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1980/11/06 第93回国会 参議院 参議院会議録情報 第093回国会 社会労働委員会 第5号
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1980/11/06 第93回国会 参議院

参議院会議録情報 第093回国会 社会労働委員会 第5号

#1
第093回国会 社会労働委員会 第5号
昭和五十五年十一月六日(木曜日)
   午前十時十一分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         片山 甚市君
    理 事
                遠藤 政夫君
                佐々木 満君
                高杉 廸忠君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                斎藤 十朗君
                関口 恵造君
                田代由紀男君
                田中 正巳君
                福島 茂夫君
                村上 正邦君
                森下  泰君
                村田 秀三君
                安恒 良一君
                渡部 通子君
                沓脱タケ子君
                柄谷 道一君
                前島英三郎君
                山田耕三郎君
   衆議院議員
       修正案提出者   湯川  宏君
   国務大臣
       労 働 大 臣  藤尾 正行君
   政府委員
       労働大臣官房審
       議官       倉橋 義定君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
   説明員
       運輸省自動車局
       保障課長     渡辺純一郎君
       労働大臣官房労
       働保険徴収課長  春日原秀隆君
       労働省労働基準
       局監督課長    岡部 晃三君
       労働省労働基準
       局労災管理課長  小田切博文君
       労働省労働基準
       局補償課長    原  敏治君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  望月 三郎君
       労働省労働基準
       局安全衛生部労
       働衛生課長    林部  弘君
       労働省職業訓練
       局訓練政策課長  野崎 和昭君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(片山甚市君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。藤尾労働大臣。
#3
○国務大臣(藤尾正行君) ただいま議題となりました労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 労働者災害補償保険制度は、今日まで数次にわたり改善を重ねてまいりましたが、重度障害者その他の年金受給者等に対するきめ細かな配慮の必要性、関係制度の動向などにかんがみ、その改善について、かねてから労働者災害補償保険審議会において検討が行われてきたところであります。
 同審議会における検討の結果、昨年十二月、当面措置すべき制度の改善について労使公益各側委員全員一致による建議をいただきました。
 政府といたしましては、この建議を尊重し、必要なものを予算化するとともに、法律改正を要する部分について改正案を作成し、これを労働者災害補償保険審議会及び社会保障制度審議会に諮問し、それぞれ了承する旨の答申をいただきました。また、船員保険につきましても、同様な改正案を社会保険審議会及び社会保障制度審議会に諮問し、それぞれ同様の答申をいただいたところであります。
 これらの関係審議会の審議を経て、さきの第九十一回国会に労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を提出しましたが、衆議院で審議未了となったところであります。しかしながら、この法律案による制度の改善は、早急にその実現を図る必要があるため、再度提出することといたした次第であります。
 次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
 まず、労働者災害補償保険法関係の改正についてであります。
 第一は、遺族補償年金の給付額について、たとえば遺族一人の場合、現在、給付基礎年額の百分の三十五に相当する額を原則といたしておりますものを給付基礎日額の百五十三日分、すなわち給付基礎年額の約百分の四十二に相当する額とするなど、その引き上げを行うこととしたことであります。
 第二は、障害補償年金について、その受けた年金の合計額が一定額に達しない間に受給権者が死亡したときは、その差額に相当する額の一時金を当該受給権者の遺族に支給することとしたことであります。
 第三は、障害補償年金について、受給権者に対して一定額の範囲内で前払い一時金を支給することとしたことであります。
 第四は、年金たる保険給付等の額のスライドの発動要件について、現在は賃金水準が一〇%を超えて変動することを要することとしておりますが、この賃金水準の変動幅を六%を超えることで足りることとしたことであります。
 第五は、通勤災害に関する保険給付についても、これらに準じて措置することとしたことであります。
 第六は、年金受給者のために、厚生年金保険等と同様の年金担保融資制度を設けることとしたことであります。
 第七は、同一の事由についての労災保険給付と、それと重複する部分の民事損害賠償とを調整するための規定を整備することとしたことであります。
 第八は、最近における労働災害の発生状況にかんがみ、事業場ごとの災害率に応じて保険料を調整するいわゆるメリット制度の調整幅を拡大するとともに、その調整率の計算の基礎となる収支率の算定に関し技術的な改善を行い、労働災害の防止努力が的確に反映できるようにしたことであります。
 次に、船員保険法関係の改正について申し上げます。この改正は、船員保険の職務上の事由による保険給付の内容について、おおむね労働者災害補償保険法関係の改正に準じた改正を行うこととしたことであります。
 以上のほか、この法律案においては、その附則において以上の改正に伴う経過措置を定めております。
 なお、労働者災害補償保険法関係の施行期日は、スライド制の改善及び遺族補償年金の額の引き上げにつきましては、公布の日から三月を超えない範囲内において政令で定める日、保険料のメリット制度の改正につきましては、一般事業は本年十二月三十一日、有期事業は昭和五十六年四月一日とし、その他の改正事項につきましては同年十一月一日としております。
 また、船員保険法関係の施行期日は、労働者災害補償保険法関係の施行期日に準ずることとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
 なお、この法律案につきましては、衆議院において労災保険給付と民事損害賠償との調整規定並びにスライド制及び遺族補償年金額の改善の実施時期等に関し修正が行われたので申し添えます。
 以上でございます。
#4
○委員長(片山甚市君) 次に、本案につきましては衆議院において修正議決されておりますので、この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員湯川宏君から説明を聴取いたします。湯川宏君。
#5
○衆議院議員(湯川宏君) 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する衆議院の修正部分について、その内容を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、第一に、民事損害賠償を受けた場合の労災保険給付の調整については、労働大臣が労働者災害補償保険審議会の議を経て定める基準により行うこととすること。
 第二に、労災保険の年金給付等のスライド制の改善については、昭和五十五年八月一日から、遺族に対し支給する年金額の引き上げについては、昭和五十五年十一月一日から、それぞれ適用すること。
 第三に、船員保険の職務上の事由による保険給付についても、右に準じた修正を行うこと。
 以上であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
#6
○委員長(片山甚市君) 以上で説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#7
○高杉廸忠君 ただいま提案されました本法改正並びに修正の審議に際しまして、私は特に、海外で働く人たちの、被災労働者についての補償問題あるいは労働災害、安全等々の問題、さらに加えまして林業にかかわる振動病等について以下御質問をいたしたい、このように考えております。
 まずお聞きをいたしたいと思いますが、海外で働く労働者及び海外の地震あるいはまあ国内の地震等もありますけれども、被災労働者についての補償問題等々に関して、労災保険法のまず審議に当たりまして、最近問題になっている、海外で働いている労働者の災害補償問題についてお尋ねをいたしたいと思っております。
 最初に、海外で働いている労働者の地域別、職業別の実数はどれほどとなっているか、把握されていると思いますけれども、その数を示していただきたいと思います。
#8
○説明員(岡部晃三君) 労働問題が国際的な広がりを見せております現在、労働省といたしましては、海外派遣労働者の安全あるいは労使関係等に関心を抱いているわけでございます。在外公館等を通じまして、適宜情報の収集に努めているところでございますが、数的には残念ながら、いまのところ全体的な把握はしておらないところでございます。しかしながら、海外で働く日本人労働者の地域別にとらえた統計といたしましては、外務省の海外在留邦人数調査統計がございます。これによりますというと、海外在留邦人で、長期滞在者のうち商社、銀行、メーカー等の社員及びその家族の数は、昭和五十四年十月一日現在で、男子七万七千六百九十名、報道関係者及びその家族の数は男子六百二十名、男女合計千百七十四名と承知いたしております。これは、地域的にはアジア、北アメリカ、西ヨーロッパ、中近東等の順位と相なっております。
#9
○高杉廸忠君 いま数字が示されましたように、海外で働く労働者は相当の数となっていると思うんです。現実に戦争が行われている地域や地震等の起きた危険な地域にも、いまの地域別で見ましても、かなりの労働者がいるわけですね。こういう現状であります。
 すでに被災者となった者の労災法等の関係法令の適用状況、これについて伺うんですが、ひとつどういう実情になっているんでしょうか、海外での被災者の人たち。
#10
○説明員(原敏治君) 労災保険の海外派遣についての特別加入の状況を見てみますと、昭和五十四年度で事業場にして千二百二十事業場、加入労働者として一万五千五百八十二人になっております。
 給付状況を見てみますと、五十三年度の状況で新規の受給者、これは海外派遣労働者の中の受給者でございますが、百八十六人になっておりまして、その給付した費用は、年金部門を除きまして二億二千九百万円に達しております。
#11
○高杉廸忠君 次に、海外派遣の雇用関係についてお尋ねをいたしたいと思うんですけれども、雇用関係はどういうような形態になっているのか、これをまず説明をいただきたいというのが一つであります。
 それから、聞くところによりますと、契約内容があいまいであるとか、数年限りの短期雇用契約関係であるとか、あるいは労働者としての権利がなきにも等しいような状態にあり、雇用が不安定の上に労働条件等についても多くの問題点があると思いますが、その契約形態といいますか、雇用形態、実態についてはどういうふうになっているのか。下請関係等も請負契約等もあろうかと思いますけれども、その点どうなっているか伺いたいと思います。
#12
○政府委員(倉橋義定君) 海外への派遣労働者におきます現地の雇用関係の実態につきましては、必ずしも私ども全部を把握しておりませんが、一つには現地の企業、現地に設立されます企業との雇用関係にある者、さらには、それらの企業へ本社から、国内にある企業から派遣、出張という形で、雇用関係は本社にありながら現地の作業に従事する者、さらには、現地の企業に下請として働く者、いろいろ多種多様でございまして、全般的な雇用関係がどうなっているかということにつきましては、私ども十分把握いたしておりません。
#13
○高杉廸忠君 それでは次に、海外で働く労働者の労災適用について伺うんですが、先ほど、海外で働く労働者に対する労災保険の適用については特別加入、こういうようなことで伺いました。この特別加入制度ですが、これは任意加入でありますね。同じような労働者が――任意制度でありますから、特別加入をしてない労働者というのもかなりいる、こういうふうに思うんです。
 そこで、同じ海外で働く労働者が任意加入、あるいはしていない、このことによって災害の場合の補償が得られない、こういう差別といいますか、現実にはあるわけですね。こういう特別加入となっているのに加入していない、この区別でどのぐらい、推計といいますか、できませんか、その数。
#14
○説明員(原敏治君) 海外派遣労働者の特別加入制度は、制度が発足いたしましてまだ日が新しいものでございます。発足いたしまして、五十二年度には一万人程度の加入者でございましたが、五十三年一万二千人、先ほど申しましたように五十四年は一万五千人という形で、次第に法の普及とともに加入者がふえていると私ども考えております。また、ことしからこの制度の通勤災害、海外での通勤災害についても適用が拡大される形になってきておりますので、そういう関係から、この労災保険の適用につきまして関心がだんだん高まってきているかと思います。私どもとしましても、さらに法の普及に努めまして、なるべく、海外派遣をいたします場合にはこの制度に加入していくように、勧奨をさらに進めていきたい、こういうふうに思います。
#15
○高杉廸忠君 ぜひこれは、海外で働く人たちがだんだん多くなってきているわけでありますから、任意加入そのものにも問題あろうと思いますけれども、労災保険の適用をやっぱり労働省としても積極的に、これはPRを含めてお進めいただきたい、これはお願いであります。
 それから、さらにお聞きをいたしますけれども、海外派遣の労働者については、派遣先の国の労災保険、またはこれに類する法の適用があるのかないのか、この点についておわかりでしたらお答えをいただきたいと思います。
#16
○説明員(原敏治君) 派遣先の国におきますところの労災補償の関係あるいは保険の関係は、それぞれの国によって千差万別でございまして、一律には申し上げられない実情にあろうかと思います。先進地域におきましては、当然条約の関係もございまして、あるいは各国とも外国人の労働者についても適用をしていくという形で扱っておりますので、すべての人に対して適用が行われているようでございます。ただ、後進地域になりますとその辺いろいろばらばらのようでございます。
#17
○高杉廸忠君 特に、これは労災保険に限らず、私は海外派遣の労働者に対するわが国における労働基準法とか、あるいは労働安全衛生法とか、こういう適用等についてもやはり積極的に進める必要があるんではないだろうか、こういうふうに考えているわけであります。
 そこで、やはり海外に出られた労働者の人たちの、安全と健康の確保を図ることが望まれているわけでありますから、これらの法律適用についても私は十分配慮をしていく必要があると、こういうふうに思っておりますが、この点はどうでしょうか。
#18
○政府委員(倉橋義定君) 海外で働く邦人の方々の労働安全または労働基準の遵守につきましては、われわれとしましては非常な関心は持っておりますが、わが国の法令が外国に及ぶということは、国際法の観点から言いまして無理があるわけでございます。したがいまして、私どもは行政指導を通じまして、日本国内にあります本社に対しまして、現地におきます産業活動または労働条件につきましては、極力国内におきます労働保護法規に準じた取り扱いをするよう指導してまいりたいと思っております。
#19
○高杉廸忠君 次に、天災地変による災害に関しましてお尋ねをいたしたいと思うんですけれども、天災地変の起きた場合の労災法の適用については、どういうような条件が必要とされるのか、まあ一般論、あるいは具体例について、もしわかりやすく説明いただければありがたいと、こう思っております。特に、まあ関東大震災のような大規模な天災の場合には労災保険の適用がなされないと、こう聞いているんですが、そうした場合の、じゃ一体理由、これがあるはずでありますから、この点もひとつ明確に示していただきたい、こう思っております。
#20
○政府委員(倉橋義定君) 地震等、天災地変に伴いまして労働者が被災をされたという場合の労災保険の取り扱いでございますが、一般の国民、住民を通じまして、当該地震によりまして被災する可能性、蓋然性は同じように労働者も住民もあるわけでございます。したがいまして、そういうような天災地変によりまして労働者が被災した場合におきましても、それは地域民として被災したものと理解せざるを得ないわけでございまして、一般的には業務上災害には当たらないというふうになるわけでございます。
 しかしながら、天災地変の中におきましても、そのつかれている業務の内容とか、当該地域の種々の条件、さらには被災時の労働者の置かれている状況等関連いたしまして、場合によりましては、その被災が業務上になる場合もあるわけでございますが、一般的に労働者が天災地変におきまして被災した場合は、地域住民の被災と同様に理解するということになっております。
#21
○高杉廸忠君 ちょっと念を押しますけれども、業務起因性があるかないかという点もきわめて重要な条件ですか。
#22
○政府委員(倉橋義定君) 一般的には、天災地変の被災ということが業務の起因性がないということでございますが、先ほど後段で申しましたのは、その職務の内容等によりましては、起因性がある場合も生ずるということでございます。
#23
○高杉廸忠君 それじゃ、その中に、たとえば天災地変による緊急事態、そういう場合に特命により被災地に行く、そういう場合の労働者についてはどうなんでしょうか。
#24
○政府委員(倉橋義定君) 災害が起きまして、その災害の措置をするために労働者が派遣されたと、重ねてそこで二次の天災地変が生じたと、そういうような場合におきましては私ども、その派遣されたことと当該受けた労働者の置かれている立場ということについては、業務起因性があるのではないかと理解していきたいと思っております。
#25
○高杉廸忠君 まあ大きな地震のときにはね、関東大震災のような、それはわかるんですけれどね。――じゃ、どのような小規模の地震、それならば労災保険が適用になるのか。それから、その業務命令が出されたか否かということ、これは地震等の場合の労災保険の適用の有無に関係する。その場合に、業務命令の内容とか、あるいは業務命令の不当性、まあ不当性といいますか、災害が予想されているにもかかわらず行きなさいと、こういう場合もあり得るわけでありますから、そういうこの不当性といいますか、違法性等も勘案されるのか。一般的に説明するとともに、私は具体的に、こういう事例ではこうですと、こういうような何か具体例を示していただくと非常にわかりやすいんですが、その点をひとつわかりやすく、こういう場合は適用します、こういう場合は適用しません、こういうような具体例でひとつ示してもらいたいと思うんです。
#26
○政府委員(倉橋義定君) まあ例を挙げますのは、非常に顕著な例は挙げられるわけでございます。
 たとえば、災害が起きて、その災害で埋もれた方を救出するためにトンネルに入ったと、重ねて地震が来て中で埋もれて死亡されたという場合につきましては、その救出のための仕事が業務によってなされたということである以上、それは業務になると思います。しかし、一般の工場、事業所におりまして地震が生じた、そういう場合、そこで死亡、負傷をしたという場合に、その方がたまたま住宅にいたり一般の道路上にいたというような場合でも、被災したであろうというような場合におきましては、当該事業所内において被災を受けましても業務上になるということはないと思います。
#27
○高杉廸忠君 じゃ、もう少し具体例があるともっとわかりやすいんですけれども、アルジェリアの地震の被災について伺うんですけれども、アルジェリアの地震で被災した労働者というのはどのぐらいつかんでおられるのか。それから労災保険の適用があったのかどうか。そして、もし適用がなかったとあれば、どのような条件が具備された場合に労災保険というのが適用されるのか。
   〔委員長退席、理事遠藤政夫君着席〕
 この辺を、アルジェリアの地震についてのみで結構でありますから、ひとつ具体的にお示しをいただきたいと思います。
#28
○政府委員(倉橋義定君) アルジェリアにおりまして日本の労働者の方が被災されたということにつきましては、私ども四名の方と承知しております。四名の中で特別加入をされている方は一名でございます。
 なお、これらの方々につきましては、いま現在、労災の申請が提出されておりません。したがいまして、被災の具体的事情が私どもまだつまびらかではございませんから、直ちにそれが業務上になるのか、さらには通勤その他に当たるのかどうか。それについては判断いたしかねるわけでございますが、新聞報道等によりました状況によりまして推測いたしますと、赴任後、まだ事業所に着任するかしないうち、ホテルで罹災されたというようなケースでございます。
 これらの問題につきましては、当該宿泊の状況等を十分精査いたしまして、業務上に当たるかどうかを判断をいたしたいと思っておりますが、
   〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕
いまのところ具体的にこれらのものについて適用があるのかどうかにつきましては、今後のいろいろな資料によって判断をするような考えでおります。
#29
○高杉廸忠君 私は、外務省から資料をいただきまして、在留邦人の居住地域での過去五年間に動乱とか天変地異の起きた場所というものの資料をいただいて、五十年からかなりあるわけなんですね。国によっては内戦があったり、五十一年の七月の中国における地震、ザイール、これは五十二年の三月でありますが、これは内戦。五十三年の十一月には御承知のようにイランにおける革命等等、内戦とかあるいは動乱とか革命とか紛争とか地震とか、この五年間でもかなりの国々のこうした天変地異あるいは動乱等が起きているわけでありますね。
 そこで、先ほども確認をいたしましたが、海外に働く方々がだんだん多くなってきている。しかも、そこで働く人たちは任意加入、特別加入というような制度でしかこれは適用されない。こういう問題が一つあります。しかもまた地震等の、あるいは動乱等でも言えると思うんですけれども、その適用についてもかなりの業務起因性を問われる、こういうふうな問題であります。私は、最終的にはやはりそれぞれ海外に行って働いて御苦労されているわけでありますから、これはやはり出先で起きた災害については、十分な補償をされるような形というものが望ましいわけであります。しかも、労働基準法あるいはわが国における労働安全衛生法、人の命を大切にするというような、そういう行政というものはこの際積極的に進めるべきであると思っているわけです。
 そこで、大臣にぜひひとつ、こういうような、いままで海外で働いている人たちがいまのような現状であります。この現状について、大臣はどういうふうにお考えになっているのか。あるいはまた、いま私が申し上げましたような――国の中でも労働基準法や労働安全衛生法や労災保険法の適用で、人の命や安全や災害の防止、こういうことでこの労働行政の推進強化が必要だと思っているわけですが、これらの海外派遣についての取り扱っている現状、それと今後大臣がどういうようなお気持ちでこれらについての充実をさせるか、この際大臣からお答えをいただきたいと、こう思っております。
#30
○国務大臣(藤尾正行君) お働きになられる方々の生命、身体の安全を守っていくということは、これは当然大事な、一番必要なことでございまして、海外にお働きになっておられると国内でお働きになっておられるのと、本来そこに差異はあってはならぬと私は考えます。しかしながら、私どもがいまこの問題を考えるに当たって考えなければなりませんことは、いずれにいたしましても災害がなくなるということが一番大事なことでございまして、災害が起こってから、その起こった災害に対しまする補償を、保険によって行うというようないまのやり方といいますものは、私は次善、三善の策であろう、かように考えるわけでございます。
 したがいまして、まず第一に災害を絶滅をする、それは海外であろうと国内であろうと。それを第一に心がけまして、そういった予防にもし効があるというような方法があれば何であろうとそれはとっていかなければならぬということが第一でございますし、不幸にいたしましてそのようなことが起こりました場合、保険という方法をいまとっておるわけでありますけれども、この保険の適用という問題につきまして、十二分にその適用の措置がとれまするような保険加入ということを広めていく、その努力も十分にやっていかなければならぬ、かように考えます。
#31
○高杉廸忠君 大臣からのお答えがいただけましたから、次に私は、労働災害の防止と労働安全対策等に関して伺いたいと思っているんです。
 労働災害は、御承知のとおりに年間百万件を超えているわけであります。このうち、三千人以上の労働者が死亡している現状であります。これは氷山の一角であると思います。古典的なハインリッヒの法則ということによれば、重大災害の一つに対して、災害が約三十倍、さらにニアミス――災害によらない災害とも言えるような底辺というのは三百倍、こういうふうに底辺は広く言われているわけであります。いま大臣が言われましたように、命を大事にしていく、健康を守る、そういうことが労働行政の私は基本的な課題であり、使命である、これは同感であります。しかし、災害の現状というのはきわめて遺憾な現状、実情であります。これは実態だとか今後の災害防止対策の基本姿勢、これを私は去る九十一国会の労働安全衛生法の本委員会における審議に際しても、安全なくして災害防止なしと、こういう立場でお尋ねをしたわけでありますが、こうした現状を踏まえ、実情を踏まえてのこれからの安全あるいは災害防止の基本について、まず伺うところであります。
#32
○国務大臣(藤尾正行君) お説のとおりでございまして、何といいましても災害を起こさないということが第一でございますから、起こさないためには、何といいましても安全を達成をするということが何よりも大事であるということだと思います。したがいまして、安全の徹底ということにつきましては、これはいかなる犠牲を払いましてもそれを実行するということが大事だろうと思います。
 いま御指摘のとおり、残念なことでございますけれども、今日なお年間の労働災害の方々の総数は百万を超え、そうしてそのうちの死亡者数は三千名を超えておるというようなことは、私どもといたしましても本当に恥ずかしい、こういう思いでいっぱいでございまして、そのような恥ずかしいことが私どもの施策によりまして、それがどんどんと減っていくということでありますならば、いかなる施策もそれに対して怠ってはならぬ、さように考えるわけでございます。
#33
○高杉廸忠君 大臣から姿勢についてお答えをいただきましたが、さらに私の方は掘り下げてみたいと思っているんですけれども、労働行政で労働災害のいまのような大臣の姿勢についてはわかるんですけれども、私は、労働安全衛生法や労働基準法に基づく徹底した監督とか行政指導というものがどうもなし得ないところに行政の実態、それに根本的に問題があるんではないだろうかと、こういうふうに認識をしているんですけれども、この点についてどういうような認識があるのか、これが一つであります。
 それから、いまの災害防止について積極的な姿勢についてはわかるんですけれども、災害防止の推進に当たって、どうも阻害要因というのが私もあると思っているんですけれども、一体阻害している要因というのはどこにあるのか、この点を明らかにまずしていただきたいと思うんです。
#34
○説明員(望月三郎君) いま、行政の姿勢につきまして大臣からお答えがあったわけでございますが、私どもも大臣の基本的な姿勢に沿いまして行政を進めているわけでございますが、行政体制が少し弱いんではないかというような御指摘だと思いますが、私どもも確かに限られた人員でやっておるわけでございまして、なかなか監督官がすべての事業場をすべて回るということは不可能でございます。しかしながら、やはり災害が多い業種、職種等が経験的にわかっておりますので、そういったものに対して、重点的に主体的能力を投入するという形で進めておるわけでございます。今後ともそういった実績を生かしまして、一人でも二人でも死傷者を減らす努力ということをじみちにやっていきたいと、こう思っておるわけでございます。
 また、第二の阻害要因がどこにあるかという点でございますが、この点につきましては災害の中身を見てみますと、その中で一番多いのが在来型の災害でございます。これは現場における労働者が、たとえば高い所から墜落する、転落するというような問題、それから機械に巻き込まれたり、すそを引っ張られたりというような、いわゆる在来型の災害が非常に多いわけでございます。この点につきましては、末端の管理監督者、現場の監督者というような者にまず朝の作業のスタート時点においてできるだけ、短時間で結構だから災害防止について注意を与えるということを徹底さしておるわけでございます。しかしながら、なお依然としてその注意が浸透しない場合もありますし、それを受けとめる労働者の側にもいろいろな、その日におけるコンディション等がございまして、非常に徹底しない面がございます。これらの点につきまして、私どもは年末及び年度末に向けて緊急災害防止対策というのを打ち出して、徹底的に災害防止に努めるということをやっていきたいと、こう思っております。
#35
○高杉廸忠君 この際、特に伺いますがね、さきの国会の労働安全衛生法の一部改正の審議に際して、改正によってトンネル工事等において重大災害が発生した場合に備えて、救護に関する措置が事業者に義務づけられて、救護の技術的事項を管理する者を置かなければならないということになりましたな。これは個々の事業者がこれを養成することはとてもできないんじゃないかと、こういうふうに思うんです。したがって、国として養成過程、管理者確保のための措置を講ずべきであると私は思うんです。こういうような具体的なことをやっぱりしていく、いかなきゃならぬと、こう思うんですが、その点についてはどういうふうに判断されますか。
#36
○説明員(望月三郎君) 先生御指摘のとおり、安全衛生法の一部改正の法律が六月二日に公布されまして、トンネル工事等、特に危険な工事を行う場合には救護に関する措置が事業者に義務づけられまして、救護の技術的事項を管理する者を選任しなければならないということになったわけでございます。このような救護の技術的事項を管理する者の確保等の対策につきましては、先生の御指摘のとおり、やはり何らかの形で国においても努力をしなきゃならぬと思いますので、今後とも十分検討いたしまして、有効な対策を講ずるように極力努めてまいりたいと存じております。
#37
○高杉廸忠君 こういうような点を具体的に進めることによって、やはり人の命、安全、これが守られるだろうと思いますから、ぜひひとつこれは国の責任で確保をしていただきたいと、こう思います。
 次に、振動病などを初めとする職業病等についてお尋ねをいたしたいと思うんですけれども、職業病の場合は特定の原因となる物質とか機械に長時間携わる作業などで発生していることが明白なんですね。したがって、その原因があらかじめはっきりしているケースというのは多いわけであります。こういうようなことがはっきりしているだけに、必要な措置というものを講ずれば防止できる、これはもうたくさんあると思うんです。医療においても、あるいは先ほど大臣からの姿勢についてお話がありましたとおりに、予防にまさる治療なしと言われている今日でありますから、災害についてもその予防対策を徹底をして、そして絶滅を期すべきである、こういうふうに私は考えるんです。職業病の発生については、使用者の過失責任を厳しく追及するようにすべきではないか、こういうふうに思うんですが、その点についてはいかがですか。
#38
○説明員(望月三郎君) 振動病等の労働災害あるいは職業病の原因は明らかだということでございますが、原因が明らかで対策も確立されておる職業性疾病につきましては、特に職業性疾病予防のための特別監督指導計画というのを私ども策定をいたしまして、監督指導を行っているところでございますが、職業性疾病予防のための監督指導の対策につきましては、御指摘のように、私どもも今後とも強力な推進をぜひとも図っていきたいと、こう思っております。
#39
○高杉廸忠君 私は先ほども申し上げましたが、九十一通常国会における労働安全衛生法の審議の際に、本委員会において特に徹底した労働災害防止対策の推進を要望いたしました。その後、私どもが要望したことを具体的にどういうように取り組まれましたか、この点をこの際お示しをいただきたい。同時にまた、衆議院の社会労働委員会で、労働災害の絶滅を期し、災害の予防、職業病の発生防止については附帯決議がされているわけです。こういう問題点がありますから、今後積極的にこれに取り組む必要がある、こういうふうに思います。この際、特に大臣にもお願いしたいんですが、来年度こういうような重点施策としていままで要望をされ、あるいは衆議院でも決議をされました事項について、積極的に具体的にどういうような来年度の諸施策をお考えでありますか、この際わかればひとつお示しをいただきたい、こういうふうに思います。
#40
○説明員(望月三郎君) 労働災害の絶滅を図るために、労働省といたしましては、五十三年度を初年度とする第五次労働災害防止計画を策定いたしまして予防対策を推進してきておるところでございますが、特に労働災害が多発している建設業の労働災害の防止対策の充実を図るために、さきの国会におきまして労働安全衛生法の一部が改正されましたが、さらに隧道の建設の作業における爆発火災の防止のために、労働安全衛生規則の一部改正を行ったところでございます。労働省といたしましては、労働災害防止計画の基本方針に沿いまして災害防止を推進してまいる所存でございますが、昭和五十六年度におきましては、第一に建設業における労働災害防止対策といたしまして、安全衛生教育の充実あるいは工事計画の事前審査体制の整備等の推進と、それから第二には、機械等による災害防止対策の推進、第三は、労働災害防止のための監督指導の強化、第四は労働災害防止団体による自主的活動の推進、第五は労働安全衛生融資制度の充実と、これらの施策を中心に対策の充実を図っていきたいと、こう思っております。
 なお、九十一国会の安全衛生法改正の際の附帯決議につきましては、三点ございますが、まず第一点は、建設事業者ごとの安全成績を把握し、これを労働災害の防止に資する制度につきまして、現在これを検討していただく専門家の人選を終わりまして、近く委員会を開催する運びとなっております。
 それから第二の附帯決議の点でございますが、建設労働者に対する安全衛生教育、健康診断等の徹底を図るための安全衛生に関する手帳交付制度につきましては、現在、建設業労働災害防止協会に委託をいたしまして、トンネル工事に従事する労働者への手帳の交付を含む試行を実施しているところでございます。
 それから第三点でございますが、労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント制度の活用につきましては、先般先生も含めました関係者の御努力によりまして、全国労働安全衛生コンサルタント会が設立されたところでございます。今後この会の活動を軸にいたしまして、効果的なコンサルタント活動が展開されることが十分期待できると存じます。
#41
○高杉廸忠君 次に、出かせぎの人たちの災害防止対策等についてお聞きをしたいと思うんですが、ことしは戦後最大の冷害によりまして、東北、北海道の多くの農民の人たちが建設現場へ出かせぎに出ているわけでありますが、その数とか実情ですね、どういうように把握をされておりますか、その点をまず。
#42
○説明員(岡部晃三君) 出かせぎ労働者の統計といたしましてはいろいろございますが、たとえば農林省の農家就業動向調査によりますというと、これは五十四年では十一万五千人となっておるところでございます。ただ公共職業安定所系統の調査によりますというと、これは農家以外のところからも参りますので、約三十三万人というふうな数字に相なっております。いずれにいたしましても、先生御指摘のとおり冷夏によりまして、ことしは出かせぎ労働者の数の増加が見込まれるわけでございますが、しかしいまのところ、数字的にはまだこの数はそれほど動いておりません。と申しますのは、やはり冷害に基づきますところのいろいろな助成金の制度等の処理をそれぞれの農家においてされましてから、その後に労働者の移動が出るのであろうというふうに考えておりますが、これは今後とも把握を続けてまいりたいというふうに考えております。
#43
○高杉廸忠君 かなりの方が出かせぎをされるというのが予想されるわけですね。これらの人たちの中には、専業農家を含めて、初めて出かせぎに行く方も出てくると思うんですね。そういう場合に災害多発というのが心配されるわけです。労働安全対策を徹底していかなきゃならぬ、こう考えるんですが、この点ではどうでしょう。
#44
○説明員(岡部晃三君) 出かせぎ労働者の労働条件の確保ということにつきましては、すでにかねてから「出稼ぎ労働対策要綱」に基づきまして実施をしてきたわけでございますが、特にことし、このような冷夏の問題がございますので、改めて先般労働基準局長及び職業安定局長連名をもちまして、全国に通達を発したところでございます。
 その内容といたしましては、雇用関係の明確化というふうな基本的な問題あるいはまた賃金不払いの防止等々にあわせまして、最も重点を置きましたのが出かせぎ労働者の災害防止の観点でございまして、これは特に建設業等に重点を置きまして、たとえば元方事業主に対しまして、法に基づくところの総合的な安全衛生管理体制の確立をさせますとか、あるいは危険作業につきまして、一定の資格を持つ者によって行わせることを徹底することでございますとか、あるいはまた安全衛生教育、これは送り出し地におきまして市町村が集団的にこれを十分に行うように、また事業主に対しまして義務づけられております雇い入れ時の安全衛生教育も徹底するようにというふうなことを重ねて強調いたした次第でございます。
#45
○高杉廸忠君 先ほども安全衛生部長からお答えいただいた建設現場における労働災害というのが多くあるわけですけれども、災害防止対策、そういう意味では建設現場における特に出かせぎの方方のそういう災害防止というのは、私はきわめて大事だと、こう思うんです。
 そこで、通産省が所管の鉱山保安法に基づく――例にとるのは大変恐縮でありますけれども、災害防止対策というのは法的にも非常に整備をされて、徹底しているわけでありますね。こういうような災害の多発を予想される建設業に関する災害防止対策についての権限など、その所管をやはり、こうした建設業における災害多発防止というわけでありますから、労働省から建設省に移管したらどうかというような強い意見がありますけれども、これらについては労働省の方は果たしてそれでいいのか、私は不思議に思うんですけれども、この点については、確認の意味で答えていただきたいと思うんですけれども、建設業における、特にそういう災害防止についての責任といいますか、これはどういうふうにお感じになっておられるか。
#46
○説明員(望月三郎君) 先生おっしゃるように、建設業の災害が多いということで、災害防止の行政責任を、むしろ建設省に移した方がいいというような御意見があるとおっしゃられるんですが、私どもといたしましてはそれは逆でございまして、たとえば鉱山保安について通産省が所管しているわけでございますが、鉱山保安の点について、まあ炭鉱の爆発を初め、非常に多かったわけでございます。そのときに先生方の多数の意見は、むしろ労働省に鉱山保安については移管すべきではないかと。事業主を監督する官庁が労働について、事故の防止について両方所管するのはむしろ不適当であるというような評価が多かったかと思います。それと同じように、私どもは災害防止については、これは建設省に任すわけにはいかないということで、むしろ私どもが一番災害防止に力を入れなきゃならぬのは建設災害だというように思っておりますし、これが私どもの安全行政の中の最も第一の行政分野だというように感じております。
#47
○高杉廸忠君 そういう意見があっても、いま部長が言われたように強力に、積極的にやっぱり労働省の行政に期待をしておりますから、そういう姿勢でひとつ臨んでいただきたいと思うんです。
 それから次に、労災保険の財政の現状と今後の見通しについて伺いますが、労働災害の多発が直接労災保険制度に重大な影響をもたらしていることは言うまでもないんですが、労災保険給付の受給者の累増等によって、財政が五十二年度以降やや赤字になっているわけですね。五十四年度には約六百億円に近い赤字が見込まれているわけでありますが、その収支決算状況というのはどういうふうになっておりますか、まずお伺いします。
#48
○説明員(原敏治君) 労災保険の財政状況は制度発足以来、昭和三十年の場合を除きまして、大体単年度での収支では黒字を維持してまいったわけでございますが、昭和五十二年から悪化をしてまいりまして、五十二年には百二十三億円の赤字になりました。単年度の収支でそれだけの赤字を見ております。それから、五十三年度には四百九十六億円、昭和五十四年度には五百七十二億円の赤字を示すに至りました。このために、本年四月一日に保険料率を全業種平均で千分の二・二の引き上げを行いまして、保険財政の健全化を図ったところでございます。
#49
○高杉廸忠君 引き上げの分と、また制度改正分の引き上げも予定しているようですけれども、今後の財政の見通し、三年間で黒字になるようにというようなお話もあるようでありますから、その点はどうなんでしょうか。
#50
○政府委員(倉橋義定君) ただいま申し上げましたように、本年の四月に保険財政の健全化を図るという見地から千分の二・二の料率引き上げを行ったわけでございますが、この料率につきましては、現在行われております労災保険水準をそのまま維持するということによりまして、少なくとも昭和五十七年度までは単年度収支で黒字を維持できるというような見通しでございます。なお、現在御審議をいただいております法案の成立によりまして、給付の改善がなされた場合につきましては、再度本年度後半におきまして、料率を千分の〇・五引き上げることによりまして、今後昭和五十七年度まで単年度収支で決算上黒字を維持できると思っております。
#51
○高杉廸忠君 わが国の労災保険制度というのは、欧米諸国並みの給付水準と言っておりますけれども、実態は私はきわめて不十分なものだと思っているんです。最近の労働組合の調査で、労災関係の年金だけでは生活できないとする者が、これは調査でありますから、八四%、こういうふうに数字が示しているわけであります。当然給付水準の改善を行うためには、何としても労災保険財政の改善が必要である、これは言うまでもありませんが、それには三つぐらい方法があるだろうと思うのです。
 その一つは、労働災害の大幅な減少または災害をなくすことなんですね、これがまず第一。それから第二は、保険料の引き上げあるいは国庫補助なり国庫負担というものを増額していくこと。これはまあ当然ですね。三つ目は、これは給付水準の据え置きあるいは総体的な引き下げをしていく。こういうような三つの方法しかないと私は思うのです。
 そうしますと、今後そういうふうな財政との絡み合いで労災保険制度の改善を図っていこうとするならば、このいずれか三つのうちどういうようなものをとられますか。
#52
○政府委員(倉橋義定君) 今後給付水準の改善につきましては、引き続き検討してまいる考えでございますが、その検討の結果によりまして給付の改善が必要となった場合の財源対策として考えられるのは、基本的には災害を引き下げるということによりまして保険財政を健全化をしていくということが第一ではないかと思いますが、保険財政の見地から見ますと、国庫補助を増額するというのは、労災保険制度が使用者の責任保険というようなことでつくられている制度のたてまえから見まして、国庫補助の増額というよりも、むしろ使用者の負担において行うというべきが筋合いではないかと思っております。
#53
○高杉廸忠君 先ほども、私は労働安全衛生法の審議に際しても申し上げたことを繰り返しました。予防に勝る治療なし。まさしく災害防止が重点であると、こういうように私も思います。ですから、繰り返し建設業は危険、有害、こういうような危険な場所につく人の命を守る、安全、災害防止、ひとつその積極的な推進を、ぜひこの際重ねて要望しておきます。
 それから、労災保険における国庫補助を見てみますと、五十四年度の収入の六千四百億円中国庫補助というのは、これは一%にも満たない二十二億円ですね。いま、保険で財政確立をするというふうなお話もありましたが、国庫補助の導入された経緯あるいはその目的、こういう点についてちょっと確認をいたしたいと思うので、この点をひとつお答えをいただきたいと思うんです。
#54
○政府委員(倉橋義定君) 労災保険制度につきましては、先ほど申しましたように、使用者の補償責任を政府の保険において行うということでございまして、したがいましてその負担は、使用者から徴収する保険料をもって充てるということが基本でございますが、数次の労災保険制度の整理の中にありまして労災保険給付のほかに、各種の援護措置等を講じてきているわけでございます。そういうような労災保険事業が保険給付のほかに各般の労働者福祉の政策的な配慮の施策を行ってきてまいりまして、そういう面から国庫補助制度を導入したといういきさつがあるわけでございます。
#55
○高杉廸忠君 いまのお話のように私も思うんですが、労災保険制度というのは使用者の無過失賠償責任制度のたてまえということでありますから、基本的には、被災者の稼得能力など家族の生活を保障するに足る給付水準というものを維持するための保険料を使用者が補てんするということは当然だと、こう考えているわけです。同時にまた、業務上の災害でありますから、社会保障的見地からの十分な補償をすべきだと、こういうふうに私も思っているわけです。将来にわたる給付改善に保険財政を健全化した上で、十分な補償をしていくようなことで私は将来に向かって備える必要があると思いますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
#56
○政府委員(倉橋義定君) 先生御承知のように、労災保険制度に年金を導入してまだ日が浅いわけでございまして、この年金受給者が平年化することによりまして、保険財政に大きい影響を与えることは現在予想されるわけでございます。そういう際におきます使用者の負担等を考えますとき、今後におきます給付水準につきましては今後の基本問題の検討の中におきまして、審議会におきまして審議をしていただき、その審議の経過を踏んまえまして政府といたしましても検討してまいりたいと思っております。
#57
○高杉廸忠君 次に、本法の改正事項に関して若干の質問をしたいと思うんですけれども、今回の改正内容は、遺族補償年金についてはきわめて小さいんですね。かつ部分的なんですね。こういう部分的なものじゃなくて、全般的な給付水準の向上を図るべきではないかと、こういうふうに考えるんです。
 たとえば、遺族補償年金で見てみますと、遺族四人の場合、給付基礎年額にわずか一%を引き上げた率でありますし、また、遺族五人の場合は引き上げを行わない、こうなっているんですね。こういう引き上げ率の根拠、これはどういう根拠があるのか。これが一つであります。
 それからついでにお聞きするわけでありますが、物価上昇等によって、生産労働者の家計も実質賃金の目減りが問題となっているわけです。こういうような引き上げ内容と被災遺族の生活改善、こういうことを比べますと、私はもっと改善をすべきではないかと、こういうふうに考えるのですが、その点もあわせてひとつお尋ねをいたしておきます。
#58
○説明員(小田切博文君) ただいまの遺族年金の給付改善の問題でございますが、私どもいま御審議いただいておりますような改善、引き上げの案を考えましたのは、その前提といたしまして、遺族年金のみならず、現行の労災保険の給付水準全般的な改善の要否につきましては、審議会におきまして、なお引き続き検討するというような処置になっておりますから、その結論を待ちたいというふうに考えているわけでございますが、当面遺族の人数が少ない場合の年金水準の引き上げを図るべきではないかというような御意見にまとまったわけでございますが、その根拠といたしましては、労働能力が一〇〇%喪失したような重度の後遺障害が残りました労働者本人に対します年金の給付率が従前賃金の六七%というような水準に設定されているわけでございますが、それと横並びで考えまして、残された遺族が多数の場合に、やはり重い後遺症が残った労働者本人が残っている場合の従前賃金の六七%の水準の年金を残された遺族が五人以上、多い場合に確保する、これは現行でそうなっているわけでございますが、その辺は障害年金との横並びがございまして据え置く、その際、遺族の人数が少ないケースにつきまして、従来は遺族数五人を基準にいたしまして、五人につきまして生前賃金の六七%の水準の年金水準を確保する。たとえば一人の場合には、五人世帯の生計費と一人世帯の生計費とを比較して、五人世帯の生計費に対する一人世帯の生計費の割合を使いまして六七%水準を割り引くというようなことをしたわけでございますが、今回の引き上げの根拠といたしましては、一人世帯、残された遺族が一人であるというケースは、直前までは労働者本人がおりまして、二人世帯であったわけでございますから、二人世帯の労災で見るべき水準が従前賃金の六七%というようなことを基準に考えまして、二人世帯が一人世帯になったときの生計費の落差の数字を使いまして、また遺族が二人のケースにつきましては、三人世帯から二人世帯になるというような際の生計費の落差の指標を使いまして引き上げ幅を決定したものでございます。
 それから物価上昇等があって、そういうことを勘案すれば、もっと大幅な年金水準の引き上げが当然ではないかというような御指摘でございますが、遺族年金はいま申し上げましたように、従前賃金に対します一定の給付率で年金の厚みが決まっております。一般的に賃金等が上昇いたしますと、給付率の厚み、四五%とか五〇%とかいう従前賃金に対します給付率が厚みが同じでありましても、実額年金額がふえてまいるというような仕掛けになっておるわけでございますが、そういうことに加えまして、今般、先ほども御説明しましたように、遺族の人数が少ないケースにつきまして年金水準の給付率そのものの引き上げを図ることにしたというようなことでございます。
#59
○高杉廸忠君 時間の関係で年金のスライド制だとか、あるいは特別支給金制度だとか、あるいは若年被災者の給付改善とか、いろいろたくさんあるんですけれども、時間の制約がありまして、残念ながら細かな点について触れることができませんでした。私は本来、労災給付というものは労災制度によって十分な補償が行われることでなければならないと、こういうふうに思うんです。今日、御承知だろうと思いますが、上積み補償というのが普及しているわけです。本来、労災給付の水準がこういう上積みがあるということは、そもそもが低い、このことを如実に示しているものであると、こう思うんです。使用者の保険料引き上げ、少なくとも逸失利益分は完全に労災で全額支払われて、生活とか遺族とか、そういうことで、私は十分な補償を足るにふさわしい内容にすべきだと、こういうふうに思うんですけれども、基本的にはこれらについてどういうふうにお考えになっておられますか。
#60
○政府委員(倉橋義定君) 先生御指摘のありましたように、労災補償の水準が逸失利益の全額に及ぶような改善を行うべきというような御指摘でございますが、労災保険におきます給付水準の改善の問題につきましては、労災保険審議会におきまして今後とも引き続き検討を行うこととしているわけでございます。労災保険制度の基本問題の検討の中で、審議会におきまして十分検討していただき、その結論をまって政府といたしまして対処してまいりたいと考えております。
#61
○高杉廸忠君 いままでの審議の過程で、私は、幾つかの改善等を含め提言をしてまいりましたが、残念ながら時間の関係がありますから、先へ進む関係で、労災制度に関して幾つかの問題点を指摘しましたから、その改善策についてはまだ多くの問題が残されておりますが、少なくとも被災労働者の人たちの、その遺族を含めて、補償を行うに足るものとは現行制度がまだ少し遠いのではないだろうか。制度上、あるいは給付内容その他においてもまだまだ不十分な点があると思っております。そこで私は大臣に、ひとつこれからの姿勢、取り組みについてお答えをぜひいただきたいのですが、こういうような現状であります。いままで私も幾つかの提言をしてまいりました。こういうような現況から見ても、まだまだ労災保険制度というものは不十分だと思っておりますから、早急に私は本制度の抜本的な改正というものを行って、被災の労働者、あるいは若い人でも、あるいは遺族でも、そういう人たちが十分な生活し得るに足る制度とすべきだと思っておりますけれども、大臣、どういうふうにお考えになっておられますか。
#62
○国務大臣(藤尾正行君) 私は、先ほど申し上げましたように金の多寡ですべてのものが買えるわけじゃございませんから、まずもってそういう事故を起こさない、そういう不幸な目に遭う方がなくなりますようにということに全力を挙げていくというのが当然の姿勢であろうと思います。しかしながら、本当に申しわけのないことでございますけれども、今日のような労災事故が多発をいたしておりまして、その事故の被害をお受けになられました御当人は言わずもがな、その御家族に至られますまで非常に御迷惑をかけておる、こういうことでございますから、いまの労災保険制度といいますものが十二分に働くということが大切だろうと思います。
 御指摘のとおり、しかしながら、世の中の、物価一つ見ましてもいろいろな推移を示しておるわけでございますから、これで十分だと言うことは、どの時点でどのように切りましてもなかなかむずかしいものが幾らかあるであろう、さように考えるわけでございまして、そういった問題を含めまして、基本的に、それでは労災の補償保険といいまするものをどのようにしていったならば、そのような御要請にこたえられるかということにつきまして、私どもはもちろんそのような勉強はいたさせますけれども、あわせて、これは、本当に労災の責任をお持ちになられる雇い主の企業の方々、そういった方々も御納得の上で十二分の制度を、これ、おやりをいただきませんと保険制度というものは成り立ちませんから、そういった意味で、あらゆる階層の方々と、またあらゆる面で世の中の動きといいまするものを的確に御理解をいただいておりまする学識経験の方々、こういった方々にお願いをいたしますそういった審議会で十二分に御論議をいただいて、そうして、しかし論議ばかりしておってもしようがありませんから、その時点時点で中間的に、ここまでできたということをやったらどうだという御勧告をちょうだいをさせていただきまして、逐次これに補正を加えていく措置を、私どもはとっていかなければならないのではないか、かように考えておるわけであります。
#63
○高杉廸忠君 次に、林業における振動病の実情とその対策について伺いたいと思うですが、林野庁来ておりますか。
 業務災害関係の新規受給者は五十四年度で百十四万、こうなっていますね。このうち、職業病によるものの数と、その職業別内訳、どういうふうな状況になっていますか、まず伺います。
 同時にまた、特に振動病の発生率が高い、そり中でも林業における振動病認定者は多く、潜在罹病者を含めると数万人ともいわれておりますが、その実態についてどういうように把握されておりますか。これは、特に民有林、それから国有林の別にひとつ説明をいただきたい、こう思っております。
#64
○説明員(原敏治君) 労働災害の発生状況は、先生御指摘のとおり、五十四年度には百万を超えて百十四万人程度の発生が、新規受給者がございますが、その職業病の発生状況につきましては、実は現在、内容を検討、集計作業中でございまして、五十四年度の数字はまだ出ていないのでございますが、五十三年度について見てみますと、職業性疾病で新規発生したものの数は、災害から続発した疾病の場合も含めましての数で二万七千二百八人が職業性疾病で新規受給者になっている、こういうことになっております。
 その業種別の分布状況につきましては、統計的にそういう把握の方式を現在まだとっておりません。種類別にだけ出しておりますのでちょっと申し上げられないのですが、御指摘の振動障害等につきまして見てみますと、業種別では、五十四年度の状況で見てみますと林業関係が千八十二人、鉱業の関係が二百七十九人、採石業が七十七人、建設業関係が四百五十九人、その他の業種が百六十九人で、振動障害の発生する業種の合計が二千六十六人となっております。
 労災保険が適用されております民有林関係の、林業関係の振動障害患者の発生状況は年次別に若干増加の傾向をたどってきておりまして、五十一年度には八百九十九人ございました。五十二年はさらにふえまして千三百四十八人、五十三年度は千四百三十一人になりまして、五十四年度は千八十二人という数でございます。これが民有林関係でございまして、国有林関係につきましては、国有林関係からお伺いしたところによりますと、五十一年が振動障害で新しく認定した者の数が二百一名でございまして、五十二年が百九十五人、五十三年が八十七人、五十四年が七十三人と次第にその数は減ってきているようでございます。
#65
○高杉廸忠君 林野庁関係に伺いますけれども、林野庁関係ではチェーンソーが約五千台と聞いているのですけれども、振動病認定者は約三千人を超えているのではないかと、こう思うんですが、そうしますと六〇%以上の発生率と、こう言われるわけですね。これに対して民間ではチェーンソー使用者が約八万六千人とも言われているんです。このうちチェーンソーの多年使用者を、これは推定ですけれども、五万人とすれば、六〇%、こういうような発生率を見ると、実に三万人に及ぶ振動病が発生していることになると考えるんですけれども、この正確な数字というものを特に民間でおわかりになっているかどうか。――時間の関係がありますから、数字が出ていないとすれば、後でひとつできるだけ数字が把握できるようにお願いをしておきます。要望しておきます。
 それから次に、林業における年度別、各県別それから官民別の振動病認定患者の数を聞きたいんですけれども、私の手元に資料があるんです。ですから、もう簡潔にお答えをいただきたいと思うんですが、さらにこれを踏まえまして、私は非常に理解ができないのは、その資料によって見ますと、茨城県の例を見ると、チェーンソーの作業従事者、特別教育の受講者の点では、五十四年度では約二千八百人になっているんです。ところが、この中では一人の振動病の療養者も新規認定者もいない、こういうことが数字でゼロにずっとなっているのですね、その点がちょっとどうも理解できない。仮に奈良県というものと対比して、奈良県を見ますと、奈良県では、資料によりますと約二千三百人の受講者がいて療養継続者が二百十九人、新規認定者が七十九人、こうなっているんですね。茨城ではなぜ全々ゼロなんだろうかと、ちょっと不思議なんですけれど、その点わかっていればお答えいただきたい。もし実数について非常に把握がしにくいと、こういうことでありましたら、後日で結構でありますからこれまた要望として、資料をいただきたいと、こう思っております。
#66
○説明員(原敏治君) 御指摘の茨城の労働基準局の管内におきますところの振動病患者の認定者数は、昭和五十一年に一名ございまして、それ以降は御指摘のとおり認定者はございません。奈良等と比較して確かに認定患者の数が少ないのは御指摘のとおりでございます。その理由については、実は労災保険の給付の関係ではつまびらかにいたしていないわけでございます。私どもはあらゆる機会を通じまして、労災保険の請求を労働者みずから行うことができることを労使の関係者あるいは関係団体等に周知しておりますが、今後とも、この面の周知について徹底してまいりたいと思っております。
#67
○高杉廸忠君 数字についてはひとつ把握できるだけお願いをしたいと、こう思っております。
 何回も申し上げますように……
#68
○委員長(片山甚市君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#69
○委員長(片山甚市君) 速記を起こして。
 高杉委員から要求された数字については提示してくれますね。
#70
○説明員(原敏治君) 数字の内容についてでございますが、認定者数につきましてはただいま申し上げたとおりでございまして、潜在をしている患者がどの程度あるかにつきましては、果たしてどこまで把握ができるか私どもまだ自信を持っておりません。なお検討いたしまして、その結果を御報告をさしていただきたいと思います。
#71
○委員長(片山甚市君) よろしいですか。
#72
○高杉廸忠君 結構です。ぜひこれはお願いをしておきます。
 それから、何回も指摘しましたように、危険有害な職業による疾病の発生予防対策というのは、強力な実施について、今日まで繰り返し同僚からも要望されているところなんです。私は、使用者の責任とか国の責任というのはきわめて重いと思っているんです。したがって、この職業病の発生等の予測できるものについては、使用者の責任とか国の責任、こういう点について、大臣お聞きのように要望している点についても、そういう発生のことについては予測できるわけでありますから、積極的なこれの対策については強力にひとつ御推進をいただきたい、重ねてひとつお願いをするわけであります。大臣の所見をひとつ伺います。
#73
○国務大臣(藤尾正行君) 仰せのとおりいたします。
#74
○高杉廸忠君 特に大臣お願いをしておきますのは、振動病の発生の防止のための労働省の方針を、通達ではずいぶんやっておられることは伺うんです。しかし、事態は一向に改善されていないのが今日の実態であります。特に林業における不安定な就業労働者と言うべきチェーンソーの使用労働者の振動病の発生防止のための施策については、私は具体的に、しかも何回も要望されて今日まで来ているわけでありますから、その完全な実現のためにぜひともひとつ重ねて要望もしておきますから、これを実現をしていただきたい、こういうふうに思います。
 そこで、時間がありませんが二、三まだお答えをいただきたいと思っておりますけれども、休業補償給付の実情とその改善についてでありますけれども、労災認定患者に対する休業補償給付というものは、その稼得能力が正当に評価をされ、かつ家族を含めて生活保障さるべきものであると私は考えるんです。そういうような振動病の認定者にあっては多くの人たちが最低も最低、非常に過酷な条件と非常に気の毒な生活状態にあるわけでありますが、こういう休業補償給付について、基本的にどういうように認識をされておりますのか、この際明らかにしていただきたい、こういうふうに思うんです。
#75
○政府委員(倉橋義定君) 白ろう病等の振動病にかかられた方が労災保険を受給される場合につきましては、その認定された時点におきます稼得賃金というものが、通常の健全時におきます稼得賃金よりも低くなっていた時点において算定されるというようなことによりまして、実際の稼得能力が労災保険給付水準に十分反映していない面もあることを十分認識しております。
#76
○高杉廸忠君 御承知のとおりに、林業における振動病は徐々に労働能力が失われていくことが特徴なんですね。病気を知りながら、家族の生活を守るために働き続けて、耐えられなくなってから病院で診断を受ける。この段階では、普通一年以上前から労働能力の低下が著しくなって、賃金の支払い形態が出来高払いでありますから賃金は三分の一にも四分の一にも激減をしている、こういうことが実態であります。こういう問題については、衆議院においても、同僚の議員が数年前から問題を取り上げているわけであります。その都度、救済措置として歴代の大臣からも答弁をいただいておりますが、その場限りで一向に実現をされていない。こういうことはきわめて遺憾である。したがって私は、これを再度念を押す意味で、大臣から具体的に、いままではそうであったがこの場限りの答弁ではなくて、決断と実行、実行するんだと、こういうひとつ決意を伺いたいと思っているんです。特に、賃金の問題についても幾つかの要望があります。発病者の職場における健常時の平均賃金を基準とする。そういうような方向でも一つの妥当性を見出すとか、あるいはまた労災補償保険法の施行規則の中の九条四号における問題でも基準局長の取り計らいでできるわけでありますから、こういうような点についても十分な救済措置がとられるように大臣の御決意をひとつ伺うところであります。
#77
○国務大臣(藤尾正行君) 先ほども申し上げましたとおり、私は白ろう病、振動病でも同じだと思うのでございますけれども、そういった病気にかかられる方がなくなりますように指導することが先決だ、かように考えておるわけでございまして、これに全力を注いでまいりたいと考えております。しかしながら、もうすでにおかかりになられたとか潜在的な病気が進行中であるというような方々に対します措置といたしましては、御指摘のように、制度がある限りその制度といいまするものを活用して、そうして被災者の方々が泣きを見ないように、そのような措置をとってまいりたいと考えております。
#78
○高杉廸忠君 時間が参りましたから、まとめとして申し上げ、大臣からさらにひとつ所見なり決意を伺い、それで終わりたいと思いますけれども、労働省がしばしば、日本の労災補償というのはILOの水準に到達したとこう言っておりますが、言うまでもなくILO百二十一号条約というのは開発途上国を含む国際的な最低基準であって、日本の労働災害補償というのはまだまだ欧米先進国に比べてはそれに至っていない今日の実態があるわけであります。たとえばベルギー、フランスの場合は障害補償年金というのは最高で所得の一〇〇%が支給されているのでありますから、むしろ先進国たる日本がILOの百二十一号条約の水準にとどまっていること自体が問題である、こういうふうに私は思うんです。言うまでもなく、労災補償の最大の目的というのは被災者の家族、遺族の生活が人に値する内容を基本として被災の労働者の療養とか労働能力の回復を図る、そういうものでなければならないと考えるのです。大臣は、先ほどの提案理由の説明の際にも、改善についても前向きの姿勢を示されました。私は、要は決断と実行であると思っております。しかも大臣は、就任以来勇断をもって労働行政の推進に当たってこられましたし、多くの期待が寄せられていると思います。私は、本法の審議に際しまして、災害の防止とか人の命を大切にするための諸施策を含めて幾つかの提言も行いました。私の意を十分くんでいただきまして、これを最後の質疑として終わりたいと思います。
 大臣に最後の御決意と所見を伺い、私の質問を終わります。
#79
○国務大臣(藤尾正行君) ただいまILO百二十一号の例をお引きになられまして、その水準に達したからといってそれで満足できるはずはないではないかという御指摘でございました。私もそのように思います。百二十一号があろうとなかろうと、私どもが政治の中で生かしていかなければなりませんのはヒューマニズムと友愛でございますから、そういった私どもの観念が私どもなりにできることはみんなとにかく実現をしていく方向に少しずつでも前進していくように、制度もまた私どもの運営も行政も、みんなそちらの方向に献身をさせていただくということで進めてまいりたいと思いますし、私は大臣といたしまして、そのあらゆる責任を負いまして、皆様方に御奉公を申し上げたい、かように存じ上げておるわけであります。
#80
○委員長(片山甚市君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後零時五十分まで休憩いたします。
   午前十一時五十六分休憩
     ―――――・―――――
   午後零時五十三分開会
#81
○委員長(片山甚市君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#82
○安恒良一君 私は、今回の労働者災害補償保険法等の一部改正によって各種の給付の改善、前払一時金制度の新設、スライド制の改善等、労災年金受給者の生活保障に一定の改善が行われたことに対しては私なりに評価をしているものでありますが、御承知のように労災保険給付と民事損害賠償との調整問題については、衆議院の社労委員会におきましても、また、本日の本参議院の委員会におきましてもいろいろ私ども日本社会党の同僚議員が議論を重ねてきているところであります。特に民事損害賠償がなされた際の労災年金の支給調整問題は、労災年金受給者にとってはとりわけ影響の大きい問題であります。そこで被災労働者及びその遺族の実情や、年金である保険給付の特質をも考慮して、慎重に対処されるべきものであるというふうに実は考えます。
 そして、この取り扱いについては、すでに衆議院において一部修正がされ、私どもの同僚委員の森井忠良氏が、労働大臣並びに労働省との間に一問一答を交わしております。でありますが、往々にして法律が設定をされますと、法律が一人歩きをする場合がありますので、この点はダブる点になると思いますが、本参議院の社労委員会においてもこの扱いについて一問一答をし、議事録にとどめて、そしてそれが完全に守られることのために申し上げたいと思うので、お答えを願いたいと思います。
 そこで、民事損害賠償がなされた際の労災年金との支給調整に当たっての基本的な考え方について、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
#83
○国務大臣(藤尾正行君) 民事損害賠償がなされた際に労災年金を支給調整するに当たりましては、御指摘のように、受給者の実情や、年金であります保険給付の特質をも考慮いたしまして対応すべきものと考えておりますが、その具体的な考え方につきましては政府委員から説明をいたさせます。
#84
○政府委員(倉橋義定君) 民事損害賠償がなされた際の労災年金の支給調整に当たりましては、次のような基本的な考え方によって行ってまいりたいと考えております。
 まず第一として、労災年金を調整するに当たっては、民事損害賠償のうち逸失利益分のみを対象とすることといたしております。したがいまして、慰謝料等は調整の対象には含まれないものであります。
 第二といたしまして、対象とする逸失利益分につきましても、その全額ではなく、原則としてその三分の二の金額のみと比較することといたします。
 第三として、労働福祉事業として行われる特別支給金は調整の対象とはならないものとして取り扱うことにいたします。
 第四として、労災年金の支給調整のための民事損害賠償の額と労災年金の額との比較に当たりましては、民事損害賠償については利息分を考慮した金額の評価増は行わないこととするとともに、労災年金につきましてはスライド後の増加額を用いることといたします。
 以上の原則によるほか、第五として、さらに労災年金の支給調整期間については上限を設けるものといたしまして、その上限は、まず一つとして、民事損害賠償額の算定の前提とされる労働可能年齢に達するまでの期間か、二といたしまして、支給調整措置がとられた労災年金受給権者の相当数について支給を再開し得ると考えられる一定の期間かのいずれか短い方とすることといたします。労災年金の支給調整に当たっては、以上のような基本的考えによって行ってまいりたいと考えております。
#85
○安恒良一君 ただいまの答弁の中で、労災年金支給の調整期間につきましては一定の上限を設ける、そして、それは審議会に図ると、こういうことでありましたから私はお聞きをしたいのでありますが、これまで政府関係の各審議会の例を見ますと、せっかく審議会で意見がまとまりましても、答申が必ずしも尊重されたとは言えない場合があるわけであります。しかし、今回はこれだけ問題になった調整事項でありますから、審議会の意見がまとまり、答申をされれば、労働省としては当然その答申を尊重するものというふうに私は考えますが、そのように確認してよいでしょうか。
#86
○国務大臣(藤尾正行君) 審議会の御答申につきましては、それをいただきましたならばそのとおり尊重していく所存でございます。
#87
○安恒良一君 次は上積みの問題についてでありますが、これもひとつここでもう一回、再度確認をしておきたいと思います。
 労働組合が、労働協約等によって獲得しているいわゆる労災上積み補償については、それがあるからといって労災保険からの給付が調整されることはないものと理解していますが、それでよいのかどうか。また、労災保険給付の支給を前提として、示談等により上積み分の補てんが行われる場合が多いが、これについても労災保険給付が調整されることはないと、こういうふうに理解をしてよいのかどうか、この二点についてお答えを願いたいと思います。
#88
○政府委員(倉橋義定君) 御指摘のありました労災保険給付を前提に、その上積みとして労働協約、示談などによって行われるいわゆる上積み補償につきましては、これを労災保険給付の支給調整の対象とすることは考えておりません。
#89
○安恒良一君 次は、メリット制の調整の幅の拡大は、事業主の労働災害防止の努力を促進する趣旨であるというふうに理解をしていますが、これによって災害隠しが増加するおそれがあるということがすでに同僚委員の議論の中で指摘をされています。私は、このようなことのないように、労働省としてはいわゆる災害隠しがないようにしかるべき処置を講ずるべきであると思いますが、その点はいかがですか。
#90
○政府委員(倉橋義定君) メリット制の趣旨は、自主的災害防止活動を促進しようとするものでありまして、その調整幅の拡大によって御指摘のような災害隠しにつながるようなことはないと考え出ておりますが、政府といたしましては、災害隠しのようなことが起こることのないよう監督、指導を強めてまいりたいと存じております。
#91
○安恒良一君 それで、衆議院で改正がなされた際に私は一点改正漏れがあるんじゃないかと思うのでありますが、それは特別支給一時金についてでありますが、次のようにお聞きをしたいと思います。
 改正法案による給付改善については、第九十一通常国会に改正案を提出した際に予定をしていた実施期日にさかのぼって実施できるよう、衆議院において修正をなされていますが、労働省令の改正による特別支給一時金の改善についても、衆議院の修正の趣旨を踏まえまして、当然法律事項と同様、当初政府案で予定をしている実施期日十一月一日にさかのぼって実施されるものと理解をしているが、そのことを確認をしたいんですが、いかがですか。
#92
○政府委員(倉橋義定君) 先生御指摘のございました特別給付金の引き上げでございますが、当初労働省といたしましては、この十一月から法案が施行されますと、特別支給金につきましても、たとえば死亡された場合とか、障害三級であるような場合につきましては、現行二百万円であるものを三百万円に引き上げると、五割のアップを予定していたわけでございます。そういうことでございますが、先生御承知のように、前通常国会に提出いたしました法案の施行の期限がすでに経過しておりまして、法定の給付事項につきましては衆議院におきまして修正はなされておりますが、省令で行います特別給付金の処理につきましては、何せ一時金につきましては年金受給者だけじゃなくて、年金受給者以外に労災補償として一時金をもらう者にも支給されるわけでございまして、すでに支給が完了しているような方もございます。そういう方にさかのぼって支給するというようなことの技術的な施行事務の困難性の問題もございますし、また大きい問題といたしましては、当初通常国会で法案が通りますと保険料率の改定を直ちに行うよう予定していたわけでございますが、料率の改定については遡及して行うことが実施できないわけでございます。そういうようなことで、せめて法律事項である給付改善を遡及することができたわけでございますが、労働省令で措置いたします特別給付金につきましては、保険財政並びに先ほど申しました施行事務の関係等から、さかのぼることは非常にむずかしいというふうに私たち考えているわけでございます。
#93
○安恒良一君 大臣、私はこの点はどうしても理解し、納得するわけにいきません。それはなぜかと申し上げますと、本年度予算の上におきまして、すでに十一月一日からの実施を前提にまず予算措置が講じられています。それから保険財政上問題があるということはいまの説明でわかります。しかし、たとえばさきの社労委員会で、厚生年金についても財政上に問題があるのにもかかわらずに遡及実施をいたしております。それからまた労災保険本法の方は、いわゆる省令でない方は衆議院においてこれは修正をしてこちらに回されております。この三点から考えますと、ただ、いま技術的な問題があると言われましたが、これはいろいろ工夫していただければ技術的な問題はできると思います。そこでぜひひとつ、この点は大臣の御努力によって遡及実施ができるようにしていただきたい。ここだけが残されるということは、またある面から言うと不公平ということに、これは厚生年金の関係、それから本法の関係、省令の関係で不公平になるというふうに思いますから、この点については、ぜひひとつ大臣の決意、前向きの答弁で問題をここで解決していただきたいと思いますが、いかがですか。
#94
○国務大臣(藤尾正行君) 御趣旨のとおりでございまして、法の精神から言いましても、法と省令におきましてその施行に対します手かげんが違ってくるというようなことがあってはならぬわけでございます。それが財政上、あるいは事務上の困難からやりにくいというような点は、なるほど私はなしとしないとは思いますけれども、しかし、そのようなことでは法の精神は失われてしまうわけでございますから、極力督励をいたしまして、省令事項につきましても、御趣旨のように遡及して適用ができますように努めさせます。
#95
○安恒良一君 まあ大臣からそういうふうに、当初予定をした時期から実施できるように措置をすると、こういうふうにお考えを承ったというふうにしておきますから、ぜひ実現をしていただきたいと思います。
 次に、これも高杉委員からもいろいろ御指摘がありましたが、私は労災保険給付の引き続く改善問題について質問をしたいのでありますが、実は、私の手元に財団法人労災年金福祉協会が、いわゆる五十四年の八月に発表されたのでありますが、障害年金受給者の生活実態調査結果の報告がございます。そして、この中で見ますと、労災被災労働者の生活実態がきわめて深刻なものになっておりますが、この点は御承知されているでしょうか、この実態調査のことを。
#96
○政府委員(倉橋義定君) 被災者の生活の実態調査につきましては私ども十分承知しております。
#97
○安恒良一君 これを細かく申し上げる時間ありませんが、この中に日常生活の状態、就労の状況、家計の状況等が詳細に書いてあります。大臣、ごらんくださっていると思いますが、もしもごらんくださってなかったらぜひ一読をお願いをしたいと思うんです。
 そして、この中で労災被災労働者が国や地方自治体に何を要望するかと、こういう調査もしておりますが、まず、障害等級一級から三級、いわゆる重障害者ほど年金の増額を切実に求めております。そして、その比率は調査対象の七三%の人が年金をふやしてもらいたいと、こういうことになっております。さらに、障害等級四級から七級の人の中でもやはり年金の増額を、同様七八%の人が増額の希望をされているのであります。もちろん今回の法改正によって給付が改善をされました。しかし、この実態調査を見てみますと、被災労働者の救済を考えた場合には、まだまだ私は労災保険の給付はきわめて不十分だと言わざるを得ないと思います。
 で、さらに、私が引用しましたこの資料というのは、あくまでもこれは障害年金受給者だけの実態調査なんですね。そこで、死亡災害による遺族の生活実態調査は実はこの中に含まれておりません。労働省婦人少年局もここに来ていただいておりますが、かつて労働省婦人少年局が労災による被災死亡者の遺族、母子家庭の生活実態調査、重度障害者家庭の実態調査を定期的に実施いたしまして発表いたしておりまして、母子家庭の生活実態調査は昭和五十年十一月に発表されていますが、その後どういう理由か調査が行われないままになっています。
 私は、せっかくいい調査だったから継続してもらいたいと思っているんですが、それは後から、なぜやめたか聞かしていただきたいのでありますが、そこで、私は労働大臣にお聞きをしたいんですが、どうか、まずひとつ労働省みずからがこの種の調査をこれからやはりひとつ定期的に、積極的に進めてもらいたい。そしてその実情をまず把握をしてもらいたい。そして、この資料をもとにしてこの労災保険給付の改善を初めとする改善等を今後行われるように私は強く求めるものでありますが、労働大臣の以上のことについてのお考え、御見解を明らかにしてください。
 それから調査をなぜやめたのかというのは事務局から答えていただいて結構でありますし、これからは必ず、これは何も私は婦人少年局の問題ではないと思います。労働省全体の問題ですから、そういう調査はやっていくべきだと思いますが、その点いかがでしょうか。
#98
○政府委員(倉橋義定君) 先生いま御指摘のございました労働災害家族の生活実態調査でございますが、昭和四十四年以来昭和五十年までにおきまして、婦人少年局が中心となりまして被災労働者の家族に災害が及ぼす影響等を明らかにするための調査、並びに労働者家族の福祉の向上を図るための調査等を実施してきたわけでございます。その後、寡婦等の就業問題が大きな社会問題になりましたので、この調査につきましては、労災被災者の家族を含めました一般の寡婦等の実態を調べるために、昭和五十二年、五十三年におきまして寡婦等の就業実態に関する調査という形で実施するようになったわけでございます。そういうことに伴いまして災害家族の生活実態調査を中止してきたわけでございます。
 これとは別に、昨年、障害年金受給者の実態につきましては、労働基準局が中心となりまして財団法人労災年金福祉協会に委託いたしましてその実態を調べたわけでございます。
 今後の問題といたしまして、先生御指摘のありましたように、年金受給者の実態を調査することは、遺族年金の支給範囲の検討や介護料の増額など、今後労災制度の検討におきまして必要な資料でございますので、私ども、審議会におきましてもそういうような実態の調査を求められておりますので、今後とも基準局におきまして被災労働者の家族の生活の実態調査を行ってまいりたいと考えております。
#99
○国務大臣(藤尾正行君) ただいま政府委員から御答弁をさせていただきましたけれども、まず施策を行うに先立って実態を把握しろという御趣旨はごもっともでございまして、特段と労災被害者の御家族、そういった方々の生活実態をきちっと把握をしていくということは、こういったこの種の行政といいまするものを展開をしていく上に欠くべからざる要件である、私はかように考えます。したがいまして、このことが労災被害者というものだけを対象にしていくべきものなのであるか、あるいは交通災害等の被災者も含めて、もっと広い範囲でやっていくべきであるかというようなことは研究課題でございますけれども、いずれにいたしましても、その実態といいまするものがきちっと常に把握をされておりまして、その実態に対処をした施策が次々と打ち出されてまいりまするように指導を強めてまいります。
#100
○安恒良一君 私が大臣にお願いをしましたのは、いわゆる労災被災者、それから家族の実態調査、これはもちろん第一点であります。しかしすでに、たとえばいま労働省が依頼をされて調査した結果がこれに出ているわけですね。これは家族じゃありませんが、いわゆる年金受給者だけでもやはり非常に悲惨な状態にあるんだと、年金の増額を望んでいるんだと。だから大臣に引き続き今後とも、いわゆる労災年金等を生活実態に合うように増額の努力を今後ともひとつ約束してもらいたいと、こういうこともお聞きをしたわけですから、その点について大臣の御決意を聞かしてください。
#101
○国務大臣(藤尾正行君) このことにつきましては、御案内のとおり、銭金のことを言うのはいやでありますけれども、財政といいまするものとの見合いがないわけではないわけでございまして、そういったものの範囲内でそれができるというような方向にいきますように努力をいたしてまいります。
#102
○安恒良一君 御承知のように、現在の労災保険の給付が非常に安いために、これでは生活が守れない、こういうことで各事業所では労使協定によって企業内の労災上積み補償が実施をされております。その額は、大企業ではその多くが死亡、障害一級ないし三級の場合は千五百万円から二千万円と現在はなっております。しかし、これは大企業、労働組合があるところであります。労働組合がありましても、企業負担能力の小さい中小企業では上積みが困難であります。もしくは、上積みをしましても金額がごく少ない、これが実態であります。ましてや、労働組合の組織のないところでは全く上積みの補償がないのであります。大臣御承知のように、わが国の労働組合の組織率は約千二百万、未組織が約二千七百万、こう言われておりますね。そういう状況であります。そうしますと、私は上積みをすることはいいことだと思うのでありますが、結果論的に見ますと、労働者の命の値段に対して企業格差が生まれているということですね、労働者の命に。大企業で働いている労働者と、中小零細企業、労働組合もつくれないところで働いている労働者の間には、いわゆる命の値段に、残念なことですが企業格差が生まれている、こういうことだと思います。
 ですからこれをなくしていくためにどうすればいいのかということになると、それはやはり労災保険の給付改善が引き続いて行われる、そして大幅にやられる、こういうことになると何も上積みを労使でやる必要は私はなくなると思うんです、労使で上積みをすることを。またいわゆる命の値段に対する格差がなくなると思うわけであります。でありますから、いま保険財政上の問題を大臣挙げられましたが、少なくとも労働者の命の値段、こういうものに、勤めている企業によって大きくアンバランスがあるということは私は行政としても正しくないと思いますから、それがためには引き続いて労災保険の給付の改善について大臣を初め労働省が努力をしてもらう、もちろん関係審議会もありますから、関係審議会の意図を受けながら努力してもらう、こういうことが今日きわめて重要ではないかと思いますので、重ねてその点について大臣の決意のほどをお伺いを申したいと思います。
#103
○国務大臣(藤尾正行君) 仰せはごもっともでございますし、私どもも当然そのような方向に進んでいかなければいけないわけでございますから、審議会等の御審議も煩わせまして、できるだけの努力を傾倒いたしたい、かように考えます。
#104
○安恒良一君 大臣から前向きに御努力の約束をいただきましたから、ぜひ実現を願いたいと思います。
 そこで、次の問題は、私は労働災害の防止についてお聞きをしたいと思うのであります。というのは、労災法の給付の改善も非常に重要でありますが、一番重要なことば労働災害をまず起こさないということだと思うわけであります。これも時間がありませんから数字を細かく聞く必要はありませんが、五十年度以降労働災害、とりわけ死傷者数がふえている点を私は大変重視をします。しかも私は、大変遺憾に実は考えるものであります。労災保険法の改善も必要でありますが、まず重要なことは労働災害を起こさせない、防止が最大の課題だと思いますので、私は労働災害防止について数点をお聞きしたいと思います。
 まず第一点は、労働基準監督官の数でありますが、これは昭和三十年から昭和五十五年まで、三十年、三十五年、五年刻みで結構でありますから、監督者の数、それから監督をしております事業所の数、その中から具体的に現場に出られる監督者の数、この数を、すでに資料要求して私の手元に来ておりますから時間上ごく簡略に御説明をお願いをしたい、こう思います。
#105
○政府委員(倉橋義定君) 昭和五十五年におきます監督官の数は本省、地方基準局、監督署を合わせまして三千百七十八と相なっております。このうち、いま先生御指摘のように実際に出動監督する監督官の数ということでございますが、実は本省の監督官も地方の署長も監督に出るわけでございますが、先生の御指摘のことがもっぱら監督に従事できる者だということに理解させていただきますと、本省の者、地方局の一部並びに署長等を除きますと、実際には八百人程度の者が本省、地方局並びに署長等の管理職にございます。それを除きますと、二千四百人程度の者が監督に専念できるということになろうかと思います。
#106
○安恒良一君 大臣、私の手元のによりますと、三十年に労働基準法適用事業所が九十五万あったわけです。それが五十四年には三百二十二万にふえているわけです、適用事業所が。そして、では監督官はどうなっているかというと、三十年には総数二千三百八十五名が、五十五年のいま審議官が言われた数は三千百七十八名なんです。それで実際に直接現場に行って監督をもっぱらやる人は二千四百名だと言われるわけです。そうすると、九十五万から三百二十二万まで適用事業所、いわゆる監督をしなければならぬ事業所がこれだけふえているのにもかかわらず、労働基準監督官はわずかしかふえていない。これでは監督、指導ができるはずがないんです。ですから、私は、まずこれは監督官の数をふやさないと、一番肝心のいわゆる労働災害の防止、これができないと思うのですが、基準監督官の増員について大臣はどのように考えどのような努力をし労災防止の実を上げようとされるのですか。お考えを聞かしてください。
#107
○政府委員(倉橋義定君) 先生御承知のように、昨今につきましては、行政コストの軽減ということから数次にわたりまして定員削減が行われているわけでございます。そういうような定員管理の厳しい情勢の中におきましても、従来から、労働災害の防止対策なり労働者の労働条件を確保するために、毎年度労働基準監督官等を中心といたしまして増員に鋭意努めているところでございます。今後におきましても、先生御指摘のございましたように、労働災害の防止を初め労働条件確保を図るために地方局、監督署それぞれの役割りなり機能分担に創意工夫をこらしまして、また機動力の増強などを図りまして行政の推進に効率化を与えていくというようなことと並びまして、労働基準監督官等の増員につきましても、われわれといたしましては最善の努力を図ってまいりたいと思っております。
#108
○安恒良一君 私は、行政能率を高める、そして政府が安上がりの政府ということで行政改革の実を上げられようとしていることについて文句を言っているわけじゃありませんが、少なくとも労働基準監督官がやります仕事は、労働災害防止だけでなくて労働基準法全体の問題でありまして、そして適用事業所がこのように年々、たとえば五十年で見ますと二百九十一万が五十四年には三百二十二万、五年間で三十一万もふえているわけですから、そういうことから考えてまいりますと、私は労働基準監督官をふやすことについて行政の肥大であるとか、そういうことで国民から批判があるはずがないと思うんです。ですから、どうか、行政改革は行うところは行うにしても、必要なところに必要な人員をふやすことについて国民的なコンセンサスは私は得られると思います。そういう意味から、どうか大臣は労働行政に意欲的に取り組むという所信表明があったわけでありますから、こんなところこそ本当に意欲的に必要な人員をまずふやして、そして監督行政の実をぜひ上げてもらいたいと、こういうふうにこのことは要望しておきます。時間がありませんので、後からまとめて大臣から御答弁をまたお願いすることになると思います。
 それから、その次の問題ですが、これも労災防止で非常に重要なことでありますが、労働安全衛生法の第九十三条は、「労働省、都道府県労働基準局及び労働基準監督署に、産業安全専門官及び労働衛生専門官を置く。」としておりますが、現状はどうなっておりますか。
#109
○説明員(望月三郎君) 先生おっしゃるように、安全衛生法の九十三条で地方の労働基準局、それから労働基準監督署に専門官を置くということになっておりまして、現在、私どもといたしましては産業安全専門官及び労働衛生専門官につきまして、それぞれの都道府県労働基準局及び労働基準監督署の行政需要に応じまして配置し、さらに増員に努めてきたところでございますが、労働基準監督署におきましては、御指摘のとおり専門官の配置されてないものがあるわけでございまして、今後とも労働災害の防止を図るために、これらの専門官の増員について鋭意努力したいと思います。数から申し上げますと、未配置の署がまだ安全専門官につきましては百三十三署、それから衛生専門官については百五十九署ございます。
#110
○安恒良一君 大臣、この点どうお考えになりますか。法律で、九十三条によって最低一名置かなきゃならぬと書いてあるんですよ。それがいま答弁がありましたように、いわゆる基準監督署では安全専門官が三百四十八署の中で二百十五人ですから百三十三名欠員になっているわけですね。それから、衛生専門官はもっとひどくて三百四十八の中で百八十九名しかおりませんから、百五十九名も欠員になっている。これは法律違反じゃないですか、法律で決められたことが明確に行われていない。なぜこのように法改正をわざわざ行ってこういうものを安全衛生法の中で明確に定義づけているのにこんなにたくさん欠員があるんでしょうか。それは一人や二人の欠員が専門官だからあるというのはわかりますが、百数十人も法律違反をして置いてないということは私はどうしても理解に苦しむんですが、その理由と、それから今後はどういうふうに大臣、この点は対処されますか。
#111
○政府委員(倉橋義定君) 先生御指摘のように、法律上は監督署にすべて配置するということになっているわけでございます。私ども労働安全衛生法が昭和四十七年に制定以来、これらの専門官の増置につきましては努力してまいってきているわけでございますが、いま安衛部長が申しましたように、まだ未設置署が残っていることは事実でございます。今後はすべての署にこれらの専門官を配置するよう、鋭意定員の確保及び適格者の養成等に努めてまいる所存でございます。
#112
○国務大臣(藤尾正行君) 法律に規定をいたしております要員が、その要所に配置をされていないというようなことはまことに遺憾千万なことでございまして、いままでの私どもの不勉強といいまするものを恥ずかしく思います。直ちに行政管理庁長官並びに総理大臣とかけ合いまして、できるだけ定員の充足を速やかにできますように、私の責任でいたします。
#113
○安恒良一君 御承知のように大臣、昭和四十七年に施行された法律ですからね、ですから大臣直ちにと言われたんですから、私はやはりそういう大臣の御決意があって、また来年この委員会でお聞きしたらまだしてないということがないように、私は法で明確に一人ずつ置けと、置くと書いてあるわけですから、ひとつ大臣、あれですか、これは安全専門官は百二十三人、衛生専門官は百五十九人欠員がありますが、これは一両年のうちに必ず充足していただけますか、そこのところをお約束ください。
#114
○国務大臣(藤尾正行君) いたします。
#115
○安恒良一君 それでは次に、今度はこれも大臣、実態を御承知置きを願って、御善処願いたいんですが、労災防止指導員というのがあるわけであります、労災防止指導員。これは労働基準監督官の補完的な組織として立ち入り調査とか指導とか監督等々、労働基準監督官ともどもにやっておりまして、私はどうしてもいまさき大臣にも御説明したように、労働基準監督官が絶対数が足りませんので、やはり労災防止指導員の効果的活用が必要だと思うんです。それがためには一つはやはり身分の保障、特に大臣お聞き願いたいんですが、財政措置ですが、年に一人五千円なんですよ、一回じゃないんですよ。人を使って、工場内に一緒に立ち入り調査に行くんですよ。ところが一年間で一人に五千円しか予算がないんですね、これでは幾らそれは奉仕といいましても、労働災害防止のために奉仕だといっても、五千円じゃひどいんじゃないですか、大臣。この制度ができて以来、私たちはやはりこの労災防止指導員を効果的に活用するためには身分保障と財政措置をやってくれということをやって、労働省も努力はある程度されておるようでありますが、労災保険会計の中でいま年間一人に五千円と、今日の世の中に年間五千円の謝礼を出して、そして労災防止の指導員として活躍せいというのは、言う方も私は恥ずかしいのじゃないかと思うんですが、この点はどのように改善をしていただけますか。
#116
○説明員(望月三郎君) 労災防止指導員につきましては、私ども、先生おっしゃるように特に問題のあるような中小企業等における安全衛生管理につきまして御指導をいただき、労働災害の防止に協力を願っておるわけでございます。その指導員の発動につきましては各地域の実情に応じてそれぞれ運用の努力がなされているものと考えられますが、今後とも円滑な活動を図られるよう努力していきたいと思いますが、まあ現在の活動状況は、年間を通じまして三日ないしは四日というのが平均でございます。したがいまして、もちろんこれがふえればふえるほどそれだけ活動の効果が上がるわけでございますが、手当についてももちろん、必ずしもおっしゃるように決して十分ではなくて、むしろ本当に不十分だと言われる額でございますが、これらの点につきましてさらに努力をしていきたいと、こう思っております。
#117
○安恒良一君 大臣、ちょっと大分苦しい答弁ですね。たとえば三日ないし四日と言われている、そして労災防止指導員は今日の労働災害の激発の中から活動をすることについて骨惜しみはしてないんですよ、三日、四日じゃなくて十日でも行きたいといっているんですよ、献身的に。ところが予算があって三日ないし四日ということに、平均でなっている。しかも三日から四日で五千円というのはどういうことなんですか。三日から四日であってもですよ。たとえば三日、四日ということを現状のままで議論しても、大臣、五千円の謝礼ということでは私は本当に労災防止指導員を活用する気があるのかないのかということに、労災防止指導員の誠意だけに今日頼っているんじゃないですか、いわゆる三日から四日行きましてもその日を割くわけですから、その仕事に割くわけですね。そのときに特別高額な報酬を労災防止指導員は求めているとは思いません。思いませんけれど、三日ないし四日行って五千円でそれでどうですかということじゃ、それはどうにもならぬのじゃないですか、大臣、その点どうですか。これもう官僚ではだめですね、こういうものは、政策ですから。
#118
○国務大臣(藤尾正行君) そういった指導員というようなものが本来存在をしておるということ自体に、私は相当問題があるような気がいたしますけれども、御案内のとおり、消防というようなものを考えてみましても、地方の消防団員、消防団長、そういった方々に対します御報酬といいますものはきわめてこれまた、命がけでおやりをいただくわけでございますけれども、低いというのが実情でございます。私はそこで、安恒委員にもこれは十二分におわかりいただいておるわけでございますけれども、労災事故というようなものは出さぬのが一番よろしいわけでございますから、だれ一人労災事故を出してもらいたいというようなのはいるはずありませんし、そういったものを防ぎますということは、お互いの社会構成員のこれは責任でもあるわけでございますから、こういった点は報酬があろうとなかろうと、積極的にできる範囲で御協力をいただくというボランティアの精神といいますものが普及することが望ましいわけでございます。これに対しまして十二分の措置をしろという御要請でございますから、その措置をするにこしたことはございませんけれども、その措置をする前にやらなければならぬことを、政府はいっぱい持っておるわけでございますから、この点は十二分にひとつお考えをいただいて、私どもがやるべきことを、決して骨惜しみをしてやらないというわけではないわけでございまして、できるだけのことはいたしますけれども、ただいまのところその指導員に対してそれだけしかお出しができぬという情勢にあるということもまた事実のようでございますから、この点はあわせ将来に改正を加えていくということで、とりあえず現在のところは、その指導員の方々のボランティア精神による御協力を御期待をするということしか私には言えないと、かように思います。
#119
○安恒良一君 いや、ボランティアと言われますけれど、私はだから当初からお断りをしているように、労災防止指導員の方々は積極的な精神でやりたがっているわけです。ところが、往々にして予算がないからということで年に三回か四回しか活動ができないところもあるわけですから、どうしてもこの予算の拡大というのは、これは労災保険財政なんですよね、いわゆる労災事故が起これば高くつくわけですから、同じ労災保険財政の中だったら、まずあなたもおっしゃったように防止の方に重点を置く方がいいわけなんですよ。そういう意味で、せめて労災防止指導員の活動ができるぐらいの財政をふやしていくということについては、これはやっぱり前向きに検討して、これは何も高い日当、日給をよこせ、月給をよこせと言っている人は一人もいないんですよ。常にもうボランティアの精神に徹してやっているんですよ。やっておっても、活動がやはり財政上制限を受けているということをたくさんの労災防止指導員から聞きますから、そのことを私は重ねて言っているわけなんです。どうかその点はこれより以上やりとりしてはあれですから、ぜひひとつ、いま言ったことは決して間違ったことを私は言っていると思いませんから、大臣並びに事務当局で善処をしてもらいたいということを、この点について申し上げておきます。
 次に、九月の三十日に中央労働基準審議会に報告がありました十の化学物質、これは安全衛生法五十七条に基づくものでありますが、そのことについてお聞きをしたいのでありますが、これは事業主だけの変異性試験だったのか、それとも行政側も関与されたのかどうか。それから試験のデータはどうなっているのか、資料としてこれはひとつ、これも専門的になりますから、ここでやりとりをしていると、資料の中身は大変ですから、どうか資料を後から出していただくということにして、いま私がお聞きをしました業者だけの変異性試験だったのか、行政でも関与された上で御決定をされ、あの十の化学物質が発表されたのか、そのことを聞かしてください。
#120
○説明員(望月三郎君) お尋ねの件でございますが、新規化学物質について行う有害性の調査につきましては、安全衛生法の五十七条の二の規定によりまして、当該新規化学物質を製造しまたは輸入しようとする事業者が行いまして、その結果を労働大臣に届け出なければならないというように規定されておりますが、試験の実施に際しましては、試験の信頼性を担保する上で一定の試験施設、それから一定の経験を有する試験業務管理者の配置などの点につきまして、基準を定めておりまして、その基準に従って行われるということになっております。それから、したがいまして自主的にそういう基準によってやるわけでございますが、その基準によってやった結果を、労働大臣に届け出がなされるわけでございますが、届け出がなされましたときに、私どもとしては有害性調査結果につきまして、その資料等に基づき高度の専門的知識を有する学識経験者に御意見をいただいてよく審議していただくということで、その審議の結果に基づきましてこれは大丈夫だというように評価して発表をしているわけでございます。
 なお、資料等につきましては、後ほど提出さしていただきたいと思います。
#121
○安恒良一君 もちろん業者からそういうあれがあったときに、学識経験者に審議していただくこと、これはもうあたりまえのことですよね。で、法律の中にもそれらのことが明記してあるわけです。私がお聞きをしたのは、変異性試験をやったのは業者だけでやったのか、それからその業者が変異性試験をやる際に、行政側でも非常に重要なことだからこれには関与したのですか、しないのですかと、そのことを聞いているわけなんです。あなたがいま言われたことは、届け出があった後、いわゆる高度な技術を要しますから、学識経験者等で十分に審議してもらった上でこの十項目を決めたと、こういうことですから、私の質問とちょっとそこかみ合っていないんですよ。その点はどうですか。
#122
○説明員(望月三郎君) 具体的な業者の試験につきましては、もちろん私どもの方に相談がございますし、私どもが定めた基準はこうこうであるというような指導はやっておるわけでございます。そういう意味で相談に乗ってこういった基準でこういった施設、それからこういった資格を持った人がこの試験をやらなきゃいかぬという指導はやっております。
#123
○安恒良一君 これも、これより以上やりとりしてあれですが、改めて私は後から細かいデータ、資料をいただきます。私はこれは今後の問題として、もちろん変異試験というのは業者がやられる、それについていろいろ相談があれば指導をされる、これはもう当然なことですが、私はこういう重要な試験については、やはり安全衛生という観点から行政側もやはり関与した方がいいんじゃないか、まあ関与といってもどの程度かと、いろいろ問題があると思いますが、こういう点は引き続いてひとつ十分御研究願っておきたい。私の意見から言うと、試験を一方的に業者に任せるだけではやっぱりいけないんじゃないか、この種のものについては。どうしても私はやはり行政がこういう試験には関与をしていくということが必要だと思いますので、そういう点をこれは今後の研究課題といいますか、ということで預けておきますから、ひとつそちらで十分御検討を願っておきたいと思います。
 次の問題に入りますが、これはたしか一昨年、五十三年の夏ごろだったと思いますが、労働基準法施行規則の三十五条を改正するに当たりまして、業務上の疾病の範囲の見直しを定期的に行うこととし、そしてそれがためには専門家会議を常設をする、そして検討する、こういうことが約束をされていまして、そのときの約束といたしまして、やはり三年に一回は見直しをしたい、こういうことが当時やりとりの中で実は明らかにされております。
 そこで、そういう約束が行われたわけでありますから、その後専門家会議は何回開かれたのか、そしてどういうことを専門家会議は検討しているのか、もしくは結論が出た問題があれば、どういうことに結論が出たのか。それから、検討を加えているということであるならば、その資料を提出をしてもらいたいと思いますが、これはどうでしょうか。
#124
○政府委員(倉橋義定君) 労働基準法施行規則三十五条の定期的見直しを行うために昭和五十三年の十二月に医学の専門家から成る労働基準法施行規則第三十五条定期検討のための専門委員会を設置したわけでございますが、それから昭和五十三年の十二月と昭和五十四年四月の二回にわたりまして会議を開催しているところでございます。第一回の会議におきましては、委員会の運営の方針などにつきまして討議し、第二回の会議におきましては、わが国におきます業務上疾病のリストと諸外国、イギリスなりフランスなり西ドイツでございますが、そういう諸外国における職業病リストとの比較検討を行ったわけでございます。なお、第三回目の会議といたしましては、本年の十二月三日に開催する予定でございます。
 なお、いろいろ検討の資料でございますが、いま二回目の審議に用いました諸外国における職業病リスト等の資料につきましては、後刻先生にお届けしたいと思います。
#125
○安恒良一君 大臣、これも聞いてください。まことに遺憾なことなんですね。業務上疾病の範囲の見直しを定期的にやろう、それがためには専門家会議を常設して十分検討しますと、こういうことだったわけです。ところが、いま聞いてみますと、五十三年にそういう約束して、五十三年の十二月に一回、それから五十四年の四月に一回ですよ、そしてことしでしょう。五十五年のいま言われたのは十二月ですか、これでは私は約束違うと思う。というのは、十三名の病理、臨床、衛生から成る各界の専門家をもって構成されています。お忙しいと思いますけれども、それでも年に一回ずつぽつりぽつりとやっているわけですね。第一回目は運営規則を決めて、第二回目は諸外国はどうなっているのかということで、去年のこれは四月にやっておるんですよ。そしてことしの十二月、一年半以上たって第三回目、何を御議論されるのかわかりませんけれども、これではやはり、労働基準法施行規則を改正したときの業務上疾病の範囲の見直しを定期的にやるという約束と違うんですよ。私は、やっぱりこういうところに労働行政の、いわゆる労働安全行政の怠慢というそしりを免れないと思うんですね。幾ら忙しい学識経験者であっても、年に一回しか開かぬなんという、そんなことでは、当時私は、当時の議事録いまここに持ってきておりませんが、議事録なくても、私どもと労働省との当時のやりとりでは、ここでひとつ専門家の意見を聞いて、そして見直しをしていきますということだったわけですから、それにしては、年に一回とか一年半に一遍しかやっていない。これでは困りますが、大臣この点はどうされますか。
#126
○政府委員(倉橋義定君) 先生御承知のように、三十五条関係につきましては昭和五十三年の四月に全面的な見直しを行いまして、全面的な整備を行ったわけでございます。その後、ILOにおきましても百二十一号条約の関係でILOの付表一号、職業病一覧の改正が行われたわけでございますが、これらの新たにILOで作成いたしました職業病のリストとわが国のリストとの比較でございますが、わが国の三十五条関係につきましてはILOのものよりも多く包含をしておりまして、一、二のものにつきましては落ちている面がございますが、今後の、次回に開きます審議会におきましては、そのILOの百二十一号の付表一を参考といたしまして、これらにつきましてのわが国の三十五条の改正についての検討を加えていく考えでいるわけでございます。
#127
○国務大臣(藤尾正行君) ただいま御指摘の、専門家によります見直しが年に一回とか一年半に一回とかしか行われないなどというのは、御指摘のとおり、私は怠慢のそしりを免れないと思います。したがいまして、そのことを頭に置きまして十二分にこれから指示をいたしまして、十二分な対応ができるように私は指導いたします。
#128
○安恒良一君 まあ、大臣の方からそういうふうに明確に言われましたから、その点は……。ただ、私は審議官に申し上げておきたいのは、高杉同僚委員も言いましたように、ILOの基準というのは発展途上国を含めたいわば世界の最低基準なんです。しかもお約束は、なるほど五十三年の四月に全面見直しをして、三年ごとということは五十六年、来年の四月でまる三年になるわけですから、見直しをしなきゃならぬわけですね。そうしますと、それがためにはやはり私は何回かの会合が今日まで重ねられておかないと、来年五十六年に間に合わないと思ったから申し上げたんですが、これは大臣が率直に、怠慢のそしりは免れない、これから積極的にあえて検討させる、こうおっしゃられましたから、それはそれでこの点はおいておきますが、どうかやはり、そういうことを約束をした場合には、その約束が完全に守れるようなことについて今後とも、特に労働安全衛生に関する行政なんですからね。ですから、それはそういうことについてはひとつ、約束は約束としてきちっと守って、本当に労災が全面的に防止できるようなことについて御配慮を賜りたいということを強く申し上げて、この点はおきたいと思います。
 次に、これもまた職業病の問題でございまして、タールがんについてちょっとお聞きをしたいのでありますが、タールがんに対する健康管理手帳の交付の拡大についてお聞きをしたい。
 現在は、タールによる肺がんは製鉄関係の各コークス炉、ガス炉、こういうものは職業病として認定をされています。ところが、タールによる肺がんというのは都市ガス、それから化学の各コークス炉、ガス発生炉関係の職場にも残念ながら拡大をいたしております。すでに三井東圧大牟田で肺がんの認定された例もあるわけであります。
 そこで私はお聞きをしたいのでありますが、やはりこの種のがんの発生という問題は非常に重要でありますので、私は健康管理手帳の交付の範囲を、タールによる肺がんは製鉄関係だけに限定することなく、すでに現実にあらわれておりますような化学の各コークス炉、ガス炉の関係とか、都市ガス、こういうところにも健康管理手帳の交付を拡大をしていくべきだと思いますが、この点はいかがですか。
#129
○説明員(望月三郎君) 現在、コールタールの関係業務に従事した労働者に対する健康管理手帳の制度がございますが、これは製鉄用コークスまたは製鉄用発生炉ガスを製造する業務に五年以上従事した者にのみ交付することとしておるわけでございますが、これは昭和四十八年に労働省に設けた専門委員会の検討結果に基づいて決めたものでございます。なお、健康管理手帳の交付対象は、製鉄用コークスまたは製鉄用発生炉ガスの製造の業務に五年以上従事した経験を有する者でございまして、その従事する業務がその業種のいかんを問うものではなくて、製鉄業という業種だけに限らず、ほかの業種であっても、そういった同じ業態であればそれに対して適用をしていくという考え方になっております。都市ガス業でも化学工業でございましても、当該事業所において製鉄用のコークスを製造する業務に五年以上従事したという経験を有する者であれば、当然手帳の交付の対象になるというように考えております。
#130
○安恒良一君 もちろん製鉄業務には現在適用になっているということを私は言ってるんです。ただ、いわゆるこの化学なら化学の各コークス炉やガス発生炉関係においても、すでにタールによる肺がんが出てきているという現実の認定が行われているから、これはやはり拡大をすべきではないかということを言っているわけですね。ですから、必要なら私は専門家会議にかけて、現実に三井東圧の大牟田で肺がんに認定されている例があるわけなんですからね。ですから、こういうことは医学的なことなんですから、私はその方向に向かって前向きに努力をしてもらう以外はないんですよ。私が聞いていることとあなたが言っていることは必ずしもかみ合ってないんだ。私が言っていることは、いま言ったようにいわゆるこの化学の各コークス炉、ガス発生炉の関係の職場で残念ながら拡大をしていると。そして、それが事実としても、三井東圧に事実認定が、肺がんだということの認定の例が出てきていると、こういうこともあるという以上は、やはり専門家会議等に速やかにかけて、前向きにこれをしていかなければいけないんじゃないですか。その点どうですか。
#131
○説明員(望月三郎君) そういう事例が見えるようでございますので、私どもも医学的知見の集積をもちろん待たなきゃなりませんが、前向きに検討していきたいと考えております。
#132
○安恒良一君 この点、労働大臣聞いておいていただきたいんですが、どうもこういうものの認定が、死人の山を築いて、それから後追い認定という場合があり得るわけですね。死人の山築いてからやったんじゃ遅いんですよ、これは。そういう事例が一件でも二件でも出てきた場合には、速やかにやっぱり専門家会議等が開かれて、死人の山ができないうちにやらないといけないと思うんですね。ですから、どうか大臣、この点もひとつ、やはりこういう事例が現実に出ておりますから、早急に専門家の御意見等も聞いて、ぜひ善処をしていただきたい。死人の山ができてからでは遅いのでありますから。どうでしょう。
#133
○国務大臣(藤尾正行君) まあ私は科学者じゃありませんから、何をもって肺がんの原因とするかということについては、私の見解は確としておりません。と申しますのは、たばこを吸いましても肺がんになるという人がおるわけでございますから、なかなかむずかしい問題がそこにあろうと思います。しかしながら、仰せのとおり専門家の方方の問題に供して、その判定を得るということは結構なことでございますから、進んでそのようにさしていただきたい、かように思います。
#134
○安恒良一君 次に、同じがんの関係ですが、原因物質が不明のまま離職をして二十年たって死亡する、そしてそのときの物質が、がんの原因だったということがわかるわけです。ところが、現役であると、これは労災給付上の認定関係はある程度できるんですが、それでも大変な手続だと言われていますが、特に離職をしまして二十年もたちますと、認定関係が大変複雑になるし、また立証するのにも実は非常に労働者は苦痛を感じているわけであります。ですから、特にがんというのは、ある一定の長期たった後にあらわれるという、職業病的がんはそういう傾向が多いわけであります。でありますから、現役で働いているときには体調に余り異変がないんだが、定年になり、その他何らかの理由によってやめて離職した後に、現役で働いておったときの物質が原因となってがんになると、こういうことがあるわけです。
 こういう点について、私は労災の精神から言いましても、やはり労働者の救済について、何らかの方法改善について考えなきゃいかぬのじゃないか。特に離職後ある一定の年数がたって死亡するというような場合について、この点の改善について事務当局の考え方を聞かしてください。
#135
○政府委員(倉橋義定君) 先生御承知のように、いわゆる職業がんの問題につきましては、国の内外におきまして職業病として評価され、業務上との因果関係が確立されている場合につきましては、労働基準法施行規則三十五条に列挙いたしまして、その列挙されているがんにつきましては、一定の要件を満たせば、特に反証のない限り業務上の疾病として認定しているわけでございます。これにつきましては、いま先生の御指摘のように、できるだけある疾病につきましての業務上の取り扱い認定についての便宜のために、そのような措置を講じているわけでございます。
 いま先生のお挙げになりました離職後相当期間してがんが発症したというような場合でございますが、もちろんそのがんが三十五条に列記されているというものであること。また、その発症された労働者の方が、当該三十五条に列挙された業務に従事していたということが確認できれば、一般的に業務上であると認定されることになっているわけでございます。特に問題は、そういうように業務従事歴が、時間がたっているとなかなかむずかしいのではないかということでございますが、業務と疾病との因果関係につきましては、請求人に私どもその立証を求めているわけでございませんで、行政の側におきまして客観的に資料に基づきまして検討を行うことになっております。しかし、この場合におきましても、本人が当該どういう職場でどういう仕事をやっていたというようなことは御協力いただかなければ、われわれとしては探しよう、調べようがないわけでございます。労働者の方々、または遺族の方々の御協力を得ながら、そのような事実の調査、そういうことにつきましての最善の配慮をしてまいっているところでございますが、今後とも先生の御指摘の点に着目いたしまして、できるだけ労働者並びに遺族の方々が労災保険の申請並びに認定が速やかに行われるよう努力してまいりたいと思っております。
#136
○安恒良一君 それじゃその点は、ひとつぜひ御努力をお願いしたいというふうにいたしまして、次の問題でありますが、御承知のように昭和四十八年から九年にかけて第一次石油ショックがあり、また第二次石油ショックもあったわけですが、これからもまた、いまのような油の値上がりという問題はまだ続く場合に、残念ながらそういう面が起こり得ると思うのでありますが、特に第一次石油ショックの時代に一時帰休もありまして、ところが、御承知のようにがんというのはいまさつきも私が申し上げましたように、ある一定の年数がたってがんが発生する。こういう場合に、労災補償の死亡の場合の賃金算定、これが一時帰休なんかとかち合いますと、労働者は大変不利になるわけですね、これは。また、現実にそういうことが起こり得るわけです。ですから、私はやっぱりこれが対策を検討しなきゃならぬと思うのであります。いわゆる賃金算定は平均三カ月なら三カ月と決まっておるわけですから。ところが、たまたまそのときは一時帰休にあって賃金は非常に下げられておったという事例はこれからもあり得ることですね。資本主義の世の中ですから、好不況の波があって、そういう場合が起こり得るわけですから。ですから、こういう点についての対策についてどのようにされるおつもりですか。
#137
○政府委員(倉橋義定君) 労災保険におきます給付の算定の単価と申しますか、基礎値になります給付基礎日額につきましては、原則といたしまして労基法十二条による平均賃金によるものとされているわけでございます。この平均賃金の算定におきましては、算定基礎期間中に使用者の責めに帰すべき休業の期間があった場合におきましては、この休業期間は除くということになっておるわけでございます。御質問のございました第一次のオイルショックのときにいわゆる一時帰休が行われたというようなこと、この一時帰休の見方はいろいろあるかと思いますが、一般的にまいりますと、これは使用者の責めに帰すべき休業に当たるものではないかと思うわけでございますが、そういう一時帰休が、たまたま賃金算定の期間の中に入っていたということによって基礎日額が低くなるというようなことは、本来あってはならないわけでございます。私ども、それらの休業期間中は除外するというようなふうに考えているわけでございまして、いま先生の御指摘になった点が具体的な事案としてありましたならば、直ちに補正の措置をとりまして是正をいたしたいと思うわけでございます。
#138
○安恒良一君 よくわかりました。それじゃ、石油ショック等の一時帰休というのはこれは使用者の責めに負うものだから労基法の精神で処理をすると、また具体的にあれば直ちに補正をすると、こういうことでありましたからその点は明確になりました。それじゃ、それはそのように承っておきます。
 次に、がんの発生の部分を限定をして補償給付をしているこの現状を、私は改善をする必要があると思う。たとえばクロムについて言いますと、肺がん、上気道がんまでは認められています、クロムの場合ですね。肺がん、上気道がんまでは認められています。しかし、他はだめになっていますが、すでにこのクロムによるがんについては、学者の間にも全身症状としてとらえるという意見がかなりあります。そこで私は、この点も労働省としても、学者専門家の意見を聞いて研究する必要があると思います。でないと、いまのように肺がんと上気道がんまでは認めるということでは、今日の実情に合わないのではないかと思いますが、そういう点についての今後の改善についてのお考えを聞かしてください。
#139
○政府委員(倉橋義定君) がんの発生基準に関しましては、現在のところ医学的な面におきまして非常に不明な点が多いわけでございます。私ども、いろいろ医学的な面から専門家の方々の御意見を聞きながら、その職業病としての職業がんの検討につきまして鋭意努力しているところでございます。たとえばベンジジン等のような物質に暴露されますと尿路系の腫瘍が発生するというようなことで、がん原性物質が人体に暴露をする態様によりまして、特定の部位にがんが発生するというようなことが知られているわけでございます。クロムによりましても、いま先生御指摘のように、われわれの委嘱しましたクロム障害に関する専門家会議を設置して検討願ったところでございますが、その中間報告におきまして肺、上気道にがんが発生するというような因果関係が認められたわけでございます。
 そういうことで、われわれといたしましては医学的知見の集積によりまして、そういうような職業がんの発見、開発に努力をしてまいりたいと思っています。御指摘のように、いろいろな物質が数多くあるわけでございまして、ベンジジンとかクロムとかに限らず、いろいろな物質のがん原の物質につきましての職業がんに関しても、常に常に最近の医学的情報の収集に努めまして、新たな知見が得られれば所要の措置を講ずるよう努めてまいりたいと思っております。
#140
○安恒良一君 私の質問は二時二十四分まででありますから、余りこれで時間をとるわけにはいかないのでありますが、いわゆる医学というのは日進月歩なんですね。もう、三年もすれば根本的に変わると言われています。またがんの研究もそれに並行して、世界各国は英知を傾けて研究しているわけですから、でありますから、私はできるだけ一番新しいそういう最近のがん研究であるとか医学の研究であるとか、そういうものを常に吸収しながら、私は補償給付の必要な拡大はやっていかなきゃならぬと、こう思いますから、どうかぜひこれも研究課題といたしておきますから、いま申し上げたように、すでにいわゆる学者の間に全身症状としてとらえるべきだという、そういう意見をお出しになっておる学者もあるわけなんですから、そういう点を十分に労働省は検討してもらいたいと思います。
 次の問題といたしまして、労働保険審査会の中の労災関係の判決状況がどうなっているのか、昭和四十年以降年度別に、請求件数、請求棄却、原処分取り消し、審査官差し戻し、これ資料を要求しておきましたらすでに届いていますから、これも細かく読み上げると大変でありますから、簡単に現状を説明をしてください。
#141
○政府委員(倉橋義定君) 労働保険審査会におきます昭和四十年以降の労災保険に関します審査状況でございます。四十一年一月から五十四年三月三十一日までを累計いたしますと、再審査請求件数が三千三百六十件、棄却件数が二千三百三十五件、取り消し件数が五百四件、棄却件数が六十九件、差し戻し件数がゼロでございます。なお残余につきましては、未処理の部分でございます。
#142
○安恒良一君 大臣、いま数字を聞かれたと思いますが、いわゆる取り消し件数というのが再審査を請求して救済された率なんです。救済された数なんですね。そこで事務当局にお聞きしたいんですが、請求件数に対していわゆる取り消し件数の占める割合、救済された割合は何%になっていますか。
#143
○政府委員(倉橋義定君) 審査請求件数に対して取り消した件数の割合は一五%でございます。
#144
○安恒良一君 まあ、審査官一生懸命やってくれているんだろうと思います。しかし、救済は一五%なんですね。これは、不服だから再申請を出したわけです。それが一五%しかなってないということであります。
 そこで私は、やはりせっかく労働保険審査会、学識経験者六名をもって構成をされておりますから、やはりここで、審査業務が公正に行われることを実は望むわけでありますが、もう時間がありませんから細かいことは言わないのでありますが、たとえば六名の中に大体労働省出身の方が非常に多いのであります、もちろん民間人も若干いますが。そして中には地方労働基準局長時代に自分が審査した事件、それが今度上に上がってきたと、もちろんそういう人が請求人から、あなたが審査するのおかしいじゃないかと、こうなるわけですから、そんな事例もあるそうであります。
 そこで私がお聞きをしたいことは、労働審査官及び労働保険審査会法第三十条三号による委員の身分保障について具体的にどう考えられるか。これはどういうことかというと、こういうことが書いてある。「審査会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき、又は職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認められたとき。」、これでですね、審査会によって審査をして、最終的には総理大臣の決裁によってやめさせられると、こういうことになっているわけですけれども、どうも私この法律を読みますと、六名の中でけしからぬのがおったら、その六名がまた審査会によってそのけしからぬ人を審査する。ところが、裁判官の場合は、御承知のように裁判官の訴追委員会、それから弾劾裁判所、こういうのがありますね。それから考えると、これだけ重要なことを扱う審査官の身分問題について、どうもちょっとこれじゃ片手落ちじゃないかなと、そういう考えが一つ。というのは、私の方に訴えがあっておりますのを見ますと、請求人に対して非礼な取り扱いや、激高してどなる、こういう審査官も中にはおるそうであります。大変人気の悪い審査官もおるそうであります。ところが、いまのところは、そういう人については審査会により、いま申し上げた第三号が書いてあるだけでありまして、裁判官のような訴追委員会もなければ弾劾裁判所もないわけであります。もちろんこれは国会承認人事に六名はなっています。国会承認人事になっていますが、そういうことですね。ですから、私は労働保険審査会のあり方について今後やはり、いま申し上げたような裁判官の場合のような訴追委員会とか弾劾裁判所等々を参考にしながら考えていかなきゃならぬと思いますが、この点はどうでしょうか。
#145
○政府委員(倉橋義定君) 労働保険審査会の審査委員の身分の保障の規定でございますが、この規定につきましては、他の同種の機関たとえば社会保険審査会というのがございますが、そういうような同種の機関の同種の法律の身分保障の規定と同じように設けられているものと理解しております。身分保障を行うことによって、他からの圧力を排除するというような立法の趣旨かと思います。また裁判官と違いまして、任期も三年といたしておりまして、三年の任期が終わりますと、その更新につきましては国会の御承認というような形になっている点につきましては、裁判官と違うような方式でございますが、いずれにいたしましても先生御指摘の問題は労働保険審査官だけではなく、やはり同種の機関、審査委員との横並びの関係がございますんで、いろいろ今後とも御指摘の趣旨を理解いたしまして研究をしてまいりたいと思っております。
#146
○安恒良一君 時間がなくなりましたから、これもまた改めて議論することにして、ぜひいま申し上げたような点については十分な御検討をお願いしておきたい。
 最後でありますが、被災労働者及びその遺族が、被災原因が業務に関係があるのではないかということで労災保険法上の療養給付を請求した場合に、監督署がこれを調査検討を加えた結果業務との関係なしと、こういうことで不支給処分をする場合がございます。私は、不支給処分をしたことについて言っているわけではないんでありますが、そのときには不支給の理由としての相当の根拠、たとえば疾病の場合は医学上の所見等を本人、家族に示すのが当然だと考えますが、どうでしょうか。これは他人に言うわけじゃないんですから、本人か遺族が請求しているわけですから。ところが、それがなされてないというふうに聞くんでありますが、その点はどうなんでしょうか。
#147
○政府委員(倉橋義定君) 労災請求につきまして不支給決定を行う場合につきましては、その不支給決定の理由につきましては、その通知書に記載できる範囲内で非常に通知書が、書くスペースが少ないわけでございまして、そういう制約がございますが、その範囲内で通知しております。
 なお、請求者の方からさらに詳細な決定事由なり、その根拠を求められた場合につきましては、これを補足して説明するというような取り扱いになっているわけでございます。先生の御指摘のありましたように、仮にそういうような遺族の方から決定理由なり、その根拠を求められて説明しなかったというようなことがないよう、今後とも十分全国会議、または地方に連絡の機会をとらえまして、その徹底を図ってまいりたいと思っております。
#148
○委員長(片山甚市君) 時間がきました。
#149
○安恒良一君 それでは、これで終わらせていただきますが、いまの場合は、三井東圧の名古屋工業所の高橋元治さん、永井直人さん、両名の死亡事件、三井東圧の大船工業所の堀田光夫さんの死亡事件のときにその点がいま私が言ったようなことがされなかったわけです。そこで、中央で審査会の席上において請求したところが出てきたと、こういう事例が現実にあるわけですから、あなたもおっしゃったように、不支給にした場合には親切に、たとえば疾病の場合だったら医学上の所見等をやはり本人、これは死んだ場合は遺族ですがね、等に私は示すのが当然労災法の精神上正しいことだと思いますから、それが厳格に守られるように指導を願いたいと思います。
 以上、私いろいろの問題について意見並びに提言をいたしましたし、また労働大臣から積極的な前向きの御回答もいただきましたが、今回の法改善の精神がより一層生きるように、今後とも労災保険法の改正問題についての一段の研究、努力をされることを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
#150
○渡部通子君 私、女子の労災の状況につきまして、まずお伺いをしたいと思います。
 最近の労働市場におきます女子労働力の増加は、これはもういまさら申し上げるまでもございませんで、非常に目覚ましいものがございます。五十四年度で全雇用者中に占める女子労働者は三四%、そのうち三十五歳以上が実に五〇%を超えておりまして、五二・六%、女子パートタイマーにつきましては、雇用者中に占める短時間雇用者の割合で見ると一八・四%、こういう状況でございまして、女子の多い業種と申しますと、サービス業、製造業、卸売業、小売業、この順になっています、規模別では中小企業が多い。こういう状況の中で、女子の労災の状況はと申しますと、昭和五十三年度においては死亡、休業四日以上の者の業種別では製造業、建設業、いわゆる第三次産業を含むその他の事業の順になっています。
 年齢別の被災状況と申しますれば、男女ともに四十歳が最も多く、四十歳代、次いで五十歳代が多いと、こういう状況でございまして、製造業に女子労災が多い原因は非常に未熟練であること、しかも安全訓練もろくに受けていない女子労働者が多い、特に中高年のパートタイマーはその機械化、オートメーション化等の技術革新の目覚ましい製造業の業種の中に非常に多い、こういうふうに私どもは認識をいたしますけれども、まずその認識についてはいかがでございますか。
#151
○政府委員(倉橋義定君) 女子の方が非常に全産業におきまして進出されているわけでございますが、たしか女子労働者の製造業におきます災害数におきましては多いと思いますが、製造業につきまして、男子と女子との災害の発生率を死傷の千人率で比較してまいりますと、昭和五十四年度では女子の死傷の千人率は六・二であり、これに対しまして、男子の千人率につきましては一一・五ということで、男子に比べれば半分であるというようなことになっているわけでございます。もちろん、この従事する業務の危険性、危険度の度合い等から見まして、男子と一律に比較して女子の方が余り災害がないということは断定できませんが、私ども製造業等を含めまして女子の未熟練労働者の災害防止につきましては、今後とも一層努力してまいりたいと思っております。
#152
○渡部通子君 規模別に見ますと、中小企業に労災が多発をしているということでございますね。私は、労災補償制度を健全に発展させるためには、まず基本的な問題といたしまして労災をなくすこと、これはもう午前中からずっと議論の続いたところでございます。そのためには監督、指導体制の整備、強化ということが、これはもう強力に行われなければならないと思うし、もう一点は、無技能労働者をなくすこと、こういったことに鋭意努めてもらわなければならないわけでございます。
 監督、指導体制につきましては先ほど同僚議員からいろいろ質疑がございましたので、あえて私は重ねることはいたしませんが、その質問を聞いておりましても、非常にこれが不備である、人数も少ない、こういう実態がわかったわけでございますが、中小企業に対しまして大体監督官というのは、現在実際に年に何回ぐらい回ってこれるものか伺っておきたいと思います。
#153
○政府委員(倉橋義定君) 先ほども御審議いただいたわけでございますが、監督官の定数は三千ちょっとでございまして、その中で監督に専念できるというものはさらに二千四百名程度でございます。そういう限られた主体的能力の中で、できるだけ重点的な監督方針をとっておるわけでございます。われわれといたしましては、監督の重点といたしましては、第一には、災害の防止に最大の力点を置いているわけでございますが、災害の発生の状況を見ますと中小企業が非常に多いわけでございまして、監督官の主体的能力も主として中小企業に振り向けていくというような実情でございますが、なおいろいろ事業所数等の関係で重点的な監督は行っておりますが、全産業を平均いたしますと大体十年ないしは十五年に一回程度回れるというような計算になろうかと思います。
#154
○渡部通子君 大臣、お聞きのような状況でございまして、これでは監督体制が一体あるのかないのか、こう言っても過言ではないと思うんです。どこを重点にやっていらっしゃるかわからないけれども、労災を防止する、防止という、予防という体制で考えていくならば、あらゆる業種に対して指導徹底をする、監督をするというのは当然な話でございまして、またこれじゃ事業所開設以来一度も来てないというところがずいぶん多いんではなかろうかと思うし、将来もまた、一度も監督、指導はなかったなどというようなことで終わってしまうのではないかと思います。こういった意味で、第一線の監督官の増員計画を一体具体的に考えていらっしゃるのかどうか、その体制をどういうふうな姿勢で臨んでいかれようとしているのか、これ大臣からもひとつ伺っておきたいと思います。
#155
○国務大臣(藤尾正行君) これは、先ほど来いろいろ御指摘をちょうだいをいたしまして、御叱正もいただき、また御助言もいただいておるわけでございますが、私は、労災事故を防止するということは、役所の監督があるからそれをやるということではございませんで、事業所自体がみずからえりを正してそのような措置をするのはあたりまえのことでございます。そこに、非常に残念なことでございますけれども、事業所にお任せをしておりますといろいろな間違いや、あるいは不備な点が出てくる、こういうことでいやなことでございますけれども、監督官といいまするものをつくりまして、これをもって監督、指導に当たらせるというような、余りいい話じゃありませんけれども、やらしておるわけであります。ところが、いま局長が申し上げましたように、非常に数が少ないということで、御指摘のように、事業所数で割ればそのようなことになっていくということであろうと思いますけれども、それではどこの事業所でもそういった事故、災害が起こり得るのかということになりますと、私は必ずしもそうではない、かように考えるのでございまして、事故の起こっておる実例というようなものを解析をしてみましても、そのような名前を申し上げるのは私は非常に失礼千万でございますけれども、たとえば建設業でありますとか、あるいは非常に機械を多用されるところでありますとかいうようなところに集中的に事故というものは起こりがちでございます。いま御指摘のございましたような婦人労働者がたくさん働いておられるところ、そういったところでございましても、たとえばスーパーでありますとか何とかというようなところには私は余り事故は起こってこないんじゃないか、かように考えておるわけでございまして、当然その監督の運営というようなことにつきましてもおのずからそれぞれのつかさ、つかさがその方針に従いましてやっておる、かように考えます。
 しかしながら、どのようなことにいたしましても監督官の数が少ないがゆえにこのような災害が多発しておるということでございましたならばこれは一大事でございますから、そのようなことはあってはならぬわけでございまして、どのようなことになりましても行政整備をしなければならぬとか何とかというような要請は要請といたしまして、しかしながら、そのことによって働かれる方方の安全が損なわれるというようなことは私は座視するわけにはまいらないわけでございまして、私といたしましては、そのような因果関係も十二分に考えて、手落ちのないような配置ができますように、それぞれの措置をしてまいる所存でございます。
#156
○渡部通子君 大臣のおっしゃることもわかりますけれども、たとえば建設業等に多い、こういうことですが、私が当初申しましたように、中小企業に事故が多発をしている、この前提で私はお尋ねをしたわけでございまして、それは建設業みたいな職場であれば事故というのは非常に認定もしやすいし、外傷が多うございましょうからわかりやすいと思うんですけれども、最近スーパーとか製造業、いまも多発の業種で言いましたけれども、女子パートタイマーがたくさん働いていらっしゃるような製造業、そういったところで、まだ認定基準には入っていないけれども、職業病と思われるような肩の痛みとか、あるいは背中から腰の痛みとか、そういった職業病を、これから認定範囲に考えなきゃならないようなものがたくさんにあるわけでございまして、そういったものもあらかじめ予防という対策的な立場で指導、監督をするということは非常に大事ではないか、そういう意味で私は申し上げたわけであります。
 次に、無技能労働者の問題でございますが、無技能女子労働者が多い、これはやはり事故多発につながるわけでございまして、中高年の女子の労働者のために職業訓練体制を整備して、職業能力及び職域の開発を図っていただく、これが労災防止上からも、女子の地位の向上のためにも必要であると思いますけれども、これらの対策の現状はどうなっておりましょうか。
#157
○説明員(野崎和昭君) ただいま先生からお話しございましたように、女子の雇用者が全体の三分の一を超えるという状態の中で、婦人の労働者の中にも専門的な技能を身につけたいという意欲が非常に高くなっていると承知いたしております。このため、従来から特に女子のみを対象としました職業訓練校を八校設けまして、三千三百六十人の規模で職業訓練を実施いたしておりますけれども、一般の職業訓練校におきましても、更衣室とかその他施設面で十分配慮しながら女子の方の入校を積極的に推進しているわけでございます。
 最近では養成訓練と申しますか、新規の学卒者に対する訓練生の約一割を女子で占めております。それから新規学卒者ではない離転職者の方の訓練生の三割、三分の一を女性が占めているわけでございます。その科目別の内容を見ましても、従来ございました女子の訓練の中心でございました洋裁とか和裁というものもさることながら、最近では、電子計算機科あるいは建築製図科、機械製図科と、そういったような新しい専門的な訓練科目のところにも女子の方が相当数入ってきておられます。私どもといたしましては、こうした傾向は今後とも続くであろうという認識に立ちまして、男女を問わずひとしく入校を希望されます方には入っていただくという前提に立ちまして、今後とも、そういった情勢に対応するために必要な訓練科の転換等を図ってまいりたいと考えております。
#158
○渡部通子君 次に、職業病について伺いますけれども、技術革新あるいは合理化、こういったものがさまざまに目まぐるしく発展をしております社会でありまして、たまたま仕事のあり方というものが、人間生理に反するような態様がたくさんにあるわけです。そして、最近は女子労働者の中に頸肩腕あるいは腰背部の疲労性健康障害、これが非常に多くなっているように見受けます。こんなむずかしい言葉で言わないで、最近は肩こりとか腰の痛みとか、こういう言葉で言っておりますけれども、そういう疲れから出ていると言われてしまうような健康障害を訴える方が非常に多い。しかも、数多くのパートタイマーは未組織でありまして、労働省通達すら守られにくい労働条件下にございます。監督、指導を徹底すると申しましても、いまお話のありましたように、それがない方が好ましい状況だと、当然事業所でやるべきことだと、こう大臣も仰せでありますし、人数も非常に少ない中でございます。したがって、こうしたことを指導を徹底させるための具体的な処置というのは労働省はどうやっていらっしゃるのですか。
#159
○政府委員(倉橋義定君) パートタイマーとか、いろいろ第三次産業その他、女子の方々が働く職場の健康管理等の問題につきましては、私ども先ほど申しましたように、主体的能力の範囲内におきましていろいろ創意工夫をこらしまして行っているわけでございます。たとえば、集団的に関係業者を集めまして女子就労に対しましての特有の問題、その場合につきましては単に労働衛生だけの問題ではなく、就業規則に基づく時間管理の問題、賃金管理の問題等を含めまして、その法の趣旨を徹底をするというような方法、さらには、自主点検制度と申しまして、一定の事項を記載しました点検票を渡しまして、企業みずからが点検し、その点検の内容に従いまして自主的に直していくというような方法等々を講じまして、数多い事業所に対しましての安全管理、労働条件の適正な管理が行われるよういろいろな指導等に努めているところでございます。
#160
○渡部通子君 頸肩腕あるいは腰背部障害等は看護婦さんとかあるいは社会福祉施設の保母さん、こういった方に多く見られるものでございまして、これらの職業は現実に基準の労働時間も守られにくいという、そういう環境で働いていらっしゃるわけでございます。病人を抱えてトイレへ連れていく、あるいは身障者を抱えてふろへ入れる、こういったような大変な重労働の分野、これは、いままで福祉職員というのはほとんど女がやっているわけでございますけれども、これは女子の分担から外してむしろ男の方にやっていただく等の労務管理が、こうした疾病の予防からも必要だと思いますけれども、いかがお考えですか。
#161
○政府委員(倉橋義定君) 社会福祉施設におきまして、いろいろ、保母その他の方々が非常に重労働である、したがいまして、その仕事を男子にかわるというような方策もございますが、やはり社会福祉施設におきます看護、保育等の役割りにつきましては、女子の適性と申しますか、そういうことが非常に大きな役割りを営んでいるわけでございます。一概に、そういうような重労働であるために男子がかわるということは、それだけの理由でなかなかかえるわけにまいりませんが、私ども、たとえば重度心身障害者施設におきます施設の方々につきましては十分健康管理を行うよう、その当該施設の長等に十分指導しているわけでございまして、今後とも、その健康管理が一層徹底いたしますよう、関係機関と連携をとりながら努力してまいりたいと思っております。
#162
○渡部通子君 それはそれでありがたいんですけれども、やっぱり、これからの方向といたしまして、保母さんのほかに保父さんも出てきているような社会状況でありますから、当然こういう福祉に携わる職員の中にもう少し、こういう特に腕力や力を要するような場所には男の方の進出が図れるようにお考えいただいて当然ではなかろうかと思いますけれども、もう一度その点……。
#163
○政府委員(倉橋義定君) 非常に、労働省だけで対応できる問題ではございません。いろいろの機会を見まして厚生省等の関係機関と話し合いましてそれらの問題の解決に努力してまいりたいと思います。
#164
○国務大臣(藤尾正行君) 政府委員は余り知識がないものでありますから、そのような答弁をいたしたわけでございますけれども、職業と性に区別があってはならぬわけでございまして、そのようないままで女子が主としてやっておられた分野に男子が進出をいたしましても一向に差し支えがないということでございますし、場合によりましてはそういうことが好きだというような方も中にはおられぬではないわけでございますから、私は、そのようなところに差別をつけるべきではない、かように思いますし、そのようなことで差別がないような指導をしてまいりたい、かように考えております。
#165
○渡部通子君 給付額の改善について一点伺います。
 今回の改正法案によりますと、労災保険給付額の引き上げは、遺族補償年金受給者のうち、遺族の数が一人から四人までのものになっておりますけれども、五人以上のものについての給付額が据え置かれた理由は何でございますか。
#166
○説明員(小田切博文君) 遺族年金の改善につきまして、遺族の人数の少ない場合に限って行ったのはどういうような理由からかというような御質問でございますが、現行の労災保険の給付水準の全般的な改善の要否等につきましては、先ほど来いろいろ御質問がありましてお答え申し上げておりますように、引き続き関係の審議会におきまして検討が進められているところでございまして、今回法案に盛り込みましたのは、当面措置することを要するというようなことで審議会で御意見がまとまった内容でございますが、特に、遺族の人数が少ない場合に重点を置いて改善が図られ考えられておりますのは、先ほども御説明したわけでございますが、従来の私どもの考え方では、遺族の人数が五人を基準にいたしまして、五人に対しまして一人のときの生計費がどのくらいの割合になるか、二人のときにはどのくらいの割合になるかというふうな指標を用いまして、残された遺族五人の場合、従前、生前賃金の六七%の、障害等級三級というような労働能力が一〇〇%喪失しているというふうに見られるケースにつきまして、生前賃金の六七%の厚みの年金を出すというようなことを前提にいたしますと、五人の六七%を基準にいたしますと、さっき言いましたように五人と一人、五人と二人というような人数別の生計費の格差指数を用いまして、一人のとき、二人のときの遺族の遺族年金の厚みをはじいてたわけでございますが、そういうことよりも、残された遺族が一人というケースは、労働者が健在であった場合には二人世帯であったということでございますから、二人世帯から一人世帯になったときの生計費の格差指数、また、残された遺族が二人というようなケースにつきましては、三人世帯から二人世帯になったというようなときの生計費格差指数というようなものを用いて所要の遺族年金の厚みを算出してしかるべきではないかというような観点から、特に遺族の人数の少ない場合につきまして引き上げを図るというような処置が妥当だというふうに考えたわけでございます。
#167
○渡部通子君 先ほども話が出ておりましたけれども、労災年金福祉協会調査によりますと、障害補償年金受給者の生活実態調査結果、この中で被災当時に家計への影響がかなりあったと回答した者は、昭和五十年以降で全体の七六・五%、そのうち現在でもその影響が残っているという者が三九・八%、やや残っている者は三四・三%。で、国・地方自治体に対する要望の調査項目に対しては、労災年金の増額を希望する者が七八%でトップであります。さらに被災障害者の家庭の場合、妻が日常の介護に当たる場合が多くて、その保険給付で従前の収入の六割しかカバーされていない、こういう実態でございまして、この辺の事情を考慮いたしますときに、今後早急に障害補償年金額の引き上げ、これを行うべきだと思うわけです。遺族補償もさることながら、病人がいるということは大変なことでございまして、ある意味では障害者を抱えているということの方が事態は深刻ではなかろうか。これに対する検討はいかがでございますか。
#168
○政府委員(倉橋義定君) 御指摘のように、障害者を家族に抱えた場合の世帯の問題につきましては、大変なことは重々承知しているところでございます。
 労災補償制度につきましては何回も申しておりますように、わが国の給付水準につきましてはすでにILOの勧告水準に達しているわけでございます。まあ西欧先進諸国に比べましても、個々の問題を比較いたしますと若干の問題はございますが、総体的に見ますと遜色ないようなまでになってきているわけでございます。したがいまして、障害補償年金におきましてもすでに六七%というような水準でございまして、私ども、今後におきます給付水準の改善につきましては制度全体の基本的なあり方を含めまして、その中で検討を加えていきたいと思っております。
 現在、労災保険審議会におきまして、先生御指摘の問題を含めまして検討中でございます。その検討の成果を踏んまえながら、今後とも、われわれにおきましてはできるだけ被災労働者またはその家族の援護に寄与するような方向で努力してまいりたいと思っております。
#169
○渡部通子君 それはぜひ早急にお願いをしたいと思います。
 で、損失てん補の金銭評価に当たりまして問題なのは、算定基礎となる賃金額だと思います。本来、人間の命というものは同等に価値づけられなければならないものでありまして、労働力の評価についても極端な不公平というものは生じてはならないと思うわけです。そういう立場で考えますと、どうしても女子は低賃金労働者が多い。それから賃金それ自体に男女格差が非常にいまも大きいわけであり、そこへ加えて、女子の平均余命というものは男子より約五年ほど長い。こういう実情を考え合わせますときに、女子被災者に対する給付額に何らかの配慮が必要ではないかと、私はこう考えますけれども、先ほど大変積極的な御答弁をいただいた大臣の御所見を伺っておきたい。
#170
○政府委員(倉橋義定君) 労災保険制度につきましては、男女を問わず平等に扱うということになっておりまして、いま御指摘のような、女子労働者が非常に賃金が低いという一般的事情は十分理解しておりますが、男子におきましても賃金の低い者もいるわけでございます。したがいまして、労災補償制度におきましてはいろいろ御指摘がございますが、その中では、やはり若年時に被災すると、その若年時における非常に賃金の低いときの賃金が基礎になって終身それがつきまとうという問題点の解決を指摘を受けているわけでございます。そういう点の検討と相まちまして、先生の御指摘の点を理解していきたいと思います。今後におきます基本的な問題の中で、それらの賃金の低い層、それの年功賃金制がどう反映していくかというような検討の中で研究をしてまいりたいと存じます。
#171
○国務大臣(藤尾正行君) 確かに渡部委員御指摘のとおり、男女間の賃金格差というものは事実ございます、残念ながら。こういったものをなくしていくというのが私ども労働政策の根幹でございまして、この際、この労働災害の被災者に対しまするそれぞれの年金その他の月額計算におきまして基本になる賃金が、御婦人の場合ややもすれば低いということで非常に困難な立場をよけい加えられるというようなことがあり得る。これは私にもわかります。しかし、この問題は、労災があるからこういった問題を検討しなければならないということではないわけでございまして、基本的な、一般の労働賃金に対しまして男女間の格差をなくせという一般論に帰すべき問題であろう、かように考えます。
 この点は重々御趣旨のほどを体しまして、そのようなことができませんように私ども心をいたしまして、ややもすれば低い立場にあられます御婦人の立場を引き上げていくように努力をいたします。
#172
○渡部通子君 次に、財源の問題でございますけれども、今後労災保険の保険料収入というものは余り伸びが期待できそうもない。なぜならば、低成長でございまして、賃金上昇率が低水準で推移をしておりますこと、あるいは第三次産業の進展で、保険料率の低い産業へ労働者の移動が今後も見込まれること、まあこんなことの状況から、伸びが余り期待できない。さらに、医療費単価の上昇による医療費の増、あるいは年金受給者の累増、こういう支出増というものも今後急激に変わるとも思われないわけでございまして、この財源を確保して、今後の制度の充実のために何かお考えがおありかどうか、伺いたい。
#173
○政府委員(倉橋義定君) 保険財政につきましては、先生御指摘のように、今後におきましていわゆる自然増的な増収はなかなかむずかしいわけでございます。それと同時に、保険財政につきましては、この数年極端に悪化いたしまして、それを改善するために本年四月から千分の二・二の引き上げを行ってきたわけです。これによりまして、この数年間におきましての保険財政につきましては健全化が期待できるわけでございますが、いま御提案いたしております労災保険法の給付改善が実施されますと、さらに保険料率におきまして千分の〇・五の引き上げをしなければならないことになっております。これにつきましては、本年度重ねて引き上げを行うというような予定にしております。それによりまして、現在予定しています給付改善の財源措置をいたすことに予定しております。
#174
○渡部通子君 これからの問題でございますけれども、先ほども議論が出ておりましたけれども、いわゆる企業独自の上積み補償を行う労働協約、これがいま広がってきております。これは先ほどお話がありました実情はよくわかりましたけれども、この事実というものは現実のその労災保険給付が、必ずしも満足すべき状態のものではないことを労使ともに認めていることになると思うんです。労災保険制度の充実を図る上に財政の健全化は欠かせない根本の問題でございますし、しかし、今後事業主の保険料の引き上げもそうそうはできない、限界があるとすれば、この上積み補償のための保険料を労災保険制度に取り入れる方向、これを検討すべきではないかと思いますが、いかがですか。
#175
○政府委員(倉橋義定君) 企業におきまして、いわゆる上積み補償制度を設けているわけでございますが、それらの財源を保険財源に充てるようにという御提案でございますが、労災保険制度につきましては、使用者の過失の有無にかかわらず、無過失の場合におきましても使用者の負担におきまして補償をする、それを保険形式で行っているわけでございます。そういうような見地から、その給付内容につきましてもおのずと限界がございまして、慰謝料等を含めて保険給付にするということにつきましてはいささか無理があるわけでございまして、したがいまして、企業が独自で支給される内容と保険給付との差というのは、今後におきましても当然あり得るわけでございます。したがいまして、企業から上積み補償の財源を持ってまいりましても、それを重ねてまた上積み補償が出るというようなことで、結局は特定企業からの財源を保険財源に求めるという結果になるのではないかと思いますが、現在におきましては、保険料は業種別の保険の度合いによって定められておりまして、上積み補償ができる財源能力がある企業により負担を多く求めるということにつきましては、制度のたてまえ上無理ではないかと思うわけでございます。そういうことから、今後におきましてはできるだけ、先ほど申しましたように基本的な問題といたしまして給付の充実につきましては検討してまいりたいと思います。そういう中で、その充実が図られることによって企業の上積み補償の効果と申しますか役割りも徐々に薄らいでいくということはあろうかと思います。そういう考えに立ちまして、今後制度の検討を行ってまいりたいと思っております。
#176
○渡部通子君 財源確保ということがこれからの大きな一つの課題になると思うわけでございますね。そして事業主からの保険料をそれほど上げるわけにもいかない、限界もない国庫補助というわけにもいかない、こうなってくれば当然、制度として私がいま申し上げたようなことはお考えいただいた方がいいのではないかと思うわけです。労災保険制度が使用者責任保険であれば上積み補償も使用主の責任保険である、違う点は、一方は公的であり一方は営利企業によるものであるということだと思うわけです。そして給付の充実に万全を期すということが、これからの労災保険制度の使命ではなかろうか、こう考えるわけでございますけれども、重ねて大臣からもひとつ御意見を承っておきたいと思います。
#177
○国務大臣(藤尾正行君) 全く御指摘は、私はそのとおり行けば一番よろしいと思いますよ。しかしながら、これは健康保険でも何でも同じでございまして、何でもかんでも一緒にして均てんをするというような方向が社会保障の相互扶助、そういったところの目的に合することはだれでもわかっていることでございますけれども、しかしながら企業によりまして、特別に自分の企業の労使の関係をよくしたいということで、特別自分の身を切ってそのような給付を出されておられるということが上積みという形で、健康保険でも何でもそうでございますけれども、行われておるのが私は実情だろうと思います。そういった点につきまして、仰せのとおり一般的な国民的水準を引き上げるということによりまして、上積み分は要らないではないかという議論はなるほど成り立ちますけれども、しかしながら企業によりまして労使の非常な御努力でせっかくその上積み分を獲得をせられた企業に対しまして、それを吐き出して一般労災の資金に御供出を願いたいということをお願いいたしましても、なかなかそれは私は、総論は賛成であって、各論に行きますとなかなか御承知を願えない、そういった面が多々あろうと思います。そういったことを、これからの施策の中で啓蒙を通じてできるだけなくするような措置はとっていかなければならぬ、かように考えます。
 しかしながら一何と申しましてもこういった保険財政といいまするものは、その事故をなくするということができれば財政の根幹はこれ成り立っていくわけでございますから、どのような努力をいたしましても災害をなくする、無事故にするという方向に全力を挙げていきまして、そうして災害に不幸にしてかかられた方々に対しまして十二分な補償措置ができますように、そのようなバランス感覚を持っていきたい、そのために私どもがやらなければならぬことは何でもやらなければいけない、かように考えておるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように災害をなくする、災害の事故を減らすということに重点を置いて、それによってこの補償保険といいますものを確立をする方向に持っていけないものか、かように考えておるわけでございます。
#178
○渡部通子君 今回の改正案では、保険給付額のスライドの発動要件である賃金水準の変動幅、これを一〇%から六%を超える場合としておりますが、六%とした特別の根拠はおありなんですか。
#179
○説明員(小田切博文君) 現行ですと、年度単位で比較しまして民間一般賃金が一〇%以上変動があった場合に初めてスライドされるというような規定になっているわけでございますが、一〇%では、最近の賃金変動の実態から見ますとスライドが間遠になり過ぎるんではないかというような御議論がありまして、その圧縮が議論されたわけでございますが、六%というふうな線に落ち着きましたのは、労災の場合に非常に特徴的な年金と申しますのは被災労働者本人がもらいます障害年金等でございますが、この被災労働者本人がもらいます障害年金につきましては、障害の程度に応じまして一級から七級まで年金の厚みに格差がございます。級間の平均的な格差を算出してみますと一三%弱になるわけでございますが、そういうことを考え合わせますと、一般的に賃金が変動いたしまして、賃金が一三%近くまで変動するまでスライドがないというようなことを想定いたしますと、同じような賃金をもらっている方が同じような程度の後遺障害が残りました場合に、一三%程度賃金の変動のある前後では、被災した時点がその前後の間では一等級下のランクの障害年金をもらったことになる。また、逆に言えば一等級上の障害年金をもらうことになるというような、非常に不合理な事態が生じ得るわけでございますが、そういうようなことを考え合わせまして、平均的な給付間の格差の半分程度、六%ぐらいまで賃金が動いたところで、スライドが発動されるというようなことが一つの妥当な線ではないかというようなことから、六%というような線につきまして御議論がまとまったところでございます。
#180
○渡部通子君 わかりました。
 フランスや西独では、年金額の改定に賃金スライドをとっております。そのやり方というのは、労働生産性、賃金上昇率等を考慮して毎年一月に年金額を改定しております。わが国の労災保険制度も、賃金水準の変動幅に合わせて毎年行った方がいいのではないか、実施時期については賃金の決定直後の五月が適当と思いますけれども、これについて御意見を聞いておきたいと思います。六%にしていただいて結構ですけれども、本来から言えば一%でも上がれば常時やってはどうか、こう思うわけですね。いかがですか。
#181
○説明員(小田切博文君) ただいま御説明申し上げましたように、今回御審議いただいている案では一〇から六に圧縮するというような案を提案しているわけでございますが、確かに御指摘のように、ヨーロッパの国々におきましては、毎年ないしは二、三%でも行うというような国があるわけでございますが、日本の他の社会保険におきまするスライド、これは厚生年金の場合には物価スライドというようなことになっておるわけでございますが、そういうようなわが国におきます他の類似の制度のスライド制の現状等を考え合わせますと、私どもといたしましては、当面は、さっき言ったような根拠で六%にするというのが、またここしばらくの賃金実態から見ましても妥当なところではないかというふうに考えておるところでございます。仮に一%程度の変動でもスライドするというようなことをいたしますと、場合によりましては一%賃金が変動、逆にマイナスになったというようなケースも生じかねないわけでございますが、そういうときには直ちに減額に発動するというようなこともあり得るわけでございまして、余りに小刻みにするということもいかがかというような感じがいたしておりますが、いずれにいたしましても、国内の類似制度とのバランス等考えまして、当面は一〇から六に圧縮するということが妥当なところではないかというふうに考えておるわけでございます。
#182
○渡部通子君 その理由もわかりますけれども、マイナスになったら減額にスライドする。まあ、そういうことは、ちょっとここのところの見通しではあり得るとも思っていらっしゃらないでしょうし、理論としてはあるかもしれないけれども、現状の段階としてはないわけでございますから、ぜひ御検討をいただきたいと思うわけです。
 リハビリについてもちょっと伺っておきますが、リハビリ患者に対する職業紹介の徹底、ぜひこれをお願いしたいと思うわけでございます。
 労災病院におけるリハビリ患者の現状、これはどうなっているか。それから職業リハビリのための要員の確保、養成の充実を図らなければならないと思いますけれども、そのための対策はお持ちかどうか、伺います。
#183
○説明員(小田切博文君) 私ども関係の病院といたしまして、労災勘定から出資いたしました出資金でつくられております労災病院という病院がございますが、この労災病院におきましては、リハビリテーション関係の施設を整備しているというようなことが一つの特徴かと私ども考えておりますが、そこで現在、いかほどの患者の方々がリハビリテーション療法を受けておるかということにつきましては、ただいまちょっと私つまびらかにいたしません。
 後段のそういうようなところも含めましたリハビリテーション関係の要員確保の問題でございますが、いろいろな努力をいたしまして、ほぼ充足を見ているところでございますが、しかし、必ずしも必要数すべてについて充足を見ているというまだ現状には至っておりません。私どもの関係の範囲内におきましても、九州の労災病院におきましては、リハビリテーション大学校というようなものを併設いたしまして、一学年四十名定員でリハビリ関係の要員の養成等も行っているところでございますが、そういうような措置の充実を図ってまいりまして、必要なリハビリテーション関係の要員の確保、充足に努めてまいりたいというふうには考えております。
#184
○渡部通子君 前段の質問については、後ほど資料をお届けいただきたいと思います。
 私は労災保険制度は、リハビリ患者の職場復帰まで、ここまで何とかめんどうを見ていただかなければならないと思うわけです。しかし、リハビリ患者の現状というものは、労災病院での職業訓練または授産施設での就業、これが最終場所になっているのではないか、こういう懸念をするわけでございます。職場復帰が困難な原因は何だとお考えになるか。あるいは労働福祉事業として、職安局との連絡を密にしてリハビリ患者の職業訓練、職業紹介、この徹底を絶対図っていただかなければならないと思いますけれども、その辺は円滑にいっているんでしょうか。
#185
○政府委員(倉橋義定君) 労働省におきましては、かねてより被災労働者の社会復帰や、職場復帰につきましては、労災病院のリハビリテーション部門の充実なり、総合せき損センターを置くなり、労災のリハビリテーション作業所の開設など、いろいろ設備の整備を図ってきているわけでございますが、そのほかに、社会復帰資金の貸し付けなり、自動車購入資金の貸し付け等の貸付業務を行うことによりまして、できるだけこれらの資金面での社会復帰が十分円滑にいくようにしているわけでございます。さらには、義肢、装具等の支給、アフターケアの実施等によりましてできるだけ社会復帰、職場復帰に力を注いできているところでございます。
 いろいろ社会復帰、職場復帰につきましての隘路はございます。なかなか御本人が職場に戻る自信がないというようなこともございますが、私どもそのような健康上の不安に対しましては一健康管理、健康診断等を実施して、できるだけ本人の健康の配慮が行き渡るというようなことも実施しておりますし、就業のために技能習得を目的といたしました教習等も実施するような費用を、これは三万五千円を限度でございますが、そういうような支給制度も置きまして、就業のための技能習得をさせるというようなこともやっております。もちろん、職業安定機関、職業訓練機関とは十分連携をとりまして、被災労働者の方々の職場復帰につきましては今後とも一層努力をしてまいりたいと思っております。
#186
○渡部通子君 ちょっと時間がありませんので、これで省略をしてしまいますけれども、ぜひそれに対しては積極的に基準監督署あたりと連携をとり合って、労災保険の枠内だけでやっているとなかなか職場復帰までいかないと思いますから、縦割り行政を踏み越えてお世話を願いたいと思うわけでございます。
 認定の問題で一点だけ伺っておきますが、先ほどもちょっと触れましたけれども、最近非常に職種がふえてまいりました関係から、女性の冷房等による冷え症だとか、生理不順だとか、腰痛だとか、あるいは先ほども申しました福祉関係に従事する方たちの腰痛だとか、そういうことが非常に訴えが多いわけでございます。
 それからもう一つ、放射線によって不妊症になったり、流産をしたりあるいは奇形児を生んだり、こういったことが結果論としてはふえてきております。昔は放射線による職業病と言えばレントゲン技師、こういったところに限られていたわけでございますけれども、最近ではアイソトープの製造業において広範囲に用いられたり、原発関連の労働者の多量の増加、こういった意味で電離放射線にかかわる疾病の業務上外の認定基準、こういったものも見直していただかなければならないのではないか、これが一点ですね、放射線関係。それから腰痛とか肩こりとか、そういった問題、職業病、こういった問題に対して、多発に対してどういう姿勢で臨まれるか、認定問題二点伺っておきます。
#187
○説明員(原敏治君) 職業性疾病の認定につきましては、従来から特に多発する、また、医学的にむずかしい問題につきましては、専門家の検討結果を得まして認定の基準をつくりまして、誠実的に、しかも迅速に認定ができるよう措置しているところでございます。
 先生御指摘の放射線障害に関しましての認定基準の見直しにつきましては、実は以前からつくられておった放射線の認定基準を最近見直しをいたしまして修正をしたものでございますが、もうすでにその後数年を経ております。したがいまして、また、新しい知見等を集積をいたしまして、専門家の検討を煩わしたいと考えております。いずれも認定基準につきましては、そのような新しい知見をもとにいたしまして、専門家にさらに検討をしていただいているところでございます。
 第二点は頸腕関係の認定基準についてでございましたが、この点につきましても、専門家の御意見に従いまして認定基準をつくり、誠実的に認定を迅速に行っているところでございます。いままで認定をしている中でいろいろな問題も出てきておりますし、さらに新しい知見等も出てきておりますが、それらの知見等を検討いたしまして、専門家による見直し検討が必要かどうかについて、さらに私どもも内部で検討をしてみたいと思っております。
#188
○渡部通子君 時間がありませんので、最後にもう一問だけまとめて伺います。
 これは先般の新宿のバスの放火事件のことでございます。これを、労災が適用になった人が何名いるのか。
 それから、新聞で報道されました秋葉さんという母子家庭の問題でございますが、お気の毒なことにこのほど亡くなられましたあのお母さん、一家の働き手でありましたお母さんが子供三人とおばあさんを残して亡くなられたわけでありますが、その場合、通勤災害として労災の適用を拡大解釈しても適用させてあげるわけにはいかないかどうかということですね。これは大変な悲劇でございますことは皆さんも御承知のとおりですけれども、とにかく犯罪被害者救済法が来年の一月からでなければだめですから、適用されませんから、その谷間におっこって労災も通勤災害もだめ、犯罪被害者法もだめということになると、内閣が決定してくだすった一時金で終わると。私もお目にかかってみましたらば御近所の、全国からの見舞い金とか、お慰め金、こういったことで暮らしていらっしゃる、あとは生活保護を受けるしかないというような状況に陥っているわけです。これを何とか救済する方法はないものかどうか、これを労災としてひとつ伺っておきたいと思います。
 あと、運輸省に来ていただいたものですから、自賠法が適用できるかできないか、この御検討が願えないか、こういったバスなどの場合に、事業者の責任というものはどの程度まで考えられるものか、これを運輸省の方からも一言御答弁をいただきたいと思います。
#189
○政府委員(倉橋義定君) 先生いま御指摘のございました新宿西口のバスの放火事件に関係いたします被災者の方二十三名の中で、労働者の方が十一名おられるわけでございます。死亡五名、その他負傷が六名ということになっているわけでございます。この十一名の中のうち五名の方から、労働者御本人ないしは御遺族の方から保険給付の請求が行われてきております。その中ですでに三件につきまして所要の保険給付を行っているところでございます。秋葉さんを含めましてその他の方方につきましては、現在いろいろ、退社後におきます御本人の行動につきまして関係者からの意見聴取等、事実関係の究明を急いでいるところでございまして、まだそういう段階でございますので、これにつきまして、その適用が直ちに行えるかどうかということにつきましては、もう少し事実関係の調査をいたしたいと思います。
#190
○説明員(渡辺純一郎君) 自賠法の適用についてお答え申し上げます。
 本件につきましては、被害者またはバス会社から、保険をしております保険会社に対しまして自賠責保険金の支払い請求がなされておらないわけでございますが、したがいまして、保険会社がその事実関係を十分に調査したわけではございませんけれども、わが方でいろいろな方面から知り得ました状況によりますと、自賠責保険の適用はきわめて困難であるというふうに考えております。
 その理由でございますが、まず第一点でございますが、自賠責保険の保険金が支払われるためには、自動車損害賠償保障法の三条におきます損害賠償責任というものが自動車の保有者に発生するという必要があるわけでございます。この責任は、同条によりますと、自動車の「運行によって他人の生命又は身体を害したとき」ということになっておりまして、本件は第三者の放火という犯罪行為によって起こったものでありまして、自動車の運行中ではございますが、発車の準備をしておりました関係で、自動車の運行によって生じたものというふうに解することはきわめて困難であるわけでございます。さらに、自動車の「運行によって」というのを自動車の運行に際してというぐあいに広く解釈いたしましたといたしましても、自動車の運行責任者たる京王株式会社の方で、自動車損害賠償保障法三条のただし書きの「自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明」すれば責任を免れるという規定がございまして、本件の場合、このような三つの要件を立証するということは、本件が第三者の放火という犯罪によって起こったものでございますので、比較的容易であろうと考えられますので、このような結論になったものでございます。
#191
○渡部通子君 時間がないのでこれで終わりでございますけれども、私は、法は人のためにあるのか、法のために人があるのかというところへ思い至らざるを得ないわけでございまして、この秋葉さんの場合などは一番お気の毒で、最初申し上げましたように自賠法もだめ、それから通勤災害にも労災にも当たるか当たらないかという検討中、しかも犯罪被害者法の救済法には引っかからない、わずかの日数で引っかからない、陥没しているわけでございまして、こういう人が現に一人いると、その人のために法律はつくられなきゃならない、こういう思いでいっぱいなんです。したがって、内閣として見舞い金をお出しになったようですけれども、死亡の場合で最高二百万、傷害の場合で百万、これでは余りにもかわいそうだと思うわけでございまして、どうか、こういう現実問題に対して温かな法の運用を、拡大解釈をしても場合によっては施行させていただきたい。これは国務大臣としての大臣の御所見を伺って、私、終わらせていただきます。
#192
○国務大臣(藤尾正行君) 渡部委員の非常に人道的な御要望でございまして、私も同様、何とか適用できるようなことにはならないか、拡大解釈をどこまでやってもいいからやってみろということでやらしておるわけでございますけれども、なかなかこの労災法に記載がされております通勤災害というものは、退社をされてからどの道を通ったとか、あるいは何時間かかったとかというようなことがございまして、余りに時間が経過をされておりましたり、あるいはその目的がどうも通常の経路から外れておられるというようなことになりましたときに、これを通勤途上と認定をするには余りにもむずかしい要件があり過ぎるということで、この間の閣議で、御案内のとおり犯罪者によります法の執行が来年の一月からでなければできません。仕方がございませんから、その谷間を埋める意味において見舞い金制度といいまするものを、法務大臣にお願いをして設定をさしていただいたわけでございますけれども、しかしながらなおこれから、いままだ検討中でございますから、全然これで終わりというわけではないわけでございまして、できるだけ拡大解釈の限りを尽くしまして救済の方向に向けていきたい、かように考えております。
#193
○渡部通子君 終わります。
#194
○小平芳平君 前回質問いたしまして残った問題を、きょう若干わずかな時間でありますが、質問いたしたいと思います。
 まず最初に、前回昭和電工大町工場それから塩尻工場において、じん肺の管理区分別の人数を答えられましたが、その数に対する評価といいますか、全体的に見てどうとらえますかという点についてのお答えがなかったので、その点からお答えをしていただきたい。
#195
○説明員(林部弘君) 前回管理区分別の人数についてお答えをいたしました際に、全体についてどのように評価をするか、その結果について分析をしてほしいという先生からの宿題がございまして、資料といたしましてすでにお手元にお届けをしているとおりでございまして、この結果から直ちに、全国的に見た一般的な姿と比べてこれがいいのか悪いのかということについてのお尋ねのように受けとめておるわけでございますが、お手元の資料にございますように、これから一概にいい悪いという判断はできないような数字でございまして、おおむね平均的な姿に類似したレベルではないかというふうに評価をいたしております。
#196
○小平芳平君 管理区分三という方ですね、管理区分三の人は職場転換が必要だということであります。そこで職場転換をしたところで、従来の労働はできないじゃないか、つまり体に故障があるから、その粉じん職場を離れて別な職場へ移るようにということになっているからには……。別な職場に移っても十分な労働収入が得られないではないかということについてはいかがですか。
#197
○説明員(林部弘君) その点につきましては、同一の職場の中で職場転換を行います場合には、多くの場合、労使間の約束事によってできるだけ従前からの生活が維持できるような配慮がなされているというふうに理解をいたしております。
#198
○小平芳平君 ちょっと、そういうことをお聞きしたのではなくて、労使間の約束事あるいは配置転換についての話し合い、もちろんそれはあるでしょうが、どういう表現をしたらいいかちょっと専門家でないからわからないですが、職場転換しなさいと言われているんですがね。その人はほかの職場へ移る場合に、いままでと同じ働きができるのかどうか。それはいま言われたように、同じ企業内で同じ賃金が得られるということならもちろんいいですけれども、実際問題として収入が得られない、それだけ仕事の量が落ちるのではないか、そういうことは考えられませんか。
#199
○説明員(林部弘君) 職種を転換した場合には、場合によっては当然賃金の下がる場合があるのではないかという要素を考慮いたしまして、じん肺法の第二十二条に転換手当に関する定めがあるわけでございまして、作業転換をいたしました労働者に対しまして、事業者はその病状に応じまして平均賃金の三十日分あるいは六十日分といったような作業転換した者に対する転換手当を払うと、そういうような仕組みがじん肺法の中には定められているというようなことはございます。
#200
○小平芳平君 その転換手当、まあ一時金ですね、転換手当でもなお不十分ではないか。実際問題、その一カ月分の手当で回復し、またもとの職場で働けるならともかく、それじゃ不十分ではないかということなんですが。
#201
○説明員(林部弘君) 実は法令の定めだけで不十分な問題につきましては、私が先ほどお答えいたしましたように、たとえば鉱山における坑内作業のような場合には、できるだけ就労の担保をするということで、同じ職域内で適切な職場転換を図り、労使間の約束で生活の保障をしていくように努めているというのが現状であろうというふうに理解をいたしておると、先ほどお答えしたわけでございます。
#202
○小平芳平君 いま申し上げた点が第一点です。労働力が低下した労働者に対して一時金で済ませるということがなおかつ不十分な場合どうするかという点を考えていただきたい。
 それから、この管理区分の表は離職後の方が入ってないと思いますがね、それはいかがですか。
#203
○説明員(林部弘君) 健康管理区分と申しますのは、一定の健康診断を行いまして、その健康診断の結果、エックス線の所見なり肺機能検査の結果からその病状に応じて管理区分が決まるものでございますから、離職をした後に実際に健康診断を行って、その結果が管理区分四に該当する場合には四になるわけでございますし、それほど病気が進んでいない段階で離職をされた後に粉じん作業等に従事しなければ、たとえば管理二程度の段階で離職をされて、相当の後に健診を行ったような場合には管理区分は二の状態にあるというようなことでございますから、離職後の管理区分の問題というのは現実に健康診断を行った場合の病状に応じて、管理区分というのは程度でございますのでいろいろな場合があり得るということでございます。
#204
○小平芳平君 ですから、離職後が大事であるということ、離職後の健康診断を義務化するということはできないんですか。
#205
○説明員(林部弘君) 離職後の健康管理につきましてはじん肺につきましても安全衛生法の六十七条でございましたかの定めによりまして健康管理手帳を交付することになっておりまして、一定の所見がある者については、離職後の健康診断が定期的に行われるように担保されております。
#206
○小平芳平君 それが確実に健康診断が実施されていれば、先ほどの答弁のような状態ではないわけでしょう。
#207
○説明員(林部弘君) ちょっと御質問の意味がよく理解できないのですが……。
#208
○小平芳平君 離職後も健康診断が確実に行われておれば、そうすれば――この表ですね、管理区分別の表、この表は離職後の人も含めて入っておりますと。離職後の人も入って健康診断は確実に行われておりますということが言えるわけでしょう。それがいろいろな場合がありますと答弁しておられますが、いろいろな場合を聞いているのではなくて、離職後の人も確実に健康診断をしておりますということでなくちゃならないと思うのです。
#209
○説明員(林部弘君) おっしゃるように、じん肺そのものが一程度以上の所見を呈するような段階に達している者は、すべておっしゃるように離職後の健康診断が必ず行われなければならないという状況にあるということは言えると思います。
#210
○小平芳平君 いうことが言えるということを聞いているのではなくて、そういうふうに行われていなくちゃならない、またそういうふうに行われているとかいないとか、そういうふうに答えてくれないと困るじゃないですか。
#211
○説明員(林部弘君) 御指摘のように、健康管理手帳の渡されている方につきましては、確実に健康診断が行われるように指導いたしておるというところでございます。
#212
○委員長(片山甚市君) もう一度しっかり。
#213
○説明員(林部弘君) そういうように指導いたしておりますので、私どもといたしましては現実にそういうように行われているというふうに考えております。
#214
○小平芳平君 確実に行われている――もし行われていなかったら確実に行っていかなくちゃいけませんね。これはどうですか。
#215
○説明員(林部弘君) おっしゃるとおりでございます。
#216
○小平芳平君 それから、五十一年一月に出されたクロム障害に関する専門家会議の中間報告、このときには六価クロムについてと、それからその他の三価クロム等についての評価ですね、それがどういうふうに健康に影響があるかということで非常に注目をしていたわけですが、中間報告についてまず御答弁を願いたい。
#217
○説明員(原敏治君) クロム化合物につきましての健康、障害につきましては、クロム専門家会議で検討をいたしました結果が、先生御指摘のとおり五十一年に中間報告として出ておるわけでございますが、この中間報告では、六価クロムを初めとしましてクロム全体について一応の検討が行われておったわけですが、三価の、いわば難溶性の溶けにくいクロム化合物につきましては、当時の医学的知見ではまだ人に健康障害を引き起こすという確立された評価が得られない、こういうような考え方でございまして、六価のクロム加合物につきましてはその健康被害が明らかであるというようなところの結論が出ておったわけでございます。そのようなところから、行政におきますところの職業病の認定につきましては、この中間報告に基づきまして、主として六価のクロム加合物によりますところの障害について、補償を現在行っているところでございます。
 その中間報告におきまして、先ほど申しましたように、まだ確立された評価が得られないということになっておりました三価クロム化合物関係につきましては、先生の御指摘が五十一年に当委員会であったかと思いますが、それ以降専門家会議を再度開催をいたしまして、現在引き続き検討をいたしておるところでございます。
#218
○小平芳平君 いろいろな学術的な発表がありまして、諸外国の文献もいろいろあるわけですね。そういうようなことを私も五十一年当時、この委員会で取り上げて申し上げたことがあったんですが、労働省としては六価クロムが、要するに労働災害としては六価クロムを考えているわけですね。それで、対象として考えているわけであって、三価クロム等は考えていないかどうか。もしもこういう場合、三価クロムの職場といいますか、六価クロムを扱ってない職場、ここの職場で六価クロムの被害が出たとは言えないようなそういう職場で、しかも六価クロムの被害と同じような障害を受けたという人が出たような場合はどうなさいますか。
#219
○政府委員(倉橋義定君) 三価クロム化合物の暴露作業におきまして、そういう作業といたしましては鉱石の採取だとか耐火レンガの製造とか革のなめしと、そういうような作業がございますが、現在のところ、これらの作業に従事される方がクロム障害であるというような顕著な障害発生事例を私どもは報告を受けておりませんが、最近におきますいろいろ学術的な研究の進展もございます。そういうような進展の成果等もあわせ集めながら、三価クロムの健康障害を引き起こすか否かの研究につきましては、先ほど補償課長が申しました専門家会議におきまして検討をしていただく予定でおります。
 なお労災の請求としましては、若干のクロムメッキ、バフの工程作業等によりまして労災請求として出ております。こういう問題を前提といたしまして、専門家会議で御検討いただく予定にしております。
#220
○小平芳平君 ちょっと専門家会議が、まあ専門家の会議ですから長くかかりますね。ですから、早く結論が出るように、専門だ専門だといっていつまでも長引いていては、労働災害を補償するという意味には間に合わなくなってしまいますから、結論が早く出ること。それからそういう結論が出ない場合、結論が出ない場合はともすれば、もう、要するになおざりにされてしまうという危険性もあるわけです、長い間には。ですから、そういうことがないように希望しておきます。
#221
○政府委員(倉橋義定君) 先生の御指摘の線に沿いまして、できるだけ早く結論を得るよう専門家会議に働きかけてまいりたいと思いますが、海外の医学的な文献等、非常に膨大な研究を解析するわけでございます。そういうようなことで、日進月歩の医学的な水準の高まりの中で、できるだけ最近の情報を確保いたしまして、できるだけ早くその結論が得られるよう努力してまいりたいと思います。
#222
○小平芳平君 終わります。
#223
○沓脱タケ子君 それでは、最初に労働大臣に対しまして、労災保険法に関する基本的なお考えをお尋ねしたいと思います。
 ここに全国脊髄損傷者連合会の要望書があるわけでございます。これによりますと、これを拝見して私も非常に胸を打たれるわけですが、この脊損患者の連合会の御要望には「私たちは企業に生命や健康を売ったわけではなく、労働力だけを売ったのである。だから、企業は労働力の使用過程において、私たちの生命や健康を損わないように保護すべき安全保護義務があると思う。」「だが、企業はこの安全保護義務を怠たったために私たちのような労災の脊髄損傷者が続発して、生命を極度に毀損させられたことになった。」「私たちの最も望むものは金銭でも地位でも名誉でもない。それは何かといえば、受傷前の完全な身体に復元してもらいたい、ということである。だが、このことはおそらく神様でもできないであろう。
 だとすれば、次に考えられることは私たちに現行よりもより多額な賠償金を支払ってほしい、ということである。」というふうにお述べになっておるんですが、私も当然至極の御主張だと思うわけでございます。労災保険法の制定の目的というのは、このような被災労働者やその遺族の切実な声にこたえることにあると思うわけでございますけれども、大臣の基本的なお考えを、まず最初にお伺いをしておきたいと思います。
#224
○国務大臣(藤尾正行君) 仰せのとおりでございまして、特段と脊髄に損傷が起こるというような非常に大きな事故にお遭いになられたそういった方々に対しまして、本当にもとの体に返せと言われましても、それはもう仰せのとおり、神様でもおできにならぬことだと思います。それをしなければならぬわけでございますけれども、それはできない。やむを得ませんから、その労働可能であった能力を推定をいたしまして、その御能力に対しまして相応の補償をさしていただいて、そうして御納得のいくような御回復と、そうして御療養と、御遺族に対しまする御生活の安全を期していきたいというのが労働災害補償法の精神であろう、かように思います。
#225
○沓脱タケ子君 ところで、今回のこの法改正案、特に労災保険給付と民事損害賠償との調整規定の新設という点は、これは被災者の切実な声を裏切る結果になっています。この調整規定によりまして、被災労働者やあるいは遺族が本当になけなしの費用と時間を使って民事損害賠償請求の裁判をやって勝ちましても、その受け取る金額というのが現行より大幅にダウンになることはもう明らかでございます。たとえば、全日本湾港労働組合の試算がありますけれども、それによりますと、いわゆる現行、昭和五十二年十月二十五日の最高裁判決の考え方を基礎にいたしまして、どういうふうになるかということを試算をしておられますけれども、これによりますと、これは資料もし何だったら配ってもいいんですけれども、簡単に読みますと、金額をとにかく仮定をいたしまして、損害賠償の逸失利益を四千八百万円、判決以前の労災保険の既支給分が五百万、それから三つ目が、判決後から労働可能年齢に達するまでの労災保険の支給が四千三百万。四が、労働可能年齢後から死亡までの労災保険の支給分が三百万。五の前払い一時金の最高額相当額千三百四十万円と、こういう状況を設定をいたしまして現行でこれを計算をいたしますと、労災保険と民事損害賠償、特に五十二年の最高裁判決の水準で計算をいたしますと、労働者の受け取る金額というのが、この金額の設定でいきますと九千四百万円になると、ところが今度の改正案でこれを算定をいたしますと、労働者の受け取る金額というのが五千百万円にダウンをするという試算をやっておられるわけでございます。こうなりますと、これはせっかく裁判をいたしましても、損害賠償請求をやって勝訴をいたしましても、いわゆる労災保険給付と相殺をされて取り分が減少するということになりますと、これは苦労して裁判をだんだんしなくなるというのは当然のことだと思うわけです。
 もう一つは、労災のいわゆる労災裁判と言われておりますのは単に金銭問題、生活保障的な要求を中心にしての金銭問題というだけではありません。御承知のように、加害企業にペナルティーを科することによってその企業に反省を求め、そして安全予防対策を重視させること、このことが非常に大きな意義を持っているわけでございます。しかし、こういう調整制度というものが取り入れられて裁判をやっても無意味だということに、特に補償金額の上ではうんと減らされて苦労のしがいがなくなるということになってまいりますと、労災の裁判というのが次々に減ってくることはもう明らかです。そうなれば、企業責任の追及も当然緩まざるを得ない、ひいては企業の安全予防対策というのもだんだんとおろそかにされることになってくるであろうと思いますし、労災、職業病を一層増大をさせていく危険さえもあるのではないかということを考えますが、大臣、この点についてはどうですか、今度のこの新しい調整規定を設定をされるに当たって、こういった点について御見解をまず最初にお伺いをしておきたいと思います。
#226
○国務大臣(藤尾正行君) 仰せではございますけれども、私は企業といえども、自分の企業の作業の中から労災が出てよかったなんということを考える不逞な者はいないはずでございます。でございますから、この調整規定が行われましたから、その結果、裁判によって慰謝料を請求をせられるというような方々の請求案件が非常に減って、そうしてそのことが回り回って企業の安全責任をおろそかにさせるというようなおそれは万々ないということを申し上げます。
#227
○沓脱タケ子君 その点は、大臣がそういうふうにおっしゃっておられるわけですけれども、いわゆる労災裁判というのはこの約十年ほどの間に四倍くらいもふえてきているという事態の中で、やはり企業内の予防対策については当然のこととして鋭く指摘をされていっておるわけでございまして、そういう点が今日労働災害の激増の中で、労働者の健康と命を守るという立場を確保していっている一つの柱にもなっているんではないかと思うわけでございます。
 それで限られた時間でございますので、そこを論議をしておりましてもこれは並行線になろうと思いますので、最大の争点であります労災保険給付と民事損害賠償との調整についてお聞きをしたいと思うわけでございます。
 この調整規定を新しく設ける根拠についてでございますけれども、労働省はこれはいままで、本委員会でも衆議院でもすでに何回かお述べになっておられるので、私はきちんと会議録になっている分を引用したいと思いますが、衆議院の社会労働委員会での、これは社会党の佐藤委員に対する倉橋さんの御説明、これちょっとお読み申し上げますので、変わりがないのかどうかというのをちょっと聞きたいんですね。倉橋さんは「いわゆる調整規定を設ける理論的な根拠でございますが」云々ということで、「民事賠償と労災保険給付につきましては損害の補てんという共通性または相互に補完するような性質があるわけでございます。したがいまして、同一の部分の損害について一方でその補てんが行われれば、片方の方でその補てんを行う要がないというようなことで相互の調整が行われるべきものであるということから出発しているわけでございます。従来は、この両者の関係につきましては裁判上の調整が行われておりまして、民事賠償請求を起こした場合におきましては、労災保険給付は事故発生と同時にすでに支給を開始してまいります。」というふうにお述べになっておられるわけでございます。これはこの御説明、根拠というのは変わってないんですね。
#228
○政府委員(倉橋義定君) その考え方につきましては変わっておりません。
#229
○沓脱タケ子君 ですから、一貫してこういう方針、こういう論拠というものをお述べになっておられるわけでございます。その根拠を図にいたしますとこういうことなんですね。これはおたくの方だと思いますけれどもね。――この図を持ってもらうと一番よくわかるんですが、委員長と大臣の方にちょっとお見せしていただいた方がいいので……。ちょっと委員長すみません……。
   〔資料配付〕
#230
○委員長(片山甚市君) 始めてください。
#231
○沓脱タケ子君 いまの論拠というものを図にいたしますと、これは最高裁五十二年十月二十五日の考え方の図式と今回提案の図式ということで、真ん中が最高裁の従来、現行の考え方であり、下が今回提案の調整措置をやった結果がこうなると、これは労働省の資料でございますね、おたくの方でおつくりになった資料だと思うんですが。
 こういうことで私はちょっとわからないのは、大臣もこういうふうに御説明をお受けになっておられますよね。
#232
○国務大臣(藤尾正行君) 私は政策決定者でございますから、細かいこういう数字の積み上げ方などというのは行政の事務に属することでございますから、係の者に十二分に入念にやるようにということで措置をいたさせております。
 終局の政策的決定は私が責任を負います。
#233
○沓脱タケ子君 このいわゆる調整規定を設けていく理論的な根拠というのが変わっておられない。そして、両者の関係、「従来は」というところの問題ですよね。「従来は」というところで、これは裁判の、「従来は、この両者の関係につきましては裁判上の調整が行われておりまして、」ということを言っておられますので、それじゃ従来の調整はどうなっていたのかということでちょっと幾つか裁判上の判例についてお聞きをしたいわけでございます。
 その一つは、昭和四十五年の三月三十日、名古屋地裁半田支部の判決における損害賠償請求事件の判決ですけれども、これは御存じですか。細かいことでおわかりでなければ、私が申し上げます。
#234
○政府委員(倉橋義定君) 下級審におきます判決につきましては、個々には理解しておりませんが、一般的に述べるいわゆる控除説、非控除説という両説によりましてそれぞれの判決等が下級審に行われていることは理解しております。
#235
○沓脱タケ子君 個々のことは御存じないとおっしゃいましたが、いま私が申し上げた四十五年三月三十日の名古屋地裁半田支部の損害賠償請求事件の判決を見ますと、これは、まだ現実に支給を受けていない労災保険金については将来給付されるであろう見込みがあるからといって、これまでを加害者が負担すべき損害賠償金から控除することは許されないものというべきである。ということで、控除してはいかぬと、将来を。控除してはいかぬという判例なんですね。さらに、昭和四十七年の三月三十一日の長崎地裁の三菱重工の堀田感電死事件の判決も、それから昭和四十八年九月十三日、福島地裁会津若松支部の損害賠償請求事件での判決。それから昭和四十八年九月十三日、広島地裁のガス爆発死亡事件での判決。それから昭和五十年五月二十日、石井印刷機ローラー巻き込み負傷事件での神戸地裁の判決。それから昭和五十一年五月四日、感電による墜落負傷事件での富山地裁判決。それから昭和五十二年六月十五日、鹿島建設九頭竜川事件での東京地裁判決。これを一つずつ拝見をいたしますと、これはいずれも、いまだ現実に支給を受けていない労働者災害補償保険金は損益相殺すべきでないということを決めておりますし、さらにそれぞれ、本判決は、労働者災害補償保険法による遺族年金は損害のてん補として控除すべきではないとしている。あるいは労災保険による遺族年金は、損益相殺の法理により控除すべき利得に該当すると解すべきではない。あるいは福島地裁でも、遺族が労働者災害補償保険法に基づき将来受領すべき遺族補償年金は、損害賠償額から控除すべきではないということが、私がいま申し上げた判例にはどれもそのように判決が出ているわけでございます。労働省から先日いただいた高裁の資料でも、五十一年六月の三十日名古屋高裁でも同じ控除すべきではないという御意見が出ているようでございます。
 そこで、衆議院の社会労働委員会でもこの問題についてはずいぶん論議をされてきているわけでございますが、「必要な調整というものはすべてその民事損害賠償側で行われてきたと理解してよろしいですか。」という、これは公明党の大橋議員のお尋ねに対して労働省では「調整につきましては、民事賠償額の中で労災保険分を引いていた関係で裁判上行われていた。」、それから「重複支給、重複負担というような問題が生じておりません。」ということを言い切っておられるんですね。これは、ことしの四月二十二日の衆議院社労委員会の会議録ですが、こういうふうに言っておられるのと、先ほどもあなたがおっしゃったように、控除説と非控除説があるのを知っていますとおっしゃいましたよね。私は、たまたまいま控除してはならないといういわゆる非控除説の判決を幾つか申し上げたわけですけれども、その点についてどういうことなんですか。
 なぜかというと、さっき今度の調整条項を新設する理論的根拠というふうにおっしゃった点とちょっと違うと思うので、それで、どういうふうな御見解なのか、お聞きをしたいわけです。
#236
○政府委員(倉橋義定君) 先ほど、下級審におきまして非控除説または控除説があるということをお話ししたわけでございます。主として地方裁判所段階におきますそれらの説でございますが、先生御承知のように、裁判制度におきましては地方裁判所、さらには抗告しまして高等裁判所、最終的には最高裁の判断ということになるわけでございます。したがいまして、地方裁判所の段階でたとえば非控除説が出たという場合につきましては、使用者側としましては不服がある場合につきましては高裁にさらに抗告、控訴をいたしまして、その内容について争う余地が残っているわけでございます。一般的にいままで高等裁判所の判決が出ておりますが、たとえば、四十六年の札幌高裁、五十年の高松高裁、五十二年の名古屋高裁、五十二年の東京高裁等におきましては控除説の立場をとっているわけでございます。先ほど先生御指摘のように、五十一年六月の名古屋高裁におきましては非控除説をとっておりますが、その後、同じ名古屋高裁におきまして、同年の九月に非控除説の判決が出ております。そういうことで、高裁の一般的な判決といたしましては控除説が一般的であったわけでございます。しかし、これも高裁の判決でございまして、要は、最終的には最高裁が判断をする。最高裁の判断が出ますと、その判断につきましては下級審の今後の判断に大きく影響するわけでございまして、さらにその案件につきましてはさらに上告、抗告等の道が閉ざされるわけでございまして、私ども、いままで一般的な高裁の控除説によりましてなされてきたというような御説明をし、さらに最高裁におきましていわゆる控除説という形で判断をした、そういうことから法的な面におきまして調整規定を設ける必要が生じたというふうな考えで御説明申し上げたわけでございます。
#237
○沓脱タケ子君 いや、私がお聞きしているところは、ちょっとわからないと思うのは、あなたは控除説、非控除説両説あるということをお認めになっているわけですよ。それはそのとおりなんです。私は非控除説、差っ引いてはならないという判決が下級審ではずいぶんたくさん出ているということを申し上げたのだけれども、社会労働委員会の御答弁の中で、それでわざわざ私、この会議録をお示しをしてるわけなんですが、ことしの四月十五日の衆議院社会労働委員会での御答弁で、「従来はこの両者の関係につきましては裁判上の調整が行われておりまして、民事賠償請求を起こした場合におきましては、労災保険給付は事故発生と同時にすでに支給を開始してまいります。」というふうに言われているように、従来は裁判上これはもう調整されてきておりますと。だから労災給付は支給をしてまいっておりますと、こういう説明をしておられるのですね。
 そういう御説明というのは、これは非控除説の判決の場合にはそうなっていたんじゃないかと思うんですよ。控除説の場合にはそうなったでしょうか。その辺はどうなんですか。私は、これはちょっと一方に偏した物の言い方じゃないかと思うので、ちょっと理解をしにくいんですね。
#238
○政府委員(倉橋義定君) 労災保険の給付につきましては、罹災と同時に支給が行われると。裁判につきましては、裁判進行を行いまして、ある一定期間を経まして判決が行われるというようなことで、裁判の経過中につきましては、使用者の責任の有無にかかわらず、民事上の賠償責任の確定の以前におきましてずっと給付されている。それは当然いままでの控除説、非控除説を問わず、控除されていたのは事実でございます。
 そういう中で、私ども先ほど申しましたのは、個別の判決で非控除説の判決が出たという場合につきまして、一審判決を使用者側が容認をしたというような場合、そういう場合に労災給付が重複していたのじゃないかというような趣旨の御質問かと思いますが、そういう場合につきましては、私ども制度的には使用者は抗告、上告等の機会を持っていたのを、みずからそれを権利を放棄して自分の不利と申しますか、それを容認したわけでございまして、したがいまして、その段階におきまして制度的な手直しをする必要がございません。したがいまして、最高裁の判決ということが、もうさらに争う余地がなくなった、今後におきます下級審の判決に大きな影響を与えるというようなことで考えているわけでございまして、衆議院におきます説明におきましても、そういう意味を含めて御説明したつもりでございます。
#239
○沓脱タケ子君 下級審で放棄されて、いわゆる訴えられた企業の側が上告の権利を放棄して、被災者に対して損害賠償をしてきたという事例があるんですか、ないんですか。私は判決が出ていたら、判決が出ている以上、これは労働者が当然損害賠償を受けていると思うんですよね。あなたの御説明は、裁判で勝訴をした場合でもこれは労災ではちゃんと控除してきているはずだというお考えですか、そういう御答弁ですか。
#240
○政府委員(倉橋義定君) 労働者側が下級審で勝訴した、で、使用者がそれについてそれ以上争わなかったというような場合につきまして、それにつきまして労災が給付を調整したということを申しているわけではございません。むしろその逆でございまして、使用者がその上で争うということをまあ放棄したと申しますか、選ばなかったということでございますんで、そういう場合につきましては、私ども法制的な問題というようなことではなく、給付につきましては労災を支給するというようなことをしてきておるわけでございます。
#241
○沓脱タケ子君 私はやっぱり事実を事実として、正確に国会では御報道いただくことが大事だと思うんですよ。それでわざわざ私はこの会議録を用いているわけですが、あなたの御答弁では、この社会党の方ですか、大橋議員に対する質疑の答弁でもこう言ってるんですよ。「調整につきましては、民事賠償額の中で労災保険分を引いていた関係で裁判上行われて」きたと。で、その質問はね、「要するに、必要な調整というものはすべて民事損害賠償側で行われてきたと理解してよろしいですか。」と言うて念を押してるわけですよ。それに対して、「調整につきましては、民事賠償額の中で労災保険分を引いていた関係で裁判上行われて」きたというてあなたの方が言っていられるんだけれども、控除した分もあれば、控除しなかったという――判決の結果ですね、控除せずにきたという幾つかの判例がたくさんあるわけでしょう。それを片方だけ、控除したという部分だけをとらえて、それを今度の法改正の理論的根拠にするということになりますと、これは私はちょっとね、大きく言えば国会をだます結果になると思うんですよ。こういう両方の事態はあるけれども、一定の不合理さがあると思うから調整するのだというふうに御説明になるのなら、これは理論的根拠という点で、そのことの可否はともかくとして、いいと思うんですよ。しかしね、片方ではこの長い間の中で損害賠償、いわゆる労災裁判で勝訴をして、損害補償給付をちゃんともらって、労災からも給付をもらい、裁判で勝訴をしたこれは次元の違うところの損害賠償請求ですから、これも受け取れるという条件というのは、いままでにはあったのですか、なかったのですか、そのことをはっきりしてほしいと思うんですよ。
#242
○政府委員(倉橋義定君) 地方裁判所の段階におきまして非控除説の判決が出、さらに、それを高裁に使用者が争わなかったという場合につきましては、労災給付との併給があったということでございます。
#243
○沓脱タケ子君 それならね、このすべての民事損害賠償が労災保険分を引いていたというふうなことは言い切れないわけでしょう。だから、あなたの方で、この調整規定を設ける理論的な根拠という点で、従来は両者の関係については裁判上の調整が行われてきたと、だから重複給付もなかったのだし、ちゃんと民事損害賠償を起こした場合においても重複支給はなかった、という言い方をしているというところに、私は実情を非常にごまかしていると思うんですよ。その点はやっぱりはっきりするべきだと思う。
#244
○政府委員(倉橋義定君) 御質問の「すべて」の意味でございますが、すべての判決でという趣旨で私申し上げたつもりはございませんで、控除説の中で将来部分の年金給付について、そういうものを含めて――既支給分と将来分、そういうものを含めて判決では控除していたのです、という意味で「すべて」を使ったと理解しております。すべての判決という意味で用いたわけではございません。
#245
○沓脱タケ子君 これは論文じゃありませんのでね、質疑応答の中だからあなたもそういうふうに御理解になっているのかもしれませんけれども、私は衆議院での論議をしさいに拝見をいたしますとね、そういうふうにあなたもお認めになっているように、控除説、非控除説の判決が出ていると。で、そういう中での被害者の闘いによっていわゆる労災保険給付だけで不十分なところを、損害賠償等によって生活を補てんし、あるいは損害を補てんしていく、逸失利益を補てんするということが今日までやられてきていたということを前提としていくならば、今度の調整給付というのは労働者に対しては非常に大きな損害になることは、冒頭に私が実例をもって申し上げたように非常にはっきりするわけですよ。ところが、あなたの説明によると、従来からちゃんと裁判では控除されていたから重複支給なんかはなかったんですというふうに説明をされるということになりますと、これはちょっとやっぱりペテンですよ、事実と違いますからね。だから、よって出てくる論拠というのはどういうふうになろうとも、事実は事実として明確に、やはり国会の中の答弁ですからね、間違いのないように言ってもらいませんと、都合のいいところだけとらえて答弁をなさる、あるいはそれが理論的根拠だなどとおっしゃると、これはそんなものが理論的根拠――都合のいい方の判決だけを理論的根拠にされるようなことで出てくるようなこのいわゆる調整条項というふうなものを認めるわけにはいかぬということになるんですよ。だからはっきりしてほしいと言っているんですよ。
#246
○政府委員(倉橋義定君) 先ほど申しましたように、「すべて」の意味は先ほどお答えしたとおりでございます。すべての判決でという意味ではございません。
 それから、理論的根拠を裁判の判決に求めるということでございますが、私ども、理論的根拠が地方裁判所または高等裁判所の判決がそうなっているからということではございませんで、先ほど申しましたように、損害の補てん性について共通性、補完性があるということが理論的根拠でございます。
#247
○沓脱タケ子君 その点で、その説明をするのに、それじゃ従来はどうであったかという御説明がついて出ているわけですよ、それはね。新しい法律をつくっていくわけですから、条項をつくるわけですから、従来の状態がどうであったかということを根拠にして、そして法的論拠というものを立てていくというのは当然のことだと思うので、その辺が私は、今日、現状ではそれじゃ被災労働者はどうなっているのか、どうなってきていたのか、しかし、それは二重給付でけしからぬからとにかくこれは調整条項をつくるんだ、こう言うのだったら非常にはっきりする。ところが、従来はちゃんと裁判上控除説で差っ引かれておりますと、だからこういうふうに変えても幾らも変わりませんみたいな、そういうことが論拠になってまいりますと、これはやっぱり実情を曲げて論拠にして言っているという点では非常に理解しにくい、納得しにくいですよ。その辺ははっきりするべきだと思うんですがね。
#248
○政府委員(倉橋義定君) 再三申し上げますように、私ども、地方裁判所の段階で控除説、非控除説がある、もちろんその中では控除説が相当多数意見であるということも十分承知しておりますが、一部意見として非控除説があるということは事実でございます。そういうような非控除説の判決が出た場合に、使用者がそれについて争わなかったという問題につきましては、これは使用者がそういうことに対する私的な問題として解決をしたということでございますので、これを労災補償制度としてその問題を取り上げるということの必要性を感じなかったわけでございます。最高裁の判決によりまして控除説が採用されるという段階になりまして、これにつきましてはすでに使用者にとって争う余地がないわけでございまして、したがいまして、これを法制的に解決をしなければならないということになったわけでございます。
#249
○沓脱タケ子君 最高裁の判決が出たので、今後重複支給になるおそれがあるということで新しく調整条項をつくらなければならないというふうになったということなんですね。そうしたら、従来はどうであったのかという点について、これは裁判上のことで損害賠償の中でちゃんと調整をされていたから労災からは差っ引いておりませんでしたと、だから重複支給にはなっておりませんということは、これは全部が正しいというわけではないですね。あなたがおっしゃったように、使用者が控訴権をあきらめて、そこで判決に従ったという場合もしばしばあるわけですね。
#250
○政府委員(倉橋義定君) また同じ答弁になりますが、一般的に非控除説の判決が出た場合につきまして、そのような重複支給があったというのは事実でございます。しかし、一般的に高裁の判決におきましては控除説がとられたと、それによって将来の年金部分を含めまして調整が行われたということも事実でございます。
#251
○沓脱タケ子君 だから私が申し上げたいのは、そういういままでは全部相殺されてきたから、こういうふうに新しい調整条項をつくっても労災被災者にとって、労災患者にとっては何にも変化はないんですよというていの御説明というのは、事実とは違うという点をはっきりしておきたいと思って申し上げているんですよ。
#252
○政府委員(倉橋義定君) 私ども個別の問題、個別の判決を受けられた方につきまして、それを調整規定を創設することによって影響がないというようなことは申し上げたわけではございません。影響がなければ、法的な措置を講ずる必要はないわけでございます。それはやはり若干でも影響があるということは事実でございまして、全然影響が生じないというような説明をいままでかつてしたことはございません。
#253
○説明員(小田切博文君) ただいまの点につきまして若干補足的に説明させていただきますと、ただいまも審議官が申し上げましたように、下級審におきましてはいわゆる非控除説の判決もあったということは事実でございまして、私ども十分承知しておったわけでございます。たとえば私どもこういうような「新しい労災保険」というような資料をつくりまして各方面御説明して回ったわけでございますが、これごらんになっていただければおわかりになろうかと思いますが、従来の裁判例では、いわゆる控除的な考え方で判決を下すのが一般的でありましたと、一般的でありましたというような表現を私どもこういう印刷物の上では用いまして説明して、御理解していただいたわけでございます。いろいろ国会におきます議論の場でも私どもそういうつもりで御説明したつもりでございますが、一部誤解を与えるような表現を私どもいたした点があったということはあろうかと思いますが、真意はいわゆる控除説が一般的であったというような前提での私ども御説明でございます。
#254
○沓脱タケ子君 そうすると、そう言うたら、そこを問題にしているんです。一般的というふうに言われているけれども、控除説、非控除説両方があるということをお認めになっているじゃないですか。それを控除説だけ、都合のいいところだけをとらえて論議の対象にしてくるというのは、そんなもうむちゃくちゃですよ。両説があるんだと、あるけれども今度の場合には法改正についてこういうふうに調整をしていきたいんだというのなら、結論がどうあろうと、これはそのことについて賛成反対は別ですよ、理論的に言うて事実を正確に出して、両説あるけれども、おっしゃったように最高裁の判決は非控除説になっておるということで、こういうふうに変えるんだという話ならわかるですよ。しかし、控除説は一般的でありますとあなたの説明に書いてある。それを私も拝見しましたよ。だから、倉橋さんの説明もそのたぐいなんですよね。片方だけの控除説のところだけを、都合のいい方だけをとらえて説明をしておられるというやり方というのは、今度のこの法改正の中でこれは私やっぱりちょっと暴論だと思うんですよ。両説があるけれどもどうするのだということで、やっぱりこういうふうにするのだということの論拠にお立ちにならないと、そんなもの、あなた都合のええところだけとらえて立論をされるなんていうのは、あるいは法改正を持ち出すなんていうことはけしからぬことだと思うんです。その辺ははっきりしてほしいと思います。
#255
○政府委員(倉橋義定君) 私ども、非控除説のあることを別に隠しておりません。現在、御提案申し上げております法案の調整の方法につきましては、むしろ、考え方としましては、最高裁判決によります非控除説の立場を閉じまして、それの最高裁判決の趣旨に即したような調整方法を考えているわけでございます。いろいろ御審議の中におきましても最高裁判決の非控除説を御説明申し上げまして、従来の高等裁判所の一般的な例の控除説と、最高裁判決における非控除説とを御説明して御理解をいただいているわけでございます。
#256
○沓脱タケ子君 そこで、押し問答していたら時間がかかるばっかりなんですけれども、たまたま倉橋さんの衆議院での御説明を見ましても、あるいは「新しい労災保険」ですか、労働省の印刷物を見ましても、控除説が一般的な傾向であるとか、あるいは調整をされているから重複支給にはなっておりませんというようなことを言い切るとかというふうな形にあらわれているように、控除説だけが前面に出てくるような、控除説だけを採用するような、非控除説もあるんだという、そういう両論の上に立ってどうするんだという立場の御説明になっていないという点では、私は、事実と違うなという点で、非常に了解しにくいわけです。そのことを申し上げている。恐らく大臣だってそのお立場でしかお話聞いていないんですよ。衆議院だってそのような御説明だからみんなそう思っていますよ。これは非常にぐあい悪いですよ。両説あるのだという立場、あるいは現実に両説あって、労災患者は控除される場合もあるし、控除されなくて権利がまるまる守られている場合と両方あると。そうして、今度最高裁判決の結果が非控除説というものをとったので、どういうふうに調整をしなければならないのかということを考えて、こういう新しい立法、条項をつくるのだというふうな御説明であれば、これはまだわかりやすい。
 いままで全然もうそんなもの関係ありませんと、重複請求なんというのもありません、だから調整条項を新設しても大して労働者には影響ありませんというようなやり方というのはペテンですね、あなた。現に労働者は、労災の患者さんたちが非常にこの部分について神経をとがらしているのは、これをやられたら、裁判をやってもこれは重複支給を避けるということで、先ほど申し上げたように大幅な支給金額のダウンになると、そのことで、今日ただいまでも労災の支給額がなかなか生活補てんにも役に立たないということで、朝からもずいぶんいろいろと御指摘があったように、大変な状況を何とかカバーしようという努力がもぎ取られるということで、非常に心配をしておられるというのはそこなんですよ。その辺を全然知らぬ顔して都合のいいところだけとって、立論の論拠にするなんということは許されないですよ。
#257
○政府委員(倉橋義定君) また同じ答えになりますが、私ども非控除説そのものがないということじゃございませんで、むしろ、非控除説を最高裁が採用したということは皆さまに御説明しているわけでございます。しかし、その前に一般的な高裁の判断というのは控除説であったということで、両方、そのお説につきましては御説明申し上げているわけでございまして、一般的にほとんど全部が控除説であるごとく説明しているわけでございません。最高裁の判例の非控除説によりましてこういう最高裁の判断された趣旨に従いまして今回説明し、法律を立案し、また、最高裁の非控除説と現在のわれわれが考えている案とは、こういう点で共通性があるのだということを御説明してきたわけでございます。先生、何回も御指摘でございますが、私ども非控除説はないのだということは一回も申し上げてございませんで、むしろ、非控除説というのは最終的な最高裁で決定されたということで、それが今回の制度改正のきっかけになったということでございますので、この点につきましては御理解いただきたいと思います。
#258
○沓脱タケ子君 もう時間がありませんので、これ以上ここで論議をしていてもどうにもならないと思いますが、いずれにしても生活保障説の立場から見れば、もう論議が尽くされてきているほどの不十分さがあるわけですから、今日の段階でこれを調整するというのは不合理だという点で私どもは理解ができません。了解しがたいところです。
 さらにもう一つ、あわせてお伺いをしておきたいのは、もう時間がないので簡単にお聞きをしますが、衆議院修正の中で出ておりますように、調整の具体的基準を設けるには労災の審議会の審議を経ることとの意見が労災保険審議会の答申でも、社会保障制度審議会の答申でもつけられておったわけでございますが、その点でお聞きしておきたいのは、従来の審議会等の答申に基づいて、労働省がそれに基づいてやらなければならないということになっていたわけですが、今度の衆議院修正をいただいた段階でどういう違いが出てくるのか、その辺だけちょっとお伺いをしておきたいと思います。
#259
○政府委員(倉橋義定君) 私どもこの法律案を提案いたしました際に、労災審議会に案を諮りましていろいろ御議論いただいたわけでございますが、その答申に当たりまして同審議会から、調整についてはその基準を作成して同審議会の議を経ることを付されまして答申がなされております。したがいまして、その審議会の答申の趣旨を尊重いたしまして、行政的には同審議会に調整の基準をかけるということの内部決定をしているわけでございます。さらに、国会に提案いたしまして後も、衆議院の社会労働委員会にそのことを答弁しているわけでございますが、審議の過程におきましてそれは法制的の担保がない、あくまでも法律がひとり歩きして、行政官の恣意的な行為がなされるおそれもあるのではないかという一つの法制度に対する問題が提起されたこと等もございまして、社会労働委員会におかれましては、それらの内容につきまして法律上担保するということが必定であるというような御意見かと思います。そういう意味合いから修正がなされたわけでございます。これにつきましては、法律的な意味合いから見ますと、従来、労働大臣が基準を定める、その基準に当たりましては審議会にかけるということは法律上の約束じゃございませんが、修正することによって、労働省、労働大臣の一つの義務として設定されたところにつきましては、法律的に有意義があるのではないかと思うわけでございます。
#260
○沓脱タケ子君 もう私の持ち時間わずかになりましたので、私はいずれにしてもこういう労災保険給付と損害賠償の調整規定をつくっていくということよりも、きょうも朝から論議をされましたように、労災給付の改善こそが大切だと思うわけでございます。これはきょうも何遍も答弁をなさっておられますように、給付水準は一般的にILO百二十一号条約の水準に達しているとはいえ、個々の被災労働者の方や遺族の生活実態を見た場合には、非常に厳しい生活を余儀なくされているということをもお認めになっておったようでございます。
 たまたまこれは全労働の組合の調査を見てみますと、これは私、拝見して驚いたのですが、いま年金受給者の、労災年金受給者、障害年金、傷病年金、遺族年金等ですが、その受給者約八千件の調査を去年の十一月からなさったデータですが、年金額が百万未満という方が障害年金で七三・九%、それから遺族年金では百万未満の方が六二・九%という状況なんですね。これはいかに厳しいかということを数字的に示しているものだと思うわけでございます。こういう深刻な事態を解決していく、改善をしていくということが何よりも大事だという点は、各党各派それぞれの委員からも厳しく指摘をされているところでございますが、これを改善していく上について、給付基礎日額の最低保障額ですね、これを大幅に引き上げる必要があると思うのですけれども、これについての御見解はいかがでしょうか。
#261
○説明員(小田切博文君) 御承知のように労災保険給付の算定基礎単価といたしましては、原則といたしまして災害直前の三カ月間の実収賃金を、三カ月の暦日数で割りました労働基準法上の平均賃金が用いられるわけでございますが、平均賃金を用いますことが偶然的に何らかの事情で低賃金に出てくるというようなケースを救うという観点から、平均賃金を用いますことが適当でない場合に、給付基礎日額の最低保障額を労災保険給付の場合に用いるということになっておるわけでございますが、その最低保障額につきましてはこの四月から、従来日額二千百八十五円であったものを二千六百七十円に引き上げたわけでございますが、いま先生の御指摘は、さらに引き上げを図るべきではないかというような御指摘かと思いますが、私ども雇用保険の同じような保障額的なものとのバランス等を考慮いたしまして、この四月に約二二%の引き上げをやったわけでございますが、将来につきましても一般的な賃金の動向等に応じまして最低保障額の引き上げ等努めてまいりたいというふうに考えております。
#262
○沓脱タケ子君 もう時間がありませんので、最後に大臣にお伺いしたいんですがね、長々と申し上げましたこの調整規定ですね、こういうものが先行されるというのではなしに、今日の労災の被災者の方々からいいますと、何としても損害補償給付が引き上げられるということが一番大きな、大事な要件になっているわけです。特に私は、何としてもやらねばならぬことはやるんだとおっしゃっておられる大臣に、特にその点で考えていただきたいと思いますのは、建築労働者などを見ますと、見習いの方が労災になったとしますね、そんな方あるんですよ。そうしたら、一人前の大工さんになったらぱんと給料ははね上がりますけれども、見習いだからということで非常に低い賃金なんですね。その方が労災給付を受け取るときには、将来一人前に、もう近く一人前になる大工さんであっても、この見習いのときのうんと低い賃金水準が一生ついてまとうと、こういう逸失利益については一体どう考えるのかという問題が出てくるわけです。そういう建築労働者でなくても、わが国では年功序列式の賃金形態が多うございますから、若い時代に労災にかかって補償給付をもらうということになりますと、将来の年功序列でずっと上がっていくという過程での逸失利益というものを一体どう見るのだろうか、十年、二十年たって、一定の年齢になった場合に、その大工さんの場合には見習いの水準でしか補償されない。事務労働者その他の現場の年功序列賃金の職場の方でも、うんと低かった時期の賃金でしか二十年たっても補償されない、こういう逸失利益をどうして補償していくかという点を考えましたならば、非常にむずかしいわけですけれども、これはやはり最低保障額を大幅に引き上げていくということでカバーする以外に、今日のところではないんじゃないかというふうに思うんですよ。
 そういう点で、大臣、朝からやらねばならぬことはやるんだとおっしゃっておられるお立場で、こういう点で最低保障額の大幅な引き上げというものにひとつぜひ踏み切っていただきたいと思いますので、そのことについての御見解をお伺いして、私、終わりたいと思います。
#263
○国務大臣(藤尾正行君) 現行の制度のもとでいろいろなばらつきがある、不公平があるという御指摘でございますけれども、私は世の中ですべて完璧というわけにはちょっといかぬと思います。
 そこで、あなたのおっしゃられるように、できるだけ、労災にお遭いになられたというような不幸な方々に対しまして救済の道を高くするようにという御趣旨は御趣旨として十二分にわかります。したがいまして、これは制度上のいろいろな制約もございましょうけれども、そういったことは十二分に研究をいたさせます。
#264
○沓脱タケ子君 それじゃ委員長、時間がありませんので、その他何点かお聞きをしたいと思いましたけれども、きょうこれで終わります。
#265
○柄谷道一君 労災保険法等の一部を改正する法律案につきましては、朝以来、各委員から相当の質問が出ておりますので、私は極力重複する部分は省略をしたいと思います。
 まず、最近の労働災害の傾向を労働省の労働基準局編の「安全の指標」によって読み取りますと、第一に昭和五十年以来、休業四日以上の労災死傷者数が逐年増加いたしております。第二に、業種別労災発生件数では、昭和五十三年以降建設業が常に第一位を占めております。また、重大災害も建設業に集中しておる。しかも、その場合、下請、中小企業における労働災害の割合が高いと、このように統計上読み取れるわけでございます。私はこのような傾向に対して、今日まで労災多発個所をどう受けとめ、どのような対応策を講じられてきたのか、まず冒頭にお伺いをいたしたいと思います。
#266
○説明員(望月三郎君) 労働災害によります死傷者は、先生おっしゃるように、長期的に見ますと相当水準が高くなって、減少しておりますが、
   〔委員長退席、理事高杉廸忠君着席〕
しかし最近におきましては、おっしゃるようにやや減少の傾向が鈍化をいたしまして、本年に入りまして、前年同期に比較しまして若干の増加の様相を見ていることにつきましては、まことに遺憾であるし、申しわけないことだと思っております。
 業種別に見ますと、この中で建設業が一番大きいわけでございまして、私どもは、建設業それから第二の製造業というものを中心にいたしまして種々の対策を立てておるわけでございますが、特に年末及び年度末につきましては非常に災害がふえるというのが過去の経験でございますので、私ども各業種の事業主団体並びにその傘下の事業主等を通じて、強力な引き締めの施策を年末に向かいまして緊急対策として要請をしております。と同時に、私どもの出先でございます全国の基準局並びに監督署に対しまして事故の対応、それから原因の究明、これからふやしてはならぬという強い姿勢で指示をしたところでございます。また、来週早々に全国の局長を招集しまして、災害防止を重点に大臣からも私どもからも詳細な指示をしたいということで対応しております。
#267
○柄谷道一君 いま部長がおっしゃいましたように強力な指導をしておるということでございますけれども、しかし労働災害の多発が規模的には中小企業に見られることは、これは明らかな現実でございます。これは私は、労働省の安全衛生指導というものが今日まで必ずしも完全とは言いがたかった。他の委員が指摘されましたように、基準監督官の量的不足というものもこれと無関係ではないと、こう思います。やはり、中小企業に対する労災の防止、この浸透というのは非常にむずかしい問題でございますけれども、ここにより重点的な配慮を今後加えていかねばならぬ。そこで、この中小企業対策について、特に政府としてのお考えをお伺いをいたしたい。
#268
○説明員(望月三郎君) 中小企業におきましては、先生御指摘のように、非常に小さな災害が相当ございまして、これを合わせますと非常に大きな数になるわけでございます。したがいまして、私どもは中小企業が経営基盤が非常に脆弱だというような点、それから事業者の安全衛生に関する意識が低調だという点などから、私どもとしては、これに従来も重点を志向してきたわけでございますが、大づかみに申しますと、特殊の業種は別として一般的に中小企業というのが一番問題でございますので、私どもの監督、指導の重点も中小企業にできるだけ浸透するようにやっておるわけでございますが、特に安全衛生意識の高揚という点、それから安全衛生教育、それから健康診断を実施させるとか、あるいは作業環境の測定だとか、機械の設備の改善というような点を重点にやっておりますが、機械の改善などにつきましては助成措置もとっておりますし、そういうものを活用していただく。それから一つの手段といたしまして、大企業の系列下にある事業所を対象といたします総合的安全衛生管理の推進ということで、系列下のものについては、元請である大企業等の指導というようなことも絡めて系列的につかまえるというようなこと。それから、産地等につきましては、産地の集団をつかまえて行政指導するというような形で、できるだけきめの細かい監督、指導ということを進めているところでございます。
#269
○柄谷道一君 大臣、労災防止ですね、これは、強力な行政指導というものがその一つの柱であることはもう当然でございます。そのためにはまだなさねばならぬ課題は山積しておると思います。しかし、中小企業経営者に対して単なるむちだけをもって防止が期せられるのかどうかということになりますと、これは問題もあろうと思うのでございます。やはりこれに併行するあめといっては失礼ではございますけれども、現在の助成措置というものにつきましても、労災防止という視点から見直しが必要ではないか、そういう両々相まっての施策というものが拡充していきませんと、労災の将来見通しというものが、力を尽くすと言われても、今後減少していくという私自身は確信を持ち得ないわけでございます。大臣の御所見をお伺いいたしたい。
#270
○国務大臣(藤尾正行君) 柄谷先生非常に御心配をちょうだいをいたしまして、ありがたいことでございますけれども、私はやってやりきれないところはないと思うわけでございまして、やるだけのことはやってみなければいかぬと、こう思っております。
 御指摘のとおり、あめとむちというようなお言葉をお使いになられましたけれども、決してあめでもなんでもありませんで、そんなことはあたりまえのことでございますけれども、いかなる企業におかれましても、その安全措置をお講じになるというときに、それに対してお金が足りないとか、あるいは助成をしてほしいとか、技術的な指導をしてほしいとかいうようなことがありましたならば、それは何でもいたします。でございますから、その点は決してあめでもなければ何でもないわけでございまして、あたりまえのことをあたりまえにやるわけでございますから、どんどんと私どもにそういったことをお言いつけをいただきたい。
 それから、実は大企業、中小企業という分け方にいろいろ問題があるわけでございまして、たとえば建設業というようなものを例にとってみました場合に、大企業がその元を請けて、そうしてその下請にどんどんどんどんと仕事を回していく、そこで最前線に立っております下請に、その労災事故というようなものが発生する可能性が非常に強いというようなことが間々ございます。そういうことは元請のこれは責任でございますから、その責任を一番下請の中小の方々にしわ寄せをしていくという制度の方がこれはおかしいわけでございまして、私どもは、そういったことは、逆にそういったことが起こりましたときには、それは元請に全部その責任をかぶってもらいまするように、その責任を持てということを指導をいたしますし、いまのところ建設業界におかれましては、そういった業界のそれぞれの責任ある方々は、そのようにいたしますと言っておりますから、そういった点は、若干これから私はいい改善の方向に向かうのではないかと考えております。
 ただ、非常に市町村の仕事でありますとかあるいは県単位の仕事でありますとかというようなことで、大企業は何も関係なくて中小自体がその責任をお持ちになられる、そういったときに、中小の方々がその札を落とされるときに正当な安全見込みといいまするものを積算の中に入れておいて、そうしてその仕事をお取りになられればよろしいわけでございますけれども、それを怠られて安全施設の面をお外しになられて下値をお出しになられるとか、あるいはそんなことはないと思いまするけれども、場合によりましたら、そういうことは間々あるいは起こるのかもしれませんが、安全上の対策費を盛り込んでおきましてもそれを倹約をいたしまして、もしそこがすうっと抜けていかれればそれだけもうけだというような物の考え方で運営されますと、これはお働きになられまする本当の労働者の方々に対しまする私は企業者の責任は果たし得たものとは思いません。そういったことにつきましては、私は中小の企業者の方方にもそれぞれお集まりをいただいて、十二分にそういったことのないようにという指導を徹底させるということが大事だと思いますし、非常に残念至極なことで、そんなものはなくてもいいわけでございまするけれども、やむを得ぬ場合にはその監督官といいまする者に後を十二分に精査させまして、そうして非違な点がある、落ち度があるというような点はびしびしと指摘をさせて、そして将来に対しまする姿勢を正してもらうというようなことはやっていかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。でございまするから、そういった方々に多少恨まれましてもやむを得ませんから、やるべきことはやるというようにひとつ御勘案を願います。
#271
○柄谷道一君 大臣の非常に力強い御答弁をいただいたわけでございますけれども、しかし実態は、じゃ適正な下請代金が確保されているか、また中小企業等に多い加工賃産業において適正加工賃が確保されているか、こういうことになりますと、まだ、大臣の言われるような姿に至っていないというのが中小企業の私はこれまた一面であろうと思うんでございます。したがいまして、労災保険法の改正が審議されますのを一つの契機として、労働大臣の方からも、やはり建設、通産など関連する大臣に対して、労災防止がいかに重要かという点を御力説願いまして、やはり政府全体として労災の防止に立ち向かっていく、そういう体制づくりのためにぜひ大臣のお力を得たい、これは強く希望し、かつ期待申し上げたいと思います。
#272
○国務大臣(藤尾正行君) いま柄谷先生から力強い励ましのお言葉をちょうだいいたしましたけれども、これは政府の問題だけではないわけでございまして、政治の問題でございます。でございまするから、政治勢力のすべてを挙げて、労働災害事故がゼロになりまするまで私どもの力を総結集をして、そして立ち向かっていかなければならないわけでございます。やれ通産大臣だ、建設大臣だと御指摘でございますけれども、そのようなもので済みまするならば、私が閣議の中で責任を持って指導をいたします。
#273
○柄谷道一君 次に、職業性疾病の発生状況でございます。これも労働基準局編の労働衛生のしおりを拝見をいたしました。疾病件数年千人率、これを見ますと、昭和四十九年以降五十三年まででは、大体〇・七と横ばいをしております。しかし、ここで私は注目しなければならないのは鉱業ですね、鉱業では四十九年が七・四、五十年が七・八、五十一年が一〇・八、五十二年では一二・八、五十三年は一二・二というふうに、鉱業における職業性疾病の発生状況が累増しておるという傾向があらわれておるわけでございます。
   〔理事高杉廸忠君退席、理事佐々木満君着席〕
この原因をどう把握しておられるのか。また、具体的に鉱業に対して今日までどのような施策を講じられてきたのか、お伺いをいたします。
#274
○説明員(望月三郎君) 業務上疾病の発生状況を年千人率で見てみますと、全産業としては横ばい状態でございますが、鉱業においては昭和五十一年、五十二年は前年に比較しますと増加しておるわけでございますが、五十三年は横ばいないしは若干の減少を示しております。
 業務上疾病の発生状況を疾病の分類に基づいて見てみますと、いわゆる事故に起因する疾病及びじん肺が増加の傾向にございまして、特に鉱業におきましてはじん肺が約半数を占めていますので、重要な疾患とこれは考えていかなければならぬと思っております。
 じん肺につきましては昭和五十二年にじん肺法を改正をいたしまして、じん肺管理区分の内容の見直し等によりまして健康管理対策が一層充実するとともに、昭和五十四年には労働安全衛生法の関係省令といたしまして粉じん障害防止規則を制定いたしまして、湿式削岩機の使用あるいは坑内における換気の実施による作業環境の改善という具体的な予防対策を定めたところでございます。また、鉱業労働災害防止協会に対しまして坑内の粉じん測定、削岩機の防振ハンドルについて現在調査研究を行わせております。
   〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕
 職業病につきましてはそういうことでございますので、職業病やあるいは有害物質等の調査研究体制の強化という点、さらには安全衛生教育の強化と事業者の衛生管理の徹底、第三は法規制の整備及び監督、指導の強化等、予防健康管理対策を充実させるという三本の柱で総合的な予防対策を展開していきたい、こう思っております。
#275
○柄谷道一君 また、別の資料によりますと、労災に占める職業病の割合でございますけれども、これも四十九年の七・五%から五十二、五十三年は七・九%と上昇をいたしております。私は特に職業性疾病問題については今日まで、朝からの議論で建設業のことは多く取り上げられてきたところでございますけれども、以上私が指摘いたしました数値の変動の傾向から見ても、より鉱業というものの職業性疾病対策というものがおろそかにされることはできないと、この点を指摘をいたしまして、ただいま部長の御答弁にはございましたけれども、さらに充実した予防対策の拡充に御努力を願いたいと思います。
 そこで私は、これは一つの提言になるかとも思うんでございますけれども、それは職業病予防法というような法律を設けてはどうかという考えを持っているわけでございます。職業性疾病につきましては、今日までの諸研究によりまして現在、ある程度業務との因果関係が証明され、予知できるという状況になりつつあるのではないかと、こう思うのでございます。そこでたとえば、じん肺法の立法に見られるような意図を、職業病全体に敷衍することが可能な時期にいま至りつつあるのではないだろうか。たとえば健康管理を行う傍ら、一定同一作業を長期にわたって行うことにより生ずるおそれがあるという職種等につきましては、何年かの就業の後、配置転換等の労務管理を講ずることによって、この職業病の発生を回避することができる。さらに、こうした措置を怠れば、それは事業主の過失責任とも言い得るのではないだろうか。なかなかこの発想を直ちに立法化するということはむずかしい問題もあろうと思いますけれども、私は職業性疾病というものを今後防止していくためには、今日までの職業性疾病の発生状況等をさらに精査し、分析し、解析するならば、そのような立法化によって、この発生を未然に防止するという政策体系の確立も決して不可能ではない、こう私は思うわけでございます。この点に対する大臣の、率直なひとつお考えをお示しを願いたいと思います。
#276
○国務大臣(藤尾正行君) 実は私の選挙区はセメント工業の多いところでございまして、じん肺などということが最近言われまして非常に結構でございますけれども、いままでは本当に私が選挙に出始めたころはあのもうもうたる粉じんが、何か肺病の薬であるかのごとき、それぐらいの知識でやっておったわけでございます。それが近々十数年の間に、それではならぬということでここまできたわけでございますから、先生のいまの御提唱になられました職業病に対しますいろいろな検討、それから、それへの対策、こういったことを体系的にまとめ上げて、そうして、公共のためにそれを活用をしていく、善用をしていく、本当に措置をしてもらう、予防をするということは私は非常に意義のあることだと考えます。ただ立法ということが、――なかなかそれまでに十二分の実態把握が必要でございましょうし、またそれを指導、啓蒙していく過程におきまして、あるいはその業者のそれに対しまする罰則規定等々におきまして研究すべき点が多々あろうと思います。こういったことは本当にありがたい御忠告でございまして、今後私どもの行政の上で参考にすべき点が多々あると、さように思いますので、御趣旨を十二分に考えさしていただいて、研究をいたさせます。
#277
○柄谷道一君 ぜひ外郭団体等にも協力をさせまして、私は、これはでき上がればひとつの大きな前進であろうと思いますので、積極的かつ前向きに御検討をお願いをしておきたいと思います。
 次に、労災保険で実務上最も問題になりますのは、この職業性疾病の認定問題でございます。業務上の負傷は比較的その原因など因果関係の証明が容易でございますし、また、傷害の認定も外見上あらわれるわけでございますから、まず公正な認定が行われておると思っておりますけれども、この職業性疾患ということになりますと、内部疾患でございますから、業務遂行性並びに業務起因性の証明がなかなかむずかしい、また、認定の内容も厳し過ぎるのではないか、こういう声は各所で聞かれる苦情でございます。その負傷等と比較して、災害の程度が軽く取り扱われているのではないか、これに対して、合理的にやはり説明する材料に欠いておるというのがまたこれ実態だろうと思うんですね。私はこういう内部性疾患に対する現在の認定の基準というものについても、いま、いきなりどうこうするというわけではございませんけれども、ひとつ真剣な検討を行って、やはり公正さが保持できると、このような基準の策定に向かって労働省の積極的な検討を煩わしたいと、こう思います。いかがでございましょう。
#278
○政府委員(倉橋義定君) 先生御指摘のように、なかなか外見的にはわからない職業病の業務上の認定なり、さらには障害等級の認定に当たりましては、私どもできるだけ迅速かつ適正な処理に努めているわけでございますが、何せ事案の性格からなかなか困難な問題をはらんでおるわけでございます。認定に当たりましては、実地調査とか医証の収集だとか、専門医によります医学的な意見の聴取とか、最終的な判断をするに当たりましてはある程度の日数を要するのはやむを得ないと、否定できないような事実がございます。私ども労災保険法の趣旨に沿いまして、労働者保護のためにより的確な判断を行うということでいろいろ努力しておりますが、今後ともこれらの認定の期間につきましては、できるだけ圧縮してまいる所存でございますが、事案の複雑なものにつきましては、ある程度日数をとらざるを得ないということも御理解をいただきたいと思うわけでございます。
 そのほか、できるだけ認定を迅速化するために、職業病の認定基準、これにつきましては私ども鋭意折に触れまして見直しを行ってきております。今後とも労基法施行規則の三十五条の整理とあわせまして認定基準の整備もどしどし行いまして、できるだけ的確なる迅速なる認定が行われるようにしてまいりたいと思っております。
#279
○柄谷道一君 次に、労災保険財政の問題について御質問したいと思います。
 被災労働者の保護制度であるこの労災保険経済の実態を見ますと、当年度収支の過不足、五十二年度は百二十二億八千七百万円の赤、五十三年度は四百九十六億二千七百万円の赤、五十四年、これは予定でございますが五百七十一億七千四百万円の赤といずれも不足を続けております。また、決算上の収支過不足をながめてみましても、五十二年度は四百五十三億二千九百万円の不足、五十三年は七百三十五億九千七百万円の不足、五十四年は八百四十七億六千四百万円の不足と、労災保険経済というものは年々悪化をしておるということは決算表の中にあらわれているところでございます。今後のこの経済見通しについて、どういう展望をお持ちになっておりますか、お伺いします。
#280
○政府委員(倉橋義定君) この数年、労災保険財政につきましては急激な悪化をいたしまして、先生御指摘のような財政になっていることは事実でございます。これに対しまして、労災保険制度を適正に維持し、労働者の保護をするためには保険財政の立て直しをしなければならないわけでございまして、本年四月に保険料率を全産業平均いたしまして千分の二・二の引き上げを行ったわけでございます。それによりまして、現行におきます給付水準を今後引き続き維持するという前提に立ちまして、この数年間は保険財政が十分立て直るという見通しを持っております。
 なお、現在御審議をいただいております労災給付の改善を行いますと、それに要する財源が要るわけでございますが、これにつきましても、本年度二回の引き上げということになりますが、使用者の御理解をいただきまして再度引き上げを予定しておりまして、法律の施行の後におきまして、千分の〇・五の引き上げをする予定でございます。その引き上げによりまして、給付改善後におきます保険財政につきましても、ここ当分の間は健全性を維持するものと予定しております。
#281
○柄谷道一君 いまの御答弁を聞いておりましても、保険経済の健全化、ここ当分の間はその見通しがあると言われるんですけれども、そのすべては保険料率の引き上げで賄っていくという方針なんですね。私は、今後も各委員が指摘いたしましたように、労災制度の内容は改善しなければならぬ。とすれば、当然発生件数が大臣の言われるようにゼロになれば別でございますけれども、なかなかこれは言うはやすくして行いがたい問題でございますから、また引き続き今後も保険財政、いわゆる保険料の値上げにゆだねなければならぬ、こんな状態が今後も続いていくという展望につながっていくわけです。その財源措置について、新たなシステムというのを労働省は保険料以外にお考えになりませんか。
#282
○政府委員(倉橋義定君) 労災保険の本質は、やはり使用者の責任を、賠償責任、補償責任を保険するものでございます。したがいまして、その財源といたしましてはやはり使用者の負担に求めるのがたてまえではないかと思うわけでございます。もちろんその負担につきましても限界がございますから、われわれといたしましては保険料以外の財源ということにつきましてはできるだけ確保をしてまいりたいと思いますが、これをたとえば一般財源に求めるというようなことになりますと、少なくとも現在におきます国家財政の中におきまして非常に困難でございますし、また制度のたてまえから申しまして、原則的な意味でそれを一般会計に求めるということは非常に制度の無理がございますので、やはり基本的には使用者の負担、保険料の負担によって賄うべきものではないかと思うわけでございます。
#283
○柄谷道一君 いま審議官は、いわゆる制度のたてまえというところから述べられたわけでございますけれども、それでは現在、各社会保険に対する事業主の負担が一体どうなっているのか。政府管掌健康保険で、これは改正前ですが千分の四十、厚生年金が、これも改正前ですが千分の五十三、児童手当は七割、労災保険では一番低いのは千分の四から、高いところは千分の百二十四、さらに雇用保険、これは一般雇用者でございますが、千分の九というふうに、もう一割をはるかに超えているというのがほぼ実態なんですね。しかも、労災はメリット制度を採用しておりますから、私がさきに御質問いたしましたように、中小企業にその労災の発生が多いということは、中小企業にとってはそのメリット制の恩恵に浴さないということでございますから、中小企業になればなるほど労災の負担が大きくなる、一般傾向としてですよ。そういう状態に大臣、あるんですね。
 一方、国庫負担の方でございますけれども、昭和三十五年に打ち切り補償にかえて長期給付を採用した際に事業費の一%が導入されましたけれども、これは金額も小さく、かつ補助率といういわゆる定率的なものではなかったわけでございます。そこで、私いろいろ調べてみますと、保険給付費は五十二年は四千百二億円、五十三年は四千七百七十五億円、五十四年の予定では五千二百一億円と、このようになって大きくふくれ上がってきているわけですね。これに対する国庫補助額は五十二年は二十一億、五十三年は二十一億五千万、五十四年は二十二億と、毎年五千万円程度しかふやしてないわけです。したがって、保険給付費に対する国庫補助率というのを割り返してみますと、五十二年は〇・五一%ですね、五十三年は〇・四五%、五十四年は〇・四二%と、率から見ますと逓減しておる。これが私は保険財政の実態ではないかと、こう思うんです。
 また、たてまえ論として労働者災害というのは経営者責任だと、こう言っておりますけれども、たとえば通勤途上の災害も労災の適用になった。いま渡部先生も指摘されましたけれども、たとえば静岡地下街のガス爆発、新宿のバス放火事件、それからまたその他一般の通勤途上の災害、こういったものが、それじゃ経営者の責めに帰すべきものかどうかということになりますと、これは全く経営者の責めとは因果関係なく、通勤途上のそうした災害は発生をしておるわけでございます。いま審議官は、たてまえは事業主負担だと、こう言われましたけれども、こうした労災が発展してきた経緯とか現状というものを考えますと、年に、大蔵省の抵抗がきつくてでしょう、ちょびちょびふやしていくだけで、一方給付費に対する比率は年々低下しておる。こんなことでいいんだろうかという私は疑問を持たざるを得ません。何割がいいのかというパーセンテージはいろいろ問題があるにしても、私は現在の労災の現状というものを考えますと、定率的国庫補助というものを労災保険の中にも適用して当然ではないだろうか。少なくとも実質的な国庫補助がパーセンテージが減少していくということは、そのことによって防ぐことができるんではないかと、こう思うのでございます。これは非常に政策的な問題でございますので、大臣、そのような発想を労災に取り入れることが不可能ですか。私はできると思うんですがね、これは。
#284
○国務大臣(藤尾正行君) これは柄谷先生せっかくの御提言でございますけれども、ほかの社会保険、保障とかいうような制度、年金にいたしましてもあるいは健康保険にいたしましてもその他のもの、これは私は、受給者が年齢的にいまの高齢化ということによりまして非常に末広がりに広がっていく、したがいましてきわめてそのバランスを保つことがむずかしくなって、そうして破産に瀕していくという傾向をたどっておられるのだろうと思います。しかし、労災の場合は決してそのような影響は受けておりませんで、現実には本当に使用者並びに労働者の皆様方の安全思想というものが徹底していけば私は低減すべき方向にあると、またそうしなければならぬと、かように考えます。
 いま通勤途上の労災の方々に対します御配慮、こういった温かい御配慮をちょうだいをいたしまして、私も感激をいたしておるわけでございまするけれども、この通勤途上の問題というようなことは本当言いますと一般の労災自体では私はないと思うんですね、厳密にいけば。しかしながら、労災に準ずべきものということでこう取り込んでいったという、そこに思想の変化が流れておるのではないかという感じがいたします。
 したがいまして、今後通勤途上のような配慮を無制限に伸ばしていくということでございましたならば、確かに先生御指摘のように、財政上、その使用者の責任というものだけで律し切れないというようなことが起こるというようなことはあり得るかもしれません。しかしながら、いまのところはとりあえずその企業者の責任の保険、積立金によりましてどうにかこうにかやれるという状況にあるわけでございますから、いましばらくこの状況の推移を見さしていただいて、そうしてどうしてもこれは永遠にどんなことを考えてもパンクしていくんだということであれば、制度的に考え方を変えていかなければならぬというようなこともあるかもしれません。しかし、そうなっていきましたときには、国家財政といいまするものは私は大変なことになると思いますよ。結局、国家財政で支出をさしていただくということになりましても、それは全部納税者の負担でございますから、結局帰するところは同じであるということになろうと思います。したがいまして、とりあえずいまこういった一つの保険制度というもので、保険料というもので賄っていけるという段階でございますから、ひとつ、いまはとりあえずその推移に任していただいて、起こってくる労災の事故をできるだけ縮小させていただいて、そうして労災保険のふところぐあいが黒字に転換をしていくように、それが定着化していくようにというような指導に全力を挙げさしていただきたい、かように考えます。
#285
○柄谷道一君 大臣、私の指摘は、いま直ちに二割とか三割の定率制を導入せよというようなことを言っているわけではないわけであります。しかし、いま大臣も力強く各委員に述べられましたように、労災制度の今後の拡充は必要だと。それは当然財源を伴ってくる、しかも、実質的な国庫補助率は定額で決められておるためにどんどんと低下しておる、通勤途上の災害という新しい要素も労災に加わってきたではないか、こういうことになりますと、私は、次の労災保険法の改正問題のときに、過去の慣例がそうだからということで、すべて事業主負担で労災とは賄うべきものという既定概念ではなくて、やはり違った視点からの検討というものはなされてしかるべきではないかと思うし、また二十二億円といういまのこの国庫補助についても、少なくとも現行定率を横ばいさせるぐらいの増額はしていかないと、国家予算の中から見て、全体といっても二十二億ですから、ちょっと労災が、国の施策の中から財政的に見ても軽んじられているんではないだろうかと、こう思うのでございます。何千億円、何兆円を出せと言っているのではないわけですから、次の年末にかけての予算折衝の面もありましょうから、ひとつ大臣、大いにそこらはがんばって、実質低下だけは当面阻止しながら、そして今後の国庫負担のあり方については引き続き検討すると、そういう姿勢をぜひお示しいただきたいと思うんですが……。
#286
○国務大臣(藤尾正行君) まことに申しわけのないことでございますけれども、これは、労災制度といいますのは保険制度でございますし、その保険の組み立て方といいまするものは、企業の責任というたてまえでございますから、そのたてまえだけはひとつ貫かしていただきたい。それでなおかつ、先生がおっしゃられるとおり、労災の範囲がどんどんふくれ上がっていって、企業責任では律し切れぬというものがこれだけふえているではないかということになりました暁に、私は改めて考え直すということであれば、これはこれなりに筋は通りますから、政策的な一つのポテンシャリティーとして、将来の問題解決のために検討さしていただくということならばお受けができますけれども、いまこの時点におきまして、そのお考え方を導入しろということでございましたならば、まことに残念至極なことでございまするけれども、いま直ちにはなかなか踏み切れない問題であるというように答えさしていただきます。
#287
○柄谷道一君 私も、いま直ちにやれと言っているのじゃなくて、来年がんばってほしいのは、年年〇・何%、〇・何%とどんどん減っていくぐらいのやつは、全体で二十数億の金ですから、とりあえずはそこに防波堤を引いておくというぐらいのことは、大臣これは御努力願いませんといかぬと思いますので、大蔵大臣と大いに折衝をしていただきたいと、これは希望いたしておきます。将来問題は引き続いての検討をお願いしておきたいと思います。
 私は、現行労災保険制度は、損害賠償ではなくて生活保障、すなわち稼働能力の低下、喪失に対応した生活費の補てん、それから能力回復の療養給付にあると、これは制度の仕組みから見ても明らかでございます。しかし、そのような性格であるとしても、その給付内容は十分とは言い切れません。私的保険として、労使間で業務上災害について労災給付に上積みした付加給付を行うという、いわゆる労災上積み制度が逐次普及しつつございます。しかも、この付加給付は、一面、他の委員も指摘されましたが、企業間の格差を増大する結果を招いております。同時に、その労使間の交渉では、それは損害賠償の一部なのか生活保障の上積みなのか、その性格づけもまだ十分にされないまま上積みが普遍化しつつあるというのが私はその実態ではないかと、こう思うのでございます。そういう現在の労災保険の性格が両面の性格づけであるとすれば、私は、労働災害が明確に企業側の不法行為によって生じたその損害賠償責任という問題が生じてくることもまた当然であろう、こういうことを考えますと、私は今後、制度の性格づけとその仕組み、給付内容、さらにはさきに指摘いたしました国の費用負担のあり方などについて、この際抜本的に見直し、次の改善に備えるという姿勢があってしかるべきではないかと思うのでございます。こういう点、一度審議会の方にでも御諮問を大臣から願いまして、今後の労災のあり方というものに対して深くメスを入れる、そういう姿勢をぜひお示しをいただきたいと、こう思います。いかがでございましょう。
#288
○政府委員(倉橋義定君) 労災保険制度の基本的なあり方につきましては、労災保険審議会の中に労災保険基本問題懇談会というのを設けまして、過去数年にわたりまして鋭意検討してきているところでございます。今回、御提案いたしました法改正の内容につきましても、その検討の成果の中間的な内容でございまして、さらに今後の基本問題、先生御指摘のありました種々の問題を含めまして、現在検討を続けているところでございます。私どもは、労災保険制度が今後の日本社会においてどういうような機能を持たせるべきかということを含めまして、将来の相当長い期間を見まして、労災制度の基本的なあり方につきまして、その懇談会に引き続き御検討をいただくよう期待しているところでございます。
#289
○柄谷道一君 私は、予定としてはここで民事損害賠償がなされた際の、労災保険年金との支給調整の問題についてお伺いをいたしたいと考えておりました。しかし、これはさきに安恒委員との間の一問一答によって政府の見解が明らかにされましたので、重複は避けたいと思います。本日のその議事録確認によって明確になりましたその方針を、あくまでも大臣としてお守りをいただきたい。これは強い附帯的意見として申し上げておくにとどめたいと思います。
 そこで、衆議院の附帯事項、またこれは同じく後ほど参議院でも同様の附帯決議がなされるものだと思いますけれども、実施基準を定めるに当たって、被災労働者及びその遺族の実情や年金たる保険給付の特質も勘案してその基準を審議会で定めると、こういうことになっております。これは大臣、労働省で諮問案をつくって出されるんでしょう。その場合、どういうお考えでその諮問案を、いまその内容までは詰まっていないと思いますが、おつくりになる予定でございますか。
#290
○政府委員(倉橋義定君) 労災保険審議会に諮りますのは、先ほど安恒先生の御質問でお答えいたしました内容に従いまして、労働省におきまして基準案を作成いたしまして御諮問申し上げる予定でございます。その中身につきましては、先ほど御答弁申しましたような基本的な考え方に沿いまして案を作成するという予定でございます。
#291
○柄谷道一君 まだその内容は固まっていない、いわゆるきょうの確認程度の段階だと、こういうことですね。
#292
○政府委員(倉橋義定君) 先ほど御答弁いたしました内容の段階でございまして、さらに今後内部で具体的な数値等については、検討を加えた上で具体的な基準案をつくりたいと思っております。
#293
○柄谷道一君 私は労働力人口の高齢化の問題と並びまして、最近の労働市場の大きな特徴は、ハート、さらに派遣労働者の雇用期間が短いとか、雇用労働条件が常用労働者に比べて不明瞭といいますか、そうしたいわゆる不安定労働者群が著しく増大しておるというのが一つの特徴であろうと思います。
 これらの問題の総合的な対応の仕方につきましては、また改めて機会を得て、あらゆる角度からの質問をいたしたいと思っておるのでございますけれども、最近、事務処理、ビル管理、情報処理、パーティーの企画、接待、工場労務、その他の部門におきまして派遣労働者の数が非常にふえつつあるわけでございます。ある資料によりますと、事務処理を行う事業所が六十、ビル管理が三千百事業所、情報処理が約九百四十事業所、パーティーの企画、接待等が百事業所、合わせて四千二百事業所のこういう派遣労働者を主体とする企業が、いま日本に存在するのではないか。しかもこれは今後ますます増大していく傾向にあると、こう受けとめられているわけでございます。これらの総合対策は、さきに言いましたようにまた改めてその対応策を質問いたしますが、問題は、このような派遣労働者と労災の関係でございます。数十万に及ぶこういう派遣労働者が果たして労災保険に加入しておるのかどうか。もし加入しておる場合でも、AならAという事業所で雇用されておるわけですね。そこからBという会社に派遣される。派遣されるBの会社の業務指示に基づいて動くわけでございます。すると、派遣先のBという会社で労働災害が発生したという場合に、その派遣労働者がA会社で労災保険に加入しておっても、そのような形態の場合に労災保険の適用が受けられるのかという問題が生じてくると思います。非常にまだ水面下にいまある産業の実態でございますけれども、これらに対する当局の対応の仕方についてお伺いいたしたいと思います。
#294
○説明員(春日原秀隆君) 先生御質問になられました労災保険の適用の関係につきまして御説明申し上げます。
 先生御案内のとおり、労災保険につきましては昭和五十年四月から、原則として労働者を使用する事業のすべてに適用されるというふうになっております。したがいまして、労働者の雇用形態などに関係がなく適用されるという形になってございます。ですから、いま御質問ございましたように派遣労働者につきましてもこれらの者を雇用する事業について、常用、派遣の区別なしに当然労災保険は適用になるという形になることと存じます。ただ、御質問の派遣労働者について労災保険の適用状況はどうかと、こういう御質問でございますけれども、率直に申しまして、これについては十分な調査というものは実態把握はいたしてございません。ただ、ほとんど大部分の事業によって大体そういう労災保険の適用手続がとられておるのだろうというふうに当面考えておりますし、また、これも先生御案内のとおり、そういう適用になるべき事業所において、具体的に適用手続がとられていないにいたしましても、不幸にしてそこで労災事故が発生した場合につきましては、その労働者には労災給付が行われるというふうな仕組みになっておりますし、その点の労働者に対する保護という観点からの配慮は十分にいたしていきたいというふうに考えております。
#295
○政府委員(倉橋義定君) 先生御質問の後段でございますが、A社が派遣元であるという労働者が、B社において被災したという場合の労災保険につきましては、私ども、労災保険の保険関係につきましては雇用関係を中心として考えております。したがって、派遣元であるA社が労災保険上のいろいろな使用者としての役割りを負うということに理解しております。
 なお、先ほど徴収課長も申しましたように、仮にそのA社が保険料を通脱しているような場合につきましても、現在におきましては、原則としてすべての事業所が強制適用でございますので、それは手続の補正をしまして労働者の保護には遺憾ないようにいたしております。
#296
○柄谷道一君 時間がまいりましたのでこれで質問を終わりますが、昭和五十三年七月に、行政管理庁が十五都道府県において業務処理請負事業をやっております八十六事業所を対象とした調査結果が発表されております。しかし、その内容を見ます限り、いま御答弁がありましたように、この労災問題について問題全くなしと言い切れる私は状態にはないと思うわけでございます。したがって、この問題改めてまた御質問いたしますけれども、労働省としてもその実態を正確に把握されて、それらの派遣労働者の労災が生じた場合に、いやしくも法の適用外に置かれるということがないように、十分の実態把握とその対策を進めていただきたい、このことを希望いたしまして、時間でございますので質問をやめます。
#297
○前島英三郎君 大変時間も遅くなりましたが、ひとつ、いましばらくごしんぼういただきたいと思います。
 まず大臣にお伺いしたいことが三点ほどございますので、よろしくお願いをいたします。
 労災法の基本理念、目的をどのようにとらえていらっしゃるか。きょうはこの問題もずいぶんやりとりが出ておりますので、どの部分が重複しているか、私出たり入ったりしたものですからさだかではございませんので重なるかもしれませんが、あえてお尋ねをさしていただきます。
 まず基本理念、目的をどのようにとらえていらっしゃるか、大臣の認識を伺いたいと思います。
#298
○国務大臣(藤尾正行君) もう何回も同じことを申し上げておるわけでございますけれども、災害にお遭いになられました方のその将来も含めました労働能力といいまするものを保障をし、同時にその方の御回復並びに将来までを継続をいたしまする御家族の御生活が少なくとも守られまするように、その安全を保障をしていきたいというところにこの法の精神があるわけでございます。
#299
○前島英三郎君 そこで二番目に労災被災者の生活実態、その社会的、経済的、精神的苦痛を大臣は理解を当然していらっしゃると思うんでございますが、被災者にも会ったと思うんですけれども、大臣の率直な感想を伺いたいと思うんです。これは、亡くなられたというのは大変悲劇ではございますが、また現代医学によりまして体の不自由な身を横たえながら、どういう精神的な苦痛あるいは経済的な苦痛を味わっているか、私は大変近い存在にそういう人たちがおりますので、それはわが身をも顧みながらも非常に痛切に感じるところでありますが、率直な御感想を伺いたいと思うんです。また、今後お会いいただく機会をまた設けていただくかどうかもあわせてお答えいただきたいと思います。
#300
○国務大臣(藤尾正行君) 何回も私も病院に出入りいたしましたし、また非常な苦痛の中を私のところまでお出かけをいただきまして、いろいろな御陳情もちょうだいをいたしております。そこで、私がその方々のいろいろなお訴え、そういったものは私なりに理解をいたしておるつもりでございますけれども、いま先生が御指摘になられました中の精神的苦痛、大変なものだと思います。よくわかりますけれども、その苦痛といいまする精神的なものを、どのように私どもが受けとめ、それをどのように御補償を申し上げられるかということになりますと、これは非常にむずかしい問題をたくさんはらんでおりますものでございますから、私どもが一生懸命にやってまいりましても、恐らくそれで十分だなどということには絶対に相ならぬだろう、それほどに先生が御指摘になられましたいろいろな御苦痛の中で、精神的な御苦痛といいまするものが私は大きいということは言えると思います。
#301
○前島英三郎君 そこで、もう一点だけ大臣にお伺いをいたします。被災者の一番望んでいることはどのようであると受けとめていらっしゃるでしょうか。まあ労災の防止、何でおれはこういうことに巻き込まれてしまったのかということもよく吐露されますし、あるいは、そのような労災の責任というものをなぜもっと追及してくれないんだという自分の会社に対する恨みもよく聞くわけであります。それから、妻子を抱えてこの力だけで生活を支えてきたいまの生活という将来の展望の中にも、なぜあのときおれは死ななかったのかという悲しい悔恨すらある部分がございます。しかし、退院してから職場復帰ができるだろうか、ほとんどできない現状がそこにあります。あるいは家に帰ることができるだろうか、家ではいま女房と子供が細々とアルバイトしているけれども、しかし自分が帰ることによって、一足す一はマイナス二になる、アルバイトさえ奪ってしまうことになるので、おれは病院にいかに長くいるか考えなければならないという、まさに生きていることさえ非常につらいというような現状があるわけですけれども、いろいろな希望としていることはたくさんあろうかと思いますが、大臣はどうお感じになるでしょうか。
#302
○国務大臣(藤尾正行君) これは、先生がいまお述べになられましたようにそれぞれの事故の時間、それから経過した時間、それからそれぞれの療養にいそしんでおられる時間、期間、あるいはそれが、ややある程度違った意味での御回復がある程度進んだという時間、そういったあらゆる段階におきまして、私はみんな違っておられるというように思います。しかしながら、そこで一貫して私どもが考えなければなりませんことは、そこにその方の人生があるということであり、その方方に御家族があるということでございます。それの御生活といいまするものをその方々が口にされませんでも私どもは十二分にそれは考えていかなければなりませんし、そのほかに私どもが考えていかなければなりませんのは、どうしてもそういった事故によって起こってまいりました人生観の中に、全部黒になってしまう、暗くなっていくというようなことがあってはならぬわけでございまして、そういった暗やみの中に、少なくとも一条の光は何とかして制度、政治の運用の面でお与えはできないものだろうかということでございます。
#303
○前島英三郎君 そういう意味では、労災の保険というものはある意味での精神的な心の部分の支えという部分もないと、何か数字で、法で割り切ってしまわれない部分というのも多々あるのではないかというような気がするんです。そこで、データの一つといたしまして審議官にちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、労災被災者の生活実態を労働省として調査したデータはございますでしょうか。
#304
○政府委員(倉橋義定君) 労災受給者の方々の生活実態等につきましては、昨年の二月から三月にかけまして、労災年金受給者に対する相談業務を行っております財団法人労災年金福祉協会に委託いたしまして、受給者の労災年金――これは傷害年金受給者でございますが、その方々の生活実態調査を実施いたしまして、それによりまして内容の把握をしているところでございます。
#305
○前島英三郎君 それはきょう安恒委員も申されましたけれども、これですね。財団法人労災年金福祉協会、この調査結果だと思うのですけれども、この労災年金福祉協会とはいかなる団体なんでしょうか、まず伺いたいと思います。
#306
○説明員(小田切博文君) 財団法人、公益法人でございまして、労働省所管の公益法人でございます。労災年金受給者につきまして、もろもろの援護事業を行うというようなことを目的といたしまして設立されてある財団法人でございまして、私どもの方からいま審議官御説明いたしましたように、年金受給者の相談業務というようなものを委託しております。年金受給者の中には、特に遺族年金の受給者というようなことになりますと、事業所との関係から離れてしまったというような方になるわけでございますが、いろいろな面におきまして事業所とのつながりがありますれば、事業所にいすを持ち込むという道もあるわけでございますが、遺族年金受給者ということになりますと、そういう道も多く閉ざされているというようなことで、何かと生活上万般のことにつきまして他に相談持ちかけてくる、相談の相手がほしい、相談の窓口がほしいというような事情があるわけでございますが、そういうような要請に応じまして、現在のところ全国労災年金受給者の多い地から相談窓口をブロック単位に一カ所ぐらいずつ開設しておりますが、順次充実してまいりたいというふうに考えておりますが、労災年金受給者のいろいろな援護活動に従事する団体でございます。
#307
○前島英三郎君 その団体が障害年金受給者の生活実態調査結果というものをまとめられたということなんですが、こういうことを言うとしかられるかもしれませんが、この団体は信頼できる団体と見ていいですか。
#308
○説明員(小田切博文君) 公益法人でございますから、労働省の監督に服しておりまして、私ども業務面でもチェックする、信頼していただいていい団体だと思います。
#309
○前島英三郎君 そうすると、この調査費というのは労働省が出したんですか。この今度の実態調査結果というのは。
#310
○説明員(小田切博文君) さようでございます。
#311
○前島英三郎君 そうすると、この調査結果が、非常に労災法の中でも現状の一つの生活保障という部分などが、あの改正の中にかなり強い影響があったかどうかということ、どうでしょうね。
#312
○説明員(小田切博文君) この調査の中にいろいろあるわけでございますが、たとえば、特に一−三級というような重度の障害年金受給者の方々のどういう点に困難を感じられたかというようなことを調べた項目を見ますと、たとえば病院を退院して自宅へ戻られる際に、住宅の改造の必要を感じたという割合がかなり高くなっているわけでございます。六割を超えているような割合の方がそういう必要を感じているというような結果になっているのじゃないかと思いますが、そういうような点を含めましてこの調査結果につきましては、昨年労災保険制度のあり方をずっと検討していただきました労災保険審議会にも御報告いたしまして、そこの審議の参考にしていただいたわけですが、いま申し上げましたような点に着目いたしましては、病院から退院して自宅へ戻るというような際に、かなり多くの方は住宅改造が必要になるんではないかというようなことで、そういうことに使われるために、特殊法人でございますが、労働福祉事業団が社会復帰資金の貸付制度というようなものを設けているわけでございますが、そこにおける貸付限度額の引き上げを図ってしかるべきではないかというような御意見にも結実したわけでございまして、私どもその御意見を受けまして、従前は貸付限度額七十万円であったものを今年度からは百万円に引き上げるというような措置も講じたわけでございます。
#313
○前島英三郎君 そういういきさつの中で、この調査結果ではいろいろなことがデータとして記録されておりますね。まあ年齢階層別受給者の発生状況、年金移行後の傷病の治療、治癒時の不安意識、それから機能回復訓練、日常生活の状況等いろいろな数字があるんですけれども、その中で治癒した後自宅で日常生活ができるか、あるいは職場復帰ができるか、そういった不安にだれしも駆られるものだと思うんですね。この調査ではその不安について調べてあるわけなんですが、一例として家計生活費について不安や困ったことがあるという人はどのくらいというふうに見ておられますか。
#314
○説明員(小田切博文君) この団体が行いました調査結果によりますと、治癒時の御本人の不安意識といたしまして、家計生活費の面で不安や困ったことを感じたというような回答を寄せられた方が三割前後の数字ということになっております。
#315
○前島英三郎君 この三割前後、二八・七%ですね。これは本当にそういう結果ですか。まやかしじゃありませんか。ちょっともう一回よく答えてください。
#316
○説明員(小田切博文君) 結果そのままの数字であると理解しております。
#317
○前島英三郎君 ですから、多答式で回答を求めているんですよ、この部分はね、これはごまかしちゃ困るんですがね。多答式で回答を求めながら集計では構成比率を出しているんですな、いいですか、つまり、その困っている人の比率が実際より小さく出ているんです。ですから、こんな数字じゃないはずなんです。私どもがいろんなところを訪ね、いろんな生活の中での不安意識を見ていますと、実数で言えば四千百八十九人のうち千八百四十九人、四四・一%が家計生活費で困っているのに、この資料では二八・七%。こういう低い数字を故意に出しているとしか受けとれないでしょう。これはまやかしと思われても仕方がないんじゃないですか。どうですか、そこは。ここだけが多答式になっているんです、ここだけが。
#318
○説明員(小田切博文君) 確かに先生御指摘のように、治癒時に不安や困ったことがあったかどうかという点につきましては、家計生活費面でそういうことを感じたか、それ以外の項目も含めまして確かに多答式で回答を求めております。そういう点から申しますと、ですから、実回答人数に対しますパーセンテージというようなものを算出いたしますと、多少いまの多答式でございますから当然重複があるわけでございますが、率は家計生活費面について不安や困ったことを感じたという方の割合は高まるかと思います。
#319
○前島英三郎君 だから高まるんですよ。だから、ここでこういう数字を出されますと、家計生活費で不安や困ったことがあると答えた人は二八・七%、三割弱ということになりますと、あたかも非常に生活はゆとりがあるというように錯覚をされるんです。ですから、ここの部分だけが多答式で、しかも生活に困っているということを全体にはじいて私が計算をしますと、四四・一%になるんですよ、四四・一%に。住居の問題でも一五・七%になり、日常生活の身の回りの世話に対しては三六・七五%になり、あるいは健康管理、医療の面で困ったことというのは二二・四号の人が訴え、そして家計生活費においては四四・一%の人がその苦しさを訴え、そして就職、職場復帰に対しては三二・八%の人が職場復帰をしたいという、多答式計算で割り出していくとこういう数字が出る。ですからこの数字を書かなきゃおかしいんですね。どうですか、それは。ですからさっきから私は、この数字、調査は信頼できるのかどうかということを指摘しているんです。労働省が金を出して長い期間調査をして、こんなまやかしの数字を出して労災法の問題も考えられたんじゃこれはもうたまったものじゃない、こう思うんです。それはいかがですか。
#320
○委員長(片山甚市君) ちょっと待ってください。
 説明員の言葉は、委員長が耳が遠い、老齢か知りませんが非常にわかりにくくて、何を話しておるのかわかりがたいので、もう少し大きい声かよくわかるように、切りのいいところで話してください。お願いします。
#321
○説明員(小田切博文君) ただいまの集計につきましては、御指摘のようにやや不適切な点があったかと思います。今後につきましては十分私ども指導したいと思っております。
#322
○前島英三郎君 大臣、労働省が実態調査をする、長い間お金をかけてやる調査が、こういう形で非常に誤解を招きやすいような調査結果というのは大変遺憾に思うんです。大臣いかがでございますか。
#323
○国務大臣(藤尾正行君) 私は、統計といいますものは常にそうでございますけれども、実際にそのときにあるザインをそのまま出したものでなければ統計的価値はない、かように思います。そういう点から考えまして、いま御指摘のような労災の、病院からちょうど御回復になられて復帰されようとする方々に対しましての問いの集計といいまするものが適切を欠いておるというようなことは、私は常識で考えてみましても恐らく皆さん不安に駆られておられるだろうと思いますね。その不安の分析におきまして、恐らく経済的要因といいまするものが、大部分を占めておるだろうということは想像にかたくないわけでございまして、そういった意味におきましては、私が考えておりまするような統計とはおよそその統計数字の結果が違った方向に出てきておるなあと、これは統計としての価値がきわめて頼りないなあという感じはいたします。
#324
○前島英三郎君 そういう意味では三分の一弱と四四%という数字では大変な開きがあると思うんです。現実には五〇%近い人たちが、いろいろな意味で生活の不安を訴えている現状というのを、御認識をいただきたいということをお願いしておきます。
 そこで、労災年金受給者のうち年金だけで生活できるという人はどのくらいあるとお考えになっているでしょうか。
#325
○説明員(小田切博文君) 御承知のように、労災年金の中には、遺族年金もございますが、後遺障害が残った方々に対します障害年金もあるわけでございます。特に障害年金の場合につきましては、一級から七級までの障害等級の方に障害年金が出るわけでございますが、四級から七級にかけてのどちらかと言えば年金受給者の中では障害の程度が軽い方々につきましては、そういう程度の障害は労働能力喪失度という観点から見ますと一〇〇%喪失では必ずしもない、部分的な労働能力の喪失程度にあるというふうな評価になっているわけでございますが、そういうことに応じまして、一部残存機能を活用して稼得もあるというような前提で、部分的な労働能力の喪失に対する補てんというふうな観点から年金が支給されるというようなこともございまして、必ずしもそういう人たちにつきましては年金のみで生活し得るという筋合い、性格のものではないわけでございますが、いずれにしましても、私ども労災年金によって、それのみによってどの程度の方が生活を維持しているかということにつきまして、特段調査したデータは持ち合わせてございません。
#326
○前島英三郎君 私は、労災年金受給者のうち年金だけでどのくらい生活ができるかというような調査も実際できぬものなのかどうなのか。精神的な苦痛を負いながら、さらに職場復帰もままならず、あるいは一家離散というような悲しい人生、あしたの暗い部分の人も大変いるわけでありますから、そういう意味では、年金だけで生活できるという人はどのくらいあるかというような部分の調査は、これは正しい調査でやはり数字として出すべきだというような気がするんですが、その調査の意向はいかがでございますか。
#327
○政府委員(倉橋義定君) 労災年金受給者の生活実態の調査につきましては、先ほど安恒先生の御質問につきまして、労働省におきまして今後その調査の実施をお約束したわけでございますが、その調査の中におきまして、年金受給者及びその世帯の生活関係、生活費等の調査もするような設計を検討していきたいと思っております。
#328
○前島英三郎君 ぜひお願いいたします。
 実際は、その労災年金で生活できないという人は結構いるんですね。実際数多くいる。つまり労災年金が低額となる人の多くは受傷前の賃金が非常に低いためなんですね。で、全国脊髄損傷者連合会は、毎年労災制度全般にわたりまして要望や問題提起を行っているわけなんですが、その中でも給付水準の低い人々の問題を取り上げているんですが、これは労働省としては、何回か陳情にも伺っているでしょうし、その辺は承知しておられるでしょうか、いかがですか。
#329
○説明員(小田切博文君) 脊損の団体の方々、しばしば私どもの労働省へお見えになりまして、いろいろな御意見、御要望を述べられておるのは私ども十分承っております。
#330
○前島英三郎君 その中で第一に提起しているのは、給付基礎日額の最低保障を大幅に引き上げるべきであるという点なんですね。つまり、最低保障を大幅に引き上げるべきであるという点だと思うんです。この点について労働省の見解を伺いたいと思うんですが、いかがですか。
#331
○説明員(小田切博文君) 給付基礎日額の最低保障額の引き上げの問題でございますが、先ほども御説明しましたように、ことしの四月一日からそれ以前の日額二千百八十五円を二千六百七十円に約二三%引き上げたところでございますが、脊損の方々におきましてはもっと大幅な引き上げが必要ではないかという御意見があるようでございます。私どもこの給付基礎日額の最低保障額につきましては、私どもの労災保険の基本的な性格が、やはり業務上の災害につきまして補償を行うという点に求められる以上、その補償といいますのは、災害によりまして損なわれた労働能力に対しまして補償を行うという観点のものでございますが、稼得能力の損傷ということになりますと、やはりそれまでの実績賃金というものが物差しにとられるべきだ、そういうような考え方が基礎になりまして、労災保険の給付の基礎単価といたしましては、基準法で言いますところの平均賃金、すなわち被災直前の原則的に三カ月の期間を算定期間といたします平均賃金ということになるわけでございますが、そういう実績賃金、実収賃金を基礎に置くというような制度、給付の組み立て方になっているのだろうと思います。そういう観点から見ますと、余り実績賃金、実態賃金とかけ離れたような水準のものを最低保障額とするということは、いま言いましたような制度の基本に照らしてみた場合に、なかなかむずかしい問題があるというふうに私ども考えております。
 一方、従前の稼得能力を補償するというような観点から保険給付がなされるわけでございますから、従前実績賃金が非常に高い人につきましては、労災保険給付も非常に高くなるというようなことになっているわけでございます。ちなみに申し上げますと、年間一千万円を超えるような年金をもらっている方もごくわずかではございますがいると。従前実績賃金に応じました給付に、労災保険の場合にはその基本的性格から言ってなるということでございます。
 それにいたしましても、実績賃金をそのまま基準法上の方式に従いまして平均賃金というようなことで算定いたしました場合には、何かと偶然的な要素で平均賃金が低く出てくるというようなことがございまして、それによりまして長期間にわたる保険給付の算定基礎単価とする場合には、いろいろ不適切であるというようなケースもあるというようなことから最低保障額を設けているわけでございますが、最低保障額につきましては、先ほど申し上げましたように本年四月から二二%引き上げたところでございますが、将来につきましても、雇用保険の最低日額等とのバランスを考慮しながら改善に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
#332
○前島英三郎君 さっきからパーセンテージは余り当てにならないと、ぼくはそう思っているんです。ですから、二千百八十円の二二%というと物すごく上がったように思うんです。一千万もらっている人がいるかもしらぬが、一千万の人の二二%といったら大変な増額ですよ。二千百八十円の最低日額の人が二二%、二二%というパーセンテージをあなたは強調されるけれども、実際は二千六百七十円ですよ。二千六百七十円で、しかも介護者の大変な介護を受けながら生活ができると、こうお思いですか、生活ができると。健康じゃないんです。下半身麻痺、私のような車いすの人も大ぜいいる、あるいはもっとひどい四肢麻痺という人もいる。そういう人たちがそういう二千六百七十円ということで一年で計算していきますと、三百六十五日、さらに労災の場合には休日を引きますから三百十三日ですかな。そういう形での計算ですから、あとの日曜日は息を吸っているだけというような部分があるわけなんですね。どう思いますか、この二千六百七十七円、その根拠もさることながら最低保障を大幅に引き上げるべきという点の希望も大変強いと思うんですが、今後の一つの検討に値するのかどうか、その辺を伺いたいと思います。
#333
○政府委員(倉橋義定君) 先生の最低基準を大幅に引き上げるという御趣旨でございますが、先ほど管理課長が申しましたように、前職賃金を基礎にするという保障制度のたてまえになっておりますが、やはり偶然的な理由によりまして前職賃金が低いという場合につきましての最低保障制度でございます。したがいまして私ども、今後におきましてはできる限り雇用保険等の関連を見つつ、その引き上げにつきましては極力努力してまいりたいと思っております。
#334
○前島英三郎君 非常に低い賃金体系の中での受傷ということになりますから、これはパーセンテージでずいぶん大幅というような形ではなく、それですらも正直言って月額五万、六万というようなケースが非常に多いわけですね。それでは正直言ってとても生活はできない。したがって先ほどの生活の中でも二八・七ではなくて四四・一%、約五割の人は生活の窮状を訴えているという数字にぼくは当然結びついていくだろうというふうに思うんです。
 そこで脊損連合会が提起している第二の点は、若年労働者及び高度成長期以前の被災労働者のことを考慮すべきだという点だと思うんです。そこで労災年金額の年齢調整による増額修正を提案しているわけなんですけれども、これについてはどうでございましょうか。もし壁があるとしたら、問題点があるとしたらそれは何なのかも伺いたいと思います。
#335
○政府委員(倉橋義定君) まず御質問の順序が逆になりますが、高度成長期以前の被災労働者の年金額の問題でございますが、これにつきましては一般の民間賃金水準が、高度成長期前とその後最近までにつきましては相当の上昇をしてきております。御承知のように、労災保険制度につきましては一般民間賃金が上がる現行では一〇%でございますが、一〇%以上変動した場合につきましては、年金額も一〇%以上上がるというスライド規定によって対応しているわけでございます。
 御質問の先にありました若年労働者のいわゆる年齢、非常に若年時におきます賃金の低いときに罹災し、それから以後ずうっと年金で生活する場合に、わが国の年功序列式な賃金体系からその恩恵がないままに、若年時の賃金のままに据え置かれるという問題でございます。この問題につきましては各方面からの指摘を受けているわけでございます。このことにつきましては、先ほどから申し上げているように、労災保険審議会の中に労災保険基本問題懇談会というものを設けておりまして、この中でいろいろな議論をしているところでございます。結論的に申しますと、いままでの間その結論を得ていないわけでございますが、いろいろ問題となっておりますのは年功賃金体系がわが国におきまして企業の規模を問わず、また職種を問わず一般的であるのかどうかというような認識の問題、具体的に申しますと、事務系なり一般的な大企業におきましては序列式賃金体系であることは事実でございますが、現業的部門とか中小企業、そういうところについて果たしてそういうのがあるのかどうかというような問題、仮に年功的要素を考慮するというようなことになりましても、それではその年功的要素をどういう方向で把握したらいいのかというようなこと、さらに高齢になりますと、賃金は一般的に低下するという動きを示しているわけでございます。そういう場合、高齢になった場合に、その基礎日額のあれをどうするのか、取り扱いをどうするのかというような問題、さらにはリタイア後、リタイアしますと、一般的には賃金収入がなくなるわけでございますが、リタイア後の基礎日額をどう考えるのかというようなこと、さらには学歴別なり男女別、産業別、そういうようなことで、年功的要素にどういうような影響度合いがいろいろあって、それをどういうふうに勘案して取り上げていくかというようなことで、いろいろ問題を抱えておりまして、まだ審議会、懇談会において結論を得ていない問題でございますが、この問題につきましては、労災保険制度の基本にかかわる問題でございますので、鋭意、懇談会におきまして御検討をいただくことを、われわれとしては願っているわけでございます。
#336
○前島英三郎君 そういう意味では、ただその人間の年功序列の中で、その位置を法の中で解釈されるのではなくて、ひょっとしたら社長になっているかもしれませんし、ひょっとしたら大変な出世をしているというケースもあるんですが、そういう若いうちに一つの労災に遭ったがために、生涯が正直言って台なしになっていると思うんですね。そういう中で、法の冷たさだけのしゃくし定規の中ではかられてしまいますと、大臣が力説する精神的な部分、はかり知れない部分がある。そういう部分を勘案しますと、私はそういう意味では、成長期以前の被災労働者のことも考えたり、あるいは若年労働者の問題も、もっと温かいやはり施策というものが、この労災の中には大切なんじゃないかというような気がするわけです。
 そこで、労災年金を受給できないでいる重度の被災者が大変多く存在しております。旧労災法の打切補償費というのが、千二百日分を受給し、その後何の補償も得られないという人がいるんです。その親会社は二部に上場された、一部に上場された、株はどんどん上がるというようなケースがあるんですが、そういうものを横目で見るにつけましても、こういう旧労災法の中での労災に遭われた人たちにとっては、まことに切ない思いがするわけですけれども、現行の制度と余りにも大きなギャップがあり過ぎるように思うのですけれども、何とかする必要があるのではないかというような気がするのです。会社がつぶれているわけではないのですね。その会社に社会復帰はできない。職場復帰もできない。ただ千二百日分くらいの旧労災の形の中で打ち切られてしまっている。あとは何らそうした温かい援助がない、こういうケースですね、これはやっぱりぼくは何とかすべきだというように思うのですが、その辺はいかがでございますか。
#337
○政府委員(倉橋義定君) 先生御指摘になりました昭和三十年のけい肺等の特別保護法以前に旧法によりまして補償を打ち切られた脊損患者の方、じん肺患者の方につきましては、現行の労災保険法が年金制を導入したこととの関連におきまして、非常に取り扱い上差異があることは事実でございます。しかし、これらの方々につきまして、これをさかのぼって労災保険制度の給付の対象とするということは、なかなか困難な問題があるわけでございますが、私どもいろいろな福祉対策の中におきまして、これらの方々につきましては、できるだけ手厚い対策を講じてきているところでございます。
 その一つといたしましては、入院療養中の方に対しましては、昭和三十七年から入院療養援護金制度というのを設けまして、療養費の援護を行う。さらに四十五年にはその制度を拡充いたしまして、入院諸雑費を支給する。月額三万何がしでございますか、そういうものを支給を行っていく。さらには四十九年には、脊損の患者の方、じん肺患者の方で通院療養中の方に対しまして、通院療養援護金制度を設けまして、療養費の援護とか通院諸雑費、そういうものを支給しているわけです。金額におきましては、通院七日を超える者につきまして月額一万七千五百円、七日以下の方については月額一万五千円と相なっておるわけでございますが、そういうような援護措置も講じてきているわけでございます。
 また、特に脊損患者の方につきましては、その症状の重篤性に配慮いたしまして、体力の減退を防ぐための栄養費、これはもう一日につき若干の金額でございますが、そういうものを支給いたしましてこれらの方々の援護措置をできるだけ手厚いようにしてまいってきておりますが、今後ともこれらの方々につきましての援護措置を一層充実するよう努力してまいりたいと思っております。
#338
○前島英三郎君 本当にそういう意味では重度被災者、特に労災年金を受給できないこういう方々にその福祉的保障も含めまして――正直言って生きているわけですからね、生きていて病院に入っているけれども、なかなか病院も非常に限界がありまして、流され流され、旅から旅へというような哀れな人もいるんです。そういう人たちが戦後の高度経済成長を支えた。一つのこういう労災保険法が適用されない部分の悲しみというもの、そのまたギャップというものを考えていきますと、やはり労働大臣の温かいトーンとは若干かけ離れている部分を非常に感ずるわけなんです。実は私も労災じゃありませんで、そういう意味ではその人たちの気持ちも大変わかるわけですけれども、何ら援護は受けてはいないわけでありますが、本当に寝たきりで病院にいる人たちにとっては、幾らあってもその金は本当に何かあっと言う間に消えてしまう、右に左。現実にその病院でもう看護を受けているわけですから、これはもう何ら精神的な、あるいは生活的なそういう意味でのプラスにはなっていないような気がするんです。大臣、こういうギャップ、ただ労災法という形の中でますますそういう差が広がっていってしまうということは大変悲しい思いがするわけですけれども、心の問題としていかがでございましょうか。
#339
○国務大臣(藤尾正行君) まあ、いままで政府委員が申し述べてまいりましたのは法制という面で、その法制に準拠をいたしまして、この場合はこうでございますとか、この場合はこうでございますとかということを申し上げましたわけでございまして、いま先生御指摘の私どもが配慮すべき問題、これはまた別途、それと別にあるわけでございますから、これは労災がどうであるとかこうであるとかということとは別に、私どもが社会保障というような大きな面から考えてみまして、何をなすべきかということになろうと思います。こういった問題につきましては厚生大臣とも十二分に相談をいたしまして、足りないところを補う措置がありまするならばそれを補ってまいりたい、そのために努力をいたしますということを申し上げます。
#340
○前島英三郎君 よろしくお願いいたします。
 年金の受給者が死亡した後の家族、特に妻への配慮について、因果関係の認定が若干冷た過ぎるのではないかという声があるんですが、その辺はいかがでございましょう。
 調査結果の概要によりますと、一−三級の九〇%の人が日常生活に不便を感じ、その七六・六%の人が介助を受け、さらにその八〇%以上の人は配偶者に介助をゆだねている。また、配偶者の就労状況を見ると、七三%が就労しておらず、その約八〇%は仕事につきたいがつけないという状況。家事、育児あるいは労災被災者の介助等々、とても仕事につけるような状況にないということは理解できると思うんですね。そうした疲れ果てた後、夫である受給者が死亡したといたしますと、労災と因果関係がないとそこで年金は打ち切りとなると、こういうことになりますね。彼女は一体それから後どうして生きていったらよいのであろうかと、こういうことになるんですが、いかがでございますか。
#341
○政府委員(倉橋義定君) 障害年金を受給されております方が、まあ家族の方、奥様がずっと介護されて、その受給者の方がお亡くなりになるといった場合につきまして、その死亡の原因、死亡のもととなりました疾病が当該業務上と因果関係がございますと、その介護された御家族の方につきましては遺族年金が支給されるわけでございます。ただ、その死亡原因が当該障害をもたらした原因とは無関係に、たとえば私死病であったとか私傷病であった、交通事故であったというような場合につきましては、業務との因果関係がないということで、そこで障害年金が失権をする。そうなりますと、いままで介護に当たられた奥様の生活、今後におきます補償が社会保障制度として欠陥が生ずるというような御指摘でございます。この問題につきましては、非常に重要な問題とわれわれ認識しております。しかしながら、単に労災保険制度の中だけでなかなか解決できない問題でございまして、この問題につきましては関係省庁、社会保障制度を担当しております厚生省等と十分連絡をいたしまして、それらの方々に対します保護が一般の方々よりも欠けるというようなことのないような制度のことにつきまして、連絡をしながら、できるだけの手を打つよう検討してまいりたいと思っております。
#342
○前島英三郎君 それは別に厚生省にも関係なく、労働省サイドでその問題の因果関係は認定をし、打ち切るか継続するかということになるわけなんですけれども、労災のいわゆる認定医というのは、いま全国にどのくらいいるものですか。
#343
○説明員(原敏治君) 労災保険の認定に関係しまして、専門の医師の方々の御意見を伺いながらやっておるわけですが、職員としての認定医は現在のところ配置されておりません。実際には、臨床をしておる先生あるいは大学で講義をしながら臨床を持っておられる先生、そういう専門の方々に委嘱をいたしましてお願いをいたしております。それぞれの専門分野について御意見をいただくような形でお願いをしております。現在全国でそれぞれ一府県単位三名ないし四名の局医、指導医の先生にお願いをしている、こうなっております。
#344
○前島英三郎君 特に脊髄損傷というのは大変複雑でして、これは因果関係というのはとても診断でははかり知れない部分があるんです、正直いいまして。これは私が実は一昨年盲腸したのです。盲腸しましたがへそから下が全く麻痺しているものですから、盲腸ということがわからないんですね。痛みがない、排便にしても全然便は出ないということになっておかしいな、しかし食欲はある、ガスも出ない、これは主治医はわからないです。毎日脊損の人は排便をしているわけじゃないんです。これは内臓も麻痺していますから、当然薬で排便をする、大体三日に一回、四日に一回、一日ぐらいずれることもあるんです。こういうことは全くわからないんです、お医者さんでは。結局、盲腸はその間どんどんどんどんふくれていく、排便がないからマッサージをする。さらに下剤を三錠から四錠、四錠から五錠というぐあいにかけていく、これは盲腸には大変危険な状態ですね。私の場合は、偶然車の中で発熱をいたしまして意識不明になってぶっ倒れました。これはあと一時間おくれたら私はその盲腸が破裂しまして恐らく死んだだろう、こう医者は言うのです。事ほどさように、つまり脊髄損傷からくるいろいろな余病というものはほとんどが関連をしているんです。ただ盲腸ということになりますと脊髄損傷とは直接関係がないわけですよ。しかし、盲腸で死んでも原因はどこにあるかというとやっぱり脊髄損傷にあるわけですね。そういう因果関係を考えていきますと、これはただ単なる認定医だけの判断、そしてまた、打ち切らんがための医者の診断というような形では、はかり知れない部分というのもあるのではないかというような気がするんです。それは今後、やはりそういう因果関係を考えていく部分には大変重要な問題だと思いますので、そういう部分も考慮に入れていただきたいことをお願いしたいと思うんですが、いかがですか。
#345
○説明員(原敏治君) 脊損の患者の方々が、療養の過程なりあるいは生活の過程の中でいろいろな身体的な疾病を発症しやすいというようなことにつきましては、先生ただいま具体的な御指摘をちょうだいしたわけですが、私ども脊損の関係の専門医であります労災病院の各地の専門の先生方からは、そのような点についての御指摘を従来から何回も受けておりまして、そういう点について温かい配慮をしながら判断をいたしていく、認定をいたしていく、こういうことでお願いをいたしておるところですが、今後とも御指摘の点については十分注意をして認定の適正を期していきたいと、こういうふうに思います。
#346
○前島英三郎君 そこで、民事損害賠償との調整に関してお伺いをしたいわけですが、支給停止となる期間はどのぐらいになるのか、ケースについてそれぞれ明示されたいと思うんですが、いかがですか。
#347
○政府委員(倉橋義定君) 民事損害賠償がなされた場合の、労災年金の支給調整についての基本的な考え方につきましては、先ほど安恒先生の御質問でお答えしたわけでございますが、そういうような基本的な考え方に立ちまして一つのモデルを設定いたしまして、そのモデルによりますと次のようになるわけでございます。
 その前提要件、モデルの設定といたしましては、現在の労災保険の障害年金受給者の平均年齢が四十三歳であるということから、四十三歳を設定いたします。そういたしますと、現行の裁判例では、労働可能年齢というのは六十七歳までに達する二十四年間ということでございます。したがいまして、これに対応する新ホフマン係数は一五・五ということになります。平均賃金でございますが、これも現在の平均の賃金日額が六千五百円程度になっております。これをモデルに使いまして、仮に賃金が毎年六%程度変動があるという前提で、障害等級に三級の後遺症が残ったという前提でモデルを計算をいたしますと、まず逸失利益の総額でございますが、六千五百円に三百六十五日……。
#348
○前島英三郎君 これですね、このデータをいまおっしゃっているわけですね。それじゃそれで時間がありませんから結構ですが、これはわかりましたが、これに十八年と七年半、まあ三年、四年ならがまんもしようが、七年半もあるいは十八年もというような余りの支給停止の開きがあり過ぎるわけですね。その辺はどうなんですか。その辺どうお感じになっていらっしゃいますか。
#349
○政府委員(倉橋義定君) 先生にお渡ししてありますモデルの表が三つございますが、それぞれ計算方式が違いまして、最終的に基本的な考え方は、三に七年半というのがございまして、先ほど基本的な考え方でとらないで、たとえば中間利息を配慮しないとかというようなことになりますと十八年とか十四年ということでございますが、最終的にわれわれの基本的な考え方で平均的なモデルを設定しますと、その支給停止期間は七年半になるということでございます。
#350
○前島英三郎君 時間がありませんので、いずれにいたしましても、調整の導入によりまして裁判で責任追及をしようとする人が私は減少するだろうと思うんです。結果として、労災の抑止力がなくなるとする批判があると思うんですね。幾ら裁判でがんばってふんだくっても、これはどうせ労災給付の方で削除されるのだから、そんなことはもうよそうやというふうなことに、これはまああきらめに似た部分で出てぐるだろうと思うんです。日本の慰謝料なんというのは、最高で一千万を超えるなんていうケースはないんです。ほとんどが二百万、三百万という状態の中、しかも大変そういう部分では精神的な苦痛にもかかわらず、この慰謝料の部分が非常に低い現実はぼくはいかんともしがたい部分があると思うんですね。そういう形で企業責任も追及し、そして自分たちの子供たちのために、生活の保障のために、自分がもし健康だったらというもろもろのことを考えていきますと、私はこういう形の労災法にすべきではないという気持ちを強く抱いている一人で、反対という立場でございますけれども、そういう意味では労災の抑止力がなくなるというような批判に対して、労働省はどうお考えになるのか最後にお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
#351
○政府委員(倉橋義定君) 今回の調整措置によりまして労災裁判の提起が後退して、そのために労働災害防止のための努力の抑止力になるというような御指摘でございますが、私ども先ほど大臣が申しましたように、事業所といたしましても労働災害のないということを願っているわけでございまして、民事賠償におきまして法案によります調整措置が講じられるというようなことがございましても、災害の防止、そういうものが失われるということはないし、また行政を含めまして労使関係者が、災害の防止の努力については最善の努力を尽くすということが責任ではないかと思うわけでございまして、この点につきましては今後あらゆる努力をいたしまして、災害の絶滅について努力してまいりたいと思っております。
#352
○前島英三郎君 どうもありがとうございました。
#353
○委員長(片山甚市君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#354
○委員長(片山甚市君) 御異議ないと認めます。
 沓脱君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案を議題とし、沓脱君から趣旨説明を聴取いたします。沓脱君。
#355
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題になりました労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につき、その趣旨を御説明いたします。
 本修正案は、第一に、スライド制の内容を抜本的に改善するものであります。
 政府改正案は、保険給付等のスライドの発動要件であります賃金水準の変動幅を現行の一〇%から六%に圧縮しました。しかし今日、低成長下での賃金引き上げは政府、大企業の賃金抑制政策と、これに迎合する労働運動の右翼的潮流が強まる中で、物価の値上げ分さえカバーできておりません。このような状態に対応するためには、スライドの発動要件である賃金変動幅の六%をもっと引き下げ、これを一%とし、わずかの変動でも直ちに正確に反映するように改善するものであります。
 このスライド発動要件は、休業補償給付にも適用します。
 第二は、民事損害賠償との調整規定は、これを全面的に削除することとしました。
 御承知のように、労働災害に係る損害賠償を求める民事訴訟はこの十年間で四倍にもふえております。このことは、今日でも低い保険給付のもとで被災労働者が裁判まで求めて損害を補償させようとしていることを示しています。政府改正案の調整規定の新設を許すことは、これら被災労働者の裁判を求める権利の圧殺にも通ずるにとどまらず、多くの裁判を通じて明らかにされている企業の加害責任を覆い隠し、労働者の安全を無視した労働強化と合理化をさらに進行さすことは明らかです。
 総評弁護団や全港湾など、多くの労働組合、労災被害者の団体が要求しておりますように、この調整規定の削除を強く提案いたします。
 第三は、メリット制調整幅を現行どおり据え置くことといたしました。メリット制の調整幅の拡大は、元請大企業の保険料負担を軽減する一方で、下請中小企業には一層の負担増とならざるを得ません。また、メリット幅の拡大は労災隠しを強めることにつながり、認められません。
 第四は、中小零細企業の保険料負担を軽減するために、一人親方等第二種特別加入者も含め、保険料率を本年三月三十一日現在のまま据え置くことといたしました。
 第五は、本修正案の実施時期についてであります。政府改正案が来年十一月から実施することとしております障害補償年金差額一時金及び前払い一時金を、本年十一月一日より施行することとします。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#356
○委員長(片山甚市君) ただいまの沓脱君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。藤尾労働大臣。
#357
○国務大臣(藤尾正行君) ただいま沓脱タケ子君から提出をされました修正案につきましては、政府といたしまして反対でございます。
#358
○委員長(片山甚市君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もなければ、これより労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 まず、沓脱君提出の修正案を問題に供します。
 沓脱君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#359
○委員長(片山甚市君) 少数と認めます。よって、沓脱君提出の修正案は否決されました。
 それでは、次に原案全部を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#360
○委員長(片山甚市君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、高杉君から発言を求められておりますので、これを許します。高杉君。
#361
○高杉廸忠君 私はただいま可決されました労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新政クラブ共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
   労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項に関し、所要の措置を講ずべきである。
 一、労働災害の絶滅を期し、災害の予防及び職業病の発生防止のために、なお一層の努力をすること。
 二、労災保険給付については、給付水準の向上、賃金の実態の保険給付への反映等の基本問題の検討を引き続き進め、その改善に努めること。
 三、民事損害賠償を受けた場合の労災保険給付の支給調整の実施基準を定めるに当たつては、被災労働者及びその遺族の実情にも配慮し、年金たる保険給付の特質をも勘案すること。この場合において、労災保険審議会の意見を十分尊重すること。
 四、傷病補償年金受給者に対する特別支給一時金の給付について、その実現を期すること。
 五、労災保険制度に年金給付が導入される以前に打切補償費を受給し、なお、療養を継続している者等に対する援護措置の充実に努めること。
 六、労働災害の防止をはじめ労働諸施策の遂行上必要な職員の増員に努めること。
  右決議する。
 以上でございます。何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#362
○委員長(片山甚市君) ただいま高杉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#363
○委員長(片山甚市君) 全会一致と認めます。よって、高杉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、藤尾労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤尾労働大臣。
#364
○国務大臣(藤尾正行君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、これが実現に努力をいたす所存でございます。
#365
○委員長(片山甚市君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#366
○委員長(片山甚市君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後七時六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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