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#1
第093回国会 本会議 第4号
昭和五十五年十月六日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和五十五年十月六日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
 宇宙開発委員会委員任命につき事後承認を求め
  るの件
 公正取引委員会委員任命につき事後承認を求め
  るの件
 労働保険審査会委員任命につき事後承認を求め
  るの件
    午後一時三分開議
#2
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(福田一君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。北山愛郎君。
    〔北山愛郎君登壇〕
#4
○北山愛郎君 私は、日本社会党を代表して、当面の重要な問題について政府の所信をただし、なお、われわれの主張を明らかにしたいと思うのであります。(拍手)
 総理の施政演説を聞きまして奇異に感じましたのは、齋藤前厚生大臣の問題について一言も触れていないことであります。いかがわしい病院理事長から多額の政治献金を受けた齋藤氏が国務大臣をやめたということは当然でありますけれども、その齋藤氏を国務大臣に任命した総理の責任もまた重大だと思うのであります。この問題につきまして、釈明を求めるとともに、総理の所信を承りたいと存じます。
 いま政府・自民党の周辺は、改憲論議で騒然としております。多くの国民は、自衛隊の増強、安保体制の拡大、有事体制の推進、靖国神社法、そして憲法改悪と、右寄り反動化への道を進む自民党の一党支配に対して、不安と危惧を感じておるのであります。(拍手)われわれは、このような情勢の中で、いまこそ平和憲法を守り、非武装中立の理念をかたく守るべきときだと信じておるのであります。(拍手)
 また、国内の政治の腐敗、経済の行き詰まり、社会の荒廃を克服するためにも、人間尊重、自由と平等をうたった憲法の諸原則をよりどころにして、平和の創出と民主主義の再生を図らなければならないとかたく決意するものであります。(拍手)
 鈴木総理がある場所で、日本の憲法は、平和主義、民主主義、基本的人権尊重など、世界にすぐれた憲法である、これを改正する意思がないと表明されたことを、私は率直に評価します。しかし、先日の施政演説の中では、その表現がまことに不明確でございました。改めてここに憲法改正の意思がないことを明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 また、それが総理の真意であるならば、これを行動で示し、閣僚の言動に対して強い指導性を発揮すべきであります。国務大臣は、憲法及び法律に従って行政を執行する責任ある地位であって、一般の人のように勝手な改憲論議が許されるものではありません。(拍手)もしも総理の意に反して改憲論議を行う閣僚がある場合は、断固これを罷免すべきでありますが、総理の決意のほどをお尋ねをいたします。(拍手)
 総理の言明にもかかわらず、政府の外交、防衛政策は、平和憲法に違反する危険な方向に進んでおります。
 昨年の外交青書には、いかなる国とも敵対関係をつくらない、政治体制のいかんを問わず相互の交流を深めるという、いわゆる全方位外交でありましたが、本年の外交報告には、自由と民主主義という基本的価値を守ることが外交の使命であるとして、ソ連を敵視し、米国、西欧など自由主義陣営との連帯を強調しております。西側陣営の一員として、犠牲を惜しまず、積極的な役割りを果たすという体制擁護のイデオロギー外交に百八十度転換しておるのであります。この方針は、米国の世界戦略に追随し、自衛隊の増強と海外派兵につながり、東西両陣営の軍備拡張に巻き込まれ、人類破滅の核戦争に突き進むまことに危険な道であります。(拍手)
 いまわれわれ日本の重大な役割りは、一九九〇年代において一〇%起こる可能性があると言われる核戦争を阻止することであります。
 現在、世界の核兵器は、広島型の百万倍、人類一人一人の頭上にTNT火薬三トンずつがぶら下がっておるというまことに危険な状態であります。この人類破滅の第三次大戦を阻止するためには、米ソ両陣営の一方に加担して、その対立激化に手をかすことではありません。多数の非同盟中立あるいは非核保有国とともに、米ソ両大国の核軍縮を要求し、双方の話し合いと緊張緩和を進め、世界の平和のために全力を尽くすことでなければなりません。(拍手)
 われわれはすでに、政治、社会体制を異にする、この政治、社会体制の相違を乗り越えて、中国との平和友好の関係を結んだではありませんか。何ゆえに、いまになって全方位外交を捨てて、体制擁護を外交の土台に据えようとするのか、総理及び外務大臣の明確な答弁を要求いたします。(拍手)
 冷戦時代とは違って、現在では米ソ両陣営とも多極化いたしております。また、米国、西欧は日本と同じ資本主義ではありますけれども、その環境や国益は相違し、決して一枚岩ではございません。
 去る九月十八日、カーター大統領は記者会見で、西欧やアメリカを守るために、必要なときは核兵器を使用すると言いながら、日本の防衛についてはどうかという質問に対して、回答を拒否したと伝えられております。アメリカにとりましては、日本と西欧では差別があるのであります。
 私はかつてこの議場で、アメリカの核のかさに頼ることをやめるべきであると主張しましたが、いまこそわが国は非核三原則を堅持するとともに、アメリカの核のかさに依存しないことを宣言し、自由な立場で核絶滅と核戦争反対のために立ち上がるべきであり、これこそが原爆の洗礼を受け、平和憲法を持つわが国の歴史的使命であると思うが、総理の決意を伺いたいのであります。(拍手)
 大村防衛庁長官は、わが国の防衛力は防衛計画大綱をやってもまだ不十分であると言い、また非武装中立は非現実的だと批判したと聞いております。
 私は防衛庁長官に、予想される敵の攻撃があった場合どのような状況が起こってくるのか、どれだけの自衛力があれば日本を守ることができるかということを、現実的に説明していただきたいのであります。(拍手)
 もし次の戦争が起これば、それは初めから本土が戦場になるということであります。ちょうど前の大戦の末期、日本が本土決戦、一億玉砕を覚悟したとき、その状態から事態が進行するのであります。空襲で石油基地や発電所が破壊され、海上輸送路が妨害されれば、電気がとまり、食糧が姿を消して、パニックが起こるでありましょう。前の大戦では、いまだに国家補償をもらえない民間の犠牲者が六十五万人もありましたが、今度は数百万、数千万になるかもしれないのであります。
 大村長官、一億の国民がその際どこに避難したらいいのか教えてください。そういう状況の中で自衛隊が何をなし得るかということを明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 穀物でわずか三四%の食糧自給率であります。さらに、石油、諸原料のほとんどを海外に依存するわが国では、戦争が起こって輸入が減ったのならば、自衛隊をどんなにふやしても、国民の命を守ることができないのであります。(拍手)私は、敵をつくらない平和外交に徹し、食糧の自給とエネルギーの自立を急ぐということこそ、これが自衛力増強よりもより現実的な安全保障であると信ずるものでございます。(拍手)
 次に、金大中氏の問題と朝鮮政策についてお尋ねいたします。
 金大中氏の死刑判決という最悪な事態を招いたのは、七三年の拉致事件のときに、金大中氏の人権を守り、原状回復を図ろうとしないで、その場しのぎの政治決着をつけた政府の責任であることは明瞭であります。もしも最終的に金大中氏の極刑判決が下ったときに、政府はどのような対応をするか、見解を伺いたい。
 また、当時の田中法務大臣、高橋警察庁長官、アメリカの当時のレイナード韓国部長、あるいはアメリカの下院の国際機構分科委員会のフレーザー委員長も、元韓国KCIA部長だった金炯旭氏も、これは明らかに韓国KCIAのしわざだと言っておるのに、政府はKCIAの犯行と考えているのかどうか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 特に田中元法務大臣が、当時政府が問題をうやむやにしたのは日韓癒着が原因であると公言しておられます。政府はこの日韓癒着をさらに新しい全斗煥政権と結びつけるような動きがございますけれども、まことに危険な方向であると言わなければなりません。
 いまこそ政府は、韓国一辺倒の対朝鮮政策を転換して、朝鮮民主主義人民共和国政府と経済文化交流を深めるとともに、政治交流に道を開き、懸案の朝鮮労働党代表の入国を認めるべきであると思うが、外務大臣の見解を伺いたいのであります。(拍手)
 次に、財政経済問題に移りたいと存じます。
 ことしの経済白書では、第二次石油ショックをうまく切り抜けたと礼賛しておりますけれども、しかしそれもつかの間で、またまた物価高と不況が共存する経済の病気が進行しております。物価は二月以来八%台、四月から六月までの経済成長率は年率で二・五%に低下しております。ことしの物価上昇率六・四%、経済成長率四・八%の目標の達成は、すでに大きな狂いが生じておるのであります。
 政府は、来年度国債を二兆円減額すると言っております。自然増収を当て込んでおります。果たしてそれが実行できるのかどうか、今後の税収見込みなどを中心として、大蔵大臣の答弁を求めたいと思うのであります。
 いまわが国の経済は、石油ショックの中でもぼろもうけをしておる大企業と倒産におびえる中小企業、人減らし合理化と低賃金で圧迫されておる労働者、低米価と減反、さらには冷害にあえぐ農民など、日の当たる上層部と日陰に残された労働者、農民、中小企業と、明暗二重の構造となっております。(拍手)経済の上半身は血がたまり過ぎてインフレを起こし、下半身は貧血して不況を生み出しておるのであります。九月期の決算も、大企業は前期に比べて大もうけにもうけをふやしており、電力会社などは料金値上げで五千億円もの増益となる見込みなのに、昨年の中小企業の倒産は一万六千件を超え、今年は昨年に比べてさらに件数で一五%、負債額では二九%もふえております。
 こうした強い者勝ち、弱い者いじめ、格差と不平等の広がる社会をそのままにして、どうして総理が言う安定成長の成果をともに分かち合っていく時代や思いやりのある社会を築くことができるでしょうか、社会的公正が実現できるでしょうか、総理のお考えを聞きたいのであります。(拍手)
 われわれは、現在の矛盾と停滞を克服して経済に活力を与えるためには、強い者の横暴を抑える経済の民主化を進めなければならないと信じております。独禁法を強化し、下請企業を親企業の圧迫から守り、中小企業の事業分野を確保し、大資本による大型店の殴り込みから零細な小売店を守る必要があると考えるのであります。(拍手)
 さらに、高度成長とインフレの中でぼろもうけをした者から税金を取って、富と所得の再分配をしなければなりません。昭和四十四年から五十三年までの十年間だけで宅地の値上がりは実に二百六十六兆円にも上っております。そして大地主も大企業も莫大な土地の含み資産を持っております。持てる者と持たざる者との不平等が広がっておるのであります。これに対してわれわれが提案してきました土地増価税法案でも、総額で十五兆円、これを五年に分けて毎年三兆円の税収が可能であり、また、租税特別措置など企業優遇税制を思い切って整理をすれば、三兆円近い増収が見込めるのであります。
 現在の経済の行き詰まりと財政再建を同時に解決するためには、この際、自民党政府といえども、思い切って大企業と金持ち優遇の税制にメスを入れるべきだと思うが、総理または大蔵大臣の見解をお聞きしたいのであります。(拍手)
 次に、防衛関係費に触れますが、アメリカの政府は、防衛庁の内部資料である中期業務見積もりを盾にして防衛費の予算編成にくちばしを入れて、国防会議にも閣議にも出さない資料がアメリカの手に渡っておる。この予算増額の要求の盾にされておる、道具にされておるわけでございます。どうしてこのような資料をアメリカ側に渡したのであるか。こんなことでは文民統制がどうにもならないではありませんか。いつ自衛隊がアメリカに所属がえをしたのでありましょう。その経過を防衛庁長官から説明していただきたいのであります。(拍手)
 また、防衛費には、表の予算のほかに裏金として、御承知の国庫債務負担行為及び継続費が莫大な金額に達しております。五十五年度では八千四百八十八億、五十六年度には九千九十億を予定しております。そして後年度以降の予算を先食いして、雪だるま式に防衛装備を進めておるわけであります。このために後年度の負担が、本年五十五年では一兆二千五百二十四億、五十六年には一兆五千五百億にも達する。このことは当然翌年度以降の今後の予算編成あるいは財政再建に重大な支障になると思うが、大蔵大臣の見解を承りたいのであります。(拍手)
 次に、労働の問題に触れたいと思います。
 憲法は第二十七条で国民の労働権を規定し、第二十八条では労働基本権を保障しております。この際、この法律の基底にある、根本にある労働に対するわれわれの正しい評価を明らかにしなければならないと思います。改めて社会の中で労働というものが果たしている役割りについて、正しい評価を持つべきであると思うのであります。社会の富を生産し、日々の社会の活動を支えているものが労働であることは、資本主義であろうと社会主義であろうとも変わりはありません。民主社会という以上は、金よりも人間が大切にされ、社会の価値を生産する労働が正当に評価され、尊重されなければならないと思いますが、このような労働に関する基本的な見解につきまして総理の労働観をお尋ねするものであります。(拍手)
 また、これに関連して触れたいことは、国鉄、郵政等、公共企業体労働者及び公務員労働者の賃金について仲裁裁定や人事院勧告が出ているのに、国鉄再建法あるいは郵便法等の審議と絡めてその支給をおくらせていると聞いておるのでありますが、もしもこれが本当であるとするならば、余りにもけちくさい小手先の術策であって、天下をとっている大自民党のやるべきことではありません。(拍手)出すものは出す、速やかに支給の手続を進めるよう強く要求するものであります。
 次に、冷害及び農業再建とエネルギー問題について質問いたします。
 本年は、異常な冷夏のために戦後最大級の冷害となって、米その他の農作物やあるいは漁業にも多大の被害を受けました。被災農民はもちろん、不況にあえぐ地方経済にとって二重の打撃であり、地方住民の不安は深刻であります。特に総理の郷土である岩手県は激甚な被害を受けておるところであります。国は、天災融資や共済その他きめ細かい対策を講ずることはもちろん、特に農家の現金収入をふやすために、被害額に見合う地方債の枠を定め、市町村を主体として小規模な改良工事や山林の作業その他労賃部分の多い事業をたくさん起こして、国は、起債の元利償還の際に、後で地方交付税等でこれを負担するような機動的な対策が必要と考えるものでありますが、これを実施する考えがあるかどうか、お尋ねをいたします。(拍手)
 自然冷害の後には二期減反という政治冷害が待ち構えております。この際、減反を凍結して、本年四月のこの国会で食糧自給力強化に関する決議をやりましたが、その決議を実行に移し、主要農産物の自給と備蓄の立法化を行い、十年計画で穀物七〇%程度まで自給を達成するために、農政の大転換を要望いたしますが、総理の決意を承りたいのであります。(拍手)
 エネルギー自立については、イラク・イラン紛争にかんがみましても、速やかに石油依存から脱却するとともに、エネルギー節約、代替エネルギーの開発利用の促進が必要でありますが、しかし、原子力発電については、相次ぐ内外の事故の頻発など、安全性及び経済性について疑問があるばかりか、放射性廃棄物処理の方法が解決されていないのであります。今回暴露された相模湾や駿河湾への放射性廃棄物の投棄による海洋汚染の疑い、あるいはアメリカ沿岸の廃棄物投棄による深刻な汚染など、続々として危険な事実が起こっておるのであります。また、小笠原島民を初め、南太平洋諸国住民の強硬な反対も起きております。
 この際、政府は、政府の低レベル放射性廃棄物海洋投棄計画は中止し、全面的に再検討することが当然と考えるが、総理の所信をお伺いしたいのであります。(拍手)
 わが党は、石油にかわるエネルギーについては、危険な原子力発電によらず、太陽熱、中小水力、地熱、風力、波力、生物性エネルギー等の開発を進めることを提唱しております。この開発可能性は、原子力発電による分をはるかに超えるものがあると私どもは考えておるところであります。自民党の皆さんも、十分勉強されたいのであります。(拍手)特に府県や市町村を中心とし、地域における自然エネルギー等の開発利用を積極的に推進するため、われわれは立法化を検討中であります。政府も、来年度予算編成において思い切った自然エネルギー予算の増額など対策の充実を要望するものであります。総理の御見解を承りたいと思います。(拍手)
 次に、行財政改革についての提言を述べたいと思います。
 第一には、憲法九十一条による国の財政報告の問題であります。憲法九十一条には、「内閣は、國會及び國民に封し、定期に、少くとも毎年一囘、國の財政状況について報告しなければならない。」と明定しております。これが実行されておりません。その結果、地方財政白書はあっても、国家財政白書はないのであります。財政法第四十六条を見ましても、その諸報告のうちにも、これに該当するものはございません。なぜ財政についてだけ憲法でわざわざ政府の報告義務を規定しているか、その意味を再認識をして、本年から正式の財政報告を実行するように要求します。総理のお考えを承りたいのであります。(拍手)
 続いて行財政改革の問題でありますが、人減らし、仕事減らし、安上がり政府の行政改革の方針は、複雑な行政需要の増大した現代の状況を無視した非科学的な発想と考えます。大蔵省主計局編さんの歳出百科によると、わが国の公務員は諸外国に比べて非常に少ないということ、従来の行政整理で公務員数はふえていないこと、歳出における人件費の割合が低下し続けておるということが指摘されておりますが、さらに詳しく大蔵大臣から説明を願いたいのであります。
 私は、むしろ行政及び事業の効果を審査して、むだと浪費をチェックする制度が必要と考えます。原子力船「むつ」は何の役に立っているのでありましょうか、中央、地方で数千カ所の工業団地をつくったが、相当部分が遊んでおり、二兆円もの投資の借金が焦げついておるのは適当であったかどうか、地価公示制度はかえって地価値上がりを刺激しておるのではないだろうか等々、行政や事業のアフターケアの必要があります。行政改革は機械的な人減らしではなくて、こうした行政効果審査制度を確立する、そしてむだをなくしていくということが重要であると思いますが、この制度を検討、実施する考えがあるどうか、総理からお答えを願いたいのであります。(拍手)
 最後に、私は、わが国の議会制民主主義の存亡にかかわる金権腐敗政治の一掃と政界浄化の課題を取り上げます。
 戦後、大小多数の政治疑獄が摘発されましたが、少しも事態はよくなっておりません。このごろでは行政の分野まで金による腐敗が広がって、汚職事件が毎日頻発しております。政党や政治団体への献金もまたどんどんふえ続けております。未届けの分を加えたら莫大な金であります。全くこれは日本の政治がどっぷりと金の中につかってしまっておる、金が政治を支配しておるという金主政治であって、民主政治とは言えないのではないでしょうか。(拍手)いまこそ金権腐敗を一掃して、国民の手に政治を取り戻さなければ、議会政治への信頼が地に落ち、歴史の先例や諸外国のクーデターに見られるように、ファッショ独裁政治に道を開く、まさに議会制民主主義の命運にかかわる重大な事態であります。(拍手)
 政治汚職は単なる刑事事件として司法検察の手だけに任すべきものではありません。国民の信頼を失った政治家はみずから進退を決めるべきであり、また所属政党が適切な処断をすべきであります。ニクソン元大統領がウォーターゲート事件に問われ、逮捕も起訴もされなくても、世論の批判を受けて大統領をやめ、政界を引退しました。これが民主主義というものでありましょう。わが国では、逮捕され、起訴されても、裁判が済めばのこのことまた政界に復帰をする。また、そういう前歴を持った人が往々にして総理・総裁になることは御承知のとおりでございます。現にロッキード事件に連座をして起訴された有力政治家が、議員バッジをつけて裁判所へ通っているというようなありさまであります。(拍手)
 こういう実態を放置して政治倫理を説いても、かえって問題の焦点をそらすごまかしと見られ、国民の共感を得ることはできないでありましょう。もちろん政界浄化の大事業は、政治家の自覚と良心、また選挙民の良識によって改善することが本筋であると存じます。しかし、金権万能のこの金主主義の社会でこれを望むことが百年河清を待つに等しいとするならば、この際、次善の策として制度改革を断行するほかはないと思うのであります。
 企業献金を全廃し、個人献金も善意のものと考えられる一定額以内に抑える、そして選挙公営を拡充し、金のない者でも立候補できる道を開くべきだと思うのであります。
 このための、一挙にこれを実現する決意が鈴木総理にあるかどうか、決意を明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 以上、私は社会党の主張と政策を述べ、政府の所信をただしました。八〇年代を迎えて内外の難問が山積し、国民生活の面でも、就職難がある、住宅難がある、結婚難がある、また借金地獄、受験地獄、交通地獄、さらには老後の不安、病気の不安、災害、事故の不安など、この世の中は難儀と地獄と不安でいっぱいであります。
 今日、政治の課題は、このような国民の悩みと苦しみの解決のために真剣に取り組むことであって、断じて現実から遊離をした憲法改悪論議ではないと思うのであります。(拍手)
 われわれ日本社会党は、あくまで平和憲法を守るとともに、積極的にその原則を現実に生かして、まじめに働く者が正しく報いられ、働けない人でも安心して暮らせる社会をつくるため、全力を尽くすことを約束して、代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 最初に、齋藤前厚生大臣の辞職の件につきまして申し上げます。
 齋藤前厚生大臣は、同郷福島県人で名誉村民の肩書きを持っている北野早苗という人物を信用し、善意の献金と思い、不用意に政治献金を受けましたが、その後でその者が医師法違反などの容疑があるということが判明したので、直ちに全額を返金するとともに、職責上厚生大臣の地位にとどまることができないとの責任感から、自発的に進退を決められたものであります。
 私は、現内閣が政治倫理の確立を第一に掲げ、政官界の浄化刷新に努めているととから考え、齋藤氏の申し出を受理し、厚生大臣の更迭を行ったものであります。まことに遺憾にたえないところでございます。
 次に、憲法問題についてお答えをいたします。
 憲法改正問題に対する鈴木内閣の方針について、この際、明確にしておきたいと思います。
 まず、結論から先に申し上げますが、鈴木内閣におきましては、憲法の改正ということは全く考えておりません。現行憲法を遵守し、擁護してまいります。
 私が憲法を改正する考えのないことは、次の理由によるものであります。
 その第一は、現行憲法は民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重を基一本理念としておりますが、この理念は非常にすぐれたものであると評価し、将来においても堅持すべきものと考えております。
 その第二は、憲法を改正するというようなことは慎重の上にも慎重な配慮を要するものであり、国民の中から憲法を改正すべしという世論が大きく高まってきて、国民的なコンセンサスがそういう方向で形成されることが必要であります。
 ところで、現在国民の中に憲法を改正すべしということについてコンセンサスができておるとは思いません。したがって、そういう段階において憲法改正という問題を政治日程にのせることは全く考えておりません。
 次に、最近の憲法論議についてであります。
 憲法第九十九条は、公務員の現行憲法に対する尊重擁護義務を規定しておりますが、内閣としては、同条の規定に従って憲法を厳に遵守していくものであります。
 他方、憲法九十六条は憲法の改正手続を規定しており、憲法の改正について議論をしたりあるいはそのための研究を行うことは、もとより憲法第九十九条の尊重擁護義務に違反するものでないことは明確でございます。(拍手)
 鈴木内閣においては、現行憲法を改正しない方針を確認しております。閣僚が憲法を尊重擁護し、法律を誠実に執行していくことは当然のことであって、これに反する閣僚は一人も存在しておりません。(発言する者あり)もとより、各閣僚は、政治家である以上、憲法について研究し、その改正の要否について意見を持っておることは当然でありますが、現内閣においては、憲法を改正しないとの方針には閣僚全員が賛成しておりますので、閣内不一致ということはありません。(拍手、発言する者あり)
 次に、外交問題についてお答えいたします。
 北山議員より、わが国の外交の基本方針についてお尋ねがございました。相互依存の関係が深まった今日の国際社会におきましては、いかなる国といえども、世界の平和と安定なくしてみずからの平和と繁栄を達成することはできません。
 わが国としては、従来から、米国との友好協力関係を基軸とし、自由主義諸国との連帯強化に努めますとともに、これを基盤として世界の国々との友好協力の輪を広げていくとの政策を進めてまいりました。わが国としては、今後ともこのような積極的な平和外交を推進してまいる考えでございます。
 なお、核軍縮についてのお話がございましたが、北山議員も御案内のとおり、わが国は、これまでも国連その他の国際的な場において、核軍縮を中心とする軍縮の促進を強く訴えてまいりました。また、多くの非同盟諸国とも協力をして、現実の国際関係の中で実現可能な措置を求めて積極的な努力を展開してまいりました。わが国としては、今後とも平和憲法のもと、平和国家としての自負に基づき、このような努力を継続してまいる考えでございます。
 次に、日米安全保障体制の問題についてであります。
 米国は、日米安全保障条約に従ってわが国を防衛する義務を負っております。また、従来より米国政府は、わが国に対する核を含めいかなる武力攻撃に対しても、日本を防衛するということを表明してきております。
 わが国に対する核の脅威や攻撃に対しては、米国との安全保障体制に基づき、米国の核の抑止力に依存するとともに、これを抑止することが最も賢明な道と考えるものでございます。政府としては、このような考え方を変える考えは持っておりません。
 次に、金大中氏の問題についての御指摘がありました。
 今般の金大中氏の裁判は、韓国の国内問題でありますが、政府としては、金大中氏の身柄の問題については重大な関心を有しており、このような関心を今後とも韓国側に伝えてまいる考えでありますが、他方、他国の裁判に介入しているがごとき印象を与える態度をとることは避ける必要があろうかと考えます。(発言する者あり)
 北朝鮮との交流の問題についてお答えいたします。
 わが国としては、朝鮮半島地域の安定を重視し、韓国との円滑な関係を維持するとともに、他方、北朝鮮との間においては、経済、文化等の分野における交流を漸次積み重ねていくとの方針で臨んでおります。政府としては、引き続きこのような基本方針を堅持してまいりたいと考えております。
 なお、北朝鮮との間の政治的色彩の強い交流につきましては、南北関係の微妙な現状にかんがみ、慎重に対処する必要があろうかと考えております。
 大企業と中小企業の格差の問題につき御指摘がございましたが、御承知のとおり、中小企業に関しましては、その経済的、社会的制約による不利を是正する観点などから、その設備近代化、事業の共同化、過当競争の防止、事業活動、受注機会の確保などの諸施策を講じてまいったところでありますが、この結果、趨勢的には大企業と中小企業の格差も次第に縮小してまいっております。今後とも上記諸施策の適切な運用充実を期し、中小企業の経営の安定、活力ある中小企業の育成に努力してまいる所存でございます。(拍手)
 次に、労働の役割り評価についてであります。
 働くことは、国民一人一人がその生活を営み、向上させるためにも、また広く経済、社会の発展のためにも欠かすことのできない基本的な要素であると思います。わが国の今日の繁栄が、勤労者の勤勉さに負うところが大きいことを所信表明の中で申し述べたのも、まさにその趣旨に基づくものであります。
 政府としては、今後とも勤労者が安心して働くことができ、かつ、その成果を正当に享受できるような環境、条件を整備することに努めてまいる所存でございます。
 仲裁裁定、人事院勧告の問題についてお答えをいたします。
 私も、仲裁裁定をできるだけ早く実施したいという気持ちにおきましては北山さんと変わりがございません。が、国鉄、郵政関係の仲裁裁定は、国鉄再建法案、郵便法改正法案が未成立であり、予算上可能とは断定できませんので、議決案件として国会に付議しております。
 政府としては、仲裁裁定を早期に実施できるようにするためにも、これら関連法案の早期成立に最善の努力をいたすものでありまして、各位の御協力をお願いを申し上げる次第であります。(拍手)
 人事院勧告の取り扱いにつきましては、政府は従来からこれを尊重することにしておりますが、今年度におきましては、勧告実施の所要財源が多額に上り、その上厳しい財政事情にあるなど、諸般の事情を総合的に勘案をいたしまして慎重に判断する必要がありますので、現在関係省庁において検討を進めておるところでございます。
 冷害対策のため地方団体が単独で小規模な建設事業を実施する場合には、起債による財源確保について十分配慮し、また、その償還に伴う財政負担については、当該地方団体の財政運営に大きな支障を来さないように十分配慮してまいります。
 水田利用再編第二期対策を凍結せよとの御意見でございますが、今回の冷害は予想以上に深刻であり、被災農家の不安も大きいことでありますので、当面は冷害対策に全力を挙げることとし、この際、第二期対策の決定については慎重を期してまいりたいと考えております。
 自給力の向上と備蓄政策についてでありますが、今後の農政の展開に当たりましては、まず、八〇年代の農政の方向と農産物需給の長期展望を確立すること、また、生産性の高い中核農家を育成すること、さらには、需要の動向や地域の実態に即した農業生産の再編成を行うこと、この三点を中心に食糧の安定供給体制の整備を図ってまいらなければならないと考えております。そのためには、備蓄を含め関連諸施策に積極的に取り組んでまいりますが、特別の立法を新たに行うことはいま考えておりません。
 低レベル放射性廃棄物について御質問がございましたが、原子力開発の円滑な推進を図る上で低レベル放射性廃棄物の処分対策の確立が急務であり、その国際ルールに基づく海洋処分は、国際条約によって認められておるところであります。
 わが国としては、低レベル放射性廃棄物について、まず、試験的海洋処分を行い、その結果を踏まえて本格的処分を行うこととしております。すでに北西太平洋海域で候補海域の調査を行い、昨年、原子力安全委員会の安全評価を完了したところであります。したがって、その実施に関しては、国内水産業界の理解を得るとともに、海外との協調を図りながら、これを慎重に進めてまいる考えであります。
 地域におけるエネルギー開発に関してでありますが、石油代替エネルギーの開発を進める場合、原子力、石炭などのほかに、これまで未利用であった自然エネルギー、御指摘の太陽熱、地熱、風力などのこの自然エネルギー、また、廃熱、廃棄物エネルギーなどのローカルエネルギーについても、環境保全などに配慮をいたしながら開発利用を進めることが望ましいと考えております。この場合、地方自治体の主導的役割りを果たすことが必要でありますが、国としても、地方の自主性を尊重しつつ、これを支援するよう努めてまいりたいと考えております。
 行政改革についてでありますが、行政改革は、人減らしではなく、行政のむだをなくすることであるとの御意見がございました。
 私は、所信表明において、行政の仕事減らしということを申し上げましたが、行政のむだをなくする、行政の効果をチェックするということは、当然、この仕事減らしの考えと一致するものであります。仕事減らしという見地から行政の整理が進めば、おのずから機構をどのように改めればよいのか、定員をどうしたらよいのか、答えが出てくるはずでありまして、そういう考えで行政改革を進めてまいりますので、ひとつ総論賛成、各論反対といったことにならないように御支援を賜りたいと思うわけでございます。(拍手)
 最後に、政治資金、選挙制度の問題について申し上げます。
 政治の浄化を図り、健全な議会制民主主義を確立していくためには、政治資金を明朗化し、金のかからない選挙を実現させることは重要な課題であります。企業献金の禁止、個人献金の抑制という御提案につきましては、企業や個人の政治活動の自由という観点からの問題があると思いますし、また、選挙の公営化の拡大につきましては、私も基本的には賛成であります。いずれにいたしましても、国会の場で、各党各会派が大局的な立場から検討をお願いいたしたいと考えるものでございます。
 憲法第九十一条についてのお尋ねなど残余の問題につきましては、所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣伊東正義君登壇〕
#6
○国務大臣(伊東正義君) 私にお尋ねの第一問は、外交青書の問題でございまして、全方位外交が変わったのかという御質問でございますが、政府としましては、これまでも政治、経済上の理念を共有するアメリカとの友好協力関係を外交の基軸として自由主義諸国との連帯強化に努める、これが外交の基盤でございまして、その上に立って世界の国々との友好、協調の輪を広げていくという外交を進めてきたわけでありまして、この外交の基本姿勢は変わってはおらぬのでございます。
 ただ、去年とことしで違いましたのは、アフガニスタンに対するソ連の軍事介入でございますとか、北方領土についての軍備の充実というようなことがあったという、日本が変わったということよりも、そっちの情勢が変わったということでございます。(拍手)
 それから、その次の御質問は、金大中氏に対する判決が最悪の事態になった場合の政府の責任はいかんということでございます。
 これは、今般の金大中氏の裁判は韓国の国内問題でございまして、金大中氏の拉致事件との直接の関係はないわけでございますので、したがって、現在金大中氏の裁判が行われていることについて、日本政府の責任の問題を論ずるということはいかがなものかと考える次第でございます。
 しかしながら、先ほども総理からお答えになりましたように、金大中氏の身柄の問題につきましては、日本政府としても重大な関心を持っているということはこれはそのとおりでございまして、その考え方は随時韓国側にも表明をしておるわけでございますが、これは韓国の国内問題でございますので、それに介入しているというような印象を避けるということは、総理もさっきおっしゃったとおりでございまして、その態度に注意しつつ、今後もわれわれは金大中氏の身辺に重大な関心を持っているということを韓国側に伝えていきたいと思うわけでございます。
 その次は、金大中氏の拉致事件の犯人は、政府としてどう考えているか、こういう御質問でございます。
 金大中氏事件については、その後も刑事事件としまして、これは捜査当局が捜査を続けているということでございます。ただ、犯人グループがいかなるものかということにつきましては、まだ解明されるに至っていないということを承知しておるわけでございます。
 最後の問題は、金大中氏の事件は、うやむやな政治決着をしたためではないか、日韓癒着のためじゃないかという御質問でございまして、朝鮮民主主義人民共和国政府とももっと活発な交流をすべきじゃないか、あるいは、このために朝鮮労働党の代表という党関係者の入国についてもっと制限を緩和したらどうか、こういう御意見でございました。
 日本としては、韓国は日本の隣国として重要な国でございますので、日韓友好関係は日本の外交にとって重大な地位を占めていると考えておるわけでございます。
 しかし、わが国は、朝鮮半島におきます南北相互間の関係の推移に留意しながら、今後とも北朝鮮との間で経済、文化等の分野における交流を積み重ねていく、そして相互理解を深めていくという考えでございますが、ただ、政治的な色彩の強い交流につきましては、現在の南北間が微妙な関係にありますので、慎重な態度でこれは検討する必要があるというのが政府の考えでございます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#7
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えを申し上げます。
 現在のような状態では税の自然増収も多く見込めないのではないか、したがって、政府は来年国債を二兆円減額すると言っておるが、果たしてできますかね、こういうことであります。
 現実の問題といたしまして、ことしの税の収入状況、これをずっと調べておるんですが、いままでのところは非常に順調に入っております。しかし、まだ予算全体の三割程度でありますから、これから先どうなるかということについてははっきりしたことは申し上げられませんが、われわれは、予算を組んでおく以上はやはり景気の後退があってはならない、そのために、物価を抑制しながら景気にも十分配慮をする。したがって、金利の問題、あるいは、この間の公共事業の第三・四半期を三〇%増加させるというような、いろいろな景気対策をあわせて行っておりますから、まず何とかなるだろう、こう思っておるわけであります。
 それから、二兆円の国債の減額は本当にできるのか、これは、できるのかというよりも、やらなければならないということであります。
 御承知のとおり、ことしは二十八兆の税及び税外収入の中で四十二兆の歳出をしておるわけです。一家にたとえれば、二十八万のサラリーマンが四十二万円使っているという話でありますから、これは長く続くわけがない。しかも、二十八万の収入しかないのに十四万借金して、そのうち五万三千円は、国にすれば五兆三千億は、借金の利息だ。こういうことではとてもやっていけない。したがってこれは、昭和五十四年度の国債発行の実績は十三兆円でありますから、それよりもよけいにするということでは財政再建にならないわけですから、少なくとも五十四年の実績よりも下にするということになりますと、やっぱり十二兆円台にしなければならぬかな、ということになると、ことしは十四兆ですから、結局二兆円それは少なくせざるを得ない。それくらいのことをやらなければ、とても国家財政がめちゃめちゃになっちゃう。したがって、二兆円は、その程度を目標にぜひやらしていただきたい、こういうことでございます。
 その次は、土地税制の問題でございますが、結局税金の問題で、もっと金持ち優遇の税制をやめちゃって、それで本当に庶民にいい税制をつくれと、簡単に言えばそういう話なんですが、結局これにつきましては、特別措置法ではそんなにおかしなものはないのでありまして、現在、五十五年べースで約九千八百億円ばかりの措置法の減税がございます。ございますが、そのうち法人税法関係は一千九百億なんです。全部ひっくるめて一千九百億。しかも、その一千九百億のうち大部分のものは中小企業が八百億、あとは公害とか資源関係。ですから、これはみんなでやれやれというようなことでやってきておるので、そうおかしなものは実はない。昭和四十七年には法人税の中に占める企業関係の特別措置は約九%あった。ところが、だんだん毎年減らしてまいりまして、五十五年度は二・二%しかないのです、法人税の中に占める減税しておる措置法というのは。したがって、これも極力今後も整理はいたします、いたしますが、そこから莫大な金目が出るというようには実は考えられないのでございます。
 問題は土地増価税……(発言する者あり)医者は言ってないです。皆さんの土地増価税の話を言っているのでして、土地増価税十五兆円、年々三兆円の税収が上がるでないか、したがって、これを断行せよということでございますが、これは非常に問題がありまして、実際は、土地の値上がりしたものを税金取れというのですが、一種の再評価税。しかし、この再評価税につきましては現に固定資産税というものがあって、固定資産税はちょいちょい改定をして、それによって固定資産税を取っておるわけですから、固定資産税が余り上がっちゃいかぬ、こう言っている中で、さらにこの社会党の案のような土地増価税というもので、しかも、その税金は経費には認めないのですよ、出しっ放しですよということが、この要綱に書いてあるわけですけれども、これは非常に問題があるわけであります。したがって、私はこの案にはなかなか賛成できない。これは、必要があれば固定資産税等をふやしていけばいいわけであります。
 また、利子配当の総合課税というようなことをやって金持ち税制を改めろという皆さんの強い御要望でありますので、これ等につきましても、これはそのために、要するに分離課税をやめて総合課税にする、したがって、郵便局の貯金も隠れみのにならないように、郵貯マネーについても、これはやはりきちっと限度を守ってもらうということなどを全部やっておるわけでございます。
 その次は、五十六年度には九千九十億円の国庫債務負担行為と継続費であるが、来年はもっと一兆五千億円ぐらいに、結局、防衛庁の国庫債務負担行為あるいは継続費を含めると、そうなるのではないかということでございます。
 これは、御承知のとおり防衛庁のいろいろな艦船、飛行機等の建造というものについては、なかなか一年一年には決められない、数年にまたがるものであります。したがって、それはどうしてもこの継続費とか国庫債務負担行為になるわけでございます。途中で契約を御破算にしても、これはほかへ持っていって売るわけにいきませんし、やはり政府が買わなければならぬということでありますから、取り決めてあるわけでございます。しかし、だからといって、われわれはそれに対して甘い査定をするということは毛頭考えていない。これは防衛庁の予算といえども一般の経費と区別することなく、財政事情その他の経費とのバランスの考慮をしながら徹底した経費の節減、合理化、これはやっていくわけですから、それは仮に、そういうふうな決まったものがあって、こちらで決まらないものもどんどんふくれて、そっちも両方ふくれてと、そう言っても、なかなかこっちはそんなに金がないのだ。それは防衛庁の予算といえども節減、合理化は徹底してやらしていただきたいということでございまして、それが財政再建に重大な支障ができないように努力をしていきたい、かように考えておるわけでございます。
 それから、正式に財政報告というものを憲法九十一条の規定に従って政府は行う義務がある、やってない、こういうことでございます。
 これは実はやっておるのです。実際問題といたしまして、財政報告というものは、予算、決算を初め、また国民に対しましても、たとえば昭和五十五年の七月二十五日の官報、そこにかなり詳細に財政法四十六条に基づく国民への財政報告というものを出しております。したがいまして、われわれといたしましては、官報でちゃんと出しておるので、国民に知らせる方法としては官報で出すということが一つの方法になっておるわけです。ところが、財政の問題とかなんとか、非常に国民になじみにくいというような問題もございますので、なるべくやさしくその解説をする必要があるというようなことで、今回大蔵省でも「財政再建を考える」というパンフレット等もしつらえまして、それでなるべく国民にも知っていただくということが必要ではないかということであります。ただ、正確に官報で出したからいいわというような官僚主義的な話だけでは、それは法律上は正しいかもしらぬが国民になじみがない。したがって、国民になじんでもらうためには、今後、多少正確さを欠くところがあっても、こういうようなものをたくさんつくって報告をする必要がある、かように考えているわけでございます。(拍手)
 それから、最後に行政改革の関係で大蔵大臣にひとつ聞きたい。これは私が言うのが正しいのかおうかわかりませんが、あえて大蔵大臣に聞きたいということを言ってきておりますから申し上げたいと思うわけでございます。
 と申しますのは、日本の公務員の問題でございまして、日本の公務員が非常に多いのかどうかということであります。これにつきましては、一九七六年の数字で比較をいたしますと、人口千人当たりの公務員の数というのは、日本では四十五・二人、アメリカは八十・七名、イギリスが百五・四名、西ドイツが八十二・六人、フランスが六十七・四人ということでございますから、各国と比べますと、必ずしも日本の公務員全体の数がうんとだぶっているということではない、私は、なかなか能率よくやっているんじゃないか、実はそう思っておるわけであります。
 しかしながら、役所の中では、今後も非常に人がたくさん入り用だという増加要求をする役所がございます。たとえば国立大学、国立病院あるいは福祉関係のところ。それと同時に、やはり少し減らしてもらわなければ困るというところもあるわけでありまして、それによって、われわれとしては行政管理庁がいろいろな面でそれを少なくするためにいろいろな行政改革をやっておるわけでございます。したがって、昭和四十三年から第五次にわたった定員削減計画を実施してきた結果が八千八百七十一名の純減というようなことでございます。第五次計画では、五十五年から五十九年にかけて三万七千六百人の定員削減をやるということをうたっておるわけでございます。
 したがって、人件費の割合等も実は年々減少をいたしておりまして、一般会計における……(「そんなことは質問の中に書いてないよ」と呼ぶ者あり)質問の中に書いてあるのです。質問の中で、そのことを詳しく言ってもらいたいということが書いてあるわけでありまして、五十五年度においては約一五%ということになって、年々その割合も下がっておることは、まさに御指摘のとおりでございます。
 以上、答弁にさせていただきます。(拍手)
    〔国務大臣大村襄治君登壇〕
#8
○国務大臣(大村襄治君) 北山議員の防衛に関する私へのお尋ねに対してお答え申し上げます。
 まず第一に、自衛力についての御質問についてでございます。
 わが国は、国防の基本方針にのっとり、近隣諸国との友好協力関係を確立して国際緊張の緩和を図る等の外交施策と、経済的、社会的発展を図るに必要な内政諸施策を講じるとともに、防衛計画の大綱に従い、わが国みずから適切な規模の防衛力を保有し、さらに米国との安全保障体制を堅持することによって、すきのない防衛体制を保持し、もって侵略の未然防止に努めているところでございます。
 しかしながら、万一、不幸にして侵略を受けるような場合がありましても、自衛隊の総合的な運用を図り、また、米国と協力することによって、極力早期にこれを排除する考えでございます。
 御指摘のように、食糧とエネルギーの自立はもとより大切なことであります。同時に、わが国の安全保障を確保するためには、平和外交に努めるとともに必要最小限度の自衛力を保持することが必要不可欠であり、これが世界の現実であることについても御理解を賜りたいと存じます。
 また、私が防衛計画の大綱でも不十分と言ったということでございますが、これは、八五年ごろでも現在の大綱で間に合うのかという質問に対し、将来のことを予測することはむずかしいが、状況によっては不十分となる場合があり得るかもしれないという趣旨を述べたものでありまして、私といたしましては、防衛計画の大綱の実現に全力を挙げて取り組むのが最重要の課題であり、いま直ちに防衛計画の大綱を見直すことは適当でないと考えております。
 なお、私は、現下の厳しい国際情勢にかんがみ、同大綱に定める防衛力の水準を可及的速やかに達成すべく一段と努力してまいりたいと考えております。
 次に、中期業務の見積もりについてでございますが、中期業務見積もりは、昭和五十一年に閣議決定されました防衛計画の大綱の範囲において防衛力整備を進めていく上で、予算概算要求案等を作成するための参考とするために防衛庁が作成しているものでございます。
 この中期業務見積もりについては、これまでの日米両国の防衛問題に関する意見交換の場において防衛庁の考え方を述べる際に、必要に応じその概要を説明しておりますが、その内容はすでに防衛庁が発表した範囲のものであり、米側としても、中期業務見積もりが防衛庁限りのものであることは十分承知しているところでございます。
 なお、米側より、わが国の防衛力強化につき希望表明がなされていることは事実でございますが、わが国としては、あくまでわが国の自主的判断に基づき、防衛計画の大綱に定める防衛力の水準を可及的速やかに達成すべく防衛力の整備を行っているところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(福田一君) 伊藤宗一郎君。
    〔伊藤宗一郎君登壇〕
#10
○伊藤宗一郎君 自由民主党を代表し、総理の所信表明演説に対し、質問をいたします。
 総理も述べておられますように、今日政府が当面している課題は、広範かつ複雑であります。そして、その多くは、長期的視野に立った対応が求められるものであります。
 私は、そのうち、特に重要と思われる課題、国民が当面最も関心を持っている問題にしぼって、総理の御所見と御決意をお伺いしたいと思います。
 まず、鈴木内閣の政治運営についての基本方針についてであります。
 先般の衆参両院選挙は、わが国議会史上初めての同時選挙であり、八〇年代のわが国の政治の進路を決する歴史的な意義を持った選挙であったのであります。そして、この選挙に当たっていろいろの予測が試みられましたが、衆参両院とも、わが自由民主党の安定多数確保という結果となってあらわれたのであります。
 この結果が明確に意味するものは、いま、内外ともに激動と混迷を続ける八〇年代の政治を引き続き自由民主党に託することが、最も賢明な、そして確かな選択であるという国民の信頼のあらわれであり、また、この厳しい内外の環境を克服して、八〇年代を希望に満ちた確かなものにするためには、まず何よりも政局の安定が第一であるということを、国民が痛切に認識されたということであります。(拍手)また、反面、選挙に臨んで野党各党から打ち出された非現実的で不安の伴ういわゆる連合政権構想に、国民がはっきりと拒絶反応を示したとも言えると思います。(拍手)
 戦後三十有余年、ほぼ一貫して政権を担当し、あの荒廃の中から今日の日本を築き上げ、この間幾多の危機を乗り切ってきた実績と経験、そして未来に対する対応力とを持つ自由民主党に、国民が八〇年代の日本の命運を託したのは、当然の選択であったと思います。
 このような国民の広範な支持と強い期待とを担って誕生した鈴木内閣の使命と責任は、きわめて重いと言わなければなりません。しかも、その後の各種の世論調査は、いずれも、内閣と自由民主党に対する支持率について、いまだかつてない高い数字を示しております。
 総理、この重い責任を果たすために、総理自身もしばしば言明されておられるように、党がこのたびの選挙で公約した政策を忠実、適切に実行することであります。
 総理は、政治姿勢の理念として和の政治を提唱され、野党とも謙虚に、そして誠意を尽くして話し合いながら政治を進めていく旨述べられておりますが、このことは、このたびの選挙の結果について責任の重さを痛感すべきものでこそあれ、決しておごってはならないとするわが党の自戒自省の総意のあらわれとして、私は満腔の賛意を表します。
 しかしながら、十分な話し合いをしてもなお合意に達しない重要課題については、いたずらに結論を引き延ばすのではなく、わが党の決断によって事の決着をつけるという、議会制民主主義の原則に従うという節度も守っていかなければならないと思います。そのことが、安定多数を与えられたわが自由民主党の国民に対する責務であると考えます。和の政治は、和の中の決断があってこそ、初めて国民の真の理解と協力が得られるものと思います。総理の御所見をお伺いいたします。
 次いで、憲法問題についてお尋ねいたします。
 総理は、先ほども、鈴木内閣としては憲法を遵守し、改憲を考えないと繰り返し発言しておられますが、最近の憲法論議についていかにお考えになっておられるか、また、政府として、憲法改正についていかなる考えを持っておられるか、この際、重ねて率直な見解を承りたいのであります。
 質問の第二点は、財政再建の問題であります。
 今日のように国家予算の三分の一を国債に依存しているような不健全な財政を正常な財政状態に立て直すことが、八〇年代の国政発展の基本条件であることは言うまでもありません。鈴木内閣に課せられた最も重要な政治課題は、不退転の決意を持って財政再建への軌道を敷くことであります。
 わが党は、このたびの選挙において、一、経済の安定成長の定着をベースとする税の自然増収の確保、一、行政改革や補助金整理の徹底等による歳出の削減、一、現行の税制体系のもとで税の増収を図るという、この三本の柱によって財政再建を実現することを公約したのであります。私は、現在のわが国の国情に照らし、これが財政再建の鉄則であり、この鉄則を逸脱するような方策はとるべきではないと思うのであります。
 しかるに、大蔵省当局が作成した財政収支試算を見ますと、昭和六十年度の租税負担率を、五十五年度の二一・八%から、四・七%引き上げて、二六・五%とすることを前提としております。
 これは、何らかの新税の創設によって、相当大幅な増収を見込んでいるものと推定されます。
 これに対してわが自由民主党は、いま申し上げましたように、新税の導入を避けて財政再建を図るべきだと考えておりますが、総理の御見解はいかがでしょうか。
 財政再建の方策として国民が強く求めていることは、安易な増税に頼ることではなくて、まず、歳出を抜本的に洗い直し、徹底した節減、効率化を図り、いわゆるチープガバメントをつくり上げることであります。
 わが国の一般会計予算の歳出は、過去十年間に、八兆円から四十二兆円にと、実に五倍以上にも膨張しております。民間の企業が、石油ショック以来の深刻な不況時代に、血の出るような減量経営を実行して経営を立て直した努力を思えば、国の予算においても、歳出削減の余地がないはずはないと国民は信じているのであります。(拍手)
 わが国の財政危機を招いた経過を顧みますと、第一次石油ショック後の不況期に税収が減少し、あるいは伸び悩んだにもかかわらず、歳出の方は年々大幅に増加していったことが、今日の財政危機の根本原因であると思います。
 とりわけ、補助金等の予算が、歳入のいかんにかかわりなく、毎年大幅にふえていったことが財政悪化に拍車をかけたのであります。五十五年度予算においても、相当多くの補助金の整理、縮減を行ったにもかかわらず、補助金予算の総額は、五十四年度より八千億円も増大し、一般歳出予算総額の三分の一に近い十三兆八千億円以上にも達しております。
 この膨大な補助金等をさらに根本的に洗い直し、思い切って整理することが、財政再建の成否を決するかぎであると言っても過言ではありません。そのためには、補助金総額の八二%を占める法律による補助に対しても、勇断をもってメスを入れるべきであります。
 いま一つの再建への有力な柱は、経済の安定成長を持続させることによって、企業の業績を伸ばし、税の自然増収を確保することであります。
 私は、昭和五十六年度以降の実質経済成長率を、少なくとも新経済社会七カ年計画の目標である平均年率五・五%程度を確保することが、財政再建の前提条件であると考えます。
 当面、今後の景気の落ち込みを防ぐため、金融政策や財政運営等を、より景気重視の運営に修正することであります。これが税の自然増収を図り、財政再建に資する重要な条件になると考えます。
 財政再建に関して最後に申し上げたいことは、わが党の重要政策との調和をいかに図るかであります。
 財政再建の厳しい制約のもとにおいても、わが党が選挙で公約したことは、いずれも国民生活の維持向上に欠かすことのできない重要な政策であり、これは誠意を持って実行しなければなりません。それには政策の優先順位の選択が特に重要な課題となります。
 以上、財政再建問題について、総理の率直な御意見を承りたいと思います。
 次に、財政再建とも深くかかわる行政改革についてお伺いいたします。
 これもわが自由民主党の重要公約の一つでありますが、さきに内閣が決定した「今後の行政改革に関する基本的な考え方」は、わが党の公約を忠実に取り入れたものであり、鈴木内閣がこれに従って強力に確実に実行することを強く望むものであります。行政改革の成否を決するものは、その実行の衝に当たる当事者の熱意と、その実行を阻むもろもろの力の抵抗を押し切る勇気であります。
 行政改革は、歴代内閣が重要政策として公約してきた古くて新しい問題でありますが、これがほとんど成果を上げることができなかったのは、当事者の熱意の欠如と、先ほど総理も言われましたが、総論賛成、各論反対、個々の問題になるとなかなか具体化が進まなかったからであります。
 この行政改革という課題は、話し合いと妥協の政治によっては容易に実現できるとは考えられません。このときこそ、和の中の決断が必要であります。そして大切なことは、まず内閣全体が一体となって実行に邁進することであり、与党であるわが自由民主党が挙党一致してこれを推進することであります。それは、一に鈴木総理の指導力にかかっていると言えます。
 総理は所信表明演説で原敬の言葉を引用されながら、行政改革に取り組む決意を述べておられますが、平民宰相原敬を同郷の大先達として尊敬してこられた総理の強い指導力の発揮をこいねがうとともに、御決意のほどを承りたいと思います。(拍手)
 次に、経済政策についてであります。
 日本経済は、政府の財政主導の景気対策によって、昨年度から今年上半期にかけて健全な動きを続けてきましたが、現在の経済動向は、経済成長、鉱工業生産、個人消費の推移と、新たに加わってきた中東紛争の影響等から見て、先行き予断を許さぬものと思います。
 政府は、さきに、景気の落ち込みを防ぐため、従来の物価安定優先の経済財政運営を、物価と景気両にらみの運営に修正する総合経済対策を決定しましたが、その効果に疑問符を投げる見方もあります。特に、公定歩合の一層の引き下げを要望する声が強いのであります。私は、物価が鎮静傾向を示している現在、さらにその定着を図るとともに、一層景気重視の経済財政運営を進め、本年度の実質経済成長目標四・八%を達成させるべきだと考えます。そのためには、公定歩合の一層の引き下げが必要と思うのであります。
 以上の経済政策について、総理の御見解を承りたいと思います。
 次に、エネルギー対策についてであります。
 エネルギーは日本経済の大動脈であり、もしこのエネルギーの安定供給にかげりが出てくるような事態になれば、経済の安定成長はもとより、財政の再建、国民生活もたちまち混乱してくることは明らかであります。当面の石油を確保することはまず至上の課題でありますが、同時に、石油の備蓄、省エネルギーの励行、さらに将来の石油不足時代に備えて、代替エネルギーの開発、実用化が急がれるわけであります。
 特に、代替エネルギーについては、いま考えられる最も効率的かつ大量供給が可能なものは原子力発電と石炭液化であることは、世界の定説であります。特に政府は、この原子力発電の立地、建設について、どのような施策を進められていますか、お伺いをいたします。
 また、このたびのイラン・イラク戦争によって、わが国の輸入石油の七〇%を依存する中東からの石油輸入に支障はないか、非常に懸念されますが、この新たな中東紛争の行方と、それに対するわが国の対策についても総理の御見解を承りたいのであります。
 エネルギーはもとより、資源にも乏しいわが国が、引き続き世界の進運に伍し、新しい知見の開発と創造によって、科学技術の開発を図ることが世界のどの国よりも必要であると信じます。鈴木内閣が従来の内閣にも増して科学技術の振興に取り組まれることを切望しながら、総理のお考えを承りたいと思います。
 次は、外交政策であります。
 イランのアメリカ大使館員人質事件、ソ連のアフガニスタン軍事介入、イラン・イラクの全面戦争等、国際情勢は激動を続けており、緊張と不安が高まりつつあります。七〇年代のデタント時代はいまや崩壊したかに見えます。いまほどわが国外交の賢明、適切な対応が必要なときはありません。
 わが国が国際社会の一員として、世界の平和と安定のための責務を果たすためには、ときに犠牲を払うことも覚悟して、毅然たる態度で積極的な外交を展開しなければならないのであります。八方美人的な全方位外交で、わが国の国益が守られ、また国際的責任が果たされる時代ではないのであります。
 今後のわが国外交政策において最も重要なことは、外交の基軸である日米友好協力関係を一層強化し、まず揺るぎのない日米関係をさらに確かなものとして構築することであります。その基礎に立って、世界の平和と安定の確保のための実効ある外交を進めることであります。
 ところが、八〇年代においては、日米両国の間に不均衡や経済的利害が相反する面が拡大していくことが早くも予想されます。電電公社の資材調達問題、自動車の輸出問題等を適切かつ公正に解決することが前提であります。そして、わが国が国力、国情に応じてみずからを守る努力を十分に尽くすことと、互譲、相互依存の精神に立って、共存共栄の経済関係を確立することが必要であります。
 次に重要な外交課題は、わが国が経済力と国際的地位にふさわしい国際的責務を果たすことであります。現在は国際間の協力と責任分担による平和と繁栄の時代であります。いまや、世界の総生産の一割を占めるに至ったわが国は、それにふさわしい協力と責任分担をしなければならないと思います。
 すなわち、世界のインフレと失業の克服や、エネルギー不安の解消等の困難な問題解決に積極的に協力し、また、発展途上国の繁栄と南北問題の解決に一層貢献することであります。これは、世界の平和の確保にも、またわが国の経済の発展にもつながるものであります。
 もう一つ、当面の重要な外交的課題は対ソ外交であります。わが国は、ソ連のアフガニスタン軍事介入に対し、これまでアメリカやEC諸国と歩調を合わせて対ソ経済措置をとっておりますが、最近のフランス等の柔軟な動きに伴って、対ソ経済措置の緩和を求める声も出てきております。しかしソ連は、アフガニスタンからの即時撤退を求める国連決議やわが国の国会決議を無視する態度を続けております。この対ソ措置の問題を初め、もろもろの外交の問題につきまして、総理の所信を承りたいのであります。
 次に、安全保障政策についてであります。
 さきの衆参同時選挙においては、防衛政策が大きな争点の一つでもありました。この選挙において、国民がわが自由民主党に勝利をもたらしたということは、とりもなおさず国民が明らかに堅実なわが党の防衛政策を支持し、野党の主張する非武装中立、日米安保体制の解消、あるいは自衛隊の廃止または縮小といった非現実的な政策を拒否したことを意味するのであります。(拍手)
 今日、世界の軍事戦略やわが国周辺の軍事情勢の変化に対応し、わが国の安全と平和にいささかも不安のないよう万全の安全保障体制を整えることは、国民の広範な支持によって生まれた鈴木内閣の重要な使命であります。
 私は、鈴木内閣がその使命を果たすため、防衛予算の概算要求限度についての配慮や総合安全保障会議の設置推進等、具体的な措置を進めていることを評価するものであります。このような鈴木内閣の姿勢に対し、一部の野党が根拠のない中傷を加えておりますことは、まことに遺憾であります。(拍手)
 いまや世界は、アメリカのかつてのような絶対的な軍事力と経済力の優越によって平和が保たれた時代は終わり、各国の協力と責任の分担による相互扶助の平和の時代であります。自分の国を自分で守る最も基本的な努力を十分に尽くさずに、他力本願で自国の安全を求めるというような甘い考えは、もはや通らない時代になってきております。(拍手)
 そこでこの際、総理に特にお尋ねしたいことの第一は、総理は、わが国の防衛力の現状が世界の軍事情勢に照らして十分であると考えておられるかどうかということであります。
 第二は、もし不備、欠陥があるとすれば、それはどこにあるかということであります。
 第三は、防衛庁の中期業務見積もりの繰り上げ実施を考えているのかどうかという点であります。
 第四は、防衛費予算と国民総生産の関係、さらに国の予算との関係をどう考えておられるかということであります。
 安全保障問題についていま一つお伺いしたいことは、総理の総合安全保障会議構想についてであります。
 近代における安全保障とは、単に防衛力だけにとどまらず、外交、経済、国民生活等を総合した安全保障でなければならないことは世界の共通認識であります。総理が総合安全保障会議の設置を推進されていることは、まさにわが国の安全保障政策の前進であり、私はこれに賛意を表するものであります。
 ただ、申し上げたいことは、国の総合安全保障政策の推進という最高度の機能を持つ総合安全保障会議は、これを法律に基づく権威のある恒久機関として設置すべきであり、その機能にふさわしいスタッフを整えることが本筋であります。総理の御見解を承りたいのであります。
 次は、高齢化社会における社会保障の問題であります。
 今後わが国の高齢化社会は急速に進み、十年後には六十五歳以上の高齢者人口が全人口の一一%、千四百万人に達するものと推定されています。このような高齢化社会に対応し、どのようにして社会保障を充実していくかということが八〇年代の重要な内政の課題の一つであります。
 高齢化社会の急速な進展に伴って、必然的に医療保障や所得保障に要する財政負担が急増してまいりますが、現在のような複雑で不均衡かつ不合理な点の多い各種の医療保障制度や年金制度のままでは、財源の伸びに限界のある安定成長下においては、とうていたえられなくなることは明らかであります。
 国民医療費の急増を抑制するため、薬づけ、検査づけと言われるような医療の現状を改める措置を講ずるとか、各種年金制度の給付開始年齢や年金水準の不均衡、不合理を改めて、公正、妥当な年金制度を確立することであります。
 政府がさきの国会に提出した健康保険法改正案、厚生年金法等改正案、さらに厚生省の老人保健医療制度試案は、医療保障制度の抜本的改正に一歩踏み込むものであります。勇気を持ってこのような現行社会保障制度の改革、合理化を図るべきであります。
 また、来るべき高齢化社会において、それが真に充実した活力ある社会であるためには、国民の間に自助自立の精神が失われてはならないものと考えます。そのための施策も適切に講ずる必要があります。総理のお考えを承りたいと思います。
 次に、異常気象による災害対策、農業政策についてであります。
 ことしは、明治三十五年以来の三大冷害年に匹敵する異常な冷夏現象であり、これによる被害はきわめて深刻なものがあります。天災融資法や激甚災害法の早期発動と、それまでのつなぎ融資等の措置を講ずることを強く要望するとともに、農業共済金の早期支払いを求めます。
 このような救済措置とあわせて、被害農業者に別途収入の道を与えることであります。本年度の公共事業費予算をフルに活用し、災害地に優先的に公共事業を拡充し、被害農家の生活安定に最善を尽くすべきであります。
 さらに大事なことは、来年度六十七万ヘクタールに拡大することを目標とする水田転作の第二期対策についてであります。
 本年の稲作の深刻な被害状況を見、被災農家の心情に思いをいたすとき、農家及び農村の不安を一日も早く解消するよう、当面の対策に全力を傾注するとともに、あわせて第二期対策については、この際慎重に決定すべきであると思いますが、総理のお考えを承りたいと存じます。
 次に、農業政策の基本についてであります。(発言する者あり)
 農業の将来に農業者の多くが不安を感じ、現在の農業政策に……
#11
○議長(福田一君) 伊藤宗一郎君、申し合わせの時間が過ぎておりますから、なるべく簡単に願います。
#12
○伊藤宗一郎君(続) 必ずしも信頼を置いていないととは、総理も御承知のことでございます。
 今後鈴木内閣は、内外の農業環境が厳しくなる八〇年代において、わが国農業、農村をどのようにして安定させ、発展させる考えであるか、総理の御所信を承りたいのであります。
 以上、いろいろと御質問いたしましたが、何とぞ御答弁を通じて、鈴木政治の骨格と全体像を国民の前に明らかにされるよう、切に念願をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#13
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 和の政治と国会運営のあり方についてどう考えるかとのお尋ねでございますが、私は、国会は話し合いの場であって、対立抗争の場であってはならないと考えております。あくまで論議を尽くし、民意を吸収し、話し合いによって国民の納得する結論を出すことであります。この国民の納得する結論を出すことが、議会制民主主義の本旨に沿うものであり、国会における和の政治は、この議会制民主主義のルールに従って国会が運営され、国民の負託にこたえることであると考えております。
 次に、憲法の問題についてお答えいたします。
 現行憲法は、民主主義、平和主義及び基本的人権尊重を基本理念としておりますが、この理念は、将来においても堅持すべきものと考えております。
 憲法第九十九条は、公務員の現行憲法に対する尊重擁護義務を規定しておりますが、内閣としては、同条の規定に従って憲法を厳に尊重していくものであります。
 他方、憲法第九十六条は憲法の改正手続を規定しており、憲法の改正について論議をしたり、あるいはそのための研究を行うことは、もとより、憲法第九十九条の尊重擁護義務に違反するものでないことは明らかでございます。
 しかしながら、憲法の改正については慎重の上にも慎重な配慮を要するものであり、国民の中から憲法を改正すべしという世論が大きく高まってきて、国民的なコンセンサスがそういう方向に形成される必要があります。ところで、現在国民の中で憲法を改正すべきだということについてコンセンサスができておるとは思いません。したがって、そういう段階において鈴木内閣としては、憲法改正という問題を政治日程にのせることは全く考えておりません。
 財政再建問題についてお答えを申し上げます。
 御指摘のとおり、財政再建は鈴木内閣に課せられた最も重要な政治課題であります。現在編成中の五十六年度予算では、公債発行額を二兆円程度縮減することを目途に作業を進めており、今年度緒についた財政再建の道をさらに一歩進めるよう最善の努力をする決意であります。
 このため、先般の概算要求においては、これまでにない厳しい要求限度枠を設定をし、各省庁がみずから既存の施策について優先順位の厳しい選択を進め、また、新規の施策についてはスクラップ・アンド・ビルドの原則で対処するよう要請したところであります。
 現在、予算編成作業が本格化しておりますが、あらゆる歳出について、このような財政事情のもとにおいてなお行わなければならない施策であるかどうかの吟味を徹底的に行い、優先順位の低い施策については、思い切った節減合理化を行う必要があります。
 このため、五十六年度予算編成におきましては、御指摘の補助金の根本的洗い直しなど、あらゆる面できわめて厳しい情勢になると思いますが、財政を再建して国の将来の基盤を確かなものにするために、関係各位の御理解ある御協力をお願いする次第であります。
 歳出抑制の努力を尽くし、また、税外収入の見直し等の手段を講じてもなお歳入が不足し、さらに踏み込んで検討しなければならないことも考えられますが、その場合におきましても、現行税制の基本的な枠組みの中で増収を図ってまいりたいと考えております。
 次に、行政改革に対する私の決意についてお尋ねがございましたが、私は、まず前内閣が策定した昭和五十五年度行政改革を着実に実現をし、さらに行政の仕事減らしという観点に立って、法令の整理、廃止などによる事務の縮減や事業の移譲を初め、できるものから着実に行政の簡素化を進める考えでございます。
 お説のとおり、行政改革は、とかく総論賛成、各論反対となりがちであります。私は所信表明において、行政改革の推進に当たり、広く各党各会派の御協力を要望いたしました。政府は、行政改革を今日政府に課せられた最重要課題の一つと受けとめ、各般の問題につき誠実に取り組んでまいりますので、重ねて各位の御協力をお願いいたします。
 当面の経済政策、特に金利政策についてお尋ねがございました。
 金融政策につきましては、今後とも物価、景気の動向に細心の注意を払いながら、機動的に運営を行ってまいることは当然でありますが、現在は、先般の公定歩合引き下げの効果の浸透を見守っておる段階であります。
 しかし、御承知のとおり、公定歩合の操作は日本銀行が行うものでありますので、ここで私が言及いたしますことは差し控えたいのでございます。政府と日銀は、今後とも緊密な連携をとりながら、経済運営に万全を期してまいる所存でございます。
 さきの先進国首脳会議でも確認されたごとく、エネルギーの問題は人類が克服しなければならない最重要課題の一つであります。とりわけわが国はエネルギー資源の大宗を海外に依存しているため、その安定的な供給確保は特に重要でございます。
 エネルギーの安定的な供給確保の基本は、中長期的に見た場合、石油代替エネルギーの導入、開発にありますが、原子力はその中で特に重要なものであります。このため、政府は、安全性の確保と環境保全に十分留意しながら、地元住民の福祉の向上に配慮して、原子力発電の立地を推進しております。
 原子力発電所の立地促進について具体的に述べますと、政府は現在、周辺地域での公共用施設の整備促進、厳重な安全審査及び検査の実施、安全及び信頼性確保のための試験研究、実証試験等の諸施策を実施しておるところでありますが、今後ともこれらの施策の充実を期してまいりたいと考えております。
 次に、イラン・イラクの紛争の石油への影響についてでありますが、わが国の石油備蓄水準は現在百十日程度とこれまでになく高く、仮にイラクからの原油積み出しが相当期間行われないとしても、当面わが国の石油需給に大きな影響が出ることは考えておりません。むろんホルムズ海峡の通航については今後の動向を十分注意する必要がありますが、現在のところ、同海峡の通航に大きな支障があるとは聞いておりません。私は、この際、国民各位がこのような情勢を十分御理解の上、冷静に対応されるようお願いするものであります。
 イラン・イラク紛争の行方とわが国の対策についてお尋ねがございました。
 イラン・イラク紛争については、これまでのところ、国連の場などを通じての事態解決への努力にもかかわらず、残念ながら停戦への動きがいまだ見られません。戦況の方も膠着状態にございます。現段階で今後の戦闘について明確な見通しを立てることはきわめて困難な状況にございます。
 わが国は、両国間の紛争が一日も早く平和的に解決することを強く希望するものであり、このようなわが国の立場はイラン・イラク両国政府にも伝達しております。政府といたしましては、今後とも状況の推移を見きわめつつ、両国に対し紛争の平和的解決を訴え続けるとともに、国連の場などを通じ、わが国と同様の関心を有する諸国と協調しながら、わが国として紛争の収拾のため果たしてまいらなければならない役割りについて検討してまいりたいと考えております。
 科学技術の振興についてでありますが、資源に乏しいわが国は、今後とも安定成長を遂行してまいりますためには、技術立国を目指すことが不可欠であります。また、複雑化の度を深めております国際社会の中で、わが国が相応の役割りを果たしてまいりますためにも、自主的な技術力強化が特に重要であります。
 以上の観点に立ち、政府としては、研究の開発資金の充実、各種研究開発の促進など、強力かつ積極的な科学技術の振興を図るつもりであります。
 外交政策について申し上げます。
 お説のとおり、わが国は、いまやその国力にふさわしい国際的責任を積極的に果たし、世界の平和と安定のため貢献していくべきものと考えております。
 外交とは、おのずからアクセントがあるべきものであり、八方美人的外交は私としてもとるところではありません。その際、わが国の外交の中心に据えられるべきものは、米国を初めとする自由主義諸国との連帯と協調にありますことは、私が過般の所信表明においても申し述べたとおりでございます。
 日米経済関係は、現在幾つかの個別問題を抱えておりますが、全般的には良好な基調を維持しているものと考えております。
 御指摘の電電公社の資材調達問題については、これまでの日米間の精力的な話し合いを通じまして、双方の立場について理解が深まってきておるものと考えますが、今後とも、さらに日米間で詰めを行い、早期に双方の納得のいく形で解決を図りたいと考えております。
 自動車問題については、日米両国政府が自動車の分野における自由貿易の原則を堅持するために努力していくことが重要であります。政府としては、この問題についても今後とも米側と緊密に意思疎通を図り、本問題が日米経済関係全般に悪影響を及ぼさないように今後最善の努力を傾ける考えでございます。
 各国経済の相互依存関係がとみに深まって参っております今日、わが国は、世界経済の主要な担い手の一員としての自覚と責任を持ちまして、引き続き、インフレ、エネルギー問題等の世界経済の諸問題の解決のために積極的に貢献してまいりたいと考えます。
 また、開発途上国との相互依存関係がとりわけ深いわが国としては、建設的な南北関係を築くことに貢献してまいる必要があります。
 また、伊藤宗一郎君御指摘のいろいろの問題の中でも、開発援助分野での協力は特に重要であります。政府は、今後ともこの面での協力を積極的に行ってまいりたいと考えております。
 アフガニスタンに対するソ連の軍事介入については、政府はいかなる意味においてもこれを容認し得ないとの立場であります。この問題については、今後とも西側友好諸国と協調しつつ、わが国として適切に対処していくことが、国際社会の一員として当然の責務であると考えております。
 政府としては、このような認識に基づき、御指摘の対ソ措置についても、米国を初め欧州その他の友好諸国との協調を重視しつつ、従来どおり具体的案件ごとにケース・バイ・ケースで慎重に検討の上、対処していく考えでございます。
 最近のわが国周辺の国際情勢は、極東ソ連軍の増強など、厳しさを増していることは御承知のとおりであります。わが国の防衛力の整備については、昭和五十一年に策定した防衛計画の大綱に従って進めているところでありますが、現在の防衛力はいまだ同大綱の定める水準に達しておりませんので、可及的速やかにその水準を達成することが必要であると考えております。
 また、防衛力の不備、欠陥があるということについては、装備の老朽化、即応体制の不備、抗たん性の不足などの問題があり、従来から逐次その整備に努めてきたところでありますが、今後ともこれらの不備な点については、その整備に努力してまいりたいと考えております。
 次に、防衛庁の来年度予算につきましては、現下の厳しい国際情勢にかんがみれば、防衛力の整備について真剣に検討しなければならないと考えておりますが、一方財政上の制約もありますので、来年度予算編成の中で答えを出していきたいと考えております。
 防衛庁予算と国民総生産の関係につきましては、御承知のとおり、昭和五十一年十一月の閣議決定において、防衛力整備についてはその経費の総額が当面GNPの一%を超えないことをめどとして行うこととされております。本年はとりわけ厳しい財政事情にありますが、その中において、他の諸施策との調和を図りながら適正に措置をしてまいりたいと考えております。
 いわゆる総合安全保障についてでありますが、今日の複雑な国際情勢とわが国の置かれた立場を考えれば、国の安全を確保するためには、単に防衛的な側面のみならず、経済、外交を含めた広い立場からの努力が必要であります。
 外交、経済協力、エネルギー、食糧等の国の諸施策は、むろんそれぞれの所管官庁が推進してきておるところでありますが、私は、これらの施策について、総合的な安全保障の観点から、高いレベルでその整合性を確保することが必要と考え、現在その具体策について検討させておるところでございます。
 高齢化社会の対応の問題について申し上げます。
 八〇年代以降わが国の高齢化が急速に進むことは御指摘のとおりであります。このことから、大きく言って二つの問題が生ずると思います。一つは、高齢者が安心して生活できる社会をつくり上げなくてはならないということであります。もう一つは、将来における働き手の負担を過重にしてはならないということであります。
 この二つの問題を同時に解決するため、現行の社会保障制度を再点検し、長期的な視野に立って福祉の立て直しを図り、負担の公平を図りながら、恵まれない人々、ハンディキャップを背負った人々には重点的に温かい手を差し伸べるよう配慮してまいりたいと思います。
 社会が高齢化することによって活力を失うこととなっては、その社会は衰退いたします。わが国は、今後とも、民間経済を中心とした活力ある福祉社会を建設していかなくてはなりませんが、その中にあって、社会の高齢化に備え、定年の延長、再就職機会の増大に努め、自助の精神を失わない活力ある高齢化社会の実現に努力してまいりたいと存じます。
 冷害等による被災農家はまことにお気の毒であり、政府としては、実情に応じ万全の対策を講じてまいります。
 すでに天災融資法及び激甚災害法については早期発動を準備しており、また、御指摘の農業共済金につきましても、被害農作物の損害評価を迅速的確に行い、共済金の支払いを早期に完了するように努めてまいります。
 また、公共事業の活用につきましては、第三・四半期の執行に当たり、特別な事業枠を設けるなどいたしまして、被災地での重点的な事業の実施に努めることにしております。
 水田利用再編対策の第二期対策についてお尋ねがありましたが、水田利用の再編は、将来の農政を確立するため避けて通れない課題ではあります。しかしながら、今回の冷害が予想以上に深刻なものであり、災害農家の不安も大きいので、御指摘のように、当面は冷害対策に全力を挙げることとし、第二期対策の決定については慎重を期してまいりたいと考えております。
 農業政策の基本についてお尋ねがございました。
 私は、食糧の安定供給の確保は、国民生活安定の最も根源的な基盤であると考えます。このため、農業が体質を強化し、総合的な自給力の向上を目指す必要がありますが、そのための施策として、特に八〇年代の農政の方向と農産物需給の長期展望の確立、生産性の高い中核農家の育成、需要の動向や地域の実態に即した農業生産の再編成が重要であると考えます。
 以上、お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(福田一君) 長谷川正三君。
    〔長谷川正三君登壇〕
#15
○長谷川正三君 私は、北山副委員長に引き続き、日本社会党を代表して、鈴木総理並びに関係大臣に対し、当面する国民生活の諸問題を中心に質問いたします。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
 しかし、その前提として、特にお尋ねしておかなければならないことがございます。
 鈴木総理、あなたは去る三日、この議場でなさった所信表明の冒頭に、さきの衆参同時選挙において安定多数を得たのは、自由と民主主義を守り、福祉の向上と経済の発展に力を尽くしている自由民主党が、国民の信任を得た結果であると申されました。
 しかし、鈴木新内閣が発足して以来わずか二、三カ月の間に、政府並びに自民党の政治姿勢は、およそ国民の期待とは正反対に、党幹部や閣僚の公然たる改憲発言、来年度予算編成における防衛費の別枠扱い、福祉や教育の切り捨て論など、国民に背を向けた高姿勢が顕著となり、財界からの兵器生産やその輸出の要求、徴兵制の提唱と相まって危険な軍事大国への大合唱となっているのであります。(拍手)
 国民の大多数は、こんなはずではなかった、再び戦争への道へ進むのではないか、国民にまた大きな犠牲が強いられるのではないかと強い危惧と不安を感じていることは、一般商業紙の投書にあらわれた圧倒的傾向を見てもはっきりうかがえるのでございます。(拍手)
 こうした中で、憲法問題についての閣内不統一を覆い隠し、ほころびを縫い合わせるために人のよさそうな鈴木総理が苦労されている様子は、一口に醜態だと決めつけたい反面、痛々しくて見ていられない感じもいたすのでございます。(拍手)
 しかし、総理、あなたはやせても枯れても一国の宰相であります。内閣の最高責任者であるあなたに、私はもう一度端的に伺います。
 鈴木内閣は、憲法九十九条に明記されている憲法遵守の義務を守り抜きますか。この点についての閣内不統一は許さないと断言できますか。また、憲法の定める貴重な内容の実現に全力を挙げると国民にはっきりお約束いただけますか、明確なお答えをいただきたいのでございます。(拍手)
 次に、国民の福祉と基本的人権を守る立場から数点お尋ねいたします。
 総理も触れておられましたが、わが国は世界に例を見ないほど速いテンポで高齢化社会を迎えようといたしております。これに対して、果たして十分な対応をなさる用意がおありでしょうか。
 故大平総理は、わが国を日本型福祉社会とする旨主張されましたが、その内容は、高齢者や児童の生活や福祉を家庭の自立自助に任せようという発想に立つもので、婦人を家庭にくぎづけにする古い体制への逆戻りを志向し、老人医療無料制度や児童手当の見直し、保健所運営費補助の地方交付税への切りかえ、結核医療費公費負担の打ち切り、厚生年金支給開始年齢の六十五歳への繰り延べ、赤字解消を主眼とした健康保険法の改悪、さらにまた、養護、特別養護老人ホームの利用料の大幅引き上げなど、どれ一つとってみても福祉の切り下げと言わざるを得ないものばかりでありました。
 大平総理の遺志を受け継ぎ、発展させると言われる鈴木内閣は、低福祉、高負担を意味する日本型福祉社会を引き続き志向されるのでありましょうか、明らかにされたいのであります。
 また、昨年、自民党三役、厚生、大蔵両大臣、官房長官の間で交わされた老人医療、児童手当などの見直しに関する六者覚書はどう処理するおつもりでありましょうか。わが党は、この際、これを速やかに撤回することが福祉の充実を求める国民の要求に沿うものであると考えますが、総理の明確な御答弁をお願いいたします。(拍手)
 次に、年金と医療についてお尋ねいたします。
 前の通常国会において、年金、健保に関する四党合意がなされたのでありますが、国会解散による衆参同日選挙で自民党が多数を占めたため、福祉年金を初め年金改善の実施が意図的におくらされているのであります。物価の上昇の中で、年金に頼る高齢者の苦しみは深刻であります。年金の改善を速やかに行うとともに、いわゆる成熟度などを考慮して、年金制度の全般的改善についていかに対応されるのか、政府の御見解を伺いたいと存じます。
 また、健康保険については、予防医療の強化、保険外負担である差額ベッド、付添料などの廃止、薬価の見直しなど、医療制度の基本条件の改革を抜きにした単なる赤字対策であってはなりません。これらの問題の抜本改革をまず図るべきであると考えますが、総理並びに関係大臣の御見解はいかがでありましょうか。
 鈴木総理、国民はいま、芙蓉会富士見産婦人科病院問題に強いショックを受けております。これには、北山副委員長も触れられましたように、政治倫理の問題としても重大な内容を持っておりますが、営利に走っている医療の荒廃という問題が極端な姿であらわれているのであります。
 無資格者による診断という医師法違反だけでなく、乱診乱療、薬づけ、検査づけ等の医療の実態が富士見病院問題によって浮き彫りにされておりますが、政府は、このような事態が今日まで放置されてきたことにどのような責任をとり、また、どのように営利に走る医療の改革を進められようとされるのか、国民が納得し、安心できるような明確な御答弁を求めるものであります。(拍手)
 さて、御承知のとおり、来年は国際障害者年であります。そのテーマは「障害者の社会生活と社会発展への全面参加と平等」であります。参加とは、社会生活そのものと、その発展への貢献のみならず、政策決定段階への参加であり、平等とは、他の国民と同じ生活を送ることであり、また、経済社会の発展による利益の平等な分配を受けることであります。この見地から見るならば、わが国の障害者対策は根本から見直さなければならないと存じますが、政府の御所見を伺います。(拍手)
 また、その手始めに、法律や条例から当事者が不快に思う「不具廃疾者」という用語をなくし、「障害者」という表現に変えるべきであると思いますし、教育の面においても、差別を感じさせる「特殊教育」という用語を「障害児教育」に改めるべきであると考えますが、総理の思いやりある御所見をこの際はっきりと伺いたいのでございます。(拍手)
 わが国は、昨年の国会において国際人権規約を批准いたしました。これに関連する国内法の一つである同和対策事業特別措置法に関してお尋ねいたします。
 一昨年、国会で同法の三年延長を決めた際、法の総合的改正を含む三項目の附帯決議を満場一致で可決いたしました。しかるに、政府は、附帯決議の実施に全く消極的であり、特に法の総合的改正については全く手がつけられていません。この取り扱いをいかがなさるおつもりか、明確なお答えをいただきたいと存じます。(拍手)
 最近、部落地名総鑑を購入した企業十九社が発覚し、中でも某信託銀行は、これをもとにコピーして各支店に送っており、これによって採用が内定していた京大法学部の学生が不採用となり、自殺するという痛ましい事実も明らかになっておるのであります。
 こうした現状にかんがみ、政府は現行法を総合的、抜本的に改正し、部落問題の完全解決を図ることが求められているのであります。内面的、精神的な差別をなくすために、教育や職業についての抜本的対策を進めるべきときであると思いますが、総理の心温まる御見解を伺いたいのであります。(拍手)
 次に、国民の暮らしにかかわる経済問題についてお尋ねいたします。
 現在の消費者物価上昇率は、年率にして八%台を推移しています。このため、勤労者の実質賃金は連続六カ月マイナスを記録しており、その上、零細な預貯金も日々目減りをいたしております。加えて所得税減税は三年間見送られているために実質増税が行われているのであります。
 総理は、所信表明において、物価情勢についてその動向には警戒を要するとし、物価の安定に最善の努力を払うと言われましたが、何の具体策も示されておりません。一体、政府の今年度見通し、六・四%内に抑えられると考えておられるのかどうか、明らかにしていただきたいのであります。
 賃金が物価の上昇に追いつくこともむずかしいのに、税負担は急上昇しているのです。にもかかわらず、政府はかたくなに所得税減税を一切行わないとの方針をとっていますが、その結果は、低所得者層ほど名目所得の上昇に伴う税金の負担が重くなるという、きわめて不公平な増税の実態であります。
 このようななし崩しの所得税増税を避けるために、まじめに働く多くの勤労国民に調整減税措置を速やかににとるべきであると思いますが、誠意あるお答えを承りたいと存じます。(拍手)
 また、財政の立て直しの緊急性は言うまでもありません。今年度七十一兆円の国債の累積残高は、国民一人当たり六十五万円の借金を負うことになり、国債発行の圧縮、財政収支バランスの回復を図らなければなりません。
 そのためには、旧来の成長促進、資本蓄積優遇の財政体質を改革する必要があります。この際、思い切った財政改革の総合計画を提示する用意があるのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
 第二に、雇用問題について伺います。
 大企業は三月末決算で史上最高の収益を謳歌しているのに、雇用情勢は依然として改善されておりません。これは、大企業の利益が人減らし合理化という犠牲の上にもたらされているからであります。経済白書も指摘しているように、就業人口の中で中高年雇用者のウエートが高まっている今日、その雇用対策が重視されなければならないと存じます。
 具体的には、中高年齢者の雇用確保のため、六十五歳を目標に当面六十歳未満の定年制及び中高年齢を理由とする解雇や雇い入れ拒否を制限する法律の制定を図り、また、中高年齢の雇用促進に関する特別措置法を改正して、高年齢者六%雇用率を義務化すること、心身障害者の雇用の拡大のために行政指導を強化することが必要と考えますが、総理の言われるきめ細かい配慮の行き届いた御答弁をいただきたいと存じます。(拍手)
 第三に、中小企業をめぐる問題についてお伺いいたします。
 長引く不況、冷たい夏の影響などで、この七月はついに倒産件数が危機ラインの千五百件を突破するという非常事態となっており、このままでは年末に向かい倒産件数はさらに増加すると予想しなければなりません。
 このような事態にかんがみ、中小企業向けの緊急融資を行うなど融資枠の拡大を図るべきだと考えますが、政府の具体的方針を伺いたいと思います。(拍手)
 また、中小企業者にとって最大の関心事はいかに仕事を確保するかということであり、国等の官公需を中小企業へ優先的に発注することが重要な問題となっております。しかし、現状を見ますと、国などの官公需の中小企業向け発注枠は、昭和五十四年度で三五・三%にすぎず、六割強が大企業に振り向けられているのであります。したがって、中小企業向け発注をふやし、発注先については、中堅企業だけでなく、小零細企業が組織している協同組合も積極的に活用すべきであります。また、発注の際に中小企業がより受注しやすくなるよう、現行の手続について改善を図るべきであります。これらについて政府のお考えをただしたいと存じます。(拍手)
 さて、中小企業者の切実な要望を受けての中小企業の事業活動の調整に関する法律、いわゆる分野法が成立してから約三年を経過しました。しかし、最近の厳しい経済情勢の中で、大企業の中小企業分野への進出が逆に活発化していることが各地で指摘されています。この大企業の横暴な進出を許しているのは、現行の分野法に欠陥があるからであります。
 すなわち、第一に知事に調査及び調整の権限がないこと、第二に大企業のダミーの進出に対する規制がきわめて不十分なことであります。したがって政府は、このような観点から、分野法の改正に積極的に取り組むべきであると強く主張いたしたいと思いますが、御見解をはっきりお示し願いたいのであります。(拍手)
 次に、教育問題について特に総理にただしたいと思います。
 カラスの鳴かぬ日はあっても、教育の荒廃やゆがみに関する悲しむべき報道のない日はありません。高校や大学への進学率が高まっているにもかかわらず、教育の荒廃が深刻化しているのはなぜか。それは教育が、国民一人一人の豊かで、みずみずしい人間形成を生涯にわたって保障する学習の権利としてよりも、学歴社会を背景とする競争原理に立った差別、選別の人づくり政策に沿って進められているからであり、教育行政もまた、国民の手の届かないところで行われているからであります。
 総理、いまこそ、学歴を得ることを自己目的としているような教育に対する誤った価値観を転換させ、憲法と教育基本法の精神に立った権利としての教育政策を確立し、そのための条件整備に全力を挙げることこそ、人間優先の八〇年代における最も大きな課題であると考えます。
 私は、この観点から、具体的に幾つかの質問をいたします。
 まず、来年度の文部省概算要求は、防衛予算の別枠扱いとは反対に、前年比六・六%増という異常な低額にとどまっています。ここに、私は、鈴木内閣の教育や福祉を切り捨てる、国民に背を向けた基本姿勢を見ないわけにはいかないのであります。もし総理がそうではないと言われるのであれば、来年度予算編成の上に教育充実の基本施策をはっきりお示し願いたいと思いますが、御決意のほどを伺いたいのであります。(拍手)
 特に教科書無償制度の堅持、衆参文教委員会の決議を尊重しての四十人学級など、教職員定数改善計画の期間短縮、希望者全員入学のための高校の設置義務化、私学の振興等に対する政府の御方針を明確にお答えいただきたいのであります。
 また、教育行政のあり方について、東京都中野区では住民の直接請求に基づいて教育委員の準公選が実施されることになりましたが、地方の時代が叫ばれている今日、教育を地域住民の手で育てていくためにも、中野区の問題提起を正しく受けとめ、教育委員の公選制復活を目指すべきであると考えますが、総理の御見解を伺います。(拍手)
 以上、私は内政問題を中心に政府の見解をただしてまいりましたが、国民生活の安定も、基本的人権の確立も、福祉や教育の充実も、平和なくしては不可能であります。(拍手)世界もまた、核兵器が高度に発達し、大量に蓄積されている今日、平和なくしてはあすの生存も繁栄もありません。
 原爆の洗礼を受けた唯一の国であるわが国は、平和憲法を高く掲げて、東西南北いずれの国とも親善友好の平和外交を推進し、核廃絶、全面軍縮への努力をすべきであり、いやしくも、軍事大国への道、死の商人への道に進むことは断じてあってはならないことを強く訴えまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えをいたします。
 憲法遵守義務についてでございますが、私は、長谷川議員の御意見にありましたように、憲法第九十九条に明記されている憲法の遵守の考えを貫き、憲法の理想の実現に努力してまいる考えでございます。私が所信表明において「今後とも、憲法の定める平和と民主主義、基本的人権の尊重の理念を堅持してまいります」と申し上げたのも、この趣旨からでございます。
 鈴木内閣においては憲法を改正しない方針を確認しており、また憲法を遵守していくことが当然であり、この件で閣内不統一が生ずることは全くないことを明確にいたしておきます。
 今後の福祉政策について申し上げます。
 日本型福祉社会という場合、いろいろな見方もあろうかと思いますが、私は、日本古来の自立自助の精神、思いやりのある人間関係、相互の助け合いの美風を守りながら、適正な公的福祉を組み合わせた、公正で活力のある福祉社会であると考えるのでございます。
 御承知のとおり、わが国は諸外国に例を見ない速さで高齢化社会を迎えようとしております。この事実を的確に把握し、今後の社会保障の推進に当たらなくてはなりません。
 そこで、一方では、高齢者が安心して生活できるような社会にしていかなくてはなりませんし、他方では、将来における働き手に負担の過重を強いてはならないと思うのでございます。すなわち、給付と負担の両面において公正が保たれなくてはなりません。私は、所信表明において「現行の社会保障制度を再点検し、長期的な視野に立って福祉の立て直しを図る必要がある」と申し上げましたが、その意図するところは、負担の公平を図りながら、恵まれない人々、ハンディキャップを背負っておる人々には重点的に温かい手を差し伸べようといたしたいのでございます。
 なお、いわゆる六者覚書を撤回してはどうかとの御意見でありますが、六者覚書は、社会経済情勢の変化を踏まえて、老人保健医療制度、児童手当制度等の基本的見直しを進めることが緊要の課題であるとの認識を、昨年末の予算編成の過程において政府・与党の間で確認をしたものであり、その方針にはいまも変わりがございません。
 年金制度についてのお尋ねでございますが、厚生年金等の改正法案については今国会に提出することといたしております。さきの通常国会において改正法案について与野党間の折衝が行われた経緯は承知しておりますが、年金制度の改正は長期的な観点から取り組む必要がありますので、政府原案を再提出することといたしました。
 今後の年金制度のあり方につきましては、年金制度が全体として均衡のある発展を遂げ、来るべき高齢化社会において真に老後生活の支えとしての役割りが果たせるよう計画的に見直しを進めてまいりたいと考えております。
 健康保険制度の改正の問題についてでありますが、健康保険法の改正は、単なる赤字対策ではなく、医療保険制度を今後の社会経済情勢の変化に対応し得るものとするための基本的改革の一環として行う必要があります。
 御指摘の病気の予防、薬価基準の適正化などにつきましては、今後とも鋭意努力をしてまいります。
 次に、障害者対策の問題についてでありますが、わが国の障害者対策については、心身障害者対策基本法、身体障害者福祉法、身体障害者雇用促進法等に基づいて各種の施策が実施され、実績を積み重ねてきているところであります。また、来年の国際障害者年を契機に長期的展望に立った施策が要請されているので、中央心身障害者対策協議会を初め関係の審議会などの御意見を求めながら、施策の推進に取り組んでいく考えであります。
 なお、「特殊教育」などの言葉の使い方については、各種の法令で技術的な用語として使われてきているものでありまして、言葉の問題もさることながら、より必要なのは、心身障害者に対する一般社会の正しい理解や思いやりの心ではないかと思います。
 次に、同和対策について申し上げます。
 同和対策事業特別措置法を延長する際の附帯決議については、その趣旨を尊重し、所要の施策の推進に努めているところでありまして、同和問題の早期解決を図っていくために必要な今後の施策の方向、内容などについては、現在所要の検討を進めておるところでございます。
 次に、消費者物価の問題についてであります。
 私は、物価の安定こそ国民生活を安定させる基礎条件であると考えており、引き続き物価の安定に最善の努力を払ってまいります。
 消費者物価の現状は、冷夏などの影響や原油価格上昇の影響など厳しい情勢にありますが、五十五年度の消費者物価が政府見通しの六・四%程度の上昇におさまるよう最大限の努力を傾注してまいりたいと考えております。
 財政改革総合計画の策定について申し上げます。
 財政再建及び行政改革については、所信表明においても特に緊急な課題として取り上げたところであり、既存の歳出の厳しい洗い直し、行政の仕事減らしという見地に立っての行政の合理化、効率化などに、内閣を挙げて総合的に取り組むつもりであります。これを総合計画の策定という形式によるかどうかは別といたしまして、政府が全体として総合的に取り組むという精神において、長谷川議員と思いを同じくするものでございます。
 雇用問題についてでありますが、私は、自助の精神を失わない活力ある高齢化社会の実現のためには、定年の延長、高齢者の再就職機会の増大がきわめて大切なことであると考えております。しかしながら、わが国のような終身雇用の慣行が社会的に確立している状況のもとで、高齢者雇用問題を考えていく上で、どうしても年功的な雇用賃金慣行の見直しが必要となります。この年功的な雇用賃金慣行を現状のままにして、定年の延長とか中高年齢者の雇用率の義務化とかについて法律をもって定めることについては、問題が多々あるのではないかと考えております。
 しかしながら、定年延長等の法律化問題につきましては、昨年六月、雇用審議会に定年延長の実効ある推進策について労働大臣から諮問が行われておりますので、その答申を待って対処したいと考えております。
 国民がひとしく能力を発揮する機会が与えられ、かつ、思いやりに満ちた社会を築いていく上で、心身障害者の方々の雇用の促進はきわめて重要であります。このため、身体障害者雇用促進法に基づき、身体障害者雇用率の達成指導を中心に、雇用の促進に努めております。その際、身体障害者雇い入れ計画の作成命令制度及び勧告制度の効果的な活用など、行政指導に努めておりますが、重要な問題でありますので、今後とも一層努力してまいります。
 文教問題に関する御質問にお答えをいたします。
 まず、教育充実の基本施策についてお尋ねがございましたが、私は、常々すべての国民がひとしく能力を発揮する機会を与えられ、また、その努力が正しく報われる社会を築き上げていく必要があると考えております。その場合、個人の創造性、自主性及び社会連帯感を育てる教育の充実を図っていくことがきわめて重要であると考えます。
 次に、義務教育教科書の無償給与制度の問題でありますが、これについては、特に最近その費用負担のあり方がしばしば議論され、いろいろな考え方があることはよく承知しております。要は、厳しい財政事情と教育上の要請との兼ね合いの問題でありますので、各方面の意見に広く耳を傾けつつ、結論を見出していきたいと思います。
 四十人学級など教職員定数改善計画につきましては、厳しい財政事情の中で、本年度からせっかくその実現を目指して踏み切ったことでもありますので、計画の円滑な実施に努力したいと存じます。
 その実現に至る十二年間という計画期間の短縮についてお尋ねがありましたが、この点につきましては、御承知のとおり、おおむね三年後に、各般の状況を勘案して、その後の計画につき検討する旨の衆参文教委員会の附帯決議もありますので、その時点で適切に対処してまいりたいと存じます。
 高校への希望者全員入学の条件整備あるいは私学振興につきましては、非常に厳しい財政事情のもとではありますが、関係省の間で十分検討いたさせます。
 教育委員会制度についてでありますが、現在の教育委員会制度は、地方自治の理念にも合致し、住民意思も反映されながら、地方における教育、学術及び文化に関する行政を進めていく上でよく機能を発揮しているところであります。今後とも、現行制度により教育委員会の一層の充実運営が行われまするように努めてまいる考えでございます。
 善隣友好の平和外交を積極的に推進すべしとのお話でございましたが、私もこの点において長谷川議員と志を同じくするものであります。わが国は、今後とも平和に徹し、軍事大国にはならないという基本的立場を堅持しつつ、世界の平和と安定のため、積極的に貢献してまいりたいと考えております。
 以上、御答弁申し上げましたが、残余の問題につきましては所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣園田直君登壇〕
#17
○国務大臣(園田直君) ほとんど総理大臣から答弁されましたが、特に健康保険改正問題は、全く御意見のとおりでありまして、健康づくり、病気の予防、リハビリテーションまでを含む総合的な保健医療対策の充実、保険外負担については、今後とも保険外負担の解消に向けて努力し、また薬価基準については、市場価格と薬価基準価格の格差の解消を図り、その適正化に努めていくなど、御意見のとおり、単なる赤字対策ではなく、社会経済情勢の変化に対応して、医療制度基盤を整備するための基本的改革の一環として改正すべきであると考えております。
 御指摘の富士見病院は、国民の健康と生命を守るという医療機関が、だんだんと営利に走り、単なる診療違反ということではなく、恐るべき犯罪を犯すに至ったことは、まことに残念であり、深く反省をいたします。今回の事件のようなことがどうして起こったか、現行医療制度を含む諸制度にも問題があると、みずから深く反省をいたしております。
 したがいまして、そういう諸般の問題も含めて、省内で、医療に関する国民の信頼を回復するための検討委員会というものを特別につくり、各局各所の優秀なる事務官を集め、特別に検討いたし、まず各方面の意見を承り、実情を審査し、当面の問題及び長期にわたりどのような制度の改革を行うべきかを検討しているところであります。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#18
○国務大臣(渡辺美智雄君) 長谷川議員の質問にお答えする前に、先ほど北山議員の質問中、財政法四十六条に基づく財政報告に関して少し足りないところがあったのでつけ加えたいと存じます。
 憲法九十一条を受けて財政法四十六条で財政報告ということが記されておるわけでございますが、この財政に関する一般的事項については、すでに国民への財政報告は行っておるところでございます。したがいまして、新たに別にいわゆる財政白書というようなものを作成する考えは目下ございません。
 しかしながら、国民的課題である財政健全化に資するよう、いろいろと財政関係は専門的でわかりにくい、こういうような御批評を受けておりますので、今後とも財政関係資料の提出については最大限に努力を払ってまいりたいと考えております。
 なお、長谷川議員からいわゆる所得税の物価調整減税を行わないかということでございますが、結論から申し上げますと、目下、調整減税を行う考えはございません。
 このことはなぜならばと申しますと、一つは、財政再建という非常に重要な問題を抱えておる。一つは、日本の現在の所得税の課税最低限を比較いたしましても、たとえば夫婦子二人という場合、日本は二百一万円までは税金がかからない。米国は百六十六万五千円、英国は八十九万円、ドイツは百五十五万九千円、スウェーデンは二百十一万円、こういう状態でございます。
 また、実際に税の賦課状況を見ておりましても、給与所得者の場合、夫婦子二人という場合だと、現在の税法で五十五年一月基準で三百万円の場合を見ると、日本は地方税の住民税と所得税と両方合わせて十一万六千円の税金であります。アメリカは二十八万六千円、イギリスは六十一万四千円、西ドイツは二十六万一千円、スウェーデンは八十六万円、こういうようなことでもございますし、日本の所得税はそれらの国と比べて私は非常に低いのではないかという気がいたします。
 ちなみに五百万円で比べてみましても、日本は地方税、所得税、約四十九万円かかりますが、アメリカは八十六万円、イギリスは百二十一万円、西ドイツは六十四万円、スウェーデンは二百八万円、こういうようなことであって、さらに社会保障関係の費用、社会保障負担率を比べても、国民所得に対する日本の社会保障負担率はスウェーデンの半分以下、フランスが五三%ならば日本は三一%というようなことで、これとても非常に安くなっております。そして大体給付内容等につきましては、そう遜色のない程度にできております。
 したがって、現在のところ、それらのことを勘案いたしますと、まことに残念ながら所得税減税を行うことはできない状態にございます。(拍手)
    〔国務大臣田中六助君登壇〕
#19
○国務大臣(田中六助君) 長谷川議員にお答えいたします。
 長谷川さんの御質問は三点あったと思います。第一は、中小企業者の倒産が非常に多い、これをどうするかということでございます。
 御指摘のように、ことしの七月の倒産件数は千五百五件でございます。八月はちょっと下がりました。しかし、九月の発表はまだございませんけれども、私どもが推定するところ、千六百件をオーバーするのではないかということでございますので、私も非常に頭を痛めておるところでございます。
 これの対策といたしまして、すでに対前年実績比といたしまして二六%増の一兆六千五百億という金を私どもはすでに計上しておりますけれども、まだまだそれでは足りないところがあると思いまして、年末の融資につきましても、御指摘のような措置をとろうというふうに考えております。
 それからさらに、三機関だけではなくて、九月十九日付で保証協会並びに三機関、それに加えて一般の市中銀行に対しても、これらの措置に万全を期するように協力するよう措置を中小企業庁長官と大蔵省の銀行局長の両名の同名で出しております。
 それから、二番目の御指摘は、官公需に対する中小企業者向けの受注確保についてという問題だと思いますが、これにつきましては、すでに官公需の中小企業向けの確保についての法律、これに基づきまして、私どもは十分な計画を練っておるわけでございます。御指摘のように、昭和五十四年度におきましては三五・三%、それから五十五年度につきましては三六・五%という計上をしております。
 それから、零細な小企業についてどうするかということでございますが、これも長谷川議員御指摘のように、私どもは、事業協同組合、そういうものを通じまして共同発注をするように、長谷川議員の御指摘を待つまでもなくすでに実施をしておりますし、これが拡大については、今後さらに万全を期したいというふうに考えております。
 最後の御質問は、事業分野の調整問題でございました。これについて調整、調査、そういう権限を県知事に与えてはどうかということと、第二点は、大企業についての規制をしたらどうか、との二点から、事業分野の調整法についての改正をやれということでございますが、結論から先に申し上げますと、私どもは、現在の段階でこの法律の改正は考えておりません。
 なぜならば、県知事に移譲するということは、非常に分野が限られることになります。御承知のように、分野の紛争は非常に多岐にわたっておりまして、全国的なものが多うございます。したがって、主務大臣か、あるいは私自身、通産大臣がその権限を付与されておりまして、これを県知事だけに依存するということは考えておりませんし、ただ、私ども、現在でも県知事に十分連絡してその意見を尊重するという態度はとっております。
 それから、大企業についての規制でございますが、この事業分野の調整法案についての御審議のときも非常にデリケートな面がございまして、大企業と中小企業の分離、これは中小企業基本法によりまして、私ども、その範囲をはっきりしておりますけれども、突き詰めていきますと、大企業と中小企業の間というものは、資本の面あるいは役員の交流あるいは製品の販売、流通、そういう面で非常に関係が深うございますし、さらに突き詰めていきますと、私権の制限、つまり、私の権利の制限というような分野にもわたらなければなりませんし、現在のところ、この法律の改正は考えておりません。
 以上、お答えいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○鹿野道彦君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明七日午後四時より本会議を開き、これを継続されんことを望みます。
#21
○副議長(岡田春夫君) 鹿野道彦君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○副議長(岡田春夫君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
     ――――◇―――――
 宇宙開発委員会委員任命につき事後承認を求めるの件
 公正取引委員会委員任命につき事後承認を求めるの件
 労働保険審査会委員任命につき事後承認を求めるの件
#23
○副議長(岡田春夫君) お諮りいたします。
 内閣から、
 宇宙開発委員会委員に井上啓次郎君を、
 公正取引委員会委員に平田胤明君を、
 労働保険審査会委員に中村博君を
任命したので、その事後の承認を得たいとの申し出があります。
 まず、宇宙開発委員会委員及び公正取引委員会委員の任命について、申し出のとおり事後の承認を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#24
○副議長(岡田春夫君) 起立多数。よって、いずれも承認を与えるに決しました。
 次に、労働保険審査会委員の任命について、申し出のとおり事後の承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○副議長(岡田春夫君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#26
○副議長(岡田春夫君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十六分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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