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1980/03/24 第94回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第094回国会 大蔵委員会 第15号
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1980/03/24 第94回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第094回国会 大蔵委員会 第15号

#1
第094回国会 大蔵委員会 第15号
昭和五十六年三月二十四日(火曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 綿貫 民輔君
   理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君
   理事 小泉純一郎君 理事 山崎武三郎君
   理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君
   理事 鳥居 一雄君 理事 竹本 孫一君
      相沢 英之君    麻生 太郎君
      今枝 敬雄君    木村武千代君
      熊川 次男君    笹山 登生君
      椎名 素夫君    白川 勝彦君
      中村正三郎君    平泉  渉君
      平沼 赳夫君    藤井 勝志君
      毛利 松平君    森田  一君
      柳沢 伯夫君    山中 貞則君
      山本 幸雄君    与謝野 馨君
      佐藤 観樹君    塚田 庄平君
      戸田 菊雄君    平林  剛君
      堀  昌雄君    村山 喜一君
      柴田  弘君    渡部 一郎君
      木下敬之助君    玉置 一弥君
      正森 成二君    蓑輪 幸代君
      柿澤 弘治君
 出席国務大臣
        大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君
 出席政府委員
        経済企画庁物価
        局審議官    齋藤 成雄君
        大蔵政務次官  保岡 興治君
        大蔵大臣官房審
        議官      水野  繁君
        大蔵大臣官房審
        議官      梅澤 節男君
        大蔵大臣官房審
        議官      小山 昭蔵君
        大蔵大臣官房審
        議官      吉田 正輝君
        大蔵省主計局次
        長       吉野 良彦君
        大蔵省主税局長 高橋  元君
        大蔵省関税局長 清水  汪君
        大蔵省理財局長 渡辺 喜一君
        大蔵省国際金融
        局長      加藤 隆司君
        国税庁次長   川崎 昭典君
        国税庁直税部長 小幡 俊介君
        国税庁調査査察
        部長      岸田 俊輔君
 委員外の出席者
        議     員 伊藤  茂君
        総理府人事局参
        事官      吉田 道弘君
        行政管理庁行政
        管理局管理官  増島 俊之君
        経済企画庁総合
        計画局計画官  河原 康之君
        経済企画庁調査
        局統計課長   田原 昭四君
        大蔵省銀行局保
        険部長     松尾 直良君
        運輸省海運局監
        督課長     井上徹太郎君
        日本国有鉄道常
        務理事     加賀山朝雄君
        大蔵委員会調査
        室長      葉林 勇樹君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二十四日
 辞任         補欠選任
  玉置 一弥君     木下敬之助君
同日
 辞任         補欠選任
  木下敬之助君     玉置 一弥君
    ―――――――――――――
三月二十四日
 所得税法の一部を改正する法律案(堀昌雄君外
 八名提出、衆法第一八号)
 財政運営に必要な財源の確保を図るための特別
 措置に関する法律案(内閣提出第三号)
 アフリカ開発銀行への加盟に伴う措置に関する
 法律案(内閣提出第五三号)
 一次産品のための共通基金への加盟に伴う措置
 に関する法律案(内閣提出第五四号)
 臨時通貨法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第五五号)
 昭和四十二年度以後における国家公務員共済組
 合等からの年金の額の改定に関する法律等の一
 部を改正する法律案(内閣提出第五七号)
 昭和四十二年度以後における公共企業体職員等
 共済組合法に規定する共済組合が支給する年金
 の額の改定に関する法律等の一部を改正する法
 律案(内閣提出第五八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 一一号)
 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 一二号)
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第一三号)
 国税通則法の一部を改正する法律案(堀昌雄君
 外八名提出、衆法第一三号)
 法人税法の一部を改正する法律案(堀昌雄君外
 八名提出、衆法第一四号)
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(堀昌
 雄君外八名提出、衆法第一五号)
 所得税法の一部を改正する法律案(堀昌雄君外
 八名提出、衆法第一八号)
     ――――◇―――――
#2
○綿貫委員長 これより会議を開きます。
 所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 質疑の申し出がありますので順次これを許します。沢田広君。
#3
○沢田委員 最初に、国税の職員の不足といいますか充実といいますか、関係者の委員の皆さん方からそれぞれの立場を通じていままでたくさん質問がされてきました。きょうはそれをまとめて言ってみたいと思っているのであります。そういう意味ですから、余り意見は述べないで、ひとつそちら側の対応というものをきちんと整理をしていってみたい、こう思います。
 まず、現在日本の法律は申告制度ということになっていますから本来ならばその申告を尊重する、これが大原則であって、それぞれの国民の良識を前提として物を考える、こういうことで理解をしていいのかどうか、これがまず第一点、これからお伺いしていきましょう。
#4
○川崎政府委員 申告納税でございますので、先生おっしゃるとおりでございます。
#5
○沢田委員 申告ですから本人の意思を尊重する。そこで今度は調査をするという場合の発動のその前提、これは何ですか。
#6
○川崎政府委員 申告納税でございますから皆さんがまじめに正しい申告をしていただく、別の言葉で申しますと申告水準が適正といいますか高い水準でなければならないということで、そのために、中には正しい申告をしない人がある、そういった人に対して調査をしようという物の考え方でございます。
#7
○沢田委員 そうすると、この申告を原則としていく現在の税制の中で、中には正確でないということをどう判断されるのですか。
#8
○川崎政府委員 私どもの方で調査選定の方針としまして悪質重点とか大口重点とか言っておりますが、一般の水準に比べて申告の水準が低い、簡単に言えばこういうものを調査の対象とするということでございます。
#9
○沢田委員 もう一回整理していきますと、国民は申告制度で納税をいたします。それは国民の良識によって憲法で認められている納税の義務を履行する。いわゆる税務署が今度は調査をする。その調査をする場合は、いま言われた例は悪質である、それから大口である、それから一般の水準よりも落ちている、これが三原則になりますか、そういうことだけですか。
#10
○川崎政府委員 三原則と申しますか、悪質重点、大口重点ということが言いかえれば申告水準が低いものを対象とするということで、三位一体というふうな感じでございます。
#11
○沢田委員 そうすると判定権といいますか認定権はその申告の水準が低い――低いという判定は何を基準として低いというふうに、法律上といいますか税務調査上どういう解釈をしておられるのですか。
#12
○川崎政府委員 判断の基準といいますか、これを基準にしてこう決めつけよといったものがございませんけれども、たくさんの納税者が申告をしておる、その中で大体営業規模が同じであるにかかわらず非常に申告の低い人があって、格段に低い理由が申告されていないといったようなものを徐々に検討しながら対象を選定するわけでございます。
#13
○沢田委員 現在捕捉率という問題がいろいろと議論をされております。この捕捉率というものに対していまいろいろ言われていることは、いわゆる一般の水準よりも低いということだけであって、正確な捕捉をする任務というものでこの調査をしているのではない。そうするとあくまでも容疑者、脱税というか脱漏というか申告漏れというか、とにかくそういう容疑のあるものについてだけ調査をするということに考えてよろしいですか。
#14
○川崎政府委員 そのとおりでございまして、正しい申告をされておる方に対しては調査はしないというのが原則でございます。
#15
○沢田委員 たとえば法人関係だけを視点にして物を考えてまいりますと、すべての法人にその調査をしなかった場合においては、正しく申告していると税務署が考えれば、それはその調査の対象にならない。税務署が正しくないと考えれば、それは調査の対象になるということに解していいのですか。
#16
○川崎政府委員 一概にそのとおりにならない場合もあろうかと思いますが、大体にやはり税務署と申しますよりは調査担当者といいますか、そういった者が脱漏があるのではないかと考えるところを調査対象としておるということでございます。
#17
○沢田委員 なぜ、スピード違反みたいな抽出方法をとることが公正だと考えますか。その抽出という方法が果たして妥当だと考えますか。
#18
○川崎政府委員 全面的に見渡しまして、そうして無作為に抽出をして調査をするということによって隠れた不正が発見されるのではないかという御趣旨かと思いますが、そういったやり方が妥当な場合もあろうかと思いますけれども、全面的にそういう方法を採用できるだけのゆとりがないといいますか人数がいないという事情もございます。
#19
○沢田委員 私の言っている抽出という言葉を解釈を間違えられたようですが、税務署というかその調査官というか、これは法律上どこに権限があるのか、これはまたお答えいただきますが、あるAならAという企業を調査する選定権、その選定権はどこにあって、そのAと決めるということがその不公正というものとの関係をどう考えているかということでお答えいただきたい。
#20
○川崎政府委員 先生がおっしゃいますような選定権といったものはないかと思いますけれども、法律上は質問検査権と申しますか税務官吏にそういった権限が与えられておるわけでございまして、その権限を前提としてどういう企業あるいはどういう個人を調査するかということをいろいろ内部的に検討して決定するわけでございます。
#21
○沢田委員 内部的に検討して運が悪い者と運がいい者が現在出ているということの現状はお認めになられますか。それともいまの状況の中で、ことしは運が悪かったな、税務署の調査に入られてしまったよ、こういう言葉を私たちは時たま聞くのですね。このことはどういうことかということになるわけです。ことしは税務署の調査が入ったというと何がしかの金がとにかく出される、こういうことになるわけですが、その現実についてはあなたはどう思っておられますか。そういうことはないと思っているのですか、そういう言葉が現実にあると思っておられますか。
#22
○川崎政府委員 なかなかむずかしい御質問でございますけれども、調査をした法人なり個人がすべて脱税をしておる、しないのは全部が正しい、そういうふうにはとうてい考えておりません。
#23
○沢田委員 いや、いま私が言っているのは、あなたはやる方だ、言うならぶん殴る方だ、だからわりあいに自分は痛さを知らない。しかし、ぶん殴られる方の痛さは、ほかの者はぶん殴られないで私だけがぶん殴られたという意識を持つのが現実でしょう。この現実を認めるのか認めないのか。そうじゃない、なでたんですとあなたは言うのかもしれぬけれども、そういうことで当たった者についてはいわゆる追徴税を払わなければならぬという現実から見ると、きわめてそれはぶん殴られたという感じになる。それで隣のやつはぶん殴られないでおれだけぶん殴られた、そういう一つの不信感というものが現実に起きているというこの現実は、どうあなたは把握しているのかということを聞きたいわけです。
#24
○川崎政府委員 そのぶん殴られたという物の受け取り方でおられる方もそれはないではないかと思いますが、やはり私どもはある年に調査をしますと、それで仮に不正がございましても次の年からは正しい申告をしていただけるであろうといったようなことで、なるべく広い範囲に調査対象を及ぼして、そして高い申告水準を維持できるようにというふうに考えておるわけでございますが、必ずしも定員が十分でございませんから思ったようにはまいらないわけでございますけれども、物の考え方といたしまして、調査ということと指導ということと結びつけて考えておるわけでございます。またそれ以外に相談ということと広報ということと、結局税務行政の四本柱として考えておるわけでございますが、いろいろな角度で調査に当たった人だけが犠牲者である、そういった風潮が生じないような行政を行いたいということを念頭に置いておるわけでございます。
#25
○沢田委員 これは我田引水でも結構ですが、そういう不公正をなくすためにどういう方法が一番いいと思っておられますか。
#26
○川崎政府委員 最善の方法を申し上げるのはなかなかむずかしいかと思いますが、先ほど申し上げましたように調査ということと指導ということの組み合わせ、また相談と広報ということの組み合わせ、この四つをまた相互に活用しまして、十分御納得のいける納税をしていただきたいと考えておるわけでございます。
#27
○沢田委員 いや、私が言っているのは、定員が十分でない、こうあなた言ったでしょう。だから定員が十分でないからぶん殴られた人とぶん殴られない人との不公正感が起きています。これは現実、その解釈は別として、例示は悪いかもしれませんよ。あなたはなでたんだと言うのかもしれぬが、とにかくぶん殴られたという片っ方は印象だ。そういうことが、定員が十分でないから起きるんだとすれば、それはパーフェクトとまでは言わないけれども、九〇%可能にするための措置としては何があるのですか。あなたの描いている理想像、あなたが描いているいわゆる国民に不信感を起こさせない条件を具備するためにはこれから何が必要なんですか、それを答えてください。
#28
○川崎政府委員 いろいろな施策の組み合わせが必要と考えますけれども、私ども担当者としましてはやはり国税、特に熟達をしました職員の数を確保したいという希望をずっと抱いておるわけでございます。
#29
○沢田委員 練達した職員を確保する、その確保する量はどういう目安で必要と考えますか。
#30
○川崎政府委員 毎年増員をお願いしておりますが、御承知のような事情でございますので、なかなか思うようにまいりません。現段階でこの程度の人数が欲しいということはなかなか申し上げにくいわけでございますけれども、増員ということと非常に質の高い職員ということとございまして、外部的にお願いを申し上げたいことと、また別に内部的にいろいろ検討して努力してまいらねばならぬということがあるわけでございます。
#31
○沢田委員 私が言っているのは、いろいろな周りの諸条件というものをゼロにしまして、国税徴収ということだけをひとつ取り上げてみて、あなたが描く徴税事務というものがビジョンとしてはどうあるべきだ、それを聞きたいわけです。だからほかの条件があって、定員が増になろうと――総理大臣も何もいないと思って答えてもらえばいいのです。ほかの省は関係ない。とにかく徴税と国民ということとの配置の中において、あなたが徴税をしていくのに一番いい理想像というものはどういう条件を具備することですか。定員がいま不足しているからだめだ、こう言われたが、その点についてはどういう条件を具備すればおおむね国民が納得できる条件というものが生まれるのですか。何も考えてないですか。何となしにやっているのですか。
#32
○川崎政府委員 理想像とおっしゃられますと非常にむずかしいわけでございますけれども、やはり理想は申告納税でございますので、余り調査をしなくても高い水準が維持できるといったような納税環境の整備されることが一番望ましいわけでございますけれども、現実は調査をある程度やりませんと高い申告水準がなかなか維持できないということもございますので、できれば何年かに一度は全部の対象を調査できるようなのが一応当面の理想ということになろうかと思います。
#33
○沢田委員 何年には一回と言うその何年というのはどの程度のサイクルを言われているのですか。
#34
○川崎政府委員 このサイクルは時代によって変遷がございまして、過去三年に一度ということもございましたけれども、現在はとてもそういう状況には定員上もないということと、また納税環境もよくなってまいっておりますから、その必要もないという点がございますが、私どもとしましては、七年なり五年なりに必ず一巡できる程度の事務が組めれば非常によろしいと考えるわけでございます。
#35
○沢田委員 そうしますと、法人だけをもし考えてみますと、百七十一万七千件という申告件数ですね、これは法人税だけの実態でいきますと。それでいま五年をサイクルということになるとこの五分の一が当面この年度ですね。そうすると一職員が調査できる能力というものは何社くらいになるのですか。
#36
○川崎政府委員 一職員が調査するというのは相手の数にもよりますし、いまちょっとここに申し上げられる資料を持っておりませんので、また後ほど御報告したいと思います。
#37
○沢田委員 いやそんなむずかしい問題を質問しているわけじゃないですよ。一税務職員が調査をするのに一年間に大体どの程度が平均的に、たとえばあなたたち持っていないと言われているけれども、実地調査件数は大体一〇%でしょう。十七万九千件とかなっているじゃないですか。もしこの件数を全職員で割れば、それは大体出るわけです。出るのだけれども、私が意見を言ったってしょうがないのだから一応あなたの答えを聞くのでいまやっているのです。私が出したのじゃしょうがないから、五年のサイクルとすると、大体三十四万件ぐらいになるのですね。それをいま、一職員がどの程度可能なんですか、一年間にやれる業種は何業種ぐらいできるのですか、こう聞いているのです。
#38
○川崎政府委員 全法人数が百七十万あるという前提で、法人税の調査職員が一万足らずでございますが、単純に割ってみますと百七十ということになりますけれども、実調率というのが大体一〇%でございますから、まあ一人平均十七というふうな計算になろうかと思いますが、これは非常に算術的な話でございまして、実際は一社に何名かが行くといった大きな会社もございますし、一人で一日に二つ三つ済ませるということもございますので、およその見当にしかならないという意味でお聞き取りおき願いたいと思います。
#39
○沢田委員 いま大体出てきた結果では、職員一人が十七社、大体十七万九千件しか実地調査件数はない。所得税の方も合わせて職員はあるわけですね。これも所得申告は九百四十二万件ある。実地調査件数は十三万九千件ぐらいある。これを両方合わせても大体三十二万件ぐらいになる。この比率が一〇%というのは、スピード違反的ないわゆる運悪い論でいっていいのかどうかということが一つは基本になるわけですね。
 現在国民としてはやはり重税ですよ、何といってみてもいまの状況からいって。税金というのは重いですよ。だから軽くしたいというのは本能的な国民のいわゆる欲求ですね。軽くしたいから、そのためにはどうしたらいいかということでみんな知恵を働かしているわけです。選挙法だって、幾ら法律つくったってまた抜け穴が出るというようなもので、やはりどうやってみたってその間を縫っていこうという努力を、国民は生活の知恵を働かせるわけです。
 その現状から見た場合に、実際に行くのは調査、指導、相談ぐらいまででしょう、広報はチラシみたいなものでしょうから。だと仮定してみた場合に、問題は苛斂誅求になってはいかぬ、といって運悪い論で通してもいけない。そうすると、せめて半分ぐらいまでは大体当たるというような、当たる人の方をともかく多くしなければいかぬ。そうしなければやはり少数だけの被害者という意識の方を自動的に持っちまう。ですから、どうしても半数を超える条件をまず確保することが、株主じゃないが最低の要件。やはり五一%の調査率というものは、申告者の過半数は調査を受けるのですという条件をとにかく一回つくれば、後は大体その慣行が生まれてくるだろうと思う。いまのように一割だけがぶんなぐられるという論理ではどうしても不信感というものが助長される。そういう体制をつくらなければならぬ。これは考え方だけでいきます、現実に合うか合わないかは別問題。考え方としてはそういうことを肯定されるかどうか、その点をまずひとつ伺いたい。
#40
○川崎政府委員 私どもにとりましては大変ありがたい御示唆でございますけれども、調査というものを考えます場合は、五一%といいますか、二年に一回参るほどの必要はなくて、過去の最高の場合でも三年に一回というふうな考え方でございまして、税法の時効も三年というふうなでき方になっておる点から見ますと、五〇%までという必要もないかと考えるわけでございます。
#41
○沢田委員 いわゆる不信感がなくなるまでの間の措置ということをぼくはただし書きつけているわけだよ。いまとにかくこういうことがずっと歴年積んできたわけですよ、高度成長以来、それ以前からも続いて。税金とは逃れるものである、言うなら国民の哲学はそういうことです。どうやってうまく逃れるかの知恵をしぼろうというのが現実ではないですか。それは給与所得者などはごまかしがきかない。しかしそれ以外は、ごまかすという言葉は適当じゃないかもしれぬが、なるべくだったら軽くしたいというのが国民のいわゆる実態感なんですね。それに刃向かってあなたの方は向かうのですから、憎まれ者になることは間違いない。この前も言ったように、飲むのもずいぶんつらいだろう。飲み屋へ行ったら、税務署のやろうとんでもないやなんて言われるだろうし、隣近所からは横目で見られるし、ずいぶんつらい立場にいるとは私も考えます。しかし、そういうことで結果的にはその実調をあくまでもやるならば、五〇%程度に一回はして、そして不公正感というものをまず除去して、その後、じゃ三年なら三年ということを定着させるという体制を確立することはやはり必要なことじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
#42
○川崎政府委員 まことにありがたい御示唆でございますが、全部の対象にいま五〇%ということを実行するというのはやはりちょっと無理であろうかと考えております。
 そこで現実的には、全部じゃございませんで、やはり多くの人は正しい申告と申しますか納税をしていただいておるわけで、納めたくない、何とか隠そうというようなグループであろうというところを選びまして、二年に一回とかあるいは毎年とかいうふうなやり方をやってまいった方が能率的ではないかというふうに考えるわけでございます。
#43
○沢田委員 あなたのやっていることが、あなたもそのうちかわっちゃうんだろうけれども、結局毎回やっている間は無難に過ごそうというのが、いわゆる役人の大体の発想なんですよ。いままでのものを急に変えるのは――鈴木総理はそういう意味においては偉いと思っている。とにかく今度は増税しないで行政改革だけでやりますなんて、これはもう偉い。その意味においては大いに見識を多とするものですよ。そういう発想の転換がやはり公務員にも求められているというふうに私は思うのです。あなたの任期中、うまくいったら次官になれるかなんて頭に描きながら、何とか無難に過ごそうとすると、ここの段階を余り変えたくない、恨まれる仕事もよけいしたくない、しかし、だからといっていままでの実績よりも下げたくない、これが素朴なあなたの置かれている環境だと私は思うのですよ。あなたの置かれている環境はそういう環境にあるんだ。だけれども、そういうところから一歩踏み出して、国民の不信感というものを除去していくために、言うならば自分の職務にひとつ忠実になってみるということは大変大切なことじゃないか。だから私は結論的にも、私の質問に答えて余り、理解がありますぐらいな程度で答えが返ってこないんだが、それだったら、やらない方がいい、任しちゃった方がいいと思う。そして申告額を全部発表して、まあ新聞なんかには出ちゃっているけれども発表しちゃって、世間の中から批判をおのずから起こしていく方が、それならよほどプラスなんだ。一割だけ隠密に守秘義務でやっていって、それだけでしか出てこないんだったらば、全部完全オープン、公開にして、国民の中からおのずから発生する不信感というものを、あれがあれだけの生活をしていながらあれだけの申告とはおかしいじゃないかという疑問を投げかけた方が、あるいはより正常性を確保するのに近道かもしれません。だから、あなたのように九〇%は隠しておいて一〇%だけ調査をして、それで全体完全であるという論理は私は通らないと思うのです。その点はいかがですか。
#44
○川崎政府委員 おっしゃるとおり九〇%は放置しまして、一〇%だけを常に調査するというのでございましたら、おっしゃるとおりでございますけれども、その一〇%というのは、ことしはこの一〇%、来年はこの一〇%というふうに動くわけでございまして、しかもその動くのが恣意的というのじゃなくて、ある程度の根拠を持って、先生おっしゃいますような悪い脱税者を探し出すという方向で選定をしておりますので、まあ実調率が低いのは残念ではございますけれども、この状態で絶対にけしからぬというふうなものではないと考えております。
#45
○沢田委員 ここへ来ると、あと政務次官なりそちらの出番になるのですが、大体いままでのやりとりを聞いて、どちらかに重点を置かなければ、方針を転換しなければ、現在の税の――あなたは政治家だからよくわかっておられると思う、そういう不信感というものを除いていくためには、実調件数をふやしてある程度の整合性をとるか、あるいは開放主義に基づいて市民のお互いの牽制というものに依存して、オープン化することによって牽制によって納税率というか正常な申告を求めていくか、やはりその選択の時期に来ていると私は思うのです。それをまたマンネリズムでずっといったら不信感は除かれない。これは確実だと思う。だとすれば、どちらを選択するかということになるだろうと思うのです。ですから私はいまの制度を進めていくならば、やはり実地調査をふやすなり、三年に一回なら三年に一回の数をこなせる形をとることが一つ必要になる。いまのように一〇%程度、所得税の方は一・五%程度しかないのですが、そういう状況でいくとするならば、これは開放主義の方がよりいい。そのかわり実調はなし、全部開放主義で市民のお互いの牽制によって正常化を図っていく。これは現在投書マニアなんていっぱいありますからね、いろいろなたくさんのものがわれわれのところへも来るくらいですから、とにかくいま投書魔なんて言われておりますが、そのくらい投書が多いわけなんです。ですからそういうことによって実態のより正常化を図っていく、こういう方法との選択の分かれ道にいまいると私は思う。だからどちらをとっていくか、実調を充実して取っていく路線をとるか、いわゆる開放主義に基づいて市民のお互いの牽制を続けながら正常化を図っていくか。隠れているものは常に隠れていってしまうということは許されない。とすれば、どちらかである。大いに内部告発もあって結構だと思うのですね。
 だからそういう意味において、市民がお互いに職員であろうとなかろうと、とにかく牽制し合っていくという状態が果たして望ましい状態かどうかわかりませんが、しかしそういうことによってある程度正常化を図る、政治家としてはどちらを選択されることがいいと思うか、ひとつお答えいただきたい。
#46
○保岡政府委員 納税をきちんとして国の歳入を確保するということは、国家にとって、また国民にとってきわめて重要なことだと思います。そういった意味できちっとした納税が行われることの工夫というものは常に真剣に検討していかなければならないと思いますが、先ほど来国税庁の次長がお答えしているとおり、自主申告制度という納税者を信頼して税を確保していくというよき制度がずっと行われてきているところでありますから、基本的にはその制度を前提としていろいろ工夫していくことが最善ではないだろうか、もちろんいま先生が言われるようにいろいろな不公正が出てまいりますと、先生のおっしゃるような考え方を持つ人も中には出てくる、そういう余地もありますので、そういうことがないように努めることが大事だと私は思います。
#47
○沢田委員 はっきりした答えではないのですが、たとえば実調も大切である。それから開放も大切である。それを両方利用するという方法はどうですか。
#48
○保岡政府委員 やはり自主申告制度というものを基本にするということですが、これはたとえば守秘義務ということを先ほど先生触れられましたが、守秘義務をきちっとすることによって本当に洗いざらい自分の所得、収入というものを国税当局に教えてもらって、そして税の制度の中でのしっかりした確実な徴収権を行使させていただくという本質的な理念というものがありますから、一般に何もかも知らして一般の人々の批判の中で税を確保していくということは、制度として急に取り入れられるものではないのではないか、こういうふうに思います。
#49
○沢田委員 そうは言っても皆さんの地方だって地方紙にはベスト三百とかベスト百とかみんな載っかってしまう。そういう人たちだけはいずれにしても社会の中にさらされていっておることは間違いない。問題は法人の場合なんですよ。個人の場合はわりあいそうやって出ていってしまうけれども、法人の場合が出ていかない。そこに実は問題があるわけなんです。そういう意味において、法人の方についての実地調査というものがきわめて大切だ。個人についてはプライバシーとかいろいろあるかもしれません。しかし法人については少なくともワースト十だとかあるいはベストテンだとかランキングは出ますが、一般的に見ると隠れておる部分の方が多いことは間違いない。ですから、そのためには実地調査件数をふやしていく。これはいまの体制を進めると仮定をするならば、ある程度努力してもらうことが必要じゃないかと思う。とりあえずそこの点で、いままでも何回か質問してきたのだが、行管庁を呼んできておるのはそこなんです。大蔵省がここで何とか節減しようと言っておるときに、税務署の職員だけふやすわけにはいかぬだろう。行管庁では全体的にどういうふうにその点を考えているのか。行管庁としてはどういうような物の考え方に立ってこういう分野を見ているのか、その点見解を承りたいと思うのです。
#50
○増島説明員 ただいまの御質問でございますが、現在の定員管理の基本といいますのは、行政規模全体としてとにかくふやさないという大方針がありまして、そのもとでできるだけ各省庁の中のいろいろな部門の合理化を図りまして、そして新しい行政需要の方に振り向けていくという考え方でございます。国税庁につきましても必要性は十分承知しているわけでございますが、政府全体としまして行政需要の強いところが非常にたくさんあるわけでございますが、全体的な勘案をしてこの再配分を図っていくということでございます。
#51
○沢田委員 各行政庁の需要が高いところが多いというのは、ちょっとこれこそワースト十じゃないが、五つぐらい挙げてくれませんか。
#52
○増島説明員 第一番には、現在では国立学校があると思います。それから国立病院、療養所でございますが、これは政策医療いろいろございますが、それに対応しましてふやす部門あるいはまた二百海里対策などで海上保安の関係の増員というのがございます。それからまた、法務省の登記事務がございますが、これもいろいろ業務量が増高してくる。それに対して対応するというようなことでございます。
#53
○沢田委員 そうすると、あなたの方の考え方では、いまの徴税の関係ではその対象の中には入らない。いまあなたが挙げた順序の中には入ってこないのですが、ウエートとしては何番目くらいに入ってきておるのですか。
#54
○増島説明員 国税庁も当然入ってくるわけでございます。(沢田委員「何番目ぐらいだと聞いておるのだ」と呼ぶ)これは順番というのはなかなかむずかしゅうございますけれども、この増員につきましては、国税庁の場合でも四百名ないし五百名の増員を年々図ってきているわけでございます。
#55
○沢田委員 四百名の増員じゃなくて、とにかくあなた方はずるいよ。河川だって何のかんのだってみんな順番をつけておいて、その順番を追い越すためにはだれかの発言がなければ順番を飛び越えられないという現実が主計局でもやられているわけだ、それぞれの主計官は。だから行管の方では、需要の多いものはどれとどれとどれで、どういう順序で補てんをしていく考えでいるのか。その構想を持ってないんだったら行管庁なんて要らないよ。もう少しきちんと、充実しなければならぬものはこういうところですとはっきり言ってみてくださいよ、順番を。
#56
○増島説明員 これは現在いろいろ御審議をいただいているわけでございますけれども、昭和五十六年度につきまして申し上げますと、先ほど国立学校、国立病院、療養所……(沢田委員「いままで言った四番目までは要らないから、その後の順序を」と呼ぶ)それから外交体制の強化、それから国税ということでございます。
 ただ、順番といいますか、これは全体の定員でございますので、根っこの員数が非常に多ければまた増減するようなこともございますし、その緊急度等いろいろございますので必ずしも順番ということではございませんけれども、実際に増員しました員数から考えますとそのようなことが挙げられるということでございます。
#57
○沢田委員 では続いて行管庁では、業務量が時代の変遷とともに減ったと思われる、たとえば土地の移動が減る、建築の戸数は百四十万戸ありますが、大体農地転用の届け出も減る、国土庁なんかも地価の測定以外は大体空みたいになっちゃっている、こういうようなものもたくさんありますが、いまは需要が多い。需要が減ったところはどことどことどこぐらいですか。これも五つぐらい挙げてみてください。
#58
○増島説明員 その業務の合理化を図っていく部門ということでございますけれども、定員の増減というような観点から申し上げますと、食糧事務所の関係、地方建設局の分野、北海道開発庁の分野あるいは港湾建設局等、そのほか各省庁の中でも事務の合理化を図るというような部門はいろいろございますけれども、そういうところから削減を図って増員に充てているということでございます。
#59
○沢田委員 いまあなたのおっしゃっている行管の物の発想では、需要のあるところとだんだん簡素化をするところと大体対比する数字を言っているわけですか、これは全然考えない数字を言っているわけですか。
#60
○増島説明員 これは相対的に、合理化を図り得る部門あるいは新規需要に対応しなければならぬ部門、そういうことで申し上げているわけでございます。
#61
○沢田委員 いわゆる需給計画を立てた上で挙げた数だ、こういうことですね。
#62
○増島説明員 これは、毎年度各省庁から定員の御要求があるわけでございますが、そういう御要求を受けましてそれで毎年度いろいろ審議をし、あるいはまた各省庁とも御協議をして決めていっているわけでございます。
#63
○沢田委員 いや、協議すると言うけれども、自分が主体性があるんだから、自分のところではこう考えています、相手の省がどう考えるか別問題なんですよ。あなたの責任は、あなたのところで最善を尽くすことなんでしょう。行管庁としてはほかの省が反対しようが何しようが、一応こういう原案でおりますというものを持たなければ、これは答弁にもならないし、話にもならないじゃないですか。隣のうちの顔ばかり見ていて、言っていいものやら悪いものやら、そんな態度で答弁になっていると思いますか。あなたの方の省はこう考えています、ほかの省では抵抗が多いですあるいは抵抗が少ないです、それはあるでしょう、しかし、あなたの省としての責任の範囲内において答弁するのがあなたに与えられた任務なんですよ。それはほかの省と相談してみてでなければ言えないというのじゃなくて、うちの方ではこう考えていますが、ほかの省にはそれぞれ意見があります、それはそれでいいんだよ。(「行管を行革しなくちゃいけない」と呼ぶ者あり)ところがそれを、何にもあなた方の柱も持たないで、よその顔色ばかりうかがってそれで物を言っているのだったら、本当にいま言われたようにあなた方自身が要らなくなっちゃうんだよ。だからそういうことでいくと、あなた方は全く見識がなさ過ぎる。いま求められている国民のニーズにこたえるのにこうなければならぬでしょう――それはいいか悪いかは別問題ですよ、われわれの中だっていろいろ意見があるのですから。しかし行管庁という職務で給料をもらっている以上、そこで私たちはこう考えていますというものが出なければ、これはあなた方、皆エリートで偉いんだから、そういうことで物を出してもらわないとかみ合っていかないんだよ。これは時間がなくなってきたので、勘弁して注意だけにしておきましょう。だから、それはそういうことで、そういう意味じゃちっとも答弁になっていないということをよく理解しておいてください。
 政務次官、またもとへ戻りますが、そういうことで結果的に見ますと、行管の方の順番から見ると、はっきりしたことは言わないようなものだけれども、六番目ぐらいにしか当たってない。しかし、去年の実績を見ると、所得税の方は別にして法人税だけで申告漏れ所得が八千四百八十七億もあるというような状況の中で考えてみると、どう考えても実地調査件数が十七万九千という数は少な過ぎる、これを引き上げていかなくちゃならぬということはどうも現状の国民の世論と見ていいのじゃないかと思うのです。だからさっき言ったように、私もパーフェクトにこれをやろうという形まではいかなくてもいいだろう、しかし一回は総ざらいをしてみる必要はある。そしてその後はなるべくならば自主的なものに依存していく。いまの段階では運不運の論理になってしまう、これは何とかなくさなければいかぬ。この運不運の問題を何とかなくすための知恵をわれわれはしぼらなくちゃいかぬ。国税庁の方でもその答弁は出てこない。政務次官なり国税庁の方でも何とか不公正感、不合理感、不信感を除くという方法を考えていかなくちゃならぬ。そこでわれわれはいまいろいろ、とりあえず向こう三年なら三年だけやってみたらどうだろうか、あるいは五年なりやってみたらどうだろうか、そういう一つの重点主義的な物の発想で物を言っているわけです。
 それともう一つは、政務次官、時間がないですからあとの問題はできないのですが、いままでも各委員が言われたことと重複するのは避けて言っていたのですが、国鉄なんかと同じで物すごい老齢化現象を起こしているのですよ。老齢化現象を起こしていて、しかも六十歳定年制を政府は出しているわけだ。これも、六十歳定年制を出しているとすれば、そこへ行ったら人口構成比からいってべらぼうに下がって、一度にやめて、退職金も大変なことだろうと思うんだけれども、物すごい断層が生まれるだろうと思うんですね。だからいまからある程度養成していかないと技術の継承――まあ技術の継承という言葉がいいかどうかわかりませんが、それが不可能になってしまう。しかも、税務職員になろうとする人は税理士法の関係があるから二十三年いたいという気持ちになる。大学を出たと仮定をして二十三なり四で入って、二十三年勤めて、その間の研修期間を含めあるいは見習い期間を含めて考えていくと、それは配置転換をするにしてもしないにしても、こちらが求める者はきわめて限られた年齢構成になってくるだろう。そういう形になってきたときのことを、それらの幾つかの要素を考えて、いわゆる予断は許しませんぞということを私は言いたい。いまからやはり物を考えていかないと、どさっとやめちゃった後、それこそ不公正感が出てきたり若気の至りも出てきたりということになっていろいろと問題が起きますぞ、だからいまからそれを充実していくという体制をとるのがちょうどこの一〇%を引き上げる時期にぶつかっている。一〇%の比率を高める時期にぶつかって、断層ができたときを穴埋めをしながら、そしてそのときにあとは申告を重点に移していきながら、その人員のバランスを図っていく。いま考えないと時期を失するという懸念が私はあるのです。ですから、その点きわめて政治的な話ですが、定年制の問題と断層の問題と技術の問題、調査能力の問題、判断力の問題、そういうものの養成期間というものを考え、しかも税理士の資格のつく二十三年というものをある程度確保する、こういう幾つかの要素を満足させるものは何かといったら、いま考えないとこの断層は埋められないということになる。これは国税庁も、感謝にたえませんと言うだけじゃ能がないですから、それに対して命をかけて、鈴木総理だっていま政治生命をかけてと言っているんだからそれぐらいの気持ちで、全体的なバランスをとっていくためにどうあるべきかということは、私の言っている意味はわかるでしょう。恐るべき事態が出てきてしまう。そういうことを考えたときに政務次官なりそれぞれ担当からお答えいただきたい、こういうふうに思います。
#64
○保岡政府委員 先生が真剣に税収の確保のために、また不公平な執行がないように一生懸命考えて御提言を含めて御意見を賜っていることを大変うれしく思います。
 いまお話しの実調率を高めるために速急にいろいろ措置をとらないと、たとえばベテランの、中堅の職員があと十年ぐらいしたら退職していくではないか、その数もおよそ二万人ということがわかっておるわけでございますけれども、そのために新規採用する職員の質を確保する、また新規採用の数も十分その点を踏まえて、そういう将来大きく減ることを補てんできる採用数というものを十分検討していかなければならないでしょうし、また比較的若い職員に対する研修なども、全力を挙げてベテランと一体となって進めていく体制も工夫を要するところでありましょう。また先生先ほどからいろいろ御議論のあるところの、国税庁の中でも徴税事務に関する職員に重点を置いて、他の事務は合理化していくようにという御指摘はあるいは大蔵省の中でもいろいろ工夫の余地はあると思います。また他省庁との配置転換等についても、できるだけ希望者が大蔵省に、国税庁に来てもらえるように努力をして、受け入れ体制その他工夫を要するところだと思います。
 いずれにしても厳しい財政事情を抱えて、財政再建という大変な国家的な課題に取り組まなければならない、国民経済生活上重大なこの課題に挑戦して勝利をおさめるためには、いま先生御指摘の点を十分心得て対処する必要があると思いますので、そのように努力をしたいと思います。
#65
○川崎政府委員 ただいま政務次官がおっしゃいましたとおりでございます。とりわけ私どもとしましてはやはり増員を努力いたしたい。そのためには先ほど行管の方からも御説明がございましたが、政府内部の配置転換ということをなお一層促進をしていただきまして、私どもの職員構成の大きなひずみが是正されなければならぬ、いろいろな意味で配置転換を中心に努力をしたいと考えております。
#66
○沢田委員 税務職員になって熟練度ができて一人前になるまでは国税では大体どの程度の年限を考えておられますか。
#67
○川崎政府委員 一人前ということのまた考え方でございますけれども、非常に高度の、熟練した、りっぱという意味ではやはり十年ぐらいと考えております。これは普通科を卒業いたしまして、第一線に配属をされまして、また実務の経験とまた書物の上での勉強でいろいろやりまして本科というものに入るのでございますけれども、その平均の入校年齢がやはり十年ぐらいになっております。
#68
○沢田委員 そうすると、いま政務次官せっかくお答えいただきまして、十年、これから一人前――一人前という言葉がいいか、ある一定の水準に達するために十年かかる。ちょうど断層と一致するのですね、この切れ目と。ですから、いまから準備していかないと、その十年目にはどうしても谷間ができてしまう。これは来年埋まっていていいというものでもないのですね。ですからこれは私たちの方の国鉄なんかでも、技能養成所が一時採用停止があった時期があったのです。それは過剰だから採用停止だ。ところがその間養成所が中断したために技術の継承に断層ができちゃって、いまにもうSLなんというのは直せる人がいなくなってしまう。そういうこともあるわけで、だからこれは継続的なものの技術というものがある、見方がある、読み方がある、監察力がある、洞察力がある、そういうものを持たなければなりませんので、半端な時期にこれを継承すると引き継ぎがうまくいかなくなってしまう。ですから私はことしからというか、五十六年、もう間に合わないのですが、五十七年になると遅過ぎるのですからその点をよほど考えないと――行管庁、よく聞いておきなさい。そういうことの、何といいますか、プロセスの大切なところと行ってすぐ役に立つのと、インスタントラーメンみたいなものと時間がかかるものとの差というものもある程度考えながら判断していかないと、先を見ての判断をしないと、とんでもない狂いが出てくるということになるわけなんです。これは行管庁もせっかく来ているんだから、これで帰っていいから、いま言われたことについてどう思うかひとつ答えてもらいたい。いま言ったように、いまからもう継続していかないと、えらい断層ができてしまってとんでもない、国民がえらい迷惑を受ける、あるいは国民が間違って不信感をより増長する、こういうことにもなりかねないのであって、その辺も構えて考えてもらえるのかもらえないのか、その点をひとつ聞いておく。
 それから政務次官も、さっきお答えをいただきましたけれども、ひとつあわせていまのこの継続の、引き継ぎの時期をどういうふうに継承していくのか、その点をお答えいただきたい。
#69
○増島説明員 御趣旨の点を踏まえまして、定員の査定あるいはまた人員の配置転換等につきまして検討していきたいと考えております。
#70
○保岡政府委員 先生るる御指摘の、継続性を持ってせっかく得てきた高い資質を継承して効率化を図っていくようにということでございますが、とかくいろいろ判断をするときにはそういう長期の流れというものを考えて徴収事務の経済性というものを考えることを怠りがちになることもあろうかと思いますので、そういうことはないように先生の御指摘の点を踏まえて、いままでもそういう点努力はしてきておりますが、なお一層努力をしたい、このように思います。
#71
○沢田委員 行管は帰っていいです。国税庁、担当だから。
#72
○川崎政府委員 次官からお答えいたしましたとおりでございまして、十年先のことを十分念頭に置きながら精いっぱい努力をいたしたいと考えております。
#73
○沢田委員 その精いっぱいの程度で……。
 それからもう一つ、これは主税の方の関係なんですが、これもいろいろ解釈はあるんだろうと思うのですが、申告漏れ所得、この間うちの同僚議員も質問しておりましたが、八千四百八十七億も出てきた。やればやるほど、しぼればしぼるほどという言葉ではありませんけれども、どうも出てくるということなんですね。ですから、本当はこれがゼロにならなければおかしいのですね。ところが解釈の相違その他によって申告漏れ所得というものがこんなに、法人税で八千四百億出てくるということになると、これもどうも客観的に見ると、普通のときにはどうしても自分の田に水を引くような解釈になりがちである。そういうことがいわゆる調査官との解釈のずれということになるわけです。ですからこれは不正だけだと私は思ってないのです。いわゆる認定の違いが、ある意味においては相当部分あると思っているのです。ですから認定の解釈の相違というものをなくしていくためにどういうふうにしていったらいいか。国税審判所もありますが、そこへ持っていくほどのものでもない。何かそこで解釈論について相違を来すようなものをなくしていくための措置、これは必要なことではないかと思うのですが、これは両者からひとつお答えをいただきたいと思います。
    〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕
#74
○川崎政府委員 ただいま先生おっしゃいました八千何がしという数字はあるいは推定のものじゃないかと思いますが、いずれにしましても、脱漏をなくすための税法の正しい理解の推進ということで、私ども先ほどちょっと申し上げましたが、相談と広報ということを考えておるわけでございます。もちろん法規に慣熟するといいますか、よく知っていただくために通達も必要なものはどんどん公開いたしておりますし、常時相談を受ける体制をつくっておるわけでございます。
#75
○高橋(元)政府委員 税制に関連した分野で申し上げますならば、いまお示しのありますような申告についての非違というものは、必ずしも作為的に所得を隠蔽化しようということだけでもないという点は御指摘のとおりだと思っております。
 ただ、そういう事態が往々にして起こってまいりますのは、一つは御本人の所得計算というものが必ずしも正確にいってないということから来ておるのだと思います。これはまさに記帳水準の向上、たびたびこの委員会でも御指摘ございますように、そういうことに国税庁それから職業会計人のグループ、税理士さん、そういう方々挙げて取り組んでいただくということだと思いますけれども、もう一つは、適用される法規が、私ども立法に携わっております身で申し上げるのは大変恐縮でございますけれども、素人の方にと申しますか一般納税者の方々に必ずしもわかりよくないという点もしばしば指摘されておりまして、そういう反省に基づいて国税庁の執行の第一線で生じてきます毎年毎年の問題点というものを税制改正にどう織り込むかという相談を毎年しております。そういうことを通じて、より一層わかりよくて、より一層正確な所得計算の方法なり税法の整備ということに努力をしたいという所存でございます。
#76
○沢田委員 申告漏れ所得というものも、いま言ったような解釈の方の分野のが多いかもしらぬ。たとえば接待の限界、線引きですね。一番申告漏れが多いと思われるのはリベート関係のものです。相手の名前は言えない、言えば相手に迷惑をかける。洋服を贈る、これは多額になるからいろんな問題を起こしかねない。だからこれは出し場所は言えません。いわゆる接待とか会議費であるとか交際費であるとかいろいろな寄付金であるとかそういうようなものについて税務官僚の認定と、それから自分はこれは使いものにならないものだと見て廃棄処分をしたものが、あるいは税務職員から見ればこれは有効なものだと見る場合もある。そういうようなことで私もいろんなものを受けてきておりますけれども、その辺の認定の差がなぜ出てくるのだろう。なぜそこにそういうものが生まれてくるんだろうか。といって片一方が、調査される方は被告の席にいるのです。ですから対等な条件というものがどうしても生まれてこない。どうしてもおどおどした形になってくる。これはだれにやったんだ、名簿を出せ、出せませんと言えば損金不算入の中に入れられる。そこが申告漏れ所得が出てくる、もっとほかにもありますよ、ありますけれども、一つの原因ではないか。その辺の解釈例規というようなものについてもう少し国税の方も徹底していくという必要性はあるんじゃなかろうか。たとえばある企業がそれぞれの官庁の職員に何らか配った。高くなればこれは贈収賄になりますが、一般の段階のものだと仮定をした場合に、しかし、片方では名前を挙げることは避けますね。それはどうして損金算入に入れるか、こういうことになるわけです。その辺の呼吸といいますか、あり方というものについては、どういうふうにこれから指導されようとなさっておりますか。たとえば会社であっても同じことですよ。会社であっても同じことですから、そういう点について、一方ではできれば調査がなければ、それはそのままで損金に入ってくるのだが、調査になるとそこは解明できない。どこかの官庁の職員と飲んだのですということになると、名前を挙げるわけにはいかない。そうするとそれは損金の不算入になる、こういう形は起こり得るわけですね。そういうものについてどういうふうに指導されようとしておりますか。
#77
○川崎政府委員 調査の実際に当たりまして、事実は一つなんだけれども、税務官吏の方と納税者の方で見解が違うということは間々ございます。私どもとしましては、取ろう取ろうという気持ちじゃなくて、納税者の身になってということをずっと指導しておるわけでございますけれども、具体的には、いろんなケースに応じまして相当細かく通達も出しておるわけでございます。社会の進展に応じまして、その都度いろいろ解釈通達も出されておりますが、今後とも先生言われるような趣旨で細かく通達を出していって、一つの解釈基準というものが明らかになるケースは非常に多いのだろうと思います。ただ、御指摘の使途不明とか、そういった不正関係のことにつきましては、やはり厳しい姿勢で臨むということを一貫してやってまいっておりまして、その点は御寛容願いたいと思います。
#78
○沢田委員 主税の方はないのですか、あったら言ってください。
#79
○高橋(元)政府委員 いま国税庁から申し上げたとおりでございますが、通達面でどういうふうに網羅的に書けるかということになりますと、これは百数十万の会社、千差万別の仕事をしておりますので、必ずしも統一的に書くとかえって繁雑を来すということもあろうかと思いますが、よく私どもの法規と申しますか、税制全体、それから、その執行に当たって起こってまいる具体的な問題もなるべく明快に法規の中に取り込めるように、法規を読めば、また基本通達を読めば大体経理の遺漏ということがなくてできるようにということを常に念願をして努力をしているつもりでございます。よろしく御指導いただきたいと思います。
#80
○沢田委員 この問題の締めくくりとして、政務次官と国税庁長官は、いま行政管理庁は先ほど述べたような程度しか認識していない。しかも、十年間も熟練度が必要だということの認識もない。学校の先生は、ことし採用してことしすぐそのまま教壇に立てるわけですが、病院も同じように、看護婦学校を出ていれば、あるいは資格を持っていれば、そのまますぐ病院に入れる。ところが片方は、そうでないという事実に対する認識度合いというものは全然欠けている。ですから、いまから三年か五年の後には多過ぎる時期が来るわけですよ。これはそうなるわけです、訓練年数が違うのですから。そういうことをある程度容認をしながら、次にあるべきものの定員というものはどうあるべきかという過渡的なものと、将来性のものを二つつくって、二つというか、もっとあってもいいのですが、そういうものをつくって具体的に提起して、これはひとつ政府部内において統一的な認識をしていく必要性がある。行管庁自身があんな程度にしか考えていないとすればえらい違いがあるのだと思う。ですから、この点は十年後を見越してのいわゆる需給計画、これを確立するということを政務次官と国税庁の方からひとつきちんと明確にしていただきたい、こういうふうに思います。
#81
○川崎政府委員 先生おっしゃいますとおりでございまして、将来にわたって定員の関係がどうなるか、特にどの程度の採用数を確保していかなければいけないかということは、私ども常々研究しております。またその採用の内容も高度の質のいい人を選ばなければいけませんので、高等学校出と大学出とどういうふうに組み合わしたらいいかといったことも検討いたしております。しかしながら、こういう定員事情でございますので、現在までまだ思うように行っていないという点もございますが、なお一層政府関係機関内でも協議をしていただきまして努力をしてまいりたいと思います。
#82
○保岡政府委員 先ほど来お答えしてきたとおり、財政再建というのは国家の最大の課題である、そういう点では歳出面でものすごい決意をもってこれに臨まなければならないと同時に、歳入の面でも、制度の問題はありますけれども、執行の問題に重大な関心を寄せて、定員の現在あるべき状況についていろいろつぶさにお調べの上、大変貴重な御意見を賜ったと思います。いま国税庁の方からお答えしたとおり、いろいろ厳しい環境にはありますけれども、先生の御意見を体して全力を挙げて取り組みたいと思います。
#83
○沢田委員 では次の問題に入りますが、退職金の税制といわゆる社会の公正というものについて、若干私の意見もありますが、お伺いをしてまいりたいと思います。
 ともかく三億とか四億とか二億とかという退職金は、庶民にとっては感覚的に非常に不信感をもたらすものであります。これは公務員関係ですが、いま法案も出ておりますけれども、それでは給料というのはどの程度のバランスが順当なのかということになりますと、これは大体十倍ということが相場になっているわけですね。初任給の十倍が最高の役職にある者の大体の給与である。これは現在人事院の方も大体そういうことで、九万円の初任給に対しては政務次官九十万円、こういうことで、給料も大体十倍という一つの範囲というものが世の中のバランスをとる幅である。その場合、退職金も同じじゃないかと私は思っているわけです。ですから、その人の年俸に対する十倍というものが退職金の常識的な限界である、五百万の収入の人は五千万、年俸四百万の人は四千万、それまでは言うならば長年の御苦労に対する表示として一つの目安になると私も思うのです。ところが、給料の五割増しを月数に掛けるなんというものもあるわけですね。これは言うならば給料の積立金なんです。これは完全なる所得税に該当すべきものだと私は思う。年金にもかかっているのですから、所得税扱いにされているのですから、それを退職金扱いにして、そして給料の二分の一掛ける月数、こういう掛け方の退職金というのはいわゆる所得税法の扱いにならなければならぬと私は思う。退職金というのは勤続年数、年を単位にしながら、勤めた年数に応じて四十年勤続なり三十五年勤続なり考えているわけです。ですから、その辺までがいわゆる退職金税制の恩恵を受ける限界ではないか、私はそのように若干考えるわけです。賃金はスライドするのですから同じように退職金の分もスライドする。それを一億もらったり三億もらったりするなんというものは所得税、合算所得で税金をいただいたっていいんじゃないか。役員の報償金にしてもそのとおりであります。そういうふうな点についてどういうふうにお考えになっておられるか。これはいろいろ議論もあるようでありますけれども、ある意味におけるこれはまた違った格差だと私は思いますので、その点ひとつお答えをいただきたい。
#84
○高橋(元)政府委員 まず、現在どういうふうな退職一時金が支給されておるかということをお答え申し上げたいと思うのでございますが、昭和五十一年に労働省がやりました高年齢労働者雇用実態調査報告というので見ますと、三十年以上勤続された方が退職一時金として受け取られる金額の中では、一千万以上という方が全体の大体五五%であります。こういう方々が最終的に俸給として受け取っておられるものは、民間給与実態調査と若干年次が違いますけれども、勤続年数の長い方の場合平均の年収は恐らく五百万円ぐらいだと思います。したがいまして、大体二倍から三倍というのが実際にもらっておられるものかと思います。
 もう一つ別の数字で申し上げますと、同じく労働省の賃金労働時間制度総合調査報告というのによりますと、五十三年に、千人以上企業ですから一番大きな企業でございますが、三十年以上勤続して退職した場合、現在の所得税法上の退職所得の控除額は一千万円でございますけれども、一千万円を超える退職金を受け取っておられるのは大学卒の一千三百十五万五千円、それから高卒が一千九十八万円、この辺が大きいわけでございまして、大卒、高卒三十年、高卒の三十五年、その辺をのけますと、ほぼ全体は現在の退職所得の控除額の範囲におさまっております。したがって非課税であるというのが現実でございます。
 いまお示しのように非常に高い退職金を支払っておるという事例は、私こういう統計で拝見しております限りはなかなか出てまいらないわけでございますけれども、そういうものについてどういうふうに考えるべきか、これは社会の公正ということもございますし、その辺はいろいろお示しをいただいてこれから考えてみなければならないというふうに思います。
#85
○沢田委員 私もきょうはその資料と同じようなものは持ってきませんけれども、退職金だけの資料を調べ、あるいはいろいろな賃金、退職金の資料を調べてみると、退職金制度というのはそれぞれの企業の特質がありますから企業によって若干のずれはありますが、現時点において千七、八百万から二千万ぐらいまでいっているのです。しかし、その人たちが大学卒であろうが高校卒であろうが、四十年、三十五年勤続ぐらいが頭打ちだと仮定いたしましても、一般的にはいま言った給与所得、年収の十倍以下なのであります。あなたがいま言われたのも以下なんです。
 だから私は、その常識を越えたものについて退職金の恩恵控除を与える必要はないんじゃないかということを言っているわけなんです。問題は、そういうのがあるかないかということじゃないのです。制度としての物の考え方を言っているわけですね。制度として物を考えた場合に、退職金がそれ以上支給される条件というものは、それはもう退職金ではない。退職金という言葉の解釈もむずかしいですけれども、いろいろ議論はありますが、それは退職金というものに該当するものではないじゃないか、言うならばそれは報償金であり、いわゆる所得の一部であると私は考えざるを得ない。しかも、ある自治体の計算は給料の二分の一掛ける総月数ですか、そういうことで退職金が払われているのですよ。そういう計算でいくから二億だとか三億だとか四億だなんていう金額が出てくる。とにかく給料が八十万だとすれば、十六年勤めれば毎月その二分の一の四十万ずつの十二倍掛ける十六年ですか、そのぐらいのものが結果的には出るということなんです。それは退職金という限界を越えたものだと私は思うのです。だから退職金の限界を越えたものであるとすれば、その分は総合課税に該当してさしつかえないんじゃないかということで、退職金というものの規定づけの解釈としてどう考えるか、そういう一つの考え方もあるということを私は言っておるわけです。
#86
○高橋(元)政府委員 退職所得につきまして、ほかの給与所得または一時所得と違います種別をつくって軽い課税を行っております理由は、大きく申して二つあると思うのでございます。
 一つは、これは生涯最後の所得だ、したがって、その所得の担税力は比較的低いと見なければならないということでございます。退職金を何に使うかという調査を見てみましても、退職後の生活費に充てる、または持ち家の建築費に充てるというのが圧倒的に多うございます。そういうものとして観念されておる退職金については、他の所得よりは弱い所得というふうに観念していいのではないかというのが一つであります。
 もう一つは、何十年という間いわば生涯を企業にささげてもらう退職金でありますから、そういう意味では一時に発生した所得であります。かつて戦後、退職金は変動所得の平均課税の制度というのを適用したこともございますが、昭和二十七年から分離課税で二分の一課税をしております。そういうことは、いまの二つの考え方がいまの制度に合っておる。
 そこで、いま御指摘のありますように、そういうものの常識を超えた退職金については退職所得と別の考え方をしていいではないかということでございますが、いま私がるる申し上げておりましたのは、普通の雇用者が長期企業に在職をして、比較的高額の退職一時金をもらう場合でございます。役員が、これはそんなに長い間勤めるわけでございませんので、六年とか八年とかの期間経営をやりまして、その経営に当たっておった役員期間について比較的高い功労金を払われる、それはさっき私がお答えしましたような職員に対する退職金とは恐らく支給率も額も違っておると思います。そういうものにつきましても、生涯最後の所得であり、それから長期にわたって退職金の原因が発生しておって、一時に、退職時に実現する、そういう性質もまたこれはあると考えてもいいのではなかろうかというふうに考えて、役員に対する退職金につきましても職員に対する退職金につきましても同じ法制を適用してきておるというのが現実でございます。
 その場合に、たとえば一月について〇・五カ月というような高い退職金でございますと、いまお示しのありましたようなケースですと、任期四年の場合に、二十四カ月ぐらいの退職金が払われることになるわけでございますが、そういうものも同じように観念していいかどうかということは、もっと大きな広い範囲で考えなければならないことであろうかと思います。どういうふうに構成していくにいたしましても、現在の退職所得について特別の税制を設けておりますその考え方、それはあると思うのでございますが一それでは退職所得控除額を引いた残りの二分の一を分離課税にしていいかどうかということになりますと、もっと広くいろいろな御意見を伺って検討はいたしていかなければならないことであろうとは思います。
#87
○沢田委員 それは検討していただいて社会の――ぼくは言いにくい話をしているわけです。役員で退職金をもらい歩きをしている人もいるくらいで、それが最後だというならこれまた話は別なんですが、ある公団でもらい、次に行ってもらい、今度はどこかへ行ってもらいということで、退職金だけで一財産なしてしまったなんという話もなくはないのですから、そういうことはやはり社会的、道義的に許されることではないと、常識的に解釈するわけです。それはそれだけの努力をなさったのかもわかりません。だからそういう人は幾らもらっても、私はもらうことを制限させようと言うのじゃない。それは、営々として三十五年、四十五年勤めてきた一般の職員の、人生の大半をつぎ込んできた人とは違う、異質のものであると私は言いたいわけです。それはいわゆる一時所得である、退職金という名称に該当しない概念の範疇に属するというのが私の言わんとしている意味なんです。
 それからもう一つは、今度は違った意味で、いま言ったように四十一年で二千何百万、土地もうんと上がっています。ちょっと普通の家の建築でも坪当たり四十五万ぐらいする、五十万近い。退職金というものがどうであったか理屈は別として、一般の職員が大体自分の家と土地を持てる程度というのが昔の概念であった。これはいいか悪いか別ですよ。しかし昔は、退職金で家と土地、長屋もできたわけです。いま長屋までは言ってもとても無理ですが、退職金でようやくそれを得ていた。だとすれば、今度は逆の言葉で言えば、二分の一じゃなくて四分の一に課税をしていいんじゃないのか、課税なしと言いたいけれども、そんなことを言ってもとてもむずかしいでしょうから。私の言うのは、二分の一のその二分の一に課税をする程度でいいんじゃなかろうか。今日のインフレによって、いま言ったように、昔の退職金から見ると、実質価値が半減してしまっている。だから、その半減しているものをカバーするためには、やはりそれだけ、今度は二分の一の従来の税制から一歩進んで四分の一にする、その段階までのプロセスとして三分の一というのもあるかもしれませんけれども、そういうことが考えられないと、いま言ったアンバランスは是正されていかないのじゃなかろうか。だから、いま私が言った最初の質問は、従来の皆さんの先輩がやめていったときの退職金は、いまにおいて見ればわずかであったかもしれぬが、言うならば、土地を求められ自分の家がつくられる実効価値を持っていた、その解釈についてどう考えるか。その実効価値を確保していくとするならば、いま引き上げるということはなかなか困難でしょうから、それはある意味においては税の方で三分の一ぐらいに、とりあえず当面はそのぐらいにしてそれを課税対象にする。頭は頭で抑える、しかし中は中で厚くしてやる、これが私は政治なのではないかというふうに思いますので、その点はどうお考えになりますか。
    〔小泉委員長代理退席、山崎一武一委員長代
    理着席〕
#88
○高橋(元)政府委員 退職金の制度が一時金制度と年金制度に分かれてまいりまして、最近では、私ども数字で見ております限りでは、退職一時金と退職年金の併給という制度をとっておるところが多いようでございます。
 そこで、私どもいまお示しのことも十分理解をいたすわけでございますが、考えておりますことは、退職一時金の形でもらいます場合と同じ退職金を年金形式でもらいます場合、年金でもらいますと、これは御承知のとおり給与所得でございますから、もらいました金額について毎年毎年給与所得控除が働いていくわけでございます。そのバランスということも重要な問題であろうかと思います。通常の労働省の設定をしておりますモデル退職金を例にとりまして、これを年金でもらう場合と一時金でもらう場合のバランスというものを私どもは毎年検討するわけですが、現在のところはほぼ均衡がとれております。むしろ一時金でもらう場合よりは退職年金でもらう場合の税額の方がたしか幾らか軽くなっておったかと思いますが、そういうバランスを崩すようなことになりましてもこれは一つの大きな問題でございますし、退職一時金というものはわが国だけの制度でございまして、外国にはむしろ退職年金というものが支配的であろうというふうに理解しておりますが、退職年金の方向に向かっていくという世の中の風潮を害しない範囲で課税の合理化をどうやっていくかという問題だと思います。
 退職所得控除という制度につきましてはたびたび見直しを行っておりまして、現在の三十年勤続で一千万円引くという制度は、たしか五十年にできたわけでございます。その後の退職金の支給実績を労働省の統計等で毎年見ておりましても、先ほどお答えいたしましたように、まだそれほど多くの方が課税になっておるというのではなくて、むしろ退職所得については分離非課税という方が多いのであるというふうに考えております。
 それからもう一つの問題は、ちょっと戻りまして恐縮でございますが、先ほどのお尋ねでございますけれども、勤続年数が比較的短くて、役員の功労金のような比較的高い支給倍率の一時金をもらわれます場合には、退職所得控除が非常に小さいわけでございます。たとえば五年ですと、百二十五万円以上は全部課税されます。それが分離課税でありますために、税率表の初めの一〇%のところからの税率を受けるか、その人の一時所得としてほかの所得を合算した上積みの税制をとるか、こういう問題でございますけれども、退職所得控除が比較的短期の場合には少ないということから、現在は、比較的高い役員の功労金のようなものにつきましては二分の一分離課税という制度のもとでかなり重課されておることも事実であろうと考えております。
#89
○沢田委員 後段の話はそのとおりです、勤続年数にかけるのですから。しかし、それでもなおかつ不信感はぬぐい切れないものがありますということを私は言って、それが最後の収入だという判断の仕方は若干違うのじゃないかということを指摘したわけです。年金の問題も、今度は厚生年金が変わりまして、いま企業が年金制度をやっていくシステムというのは、一つは企業として内部留保金として非常に利用価値がある、運用益がある、これもこれからの経済のインフレ状態がどうなるかということによって大変な問題を起こすわけでありますが、安定していく限りにおいては、いまの私の持ってきた書類においても、大体年金の併給制度が多くなってきておる。これは、二千五十円の基礎年金のときの状態で、今度は厚生年金の基礎年金が上がりますと、昭和十七年に始まりまして現在ちょうど三十五年、これから満期でもらえる人が多くなってくるわけであります。そうしますと、大体百八十六万ぐらい、まあ十五万ぐらいを、もっと多いでしょうけれども、標準報酬を二十万としてもなかなか企業年金というのはその間のつなぎであったという意識が強いと思うのですね。ですから、これからは厚生年金でもほぼ十五万ぐらいの毎月の所得になっていく。そうなっていった場合に、さらに六万円を加えていく必要性があるかどうかということになりますと、いまの土地の代金が高過ぎる、家が高過ぎますから、住宅ローンで借金をして、返して、退職金のときに一度に払うというのが大体いまの一般の庶民階級の現状なんですね。住宅ローンで借りて家を建て、土地を買って、そして退職金で一度に払って清算する。ですから、私がいろいろなところへ行って手を挙げさせて、そのとき見ますると、絶対に年金制度反対というのが多いんですよ、現実の庶民一般は。半分積立金にしておいて年金制度にして、どちらを選びますかという話をすると、絶対的にそれに反対が多いわけです。それはだからいまの厚生年金の水準が百十何万とか百十六万ぐらいの水準でいたときにおいては六万円が出るか出ないかが大きな条件であった。そういう条件下における年金制度の成熟の度合いとこれからの年金制度の度合いとは、満期になって厚生年金の成熟度が伸びていった場合とは違ってくる、そう私は判断しております。だから昔の退職金によって、実効価値の点についてはお答えいただかなかったのですが、いわゆる退職金の実効価値というものから判断をすると、やはりいま少し実効価値を近づけてやるという努力はしてやる必要があるんじゃなかろうか。あなたはどう思っているかわからぬが、あなたもいつかなるんでしょうが、あと三十年もあるとは言えるわけじゃないから、そう考えてみたときに、それで昔の人間と比較して、判任官、まあ高等官二等でやめた人の退職金と比較して、あなたぐらいになりますと一等になりますか、二等でやめたと仮定して比較したときの実効価値がどれだけ違うか、ではその点の見解だけをひとつ聞かしてもらいたい。
#90
○高橋(元)政府委員 退職金が現在平均して高いか低いか、それが老後の生活及び持ち家の建築費を賄うに十分か、こういうお尋ねだと思います。これはもう大変お答えのむずかしい問題でございますけれども、給与の俸給表のカーブについて冒頭にお示しがございましたけれども、俸給表の高さと申しますか、角度というものと退職金の額というものとこれは関連していると思うわけでございます。支給倍率ということで、私も深く調べたわけではございませんのでうろ覚えで恐縮でございますが、支給の倍率ということからしますと、それはかつてといまと余り変わっていないんだろうと思います。ただ、そこにありますのは、俸給表の立ち方の問題が一つと、より大きくは退職金の使途という調査でいきますと、これは重複回答で、ございますから一〇〇を超えますが、退職後の生活費に充てるという人が圧倒的に多くて、三分の二でございます。それから持ち家の建築費に充てる人が四割でございます。足すと一〇〇を超えてしまいますけれども、そういうようなことで、持ち家の建築費に充えると言った人が、要するに土地が上がったために十分な家が出てこない、ウサギ小屋にも達しない、こういうこと、それをどういうふうに考えるかなんでございますけれども、これは根本的にはやはり地価対策ないし土地の供給の問題で、退職金だけで受けとめていくというのは大変むずかしい問題があると思いますが、お答えしておりますように、三十年、三十五年と勤続をいたしました場合に、千人以上の雇用規模の事業所で、大体高卒、大卒というところだけが若干の課税を受ける。それ以外の人々については大体現在の退職金は非課税でございます。そういう形の中で、税制でこれに対応すると言っても非常に無理がありますので、むしろ年金とのバランスということを考えながら、頭に置きながら、なおかつその退職所得控除のあり方というものについて常時検討を怠らないということで対応いたしたいというのが私の考えでございます。
#91
○沢田委員 私の質問に大分認識を欠いておる方も、あっちの方でやじで言っておりましたが、言っておきますが、私は退職金を幾らもらったって構いませんということを言っているわけです。構いません、幾ら出してもいいんです。ただ、社会の常識を超えるものについては、退職金の一時控除の特例から外して、一般給与所得並みに扱うべきである、こういうことを言っているんです。その点は二億もらおうが三億もらおうが、それは自由です、それぞれの会社なりそれぞれのところで決めるのは。その住民が決めたりその会社の役員会で決めたりすることですから、われわれが介入できない面がある。ただ税法から見れば、それが一般常識を超えた分はその恩恵税率でなくて、いわゆる一般総合所得課税という体制にするのが、いわゆる退職金に該当しない分野に属するのではないか、こういう解釈論を言っているのであって、その辺は誤解がないようにしていただきたいと思います。
 それから、ちょっときょうは生保を呼んでなかったんですが、総理府を呼んでおりますので、総理府の方にお答えをいただき、いまの問題は続いて政務次官後で一緒にお答えいただきたいのですが、いままでの話をやっていまして、総理府の方では、法案審議に入るつもりは毛頭ないのですが、退職金というもののイメージといいますか、考え方というものは大体わかってきただろうと思うのです。だからいま取り下げろなんという意味のことを言おうとも思っておりません。ここで言ったから取り下げるなんということはあなたが答えられるものでもないだろうと思うのですが、しかしいま出している状況から見ると、退職金というものはそういう性格のものなんだということをおぼろげながら御理解いただいたと思うのです。時間があればもう少し退職金の性質を詰めていきたいのですが、一言だけ、退職金とは何ぞやということだけであなたのお答えをまずいただいて、政務次官の答弁をいただいて、私の時間がなくなりましたので、あなたが考えておる退職金とは何であるか、それをひとつお答えいただきたい。
#92
○吉田説明員 私どもの考えております退職金、私どもは退職手当と申しておりますが、退職手当の性格は長期勤続に対する報償であると考えております。
#93
○保岡政府委員 先生がいろいろ議論をされてこられました異常に高い退職金の税制における取り扱い、これはいわゆる退職金のいまある、現行制度の範疇で処理すべきものかどうかということについては、確かに高い退職金についてはいろいろ検討すべき問題もあろうと思いますので、今後税制調査会等に先生の御議論あるいはわれわれの研究等を報告して検討をしていただくようにさせていただきたいと思います。
#94
○沢田委員 もう一つでちょうど時間になりますから、政務次官、もう少しあれで、今度はさっき言った退職の価値観の減少、じゃそれをどう改善したらいいか。退職金をふやせと言ってみたって、いまの情勢でそうはできない。とすれば、その価値を高めてやるためにできることは何だろうか。それは土地の価格を安くするということは確かにそのとおりです。しかしいままで政府が土地政策にそういう政策をとってきたかというと、全然そういうものはとられていない。とすれば、結果的にはわずかであっても気持ちの上で税法で幾らかでも考慮してやるということが、いわゆるこれは精神的な安定剤みたいなものかもわかりませんが、実効価値は大したことはないかもしれません。それは二分の一を三分の一にしたからといって、それほど多くの減税になるわけじゃないですね。しかし精神的なものに与える影響としては、いや、やはり政府はそこまで考えてくれているのかという気持ちを与えることは間違いない。土地税制が変わってきたら、また二分の一に戻ったってこれはいいわけですね。とにかくいまの現状に合うのが政治ですから、いまの現状で坪五十万、二十坪の家でもう一千万、土地が六十万として三十坪で
 一千八百万、どうやってもその程度は最小限度家屋として必要な条件なんですね。だとすれば、退、職金で一応それを建てようとしている人たちに幾らかでもそれをする、これはまあ分数で言えば二分の一から三分の一、私は四分の一ということが年来の主張だったのですが、一応三分の一であってもそれにこたえてやる、これが政治なんじゃないかという気がするのですね。そういう意味において、高い方は高い方でやはり整理する、それから低い方は低い方でやはり恩恵を与える。それが私はバランスをとるという一つの政治の仕組みだと思うので、最後にその答弁をいただいて、私は終わりたいと思います。
#95
○保岡政府委員 今度は比較的小さい方の退職金の取り扱いですね。老後の持ち家の問題とか生活の保障をどうするか、これは総合的に政策を推進するべきものだと思いますが、先生がおっしゃるように、税制面で何らかの措置がとれないか、いま先生の御提案のことも含めて、こういう厳しい財政状況下でございますから、減収につながる改善が現時点においてすぐ具体的な検討課題になるかどうか、これはなかなか厳しい環境にあると思いますけれども、しかし先生のおっしゃっていることはよくわかりますので、先生の御議論、先ほど申し上げたように低い方も含めて税制調査会に御報告をさせていただいて、検討していただくようにしたいと思います。
#96
○沢田委員 終わります。
#97
○山崎(武)委員長代理 蓑輪幸代君。
#98
○蓑輪委員 私は租税特別措置について二、三点お伺いしたいと思いますが、その前に所得税について一点だけお伺いしておきたいと思います。
 今度の税制の中でパート税制について配慮したということで、一部改正案が出されているわけですけれども、所得税減税が行われていない中で非常に生活が困難になってきておりますので、パートで働く主婦の皆さんがずいぶんふえておりますし、あわせてパートに出られないような場合には内職でもって家計収入を助けるという家庭もずいぶんふえているのが最近の実情です。
 パートの時間給なども四百円前後ということで、少しは上がっているようですけれども、非常に低い賃金になっております。内職となりますともっとこれがひどいわけで、家内労働者ということで労働省がとりました統計でも、五十四年の九月で女子一時間当たりの工賃が二百八十五円というふうに発表されております。これは平均就業年数が数年もたっているというベテラン女子の場合でありまして、内職でも特に圧倒的多数を占めるという二年未満くらいとなれば、時間給百円というようなところも間々あるという、非常に低賃金の中での長時間労働ということで家計を助けているというのが現在の実態になっているわけです。
 そうした中で、税制の面で見ますと一歩の前進とは言えましても、このような家計の実態を反映したものとはとうてい言えないわけでして、そういう中でやはり私はパートの労働者の場合あるいは内職の婦人の場合もっと税制上配慮すべきでないかというふうに考えるものです。
 しかし、そういう中で特に内職婦人について言えば、パートの場合と違いまして給与所得控除がないということで、より一層、低所得でありながら税負担がかかってくるという実情があるわけです。たとえば年間六十九万円の内職収入を家庭にもたらそうとする場合に、いろいろ経費もかかるわけで、たとえばそれが縫製の場合の糸とか消耗雑費、交通費等いろいろ合わせて二十一万円ぐらいかかってくるという例で見ますと、六十九万円から二十一万円を引いてこれが所得ということになりまして、これに対する課税は、現状では所得税と住民税、さらに夫の配偶者控除が受けられないために夫の方での税の負担というようなものをあわせ考えますと、七万八千九百円も負担するという計算になってくるわけです。同じ六十九万円の収入を得るとして、これがパート労働者の場合ですと非課税ということになってくるわけで、かなりこの点不合理な面があるように見受けられるわけです。
 そこで、内職の婦人からも何とかしてほしいという声が非常に強く上がってきておりまして、私はこの主婦の内職の場合についても、いろいろな形式があると思いますけれども、実質的に見てそれが労働の対価という性質を持っているというふうに認められる場合には、ぜひこれを給与として取り扱うことができないものだろうかというふうに思いますが、この点に関連して政務次官の御答弁をいただきたいと思います。
#99
○高橋(元)政府委員 いまのお話は、掘り下げて考えますと、家族の消費生活というのは共同で行われるわけでございますが、所得税の課税は稼得者それぞれにかかっていくということをどう考えるかという問題だと思うわけでございます。
 いまの日本の所得税法ないしこれは民法もそうでございますけれども、夫婦別産、稼得者単位の課税ということをやっております。そこで、非常に家計が苦しい場合に御主人が働き、奥さんも働く、いま全体として平均一世帯一・三人ぐらいの収入を得る人がたしかあると思いますから、平均しますと一世帯で御主人以外に奥さんが働いておられる割合が三分の一あるわけでございますけれども、そういうものについて合算で課税するかどうかという基本問題を解決しませんと十分なお答えにならないんだと思います。
 ただ、いまお尋ねのありました件は、パートは給与所得控除があるけれども、事業または雑である場合には給与所得控除がそもそもありませんから、その場合に、いまのお話ですと二十一万円なんですが、そういう経費をさらに給与所得控除に応じて簡易に認定できないかという問題だと思います。簡易な所得の経費の把握ということについては、これはむしろ執行の問題でございますが、たびたびお尋ねをいただいておりますので、国税庁ともいま相談をしておりまして、何らかの明快、簡便な方法というものがあるかどうか、できるだけそういう方向で検討を進めてもらっておるわけであります。
#100
○蓑輪委員 いまお答えをいただいて簡易な方法について検討中ということですが、ぜひ一日も早くこの点での善処をお願いしたいと思います。政務次官の御答弁もいただけませんでしょうか。
#101
○保岡政府委員 先生いま御指摘の点、確かに給与所得控除を得られる者が圧倒的に、概算控除という制度ではありますけれども受けられる、具体的に経費を算定すると今度また税がかかってくる、これはなるほどちょっと不公平かな。あるいは給与所得控除をそのままかけるところにも問題があるかもしれませんけれども、いま局長からお答えしたとおり、経費をできるだけ概算的にして、それより超えるものについて見るとか、いろいろ執行面の工夫ができると思いますので、いま国税庁でいろいろ検討しているようでございますから、趣旨を踏まえてやりたいと思います。
#102
○蓑輪委員 それでは、租税特別措置についてお伺いします。
 まず最初に、LPGの貯蔵施設について割り増し償却制度というのが設けられるということですけれども、この制度を設ける理由についてお尋ねしたいと思います。
#103
○高橋(元)政府委員 LPG法というのができまして、LPGの備蓄義務というものが定まったわけでございます。従来は油につきまして備蓄義務というのがありまして、これは全体として油の備蓄をふやさなければならないというIEAの申し合わせ等を頭に置きまして税制上も助成措置を講じてまいったわけですが、石油にかわりますよりクリーンなエネルギーという意味で、LPGの持っております政策的な意味というものもより高くなってまいりましたし、それを助成すべき政策上の必要性も高まってまいりましたので、今回LPG備蓄法の制定を契機にこれを割り増し償却の対象に加えたということでございます。
#104
○蓑輪委員 この制度を利用できるという企業、対象企業といいましょうか、それはLPGの輸入業者ということになろうかと思いますが、これはかなりの大手商社などになると思います。その点では資金調達能力は十分にあるはずではないでしょうか。
 それで、これに関するいろいろな制度が設けられておりまして、備蓄LPG購入費用関係では、備蓄LPG購入資金として、石油公団融資で融資比率九〇%という制度が設けられる。そしてLPG備蓄増強対策補給金ということで、石油特会から利子補給三%が行われるというふうになっており、また備蓄基地建設費用関係では、LPG備蓄基地建設というものに開銀の融資で融資比率七〇%、さらにまたLPG備蓄施設融資利子補給金というのが石油特会から利子補給で二%、こういうふうにいろいろな制度で資金手当てが至れり尽くせり、おんぶにだっこ、手厚く用意されているというふうになっているわけです。
 このほかにまたLPG貯蔵施設割り増し償却制度というのを国税で措置しようということになるようですけれども、これはちょっとやり過ぎではないか。一方では財政再建で、特に所得税の減税も行わないという厳しい態度をとりながら、大企業向けの、特に限定される大手商社等に対しては、エネルギー対策ということであらゆる手だてをとることになろうとしているわけです。こういうふうな大企業に対する一点集中的な優遇措置というのは改める必要があると思います。
 LPGの需給見通しにつきましても、家庭、業務用の需給の伸び率はきわめて低いというふうに見積もられておりまして、電力用については著しい伸び率を見込んでいるわけです。この見込みそのものもちょっと過剰見込みではないかとまで言われておるようですけれども、それにしでもこういう特定の大企業用に異常なほどの手当てをするというのは、こういう時期にいかがなものかと思うわけで、税制上の優遇措置を特別に設けることは、国民側から見て新たな不公平の拡大と受け取らざるを得ない状況ですので、この点について、やめるべきであると考えますが、政務次官の御答弁をいただきたいと思います。
#105
○高橋(元)政府委員 私、先ほどお答えしました中でちょっと間違ったことを申し上げましたので、おわびして直させていただきます。
 石油備蓄法の改正でLPGを対象に取り込んで、そういう法案を現在国会の御審議を仰いでおるところでございます。失礼いたしました。
 そこでいまのお尋ねでございますけれども、すべてのLPGタンクを対象にするというのではございませんで、備蓄法の規定によりまして、前年の平均貯蔵量を超えており、かつ指定された日数以上平均貯蔵日数がある。しかも内容積六万立米以上のタンク。それから同一敷地内で、同一事業年度において合計六万平米以上になるタンクというようなものを対象にいたしておるわけでございます。こういうタンクは比較的資力といいますか、規模の大きい業者でなければ設けられないことは事実でございます。石油ガスの輸入法人、石油ガスの基地法人、この二つを対象にして制度を創設することについて御審議をお願いしておるわけでございますけれども、最近の財政事情でございますので、今回石油備蓄法の改正によりまして、LPGを対象にするにつきまして、石油、LPGを含めて割り増し償却率を従来の四割から三割六分に落としているわけでございます。そういう点もあわせて全体として考慮しておりますが、租税の公平を害しても、特別措置でございますから、国民経済的また国民生活的に達成を助成すべき目標があるということがこういう政策税制の根幹でございます。現在のようにエネルギー事情が非常に国全体の政策として大きく浮かび上がってまいりまして、それに対して財政投融資、財政支出、それから金融、税制、すべてを通じて、LPGの供給、全体としてのエネルギーの供給ということに配慮する必要があるという基本的な前提を頭に置きまして、その一環として税制を創設することについて御審議をお願いしておりますので、御理解がいただきたいと思います。
#106
○蓑輪委員 エネルギー対策そのもの、あるいは代替エネルギー確保ということについて私どももとやかく言う立場ではございませんけれども、それにしてもやり過ぎではないかということで、その点について政務次官はどのようにお考えでしょうか。
#107
○保岡政府委員 いま局長からお答えしたとおり、国民的な課題としてエネルギー対策はきわめて重要なものでございますし、石油の備蓄はかなり進んでまいっておりますけれども、LPGの備蓄はまだ十分でない。しかもLPGは国民生活上非常に重要で、家庭の大事なエネルギー源であります。そういったことなどから、一たん昨年のイラン・イラク戦争のようなああいう世界情勢の変化があって、いつなんどき厳しいエネルギー環境に立たされないとも限らない。そういうことから国民生活上どうしても守っておかなければならない備えでございますので、税制面だけではなくて、あらゆる施策を総合してかからなければならない問題でありますけれども、そういう重要な政策であることにかんがみ、なお租税特別措置、これはできるだけ厳しくやるべきでありますけれども、先生の御指摘もそのとおりでありますが、本件についてはその必要性ありとして御理解を賜りたいと思います。
#108
○蓑輪委員 この点については、たとえば次のお尋ねの点とも関連しますけれども、エネルギー対策促進税制ということで新たな税制が考えられているわけですね。エネルギー対策促進税制ということでは、すでに同様なものが五十三年度一年限りの措置として、省エネルギーから公害防止投資を対象に投資額の一〇%を控除するという制度が導入されておりますし、五十四年度からは産業転換投資減税ということが導入されてきているわけです。通産省などが重点施策として主張し、例外的に導入されてきているわけですけれども、その政策効果、どのような効果をもたらしたのか、有効性という点については明らかになっていないように思います。利用実態等も具体的に明らかにされていませんし、そういう中で政策税制とか言われながらあいまいもことした感じで、重要であるから承知しろということだけでは納得できないもので、やはり効果を明らかにすべきだ、効果を明示し得ないようなものについては特別措置というのは承知することができないというのが国民の認識だというふうに思うわけです。こういう点から見ても、エネルギー対策促進税制についてどのような効果があったのかという点をちょっと明らかにしていただきたいと思います。
#109
○高橋(元)政府委員 五十三年の投資減税は、これは一般的な不況からの脱出のための投資減税でございます。広く産業、企業が行います投資を対象といたしております。五十四年、五十五年、両年度に適用されました産業構造転換投資促進税制でございますか、これは不況産業、特定不況業種というものに属しております企業が不況から脱却いたしますために構造不況業種から構造不況業種以外に新しく投資をします場合にそれを対象としたわけでございます。したがいまして、ここ三年間に二つの投資税額控除があったわけでございますが、それぞれ政策目的を異にしております。これの実績が締まってないではないかというお尋ねでございますけれども、実は私ども会社標本調査というのを国税庁でいたしておりまして、これにあらわれてまいります数字をいま申し上げるわけでございますが、ひとつその前にお断りしておきたいと思いますのは、会社標本調査は国税庁の事務の都合で二月から一月という年度で集計をいたします。したがいまして二月−一月年度でございますから制度改正は一年おくれの翌年に出てまいります。そういう点を留保して申し上げさせていただけば、五十三年度にこれは取得して使用に供したものが税額控除対象として九十五億、百億をちょっと切ったぐらいございます。五十四年度にこれは三百五十億程度税額控除の対象になったものがございます。それぞれがそれぞれの政策目的に応じて投資税額控除は働いておると思いますが、なおこれは五十五年の会社標本調査の結果を見ませんと五十四年度改正の効果というものは御報告できないわけでございますが、私どもは通産省にもいろいろ話を伺っておりますけれども、それなりに効果を上げてきておるというふうに思います。
#110
○蓑輪委員 こういう税制を利用できるのは特に大企業などが中心になるわけで、今回新設されるエネルギー対策促進税制について言えば、大企業の場合は開銀の調査でもすでに省エネ、代替エネ設備投資は拡大基調にあり、新たな不公平を拡大してまで本税制を新設する必要はないというふうに私は思います。
 昨年十一月の設備投資研究会というところの報告でも、五十五年度の設備投資計画で見ると中小企業の場合、大企業に比べて他人資本からの資金調達に依存せざるを得ないという状況ですが、大企業の場合は設備資金の八四%を自己資金で賄っているというふうにも指摘されているわけですから、その点考えるならば大企業にはちゃんと十分な資金調達能力があるわけですから、あえてこのような税制を設ける必要はないというふうに思うわけですが、その点いかがでしょうか。
#111
○高橋(元)政府委員 会社標本調査の数字を先ほどお答えしたのでございますけれども、五十三事務年度の税額控除額約九十五億と申し上げたとすればそれは中小企業の分で、全体百二十億の中で九十五億が中小企業分でございます。五十四年度は三百五十億程度と申し上げましたが、その中の二百億は中小企業分でございます。
 今回御審議をお願いいたしております省エネルギー、代替エネルギー、この二つの選択的な投資税額控除、その対象となります企業規模で申し上げれば、中小企業設備は全体一兆円の取得設備の中で六千六百億円、減収額で申してグロスで八百億円の減収のうちで五百四十億円が中小企業ということで、中小企業については私どもは相当の配慮をいたしておるというふうに思っておりますし、対象となりますスペック、機械設備の名称等を決めていきます際にも中小企業の取得する設備というものについて手落ちのないように現在告示等の制定のために準備を進めておる次第でございます。
    〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕
#112
○蓑輪委員 中小企業が利用できるという部分もありますけれども、大企業がもっぱら利用する対象設備というものを見てみますと、たとえば大手鉄鋼業がすでに取り入れつつある連続鋳造設備というのは単価が百億円もするというふうに言われておりますので、七%の税額控除で約五億二千万も減税になる。巨大な設備投資を行う大企業ほど巨額の税の軽減を受けるという仕組みになってくるわけで、大企業に関してはこうした減税措置は要らないのじゃないか。これこそ新たな不公平の拡大であるというふうに思いますので、その点について最後にお尋ねして終わりたいと思います。
#113
○高橋(元)政府委員 ヨーロッパの国々それから日本、エネルギーが何に使われているかということを見ますと、ヨーロッパの国々では暖房用というのが寒い国でございますから非常にウエートが高いわけでございます。三分の一から四割ぐらいはたしか暖房用に石油が使われておる。日本の場合にはまだ自動車に使っております石油の割合というのはそれほど高くございませんで、そのほとんどが、ほとんどと申しますか一番大きな部分は産業用でございます。したがって、六十五年までに輸入エネルギー依存度を五割に下げていくというためには、産業の使いますエネルギー原単位を下げていくということが最も大事なことになってまいるわけでございます。いま御指摘のありました連続鋳造設備でございますが、これは省エネルギー率が四割というふうに考えております。それから、いろいろ当初の段階では広く連続鋳造設備を対象にしたらどうかという通産省の御示唆もあったわけでございますが、お話し合いの結果スペックをずいぶんしぼりまして、現在これは五%ぐらいの普及率かと思います。スペックをしぼりました場合に、いま四〇%の省エネ効果を上げる見込みと申し上げました、そういうものがこれから先鋳造設備として機能していくということが全体としてのエネルギー原単位を下げていくために大事なことでございますし、前にもお答えしたと思いますが、省エネルギー設備というものを選びます際に省エネルギー率ということと新式の顕著の改良が行われた機械ということと普及が低いということの三つを基準にして、私どもこの制度をこれからの技術の進歩に応じて進めて動かしてまいりたいというふうに考えております。全体の制度も三年限りということで、ずるずると延長するということでもございませんので、現在の政策的な要請ということの中でこういう政策税制が必要であるという点について御理解をいただきたいというふうに考えます。
#114
○蓑輪委員 いろいろ説明されましても、やはり大企業優遇という感じをぬぐえないわけで、私どもは生活実感を踏まえて考えてみた場合に、所得税減税が行われない中でのこのような措置というのは非常に不公平なものであるということを指摘しておきます。
 質問を終わります。
#115
○綿貫委員長 正森成二君。
#116
○正森委員 残り時間が十分余りですので、ごく簡単に伺います。
 今度の租税特別措置の中で戦争災害準備金制度というものがあるようですが、その内容をごく簡単に説明してください。
#117
○高橋(元)政府委員 戦争保険料の支払いに係る異常危険準備金という規定を租税特別措置法の中に創設するようにお願いをいたしております。
 その内容を申し上げますと、特定海外水域、これは具体的に申しますとペルシャ湾ということを政令で決めるつもりでおりますが、特定海外水域を航行する海運業者に対しまして、当該水域に係る前三年の平均支払い保険料の二倍から当期に支払った支払い戦争保険料を引いた差額を限度として異常危険準備金の積み立てを認めるわけでございます。この異常危険準備金は、支払い戦争保険料を超えます支払いを起こした場合はその超過額を取り崩し、また二年たったらこの準備金の積み立ては取り崩すということが制度のあらましでございます。
#118
○正森委員 この制度は、一年半、二年近く前にイランの情勢が戦争状態になりまして非常に危険になったということで、いろいろ海運業界その他から要望があったものでもあり、また、わが国が石油を確保しなければならぬという国家的な政策から見ても必要だということで設置されたんだと思われるのですが、若干の関係者の書いたものを見ますと、これは戦争保険的なものだけれども、戦時戦争保険ではなくて平時戦争保険ではないか。つまり、余り損害を受けないときには役立つけれども、本当に物騒になってきたときには役に立たないものじゃないか。一つには解除条項というのがありますし、もう一つには自動終了条項というものが約款の中でございまして、本当に物騒になってきたときには役立たないものじゃないかという意見がありますが、いかがですか。運輸省でも、保険部ですか、どちらでも。
#119
○松尾説明員 現行のいわゆる戦争保険がどういう仕組みであるかというお尋ねでございますが、通常の船舶保険の普通保険約款に基づきます契約におきましては、戦争であるとか海賊行為、ストライキ、暴動、こういった危険についてはてん補されないことになっておりますので、別途船舶戦争保険特別約款というものがあるわけでございます。この特別約款におきましては、いま申しました戦争等の損害をてん補するわけでございますが、御指摘のような解除条項あるいは自動終了特別条項というものがついております。解除条項と申しますのは、保険会社が十四日前の書面予告をもって解除できるということでございます。それから自動終了条項と申しますのは、第一に、核兵器が戦争に使用された場合。第二には、イギリス、アメリカ、フランス、ソ連、中国、いわゆる五大国間で戦争が生じた場合。第三番目に、日本政府または外国政府によって被保険船舶の強制使用が行われたとき。こういう場合には自動終了するということになっておるわけでございますが、いま申し上げましたように、これは核戦争とか五大国間の戦争というような非常事態には自動的に終了するものとなっておるわけでございますが、現在までのところこれが自動終了になったということはございませんわけでございます。現在、イラン・イラク、その他戦争がございますけれども、この仕組みが現に動いておるということでございます。
#120
○正森委員 自動終了条項というのは核兵器が爆発したり、そういう物騒なものだから、とても保険では賄い切れぬ。ただ、いま部長がイギリス、フランス、米国、ソ連、中国の五大国間の戦争ということでしたけれども、これはその五つの国の間の戦争ということですか、五つの国が加わった戦争ということじゃないんですか。
#121
○松尾説明員 五大国全部がという意味ではございませんで、五大国間のいずれかの二カ国で戦争が起きた場合ということでございます。
#122
○正森委員 自動終了条項はともかくとして、解除条項が非常に問題があって、せっかく船舶戦争保険を掛けておってもいよいよ物騒になると十四日前の書面予告で契約を解除し得ることになっておる、あるいは継続する場合には除外水域を設けまして、短期間の割り増し料率を課するというようになっているのですね。
 この間のイランとイラクの戦争を例にとりますと三日間で最高は三%ですね、付保額に対して。そういう保険料を課せられたということで非常に皆が困ったというのが出ておるんですね。たとえば三十五億円の値打ちのある船だとすると、危険水域に三日間おれば一億五百万円取られる、だから、締めて百日間おればまるまる船の値段だけ保険料を掛けなければならないということで、これではかなわぬということになっておるわけですね。そういう苦情もあって今度のような制度もできたということになろうかと思うのですけれども、しかし、幾らなんでも三日間で船の値段の三%の保険料というのは、これはもう保険料とは言えないようなものだという苦情が船舶関係あるいは荷主関係から出ているんですね。
 それに関連して、ある雑誌に載っておりました論文によりますと、二十年間に戦争保険の保険料収入が八十五億円あった、実際に事故が起こって支払われた保険金というのは八億五千万円、だから一〇%であって、九〇%は安心料であって、まるまる保険会社のポケットに、ないない、ごちそうさん、こういうことになっておるというんですね。
 そこで、一部の関係者の中からは、三つないし四つの改善をしてもらいたいというのが出ているのです。時間がございませんから申しますと、まず第一に、高い戦争保険料を払っておるのに事故が起こると、とにもかくにも余り発動されたことはないようですが、十四日前に書面で通知して停止できる、この停止はやらぬようにしてほしい、まあ保険会社から言えば何が起こっても十四日間は危険を負担しているのだからありがたく思えということかもしれませんが、十四日間の予告で停止されてしまうのでは危なくて仕方がない、これをやらないようにしてほしい。
 第二番目には、保険料を上げるのもいいけれども、五十億円の船が百日間でまるまる五十億円の保険料になるのではかなわぬので、付保額の二〇%まで保険料が達したら、それ以上はもう堪忍してもらいたいとか、あるいは英語ではノー・クレーム・リターンと言うのだそうですが、ともかく危険水域に行って無事に出てくれば、初めに保険料を掛けるのはやむを得ないけれども、帰ってきたら高い保険料を払っているのだから二分の一だけは返してくれとかいうようないろいろな要望。
 それから、ペルシャ湾の一部はなるほど戦争しているけれども、その近くのクウェートだとかそんなところに行くのまでぐっと保険料を上げるというのはかなわぬ、いわゆる保険料の便乗値上げですね、こういうのを何とかしてほしいというような三つないし四つの要求があるんですね。これは大蔵省保険部というのですかが答えることなのか運輸省が答えることなのかよくわかりませんが、そういう要望は聞いていると思うのですが、どう思いますか。
#123
○井上説明員 先生お尋ねの件につきましては、船主協会からの要望ということで船舶保険連盟の方にお出ししたものではないかというふうに考えております。
 引受停止の問題につきましては、そういう事態に至らないよう極力努力をいたしたいというような回答をいただいておるところでございます。さらに、頭打ち制度を導入する件につきましては、非常にむずかしい問題であるといったような回答を得ております。その他いろいろございますけれども、そういったことで船舶保険連盟側としても努力すべきものは努力したい、こういう状況でございますので、この点につきましては十分御理解をいただきたいと思います。
#124
○正森委員 私がこういう問題を聞きますのは、どんな保険会社も自分の独力ではできないので再保険に付さなければならないですね。その場合にはロンドン関係の意見が非常に強くて、そこの意向によって保険料率が決まってくる。それで、この間のイランの事変の場合に三日間で三%ですかというような高い料率になったのも、ロンドン関係の業界筋の意向でそれに追随せざるを得なかったというようなことがございまして、一部の業界からは国が再保険関係でめんどうを見てもらえないだろうかという見解があるのです。それはある意味では、戦争保険の保険料が年間十億ぐらい入るから二十年ぐらいを単一の保険年度として計算すると二百億円ぐらいのリスクに耐えられるので、これを出しても結局は保険料が入ってくるんだから、国の問題としても十分にペイするんだというような意見があるわけです。わが国は平和国家ですからわが国自身が戦争をするということは考えられないにしましても、貿易立国の国ですから、どこでどんなことに巻き込まれるかもわからないという点を考えての意見だと思うのですね。私は何もこういうのが正しい意見だとは思いませんし、政府筋の意見として、平時戦争保険的状況のもとで危険が少なく働きの多いときだけはうまい汁を民間が吸って、最後の一番危ない戦時戦争保険的状況の救済だけを国に押しつけるのはどうかというのが政府筋の意見だ。それももっともだというように思うわけですが、いろいろの危険度あるいは必要性というような点を考えますと、いろいろ考えなければならぬ問題があると思うのですが、こういう点について検討しておられますか。
#125
○松尾説明員 先ほど先生からお話がありました、船主協会から損害保険業界への要望があったという点はわれわれも承知をいたしておりますが、この戦争保険がロンドン中心でロンドンの言いなりになっているのではないかというお話、あるいは船主協会の一部にもそういうことを言われる向きがあるようでございますが戦争保険というのは大変巨額かつ非常に一時的なものであるわけでありまして、その損害がどのくらい、どういう場合に出るかというのはなかなか予測困難な問題でございます。またこれは民間の保険業界の通常の引き受け能力を超える問題であろうかと思うのであります。そういうところから損害保険一般が、巨大リスクというのは相互に国際的に連携をとりまして、再保険というシステムが行われているわけでございます。
 これは何も戦争保険だけではございません。御案内のとおりロケットの保険だとか航空機の保険だとか巨大なリスクというのは次々にふえているわけでございます。仮に先ほど先生のおっしゃいました二十億ずつ十年間、二百億たまるではないかというお話ございましたが、大型のタンカーが一隻沈めば二百億というのは一遍に飛んでしまう話でございまして、その巨大リスクをだれが担保できるかといいますと、長い歴史を持ちますのはロンドンのマーケットでいろいろな引き受け業者がいて、そこのところが料率をこういう料率なら引き受け可能だというようなことでいたしておるわけでございまして、ロンドンの言いなりというのではなくて、日本の保険業界も単独では担保し切れないので、これをロンドンの再保険に出す、そのときには再保険料率というのはそういうロンドンの専門家が算定をする。それでなければ再保険がカバーがとれないということで、事実上その料率が世界に適用される、こういうことであろうかと思うのであります。ただ、日本は従来の実績というのが非常にいいということもございまして、先ほど最高時には三日間で三%というお話ございましたが、これは日本の場合には現実には約一割引きの、三日間で二・七一五%ということになっております。このように異常に高かった料率というのはきわめて一時的でございまして、現在は一日当たりにいたしますとシャットルアラブ川の、かつて一番高かったところでも〇・〇六まで下がっておるわけでございます。
 ロンドンに対する交渉力というものを、日本の業界も相当大きな力を持っておるわけでございまして、今後ともそういうロンドンとの交渉の力をより強く発揮したいということで、今後日本の損害保険業界が、いままでは個々の会社が引き受けておりますのを共同で引き受けて共同でロンドンと交渉に当たる、こういったことが近く具体化するように聞いておる次第でございます。
#126
○正森委員 保険部長の答弁されたことは私も一応知っておりますけれども、しかし制度の上でなお考えてみなければならぬ問題があると思う。そうでなければ今度の準備金制度をつくりましても、いざというときには再保険をロンドン筋に頼るというので保険料率が非常に高くなって、実際上は付保額に近いものを払ってしまわなければならない。それにはたえられないということで海運会社が非常に困るか、あるいはいっそ戦争保険を掛けないで、やられればやられたときで一か八かということで出かけていくというようなことをやるかという問題がある可能性がある。
 それから一方、また、保険料率がある程度落ちついてまいりますと、今度の制度は企業にとって非常に、実際上出た利益を減らすことになるわけですから、企業優遇制になるというような非常に微妙な制度になってくるというように思うわけです。
 政務次官に最後にお伺いしたいと思うのですが、制度そのものの前提にある保険業界の仕組みというものについてやはり大蔵省としてもよく研究して、将来またイラン・イラク戦争あるいはその他のことが起こる可能性があり、またあの海域というのはわが国にとって死活的にも重要な点もありますので、考える必要があるのではないかと思いますが、御意見承って終わりたいと思います。
#127
○保岡政府委員 先生御指摘のようにイラン・イラク戦争のようなことが起こると、この間の例でもそうでありますが、一日三%というようなことで、百日もすればその船が買える保険料を払わなければいけない。これでは実際にそういう状況になった場合に航行をあえて行って危険を冒すか、あるいはそこまでもできないでしょうから航行を中止するというようなことになれば、これは国民生活上重大な事態になるわけです。したがって、これに対しては何らかの措置を講じなければならない。
 そういう迫られたことから、とりあえず二年の限定を設けてこのような準備金制度を創設したわけでありますが、先生が公平に右からも左からもいろいろ御意見を賜りまして、またいろいろ御提言もありましたが、そういう問題をこの二年間に十分検討しまして、本当にどういう保険構造でこれに対処したらいいものか、基本的には保険によって解決しなければならない問題だと思いますので、一生懸命検討させていただきたいと思います。
#128
○正森委員 終わります。
#129
○綿貫委員長 本会議散会後、直ちに再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時五十七分開議
#130
○綿貫委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、堀昌雄君外八名提出、国税通則法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び本日付託になりました堀昌雄君外八名提出、所得税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、提出者より順次提案理由の説明を聴取いたします。伊藤茂君。
    ―――――――――――――
 国税通則法の一部を改正する法律案
 法人税法の一部を改正する法律案
 租税特別措置法の一部を改正する法律案
 所得税法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#131
○伊藤(茂)議員 ただいま議題となりました四法案につきまして、提案者を代表いたしまして、順次提案の理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。
 まず、国税通則法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 財政の再建が重要な課題となっている今日、納税者の税金への関心と不満はかつてなく高まり、とりわけ不公平税制の是正と公平・公正な税務行政を求める声は大きな動きとなってあらわれてきております。
 ところが、このような納税者の不平不満に対処すべき現行の権利救済制度は、租税事案を正当に解決することにはあまりにも不備であり、かつ、欠陥の多いものであります。
 一九六八年に、社会党はシャウプ勧告に基づいて設けられていた協議団制度を廃止し、内閣総理大臣の所轄のもとに国税審判庁を設置するという趣旨の国税審判法の制定を提案いたしました。
 政府は、党の提案に刺激を受け、協議団を廃止し、国税庁に所属をする国税不服審判所を設置するという趣旨の国税通則法の一部を改正する法律案を提案し、一九七〇年に成立し、今日に至っているのであります。長年にわたる協議団制度を廃止し、準司法的運用を企図した審判制度を取り入れたことは、わが国における租税救済制度上一定の前進であったと言えます。
 その結果、民間人の起用を含めた人事の刷新が行われ、審判制度は新しい意欲に基づいた運営が始められるかに見えたのでありますが、十年の年月が経過した今日、この審判所とその運営の状態を根本的に見直す必要が生じてきております。それは設置当時危惧された弊害が生じてきているからであります。
 たとえば、審判所事務運営の現状を見てみますと、まず、最も重要な事項である、審査請求事務処理すなわち審査、裁決の独立性の保持、あるいは、審判所の独立性が果たして確保されているかという問題があるのであります。
 最近では、国税審判官の多くは、国税庁、国税局、税務署の職員から直接任用され、数年で再び国税庁、国税局、税務署へ戻る傾向が強くまた、人事権も予算も国税庁が掌握しておりますので、どうしても国税庁、国税局の方を向いて仕事をするようになり、結果的に処分庁と同じ結論を出すという傾向が強いのであります。このような現状においては、裁決の独立性の保持なり審判所の独立性が、基本的に確保されるはずがないのであります。
 また、現行法では、国税不服審判所長が国税庁長官通達と異なる解釈により裁決しようとするときは、国税庁長官は国税審査会の議決に基づいて国税不服審判所長に対し指示することができると規定されておりますが、国税不服審判所が創設されて十年もたっているにもかかわらず、いままで長官通達と異なる裁決がなされた事案は一件もありません。このことは、現実の運用において、この制度が空洞化していることをあらわすものであります。
 一方、租税事案についての裁判の公正の確保という見地から申しますと、裁判所による救済が最もその目的に合致するものでありますが、裁判所による救済、すなわち訴訟は、費用や時間を要する点に問題がありますので、裁断の公正を保持しつつ、比較的簡素な手続により事案が処理されるような制度が現在強く要望されているのであります。
 そこで、第三者機関の公正な裁断による救済の要求と、行政段階での比較的簡素な手続による救済の要求という両者の要請を満たすような新しい租税救済制度を確立することが必要不可欠であるといわなければなりません。
 以上のような考え方によりまして、第一に、現行の国税不服審判所を廃止し、行政段階の新しい租税救済機関として、執行機関から完全に分離独立した裁決機関としての国税審判庁を設けることとし、この国税審判庁が、純粋な第三者機関として租税事実につき比較的簡素な手続で公正な審判を行うこととし、第二に、審理手続の一層の民主化により、審判の公正を図ることとし、もって納税者の権利利益の救済を促進することとする必要があることを強く認識し、ここにこの国税通則法の一部を改正する法律案を提案した次第であります。
 以下、この国税通則法の一部を改正する法律案の内容についてその概要を御説明申し上げます。
 まず、第一に、この改正案による制度の基本的な仕組みは、国税不服審判所にかわる審判機関として、総理府の外局として国税審判庁を設置することといたしております。これは納税者の権利利益の救済を図り適正公平の裁決を担保し得る第三者的税務裁判機構をつくるためには、何よりも国税の執行機関から分離させ、独立性を強化することが必要であるからであります。
 第二は、国税審判庁の長は国税審判庁長官とし、内閣総理大臣が任命することといたしております。
 第三は、国税審判庁の所掌事務といたしましては、国税に係る行政庁の処分についての不服に対する審査に関する事務をつかさどるものといたしております。
 第四は、国税審判庁の地方支分部局として各都道府県に地方国税審判局を置き、さらに地方国税審判局の事務の一部を取り扱わせるため、その地方国税審判局の管轄区域内に、地方国税審判局の支部を設けることができることといたしております。現行の国税不服審判所には、全国に十二の支部しか置かれておりませんが、本改正案では、地方国税審判局は現行の支部の約四倍に増加し、納税者の便に寄与することといたしております。
 第五は、国税審判庁には、国税審判官及び国税副審判官を置くこととし、審査請求に基づく審理及び裁決は、三人の国税審判官の合議により行うものとし、この合議体の合議は、過半数により決するものといたしております。現行制度では、合議の結果が最終的結果でないため、審判所の合議の価値が大いに問われているので、本改正案では、合議を本来あるべき重要なものとして位置づけているのであります。
 第六は、審査手続は、口頭審理により行うことを原則といたしております。ただし、当事者の申し出により、書面審理によることもできるようにいたしております。
 第七は、口頭審理は、公開して行うことを原則といたしております。
 現在は、不服申し立ての審理は非公開で行っておりますが、国税審判庁の審理を公正に行うためには、その審理を納税者に公開する必要があろうと考えます。
 第八といたしまして、審査の公正を確保するため、審判官の除斥及び忌避の制度を設け、審判官が事件や当事者と特殊な関係がある場合におきましてはその職務の執行から除斥されることとし、また、審判官について審査の公正を妨げるべき事情があるときは審判請求人、処分庁または参加人はその審判官を忌避することができることといたしております。
 第九は、審理及び裁決は総額主義でなく争点主義に基づいて行うべき旨の規定を新設することといたしております。この点については、一九六九年に政府の国税通則法改正案が国会で可決された際参議院大蔵委員会において争点主義の精神を生かすべき旨の附帯決議がなされ、また、国税不服審判所の審査事務提要の中でもその旨が規定されてはおりますが、いまだにその趣旨が十分に生かされておりませんので、本改正案におきまして明確に規定することといたしたのであります。
 第十は、審理の迅速化を図るために、担当の国税審判官の指定は、現行法の処分庁による答弁書提出の時点ではなく、審査請求書の受理の時点で行うべきことといたしております。
 第十一に、不服が国税庁長官の通達が法令に適合しないことを理由とする等一定の場合には、不服申し立てを経ずに、直ちに裁判所に出訴する道を開くことといたしております。
 以上が、国税通則法の一部を改正する法律案の提案の理由とその内容の概要でありますが、納税者の権利利益の救済制度の根本的改革という問題は、かねてからの国民的課題ともいうべきものであり、処分庁から完全に独立した純粋の第三者機関による権利救済制度の実現及びこの機関における審査手続の民主化は、真に納税者の権利利益の救済を万全ならしめるものとしてこの国民的な課題の解決への大きな前進を意味するものであることは明らかであります。
 国民の待望するこの国税通則法の一部を改正する法律案につきまして、何とぞ御審議の上、御賛成賜りますようお願い申し上げます。
 次に、法人税法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
 わが国の特例国債依存財政は来年度予算で七年間も続くこととなり、かつて三五%にも及んだ国債依存率が二六%台に下がったとはいえ、国際的に見ても依然として高い赤字財政にあることは言うまでもありません。
 政府は八一年度予算を財政再建元年予算と自画自賛し、歳出面においては思い切った節減合理化を行い、歳入面でも徹底した見直しを図ったとしております。しかし、その内容を見てみますと、不要不急経費の削減の全く不十分なことは補助金の整理とは名ばかりのものである一事を見ても明らかでありますし、歳入対策でも既存税制の枠内の増収対策をすべて講じ終え、今後の税収確保は大型間接税以外にないと短絡させていることに見られるように国民のための財政再建予算となっていないのであります。言うまでもなく、財政再建とは従来の大企業優遇の税財政制度を抜本的に改革することであり、それが特例国債依存財政から脱却する道でもあります。
 したがって、現在の財政赤字を克服するに当たっては不要経費の削減及び一般経費の節減に努めるのは当然でありますが、抜本的な税制改革による財源の確保がきわめて重要であります。しかも、不公平な税制を是正し、負担能力ある大企業に対する課税の適正化を図ることが財源対策となるとともに国民の税に対する信頼をもたらすこととなるのであります。しかしながら、政府の税制改正の方針にはかかる認識もなければ計画的対応も見られません。すなわち、政府の税制調査会が昨年十一月に答申した中期税制答申における法人課税のあり方についても、企業課税小委員会の報告に基づいて、現行の法人税制を維持することが適切としているのであります。企業小委員会の報告が、法人の性格に触れて、実在説あるいは擬制説のどちらかの立場に割り切ることは困難としながらも、現状の維持を結論づけていることはとうてい国民の納得するところではありません。
 日本の上場株式の七割以上が法人所有という実態を見、かつ、平均利回りが一%にも満たない実情を踏まえるならば、シャウプ税制によって確立された法人擬制説に立脚した現行法人税制はいわば虚構の理論に立つ税制になったと言わざるを得ません。したがって、現行税制に立っての一律二%の法人税率の引き上げといった対応でなく、法人税制の根本的改革に着手すべき事態を迎えているのであります。これが本法案提出の理由であります。
 以下、この法律案の大要を御説明申し上げます。
 この法律案は、法人税についても負担能力に応じた課税を行うため、現行の比例税率を廃止し、所得区分による軽度の超過累進税率を採用するとともに、大企業に有利な受取配当の益金不算入制度を廃止する等の改正を行うものであります。
 まず第一に、税率の改正であります。現行の普通法人に対する四〇%の税率を、年所得一億円以下の金額については三七%、一億円超十億円以下の金額については四二%、十億円超の金額については四七%の税率に改めることといたしております。
 一方、軽減税率の適用幅を拡大し、資本金額等が一億円以下である法人の所得の金額のうち百分の二十八の軽減税率の適用を受ける所得の金額を、現行の七百万円以下から一千万円以下に改めることといたしております。
 第二に、受取配当の益金不算入制度の廃止であります。現行の受取配当の益金不算入制度は法人間の配当について二重課税を防止する見地から設けられているものでありますが、大法人の株式投資が増大し、その持ち株比率がきわめて高くなっている現在では、いたずらに大企業の税負担を軽くする制度となっておりますので、これを廃止し、配当金はすべて課税所得の中に含めることといたしております。
 第三に、法人の寄付金の損金算入基準の引き下げであります。法人の寄付金につきましては、資本金基準及び所得基準による一定限度の範囲内で損金算入が認められておりますが、昨今では資本金または所得の増大によりその限度額が相当巨額となり、法人の寄付金支出を容易にしております。そこで両基準をいずれも大幅に引き下げて適当な限度といたしております。
 第四に、法人の貸し倒れ引当金の繰入限度は政令で定められておりますが、これを本法に規定するとともに資本金一億円以下の企業については繰入率を緩和することであります。金融機関を初め現行の繰入限度は貸し倒れ実態をはるかに超えた率となっており、これは利益留保の色彩の濃い制度となっておりますので、とりあえず、金融及び保険業の繰入限度を千分の五から千分の三に引き下げ、他の業種については、現行率を本法で規定して、経過措置を認めないこととするとともに中小企業には大企業より若干高率の繰り入れを認めることといたしております。
 第五に、法人の退職給与引当金の損金算入限度額の引き下げであります。引当金は準備金と異なり、企業会計上正当なものと認められ、異なった取り扱いが必要とされていますが、実態は租税特別措置法による減税措置と変わりがないのであります。しかも大企業が最も多く利用しているものの一つであり、内部留保金ないし営業資金として利潤増大に役立てられておりますので、資本金一億円を超える法人の退職給与引当金の損金算入限度額を現行の百分の四十から百分の二十五に引き下げることといたしております。
 第六は、資本金額等が一億円を超える法人及び保険業法に規定する相互会社については欠損金の繰り戻しによる還付を行わないこととするものであります。企業が赤字を出したときに払い戻される法人税は昭和五十四年度で千七百八十七億円に上っております。今日の財政赤字の中でさらに歳入不足に拍車をかけるこのような制度は、一般の国民感情から見ても認めがたいものですので大法人には適用しないことといたしております。
 以上、この法律案につきまして、提案の理由及びその内容を申し上げました。
 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
 わが国の財政史においても、また、最近の先進諸国の財政においても見られない異例な巨額の財政赤字を抱えている現在の日本財政を立て直すには、かつての高度成長促進、資本蓄積優遇の体質と構造を改めて、いわゆる福祉優先型財政を確立することが必要であります。そのために徹底した財政改革と不公平税制の是正こそ国民の要望するところであります。特に、今後の社会においては公平、公正、平等の実現が最も重要な政治理念となりますので、税制の改革に当たってもかかる観点に立って対処しなければなりません。しかも、政府はかつてない大増税によって財政再建を図ろうとしている現在、租税特別措置法による税の減免措置も最小限に抑えるのでない限り国民の公平感を高めるのは不可能であります。
 ところが、政府の租税特別措置の改廃、整理はきわめて不十分であります。政府は最近六年間で企業関係の租税特別措置九十八項目から七十三項目へと整理合理化を図ったとしておりますが、いまなお七十三項目存在していることが問題と言わなければなりません。しかも、政府の減収見込み額試算は公表されても実績は明らかにされていないのであります。
 また、資産所得者優遇の税制も温存あるいは拡大されております。利子配当所得の総合課税化は長年の懸案事項であります。政府は、グリーンカード導入を理由に源泉分離選択制度を継続しておりますが、実施可能な税務調査あるいは支払い調書提出義務の強化といった税務行政面での措置を講じつつ、不完全とはいえ総合課税化を早めるべきであります。さらに、土地税制の緩和も宅地の確保という保障のないままに三年連続の緩和が行われましたが、それが、かえって地価上昇を引き起こし、課税の不公平だけを拡大する結果を招いているのであります。
 このように政府の主張する不公平税制の是正すなわち政策税制の是正も不十分であり、一部には逆に不公平を拡大してさえいるのであります。その上、大法人優遇税制として批判の強い法人の配当軽課税率や受取配当の益金不算入などの廃止問題は全く取り上げられておりません。
 財政再建のためには不公平税制を是正し、大法人と資産家に対する課税を強化して税収の増加を図ることが必要であります。これが本法案提出の理由であります。
 以下、この法律案の大要を御説明申し上げます。
 この法律案は、利子配当所得課税の特例、社会保険診療報酬課税の特例及び個人の土地譲渡所得課税の特例について是正するとともに、大企業と中小企業の税負担に大きな差をもたらしている支払、配当軽課制度を廃止する等の改正を行うものであります。
 第一に、利子配当所得課税について源泉分離選択課税制度及び確定申告不要制度等の廃止であります。これらは資産所得優遇の最たる措置でありますので、総合課税の本来の姿に戻すこととしております。
 第二に、医師の社会保険診療報酬課税の特例措置の廃止であります。現行制度はかつての一律七二%の経費の控除制度からは改善されておりますが、いまなお不公平な税制にほかなりませんので、特例措置を廃止して実額経費控除制度に改めることとしております。
 第三に、個人の土地譲渡所得課税の強化であります。長期譲渡所得に対して課税を強化することとし、現行の譲渡益四千万円、八千万円の課税所得区分をそれぞれ三千万円、六千万円に引き下げるとともに、譲渡益六千万円以上の部分については全額総合課税とすることとしております。
 第四に、家屋の増改築に対する住宅取得控除の適用であります。現在、新築住宅及び中古住宅の取得者については住宅取得控除による税の軽減措置が講じられておりますが、家屋の増改築についても税負担の公平を図る意味からも住宅取得控除を適用することにしております。
 第五に、法人の支払い配当軽課制度の廃止であります。法人の支払い配当軽課制度は法人の自己資本を充実する目的で設けられた特例措置でありますが、いたずらに大企業の税負担を軽減する役割りしか果たしていないことにかんがみ、この制度を全廃することにしております。
 第六に、交際費課税の強化であります。交際費課税につきましては、社用支出の実情にかんがみ一層の強化を図ることとし、損金算入限度額の限度超過額の全額を損金不算入することにしております。
 第七に、各種準備金の整理、改廃であります。準備金はいわば将来の費用の繰り上げ計上でありますが、実際には現実に発生する損失額を上回って過大計上される傾向が顕著になっております。したがって、実際の費用的支出を上回る計上分は利潤の免税もしくは国からの補助金的支出と同じ効果を持つことになっており、利益隠しであるとの批判もある上に、制度の既得権化の問題が現実化しており、弊害が目立ち始めているのが実情であります。
 そのような状態でありますので、とりあえず、特定鉄道工事償却準備金、原子力発電工事償却準備金、電子計算機買い戻し損失準備金、渇水準備金を廃止することとし、また資本金一億円を超える法人の価格変動準備金、中小企業等海外市場開拓準備金、海外投資等損失準備金、金属鉱業鉱害防止準備金、特定ガス導管工事償却準備金、株式売買損失準備金、証券取引責任準備金、商品取引責任準備金、保険会社等の異常危険準備金、原子力損害賠償責任保険または地震保険に係る異常危険準備金、探鉱準備金、海外探鉱準備金を廃止することとしております。
 第八に、技術等海外所得の特別控除や試験研究費の税額控除についても、大企業が独占的に利用している実情にかんがみ、資本金一億円を超える法人の技術等海外所得の特別控除、試験研究費の税額控除については廃止することとしております。
 第九に、特定設備等の特別償却についても減価償却費を過大に計上できることにより利潤を費用化して適用企業は無利子の融資と同様の資金を調達できる機能が顕著になってきている実情にかんがみ、資本金一億円を超える法人の特定設備等の特別償却を廃止することにしております。
 第十に、不況とインフレとが共存する経済状況のもとで、中小零細企業の税負担を少しでも緩和するため、中小零細企業に対する法人税の延納の特例を設けることとしております。
 最後に、政治団体に対する企業の政治献金についてであります。現在、政治団体に対する寄付金も一般寄付金として損金扱いとされておりますが、大企業の政治献金が以前から社会的問題となっております状況にかんがみ、この種の寄付金の損金算入措置を廃止することにしております。
 以上、この法律案につきまして、提案の理由及びその内容を申し上げました。
 最後に、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 わが党は、深刻な事態に追い込まれている財政を立て直し、国民生活の安定を図ることを目標にして、まず、インフレによる税負担の不均衡を是正して、勤労者中心に救済措置をとり、さらに、大法人課税の改革、租税特別措置の廃止、資産課税の強化等によって公平な税負担構造を確立して税収の確保と所得の再配分を強化することを税制改正の基本方針に据えております。そのための改革を論議することが中期的税制改革論の内容でなければならないと考えるものであります。
 ところが、政府にはその方針に立った計画的対応は見られません。とりわけ、国民大衆に直接大きな影響を及ぼす所得税については名目所得上昇に伴う実質増税を防止するためのいわゆる物価調整減税の制度的改革は講じられておりません。このため、所得税の税収弾性値は二を上回る状態となり、また、納税者数も増加の一途をたどっており、給与所得者の納税者比率は昭和五十年度の七二%から五十二年度の七四%、五十六年度では実に八四%にまで高まってきているのであります。これらは、勤労所得税のなし崩し的な増税が行われてきていることを示すものであります。
 かかる大衆増税路線を改めるには所得税制の基本的手直しを必要としておりますが、他面、税制の公平を確保することも重視していかなければならない状況にあります。したがって、いわゆる物価調整減税の制度化等の問題につきましては、今後所得税制の基本的洗い直しとの関連で検討することにし、とりあえずは給与所得者の税制の公平な適用と高額所得者に対する不公平な優遇措置を是正することが欠かせません。これが本法案提出の理由であります。
 以下、この法律の大要を御説明申し上げます。この法律案は、現行税法では、給与所得者に必要経費の制度が認められていないことや所得の捕捉率がきわめて高いことなど不公平、差別的な状態に置かれていることを是正するために給与所得者に確定申告選択制及び必要経費の実額控除制度を創設し、労働組合費控除等を新設して税負担の軽減を図るとともに配当控除制度の廃止等課税の強化を図ろうとするものであります。
 第一に、給与所得者の確定申告選択制度の創設であります。わが国の現行の税制においては給与所得者については大多数が年末調整で税金を確定させられ、事実上確定申告権が奪われているのであります。しかし、納税者が確定申告を行うことは民主主義的権利の行使と言えるのであり、そのために給与所得者の確定申告選択制度を創設することといたしました。
 第二は、給与所得者の必要経費の実額控除制度の創設であります。現行税制においては給与所得者はどのような職業、勤務状態にあろうとも、給与所得控除という一律の控除を適用されるにすぎません。
 したがって、給与所得者について、給与所得控除制度のほかに実際に要した必要経費を認める実額経費控除の制度を創設することといたしました。
 なお、この場合の必要経費とは、別段の定めがあるものを除き、旅費、通勤費、衣服費、調査研究費、労働組合費その他の費用で給与等の収入金額を得るために直接に要したものと規定いたしております。
 第三は、給与所得控除の控除限度額の設定であります。現行制度では給与所得控除額はいわゆる青天井で高額所得者優遇の制度となっておりますので、この不合理を正すため控除限度額を二百五万円とし、いわゆる控除頭打ち制度を設けることとしております。この結果、年収千万円を超える場合の給与所得控除額は二百五万円の一定額となります。
 第四は、鰥夫控除の創設であります。これはわが党が年来要求してきたものでありますが、今回ようやく政府案として提出されるに至ったところであります。
 第五は、雑損控除の適用最低限度額の引き下げであります。現行制度では、災害等によって生じた損失が合計所得金額の十分の一相当金額を超えるときは、その超える部分の金額を雑損控除として控除することが認められておりますが、この適用最低限度額を合計所得金額の百分の二または二万円のいずれか低い方の金額に引き下げることといたしております。
 第六は、医療費控除の適用最低限度額の引き下げであります。現行制度では、医療費の合計額が合計所得金額の百分の五または五万円のいずれか低い方の金額を超えるときはその超える部分の金額を医療費控除として控除することが認められておりますが、この適用最低限度額を、合計所得金額の百分の二相当金額または二万円に引き下げることといたしております。
 第七は、通勤費の非課税であります。現行制度では、実際に支給した通勤手当のうち一定限度までの金額について非課税としておりますが、通勤費は必要経費でありますから、通勤費の実費相当額は全額これを非課税とすることにいたしております。
 第八は、夜勤手当の非課税であります。警察官、看護婦等夜間勤務をする者の場合は、心身の消粍が激しく、その回復のためにはかなりの経費が必要でありますので、一定額の夜勤手当についてこれを非課税とすることにいたしております。
 第九は、キャピタルゲイン課税として有価証券の譲渡による所得に対する課税の強化であります。現行制度では年間取引五十回二十万株未満については非課税になっておりますが、これを改めて年間取引二十回十万株以上に対して課税をするものといたしております。
 第十は、退職金の退職所得控除額の大幅な引き上げであります。退職所得控除額を現行の勤続年数一年につき現行の二十五万円から五十万円に引き上げ、二十年勤続で一千万円まで非課税とするものであります。なお、あわせて退職所得控除額の最低保障額、障害退職の場合の加算額をそれぞれ引き上げることといたしております。
 第十一は、労働組合費控除の創設であります。労働組合費は労働者の経済的地位の向上、福利増進を図るための費用でありますから、今日の社会通念から見て当然給与所得者の必要経費と考えられますので、組合の経常的な費用に充てられる組合費につきましては所得控除を認めることといたしております。
 第十二は、寒冷地控除の創設であります。寒冷地域におきましては、暖房費等の生計費が他の地域に比べて多額にかかることは言うまでもありません。そこで、その経費相当分を総所得金額等から控除する制度を新たに設けることといたしております。
 最後に、配当控除制度の廃止であります。現行制度は、いわゆる法人擬制説に立って、所得税の前払いである法人税を清算する意味で配当控除が行われておりますが、この制度によれば、配当のみの所得者は夫婦子二人の場合、課税最低限が四百四十万円となり、給与所得者と比較して著しく不均衡を生ずる資産所得優遇の制度となっております。したがって、法人擬制説を維持する考え方をやめて、税負担の公平を図るため、配当控除制度を廃止することといたしております。
 以上、この法律案につきまして、提案の理由及びその内容を申し上げました。
 何とぞ御審議の上、御賛成賜りますようお願い申し上げます。
#132
○綿貫委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
#133
○綿貫委員長 次に、内閣提出、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
#134
○村山(喜)委員 三税についてお尋ねしてまいりたいと思いますが、まず第一に、所得税法二百三十二条の財産債務明細書の提出の状況を承りたいと思います。
#135
○小幡政府委員 財産債務明細書の提出状況でございますが、先生御案内のように、その年分の退職所得を除きました所得金額が二千万円を超える場合に所得税法の二百三十二条の規定によりまして財産債務明細書を提出しなければならないことになっているわけでございます。五十三年分の提出義務者の数は七万七千人でございました。五十三年分の財産債務明細書の提出状況につきまして私ども全数の報告を徴しているわけではございませんけれども、サンプル調査の結果から全体を推計いたしますと八二%に相当する六万三千件が提出されたものというふうに思っておるわけでございます。未提出となっている者につきましては引き続き提出を督促しておるところでございますけれども、譲渡所得など一時的な所得によりまして提出義務者となった者の中には特記すべき財産がないというふうな者もございますので、すべての提出義務者について提出が行われるまでには至っていないという状況でございます。
#136
○村山(喜)委員 八二%というのはサンプル調査という話でございますが、二千万円以上の所得のある者については明細書を提出せよという法律上の規定があるわけですが、罰則はどうなっていますか。
 なお、それについて不完全なままで、おざなりに調査が終わっているということになった場合には、そういう所得の二千万円以上あるような人が財産をどのようにして形成するかということは他の部門でつかむことができますか。
#137
○小幡政府委員 罰則の点は主税局の方からお答えがあろうかと思いますが、私どもの方からこの活用の状況のことをお答え申し上げたいと思います。
 財産債務明細書が提出をされますと、高額所得者の管理のために有効な資料でございますので、私どもといたしましてはこれを整理、保管いたしまして長期的に有効に活用しておるという実情でございます。
#138
○高橋(元)政府委員 お尋ねの財産債務明細書は、昭和二十八年に一遍廃止をいたしまして、現在復活しておるわけでございます。二十五年当時、創設当時は正当な理由がないのに提出しなかった場合は加算税の対象ということになっておりましたが、現在は提出義務に違反いたしましても制裁を科していないわけでございます。それは、一定の高額所得者について確定申告に際して財産債務明細書を出していただくことにしておりますのは、適正な課税を確保するための補助的な手段でございますから、補助的な手段という意味で、それを罰則の対象にするにはなじまないという考え方からでございます。
#139
○村山(喜)委員 それにしても、サンプル調査程度でお茶を濁しているようでは徴税義務者として執行怠慢だというふうにしか私は思われないのですがね。罰則がないからそういうことになっているのだろうと思いますが、今日、社会的な不平等という問題は所得の面よりも資産の面で拡大をしているのじゃないだろうか、そういうように思うがゆえに、この点についてはもう少し徴税の責任を果たしてもらいたいと考えております。
 そこで次にお尋ねしてまいりたいと思いますが、今度の所得税法の改正では寡夫の控除の問題等も出ておりますし、若干前進をした面もございます。しかしながら、これは大臣、どうなんでしょうね、不動産の所有による格差、それから株式、有価証券等の金融資産を持っている人あるいは宝石、貴金属、また最近大分値上がりになったようでございますが書画骨とう等の資産、こういうようなものを持っている人の状況を把握しながら不平等を是正するというのが福祉国家の目標の一つだと考えるわけですが、現在資産と資産から生ずる所得への課税の公平は、これは適正になされているものだ、こういうふうに大臣はお考えでございますか。いかがですか。
#140
○渡辺国務大臣 現在、分離課税制度というのがございまして、高額所得者の場合で有価証券とか預貯金を持っておるという人については、三五%ぐらいの税率で済むから有利でないかという議論が一つございます。しかしながら、日本の所得税は非常に急進的な累進課税で、八千万以上七五%、住民税と両方では理論的には九三%の税率ということでありますから、その点はまた世界に例のないほどきつくなっておる。したがって、仮にそういうような状態で分離課税をなくすということになると、いろいろ巧妙な脱税というようなものも発生しないというようには考えられない。そこでこれは、総合課税に移行するときには、現在の分離課税はなくなるわけですから、税率調整というものは国際的な状況を見ながらやるべきものじゃないか。これは現実問題として、高額所得者等が他に換物をするとかいろいろなことが急激に行われるとあらかじめ想像できないような経済混乱が起きることもあるのです。その結果が国民経済に悪い影響を及ぼすということもいかぬことでございますから、それらとの兼ね合いでどういうようにするか、今後十分に検討いたしてまいりたいと思います。
#141
○村山(喜)委員 大臣の現在の所得税の累進構造に対する考え方というのはわかりますが、五十九年度から利子配当所得の総合課税が決定をしている。その場合に株式の譲渡所得の課税、事実上は非課税の状態にありますし、土地譲渡所得について軽課措置がとられている、そういうような面から見ましてもどうも資産面に対する課税が所得税の上において不十分ではないだろうか。これはやはり持てる者に対する持たざる者の、国民の気持ちであろうと思うのですがね。
 そこで私は、富裕税とかあるいは金融資産税というような意味の創設を検討してみる段階に来ているのではないだろうかと思うのでありますが、たとえば軽度の累進税率で二千万円以上の階層に対する資産の課税というようなものを図ることができるならば、その預貯金や株式等の把握もできますから、資産性所得への課税の正確性が期待ができる。あるいは金融資産税の創設というような意見を言われている人もあるわけでございます。これは預貯金や公社債や株式等の資産を一億円以上持っている人に対して一・五%程度の単一の軽課の課税をいたしまして税収を図るというような方法があるじゃないかというような意見を出されている学者もおいででございます。こういうものについていま大臣が言われた問題とあわせて検討をされるお気持ちはないかどうか、お答え願いたい。
#142
○渡辺国務大臣 シャウプ税制のときですか、富裕税というのが一時できたことがあるのです。あるのですが、私ども実務的に見てみると、不動産は非常に把握しやすいのですが、要するに預貯金、株式というようなものは実際問題としてなかなかつかまらない。したがって、固定資産を持っている人と流動資産を持っている人とで現実的に不公正、不均衡、不権衡といいますか、そういうものができる。ですから、そういうような流通証券や預貯金を持つ人が把握されるという状態にならないと困るんじゃないか。そういうような意味でグリーンカードというものが役立つことはあり得る。そのかわり、それに対しては軽微な税金をとるか、表に出してもらうかわりに所得税の税率緩和を図るとか、そういうこともあわせて検討をしてみたいと思います。
#143
○村山(喜)委員 いよいよ日本の国も高齢化社会を迎えるわけでございますが、政府税調の中期答申の中で、年金課税の問題については重要な検討課題だ、こういうことが指摘をされているようでございますが、確かに問題がたくさん残っているようでございます。そういう問題についてのあり方の問題は、これから大蔵省としても鋭意検討をされるおつもりであるのかどうか。その点が第一点。
 それからもう一つは、所得税と地方税の関係、住民税の関係なんです。
 未成年者あるいは身体障害者あるいは寡婦、そういうような方々に対する課税は、住民税の場合には、八十万円以下の年所得の場合には所得割の住民税も均等割の住民税も課さないという制度になっておりますね。ところが所得税は、幾ら未成年でありましても税金は七十三万を超えた場合には課税がされるという仕組みになっている。地方税というのは応益の原則と応能の原則という二つの要素を持っているものだし、所得税というのはやはり応能の原則の方が働かなければならないと私は思うのでございますが、そういうような面で実際徴税事務に当たる者から考えてまいりますと、出す側はいずれも国民なんで、納税者。それは所得税はこうなっている、地方税はこうなっているというようなことで、最低の課税限度等につきましても大変ばらばらな感じになっている状況を、これはいつかは改めていかなければならないんじゃないだろうかという気がするのでございますが、そういうものに対する考え方はどういうふうにお持ちですか。その二点。
#144
○高橋(元)政府委員 まず年金でございますが、去る十一月の税制調査会の中期答申の中で、年金課税の問題、公的年金に対する課税の問題は今後外国の事例をも参考としつつ検討を進めていく必要があるという指摘がございます。ということが答申されました趣旨でございますが、これは現在御案内のとおり、公的老齢年金に対する課税は給与所得控除の適用を認めておるわけでございます。勤労に伴う経営費の概算控除という性格を持っております給与所得控除がそのまま年金収入に適用されることがどういう考え方になるのか、そこが一つの問題でございましょうし、また、現在の年金課税では掛金と申しますか社会保険料、これは全額所得から控除されておるわけでございます。
 アメリカの場合には、給付の段階では非課税、掛金の段階では控除しないというふうになっております。イギリスの場合には掛金の段階で控除せず、それから給付の段階では年金収入ということで特別な扱いはしませんけれども、老齢者であるという理由で基礎控除の割り増しがありますので、したがって事実上給付の段階では課税しない、こういう例もございます。
 各国まちまちでございますが、これから高齢化社会を迎えてまいりまして、その財源としてどういう所得に対する課税のあり方を考えるか、また公的老齢年金の受給者がふえていく場合に、公的老齢年金に対する課税のあり方ということは、年金の原資を出す人とのバランスという観点からも重要な検討課題であろう、こういうお考えでいま申し上げたような答申が出たわけでございます。今度いずれの時期になりますか、会長がこの前もお見えになっていろいろお話があったわけですけれども、今後税制調査会でいろいろな所得税の基本問題というのを御検討になります際に、この点もあわせて税制調査会の中で御検討が進められるのであろうというふうに私どもは考えておりまして、私どもの方もそれなりに各国の税制の勉強をいたしておるというのが現状でございます。
 第二は、地方税と所得税の関係についてのお尋ねでございますが、お話しのように、確かに地域社会の費用を住民が広く、能力に応じて負担するというのが個人住民税の性格でございます。したがって、いわゆるクラブの会費というような思想がございまして、課税最低限は所得税のそれよりも低くなっておるということからも見られますように、可得税と住民税は必ずしも考え方が一致しておりません。もともと所得税は、所得があればその多寡に応じて累進的な課税を求めるというのが基本的な思想でございますから、人的な免税ということは所得税になじまないという考え方を私ども持っております。
 障害者、寡婦、老年者あるいは勤労学生という特殊の弱い担税力を持った方につきましては、それぞれ担税力の減殺の程度を勘案いたしまして、障害者、寡婦、今度は夫の方の寡夫、老年者、勤労学生という控除が適用されるということになっておりまして、それによって対応しておるわけでございます。未成年者につきましては、これは個人住民税は、むしろ昭和二十五年改正前のいわば家ごとに税金をかけていくという従前の、私もよく存じませんが、戸数割とか所得割といった時代からのいわば一種の残渣であろうかと思います。市町村に一戸を構える個人または独立して生計を営む個人、こういう者が従来は地方税を払ってきたわけですが、それを昭和二十五年に所得のある人から取るということにしたときに未成年者を外すという制度ができて今日に及んでおりますので、これは地方税の中でもむしろ特殊の地位を持っておるもので、それを所得税制に及ぼすということにはなじまないという考え方を持っておる次第でございます。
#145
○村山(喜)委員 その問題を掘り下げて論議してまいりますと時間が足りませんので、法人税の問題に移りますが、いまも社会党の伊藤理事の方から提案をいたしましたように、法人課税のあり方については非常に問題が多いと私だちは見ているわけでございます。ところが日本の税調の場合には、十一月の中期答申を見ましても、問題の本質には触れないで現行の税制制度というものを前提にしながら、それを肯定をしてこれからもやっていくんだという構えであるようでございます。
 法人実在説あるいは擬制説、いろいろな説がありますけれども、いま日本の株の所有形態を見てみましても、後からまた申し上げますが、株主に対する利益金の配当のあり方の問題、内部留保の問題を見ましても、実質的に擬制説という形をとるのはおかしな姿になっているんじゃないかという気がこれは常識的にしてくるわけです。七〇%も法人間の持ち合いになっているというようなそういう状況の中で見てみましても、どうも従来の中途半端な折衷案みたいな考え方の法人税制のあり方では問題があり過ぎるんじゃないだろうかという気がいたしますが、大蔵省としては、これは税調がそういうような方針を決めているんだからそれについてはもうさわらないという、そういう考え方でございますか。
#146
○高橋(元)政府委員 法人税の性格なり制度をめぐりましてさまざまな御議論があるわけでございます。いまもお示しがございましたけれども、昨年の春から夏にかけて税制調査会の企業課税小委員会で相当精力的な作業をやっていただきましたのは、そこに幾つかの問題があるということが発端であったわけでございます。確かに問題点として指摘されております点はいま村山委員の仰せのようなことを含めまして、法人が個人の集合体であって、所得税の前取りであるから、配当に対する法人税、所得税の税負担の調整は完全に行うべきであるという議論から、その所有、経営が分離しておる法人の実態から見ても法人と株主は別々だから配当に対する法人、所得両税の税負担の調整は要らないという議論に至りますまでさまざまあるわけでございます。
 現行の、昭和三十五年以来の法人税と所得税の調整につきまして配当軽課、配当控除、支払い側と受け取り側と両方において調整が行われる仕組みをとっておられまして、制度として非常にむずかしくてわかりにくいということも一つの問題でありましょう。またわが国の株主は法人税引きの手取り額というものをもって配当と考えるということがございますし、それから支払う法人側ではその配当にかかる法人税は会社固有の税負担であると考えるという習慣もありますし、現金配当率を一定に維持するということが経営の一つの物差しということもございます。そういう社会的な制度、経営の理念、また株主の意識、それから法人税の制度、それらがさまざまに相重なり合いましていろいろな問題が出ておりますので、そこで税制調査会で小委員会をつくりまして専門家に集まっていただいて、相当詳細な議論をされた結果が、将来の方向として法人税と所得税の調整を考えるとすれば、それは国際的にいまやプリベールしようとしているところのインピュテーション方式というものが一つのかがみになるであろう。しかしいま直ちにインピュテーション方式に移るのでは、それはやはり資産の選択なりそれから企業の行動なりというものに相当な影響を与えるだろうから、もう少し情勢を見る必要があるという答えになっておるわけでございます。したがって現行の制度でまずまずはいいのではないかというのが相当精力的な御議論の集約でございまして、私どももそういう趣旨を盛り込んだ中期答申というものを昨年の暮れにいただきまして、法人税の制度については、基本的には現行の制度に乗りながら将来の展望、日本経済ないし日本の企業社会というものに合った法人税制というものを模索しておるというのが現状でございます。
#147
○村山(喜)委員 そこで、私は大臣のお手元にも差し上げましたが、法人企業統計から見た実態というものが一体どうなっているんだろうというので、法人企業統計年報やそれから五十六年度の予算の資料をもとにして整理をしてみたのでございますが、五十四年度の営利法人、これは大変な売上高増加率、経常利益の増加、付加価値の増加あるいは設備投資の増加という形の中で出ておりまして、その中から支払い利息・割引料などが大変な、十五兆近くの支払い利息・割引料を出しているというようなものも統計的に数字が出ております。これも営業純益は前年同期よりも四%上がっているわけですね。十兆七千億の営業純益を上げている。ところが税金の引当金の関係を見てみますとこれは伸び率はそう大きくないじゃないかというのが不思議でならないのであります。その利益金処分を見てみますと、内部留保に六兆円もつぎ込んでおる。
 そこで五十四年度の法人企業の引当金や準備金、特別償却等の利用状況を見てみますと、諸引当金で十三兆二千七百二十九億円、租税特別措置によります諸準備金の積み立て合計、これは取り崩しも若干ありますが二兆五千三百八十八億円、特別償却あるいは特別控除、税額控除合わせると十六兆一千七百八十一億円、こういうような数字に上っているわけですね。それは次の年度に対する設備投資の内部資金として動いていくことは間違いないわけでございますが、それにしてもこれだけの純益を上げながら、しかも人件費に対する付加価値の配分は減量経営で減ってきている。こういう状況の中で、では租税がふえてその利益に見合った形でふえているのだろうか、税率がかえって低下しているのではないだろうかというふうに思われるのでございます。そういう、いわゆる法人の企業行動というものから見ていまの税制、法人税制だけじゃございません、租税特別措置まで含めてやはり基本的に見直しをする段階に来ているのではないだろうかという気がするのでございますが、それはどういうふうに感じ取っておいでですか。
#148
○小山(昭)政府委員 法人企業統計に関します技術的な点につきましてお答え申し上げます。
 ただいま先生の御指摘になりました昭和五十四年度の法人企業統計によります営業純益でございますが、これは御指摘のとおり確かに十兆余の金額になっておりまして、五十三年度の五兆何がしに比べましてほぼ倍増いたしております。
 ただこの営業純益と申しますのは、統計上付加価値の配分の状況を見るために出しておりますかなり技術的な概念でございまして、法人の営業利益から支払い利息と割引料を差し引いたものが営業純益ということになっていることは御承知のとおりでございます。それで、この営業利益に対して支払い利息・割引料の占める割合が五十三年度には七割を少し上回っておるわけでございまして、五十四年度、この支払い利息・割引料の増加額が余り大きくなかったために、営業利益から支払い利息・割引料を差し引いた営業純益が非常に大きな数字としてあらわれているということでございます。
 たとえて申しますと、五十三年度の営業利益を一〇〇といたしますと約七〇が支払い利息・割引料であり、営業純益は約三〇であった。それが翌年度営業利益が約一四〇近くになり、これは一三六・一でありますが、それに対して支払い利息・割引料が八〇弱であった。したがって、差っ引いたものが約二倍になって反映しているということでございまして、企業の業績といいますか利益の姿を見るにはこの営業純益でとらえることは若干誤解が出てくるおそれがあろうかと思います。
 営業利益で見ますと、いま申しましたように五十三年から五十四年の伸びは三六・一であり、また税引き前利益で全法人の当期利益を見ますと三三・九%の伸びということになっておるような次第で、ございます。
#149
○高橋(元)政府委員 やや別の数字を申し上げるようで恐縮でございますが、私どもの国税庁の方で毎年相当正確な標本理論によりまして会社標本調査というのをやっております。
 そこで出てまいります利益処分で、ございますが、その中の法人税の割合というのはほぼ一定でございまして、三三%が五十年度、これは非常に企業の業況が悪かったときでございます。それからかなり業況が好転しまして、現在は三一・八%でございます。なぜ業況が好転したのに法人税の割合が下がるかと申しますと、黒字法人の割合がふえてくるからでございます。赤字の法人はマイナスになりますので法人所得が小さく出る、こういう結果でございます。内部留保はこれまた大体三三%から三五%くらいのところを前後しておりまして、内部留保が特に益金処分の中でふえてまいったというふうには考えておりません。
 お尋ねは、そういう所得を計算する際に、むしろその外側で準備金とか引当金とかいうものがかなり大きいではないか。会社の諸引当金というのは残高で申しますと、お示しの資料のように十数兆というものがございますし、準備金でも三兆円くらいでございます。そういうものが会社の利益を単に減殺しているにすぎないものではないかということでございますが、引当金につきましては、たびたび申し上げておりますように、これはむしろ会社が利益に計上して配当してはならない、それに見合った債務があるというようなものでございます。たとえば退職給与引当金というのは退職給与債務見合いでございますから、利益として処分することをむしろ禁止するということだと思いますし、貸し倒れ引当金にしましても、貸し倒れと申しますか回収不能の債権の見込み額でございますから、これを利益として配当することを許さない、こういうことであろうと思います。準備金はやや政策的なものもございますけれども、やはり一種の概念的に考えられます費用というものを合理的に計算をして、政策目的の範囲内でできるだけ圧縮して準備金として認めさせているわけでございますし、特別措置で認められます準備金というのは必ず取り崩しということを要件にしておりますので、これは一種の利益の課税の繰り延べということで御批判はあろうと思いますが、それぞれの政策目的に応じて設定をされておるものであって、決してこれがあるから本来計上すべき利益が低くなっていることはございません。別途この委員会にもお出ししております法人企業の税負担の実態と申しますか、ちょっと私正確な名前を記憶しておりませんが、そういう資料によりますと、資本金一億円以下の法人、資本金一億円から百億円の間の法人、百億円以上の法人という区分でいたしますと、税負担は、中小法人と大法人では明らかに中小法人の方が低くなっておるという実績になっておるわけでございます。
    〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕
#150
○村山(喜)委員 会社にとっては債務性の退職引当金でありましても、それだけ利益の圧縮につながることは間違いないわけですから、それが適正に積まれているかどうかという問題との関係でございます。そういうような意味においては、引当金が十三兆二千七百二十九億もあるというような状態になっておる状況を見てまいりますると、一体いまの法人税のあり方というものはこれが適当であろうかということになってまいりますと、受取配当益金不算入の問題やあるいは交際費、寄付金の損金算入の問題、準備金、引当金、特別償却の洗い直しの問題あるいは法人の固定資産評価益に対する問題なり事業税の損金算入の否認の問題なり法人税率の累進化の問題なり、いまさっきわが党の方から提起をいたしましたような問題を抱えているということを指摘をしておきたいと思います。
 そこで次に、国際収支の問題と国際流動性の問題をめぐりまして若干の質問をいたしたいと思います。
 五十四年度で総合収支で百八十九億五千百万ドルというマイナスが生じました。これは経常収支が悪化をしたためにそういうような形になったわけでございますが、それをカバーするために公約部門の外貨準備を取り崩して、それから為替銀行の部門のポジションを悪化させまして、これによってカバーをしたわけでございますが、現在外貨準備高は二百六十億くらいですか。どうなっておりますか。そういうようなものが、当時は百八十五億程度にとどまったわけですが、今日約二百六十億くらいになったとすればどういう形でそれを用意ができたんですか。
#151
○加藤(隆)政府委員 二月末の数字が大体二百七十億ちょっと切れたくらいでございます。それで御質問の点でございますが、十二月、十二月で比べてみますと、確定した数字で五十四年の十二月と五十五年の十二月と比べてみますと、外貨準備が二百三億から二百五十二億と四十九億ふえております。
 それでこれがどういうふうにやりくり算段がついたかという御質問だと思いますが、先ほど年度で村山委員が御発言でございますが、いま暦年でやらしていただきますと、経常収支が百八億の減でございます。長期資本が十八億黒、短期資本の収支差が六億の黒、八十四億の赤になっておるわけです。それを今後は為銀部門、こういうようなところで外から金を借りてまいりまして百三十三億取り込んだわけです。こういうかっこうで外貨準備が結果的に四十九億ふえる。もう一回申しますと、二百五十二億から二百二億引きますと外貨準備が四十九億ふえておりますが、これは経常収支系統で八十四億赤になって、金融勘定の方で取り込みを百三十三億やった、それで四十九億になる、こういうかっこうになっているわけでございます。
#152
○村山(喜)委員 これは海外の短資の調達によりまして為替部門がそれだけポジションが悪化をしたということになるわけですね。
 そこで私は国際流動性の問題を調べてみたんですが、八〇年末の数字を電話で聞いたんですけれども、これは間違いございませんか。市中銀行の保有対外債権債務の残高の対比でございますが、八〇年末は債務残高が十八兆八千六百九十七億円、それから債権が十兆九千二百八十二億円、これは間違いございませんか。
#153
○加藤(隆)政府委員 大体そういう数字でございます。
#154
○村山(喜)委員 これが大変急増をしたというのはどういう理由ですか。
#155
○加藤(隆)政府委員 債権の方は増加が非常に落ちておるわけでございます。債務の方の急増でございますが、貿易収支、これが赤なものですから、輸入ユーザンスのかっこうなりそういうかっこうで、先ほどの数字に代表されてくるわけでございますが、外から借りたというようなことで為銀の債務が急増しておるわけでございます。
#156
○村山(喜)委員 債権の方は一・七倍、債務の方は、これは年末計算でやってみますと一・八倍にふえているという状況の中で、大変な負債を背負い込んでいるなということがわかるわけでございますが、次に長期資本の関係は一体どうなっているのてすかこれは五十四年末の数字だけを私は数えてもらったのですが、入りと出しの関係でどういう数字になっておりますか。
#157
○加藤(隆)政府委員 長期資本の方でございますが、五十四年末の残高で八百三十六億になっております。
#158
○村山(喜)委員 そこで八百三十六億六千三百万ドル、それからいわゆる入りの分でございますが、三百六十三億五千五百万ドル、これでは債権の方がここは多いわけでございますが、そういう中で貿易外収支及び移転収支の推移を見てまいりますと、日本の国が債権国家として国際的に市場に進出をしている、合弁会社を海外においてつくっていく。そういう中から投資収益を上げ、あるいは投資収益によりまして直接投資収益と利子配当収益を上げておるわけでございますが、これの一番新しい数字はどういう数字になりますか。
#159
○加藤(隆)政府委員 本年の二月の数字が一番新しいわけでございますが、投資収益の中の受取利息と支払い利息、大体支払いが九億で受け取りが八億で、端数は忘れましたが大体一億ちょっとの赤になっております。
#160
○村山(喜)委員 これは投資収益全体を言われるわけですか。
#161
○加藤(隆)政府委員 そうでございます。
#162
○村山(喜)委員 五十四年度末においては収支じりにおいて十二億二千二百万ドルの黒字ですね。それが今日の時点においては約一億ドルの赤字、こういうことになってきたということはどういうことを意味するのですか。
#163
○加藤(隆)政府委員 二つのことが考えられると思うのでございますが、循環的に一時的な現象であるかどうか。もう一つは構造的に先ほどの負債がふえているということと高金利になっているというようなことで、後の方の理由が非常に懸念されるわけでございますが、目下のところ一月だけの現象でございますので、なお見きわめる必要があろうかと思っております。
#164
○村山(喜)委員 こういうような状況の中で国際的に非常に高金利の時代が続いている。日本の場合には、公定歩合を下げていくというような矛盾した政策がとられたわけですが、今後の日本の長期資本収支なりあるいは国際流動性の上において、そういうマイナスの局面という問題が今後さらに悪化するというようなことにはなりませんか、どうですか。
#165
○加藤(隆)政府委員 これは非常にいろんな要因が絡んでいるわけでございますが、御質問の点は、金利差が収支差なりレート差にどういうふうに出てくるかというような問題だろうかと思いますが、一般的には内外金利差というものが資本移動を起こしてレート変動ということになるというふうに言われておりますが、この二年来のわが国の経験で申しますと、たとえば日本の金利とアメリカの金利が、アメリカの金利が高いわけでございますが、その高さが高くなってもレートがなかなか弱くならない、円のレートが弱くならないというような局面もございます。
 それで、フロートの時代から八年ばかり分析してみますと、レート差と資本移動、金利差とレート差がパラレルに動いたときと、要するにアメリカに有利になったときに円安になるかどうかということ、それからアメリカに不利になったときに円高になるかどうかということですが、パラレルに動いたときと動かないときがあります。一般的には金利差が資本移動を起こしてレート差に及ぶという考え方になっておりますが、先ほど申しましたように、円の先行きについてどう考えるかというような問題、それから金利差が物価差に及びまして、物価差が経常収支に及ぼすというような実態面のインパクトの問題、そういうような問題がございまして、たとえば今回の公定歩合の場合にもいろいろ御議論があったわけでございますが、アメリカの金利が低下傾向にありますけれども、あの公定歩合を下げた段階では円安になるのではないかという見方が一般的でございますが、過去の経験からいって、いま申しましたようなファンダメンタルズの方のことを考えると、余り影響は出ないのではないかというふうに私どもは見たわけですが、結果的にそうなっている。ただ、いま先生の御指摘のようなことは一般的には言われているわけで、たとえばドイツの場合には、いまアメリカの金利が上がったものですからドイツの金利が低いために非常に苦しんだということで、金利を上げる特別ロンバードということで対抗しておるというようなことはございますが、いずれにいたしましても、金利以外にいろいろな要素が絡みますので、なかなか一義的には言えない。ただ、御指摘の点は十分注意してやっていかなければいけない問題だろうと思います。
#166
○村山(喜)委員 そういうような事情を踏まえながらちょっと私確認をしておきたいと思いますが、国際流動性の日銀統計の国際比較統計の数字は、これは自由圏だけが出されているので、共産圏等は入っていないというふうに聞いているのですが、そうですか。
#167
○加藤(隆)政府委員 日銀の資料は恐らくIMFの統計からとっていると思いますので、そういうことになります。
#168
○村山(喜)委員 そうなりますと、いま問題になっております中国に対するプラントの問題なりあるいはイラン石化の問題ですね、こういうような問題が輸銀やあるいは基金等を通じまして出資なりあるいは融資枠を決定をしているというような問題まで含めてまいりますると、IMF方式の国際収支の中には出てこないけれども、資金ポジションの問題などから見てまいりますると、さらに対外債権債務の関係で見た場合にはバランスシートがさらに悪くなる、こういうふうに見ていいのですか。
#169
○加藤(隆)政府委員 ちょっと先生の御質問を誤解しまして、自由主義圏の国の統計が載っているという意味で申し上げたのですが、いまの御質問ですと、わが国の場合は中国であれ、ソ連であれ全部統計に出てまいります。
#170
○村山(喜)委員 これ以上その問題は触れませんが、そこで税法の関係にありますタックスヘーブン利用の租税回避の問題ですね。おととしでしたか、そういう租税回避を避けるために立法措置をとりまして、ぺ−パーカンパニー対策をすることによって不当な留保を避けるような方向で的確に課税を捕捉をするという問題を取り上げたわけでございますが、その場合に、移転価格操作の防止の問題は当時は論議されなかったと思うのでありますが、現在の状況の中では、新聞等を見てまいりまするとトランスファープライシングの防止の問題は今後検討する、こういうことでございましょうか。
#171
○高橋(元)政府委員 五十三年に創設しましたタックスヘーブン対策税制は、現在国税庁で執行面でいろいろと研究し、実行に移しておられるところであります。いまのお尋ねのトランスファープライシングでございますが、OECDでたしか七四年にトランスファープライシングについての税制の勧告があったわけでございます。わが国はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと異なりましてトランスファープライシングを否認する税制を持っておりません。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツではいわゆるアームス・レングス・プライスというのですか、そういう価格を持っておりまして、それを徴税当局が決めて外国の子会社、または外国の関係会社との間の取引の価格を否認できる。たとえば仕入れをより低くし、売り上げをより高くできる、こういう制度を持っております。日本の場合には現状ではむしろ国際的なそういったトランスファープライシング税制を持っております国との執行上の協議ということが現状でございます。ただし、外国でそういうトランスファープライシング否認をいたしますと、当然日本の親会社ないし本店との二重課税の問題が起こってまいりますから、そういうものをどういうふうに処理をしていくかということで、現在外国でとっておりますようなアームス・レングス・プライスというようなものを法制化することができるかどうかということをいま勉強しておるわけでございます。太平洋全体を通じまして、オーストラリアでございますとか、日本でございますとか、カナダでございますとか、アメリカでございますとか、そういうところでトランスファープライシングの協議というものを現在実行上やっておるわけですが、そういうところの協議を映しましてどういうふうに法制化するかということをいま真剣に検討しておる状況でございます。
#172
○村山(喜)委員 そこで租税特別措置法の問題でございますが、この法人税関係の予測と実績の対比は、塚田委員の資料要求によりまして本日出てきておるわけでございます。この説明をお願いします。
#173
○高橋(元)政府委員 租税特別措置の減収額を毎年予算御審議、税法の御審議のために当委員会に御提出しておるわけでございますが、それに対する実績はどうなったかというお尋ねがたびたびございます。個人関係は一人一人の所得者の所得の高さというものによりますので、これは実績と申しましてもちょっと実行上把握できないということはお断りを申し上げねばいけないわけでございますが、法人につきましては先ほども引用させていただきました会社標本調査というのがございまして、これはサンプリングではございますけれどもかなり正確に全会社の決算ないし収益の状況というのは把握できるわけでございます。その中で特別償却、準備金、税額控除及び所得控除、各項目にわたりまして申告書、それから調査書等に基づきます実績が出ておりますので、それを集計いたしましたのが本日御提出をいたしました五十四年度減収額、二十項目に分けての減収額でございます。ただし、実際の税収の見込みと申しますのは四月から三月の現実の会計年度税収でございますから、見積もりの段階で御提出しておりますのは四月−三月の税収に対していかほど減収が起こったかということでございますし、会社標本調査の方はどうも国税庁の事務の流れからしまして二月から一月までの事務年度の申告書を集計いたしますので、たとえば税制改正の効果等は一年おくれでないと出てまいらないという差はございます。ございますが、法人税関係の特別措置による減収額というものを把握いたしますために、いまお手元にごらんいただいております資料というのは最新かつ最も詳細なものであるというふうに私どもは考えております。五十四年分全体で申しまして、交際費の課税特例を加えますと、予算の見積もりのときには二千八百六十億円の増収ということになっておりましたが、実績でやりますと三千二百九十億円でございますか、ほぼ変わらない実績が出ております。
 個々の項目につきましては御質問によりましてお答えをさせていただきたいと思います。
#174
○村山(喜)委員 予測はいままでずいぶんやってきましたが、実績が出てまいったのは初めてであります。しかし中をいろいろ予測と実績とを比較してみますと、大分狂いがあるなというのもあるわけですね。たとえば準備金あたりにおきましては、その前はもっと大きな数字が出されておったわけですが、トータルで二百四十億しか出てきていないわけですね。前は四百二十億、こういうような平年度の減収額が出てきているのに、そういうような状態に終わっている。個々の問題については時間がありませんので避けたいと思いますが、きょう出されましたもう一つの資料「昭和五十六年度租税特別措置減収額の見積り概要」、未定稿となっておりますが、こういうような資料というのもこれからこの委員会には毎年提出されるということになるだろうと思うのですが、その御用意がございますか。
#175
○高橋(元)政府委員 今後、法案の御審議に必要でございますので、毎年度提出をさせていただくように計らいたいと思います。
#176
○村山(喜)委員 財政負担率の動向から見ましてもうずいぶん自然増収が出てきたり、あるいは今年度一兆四千億の増税がなされたりするようなかっこうになってまいりますると、租税負担率や社会保障料金の負担額が昭和六十年度に見積もっていたものが二年ぐらい繰り上がったような形の中で達成ができるような状況になりつつあるのではないだろうかと思うのでございますが、本年度の財政負担率はどういうふうになっておりますか。
#177
○高橋(元)政府委員 五十六年の現在の国民所得の見積もりでまいりますと、一般会計税収だけで申しますと、国民所得比一五・二でございますが、国税、地方税合わせましたところで二四・二でございます。これに税外負担、日銀納付金等がございますので、それが〇・四ないし〇・五ございますから、二四・七前後というのが国民経済計算ベースの租税負担率ということになろうと思います。
 それでこれから先どうなるかということについては、これから先の国民所得が毎年どう動くか、それから税制が現在のままの税制ということでそこからどのくらいの税収を生み出してくるかということはなかなかむずかしいわけでございますけれども、いま一五・二と申し上げました一般会計税収が毎年弾性値一・二で伸びてこれから先国民所得が、またGNPが一一・七%の等率で毎年伸びる。これは実際はなかなかそうはいかないのでしょうけれども、そういう新経済社会七カ年計画の見直しに合わせました推定をいたしますと、五十六年度一五・二というのが五十九年度には〇・七ぐらい高まるのではないかというふうに思います。
#178
○村山(喜)委員 ことしは主計局ベースでやりますと二四・二だ、国民所得ベースに直しますと二四・七、社会保障の負担率が一〇・一です。合計いたしますと三四・三という高い率になってまいります。それではその前の年は一体どうだったか。補正後の五十五年度の場合には二二・九だ、社会保障関係の負担が九・七で三二・六だ、そして政府の六十年度ベースの計画によりますと租税の負担率が二六・五ということになっているわけでございますが、どうもいまのテンポの速さからいけば、これは六十年にならずして五十八年ごろには、いまのまま減税をやらないでいくとするならば高い租税負担率になっていくのではないだろうかという気がしてならないわけでございます。したがいまして、こういうような財政負担率の問題を考えてまいりました場合には、国民の今日のいわゆる消費動向というようなものが大変心配になってきている状況の中では、そこら辺ももう少し検討し直さなければならないのではないかという気がいたします。この財政負担率の動向は、いま主税局長のお話ではこれからの上がり率は低いのではないかということでございましたけれども、どうもいまのは、説明として承りますと不十分な気がいたすのですが、来年度はもう増税ということは一切考えていないという前提に立ってのお話だというふうに確認してよろしいのですか。これは大蔵大臣答えてください。
#179
○高橋(元)政府委員 いま申し上げました数字は自然増収率でございますから、現行税制のままで推移したならばという数字を申し上げたわけでございます。政策的意図は含まれておりません。
#180
○渡辺国務大臣 総理大臣は、五十七年度の予算編成には大型の消費税、間接税ですか、そういうものは念頭に置かない、それで極力歳出カットをやって予算編成をやるようにということでございまして、私もそれでやろうと思っておるのです。一切置かないかどうかということについては、これはやってみないことにはまだわからぬことでございますから、要するに歳入と歳出ということは、歳出が切れなければそれに必要な財源が要るわけですから、それは一切ということはここでお約束はできないと思っております。
#181
○村山(喜)委員 わからないようなわかったような話でございますが、時間が参りましたので、次の問題は後の委員に譲りたいと思います。
 終わります。
#182
○大原(一)委員長代理 戸田菊雄君。
#183
○戸田委員 大臣が席を外されておりますから順序を変えまして、最初に国鉄の問題について若干質問をしておきたいと思うのでありますが、今回の「租税特別措置法の一部を改正する法律案新旧対照表」の百二十六ページ、第八十条でありますが、「日本国有鉄道の特定地方交通線に係る土地等を取得した場合の所有権の移転登記等の免税」こういう制度が今回新たに設けられましたね。このことで後で大蔵省の方にはいろいろ質問をしてまいりたいと思うのですが、国鉄から常務が参っておりますから、三点についてひとつ見解を示していただきたいと思うのです。
 その第一点は、国鉄財政再建措置法に基づいて、ローカル線の廃止等の問題については一応政令が確定して四十二線が出た、こういう状況ですね。そしてこれから地方に落としまして地方協議会を設置して、そこで代替輸送にするのか第三セクターにするのかということで種々検討を加える段階ですね。そしてそれをやってまとまらないということになれば、前途二年間行ってあるいは見切り発車、こういう筋書きで政府は進められていくようにわれわれは理解をしているのです。そういう状況ですと、租税特別措置法で免税制度の受け入れ態勢がすでにつくられているわけで、大分手回しがいいと私は考えているのです。恐らく関係者と大蔵省は相談をされたと思うのですが、さしあたって四十二線の廃線、近々中に七十七線来ましょうが、そういう見通しができたのかどうかですね。たとえば、税法ではこういうことになっているのです。「建物の所有権、地上権若しくは賃借権の保存、移転若しくは設定の登記又は」云々、こうなっているわけです。だからそういった見通しがついているのかどうか、これが一つであります。
 それからもう一つは、これはこの問題には直接関係ないのでありますが、いま国鉄部内としては遊休地の売却促進を、財政再建に寄与するという立場で全体割り当ててやっているようでありますけれども、そういう土地の売却状況を、額を含めてひとつ御説明いただきたい。
 それから、今回の四十二路線対象で、これが全部処分をされたということになりますると大体どのくらいの総額になっていくのか、七十七線にいったときにはどのくらいになるか等々の問題についても、その売却額というものについておわかりならば、あわせてお聞かせ願いたいと思うのです。
 以上、三点です。
#184
○加賀山説明員 お答え申し上げます。
 法律が通りまして三月十一日に政令が施行になりまして、現在その政令に基づきまして選定をいたす計算基準、これは運輸大臣告示で示されることになっておりますが、この告示がまだ出ておりません。近々出る予定だと聞いておりますが、これが出ました段階で具体的に線路の選定を始めるという段取りをいたしております。御承知のように政令でまず第一段階の選定をするという計画でございまして、新聞紙上等で四十二線七百五十キロということが言われておりますが、現在これにつきましての具体的な適用除外条件等さらに確認をいたすことにいたしておりますので、その具体的線名、キロ数は、最終的に確定するのにはまだ若干の時期を要すると思っておりますが、大体告示が出ました後一月ぐらいそういう作業をいたしました上で国鉄として大臣申請をいたしたい。その上で大臣の方で知事の御意見をお聞きになり、承認がおりてくるということになりますので、最終的に決定になりますのは五、六月ごろにはなるのではないかというふうに考えております。そうして、そういう線区が決まりますると引き続いて協議会を開始をいたします。協議会の中におきまして具体的にバス転換にするのかあるいは第三セクター等への転換を図るのか、いろいろな協議がその中で行われていくわけでございますが、当然その協議の際にいろいろな条件というものが協議の中身として必要でございます。したがいまして、その段階におきまして、当然バス事業に転換をして始める場合あるいは地方鉄道業として始める場合その他につきまして、その場合にかかってまいります税制の問題も一つの協議条件の中身という形になるわけでございますので、昨年でき上がりました法律の附則の中で、不動産の取得税等は免除するということが明示されておりますが、登録税につきましては、今回の法改正の中で一応諸条件を準備していただくという形になっているわけでございまして、したがいまして、二年間というのは決して――これは最終的に二年たてばその段階でいろいろ対策を考えるという形でございますが、協議が早く調えば今年度中にも、当然協議の調ったものからバス転換あるいは第三セクターへの転換という事実も起こり得るわけでございまして、そういう意味におきまして、当然それらに伴います諸条件というものを準備していただかなければならないというふうに考えているところでございます。
 それから第二点の御質問の、いろいろな資産売却の実績あるいは今後のこの特定地方交通線に伴います売却等がどうなるかという御質問でございますが、五十年以降大体国鉄におきましていろいろな不用地の売却その他をずっとやってまいりましたが、五十年以降大体百億から、五十四年度では百八十二億の実績を出しております。今年度、五十五年度におきましては、予算上三百億の予定をしておりまして、鋭意この目標達成に努力をいたしているところでございますが、さらに五十六年度、現在御審議中の予算案におきましては六百億を売りたいという計画で、現在いろいろ細部を検討しております。
 また一方、法律に基づきましていわゆる経営改善計画を立てるわけでございまして、現在その最終的な詰めの段階に来ておりますが、その中でも当然資産売却、いろいろな不用資産の売却あるいは現在使っております用地につきましても、さらにこれを整理をし、売れるものは売っていくというような対策を含めまして、現在検討を進めておるところでございます。
 その中で、当然、バス転換等になりまして廃線敷等が出てまいるわけでございますが、第三セクターへの譲渡につきましては、無償で譲渡、貸し付けということを考えております。それからバス等へ転換いたしました段階で出てまいりました廃線敷あるいは駅舎跡地等、こういうものを有償でやるか無償でやるかというような点につきましては、かなりこれからの協議の中身のあれにもよろうと思いますが、過去の実例から申しますならば、道路用地に廃線敷を提供したというような例もございます。こういう場合は大体十分の一の価格で道路管理者側に譲渡をしているというようなのが大体過去の実績でございまして、過去私どもが線路をやりましたうち、約百二十キロ分ぐらいをそういう形で処分をした実績が四十年以降ございますが、大体キロ当たり平均しますと二千四百万ぐらいの実績が出ております。
 今後、いろいろ地域が変わるわけでございますので、それらの売却価格がどのくらいになるかというのは個々に違いますし、推定も大変むずかしいということ、それから転換をいたします段階におきまして、第三セクターならばこれは無償譲渡という形になりますし、あるいは道路に転用する場合でもその価格の協定というものは今後の協議の中でいろいろ決まってまいります問題でございますので、現在の段階では、具体的にその資産がどのぐらいに見積もれるかということはちょっと推定がまだできかねる状態にございます。
#185
○戸田委員 申しわけありませんが、もう二点ほどちょっと追加さしてください。
 その第一点は、いまのように第三セクターにいった場合には、お話しされたとおり、処分ということになりますね。前途やってみなければ、坪当たり幾らで総額幾ら、その青写真はまだ出ない、こういうことです。それはよくわかる。同時に、地元へ行きますと、たとえば宮城のように丸森線が十七・四キロですね、福島まで持っていこうという計画だったけれども、どうもなかなか実現はしない、こう言っておる。ところが、地元の人たちはいま、この土地もおれたちが提供した、労役も提供した、全部やって、それでつくってもらったんだ。そういう地権者等の兼ね合いについては、これは全部処理はできているわけですか。それが一つですね。
 それからもう一つは、いま、大体六月に地方協議会ができてそれ以後ということになることは時期的にわかりました。だからそれ以後の見通しということになりましょうから、さしあたり四十二線でどのくらいの第三セクター受け入れがあって、そういう方向にいくかどうかはこれからですが、その第三セクターで、民鉄とかあるいは自動車会社とかそういうものの受け入れ体制の想定は、まあ当たってはいないのでしょうけれども、予想としてはどうですか。その引き取り人は出てきましょうかね。その辺ちょっと聞かしておいてください。
#186
○加賀山説明員 国鉄線には、先生御承知のとおり、国鉄自体で所有しておりますものと、鉄道建設公団がっくりまして公団の所有になっているものとございます。御指摘の丸森線は、鉄道建設公団がつくりまして公団の所有になって、国鉄が借り受けているという形でございますが、おしなべてそういういろいろな歴史がございますし、土地その他につきましてのいわゆる法的な権利関係というものは十分整理をしてあると思います。こういった問題、過去に、ずいぶん昔ですが、戦争中にいろいろ勤労奉仕をしたんだとか、いろいろな話を私ども聞いておりますが、そういう地元のいろいろな対策等につきましては、転換交付金等も政府の方から助成をしていただくということにもなっておりますし、今後そういうものを含めまして協議会の中でそういう地域の方々の御納得いくような解決策を十分配慮してまいりたいというふうに考えております。
 それから、廃止あるいはバス転換の対象になる受け入れ側の話でございますが、現在、そういう国鉄の線ではございませんが、具体的な動きといたしましては、御承知の野岩線におきまして福島県並びに栃木県並びに東武鉄道その他がありまして、引受体制をつくりまして第三セクターをつくろうという意思表示をいたしておりますが、その他のところにつきましてはまだ具体的な話は出ておりません。これからの問題でございますが、当然協議会の中でいろいろ御相談をしてまいれば、いろいろな形におきます、いわゆる市町村なり地方公共団体が参加するものもございましょうし、あるいは民間という形で引き受けるというような、いろいろケースは違うと思いますが、そういう方々が出てきていただけるものというふうに期待し、また、私どももそういう話し合いをまとめるべく努力をしてまいりたいと考えております。
#187
○戸田委員 どうもありがとうございました。国鉄の案件、もう結構でございます。
 それで、大臣、第一点の質問をいたしたいと思うのですが、今回の五十六年度予算編成に当たって大蔵省の方針としては、一つは財源不足、二兆円減額に伴ってどうするかということで四つの方針を出した、こう理解をしておるのです。その第一は、経済成長による増収でやる、いわゆる自然増収論ですね。第二は、国が使う予算を徹底的に削減する、いわば行革、削減。それからもう一つは、この自然増収プラス――いわば一、二のセット案、これでいこう。第四は、積極かつ大増税。大増税と政府が言ったかどうか、これはそういうことを取りざたされているわけであります。
 それが最近に至って、鈴木総理は、もう来年度以降は増税はやらないと。大蔵大臣もここでしばしばその質問に対しては、それはまさに天命だと考える、こういう決意を申されておるのですね。
 そういうことでいきますと、結局われわれの理解としては第二の、いわゆる行革、徹底した削減、そういうことでいきますと、こういうことになるのじゃないかと思うのですが、大臣はどうですか。
#188
○渡辺国務大臣 私は来年度以降増税はやらないということは言ってないのです。大型間接税のような新しい増税は頭の中に考えない。それで歳出削減をまず徹底的にやる、増税のことを考えると要するに歳出カットがなまくらになってしまうからそれはもう考えない、極力歳出の削減というものを行革とあわせてまずやるということだけでございます。
#189
○戸田委員 どうも微妙なんで、歯切れのいいところで言ってもらいたいのだけれども、大臣、いまの話を聞きますと二段階論法じゃないですか。増税をやらないとは言わない、しかしそれを考えると行革の方がなまくらになるからこれは考えずに、さしあたって行革を大中心でやるんだ、こういうことです。結局二段階じゃないですか。どうですか。
#190
○渡辺国務大臣 問題は、国民がどっちを望むかという問題でございますから、ことしも決して歳出カットをやらなかったわけではないわけです。五十六年度予算編成に当たっても御承知のとおり当然増が一兆九千億円あったのです。これはなかなか抑え切れない。抑え込んでもやっと一千数百億程度でしょう。しかし増税は一兆四千億しかやってないのです。しかもそのうち政府が使えるのは、一般歳出に回せるのは一兆一千億なんです。すると一兆一千億で一兆八千億か九千億をちゃんと吸収して、そのほかにエネルギーや何か新政策にもお金をつけているわけです。そうすると、八千億円くらいのお金をどこで調達したかという話になりますね。それはやはり歳出カットあるいは抑え込み、あるいは一部皆さんからも非難を受けましたが補給金でやるもの、六百六十億円住宅関係の予算を財投に回したというのも、幾つかあります。そういうことをやってつくったわけですが、まず来年度予算の問題に当たっては、ことしは抑え込みや何かをやっても、法律の規定のあるようなものはできないわけですよ。法律を直してもらわなくてはできるわけがないのですから。増収の方だけは今回は法案を出して、特別法で電電公社からも出してくださいといってつくったが、歳出カットではそういう法案は出てないわけです。だからそういうようなものを含めて、要するにこの際増税というものをまず考えないで、来年度の需要はどれくらいあるかということについては、いまのままでは中期展望で出ているように二兆円近いものがあるわけですから、その財源をそれも抑え込む、しかしこれは全部は抑え込めないわけですから、その分をどこかで切るわけですから、まずそういう切ることを一生懸命やってみようということを申し上げているわけです。それから先のことは、それはできれば万歳で何も言うことはないわけです。
#191
○戸田委員 まずそういうことで重点的にやってみようということであれば、私の考えからいけばこの租税特別措置というのは、言ってみればこれは補助金でしょう。だからこういうものを一番最初にカットすべきじゃないかと思うのですが、ことに財政担当大臣としてその点はどうですか。
#192
○渡辺国務大臣 ですから、租税特別措置というものを直せば反面増税みたいになりますが、物の考え方によっては補助金だ、だからこれはカットしたって補助金カットと同じだという考え方もあるわけです。ですから、それはいろいろなことを全部考えて、そういう間接補助金カットは考えなければいかぬと私は思います。ですから、どれくらい歳出を抑え込めるか、どれくらいどうしても抑え込めないかということを、まずやってみなければわからぬわけですから、いま国会中でそこまで手が回りませんので、国会が終わり次第早速始めたい、そう思っております。
#193
○戸田委員 途中大臣が抜けるようですから順序を変えたのですが、あとは順序で聞いてまいりたいと思うのです。
 さっき本会議でうちの佐藤委員も質疑に立って、私はきのうちょっと所用があって税調会長の小倉さんの見解を聞くことができなかったのでありますが、一貫して税制調査会の中期答申は実行していきたい、こういうことをほのめかしておるということをさっき伺いました。そういうことになりますと、一つは新経済社会七カ年計画、この関係で税制調査会ではこういうことを言っています。国民総生産の二%見当税金を取っていきたいと思うんだと言っております。そういうことになりますと、これは経済企画庁の方にお伺いしたいのですが、経済成長は名目一〇%、実質六%です。最終年次のGNPは四百二十四兆円、これを土台にして税金を取っていくことになりますと、五十七年、八年、九年、六十年の四年間どの程度になりましょう。
#194
○河原説明員 お答え申し上げます。
 ただいま御質問のありました各年次別に新経済七カ年計画でどのような税収のあれになるかということにつきましては、七カ年計画自体が中期多部門モデルで六十年の姿を描くようにできている関係で、途中年次の数値というのが計算機上はいろいろ出てきますけれども、その目的からいきまして六十年度の姿を描く、それが大体そのときの国民所得三百四十兆円なんですけれども、それの二六カニ分の一程度になるということで、その税収も国税幾ら地方税幾ら、そういった関係で出てまいりませんので税調の答申と直に比べるわけにはいかないというふうに考えております。
#195
○戸田委員 それは大蔵大臣も再々言っていることなんで、何も符合させる必要はないから、試算でも結構ですが、出ませんか。五十九年度までは出ているのですからベースがはっきりしているでしょう。
#196
○河原説明員 お答えいたします。
 経済企画庁の立場から六十年度の租税収入を出しまして、それを逆算していまの税収と等率に結んで出せばある程度の数字は出るかと思いますけれども、これは以前出ておりました財政収支試算ベースのような計算になりまして余り意味がない数値になるのではないかと思われます。つまり税調の答申の国税と地方税につきまして、そこを出発点として年次別の数値を出していくことになりますと、少し七カ年計画の考え方と異なりますので余り意味がないのじゃないかという気がしております。
#197
○戸田委員 これはある計算を参考にしたのですけれども、GNP二%の税額でいまの平均名目一〇%、実質六%、これを土台にして、それで社会七カ年計画を土台にして一端の試算をやってみますと、五十七年で六兆円、五十八年で六兆六千四百億円、五十九年で七兆三千五百億円、六十年で八兆一千二百億円、こういうことになりますから、最終年次までいきますと大体六兆円ないし八兆円のまさに空前の大増税、こういう状況なんです。税調で言っている試算でまいりますとそういう結果になるのです。これは大蔵省な経企庁長官は裏では百も御承知のはずだと思うのですが、その辺の見解はどうですか。
#198
○河原説明員 ただいま先生が計算されました数値については、増税分ということでございましょうか。(戸田委員「はい」と呼ぶ)それで、いまの計画におきまして、先ほども申し上げましたように、各税目別、それから国税であるか地方税であるか、それから国民経済計算ベースの税収でございますから、日銀納付金だとかそういうものも入りますし、それで相続税を控除するというようなかっこうになると思いますが、そういった細かいことを積み上げてやっておるわけではございませんので、その分についてもどうとも言えませんし、それから租税負担率といいますのは、自然増収といいますか、そういったもので上がっていっても上がっていくわけでございまして、自然増収と増税分とを分けて二六カニ分の一のうちどの分が増税分であり、どの分が自然増収であるかという計算もできないわけでございます。
 ただ、税調のものは一定のGNPを置きまして、それと予算規模を、GNPの伸びと同じと見た場合に、国税の比率を二ポイントぐらい上げることになる。それも自然増収の方を一%と見ておりますから、合計で国税の方が三%ということであったと思いますけれども、そういった計算になっておりますので、ちょっと企画庁としては税調の答申でもって租税負担率を幾らかという計算はできないことになっております。
#199
○戸田委員 時間がないから端的に答弁してください。
 それで、もしこれが試算として想定されるとすれば、主税局長どうでしょう、どういう税目なら六兆円ないし八兆円の税金が取れるか。いままでいろいろ検討された内容もあるでしょうが、税調でもそうだと思うのですが、どの税目なら大体この六兆円ないし八兆円のそういう税収を確保できましょうか。
#200
○高橋(元)政府委員 六兆円ないし八兆円という仰せでございますけれども、税制調査会の中期答申の基本的な考えは、国税の収入が歳出の中で八割を占めるようにしたい、それが財政再建と申しますか、特例公債から脱却するために基本的に必要だということを言っておるわけでございます。
 そこで、今後歳出がGNPと同じスピードで伸びるといたしますと、これから五十九年度までに、一〇・七というのが一般会計税収のGNPに対する割合でございますが、それが自然増収、弾性値一・二、それから経済成長一〇%という前提のもとで、当時は六二%でございましたが、八〇%に追いつくのにGNPの二%ぐらいは税制改正で国民に負担をお願いする必要があるということを申したのが中期答申の基本的な思想でございます。そこで六兆円ないし八兆円ということに固定的な意味があるわけではないのでございます。本年度一兆四千億円に近い税負担の増を国民にお願いをいたしまして、その結果一般会計の歳出に対する税収の割合は六九%というところになりました。五十五年度が六二%、五十六年度が六九ということにになったわけでございます。そこから八〇%という税収の水準まで到達をいたしませんと、特例公債なしで国民の需要を賄っていくということがむずかしい。それをどうやってやっていくかということでございまして、どういう税目があるかというところまで実は中期答申は考え及んでいないわけでございます。したがいまして、所得税であればどうか、法人税であるとすれば、これはとても財政を支えるだけの力がなさそうだ。そうすると新しい間接税はどうか、こういうことを検討しておられるわけです。私どもは、いまお尋ねでございますけれども、即座に中期答申の基準を満たすためにどういう税目を選ぶかというお話に対しては、お答えするだけの用意を持っておらないわけでございます。すべてそれぞれの年度で社会、経済情勢というものを踏まえて、毎年度の税制改正の中で考えてまいるということ以上のお答えはできないことをお許し願いたいと思います。
#201
○戸田委員 それからもう一つこの際に聞いておきたいのですが、それは大蔵省の財政収支試算ですね、いまの税の伸び率、この見込みで計算してまいりますと、これもある計算ですが、五十六年度で一兆一千三百四十億円、五十七年度で一兆三千六億円、五十八年度で一兆四千八百億円、五十九年度で一兆六千九百四十四億円、六十年度で四兆九百八十二億円、大体こういう状況になっていくようでありますが、この辺の試算は数字として持っていますか。持っていればちょっと教えていただきたい。
#202
○高橋(元)政府委員 ことし予算委員会、それから当委員会にお出ししました「財政の中期展望」、これの中での税収の見方は、これは経常部門と投資部門と合わせまして全体として一一・七%の経済成長率に対して弾性値一・二という中期的な見方をしまして、毎年一四・〇四%ずつ税収が伸びるという計算をしてここに書いてあるわけでございます。それを投資部門と経常部門に分けて書いたわけでございます。したがいましていまちょっとお示しの数字は私どもそうであるともないとも直ちにお答えできないわけでございます。(戸田委員「超過税収」と呼ぶ)
 これは現行の、つまり五十六年度当初に持っております税制が今後続くという見方でございますから、これの中の税目がどうであるかということはございませんで、所得税からトランプ類税までまぜまして、全体の税収が毎年一四・〇四ずつ伸びていくという想定を置いているということがこの試算でございます。
#203
○戸田委員 余り時間がありませんから大ざっぱなことを聞いて……。
 もう一つ特例公債の解消問題ですね。これは御存じのように財政収支試算でもって明確に出ておるわけですが、この大蔵省の一月の試算内容によりますと、公債残高が六十年度で一六・八%、こういう状況になってまいりますね。ですから、たとえばいま主税局長がお話をされた超過税収あるいは財政収支試算の歳出減少額、これも昨年より一%減少でことしは四・三%、これを抑えたんですね。だからこの程度でいけば、やはりこれに対する支出減額もあわせて出るわけですから、それと超過税収、それから自然増収とを含めますと、これは五十七年から八年の間に特例公債の解消は実現できるのではないか、スピードアップできるのではないか、こういう考えを持つのですが、この辺はどうですか。
#204
○吉野(良)政府委員 先般国会にも御提出申し上げました「財政の中期展望」の試算によりますと、御指摘のように五十七年度におきましてはいわゆる自然体で推計をいたしました歳出と、それから歳入面につきましては、先ほど主税局長からも御答弁がございましたが、いわゆる自然増収のみという考え方で推定をいたしました歳入の数字との間に、御案内のように約二兆七千七百億円の差額、ギャップが生じているわけでございます。同様にまた五十八年度におきましては、その歳出と歳入とのギャップが四兆九千六百億ということに相なっているわけでございます。
 で、これも先生御指摘になりましたが、特例公債を五十九年度にともかくゼロにするという前提に立ちました場合のギャップでございます。この五十七年度に一応試算をされます二兆七千七百億といいますギャップは、これは先ほど大臣からも基本的な考え方として御答弁がございましたが、まず何よりもやはり歳出の削減、広い意味での行政改革も含めました現在の制度なり運営のルールなり、そういったものにまでメスを加えてまいりまして歳出削減に全力を挙げてまいる。五十七年度におきまして御提出申し上げております歳出の推計の水準よりも二兆七千七百億円という大きな歳出削減がもし可能でございますれば、事柄の筋道として五十七年度の要調整額は解消をされる。そういった筋道と同様に五十八年度も筋道を通りまして、五十八年度に四兆九千六百億円の要調整額を解消し得、さらにまた五十九年度に六兆八千億円に上ります同様の意味の歳出歳入の面のギャップを解消し得ますならば五十九年度に特例公債から脱却が可能である、こういう姿が描かれているわけでございます。
#205
○戸田委員 そこで、所得税の問題についてちょっと見解を聞きたいのです。
 経企庁が参っておりますから、最初に五十六年度の公共料金値上げ、相当大量にわたって行われるわけですが、過日、二月段階ですかお伺いをしたときには、今次公共料金値上げ等に伴って物価波及、消費物価の引き上げ、こういったものは大体〇・八%程度だ、こういう見解。どうもそれじゃおさまらないのじゃないかというのが私の見解ですが、これはどのくらいに考えておりますか。その内容をひとつ教えてください。
 それからもう一つは、非消費支出の推移が非常にふえてきておりますね。これは一体どういうふうに見ているのか。
 それから給与所得の階層別納税人員、これも大分ふえてきておりますが、これはいいです。大体大蔵省の資料にも出ておりますから。
 前段二つの問題についてまず見解を示していただきたいと思います。
#206
○齋藤政府委員 先ほど五十六年度について〇・八%に見ておるという御指摘がございましたが、これはちょっと誤りでございまして、五十五年度の公共料金のうち予算関係のものについて当初〇・八%という見込みを立てておりました。(戸田委員「補正を含めて」と呼ぶ)いや、当初でございます。五十六年度につきましては、公共料金のうちの予算関連のものとして現在大体〇・三%程度というふうに試算をいたしております。予算関連以外に当然公共料金がございますけれども、これにつきましては、今後事業者等から申請がなされてその上で決まるものでございますから、現時点では、これにつきましてお答えするのは差し控えさせていただきたいと考えております。
#207
○戸田委員 ちょっといま内容について読み上げますから、この範囲のものでいまの見解ですか。それはたとえば、消費米価、これは四月一日、三・一五%、それから消費者麦価、これが五・六%、それから国鉄運賃九・九%、国立学校の入学金、受験料、高校入学金、受験料、郵便料金、はがき、これは三十円から四十円、封書が五十円から六十円、はがき二十円から三十円、塩、平均三・二%等々四月以降、一月二十日のものもありますが、この範囲でですか。
#208
○齋藤政府委員 御指摘のような品目を含めまして、〇・三程度ということでございます。
#209
○戸田委員 経企庁にお伺いしますが、予算委員会で総理初め回答しているのは七%程度で当初努力をする。しかし、これは八%に近い七%台でいかざるを得なくなるのじゃないですか、五十五年度、どうですか。
#210
○齋藤政府委員 いまのところ本年度につきましてどのくらいになるという公式の計算を実はいたしていないわけでございますけれども、CPIにつきまして現在わかっております一月の全国の水準が仮に横ばいになるという計算をいたしますと、五十五年度の前年度比上昇率は七・七%という計算に相なります。
#211
○戸田委員 どの時期までいったらこれは明確にわかりましょうか。それが一つです。
 それからもう一つは、非消費支出の推移についてちょっと伺ったのですが、五十五年度でいいですから、わかったらひとつ。
#212
○齋藤政府委員 五十五年度の全国のCPIが出るのは四月の末というふうに予測されております。
 それからもう一つお尋ねの非消費支出につきましては、これは対前年増加率で五十五暦年は一二・六%という数字が総理府統計局調査によって出ております。
#213
○戸田委員 時間がありませんからこちらで資料の話をして、間違っておる点があれば御指摘を願いたいと思う。
 そこで大臣、物価上昇はやはり七%を超すことはもう間違いない。非消費支出も一二・六%、これもやや上がってくる。それから給与所得の階層別も大蔵省の資料によってもおおむね二十九万人ぐらいふえている。さらに源泉徴収課税の見込み人員も同様にふえている。給与所得と税金の関係は一つの例だけ申し上げますが、サラリーマンの五十六年分の税金で試算をしたものですが、三百万円の収入で五十五年分、夫婦と子供二人、これが仮に五%ベースアップということになると三百十五万円、八%で三百二十四万円、一〇%で三百三十万円、これでまいりますと大体五%で税額で三・九%増ということになる。八%の場合ですと四・一%、一〇%で四・一%、こういうことになるのです。そうしますと、今回一兆三千九百六十億円等を含め自然増収四兆五千億の半分以上が大体源泉もしくは勤労者の税金、こういうことで取っていくわけですね。物価がこういうこと。さらに公定歩合の引き下げによって、私の計算ですといままで五十年以来おおむね九回くらい、その間若干二回ほど引き上げもあったようでありますが、これによって貯金目減りはざっと計算して七兆円ぐらい。踏んだりけったりという状況じゃないでしょうかね。それで大蔵省も確かに若干所得税の改善措置はやりました。二十万を二十九万円に控除額を上げるとか、二、三点についてやりました。しかし一貫して税率と最低限、そういうものは据え置きでしょう。だからそういうところで大増税、実感として実質的にも非常に重税感というものを感じている、これが私はいまの勤労者の大部分の考え方だと思うのですね。それが二千万人以上いるわけですから。こういう問題について、やはり五十七年度、むしろいま勤労者の皆さんが要求している物価調整減税ぐらいは最低やるのが当然じゃないだろうか。仮にこれがどうしてもことしできないという状況であるならば、財政特例法でもって、これから戻し税か何かわかりませんが、三千億見当やるという腹づもりのようですが、それに含めて五十七年度以降はどうしてもこの税率ないし課税最低限というものを含めて全面改善措置をとるべきじゃないかと考えますが、その辺の見解はどうでしょう。
#214
○渡辺国務大臣 それは課税最低限を動かしておりませんし、税率を動かしておりませんから、月給が上がれば上がった分について課税がふえる、これはもうやむを得ないことでありまして、私なども六五%ぐらい大体取られますけれども、それはやはり極端なものですよ、正直な話が、身をもってひしひしと感じておるわけですから。しかしながら現実の問題として、現在の財政事情から見てなかなか大幅な所得税減税をやれる状態にない。もう一つは、課税最低限は諸外国と比べて日本は非常に順調に引き上げてまいったわけですから、それがここに来て足踏みしているということも事実でございます。
 したがって、今回は増税もお願いしなければならぬという状態の中なので、ひとつそれは御勘弁をいただきたい。税金は払えない人は――物価が上がった分だけは、もっと所得の少ない人の方があるいはひどいかもわからない。したがって、そういうこともあって所得税減税は御勘弁を願いたいと言ってきたわけですが、いろいろな関係があって各党との交渉もあり、議長裁定も出たことでございますから、私はその議長裁定の線には文字どおり忠実にそれは尊重しますということを申し上げているわけです。
 五十七年度以降については、これも問題は財源の見通しの問題でございますが、一方あなたのおっしゃるような現実の姿もある。そこで私はかねてから直間比率をもう少し何とか動かせないかなということをお願いしてきたということは、全然考えないわけではなくて、何か財源的に余裕が出れば考えたいという気持ちがあるから言ってきておるわけでございます。ですから歳出のカット、それから景気を維持して自然増収がどれぐらいとれるようにするか、これもやはり景気をよくしなければなりません。そういうようなこと。それからまた別なことが何かできて、しかも財政再建の見通しが立てば、私は所得税減税に決してやぶさかではございませんということをかねて申し上げておるわけであります。
#215
○戸田委員 租税特別措置について若干見解をお伺いしたいのですが、配当所得、これはうちの塚田議員の要求資料でありますけれども、大体捕捉率六千三百九十億円、減収額五百八十億円、これは見積もりで確定じゃありませんが。それからもう一つは利子の関係は、少額貯蓄の方も入っておりますが、六兆三千八百六十億円へこういうことになっておるのですが、これは明らかに改廃の問題で、五十九年度グリーンカード導入に伴って、これは廃止をいたします、総合課税にいたしますということはもう決定をしているようでありますから、それはいいのですが、どうもそのグリーンカード導入について最近何かいろいろな争いがあって、どうも当局の姿勢も危なくなってきたのじゃないかといううわさが巷間伝えられるのですが、これは大臣どうですか、大丈夫ですか。
#216
○渡辺国務大臣 それは私どもとしては、かねてこれも繰り返して申し上げておるように、所得の公正な捕捉という点からやらなければならない。しかしながらこれについては、いまの税率というのは理論的には八千万円以上九三%も取られるというような仕組みになっておって、八千万円の最高限は二十何年間動かしてないでしょう。二年や三年の話じゃないのです。物価調整から見たら何倍か違っておるということでも動かしていない。そういうような問題もあるから、恐らくそれが実施されるというときまでには所得税の仕組みというものについても抜本的に考え方を見直しをする必要があるんじゃないかということもかねて私は言っておるわけです。それはグリーンカード制度を定着させていきたいという考えから申し上げておるわけであります。
#217
○戸田委員 それからもう一つは銀行の貸し倒れ準備金の問題ですが、これは最近、こういう事実があったのです。たとえば弟が事業をやっておった。その保証人になった。銀行からその他一千万円ぐらい借りた。ところが残額が七百二十万円ばかり残りまして、本人は夜逃げしていなくなった。自分が、連帯保証人が払わなければいけないようになった。勤め人ですから持っておる金がない。やむを得ず、まだやめなくてもいいのですけれども、職場をやめて退職金で充当せざるを得ない。言ってみれば、銀行の貸し付けの場合はそのくらい厳格ですね。容赦ない。不良貸し付けが出たにしても、これは絶対取りっぱぐれがないのですよ。払えなければ、家と土地を持っていればそれをちゃんと取ってしまうし、競売に付する。そのくらい厳格にやっておるのです。確かにいままで、千分の十五からいろいろ努力してまいりまして、今回千分の三まで下げた、こういう努力については私も多としますが、これは仮に年度内、決算期までに取れないものでも決算期が変わればまた追及して取っていくのですから、絶対取りっぱぐれがないですね。それが大蔵資料でも約一兆円を超える。それが全部内部留保になっていく、財産になっていく、こういう状況ですね。だからそういうものにまで政策減税をやる必要があるのかどうか。これは即刻、でき得れば全廃でもいいと思うのです。銀行だっていろいろあります。信金もあれば相銀もある。あるいは地方銀行もあれば都市銀行もある。いろいろ段階があるから、そういう点ではいろいろ差別があるでしょう。ありましょうが、そのくらいぴちっとやっておるのですから、それでおまけに大蔵省も何年も努力をされてきたけれども、歩積み両建てだってまだ銀行はやっていますよ。通達を何回も出して何十年とやってきたけれども、まだそういう点が徹底しない。なぜそういう状況なのか。これはどうですか、大臣。
#218
○渡辺国務大臣 それはいままで千分の十五とか、ゆるふんであったことは事実なんですよ。ですからこれは相手方に言わせれば言い分もあって、担保はとっておるけれども売れない担保をみんな持ってしまってなかなか売れ口がない。そのうちに金利がどんどんかさんでしまっておる。私もそういうような現実を幾つも知っています。特に中小のところなんかにいっぱいあります。そういうような実態もあって、なかなか処分もできないで困っているところもある。そういうのが数字の上にも出てきてますね。現実に貸し倒れになって整理したものが千分の一ちょっとくらいでしょう。ですから、そういうふうな、しかし表に出さないで焦げついているのもある。したがって、今回は千分の五から千分の三に下げましたが、さらに実態を見て実情に合うようにしていきたいと思っております。
#219
○戸田委員 これは実情に合ったような指導を含め、監督を含め、行政措置をあらゆるものをとっていくでしょうが、いま大臣がおっしゃられたことで私はいいんですけれども、ひとつそういう点の再見直しですね、これを一回やっていただきたいと思うのですね。私たちも出せというなら現実は幾らでもあるのですから……。だから、そういう面を踏まえてこれからの制度的な改廃等については私たちも努力をしてまいりたいと思っています。
 最後にお伺いしますが、政策減税を各税日ごとに私も拾って――きょうは時間がないから一つで終わりますが、関税が今回改正になりますね。これは基本的に私は賛成です。党もそういう態度です。ただ、一つその中に原子力用品とか飛行機とか、あるいは重油の脱硫、そういった問題について一貫してやはり関税の部面から政策減税をやっているんですね。額を聞きましたが、余り多い額じゃないのですよ。だから、この手のものなら確かに原材料を安く買って、そしてコストをできるだけ低くしていって、経済全般に余り多くの影響を与えないという配慮はわかりますけれども、その問題が一つありますので、この問題に対する見解をひとつお伺いしておきたい。
 それからもう一つは、最近多国籍企業というものが、日本も諸外国へ大分進出をしているわけです。そういうものに対する脱税といいますか、南アメリカ等に参りますともっと税金のかからないところがいっぱいあるわけですから、そういうところに投資をして、そこを事務所にしていろいろやっているということもあるが、きょうは時間がないから、具体的に触れるわけにまいりませんが、いま国際的に日本の経済も全般的に大進出をしているわけですから、そういう脱法行為その他に対してどういう処置をとっているか、時間ですから、最後に二点だけ伺って終わりたいと思います。
#220
○清水政府委員 前半の関税の問題について私からお答えさしていただきます。
 御指摘の関税におきまする減免制度という政策的な措置につきましては、従来からも毎年度の改正の機会にこれを見直すように努力はいたしてきております。そういたしまして、制度の設定の趣旨と、それから主としてこれは国産が可能かどうかというようなことに着目してやってきておるわけでございますが、国産可能なものは逐次これを除外していくということはいたしてきておりますが、今後におきましても御指摘の御趣旨を踏まえまして、業界の実情等をよく把握いたしまして、きめ細かく見直しの努力を続けてまいりたい。具体的には今回の暫定措置をお願いいたしておりますけれども、四月からの問題にいたしましても幾つかのものにつきましては見直しをして減税幅を縮減していくというようなことを鋭意検討いたしておりますので、御了解を賜りたいと思います。
#221
○梅澤政府委員 ただいま委員がおっしゃいました多国籍企業の問題も含めまして国際間の所得移転の問題あるいは課税の適正化の問題でございますが、これは先ほども御議論がございましたように、五十三年の税制改正でいわゆるタックスヘーブンに対する課税の強化を図ったわけでございますが、今後の検討課題といたしましてはトランスファープライシングの問題も含めまして、これは国際経済情勢がどんどん進展してまいりますので、諸外国の法制も必ずしもまだ定着していない、非常に流動的な状態でございますが、そういう点の検討も含めまして今後真剣に取り組んでいきたいというふうに考えておるわけでございます。
#222
○戸田委員 ありがとうございました。これで終わります。
#223
○大原(一)委員長代理 柴田弘君。
#224
○柴田委員 最初に行政改革とそれに関連して五十七年度の予算編成の方針について大臣にお聞きしてみたいと思います。
 大臣の記者会見における発言あるいは昨日の土光会長との懇談、そしてきょうの本会議、また当委員会における発言等、いろいろとお聞きしておりまして、だんだん大臣のお考え方もより一層鮮明になってきたと思うわけでありますが、当初は大臣は、とにかく五十七年度大型新税は導入をしない、それから既存の税制による増税も考えないで思い切った歳出削減によって予算編成をする、こんなふうに御発言になっていたわけであります。
 昨日の土光会長との会談によりまして、いまの段階では経済協力の問題があり、あるいはエネルギー対策の問題もある、社会保障の問題もある、そういったことで、やはり税収の見通しがつかないので増税一切なしとは言えない、こんなふうに御発言になっておるわけです。
 そういうふうに考えてまいりますと、いまも委員会でのやりとりがあったわけでありますが、とにかくここではっきり言えることは、五十七年度の大型消費税は導入をしないが、しかし既存税制の見直しによっての増税というものは考えていかなければならない場合もあるのではないだろうか、これが一つです。
 それからもう一つは、大臣、五十七年度はとにかく大型新税は念頭にないわけですね。これは導入しない。ところが、五十八年度以降、これはもう導入をしないとは言えない、こんなふうに理解を私はいたしておりますが、そのような考え方でよろしいかどうか、お聞きをしておきたいわけです。
#225
○渡辺国務大臣 大体そんな考え方だと私は思いますが、要は、要するに歳出を守っていくために歳入があるわけですから、だから歳出がなくなってしまえば歳入は必要ないのです。
    〔大原(一)委員長代理退席、山崎(武)委員長代理着席〕
ですから問題は、仮にそれじゃことしと同じ予算を来年組みますよと言うと、またゼロリストなんていう話になってしかられちゃうかもしれませんが、それじゃゼロベースで同じくやれと言われても、たとえば年金を預かっている厚生省では、老人がふえるのに年金をふやさないという、人の数がふえるのだから、じゃ、年金の国庫補助額でも少なくするのかという話になります。なかなかむずかしい問題がいろいろある、一つの例だけれども。ですから、そういうふうになかなか切りづらいものもあるでしょう。それからエネルギーをふやせ、これは一番大事な政策だ。もう世界に対して約束したみたいに、ともかく海外経済協力は倍にするともう言っちゃったわけだから、過去五年間の倍にこれから五年間でしますということになれば、こういうものもふえるわけです。そういう分を、既存のものだけで当然ふえていくものを全部はめ込めるかどうか、これはやってみないことにはわからないのです。しかし現在の法律制度はそのままではできっこない。したがって現在の法律制度にも改正する案を出さなければ、とても二兆円からのふえるものを規模をふくらまさないで抑え込むということは不可能に近いと私は思います。したがって総理もきょうおっしゃるように、これには国民の代表である国会の皆さんの御協力を得なければ困りますから、総論賛成、各論反対では困りますよ、そのときにはぜひ御協力いただけなければできっこないのは最初からもうわかっているのです。政治生命のかけようがないわけですから、それは総論に賛成いただく以上は各論でも御賛成をいただくということになれば、どこまでできるか。増税ということを頭に置いたのではだめだから、増税はないという前提で、まずシビアなものをつくってみようというのがいまの心境です。
#226
○柴田委員 いずれにいたしましても、行政改革、思い切った歳出削減によりまして五十七年度予算編成をしょう、これが天命である、あるいは政治生命をかけるという総理並びに大臣の決意であるわけでありますが、こういった背景には、私が考えますのには、五十六年度の予算編成、つまり一兆四千億に及ぶ増税、しかもそれが、いつだったか当委員会におきまして私が御指摘をいたしましたように、とにかく会計検査院から五千七百億円に及ぶむだ遣いを指摘される公費天国、あるいは行政改革も本当にお茶を濁した程度のことである、あるいは私立医大に見られるような補助金の制度のあり方、確かに財政再建ということについてはその必要性を国民が認めておっても、そういったいろいろな現実がある間は増税路線というものは国民の理解は得られないであろう、それは政治不信を招くであろうということを私はたしか御指摘を申し上げて大臣の御見解を伺ったわけです。そういったいわゆる五十六年度予算の増税路線に対する反省があったればこそ、五十七年度の予算編成については思い切った歳出削減、できる限りの行政改革、そして大型新税にはよらず、こういった政治生命をかけた決意表明になった、私はこんなふうに理解しておりますが、簡単で結構ですので御答弁を願います。
#227
○渡辺国務大臣 私も反省はないわけじゃないが、やはり増税の効用でして、増税という問題が出たものですから、それならもっと経費を切れという国民世論になったわけです。国会の中でもこんなに歳出を切れ、行政改革をやれ、切り方が足らないという御議論をいただいたことは初めてじゃないか。国会というのは国民世論を敏感に反映するものだと思って私は感心しているのです。増税がなければこんな話はどこからも出てきませんよ、政府、出しなさい、出しなさいと言うだけで。しかも政府はもう借金はしないのですから、出すのにはどこかでいただかなければ出せないのだから、ではいただきますよとなったものですから、それは困る、もっとむだ遣いを切れ。しかし問題は、どこに幾らむだ遣いがあるからという問題で、部分部分少しは言ってくれますが、何千億にも及ぶようなことを――軍事費を切れなどと言う人もありますけれども、そういうことはわが党としてはなかなかむずかしい話なので、そういうふうに具体的に例示をして何千億というものをそろえてくれれば、われわれも一緒になって真剣に考えたい、そう思っております。
#228
○柴田委員 この歳出削減、広い意味においての行政改革ですが、この中身につきましては、もちろん第二次臨調の審議結果の答申を受けて行われるということも考えられるわけでありますが、財政当局としてはここで一つの明確な指標というものがあってしかるべきではないか、こんなふうに思います。ちなみに五十六年度予算の編成については、一つは国債減額二兆円ということ、それから予算の伸び率が一けた台、こんなようなことが指標になっておった、こういうふうに思うわけであります。
 それで私は大臣に突っ込んでお聞きしたいわけでありますが、この五十七年度、いわゆる大型新税を導入しない、増税もなるべくやりたくない、こういうことを前提に置かれて予算編成をされると思うわけであります。この目標といいますか指標といいますか、そういったものは、たとえば国債の減額がどうだとかといったことも含めて、具体的に「財政の中期展望」もあるわけでありますが、御答弁をいただければと思います。
#229
○渡辺国務大臣 まだ具体的には何も決まっておりません。「財政の中期展望」にあるように、要するに五十九年度までに赤字国債から脱却するということです。あとはいま言ったようなことで、まず歳出のカットというもので対応していきたい。経済はやはり順調に伸びてもらわなければ自然増収は入らぬわけで、予定の税収も入らぬなどということでは困ってしまうわけですから、そういうようなことにも配慮をしながらやっていきたいと思っておるわけです。
#230
○柴田委員 「財政の中期展望」は財政運営の一つの手がかりだ、これは大臣がしばしば予算委員会等で答弁をされておられます。歳出のカットの規模というものは、先ほどの議論にもあったわけでありますが、やはり五十七年度は、ここで示された要調整額が二兆七千七百億ですか、その辺が一つの規模としては考え得るところではなかろうかなというふうに私は考えるわけです。具体的な目標がないとおっしゃるわけでございますが、そこら辺のところはどうなんでしょう。
#231
○渡辺国務大臣 ですから「財政の中期展望」は一つの見方なんですから、あのままでは、切らなければふえてしまうわけです。具体的にどういうふうに洗い直しをするか、いままだ五十六年度予算の審議中でございまして、予算さえも上がっていないというのに、その次の上がらない予算の話をここで議論したって余り意味がないわけでして、一刻も早く予算を上げていただいて、税法等も歳入法案も上げていただいて、早く国会から解放していただいて早速にそれに取り組めるようにしてもらいたいと思っております。
#232
○柴田委員 確かに大臣のおっしゃることも一理あるわけでありますが、やはり来年があり、いまがあるわけですから、しかも政治生命をかけて歳出カットをやるというのですから、これは五十六年度予算の反省があり、五十七年度予算の編成がある、こういうふうに考えておりますので、そういったことをお聞かせいただくことが大事ではないかと私は思って御質問をしておるわけであります。
 それで、ゼロリストというものを昨年出されました。これはいろいろな見方がありました。評価をする方もありましたし、いや増税キャンペーンの一環だという批判もあったわけです。私が考えますのに、これはやはりこういったものでなくて、思い切った歳出削減をするんだ、行政改革をやるんだ、こういうときには、財政再建のためにも、中期展望を踏まえた第二次臨調の答申もあるわけでありますが、それを踏まえて再建期間中の中期展望に立った財政再建計画といいますか、あるいはまた行財政計画と言ってもいいと思いますが、そういったものを国会の方に提出をしていただいて、先ほど大臣がおっしゃいましたように国会で議論をしていく必要があるんじゃないか。しかも、これはすぐまたお聞きしようかなと思っているのですが、総理が秋には行政改革の臨時国会を開く云々という話もあるわけであります。そういったことで、やはりそういった中期的な財政計画を提出をされることが必要になってくるんじゃないか。それが国会で審議される一つのたたき台にもなりますし、また同時に、国民大衆、各界、各層に対してこういった考え方で財政再建を進めていくんだぞ、行政改革を進めるんだぞ、こういった議論ができる一つのたたき台として私は必要になってくるのではないか、こんなふうに考るわけでございます。どうでしょう。
#233
○渡辺国務大臣 自由主義体制では、厳格な意味での計画というものがつくってもそのとおりならぬわけです。一つの目安、ガイドライン的なものはできますが、計画というきちんとしたものをつくっても、経済は変動しているわけですから――早い話がソ連だって中国だって計画をつくったって全然合わないわけです。ああいうふうな計画経済の国ですら合わない。おてんとうさま一つで農産物なんというのは違ってしまうわけです。だからそういう計画というのはむずかしい。
 もう一つは、その計画の基礎になるところの制度というものが、いまのままではどんどん広がっていくわけですから、この制度を変えるということをやらない限りは、いまのままで計画をつくったって仕方ないですね。制度をこういうふうに直そうという決意がまずできなければ、それに皆さんの御協力を願わなければならないというここの問題でみんな利害関係が違うわけです。だけれども、その中で最大公約数的にいけるものはこの程度のものだというものは、われわれは制度を変更する上において原案を出さなければならぬ、それに対して皆さんからも私は御意見も聞きたいし、できれば各党がこことこことここを切れというように具体的に出してもらって、そういうふうにしてもらわぬと、ただ切れ切れと――私も一生懸命やるのですよ。やるけれども、各党知恵を持ち寄っておれたちの意見も尊重しろ、ここを切れという案を出してもらうと非常に私は参考になって、一緒になってやらしていただきたい、そう思っているのです。
#234
○柴田委員 大臣、私が言っているのは、命をかけて行革をやるんだ、歳出カットをやるんだとおっしゃっているのですから、これはもちろんいろいろな各党の意見を聞くということも事前には大事でありますが、命をかけた以上はこういったものですよということを、そのとおりになるかならぬかは別ですよ、いまソ連の話が出たわけでありますけれども、私はたたき台を出しなさいと言っているのです。ゼロリストということじゃなくて、議論をしましょう、そして国民各界、各層に御意見を聞きましょう、アピールしましょう、こういうことを正直に申し上げているわけであります。そういうものなら出せるでしょう。
#235
○渡辺国務大臣 出したいと思っています。
#236
○柴田委員 出したいということでありますが、いずれにいたしましても、そういったたたき台になる中期財政計画というものが出されなければ中期展望に立った財政再建論議ができないということ。それから、わが国の経済成長もいま少なくとも五%程度の成長が定着するかどうかという分岐点にあると思うのです。そうすればこの意味からある程度責任を持った中期的な財政運営というものを示す必要があると思う、そういった意味で出しなさいと言っているのです。
 それからもう一つは、今国会の議論をいろいろと見てまいりましても、五十六年度予算案審議を振り返ってまいりますと、所得税減税、福祉の問題、物価安定の問題、いろいろな議論が交わされました。もちろん行政改革の問題、補助金整理の問題等も議論が交わされた。結局そういった諸問題、その是非の問題はみんな財源問題に帰着することが多いわけなんです。ほとんど財源問題だと言ってもいい。その際に議論を交わすたたき台である中期展望に立った計画性を持ったものが示されてしかるべきである、こういうふうに私は思うわけです。これは政治の責任なんです。だからひとつ、出したいということですので、ぜひとも出していただくように要望しておきます。中期的な展望に立った中期財政計画……渡辺国務大臣「財政計画は出すと言っていない……」と呼ぶ)たたき台です。それを出しなさい、こういうふうに重ねて要求をしておきます。
 次は、所得税の問題に入らしていただきます。
 先ほども大臣が答弁なさっておりましたが、わが国の所得税の累進税率のあり方、その中に不公平感を助長するものがあるのではないか、こういうふうに私も思います。御承知のように六十万以下の一〇%から八千万以上の七五%まで十九段階の区分、これを住民税を考慮に入れますと軽減措置を含めても最高八〇%以上の税金を徴収されるということになるわけです。それで高額所得に適用される税率を引き下げるということ、これはいろいろな議論がありますので私は大臣の真意だけをお伺いして次の問題に行きたいわけでありますが、いずれにいたしましても大臣がそういう発言をなされて、果たして高額所得者というのはどの程度わが国にいるだろうか、こういうふうにちょっと大蔵省の方の資料をいただいて計算をしてみましたら、一・四%なんですね。これは二千万以上。五千万以上が八千六百八人。とにかく二千万以上で一・四%なんですね。それは確かに大臣がおっしゃるように、グリーンカード制実施に伴って総合課税になるのだから、勤労意欲というものがなくなるといかぬから、総合課税移行のときにはこういった問題も一遍考えなければいかぬだろう、こういうことであるわけでありますが、果たしてわが国の経済社会というものが今日そういった勤労意欲がなくなるような経済社会であるか。私は、まだまだ競争意識の強い社会だと思うわけです。しかも、いま財政再建の途中であって、低所得者の所得税減税云々と言っておるときに、グリーンカード制の批判をかわす一つの見返りとしてこういったことをおっしゃるということが時宜を得たものであるかどうか、私はちょっと疑問に思っておるわけなんです。この辺、これは私だけの考え方ですから大臣と食い違ってもしょうがない。またこれについての御意見があればお聞かせいただきたいと思っております。
 それからもう一つ、所得税体系を見直すということであるわけでありますが、税率の区分の問題で大臣の御見解をお伺いしたいわけです。先ほど言いましたように課税所得に関しては日本は十九段階ですね。これはやはり細分化されているというところにも問題があるのではないかというふうに私は思います。この細分化された一つのメリットというのは、収入の変化に応じた税の徴収が行いやすい、こういうメリットもあるでしょう。ところが一方にデメリットがある。このデメリットが大きい。収入が少しふえただけですぐ税金をがっちり取られる。物価高、インフレが進む昨今におきましては、名目賃金のアップが実質ダウン、こういった現象がサラリーマンの家庭を苦しめておって、現実にこれはサラリーマン家庭における一種の不公平感といいますか、税金を納めたくないなという厭税思想というものにもなってくるのではないかと私は考えるわけです。
 欧米各国の税率区分を見てまいりますと、日本は十九段階でありますが、アメリカが十七段階、イギリスが七段階、フランスが十三、カナダが十三、オランダが十、オーストラリアに至っては四段階、スウェーデンが十三ですか、こんなふうに日本より税率の段階区分が緩和されているといいますか、なっているわけですね。
 ですから、せっかく所得税の体系を見直されるのであるならば、こういった細分化された十九段階の税率をもう少し段階数を少なくして緩和したらどうだろう。そしてサラリーマン家庭においてのそういった不公平感なり厭税感というものをやわらげる方向へ行くべきではないか。これは一種の不公平税制の是正にもつながってくるのではないかなという気持ちを私は持っているのですが、どんなものでしょうか。
#237
○渡辺国務大臣 日本の分類が細か過ぎると言えば細かいかもしれませんが、これは非常に親切にできておるのですね。
 たとえば高等学校か何かを卒業して見習いで入って、年間に七十九万円しかもらわなかった、あるいはそれ以下だったという場合は税金がかからないわけですよ、給与所得者で。給与所得控除五十万円、自分の基礎控除二十九万円。その人が一年目に今度は二十万円月給が上がったという場合、課税最低限を超えて二十万円上がった、それは日本なら一割で二万円の所得税で済む。イギリス方式だったら六万円となるわけです。イギリス方式は最初から三〇%。それで、二年目になってまた二十万上がったという場合、日本だったら四十万上がってそれの一〇%だから四万円で済むわけです。イギリスだったら三割で、三、四の十二万円となるわけですね。ですから、低額所得者についてはゼロから六十万円まで、課税されるようになって六十万円までは一〇%でいくものを――一遍に六十万円なんか上がる人はいないですね。低額所得者が最初の一年で六十万円上がることはあり得ない。六十万円上がるには三年なり四年なりかかるでしょう。最初から三割ずつ取ることがいいのか、六十万円くらいまで上がるものはなだらかに一〇%がいいのか、またそこで二%とか細かい刻みで少しずつ上がるようにしてやった方がいいのか、どかんと格差をつけてやった方がいいのか。こう見えても日本は比較的月給は上がっていくのですよ、去年だけは少し足踏みで七%ぐらいしか上がらなかったけれども。ですから私は、この段階をもう少し簡略化するということは賛成です。賛成ですが、最初から三割も取るのはどうかなという気がしているのです、実際のところ。だけれども、やはり累進だ累進だと言いますけれども、累進をなくすためには、最初からいっぱい取れば累進は少なくていいわけですから、それはやはり物は考え方なんですよ。これでも政府の方はかなり気を配って親切にやっているのですよ。
#238
○柴田委員 大臣は私の言っていることがよく理解できなかったかもしれませんね。
 もう一遍言いますけれども、とにかく六十万以下、これは一〇%ですね。私の申しているのは、要するに中低所得者ということで、特にいまのサラリーマンの階層で、標準世帯の場合、たとえば百二十万を超えて百八十万以下、これは百分の十四、要するに百二十万から六十万ふえて百八十万になりますと、二百四十万までは百分の十六、二%ぽっと上がる。それから二百四十万を超えて三百万円以下、これは百分の十八。二%刻みになっている。だから、この百分の十四というのをもう少し上の方まで緩和をしたらいいだろう、百分の十四でやったらどうでしょうか、こういうことを言っているわけです。そういうことなんです。
    〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕
#239
○渡辺国務大臣 やはりある程度のものは取らなければならぬわけですから、上を緩和すれば下を上げるほかないのです。これは上を低くすれば下を上げるということになっちゃいますからね。全体の財源の問題との絡みでございますから、私はなだらかに少しずつ上げるというやり方は決して悪い方法ではない、そう思っておるわけです。
#240
○柴田委員 私の申したのはそういったことでございまして、そういった名目所得が本当に少し上がって、その上がったためにまたより高い税率で所得税を払わなければならない、特に物価高という折にやはりこういった問題を検討すべきであるというふうに申しておるわけでございますので、どうかひとつ、上の方のことばかり言わずに、そういった階層のことも考えてもらいたい。
 それから、ここでは課税最低限の引き上げあるいはまた必要経費のことは申しませんが、ただ高額所得者の税率が高いからそれを引き下げるということだけ考えないで、やはり中低所得者も税率の問題において検討を願えないだろうか、こういうことで御提案申し上げておるわけでございますから、誤解のないようにひとつ理解をしていただきたい、このように思います。
 それから同じく所得税の問題でありますが、寝たきり老人に対する税制のあり方、この問題は、実は昨年の通常国会、当委員会におきまして私も厚生省にも来ていただきましてその実態等を聞きまして、当時の竹下前大蔵大臣に御質問しまして、御理解をいただきまして、今後こういった問題については税制調査会へ報告もし、やはりそこで審議の対象にもしていただく、こんなような前向きの御答弁をいただいたわけであります。もちろん財政再建の途中でもあるし、いろいろと財源確保ということで問題があることはよくわかりますが、こういったいわゆる福祉税制のあり方、一つは寝たきり老人対策というものについて今後とも何らかの税制についての対応策というものも考えていかなければならないと思っておるわけであります。その辺、大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
#241
○渡辺国務大臣 寝たきり老人とか重度の身体障害者とか、そういうようなことについては今後のいろいろな政策をとる上におきましても十分に配慮してまいりたいと思います。
#242
○柴田委員 配慮していただいて、ぜひとも実現を要望しておきます。
 続きまして、パートタイマーの減税の問題であります。この問題も当委員会におきましてさまざまな角度から御質問があったわけでありますが、私どももこの引き上げについての主張をいたしておりますので、大臣の御見解を伺いたいと思います。
 今回、現行二十万から二十九万に引き上げられまして、非課税限度額、これは七十万から七十九万になります。こういったことにつきましては、この引き上げにつきまして私どもも主張してまいりましたのでこれは評価をいたします。しかし、現実の問題といたしまして主婦がパートタイマーとして働かなければならない。これはもう再三お話がありますように今日の物価高あるいは社会情勢の変化ということで、教育費や住宅費とかそういった支出が多い、こういったことで働かなければならない。私どもも働いている御婦人の皆さん方と御要望もありいろいろとお話し合いをするわけでありますが、今回の引き上げは一定の評価をされるわけでありますが、今後この給与所得控除の引き上げについては非課税限度額を九十万程度にしていただきたい、こういった切なる要望があるわけであります。それはことしやってくれとか来年やってくれということまでは私は申しませんが、やはりこういった働かなければならない主婦が多い現実、そして教育費あるいは住宅ローンの返済等々していかなければならない実態、特に住宅ローンの場合でも昭和四十五年が全国全世帯の八・六%であったのですが、五十三年度には二二%と約三倍近くふえている、こういった現実の中でわが国の社会情勢というものを考えたときに、将来の展望に立ってこういった問題もさらに前向きに対応をしていくべきである、こんなふうに考えるものですが、いかがでしょうか。
#243
○高橋(元)政府委員 自分が基礎控除以上の所得がありましてみずから奥さんが所得者である場合に、だんなさんの配偶者になって配偶者控除をもらう、これはちょっと理屈に合わないことと思うのでございます。いまお尋ねのお話はもちろん配慮が必要な事柄であるということは理解できますけれども、いま私が申し上げたことからおわかりになりますように共かせぎというものを税法上どういうふうに取り扱うかという広い問題の一環であろうと思います。基礎控除以上の所得があるということは、すなわち共かせぎでございますからそれはだんなさんと奥さんと給料が同じであるとか奥さんの方が多いという場合とパートと区別することはなかなかむずかしいのであろうというふうに思います。そういう事柄の一環として所得税制の中で時間をかけて勉強いたしたいと思っております。
#244
○柴田委員 ぜひひとつ御検討をお願いしたいと思います。
 次は、グリーンカードの問題につきまして、大臣この間お見えになるかと思ったらお見えになりませんでしたので、政務次官には御質問を申し上げていろいろお聞きしたわけでございますが、せっかくの機会でございますのでこの間の続きということでお聞かせをいただきたい、こう思っておるわけであります。
 いま、御案内のように見直し論といいますかいろいろ出ています。これは大臣もよく御承知かと思うわけでありますが、この見直し論の背景といたしまして、一つは預貯金が金や株式や土地などの資産にシフトするということ、二つ目には海外へ資金が流出するという問題、三つ目にはそれが設備投資などの産業資金の供給を阻害する、四つ目はその結果として換物の助長はインフレを招く、こういう大要四つの見直し論があるのではないか、こういうふうに私は思うわけであります。これ以外に何かあるのかどうか、大臣の御所見をお伺いしておきたい、こう思います。
#245
○渡辺国務大臣 私は見直し論者じゃないから、それ以外のことは考えておりません。
#246
○高橋(元)政府委員 いろいろ新聞雑誌等にありますこと、論拠を見てみますと土地、株、金、それから海外そういうことに大別できるかと思います。いま仰せのとおりであります。
#247
○柴田委員 それで主税局長、ついでにお聞きしたいのですが、先日の委員会に大臣はお見えになりませんでしてなにですが、そういったいまの見直し論、これは私いろいろ御質問を申し上げましていずれも根拠のないものであるということがわかったというふうに私自身は理解をいたしているわけでございますが、私の理解が間違っておるでしょうかどうでしょうか。
#248
○高橋(元)政府委員 前回お答え申し上げましたように土地といいましてもこれは登記簿の動きで把握できてしまいますし、ことに現在土地を買われれば必ず短期所得の重課制度の対象になるわけでございますから、ちょっと土地への逃避ということはむずかしいだろう。金にいたしましても、七百ドルから五百ドルを割るところまで短期間の間に価格が動くものでございます。そういうものが価値維持の手段として十分であるのか、また日本の金の輸入なり供給なりということからして恐らく数百億円程度の動きしかないと思います。そういうものの中に貯蓄が吸収されるというふうにも考えられない。それから株式にしましても、昭和五十年からずっと今日に至るまで年間を通じますと個人は売り越しという状態でございます。いまのような低利回りでありかつ値動きの激しい株式に貯蓄が本当にシフトしてくるかどうかということ、それは大変疑問であると思います。海外と申しましても、個人が外国へ貯蓄をいたします場合には記録が国内に残るような仕組みになっておりまして、これも簡単に資本逃避ということには参らないということは前回お答えしたとおりでございまして、いずれもグリーンカード制度の導入でそういうことが起こり得るということについては私ども論拠がないことであるというふうに考えております。
#249
○柴田委員 大臣、お聞きのとおりに、大臣は見直し論者でないからそういうことは関知しないとうまくするりと御答弁をなされたわけでありますが、いまいろいろと言われておりますことは根拠がないというふうに理解をしてもいいと私は思います。いま主税局長が御答弁なさったとおりなんであります。私は、問題は大臣、こういった根拠のない見直し論がいろいろと言われておる、そしてよくわかった人ならいいわけなんですけれども、問題はその見直し論に善良な国民一般がそういった風聞に惑わされる、そして資産がいろいろとあちこちへ流れる、こういうことの可能性が現実問題としてあるのではないか、こんなふうに私は思います。だから、こういうことは根拠がないんだよということを世間一般に周知する必要もあるのではないか、こういうふうに私は思います。
 それから、同時にもう一つは、きのうも参議院でしたか、このグリーンカード制度について大臣が予算委員会で御答弁なさっていたわけですが、この実施に際して思いがけない問題もあり、時間もあるので、制度の穴ふさぎ対策を講じていかなければならない、こんなふうにお述べになっている。ではお聞きしますけれども、思いがけない問題とは何か、制度の穴ふさぎ対策というのはどんなことを講じていかれるのか、この辺をひとつ、先ほどの第一点の根拠のないことだからそういうことを善良な一般国民大衆に周知する努力も必要であるというこの答弁とあわせてしていただきたいと思います。
#250
○渡辺国務大臣 どういう穴が出てくるか私はよくわからないのですがね。皆さんからいろいろと指摘をされればなるほどなと思ったときにはそういうような穴ふさぎもしなければならないということを言っているわけでして、誤解をされると、何かグリーンカードでもできると大変だと思ってあわてて金を使っちゃったり物を買っちゃったりというような人がなきにしもあらずなんです。したがって、決してそういうこわいものではありませんよ、要するにグリーンカードによって自分たちは免税してもらえるのですよ、郵便局なら三百万とか、銀行なら三百万とか、国債なら三百万とかいうふうに免税をしてもらえるのですよということをよく教えていかないというと、間違っちゃって、それじゃグリーンカードで全部税金がかかっちゃうのじゃないか、へそくりでためたものをみんな取られちゃうのじゃないかという心配をする人、あわてる人も世の中にはありますからね。それはやはり二年ぐらい時間があるわけですから、そういうことでみんなが、じゃお金を持っていても大変だとか、すぐに早く物を買ってしまわなくちゃならぬという錯覚を起こされたら、それはインフレになっちゃいます。そういうような思いがけないことだって考えられないことはないので、心配ないのですということをよくPRして納得してもらう必要がある。そうすれば誤解を与えないですね。そういうことの意味で私は申し上げたわけなんです。
 ですから、いま特別にどういう抜け穴があってどうでこうでというようなことは別に考えてないのです。ただ、私は、グリーンカードで総合課税というようなときになると、いまの所得税の中にはこのままではどうかなと思うことがございます。たとえば総合課税ということになれば、夫婦共働きでどっちも所得がある。それで分離課税がなくなる。現在は分離課税があるから、多額のものを持っていなければいいかもしれませんが、そのときに資産合算で夫婦だったら合算しなければならぬ。どっちかの所得に合算する。そうすると累進課税がかかるわけですね。自分のかせいだ貯金の利息を何でおやじさんと合算しなければならぬのかというような問題も出てくるしするから、いまの資産合算のやり方というのは、配偶者のどちらか一人は無財産的な物の発想じゃないのか。普通だったら、日本の場合は女性の方が配偶者になることが多いですな、例外はあるかもしらぬけれども。だから、そういう物の考え方の上にできていることは、ちょっと一緒にこのときに直したらいいじゃないかということを私は申し上げたのですよ。
#251
○柴田委員 それでは、この問題では最後に一つだけ大臣にお伺いをしたいと思います。
 いまさら言うまでもありません。グリーンカード制度は公平な総合課税の実効を確保するとともに、マル優、郵貯などの非課税貯蓄制度の適正な運営を図るためのものである。これはもう間違いありません。それで、確実に実施という御答弁であると思いますが、あすまた事と次第によっては総理にもお聞きしようかと思っているわけですけれども、総理は、とりあえず五十九年、六十年までは実施して、その後問題があったらまた一遍考えればいいのじゃないかな、そんなことをおっしゃったようにお聞きいたしております。これは仄聞です。それで、大臣はどうですか。大臣は、そんなことでなくて五十九年度からばあっと実施していくのだ、問題があればその都度、いまおっしゃったような穴ふさぎ対策というのですか、そういったものも考慮して問題のないように、いずれにしても総合課税によって税の公平を確保していくのだ、こういう決意だと思うのですが、どうでしょう。
#252
○渡辺国務大臣 そのとおりです。私は、実施する前にあらかじめ予知されるようないろいろな問題点、そういうものは同時実施をしたらいいと思っています。
#253
○柴田委員 あと時間がわずかになってきましたが、法人税の問題でお聞きをしておきたいと思います。
 今度二%の税率アップ、これは大法人も中小法人も一律に二%アップということになるわけであります。今日の中小企業、中小法人の経営の問題では、倒産がこの一月、二月も月としては史上最高である。中小企業を取り巻く経済環境の中でこういった問題があります。それから、中小企業の持つ特殊性とでもいいますか下請的な問題があるわけです。特に、年々歳々下請企業の比率というものは、統計を見てまいりましてもだんだんふえてくる。これはもう大企業の下請ということで生きているわけであります。もう一つの問題は、これはたしか国税庁の資料だったと思いますが、これをいただいて、一億円以上と一億円未満の法人の二つに分けまして、法人数とその所得額を計算してまいりますと、要するに中小法人は全体の九七・三%あるわけでありますが、その所得の合算が二五%しかない。それから大法人はどうかといいますと、二・七%の法人数で、所得は全体の七五%ということで、この表を見ましても、とにかく大法人がもうかっているのではないか、こんなふうに言えるわけであります。
 確かに、片方においては軽減税率の適用があり、大企業はないということであります。一二%の差があるからとおっしゃるかもしれませんが、同じ税率二%のアップというものは、二八%を二%アップするのと四〇%を二%アップするのとはやはり違うわけなんですね。だから、こういった面において、わが国の中小企業を取り巻く経済環境とか下請的な問題、あるいはその利益も少ないという現状を考えて、今回二%やったから何とか通してくれということでありますが、中小企業、中小法人に対しての法人税の問題についても今後何らかの配慮をしていく必要があるのではないか、こんなふうに私は考えるわけでありますが、そういったことについて、今後の問題としてひとつ大臣の御所見をお聞かせいただければと思います。
#254
○渡辺国務大臣 これも再々御質問の出ておるところでございまして、もともと中小法人とそれ以外のものは五%しか格差がなかったわけです。それを大法人の方は何回か引き上げまして、現在一二%の差になった。これも御承知のとおりでございます。したがって、その差をもっと拡大するということは、特に中小法人の中では同族会社的なものがかなり多いのも現実であって、そこで純然たる個人の企業と同族的な法人の企業との間でまたアンバランスが起きる。したがって、今回は、やはり一二%の差はそのままつけるということにいたしました。そのかわり、七百万円の所得のものを八百万円まで適用するということにしたわけでございます。今後財政事情も非常にゆとりができ、またいろいろな点で明るい見通しになった場合においては何らかの配慮を考えたいと思います。
#255
○柴田委員 軽減税率の適用は七百万から八百万になりました。これは評価するにやぶさかでありません。しかし、実態に合わせて将来これを一千万ぐらいにするとかあるいは同じ軽減税率の適用でもパーセンテージに段階を設けて、所得の低いそういった中小法人に対しては今後とも配慮をお願いしたい、こういうように思います。
 最後に、時間もあと四分しかありませんが、税制問題以外でちょっと御質問します。
 オリンピックの記念硬貨の発行ということで、先の話で恐縮ですが、大臣等にもいろいろ御協力をいただいて、名古屋オリンピックも閣議決定をされまして、いよいよ九月の投票ということになる。メルボルンが辞退をしたということで名古屋に来る可能性が強いわけなんですよ。この点は非常に感謝しております。
 それで、いろいろ皆さんの声を聞きますと、東京オリンピックのときだとか札幌オリンピックのときだとか記念碑貨が出ましたね。東京オリンピックで千円を出したときには時限立法で法律改正をやった、こういうことなんです。そういった点も含めて、今後ともオリンピックが来た場合、開催されるということを前提にして、大臣の御見解でいいですが、記念硬貨の発行についてお聞かせをいただきたい。五百円硬貨も何か発行されるというような、これは法案の審議も近いわけでありますが、そういった点も含めて大臣の御所見をお伺いします。
#256
○渡辺国務大臣 まだ発行するかしないか相談もしたことはございませんが、各方面と相談の上、そういう希望が多ければ、財政上どういう負担がかかるかそこらのところも検討しながら、支障がなければ発行してもいいし、もう少し研究させてください。
#257
○柴田委員 わかりました。――それじゃたまたま理財局長がお見えになりますから。
#258
○渡辺(喜)政府委員 いま先生がおっしゃいましたように、過去におきましては東京オリンピックの際に記念の千円並びに百円の貨幣を発行いたしておりますし、また札幌の冬季オリンピックの際にも記念百円貨幣というものを出しておるわけでございます。それ以外にも、万国博覧会でございますとかいろいろな国民的な記念すべき行事というようなときには記念の貨幣を発行したという実績があるわけでございます。
 名古屋のオリンピックにつきましては、本当にやるのかやらないのか、その辺がまだ確定しておりませんものですから、私どもも事務的には、先ほど大臣が申し上げましたようにまだ検討の段階には至っていないということでございますが、仮に名古屋でオリンピックが開かれるというような際に、もし国民の間にもそういう御希望が非常に強いというようなことでありますれば、従前の例にも照らしまして慎重に検討をいたしたいと考えておる次第でございます。
#259
○柴田委員 それでは、時間が参りましたので終わります。
#260
○綿貫委員長 木下敬之助君。
#261
○木下委員 このたび法人税率を一律に二%引き上げるという計画でございますが、昨年から景気も非常に冷え込んできておりますのに、企業の設備投資意欲に水を差して景気をますます悪化させるのではないか、こう考えられるのでございますが、どのように御検討いたしておられるのでございましょうか。
#262
○渡辺国務大臣 法人税の二%という程度のことでは景気にそんなに影響はない、私はそう思っております。
#263
○木下委員 二%程度ではと申されましたけれども、二%というのは大変大きいと私は思います。ですから二%程度では設備投資意欲への影響は大したことないのじゃないか、それだけのお答えでは余り安心できないのですが、何か検討なさったわけですか。どんな検討をなさったか、少し具体的に教えていただきたい。
#264
○高橋(元)政府委員 税制調査会で五十六年度の税負担の増加について御審議を願ったときに、これが経済にどういう影響を与えるかということについても詳細御検討をいただいたわけでございます。
 それで、これは今回のすべての税率引き上げについて共通して申し上げられることだと思うのですが、今回の増税で国民に一兆四千億近い負担をお願いいたしますのは、国債を減額して将来にわたってインフレの禍根をあらかじめ除いておく。したがいまして、自然増収はまず国債減額に優先的に充てて、必須の歳出を極力切り詰めて、それを賄うために税負担の引き上げをお願いするわけですから、したがって増税分は政府の必要な歳出となって民間に還元される、そういうことが一つ考慮されるべきではないか。税というものだけ取り出しますとどんな税でもデフレ的な効果があるわけでございますが、歳入歳出両方を通じて財政としてのインパクトというものを考える必要があるだろう。
 第二番目に、物価も五十六年度になりますと落ちついてまいりますし、民間の設備投資につきましてもいわゆる投資循環の上昇局面にある、そういうことで五十六年度の経済が円滑に上昇をするということが考えられるところから、したがって、税率の引き上げについていま大臣から簡単にお話もございましたけれども、それが景気の足を引っ張るということにはならないのではないか。
 第三番目に、二百六十兆という大きな経済の中で、それは確かに国民の御負担でございますから少ないにこしたことはないわけですが、〇・五%の総体としての増収ということになりましょうか、それが経済を冷やすという量的なつり合いにはならないのではないか。こういう御答申をいただいておるわけでございます。
#265
○木下委員 現在の設備投資がどのようになっておるかお聞きいたしたいのです。
 大企業が堅調で、中小企業は悪いというふうにも聞いておるのですけれども、ただ単に中小企業基本法の定義による大企業と中小企業という区分にこだわらない目でながめて、大企業の規模を大中小に分けてきめ細かく見たらどのようになっておるかお答え願いたい。
#266
○田原説明員 お答えいたします。
 私どもで調査いたしておりますのは資本金一億円以上でございますが、最新のデータは昨年十二月に調査いたしたものでございまして、一応ことしの四−六月までの見通しが出ております。なお、昨年の十二月時点で、まだ五十六年度の企業の設備投資計画が十分固まっていない段階でございまして、四−六月の形勢についてはまだやや流動的な面が残っていようかと思いますが、資本金一億円以上を、一億円から十億円、これを一番小さいものと見る、それから十億円から百億円、これを中、それから百億円以上を大というふうに三つに分けて最近までの数字を見ますと、一番小さい一億円から十億円のところでは、昨年の秋まで設備投資が急増いたしまして、それから十二月からちょっと増勢が一服しておりまして、この一−三月から前年同期の水準を若干下回る、こういう結果になっております。それから十億円から百億円の中のところでは、増勢は一−三、四−六月と鈍化いたしますが、まあ前年同期を大体一〇%上回るという結果になっております。それから百億円以上の大では、昨年の十二月からことしの一−三月にかけまして、前年同期で四割増という非常にふえる結果になっております。
 なお、この百億円以上のうち、大体半分くらいは電力業でございまして、電力業は五十五年度の前半ちょっと一服、下半期に繰り延べになりまして、五十五年度の秋、昨年の秋から急増して、これが資本金百億円以上の全体の設備投資を大きく押し上げる、こういう結果になっております。
#267
○木下委員 いま聞いてみますと、やはり大きいところはよくて小さいところが余りよくないというふうにもとれますが、大きいところが意欲的にやれば、金額だけで見ると大企業に設備投資意欲があれば景気の悪化を招くことはないように思えるでしょうが、小さいところの場合、自分の勤めている会社が設備投資意欲がなくなれば社員も個人的消費の意欲にも大きく影響して悪化するであろうと考えられます。中小零細企業とそこに働く人々にとっては一律に二%引き上げられることは問題であって、景気に悪影響を与えると私は考えるのですが、この際幾らかでも中小企業の設備投資意欲を刺激するために何か考えるべきではないかと思います。たとえば、中小企業用設備の耐用年数の短縮を図るべきであると考えますが、この点どうお考えになりますか。
#268
○高橋(元)政府委員 減価償却資産の耐用年数と申しますのは、これは投下した資本が幾ら経費の中に織り込まれるか、製造原価に織り込まれるかということでございますから、したがって、資産の物理的な寿命に経済的な陳腐化というものを加味して決めていく、客観的に決めるという性格のものであろうと思います。まあ政策的な観点から、たとえば設備の所有者が規模等によりまして耐用年数を短縮したり延長したりということにはならない性質のものであるというふうに思いますが、ただ、特別の事情で法定耐用年数に比べて実際の耐用年数が短いということがございます。そういう場合には、現在でも法人税法の施行令五十七条という規定によりまして、耐用年数の短縮を国税局長の承認を受けてできるという制度がございますから、そういう制度の活用によって実情に応じた耐用年数ということは可能であろうと思います。
#269
○木下委員 特別なやり方ができるようですけれども、それをどういう形で申請すればどの程度簡単にできるのかとか一般の中小零細企業者まではなかなか行き渡ってないと考えますので、どうかこれを機会に考えていただきたい面もあろうかと思います。
 同じ設備償却のことですが、中小企業用機械の特別償却の償却率を引き下げるという考え方についてはどう考えられますか。
#270
○高橋(元)政府委員 これは中小企業の方が非常に広く利用されておられる制度でありまして、五十四年度の実績で申しますと、この特償の対象になりました設備が千百七億あります。五十六年度の減収見込み額では四百三十億円ぐらいの減収になるというふうに見込んでおりますが、この制度はまあ租税特別措置でございますから、昨年度といいますか本年度、五十五年度でございますけれども、企業関係の租税特別措置の一律大幅縮減ということをやりました際に、やはり若干縮減をいたしております。従来六分の一の特別償却でありましたものをいま一四%ということにしておりますのは、原則五割カットで臨みましたこの大幅縮減のときにも、中小企業向けの租税特別措置である、また、その中で非常に利用の広いものであるということに配慮いたしまして、軽減率を二割にとどめておるということでございます。
 現在のような財政再建が緊急の課題であるという状況のもとでこの償却率をさらに引き上げよというような御指摘かと伺いましたけれども、この点については非常にむずかしいということを御理解をいただきたいと思っております。
#271
○木下委員 中小企業がこういう二%一律上げの影響で全体が冷えていって、そこで働く人たちの消費意欲が下がっては何にもならないだろう、自然増収等にもつながっていくだろう、こういうふうに考えて私も発想いたしておるわけでございますから、いまの国の財政状況を十分承知した上でぜひこの点は考えた方がかえって増収につながりはしないか、こういうふうに発言いたしておるわけでございます。特に中小企業にとって設備の償却の仕方に幅のある選択のできる道が開けるようになれば安心して設備投資をすることにつながると考えますので、よろしく今後の御検討をお願いいたしたいと思います。
 それでは次に、法人税の一律二%上げは企業の体力を弱めるのではないかと考えておるわけですが、法人企業統計で見て企業の内部留保となっている利益剰余金の最近の状況はどうなっておるのか、企業規模別に教えていただきたい。
#272
○小山(昭)政府委員 お答え申し上げます。
 法人企業統計によりますと、全企業の利益剰余金、つまり利益準備金、任意積立金及び当期未処分利益の合計額でございますが、これは五十四年度におきまして約三十七兆八千七百億円というのが同年度の法人企業統計年報による数字でございます。これを企業規模別に御説明いたしますと、資本金一億円未満の利益剰余金の額は十八兆六百七十一億円でございまして、資本金の額に対しまして約二・二倍。一億円ないし十億円の資本金の企業につきましては、利益剰余金の額は五兆一千三百二十三億円で、同じく資本金に対して約一・八倍。資本金十億円以上の企業につきましては、利益剰余金の額は十四兆六千七百五十五億円、資本金に対し約一・一倍となっております。
 以上でございます。
#273
○木下委員 企業の体質強化の観点からして、中堅や中小企業の税率まで一律に二%引き上げるというのは問題があるのではないかと私は考えておるのです。この点どのように考えられますか。
#274
○高橋(元)政府委員 先ほど他の委員の御質問に大蔵大臣からお答えしたとおりでございますが、ちょっと別の観点から申し上げますと、一二%の現在の制度のもとでも税率格差がありまして、その一二%は改正後でも持ち越されるわけでございます。一二%で中小法人がどのくらいの軽減を受けているかということでございますけれども、これは五十四年の会社標本調査、これを使って試算をいたしてみますと七十二万五千九百五十一というのが中小法人で税金を納めておられる方ですが、その方々の一二%の税率確定による減税額は総体で二千五百億円を上回るわけでございます。一社当たり三十五万円。それから協同組合、公益法人については一七%くらいの税率格差がございます、二三%ですから。それらを合わせますと千七百億くらいになります。合計して、こういう基本税率から軽減をしておりますものが全体で五十四年ベースで四千二百億円くらいの軽減になっております。
 中小法人の留保をさらに厚くせよという政策要請はもちろん理解できるとは思いますけれども、税法にはまた税法としてバランスと申しますか負担のバランスというものも当然必要になってまいりますわけで、いま申し上げたような規模に達しておる中小法人に対する政策的な軽減をさらに拡大するということは、財政状況だけでなくて税制の立場からもいかがなものかということを御理解いただきたいと思います。
#275
○木下委員 民社党としては、軽減税率の適用所得限度は千二百万円までに引き上げるべきではないかという考えを持っておるわけです。この点に
 ついてもお答えをいただきたい。
#276
○高橋(元)政府委員 今回七百万円から八百万円に軽減税率の適用限度を上げておりますが、これをさらに千二百万円まで引き上げたらというお話でございますけれども、そうしますと千二百万円までのところは現在の税率よりも税負担が軽減されてしまうわけでございます。正確に記憶しておりませんが、たしか二千八百万円ぐらいまでずっと軽減が及ぶと思います。八百万円以下の所得のみを有する中小法人というのは、全体の中小法人の九割ございますから、残り一割の比較的利益の大きい中小法人についてそのような幅の広い減税効果が及んでしまうということをいかように考えたらよいのか。私どもは消極的な考え方を持っておるわけであります。
#277
○木下委員 考え方にいろいろとあると思いますけれども、しかし七百から八百に上げて、この上げたというのはいろんな事情があると思います。同じように考えてみますと、中小企業の軽減税率適用における資本金一億円以下という要件を緩和するということも考えられるんじゃないかと思いますが、この点はどう考えられますか。
#278
○高橋(元)政府委員 これは中小企業基本法でございますとかさまざまの中小企業に関する法規、これが大体一億円を大と中小の分かれ目にしております。税法上は一億円以下でございますから、資本金一億円の日本銀行も税法上は中小企業ということになってしまいますので、その数が全体の九九%でございますから、さらにこれを上に上げていくというのは制度としても大変考えにくいところではないかというふうに思います。
#279
○木下委員 中小企業というふうに言うと、中小企業の規定で一億ということを言われておるから、一般に中小企業と言ってしまえばその範囲だけで、大企業という言葉を使ったときもそれ以上が全部入る。ところが、大企業といいましても超大企業からいろいろありますから、もう少し実情に合わせた、大企業の中にも中間的にもう少し考えなければならないところもあったりいろいろすると思いますので、きめ細かいことを今後やっていかれたらと考えております。
 社内留保についてもう一つお聞きしたいのですが、同族会社の留保金に対して課税をしておられる。これはどういう考え方でやっておられるのか。
#280
○高橋(元)政府委員 これは日本だけじゃございませんで、アメリカにもイギリスにも同族会社の、また持ち株会社とか、いろいろ法律上の言葉は違っておりますけれども、留保について課税をする制度がございます。なぜかと申しますと、同族株主と会社というものは同族会社の場合に利害が一致しておるわけでございます。したがって、配当でもらわなくても社内に積んでおけばいい、こういうことになります。そうなりますと、所得税の課税の機会というのが非常に先に繰り延べられてしまいますので、したがっていわば不当留保ということが起こり得る。アメリカあたりですと、これは不当留保課税、こういう言葉で呼んでおるわけでございますが、個人企業における所得税負担と、不当留保と言ったら言葉は悪いのですけれども、過剰な留保を持っております中小法人形態の留保金というものと課税上のアンバランスが当然問題になってくるので、したがって一定の基準を超えます留保所得については特別の課税を行っておるということでございます。
#281
○木下委員 課税する方はいろいろとございますでしょうが、課税をされる側、いろんな方の話を聞いていると、まじめに税を納めても少々インチキなことをしても余り変わらないような考えを持っている。脱税をすればつかまりますけれども、節税でできる範囲でできるだけのことをしても余り変わらない。何とか意欲的に課税をするというような方向に向けられないものかといつも考えておるわけですが、国税庁は納税意識の高揚、優良な納税者の育成のためにどのような措置を講じているのか。もっといろいろと措置を考えたらどうかと思うのですが、この点どう考えられますか。
#282
○川崎政府委員 正しい納税意識を高揚するという意味で、従来から広報には特段の配慮をいたしておるつもりでございますが、税務行政の四本柱としまして調査、指導、相談、広報ということを考えております。
 広報について具体的に申し上げてみますと、たとえば税を知る週間といった行事を毎年やっておりますし、またテレビ、ラジオ、新聞その他のマスコミを通じましていろいろの機会にいろいろの税制をPRする、また一方で租税教育といいまして、高等学校、中学校を通じて生徒のころからいろいろな意味で納税意識を高揚するようなことをお願いしておるわけでございます。これは非常に重要な施策と考えておりますので、なお一層拡充するように努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
#283
○木下委員 そういういろいろな広報というのがあるでしょうけれども、これは誤解されると困るからはっきり申し上げておきますけれども、昔ある程度の納税者しか参政権のなかったような時代があった。こんなことはとてもいま考えられることでありませんし、間違った方向だったと思いますけれども、何か納税することによる具体的なメリットのようなものがあればもっとできるんじゃないかという声もありますので、何らかのそういった考えられるチャンスには、本当の意味で利益があって意欲的に納税できるような制度というものが考えられないものかということも検討をいただきたいと思います。
 次に、退職給与引当金の積み立て限度額を百分の五十から百分の四十に下げた理由をお聞きいたしたい。
#284
○高橋(元)政府委員 昭和三十一年に退職給与引当金の累積限度額というものを二分の一にいたしました。その二分の一にいたしました考え方は、それまでは退職給与の要支払い額の増加額を全額引き当てさせておったわけですが、それは全額引き当てることはないんではないか、一定の利子率で割り引いて現在価値に直しまして、いわゆる現価に直しまして、そこでやればいいじゃないかということになりまして、当時約八%ぐらいの内部利子率で割り引いて、従業員の平均在職期間をあと九年勤める、こういうふうに見まして五割にしたわけでございます。
 その後だんだんと企業の年齢構成といいますか人員が充実してまいりまして、今後の平均の予定在職年数が伸びてまいりました。五十三年の賃金構造基本統計調査によりますと、それが大体十二年というぐらいになっておりますので、十二年で割り引き直してみますと、百分の五十でなくて百分の四十でよい。現価方式で退職給与引当金の累積限度額を決めておる、そういう考え方の上に立っても、百分の五十から百分の四十に法定の繰入率を引き下げることが可能である、こういうことになりまして、五十五年度税制改正で引き下げをすることにいたしたわけであります。
#285
○木下委員 私は、退職金はそれを受け取る人のために確実に積み立てられるべきだと考えるのですが、現在の退職金の積み立てを、支払い確保のために退職給与引当金の一部だけでも取り崩せないようにするということはできないのですか。こういう考え方についてどう考えられるか。
#286
○高橋(元)政府委員 大変貴重な御指摘だと思うのでございますが、退職給与引当金ができましてから、たしか昭和四十年度まででございますか三十九年度まででございますか、特定預金制度というのがございまして、特定預金をいたしました場合にその四倍まで退職給与引当金が積めるということにしておった時代がございます。これは何も部外に出さなくてもよかったわけですが、イヤマークされた預金ないし保険でもいいのですが、そういうものを退職給与のために取得した場合に限って退職給与引当金が積めるということにしたわけでございます。そういう制度に再びならないか、退職給与引当金を巨額に積んでおっても会社がつぶれてしまったら何にも払えない、それは困るじゃないかというお話がたびたびこの委員会でもございました。退職給与引当金に支払い保全措置をかみ合わせることができないか、そういうことをいろいろ勉強してきたわけでございますが、どうも資金面にゆとりがない企業の場合には、外部に金を積ませますと退職金制度が後退してしまうという御批判が労使ともにございまして、結局実現を見ないで現在に至っておるわけですが、長期的な勉強の課題であるというふうに思っております。
#287
○木下委員 確実に退職金が払えるようにして、社員に安心して働いてもらいたいと願っている経営者もたくさんおるわけで、このような人たちにとって節税を考えると、いまでは適格退職年金制度等で社外に積むというかっこうになっております。できれば社内でも基本に返った制度を考えて確立していただきたい、こういうふうに考えております。
 次に、中小企業の交際費については宣伝広告費に該当する部分が多いように思われるのですが、大企業との差についてはどう考えられますか。下請的な仕事を行っているところは特にこのような傾向があるのではないかと思うのです。
#288
○高橋(元)政府委員 現在交際費は、資本金基準の損金算入限度というのはございませんで、すべて定額控除一本でございます。これはしばしば御批判もあったわけですが、資本金一千万円よりも小さい企業の場合には支出交際費の中で四百万円は損金に見られる、それから一千万円と五千万円の間の会社は三百万円が引ける、五千万円を超えます資本金の会社の場合には二百万円しか引けない、こういう制度になっておりまして、定額控除額を出っ張りました部分はすべて九割否認ということでございますから、御質問のような趣旨では中小企業の交際費の方が課税上は大企業よりも甘くなっておるということでございます。
#289
○木下委員 交際費については、よくたくさんの関連企業を持ってそれぞれで出して、使っているのはそのグループのトップが使っているというようなことで、最終的にはざる法的なかっこうで交際費が使われているのではないかという目でも見られるのですが、この点どういうふうに考えられますか。
#290
○高橋(元)政府委員 交際費の中で何割税金がかけられているかという割合で見ますと、中小法人が使っておられる交際費が五十四年度二兆百九億円になりますが、その中で税金がかかっております部分が三千九百二十二億円で約二割であります。いわゆる大法人の場合には八千九百五十二億円交際費を使っていまして、その中で否認されております金額は六千九百八十億円で、七八%課税されておるわけであります。そういう意味で、中小法人の損金不算入割合が低くなっておるわけですが、それは先ほど申し上げた四百万円の定額控除というのが効いておる。四百万円の定額控除と申しますのは、いまお話にありましたように、いわば下請的で、親会社から交際費を回してこられるというような場合になかなか断り切れないというような中小企業のお立場等も考慮して、資本金が小さくなるほど定額控除が大きくなるといういまの制度が五十四年からできておるわけであります。
#291
○木下委員 中小法人、大法人の税負担率の割合が三六・二%、三八・五%と、これは大蔵省の資料で見たのですが、余り変わらないというのは、これはどういうふうに考えておられますか。――もう一度言いましょうか。中小法人と大法人とありまして、税負担率の割合というのを大蔵省の資料で見ましたら、中小法人が三六・二%、大法人が三八・五%、これは余り変わらないので、どうしてこう余り変わらないのかなというふうに考えたのです。
#292
○高橋(元)政府委員 ごらんになっておられる資料は予算委員会に提出しました資料だと思いますが、お手元にあります中でA分のBというところをごらんになって御質問だと思います。
 これはすべての法人税が四割あるという前提でまずはじきまして、それに中小法人配当分が配当軽課になっております。それから中小法人の軽課割合は加えておるわけでありますが、その右の方にずっとC、D、E、F、こう欄がついておりまして、一番右の欄で見ていただきますと、租税特別措置を全部織り込んだ後の税負担割合で申しますと、一億円以下の中小法人の場合三七・三%、大法人は四〇%、それから一億と百億の間の大法人が四一・八、こういうふうになって、かなり、実際の税負担割合は中小よりも大法人の方が重くなっておるということでございます。
#293
○木下委員 次に、個人法人と明確な法人との間に課税面からの区別というものはあるでしょうか。
#294
○高橋(元)政府委員 個人法人と言っていろいろな意味に使われております。たとえば組合課税のようなもの、留保した場合でも全部出資者にその留保分を割り当てまして所得課税してしまったらいい、こういうような制度を個人類似法人に導入したらいいという議論もございますが、いまの御質問はそうでなくて、たとえば会社のオーナーと経営者が一致しておりまして、いわゆる同族会社である場合という御指摘だと思います。
 そういうことでありますれば、現在、同族会社の行為計算否認という制度がございますのと、つまり支払いました給与でありますとかその他のものにつきまして租税回避行為があった場合にはそれを税務が認定をして適正な課税が行い得るという規定がありますのと、もう一つは留保金課税、先ほど御説明申し上げましたような留保金課税の制度があるという点が制度的な差でございます。
#295
○木下委員 この個人法人の必要経費について十分な調査が行われておるでしょうか。公私の区別というのが不十分なんじゃないか。この点どう考えられますか。
#296
○川崎政府委員 御指摘のような面が多々ございますので、そういう種類の法人につきましては特に厳しい目で対象選定を行っております。
#297
○木下委員 いろいろと終わりの方に雑然とした質問を重ねましたが、私の質問をこれで終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
#298
○綿貫委員長 正森成二君。
#299
○正森委員 もう八時を回りまして、大臣、御苦労さまでございます。お疲れでしょうけれども、いよいよラストバッターで、これが終われば解放されますので、もうしばらく奮闘していただきたいと思います。
 まず最初に、昨日、小倉税調会長がお見えになったときにも伺ったのですが、税制調査会長の代理の木下和夫さん、大阪大学の名誉教授ですが、国民政治研究会というところで去年十一月二十五日開催の月曜会というので講演をしておられるわけです。そこで、来年の、つまりいま審議になっている増税に触れて「来年度は税収不足額が二兆円の国債減額をやって、一兆五千億円の税収不足があるので、そこで法人税を二%上げる。これで五千億円できる。あと酒税を二〇%程度アップして二千億円の税を稼ぐ。あとは乱診状態といいますか」ランシンというのは心が乱れるというのじゃなしに診療が乱れる、富士見病院みたいなやつですね。子宮か何か元気なのをとって金をかせぐという。「あとは乱診状態といいますか、理屈のない増税といいますか、かき集めです。」こう言っているのですね。つまり税調の会長代理の方が、やはり乱診状態で理屈のない増税でかき集めたというように言っておられるような状態が本年度の増税じゃないかと思うのですが、本音が出ているのじゃないかと思うのです。なかなか正直な人じゃないですかね。
 そこで、大臣もこういう点についてどう思われますか。
#300
○渡辺国務大臣 私、いまお聞きしたので的確な御批判はできないのでございますが、乱診状態というのかどうか、理屈のない増税といいますか、かき集めです、こう言ったようですね、これを見ると。これは税調の方がおっしゃったので、そういう見方もあるいはあるのかどうか知りませんが、いずれにいたしましても、ことしは前から言っているように一兆九千億円の当然増をどうしてもどこかで吸収しなければならぬというような点から、八千億円程度は経費の節減合理化を図ったのですから、あと一兆円ちょっとが足りないというために、一兆四千億円の御負担をお願いしなければならぬ。その中で法人税というようなもので六千億円ぐらいですか、その他物品税とかいろいろな、結局所得税以外の重立ったものについては全部、薄く広くお願いした。そうすると印紙税なんか倍も取って何が薄く広くだとおしかりを受けるかもしれませんが、そういうようなことで、取れるものからは極力一カ所に偏しないでいただいたということでありますから、見方によるといろいろな見方があるかもしれませんが、私は大蔵大臣でございますから、広く浅くいただくことにした、乱診状態ではないと思っております。
#301
○正森委員 大蔵大臣としてはああ答えるより仕方がないので、まあしかし言外に広く浅くかき集めたという感じをやはり否定なさらなかった。
 そこで、気安い立場の場所での気を許しての発言だと思いますから、私も深くどうこうしようとは思いませんが、しかし理屈のない増税だ、つまり一定の哲学のない増税だ、広く浅く取れるところからかき集めたという感じは何となく出ていると思うのですね。いま法人税も審議されておりますので、やはり理屈のある税金の取り方といいますか、そういうものは考える必要があるのではないかと私は思います。それで、遅くなって失礼ですが、できるだけ簡単にしたいと思いますので、法人税について若干聞かしていただきたいと思います。
 法人税を考えます場合に、もちろんいろいろな接近の方法がございまして、神学論争と言われておりますが、法人擬制説がどうかとか法人実在説がどうかとか、いろいろ議論の仕方はあろうかと思います。しかし今度の企業課税小委員会の報告というのが五十五年九月に出ましたが、そういう神学的な論争ではなしに、それがわが国経済にどういう影響を与えるか、あるいは法人のビヘービアにどういう影響を与えるかというようなさまざまな観点から考えていかなければならないという姿勢を打ち出していると思うのですね。もちろんそういう視点も私は必要であろうと思いますけれども、その機会にわが国の税制が法人税についてどういう歴史をたどっていったかというのを見てみるのも、いろいろ法人税の問題を考えてみる上で有益ではなかろうか、こう考えるわけであります。
 そこで、そういう点を考えますと、もちろん法人税の問題が出てくるのは明治になってからですが、明治の初めはまだ会社組織も発展しておりませんし、そもそも地租中心の時代でしたから最初は法人税というものはございませんでした。そして相当たちましてから法人税ができましたが、今度は法人税が、配当された場合の個人に対する所得税というものは取らないという状況が相当長く続いたことは御承知のとおりであります。その後、物の本によりますと大体大正七年から九年ぐらいの原内閣、そのころになってから大分かっこうがついてきたというように言われているのですが、この当時の法人税の考え方はどういうものだったかお答えを願いたいと思います。
#302
○高橋(元)政府委員 明治三十八年から大正八年まで、当時の所得税、第一種所得と申すのが法人所得でございました。これは甲と乙に分かれておりまして、甲は株主が二十一人以上または株主、社員会わせて二十一人以上、これはいわゆる会社らしい会社でございます、これにつきましては六・二五%の比例課税でございました。乙というのがございまして、これは合資、合名会社または株主の数が二十人以下の会社、いわば人的会社と一言で言ってもいいかもしれませんが、人的会社につきましては四・五%から一二・五%、こういう累進課税で、当時の提案理由などを読んでみますと、これはやはり人数が非常に小さい会社、または合資、合名会社は株主個人に比準して考えることが十分可能だしまたその方がいいから累進税率をとるものだという説明がなされております。
#303
○正森委員 そういう税制でございましたが、大正九年に相当大幅に改正になりまして、ここではまず第一に、いままで配当所得に対しては総合課税が行われなかったというのに対して、これは大蔵省の大臣官房調査企画課が出している「戦時税制回顧録」に載っておるようですが、当時この配当所得に対して課税されないということにそもそも税務官僚が怒り出して、これは非常に不公平であるということで配当所得への総合課税が導入されました。同時に法人税については、これは超過所得が導入されて資本金額が、一〇%を超えた分というのについては四%から二〇%の超過累進税率が課せられる。それから同時に、配当その他の処分をしないで社内留保をした額には留保所得が課せられる、これも三段階の税率であります。それから清算所得というのが七・五%で課せられるということになりました。同時に法人の受取配当の益金を、不算入ではなしに算入するという考え方をとりました。
 以上の考え方を見ますと、ほとんど、いわゆる講学上の法人実在説に近い考え方をとった、あるいは法人実在説というのは必ずしも適当ではございませんで、法人独立課税主体説と呼ぶ方が適当である。つまり法人にも独立の担税力があるんだというような考え方でありますが、それに近いと言われる制度であります。ただ配当所得控除というのがやはり四割ほど残っておったそうでありまして、そういう点では完全な法人独立主体説ではないように言ってもいいかと思います。そういう制度が大正九年以来導入されたということのようでありますが、私が申した指摘はそのとおり間違いありませんか。
#304
○高橋(元)政府委員 「明治大正財政史」によりますと、大正九年七月の所得税法の改正は
  之れ法人は法律上独立の人格者たるのみならず、其の企業所得は畢竟するに、資本合同の組織に因る法人特殊の有利なる地位に基き獲得するものなるを以て、其の資本金額に対し普通の利廻以上の所得を有するときは、之に相当の負担を課するを当然と認めしに因るものなり。
こうなっております。
 いまお尋ねがありましたように大正九年の改正と申しますのは、第一次世界大戦後の経済、財政の疲弊のときに税収を上げてまいるということを主眼としてできたものでございますから、したがいまして、法人に、当時は成金時代でございます、超過所得税を課するということ、それを本法上の法人の法人税と超過所得税の合体したものであるというのが、私どもの当時の法人税についての考え方でございます。
#305
○正森委員 いまお答えがちょっとございませんでしたが、受取配当の益金も算入するということをやはりこのときにはとったと思うわけであります。つまり第一次大戦後の非常に経済がむずかしい状況のもとで、成金という言葉を使われましたが、とにもかくにも利益を上げている法人に対して独立に課税主体と考えて財政上の必要を負担させるという考え方を、やはりこのときにはとったと考えられるわけであります。その後、こういう状態が続きましたが、昭和十二年にも、これは七十回の帝国議会だったと思いますが、残っておりました配当所得控除を四割から二割に引き下げるということをやりましたが、このときに馬場蔵相の税制改革案では、「法人が個人ト別個二存在シ経済上有利ノ地位二在ルコトハ顕著ナル事実ニシテ法人ハ法人トシテ独立ノ租税主体タリ得ルコト論ヲ俟タズ」というように、当時の帝国議会では述べているようでありますが、その事実は間違いありませんか。
#306
○高橋(元)政府委員 ちょっと、いまお読み上げになりました資料を手元に持っておりませんが、恐らく委員の御指摘のとおりであろうと思います。
#307
○正森委員 私の資料では間違いないと思います。その後、昭和十五年には、さらにいわゆる法人の独立課税主体説的な考え方が前進をいたしまして、法人税を所得税から完全に分離するということを行い、法人税は一八%、それ以前にも資本についての課税が千分の一・二程度ございましたが、それをさらに千分の一・五にする。ただし、配当所得控除は政府原案では全廃となっておりましたが、諸般の事情から一割だけ残されたというように変わったようであります。さらに戦争末期の昭和十九年になりますと財政需要が非常に増大してまいりますから、法人税は三〇%に引き上げられ、そして配当所得控除は政府原案のとおり全廃されるということで、言ってみれば、昭和十九年の財政が最も困窮をきわめたときには、法人を独立の課税主体と見る。あるいは別の言葉で言えば、法人実在説的な考え方をするということは、ほぼ完全といっていいような程度にまで達したのではないか、こう思いますが、いかがですか。
#308
○高橋(元)政府委員 昭和十五年に、内国法人一八%、外国法人二八%という法人課税になったことは、いまお話しのとおりでございます。その後、これも当時の言葉で申しますと軍需景気というものでございまして、法人の中で利益を上げる者は資材も配給される、販路も保証されるということで相応の利益を得てまいったわけでございます。そういうところに当時の戦費の調達の財源を求めるということから、法人につきましては配当所得控除もやめる、それから法人側の受取配当もかける、こういうふうになってまいりました。それは、消費財産業というものはどんどん間引かれていきまして、残っているものは軍需工業で、これは当時の太平洋戦争遂行の過程で国から利益を受け取る、当時の独特の経済観と申しますか、歴史観と申しますか、社会観と申しますか、そういうものから出てまいった制度で、これをもっておよそ百年に近い、日本では百年に近いわけでございますが、法人所得課税についての一つの確立した考え方――財政が疲弊しているから必ずそうなるというようなものではない、全く戦時経済の特殊性からまいっておる制度というふうに私どもは理解しておるわけでございます。
#309
○正森委員 私も昭和十二年、十五年、十九年というように課税が強化された時期の税制が万全なものであると言おうとしているのではございません。しかし、大正九年というのは第一次大戦の終わった後ですね。だから戦争経済の必要のないときでも、当時の成金というものができ、経済が疲弊して税収を上げる必要があるというときには、法人を独立の課税主体と見るという考え方が強化され、そして昭和十五年、十九年というように至ってそれが一〇〇%に近いものになったという歴史は、これはやはりわれわれとしては約三十年に近い歴史ですから、だからいまのわれわれの戦後は法人擬制説というようなものがもう神代の時代から確固不動のわが国の税制であったように考えるのは、これは必ずしも当たらないものであり、当時の経済情勢と財政需要によっては、われわれの先人は神学論争にこだわらずに適宜対処してきたということは、やはりわれわれとして考えておいてもいいことではないかというように思うわけであります。私は何も法人実在説から全部を考えろと言っているのではなしに、逆に法人擬制説からだけ考えるという態度もとるのではなしに、そのときそのときの経済情勢と、税収をどのようにして上げていくのが国民全体にとって納得を得られ、わが国経済全体の円滑な進行のためにもマイナスにならず、むしろプラスになるかという観点は常に持っていかなければならないという一つの例として申し上げているわけであります。
 たとえばいままで申し上げましたことを一つとりましても、たとえば私がこの間大臣と有価証券譲渡益のことについて話しましたときに、株式市場が個人にとって魅力のないものになりつつある。たとえば時価発行してプレミアムは全部取っちゃう。そういうのを続けて株主に新株を発行しないで還元しないということであれば、魅力が薄れるのはあたりまえだという意味のことをちょっと言いましたので、御記憶に残っていると思う。このプレミアム分について増資をしないというような場合には、これは配当もしないわ、利息も払わぬでいいわ、まるもうけであるということになるわけですね。それに対して課税したらいいじゃないかと言いますと、それは資本課税になるからだめだというのが大方の財政当局なり税務当局の話なんですね。しかし、それについても私がいまの戦前の例で言いましたように、相当長期にわたって資本の千分の一・二とか一・五とかいうように、必要とあらば資本課税をやっているわけですね。これは、資本というのは利益を生み出すものであり、それ相当に社会的な便益を受けておるのだから、利益を生むもとなんだから、そのもとに対して低い税率でかけたっていいじゃないかという考え方がやはりあったということなんですね。ですからプレミアム課税などというと、資本課税だ。資本課税というものはそもそもできないものなんだというような固定した考え方というのは、やはりもう少し柔軟に考える必要がある。私は何もそれをいますぐやれと言っているのではなしに、考え方としてはオプションを広くとる必要があるのではないかということで申し上げているわけであります。最後にまたまとめて大臣にお伺いいたします。
 そこで、戦後はどうであったかというように考えますと、昭和二十一年は、これはやはり戦後で金が非常に足りなかったということで、超過所得制度というものがございました。これは資本金の
 一〇%を超えたものはどうだとか、二〇%を超えたらどうだとか、三〇%を超えたものはどうだというように税率が違うのですね。それでこの制度は昭和二十二年にはやや緩和され、資本に税をかけるというのも緩和されました。昭和二十三年には超過所得はうんと引き下げられ、資本に対して税をかけるのは廃止になり、同時に税額控除というのが一五%で復活されました。当時の記録を見ますと、これは吉國二郎さんがお話しになったということですが、戦後司令部が来て、昭和二十三年でしたか法人税について二重課税を排除するという意味で、配当からたしか一五%の控除をやれという指令が来たと思います。つまり、占領軍が入ってきて、昭和二十四年以降のシャウプ勧告的な考え方がここへ入ってきているわけであります。
 ただ、そうではありますが、ここでも私が指摘したいのは、単に戦前だけでなしに、戦後も昭和二十一年、二十二年、二十三年といったら金がなくて困っているときですね。そのときには企業に対して超過所得の累進税率を課しておったということです。大臣の本会議での答弁を聞いておりますと、大臣の答弁にも一つのパターンがありまして、超過累進課税と言いますと会社を分割してしまうとか――それは確かにそういうおそれもあるかと思いますけれども、しかしいま言いました歴史を考えてみますと、必要に応じて、所得税みたいに十何段階というのは困りますけれども、三つないし四つくらいの段階の超過累進課税というのは法人の場合にも戦前戦後を通じてやっていたと
 いうことなのです。ですから、こういう点についてもわれわれは法人については超過累進課税というか段階課税というのは頭からやるべきでないというような固定した考えはとるべきではないのではないかというように思っておることを申し上げておきたいと思うのです。
 こちらばかりしゃべって申しわけありませんが、次にシャウプ税制が出てまいりますので、そこのところで一区切りをつけたいと思います。
 御承知のようにシャウプ税制は、シャウプ氏が参りまして税制の抜本的な改正を言ったわけでありますが、このシャウプ氏の考え方は、言うまでもなく、法人というのは与えられた事業を遂行するためにつくられた個人の集合である、言ってみれば法人擬制説と呼ばれているような、あるいは課税の面から言えば法人個人課税一体説というか、そういう考え方に立っているわけであります。したがって、私が前回のときに申しましたように、シャウプ氏にはシャウプ氏なりの理論が一貫しているわけですね。その考え方は、法人は個人の集合なんだから単一の比例税制とする、法人に対しては超過所得課税は廃止する、つまり全部株主個人に帰するんだから法人が大きいからとかちょっとたくさんもうけたとか、そういうことで差をつけないで、個人のところへ来た段階で適当な所得税の累進課税を課すればそれで十分なんだという考え方は一貫しているのですね。それなりに理論が通っているわけであります。しかも、それを徹底しますから法人の清算所得に対する課税は廃止する、これは本来法人は課税主体ではないので、個人のところで、清算所得が分配されたところでばっちり取ればいいので、法人の段階で清算所得に課税する必要はない、これはシャウプ氏の考え方からすれば理屈が通っているわけですね。
 さらに、そうだとしますと法人の留保所得、配当しない所得をほっておくというのは――これは現在はそうなっているのですね。これは理屈に合わない。なぜなら、留保所得というのは、もしも配当されれば個人の段階で所得税がかかる。法人が留保しておればその分課税されないで、その金を株主の集合体である法人がただで使っておるということになるのだから、もうかった利子相当分、あるいはそれの何がしかは課税して当然である、そうしなければ不公平になるという考え方ですね。これも大いに筋が通っているのですね。ですから、留保所得については利子相当額に見合う特別税、積立金利子付加税を課する。これは非同族会社には二%、同族会社は自分と一緒のようなものですから七%だ、こういう税制になったのですね。
 それから、法人株主の受取配当は益金不算入とする、これはシャウプ氏の考え方によれば特に子会社の場合に該当するのですが、益金不算入しないと株主のところへ戻るまでに何回も課される株主はたまったものではないからこれは益金不算入である、こういう考え方です。そして、個人の受取配当については総合課税で課税するけれども、法人の段階で所得税が前取りされているのだからそれを引かなければ株主としては損であるということで、受取配当額の二五%相当額を控除したわけです。しかもこの二五%というのにも理屈がありまして、当時は個人所得の最高税率が五五%だった。ですから、受け取った者が五五%の所得税を払うのと呼応して、それと前段階での法人税とどのくらい配当所得控除をやれば引き合うかということで計算したら、私も知りませんが二四・何ぼという数字が出たのです。それで二五%を控除することで整合性がとれるであろう、こういうことになったわけであります。
 そして、ほかにもいろいろありますが、最後に真打ちになるのが有価証券の譲渡所得については全額課税するという制度であります。これはこの前申し上げたから大臣よく御存じと思いますが、留保所得が多いとそれは株価に反映されるわけです。シャウプ氏は、留保所得に対しては積立金利子付加税を取るのだけれども、それでもまだ法人には利益が残っていくので、それがいよいよ有価証券を売却したときに全部実現する。そこでこれに課税しなければ不公平であるということで課税をしまして、もうこの前引用しましたから申しませんが、これが核心なんだ、ここのところをやらないということになれば私の言っている勧告というのは全部の体系が狂ってくるのだ、だから残りの制度も公平を欠く制度になるのだということを言っているということは、前々回ですか私が指摘したとおりでございます。
 これが正当であるかどうかは別として、これはこれなりに理屈として首尾一貫していることだけは間違いないです。ただ、二五%の控除というのが、所得税率五五%の高い所得者についてはほぼ一〇〇%、一〇三%ぐらいになるそうすすが調整をしておりますが、所得税率が二〇%とか三〇%の低い人は十分に調整をされないで損をしているという不利がございまして、いまECで行われているインピュテーション方式というのとは若干精密さにおいて欠ける点はありますが、それなりに理屈が通っているわけです。
 私がいままで長々と言ってまいりましたのは、木下和夫さんが理屈のない増税、こういうように言っている。やはり税を取る限りは理屈に合った税体系でなければならぬと思ったから最初に引用したわけで、決して木下さんの個人攻撃をしようと思ったわけではないのです。そこで、そういう前提からいきますと、現在はシャウプ税制が崩れていることははなはだしいのです。これはもう理屈にも何にも合わないという税制を法人税でも所得税でもとっており、それは大企業、大資産家擁護のための税制としてのみ残っておる、こう言われても仕方がなくて、シャウプがもう一遍日本にやってきて、いまこの大蔵委員会で参考人にすれば、大声を上げて怒るだろうと思うのです。それを直すのが渡辺さんあなたの責任であるというように言うだろうと思うのです。私は長々と話しましたので、この辺で戦前からやっとシャウプ税制までたどり着いたわけですが、大臣の所感と、木下さんが指摘された理屈のある税制にするためにはやはり何を財政当局はなさねばならないかということについて御所見を承りたいと思います。
#310
○渡辺国務大臣 大変御勉強をされて造詣の深い話を聞かせていただきまして、私も非常に勉強になりました。私は、この法人税課税の問題は、時の産業政策と重大な関係があったかと思います。シャウプ税制も非常に首尾一貫しておって、私も大変あれを好んで読んだことがあります。ありますが、結局理論倒れのところも少しあったのじゃないか。たとえば一番先にぶつかったのは富裕税という問題で、ございますが、やってはみたものの、現実には非常な不公平になってしまって、それで有価証券等を持っている人は比較的逃れて、固定資産を持っているような人だけがかぶる。それから税率が低いわりあいに非常に手数がかかって、余り税収は上がらないというようなことで途中でやめてしまったということもあります。それから戦後になって、高度経済成長期を迎えて、日本の企業を国際的に競争できるような企業にしようという政策が強く働いてきたということも事実じゃないか。それによって法人が大型化をしてある程度保護されたわけですから、それによって大きな事業ができ、何万の従業員を使い、それによって従業員もそれに関係あるものはみんな潤っておることも事実です。そういういい面も私はあったかと思います。しかしその反面、いまおっしゃったようにいいところだけつまみ食いをしてしまった。要するにキャピタルゲインの課税というようなものは何かそのままにして、今度は課税しなくしてしまったというようなことがあったり、また増資をした場合のプレミアムは当然株主に配当されなければならぬ、だれが考えてもそういうものです。しかし取締役の権限が商法の改正によって非常に強化されて、それで一時は取締役会が自由にするようなことはできなかった時代もあったのですが、取締役会一任みたいな形で、どういうふうな増資の割り当てをするかというようなことなども、時価発行する場合は株主割り当てをすべきものを全く株主割り当てをしないで市場で売ってしまって、しかも親引けなどというようなことで、それによってしこたまもうけた人もあるという話を私も聞いております。これなどは非常に悪用の方じゃないかと私は思う。また重役が株主を恐れないようになったということは、日本の産業の技術革新等に大きな潜在的な力を与えたことも事実だと思います。アメリカのように株主だけを恐れて目先の配当だけということになると、要するに技術革新のための投資ということをやらないで配当優先、見せかけ決算をつくっても、タコ配当しないまでもともかく配当だけを優先する。そのために企業への投資というものが行われない。それが長く続いたために非常に陳腐化をして日本の自動車に負けてしまった、日本の鉄に負けてしまったというような面も出てきているわけです。どちらも行き過ぎてはいかぬのです。
 そこで現在、高度経済成長から安定成長に移る。しかも税制の問題でも非常に厳しいという時代に入ってきておるわけであって、一方膨大な国債を抱えておって、これは返済しなければならぬという状態になってまいりますと、世の中の時代も変わっておるし、いたしますから、そういう点についてどうあるべきかということは、一遍本当に真剣に検討してみる必要があるんじゃないか。そういう意味で、正森委員のいままでのいろんなお話は実は大変私は勉強になっております。そういうような構成を直す、増収を図るという意味では大変いいのですが、あとは減税の問題がなければ真っすぐ大蔵省の最高顧問にしてもいいのですけれども、いずれにいたしましても、これは大変いいお話をいろいろ聞かしてもらって、われわれも謙虚に、今後税体系全体の見直しをするというようなときが必ず私は来ると思うのです。そういうようなときに、ただいままでのずっとたび重なるいろいろな御提言については謙虚に検討さしていただきます。
#311
○正森委員 いま大臣の御答弁がございましたが、シャウプ氏が帰りまして、わが国がサンフランシスコ条約で形式的、法律的には独立するということになりますと、早速、いま大臣が、いいところのつまみ食いと言われたことの現象が起こるのですね。これを全部挙げますとまた時間がかかって御迷惑をかけますからはしょって申しますと、昭和二十六年にはこれは留保所得に対する積立金の利子の付加税という、これはやらなければならないという理屈なんですが、それは同族会社以外の二%はやめてしまう、同族会社は七%から五%に下げる。昭和二十八年になりますと、この間言いましたように、シャウプ氏が自分の税制の核心であると言った有価証券譲渡所得の課税を廃止してしまう。だから留保して、それによって株価が上がって、当然これは株主の資産ですが、それを売ったときに、実現したときに全然税金がかからないという制度にしてしまったわけですね。そうしますと、そのほかの制度との整合性は一遍になくなってしまうわけであります。そのほかに非常におもしろいことは、法人税を重くする、三五%が四二%になるというようなことになりますと、配当所得控除というのは、これは上げませんとぐあいが悪くなる。これが下がれば逆のことをやらないと整合ができないのですけれども、わが国の場合にはそれが連動いたしませんで、逆な現象が起こってきているというようなことが、調べてみると全部あるわけですね。
 このことは主税局長にも伺いたいのですが、これは法人擬制説をとって説明するということは非常に困難な現象ではなかろうか。シャウプ税制の場合には仮にも二五%の所得税額控除というのは所得税の五五%の最高のものと連動するというような一定のセオリーがあったわけですが、それが崩れてしまっているということになるわけであります。その上昭和三十年には、これは結論は中小企業に対する一定の政策税制であるということで結構なことだと思いますけれども、法人税を二段階に分けまして、中小企業には軽課するということが起こりました。これは中小企業を保護するという点ではいいのでしょうが、しかし、厳密に法人擬制説をとりますと、株主に、大企業の株主だって零細な所得しか持っていない人がいるのだし、中小企業の株主だって相当金を持っておる人がおるのだから、この両者について所得税の段階で、きちっと取るものは取り返してもいいわけであります。
 ところが、この法人税について二段階をとりましたときに、配当控除率については何らの変更をしておらない。これも法人擬制説をとって、法人と、それから個人との間の税額を調整しようという考えが全く破綻してしまっておるということを意味するものではないかというように思うわけです。
 それから、さらに言いますと、公益法人についても税金を取っておりますね。これについて、それじゃ税額が低いから公益法人の関係者に何らかの所得控除の差別を設けておるかといいますと、それも別にないというような点を考えますと、幾ら一部の学者が言いましても、法人個人課税一体説といいますか、あるいは昔ながらの法人擬制説といいますか、そういうような考え方というのはどう考えても破綻をしていると言わざるを得ないと思うのですね。ですから私は、主税局あるいは財政当局が何もアメリカのまねをして経済の衰退を招けということを言うているわけではありません。アメリカが主要な点では法人実在説的な考えをとっていたということを私知っておりますけれども、私がここで言いたいのは、法人擬制説という考えに固執して、だから一方では配当軽課、一方では配当税額控除をやらなきゃいかぬとか、あるいは受取配当は絶対に益金に算入してはいかぬとか、そういうような固定的な考えをやはり捨てて、どれが一番現在のわが国の財政状況やあるいは経済をさらに発展させるという意味からいって適当であり、許容される税制であるかという観点から考えてみる必要がある。そして、戦前には超過所得課税もあったし、資本課税もあったというようなことを考えますと、私は、現段階でこの財政危機を突破するためにあれだけ国民に反対が多く、そして国会でも議決している課税ベースの広い間接税を鈴木総理の御意見を押し切って大蔵大臣が何かまだ未練ありげな答弁をするというようなのは一日も早くやめて、そして社会党からも御提案がございました、あすは私どもの党も提案いたしますが、法人税について緩やかな段階税率を考えるとか、プレミアム課税を行うとかあるいは受取配当の益金不算入ということについて考え直すとか、そういうような法人税について理屈の通った考え方というのを考えていく必要があるのではないかというように思いますが、いかがですか。
#312
○高橋(元)政府委員 御承知でございましょうけれども、アメリカのマスグレイブという人は現代財政学の代表的な学者だと思うのでございますが、昨年やってこられまして、私どもいろいろお話を承ったり懇談する機会があったわけですけれども、マスグレイブさんと話をしておりましたときに私が一番聞きましたのは――ちょっと迂遠な話でお許しいただけますか。アメリカがなぜクラシカルメソッドというのですか、いわゆる実在説的な法人とそれから個人配当の二重課税をやっておるか、これをヨーロッパ式のインピュテーションシステムに直さないのはなぜだろう、その見通しはあるのかということを聞きましたのですが、結局支払い配当について所得税をかけ法人税もかけておるということは、アメリカの企業を支配しております大株主の利益というものに一番忠実な要請に沿っているものだ、したがって会社の内部に留保を残しまして、それで会社の財産ないし経営を支配し得る大株主の利益というものが一番実在説のもとでは生かされるというような話をしておりました。それから、振り返ってみますと昭和三十九年とか四十年ごろにアメリカは配当税額控除をやめ、イギリスもいわゆるクラシカルメソッドになって配当重課、留保軽課ということをやったことがございます。それも法人の内部留保による資金調達ということを重視するという政策的な配慮であったわけでございます。いずれにいたしましてもマスグレイブの話でもそうでございますし、日本の財政学者といろいろお話ししていてもそうでございますが、いわゆる絶対法人税というのはないのだ、法人が担税力を持っておってこれに絶対的に法人税をかけるということではないのだということは法人税学者の共通の認識のようでございます。
 そういう観点から、先ほど来お話もございましたけれども、昭和二十六年以来、たとえば二十八年の譲渡所得をやめた、これは先ほど大臣から理論倒れのところがあったというお話もございましたけれども、実際に株式の譲渡所得に課税をするという制度を設けましても何にも実績が上がってこない、これでは譲渡所得課税があるからといって法人税制がシャウプ的な意味での完結した体系であるという保証にはならない、むしろこれはやめてしまった方が当時の資本市場の育成という観点からいいのだ、こういう政策的配慮が働いたからであろうと思います。
 わが国の法人税制の戦後の変遷といいますのは、四十三年の長期答申に至りますまで、どちらかと言えば擬制説から実在説の方へ動いてきておったと思います。配当控除率も下がってまいりました。税率を上げても動かさない。それからお示しのように公益法人なり協同組合についてのさらに一段と軽減された税率も導入されてまいりました。しかしながら四十三年、四十六年の長期答申以降、これは小委員会の報告でも正森委員よく御理解いただいていると思いますけれども、絶対的に擬制説か実在説かということでなくて、むしろディファレンシャルな見方と申しますか、いまの制度を動かしたら経済なり投資家なりどういう影響があるのか、その影響をできるだけプラスの方向に持っていく、そういう発想法に変わってまいりまして、その発想法が五十二年の答申で踏襲され、五十五年の中期答申でもまた出ておるということでございますから、現在は冒頭にお話のありました神学論争ということを離れまして、法人税制を動かした場合に、それが経済に与うべき影響、国際的な法人税の趨勢というものを考えていくという局面にあると思います。国際的な趨勢と申しますと、アメリカ、イギリスが昭和四十年ごろに相次いでクラシカルメソッドに移りましてからまた十年たちまして国際的な流れはかわりまして、いまインピュテーション方式というものがヨーロッパにおける統一した動きになっております。アメリカはなかなかそれに同調しないと思いますけれども、しかしながらそういう全体の国際化の流れの中で、やはり税制というものを考えていかなければならない、そういう必要性はますます高くなってきておりますので、その辺を踏まえて昨年の小委員会の報告ができておる、そういうことでございます。
#313
○正森委員 いま主税局長がマスグレイブ氏に会った話が出ましたが、恐らくこれは、アメリカでは統合賛成論者を統合論者もしくはイデアリストというのだそうですが、インテグレーショニストというのですか、それからイデアリスト、その一方の旗頭ですね。マスグレイブというのはたしか御夫婦で、リチャード・A・マスグレイブとペギー・B・マスグレイブ、この二人のことだろうと思うのですけれども、お話が出たわけであります。確かにECでは、イギリスなどは独立課税主体説をとっておりましたが、ECに加盟しまして、ECではたしか昭和五十年ですかインピュテーションの統一指令を出しまして、そういう方向へ動いているという事実はございますけれども、しかし依然としてアメリカではマスグレイブ夫妻のような御意見もありますが、がんこな分離論者といいますか独立課税主体説論者もおりまして、アメリカだとかオランダというのは依然として法人を独立の課税主体と考えるという考え方をとっており、今度のこの企業課税小委員会の報告を見ても必ずしも国際的動向は定まっていない段階において、わが国でインピュテーション方式を採用するのは時期尚早である、こういう考え方をとっていると思うのです。
 そこで、いま企業課税小委員会の報告の話が主税局長から出ましたので、その中で一つ聞かしていただきたいと思うのですが、これの六十二ページないし六十三ページをあけていただいたらいいと思うのですけれども、「地方税における税負担の調整についての考え方」というところがあるんですね。これは住民税の法人税割、それから個人に対しては住民税所得割というのが課せられておるわけですね。これを完全に統合するマスグレイブ氏のような考え方をとりますと、これも当然統合しなければおかしいのだけれども、地方税の場合には統合するということが全く行われていないのですね。ここで考えておりますことは、地方団体が課税権を有しておって法人の所在する地方団体と個人株主の所在する地方団体とは必ずしも一致しないという点から考えると、大体調整するという考え方は地方税になじまないということで片づけているんですね。しかしこれは理屈としてはなかなかこれでは片づけられない問題だと思うのです。税金を取る方からはなじまないといって片づけましても、取られる方から見ますと、おれはどこそこのどの会社の株主で大阪に住んでおる、東京には住んでおらないということでありましても、やはり自分の金が法人税として取られて所得税の前払いであるというのが統合論者の考え方ですから、どこに住んでおろうとそんなことは知ったことじゃない、同じ日本に住んでおるんだ、それは何らかの形で返せというのでなければ首尾一貫しないのです。そんなものこのごろのような発達したところで東京に本社のある会社は株主は全部東京に住んでおって、大阪やら名古屋、神奈川には全然おらないということはあり得ないのですから。ところが、そういうのを平然と、最高水準の人が書いたと思われる理由のところにあっさりとそういう理由で一言のもとに統合というのは法人税ではなじまないというので切り捨てているのですね。これは理屈としては非常にずさんな考え方ではなかろうか。ですから、ここから言えるのは、私は何も法人税について無理やり統合しろと言っているのじゃないのです。統合できないのはできないだけのわけがあり、住民の間でも東京に本社のある法人は東京で住民税の法人割を払いなさい、それだけ東京都に御迷惑をいろいろかけているのだから。個人は個人で大阪に住んでおる者は大阪で、沖繩に住んでおる者は沖繩で、茨城なり栃木に住んでおる者はそこで払いなさいという考えが日本に定着しているからだ。それはすでにそれぞれが独立の租税の負担をする主体であるという考えが地方税段階では完全に行き渡っているからだと考える方がむしろ自然であるというように思うのです。そういう考え方や、国税でもいまや一体説が崩れつつある点からいいますと、主税局長、いまも引用されました昭和四十三年の長期税制答申が、さきにおっしゃいましたから長くは申しませんけれども、法人には独自に担税力があるというように考えておるというのは、その後ECの動き等はございますけれども、やはり一つの必然的な考えの流れではなかろうかというように私は考えざるを得ないわけであります。
 大臣、昭和四十三年に税制調査会自身が現在の日本の法人税のあり方に大きな疑問を投げかけて「長期税制のあり方についての答申」というのを出しているのです。その中で法人税について一定の考え方を示して、長くなりますから一部だけを読みますが、「当調査会がさきに中間答申において、法人税を株主の所得税の前払いとしてではなく、法人独自の負担であるとするいわゆる法人利潤税方式の方向について検討すべき旨を指摘したのは、」云々「以上のような基本的認識に基づくものである。」以上のようなというのは全部省略します。それからさらに、「このためには、法人税は株主の所得税の前払いとしてではなく、法人の独自の負担であると認識し、企業の純利潤を株主の負担とは切りはなした企業独自の負担力の指標と考える方向で検討することが適当と認めたのである。」ということで、ここにいろいろな提案をしているわけです。この提案を全部読み上げるということは長くなりますが、非常に興味深い提案をしているわけであります。ですから、私はいまのように日本の財政というのが危機的状況にあって、鈴木総理が行政改革で政治生命をかけるというようなことを一方では言うておられ、いやいや行政改革だけでは心もとないのでやはり課税ベースの広い間接税をやらなければならないというような考えがありというような激動の時代には、戦前のわが国税制の歴史を考え、また昭和四十三年の長期税制の答申を考え、やはり基本的に世間でいわゆる不公平税制と言われているものについて考えてみる必要があるということを再度申し上げたいと思うのです。
 そこで、その場合にこれが企業のビヘービアに対してどういう影響を与えるだろうか、それがわが国の経済に、資本主義社会が当分の間は存続する、なるべく早く変わったらいいと私どもは思っているのですが、当分の間存続するという前提のもとで余りに大きな変動を惹起するようであると、これは渡辺大蔵大臣としては、自民党としても困るということだろうと思うのです。ところがそれについても心配要らぬという答えが出ているのです。これは皆さんはよく御存じであえて申すまでもないかとも思いますが、念のために指摘したいと思うのですが、主税局長に答えてもらいましょうか。配当軽課一本にしぼった場合、インピュテーション方式を採用した場合、受取配当益金不算入を変えてしまった場合、それぞれ企業のビヘービアにどういう変化があらわれるであろうかというのが出ていると思いますが、それを答えてください。
#314
○高橋(元)政府委員 まず独立説か統合説かということでございますけれども、法人税と所得税の間の税負担の調整を行わないということにいたしますと、その場合の問題は、一つは資金調達との関連でございます。もう一つは資本市場との関連でございます。第三に国際資本交流との関連でございます。これらにつきましては小委員会の報告に非常に詳細に書かれておるわけですが、ごく簡略に申し上げますと、企業の資金調達との関連で申せば、株式発行による資金コストが借入金や社債の外部資金コストに比べて高いものになる。したがって株式発行によらず借入金や社債の選択を促進させるということになってくる。さらには株式による資金調達が妨げられることによって企業の景気に対する対抗力というものが少なくなってまいります。こういうことからマイナスの影響があるであろう。
 次に、資本市場との関連で申しますれば、留保に比べて配当に重い税金がかかりますから、大株主または支配的株主の意向が企業の配当政策に影響を持つ限り、企業は内部留保を選好して配当を抑制することになるだろう。そうなりますと、資本の再投資ということがより効率性を欠く。資本市場が本来持っておる適正な資金配分機能というのは害される。また配当が抑制されますと、とかく投資は投機ということになりやすいということが指摘されております。
 国際資本交流との面では、仮に調整を行わない国に日本が移行したといたしますと、外国の投資の方が税負担上有利になってきて、そこから資本の流出ということが働くようになるであろう。そういう意味で国際的な八一モナイゼーションということへの影響がある、こういうことが基本的にまず指摘されておるわけでございます。
 そこで法人段階で調整を行うことが必要だということで配当軽課、それから支払配当損金算入、それから配当税額控除、法人税加算調整、いわゆるインピュテーション、四つの方式についてそれぞれ検討しておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても配当軽課という形でいきますと、日本の株主というのは現金配当というものを配当と考えて、配当にくっついております法人税負担は自分に対する配当ではないという観念をいたします。経営者の方はまた一定の払い込み資本に対する配当率を維持するということを経営の基本と考える傾向がございますし、配当控除につきましても、これは世間では株主に対する優遇措置であるという見方がございますし、配当軽課そのものが配当率の高い大企業に対しての優遇である、これはそれぞれ一種の、言葉が悪いのですが、感情でありまして、理屈からしますと首尾一貫しないものがありますけれども、そういう現状のもとで四つの方式を検討してみますと、いずれにしても一長一短でございます。国際的なハーモナイゼーションということを重んずればやはりヨーロッパで行われておりますインピュテーション方式に移行するということを将来の方向と考えるにしても、しかしながら、それはどのような投資、ポートフォリオと申しますか、金融資産選択にどういう影響があるか、企業の資金調達にどういう影響があるか、国際的な競争にどういう影響があるかということを一つ一つ考えていかなければ答えが出てまいらない。それはもう少し国際的な動向が軌を一にするのを待って方向を決定すべきだという答えになっておるわけでございます。
#315
○正森委員 主税局長が非常に丁寧にお答え願ったのですが、私が伺いましたのは、ちょっと質問が不十分でしたが、違いますので、私の方から申し上げたいと思います。
 「企業課税小委員会報告」の、大臣、お手元にもしお持ちでしたら、五十二ページをあけていただきたいのです。そこには、「配当軽課方式に一本化した場合の配当政策」こういうことで、日本租税研究協会がアンケート調査をやっているのですね。その結論が出ているわけです。
 それは、「「配当税額控除方式が廃止され、代わりに配当軽課税率が引き下げられた場合、配当政策をどうするか」」配当税額控除方式が廃止されてしまう、それでかわりに配当軽課税率が引き下げられる、つまり言葉をかえると、配当軽課方式に一本化してしまう、この場合ですね。ですから、企業の負担と考えますと、企業にとっては非常に利益になるわけですね。それに対する答えが、「「配当率を据え置く」とした企業が約四七%、「他社に追随する」とした企業が約四〇%となっており、両者を合計すると約八七%となる。」つまり、ほとんど変わらぬということなんですね。一本化して配当軽課方式になるから、非常に租税が助かるからこの機会に配当をふやそうかというようなことは考えない、いままでの配当を維持する、あるいは他社に追随するという者が八七%を占める、こう言っているのです。
 そうしたら、インピュテーション方式に統合したらどうかというと、今度は五十四ページを見てください。五十四ページの一番上に「法人税加算調整方式」、これはインピュテーション方式のこの小委員会の日本語訳なんですが、この場合の配当政策、「「配当軽課制度が廃止され法人税加算調整方式が採用された場合、配当政策をどうするか」」これは株主にとっては利益なんですね。しかし、企業にとってはもうけにならないわけですが、それに対して、「「配当率を維持する」とした企業が約五五%、「他社に追随する」とした企業が約三八%となっており、両者を合計すると約九三%となる。」つまり、九三%はほぼ変わらぬと言っているわけですね。
 その次に、受取配当益金不算入、六十二ページを見てください。受取配当益金不算入というのは、企業にとっては利益ですね。これがもし廃止になるということになれば、企業にとっては猛然たる反発が起こるかと思って興味を持ってそのアンケートを見れば、こう言っておるのですね。「「受取配当益金不算入制度が廃止された場合、安定株主工作に対する協力、業務提携のため所有している株式についてどうするか」という問いに対し、「手放さない」とした企業が約八一%、「当該会社と協議して決める」とした企業が約一二%、「投資採算が悪化するので手放す」とした企業が約三%となっている。」こう書いているのです。
 つまり、受取配当益金不算入にしたら、いままでの財政当局の考えでは、株主に渡るまでに何遍も課税されて株主はたまらぬ、企業にとってみても、一たんもう税金を取られている配当についてまたおれのところで課税されるというんじゃ、そんな株は持っておってもしようがないということになって大変な変動が起こるであろう、こう思われておったし、私もあるいはそうかなあとも思ったのです、あなた方の宣伝が行き届いているから。ところが、実際に調べてみて、アンケートをとってみたら、手放すというのは三%で、ほかはやはり手放さぬと。せいぜいが当該企業と相談するというのが一二%で、手放さぬというのが八二%だ。
 そうしますと大臣、いまの制度をごっと変えると、経済にごつい影響があると言われているわけです。ほかにはもっとたくさん項目があると思いますよ。株主の動向も調べなければいけませんからね。しかし企業に関する限りは、一番根幹である配当軽課一本にしぼるとか、あるいはインピュテーション方式一本にしぼるとか、受取配当益金不算入をやめるとか、まあ言ったら、一番根源的な制度が変わっても、自分たちの配当政策やらあるいは他社との協調のために持っておる株式、それについては変化はない、こう言っているのですね。
 そうしますと、渡辺大蔵大臣たるもの、度胸のある大蔵大臣なら、ここまでアンケートでどうもないと言うのなら、ひとつやるかということになってもこれはいいんじゃないかと思われる数字が出ているのですね。そうじゃないでしょうか。
 主税局長、えらい失礼しましたけれども、私はこのことを答えてほしかったわけであります。
#316
○渡辺国務大臣 どういう意図でそういう答えをしたか、私もその心理状態はよくわかりませんが、恐らくこの会社が、そこに何かいろいろな、自分の支配関係とかいろいろな下請をやらせて、人的な、やめた重役を天下りで送り込むとか、あるいはその会社と関係がなくなれば自分の企業の収益にもっと別な影響を及ぼすとか、あるいは会社のエゴが別に何か働いているとか、だから、そういうことを答えた人の心理状態がわからないというのは、私はそれを言ったわけです。
 だから、税金がよけいかかるということになれば放すというのが普通なわけですから、それはそれ以上に別な利益が何かあるんじゃないか。それは何であるかというようなことも調べないとよくわかりませんが、いずれにしても、要するに会社同士が株の持ち合いをやってしまっておるというようなことで、しかも日本の場合は、個人株主がだんだんだんだん減ってしまっているわけですよ。これは興味がないからですから、権利が守られないからだから。
 だからこういう点については、法人実在説だけに割り切ってしまうのがいいのか、日本のような国は、安定的社会にするために個人株主をもっとつくった方がいいのか。たとえば日産とかトヨタとかたくさん大企業があるが、そういうところでともかく従業員にたくさん株を持たせる、そして従業員の中からも監査役が出るとか、大株主はまあ出ないだろうけれども、何か重役が出るとか、そういうような形のことがいいのか、これは大きな問題なんですよ。自由社会にとっては大変な問題で、これは崩すわけにはいかない問題でございますから、真剣にいろいろな角度から勉強させてもらいたいと思います。
 きょうは大変ありがとうございました。
#317
○正森委員 礼を言われてもまだ終わったわけではないのですが、委員長もときどき目をつぶって非常に気持ちよさそうにしておられる時期がありますし、他の委員に御迷惑をかけてもいけませんので、きょうはこれで終わりまして、別の機会にまた聞かせていただきたいと思いますが、現在では上場株式なんかについては、七〇%以上は法人が持っているのですね。個人はちょっとしか持っていないのです。そこへもってきて受取配当は益金不算入だということになれば、これが法人の株式所有の性向を高めることはあっても、減らすことはないと思うのですね。
 ですから、いまの資本主義社会が法人の法人のための資本主義社会だと言われないためにやはり考えていかなければいかぬということで、私は、そういう意味からは、神学論争には必ずしもこだわりませんが、わが国の法人税制の過去にはいろいろ現在とは違う考え方もあったということも御参考にしていただいて、どの制度が財政再建にとって有益であり、また経済に対しても一定の積極的な役割りを果たすであろうかという点を考慮して、大所高所に立って考えていただきたいということを申し述べまして、本日はこれで終わらせていただきます。
#318
○綿貫委員長 次回は、明二十五日水曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開くことにし、本日は、これにて散会いたします。
    午後九時二十分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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