くにさくロゴ
【PR】姉妹サイト
 
#1
第093回国会 本会議 第3号
昭和五十五年十月七日(火曜日)
   午前十時二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  昭和五十五年十月七日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。鈴木内閣総理大臣。
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(鈴木善幸君) 去る三日の所信に関する演説につきまして、一部趣旨の徹底を欠きましたことはまことに遺憾に存じます。ここに関係部分を改めて申し上げます。
 新たな角度から行政の合理化と効率化を進めるため、これまで実施してきた定員の縮減などに加えて、主として「行政の仕事減らし」という観点からとの問題に取り組んでまいりたいと思います。つまり、すでに行政需要が少なくなったと思われる仕事を縮小、廃止し、また、政府が直接関与する必要がなくなったと思われる仕事はできるだけ民間部門の手に任せるという考え方であります。このため、法令の整理廃止などによる事務の縮減や事業の移譲を初め、できるものから着実に行政の簡素化を進めてまいります。
 他方、これからの国民の需要に的確にこたえる行政を実現するため、長期かつ総合的な視野を持った行政改革案を策定する必要があります。このため、臨時に総合的な調査審議機関を設立すべく、ただいま準備を進めております。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(徳永正利君) 国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。小柳勇君。
   〔小柳勇君登壇、拍手〕
#6
○小柳勇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、鈴木総理大臣に国政の基本的な諸問題について幾つか伺いたいのであります。
 まず第一は、鈴木内閣の政治姿勢についてであります。
 その初めに、総理、あなたの総理・総裁としての指導性について伺います。
 鈴木内閣は、無謀な衆参同時選挙というあの選挙の結果を受けて、多数をとったおごりと高ぶりの中に三カ月前に発足いたしました。内閣の評価はまだ定かでありませんが、鈴木総理、あなたに対する一般的な評価は、「哲学がなく、リーダーシップに欠けている」ということのようであります。原因はいろいろありましょうが、哲学がないということのその一つの例は、あの閣議で決めて閣僚打ちそろって靖国神社に参拝いたしました。それも一つの例であろうかと考えるのであります。
 御存じのように、憲法第二十条には、いかなる宗教団体も国から特権を受けてはならない、また、国及びその機関はいかなる宗教的活動もしてはならないと明確に規定しておるのであります。靖国神社は宗教法人であります。宗教法人には仏教のお寺もあるし、キリスト教の教会もあります。英霊に参拝することはだれも反対しておりません。英霊に対しては、諸外国がそうでありますように、別に慰霊塔を建立するなどして、いつでもだれでも参拝できるよう早急にその方途を考えるべきであろうと思うが、総理の見解を伺うのであります。
 また、指導性の欠如というのは、まず奥野法務大臣の院内外における積極的な改憲の言動は目を覆うものがあります。十月一日の臨時閣議において、総理の所信表明演説の草稿から「憲法遵守」の項目が削除された。また、大村防衛庁長官が自民党の研修会におきまして、防衛の根幹を崩すような暴言を吐いた。閣僚のこのような勝手気ままな発言を容認しておられる。このことに対して、国民は総理・総裁としての指導性がないのではないかと、そう言っておると思うのであります。
 あなたは、NHKの「総理にきく」という番組の中で、リーダーシップとはオーケストラの指揮者のようなものだと言って国民の失笑を買ったのでありますが、その楽譜は一体何でありましょうか。少なくとも日本国憲法を初めとする法の遵守であり、議会民主主義に基づく議院内閣制によるものでなければならないと思うのであります。でなければ、カラオケの伴奏者になってしまいます。総理の見解を求めるのであります。
 政治姿勢に関する第二の質問は、政治的倫理の確立という点であります。
 あなたは、さきの無謀な同時選挙の中でも、政治倫理の確立を公約の第一に掲げた。そして、自民党はもう絶対に悪いことはしませんと言って国民の審判を仰いだのであります。にもかかわりませず、政治倫理の大罪を犯す者は、あなたの手元、足元から続々発生しておるのであります。その筆頭が、汚い手にまみれた政治献金を受け取った前の厚生大臣であり、また、千葉一区から無所属で当選し、自民党に入党した泰道三八君のどろ沼のような選挙違反ではないでしょうか。
 この二つの事件に総理はどう対処されるか。金もうけ主義の悪徳医療機関の追放と、泰道君の処分について国民も聞きたがっておるのでありますから、総理の見解を聞きます。
 また、けさの新聞によりますと、澁谷代議士が自民党の総務に留任することが決まったようでありますが、これを認めるのかどうか。自民党総裁としての見解を聞かなければなりません。
 特に、悪徳医療機関については、わが党は、いち早く富士見産婦人科病院に現地調査団を派遣いたしました。被害者たちと懇談するなど事態の究明に当たってまいりましたが、政府の厳正な、今後の積極的な対策を示してもらいたいのであります。
 私は、現在のように選挙に非常に金がかかり、かつ政権党である自民党が圧力団体や経済団体などから各派閥競って膨大な政治献金をかき集めておるような状態では、幾ら倫理委員会を設置してもその効果はないと思うのであります。あなたの言う政治倫理委員会設置の構想を御説明願いたいのであります。また、なぜ自民党はこれに対して非常に冷淡であり、消極的なのか、その理由も御説明願いたいのであります。総理の見解を求めます。
 政治姿勢の第三は、総理、日本の外交に関する姿勢が問われなければなりません。
 特に、日米関係における政府の姿勢は、問題が山積しておるし、困難であるだけに正しい姿勢が求められるのであります。たとえば防衛費の増額要求、電電公社の資材調達問題、日米航空協定の不平等の拡大、対ソ制裁措置の失敗など枚挙にいとまがございません。かのチトー大統領は、社会主義圏でありながらソ連にも堂々と抵抗して、みずからの道を歩きました。私は、正しい真の日米友好を求める立場から、自主的な平和外交を望む者として、この点を重視しておるのであります。総理の御見解を求めるのであります。
 また、今回の中近東の紛争に際しましても、平和憲法を遵守する立場から、そしてエネルギー源の依存度が最も高い日本の立場から、一番積極的に行動しなければならぬのは日本政府ではありませんか。総理の中近東政策に対するお考えを明確にしていただきたいのであります。
 政治姿勢の最後の問題は、日韓関係、特に金大中事件であります。
 金大中氏の過酷な運命には世界の民主主義者が注目していることを強調しておかなければなりません。今日の韓国における死刑判決の過程では、何の根拠もないままに、軍事政権の弾圧、制裁が行われていることは、世界が周知するところであります。しかし、それ以前に、日本の国家主権を侵して金大中氏を拉致した事件がまだ解決されておりません。日韓政府間のいわゆる「政治解決」なるものがありますが、一体これは何でありましょう。私は総理に、この政治決着とは一体何か、国民のだれもが理解できるように、明快な説明を求めたいのであります。
 日韓関係が微妙なときに、日本の元総理が韓国を訪問されました。私は軽率だったと思います。その訪韓の報告によって、先日まで報道された鈴木総理の見解が百八十度転換されて、金大中事件について一切所信表明で触れずに逃げてしまわれました。これは許されないと思います。いずれにせよ、今日の新たな段階におきましてこれを見直し、そして原点に戻って、金大中氏の原状回復要求をなすべきことを強く要求するものであります。総理の決意を伺います。
 第二の大きな問題は、経済運営と財政再建の問題であります。
 その第一は、経済運営の基本方針についてであります。
 去る九月五日に、政府は「経済の現状と経済運営の基本方針」を決定になりました。これは景気と物価の両にらみという政策判断に基づいたものと言われておりますが、内容はどっちに重点を置いておるのかわからないし、単なる作文としか受け取れません。もともと財界や大企業本位の体質を持っている自民党政府が、公定歩合を引き下げ、金利負担を軽減させ、公共事業予算の執行抑制を解除して、大企業寄りの景気刺激策をとろうとしていることが明らかでありますが、それだけでは良心にとがめるのか、その後、物価重視の政策姿勢をもつけたりに打ち出しました。しかし、鈴木内閣の真意は、閣僚会議の決定に見られますように、物価問題は山を越したという認識であります。とても本気になって物価対策に取り組む勇気、態度が感じられません。もしやる気があるならば、この国会で継続審査中の郵便料金の値上げ法案は撤回すべきであります。また、土地の異常な値上がりなどについても早急に手を打つべきであります。特に土地については、マイホームを求めて四苦八苦する善良な市民の夢を無残にも打ち砕くという事態になっております。すでに住宅ローンが払えなくて親子心中した家族もあります。総理は、こういうことに思いをいたし、多少の抵抗はあろうとも、土地税制の運用や地価凍結、土地取引の規制など思い切った施策を果敢に講ずるようにすべきであります。これらの点について、総理の見解を伺っておきたいのであります。
 こうした政府の財界寄りの体質は、結局、国民生活に大きなツケを回しております。石油高を口実にした電気、ガス料金、国鉄運賃などの公共料金の大幅値上げや大企業製品の便乗値上げが相次いで行われておる。その一方、インフレをこれ以上激化させまいと自粛した賃金値上げ要求に悪乗りして賃金を低く抑えたため、勤労市民は実質所得の目減りに悩まされるという不公正と格差が目立っておるのであまりす。いうところの消費不況の真の原因はここにあることを総理はよく御存じのはずであります。企業の労働分配率を高めて賃金を上げる一方、製品価格を引き下げて実質所得をふやすなど、国民大衆のための方策を講ずるよう強力な指導が求められているのであります。大企業中心の経済運営から国民生活中心の方向に積極的な対策を実行される意思があるかどうか伺いたいのであります。
 ところで、総理、鈴木内閣は財政再建に名をかりて大変なことをやろうといたしております。その最たるものは福祉の切り捨てであります。
 今日まで十年間、一般財政よりも伸び率が高かった社会福祉関係の予算が五十五年度予算から急激に低下いたしました。五十六年度もまたその傾向を強めております。わが国の福祉は、いわゆる中福祉であり、高福祉とは縁遠いものであります。また、高齢化社会にどう対応するかが重要課題であります。わが国がこれから歩いていく道は、あなたが所信表明で述べられたように、「安定成長の成果をともに分かち合っていく時代」であります。恵まれない人々に思いやりのある社会を築いていかなければなりません。それは福祉の充実にあります。
 そういう意味から、少なくとも年金、医療、環境保全、教育などに対し、もっと財政による手厚い国の援助が望まれるのであります。年金の一元化、医療制度の改正など、緊急な課題があります。また、幼稚園から大学まで教育に金がかかり過ぎます。社会保障や教育の充実を怠っているから、国民は乏しい財布の中からやりくりして、老後や不意の出費、そして子弟の教育のために備えて貯金をするのであります。日本の貯蓄性向は約二〇%で、アメリカが五%、イギリスが一〇%、西ドイツが一四%でありますが、これをはるかに抜いておるのであります。世界一であります。これは自己の生活を守るための知恵ではありますが、政府に対する無言の抵抗でもあるのであります。政府の福祉や教育が完備しておれば、国民は貯蓄に励まずとも買いたいものを買えるのであります。そうすれば消費は拡大し、景気の維持も企業の設備投資にまたないでも行えるのではないでしょうか。総理のこれらの国民生活を守る緊急の施策に対する所見を伺いたいのであります。
 さて次に、財政赤字の責任の所在を明らかにしていただくとともに、累積する国債にどう対処していかれるのか、明確なる指針を伺いたいのであります。
 歴代自民党内閣が残したものは、七十一兆円に上る膨大な国債の残額であります。一体これをどう処理するおつもりなのか、総理の基本的な姿勢を伺っておきたいのであります。
 総理は、所信表明演説で、来年度二兆円の国債減額を公約されました。財源難を宣伝している政府のどこにそんな手品まがいの大金があるのか。国民大衆への増税を当てにしての国債減額には反対であります。二兆円国債減額の詳細な方法についてお示し願いたい。
 昨年の暮れに、財政の再建を行政改革、税負担の公平化、現存税制の見直しで達成しようとする国会決議が行われました。増税なしの財政再建決議と言われておるところであります。しかし、現実には、現在の税制でも、たとえば所得税では、課税最低限を引き上げない限り課税人員が増加し、隠された大増税に納税者は苦しんでいる状態であります。せめて物価調整減税ぐらいやらなければ、消費不況や賃金の目減りは是正できないのではありませんか。まして、伝えられているところの間接税の重課などは、国会の決議にも反し、国民の不信を招くことになります。総理の所見を求めます。
 次に、歳出削減について伺います。
 国債の増発や増税を食いとめようとすれば、歳出を削減するほかありません。鈴木内閣は、居直った形で、増税か行政サービスの低下かなどと、問題を国民の選択に任せるという姿勢をとっております。どちらも国民にとっては困るのであります。そこで大きくクローズアップされるのは、防衛費を思い切って削減すること、そして行政改革であり、補助金の整理であり、米とか健康保険とか国鉄のいわゆる三K問題の対応をどうするかということであります。行政改革や補助金の整理については、圧力団体の先頭を切っておるのが自民党議員である限り、思い切った削減は無理ではないかという見方もあります。また、地方財政との調整については、なるべく財政も事務もともに「地方の時代」にふさわしく、移管、移譲すべきであると考えます。いずれもこれらの歳出削減には難問が山積しているのでありますが、これをいたずらに時を待って先に延ばすことは許されぬのであります。要は、政府及び自民党がみずから姿勢を正して、勇気をもって政治を行うことが大事と思うのであります。総理の見解を伺いたいのであります。
 経済問題の最後は、エネルギー対策についてであります。
 絶えざる石油危機にさらされているわが国のエネルギー対策は、一体どうなっておるのでありましょうか。総理は、所信表明の中で、官民一体のエネルギーの節約と石油備蓄で当分石油の心配はない、今後、原子力を初め石炭などの石油代替エネルギーの開発導入を進めてまいりますと言っておられます。しかし、原子力における安全性の問題、国産エネルギーの量的不足と割り高、OPEC以外の産油国、たとえばメキシコや中国などからは多量の輸入を望めないのであります。すべてに解決できない難問を抱えていることは周知の事実であります。たとえ代替エネルギーの開発が進みましても、現在、総エネルギーの七三%を占める石油資源は依然として重要なのであります。
 私は、エネルギー危機を痛感する一人として、この九月に中近東初め主な産油国を見てまいりました。その実感を率直に申し上げますと、何といっても歴代自民党内閣のOPEC諸国に対する外交努力の足りなさを痛感させられたのであります。経済援助や技術協力のあり方、情報の収集と処理、アラブ地域に適応する外交官の配置、どれもこれも皆誤った選択をしているとしか言いようがないのであります。特に、アラビア語ができる人は、日本にはわずか四十二人しかいないと言われています。
 総理は、「わが国の石油依存度を今後十年の間に五〇%にまで引き下げる」と所信表明で述べられましたが、現在の体制ではとうてい不可能と思われるのであります。そのプログラムを具体的に説明願わなければ納得できないのであります。所見を伺います。
 第三の問題は平和と防衛の問題であります。
 最近の政府・与党の動きは、ソ連をはっきりと仮想敵国に位置づけ、世界の局地的な紛争を誇大宣伝して、戦争の危険がわが国にも差し迫っているかのような危機感をあおっております。
 さらに、米国の軍事力劣勢をカバーするために防衛力の増強を声高に主張し、来年度予算の概算要求では、一般経費が七・五%増加予想に対し、防衛予算を九・七%増加に特別扱いにしてしまいました。そして、米国が強く求めている中期業務見積もりの一年繰り上げの手が打たれています。防衛力整備に至っては、航続距離三千九百キロと従来の三倍以上のF15戦闘機に誘導ミサイルの実弾を常時装備し、臨戦態勢を強化しております。これは完全に攻撃型編成体制ではありませんか。専守防衛という従来の政策の完全な変更と思いますが、いかがですか。
 国家予算審議を経ずして、軍事国家への方向づけをしてしまったことは許せないのであります。総理の責任を追及し、所見を求めたいのであります。政府が盛んに主張する正面装備の強化をどこまで増強すれば日本は守れると言われるのか、総理に伺いたいのであります。
 主要食糧の五〇%近く、また工業原材料、エネルギーの八〇%以上を世界各国から輸入している日本が、軍事力の強化に頼ってどの敵から日本を守ろうとするのか、伺いたいのであります。
 四つの島を守ると同時に、日本民族がどこの国からも愛されて、永続的に平和共存ができることこそいまわが国が探すべき防衛の方策ではないかと考えるのであります。
 日本社会党は、今日まで平和憲法を守り、日本の平和勢力を結集して、終戦以来三十五年間、非同盟主義、非武装積極中立の平和外交を主張し、推進しながら、日本の平和を守ってまいりました。戦争のない平和ということがどんなにとうといことでありましょうか、国民にとってはどんなに幸せなことでありましょうか。また、国防予算を最小限度にし、平和産業を盛んにして今日の日本の経済再建と発展とがあったのであります。これが平和憲法を擁護してきた日本国民の偉大なる足跡ではありませんか。この混迷と激動の八〇年代にこそわれわれは平和憲法に立ち返り、平和と民主主義と人権尊重の三原則に立って日本の方向を定めなければならないと考えるのであります。そして、世界の国民に向かって、いま一度平和国家を宣言しなければなりません。憲法前文には「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とあります。資本主義体制であろうと、社会主義体制であろうと、戦争は罪悪であり、恐怖であります。日本の平和を守るとともに、世界の平和を守るために、日中平和友好条約の締結を生かして、米中ソなど核保有国に核軍縮を強力に訴えようではありませんか。総理の見解を求めます。
 そして、人権尊重の原則は、単に口先だけで差別の撤廃や解放を叫ぶのではなく、身体障害者や病人を大切にし、すべての人間の生命のとうとさを基底に据えることであろうと思います。生きとし生ける者が精いっぱい生き、働き、死ぬときに「生きていてよかった」と言えるような世の中をつくることであろうと思います。でなければ、難民救済も発展途上国に対する経済援助も単なる金の貸し借りに終わってしまうのであります。難民救済及び発展途上国への経済援助に対する総理の見解を求めます。
 総理及び総理の内閣は、この日本の平和憲法を尊重し擁護する義務を負っているのでありますが、最近、法務大臣が執拗に軍事力増強のための憲法改正の発言を繰り返しております。憲法第九十九条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明記されております。また、特定公務員である人事官は、最高裁判所長官の面前において憲法尊重擁護の宣誓書に署名してからでなければ、その職務を行ってはならないし、この公務員が本条所定の義務違反をした場合には、裁判所において憲法違反の責任を追及されることになっております。特定公務員である人事官にこれだけ厳しい義務づけがしてあることを承知している法の番人である奥野法務大臣が、なぜ憲法九十九条を素直に解釈しないで、執拗に憲法改正の発言をされるのか。それは憲法の尊重擁護ではなく、憲法に対する軽べつと破壊の意思表示であると言わなければなりません。奥野発言が憲法違反であるかどうかの論争を一応ほかにおいたとしても、憲法への忠誠心を欠いた法務大臣は法の番人としては不適格であると思います。また、国務大臣として行政を担当することも容認できません。奥野法務大臣は直ちに国務大臣と国会議員の職を辞して、憲法改正発言の自由を獲得すべきと思うのであります。
 内閣の連帯責任をもって憲法を尊重し擁護しなければならない総理大臣の決意を承って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 最初に、無宗教の慰霊塔を建てたらどうかと、こういう御提案についてでありますが、今後、国民各界、あるいは国会においても各党各会派において検討すべき課題であると考えております。
 次に、リーダーシップの問題につきましてお話がございました。
 まず、私のリーダーシップ、政府運営の指針についてお尋ねでありましたが、御質問にございましたように、私は総理大臣として、内閣をオーケストラにたとえますと、その指揮者のようなものであると申したことがございます。閣僚にそれぞれの能力と持ち味を発揮してもらうという意味で、つまりバイオリンはバイオリンの、フルートはフルートのそれぞれの楽器の音色を十分に響かせてもらいながら、全体としてハーモニーがとれて美しいシンフォニーとなるように指揮をとっていきたいと望んでおるわけであります。
 楽譜は何かということでありますが、それは憲法を遵守し、その理想を実現することであることは当然でありますが、さらに先般所信表明として、内政、外交にわたりお示しをいたしました。内政については、政治倫理と綱紀粛正、行政改革、財政の再建、エネルギーの問題、高齢化社会、物価問題等々であり、また外交については、世界の平和と安定のための積極的な貢献と自由主義諸国との連携の強化などであります。これらの問題は、単に当面の課題にとどまらず、国家の将来の基盤づくりにかかわる重要な問題であります。私は、閣僚の一人一人がみずから担当する国政上の諸課題をしっかりと見詰めて、持ち場持ち場で能力を発揮し、全体としてよき成果を上げることができるよう、誠実に内閣を運営してまいる所存でございます。
 私は、所信表明で明らかにいたしましたとおり、安定した政治の運営は国民の信頼を得て初めてできるものであり、清潔な政治がその原点であると考えて、政治倫理の確立を当面する緊急の課題として取り上げました。政治倫理の確立は、元来、政治に携わる者個々人の自覚と良識にまつべきものであると思われますが、制度面におきましても、政治資金の明朗化、公正で金のかからない選挙制度の実現が急務であると考えております。この一環として、さきの国会で廃案となった政治資金規正法の改正案を今国会に提出して御審議をお願いいたしたいと思いますが、一方、参議院全国区制のあり方など、選挙制度の問題についても国会の場で各党各会派が大局的な立場から検討され、速やかに成案が得られるよう切望する次第であります。
 なお、泰道議員の問題につきましては、事実関係が判明した段階で、党と協議をいたしまして結論を出したいと考えております。
 政治倫理委員会の設置についてお尋ねがございました。
 政治の倫理を確立し、政界の浄化と刷新を図ることは、わが国の議会制民主主義を守っていくため不可欠のことであり、最も緊要なことであると考えます。私は国民の信頼と期待にこたえるため、このような役割りを持つ委員会設置を検討する必要があると考えております。これは国会の問題でありますから、総理としてではなく、自由民主党総裁として党首脳にこの私の考えを伝え、議会制度協議会あるいは議院運営委員会において各党各会派と十分協議するよう指示したところでございます。
 次に、外交の問題についてお答えをいたします。
 第一に、対米外交についてでありますが、わが国は米国との友好協力関係を基軸として、世界の平和と繁栄のために積極的な役割りを主体的に果たすことを外交の基本としております。これを対米追随と言うのは全く当を得ない御批判でございまして、防衛問題につきましても、政府は、従来一貫して、国民のコンセンサスを得つつ、自主的判断に基づいて取り進めるという立場に立って取り組んできております。日米航空関係の諸問題につきましても同様でありまして、今後とも、均衡のとれた形での日米航空権益の実現を目指して、粘り強く交渉を行ってまいる考えであります。
 いわゆる対ソ経済措置につきましては、今後とも、米国を初め欧州その他の友好諸国との協調を重視しつつ、具体的案件ごとにケース・バイ・ケースで、慎重に検討の上、対処していく考えであり、私は、かくすることが国益に沿うゆえんであると考えておるものでございます。
 イラン・イラク紛争についてお尋ねがございました。
 今般の紛争につきましては、わが国のみならず、米国、ソ連なども直ちに調停など外交的な仲介のイニシアチブをとることが困難な状況にあり、イスラム諸国会議の仲介すら容易に成果を上げ得ない状況にあります。いずれにせよ、この紛争は早期に収拾さるべきものと考えます。政府としては、今後の状況をも見きわめつつ、あらゆる機会をとらえ、志を同じくする諸国とともに紛争の解決に寄与するため努力をいたしてまいるつもりであります。
 次に、わが国の中東産油国に対する外交の問題であります。
 OPEC、特に中東産油国との関係は、石油確保という視点に加え、世界の平和と繁栄を目指して協力する。パートナーとしての関係という面からもとらえることが肝要と考えます。このため、政府としては、これら諸国との間でハイレベルの交流を一層積極化し、これら諸国との十分な意思疎通を図るとともに、経済技術協力、人的文化的交流等を初めとして、真にその国の経済社会開発に寄与し得る幅広い協力関係を築いてまいりたいと考えております。
 次に、金大中氏の問題についてお尋ねがございました。
 金大中氏の裁判自体は韓国の国内問題であり、私は、わが国としてこれに介入しているがごとき印象を与える態度をとることは適当ではないと考えております。もっとも、金大中氏の身柄の問題については、政府としても常に申し上げているとおり、重大な関心を有しており、このような関心を随時韓国側に伝えてきております。政府としては、今後ともわが方の関心を十分に韓国側に伝えてまいる考えであります。
 第二に、金大中氏事件の政治決着の問題については、韓国によるわが国の主権侵害があったと断定し得るに至っていない状況下で、その当時の日韓双方の最高首脳が日韓関係の大局を考えて政治判断を下したものであります。政治決着につきましては、韓国側の公権力の行使が明白になった場合にこれを見直すことがあり得るというのが政府のこれまでの一貫した立場であり、政府として、現状において金大中氏の原状回復を要求し得る立場にはないと考えております。
 去る九月五日の経済対策閣僚会議におきまして、物価の安定をより確実なものとするとともに、今後の景気の動向に細心の注意を払い、機動的に対処すると経済運営の基本的態度を決定いたしましたことは御承知のとおりであります。その席上におきまして、私から関係閣僚に対しまして、経済運営に当たっては政府の果たす役割り以上に民間の役割りとその賢明な対応が大切であり、その環境整備という意味で、消費者物価の安定には特段の留意をしてほしい旨のお願いをいたしました。所信表明でも述べましたとおり、物価の安定には引き続き最善の努力を払ってまいります。
 料金値上げ法案の撤回や地価の凍結などを果敢に行えとの御意見でございますが、私は統制的な手段で物価の抑制ができるとは考えておりません。一時的な効果はあるかもしれませんが、統制によって問題を根本的に解決することができるとは考えておらないのであります。解決することができないと考えております。第二次石油危機の後、特段の物価の統制を行わなかったわが国の方が石油価格の統制などの措置を講じたアメリカよりも物価上昇率が低かったことはよく御承知のとおりであります。生産性の上昇、需給関係の改善などの基本的対策を講じていくことが大切であると私は考えております。消費者物価の安定がひいては国内需要の着実な拡大につながり、経済の安定成長に資するものであることは、去る九月五日に経済対策閣僚会議で決定した「経済の現状と経済運営の基本方針」でも触れているところであります。
 また、消費者物価の安定によって勤労者の実質賃金の目減りを防ぐことは、労使の協調というわが国のよき慣行を保つ上からもきわめて重要であります。さきに申し上げましたとおり、私が経済対策閣僚会議の席上、関係閣僚に特に物価に対する配慮に抜かりのないようお願いいたしましたのも、まさにそのような認識に基づくものでありまして、今後とも物価の安定には最善の努力を傾けてまいるつもりであります。
 財政再建に名をかりて福祉の切り捨てと防衛費の増額をするのではないかとのことでありますが、そんなつもりはございません。私は、現状のような財政状況ではわが国の将来は危うくなるのではないか、わが国の経済と国民生活が根底から揺るがされることになるのではないかと深く憂慮しております。財政再建を鈴木内閣の最重要課題の一つとして取り上げておるわけでございます。
 年金について、制度の一元化を図ってはどうかとのお尋ねがございました。
 私は、高齢化社会の到来を控え、年金制度の均衡ある発展が図られる必要があると思います。公的年金制度に関する関係閣僚懇談会というような場もございますので、そのような場を通じて総合的な観点から年度制度全般にわたり検討していく必要があると存じます。
 付添看護料、差額ベッドなど保険外負担の解消について御質問がございましたが、政府としては、健康保険を初めとする医療保険制度全般にわたる改革を進める方針でありますので、保険外負担の解消につきましても今後一層努力してまいります。
 教育費についての御質問がありましたが、教育の機会均等の確保、質的水準の向上のため各般の対策を講じてきたところであります。育英奨学事業、私学の振興につきましては、非常に厳しい財政事情のもとではありますが、関係者の間で十分検討さしております。
 住宅問題に対する施策とビジョンについてお尋ねがございましたが、私は、すべての国民が良好な住環境のもとに安定した生活を営めるようにすることが基本的な目標であると考えております。現在、わが国においては、統計上は世帯数を住宅戸数が上回っており、量的には一応充足された姿になっておりますが、問題はその質、特に大都市地域の居住水準の改善にあると思います。このため諸般の施策を講じてまいりたいと存じます。
 環境問題に対する施策とビジョンについて御質問がございましたが、環境に関する施策の基本的目標は、国民の健康の保護と生活・自然環境の保全であります。特に、私は、これまで力を注いできた、発生した公害の事後的対応に加え、環境汚染の未然防止に力点を置いてまいりたいと思います。また、長期的に見た場合、環境問題は世界的な広がりを持っており、われわれの現在の対応が後世に与える影響のきわめて大きいことも十分留意していく必要があります。
 年金、医療、教育、住宅、環境などの諸問題について積極的に対策を講じ、消費支出をふやすような景気対策を行えとの御意見でありましたが、御案内のような厳しい財政事情のもとにありますので、今後検討をさしていただきます。国民総支出の半分を占める個人消費支出が増大することは、確かに景気対策の上できわめて重要なことであります。私は、そのためには物価の安定が最も大切であり、安定した物価の中で消費者が未来に不安を感じなくなったとき、少なくも未来に対する不安が減じられたときに、実質消費支出の増加が期待できるものではないかと思います。要は物価ではないかと思うのでありまして、私は物価の安定に全力を尽くす考えであります。
 わが国の今日の財政赤字は、第一次石油危機後に生じた景気の停滞の中で、公共事業を中心に景気の回復を図り、失業を初めとするもろもろの問題の解消に努めるほか、国民生活安定のために社会保障、文教などの行政サービスを拡充してきたことによって生じたものであります。この結果、わが国経済は立ち直り、国民生活の安定も確保されてきたということは御理解いただけるものと思います。しかし、いまやこのような赤字をさらに増加するに任せるならば、単に財政の破綻を招くばかりでなく、わが国の経済と国民生活を根底から揺るがすものになりかねません。したがって、私は財政再建を鈴木内閣に課せられた最も重要な課題の一つであると受けとめております。
 中長期的に見てどう考えるかとのお話がございましたが、当面は特例公債の償還が始まる昭和六十年度までには特例公債の発行をゼロにしておきたいと考えております。
 昨年十二月の財政再建に関する決議は、財政再建が緊急の課題であることを指摘しながら、一般消費税によらず、歳出歳入にわたり幅広い観点からその方策の検討を進めるべきである旨を宣言されたものと理解いたしております。この決議につきましては、大蔵大臣から、政府としてはこの御決議の趣旨に十分配意して、歳出歳入両面にわたり幅広い観点から財政再建を進めてまいる所存である旨お答えを申し上げたところであり、現在においてもその方向で対処しておるところでございます。
 税負担の公平化についてのお尋ねでありますが、租税特別措置につきましては、昭和五十一年度以来の整理合理化によってその主要な項目のほとんどについて改善措置が講ぜられたところであります。しかし、今後とも税負担の公平確保には努力してまいらなければならないと思います。
 財政再建の具体案を示せとのことでありますが、思い切った歳出の抑制と歳入の見直しにより、現在編成中の五十六年度予算では公債発行額を二兆円程度縮減することを目途に作業を進めております。歳出抑制等の努力を尽くし、なお歳入が不足する場合でも現行税制の基本的な枠組みの中で増収を図ってまいる所存であります。
 勤労者の収入の目減りに対して所得税減税を検討しているかとのお尋ねがございましたが、わが国の所得税の負担水準は諸外国との比較で見て相当低く、また有業人口に占める納税人員の割合もかなり低くなっているというのが実情であります。このような負担水準の実情や厳しい財政の現状を考えますと、財政の再建がなるまでは物価調整減税を含めまして所得税減税は御容赦をいただきたいと思うのでございます。よろしく御理解を賜りたいと思います。
 歳出の削減に当たって、地方の時代にふさわしい政策転換が必要であるとの御意見でありましたが、たとえば補助金の整理に当たって、いわゆる民有化のようなことでできるだけ地方の選択の幅を広くするようなことが必要であると考えております。また、行政改革に当たっては、仕事減らしという見地から作業を進めたいと考えていますが、住民の身近なととろで住民の意思を反映しながら行われることが望ましい事務につきましては、地方の仕事であるというように整理していくべきではないかと考えております。
 エネルギー情勢と対策について御指摘がございましたが、これは短期の見通しと中長期の見通しを分けて論ずる必要がございます。すなわちイラン、イラクの紛争という事態が生じましたが、わが国の場合、省エネルギーの成果とこれまでになく高い備蓄水準のおかげで、さしあたり石油の需給は安定しております。しかしながら、所信表明でも明確に述べましたとおり、中長期的に見た場合、国際エネルギー情勢は緊迫の度を加えるものと考えなければなりません。このため、御指摘の石油代替エネルギーの開発導入を初めとして、省エネルギー対策、石油の安定確保などの諸施策の一層の推進に最善の努力をいたす考えであります。
 専守防衛についてのお尋ねがございました。
 専守防衛は、御承知のとおり、わが国の防衛の基本的な方針となっておりますが、その内容は、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その防衛力行使の態様も自衛のための必要最小限度にとどめ、また保持する防衛力も自衛のため最小限度のものに限られるなど、受動的な防衛戦略の姿勢を言いあらわしているものであります。政府としては、従来からこの専守防衛を基本として防衛力整備を行っているところであり、御指摘のように、アメリカの要請にこたえて専守防衛から攻撃型の防衛に変化しつつあるという事実はございません。
 なお、わが国は特定の国を仮想敵国と考えるようなことはしておらず、わが国に対するいかなる外部からの武力攻撃に対しても、日米安保体制と相まってこれを未然に防止し、これを排除するという考え方であります。
 わが国の安全保障を確保するためには、日米安全保障体制を堅持し、自衛のための必要最小限度の防衛力の整備に努めるとともに、世界の平和と安定に貢献する積極的な外交努力が不可欠であると考えます。なお、安全保障問題を初め外交は、国際情勢の冷静的確な分析を踏まえ、現実的な政策として実施されなければなりません。したがって、お話しのような非同盟中立という考え方は私のとるところではございません。
 難民救済につきましては、わが国は、悲惨な状況にあるインドシナ難民、アフガニスタン難民に対して、医療、食料等の分野での協力を人道的観点から従来より積極的に行っております。インドシナ難民の本邦への受け入れにつきましても、国情を踏まえつつ、できる限りの努力を行ってまいりたいと思います。
 なお、発展途上国に対する開発援助につきましては、先般の所信表明でも述べましたとおり、わが国は自由世界第二の経済大国として、今後とも積極的にこれに取り組んでまいる考えでございます。
 憲法第九十九条は、公務員の現行の憲法に対する尊重擁護の義務を規定しておりますが、内閣としては、その規定に従って憲法を厳に遵守していくことは当然のことであります。一方、憲法第九十六条は、みずからその改正手続を規定していることからも明らかなように、憲法改正について閣僚が論議をしたりあるいはそのための研究を行うということは、もとより憲法第九十九条の尊重擁護義務に違反するのではないのであります。奥野大臣は、鈴木内閣は改憲せずという方針に賛成しておりますし、また、現行の憲法を厳に遵守していくことを明言しているのでありまして、大臣として不適格であるとか辞任すべきであるとの御意見は、理由がないと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(徳永正利君) 初村滝一郎君。
   〔初村滝一郎君登壇、拍手〕
#9
○初村滝一郎君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、総理の所信に対し、総理ほか関係閣僚に若干の質問をいたします。
 質問に先立ち、過ぐる衆参同時選挙のさなか不幸にして急逝されました故大平前総理・総裁に対し謹んで御冥福をお祈りいたします。
 まず、鈴木新内閣の今後の政局担当に対する政治姿勢についてお伺いをいたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 去る六月二十二日には、八〇年代初の国政選挙が行われたのでありますが、これは、わが党の勝利であると言うよりも、良識ある国民の賢明な政治選択の勝利であったと思います。厳しい内外情勢の中で、有権者の大多数は野党連合政権を拒否し、自由民主党の安定過半数による政局の安定を求めたのであります。
 わが党としては、この勝利におごることなく、円満に選出された鈴木総理のもと、挙党一致、選挙公約を誠心誠意実行していくことがわれわれに課せられた使命であり、国民の期待にこたえる道であると思います。このためには、政権担当に当たっては絶対多数にあぐらをかくことなく、謙虚な政治運営に心がける必要があります。この意味で、「和」を政治信条とする総理の姿勢を歓迎いたします。
 総理は、真心をもって人と接し、強い信頼関係の中から問題の解決を見出すと言われておりますが、これとあわせて必要なのは、激動の八〇年代と言われているように、目まぐるしく移り変わる現実に直面して、必要な政治決定や政策対応をタイミングを逸することなく、果敢かつ積極的に行うことであります。総理の政治姿勢をお伺いいたします。
 次に、政治倫理の確立と綱紀粛正についてお尋ねをいたします。
 政治と行政が国の経済、社会の分野に多大の影響を及ぼすことは申すまでもありません。それだけに、これに携わる者の政治倫理の確立と綱紀の粛正は民主政治の原点であります。
 昨年来、明るみになった一連の不祥事件が政治、行政に対する国民の不信を招いたことはまことに遺憾であり、われわれは、政治に対する国民の信頼を回復するためには、これを真摯に受けとめ、深い自戒のもとにみずからを正すため党倫理憲章を制定し、政治家の遵守すべき政治倫理を確立して、厳正な党紀の運営に努めているところであります。しかしながら、選挙に金がかかり、政治に金がかかる現行の政治資金のあり方は、一歩誤まれば政治腐敗の病原ともなりかねないだけに、一国の立法をつかさどる政治家にはより高い倫理責任が望まれるのであります。
 政治倫理を強調される総理としては、政治資金の明朗化に対しどのように対処されるのでありますか、あわせて綱紀粛正の基本姿勢を示されたいのであります。
 これと関連して、現行の選挙制度、なかんずく参議院全国区制は、かねてよりそのあり方が問われているところであります。現行の全国区制は巨額な金と体力を強いる制度であり、このような制度は世界に例がありません。また、参議院の創設の趣旨から見ても、理念とはかけ離れた制度へ移行し過ぎた傾向を示しております。この制度の是正のため、わが党はプロジェクトチームを発足させ、検討を開始しておりますが、所信表明では総理の姿勢が就任当初より後退した感じがいたします。改めて全国区制の改正に取り組む決意を伺いたいと思います。
 次に、外交問題についてお伺いいたします。
 今日、世界は、政治、軍事、経済などの各面で混迷を続けておりまして、世界の経済活動の一割を占めるわが国に寄せられる期待はきわめて大きいものがあると思います。わが国として、今後世界の平和と繁栄にどう貢献するのか、まず世界外交の基本方針をお示し願いたい。
 あわせて、アメリカはかつてのように強大でなくなり、軍事、経済の面で地位が相対的に落ちたと言われておりますが、わが国としては、従前以上に、両国のパートナーシップに基づき日米安保体制のもとに貿易経済の緊密な友好関係を促進することが肝要であります。現在、日米間で問題となっておりますわが国の防衛努力や自動車、電電など個別の経済問題などは、十分な話し合いを通じ解決していくことが重要であろうかと思います。総理及び外務大臣の所見を承りたいと思います。
 伊東外務大臣は、さきにアジア五カ国を歴訪いたしました。これまでわが国は、金は出すが政治的に手を汚そうとしないととかく言われてきました。今回の歴訪では、カンボジアの問題で見られるように、いままでの経済援助中心の政策を進めて政治的役割りを果たしていることは評価いたします。しかしながら、米中ソの三大国からそれぞれ影響を受けている体質の異なったアジアの各国に、今後わが国が引き続いて政治、外交を行うにはかなりの困難な問題が生ずると考えられますが、外務大臣は、今回の歴訪を通じて得た成果をどうとらえ、アジア外交に対処されるのか、お伺いをいたします。
 また、国民の悲願である北方四島の一括返還がいまだ実現を見ないのはまことに遺憾であります。伊東外務大臣は国連において、北方領土問題及びアフガニスタンへの軍事介入を含むソ連の外交、軍事戦略に対し、善隣と友好を具体的行動で示せと強く要請したことは高く評価いたします。しかしながら、その後の日ソ外相会談では双方の主張は平行線をたどっていますが、政府は北方領土問題にどう取り組んでいかれるのか、その決意のほどを示してもらいたい。
 一方、中東に目を転ずると、イラン、イラクの紛争は石油基地攻撃にまでエスカレートしております。長期化の傾向にあることはまことに遺憾であります。輸入石油の七五%を中東に依存するわが国としては、速やかなる即時停戦を切に望むものであります。政府としてはこの紛争の行方をどう見通されておりますか、また、わが国の石油情勢に及ぼす影響及び今後の対策を伺います。
 私は、中東の不安定な政治情勢を考慮するとき、石油入手先の多角化を図ることが急務であると考えますが、政府はこのためにいかなる外交を展開する所存でありますか、伺います。
 現在、わが国の石油備蓄は百十一日分であり、これは国際エネルギー機関加盟国の百四十日分を下回るものであります。資源のないわが国としては、国際協調を図りつつ石油備蓄体制の強化を早急に図るべきだと考えますが、政府の見解を伺います。
 次に、安全保障について伺います。
 総理が申されるように、わが国は戦後これまで日米安保体制を基軸として国の安全を維持し、今日の繁栄を遂げております。しかしながら、わが国を取り巻く世界の軍事情勢は、ソ連の軍事力の急速なる増強の結果、米ソ間の軍事バランスにおいてアメリカが絶対優位に立っているとは言えない状態となっております。とりわけソ連は、このような軍事力をアフリカ、中東への勢力拡大に向け、昨年末にはアフガニスタンへ軍事介入しているのみならず、わが国の北方領土に大型トンネルを含む軍事基地を構築し、わが国の安全にとって脅威を与えておるのであります。
 こうしたソ連の世界戦略を冷静に分析し、いまこそ日米安全保障体制に基づきアメリカと緊密な協力関係を維持することが、わが国の安全保障にとって最優先の課題であります。もとより、安全保障とは国民生活をさまざまな脅威から守ることであります。それは、軍事面にのみ限定されるものではなく、石油や食糧など外国からの供給がとだえると、わが国の生存にとって脅威であるにとどまらず、国家そのものの存立が危うくなることにもなりかねません。その意味で総合安全保障がきわめて大事であります。これに関する総理の所見を伺います。
 われわれは、日本の平和と繁栄は世界の平和と安定の中に求められるものであり、切り離せるものではありません。経済大国となったわが国が国際社会の責任ある一員として世界平和に貢献し、自衛のための国内体制を固めることは当然の責務であります。わが国がみずからの安全を確保するという自主的な判断により、適切な防衛力の整備を図るべきであると思いますが、総理の所見を伺います。
 次に、経済、財政問題についてお伺いをいたします。
 まず第一は、最近の景気動向とその対策についてであります。
 わが国経済は、原油価格の大幅上昇に見舞われたにもかかわらず、五十三年後半から着実な自律的拡大の道を歩んでおりましたが、五十五年度に入り、堅調を続けてきた生産、出荷など鉱工業生産活動が素材産業の減産等により足踏み状態となって景気停滞の様相を濃くしております。
 政府が九月五日、総合経済対策を決定したことは、このようなわが国経済の実情を考慮した適切な措置と言わなければなりません。しかしながら、原油価格の上昇によるデフレ効果の本格的浸透を憂慮するとき、今回の総合経済対策だけでは不十分であります。政府は速やかに経済政策運営の基本を物価中心から景気重視に転換し、追加的な経済対策を実施すべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
 また、鎮静化の方向にあった消費者物価が、冷夏の影響により、野菜、果物など季節商品の値上がりに伴って上昇いたしておりますが、今後の野菜等の需給見通しと物価対策について、あわせて経済企画庁長官にお伺いいたします。
 第二は、財政の再建についてであります。
 五十五年度予算で初めて一兆円の公債減額を行い、財政再建の一歩を踏み出したことは評価いたすのでありますが、わが国財政はなお十四兆円という巨額な借金財政に陥っております。この利払いのための国債費は実に五兆三千億円にふくれ上がり、他の諸施策の経費を圧迫しております。このような状態を続けると、財政としての働きをなくするばかりか、インフレとなって国民生活そのものを破壊することになりかねません。最近、ようやく国民の間にも財政再建への機運が盛り上がっており、政府は、この機を逸せず、効果的手段を講ずべきだと思います。財政再建に取り組む大蔵大臣の基本姿勢を伺いますと同時に、来年度予算編成についての考え方を示されたいと思います。
 次は、総合予算主義の採用による歳出の削減についてであります。
 本年度も昨年に引き続き年度内にかなりの自然増収が見込まれる状況にありますが、その一方で人事院勧告に基づく公務員の給与改善費の歳出追加を余儀なくされる状況にあります。元来、公務員の給与改定などは、災害補正と異なり、当初からある程度予測されるものであって、従来のように年度途中において安易に自然増収に頼るという制度は、この際改めるべきではないでしょうか。財政再建が国家の大命題である今日、自然増収はすべて国債減額に振り向ける補正なし総合予算主義を今後貫徹すべきではないかと思いますが、大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
 次に、行政改革についてお伺いします。
 中曽根行政管理庁長官は、今回八項目から成る今後の行政改革に関する基本的な考え方を発表されておりますが、これは、これまでの行政改革が機構いじりに重点を置いていたのに比べ、行政の減量化、ぜい肉落とし、サービスに着目して、新しい時代に即応した簡素にして効率的な行政の展開を目指しているものとして高く評価するものであります。高度経済成長時代に肥大化した行政組織や事務事業は、八〇年代を迎えた今日、決意を新たにして再点検し、不要なものはこの際思い切って改革し、国民のニーズに合った行政サービスの徹底を図るべきが急務であると思います。しかしながら、行政改革は、総論においてはおおむね賛成していても、いざこれが実施に移されようとする各論になりますと反対に遭うという、きわめてむずかしい宿命的課題であります。
 今回再提出される行政改革関連八件は、いずれも解散国会において審査未了となったものであります。また、当面の検討課題の中を見ましても、特殊法人の経営の実態の見直し、中央省庁内の組織編成、地方公共団体の定員の抑制など、各省庁の厳しい抵抗は必至であります。これを実行に移すには総理の不退転の決意、たくましいリーダーシップがなければ、せっかくの行政改革がかけ声倒れになってしまうおそれが強いのであります。いかにこれに取り組むのか、総理及び行政管理庁長官の決意のほどを示されたいのであります。
 行政改革が看板の塗りかえや机の配置を変えるという単なる機構いじりだけに終わるのでは、真の効果を期待するのは困難であります。不必要な人員は思い切って減らしていくという、ある程度の出血を伴う人員整理も場合によっては必要ではないかと思います。行政管理庁長官は、今後定員管理をどのように合理化し、人件費削減の実質確保に努めるのか、あわせて臨時行政調査会設置のねらいを伺いたいと思います。
 次に、冷害対策についてお伺いいたします。
 今回の冷害による総被害見込み額は実に六千億円と言われております。これは大正二年以来の大災害であり、被災地からは収穫の見込みのない青立ちの稲穂を手に苦悩に満ちた農民の表情が伝えられております。
 わが党は、去る九月二十五日に、冷害等による農作物等の被害救済に関し政府に申し入れを行っております。
 また、異常気象による影響は、ひとり農業のみにとどまらず、経営基盤の弱い中小企業にもかなりの打撃を与えております。政府は、これら農業者及び中小企業に万全の被害救済措置を講ずべきだと思いますが、その対策を伺います。
 次は、水田利用再編対策の第二期対策でありますが、冷害は冷害、減反は減反と果たして単純に割り切れるものでありましょうか。大きな疑問があります。米需給の不均衡の是正が当面する農政の最重要課題であるとは申せ、水田利用再編対策という名の転作は農家にとってイバラの道であります。今回、空前の大災害をこうむった農家に、さらに来年度からこれに追い打ちをかける第二期の水田利用再編対策の実施は、被災農家に十分配慮し、慎重に決定していただきたいと思います。
 さきに、日韓間の最大の懸案でありました北海道沖の韓国漁船操業問題が四年ぶりにこのほど解決いたしましたが、関係各位の御努力に対し心から敬意を表します。
 この結果、問題となるのが、韓国漁船の規制強化の見返りとして、済州島周辺の以西底びき網漁業の規制強化を受け入れたことであります。以西底びき網漁業は、燃油の高騰、資源条件の悪化などによって厳しい経営状況に追い込まれている中で、文字どおり過重な負担を負わされることになり、減船による業界の再編は不可避であります。政府は、その責任において減船補償に万全を期すべきであると思います。
 以上の諸点について政府の所見を求めるものであります。
 次に、科学技術の振興と創造的能力の開発について伺います。
 資源に乏しいわが国が今後国際社会の一員として生き延びるためには、科学技術立国を目指し、創造的な技術開発を通じて世界に貢献していかなければなりません。わが国は、外国の技術を導入し、加工改良する能力はすぐれているが、独創的な発明が少ないと指摘されてまいりました。いま求められているのは、こうした導入型・模倣型体質から脱却し、自主的技術を発展させる基盤をつくることであります。このためには、青少年に、みずから調べ、みずから考える創造的能力を育てる教育環境を確立するとともに、すぐれた科学者や技術者に存分に腕をふるえる場所を用意することが大切であります。それには、大学も企業もそれぞれ日本型の縦割り社会的な閉鎖性を打破し、国の研究所も含めて、情報の交換、研究者、技術者の交流等をもっと活発に行う必要があります。
 また、わが国の研究投資は民間主導型で、研究開発費における国の負担割合は米国や西ドイツの半分にすぎません。技術開発の主力を企業だけに任せておいては、どうしても営利に直結した短期的効果のあらわれる導入型・改良型技術に偏りがちであります。模倣は創造よりコストが安いのであります。目先の利益にとらわれたり、失敗を恐れていては、独創的な発明や技術革新は生まれません。創造的な研究土壌は育ちません。事、科学技術の研究に関する限り、多少のむだを容認する風潮も必要ではないかと思います。そして、こういう分野にこそ積極的な政府の研究投資が望まれるのであります。財政事情厳しい折でありますが、国家百年の大計である科学技術立国のため、創造的な研究、頭脳の開発に政府は思い切った手を打つべきであると信じますが、総理の所見を伺います。
 次に、原子力船「むつ」について伺います。
 佐世保市で改修工事中の「むつ」は、地元との協定では、一昨年秋の佐世保回航後三年間で工事を終え、新母港へ回航する約束となっております。しかしながら、本格的改修工事に取りかかったのは、ようやくことしの八月に入ってからであります。工事に当たって関係者に望みたいのは、何よりも放射能監視や環境保全など安全の確保に万全を期してもらいたいということでありますが、しかも、この工事を行うのに、昼夜兼行の突貫工事で工期を守らなければならないというきわめて困難な問題に迫られております。さらにまた、新母港の決定もむずかしい今後の政治課題として残されているようであります。果たして「むつ」は約束の期限内に工事を終え、新母港に向けて佐世保を出港できる見通しがあるのかどうか。
 長崎県は、御承知のとおりに原爆被爆県であります。いまなお被爆後遺症で多くの人が苦しんでおります。政府は、こうした県民感情を十分認識し、仮にも大湊出港の際の不手際の二の舞を繰り返すことのないように、周到に手はずを進めるよう要望し、総理の所見を伺います。
 次に、環境問題でありますが、去る七月、アメリカ・ホワイトハウスが発表した「二〇〇〇年の地球報告」は、「もし現在の傾向が持続するなら、西暦二〇〇〇年の世界は、現在に比べ一層汚染され、物的生産は拡大されるにもかかわらず、人々は多くの面で今日より貧しくなるだろう」と指摘し、「問題が悪化するまで決断をおくらせるならば、有効な施策の選択の可能性は著しく狭められるであろう」と警告しております。
 総理も、所信表明において環境問題の世界的広がりと対応の重要性を指摘されましたが、現下の環境政策の課題のうち、当面最も緊急を要するものは、開発行為が環境に与える影響を事前に調査、予測、評価し、あとう限りこれを未然に防止するための統一的なルールを確立することを目的としたいわゆるアセスメント制度の法制化にほかなりません。この問題に対し、総理の所信を伺います。
 最後に伺いたいのは憲法問題であります。
 去る八月二十七日の衆議院法務委員会における奥野法務大臣の憲法発言をめぐって、今日これが大きな政治問題となっております。それぞれの立場において解釈すれば、それぞれの言い分はあると思います。しかしながら、私は当日の速記録を詳細に調べました結果、今回の奥野発言は、言論の自由を定めた憲法第二十一条、国会内発言に責任は問われないとする第五十一条、改憲手続を定めた第九十六条など、現行憲法の各条項には全く抵触せず、遵守義務と改憲論議とが矛盾するものでないことは、当の憲法自体に照らしても明らかであります。
 憲法は国家存立の基本法であるだけに、軽々に改憲を行うべきでないことはもちろんでありますが、だからといって憲法を不磨の大典として絶対視すべきではなく、憲法の改正を認める条項があるからには、時代の推移、国情に応じ、これを自由に論議、研究することは、民主政治のもとにおける当然の国民の権利であります。
 「人民は常に憲法を再検討し、改革し、変更する権利を有する。一つの世代は、将来の世代をその法に従わせることができない。」という一七九三年フランスの権利宣言を例に引き出すまでもなく、自由主義国、社会主義国を問わず、世界の主要国で戦後憲法を改正していない国は日本を除いて一国もありません。米国とイタリアは五回ずつやっております。フランスは八回、西ドイツは三十四回、社会主義国のソ連は実に五十一回です。中華人民共和国も四回の改正をそれぞれ行っております。
 総理は、所信表明で憲法の理念を堅持することを述べられておりますが、憲法制定後三十有余年を経た今日、当時と内外情勢は一変しております。憲法は国家、国民にとっていかにあるべきかということを真剣に考えるときであると思います。当初より改正を意図するのではなく、その今日的な問題を洗い出し、材料を国民に提供する意味で、改めて内閣に憲法調査会を設け、検討してはいかがかと思いますが、総理にお伺いをいたします。
 終わりに、大平前総理は、参議院選挙公示日の街頭演説の第一声で、「集団には意見の相違はある、自民党もその例外ではない。しかし、意見の相違は、その意見を闘わせる中でよりよいものをつくり出していく」と絶叫して倒れました。この大平精神は総理の言う「和の政治」と脈絡相通ずるものがあります。
 鈴木総理、あなたは大平精神の継承者として、これまでの軌道をそのまま歩くのではなく、事態の変化、展開に応じて創造的に発想を転換され、先見性を持った「思いやりのある政治」を達成するために、新しき八〇年代を切り開いていただきたいのであります。
 以上、お尋ねし、かつ要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 私は、自由民主党の総裁及び内閣の首班として、議会制民主主義の本旨にのっとり、党の公約な着実に実施していくことが私に課せられた責務であると考えております。
 私は、和の政治を施政の基本理念といたしておりますが、元来、国会は話し合いの場であって、対立抗争の場であってはならないと考えております。あくまで論議を尽くし、民意を吸収し、話し合いによって国民の納得する結論を出していくことが必要と考えております。この国民の納得する結論を出すことが議会制民主主義の本旨に沿うものであり、国会における和の政治は、この議会制民主主義のルールに従って国会が運営されることであると考えております。
 政治倫理の確立と綱紀の粛正の問題、選挙制度の問題についてお触れになりました。
 政治倫理の確立は、政治に対する国民の信頼を得る原点であり、所信表明において明らかにしたとおり、当面する緊急の課題であります。政府としても、その対策の一環として、さきの通常国会で廃案になった政治家個人に係る政治資金の明朗化を図るための政治資金規正法の改正案を今国会に提出して御審議をお願いする考えであります。
 官庁綱紀の粛正については、政府の取り組むべき重要な課題の一つとして全省庁を挙げて取り組んでいるところであります。引き続き綱紀の粛正について厳しい姿勢で取り組み、国民の期待にこたえてまいります。
 参議院全国区制の改革について御意見がありましたが、確かに現在の参議院の全国区制は金がかかり過ぎること、短い期間内に広い区域にわたって選挙運動をすることは大変な負担であることなど、その改善を検討すべき段階に来ておるのではないかと思います。ただ、問題が選挙の基本的な土俵づくりに関することでありますので、事柄の性質上、国会の場において各党各会派の間で十分な御論議を尽くされて結論を出していただきますよう期待をいたしております。
 次に、外交問題についてお答えをいたします。
 第一に、わが国外交の基本方針についてであります。
 今日、各国間の相互依存関係はますます深いものになっております。また、戦後三十五年を経て、いまやわが国の国力は飛躍的に増大いたしました。わが国は、そのような認識に立脚して、平和国家としての基本的立場を堅持しつつ、世界の平和と繁栄のために、経済面のみならず、政治、外交面においてもその国際的地位にふさわしい責任と役割りを積極的に果たしてまいる決意であります。
 次に、日米関係についてであります。
 日米間の友好協力関係はわが国の外交関係の基軸であり、また、米国にとってもわが国は重要なパートナーであります。このような現在の緊密な日米関係は、そのときどきにおける利害の相違を超えた揺るぎない基盤に立脚したものであると考えます。両国政府は、このような基本認識を踏まえ、これまでの防衛努力を含む安全保障上の問題について腹蔵のない意見交換を行っております。
 なお、自動車の問題、電電公社の資材調達の問題については、今後とも米国側と十分な意思の疎通を図り、早期に双方が納得いく形で解決を図りたいと考えております。
 イラン・イラク紛争の見通しと、これに対するわが国の対応についてでありますが、現在までのところ、国連の場などを通じての事態解決への努力にもかかわらず、残念ながら停戦への動きは見られません。戦況の方も膠着状態にあるように見受けられ、現段階において今後の戦闘の行方について正確な見通しを立てることは困難でございます。わが国としては、イラン、イラク両国の間で戦火が拡大していることを深く憂慮しており、両国間の紛争が一日も早く平和的に解決することを強く希望しております。また、このようなわが国の立場はイラン、イラク両国政府にも伝達してきております。政府としては、今後とも状況の推移を見きわめつつ、両国に対し紛争の平和的解決を訴えてまいりますとともに、国連等の場を通じ、わが国と同様の懸念を深めている諸国とも協調して、紛争収拾のため最善を尽くしてまいりたいと考えております。
 イラン・イラク紛争の石油への影響についてでありますが、わが国の現在の石油需給は緩和基調にあり、また石油備蓄水準はこれまでになく高く、仮にイラクからの原油積み出しが相当期間行われないとしても、当面わが国の石油需給に大きな影響が出ることは考えておりません。もちろん、ホルムズ海峡の通航については今後の動向を十分注視する必要がありますが、現在のところ同海峡の通航に大きな支障があるとは聞いておりません。
 私は、この際、国民各位がこのような情勢を十分御理解の上、冷静に対応されるようお願いするとともに、政府といたしましても、引き続き石油供給源の多角化、省エネルギー対策、代替エネルギーの開発導入等の諸施策を推進してまいります。
 次に、石油輸入先の多角化の問題であります。
 わが国は、現在、原油総輸入量の七割以上を中近東に依存しており、今後とも同地域の重要性は変わらないと思われますが、他方、石油供給の安定的確保を図るため、原油供給源の多角化を目指し、中南米、アジア等、非中近東地域からの原油輸入の増大に従来にも増して努力していくつもりであります。ただし、これら産油国の中には、原油供給をわが国との政治、経済全般の観点からとらえようとする考え方がございます。このような事情にもかんがみ、政府といたしましては、従来にも増して、これら産油国との間に人的交流、経済技術協力、文化交流など、諸般の分野における相互協力関係の強化を図り、もって総合的な外交努力を通じ、原油供給源の多角化を実現してまいりたいと考えております。
 石油備蓄についてでありますが、仰せのとおり、わが国としては石油備蓄の一層の強化が必要であります。このため、民間の九十日備蓄に加え、石油公団による国家備蓄を推進しているところでありまして、現在のタンカー備蓄のほか、国家備蓄基地の建設を進めるよう努力し、長期目標の三千万キロリットルの国家備蓄体制の確立を図ります。
 次に、いわゆる総合安全保障に関してでありますが、今日の複雑な国際情勢とわが国の置かれておる立場を考えれば、初村議員の御指摘のとおり、単に防衛的な側面のみならず、経済、外交を含めた広い立場からの努力が必要であります。外交、経済協力、エネルギー、食糧等の国の諸施策は、むろんそれぞれの所管官庁が推進しているところでありますが、私はこれらの施策について総合的な安全保障の視点から高いレベルでその整合性を確保することが必要と考え、現在その具体策について検討さしておるところであります。
 わが国は、国際社会の一員としての自覚に基づき、世界の平和と安定のため積極的な努力を払ってきているところでありますが、特に自由と民主主義を基調としているわが国としては、米国及び西欧諸国を初めとする自由主義諸国との連帯と協調をさらに強化していく必要があります。また、わが国の安全保障が米国との安全保障体制を堅持することによって確保されていることは事実であり、わが国の平和が東アジア地域の平和に貢献し、ひいては世界平和にも貢献することになると確信いたします。このようなことを踏まえて、わが国としては、最近の厳しい国際情勢にかんがみまして、あくまでわが国の自主的判断に基づき、わが国の防衛のため必要な防衛努力を行っていきたいと考えております。
 行政改革に取り組むに当たっての私の決意についてお尋ねがございましたが、私は不退転の決意を持ってこれに当たる所存でありますので、所信表明においてもお願いいたしましたとおり、広く各党各会派の御協力を要望する次第でございます。
 農業者及び中小企業に対する冷害対策に万全を期するようにとの御意見がございました。
 政府としても、今年の冷害がきわめて深刻な事態でありますので、万全の施策を講じてまいりたいと存じます。
 まず、被災農家救済のため天災融資法及び激甚災害法の早期発動の準備を進めるほか、農業共済金の早期支払い、被災地での重点的な公共事業の実施など、被害の実情に応じた対策を講じてまいりたいと存じます。
 中小企業対策といたしましては、まず冷夏の影響により経営の安定に支障を生じておる中小企業に対し、金融面の措置として、中小企業体質強化資金助成制度の地域産業対策融資を機動的に活用することといたしました。また、冷夏の影響で売り上げの減少が著しい業種を中小企業信用保険法の不況業種として追加指定し、信用保証協会の保証を通常の債務保証限度額とは別枠で利用できるよう措置したところであります。
 水田利用再編第二期対策は、将来の農政を確立するために避けて通れない重要な課題であります。ただ、今回の冷害は予想以上に深刻なものがあり、被災農家の不安も大きいことと存じますので、当面は冷害対策に全力を挙げることとし、第二期対策の決定については慎重を期してまいりたいと考えております。
 長年にわたる北海道周辺海域における韓国船操業問題が、今回の日韓漁業協議により解決を見ることとなりましたが、まことに喜ばしいことであります。しかし、一方において、済州島周辺の底びき網漁業について操業規制を余儀なくされることとなった以西業界が影響を受けることとなりますので、その対応策について目下検討を行っておるところでございます。
 御指摘の創造的な研究開発の推進についてでありますが、資源に乏しいわが国が今後とも安定成長を遂げていくためには技術立国を目指すことが不可欠であります。また、複雑化の度を深めている国際社会の中でわが国が相応の役割りを果たしていくためにも自主的な技術協力が特に重要であります。このため政府としては、これまでも自主技術開発の推進に努めてまいったところでありますが、御指摘の創造的な研究開発についても積極的に推進してまいります。
 原子力船「むつ」に関しましては、地元とのお約束もありますので、私としても期限内に修理、点検が終了するようあらゆる努力を惜しむべきではないと考えております。また、特に環境保全、安全確保には引き続き万全を期してまいります。
 次に、いわゆる環境アセスメント制度の法制化に関してでありますが、環境保全を進めていく上で今後の重点は環境汚染の未然防止でありますから、政府としては環境影響評価の法制化について引き続き努力してまいりたいと思います。
 憲法尊重擁護の義務と憲法改正の議論との関係についてお答えをいたします。
 御承知のとおり、憲法第九十九条は公務員の憲法尊重擁護義務を規定しておりますが、一方、憲法第九十六条は憲法の改正手続を規定しておりまして、憲法改正についての議論をしたりあるいはそのための研究を行うことは、もとより憲法第九十九条の憲法尊重擁護義務に違反するものでないことは、初村議員の御指摘のとおりであります。
 内閣に憲法調査会を設けよとの御意見でありますが、鈴木内閣においては憲法を改正しない方針でありますので、調査会を設置する考えはございません。
 以上、御答弁申し上げましたが、残余の問題につきましては所管大臣から答弁いたします。(拍手)
   〔国務大臣伊東正義君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(伊東正義君) 初村議員の御質問の外交問題総理から大分御答弁がありましたので、直接私にございました二点についてお答え申し上げます。
 第一点は、私のアジア歴訪の成果及びアジア外交の対処策いかんということでございます。
 アジアに位置しますわが国としまして、アジアの平和、安定ということが不可欠の要件でございますので、アジア人の心に直接触れ、直接この目でアジアを見てこようということで、そういう見地から、最初の外国訪問地としまして、タイ、ビルマ、インド、パキスタン、中国の五カ国を歴訪してまいったのでございます。短期間でございましたが、各国の政府首脳と、二国間の問題のみならず、カンボジアの問題でございますとかアフガニスタンの問題等、国際問題一般についても親しく意見の交換をする機会を持ち、各国が当面する諸問題について理解を深めますとともに、わが国の立場も率直に伝えまして、両方で理解を深めたのでございまして、今後わが国がアジア外交を進めてまいります上に私は大きな布石になったものだというふうに感じておるわけでございます。
 また、難民問題に関しましても、私自身、カンボジアの難民キャンプ、これはタイでございます。アフガニスタンの難民キャンプ、パキスタンでございますが、これを訪れまして、本当に悲惨な難民の状況を視察をいたしたのでございます。さらにタイではカンボジアの難民の流入によりましてタイの国民自身が被害を受けているという被災民の問題もございまして、これを視察したのでございますが、人道面からの援助ということは当然でございますし、さらには、難民というものを起こさないようにする根源の解決が必要だということを痛感してまいったような次第でございます。
 今次歴訪を通じまして、各国よりわが国に示されました期待は、わが国の経済力の増大に伴いまして経済技術協力の強化ということの要請がありましたことは当然でございますが、いまやアジアの平和の維持と安定の確保のために、日本が政治的な側面においても、より積極的にあるいはより建設的な役割りを果たしてほしいという要望が聞かれましたことを、日本におりまして感じましたよりもさらに強く感じた次第でございます。
 確かに、この期待にこたえるには、先ほど初村議員がおっしゃいましたように、米中ソの影響力のある地帯でなかなか容易でないということは、これは私もよくわかるのでございますが、わが国としては、アジアの問題に対して建設的な関心をさらに一層深めまして、積極的な外交努力をすることが必要であるということを感じまして、たとえばカンボジア問題の早期平和解決ということがアジアの安定にとって本当に必要でございますが、この問題は国連の内外におきましてASEANの諸国と十分に協調しまして、今度の国連総会にも決議案を出すのでございますが、共同提案をして、ASEANと一緒に出すわけでございますが、和平の道を探っていくということも、こういう道を積み重ねる必要がございますし、あるいはアフガニスタンの問題になりますと、EC諸国と協調してこの問題にも取り組む必要があるということを痛感しました。八〇年代の国際社会においてわが国に期待される外交姿勢はこういうものであるということを痛感して帰ってきたわけでございます。
 もう一つの問題は、北方領土に今後どういうふうな取り組み方をするかと、ソ連に対する取り組み方の問題でございます。
 ソ連がわが国固有の領土でございます北方領土の不法占拠を続け、さらに最近に至りまして新たに軍備を配備したということは、これはきわめて遺憾なことでありまして、政府としてもこれを重大に受けとめ、累次にわたって厳重にソ連に抗議し、このような措置の速やかな撤回を強く申し入れてきたことは御承知のとおりでございます。
 また、先般私は、第三十五回国連総会の一般討論演説におきまして、北方領土問題を取り上げまして演説したのでございますが、さらに、その次の日、二十四日には、グロムイコ・ソ連外相との会談におきまして、北方領土の返還はこれは国会でも何度も決議がございますし、日本国民の総意に基づくものであるということを強く主張し、早急に領土問題を解決して平和条約を締結すること、これがまた日本とソ連との間の友好関係にどうしても必要であり、また北方領土における軍備強化は日ソ友好に逆行するものではないか、顔を逆なでするようなものではないかということを実は強調したような次第でございます。
 これに対しましてソ連側では、依然として、領土問題につきましては、もう領土問題というものはないのだ、余分な領土はないということを述べまして、かたい姿勢を崩しておらぬのでございます。私は、鳩山さんとの交渉でも一番領土問題を知っているのはグロムイコ外相、あなたではないかというようなことを主張して、両方で意見の交換をしたのでございますが、誠意ある態度を示しておらないことはまことに遺憾でございます。
 政府としては、ソ連側に対しまして、この問題の解決こそ日ソ間の真の相互理解の促進に不可欠であるという認識をあらゆる機会に伝えまして、そしてそれを理解せしめる努力を今後も引き続き続けてまいりますとともに、北方領土返還に対するわが国民の総意を踏まえまして、今後とも筋を通すべきところは通して主張し、これは息長くあるいは粘り強く対ソ交渉を続けていくということでこの北方領土返還の問題に取り組んでまいりたいというのが日本政府の態度でございます。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問の第一点は、景気対策が不十分である、もっと積極的にこれを進めよと、こういう御意見でございますが、去る九月五日、政府は一連の総合経済対策を決定いたしましたが、この特徴は、物価にも引き続き十分な配慮をしながら、一方最近の景気動向にかんがみまして一連の景気対策を進める、こういう内容でございます。
 従来の景気対策に比べますと、従来の対策は大規模な補正予算を組みまして非常に積極的な対応をしたのでございますけれども、今回の景気対策は現行予算の枠の中でいろいろ工夫いたしまして一連の対策を進めておるということでございますから、その力は従来のものに比べますと比較的弱い、このように私どもは判断をしております。ただしかし、景気の現状はまださほどひどい状態ではない、かげりが出始めた、こういう段階でございますから、現在のような内容でも相当な効果があるものと期待をしております。しかしながら、今後の景気動向には十分気をつけまして、今後とも必要に応じて機敏で適切な対応を進めてまいりたいと考えております。
 質問の第二点は、現在、野菜が不足しておるが、それに対する対策いかん、こういうことでございますが、この夏の異常気象によりまして野菜の生産は大幅に減りました。そのために消費者物価に悪い影響が出てまいったのでございますが、農林水産省と頻繁かつ緊密に打ち合わせをいたしまして、野菜の増産対策、出荷奨励対策、こういうものを積極的に進めてまいりました。その結果、最近になりまして需給関係は相当改善されたと考えております。価格もいま安定の方向に向かっております。しかしながら、消費者物価に対する影響が非常に大きいものがございますので、今後とも必要に応じて農林水産省と協議をしながら積極的な対策を進めてまいりたい、このように考えております。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(渡辺美智雄君) 初村議員の御質問にお答えいたします。
 まず、財政再建に取り組む大蔵大臣の姿勢、基本方針はどうかということでございます。
 先ほど初村議員が、現在のまま財政を放置すればこれは大変なインフレになる可能性が非常に強い、したがってこれは放置できないというようなことをるる御説明してくださいました。全く御指摘のとおりでございます。しかしながら、実は国民全体が、初村議員のように御理解してくれる方ばかりおらないわけでありまして、そこが問題なわけでございます。したがって、私といたしましては、現状は御指摘のとおりでございますが、この現状をどうして国民に深刻に知っていただくか、これが一番の問題であって、これさえ知っていただければ財政再建の方途というのはおのずから国民のコンセンサスのもとにスムーズにでき上がる、私はこう見ておるわけでございます。
 実際問題として、ことし日本で発行した国債総額は約十四兆二千七百億円で、これはアメリカの六兆七千億円とか、イギリスの三兆八千億円とか、ドイツの三兆円、フランスの一兆円を加えて十五兆円ぐらいですから、その五カ国のものぐらいを日本で発行しているということは、これはもうかなりなものであるということは大体皆わかるのです。
 問題は、そういうようなことが何でそれではできたのかと、ここのところがわからないというと議論はあべこべになってしまうわけでありまして、そこなんです、問題は。そこを知ってもらわなければならない。そこで、これは御承知のとおり、現在確かに七十兆円という国債の発行残高がございますが、このうち約四十二兆円というものは建設国債でございます。あとの二十九兆円がいわゆる赤字国債と言われるものであって、建設国債はそれなりに不況からの脱出という面で失業を防止し、景気のかさ上げ、底上げに力を尽くしたと、これは学者も大体認めておるところであります。しかも、これは道路となり橋となり、いろいろな面で公共投資として残っておるわけです。だからこの予算はきわめて有効適切な予算であったというようにわれわれは考えておるわけでございます。問題は、そうすると特例公債が問題になるわけでありますが、これにつきましては、これは不況下であって税収が入らなくても福祉はいっぱい上積みしなさい、学校にはいっぱい金を出して四十人学級をつくりなさい、みんなそういうことを言われてきておるわけですから、したがって税収は過去七年間に二倍にしかならないが社会保障費は三・九倍になっておるということになると、税金は二倍しか上がらないのに社会保障費その他がそれ以上にオーバーすれば、どこかでそれは足らなくなるから借金という形になるわけで、いままでそういうようなことで社会保障や文教の充実をやってきたということは間違いないのです。したがって、国民にそれを知ってもらえば、ああそうなのかと。しかしながら、いまからはこれ以上に国債をどんどん発行し続けますというと、なかなか払い切れなくなる。すでにことしも二十六兆四千億円の税収で、要するに国債費が五兆三千億円、したがって、これは一家の家計にすれば二十六万円の月給しか入らないのに、その中で五万三千円も利息等を払うことは大変だと。これが六万、七万、十万とふえていったらばとても払い切れなくなるということはわかるわけですね。したがって、ここらが限度で、ともかく借金を減らしていこうじゃないか、去年は一兆円減らしたのだからことしは二兆円減らすのだと。お説教でなく、これを知ってもらわなければだめなんです。だから、それを知ってもらうことによって、それでわれわれは来年は国債の二兆円減額ということを優先課題として財政再建に取り組んでまいりたい、かように考えておるわけでございます。
 そのためには、やはり徹底的な経費の洗い直しをしなければなりません。したがって、経費はもう例外をつけないで、必要なものは最小限度認めますけれども、そうでないものは優先順位をつけて極力これは洗い直しをする。異常な公債の大量発行のもとですから、これはもう厳正にやらなければならぬ、こう考えております。しかもまた、サービスの低下の問題についても、借金をしてまでそれだけサービスする必要があるかどうか、ここらのところはもう一緒になって考えてもらわなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
 その次には、いわゆる国家公務員の給与のベースアップの問題で、これは総合予算主義を貫いて補正予算なんかしないでやったらどうだというお話でございますが、これはいまでも総合予算というものは貫いておるわけであります。しかし、だからといって一切補正予算は認めないのだということではございません。ただ、御承知のとおり、年の中途で国家公務員のベースアップというものは決まるものですから、予算のときには幾ら上がるのだか実際わからないわけです。これはもう人事院が決めて、それを大体のむという慣例になっておるものですから、だからわからない。ある程度のことは予算に組んでございます。組んでございますが、そういうようなことで、もしそれが足りないという場合には追加予算というようなこともあるのでしょうけれども、現段階においては、本年度は追加予算を組むかどうかということはまだ不明でございます。何とも申し上げられない。余裕財源が出た場合には優先的に国債の減額に充てるということを基本として考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(中曽根康弘君) 行政改革は現内閣の最大政治課題の一つと心得まして、総理の御指導のもとに内閣一体となって真剣に努力するつもりでございます。
 今回の行政改革に当たりましては、いわゆる機構いじりというものを避けまして、むしろ減量経営による行政の実態に切り込むことをやろうと考えました。そのために仕事の原因である法律、政令、許可認可、あるいは補助金、こういうものを思い切って削減するように努める所存であります。あるいはさらに特殊法人の経営実態等も見直しまして、剰余金その他はできるだけ政府に還元さしていただいて、これを国債を減らすお金の方に回していきたいと考えております。
 第二番目は、行政の本質の一つは奉仕にあります。「公務員は、全体の奉仕者」と憲法にも書いてあります。したがいまして、サービスの徹底的な改革を行って奉仕の実を上げよう、こういうことで閣議決定をいたしまして、その実施に臨むことになりました。来年の三月までに実際を点検評価いたしまして、たとえばサラリーマンがお昼休みに出生届を持っていったら窓が閉まっていた、こういうことがないようにお昼休みも窓はあけておく、あるいは駅やそのほかの公衆便所をきれいにする、小さなことですけれども、そういうことを徹底的にやらしたいと思っております。来年三月までにそれを評価いたしまして、よくやっているところはほめていただく、悪いところは主務大臣を通じて注意する、そういう信賞必罰を徹底してやりたいと思っております。
 第三点は、八〇年代になりまして、政治、経済、社会、非常に大きな変化が起きて、行政も変化しなければなりません。たとえば情報公開が片方で要求されておりますが、片方ではプライバシーの保護が要求されております。あるいは官業と民業の分界点、中央と地方の仕事の限界、そういうさまざまな問題につきまして、やはり権威ある機関をつくりまして、相当哲学的な基礎まできわめて具体案をつくっていただきまして、それを実行してまいりたい、そう考えております。
 次に、出血を伴う整理の問題でございますが、総定員法をつくりましたときに参議院内閣委員会においても附帯決議がございました。また、政府の答弁もございまして、出血を伴う整理を行わないように配慮する、こういう答弁をしております。この答弁は尊重されなければならぬと考えております。しかし、政府といたしましては、過去十三年間におきまして自然減耗に非常に努力しておりまして、大体十三万六千人の退職者を出しております。しかし、医科大学が各県にできておりましたり、あるいは学部の増設あるいは病院の看護婦さん、あるいは登記所の公務員、あるいは二百海里による海上保安官、あるいは飛行場がジェット機化しまして航空管制要員が非常に要る、こういうことで十二万七千人ばかりふえました。大体九千人をネットで減らしているわけであります。これから五年間に同じような自然減耗を促進して約三万七千人の人間を浮かそう、そしてこれを補充するのをできるだけ少なくしておこう、こういう努力を懸命にやっていきたいと思っておる次第でございます。(拍手)
#15
○副議長(秋山長造君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○副議長(秋山長造君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
【PR】姉妹サイト