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1980/04/07 第94回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第094回国会 本会議 第16号
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1980/04/07 第94回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第094回国会 本会議 第16号

#1
第094回国会 本会議 第16号
昭和五十六年四月七日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十四号
  昭和五十六年四月七日
    午後二時開議
 第一 外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関
    する法律案(内閣提出)
 第二 港湾整備緊急措置法の一部を改正する法
    律案(内閣提出)
 第三 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣
    提出)
 第四 郵便年金法及び簡易生命保険及び郵便年
    金の積立金の運用に関する法律の一部を
    改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 石田博英君の故議員川口大助君に対する追悼演
  説
 公共企業体等労働委員会委員任命につき同意を
  求めるの件
 日程第一 外貿埠頭公団の解散及び業務の承継
  に関する法律案(内閣提出)
 日程第二 港湾整備緊急措置法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
 日程第三 恩給法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 日程第四 郵便年金法及び簡易生命保険及び郵
  便年金の積立金の運用に関する法律の一部を
 改正する法律案(内閣提出)
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律
  の一部を改正する法律案(内閣提出)及び原子
  爆弾被爆者等援護法案(森井忠良君外七名提
  出)の趣旨説明及び質疑
    午後二時九分開議
#2
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(福田一君) 御報告いたすことがあります。
 議員川口大助君は、去る二月二十六日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る三月九日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 衆議院は議員正五位勲三等川口大助君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 故議員川口大助君に対する追悼演説
#4
○議長(福田一君) この際、弔意を表するため、石田博英君から発言を求められております。これを許します。石田博英君。
    〔石田博英君登壇〕
#5
○石田博英君 ただいま議長から御報告がありましたとおり、本院議員川口大助君は、去る二月二十六日、御入院中の東京大田区東京労災病院において、結腸がんのため逝去されました。まことに痛恨哀惜の念にたえません。
 私は、ここに、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し上げたいと存じます。(拍手)
 川口君が御逝去されましたのは午前十時三十分と承っておりますが、私が、その知らせを得て病院に到着いたしましたのは十一時三十分、御遺体はまだ霊安室に移されず、奥様、御令息、御近親に守られながら、闘病のベッドの上に白布をかけられて安置されてありました。この白布さえなければ、あたかも仮眠をとっておられるようで、お顔は心持ちおやせになったと御見受けしましたが、静かで安らかで、あの人なつこい童顔で、いまにもほほ笑みかけられるようでありました。
 私が川口君を知ったのは、昭和二十六年、川口君が県会議員に初当選されたときでありますが、以来三十年の交遊の数々が走馬灯のように私の心を去来し、まくら元を去りがたい思いでありました。
 川口大助君は、大正七年三月、現在の秋田市新屋、当時の河辺郡新屋町で御出生、御先考の兵吉氏は、自由奔放な生き方をされた快男子で、呉服店、文房具店などを経営されたり、また新聞記者もなさり、さらに二十代で長兄やおじさんと三人そろって町会議員に当選、しかも御自分は最高点という離れわざを演じ、続いて故池内代議士の秘書を勤めるなど多彩な生涯を送られたが、惜しくも四十二歳で世を去られました。
 以来、川口君は、去る五十三年十月、八十一歳で亡くなられた御母堂の限りなき献身と愛育のもとに成長されました。この御母堂に対する川口君の敬慕は非常なもので、私も幾たびか川口君の感謝の述懐を聞いたものであります。
 以後、昭和十年、県立秋田中学を御卒業後、しばらく秋田県庁に勤務された後、十二年八月、国鉄秋田運輸事務所に転じ、十九年六月、応召、二十一年三月、復員除隊されたのでありますが、直ちに労働運動に身を投ぜられ、卓抜な指導力を発揮されて、推されて国労秋田地本の初代委員長に就任、続いて二十六年、県会議員に御当選、二期務められた後、三十四年から四十六年まで三期十二年、秋田市民の衆望を集めて秋田市長となり、県都秋田市の都市基盤づくり、地場産業の育成、さらに県主体事業の市町村負担金の廃止による市財政の健全化など、今日の大秋田市の発展に大きな実績を残されたのであります。(拍手)
 また、全国革新市長会の結成に参画し、副会長として会長の飛鳥田横浜市長を助けられました。さらに、その革新市長の立場にありながら、市長一期目に与党の強い反対を押し切って、赤字財政克服のため行政改革を断行されたことも、特に申し述べておきたいと存じます。
 続いて五十一年十二月、第三十四回総選挙で衆議院議員に御当選、途中知事選に立候補のため退職されましたが、その後三十五回、三十六回総選挙に連続御当選、大蔵委員、予算委員、外務委員、農林水産委員、運輸委員、科学技術委員、また公職選挙法特別委員を歴任され、きわめて積極的に、かつエネルギッシュな活躍をされたことは、諸君のよく知られるところであります。
 川口君は、酒もたばこもたしなまなかったのでありますが、御性格は底抜けに明るく、庶民的で、「大ちゃん」の愛称と、人なつこい童顔で県民各層に親しまれたばかりでなく、考え方はきわめて現実的、建設的で、観念論や抽象論には、ただにこにこ笑っておられるだけでした。また、おおらかで決断力に富む人でもありました。
 川口君が、企業管理士の資格をお持ちであったことを知る人は案外少ないのでありますが、この事実は、川口君の中小企業に対する並み並みならぬ関心を、自分の努力の勉強で裏打ちされた実証でもあります。(拍手)
 一方、川口君は、また文筆にもすぐれた才能を持ち、市長時代欧米視察をされたのでありますが、観光は一切たな上げで、訪問地の市長との接触、その市政と実情を秋田市に比較検討されることに努められ、帰国後三浦書店から「青空の中から、わが町を思う」という著書を公刊されました。単に職務熱心という言葉では済まされない川口君の人柄を、私は、ここに見るのであります。(拍手)
 若き日の川口君に大きな影響を与えた一つは、県庁在勤中、用水改良事務所に派遣され、そこで見た飯場の実情であり、第二は、川口君は応召し、中国大陸を転戦して青島で終戦を迎え、二十一年三月、復員されたのでありますが、この軍隊生活で得た「平和への希い」であったのであります。(拍手)
 川口君と私は、党派の違いを忘れ不思議に心の通う、言うところのウマの合う友人でありました。市長時代、よく私の宿を訪ねてくれました。市政の御相談を受けたこともたびたびありました。このつながりは、後年同じ選挙区で争うことになっても変わることなく、私は、川口君との選挙戦が紳士の戦いであったことを誇りといたします。(拍手)
 「平和への希い」の具体的対応については必ずしも一致はしませんでしたが、私たちが歩かされた道を、これからの人に繰り返して踏ませないという点では、いつも同志でありました。
 いま、国際情勢が緊迫し、各地で武力衝突が起こり、力の対決が台頭していることは、川口君の大きな気がかりであったと思います。
 私が川口君の病気御入院を知ったのは、旧臘の押し迫ったころでありました。昨年五月の解散の際、同じ夜行列車で帰郷し、車中で元気に話し合った記憶と、日ごろ議場で明るい笑顔に接し続けた私は、ほどなく全快退院されるものと信じていました。事実、新春には一度退院帰宅されたのでありましたが、それもつかの間、再び入院され、今度は不帰の客となられたのであります。
 六十二年の生涯は、決して長いとは言えません。それは充実して悔いのないものではありましたが、川口君は残念であったと思います。御遺族の御心中、お慰め申す言葉もありません。
 しかし、「人の生命は友や知己の記憶に残る限り続く」とも言います。郷土秋田県の県民はもとより、私ども友人は、生命の続く限り「大ちゃん」を忘れません。
 去る三月九日、秋田市文化会館で行われた川口君の御葬儀に、私も参列いたしましたが、焼香する人々は各界あまねく千五百名に達し、場内は川口君のお人柄と御功績に対する追慕と愛惜の念に満ち満ちておりました。私どもの川口大助君に対する惜別の情もまた限りはありませんが、ここに、諸君とともに、謹んで御冥福を祈りたいと存じます。
 「大ちゃん」、安らかにおやすみください。(拍手)
     ――――◇―――――
 公共企業体等労働委員会委員任命につき同意を求めるの件
#6
○議長(福田一君) お諮りいたします。
 内閣から、公共企業体等労働委員会委員に市原昌三郎君、金子美雄君、隅谷三喜男君、中西實君、原田運治君、舟橋尚道君及び山口俊夫君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#7
○議長(福田一君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法律案(内閣提出)
 日程第二 港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#8
○議長(福田一君) 日程第一、外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法律案、日程第二、港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長小此木彦三郎君。
    〔小此木彦三郎君登壇〕
#9
○小此木彦三郎君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法律案について申し上げます。
 京浜外貿埠頭公団及び阪神外貿埠頭公団は、昭和四十二年に設立されて以来、外貿埠頭の計画的な整備を推進し、昭和四十年代後半から五十年代にかけてのコンテナ等の外貿貨物の急増にこたえてまいりましたが、外貿埠頭の整備はすでに相当の進捗を見ており、外貿埠頭を緊急に整備するという両公団の設立の目的は、おおむね達成されたのであります。
 本案は、行政改革の一環として、特殊法人の整理合理化を図るため、両公団を解散し、両公団の業務は、その公共性、国家的重要性を考慮し、港湾管理者が設立する財団法人であって運輸大臣が指定するものに移管することとし、その運営について国の海運、港湾政策の反映を図るほか、国の助成、債権者の保護等について所要の措置を講じようとするものであります。
 その主な内容は、
 第一に、京浜及び阪神の両公団は、この法律の施行のときにおいて解散することとし、両公団の一切の権利及び義務は、原則として、各港ごとに一を限り指定する指定法人が承継すること、
 第二に、政府の公団に対する出資金は、指定法人に対する無利子貸付金になったものとし、関係地方公共団体の公団に対する出資金は、指定法人に対する出捐金になったものとすること、
 第三に、政府は、指定法人の業務の適正な運営を確保するため、貸付料の届け出の受理、整備計画等の認可、財産処分の制限等、指定法人に対する所要の監督を行うこと、
 第四に、政府は、指定法人に対し、外貿埠頭の建設等に要する費用に充てる資金の一部を無利子で貸し付けることができることとすることであります。
 本案は、去る二月十七日本委員会に付託され、三月二十四日塩川運輸大臣から提案理由の説明を聴取し、二十七日及び三十一日の両日質疑を行い、同日質疑終了の後、自由民主党の楢橋進君から賛成、日本社会党の伊賀定盛君及び日本共産党の三浦久君から、それぞれ反対の討論があり、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し、「指定法人への移行に際しては、港湾管理者、埠頭借受者、職員団体との連携を密にして行うよう指導すること、両公団の職員の処遇については、公団在職時に比べて不利益とならないよう誠意をもつて対処すること等につき適切な措置を講ずべきである」旨の附帯決議が付されました。
 次に、港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、昭和五十年代後半においても港湾取扱貨物量の着実な増加が見込まれるほか、貨物輸送の合理化、厳しいエネルギー情勢への対応、地域振興のための基盤施設の整備等の必要性が増大している実情にかんがみ、港湾整備事業の緊急かつ計画的な実施をさらに促進するため、昭和五十六年度を初年度とする新しい港湾整備五カ年計画を策定することとしようとするものであります。
 本案は、去る三月二十六日本委員会に付託され、三十一日塩川運輸大臣から提案理由の説明を聴取し、四月三日質疑を行い、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(福田一君) これより採決に入ります。
 まず、日程第一につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#11
○議長(福田一君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、日程第二につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#12
○議長(福田一君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
#13
○議長(福田一君) 日程第三、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。内閣委員長江藤隆美君。
    〔江藤隆美君登壇〕
#14
○江藤隆美君 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近の経済情勢にかんがみ、恩給年額を増額するとともに、戦没者等の遺族、傷病者及び老齢者の処遇の改善を図るほか、長期在職の老齢旧軍人等に係る仮定俸給の改善等の措置を講じ、恩給受給者に対する処遇の充実を図ろうとするものであります。
 本案は、二月十二日本委員会に付託され、三月二十四日提案理由の説明を聴取し、審査を行い、三月三十一日質疑を終了いたしましたところ、自由民主党の愛野興一郎君から、施行期日に関する修正案が提出され、趣旨説明の後、採決の結果、全会一致をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
 なお本案に対し、附帯決議が付されました。以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(福田一君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 日程第四 郵便年金法及び簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
#17
○議長(福田一君) 日程第四、郵便年金法及び簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。逓信委員長佐藤守良君。
    〔佐藤守良君登壇〕
#18
○佐藤守良君 ただいま議題となりました郵便年金法及び簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近における高齢化社会の急速な到来等の諸情勢にかんがみまして、国民生活の安定及び福祉の増進に資するため、郵便年金に関する制度を改善するとともに、既存の郵便年金契約について特別措置を行おうとするものであります。
 まず、郵便年金法の一部改正の主な内容について申し上げますと、
 第一は、年金額の逓増の仕組みの導入であります。
 現行の郵便年金の年金額は定額制でありますが、今回、これを改正いたしまして、郵便年金約款の定めるところにより、年金額の逓増及び分配すべき剰余による年金額の増加ができるようにしようとするものであります。
 第二は、年金の最高制限額の引き上げ等であります。
 現在、年金の最高制限額は年金受取人一人につき年額二十四万円、最低制限額は年金契約一件につき年額三千円となっておりますが、これを、初年度の基本年金額の最高制限を七十二万円に引き上げるとともに、最低制限を十二万円に引き上げようとするものであります。
 次に、簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部改正の内容について申し上げます。
 これは、郵便年金の充実を図るため、郵便年金の積立金の運用範囲に、外国政府等の発行する債券、信託業務を営む銀行または信託会社への金銭信託で元本補てんの契約があるもの及び銀行等への預金を加えようとするものであります。
 最後に、特別措置の実施について申し上げます。
 これは、郵便年金制度を改善するに当たり、既存の年金契約につきまして、加入者の利便及び事業運営の効率化を図るため、加入者の申し出により契約を消滅させ、年金の支払いにかえて特別一時金を支払う等の特別措置を行おうとするものであります。
 以上のほか、簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の改正により、郵便年金の積立金の運用範囲を拡大することに伴いまして、資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金の積立金の長期運用に対する特別措置に関する法律につきましても、所要の改正を行うことといたしております。
 なお、この法律の施行期日は、「公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から」となっております。
 本案は、三月三日本委員会に付託され、三月十九日山内郵政大臣から提案理由の説明を聴取し、慎重に審査を行い、四月一日討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対しまして、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブの五党共同提案に係る附帯決議を付したことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(福田一君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び原子爆弾被爆者等援護法案(森井忠良君外七名提出)の趣旨説明
#21
○議長(福田一君) この際、内閣提出、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び森井忠良君外七名提出、原子爆弾被爆者等援護法案について、趣旨の説明を順次求めます。厚生大臣園田直君。
    〔国務大臣園田直君登壇〕
#22
○国務大臣(園田直君) 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明申し上げます。
 昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者については、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律により、健康診断及び医療の給付を行うとともに、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律により、特別手当、健康管理手当、保健手当その他の手当などの支給を行い、被爆者の健康の保持、増進と生活の安定を図ってまいったところであります。
 本法律案は、被爆者の福祉の一層の向上を図るため、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律について改正を行おうとするものであります。
 以下、その内容について説明申し上げます。
 まず第一は、医療特別手当の創設であります。
 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の規定により、原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の状態にある旨の厚生大臣の認定を受けた被爆者であって、現に当該認定に係る負傷または疾病の状態にあるものに対し、新たに医療特別手当を支給することとし、その額を月額九万八千円とすることとしております。
 この医療特別手当は所得のいかんにかかわりなく支給することとし、また、これらの者に支給する特別手当及び医療手当は廃止することとしております。
 第二は、特別手当の額の引き上げであります。
 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の規定により、原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の状態にある旨の厚生大臣の認定を受けた被爆者のうち、医療特別手当の支給を受けていないものに支給する特別手当の額を、現行の月額三万三千八百円から三万六千円に引き上げることとしております。
 第三は、原子爆弾小頭症手当の創設であります。
 原子爆弾の放射能の影響による小頭症の患者に対し、新たに、原子爆弾小頭症手当を所得のいかんにかかわりなく支給することとし、その額を月額三万三千六百円とすることとしております。
 なお、原子爆弾小頭症手当につきましては、医療特別手当または特別手当との併給を認めることとしております。
 第四は、健康管理手当の額の引き上げであります。
 健康管理手当につきましては、造血機能障害など、特定の障害を伴う疾病にかかっている被爆者であって、医療特別手当、特別手当または原子爆弾小頭症手当の支給を受けていないものに対して支給することとし、その額を現行の月額二万二千五百円から二万四千円に引き上げることとしております。
 第五は、保健手当の額の引き上げであります。
 保健手当につきましては、爆心地から二キロメートルの区域内において直接被爆した者であって、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当または健康管理手当の支給を受けていないものに対して支給することとし、その額を、一定の範囲の身体上の障害がある者並びに配偶者、子及び孫のいない七十歳以上の者であって、その者と同居している者がいないものについては、現行の月額一万千三百円から二万四千円に引き上げ、それ以外については、現行の月額一万千三百円から一万二千円に引き上げることとしております。
 また、これらの改正の実施時期は、昭和五十六年八月一日といたしております。
 以上が原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○議長(福田一君) 提出者森井忠良君。
    〔森井忠良君登壇〕
#24
○森井忠良君 私は、ただいま議題となりました原子爆弾被爆者等援護法案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ及び社会民主連合を代表いたしまして、その提案の理由を御説明申し上げます。(拍手)
 昭和二十年八月六日、続いて九日、広島、長崎に投下された人類史上最初の原爆投下は、一瞬にして三十万人余の生命を奪い、両市を焦土と化したのであります。
 この原子爆弾による被害は、普通の爆弾と異なり、放射能と熱線と爆風の複合的な効果により、大量無差別に破壊、殺傷するものであるだけに、その威力ははかり知れないものでございます。
 たとえ一命を取りとめた人たちも、この世の出来事とは思われない焦熱地獄を身をもって体験し、生涯消えることのない傷痕と原爆後遺症に苦しみ、病苦、貧困、孤独の三重苦にさいなまれながら、今日までようやく生き続けてきたのでございます。
 ところが、わが国の戦争犠牲者に対する援護は、軍人、公務員のほか、軍属、準軍属など、国との雇用関係または一部特別権力関係にある者に限定されてきたのであります。しかし、原子爆弾が投下された昭和二十年八月当時の、いわゆる本土決戦、一億総抵抗の状況下においては、非戦闘員と戦闘員を区別して処遇し、原子爆弾による被害について国家責任を放棄する根拠がどこにあるのでございましょうか。(拍手)
 被爆後三十数年間生き続けてこられた三十七万人の被爆者と、死没者の遺族の、もうとれ以上は待ち切れないという心情を思うにつけ、現行の医療法と特別措置法を乗り越え、国家補償の精神による被爆者援護法をつくることは、われわれの当然の責務と言わねばなりません。(拍手)
 国家補償の原則に立つ援護法が必要な第一の理由は、アメリカの原爆投下は国際法で禁止された毒ガス、生物化学兵器以上の非人道的兵器による無差別爆撃であって、国際法違反の犯罪行為であります。したがって、たとえサンフランシスコ条約で日本が対米請求権を放棄したものであっても、被爆者の立場からすれば、請求権を放棄した日本国政府に対して国家補償を要求する当然の権利があるからであります。(拍手)
 しかも、原爆投下を誘発したのは、日本軍国主義政府が起こした戦争なのであります。われわれがこの史上最初の核爆発の熱線と爆風、そして放射能によるはかり知れない人命と健康被害に目をつぶることは、世界最初の被爆国としての日本が、恒久平和を口にする資格なしと言わなければならないと思うのでございます。(拍手)
 第二の理由は、この人類史上未曽有の惨禍をもたらした太平洋戦争を開始し、また、終結することの権限と責任が日本国政府にあったことは明白であるからであります。
 特にサイパン、沖繩陥落後の本土空襲、本土決戦の段階では、旧国家総動員法は言うまでもなく、旧防空法や国民義勇隊による動員体制の強化に見られるように、六十五歳以下の男子、四十五歳以下の女子、すなわち、全国民は国家権力によってその任務につくことを強制されていたことは紛れもない事実であります。今日の世界平和が三十万人余の犠牲の上にあることからしても、再びこの悲劇を繰り返さないとの決意を国の責任による援護法によって明らかにすることは当然と言わねばなりません。(拍手)
 第三の理由は、すでに太平洋戦争を体験している年代も数少なくなり、ややもすれば戦争の悲惨さは忘れ去られようとしている現状であります。原爆が投下され、戦後すでに三十数年を経た今日、被爆者にとってはその心身の傷跡は永久に消えないとしても、その方々にとっては援護法が制定されることによって初めて戦後が終わるのでございます。(拍手)
 昨年十二月、厚生大臣の私的諮問機関である原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見書が出されましたが、被爆者や平和運動を熱心に進めている国民の期待を裏切るものであり、国家の戦争責任を否定し、むしろ日本の戦争政策を正当化する内容となっているのであります。また、われわれが原爆が国際法違反であると指摘しているにもかかわらず、全く触れていないことも私は問題だと思います。さらに許せないのは、国家補償に基づく被爆者援護法の制定には国民的な合意が必要であるとしている点であります。戦後三十数年間政府は国家補償法をつくらず、戦争体験の風化した今日まで放置をした責任はきわめて重大であり、いまになって国民的な合意を要求するのは、本末転倒もはなはだしいと言わねばなりません。(拍手)原爆の悲惨さの残る終戦直後に立法化されていれば、国民的課題の解決として大いに歓迎されたはずであります。
 私たちは、以上のような理由から、全被爆者とその遺族に対し、放射能被害の特殊性を考慮しつつ、現行の軍属、準軍属に対する援護法に準じて、原爆被爆者等援護法を提案することといたしたのであります。
 次に、この法律の内容の概要を御説明申し上げます。
 第一は、健康管理及び医療の給付であります。
 健康管理のため年間に定期二回、随時二回以上の健康診断や成人病検査、精密検査等を行うとともに、被爆者の負傷または疾病について医療の給付を行い、その医療費は、現行法どおりとすることにいたしたのであります。なお、治療並びに施術に際しましては、放射能後遺症の特殊性を考え、はり、きゅう、マッサージをもあわせて行い得るよう別途指針をつくることといたしました。
 第二は、医療手当及び介護手当の支給であります。
 被爆者の入院、通院、在宅療養を対象として月額三万円の範囲内で医療手当を支給する。また、被爆者が安んじて医療を受けることができるよう月額十万円の範囲内で介護手当を支給し、家族介護についても給付するよう措置したのであります。
 第三は、被爆二世または三世に対する措置であります。
 被爆者の子または孫で希望者には健康診断の機会を与え、さらに放射能の影響により生ずる疑いがある疾病にかかった者に対して、被爆者とみなし、健康診断、医療の給付及び医療手当、介護手当の支給を行うこととしたのであります。
 第四は、被爆者年金の支給であります。
 全被爆者に対して、政令で定める障害の程度に応じて、年額最低二十八万八千円から最高五百三十九万四千円までの範囲内で年金を支給することといたしました。障害の程度を定めるに当たっては、被爆者が原爆の放射能を受けたことによる疾病の特殊性を特に考慮すべきものとしたのであります。
 第五は、被爆者年金等の年金額の自動改定措置、すなわち賃金スライド制を採用いたしました。
 第六は、特別給付金の支給であります。
 本来なら死没者の遺族に対して弔意をあらわすため、弔慰金及び遺族年金を支給すべきでありますが、当面の措置として、それにかわるものとして百万円の特別給付金とし、五年以内に償還すべき記名国債をもって交付することといたしました。
 第七は、被爆者が死亡した場合は、十五万円の葬祭料を、その葬祭を行う者に対して支給することにしたのであります。
 第八は、被爆者が健康診断や治療のため国鉄を利用する場合には、本人及びその介護者の国鉄運賃は無料とすることにいたしました。
 第九は、原爆孤老、病弱者、小頭症その他保護、治療を必要とする者のために、国の責任で収容、保護施設を設置すること、被爆者のための相談所を都道府県が設置し、国は施設の設置、運営の補助をすることにいたしました。
 第十は、厚生大臣の諮問機関として、原爆被爆者等援護審議会を設け、その審議会に、被爆者の代表を委員に加えることにしたのであります。
 第十一は、放射線影響研究所の法的な位置づけを明確にするとともに必要な助成を行うことといたしました。
 第十二は、日本に居住する外国人被爆者に対しても本法を適用することとしたのであります。
 第十三は、厚生大臣は速やかにこの法律に基づく援護を受けることのできる者の状況について調査しなければならないことといたしました。
 なお、この法律の施行は、昭和五十七年一月一日であります。
 以上がこの法律案の提案の理由及び内容であります。
 被爆後三十六年を経過し、再び原爆による犠牲者を出すなという原水爆禁止の全世界の願いにこたえて、何とぞ、慎重審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び原子爆弾被爆者等援護法案(森井忠良君外七名提出)の趣旨説明に対する質疑
#25
○議長(福田一君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。城地豊司君。
    〔城地豊司君登壇〕
#26
○城地豊司君 広島、長崎に原爆が投下されて、間もなく三十六年が参ります、一瞬の閃光のもと、熱線と爆風、放射線により三十万人余の人命が失われ、夫を返せ、妻を返せ、むしばまれた体を返せと訴え続ける被爆者や遺族、再び原爆を許すまじと叫び続ける平和愛好家の声が強まっている今日、私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案につきまして、鈴木総理及び関係閣僚に御質問いたします。(拍手)
 鈴木総理原爆被爆者は、平均年齢でも一すでに六十歳を超え、いまもなお病床に苦しみ、健康と生活の不安に悩まされています。遺族も、肉親を失い、いまもって一本のお線香代も出さず、弔意をあらわさない国の仕打ちを恨んでいます。なぜ軍人軍属、準軍属と同じように国家補償をしないのですか。
 政府は、今日までその理由として、軍との身分関係、特別権力関係がなかったこと及び一般戦災者との均衡がとれないことを挙げています。しかし、太平洋戦争末期には、国家総動員法に加えて、義勇兵役法など、軍関係者以外の国民すべてが本土決戦に備えて強制的に参加しなければならなかった明らかな証拠があるのであります。
 また、政府は、これまで原爆被爆者の国家補償を求める要求に対しては、一般戦災者の方々がいるからとかわし、一般戦災者が同様の要求をすれば、原爆被爆者すら救済していないと逃げてきたのであります。
 鈴木総理、戦争犠牲者のうち軍関係者だけ補償するのは片手落ちではないかと思うのですが、どうでしょうか。(拍手)特に、財産被害は要求を抑え、生命と健康の被害に限って補償を求める声に、なぜ耳をかさないのですか。
 昨年は、犯罪被害者等給付金支給法が制定され、ことしの一月からは、暴力団の流れ弾に当たっても国家が補償する時代になっているのです。明確な御答弁をいただきたいと思います。(拍手)
 なお、わが党は、一般戦災者の方々につきましては戦時災害援護法を参議院に提出していることを、この際明らかにしておきます。
 質問の第二は、原爆が戦時国際法に違反する点であります。
 昨年十月二十日に提出した質問主意書において、わが党の大原議員が「広島、長崎両市に対する原爆の投下は、国際法自体――少なくとも、「国際法の精神」に違反する違法行為であると考えるかどうか。」とただしているのに対して、政府は、答弁書の中で「広島市及び長崎市に対する原子爆弾の投下は、国際法違反であるとはいい切れないが、国際法の根底にある人道主義に合致しないものであるとの意味において国際法の精神に反すると考えている。」と述べております。違反であるとは言い切れないが、国際法の精神に反するとはどういうことなのか、伊東外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
 なお、昭和二十年八月十日の日本政府としてアメリカ政府に対する抗議の中で、「全人類および文明の名において米国政府を糾弾する」としております。また、これまでの国会論議の中でも、政府は、原爆は国際法で禁止された毒ガス以上の非人道的兵器であることを認めて、戦時国際法の精神に違反するという見解に同意していることとの関連も含めて答弁をいただきたいと思います。(拍手)
 質問の第三は、昨年十二月十一日に園田厚生大臣に出された原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見書についてであります。
 この意見書は、切実な被爆者の願いを十分に参酌したものとはなっておらず、被爆された多くの人々からは不満の声がたくさん出されていることはまことに遺憾であります。
 この意見書の「原爆被爆者対策の基本理念」において、「原爆被爆者の犠牲は、その本質及び程度において他の一般の戦争損害とは一線を画すべき特殊性を有する「特別の犠牲」」――「「特別の犠牲」であることを考えれば、国は原爆被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って被害の実態に即応する適切妥当な措置対策を講ずべきものと考える。」と述べていますが、この「特別の犠牲」「広い意味における国家補償の見地」「被害の実態に即応」の三点について、政府の提出法案では、法の目的や具体的内容について特に顕著な改正がなされていないのはなぜか、園田厚生大臣の御見解を伺いたい。(拍手)
 さて、私はこの際、渡辺大蔵大臣にも御質問しておきたいことがあります。
 「広い意味での国家補償」と言うからには、せめて所得制限の撤廃ぐらいはやらなければなりません。鈴木内閣は、社会保障面で、所得制限を強化して該当者を締め出す傾向にあることはまことに遺憾でありますが、被爆者については、年々所得制限が緩和され、残り四%となっております。厚生省の考え方も、所得制限を撤廃しなければ筋が通らないというふうに聞いております。金額的にもわずかで、むしろ大蔵省はメンツにこだわっているのではないか、ぜひ再考すべきであると考えますが、明快な御答弁をいただきたいと存じます。(拍手)
 次に、この意見書は、死没者への弔慰金、遺族年金の支給について、「同胞の心情として、きわめて当然」としながらも、一般戦災者との均衡に留意すべきこと、国民的合意の必要なことを挙げています。
 そこで、厚生大臣にお伺いしたい第一点は、この意見書では、弔慰金、遺族年金の支給に関して、何回読み返してみても否定したものではないと考えるが、厚生大臣はどうお考えになりますか。
 第二点として、国民的合意が必要というが、悲惨な原爆投下によって終戦が早められ、いわば三十数万死没者の犠牲の上に今日の平和が打ち立てられた経過から見て、戦後直ちに被爆者援護法が制定されていれば当然この種の意見は出なかったはずであり、政府の放置責任は重大であります。とかく戦争体験が風化しつつある今日、この意見書の評価が低いのもこの点にあるのではないかと考えますが、所見を承っておきたいと存じます。(拍手)
 質問の第四点は、被爆二世または三世に対する考え方についてであります。
 被爆者の問題とともに重要なのは、被爆二世または三世の問題であります。被爆者の場合は、その実態を確認しながら対策を立てられるわけでありますが、二世または三世の場合には、どのような形で、どのような影響が出てくるか、非常に不安な状況のもとで生活しなければなりません。しかも、医学的に見ても十分な解明がなされていない現状であることから、多くの課題があると思います。
 昨年四月の第九十一国会で、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律に対する附帯決議において、「被爆者とその子及び孫に対する放射能の影響についての調査、研究及びその対策について十分配意するとともに、二世の健康診断については、その置かれている立場を理解し、一層の充実を図ること。」となっておりますが、この附帯決議を具体的にどのような形で対策を立てておられるのか、園田厚生大臣の御見解を伺いたいと思います。
 次に、質問の第五点は、認定被爆者の問題についてであります。
 本年二月二十三日、長崎市の被爆者から出されていた認定被爆者の申請を厚生省は却下されました。この人は、被爆のとき七歳であり、長崎の爆心地から一・三キロメートルのところにおりました。当時一五〇ラドの放射線を浴び、白血球二千六百、足の骨は子供のときのままであります。こんな状況であっても却下されるのであります。疑わしきは認定するという基本姿勢が全くなく、むしろ認定したくないという姿勢でやっているのではないかと疑いたくもなります。認定制度は手続が煩瑣で、被爆者ふるい落としの役割りを果たしている現状を、園田厚生大臣はどう考えておられるのか。放射能に閾値はないという見地から廃止すべきではないかと考えますが、御見解を伺いたいと思います。(拍手)
 最後に、私は、わが党初め野党六党から提案された原子爆弾被爆者等援護法は、現状において、被爆者を援護するためのぎりぎりの現実に即した法案であると考えます。日本国民であれば、だれでも賛同するものであると考えますので、この際、政府提案に係る法案を撤回され、野党六党提出の原子爆弾被爆者等援護法案に賛成されることを強く要求し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#27
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 原爆被爆者を初めとする戦争犠牲者に対して、軍人軍属等と同様な国家補償をすべきではないかとのお尋ねでございます。
 私は、さきの大戦では、国民のすべてが何らかの意味で犠牲をこうむっておりますので、これを完全に償うということは、残念ながら不可能ではないかと考えております。わが国は、国民の一人一人が戦争で受けた痛みと苦しみを乗り越え、今日の平和と安定を築き上げてきたのでありまして、いま改めて戦後処理問題を見直すことは、かえって新たな不公平感を生み出すことになるのではないかと思います。戦争により国民のすべてが何らかの形で受けた犠牲の中でも、原爆被爆者の方々の犠牲がきわめて特殊性の強いものであることは申すまでもありませんが、国の施策として、被爆者に対して弔慰金、遺族年金を支給するという考えにつきましては、やはり一般戦災者との均衡上困難であると考えます。
 残余の件につきましては、主管大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣園田直君登壇〕
#28
○国務大臣(園田直君) お答えいたします。
 原爆基本問題懇談会の趣旨が改正法案に盛ってないじゃないか、こういう御意見でありますが、この懇談会の結論は、国家補償の理念を明記しながらも、その国家補償には幾つもの条件が付されております。したがいまして、その中の問題を全部、法律案の目的の中に入れることはなかなか困難でございます。したがって政府としては、原子爆弾小頭症手当に係る所得制限の撤廃、医療特別手当その他の手当の創設、引き上げを行ったわけでございます。
 二番目の弔慰金、遺族年金の問題でありますが、おっしゃるとおり、懇談会はこれを否定しておるとは私は思いません。ただし、一般戦災者との均衡上「国民的合意を得ることはむずかしい。」と指摘されておりまして、政府としても同様に考えておりますので、慎重に扱っておるわけであります。
 被爆者の二世、三世の問題でありますが、ただいまのところ、有意な遺伝的影響をつくっておるということは、学問的に結論が出ておりません。したがって、現在、二世、三世に対し医療費や各種手当の支給等の施策は考えておりませんが、二世の中には健康面の不安等を持っておる方が少なくありませんので、五十四年度から原爆放射線の影響に関する研究の一環として、希望者に対し健康診断を実施をしておるところでございます。
 認定制度について御意見がありましたが、これは御承知のとおり、原爆医療審議会の専門的な意見に基づいて行っているところでありまして、原爆放射線による健康障害について特別の措置を講ずる上では不可欠の問題でありますから、これを廃止したいとは考えておりません。しかしながら、いま御指摘のような、認定の仕方が冷たい、ふるい落とす目的ではないかなどと言われないように十分注意をして、この認定を頼むつもりでございます。(拍手)
    〔国務大臣伊東正義君登壇〕
#29
○国務大臣(伊東正義君) お答え申し上げます。
 広島市及び長崎市に対する原爆の投下は、慣習国際法あるいは条約等の実定法上の厳密な法律論として申し上げますと、これは国際法違反であると言うことはできないわけでございます。しかしながら、このような原爆投下は、国際法の根底に流れております基本思想の一つである人道主義に合致しないという意味合いにおいては、国際法の精神に反するものであると考えております。
 なお、原爆の投下は、老幼婦女子を含む広い範囲にその害が及ぶ、人道上きわめて遺憾な事態を生ぜしめたものでありますので、交戦状態にありました昭和二十年の八月十日当時に、これに強く抗議したことはまた当然であると思うのでございます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#30
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えをいたします。
 原爆被爆者の所得制限、これは国家補償というなら全部撤廃しろ、こういうことでございます。
 しかし、原爆の被爆者と言ってもいろいろ障害の程度が実はございまして、これらにつきましては原爆被爆者基本問題懇談会、これの御意見を徴しまして決めておるところでございます。
 ただいま厚生大臣からお話があったように、近距離被爆等によって受けた重症な方、こういうような方等につきましては、原爆小頭症患者あるいは医療特別手当をもらっている方、これはもう青天井で所得制限なしということにしたわけでございます。
 そのほか、ともかく原爆に関係はありますが、かつて原爆症の患者であったとか、あるいは原爆関連の疾病患者で健康管理手当をいただいておる、それから二キロ以内の被爆地におったが、別に原爆関係の症状は直接ないという方についてはいろいろな手当が出ておりますが、これについては引き上げまして、六百五十六万円という家族四人での制限があったものを、今回は七百六万六千円ということに引き上げた結果、所得制限があると言っても、ほとんど大部分の方は所得制限がないと同じような状態にしたわけでございます。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#31
○議長(福田一君) 平石磨作太郎君。
    〔平石磨作太郎君登壇〕
#32
○平石磨作太郎君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま提案のありました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、若干の質疑を行うものであります。
 終戦後三十有余年を経た今日、第二次大戦の傷痕はややもすれば忘れられがちでありますが、しかし、戦争犠牲者の処理問題に限っては、いまなお戦後は終わっていないと言われております。原爆被爆者の援護問題も、実はこの例にほかならないのであります。
 初めに、鈴木総理に対し、お伺いいたしたい。
 瞬時に、しかも無警告、無差別に三十万人に上るとうとい人命を奪い、広島、長崎の両市を壊滅させた原子爆弾が投下されてから三十五年の歳月を経ております。言うまでもなく、この原子爆弾は、人類が初めて経験した強力かつ残虐な大量殺戮兵器であり、過去のいかなる戦争災害にも見られなかった惨状をもたらしたのであります。
 幸いにも生命をつなぎとめ得た被爆者は、いまなお一様に被爆障害におびえ、現に放射能障害に呻吟し、死と直面している被爆患者も少なくありません。被爆者は、身体的な受傷はもとより、生活上、一般の戦争被害者よりも不安定な状態に置かれ、さらに、今日に至るまで社会的、精神的な損失と苦痛に耐えてきたのであります。
 こうした背景の中で、被爆者の悲願が、国家補償の精神に基づく被爆者援護法の制定、実現にあったことは、総理もつとに御承知のとおりであります。
 私は、国際法の精神に反し、戦闘員、非戦闘員を問わず、無差別に殺戮を行った原子爆弾投下の違法性と投下責任の追及は避けて通れないことであると考えるものであります。唯一の原爆被災国として、世界に対し、平和と核廃絶を主張する立場からも、そのあかしとして国家補償の精神に基づく援護法の制定を目指すべきであると考えるものであります。
 また、本院社会労働委員会においても、五十二年改正以来、その附帯決議において国家補償の趣旨が述べられているのであります。
 また、原爆基本懇の意見でも、限定的ながら被爆者救済を「特別の犠牲」に対する広い意味の国家補償として認めている以上、その補償義務を明確に示す援護制度を新たにつくるべきであると思います。総理の御所見を承りたいのであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 次に、厚生大臣に対し、お尋ねいたします。
 昨年十二月の厚生大臣の諮問機関である原爆被爆者対策基本問題懇談会からの報告は、意見と呼ばれるものでありますが、本改正案策定に当たってどのように反映されたのか伺いたいのであります。
 この意見では、「被爆者犠牲は、本質、程度において他の一般の戦争損害とは一線を画すべき特殊性を有する「特殊の犠牲」である」と述べ、さらに「国は被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って被害の実態に即応する適切妥当な措置対策を講ずべきである」と述べております。本改正案のいずれの部分を指して、国家補償の見地に立つ適切妥当な措置をとったと言われるのか、御説明をいただきたいのであります。
 ただいまの提案理由を聞く限り、私は、最も重要な、そして被爆者が切実に要求していた、過去、現在、未来にわたるいわゆる三つの保障は見当たらないのであります。意見が述べているように「結果責任」から「相当の補償」を国が行うものである以上、「国家補償の精神に基づく」という文言を本法案の目的に明記すべきであります。
 さらに、その内容として、現行特別措置法における各種手当を年金として整理統合し、また、遺族に対しては特別給付金を支給すべきだと考えますが、厚生大臣の御見解を承りたいのであります。
 第三に、基本懇の意見には、国と特殊な法律関係にあった旧軍人軍属等に対する援護施策と同一視して被爆者対策を行うことはできないと言われております。被爆者には、国との身分関係がないため、法律論としては無理があるという趣旨であります。
 しかし、未帰還者留守家族等援護法においては、未帰還者が置かれている「特別の状態」にかんがみ、国との身分関係にない民間人に対する国家補償の措置がとられており、基本懇は、一般戦災とは比較にならない被害をもたらした特異な爆弾をもって生じた「特別の犠牲」であると言われております。このことを考え合わせれば、たとえ国との身分関係がない被爆者についても、国家補償することに合理的理由がないとは言えないと思うものであります。厚生大臣の御見解を賜りたいのであります。
 また、被爆者対策を完全な国家補償とすることに国民的合意は得がたく、かつ社会的公正が確保できないとありますが、一般被災者も、原爆被爆者に対する国の援助をこれまで是認してきております。特に被爆という特殊性にかんがみ、対策を手厚くすることに国民は反対するものではないと思われます。
 仮に巷間言われるような戦争風化の兆しがあるとしても、それは戦後三十六年を経過して世代も大きく変わり、戦争や原爆の悲惨さに対する理解が希薄化するとしても、日本国民に残した悲惨な傷跡はいつまでも消え去ることはないと考えられます。したがって、それをもって短絡的に、断定的に国民的合意が得られないとする考え方には納得しがたいのであります。今日、現行原爆二法では十分な施策が期待できないと言わなくてはなりません。いまこそ国の責任を明確にすべきであります。あわせて御答弁をお願いいたします。(拍手)
 第四に、基本懇の意見では、被爆を特別犠牲としておきながら、かつてわが国政府が講和条約において放棄した損害賠償請求権についての責任については否定的見解をとっていますが、これは重大な矛盾であります。それでは何ゆえ国家補償と言うのか、理解できないのであります。この点、厚生大臣はいかようにお考えか、お答えをいただきたいのであります。
 また、政府は従来、被爆者対策を特別な社会保障であると説明されてきたのでありますが、法の目的に国家補償の文字を明記できないのであれば、政府の被爆者対策は依然社会保障のエリアで対処することになると理解してよろしいか、それとも、特別措置法の性格はこれまでとは異なるものだとの御見解に立たれるのか、あわせてお答えをいただきたいのであります。
 第五に、被爆者対策を、これまでのように特別なという表現をもって社会保障施策の領域で対応していくのであれば、たとえば、老齢福祉年金等は所得によって支給制限がありますが、被爆者対策は税額を基準にして対象を定めております。この理由がどこにあるのか、理解に苦しむところであり、また、所得制限の撤廃はできないものかどうか、あわせて御説明をいただきたいのであります。
 また、これまで特別手当、健康管理手当、保健手当等の給付水準を設定するのに、老齢福祉年金を基準にして決定しており、たとえば特別手当、健康管理手当は老齢福祉年金の一・五倍、保健手当は老齢福祉年金の引き上げ幅の二分の一というように行われていますが、この根拠を示していただきたい。
 第六に、原爆被爆者介護に関連して、家庭奉仕員制度について伺います。
 今年度予算において、被爆者介護に携わるホームヘルパーが五十人減員となり、現在員が十三人となっております。この減員の主な理由はどこにありますか。人を減らして被爆者へのサービスの低下につながりませんか。お尋ねをいたします。
 一方、老人、身障者関係のホームヘルパーにしても、全国三千二百五十五市町村における事業量は年々増加しているにもかかわらず、ホームヘルパーの人員は年々増加措置が鈍化しております。外国と比較しても、人口十万人に対して、ノルウェーが八百五十三人、オランダ六百三十六人、イギリスが二百三十四人、これに対しわが国は十一人であり、政府は在宅対策を強調しておりますが、このような介護体制で在宅看護及び相談業務は十全と判断されておられるのかどうか、お尋ねをいたします。
 また、ホームヘルパーの処遇にも問題があります。すなわち、ホームヘルパーの勤務実態は常勤であるにもかかわらず、いまなお全体の一割以上が非常勤取り扱いとなっているのであります。手当にしても、今年度は八・六%アップで月額十万五千六百円と引き上げられたものの、活動費はわずかに月額二千五百円の据え置きであります。また、常勤ヘルパーと言っても、その処遇は千差万別であり、政府は、社会福祉施策の推進に当たり、ホームヘルパーの役割りをどのように評価し、また位置づけられておられるのか。ホームヘルパーの身分の確立についてどのようにお考えになるのか、あわせて御答弁をいただきたいのであります。
 第七に、生活保護法における収入認定についてであります。
 被爆者に対する諸給付について、その生活実態から見て、生活保護の収入認定からは除外することを検討すべきであります。収入認定についての本院社会労働委員会の附帯決議もあります。
 この点どのように検討せられたか、説明をいただきたいのであります。
 最後に、戦後三十六年を経ながら、いまなお戦争後遺症が随所に見受けられ、その意味で戦後はまだ終わっていないと思うのであります。その一つは、中国残留孤児問題であり、また、未帰還兵士の調査、さらには遺骨収集及び墓参問題などが山積しております。
 大臣は、この戦後処理問題に対し、どのような決意で当たられるか、所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#33
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 原爆被爆者についての対策といたしましては、政府は、従来から原爆医療法及び原爆特別措置法によりまして、積極的に所要の措置を講じてまいったところであります。また、先ほどの趣旨説明にございましたように、今回さらに一段とその充実を図るため、法改正をお願いしているところでありまして、被爆者の方々を思う心情におきましては、平石議員のお考えに劣るものでは決してございません。しかしながら、被爆者対策を国家補償という観点に立っての被爆者援護法という形に改めることにつきましては、一般戦災者との均衡という点から見て困難であると考えております。(拍手)
    〔国務大臣園田直君登壇〕
#34
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 基本懇の意見が本改正法案に入っていないじゃないか、こういう御意見でありますが、「広い意味における国家補償の見地」に立って「近距離被爆者に対しては、被爆の実態に即した各種手当の支給等に努力」すべきだとする基本懇の意見を踏まえて、医療特別手当及び原子爆弾小頭症手当の所得制限の撤廃あるいは手当の新設等をやったところであります。
 法律の目的に「国家補償の精神に基づく」という文言を明記すべきではないか、こういうことでありますが、先ほども申し上げましたとおり、広い意味の国家補償の理念でありますが、幾つかの条件が付されておることから、その内容をすべて法律の目的の中に規定することはなかなか困難でございます。
 各種手当を年金化してはどうだということでございますが、遺族に対する弔慰金を支給することについては、一般戦災者との均衡上困難であると指摘をされております。なお、手当と年金については法律上の差はほとんどないものと考えておりますが、各種手当を年金とすることについては、なお検討したいと考えております。
 国との身分関係がない被爆者についても国家補償することに合理的理由があるのではないか、こういうことでありますが、国との身分関係の有無と国家補償とが直接関係がないことは御意見のとおりであります。しかしながら、国から留守家族に手当が支給されることとなっておる未帰還者が置かれておる「特別の状態」と、原爆投下による「特別の犠牲」とは、本質が異なっておると考えますので、同様の取り扱いはなかなか困難であると考えております。
 被爆者対策を完全な国家補償とすることについては国民的合意が得られるのではないか、こういう御意見であります。
 基本懇の意見書は、原爆被爆者対策の基本的あり方について、「他の戦争被害者に対する対策に比し著しい不均衡が生ずるようであっては、容易に国民的合意が得がたい」と述べる一方、戦争による一般的な犠牲については、「およそ戦争という国の存亡をかけての非常事態のもとにおいては、国民が、その戦争によって何らかの犠牲を余儀なくされたとしても、ひとしく受忍しなければならない」と言っておるわけであります。
 講和条約における損害賠償請求権の放棄と被爆者対策の国家補償の問題でありますが、基本懇の意見では、「広い意味における国家補償」は「原爆被爆者が受けた放射線による健康障害すなわち「特別の犠牲」について、その原因行為の違法性、故意、過失の有無等にかかわりなく、結果責任として「相当の補償」は認めるべきだという趣旨」であり、これは講和条約において放棄した損害賠償請求権とは本質的に異なるものと考えております。
 被爆者対策は依然社会保障と考えるかという意味の御意見でありますが、基本懇から、御承知のとおり、単なる社会保障制度ではなく、「広い意味における国家補償の見地に立って講ずべきである」との意見をいただいておりますので、政府は、これを尊重しながら検討してまいりたいと思います。
 被爆者対策を特別の社会保障と言うのであれば、所得制限を税額を基準に行っている理由は何か、こういう御質問でありますが、これは所得税額は、その者の収入の多寡ばかりでなく、扶養親族数等の、その者の置かれておる種々の状況を勘案した後の数値であり、また、実務的にも税額証明書によって確実に把握できるからでございます。
 各種手当の所得制限撤廃の問題でありますが、被爆者に対して支給される医療特別手当及び原子爆弾小頭症手当については、所得制限を行わないこととしております。しかし、その他の健康管理手当、保健手当等については、その受給対象者は、現に健康障害がないか、またはあるとしても放射線障害との関係が間接的でありまするので、所得制限を撤廃することはなかなか困難であります。
 各種手当の給付水準を老齢福祉年金を基準にしておる根拠、これは、各種手当を支給する目的が被爆者の福祉の増進を図るということでありますから、四十八年以来、受給者の大半を占める健康管理手当の額と老齢福祉年金の額を同一とすることとしたものであります。また、各種手当の額は被爆者が受けた原爆放射線との関連を中心に定めております。
 家庭奉仕員が五十六年補助対象を五十人減らした、こういうことであります。これは、五十六年度で被爆者家庭奉仕員派遣事業について補助対象を減らしたのは、地方公共団体で、日常生活の世話が必要な被爆者に対しては、ほとんど老人家庭奉仕員の派遣により適切に対応がなされておるためであり、これによってサービスが低下するとは考えておりません。
 ホームヘルパーの増加措置が下降しておる、こういうことでありますが、各都道府県の配置需要を踏まえ毎年増員を図ってきたところであり、五十五年百人増、五十六年百人増の一万三千三百二十人を予算化しております。この人員をもって昭和五十六年度の配置要望を満たすとともに、家事介護に関するサービス及び相談助言に関するサービスの需要に対応しておるものであります。
 政府は、社会福祉施策の推進に当たってホームヘルパーの役割りをどう考えておるか、なお身分法の制定、こういう御意見でありますが、日常生活に援護を要する老人でも、住みなれた家庭や地域で生活を維持することができるように、各種の在宅福祉施策の充実に努めていくことが肝要でありまして、中でも、家庭奉仕員派遣事業については在宅福祉施策の中心的施策をなすものと考え、一層の充実を図る所存でございます。
 御指摘の身分法の制定については、必要性、内容等について種々検討を加える必要があり、今後関係方面の意見も聞きながら慎重に検討していきたいと考えております。
 被爆者に対する手当は生活保護の収入認定から除外すべきではないかという御意見であります。
 この問題、各種手当については、医療手当等、慰謝激励を目的とする手当は、従来から収入認定除外をしておるところでありますが、特別手当は認定患者の生活援護のために支給されるものでありますから、最低限度の生活維持のために活用すべきものとして収入認定しているところであります。
 次に、戦後の問題で、中国の残留孤児の問題、それから未帰還者の問題、遺骨収集の問題なお北朝鮮からの日本人妻の里帰りの問題等、いまなおたくさんの問題が残っておりますことはまことに残念でございます。今後とも一生懸命努力して、この解決に全力を尽くす所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#35
○副議長(岡田春夫君) 小渕正義君。
    〔小渕正義君登壇〕
#36
○小渕正義君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま提案趣旨説明がありました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに厚生大臣に質問を行うものであります。
 昭和二十年八月六日、九日、広島、長崎に投下された原子爆弾は、一瞬にして三十万余の人命を奪い、両市をさながら死の町と化したのであります。まさに、原子爆弾は人間の尊厳、人間そのものを根底から破壊したのであります。私は、このような原子爆弾投下は、国際法に違反するとともに、人道上許されざる行為であると断ぜざるを得ません。
 原爆投下以来三十数年を経た今日、三十四万余人の被爆者は、いまなお原爆後遺症に苦しみながら懸命に生きているのであります。そうして、これら全被爆者が昭和三十一年以来要求し続けてきたのが被爆者援護法の制定であったことは周知の事実であり、この悲願を実現させることこそ政治のなすべき重要な使命であります。(拍手)
 昨年末答申されました原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見書に対し、被爆者団体は「広島、長崎の原爆による残虐無比の被害と、その後の被爆者の苦しみを全く理解していない。われわれは激しい憤りを持ってこれに抗議する」との声明を発表し、援護法の早期制定を目指して粘り強い運動を展開しています。
 総理は、この被爆者の長い間の悲痛な叫びを一体どのように受けとめておられるのか、率直なるお考えを示していただきたいと思います。(拍手)
 次に、お尋ねいたします。不幸な第二次大戦で国内が戦場となり敗戦となった国、ドイツの戦後処理であります。
 西ドイツに限って見ますならば、四百万人が戦死し、二百八十万人の民間人が戦争犠牲者として死亡したと言われていますが、この西ドイツでは、一九五〇年には戦争犠牲者援護法が制定され、その後数次の法改正によって、戦闘員、非戦闘員を問わず、戦争で受けた犠牲に対し、国家の責任において補償、救済等の処置がとられております。特に追放や空襲によって失われた資産はもちろん、通貨制度改革による私的な損失をも含めて千三百億マルクより千四百億マルクが支出され、資産損害七百五十万件、家具損失補償約九百万件が処理されたと伝えられています。
 同じ敗戦国であり、わが国同様戦後の驚異的経済発展を実現した、数年前までの保守党政権下にあった西ドイツのこの政治を見るとき、同じ保守党政権であって、しかも世界唯一の原爆被爆国であるわが国の現状はまことに恥ずかしい限りであり、これこそまさに政治の怠慢と断ぜざるを得ません。(拍手)
 私は、被爆者援護法制定の運動が、わが国の戦後政治のあり方を問われているのではないかというふうに言わざるを得ないのであります。いまこそ政府は、みずからを省みて、自民党政治の後進性を打破して、被爆者の声を厳粛に受けとめ、名実ともに国家補償に基づいた援護法の制定を図るときでありますが、総理の明確なる見解をお願いするものであります。(拍手)
 次に、意見書では、国家補償の考えを採用する一方、被爆者の最も強い政策要求である弔慰金や遺族年金の支給を認めていません。私は、このような意見が出されたことを非常に残念に思っています。
 最近では衝動的通り魔による殺人等によって発生した被害に対しても特別給付金が支給されるような今日の社会情勢の中で、国の責任で引き起こされた戦争によって、しかも原爆投下によって死亡した国民に対し、国が死者に対し弔意を表するのは当然ではないでしょうか。速やかに、政府は、被爆による死者の遺族に対して当面少なくとも弔慰金を支給すべきでありますが、厚生大臣の明確なる答弁をいただきたいのであります。
 また、意見書では、現在の施策の問題点として、画一的、総花的であることを指摘していますが、現行の施策はそのような事実はないと私は判断いたします。意見書で言う画一的、総花的施策と言われているのは、どのように受けとめられているのか、厚生大臣の見解を示していただきたいと思います。
 被爆者は、意見書で言う画一的、総花的施策の指摘が、現行施策の縮小につながるのではないかと非常に危惧しているのであります。特に健康管理手当が被爆者対策予算の六割を占めている現状から、見直しの対象になるのではないかと大変な心配をしております。健康管理手当は現行被爆者対策の重要な柱であり、むしろ充実強化を図るべきであります。私は、後ろ向きの見直しはあってはならないと考えますが、厚生大臣の決意を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 同時に、被爆者に対する現行の諸給付については、各種手当額の引き上げ、所得制限の撤廃を図るべきでありますが、これらの改善策について今後の具体的方針を明示していただきたいと思います。
 被爆後三十六年を経た今日、被爆者の高齢化が進み、病気や生活上の困難、精神的苦しみも一段と深刻化しています。このため、被爆者の相談業務の充実は、被爆者福祉サービス向上に不可欠であります。また、在宅被爆者が円滑なる日常生活を営めるようにすることも重要な課題であります。こうした現状にかんがみ、相談事業の拡大及び家庭奉仕員制度の拡充等について、政府は、どのような具体的方針で取り組まれるのか、その施策を明らかにすべきであります。
 さらに、被爆者が最良の医療が受けられるよう、長崎原爆病院の充実強化のための助成や、広島の原爆養護老人ホーム建設費の助成拡充などに対する政府の具体的方針を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 さらに、被爆による各種影響に関する調査研究が進められていますが、これらに関する今後の措置をどのように講じられようとしているのか、その具体策についての御答弁をお願いするものであります。
 次に、健康診断受給者証交付対象区域、一般に言う被爆地域についてお尋ねいたします。
 長崎の場合、被爆地域の指定が当時の行政区域単位に指定された関係から、現状は、爆心地より半径十二キロメートルの対象区域があるにもかかわらず、半径六キロメートル区域でも対象外地域もあり、著しいふぐあいを生じています。したがって、これらの是正を求める声は県民の世論とさえなっているのであります。この点に関しては、合理的基準が見出し得ない今日、現状の固定化は被爆当時の気象条件を考慮しても不合理と言わざるを得ません。このような地域是正についての厚生大臣の御意見をお伺いいたすものであります。
 最後に、いまさら私が申し上げるまでもなく、わが国は憲法において平和主義に徹し、世界の恒久平和を希求し、しかも世界唯一の原爆被爆国でもあります。人類の永遠の繁栄を希求し、核兵器廃絶を全世界に呼びかけるわが国が、唯一の被爆者に対して国家補償に基づく援護法の制定さえも実現していないような状況の中で、世界に対しどのような顔向けができるでしょうか。わが国が世界に対する平和主義のあかしとしても被爆者援護法は制定されなければなりません。二度と被爆者をつくらないという平和の保障こそ原爆被爆者の悲願でもあります。
 鈴木内閣は、速やかに本日提案されました全野党共同提案である原子爆弾被爆者等援護法案に対し、勇気と決断を持って賛同されることを心から期待し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#37
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、被爆者団体の運動について私の感想をお尋ねでございましたが、私は、世界で唯一の被爆国であり、核兵器の廃絶を願うわが国にとって、被爆者団体の方々の長年にわたる平和運動、被爆者運動はきわめて大きな意義を持っていると心得ており、その運動の趣旨をも踏まえ、今回法改正案を提案をして御審議をお願いしているところであります。
 次に、西ドイツの戦後処理についてお尋ねがありました。
 私は、西ドイツにおきましては、直接の戦争影響により障害を受けた一般戦災者に対しても援護措置が講ぜられていると承知しておりますが、御承知のとおり、西ドイツは国土の全体が戦場となったのでありまして、わが国の場合と同様に論じ得ない事情の相違があると思います。(発言する者あり)
 国家補償に基づく被爆者援護法を制定する意思があるかとの御質問につきましては、先ほどからお答え申し上げておりますように、一般戦災者との均衡上困難であると考えております。
 その他の御質問につきましては、厚生大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣園田直君登壇〕
#38
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 弔慰金の問題でありますが、先般からお答えしておるとおり、懇談会の結論は、一般戦災者との均衡上なかなか困難である、こういう意味でございます。しかしながら、惨禍をこうむって死亡した方々に対する配慮として、今回被爆者慰霊祭の補助を倍増、新たに遺族の慰霊祭出席旅費の補助等を行うことといたしております。
 基本懇の意見書が、画一的で総花的だと言っておる、こういう御意見でありますが、この意見は、必要の原則よりも公平の原則に重点が置かれ過ぎておるという趣旨だと私は理解をしております。
 健康管理手当の支給については、必要な被爆者に支給されるよう、制度の適正な運用を図りたいと考えておりますが、いまのところ、この見直しは考えておりません。
 各種手当の引き上げ、所得制限の撤廃の御意見でありますが、福祉年金等、他の公的給付との権衡を配慮しつつ今後とも努力をしてまいります。
 医療特別手当及び原子爆弾小頭症手当以外の手当については、所得制限をただいまのところ撤廃する考えはございません。
 三点についての御意見。一つは被爆者に対する相談事業の拡大、家庭奉仕員制度の充実。これは今年度の予算では、わずかではございますが対象人員を増員したところであり、家庭奉仕員派遣事業については、一般の老人家庭奉仕員制度との関連を考慮し、実情に即した運用を図ってまいりたいと存じます。
 長崎の原爆病院の整備については、五十五年度に五億円の補助を行ったところでありますが、今年度も引き続き補助を行いたいと考えます。
 広島の原爆養護ホームについては今年度補助を行いたいと存じます。
 原爆放射線の影響の調査研究については、研究所における調査研究の充実を図るとともに、新たに大学の原爆放射能医学研究所、原爆病院などとの共同研究を行うこととしております。
 長崎における被爆地域の修正の問題でありますが、これはいろいろ過去の実情があり、かつまた懇談会では、新たなる不均衡を生んではならぬという、やや否定的であって、なかなか困難ではありますが、実情をよく存じておりますので、私はできるだけ努力を続けたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#39
○副議長(岡田春夫君) 浦井洋君。
    〔浦井洋君登壇〕
#40
○浦井洋君 私は、日本共産党を代表して、原子爆弾被爆者に対する特別措置法の一部改正案について、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
 政府の提出した改正案は、医療特別手当、原子爆弾小頭症手当の創設や諸手当の引き上げを図ろうとする内容であり、確かに現行法の手直しであります。
 しかし、同時にそれは、政府が、国家補償の立場に立つ被爆者援護法の提案を拒否する態度を表明したものであり、長年にわたる被爆者を初め、広範な国民の要求を無視するばかりか、七八年の国会決議にも反するものであります。(拍手)
 私は、政府がこうした態度をとり続けることに強い憤りを持つとともに、原爆被害の特別に悲惨な実態について、一体総理はどう認識をしておるのか、改めて聞かないわけにはまいりません。
 一九七七年、NGO被爆問題シンポジウムでは、原爆被害の特徴について、第一に民衆に逃避の余裕、逃げる余裕を与えない瞬間奇襲性、第二に一定地域の全住民を殺傷する無差別性、第三に人間のみならず、あらゆる生物及び環境を破壊し尽くす根絶性、第四に人間生活の命、暮らし、心の全面に被害を与え、人間らしく生きることを奪った全面性、そして第五に被害の持続拡大性の五つの特徴があると報告をされています。現行法が、被害の特徴を放射線による健康上の障害にとどめていることの不当性は、きわめて明白であります。(拍手)
 総理は、原爆被害の実態と特徴をどのように認識しておられるのか、この際はっきりとお答えを願いたいのであります。(拍手)
 第二は、アメリカの原爆投下の国際法違反と日本政府の賠償請求権放棄の問題であります。
 政府は、これまで、アメリカの原爆投下に対して、国際法の精神に反するが、国際法違反とは言い切れないという、アメリカの国際法違反を免罪する見解を表明してまいりました。しかし、さすがに原爆が国際法で禁止をしておる毒ガス以上に非人道的な兵器であることは認めざるを得なくなっております。さらに、その使用方法においても、非防守都市である広島、長崎に投下されたものであり、しかも非軍事目標をねらい、非戦闘員に対する無差別攻撃であったことは明らかであります。
 だから、この際、アメリカに追随する卑屈な態度を改めて、広島、長崎に対する原爆投下が全く国際法違反であることを、本日、この席で明確に表明すべきではございませんか。(拍手)
 さらに、サンフランシスコ条約によって、日本政府は、アメリカに対する一切の賠償請求権を放棄をいたしました。賠償請求の道を閉ざした日本政府は、当然アメリカにかわって被爆者に賠償する責任があるではありませんか。この点についても、明確な総理の見解を伺っておきたいのであります。(拍手)
 第三の問題は、国の戦争責任と国家補償の問題であります。
 日本政府が太平洋戦争を引き起こし、その結果として被爆の惨禍が生じたものであることは、何人も否定し得ないところであります。被爆者たちが、国が責任を負い、被爆者を援護すべきであると要求しているのは当然であります。
 ところが、政府は、国との身分関係がなかったことを理由に国家補償の精神に基づく援護法制定を放置しておるのであります。しかし、問題は身分関係のあるなしではなしに、原爆の被害が存在をし、その原因が国にあるということであります。政府の見解は論理的に全く誤っており、全く不当であります。
 特に政府は、戦争の犠牲は国民が等しく受忍すべきであるという被爆者対策基本問題懇談会、基本懇報告を盾に、被爆者援護法の制定を拒んでいますが、総理は、この基本懇報告のいわゆる受忍論が、いかに国民から激しい怒りをもって批判されたか、よく知っておられるはずであります。
 総理、国の侵略戦争の結果、悲惨な原爆被害が生じたことに対し国が責任を負うべきであるということを、今日、この壇上で明確に答えていただきたいのであります。(拍手)
 次に尋ねたいのは、被爆後長年にわたって日本政府が被爆者を放置をし、その犠牲と苦しみを増大させた責任についてであります。
 先日広島市が出版した「広島新史」には、故都築正男東大教授の資料として、被爆者の治療法をアメリカ占領軍が発表を禁止した事実が明らかにされ、このため、広島の被爆者約七万人は助かるべき命を落としたと伝えられています。
 また、当時日本に派遣されていた国際赤十字の代表ドクター・ジュノーは、広島救援のために医薬品、食糧、病院再建の資材などをジュネーブに要請しようとしたが、電報の発信をGHQが許可をしなかった。さらに、GHQとの連絡委員会で日本側委員が、広島救援の必要はない、われわれが独力でやるとGHQに同調したからだと報告をいたしております。
 このほか、アメリカによって原爆被災映画など資料の没収、プレスコードによる報道規制、ABCCの運営など、主としてソ連に対して原爆の実態を秘密にするために、戦後も被爆者は犠牲にされ、日本政府は、こうしたアメリカの非人道的な政策遂行に追随、協力を惜しまなかったのであります。
 被爆後、原爆医療法制定以前の十数年間は、生き残った被爆者にとっては、最も心身の障害が進行をし、不安定な状態にあった上に、物資の不足、インフレの進行、治療費の自己負担により貧困に拍車をかけられ、多くの被爆者は治療も受けられず、塗炭の苦しみの中で亡くなっているのであります。
 総理並びに厚生大臣は、日本政府がアメリカの世界戦略に基づく占領政策に追随をし、長年被爆者とその家族の心身両面にわたる苦痛を拡大をし、持続をさせた責任を、いまこそ率直に反省をすべきであります。
 そのために、まず、直ちに政府の責任で原爆医療法制定以前の原爆による死没者の実態を調査をし、その遺族に対する援護措置をとること、そして、ABCCの資料を初め、いまだに公表されていない被爆の記録など、全資料の公開をアメリカに要求すべきであります。この点については、ひとつ厚生大臣の明確な答弁を求めるものであります。
 第五は、核兵器の全面禁止の問題であります。
 被爆者が援護法を要求している大きな理由の一つは、再び被爆者をつくるまい、核兵器のない平和な世界をつくろうという国民共通の願いの実現であります。
 これまで国会は再三にわたって、核兵器の製造、実験、貯蔵、使用に反対をし、全面禁止協定の締結を求める決議を行ってまいりました。ところが政府は、三年前の第三十三回国連総会で、核兵器を非核兵器国へ配備することを禁止した決議に反対したのに続いて、昨年の三十五回総会では、三十三回総会で棄権した核兵器不使用及び核戦争阻止の決議に今度は反対票を投じたのであります。これは、被爆者と国民の願いに背を向け、国会決議に反した行動であることはきわめて明らかであります。
 総理、この地球上から核兵器を一刻も早く廃絶をすることは、被爆国日本の国際的義務ではありませんか。それにもかかわらず、日本政府は国連でなぜあのような態度をとったのか、今後の国連決議に対する態度とあわせて、ひとつ明確にお答えを願いたいのであります。(拍手)
 最後に、私は、総理の深刻な反省とともに、国家補償の立場に立つ援護法制定への決断を求めたいのであります。
 広島、長崎に投下された原子爆弾は、一瞬にして数十万の人々を殺傷いたしました。そして、あの惨禍の中、生き延びたおよそ四十万人の被爆者は、苦しみと闘いながら生き続けてきたのであります。被爆三十六年を経て、大半の被爆者は高齢に達し、健康や生活への不安は一層深刻さを増しています。
 現在、被爆者と遺族の苦しみに対し、国家補償の立場に立つ援護法を制定するということは、被爆者の健康と生活を守るために急務であると同時に、被爆国である日本が、核兵器による惨禍を再び繰り返さないという決意を内外に表明する上でも、きわめて重要な意義を持っておるのであります。
 先ほど提案説明のあったように、私も提案者の一人でありますけれども、自民党を除く全政党が共同して、原子爆弾被爆者等援護法を提案をいたしております。
 鈴木総理、あなたは自民党総裁として、六党提案の被爆者援護法を今国会で成立をさせるように決断をし、真に国民の期待にこたえるべきではありませんか。私は、鈴木総理の決断を強く求めて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#41
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、第一問と第五問の、原爆被害についての私の認識と被爆者援護法についてのお尋ねでありますが、私は、第二次大戦によって、すべての国民が何らかの犠牲を余儀なくされた中にあっても、原爆被爆者の犠牲はきわめて特殊性の強いものであったと認識いたしております。
 このため、政府としては、従来からいわゆる原爆二法に基づき、被爆者の方々に対し健康診断及び医療の給付を行うとともに、その健康状態に応じ各種の手当を支給してきたのであります。また、今回の改正では一段と諸手当の充実を図っているところでありまして、したがって、野党各党の共同提案である原子爆弾被爆者等援護法案に賛成する考えはございません。
 原爆投下は国際法違反ではないかとのお尋ねでありましたが、従来から政府が述べてまいりましたとおり、原爆投下を国際法違反と言い切ることはむずかしいのではないかと思います。
 また、第二問と第三問の、政府は、米国に対して有する損害賠償請求権を講和条約によって放棄したのだから、政府が被爆者に対して損害賠償をすべきではないかとのお尋ね、及び国が始めた戦争によって原爆被害が生じたのであるから、国は損害賠償をすべきではないのかとのお尋ねでありました。
 いずれにつきましても、昨年十二月に提出されました原爆被爆者基本問題懇談会の意見書にも明らかにされておりますとおり、御質問のような法的責任が国にあるとは考えておりません。
 核兵器についての国連総会決議に対するわが国の姿勢が問題ではないかとの御質問でございました。
 わが国は、国連総会決議のそれぞれについて、その持つ意味合いを十分検討して投票態度を決定してきたところであります。御指摘の両決議案には、現実に存する国際軍事バランスを不安定にし、平和の維持、強化に資さないおそれがあり、また実現性にも乏しいとの判断のもとに反対投票をいたしたものであります。
 しかしながら、わが国は、申し上げるまでもなく過去の惨禍が繰り返されるようなことがあってはならないと考えており、軍縮委員会を初めとしてあらゆる機会をとらえて、包括的核実験禁止など、具体的かつ実現可能な核軍縮措置の促進を主張しているところであります。
 以上、御質問にお答えいたしましたが、残余は主管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣園田直君登壇〕
#42
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 御指摘の文献が公にされたことは承知しておりますが、日本の政府が被爆者の治療、救済をことさらに放置したとは考えられません。
 なお、ABCCの時代の被爆者に関する資料は、すべて現在の放射線影響研究所に引き継がれておりますが、引き継がれる以前に米国政府が持ち帰った資料が特定できるならば、外交ルートを通じ入手するよう努力をいたします。
 なお、死没者の調査の問題は、御承知のとおりなかなか困難ではありますが、原子爆弾被爆者実態調査等の一環として調査をいたします。(拍手)
#43
○副議長(岡田春夫君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#44
○副議長(岡田春夫君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  鈴木 善幸君
        外 務 大 臣 伊東 正義君
        大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君
        厚 生 大 臣 園田  直君
        運 輸 大 臣 塩川正十郎君
        郵 政 大 臣 山内 一郎君
        労 働 大 臣 藤尾 正行君
        国 務 大 臣 中山 太郎君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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