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1980/10/23 第93回国会 参議院 参議院会議録情報 第093回国会 外務委員会 第2号
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1980/10/23 第93回国会 参議院

参議院会議録情報 第093回国会 外務委員会 第2号

#1
第093回国会 外務委員会 第2号
昭和五十五年十月二十三日(木曜日)
   午前十時三分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 十月十六日
    辞任         補欠選任
     上田耕一郎君     立木  洋君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         秦野  章君
    理 事
                稲嶺 一郎君
                大鷹 淑子君
                松前 達郎君
    委 員
                安孫子藤吉君
                中村 啓一君
                夏目 忠雄君
                鳩山威一郎君
                細川 護煕君
                町村 金五君
                戸叶  武君
                渋谷 邦彦君
                立木  洋君
                木島 則夫君
                宇都宮徳馬君
                山田  勇君
   国務大臣
       外 務 大 臣  伊東 正義君
   政府委員
       防衛庁防衛局長  塩田  章君
       外務省アジア局
       長        木内 昭胤君
       外務省北米局長  淺尾新一郎君
       外務省欧亜局長  武藤 利昭君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    村田 良平君
       外務省経済協力
       局長       梁井 新一君
       外務省条約局長  伊達 宗起君
       外務省国際連合
       局長       賀陽 治憲君
       外務省情報文化
       局長       天羽 民雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義章君
   説明員
       文部省体育局ス
       ポーツ課長    戸村 敏雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際情勢等に関する調査
 (日ソ関係に関する件)
 (北方領土問題と日ソ平和条約締結に関する
 件)
 (ソ連に対する経済措置に関する件)
 (オリンピック問題に関する件)
 (防衛問題に関する件)
 (海外派兵と公海の解釈に関する件)
 (平和外交と憲法問題に関する件)
 (沖繩における米軍に関する件)
 (極東の範囲に関する件)
 (金大中問題に関する件)
 (カンボジアの政権とインドシナ情勢に関する
 件)
 (ベトナム援助に関する件)
 (ホルムズ海峡の安全通行に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(秦野章君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る十六日、上田耕一郎君が委員を辞任され、その補欠として立木洋君が選任されました。
#3
○委員長(秦野章君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○松前達郎君 きょうは、日ソ関係ですね、この前も渋谷委員からのお話があったわけですが、この日ソ関係についてまず最初にお伺いをいたしたいと思うわけです。
 そこで、今日の日ソ関係、これを見てみますと、決して良好な状態ではない。これはもうだれもがみなそういうふうに感じていると思うんですけれども、日ソの間に横たわっている諸問題ですね、これは、第二次世界大戦を終わって相当の日時がもうすでに経過をしておるわけなんですが、それにもかかわらずいまだに数多くの問題が山積をしているという状態だと私は思っております。まあ特に世界の緊張が次第に強くなってくる。その中でかえってその問題がクローズアップされ、大きな問題となってきているんだと思いますが、そういう結果、どうも一見しますとどうにもならないような冷え切った状態に陥りつつあるんじゃなかろうか。日ソ両国の間ではまだ終戦処理すら行われていないんじゃなかろうかというふうなことになるわけですが、このことは返して言いますと、アジア太平洋地域の平和と安定に関して大きな問題を提起しているんだろうと思います。今後わが国としまして、この問題に取り組んで、当然これは国益を基本にしながら新たな日ソ間のパイプを通していく必要があるんじゃないか。このパイプによって両国間の国際的な改善を行い、世界の平和に寄与するべきだと考えておるわけですが、この点について外務大臣どういうふうにお考えでしょうか。
#5
○国務大臣(伊東正義君) ソ連がわが国にとりまして重要な隣国である、対ソ外交というのはわが国の対外関係でも重要なものの一つであるということば、これはだれも同じ考えだと思うわけでございます。
 先生おっしゃったように、鳩山さんが代表で行かれまして日ソ共同宣言が出てからも大分なるわけでございますが、それから今日の間に、非常に温かかった時代と冷えた時代といろいろあったわけでございますが、いまは確かに冷えた時代だということは私もそのとおりだと思っております。なぜかと考えますと、特に北方領土の問題が根底に横たわっていることはもうこれはそのとおりでございますが、その上に、昨年ごろから軍備が強化されているというような問題がある、あるいは去年の十二月のアフガニスタンに対するソ連の軍事介入ということで、国連でも世界の大多数の国が即時撤兵というような決議に賛成をするというようなことが、あれはことしの一月あったわけでございまして、それに基づいていろんな、対ソ経済措置でございますとか、高度の技術を要する商品の輸出の問題でございますとか、ハイレベルの人事交流の問題でございますとか、いろんな問題がそれを契機に出たわけでございまして、考えてみますと、これ日本の行動によってということよりも、私どもはソ連の行動によってこういう問題がもたらされたんだというふうに認識をしているわけでございまして、ソ連に対しましては、国連の決議を早く実行するようにというようなことを何回も伝え、対ソ経済措置ということもやっておるわけでございますが、まだそういう基本的な問題が解決されないでいるわけでございます。
 先般、国連でも領土の問題も話し、グロムイコ外相と会いましても日本側の基本的な立場を主張をしまして、日ソ友好というのはこれはもう本当に大切なことなんだから、相互に理解を深めて何とかお互いに努力をしようということで別れたわけでございますが、私どもとしましては、やはり筋を通すべきことは筋をちゃんと通して主張する、ソ連も話し合いが本当にできるような環境をつくるように、ソ連がひとつそういう具体的な行動をしてもらいたいということを言ったわけでございまして、何とか相互理解を深めて日ソの友好親善を続けていくという態度には変わりないのでございますが、いまはそういうような前提条件が、まだなかなか解決の糸口が見つからぬというのがいまの現状でございまして、私どもも日ソ関係というのは重大だということはよくわかっておりまして、いまじっとソ連の出方も見守っているというのが現状でございます。
#6
○松前達郎君 いまおっしゃったような経過であるというのは承知いたしておるわけですけれども、どうもそれぞれの通すべきことは、言うことははっきり言うと、これは結構な話なんですが、対峙をしたままほったらかしておいてもこれはもういつまでたってもパイプがあいていかない。ですから、そこのところを考えてどういうふうにしてパイプをあけるのかというのをやるのが外務省の役割りだと私は思っているわけですね。歴史的な対立の一つの経過というのは当然あるわけですけれども、これを無視するというわけにはいかない、これはそうだろうと思います。しかし、何とかしてその話し合いあるいは相互理解に対するパイプをあけようじゃないかというそういう努力ですね、これはただ対峙していてどっちかが折れるまで待っていてどっちかが何か言ってくるだろうというんじゃこれは話にならないわけですから、そういったパイプをつくっておく必要があると私は思っておるわけです。これはいろんなパイプがあると思います。それについて大臣何かひとつお考えがありますか。
#7
○国務大臣(伊東正義君) 向こうとの話し合いでは、たとえば政府べースの信用供与につきましても、これはケース・バイ・ケースでやっておることは御承知のとおりでございまして、森林開発とか、そういうものについてこの間もやったわけでございまして、そういう一つのパイプで話していることはございます。またこれは五年間の貿易協定があるわけで、またそれの見直しの会議をやらなければならぬとか、今後どうしていくかというような問題もあるわけでございまして、全然何も外務省がパイプ全部切ってというようなことじゃなくて、いろんなそういう、太いか細いかは別としまして、ルートでいろんな向こうと実務的な話をしているということは確かでございます。そのほかいろんな動き、いろんな連絡があることもございまして、私どもどういうふうにそれを取り上げるかということをいま考えているようなこともございまして、一々申し上げませんが、先生のおっしゃるように、日ソ関係というものを何とか相互理解の上で友好を保っていくという努力をするということはいろんな機会を見つけて私どもも考えてまいりたいと思っております。ただ、注意しなければならぬのは、無原則にそれをやるということはこれは私はいかぬことだ、やっぱりある原則の上に立ってこれをやる必要はどうしてもあるというふうに思っておるわけでございます。
#8
○松前達郎君 パイプがいろいろあいているということですけれども、これはいろいろな方面で、分野である程度のパイプはあいているだろうと思いますけれども、私が申し上げたのはメインパイプですね、このことを申し上げたわけであります。こういうふうなことが――外交というのは恐らくいつでもそうだろうと私は思うんですけれども、素人なんですけれども、幾ら対峙していてもどこかでやはり何らかの意思疎通があるんだという、そういう面があると思いますので、これについても今後努力をひとつお願いいたしたいと思っておるんですが。
 一九七一年の五月の十九日にコスイギン首相とカナダのトリュドー首相の間でソビエト・カナダ議定書というのが締結をされておるわけですね。それから一九七一年の十月三十日はパリでブレジネフ書記長とポンピドー大統領の間でソビエト・フランス協力原則、これが取り決められておるわけです。また、アメリカとソビエトの間でも一九七二年の五月二十九日に、モスクワですが、ブレジネフ書記長とニクソン当時の米国大統領、この間でソビエト・アメリカ合衆国間の関係の基本原則というそういうものが結ばれているわけなんですが、このことはもうもちろん御承知だと思いますけれども、この関係は外務省としていまでも引き続きその後生きているというふうにお考えでしょうか。
#9
○政府委員(武藤利昭君) ただいま例示がござましたようなソ連と米国、カナダ等々とのいわゆる協議に関するあるいは諸原則に関する取り決めないし合意というものがあるわけでございますが、これは第三国間のものでございますので、私ども正確に申し上げる立場にはございませんが、私どもの理解といたしましてはそういうものは依然生きていると承知いたしております。
#10
○松前達郎君 それは生きているということですけれども、これはこういうふうなことを、さっきメインパイプとぼくが申し上げたのはこういった意味のことを申し上げたわけなんですね。そういう意味を含めてこれは外務省としてはどういうふうに評価されておりますか。
#11
○国務大臣(伊東正義君) 日本との関係でございませんので、それをわれわれがどういうという筋のものでありませんが、その当時その当時ではそれがそのとおり妥当しているということがあるわけでございますが、たとえばアメリカの関係、最近の情勢はまたそれは生きているが、その上に立ってSALTの批准の問題とかいろいろいま戦域核の交渉とかいろいろございますのでやっておられるが、アフガニスタンへの軍事介入についてはいろんな措置がとられているというようなことでございまして、日本においても、メインパイプと先生おっしゃれば、昭和三十一年のあの鳩山さんが行かれて共同宣言があったわけでございまして、あれが一番の私は太いパイプだと思っているわけでございまして、その後、田中総理が行かれたときに共同声明を出されたとか、いろいろそういう経過できているわけでございまして、それがやっぱりいままでの日ソ関係の積み上げの一つの大きなパイプになっているというふうに私どもは了解しております。
#12
○松前達郎君 メインパイプということでいまの日ソ共同宣言ですね、これがあったということですが、確かにある意味で言うとパイプの敷設はされているんだろうと、中に物が流れてないだけだろうというふうな感じを持っておるわけですが、ソビエトはいまデタントか反デタントかという、その辺の非常に重大な選択を迫られているんではなかろうかと私は思っておるんです。軍事力においてもアメリカと同等あるいはそれ以上の軍事力を保持をしておると言われておりますし、東西の緊張というのがその軍事力をべースにして次第に高まってきている、それが状況だろうと思うんですけれども、十月の二十一日にブレジネフ書記長の中央委員会での演説があったわけですが、これを見てみますと、衛星国における最近の諸問題、これはポーランドのストライキとかいろいろな特にサテライト諸国のソビエトに対する批判がだんだん強くなってきているという、そういうふうな問題あるいは国内における経済の低迷、そういったような問題さらに官僚主義が非常にはびこっているという、これは私自身も経験をいたしておりますけれども、そういうふうな問題、こういった数多くの問題があるということを指摘を自分でしておられるわけですね。それに対して、今後は生活優先策を取り入れていきたいんだというふうな旨の発言をして、発表をしておるわけですけれども、これは見方によりますとソビエト経済行き詰まりの打開の方向転換が始まったんじゃないかというふうに感じるわけなんですが、流れが少しずつ変わってきているような感じを私は抱いておるんですが、このような流れの変化について外務省として一体どういうふうにこれを見ておられるか、その点をお聞かせいただきたい。
#13
○国務大臣(伊東正義君) 足りないところは政府委員から答弁いたしますが、米ソ関係でデタントということは、私はソ連のアフガニスタンに対する軍事介入によってかげりが出てきたことは、私はもうかげりが出ているということはそのとおりだと思いますが、やはりSALTIIの批准を、この間私ブラウン長官に会っていろいろ話しましたときも、大統領の選挙が終わればなるべく早く批准はやりたいと思っているんだというような話をブラウン長官がしておりました。
 それから、いま御承知のようにスイスで米ソ間で繊維規格の交渉が始まっているわけでございまして、米ソの間とっても私は基本にはデタントという政策は私はあるというふうに見ておるわけでございます。アフガニスタン軍事介入でかげりがあることは確かでございますが、基本的には私はやっぱり平和維持ということで両方とも考えているということには間違いないというふうに思っているわけでございます。
 それから、いまブレジネフ書記長の演説が、生活といいますか、消費物資といいますか、そういうものを優先に考えていると、十一次五カ年計画でもこれいま向こうでやっておられるんでしょうが、そういう傾向が出ておることは私どもも承知をしております。エネルギーの問題でございますとか、あるいは農業のことで農業機械の問題とか、そういうものが相当重点的に取り上げられておるということは承知しておりますが、それが具体的な計画としてまだ決まったわけじゃございませんが、そういう流れが出てきておるのかなという、いま注意しながらそれを見ているというところでございまして、軍備の増強ということとそれとどういう関連で計画ができるのかということを注意して見ているというのがいまの私の考え方でございます。
 何かありましたらどうぞ。
#14
○松前達郎君 大臣はそういうふうに見ておられるんですが、外務省の方はいかがでしょうか。
#15
○政府委員(武藤利昭君) ソ連の経済につきましては、ソ連の経済がいろいろな困難に逢着しているということは、これは一般に言われているわけでございまして、今般のブレジネフ演説におきまして、もう少し消費財の方を優先させるというような方向が打ち出されているということは、これはまあもちろんソ連がお決めになることではございますけれども、その状況といたしましては、私どもとしても理解できるところであるわけでございますし、それからソ連の経済で特に農業が不振であるということも、これも広く言われているところでございまして、農業面に従来以上の重点を置くということも、これも十分考えられる方策であろうかと思うわけでございます。そういうような意味で大きな方向は、ある意味では今度のブレジネフ演説で打ち出されているように見受けられるわけでございますけれども、これを具体的、詳細にどうするかということになりますと、いま大臣からお話がございましたとおり、第十一次五カ年計画、これは来年の二月の党大会にかけて固められていくものと承知いたしておりますので、そのような過程の中で細かい計画が積み上げられて
 いくということではなかろうかと存じております。
#16
○松前達郎君 流れが少し変わってきつつあるんじゃないかという感触ですね。これは恐らく、いま大臣もおっしゃいましたけれども、私もどうもそういうふうなことじゃなかろうかというふうに思っておるわけなんですが、一九八〇年の三月にプラウダに載った論文でこういうことを言っているんですね、デタントがもし崩れるようなことがあると、その影響は第二次世界大戦を上回るであろう。その理由は、兵器の質的向上、核兵器の拡散、あるいは国際紛争へ関与する国が多くなった、こういうことと、さらにいまお話出てました食糧問題、あるいはエネルギーその他の資源問題ですね、こういうふうなことに関するグローバルな解決策がどうも見当たらない、そういうことから国家統合しか残されなくなったと、こういうふうな論文が出されておるわけなんですね。しかも最近のソ連の軍事負担というのは、これはもうベトナムですとかあるいはエチオピア、アンゴラ、アフガニスタン、こういうふうなことで増大する一方、恐らくこれが国内経済を相当圧迫しているんじゃなかろうか、こういうふうに考えていいんじゃないかと思うんです。したがって、ソビエトが今後反デタントの道を歩くという、選択するということは余りないんじゃないかというふうな気もするわけです。こういった一連の動きを見てみますと、どうもその辺が流れが変わったんじゃなかろうか、変わりつつあるのじゃなかろうか。したがって、もしかソビエトが反デタントの道を選択したとしますと、短期的にはいま軍事的に非常に優位を保ってはおるわけですけれども、長期的に見てみますと、たとえば油の不足だとか、食糧の問題ですとかあるいは東欧諸国からの体制批判ですね、これはもう相当根強いものがあると思います。そういうものが予想されて非常に厳しい局面にソビエトは立たされてしまうのじゃなかろうか、こういうふうに考えていいんじゃないかと私は思っておるんですが、最近またそれに対して、そういったことを裏づけするようなことなんですが、イズベスチアの二十四周年記念論文、これはつい最近ですが、日ソ共同宣言に盛られた諸原則に基づく日ソ関係の発展の必要性、これを強調する論文が掲載をされたというふうに報ぜられておるわけなんですね。日ソ関係を共同宣言の諸原則に沿って建設するということ、これはさっきも話が出ましたけれども、日本、ソビエトの両国民、他のアジア諸国の国民の死活的利益である、こういうふうなことをその論文の中で言っておるわけなんですが、先ほどと同じように、これもやはり最近になって出た論文なので、共同宣言という言葉が出てきたわけですね、これについて外務省はどういうふうに注目されているか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
#17
○国務大臣(伊東正義君) 第三次大戦ということになれば、先生がおっしゃったように本当にこれ、世界人類の破滅に近いようなことになるということで、今度のイラン・イラク紛争でもソ連、アメリカがまず介入しないと、ほかの国も介入しないということをやるべきだということを私はニューヨークでもグロムイコさんに会って言ったわけでございますが、これは私は米もソも、先ほど言いましたように、やはり基本的にはデタントということの上に立って物事を考えていく、私は人類のそれが英知でなかろうか、こう思って、何としても第三次大戦は避ける。いまイラン、イラクで問題が出ておりますが、介入はしないということであそこはおさむべきだというふうに考えておりますので、この点は、私は米ソも同じだろうというふうに期待をしておるわけでございます。日本もそういう考えで外交問題に取り組まにゃならぬというふうに思います。
 それから日ソの共同宣言の話、どう見るかということでございますが、実は私、ニューヨークでグロムイコ外相に会いましたときに、グロムイコ外相に私は主張しましたのは、この日ソ共同宣言を何回も実は言ったのでございます。あそこに日ソの関係の基本は盛られており、そして領土問題もあの中に入っているんだ、その当事者の一人がグロムイコ外相なんで、あなたがあの問題は一番詳しいのだ、ということで、私はこの日ソ共同宣言を何回も実は二人の話でしたわけでございます。そのときはそれに対して確答はなかったのでございますが、最近、先生がおっしゃったように、日ソ共同宣言を最近、いままでは余り引かなかったのでございますが、これを引いて新聞論調が出たということで、これはと思って注意して見たのでございますが、次の日はまた領土問題はもうないのだというようなそれを打ち消すような新聞論調も出たということでございまして、その近の真意は私はよくわかりませんが、日ソ共同宣言を向こうが新聞に書いたということにつきましては、私は、これは日本としては注意深くこのことは見ていく必要があるというふうに思っております。
#18
○松前達郎君 その当時の報道がここにあるのですけれども、ソビエトには余分の領土はないということを言われたというふうなことが報じられておるんですが、これはあれですか、共同宣言の話を持ち出して、その後でそういうことが相手側から返ってきたんですか。
#19
○国務大臣(伊東正義君) さようでございます。
 私は共同宣言の話を何回も持ち出しまして、松本全権からグロムイコ――当時のあれは外務省の第一外務次官でございましたか――あての書簡が出、それに対してグロムイコさんから領土問題――国後、択捉を含めた――歯舞、色丹は平和条約ができると同時に引き渡すということでございまして、あとは国後、択捉も含めた領土問題も協議をしていくという、交換した書簡があるわけでございまして、グロムイコさんあなたは一番知っているんだということで、何回も私は主張したのでございますが、その後で出た言葉の中に、領土問題というようなことをいろいろ言うのは日ソの友好親善関係を維持し発展させるということに邪魔になるんだと、その領土問題が残っているという主張は、それは邪魔になることで、領土問題はもうソ連としては解決したと思っているし、余った領土はないというのは、共同宣言のことを私が何回も言った後に出た言葉でございます。
#20
○松前達郎君 そうしますと、共同宣言の内容と照らし合わしていまの経過を見まして、領土問題がどうも絡み込んでいないんじゃないかという感じもするわけですね。そのときの話の内容の中に、相手側の理解ですね。しかし共同宣言としてはやはり領土問題が絡んでおるわけですから、その点の問題について先ほど来の新しい展開が始まりつつありそうだと申し上げた、いろんな論文とか演説とかの内容を見ましても、日ソ共同宣言の時点に戻して再出発をするというような感触にとらえるんですよね、最近のソビエトのいろんな演説とかそういうものを見ますと。もしかそうだとしますと、当然いまの領土問題が絡んでくるわけですね。その点について、領土問題に関して一体これがどういうふうな意味を持つであろうかということですね、これについてどういうふうにお考えでしょうか。
#21
○国務大臣(伊東正義君) ニューヨークでのやりとりはいま率直に申し上げたとおりなんでございまして、その後に続いて日本側に条約案を渡してあるという話が出たのでございます。その条約案というのは、日ソ善隣友好の条約案だと思うのでございますが、そういう具体的な名前は言われませんでしたが、条約案は渡してあるということ、それをもとにしてやればいいじゃないかという話がございましたので、私はあれはただ受け取ったけれども、それだけで、受け取るだけだと、そのかわり日本も平和条約案というのを向こうに渡して、相互に渡したわけでございますが、それは領土問題を解決して平和条約を結ばにゃいかぬという、領土問題を含んだ条約案でございますが、これは向こうも反応を示さず、善隣友好条約は、こっちはそういうものじゃだめだと、こういうことになっているものがあるわけでございますので、そういうことに言及して、最後にはお互い日ソ友好関係の発展のために努力をしようということで別れたのでございますが、その後、最近出ました新聞、それから次の日領土問題はもう終わっているというまたそれを打ち消すような新聞が向こうで出たわけでございまして、私どもとしましてはその辺のところを、これは注意深く見ているというのが――いま新聞に出たばっかりでございますので、見ているところでございますが、領土問題についてはいままでの経緯から見まして、そう甘い観測とか、そういうことは持ってはいかぬと、やっぱり私はソ連は厳しい考えを持っているというふうに見ております。
#22
○松前達郎君 そういう一連の動きが最近あるということですね。いままでそういうのがもう全然対峙したまま議論もされなかったですね。多少それが俎上に上ってきたというので少し流れが変わったんじゃないかという感じを持つんですけれども、いまの平和条約の締結と領土問題の解決の問題ですが、領土問題を解決してから平和条約を結ぶんだと、こういうふうにいまおっしゃったわけなんですが、平和条約を結ぶその時点で領土問題を同時に解決すると、いろんなやり方があると思うんですが、外務省としてはどういうふうにお考えですか。
#23
○国務大臣(伊東正義君) 私の発言が不正確だったかもしれませんが、平和条約の中で領土問題を解決すると、ですから、もう平和条約を結べるときは中に領土問題があって解決できる、同時だというふうにお考え願いたいと思います。
#24
○松前達郎君 はい、わかりました。
 それでは次に、今度は経済的な面での問題に関していろいろとお聞きいたしたいんですが、最近対ソ経済制裁ということで、ソビエトに対しての制裁が西側諸国で行われておるわけなんですが、どうも最近それが崩れてきつつあるんじゃないかというふうな報道があるわけですね。たとえば、パイプラインの敷設に対する大口径のパイプですね、これの供給に対する問題ですとか、いろんな面で西側の国々との折衝がどうも始まっているようだと、日本にも恐らく来ているんじゃないかと思うんですね。それに対する打診が来ているんじゃないかと、こういうふうに思うんですが、アメリカの方針をそのまま受け取って忠実にやっていくのはいいかもしれませんが、そういうふうな体質ですからやむを得ないかもしれませんけれども、事実上対ソビエト禁輸を堅持はしていますが、そうこうしているうちにどうもフランスだとか西ドイツ、イタリアなどの西側諸国がソビエトとの間に大型プロジェクトの商談をまとめようとしていると、こういうふうなことでどうも崩れ去ってきているんではなかろうか。したがって、それに対してまたアメリカの方が対ソ制裁結束を固めようじゃないかというふうなことで、これはきょうの報道でしょうが、大統領選挙の後にできるだけ早い機会にアフガニスタン事件に伴う対ソ経済制裁措置に関する西側の会議を開催したい、こういうふうな報道も、基本方針を決めたというような報道がされておるわけですが、この点は聞かれていますか。
#25
○国務大臣(伊東正義君) 新聞で私も拝見はしたのでございますが、正式なアメリカからそういう要請があったとか、相談を受けたとかということはまだいまのところありません。
#26
○松前達郎君 それは計画をしている段階でしょうからまだ当然ないと思いますけれども、こういうふうなことでどうも経済的な問題一つ取り上げてもなかなかこの辺が、ある程度のパイプはあいておりますが、どうもぎくしゃくしている面がある。特に、たとえば、西シベリアの天然ガスを西欧諸国に供給する計画なんというのがあるわけですね。それに関連して日本に対しても三十億ドルぐらいの商談があったというふうな報道もされておる。そういうことでこの面は恐らくさっき大臣申されたように、経済面ではパイプあいているんだと、ある程度のパイプがあいているんだということをおっしゃったわけなんで、その一環でこれを考えていっていいんでしょうか。
#27
○国務大臣(伊東正義君) 具体的にいままでやりましたのは、政府委員の方から一応あればお答えしますが、全部やめたということではなくて、先生おっしゃるようにケース・バイ・ケースで政府ベースの信用供与ということをやったのでございまして、今後もそういう考えでいくという方針は貫こうと思っているわけでございますが、いま先生の御指摘になりましたシベリア側からヨーロッパの方に持っていく、天然ガスを送るパイプラインの話はこれは正式にはまだそういう話は外務省やなんかは相談受けておりません。新聞にちらちらヨーロッパと日本と両方に発注したらどうかというようなことが考えられているということで、新聞では読むのでございますが、まだそういう相談は受けておりません。
#28
○松前達郎君 たしかこの前の委員会で大臣がおっしゃったので、その経済制裁措置に関連することだと思いますけれども、ソビエトに対する経済制裁措置、全面的にやっているんだというのが前の、以前からの政府のお考えだったと思うんですね。それがケース・バイ・ケースというふうに発言された……
#29
○国務大臣(伊東正義君) いま先生おっしゃいましたが、われわれ決して制裁とは言ってないです。経済措置と言っているのでございまして、経済措置をとっていますと言っていますが、政府のベースの信用供与というものを全面的にストップしたということじゃないんです。ケース・バイ・ケースで実はやっているわけでございまして、実例ございましたらいまちょっと御参考に政府委員から申し上げます。
#30
○政府委員(武藤利昭君) たとえば輸銀の資金の供与にいたしましても、南ヤクート炭の開発追加ローンとかあるいは第三次KSと言っておりますが、極東森林資源開発プロジェクト等を認めているということは、すでに先生御承知のとおりと思いますし、またその前にはサハリン石油の探鉱につきましても、これはむしろアメリカの機材を必要とするという問題がございまして、これは日本からアメリカに話をしてアメリカの輸出許可をとったというふうなこともあったわけでございます。そういうことで、ケース・バイ・ケースに検討の結果実施しているものもあるということでございますし、また大口径鋼管についても、今年すでに前から話がありました分につきましては、これも認めているということはあったわけでございます。
 いずれにいたしましても経済措置というものは、輸銀資金の供与に関するものについてはそのようにケース・バイ・ケースにやっておりますが、それ以外のいわゆる通常貿易については、これは何らの制限もないわけでございまして、これは自由に行われているというのが現状でございます。
#31
○松前達郎君 それじゃ、今後もまたそういう姿勢をずっと保っていこうと、こういうことですね。
#32
○国務大臣(伊東正義君) その点は当分そういう考え方で、変化がない限りそういう態度でいこうという考えでございます。
#33
○松前達郎君 それじゃ今度また、これはソビエトの問題と多分関連があるだろうと、私思いまして、オリンピック問題についてちょっとお伺いをしたいと思うんですが、名古屋に招致をするという関係閣僚会議幹事会ですか、これでオリンピックの招致に関しては了承をして招致することが大体決まったということだと思いますが、これは非常に大きな問題がここにあるんだと私は思うんですが、たとえばモスクワ・オリンピックのときに、これは伊東外務大臣はその当時官房長官であられたと思いますが、JOCその他のところへ出向かれていろいろとおっしゃったことがある。その結果かどうか知りませんが、モスクワ・オリンピックはボイコットするということになって日本はボイコットしたわけなんですが、この影響が恐らくこれ、どうせIOCの総会、IOCでもってこの検討がされる時期が来ると思いますね。そのときに、恐らくそれに対してのいろいろな影響があるんじゃないかと私は思っていろいろ心配もしておるわけなんですが、ソビエトの方、ソビエト側が名古屋のオリンピック、日本で開催するということについてどう考えているかということについて、私実はある人から直接聞いたことがあるんです。日本で開催することについてはソビエトは特別な反対はしてないし、非常に希望もしている。そういうふうなことも言っておったわけなんですが、どうもしかし、その裏にはさっき申し上げたモスクワ・オリンピックのときの問題がひっかかってくるので、民間ベースでこれが推進されて、これオリンピックの憲章の精神にのっとった内容でその経過、あるいは実施が行われるとすれば、これは問題ではなかろう、こういうふうなことを盛んにその人が言っておったわけです。これはノビコフ副首相とか、あるいはパブロフ・スポーツ委員会の委員長、日本で言えばスポーツ大臣になりますか、こういう方がそういうふうな発言を直接されたのを私聞いたわけなんですが、こういったような問題があるということですね。ですから、これ名古屋のオリンピックをぜひとも開催について承認をとりつけたい、メルボルンも立候補している、メルボルン、オーストラリアはオリンピックに参加していますから、そういう面で非常にハンディキャップがあると思うんですけれども、そういうふうなことであるとすれば、やはりこの辺の問題も少し考えておかなきゃいけない問題じゃないかというふうに思うんですが、この点いかがですか。これ外務省と、担当は文部省ですか。
#34
○国務大臣(伊東正義君) お答え申し上げます。
 名古屋オリンピックの関係の政府側の担当は文部大臣ということで、この間閣僚会議でも決まったわけでございます。そして閣僚会議で、大体名古屋の一九八八年のオリンピックは開催することを認めようじゃないか、正式には閣議決定といいますか、閣議了解が要るわけでございますので、まだそこまでは至ってないのでございますが、閣僚会議で大体承認をしまして、そして担当大臣は文部大臣と、こういうことにしたわけでございます。
 私が官房長官時代というお話があったんですが、あれはJOCじゃなくて、体協の理事会で体協の会長の河野謙三先生が、政府側で出て政府の考えを述べろと、こういうことであったものですから、私はそういう要請があって体協の理事会に行ったのでございます。
 経過はそういうことでございますが、あのときはやっぱりオリンピックというのは若人のスポーツの祭典で、これは平和と友好という空気の中で全世界から祝福されてやるのがオリンピックなんだが、ちょうどソ連が軍事介入をして、アフガニスタンでは血を流している、そういうモスクワで行われるということは、オリンピックの目的から言うと合致しないんじゃないかという考えで、本当に練習をしていた選手には気の毒だったんですが、ああいう政府の見解を伝えまして、JOCが最終的に決定されたわけでございます。当時から名古屋のオリンピックの話は出ておりまして、政府として何もアマチュアスポーツその他スポーツを軽視するわけじゃちっともないんで、モスクワはボイコットすることがあっても、名古屋に八八年にオリンピックを招致するということは、これは別問題として考えてもいいじゃないかということで、大平内閣当時から内々はそういうことを考えようじゃないかということを実はやって、愛知県、岐阜県、三重県その他にも内意は伝えておったというのが事実でございますが、その後、大平総理の急逝でいままで延び延びになっていたというのが実情でございます。これは国際友好促進ということがあのオリンピックの大会には非常に大きな目的になりますので、メルボルンは一回オリンピックをやったことがあります。名古屋あるいは岐阜、三重というところは、あの中京地帯ではそういう催しをやったことがないし、これは国家でやるんじゃなくて、原則は都市が主催するわけでございますが、今度は例外で名古屋市だけじゃなくて三重県、岐阜県も参加するということになっているわけでございますが、先生おっしゃったように、メルボルンが手を挙げそうだ、立候補しそうだということで愛知の知事、名古屋の市長がこの間行ってこられたのでございますが、ことしの十一月の末にローザンヌで立候補締め切り、来年のたしか九月の末にどこで開催するかということが決まる、ちょうど一年間あるわけでございますので、立候補するからには日本にこのオリンピックを招致して国際親善をぜひやりたいというのが政府の考え方でございまして、名古屋市、愛知県、岐阜県、三重県が主催をしてやられるわけでございますが、それには政府として協力していこう、こういう態度でいるわけでございます。
#35
○松前達郎君 それで、さっき申し上げたようなことでいろいろ関係が出てくるだろうと私は推察をするんですけれども、たとえばさっき私、申し上げましたパブロフ・スポーツ大臣がオリンピックの前に日本に来るということがあったわけなんですが、現実にはビザを出さなかったから来れなかった。これについてもやはりいろんな関係があって、今後たとえば体協あたりが中心となって日本に招待するような計画もあるやに聞いておるんですが、こういうふうなことで、そのときまたビザを出さないということはないでしょうと思いますけれども、こういうふうな動きを通じてやはりスポーツ交流というのもパイプの一つだと私は思います。そういう意味で、今後オリンピックも、名古屋のオリンピック問題あるいはその他一般的なスポーツの交流、こういうものを通じて今後の活動をしていくのも一つの考え方じゃないか、こういうふうに思うんですが、今後ソビエトあたりとのスポーツ交流について文部省としては一体どういうふうにお考えですか。
#36
○説明員(戸村敏雄君) 九月の二十日に八カ国の隆上大会がございました。これは昨年から始めた事業でございますが、この際にソ連のスポーツ選手も予定どおり参加してまいっております。なお、体協といたしましては、この後もこの五十五年度の予算の中で、いろいろとスポーツの国際交流というものは計画どおり実施するというふうに聞いております。
#37
○松前達郎君 大分時間がなくなってきたようですから、少し先の方に急ぎたいと思いますが、防衛等の問題についてお伺いいたしたいと思うんですが、最近いろいろな防衛論議が盛んに行われて、推測といいますか、仮説を立てて、それでいろんなことが討議をされている、こういう状況なんですが、今度、日本が国連の安保理事会の非常任理事国になったわけですね。それで、こういうふうになりますと非常に大きな責任があるんだと外務大臣おっしゃったわけなんですが、国連の安保理事会というのは、最も重要な平和維持機関だと私は思っておるわけです。その平和維持機関の活動としていろんな問題、これが出てくるんじゃないか。たとえば、平和維持活動としての平和維持軍ですね、それから平和監視団、こういうものがあるわけなんですが、理事国ということであれば、これらの活動に日本も参加するというふうなことが考えられるのではないかと私は推察をしているんですが、その辺どういうふうなお考えを持っておられるか。
#38
○国務大臣(伊東正義君) 安保理に、百四十七票の有効投票中百四十一票という非常に高い投票をもらって非常任理事国に当選をした、いままでの中で一番高い投票をもらったわけでございまして、それだけに私は非常に責任も重いんだと、世界の国々が日本に対して期待をしているところが大きいというふうに考えられるわけで、私は本当にこれ、日本の責任という、世界の平和を維持するということにつきまして非常に責任が重いという感じを持ったわけでございます。
 安保理は、先生おっしゃるとおり、これは世界の平和維持のために非常に機能する場所でございますので、日本としても十分責任を果たしていかなけりゃならぬというふうに思うわけでございます。その中で、先生がおっしゃいました平和活動の問題でございますが、いままでの過去の経験では、実績ではその都度決議をしまして、停戦ができたところに停戦の監視団を出すとか、あるいは平和維持軍、これは部隊を持って出て平和を維持するというような維持軍、二つのことを過去においてやったのでございます。これは、法律論をすれば、日本の憲法上からいきますと、部隊が出てというのは、これは憲法上ははっきりできないわけでございますが、停線監視団、これは武器は持たないということで、停戦がそのとおり実行されているかどうかということを国連の方に行って通報する、そこへ監視団が出てですね、そういう役目だけでございますので、これは憲法上から考えればそういうところへ出ても、それは法律解釈では許されるということに相なろうかと思いますが、ただ、自衛隊の人が行く場合には、どっちにしろこれは自衛隊法で禁止されているわけでございますから、これは出れない、自衛官は行けないということになっております。
 それで私は、これはもういまのは法律論でございまして、現実の場合に日本が何か協力を経費のほかにするかということになれば、私はその停戦監視団、憲法解釈上もそれはそういうことはできる、部隊で出るんじゃなくて丸腰の人が行くわけで、停戦を見て通報するというだけでございますから、これはできるということでございますが、しかしその場合にも自衛隊法を改正して自衛官が行くということじゃなくて、私は政策論としては、シビリアン――お医者さんでございますとか、これが国連の職員になって出るとか、あるいは通信をするシビリアンの人が行くとか、そういうような形でやる場合には、政策論としてはそういうふうにやった方がいいではなかろうかと私は思うわけでございますが、まだ現実の問題になって、いままでそういうことはありませんので、過去において求められて断ったことがございます。ハマーショルド事務総長のころに一回求められて断った、自衛官のたしか派遣でございましたが断ったことが一回あるというだけで、いままで要請をされたことはございません。ですから、これも仮定のもとでの議論でございますので、現実にそういう法解釈上許せる、しかし現実の問題としてどうするかということは、その場になりましてよく政府部内で検討しようというふうに考えております。
#39
○松前達郎君 それから、最近、国際海上監視部隊、これもまた仮定だというふうに言われておるその構想があるわけですね。これについて直接武力を行使することが自衛権の行使ということになる、費用分担についてはその概念に当てはまらないからいいんだと、こういう結論をお出しになったんですが、武力の行使ではないけれども、戦争に関係する物資の供出の場合は一体どうなんですか、これは構わないんですか。
#40
○国務大臣(伊東正義君) 政府委員からお答えします。
#41
○政府委員(浅尾新一郎君) ある地域に戦争が行われて、そこへ物資を供出する場合、日本の場合は、それが武器である場合は武器三原則に抵触いたしますので、現在の武器三原則を守っている限りそれはできないことでございます。
#42
○松前達郎君 そうしますと、武器というのがいろいろ最近は拡大解釈されたり、いろいろその内容について幅広くなってきているんですけれども、戦争に使う道具としてだったらそれはもう武器ということになるんですね。
#43
○政府委員(塩田章君) 自衛隊法上武器といいます場合は、直接に人を殺傷しますとかあるいは物を破壊するとか、そういうことに使われる器具、機械、装置、そういったものを自衛隊法上では武器と称しております。
#44
○政府委員(伊達宗起君) 武器に関しましては、ただいま北米局長からも言及がございましたように、武器輸出三原則というのが政府の採用している政策であるということは御承知のとおりでございます。そこで、その武器輸出三原則におきます武器と申しますものは、軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの、それを言うのでございまして、具体的には輸出貿易管理令別表第一の第一九七の項から第二〇五の項まで掲げるもののうち、この定義に相当するものが武器というふうに実際上取り扱われているものと承知しております。
#45
○松前達郎君 そうしますと、さっきの武器というのは、人を殺傷する、相手を破壊するということだと定義されたんですが、いまのあれですと、戦争の用に供されるものですから、幅広くなってきますね。その辺はいかがですか。
#46
○政府委員(塩田章君) いま私がお答えしましたのは、自衛隊法上武器という言葉が何カ所か出てまいりますが、その定義としての武器について申し上げたわけでございますが、いま話題になっております武器輸出の三原則、そういったような関係からの定義はまたこれとは異なっておるように私どもも承知しております。
#47
○松前達郎君 その辺の解釈いろいろと幅広い、あるいは狭めたりすれば、いろいろと変わると思うんですけれども、それと戦争に関係のある物資の供出については、じゃあ行わないと、こういうことですか。行えないというのですかね。
#48
○政府委員(浅尾新一郎君) 先ほどお答えいたしましたように、いわゆる貿管令に記載されているような武器の輸出については、これは武器三原則に抵触するということで行えないということでございます。
#49
○松前達郎君 いいですか、大丈夫ですか。
#50
○政府委員(浅尾新一郎君) いま何か非核三原則と聞かれたようですが、私は武器三原則と申し上げたつもりでございます。
#51
○松前達郎君 それはそのくらいにしまして、もう一つだけ。
 最近カーター大統領が、ソビエトの攻撃があれば核兵器を西側防衛のために使用することもあると、こういうふうな発言、これは選挙用の発言だという説もあるんですが、日米安保条約に関して、この面についてアメリカと核使用――アメリカが核を使用するわけですね、こういうことについて何らかの協議をいままで防衛庁としてしたことがありますか。
#52
○政府委員(浅尾新一郎君) アメリカは安保条約第五条によって日本を防衛する義務を有しております。その場合に使用する兵器は通常兵器であるかあるいは核兵器であるかということを問わないわけでございまして、歴代の内閣総理大臣とアメリカの大統領との共同声明の中にそういう個所が幾つかございますが、一カ所だけ引用さしていただきますと、昭和五十年八月六日、三木・フォード会談、その後に出ました共同新聞発表、その四項のところに「大統領は、総理大臣に対し核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引き続き守る旨確言した。」と、こういうことでございます。
#53
○松前達郎君 そうしますと、アメリカが核を使う場合もあり得るという解釈になるわけですね。核を使うということになると、日本も核攻撃を受ける可能性があるということになっていくわけですから、それに対するやはり何らかの対策というものも持たなきゃいけないような感じを私持っているわけですが、これはいずれ別のチャンスにまたいろいろとお伺いしたいと思います。
 もう一つ最後に、最近この前の予算委員会――この前といいますか、先国会の予算委員会で私質問したんですが、リムパックに関して、シーレーンの防衛じゃないかということを質問をしたわけなんですが、そのときははっきりした御返事がなかった。その後どうもやはりそれはシーレーンの防衛のための一つの訓練にもなるんだということになってきたわけなんですが、そのシーレーンの防衛等に関して大村防衛庁長官がだんだん最近拡大解釈をされて、千海里以上の場合でも防衛の範囲を超えることがあるんだ、超えることができるんだというような解釈もされているようですが、それともう一つ、海外派兵については憲法上認められないという条項があるんですね。憲法上の解釈の問題、公海上と海外との関係ですね、公海は海外ではないのかあるのか、公海というのはどこの国にも所属していない海域ですから、そこだったらどこでもいいんだ、幾らでも拡大解釈していいんだというふうなことなのかどうか、その辺ちょっとはっきりしておきませんと、公海をずっと伝わっていけばどこの国にも行けるわけですから、そういう面で防衛庁としてその辺の考え方、どういうふうな考えを持っておられるか、それを最後にお伺いして終わりたいと思います。
#54
○政府委員(塩田章君) まず、海外派兵でございますけれども、私どもは海外派兵と言います場合は、他国の領土、領海、領空、要するに他国の領域に武力を行使する目的を持って部隊を派遣することを海外派兵と理解しております。
 一方、自衛権が行使される範囲でございますけれども、たびたび申し上げておりますように、わが国が自衛のために自衛権を行使する区域は領海、領空に必ずしもとどまらない、自衛のため必要最小限の範囲であれば、公空、公海にも及ぶということはかねがね申し上げているところでございます。ただし、実際の現在の私どもの海上防衛力の整備につきましては、整備する目標としましてわが国周辺数百海里における海上作戦、あるいは航路帯を考えてみました場合には約一千海里程度の航路帯における海上防衛作戦ができるということをめどに防衛力の整備を図っておりますと、こういうことでございます。
#55
○松前達郎君 どうも科学技術庁済みません。海洋投棄の問題をお聞きしたがったんですが、時間がなくなりましたので、せっかくおいでいただきましたが、ありがとうございました。
 終わります。
#56
○渋谷邦彦君 伊東さんね、唐突なことをお伺いするかもしれませんので、その辺は御了承ください。
 最近の政府の外交方針を私なりに整理をいたしてまいりますと、若干の変化が見られるんではないか、つまり、従来全方位外交というものをしきりに標榜されておられた考え方がいつの間にか消えてしまった。何か理由があるのかどうかわかりません。しかし、一貫して変わらないと思われるのは、日米安保条約を基軸にして国連中心主義をとり、自主的な平和外交を推進する、これが恐らく現状においても政府の変わらない外交方針であろうと、このように確認してよろしゅうございましょうか。
#57
○国務大臣(伊東正義君) いまおっしゃいましたように、もう一貫して変わらないのは日米安保を中心としまして日米の友好親善ということを外交の基軸にしていくということは、これは全然変わらぬわけでございまして、そういう見地に立って政治、経済につきまして、同じ理念を持った国々と協調を保っていくということでございます。それから自主的とおっしゃいましたことは、これはまさに外交は自主的であらなけりゃならぬことなんで、これは私も常にこのことは言っているわけでございます。
 それから全方位外交、これは国連という場でも、これはもう全世界集まっているんでございますから、そこで日本の主張を貫いていくということは、主張していくということは従来と一向に変わってないわけでございまして、先ほど言いました、日米あるいは日米を基軸にして自由主義陣営と協調していくんだということを申し上げましたが、それはそれで、あとの国とは友好協調を保たぬということじゃなくて、どの地域におきましてもやはりあらゆる国とできるだけ友好親善を深めていくというのは、これはもう前もいまもそのことについては全然変わってないわけでございます。ただ、その後国際情勢が緊迫しまして、ソ連のアフガニスタンに対する介入でございますとか、北方領土の軍備の強化があったとか、いろんな緊張が出てきておりまして、それにその場で対応しているということはあるわけでございますが、外交の基本姿勢というのは私は変わってない、やっぱり平和外交、自主的に平和外交、軍事大国にならず平和外交を進める、その基軸は日米の友好親善を最大の基軸にしていく、こういうことはいまでも変わっていないというふうに思っております。
#58
○渋谷邦彦君 そこでこの平和外交を、これからも――当然私たちも望ましいというふうに受けとめているわけでありますが、それを貫くためには武力の背景があった方がいいのかどうなのか。ひとしきり力の外交ということがいままかり通って、あるいはそうあるべきだというような議論も一部においてございます。その点についての御判断はどのようにお持ちになっていらっしゃいますか。
#59
○国務大臣(伊東正義君) これは、憲法にも自衛権というものが認められておるのでございますので、先生御承知の専守防衛という立場で日本の自衛のために必要の最小限の自衛力は持つ、これはもう当然国家として存立する以上、私はそれはやらなけれりゃならぬことだと。ただ、その場合に国民のコンセンサスがなければいかぬという問題もございますし、それを達成するにはシビリアンコントロールでございますとか、いろんな問題はございますが、いま言った専守防衛という立場に立って、国を守っていく自衛の最小必要限のものは整備していくということは当然やらなきやならぬと、こういうふうに思っております。
#60
○渋谷邦彦君 まあそこまでの時点はいままでしばしば議論されてきた経過であろうというふうに思います。
 ところが、最近の国際情勢の激変に伴いまして、わが国におきましても、特にこの臨時国会あたりから急速に防衛力増強の論議が高まってきたことは否定できないだろうというふうに思うわけです。ところが、これが憲法問題あるいは自衛隊法さまざまな法律の拘束に基づいて思うに任せない。たとえば、あるいはこれから同盟国と言われているアメリカからしばしば、従来もそうであったし、現在も、これからもあり得るだろうという可能性を考えますと、日本の防衛力増強についての要求――多少は分担をしてもらいたい、あるいはホルムズ海峡の航行安全に伴う合同艦隊、日本がそれに参加できないということになればせめて費用の分担でもしてくれぬかと。現状においてはまだその要求というものは正式に来ないというふうに言われているそうでございますが、そういったことがいろんな形を変えて今後も来るであろうということは想像にかたくない。しかし、従来からもしばしば言われてきておりますように、また、政府からの答弁もございましたように、憲法上できないあるいは自衛隊法上できない、この繰り返しでございました。しかし、もう少し次元を変えた判断に立って考えてみた場合に、同盟国に対する役割りというものを日本としても何らかの形でとらざるを得ないだろう。あるいは国連中心主義といった場合に、国連にいかなる形をもって協力をしなければならないのか。国連監視団という問題もしばしば起こってまいります。しかしそれは自衛隊法の拘束によってできない。一方においては国連中心主義を唱えながら、実際に国連には協力ができないという、こういう矛盾がいま現実的に起こっているわけですね。
 さてそこで問題になりますのは、唐突だと冒頭にお断り申し上げたのは、まあそういった経過の中で、いまさまざま憲法論議がかしましいほどに表面化してまいりました。まあこれも古くて大変新しい政治課題であろうというふうに思います。昨日あたりも鈴木総理は、鈴木内閣としては憲法は遵守していく、しかし自民党総裁としては大いにこれからの改憲に向けての議論をしながらその取りまとめの方向へ取り組もうというような趣旨のことが決まったようでございます。ということは、やはりそこに新しい一つの突破口を開きながら、特に憲法第九条の拘束というものを、何らかの、合理的に今後の国際情勢の変化に対応できる、あるいは防衛力の増強にいたしましても、あるいは国連に協力するという具体的なそういう問題を考えてみた場合に、自衛隊法の改正というものも当然起こってきやしまいか。したがって、何としてもこの足かせというものを外す必要が、日本の将来の展望の上に立って必要な課題であろう。勢いそういう方向へ持っていかれる空気がいま非常に強いというふうに思うんでありますが、これはもう外務大臣としても、当然鈴木内閣におられる以上は遵守いたしますということに決まっていることは言うまでもございませんが、これ、一国会議員というお立場になった場合に、いまずっと外務大臣という枢要なお立場の経験を通して、憲法改正が望ましいのか、自衛隊法改正が望ましいのか、そうすることで同盟国に対するせめてもの日本としての役割りが果たせていくであろうと。恐らく――五年先、十年先のことはとうていわれわれ予測もつきませんけれども、イラン、イラクのような問題というのは将来において全くないという保証は何もないわけです。あるいはもっとわれわれが苦慮しなければならないさまざまな問題が起こったときにも、やはりそうしたことを整理しておくことが十分に対応できることになるであろう、そういうお考え方をお持ちになっていらっしゃるかどうか、その辺、意のあるところをお聞かせいただければ大変ありがたいと思うんですが。
#61
○国務大臣(伊東正義君) これは、個人の意見といっても奥野法務大臣みたいなことになりますので、これはなかなかむずかしいところでございますが、まあ外務大臣としてといいますか、まあ伊東正義、政治家として申し上げますが、私は軍事の問題というのは、戦前私どもも経験したわけでございまして、まあ軍事大国であるかどうかは別にしまして、日本が相当な軍備をして、そして戦争をやって、その結果敗戦ということになったことはもう先生も御承知のとおりでございまして、その問題、そういう経験から生まれてきたのが私は日本の憲法だというふうに考えております。実際問題としますと、軍備というものは歯どめというのはなかなかむずかしい問題だ、それでいまの憲法ができてきたわけでございますから、私は、国連の中でも、日本というのはそういう平和憲法があるんだと、軍事大国にならないんだということで高い評価があるんです。また東南アジア等回りましても――きのうもインドネシアの高官と話したんですが、日本は軍事大国にならないんだ、日本の軍備というものは、防衛というものは専守防衛なんだということを私は説明をしたのですが、そういうことで安心したと、そういうことを聞いて安心したと。私は防衛力を強化するから経済協力は減らしていくんだというようなことは日本は考えてないと、専守防衛で日本を守ることにいまでは足りないからもっと防衛力を強化しようということをやっておるので、その海外派兵だ、そんなことは考えていないのだということをきのう説明しましたら、それで安心したと、こういうことを言っておりました。
 私は、大平総理がカーターさんに会ったときも、カーターさんから、日本にはいろいろ制約があることは十分知っているということを向こうから大統領が言っているわけでございます。それは憲法問題等を頭に置いてカーター大統領も言っていることは間違いないわけでございまして、私はそういう意味から言いまして、改憲と、憲法改正ということにはいろいろ議論があります。これは私は政治家それぞれ議論があっていいことだと思いますので、みんなが議論されることは私はそれなりに評価しておりますが、私は実はまだ改憲論は一回も言ったことはないです。私はその団体にも入っておりませんし、そういう立場にありますので、いまの考え方で専守防衛ということで私はやっていくべきだと。これは未来永劫とは言いません。わかりませんが、そんな先のこと、人間の予想もできませんからわかりませんが、私は現時点に立って考えた場合には、この憲法は平和主義の憲法、民主主義の憲法、人権擁護の憲法と、こういう憲法は守って平和外交を徹底していくと、徹底的にやっていくというのがやっぱり日本の立場、それがまた世界で評価をされるんじゃなかろうかと私は政治家として思っているわけでございます。
 それで国連でいろいろ協力ということが言われますが、これは財政的な負担をしていくということは従来も当然やっていたわけでございますし、これを中心にやっていく。人的な協力というところでは、私は政策としては、憲法が許せるという法解釈ができても、やはりシビリアンでなるべくできるだけ協力をしていくというやり方があるのではなかろうかと、私はそう思っておりますので、先生の御意見がどっちになるか私はいまの御質問でよくわかりませんが、憲法改正しろという御意見なのかどうか私もちょっとわかりませんけれども、私は政治家としてそういう考えを持っているということを申し上げておきます。
#62
○渋谷邦彦君 重ねてお伺いをするわけですが、いまの御答弁の中から、日本の外交というものは現在の憲法、自衛隊法に手を加えずとも十分将来ともに同盟国に対しても役割りを果たしながらやっていけるというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
#63
○国務大臣(伊東正義君) 私は、当分憲法は改正しなくていいというふうに考えております。で、自衛隊法の問題はこれはたしか南極に行くときに自衛隊を、自衛官がですか、南極に行くとき改正したことがございます。そういう純然たる平和的な、きな臭くないそういうときのは私はこれはあり得ると思います。現にやったことがあるんですから、南極に行くときに。ですから、そういうことまで否定はしませんが、きな臭い問題では私はそう改正をしていくというふうにはやらなくてもいいんじゃないかと、その辺になると憲法ほどはっきりわかりませんけれども、そういう考えを持っております。
#64
○渋谷邦彦君 いまの御答弁を伺っておりますと、われわれと考えを一にする大変良識ある御判断を持ってこれからも外交に臨まれるというふうにお受けとめをしたわけでございます。ただ、一方においては、御承知のとおり、特にこのイラン・イラク紛争が起こりましてからただならない様相を呈していることは事実でありまして、一部には米第七艦隊のインド洋、ペルシャ湾への移動、そういったようなことがいま取りざたされているようであります。のみならず、つい先ごろ、たまたまTBSのカメラマンの方がカムラン湾を通過の途上、ミンスクがそこに停泊をしているという事実を確認しております。私、そのフイルムをテレビで見せてもらいました。そうすると、あの辺に強大なソビエトの海軍基地が設置されるというか、さらに強化されていく可能性。そうしますと、大変このインド洋あるいはペルシャ湾というのは波が高いなと、こういう背景をもとにいたしますと、当然この太平洋の地域についての米軍事力の支配というものの能力がずいぶん低下するであろうと、これは常識的にも判断できるわけです。そうした補いを日本の防衛力増強によってそれを補完せいと、この問題はもうしばしば繰り返されて出てきたわけであります。しかも今回のイラン・イラク紛争によってあるいは急速にそうした状態というものがいまその方向へ向かって進みつつあるんではないだろうか。その場合に日本として取り得る一体対応というものは、やはりそのアメリカの要求どおり防衛力増強によって補完すべきなのか、やはり従来どおり、先ほど外務大臣が述べられたとおり必要最小限度という憲法の枠内においてとどめるべきなのか、そういうようなその判断がいろいろと乱れていく危険性というものがあるんではないか。そういう国際情勢の変化によって、それを一つの口実としながら突破口を開くというような考え方が次第に頭をもたげてまいりますと、これは大変危険な方向を日本が歩むことになるであろうという問題、これが一つ。
 それから先ほどの国連に対する分担金、これは私どもも十分津知をしております。ただ、今回の合同艦隊の行動といいますか、それに伴う費用の分担というものについてはまだそういう要求がないというふうに伺っておりますけれども、要求があった場合にそうした面についての協力の姿勢というものはどうあるべきか。全くそれは協力をしなくても、従来どおり日米友好というものの機軸は損なわれない、そういう関係を保ちながら持続できるものなのかどうなのか。こういったいろんな錯綜する疑問点というものが出てきまして、武器の携行が許される、許されない、いろんなそういうその問題が混乱して、最近の衆参両院の外務委員会あるいは安保特別委員会等においても、われわれが新聞報道を拝見をいたしましても、どうなっちゃっているんだろうというくらいに何か混乱をしているというようなことも考えられます。恐らく政府としてはその辺をきちんと整理をしながら、今後そうしたいろんな事態の変化に対応できる日本の防衛力はいかにあるべきか、またアメリカからそういう要求を出された場合にどういう対応の仕方が考えられるのか、従来のようなやり方でいいのかどうなのか、やはりいま新しい時点に立ってそういった点についての整理がやはり行われてしかるべきではないだろうかと、こういうふうに考えられるのでありますけれども、その点はどのように私どもは判断をしたらよろしいものか、政府としての考え方はもうすでにいろいろな分析を通してお取りまとめになっていらっしゃると思いますので、お聞かせをいただければ大変ありがたい、こう思うわけであります。
#65
○国務大臣(伊東正義君) 防衛力の具体的な問題につきましては防衛庁からお答えを願うとしまして、私は先生がおっしゃったいままでの自衛力の最小限度というものを憲法上は保持を認められておりますから、という解釈で私はやっぱりいくべきだというふうに考えております。この際それを変えてということになりますと、これは憲法改正の問題とも結びつく問題でございますし、私は日本は日本を守るということについていままで以上に努力をしていくということをやると、それ以上のことは、これは友好関係のある、条約ということでなくて、安保条約ということよりもはみ出すわけでございますけれども、それは日米の友好が基軸だということの日米の信頼関係に基づいて、そして米国でございますとか、これは同盟国でございますが、西側の陣営と相談をしまして、日本はそこまではできないんだということを理解してもらうということだと私は思うわけでございます。
 それから、合同パトロールの費用の問題ですが、これはいままで合同パトロールをするから協力してくれとか、自衛官を出してくれとか、あるいは費用を負担してくれとか、一切これは実はないわけでございます。向こうもこれは知っている。私は向こうもその点は了解をしているというふうに思っております。費用負担なんということは、先生いま一つの例としておっしゃったんですけれども、私は、どういう形のものでどういうことを――もしあるとしてどういう形のものかわかりませんが、そんなみみっちい話はもう政策的に出っこないよ、ということをみんなと言っているわけでございまして、強いて法律論ということを言われて法律論を申し上げたことはありますが、これはそういうことが現実の問題として話がありました場合は、政府としてこれはいろんな対応の仕方があると思うんです。合同パトロールの性格ですね、いろいろこれはよく聞いてみなければわかりませんし、日本の財政法との問題もありましょうし、いろいろな関係がありますから、私はそういう現実の問題が起きたときに法律論で、いま集団自衛権に該当しないから大丈夫だということは、いま仮定の問題として法律論で言ったのでございますけれども、具体的な問題が起きてきた場合には、いろいろこれは対応の仕方、問題がございますので、そのときになってこれは相談すべき問題じゃないかというふうに考えております。
#66
○渋谷邦彦君 それはぜひそうあっていただきたいと思いますし、またそうあることが、先ほど来の答弁を貫く日本政府の方針につながるであろうというふうに考えられるからであります。
 ただ、われわれが非常に心配するいろんな側面がございまして、来月に入ると大統領選挙が終わるわけでありましょう。カーターになるのかレーガンになるのかわかりませんけれども、大統領がかわるたびごとに対日政策に変化が起きやしまいかという心配。それでなくてもいま経済摩擦が依然として日本とアメリカとの間にみぞをつくりかねない。自動車、電電機器あるいはたばこという問題。やはりそうした裏には、裏と言った方が適切であるかどうかわかりまんけれども、やはり太平洋においては多少は日本はアメリカと共同して防衛の分担をしたらどうかとか、何かいつも消えてはまた表に出てくる、出てきてはまた消えるという、それがやっぱりしばしば出たり入ったりするということは、日米間にとっても決して好ましい情勢ではない。いましきりに力説された日本の現状の立場というものを本当に理解するとするならば、もっと平和的に、もっと円満な話し合いというものも当然行われるでありましょうし、角が立つようなことは日米間にあってはならぬというふうに思いますだけに、将来ともにわたってそういうことがあってはならぬ。しかしもう絶えずそういうことがつきまとうわけですね。そういった点についても、現状として十分話し合いの上で解決がなされていかなければならない、大統領がどういう人にかわろうとも、そういう変化があってはならない、そんなようなわれわれは希望を持つわけです。そういう判断というものがいつまで持てるかどうかという心配もありましょうし、情勢の変化というものは絶えずこれから五年先、十年先、二十年先ないという保証は何にもないわけでありますから、そういった先にもいま述べられたような方針を貫いた日本の外交というものをやはりとり続けていただきたい、こう思います。と同時に、やはりこの自主的な外交の展開というものを標榜する以上は、日本として果たせる役割りというのは何があるんだろう。たとえば今回のイラン、イラクの問題についても、これは日本にとりて、もし万が一のことがあったら七〇%の油は全く停止されるわけであります。産業界に及ぼす影響あるいは国民個人個人の消費生活に与えるショックというものははかり知れないものがあることはもう先刻承知のとおりであります。しかし、それが全くそういうことがないのかというと、あり得ないということはない。あるかもしれない。あるいは今回非同盟諸国がこれは調停に乗り出したようであります。これが円満解決の方向へ向けられるものかどうなのか、それすらも現在保証の限りではない。まあいろんなそういう状況が考えられるわけであります。当然外務省としてもその辺のことは百も承知の上で、今後の日本のとるべき対応というものはどうあるべきかということについても、いろいろと議論がなされているだろうと私は思う。
 そこで、私は常に思いをいたす場合に、一体自主的外交とは何だという問題がある。大変単純な素朴な疑問というふうになるかもしれません。やはり私は、一面に行動力を持ってですね、たとえそれが実効が上がる上がらないは別問題といたしましても、たとえば伊東外務大臣なら伊東外務大臣がイラン、イラク――あるいはホメイニに会うもよし、あるいはフセイン大統領に会うもよし、また周辺のサウジアラビア、クウェート、あるいは南イエメン、あるいはアラブ首長国連邦等々、そういう隣接する国々の指導者階層に会って、何とか円満に――もう戦争始まっているわけですから円満というわけにもなかなかむずかしいだろうと思いますが、要するにまず第一段階としての終戦への方向へ話し合いを強力に持っていく突破口を開くとか、いろんな考えられる問題がぼくはあると思うんです。まあ国連でもいろいろ話し合いをされたそうでありますけれども、具体的に現場へ臨んでそういった面の解決をするということの手だても私は必要ではないか。
 どうもいつの場合でもですね、第一次オイルパニックのときもそうであった、それしばらくたってから三木さんが特使で向こうへ飛ばなくちゃならぬというていたらくもあったわけです。常におくれるんです。後手なんです。日本があすこをどうしても必要とする以上、やはりそれなりの日本としての対応というものは、絶えず最悪の場合を考えて、取り組む必要があるのではないだろうか。いまずっと一貫して言われたような、これはできることとできないことがもう明確でありますし、それをいま確認をさしていただいたわけであります。じゃあ、できることは一体何だ。この点はどのように外務大臣として、今後の問題を含めて、御方針としてお持ちになっていらっしゃるのか。
#67
○国務大臣(伊東正義君) 非常に広範な御意見でございまして、自主的ということでまあ日本に対する外国の見方、いろいろなお話がございましたが、私もその点は外務大臣として当然考えなければならぬことでございまして、まあ大統領選挙がどうなるかわかりませんが、これはブッシュさんが共和党の副大統領候補ということで来ましたときに対日政策、外交政策のことも実は議論したのでございます。そして、共和党は日本に対して従来の政策を変えることはないと、それ以上のものを要求するとかですね、そういうことは考えてないということをはっきりブッシュさんの口からも確かめたのでございますが、いまいろんなことをアメリカから言ってきているのはですね、これはまあ期待表明、いろんなことを期待していますよということでございますが、だれからもですね、実はいまの憲法を改正して、そして専守防衛でなくて集団防衛、集団自衛権が行えるような、そういう憲法改正ということの期待表明は、アメリカで会った人に私は全然ありません。だれに会ってもその点はないわけでございまして、日本の専守防衛、日本を守るためにもう少し日本は努力をしてもらいたいという期待表明があったことば確かでございますが、憲法を改正してあるいは自衛隊法を改正して、もっと責任分担をして外へたとえば出ていくとか、シーレーンの問題で出ていくとか、そういう期待表明はこれはいままでありませんでした。ですから、日本としては安保というものが円滑に運営されるように、それには日本がやることはちゃんとやる、あるいは駐留米軍の経費の負担もできるだけ考えるとか、そういう安保条約のもとに、五条のような場合にアメリカが来て日本を一緒に防衛してやる、危機に対して共同して対処してやるという信頼感をつくっておくことが私は日本として一番大切なことだと、信頼ということが非常に大切だということを私は考えまして、防衛力以外のことでもアメリカといろんな折衝をしているということでございまして、これは私は狭義の防衛力ももちろん大切でやらなければならぬが、そういう広い意味の安全保障、国と国との間の信頼関係ということにつきまして、私は非常にこれは大切なことだというふうに思っているわけでございます。その意味で、大平総理の合同葬儀にカーター大統領が来た、参列したということは、私はやっぱりあれは非常に高い信頼関係だというふうに評価しているわけでございます。
 それから、後段でおっしゃいました行動力をもっと発揮して、後手にならぬように先手でいろいろ考えるべきだとおっしゃっていることはよく私もわかります。実は私どももそれをいろいろ工夫をしているところでございまして、両国に言うだけでなくて、イスラムの議長国家であるパキスタンの大統領にも親書を出して頼みまして、協力してもらいたいというようなことをやっているわけでございますが、何しろ実は米ソもまだ仲介に立てない、仲介して調停になかなか立てない。御承知のように両方ともイスラム国家でございますが、その議長国が中へ入ってもなかなかまだ調停の緒につかない。主張がうんと違っておりますので、つかない。国連がやってもまだつかないというようないろいろむずかしいことがありますから、その中で日本はどういうことができるかということは、先生おっしゃるとおり、後手後手にならぬように、湾岸の諸国ともいろいろ連絡はとっていることがございますし、先生の御心配はよくわかりますので、外務省としても最善のこれは努力をして、平和が一日も早く来るようにという努力をしていることを申し上げます。
#68
○渋谷邦彦君 決して言葉じりをつかまえて私申し上げるわけじゃございませんけれども、米ソがまだ具体的に動きを示していない、あるいは国連も手をやいている、それはわれわれも承知をしております。けれども、やはりアメリカあるいはソビエトの動きを見てから――それも必要な場合がございましょう、決してそれを否定するものではございません。やはり、日本は時に応じては独自の立場で行動することも、これからの日本の独自な外交展開の上で、中近東と密接な関係を維持する上からも特に必要ではあるまいかという、そういう観点に立って一つの例としていま申し上げたわけです。
 それから、この問題にもう一つ関連してお尋ねをしておきたいんですが、これは米上院の外交委員会が先ごろ公表した問題の中で、インド洋、ペルシャ湾での危機に対処するため沖繩駐留海兵隊の使用を想定している、それが明らかにされているんですね。これは、南西アジア政策に関する非公開聴聞会議事録、ことしの二月から三月にかけて行われた内容が上院の外交委員会によって公表されているわけであります。したがって太平洋における米軍事力を想定した上で――当然それは想定するでしょう。米第七艦隊艦船をインド洋に移動することを十分考えている。現実にそれが移動されているかどうかはわかりません。
 さて、そこでまた問題になりますのは、沖繩からという問題。これは従来もしばしば問題になっていました。一体ペルシャ湾というのは極東の地域に含めるのか。大来さんは含まれない。しかし伊達さんはその見解を異にしました。要するに、その影響というものが日本に及ぶという場合には、その及んだ範囲は全部極東に含まれるんだと。ここで伊達さんを決していじめるわけじゃございません。ただ、安保条約の取り決めがあるわけでございますので、事前協議というのももう全く空洞化されておりまして、一体いかなるそれなりの存在価値があるんだろうと思うようなことがあるのでありますが、またぞろ沖繩からという問題になりますと、沖繩島民は言うに及ばず、大変な心配をいたすことになるでありましょう。間接的に日本が戦争に巻き込まれないとも限らないという、そういう関連も出てくるでありましょう。昨日、衆議院の外務委員会で私どもの玉城委員がSR71の発進について確認をしたようでございますが、常時飛ぶ場合には、これはもう当然事前協議の対象になる云々、そういうような大変微妙な答弁もございました。それを移動とみなしていいのか。これは作戦というのは移動も全部作戦行動に入ると私どもは、それを考えるのは当然常識だというふうに思うんです。将来そういう沖繩を基地として最悪の事態になった場合に沖繩からの作戦行動が考えられるかどうか。その場合に日本としてとるべき対応というものはどういうふうにいま考えているか。この点、最後の締めくくり、防衛関係もちょっと伺いたいものですから、その点をまず一応最後の締めくくりとして確認をしておきたい。
#69
○政府委員(浅尾新一郎君) 私の方から最初に、いま渋谷委員が引用されましたアメリカ上院外交委員会聴聞会における証言でございますけれども、これは本年三月四日、ケリー緊急展開部隊司令官が説明したことを言われているかと思いますが、その中でケリー司令官が述べているのは、「危機の状況と地理的位置によって、その特定地域に最も近い部隊から引き抜く」――引き抜くというのは緊急展開部隊を引き抜く――「ことが望ましく、たとえば中東が緊急事態であれば最も近い海兵部隊がこれにあたる」と述べている。そこで具体的に沖繩海兵隊の使用については、いま申し上げたように言及していないわけでございます。さらに申し上げると、緊急展開部隊というものはことしの一月のブラウン国防長官の報告の中で出てまいりまして、アメリカはソ連との関係でNATO正面の通常戦争あるいは核戦争については準備が十分できている、しかし局地戦争についての準備ができていないので、新しく緊急展開部隊をつくる、したがって緊急展開部隊の対象となる地域はNATOを除く世界の各地ということで、中東ということが特定されておりませんし、さらにその構成部隊は四軍をもって構成されるということで、特定の部隊が、どの部隊が入るかということは、さっきケリーの証言にございましたように、その状況によって変わってくるということでございます。
 もう一つ、昨日の王城委員の質問に関連いたしまして先生が言われました、SR71が沖繩の基地から常時中東あるいは特定の地域に偵察行動に出ていれば事前協議の対象になるということでございますが、私はそういうことは申し上げておりませんので、私の申し上げたのは、仮定の問題でございますけれども、SR71が常時全く中東の偵察のためにだけ沖繩に駐留しているということであれば、これは安保条約六条の規定に抵触するであろうということを申し上げたわけでございます。
#70
○渋谷邦彦君 外務大臣、いま北米局長が答弁されましたとおり、今後もそういうような日本国民が心配されるような、いわゆる事前協議の対象になるような沖繩の基地の使われ方というものは、イラン、イラクについては少なくともない、このように判断してよろしゅうございましょうか。
#71
○政府委員(浅尾新一郎君) 私の方から、事実関係でございますので、申し上げますが、今回ことしの通常国会で同じようなことが問題になりまして、沖繩の部隊が戦闘作戦行動に従事するようなことがあるかどうかという御質問がございました。それに対して政府は一貫して、これは現実的な問題として起きないという答弁をいたしております。この点についてはアメリカとも確認済みでございます。
#72
○政府委員(伊達宗起君) ただいま渋谷先生から私の前通常国会におきます答弁に関しましてお話があったわけでございますけれども、ちょっと先生の言葉遣いが、失礼でございますけれども間違っていらっしゃるので、議事録を何と申しますか正確にするために、私から一言申し述べさしていただきます。
 先生は極東という言葉を使われまして、ペルシャ湾が極東に入るか入らないかということで、大来外務大臣は入らないと言い、私が入ると言ったというふうにおっしゃったのでございますが、極東そのものが問題となっていたわけではございませんで、あの当時の議論は極東の周辺ということが問題になっていたわけでございまして、周辺にペルシャ湾が入るが入らないかという御質問があり、議論が行われたわけでございます。この場合、私がお答え申し上げましたのは、極東の周辺というのは地理的にどこからどこまでと明確に示されるものじゃないんだと。つまり、極東に対する脅威または武力攻撃というものが起こったときに初めて極東の周辺という概念がそこに生じてくるので、極東に対する脅威とか極東に対する武力攻撃というものが起こったときに出てくる相対的の概念である、だから、どこからどこまでとあらかじめ特定することはできないけれども、具体的にペルシャ湾はどうかということであるならば、地理的にも非常に遠いところであるし、実際問題として、ペルシャ湾に起こった事態が極東に直接の脅威を及ぼすとかいうようなことは考えられないから、その意味においてペルシャ湾は極東の周辺とは観念されなくてもいいだろうということを申し上げたわけでございます。
#73
○渋谷邦彦君 そのとおりなんです。ぼくはメモに書いてあったんです。ちょっとぼくは言葉が足りなかったから、誤解を招いたことを……済みませんでしたね。そのとおり、ぼくのメモどおりです。
 次に、大変塩田さん、お待たせをいたしました。いま防衛力増強ということをその主眼としてしきりに、特に兵器の質的な向上ということでお取り組みになっているようでございます。ことしの四月ですか、外務大臣がまだ官房長官のころです。竹田統幕議長が現況説明ということで九人ばかりの方――幕僚監部の方ですか、行かれたときに、兵器の話が中心であって、そのための予算を何とかしてくれと、こういう意思表示がなされたということを聞いております。
 さてそこで、しきりにもう先ほど来から申し上げておりますように、日本の防衛力増強、言うべくしてこの点は非常にむずかしいと思うんですね。侵略に対して陸海空、どういう態勢でもってこれに臨むのかという基本的な問題から始まって、どういう兵器が十二分に防御のための効果を上げられるかどうか、いろいろ考えなければならない問題がもうすでに何回となく繰り返されて今日まできていると私は思うんですね。果たして、ただ兵器の質的な向上を図ることだけが、そして膨大なそこに財政措置を講じなければならないということだけが日本の防衛力整備に一体つながるものなのかどうなのか。これはこれからも恐らく一つの疑点として残る問題であろう。同時に、現在の日本を取り巻く環境と申しますか、国際環境。そのために防衛の、何というか目的を、どういうふうに一体照準を当てたらいいのかどうなのか。あるいは、その防衛力の現況と計画というものについては、実際は国民にはわからないんですね、はっきり言うと。どういうふうになっちゃっているのか。ただ予算だけよこせよこせ、兵器をとにかく古いのから新しいのにかえなければという非常に短絡的な、そういうことしか国民の目には映らない。果たしてそれだけでもっていいのかどうなのか。と同時に、現在の自衛力というものが一体どの程度の効果を挙げ得るものなのかどうなのか。これも行きつ戻りつして、いろいろと議論があったろうと私は思うのです。しかし、これも年々歳々近代兵器の発達に伴って、その様相というものも変わってくるであろう。しかし、これからの日本の専守防衛というものを果たすためには、果たしていままでのとおりのような状況でいいのかどうなのか、もう一遍総体的に洗い直す必要があるのではないだろうか。私は、何も軍事専門家じゃございませんので、そういうような常識的な判断と申しますか、当然出てまいります。
 先ごろ防大の校長をやめられた猪木さんだとか、あるいは前に防衛局長やった海原さんだとか、あるいは戦時中陸軍の兵器廠の長官をやった遠藤三郎さんとか、大変貴重な意見があるのですね。それらもいろいろと防衛庁の方でも受けとめつつ、そして今後のあるべき姿というものをいろいろと想定をし、考えておられると思うのです。大変一般論的ないま言い回しで申し上げておるわけでございますけれども、そういう昨今の情勢の中で、日本の防衛力整備が果たしていかなるものであろうか、この疑問に対してわかりやすくひとつ御答弁をいただければ、まず大変ありがたいと思いますね。これだけでもずいぶん答弁の中身がございますよ。
#74
○政府委員(塩田章君) 大変大きな課題でございますけれども、まずいまの防衛力整備に当たって、武器なんかの更新とか、あるいは新しい武器の整備、それに対して大きな財政力も伴いながらやっていくこと、それだけでいいのかという問題でございますけれども、これは私が申し上げるまでもなく、防衛力というものは、やはりそういった装備の近代化ということも当然でございますけれども、それを扱う隊員の質ということは、これも当然重要なこと、あるいはそれを動かす組織、機構といったことも当然重要な問題であります。ですから、いつも総理が申しておられますように、節度のある、質の高い防衛力の整備ということを言っておられる。その質の高いという意味も、そういった装備面の近代化ということのみでなくて、隊員の練度あるいは士気、そういうことも含めた人的な自衛力、あるいはまたそれを動かす組織、機構といったもの、そういったことも含めた意味での整備でなければ意味がない。私どもこれはそのとおりに思っております。
 その次に先生が御指摘になりました、いまの取り巻く国際環境、そういったものを背景にしていろいろやっているようだけれども、国民には必ずしもよくわからないというような御指摘があったわけでございますけれども、その点につきましては私どもはやはり五十一年にできました防衛計画の大綱というものに基本的な考え方は示されておると思います。つまり、限定的かつ小規模な侵略に対しては、独自で排除するだけのものを整備し、それ以上のものについては日米安保体制でもってわが国の平和と安全を守っていくんだという考え方、それに基づきまして別表にある程度具体的に数字を挙げた防衛力の整備目標というものも示されておるわけでございまして、私どもは最初に申し上げました質的な面の向上ということももちろん考えながら、いまの私どもの当面の措置としまして防衛力の整備の目標としまして、やはりいま申し上げました防衛計画の大綱の水準に早く達したい、そのために現在具体的には私ども中期業務見積もりというものを私どもなりに持って整備を図っておるわけでございますけれども、それを進めていきたいというのが現在の私どもの立場でございます。
#75
○渋谷邦彦君 五十一年の大綱についてはわかっていますけれども、非常に概念的なんですね、わかったようなわからないような。確かにそうした限られた範囲のことしかできないであろうということは、われわれとしても判断はつくものの、実際の限定的、具体的なそういう議論に入ってきますと、果たしてどうなのかという問題ございましまう。これから安保特別委員会とか内閣委員会でも、もちろん議論になっていくだろうと思います。
 そこで、もうあと、大変お待ちになっていただいて恐縮なんですが、もう一点、そういったいま防衛力を拡大する前にやらなくちゃならぬ問題もあるんじゃないかということが考えられるわけね。私ども詳しいことはわかりません。たとえばいまの陸海空というその状況の中で、もし有事の場合に、どこに一体指揮系統というものがあるのか、これもずいぶん議論されてきたでありましょう。もうすでにおやめになった陸海空の各統幕議長が集まった座談会の模様が掲載された雑誌がございますけれども、それを読んでおりましても、専門家ですらも現在のそのあり方については、何か有事の場合には全く混乱を起こすであろうと、端的に言えば、それは防衛庁長官ということになるかもしれませんよ。しかし実際に取り組むのは、制服でしょう、ユニホームでしょう。そういったことは全然ばらばらになっている。こういったものをやはり統括した、そういう体制だとか、いまの財政難というものを考えてみた場合に、人員の配置にしても、多いのか少ないのか、あるいは兵器にいたしましても、いま戦車が八百両あるそうでありますけれども、最新のやつが北海道だけにしかないと。どこでどういう効果を上げるために戦車というものが一体それだけ必要なのか、あるいはF15のこれから導入というものが百機ばかり予定されている。それよりももっと、最近開発された、一発百万円とか一発一千万円ぐらいのミサイルを導入した方がいいんじゃないか。そうすると、F15一機を買うよりもはるかにそれが効果的ではないか等々、いろんな問題が素人目に見ましても感じられる。それよりも何よりもそういう問題を拡大する前に財政というものを考えつつ、そして機能的にどういうふうに働くのが一番いいのか、カナダのように全世界で一つと言われているそうですけれども、果たしてそこまでいくためにはいろんな問題、障害があるでしょう。けれども、やっぱり理想まで到達したというのが現在のカナダの統一軍だそうであります。やっぱりそういうようなことも現在の防衛庁としても、いろんなセクショナリズムというものを排除しながら総合的に日本の専守防衛というものをどこまでも貫いていこうとするならば、やはりその機能というものを十二分に上げるためにはそういった点からまず防衛力整備というものを現実的にやることの方が先決ではないのか。これをもっと本当はきょう細かく聞きたかったんです。はっきり申し上げて。それを総合的に、いま私が何を言おうとしているのか、おわかりいただいたと思いますので、それを取りまとめて整理をして答弁していただきたいと思います。
#76
○政府委員(塩田章君) いまのお尋ねの中心は、有事の場合の指揮系統がうまく作動するかどうかというお尋ねであったと思いますけれども、まず現状は、防衛庁長官は各部隊を指揮するに当たりまして、陸海空の幕僚長を通じて行うということが、通常の場合そういう形でございますが、有事の場合に、陸海空の自衛隊のいろんな組み合わせによりまして、特別な部隊、いわゆる統合部隊をつくる必要があるということもございまして、そういう場合の規定も現在ございます。そういう場合には統合幕僚会議議長が各幕僚長にかわりまして、そういう統合部隊の指揮については幕僚会議議長が長官を補佐するということで、一応そういう必要の場合の統合部隊の規定もございます。あるいはまた、そういう統合部隊をつくらなくてもいまの陸海空の自衛隊の形で戦う場合であっても、その部隊の指揮、運用の基本につきましては、統合幕僚会議議長が長官を補佐するということになっておりまして、統合的な運用ということについての現在の段階での制度的なものは一応できております。ただし、実際の運用が、これがうまくいくかどうかという問題はもちろんあるわけでございまして、現在私どもとしましては、一つには、来年度からお願いしたいと思っておりますが、中央指揮所というものをつくりまして、五十八年度から運用開始したいと思っておりますが、これができれば、長官の統括的な運用というのも、あるいはそれを補佐する統合幕僚会議議長の補佐というものが非常に効果が出てくるんじゃないかということを一つ期待しております。
 それからもう一方、それと並行しまして、実は五十四年度に一度統合演習というのを行いました。これ実は陸海空自衛隊ができて初めてなんですけれども、統合幕僚会議議長がみずから統裁官になりましてやった演習がございますが、これも大変大事なことだということで来年度からは少なくとも毎年一回は行いたいということを考えております。そういうことをやって積み重ねていきます間に実際のわが国の自衛隊の動かし方についていろんな問題点、研究が積み重なっていくだろう。一方で、いま申し上げました中央指揮所なんかをつくっていくことによりまして、相まってなるべく早く実際の経験に基づいたいい体制をつくっていきたいというふうにいま考えているところでございます。
#77
○渋谷邦彦君 終わります。
#78
○委員長(秦野章君) それでは午前中はこれで休憩し、午後は零時五十分から再開いたします。
   午後零時八分休憩
     ―――――・―――――
   午後零時五十三分開会
#79
○委員長(秦野章君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#80
○立木洋君 大臣、きょう委員会が終わったら韓国の大使と会われるというふうな何か予定がおありなそうで、そこでちょっと申し述べておきたいわけですが、きょうお会いになって判決文を要求されると思うんですが、もちろんこれは野党が要求してくれと言われているから要求するのではなくて、当然政府みずからが政治決着との関連で明らかにされる必要があるというふうにお考えになって要求されるものというふうに解釈していいでしょうね。
#81
○国務大臣(伊東正義君) これは、当然政府として判決文を全文を見たいということでございまして、野党が言われたからとかそういう意味じゃなくて、政府として独自な考えでやります。
#82
○立木洋君 それからもう一つ、これを韓国の大使に申し入れられる場合の姿勢の問題にもかかわるかと思うんですが、一時期、この金大中裁判の問題に関して日本政府が批判的な見解を述べたりいろいろするということは、内政干渉にわたる危険があるというふうなことが言われていたわけですが、こういう金大中裁判の問題について日本政府があるいは批判的な見解を述べたり警告を行ったりするというふうなことは、これは内政干渉にわたるというふうに大臣お考えでしょうか、それともわたらないというふうにお考えでしょうか。
#83
○国務大臣(伊東正義君) 厳密な意味で、国際法上内政干渉といいますか、そういうことになりますと、相手方に強制的に自分の意思を通すとか強制するとか、そういう厳密な意味で言えばそういうことかもしれませんが、やはり向こうの立場その他もいろいろありましょうから、向こうの国々の国情等もやっぱり配慮をしていろいろ意見を言うということだと私は思いますので、その辺のところはやっぱり注意しながら意見を向こうに伝えるということだと思っております。
#84
○立木洋君 もう大臣はもちろん十分御承知だろうと思いますけれども、国連憲章の中でも明確に、人権問題、基本的な自由の問題の尊重ということが国連憲章にも明確にうたわれておって、加盟国の義務にもなっているわけですね。先ほど午前中、非常任理事国になったということの責任の重大さを大臣申し述べられたわけですし、そういう人権問題というのはやはり国連の中でも再々取り上げられてきて、この問題に対する意見、警告を述べたりするというようなことは、これはやっぱり内政干渉にわたるという問題ではなくて、広く、やっぱり国際的な問題として問題にされているという経過もあるわけです。特に今回の問題というのは日本とのかかわりも非常にあるわけですし、とりわけヨーロッパでは、西欧九カ国ですか、これは金大中氏の裁判にかかわってのあの死刑判決の中止を要求するというふうなことを全員一致、九カ国政府の代表のもとに採択されておるというふうなこともあるわけですから、このきょうの午後、大臣が韓国の大使に述べられる際に、この判決文を強く要求すると同時に、やはり今日の裁判における日本の広範な国民が抱いておるきわめて遺憾の念、危惧の念、こうしたこともきちっと伝えていただきたいと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
#85
○国務大臣(伊東正義君) 金大中氏につきましては、拉致事件があったということで日本の国民のたくさんの方々が特別な関心を持っておられる、そして裁判の成り行きに憂慮しているということは私、会うたびに伝えたのでございまして、その点はきょうも伝えるつもりでございます。
 人権の問題につきましては、これはお話がございましたが、この問題が国連でも非常に重視されているということはよくわかります。ただ、この人権の問題、その国の政府と国民の関係ということで考えていきますと、その国その国の国情、事情等いろいろありますから、一概にどうだと、こう言えないわけでございまして、ECがこう言ったから日本もこうということでは、私はその点は若干違いがあってもいいと思うのでございますが、この点はその国その国の事情もよく考えて、深く考えて物を言わにゃならぬというふうに私は思っております。
 それで、いまの先生のおっしゃった内政干渉かどうかということにつきまして、私は厳密な意味では、強制的にどうということはこれはしているわけじゃございませんから、内政干渉、法律的な意味の内政干渉とは思っておりませんが、やはり向こうのいろいろな国内の事情、問題が司法権の問題であるというふうな事情、いろんな事情がございますから、そういうことを頭に置いて十分相手のことも考慮しながら判決文を見せてもらいたいという要請をしようと思っております。
#86
○立木洋君 まあ国連憲章の問題については、政府自身が韓国との間で結ばれた日韓条約の第四条の中にも国連憲章の原則を踏まえるということが明記されておるわけですし、この点は平和の立場と同時に人権の問題ということもはっきりしているわけですから、これは外相の方からきちっと申し述べても決して内政干渉にわたらないと思うので、その点改めて強く要望しておきたいと思います。
 それで次の問題ですが、カンボジアの問題ですけれども、いま日本の政府としては、俗に言われておりますいわゆるポル・ポト政権ですか、を承認し、それとの外交関係を持っておるという状況になっているわけですが、このいわゆるポル・ポト政権との外交関係を維持していくという根拠ですね、どういう考えでいまそれを維持しておられるのか、それをまずお尋ねしたいんですが。
#87
○国務大臣(伊東正義君) 私、東南アジアを回ったときも、ASEANの人々から、国連の代表権についてASEANは一致して民主カンボジア政府の国連代表権を維持しているから、日本も協力してもらいたいということを要請があったわけでございます。日本は、御承知のような民主カンボジア政府を承認し、代表権につきましても、昨年も民主カンボジア政府の代表権を維持するという投票をしたわけでございますので、ASEANの主張を支持して行動したわけでございますが、その理由は、ASEANとの関係でASEANの主張を支持するということもございましたが、理由とするところは、武力をもって他国に侵入して、他国の中に自分の都合のいい政府をつくっていく、そういう介入はどうしても認められない、国連の決議でも即事撤兵ということを言っているわけで、ベトナム軍のカンボジアからの即時撤兵ということも言っているわけでございまして、私どもは、ポル・ポト政権が過去においてやったことがみんないいからポル・ポト政権を維持するという意味じゃなくて、武力をもって介入して、そしてかいらい政権をつくって、その政権の代表権を認めるということはどうしても日本としてはとるところじゃないということで、それでは民主カンボジア政府というものの代表権の維持をやはり続けていこうという立場でやったわけでございまして、ポル・ポト政権のやったことをみんなこれはいいぞということを言っているわけじゃないんです。
#88
○立木洋君 私も申し述べたいことはあるわけですが、それはさておいて、去年の二月でしたか、私は園田さんが外務大臣のときにお尋ねしたんです。つまり、ヘン・サムリン政権がどうして承認できないのですかということをお尋ねしたときに、そのときの大臣のお話では、つまりヘン・サムリン政権というのは実効支配をしていないと、だからいま承認する段階ではないというふうに判断しているということを述べられたわけですね。つまり、ヘン・サムリン政権が承認できないというのは実効支配をしていないからだ。いまの大臣のお話ですと、これは外部勢力の武力によってつくられた政権だから承認できないという新たな要件が加わるわけですか。
#89
○国務大臣(伊東正義君) 私はそういうことを常に言ってきたわけでございまして、それは日本政府がヘン・サムリン政権を承認しないということの大きな理由でございます。
#90
○立木洋君 そうしたら、ヘン・サムリン政権はこれは未来永劫に承認することはあり得ないというふうに、大臣のお話で――言うならば外部の勢力が介入した政権であるかどうかという議論は、私は別の議論を持っていますけれども、しかし大臣のお話でいきますと、ヘン・サムリン政権というのは外部の武力によってつくられた政権だから未来永劫に、どんな状態になってもこれは承認できないというようなことになるんですが、それでもいいんですか。
#91
○国務大臣(伊東正義君) これは今度のカンボジアの情勢に関するASEAN――日本も共同で提案した決議がきょう多数で通ったわけでございます。現地の日付ではきのうでございますが、九十七対二十三ぐらいで通ったわけでございますが、これは外国の軍隊の即時撤退、これはベトナムになります。即時撤退と、そして今度はカンボジアの国民による自由な投票による政権を選ぶということを内容にしているわけなんです。でございますので、私どもも共同提案でこれをやりましたから、カンボジアから外国の軍隊はみな撤退すると、そしてそういう自由に国民が自分の意思を発表できるという立場で自由な投票をやりまして政権を選ぶ、そのとき選ばれた政権につきましては、日本はこれは国民の自由意思で選んだ政権なんだと、それはどういう政権になるかわかりません、わかりませんが、それは承認したいということだと思います。
#92
○立木洋君 大臣ね、ヘン・サムリン政権がそういうふうな政権として規定をされて、今後未来永劫にヘン・サムリン政権である限り承認できないということをこの外務委員会の席上で公式に述べられたということは、これは大変な問題なんですよ。
 私、一つお尋ねしますが、たとえばいまアフガニスタンのカルマル政権は日本は承認関係を持って、外交関係を持っていますわね、大臣、カルマル政権は。
#93
○国務大臣(伊東正義君) ひとつ、いま先生のおっしゃったところで、私はそういうことを言ったのじゃなくて、カンボジアから外国の軍隊みな撤退する、そして国民の自由な意思によって選挙が行われる、そのときにどういう政権ができるか私はわかりませんと言ったんです。それはあるいはシアヌーク殿下が出るのかもしれない、ヘン・サムリン政権が当選するのかもしらぬ、それはわからぬ、どういう政権ができるか私はわからぬということを言ったわけでございまして、そこで国民の自由な意思表示によって、投票によってできた政権については、これは日本は承認をしていきます。その国と国交を結んでいきますということを言ったわけでございまして、先生は私よりも狭いことをおっしゃったんで、選挙で勝っても認めないと私が言ったというふうにおとりになったのでございますが、私はそういうことを言ったんじゃない。どういう政権ができるかわかりませんが、そういう国民の自由意思でできた政権については、それがどういう政権であっても承認はしていく、こういうことを言ったわけです。
 それから、アフガニスタンとの関係は、法律関係、どうぞやってください。
#94
○立木洋君 外交関係あるんでしょう。
#95
○政府委員(伊達宗起君) アフガニスタンの現政権とわが国との関係は、承認しておりませんし、正常な外交関係はございません。
#96
○立木洋君 いま大使館こちらにありますわね、アフガニスタンの大使館。
#97
○政府委員(伊達宗起君) 存在はしておりますが、正常な外交関係を結んでいるものではないので、その限りの制約のもとに活動といいますか、活動していると。つまり正常な外交関係にはないといいましても、実際上の正常な外交関係ではないような日常の事務というものはあり得るわけでございまして、それを処理するということはあり得るわけでございまして、それは直ちに国際法上承認につながるものではないという行為があるわけでございます。
#98
○立木洋君 一九七八年四月以降、アフガニスタンの政権というのは承認されたことは一回もないわけですか。
#99
○政府委員(伊達宗起君) 一度もございません。
#100
○立木洋君 そうしたら、大使館が設置されているのは、あれは大使館ではないというわけですね。
#101
○政府委員(伊達宗起君) 厳密な意味におきまして、わが国が承認関係にない政権の代表として来ているわけでございますから、大使館ではないということも言えると思います。
#102
○立木洋君 そこらあたりもう一遍さらに明確にしておきたいんですけれども、これはこのことだけで時間をとっておったら後の聞きたいことが聞けなくなりますから、まだ私としてはアフガニスタンとの関係がどういうふうになっておるかというのはきわめてあいまいだと思うんですね、いまの条約局長の答えだけでは。私そこらあたり、もう少しはっきりさしておきたいと思うんですが、時間がないので次に進みます。
 この間、大臣がASEANなど五カ国を訪問して帰ってこられて、そして鈴木総理に報告をされた。そのときの新聞の報道を読んだんですが、あの新聞の報道の中では、当面ポル・ポト政権の支持を続けていくが、将来はカンボジアがどういうふうになっていくかいま見通しが立たない状況にあるという趣旨の報告を総理にされたという。当面はポル・ポト支持をしていくが、将来のカンボジアに対してはいまのところ見通しが立たないという報告をされたというふうに新聞の報道で読んだんですが、それが事実だとしたら、それはどういう意味で述べられたのか、ちょっとそのあたりを説明していただきたいんですが。
#103
○国務大臣(伊東正義君) 私、正確な表現はいま覚えておりませんが、総理に報告したことは、ことしの国連総会で民主カンボジア政府代表権の維持をするということで各国に働きかけます。ただ、インドシナの平和ということ、恒久的な平和ということはこれはそれだけで解決することはありません、それだけでインドシナの平和が解決されるとは思いません、やはりあそこで平和的に関係国あるいは影響を持った国とか、ASEANの大部分とか、そういうもの、具体的にどこと言ったわけじゃございませんが、国際会議を開いてやっぱりテーブルについてみんなで話し合いを平和裏にするということを考えないと、代表権の維持だけであそこに、インドシナ半島に平和が来るというわけにはいきません、私はそう思いますと。きのう通りました決議にも、やはりそういう国際会議の提唱をしているわけでございまして、
   〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕
代表権の維持ということはまず第一歩で、これからがインドシナ半島の平和をどうやったらもたらせるかということの正念場でございますということを、そういう意味のことを、言葉は正確には覚えておりませんが、言ったことは確かでございます。
#104
○立木洋君 それで大臣、最近のASEANですね、それからカンボジアをめぐる状況の中で、いろいろ国際的な動きが変わってきたと思うんですね。昨年はイギリスのポル・ポトに対する承認の取り消しがありましたし、ことしは国連総会が終わってからオーストラリアのいわゆる承認取り消しが行われましたし、また大臣がせっかくおいでになって、ビルマに対してもいろいろお話をされたようですけれども、ビルマはポル・ポト承認は投票では棄権をされたというふうな動きもあったし、またタイやシンガポールも最近はポル・ポトに対していままでと異なった見方が出てきているようですし、またきのうお会いになったインドネシアの高官との大臣のお話もきょう新聞で見ましたけれども、若干違ったニュアンスをポル・ポトについては持っておるような感じも受けたわけですね。
 私は、そういう本当の意味でいわゆる東南アジア、ASEAN諸国、あの周辺においていわゆる紛争状態が起こらない、戦争が起こらない、そういう平和を願っていくということは、それぞれの国の国民がそれぞれみずからの政権をどうしていくかということにまたなければならないことだろうと思うんですね。そういう観点から見るならば、そういう動きを十分に踏まえた対応の仕方というのが日本の政府としても私は必要だろうというふうに考えるわけですよ。ですから、このかたくなな態度をやっぱりカンボジア問題ではとらないで、大臣自身としても十分に動きを見ながら対応していく姿勢が私は必要ではないだろうか。私の言いたいことはまだたくさんありますけれども、ただ大臣に私の意見をぶつけても聞いてもらえない点もあるでしょうから、それは言いませんが、少なくともそういう考え方は持つべきではないだろうか。そうするならば、来年の一月にカンボジアの政府では総選挙を実施するということがすでに確定されて、その準備が進められているわけですね。だから、いまの東南アジア、ASEAN諸国の動きをにらみ合わせながら、来年の選挙でつくられる政権というものに対しては日本政府がどういふうに考えるのか。もちろん、いまからそれをどうこうということは言えないかもしれませんけれども、少なくとももっと動きを踏まえた、カンボジアの国民自身が選んだという政権であるならば、これについてはもっと柔軟な態度をとることが政府としても可能ではないかと思うんですが、先ほどの大臣の御答弁と考え合わせて、もう一度ちょっと御確認を願いたいんですが。
#105
○国務大臣(伊東正義君) 国連の総会で民主カンボジアの代表権維持というのはこれは去年より票数はふえているんです。先生も御承知だと思うんですけれども、去年より国連の場では民主カンボジア政府の代表権を維持するという国の方がよけいになっております。その後オーストラリアが、取り消しはまだ行っておりません、まだ現実には行っておりませんが、そういう意向を発表したということは、これは事実でございます。先生がおっしゃったビルマが棄権をしたということも事実でございます。まあそういう情勢はいろいろあるわけでございますが、私どもはまず第一段階として民主カンボジア政府の代表権の維持ということをやったわけでございまして、これからあそこを恒久的平和にするにはどうしたらいいかということは、先生がおっしゃるように、これはよく真剣に慎重に考えなければならぬことだと私ども思っております。
 ただ、先生のおっしゃった来年一月の選挙ということでございますが、私ども今度の国連で出しました決議案、多数できのう通った決議案は、まず撤兵ということを言っているわけでございます。銃剣のもとの選挙ということじゃなくて、撤兵をして、国民が自由に意思を表示できるという状態のもとで選挙をということを決議では言っているわけでございます。その点が、そういう情勢が一月までにできるかどうかということは、これはこれからの問題でございますから、私、いまここでどうということは言いませんが、本当に自由な国民の意思の表示ということができる選挙ということをわれわれは期待しているわけでございます。それで先生のおっしゃった、かたくなな態度でなくとおっしゃることはよくわかるんです。これは先生のおっしゃったことで有意義なことはありますので、それは私ども大いに参考にしていきますが、柔軟なといいますか、かたくなでないといいますか、そういう態度で臨めとおっしゃることはよくわかりますので、私どももこの問題につきましては慎重に、ASEANの諸国とも相談しながら慎重な態度で取り組んでまいります。
#106
○立木洋君 もう時間がないので最後に二点だけお尋ねしておきたいんですが、私たちは外国の軍隊が存在しておる場合、二国間で協定が結ばれて存在しているような場合でも、国民の意思を自由に表明できる選挙はあり得ると。日本にだってアメリカの軍隊いますからね。だって、これでアメリカの軍隊がいるからといって、われわれ自由に選挙ができないかといえば、そうではないわけで、それは外国の軍隊云々という問題については、私はやっぱりよく考えてみる必要があるだろう。それからベトナムが介入して私はカンボジアの政権を覆したというようなことは、私たちはそういう立場をとらないということを申し述べておいた上で、二点だけ。
 一つは、いまのポル・ポト政権の承認について、承認を取り消すことを検討するお考えはおありになるかどうか。いま西ヨーロッパの国々でもポル・ポト政権を承認していない国というのは比較的あります。そしてまた、承認していなくても、国連での代表権は支持したという国、西独等々あるわけですから。こういう問題については、最近そういう承認取り消しが進んでおる状況の中で日本としてはそういう問題を考える余地がないかどうかという問題です。ヘン・サムリン政権を承認するかどうかはまた別ですよ。ポル・ポト政権の承認を取り消す検討をなされるお考えがあるかどうか。
 それからもう一つは、先日櫻内義雄自民党の幹事長が、ベトナムに対する援助の凍結をやめてはどうかという趣旨のお話を外務大臣に申し述べられたと思うんですが、ベトナムに対する援助の問題について、その後どのように大臣はお考えになっておられるのか、この二点だけお答えいただいて、私の質問を終わります。
#107
○国務大臣(伊東正義君) 外国軍隊が入っている場合に、国民の自由意思が発表できないじゃないか、日本もアメリカの軍隊がいるんじゃないか、ベトナムだってカンボジアだって、そういうことは具体的に言えば考えられるではないか、というお話でございますが、これはまあ先生の御意見として承っておきますが、私は大分事情が違うということだけは、もうはっきり私はそういう認識をしております。
 それから二点でございますが、民主カンボジア政府の承認を取り消すことを考えているかどうかということでございますが、いままだそういうことは全然相談をしたことはございません。目下考えておりません。
 それから、ベトナムの援助の問題でございますが、幹事長からそういう話があったことはそのとおりでございます。それで私、幹事長にもそのときお答えしておいたのでございますが、
   〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕
このことは、あの地域のインドシナ半島の平和ということに非常な関係のあることでございますので、まだいまそれを解除して援助をするというような情勢にはなっておりませんということを私はお答えしたわけでございまして、櫻内幹事長からお話があったのは一カ月ぐらい前だったと思いますが、いまもそのときお答えしたと同じような考え方でおります。
#108
○木島則夫君 最初に外務省にお尋ねをいたしますが、いまイランのアメリカ大使館員人質解放をめぐっていろいろ取りざたが行われております。まず伺いたいことは、外務省がどういう感触を得ているかということと、マスコミの報ずるような明るい見通しがもしあるとするならば、それはイラン議会を山として行われるか、ごく近い将来そのことが実現をされるというような見通しをお立てになっているか。まあいろいろつかんでいらっしゃると思うんですけれど、まずこの辺から伺っておきたいと思います。
#109
○国務大臣(伊東正義君) イランの人質の問題につきまして、イランの首相が国連に出て事務総長とも会ったりした、帰りにアルジェリアにも寄り、帰ってからいろいろな動きがあるということで、若干の変化はあるのじゃないかと予想しておりますが、アメリカ政府は過去においても実は何回もあった、いろんな手はずまで整えたけれども、その都度実現しなかったということで、今度の問題につきましても非常に慎重でございまして、具体的な姿として人質解放が緒についたというふうにはまだ見ておらぬのじゃないか、非常に慎重な態度で見ておるというのが現状でございます。
#110
○木島則夫君 この人質事件をめぐりまして、わが国のイランに対する制裁措置というものは、わが国の自主的な判断よりも終始対米協調路線が優先をしたという意味で、確かに私は問題を残した外交であったというふうに思っているんです。
 イランは、確かにわが国の原油輸入の一割を占める重要な石油供給国であったにもかかわらず、ことしの四月、アメリカが対イラン断交を含む新しい制裁措置を発表をした。で、わが国等の友好国に同調を求めてきたことを背景としまして、政府の大来外務大臣は外人記者との会見の席でも、わが国にとって石油の供給というものは死活問題ではあるけれど、それよりも重要な問題があると言って対米関係維持の重要性ということを間接的に強調をした。故大平総理大臣も、これは札幌でのたしか記者会見であったと思いますけれど、この発言はきわめて当然のことであると述べたのでありましたが、こういった発言は、政府の対米姿勢を端的に示すものであったというふうに私には映ったわけでございます。
 もちろんわが国としては、アメリカと違いましてイランと断交することはしないでバンダルホメイニの石油化学プロジェクトの仕事を、工事を経済制裁の対象から外すべく腐心をするというような点はあるにはありましたけれど、大使館員の削減であるとかあるいは食糧、医薬品を除く新規輸出の停止、新規の技術援助の停止等の措置はすべてECよりも先走らず、またECよりもおくれずといった基準によってとられたものであった。これまた私はEC追随という自主性を欠いた外交であったというふうに見ていたわけでございます。当時は大平内閣の当事者でもあった外務大臣でございますから、おっしゃりにくい点はよくわかるんですけれど、いま振り返りまして、やっぱり日本の外交の自主性という立場からこの問題を振り返ったときに、欠くるものがあった、確かに問題はあったというふうな御反省の上に立ってこれからの日本の自主外交というものの一つの節にしたいというお気持ちがあるかどうか。というのは、この人質解放の問題が解決した後、また制裁措置をどう自主的に判断をしてこの措置をとるかということにもつながってまいりますので、この経過を踏まえて外務大臣にひとつ振り返っていただきたい、こういう意味での質問であります。
#111
○国務大臣(伊東正義君) あのときの経過を思い出しますと、一月の何日でございましたか、日本へはハビブという特使が参りまして、ちょうど私、大来外務大臣が外国へ行っているときでございまして、臨時外務大臣代理をしていて会ったのでございます。それと一緒にヨーロッパにはたしかクーパーが行ったか、だれか行った。両方に、アメリカはこういうことを考える、ECも日本も協力をしてもらいたいというような期待表明で来られたので私が会ったわけでございます。そのとき私は特使に言ったのでございますが、これはアメリカに追随してやるんじゃない、日本もこれは国際法秩序が――もう大使館員が人質になる、占拠されるというようなことは、これは国際法の破壊でございますので、国際秩序の破壊でございますので、そういうことを日本もこれは認めるわけにはいかない、アメリカがどう言おうと、それはおかしなことなんで、そういうことは認められない。日本でも国際秩序が早く戻されるようなひとつ協調といいますか、そういうことは考える。しかし、それはあくまでも日本が判断してやることであって、いま先生のおっしゃったあのイランの石化の問題がございますので、日本としてはそういう独自な問題があるんだから、これは当然日本としては、ほかの輸出をとめるというような、新規のものをやらないというようなことがあっても、こういうことは日本としてはやらざるを得ないんだと。アメリカがどう言ったって日本としてはこうだというようなことを私は主張して別れたことがございます。ECもECの外相会議をやって、ひとつ国際秩序を保つということで、イランに対して経済制裁を協調してやろうというような決議をしたわけでございますので、日本としてもこれはちぐはぐなことをやっても効果がないので、ECともひとつ相談してみよう、やる場合にどういうやり方が一番効果があるかということで相談しようということで、いま先生がおっしゃったように大来外務大臣が急遽ECに行きまして、何人かの外務大臣に会って相談をしたということがございます。これはあくまで国際秩序を守ると、どこでも大使館はもう安全じゃないんだというようなことになりましたらこれは国際秩序を守れませんので、そういう判断で自主的にひとつ協調してやっていこうということを決めたわけでございますので、その点はひとつ御了解を願いたい。私も常にそういうことはアメリカに対して主張したのでございます。
 それから今度は、もしも人質解放になったらということでございますが、あれはまあ一時的な問題としてやったということは、これははっきりしているわけでございますので、これは解除ということはあり得るわけでございます。その際には、これを行いますときに、EC等とも方法、時期等相談したことがございますので、やはり私はその経緯から見まして、日本はこうするよというようなことでECともやっぱり通報するといいますか、そういうことはやって、解除する場合にはやるべきじゃなかろうか、これは仮定の問題でございます。これからの問題でございますが、そういうふうに考えております。
#112
○木島則夫君 人質解放という客観的事実が行われたということになるならば、自主的に制裁措置を解除をするんだというふうにとってよろしゅうございますね。
#113
○国務大臣(伊東正義君) もちろん日本の政策判断でございますから、日本としてはこうするのが一番いい、こうしたいということで方針を決めます。その上で、ECあるいはアメリカもやっていたことでございますから、日本としてはこうしますよということを通報するということは当然だと思っております。
#114
○木島則夫君 事の決まったいきさつは、さっき外務大臣がおっしゃったとおりでございまして、ここでも日本は自主的におやりになって判断をしたんだというお答えでございましたけれども、外に出た、外に映った御決定の姿というものは必ずしも私は日本外交の自主性というものをはっきり示したとは思えなかっただけに、日本がすることは日本で決めて、その後アメリカ、ECに通告をするんだといういまの姿勢はひとつきちっとやっていただきたい。これは確認をさしていただきたいと思います。
 これもまた確認でありますけれども、最近カーター大統領とマスキー国務長官がイラン・イラク戦争に関しまして、人質解放の見合いでイランを支援するような姿勢を示しておりますけれど、もちろんわが国としてはこの戦争に対してはあくまでも中立、不介入の態度を貫いていくんでしょうね。これももちろん確認であります。
#115
○国務大臣(伊東正義君) アメリカで演説をしたということは新聞等で知ったわけでございますが、あれは人質解放のための、人質解放に関連した発言であって、アメリカはやはり不介入という原則は変えてないというふうに私どもは理解をしおります。日本はもちろんあの紛争については不介入、中立ということを何回も声明をしているわけでございまして、どの国がどうだったからどうということじゃなくて、日本としては不介入、中立の原則は堅持していくということでございます。
#116
○木島則夫君 せんだってイラクから来日をしたカラフ特使が十月の十七日に伊東外務大臣と、また二十日には鈴木総理大臣とお会いになったわけであります。会談をされたわけなんですが、どのようなことをここで話し合ったのか。またフセイン大統領から鈴木総理あて親書が手渡されたということでありますけれども、この内容はどういうものであったか。報道によりますと、特使は総理と会われた際に、この親書を手渡すとともに日本が平和のために政治的役割りを果たすように要請をしたということでございますが、これに対して日本側は、中立、不介入の立場を説明をして一刻も早く戦争が終わることを願っていると願望を表明をするのみで、平和のために何らかの役割りを果たすというような積極的な姿勢は示さなかった。ひたすらイラクに要請をしたことは、在留邦人の安全な出国やシャットアルアラブ川に足どめをされている日本の船舶の安全な脱出等であったというふうに聞かされておりますのは、どうもその日本の立場に立ち過ぎた余りにもエゴイスチックな要求が先に掲げられて、国際社会での日本の役割りを何かこう軽視したような、軽く見られるような言動に映ってならないのでありますけれど、この辺は外務省の姿勢としていささか問題があったのではないか、こう思うんです。いかがでございましょうか。
#117
○国務大臣(伊東正義君) 私が先に特使に会いまして後で総理が会われたのでございますが、向こうからの話は、私に対しましては、今度の紛争というものは、これは何も領土的要求とか石油が欲しいんだとか、そういうことでやったんじゃない、前の一九一三年の条約、一九七五年の条約というような条約を説明をしておりましたが、そういう経過を踏まえてそれの忠実な実行ということを自分らは考えているんだ、ところが国境侵犯、イランから国境侵犯が、いろいろ紛争が起きていてそういうことが原因で紛争になったんだというイラクの立場の説明があったわけでございます。それから自分たちは何もイラクに日本が加担をしてくれということを要求したのではない、要求しに来たのではない、なぜ戦争をやったのか、紛争を始めたのかということを理解してもらえばいい、また、日本が中に立って仲介をしてもらいたいということの何も要請に来たのではないというような経過の話でございました。総理には、日本も世界の平和の動きがある場合にはそれには日本も参加してくださいよというような抽象的な、このイラク・イラン紛争に調停がある場合に日本もその中に入って調停をしてくれというような具体的なことじゃなくて、もっと広い意味の世界の平和というようなことで動きがある場合には日本もそれには参加してくださいというようなことを総理には特使が言ったということを、私、後で聞いたわけでございますが、それは具体的にたとえばどこが仲介に立つ場合に中に立ってくれとか、一緒にやってくれとか、そういう具体的な話ではなかったということを聞いておるわけでございます。
 それで私は特使に対しまして、いま先生のおっしゃったような在留邦人の脱出に非常にイラクは協力をしてくれたことがございまして、もう千数百人――半分ぐらい出ていますので、それの感謝、今後ともひとつそれを頼みますということ、あるいはシャットアルアラブ川の船が閉じ込められている、これは日本だけじゃない、日本の船よりも外国の船の方が多いんですが、いま国連から部分停戦をしてその船の脱出ということの勧告があったわけでございます。でございますので、イランはイラクが承知するならということで引き受けましたが、イラクはその当時まだ返事をしていなかった。早くそれを返事をして部分停戦をして外国の船はみんな出すようにしてもらいたい、あるいはバンダルホメイニの日本の石油化学というのは、これは特別な施設なんだからなるべく爆撃はしないように考慮してもらいたい、日本の企業が中断しているが、この損害補償の問題とかいう日本のことをもちろんこれは言ったわけでございますが、そのほかにいま日本が現実の問題として一つ動きましたのは、パキスタンのハク大統領にぜひイスラム国家の議長国家として仲裁をぜひやってもらいたい。両方イスラムなんだから、イスラムの国家に対しましてひとつ働きかけてもらいたいということを現実にやりましたので、調停その他にはこれはぜひ応じて、何とか早く平和になるように努力してもらいたい、あるいはホルムズ海峡の航行の安全ということにつきましては、これは日本だけじゃなくて、石油の問題を含めて世界の平和に関係することなんだから、ぜひホルムズ海峡の安全航行はやってもらいたい、というふうなことを実は種々話したのでございます。それに対しまして、ホルムズ海峡の安全航行については、自分の国はもうあそこの安全航行を確保できるようにあらゆる努力をする、また、調停があればだれの調停でも、国連の調停だけでなくて、だれの調停でもテーブルにつくというような返事があったのでございまして、単に日本だけの国益だけのことじゃなくて、あそこに何とか平和が来るように、調停の問題とか、ホルムズ海峡の安全航行の問題とか、そういうことを強く要請したというのがあの話し合いの実情でございます。
#118
○木島則夫君 外務大臣、二時から外交日程がおありになるということですから、私はもうここでやめますけれど、いまのお話を聞いていても、広い意味で世界の平和の動きがあった場合には、日本にひとつ積極的に調停役を買ってほしいという要請があったわけですね。まあここまで私は、これから先が大事なんでしょうけど、もう時間がございませんので、やはりそういうものにこたえるような国連外交、日本外交でなければならないと私は思いますが、ここのところだけちょっともう一回触れて、それで大臣の外交日程のお邪魔をしたくございません。いかがでしょうか。
#119
○国務大臣(伊東正義君) いまのお話の点ですが、そういう具体的に調停があった場合に日本もその調停の中に入ってくれという意味よりも、もっと広く、世界の平和という動きがあったときには日本も参加してもらいたいというような、もっと広い漠然とした話だったと私は聞いているわけでございまして、私にはそういう話はなかった。しかし、それはその話がどうであろうと、先生のおっしゃった、いまPLOが一つの案を出しまして、非同盟国の間でまだ具体的な動きにはなっていませんけれども、ある案がいろいろ相談されているという状態が一つございます。それからイスラムが、さっき申し上げましたようにハク大統領が一つの動きをしているということも事実でございますし、国連の安保理事会が動いているということも事実でございます。こうした動きに対して、日本はこれは何もしないという意味じゃなくて、国連の安保理事会でもまた日本の代表から発言をしてもらいますし、イスラムの方へは実は働きかけているというのは現実でございますし、これはぜひ実現をということで働きかけておる。PLOの動き、非同盟は――これは日本が非同盟でございませんので、直接は働きかけてはいないわけでございますが、私は先生のおっしゃるように、日本も安保理の非常任理事国に一月からなるのですから、日本としてもできるだけの、これは積極的な調停の中に加わるか、調停を進めるように側面からやるか、その辺は別としまして、日本も積極的に働いていくという考え方でいまいろいろ相談をしていることは確かでございますので、なるべく先生のような考え方で外交に取り組んでいきたいと、この問題はそういうふうに思っております。
#120
○木島則夫君 外交日程がおありになるそうでございます。もうちょっと詰めたかったのでありますが、ここで失礼いたします。ありがとうございました。
#121
○宇都宮徳馬君 金大中問題について少しくお話ししたいと思います。
 この前、鈴木首相が新聞記者会見かなにかで言われたと伝えられていますが、韓国は現在の経済情勢非常に悪いわけですから、だから経済援助等当然要請を受けるわけですけれども、現在のような金大中事件に対する態度では、日本の国民感情からいって非常にそういうことがやりにくいということを言われたと記憶していますね。で、私はこれはまあ、その前後に鈴木さんに会いまして、本音だろうと、こう思っているんです。これについて大臣の御意見は聞きませんけれども、ただ、国民感情がなかなか厳しいということだけは私は最近痛感していますから申し上げたいと思うんですが、とにかく私もいろんな外交問題に関連いたしましたけれども、この金大中事件ほど日本の普通の国民からいろんな積極的なフレーフレーという意見、やれやれという意見を寄せられたことはないんですね。それで、特に申し上げたいのは、非常に零細な寄付金を封筒なんかに入れてきましてね、それがまあインテリとか偉い人とかじゃなしに、本当の小さい主婦とか農民とか、そういう者から手紙やお金が来ているんですね。で、これはね、私は鈴木さんがああいうことは日本の国民感情が許さぬということの裏づけだと私は思うんですけれども、二、三証拠のために読んでみますけれども、これはたくさん来ているんです。本当言いますとね。で、少ないので千円、二千円、多いので一万円、その程度のものですけどね。それで、まことに素朴な政府に対する要求、われわれ政治家に対する要求ですからね、こういうところで申し上げておくのもそういう方々のために意味があると思いますから、私は本当に抜粋したところを読みたいと思いますけれども、たとえば、ここにはがきをよこしている。これはまあはがきですから、お金入れてありませんでしたけれども、「金大中氏の件については御意見に全く同感です。私たち無名の者には、自分の気持ちの伝えるところがありません。よろしくお願いします。家族の者も皆同じ気持ちです。五十四歳」、これは農民ですね。それからこの、「私は離島の主婦なので、署名も何にもできず、ただ心配し続けています。どうか皆様の力で金大中氏の命を助け、自由にさせることができるよう、がんばってください」とか、それから、少し理屈っぽいんだが、「金大中氏の自由回復のために、日韓政治決着の見直し、対韓経済援助の即時打ち切り」なんというのもありますね。そういう意見が大量に寄せられています。お金も来ているんですね。私はこれは、いままで私が手がけた事件のうちでそういうことなかったですからね、鈴木総理が、変なことをすると日本の国民感情が許せないということは、本当であろうと思いますよ。
 それで、これは少し長いんですがね、「いま、抑圧されてふつふつと民主主義への熱い思いを暗い心の奥に抱えている心ある韓国の人々の気持ちを理解し、日本のわれわれが声を大きくして叫ぶときだと思います。韓国の平和は日本の平和であるし、韓国の民主主義の萌芽は日本の民主主義の発展であるし、このことは金大中氏の拉致事件が日本の土壌で行われたことから見ても、表裏一体の関係にあります」と、なかなかその実態をよく見ています。この人なんかは封筒の中に千円だけ入れてきましたがね。とにかくまじめな関心が大衆の間にあると、したがって、鈴木総理が、そう簡単に日本の国民感情を無視するわけにいかないんだという記者会見された方が本当ですね。後、訂正されたかどうか知りませんがね。
 それで、いよいよきのう、憲法の国民投票が韓国で行われましてね、それで、その投票率なんかも発表になっている。九〇%以上というんですから、まあ全斗煥としては非常に成功であると、こう思っているでしょう。しかしまあ、私をして言わしむれば、韓国の民主主義と韓国の民衆は泣き寝入りしているんだと、こういう状況であることだけはこれは間違いないですね。とにかくことしの五月何日に、日本で言えば昔の憲兵司令官が軍の一部を語らって、そして最も精強な――現在、普通の民衆とそれから精強な部隊との武装力の差というものはとてもこれは問題にならない。いまから三十年前、五十年前とは問題にならない。そういう武装力で、そして非常な決心をもって弾圧すれば大概の者はまいりますよ。そしてあきらめてしまうというか、泣き寝入りしてしまう。そういう状況ですね。しかしやっぱり何と言うのか、先ほどあったように、ふつふつと燃えているものはこれは消えないわけですから。だから私は、金大中事件が、今度の憲法の国民投票が一応投票率がよかったとかなんとかいう事実によって一気に押し切られると、死刑とかそういうところまでいってしまうということになりますと、これはやっぱり皆さん御心配のとおりに、日本の国民感情には相当後味の悪いものが残る、そして、非常にある意味では韓国との間で大きい傷跡になります。韓国の国民の間にもそういうものが残っているんですから。
 伊東外務大臣がアメリカと話し合われたこともあると思いますが、アメリカのマスキーさんなんかも相当積極的なようですけれども、とにかく関心を何度か表明されていますね。私は、関心を表明されて、そして何とか金大中さんが死刑になるようなことは防ごうという決心を持たれたと、そのために非常に努力されて、私どもは伊東さんのそういう気持ちを一国民として、一政治家として評価しているわけですけれども、そういう、関心を持たざるを得ないということは非常に外交的な表現でありまするけれども、変なことをされちゃ困ると、こういうことになると思うんですけれども、そういう御心境は変わりありませんか。大臣にひとつ……。
#122
○国務大臣(伊東正義君) 重大な関心を持って憂慮して見守っているという気持ちは変わりありません。
#123
○宇都宮徳馬君 そしてあした裁判がありまして、うっかりするとまた死刑判決になる、第二次裁判で金大中さんは死刑、その他の多くの者も大して罪もない者が重刑に処せられる、それにつれていろんな韓国の人が罰せられる、そういう状況になるわけですから、日本やアメリカが関心を表明しておいて、そしてそういう状況になってくるということは日本の国民は許すことができぬと思いますよ、日本の政府は許すことができるかもしらぬけれども、気持ちの上で。
 これから韓国の大使に会われるという話ですからなんですけれども、日本の国民感情というものは意外に、とにかく普通の大衆がよく知っていて、むずかしいんだぞということは十分ひとつ伝えていただきたいと思いますね、これはもう当然なさると思いますけれども。
 そして、こういう問題がありまするから政府は別の理由を言っているようですけれども、日韓閣僚会議、金大中事件が起こったときも日韓閣僚会議が延期されたわけです。当時は大平外務大臣だったわけですが、延期されました。それで九月ごろ開かれるものが十二月ころになったわけでありまするけれども、現在も延期されているわけですね。新聞によりますると延期されておる。私は、こういう両国間に非常に重大な解決を要する問題が解決されない、意見の相違がはっきりしているときに日韓閣僚会議など開くべきじゃない、こう思いますから、これは開かないのが当然ですけれども、本日の朝日新聞見ますと、「日韓閣僚会議は年内断念」と書いてある。「韓国、外相会談を打診」、こう書いてありますが、私はやっぱり外相会談などもやるべきじゃないというふうに思いますね、死刑など宣告された場合には。それは日本の――これはこの前も申し上げたけれども、大平外相のときの政治決着あるいは政治解決の、日本側のすべきことだけはやって、韓国側のすべきことはやられてないという基本的な問題があって、その上にいろいろ起こっている問題ですから、これが再び蒸し返されている以上、国際的に、そして国民が重大な関心を持っている以上、外相会談などやるべきじゃないと私は思いますが――ここで言えなければいいんですけれども。これは私の意見です。あなたが答えていいことがあったら答えてください。
#124
○国務大臣(伊東正義君) きょうの新聞に出ておりますが、向こうから正式に外相会談をということの提案があったわけじゃないんです。これはそういう正式な提案はありません。ただ、私、実は国連へ行きましたとき方々の国の外務大臣と会ったことがあるんです。会いまして、本当は韓国の外務大臣にも会って、新しい外務大臣ですから日本側の意向を伝える、さっきの憂慮しているというような問題の意向を伝えるということは、私は適当な機会だと思って、実は国連で会おうと思ったんですけれども、ちょうど韓国の外務大臣は来ておられませんでしたので会いませんでしたが、いま向こうからそういうことを正式に提案してまてないということですから、私どもいまそれについてどうこうということは考えておりません。
#125
○宇都宮徳馬君 非常にお忙しいようで、もう二時ですからこれで終わらしていただきます。どうも御苦労さまです。
#126
○政府委員(伊達宗起君) 先ほど立木委員の御質問の際に、立木委員から、七八年四月以降日本はアフガニスタンの政権を承認してないかというお尋ねがございまして、私は、その以後承認しておりませんと申し上げたわけでございますが、その後調べてみますと、七八年四月はアミン政権が成立したときでございまして、アミン政権との関係におきましては日本は承認をしております。現在のカルマル政権は七九年十二月に成立したものでございまして、このカルマル政権はわが国は承認いたしておりません。謹んで訂正いたします。
#127
○委員長(秦野章君) 以上をもって本日は散会いたします。
   午後一時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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