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1949/02/14 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 予算委員会 第4号
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1949/02/14 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 予算委員会 第4号

#1
第007回国会 予算委員会 第4号
  公聽会
  ―――――――――――――
昭和二十五年二月十四日(火曜日)
   午前十時三十九分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
二月十三日委員尾崎行輝君、西川甚五
郎君、西川昌夫君、中川幸平君、岡田
喜久治君、田口政五郎君、小杉繁安
君、櫻内辰郎君、高橋啓君、仲子隆
君、油井賢太郎君、池田恒雄君及び岩
間正男君辞任につき、その補欠として
堀末治君、淺岡信夫君、小林米三郎
君、岡崎真一君、池田宇右衞門君、石
坂豊一君、團伊能君、伊東隆治君、小
林勝馬君、鈴木順一君、前之園喜一郎
君、川上嘉君及び藤田芳雄君を議長に
おいて指名した。
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○昭和二十五年度一般会計予算(内閣
 送付)
○昭和二十五年度特別会計予算(内閣
 送付)
○昭和二十五年度政府関係機関予算
 (内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○理事(岩男仁藏君) では只今から昭和二十五年度総予算について公聽会を開会いたします。
 先ず公述人に対して御挨拶を申上げます。本日は公私共お多忙中委員会のために御出席頂きましたことを厚くお礼を申上げます。では武蔵大学経済学部長鈴木武雄さんから一つお願いいたします。
 その前にちよつと申上げますが、公述人の公述が終り次第、公述人に対して質疑を許します。この質疑は、御相談ですが、一公述人に対する質疑時間は約十分間くらいにしたらどうかと思いますが……。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○理事(岩男仁藏君) ではそういうことにいたします。
#4
○公述人(鈴木武雄君) 只今御紹介頂きました武蔵大学の経済学部におります鈴木でございます。
 昭和二十五年度の予算案の特色といたしましては、大蔵大臣の財政演説及び予算説明書によりますと、既定の経済安定策を更に強化して、その基盤の上に我が国の経済を前年度に比して一層積極的に再建、復興させることにある。こういうふうに言われております。つまり一言にして申しますならば、二十四年度のドツジ予算の延長と、シヤウプ勧告の具体化を骨組といたしまして、その上に再建復興予算の性格を若干加味している。それが二十五年度予算案の特色であるということができるかと思うのであります。
 そこで予算説明書に挙げられました数字を大体捨い上げて見ますと、ドツジ予算的な性格を表わしているものといたしましては、財政規模が縮減されているということであります。一般会計歳出におきまして、七百九十六億円の削減、一般特別各会計の歳出純計予算の減が二千三百九十八億円、歳出純計の国民所得推計額に対する比率五六%、これは前年度が六三%に当りますから、これも減つている。政府機関支出の、支出予算の削減、減少が四千九十九億円というふうに、財政規模が縮減されているということが一つであろうと思います。
 第二には、価格補給金の削減、八百九十二億円、前年度当初予算に比べますと、千百二十二億円の減という点。それから債務償還費、これは千二百七十六億円に上りまして、前年度に比べますと減少しておりますが、尚相当巨額を計上しているという点であります。それから剩余金積立金等が殖えて相当巨額に上つている。いわゆる超均衡予算の建前が依然としてとられている。こういうような諸点が、ドツジ予算的性格が尚二十五年度予算に現れているところということが言えると思います。
 それからシヤウプ勧告の具体化といたしましては、減税七百十三億円、それから地方財政平衡交付金制度の創設、それから地方補給金の整理などによる国庫負担の地方財源の充実というような点を挙げることができるかと思います。
 それから復興予算的な性格でありますが、建設的支出、つまり財政投資の増額が八百八十億円、そのうち、公共事業費の増額が三百六十五億円、見返資金による公共投資及び私企業投資の増額が二百八十億円、合せまして八百八十億円の財政投資の増額、その外の勘定からいたして見ますと、二千百六十四億円程が建設的支出の増額ということになつております。
 それからシヤウプ勧告に示されております以上に減税を行なつている。勧告の減税額四百五十六億円に対して、予算案におきましては七百十三億円、これを二十四年度予算額の現行税法による額に比べて見ますというと、九百十三億円の減額になる、こういうふうに予算説明書から抜き出して言うことができると思います。
 従いまして大雑把に計算いたしますというと、価格補給金の減額と、それから減税額がほぼ見合いまして、債務償還費が前年度よりも減少しておりますが、その債務償還費の減少がほぼ建設的支出の増加額と見合つているということが言えると思うのであります。即ちシヤウプ勧告も、大きな意町におきましてはドツジ・ラインの一環である、コウ考えますならば、二十五年度予算案における復興予算的な性格は、債務償還費が幾らか減少した限りにおきまして、即ちドツジ予算的性格が若干修正せられた限りにおきまして、漸く頭を出すことができたのだと、こう言うことができると思うのであります。で二十五年度予算案の積極的な特色として強調されておりますのが、復興予算的な政策、建設的な支出が前年度よりも増加しているというところにあろうかと思うのでありますが、今申しましたように、これもドツジ予算的な性格が若干修正せられた、緩和せられた限りにおいて可能になつている。頭を出していると、こういうことが言えると思うのであります。それで昨年度の予算は大体ドツジ・ラインによる安定化の予算であつた、こう言われております。そうして二十五年度の予算は復興のためのいわば自立化予算である。安定化予算から自立化予算への移り変りが二十五年度予算の特色である、こういうふうに言われておりますけれども、二十五年度予算案は、全体としてやはり非常にドツジ予算的、安定化予算的な性格が強いのでありまして、それが余りに強いために、復興予算的な性格が却つて目立つているとすら言うことができるのではないかと思うのであります。その復興予算的な性格すら、今申しましたように、ドツジ予算的な性格が或る程度修正せられている、緩和せられている限りにおいて漸く可能になつているのだ、こういうことが言えるのではないかと思います。
 で、二十四年度の予算につきまして、少しく反省して見る必要があるのではないかと私共考えるのでありますが、普通安定化予算と言われております二十四年度予算というもの、これは必ずしも、去年の三晴七日にドツジ氏が安定計画についての構想を発表せられましたが、あのドツジ声明に現われた限りにおいての安定化計画というものが一〇〇%に現われた予算であるということは言えないのではないかと思うのであります。大きな線におきまして、大体においてドツジ声明の精神を具体化しているということは言えますけれども、併し若干の点におきましては、可なり復興予算的な性格がやはり二十四年度の予算の中にも割込んでおつたということが言えると思うのであります。特に価格差補給金というものが、ドツジ声明の精神から申しますならば、竹馬の片脚ということで、当然これは大巾に削減せらるべき運命にあつたのでありますが、二十四年度当初予算におきましては、この価格差補給金というものが殆んど現状維持的に計上せられたのであります。そうして單一為替レートというものが実施せられたのでありますが、輸出レートにつきましては、嚴格に單一為替レートを適用するということになりましたけれども、輸入物資につきましては、尚価格調整措置を講ずる、勿論その財源は、今までのように援助物資の見返資金を利用するということは許されなくなりまして、国民の税金によつて負担しなければならないということになりましたけれども、尚この輸入物資につきましては価格調整措置を残して行く、言い換えますならば、輸入物資につきましては、事実上の複数レートを残して行く、こういう措置が二十四年度当初予算の中には織込まれているわけであります。こういう、いわば不徹底な姿に二十四年度予算案がなつたということは、デイスインフレ政策というものが、安定化政策の眼目になつたということと深い関連があると私は考えるのであります。デイス・インフレ政策ということは、御承知のようにインフレは安定させるがデフレには持つて行かない、こういう意味であろうと思いますが、そうして日本の経済の現状から申しまして、私もデフレによつてインフレを安定させるということは、これは非常に大きな困難を伴うものであろうと思いますので、その限りにおきましては、デイス・インフレ政策というものに決して反対するものではないのでありますけれども、そのデイス・インフレ政策というものをとらざるを得なかつたことからいたしまして、早急に価格差補給金というようなものを外してしまうということは、実際問題としてむずかしかつたからであろう、こう考えられるのであります。デイス・インフレ政策というのを、これを為替レートの水準の方から捉えて見ますと、大体そのときの円の価値の水準に為替レートを決める、その水準で円の価値を安定して行くということであります。別の言葉で申しまするならば、そのときの物価水準というものを大体維持して行く、そのときの物価水準というものを安定の基準にして行く、こういうことになろうかと思うのであります。で三百六十円というレートが決まつたのでありますが、この三百六十円というレートは、大体におきまして当時の公定価格水準と、それから闇価格水準と、アメリカの物価水準とを比較いたしましたほぼその中間のあたりに決められたレートであるということが言えると思うのでありますが、そういう水準にレートが決まりまして、そうしてこの三百六十円というレートを、具体的な安定水準としてこれを堅持して行く、これが安定政策の中心になつたわけでありますが、そういたしますと、私考えますのに、そのときの日本の物価水準に大きな影響を與えていたものと申しますか、そのときの日本の物価水準の支柱となつておりました価格差補給金というもの、これはやはり維持して行かなければ三百六十円レートを維持して行くことは非常にむずかしい、そういうエレメントではなかつたか、こう思われるのであります。それからそのときの公定価格水準というものに、もう一つ大きな影響を與えておりましたのは、今までの低物価政策。これは公定価格政策の精神であつたと思うのでありますが、その低物価政策の大きな内容といたしまして、企業の固定資産の再評価というものをずつと認めないで、再評価させないで来たわけであります。つまり再評価することによりまして減価償却費が非常に嵩んで来るということになりますと、公定価格というものは、どうしてもそれに応じて引上げて行かなければなりません。そこで固定資産の再評価を抑えて、少な過ぎる減価償却を矯正して来ることになりまして、原価の低い、生産費の低い、従つて低い公定価格というものを維持して行く、そういう政策、これも三百六十円レートが当時の物価水準というものを大体の基準として決められました以上は、この政策もやはり続けて行かなければならなかつたのではないか、こういうふうに思われるのであります。ところが昭和二十四年度当初予算が決定になりまして間もなく、価格調整費は削減するのだ、シヤウプ勧告が出まして固定資産の再評価をやらせて、そうして適正な減価償却をやらせるのだ、こういうことになつて参りました、インフレが安定いたしまして経済が正常化して行きます場合には、補給金というようなものは当然これはない方がよろしいのでありますし、それから固定資産の再評価、それに伴う適正な減価償却ということも、いわゆる資本の食い潰しを防いで行きます上におきまして必要なことであることは申すまでもないのでありますが、そういうことが最初から十分に予定せられることなくして、むしろそういうものを維持して行かなければならないような具体的安定基準を定めたというところに、私は非常に大きな矛盾があつたのではないかというふうに考えておるのであります。そうして果して昨年の暮になりまして、二十年度予算の補正ということが、価格調整費の削減ということを中心にいたしまして行われたのでありますが、そういう点を見て参りますというと、二十四年度予算というのは、初めから本当の意味において安定化予算ではなかつたのではないか、年度の途中において最初の政策を変更する、予算の補正をしなければならないというようなこと自体が、すでに二十四年度予算というものが安定化予算とは言い得ない性質のものであつたのではないか、政策が非常にぐらついていたのではないか、こういうふうに考えられるのであります。そうしてそういうことがやはり経済界に非常にいろいろな迷惑と申しますか、影響と申しますか、そういうことになりまして、企業といたしましても、落着いた長期の計画を立てるということが非常に困難な状態に追込まれた、こういうことが言えると思うのであります。
 それからデイス・インフレ政策ということから捉まえられますもう一つの面は、金融の面でありますが、二十四年度の予算は、御承知のように非常に巨額の債務償還費というものを計上いたしまして、超均衡予算によつて余計に税金をとります。そうしてこれを債務償還に充当する、この限りにおきまして財政の面においては非常なデフレ的な要因があつたわけでありますが、デイス・インフレという建前からいたしまして、この債務償還金が、大体国債、復金債等を保有する金融機関に流れて行きます。その金融機関から民間企業に対して投資、融資というような形で、もう一度民間に再放出させる、こういうことによつて一旦收縮した通貨は再び民間に出る。そこで通貨量に増減がない、デフレではなくデイス・インフレになる。こういう構想であつたのでありますが、成る程二十四年の実績を顧みてみますと、通貨量におきましては殆ど増減はなかつた。その点におきましては、金融面におけるデイス・インフレ政策というものは一応効を奏したということが言えるのでありますが、これは極めて皮相的な見方に過ぎないのでありまして、御承知のように長期設備資金というものが、二十四年度におきましては予想した程円滑には供給ができなかつたのであります。そうしてこのことが経済界にやはり非常に大きな影響を及ぼしたということは言えると思います。例えば企業が合理化を要請せられておるのでありますが、そうしてこれは確かに必要なことでありますが、その合理化のためには、設備の改良、改善、近代化等のためのいわゆる長期的な合理化資金というものがどうしても必要なんでありますが、この供給が円滑に行かなかつた。そのために企業の合理化ということが本当の意味での合理化という方向に進みませんで、單に当面の利潤を保護する、人員を整理するとか、賃金を切下げるとか、遅欠配をするとか、下請加工費を切下げるとか、そういうような單に当面の経理面において生産費を切下げる、そうして辻褄を合せる。そういう消極的なために、積極的に生産力が増加する、労働の生産性が増加する、そういう方向への合理化が、少数の巨大企業を除きましては殆んど行われなかつたというような結果を招いたと言えると思うのでありますが、更に又昨年の暮の十二月十四日に証券市場に非常に大きな暴落が起りましたが、これも長期設備資金の供給ということにおいて大きな欠陷があつたことの現われであつてと、こういうことが言えるのではないかと思うのであります。なぜならば、それまでの長期設備資金というのは、大体金融機関の方は、滯貨金融とか、そういう單に流通的な資金の面におきまして再放出ということが行われたのでありまして、長期設備資金を余り熱心には出さなかつた。そこで長期設備資金の供給源というのは、主として大衆の懷ろに依存する、そういうことになつたのであります。つまり大衆の株を買うというところに長期設備資金の供給の源が求められた。ところがこれはまだインフレの余燼が残つておりました昨年の上半期頃までは、一応効を奏することができまして、いわゆる証券景気というものが見られたのでありますけれども、やがて行詰つてしまつたのでありますが、行詰つてしまうのは実は当然のことでありまして、ドツジ・ラインによる資本の蓄積方式というのは、先程も申しましたように、超均衡予算によりまして税金を余計に国民からとり、そうしてこれを金融機関に債務償還ということで流して、そうして金融機関の氾濫による投資、融資ということで資本の形成をやつて行こう、こういうところにその特色があるということが言えるのでありますが、そうだといたしますというと、これは国民大衆に対しましては、強制節約によつて資本を蓄積する、こういう方向であります。にも拘わらず証券市場を通じまして、国民大衆の株を買うということに長期資金の供給の源を求めるというところに、すでに食い違つた大きな矛盾があつた、こういうことが言えるのではないかと思うのであります。
 そこで二十五年度の予算を立てるに当りまして、二十四年のこれまでの経験からいたしまして、十分考えなければならないのは、この長期設備資金の供給方法について確固たる対策を立てる、こういうことでなければならないと思うのでありますが、二十五年度予算案におきましては、成る程、建設的支出が、先程申しましたように、昨年度よりも相当額殖えてはおりますけれども、併しこれは二十五年度予算に計上されております依然たるドツジ予算的性格の特色である債務償還費というものとほぼ見合うのでありまして、未だ積極的にこの長期設備資金供給の方策が立てられているということは、言いにくいのではないかというふうに考えられるのであります。大蔵大臣の財政演説を拜見いたしましても、この非常に重要な金融政策ということにつきましては、僅かに興業銀行等の増資を、見返資金によつて引受けさせる、そういうことによつて銀行債務の発行限度を拡張するというような点が目新らしいだけでありまして、その外の点におきましては、昨年度と同じような金融政策を繰返すようにしか受取れないのでありまして、この点に私共は非常な不安を感ずるわけでありまして、金融政策、特に長期設備資金の供給方策、もう少し大雑把な言葉で申しますならば、復興段階に入つたと言うならば、資本蓄積の方式につきまして、もつと昨年度の経験から反省された新らしい適切な方策が立てらるべきではなかつたか、こういうふうに考えられるのであります。私共といたしましては、やはりこれは財政投資、国家資本というものの活用、これに求めるより外、デフレ的な要因の緩和ということはなかなかむずかしいのではないか。私的金融機関はペイイング・ベイシス、即ち採算基礎というものを重んじて貸出をするから、最も合理的最も理想的な資金の再配分が行われ、そして最も合理的な資本の蓄積が行われて行くと、こういう考え方につきましては、私共は非常に大きな疑問を持つのでありまして、仮にそういうことになるといたしましても、それには非常に長期の時間が必要であります。イン・ザ・ロング・ランにおいてそういうことになるということは或いは言えるかも知れませんけれども、併しこの二十五年度という矩期の目前の問題といたしましては、こういう方法ではなかなかむずかしいのではないか、こういうふうに考えられるのであります。やはりもつと国家資本、財政投資という点を織込む必要が今度の予算案においてあつたのではないか、こういうふうに考えられるのであります。その外まだ申上げたい点もありますけれども、時間の関係がありますから、その辺で打切りまして、後は御質問がございましたら、私の考えておるところを申上げたいと思います。
#5
○理事(岩男仁藏君) 御質問ございませんか。別にないようですから、それでは先生よろしゆうございます。
 次に東京新聞論説委員の福良先生にお願いします。
#6
○公述人(福良俊之君) 東京新聞の福良であります。
 二十五年度の予算につきましては、只今鈴木先生から大体その性格、内容について詳細な御批判があつたように思われますので、私は簡單に二十五年度の予算のうち、最も考慮さるべき問題について申上げたいと思います。それは鈴木先生のお話とも重複いたすかと思いますけれども、第一に指摘したいことは、債務償還費が多過ぎるという点であります。第二の点は、財政の金融面に対する比重が大きくなつておる。従つてこの運用によろしきを得なければ影響するところが大きいという、この二点であります。
 二十五年度の債務償還費は、二十四年度の債務償還費に比較いたしまして、約三百億円の減少となつておりますけれども、一般会計におきまして七百数十億円、見返資金特別会計におきまして五百億円を計上いたしております。この一般会計の七百億円の債務償還費は、その歳出総額に対しまして、凡そ一五%を占める巨額なものであります。このような巨額の債務償還を二十五年度において実施する結果、どのような影響が起きて来るかということを少し考えて見なければならんと思うのであります。
 申上げるまでもなく二十四年度の予算は、先程も御指摘がありましたように、超均衡予算とも称すべきものだと思われるのであります。この予算は、中央財政においてこのような均衡予算を編成するために、どのような影響が起きたかと申上げますならば、第一には、地方財政に対してしわ寄せが行われたということであります。地方財政の需要をできるだけ圧縮することによつて、中央財政の均衡が実現されたのであります。第二は、もう一つのしわを金融に寄せたということであります。二十四年度の予算を施行いたしましてから、どのような影響が経済界に現われたかは、皆さんすでに篤と御承知の通りであると思うのであります。この予算の実施によりまして、国内的に需要が相当大巾な減少を来したのでありますが、この需要の減退に対して生産がどうであつたかということを見てみまするに、総司令部の統計によりましても、昨年末には戰前の水準に戻つておるのであります。
 このように、超均衡予算の施行にも拘わらず、生産が低下しないで、むしろ上昇を辿つたということは、どうして行われたかというならば、先程鈴木先生の御指摘の中にもあつたかと思いますけれども、労働の生産性を高める必要から、各企業が合理化を実現するという建前の下に、むしろ生産を増加して来たということであると思うのであります。この増加された生産物が、先程申しましたように、国内的な需要の減退という問題にぶつつかつて、結局は滯貨の増大という形になつたのでありますが、この滯貨の増大を可能ならしめたものは何であるかというならば、これは金融機関の貸出によるものと申すことができると思うのであります。昨年中の金融機関の預金の造成と貸出の造成とを比較いたして見まするならば、直ちにこの間の事情がはつきりするのでありまして、大体預金と貸出とのバランスは八〇%から大銀行の或るものに至つては九〇%にも達する程の比率を示しておるのであります。このような金融機関の預金と貸出とのアンバランスが決して好ましいものでないことは申上げるまでもないと思うのであります。二十四年度におきましては、今申上げましたように、超均衡予算の施行にも拘わらず、生産は減退せず、これの補いはすべて金融機関の貸出によつて行われたのでありますが、果して二十五年度において、金融機関にそれだけの余力があるかということを考えて見ますと、二十四年度は、当初予想いたしましたよりも預金の造成が多かつたために、その一部はインフレ期において退蔵されていた資金が安定を見越して金融機関の手許に還流した等の事情もあると思われるのでありますが、予想以上の好調を示したのであります。併し二十五年度において、金融機関の預金が二十四年度と同様の好調を迫るとは想像されないのであります。そういたしますと、二十五年度において最も重大な問題は、現在直面しておる金融機関の預金と貸出とのアンバランスをどうやつて調整するかの問題、更に先程鈴木先生が御指摘になりましたように、長期建設資金をどのようにして賄つて行くかという問題であろうと思うのであります。
 このように考えて参りますと、二十四年度において債務の償還に充てられた千五百億円のうち、大部分は金融機関に還流し、これが間接的に投資されたのでありますけれども、二十五年度に計上されておりまする千二百億円の債務償還のうちには、市中手持の国債は僅かに八百余億円に過ぎないのでありまして、その他の金額は、日本銀行からの借入金その他に振向けられることを予想されるのであります。この結果は再び投資面に現われるというよりも、むしろ日銀券の縮小の形になつて現われて来るのを予想しなければならんと思うのであります。かように考えて見ますと、二十四年度における債務償還は、インフレを或る程度收束し、日本の経済を安定化せしめるために必要であつたかも知れないけれども、二十五年度の債務償還費、殊に一般会計において歳出総額の一五%にも達するような債務の償還は、相当考慮を要するのではないかと考えるのであります。
 第二の点でありますけれども、二十四年度におきまして金詰りの声が可なり嚴しかつたことは皆さん御承知のことと思いますが、その一つの原因として、見返資金の活用が、一般の期待に反したという事実を見逃すことができないのであります。二十五年度におきまする見返資金の総額は、二十四年度よりは多少減少しておりますけれども、千億円を超える資金というものが政府の管掌下に置かれるのであります。もう一つ見逃すことのできないものに預金部資金があります。二十四年度におきまする預金部資金の増加が、どの程度に達しまするかまだ明確な数字を持つておりませんけれども、大体八百億円程度に達するのではないかと思います。二十五年度におきましては、この増加額は凡そ一千億円と予想されるのでありますが、政府の主管いたしまする会計におきまして、預金部資金において一千億円、又見返資金特別会計におきまして一千余億円という巨大な資金がある。この二つの資金をどういうふうに活用するかということは、先程申しました市中金融機関の手許が現実にアンバランスの状態にあるということと考え併せまして、相当の影響力があるように考え得られるのであります。すでに見返資金の運用につきましては、大体の方針も決定を見ておるようでありますが、金融につきまして最も大切なことは、時期を誤らずに必要な資金を供給することであります。従つて預金部資金の運用、見返資金の活用、それぞれに或る種の制約があることは私共も承知しておりますけれども、この運用については、金融の調整的な役割と、長期資金の不足を補うために十分の効果を発揮し得るような運用を期待してやまないのであります。
 最後に附け加えなければならないことが一つあります。それは先程も申上げましたように、二十四年度におきましては中央財政の均衡化を実現するために、そのしわを地方財政に寄せられ、金融機関に寄せられたのであります。地方財政につきましては、二十五年度におきまして平衡交付金制度の実施、地方税改革の実現によりまして、相当緩和されるのでありますが、金融方面におきまするしわ寄せは先程申上げましたように、二十五年度においては、殆んどこの面ではしわを寄せることは困難である。それならば二十四年度において金融機関にしわが寄せられて、その結果がどうなつたかということを考えてみますと、大産業の方面におきましては、その製品並びに経営という面から、金融機関の対象として、ともかくも滯貨を製造しつつも金融機関からの借入を受けることができたのでありますけれども、中小企業、この範囲は極めて曖昧でありまして、漠然としておりますが、中小企業につきましては、資金の関係から金融機関から締出され、金融機関に財政から寄せられたしわの或るものは、中小企業の面に再びしわ寄せするという形になつておる事実であります。その結果といたしまして、二十四年度におきましては、中小企業における倒産、規模の縮小その他各種の非常に気の毒な事態を見ておるのであります。この中小企業が、日本経済の一つの特色的な存在であるということは改めて御説明するまでもないことなんでありまして、又中小企業関融というものが、現在の市中金融機関の対象になる得るものであるかどうか、これらについては、いろいろ意見があることと思われますけれども、少くとも二十五年度におきましては、この中小企業の金融の問題についても、相当の関心を拂う必要があるように考えられるのであります。甚だ簡單でありますけれども私の公述をこれで終りたいと思います。
#7
○理事(岩男仁藏君) 御質問ありませんか。御質疑が別にないようですから……、実は午前中の予定はお二人であつたのであります。少し時間が余りましたが、これで休憩いたします。午後は一時から開会いたします。
   午前十一時三十二分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時十九分開会
#8
○理事(岩男仁藏君) それでは午前に引続き、これより公聽会を開会いたします。
 先ず公述人に対して御挨拶を申上げます。本日は公私御多忙中、本委員会のために御出席を頂きましたことを厚く厚くお礼を申上げます。公述の時間は約三十分の予定にお願いいたしたいのであります。午前中にも申上げましたが、一人の公述人に対して質問の時間は約十分間にお願いしたい。どうぞ日教組の岡三郎さん、お願いいたします。
#9
○公述人(岡三郎君) 只今委員長の指名によりまして公述人としてこれから所見を述べる次第でございますが、初めに私の身分を明確にして置きたいと思います。私日本教職員組合の副委員長の岡でございますが、新らしい全官公の議長を勤めておる次第でございます。一応身分を明らかにして公述に移ります。この昭和二十五年度の予算全般に関しまして、先に衆議院におきまして公聽会が催されました。尚これから以後、衆参両院におきまして愼重なる検討が八千万国民の注視のうちに行われんとしておるのでありますが、この席上私は率直にこの予算案に対して意見を申述べ、諸賢の御参考に供する次第でございます。
 先ず概括的に申しまして、政府は昭和二十四年度均衡予算の実施によるデイス・インフレ政策は、通貨の縮小、実効価格の停滯、生計費、賃関の保合等に見るごとく成功を收めておると、こう宣伝しておるものでございますが、併しながら我々働く者の立場から申しますと、現実は、労働者、農民の生活は窮乏化しておるということでございます。次に中小企業は沒落に瀕しておる。それから失業者は刻々と増大しておりますし、潜在的な失業者が今や顯在化しつつあると、こういう状態でございます。
 それから滯貨が激増する。企業整備、人員の首切り、こういうものが相次いで起つておるのでありまして、果して真実に日本の経済が安定へ指向しておると言えるでありましようか。私はこの現像は、いろいろな問題があるといたしましても、購買力の低下から来る相対的生産過剩によると考えておるものでございます。なぜならば昭和二十四年度予算は、その歳入が、七〇%を大衆よりの租税收入によりながら、歳出は、資本の蓄積擁護に向けられたため、大企業は立直りましたが、大衆の購買力が激減いたしまして、生産、消費の不均衡を更に拡大するに至つたのであります。この識本の蓄積に使用された額は、大体我々が計算いたしまして、最小限に見て千三百億程のところでございますが、これが金融機関に流れ込んで、独占金融機関を通して集中生産に振向けられて来たのでございます。更に独占価格による支配に伴つて、中小企業が圧迫されて参りました。而も大衆の購買力の不足は、分配国民所得においては、勤労大衆の所得が著しく減じているに拘わらず、勤労者の租税負担は極めて過大に徴收されております。このために働く者の購買力が極端に不足しておるという現実が、大衆のこの購買力の不足を示すために、昭和二十四年度預金部資金、こういつたもの、それから大衆より吸い上げた郵便貯金、額にいたしまして二百億程度ですが、又対日見返資金も大体六百三十五億、こういう金が現在遊んでおります。これらのことは、大衆よりの吸い上げが大衆に還つて行かず、意識的、政治的に大資本に集中されているので、賃金の遅欠配、生算費の切詰め等によつて、生活に喘ぐ大衆の購買力を更に減退させております。このための過少消費が即ち相対的生産過剩であるのであります。このことが金詰りと言われておるのであつて、輸出不振による九百億に上る滯貨の洪水と、五百億乃至六百億と計算されている売掛金の増大、それから昭和二十四年一月より九月までに一万の事務所の企業整理がなされまして、それに伴つて人員七十万に及ぶ馘首が行われたのであります。次に潜在失業者を含め、昭和二十四年七、八月で五百七十四万乃至九百八十六万とされる失業者の激増等の現象となつて現われているのであります。而も二十五年度予算案は、これらの財政政策の継承で、その実施の結果は、先に述ベたごとく、恐慌現象を更に悪化させるのではないか、こういう懸念が今や潜在的に非常にあるし、蜷川長官の中小企業の問題についても、あれが本当に働く立場においては真実であるということを我々は叫ばずにはおられません。それ故にこの昭和二十五年度の予算に対しましては、諸賢が根本的なる本当の日本の再建復興経済のために御検討を煩したい、こう思うものでございます。併しながら時間も非常に短いものでございますので、私は日教組の副委員長として、又官公労の議長の立場から、教育財政の問題と、官公吏の給與の問題についてのみこれから申上げたいと、こう思うのでございます。
 先ず第一に、教育予算について申しますと、シヤウプ勧告に基くところの一般平衡交付金と、標準教育費の関係でございます。次に第二は、六・三建築費の問題であります。
 第一の一般平衡交付金につきましては、すでに諸賢の御承知の通り、シヤウプ勧告は地方財政確立のため、明年度において地方自治体の独立税收を四百億増加すると共に、国庫から一本立の平衡交付金を支出する制度を確立しました。で二十五年度は御存じのごとく千五十億の予算が今立てられておるわけでございます。この費用が大体地方公共団体の教育、警察、道路、衛生、厚生、その他各種のものに使われて行く。この点につきましては、今朝程の朝日新聞の論説におきまして、種々義務教育費の確保をせよという論説が載つておりまして、あの点私誠に同感の意を表する次第でございますが、以下簡單の述べますというと、これらの諸経費の中で、口に教育の尊重を叫ばれてかく現在まで来ておりますけれども、自治体の中に入つておりますというと、教育費程頭から削られる予算はございません。これは中央官庁におきましても、文部省予算というものが、文教の復興、いわゆる次代を担う生徒のため、或いは次代を担う可愛い子供のためと、こう口には唱えられておつても、一旦この白堊の殿堂に入つてしまえば、又中央の官庁におきましては、この教育費程むごたらしく、あつさりと削られておるものはございません。併しながら中央において削られた教育費も、地方の自治体に行つてはこれを無視するわけには行きません。そのために地方の自治体の占めるこの率は九百二十一億、大体全総額の二五%に達しておると、こう朝日の論説は書いております。これは私達の統計とほぼ一致しております。この重要なる教育費の裏付をなしておつたのが、現在までの義務教育費国庫負担法でございます。これがいよいよ廃止されて、半額負担がなくなる、こういう状態、それから平衡交付金一本でこれを賄つて行く、こういう方針でございます。一見、この交付金の問題につきましては誠に妥当であるという考えも持ちますけれども、先程申しましたように、これが如何に義務教育に影響するかを我々は哀心から心配しておるのでございます。国が必要と認める教育の基準は、やはり現在の段階におきましては、財政的、法律的に裏付のある、こういう立場をとらないと、教育費として一応見込んだものが、政治力のために、政治力の強い土木とか、警察とか、厚生、衞生等の方面に流用されて、地方財政の困窮に名を藉りて、逆に義務教育費の実質的な低下がもたらされる、この点を心配しておるのでございます。又一方、各府県の財政にアンバランスがございますので、府県各市町村ごとにでこぼこが生じて、憲法の示す教育の機会均等の均等がなされなくなるという心配がございます。で、この点に関しまして、日本教職員組合といたしましては、塩原大会により、このシヤウプ勧告の研究に基きまして、是非共この際、一定額、標準教育費の設定をせねばならんという、この点を決定いたしまして力を注いで参りました。これが文部省並びに教育刷新委員会の同調を得まして、尚地方の教育委員会並びに心ある市長村長等の重大なる関心を呼び起して参つたのでございます。これに対しまして、地方自治庁側では、平衡交付金法案を提出するに当つて、義務教育費の特別法による裏付を以て、地方自治に対する中央の束縛と、こういうふうに見て両者が対立して現在に至つております。この二月十一日に、閣議におきまして地方自治庁提出の地方財政平衡交付金法案と、文部省提出の義務教育費に関する標準教育費法案が、大体同時に形だけは認められることになつておりますが、この内容としての額の問題が残つておるのでございます。以上、政府は一応義務教育費の最低確保の線に出ましたことは、我々教職員組合としても、これは一つの進歩であり、現実をよく考えておると考えておりますが、ただその内容について、明確に次のことを私達は申さなければなりません。と申しますのは、現在閣議了解の線にある文部省案と申しますのは、次のごとき問題を有しておるのでございます。つまり一人当りの單価が非常に低い。当初予定しておりましたのは四千五百円程度、一ケ年について單価の最低として確保されなければならんじやないかと、こう我々も考えており、当局も考えておつたものですが、これが逐次交渉の結果、三千八百円より更に三千五百円、最近に至りましては三千二百円となつて、全く形だけのものとなり、この結果、平衡交付金に伴う寄附金の廃止とか、そういつた問題は再び解消されずに残るような状態がここへ来るんではないか。又PTA負担等の形は依然残つて行くのではないか、こう考えております。更に範囲が義務教育と限定されましたので、高等学校とか幼稚園とか、こういつたものとの教育の一貫した政策が貫かれなくなるのでなはいか、こう考えます。次に、地方の財政より逆算したもので、かくあらねばならんという形からではございませんので、前進的計画性を欠いているという点でございます。以上によりまして教育費の大巾増額が絶対に必要であるのであつて、若しそのために平衡交付金が少いとするならば、当然私はこの平衡交付金をより増額する方向に持つて行かなくちやならんじやないかと、こう考えるものでございます。
 非常に時間がかかりましたが、更に教育経費の一例として、六、三建築を取上げてみますと、一応政府は四十五億円の国家予算が確保されたとこう申しておりますが、元来五百万の生徒のために、二十二年から二十五年、今年に至るまで四ケ年間に僅か総計百十九億五千三百万円に過ぎません。このため地方の市町東独力で建築した建物が、二十二、二十三年度の両年度に七十六億を費しております。このために市町村長三名が自殺をなさり、二千余名の市町村長がおやめになつております。この事実により、昨年度当初予算で零になつたこの建築予算が、吉田内閣もこの現実にびつくりしたのでしようか、十五億の追加予算と、各種の努力による四十五億の今年度予算となつて現れたことに対して、その努力は我々として買えるといたしましても、何と言つても口に教育の尊重を唱えておりながら、やはりここに政治の貧困を私はさらけ出しているとこう考えます。現実に経済再建が重要であるとは、口の先だけではなくて、やはり現在の子供を立派に育てることが、次代の日本の文化国家の育成であるということを私は確信しているが故に、このことを口にするわけでございます。この教育費の総額は、全国の親御さん達の本当に希つているところでありまして、金のかかる私立学校に行く生児兒童のためにも、高額所得者、シヤウプ勧告案による三十万円から、五五%の増税をするならば約二百億浮くのでございます。このぐらいの減税の財源で、一つぐらいの功徳を積んでもよかろうと私は思うのでございます。六、三制の建築費に、少くもこの減税によるところの二百億ぐらいのものは増額をして貰いたい。これが教育に対する私の予算上のお願いでございます。
 以上大体教育に関する平衡交付金に伴う標準教育費の問題と、第二は、六、三の建築費の問題について概略を申上げました。
 時間の都合上、次に、官公労の議長といたしまして、給與ベースの改訂について、予算上私は次のことを申上げたいと思います。
 先ず第一に、政府が給與白書を発表いたしまして、種々の角度から公務員の給與を六、三ベースに抑えようとしておりますが、私はこの公述に、後刻申上げますが、予算の財源は明確にあるということをこの席上に申したくて参つているのでございます。先ず第一に、給與ベースの改訂に関する人事院勧告の発表以来、政府は機会あるごとに改訂の意思なきことを明言して来ました。二月三日、正式文書を以て人事院の勧告拒否の態度に出て来たのでございます。国家公務員法に基いて、我々公務員から団体交渉権と罷業権を奪い、あらゆる彈圧を強化して来た政府が、同じ公務員法の趣旨を敢えて蹂躙して、給與ベース改訂の勧告を拒否する政治的、道徳的責任を追及すると共に、政府のいわゆる給與白書に掲げる拒否の理由の誤りを私は次のごとく指摘したいと考えるのでございます。政府は実質賃金は向上しているとこう申しておりますが、実質賃金は果して向上しつつあるでございましようか。第一は、実質賃金が向上したと主張する時日の問題でございます。基準の時日の問題でございます。即ち政府は昭和二十三年法律第二百六十五号によりまして、現行六千三百七円ベースが完全に実施されたとこう申しますが、完全に実施されたのは昨年の三月であり、それを基準時とすべきであるとしています。ちよつと間違いましたが、この六千三百七円ベースが、完全に実施されたのは昨年の三月であり、それを基準とすべきであるとこう申しておるのでございます。而して同法附則第三十二條によれば、この法律は、昭和二十四年一月一日から実施するが、昭和二十三年十二月一日から適用すると謳つております。そして又同法第一條には、人事院が国会及び内閣に対し勧告した給與計算を原則的に承認すると規定し、その勧告は六千三百七円ベースの数字的基礎である独身者青年男子職員の最低生活水準維持費を、昭和二十三年の七月で算出しておることを明記してあるのでございます。従つて昭和二十三年七月を基準時とせねばならんことは、実質的にも法律的にも明確であるのでございます。この点政府が甚だ曲解しておるとこう考えます。そのことは又国家公務員法第二十八條或いは第六十四條によれば、公務員の給與は、生計費、民間給與等によつて決定されるのであるから、六千三百七円ベースが昭和二十三年七月のそれによる限り、そのときを基準時とされねばならんことは余りにも当然であります。若し基準時にならんならば、政府の主張する昭和二十四年三月のそのときの給與は、つまり政府の主張するように二十四年の、昨年の三月ですね、そのときの給與は六千三百七円ベースを遥かに上廻つたものでなければならん筈でございます。以上のごとく法的にも実質的にも明確である一昨年七月基準の根拠を無視いたしまして、昨年三月基準を主張するゆえんのものは、昨年三、四月頃より経済諸指数が比較的横這いを続けていることから、実質賃金が向上していると、これは捏造するためのものであると私は断言いたします。政府は次に昭和二十四年三月を基準として、消費者実効価格指数は、同年十月は九七・八、十一月九三・九、十二月九五・八と大体低落の傾向が見られると主張しますが、昭和二十三年七月を基準とするときは、ここに手許にある資料を見ますと、昭和二十四年五月の一三二・二を山といたしまして、その後横這いを続けています、確かに……。尚同年十二月一二四・一の上昇を示しているのです。従つて政府が、公務員の実質賃金が昭和二十四年十二月に一〇四に向上を示していると言つていることも、実は八〇・六と二〇%の低下となるのであります。根本的に出発の指数を違えて昨年の三月に基準を置いて計算をしておりますが、三月の基準ではなくして、一昨年の七月を基準にして六千三百七円は決められておるわけです。それですから指数を計算するならば、一昨年の、昭和二十三年の七月の指数を基準として計算すべきを、昭和二十四年、昨年の三月を基準として考えておる。ここに大きな欺瞞があるのでございます。それですから繰返しますと三月を一〇〇として現在八〇・六と言つておりますが、六千三百七円は、三月ではなくして二十三年の七月の指数で作つておるのでございまして、二十三年の七月から計算いたしますれば、現在は一二四とこうなるのでございまして、大体二〇%の上昇は現在はつきりとある。六千三百七円の基礎になつた数字から考えれば、現在は二〇%上昇しておるとこういうことになるのでございます。而も六千三百七円ベースは、算定当時においても低額に過ぎたものでありまして、同ベースと共に実施された勤務時間の一方的な延長、それに伴う時間当りの賃金の低下、再計算による賃金の引下げ、或いは超過勤務手当の大巾減額等を計算に入れるときに、実質賃金は更に減つておるのでございます。又生計費においても、一昨年七月より四〇%の上昇を示し、三月以降も下降していないのであつて、公務員が一般国民と同様の生活水準を維持するためには、同率以上の給與の引上がなされなければならない、こういう筈でございます。公務員が一般国民生活水準以下でよい筈もなく、又ベースの改訂が、政府の主張するごとくたとえ経済安定を妨げるとしても、その犠牲をひとり公務員が負わなければならん理由も存在し得ない筈であります。更に政府は、今後闇及び自由価格の値下りによつて実質賃金は一段と改善されると断じておりますが、併しながら消費者の消費財の各闇価格及び自由物価指数は、昨年四月を山といたしまして漸落の傾向にあるにせよ、一昨年七月より尚下つてはいないのでありまして、勤労者の生活の中心である飮食物は、八〇%近くを配給に依存している現在、闇及び自由物価の低下は、非配給食品二〇%にしか影響しません。つまり闇は下つたとしても、勤労者は八〇%の公定価格の生活をしておる、この現状から生活の楽になつておらないのでございます。配給食品八〇%は、公定物価の八〇%上昇の影響によりまして、実質賃金の改善どころかますます実質は低下しておるということでございます。闇に依存できない勤労者の生活は、闇、自由物価はたとえ今後低落いたしましても、補給金の削減、貨物運賃の引上、電気料金の値上と公定価格の値上りによりまして、生活は更に圧迫される、こう解釈するのが又当然でございます。このことは、政府も昭和二十五年度国家予算におきまして、物件費を増額している、つまり政府も給與白書によつてああいうでたらめなことを言つておりますが、国家予算において、物件費を増額しておるということによつて、みずから認めておるということを私はここで申上げたいと思うのでございます。更に又実質賃金が、政府の主張するようにたとえ向上したとしても、世界に類に見ない戰前の低賃金の現在三一%にしかならないということからも、ベースの改訂拒否の理由とは本当にならないのであると私は断言いたします。
 次に、民間の給與との差が少い、殆んどないと政府はこう申しております。国家公務員法第六十四條は、その給與決定の重要條件として民間給與との均衡を規定しているが、政府は公務員給與と民間給與との比較差は、昨年三月七千二十九円に対し八千二百二十五円、十月は七千二百四十六円に対し八千六百二十六円であり、上昇率、金額共に両方の開きは僅少に止まる、こう政府は言つております。先ず上昇率について述べるならば、民間給與は、一昨年七月に比し昨年十一月は八三%の上昇を示しております。この上昇は、今後も続くことが傾向線、グラフを引張つて見れば明らかになるのでございますが、公務員の給與が六千三百七円ベースに放置されてよいとは、如何なる角度よりも言えないことでございます。政府の主張する昨年三月七千二十九円、十月七千二百四十六円とする金額及び三%の上昇も、この期間においてなされた二〇%の行政整理が、その大部分が弱年者によつて占められたため、平均給與額が計算上増加したと、こういうことが現われておるに過ぎませんで、公務員の受けておる実際の額は何等上昇してはおりません。つまり若い者が首を切られた、そのために残つた者が年齡的に多くなつておる、これで平均いたしておりますから、給與が上つておるように数字では見受けられますけれども、実際の公務員の給與は少しも上つておらない、こういうことです。又超過勤務手当の増加も、行政整理による予算残によるもので、労働強化を意味する以外の何ものでもない。これを以て六千三百七円ベースにおいて給與が上昇したごとく印象付け、その年の民間給與の上昇率をカムフラージユせんとする政府の作為も余りに見え透いておると申して過言でありません。金額においても、昨年十一月の民間の給與は六千三百七円ベースの十四割、公務員の十四割、二千六百円増の八千九百十六円という、公務員は民間労働者の四割下廻つた生活水準を余儀なくされておるのであります。尚政府の言うごとく、若し仮に公務員の給與七千二十九円、七千二百四十六円を是認するといたしましても、その額の民間給與との差額は、それぞれ千二百円或いは千四百円でありまして、公務員給與の一七或いは一九%になるのでありまして、この差を僅少であると政府は申しておりますが、放置されてよいものでございましようか。又実質賃金の戰前比が、民間の四五%に対しまして、公務員三一%に過ぎないことも併せ考慮されねばなりません。以上、政府は白書において毎月勤労統計、工業平均賃金は、その対象が大工場中心であるとこう申しておりますが、中小企業の方は賃金が安い、こう言つております。これに対してもここに批判がありますが、時間の関係上、この政府の比較が全く当つておらない、この点は、後刻質問において御答弁申上げたいと思いますが、時間の都合上少し端折ります。
 次に、以上全く現政府が出しておる給與白書に対して、各種の角度から私は批判をして参つたのでありますが、この批判は、私は本当に科学的で正しいということを確信しております。
 以上、給與改訂を何といつてもせねばならん理由を述べて参つたのでありますが、然らば財源はどこにあるか、この点に対して一言お聞き願いたい。この点は私確信を持つて参つたのでございます。で補足いたしますが、時間を少し超過いたしましたが、二月十一日だと思いますが、私は全官公庁を代表いたしまして約十六名がESSのリード課長に面会いたしたのでございます。この時の趣旨は、政府が六千三百円の据置きで予算を組んでおるが、これは一応理屈がある、と申すのは、政府が昨年七、八月頃に予算の基準を立てたが、その後において人事院が勧告した。そうするならば当然人事院の勧告に対して政府は尊重して、こうしてもう一応六千三百七円の基礎が昨年の七、八月頃に考えられたのであるから、その後何ケ月か経つて勧告がなされた、その数字を審らかに検討するならばいざ知らず、頭から無視しておる態度という点について、我々は是非とも我々のこの人事院の勧告に基く法律案を国会に出さして、政府の案が是か我々の案が是か、一昨年の十二月のごとく鬪わして貰いたいということをリード課長に申したのでございます。初めは少々拒否しておりましたが、最後にやはり日本の民主主義を……少くとも全国の八千万の代表の輿論がこの議事堂に反映するということを我々は期待し、それでこそ民主主義革命というものが前進するのであるということを強く申した曉に、リード課長は、その意見は尤もだ、それならば至急に国会の議員さんに頼み、君達も研究して、現在の既定予算の枠内において何とか操作できる途があるかどうか研究して貰え、こういことを申したのでございます。而も現在の政府予算は、リード課長は次のごとく申しております。あれは與党の民自党と政府が幾つかの案を作つてESSに出して来たが、その中でまあ一番妥当と思うというものを取上げただけに過ぎない。それで現在の既定予算の枠内において別の角度から検討すれば、必ず案が出るだろうとまで申しております。而もその時に君達の案が上提されれば、それでこそ対等の立場で国会に国民の輿論を反映して鬪わせることができるのであるということを、我々には強く申したのであります。君達、そうなれば有利になるから早く行つて来い。寛容の態度で検討して呉れますかといつた時に、リード課長は、寛容の態度を以て検討する。資料が出れば検討する、こう申したのであります。
 そこで私は少し端折りますが、白書にあるところの、政府が唱える六百億ですか。この点について私は論旨を進めたいと思います。
 政府は人事院勧告を地方公務員を含む全公務員に実施すれば、年間六百億を要するといつておるが、常に大衆よりの徴税に嚴格である政府が、ベース改訂に伴う給與所得の税金のはね返りということを飽くまで計算に入れていない。誠に八千万を撞着するも甚しいといわねばならない。日頃出す時には税金のはね返りをびしびしと取りながら、今回公務員の給與を上げない理由として、六百億はインフレを助長する、こう頭から申しておりますが、これは誰が見ても給與所得のはね返りがあの中に引かれていない。こういうことを私ははつきりここで言いたい。而も六百億は増税或いは鉄道の運賃の値上、通信料金の引上、或いは二割の行政整理を行なう、こう主張しておりますが、ベース改訂を支持する輿論をこの詭弁によつて切ります、こういう僕田意図を持つておると言わざるを得ないのであります。我々の計算によれば、実際に見て、これはここに資料がございますが、三百八十五億から四百億程度、これがあれば人事院勧告に基くところの給與ベースの改訂ができると確信しております。而もそれは減税に何ら影響せず、或いは増税、物価の値上、行政整理等を要さん枠内の操作でこの給與の改訂ができるのでございます。で昭和二十五年度予算案は、昭和二十四年度予算案に見られると同じく、歳入面において徹底的な收奪を行い、歳出面において大資本に奉仕する方針を更に一層強化し、恐慌を激化させておるものでございますが、先づ一番先に、財源を求めるならば、これは資本家の前で言うと嫌われると思いますが、シヤウプ勧告に基く、池田蔵相も言つておつた大資本の脱税の公認にも等しいところの株式の名儀書換の中止、資産再評価の繰延べ、無記名預金の記名延期を取消すならば、歳入増は相当のものがあると誰も常識で考えております。それから昨年四月十三日、平田主税局長が国会において昭和二十二、二十三年度において約五千九百億円脱税があつたと大体推定しております。これを見てもこれだけのものが取れるならば、ベース改訂費用の捻出は容易であるばかりでなくして、中小企業、農村の復興にも大いに役に立つと、こう考えます。或いは又大資本育成の法人税軽減の適正化、又先に述べたシヤウプ勧告通りの高額所得者、即ち五十万円以上五五%を、三十万円以上五五%に直せば、シヤウプ勧告の通りにやれば、二百億円が直ぐ浮いて来る。私は只今ここに資料を持つております。税金を軽減する軽減すると言つておりますが、あのシヤウプ勧告の中で見ても、非常に累進課税、上の方の高額所得者が軽減されておるのでございますが、あの通りにやつても二百億浮いて来ると、これは確信を持つて申します。
 次に財源として挙げられることは、輿論のすべてが指摘するごとく、公債償還千三百億が余りにも多過ぎる。これを削減すべきである。端的に申上げます。即ち国債償還費であるが、七百十六億より法律に基くところの期限がある二百十六億を除いて……是非とも今年拂わなくてはならないものが二百十六億でございます。それを政府は七百十六億計上しております。それから特別会計で約五百億、合せると、今年是非とも返さなければならない二百十六億を除いて、千億を敢えて政府はここに計上しておるのでございます。これは政府の政策であると断言します。特に現在のごとき金詰りの経済情勢下において、單に金融機関に金を廻して蓄積するのみにて、デフレはこんな状態ではますます烈しくなると、特に中小企業者はこれではとてもたまらないと、こう誰も考えております。又当の金融機関においても、融資の方法なく且つ債券保育によるところの対外信用度も低化して、つまりそれが償還されてしまえば、銀行の対外信用度として債券を持つておるのでございますが、債券償還には必ずしも銀行自体も賛成していないと私は聞いております。銀行自体が賛成していないその債務償還、いわゆる一千億の計上は、余りにも巨大過ぎると、私はこう申します。政府は速かにこれらの財源を公務員の給與に廻し、公務員をして公共の仕事に專念せしむると共に、政治の腐敗堕落とか、多量の收賄、贈賄とか、そういうものを是非ともやめさして、デフレ経済にここで活気を注入して貰いたい。如何にこれを吸上げて日銀に取つたとしても、政府がこれを出すときには、昨年の例のように、なかなか下の方の中小企業には廻つて行かない。僅か三億程度では、この中小企業の没落に瀕する状況を救う途は全然ないと思います。
 次の財源は、私はここに面白い例が一つございますが、私は以上のような問題から、更に突込んで何とか財源はないかと研究したところが、物件費においてまさしくあると、こう考えたのでございます。物件費の中で、大体トータルを申しますというと、一般会計で大体三・四五%、特別会計で一・二四%政府機関において一・〇九%、これを節的すれば、公務員の給與の改善は直ちにできるということは私は申します。これを総計いたしまして、尚地方公務員を自治庁の統計の数を加えて割つてみますというと、中央官庁の、今言つたような一般会計、特別会計、政府機関の会計だけの平均の余剩金、これを何とか余して、そうしてその金で地方公務員をも含めて出すというと、全体で的二・五八%の節約ができれば、この公務員の給與財源は出て来る。一兆億以上ありますよ。この一兆億以上ある物件費を二%程度、つまり月給で言えば百円で二円のいわゆる節約ができれば、この公務員の給與の改善の財源は出て来ると、私はこれははつきり言います。この資料は私ここにございます。
 以上、極めて楽にできる財源の措置であり、公共事業費九百九十億のうち、来年度分として百億があります。この百億の中でも、少額の運用は私は不可能ではないと、こう思つております。又国際小麦協定参加によつて、低価な小麦輸入によりまして、食糧の補給金は相当浮くのではないか。これは一つの仮定でありますが、そうも考えられます。以上のように、二十五年度予算の枠内においてさえも、政府の吹く六百億とたとえいたしましても、十分にこの支出は可能であると、要は財源よりも、改訂しようという誠意の問題にかかつておるのである。
 以上大変長きに亘りまして申述べましたが、政治的にも、経済的にも、今回のベース改訂を断行して、新らしい日本の再建の真の担い手としての働く公務員の生活を是非とも保障すべきであると、右を結論として私の公述を終る次第でございますが、私各種の角度から調べた結果、財源的には確信を持ちました。昨年度の年末において、政府がないないと言つておりながら何とか絞り出して年末に五十何億やつた。これは我々としても額には不満があろうとも、やはり国家予算というものは節減すれば出て来ると、必要以上に労働情勢を悪化させ、必要以上にインフレとかそういつたものを強調して、昨年五十何億出て、日本の経済がインフレになつたでしようか。年末五十何億出ても日本の経済は絶対にインフレにならなかつたことを、我々ははつきり知つております。この角度から、余剩を節減して、働く公務員として、又公正なる公務員として、公共の福祉に応えられる公務員としての何とか生活の維充を護つて、新らしい官吏制度を打建て、新日本建設の礎石にして頂きたい、こういう角度から申しましたので、非常に時間が超過いたしましたが、大変長くなつたことをお詫びいたしまして、私の公述を終ります。
#10
○理事(岩男仁藏君) 御質問はありませんか。
#11
○森下政一君 今お述べになりました給與改訂を行う財源ですね、あなたの計算によると、所得税のはね返り財源を加えると三百八十億乃至四百億で足りると、いろいろ財源の御説明を聞きましたが、項目だけをもう一遍ちよつと挙げてみて下さいませんか。
#12
○公述人(岡三郎君) 第一に、歳入において多額の増收が可能ではないかと、その点は、株式の名儀書換を一応池田さんはやると言つておりましたが、これがデフレの恐慌によつて株が落ちて来た。それでびつくりして挺子入れをするというために中止になつておりますが、この株式名儀の書換中止、資産再評価の納税繰延べ、無記名貯金の記名延期等を行うならば、立ちどころに相当の金が浮くと、これをシヤウプ勧告通りにやればですよ。だから、ここで私は余計なことを申しませんが、向うの言う通りにやればそうなると、こういうことを言いたいのです。それから更に、所得税の大口課税対象に対する課税の問題、これは平田主税局長が二十三年度五千九百億あつたと、こうはつきり申しております。これだけあれば、公務員のみならず、破滅に瀕しておる農民、中小企業者を救つて余りある。一つの空論のようでありまするが、やはり税務官吏でも人間でございますので、これを食わして何とか国家に務めさせると、真摯な働く勤務振りが出て来れば、そのくらいな金は自然に国庫に入ると、こういうことを申したいのです。それから次に法人税の軽減の適正化、それから高額所得申告課税等の増收、先程言つたようにシヤウプ勧告の三十万以上五五%になつておる。シヤウプ勧告によると、それを政府は五十万円以上を五五%にしておるわけですね。この差額だけでも約二百億あると、こう考えられます。それから先程申しましたように、公債の償還費千三百億、これは非常に無茶だと言えます。当の銀行屋さんに聞いて見ても、国債は現在もう民間にあるものは戰争中燒けたり、銀行にみんな入つておる。だから今一般の民間人で国債を持つておる者は殆んどおらないと思う。ところが銀行の持つている国債も日銀に担保になつて金を借りておるわけであります。だから今政府の方で国債償還の金を入れたとしても、銀行の懷には入らないで結局日銀にみんな入つて行く。こういうことです。だから銀行屋自体はそれによつて国債が取上げられてしまえば信用というものがなくなつて来るわけです。やはり銀行だつてただ金じやなくて、やはりそこに信用のある物件がなくてはならない。その物件を取り上げられるということで、事実物件を担保にして日銀から金を借りておるから、銀行としてそんなに有難くない。結局日銀に金が還流して一千億という金が日銀の懷に入つてしまう。日銀は適当にそれを融資すると言つておりますけれども、大資本だけには行きますが、中小企業なんかには銀行を通して貸そうたつて貸せません。必然的に投資する投資すると言つていながら結局時期が去年のように遅れて、結論はデフレの深刻化ということになる。だから銀行もこれをしてないわけです。だからこれは二百十六億が本年度の義務的な償還費ですから、それ以上はそれ程必要ないのではないか、こう思います。次は先程申しましたように、一兆億以上に上るところの物件費です。物件費はものすごいものでございます。ここに詳しい統計がございますが、これは後で又御説明申上げますが、これを大体二・五%、これだけ既定予算の枠を節約して貰えば、政府の言つておるように、たとえ無茶な六百億でも、六百億くらいの金は出て来る。物件費として一兆何千億、こうなります。一兆億を越しております。それで物の値段は下つて行くと言つておる政府自体が……、物の値段は、実際の値段は上つておる。こういうことを予算に現わしておるわけです。財源について今まで言つたことを拔きにしても、この既定予算の中の物件費だけの節約でも公務員の給與ベースの改訂はできるのであります。そうして公務員の生活を少しでも緩やかにして、公正な公務員の仕事をさして行く。これが公共の福祉のために働いておる公務員達の私は待遇ではないか、こう考えます。その外まだいろいろありますが、食糧管理に昨年百七十億繰入れた補給金のことは先に申しましたが、第六臨時国会にないないと言つていながら政府は百七十億食糧管理に繰入れたのです。收入の自然増によつて昨年これは賄つたと言つておりますが、非常に今の予算の建て方は大蔵省は堅いのです。だから吸上げた税金が懷ろに遊んでいるのですよ。余つているのです。だから一方から見るというと、非常に日本の経済は形の上では堅実だと言えるのですが、支出が少くて取上げられた金が全部、全部と言えませんが相当程度懷ろに寢ている、これが現実です。それでなかつたら食糧管理に百七十億、第六臨時国会でぽんと出せるなんて金がある筈はない。昨年年末に五十三億貰つてちよつとしたのですが、数は不満でしたが、五十三億ないない。初め五百円しか出せない、七百円しか出せない。それがしまいには五十三億出て来た。何も私、これを追及するのではないのですが、少くとも政府が真劍に公務員のために努力するならば、財源はどこにもあると私は断言します。これはドツジ・ラインとか経済九原則がありますが、これは一昨々年、一昨年より昨年にかけてのインフレ時代であればこそ我々の有難かつたものでございまして、現在一年でがらりと経済情勢は変つておる。この過程におきまして、是非とも根本的なデフレ予算の御検討をお願いしたい。更にここにまだ予算の出し方がありますが、こんな程度で一応簡略にして置きますが、公務員の予算の方においても少し出て来るのではないか、こう思います。
#13
○小林勝馬君 ちよつとお尋ねしますが、物件費一兆億以上と言われるのだが、一般会計と特別会計と何と計算して言われるのです。それからその二・五%と言われるのだけれども……。
#14
○公述人(岡三郎君) これはここにございますが、初めのやつでございます。大体一般会計で千五百八十五億六千八百二十万九千三百円、これは一般会計の物件費です。それから特別会計の方は四千四百四十二億九千二百二十四万三千五百円、これが特別会計です。それで政府機関の方は、これは又厖大なんですが、八千四百七十六億三千九百二十九万二千百円、こういう厖大なるあれがあるわけです。これをこの公務員一人当り一般会計の方で一千四百四十九円上げてやるというと、十二ケ月間で大体七十三億、それでこれを割つて見るというと大体三・四五%一般会計で節約すれば、公務員の給與が出て来るわけです。だから特別会計の方では一・二四%、これは予算の説明書で御存じのことと思いますが、一・二四%、それから政府機関の船舶運営会とか、公団、復金等の政府機関ですね。それから国鉄、專売、こういうものを全部引くるめまして、大体八千四百七十六億三千九百二十九万二千百円、もの凄い物件費があるわけです。これを九十二億これから取れば、大体金が九十二億あれば政府機関に出せるわけです。この九十二億という金は政府機関の物件費八千四百億から数えると約一・〇九%、一%ちよつとなんです。これだけの金を先ずひねり出して、地方公務員にまでやつたらどうか。地方公務員の数がこれは自治庁の統計によりますと百二十八万五千百六十五人ございます。この人数を今言つた三つの一般会計、これを足しまして割るというと大体地方の経費の節減をしなくても、大体中央の物件費の二・五八%の節減によつて出て来る。こういうことが昭和二十五年度の政府の予算案からも出て来るわけです。大体よろしうございましようか。
 それからあの給與白書というものは、あれは誰が作つたか知れませんが、全く常識外れです。私は労働組合からの立場でなくて、本当の一人の教員の立場として考えても、あれは常識外れでして、最も笑の種を千載に残すのじやないかと思つております。
#15
○深川タマヱ君 お挙げになりました新財源は、よく御研究になつているとは存じますけれども、何分実現の可能性がございませんと取上げられませんので、お挙げになりましたものについて少しお尋ねして見たいと思いますけれども、法人税の場合は、政府はいつも外資導入のために、これ以上は上げられないということをしきりとおつしやるのですが、これに対して簡單でいいですから、あなたの御見解を伺いたいことと、それから大口所得の脱税でございますが、只今の税務機構からして、ちよつと実現が困難のようでございますけれども、これで間に合うかどうか疑われるのでございますが、これに対する見通しを伺いたいと思います。それから次は資産再評価、これは減価償却費というものを相当多額に上げて置きませんと、今設備が壞れましたときに、復旧いたしますのに困りますために、こういうものが出て来たと思いますが、今の設備を時価に換算いたしまして、これだけの資産があるからというので税金を取立ててしまうという場合は非常に無理があると存じますので、むしろそれだけ余裕を手許に残すためのことであつたのじやないかと思いますので、少々ここには無理があると思います。以上について……。
#16
○公述人(岡三郎君) 第一点の法人税の問題は、これはいろいろの経済学的に見て違いがございましようけれども、結局一般の源泉課税ですから、一般の給與所得税とか、そういつたような大衆課税、こういうものから比ベれば非常に軽減になつているということは御存じだと思うのです。これは会社の資産内容とか、そういたつものを現在何とかしなくちやならん、そういうような角度もあると思いますが、ここに資料があるのですが、やはりもう少し法人税を上げて財源を出しても無理じやないのじやないか。但し中小企業で、下の方の小さい企業では無理だと私は思うのですが、今食糧品の工場あたりで、如何に物価が何とかかんとか言つて株価が下つていると言つても、食糧証券なんかは非常に利潤が上つている。資本の二十年割とか、ひどいところでは三十割も上つている。会社々々によつていろいろと株式関係、法人関係がありますが、株式のこういつた、さつき混同いたしましたが、一般の法人、我々の方として考えるところの法人ですが、そういつたものももう少し何とか取つてもいいのじやないか、これは確固たる統計はございませんけれども、推断しているわけです。これは大蔵省の職員組合の方々も、日大の関係の方々ももう少しはいいのではないか、こう言つているわけです。私は何も無闇に多くぶつかけろと言つているわけじやございません。
 それから第二は大口所得の問題、これは日財の組合員の方の話ですが、やはり現在では確かに手不足であるということを申しております。併し全般的に言つて、やはり政府は例えば寮とか厚生施設とか、いろいろなことで実質賃金の値上りを言つているけれども、実際は伴つていない。ですから税金を取りに行くにに非常に過労になるといつたような面もありますので、もう少し待遇の面を考えて行けば張り切るのではないか。精神的な面もありますが、これは率直に現場の人から聞いております。ですから現在の機構を以て、もう少し動員しても相当やればできるのじやないか。但し大きな会社の脱税は、これは三菱化成のような例もございますけれども本当に命懸けでやらなくちやならん、そういうふうな危險もございます。曾ては濁酒の関係もあつたのですが、そういつたような関係で、現在の機構でももう少し政府の本当の温い心持が出れば相当できるのではないか、こう考えます。
 資産再評価の問題についてはこれは非常にむずかしいのですが、御説の通りシヤウブ勧告に基いて全面的にコストを定めて、現在の物価に換算いてやるということは私も無理だと思います。無理だと思いますが、併し現在これを税金を取らないで繰延ベておる。これは私はこう思つております。一般のデフレ傾向によつて深刻なる経済の影響が株価をああいうようにゆすぶつた。株価対策としてこういうものを考えるのではやはり遅い、今の証券会社を立てる、そういう小手わざでは駄目なので、根本的にやはり日本の経済の、一昨年、昨年のドツジ・プランのできる頃のあのインフレの上昇期と、現在の経済機構が根本的にもう変つて来ておるのだということを私は認識したい。ですからこの再評価の問題も無理に何も工場を皆ぶつつぶせとは言いませんが、相当この再評価、これも企業々々によつて彈力性を持たせるようにいたしてやれば、或る程度やはり勇気を持つてやれば取れるのじやないかと思います。相当彈力性を持たせているのでこの点について極端なことは言いませんが、こういつたことからも財源は出て来る。今の中小企業とか、一般の勤労大衆から比ベればやはり優遇されておる、優遇され過ぎていると私はそう思います。ですからそういう点について、もうちよつと公平な税の徴收というものがあつていいのじやないかとこう思うのです。株価対策とか、そういつた面で再評価をやるのは小手わざではないかと思います。質問に当つているかどうか分りませんが……。
#17
○理事(岩男仁藏君) それでは質問はこの程度で止めて頂きます。
 次は第一銀行頭取荻野政孝君。
#18
○小林勝馬君 議事進行についてちよつと……。時間をはつきり守つて頂いて、質問も先程十分という約束になつておりますが、そういうふうに制限して頂かないと、これは切りがないことになるのじやないですか。これからはそういうふうにやつて頂きたい。
#19
○公述人(荻野政孝君) 私第一銀行頭取の荻野でございます。今度の二十五年度予算につきまして金融界におります金融業者といたしまして簡單に御批評申上げたいと思うのでありますが、大体この説明書に予算の特色は挙げてありますので拜見いたしましたが、復興財源の面に相当重点を置いておいでになるということにつきましては、非常に結構なことと思いまして、特に余り申上げることもないと思うのでございますが、歳入面と歳出面とに分けまして極く簡單に申上げます。
 歳入面の税金の関係では、シヤウブの勧告によりまして合理的な改革が行われたのでございます。これに対しましては特別に申上げることはないのであります。所得税の軽減は相続税累進課税、富裕税の新設に上りまして補われまして、直接税については相当改善が行われておると思うのであります。所得税の改正税率の上でちよつと申上げますと、收入が二十万円超過したものは五〇%、五十万円を超過したものは五五%という標準になつておりますが、これは我が国の現在の貨幣価値の減少の実態に即応しておらないのじやないか、又中堅程度の所得階級には非常に過重であると考えるのであります。これは今日物価が戰前の百倍になつておると考えますと、二十万円の收入の者も元は二千円であります。それが五〇%の課税を受けるということは、ちよつと昔は考えられなかつたことであります。併し今日の敗戰後の日本といたしましては或る程度止むを得んかとも思いますけれども、これは何とか財源を考えまして、この標準を少し上に上げて行かないと、どうも勤労階級には非常に苦しいのではないかと考えるのであります。又戰後の日本といたしましては一般の混乱がまだ十分に回復いたしておりませんし、それから所得の捕捉も不完全でもございますし、徴税技術も誠に不十分な点もあると思うのでありまして、日本の現状から申上げますと、そういう点から考えましても勤労階級の上にはこれは少し重過ぎると痛切に感ずるわけであります。それに対しましてはこれは誠に一時的な姑息の考えかも知れませんけれども、間接税に多少の増徴をしてでも、この勤労階級の所得税を軽減するということも考えられるのじやないか、そういう考えを持つております。先ず百万円以上くらいから五五%というような工合に、もう少しこの点をお考え願いたいと思います。それから配当所得、預金の利子所得のことでございますが、今回の改正で配当所得は源泉課税はございませんで、税額から二五%控除せられることになつております。預金の利子所得、つまり預金の利息でありますが、それは今相当の税金がかかつておるのであります。それに比べますと配当所得というものは相当有利になつているのでありますが、この点は相当研究を要するのではないかと考えるのであります。いつの時代でも国民貯蓄の重要なことは同じでございますが、殊に我が国の実情から見まして、又我が国の過去の国民の慣習に鑑みまして、特に現状では間接的な資本の蓄積に俟つところが誠に大きいのでございまして、経済が正常化し、貨幣価値が安定しておるのでございますから、国民の一人々々が堅実な貯蓄のできるように、特に考慮をしなければならんと考えるのであります。戰争の破壊から急速な立直りを実現するためにも、特に資本の尊重が必要でございまして、大正時代長きに亘りまして預金の利子課税というものは僅かに五%――七%に過ぎませんでございましたが、今日では最底二〇%から六〇%までかかつておるわけでございまして、過去明治、大正を通じまして利子が安かつた時代の経済の発展を見、銀行の預金というものが非常に寄與した当時を追想して、この点は戰後の日本といたしましては十分考えなければならんことと考えるのであります。尚この預金の利子の課税というものは、総額におきましても財政の上から照らして、課税の面から申しましても極く僅かなものでございまして、この点は又皆様の御考慮を願う次第であります。相当の課税上優遇策を講じて、そうしてこの貯蓄力を更に増進するということが殊に大切なのではないかと考えるのであります。それから法人税でありますが、これは従来の法人税は超過所得に対しまして累進的に税金がかかりまして、会社を経営いたしましても、非常に立派な経営をして利益を上げれば上げる程、税金が重くかかつて参りまして、誠に不合理なものであつたのでありますが、今度超過所得に対する課税が廃止されましたことは、誠に日本の産業回復のために結構なことと考えるのであります。堅実にまじめに経営しておる企業がますます堅実になつて行くことになり、この点は非常に結構だと思いますが、これに対しまして地方税であります附加価値税とか、固定資産税というようなものによりまして、これは折角税金が減つたものが又その代り同じものにかけられて、結局大したことにならないというようなことにならないように特に考慮をめぐらす必要があると思うのであります。
 歳入の方は今申上げました二つの点がございますが、歳出の方では債務償還、最も論議せられておるのでありますが、公共事業費を初めといたしまして、復興再建のために積極的にいろいめ予算に計上せられたものが、二十四年度に比べまして千三百二十億円を増加しておるのでありまして、これは誠に結構なことだと考えるのであります。御承知の通り日本は従来身分不相応な軍備を持つておりまして、非常に巨額の軍事予算を国民が負担しておつたのでございますが、敗戰の結果といたしましてそれはなくなつたのであります。それだけに国内で生産いたします物資の消費は、軍が消費しておつた巨額なものがなくなつて来たということになるのでございまして、この点は戰前ずつと長年それにマツチするようにできておる日本の産業経済の上には、非常に大きな変化を来たしておるのであります。これに対してできるものを一方では海外ほ出す、一方では国内で相当の消費をしなければ解決をしない、生産過剩に陷るということになるのであります。それに対しまして二十四年度に比べまして巨額の、こういう公共事業であるとか、いろいろ一般の復興のために巨額な予算を計上せられておるということは誠に結構なことと思うのでありますが、尚三百五十億円の地方債の発行もございますし、尚この外に五百億円、並びに前年度剩余金の二百二十億円、それから特別会計から五百億円の債務の償還が予算に計上されておる。先程岡さんからお話がございましたのでございますが、この債務償還は銀行はそんなに公債を返して頂かなくてもいいんだという御意見でございますが、その通りでございます。併し今度の千億円余りの、千二百億円に上る債務償還というものがどういう内訳になつておるのか、その時期というものが、この説明では分りませんのでございます。これは成るべく早く発表して頂きたいと思つておるのでございますが、これは、従来は日銀の手持国債の償還を行い、又預金部や市中金融機関に産業資金の供給源として公債を償還して来て頂きました。これをそうしないで、直接投資に廻せという議論もありますのでありますが、従来まだこの点も私はよく存じませんが、日本の公債が只今二千五六百億残つておるのであります。これは相当整理を要するものもあるだろうと思うのであります。それはそれといたしまして、この市中金融機関に対する公債の償還は、今でも強制的に行われておるのじやございませんが、全般的に相当資金が欠乏しておりますために、それを償還を受けておるという実情になつておるのでありまして、これも程度の問題でございまして、場合によるとその必要があることもあるし、ないこともあるのでありますから、余りに重きを置かないで、私としてはむしろさつき申上げましたように、公共事業であるとか、つまり国民の生産的の消費面、何か道路の改修でも、汽車を直しても、或いは電車の軌道を直しても、鉄橋を直しても結構なんでございますから、或いは今お話になつた給與を幾分よくするということも結構なんでございますが、むしろ国民経済の生産面にできるだけ振向けて頂き、そうして民間の産業がデイス・インフレの線に止つて、そうして資金が更に銀行へ還流して来るという順序になつて来ることを、希望いたしておりますのでございます。
 もう一つ、これは一つ希望のことなんでございますが、これは特に皆様の御参考までに申上げることでございます。これは昨年ドツジ氏が参りましたときも、我々で話をいたしましたのですが、どうも徴税も、本年は一月から三月の間に、二十四年度分が千七百億ございます。只今のところ、一月、二月で、相当……七、八億くらい、その程度徴收されました。まだあとに千億くらいが、二月までに徴收される筈であります。こういう巨額な税金が尻押しになりまして、年度末に迫つて来るということは非常に困ることなんであります。それは銀行の資金が、預金が、一方では引出されて税金になりますし、一方では、それがために、銀行で金を借りるということが一時に起つて参ります。財政が戰前に比べますと、非常に大きな金額になつて参りますために、このしわ寄せが非常に市場に影響を與えておるのであります。これは徴税技術の上から、もう少ししわ寄らないようにやつて頂けないものか、年々大体決つておる税金を、年度初めからならしてぼつぼつ取つて行くということも考えられるのでありますけれども、これはなかなか困難があるとは存じますけれども、それで非常に金詰りが来るということは、やはり一時の現象であるようでも、なかなか波紋が大きいのでございます。この点は、皆さんも特に御考慮置き願いたいと思つて、かねがねそう感じておるような次第でございます。
 それから同じことが言えるのでございます。見返資金の産業投資の方も、さつき申上げましたように、特に直接の産業投資も必要でございますが、又一方では、これを先程申上げたように、ますます国の産業が発展いたしますし、又消費面が、それに伴つて増大するような方面に向けて頂くように、その点はドツジ・プランによりますデイス・インフレーシヨンに対しまして痛切に私共業者といたしまして、感じておりまするところでございます。
 その他尚これも金融面から見ましての私共の意見なんでございますが、今の民間に見返資金、その他の民間の産業投資、そういうような資金が纒つて出て参りますけれども、これは全然時期をお構いなしでございます。こういう今の金詰りが強く思われる一月から三月というようなときに、成るべく早く資金が民間に出るということが是非必要でございます、この点は日本銀行総裁もお骨折りのようでございますけれども、なかなかこれがうまく行かないのでございますが、政府は、御承知のように、今日は国民はまだまだ赤字財政に苦しんでおりますけれども、昨年以来財政は黒字になつて参りました。従来米穀証券とか、それから大蔵省証券によりまして、市場から金を吸上げて市場の操作をしておつたのが、いわゆる赤字操作をしておつたのが、これからは始終政府の方は金が余る、それを至急に放出するということになつて参ります。このことは非常に結構なことなんでございますが、これも時期と、それから誠に貴重な黒字なんでございますから、これをいい都合に民間へいい時期に放出するということをやつて貰いたい。それには只今でも指定預金というのがございまして、まとまつた金が銀行に巨額に預けられる場合もございます。それも結構なんでございまして、こういう点を皆様も一つ念頭に置いて頂きたいと思います。私は大体これくらいで……。
#20
○小林勝馬君 ちよつとお伺いしたいのですが、最初二十五年度予算で債務償還を一千三百億やることは誠に結構で、非常に賛成のようなお話をされましたが……。
#21
○公述人(荻野政孝君) 債務償還じやないのですよこれは……。
#22
○小林勝馬君 途中でそういうふうにおつしやつて、それから銀行としてはそう重きを置かなくていいと、岡君の御説明のような話がありました。それから生産面に向けて銀行にそれが還つて来るような問題を、公共事業でも何でも構わないというふうに……。
#23
○公述人(荻野政孝君) 何でも構わないというのではない、公共事業というものは非常に結構だと思います。公共事業、鉄道とか、そういう方面へ十分この建設的の方へ振り向けて頂いて、道路なんかも日本は非常に遲れておるそうでございまして……。
#24
○小林勝馬君 お聞きしたいのは債務償還の方よりも、そういう公共事業費に廻して呉れ、銀行の方はそれでよいんだというのですか。
#25
○公述人(荻野政孝君) 債務償還も或る程度結構でございますが、金額はどの程度かちよつと見当がつきませんけれども、そうひどく重きを置くことにならないでも銀行というものは公債を持つておらないと、どうしても支拂準備といたしまして或る程度公債を持つておらなければならん。これをなくしてしまつて、直ぐその公債に代るような投資物はないようなわけです。これはどうしてもこの程度は保有していなければならん。これは相当程度減つて来ておりますから、これ以上そう余地はないのじやないかと思います。
#26
○小林勝馬君 債務償還はそう多くなくてもいいということになりますか。
#27
○公述人(荻野政孝君) それだけの余裕があれば、その方へ振り向けて頂きたいと思います。
#28
○木村禧八郎君 二つばかり伺いたいのですが、最近の銀行の経営状態ですね、もう御承知の通り預金に対して貸出の比率が又非常に大きくなたておる、アブノーマルになつておる。それで今後の見通しですが、政府は今度今のお話のように債務償還をやると、そうしますと銀行の手許に、まあ公債の代りに金が入つて来ますが、そうしますとそれを又貸出に廻しますと、ますます現在のこの経営のアブノーマルの状態がひどくなり、そうなると今後の長期資金、その他の銀行の投資の見通しでございますね、それがこれまで通り行くものかどうか、その見通しにつきまして一つと、それから預金の状況なのでございますが、実はこの前の公聽会で千金良さんにお伺いしまして、千金良さんはドツジ・ラインによつて預金は減少するだろう。大体二十四年度の見通しは、最低相当堅く見て千五百億ぐらいでないか。ところが相当御承知のように殖えた。これにはいろいろな堅実な蓄績かどうか。そこに問題があると思います。そこで最近預金状態についてどのぐらいが資本の蓄績として見てよいのか。両建、或いはその他の本当の意味の蓄績でない、いわゆる不堅実なものと見られるものか。それから今後の預金の増加の見通し、その二つについて伺いたいと思います。
#29
○公述人(荻野政孝君) 後の方を先に申しますと、預金の増加は実は三月頃までは、四月ぐらいまで続くと思いますが、税金が非常に多うございますから、全国の銀行預は金一月になりまして昨年は四百億減つておる、今年は二百億減つております。その代り預金の総額は今七千億円ある。兌換券の発行高の倍以上の預金になつております。それは日本は経済が安定すればする程兌換券と預金の比率は、兌換券の方が少くなつて来て、預金が殖えて来るということになると思うのでございますが、これから先四月、五月になりまして税金が一段落すれば、まあ何と申しますか、国家事業及び個人の仕事の繁栄の程度によりまして預金はぼつぼつ殖えるものと思うのでございます。これはどうも今のデイス・インフレーシヨンという実情から申上げますと、余りそう沢山殖えるということは期待できないと思います。過去のインフレーシヨンのような工合に殖えて参りませんが、併し昨年の増加率が非常に下がつたことはなぜかと言えば、要するにこれは一般の国民の心理がございまして、元はインフレーシヨンの間は金より物であつたのです。今度は述に物より金ということになつて参りました。一般も金を持つておつても別に心配はないということから、預金が次第に殖えて来ておるというわけです。別に特に増加の見通しはございません。
 それから前の長期資金の問題は非常に皆困つておりまして、長い間各方面から論議されて来たのであります。やはりこれは普通銀行がやるべきではなくて勧業銀行であるとか、興業銀行であるというようなところに任してやるべきだという考えは、一般に持つておるのでございます。それからまあいろいろ変化が最近ございまして、一般銀行でも長期金融をするのには、債券を発行してよいという法律が出そうなのであります。これも銀行によりまして或いはそういうことをやるものがあるかも知れませんが、ちよつと長期金融はやはりなかなか玄人でないとやれませんから、私共の考えとしては興業銀行あたりに主としてやつて頂く。それに対して我々はできるだけ興銀さんに協力するという立場にありたいと思うのですが、併し長期の銀行債券が発行できるということは、或る程度長期金融に対する大きな希望ができるわけでございます。
#30
○前之園喜一郎君 証券界が非常に混乱したことはすでに御承知の通りでありますが、今日あたり株は暴騰しておるようですが、これは見返資金か何かの放出があるというようなことを考えられておるようですが、この安定せしめる対策、どのぐらいで安定するのが一番よいのか、或いは将来の見通しというようなことについて一つお伺いいたします。
#31
○公述人(荻野政孝君) こういう対策は早ければ早い程よいのですが、昨年の秋頃悪くなつて参りました。あの頃にやればそう巨額な金でなくても済んだが、長く続いて来るとなかなか少々の金では済まないということになります。株は戰前には三百五十億ぐらいであつたものが、今非常に巨額なものになつております。ですから少々の融通では、一般の大衆がこれに向つて来なければ非常に響かないというような実情になつておるわけであります。昨今上つて来たのはそれに対する持株会社ができるということが、可なり濃厚になつて来た。市場ではそういう気構いのところへどうも今まで非常に売り過ぎておる。安く放し過ぎておるから、穴埋をしようということもあると思います。そんなことで、そこへ又ちよつとデマが入つたので、昨日よくなつて来たのだろうと思います。
#32
○前之園喜一郎君 具体的な対策は……。
#33
○公述人(荻野政孝君) 具体的なこととしては、経団連あたりでやつておられる持株会社を作るということである。一月の相場では相当基礎のあるいい株が非常に安くなつておる。これは日本経済のためによくないと思う。
#34
○堀越儀郎君 今の債務償還の問題ですけれども、先程岡さんのお話で金融業者や銀行方面ではむしろ喜んでおらないのではないか、こういうふうな強い意見を言われたのですが、あなたの方では喜んでおられないのですか。
#35
○公述人(荻野政孝君) 喜んでおらんというわけではないのです。相当償還がございましたし、今後も或る程度あつた方がよいと思います。それは程度の問題でございます。
#36
○堀越儀郎君 政府の狙つておるところは国際経済への復帰に当つて、日本の経済信用を得るために、どうしても債務を償還しなければならないという立場に立つておるようでありますが、あなたの先程のお話を伺つておりますと、そうじやなく生産という面に、むしろその金を廻した方がよいのではないかということで、それは意見の食違いと思ういますが。
#37
○公述人(荻野政孝君) 政府やGHQあたりの意向も、そういうところにあるのではないかと思うのですが、そうだとするとこれは止むを得ないと思います。それが或る程度許されるならば……デイス・インフレーシヨンならよろしいが、デフレーシヨンのために非常に事業が衰微しておる。それはやはり一方では国民の消費面が足りないから起つておるので、敗戰国民としては幾らか贅沢な考えかも知れませんが、どうしても、軍の大きな消費に替えるに、一般国民の消費が或る程度ないと、日本の産業というものは持ちこたえられない。それにはやはり政府が大きな国民の消費面を作つて、そして或る程度経済の再建をして行かなければならんじやないかと思います。
#38
○堀越儀郎君 所得税の税率の問題ですが、あなたのお考えとシヤウプ案とに開きがあるのは、どういう点でそうお考えになりますか。
#39
○公述人(荻野政孝君) それは今申上げましたように、物価が非常に高くなつておる。二十万円以上百万円までというと非常に巨額のようでありますが、物価は戰争前の百倍になつておるのだから、二十万円と言つてもそれは戰前の二千円である。それから半分の税金を取るということは相当苦しいだろうと思います。現在二十万円ぐらいの年收のある人は一般大衆、殊に勤労階級に多いと思います。こういう人々の負担をできればもう少し軽減したいと思います。その財源としては間接税あたりをもう少し考えたらどうかと思います。具体的にはまだ調べておりません。
#40
○理事(岩男仁藏君) 次は東京商工会議所理事、五藤光学研究所長の五藤さんにお願いします。
#41
○公述人(五藤齊三君) 私は今御紹介を頂きました五藤齊三であります。中小企業を代表いたしまして商工会議所の理事をいたしておりますものでありまして、全く財政につきましては素人であります。実は予算説明書を頂戴いたし一応拜見いたしましたけれども、詳しい計数的なことはなかなか頭に入りませんので、とにかく予算に関連を持ちます政策的な意見を、中小企業の立場から述べさせて頂きたいと存じます。
 先程第一銀行の頭取の荻野さんから公述のありましたように、先ず歳入の面から申上げて見たいと思います。所得税の中小企業に対する過重の問題でありまして、これは荻野さんも御指摘になりましたように、シヤウプ勧告案の実施を見ようといたしております二十五年度の予算案によりましても、二十万以上百万までの中産階級の所得に対して、尚且つ甚だ過重であると思うのであります。これは御同様敗戰国民として忍ばなければならない必然的の運命である。こういうふうに考えなければならんのでありましようけれども、具さに案を見ますというと高額所得者の面におきましては、相当の軽減が計られるようになつております。少額所得者におきましては戰前の税制によりますものに比較いたしまして、四〇%程度であつて、高額所得者におきましても三〇%以上の軽減を図られるようなふうになつておりまするのに、国家の中堅であります中小企業及び勤労階級の、いわゆる中産階級に対する所得税の軽減率が甚だ低いと思うのであります。即ち五十万円程度の年收に対しましては、一割強しか従前の税率よりも軽減せられていないように思うのであります。これは甚だ中産階級の冷遇であるというふうに私共は考えるのでありまして、何とかこのシヤウプ勧告案に盛られました勤労控際を、一〇%を一五%に引上げることについて関係当局の了解を得られますように、当局の御努力によりまして、この中産階級の所得税の軽減が図られますように、御一考を願いたいと私は考えるのであります。
 私、税のことに多少関心を持つておりますので、外国の税の問題等も一応調べて見たのでありますが、これを米英独の戰勝国及び敗戰国の実態と比較して見まするのに、アメリカは持てる国であり、富める国でありますので当然でありましようけれども、三百六十円レートで換算すると、大体九十六万円ぐらいまでは所得税がかからんように思われます。英国におきましても、これは御承知の通り、国家保障制度が非常に発達いたしまして財政上非常に多くの支出を要する英国、而も戰後の再建に対しては饑餓輸出ともなつておりますような状況の英国におきましては、大体四十六万円程度まで無税であるように思われるのであります。又我々日本と共に今度の世界大戰におきまして一敗地に塗れましたドイツにおきましても、十万円程度の年收に対しては免税をせられておるように思われるのであります。それに比較いたしまして、日本の中産階級は、営業者の場合は今までの税制で見まするならば、四万六百円から税を取られることになるように思うのであります、これに対しましてシヤウプ勧告案の実施に基きまして、或いはこの勧告の線を超えて勤労控除等を引上げられましたような関係から、まあ私これは細かく存じませんが、六万円或いは六万何千円ぐらいまで免税点が上るのではないかと思うのでありますけれども、これらに比較いたしますというと、日本の中産階級の税の負担の重圧というものが、非常なものであるということが言えるのではないかと思います。シヤウプ勧告案を読んで見ますというと、この程度の課税の実行は日本に在留しておる外国人でも恐らく認容するであろうというふうな書振りをしておられるように思いますが、実際は大違いであります。政府においてもこれに対しては外国人に対する所得税、課税の特例を発布せられて、所得額の五〇%の天引といつたような案を出されておるようであります。私商工会議所におります関係上、アメリカ商工会議所の方からもこの問題についてはまあ申入れのようなものを持つて来ておることを聞き及んでおるのでありますが、シヤウプ勧告案の実施に当つて、その通りやられるというと、日本にいる外国経済人は到底日本に留まる魅力は何も持ち得ない。アメリカの全くの市民的な年收三千ドル程度の、この程度の人はまあ御承知の通り、日本の金に換算いたしますと年收百八万円ということになるわけでありますが、この程度に対してはアメリカにおいては所得税は一%の三十ドルしか拂わない。地方税その他の負担を加えてもたかだか一〇%程度の税負担に過ぎない。であるのに拘わらず日本のシヤウプ勧告案に基く税制においては六〇%以上を地方税、国税として拂わなければならん。これでは日本においてアメリカ的生活が行われないばかりでなく、ますます努力をして資本を蓄積しようと思つても、到底これはなし得ないことであるから、このままの施行は到底認容ができない、こういつたようなことを申しておられることを私共昨年の十月頃から聞き及んでおつたのであります。それに対して政府も特例をお考えになつたことを過日新聞で承知いたしまして、さもありなんと考えたわけであります。そういう観点から、この日本の中産階級が相変らず税のために非常な苦しみを嘗めておることに想到せられまして、今後二十五年度の予算の御審議に当りましては、この点につきまして格段の御配慮を願つて置きたいと存ずるのであります。これについてちよつと余談でありますが、昨年の十一月のリーダース・ダイジエストにイギリス人はなぜ賭けが好きかという記事が載つておるのをお読みになつたと思いますが、英国におきましては最近財政の膨脹から徴税額の限界と考えられるような状態になりまして、今まで多額の資本を持つておる人の外は幾ら勤勉であり、幾ら有能であり、幾ら創意工夫をめぐらして仕事をしても決して新らしく資本家になる見込みがない。書記の子は書記、小使の子は小使で一生を終るより外はないということが、イギリスの現在の経済的社会情勢であるように書いております。でありますから、只今日本で宝くじ、競馬、競輪が大流行いたしておりますけれども、英国におきましてもラグビーくじというものが非常に流行であるそうでありまして、毎週々々千六百万人がこのラグビーくじを買つておる。これに当るというと、一人で七万五千ポンド、日本のお金に換算いたしまして一億八百万円にも当る資本金がころげ込む。これを僥倖するより外にブルジヨアでない人が金を蓄積することは到底できない。こういう状態に財政上追い込まれておるので、国民は滔々として射倖心に走つておるということが書いてあります。例を挙げますと最高の收入を得ておる人でも、生れたときから九十歳に至るまで爪に火を点すような生活を続けなければ七万五千ポンドは現在の情勢では到底溜まらないというのが、英国の現状であるということが書いてあります。これに比べますというと日本の中産階級の実情が、今申上げましたように英国では四十六万円程度まで免税点がある。その程度国家の保護を受けておりながら尚且つそのようであります。日本におきましては五万円か六万円以上は税を取られる。而も荻野頭取も御指摘になりましたように、中産階級においては非常に率が高く、生活の中に食い込んでおる。こういうことから考えますと、日本の今後の中産階級の生活、或いは中小企業者の苦しみはなかなか容易ならんものであると思うのであります。私はそこで考えますのでありますが、このようなむずかしい時期でありまするけれども、一つ一つの個人を考えて見ますというと、日本の貧弱な科学研究の設備の下でも、湯川博士が世界的に輝くようなノーベル賞授賞というような学問的成果を挙げられましたように、経済活動の下ではこのようなむずかしい世の中でも、創意工夫と異常なる勤勉の結果によりまして、相当の経済的成果を挙げる企業者もないことはないと思うのであります。がそれらに対しまして從来の税制、或いは今後改正せられますでありましようところの税制によりますというと、多く利益を挙げるならば累進的な説を取られる。即ち非常に勤勉であり、有能な経営は懲罰的に税を多く取る、こういうような組織になつておるのでありますが、インフレーシヨンの收束を見ません現段階といたしまして、これは又止むを得ないことかも分らんのでありますけれども、闇利得でないもの、或いは不公正な利得でない公正なる経営、勤勉なる経営、有能なる経営の結果生れました、いわゆる超過所得に対しましては、何らかの方法で税の上で報奬的な減税の制度が布かれて然るべきではなかろうかと思うのであります。今日本の制度を顧みて見ましても、終戰後わいゆる国家恩賞制度というものが多く再現せられておりませんけれども、国家社会に大きな裨益をいたしました人につきましては文化勲章が授けられ、街の発明家に藍綬褒章が授けられる。有能な人には相当国家的の褒章を與えられておる。消極的な面から申しますならば、終戰直後において日銀券が大いにインフレートいたしました。出たお金が日銀に還流しないということに対して、国家は大局的な財政の方から、これに悩まれまして、福券或いは宝くじを発行させて、これによつて浮動日銀券吸上げをしようと試みられましたことは、御承知の通りであります。不労所得でありますところの福券や宝くじに当りました者に何ら税をかけないで巨額の報奬金を與える。これも考えて見ますというと、消極的な意味において国家の要請する施策に同調する人に対する抽籤による報奬であると思うのであります。今日におきましては、もう御承知の通りインフレはいわゆるデイス・インフレーシヨンから更にデフレーシヨンに転換をしているという議論が多いように、物価は横這いをいたしまするし、日銀券の発行高はもう累増しないということになりましたので、それらの臨機的な措置はもう必要がないというので、福券、宝くじの発行も二十五年度限りで止めるべきであろうというような議論がありますことは当然であろうと思います。又今無記名定期預金という制度がありまして、闇で儲けたお金でもこれを無記名で預けて置くならば、その所得の源泉を調査ができないような機構が国家的に認められておつたのであります。これも日銀券の増嵩が停止せられました今日、もうその必要はなかろうと言つて、預金の祕密性を剥奪しようという方向へ向いておるわけであります。過日も日銀政策委員会に呼ばれまして、興銀総裁であられました岸委員等からお話を承つたのでありますが、現在無記名定期預金が七百億円あつて、これの祕密性を一時に剥奪するならば、又箪笥預金にその全部ではなくても相当額がなる心配があるので、これを一時に強行するということは大いに考えるべきであるというようなお話も承つたのでありますが、とにかくそんなふうに大体経済は横這い、安定の方向へ向いておりまして、今後はいわゆる竹馬の片足、或いは両足を切つた自立経済がドツジ公使によつて要請せられましたことは、誠に機宜を得たことであると思うのでありますが、ただこれが国家財政においての黒字予算、そうして自立経済に偏重をいたしまして、個人経済においては相変らず破綻を続けておる。これは先程来岡さんや荻野さんの指摘せられました通りでありまして、誠に遺憾でありますが、私はむしろこれを或る程度緩和せられまして、荻野さんも指摘せられましたように、国家の債務を償還するということに相当の手心を加えられ、せめて国内債務の償還に対しては今暫く見送つて、日本の真の経済再建のできるような方途にこれを流用するというふうにして頂きたいと思うのであります。歳入の問題に対しましては以上の程度に止めて置きまして、歳出の面におきましてはこの中小企業の現在の窮境に対しまして、何らかの手を予算の上に打つて頂きたいのであります。先程岡さんも触れられましたように、蜷川長官が三月危機を公言せられたということで進退問題までお起しになつたわけでありますが、正に三月危機が段階的に来るかどうかということは、これは多くの議論もおありになることだろうと思いまするけれども、とにかく中小企業の窮境というものはもう隠れなき事実でありまして、御承知のように街に氾濫する物の投売りの状態を御覽になりましても、或いは物を九割引きで売る、その売る原因がとにかく焦眉の急に応ずるように資金を何とかして獲得しなければ税金攻勢に到底堪えて行かれないので、何とかして税金を作らなければいかんというようなことで全く損得を顧慮することなく、物を投売りしておるような状態であります。而もこれは商業者の面におきましてはそういう投売りや夜逃げをした後の物を安く仕入れて来て、それに一定のマージンをかけて市価よりは安く売るということでありますから、大きな影響はないように思われますが、製造業者の面につきましては全く惨憺たるもので、滯貨の累増によりまして、どうしても物を投売りしなければならんというような情勢に追い込まれておると思うのであります。これを何とかして救済いたしますのが、刻下の急務であると思うのでありますが、あまその原因は先程も申しました税金攻勢がこの筆頭であると思うのでありますが、一面におきましては国内における有効需要の減退によりまして、売行不振に陥つておりますこと、これ又隠れなき事実であります。これは貿易の問題でもレートの設定以来非常な難航をいたしておりまして、或る種の物はなかなか軌道に乗らない、経営合理化もその限界に達して、これ以上の合理化は無理だと言いながら、又なかなか先方の要求するような値段に到達しないというような企業も多々あるように聞いておるのであります。從つて起ります資金の逼迫でありますが、その資金の逼迫に対しましては、戰前におきましては問屋金融というものに中小企業は非常に依存をいたしておりましたけれども、戰後におきましては問屋的な面における経済的な弱体化によりまして、問屋から金融を受けるということは事実上非常に困難な状態になつたのであります。むしろ中小企業者がその生産品を問屋に貸付けて、その代金がなかなか回收せられないというような実情が現在の状況である。でありまするので、これらの対する資金の供給を是非とも急速に図らなければならんと思うのであります。それに対しましては、過日の新聞にも出ておりましたのでありますが、復金の余裕金を市中銀行に預金せしめて、これを中小企業の面に流すように施策をするというようなことが現われておりまして、誠に政策としては結構なことであると思うのでありますが、昨年の年末におきまして、年末決済のために中小企業の困憊を救うために政府は百億円の預金部資金を多くの銀行に指定預金をせられまして、これによつて中小企業に対する年末金融の疏通を図つたものでありますが、これ又大変結構なことでありましたが、その成果を一月以来段々聞き合わして見ますというと、この親心ある政府の施策が、実際は多くの効果を挙げていない。大体市中銀行におきましては先程荻野さんも言つておいでになつたように思いますが、日本経済の前途の見通し難のために、全く石橋の上を叩いて渡るような金の貸し方を銀行業者がやつておられますがために、この指定預金等も実際は中小企業の面には殆んど流れていない。むしろ日本銀行に対する借入の返済にこれが多く自然に廻つておるというような状態を見受けるのであります。こんなことから考えましても、この復金の余裕金を指定預金にせられますことでは、到低窮迫しておる中小企業に金が流れて行かないと思うのであります。でありまするから、これは是非とも直接投資の形を取つて頂きまして、復金、或いは商工中金、進んでは市街地信用組合等の方にもこの国家資金が廻りまするし、延いては見返資金等もこれらの零細金融機関にまで均霑をいたしますような施策を是非とも取つて頂きたいと思うのであります。又近時不動産金融機関の再開問題が非常に重要なりとして取上げられておるのでありますが、過日も勧銀の方でいろいろ御意見を承つておりますというと、方向は正にその方に向かなければならないし、前進をしておるけれども、実際の問題としては、長期資金獲得の方法が困難であるから非常に資金難の状態である。もう一つは現在市中銀行におきましては、厖大な無利息の当座預金を抱えておられますので、金利のコストというものが非常に安い。ところでこの国家資金を以て今後賄われようと考えられております中小金融及び不動産金融の面におきましては、見返資金等は七分五厘の優先配当を約束しなければならない。こういうことになつておるようでありますが、この七分五厘の優先配当を実際採算の上で計算をいたして見ますというと、銀行業者の説明によりますというと、利益の中税金を拂つた後で七分五厘の優先配当をするのであるから税込から換算いたしますと、一割一分五厘乃至一割二分になる。これが要するに長期不動産金融の資金コストであり、中小金融の資金コストである。従つて今利息を可なり低金利政策を強行しなければいかんという観点からやかましく言われておるのでありますが、それにマツチするような方法でやるというと、銀行の経営が全然成り立たん。こういつた二つの隘路があるということを実は承つておるのでありますが、これらに対しましても、この見返資金による優先株の引受の金利を五分程度に引下げて頂きますように、関係方面へも御折衝を願いたい。こんなふうに考えるのであります。そういうことによりまして、中小企業にも幾らか金融の疏通が翹望せられる状態になることを私共は切望をいたしますわけであります。又中小企業專門の金融機関を作つて頂きたいというようなことも、復金がこの余裕金を応急的に流用を許されまするならば、この中小企業專門金融機関の問題もよく検討の後にお委せになつてよいと思いますが、若しそれが許されるならば、中小企業金融の機関を至急法制化せられて、これに対して国家資金をこれに流して応急の中小企業金融対策をお樹てを願いたいものだと思うのであります。尚商工中金の活躍を今後政府においても期待せられておるようでありますが、この商工中金は協同組合の金融機関として存在いたしておりまする性格上、組合員個人の金が貸せない、預金が預かれないという悩みに多年悩んでおるのであります。これらに対しましてはイデオロギー的には組合精神に反するといつたような反対意見もありまするけれども、実際問題といたしましては、これあるがために商工中金の預金が集らないし、又貸付も十分徹底した程度に行なえないということは隠れもなき事実でありまして、商工中金当局におきましてもこの制度の是正せられることを切望しておられるやに聞き及んでおるのであります。これは予算措置には関係はありませんけれども、併せて中小企業金融のために今後の最も重要な施策であると思いまするので、是非とも御努力が願いたいと思うのであります。そうしてそういう観点から考えますというと、二十五年度におきましては中小企業庁を通産省の内局にせられまして、いわゆる機構縮小によつて経費の節減を計られようと考えておられるようであります、これはむしろ反対に従前通り外局として在置するばかりでなく、徴税機構のために多くの税務職員を採用せられまして、税務機構の拡充を計つておられますように、中小企業のために是非とも中小企業庁は外局として在置せられ、尚且つ拡充のできますような予算を配慮願いたいものであると思うのであります。そうしてもう一つありますが、これは信用保証協会の問題でありますが、中小企業の金融難を打開します一つの制度といたしまして、各都道府県に信用保証協会が生まれまして、東京都におきましては昨年末五億円の予算を組まれまして、即ち所定の銀行に指定預金をせられて、この中小企業金融の疏通を計画をしておられるのでありますが、これも五億円という比較的少い金額でありまするので、十分なる効果を挙げ得ないような状況であります。各府県にできております信用保証協会の挙つての意向といたしましては、この信用保証協会の中央機関を作つて、これに国家の再保証を願いたい。こういうことが強く要請せられておるのであります。これ又予算を伴うことでありまするけれども、その方向に参りますことによつて、刻下の危機を中小企業の面から緩和することができるであろうと思うのであります。
 非常に長くなりましたが、大体私の申上げたいと思いますことは、これらの諸点でありまして、その結果、予算の均衡が崩れますことに対しましては、如何にすべきやという問題でありますが、これは冐頭に申上げましたように、私は財政のずぶの素人でありますから、細かいことはよく分りません。ただ先程も申しましたように政府の施策として取上げられております債務償還の中で、国内債務の償還は今暫く延期をせられることをお考え願つて、そうしてこの面から数百億の金を浮かして、或いは公団の整理も今鋭意やつておいでになりますが、公団の手持ち物資というものは数百億の多額に上つておりまするので、これなども至急清算を促進せられまして、これらを資金化するという問題、或いは国有財産の拂下げについても、これ又鋭意大蔵省において促進はしておられるようでありまするけれども、これ又徴税の強行と相俟つて、これを促進せられまして、これらの面から財源を捻出せられまして、一つは歳入の減少を税法上カヴアーをする。又他面におきましては、中小企業に対する支出の面をこれらによつて賄うように御配慮願いたいと思います。細かい計数的なことは私共どうもよく分りませんので、專門の議員諸氏におかれまして、一つ御検討の上そういう方向に進まれますことを中小企業を代表いたしましてお願いを申上げたいと存じます。私の公述はこれで終ります。
#42
○前之園喜一郎君 中小企業の立場から附加価値税に対する御感想を簡單に伺いたいと思いますが。
#43
○公述人(五藤齊三君) 附加価値税は、これは非常な問題でありまして、私共聞くところによりますというと、今の税率を施行せられましても、恐らく従来の負担の数倍に上るのではないか、又御質問の外でありますけれども、固定資産税等も非常な増徴になりまして、従来の五倍、六倍というような税を取られる結果になるのではないか、この点は大きな関心を持つております。ただ一つ言えますことは、有能な企業、いわゆる黒字企業に対しましては、これは損失勘定として認められますので、收益力の多い企業は致命的な影響はないと思うのであります。まあこの際でありますので、いずれもコスト高の売値安という状態に追込まれておりますので、全体的にはこの問題は非常な影響があると思います。地方自治庁におかれましても鋭意これを改善せられるよう研究せられておると聞き及んでおりますが、国会においても成るべく税率を低くしようというような御努力を続けられておるかに聞き及んでおりますので、そういう御努力に期待を申上げておるのであります。
#44
○木村禧八郎君 只今のお話で中小企業者と金融の問題ですが、冐頭にお話しになりましたようにいわゆる中小企業者の一――三危機は、今お話しになつた程度の金融措置で、いわゆる中小企業者の危機というものは克服できるものかどうか。
#45
○公述人(五藤齊三君) 或る新聞の記事にこういうことがありました。中小企業というものは雑草のようなものであつて、大して国家的にも役には立たんけれども、幾ら踏みつけても踏みつけても枯れないのだ、引き抜いても引き抜いても又生えて来る、こういうような記事を私読みまして、一つは非常に我々中小企業として多くの侮辱を感じました。他面におきましては中小企業の根強さ、そうして又これが国家のために間接的に寄與している面に大きな自負を感じたわけであります。そういうようなわけで非常な危機を叫ばれながら、どうしても金融がつかなければ、昨年の暮はもう夜逃げだと言いながら、実は今日までそれが何とか途がついておるというような状態であります。それは親戚、知己、故旧を頼つて金融を頼んだり、或いは町の高利貸に依存をしたりというような状態でありますが、こういう無理を重ねて行きますというと、今に肺病患者のようになつて次第に弱つて、三月危機とは申しませんでも、本年のうちには概ね整理をされるような状態になるのではないか、こういうことを私共は危惧いたします。
#46
○木村禧八郎君 実は御質問を申上げましたのは、中小企業庁が中小企業者の金融対策として考えているのは、大体今は合理化資金とか、設備改良資金として多く出しておつて、結局まあ資本金二百万円とか或いは使用人二百人程度、その程度の中小企業者を中心にして合理化資金を出している。それで大銀行或いは又国民金融公庫とか、そういうところから金を出すにしても、結局ペーイング・ベーシスによつて出すのだ。従つて見込のないものには出しつこないのだ、今の金融機関を通ずる限りは……従つて只今お話のような形の金融及びペーイング・ベーシス、それによつては中小企業者のもつと五人とか十人とかいう零細な中小企業者の金融なんというものは救われないのじやないか。やはりどうしても国家補償を併うか、或いは国家が救済的な金融として金融をするか、或いは金融の方でできなければ税金の方で考慮する。現在では中小企業者が困つている。税金を政府は取つてそれで公債の債務償還をして、その金を大銀行にやつてしまう。大銀行では金が行くと中小企業者には貸さない。そういうことは止めて、税金の面で、ペーイング・べーシスでどうしても貸さないから、税金の面で零細な業者に資本の蓄積をさせる。そういうことをしなければ救済がつかないのじやないかと思います。
#47
○公述人(五藤齊三君) そこでありますが、信用保証協会におきましては、要するに損失補償ということで、損失補償を一歩前進いたしまして支拂補償まで今やつております。それで中小企業者になり代つて立替える。或いは敢れなければ損失を補償する。こういうところまで信用保証協会がやつているわけでありますが、それに対して考えますことは、彼の豊田佐吉翁が世界に冠たる自動織機を考案発明せられまして、日本の纖維業界の今日の基礎を築いた一つの蔭の努力をされたのでありますが、これはもう故人になられました鐘紡の副社長福原氏が非常な苦労をせられまして、資金的にも大鐘紡をバツクニせられて多くの援助をされた。それに対して又金融業者も鐘紡の信用を信頼して、貸した金を容易に取立てないということを多年に亘つてされたので、非常に困難な事業が完成をしました。こういつたこともありますように、中小企業の面におきましても貸した金は例えば六ケ月とか一ケ年で必ず返済しなければならない、こういつたような行き方は非常に無理であると思うのであります。決して救貧事業的な、厚生省の予算のような貸金は必要ではないと私は思います。必ず再生産によりまして中小企業が浮び上つて、将来返済ができるのみならず、ここに大きな再建が生まれる、こういうことが言えると思いますので、長期資金、回転資金、運転資金にいたしましても、一年、二年、或いは三年ぐらいこれが徴收を待つてやる、こういう行き方を、一つ温情のある融資が行われますような施策が望ましいと思います。
#48
○理事(岩男仁藏君) どうも有難うございました。
 次に群馬県の時計商の伊藤正敏さんにお願いいたします。
#49
○公述人(伊藤正敏君) 私は群馬県の伊藤正敏でございます。
 非常に專門的のことを学んでおりませんので、專門的なことは分りませんが、ただこの二十五年度予算が実施せられるに当りまして、計算と実際はどう地方農村に行つたときは響いて来ているか、この一例を挙げてやつて行きたいと思います。これは私達の村ばかりでなく、全国の他の村に対しても多少は共通するところがあると思うのであります。まあ群馬県といたしましても東京より二百キロ以内の近いところにあります一農山村でございますが、急に集めた資料で、極く小範囲でしか申上げられないので、誠に申訳ないとは思つておりますが、ここにちよつと申上げて置きます。この点に多少なりとも参考になるところがありますれば幸いでございます。一般的における金詰りは、一山村にまでも大きく現在響いております。購買力の減少が目立つておる。特に一年を通じて或る一定の時に金銭の收入がある農村は、その收入した金をやたらに毎月月給の入つて来る月給取りのように、どんどん使つていいというものではありません。やはり計画を立てて愼重に使わないと、或る時期において金が全然なくなつてしまうというようなことが起るのであります。それで農村では金が入つても直ぐ使うというようなことはしないで、物から金への気運は非常に強くなつております。従つて購買力は減る、金詰りは強くなるし、これに加うるに徴税の強行で、ひと頃のような農村の景気は見ることができません。従つてこれらの地方における業者は、都市における業者とはおのずからその点違うところがあると思います。又農家にしても、都市に近い農家とは全然話にならない程の差がございます。ここに私達の農村を中心にしまして、A並びにBの二つの村についてその実例をちよつと申上げて見たいと思います。片方の村は東西十六キロ、南北約十キロ、面積一万七百十九町歩ある村でございますが、その人口は八千七百五十人、他の村は東西十二キロ、南北五キロ、人動は七千三十人であります。農地の広さは、Aの村は田が百三十三町歩、畑が五百十町歩、Bの村は田が四十五町歩、畑が四百五十五町歩の非常に田の少い村で、田の多い村と比較すると、收入の道は全然違うと思います。農家戸数は、混同し易いですからBの村についてのみ申しますと、農家戸数は八百九十二戸、その一戸当りの平均面積は六反二畝という貧弱なものでございます。それに対する所得の決定額は、一反歩当り七千円かかつております。それデ農家の稼働人員はと申しますと、二千六百七十六人、これは約二十歳から六十歳までの働ける者は、男でも女でも全部含めた数字でございます。そこで税金の対象となる農家はというと、八百九十二戸の中七百二十二戸は税金の対象になつております。又農家の外に百七十九人の営業者がございます。又その外医者とかその他の職業として十四人、合計九百十五人の所得の申告をする人がおるわけでございます。ところが実際に税金を納める戸数は、扶養控除その他を差引きまして、九百十五人の中で五百三十八人、これが実際に税金を納めておる戸数です。その五百三十八戸の納める税金は四百九十六万八千円でございます。これは実際に役場に入つた税額を調査したものでありまして、間違いはございません。そのうち営業者の方の税額は、一人当り事業税といたしまして四千四百五十三円、所得税の方が九千二百三十四円、一人当りの所得二万七千五百四十五円に対して、税金は所得税と事業税だけで一万三千六百八十七円、これはもう事実税金で、それだけでもう全所得の四〇%以上の税金が支拂われております。その他に、今度は住民税その他村に対する独立税が相当かかります。
 こういうものを去年の一例から比ベて見ますと、実際に政府が示してある税金の税率の表から比べて見ますと、大体村民税その他を拔いただけが、実際に税金の額と同じになつております。だから文書でできておる税金というものよりは事実納める税金の方が、村へ来て納めるときは高くなる。こういうことはないわけでありますけれども、実際面において非常に高くなつておる。これは扶養控除まで差引いてこういうふうになつております。
 それでこの村全体の收入といたしますと、二十三年度の決算報告書によりますと五百二十七万四千二百六十七円。支出が四百六十四万二千四百五十四円。そのうち税金として入つたものは三千三百八十一万四千二百六十五円、これは收入のうちの税金として入つたものであります。又国から貰います配付税が十四万二百円。このようにして、村の財政の多くは税金で賄なわれておりますが、事業その他は到底ない村でありますから、仕方はございませんが、二十四年度所得決定においては、所轄税務署で決定した去年の所得は、二十三年度の所得よりは五割から十割所得額が多くなつて来ております。従つて税金も、税率は二十四年度の方が二十三年度よりは相当減つておりますが、併し所得額というものが多くなつたから、実際に納める税金は事実殖えております。このように税率が幾ら安くなつても、所得額が殖えて来るのでは、実際何にもならないと思つております。税金は前年度の所得のうちより出ましたが、その税金の多くは、実際は二十四年度のように営業不振の多い業者のあつたときは、税金を拂うには確かに拂いましたが、それは前の年の黒字を以て拂つたのではございません。前に仕入れて置いたような品物を売つて、十売つては八仕入れ、八売つては六仕入れるというようにして、その差額の金を以て税金を拂つたような状態で、誠に無理に無理を重ねて拂つて来ましたので、こういう状態をいつまでも続けるようなことはとてもできないのであります。この蔭には、購買力の減少による金づまりのために、多少損しても、お客さえあれば、もう品物は売つて金に替えた方がいいというような窮地を切拔けるために、早く言えば税金を納めるためにした業者が相当多いのであります。ここで二十五年度の予算ができまして、業者の多くはこれに相当期待をかけております。この二十五年度予算が完全に実施されまして、税金が安くなる、所得税は確かに減ります。併し地方税が殖えればその実際においては大した差はないと思つても間違いないと思つております。税金が多いということは結局、村の金詰りはますます多くなるというような関係で、どうかこの点については事実と理論とがどのくらいの差を持つておるかということを、よく調査して頂きたいと思います。又その外に六三制の中小学校施設の実施については、政府よりは補助費として約五割に当るといつておりますが、四十五億円が出ておりますが、これによりますと、昭和二十二年から着手しておりました六三制の施設は一応完成し、全国の二千六十六市町村に校舎面積で、学童一人当り〇・七坪、合計坪数において六十七万四千八百三十四坪の校舎が完成するそうでありますが、今までの総経費百十八億三千九百万円、坪当り一万七千五百円、この半額が国庫から出されていることにはなつておりますが、残りの半額はどこから出るか、これは各市町村の負担により、一部の市町村では公有財産、例えば村有林を売るとか、そういうようなことによつて建設費に当てている所が相当あるのであります。ところがそういうものを持たない多くの所では、残りの金額を住民税の何倍にも相当する寄附金によつて補われております。然るにこの寄附金がそんなに易いものじやないのであります。住民税も高くなつておりますところへ持つて来て、十倍、十五倍、二十倍というような寄附金が、大体強制的に新制中学の建設に当つては来ております。併しこれは皆自分の子供が学校へ行つている親にして見れば、無理もないと思うことでございますが、無理に無理をして、出せる人は出して学校ができ上つておる。出さないという人は多少あつても誠に止むを得ないことだと思つております。ではここで私達の村において学校を建設したその実情は、どのくらい実際金が出してあるかというと、Aの村においては村有林の拂下げによつて、建設費の国庫補助の残りの大部分を支出して、残つた僅かを村民税のほんの少々で新制中学を建てております。併しこの村は非常に面積が広いのでございます。面積が広く中学校は中央に一つ、ところが小学林は六校ございます。東、西、南、北、南西、その他……中央に五年生以上が入る学校がありまして、……ここに一年から四年もあります。合計校舎数にして八ケ所の校舎を持つておる。こういうように村の財政が学校を造るときには金がかからなかつたけれども、こういう教育の方に相当金がかかつておれば、自然と住民の負担する金は違つて来る。それから又Bの村は校舎は丁度戰争前に拵えておる。それで東と西と中央の三ケ所に学校があつて、そのまん中の学校を新制中学に振り向け、両端にあつた学校を小学校に廻して、両端の学校に一年から六年までを全部施設を直して收容して、まん中にだけ新制中学生を置くというようにして、学校建設には直接金はかかりませんでしたけれども、村が非常に細長く、まん中に利根川の支流でございますけれども、相当大きな川が流れておる。県道が川に沿つて走つておるために、その川にかかつておる橋の費用というものは全部村で持たなくちやならん。丁度まん中辺を流れておるので、その橋は相当自動車が荷をつけて通らなくてはならない。県道に匹敵するくらいの頑丈な橋を拵えなければならない。このような橋は大体五つ、その外でちよつとした荷車くらい通れる橋が三つ、こういうふうに片方の村は学校で金がかかり、片方の村はその川で金がかかる。村々によつて非常に違います。又いま一つのCという町では、大体人口一万、中学校を新設して、非常に大きいので二十四教室建てました。これは町民税の大体十五倍平均の寄附金によつて建れられております。その他この町は自治警察は国庫補助によつてやつておるが、結局これに対する人件費というものは相当町からも出さなくちやならない。そういうような関係で相当金がかかります。こういうように村々によつて同じ税務署から税金がかかつて来ておりましても、実際に住民の負担する税金というものは、村へ行けば全然違つて来るのであります。税金という形でなくも、いろいろ寄附金とか、そういうような名義によつて出る金というものは、村によつて非常に差がありますから、こういうところはできるだけ調査して、今年度から行われます平衡交付金というようなものに対しては、そういう村の実情によつて相当考慮して頂きたいと思つておるものであります。非常に地方の農村が都市の農村に比べて苦しい立場にあるということは事実でございます。これを何とか切り拔けるためには農村に対しても、公共事業的な事業を早急に実施して貰いたいというような意見も相当ございます。政府におかれましては速かに農村の窮乏を救つて貰う、日本の相当数を占める農民が苦しければ、そこにおる業者も自然と苦しくなつております。このような状態はよく実情を調査して頂けば分ることと思いますが、どうか成るベく早く施策を講じて頂きたいと思つております。以上簡單でございますが……。
#50
○木村禧八郎君 先程税率が減つたが、税金が多くなつたと言われた根拠ですね。それは国税についてですか、村の……。
#51
○公述人(伊藤正敏君) これは所轄税務署におきます国税についてでございまして、それで結局村で課税する地方税は、その税務署の国税を基礎として一割八分はかかつて来ておる。村と国税は同じ税金で……。
#52
○木村禧八郎君 そこで所得が五割――十割くらい多く決定された。ところで本当に所得が殖えていたのか、やはり所得が殖えていないのにそういうように天降り的に決定した来たのですか。
#53
○公述人(伊藤正敏君) それは結局こういうことになります。二十四年度の大体初め六月予定申告を出す頃においては、まだそんなに二十三年度よりは金詰りが多くなかつたのでございます。それで税務署においても二十三年度よりは二十四年度の方が相当所得があると、こうみなして確かに三割から五割、多いところはもつと、このくらいには出さなければ更正決定が行くんだからという通知は、業者にはつきりと予定申告前に明示してあります。それでこれを実際にはないからと言つて、出さない業者は、十月の予定修正申告のときに、仮更正を受けて、それでそういうような状態で、但しここで少し減つたのは農業所得でございます。農業所得は最初七千二百円平均にかけてございました。六月予定修正のときには……それが今年の一月三十一日の確定申告において二百円だけ減りまして、大体平均七千円くらいに、これは農産物の関係で減つております。大部分は殖えたきりで実際には減つておらなかつた。
#54
○木村禧八郎君 その後実際に收入はなかつたのですか。
#55
○公述人(伊藤正敏君) 收入が事実においてあつたとすれば、あつただけは收入一杯かかつております。取つた金の半分以上は税金を出しておる。
#56
○木村禧八郎君 その取つた金の半分以上は税金に出しているということはどういう意味ですか。
#57
○公述人(伊藤正敏君) 所得税、その他事業税であります。一人の人が仮に十万円の所得を挙げますと、それに対する事業税というものは九分なら九分、附加税がついて一割八分になります。その一割八分があり、十万円に対する所得税というものが相当、四万幾千円がかかつている。そのようにして相当税金で取られております。税率が今より低くならない以上は、相当金融状題があれになつても苦しい状題はまだ長く続くと思います。
#58
○木村禧八郎君 そうですか、税率が累進して来ますからね。
#59
○公述人(伊藤正敏君) ええそうです。
#60
○理事(岩男仁藏君) 御質問はございませんか。それでは有難うございました。
 以上で予定しました公述人の公述は全部終了いたしました。本日公述を願いました六名の方には、誠に貴重な御意見の御発表を頂きまして有難うございます。重ねて厚く御礼を申上げます。
 尚御承知のように、明日も午前十時からこの公聽会を開きますから、多数御出席下さるようにお願いいたします。本日はこれで散会いたします。
   午後四時十三分散会
 出席者は左の通り。
   理事
           岩男 仁藏君
           堀越 儀郎君
           田村 文吉君
           木村禧八郎君
   委員
           岩崎正三郎君
           岡田 宗司君
           和田 博雄君
           羽生 三七君
           森下 政一君
           石坂 豊一君
           小林米三郎君
           平岡 市三君
           堀  末治君
           小林 勝馬君
           深川タマヱ君
          前之園喜一郎君
           赤木 正雄君
           飯田精太郎君
           井上なつゑ君
           伊達源一郎君
           藤野 繁雄君
           松村眞一郎君
           藤田 芳雄君
           小川 友三君
  公述人
   武蔵野大学経済
   学部長     鈴木 武雄君
   東京新聞論説委
   員       福良 俊之君
   日本教員組合副
   委員長     岡  三郎君
   第一銀行頭取  荻野 政孝君
   東京商工会議所
   理事五藤光学研
   究所長     五藤 齊三君
   時  計  商 伊藤 正敏君
ソース: 国立国会図書館
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