会というところでこの問題を取り上げまして、文部省の方へ早くしてほしいという申し入れをいたしたことはございます。
#152
○山原委員 どうするのですか。これからどうされるのですか。七月に展示会が行われますが、検定終わっていません。率直に言ってもう印刷しなければいかぬでしょう。どうするのですか。
#153
○稲垣参考人 これは検定が終わる時期にならないと、いまここでどうするとか、そういうことは申し上げられないと思いますが……。
#154
○山原委員 いつ終わると判断されておりますか。
#155
○稲垣参考人 いま伺っておるのでは、六月中旬になるだろう、六月中旬を少し過ぎるかもしれないが、まあ六月中旬が目安であろうというふうに私どもは理解しておりますが……。
#156
○山原委員 協会長としてそれでいいのですか。だから、こういうかっこうになってくるわけですよ。ぼくは何が原因か聞きたいんですよ。何で文部省の検定がこんなに滞っているのか。本当に異例中の異例なんですよね。だから、その背景には、高等学校の「現代社会」を徹底的に変えようとする文部省のねらいがあると思うのです。しかも展示会をやらなければいかぬでしょう。印刷しなければならぬでしょう。そうして文部省が内閲本につきまして、ここを変えなさい、ここを変えなさいと言ってきたとき、日はもうありません。ないから、執筆者に対して了解を得る時間もないものだから、結局、文部省の言うとおりもう拙速で済まして印刷へかかっていく、あるいはもう印刷にかかっているかもしれませんよ。そんなことも知らないで、ここで参考人として証言されるのは、まことに私は残念でございますけれども、その辺お困りになりませんか。六月の中ごろか何か知りませんけれども、そんなところで検定が終わってどうするのですか。印刷できますか。七月の展示に間に合いますか。どうされるのですか。
#157
○稲垣参考人 六月の中ごろに検定が終わるということは、見本本審査が済むということだろうと思うので、印刷にはもうちょっと、印刷といいますか版はもうほとんどできている状態だと思います。
#158
○山原委員 そんなことでなくて、教科書問題もっと大事に考えてください。子供たちが使う教科書の問題ですからね。
 それなら検定通らないで印刷しているのですか、いまのお話では。印刷へ入っているのですか。
#159
○稲垣参考人 検定が合格するまでは印刷はできませんけれども、製版はずっと前からやっておるわけでございますので、版はできておりますので、印刷にかかるのはそんなに時間のかかる問題ではないと思います。
#160
○山原委員 時間が来ましたので何ですが、少し厳しい発言をして参考人に申しわけございませんが、しかし、本当にどうしても納得いかないんですね。ふだんなら二月、三月に終わっている。これは文部省に聞きたいのですが、きょうは時間がありませんから聞きません。二月、三月に終わっているのが、六月になって検定が終わるというのは、これはもう異例中の異例ですよね。異例だとお思いになるでしょう。何かこの背景があると思わざるを得ません。
 たとえば、先ほど有島さんからお話のあった経済の記述の用語を変えるとかあるいは憲法の条項、前文を変えるとか、いろんなことがうわさされているわけですが、これはもうまさに政権政党の意見によって教科書が全面的に変えられようとしている危険性を、あなたの御発言はくしくも発表したのじゃないかと思うのです。
 その意味で、私は、本当に教科書協会が、定款に従いまして、そして教育は「不当な支配に服することなく、」というこの条文をしっかりと守っていただいてやっていただきたいということを御要請を申し上げまして、私の質問を終わります。
#161
○三ツ林委員長 湯山勇君。
#162
○湯山委員 参考人にたびたび来ていただくわけにもまいりませんので、この機会に、先ほどの参考人への質問の残部を中心にして質問をさしていただきたいと思います。
 まず、参考人にお尋ねいたしますが、この全面改訂の申し入れについては、文部省から返事をもらうことになっておりますか。もらうとすれば、いつごろもらうようになっておるか、お伺いいたしたいと思います。
#163
○稲垣参考人 四月の二十七日の理事会の直後に、文部省の藤村検定課長にこの申請というか要請をしたわけでございますが、そのときには、この連休明けぐらいにはお返事をもらえませんか、こういうふうに申し上げてございます。
#164
○湯山委員 文部省はいつ返事をするのですか。
#165
○三角政府委員 本日の御論議もあったわけでございますけれども、私どもといたしましても、教科書協会の会長あるいはその他の関係の方々からもう少しよく話を聞きまして、近いうちに結論を出したいと思っております。
#166
○湯山委員 当然、これは従来の方針と違うわけですから、四分の一を超えるという判断の基礎は、具体的に聞かないとできないことでございますね。
#167
○三角政府委員 この教科書の検定の制度といたしましては、これは三年ごとにあるわけでございまして、そして、この三年ごとに新規検定及び改訂検定の双方を受けとめるという制度になっておるのでございます。
 ただ、中学校の教科書については、前回一回だけこの中間の過程で、改訂検定だけで終わったという年がありますので、それが直近の例でございますので、それがいかにもずっとあった前例のように言われておりますけれども、そういう話なのでございます。
 でございますが、私どもとしては、よく検討した上で結論を出したい、こう思っておるわけでございまして、先ほど来参考人からの御説明にもございますように、これから編集の作業に入って、そして時間をかけて編集を進めたその暁に、結果として、いわゆる手を施した個所のあるページが四分の一を上回るかどうかは、そのときになって決まってくることでございますので、この段階で内容について余り私どもが突っ込んで云々するということは、検定する立場としては、かなり抑制的に控え目にやるべき事柄ではないか、場合によりましては、その編集の方向づけ等に影響を及ぼすということがあってもなりません。そういうふうに考えているのでございます。
#168
○湯山委員 どうも修飾語が多過ぎてわかりにくいのですが、申し出たことについては、その根拠、そういうことをやはり十分検討した上で一つ一つの項目をどうこう、内容をどうこうというのではなくて、ただ言うてきたから、それだというので漠然とやるのではなくて、根拠を確かに検討した上で自信を持って認めるということになるわけでしょうから、そのことについては、きょうお聞きするわけにはいきませんから、また、その段階でお聞きいたしたいと思います。聞けばお答えできますね。
#169
○三角政府委員 現段階におきます協会側、これは各会社の意見を集約しておると思いますが、考え方なりあるいは現在の段階での見通しなり、そういうことをよく聞いた上で検討をいたしたい、こういうふうに思っております。
#170
○湯山委員 参考人にお尋ねいたしますが、先ほどの御答弁では、まだどれだけになるかわからない、従来の考え方からいくとなりそうだ、だから、おっしゃった中にも、一社は全面改訂でなくてもいいというようなこともおっしゃったようです。だから、まだ漠然としておって、もしこういうことになればこうという申し入れだと先ほどおっしゃいましたが、聞かれたらこれはこうこうだからこうとおっしゃいますね、文部省へは。
#171
○稲垣参考人 私の会社は公民を出していませんので、他社がどうするかということをここで申し上げるのはむずかしいと思うのでございますが……。
#172
○湯山委員 もうこういう時間ですから申しませんけれども、申し入れば代表でやって、今度あとは各社だから私にはわかりません。山原さんはあんなにおっしゃったけれども、ちょっとおかしいのじゃないかということが一つ。それから、いまのように、教科書の内容についてどこをどうどのくらい改訂するというようなことまで決める権限、そういう業務内容が協会におありになりますか。
#173
○稲垣参考人 そういう権限は全然ございません。
#174
○湯山委員 じゃ、今度の行動は、ないことをおやりになったわけですね。
#175
○稲垣参考人 合意されたことについては、協会としては動きます。
#176
○湯山委員 一般論として、権限のないことだということをおっしゃっている。合意されたからと言ったって権限ができるわけではないわけです。というのは、私が申したのは、教科書の内容についてのことなんですからね。これは論議の場じゃないですから、おっしゃったことで承っておきます。
 それから、無償が決まったということでお礼に行ったということですね。私らの常識から言えば、無償であろうが有償であろうが、教科書会社は教科書代はもらうわけですから、無償か有償か関係のあるのは子供、父兄ですよね。どうしてお礼に行く必要があったのですか。
#177
○稲垣参考人 無償制度は、十八年ですか続いておりますので、私どもは、無償制度に即した会社の体制をやっておるわけでございまして、これが有償になりますと体制を変える。それから、一番初めに問題になるのは、無償だと政府から前金がもらえますが、有償になると、これは児童から回収しなければならぬ、こういう問題が起きまして、その間の資金の問題が大変困るであろう、そういうような観点から無償の継続を業界としては希望しておるわけでございます。
#178
○湯山委員 非常に率直な御答弁でよくわかります。つまり協会側は、教育的な立場あるいは父兄の立場というのじゃなくて、会社経営上、無償でなくなれば九〇%という前渡しがなくなる、それでは困るという純粋な会社経営の立場からの要望であったということでございますね。
#179
○稲垣参考人 もちろん、会社経営上の立場から言えば、先ほど申し上げたとおりでございますが、実は私どもも、諸外国へ教科書の制度がどうなっているかということを調査に例年行っておりまして、もう十カ国以上調査をしてきたわけでございますが、ほとんどの国がやはり無償であるということで、そういう意味からも私どもは、日本だけが有償になるのはまずいのじゃないか、こういうような感じを持っておりますので、それは国民の一人として有償には反対していきたい、こういう気持ちもございます。
#180
○湯山委員 わかりました。
 そこで、有償、無償を決定する権限は、やはり政府、それから与党に大きな力がある。法律改正ですからね。法律改正は、やはり多数を持っている与党に大きな権限がある、力があるということは、これはもう申し上げるまでもないことです。
 そこで、そういう権限を持っている人の意見だから、これは尊重しなければならないというのは、御答弁はどういうことがおありになるかわかりませんけれども、やはりマスコミやたくさんの人が指摘しているように、そのつながりは否定できない、これはいまの御答弁で明確になりました。
 それから次の問題は、先ほどごたごたしてできなかったのですが、原発の問題ですね。これも結局は、原子力発電を進める側の立場に立っての局長の御答弁で、一々質問しないで申しますが、局長は、原子力発電の安全性につきましては、慎重な調査研究や対策も行われておる、だから、こんなに危険性を書くことはバランスがとれないということだったのですが、その後、いま大臣にもお尋ねしましたように、敦賀ではとにかく会長は辞任、それから通産省は、これを告発する、まだしてないですが、する方針。告発するなんということは、危ないということを世間に知らすことです。あえてそれをやるというのは、やはり住民を尊重している。つまり住民の側から言えば、照らしておるこの電力が原子力発電のものでなければならないなんてだれも考えていない。それよりも住民にとって大事なのは、その被害を受けるか受けないか。敦賀の場合は、魚も売れない、民宿にも来ない、そして現に被曝した人が、きょうのニュースでは三十何名。
 ですから、私が言いたいのは、そういう政・官・財の圧力に屈してというか、圧力を受けて文部省は、参考意見を述べて、参考の話をして、それを受けて教科書会社が訂正を申請してきて承認した、そういう財界などの自分のところの利益、そういうものを基礎にした要望というものは、やはりこういう住民無視につながる。通産省の態度はりっぱです。反対の意見もあるし、罰金といったって十何万円だけれども、あえて告発する。それは国民の生命を守るためです。こういう配慮が全然文部省にない。つまり、こういう圧力によってやることは、そういう結果を招くということを、今度のこのことが如実に示している、これを申し上げたいのです。これが一つ。
 それから次に、政界の、政治の、特に具体的な名前を申し上げて失礼ですけれども、自民党の圧力です。これは教育というものが不当な支配に屈してはならない、その中の最たるものは政治権力です。これは西岡さんはよく御存じだと思いますけれども、それを排除するように日本の制度はできている。第一、私は、ずいぶんお巡りさんに取り囲まれてやられましたけれども、あの公選制の教去某女員が任命になった。教育委員会法には、御存じでしょうが、任命制の教育委員の数は決めています。県知事の任命、市町村長の任命です。ところが、五名委員のときには三名以上は同一政党から入ってはならない、三名入ったら多数になる。いい悪いにかかわらず、それで事を決めることは政党支配です。それは排除しなければならない。政党にはイデオロギーがあります。それを教育に持ち込んではならない。三名委員のときには一名しか、二名になったら、もうそれはやめなければいかぬ。多数には絶対なっちゃいけない。こういう規定が地方教育行政の組織、運営の法律の第四条、これが人数の制限。
 それから、十一条の五項には、教育委員が政党、政治団体の役員となってはならない、また積極的に政治活動をしてはならない。これは御存じのとおり、任命制でこうなっているんですね。これは、そういう政治権力の教育への介入はやっちゃならない、こういうことの具体的なあらわれです。
 そのほかにも教育の中立あるいは政治活動の規制、いろいろ政治権力から教育を守るというのは、たとえ私どもがあれだけ抵抗した教育委員会の民主性を破壊する場合においても、当時の保守党は良識をもってやっておるのです。
 ところが、いま会長が言われたように、教科書を無償にするか無償にしないか、われわれずいぶん反対しましたが、ぎりぎりの権限は、これは法律を変えなければなりません。したがって、多数を持っている与党にある。その与党に、いまのようにたちまちこれがなくなれば、それは教育的な問題もおっしゃったけれども、問題は、四百何十億の九割の前渡しがなくなったら大変だ、それじゃ、この政権政党にどうしたって頭を下げなければいかぬ、お礼にも行かなければならぬ、御要望にもこたえて、御指摘の点は三年と待たずに直します、こうでしょう。これは、どんなにおっしゃっても否定できない。
 また、私は、この際、特に大臣は政党大臣ですから、そういうのを排除する、たとえ自分の党であろうが何であろうが、そういう不当な支配を排除する、それがあなたの役目です。それが教育基本法十条だと私は信じております。また、良識ある自民党の皆さんだって、このことはよくおわかりです。大臣も、もちろん、そうおわかりだと思いますが、大臣、いかがですか。
#181
○田中(龍)国務大臣 大変りっぱな御意見、ありがとうございます。
 私は、文部大臣といたしまして、次の世代を担う青少年にりっぱな教科書をつくってあげなければならぬ、この念願に燃えております。
#182
○湯山委員 大臣、これは教科書の問題だけじゃないのです。たとえば今度の私学助成にしても、与党はああやって法律を出す力を持っている。出した法律が通るか通らぬかまだわかりませんけれども、通る可能性は非常に強いわけです。議員立法でもできる。だから、採択制度も制度的に変える、これも政権政党で、しかも今日の自民党では、そういう力を持っている。教科書会社の生死にかかわる九〇%の前渡し金、これだって生殺与奪の権を持っていると言うと言い過ぎですけれども。
 そこで、文部行政の基本としては、たとえ政党出身の政党内閣の大臣といえども、文部大臣は、教育基本法十条の精神によって、そういう不当な支配――中身が当、不当じゃなくて、そういう権力で動かしていこう、それに迎合する、そういう不当な支配は排除するというのが、文部大臣の基本的なお立場ではないでしょうかということですから、一般論として大臣の御決意を伺いたいわけです。
#183
○田中(龍)国務大臣 文部大臣は行政官でございます。われわれは、決められました法制をいかに守っていくかということでございます。それに対しまする新しいお考えなり何なりにつきましては、それは立法府のなさることでございまして、先生を初め皆様方のお決めになりました法律を私は守ります。
#184
○湯山委員 そうすると、大臣は、教育基本法十条を守って、いまのようなそういう不当な支配は排除する、そのために全力を尽くす、このことをこのときこの際言ってほしいのです。
 それは、そのことが日本の将来の教育を守る道でもあるし、手近なことで言えば、いい教科書をつくる道にもつながるわけですから、あくまでもそのような不当な支配は排除する、こういうことをはっきりおっしゃっていただきたい。
#185
○田中(龍)国務大臣 私は、行政官でございますことは、ただいま申し上げましたとおりであります。いまの政党の一つの理念といたしまして、不当か正当であるかということは、これはまた各政党の哲学でございます。私は、立法府の方には容喙いたしません。行政官といたしまして、決められましたことにつきましてお答えいたします。(発言する者あり)
#186
○湯山委員 これは早くやめようと思うのですけれども、大臣、もう全部前置きも何も抜いて、教育基本法十条を大臣は全力を挙げて守るということがおっしゃれるかどうか。
#187
○田中(龍)国務大臣 私は、現行の教育基本法十条を守ります。
#188
○湯山委員 それから、いま申し上げましたように、財界と結びついた圧力というものは国民無視になる。それから、いまのような政治権力と結びついて、稲垣さんの方もやむを得ず頭を下げて行かなければならない。後向いておるかどう向いておるかは別ですけれども、もうああいうふうに発表になったから、このことは皆そう思っております。そうすると、問題は著作権です。書いた学者、書いた教育関係者、それがこういう背景の中で今度改訂します、認めてくれと言う場合に、一人でも拒否権があるのですから、こんなことじゃわれわれ納得できないと拒否したら、これは全然できなくなりますね。これは稲垣会長さん、どうですか。
#189
○稲垣参考人 お説のとおり、著作権法によって拒否されるとできません。
#190
○三ツ林委員長 湯山君、時間が超過いたしておりますので、結論を急いでください。
#191
○湯山委員 非常にはっきりいたしました。一人でも拒否すればできない。このことは、いまのようなことを考えてみると、その心配は非常に濃厚です。
 そのことだけ指摘して、木島委員が一言関連があるそうですから……。
#192
○木島委員 一問ずつです。
 先ほど大臣は、きょうおっしゃったのでありますから、今回出したところの教科書はりっぱであると信じておりますとおっしゃるということは、文部大臣の教科書に対する責任上大変りっぱな態度と思うのであります。だが、会長から全面改訂の申請が出れば、それはその時点で考えるとおっしゃっている。しかし、政治家である文部大臣が、今日これほど社会的な問題になっておるところの教科書をどう改訂するか云々ということは、毎日新聞をにぎわしておるのでありますから、したがって、少なくともいまどのような問題が起こっており、どういう改訂という動きがあるのかということぐらいは、政治家であり、文部大臣である限りにおいては、当然検討なさっていらっしゃるはずであろう。でなかったならば、文部大臣たる資格はない、政治家たる資格はない。
 そこで、いまでもいい教科書だと信じていらっしゃる。当然、今日のどのような問題からどのような具体的な問題点についての改訂の項目があるかということは、政治家として理解されないわけがない。しかし、いまもりっぱな教科書だと信じておるとおっしゃった。とするならば、あえて世間騒がせなことでなしに、いままでどおり四分の一以内の改訂であるべきであって、先ほどの局長の話によりますと、近く全面改訂をも含むところの申請に対する回答をするそうであるけれども、このことは、いま大臣がおっしゃったことからするならば、りっぱな教科書だと信じており、そしてすでに検討されておる上においてきょうおっしゃったのでありますから、当然、これは四分の一以上になることの改訂を認めるような協会に対する回答はなさらない最後の大臣の決断が必要だと思うのでありますが、その点をお聞きいたしたいことが一点であります。
 それから、会長にお聞きいたしますが、ある新聞にこう書いてありました。日教組が採択するかしないかということが企業にとって大変であるから、そのことを考えないわけにいかなかったということもおっしゃいました。それは自民党の小委員会でおっしゃったようであります。とするならば、今回もし無償が有償になったら前渡しがなくなって、経営に非常に困ると先ほどおっしゃったそのことだけ、その他は除きますが、そのことが中心であるならば、この教科書をつくるのに日教組が直接影響を与えるわけがない。あと日教組が教育白書等を出すから、そこには批判があるから、したがって、採択されないと困る、だから、いろいろ云々とある。要は経営のために、たくさん本を買ってもらうために、ときには迎合し、ときには無償から有償になったならば企業が困るから、自民党の要請で全面改訂をしようとするのか。しからば教科書協会とは、教育の基本の一つであるところのこの協会に対する基本理念は一体どこに持っているのだ。企業がよければ、教科書はそのときの支配勢力に、他の外圧によって左右されても企業の経営の安全のためにどうでも動くということになるのではないかという懸念を持ちましたが、両者からそのことだけについてお答えをいただければありがたいと思います。
 以上です。
#193
○田中(龍)国務大臣 お答えいたします。
 現時点におきまして、私は、行政官といたしまして、法制のとおりに執行いたします。
 なお、その間、それを現行法制上から申しまして、私は、いまの改訂の問題は、その発行者の方からの要請に基づきまして検定をいたすのでございます。
#194
○稲垣参考人 無償の廃止がこわいから、財界、政治の圧力があるから、おまえたちは言うことを聞くのだろうという御説のようでございますが、私どもは、学校の子供が言ってまいりましても、その他団体、個人いかなるところから言ってまいりましても、これを謙虚に受けとめまして検討の材料にいたします。そして、これは改めた方がいいという著者の判断があれば改訂をいたします。そういう立場で会社を運営し、協会も運営しておりますので、政治的圧力ということは一切考えておりません。不党不偏の態度でいままでもやってまいりましたし、これからもやってまいります。
#195
○三ツ林委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。
 この際、委員会を代表いたしまして一言ごあいさつをいたします。
 参考人には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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