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#1
第093回国会 法務委員会 第3号
昭和五十五年十一月五日(水曜日)
    午前十時十二分開議
 出席委員
   委員長 高鳥  修君
   理事 青木 正久君 理事 木村武千代君
   理事 熊川 次男君 理事 山崎武三郎君
   理事 稲葉 誠一君 理事 大野  潔君
   理事 岡田 正勝君
      今枝 敬雄君    上村千一郎君
      大西 正男君    太田 誠一君
      高村 正彦君    佐藤 文生君
      白川 勝彦君    森   清君
      伊賀 定盛君    小林  進君
      武藤 山治君    大橋 敏雄君
      安藤  巖君    野間 友一君
      田中伊三次君    中川 秀直君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 奥野 誠亮君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 筧  榮一君
        法務省民事局長 貞家 克己君
        法務省刑事局長 前田  宏君
        法務省訟務局長 柳川 俊一君
        法務省入国管理
        局長      小杉 照夫君
        外務大臣官房外
        務参事官    渡辺 幸治君
 委員外の出席者
        インドシナ難民
        対策連絡調整会
        議事務局長   村角  泰君
        警察庁交通局運
        転免許課長   越智 俊典君
        外務大臣官房審
        議官      関  栄次君
        文部省初等中等
        教育局財務課長 倉地 克次君
        文部省初等中等
        教育局中学校教
        育課長     垂木 祐三君
        厚生省児童家庭
        局児童手当課長 近藤純五郎君
        厚生省保険局国
        民健康保険課長 古川貞二郎君
        厚生省年金局年
        金課長     佐々木喜之君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月三十日
 辞任         補欠選任
  今枝 敬雄君     有馬 元治君
同日
 辞任         補欠選任
  有馬 元治君     今枝 敬雄君
十一月四日
 辞任         補欠選任
  沖本 泰幸君     大橋 敏雄君
同月五日
 理事沖本泰幸君同月四日委員辞任につき、その
 補欠として大野潔君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
十月二十四日
 国籍法の一部を改正する法律案(土井たか子君
 外六名提出、衆法第六号)
 最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する
 法律案(稲葉誠一君外五名提出、衆法第七号)
 最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案(稲
 葉誠一君外五名提出、衆法第八号)
 刑事訴訟法の一部を改正する法律案(稲葉誠一
 君外五名提出、衆法第九号)
 刑法の一部を改正する法律案(稲葉誠一君外五
 名提出、衆法第一〇号)
 政治亡命者保護法案(稲葉誠一君外五名提出、
 衆法第一一号)
十一月四日
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出第二九号)
 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出第三〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 法務行政及び検察行政に関する件
     ――――◇―――――
#2
○高鳥委員長 これより会議を開きます。
 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。
 昨四日、理事沖本泰幸君が委員を辞任されましたので、現在理事が一名欠員になっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は大野潔君を理事に指名いたします。
     ――――◇―――――
#4
○高鳥委員長 法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
#5
○小林(進)委員 まず委員長に御質問をいたしたいのでありますが、夕べの夕刊でございますか、何げなしに見ておりましたら「衆院議院運営委員会は四日の理事会で、松野頼三元防衛庁長官の偽証告発問題の取り扱いを協議した結果、法務委員会に舞台を移して折衝を続けることで与野党が合意した。」なおその次に「自民党側は法務委員会が松野問題を所管事項として審議するならあえて反対しない」これは法務委員会で松野問題を取り上げることに賛成をしたという表現でございますが、これに対して「野党側は「松野問題でなく松野証言問題だ」と反論したが、法務委に所管を移すことでは一致した。」こういうふうに載っておるのでございまして、この議運のきのうの理事会の結論から見れば、この法務委員会で松野問題、あるいは松野証言に限定するかどうか若干この点に意見の相違はあるようでございますが、松野問題を取り扱うことにおいてはもはや与党の方でも了承を与えられたようでございます。この点を法務委員長は自民党のそれぞれの機関から正式に受けていられるかどうか、まずお伺いをしておきたい。
#6
○高鳥委員長 小林委員にお答えいたします。
 まず、自民党の機関から連絡を受けたかどうかということにつきましては、議運においていまおおよそお話のあったような趣旨の見解を自民党の理事が申し上げるという方向であるということを自民党の国対委員長から承りました。しかし、いまの見解と申しますか自民党が申し述べられたであろうことについては、これは議運がそう決めてこちらに指示をするというような性格のものではございませんので、したがいまして、議運から法務委員会で取り扱えというような指示は全くいただいておりません。
#7
○小林(進)委員 それだから困るのですな。大体自民党という政党は、どこを一体へそをつつけば話が出てくるのかわからぬ。議運は議運、法務は法務、何も関係のないような、それぞれ独立しているような、そういう答弁をされると、どうもわれわれ野党としては非常に仕事がやりづらい。特に法務委員会はよくありませんな。法務大臣もお見えになったが、法務大臣の姿勢自体が実に間違っている。大体政党内閣制のもとには総理、総裁の意向のもとにやはり党員はある程度意思を一つにしておくとか、特に内閣なんというものは、内閣総理大臣の意思に基づく内閣の一体性、連帯性、一致性というもの、これが政党内閣の原則なんだ。それを閣僚でも言論の自由があるだろうとか、自由な発言は許されていいだろうなどと言って、総理大臣が右を言っているにもかかわらず法務大臣が左の発言をしていて言論の自由で許されていいなどということをとんとんやられているというのは、国民の側から見れば内閣とは一体何なんだということになる。どこに連帯性、一体性、共同責任があるんだという疑いを持たざるを得ない。
 だから私は、この前もこの法務委員会で法務大臣の奥野君によく忠告をしておいた。あなたの所信を述べるのはいいが、それくらい憲法改正に執念を燃やしているなら、閣僚をやめて国会議員として立法府の一員として自由に論ぜられることはよろしゅうございますよ、しかし閣僚の立場でいる限りは、やはり閣僚の一体性、閣議の一体性、総理の意向に相伴って国民から疑惑を持たれないような、そういう連帯的姿勢が必要なんですよということを何回も言っておるのだが、その後もまたしばしば世間の疑惑を生むようなあるいは総理の意向や内閣の意向と相反するような発言をしていられて国民は非常に迷っておる。こういうことは厳重に慎んでもらわなければならぬと私は思うが、問題はいまあなたに、委員長に質問しておるのはこの議運ですよ。
 国会運営の一つの責任をしょっている議運の理事会で、松野偽証問題は法務委員会でこれを扱うということで合意に達したと言っておるのだ。だから野党の方は、この合意に基づいてこの委員会は当然運営せられるものと思っているにもかかわらず、ここへ来て答弁を求めたら、風の便りじゃないけれども何かそんな話はあったようなないような、話は聞いたけれども正式に機関からは何の音さたもないと言う。それじゃ一体私どもは国会にどういう姿勢で臨めばよろしいのですか。委員長、これは笑い事じゃありませんよ。国会運営の基本に関する問題でありますから、きちっとした答弁をしていただきたいと思います。
#8
○高鳥委員長 小林委員にお答え申し上げます。
 私が承知いたしております限りでは、松野偽証問題という表現ではなくて松野問題というふうな表現を使われたと承知いたしております。それから、当委員会においてこれを取り上げられることについて自民党としては反対しない、こういうことを議運で自民党側の理事から言われたということを承っております。したがいまして、その問題をここで取り上げるとすれば、これからどうするかといういわばスタート地点に立つわけでございますので、この委員会の独自の判断に基づいて行われるものだ、このように承知いたしております。
#9
○小林(進)委員 そういたしますと、あなたは法務委員会の委員長としての責任において云々ということではない。あなたは委員長として一体どうお考えになるのですか。委員長というものは権威があるのですよ。国会法、国会規則の中に委員長の権限その他はきちっと明記せられておりまして、なかなか重要なる責任を持っておるのでありますから、これを委員会に云々などという責任のない、投げやりな答弁では許されるような地位じゃございません。国会の職務においては議長、副議長に次いで重要なる国会構成の柱なんですから、それだけ責任も重いのです。権威のある答弁をひとつしていただきたいと思います。
#10
○高鳥委員長 小林委員にお答え申し上げます。
 松野証言問題ということになりますと、当委員会において行われた証言ではございません。したがって、当委員会において直ちにこれを取り上げてその内容について判断をし、かつまた議院証言法に基づく手続をするというような立場にあるとは考えられません。ただ、いわゆる松野問題ということで幅広くお取り上げになるとするならば、その後における裁判の経過等を踏まえてのいろいろな御検討もあろうかと存じます。それらにつきましては、当委員会の権威にかけましてしかるべく、小林委員の御指摘のあったような立場で十分委員会の権威を高めながら処理してまいりたい、このように考えております。
#11
○小林(進)委員 民主政治の根幹とか議員の社会的道義的責任に関する問題、こういう問題は国会議員としても非常に重要に考えなければならぬし、国会としてもこれは大変重要に考えなくてはいけない。
 あなたに申し上げるまでもないけれども、航空機輸入に関しまして、同じロッキード問題ありダグラス問題ありグラマン問題ありあるいはボーイング問題あり、いろいろアメリカの飛行機会社からそういう疑惑に絡むような問題が幾つも国会議員に関係して、いまこれは浮き彫りにされて、国民は大変不愉快に思ったり大変疑惑を持ったり国会に不信を持ったりしているわけだ。その中で、一方はロッキード問題に関連して田中元総理は、五億の金をもらったとかもらわぬとかということで、国会でも責任を持ってそれぞれ政党の所属もおやめになるとかあるいは責任をおとりになる形で身を処せられて、いままた裁判に問題が移って、公判廷へも一週間に一回は忠実に足を運んで国民の審判を受けているという形だ。
 ところが、一方の松野君は、これも同じ航空機輸入に関する問題、いみじくも同じ五億と五億だが、こっちの五億の方はやれ職務権限があるとかないとかあるいは時効が成立したとかしないとか、そういうようなことで国会の航空機特別委員会、昭和五十四年の五月二十四日、証人喚問に出られて、宣誓して証言をされただけで能事終われりという形で幕を引こうとするなどということは、国民の側から見て一体了承できるかどうか、また国会の立場から見てこういうような幕引きをそのままに許していいかどうか、また国会議員個々の立場から考えても、国会議員は一人一人国民の信を受け、国民の負託を受けている者の立場から考えると、こういう不均衡なことが許されていいかどうか、私どもは、こういう立場から物を判断すべきである。
 しかも、その航空機輸入に関する特別委員会が廃止されたということになれば、こういう政治家の道義的社会的責任を追及する次の場所はどこか。国会のルール、国会の運営等を審議をする議運において、法務委員会が至当であろう、適当であろう、だから法務委員会でこれをやってくださいといって与野党の間で合意ができた、実に好ましいことじゃありませんか。その好ましいことを受けて、積極的に委員長がその問題の作業に入るというのが、委員長としても国会議員としてもまた国会のあり方としても最も妥当かつ適切なあり方だと私は思う。それをあなたは単なる手続上の問題や与党という小さい範囲内において物を手続にすりかえて、これを何か矮小、歪曲しようと考えておられるということはまことに残念にたえぬ。この点をひとつ堂々たる立場で御回答願いたいと思うのであります。
#12
○高鳥委員長 小林委員にお答え申し上げます。
 歪曲しようとか非常に小さな形に押さえ込もうとかという考え方は委員長は少しもいたしておりません。ただ端的に申し上げますと、議運での話し合いは、自由民主党は法務委員会でこれを取り上げることについてあえて反対しないということを言われたにとどまっておると委員長は承知をいたしております。新聞の報道がいかような形をとっておるかは、それは新聞の立場でお書きになったことでありまして、与野党でその問題について法務委員会で取り扱わせるという合意をされたというふうには承っておりません。したがいまして、もし私の承知しておりますことについて誤りがありますならば、なおこの後議運の委員長なり何なりにただしたいとは存じますが、私が承知しておりますのはそこまでであります。したがいまして、非常に正確に事態を把握してお答えしておるつもりでございまして、決して歪曲をしようなどという考えを持っておるものではありません。
#13
○小林(進)委員 これは、今次国会の中でも野党としては、また国民の側から見ても大変重要なる問題の一つなんです。航空機輸入に関する特別委員会を与党が廃止をしたということ、国会議員の疑惑に関する問題に幕を引こうとしているか否かということは、国鉄再建法や郵便料金の値上げ問題と相匹敵するくらい重要な問題なんです。それを委員長はそういう答弁で軽く逃げようとしておりますけれども、時間の制約もありますから私はきょうのところはこれでやめておきます。議運の委員長はもちろんでありますが、あなたの所属の自民党として次の法務委員会にはきちっと回答ができるように、またこういうような問題を繰り返すことのないようなきちっとした答弁をお示しくださることをお約束なさることをお願いいたしまして、次の質問に移りたいと思います。
#14
○高鳥委員長 小林委員にお答え申し上げます。
 委員長といたしましては、自民党員でありますので当然自民党の方と十分相談はいたしますが、委員会の運営に当たっては与野党の理事の皆さんと十分協議をしながら公正妥当な運営を図ってまいりたい、このように考えております。
#15
○小林(進)委員 これは言わずもがなのことですけれども、一応委員長に御報告いたしますが、これは先輩の議員として私は申し上げるのですからお聞き願いたいと思うのです。
 あなたは、先ほどは法務委員会に相談をしてということをおっしゃった、いま理事会に諮ってということをおっしゃった。それは理事会に諮ることは非常にいいことです。いいのですが、国会法や国会規則に理事会という制度はないのです。ただ運営の便宜上理事会というものを設けて、その委員会の運営を事務的にスムーズにやろうということで理事会という一つの慣習が生まれてきた。ところが、この理事会というものを与党は、政府党の方は籠絡したりこれを丸めたりすると運営上非常に便利ですよ。たとえて言えば、私のようなやかましい委員がいて一々発言すると運営がなかなかスムーズにいかない、大ぜいの人間を掌握するには与党の方がやりづらい、そこで少数の理事だけを重要視して何でも理事会で話を決めて、ときには頭をなで、ときにはおどかし、ときには緩急自在の方策を用いながら、委員会運営の妙手を用いようとする。これは正確に言いますと国会の堕落なんです、委員会の堕落なんです。妙味を発揮して長所を発揮する場合以外は、悪くするとこれが不当な妥協で終わる場合がある、不明朗で終わる場合がある。
 いまの松野問題等は今国会における重要な問題でありますから、理事会でお諮りをいただきますることまでは反対いたしませんけれども、最終的にはやはり委員会に明確に諮っていただいて、堂々国民の側にもその内容を明らかにするような締め上げ方、結論をお出しいただきますることをひとつ要望しておきますが、いかがでございましょう。
#16
○高鳥委員長 小林委員にお答え申し上げます。
 理事会に諮るということについては、国会における一つの確立された慣行と私は理解いたしております。なお、御指摘のような堕落があるとは委員長としては考えておりません。十分御相談をして遺憾なきを期したいと存じます。
#17
○小林(進)委員 堕落があるかないかはそれぞれの主観の問題ですから、あなたと議論をしてもこれは切りがありません。しかし与党、政府党が野党と物をまとめていくためには、この理事会制度を活用するということ、悪く言えば悪用するということは非常に安易な進め方になるのですよ。そこにもろ刃のやいばの危険性があるということを私はあなたに申し上げているのです。決して理事会が公明正大しかも長所だけ伸ばして運営されたという実証はやはりない。悪い面も出ているのですよ。もしそれを挙げろというなら、きょうは法務委員会ですから挙げませんが、改めてあなたと対談をしながら、来し方行く末を全部あなたにお知らせして、委員長に一つの資料を提供してもよろしいと思っていますよ。ですから、あなたはここで、そう物をきっぱりと言い切ったようなことを言わないで、かもしれません程度にしておいた方が委員長としては利口なんですよ。ちょっとお教えしておきます。
 そこで私は、法務委員といたしましては、長い私の国会生活でも正式な法務委員をやりましたのは今回が初めてであります。恐らく遅くても来年のいまごろまでは法務委員として、法務大臣以下皆さん方におつき合いをさせていただくことになると思う。その間に私は、いろいろな問題を御質問申し上げたりあるいはまた回答をいただいたりしなければならぬと思っている。法務委員会におけるこの先一年有余のそういう私としての任務を果たすためには、やはり私自身がひとつ心の土台をつくり上げておかなければならない。基本的な思想というものをつくり上げておいて、それから質問に移っていくという順序で私なりに行きたいと思う。
 そこで、私がいま法務委員をいたしまして一番気になっていることは、前回も前々回も私は御質問をいたしてまいりましたが、いわゆる法務省と検察庁との関係なんです。国民にとってはやはりこの問題は一番重大なんです。検察庁というものは準司法だ、行政によってそう簡単に動かされるものではない、そうあってほしいというのが偽らざる国民の祈りでもあり希望なんです。この検察庁あるいは検察の職務が政党政府、ときに政党から出た法務大臣等によって自由に動かされたり、ときに右せられたり左せられたりしたら、本当の三権分立、独立というものがその点からも侵されてくるのじゃないか、国民の権利が侵害されるのじゃないか、大変心配があるのであります。私は多年、やはり私自身心の中でもこの問題を憂えてまいりましてね。私は法務委員になったらまずまずこの問題を正しく質問しておきたいと、実は多年考えてまいりました。そこで今度もまた、きょうこの問題について質問を繰り返すわけです。法務大臣に向かって御質問申し上げるわけでございます。
 新しい問題といたしましてはやはりKDDですよ。いわゆる解散までにおける国会においてKDDをやった。税理士法改正に絡む問題あるいは金銭が国会議員にばらまかれたという問題も出てきた。そのときに、人の名前を申し上げてまことに悪いのですけれども、KDD事件に関しましてはもとの郵政大臣の服部安司君の名前が大分たくさん出てまいりました。それから、一つのハプニングといいますか、その問題ではなくて突然に浜田幸一前代議士のラスベガスにおける賭博問題等が出てまいりました。
 そのときに、服部安司君のいわゆる起訴問題とか告発問題とか、そういうことに関連をいたしまして浜田幸一君はこう言った。これは週刊誌等に報道されたことでありましょう。週刊誌に出たことでありますから本人が言ったかどうかわからない。服部安司は指揮権発動だよ、あれは告訴にも告発にもならない、ちゃんと指揮権発動が出ているから、KDD事件はこれで終わりなのだ、こういうようなことを彼自身がしゃべったと週刊誌に出ているが、まだそのときには、あに浜田幸一君だけじゃない、KDDは指揮権発動が出ているから、これはもうこれで幕引きなのだ、完全に終わるのだというのがこのシマ一帯の空気だったので・あります。この問題に対して法務大臣はいかにお考えになりますか。これは世間の人もみんな聞いているのであります。政治家あるいは政界、財界の癒着に基づくこういう問題は必ず指揮権の発動が行われてやみに葬られるのだというのがいまやもう世間の常識になりつつあるくらいなんです。大臣の明確な御見解を承っておきたいと思うのあります。
#18
○奥野国務大臣 検察が国民から信頼を受ける、これは政治に対する国民の信頼感の基本をなすものだと考えておりますだけに、私としては、検察が独自にその所信に従って職責を果たしていく、その体制を守るために最善を尽くさなければならない、こういうことを考えているわけでございます。検察庁法には、法務大臣が検察一般を指揮監督する、しかし具体の事件については、御指摘のように検事総長を通じてのみ行うということになっておるわけでございます。検事総長は信頼に足る方が常に選ばれてその任についておるわけでございますので、法務大臣が特別に干渉をするというような必要は全然生じてこないと思っておるわけでございます。
 御指摘になりました事件は警察当局が捜査に当たってまいったわけでございまして、当然警察当局が検察当局とも連絡をとっておったと思うわけでございますけれども、結局その捜査の過程で起訴できないという事態になった、こう理解しておるわけでございます。おっしゃいましたように、当時いろいろマスコミに取り上げられておったことで、結論は事件にはならなかったわけでございますので、事件にしたいというお考えの人にとっては期待外れであったかもしれませんけれども、警察なり検察当局なりが最善を尽くして大変な努力を積み重ねてくれてああいう結果になったものだ、こう私は理解しておるわけでございます。なお足りないところは事務当局から必要に応じてお答えをさしていただきたいと思います。
#19
○小林進委員 当時あなたは司法大臣でいらっしゃらなかったわけでございますから、そういう御答弁がはね返ってくると思います。
 実は私もあなたの御答弁のとおりありたいと思いまして、いろいろな問題を調べてみたのであります。私が調べた問題だけでも、古いところから順番に項目を申し上げますと、第一番目には日糖疑獄と指揮権発動、これは明治の桂内閣のとき。それから大正に入りましてシーメンス事件、これも検察の捜査と内閣の崩壊といってやはり政治が絡む。第三番目には陸軍をめぐる汚職事件。第四番目が帝人事件に関する政治の介入、これは後で帝人問題を、どうしても検察庁の物の考え方をお聞きしたいと思いますから御質問いたします。第五番目は天皇機関説問題、これは小原直さん、司法大臣としても実に謹厳実直な方でございますが、このときにも検察と政治の絡みつきがありますね。第六番目には血盟団事件、井上日召事件の取り扱いについても司法省と検察庁との一つの癒着がありますね。いよいよ戦後に入って昭和電工事件にも、法務大臣ですか、君臨すれども統治せずなどという言葉とうらはらの結果が出ていると私は読んでいる。それから、大橋武夫法務大臣と検事総長との二十五条解釈問題に対する論争については、先般も質問いたしましたからやめにいたします。次に造船疑獄、これだけは指揮権発動が行われたということは天下周知の事実であります。だが、この造船疑獄事件については、むしろ私は別な見解を持っている。これは古い問題じゃない、今日的な問題として、私はいま一度御質問しておきたい。私の法務委員としてのグラウンドをつくる意味において質問しておきたいのであります。
 第一番目に、私はずっとこういういろいろな事件を調べてみたのでありますが、その中で一番奇異にたえないのは帝人事件、これに対する法務大臣の見解と検察庁の見解、実は検事総長に来ていただければ一番いいのでありますが、法務委員会には検事総長を呼べないのだそうでありますから残念ですけれども、両方の見解を承っておきたい。
 昭和九年の一月中旬から、当時の時事新報が「番町会を暴く」という記事をずっと連載した。これは私ども在学中で興味を持って読んでおりましたから、いまでもその記事は生々しく知っております。台湾銀行の重役が銀行に保管中の帝人の株を安く売って銀行に損害を与えたというのが内容なんです。これを当時の右翼の大日本国粋民衆党委員長の蓮井継太郎という人が告発状を出して、そのときは東京検察庁とは言わない、東京地裁検事局が取り上げた事件であります。政財界の大物十五名を背任と偽証と贈収賄罪などでこれを取り上げたという壮大な疑獄のドラマ事件です。
 当時の法務大臣は小山松吉さん、当時の検事総長が林頼三郎さん、当時の東京検事局の検事正が岩村通世氏、捜査の主任検事が黒田越郎氏外三人の捜査官、こういうわけでございます。その黒田越郎さんという方は途中で亡くなられて、その後に枇杷田源介という検事さんが主任になられた。私は、この枇杷田さんからは刑事訴訟法も若干習ったことがありますからよく知っている。見るからに人を威圧するような大変りっぱな検事でございました。この人にかわった。当時の岩村検事正は、これはどうしても贈収賄を成立するに足る事犯だという確信を持ってこの指揮をとっておられたのでございますが、当時といたしましては、いまの検察庁、検事局も乗り気になりまして、世の中は大変腐っている、腐っておらぬのは大学教授とおれたち検事だけで、大蔵省も大変腐敗堕落している、官吏は頼りにならない、こういう風潮が検察庁の中にあって、第一審検事局を中心に張り切ってこの問題にぶつかっていった。
 そのために、この台湾銀行事件によって、当時の商工大臣の中島久萬吉氏と当時文部大臣の鳩山一郎氏は、これにみんな関係があるということで昭和九年の四月前にやめていられる。商工大臣も文部大臣も、検察陣の厳しい追及に耐えかねて疑惑ありという世間の風評もあってやめている。そして七月の三日には、ついに当時の齋藤實内閣は総辞職をしている。でありまするから、いわゆる検察陣の捜査によって内閣が崩壊した、総理大臣が内閣を投げ出したというのは、シーメンス事件に続いて二回目です。戦後に芦田内閣がありますが、二回内閣をつぶしているのです。
 こういう問題に関連をいたしまして、検察庁の第一審の捜査で内閣を崩壊せしめたというようなことは、今日的問題として一体これをどう解釈したらいいか、これは古くて新しい問題ですから、まずこれをひとつ法務大臣の見解を承っておきたいと思います。
#20
○奥野国務大臣 御指摘になりました事件は、帝国憲法時代の事件でございます。日本国憲法ができましてからは、国会は国権の最高機関ということにもなってきているわけでございまして、政治の仕組みといいましょうかあり方というものが根本的に全く違っているのではないかなと、こう思います。今日におきましては検察機関は、先ほどおっしゃいました準司法機関として独自にその行動がとれるように、政治の面においても最大限の配慮を払っていかなければならない、こう考えているわけでございますので、政治が検察に介入していくというようなことは起こらないのではないだろうか、また起こすべきではない、こう考えているわけでございます。
#21
○小林(進)委員 確かにそれは旧憲法時代、明治憲法時代と新憲法時代とは違うということで逃げられればそれはそのとおりかもしれませんけれども、確かに明治憲法は、国会議員は天皇の立法権に協賛をし、裁判官は天皇の裁判権に協賛をし天皇の名において裁判をし、あるいは検察庁いわゆる行政官は天皇の官吏として行政を行う、そういう憲法のたてまえではある。しかし、事実の上において旧憲法時代における検察の活動に一々天皇が指揮権を発動したわけでもないし、いまの検察とそう実質的に変わりはないと私は見ている。どうでございましょう、法務大臣。ただ、立法府は天皇の政治に協賛するか、あるいはいまも言うように天皇の官吏として行動するかという、その頭に天皇を冠しないかであって、検察行政それ自体には私はそれほどの差があるとは思えないし、またあったら大変だと思う。
 だから、私はその立場でお聞きするのだ。今日的立場で私はお聞きするのですが、その検察によって齋藤内閣が倒された。かわって総理大臣になったのが海軍大将の岡田啓介さん。そこで新しく任命された司法大臣、いまは法務大臣と言いますけれども、司法大臣が清廉潔白をもって鳴っておられた小原直さん。新潟県出身の司法大臣。小林進も新潟県でございますが、私と同じ長岡出身でありまして、わが郷土の誉れ高い司法大臣でございます。法務委員長も何か言いたそうな顔をしていますが、これは新潟県でも端っこの方でございます。(笑声)その清廉潔白でありまする小原直さんが、東京控訴院の院長でいられたのでありますが、岡田啓介さんによって司法大臣に任命された。私は歴史を物語っているのです。そのときに岡田首相は小原法相に向かって、帝人事件を何とか考慮してもらえないかということを言われた。そこで小原司法大臣は刑事局長の木村尚達さんに命じて帝人事件の記録を全部再検討させた。再検討させたが、結局それは起訴に値するということで、岡田総理大臣の要望を司法大臣がきっぱりと拒絶された。このことは後日小原法相が、そのとき岡田首相は大変不愉快な面持ちを示されたということを自叙伝の中に明らかにされておりますから、これは事実であります。こういうことを記録に残されておる。
 この問題を法務大臣は一体どうお考えになりますか。これはやはり一つの指揮権の発動じゃないのでしょうか。いかがでしょうか。首相が司法大臣を通じてこの問題を適当におさめてくれ、そういう要求を出されているという事件でありますから、これはやはり指揮権ではないのでしょうか。やみの指揮権発動ではないのでしょうか。いかがでしょう。どう解釈したらよろしいのでしょうか。
#22
○奥野国務大臣 戦前の内閣の仕組みといまの内閣の仕組みと全く違っているわけでございます。同時に、いまは検察庁法で、具体の事件につきましては法務大臣が検事総長を通じてのみ指揮することができる、こう限定されておるわけでございます。
 御指摘になりました事件については詳しく私存じておりません。いま伺った範囲でしか存じておりませんけれども、今日におきましては、いま申し上げましたように指揮権の発動というものは非常に限られておるわけでございますし、また、そういうことをした場合には検事総長はそれに従わなければならないと同時に法務大臣は責任をとるべきだ、私はこう思っておるわけでございまして、指揮権発動というものは簡単に行われるべきものではない。また、そういうことなしに検察につきましてはその所信に従って全力を傾ける体制をむしろ守っていかなければならない、干渉がましい姿勢を政治の面がとることは避けていくべきだ、こう考えておるものでございます。
#23
○小林(進)委員 法務大臣と私と一方的な受け答えじゃ真実を知ることはできないので、検察庁がいていただくと問題を解明していく上に非常に都合がいいのですが、どうも一方通行でおもしろくないですな。しかし質問を続けましょう。
 この事件は昭和十二年十二月十六日、三年間を経て当時の陸軍大将林銑十郎首相のときに、司法相は塩野季彦氏にかわっていたのですが、東京地裁の藤井五一郎さん、これは有名ですね。藤井五一郎裁判長は十六被告全員に無罪を言い渡した。その判決文をつくったのが戦後の最高裁判所の長官をやられた石田和外さん。この最高裁判所の長官をやられた石田和外さんが陪席判事をやっておられた。彼がこの判決文を書いた。帝人事件は全く架空の犯罪であり、検察当局がつくり上げた空中楼閣だ、こういうふうにきめつけているのです。私はこの記録を読みながら、これも今日的問題だと思って慄然としたわけだ。この事件は百年にわたる日本の検察史の中における最たる汚点であり、政財界の疑獄といえば証拠不十分だとか法律解釈で無罪になるのが大体いままでのしきたりなんです。そこに指揮権の発動が動いていって、そして大体職務権限なしだとか時効だとか灰色だとかそういう言葉で問題を無罪などにしているというのが普通のケースなんです。しかしこの帝人事件だけは空中楼閣だ、検事の創作だ、こういうような判決文が出ているということは、検察陣にとって前代未聞の不名誉のことであった。同時に当時の新聞は挙げて、検察ファッショだ、こういうふうな書き方をいたしまして、そして検察の威信というものは地に落ちたわけであります。
 これから私の質問なんでございますけれども、こういうふうにまできめつけられた判決を受けて、結審を受けて東京検事局、いまの地方検察庁です、これは自己の名誉と自己の存在のためにも上級審に控訴して争うというのが当然であります。控訴しようとしたのだ。ところがそれをやめさせられた。第一審の検察陣の総意をやめさせた、それを抑えたのは司法大臣の塩野季彦さん。いまの検察陣の中でも塩野閥などというのがあるのかないのか、私は門外漢でわかりませんけれども、後で専門家にお聞きしてみたいと思うのでありますが、かつて一時はわが日本の司法閥の中に、検察閥の中に塩野閥というのが実に大きな威力を持ったことがございます。その塩野さんがこの検察の第一審の決定を覆して控訴するのをやめると言われた。その理由は大乗的見地に立ってこれをやるのはやめなさい、こう言って検察当局を抑えて第一審で全部無罪にしてしまった。当時の第一審の検事正は岩村通世さん。岩村通世氏はそこで当然進退伺いを司法大臣に出した。出しましたら、塩野さんはその進退伺いをふところの中に入れて、そして第一審の検事正から直ちに司法事務次官に抜てきされたのです。
 こういうようなことを一体今日の司法行政の場所に当てはめてみて、われわれはどういうふうに考えればよろしいのでございましょう。これも指揮権の発動ではないのですか。あるいは進退伺いを出した検事正岩村さんが間違っているのでしょうか。間違っていないのか、この態度は。しかも間違っていない、正しく進退伺いを出して責任をとろうとしたら、それを抜てきして事務次官。今日の検察行政の中でも第一審の検事正が司法省の事務次官になったという例はない。驚くべき異数の抜てきだが、こういうことが一体今日でも行われる可能性があるのかないのか。この一つだけでも幾つも問題を含んでいるわけでございますが、これはひとつ刑事局長、あなた法務省の刑事局長としてじゃなくて、検察庁の検事としての立場でこの問題の所信を聞かしてほしいと思うのであります。
#24
○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘のいわゆる帝人事件でございますが、先ほど御質問の中にも。ございましたように、この事件はむしろ検察ファッショであるとかあるいは人権じゅうりんであるとかいうようなことが問題になった面もあるくらいな事件でございまして、そういう面からいたしますと、いわゆる汚職事件をやらないということではなくて、むしろやり過ぎたというような御批判があった事件ではないかと思うわけでございます。したがいまして、その捜査につきまして指揮、権発動というようなものがあってやるべきものもやらなかったということには、どうもつながらないのじゃないかというふうに思うわけでございます。
 また、後の方で仰せになりました、無罪判決がありました場合に控訴しなかったということでございます。そのことについて当時の塩野大臣がそういう判断をされたということはいろいろ出版物等にも書かれているところでございますけれども、私ども、何分古いことでございますので、その当時の事情は必ずしもつまびらかではございませんけれども、いろいろな出版物等も調べてみますと、いわゆる政治的判断で控訴をしないということではなくて、当時事務的に公判の経過等を調査し、この事件が控訴して有罪になる見込みがあるかどうかということを事務当局も含めて慎重に検討した結果、これはなかなか控訴しても有罪になる見込みは薄いであろうというようなこと、また先ほど申しましたように、この事件の処理につきましてはいろいろと御批判があったこと、そういうことを総合判断して、これ以上争うべきではないというようなことから控訴がなされなかったというふうにも言われているところでございますので、その面におきましても不当な政治への介入ということではなかったのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
 また、先ほど来名前を挙げられました大臣も、当時といたしましてはそれぞれ検察官のOBから大臣になった人でございますし、そういう関係もあるわけでございます。
 また最後に、当時の検事正が進退伺いを出したのを抑えてむしろ栄転させた、こういうのはおかしいのじゃないかというような御批判であったかと思いますけれども、そういう人事をされたこと、これは当時の大臣のお考えでございますので、そのお気持ちが那辺にあったかはよくわからないわけでございますが、事実上ちょっと違っているのじゃないかと思いますことは、岩村氏は捜査当時の検事正であったことは事実でございますが、私の記憶では、次官になります前はいまで申しますと最高検の次長検事の立場にあったのじゃないかというふうに思っておるわけでございますので、その点がまず事実と反するのではないかというふうに考えております。
#25
○小林(進)委員 私は二回、三回法務省が、行政庁が検察行政に不当に関与することの危険をしつこく質問してきたわけでありますが、この帝人事件に関する限りは立場が逆になりまして、いわゆる検察ファッショの危険もまた今日のこの段階にはあるのではないかということの立場で、いま帝人事件を質問したわけだ。
 いみじくも検察庁が張り切ってやって時の齋藤内閣も倒した。次の岡田内閣を通り越して林銑十郎、三代の内閣に及んでこれは世間を騒がせた。そして大蔵省の高級官僚から在野の法曹界を沸き立たせたような大問題であった。あくまでもそのときには岩村通世検事正を中心にして断じて自信があるのだ。この台湾銀行事件に関連して帝人の株を安く売って、そのためにみんな関係の政治家も幾らか賄賂を取っている。賄賂といいますか謝礼金を取っているじゃないか。その謝礼金の方向も明らかにして、断じて贈収賄を構成していると確信を持って言っている。確信を持って三年間も闘い抜いて、そのために国会の中でも検察ファッショ、その取り調べは非常に過酷冷酷だ、人権を無視したやり方だといって何回も論ぜられた問題だ。にもかかわらず検察陣は、確信を持って断じてそうじゃないのだ、あくまでも自信があると言っている。それが第一審の東京地方裁判所において、それは全く空中楼閣だ、検事の創作だというほど裁判官によってきめつけられたのだから、これは全くそういう検察陣の存立自体を疑わせるような大問題なんだ。
 その問題を、それほど確信があって、空中楼閣だ、創作だまで言われて、第二審に控訴もできないでかぶとを脱いだなどということは、これは一体どう解釈したらいいのですか。政治問題は介入しない。政治問題は介入しないというのならば、一体その三年間、人権じゅうりんだといって国会の中でも非難攻撃されたその検察陣のあり方が正しかったのかどうか、これも今日的問題として私は聞くのだ。いまの検察陣の捜査の中にそういうような人権をじゅうりんするようなことはもうないか、それを教訓としてどういまこの中で取り上げているのか、できれば私はそれまで聞きたいからこうして御質問申し上げているのであります。いかがでございますか。ここまで言われて黙って白紙に戻して、そしてその後の検察行政の中で一体この事実をどれほど教訓として受け取るところがあったのかないのか、今日これがどのように生かされているのか、そういうことを私はお聞きしたいのであります。
#26
○前田(宏)政府委員 ただいま仰せにもなりましたように、この事件は当時の東京地方裁判所検事局が大変力を入れて捜査に当たった事件であったと思います。したがいましてその当時といたしましては、それなりの証拠もあるという考えのもとに起訴をし、公判の維持にも当たっていたわけでございます。
 それで、無罪の判決がありまして、その判決の中で御指摘のようなことも言われておるわけでございますが、その際にも、先ほどお話がありましたように、控訴意見もあり、また控訴が適当でないという意見もあり、いろいろと両方の考えがありまして、その結果、先ほど申し上げたようなことで結論的には控訴しないということになったわけでございます。
 その間、先ほどもお触れになりましたように、取り調べが過酷ではないかというようなことが国会でさえも取り上げられたようなこともあったやに聞いておるわけでございます。したがいまして私どもといたしましては、こういう事件を、その後いろいろな研修なり何なりの機会に検討もし、現在また将来にわたる検察のあり方につきましての一つの反省材料ということで考えておるわけでございます。
#27
○小林(進)委員 まあ戦後もいろいろな事件が、あるいは再審請求をしたり、私はこの前も、これは言わずもがなでございますか知りませんが、大変世間から誤解されることも心配しながら平沢さんの問題も御質問申し上げましたが、そういうふうな検察庁の創作だとかあるいは空中楼閣の事件だと思わせるようなことが、戦後のいわゆる新憲法のもとでそういうような痕跡は全然ございませんかどうか。いまの検察行政の中にこういう問題がございませんか。帝人事件をもって最後にいたしておりますか。
#28
○前田(宏)政府委員 まあ帝人事件におきましてもいろいろなことが言われたわけでございますが、果たして言われたとおりであるかどうかということは、また問題があろうかと思います。
 それはさておきまして、その後、戦後と申しますか最近までにわたる検察庁の捜査の中におきまして、もちろん被疑者あるいは被告人の方の立場からいろいろな御批判等があることはございますけれども、私どもの立場といたしましては、そういう人権じゅうりん的なことは行っていないものと確信いたしております。
#29
○小林(進)委員 いま刑事局長から、戦後はそういう捜査は行っていないものと確信をするというお返事がございました。この言葉は、私はきょうのところはひとつちょうだいをいたしておきまして、後日またこの問題について関連をして少し質問を申し上げたいと思うのでございます。
 私は、戦前の問題としていま一つだけ司法当局の考えをお伺いしておきたいということは天皇機関説の問題です。私は美濃部さんの教え子でございますから、どうしてもこの問題は私はいまでも腑に落ちない、考えておきたいのでありまするけれども、これは昭和十年の二月十八日、当時の貴族院において美濃部達吉博士が天皇機関説をやり玉に上げた江藤源九郎代議士、菊池武夫貴族院議員などの暴論に対し、片言集句をとらえて反逆者とは一体何事か、わが学説への攻撃は黙視できぬと反撃をされた。これがどうも問題になって火を噴いて、軍部を中心とする大勢は、美濃部博士を刑事事件として江藤源九郎代議士を代表として東京の検事局に告発をした。美濃部達吉先生自身は自若として驚かれないのでありまするけれども、告発をした側はあくまでも身柄を拘束をして投獄をせよという強要をしてやまなかったわけです。時の政府に迫ってきたわけです。それで、困り抜いた時の司法大臣の小原直氏は、検察庁じゃないのですよ、小原司法大臣は使いの者をやって美濃部さんに、あなた、貴族院議員をおやめになったらどうですか、こうやって説得をしたわけだ。そして司法大臣の説得に応じで美濃部さんが貴族院議員をおやめになった。そこで美濃部達吉の憲法著書の中で、天皇機関説の部については出版法第二十七条の安寧秩序の妨害に当たり、詔勅批判の部分は同二十六条の尊厳冒涜に抵触をし、各有罪であるが、情状によって起訴猶予とする、こういう裁定を下したわけだ。
 これを今日的次元で見て、これは一体どういうふうに解釈したらよろしいのでございましょうか。法務大臣、これは全く政治問題でありまするから、政治的見解をひとつ承っておきたいのであります。
#30
○奥野国務大臣 戦前、昭和の初めから日本の政情が異常に大きく変わっていって、軍と官僚が一緒になりまして、その人たちなりの諸政刷新が強く叫ばれていったと思います。当時の国の政治の仕組みは、むしろ私は国会は無力だったんじゃないかなという感じがいたします。私の体験をもっていたしましても、当時ありました枢密院の力というものが非常に大きかったという印象をいまも深く持っております。
 戦後は、もちろん枢密院もなくなりましたし、先ほど申し上げましたように、憲法上国会は国権の最高機関、こううたわれておるわけでございます。したがいまして、戦前起こったことがやはり戦後心配しなければならないということは、すでに制度上排除されているんじゃないかなと思います。日本国憲法は、すべて国民は個人として尊重されなければならないということをうたっておりますし、また思想、信条、学問、表現、言論等につきましてもその自由を保障しているわけでございまして、その保障の程度も戦前の姿とは全く違っているんじゃないか、こう思っているわけでございます。戦前の過ちを繰り返さないために、戦後のもろもろの仕組みがその反省の上に打ち立てられているんじゃないかな、こう思っているわけでございます。
#31
○小林(進)委員 戦前のことですから戦後に行われることもないだろう、そういうお考えは結構だと思いますけれども、私の聞きたいのは、この問題は、やはり告発を扱うのは検察庁で、当時も検事でなければならぬにもかかわらず、その告発を法務大臣、当時の司法大臣が扱っているというこの形は、これは戦後の今日でもどうも行われる危険があるのではないか、それが、私があなたに質問したい第一点なんです。司法大臣が全部、これは美濃部さんを貴族院をやめさせて、それを条件にして起訴猶予にするという、その間の理屈はちゃんと法務省が考えたというこのコースが今日も行われるようじゃ困る、これが一つなんです。
 いま一つは、これはあなたに直接関係するのでありまするけれども、この美濃部さんの天皇機関説の出は外国なんだ。天皇機関説の学説の発祥は、日本の憲法と同じ外国なんですよ。この天皇機関説が、帝国大学の筧さんがいたり、かしわ手を打って憲法を論ずる学者もいたんだが、その中で三十年間天皇機関説というものは定着をした。それを一夜にして、これはいわゆる治安維持法に違反するとか皇室法に違反するとか尊厳を冒涜するとかいって犯罪を構成するというこの危険性、これは一体ないのかどうか。何も私は牽強付会であなたの憲法改正論に結びつけるわけじゃないのですよ。結びつけるわけじゃないが、やはり三十三、四年前に行われた日本の憲法も外国の押しつけだ、だから自主的憲法をつくらなければならぬというあなたの学説は、美濃部憲法三十年定着したものが一夜にしていわゆる犯罪を構成するということに何か相通ずる危険性がなきにしもあらずということを私は憂えるから言うのです。この問題を一体どうお考えになっているか、時間もありませんから、これで二点です。
 いま一点、これが一番重要なんですよ。これは刑事局長、私はデマを持ってきて言うんじゃないですからね。歴史に基づいて言うんだから、あなたにもひとつ確信を持って答弁してもらいたいんだが、この小原さんが美濃部さんを起訴猶予にしたことについて、当時の検事局、いまの検察庁の中でも非常に批判があったのです。その批判の第一人者は当時の検察庁の大御所と言われた平沼騏一郎、それからいま申し上げました塩野季彦、この派につながる検事なんであります。この検事は一様に激怒した。怒ったんですよ。こんな手ぬるいことではいかぬじゃないか、天皇機関説などといって国家の基本を危うくするような売国奴学者を、単に貴族院議員をやめさせたのみで起訴猶予にするなどということは、これは検察陣に対する不名誉なやり方だ、こういうようなことをやるから国家の前途を誤ると言って、この線につながる検事が激怒したという歴史上の事実がそっくり残っておる。これを憂えている者がいまでもその系統ですよ。この系統がこれは岸本検察庁次長のところまで来ますがね。この岸本の線から流れてずっといまの検察陣営の中にもこの流れがあるのではないかということを大変心配している人がいるのですよ。
 この三つの点について御答弁を願いたいと思う。
#32
○前田(宏)政府委員 ただいまのいわゆる天皇機関説事件でございますが、ただいまのお話の中にもございましたように、大変異常といいますか特殊な情勢下における事件ではなかったかというふうに思うわけでございます。したがいまして、その当時の事件の扱い方について、現在の立場から見ていろいろ当否の御批判、御論議はあろうかと思いますけれども、その当時といたしましては、当時の司法省あるいは検察庁も含めて全体として・それが一番いい結論であるということでそういう処理になったものであろうというふうに考えておるわけでございます。
 特に先ほど、検察庁が本来やるべきことを大臣みずからがやったのがおかしいではないかということがあったように思いますけれども、私どもの理解では、単なる刑事事件であるばかりでなく、いわば政治問題化した事件ということもあったように思うわけでございまして、そういう立場から当時の大臣もいろいろと御苦労をなされたんじゃないかというふうに思いますが、処理自体は当然のことながら検察庁でやっているわけでございます。
#33
○小林(進)委員 何かいまの刑事局長の答弁は半分聞こえなかったな。あなたは何言われたか知らないけれども聞こえなかったんだよ。当時のいわゆる美濃部憲法の天皇機関説というものも発祥は外国なんだ。いまの日本の憲法も、これはアメリカの駐留軍から押しつけられたんだということになれば、根は一つだから、また美濃部憲法も時代の移り変わりと同じように、三十年定着したこの学説の張本人が次の日は犯罪人として起訴されるというような形が、一体憲法を通じてもわが日本の将来にこういうことが起こるようなことがないかと私は言っている。これを私は申し上げている。
  これは法務大臣に政治問題としてお聞きしたいと言うのですよ。日本の憲法は、われわれの方から言わせれば憲法は三十数年なんだから定着してわれわれの血となり肉となっていると思っているんだ。ところが、あなたのような頑迷固陋と言っては悪いけれども、最も革新的な法務大臣がおいでになって、自主的な憲法をつくらなければいかぬ、これは外国から押しつけられたのだというような説が一夜にして国民の声となって、われわれみたいにいまの憲法を守れ、平和憲法を守れなんという者が美濃部さんのような立場に追い込まれる。われわれは吹けば飛ぶような小物ですからそんなことはないけれども、そういうような世の中の移り変わりを来すような危険が、この検察という小さな窓を通してそういうようなことが起こり得るということも考えられないかということを私は聞いておるわけです。そこに美濃部問題が過去の問題ではなくて今日的に息を吹いているのじゃないか、これをどうお考えになりますかということを私は聞いておるのです。
#34
○奥野国務大臣 戦前は内閣でも官僚内閣制、いまは議院内閣制、戦前は天皇側近が内閣の首班者を決定していったと思います。いまは国会が内閣総理大臣を指名するわけであります。全く違うと思います。同時にまた、戦前行われました出版、図書の検閲なども、出版法でありますとかいろいろな法律に基づいてそういうことが行われたわけでございますけれども、いまはできる限りそういうものは自由にするという基本原則を憲法にうたっておるわけでございますし、また国会がそういうような検閲を拡大するという式の立法をされるということは予想されないと思うわけでございます。したがいまして、戦前に美濃部さんの天皇機関説が批判を受けたということは、学問の自由でありますとか思想、信条の自由でありますとかいうことを保障しておりますいまの時代におきましては、これはまた予想されないことではないだろうかな、こう思っておるわけでございます。
 同時にまた、憲法改正論議も過去に戻そうということじゃなくて、自分たちで自由に論議して、同じものであってももう一遍つくり直してみようじゃないかという考え方が一つあると思うのでございます。同時に、論議を尽くしてよりよいものにしていきたい、悪いものにするのじゃなくて、よりよいものにしていきたいという考え方で論じ合っているわけでございますから、当然その中には戦前の反省の上に立った考え方でよりよいものにしていくという気持ちがあると私は考えておるわけでございます。
 同時にまた、憲法改正をしようといたしましても、日本の憲法には、改正する場合に国会議員の三分の二の議決がなければ国民に対しまして発議できないということになっておるわけでございますから、単なる過半数じゃなくて三分の二を超える国会議員が賛成しなければ発議できないわけでございます。同時にまた、国民がその気持ちにならなければこの発議にも賛成しないわけでございましょうから、国民の間にそういう合意が生まれてこなければできないことじゃないだろうかな、こう思っておるわけでございます。
 私は、国の運命を背負っていく国会だから、憲法につきましてもいろいろな角度から大いに論議を積み重ねる必要があるんじゃないかということを常に言っておるわけでございまして、改正をいま発議しようと思いましても三分の二なんてとてもございませんでしょうし、また国民の間にも憲法論議が高まっているとは思えないわけでございますから、やはり国の将来を担っておる国会としては、論議を重ねながら国民にも考えてもらいながら、よりよいものが生まれてくるならばよりよいものが生まれるように努力をしていくことが私たち政治家の責任ではないだろうかな、こう思っておるわけでございます。
#35
○小林進委員 私は先ほどの刑事局長の答弁が聞こえなかったのですけれども、いまも私の質問の筋はもとは一つなんです。
 どうも検察庁の中に派閥があるという一つの考え方があるのです。そういうことで先ほどもちょっと聞いたのです。せっかく小原直さんが一これはどちらかというと経済派などという名前で呼んでいる人がいる。この小原さんに対抗する検察庁の大御所が塩野さんだという見方もあります。塩野さんは思想を主点にして共産党、左翼等の追及を主体にしておやりになった。小原さんは政界、財界の癒着を中心にする経済事犯を中心にしておった。こういう二大派閥があるという見方だ。それが今日でもずっと尾を引いていて、検察行政が、検事総長以下の方々のキャップの派閥の動向によって特捜部あるいはその他の犯罪捜査の内容がいささか薄くなったり厚くなったりする開きがある、こういう見方がある。その具体的な例としていま私は申し上げたわけなんです。小原さんが美濃部さんを起訴猶予にしたことに対して、検察内部で塩野さんやあるいは平沼騏一郎さんにつながる派閥の検事が非常に色をなして憤慨した、そこに検察陣営内部における派閥の動きを見ることができた、こういう歴史的問題を私は聞いているわけなんです。これをどう考えるか。いまでもそういう傾向があるのかないのかということを聞いているわけなんです。ありませんか、それは。
#36
○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘のように、いろいろ過去に派閥的なものがあったというようなことが出版物等に書かれていることは事実だと思いますけれども、私ども理解しておりますところでは、検事もいろいろおるわけでございますから、物の考え方にはいろいろあろうかと思うわけでございます。また仕事の担当の面におきまして、いま仰せになりましたように経済事件を主に扱っている者とかあるいは当時の思想事件を主に扱っている者とかいろいろあったわけでございますから、そういう担当事件等との関係で物の考え方が異なる面もあるいはあったのじゃないかと思いますけれども、およそ事件を処理する面におきましては、よく申しておることでございますけれども、不偏不党、厳正公平の態度を従来から堅持し、現在も堅持し続けておる、かように考えておるわけでございまして、いわゆる派閥というようなものではないと思っておりますし、少なくとも現在はそういうようなものもないと考えております。
#37
○小林(進)委員 時間もありませんから、戦後の問題についてちょっとお伺いいたしますが、私が奇異にたえない問題は、われわれの先輩に河野一郎さんという実力のある政治家がいらっしゃった。この方が競争馬の輸入事件で、これは当時の新聞の切り抜きでも持ってくればいいのですが、きょうは持ってきませんでしたけれども、輸入事件で若干の疑惑があるということで、この事件に関連して、河井信太郎検事が関税法違反で輸入商社の東京支店長を詐欺の容疑で逮捕をして事件の解明に本腰を入れようとされたときに、当時の法務次官が岸本さんなんですが、この岸本法務次官が、担当検事の河井信太郎検事にも相談することがなく、その上級職の検事総長の佐藤藤佐にも報告することなしに単独でその検事をかえってしまって、そしてこの被疑者を釈放してしまって事件をつぶしたという事実が歴史の上に残っているのです。これは刑事局長どうですか、この事実を御存じでございますか。
#38
○前田(宏)政府委員 ただいま仰せになりましたようなことが出版物等に出ておったような記憶はございますけれども、詳細は存じておりません。
 それはそれといたしまして、いま仰せのように、次官が一線の検事の担当を直接かえるというようなことは通常考えられないことでございますので、そういうことはなかったのじゃないかというふうに思っております。
#39
○小林(進)委員 私もそう思うのですよ。こんなことが行われたら、これは指揮権の発動なんというものではありません。これは全く司法大臣、司法事務次官の言いなり次第に検察庁が動かされているという何よりの証拠ですから、これでは世の中真っ暗ですよ。あなたも何かの風の便りで聞いた覚えもあるとおっしゃるのですけれども、これは法務省は事実を正確に調べて、いま一度この事実の有無をひとつ文書で御提出を願いたいと思う。これは、いまでも私が一番おそれている法務省と検察庁との関係の混濁といいますか乱れを示す何よりの証拠ですから、こんなことが毛ほどもあったといえば大変な問題でございますので、ぜひ文書でお願いをいたしたいと思います。
 文書の問題といえば、委員長、私は前々回のときにも法務省に文書で提出をお願いしている問題が一つあるのです。あなたはお忘れにならぬでしょう。大橋法務大臣のときに当時の最高検の次長を法務大臣が転任させる、法務大臣にその権限がないといって、検事総長佐藤藤佐氏以下が抵抗したという、この問題について正確なる見解を承っておきたい、これは口頭じゃだめだ、将来にまたがる問題だから文書で回答を願いたいということを要求しているのでありますけれども、まだ文書が出てまいりませんので、これは委員長、委員長の権限において文書で回答を出していただくようにお願いをしておきたいと思うのであります。
 これは二つ、ひとつお願いをしておきます。
#40
○高鳥委員長 小林委員に申し上げますが、後段の件につきましては、その後の委員会において刑事局長から答弁がございましたので、それをもって小林委員が了承されたものと理解をいたしておりまして、いま重ねての御要請でございますので、法務省側にまたその旨はよく申し上げたいと存じます。なお、前段の御要請については法務省側で十分検討してもらうことにいたします。
#41
○小林(進)委員 委員長の善処を要望いたしておきたいと思います。確かに前回には口頭で刑事局長、法務大臣から御答弁のあったことは私は耳にとどめておきましたけれども、その内容についてはまだまだ了承いたしておりません。どうしてもそれは文書で正確にお出しをいただいて、後世歴史にとどめておく重要問題でございますので、特にお願いをいたしておきたいと思うのであります。
 時間も参りましたので、私は、これももう世間に周知徹底せられた問題でありまするけれども、やはりとどめておきたいというのが造船疑獄と指揮権発動の問題。これは昭和二十九年の一月七日に開始された。当時の検察庁の最高検は佐藤藤佐検事総長、岸本義広次長、東京高検検事長が花井忠、東京地検が馬場義続検事正と田中万一次席、山本清二郎特捜部長、河井信太郎主任検事、このもとに行われた問題でございまして、当時の内閣総理大臣は吉田茂、法務大臣が犬養健、それから清原邦一が次官、井本台吉が刑事局長、こういうときにでき上がりました造船疑獄の問題でございます。
 造船疑獄の骨格だけを申し上げますと、日本海運を復興するために二十四年十二月から開始された外航用大型船建造の第五次計画造船から政府は低利で融資を始めた。三年間据え置き、十三年間の年賦償還、金利七分五厘という破格の条件であった。そしてもうけるだけ船会社はもうけた。しかし、朝鮮戦争も終わって不況の波が日本を覆った。そこで船会社の経営者が考えたことは、年七分五厘の利子を半分以下の三分五厘にし、さらに市中銀行への利子一割一分も五分引いて六分にしてもらい、引いた分は船会社にかわって国が税金で支払ってくれるという、これは非常に虫のよい話だ。この話を船会社が自由党の幹事長佐藤榮作氏のところへ依頼に行ったら、よろしい、その法律は自由党でまとめてやる、そのかわり自由党は前の選挙で二千万円の借金が残っているから、その二千万円の金を持ってこい、こういうふうに要求された。船主協会はこれを受けて二千万円の現金をトラックで自由党へ運んだ、持っていった。利子補給法によって船会社が支払わずに済む利子の総額は年平均三十三億円に上るのであります。二千万円は全く安いものである。以上が造船疑獄の概略であります。そして山本清二郎特捜部長、河井信太郎主任、この二人がねらいをつけた中心人物が、当時の自由党の幹事長佐藤榮作氏と政調会長池田勇人氏の二人であった。後にこれはいずれも宰相の地位につかれた。
  二十九年四月十九日、佐藤、池田の逮捕問題を
 めぐって検察庁の首脳会議が開かれた。検事正の馬場義続氏や河井信太郎検事は、まず佐藤榮作を逮捕すべきである、その後に池田勇人を逮捕する、汚職の証拠は完全にそろっていると強硬に主張した。ところが法務省側からは、佐藤への二千万円は党の経理に入っている、政治献金であって賄賂ではないという法律解釈が寄せられていた。だから、これは検察庁と法務省と意見が対立した。法務大臣の犬養健氏は自由党側から、法務大臣のくせに検察陣もコントロールができぬのか、吉田内閣の閣僚でありながら政権崩壊を黙って見ているのかという憎しみに似た非難が自由党の政治家側からもだんだん出てきた。こういう状態の中にあって河井検事は、佐藤さんを三回、池田勇人氏を四回、これは場所を秘匿して調べた。そうして四月二十日に最後の検察首脳会議が開かれて、捜査技術上まず佐藤榮作に逮捕状の請求を行うということを決定したわけだ。
 ところが四月二十一日、検察の疑獄捜査を一挙に押しつぶすための犬養法相のいわゆる有名な指揮権発動が行われたわけだ。この日の早朝吉田首相は、芝白金の公邸に緒方竹虎当時の副首相、当の佐藤幹事長、松野鶴平等を呼んで協議した結果、最終的に指揮権発動を犬養にやらせることを決定した。そこで犬養さんは、大臣室に佐藤検事総長を呼んで、検察庁法第十四条に基づき指揮権を発動し、佐藤榮作逮捕にストップをかけた、こういうことであります。
 ここで私が質問を申し上げたいことは、政治というものは完全に検察より優位に立っているということが、これによって国民に明らかにされたわけだ。だから、政治を握る権力者は法律の上では巨悪であっても、どんな悪いことをやっても常に安全地帯にいることができるということが、この事件を通じて初めて国民に明らかにせられた。これが第一点目の疑点であります。こういうふうに国民は解釈しているが、一体司法大臣はどうお考えになるか。政治家は検察よりも優位に立っている、政治家というものはどんな悪いことをしても、いわゆる権力を握った者の力によって法律上の悪を排除してもらえるということを国民がこの問題で信ずるようになった。これを一体どうお考えになっておるか。このことが一つであります。これをひとつお聞きしておきたいのでございますが、いかがでございましょう。
#42
○前田(宏)政府委員 いわゆる造船疑獄事件につきまして、ただいま御指摘になったようなことがいろいろと言われておるわけでございますけれども、その経緯につきましては必ずしも明らかでない点がいまだに残っているようでございます。したがいまして、いまおっしゃったようなことがあるかどうか直ちに申しかねるわけでございます。
 また、最終的に政治が検察より優位に立っているではないかということで、そういう国民の理解というか批判があるというお言葉でございましたが、やはり検察庁法は、これまでも大臣からも申しておりますように十四条の規定で、責任政治の問題と検察のいわば独立の問題とを調和させるという観点からあのような規定になっておるわけでございまして、どちらが優位であるということではなくて、その事案事案に応じてあの規定の精神に沿った適正な運用がなされるべきであろう、かように考えておるわけでございます。
#43
○小林(進)委員 法務大臣、それでよろしゅうございますか。決して政治が検察行政といいますか捜査の上に優位に立つものではないとあなたはおっしゃるわけだ。確信がございますか。刑事局長間違いありませんか。あなたたちはどんな政治権力のそういう圧力をも排除して正々堂々とやる、決して政治の下風に立つものではないと、あなたは確信を持ってそれをおっしゃいますか。これは大事なことですよ。
#44
○前田(宏)政府委員 最初に申しておりますように、検察といたしましてはいわゆる不偏不党、厳正公平の立場を堅持しながら事に当たっているわけでございます。
 ただ、いま申しましたように政治といいますか内閣のもとにある検察でございますので、検察がいわば独善的な行動をしてはならぬこともまた一面あるわけでございます。そうなりますとまあ検察ファッショと言われるようなことも起こりかねないわけでございますので、その点はまた検察としても自粛自戒しなければならぬ点であろうというふうに考えておるわけでございます。そういうことは今後全くあり得ないと思いますけれども、やはりそういうものをいかに調和させるかという精神からできているのが検察庁法の規定であって、検察といたしましては不当なと申しますか理由のない政治的な配慮というものは当然排するわけでございますが、それなりの内閣の間接的ながら監督というものには服すべきもの、かように考えております。
#45
○小林(進)委員 もろ刃のやいばといいますか、確かにあなたのおっしゃるように両面の力を持っておりますからね。だから一面は私が言うように、いわゆる帝人事件に見られるような、ともすると時の内閣をぶっつぶして独走して、そしてどうもそれを検事の創作だなどという判決を受けるような、そういう危険があるから、その点はやはり時の法務大臣によってある程度指揮権発動という形でチェックをしてもらうという、その歯どめも必要だ。これは私は認めるにやぶさかでない。だから先ほどから質問をしている。こっちの問題はどうか、今日時点でどうかということを私が質問申し上げてきたのは、それなんです。
 けれども、いま国民の側から一番心配していることはその右の面じゃない。あるいはシーメンス事件で山本権兵衛内閣を倒した検察庁あるいは帝人事件で齋藤内閣を倒した検察庁のいわゆる独裁的なファッショ的なその進め方に対して、国民が恐れている面も実はあるのですよ。あるのだが、いま恐れているのは、造船疑獄に見られるような政治的介入で、いわゆる時の政府の政治的介入で検察陣が政治の意向によって決して社会正義を堂々とやらない、そういう卑屈な姿勢があるのではないかというこの点を国民はいま一番恐れている。だから私は、こちらの方へむしろ力を置いて、いま一生懸命になってあなたに質問している。それがKDDだ。税理士法だ。あるいは前の郵政大臣の問題ですよ。どうも最近は、指揮権が最も巧妙に発動せられて、いわゆるやみの指揮権発動がことごとにすべての政治家の絡んだ事件に行われているのではないかということを国民は心配しておりますが、この点はどうなんですかということをあなたに質問している。
 そこで、次の第二問として私は御質問申し上げますが、検察の意向に反してあるいは法務大臣の意向に反して検察陣が独自の捜査を開始しようとして、そこで法務省と検察側とぶつかった唯一の問題が、このいわゆる造船疑獄の指揮権発動なんだ――これはいまこう見ているということを私はあなたに申し上げたい。これが唯一ではない。唯一ではないのであって、実は指揮権発動は常時行われているのだ。戦後は常時行われている。行われているが、あるいは時の政府、時の総理大臣あるいは時の法務大臣、その下における検察庁というものは実にあうんの呼吸で、検事が、どうだ、そろそろひとつお手やわらかにと言えば、あとは言わず語らずで、はい承知しましたと言って、ちゃんと問題をおさめていく、そういう形がちゃんといまでき上がってしまっている。国民が望んでいる検察の独立などというものはもはや影をひそめた。最近特にそれがひどくなっておる。特にひどくなったと言えば、いま刑事局長は首をお下げになりましたけれども、なぜ一体ひどくなったかというと、いま検察陣営における最高首脳部というものは、検事総長あるいは検察庁の次長あるいは東京高検検事長、こういう方々は――ともすると、本当に独立でもって社会の悪と取り組むような第一線の苦労人が、だんだんこういう上級職へ上がっていくという風潮がここ数年なくなってしまった。いわゆる行政官が法務省の中にいて、刑事局長、どうもあなたに皮肉を言うようで悪いが、あなたは別格にしまして、法務省にいて、何々課長だ、何々局長だ、こうやってその行政を担当し、国会等と特に交わりの深い行政官がいわゆる検察陣営の勢力をおさめてしまって、そういう法務省内部における行政官のエリートが東京高検の検事長になっておる、あるいは事務次官になっておる、あるいは検察庁の次長になった、検事総長になったといって、ちゃんといわゆる最高首脳部に行って、本当に第一線に身を賭して社会正義のために闘っているというそういう方々が、最近の検察陣営の中では余りどうも日の当たる場所へ行かないのではないかという、こういう一つの見方がいま出ているのです。
 これは私は専門家ではありませんし、門外漢だ。最初から断っているように、法務委員なんというものは国会議員になって初めてやらしてもらっている。全く素人ですから、小僧が習わぬお経を読んでいるものでございますから、ピントが外れていたらお笑いいただけば結構なんでございまけれども、しかし、それだけ私は世間の人の声はちゃんと素直に聞いてきて、そしてここで発言しておる。ここ数年は、どうも特捜部といえどもあるいは第一線における検事といえども、本当に身を犠牲にして闘っている者はやはり日の目を見ないで、行政官で時の国会なんか出入りして政治家とのつき合いを深めている、そういう法務省内部における行政官がずっと現在のいわゆる検察行政を支配をする、指導する形が出てくる。そうすると、検察庁の中でもまじめになって命がけになって社会正義のために闘うよりは、時の政府のちりを払った方がいいだろう、法務大臣の鼻毛を引っ張った方がいいだろう、お世辞を言っておいた方がいいだろうという風潮がおのずから生まれてくる。そうなると国民の検察に対する信頼も損なわれるのではないか、こういう意見があるから私は申し上げている。
 いま、この造船疑獄に関する指揮権発動というのは、むしろ法務省と検察陣が相ぶつかった特異な事件であるだけにこれが表面に出たのであって、本当は表面に出ないところでやみの指揮権発動は常時行われているという、この見解に対して、いま一度ひとつ正確な御答弁をいただきたいと思うのであります。
#46
○前田(宏)政府委員 小林委員から検察に対します期待と申しますか御信頼をいただいておりまして、大変ありがたく考えておるわけでございます。
 先ほど来、最近の事件でやみの指揮権と申しますかそういうものが行われているじゃないかということの御指摘を受けておるわけでございますが、確かに国民の皆様方から見ますと、いろいろと疑惑があります場合に、これを全部解明してくれ、それを全部、極端に言えば裁判にかけてくれというようなお気持ちがあるのではないかと思いますけれども、それはやはり限界がございまして、刑事事件としての処理でございます場合には、証拠がありまして、それがまた起訴に値するという場合に初めて起訴されるわけでございますから、証拠がないものを起訴するというようなことでは、またそれこそ検察ファッショと言われかねないわけでございます。そのような意味で、最近のいろいろと御指摘になりました起訴されなかった事件は、警察あるいは検察当局が最大の努力を尽くしまして証拠も検討した結果、結局起訴に至らなかったということでございまして、それがいわゆるやみの指揮権の影響であるとかということは決してないというふうに考えておる次第でございます。
 それから第二点といたしまして、検察の首脳部に行政官の経験のある者が多いではないかというような御指摘を受けたわけでございます。その中で私個人にも触れられたわけでございますが、率直に申しまして私も、こういう職について、こういうことをするつもりで検事になったというつもりはございませんでしたが、人事の都合でこういうことになっているわけでございまして、それぞれ人事上は、人事管理者側から見た適材適所と申しますか人の使い方と申しますか、そういうことによって配置されているもの、かように考えるわけでございまして、決して、そういうことから検察の姿勢といいますか事件に対する取り組み方というものが変わるということはないものと確信しております。
#47
○小林(進)委員 犬養法務大臣による指揮権発動については、今日もまだこの問題が生々しく尾を引いているわけでございますが、私どもも検察陣やそういう関係者に仲間もいるわけでございますが、そういう人たちの気軽な言葉等を通じて聞くところによりますと、この指揮権発動が出て、事実上当時の検察陣が、捜査陣営が壊滅に瀕するくらい精神的にも痛手を受けたわけでありまするが、そのときに、検察陣の中で派閥があるということは私も本当に言いたくないのだが、他の系統に属する検事の間から、それは先ほどのあなたの御答弁の中に、検事の中でも意見はいろいろあるのだから反対意見があるのも当然だとおっしゃった、それはそのとおりでしょうけれども、その反対の意見を持っている検事の中から、それ見たか、時の自由党、権力政党の幹事長だとか政調会長を引っ張るなんということをすれば成功するわけがないんだ、抑えられることは初めからわかっていたじゃないか、何ておまえたちは見通しがきかないんだと言って、当時の馬場検事正あるいは河井信太郎主任検事等に対するそういう非難の声が検察陣の中にも巻き起こったということが公然化されている。この事実は一体どうお考えになるか、これが第一点であります。
 それから第二点は、検察力というものは、検察の権力の行使というものはやはり限度がある。権力政党の幹事長だとかそういうものの身柄を拘束するなどということは検察権力の行き過ぎだ。そんなことをやれば日本の政治を担当している保守政権の基盤を揺るがすことになる。そして日本の左翼勢力、社会党もきっとその中に入れるのでしょうけれども、左翼勢力を喜ばせるような捜査の結果になる。検察庁というものは、他の一般行政と別に独立の体制にあるとは言いながら、やはり時の政府、政権政党のもとに使われているんだから、その政権の基盤を揺るがすようなことまでやることは検察権力の行き過ぎだから、そこまでやったのは間違いだ、こういう声が検察の内部にも起こったということを私は聞いている。これは言うと言わざるとにかかわらず検察行政の中に流れている基本的な物の考え方ではないかと私は疑わざるを得ないけれども、これは一体どうですか。正対不正じゃないけれども、その正対不正の捜査の活躍も限度があって、時の政府の基盤を揺るがすようなところまでは検察活動を行うべきではないという考えが私はあるのではないかと思う。
 それから第三番目の純粋なる法律論としても、佐藤幹事長がもらった二千万円の金は自由党の金庫の中に入っておるのだから、これは法律的にも純粋の政治献金ではないか。この政治献金たる性格を持っているものをも一つの贈収賄の嫌疑で取り上げるということは、いわば山に入る者山を見ずといいますか、国家というものを考えない検察行政の行き過ぎたやり方である、政治家のこれくらいの金をもらったものは政治献金として認めるのが国家を愛する者の検事としての正しい考え方である、こういう法理論をなす者もあったというのです。
 以上三点について、法務大臣、あなたは法律の大家をもって任じられているのだから、専門的に意見を述べてくださいよ。
    〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕
#48
○前田(宏)政府委員 適切なお答えができるかどうかわかりませんけれども、まず第一点の造船疑獄事件の後でいろいろな批判が検察内部であったということでございますが、そのようなことがいわば裏話的なとらえ方で出版物等に出ておるわけでございますけれども、ややもするとそれは誤解を与えるような効果を持つものではないかというふうにむしろ危惧しているわけでございまして、先ほど申しましたようにいろいろな考え方はあると思いますけれども、その考え方によって事件の結論を左右するというようなことはないというふうに確信しておるわけでございます。
 二番目、三番目を通じての問題でございますが、検察といたしましては、犯罪の嫌疑があると認められる場合にこれに対して厳正公平な態度で臨むというのが基本でございまして、その点については全く変わりはないわけでございます。もちろんその場合に、事件の背景でございますとかその捜査処理が与える影響でございますとか、そういうものにつきましても当然考えるわけでございますけれども、それは検察の独自の判断として考えるべきことでございまして、他からの影響によって考えるべきことではない、かように考えております。
#49
○小林(進)委員 法務大臣、いまの答弁でよろしゅうございますか、どうですか。御見解はございませんか。
 私は刑事局長の御答弁ではどうもまだ一つ満足できないですね。時の政府の意向等を考えないで、ただ嫌疑があれば、捜査の必要があれば断固として捜査をやるとおっしゃるのですか。刑事局長どうですか。時の権力政党の根幹を揺るがすようなところまで捜査が行ったのは捜査の行き過ぎだ、こういう声があるんですよ、検察内部の中でも。検察の捜査の限度がある、限度は、時の政府の根幹まで、保守党の根幹までも傷つけるようなところまで行ってはいけないのだ、こういう一つの見方があるというのです。その見方を一体あなた方はどう考えていらっしゃるかというのです。
#50
○前田(宏)政府委員 そういう見方があるかどうかということも問題であろうかと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、犯罪の嫌疑があるものにつきましては基本的に厳正公平な態度で臨むべきもの、かように考えております。
#51
○小林(進)委員 まだ私の用意した質問は終わっておらないのでございますが、時間が参りましたのでこれはまた次の委員会でやらせていただくことにしまして、本日は残念ながらこれで終わることにいたします。ありがとうございました。
#52
○熊川委員長代理 稲葉誠一君。
    〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
#53
○稲葉委員 この前大臣が、参議院の法務委員会ですか十月三十日に何かいろいろ靖国神社の問題について質問があったのに対してお答えになっておられますね。そこで、それに関連してちょっと質問をしたいと思いますので、どうぞ腹蔵のないお答えを願いたい、こう思うのです。
 一つは、靖国神社の国家護持はどうしていけないのでしょうか。
#54
○奥野国務大臣 靖国神社国家護持がいいとか悪いとかいう議論は参議院でいたしてはいないわけでございます。
#55
○稲葉委員 靖国神社の国家護持はいいとか悪いとか聞いているのではなくて、どうして悪いのですかと聞いているのは、そうすると、あなたの口からは憲法二十条に違反するからいけないのだという答えは出てこないのですか。
#56
○奥野国務大臣 憲法二十条の関係から靖国神社に参拝をすることが疑義があるというようなことからして、国家護持であるとかあるいは公式参拝であるとか、そういうことを自由にするような立法をしたいという考え方がこれまで論議されてきておるわけでございます。
 この間私が参議院で質問を受けまして、憲法二十条等との関連から靖国神社に参拝する場合にも個人の資格でと言わざるを得なくなってきている、やはりその辺はすっきりした姿にしてもらいたいということを申し上げ、同時に、憲法二十条についても若干いろいろ問題があるということを指摘させていただいたわけであります。
#57
○稲葉委員 それは参議院でのお答えですね。
 それに関連しますけれども、私のお聞きしているのは靖国神社の国家護持――国家護持というのはどういうことを指すかということは、公式参拝もあるし国家が費用を分担することもあると思うのですが、それが憲法二十条に現在では違反をするというふうにあなた自身はお考えなのか、あるいはそうではないのか、どうもそこら辺のところのお答えがはっきりしないようですね。
#58
○奥野国務大臣 私が承知しております靖国神社国家護持の考え方は、宗教の組織に公金を使ってはならない等の憲法上の規定があるものでございますから、靖国神社の宗教性を排除して、そして国で護持していくようにしたいというような考え方が生まれてきていると承知しております。
#59
○稲葉委員 そうすると、靖国神社の宗教性を排除するということは、憲法二十条との関連ないしあるいは関連がなくてできるかもわかりませんけれども、それは具体的にどういうふうにするということなんですか。
#60
○奥野国務大臣 戦前は国家神道等は宗教団体とはされていなかったことは御承知だと思います。戦後は届け出さえすれば宗教法人になる、また靖国神社も届け出られて現在は宗教法人となっておられるわけでございます。
 一般の宗教団体と靖国神社とは違うのではないだろうかという疑念があるわけでございますし、また、そういうことから国家のために犠牲になられた方々、そういう人たちについてその霊を慰めていきたい、国民みんなで霊を慰める措置をとっていきたい。そうすると、憲法五十何条でしたか公金を使ってはならないということとも絡んでくるものでございますから、特別な立法をしてその道が合法的に合憲的になされるようにしたいという考え方だ、こう思っておるわけであります。
#61
○稲葉委員 後の方は憲法八十九条ですね。
 だからあなたのお考えをお聞きしているのですよ。あなたとしては、公金支出をすれば国家護持になる、公式参拝をすれば国家護持になる、それは宗教法人だから、こういうことでしょう。そうすると、宗教法人でなくするためにはどういうふうにしたらいいのでしょうか。
#62
○奥野国務大臣 私はそれよりも、憲法二十条で宗教的活動をしてはならないと書いてあるわけでございまして、その宗教的活動をしてはならないという言葉が靖国神社に参拝することを禁止しているとはどうしても私には受け取れない、そういう疑念をずっと持っているわけでございます。したがって、私が靖国神社に参拝しますときにことさら私人の資格で参拝しましたと言わざるを得ないようなぎこちない姿、これを何か解決してもらえぬものだろうかなという気持ちでお答えをしたわけであります。
 「宗教的活動」と憲法はうたっているわけでございまして、学者によっては、それは宗教の宣伝をしてはいけないのだ、特定の教義を広げるそういう活動をしてはならないのだ、こう読んでおられる方もございますし、私自身も、靖国神社に参拝することがその宗教的活動に触れるものだろうかという疑念をずっと持っておるわけでございます。そういう意味合いにおいて、その憲法の規定についても疑問があるが、ひとつすっきりしてもらえぬものだろうかな。
 また憲法二十条の規定は、御承知のようにマッカーサー草案そのままになっているわけであります。また制憲議会におきましても、参拝がそれに触れるとか触れないとかいう論議もなされていないわけでございます。
 また、津におきます地鎮祭の際の神道儀式を用いたおはらい、それが合憲であるか違憲であるかということが争われまして、地裁では合憲になり、高裁では違憲になり、最高裁で合憲になるという過程を経ているわけでございまして、私は、宗教的活動がどの範囲までであるかということについてはいろいろな問題があるのではないかな、靖国神社に参拝することがそれに触れるのだとはどうも考えられないなということを常日ごろ言うておるわけでございまして、その規定に疑問を持っております。もしその解釈が国会で合意が生まれてくればこういう問題もかなり解決が早いんじゃないかな、こんな気持ちも私はあったりするものでございますから、早くすっきりしたものにしてもらいたいなという希望をそのときは申し上げたわけであります。
#63
○稲葉委員 いまのあなたの言われる参拝という意味は公式参拝という意味ですね。念を押しますけれども、ちょっとお答え願いたいと思います。
#64
○奥野国務大臣 国及びその機関が宗教的活動をしてはならない、こうなっておりまして、法務大臣も国の機関でございます。また、地方公共団体あるいは私の所管でありますと刑務所あるいは病院あるいは学校等もその機関に入るわけでございまして、その機関として参拝することが宗教活動をしてはならないということにみんな触れる、こういうことになってまいりますとかなり疑問があるなと、こんな感じを持つわけでございます。
#65
○稲葉委員 そうすると、憲法二十条はどういう経過からできたというふうにお考えになるのでしょうか。
 津の地鎮祭の訴訟がありましたね。あれは習俗的な行事だということになったのでしょうが、あの中で特に藤林さんが――あの人はクリスチャンですね。あの人が、少数意見ですけれども、アメリカの憲法との関係においてこの問題について相当触れておられるわけですね。率直に言うとこの二十条は非常に厳格な規定だ、そういうことを藤林さんが触れておられますね。
 そうすると、この憲法二十条がどういう目的でできたか、こういうことについては大臣としてはどういう御認識なのでしょうか。
#66
○奥野国務大臣 信教の自由をうたった規定でございますし、いま私が指摘しましたのは第二十条の三項でございます。国及びその機関は宗教教育その他宗教的活動をしてはならないという規定を置くことによって信教の自由を担保する。政府が特定の宗教に対して援助する、力になっていくというようなことは一般的な信教の自由に対しまして障害になる。そういう意味合いで信教の自由を担保するためにことさら三項が設けられている、こう私は理解しているわけでございます。
#67
○稲葉委員 いや、三項ではなくて二十条全体の話をしているわけです。全体が相当厳格な規定だということが言われておる。なぜ二十条ができたのだろうか、こういうことを聞いておるわけです。これは靖国神社というものを意図してできた規定なのでしょうか。とすれば、どういうことを意図してできたのでしょうか。
#68
○奥野国務大臣 どういう意味のお尋ねか知りませんが、占領直後、占領軍から国家神道禁止指令をもらったこともございます。同時にまた、信教の自由は帝国憲法時代もうたっておったわけでございまして、それをより強固なものにするという意味合いも含めて二十条や八十九条の規定ができてきている、こう存じておるわけであります。
#69
○稲葉委員 信仰の自由は当然なんですが、従来国家神道は日本の場合特別扱いをされてきた。これに対する反省からこの条文というものは生まれたのではないでしょうか。それが特に戦争なり何なりに果たした役割り、軍国主義というか、そういうふうなものの発展の上に果たした役割りですね。その反省の上に立ってこの条文ができてきた、こういうふうにお考えになるのではないでしょうか。
#70
○奥野国務大臣 占領軍の国家神道禁止指令が占領直後に出されているわけでございますし、マッカーサー草案もそういうことを頭に置きながらその規定を書いているのだろう、こう私は思います。
#71
○稲葉委員 非常にくどいようですが、そうするとあなたは、憲法二十条三項の「宗教的活動」の中に閣僚の公式参拝も入っているという解釈なんですか、入っていた方がよろしいという意味の解釈なんでしょうか、願望というか。
#72
○奥野国務大臣 そこがまだはっきりしてないのではないか、政府としても疑義があるという気持ちを持っておるのだろうと思います。私は、そこまでは禁止してないのではないだろうかなという気持ちを持っておるわけでございます。
#73
○稲葉委員 しかし、私が質問主意書を出したときには、その答弁の中ではその点はもうはっきりしておって、公式参拝なり国家護持というものは宗教性がある現在の状況ではできないのだ、こういうふうにはっきり閣議決定の中では答弁しているのではないでしょうか。きょうはそれを持ってこなかったですけれども、そういうふうに答弁していると私は理解をしているのですが、この点はどうでしょうか。
#74
○奥野国務大臣 この間閣議に出ましたから私も見たわけでございますけれども、靖国神社が憲法上の宗教団体であるということは明確に答えているわけでございます。しかし、いわゆる公式参拝がひっかかるかひっかからないかということについては憲法解釈として疑義を持っているという立場での答えになっている、私はこういう理解をしておるわけでございます。
#75
○稲葉委員 あなたは公式参拝だけのことを言われますけれども、公式参拝と国家護持、両方が一つ大きな問題になっている。国家護持というのは、公式参拝も含めて費用を支出するという意味ではないのですか。それはどういうふうに考えますか。
#76
○奥野国務大臣 いま自民党の中で考えられてきた考え方の中には、国家護持もございますし、また公式参拝を自由にするという考え方もございますし、必ずしも一つではないと思います。
#77
○稲葉委員 憲法二十条というのは、何かあなたのお話で言うと、早急の間に十分な審議を経ないままにできたというようなことを参議院では言われているようですね。そこらのところはどういうことなんでしょうか、ちょっと御説明願えればと思うのです。
#78
○奥野国務大臣 一つは、憲法二十条はマッカーサー草案のままで字句も変わっていない。もう一つは、制憲議会の際に、公式参拝ができるかできないかという式のこと、先ほど地鎮祭のおはらいの例も挙げましたけれども、そういうことが議論になっていない。少なくとも宗教的活動の範囲についてはいまになってみればもう少し広げた議論をしておいてもらうと、今日この混乱が起きないのではないかなという気持ちを持っておるわけでございます。
#79
○稲葉委員 きのうですか、朝日新聞に自民党の各議員に対する憲法問題のアンケートだか調査だかよくわかりませんが出ていましたね。これは電話でやったのかあるいは直接お会いになってやられたのか文書で回答されたのか、そこら辺のところも確かめないで質問するわけにいきませんから最初にそれを確かめたいと思うのですが、それと同時に、新聞に出たのでは、奥野さんのあれとしては「最低限、九条改正。平和主義は貫くが自衛隊が気概が持てる環境を。」こういうふうにありますね。
 だから、どういう経過でこれが出てきたのかということが一つと、ここには非常に短く出ていますね。これではなかなか真意がわかったようなわからないようなことで、誤解を招く点も私はあるのではないかと思いますので、ここら辺のところをあなたのお考えをもう少し詳細にお述べになられて結構だと思うのですがね。
#80
○奥野国務大臣 私の場合には、朝日新聞の記者の方が私と面接の上でお尋ねになっておりましたから、そのときの問答に基づいてお書きになっておるのだろうと思います。
 また私の考え方は、八月の末に稲葉さんから自主憲法についてお尋ねをいただいたそのときにお答えをしたそのとおりの気持ちでございます。自主憲法をつくるとするならば、第九条で解釈の違いがないようにしてもらいたいな、また、社会党は自衛隊は違憲だ、こうおっしゃっているわけでございますから、これはやはり自衛隊の士気高揚の上においてかなり障害になっているのじゃないかな、私たちは、自衛隊は士気旺盛であってほしいな、こう思っておるものでございますから、そういう気持ちでお答えをしたわけでございます。
#81
○稲葉委員 そうすると、憲法九条を改正したいというのはあなたのお考えですが、どういうふうに改正をしたいというお考えでしょうか。
#82
○奥野国務大臣 平和主義の徹底を図りながらも自衛隊が違憲だという解釈が生まれないようなはっきりした規定にできないものだろうかな、私の願っていますことは、有力な政党の間で百八十度も違っている、しかもその規定が国の独立を守っていく上において非常に重要な規定だ、これは国民にとって大変迷惑なことではないだろうか、こう思っておるわけでございますし、私たちとしてもやはり抑止力を持って国の独立を守っていく、そのためには自衛隊はそれなりに皆さんが気概あふれる方々であってもらうように、われわれ政治家としてはそのような環境を整備していかなければならないじゃないかな、こう思っておるわけでございます。
#83
○稲葉委員 そうすると、いまのあなたのお考えだと、憲法九条をどこをどういうふうに書けばいいということになるのでしょうか。
#84
○奥野国務大臣 私はいま抽象的にお答えしたわけでございまして、その範囲の規定であるならばどんな書き方でも結構でございます。
#85
○稲葉委員 そうすると、あなたのお話によると、いまの自衛隊は気概が足りないのですか。そこら辺のところがよくわからないのですが、どうなんでしょう。
#86
○奥野国務大臣 自衛隊募集業務に対しまして反対運動があったり、あるいは自衛隊が盛大に訓練をします場合に地域によりましては反対運動があったりしておりますことは、自衛隊の人たちについては士気を阻喪させる原因にはなっているのではないかなと心配をいたしておるわけでございます。
#87
○稲葉委員 いまの自衛隊の問題については、そういうことで自衛隊が士気を阻喪しているかどうか、これは争いがあることでしょうね、各自の考え方の違いでしょうが。
 そうすると、結局いま言う自衛隊という言葉自身にもう彼らとしては士気が十分発揮できないものがあるんじゃないでしょうか。自衛隊などと言って何だかわけがわからぬと言ってはぐあいが悪いけれども、憲法の中に軍隊なら軍隊とはっきり書いたらいいのじゃないでしょうか。軍隊なら軍隊となれば、それで、これは国を守る軍隊だとはっきり書けば、自衛隊というかそういう人たちの士気も上がってくるのじゃないでしょうか。
#88
○奥野国務大臣 私は、そういう言葉よりも、国民みんなに支えられる自衛隊であれば、国民の期待にこたえてしっかりやらなければならないというふうに自衛隊の皆さんに思ってもらえる、しかし国民の中の一部に、おまえたちは違憲の存在だよ、やめた方がいいんだよ、こういう声があるとしますならば、やはり力が欠けるのじゃないかな、こう思うわけでございます。国民みんなに広く支えられる、また国民みんなから強く期待される、そういう自衛隊であることが大切なことじゃないのだろうかな、こういうふうに私は年来希望しておるわけでございます。
#89
○稲葉委員 いまの問題はまた別な機会にゆっくりさせていただきたい、こう思います。
 そこで、この前私は予算委員会で保安処分のことをお聞きいたしましたね。保安処分はここで二、三十分でやるという問題ではなくて、相当長時間に厚生省も来てもらって全般的にやらなければならない非常に大きな問題を含んでおる、こういうふうに考えるのですが、あのとき、結局新宿バス事件が発端だということを法務大臣は盛んに言われたわけですね。あの新宿バス事件は、結局は「精神障害の疑いがある方が起こされた事件でございます。」ということをあなたは言われておりますね、「疑い」という言葉が入っておりますけれども。結局は精神障害がどうなったんですか、これは。相当長い鑑定留置されましたね。東大助教授の逸見さんがやられたわけですが、鑑定書をぼくらは見ているわけじゃありませんけれども、結論だけちょっと新聞で見ました。相当長い間、五十日ぐらいですか、鑑定留置であんなに長くかかることはありません。場合によりますけれども、普通はどんなに長くても一月ぐらいですね。その結果はどういうふうになったのか、ちょっと御説明願いたいのです。
#90
○前田(宏)政府委員 いわゆる新宿のバス放火事件につきましては、いま御指摘にありましたように、鑑定留置をいたしまして被疑者の精神状態につきまして専門的な鑑定がなされたわけでございます。その結果といたしまして刑法上の心神喪失には当たらないということが言えると思います。
 と申しますのは、過日十月二十九日に公判請求をしているわけでございますので、心神喪失でございますれば起訴できないということからそのことが言えると思いますけれども、それでは鑑定の結果がどういうことであったかということになりますと、一部新聞等でも報道されましたけれども、この鑑定の内容はこれから始まります公判の中で一つの立証事項として立証されていくことでございますので、この段階でその内容がどうであるかということも申し上げるのは適当でないと思います。
#91
○稲葉委員 それは私もよくわかります。それはどの段階で、公判廷で出てくるのか、恐らく弁護人側が最初の起訴事実の認否の段階で弁護人の意見を主張されるでしょうから、その段階で出てくるのか、どういう段階で出てくるのかわかりませんけれども。
 結局、精神障害の疑いある人が起こしたということは間違いないのですか、あるいはその精神障害の疑いがある人が起こしたんだけれども、後になって考えてみたならば精神障害はなかった、こういうことなんですか。
#92
○前田(宏)政府委員 先ほど申しましたように、現段階では起訴をしているということだけがはっきりしているわけでございますから、その点から心神喪失には至らなかったという認定をしているということは申し上げられるわけでございますけれども、お尋ねのように、精神障害あるいは精神異常と申しますかそういうものがあったかどうかということになりますと、それは別問題であろう、かように考えます。
#93
○稲葉委員 そこで、予算委員会で私が聞いたときに後で一緒に厚生大臣にも聞いたわけですね。
 そうすると、厚生大臣はこういう答えをしているのですね。「精神病患者の種類は御案内のとおり大体三つに分かれておりまして、ほうっておけば、痴呆性で危害を与える、治安を賊するというのが一番重いわけでありますが、法務省で考えておられるのは、そういう犯罪があっちゃ困るから、ある時間あるいはある何か行事があるというような場合拘束するというような趣旨からくる精神病患者の自由を拘束するという点が重点であります。」こういうふうに厚生大臣は答えておりますね。これはあなたに先に聞いて後から私は厚生大臣に聞いたのですから。これは、厚生省の精神衛生医療問題ですか、これに対する不信からではないかということを聞いたときにこういうふうに答えて、法務省の説明はこうだということを厚生大臣言っておりますね。
 そうすると、ある時間あるいはある何か行事があるというような場合拘束するんだ、こう言っているのですね。議事録があります。これはあなた、はっきりとした予防拘禁じゃないですか。そういうふうに厚生省は理解しているんじゃないですか。法務省はそういうふうに説明をした、こう言っているんだからね。この理解の仕方は、厚生大臣、厚生省は間違っていますか間違ってないのですか、どっちです。
#94
○前田(宏)政府委員 ただいま御引用になりましたような厚生大臣の御答弁があったことは私も承知しておりますが、厚生大臣とされましては、突然のお尋ねを受けたようなことで若干誤解と申しますかそういう点もおありになったんじゃないかなというふうに思うわけでございます。
 と申しますのは、例の草案で考えております保安処分制度もいまのようなことではないことは稲葉委員御自身がよく御承知であろうと思うわけでございますので、そういう意味でもいま申したようなことが言えるんじゃないかというふうに思うわけでございます。なお、そういうこともございましたので、厚生省の担当局長の方には、もし万一にも誤解があってはいけないので、その点はよろしくお願いしたいということを後から申し上げております。
#95
○奥野国務大臣 園田厚生大臣は私に適当な機会に答弁を訂正しますとおっしゃっております。
#96
○稲葉委員 では、厚生大臣がそういうふうにおっしゃるなら……。これは非常におかしいですね。これじゃはっきり予防拘禁ですからね。何か行事というのは大体見当がつきますけれどもね。
 そこで、保安処分に関連して外国へ何か制度の視察に行かれるようなことがちょっと新聞紙上に出ておったわけです。私が疑問に思いますのは、刑法改正草案は何年もかかってやったことでしょう。保安処分だけではありません、ほかの総則から各則全部ずっとありますから。これを相当長い間やってきて、そして保安処分の問題についてもやってきたわけで、その間各国の制度なり立法なり実際の運用というものについては相当法務省としても勉強をされておったのじゃないでしょうか。そう思うのに、新聞の報道だから違うといえば違うかもわかりません、どうだか、これからお聞きしますが、いまになって急に外国の施設をいろいろ立法なり何なり調べるということは、私はちょっと理解しがたいのですが、実情はどういうことなんでしょうか。
#97
○前田(宏)政府委員 ただいま御質問にもございましたように、法制審議会でいろいろと審議がなされております間、事務当局といたしましても、その資料を提供する意味も含めまして、外国の立法例あるいは運用の実情等につきましては調査を続けておったわけでございます。
 したがいまして、各国の立法例等も相当程度集めておりますし、その点はこれまでも十分やってきたところでございますけれども、その後各国におきまして改正が行われているというようなこともございますし、また最近この問題が一つの話題的なことになりましてから、反対の立場の方々から外国のことについて、たとえばデンマークでは保安処分が廃止されたではないかというような論文といいますか、そういう御意見も出ているようでございますので、万が一にも間違った点があってはいけないということで、そういう点も含めまして念のための補充的な調査をしたい、かように考えておるわけでございます。
#98
○稲葉委員 補充的な調査ですか捜査ですか。
#99
○前田(宏)政府委員 調査でございます。
#100
○稲葉委員 いま捜査と言われたように聞こえたけれども、それは調査でしょうね。
 いまのデンマークの場合は七三年六月に廃止になった、こういうふうに言われています。世界各国は大体保安処分の廃止の方向にいま進んでいるのではないのですか。そうすると、あなた方の方で何か新しく立法が変わったとかなんとか言っているけれども、新しく保安処分が設けられたというのであなた方が手本にされるというようなところは一体どこなんですか。
#101
○前田(宏)政府委員 たまたま私デンマークのことを申し上げましたところ、稲葉委員からデンマークでは保安処分が廃止されているというふうにおっしゃいました。
 しかしながら、私どもが現在調査しておりますところでは、現在も刑法の六十八条あるいは六十九条に精神病院等への収容あるいは保安拘禁という規定がございまして、その制度は現存していると理解しております。ただ廃止されましたのは労働所収容という制度、これは私どもが考えております保安処分とはむしろ異質なものではないかと思いますが、そういうものは一部廃止されたということでございまして、そのようなことからいたしましても、最近言われているいろいろな議論が正確な事実の認識の上に立ってなされていないのじゃないかということをむしろ恐れるわけでございます。
#102
○稲葉委員 私も外国へ行って、立法例よりもむしろ実際のその運用ですよ、これは法律があっても実際にはやられていないところも相当あるわけでして、どのくらい行くのか知りませんが、そこへ二、三日行ったところですぐわかるものではありません。それから、その国としても実際余り名誉なことではありませんから、実態のこと、本当のことはなかなか言わないのじゃないでしょうか。相当長期に調査をしないといけないというふうに考えるわけです。
 この前、これは一体一番長いのは何年くらい収容するのかということを私は大臣に聞いたら、大臣わからなかったですね。これは勉強不足で、条文にあるのですから、初め三年で後二年二年と更新できるから長期七年です。それはそうなんです。精神障害者に対してそんなに長く入れておくということはちょっとないわけです。そこらいろいろこれは問題は確かにあるのです。非常に大きなむずかしい問題があって、病気のことですから、私どもにはなかなか理解しにくい点がたくさんあります。この朝日ジャーナルの中にある河上君と宮沢浩一さんとの対談も、これもすべてのことが全部載っているのかどうか、何時間ぐらいやったことであって、その河上君のしゃべったことが全部載っているのかあるいは宮沢先生のしゃべったことが全部載っているのか、そこら辺のところよくわかつらぬですよ、率直な話、いろいろな話も聞きますからね。これらやはり全部のものを見なければなかなかこれだけで私も判断できないと思うのだけれども、これは編集権の問題でもあって、これはわれわれがかれこれ言うべき問題でもありませんからこれ以上申しませんけれども、いずれにしても、あなたの方でもいろいろな形で克明に調査をされて真実を明らかにするのは私は大事だと思いますね。
 私の方でも私どもなりに、いま言ったたとえばオランダの問題でも廃止になったと言うけれども、みんな自分たちの方の都合のいいところだけ引っ張ってくるわけですから、だれだって論証するときに、これは日本人の悪い癖で、自分の都合のいいところだけ引っ張ってくるわけです。この前の弁護人抜き裁判のときだって、藤永君が引っ張ってきたのは控訴審で破れて破棄されたような判例まで引っ張ってきて出しているわけでしょう。こんな破れた判例を引っ張るのはおかしいじゃないかと言ったら、学者はみんなそういう判例の引っ張り方をしていますと言うから、なるほどそうかなと思ったのですが、自分の都合のいいようなところもあるし、都合の悪いところもあると思うのです。だけれども、これはとにかく全面的に、ことに法務省関係では明らかにしてもらって、正直な一つの答申書というか何なりを出してもらいたいと私は思うのです。その上でわれわれは長期的に粘り強くこの保安処分の問題について論議を深めていきたい、こういうふうに思うのですね。いまも厚生大臣のあれなんかを見ると、私もこれを聞いたときに気がついたのです。変なことを言うなと思ったのですけれども、あそこだから黙っていたのです。いろいろなところがありますから、これから十分論議を深めていきたいと思います。
 それからもう一つの問題は、いま国籍法の改正ことに二条の問題で父系主義から父母両系主義というのですか、あの問題の中に入ってきますね。これはコペンハーゲンで開催の国際婦人の十年世界会議で政府は婦人に対するあらゆる形態の差別を撤廃する条約に署名した、こういうふうになっていますね、ことしの七月十七日ですか。そのことに関連して国籍法の改正という問題がいま起きておるし、ことに二条の問題が今後起きてくる。私の方もいま提案をしていますから、この前にも提案をして、七日に土井たか子さんから趣旨説明があるわけです。
 いまこの問題をめぐりまして、父母平等の問題で国籍確認で東京地裁の民事三部、民事は二部と三部が行政部ですが、三部に二つの事件が係属しているわけですね。ことしの五月十三日に結審して、半年以上たってもまだ判決になりません。ですから、私はいまここでその判決に影響を与えるようなことを質問することは避けなければならない、こういうふうに思います。だからこの具体的な事案も内容も聞かないし、これに対してあなた方の方で出しておる最終準備書面というものがそのまとめだと思う。この最後、第三のところに政治的ないろいろな判断の必要性ということを書いていますけれども、これなんか私は相当問題があることだと思うのです。それについて細かいことを聞くのは裁判に対して介入のおそれがあるというふうにとられてもいけません、判決が出ていませんからね。だからそれは聞きません。
 ただ、その中で一つ私は了解できないことがあるんですが、それはこういうことを言っているのですね。鑑定人、学者が出ておるわけですが、その「鑑定人らは、近隣諸国との国際条約によって解決できる旨述べるが、」――これは東京法務局になっています。ちょっとページがついてないのですが、最後の「第三 国籍付与の政治的判断の必要性について」というところの二の終わりの方、これは大臣に聞いておいてもらいたいのですが、この中に「鑑定人らは、近隣諸国との国際条約によって解決できる旨述べるが、朝鮮、中国がいずれも分裂国家的状態にあり、また、中国においては国籍法も未だ定められていないのであり、国際条約を締結するに十分な条件にあるか否か疑問であり、」というようなことが書いてあるのです。大臣いいですか。これは大臣にお見せしてくださいね。
 そうすると、いま中国が分裂国家の状態にあるというふうに大臣はお考えですか。これが鈴木内閣の基本的な考え方ですか。中国が分裂国家的状態にある、こういうふうにちゃんと書いてありますよ。これはその考え方ですか。まずそれが一つ。それから、国籍法が決められてないというのは、この準備書面を出した段階ではまだ決められてなかった、これはしようがありません。後で中国の全人代会議で決められたのですから、この状態のときはしようがありません。いまは決められておる。中国が分裂国家的状態にあるということは、具体的にどういうことを言うのですか。
#103
○柳川(俊)政府委員 この準備書面におきます分裂国家的状態といいますのは、通俗的な意味で二つの領土的な状態があるというような意味だろうというふうに思っております。
#104
○稲葉委員 何だかはっきりしないな。大臣どうですか。鈴木内閣では中国が分裂国家的状態にあるという認識なんですか。日中の平和友好条約もあるんじゃないですか。台湾は中国の領土だというふうに認定しておるんじゃないですか、日本の政府は。この書き方は問題を起こしますよ。法務省で民事局長もちゃんと内容を検討したと言うのだけれども、通俗的とは何事ですか。だろうと思うとか、そんなはっきりしないような言い方はいかぬよ。これは問題になるところですよ。これは大臣どう考えるの。鈴木内閣は中国が分裂国家の状態にあると考えているんですか。
#105
○柳川(俊)政府委員 国際法によりますと、分裂国家といいますのは本来の国際法的な用語ではないということになっております。一般的な用語として分裂国家という言葉がある。その内容は、一つの支配力を持っておる政府がありまして、それと他の支配力を持っておる政府がある。その二つの政府の関係において互いにいずれもが自分の政府、自分が全体的な意味での政府であるというふうに主張している場合があるわけでございます。こういうような場合について分裂国家というふうに申しているわけでございます。そういうような意味からいいまして、中国あるいは朝鮮というものがそれに近い状態にあるということで分裂国家的状態にあるというふうな表現をとったものでございます。
#106
○稲葉委員 どうして中国はそれに近いのよ。そんなばかな話はないじゃないですか。だって日本は中華人民共和国を承認して、そして日中平和友好条約によって台湾も中国の領土だということを認めたんじゃないですか。どういうふうになっておるのですか。ちょっと待ってください、大臣に聞いておるのだから。鈴木内閣としてどういう態度をとっておるのか、ちょっと大臣から。
#107
○奥野国務大臣 中華民国政府を中国を代表する政権として交流しておりましたのを大陸の中華人民共和国が中国を代表する政権としたわけでございますから、二つの国を認めておるわけではございません。
 ただ、国籍法等を扱います場合に、現実問題として台湾からたくさん日本に来ておられるわけでございますし、また昔の関係もございまして、そういう人の国籍の場合に簡単に法律的な従来の扱いだけでは済まされない問題があるという意味で、御指摘のような言葉を使ったのだろうと思います。
#108
○稲葉委員 だけれども、この言葉の使い方は非常に誤解を招きますね。あなたがいま言われるような意味で、法律家から見ればあるいはあなたのような理解の仕方があるかもわかりませんよ。あるかもわからないけれども、そうでない人が見ると非常におかしな理解の仕方だ、こういうふうに考えざるを得ないのだ、こう思うのです。
 私は、この書き方、中国が分裂国家的状態にあるというふうには、通俗的に言ってそうだと言うのだけれども、そういうふうにはちょっと理解できないのですがね。片方のところは、自分の方が全部の領土を支配しているなんという主張はちっともしていないじゃないですか。もっとも、私の理解をしている次元とあなた方のお答えになっている次元とが違うということなのだろうとぼくは思うんだな。だからこういうふうな文句に出てきたのだ、こういうふうにあなたの方で言いたいのでしょうと思いますが、いずれにしても国籍法の問題で今後いろいろな問題が起きてくるというようなことをよく言うのですね。いろいろな問題が起きてくる、なるほど起きてきますよ。起きてくるかもわからないですね。いままで父系主義をとっていたのを両系主義にすればいろいろな問題が起きてくるのはあたりまえです。
 ちょうど難民条約のときに、難民条約を批准すれば大変な問題が日本に起きるからというので、難民の定義がわからないしきわめて不明確だから、この難民の地位に関する条約については批准しないのだということを前に外務省の条約局長は言ったことがある。ところが、いまはそうじゃなくなってきているわけでしょう。情勢は変わってきて、ただ二十四条の(b)の社会保障の問題、国民年金の問題をめぐってそれをどうするかということで外務省と厚生省で折衝をしている、こういう段階ですね。
 情勢は非常に変わってきて、世界の国々の非常に多くは、この問題について、父系主義を採用していた国がだんだんやめてきて、国籍取得における平等を実現しようとしておる。たとえばフランス、西ドイツ、スイスその他もありますね。そういうことをいろいろ考えると、この国籍法の大勢は、確かに技術的にいろいろな問題があるにしても、それをやはり押し切って国籍法の改正をするというのが、日本が世界の大勢におくれない非常に大きな一つのポイントであるというふうに考えるのです。いろいろなことを考えたら切りがないですよ。いろいろな問題が次から次へと起きてくるかもわからぬけれども、実現しそうもない、起きてきそうもないようなことまで考えていたのでは切りがないですよ。だから、ある段階においてしっかりとした決断を下して、この国籍法を日本でも改正をする。社会党で案を出していますけれども、政府としても提案をするということについてどういうふうに考えるのか。このことを一言、これは大臣と民事局長と両方からお伺いをして終わりにします。
#109
○貞家政府委員 稲葉委員御指摘のとおり、世界の情勢は非常に変化を遂げております。わが国といたしましても、先ほど御指摘の婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約に最近署名いたしたわけでございまして、これについて今後国内法制等諸条件の整備に努めるという方針を堅持しているわけでございます。
 そこで国籍法二条の問題、これは必ずしも二条だけには限りませんけれども、国籍法の改正問題が浮かび上がってきているわけでございます。御指摘のとおりいろいろ問題があるわけでございまして、その一例を挙げますれば、二重国籍をどう考えるか、これを解消するためにどういう方策が最も適当であるか、あるいはどうしても二重国籍者が残るということになりました場合には、それに対して種々国内法制上の問題点が生じてくることも考えられるのでございます。確かにこういった問題が続出いたしまして切りがないとおっしゃいますけれども、私どもは、だから問題点の検討はいいかげんにして断行すべきだというふうには実は考えていないわけでございまして、この問題点は私どもといたしまして一つ一つ克服してまいる、そのための努力をいたしたいと考えているわけで。ございまして、まず最近においてそういった父系主義から両系主義に変わりました諸外国の制度、その運用の実情というような面についても調査を開始しているわけでございます。
 今後こういった面について十分な調査を遂げ、そして隘路と申しますか問題となる点を一つ一つ克服するための努力を重ねて、国籍法の改正を十分責任を持って提案できるような自信のある考え方を確立いたしたい、かように考えまして日夜努力を続けているという状態でございます。
#110
○稲葉委員 これで質問を終わるのですが、言葉じりをつかまえるわけではありませんけれども、何かいいかげんなところで打ち切ってやれなんてぼくが言ったようにあなたは言いましたけれども、そんなことをいま言ったつもりはありません。ただ、私もしゃべるのが余り得意じゃありませんから、そういうふうにとられたのかもわかりませんが、そうではなくて、具体的に詰めなければならぬところは非常に多いですよ。それはわかります。だから、それは詰めるところは詰めて、そうして早く法案をつくるように克服してほしい、こういうことですね。それはおわかり願えたと思うのです。
 それから、刑事局長がさっき言われた保安処分でどこか外国へ行くというのは、具体的には、どの程度のチームがどこへどういうふうに行くことにいまなっているわけですか。
#111
○前田(宏)政府委員 外国に行きますからには効果的な調査をしたいと考えておりますので、その行き先あるいはスケジュールと申しますか、そういう点につきましては、国内でわかる資料等もいま検討し、それで足りない点を調べるということで計画を練っているところでございます。
#112
○稲葉委員 終わります。
#113
○高鳥委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時五十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十一分開議
#114
○山崎(武)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。岡田正勝君。
#115
○岡田(正)委員 インドシナ三国の難民の問題につきましては大臣はよく御承知だと思いますけれども、一応質問をいたします前にその経過をお話をしておきたいと思うのであります。
 一九七五年にラオス、ベトナム、カンボジア、俗に言うインドシナ三国は社会主義に変貌してまいりました。それ以後ベトナムにおきまして約六十万人、ラオスにおきまして約二十二万人、カンボジアにおきまして十数万人の方々が祖国を捨てておられます。一九七五年、俗にボートピープルと呼ばれるベトナム難民の人が日本に仮上陸をいたしましたが、一九七八年の四月三十日まで日本は難民に対しての定住を認めていませんでした。同年四月三十日に発表されました三条件つきの定住も、日米会談を控えた米国へのおみやげとして当時の福田総理が発表したものでございまして、四カ月後の一九七八年八月三十日に初めてベトナム難民のマイ・ヒュー・ロイという一家の三人の方々の定住を認めましたが、それ以外は一九七九年、昨年の四月まで他の一切の定住者を認めなかったのであります。
 昨年の四月以降、この難民対策は世界の世論にも刺激をされましてさみだれ式に変更されていったのでありますが、それも六月に控えました東京サミットを横目ににらみながらのものでありまして、日本は金は出すけれども難民には実に冷たいという批判をいかにかわすかという配慮であったのではないかと思うのであります。逐次改定されまして、定住条件を昨年の七月十三日の閣議におきまして五百人と枠決めをされました。これは日本国内の整備すら全く無視した状況のもとで急遽発表されたというような形であります。さらに昨年十一月十八日より四日間、タイ国境の難民キャンプをカーター大統領夫人に見習いましてわが日本も緒方貞子さんを団長といたしまして政府代表のカンボジア難民現地調査団が現地を訪れました。その結果、やっと政府は姫路と大和に難民定住センターというものを開設いたしました。ことしの六月十七日の閣議におきまして、条件も緩和し定住枠も五百人から千人に広げられたという段階でございます。
 世界の約八十カ国は難民条約を批准いたしておりますのに、先進国の中でこの条約に批准をしていないのはわが日本だけという状態であります。そしてたびたび、大来さんのときにもそして伊東さんになりましても、いまにも難民条約の批准を国会にお願いするような気ぶりを見せながら、今日に至るまでこの条約は提案されておりません。わが国を振り返ってみますると、鎖国から開国をいたしまして、開かれた国となってわずか百十三年しかたっておりません。いまだ鎖国主義の風潮が残っているのだろうかと私は情けないことだと思っておるのであります。こんなことで開かれた日本ということが一体言えるのでありましょうか。そういう私の考えと、そして非常に人道主義的な、思ったことをすぱっと言ってのける奥野さんに期待を込めまして、以下、インドシナ難民対策につきまして質問を申し上げていきたいと思います。何とぞ法務大臣を初めといたしまして法務省、外務省、文部省、厚生省、内閣官房の皆さん方には真摯なお答えをひとつお願いをしたいと思っておるのであります。期待をしております。
 さて、質問に入ります前にちょっと差し上げておきたいものがありますので、委員長、失礼します。これは大臣はお持ちになっておるようですから、委員長、ひとつ見てください。これは質問の中に出てまいりますので。
 さて、第一の質問でありますが、政府のインドシナ難民の受け入れ政策に対して質問をいたします。これは内閣官房の方で主にお答えいただけると思うのでありますが、その質問の内容は、大平前総理の御遺志によりまして御承知のとおり定住枠が五百人から千人に広げられました。その充足の現況というのは一体どのようになっておるか、お答えを願います。
#116
○村角説明員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、昨年の七月に閣議了解をもちまして定住許可条件の緩和とともに一連の定住促進策というのを実施することにいたしまして、昨年の十月にアジア福祉教育財団にこの仕事を委託したわけでございます。財団は御披露のありましたとおり大和と姫路に定住促進センターを設置し、そこに日本に定住を希望するインドシナ難民の方々に入っていただき、そこで日本語の教育、職業の紹介、職業訓練のあっせんその他を行いまして定住の促進に努めてきた次第でございます。
 そうしましたところ、本年の六月に、前に定められました定住枠五百に大体近くなってまいりまして、そこで御指摘のとおり定住枠が千人に広げられたわけでございます。その後もこの定住促進の仕事を関係者の努力によって続けてまいりまして、実質的な定住許可数、これは定住許可総数から取り下げ数を引いたものでございますが、本日現在で七百八十二名になっております。ただし、このうちすでにわが国に定住している難民の数は四百六十一名でございまして、この差はまだ東南アジアの各地にいるわけでございます。
#117
○岡田(正)委員 いま回答を聞いていますると、四百六十一名の方がいま現に日本に定住をしているという状態でありまして、千人という枠にはまだまだ届かぬわけでありますね。
 そこで私が非常に不審に思いますのは、この定住枠の消化、充足が非常に鈍いと思うのです。難民の方々の非常に心せいた、差し迫った、せっぱ詰まった状況からいいますと、非常に定住枠の充足が鈍い。これは何か原因があるんじゃないのか。そのいわゆる鈍いということの原因の調査や分析をなさいましたか。
 それから、一部説明をなさる中で聞くことがあるのでありますが、いや実は定住の希望者が少ないのでありましてということを聞くのであります。これは私から言いますと言い逃れでありまして、誤りではないかと思っておるのであります。むしろそれは日本側の血の通った政策がないからではないのか、それが一番大きな原因ではないかと思うのでありますが、このことにつきましてさらに反省するところはありませんか、お聞かせ願います。
#118
○村角説明員 お答えいたします。
 すでに日本に定住している難民の方の数は四百六十一名でございますが、許可数つまり実質的な許可数でいきますと七百八十二名。この定住促進の仕事を実際に始めましたのが姫路が昨年の十二月、それから大和が本年の二月の末ということから考えてみますと、昨年の前半には先生御指摘のとおり一家族三名というのが実情であったことから見まして、私どもは、関係者の努力によって、むしろ着実に順調に進んでいるのではないかと考える次第でございます。今後とも、すでに許可になった人が身体検査等が済みますと次第に入ってくるわけであります。入ってこられますと、大和、姫路のキャパシティーのある限り順々に教えていくということになります。私どもとしては、この日本に定住された方々が円滑に日本社会に溶け込んで、みずから働いてかせいで、日本人の中で暮らしていけるように、そのためにこの定住促進の仕事をしているわけでございますが、やはりその定住促進センターのキャパシティー、能力に応じて徐々にやっていくべきであろうと考えております。
 それから、先ほど定住希望者、日本に定住を希望する人が少ないのではないかという御指摘でございますが、確かに難民の中に、実は日本には定住を希望される方とはほかに、海上で救助されて日本に連れてこられたいわゆるボートピープルという方がおられるわけでございます。この方々の中では定住を希望される方が少ないのは事実でございます。その理由を私どもも各施設を回って聞いてみますと、一番多い理由は米国に親戚とかあるいは友達がいるとか、そういうやはり他国に住むことになったときに頼りになる人がそばにいる方がいい、こういう理由を挙げる方が一番多うございました。しかし、それでも一ころから比べますと大分ふえておりまして、本邦の一時滞在施設からすでに定住許可になっている人が四十七名、まだ勉強中の人もかなりおられます。それで、日本定住希望者というのは本邦の一時滞在施設にいる難民の中では少のうございますが、アジアの一時収容施設にいる難民の中には日本に定住を希望される方がまだまだこれからもおられると思いますので、私どもとしては引き続き関係者の御協力を得てインドシナ難民の本邦定住促進に努めていきたいと考えております。
#119
○岡田(正)委員 後でまた詳しく具体的な例を挙げて質問をさせていただくことにいたします。
 一つだけちょっと念押しをしておきまいと思います。昨年の十二月の姫路それからことしの二月の大和のセンター両方合わせまして何人収容できる施設でございますか。
#120
○村角説明員 大和と姫路と双方合わせまして一時的なキャパシティー、収容能力は約二百五十名でございます。ただし、これは一時に滞在しているその最大のキャパシティーでございまして、この三カ月の日本語教育を終え、職業訓練その他を、これは人によって違いますけれども、終えた人はどんどん就職して出ていくわけでございますので、これは回転していくわけでございます。ですから、難民の滞在期間によって年間のこなし能力というのは違ってくるわけでございます。
#121
○岡田(正)委員 それでは後ほど具体的にまたお尋ねをいたします。
 次に、受け入れ後の待遇の問題でございますが、大臣のお手元に差し上げました一番上の資料であります。鳥取の小学校で、難民の子供さんが入学したいということに対しまして、これを拒否した事件があります。十月二十七日に幸いに受け入れが決まりましたからよいようなものでありますけれども、一たん拒否を受けました子供の心には大変大きな傷を与えておるのだろうと私は思うのであります。これは世界人権規約の規定する趣旨にのっとりまして基本的に日本人と同待遇をすべきでありまして、それがまた昨年わが国について発効いたしました御承知の世界人権規約で言う内外人平等の原則の強く要請しておるところでもありますが、このことを踏まえまして文部省側の反省を聞きたいと思うのであります。
#122
○倉地説明員 文部省といたしましては、従来から、外国人がその子女で学齢相当者を公立の小中学へ就学させることを希望いたしました場合には、市町村委員会はこれを就学させるよう指導してきている次第でございます。
 今回、河原町当局におきまして必ずしもこの趣旨が徹底されていないという点が見受けられたわけでございますけれども、私どもといたしましてはきわめて遺憾なことであったと思っておる次第でございます。今後とも私どもといたしましては先ほど申し上げましたような指導の方針をさらに徹底させてまいりたい、そのように考えておる次第でございます。
#123
○岡田(正)委員 よくわかりました。ただ問題は、町内会で起きた問題とかいうのではないのであります。入学拒否をいたしました機関というのは公的な機関であります。しかも文部省の統括の中に入った機関で起きた問題でありますので、私はいまの答弁でそれ以上質問しようとは思いませんが、二度と再びかような事件がありませんように、事件が起きてからの指導では私はこういう問題は手ぬる過ぎると思うのであります。これはすでにわが国が批准をいたしました世界人権規約にも明確に載っておることでもありますので二度とこういう問題が起こらないよう厳重な指導をお願いしておきたいと思うのであります。
 文部省の関係は以上です。結構です。ありがとうございました。
 続いて質問させていただきますが、法務省の関係であります。
 待遇の中で最も重要となりますのは法的な在留資格と帰化の可能性の問題であります。現在、難民に与えられておる資格というのは永住許可ではなくて一年間の特別在留資格にすぎないと聞いておりますが、これは事実ですか、いかがですか。こんなことでは難民の将来に対する不安、心配というものは消えるはずもありません。一年ごとに更新されるかもしれない、されないかもしれない。こんなことじゃ、だれが安心して日本に来ようという気になるでありましょうか、その点のお考えを聞きたいのであります。
#124
○小杉政府委員 ただいま先生からお話がございましたように、現在難民に与えております資格は永住資格ではなくて一年間の特別在留資格である、これは事実でございます。ただこれは、現在の入管令の四条一項第十六号に言います法務大臣が特に在留を認める者という資格で期間一年を与えておるわけでございますが、入管令上いわゆる四−一−一六−三というカテゴリーに属する者の在留資格で認められる最長の限度は三年でございます。しかしながらこれまでの入管の実務上は、外国人で日本に入国された場合には当初は一年単位で在留を認める、以後は期間更新をするという扱いになっておるわけでございます。
 それで、たとえばこれをほかの例と対比して考えてみますと、日本人男性と結婚してわが国に永住を希望するような外国人女性の場合、これらの方も入国の当初は在留期間は一年ということでお入れしておるわけでございますが、一年たったら更新されないのではないか、そのために離婚しなければならないのではないかというような不安を当該外国人女性から伺った例もございませんし、私どもとしては、もし難民の方々に私どものいまの制度が理解されていないがゆえに不安があるのであるとすれば、それはそれなりにPRをするなりいろいろな方法で解決を図ってまいらなければならないのではないか、そのように考える次第でございます。
#125
○岡田(正)委員 それではちょっとお尋ねをいたしますが、この種の在留資格の問題につきましてアメリカ、カナダ、オーストラリアという諸外国におきましては一体どのように対処しておられるかお尋ねいたします。さらにつけ加えて、現在これらの国が、そしてわが日本がインドシナ三国の皆さんに対して許可をした数を、各国別に日本を含めてひとつ発表願いたいと思います。
#126
○渡辺(幸)政府委員 お答え申し上げます。
 インドシナ難民の最大の受け入れ国は米国でございますけれども、米国は入国の際とりあえず二年間の滞在許可を与えまして、その後永住許可を与えることといたしております。入国五年後に市民権取得のための帰化申請を行うことができて、申請が認められると五年間遡及して市民権が獲得されるということになっております。次にカナダでございますけれども、カナダは入国の際永住許可を与えて三年後に帰化申請ができることになっております。オーストラリアにつきましては、入国の際同じく永住許可を与えて、二年六カ月後に帰化申請を行うことができるというようになっております。
 お尋ねの各国別のインドシナ難民定住受け入れ数でございますけれども、多い順から申し上げますと、この数字は一九七五年の五月のインドシナ動乱終結後本年九月三十日現在までの延べ数でございますけれども、米国が二十九万五千六名、二番目がフランスでございまして六万七千六百七十三名、その次がカナダでございまして六万五千三百七十二名、次にオーストラリア四万一千六百四十六名、それから英国がございまして一万一千六百七十二名、大体こういったところが重立った国でございまして、わが国の場合は、本日、十一月五日現在四百六十一名ということでございます。
#127
○岡田(正)委員 ありがとうございました。ただいま御発表がありませんでしたが、わが国よりも国土の面積も小さく国力も非常に弱いはずでありますスイスにおいてさえ約四千人、ベルギーにおいてさえ約三千人定住許可をしておるという話を聞いております。いま故意に発表されなかったのかどうか知りませんが、経済大国日本といたしましては四百六十一名、まことにりょうりょうたる感じが私はしてならないのであります。
 さて次の質問でありますが、永住許可条件は現在どうなっておるのでしょうか。この条件が余りにも厳し過ぎるのじゃないでしょうか。緩和すべきではないかと思うのでありますが、説明を願いたいと思うのであります。
#128
○小杉政府委員 現在、永住許可につきましては入管令上五つの要件を定めております。素行が善良であること、独立生計の技能または資産を有すること、あるいは健康であること、本邦に確実な身元保証人があること及び一定の居住歴を有すること、この五項目の要件を満たした場合に永住を許可する、これが一般外国人に対して適用しておる永住許可の基準でございます。
 定住を許可されました難民に対する永住許可、この問題につきましては、基本的には、一般在留外国人に対する永住許可とそれほどかけ離れた扱いをするということは、私どもの行政としていささか困難がございますけれども、難民として定住を認めた経緯がございますので、その経緯を踏まえて、個別の申請案件の処理に当たりましては、この五つございます要件のそれぞれの適用におきまして、できる限り好意的な配慮をもって弾力的に対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#129
○岡田(正)委員 そこで私の希望でありますが、前段の質問においてお答えがありましたように、アメリカの二年あるいはカナダのいきなり永住、オーストラリアのいきなり永住という制度から比べましても、わが国の受け入れ条件というものはまことに厳し過ぎるというふうに思うのであります。
 そこで私は百歩譲って、いきなりカナダやオーストラリアのようなまねはわが国はできないよということをのむといたしましても、ならば、まず三年間ぐらいの特別在留許可、これは先ほどの御説明にもありましたが、現在の入管令で改正をしないで与えられるはずでございますね。可能なはずでございますね。それを与えてやって、それから三年後に永住許可を与える、いわゆる帰化申請をさせるというようなことを難民に約束してやるぐらいの前進があってもいいのじゃないかというふうに私は思うのでありますが、いかがでございますか。
#130
○小杉政府委員 先ほど外務省の方から主要国における難民の在留資格の問題でお答えがございまして、わが国とかなりかけ離れた、何と申しますか難民を優遇する措置がとられておる、これは現に事実でございます。
 このような処遇が、たとえばアメリカ、カナダ、オーストラリアでなぜ行い得ているかということを考えてみますと、これらの国が移民の受け入れ制度というものをかねてから持っておる、これが非常に大きな理由になっておるわけでございます。すなわち、長期的に定住をする外国人を受け入れるための法律的な受けざらというものが移民制度の関連においてすでに現存しておった、それをいわば難民に準用していくという形でかなりの部分が救済されておるわけでございます。
 それに反しましてわが国の場合、移民は絶対に受け入れないという非常に大きな基本国策がございまして、その国策に基づいて現在の入管令というものが立てられておる。そこの差異がかなり決定的な差異としてある点はまず御認識いただきたいと思います。
 それから、さらにただいまの御質問の点でございますが、確かに法律的に難民に直ちに三年の在留期間を与えるということが不可能ではございません。しかしながら私どもこの際考えなければなりませんことは、一般外国人との関係特にわが国と歴史的にも伝統的にも非常に密接なつながりのございます韓国、朝鮮あるいは台湾の人たち、これに対する処遇上の均衡、これもあわせて考えなければならない点があるわけでございます。これはいわばわが国固有の特殊事情でございまして、この点についてはやはり先生方の御理解をいただきたい点でございます。
 いずれにいたしましても、現在のところ私どもといたしましては、定住許可のときには従来どおり在留期間一年で許可をいたしますが、本人の定住後の在留状況を見まして、できる限り早い機会に在留期間を三年に伸長するという方向で処理してまいりたいと考えるわけでございます。
#131
○岡田(正)委員 わかりました。ただ、いまお答えの中で非常に気になりますことは、私は、南北朝鮮人の皆さん方の身分の問題あるいは台湾の皆さんの身分の問題につきましても従来から関心を非常に強く持ってきた議員の一人でございます。であるだけに、この現在の入管令でも直ちに一二年間の特別在留許可が与えられる制度があるにもかかわらず、韓国の皆さんあるいは台湾の皆さんとのバランスの問題から踏み切ることができないというお答えでは、実は私は満足していないことをここで強く表明を申し上げておきます。
 それから次にお尋ねをいたしますが、帰化できるかどうかということは難民の皆さんにとっては大変大きな関心事であることは御承知のとおりであります。そこで、先ほどの永住許可のときと大体同じでありますが、帰化条件の中の条件でこれはどういう意味かなといって非常にわからないところがあるのです。その五つの中の一つだけ取り上げてちょっと特別にお尋ねをしておきたいと思いますが、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能があること。」というのが一項目入っておりますが、これは一体基準があるのでございましょうか、お答え願います。
#132
○貞家政府委員 御指摘のとおり、帰化の条件といたしまして、日本人と身分関係のある者は別でございますけれども、一般的な帰化の条件といたしまして国籍法第四条第四号に「独立の生計を営むに足りる資産又は技能があること。」というのが掲げられているわけでございます。
 この点につきましては帰化事務の運用上、特にどれだけの収入がなければならないとか、どれだけの稼働能力がなければならないという基準は設けておりません。各ケースに応じまして個々に判断をする以外にないわけでございます。ただこの規定が置かれました趣旨は、帰化によって国に公的負担を生じさせる者には帰化を認めない、こういう趣旨でございます。したがいまして、この条件の充足か否かを判定するにつきましては、申請者が日本に帰化した後においても国民として将来にわたり一応安定した生活を営むことができるかどうかということを個別に判断いたすわけでございます。
#133
○岡田(正)委員 こういう質問は適当ではないと思うのでありますが、難民の皆さんが比較的よい条件の職場に恵まれることは一般的には余り考えられませんね。ということになりますと、わが国で言いますところの、一番極端なもので言いますといわゆるパートタイマー的な仕事をやっていらっしゃる場合、こういう場合はどう判定をしていらっしゃるのですか、お尋ねします。
#134
○貞家政府委員 難民の方々にとりましてはそういった生活の資を得ることがなかなか困難であるという事情は容易に想像されるわけでございます。したがいまして、たとえパートタイマーということでございましても、要は将来の見込みの判断でございまして、そういったものが事実上継続するかどうか、また御本人の就労意欲と申しますかそれを続けていかれる意欲があるかどうかを調査いたしまして、実情に合った判断をすべきものだというふうに私ども考えております。
#135
○岡田(正)委員 そういうことは、現実に判断を下します現場の第一線におきましてもあなたと考えは全く変わらぬと理解をしてよろしいですね。
#136
○貞家政府委員 帰化の条件につきましては、私ども常日ごろから各現場の地方法務局によく指示をいたしております。したがいまして、そういった考え方が違うということはとうてい考えられない次第でございます。
#137
○岡田(正)委員 非常に明快な答弁をいただきましてありがとうございました。
 次に難民の帰化の問題でありますが、現在の国籍法第四条でありますけれども、非常に厳しい条件を定めております。しかもその運用の実態も相当に厳しいと実はわれわれ聞いておるのであります。そこで難民の帰化の問題につきましては、いま御説明のありましたカナダ、オーストラリアあるいはアメリカなどのように三年後ぐらいには容易に帰化ができるように、ひとつ特別立法をするぐらいの配慮をしてやってもらいたいと思うが、いかがでございますか。
#138
○貞家政府委員 一般の通常の帰化におきましては、引き続き五年以上日本に住所を有することというのを基本的な条件としているわけでございます。ただ、これには例外がございまして、日本国民の夫である場合あるいは日本国民であった者の子である場合、日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所もしくは居所を有し、またはその父もしくは母が日本で生まれたもの、この最後の場合は余り実例がないかもしれませんが、そういった場合には三年、さらに日本国民の妻である場合、日本国民の子で日本に住所を有するというような場合には居住要件というものは必要とされていないわけでございます。また、日本国民の養子で引き続き日本に住所を有し、こういった者につきましては一年以上日本に住所を有しといった、小刻みにいろいろそれぞれの置かれた状態に従いまして区別を法律で設けているわけでございます。
 ただ、一般的な居住要件が五年であるというのは長過ぎるではないかということでございます。これは確かに外国におきましてもいろいろ例はございまして、先ほどお話の出ましたアメリカとかオーストラリアとかカナダとか、そういった国々においては比較的短くなっておりますが、またヨーロッパの国々の中には十年というのもあるわけでございます。したがいまして、岡田委員のおっしゃる趣旨はよくわかるのでありますけれども、この帰化と申しますのは日本に在留すること以上の何物かを持っているわけでございます。端的に申しますれば日本国民としての権利義務を取得する、こういう法的な地位を与えるわけでございます。したがいまして善良な日本国民として日本の社会に同化していただく、そういうことがおのずから必要とされるわけでございまして、そういった点を考えますると五年という要件も通常の場合にはやむを得ないのではないかというふうに私どもは一応考えているわけでございます。
 ただこれは、親族関係のあります場合につきましていわゆる男女平等の思想から国籍法の改正の検討ということに迫られているわけでございまして、そういった機会に、この男女の区別を現在設けております、つまり日本国民の夫である場合と日本国民の妻である場合と区別を設けておりますので、そういった点につきましては期間の制限につきましても若干手を加えざるを得ないのではないかというふうに考えておりますが、一般的に申しますと、帰化というものの性質上やはりある程度の期間は日本に居住をされる、そして日本に同化をされるということが必要ではないか、一応私どもとしてはさように考えでいる次第でございます。
#139
○岡田(正)委員 しつこいようでありますが、重ねてお尋ねをいたしますけれども、この帰化の条件というのは全然緩みたるみなし、いままでに一切特例なしと判断してよろしいんでしょうか。
#140
○貞家政府委員 帰化の条件の中にも裁量と申しますか解釈の余地のないものとそうでないもの、これは容易におわかりになることだと思います。したがいまして、裁量のないところについては法律がございます以上それに反した取り扱いということはいたしておりません。ただ性質上裁量が許されるものにつきましては、できる限り個々の実情に応じた運用を図っているということが私どもの方針でございますし、各地方法務局においてもさように処理がなされているというふうに理解しております。
#141
○岡田(正)委員 これはもう御存じのとおりでありますが、日本がすでに認めております世界人権規約第二条には、この世界人権規約の約束事を成就させるためには各国の中にある現在の法律をも変えていくことをお互いの国は約束しようということまで実は明記をしてあるのであります。このことを十分腹におさめられまして、時間の関係がありますのでこの質問はこの辺でやめますが、ぜひひとつ努力をしていただきたいというふうに考えている次第であります。
 それから、次に受け入れの手続について質問をさせていただきます。アメリカ、カナダなどでは東南アジアの難民キャンプに定住者を認定するために係員を常駐させて、毎日のように難民と接触をしておると聞いております。ところが、わが日本は現地の大使館任せでございまして、しかも専従の大使館員はおられぬという話であります。国連や民間のボランティア団体の取り次ぎを受けて対処するという程度でありまして、この話を聞く限り、わが国の大使館は余り積極的ではないと思われるのであります。まさに典型的なお役所仕事でありまして、難民から定住希望が出されましても実現をするまでには半年もかかるということが珍しくないと聞いております。これもやはりこういう姿勢に関係があるのではないでしょうか。難民に一日でも早く安住の地を提供しようとする姿勢が全くないと思われますが、政府の方はポーズだけでございますか。私はポーズだけと思いたくないのでありますが、こんなに長く期間がかかるというのは何かほかに事情があるのでございましょうか、お答え願います。
#142
○渡辺(幸)政府委員 お答え申し上げます。
 わが国の東南アジア諸国特にインドシナ難民が一時滞在をしている地域の在外公館についてでございますけれども、きわめて人数が限られているということがございまして、難民キャンプに常時係官を常駐させるということには無理があるという状況でございます。現実には難民から国連難民高等弁務官事務所、UNHCRと申しておりますけれども、を通じまして日本に対する定住の申請が行われた場合には大使館がこれを私ども外務本省に取り次ぎまして、日本の関係当局において審査をいたしまして、その審査の結果定住許可が与えられた場合には許可通知それから日本への入国の査証を与えるということを行っているわけでございます。
 現在インドシナ難民が最も多く滞在しておりますのはタイでございますけれども、わが方のタイの大使館では、専業というわけではございませんけれども、館員七名で難民班というのを組織いたしておりまして、館員七名を中心とした民間のボランティアの方の御協力を得て随時キャンプに赴きまして難民と面接さらには調査を行うというような体制でございまして、わが方のタイ大使館の最も主要な業務の一つとして難民問題に取り組んでいるわけでございます。
 実際に、難民の方々から日本に対する定住の希望の表明がありましてから、その後どのくらい時間がかかって許可がおりるのかということでございますけれども、書類の送付その他の手続がございまして、早ければ二、三週間という例もございますけれども、通常二、三カ月から四、五カ月かかるというのが実情でございます。
#143
○岡田(正)委員 現地の大使館で配付しているのですか、難民への手引書というのがありますね。あの中におきます定住条件というのが厳しいのじゃありませんか。簡単にお答えください。
#144
○村角説明員 本邦への定住許可条件につきましては、本邦の一時収容施設にいる難民に対する定住許可条件とアジア地域に一時滞在する難民の許可条件と二通り異なっております。
 まず、本邦に一時滞在している難民の定住許可・条件はきわめて緩いものでございまして、極端に申しますれば健康でありさえすればよろしいとまで言っても差し支えないと思います。職につくというのがありますが、職についてはお世話いたします。
 東南アジアの一時収容施設にいる難民の定住許可条件と申しますのは昨年の七月にかなり大幅に緩和をいたしましたが、しかし、それでもなおかつ実際に調査団などを派遣いたしましてもう少し緩めたらいいのではないかなという点もございましたので、関係各省いろいろ協議いたしまして、本年六月先ほど先生が御指摘になりました例の定住枠を千人に拡大しましたときにさらに許可条件を緩和いたしました。
 先ほどの難民に配付している案内書でございますかパンフレットでございますが、これは先ほど申し上げましたアジア福祉教育財団の難民事業本部が発足いたしましたときに、難民の方々に日本の定住許可条件はこうです、それから日本に来ればアジア福祉教育財団がこのように難民の方々が円滑に日本の社会に溶け込んでいただくそのお手伝いをいたします、こういうことを詳しく書きましたのを、しかし難民の方々も日本に来るからには一生懸命勉強してください、そういう趣旨を書いたものでございますが、これをこしらえまして、これをベトナム語、ラオス語、カンボジア語に全部翻訳いたしまして、最初に例のことしの六月以前のときには七月の定住許可条件を書いていたわけでございますが、六月に変わりましたら早速これをまた全部直しまして、現在配付されておりますのは、現在有効であるかなり緩和された定住条件が書いてあるわけでございます。
#145
○岡田(正)委員 いろいろと説明を聞いてまいりますると、現地の難民キャンプに、難民事業本部というのですかここの代表の方々がことしの三月と八月ぐらいに二回にわたって代表団を出して、何名かを定住の許可の認定をしたというようなことを聞くのでありますが、一体何名認定されて何名入ってこられたのか。さっき聞きますと、いわゆる入国許可というのが早いのだったら二、三週間、遅いものでも四カ月か五カ月、こういうことを聞くのでありますが、一体どのくらい経過しておるのか。実際には何カ月も音さたがないというのを聞いておりますので、あと個々の具体的な例のときにお話をしますが、一応概括をお話しください。
#146
○渡辺(幸)政府委員 お答え申し上げます。
 インドシナ難民の定住促進の業務を私ども政府から委託させていただいておりますアジア福祉教育財団は、先生御指摘のとおり東南アジア六カ国に対して定住条件適格者調査団というものを派遣しております。本年に入ってから二度派遣しておりまして、最初は二月から三月にかけて東南アジア五カ国に調査団を五班に分けて派遣しております。定住希望難民と面接をいたしまして百六十九件、四百五十三名が日本における定住に該当する可能性があると認められました。可能性でございます。それから引き続きまして八月から九月にかけて東南アジア三カ国に対して三班に分けて派遣をいたしました。この際は八十二件、二百三十五名が同様に定住条件に該当する可能性があると認められたわけでございます。この結果、この調査団の派遣によりまして定住促進事務が大いに促進・されたと私ども考えております。
 具体的に第一次調査団の四百五十三名それから第二次の二百三十五名の中ですでに定住許可がおりた者がどの程度かというお尋ねでございますけれども、この点については、非常に申しわけないのですけれども、種別が非常にむずかしいために大体の概数といたしましては八〇%から九〇%は許可されたと考えております。ただ、わが国で定住許可を通知いたしましても、第三国に対する定住許可がおりている関係で実際に日本に参って定住をされる方は若干といいますかかなり少なくなっておりますので、この七百人前後の方々の中で日本に定住される方ということになると、五割から六割ではないかと考えております。
#147
○岡田(正)委員 それでは時間の関係がありますので次に入らせていただきます。
 ことしの七月、「在日インドシナ難民を救う法律家の会」というところに在籍をしておられます六人の弁護士さん、きょうお見えになっておると思うのでありますが、笹原さん、池田さん、野本さん、村上さん、住田さん、伊藤さん、その六人の人と、慶応大学の小松教授が、恐らくお見えになっていると思うのでありますが、現地で合流をいたしまして、タイの東部の町ウボンの難民キャンプにおきまして二十八歳のアノン・ナコンタップさんに出会っておるのであります。このアノンさんというのは、四十八年の四月から五十二年三月まで四年間慶応大学の医学部で附属厚生女子学院に留学をいたしまして、看護婦教育を受けたりっぱな人であります。政変後のラオスで農業をしておりましたが、父も夫も旧政府の軍人であったために国外逃亡をことしの二月計画、メコン川を渡りますときにラオス軍の一斉射撃に遭いましてタイに着いたときには夫の姿はすでに船の中になく、乳飲み子の長男一人を抱えて難民となった人であります。八月十六日定住の許可が出たのでありますが、なかなか入国の許可が参りません。そこでやきもきしておったのでありますけれども、昨晩連絡を受けたのですが、やっとこさ三カ月たって十一月三日入国してよろしいということになり、昨日の新聞でも御承知のとおり大きく報道されております。おくればせではありましたけれども、この間の当局の皆さんの御配慮には私も心から感謝を申し上げる次第であります。
 そこで、新聞に出ておる限りでは妹さんも来ておるのではないかと思うのでありますが、この人にはスウィマンという妹さんもおられたはずであります。その妹さんがどうなったかを一緒にお聞かせいただきたいと思います。
 それからいま一つ、タイのノンカイキャンプにおられます二十四歳のナン・カミンさん、これはラオスの難民でありますが、すでに入国の申請を出しておるのでありますけれども、いまだにおりていないという話であります。この方の弟さんはすでに特別在留許可をもらいまして日本におられるわけでありますが、このナン・カミンさんは入国を認めるのかどうか。余り日にちが長過ぎるのでありますが、何か障害があるんでしょうか、その点をお聞かせいただきたいと思うのであります。
#148
○小杉政府委員 先に申されましたラオス人のアノン・ナコンタップさん、この方の妹さんにつきましてもお姉さんの方と同じ日付で定住を許可いたしまして、おととい十一月三日に妹さんもわが国に入国しております。それで、里親である在日関係者のところに落ちつかれた上、近々神奈川県の大和市にございます定住促進センターに入られるというふうに伺っております。
 それから二番目のラオス難民のナン・カミンさんでございますが、この方に対しましても、この方の弟さん並びに妹さんを含めて計三名に対しましてすでに十月十五日付で定住を許可いたしておりますので、いずれ近く入国してこられると考えております。
#149
○岡田(正)委員 ちょっと素人的な質問をいたしますが、十月十五日に定住の許可を出された、これはいまわかりました。定住の許可が出たということは、もう直ちに日本に入ってきてもいいということでございますね。
#150
○村角説明員 お答えいたします。
 東南アジアの一時収容施設にいる難民の方に定住許可が出まして、これが大使館を経由して国連難民高等弁務官事務所を通じましてそのキャンプに連絡されます。そうしますと、その方がそのキャンプの施設の責任者を通じて連絡してくるわけです。ただし、もう一つ健康診断がございまして、これにはタイの場合ですとバンコクの近郊にございますチョンブリのセンターにその方が来てそこでICEMという団体のお世話によりまして、わが方が提示いたしました健康診断がいろいろございますが、これをいたしまして、その上で今度はフライトの手配を同じくICEMがしてくれまして来る、こういう手順になります。
    〔山崎一武一委員長代理退席、青木委員長代理着席〕
ですから、定住許可になりますと、そういう一応の手続を踏んで健康であるということが証明されると来られるということになります。
#151
○岡田(正)委員 ありがとうございました。ナン・カミンさんの件につきましても非常に安心をいたしました。
 ただいままで三点にわたりまして、主として国外にいらっしゃる難民の方について質問をしてきたのでありますが、次は、国内におりますところの難民あるいは俗に流民と言われております方々の処置について質問を申し上げていきたいと思います。
 国内には、流民と呼ばれるインドシナ出身の不法残留者すなわちビザ切れの人でありますが、この人たちは一体何人くらいいらっしゃると推定しているのでありますか。
#152
○小杉政府委員 この問題ははなはだお答えがむずかしいのでございますが、インドシナ三国での生活歴を有しているかどうかということが判明いたしますのは、不法残留をしていることが発覚いたしまして実際に摘発をして違反調査をする結果わかってくるということでございます。その摘発される前につきましては、実は確認の方法がないわけでございます。不法残留者でございましても、摘発をされていない限り本邦に潜在しておる者が一体何名おるか、これは実は私どもとして確実に把握する手段が全くないのでございます。
 ただ、私どもが持っております不法残留で現に摘発された方の中にインドシナ三国出身者が大体何%くらいおるかということは統計的には類推できるわけでございまして、現在における不法残留者の総数は私どもつかまえることができますので、それにその比率を掛け合わせますとある程度の推定はできるわけでございます。その推定をいたしましたところでは、約二百名くらいではないかという数字が出ておるのでございますけれども、これは先ほど申し上げましたとおりあくまで推定でございまして、確実な明確な根拠があるわけではございません。
#153
○岡田(正)委員 いま推定約二百名くらいいらっしゃるんじゃないかというお話でありますが、彼らに対する政府の取り扱いといたしましては、まず入管令違反それから外登法違反で逮捕いたしまして刑事裁判にかける。その後は俗に言う赤いスタンプをパスポートに押しまして犯罪者扱いの国外追放ということになります。その間保釈などは許されませんし、本人は拘置所や収容所に入れられっ放しという状態であり、仮放免もありません。インドシナ三国以外のパスポートを持っていたということだけで、一般の犯罪者でもありませんのに、形式犯であるのにこういう処置は実に冷たい、むごいと思うのであります。彼らはなぜ難民と認定ができないのでありましょうか、その点をお尋ねいたします。
#154
○小杉政府委員 ただいまの先生の御質問の中にも難民とか流民というような言葉が出てまいりましたが、この難民、流民という言葉については実は明確な定義があるわけではございません。
 したがいまして、非常に不明確な定義のもとに議論いたしますとやたら混乱が起こるおそれがございますので、私どもなりの一つの理解で申し上げますと、いわゆる流民という方たちは、かつてインドシナ三国に現に生活歴を持っておられた方である。インドシナ三国の政変前後にそこから恐らく難民として脱出された方である。しかしその後台湾あるいは香港あるいはタイというような第三国に赴きまして、そこで定住を認められる。その後、どういう理由であったかは別といたしまして、恐らく想像いたしますのに、地縁、血縁をもとにいたしまして、台湾あるいはタイあるいは香港の政府から旅券の発給を受ける。しかる後にその旅券を持って観光ビザでわが国に正規に入国してきて、在留期間を超えて不法残留してしまった。そういう方がいわゆる流民と言われておるのではないか。これに対しまして難民と申しますのが、いわゆるボートピープルあるいはタイやシンガポールないしは香港の難民収容所に収容されておりますいわゆるランドピープル、こういう人たちを総称して難民と言い、流民とは先ほど申し上げましたように第三国旅券を持ってわが国にその正規の入国をした上で不法残留した者、そういう区別があるのではないかというふうに考えるわけであります。
 それで、この両者を比較してみますと、確かに先生御指摘のとおりに、かつてインドシナ三国に生活歴があって非常に難民性が強いという点の共通性はあるわけでございますが、流民につきましては、現在インドシナ三国以外の国たとえば台湾であるとか香港であるとかあるいはタイであるとか、その国の旅券を正規に入手して、その旅券発給国の国籍を有する者すなわちその国の国民としてわが国に入ってきておるわけであります。それでこの人たちは、旅券発給を受けたその当該第三国におきまして、難民問題でよく使われますいわゆるファーストアサイラム、最初の庇護というものをすでに得ておられる。それに対してボートピープルあるいはランドピープルの皆様方は、いまだかつていずれの国からもその種の庇護を受けていない、その点が非常に大きな義異になるということでございます。
 ちなみに、たとえ難民でございましても、いずれの国かの保護のもとに一たん入りますと、その時点からその方の難民性というものは失われるというのがいまの国際的にも承認された解釈であり慣行であるわけでございます。そのような意味で、流民の場合には母国を脱出した後たとえば台湾で定住を認められた、実はその時点でその方の難民性というものはすでになくなっておるわけでありますけれども、ましてや台湾政府が正規に旅券の発給を行ったということは、台湾政府がその方を自分の国の国民であると認めたからこそ旅券を発給しておるわけでありまして、自国民として保護するのだということを世界に向かって公約しておるというのがこの流民のステータスになるわけでございます。その意味で私どもは、これは難民ではないというふうに考えておるわけでございます。
    〔青木委員長代理退席、木村一武千代一委員長代理着席〕
 ただ、ただいま申し上げましたような流民の方々の中には、正規に旅券を取得したのではなくて、他人の戸籍謄本のようなものを冒用されて他人になりすまして旅券を取得されたというような事案もあるようでございます。このような事案につきましては、確かに旅券発給国の国民であると認定するわけにはまいらないわけでございますので、このような人たちについては、私どもといたしましても事案ごとに慎重に検討した上でしかるべき特別の措置を考えたいというふうに思っておるわけでございます。
#155
○岡田(正)委員 よくわかりました。
  いまお話がありましたように、ひとつ穏やかに処置をつけてもらうと大変ありがたいのであります。考えてみましても、日本へエアピープルとして飛んでこようといたしますと、どうしてもやはり金でパスポートを買わなければ飛行機に乗れません。そういうことで偽名を使ったりなんかいたしまして、大金を投じてパスポートを手に入れて日本へ飛んでくる。それが観光ビザで入りましても結局期限切れというようなことになって不法残留というそしりを受けるのであります。いずれにしても、そのパスポートを何で手に入れなければならなかったかという背後の事情を政府といたしましても十分に考慮をしていただきまして、生活歴を十分調べた上で、もう難民は難民に間違いないわけでありますから、政府の方も血の通った御判断をいただくように特に強調しておきたいと思うのであります。
 次に、具体的な例に入らせていただきます。大臣のお手元にビニールの袋に入りました三枚の写真があると思うのであります。この三枚の写真の説明を先にさせていただきますと、裏にちょっと書いてありますからわかると思いますが、これは昨年の暮れのクリスマスパーティーを、国際連合の会事務局長の小松秀子さん、きょうお見えになっておるはずだと思うのでありますが、その方たちが三笠宮殿下あるいは妃殿下と非常に御親交が深うございまして、そういう会を毎年一回クリスマスに開いておるのであります。その席には、お亡くなりになりました大平総理の代理といたしまして官房副長官がお見えになったり、あるいは大来外務大臣の奥様がお見えになったりいたしまして、それぞれりっぱな方々から励ましの言葉をいただいて難民の諸君を慰めてやるというようなことをずっと続けていらっしゃる会であります。
 この立ち姿の五名並んでいる分で言いますと、一番向こうの紫色を着ておるのが、実はいまからお話しいたしますリン・レイケンという女性であります。年は二十歳でラオスの難民であります。そのお隣が三笠宮妃殿下であり、真ん中が三笠宮殿下でございます。それから次の、テーブルに着いて何か花をもらおうとしておるような写真がありますが、三笠宮妃殿下に花を差し出そうとしておる紫色の着物を着た人がリン・レイケンさんであります。三笠宮妃殿下のすぐお隣に座っていらっしゃるのが小松秀子事務局長でございます。あとは皆さん方と記念写真を撮った立ち姿でございます。こういうふうにしてリン・レイケンさんは昨年の暮れのクリスマスは非常に楽しく暮らしたのであります。
 この女性はお医者さんの娘さんでありまして、家族がばらばらになってラオスを逃亡したのであります。メコン川を渡りましてタイへ渡り、そこから台湾へ逃げ、さらに台湾のパスポートをもらって日本へ来た。これは二、三年前の話であります。ビザが切れるときに、帰ろうにも帰る旅費もなく、また不幸にいたしまして同じ時期に父親が死亡したというようなことがありまして、バンコクに残しておりますお母さんや弟や妹あるいは台湾におりますおばあさんの生活費を何とかしなければいかぬというので、本人がこの東京におきまして一カ月食費全部込めてわずか二万円で生活して、残ったお金を全部送金をしておったのであります。結果的にはビザ切れで不法残留者ということになったのでありますが、この人のお母さんがバンコクで倒れまして、倒れた拍子に頭を打った。意識不明に陥ったからすぐ帰ってもらえないかということを実は台湾のおばあさんが聞いたのであります。その台湾のおばあさんから友人の学生が聞きまして、本人の方に連絡がありましたので、本人は小松秀子さんたちのお世話どりで十月七日成田の入管へ出頭したのであります。成田の入管では、まことに人道的な穏やかな取り調べをしていただきまして、一晩そこへ泊められただけで翌日十月八日、台湾へ出国することができたのであります。
 そこまではよかったのです大臣、ここまではいいのでありますが、悪いことに出国をするときにさっき言いました赤いスタンプ、国外強制退去という赤いスタンプをぺたっと押されますので、台湾へ着いた、着いたところが、相手の方では、これは日本で赤いスタンプがついた、犯罪人だ、どんなどえらい悪いことをしたのだろうかということになりまして、疑われて、ついに台湾へ着いたもののタイ国へ渡ることができません。出国することができなくて困っておるということを、先月の二十九日に小松秀子さんらが聞いたのでございます。
 このことで小松さんを初めとする皆さん方が大変心配をいたしまして、電話で問い合わせをいたしました。しかし、いまだに赤いスタンプのおかげで出国ができません。お母さんは病気で寝ておる、手術をすればあるいは治るかもしれぬと病院のお医者さんは言ってくれる。だがしかし、下手をすると死亡することもあり得るので、何としても責任のある家族の立ち会いが必要と言われるのでタイへ飛んでいこうとしたのに、実は本人が現地に行かれませんので、病院も往生いたしまして手術はできぬ。向こうにおるのは弟さんや妹さんですから途方に暮れてしまったという状態でありました。
 ところが関係者の御努力で、十一月六日付で台湾からバンコクヘようやく出国することができたと、これも昨日の晩朗報が届いたのであります。どういう理由で出国させてくれるのか知りません。しかし、本当にむごい話ではありませんか大臣。私はかわいそうだと思いますよ。その写真を見てください。この人が悪いことをするような人間でしょうか。この紫の服を着た女性を見てください。
 ここで皆さんに聞いてもらいたいのは、出国させるときに赤いスタンプを押していなければこんなことは起きなかったに違いないのであります。私は非常に悔やまれてならぬのです。ただ法や規則をしゃくし定規におやりになる、それは間違いのないことかもしれません。だがしかし、そのことによって人間の一生を誤らせ、あるいはひょっとしたら死に目に会えないかもしれないのであります。こういうむごいことを私はしゃくし定規にやるべきではないと思うのです。
 このリン・レイケンさんだけではありません。日本におってもやはり不法残留というので逃げ回って、あっちのすみ、こっちのすみと、寝るところがない、夜は勤めて昼間国鉄の山手線に乗って、何遍乗ってもただですからそれに乗って睡眠をとって疲れをとっておるという人たちも多いのであります。そういう人たちが日本に滞在することをあきらめて、失望して日本を出ていこうとして、成田あるいは品川の東京入管へ行きます。行ったら直ちにとっつかまってそこで収容されます。出たいと言っても出してくれません。何でこんなに何日間も勾留するのですか。これが実例です。
 それで、いまお尋ねしたいと思うのですが、成田あるいは品川、この両方の入管では、みずから日本を出ようとする人を一体何日ぐらい泊めるのか、その勾留する日にちを教えていただきたいと思います。
#156
○小杉政府委員 ただいまの先生の御質問の御趣旨は、いわゆる自費出国でみずから早く出ていきたいと言っておる人を何日泊めるかというお話だろうと思うのでございますが、そのようなケースにつきましての統計というものは実は私ども持っておりません。ただ、先ほどのリン・レイケンさんですかのケースにも、ございますように、私どもといたしましては、不法残留をした者であっても、出国の意思を持って現実に飛行場にあらわれてこられるような外国人の場合、これを十日も二十日も泊めおくということは一般的にいたしておりません。先ほどのケースのように一泊で出すというケースが多いわけでございます。
 ただ、ただいまのお尋ねの点と必ずしもそぐわないのでありますけれども、成田と東京の各事務所について申し上げますと、成田におきましては、一人当たりの平均収容日数というのは三日間になっております。それからさらに東京入管事務所の場合では約八日間でございます。
 事務所によりましてこれだけ格差があるということは、それぞれの事務所が取り扱っております違反事件の数と質、さらには調査あるいは審査担当官の数、それの相関関係によって長短が出てくるわけでございますが、東京入管の例をとりましても、統計的に申しまして、一昨年五十三年におきましては平均で十・〇九日、それが五十四年には九・〇二日、さらにことしの一月から六月までを見ますと七・五四日というふうに漸減しておるわけでございます。
 ただし、この数字にとらえられております違反者は、先ほど先生がおっしゃいましたような、いますぐこれから出国するから勘弁してくれというタイプの人のほかに、たとえば偽造旅券を持って入ってきた人であるとか、あるいは本邦において資格外活動をやっておった、その違反調査をやらなければならない、そういうもろもろの違反者が入っておるわけでございますから、平均日数がやや長く見えますけれども、先生がおっしゃっておられるようなケースについては比較的早期に出国を認めておるというのが実情でございます。
#157
○岡田(正)委員 大分はっきりしてまいりました。
 それでは、くどいようでありますがもう一度念を押しておきますけれども、たとえば偽造のものを持っているとかあるいは犯罪を犯しておってそのまま出国しようとしているとか、そういう特殊なケースだったら、それは何日も泊めなければならぬと思いますけれども、自分が自分の意思で日本の滞在をあきらめてどこかの国へ出ていこうとする場合、これはその日一日泊まるだけであって、それ以外のものは何も考えていないということは本当ですか。はっきりした返事をもう一度願います。
#158
○小杉政府委員 これはすべてのケースがそうであるということを断言することはできませんけれども、たとえば出国の意思表示があった、あったけれども日本に在留している間に明らかに犯罪が行われていたとか、あるいはその方が入国するに際してある種の手引きと申しますか国際的な手配師というようなものが介在しているのではないかと疑われるようなケース、そういうようなものについては、もちろん私どもとしては十分な取り調べをいたさなければならないわけでございまして、一律に常に一泊させたら必ずお帰しするということをお約束するわけには実はまいらないわけでございます。
#159
○岡田(正)委員 ちょっとくどいようですが、もう少し具体的なことを聞かしてください。
 自分の意思で日本滞在をあきらめて出ていこうとする人が入管へ出頭したときに、何日も何日も、われわれから言うたら不必要に長い間泊めておいて、そこで調べる内容で――これは推定ですよ、私はその中をのぞいたわけではありませんから推定でありますが、おまえが出ていくのは構わぬ、そら出ていけ、それで赤いスタンプはわざわざ押しておいてやると言うて、赤いスタンプだけは忘れぬように押して、そして今度その本人は向こうへ行ったら犯罪者扱いになることは知っておりながら、みずからの意思で出ると言っているのに、赤い判こをわざわざ押して、その上で聞いていることは何かといったら、おまえ、どこへ住んでおったのか、どういう友達がおるのか、どういう連中がおるんだ、どこへ働きにいっておったのか、その友達はいまどこにおるのか、何をしておるか、何歳か、どういう人間か、それを言わなければ日本を出さないぞという取り調べはしておらぬかどうか。私は、そういう取り調べをする権利は何もないと思う。どういう法律的な根拠があってそういうことをおやりになるのか、私の推定ですから、気にしないで答えてください。
#160
○小杉政府委員 先ほど来赤いスタンプのお話が大分出ておりますので、まずその点についてお話し申し上げますが、わが国の現在の入管令の二十四条、ここに退去強制事由というのがいろいろ書いてございます。この退去強制事由のいずれかに該当して本邦から退去強制されました者は、本邦から退去した日から少なくも一年間はわが国に入国することができない、そういう規定が今度は別途入管令の第五条に書いてあるわけでございます。
 私どもが退去強制をして成田から出国される方について判こを押しておりますのは、これらの被退去強制者がこの一年の期間の間にトンボ返りで帰ってくる可能性というのがあるわけでございます。それは私どもは、別途いわゆる入審リストという退去強制を受けた者を入国の際にチェックするリストをつくって防遏に努めておるわけでございますけれども、とのリストをつくりますのにも一、二カ月の期間がかかる、そういうことが。ございますので、やはり何らかの目印がないと、要するに退去強制された者とそうでない者との区別がつかないわけでございます。そのために私どもとしては、本邦へのいわゆるトンボ返り入国というものを防止するための措置の一環といたしまして、当該本人が退去強制された者であるという旨を示した赤いスタンプをその旅券に押している、これは事実でございます。
 ただ、これはすべての被退去強制外国人に対して全く平等に適用しておる措置でございまして、先ほど来先生がおっしゃられておるように、好んで退去強制者を犯罪者扱いにするというような恣意的な措置ではございません。この点は十分御理解をいただきたいと思います。ただ、先ほどの先生が御指摘になられましたケース、これについてはまことにお気の毒だったと心から御同情申し上げますけれども、私どもといたしましては、この赤いスタンプを押さざるを得ない行政上の必要があるわけでございます。
 さらに次の点でございますが、私どもといたしましては、外国人の入国に関しまして公正な管理を行うことを職務としておるわけでございます。一人の不法残留者があらわれて、その不法残留者が外国に出国するということをみずからの意思で名のり出てきた場合におきましても、やはり将来にわたって公正な入管行政を維持していくためには、ある程度外国人の在留実態というものをそういうような機会に把握するのは当然の行政上の必要から出るものでございまして、あえて法的根拠云々というようなことを必要とする問題ではないというふうに私は考えております。
#161
○岡田(正)委員 わかりました。大分はっきりいたしましたが、それでは、時間がありませんので希望だけ申し上げておきたいと思います。
 このいまの赤いスタンプというのは、これこれの事情によってやむを得ず、リストをつくるのにも時間がかかるので、めんどうくさいからスタンプを押しておるんだ、今度はそれを持って入ってきたらすぐわかる、こういう事務上の関係でおっしゃっておるわけでありますが、こういうところで私は、たとえば人道上の配慮から、一年間だけ入国を拒否するというのであれば、何も赤いスタンプでぱかっと押さなくても、このごろは特殊螢光塗料なんかもあるわけでしょう。そういうもので、よその国で何かなというわからぬようなものを、本人の人格を尊重するような方法で、ひとつスタンプ以外のものを御利用になったらいかがであろうかというふうに考えるのであります。
 それから出るときに、こういうことが二度も三度もあってはいかぬので、いろいろなことを問いただすのはあたりまえのことである、別に法的根拠はない、こういうことをおっしゃるのでありますが、私は、この出ていく人が犯罪者なら、いま御説明のあったことは納得をいたします。だけれども、パスポートでビザ切れになったといういわゆる形式犯ではありませんか。何も犯罪を犯していない人を何日も何日もとどめておいて、しつこく仲間のことを聞いていくということは、これはまさに人格の無視ですよ、人格を無視していますよ。そんなものを本人が言えるわけないじゃないですか。自分だけ日本から出るんだから残った仲間はどうなってもいい、知っちゃいないというようなことが言えますか。そういう人間が人間を背くようなことを無理やりさせるべきではないと思うのであります。これはまた機会を得て、別のときにさらにお話をさせていただきたいと思うのであります。
 次の問題に移らせていただきます。それでは次に、具体的な流民のケースについて質問を申し上げます。二人質問をいたします。
 第一の人はアンポパン・プーゲンという人であります。これはちょっと大臣に見ていただきます、これが悪いやつか悪いやつでないか。ただいま大臣にお手渡しをいたしましたが、その写真の男がラオス華僑で二十五歳のアンポパン・プーゲンという青年であります。この人は本年の一月三十日川口署で検挙されまして、翌三十一日東京入管へ身柄を送致されました。三月十九日台湾へ退去強制令が出ました。四月二十五日執行停止の申し立てをいたしまして、六月二十七日に地裁で執行停止決定が出ました。
 この人は、過去にラオス旅券で日本に入った経歴があり、現在台湾とラオスと両方の旅券を持っておるという人であります。この人は非常にまじめでありまして、大臣のお手元にあると思いますけれども、収容所の中で、きょうお見えになっておると思いますけれども、弁護しておられます野本先生のところへお出しになった手紙であります。大臣、これは外国人が書いた手紙と思いますか。はなはだ情けないことながら、日本の最高学府を出た人の中でも、先生元気でおられますかという葉書を書いたときに、元気でおられますかのおられるという字を木の枝を折るという折るを書いておる人もあるのであります。そういうことに比べてみたら、日本の学問を一つも受けていないこれがラオス青年の手紙なんですよ。実にりっぱなものではありませんか。そして日本語もぺらぺらでございます。
 ところが、この人が一月三十一日に収容されて以来、実はきょう今日もまだ収容所に入っているのです。大臣、何カ月だと思いますか。九カ月たっているのですよ。これはやっていることがおかしいんじゃないでしょうか。しかも、お父さんやお母さんやきょうだいの人々は国連からラオスの難民に間違いないよといってちゃんと認定を受けていらっしゃるのです。そのずらっと並んだ十人の人、たくさんおるでしょう、それ全部きょうだいです。その人たちはみんな難民と認定されているのですよ。そんなことがわかり切っておるのに、なぜ仮放免をしていただけないのでしょうか、その点をお聞きしたいのであります。
#162
○小杉政府委員 先ほど先生がおっしゃいましたように、この方は昭和四十九年と昭和五十年の二回にわたってラオス旅券で日本に入国しておられるわけであります。しかしその後、日本から昭和五十年の八月に台湾へ向けてお帰りになられた。一年間台湾に在留した後昭和五十一年の七月に、林静という名義の台湾の旅券を正規に取得されて、その台湾の旅券を持ってわが国に入国してこられた。これが五十一年七月二十八日に入国しておられます。この方は六十日、二カ月の在留期間を与えられて滞在しておったわけでございますが、その後昭和五十一年九月二十六日を超えまして不法残留して、結局四年後の五十五年に警察に検挙されたということで退去強制令書の発付を見るに至ったわけでございます。
 先ほど来私が申し上げておりますように、正規の台湾旅券を台湾において入手した上日本に来られた、その方が日本の入管令に違反されて不法残留をした、その結果として退去強制手続をとられる場合には台湾に送り返すのが筋である、これは私どもの基本的な考え方でございます。しかるところ行政訴訟が提起されまして、結果的に裁判所から送還部分についてだけ執行停止の決定があったということで、現在収容が続いておるわけであります。しかしながら、そもそも私どもが退去強制令書を発付するということは、その外国人が日本に在留することを法律的に否定したということを意味するわけでございまして、要するに日本にいてはならないという決定を政府が行った方、その方についていま裁判が提起されたわけでありますが、現在のところ、裁判所が送還部分の執行停止をしたということで、直ちにこれが仮放免の許可につながる性質のものではないわけでございます。これは、場合によってはあと何年になりますか、かなり長期にわたって、少なくとも裁判の結果が出るまで収容を続けることもあり得るタイプの方になるわけでございます。その点については誤解ないようお願いいたしたいと思うわけでございます。
#163
○岡田(正)委員 御説明になることもよくわかるのでありますけれども、ちょっと私も不審に思う点がありますので、さらに突っ込んだ質問をさせていただきたいと思うのであります。
 この件につきましては当初、刑事裁判手続、これはもう通例行われておりますね、それを省略されまして直接入管の方の手続を執行されました。しかし、退去強制令書発付に対する処分取り消しの行政訴訟を起こしましたら、法務当局は外登法違反で略式起訴をしてきた。これは一体なぜですか。一番最初に刑事裁判の手続を省略しておいて、そしてこの行政訴訟を起こした途端に、今度はまるでしっぺ返しのように外登法違反で略式起訴をしてきた。これは一体どういうわけなんでしょうか、お答えください。
#164
○小杉政府委員 これは、五十五年の一月に川口警察署が検挙をいたしましたときに、外国人登録法違反の容疑で検挙いたしておるわけでございまして、刑事手続はその時点から始まっておったのだというふうに私どもは理解しております。
#165
○岡田(正)委員 それでは時間がありませんので次の問題に移らせていただきますが、それにしても、いま御説明のあったことが全部真実だといたしましても、要は形式犯でございましょう。形式犯であり、しかも本人がわが日本において証拠隠滅を図るおそれも全然ないわけでしょう。証拠隠滅もできもしない。であるのに、なぜ保釈ができないのですか。いまのお話によれば、裁判の行き方によっては何年この問題が係争して続くかわからぬというお話でございますが、その間全然保釈をしないつもりですか。形式犯である、証拠隠滅のおそれもない、できるはずもない、であるのになぜ保釈ができないのでしょうか。
 さらにいま一つ申し上げておきたいのは、刑事裁判ですら執行猶予がつくような事件におきましては、裁判が始まったら日本人のケースだったら当然保釈をされておるではありませんか。どうしてずっと何カ月も何カ月も、いま九カ月になりますが、収容しておかなければならぬのでしょうか、そういう点がいま少し人間的な扱いができぬのかと思うのであります。ぜひともひとつ仮放免をしていただきたいというふうに思うのでありますが、再度お答え願います。
#166
○小杉政府委員 先ほども申し上げましたけれども、退去強制令書を発付されました外国人というのは本邦での在留を否定された者でございます。これを仮放免いたしまして町の中に放すということは在留を再び認めるということに相なるわけでございます。そこらの点がございますので、私どもは、強制令書を発付された外国人については、本邦外に送還する時期まで入国者収容所あるいはその他の収容場に収容するという原則をかなり厳格に堅持しておるわけでございます。
 しかしながら、収容というものが今後さらに長期にわたるというようなことで仮放免すべき理由というものが新たに生じてまいりますれば、その段階で私どもとしても仮放免の問題を考えるということは事実でございまして、未来永劫に入れておくというようなことを言っておるのではございません。
#167
○岡田(正)委員 それではアンポパン・プーゲンさんのことにつきまして、再度くどいようでありますが要望をしておきます。
 いま私も説明をし、あなたからも御説明がありましたよう、本件につきましては地方裁判所におきまして国外へ退去するという退去令についてはその執行を停止されておるわけですね。停止されておるわけでしょう。言うなれば執行猶予でございましょう。そういう状態にあるときに、日本人なら当然仮放免ということがあってしかるべきであるのに、異邦人なるがゆえに、外国の人であるがゆえにこの人は出すわけにはいかぬという考え方、これは法律的に詰めていけばそれも正しい理論かもしれません。だがしかし、余りにもしゃくし定規ではないでしょうか。九カ月も収容するなんということは余りにひどいですよ。形式犯というような人に対して与えられるべき罰ではありませんよ。その点を強く大臣にも聞いておいていただきたいのです。ぜひひとつ御考慮をお願いしたいと私は思います。
 さらにいま一つの具体的な問題でありますが、チャン・メイランさんであります。これは大臣も皆さんも新聞でことしの四月ずいぶん大きく出ましたので御存じであろうと思うのでありますが、きょうこちらにお見えになっているはずだと思うのであります。あの黒い服を着た向こうから一番上段の金髪の人の隣がチャン・メイランさんのいいなずけで在留許可をいただきましたタウ・ミン君です。タウというのは、聞いてみたらミスターという意味だそうであります。そのいいなずけの隣におる女性が話題の人チャン・メイランさんでございます。このチャン・メイランさんのことでありますが、実は、何で本人に傍聴のところへ来ていただいたかと言いますと、チャン・メイランさんの御希望もありまして、日本は正義の国だから必ず私を助けてくれるに違いないと言って常々叫んできた彼女、それが日本の法律の元締め役である一番偉い人、その人の顔はぜひ見ておきたい。それで、しかも奥野さんという人は信念の人であり正義漢だ、人道主義の人だということを聞いている。ぜひひとつ顔を見せていただきたい。ほかのところで見ることができないから、きょうは特別に傍聴させてもらいたいと言うので、実は彼氏と一緒に来ておるような次第でございます。
 このチャン・メイランさんは、大臣お忘れかもわかりませんが、一九七五年ラオスの政変におきまして一家が離れ離れとなり、女友達お二人と小舟に乗りましてタイへ脱出をいたしました。一九七六年の九月、タイのパスポートをお金で買いまして香港へ行き、その香港の難民収容所におりましたお母さんやお姉さん、弟と再会をいたしましたけれども、そこに入ることができず、一人で台湾へ向かい、そこで同地の学校にも入れてもらえず、友人を頼って一九七七年の七月に日本へ来たという人でありまして、この人は全く帰る国はありません。帰ったらラオスで迫害を受けるあるいは殺されるかもしれないという家に生まれておる人でございますので、帰る国がない。そこでメイランさんはレストランでパートタイマーなんかをして昼も夜も働いて、いま言うように一カ月二万円くらいの生活をして、そしてそれをみんな兄弟のために仕送りをしておったという感心なお嬢さんです。ことし二十一歳です。このチャン・メイランさんが一九七九年、去年の十月十三日西新井におきまして逮捕されました。そしてことしの四月二十三日、大ぜいの人の手助けによりまして仮放免となって現在に至っておる話題の人なんです。
 その人のことにつきまして私はお願いをしたいのは、法務大臣の権限でぜひとも特別の在留許可を認めてやっていただきたい。そこにもおつけいたしましたけれども、こういう国連の難民証明書、これはチャン・メイランさんの難民証明書であります。この難民証明書もあるわけでありまして、国連からさえ認定されているのですから、日本の政府もぜひとも、それは入るときの手続その他。パスポートのビザ切れ、いろいろな問題があるでしょうけれども、ぜひともひとつ特段の御配慮をいただきまして、大臣の特別の在留許可をいただきたいと思うのであります。私は、国連の認定こそ尊重すべきものではないかと思うのです。しかも、同じラオス難民できょう来ておられる隣のタウ・ミンさんを含む四名の人たちは、ことしの四月二十一日付をもちまして特別在留許可が大臣からおりておるのであります。どうぞ大臣の格別の御配慮をお願いしたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
#168
○小杉政府委員 大臣の御答弁に先立ちまして一言申し上げます。
 この方につきましては、現在刑事裁判が続行中でございます。先ほど先生が申されたやむなくタイで旅券を買ってという点あたりも裁判所で大いに争われておるところでありまして、私どもとしてはタイ国政府に正式に確認をしたところ、この旅券は正規に彼女に対して発給されたものであるという確認などもとっておるわけでございまして、いろいろ争点はあるわけでございます。少なくとも、第一審におきましてはセロ・ソム・シーというお名前で入っておられるわけでありますが、この方の難民性というものは裁判の過程では否定されたところでございますけれども、国連難民高等弁務官事務所からの配慮要請もございますし、また現在刑事裁判が係属中であるということもございますので、その帰趨を見きわめた上で、私どもとしても慎重な配慮をしたいというふうに考えておるところでございます。
#169
○岡田(正)委員 御説明はよくわかるのです。御説明はよくわかりますけれども、お互いにわかった話とわかった話をするから物がわからなくなるのでありまして、どっちかがわかった話をして、どっちかがわけのわからぬことを言ったら、話はきれいに片がつくのであります。両方ともわかった話をしておるわけでありますから、どっちも大人の話をしておるわけで、ぜひ私が御勘考を大臣にお願いしたいと思いますのは、先ほど申し上げた一点です。お手元に差し上げておりますチャン・・メイランさんは難民に間違いありませんと国連は認定いたします、国連のこういうものまで出ておっても、なおかつ日本は難民と認定をしない、在留許可をおろさないということになると、私は大変な問題であろうと思います。ぜひともひとつ考えていただきたいと思うのです。
 私は、ここで実は法務省から出た申立書の問題につきましても十分この点真意を確かめたいというふうに思っておるのです。大臣のお手元に差し上げたこの申立書の中で三カ所に赤い線を引いてあります。この問題についても、一体国連から難民という認定を受けようと受けまいと、そんなことは日本の政府に何の関係もないや、こんなことが平気で出ているのですよ。こんなことがあっていいのですか。私はとんでもない話だと実は思っておるのであります。時間がありませんから、その問題についてはもうこれ以上申し上げることはやめにいたします。大臣の特別の御審査をお願いしたいと思うのであります。
 そこで、これは奥野さんにお尋ねをしたいと思うのでありますが、難民条約の批准の問題についてであります。外務省の方からもお答えをいただきたいと思いますが、伊東外務大臣、これは前の大来さんもそうでございましたが、条約の批准承認の案件を次の通常国会に提出したい、常にこう言っていらっしゃるのであります。そういう意向を明らかにしていらっしゃいますが、外務省の腹づもりは一体どうなんでしょうか。そして法務大臣は、自分の担当以外のことであっても思ったことをずばっとおっしゃる非常に気持ちのいい人であります。私が好きな人です。大臣は、この難民条約の批准の問題を内閣の一員として一体どうお考えでありましょうか、お答えいただきたいと思うのであります。
#170
○関説明員 外務省の立場からお答えをさせていただきたいと思いますが、外務省といたしましては、この難民条約になるべく早く入りたいという念願を持っておりまして、前通常国会におきましてもできましたら御審議いただこうと思っていたわけでございますけれども、去る五月、当時の大来外務大臣から外務委員会で御答弁申し上げましたように、関係省庁との意見調整がつきませんで、残念ながら見送らざるを得なかったわけでございます。
 外務省といたしましては、現在、条約の加入に伴って必要となります国内体制の整備につきまして、関係の省庁と鋭意検討中でございまして、意見調整がつき次第、なるべく早く国会に提出して御審議いただこうというつもりでおります。
#171
○奥野国務大臣 この間伊東外務大臣から、難民条約批准の問題を事務的に詰めさせたいという話がございましたから、そういたしましょうと答えたところでございます。
#172
○岡田(正)委員 大変明快なお答えをいただきましてありがとうございます。
 一つだけ外務省の方に念押しのような形でお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、二人の大臣にわたって関係各省との煮詰めをずっとやってきていらっしゃるわけでありますが、今日に至るまでいわゆる国内関係の問題で煮詰めが至っていない。一番大きなガンとなっておるところは厚生省ではないかとよく言われるのでありますが、その点はいかがですか。
#173
○関説明員 お答え申し上げます。
 条約の二十三条と二十四条に内国民待遇が規定されているわけでございまして、その中に国民年金、児童関係の諸手当それから健康保険等につきまして内国民待遇を与えるということが規定されておるわけでございます。これらの二つの条項と国内法との抵触する部分がございまして、その点につきまして現在厚生省と協議中でございます。
#174
○岡田(正)委員 それでは厚生省の人にお尋ねをいたしたいと思うのであります。
 これは十月三十一日付の日経新聞でございますが、「在日外国人に認める 国民年金加入 厚生省首脳が意向」こういうふうにどんと出ておるわけでありますが、国民年金法第七条第一項は被保険者を日本国民に限定いたしまして、さらに福祉年金の障害、老齢、母子、準母子については資格認定日に日本人でない者は適用されない、こういうことになっております。
 こうした在日外国人の排除に対しまして、日本国内に六十六万人もおります南北系の在日朝鮮人の不満が非常に大きいのであります。昨年の九月、すべての者が社会保険を含む社会保障を受ける権利を有することを認めるという国際人権規約を承認しておるのでありまして、同法の見直しがいま迫られておるところであります。在日米国人の場合、ここをよく聞いておいてください、これはほかには全然ないのかといったらないのではない、ありますよ。在日アメリカ人の場合に限って、日米友好通商条約で拠出制の国民年金への加入が認められているのであります。在日南北系朝鮮人の場合は、厚生年金を掛けていても国民年金につなぐことができません。老後、障害時に対して非常に不安が多い、こういう問題につきまして、十月三十一日厚生省は、このような新聞にも発表されたとおり難民条約批准のために在日外国人の国民年金加入を認める方向で検討する、まことに力強い意向を表明されたのでありますが、それは事実ですか。新聞に書いてあることがうそですか。
 それといま一つは、インドシナ三国の難民で日本に定住の意思がある人も加入できない、このことが内外人平等の社会保障の適用を盛り込んだ難民条約批准あるいは現在認めておりますところの世界人権規約の趣旨に違反をすることではないかと考えておるのであります。いずれにいたしましても、この社会保障の問題こそ難民条約批准推進のブレーキとなっていると考え、非常に私も関心を深く持っておるのでありますが、今後もし検討するということが事実なら、今後のスケジュールはどうお考えになっておるか、あわせてお答え願います。
#175
○佐々木説明員 お答えを申し上げます。
 ただいまお尋ねのように、国民年金におきましては日本国に在住する日本人に対象を限っておりまして、昭和三十六年にこの制度ができましたときに、外国人は適用の対象にしないということの割り切りをやっておるわけでございます。と申しますのは、御承知のように国民年金は二十五年間にわたりまして保険料を掛けていただきませんと年金が支給されないということでございますので、外国人の方の場合には保険料の強制掛け捨てというような問題が生ずるということでございますので対象外としたという経緯があるわけでございます。ただしかし、先生ただいま御指摘のように、昨年わが国が加入いたしました人権規約の趣旨は内外人の平等ということをうたっておるわけでございまして、そういうことにつきましては私どもも十分承知をしておるわけでございます。
 一般外国人の中でも特に多数を占める在日韓国、朝鮮の方々からはかねて御要望がございまして、国会におきましても幾度か御論議がされている問題でございますので、私どもといたしましては、この点について十分に検討いたしました上で、わが国の年金制度の体系を崩さない範囲において、しかるべき何らかの方策はないかということを検討したいと考えておるわけでございます。
 それから難民条約につきましては、私どもはこの批准について反対しているということはございません。加入は賛成でございます。ただ、ただいま外務省からお話がございましたように、わが国の社会保障制度との関係をどのように考えていくかという問題がございますので、この点については事務的にただいま意見の調整中でございます。
 以上でございますので、御了承いただきたいと思います。
    〔木村一武千代一委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
#176
○岡田(正)委員 それでは、最後に難民問題につきまして大臣のお考えを聞かしていただきたいと思うのです。
 昔から、窮鳥もふところに入れば猟師これを殺さずということわざがございます。私が大臣にお願いしたいと思っておりますことは、法律で裁いていくということよりは、まず困っておる鳥、窮鳥に生活の糧を与えて、親身になって相談に応じてやるということの方が先決ではないのでしょうか。世界の平和そして個々人の人権ということを考えたら、私はもっと法に涙があっていいと思うのであります。
 戦火と政変を逃れて命からがら日本に滞在をしているインドシナの若者の数は少なくありません。彼らは見つかったら最後、不法残留者ということになって強制送還されます。窮鳥を追い払うというような仕打ちは、少なくともアジア人との心の触れ合いこそと鈴木内閣がうたい上げておることに背くのではないのでしょうか。また、世界人権宣言十四条には「すべて人は迫害からの避難を他国に求め、かつ、これを他国で享有する権利を有する。」と明記をされておるのであります。有効な旅券を持たない、確かに不法であります。だが、難民に有効な旅券を持ってきなさいということを期待することはもともと無理な話ではないでしょうか。悪質な犯罪者は別といたしまして、本当の難民に対しては、法務大臣の裁量に任されておる在留特別許可を積極的に活用していただくべきではないでしょうか。難民の鎖国から難民への開かれた国へ持っていっていただきたい。私は、その幕あけの法務大臣になっていただきたいと希望するのでありますが、大臣の御見解を聞きたいのであります。
#177
○奥野国務大臣 日本は、戦後三十五年で見違えるような国際社会における存在になったと思います。見違えるような国際社会の存在になれば、それなりに国際社会の役割りを進んで分担していかなければ国際社会のきらわれ者になってしまうのじゃないかと思うわけでございます。そういう意味合いにおきまして、三十五年来の日本の国際社会の問題に対する対処の仕方をそれなりに深く反省して、今後どのような道を選ぶか真剣に考えていかなければならないと思っておるわけでございます。
 難民の問題につきましては、私もこれまでインドシナ三国のことについては深い関心を持ち、私なりの主張もしてきたわけでございまして、ようやく千人定住を認めるというところまで来ておるわけでございます。流民の問題につきましては、いろいろな問題の御指摘がございました。私なりによく関係者と相談をしながら、国際社会からそれなりに尊敬される日本であるような施策に努力をしていかなければならない、こういう気持ちを持っておるものでございますので、十分検討させていただきたいと思います。
#178
○岡田(正)委員 大変ありがとうございました。世界から尊敬されるような日本をつくろうじゃないかという大臣の御意思、本当に私は力強く思うのであります。ぜひひとつよろしくお願いいたします。
 最後に意見だけ申し上げますが、悪いやつをこらしめるということも法律なら、困っておる人たちを救うのも法律ではないでしょうか。法律というものは人間がつくったものであります。だから、その法律の運用には心が通っていなければ、私は法律とは言えないと思うのであります。心の通わない法律は、それがあるがために世の中が暗くなり冷たくなることもあり得ると思うのであります。法の目的を生かした心のこもった運用を強く要望いたしまして、私の難民問題に対する質問を終わらしていただきます。ありがとう。ございました。
#179
○熊川委員長代理 野間友一君。
#180
○野間委員 岡田委員の大変熱のこもった質問の後でありますが、私は、婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の早期批准の要求と、この批准前の国内法の不整備の中でのさまざまな問題についての施策の前進その他について質問をしていきたいと思います。
 まず外務省にお伺いするわけでありますが、いま申し上げた条約はいつ批准されるのか、今国会に出されるのかどうか、その点いかがでしょう。
#181
○関説明員 お答え申し上げます。
 ただいま先生御指摘の条約につきましては、七月十七日に日本は署名いたしましたけれども、現在国内体制の整備のために関係省庁と協議を進めている段階でございまして、目下のところ、具体的にいつの国会に提出できるということを申し上げるような段階にはまだ至っておりません。しかしながら、ことしの六月の婦人問題企画推進本部申し合わせというのがございまして、それによりますれば、昭和五十六年から六十年までの国内行動計画後半期と申しますか、この期間における重点課題として、批准を実現するために国内法制等諸条件の整備に努めるということになっておりますので、この期間内になるべく早期に外務省といたしましては批准いたしたいというふうに考えております。
#182
○野間委員 ことしの三月七日の予算委員会の第一分科会の中で、土井分科員の質問に対しまして国連局長が「できれば来国会にでも御提案申し上げることができればこれは非常に幸せである」という発言をされております。これは七月調印以前の問題ですがね。
 したがって、さまざまな国内法の整備の問題はあろうかと思いますが、外務省自身としては、いまの発言からしても、これは来国会という表現を使われておるわけでありますから、早急に、この方針からいいましたら七月以後の国会で当然に提案をしなければならぬ、こういう責めを負っておるわけでありますが、この点どうなんでしょうか。最も近い時期に出すということになりますといつごろになるのか、一定のめどをひとつ聞かしてほしいと思います。
#183
○関説明員 外務省といたしましては確かに早期批准という強い願望を持っておるのでございますけれども、何分にもいろいろな問題に分かれておりまして、国内体制の整備に相当の時間を要するということは認めざるを得ないわけでございまして、現在鋭意各省庁と協議を続けております。できるだけ早期に国会に御審議をお願いしたいというのが依然として外務省の強い願望でございます。
#184
○野間委員 そうしたら、いま指摘をしたように予算委員会の分科会で賀陽さんが発言されておりますけれども、これはどういう意味なんですか。
#185
○関説明員 その時点におきましても現在と同様でございますけれども、外務省といたしましては、繰り返すようでまことに恐縮でございますが、なるべく早くという願望は捨てていないわけでございまして、私の推測でございますが、そういう強い願望が、ただいま先生がおっしゃいましたような賀陽局長答弁という形であらわれたのじゃなかろうかと思います。
#186
○野間委員 外務省、そんな無責任な、できもしないことを願望で答弁するというのはとんでもないことだと思うのですよ。少なくとも来国会という以上、それがたとえば今国会に間に合わないとしても、数年も後になるというようなことは答弁と背馳するわけでしょう。違いますか。ですから、来国会という以上は本当にできるだけ、たとえば通常国会でも出すというようなことを踏まえて、国内法の整備にかかるのは当然じゃないですか。そのことと、現在どういうところとどのように詰めておるのか、進捗状況を聞きたいと思います。
#187
○関説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘の点を十分念頭に置いて、今後とも大いに努力して早期批准に持っていきたいというふうに、外務省としてはあらゆる努力をいたしたいと思います。現在、関係国内法とこの条約との整合性の問題につきまして、九月の下旬から約一カ月にわたりまして関係の十一省庁と個別的に検討会を開いておりまして、まだ関係省庁の事務レベルの問題点、解決策等について種々問題がございまして、結論を出すまでには至っておりません。
#188
○野間委員 早急にこの点については各省庁詰めて、できれば通常国会に出せるようにひとつ全力を挙げて奮闘されるように要望申し上げておきたいと思います。
 そこで法務省に対してでありますけれども、条約に調印をいたしておりますが、この条約の持つ意味、評価、これはどういうふうに理解しておられるのか、お答えいただきたいと思います。
#189
○貞家政府委員 条約の趣旨が男女平等の趣旨の徹底であるというふうに基本的に理解しているわけでございまして、したがいまして、私どもの所管事項に関係いたす面といたしましては、まず国籍法をこの趣旨に適合させるためにはいかなる手当てをすべきかということになると考えております。
#190
○野間委員 国連婦人の十年世界会議に内閣総理大臣がメッセージを出しておられます。当時、臨時代理としての伊東正義国務大臣のメッセージですが、この中で、この「条約の署名式が行われることは、極めて重要な意味をもつものであり、かつ時宜に適したことであります。本条約は、婦人の地位の向上と男女平等の原則の確立に、飛躍的な前進をもたらすものであり、」あと中略しますが、「本条約の批准に向けて国内諸条件の整備に積極的に取り組むことといたしております。」とあります。
 こういう中身のメッセージが届けられておるわけでありますが、法務大臣、この総理の条約に対する位置づけ、これは当然同じだと思いますけれども、いかがでしょう。
#191
○奥野国務大臣 法務省としては、いま民事局長がお答えいたしましたように理解しております。
#192
○野間委員 そこで、先ほど民事局長の話にもありましたけれども、これは条約の九条がいま指摘の国籍法の改正の問題と直接かかわりを持つわけであります。すなわち、子供の国籍に関しては婦人に男性と同等の権利を与える、これは二項ですね。一項では、婦人に対し、国籍を取得し変更しまた保持することにおいて男子と同等の権利を与える。この九条が直接かかわってくる問題であります。
 そこで、私がお尋ねしたいのは、いま指摘をした九条と現在の国籍法、これには矛盾と申しますか背馳があるということは当然認めると思いますが、いかがでしょう。
#193
○貞家政府委員 御指摘のとおり、現行の国籍法二条は出生による国籍の取得について定めているわけでございますが、これにつきましてはいわゆる男系主義というものをとっているわけでありまして、出生のときに父が日本国民である、そういう場合に原則的に子が日本国民になるという考え方をとっているわけでございます。
 したがいまして、ただいま御指摘の条約の九条、ことに九条の二項が問題になるかと思うのでございますが、この条文の内容はきわめて簡単でございまして、種々解釈の余地があるかと思いますけれども、締約国は、婦人に子供の国籍に関し男性と同等の権利を与えるということになっているわけでございます。したがいまして、すでに多数のヨーロッパ諸国を初めとして世界の国々が男系主義から男女両系主義への改正を行ったかあるいは現に作業中でございます。わが国といたしましても、この条約の趣旨により適合するためには、男系主義を男女両系主義にすることの検討が当然必要になってくるというふうに考えております。
#194
○野間委員 ですから、総理のメッセージもありますように、婦人の地位の向上あるいは男女平等の原則の確立、こういう観点からいろいろと条項はあるわけですが、特にこの九条に関しては男女平等の原則という点から、いま国籍法の二条の問題と直接かかわってくるということになるわけですね。これは二条だけではなしに、たとえば帰化に関する五条あるいは六条、こういうものとも直接かかわってくるということは当然ですね。
#195
○貞家政府委員 野間委員御指摘のとおりでございます。
#196
○野間委員 そこで、外務省がいまいろいろ各省庁と折衝し、あるいはいろいろ批准についての作業を進めておるようでありますけれども、国籍法の改正について、いま法務省ではどのような作業を進めておるのか、その進捗状況をお聞かせ願いたいと思うのです。
#197
○貞家政府委員 この国籍法の改正につきましては派生する問題がきわめて多うございます。そこで私どもといたしましては、まず顧慮しなければならない問題点というものを総ざらいをいたしますと同時に、最近改正いたしました諸外国のその改正の内容、この改正内容自体は条文によって明らかでございますけれども、さらに国籍事務に関しましては各国ともかなり運用と申しますか実際の動き方というものを把握しなければならないわけでございます。そこで問題点を整理すると同時に、これと並行いたしまして、その問題点の幾つかについて外国に照会をするあるいは直接調査に赴くというような形で実は調査研究をすでに開始しているところでございます。
 ただ、問題点が非常に多岐にわたりますと同時に、その影響するところがかなり広くかつ深いように考えられるわけでございまして、そういった問題点を網羅的に解決をするということが非常に困難な問題を含んでいるというふうに考えているわけでございまして、まずもって現実にそういった制度を取り入れた外国の実情を鋭意調査研究をするということを現在のところでは主眼にして検討を進めているわけでございます。
#198
○野間委員 法技術的には私はいろいろあるかもわからぬと思いますが、しかし基本的には男女平等に扱うということでありますから、たとえば二条におきましては日本国民たる父または母と、母を加えればいいわけでしょう、基本的に。あとは、これからも質問を続けますが、二重国籍の問題をどう解消するかということになるわけで、条約があり、しかも条約とこの国籍法が背馳をする、その中で改正しなければならぬ点はおのずと明らかに出ておるわけですね。
 そこで、毎日新聞の九月十一日付の朝刊によりますと、父系優先主義を見直すことは当然条約に基づく課題でありますが、法務省は十日に改正の検討に着手したというような報道がなされておりますが、十日から始めたのでしょうか。部内の作業ではいろいろ発表された論文等も私は目を通しておりますけれども、これはどうなんでしょうか。
#199
○貞家政府委員 実は私、九月十日という日をそれほど印象的には覚えていないのでございまして、この問題はもうすでに相当前から提起をされている問題でございますし、私どもといたしましては問題意識を常に持ち続けて検討を開始していたつもりでございます。ただ、具体的に外国について調査を進めるということは御指摘の九月十日以後であったということが言えるかと思いますが、調査をするにしましても、外国自体がいま作業中であるとか、いろいろ制度が変わってから新しいというような事情がございまして、いつからいつまでにこういう調査をしたというような確たる過去の日程を申し上げるというような状態ではございません。
#200
○野間委員 部内で聞きますと、たとえば西ドイツに調査のため派遣したとかあるいは年が明けてヨーロッパ諸国に派遣するやに私は聞いておるわけであります。しかし、これは本当にテンポを早めてやらなければ、とにかくぼつぼついつ終わるかわからぬようなそういう作業では、条約の批准がおくれるばかりだと私は言わざるを得ないと思うわけであります。諸外国の例を見ましても、西ドイツ、スイス、デンマークあるいはスウェーデン、こういう国はこの条約に前後して男女の平等という原則から父母両系主義に国籍を改めておるということは事実ですね。違いますか。
#201
○貞家政府委員 相当多数の血統主義をとっております国が父母両系主義を採用するに至っております。
 ただいま御指摘のフランスが一九七三年、西ドイツが一九七四年、スイスが一九七八年、デンマークが一九七九年、スウェーデンが同じく一九七九年というように、これは改正をいたしておるわけでございます。最近に至りまして、これとは関係ございませんけれども、中国におきましてもこの九月十日に国籍法が新たに制定をされたということも承知しておりますし、また、これは内容の詳細まで承知しておりませんけれども、ノルウェーについても改正が行われているというニュースを得ております。イギリスにおいては、これは御承知かと思いますけれども、血統主義ではなくて原則が生地主義でありますけれども、部分的に父母両系主義を採用しているというふうに聞いておりますし、オランダは改正案がほぼまとまりましたが、ただ問題が国民の範囲を決めるという非常に重大なことであるから数年間これを寝せておくと申しますか広く一般国民の感触を得る、意見を聞くというような手順をいま踏んでいるというようなニュースも聞いているわけでございます。
#202
○野間委員 諸外国では、このようにすでに着々と法改正も完成しておるわけですね。わが国はいまなおこれからぼつぼつというようなことじゃ、これは国際的にもおくれをとるだけの話なんですね。これをやらなければ男女の実質的な平等にならぬわけでしょう。
 そこで、遅まきながらやっておるわけでありますけれども、改正の方向についてはもちろん父母両系主義、これに変えていく、あるいは帰化条件、先ほどもお聞きしましたけれども、帰化条件についても男女平等の原則を基軸にして書きかえるというかいじるというような方向でいま進められていると思いますが、それは間違いありませんね。
#203
○貞家政府委員 改正の重要な点はただいま御指摘のとおりでございます。
#204
○野間委員 いつごろ法務省としては成案を得て国会に出す用意があるのですか。めどをいつごろに置いていますか。
#205
○貞家政府委員 ただいまもお答え申し上げましたように、この改正に伴って生ずる問題点というのはかなり広くかつ深いものがあると思うのでございます。したがいまして、そういった面につきまして私どもはやはり確信を得て、自信を持って立案をいたしたいというふうに考えております。
 ところで問題になりますのは、そういった制度を改めた場合に、国籍の関係はどうしても外国との関係が生じてくる問題でございます。したがいまして、いろいろ生ずることが予想される問題点について、やはりそういった外国との間の国籍の実務の運用と申しますか、そういった点について十分外交的な折衝というものも行う必要があるわけでございまして、たとえばヨーロッパ諸国におきましては各国そろってといいますか大部分の国が実現したわけでございますけれども、その背後にあります事情として見逃すことができませんのは、二重国籍の問題の解消につきましてヨーロッパ理事会において協定ができております。これは重国籍の減少と重国籍者の兵役義務に関する協定というふうなものができておりまして、これにヨーロッパ主要国以外にたとえばトルコあるいはキプロスというような国も入っておりまして、相当多数の国がこういった条約によりまして問題の外交的な種々の不都合を防いでいる、こういった事情も考えられるわけでございまして、そういった面につきましてもわが方としては十分考慮をいたさなければならない。その前には近隣諸国の国籍事務の運用ということも十分承知した上で、そういった不都合が生じないようにしなければならないというような点がございます。
 したがいまして、頭の中でこれを理屈だけで条文化する、あるいは案をつくるということは、これは御指摘のとおりそれほど長期間を要する仕事であるというふうには考えておりません。しかしながらその準備と申しますか、実際に動かす場合の自信を得ますためには若干の日数を必要とするということは当然覚悟しなければならないわけでございまして、いま何年以内にこれを国会に御提案申し上げるということをここで私から申し上げることはちょっと差し控えさせていただきたい。しかしながら、一日も早くこの条約の署名に当たりまして申し合わせが行われておりますように批准のために国内法制等の諸条件の整備に努力するということは、私ども基本的な方針でございます。そのための努力を鋭意続けたい、かように考えている次第でございます。
#206
○野間委員 いろいろ言われますけれども、結局作業がなかなか進まないというか結論がいまの答弁では出にくいというふうに理解したわけですけれども、非常に失望するわけですね。とにかく鋭意作業を進めて、できれば通常国会にでも出せるように意気込んでやっていただきたい。これまた別の機会に私もさらに詰めて質問をしたいと思います。
 二重国籍の問題は確かに言われました。これはどこでもいろいろな問題があるわけですけれども、ヨーロッパとかいままでいろいろ改正した国々では、これはそういうようなことを前提としていろいろな工夫や苦労をしながら技術的にこれを解消してやっておるわけですね。しかも、むしろいま法のはざまの中で生じて大変問題になっております沖繩などを中心とする無国籍者ですね、この無国籍者がいまの国籍法のいろいろな矛盾の中で生まれておるわけですね。無国籍者といいますと、人間として実在するにもかかわらずいわゆる法律的には存在しないという、こういう措置を実は受けておるわけです。
 二重国籍者の場合には義務とかあるいは国家の見地からのいろいろな論議が法務省はよくあるわけでありますけれども、少なくとも二重国籍者の場合、個人として何が利益で何が不利益になるか、不利益な場合にはこれをどのようにして解消するのかということを考えればいいわけでありまして、しかもこれらは私は容易にできるというふうに思っておるわけであります。これについてはまた後で議論をするとして、現行法上も二重国籍は認めておるわけですね。たとえば九条あるいは十条、七条、これはまさにそうですが、いかがでしょう。
#207
○貞家政府委員 確かに御指摘のとおり二重国籍の生ずる場合はあり得るわけでございます。ただ、男女両系主義にいたしました場合に、飛躍的に二重国籍者の生じ得る余地が大きくなるという点が問題であろうと思います。もちろん現在でも、男女両系主義をとっている国の国民と日本人との間に生じた子については同じ問題が起こるということは御指摘のとおりでありますし、また国籍留保等の制度がございまして、そういう余地があることも承知しております。
 ただ、わが国は国籍の離脱を非常に容易に認めているわけでございます。これは憲法の要請もございまして自由に国籍が離脱できる。ただ、諸外国は必ずしも日本と同じように自由に離脱を認めていないという点が問題が残るところであろうかと思います。
#208
○野間委員 外交保護権とか兵役義務の衝突とかあるいは犯罪人の引き渡しに関して国家間の衝突等々、一定のそういうものをどう解消していくかということも一つの課題ではあろうかと思いますけれども、しかし少なくとも現行法上、いま申し上げたように、いま局長認めましたけれども、九条、十条、七条で二重国籍者、重国籍者というものは認めておるわけですね。「離脱することができる。」というような表現も使っております。
 そこで、たとえば九条に基づいて、これは石田玲子さんという国籍に対して非常に研究されている方の資料にもありますけれども、一九六八年から七七年までの十年間に二十八カ国で二万四千六十九名、こういう九条に基づく二重国籍者がある。その他いま両系主義をとっておる外国人の母と日本人を父とするその中に生まれた子供であるとか、あるいは婚姻により自動的に夫の戸籍を取得した日本人の妻とか、これは現在でもさまざまなケースがあり、実際に多いわけですね。大体これらを合わせまして、いま国外に二重国籍者、重国籍者ですが、どのくらいおられるというふうに考えておりますか。
#209
○貞家政府委員 現在二重国籍者がどの程度あるかということは、ただいまのところ把握いたしておりません。
#210
○野間委員 把握してないということですが、およその数字はどうでしょうか。いま二万四千六十九名と九条に基づく数を挙げましたけれども、少なくとも何万人という人がおられると思うのです。どうでしょうか。
#211
○貞家政府委員 ちょっと的確なお答えはいたしかねるわけでございますけれども、何万人というほどでは私はないと思います、感じでございますが。
#212
○野間委員 だから、それすらまだ正確に把握してないわけでしょう。それで改正法云々というのも、その実態の把握すらしないままに現在に至っておるということにも大きな問題があると私は思わざるを得ないと思うのです。もし両系主義にした場合、大体年間二重国籍者がどのくらい生まれるというふうに考えておりますか。
#213
○貞家政府委員 大ざっぱに見積もりまして、五、六千から七、八千というふうに私どもは踏んでおります。
#214
○野間委員 確かにふえることは間違いないと思いますが、しかし先ほども言いましたように、各国がいろいろな工夫をこらしまして、この二重国籍の解消にいろいろな手だてをしておることは御案内のとおりであります。
 そこで、私は具体的に沖繩における諸問題についてお尋ねをしてみたいと思いますが、いま安保条約もあり、しかも米軍基地の五三%が沖繩にいま集中しております。そして、ここでは四万に近い米軍人がおるわけでありまして一混血児、国際児ですね、あるいは無国籍児の出生というものは不可避的な状況でありますが、その点についての確認をまず求めたいと思います。
#215
○貞家政府委員 御指摘のとおり沖繩は非常に特殊事情がございまして、いわゆる無国籍の混血児、これが四、五十人はいるであろうというふうに私どもは考えているわけでございます。
#216
○野間委員 いや、もっと多いですよ。いつでしたか、国会の中で約七十名ということを法務省は答えておったと思いますが、そういうふうに正確な実態の把握すらできていないわけですね。
 私も、この間共産党の国会議員調査団を組みまして、現地に行きましていろいろと調査をしてきたわけでありますが、現在でも国際結婚は年間約四百組あるようであります。国際児が年間約五十名。この国際児の数は、一つの推定ですけれども、現在まで三千五百名から四千名、こういうふうに私は聞いてまいりました。しかも無国籍は七十名から百名、こういうことが言われておりました。これらの数字について法務省は実態を把握していないということのようですけれども、この数字についてはどうなんでしょう。
#217
○貞家政府委員 法務省といたしまして把握できますのは外国人登録をしております無国籍者でございますが、沖繩在住の無国籍者が本年の六月末現在で七十三名でございます。ただ、この無国籍の中には中国関係あるいはフィリピン関係いろいろございます。それからアメリカとの関係ではそれを除いたものになりますが、また一方におきましては身分関係が整理されていないというようなものがあるわけでございまして、こういったものはそれにさらにプラスの要素になるわけでございます。
 そういった点、私どもは沖繩にございます社会福祉法人の国際福祉沖繩事務所等と常時連絡をとっているわけでございますけれども、そういった事務所から聞きますところでは、いわゆる無国籍児が大体四十名だというような話も聞いておるわけでございますが、ただその中には、ただいま申し上げましたような戸籍関係を整理いたしますことによって、あるいは本来は当然日本の国籍を取得している、ただ戸籍上そこが乱れているというようなケースもかなりあるようでございます。
#218
○野間委員 国際福祉沖繩事務所の問題がいま出されましたけれども、これは改正されて、いまは国際福祉相談所となっています。あなたはずいぶん古いですね。
 いずれにしても、純粋無国籍者あるいは未就籍あるいは婚外子といろいろな形態がございますけれども、ここでは七十から約百名の無国籍児がおり、しかも私が先ほど申しましたように、基地があり米軍人がいる以上、毎年毎年ふえていくわけですね。これらの問題についてどうしたらいいのかといいますと、国籍法の改正をすればすぐに解消できる問題であります。しかも、これらの子供の中の三分の一の子供が、早く日本の国籍が欲しいというふうに要求をしておるようでありますけれども、なかなか手続がめんどうでできないというのが真相のようであります。
 そこで、時間がありませんのではしょりますけれども、政府あるいは法務省は帰化の手続があるじゃないかというようなことをよく言われます。国籍法を改正するまで、帰化の手続しかも簡易帰化を認めておるから、それでひとつ何とかというふうに言われるわけであります。確かに帰化の道はあります。しかしながら、生じてしまった無国籍児の救済あるいは解消ということになりますと、それはそれなりに意味がありますし、門戸をできるだけ広げるということは当然でありますけれども、しかし、そういう子の発生を未然に防いでいくためには、抜本的な国籍法の改正を待つ以外にないことは明らかであります。言うならば、帰化というのは対症療法ですね。ですから、基本的な解決に向けて早急に努力をする必要があるのではないか、こう思います。
 そこで、無国籍児の現在の法の扱いと申しますか処遇について若干聞いてみたいと思います。
 まず厚生省に対して伺います。たとえば、国民健康保険の取り扱いあるいは児童手当、児童福祉手当、こういうものの取り扱いはどうなっておるのでしょうか。
#219
○近藤説明員 児童手当についてお答えいたします。
 児童手当は、義務教育の終了前の児童を含みます三人以上の児童を養育している者に対しまして、第三子以降から支給しているものでありますけれども、児童については国籍要件を問うておりませんので、無国籍児につきましても児童手当が支給されるということに相なっております。
#220
○古川説明員 お答えいたします。
 国民健康保険制度におきましては、市町村が条例でもって外国人、無国籍者も含めまして国保を適用することができるというふうな取り扱いになっておるわけでございます。事実相当の無国籍の方々が市町村の条例で適用されている。また沖繩の無国籍児童につきましては、特別にこうした児童の国保の適用についての条例を設けている市町村が相当数に上っておる、こういうことでございます。
#221
○野間委員 その場合、外国人登録は給付を受ける要件になっておるのかどうか、厚生省の両方からお答えいただきたい。
#222
○近藤説明員 私ども、いままで余り問題になったわけではございませんけれども、日本人の子供につきましても、実務上住民基本台帳に記載されているということになっておりますので、無国籍児童につきましては、当然外国人登録を受けた後に支給されるということになろうかと思います。
#223
○古川説明員 児童手当の場合と基本的に同じでございます。
#224
○野間委員 文部省、その義務教育あるいは高等学校の入学の問題、それから教科書の無償配付についてどういう取り扱いをしておりますか。
#225
○垂木説明員 御説明申し上げます。
 無国籍の児童につきましても、生年月日を確認いたしまして小学校あるいは中学校に受け入れておるわけでございます。学校に受け入れました以上、日本に国籍のあります児童生徒と全く差別なしに取り扱いをいたしておるわけでございまして、もとより御指摘がございました教科書につきましても無償給与の対象にいたしておるわけでございます。
#226
○野間委員 公安委員会、お越しですか。運転免許はどうなのでしょうか。
#227
○越智説明員 お答えいたします。
 運転免許の関係では外国人、無国籍の者も別に差別はしておりませんで、受験資格はございます。ただ申請のときの添付書類の際に、総理府令では外国人登録証というものを申請書に添付することになっておりますけれども、それがない場合にはそれにかわるものということで、市町村長の証明した書類でもって申請書にして受験をさせております。
#228
○野間委員 厚生省、そうすると、国民健康保険は条例によって各自治体でやれば受けられるわけですけれども、この場合には、やはり外国人登録はなければだめなのでしょうか。それとも無国籍者でも出生証明というものがあれば受けられるわけかどうか、この点はどうでしょう。
#229
○古川説明員 お答えいたします。
 御案内のように国民健康保険は市町村の事務でございまして、実際上外国人登録法と同じような扱いをいたしております。つまり、外国人登録をしておりますのが実情でございます。
#230
○野間委員 そうしますと登録の問題がまた出てくるわけですが、これは後にして、簡易帰化についてひとつお尋ねしたいと思いますが、簡易帰化とはどういうものですか。
#231
○貞家政府委員 国籍法の規定によりまして帰化の場合が別の条文で規定されているのでございますが、一般的な帰化の条件、これは五年以上の居住でございますとか二十歳以上とかいろいろあるわけでございますけれども、日本人と特別な身分関係を持っている者につきましては要件が緩和されるということに第五条、第六条でなっておるわけでございまして、最も簡単になっておりますのは、日本国民の妻、日本国民の子で日本に住所を有するもの、こういったものが典型的な例でございまして、そういったものにつきましては居住の条件は必要といたしませんし、もちろん二十歳以上という要件も必要といたしません。また「独立の生計を営むに足りる資産又は技能がある」というような要件も必要としない。こういうことで簡易に帰化ができるというたてまえになっております。
#232
○野間委員 沖繩の無国籍児の帰化については簡易帰化――私が法務局長に向こうで会いましたときは超簡易帰化という表現をされておりまして、局長自身は大変前向きの答弁をされておりましたが、少し具体的な問題についてお伺いしたいと思います。
 いわゆる未就籍の無国籍児ですね。夫が米軍人で、アメリカへ帰って行方がわからないというような場合、要するにその子供の帰化について共同親権の問題が出てくるわけでありますが、こういうケースの場合には共同親権はもちろん行使できませんし、帰化手続について父親の同意書もとることが不可能であります。そういう場合、この帰化の手続に関して超簡易帰化なり簡易帰化のもとで具体的にどのような運用をされておるのか、あるいはされようとしておるのか、簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
#233
○貞家政府委員 御指摘のとおり、親権者が代理する、その親権者の問題が非常に問題になるということはそのとおりでございます。ただ、あらかじめお断りいたさなければならないと思いますのは、有効な法定代理人でなかったという場合には帰化が無効にもなりかねないわけでありまして、その点でやはり慎重に処理せざるを得ないという点はございます。しかしながら、証明の方法につきましていたずらに煩瑣な書類なり証拠を要求するということは実情に合わないわけでございます。
 そこで、私どもが現在沖繩現地に指導しておりますのは、便宜とにかく母親の代理によって申請されたものにつきましてこれを受理して、その点につきましては判断を留保して本省に進達をしてもらう。それで本省において外国法の調査をするあるいは便宜こういう方法によって認めるというような判断をいたすということによりまして、これが結果的に超簡易帰化になるかどうか、これは個々のケースによって異なりますけれども、あるいは物によりましては家庭裁判所の審判を受けるように指導するということを連絡するとか、あるいは外国法の調査を本省でやるというようなことによりまして、不都合が生じないようにできる限りの便宜を図っていきたいというふうに私どもは考え、そのように現地を指導しているつもりでございます。
#234
○野間委員 帰化手続する場合に、そうしますと父親が行方不明という場合には代理して母親が親権の行使つまり帰化の申請をするということは当然いいわけですね。
 それからもう一つ、そういうような申請がなされた場合に、その夫の本国法と申しますか父親の州法なり何なりを調査をする。その中で、たとえば父母の一方が親権を行使できない場合、つまり日本民法と同じような規定がある場合には妻だけでももちろんできる。もし規定がない場合にこれは一体どうするのか、あるいはその夫の本国法、依拠するそれがわからないような場合にはどうするのか。これは条理に照らして処理をしていく、つまり母だけの申請を認めて許可をするということは、当然私はしてしかるべきじゃないかと思いますが、その点いかがですか。
#235
○貞家政府委員 いろいろ不明確な点がありまして調査しても容易に目的が達せられないという場合があり得るわけでございまして、その場合には御指摘のとおり、やはり条理に照らして判断をするという以外にはないであろう、私どもはさように考えております。
#236
○野間委員 ですから、申請があった段階で末端までそういう指導をして、これは同意書を持ってこいとかなんとか、そういうようなことで窓口で追い返すということのないように指導されますか。
#237
○貞家政府委員 先ほども申し上げましたように、とにかく門前払いはしないように受理をいたしまして、疑問な点があればそれは留保して本省に進達してもらいたい、かように現地を指導いたしております。
#238
○野間委員 いや、受理だけではなくてその許可の手続まで、最終まで、いまいろいろ質問をしてあなたも回答したけれども、そういう方向で末端の窓口まで指導していくということは、これはいいわけですね。
#239
○貞家政府委員 現地に余りにも大きな判断の幅を与えるということはかえって混乱を招くことになるかと思います。したがいまして、私どもが十分調査をいたしまして、その結果によって終局的に処分をいたすのは現地でございますが、さような連絡をいたしまして不都合が生じないようにしたい、かように考えております。
#240
○野間委員 実は十月六日に、二人の無国籍、これは未就籍、小学校二年生と四年生の子ですが、この帰化申請にお母さんが那覇の法務局へ行ったわけです。ところが、窓口で親権者の指定を持ってこなければだめだということでけんもほろろに突っ返された。
 そこで、ちょうど私が現地調査に行きまして、法務省の扱いというのはそういうものじゃないということを私申し上げたのですが、その後これはおかしいということで福祉事務所の方が戸籍の本庄という課長に電話したところが、小学校二年生程度の学力があれば二千円持ってくればできるんだ、こういう侮べつ的な言辞を弄しているわけですね。つまりここでは、一つは、いま局長はそういうように答弁しましたけれども、親権者の指定がなければだめだということで窓口で追い返している。それに対してもう一度課長に聞き合わせますと、小学校二年生程度の学力があれば二千円ぐらい持ってきたらそれでできるんだというような、あたかもこの母親をべつ視するような発言までしておるわけであります。これは二十九日のケースですけれども、つまり本省ではいろいろと言われても、実際窓口ではなかなかそこまで浸透していないわけですね。こういうのが出てくるわけです。
 したがって、こういうことがないように、門戸を広げ、しかもまじめに親切に受け付けをして帰化を円滑に、しかも簡易帰化と言われ、沖繩のそういう子供に対してはできるだけサービスをしてというように言われるわけですから、そういう指導をひとつ徹底してほしいと思いますが、その点についていかがですか。
#241
○貞家政府委員 お話の件は、私はどういう経過でそういうような問答があったか詳細に存じておりません。ただ、恐らく推測いたしますところでは、たとえばこういう書類、戸籍謄本なり何なりの書類が必要だと言われて、それは一体どれくらい金がかかるかというような質問があったのに対して、係官がお答えをした、それが不親切であったというような事情ではないかと推測いたすわけでございますけれども、しかし、どういう意思に基づいてそういう応答をいたしましたにせよ、相手の申請人の方に不快な感じを与えたことがあるとすれば、これは私どもの常日ごろの指導方針と相反しておりますので、そういうことがないように厳重に注意をいたしたいと思います。私どもは常日ごろから、日米混血児等からの帰化の相談あるいは申請については可能な限り特段の協力をしてくれということを、文書でも口頭でも何回となく沖繩の地方法務局には伝えているところでございます。
#242
○野間委員 弁解されるのはいいでしょうけれども、私言うのは、十月六日に行ったところが、親権についての指定の書面がなければだめだということで突っ返されたわけですね。それでずっときておったわけですよ。ところが、私らが調査に行きまして相談所に行きまして、それで法務局長は、そうではなくて、そういう同意書がなくても、指定がなくてももちろん受け付けをしますし、本省の了解を得ておる、こういう返事があった、それを私は伝えたわけですね。そこでその係の人が戸籍課長に電話したところが、いま言ったような暴言を吐いたわけですね。ここにやはりべつ視が出ておると思うのですね。したがって、そういうことのないようにとにかく窓口で親切に、上で何ぼ言ったってだめですから、ぜひそういうことのないようにさらに徹底してほしい、これが一つです。
 時間の関係でもう一つ続けますが、次は婚外子の無国籍児の問題であります。この無国籍児が帰化の手続をする場合にだれがどのようにすれば最も簡易にできるのか、お答えいただきたい。
#243
○貞家政府委員 婚外無国籍というケースがかなりあるようでございます。これは法律上はアメリカ人と婚姻中でございますからいわゆる嫡出の推定が働くということですが、事実上離婚状態にある、それで他の日本人の男子と同棲生活に入っているというようなケースから生まれた子供であろうと思うのでございます。
 これは法律上非常にむずかしい関係になるわけでございますけれども、私どもが一応考えておりますのは、これは事実上行方不明あるいは完全な別居で夫が帰ってしまったということでございますと、そういったことを立証いたしますことによって嫡出推定が一応破られる、それでそういう解釈を前提にいたしまして認知を求める。つまり現在同棲している事実上の夫に対しまして認知を求める。それによって家庭裁判所の調停によりまして合意ができるという場合に合意による審判を得ていただく、それによって戸籍面も解決される。この場合には日本国籍を当初から持っているということになるわけでございまして、それによって解決するのが最も便利な方法ではないだろうか、かように考えております。
#244
○野間委員 末端までそういう指導をぜひやっていただきたい。
 それからもう一つですが、外国人の登録と帰化の手続に関しまして、たとえば日本人妻と結婚をした米軍人との間で生まれた子供で無国籍の場合、この無国籍の子供が帰化の申請の手続をするという場合に外国人登録の関係では一体どうなるのか。いずれ帰化するわけでありますから、外国人登録そのものをすることは無意味ではなかろうか。したがって日本の母の子供の帰化手続については、外人登録はなくても帰化の申請をし許可ができるというふうにぜひ運用上すべきだというように私は思いますが、いかがでしょう。
#245
○貞家政府委員 外国人登録法の目から見ますと、やはり外国人登録をすることによって在留資格を持ち住所を有するということを証明するということが、これはまあ筋は筋でございます。しかしながら現実の問題といたしまして、外国人登録ということが事実上できないようなケースもあるわけでございます。軍属関係者というような場合に問題は起こります。
 したがいまして私どもの態度といたしましては、外国人登録をしていただければそういった証明等は非常に簡単になりますけれども、外国人登録をしないで帰化の許可の申請をされるという場合にも、これはそれによって不許可にするというようなことではなくて、帰化条件についてこの場合には調査をいたすことになるわけでございますが、調査して問題がない場合には帰化を許可するという方針でやっております。ただこの場合においても、くどいようでございますけれども、外国人登録をする義務、在留資格を取得する義務を免れてしまうということになるわけではございませんけれども、帰化の申請といたしましてはこれを認めている例もございます。
#246
○野間委員 いや別に入管のことは聞いているのじゃなくて、民事局として運用上受理から許可までそういう方針でひとつぜひやってほしい、いまそういうお答えがありましたので、それもぜひ末端まで行政指導をお願いしたい、こう思います。沖繩まで、よろしいですね。
#247
○貞家政府委員 先生御指摘の諸問題については十分現地に徹底を図りたい、かように考えております。
#248
○野間委員 もう時間がありませんので、ずいぶんあるのですけれども、あと一、二点続けてお伺いしたいと思います。
 一つは、国際結婚の破綻の中で、たとえば離婚手続になりまして子の扶養料とか慰謝料請求、あるいは妻子を置き去りにした外国人の夫が扶養義務を怠っているというようなケースがずいぶんあるわけです。しかも、そういうケースの中で扶養料なりあるいは慰謝料の実行が不可能であるということの中で、たとえばアメリカでは各州間の協定とかあるいはアメリカとイタリアとの協定等々があるようでありますけれども、二国間の協定を結びまして執行ができるようにこれはぜひやらなければならぬのじゃないか、こういう要望も強く出ておるわけですね。沖繩の教育振興会の方々がアメリカの総領事館と交渉された場合でも、双方の協力でこの問題を解決したいというふうに答えておるわけでありますが、協定を結んで履行確保を図る努力を法務省としてもぜひするべきじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
#249
○貞家政府委員 ただいま御提起になりました外国判決の執行の承認という問題は国際的にも非常にむずかしい問題でございまして、訴訟制度が異なっております国同士ではなかなか問題があるわけでございます。たとえばへーグの国際私法会議でもそういった条約案が採択をされておりますけれども、批准する国は少ないという状況にあるのが現実でございます。
 しかし御指摘の問題は、確かに私どもとしてほってはおけない問題だと思っております。したがいまして、この点につきまして外務省その他関係当局とただいま名案はないかといろいろ協議をいたしておるわけでございまして、問題は非常にむずかしゅうございますけれども、私どもとして、その点につきまして十分効果のある状態にいたしたい、かように念願し検討しているということを申し上げたいと思います。
#250
○野間委員 最後に、入管局長に外国人の登録手続の問題でお尋ねするわけですけれども、私、沖繩へ参りましていろいろ聞いております中で、たとえば基地の中の病院で生まれる、しかし出生したときの書類なり証明、そういうものは全く散逸をしてない、つまり医師とか産婆さんのあれもありませんしという場合に、母親の陳述書、そういう疎明だけで外国人登録ができるのかどうか、こういう要望も非常に強いわけですね。運用上、無国籍のこういう沖繩のケースの場合にこれはできるのかどうか、ひとつお尋ねをしたいというのが一つと、もう一つですが、沖繩での、先ほど申し上げたけれども、年間四百件ばかり国際結婚をして五十件ばかり混血児、国際児が産まれ、その中で無国籍児もずっとこれから継続していくという中で、この混血児に対する救済という点から日米での児童福祉基金、こういうものをぜひつくってほしい、こういう要求も受けてきたんです。こういうものを検討していただけるかどうか。
 この二点を局長と大臣にお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
#251
○小杉政府委員 外国人登録法の関係では、ただいま先生がおっしゃったとおりに私どもやっておるつもりでございます。新たに外国人登録をするのでございますので、その際は出生証明書であるとか父の軍籍離脱の証明書というようなものを一応は要求しておるわけでございますけれども、これらの文書が得られない場合には、母等からそれにかわるものとして陳述書を提出していただくということで申請を受理することにいたしておりまして、その点は先生御要望どおりのことが現に行われておるはずでございます。
#252
○奥野国務大臣 沖繩にもいろいろな社会福祉団体があると思うのですけれども、具体の事例については承知しておりませんので、よく検討していきたいと思います。
#253
○野間委員 しり切れトンボになりましたけれども、時間が参りましたので、一応きょうはこれで終わりたいと思います。
#254
○熊川委員長代理 次回は、明後七日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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