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1949/01/26 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 本会議 第11号
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1949/01/26 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 本会議 第11号

#1
第007回国会 本会議 第11号
昭和二十五年一月二十六日(木曜日)
   午前十時二十八分開議
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 議事日程 第九号
  昭和二十五年一月二十六日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 第二 最高裁判所裁判官国民審査管理委員の選挙
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#2
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
 議員荒井八郎君は一月十一日逝去せられました。誠に痛惜哀悼の至りに堪えません。同君に対しましては、議長はすでに弔詞を贈呈いたしました。
     ―――――・―――――
#4
○議長(佐藤尚武君) この際、玉置吉之丞君から発言を求められております。玉置吉之丞君。
   〔玉置吉之丞君登壇、拍手〕
#5
○玉置吉之丞君 私はここに諸君のお許しを得まして、故荒井九郎君に対して弔詞を申述べたいと存じます。
 荒井八郎君は明治二十一年埼玉県の忍町に生れ、夙に東京に出られまして、関直彦先生の私塾に学ばれ、若くして大いに実業の辛酸を嘗められまして、足袋の業界においてその生産販売に関しての尊い御体験による権威は、同君が斯業において多数の要職を占めておることによつても明らかであります。かくのごとく同君は実業界において成功されました立志伝中の人でありますが、一方、町会議員、農業会長、県会議員等に挙げられ、郷土の政界並びに産業の発展のために盡瘁したその功績は大きいものがあるのでございます。更に志を中央の政界に馳せられまして、参議院議員に全国選出議員として任期六年を以て選ばれたのであります。
 議員となられましては実業家としての経験を生かし、我が国経済の再建のために、はた又祖国の復興に、大いに期するところがあつたことを拝察いたされるのであります。然るところ不幸病魔の冒すところとなり、本月十一日長逝されましたことは、誠に痛惜哀悼の至りに堪えません。我々は同君の遺志のあるところを継いで参議院の使命を果し、以て同君の霊を慰めたいと存じます。
 ここに同君の生前を偲び、謹んで弔詞といたします(拍手)
     ―――――・―――――
#6
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件。
 昨日に引続き順次質疑を許します。鈴木順一君。
   〔鈴木順一君登壇、拍手〕
#7
○鈴木順一君 私は民主党を代表いたしまして、総理の施政方針演説並びに安本長官、大蔵大臣の財政経済演説に関連いたしまして質問いたします。
 今年は日本があらゆる犠牲と努力を拂つて起ち上る年である。みずからの力で起ち上る年である。而してこの吉田内閣に対し国民も相当の期待をしておつたのであります。ところが本議場で行われましたところの総理の施政方針演説は、国際情勢の変転下において講和会議はどうなるか、安全保障がどうなるかについて、我が方では積極的には如何ともいたし難いことを述べておるのみであつて、その他は殆んど楽観的な内容に終始しておるのであります。自衛権の問題につきましても、憲法により戰線を放棄したが、自衛権まで放棄したのではないと言つておるのみであつて、明確に述べておるのはただ賃金ベースの改訂を行わないということだけであります。新憲法により一切の軍備を廃し、すべての交戰権を捨てた日本が、自衛権と言つても武力を伴う自衛権のあり得ないことは、何人も銘記しなければならないことであります。ただ内政的、外交的にあらゆる努力を盡じ、侵略の口実を與えず、平和と正義を愛する諸国の手によつて安全を保障して貰う以外に途はないのであります。併し首相の自衛権放棄せずということの内容に、若し甲と乙との両国の間におきまして交戰するような事態に立ち至つた場合に、一方の国に軍事基地を提供するようなことがあるならば、一方の国の軍力によつて保障される結果となり、勢い戰争に巻き込まれる結果となるのであります。若しかかることありとするならば、憲法の戰争放棄はただ日本だけの戰争放棄に止まらず、外の国々までも平和的の国交を推進するという精神と反し、又何人も望むところの全面講和は百年待つても招来しないのであります。日本にとつては重大な問題であるのでありますが、この安全保障につきまして総理のお考えを承わりたいと存ずるわけであります。
 吉田首相は昨年の総選挙の前に、前民主党総裁の犬養氏との間に密約がありと聞いておるのでありますが、そうして保守合同を叫び、遂に犬養氏を政界の孤兒たらしめたことは、吉田民自党総裁の重大な責任であると私は考えるのであります。(拍手)暮の二十四日、保守合同の約束を結論付けるときが来たと声明し、保守合同の政治的目的は講和会議に臨む政局の安定を期することであると言つておりますが、国内的な安定は、昨日総理がこの議論で和田君に答えたように、破壞的分子や反動分子が横行しておるようでは困るということであつて、保守陣営が統一されなくてはいけないという意味では絶対にないのであります。これは個人的な利害に基いた動きでありまして、政策を忘れた政党人の妄動であると断定せざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)国民はこのことに関し少しも興味を感じておらないのであります。講和会議に臨む必要な国内体制とは、先にポツダム宣言に謳われております政治、経済、文化、社会各分野における日本民主化の実現でなければならないのであります。保守合同などということは枝葉末節の問題でありまして、これを講和会議の前提であるかのごとく、国内体制の整備であるかのごとく言うことは、総理のこじ付けであり、参議院選挙を前にした地盤獲得にしか過ぎないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)これを保守合同の一環などと言うのは、国民を小馬鹿にし、瞞着するものだと非難されても止むを得ないのであります。民自党は前々より減税を選挙のスローガンのように自慢しており、総理の演説にまで九百億の減税を言う一方、地方財政の確立も言うだけであつて、地方税の増徴は伏せておるのであります。かような宣伝的な演説は、民自党総裁としてだけならば納得もいたしましようけれども、一国の総理としては不満を禁じ得ないのであります。更に総理は、経済の安定はでき、国民は喜んでおると言われておりますが、通貨の安定はできましても、逆にデフレでいよいよ不況は深刻化し、三月になり急に徴税することにより国民の生活は苦しくなり、国内は不安定にさらされるのであります。
 更に年末給與のように、最後に追い詰められて土壇場になつてから金を出すように政治は、非常にまずいやり方であります。この度の人事院の勧告が妥当であるにも拘わらず、又公務員が他の労働者と異なつた、特殊に置かれた立場から言いまして、この待遇改善には政府は重大なる責任を持つべきであります。一般賃金より下廻るまま放置されることは絶対に許されないのであります。総理は、給與の引上げは物価と賃金の悪循環を来たし、インフレに逆転すると述べておりますけれども、現在の財政金融状態においてはさような心配は御無用であります。政府の重大なる責任を回避することは許されないのであります。財源につきましても、増税によらなくも、経費の節約と多過ぎる債務償還をそれに充当すれば十分に間に合うわけであります。政府は人事院の勧告を無視し、何ら真劍な努力を拂つておらないのは、重大なる責任回避であると私は考えるのでありますが、これに対し総理並びに大蔵大臣の御所信を承わります。
 次に、安本長官の演説を聞いておりますと、貿易、生産、産業の合理化、資源開発、見返資金、国民生活、失業対策等、広汎に亘つているが、ただ表面を撫でているだけであつて、その内容たるや実に羅列的で貧弱であります。そのうちでも民間資本の蓄績或いは所得の配分の問題は忘れられておりますが、この民間資本の蓄積、国民所得の配分のことにつきまして、具体的な方策を承わりたいと存ずるのであります。
 次に、大蔵大臣の所信を質したいと思います。大蔵大臣は、政府の政策の基調はデイス・インフレであると言つております。現在の我が国の経済はその線に沿つて安定していると言つております。その論拠と称して、物価安定、その他経済指数を挙げているかと思えば、又一面、物価を低落させる考えであるということも言つているのでありますが、我々は今日の我が国経済は極端なデフレであつて、二十五年度予算をこのまま実行すれば一層デフレを激化させる結果となるのであります。大蔵大臣は今後更に物価を低落させる考えであるということは、私の議論を認めるという結果になるのでありますが、この点如何でありますか。お伺いいたしたいと思うのであります。
 更に大蔵大臣は、二十五年度予算は均衡を得た予算であつて、近来にない名予算だと言つておりますけれども、外の人が名予算だと批評するならともかく、自分から名予算と言つていることに対しては、(笑声)大した心臟であるけれども、心臟だけでは財政経済政策は行われないことを断言して置く次第であります。(「そうだよ」と呼ぶ者あり、拍手)均衡予算だと我々は決して思わないのでありますが、均衡予算とは財政資金の吸上げと撤布が大体均衡を得ているということでありまして、吸上げが著しく超過しており、このまま実行するならば現在のデフレを一層悪化させることになり、決して均衡を得た予算でもなければ、又名予算でもないと断定せざるを得ないのであります。二十五年度予算におきまして千三百億の債務償還がなされようとしておりますが、この結果は明瞭であります。政府はその資金が日銀を通じ、又市中銀行を通じ、直接企業に放出されるように適切なる指導を加えると言つておりますが、二十四年度におきましても同じようなことを言つておつたのでありますけれども、その結果は完全に失敗しているのであります。経済界の実情の変化を少しも考えず、又々ドツジ・ラインをう呑みにした二十五年度予算は、その本質におきまして極端なるデフレ予算であることは、世評が一致していることを見ても分る次第であります。従いまして、この予算を実施し、而もデイス・インフレに持つて行くには、金融政策において最も巧妙且つタイムリーの政策を講じなければならないと思うのであります。政府は二十四年度予算の実施に当つて見返資金を活溌に放出すると言つておりましたが、実際はどうでありましようか。その怠慢振りは一般の非難の的となつておる次第であります。(「そうでもない」と呼ぶ者あり)又預全部資金を徒らに抱え込んで、これを死蔵しておつたのであります。かように見返資金の放出を怠り、又預金部資金を活用せず、デフレ予算のしわを金融に寄せた結果はどうであつたか。金融機関は預金の九〇%乃至甚だしきは一〇〇%を越した貸出を行わざるを得なくなつて来たのであります。この資産内容は大いに警戒を要するに至つておるわけでありますが、外国の金融家がこれを見てどう感ずるでありましようか。吉田総理も大蔵大臣も、外資導入、外資導入と盛んに唱えておりますけれども、かような状態を見ては、海外の金融家や投資家が短期資金の貸出さえ躊躇するのであろうと思う。況んや長期資金におきましては、はつきり分る次第であります。
 先ず、デフレの根本原因の一つである債務償還は、この際できるだけ差控えまして、これを減税その他に廻すべきであろうと思うけれども、大蔵大臣の所信を伺う次第であります。政府は見返資金からする債務償還について、公共企業投資、私企業投資、その間に彼此流用できるような計画があるように見受けられますが、果して見返資金からの五百億は債務償還に充てる考えであるか。又私が只今述べました趣旨によつて、これを私企業又は公企業に使う考えであるか。伺いたいのであります。又見返資金及び預金部資金を従来のように抱え込んでおらず、急速に産業界に返して、金融機金の荷を軽くすべきであろうと思う。大蔵省はこれに対して如何に処置をとられんとしておりますか。
 大蔵大臣は最近の証券市場は意外に不振であつて、長期資金の調達も困難を来たす虞れがあるところより、日銀のオペレーシヨンの活用、放出株の調整、増資の時期的調整等の外、今後も十分に積極策を講ずると言つておるが、大蔵省の中におきまして不振であるという今日の状態に至るまで、政府は一体何をして来たのか。何もしなかつたのか。効果のあるようなことはできなかつたのか。この点を疑わざるを得ないのであります。由来、証券市場の動向は政府に対する経済界のバロメーターであつたのであります。今日の証券市場の不振は何を意味しておるか、火を見るより明らかであります。
 財政と金融に調整策が計画的に行われなかつた。その上に金融引締めが急カーブで左転右転するために、市中の金融機関の態度もその度に大幅に搖れて、経済界は思いも及ばぬ波動を受け、必要以上に怪我人を出しておるのであります。これは財政と金融の調整を重要な役割とした見返資金で殆んど活動せず、財政と金融が別個に動いたからであります。国庫の歳出入が金融に大きな影響を與えることは言うまでもないのでありますが、租税により過去の債務償還をする時期と償還の対象が金融情勢に與える影響は軽視できないにも拘わらず、債務の償還は金融情勢を無視して行われておるのであります。即ち財政と金融の連絡はないも同同であります。日銀政策委員会も通貨対策審議会も、財政政策と遊離した動きをしておつたのが、今日の金詰りを深刻化した真因と言えるのであります。デフレ予算でありますから、この点、本年度は財政は金融の調整を如何に行わんとするか。又金融政策はなだらかでなければならない。その財政面から来る波動が急激であるなら、金融面では御動を速度においても緩和する政策がとられるべきであるけれども、財政面と同じように金融面でも引締めたならば速度は倍加する。こんな計画性のないことでは経済界は堪らないのであります。十分に財政と金融の調整策をとり必要があると思うが、この点に関し、まだお見えになつておらないけれども、大蔵大臣の答弁を要求いたします。(「政策次官がやる」と呼ぶ者あり)
 次に農林大臣にお尋ねいたしますが、食糧輸入は段々増加して来ておりまして、全輸入の五〇%となり、量も供出量の五〇%になつて来ているのは、増産に対する熱意のないことと、施策の貧困によるもので、やがて完全独立まで脅かすものではないかと考えるのであります。又為替レートの変更ありと巷間に伝えられるところより、農林水産物の輸出は休止状態であるが、農林大臣の具体策は何でありますか。伺いたいのであります。
 又本年度予算は、農林関係の災害復旧費は、金額こそ殖えておりますけれども、公共事業費中に占めるパーセンテージが落ちておりますので、農林施策の万全は期せられないと考えるのであります。農村に対する今までありました農林省よりの助成が大幅に減つて、農村財政に大きな穴があいておりますが、これに対し農林金融によつて如何なる方法で埋めるか。その時期方法を伺いたいのであります。その上、治山治水上、重要な植林計画につきましても、強力にこれを速かに進めなければならないと考えますが、これに対する法的な措置は如何なる御用意があるが承わりたいのであります。
 次に建設大臣に対してお伺いいたしますが、本年度よりシヤウプ勧告により災害復旧費全額国庫負担となつておりますが、すでに施行しておるものと、起債により竣工しておる工事の分に対して、地方は非常に困つておりますが、これに対し如何に御処置されんとするか伺いたいのであります。治山治水計画のうち、河川計画は下流より上流に及ぼすよう計画を立てておりますけれども、計画をやり直し、上流より下流の施行するような方法をとられるお考えがあるか、承わりたいのであります。
 最後に文部大臣にお尋ねいたしますが、シヤウプ勧告によりまして、義務教育費、定時制高校の職員費、公立学校共済組合の事業などの国庫負担が全部地方公共団体の支拂となり、地方公共団体は、増徴となる地方税と、全国で約千百億ある平衡交付金の配付によつて賄うことになつておりますが、現在のような貧しい地方財政では、未だ六・三制の完成を見ず、そして、この時期において簡單に地方自治体に押付けることは、義務教育の危機であると考えるのであります。この際、例えば標準教育費というようなものを設けまして、これを平衡交付金の金にはつきり枠をとることが正しく、この切替えのときこそ、予算を確立し、地方財政の中によき先例を作るようにしたら如何かと存ずるのでありますが、これに対し文部大臣の御答弁を要求いたします。以上。
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(吉田茂君) 鈴木順一君の御質問に対してお答えをいたします。
 自衛権について、又軍事基地の問題についてのお尋ねでありますが、自衛権についてはしばしば私の演説においても御説明いたしておりましたが、私は武力がなく戰争を放棄しても自衛権はある。恰かも武士が廃刀以前において、廃刀令によつて両刀を捨てるということが、自衛のできないような感じがして、当時士族が相当反対をしたということもありますが、それと同じように、武力がなくても、自衛権は(拍手)完全に、国家としては国家を護る力があると私は確信して疑わないのであります。(笑声)又軍事基地の問題についてしばしばお尋ねがありますが、現に軍事基地に対しての交渉はございません。(「頓智問答」と呼ぶ者あり)
 又保守合同は恰かもポツダム宣言に反するような御質問であるように思いますが、むしろポツダム宣言による民主政治確立のために保守合同をなすがいいと私は確信いたすのであります。若し新議会政治が小党分立する、若くは極端な政権が相対立するがごときことがあれば、この際民主政治の発達、確立を妨害するものであるのであります。(拍手)私は総選挙以前においてしばしば各地方或いは東京においても申しておつたのでありすまが、志を同じうする者が相提携して、そうしてここに政局の安定を来たす。ここに日本の国民の意思が初めてこれによつてはつきりするものであると主張し得るのである。実現し得るのである。そのために志を同じうする者が相寄つて一大政党を形作つて行く。以て政治の安定を期する。政治の安定、経済の安定によつて講和條約を促進したい。これは今日私は申すわけではないのでありまして、総選挙以前から主張し来つたところであります。私は志を同じうする者と合同し、又政局の安定を図らんとするものでありまして、犬養君一派に呼びかけておるものではないのみならず、犬養君一派との間に何らの密約もないのであります。
 又地方の減税についてお話が出ましたが、これは中央の政治行政組織のみならず、地方の政行組織においても成るべくこれを簡素化して、そうしてその支出を減じて、そして地方減税を実現いたしたいと思つておるのであります。
 賃金ベースの人事院の勧告を容れなかつた、勧告に従わなかつたという理由は、私の施政の演説の中にも述べておりますが、政府といたしては、これは物価との間に微妙な悪循環を来たす故に、政府の見解として人事院の勧告は受入れないということに決定いたしたのであります。
 その他財政問題については当局大臣からお話をいたします。(拍手)
   〔「大蔵大臣はどうした」「安本どうした」「次官は相手にしないぞ」と呼ぶ者あり〕
   〔国務大臣森幸太郎君登壇〕
#9
○国務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。今日我が国の食糧が輸入食糧に一部依存しなければ完全なる消費を全うすることができ得ませんので、一部輸入を仰いでおるわけであります。併しながら我が国といたしましては、できるだけ食糧の自給度を高める上において、国内の増産を図りますことは勿論、輸入食糧に対しましても、日本の力によつてこれを輸入するという政策を以て進みたいと考えておるのであります。
 農産物の輸出の点でありまするが、これは絹布を除きまして、その他のものが漸次これは旺盛になつて参つておるのであります。絹布のごときもアメリカの不景気のために一時輸出が停頓いたしておりましたが、漸次この輸出も旺盛になりまして、殊にヨーロツパ方面におきましても、この絹布の需要が盛んになつて来たのであります。併しながら今日までは海外の諸事情が分つておりませんので、今後海外の事情をよく調査し、知るということが第一であり、又絹布というものが戰争のために暫らく消費面から消えておりましたがかめに、この絹布の消費に対する宣伝ということも必要であるのでありまして、今後そういう方面に力を入れまして、絹布等の輸出もますます旺盛になることを期待いたしておるわけであります。
 農村に対する金融の問題でありまするが、御承知の通り農村に対しましては非常に金融が逼迫いたしております。殊に担保力がない今日の農村といたしましては、長期の金融を政府の力によつてせなければならんのであります。これは対日見返資金を利用いたしまして、農林中央金庫を通じ、農業手形、水産手形等によつて長期の低利なる資金を融通いたしたいと計画を進めておるわけであります。
 尚、治山治水の問題でありまするが、これは申上げるまでもなく最も力を注いでおる問題でありまして、この山林経営につきましては殊に長期の資金を要するのであります。従つて政府におきましては、この山林経営に対する資金の融通に対しまして計画を立てておるのと共に、又この伐採後の森林を、これを栽植するというこの緊急造林の方につきまして法的措置を考慮いたして、近くその実現を期したいと、かように考えておるわけであります。(拍手)
   〔国務大臣益谷秀次君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(益谷秀次君) お答え申上げます。昭和二十五年度におきましては、災害復旧費は軽微なる災害を除きましては国庫において全額負担で参りたいという方針でございます。而して只今御質問になりましたごとく、政府の助成を待ち切れないで、地方公共団体においては、いろいろ財政上のやりくりをいたされて工事を進められておる部分があるのであります。これに対しては、政府の助成をいたした金額、工事、それに一線を画して参りたいと思いますから、従つてすでに助成金を待たず工事をいたされた部分については、国庫において全額負担をいたさなければならぬと私は考えておるのであります。
 第二の点は、御承知の通り河川改修工事は、従来下流から上流に及ぶ、これは常道でありまして、又最も堅実なる方法であると承知いたしております。併しながら必ずしもこの工法を墨守するものではございません。要は河川の実情に鑑みまして、中流から、或いは上流から工事を進めて参るというふうな場合もあるのであります。これは従来とても、さような方法を用いて参つたのであります。以上お答え申上げます。(拍手)
   〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(高瀬荘太郎君) お答えいたします。只今お話がありました通り、今回新たに予算編成の仕方によりまして、地方教育費に対する国庫補助金の予算計上の仕方が変つたわけであります。そうして平衡交付金の中にこれが算入されるということになりましたが、御質問にありましたように、この制度の変化自体によりまして必ずしも地方財政を特に圧迫するという結果にはならないと考えております。特に昭和二十五年度予算におきましては、この平衡交付金の中に算入されます地方教育費に対する国庫補助金は約二十数億円増額される予定になつております。併しお話のありましたように、その運用につきましては、合理的に且つ公平に行われますように、適当な方策を立てなければならないということは全く同感でありまして、これにつきましては、お話のあつたような標準教育費、或いはそれに準じますような適当な計算基準を設けまして、それによつて地方教育の水準を是非とも維持して行きたいと考えております。併し問題は、御承知のように地方自治の確立とか或いは地方財政の円滑な運営ということと密接な関係がありますので、それらとの調節につきましても十分愼重に考えて行きたいと考えております。(拍手)
#12
○議長(佐藤尚武君) 池田大蔵大臣並びに青木国務大臣は関係方面に出向いておりまするが、大蔵大臣は間もなく出席されまして答弁いたすということでございます。青木国務大臣の答弁は他日に留保せられたいということでございます。赤木正雄君。
    ―――――――――――――
   〔赤木正雄君登壇、拍手〕
#13
○赤木正雄君 私は主として治水問題につきましてお伺いいたします。
 先ず第一に、治水政策について総理大臣のお考えを承わりたいのであります。昭和二十二年の九月三十日に、あの当時の大水害に鑑みまして、この席上で災害に対する決議を満場一致を以て決めました。その際、時の総理片山さんは、この席上から、單に災害復旧のみならず、治水の根本に対しても十分の策を立てると強く言われたのであります。その後、芦田内閣におきましても、芦田さんは又治水の根本を立てるということを強くお話になりました。この内閣でも治水問題を最も重要な政策とされておることは我々はよく存じております。併し果してその政策に盛られるものは、治水の如何なるものかを十分御了解になつておるかどうか。ここに私は多大の疑問がありますから、敢えてお尋ねする次第であります。
 一体我が国の河川は、その重要なものに対しては、すでに明治年間から仕事に着手したのであります。北上川、最上川、信濃川、利根川、荒川、近くでは多摩川或いは木曾川、神通川、淀川、吉野川、筑後川等、恐らく二十二の大きな河川はすでに竣工したのであります。それがために、その当時盛大な竣工式を各地方で挙げて、もはやこれで水害は永久に来ないものと地元の人々は皆安心をしています。又安心をしたのであります。その他の河川におきましても、重要な河川に対しては、必要な個所に相当の仕事がすでにされたのであります。これにも拘わらず、昭和二十二年の水害以来、再び河川改修を、今までした河川に対しても起す、北上川とか、最上川とか、江合成瀬川、信濃川、利根川、木其川、常願寺川、或いは淀川、吉野川、筑後川等の十大河川は無論、その他の多くの河川に対しても再び改修せねばならぬ、こういうことになりましたが、一体、河川改修の生命はそれ程短かいものでありましようか。かく考えて来ますと、再び改修を必要とする原因として何があるか。これは皆樣も御承知の通りに、戰争中における森林の濫伐とか、或いは戰争中において河川に殆んど手を触れなかつた、これは世間も申しております。この会議場でも皆樣からこの席上でたびたび言われました。併し私はこの外に我が国の治水政策に大きな欠点が存在する、これを指摘せざるを得ないのであります。
 一体、洪水時の水量は、御承知の通りに水量と土砂の量であります。甚だしいものにおきましては、洪水の中の半分以上は土砂から成り立つております。この中の水量は、これは立方に計算して河川改修の計画が立ち得るのでありまするが、土砂に対しては予めこれを計算することができない。どうしてもこれが出て来ないような方法を講じなくてはなりません。即ちこれが砂防工事であります。私がここに申す砂防工事とは、單に建設省関係のみならず、農林省関係の治水事業をも含めての意味であります。即ち治水というのは、河川の改修と砂防工事の二つを完全に行なつて初めてその目的が達成し得るのであります。然るに従来の治水工事は、ややもすれば河川改修を以て治水の全部であるかのように国民を考え、又政府もそれに主力を注がれて来たのであります。これでは河川の改修は竣工しても、日夜土砂が流れて来ますから、一朝洪水に会つたならば氾濫することは当然のことであります。あの二十二年の利根川の水害で栗橋が破堤した場合に、すでにその附近は改修した当時よりも河床が一メートル内外高まつておるということは、地方の人々がすでに申したことであります。言い換えるならば、従来我が国には河川工事はあつても、一つの河川について水源から河口に至るまで計画的に治める治水工事はなかつたのであります。この理論上の欠陷が各地に災害をもたらした、即ち河川の再改修を必要としておる大きな原因の一つである、こういうことが言えます。このことは、僅かながらも河川工事と砂防工事とを併せて行なつた場所には殆んど水害がない、その森林は相当に濫伐しても、今までに出水のための水害がなかつた、この事例を見ても明らかであります。
 又ひとり治水上から見たばかりでなく、利水の面から考えましても、今後我が国の動力源といたしまして極めて重視されておるものは水力発電の点でありますが、折角堰堤を築いて貯水池を設けても、水源が荒廃しておるために、多量の土砂が堆積沈澱して、貯水池の作用を著しく減退しておるのであります。例えば木曽川水系の大井貯水池は、水を湛えて以来二十一年間に全容量の七〇%が失われております。又黒部川水系の小屋平調整池では、十一年間に八八%が失われております。全国的の統計を見ても、百五十一地点の貯水池、調整池の調査において、全容量十億立方メートルの一〇個が堆積土砂によつて失われております。この結果は、貯水又は調整能力の減少となりまして、無効な放流を余儀なくされて、発生電力量に著しく損失を来しておるものであります。国民の多くは、堰堤を築いて水力発電を行えば永久に発電し得るものと考えておるかも知れませんが、以上のような事実に徴するならば、我が国のように水源が荒廃していてもこれを治めない以上は、この期待を裏切られるのであります。
 政府が来年度の予算をいよいよ建設の年の発足として、公共事業費の中においても、特に災害に鑑みて、治水事業を重点に取上げられた点は我々もよく存じております。併し最初、閣議の結果を新聞で見たときに、相当の砂防費も計上されておりまして、この政府によつて初めて正しい治水事業が断行されるものと、私は非常に期待を持つておりました。併しドツジ博士による査定の結果は、御承知のごとく、最も甚だしく減額されたのであります。私はこれに対して、或いは本年度の予算よりも多額に組んだと政府は言われるかも知れませんが、さような枝葉末節のことをここで申そうとは思いません。ただ容易にこの水源の事業費が減額されたその精神の問題であります。
 明治の初年にデレーケその他のオランダ人が初めて我が国の治水計画を立てましたときに、例えば淀川、木曽川のごとき、明治十四年の河川改修費は共に六万円であります。そのうちの四万円は砂防事業に、残りの二万円は河川改修に使用したのであります。これは申すまでもなく治水は先ず水源を治めて次いで下流の改修に及ぶべきであるという治水の純理論に立脚した処置と考えられるのであります。その後、明治の中頃から、これらの外国人が帰るに及んで、現在のような治水政策に転換しましたが、ここに大きな治水上の欠陷が介在して、すでに申したごとく、折角した河川改修も再改修も必要とする原因となつたのであります。
 今や我が国は資源の開発、土地の完全利用、これを図るために国土の総合計画を考うべき時期に到達いたしました。これも治水が主となりますが、殊に今後農村経営の合理化といたしまして、土地の交換分合という極めて大きな問題が残されております。これは耕地の改良と、なかんずく治水の完成によつて土地の安定が図られることが、その根幹となるものであります。水源の治まらない河川改修だけでは決して役立つものではありません。即ち国土の再建は水の理論に立脚した正しい治水政策によつて初めて目的が達成され得るものであります。併し何分にも従来の政策を変更するということは非常に障害が多い。殊に多くの国民は治水というものはかようなものかと、即ち現在の治水政策を以て治水のように思つていますから、これを転換させることは非常に困難であります。これは内外共に非常に困難であります。併しこの治水の原則に従わない治水政策で決して永久に我が国の治水は成り立つものではありません。この観点からして、私は砂施工事も河川工事も平等に取扱つて、平等の観点から正しい治水政策にこの際転換される必要がある。我々は單に眼前の数年間の経過を以て満足すべきでありません。この際に、本当の正しい治水政策に転換しない限り、我が国は永久に水害から免れることはできません。この意味におきまして、果してこのいろいろな障害を打破しても正しい治水政策に持つて行かれるかどうか。無論、私がここに申す治水政策は決して砂防のみではありません。無論、河川の重要さも十分承知しています。即ち合理的の治水政策に持つて行かれるかどうか、この点を総理大臣にお伺いしたいと思います。
 次に、災害問題に関しまして、建設大臣、安定本部長官並びに大蔵大臣にお伺いいたします。来年度の災害復旧費は四百七十億という相当思い切つた予算が計上されております。併し二十四年度の府県の土木災害で国庫の補助を要求した総額は五百四十七億七千二百余万円に達しております。又これに相当する災害復旧個所は六万五百十三ケ所になつております。これを建設省で査定した結果は四百三億九千二百余万円、個所数において四万一千三十七ケ所となつておるのであります。即ち一万九千余ケ所は、これは国庫の補助を受くることができません。一体この部分に対して如何なる処置をとるでありましようか。無論この一部は県が自分の費用を以て災害復旧もいたしましよう。併しその多くは何ら手を着けずに放置して置くのが今までの習慣であります。そうしてこの次の出水に対してこれがますます破壞して、いわゆる国の補助を受け得るように大破壞をして初めて災害復旧をなす。こういう形なのであります。況んや初めからこの災害復旧の国庫の補助の対象とはならない小さい破損の個所はその何百倍あるか存じません。このことは、我々がいずれの河川を見ても、至るところ護岸の一坪ぐらい壞され、橋が少し壞されておる、こういう事実を認めることにおいて明らかであります。これを一体どうするか。二十四年度におきまして、仮に二十七都府県が河川の維持費をどれ程計上しておるか。その額は一億四千二百五十六万円であります。これによつて二千六百三十九河川を維持せねばならない。言い換えるならば、一つの河川について僅かに五万四千円より維持費を計上しておりません。何故にかように府県が維持費を計上していないか。僅かに一つの河川で五万四千円ではこれが維持できる筈がない。これには第一に今まで維持費に対しては国の補助がなかつた。国の補助のないものは起債も認められることはなかつた。従つてこれがますます破壞して、これも災害復旧の国庫の対象になるまで放置して置く、こういう状態であります。でありますから、何としても大きく破壊する前に、先ず維持をしなければならない。ではこの維持はどうするか。無論今は我々の税金は決してこれを軍部に捧げるわけでありませんから、早く維持費に用うべきでありますが、そこは、まだいたしておりません。何としても補助をしてこれをすることが必要であります。来年度の予算には防災工事ということをやりまして、やはり維持費を計上されております。この維持は如何にするか。今よりも多額の維持費を計上さるべきではないか。この点が一つと、もう一つは、災害復旧と同じような仕事が各省に跨がつておる。或いは建設省、或いは運輸省、或いは農林省、これがために各府県から建設省に出しておるのが不合格になれば運輸省に持つて行く、或いは農林省に持つて行く、こういう不合理がありますから、こういう不合理を改めて、この点からも合理的な行政機構に改むると同時に、今までの災害査定の規定を根本的に改められる御意思がないかどうか。この点を承わります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(吉田茂君) 赤木君にお答えをいたします。従来政府の治水計画において砂防工事を軽視しておるということに対する御警告と承知いたしますが、御意見は謹んで伺います。政府として今度治水をいたす場合には、砂防工事についても十分注意いたしますと共に、この治水、砂防、灌漑その他につきましては、新たに国土補修計画でありますか、全体的の計画を立てるために、特に委員会を作つて、その道の権威者を集めて研究いたすことになつておりますから、この委員会においても御趣意のあるところはよく伝えまして、砂防工事にも十分研究いたすようにいたさせます(拍手)
   〔国務大臣益谷秀次君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(益谷秀次君) 砂防の権威であります赤木議員から熱心なる御質問を頂きまして感激いたしておる次第であります。(笑声)只今総理がお答え申上げました通り、砂防については政府はこの緊急重要性をどこまでも認めて、本年は十八億の予算を計上いたして御審議を願つておる次第であります。もとよりこれについては十分とは申上げることはできません。財政の都合で、これで本年は我慢をしなければならんということに相成つてのであります。河川の維持についてでございまするが、仰せのごとく従来中小河川に対する維持費の補助がございませんでした。併しながら洪水を防止軽減いたしまするのには、どうしても河川を維持いたさなければならんという建前から、御承知の通り本年は特に中小河川の維持費の方面に僅かでありまするが四億円の経費を計上いたしておる次第であります。尚、災害復旧の統一ということでございましたが、これは各省ばらばらにならないで、統一実施をいたして参らなければなりません。故に政府におきましても災害復旧の査定を統一いたして、そうして総合的に災害復旧を進めて参らなければならぬという所存でございます。(拍手)
#16
○議長(佐藤尚武君) 先程申しましたように、池田大蔵大臣、青木国務大臣とも関係方面に出向いたままでありますので、答弁は他日に留保いたします。国務大臣の演説に対する質疑は尚ございますが、これを明白に讓りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
     ―――――・―――――
   〔青山正一君発言の許可を求む〕
#18
○議長(佐藤尚武君) 青山正一君。
#19
○青山正一君 本員はこの際、魚類の配給統制並びに漁船拿捕に関して緊急質問をすることの動議を提出いたします。
#20
○鈴木憲一君 本員は青山君の動議に賛成をいたします。
#21
○議長(佐藤尚武君) 青山君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許可いたします。青山正一君。
   〔青山正一君登壇、拍手〕
#23
○青山正一君 私は魚類の配給統制並びに漁船の不法拿捕に関しまして、以下の諸点につきまして、内閣総理大臣、農林大臣及び経済安定本部長官に対しまして率直なる所見を承わりたいと存ずる次第でございます。先ず最初に、内閣総理大臣の御意見を左の三点について伺いたいと思うのであります。
 第一に、すでに御承知のごとく水産業は、我が国人口食糧政策の上から、はた又自立経済確立の点から、重要な役割を担わされていることは、これは申すまでもありません。然るに最近に至りまして、例えば水産資材に対する補給金の廃止、或いは復興資金融通の停止等、凡そ水産業の興隆に逆行するような万策が行われていることは真に遺憾のことと思うのであります。かような情勢の下で、漁民の生活を保証し、漁業生産を確保いたしまして、真の我が国の水産業の確立を図るために、如何なる対策と用意が考慮されているのでありましようか。政府の所見を承わりたいのであります。
 第二に伺いたいのは、戰前におきましては、我が国の漁船は北は北洋から、東南支那海、遠くは南氷洋にまで進出いたしまして、東奔西走、縦横に活躍いたしまして、世界有数の水産国としての真価を発揮して、特に一九三四年にはその漁獲高におきまして世界十七ケ国の四四%五を占めて、世界第一位を誇つたのであります。ところがこの異常な発展は、その半面におきまして、獲れるだけの魚を獲るといういわゆる掠奪漁業と化してしまい、漁業資源保護に或いは又国際條約の遵守に大きな欠陥を生じたことは、これを否定し難いところであります。飜つて戰後の今日におきまして、許された漁区は戰前の三分の一に縮小せられましたが、こうした漁業道徳を無視した戰前の行為が戰後の漁区制限の一大原因をなしていると言うても過言ではないのであります。こうした過去の我が国漁業の根本的欠陥を拂拭いたしまして、再出発の日本漁業を健全に発展させるためには、この制限を極力緩和いたしまして漁区拡張を図ることが焦眉の急務であると痛感するものであります。政府はこれについて如何なる対策を持つているか。率直なる所信を承わりたいと思うのであります。
 第三点は、本年の一月九日から十二日に至る間におきまして、韓国の済州島附近のマツカーサー・ライン内におきまして、操業中の日本漁船五隻が、このうちには五百トン級の優秀漁船も包含されているのでありますが、その乘組員六十人と、凡そ五、六万貫の漁獲物と、船もろ共に不法に拿捕されたという事件が起つたのであります。これらの漁船はいずれもマツカーサー・ライン内におきまして平和的に操業していたのであります。然るに図らずも今回のごとき不法な拿捕を受けまして、而もこうした事態が今後も尚頻発することがあるとしますならば、今後の出漁に非常な不安を與え、延いては漁業生産の上に一大支障を生じますことは極めて明白なことであります。政府はかかる事件の発生に没みまして、講和條約成立以前においても関係国と何らかの協定を結ぶというような、この種事件の防衛のために何らかの対策を考えていられるでありましようか。又今回の事件そのものに関しまして、すでに如何なる応急的措置をとられましたか。お伺いいたす次第であります。それとも講和会議以前には何らの措置もとり得ないものとして、言わば泣き寢入りの状態に放置されているのでありますか。この際、本件のごとき国際的な重大な案件に対しまして、どのような考えを以て対処されんとするものでありますか。漁業者の現に蒙むつている損害は勿論、今後の漁業活動に一大不安を與えている本件のごとき……、政府のとりつつある措置並びにその見通しについて、重ねてはつきりした所信を総理大臣から承わりたいのであります。
 次に農林大臣にお伺いいたします。
第一に、水産物の生産は今や著しく復活いたしまして、少くとも食用魚介類に関する限りにおきましては戰前のレベルに達せんとしているのであります。かかる情勢の下で、尚且つ現行のごとき煩雑極まれる統制を何が故に継続せなければならないか。その理由の発見に苦しむものであります。この点につきまして国民の納得の行く御意見をはつきりとこの壇上で承わりたいのであります。
 第二に御質問申上げたいことは、生産から出荷、荷受、配給に至るまで、各般の事情が最近著しく異なつて参りまして、一応安定した段階に到達しているものと考えるのであります。この際、速かに市場法制の改革を断行いたしまして、自由取引に移行し得る体制を準備するの時期なりと確信するのでありますが、これに対する所見を伺いたいのであります。
 第三点は、自由取引に移行するには、当然或る程度の混乱が予想されるのでありますが、これに関しては予め万全の措置を講じまして、関係者に與える打撃を最小限度に食い止めるような施策がとられなければならないと考えるのであります。併しながら自由取引に移行すると申しましても、現行の統制を撤廃いたしましてただ單に戰前の自由な形に戻すということでは、水産業の民主的発展は期し得られないのであります。ここに新たな構想による水産物配給機構の必要が生じて来るゆえんであります。すでに一、二の大都市の中央市場には、過去の自由取引を謳歌する余り、例えば旧来の仲買入の復活を図り、一部ではすでにこれが実現現を見ている状態であります。これらの機構は、水産物配給過程の一つの分荷機構としての使命は別問題といたしまして、これが手数料商人として存在し、これに伴い中間経費を新たに生ずるということは考慮さるべき問題であります。尚、最近既存の荷受機関までが、その手数料を五分から八分、八分から一割へ増高せしめようと企てておるやに聞き及んでおりますが、これは以ての外のことでありまして、かかる傾向は中間経費を高め、結局生産者並びに消費者の利益に逆行するものであります。このように、統制撤廃後の水産物の配給制度の問題につきましては、真に生産、消費の両面から極めて民主的方法が望ましい次第でありまして、この点につきまして農林大臣は如何なる対策を考慮されておるか。お伺いする次第であります。
 最後に、経済安定本部長官に伺いたいと存じます。第一に、輸入資材に対する補給金の廃止によりまして、綿糸は三倍半、綿撚糸は二倍八分、綿網は二倍一分、マニラロープは二倍六分の値上りが予想されておりまして、この点からしますと、漁業経営費の膨脹は一倍半から二倍近くに達するものと考えられるのであります。これに加うるに陸上輸送費の八割暴騰は、更に漁業経営に重圧を加える結果となることは明らかであります。然るにこの経営費の騰貴に比例いたしまして魚の値段を追従させるということは、これは至難のことであり、地方、消費生活の面よりも、かかる魚価の騰貴は国民の最低生活も更に圧縮することも十分に予想されるのであります。漁業の経営費と、魚価と、消費生活と、この三者の調整について如何なる考慮が拂われておるか。我が国の漁業乃至漁村の興隆浮沈に関する重大な問題なりと考えますので、率直なる所見を承わりたいのであります。
 第二の問題は、先に農林大臣への質問の中でも申述べましたように、現在の魚類統制は遠からずこれは撤廃されることは一般国民の常識となつておりますが、統制撤廃の曉に、その撤廃に伴ういろいろな障害があると思うのであります。その一つといたしまして、従来、統制業務に従事いたしました多数の官公吏のはけ口をどうするのだというような問題、或いは既存の統制機関、例えば出荷機関、荷受機関、小売機関の整理方針を事前に確立いたしまして、無用の混乱と出血を極力回避すべきことは、これは申上げるまでもありませんが、巷に氾濫するこの失業群に、更に五万、七万というような多数の離職失業者を生ぜしめることは、これは重大なる社会問題として十分なる措置が講ぜられなければならないと信ずるのであります。以上に対しまする考慮と対策を承わりたいと思うのであります。
 以上三大臣に対し、明快なる御答弁をお願いいたす次第であります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(吉田茂君) 青山君にお答えをいたします。お話の通りに、日本の水産業は戰前においては非常な発達をして、太平洋、南極、北極にまで至る程の厖大なる区域にその漁獲をいたしておつたのが、戰後におきまして、マツカーサー・ラインの極く限られたところに縮小されたということは誠に遺憾なことでありまするが、併し仕合せにして総司令部においても、日本の漁区拡張については非常な同情を以てこの問題をつとに研究しておりまして、昨年の秋、漁区の相当太平洋方面において拡張されたことは御承知の通りであります。尚その他の方面についてもいろいろ研究を重ね、又交渉を重ねておるようでありまするが、この問題は総司令部において非常な熱意を以て、殊に係官において熱意を以てこの問題を取扱つておるということを御承知を願いたいと思います。又最近日本の漁船に関して、捕獲であるとか拿捕若しくは轟沈をされたものもあり、又いろいろな事件を起しております。マツカーサー・ラインの近くにおいて、漁区の範囲外に出たとか何とかいうような理由で以ていろいろな事件が起つておりまするが、その都度、海上保安庁からの報告も受けておりますし、又総司令部からの報告も受けております。これに対して、海上保安庁としては、持つておる汽船その他を以て監視には十分努力いたしておりまするが、今のところではその監視船の力というものは甚だ十分でないために、この力を補充するということも考えておりまするが、同時に総司令部においても、日本の漁船の保護若しくは拿捕された漁船の取返しとか、或いは抗議とか、その都度、十分なる力を盡して交渉なりその他の処置をとつておりますことを御承知を願いたいと思います。
 その他のことについては関係大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣森幸太郎君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。
 御説明になりました通り、日本の水産物の生産額は非常に向上して参つたのであります。併しまだまだ戰前の状態には、漁区等の関係よりして復帰することは容易なことではないのであります。この際この統制を撤廃したらどうだという御意見でありましたが、日本の食糧事情が、従来通りの食糧よりも更に一歩進んで合理的な食生活を行わしめなければならないという見地から、主要食糧、油、砂糖というものが統制を撤廃せずして配給制度になつておりますがごとくに、この漁類も蛋白給源として未だこれを自由放任する段階にまで至つておらないのであります。併しながら無用の統制を必要といたさないのでありまするこら、極く最小限度に大衆向きの魚類のみを統制をいたしておるのであります。併しながら漸次これらの大衆向きの魚類の生産が増高いたしますに従つて、統制も撤廃し得られると存ずるのでありますが、今、何月頃にその時期に到達するかということは明言でき得ないのであります。併しできるだけ早く統制を撤廃いたしたい、かように考えまするが、お話にもありました通り、この統制撤廃とそうして市場の問題であります。ただ無措置にこの統制を撤廃するということは、消費者と生産者との間に混乱を生ずることは想像されるのでありまするから、統制撤廃と相伴いまして、その事前措置といたしまして、市場法の適当な改正を行いまして、そうしていよいよ統制を撤廃いたしましても消費面に或いは販売面に混乱を来たさないと、こういうことをよく考えてその時期を定めたいと、かように考えておるわけであります。
 尚、生産の保護でありまするが、これは昨年八月十五日に、御承知の通りに漁船の操業区域に関する制限法令を出しまして、そうしてこの事件防遏の方法を考えたのでありまするが、尚、近く資源枯渇を防止する法案を制定いたしまして、この水産業の維持を考えたいと存じておるのであります。今総理からもお答えになりましたが、韓国の我が漁船の拿捕の問題でありまするが、これは昨年も再々起つた問題でありまして、非常にこのマツカーサー・ラインに対するはつきりした監視が行われないということでありますので、昨年八月十五日に政令を出しまして、八隻の監視船を出しまして、そうしてこのマツカーサー・ラインを確保すると共に、漁業者に対する国際條規或いは又この制約されておるところの範囲内の操業ということを誠実に守らしむるということによつて、連合国の我が水産業に対する信用を高めて行きますれば、漁区の拡張はおのずから許容されるということを考えまして、その処置に出ておるわけであります。今回の韓国の我が漁船拿捕の問題につきましては、政府といたしましては、司令部に対して適当な処置をとつて貰うように交渉をいたしておるようなわけでありまするから、この点は御了承を願いたいと存じます。
 以上簡單でありますがお答えいたします。(拍手)
   〔政府委員西村久之君登壇、拍手〕
#26
○政府委員(西村久之君) 青木長官が関係方面に出向いて不在のため、私から代つて青山議員の質問にお答え申上げます。
 頗る專門的な御意見も拜聽いたしまして啓発されるところが多いのでありまするが、青山君の第一の御質疑は、補給金撤廃による漁業資材の値上りから来る漁業者の御心配の点についてのお尋ねでございまするが、御意見の通りに、補給金を撤廃いたしまする結果は、漁業用の補給金の付いた資材につきましては値上りは生ずるのであります。併しながら漁業全体の経費の関係を考慮に入れますると、御心配になる程度に経費全体の増額は来たさないのであります。或る程度の値上りは、各当事者間の企業の合理化等によつて吸收し得られる見込を立てておるのであります。第二段のお尋ねの統制撤廃後における各種機関から出て来る失業者に対する対策如何というお尋ねのようでございまするが、これは御案内の通り、統制解除によりまして出まするところの業者は、皆專門家であられるのであります。自由経済に立戻りますれば、銘々お仕事を始められる方もありまするし、尚又各民間企業の間の雇用人として吸收せられる方々も多数あられますので、御心配になるような状態には立至らぬことを信じておるものでございます。
 簡單でございまするがお答え申上げます。(拍手)
#27
○議長(佐藤尚武君) 本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時五十九分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、故議員荒井八郎君に対する弔詞贈呈の件
 一、故議員荒井八郎君に対する追悼の辞
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 一、魚類配給統制並びに漁船拿捕に関する緊急質問
ソース: 国立国会図書館
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