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1949/04/06 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 厚生委員会 第26号
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1949/04/06 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 厚生委員会 第26号

#1
第007回国会 厚生委員会 第26号
昭和二十五年四月六日(木曜日)
   午前十時三十三分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○健康保険法等の一部を改正する法律
 案(内閣提出)
○生活保護法案(内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(塚本重藏君) これより会議を開きます。日程の順序を変更して、健康保険法等の一部を改正する法律案の審議に入りたいと思います。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(塚本重藏君) 御異議ないものと認めます。それでは健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。先ず提案の説明を願います。
#4
○国務大臣(林讓治君) 只今議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして提案の理由を御説明申上げます。
 健康保険、船員保険及び厚生年金保険におきましては、保険料等を滞納した場合の延滞金の割合は、従来から大体国税徴收法と同一歩調をとつて参つたのでありまするが、このたび国税徴収法の一部が改正されましたので、その趣旨に同調いたしまして、延滞金の割合「二十銭」を「八銭」に引下げたいと存ずる次第であります。
 又徴收金額の一部について納付があつた場合には、その日以後の期間に係る延滞金は、従来から納付済額を差引いた額について計算するよう取扱つておつたのでありまするが、この際これを明確に規定いたしたいと存ずる次第であります。
 何とぞ御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いする次第であります。詳細に亘りましては政府委員から御説明申上げます。
#5
○委員長(塚本重藏君) お諮りいたします。本案の審議を次回に延期して、生活保護法案の審議に入りたいと思います。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(塚本重藏君) 御異議ないものと認めます。
#7
○委員長(塚本重藏君) 生活保護法案について質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから、これを許します。山下委員。
#8
○山下義信君 私は本案の大体骨子と考えられまする点につきまして、それらの諸点は若干政策に関係があると思われますので、政府のお考を聴きまして、そうして細部につきまして事務当局の御見解を伺う、こういう気持で、先ず、政府の御所見を承りたいと思うのであります。質疑に先だちまして、私は本案の提出に際しましては、深い情熱を以てこの案を受取るものであります。同時にこの機会に本案が、私共とは反対の立場でありまする現内閣の、而も保守党内閣の手によりまして、こういう性格の法律案が提出せられましたということにつきましては、敬意を表よるものであります。同時に本法案の立法に当られましたる関係諸君の労苦を深く多とするものであります。私の伺いたいと思いまするこの重要骨子と申しますか、そういう点は約十点程あるのでございますが、委員会のお許しを受けまして、或いは他の同僚諸君の御質疑と前後いたしまして、適当な与えられた機会に明かにさせて頂きたいと思うのであります。
 第一点は、本法の大目的は、提案の御説明にありますように、従来の現行法の性格をすつかり脱却いたしまして、いわゆる久しく我々の待望いたしました憲法第二十五條の精神を具現する融合保障の理想の実現を目指す性格のものであるという御提案の理由にありました通り、そういう劃期的な性格を帯びておりまする本法でございまするから、言い換えまするというと、この法によりまして生活の保障が与えられて行く。その保障の範囲が私は現在の生活保護法よりは十分その理想に副い得るように拡大強化せられてあるものとかように考えるのでございますが、果してさようでございましようか、保障の範囲が、或いはその対象において、或いはそり保障の限界において、或いはその保障の程度において現行法よりは確かに拡大強化せられたものでなければならん筈であります。いろいろに用語が異なり立法の体裁がかくのごとく改められましても、その内容というものが現行法と少しも変りがないということでございますれば、御提案の趣旨は悉くこれは偽りであると申さなければなりません。でございますから、確かにそれらの保障の範囲というものがいろいろな面において拡大強化せられたものであると考えるのでありますが、果してさようでございましようか、言い換えまするというと、社会保障制度の実現せられた暁におきましても、恐らくこの法案に大なる改正を加えなくてもよいという御確信をお持ちであろうと思うのでありますから、いわゆる社会保障制度的性格の生活保護法であるべきでありまするから、重ねてお尋ねいたすのでございますが、保障の範囲が確かに拡大強化せられたものであると本員は受取つておるのでございますがさようでございましようか。その点を先ず第一点として承りたいと思うのでございます。
#9
○国務大臣(林讓治君) 只今山下委員からのお話のございましたように、この度の生活保護法の問題は、勿論これまで行われておりましたよりも更に拡大強化せられたものと私共も考えております。従つて今後においてできますところの社会保障制度につきましても、これが骨子と将来なつて行くものと考えております。
#10
○山下義信君 そういたしますと、先ずその保障の拡大強化せられました内容の一つといたしましては、対象者の範囲でございます。これは現行法には極めて曖昧たる表現でなつておりましたのが、改正案におきましては、第一條にやや明確に規定されてあるのでございますが、尚未だこの法案全体を通しましてその概念が、範疇がはつきりいたしませんので、伺うのでありますが、この第一條によりますと、「生活に困窮するすべての国民」かようになつております。且つこれが集約せられまして、一つのテクニツクとしてそれが定義せられてありますることは、言うまでもなく第六條題二項に「要保護者」としてその定義がせられてございます。その要保護者の説明もこの法律で尽されてあるのでございまするけれども、尚明確でございません。その生活に困窮する程度は如何なる程度を指しておるのでございましよう、これが第一点でございます。困窮という文字の解釈はいろいろございまするが、或いは貧窮、或いは極貧、或いは困窮、日本文字で種々異つた文字はございまするが、困窮という文字は極貧とか、貧窮とかいう文字とは少しく差違があるように考えられます。これは諸外国の法的扶助の制度を見ましても、最低の一番の貧乏人という意味とは少し違うと思うのであります。いわゆる最下位の表現では私にないと考えるのでありますが、困窮という程度はこの法律では如何ような程度と考えるのでございましようか、その点であります。只今保障の範囲が拡大強化するのだ、社会保障の性格で行くのだ、こういう考えでございまするからこの点を伺うのであります。と申しますのは、例えば保護の種類に、教育扶助、住宅扶助、その他の扶助がございます。生活扶助を受けなくなつても、教育扶助や住宅扶助や生業扶助は受けられる筈になつております。医療扶助も亦然りでございます。現に改正案の生業扶助のところにはそれが明らかにされてあります。然るに、これは事務当局にも私はチエツクしておいて頂きたいと思うのでありますが、すべて教育扶助や住宅扶助のところに参りますというと、生活に困窮しておるものが皆それらの扶助を受けることになつておる。つまり言い換えまするというと、この法律によりますと、先の方で扶助の種類のところに参りましたときに、いわゆる被保護者でなければ……これは恐らく立法のミスであろうと思うのでありますが、被保護者でなければ教育扶助も住宅扶助もすべてうけられぬことになつておる。要保護者というものの定義がこの法律の中で一定していないところがあるのであります。細かいところは避けて参りますが、ともかくも困窮という程度はどのように考えておられますか、この点を明かにして頂きたいと思うのであります。
#11
○国務大臣(林讓治君) 只今の「国が生活に困窮するすべての国民」の「困窮」の程度についての問題でありまするが、これは第三條と第八條の二項において定められておるわけですから、これによつて行いたいと考えておるわけであります。
#12
○山下義信君 第三條がその生活に困窮するという程度であるとすると、従来の私共が考えておりました困窮という程度よりも相当程度が、何と申しますか、少しく上げて考えられておるように思うのであります。具体的に申しますと、困窮のため、第三條に言われてあるような最低限度の健康で文化的な生活水準を維持することのできないもの、又はその虞れのある者が等しく本法の対象であろうと思いますが、その点は如何でございましよう。
#13
○国務大臣(林讓治君) 只今の生活の水準でございますが、これは、実際に照し合せまして、そのときの実情に基きましてこれを保護すべきものは保護して行きたいと考えております。
#14
○山下義信君 そういうお答では、話としては受取れますが、法律の上で條文に合せては解釈しかねるのでございまして、それでは先程本員が伺いましたように、例えば第十七條の生業扶助のところにおきましては、「困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者又はそのおそれのある者」、こうなつております。この者には生業扶助という一つの保護を與えるということになつておる。然るにその他の十五條、十四條、十三條等の教育扶助、住宅扶助、或いは医療扶助にいたしましても、それらの條項の中には「又はそのおそれのある者」ということが省かれてある。そういたしますと、本法で言うところの要保護者と申しますものは、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者だけに限るのでございますか、或いは又そのおそれのある者ということも含まれてあるのでございますかどうですか、ということでございます。
#15
○政府委員(木村忠二君) 只今の御質問につきましては、生業扶助という扶助の性質から来る違いでございまして、本法の対象といたしましては、やはり全体としまして最低限度の生活を維持することができない者、それからおそれのある者に対しましても生業の扶助の限度におきましてはやはり対象になるということに相成つております。
#16
○山下義信君 生業扶助のところは分るのでありますが、教育扶助、住宅扶助、医療扶助等におきましては、被保護者にならなくても教育扶助、住宅扶助、医療扶助は私は受けられるのではないか、生活扶助は受けなくてもそれらの扶助は受けられるのではないかというのであります。そこで困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者は、言うまでもなく生活扶助を受ける者である。でありまするから、その生活扶助を受けない者でも受けられるということになれば、又そのおそれある者も教育扶助、住宅扶助を受けられるのでなければ、私はこの法が前後一貫していないと考えるのでありますから、要保護者というのは困窮のため最低限度の生活を維持する、ことのできない者又はそのおそれある者でなければならん。この法律は要保護者に皆適用するとある。要保護者という者の中には最低の困窮の生活をなす者は勿論でありますが、又そのおそれある者をも含まなければ、すでに生業扶助は要保護者には該当しないということになるのであります。でありますから、要保護者というのは困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者は言うまでもないが、又そのおそれある者もこの要保護者の中に含まれるのでなければ、この法律の要保護者の定義は一貫していないと、かように考えるのでありますが、その点は如何でありますか。
#17
○政府委員(木村忠二郎君) 生活に困窮するという状態につきましては、その日だの食事等のいわゆる物的な生活だけでなくして、教育の点におきましても最低限度の教育が受けられないという状態にありまする者も生活に困窮する者の中に含めて考えなければならないものであると考えております。又住宅につきましても、最低限度の住宅が確保せられないということは、やはり生活に困窮するという一つの状態ではないかと思われます。この点は医療、助産等につきましてもやはり同様でございまして、総て生活、教育、住宅、医療、出産、葬祭といつたようなものにつきましては、それの最低限度のものができないということは、やはり生活に困窮するという状態に相成ろうかと思います。従いましてそういうような生活に困窮するという状態にありまする者にたいしまして、今申しましたような保護を行うのでございます。尚要保護者といたしてありまするのは、保護をいたしまする対象となり得る者でございまして、これにつきましては生活に困窮する者及び困窮するようになるおそれのある者、この両方が入るのでございまして、この両方がこの法としては対象となつておりまするが、これにいたしまする保護の内容といたしましては、生活に困窮する者につきましては総ての扶助をいたしまするが、他の最低限度の生活を維持することのできないようになるおそれのある者につきましてはその他の生産扶助だけをやる、こういうことに相成つておるような次第でございます。
#18
○山下義信君 これは私は大変なことじやと思うのです。それでそうなりますと、只今保障の範囲を拡大強化するんだ、社会保障的な性格でも行くんだ、こういう考え方と、救貧的な従来のような性格は払拭するのだということをおつしやる、そのことと、実際に保護の内容として規定せられるも本改正案とは一致していない。もうちつとも現行法と変りがない。少くてもいわゆる率直に申上げますと、ボーダー・ラインの階層にこれらの保護が弾力的にできるだけ適用せられるという意図がこの法律の中に現れていなければ、何を改正したのですか。どこに取柄があるのです。一応は予算その他の制約を受けまして教育扶助も住宅扶助も別の法として新たに出しましても、その基準の積算の上には依然として生活扶助の範疇に留めざるを得ないこの予算的な実情は了承いたしまするけれども、併しながら法律の制定の目的というものは、現行法のごとき極めて窮屈なる生活極貧者の範囲から聊かでもボーダー・ラインの線にと範囲を拡大して行こうという意図があつてこそ、社会保障制度の一環としての法的扶助でなくてはならんということが一向ないというのでは、私はこの改正案の趣旨がどこにあるか疑わざるを得ないのでございます。只今の御答弁で、要保護者というのはかような生活の困窮に陥つた者又はそのおそれある者を含むとおつしやつたのは、正にその通りでなくてはならん。その点は本員は定義はそうだということは明かになりましたが、その要保護者に生活扶助も教育扶助も住宅扶助も医療扶助も或いは出産扶助も適用するのであると法律に書いてあるのでございます。その要保護者というのは生活の困窮に陥つた者又はそのおそれある者であると、こう決めて置いて、そうしてこれらの数種の保護は要保護者に適用するのであるというて置いてありまする以上は、総てそのおそれある者にも教育扶助、住宅扶助その他の扶助が適用されなければ、この法律は嘘を言うておるということになります。これとその教育扶助、住宅扶助、医療扶助等は、生活扶助を受けなくても、被保護者にならなくても、併し教育にも困り、住宅にも困り、医療にも困るというものに保護を与えようとする。現に医療扶助はそうやつておるんでしよう。然らば、その他の扶助とても亦さようでなくてはならん。ただ予算の制約上致し方なく、生活扶助の基準額からの内容しか与えられないけれども、本法の御精神というものは、聊かでも生活の困窮の慮れあるものについても、かようなる特別の保護を与えようとすることが精神でなくてはならない。私共の知る限りにおきましては、審議会の勧告もその精神であつたと思いますが、その点はどういうふうに考えられますか、重大な点でございますから、明確に御答弁を願いたいと思う。
#19
○政府委員(木村忠二郎君) 只今山下議員からお話になりましたように、生活扶助を受けなければならないものだけが、生活に困窮するものという中に入れて考えてはおらないのでございます。従いまして、教育扶助のみの単給をするということも、当然これは考えておる次第でございます。住宅扶助につきましては生活扶助を受けないで、住宅扶助だけを受けるものということもこの中考えております。ただこの四條で「生活に困窮する者」と申しておりますのは、只今申しました生活扶助は受けなくても教育扶助を受けなければならないという状態にありまする者はやはり生活に困窮する者の中に入つておるわけです。つまり困窮の程度につきまして、第三條にございまするような、「健康で文化的な生活水準を維持する。」ということになりますると、教育扶助を受けなければ教育ができないといつたような、状態にありまする者も、やはりその程度までは、やはり健康で文化的な生活水準ということに相成りまするので、そういうような意味で、単なる生活扶助のみならず、教育扶助、それから医療の面につきましても、やはり最低の医療は受けさせなければならんということになりまするので、いわゆる生活そのものには困らなくても医療ができないというもりにつきましては、やはり我々としましては生活に困窮する者の範囲の中に入るというふうに考えておるような次第でございます。この点につきましては、全てお説と御同様に考えておるのでございまして、そういう意味でボーダー・ラインの方も……そのボーダー・ラインの考え方でございまするが、ボーダー・ラインの者も、生活に困窮する者の範疇の中に一応入るというふうに考えております。
 尚ここで、その慮れのある者というふうに考えますのは、現実には生活もできるし、教育も、それから住宅も一応できる。併しこれを抛つて置きますとそれができなくなる虞れがある。それに対しまして、或る程度の生業扶助を出しますると、又そういうことをせずに済むようになるといつたようなものにつきましては、生業扶助をいたしまして、各種の扶助を受けさせないで済ませるようにするというのが趣旨でございます。従いまして生業扶助のみが「そのおそれのある者」というのを加えることにいたしたような次第でございます。
#20
○山下義信君 やや明確になりました。それではこの保護の対象の点につきまして、関連しては伺つて置きたいと思いますのは、この要保護者の…この改正法を施行いたしまして、この趣旨に則りましての今後の要保護者の、つまり対象の数はどういう見込を持つておいでになりますか。つまり現行法のごとき非常に限られた狭義の生活極貧者といつたような性格から、聊か生活保障的な、社会保障的な性格へと、一寸でも進んで行こうというこの法律の趣旨に基きまして、今後の対象者の数の見込はどういうふうに考えられておりますか。私共の考では、相当この保護の適用の範囲が拡大せられた。従いまして対象者の数も相当の増加を見込まなくてはならんのではあるまいかと、かように考えるものでありまして、二十五年度の予算におきましては毎月二・五%の増加数を見込まれておられますが、あれは一部には月々二・五%ずつ生活扶助の基準額を増加する、支給してやるのだということに考えているものがあるのでありますが、本員は、政府におきましては、二・五%ずつ対象者の数が増加するものというお話で精算の基礎にしておられるのではないかと考えているものでございますが、若しそれが間違いでありましたら御指摘を願いたいと思います。大体におきまして私共本法のこの精神をよく活かして適用いたしまするならば、少くとも現状の我が国におきましては、六百万人及至八百万人の適用者が、いろいろな数字的統計であるように推察しておりますが、政府はこの改正法案の適用の範囲を、この法の精神に副いまするならば、どのくらい増加するというお見込を持つておられますか。その点を伺いたいと思います。
#21
○政府委員(木村忠二郎君) 現在生活保護のうちで、生活保護だけを受けているものの数というものは明確のなつておらないのでございまして、生活扶助、それから外の扶助というものを受けておりますものを合せますと、現実に受けている者が約百七十万ということに相成つております。そのうちで生活扶助だけを受けております者がどのくらいになりますか。特に今度の教育扶助、それか住宅扶助の単給だけ受ける者というふうに分けて考えますると、或る程度この数は百四十万くらいに、或いはそれ以下になるのじやないかと思われます。つまり生活扶助のみを受ける者は、それぐらいになるのじやないかと思います。これは推定でございまして、実際にはまだ正確には計算いたしておりませんのでわかりませんが、そのくらいになるのじやなかろうかと思います。従いまして併給のものにつきましては必ずいつも併給、特に医療扶助につきましては、病気に罹つた場合だけこれを受けることになりますので、大体現在では入院をいたしております者につきましては、単給で医療扶助を受ける者の数が多くなつております。それから外来患者として医療扶助を受けております者の数は、併給されている者よりも少いといつたような状況に相成つております。これらは結局その支出すべき金額の限度によりまして異つて参りまするので、ボーダー・ラインの程度を単なる外来として医者にかかります者の範囲、程度のところまでを考えますると、ボーダー・ラインの者の数は、これは現在の生活保護を受けている者だけの数程度に止まるのではないか。それから入院というところまで引上げますと、相当の多くのものがこの範囲に入つて来るということになりまして、この生活保護法の該当者というものにつきましては、生活の状況というものによつて異つて参るわけであります。従いまして、その数がどのくらいになるかということは、従来からボーダー・ラインの者の数というものを推定いたしますれば、大体大きく見ますれば、現在の生活扶助のみを受けておりまする、昔で申しますれば第一種カードと申しまするか、その範囲のものの二倍ぐらいはいるのじやないかと私一応考えております。これは確かなものでございませんで、一応勘で考えたところでございます。そうして先程御質問のございました本年度の予算との関係でございまするが、本年度の予算におきましては一応基準が或る程度上るということを基礎にいたしまして考えているのでございまして、元の考え方、つまり住宅扶助も生活扶助の中に入つているものという考え方からいたしますと、約五千六百円というのが標準の家庭の五人世帯の標準の経費ということに相成つております。五千三百七十円というのが従来の基準でございます。これが大体、住宅扶助を入れまして、五千六百円、住宅扶助を引きますると、五千五百三十円ということに相成ります。大体その程度の引上げを見まして、更にその外に人員の増加を見込んだということにいたしているわけでございます。その人員の増加によりまして、大体一割程度が増加するというふうな見当で以て考えております。そういう一人当りの要保護者に見ますところの経費というものの増加、それからもう一つは、今申しました対象の増加、両方睨み合せまして、二・五%ずつの増加というものが出て来るというふうな一応の考え方を持つているのであります。これにつきましては、従来も各種の基準の引上げをやり又失業者が出て来るという、対象の殖えるという両方の結果を見まして、それに今度の情勢を考え合せました上で、一応そのくらいで行くのじやなかろうかと推定をいたしているのでございまするが、これにつきましては、実際の今後の経済状況というものによりまして、尚相当この傾向の変動が来るのじやないかということも考えられますので、これらに即応いたしまして、順次適宜の措置をとつて行かなければならんということに相成るのじやなかろうか、こういうふうに考えております。
#22
○山下義信君 今の二・五%のことは分りましたが、ところでボーダー・ラインを入れての凡その対象者の数は、大体今の生活扶助を受けている者の二倍ぐらいであろうという局長の一つの勘での御推測で、これは確たる科学的基礎調査があるわけでないでしようから、お互いの考えでありますが、私もつとあるじやないかと考えるのであります。それは見解の相違でありますから、ここで一割の増加を見込んだということが、これはこの改正案ではないと思う、現行法の建前でいろいろな失業状態等から来るところの影響を顧慮して、予て政府が考えているのは、十七、八万、一割くらいの増加を見込んでいるが、併しかような、何と申しますか、進歩的な改正案を適用するということになれば、もつと適用の範囲が拡げられる、拡げられるのではなく、拡げなければならんという法律の建前になつている。政府はできるだけこの法律の適用を多数の当然受けなければならん国民に対して、できるだけこの法の実行に当つて、ただ予算上から制約されるというので、現在の数字程度のところでごまかさないでこの法律、この拡大強化せられたる保障の精神に副うように誠意ある実行をなさる考が現内閣にありますかどうか。この点は大臣から承つて置きたいと思います。
#23
○国務大臣(林讓治君) 只今山下議員からの御説の通り私共はそれに該当する者でありましたならば、十分その点を考慮いたしまして、拡大したそのゆえんを実行いたしたいと考えております。
#24
○山下義信君 そこで第三点といたしましては、保障の限界でございますが、言い換えまするというと、この法で与えようとする保障の程度の問題でございます。成る程法律の原則等に揚げられてあるところを見ますというと極めて、結構でありまして、従来ないところの、非常に明るい條文が原則として揚げられてある。併しながらだんだんこの法律の奥へ奥へと入つて参りますと、いろいろな條文をつけて、つまり結構な看板を揚げられておられるが、実質的なその保護の範囲というもが、結局は現行法通りにしてしまうというような、何と申しますか、極めて臆病なおびおびしておいでになる。あれにも気兼ねし、これにも気兼ねして、非常に何物か恐れてお出でになるようにこの法律ができており、我々は頗る遺憾とするところでございますが、なぜさように恐れるのであるか。例えば第四條におきまして、先ず一つの條件をつけた。「あらゆるものを云々」、相変らずかような表現をお用いになる。私は議論をいたしません。質疑の程度に止めますけれども、議論はいたしませんけれども、資産や能力、その他あらゆるものをその生活のために云々、先ず第一番目にこの條件をつけたのであります。一体この生活の維持のために活用というのはどういうことを指すのですか、資産や能力、あらゆるものを活用というのはどういうことを言うのですか。これはいつも問題になる。生活保護の一つの名所であります。一つの名所でありますから、決まりきつたことでありますが、丸裸にならなければいかんのかという問題のところでありますが、この活用というのは丸裸を意味するのですか、そうでないでありましよう。今度こういう表現をお用いになりますならば、いわゆる小さな田を持つておる者が病気になつた、その田を売らなければこの保護を受けられないのかという、生活保護の一つの名所でありまするが、そういうことではないのでありまして、適当に活用されておつたならば一つの田があつてもいい。先ずそこに一つの関所、條件ができておる、率然と読みますと誠に苛酷な條件のように考えるのでありますが、相変らず現行法にありますところの救貧的な生活、極貧にならなければいかんのではないということを先程大臣からもお話になり、局長もお話になつたが、ここで活用ということはどういうことをいうのか、先ずこの條件から承つて置きましよう。
#25
○政府委員(木村忠二郎君) この点は只今山下議員から御質問になりました通り、特に活用という言葉を用いましたのもその意味のつもりであつたと思つております。資産、能力その他あらゆるものと申しておりまするけれども、これはその活用することができるものだけを考えておるのであります。従いましてこのものが例えば現在或る仕事をしておる。病気のために入院しなければならない。その場合にその者が病気が治つて帰つて来ました場合に、又元の仕事を続けて行くために必要な最小限度のものは残して置かなければ、その者が資産に対しましても活用されたことに相成らんというふうに考えいております。従いまして我々といたしましては当然そこまでこの人を落すということはこの際いたしたくない。ここにおきましては、必ずこの人は再び立上る、これは法の目的の第一條にもございまするように、その自立を助長することを目的とする、その大目的を以ちまして、この法は運用しなければならん、この法の運用につきましては第五條にもございまするように、策一條というようなものが基本原則でございまするから、この基本原則に従いまして運用さおれるということから、飽くまでそのものの適当な機会にはいつでも自立する、必ず自立する、できるだけ早い機会に自立するというようにいたさなければならんというような考を以て運用して行きたいと思います。第四條につきましても同様でありまして、これらのものがその者の自立ということに邪魔にならないように運用していきたいと考えておるような次第であります。従いまして、只今お説の通り、この活用というのは生活の保護、直接生活のためにこれを皆入れてしまうというのはむしろ活用ではないのであります。それは単なる使用であるということになるのであります。そういう意味で活用という字句を用いましたことは御指摘の通りであります。
#26
○山下義信君 この点大事ですから大変よく分りましたが、伺つて置きます。例えば失業者が失業保険を受けまして、辛うじて失業中の生活を維持しておる。ところがその給付の期限が切れる。もう生活の資の得ようがない。この法律でいろいろ他にも條件があります。扶養義務者もなけらねばいろいろない、という場合の生活困窮の場合に、それらの失業労働者が持つておりまする家具家財等を何も売りませんでも、或る程度の生活に必要な家具家財は存置して置きませんと、例えば衣類等でもその仕事用のいろいろな諸道具或いは被服類も持ちませんというと就職に行かれません。ルンペンになりまして、ぼろぼろになりましたのではどうにもなりませんので、或る程度の失業時代に家具家財の有様というものはそのままで、できるだけ、只今御答弁になりましたように、再び自立し得られる支度のできる程度のものがございませんと再起不能でありまするから、できるだけそういう程度のままで私はこの法の適用を受けられると考えますが、政府はどう考えられますか、承つて置きたいのであります。
#27
○政府委員(木村忠二郎君) 只今の御指摘の点も、我々といたしましては至極同感でございます。この趣旨につきましては、法の第九條におきまして、「必要即応の原則」ということも書いてあるような次第でございまして、やはりその人の世帯の実際の必要の状況というものを十分判断いたしまして、これらのもの勘案いたしました上で以て、保護すべきかすべきでないかということを決定しなければならんというふうに考えております。従いまして只今御指摘になりましたように、失業いたしました者がまた再び就職いたしまするか、他の職業に就きまするためにどういても必要であるというようなものは、何とか必ず残して置かなければなりませんし、又その者が生活を維持するに必要なものというようなものも併せて残して置かなければならんと考えておるのでありまして、その働くに必要なる衣類といつたようなものを、これを処分するといつたようなことは我々としても望むところではないのであります。
#28
○山下義信君 保障の條件としての第二は第八條にあるのであります。ここで厚生大臣の定める基準で測定して、そしてその不足分の程度を保渡しでやる、ということを申されてある、私は何と申しましても、結局は段々煎じ詰めて参りますというと、厚生大臣の定める基準の取り方如何に帰してしまうと思う。これだけの大問題が、幾百万の人が救われるか救われんかということの結局の要は、厚生大臣がどう決まるかということにあるのであります。それが厚生大臣の一人の手に委ねられるというのはどういうわけであるか。而もこれは国民の権利としてこの度与えられておるのである。国民の権利の点は後程伺いますが、この国民の権利と、その正当なる国民の受給権というものを厚生大臣の手一つで左右できるとは、この立法の精神をどうしてそうお考えなるか。国民の権利ならば当然これは法律によらなければならない。なぜ法律によらないのか。或いはその法律にこれを規定することは面倒である、何が面倒であるか。只今持つておるところの生活扶助の基準というものを別表に掲げて、三枚であろうと五枚でおろうと、印刷するに何の手間がかかるか。その生活を基準を合理的に数字に書いて、時が来れば改訂なさる。その別表の数字を変えるというくらいのことは一分間でもできるのであります。なせそれがむずかしいのであるか。かようなる国民の当然受くべき権利のその確定は、国民みずからが決定いたしましてこそ民主主義である。即ち法律により国会が国民の意思によつて決定せらるべきものである。さように国民の権利が、ただ一厚生大臣の行政府の長官によつてそれの決定が左右せられるという立法に相成りましたのは、どういう趣旨に基いて厚生大臣に委ねられたのか、厚生大臣が一番厚生な判決を下すものとお考えになつたのか、その立法の御精神を承つて置きたい。
#29
○政府委員(木村忠二郎君) この生活保護法におきまして最低生活の限度を認めまするところの基準というものは、極めて重要なものでありますることは御指摘の通りでございます。ただ現在までのところにおきましては、この最低生活の基準というものをどの線に置くべきであるかということにつきましての確乎たる資料というものが十分できておらないような状況でございます。従いまして従来から一応の基準というものを定めて参つて来ておるのでありますが、この基準が極めて不満足な状況であるということは申上げるまでもない次第でありまして、我々といたしましてはこの基準を向上いたしますることに極力努めておるようなわけでございます。この基準の向上につきましていろいろと各方面の折衝もいたし、又その方面の知識のありまする方々とも御相談いたしておるのでございますが、まだ今のところ我が国といたしましては、これに適切なるものを持ち得ないような状況になつておるような次第であります。すでに御承知と思われるのでございますが、国民の最低生活の基準というものがどこにあるかということにつきましては、社会保障制度審議会におかれましても御検討に相成つておるようでございまして、これらの御検討の結果どういうようなその最低生活の基準というものが立てられるか、これを基礎といたしまして更に立法措置或いはその他の適切なる措置を講ずるのが至当ではないかというふうに考えておるような次第でございまして、この点につきましては我々としましては、御指摘のような有権的な基準というものが一日も早く立つということを期待いたしておるような次第であります。それまでの間におきましては、我々としましては、一応の従来の行方というものによりまして参りたい。尚この基準につきましては直ちに直接予算芝関係いたして参りまするので、その点につきまして一応この予算の基礎といたしましては、どういう基準を用いておるかということにつきましてはこれを明かにいたしまして、その予算の基準で以つて一応やろうという建前で進んでおるようなわけであります。更にこれを制限する、或いはこれを又殖やすといつたような場合につきましては、又必要なる予算的な措置を講じて参りたいというふうに考えておるのでありまして、我々としましては現在の基準ならば、これより更に制限するということは到底考えられない、これより幾分でも良くするというふうに努力して参りたいというふうな考でございます。尚最近の経済情勢の各種の変動というものがこの基準を常に動かさなければならないというような状況に相成つておりますることも、これに即応いたしまして、一応迅速に適切なる措置を講じて参りたいというふうに考えまして、只今までの一応の方法をとつたような次第でございまするが、これにつきましては今後、先程申しましたような状況の速かなる完成を見まして、これによりまして適切なる措置を講じたい、こう思つておる次第でございます。
#30
○山下義信君 局長の答弁は少し私の質問と外れておりますが、私は問題がここにあるということだけを指摘して置きます。そういうむずかしい国民の最低生活の調査、或いはこの保護の基準の建て方のむずかしい、そのむずかしいものであればこそ最も大切なる法律規定としなければならんのであります。審議会の勧告の趣旨は、保護の基準を法律に明記せよというのは、こういう作文でいろいろ表現せよと言つたのではない、その生活の、或いは各種保険の給付額が法律で決定せられてあると同じように、同じことでありますから、このこうした扶助の基準額等も、すべからく法律に明記しなければならん、一行政府で以てこれが左右せられるというがごときは軽率に墮するというので、勧告の趣旨はそこにあつたと思います。問題はここにあるということだけを私は指摘して、不満の意を表して置きます。少くとも審議会等を作つて、厚生大臣も慎重に研究をいたす用意が、私はこの点に必要であると考えるのであります。
 尚この條件の中に、第八條には「不足分を補う程度」というような言葉を使いまして、恰も要保護者が一部負担をしなくちやならんのであるということを要請しておるがごとき誤解の虞れがあるような用語がる。或いは又第二項におきましては「必要な事情を考慮した」とか、或いは「十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。」とか、様々な條件を付けまして、如何にも出し惜しみをしておるような、如何にも少しでも余計出してはならんといつたごとき表現が所々随所に数多く見えることは、私は甚だこれは一つの立法技術でありましようが、よくできておる法律でありながら多少の不備を感ずるのでありますが、第九條に行きますというと、誠にこれは面白い條文が一項加えられてある。この第九峰は取り方によりましては苛酷な條件とも考えられる。取り方によりましては極めて弾力性のあるいい意味の條文とも解釈せられるのでありますが、私はいい意味にこの第九條の條件を考えたいと思うのであります。そこで、例えば従来問題になつておりました未亡人世帯等の援護対策等も、私は第九條のこの必要即応の原則を十分に発揮いたしますれば、それ等のかねての懸案の、そういう対象者に対しまする施策も十分に、遠慮なく、この新しい生活保護法の通用でできるものである、そういう意味で第九條の御立法をなされてあると解釈いたすものでございますが、果してさようでございましようか。この点を承つておきたいと思います。
#31
○政府委員(木村忠二郎君) 第九條につきましては只今の御指摘の通りでございまして、この点は我々としましても、特に第八條にございますところの基準につきましても、第九條の原則というものは当然込んで考えなければならない。従いまして、その、各世帯の必要といたしまする経費につきましては、その世帯を構成いたしておりまする者の状況に応じ、又その世帯の実際の実情にも即応するように、つまりいわゆる悪事等にならないようにする無差別平等原則というもの、この点につきまして十分正しい意味での無差別平等にするという考にしなければいけないと思つております。特に未亡人世帯のごとく、特別なるハンデキャップのありますところの世帯につきましては、そのハンデキャップが十分に補われるようにいたしたい、この点につきましても第九條は十分活用いたして参りたい。かように考えておる次第であります。
#32
○山下義信君 只今の御答弁私は満足いたします。どうか第九條によりまして言うに言われん微妙な運用の妙を発揮して頂きまして適切なるこの法の運用を切望するのであります。
 次は第四点といたしまして、要保護者に対しまして権利が与えられてある、つまりこれはこの保護が権利として与えられたという劃期的な立法でありますが、にも拘らず保護者にとりまして極めて不利益な制約と申しますか、誠に好ましからんところの圧迫とでも言うべきような條文が所々に見受けられる。折角権利としてかような保護を与え、いわゆる基本的人権の尊重が、この法律によりまして明かにせられようというに拘らず、依然として「お前達を保護してやるんだ、保護してやる代りにはこれだけのお前達は」というこの一つのいわゆる、旧弊的と言いますか、そういうように恩恵的な、交換的な制限を加え、或いは乃至圧迫を加えるというようなことが随所に見受けられることは、私の遺憾とするところでありますが、例えば第七條におきましては、いわゆる保護の申請の原則が定められてありますが、この保護の申請をなし得る者が、ここに要保護者と、扶養の義務者と、同居の親族が保護の申請ができることになつておるが、他の者は保護の申請はできないのであるかどうか。例えば友人でありますとか、或いは隣りの者であるとかいうような者は、保護の申請はできないのであるか。或いは折角与えられたる保護の申請権、これはライトである。各国の立法も、本員は外国を見ませんから、実地には知りませんが資料によりますというと、これは立派な一つの保護申請権という権利である。この権利を誰にでも代理をして、行使させることができますかどうか。この申請はこれだけに限りますか。この保護の申請をなし得る者の範囲はどういうふうに考えておられますか。代理は又誰でもできますか。誰にでもやらせますか民法の代理権はそれは誰にでもできましようが、一応法律の上におきまして、何かこの要保護者の保護申請権を保護してやるというお考はございませんか。
#33
○政府委員(木村忠二郎君) ここで保護の申請者と書きましたのは、実際にその手続きをいたしまするものを限定いたしたわけではないのでありまして、要保護者、扶養義務者或いは同居の親族が自分では言い出さないでおる、その場合におきまして友人がその者に勧めまして、そうして代つて手続をしてやるというようなことは差支ないのであります。そうしたものを制限しようという意図は持つておらないのであります。
#34
○山下義信君 これは私はまあ見解でございますから、今は述べませんが、一応私はこう考えるのですが、これは私は質疑の形式で、当局に伺つて見たい。問題は民生委員のあり方ですが、これは他の同僚議員も随分御意見があろうと思いますから、私は避けますが、この民生委員などが、この保護の申請を代つてやるということは、私は極めて適切じやないかと思う。ただ発見というだけでは意味をなさんので、この申請の代理ぐらいは、民生委員にさせてやれば、民生委員の仕事としても極めて相応しいことでありまして、これが若し民法でいうところの無制限に誰にでも代理させることができれば……私共はこういうことを言うことを好ましく思いませんが、若しこの法が特定な政党なぞに利用せられ悪用せられまして、この階層の者を、この保護申請権を、或は不服申立権を濫用、悪用いたしまして、そうしてそれが党利党略の具に供せられる、例えば、私率直に申しましよう、この法を一つの生活困窮者の煽動の具に供するがごときことがありましては、私は法の精神が惡用せられるものとして憂慮いたさなければならん。そういうようなことのないようにいたしまするには、誰にでも保護の申請の代理ということを認めなくて、この法の上に明かにこの保護の申請、或は不服の申立の代理は、民生委員がよいぞ、民生委員にさせるぞということに相成りまするならば、十三万の民生委員の活用といいまするか、又この法律の円満なる運用又要保護者の折角の権利を保護してやるという上において、私は親切な行き方ではないかと考えるのでありますが、そういう点につきまして当局は、政府はどうお考えになりますか、その点大臣から私は承つておきたいと思うのであります。
#35
○国務大臣(林讓治君) 只今のお話御尤でして、私共は民生委員を十分に活用いたして行きたいというつもりでおります。従つて民生委員につきましても、今後大いにこういう方面については指導いたして行きたいと思つておるわけです。
#36
○山下義信君 折角の要保護者に対しまして、まあ不利益な條文が沢山あるのです。これは細かいとは又の機会に讓ることにいたしまして、例えば第二十四條の第四項を見ますというと、保護の申請をいたしまして、三十日以内に通知がなかつたときは、その申請を却下したものとみなすと、こういうのであります。これは非常に市町村長によりまして悪用せられる虞れがある。これは保護の申請を却下するのに誠に好都合なやり方になつておる。調べんでもいい。拠つておきさえすればいい。この申請を却下しようと思えば、三十日以上拠つておきさえすれば、当然自動的にこの法の四項によりまして却下するということになる。これはむしろ親切なやり方をするならば、これは不服申立のところでも同じでありますが、立法的な技術としては困難がございましようが、親切なやり方とするならば、他の行政の手続のときにいたしましたと同じように、三十日経つたらば、何らの通知がなかつたらば、許可したものと見做すとした方が余程に親切ではないか、これは大変市町村長が却下するのに都合のいいように作られてありますことは、法律に親切さがないも私は考えるのであります。これは是非この四項を濫用せんようなやり方というものについて、当局は十分にこの意思があるかないかということをここで伺つておきたい。
#37
○政府委員(木村忠二郎君) 保護の申請に対します市町村長の措置といたしましては、第二項によりまして、申請があつた日から十四日以内に申請者に対しまして、保護の要否、種類、程度、方法を決定して、而も書面を以て通知しなければならないことになつております。ただ保護者の、扶養義務者の資産状況等の調査をしなければならないといつたような特別の事情がある場合には、これは三十日まで延ばすことができるのでありまして、どんなことがありましても、市町村長は、三十日までには何らかの措置を取らなければならないと思います。殊に生活保護法によります保護というものは、人の最低の生活の保障という点に直接関係があるのでございますから、これはできるだけ早く、できれば申請があつた日から直ぐにその措置ができるようにしなければならないという考でございます。而もそれが一日も早く安心を与えますためにも決定をしなければならないと考えるのであります。特に、従いまして、我々といたしましては、これは三十日まで待つということは、これはよくよくの場合でなければならないことでありまして、十四日以内、或いはできればもつと早く十四日以内、最長十四日ということで、それよりも早く、一日も早くこれに対する措置を決定するということを要請いたしております。又そういうふうに指導もいたしますし、又そういうふうにいたさないような市町村長がありましたならば、これに対しましては、嚴にこれを戒めるようにしなければならないと考えておるのであります。四項を設けました趣旨を申上げますと、三十日経つても返事がなかつた場合におきまして、何にも規定がございませんと、これに対する救済の手続が取れないわけでございます。これを申請者の側におきまして何も言つて来ない場合には、却下したのだというふうにみずから見做すことができるという規定を設けまして、これによりまして、申請者の側から救済を請求することができるという状態をここに作ろうというのがこの規定の趣旨でございます。従いましてこれは、申請者は、却下したものと見做すことができると書いてございますが、この変じがないときは却下したものと見做すというふうには、法律上当然見做されるものではない、と申しますのは、これはどうしても我々といたしましては三項で以てやるもいうのが建前でして、四項で以て却下をするというのが建前になるようなことは、飽くまでしないようにしなければならないというふうに考えておりますが、特に四項で以て自然却下のようなことになつて、何と申しますか、救済の訴えが出てくるということになりましたならば、これは明かに市町村長の怠慢ということが明かになるわけであります。我々といたしましては、監督上この規定が発動されるような場合におきましては、特にこの点は質点をおいて見なければならん状況であると考えるのであります。
#38
○山下義信君 まあ随分沢山いろいろ要保護者に制限が加えられてある。まあ随分にこれはひどいと思われるようなことが随所にあるのでございますが、例えば、第二十七條におきましては、市町村長は、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができるということで市長村長に指示権が与えられてある。併しこの指示というものは決して強制するのではない。二項三項でわざわざ御丁寧に断り書かされておる。然るにこの法律によりますというと、この市町村長の指示に従わなければ保護を止めるぞという強い規定かあるのであります。これはひどいことが書いてある。そこでこの第二十七條におきましては、指導指示というものが決して強制するものではないと言つておきながら、第六十二條に持つて参りますというと、この第二十七條の規定によつて被保護者に対し必要な指導又は指示をしたときにはこれに従わなければならないと、服従の義務を課しておる。二十七條においては強制しないと言つておる六十二條になつて、しまいになつて来るというと、これに強制義務が、服従義務が課してある。これらの指示に従わなければ、この第三項に至りますというと、保護の変更停止又は廃止をするぞ、こういうのであります。なぜかような苛酷な條文を作つたのでありますか。二十七條と六十二條と、この法律は大変私は正反対で、矛盾しておると考えるのでありますが、この点はどういう考えでかようなことにいたしたのでありますか。何れが本当なのか、二十七條が本当であるのか、或いは六十二條の強制服従の義務が本当であるのか。政府はどちらが本当に立法したのであるか。この点を伺つておきたい。
#39
○政府委員(木村忠二郎君) これはお説のように一見矛盾しておるように見えるのでございますが、これは、この生活保護が一つの権利であると申しますことは、当然保護を受けます者に一定の定義があるということは言うまでもないことではないかと思われるのであります。権利関係を明かにいたしまする場合におきましては、当然の帰結といたしまして義務関係も明かにいたしておかなければならんというふうに思うのであります。勿論この関係におきましては、その権利に相応する義務ということにならなければならないのであります。この点につきましては十分に留意をいたさなければならんと思います。生活保護法によります保護をいたしますのは、これは国の責任でありますし、又それを受けまするのは国民の権利でございますが、この保護を受けまするものも、国民全体の税によりまして保護せられることに相成るのでございますので、それぞれ状況に応しましてその額を、額と申しますか、程度をできるだけ少くするということに努めることが当然被保護者におきまする義務ではなかろうかというふうに考えたのでございます。これは実際の状況からいたしますると、被保護者につきましては種々の指導をいたしをせんと、それに対しまする努力というものが十分にできない場合というものがあるということは、これ又多くある状況でありまして、それらの点につきましては必要なる義務をどうしても設けておきませんというと、保護の適正化を図るということができないのではないかと考えるのであります。ただその規定を明かに設けますにつきましては、我々といたしましてはこの規定が濫用せられるということは飽くまでも阻止しなければならん、これは只今山下委員から御指摘のありました通りであります。そういう規定があるということをいいことにいたしまして、当然行われなければならないところの保護を行わない、或いはそれを渋るというようなことがあつてはならないのであります。我々といたしましては保護しなければならないことは保護しなければなりませんが、この保護という中の中味といたしましては、この保護を受けましたものがこれによりまして適正に生活ができまするようにいたして行きたい、指導するということがやはり保護の内容として考えられなければならない、その場合は、その指導に従つて貰うということがやはり当然そういうことを被保護者として考えなければならんことと考えております。そういうわけで第二十七條におきまして、指導指示権の規定を設けまして、更にこれに何するところの六十二條の指導指示に従わなければならなという義務を負わしたのでございまするが、この指導指示権というものを濫用いたしまして、市町村長が被保護者の自由を束縛し、或いはその不必要なる指導指示をしたり、或いは被保護者の意に反しまして強制的にこれをやるというようなことをしてはなりませんので、それらの点につきましては、十分被保護者の納得の行くように指導いたしましてやる、そういうふうにいろいろと懇切丁寧にいたしましても尚これに従わないで、非常に社会通念から見ましても適当でないような処置に出ました者に対しても、保護するということは、これはむしろ、何と申しまするか、国民の税を使いまするものといたしまして、考えなければならんというふうに考えますので、まあ最後の手段が第六十二條の第三項に規定したような次第でありまして、我々といたしましては、六十三條の第三項は、これは滅多に使うべきでない、これは伝家の宝刀として秘めておくべきものであるというふうに考えるのでございます。我々としましては、飽くまでも指導によりまして、被保護者が納得づくで以てこれに待つて行くというようにしなければならん、こういうふうに考えておるのであります。
#40
○山下義信君 局長の心持は分るのですがね。併し法律は明かに反対なことが二十七條と六十二條とに規定してある、でどちらが本当かということをこれは明かにしなければならん。二十七條の方では指示指導はするけれども強制は市内とこう言つておる。六十二條の方では服従せにやいかないのだと強制の義務が負わされておる。これは明かに矛盾しておるところの法律である。心持は分るのであるが、どちらが本当であるかということを、これは明確にいたしておかなければならん。これはまあ議論になりますから問題として私は提供しておきますが、一体ひどい。この市町村長にいわゆる生計調査をさせる、これは当然です。生計調査をやらなければいけませんから、尚そのやり方はどうしてやるのか明らかでないが、これは当然相当立派な方式を立てまして、生計調査をやるわけです。併しながら生計調査に際しまして、いろいろ故障が被保護者との間に起きました場合には、五万円の罰金の規定が課してある。要保護者というのは生活の困難な者ですよ。その生活困難な者に市町村長がそれをやるときに、若しそれを拒んだり、いろいろなことをしたときには五万円の罰金という処罰ある。これは考えなければならん問題である。五万円の罰金がどうしてその要保護者かち出で来ます。これはですね。まあこういうことは議論になりますが、そういうふうに所々に苛酷なところがある。今の六十二條でありますが、これは二十七條との相反しております点はあとに問題を残すといたしまして、只今の御説明ではまだ納得いたしませんから、あとへ残しますが、この場合です。これが国民の権利でございますぞ。これは忘れたら駄目です。この法律を一貫しておるところはこの保護を受くることは国民の権利である。権利ということは濫用、悪用の意味で私は申しておるのではございません。当然の国民の正しいいわゆる権利であります。でありますから、できるだけそれを保護してやらなければならん。然るにその権利を保護してやるところの新しい規定というものが私はやや欠けておるのではないかと思う。この六十二條で、今のような要保護者が指導、指示を受けなかつたときには、この伝家の宝刀を抜いて保護の停止をするのでございますよ。何故ここで要保護者に言い訳をする機会を与えてやりませんか。いきなり一方的に市町村長がさあつと保護の停止ができるように規定してあるということは実に残忍と言わなければなりません。要保護者はこの場合にこういうような廃止の決定をされましたときには、そこでそれに対して言い訳をする、不服の申立てとは違いますよ、言い訳をする、この弁明の機会を与えるということが、すべての最近の諸立法の事例でもありますが、殊に要保護者ですよ。厚生大臣は、読売紙上の紙上討論会の、何ですか、記事の中に書いてある、これらの弱い者をできるだけ自分は法律を改正して保護してやろうという、この記事が載つておつたことを記憶いたしておりますが、ここで要保護者に弁明の機会を与えてやることが私は適当であると思いますが、政府はその点をどう考えられますか、これでいいと考えておられますか。
#41
○政府委員(木村忠二郎君) この点はこう言うことになるわけじやなかろうかと思うのでございますが、第六十二條、第二十七條によりまして、必要な指導又は指示をすることかできるという、これは必要なる指導指示をするわけでございます。その際に、自分がそういうことはとてもできないということになるならば、これに対しまして当然それに対することをその場で見てやることもあると思いますし、市町村長がそういうことを指導指示に対するいろいろな言い分がこの際あるのではないか、又そういうふうなよく指導指示と申しますることは命令じやないのでございますから、これにつきましては、十分に納得の行くようにここで話合をしてやるということになると思います。そういうふうにいたしまして、而もその指導指示いたします場合におきましては、二十七條の三項にありますように十分に制限を設けまして、そうして被保護者の自由なる或いは意思というものを十分に尊重いたしまして、そうしてその措置を講じました上で、尚町それに従わないというような場合でございましたら、この義務に反するという場合は極めて稀な場合、余程惡質な場合ということだけに限られるだろうと思います。従いましてその場合におきましては弁明の機会を与えておるわけでございますから、市町村長としては二重三重に考慮した上でやるべきじやないかというふうに考えておるわけでございます。そういうふうに実際にやらなければならん、そういうふうにいたしたいと考えております。それで尚市町村長自身の考え方が間違つておるかどうかと言うことにつきましては都道府県知事に対する不服の申立によりましてその点は救済するようにいたさなければならんと思つております。
 それから先程の罰金の点でございますが、これは不実の申請、不正な手段によつて保護を受けたような場合でありますとか、虚偽のことを申立てたというような場合によつては当然罰則の適用をいたしたいと考えております。それは例えば、或る財産を持つておることを知つておる人のところへ行つて例えば收入の明かに入るところに行きまして、收入を受けますために適当でないと言うことがあります場合、要保護者自身、要保護者の関係におきましてこの保護の適正化を妨げるような行為がありました場合の罰則規定を設くるようにいたしたのであります。つまり我々といたしましては、要保護者につきましてはこの際調査いたしまして要保護者の周囲につきましての十分の調査をしなければならないというふうに考えておるのでございます。これらの際にこれを妨げるような特殊の措置の要します場合に際しましても、特殊な措置ということに対しますところの罰則規定というものを明らかにしなければならんように考えたのであります。勿論かような悪質な妨害行為というものがありました場合におきまして、罰金は幾らかけましてもこれは取れないとうことは当然のことだろうと思います。
#42
○山下義信君 そうすると八十四條にあるところの第二十八條第一項というこのとは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したということは要保護者を含んでおるのではない、こういう御見解でございますね。
#43
○政府委員(木村忠二郎君) これは要保護者を含んでおらないのではないのでございますが、これは実際には、只今申上げましたように、要保護者につきましては罰金は取ろうとしてもこれは取ることは恐らくできないだろうと思います。その調査を妨げるというようなことをさせないという規定だけでございます。従いましてこれは実際にはそれ程の実効があろうとは想いませんけれども、惡意若しくは惡質なものに対して、この妨害といつたようなことについての罰則規定は盛つて置かなければならんのではないかというふうに考えております。我々としましては権利としまして確保いたしますためには、どうしても権利の内容というものを明かにするために、何と申しますか、要保護者に対しますところの義務というものは、権利のあるところには必ず義務が伴うというところから当然その点は明らかにせられることも止むを得ないのではないかと思います。
#44
○山下義信君 大臣の御出席ですから、努めて私は大臣の見解を聴きたいと思うので、細かいところは保留さして頂きます。折角のことでありますから、関達して要保護者の権利、保護いうことに関連してございますが、これはどう考えておられますか。第三十八條の保護施設の種類のところで養老施設のところでございますが、この養老施設の中に入れまする者のことが第二項に書いてございます。「老衰のため独立して日常生活の用を弁ずることのできない要保護者」とございます。この法律の字句を読みますと、要保護者であつて……要保護者というのは言うまでもなく生活の困窮の者、先程の定義で申しますと、若しくはそのおそれある者でありますが、その生活の非常に困窮した者で、而日常生活の用を弁ずることのできない者と言いますと、手も動かん、足も動かん、便所に行く事もできない、殆んど日常身辺の用ができない者というような、動くことも過すこともできないような者でなければ養老施設に入れない、こういうふうに條文では見えるのであります。年をとりまして、生活困窮をいたしまして、他に生活の扶助を受くる手段のない者は、私は養老施設には入れるべきであつて、さような者であつて尚その上に足腰の立たん日常の身辺の自由もきかないような者ということまで極限してあるようにこの條文は読めるのでありますが、立法者はどういう考え方でこのように制限を加えてあるのでありますか、これを明かに願いたいと思います。
#45
○政府委員(木村忠二郎君) 独立して日常生活の用を弁ずることができないと申しまするのは、その起居動作だけに限定いたしておるつもりではないのでありまして、その人一人が物を買いに出る、何と申しまするか、各種の生活の事情を他人に頼まずにはできないという状況にあります者ならば総て入るわけであります。従いましてその人の足腰立ちましても、非常に、何と申しまするか、起居動作にどうしても年をとりますと十分なことはできませんので、物を買いに出たりなんかすることもできない。つまり生活の各種の日常の仕事というものが自己の周囲にあるわけでございますが、そういうことができないといつたような場合であります。従いまして、何と申しまするか、起居動作のできないというところまでひどい者という意味ではなくて老人であつて、その人を介護する人がいない、そのために日常の生活に支障を来たすといつたような者は総てこれに入るというふうに広く解釈いたしておるようなわけでございます。これは決してそういう意味で非常に制限せられた本当の老衰して老病になつてしまつておるというような者だけに限るという趣旨ではないということを御了解願いたいと思います。
#46
○山下義信君 只今の御答弁を要約いたしますと、こういうことになるのですね。そうするとこの第二項の心持は、老衰のため独立して生活を営むことができない要保護者を收容する、こういうことになるのですね。
#47
○政府委員(木村忠二郎君) 大体そのようなお考で私共のほうと意思は一致しておる、こう思つております。
#48
○山下義信君 大臣に私伺いたいのでありますが、最前問題に出ました国民生活の最低水準とはどういうものを言うか、この基本的調査ができませんと根本問題の解決がつかんのでございますが、生活扶助の基準に関しますることをいろいろ我々は法律に明記せよというのでありますが、或いは審議会を作れという意見もあるわけで、いろいろ又政府の方にもお考もあり、御理由あろうと思うのでありますが、そういう法律上に謳う謳わんは別個といたしまして、何といたしても我が国の国民生活の水準の問題、これの根本的調査ができなければ真の生活保護法の完璧もできませんし、総ての保障制度の立案企画もできないわけでございますが、これに対しまして政府当局におかれましては、政府自ら相当に根本的な調査をやつてみるというお考があるかどうか、今回のこの法案に密接不可分な問題といたしまして、私は国民の最低生活の水準とはどういうところに水準を引くか、それらの我が国における調査が不十分である、これはすでにワンデル使節団の勧告にもこういう調査のできていないことが指摘してあるのでありますが三カ年経つてもまだ何等のまとまつた見るべき資料ができていない、これから一つ相当な規模で徹底的に御調査に相成るというお考がありますかどうか。安本、労働省あたり或いはそれらの関係の機関に多少の手をつけた形跡もありますけれども、みるべき資料もないのでありまして、これは厚生省といたしまして大仕事であろうと考えるのでありますが、政府におきましてそういう御計画があるかどうか。ただそういう問題の調査費が計上してあるとか、或いは審議会でやつてくれるんだというような人頼みでは私はいかんと思う。これは超党派的な問題であると思いますので、この際大臣がどういうような御計画があるかということを承つて置きたいと思います。
#49
○国務大臣(林讓治君) 只今社会保障制度の調査に基きまして厚生省の方におきましてもその基準を決めるべく調査に関わつておるわけでありますから、厚生省いたしましてはその調査を待つていたしたいと考えております。
#50
○山下義信君 社会保障制度の調査を待たれるのも、まあ二つに分れる必要はないのでありますから、その方を待つとおつしやつてもそれでいいのでありますが、私の申しておりますのは、社会保障制度審議会は、これは言うまでもなく、脇道に入りますから触れませんが、これはあなたの審議会ではない、あなたの方の審議会ではない……
#51
○国務大臣(林讓治君) ちよつと……審議会じやないのです。社会保障制度のために調査をやつておるのですから、官房でやつておるのです。
#52
○山下義信君 それなら分りました。いま一つ伺つて置きたいと思いますことは、本法によりまする保護施設の問題でございます。これは今回の改正案の一大特色なのであります。現在の保護施設に対しまして拡充強化の心持で関係の法文が織込まれてあります。これらにもいろいろ問題があります。例えば收容者に対しまするいろいろな、只今のに関連して申せば、指導指示などを施設の長がする、又市町村長も指導指示をする。一体施設の長と市町村長指示と要保護者にとつてはこの法律で見る両方から受けなければならん。そういうときに市町村長も施設の長との間の要保護者の指導指示の関連はどうするのかというようなことが、折角調べても規定がない。いろいろ施設の廃止等につきましてもなかなか重大でありまするがそういうようなときに広くしヒヤリングいたしまして適正な処分をするというようなこともない。いろいろ規定の中にも考究すべき点があると思いますが、ともかく政府におきましては、この法律によりまして、言までもなくこの法の建前が居宅保護でありまして、それが保障制度の本筋でありますが、この收容保護施設というものに対して今後の政府の方針はどういうふうに考えておられますか。この保護施設の全国に亘りますところの各種の必要な施設の数の御調査ができておりますか。どのくらいいるであろうか。養老施設にいたしましても、その他の收容施設にいたしましても、どういう地方にどの程度の施設が必要であるか。どの程度拡充強化して行かなければならんかということの御調査ができて、それらの対策ができておりましようかどうか。今回のこの改正案によりまするというと、いわゆる公の支配に属するようにいたしまして、そうしてそれらの施設には公然と補助が出ることの道が聞かれておる。これは非常に従来の難問題を解決しました劃期的な改正でございますが、それらに対しまして、法律だけは作つてあるけれども、実行についての何ら具体的な計画がないというのでは私は用意が足りないと思うのです。そういう点に対しまする政府の御用意というものはどういう用意を持つておられるか。大体でよろしいが、政府の方針は相当施設を拡充強化して、この方面に十分予算を精算してやつてみる考があるかどうか。相当の御計画が私はなくてはならんと考えますが、大臣の御見解を承つて置きたいと思います。
#53
○国務大臣(林讓治君) 只今御指摘になりましたように、この生活保護に対しまする施設というものは、十分これを充実するようにしなければならんと考えております。幸にいたしまして今年度の予算におきましては、前年度から比較いたしますると予算の増加も見られておりますから、現在の計画に基きまして、現在のところはほぼ充実し得られるだけのものはできはしまいか、尚将来につきましては私共も一段とこの施設については充実せしめるようにいたしたいと考えております。
#54
○山下義信君 これは局長に伺いますが、施設に対しまする、只今の私の述べましたような各種の総合的計画というものができておりますか、或いは又今後鋭意それをお立てになる考ですか。若しできておればどういう御計画か、資料を頂戴したいと思う。若しできていなければ至急に計画を立てて、年々とつて来た予算を年々そのときどきぐにこれを振撒くというのでなして、相当の計画的なプランがなければならんと考えるのでありますがそれはどういうふうに用意されるお考でありますか、承つて置きたいと思います。
#55
○政府委員(木村忠二郎君) 戰争の終りました後におきまして、緊急に各種の施設の拡充をいたしたのでございまするが、一応計画的に今後やらなければならんというふうに考えまして、一昨年度から計画的にやる大体の考を以ちまして、各地方に対しまして、その地方におきまする要保護者で以て施設に收容しなければならんといつたようなものについての調査をいたしますと同時に、それを收容するについてどういう施設を作らなければならんかというような一応の調査をいたしたのでございますが、現在出ておりまする調査資料は極めて不十分でございまして、これを以ちまして計画を立てるということが適当でないというふうに一応考えられる。従いまして我々としては、今後できるだけこれを整備いたしまして、そうして計画的に、年次計画でもできるだけ早く完成させるということを目的としましてやつて参りたいというふうに思つておるわけでございます。従いましてお手許に差し上げることができるようなしつかりした資料というものは只今持ち合わせておりません。ただ現在では、緊急生活保護法として参りました時代と違いまして、作りますものにつきましても、その配置その他につきまして大体重複或い不足ということがないように配分を考えて設置を認めるというふうな状況に相成つております。
#56
○山下義信君 今の内閣が社会保障制度に対して可成り熱意を持つておられますことは、私も大変嬉しいのであります。恰も英国のそれのごとく、保守党で以ていろいろ口を切つて貰いますることは、甚だ不思議な対象と申しますか、奇縁と申しますか、我が国もそれにならんとするようで、私も大変多とするものでございますが、この我が国の現状から見まするというと、私共生活保護法の劃期的改正、先ず公的扶助の面から口を開いていこうということをいたしました所以のものは、元来これは国家予算でやり得ることでありまして、保険料徴收、被保険者に負担せしめるというようなのと異なりまして、煩多なる問題がございませんので、極めて政治といたしましては、この対策しては簡單にでき得ると思うのでございまするので、先ず生活保護法の全面的改正から骨格を作つていくことを期待しておつたのでございまするが、この説明によりまして、この口が開かれたことは、しばしば申します通りに私の多とするところでございますが、何といたしましても我が国の現状からいたしまして徹底的に各種保険のみによつて保障し得られんことは言うまでもないことでございまして、使節団の勧告書にも指摘されてありまする通りに、この公的扶助の持ちまする重要な使命と申しますか、占むべき点は、相当にこれが担つていかなければならんと私共は考えるわけでございますが、従いまして今年の予算で以て相当大臣の御努力で見るべきものがありましたことは、我々も認めるのでございますが、昭和二十六年度、来来年度におきまして、一応現内閣としまして、今後政府といたしましては、この社会保障制度につきましてはどういう考を持つておられますか。閣内にてのお話合、政府としての方針等どういうふうな考を持つておられるのでございましようか。少くとも昭和二十六年度には、相当程度各種の保障制度の実現をやつて見るという熱意持つてかかつておられまするかどうか。これは率直に申しまして、あなたの内閣にこういう重大な分配政策の解決御注文申上げるのは無理かも分らんけれども、しかしながら諸般の情勢上、今政局を担当しておりまする政府が、国民のために、少くともこの制度のためには十分御尽力を先ず切開いて行かなければならん当面の政局を担当しておいでになるのでありまするし、政府としてこの社会保障制度の実現に向つてどういうふうな考を持つておいでになるのであろうかという点を、私はこの機会に承つて置きたい。それは当院におきましても本会議や我々の委員会におきましても、しばしば同僚議員からいろろろ伺いますというと、すべて社会保障制度に関連のありまするような問題について伺いますというと、いつも審議会の答申を待つのだ、審議会が折角熱心にやつてくれているので、それが答申が出るのを待つて善処しよう、こういうふうにお答えになる。これは一種の逃げ口上のようにも見えまするし、又審議会はあなたの政府の政策を調査立案する機関ではない。一応政府とは独立の立場で以てできている審議会で、それでこそ国会から委員を送つている。あなたの政府の政策の決定をする資料や調査をするために設けられた審議会ではないのであります。御参考にはなるでしよう。或いは勧告もいたすでございましよう。併しながら政府におかれましては政府みずからの御決意というものが或る程度、社会保障制度は俺の内閣ではこういう程度まで進めて行こう、こういう目鼻をつけて行こうというお考があるべき筈でございますので、熱心なるあなたの方の人達もお出でになるのでありますから、相当の考があると思うのでありますが、どういうようなふうに考えておられるのでありますか。私は自由党の今の内閣のお考をこの機会に承つて置きたいと思う。
#57
○国務大臣(林讓治君) 只今御指摘になりましたように、社会保障制度の問題につきまして、その答申を待つておるということは決して逃げ口上ではないというつもりで、委員長の大内博士その他、又最近におきましては末高委員等はアメリカの方にも行かれまして、そうして近く帰られると共に適正なる社会保障制度に対するところの答申が得られるものと考えております。従いましてそれらの問題ができましたという場合においては、すべてのものが直ちに二十六年度においてできるかが直ちに二十六年度においてできるかは、予算面に非常に重大なる関係を持つことと考えますが、この生活保護法の改正などの第一歩といたしまして、私共はその答申が得られました場合においては、すべてのものができるような予算の計上ができるということになればまことに結構と考えまするが、仮に大蔵省が経済的な面などから考えてできないものとするならば、取敢えずできるようなものでも一歩ずつ進んで私共完成を期するつもりでおります。答申がすベてのものが出て参りましたという上におきましては、二十六年度の予算を計上する上においては、厚生省といたしましては我々はどこまでもこれを遂行し得られるように、予算を取りか得られるように一段の努力をいたしましてこれが実現を図つて行きたいと考えております。
#58
○山下義信君 私は重ねて大臣に御考慮を促しておきたいと思うことは、国民の保障せられます生活の水準の程度、私はこれを低い水準に置きますることは、ただ単にその当面の対象者の不幸のみでなくいたしまして、国民全部の私は利益であると思います。国としても不利益であると思う。それで低水準、こういう保護の水準もこれは本当は高く引上げまして、そうして保護をいたしまする程度というものを高く一応基準を立ておきまして、そうして諸條件に寄りましてそれを適用しまするのには段々引いて来る。こういう條件の場合には低く、こういう條件の場合には、これだけ高くということにいたしまして、その必要な程度に即応するというような建て方をいたして、国民の生活の水準をできるだけ高めるということの方がすべてあらゆる方面におきまする政治経済の復興を発達促進する所以とも相成り、延いては人口問題等の解決に資し、或いは国家百年のための国策の上にも私は裨益すると思うのでありまして、この保護の基準を低め、国民の生活の水準を低いところに止めて置いて満足するがごとき政治の在り方といたしますることは、国運の恢復発展上これは非常に逆効果でありまして不利益であると考えるのであります。従いまして本法のごときも折角法文の上では先程大臣のいわれましたように、この生活保障の性格持つて行こうといたしながらも、実際の上におきましては費用の点からいたしまして段々枠をそこへ嵌め込みまして、いやが応でも水準を低目に止めて置きますということは、これは單に生活保護法を殺すということだけでなくいたまして、我国の国勢、国力恢復、すべての諸般のにおきまして私は不幸この上もないと考えるのであります、従いまして決して、たとえ保護であるからといいましてもその保護の基準を高めるからというて、或いは弊害があるなどということを申しますることは非常に短見者の考え方であります。アメリカにおきまする……私はアメリカに参つたことは、ございませんが文献に徴しまても、公的扶助を受けまする生活の水準は一般生活者とちつとも変りがない。日本におきましては何か厄介者を仕方なしにいやいや辛うじてただ命を繋がす程度の保護に止めておるのか、それが政府の保護であるといつたような従来の恩恵的な、救貧的な、考え方、そういうものでなくいたして、たとえ公で保護する保護でありましても、その与えるところの生活の水準というものは、少くとも労働力再生産に必要な程度の生活水準というものを与えて行かなければなりません。その生活水準を与えてこそ初めて生活の保障になるのでありまして、厄介者を飼い殺しのするというような考え方でなくいたしまして、当然再起の機会を与えるべきこの生活の保障でなくではならんのでありまして、帰するところは結局この法を実行する上において政府の考え方というものが、そういう考え方でやるか、ただ單にこれは社会の落伍者を、いわゆる資本主義社会、自由競争に破れた者を、落ちた者をただ国の責任として抛つては置けぬから或る程度の保護を加えるのであるという、若し考え方でありまするならば、根本的にこの立法の精神と相反するものでありまして要はこの生活の水準、保護する水準というものを国民の生活水準も高めなければなりませんし、この保護する生活水準というものも当然救貧的な惨めな生活水準より、やや人らしい、いわゆるこの立法者の今関係諸君が御苦労なさり、又政府、厚生大臣も御心配下さつた人らしき人として相応しい、人として恥かしくない、恥かしい思いをしないで済む程度の生活水準を与えるのでなければ、この法律は悉くこれは羊頭をかかげて狗肉を売るものである。うわべは改正した、うわべはこういう趣旨だと言つておきながら、実際は依然として救貧的な域から、救貧的なものに止まるといるがごときものではこれは私はいけないのでありまして、この法律の施行に当られまするそのときの内閣の、政府の決意を以ちましてできるだけ水準を引上げるということに御努力を願わなければならんと考えます。只今のこの保護の与えられまする扶助額の水準は一般消費者の生活の水準等から見まするというと、辛うじて四〇%、三七%というような程度の扶助しか与えられておりません。即ち勤労者、労働者のあの貧乏な生活のまたその四割、三割六、七分という程度の扶助額でございます。それではいけません。今日の労働者も、失業いたしましたら生活保護によつて保障されるどころの生活も、やはり労働者の勤労を致し得られる当時の生活状態が、同じ水準が与え得られることがこの社会保障制度の一環としての生活扶助でなくてはならんと考える。私は多言を要しません。賢明なる大臣はよく御承知で、要はこの法を施行する面においていくばくの予算が必要なりやという問題なんであります。ただ單に法律を作つただけでは何にもなりません。その裏付は予算でありまするから、この法律を本当に誠実に履行いたしまするならばどのくらいの予算が要るかということの固き決意がなくては到底この法というものは完全に行くことはできません。そこで先ずこれが社会保障制度の先駆として出て来るものでございますから、この法律が誠実に実行せられなければ、今後我が国の一大テーマであるべき社会保障制度に対しまして国民の大なる期待を裏切るものと言わなければなりません。どうかこの法律に伴いまする予算につきましては、私共勘でございまするが、内輪に見積りまして少くとも三百億を要すると存じます。いわゆるこの扶助額の基準の引上げ、範囲の拡大、各種の新たなる保護の種類の増加、或いは施設の強化拡充、或いは施設の最低基準の引上げ等の補助等を勘案をいたしまするならば、ややこの法は十分ではないけれども、この改正法案らしいような運用をいたそうといたしますと、少くとも三百億は私共は内輪に見積つても是非必要ではないかと考えます。それで辛うじて二百万程度の要保護者を十分これを保護して行ける程度ではないかと存ずるのであります。その点につきまして、只今から政府におかれましては、この法の施行の上に対しまして、予算上今年も御努力頂いたのでございますが十分に一つ御尽力下さる御決意がありますかどうかということも、私はこの機会に承つて置きたいと思うのであります。
#59
○国務大臣(林讓治君) 只今のお説は御尤もでございまして、私共も今後におきましては、生活の最低と申しましても、お説のように成るべく向上を図つて行く意味に基いても、お説に従つて参りたいような心持ちを持つております。尚予算の面につきましては、只今のところからいたしましたならば、これくらいなところでほぼ用が足りるんじやなかろうか、将来につきましては一般と予算面におきましても充実し得られるように努力をいたしたいと考えております。
#60
○山下義信君 まあこれは将来の希望でございますから、私は希望を表明したことにして置きますが、今の予算では到底この分の実行は不可能でございますから、尚政府は引続いて、要すれば、補正予算をお組みになる御努力を願いたいと存じます。
 尚多少の質疑が残つておりまするが、本石は私はこの程度に質疑を止めて置きたいと思います。
#61
○委員長(塚本重藏君) 午後一時半まで休憩いたします。
   午後零時三十二分休憩
   ―――――・―――――
#62
○委員長(塚本重藏君) 休憩前に引続き再開いたします。速記を止めて。
   午後二時一分速記中止
   ―――――・―――――
   午後二時五十四分速記開始
#63
○委員長(塚本重藏君) 速記を始めて。それでは本日はこの程度で散会いたします。
   午後二時三十五分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     塚本 重藏君
   理事      藤森 眞治君
   委員
           姫井 伊介君
           中平常太郎君
           山下 義信君
           小林 勝馬君
           竹中 七郎君
           井上なつゑ君
           小杉 イ子君
           穗積眞六郎君
  国務大臣
   厚 生 大 臣 林  讓治君
  政府委員
   厚生事務官
   (社会局長)  木村忠二郎君
   厚生事務官
   (社会局保護課
   長)      小山進次郎君
ソース: 国立国会図書館
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