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1980/01/29 第94回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第094回国会 本会議 第4号
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1980/01/29 第94回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第094回国会 本会議 第4号

#1
第094回国会 本会議 第4号
昭和五十六年一月二十九日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和五十六年一月二十九日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の
   続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 国務大臣の演説に対する質疑   (前会の
 続)
 高田富之君の故議員荒舩清十郎君に対する追悼
  演説
 葉梨信行君の故議員久保三郎君に対する追悼演
  説
    午後二時四分開議
#2
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(福田一君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 伊藤公介君から、二月四日より十四日まで十一日間、堀之内久男君から、二月六日より十三日まで八日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑   (前会の続)
#5
○議長(福田一君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。竹入義勝君。
    〔竹入義勝君登壇〕
#6
○竹入義勝君 私は、公明党・国民会議を代表して、さきの政府演説に対して質問をいたします。
 私は、総理が、「八〇年代は二十一世紀への足固め」という認識を基調とされていることに異論はありません。それだけに、その入り口に当たる今国会の総理の施政方針演説は、今後のわが国の進路を国民に示す意味で、かつてない重要さを持つもので、政治、経済、産業、文化、社会など、各般にわたる歴史的変革期にあって、国民は、生活と社会の動きを通じ不確実性を意識し、不安の中で、わが国の進路を見定めようとしているのであります。
 しかし、総理の言われる総合安全保障の構想においても、国民は、防衛力増強路線の踏み出しを強く印象づけられただけで、平和憲法堅持と軍事大国とはならないとする内外への公約をいかにして実現するか、その具体的手だてを聞くことはできなかったのであります。
 さらに、財政再建に対する行政府の努力や国民負担の公平化はあいまいにされた中で、大増税路線だけがこれまた強く印象づけられただけであります。
 加えて、高齢化社会への急速な進行の中で、国民福祉の向上が制約されることが明らかにされただけで、総理は、福祉社会像を何ら示しておりません。
 結局、総理の演説は、経済大国となった日本の役割りと、財政赤字を国民の負担によって解決しようとする一方的は必要性を国民に訴えただけであったと申しましても過言ではありません。
 そこで私は、以下、重点的な視点から政府の方針をただすものであります。
 財政の危機については、国民各位の周知するところであります。しかし、いま重要なことは、政府みずからが、わが身を削る誠意をあらわすとともに、乏しきを憂うるよりも、等しからざるを憂うることを肝に銘じて、施政の上に実現することであります。
 私は、その等しからざるを憂うる立場から、総理に申し上げるものであります。
 第一に、国債二兆円減額は、財政体質の改善、つまり行政改革、補助金の整理等の結果としてなされるべきで、増税によって行うことは、いたずらに財政の水ぶくれを助長するだけで、むしろ体質改善を阻害するものであります。しかし、政府は、一兆三千九百億円という大増税と電電公社等の益金の吸い上げで賄おうとしております。しかも、大企業、中小企業の別なく法人税率を一律二%引き上げ、中小企業の軽課税率の存在理由を無視した増税であり、酒税の引き上げ、物品税の対象拡大と引き上げ、さらに印紙税の大幅引き上げによるものであります。
 一方、所得税の方も、五十三年度以来課税最低限の引き上げが行われていないので、五十六年度においては、たとえば標準世帯で年収三百万円のサラリーマンは、仮に賃上げ率八%として、その税負担は三八%増となります。
 このような税負担の増加による源泉所得税の実質的増税分は二兆円にもなっております。その意味で、国債二兆円減額というも、所得税の実質的な増税によって賄われたと言っても過言ではありません。(拍手)
 この問題について、昨日、総理答弁は、わが国の租税負担率が先進諸外国に比べて低いことを強調されたのでありますが、税負担が及ぼす生活への影響は、全生計費との比較も同時に行わなければなりません。昨年の国連職員の調べによると、たとえば、わが国の生計費はアメリカの一・七五倍、イギリスの一・五六倍、フランスの一・二八倍であります。このように世界一高い物価水準による生活費負担を無視して、政府に有利な比較数字を発表するのは、まことに公正ではありません。(拍手)
 第二に、これら五十六年度の大増税を布石として、五十七年度に大型消費税の導入を目指そうとしている政府の考えに私どもは断じて反対であります。むしろ行うべきは、税負担に対する不公平感を取り除くことにあり、世上、トーゴーサンとか言われているように、所得捕捉が一〇〇%のサラリーマンと、それ以外の所得捕捉の格差から生じている不公平な徴税方法にも思い切ったメスが入れられるべきであります。
 このことは、多くの所得制限が導入された国及び地方が行う社会保障給付制度などが納税額を基準としていることからも、この所得捕捉の不公平が、社会正義に反する不公正を一層拡大させているのであります。
 第三に、こうした値上げ、増税、福祉後退による物価の上昇、国民の実質所得の低下は、国民消費支出の伸びを引き下げ、景気の停滞、そして財政収入の低下にまでつながり、内需主導型経済を期待した政府の五十六年度経済見通しを覆すことが十分に予測されるのであります。
 そこで総理、私は、税負担の不公平の最たるものである所得税の是正について、少なくとも三千億円程度の減税に見合う課税最低限の引き上げを図ることを強く要求いたすものであります。総理の明確な答弁をお願いを申し上げます。(拍手)
 加えて、中小企業に対する不合理な課税強化は、史上二番目を記録した倒産発生の中で、苦境にある業界を追い打ちすることになります。したがって、中小企業に対する増税を取りやめ、同時に倒産防止施策を充実することを要求するものでありますが、あわせてお答えをいただきたいのであります。(拍手)
 さて次に、私は、行政経費節減と行財政改革に対する政府の怠慢をきわめて遺憾とするものであります。財政の再建には、まず政府みずからがわが身を削る努力、すなわち、行政の簡素合理化を断行することにあったはずであります。
 そこで伺うものでありますが、さきに、わが党とともに中道四党の合意に基づく、中央省庁機構の整理、地方出先機関の原則的廃止、国家公務員の定員削減、公務員の定年制導入、特殊法人の統廃合、補助金の大幅整理、各種審議会の整理合理化等の十項目に及ぶ行財政改革に関する申し入れに対し、それを総理は実行する決意がおありなのかどうか。
 さらに、その中でも、補助金については、総額十四兆五千二百億円の一割削減を目標に整理することは緊要な課題であると考えますが、あわせて総理の答弁を求めるものであります。(拍手)
 さらに、五十六年度から第二次臨調が動き出すわけでありますが、第一次臨調の答申の中でも、今日の状況に適合し、財政再建に効果を発揮する項目はすべて実施すべきであります。また、第二次臨調は、行政改革を五十七年度予算の中で断行するためにも、五十七年度予算編成期に間に合わせるよう、本年夏ごろまでに第一回の答申を求めるべきでありますが、これらについて総理の所見を伺うものであります。
 さて、国民は、行財政改革の断行とともに、不正、不当経理に対する徹底的摘発を求めております。五十四年度決算検査報告書によれば、わずか検査対象八%の会計検査にもかかわらず、不適正経理は実に五千七百二十五億円にも達し、そのうち三百三十六億円がむだ遣いであることが指摘されております。このような不正経理を徹底して正すには、現在の会計検査体制を抜本的に改善していく以外にはないと考えます。同時に、国民が経理のガラス張りを求めていることからも、情報公開法の制定やオンブズマン制度の創設は必至の課題であります。どのような決意で臨まれるのか、あわせて御所見を承りたいのであります。(拍手)
 今日の肥大化した国の行政機構と同様に、国と地方の関係においても、これまで激増してきた機関委任事務、補助金行政に対しメスが加えられておりません。すでに地方制度調査会、全国知事会などから再三にわたって改革の提言が出され、国、地方間の行財政の抜本的改革を求める声は高まっておりますが、総理は、この問題についてどのように考えておられるのか。また、その取り組みに対する具体的なスケジュールについても伺うものであります。
 次に、私は、昨年大蔵省が発表した歳出百科が指摘する問題点及び今後の方向などについて、具体的に数字で示した計画を策定し、国会に提出することを求めるものであります。
 また、私どもが再三要求してきた中期財政計画の策定は、ますます必要性が高まっておりますが、国会提出の時期を明確にしていただきたいのであります。その内容は、単なる後年度負担推計や、かつその目的が大型消費税の導入などであっては断じてなりません。中期財政計画は、財政再建に対し国民の合意と理解が得られるものとされることを要求いたしますが、総理の見解を示されたい。
 さて、五十六年度経済について、政府の見通しは、実質成長率の伸びを五・三%と見込み、内需の寄与度を四%と予測して、民間活力による自律安定成長を期待いたしております。
 この見通しどおりに進めば幸いでありますが、先ほども申し上げたように、政府が考えるほど楽観できるものではありません。民間経済を活性化させ、さらに最終需要である国民消費の増大を図るためには、何といっても物価の安定に全力を挙げることが最大の課題であります。
 政府は、第二次石油危機と物価の関係を、市場原理にゆだねたことと金融政策によって調整することに成功したと考えているようでありますが、結局、消費者物価上昇率を七%に上方修正いたしました。しかし、その達成も恐らく不可能と言えます。五十六年度において、世界経済の中に大きなウエートを占める日本経済は、世界経済の流動の中で五十五年度と同様の手法で物価を安定できるかどうかは、政府の大増税政策と国民経済の関係も含めて疑問があり、万端の配慮と政策の実施が必要であると私は考えます。
 世界的に見て、当面、石油がだぶついていると言われる現状においても、OPECは世界経済と合わせ、少なくとも石油価格の実質値上げは行うでありましょう。それに、政治、軍事情勢を加えれば、供給と価格情勢はきわめて不透明であります。政府は、五十六年度の消費者物価上昇率を五%以下に抑える努力に全力を挙げるべきだと考えます。
 そこで、総理、まず五十六年春闘の行方との深いかかわり合いからいっても、五十五年度消費者物価上昇率が達成できなかった原因は何にあったか、また、その原因に対して、いかなる手が打たれたのか、この際、明確にされたいのであります。
 第二点は、五十六年度は、酒税引き上げ、国鉄など公共料金等の値上げがメジロ押しの状況にありますが、安易な値上げには反対であります。特に、公共企業体については真剣な企業努力を国民は要求しておりますが、どのように受けとめ、努力をなさるつもりか。また、石油価格と円の為替レートの関係からの為替差益の還元を、価格あるいは料金を通じて行わせることは、政府の責任であると言わなければなりません。どのような対策を実施されるのか。
 第三点としては、相次ぐ寡占商品の同調的値上げに対し、公正取引委員会が情況証拠でやみカルテル摘発を行うなど、独禁法の運用強化を図るべきでありますが、どう考えておられるのか。
 第四点として、五十五年度予算修正要求で、自社公民四党の間で合意した物価対策費五百億円が、冷夏対策、消費者への情報提供等に大きく寄与した実績から見て、五十六年度においても消費者物価対策の機動的運用のため、一般会計の予備費の中で優先的に確保することを要求するものでありますが、この点も明確にされたいのであります。(拍手)
 さて、エネルギー価格と供給が、わが国経済と国民生活に及ぼす影響の重大性については多くの言葉を要しません。また、脱石油化は、わが国のみならず世界的な課題でもあります。したがって、石油代替エネルギーの開発研究は、その所要年数の問題からしても急がなければなりません。
 そこでまず、政府が昨年十一月に決定した昭和六十五年度の石油代替エネルギーの供給目標は果たして達成可能であるかどうか。
 また、新経済社会七カ年計画の見直しに伴い、原子力の下方修正を中心に、現実に即した修正が必要と思われるが、この点はどうか。
 さらに、石油を中心としたエネルギーの備蓄と現在の取り崩し分に対する補充について、具体的にどう対応なさるのか、この際、明らかにしていただきたいのであります。
 また、国会において、衆議院にもエネルギー対策特別委員会を設置すべきであると考えますが、総理の御所見を承りたいのであります。
 次に、住宅、土地問題について質問をいたします。
 今日、国民の切実かつ最大の関心事である住宅、土地問題に、総理が施政方針演説で一言も触れなかったことはきわめて遺憾とするところであります。
 いまや、衣食住という基本的な視点から見ると、衣食の充実感に対して住の面では、政府の調査ですら千二百五十六万世帯が住宅困窮世帯になっております。ここに、いかに住生活が立ちおくれているかが明瞭であります。狭い、設備が悪い、高家賃、プライバシーが守れないという住宅の質の低さと家賃の高いことが、そのまま持ち家志向となり、財産を持つという意識もさることながら、政府の政策に対する不信や、生活の先行き不安への防衛的発想に基づくものと理解すべきであります。
 総理が、「八〇年代を二十一世紀への足固め」の時代と言われるならば、古くして新しいこの住宅問題、その根底にある土地問題の解決こそ、わが国の国力、国情にふさわしい住宅水準へと向上をさせるために、全力で取り組むべき社会的課題であります。
 こうした観点から、私は、提案を交え、総理の所信を問うものであります。
 その第一点は、住宅対策の基本理念としては、現在の高地価のもとでも依然として住宅問題を個人的問題として解決するのではなく、社会的問題として、国の責任、国、地方の供給体制の明確化、標準世帯で四LDKを目標とする居住水準の設定、宅地供給の基本的方向を確立する住宅基本法を速やかに制定することを提唱いたします。
 第二点は、住宅投資と関連公共投資効率から見て、都市再開発と市街化区域内の宅地開発に重点を置き、良質の公的分譲賃貸住宅を多様化して建設すべきであります。
 第三点は、その最大のネックは、再燃した地価暴騰と宅地供給不足であります。
 その解決の一環として、三大都市圏の市街化区域の農地については、農地の保有者が少なくとも二十年間は農地のまま使用し、宅地並み課税はしない、あるいは宅地転用も譲渡先も制限されないが、宅地並み課税を完全実施する、そのいずれかを農地の保有者が自由に選択できる選択的宅地並み課税制度を導入する。また、国土利用計画法に基づく規制区域の積極的指定を行えるよう、法改正を含めて速やかに検討することであります。
 第四点は、空き家増加傾向にある大都市地域の木賃アパートを、公的融資または一定期間の利子補給で不燃建築のセミパブリック住宅、すなわち民間経営による準公共的住宅へ計画的に建てかえ、適正な家賃を定めて居住水準の高い住宅を供給することであります。
 なお、一般の民間賃貸住宅入居慣行に対する行政指導とともに、住宅規模に一定水準を設け、税制面からは住居費控除を創設することを検討すべきであります。
 以上を提案し、総理の御所見を求めるものであります。
 また、当面する第四期住宅建設五カ年計画の実施に際しましては、宅地供給対策を明確にするため、地方自治体主導による宅地供給五カ年計画も策定して、並行的に推進することを要求し、御所見を求めるものであります。(拍手)
 次に、わが国の高齢化社会の到来を展望するとき、これらに対する政府の方針は、財政事情に引きずられて国民に不安を与えるのみであると言わざるを得ません。物価水準、生計費が高まる中で、所得制限の強化のみが行われ、最低生活保障の確立の上に立つ生きがいのある高齢化社会をつくる展望を何ら与えていないのであります。
 老齢福祉年金受給者は、核家族化の進行で独立生計を営む老人がふえつつあり、子供世帯の所得とは無関係であるにもかかわらず、子供世帯の収入で格差を設けることは合理性を欠くものであります。
 また、児童手当制度については、昨年九月の中央児童福祉審議会の意見具申にもあるとおり、人口老齢化の中で「将来の社会の担い手である児童を「社会の子」として社会的に配慮」すべきであり、所得制限は「原則として行わない」との意見は当然であります。これらの意見を無視した政府の方針はきわめて遺憾であり、それぞれについて改めて政府の所信を伺うものであります。(拍手)
 同時に、老後生活を社会的に保障し、現行年金制度の格差是正のために、わが党が提唱してきた年金制度の統合を含めた基本年金制度の検討を要求するものでありますが、総理の御見解を示されたいのであります。(拍手)
 高齢化社会に対応する積極的な施策のもう一つの柱は、中高年齢者の雇用の確保であります。しかしながら、われわれが提案した定年延長法制化は、雇用審議会の審議でいまだ意見がまとまるに至っておりません。
 総理、急進する老齢化社会に対処していかなる対策をお持ちなのか、この際明確にしていただきたいのであります。さらに、定年延長法制化の検討を促進し、早期実現に積極的な努力をすべきでありますが、この点についても総理の明確な御答弁を願いたいのであります。
 また、婦人労働者について、老人家族の病気看護等によって失業を余儀なくされている現状から、雇用を保障する看護休暇制度の制定が切実な要望となっております。同時に、婦人差別条約の早期批准とともに、男女雇用平等法の制定、母性保護に関する官民格差を解消することが緊要な課題となっております。以上の点について、総理の所信を伺うものであります。
 さて、本年は国際障害者年でありますが、政府は、障害者の自立と社会への完全参加実現のために、本年度をスタートとした十カ年計画を速やかに策定すべきであると考えますが、いかがお考えでありましょうか。
 また、障害者の自立と社会への完全参加を支える大きな柱は年金制度であります。なかんずく障害者福祉年金においては、扶養義務者の所得制限が数年来据え置かれております。物価、賃金の上昇分だけ制限が強化されるという、きわめて不合理なままにあります。その見直しと給付額の改善を要求するものであります。さらに、身障者雇用の拡大と行政指導の強化、職業訓練の内容を産業の実態に即した能力開発へと改善することが急務であります。これらの課題の早期解決を要求し、総理の懇切な答弁を求めるものであります。(拍手)
 ここで、三八豪雪以来の大雪に見舞われている日本海側各地における豪雪禍について政府の対応をお伺いいたします。
 再三にわたる豪雪によって犠牲者や負傷者が続出し、家屋や公共施設、農業施設等の全半壊も相当数に上っております。さらに、国鉄輸送の麻痺や道路交通網の混乱によって、生活必需物資の不足と価格の上昇が住民の不安をつのらせております。
 わが党は、昨年末以来、東北、北海道、北陸の豪雪被災地域における現地の状況をつぶさに調査し、住民の激励と救援活動を展開してまいりましたが、事態はきわめて深刻であります。この際、再度政府に対し、豪雪被災地域住民の安全の確保と都市機能の回復のために総力を尽くされることを強く要請し、特に、被害が北陸、東北、北海道と広域にわたっていることにかんがみて、激甚災害特別措置法に基づく激甚災害の指定措置を速やかに講ずべきだと考えますが、その他減税、物価、雇用等に関する対策もあわせて、総理の見解を伺うものであります。(拍手)
 次に、外交、防衛問題について焦点をしぼってお伺いをいたします。
 ASEAN諸国との友好協力関係とアジア外交の推進は、わが党がかねてより指摘してまいりましたところであり、今回のASEAN諸国訪問で、総理が、相互理解を図られたことについては評価されるべきであると私は考えます。
 わが国の経済協力は、外交政策遂行の手段として、また平和保障政策の一環としても重要性を高めており、ASEAN諸国に対し、今後、農業、人づくり、エネルギー、中小企業の育成のための協力を通じて、民生の向上に寄与することに重点を置いたことについても、私は高く評価を惜しむものではございません。
 しかし、これまでの発展途上国に対する農業、食糧の開発援助、人づくりのあり方はまことに場当たり的でありました。真の人づくりは現地主義でなければならない、これは実務に携わり、現地に赴いた人々に共通した認識であります。その意味からも、沖繩へ本部を設置する国際センターの設置構想については、本部自体を発展途上国内に設置すべきと考えますが、総理の見解を承りたいのであります。
 さらに、総理は、カンボジア問題の解決のための国際会議にベトナムの参加を訴えておられますが、しかし、国際会議そのものが、ベトナム軍の撤退を前提としなければならないという国もあり、実現が困難だと私は考えるのでありますが、この点、総理のお考えを改めて明らかにされたいのであります。
 今回の歴訪において、総理は再三、わが国は決して軍事大国とはならない、加えて、わが国に対して国際社会における軍事的役割りを期待することは誤りであると表明されました。しかし、わが国の防衛費は年々増額され、世界有数のものとなりつつあることは、改めて指摘するまでもありません。新たなレーガン政権がわが国に対し、防衛力増強、軍事的役割りの増大を求めてくるのは必至であると言われております。
 総理、一体軍事大国とは何を指すのか、その定義をここに示されたい。軍事大国にはならない歯どめ、専守防衛に徹するというその中身を、ぜひ明確に御説明をいただきたいのであります。(拍手)
 また、レーガン政権の要請にどう対応されるのか。中業見積もりの前倒しをさらに進めることは、よもやないと思うのでありますが、この点もぜひとも明確にしていただきたいのであります。
 さて、対ソ関係でありますが、これから先もまだ冬の時代が続くのか、それとも何らかの改善の方途をお考えなのか。また、対ソ制裁措置をどのように考えて、これから措置されるのか、この点も明らかにお教えをいただきたいのであります。
 次に、アラブ諸国との友好協力関係について今後どう進めていかれるのか。私は、相互の理解を深める一つの方途として、これらアラブ諸国との首脳の相互訪問を積極的に推進すべきと考えますが、総理の見解を求めるものであります。(拍手)
 なお、最近発生した大砲半製品輸出にかんがみ、この際、武器輸出禁止法を制定すべきであると考えますが、この点についてはいかがでありましょうか。
 さらに、わが党議員の、外国の軍事施設建設を日本の企業が請け負うことの是非等についての質問書に対する政府の答弁書は、軍事的用途にかかわる経済援助は行わないとしてきた従来の政府見解の変更を意味するのか、お答えをいただきたいのであります。
 次に、憲法問題についてお伺いをいたします。
 さきの国会で、総理は、鈴木内閣が現行憲法を擁護し、次の選挙においても改憲をテーマとしないことを明確に表明されました。しかしながら、自民党は、本年度の運動方針として改憲論議を進めることを決定したのであります。自民党が改憲を政綱に掲げるだけではなくて、運動方針として決定したということは、総理が先国会で、私の政権担当、自由民主党総裁の地位にある場合、改憲の具体的な行動、措置をとらないと発言されたことに反することであります。自民党の運動方針の方向と政府の憲法擁護との矛盾をどう説明されるのか、鈴木内閣は憲法に対する姿勢を変えられたのかどうか、この点、明確にされたいのであります。
 最後に、民主政治の根幹にかかわる一票の格差是正について伺います。
 総理、衆参両院議員の定数問題についての訴訟は、すでに二十年にわたって行われております。判決が示すように、速やかにその是正を図らなければなりません。ところが、現行の公選法には定数に関する明確な規定がありません。定数問題は、まさに憲法問題でございます。
 政府・自民党は、これまで定数問題を選挙区制問題と絡めて処理しようとしてまいりましたが、最優先課題は、衆議院と参議院地方区の定数是正であります。したがって、定数是正を他の制度と切り離し、優先して行うべきでありますが、総理のお考えをお伺いしたいのであります。
 また、この際、定数問題について第三者機関の設置を含め、憲法十四条に沿った投票価値の平等を保障する等の措置について法制化することを提案するものであります。
 以上、総理の明確かつ具体的な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 竹入公明党委員長にお答え申し上げます。
 まず、三千億円程度の減税に見合う課税最低限の引き上げをしてはどうかとの御提言でございます。
 私は、所得税減税の問題は、わが国財政の実情との関連で考えなくてはならないと思います。竹入委員長御承知のとおり、特例公債の二兆円減額を織り込んでいる昭和五十六年度予算においても、歳入の二六%以上を公債金収入に依存しており、特例公債もなお五兆五千億円発行しなければならないという実情であります。財政の再建は緊急の課題であります。私は、今日の不健全な財政状況を放置し、いわゆる赤字公債の償還のために新たな赤字公債を発行しなければならないということになれば、国の経済はもとより国民生活にとってもゆゆしい事態になると考えます。ここで踏ん張って現況を打開しなければ、やがてはより大きな国民の負担になると考えるものであります。
 このような財政の現状を真剣に考えれば、また、主要諸国との対比で見て相当低位にあるわが国の所得税負担水準の実情を考慮すれば、課税最低限の引き上げを含め、所得税減税はお許しいただかざるを得ないのでございます。
 なお、竹入委員長御指摘の国連職員の生計費比較でございますが、これは国連職員がそれぞれの派遣された国での生計費、つまり外国人の生計費の比較という性格のものであります。同じ資料の最新のデータで、居住費を除いた生計費を比較しますと、わが国の生計費は、アメリカとの比較では一・四六倍でありますが、英、仏、独等に対しは遜色がなく。むしろわが国の方が低い数字になっておりますことを蛇足ながらつけ加えておきます。
 中小企業の法人税率の引き上げを取りやめよとの御意見でございますが、わが国財政の現況、中小法人についての軽減幅が一二%と相当大きくなっていること、所得税減税ができない状況の中にあって、個人形態の事業との税負担のバランスに配慮する必要があることから、今回二%の法人税率の引き上げをお願いしているものであります。御理解を賜りたいのであります。
 なお、このような負担増の中にあっても中小法人の軽減税率の適用所得限度については年七百万円から年八百万円に引き上げることとしており、中小企業に最大限の配慮を払っております。
 また、御要請の倒産防止対策の充実についても、政府系中小企業金融三機関による中小企業倒産対策貸し付けの枠の拡充など、所要の措置を講じてまいっております。
 政府は、昨年末新たな行政改革計画を閣議決定いたしましたが、その中において特殊法人の統廃合など、昭和五十五年行政改革の着実な実施に加え、仕事減らしの観点から許認可等の大幅な整理を進めることとしているほか、公務員の定年制導入については関係法案を提出し、強くその成立を期待しておるところであります。
 これらは中道四党の御提言の趣旨にも即したものでありまして、私は、これを強力に今後とも推進してまいりたいと考えます。なお、その他の事項につきましても今後行政改革を進める上で御趣旨に沿うよう努力いたします。
 補助金について一割削減を目標に整理せよとの御提言ですが、補助金の整理合理化については積極的に推進することとしており、五十六年度も補助金など二百九十二件を整理したほか、減額等を加え千六百八十八億円の整理合理化を行いました。
 しかしながら、補助金等の内容は社会保障、文教など国の重要な施策を実現するための経費が大宗でありますので、これらの経費を、単に補助金であるからといった理由で廃止したり削減することは、必ずしも当を得たものではないと思うのでございます。
 臨時行政調査会では、これまで歴代内閣で取り上げた行政改革問題についても、新たな観点から基本的な検討を行うことになるものと考えております。
 また、財政再建等に関連して改革を急ぐ問題については、必要に応じ中間答申等を求めて、早期にその実施を図ることといたしております。
 近年、財政資金の有効かつ適切な使用について国民の関心が高まっており、会計検査の充実は重要な課題であると考えます。政府としても会計検査院の重要性を考慮し、その機能が十分に発揮できるよう検査業務職員の増強を図るとともに、会計検査活動についても所要の予算措置を講じてきているところであります。
 なお、情報公開法の制定及びオンブズマン制度の創設につきましては、昨日も御指摘を受けたところでありますが、前者は、公務員の守秘義務やプライバシー保護との調整などの問題があり、後者は、国会に設置する場合は、国会みずから決定すべき問題であり、行政府内へ導入する場合は、行政監察、行政相談等、既存の類似の制度が存することでもありますから、いずれも慎重な検討が必要であると考えております。
 国、地方を通ずる行財政の改革については、従来から多くの指摘がなされており、政府もその合理化に取り組んできておりますが、今般設けられる臨時行政調査会においても、この問題について幅広い検討が行われることと期待いたしております。
 歳出百科についてのお尋ねがありましたが、これに基づき、将来にわたる歳出削減の実行計画をつくれということでありますれば、実際問題としてなかなかむずかしいのではないかと思います。
 しかしながら、現在、今後の財政運営のあり方について検討を行う上での一つの手がかりとして、財政の中期的展望について検討を進めております。その内容は後年度負担額推計を基本とするものでありますが、いずれ御検討を賜り、御高見を仰ぎたいと存じております。
 五十五年度消費者物価が当初見通しの六・四%程度におさまらなかった原因といたしましては、原油価格の予想を上回る上昇のほか、異常気象の影響が加わったことなどがあります。政府は、数次にわたり、物価対策の推進を図ってこれに対処してきており、今後とも物価安定に最大限の努力をしてまいる所存でございます。
 次に、公共料金についてのお尋ねでありますが、政府は、公共料金の改定に当たっては、経営の徹底した合理化を前提とし、物価及び国民生活に及ぼす影響を十分考慮して厳正に取り扱うとの方針で臨んでおり、これまでもその改定に当たって、真にやむを得ないものに限ることとし、その実施時期及び値上げの幅については、物価及び国民生活への配慮から極力調整してまいっております。
 円高為替差益の還元についてでありますが、最近の円相場の上昇は物価面に好影響を及ぼしてきたところでありまして、政府としましては、今後とも、円高が市場メカニズムを通じて価格の安定に資するよう、必要に応じ適切な措置を講じてまいる所存であります。
 なお、電力、ガスにつきましては、円高差益を含めた収支の状況を踏まえた上、現行料金をできる限り長く維持し、料金の安定に努めるべきものと考えております。
 価格の同調的引き上げにつきましては、独禁法に基づき絶えず監視を行っているところでありまして、同法の要件に該当する場合には、価格引き上げ理由の報告を求めております。すなわち、昭和五十五年におきましては、鉄鋼、フィルムなど十六品目につき報告徴収を行ったところであります。
 また、やみカルテルの審査件数は、昨年四月から十二月まで六十一件に上っておりますが、共同行為の存在が合理的に推認できる情況証拠を活用するなど、独禁法の厳正な運用を図っております。
 次に、物価対策費の問題でありますが、政府は、五十六年度においても五十五年度と同様に物価動向に細心の注意を払い、物価が著しく高騰するおそれを生じたような場合には、必要に応じ適切な措置を機動的に講じていく考えでありますが、あえて一般会計の予備費の中に特別の枠を設けなくとも、このような政策運営に十分対応できるものと考えております。
 次に、エネルギー問題についてお答えいたします。
 昨年十一月に策定いたしました昭和六十五年度の供給目標は達成可能かとのお尋ねがございましたが、この供給目標は、むしろ現下の内外のエネルギー情勢にかんがみ、その達成に向けて官民を挙げて最大限の努力を傾注すべき性格のものとして御理解を願いたいのであります。
 代替エネルギーの供給目標と新経済社会七カ年計画の見直しとの関連についてお尋ねがありました。
 同目標は政策努力目標でありまして、新経済社会七カ年計画、第三次全国総合開発計画等の経済マクロフレームを踏まえたエネルギー需要等を勘案して定められたものでありますが、新経済社会七カ年計画の昭和五十五年度のフォローアップの結果に基づき、政策努力目標である供給目標を修正する必要はないものと考えております。
 石油備蓄の取り崩しとその補充についてでありますが、石油の需要には季節的な変動があるため、不需要期には備蓄の積み増しが行われ、需要期である冬季にはその取り崩しが行われるのが通例であります。今回も冬季に入り、五十五年十二月末の石油備蓄の水準は前月と比べやや減少しておりますが、これはこのような季節的要因によるもので、十二月末で百七日分という備蓄水準は、前年同月の水準である九十九日と比べてもかなり余裕のある水準であります。
 現在、参議院に設置されているエネルギー対策特別委員会を衆議院にも設置せよとの御提案でございますが、エネルギー問題は、衆議院では商工委員会、石炭対策特別委員会等において真剣な論議が行われていると理解しております。いずれにいたしましても、との問題は院において十分検討され、結論が出さるべき問題であると思います。
 次に、住宅、土地対策についての多角的な御意見、御質問がございましたので、順次お答えを申し上げます。
 まず、住宅問題を個人的問題としてではなく社会的問題としてとらえ、住宅基本法を制定すべきであるとの御意見については、同様な観点から、現在、建設省において、住宅政策の基本的方向を示す住宅基本法案を鋭意検討しておるところでございます。
 次に、大都市地域における住宅の供給については、職住近接の要望に対応しながら着実に居住水準を向上させていくため、都市再開発事業の活用と市街化区域内の農地の宅地化の促進等により用地取得の円滑化を図って、公的住宅の建設、持ち家取得を促進することが重要と考えております。このため、住宅供給促進事業制度の創設など、制度上の工夫をしているところであります。
 市街化区域農地に対する固定資産税の課税の適正化措置につきましては、当面昭和五十六年度までは現行制度を維持し、五十七年度以降の取り扱いについては、答申等を踏まえて今後十分検討してまいりたいと考えております。
 御提案の選択的宅地並み課税についても、今後検討してみたいと存じます。
 次に、国土利用計画法に基づく規制区域の積極的指定については、投機でなく需給不均衡による地価上昇という現在のような状態のもとでは、いろいろ問題もありますので、土地取引及び地価の動向をよく監視し、必要な場合には機動的に指定を行うという考え方で本制度を運用してまいりたいと思います。
 また、大都市地域の木賃アパートについては、御意見のように、従来から利子補給制度等により建てかえの促進を図り、居住水準の高い住宅を供給する制度を取り入れておるところであります。
 一般の民間賃貸住宅の入居慣行にトラブルが生ずることが間々あると聞きますので、よく実態を把握し、行政の立場から必要な指導を行うことを検討しております。
 住宅費控除の御提言につきましては、税制上いろいろ問題があるので、その実現はむずかしいの
 ではないかと思います。
 次に、住宅建設五カ年計画と宅地供給五カ年計画を並行して推進させることにつきましては、政府としては、住宅建設五カ年計画の策定とあわせて、五十六年度から向こう十カ年間の宅地需給長期見通しを近く策定することとしており、引き続き、それに即して各都道府県ごとに宅地需給長期見通しを策定するよう指導してまいる所存でございます。
 次に、高齢化社会に関する御質問にお答えをいたします。
 まず、老齢福祉年金につきましては、きわめて厳しい財政事情のもとではありますが、社会経済情勢の動向に応じ、年金額を月額二万二千五百円から二万四千円に引き上げることとしました。その際、世帯の収入に比較的余裕のあると見られる階層の世帯には、今回の改善額の一部を御遠慮願うことといたしました。
 また、児童手当につきましては、相当程度所得が高い層の方々には受給を遠慮していただくこととし、所得制限を四百九十七万円から四百五十万円に切り下げる一方、給付の必要性の特に高い低所得層について手当額を引き上げております。今回の児童手当の改正は、現行制度の枠組みの中での部分的な手直しであり、制度の将来のあり方については、今後さらに検討を進めてまいる所存であります。
 基本年金制度について私の見解を示すようにとのお話がありました。
 基本年金制度は、確かに一つの御提案でありますが、現行制度からの円滑な移行が困難であること等の問題がありますので、私としては、現行の八つの年金制度を前提として、問題があればその改善を図りながら、全体として整合性のとれた発展を期すべきではないかと考えております。
 次に、中高年齢者の雇用の確保でありますが、最近の定年延長の動向を見ると、従来定年延長の取り組みが比較的おくれていた大企業を中心に、そのテンポが速まってきている状況にあります。また、今年一月十九日の雇用審議会答申では、定年延長の立法化問題について、今後定年延長の進展の動向を見きわめながら検討を続けるとされておりますが、それと同時に、定年延長促進のため政府の講ずべき施策についても御提言をいただいております。政府としては、この答申に盛り込まれた見解と施策の方向に沿い、定年延長の促進のための行政指導を強力に展開するとともに、長期的な展望に立った総合的な高年齢者対策の推進に努めております。
 なお、定年延長の法制化については、引き続き検討を続けることとなっている雇用審議会の審議の結果を待って対処いたします。
 婦人労働者に対する今後の施策でありますが、法的整備を含め、現在婦人少年問題審議会で検討が行われておりますので、その結果を待って、男女雇用平等法の制定、母性保護の充実等について検討してまいります。
 婦人差別撤廃条約については、本条約批准のため国内法制など諸条件の整備に努めることとして、すでに検討を開始しており、今後とも積極的に取り組んでまいります。
 国際障害者年に当たってのわが国の長期行動計画については、国際障害者年特別委員会の中で調査審議が進められております。政府はその結果を待って効果的な施策の推進を検討してまいります。
 障害者福祉年金については、五十六年度に年金額の改善と本人の所得制限の引き上げを予定しておりますので、これ以上さらに見直しを行うつもりはございません。
 心身障害者の雇用につきましては、さらに一層推進していくため、特に身体障害者の雇用率が低い大企業や特定の業種等を重点に雇用率の達成指導を強力に推進いたします。また、身体障害者職業訓練校の整備、一般の職業訓練校への入校の促進など、公共職業訓練の充実を図るほか、民間の活力を生かす観点から、事業主等による能力開発事業の拡充等にも努めてまいりたいと存じます。
 次に、豪雪対策についてお尋ねがありましたが、まず、激甚災害の指定については、被害状況の把握に努め、調査結果が判明次第、速やかに検討したいと考えます。また、雪おろし等の費用についての税法上の措置や生活必要物資の安定供給あるいは雇用対策など、各般にわたり必要な措置を講じていくこととしております。
 次に、軍事大国にならない歯どめは何かとのお尋ねでありますが、わが国の防衛政策の基本は、専守防衛に基づき、あくまでもわが国の防衛のため必要最小限度の範囲において防衛力を整備しているものであり、具体的には、性能上もっぱら他国の壊滅的破壊のためのみに用いられる攻撃的兵器は保持しない、海外派兵は行わないなどの原則を堅持しております。わが国の防衛のため必要とする範囲を超え、他国に脅威を与えるような強大な軍事力を保持することになれば、それは軍事大国と言うべきものでありますが、わが国が目指しているところではないことは、これまでたびたび申し上げておるところであります。
 次に、レーガン政権の外交、防衛政策については、大統領ほか関係者の言動を見きわめた上で判断することになりますが、米側は、わが国が憲法上の制約の枠内で防衛力整備の努力をしている事情を十分承知しているものと考えられますので、防衛問題をめぐる対日政策には、カーター前政権と比べて基本的な変化はなかろうと思っております。
 わが国としては、米国から防衛努力強化の期待表明がなされた場合には、これまでと同様、それを念頭に置きながら、あくまでもわが国の自主的判断に基づき防衛力の整備を進めるとともに、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に努めてまいる所存でございます。
 次に、ASEANに対する経済技術協力の問題であります。
 私は、先般ASEAN諸国を訪問いたしました際、ASEAN諸国に対する人づくり協力拡充のため、ASEAN人造りセンター構想を提唱いたしましたが、各国政府首脳から基本的賛同を得ました。これは、わが国の協力により、ASEAN各国にそれぞれ一つずつの人造りセンターを設置し、また、この関連で沖繩にもセンターを設置するという構想でありますが、御指摘の沖繩のセンターの性格づけにつきましては、今後ASEAN諸国の考え方も十分徴した上で決めていくこととしております。
 次に、カンボジア問題についてであります。
 私は、先般のASEAN諸国歴訪の際、これら諸国首脳との話し合いを通じ、カンボジア問題については、国連総会の決議にのっとった国際会議による平和的解決を図るほかはないという強い感触を得ました。わが国は、このような国際会議開催のために国連事務総長が適切な措置をとるよう働きかけを行っておりますが、今後は安保理事国として、ベトナムに対する働きかけも含めた事務総長の努力に積極的に協力していく方針であります。
 日ソ関係についてお答えいたします。
 最近の日ソ関係の冷却化は、北方領土の軍備強化、アフガニスタンへの軍事介入など、もっぱらソ連側の行動に起因したものであります。これらのきわめて遺憾な事態に対し、わが国は、言うべきは言い、通すべき筋は通すとの一貫した態度で臨んでおりますが、これに対しソ連側は、今日まで誠意ある対応を一切示していないことは御承知のとおりであります。
 政府といたしましては、ソ連との間に真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することを重要な外交課題の一つと考えており、このため誠意を持って対処する考えでありますが、このような日ソ関係発展への展望を開くためにも、ソ連側がその誠意を具体的行動をもって示すことを強く希望する次第であります。(拍手)
 次に、わが国の中東外交についてであります。
 わが国としては、わが国とアラブ諸国の間に存在する相互依存関係を十分考慮しながら、これら諸国に対し経済技術協力を推進するとともに、人的、文化的交流等を通じ相互理解を増進することにより、これら諸国との友好協力関係の強化を積極的に進めていく所存であります。
 また、このような観点からも、これら諸国との首脳レベルの相互訪問は、竹入委員長御指摘のとおりきわめて望ましいと考えております。この点に関し、私は、すでに政府が御招待申し上げているエジプトのサダト大統領の来日が年内にも実現するよう、強く期待をいたします。
 武器輸出禁止法を制定すべきであるとの御意見がございましたが、御承知のとおり武器輸出につきましては、武器輸出三原則及び昭和五十一年二月二十七日に国会において表明した武器輸出に関する政府の方針に基づき、きわめて厳格に対処してきているところであります。その規制手段としては、外国為替及び外国貿易管理法に基づく輸出貿易管理令があり、今後とも、その厳格な運用を図っていくことで十分対処できると考えております。
 次に、去る一月十九日の黒柳明議員の質問主意書に対する政府の答弁書は、従来の政府見解の変更を意味するのではないかとのお尋ねでございますが、軍事的用途に充てられる対外経済協力についての従来の政府の方針には変わりはございません。
 すなわち、昭和五十三年四月五日の衆議院外務委員会での対外経済協力に関する決議の中に「今後とも軍事的用途に充てられる或いは国際紛争を助長する如き対外経済協力は行わないよう万全の措置を講ずること。」と述べられておりますが、政府は、この趣旨を踏まえて対外経済協力の推進に対処してきており、このような従来の方針には変わりはございません。
 なお、わが国の民間企業の工事請負などの取引につきましては、右の決議の直接の対象となるものとは考えておりませんが、当該取引の中に武器輸出に該当するものが含まれていれば、その部分につき武器輸出の三原則及び昭和五十一年二月二十七日の武器輸出に関する政府方針に基づき厳格に対処すべきはもとより当然であり、政府の答弁書も、そのような方針で処理していくことを明らかにしたものでございます。
 次に、憲法問題についてお尋ねがありましたが、私は、憲法上、改憲論議と憲法遵守義務とは両立し、矛盾するものではないと繰り返し申し上げているところであります。(拍手)したがって、自由民主党が国民の要求にこたえていろいろな問題を研究し、その一つとして憲法について論議することは少しも差し支えないものと考えております。
 なお、党の憲法調査会は、現行の憲法に問題があるのか、あるとすればどの点かを調査研究をしておるのであって、改憲の具体的な行動をとっているわけではございません。
 いずれにしても、憲法のような基本法の改正は、慎重の上にも慎重でなければならず、国民の世論がその方向に向かって成熟しているとは言えない現段階においては、改憲の具体的行動など全く考えておりません。
 次に、衆参両院の定数是正を最優先の課題にせよとの御意見がありました。
 衆議院の定数については、従来、各党各会派の間で合意を見た線に沿って、不均衡の著しい選挙区について是正が図られてきた経緯があります。定数是正については、衆参両議院を通じ総定数をどうするのか、選挙区画をどう定めるか等の基本的問題との関連を十分考慮してかからなければなりません。
 第三者機関の設置の御提案もありましたが、そういう御提案も含めて選挙区別定数の問題は、選挙の基本的なルールづくりの問題として各党各会派の間の合意に基づいて改善していくことが、最も民主的かつ現実的な方法と考えており、今後、各党各会派の間において論議を尽くしていただきたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(福田一君) 佐々木良作君。
    〔佐々木良作君登壇〕
#9
○佐々木良作君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、まず冒頭に、鈴木政治の基本姿勢について伺います。
 わが国政治は、八〇年代第二年目を迎えまして、ますます緊迫する国際情勢、深刻化する内政上の諸問題を抱え、その打開には卓越した政治決断と実行とが強く求められております。
 その意味で、政治の責任が今日ほど大きな比重を持つに至ったことはありません。
 しかるに一方、政治と政治家に対する国民の不信と不満が、今日ほど根深く根強く広がっておるときもまれであります。それは、ここ数年来、国民はいやというほど政治の汚職と綱紀紊乱の実態を見せつけられてきたからであります。政治に清潔さが失われたとき、信頼も失われ、政治家は、その責任を果たすことができません。日本政治が直面する最大の課題は、まさにここにあります。
 鈴木総理は、何よりもまず政治に対する国民の信頼を取り戻すことに全力を傾けるべきであります。政治倫理の確立と綱紀粛正の断行は、鈴木総理のリーダーシップにかかる最重要課題でありましょう。総理の決意と方針を具体的に承りたいと存じます。(拍手)
 第二に、総理、私は先日の施政方針演説を伺っておりまして、まことに失礼ながら、これは鈴木さんの施政演説ではないと感じました。内容が総花的問題点の羅列で具体性がないというだけではありませんで、全くの官僚作文の朗読であったということであります。(拍手)庶民的な鈴木さんらしい政治姿勢も、あなたの持ち味も全く感ぜられませんでした。それは昨日来の答弁でも同じであります。私は、自民党内閣に官僚主導型政治が完全に定着してきたことを痛感したのであります。まことに残念であります。(拍手、発言する者あり)
 私は、官僚政治の惰性を打ち破り、国民との間に血の通った、生き生きとした政治を打ち立てることこそ、議会政治家の第一の使命だと考えるのでありますが、この点につき総理の率直な御所見を承ります。
 政治姿勢に対する第三の質問は、わが国政治の根幹に触れる憲法改正問題についてであります。
 鈴木総理は、これまで、総理としては護憲、自民党総裁としては改憲という奇妙な立場をとってとられました。このような総理と総裁の不可解な使い分けが、国民の間に憲法問題についていかに不安と混乱をもたらしてきたか、御存じないはずはございません。この関係は、先ほどの竹入委員長に対する御答弁でも私ははっきりわかりません。
 しかも、自民党の改憲論議は、従来、抽象的に憲法改正を提唱するばかりでありまして、現行憲法のどの条章をどのように改正したらいいのか、その意味も全くわからぬのであります。研究なら黙ってすればよろしい。今回改めて打ち出された自民党の五十六年度運動方針においても同様であります。このような問題提起の仕方自身が、政治的に無責任きわまりないと言わなければなりません。(拍手)
 わが国の一部には、なお自衛隊違憲論がございます。自民党の改憲論は、みずからもその疑念を持って、それを解消することを主たる目的とするものでありましょうか。鈴木総理に対し、まずこの点を明らかにされることを要求いたします。
 同時に、このことと関連して具体的に総理は、第一に、憲法九条一項は、自衛のための戦争まで放棄しているものではないとの見解に立たれるのか。第二に、同条二項は、自衛のための交戦権は放棄していないと解釈されるか。第三に、砂川事件の最高裁判決などで示された統治行為論についての政府の見解はどのようなものか。第四に、もし統治行為論に立たれるのでありますならば、そういう場合には、この際、国権の最高機関たる国会で、自衛隊の存在は合憲である旨の決議を行い、もって一部の疑義を解消し、国民的コンセンサスをつくるべきだという意見もありますが、これに対する政府の所見はいかがでございますか。
 以上、四点について総理の所信を伺いたいと存じます。
 民社党は、憲法擁護の立場を明確にいたしております。それは、現行憲法は、日本が今後追求すべき近代国家の諸原則を明定しており、かつ、それは必要にして十分だと確信しておるからであります。特に現行憲法が定める基本的人権の尊重、主権在民、平和主義の三原則は、われわれが描く民主政治の構築、福祉社会の創造及び国際連帯の推進にとって、まさに不可欠の要件であります。なおまた、それは日本があくまでも民主的な国民共同体であるとの基本理念に立ち、そのゆえに、左右を問わず、すべての全体主義も資本の横暴もともに許さないのが日本国憲法の精神であると考えるからであります。(拍手)
 したがって、われわれは、先ほど言いましたように、どうしても、この際自民党が改憲論を主張される意味がわかりかねるのであります。したがって、この際総理より、自民党総裁として、特に改憲を必要とする理由並びにその主な内容を、国民に向かって明示されんことを要求いたします。
 次に、わが国政が直面する内政上の最大課題たる財政再建問題を中心に質問をいたします。
 まず私は、その冒頭に、財政再建を進めるのには、次の三つの原則に立つべきことを強く主張するものであります。
 その第一は、徹底的な行財政改革を断行し、国民の負担を最小限にとどめること。第二は、物価と雇用の安定に最大限の配慮をめぐらし、適切な経済運営を行うこと。第三は、福祉と教育政策の前向き再構築を図ることであります。この立場から、以下具体的に、その施策、方針を伺います。
 総理は、五十六年度予算において二兆円の国債減額を実行されました。一つの見識として評価いたします。しかし、財政再建のため何よりも真っ先に実行されなければならない歳出の削減は、昨日からきょうまでの総理の懸命の陳弁にもかかわりませず、きわめて不十分であることは事実であります。(拍手)
 それは、小さな能率的な政府を目指すべき行財政改革がほとんど行われていないからであります。その結果、国債減額分の大部分がそのまま国民の負担に転嫁されました。この指摘は、すべての論者に共通するものであり、財政再建に対する国民の不満もこの一点に集中されております。(拍手)
 かくて、増税と保険料、公共料金の値上げなどによりまして、一世帯当たり六万円強の負担増、累進構造による所得税の増加分を加えますと、それは年間十万円という史上空前の負担増を国民に押しつけておるのであります。
 さらに重要なことは、このような再建方法によって五十九年度赤字国債解消を目指すとするならば、五十七年度以降毎年、それに要する二兆円規模の穴埋め財源が、すべて国民負担に課せられ、かくては、伝えられる大型間接新税などの導入を必須とするに至るであろうことであります。このようなやり方は、国民を無視した官僚独善の暴挙でありまして、とうてい国民の納得できるものではございません。
 昨日来の答弁で、政府は、財政の中期展望を検討中ということでございましたが、御承知のように、アメリカにおける新レーガン政権が思い切った歳出削減と、それから減税とを同時に行おうとしておること、具体的内容さえ、いま出かかっておることにならい、そのような方法によって、この増税路線を変更されることを要望いたします。
 私は、そのような変更がなされない限り、今国会に提出される二十余件の増税関係法案の審議に対し、わが党は厳しい姿勢を持って臨むことをあらかじめ警告し、総理の反省を求めるものであります。御所見を伺います。(拍手)
 行財政改革につきまして、総理は、大平内閣の五十五年行革を追認するという態度にとどまっておられまして、その年次計画の消化さえ十分でなく、ひたすら第二臨調の答申待ちという消極的な姿勢のように私どもは拝見いたします。
 第二臨調の中心課題は、国民に対するサービス行政、官業の民営移管、国と地方との行政分担などについての刷新改革案を立案することにあると言われますが、これらの諸問題につきましては、すでに歴代内閣の行革テーマとして各種の検討が行われ、中でも昭和五十四年七月の「今後の政府・公共部門の在り方と行政」と題する報告書は、十三項目にわたって具体的提言を行っております。
 したがって、先ほどの竹入委員長も御指摘ありましたように、私は、第二臨調の答申を待つまでもなく、行革の骨子はすでに検討済みであり、その実行が残されているだけと言っても過言ではないと思います。(拍手)
 また、第一臨調の場合と同様に、第二臨調によって大変りっぱな答申が出されたといたしましても、それがたなざらしにされたままになるのでは何の意味もございません。行革案の強力な実行のためには、本当は行管庁長官御自身の権限にまで検討を広げなければなりますまいし、それ自身もまた第二臨調の重要な課題でありましょう。間口が広過ぎます。
 しかし、このたびの第二臨調の発足には特別の緊急なる使命があると考えます。それは、国民の納得のいく行革プランを早急に策定し、もって増税による財政再建のやり方を変更させることであります。
 したがって、総理は、第二臨調に対し、五十七年度予算編成に役立つよう、その第一次答申をまず求め、即刻実行に移すべきであると考えるのでありますが、総理の御見解を承りたいと思います。
 昨日来、総理は、答弁の中で、行革は粘り強く進めるということを言われました。私は、行革というものは交渉ではございません、粘り強くというのではなく断行すべきものだと思うのであります。総理の勇断を望んでやみません。(拍手)
 関連して、補助金整理について、わが党は、地方分権を考慮いたしましたいわゆる第二交付金制度の創設というものをすでに提案いたしておりますけれども、この問題は、具体的に掘り下げた論議が必要と思いますので、予算委員会に譲ることにいたします。
 財政再建を進めるに当たっての第二の原則は、特に物価、雇用、景気に配慮した適切な経済運営を行うことであります。
 昨年わが国経済は、比較的安定した姿で第二次石油危機を乗り切ったと言われますが、これには民間企業の活力、特に中小企業のバイタリティーと、民間労組を中心とした勤労者の生産性向上への努力並びに賃上げの合理的自粛の成果が高く評価されなければなりません。
 しかるに、政府は、その公約であった消費者物価六・四%への抑制に失敗し、ために勤労者の実質賃金は、皆様の御指摘のとおり一月から十一月までマイナス〇・九%を記録し、中小企業の倒産件数は、一万七千八百八十件と異常な高率となっております。これは、まさに功に報いるに罰をもってするのたぐいであり、責任は重大であります。
 もし政府が真剣に民間の活力に期待するということでありまするならば、この際、中小企業者に対する各種増税の取りやめ並びに金利の軽減措置、物価調整減税の実施、住宅並びに土地対策の推進及び六十歳定年制の早期実現、週四十時間、完全週休二日制を図る労働基準法の改正など、勤労者、中小企業者のための施策を積極的に推進すべきであります。
 所得減税はしばらく待たれたいと言われる総理の答弁のような姿勢では、私は、実は民間に期待して五・三%の成長を図るという経済成長への期待もとうてい達成できないと考えます。総理の見解を求めます。
 さらに、経済の重要な課題として貿易摩擦、エネルギー及び農業問題がございます。
 貿易摩擦を緩和するためには、特に米欧に対する黒字幅縮小を図るための諸施策、市場開放や輸出の自粛などとともに相互のコミュニケーション拡大の努力が必要であり、これらについては日米賢人会議が具体的な提言を行っておりますが、政府は、これらを今後どのように具体化していく方針か、関係閣僚の答弁を求めます。
 また、エネルギー問題については、私は、この壇上から、たびたび、政府のエネルギー対策が机上プランに終始し、肝心の実行計画のないことを指摘してまいりましたが、今日なお同様な状態に置かれていることは、きわめて遺憾であります。
 また、新規エネルギー開発の最大の障害が立地問題にあり、その打開のため、わが党は特別措置法の制定を提唱しております。
 これらの問題とともに、個条書き的に、
 第一、田中通産大臣提唱の小規模原子力発電構想の実現可能性について
 第二、昭和六十年度の省エネルギー率一二%の引き上げ再検討問題について
 第三、国際問題化しつつある原子力廃棄物処理に関する政府の方針について
 第四、伝えられるところのフランス政府提案の国際石油銀行構想について
 以上四点に対する関係閣僚の御所見をあわせてお示し願いたいと存じます。
 次に、いまや食糧資源問題が国際的に重要視されつつあるとき、わが国農業の現状は、米減らしの減反政策以外に農政なしと言われる心細い状態であります。生産者たる農民の側からも消費者たる一般国民の側からも、その根本的立て直しが求められておるところであります。
 わが民社党は、第一に、さきの国会での食糧の自給力強化決議の趣旨に従い、国民食糧確保を目標に、減反政策を抜本的に見直し、総合的な農業政策を強力に進めること。第二に、国民経済における農業の位置づけを明確にし、これを地域経済発展のかなめとして再建するため、農業基本法の抜本的見直しを行うこと。第三に、農業の生産性向上を図るため、従来の場当たり的指導を改め、農業投資の拡充による強力な総合対策と指導を行うこと。この三基本方針により新たな日本農業の再構築を行うべきことを提唱しております。
 農政に詳しい鈴木総理の強力な閣内指導を要望し、総理の御所見を求めます。(拍手)
 なお、昨今の異常豪雪に対しまして、わが党も、直ちに現地調査団を派遣しますとともに、政府に対し、すでに、激甚災害の指定、特別交付税による自治体財政への助成強化、地元企業などへの緊急低利融資などの応急措置とともに、特に野菜の急騰などの物価対策に特別の配慮を行うべきことを要請してまいりましたが、この際、私は、政府がこれらの施策を急速かつ充実して実施されるよう、重ねて要望いたします。
 財政再建の第三の原則として、私は、特に福祉と教育について前向き政策への転機ととらえるべきことを強く主張いたします。
 今回の予算編成に当たって示された鈴木内閣の福祉に対する態度は、明らかに後退姿勢であります。それは、児童手当や福祉年金などの具体的予算内容だけについて言うのではありません。そこには福祉に対する基本理念が欠落しているからであります。人間の生存と生活の安定という、人間の基本的必要性から生まれた福祉の根本理念を理解するならば、財源に余裕があればこれを福祉にばらまき、引き締めが必要な財政事情になれば、これを真っ先に抑制対象とするような、そんな態度はとり得ないはずであります。
 もちろん、充実した福祉のためには、それだけの財源が投入されなければなりませんが、福祉社会への着実な進展を目指すならば、まず、ナショナルミニマム構想を明らかにし、コミュニティー福祉社会への方針を示すことであります。そのような将来構想が国民に示されるのでありまするならば、国民はあすに向かって信頼と期待とを持つに至るでありましょう。
 このような考え方に立って、私は、鈴木内閣が早急に日本型福祉社会像の政策大綱を策定され、防衛計画と同じように、国の責任において実施すべきその中長期実行計画を明らかにして、国民の協力を求めるべきであると考えます。総理の責任ある答弁を求めます。(拍手)
 なお、私は、国際障害者年に当たる本年の政治目標として、政府は、この際、障害者と老人に対する福祉政策について、国民的規模で推進する一大国民運動を展開すべきことを提唱いたします。総理の御所見を伺います。
 なお、この際、特に強調しておきたいことは、医療と学校教育の荒廃についてであります。
 いまや、この問題は日々深刻化し、それは家庭にとって不安を超えて恐怖でさえあります。これはまさに政治の所産であり、国会と政府はともに責任を痛感しなければなりません。
 医療の荒廃は、新しい薬と新しい機械の洪水によって医師の心が急速に失われてきた結果とも言われ、その背景には、一部医療産業や医師の営利主義があるとも指摘されております。
 また、一方では、最近の日教組の研究集会において、まず教師が変わらなければ子供も変わらないという発言があったと聞きます。
 まことにそのとおり、教育だけではなく、医療もまた、結局は人の問題に帰着いたしましょう。総理は、これらのことを根底に据えられて、勇断をもって本問題の改善、改革に取り組まれんことを切望いたします。
 教育改革については、教師の資質向上問題とともに、ゆとりある教育実現のためには、抜本的に六・三・三制を見直し、高校入試の全廃、中高一貫教育の実施など、教育制度の大改革に着手すべき時期に立ち至っていると私は思います。総理の率直な御所見を承ります。
 次に、平和と安全保障の問題について質問をいたします。
 言うまでもなく、国の安全確保のためには一定の防衛力が必要でありますが、同時に、戦争勃発の根源を解消する世界平和の構築こそが最大の安全保障と言えましょう。
 この見地から、私は、鈴木内閣の総合的平和戦略の欠如を指摘し、その展開を強く要望する立場に立って、そのための具体的方針をお尋ねいたします。
 その第一は、いわゆるデタントと危機管理についてであります。私は、目下の国際情勢の中で二つの危険に着目いたします。その一つは、米ソ二大国の軍拡競争であり、他の一つは、中東の情勢が内蔵する危険性についてであります。
 まず、米ソ・デタントは、ソ連のアフガニスタン侵攻以来凍結状態にありますが、いまや、新たに誕生した米レーガン政権は、軍事力増強によって戦略的優位を確保しつつ、これら力の回復を通じ、改めてソ連との交渉に臨もうといたしております。これは明らかに米ソの力の対決を招き、ここに新たな不安が増幅されようとしております。
 このとき、日米欧の西側陣営のうち、西ヨーロッパで指導的役割りを果たしつつある西ドイツでは、デタントという文字こそは国益という言葉と同じ意味を持つほどの重さでもって、国運をかけて対ソ・デタントに取り組んでおります。これは私の数回の訪独を通じて得た実感なのであります。この西独の取り組み方は、明らかに、アメリカの最近のデタントに対する認識とは微妙な相違を見せております。
 鈴木内閣は、日米欧の連帯強化を日本外交の新基軸に据えようとのお考えのように伺いますが、この米欧間の認識の段差に対し、日本はどのような姿勢で対処されようとするのか。これは、日米首脳会談に臨む日本の基本的姿勢にも関連いたしましょう。デタントに対する鈴木総理の基本認識とともに、その対処方針を明らかにいたされたいと存じます。
 同時に、現に深刻化しつつあるポーランド問題に関連して、伊東外相は、ソ連の軍事介入があった場合、欧米との協調は当然との立場から、少なくとも経済制裁には同調することを示唆されておりますが、鈴木内閣として、この方針に変わりはございませんか。この問題は、デタントの方向を決定づけるものと思われるだけに、きわめて重要でありまするので、この際、総理より、確かなる方針をお示し願いたいと存じます。(拍手)
 次に、対ソ外交について伺います。
 西欧諸国は、当今しきりに対ソ、対東欧接触を深めておりますが、わが国においては、日ソ間交渉は、事務レベルの協議さえ凍結の状態にあり、政府間交渉は閉ざされたままになっております。この事態打開のために、政府は、どのような方針をとろうとされるのか。向こうが物を言ってくるまで、じっと黙って待っておるという態度でありましょうか。事務レベル協議再開への条件を、どのようにみずから整えようと考えておるのか、考えておらないのか。
 このような状態の中で、経済界を中心に対ソ経済関係の修復改善の手始めとして、日ソ科学技術交渉会議の開催へ積極的な動きを示していると聞くのでありますが、これに対する政府の態度、方針はどのようなものでありましょうか。
 私は、対ソ交渉については、領土問題を入り口として、その交渉自身を断るのではなくて、領土問題を入り口論としてではなく出口論と構えて、政経不可分の立場を堅持しつつ、対ソ接触は執拗に行うべきだと考えるのであります。具体的質問に答えるとともに、今後の対ソ関係打開への政府の基本方針を示されたいと思います。(拍手、発言する者あり)
 もう一つの危険な局面は……(発言する者あり)聞くのは君たちではないか、聞け。(発言する者あり)聞くのなら文句言うな。――議長、静めてくれ。発言権はおれにある。議会主義自身を君たちは踏みにじるのか。
#10
○議長(福田一君) 静粛に願います。――静粛に願います。
#11
○佐々木良作君(続) もう一つの危険な局面は中東の情勢であります。
 イラン・イラク戦争の長期化、アラブ圏諸国の分裂抗争の深刻化、国際石油市場の大動脈たるペルシャ湾の不穏な形勢、これらは、わが国はもとより、国際経済、国際平和の明暗を分かつ世界的なキーポイントとも言えましょう。
 しかるに、わが国のこの地域に対する外交姿勢は、とかく右顧左べん、それは羅針盤のない漂流船のごとくにさえ見受けられます。このような姿勢は、世界平和の構築を積極的に図ろうとする日本の外交姿勢ではあり得ません。東西両軍事大国の介入を極力嫌悪しておるこの地域に対してこそ、わが国は確固たる自主外交を展開すべきであります。
 そのような立場から、政府は、イラン・イラク戦争の和平交渉に積極的な役割りを果たす意思はないか。このことを含め、中東地域に対する外交の基本方針を承ります。(拍手)
 第二に、アジア外交について質問いたします。
 まず、私は、鈴木総理が外国訪問の最初をASEAN諸国に求め、アジア重視の外交姿勢を示されたことに敬意を表します。
 総理は、この歴訪を通じて各国にさまざまな援助を約束されました。私は、これらの約束が誠実に履行され、それによって友好のきずながさらに強められんことを切望いたします。
 今回の総理の歴訪で最も注目すべきことは、アジアにおける日本の政治的役割りが一段と高められたことであります。中でも、カンボジア問題に対するわが国の対応のあり方はきわめて重要でありますが、先ほどの御答弁にもございましたけれども、総理は、今後この問題に本当にどのように対処される方針なのか。アジアを代表する国連の安保理事国としての自覚に立って、その具体的方針を明らかにされることを望みます。
 なお、わが党は、南北問題をきわめて重視しておりまして、その意味で経済援助等の問題は重要だと考えますが、時間の関係上、予算委員会に譲ります。
 次に、平和と安全の問題の中で、わが国にとって最も重要なのは、朝鮮半島の動向とそれに対するわが国の対応のあり方であります。
 韓国においては、憂慮された金大中氏の極刑は回避せられ、非常戒厳令の解除とともに、第五共和国体制の整備と国際関係修復への動きが一段と活発に進められております。しかし一方、全大統領による南北首脳会議の提唱は、その後一向に進展せず、南北関係は一層厳しさを増しつつあるとも見受けられます。
 私は、朝鮮半島の平和はわが日本の平和に直結するものであることにかんがみまして、金大中氏の人権回復や韓国内民主化の一層の進展を願いつつ、わが国はこの際、日韓関係の正常化に積極的に取り組み、まず、日韓両国の首脳会談、両国閣僚会議などを手始めに善隣外交の展開を図るべきだと考えます。政府の方針を承りたいと思います。(拍手)
 最後に、防衛力整備について伺います。
 米ソのデタントの後退を背景とする厳しい国際情勢を直視するとき、西側の一員としての日本は、今後防衛努力を着実に進めていくことが求められます。しかし、それは内外に不安を巻き起こすような軍事大国への道であってはなりません。そのためには、明確な条件と原則を確立することが不可欠であります。
 私は、この見地から、総理との党首会談を通じまして、防衛力整備に当たっては、平和戦略の推進と憲法の枠内にとどめること及び財政事情を配慮することの三条件を踏まえるよう提示し、総理も基本的にこれを了承されましたが、この際、本議場において、改めてこの三条件に対する総理の責任ある御所信の表明を求めます。(拍手)
 さらに、私は、厳しい財政事情の中で、五十七年度以降もさらに続けざるを得ない防衛努力の現状からして、この際、正面装備の吟味など、防衛予算の中身に入ってこれを総点検し、防衛費の効率化に全力を傾注すべきことを強調するものであります。
 防衛予算は、もはや防衛庁と大蔵省にのみ任せてはおけない段階に立ち至っておると考えます。私は、国防会議の現状では、結局三自衛隊のばらばらの要求が算術平均値的に平等にうのみにされる結果になることを恐れるものであります。今後は、専門家による兵器、装備の総合的点検が必要であり、その結果を踏まえて、国としての最高の意思決定が行われなければなりません。
 この意味から、政府は、シビリアンコントロールの中核として、国防会議を改組強化し、ここに防衛予算全体にわたってこれを具体的にチェックする機能を整備すべきであると考えるのであります。総理の責任ある答弁を求めます。(拍手)
 終わりに、鈴木総理の最も重要な政治日程でもあります日米首脳会談につきましては、私は、率直かつ具体的な要望を持っております。したがって、この問題については、特に別の機会を設定されることを総理に強く要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 佐々木民社党委員長にお答えいたします。
 最初に、政治倫理の確立を最優先課題として取り組めとの御意見でありました。
 私は、清潔かつ公正な政治と行政は、社会の秩序の基礎をなすものであり、国民の信頼を得る原点であると考えております。政治の倫理を確立し、行政の綱紀を保持するため、政治、行政に携わるすべての者が自戒の念を持って事に当たらなければならないと思います。
 政治倫理の確立に資するため、倫理委員会の設置や金のかからない選挙のための選挙制度のあり方などの問題について、各党各会派の間で十分論議され、成案が得られることを期待をいたしております。
 次に、憲法問題について多角的な御意見を伺いました。鈴木内閣においては憲法改正を考えていないことは繰り返し述べているとおりでありますが、一方、自由民主党は、政党である以上、国民の要求にこたえて、いろいろの問題について調査研究し、その一つとして憲法問題について研究することは何ら差し支えないし、むしろ政党の責務でもあると考えております。自由民主党も、党の政綱で、平和主義、民主主義及び基本的人権の尊重の原則は堅持すると明記しております。この原則を維持していくことについては、今後も変わることはありません。
 なお、自由民主党としては、この三原則を堅持しつつ、憲法の問題について調査研究を行っているのでありますが、いまだどの条文をどうするかというようなことは言えない段階でございます。そこまで調査研究が進んでおりません。
 次に、憲法第九条の解釈についてお尋ねがありましたが、政府は、従来から、第九条第一項の規定については、自衛のための必要最小限度の武力を行使することは認められているが、その限度を超えて武力を行使することは許されないと解しております。また、同条第二項の「交戦権」とは、戦いを交える権利という意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称を意味するもので、このような意味の交戦権は認められておりません。しかし、自衛のため必要最小限度の武力を行使することは当然認められており、その武力の行使は交戦権の行使とは別のものであります。
 次に、最高裁判所の判決が認めているいわゆる統治行為の理論については、最高裁判所の判断として、政府においてもこれを尊重しております。
 国権の最高機関である国会が自衛隊は合憲である旨の決議を行い、一部にある疑義を解消するとの意見については、その決議を国会がなされることは政府としては意見を述べる立場にありませんが、自衛隊の存在が合憲であることは疑いのないところであると考えております。
 次に、私の政治への取り組み姿勢についてお尋ねがありました。自由民主党内閣に官僚主導型政治が定着しているとの御批判を受けましたが、私は、官僚政治に堕することなく、議会制政党政治の本旨にのっとり、民意を反映させ、国民と血の通った政治を確立することを信条として、日々精励しているところでございます。(拍手)
 次に、財政再建に関する御質問にお答えをいたします。
 御承知のとおり、五十六年度予算では四兆四千九百億円と見込まれる自然増収を優先的に公債減額に充て、特例公債の発行額を二兆円減額し、財政再建を本格的に軌道に乗せたところであります。
 公債減額に当たっては、経費の節減合理化に努力し、国債費と地方交付税以外の一般歳出はその増加率を四・三%と、昭和三十一年以来二十五年ぶりの低い率に抑えました。また、全体としての歳出規模の伸び率も一けたにとどめました。
 二兆円の公債減額が大部分国民の負担に転嫁されているのではないかとの御批判でありますが、さきに申し上げたように、厳しい予算の中で福祉、文教などの行政水準の維持を図っていくため、なお相当の財源を確保する必要がありますので、今回、特殊法人からの国庫納付金など、政府部内で増収措置に努めるとともに、現行税制の枠組みの中で増税をお願いしているものであります。何とぞ御理解を賜りたいと存じます。
 行政改革につきまして消極姿勢に終始しているのではないかとの御批判がございましたが、私は、かねて申し上げておりますとおり、積極的に行政改革の一層の推進を図ってまいる所存であります。
 昭和五十六年度予算との関連では、昨年末の閣議決定において、行政事務・事業の整理、委譲など、行政の減量化を中心とする新たな角度からの行政改革を実施する方針を決定いたしましたが、逐次これを推進してまいります。
 また、基本的な行政改革案を策定するため、臨時行政調査会を設置することとしておりますが、年度内にもこれを発足させ、財政再建等に関連して改革を急ぐ問題については、必要に応じ中間答申等を求めて、早期にその実施を図ることを考えております。
 なお、臨時行政調査会で検討する事項といたしましては、これまで歴代内閣で取り上げられた行政改革問題についても、新たな観点から基本的な検討を行うことになるものと考えます。臨時行政調査会の御検討の結果につきましては、政府はこれを尊重し、順次実行に移す決意であります。
 経済運営を適切に行うことが財政再建に貢献することは、御説のとおりであります。財政の対応力が著しく低下している現状におきましては、民間需要の息の長い成長を持続せしむることがきわめて重要であると存じます。
 佐々木委員長は、その際特に中小企業と民間労組を中心とする勤労者の役割りを重視しておられますが、私も大いに期待いたしております。しかしながら、御提案の勤労者、中小企業者のための施策の中には、中小企業者に対する増税の取りやめ、物価調整減税など、現状では実施できないものも含まれておりますが、それ以外の項目で御趣旨に沿って積極的に推進することができる施策もございますので、政府としてもできる限りの努力を重ね、自由で安定した民間活動の環境を整えてまいります。
 エネルギー対策についてお尋ねがございましたが、政府は、エネルギー対策を国政の最重要課題の一つとして総合的に展開しております。このため、石油の安定的確保、省エネルギーの推進、環境保全に留意した石油代替エネルギーの開発、導入の諸施策を精力的に推進していくことを基本としており、五十六年度予算編成においても、エネルギー対策には重点的に予算の配分をしたところであります。
 放射性廃棄物の処理対策につきましては、昭和五十一年十月に原子力委員会が決定した基本方針に沿って鋭意取り組んでいるところでありまして、放射性廃棄物の処分方法としては、現在の陸地処分に加え海洋処分をあわせ行う方針のもとに、内外関係者の理解を得るための努力を続けるなど、所要の施策を進めております。
 農政については、施政方針演説で申し述べましたとおり、長期的展望に立った農政のもとに、日本型食生活に即した農業生産の再編成と経営規模の拡大を軸とする生産性の向上に努め、総合的な食糧自給力の維持強化を図る所存であります。
 このため、先般農政審議会から答申された「八〇年代の農政の基本方向」と、閣議決定した「農産物の需要と生産の長期見通し」を踏まえて、栄養的な観点からも、総合的な食糧自給力維持という観点からも望ましい日本型食生活の定着促進、五十六年度から五十八年度までの水田利用再編第二期対策の推進、農用地利用増進事業を中軸に据えた地域農政の総合的推進による中核農家の育成、省エネルギー技術を含む農業技術の向上、優良農地、水資源の確保等を中心に今後の農政を展開してまいります。
 豪雪対策について三点御質問がありました。
 激甚災害の指定については、被害状況の把握に努め、調査結果が判明次第、速やかに検討することといたしております。
 次に、除排雪経費が著しく多額な地方団体については、普通交付税措置額、降積雪量等を勘案して、特別交付税により措置する予定であります。
 また、経営に支障を生じている中小企業に対しては、災害復旧貸し付けや体質強化資金を活用して機動的な融資を行っているほか、既往の貸付金についても、実情により返済猶予が行われるよう関係機関を指導しているところであります。
 今回の豪雪地帯における食料品、灯油等の生活必需物資については、政府においても地方公共団体との連携を密にし実情把握に努めておりますが、現在までのところ、道路交通を中心に物資の輸送が確保されているところから、総じて需要に応じた供給が確保されております。
 一方、年末以降の寒波の襲来により、一部の野菜については生育遅延等の影響を受けて価格が高騰しております。これに対しては、契約栽培に係るキャベツの放出、野菜供給安定基金が保管しているタマネギ、バレイショの放出により、価格安定対策を講じているところであります。政府としては、今後とも事態の推移を見守りつつ、必要に応じ適切な対策を講じてまいる所存であります。
 次に、福祉及び教育についての御質問についてでありますが、まず、福祉については、私は、本格的な高齢化社会にふさわしい給付の実現と負担の公平を図る必要があると考え、福祉の見直しに努めておりますが、決して財政再建の真っ先の抑制対象として福祉を取り上げているわけではありません。
 御指摘の児童手当、福祉年金等の措置と申しますのは、所得制限の適正化を講じたことを指すものと思われますが、他方において、障害福祉年金の本人所得制限の大幅緩和、原爆被爆者のうち認定患者に対する医療特別手当についての所得制限の撤廃という措置を講じておりますことも、御留意いただきたいのであります。
 福祉についての中長期実行計画を明らかにせよとの御意見でございましたが、御承知のとおり新経済社会七カ年計画では、昭和六十年度までの社会保障全体の給付及び負担の規模、年金、保健医療及び社会福祉の各部門についての具体的な施策の方向が明らかにされております。しかし、せっかくの御提案でありますので、内容にもよりますが、検討させていただきます。
 国際障害者年に当たり、障害者と老人に対する福祉政策についての一大国民運動を展開してはどうかとの御提唱がございました。
 国際障害者年推進本部の国際障害者年事業の推進方針において、全国民的な関心を盛り上げるという観点から推進を図ることとしており、その方針に沿って関係省庁において努力いたしております。
 医療と学校教育の荒廃について御指摘がございましたが、私も御指摘のとおりと考えますので、事態の改善に全力を尽くす考えでございます。
 ゆとりある教育の必要性には私も同感であります。ただ、学校教育制度の根本的改革は、事が国民の将来に深くかかわる大事な問題でありますので、十分慎重に対処していく事柄であると存じます。教育にゆとりが必要であるとの物の考え方には賛成であります。
 今日の国際関係において、いかなる国といえども世界の平和と安定なくしてみずからの安全を確保し得ないということにつきましては、佐々木委員長御指摘のとおりであります。
 わが国といたしましては、このような認識のもと、節度ある質の高い防衛力の整備、並びに防衛政策の基調たる日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に着実に努力いたしますとともに、世界の平和と安定に資するため、政治、経済両面において国力にふさわしい貢献を積極的に行ってまいる考えでございます。
 次に、西側諸国とソ連との間のいわゆるデタントの問題であります。
 デタントにつきましては、米国、西欧諸国も引き続きこれを維持していくとの考え方であり、レーガン新政権も、ソ連の対外進出及び勢力拡張の動きに対しましては強い姿勢で臨むとの考えを明らかにしながらも、他方、米ソの全面対決により核戦争の危機が増大することは避けるべきであるとの考え方を明らかにいたしております。
 日米欧諸国を中心とする自由主義諸国といたしましては、アフガニスタン問題解決を初め、東西関係改善のために、その連帯と協調を強化していくことが重要であるとの共通認識のもとに、おのおのの立場からの最善の努力を払っておるところであります。
 ポーランドの問題についてお答えいたします。
 わが国は、ポーランドの問題は、外部からの干渉によることなく、ポーランド国民自身により解決されるべきであるとの立場を一貫してとってきております。したがって、万一ポーランドに対する軍事介入が行われた場合には、わが国としてもこれを容認することはできず、その場合は、米国及び西欧諸国と緊密な連絡を保ち、これら諸国の動向に留意しながら適切な対応を行っていく所存であります。
 次に、日ソ関係についてであります。
 最近の日ソ関係の冷却化は、北方領土の軍備強化、アフガニスタンへの軍事介入など、もっぱらソ連側の行動に起因したものであり、これらのきわめて遺憾な事態に対し、わが国は、言うべきは言い、通すべき筋は通すとの一貫した態度で臨んでまいっております。
 もとより、政府は、重要な隣国のソ連との間に真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することを望んでおります。私も、ソ連との間が厳しい困難な局面にある際においても、それなりに対話が必要であるとは考えるものでありますが、そのためにも、ソ連側が主張してやまない善隣と友好を、言葉だけでなく実際の行動で示すことを強く望んでやみません。
 なお、日ソ関係は、政治、経済等の分野を含め、全体としてとらえるべきものであることについては、私も御指摘のとおりであると考えます。ただし、私は、領土問題を解決し平和条約を締結することなく日ソ関係を真に安定した基礎の上に置くことは不可能であると考えます。
 政府といたしましては、かかる認識をあらゆる機会にソ連側に伝え、北方領土返還に対するわが国民の総意を踏まえながら、息長く、粘り強く対ソ折衝を進めていく決意であります。(拍手)
 次に、対中東外交についてであります。
 わが国は、国際政治経済に占める中近東諸国の重要性、わが国との間に存在する相互依存関係等を十分考慮しながら、これら諸国の国づくりや人づくりのための経済技術協力を推進する方針であります。また、これに加え、人的、文化的交流等を通じ、彼我の間の相互理解を増進することにより、これら諸国との友好協力関係の強化を積極的に進めてきており、今後ともかかる方針を継続していく所存であります。
 なお、イラン・イラクの紛争については、イラン、イラク両国の主張、立場に依然として大きな隔たりがあるため、国連を初めとする種々の仲介努力も直ちに効果を期待し得ません。しかしながら、紛争の平和的解決のためには国際的努力の継続が不可欠であります。わが国としても、かかる国際的動きを支持しながら、両国に対し、紛争を一日も早く平和的に解決するよう強く訴えていく考えであります。
 このような私の考え方につきましては、先般来日したイラクのラマダン第一副首相に対して、私より率直に伝えた次第であります。
 次に、私のASEAN歴訪についてであります。−私は、先般ASEAN諸国を歴訪し、各国の首脳と胸襟を開いた話し合いを行い、わが国とASEAN諸国との友好協力関係のきずなは、さらに強固なものとなったと確信いたしております。
 また、その際、今後とるべき具体的措置についても種々話し合いを行いました。私は、今後はまさに佐々木委員長御指摘のとおり、約束したことは必ず実行するとの誠意を持って、これら諸国との関係発展のため努力してまいりたいと考えております。
 次に、カンボジア問題についてお答えいたします。
 私は、先般のASEAN歴訪の際、これら諸国首脳との話し合いを通じ、カンボジア問題については、国連総会の決議にのっとった国際会議による平和的解決を図るほかないという強い感触を得ました。
 わが国は、これまでも、このような国際会議開催のために国連事務総長が適切な措置をとるようASEAN諸国とともに働きかけを行っておりますが、今後とも安保理事国として、これら諸国と協調しながら、事務総長の努力に積極的に協力してまいる方針であります。
 次に、日韓関係についてであります。
 金大中氏に対して減刑の措置がとられたことは、これまでわが国として同氏の身柄について再三関心を表明した経緯に照らし、憂慮すべき事態を避けることができたという意味で、これに安堵した次第であります。
 私は、金大中氏問題がこのような結果になったことは、日韓友好協力関係の促進にも資するものと評価しており、政府といたしましては、今後とも両国関係の緊密化に努力してまいる所存でございます。
 なお、朝鮮半島の問題についてでありますが、政府は、朝鮮半島における緊張緩和が進むことを強く希望しており、そのための国際環境づくりに今後とも努力してまいる所存であります。
 政府は、韓国との友好協力関係を引き続き促進するとともに、北朝鮮とは貿易、経済、文化などの分野における交流を漸次積み重ねてまいる考えであります。
 次に、昨年秋、自由民主党と民社党との党首会談において、民社党から防衛力整備の基本的立場として、平和戦略の推進、憲法の枠内、財政事情の配慮の三点が述べられました。
 政府としては、わが国の防衛は平和憲法のもと専守防衛に徹し、決して軍事大国にならず、さらに非核三原則を国是とし、国民の理解を得ながらその整備を進めていくことを基本方針としており、基本的に共通の認識に立つものと考えております。
 次に、国防会議がシビリアンコントロールの中核として機能するよう改組強化を提言されましたが、年々の主要な整備内容については、専門的知識を持つ関係省庁から資料を求め、慎重な審議検討を進めており、シビリアンコントロールの見地から遺漏はないものと考えております。今後とも、佐々木委員長の貴重な御意見を参考にさしていただき、国防会議の運営の充実を図ってまいります。
 以上、お答えをいたしましたが、残余の点につきましては所管大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣伊東正義君登壇〕
#13
○国務大臣(伊東正義君) 総理からほとんど御答弁がございましたので、私、二点だけお答え申し上げます。
 一点は、貿易摩擦解消のための日米賢人グループから出た報告書の取り扱いをどうするんだということでございましたが、これは鈴木総理とカーター大統領に報告があったのでございますが、これは貿易摩擦回避のために非常に幅広く長期的な観点から、いろいろな有益な見解、報告が出ているわけでございまして、アメリカにおける生産性の向上あるいはインフレ防止が日米間の経済関係の改善に役立つのだというようなことやら、あるいはマクロの経済政策について、日本とアメリカの間で調整するというのではなくて緊密に協議をしろというような御意見やら、自由貿易の促進の問題あるいは日本がもっと国際的な責任をより積極的に果たすべきじゃないか、アメリカも同盟国に対してよく協議、調整をすべしというような非常に高い見地から検討された報告でございまして、日米間の経済の健全な関係を維持するという上から言いますと、非常に示唆に富んだ報告をいただいたわけでございます。この報告をいただきまして、政府としましては、可能なものから実行していこうということで総理から御指示がございました。内容を検討して早急にできるものと少し時間のかかるものといろいろあるだろう、検討せいという指示がございまして、いま政府部内で検討している段階でございまして、とれるものから実行に移していくという考え方でございます。
 それからもう一つは、日ソ科学技術交流委員会の御質問がございました。
 これは委員長も御承知のとおり、過去において五回開かれたわけでございまして、五回目は一九七八年でございます。これは民間ベースのものでございまして、日ソ経済委員会、向こう側からすればソ日経済委員会の下部組織で、従来から鉄鋼とか工作機械、農業機械あるいは電気技術等の分野で相談があって技術交流が行われておるということでございます。
 本年は第六回目が開かれる予定というふうにわれわれは了解しているわけでございまして、二月にはその予備的な話し合いが行われるということを伺っておるわけでございます。これは民間ベースのものでございまして、そういう申し出があるということをわれわれは了解しております。
 政府関係は、御承知のように新しい政府ベースの信用供与につきましては、これは西側の諸国とよく協調をとりながら、一つ一つ慎重な検討を加えながら取り扱っていくという取り扱いは従来のとおりでございますので、あわせて御報告申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣田中六助君登壇〕
#14
○国務大臣(田中六助君) 佐々木委員長にお答え申し上げます。
 総理がお答えしてない部分についてお答えいたしますが、まず第一に、日米、日欧の経済摩擦について、どういう見解を持っておるかということでございますが、御承知のように八〇年つまり昭和五十五年を試算してみますと、EC関係で帳じりが約八十八億、日本が黒字でございます。アメリカに対しましては七十億ドルの黒字でございますので、したがって、経済摩擦が起こるのは当然と言えば当然でございます。しかし、私どもの基本方針といたしましては、第一に、この経済摩擦が政治摩擦にならないように、これが第一点でございます。第二点は、大きな貿易関係になっておりますので、保護主義貿易に各国が陥らないように、むしろ拡大貿易、自由貿易の拡大へ向かうという方針を、わが政府はとっておかなくちゃなりませんので、この二点を基本方針としていかなければならない。
 そうすれば、基本方針を実現するにはどうしたらいいのかということでございますが、これは、私どもいままで輸入制限暫定品目というものがございまして、過去昭和三十一年から四百六十六品目ございましたけれども、現在二十七品目日本は残っております。しかし、その中で工業品目は五品目でございまして、フランスが二十七品目工業品目が残っております。西ドイツが十一品目、アメリカが日本より一つ多い六品目残っておりますので、そういう点におきましても、私どもは市場開放という目的は貫いておるというふうに考えております。
 また、東京ラウンドの早期実現、これは私どもが気をつけておるところでございますが、これの実現前においても、暫定ではございませんけれども、実質的な関税率を試算してみますと、日本が六・九%ですね、それからEC関係が八・八ぐらい、アメリカが九・六、九・六以上かもわかりませんけれどもまあその程度だ、そういうふうになっておりますので、市場の開放につきましては日本は率先してやっておるわけでございます。
 そのほか市場開放の例といたしましては、わが国から輸入ミッションを派遣するとか、向こう側から輸出ミッションを派遣してもらうとか、そのほか見本市あるいは展示会、そういうものをどんどんわれわれが行って、何とか市場開放の実を上げたいというふうに考えておりまして、できるだけそういう経済摩擦はそういう基本方針のもとに避けていきたいという考えでございます。
 次はエネルギーの問題でございますが、御承知のように日本は九九・八%まで石油は輸入しております。現在、エネルギーの石油に対する依存率は、総理もたびたびこの場で答えておりますように七三%ぐらいございまして、これを十年後に五〇%まで下げる、そのかわり、この代替エネルギーをどうするかという問題がございます。
 非常に机上プランだけで実質的な効果はないじゃないかと言われておりますけれども、現在の財政基盤のもとで、私どもは豊富にこのエネルギー問題に取り組んでおるというふうに断定していいんじゃないかと思いますのは、御承知のように石炭並びに石油及び石油代替エネルギーのこの特別勘定の中に、私どもは石油勘定で約三千億円、石炭勘定で千三百億円、また石油代替エネルギーの勘定の中で約千五百億円など、トータル六千七百十九億円、先年度に比べまして二〇・七%アップでございます、それほどの予算を組んでおるということは、必ずしも机上プランではないというふうに私ども断定できるんじゃないかという気持ちがしております。そのほか、新しく電源開発に関係のありますエネルギーの投資減税というものもやっておりますし、それから立地の交付金、この新しい制度なども設けて、現在の段階で万全とはいきませんけれども、それに近い対策をとっておるというふうに信じております。
 それから、いま民社党が提唱しております特定電源地域に関する特別立法ですか、その法案を何とかしたらどうかという御提案でございますけれども、私ども現在発電用周辺地域整備法というものを持っておりますし、そのほか佐々木委員長が十分御承知のように電源三法を私ども持って、それでいまのところ十分じゃないか、新しい法案をつくって、それにつきまぜることはどうかという疑問の余地を持っております。
 それから、残りは、田中構想と言っておりますが、実は私の構想でもないのでございますけれども、小規模の原子力発電所、それはどういうことかということでございますけれども、これはいま地方の時代ということになっておりまして、小型の軽水炉の発電所を設けて、自家発電あるいは地方の冷暖房などに益したらどうかという考えでございまして、この案によりまして私ども来年度予算には六千三百万円の金を計上しておりまして、二年間で二億円、これを計上して、いまフィージビリティースタディーと申しますか、構造とか内容、そういう点についての調査を十分やって、その後で実現に移したいというふうに考えております。
 それからもう一つ、いま提唱しているオイルバンクですか、フランスのジロー・エネルギー大臣が、ちょうどIEAの会議の最後の晩に私どもの晩さん会に招待しまして、その案を出されたのですけれども、私どもはその案を考えるということは非常に大切なことで、きのうのECの会議でも、このオイルバンク、これをやろうというふうに言っておりますし、十分私どももその考えは参考になるというふうに考えておりまして、十分検討の上、何らか実現ができますならばという考えを持っております。
 以上で終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(福田一君) 松本善明君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔松本善明君登壇〕
#16
○松本善明君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
 総理は、施政方針演説で、わが国の国際的地位の向上に伴う国際的責任を大いに強調をされました。そして、まず防衛問題について触れられました。総理大臣が施政方針の最初に防衛問題を取り上げたのは、戦後恐らく初めてのことだと私は思います。しかも、その際総理が「日米安全保障体制を基軸として」「質の高い防衛力の整備を図る」と述べたことは、総理の言う国際的責任の意味を浮き彫りにしたと思います。それは、対米追随姿勢による日米軍事同盟強化と軍備拡張であり、そのために国民に犠牲を負わせる大増税と福祉の切り捨てであります。これこそ今国会の、また政府予算案の最大の問題であります。
 そこで、まず第一に、日米関係と軍備増強、日本の国際的責任についての質問をいたします。
 出口のない経済危機、目を覆うばかりの地位の低下の中で、「強いアメリカ」を標榜してレーガン政権が誕生をいたしました。レーガン大統領は、その就任演説で軍事力の行使も辞さない立場を表明をし、前NATO軍司令官のヘイグ国務長官は、核兵器の使用も辞さずと発言をしております。超軍拡と軍服外交の危険な時代が始まろうとしているのであります。レーガン政権は、ソ連の脅威に対する西側全体の集団的防衛努力の強化を叫び、日本に対しても軍事力増強と日米共同作戦の強化を一層強く要求してくることは目に見えております。
 もちろん、わが党が一月十日に発表した論文で詳しく述べましたように、ソ連のアフガニスタン軍事介入は許すことのできない民族主権の侵害であり、ソ連軍は直ちに撤退をしなければなりません。しかし、アフガン問題も含めて、今日の国際緊張の根源は、軍事同盟と核軍拡の悪循環にあります。ソ連の脅威を口実にその軍事同盟を強化し、軍備拡張に拍車をかけることは、安全保障どころか、国際緊張をさらに悪化させることにほかなりません。
 総理、政府予算案は、アメリカの軍拡政策に全面的に協力をしたものであります。二兆四千億円の軍事費を計上し、その伸び率はついに社会保障費を上回りました。しかも、兵器の発注は、一兆三千五百億円も後年度にツケを回すやり方でありますから、五十七年度以降の軍事費は、毎年十数%ずつ伸びることは避けられません。
 レーガン大統領のアレン安全保障担当補佐官は、世界第一位と第二位の超経済大国、米国と日本がなすべきことはきわめて多いと、軍事費分担問題での日本への期待を表明をいたしました。GNP第二位の日本が、もしもアメリカの期待どおりNATO並み三%の軍事費を持つに至れば、まさに米ソに次ぐ超軍事大国になるのであります。政府予算案は、このようなアメリカの要求を受け入れて、大軍拡への第一歩を踏み出すものであります。
 総理は、財政危機の中で、国民の反対を押し切って本格的に軍拡に踏み出すつもりでありますか。「軍事大国とならず」という総理の演説が本当ならば、予定されている日米会談でアメリカの軍事要求を拒否すべきだと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。(拍手)
 七八年十一月の「日米防衛協力の指針」いわゆるガイ下ラインの合意、八〇年のリムパック参加と安保条約に基づく日米共同作戦体制の強化は、きわめて危険な段階に入ってまいりました。
 たとえば、政府予算案では、一機約六十億円の航空自衛隊輸送機C130Hの購入が決められております。これは、宗谷、津軽、対馬の三海峡封鎖用でもあると報道されておりますが、八一年度米国防報告では、ヨーロッパで米軍が戦闘に入った場合には三海峡を封鎖する構想が述べられております。C130Hの任務が報道のとおりであるならば、結局アメリカの国防報告の構想に沿ったものになるではありませんか。このことは、日米共同作戦体制が日本をアメリカの戦争に自動的に巻き込む段階にまで至りつつあることを如実に示しております。
 総理は、この危険をどう認識しておられますか。C130Hの用途と米国防報告に言う三海峡封鎖について、政府の態度と立場を質問をするものであります。(拍手)
 さらに、政府予算案には、六百二十億円の巨額の費用でミサイル護衛艦の建造が計上されております。これは、海上自衛隊が対潜哨戒から、いよいよ対空ミサイル戦に参加することを意味しております。
 政府は、昨年のわが党上田参議院議員に対する答弁の中で、公海上で米国の艦船を守る結果になるという場合があることを認めました。朝日新聞が報道した日米共同作戦の国会想定問答集でも、公海、公空で自衛隊が米軍艦隊を護衛できるとされ、さらに、その米艦船の核装備も予想をしているのであります。だとすれば、このミサイル護衛艦は、アメリカの核空母を守るミサイル戦に参加することが主任務の一つになるということであります。これは、総理も国是と呼ぶ非核三原則を踏みにじり、アメリカの核戦略に加担して日本国民を核戦争に巻き込む暴挙だと考えますが、総理の責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)
 これは決して仮定の問題ではなく、最近アメリカによって盛んに強調されている、中東からのオイルロード、海上輸送路の防衛分担問題に関連をしております。こうした問題を対米追随の軍事問題として接近しようとする角度と姿勢そのものが、中東問題の平和的解決を危うくする要因なのであります。この問題では、大国の介入、特に軍事介入を防ぐ積極的な平和外交、民族自決権尊重外交の努力こそ大切だと考えますが、あわせて総理の答弁を求めます。(拍手)
 鈴木内閣の危険な外交姿勢が生み出すものを鮮烈に示したのが、金大中氏問題をめぐる対韓外交であります。
 総理は昨日、金大中氏の減刑を評価し、それ以上言及しないと述べ、施政方針では、全斗煥政権との円滑な関係の発展を希望すると述べました。総理は、金大中氏が日本での行動が問われて無期懲役という重刑になったことを不当とは全く思わないのでありますか。金大中氏が、わが国の主権を侵害してKCIAに不当に拉致されてから、二度の政治決着が行われ、その人権は侵害されたままであります。いままた、この重刑に抗議せず、判決文さえ手に入れずにこれを容認することは、わが国の主権や人権よりも、人権を抑圧する全斗換政権との友好関係や、米日韓の軍事同盟関係の発展を優先させているとしか考えられません。(拍手)明確な答弁を要求するものであります。
 総理、ことしは中国侵略開始五十周年、対米英開戦の四十周年であります。日本の国際責任を言うのなら、アジアの諸国民に甚大な損害を与えた国として、また世界唯一の被爆国、平和憲法と非核三原則を持つ国として、軍事同盟強化や軍備拡張ではなく、核兵器全面禁止と軍縮の先頭に立つべきではありませんか。(拍手)私は、この点で、日米安保条約のもとでの日本の軍事力増強は、通常軍備ではあっても、アメリカの核軍拡と核戦略の一翼を担うものであることを強く指摘しなければなりません。
 最近、核戦争の危険の増大が各方面から警告されております。特に昨年九月、ワルトハイム国連事務総長が国連総会に提出した核兵器に関する研究報告は傾聴に値します。それは、ミサイル技術の発展によって、ICBMを先に発射して相手方のすべてのICBM基地を破壊をする第一撃戦略が可能になったことや、ミスや事故による核戦争の危険が増大したことなどを指摘をしております。昨年のアメリカのコンピューターミスについて、イギリスの下院は、米国は四日間に二回も全人類を核兵器による絶滅の瀬戸際に追い込んだと警告したほどであります。いまこそ、一九七八年の国連軍縮特別総会で満場一致で採択された最終文書に従い、国際社会が当面する最も緊急の任務として、軍縮、特に核軍縮に取り組まなければなりません。
 総理、唯一の被爆国日本の国際的責任として、軍拡ではなく軍縮を、核軍拡への加担ではなく非核三原則の国際化、核兵器全面禁止の国際協定締結を世界に呼びかける意思は全くありませんか。(拍手)
 伊東外務大臣にも質問をいたします。
 あなたは外交演説で、「核軍縮を中心とする軍縮の促進のために一層大きな役割りを果たしてまいる決意」を述べられました。それでは、いま鈴木内閣が進めているのは一体軍拡なのでありますか、軍縮なのでありますか、外務大臣としての評価と判断をお聞きした上で、さらに、もしお持ち合わせがあるならば、軍縮決意の具体的な内容をお聞きしたいと思うのであります。(拍手)
 関連して、被爆者援護法の問題について質問をいたします。
 昨年末、原爆被爆者対策基本問題懇談会が答申を出しました。驚くべきことに、それは、戦争終結の直接的契機となったとして、国際法違反の戦争犯罪であるアメリカの原爆投下を弁護し、原爆被害は国民がひとしく受忍しなければならない戦争の犠牲であるなどと述べて、世論の厳しい批判を浴びたのであります。総理はこの見解を肯定するのかどうか。また、国家補償の原則に基づく被爆者援護法の制定は日本国民の国民的課題となっていると思いますが、総理の見解を求めるものであります。(拍手)
 いま一つ指摘をしておきたいことは、以上のような安保強化と軍事費の拡大が、国民の生活と福祉向上とは決して両立しないということであります。
 軍事費は七・六%、千七百億円増額されました。しかし、これだけあれば、たとえば身近な福祉年金で見ますと、老齢福祉年金を政府案より六千円ふやして三万円、障害福祉年金を一級で四千円上げて四万円、二級を六千円上げて三万円にすることができます。ツケとして残される一兆三千五百億円の後年度負担を国民本位に振り向ければ、さらに大きなことができることは明らかであります。総理、どちらを選ぶのか、はっきりお答えいただきたいと思います。(拍手)
 園田厚生大臣は、昨年、「四方の海みなやすかれと祈り行動することが外相の仕事のはずだ、それを大砲買え、飛行機買えとあおっている」と外務大臣を批判し、記録に残る発言をしたいと述べました。
 そこで、国民福祉に責任を持つ厚生大臣には、その批判の真意と、アメリカからの要求、軍事費と社会保障費との関係などについて。また、公然と批判された伊東外務大臣には、記録に残すに足る弁明と反論、そして総理には、両大臣の閣内不統一について、それぞれ答弁を求めたいと思います。(拍手)
 第二に、憲法問題について質問をいたします。
 レーガン大統領の側近ミッデンドーフ元海軍長官は、第二回安保セミナーの議題として、安保再改定と日本国憲法の改定を提案をしています。この会議は、アメリカ上院で、日米両国が二十一世紀に向けて進むべき青写真を提供するものと報告をされております。
 そこで、私は総理に、「二十一世紀への足固め」とあなたの言う八〇年代に、自民党政府として、絶対に安保条約の双務的攻守同盟への改定と、それに伴う憲法の改定は行わないと言い切れるかどうか、改めて質問をしたいと思います。(拍手)
 憲法の条文改悪のキャンペーンとともに、解釈の改悪による憲法じゅうりんが進んでおります。特に、この国会で公表されると言われる有事立法中間報告は、きわめて重大であります。
 報道によりますと、その内容は、自衛隊法百三条の土地、家屋の収用、医療、土木建築、運輸関係従事者への協力命令を罰則つきで強制する、しかも防衛出動下令前の、つまり防衛庁長官だけの判断で出せる待機命令のときから適用できるようにすることなどが含まれております。これは文字どおり戦時立法で、憲法九条、十八条を侵害した、戦時徴用令、徴発令、国家総動員法の復活に通ずるものであります。(拍手)このようなものを本気で作成中なのか、総理の責任を問うものであります。(拍手)
 第三に、経済、国民生活の問題について質問をいたします。
 総理は施政方針演説で、わが国の経済は「安定と繁栄を見るに至った」と述べましたが、賃上げの抑え込みと物価の上昇によって、昨年の勤労者の実質所得は前年を下回りました。これは統計始まって以来の異常な事態であります。しかも、四年連続の減税見送りによる実質増税で急激にふえた税金と、相次いで値上げされた健康保険料、年金保険料が給料から天引きされ、可処分所得、すなわち手取り収入はますます小さくなっております。さらに、公共料金の軒並み値上げ、のしかかる住宅ローンのために、無理に無理を重ねる夫の健康を気遣いながら、奥さんがパートに出てようやくやりくりする、これがわが国の勤労者の平均家庭の火の車の実態なのであります。(拍手)
 農業も同様であります。低い米価と大幅減反の上に、一粒の米もとれないという農家も続出する戦後最大級の冷害で、実質農業所得は二年連続して前の年を下回りました。
 こうした国民の実収入の低下と、それによる個人消費の落ち込みは、日本経済全体を停滞させ、とりわけ中小企業の倒産を招く最大の原因となっております。月千件以上の倒産が連続六十四カ月も続き、昨年一年間では一万七千八百件、史上第二位という暗い記録をつくったのであります。
 ところが、これとは対照的に、大企業は昨年九月期の中間決算で三月期に比べて六割も利益を伸ばし、あの狂乱物価、悪徳商法でぼろもうけをした七三年九月期を五割も上回る空前の大もうけとなったのであります。
 大企業の繁栄と国民生活の困難、総理は、この不況の二重構造を一体どのように受けとめておられますか。あなたが経済を見る尺度は、国民の暮らしでありますか、それとも大企業のもうけでありますか、はっきりお答えいただきたいと思うのであります。(拍手)
 いま政治が果たすべき最大の任務は、国民生活の防衛のはずであります。国民生活をますます苦境に追い込む政府予算案では、経済の停滞を長引かせるだけではなく、税収の伸び悩みを招き、財政再建の土台を掘り崩すだけではありませんか。総理の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 国民生活を防衛するために特に緊急を要する八つの点について質問をいたします。
 一番目に、大増税計画を撤回をし、四人家族で三万円、総額六千億円の所得税減税を実行することを要求いたします。
 総理は、昨日、日本の課税最低限は主要国の中で最も高いと述べましたが、実際の購買力で見るならば逆に最も低いのであります。だからこそ減税なしの事実上の増税は、もはや耐えがたいものになっているのであります。大型消費税を導入するなど言語道断の暴政であります。
 総理、一般消費税型新税である、中期税制答申で言っている課税ベースの広い間接税なるものの導入は、いかなる名目でもしないということを約束することができますか。昨日は、導入するともしないとも明言をしておりませんが、きょうは、はっきり答弁をしていただきたいと思います。(拍手)
 二番目は、物価対策を経済政策の基礎に据えることであります。
 昨年春以来の大幅値上げによって、電力、ガス業界は今年度上期だけで五千億円以上、同じく石油業界は六倍増の約二千三百億円という膨大な利益を上げております。値上げが不当であったことは明白であります。このような大企業の不当価格にメスを入れ、電気事業法第二十三条の発動など、価格引き下げのための具体的措置をとり、一層客離れを招くだけの国鉄運賃一〇%値上げの中止をすべきではありませんか。
 第三に、欧米の年金水準は、購買力平価で見ますと、どの国も十万円台であるにもかかわらず、わが国では受給者の七割までが二万円台にすぎません。老齢福祉年金をせめて月額三万円に引き上げるなど、老後の暮らしを保障する総合対策を確立することを求めます。
 ことしは国連の決定による国際障害者年でありますが、これを契機に、障害者の医療、教育、福祉、雇用、社会生活のすべての分野にわたる財源の裏づけのある障害者対策特別措置法を制定すべきでありますが、総理の見解を伺いたいと思います。(拍手)
 第四に、雇用を拡大し、百万人台を大きく超える失業者の生活を保障する総合計画を立てなければなりません。とりわけ、総理は、「高齢者の就労の機会の確保に配慮する」と述べましたが、それならば、失業対策事業の打ち切りをやめ、国の責任で二十万人の規模で再確立するべきであります。また、西ドイツより三カ月分も多い労働時間を短縮し、民間雇用を拡大することが重要であります。婦人差別撤廃条約のためにも、男女雇用平等法を速やかに制定すべきであります。本日、その制定について発言をされましたけれども、いつごろまでにされるか、時期のめどまで含めて答弁を求めるものであります。(拍手)
 第五に、大企業向けの開発銀行、輸出入銀行の金利より一%以上も高い政府系中小企業三金融機関の金利を引き下げるべきであります。また、国などの官公需の中小企業発注比率を、現在の三六%から五〇%以上に高め、仕事を保障しなければなりません。
 第六に、強制減反の拡大と農産物輸入自由化政策をやめるとともに、安心して転作に取り組めるよう、主要な農産物に米並みの価格保障制度を確立することが必要であります。
 第七は、住宅対策でありますが、住宅困窮世帯は一千万に上っているにもかかわらず、政府はまたもや公営、公団の住宅建設を一万七千戸も削減をいたしました。来年度は少なくとも二万戸を追加すべきであります。
 第八に、死者七十余名を数えるに至った深刻な豪雪被害に対し、政府の対策はまだまだ不十分であります。除雪、排雪のための緊急交付金を初め、一層の改善を求めるものであります。(拍手)
 以上、具体的にお答えいただきたいと思います。
 総理、私の述べたいまの八点をすべて実行しても、約二兆円程度で済むことであります。わが党は、すでに財源対策を含めた詳細な財政政策「国民のための財政百科」を発表しておりますが、さしあたり必要なことは次の三つであります。
 その一つは、軍事費の大幅削減であります。新しい兵器の発注や、米軍地位協定上も義務のない米軍駐留費の不当な分担のための予算を全額削るのはもちろん、これまでに発注した疑惑がらみのP3C対潜哨戒機、F15戦闘機などの契約を解除し、装備費を中心として少なくとも七千億円程度の軍事費削減を行うべきであります。(拍手)伊東外務大臣は軍縮の決意を述べたのでありますから、当然実行できるはずであります。総理と外務大臣の答弁をお願いをします。(拍手)
 二つ目は、その他の不要不急経費の徹底削減であります。電子計算機メーカーやアメリカの石油メジャー、イギリスのジェットエンジンメーカーを初めとする内外の大企業に対する補助金を廃止をするとともに、環境破壊を進め、大企業を潤す関西新空港、大規模工業基地造成、本四架橋三本同時進行などの大型プロジェクトを大幅に縮小すべきであります。
 また、国民へのサービス行政を切り捨てる仕事減らしの行政改革ではなく、不正、腐敗を根絶する民主的な行政改革を進めることも重要であります。(拍手)その前提として情報公開法を制定し、行政の実態を国民の前に明らかにすることについて、総理の答弁を要求をいたします。(拍手)
 三つ目は税制であります。不公平は是正したと政府は言っておるのでありますが、その根幹が手つかずのまま残っている不公平税制の改革が重要であります。これを実行しますならば、三兆円を超える税収を得られることは確実であります。一例を挙げますならば、大企業は額面をはるかに上回る時価で株式を発行し、トヨタ自動車一社だけでも三百五十億円に上る膨大な差益を手に入れて、税金は一円も払っていないのであります。
 租税特別措置法の小手先の手直しではなく、法人税法本法に含まれるさまざまな優遇措置を抜本的に改めるかどうか、財政政策について総理と大蔵大臣の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 総理、いま政府の軍拡、大増税予算を厳しく糾弾をし、軍事費を削り、暮らしと福祉、教育の充実を求める国民の声はますます大きくなってきております。私は、この国民の要望に基づいて、来年度予算の根本的組み替えを要求し、総理の答弁を求めるものであります。(拍手)
 第四に、政治倫理、選挙制度など、民主主義にかかわる問題について質問をいたします。
 昨年の所信表明で、総理は「政治倫理の確立」を三つの緊急課題の第一に挙げておりました。ところが、今回はお添え物のように倫理委員会の設置が二行触れられただけであります。しかも、衆議院に続いて、参議院の航空機輸入調査特別委員会を自民党は廃止しようとしております。松野偽証告発を初め、問題の山積している航空特を廃止して何が政治倫理委員会でありますか。(拍手)
 このような政治倫理の喪失の背景には、いわゆる田中復権という政治現象が横たわっております。ロッキード公判で五億円授受のいきさつが次々と明らかになったことによって、刑事被告人田中角榮の有罪の見通しはますます濃くなっております。ところが、奇怪なことに、百名を超す田中派の勢力拡大、現職閣僚を含む目白もうで、離党したはずの田中自身の公的な政治的登場と政治的発言などなど、与党である自民党内部での田中復権現象は、いまや黙視できないところまで拡大してまいりました。
 一国の首相でありながら外国航空機会社から五億円を収賄した疑惑で逮捕され、公判進行中の刑事被告人が、公然と政治的に復活をし、日本の政治に影響力を行使している事態の恥ずべき異常さを、総理はどう受けとめているのでありますか。(拍手)これは検察官や裁判官に何の影響もないと思っているのでありますか。そのような政治に対して国民的信頼がどうして集まるでありましょうか。(拍手)日本の政治倫理の根本問題として、総理の率直な答弁を求めるものであります。(拍手)
 最後に、選挙制度について質問をいたします。
 東京高裁で、一票の格差が一対二を超える場合は違憲という判断が示され、定数是正はますます広範な国民の世論になりました。総理は、施政方針でこの緊急な問題について一言も触れず、自民党の提案している公職選挙法改悪を早期に行いたいと述べたのであります。これは、選挙という政治活動や言論の自由が最も保障されなければならないときに、政党や団体の機関紙宣伝カーやハンドマイク、看板やステッカーを禁止、制限するという、いわば国民の目、耳、口をふさぐような大改悪であります。(拍手)戸別訪問の自由化は世界の大勢であり、昨年、広島高裁の判決でも、その禁止が違憲とされたところでありますが、今回の改悪はこのような傾向にも逆行するものであります。
 総理、このような党利党略をやめ、定数是正のための自民党の具体案を持って、各党の協議を直ちに始めるべきではありませんか。昨日より一歩進んだ答弁を要求をいたします。(拍手)
 先ごろ、自民党の後藤田選挙制度調査会長代行は、格差を一対二にしようとするならば、選挙区制そのものを再検討しなければならなくなるとNHK討論会で述べて、小選挙区制導入の意図を示しました。これは定数是正の世論を逆手にとり、国民の反対を抑えて、安保強化、軍拡、大増税という反動的、反国民的政策を遂行するのに必要な自民党独裁体制をつくろうとするものであって、断じて許すことはできません。(拍手)
 私は、日本の議会制民主主義の根本にかかわるこの問題についての総理の見解を求め、独立と平和、民主主義と国民生活を守るために全力を尽くす日本共産党のかたい決意を表明をして、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#17
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 松本君の御質問にお答えいたします。
 レーガン政権の外交、国防政策につきましては、新政権の基本政策の表明等を見守った上で判断することになりましょうが、いずれにせよ、わが国の防衛努力は、憲法、専守防衛といった基本的な枠組みの中で国民のコンセンサスを得つつ、あくまでわが国自身の自主的判断に基づいて決定される問題であり、この点、レーガン政権も十分承知しているものと考えます。
 来年度防衛予算政府原案も、このような考え方のもとで、わが国自身の自主的判断に基づき、わが国の防衛力の整備を進める上で必要かつ最善のものとして決定されたものでありまして、大軍拡の第一歩といった表現は、いたずらに国民に誤解を与えるものであり、まことに心外であります。(拍手)
 次に、C130H輸送機についてお尋ねでありますが、C130の整備は航空輸送力を増強することを目的としているものであります。
 また、八一年度米国防報告において、わが国周辺の海峡封鎖についての記述があるのは御指摘のとおりでありますが、これは米海軍等の能力を一般的に説明している中で行われたものであると承知しております。
 ミサイル護衛艦がアメリカの核空母を守るとのお話がありましたが、ミサイル護衛艦は、海上自衛隊の艦艇を空からの攻撃から守るための中心となる護衛艦として建造しているものであります。
 ミサイル護衛艦は、わが国に対する武力攻撃が発生し、日米安保条約が発動された場合には、米艦艇と共同して対処することもあり得ると考えられますが、これはあくまでわが国を防衛するため必要な限度において行動するものであって、もっぱら米艦艇を守ることのみを目的として行動するものでないことをはっきりと申し上げておきます。(拍手)
 いずれにせよ、わが国としては、米国との間で海上輸送路防衛の分担といったことなど考えておらず、海上交通路の安全確保の問題については、平素より関係国との友好協力関係を増進することにより、円滑な海上航行を確保すべく努力してまいる所存であります。
 ただし、わが国が武力攻撃を受けた場合においては、従来からも申し上げているとおり、自衛隊が憲法の枠内において行動し、周辺海域における船舶の保護に努めることは当然であります。
 金大中氏の裁判の問題は、基本的に韓国の国内問題であります。
 なお、先般の金大中氏に対する減刑措置については、政府は、日韓関係の促進に資するものと評価しており、今後とも円滑な日韓関係の維持に努めてまいる所存であります。
 軍縮問題につきましては、核軍縮を中心として、現下の国際情勢において実行可能な具体的措置を一つ一つ積み重ねてまいります。園田外相当時、国連総会で核軍縮を含む軍縮に関する演説を行い、非常な感銘を与えたことは記憶に新しいところであります。今後引き続き、私どもは、この軍縮を国際社会において訴えてまいる所存でございます。
 特に、独自の政策として非核三原則を堅持しているわが国といたしましては、このような基本的姿勢に基づき、まず核兵器の生産、開発の歯どめとなる包括的核実験禁止条約の早期実現に努力してまいる考えであります。
 原爆被爆者対策基本問題懇談会の答申について、私の考えをお尋ねでありましたが、基本懇の意見は、原爆投下を弁護するものではなく、また、原爆被爆者の犠牲は、国民がひとしく受忍しなければならない一般の犠牲とは異なる特別の犠牲として、適切妥当な措置を講ずべきものであるとしているものと理解しております。
 政府は、従来から、原爆医療法及び原爆特別措置法を制定し、被爆者対策を推進してまいりましたが、弔慰金及び遺族年金の支給を内容とする被爆者援護法を制定することは、基本懇の意見において、一般戦災者との均衡上、国民的合意を得ることはむずかしいとされており、政府としても、この点同様に考えております。
 防衛関係費の拡大と、福祉の向上は両立しないとの御意見でありますが、五十六年度予算では、国債費と地方交付税を除く一般歳出の増加額約一兆三千億のほぼ半分を社会保障予算の増加に充てております。また、内容的にも、社会的、経済的に弱い立場にある人々について、重点的かつ着実に福祉の充実を図っておりますので、御批判は当たらないのではないでしょうか。(拍手)
 また、園田厚生大臣が、予算編成に関し伊東外務大臣を批判したから閣内不統一ではないかとのことでありますが、両大臣とも来年度予算の政府原案に賛成しているのでありますから、閣内不統一ということはございません。(拍手)
 なお、日米安保条約につきましては、従来私からも繰り返し申し上げておるとおり、政府はいかなる意味においても安保条約の改正といったことは考えておりません。また、憲法の改正も考えておりません。
 次に、有事立法について御意見がありましたが、防衛庁で検討を行っている有事法制の研究については、中間報告をする内容がまとまったという報告は受けておりません。
 なお、この研究は現行憲法の範囲内で行うものであり、旧憲法下の国家総動員法等の復活を検討しているものでないことは申し上げるまでもございません。
 家計の実質所得の落ち込みが不況の二重構造をつくり出しているとの御指摘ですが、家計の実質所得低下の主因は、結局のところ原油価格の大幅上昇による消費者物価の上昇にあると思います。最近の消費者物価は幸いにして安定化の傾向にありますので、この傾向をさらに確実にすることにより景気の着実な拡大、雇用の安定を図るよう努めてまいります。
 来年度予算においては、財政の現状に顧み、歳出面における思い切った節減、合理化と歳入面における徹底した見直しを行っているのは御承知のとおりであります。
 一方、来年度のわが国経済をめぐる内外の環境を見ると、国内経済の分野では第二次石油危機の影響が次第に吸収され、また、世界経済の動向についても多くの先進諸国が年後半から景気の立ち直りが予想されるなど明るさが増すと期待されますので、とのような予算を前提とした上で、国内民間需要を中心に五・三%程度の成長を達成できるものと考えております。また、税収についても、こうした経済の動向に見合って相応の伸びが見込まれるところであります。したがって、来年度の予算が財政再建の土台を崩すとの御指摘は当たらないものと考えます。
 増税を撤回し、六千億円の所得税減税を行えとの御意見でありますが、財政の現状から見ていずれも困難であります。
 また、税制調査会の中期税制答申に言う課税ベースの広い間接税の導入をやめよとの御意見でありますが、政府としては、今後の税制のあり方について、今国会における御議論などを踏まえながら、今後幅広い観点から検討してまいりたいと考えております。
 昨年の電気、ガス料金の改定に際しましては、物価、国民生活への影響を十分考慮しながら、経営の徹底した合理化を前提として、原価主義に基づき厳正かつ慎重に査定し認可したところでありまして、不当なものではございません。
 電力会社、ガス会社の中間決算は好調でしたが、これは円高や豊水等の特殊要因を主因とするもので、今後については、OPECの石油値上げの影響なだ不透明な要因も多い状況となっております。したがって、今後の電気、ガス料金につきましては、収支の状況、為替相場の動きなどの要因を十分踏まえつつ、現行料金をできるだけ長く維持し、料金の安定に努めるべきものと考えております。
 国鉄運賃値上げについてでありますが、国鉄の経営状態は依然危機的状態にあり、来年度国鉄予算政府原案では、徹底した経費の節減を行うとともに、約七千三百億円の政府助成を行うことといたしましたが、なお大幅な欠損を避けることができず、利用者にもある程度の負担を求めざるを得ないと考え、約二千億円の運賃改定増収を見込むこととしたところでありますので、御理解を願いたいのであります。
 老齢福祉年金を月額三万円に引き上げよとの御意見でありましたが、五十六年度において二万四千円に引き上げることとしており、これ以上の引き上げは考えておりません。
 老後の暮らしを保障する総合対策を立てよとの御説については、世界に例を見ないスピードで到来しつつある高齢化社会への対応という広い視野から適切に諸般の施策を講じてまいる方が適当ではないかと考えております。
 心身障害者に関する施策の基本的事項及び総合的推進につきましては、すでに心身障害者対策基本法が制定されておりますので、御指摘のような特別措置法を制定する考えはございません。
 労働問題についての御質問でありますが、まず、現行失業対策事業は基本的には終息を図るべき段階にありますが、就労者の実情等にかんがみ、労働政策としての事業として、なお暫定的に継続することもやむを得ないと存じます。しかし、今後の雇用・失業対策は民間企業への雇用促進を基本とすべきで、失対事業のような方式はとるべきでないと考えております。
 労働時間短縮については、積極的に行政指導の推進に努めます。
 婦人差別撤廃条約については、現在関係省庁において国内法制との整合性も含め検討を行っているところであります。
 男女雇用平等法については、審議会の審議結果を待って検討してまいります。
 政府系中小企業金融機関の貸出基準金利につきましては、原則として民間の長期プライムレートと同率として中小企業の金利負担の軽減を図ってきているところであり、さらに公害、産業安全のように特定の政策目的に沿った特別貸し付けについては、基準金利を下回る低利の貸し付けを行っております。今後とも、この考え方に沿って政府系中小企業金融機関の金利を適切な水準に保ち、中小企業の経営の安定に十分配慮してまいります。
 官公需の中小企業向け発注比率についてでありますが、これは、官公需の内容、中小企業者の受注能力等にも深くかかわり合うものでありまして、直ちにこれを五〇%とすることは困難でございます。
 強制減反、農産物輸入自由化をやめ、主要農産物に米並みの価格保障制度を確立せよとの御提言でありますが、需要の動向に応じた農業生産の再編成の重要性、食糧の安全な確保、財政負担等々から考えまして、私には現実性の薄い御提言のように思われます。(拍手)
 公営、公団住宅を二万戸追加せよということでありますが、昭和五十六年度においては、事業実施状況、地方公共団体の要望等を踏まえて、現在策定作業中である第四期住宅建設五カ年計画の初年度として必要な戸数を確保したものであります。
 次に、豪雪対策についてでありますが、この冬の豪雪に対処するため、政府としては、豪雪対策本部を設置し、除雪の推進、生活物資の確保等の措置を講じており、また除雪費の増高等に対しても適切な財政措置を講じてまいる所存であります。
 次に、軍事費の削減の提案でありましたが、防衛関係予算については、従来から「国防の基本方針」及び「防衛計画の大綱」に基づき、真に必要な経費に限って予算計上しているものであり、これを削減する考えはありません。
 大企業に対する補助金の廃止、大型プロジェクトの縮小との御意見でありましたが、五十六年度予算においては、交付先のいかんを問わず、すべての補助金等について見直しを進め、積極的に廃止、減額等の整理合理化を推進したところであります。また、いわゆる大型プロジェクトについても、厳しい財政事情にかんがみ、極力抑制を図ったところであります。
 民主的行政改革を進めよとのことでありましたが、行政改革は国民がひとしく求めている緊要の課題でありますので、積極的に取り組んでまいります。
 情報公開法の問題につきましては、公務員の守秘義務やプライバシー保護との調整など関係する分野が広く、また、外国法制の運用の実態等も見きわめる必要がありますので、今後、各界各層の意見をも参考として、幅広く慎重にこの問題に対処してまいる所存であります。
 租税特別措置の整理合理化は、昭和五十一年来精力的に推進し、一応一段落したところでありますが、今後とも実態に即した見直しを行う必要があると考えており、五十六年度の税制改正においても、その整理合理化を図ることとしております。
 株式の時価発行に伴うプレミアムは資本そのものでありますので、これに対する課税は、所得ではなく資本に対する課税となり、適当でないと存じます。
 予算組み替えの要求がありましたが、政府としては、現に御審議いただいている五十六年度予算が最善のものと考え御提案いたしたところであり、各党の御理解をいただけるものと確信をいたします。
 次に、航特委の廃止について御意見がありましたが、いわゆる航空機輸入に関連して指摘された疑惑に関しては、すでに司法当局において解明が終わり、航特委の任務が終了したものと承っております。この問題で後退したかのような発言がありましたが、そのようなことは全くありません。
 次に、現在御審議願っておる公職選挙法の改正案は、選挙における騒音公害、立て札、看板のはんらん等の問題に対処し、選挙の公正の確保と金のかからない選挙の実現に資しようとする立場から提案されているものであり、速やかに各党各会派の合意が得られるよう念願をいたします。(拍手)
 なお、定数問題については、選挙の基本的なルールづくりの問題として各党各会派の間で論議を尽くしていただきたいと存じます。
 以上、お答えいたしましたが、残余の点については、所管大臣から答弁をさせます。(拍手)
    〔国務大臣伊東正義君登壇〕
#18
○国務大臣(伊東正義君) お答え申し上げます。
 私には三つございまして、いまの防衛予算についての評価の問題と軍縮決意の具体的内容いかん、これが第一番目でございます。
 防衛予算の評価につきましては、総理大臣から明快な御答弁がございましたので、私は全然一緒でございますので、答弁省略いたします。(拍手)
 軍縮決意の具体的内容でございますが、世界の平和と安定にとって軍縮、軍備管理面での国際的努力が不可欠であり、わが国としては、今後とも核軍縮を中心とする軍縮の促進を強く訴えていく所存であります。
 このような基本的姿勢に基づいて、わが国は、明年開催予定の第二回国連軍縮特別会議の準備委員会に副議長国の一つとして参加する等、軍縮の促進に積極的に貢献してまいる所存でございます。
 なお、軍縮決議を手元に持っておるかということでございましたが、きょうは持ち合わせございませんので、予算委員会等適当な委員会、適当な場所でお答え申し上げます。
 もう一つ、二番目は、外務大臣の防衛予算の発言について外務大臣の弁明を聞きたい、こういうことでございます。
 お答え申し上げます。外務大臣としては、わが国の外交の基本は平和外交にあるとの観点に立ち、従来より平和外交を何よりも優先させてきております。わが国の防衛努力の問題については、これをわが国が自主的に行うべきことは当然のことでございまして、私はまさに、このような考え方を内外で何度も表明してきたつもりでございます。
 さらに、わが国の安全保障の根幹は、わが国の自衛力とともに日米安保体制にあることは御承知のとおりであります。日米安保体制の効果的な運用のためには、日米両国の信頼関係の維持発展ということが基礎であると確信をしております。こうした日米の信頼関係の維持発展を重視し、私は、外務大臣として国の防衛の問題に関心を示し、意見を申し述べた次第でございます。
 以上でございます。(拍手)
 最後は、七千億円程度の軍事費削減を要求するが、軍縮の決意を表明した外務大臣は、これに対してどう思うかという御質問でございますが、予算削減の問題につきましては、総理からこれも明快に御答弁がございましたので私は繰り返しませんが、現段階で提出しました予算は最善のものでございますので、私はそういう考えでございます。
 もとより、わが国の安全は、防衛面での努力のみではなくて、平和で安定した国除環境をつくり出すために、外交を初めとする各般の努力を通じて総合的にこれは確保されなければならないと思うわけでございます。
 外交演説におきまして、かかる努力の一環として、わが国の平和国家としての独自の立場から「核軍縮を中心とする軍縮の促進のために一層大きな役割りを果たしてまいりたい」と決意を申し上げた次第でございます。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#19
○国務大臣(渡辺美智雄君) 簡単にやらしていただきます。
 大体、大蔵省関係のことも総理大臣が逐一答えてありますので、特別に追加するようなものもありません。
 ただ、問題は、非常に非現実的で、とても実行不可能なようなものが多いということであります。(拍手)たとえばプレミアムの問題にしても、プレミアムの課税は、自分の資本に課税しろというお話でございまして、残念ながら、私の知っている限り、アメリカもイギリスもドイツもフランスも、どこでも実行はいたしておりません。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣園田直君登壇〕
#20
○国務大臣(園田直君) 私が外務大臣を批判したというのは、やや事実と違っております。
 予算編成に関し、同僚として心配を込め、注意を加えてお願いを二、三しただけであります。これに対して外務大臣は、心の広い、私よりも偉い方でありますから、よく注意しよう、こういうことであります。
 そもそも、閣内で激しく議論をし激しく団結するのは、現代内閣の特質であると考えております。(拍手)私と外務大臣は、そのようなことを平気で言い合えるほど親密でありまして、閣内不統一などは断じてございません。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○副議長(岡田春夫君) 田川誠一君。
    〔田川誠一君登壇〕
#22
○田川誠一君 私は、新自由クラブを代表して、施政方針について、鈴木総理大臣に対して数点にしぼり質問をいたします。
 質問に先立って、私は、鈴木総理大臣が年頭早々東南アジア諸国連合の五カ国を歴訪されたことに対して、その労をねぎらうものであります。
 総理が、就任後初の公式訪問先に東南アジア諸国連合を選んだことは、アジアに位置する日本のアジア重視のあらわれとして、東南アジア諸国連合の五カ国から歓迎されました。われわれ新自由クラブもこの点を評価いたします。
 しかし、問題は、こうした形だけではないのであります。政権担当後初の訪問外交の対象にアジア諸国を選んだという形は、昭和三十二年の岸内閣も同じでありました。このときもアジア重視の姿勢を宣伝されましたが、結果的にそれは、対米一辺倒の印象をぼかすためとか、あるいは日米会談への前座であるとか批判され、アジア諸国の反応も決して芳しいものではなかったのであります。
 日本のこれまでの訪問外交の跡を振り返ってみますと、そのときその場の形や口先だけの約束事が、後に抜きがたい不信の種となった事例が山積していると言っても過言ではありません。
 総理は、施政演説でも、今回の五カ国歴訪について各国首脳との対話の実りを強調されましたが、成果も実りも、実は今後の鈴木内閣の対応にこそかかっているのではないでしょうか。(拍手)
 今回の歴訪を真に実り多いものとするためにも、アジアの友人たちとの話し合いを基礎に、ぜひともアジアの心を心とした外交、平和に徹し、平和を守ることに徹した外交、約束したことは必ず実行していく外交を鈴木政権が積極的に展開していくことを、ここに強く要望するものであります。(拍手)
 形を裏づける誠意、約束したことは必ず実行していく不断の努力が何よりも重要であることは、内政、外交を問わず、国政を預かる者の当然の責務であります。鈴木政権の誕生から六カ月を見まして、残念ながら、鈴木政治への不安と不信を持たざるを得ません。
 あれほど強調された「政治倫理の確立」はどうなりましたか。一年前に国民に向かって宣言された派閥解消は一体どうなったでしょうか。衆議院で航空機疑惑等特別委員会を廃止したり、派閥活動を公然強化している実態を見れば、言行不一致の政治姿勢は余りにも露骨であります。
 さらに、安易な増税はしないという再三の言明とはうらはらに、五十六年度政府予算案は、行政改革にも手をつけず、まさに低所得者層を初め、弱いところに負担を強化する安易な増税案そのものではありませんか。(拍手)総理のこれに対する考えをお聞きしたい。
 鈴木内閣発足以来の憲法論議の動向も、総理の政治理念に深い疑惑を抱かざるを得ないのであります。
 いまの憲法改正論議を見ますと、二つの動きが見られます。一つは、第九条を改正し、なし崩しに軍事大国の道を開こうとする勢力であり、もう一つは、憲法擁護を当面の政略に使いながら、革命を成就した暁は社会主義憲法の制定を目指す勢力であります。
 私たち新自由クラブは、このいずれにも反対であります。私たちは、平和憲法の理念を生かして、世界の平和と繁栄に貢献するとともに、現行自由主義憲法のもとで社会的公正を実現し、真に民主的な自由主義社会の発展を期し得るものと考えています。
 憲法は、もちろんいわゆる不磨の大典ではありません。改正を論ずることさえまかりならぬというような硬直的なものであってはならないと思います。その意味で、私たちは、むしろ日本国憲法について国民が大いに議論し真剣に考えるべきものとしております。
 しかしながら、鈴木内閣発足直後から政府部内で口火を切る形となった今日の憲法論議は、あらゆる点で納得しかねるものが多過ぎるのであります。
 先ほどの民社党の佐々木委員長に対する答弁を聞いていましても、どうも不明であります。総理としての考え方はわかりましたが、それでは、あなたの率いる自由民主党の政綱は憲法改正を志向していないのかどうか。先ほどの佐々木委員長への答弁を聞いておりますと、自民党の政綱でさえも改正を志向していないように受け取られてなりません。
 しかし、自民党の政綱を見ますと、第六に「独立体制の整備」としてありまして、その中に「平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う。」と明言しているではありませんか。
    〔副議長退席、議長着席〕
こういうことをはっきりしないで、国政を担当する最高責任者として、憲法に対するあいまいな態度をとるということは余りにも無責任過ぎるではありませんか。(拍手)
 私たち新自由クラブは、また防衛力の増強をめぐる鈴木内閣の姿勢にも、深い危惧の念を抱いております。
 われわれ新自由クラブは、自衛力の存在は当然これを認めておりますし、その自衛力はまた、この国土を自衛するため必要にして適当なものであるべきだと考えております。したがって、その強化に必ずしも異議を唱えるものではありません。しかし、その前提には、軍事力だけが防衛力でないという点であります。平和に徹し、平和を守ることに徹する外交努力こそが何よりも優先されなければならぬと考えております。
 さきの国会で、わが党の河野洋平議員は、園田前外相の国連演説を高く評価し、支持を表明しましたが、その趣旨は、やはり軍備拡張競争を起こさせぬ日本の積極的役割りが強調され、その点が私たちの理念と一致するからでありました。
 しかし、鈴木内閣発足以来の防衛費増額を目指す政府・自民党の動きは、およそこの理念に逆行するものであったと言うほかはないのであります。特に平和外交の先兵であるべき外務省が、対米配慮を強調して防衛予算増額に防衛庁と共同作戦をとる形をとったことは、何とも不可解そのものであります。
 国際的脅威が生じたり軍事的な有事が予想されるようなときがあっても、そのような事態にならないように努め、あらゆる手段を講ずるのが外務省の責務ではないですか。そうした努力を十分しないで、外務省の課長クラスが軍事費の増額キャンペーンをやり出すことは本末転倒であります。(拍手)
 世界の歴史にも明らかなとおり、軍事力は常に相対的なものであります。隣接国の脅威を強調して軍事力を増強すれば、相手国も当然それを脅威として、ここに際限のない軍備拡張競争を招き、それに巻き込まれ、そのあげくは、現実に一触即発の事態にまで進むのであります。
 北方の脅威を強調し、防衛力増強を急務だとする最近の関係者の動きは、軍事大国にはならないと言いながらも、次第に軍事拡張へ既成事実がつくられていくのではないかという懸念を抱かざるを得ません。(拍手)脅威があれば、北方領土返還を含めて、これを解消する努力を全力をもってしなければなりません。
 いま北方脅威論を強調している人たちの中には、つい十年前まで中国脅威論をしきりに唱えていた同じ顔ぶれも見られます。(拍手)しかし、八年前の日中国交正常化によって、いまは中国の脅威どころか、友好ムードいっぱいの関係となり、東南アジア訪問で鈴木総理も言っておられるように、中国とは何でも話し合える仲になったではありませんか。まさに外交努力の結果であります。(拍手)
 戦争や侵略は、しょせん人間がすることであります。こうした軍事的な有事は、人間の努力によって防ぐことができないはずはありません。防ぐことの可能な軍事的、人為的有事に対して防ぐ努力をあえて怠り、それに備えて巨額の国費を投ずるよりも、人為的には避け得られないような有事、たとえばいま緊急の問題になっておる地震や雪害対策を初めとする自然がもたらす有事に備えることこそ、現在最も必要なことではないでしょうか。(拍手)
 私は、先ほど、行政改革に手をつけず、安易な増税によって赤字財政を切り抜けようとした国民不在の姿勢を指摘いたしましたが、この問題は、ただ単に政府・与党だけの問題ではなく、野党にも考えなければならない点があると言わざるを得ません。
 たとえば昨年秋の臨時国会に課せられた公務員の給与等三法への対応を見ますと、公務員の給与引き上げだけを成立させることが優先されて、一緒に成立させなければならないはずの定年制法案と退職金の削減法案を継続審議にさせてしまったことであります。(拍手)
 行政改革や官民格差の是正が本当に急務であるとするならば、公務員の給与引き上げよりも、定年制や退職金の削減を実現させる方がむしろ優先さるべきものではなかったでしょうか。(拍手)
 ところが、国会審議の現実は、自民党が一部の野党と話し合い、公務員の給与引き上げ案だけを切り離して成立させ、定年制法案と退職金削減法案はついに見送りになってしまいました。
 われわれ新自由クラブは、給与引き上げだけが優先されないように最後まで三つの法案を一括して処理することを強く主張しましたが、結果は給与引き上げ法案だけの成立となってしまいました。一部の野党が、公務員の賃金引き上げを通したい余りに、自民党と安易な妥協をしているかのような様子を見ますと、行政改革について、いたずらに政府・与党だけを責めるわけにはまいりません。
 そこで、総理にお尋ねをいたしますが、さきの臨時国会で継続審議とされてしまった公務員の定年制法案と退職金削減法案を、この国会で成立させる強い気持ちをお持ちかどうか、その決意をお聞かせいただきたい。
 われわれ立法府が、与野党を問わず真剣に考えなければならない問題に、議員定数の格差是正の問題があります。すでに質問が出ているので多くは申し上げません。総理が本当に行政改革を断行する気があるならば、議員定数の格差を直すのを機会に、われわれがかねてから唱えていますように、思い切って国会議員の定数を減らすとか、少なくともこれ以上ふやさないようにして定数の改正を行い、国会がみずから簡素化の手本を示すべきであります。(拍手)
 総理は、先ほど来の答弁の中で、各党と合意を得てとか総定数の問題があるとか、逃げの姿勢をとらないで、国会がみずからの身を切って、その上で不均衡を是正する意思を、総理、あなた自身持っておられるかどうか。また、一票の重みの不均衡が違憲とか合憲とかというような問題の前に、まず民意を正しく反映できるかどうかという多数決政治、議会政治の根幹にかかわる問題であると思いますが、これに対する総理の見解を求めるものであります。(拍手)
 次に、昨今の教育現場における校内暴力行為、校内暴力の問題について伺います。
 総理は施政方針の中で、この問題について、「深い愛情と信頼」が必要であるとか、「社会全体で青少年の健全育成に当たらなければならない」などと、抽象的で、何ら具体的な方針を示しておりません。
 入試地獄の深刻さが子供に与えるストレスとか親子の対話不足とか教師の資質の問題など、校内暴力の原因を一つ一つ掘り下げていきますと、かねてから新自由クラブが主張してきた六・三・三・四制度の見直しをどうしてもやっていかなければなりません。そして人間の形成に大きな影響を与える中等教育の初期の課程の中で、入学試験の準備に煩わされないで、基礎教育や徳育の教育を充実させるためにも中学、高校の一貫教育を図るべきだと思いますが、総理はどのようにお考えか承りたい。(拍手)
 また、幼児に対する家庭のしつけ、家庭教育が青少年の人格形成に大きな影響を及ぼすことを多くの人々が認めながら、それが行政の面でほとんど顧みられておりません。とりわけ新生児を持つ母親の教育、ゼロ歳児の教育が、行政のなわ張りの間に埋もれて全く顧みられない現状を見逃すわけにはまいりません。文部、厚生両省が、所管にこだわらず早急にこの問題を処理していくべきだと考えますが、総理のお考えを示していただきたい。
 さて、利権を保証して五千万円を業者から受け取る知事が千葉県にあらわれました。金権腐敗の政治構造、政治風土は、決して千葉県だけのものではありません。いままで他の県でも似たような事件が起き、いずれも司直の手にゆだねられました。中央、地方を覆う、このような金権体質をこのままにしておくことは、国民全体の倫理感覚を麻痺させてしまうことを私は最も恐れるものであります。
 政治の浄化は、もちろん政界みずからが姿勢を正して、政治倫理の確立に努めていかなければならないことは当然であります。しかし、政治腐敗の多くが、政界と経済界との癒着から生ずる贈収賄や裏口献金にあらわれていることを見ますと、経済界に対しても経営の倫理の確立を強く求めていく必要があると思います。
 最近、国税庁が調査したところによりますと、資本金一億円以上の企業一万七千九百社が昭和五十四年七月から一年間で三百二十一億円の使途不明金を計上しております。一社平均三千二百万円というこれまでの最高を示しております。
 会社経理の使途不明金の大半は、表に出せない不正献金として政界に流れ、政治浄化の妨げになっているのは、いまや常識になっております。腐敗の温床と言われ、常に厳しい社会的批判を浴びせられているこのようなことが、なぜ一向に減らないのでしょうか。
 これはロッキード事件やKDD事件を見ても明らかなように、社長とか副社長といったようなトップの権力が余りにも強過ぎ、それらの者の行き過ぎや不正行為をチェックする監視機構が、経済界に十分確立されていないことに大きな原因があります。
 経営倫理の確立は、本来経済界の人たちの自覚と責任で達成されるのが望ましいことは言うまでもありません。しかし、政治を巻き込む企業犯罪が一向に後を絶たない今日、会社の経営が一握りの者の恣意、身勝手さによって左右されることがないよう、経営内容をできるだけガラス張りにすべきではないですか。そして株主や従業員はもちろん、一般の人たちからも監視の目が行き届くような仕組みを新たな立法措置で確立させるのもやむを得ないことではないでしょうか。
 経済界には、これでは私企業の秘密が保てなくなるとか、あるいは競争が衰えてしまうといった反対意見が強いようでありますが、私は、むしろこうすることが企業間の公正な競争を維持し、株主や一般消費者の利益を守り、健全な自由主義経済体制を発展させる上にも不可欠なことと信じております。
 政府は、今国会に商法の一部改正案を提出する準備を進めているようでありますが、会計監査人の監査を受けなければならない会社の範囲を拡大するといったようなこそくな手段ではなく、本当に政治と企業の醜い癒着関係を断ち切る気があるならば、経済界の反対を恐れず、資金がどのように流れているかなど、経営内容を徹底的に公開させる制度を導入することであります。同時に、アメリカの証券取引委員会のように、監督官庁の機能を強化させ、経営の不正摘発にももっと力を入れるべきであると思いますが、総理の考えをお聞きしたい。(拍手)
 終わりに、戦後処理の未解決の問題について総理の考えを伺います。
 戦争が終わって三十六年にもなりますが、いまもなお、敗戦の際、混乱ぶひどかった中国の旧満州地区に取り残された日本人孤児が千数百人もいます。これらの人たちが、いまなお肉親を探し求め、祖国日本を一目見たいと望郷の念に駆られていることを総理は知っているでしょうか。
 一方、台湾では、戦争中、日本の軍人軍属として戦地に駆り出された台湾人が約二十万人います。そのうち三万人が戦死しています。傷ついた人は、その数倍にも上っております。しかし、戦後日本国籍を失ったという理由だけで何らの補償措置を受けることなく、給与の支払いでさえ停止されています。そしていま補償請求の訴訟が行われております。
 いずれも国家の要請によって犠牲を受けた人たちであり、単なる一般の戦争災害者ではないのであります。こうした戦後処理の問題を片づけない限り、真の意味の戦争が終わったとは言えないと思います。(拍手)
 また、総理がこの議場で述べた「思いやりに満ちた社会」の実現ということは、こうした人々にこそもっと温かい手を差し伸べるべきではないでしょうか。(拍手)
 そこで、総理にお尋ねしたいのは、政府は、中国残留孤児の問題を昨年秋、日中首脳会談で遅まきながら取り上げましたが、ベトナム難民問題対策でさえやっておりますように、政府の中に担当の責任部門を設けて、積極的にこれに取り組む意思があるかどうか伺いたい。
 また、残留日本人孤児の受け入れや日本語教育、社会復帰などにつきまして、今後どのように取り組んでいくか、その決意を伺いたいのであります。
 また、台湾にいる元日本軍人軍属、これらの人たちはいま不遇な生活を送っている人が多いと聞いております。わが国がアジアの一員としてその役割りを担おうとしている今日、みずからの戦争に駆り立てた人たちの救済措置に目をつぶっていて、一体どこに日本の信頼を求めることができるでしょうか。
 総理は、台湾の元日本軍人軍属の補償請求権はないと断定しているのかどうか、あるのかどうか。それとも何らかの救済措置か、補償に見合う措置を考えておられるのかどうか、これをお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#23
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 田川さんの御質問にお答えいたします。
 私は、先般のASEAN各国首脳との話し合いにおいて、アジアの平和と繁栄のため、わが国の国際的地位にふさわしい政治的、経済的な役割りを果たす決意であること、また、成熟した日本とASEAN関係の構築を目指し、ASEAN諸国とともに考え、ともに努力する考えであることを伝えました。これは、田川議員御指摘のアジアの心と心を通わせた外交、平和を守る外交に通ずるものであります。
 私は、今後ともこうした姿勢を堅持し、また、御指摘のとおり、約束したことは必ず実行するとの誠意を持って、将来にわたりASEAN諸国との揺るぎない友好信頼関係を築くべく、不断の努力を重ねてまいりたいと存じます。
 航空委の問題につきまして御意見がありました。いわゆる航空機輸入に関して指摘された疑惑に関しましては、司法当局においてすでに解明が終わったと承知しております。
 しかし、政治倫理の確立は当面の緊急な課題であり、私は、さきの臨時国会以来検討されている倫理委員会の設置について、各党各会派の間で速やかな建設的な合意が得られることを期待いたしております。
 次に、憲法問題についての御質問がありました。鈴木内閣としては、憲法のどの条項の改正も考えていないことは、たびたび申し上げたとおりであります。
 一方、憲法の問題は国民的基礎において検討さるべき問題であって、政党である自由民主党が、国民の要求にこたえて、憲法のいろいろな問題を研究することは何ら差し支えないものと思います。私も、平和主義、民主主義及び基本的人権の尊重の原則を堅持しながら、憲法の問題を自主的にいろいろ研究していくことには賛同しており、党の総裁として党の政綱を変える考えはありません。
 なお、党の憲法調査会で憲法の問題をいろいろ研究しておりますが、どの条項をどう変えるかなど、具体的なことはまだ言える段階ではございません。
 さきの臨時国会で継続審議となったいわゆる公務員二法案についてお尋ねがございました。
 昨年秋の臨時国会において、政府は、人事院勧告を受けて国家公務員の給与改善を図る給与関係法案を提出し、その成立を見ましたが、現下の逼迫した財政事情のもとで、このような国家公務員の給与改善を行うに当たっては、その反面で、公務員について正すべきところは正すという姿勢で臨むことが、行政に対する国民の信頼を確保するために不可欠であります。
 そのような見地から、行政の能率的運営を図るための定年制度法案及び退職金の官民格差の是正を図るための退職手当法改正案につきましては、政府としては、さきの給与改善法案とともに臨時国会で成立することを強く期待していたところであります。今国会でも速やかに御審議の上、ぜひとも成立させていただきたいと考えております。(拍手)
 次に、議員定数についてでありますが、昨年末の東京高裁における衆議院の定数配分に関する違憲判決については、定数配分上違憲となる具体的基準を示した初めての判決であり、最高裁がどう判断するか、今後成り行きを見守っていく必要があると思います。
 しかし、定数是正の問題は、本来立法府みずからの権限と責任において処理すべき問題でありますから、総定数をどうするかという問題を含めて、選挙のルールづくりの問題として、今後各党各会派の間で論議を尽くしていただきたいと存じます。
 学校教育のあり方についてのお尋ねでありますが、学校教育は時代の変化や進展に即して常に改善を加えていく必要があり、五十五年度から小学校、中学校、高等学校と順次進められている新しい教育課程では、基礎基本の充実、徳育、体育の重視などに特に配慮したところであり、入試制度の改善など諸般の施策と相まって、ゆとりのある充実した学校教育の実現に努力しております。
 しかし、学校教育制度の抜本的改革については、それが国民の将来に深くかかわる重要な問題であることにかんがみまして、十分慎重に対処していく必要があると考えております。
 幼児に対する家庭のしつけは、お説のとおりきわめて重要な問題でありますので、従来から家庭教育の振興、児童福祉、母子保健の観点から諸施策を推進しているところでありますが、昭和五十六年度予算におきましても、これから親になろうとする人を対象とした家庭教育に関する学習機会の拡充を図るなど、幼児期の家庭教育の一層の充実に努めることとしております。
 なお、これらの事業の推進に当たっては、地域の実態に応じて関係機関が相協力し、児童の健全育成の実効が上がるよう努めてまいります。
 次に、中国の残留孤児問題についてお答えいたします。
 私は、この問題について、かねてより田川議員が傾けておられる熱意に対しまして敬意を表しております。
 この問題につきましては、田川議員も御承知のとおり、現在関係省庁において連絡会議を設けるなど、相互に連絡を密にして各般の問題に取り組んでいるところであります。
 なお、孤児の親族調査については、データ不足等いろいろ困難が多いのでありますが、政府はできる限りの努力を払っておりまして、先般の第一回日中閣僚会議におきましても、わが方より中国側に対し、未判明孤児六百三十名分の名簿を手交した上で親族調査等について協力を求めましたところ、先方よりは肯定的な回答を得た次第でございます。今後とも政府としては最善の努力をしてまいる所存でございます。
 最後に、台湾の元日本兵と恩給制度についてでありますが、元日本兵は、恩給法等において日本国籍の喪失を失権事由としていることから、昭和二十七年の平和条約の発効により日本国籍を喪失したことを理由として恩給等が支給されておりません。
 恩給権の得喪が国籍の有無をその要件としているのは、官吏関係という国との特殊な関係に立脚する年金制度の沿革ないし性格に由来するものであります。そして、この要件を現時点において撤廃することは適当でないので、恩給制度等において台湾の元日本兵を救済することができないのであります。
 なお、その他の見舞い金等の方法により救済措置を講ずることは、いろいろな事情からきわめて困難でありますのが実情であります。今後なお検討させていただきます。(拍手)
    〔国務大臣伊東正義君登壇〕
#24
○国務大臣(伊東正義君) 田川さんにお答え申し上げます。
 先生おっしゃったように、平和外交をもっとしっかりやれという御激励まことにありがとうございます。外務大臣、外務省とも、おっしゃるように平和外交の堅持、何物にも優先させて日本の安全と繁栄を守るために平和外交に徹しろとおっしゃること、私もそのとおりだと思うわけでございます。その日本外交の基軸が日米関係の平和友好、これはまた日米安保体制というものをもとにしました日米の平和友好ということの維持でございます。
 その安保体制を円滑に運用するには、先ほど申し上げましたように、お互いの国の信頼関係が大切だということの考えから、私も防衛の問題につきまして発言をし、あるいは先生おっしゃったように私の部下の課長も発言したということだと思いますので、その点はひとつ先生、御了承願いたいと思うわけでございます。
 ただ、先生がおっしゃいましたように、防衛というものは狭義の防衛だけじゃなくて、食糧も石油も、あるいは国際協力も、広義なもの、総合的に考えるべきことであり、またもう一つ、国際紛争、緊張というものが起きないようにする、起きても巻き込まれないように、それをごく小規模のものにして、なくしてしまうということが平和外交じゃないかという先生の御意見は私も同感でございますので、そうしたことに今後とも努力をしてまいるつもりでございます。(拍手)
#25
○議長(福田一君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#26
○議長(福田一君) 御報告いたすことがあります。
 議員荒舩清十郎君は、昨年十一月二十五日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において昨年十二月十八日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 衆議院は多年憲政のために尽力し特に院議をも
 つてその功労を表彰されさきに本院副議長議院
 運営委員長決算委員長予算委員長の要職につき
 またしばしば国務大臣の重任にあたられた議員
 正三位勲一等荒舩清十郎君の長逝を哀悼しつつ
 しんで弔詞をささげます
 故議員荒舩清十郎君に対する追悼演説
#27
○議長(福田一君) この際、弔意を表するため、高田富之君から発言を求められております。これを許します。高田富之君。
    〔高田富之君登壇〕
#28
○高田富之君 ただいま議長から御報告がありましたとおり、本院議員荒舩清十郎先生は、昨年十一月二十五日、国立相模原病院において逝去されました。まことに痛恨の念にたえません。
 私は、ここに、諸君の御同意を得まして、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)
 私は、先生とは昭和二十一年の第二十二回衆議院議員総選挙以来、今日まで三十五年間にわたり、同じ選挙区でともに選挙を相争い、所属党派は異にしておりましたが、先生の小事にこだわらない、豪放らいらくな性格と、反面、人情の厚いお人柄に、大衆とともに歩まれた政治家としての魅力と、人間としての親しみを抱いてまいりました。
 このたびの先生の御入院は、ぜんそくの治療ということで、私は、すぐにも御快癒されると信じ、一日も早い御本復を祈ってやまなかったのであります。
 しかるに、先生の訃報は余りにも突然なことであり、円熟した先生の今後の御活躍を信じて疑わなかった私は、ただ荘然として、言うべき言葉もなく、いまさらのごとく、人の命のはかなさを痛感せざるを得なかったのであります。
 荒舩先生は、埼玉県秩父市きっての名家であり、秩父織物の製造業を経営する荒船家の第十六代目の後継者として、明治四十年三月にお生まれになりました。
 先生は、大正十四年、県立川越工業学校を卒業の後、父君を助けて家業に励んでおられましたが、昭和八年、二十六歳のとき、不幸にも父君を失われました。荒舩家を背負って立たれることになった先生は、二十八歳の若さで秩父銀行頭取の要職につかれたのを初め、その敏腕を発揮して数多くの事業を手がけられました。
 一方、先生は、頻発する荒川の洪水被害から住民の生活を守るため、近在の青年の陣頭に立って、荒川の霞堤の取り壊し運動を起こされました。この運動は、当局の厳しい取り締まりにより挫折はいたしましたが、先生の郷土愛と正義感の発露であり、若き日の先生をほうふつさせるものがあります。先生は、これを契機に荒川の治山治水対策こそ天から与えられた生涯の事業であり、政治によって初めて解決し得る問題であると確信され、政界に入られる決意を固められたとのことであります。
 先生は、昭和十二年、秩父郡高篠村の村会議員に、昭和十五年には埼玉県会議員に当選され、さらに昭和十九年には副議長の要職につかれました。その傍ら、昭和十八年から二年間高篠村の村長にも就任され、戦前、戦中の多難な地方の政治、行政に携わってこられました。
 この間、先生は晩学も辞せず、明治大学に学ばれ、また、一地方政治家として、故川島正次郎先生にも私淑し、政治家としての素地を着々と築かれたのであります。
 やがて、昭和二十一年、戦後初の第二十二回衆議院議員総選挙に、郷党の衆望を担い、埼玉県全県一区から立候補し、みごと最高点をもって初当選の栄を得られ、かねての国政参加の宿願を果たされたのであります。(拍手)
 それ以来、公職追放の期間を除きますならば、今日まで連続して当選すること十三回、そのうち最高点で当選すること実に十一回を数え、在職二十九年四カ月の長きに及んだのでありまして、去る昭和五十一年九月には、永年在職議員として本院からはえある表彰を受けられました。先生に対する郷党の信望がいかに厚かったかがうかがわれるのでございます。(拍手)
 第九十回帝国議会に初めて本院議員として議席を得られた先生は、第一次吉田内閣の植原国務大臣、星島国務大臣の秘書官に任ぜられ、政治の要諦を体得するとともに、日本国憲法の制定を初め、憲法付属法規の制定に参画されたのであります。しかるに、昭和二十二年三月、突如公職追放の指令を受け、三年余にわたり雌伏のやむなきに至りました。
 追放解除になった先生は、昭和二十七年の第二十五回総選挙に埼玉県第三区から出馬し、再び本院に復帰され、たちまち頭角をあらわし、昭和二十八年、早くも議院運営委員会理事となり、翌年には建設政務次官に就任するなど、各方面に縦横の活躍をされました。
 やがて、昭和三十四年六月には衆議院議院運営委員長に推され、デモ規制法をめぐる与野党の対立、あるいは国論を二分した安保改定の時期に国会運営の衝に当たられました。引き続く昭和三十五年十二月には決算委員長に御就任、その後、昭和三十八年十月には予算委員長に挙げられました。自来、先生は同委員長に選任されること前後五回、在任期間は延べ五年三カ月に及びましたが、このような幾たびもの予算委員長御就任は、国会史上にその例を見ないところであります。(拍手)
 この間、昭和四十一年八月、第一次佐藤内閣に運輸大臣として入閣、ざらに昭和四十五年一月には、本院副議長の重職に推されました。この副議長御就任は、議会大荒舩先生にとりて、生涯忘れがたい光栄であったことと存じます。
 選任五回目の予算委員長を退任された昭和五十一年九月には、三木内閣の行政管理庁長官に就任され、同年十二月には、裁判官弾劾裁判所裁判長に選任されて、いわゆる鬼頭判事補事件の訴訟指揮をとられたことは、あまねく国民の記憶に新たなところであります。
 次いで、昭和五十二年十一月には、福田内閣に再度行政管理庁長官として入閣されて、戦後最大規模の審議会等の統廃合を推進されました。他方、自由民主党にあっては、副幹事長、総務会副会長、党顧問を歴任して、党の運営に尽瘁され、常にその発言は重きをなしておりました。
 かくして先生は、党人として政党政治の発展に努められるとともに、国政の進展に多大の功績を残されたのであります。
 思えば、先生の鋭い政治感覚とすぐれた調整能力は、国会運営の分野において遺憾なく発揮されました。つい先ごろまでの予算委員会のひのき舞台での先生の御活躍は、まことに華々しいものでありました。
 時に、わが国内外の諸情勢は大きく揺れ動き、予算審議の過程において幾多緊迫せる場面が展開されました。昭和四十九年には、第一次オイルショックに端を発した経済の混乱と狂乱物価、昭和五十年には、インフレと不況下における社会的不公正の問題、昭和五十一年には、ロッキード問題が相次いで政治の焦点となり、国会に寄せる国民の期待と関心は、大きな高まりを見せたのであります。連日の新聞、テレビは、競って白熱した第一委員室の光景を茶の間に伝えました。委員諸君と、総理を初め各閣僚との激しい論戦や、証人の息詰まるような証言とともに、荒船委員長の大きく動く身ぶり手ぶりと、響き渡る発声によってなされる議事の進行ぶりは、細大漏らさず報道されたのであります。
 世人は、ややもすれば、時間におくれた大臣に大声で駆け足を命じたり、ときには当意即妙、酒脱な発言によって緊張をやわらげる荒舩委員長の横顔を好んで描き、これを先生独特の演技、演出ととらえるきらいがありました。しかし、そのような一面のみを強調し、これを先生の政治家としての人間像のすべてであるかのごとく評することは当を得ないところであります。
 常々、「立法府と行政府のけじめだけははっきりつけなければならない」と申されて、予算委員会の公正な運営を図られた先生。「国家、国民のためになるなら、メンツにこだわらず、野党の政策もよいところはどんどん吸収していかなくてはならない」と語り、理事会、委員会における野党の主張に誠意を持って耳を傾け、その日の委員会運営についても、早朝から各党理事に小まめに電話し、絶えず与野党の意思疎通に努められた先生。これらは、先生が強固な信念を持って筋を通し、議会政治を守り抜かれた議会人であったことを如実に示す証左であり、私ども政治家のもって範とすべきものと存じます。(拍手)
 荒舩さん、あなたは天衣無縫、常に開放的で明るい方でありました。先生の、ときには奇想天外とも見える言動に、人は思わず引き込まれ、先生独特のユーモアは、だれにも安心感を与え、ほのぼのとした親愛の情を感じさせました。このような先生固有の天性が、信義に厚い明治人の風格とともに、人間的魅力をさらに大きく形成し、政界はもとより、郷党の信望をこぞって一身に集められたものと存じます。
 先生は、秩父の山野を初め、県下の田園、街頭をくまなく歩き、庶民の生活に密着した問題点とその対策を端的に訴えられました。複雑多岐にわたる外交も経済も、先生によって庶民の身近なものとされ、広く選挙民の支持を集められたのであります。
 このような先生が、郷土にとってかけがえのない存在でありましたことは申すまでもありません。立ちおくれた埼玉県北部各地域の発展のために、どれほど尽力されたか、その数々の業績ははかり知れないものがあります。(拍手)とりわけ、「水を治め、道を治める者、国家を治める」との政治信条のもとに、治山治水事業や産業開発道路の整備事業に心魂を傾けられました。この先生の御尽力によりまして、今日、これらの事業が著しい進展を見たのでありまして、地元の人々が荒船先生を郷土の恩人と仰ぎ、心から感謝の念を惜しまなかったのも、けだし当然のことと申せましょう。(拍手)
 享年七十三歳、中央、地方を通じて四十数年に及ぶ政治の道のりを、寸時も休むことなく、一路ばく進してこられだ先生は、世に多くの話題と余韻を残しつつ、にわかに去って行かれました。
 あの血色のいい笑顔で、たれにでも肩をたたき気軽に話しかける先生のお姿も、廊下まで響きわたる先生の力強いお声も、もはや見ることも聞くこともできなくなりました。寂寥の感、胸に迫る思いでございます。
 同時に、私は、荒舩先生の長く厳しい政治生活を内にあって常に支え、ひたすら先生とともに風雪に耐えてこられた奥様の御労苦をしのばずにはおられません。(拍手)奥様の御胸中、お察し申し上げるに余りあるものがございます。
 現下、内外の諸情勢まことに厳しく、国会に課せられた責務のいよいよ重きを加えようとするとき、洞察力に富み、豊かな識見を有せられる練達堪能な政党政治家荒舩清十郎先生を失いましたことは、ひとり自由民主党のみならず、本院にとっても、国家国民にとりましても大きな損失であり、まことに痛恨の念にたえません。(拍手)
 しかし、先生が国政の場に、あるいは郷土に残された幾多の業績と御遺志は、先生を敬愛する多くの人々の胸に深く刻まれ、力強く受け継がれることでありましょう。
 ここに、ありし日の荒舩清十郎先生の面影をしのぶとともに、その御功績をたたえ、心から御冥福をお祈りいたしまして、追悼の言葉といたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#29
○議長(福田一君) 御報告いたすことがあります。
 議員久保三郎君は、去る一月五日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る七日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 衆議院は多年憲政のために尽力しさきに交通安
 全対策特別委員長の要職にあたられた議員正四
 位勲二等久保三郎君の長逝を哀悼しつつしんで
 弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 故議員久保三郎君に対する追悼演説
#30
○議長(福田一君) この際、弔意を表するため、葉梨信行君から発言を求められております。これを許します。葉梨信行君。
   〔葉梨信行君登壇〕
#31
○葉梨信行君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員久保三郎先生は、去る一月五日、国立水戸病院において逝去されました。まことに痛惜の念にたえません。
 私は、ここに、皆様の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)
 昨年秋の臨時国会で国鉄経営再建特別措置法案が審議されました際、先生は、社会党議員の先頭に立って縦横の活躍をされておられましたのに、元日の朝突然倒れられ、正月の松もとれないうちに幽明境を異にされようとは、人の世のはかなさを嘆かずにはおられません。
 久保先生と私は、昭和三十三年五月の総選挙に、茨城県第一区からともに初出馬いたしました。この選挙で久保先生はみごと当選の栄冠を得られましたが、私は不覚にも一敗地にまみれ、国会での先生の御活躍を野にあって、はるかに注目してまいったのであります。
 やがて、昭和四十二年一月の総選挙で私も本院の議席を得ることができ、それからは、公私にわたり、先生の温かい御指導と御交誼をいただいてまいりました。
 先生と私とは、互いに党派を異にし選挙戦を戦ってきましたが、ことに昨年六月の総選挙の立会演説会では、安全保障、財政再建、福祉等の諸問題について先生に激しく論争をいどみ、先生もこれに徹底した反論を加えられました。私は、国民の前での真剣な論議こそ、やがて大きく実を結び、国民的合意をつくり上げる日が来るとかたく信じ、あえて先輩に挑戦したのでありました。
 しかし、主義主張は違っておりましても、平和を願い、国民の幸せを求める熱意はともに変わるところはなぐ、これからも先生と議論を闘わせ、政治の先輩である先生の御指導を仰ぐつもりでおりました。それなのに、このたび突如として先生を失いましたことは、まことに痛恨のきわみと言わなければなりません。
 久保先生は、明治四十四年三月、茨城県西茨城郡岩瀬町にお生まれになり、国鉄職員であられた御尊父の影響を受け、東京鉄道局教習所に進まれました。教習所では、後の本院副議長原彪先生の御指導を受け、原先生の崇高な御人格と高邁な思想に接しられましたが、このことが久保先生を社会主義の道へ歩ませる一つの契機となったのではないでしょうか。
 昭和四年、教習所を終えられると、先生は、水戸駅車掌所を振り出しに、列車乗務や管内各駅の業務に従事され、働く者の苦しみと誇りを味わう中で、強靱な忍耐力と旺盛な責任感を形成されたのであります。
 やがて、終戦を迎え、社会の混迷と人心の荒廃を目の当たりにされた先生は、永久平和を実現し、大衆の生活を守るために何をなすべきかを模索され、熟慮の末、水戸駅助役から、いまた草創期にありました労働組合運動に身を投じられたのであります。
 そして、いち早く国鉄労働組合の結成に参画し、その水戸地方本部執行委員長に就任されました。また、推されて茨城県労働組合連盟事務局長、茨城県官公労議長を歴任され、今日の労働組合発展の基礎を築かれたのであります。
 しかしながら、やがて先生は、幾多の問題が政治の場でなければ解決できないことを痛感され、昭和二十二年三月には日本社会党に入党、同年四月には新憲法下初の地方選挙に立候補され、三十六歳の若さで茨城県議会議員に当選されたのであります。
 さらに、先生は、同憂の士に推されて、昭和三十三年五月、第二十八回衆議院議員総選挙に立候補、みごと当選を果たされ、保守の地盤と目されていた茨城県第一区に革新の灯をともされたのであります。(拍手)
 本院に議席を得られた先生は、国政の各分野に幅広く活躍されましたが、先生の本領は、特に運輸交通の分野で発揮され、このことは皆様よく御承知のとおりであります。
 先生は、第七十一回国会の昭和四十七年十二月、推されて本院の交通安全対策特別委員長の要職につかれましたが、運輸交通の基本である安全輸送の確保という原点に立って、精魂を傾けて、その対策の推進に当たられました。
 また、先生は、常に国民生活優先を基本として、政府に対し行政の転換を強く迫り、ときには、その著書において交通政策のあるべき姿を示して、政府の対応のおくれに警鐘を鳴らしてこられました。しかし、先生の姿勢は、単なる机上の議論ではなく、現地をつぶさに調査し、地域住民、各界各層の声を聞き、綿密周到な分析の上に立って建設的な提言を行うというもので、政府は、委員会における先生の御意見に耳を傾け、これを行政の上に反映させてきたのであります。
 先生は、在職中野党の立場で数多くの法律案を立案されましたが、最近では地方陸上交通事業維持整備法案、中小民営交通事業者の経営基盤の強化に関する臨時措置法案など四法律案を提出し、他方、これをもとに、第八十五回国会の運輸委員会において同僚議員と相諮り、地方陸上公共交通維持整備に関して与野党一致の決議に導き、政府にその実現を強く求められたのであります。(拍手)
 特に、国鉄再建問題につきましては、総合交通政策の中に位置づけられた国鉄再建策を発表されるとともに、さきの内閣提出、国鉄経営再建法案の審議の際には、この立場から修正案を提出し、さらに各党に働きかけて、「国鉄経営改善方策についての提言」の取りまとめに尽力されたのであります。
 こうした御活躍により、久保先生は現実を真っすぐに見詰め、勇気を持って決断する得がたい政治家であるという評価が与野党議員の間に確立されたのであります。(拍手)
 そして、先生は、日本社会党にありましても同僚議員の信頼が厚く、代議士会副会長、両院議員総会副会長として、党内の意見調整に尽力されるとともに、長らく政策審議会副会長、交通政策委員長、運輸部会長を務められ、社会党の政策立案に大きく貢献してこられました。
 かくして、先生は、本院議員に当選すること連続九回、在職二十二年十一カ月の長きに及び、この間、国政に残された功績は、るる申し述べましたようにまことに偉大なものがありました。(拍手)
 先生は、また、郷土茨城の発展にも骨身を惜しまず尽力されました。先生は、調和のとれた郷土の発展を目指して、霞ケ浦の浄化、漁業経営の改善、人口急増対策等に労苦をいとわず奔走し、多くの貢献をされました。
 さらに、これから水戸射爆撃場跡地利用の問題、昭和六十年開催予定のつくば国際科学技術博覧会の輸送問題等について先生の御手腕が大いに期待されておりましたのに、いま久保先生を失いましたことは、茨城県民にとりましてもまことに大きな損失と申さねばなりません。
 先生は、大衆に奉仕する政治を信条として、ひたすら大衆とともに歩んでこられました。「事があれば労をいとわず、足を運び、だれにでも親身になって相談に乗ってくださった」と、郷里の人々は涙ながらに語っております。
 人に接するに温厚篤実、すべての人々に安らぎと信頼感を与えずにおかなかった先生は、その温容のうちに剛直とでも申すべき強い信念が秘められておりました。
 身を処するに清廉、権勢におもねらず、地位を求めず、おのれの信ずるところは断固として譲らない、いかにも水戸っぽそのものの先生を、私は郷里の後輩の一人として心から尊敬申し上げていたのであります。(拍手)
 「まず和して、しかる後、大事をなす。原則は反復して確認せよ。」これは絶筆となった先生の新年に当たっての揮毫であります。今後の政治にかける決意を年の初めに新たにされたそのやさき、志半ばにして、六十九歳の生涯を閉じられた先生は、どんなにか心残りであったことでありましょう。しかし、先生が国政に、あるいは郷土に残され幾多の御業績と御遺志は先生を敬愛する多くの人々の胸に深く刻まれ、力強く受け継がれるに違いありません。
 わが国、内外の諸情勢は厳しく、難問が山積している今日、政治に課せられた任務はいよいよ重きを加えております。このときに当たり、私どもは、久保先生の御遺志を体して、決意を新たにして国政に取り組むことを誓うものであります。
 ここに、謹んで久保三郎先生の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈り申し上げ、追悼の言葉といたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#32
○議長(福田一君) 御報告いたすことがあります。
 永年在職議員として表彰された元議員河野密君は、去る一月四日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る七日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 衆議院は多年憲政のために尽力し特に院議を
 もってその功労を表彰された勲一等河野密君の
 長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
     ――――◇―――――
#33
○議長(福田一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後六時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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