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1949/01/30 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 本会議 第14号
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1949/01/30 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 本会議 第14号

#1
第007回国会 本会議 第14号
昭和二十五年一月三十日(月曜日)
   午前十時五十三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第十二号
  昭和二十五年一月三十日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第六日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件。一昨日に引続きこれより順次質疑を許します。小林勝馬君。
   〔小林勝馬君登壇、拍手〕
#4
○小林勝馬君 私は民主党を代表して、吉田内閣総理大臣の施政方針演説並びに一般政治問題について質問したい。
 自衛権の問題につきましては、本議場においてすでにしばしば論議が繰返され、総理は武力を伴わないでも自衛権があるということを言つておられるが、武力を伴わない自衛権の主張によつて我が国の安全保障が如何に維持されるかという点が非常に曖昧で甚だ疑問である。ただ單に自衛権を主張されても、その内容が空虚なものであつてはならないのであります。この意味においても総理は放棄せぬ自衛権の内容を二十世紀後半に処せんとする日本国民に明確に指示する必要がある。自衛権といつても、我が国においては武力を伴う自衛権はあり得ないのであるが、総理は自衛権主張の構想と範囲を如何に考えておられるか、具体的に伺いたい。それは警察国家を意味するのであるのか、駐屯軍の武力に依存するのであるのか、国際管理による武力援助に依存するのか、ただ單に外交交渉によるものであるのか、一定の内容を国民に示すことが必要であると思うが、この点について総理の明確なる御答弁を承わりたい。
 次に大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、ちよつとお断わりして置きますけれども、本日大蔵大臣が出席がないのは甚だ遺憾であります。私は、なまで大蔵大臣に質問をし御答弁をお願いしたいつもりであつたのでございますが、係官から十分伝達を頂きたいと思います。(「出席を要求しろ」と呼ぶ者あり)おらんのだ。大蔵大臣に次の数点を質問いたしたい。昭和二十四年度の本予算も補正予算も共に極端なデフレ予算であつたことは、我々の指摘したところであり、又一般世論も一致したところである。勿論インフレを防止するためには、一時は或る程度の極端な手段をとることに止むを得ぬことも認めるにやぶさかではないのであるが、この極端なデフレ予算を施行して、而も経済の基調を政府の従来唱えて来たデイス・インフレにするためには、金融政策でこれを補うのでなければならないことは分り切つている。然るに今日まで政府が金融政策としてなすところを見るに、盡く機宜を失したために、必要以上のデフレを招来している。大蔵大臣は頻りに楽観論を唱えておられるが、事実は争うことができない。即ち今日の金詰りの激化、不景気の深刻はどうであるか。今や政府の金融対策に対する不満の声は巷に、工場に、農村に充ち満ちているではないか。而も今回提出された昭和二十五年度の予算はどうであるか。これ又昨年来の経済情勢の変化を何ら顧慮することなく、ただ馬鹿の一つ覚えにドツジ・ラインを鵜呑みにした全くのデフレ予算であると言わなければならぬ。(「その通り」と呼ぶ者あり)若しこの予算をこのまま実施し、而も金融政策面で昨年のごとく無為無策、且つ盡く機宜を失するようなことであれば、生産の増加を期待し得ないのみならず、産業界は全面的に麻痺状態になり、中小企業は崩壊し、延いては金融界にも累を及ぼすの危險さえ感ぜられるのである。又單に問題は経済面、金融面に止まらず、社会的、政治的に見ても、世相の險悪化の結果は、或いは国際的過激分子の好餌となる虞れさえなしとしない。(「過激分子とは何だ」と呼ぶ者あり)そもそも今日の金詰りの根本原因は、前にも申述べました通り、二十四年度本予算及び補正予算が極端なデフレ予算であつたこと、次に復金の機能を突然停止し、而もこれに代るべき方途を講じなかつたこと、次に対米三百六十円ペースを基礎として合理化を強行する結果となつて、而もその後に起つたポンドの切下げに対して、適切な処置を講ぜず、且つ又二十五年度予算も必要以上、全く必要以上にデフレ予算であるために、経済界の前途に不安を抱く金融機関は、極度に警戒して、一般的に却つて金融を引締めていることである。次に国内有効需要の減退に加うるに、国際的経済情勢の急変、なかんずくポンドの切下げにより、輸出は予期のごとく増加せぬことなどにもあるように認められると同時に、又これに対して政府は全く無為無策であり、殊に見返資金、預金部資金、その他の吸上げ資金を急速に放出しなかつたためであると思うのである。
 よつて私は政府は昨年の誤まりを再び繰返すことなく、第一に、今後財政資金その他の吸上げ資金を財政的手段又は少くとも金融的手段により、急速に産業界に還元するため、あらゆる方途を講ずべきであると思う。第二に、借入を希望する者の受信能力を補うため、信用保証制度、又は保証貸付制度を拡張すべきであると思う。第三に、現下の国際情勢に鑑み、單に輸出振興のみに頼ることなく、国内の有効需要を喚起する方面へも大いに金融の疏通を図るべきである。尚又第四に、大蔵大臣はいろいろ強弁しておられるけれども、客観情勢の推移を見て、適当の機会に対外為替レートを再検討すべきであると思う。これらの点について大蔵大臣から重ねて明確なる御答弁を願いたい。
 更に大蔵大臣は、今日の我が国の状態はデフレではなく、デイス・インフレだと言つて、その理由として、物価、通貨その他の経済指標を挙げておられる。デフレとかでイス・インフレとかという問題は暫らく別といたしましても、一昨年末に比べて物価が三割以上も上つている昨年末の通貨量を、即ち日本銀行券の発行高を、一昨年の末とほぼ同額に抑えたということは、経済界の実情を無視したものであると思う。物価の上から見て、むしろ通貨量が甚だしく不足したために、一般の金詰りを一層激化する結果となつたのではないかと思うが、これに対する大蔵大臣の所見はどうであるか伺いたい。
 次に前にも述べたように、二十四年度予算においても、又二十五年度予算においても、財政面のデフレのしわを金融面に持つて来て、金融機関に責任を転嫁し、その負担を重くしたために、金融機関が預金の九〇%或いは銀行によつては一〇〇%以上も貸出しており、資産内容が著しく不健全化して来たこと、及びその結果は一見して海外投資家の不安を招き、延いては我が国に対する投資を躊躇するに至る虞れのあることは、先日我が党の鈴木議員からすでに指摘した通りでございますが、大蔵大臣は、国債、地方債、復金債等、優良な有価証券が不足しておるから貸出す外はないとか、又昭和元年から四、五年頃までは七〇%以上も貸出していたことを述べて、現在の貸出はむしろ常態であるというようなことを言つておられるが、海外投資家のことは暫らくおくといたしましても、政府は無記名預金を廃止するということを発表しておられる。若しその結果、昭和元年頃から四、五年頃に比べて著しく安定性預金の少い金融機関から、恐らく千億円にも及ぶと伝えられる無記名預金が、千円札の発行と相待つて、万一どしどし引出された場合、而も箪笥預金にでもなる場合があつたらどうするお考えであるのか。かかる事態が起きたら金融機関に担保の余裕が少いと言われておるこの際、非常に危險ではないかと思うが、どうであるのか。又無記名預金は飽くまで廃止するお考えであるのか。大蔵大臣の所見を伺いたい。
 更に一昨日木村議員からも質問がありましたが、政府は証券民主化を唱えて、あの未亡人や子供などにまで株式を買わせ、特に証券業者をして売出株を捌かせた。而も今日の証券市場は実に不振である。大蔵大臣自身、今日の証券市場の不振を認め、且つ遺憾であるとしておるではないか。証券市場が今日のように不振では、産業の必要とする長期資金の調達が極めて困難なことは大蔵大臣の言を待つまでもないところであるが、一般的に言つて、証券民主化を叫んで未亡人やその他の零細な投資家に株を買わせて損をさせた責任は一体どうするつもりであるのか。この点については何ら明確に答えられておらないが、是非明確に御答弁願いたい。これらの人々が單にこの際経済的に損失を蒙むつておるのみならず、かかる事態を惹起した結果は、将来の証券民主化のためにも重大なる影響があると思われるが、この点をどう考えておられるのか。政府は証券市場の不振に驚いて、昨年末以来二三の対策を講じたということは一昨日も説明されたが、その効果は全然ない。その後も引続いて下落しておる現状である。私は証券市場は政府の財政経済政策全般の反映であり、この場合は政府に対する不信任の表現であつて、ただ小手先の対策のみでは到底回復ができぬと思うが、大蔵大臣のいわゆる積極的対策とその効果の見通しについて、もう少し明確なる答弁をお願いいたしたい。
 次に農林大臣に質問いたしたい。
 聞くところによると、政府は農業政策審議会を設けたということでありますが、会議はすでに何回お開きになり、何を審議されたのか、又政府はこれに何を期待しておるかをお聞きいたしたい。農村は日本人口の五割有余を保有して、人口過剩に喘いでいる現状にあるにも拘わらず、農業対策は、過去一ケ年間の空白のまま、経済的にも技術的にも何らの援助が加えられず、むしろ戰時中同樣略奪政策そのままの政策が行われている。併し貿易の振興と共に、世界農業との競争の中に追込まれんとしている今日、政府は日本農業の世界的地位との関連について、今こそ日本農業の健全向上化を実践すべき時期に到達していることを悟らなければならない筈である。農村はすでに恐慌のどん底に足を踏み入れている。進歩もなく、希望もなく、旧態依然として、昔ながらに郷土を愛し、父も母も、お爺さんもお婆さんも、伜も娘も、一家盡くが営々として、この泥沼から立ち上らんとしてもがき喘いでいる現状である。首相、農相が全国各地に一たび足を踏み入れて見れば、その疲弊の真相が意外に深刻なることに驚くであろう。農村は時期的に政府の具体的な援助施策をこれ以上待ち切れない状態にある。政府が農政審議会に依存して、政策を審議することは誠に結構なことであるが、由来かかる審議会的存在は、時期的に必要としないときに結論が出るし、仮に結論を出しても、これが忠実な実行の行われたためしが非常に少い。私は、ここで、この農政審議会ばかりでなく、それぞれの施策を異にして設置されている幾多の審議会の政策面に対する効果を疑うものでありまして、政府はこれらの審議会を口実に責任の転嫁をしているのに外ならないと思うがどうであるか。(「その通り」と呼ぶ者あり)政府は具体的に何をすれば農業の振興をなし得るかくらいは知つている筈だ。(「知らないのだ」「分らないのだ」と呼ぶ者あり)土地改良、暗渠排水、適地適作、農村工業化のために、更に多額の財政的援助と金融の円滑化、技術の導入を期すべきであつて、今更研究を要すものではないのであります。要は急速にこれらの問題を実現化することにある。更に本二十五年度の予算内容を見ても、農村に対する政府のかかる観点からする具体的な施策は殆んどないと言つてよい。若し政府にして真劍に農村の実情を考うるならば、この予算にこれを指示すべきではないのか。口で言うことと実現とは別であるというのならいざ知らず、一つの審議会程度で農村問題が解決の緒についたと考えるのは大きな間違いではあるまいか。要は全農民の熱烈なる叫びを急速に具体化することにあると信ずるものであるが、以上現下の農業対策に対する農相の真意を承わりたい。
 次に海運問題について伺いたい。
 総理は施政演説において、船舶の増加に伴う可及的自国船による通商の改善に努力していると述べておられるが、航洋船の充実と商業的ベースによる外航配船実現の促進は、誠に我が国海運界の喫緊の要務であると信ずるものである。我が国の現有航洋船は微々たるもので、又外航配船の実現も曙光を見ていない現状であるけれども、航洋船の充実は財政上の重要施策であり、外航配船はすでに西ドイツにおいて先例があると共に、民間貿易上不可欠の要件として、共に政府は積極的に努力中であると思うが、海運界の混迷を一掃するために、航洋船隊の充実促進措置の詳細並びに海外配船に関する交渉の状況、将来の見通し如何を承わりたい。
 次に船舶公団廃止後の措置と海事金融制度の確立についてであります。海運企業が資本蓄積皆無の現状であり、又復金融資が停止され、船舶公団も又廃止の運命にある今日、海運界は何らの優先的融資の方途をも持つておらない。新造船並びに改造船に関する見返資金の融資は二十五年度も続行せられるものと思いますが、長期多額の低利資金を要する海運界のために特殊金融機関の設置を至急実現して助成の途を開くことが必要であると思う。船舶公団廃止後の措置に対する方針と共に、本件に関する政府の企図を承わりたい。
 更に船舶運営会廃止後における商船管理委員会について承わりたい。政府は商船管理委員会を設置して、五千重量トン以上の船舶を外航船として管理運航させる方針と聞くが、外航配船が嚴重に制約されておる現状より見て、不明確な五千トンという線を以て内外航路を区別し、五千トン以下の船舶を一挙に完全自営に移行させることは、徒らに海運の混乱を激増し、尚又長期指示待船による船腹過剩並びに多数の船員の失業対策をどう考えておられるのか。このように「商業的ベースによる配船」という根本を「配船による商業ベース」という逆理に立つがごときことは、海運界の混乱と危機を徒らに巻き起すもので、これに対し如何なる措置をとられんとするのか。若し本件に対する措置を誤まらんか、荷物の奪い合い、運賃のダンピング、中小船主の破綻、労働不安等、一連の深刻なる危機を生ずる虞れなしとしない。船舶運営会制度を如何に規正し、又これに関連して、船腹調整対策実施の意向について、政府の方針を明らかに承わりたい。
 次に厚生関係諸問題について質問いたしたい。
 先ず第一に、極く近き将来制定を見るべく準備中であるところの社会保障制度の問題であるが、本制度は民主国家としての重要な施策の一つであることは言を待たざるところである。政府はこの制度の制定に当つて、勧告によりただ申訳的に審議会を作つたのみで一時逃れをしているのではないかと疑わざるを得ないのであります。その理由として、本制度の運用に欠くことのできぬ昭和二十五年度の予算が、一切の費用を合算しても僅かに四百六十三万円余であるのを見ても肯けると思う。この僅かな経費を以て何を期待しておられるのか見当が付かない。この審議会こそは、社会不安を除去し、失業問題を解決して、国家の再建を図らんとする社会保障制度制定の唯一の審議会でなければならないと信ずるものであります。国民健康保險税法においても医療費給付に対し何らの国庫補助がないのは、社会保障制度の前途を暗くするものであると思う。更に本年四月から実施せんとする健康保險、厚生年金保險、船員保險、失業保險を総合して、大蔵省が目的税として徴收せんとするところの社会保險税にしても、何ら国庫補助の裏付けがないが、掛け声ばかりでは社会保障制度の意義ある制定は覚つかないと思う。これに対する所信を承わりたい。
 次に、街頭兒対策等について承わりたい。最近金詰りによる社会不安と、更に生活苦のための一家心中等の不祥事が続出しており、港には悪の巣とさえ言われている浮浪兒が氾濫している現状である。政府はこれらと、更に未亡人、身体障害者、生活困窮者、青少年補導対策に対しても僅かの予算を以てこれを糊塗している実情で、何ら根本的な施策を施していないことは只今も申述べました通りであります。殊に年若い彼らこそ我が日本の次の時代を背負つて立つべき大切な第二の国民であることを考えるとき、私共は国民の一人として、何とかしてこれを善導し、強力な対策を樹てねば、国家の前途に重大なる暗影をもたらすものと思う。これらに対しても政府はあらゆる努力を拂い、見返資金その他で救援の手を伸ばすべきであると思うが、これに対する政府の所信を承わりたい。
 このように、厚生事業を初めその他重要なる施策に対する政府の認識不足の事例は枚挙に遑がないのである。例えば先年、非衛生的、非科学的だと指摘された、あんま、はり、灸の問題を見ても明らかである。全国十万を算するところの業者が生活していることは、即ち国民自体がその必要性を認めている証左に外ならない。業者はあの危機以来、学術の研究とそうして素質の向上並びに治療室の完備等に、この金詰りの激しい今日営々として努力しているに拘われず、これを究明研究して指導すべき立場にある政府が未だ一銭の研究費すら用意せず、放任している実情は誠に遺憾である。社会的に認められ、国民保健の一翼を担当しているこれら業者に対し、政府は従来如何なる方途を講じて来たか。尚又、将来積極的な指導育成を強硬に推し進めるべきであると思うが、如何なるお考えであるか。以上の諸点について関係各大臣から明確なる御答弁を願いたい。
 最後に、私は質問の詳細を省略いたしますが、一昨日総理は衆議院において、講和問題についてなかなか派手な御答弁を願つたようでございますが、参議院におきましてもその構想を承われば甚だ幸いと存じます。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#5
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。
 安全保障、自衛権についてはしばしばお尋ねを受けますが、この質問の根柢と申しますか、しばしば質問を受けるゆえんは、けだし、これは私の想豫でありますが、軍備を持たない安全保障があるか、安全保障の基礎は軍備によるべきであるというようなお考えもあつて、しばしば質問を受けるのではないか、自衛権の問題も又然りと思います。併しこれはよくお考えを願いたいと思いますことは、果して軍備を持つておる国が安全な保障をせられるか、軍備によつて国の安全が保障せられるか、これは過去の歴史において甚だ明瞭であると私は思うのでありますが、軍備の競争が始まつて列国が競うて軍備を持つということが、やがてその国の安全を阻害し危うくする、或いは国際の間を危うくする、国際の平和を危うくするということは、これは歴史が証明して甚だ明瞭であると思うのであります。ここにおいてか、過去におきましても軍備の制限とかいうような問題が常に取上げられて、而も国の、国際の平和は保たれなかつたのであります。軍備競争の拡張の結果は遂に戰争に立至つたのであつて、国に武力があれば国の阿全は保障される、或いは国の自衛権は全うし得るということは、これは古い考えであつて、今日においてはその誤まれることを過去の戰争においてはこれは十分証明されておる歴史上の事実と考えます。(拍手)故に私は日本の国の安全保障に何にあるか。私の施政演説の中に述べて置きました通り、民主政治に徹底すること、戰争放棄の主義に徹底すること、これが先ず中核をなすものである。又安全保障の中核をなすものである。又その精神が列国に認められることによつて互いに国際間において信頼が生ずる。この日本国は民主政治の徹底した民主政治国である、又列国に先立つて軍備を放棄した、戰争を放棄したこの国は、以て互いに世界の平和を談ずるに足るものである、或いは世界の繁栄を増進する問題について安んじて語り得るものであるという信頼ができて、ここに日本の安全が保障せらるるのである。(拍手)軍備により、或いは戰争を考えに置いて、みずから護る、武力で以て護るという考えをどこか心の奧に持つておるならば、これはみずから日本の国の安全をむしろ阻害するものであつて、よろしく国際関係に重きを置いて、国際間の信頼を得て、その信頼によつてみずから護る、これが一番安全な安全保障なりと私は確信いたすわけであります。(拍手)自衛権においても又然りであります。日本の国を護る自衛権の……すでに独立を回復した以上は、如何なる国と雖も自衛権のあることは明らかであります。講和成つて日本が自衛権を回復する、独立を回復する、自然自衛権は回復さるるのであります。然らば武力なき自衛権は如何にということは先程説明いたした通りでありますが、更にその内容は如何というお尋ねを受けるのでありますが、これもしばしば私が申す通り、自衛権が発動しなければならない状態如何によつて、自衛権の発動の形が定まるものであつて、自衛権の内容が定まるものであつて、その前提たる自衛権を発動しなければならない状態がここに現存せざる限りは、自衛権の内容はこうこうかくかくということを申すことはできないのであるということは、しばしば私が説明いたした通りであります。
 次に海運の関係についてお尋ねがありましたが、日本の海運は、日本の今日の船舶は、この戰争状態が継続しておる限り、即ち講和條約ができない限り、外国に一歩も出ることができない筈であります。故に日本の海運を再び隆盛ならしむる第一としては、国際講和が成立する、外国との間に平和関係が確立せられる、戰争状態が終了する、これが第一歩であろうと思います。今日然らば海運問題はないかと申せば、大いにあるのであります。講和ができて日本の独立が回復された後に日本の種船が世界の海の上に雄飛するためには、今日は最も大切な準備期間であると思うのであります。故に私は日本の船舶が外洋に出て立派に海運の役に立つという、立派な船舶を持つ、外洋船舶を持つということが第一であります。そのためには従来の古い船は壊して新造船を造るということに国家が思いをいたすべきであると考えて、政府もその方針で建設政策をいたしておるのであります。
 その他の問題については主管大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣森幸太郎君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(森幸太郎君) 小林議員にお答えいたします。
 農業審議会についてお尋ねでありましたが、これは各省設置法に基く審議会ではありません。昨年の十二月以来、全国の篤農家或いは農業の各方面における権威者等を集めまして、おのおの專門的な意見を聽取いたしまして、農業政策確立の参考に資すべく、この諮問的な委員会を設けたわけであります。尚、農業政策について貧弱であるというお話でありますが、現段階における農業政策は伊先の首相の施政方針の中に包含されておることを御承知と存ずるのであります。尚、具体的の面につきましては、正に提出いたしております明年度の予算の内容について御検討下されば、決して無為無策で今日の農業政策を打切ろうといたしておるのじやないことを御承知下さることと存じます。(拍手)
   〔国務大臣大屋晋三君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(大屋晋三君) 小林君にお答えいたします。
 我が国の船舶、海運に関しまする大方針につきましては、只今総理から御答弁申上げた通りでありまするが、その具体的の点につきましては、我が国の現在の海運の構成は戰後非常に脆弱に相成つております。御指順のように、外航適格船が非常に少いという意味合におきまして、後日自由にコンマーシヤル・ベーシスで我が国の船が外航に回り出し得られまする準備を只今営々としていたしておるわけであります。それは昨年度から本年度にかけまして、二十四年度、いわゆる第五次体造船計画におきまして、四十六隻約三十万総トンの新造船を企画いたして一部着手いたしております。又大型戰時標準船を二十九隻十九万七千トンの改造を行うということを決定いたしまして、これも一部着手をいたしておるような次第でございます。これにつきましては、御承知の通り新造には見返資金を五〇%、改造には七〇%を貸與いたしておるような次第でございます。かようにいちしました場合におきまして、我が国の外洋適格船は、現在は実に微々たるもので、十八隻十万二千トンしかございませんが、三月末日になりまするというと、四隻殖えまして二十二隻十一万六千トン、寅にこれが昭和二十六年の三月末日になりまするというと、隻数も大変増加いたしまして、百三十二隻八十六万七千トンに外洋適格船が殖えるという状況でございます。
 次に小林君の御質問の海事金融制度の問題でございまするが、これは非常に必要なことでございますので、一に今後の国際海運の動向と又我が国一般財政金融政策とを睨み合わせまして、若し必要がございますならば、海事金融制度に関する何らかのコンクリートのものを作ろうかというので、今後えて研究をいたしておりまするが、差当りましては、只今も申上げました通り、見返資金の活用によりまして船舶の新造或いは改造をいたす方針をとつておる次第でございます。
 更に今後の御質問は、船舶運営会廃止後における船舶の調整の問題はどうかというお尋ねでございまするが、船舶運営会を廃止いたしまして商船管理委員会を作るつもりにいたしておるのであります。そういたしますというと、我が国の現在の船舶の運営の方式に少し変化が起るのであります。即ちどういう変化が起るかと申しまするというと、かようにいたした場合に、民間業者の自営に移ることに予定をしておりまする船舶に、或るボリユームの船腹の過剰を来たすということが起る。従いまして我が国の海運業者が採算上に非常に困難を生ずるという場合が起りますので、目下、この点に関する調査に関しましては、関係方面とも折衝を続けて、或る方策を発見すべく今努力しておる最中であります。御承知のようにその根本的の考え方といたしましては、只今総理からもお述べになりましたが、過剰船腹の根本的な調査方法は、海外配船に向かない不良なもの或いは老朽な船腹は、これを繋船をいたすというような方式、或いは解体をいたすというような方式その他いろいろな考え方ができますが、かような根本方式のいずれを採用したらいいかということを目下研究中でございますので、追つてそれを発表いたすつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣林讓治君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(林讓治君) 小林議員にお答えいたします。
 国民生活の窮乏を除去し社会福祉の増進をいたすということが、社会不安を防止する上においての非常な重大なる問題になるわけでありますが、社会保障制度につきましては、先般も申上げました通りに、政府といたしましては早急にこれが整備をいたすように研究をいたしております。他日遠からず何分の答申があることと考えまして、厚生省は厚生省といたしまして、それに互いに併行いたしまして、そうして実現をし得られるように目下努力をいたしております。御指摘になりました調査費も、昨年度は極めて少かつたようでありますけれども、来年度におきましては約三千万円ばかりに増額をいたして、この調査に万全を期するつもりでおるわけであります。
 更に社会不安の除去についての御指摘でありますが、誠に御尤もの点でありますが、幸いに周囲からの御支援もあり、又大蔵当局からも相当の了解を得まして、明年度公共事業費などというものは二十四年度に比較いたしまして約三倍ぐらいの金額を予算に計上いたしておるわけであります。その内容につきましては予算総会などにおいて申上げる機会があろうかと考えますが、それらの経費に基きまして全体に亙つての不安を除去する方法を講じたいと考えておりますので、本日のところはこれを以て御了承をお願いいたしたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(佐藤尚武君) 岡元義人君。
   〔岡元義人君登壇、拍手〕
#10
○岡元義人君 私は緑風会を代表して、これより政府当局に数項の点について御質問をいたしたいと思うのであります。尚、数多くの質問がなされた後でありますので、私は具体的問題についてのみお伺いいたしたいと思うのであります。尚、大蔵大臣が御出席になつておりませんが、後刻必ず答弁して頂くということでございますので、これを了承いたしまして質問いたしたいと思います。
 先ず吉田首相にお尋ねいたしますが、講和会議の問題に関しましては、過般来大体の構想について首相が明らかにされたところでありますが、その具体的内容におきましては全く漠として掴み得ないのであります。併し先日の和田議員に対するお答え等を斟酌いたしまするに、極東における中国の不安定なる状況等から、対日講和が急がれるというような場合におきましては、首相の言われる通り全面講和の期待は誠に薄いと考えなければならないのであります。首相もしばしば言明せられましたように、單独講和も又止むを得ないとする決意があるかのように窺われるのであります。併しながら御承知のごとく六百五十万引揚者の過半数が朝鮮、樺太、中国閣係の者であり、これらの引揚者達は誠に悲惨極まる強制移住を余儀なくされた者であります。あらゆる問題を歴代首相並びに外相が本議場におきまして答弁されました通り、これらの在外財産等につきましては、政府が講和会議を一つの口実として未解決のまま今日に至つておるのであります。かかる物的、精神的損害もさることながら、今尚、極寒シベリアの地には、特に北極圈内のウオルクタ、ナリンスク、ヘンガンジヤその他の地区等においては、零下七十度の寒気と、いつの日か日本に帰れるという唯一の希望に、生き抜くための苦しい鬪いが続けられておるのであります。これらの相当数を含めて、而も尚死亡さえも確認でき得ない三十七万六千余りの残留同胞と、十万に近いと言われております中共治下に働かされておる同胞の処置に関して、どのような処置がとられんとしておるのか、明らかにして頂きたいと思うのであります。この問題はひとり未だ帰らざる留守家族のみならず、全国民の憂慮おく能わざるところでありまして、従来しばしば本議場においても、單独講和も又止むを得ないというような場合を明らかにせられた首相は、これらの一切を犠牲にして、その犠牲の上に單独講和も又止むを得ないと言われているのか。或いはこれらの一切を講和会議前に解決を付けようとしておられるのか。或いはこの問題は、不幸にして單独講和になつても何らかの方法によつて杞憂なく解決できるという自信を首相はお持ちになつておられるのか。この際国民の前に率直に披瀝されんことを切望するものであります。六百五十万引揚者の在外財産といい、留守家族並びに二百万遣家族の心情を思うとき、万一これらを見殺しにするような犠牲の上に立つて講和会議が迎えられるとするならば、自由と平和を希求して高度の文化国家を目指す日本の将来に、民族的にも分裂の素因を作り、国家百年の大計を誤まる禍根を残すことを心より憂えるものであります。
 次に講和会議の内容についても、特に賠償物件等に対しては相当寛大な処置が講ぜられんとしておることを仄聞いたしておるのでありますが、講和会議の見通しと共に、海外に残して来ました財産につきましては、国民ひとしく重大なる関心を持つていることは、政府と雖も十分御理解されておられるところと思うのであります。勿論国際観念からいたしましても、私有財産は十分尊重されなければならないものであり、第一次欧洲大戰におきましても、ヴエルサイユ條約に従い、ドイツは在外私有財産を賠償に繰入れられ、ドイツ政府は旧所有者に対して損害補償の義務を規定したのであります。又今回イタリア平和條約におきましても、ソ連勢力圏内の私有財産はソ連への賠償に充てられ、イタリアは旧所有者に補償し、連合国治下にある私有財産は清算された上、連合国側の対伊請求権を満たすに充てられ、清算代金に余剰が出た場合にはイタリアに返還されることになり、財産を取上げられた旧所有者であつて余剰代金の返還を受れなかつた者に対しては、イタリア政府が補償することになつたのであります。そこで私は政府に対して、満州、北鮮、樺太地区におけるところの在外資産はソ連が戰利品と称していると言われておりますが、これは賠償とは別に考えておられるのか。又現在の客観情勢より判断いたしまして、日本の在外資産は不返還と考えるべきでありますが、先にも述べました通り、今後日本国内における賠償取立が緩和される場合におきましては、基本的人権が平等に尊重されるゆえんからも、又それでなくてさえも非惨極まる運命に飜弄されている引揚者達は、余りにも過重な犠牲を負担することになり、戰争犠牲の公平な負担という立前から申しましても、政府として何らかの調節的処置が講ぜらるべきであり、その意図ありや否やをこの際明らかにして頂くと共に、政府は現在の段階におきまして、これらの基本的調査を完了しておられるのか。先日国会法第百四條に従いまして、本院議長名を以てその資料提出を大蔵省にお願いしたのでありますが、提出を拒否されたままとなつておるのであります。今回併せて何事でも国会に提出し、国民の前に明らかにされる準備が完了しておるかを明確にして頂きたいと思うのであります。勿論この問題に関しましては、大蔵大臣からもお答えを願いたいと思います。
 次にシベリア地区の引揚者は、昨年に引続き連合軍の絶大なる御理解と御援助によりまして、冬季中にも拘わらず高砂丸の入港を見るに至り、又更に二月六日には再び高砂丸が二千八百名をナホトカに迎えに行くことになつておるのでありますが、尚その後の移動状況から判断いたしまして、引続き配船の指令も又近きを思わせており、一方、南方地区よりの戰犯受刑者等の内地における服役が実現いたしましたことは、国民と共に総司令部の絶大なる御理解と温情に対し深く感謝申上げる次第であります。更に本問題に関しましては、政府におかれましても格段の努力をいたされましたことにつきまして、率直に敬意を表するものであります。併しながら遺憾に思いますのは、シベリア地区にやける同胞の捕虜取扱に関し、一九二九年七月二十七日ジユネーヴの国際條約をも無視され、帰心失のごとき心理状態にある抑留同胞の弱点を利用して政治教育が強要せられておることは、たびたびの本院在外引揚特別委員会における証言等によつて判断できるのでありますが、而も数多くの証言によつて、血に分け合つた同胞が殊更に共産主義を信奉せざるの故を以て反動分子の烙印を押され、故意に帰還を遷延せしむるの挙に出でたばかりでなく、更に強制的労働に服せしめたごときは誠に了解に苦しむところであります。これがため本人の精神的打撃は勿論のこと、国民に與えた衝撃は甚大なるものがあるのであります。又帰還者のうち、いわゆる民主グループの人達は、反動分子を評して、大衆の上にあぐらをかいて来たと国会においても申されたのでありますが、抑留中この思想教育の絶対的指導権を握つていた日本新聞の曾ての幹部達は、これらの多くの犠牲の上に悠々とあぐらをかいて帰つて来ておるのであります。又残留邦人の間に、吉村隊事件として伝えられておるものの外に、いわゆる民主化運動の行き過ぎによる事件といたしまして、昭和二十三年七月、チタ地区第五十二収容所ハハトイ分所中島利三郎氏は、民主委員長今安平、外十数名によつて胴上げに会い、死に至らしめられておる外、二十三年五月八日帰還船信濃丸より海中に身を投じた杉田元兵長もカンパの犠牲と言われておるのであります。その他幾多の事件が惹起されておりますが、胴上げ、吊し上げは彼らの常套手段であります。昨年度帰還者の指導者達がとつた行動と共に、今回のコミンフオルム批判によつても明らかなる通り、まさしく暴力革命の前奏曲を思わしめるごとき事態とを考え合せて、如何に問題が外地において行われたといたしましても、このままに放置するがごときことあれば、かかる行為は合法的手段として、いつの日か再び繰返されることは明らかでありまして、我々は日本の歴史の中に生きており、又歴史を作り上げて行かねばならないのでありますが、同時に子孫によつて継続せられねばならない以上、飽くまでも是は是、非は非としてこれを質し、再びかかる誤まりを犯さざるよう努力せねばならないのでありまして、私は政府が軍法会議の制度を廃止され、その業務の引継ぎの指令及び政令第三百号等によつて、嚴然たる態度と決意を以て断乎たる処置を強調するものであります。首相の決意と法務総裁の見解をお伺いいたす次第であります。
 次に、今や引揚の解決は大きな転機に到達しておると考えるのであります。過日の対日理事会におけるシーボルト議長の発言の中にも、説明の付かない数三十七万六千九百二十九名と言われておる通り、国民としても重大なる覚悟を必要とするものでありまして、政府は今こそ、ソ連、中共地区のみが他地区よりすでに二年を経過しておるにも拘わらず、未だに帰還の完了を見ず、而もソ連側から詳細な公式通報にも接しないのであります。このままの状態に放置される場合は、状況不明のままに打捨てられる人々も相当出て来る虜れが多分にあると思わねばならないのであります。今こそ政府は敢然として、勇気を持つて、何故かくも引揚が遅れ、又何故死亡の詳細をも通報されないのか、その目的のあるところを究明して、これに対応する万全の措置を速かに樹立されることによつて、政府は最後の一人と雖も無事帰還するまで全力を傾注されねばならないと考えるのであります。日本共産党の神山君は衆議院において、引揚数字は反ソ反共宣伝のためのでつち上げだと発言されたようでありまするが、故意に死亡詳報を出さず、今尚遅々として引揚を遅られておること自体が、アメリカに対する日本国民の不信の念を抱かしめんとする意図あることは、容易に想像できるところであります。又数字についても、すでにタス通信の伝えるところの数字は明らかに根拠を失つておることが、本院在外引揚特別委員会の調査によつても明らかとなつており、一体、物を受取つておりながら領收書を出さない現状においては、共産党の諸君は数字を云々する根拠は毫もない筈で(「その通りだ」と呼ぶ者あり)政府は、多くの受刑者として処置を受け、そうして現地で釈放された人達が、故意に日本に帰されず、シベリアの野にすべて放りつぱなしにされており、帰国もかなわず、労働力補填の犠牲となつておる事実を十分に検討されて、それに対処する方法を講じて留守家族の憂慮に応えねばならないのでありまするが、この際、速かに相当予算を計上し、一齊に国内的に周到な調査を行う意図を持つておられるのか、又最後の一人まで調査を完遂する決意を持つておられるのか、明らかにして頂きたいと思うのであります。
 次に、曽て国のお召しによりまして歓呼の声に送られた人達が、空しく遺骨となつて日本の港に帰つて来られても、これを抱いて呉れる家族の人々にめぐり会えず、未だに交付先不明の遺骨が相当数に上つております。これらの浮ばれぬ霊に対しまして、国民は勿論のこと、政府又一掬の涙あつて然るべきであり、これらの霊を慰めるために無緑塔のごときものを建立する意図ありや、伺いたいのであります。
 次には大蔵大臣にお伺いいたしますが、大臣はよく、民生は安定していると言明されておられます。かかる言動は、全国一千万を超える戰争犠牲者等がどのような悲惨な生活に苦しんでおるか、御承知ない模様であります。戰争の犠牲を過重に負担しておるこれらの犠牲者のうち住むに家なく、寺院、学校、橋梁の下や穴居生活をしておる者は優に二十四万を超えておるのであります。而も何ら組織的運動さえできないこれらの人々の中でも、か弱き未亡人等は多くの子供を抱えて生活を支えて行かねばならず、支もこれらの人々は職業軍人でないところの応召により国犠牲となつた人々の家族が数多く含まていおるのであります。税金等につきましても、その控除額においても調整されることなく、却つて過重に負担せしめられておる現状であります。この際速かにこの矛盾を是正すると共に、国として同情ある処置を考慮される意向を持つておられるか、伺いたいのであります。これらの人々は何らの抗議を申込む力さえなく、最近の社会現象として一家心中その他の事件に徴しても明らかなるごとく、僅かに死を以て抗議に代えているのであります。
 次にシベリアその他の地区におきまして、すでに四年に余る長年月を労役に服して帰還して来る人々に対しまして、退職手当の支給を考える旨承わつたこともあるのでありますが、又片山内閣以来、歴代労働大臣は、帰還者が上陸と同時に給與を断たれ、失職者となるについては、失業保險の適用を考慮したい旨、本議場において述べて来られたところでありますが、併しながらその都度予算的処置の困難を理由に遂に今日に当るまで実現を見ずに参りましたことは、労働省自体も認めておられるところであります。然るに了解に苦しむことは、第六国会におきまして提出せられました補正予算の中で、引揚費に余剩を生じたところの十億円を他に転用せられた事実に関し、援護の万全を果しておられるならともかくも、真に帰還元とその家族の身上をお考えになつておられるのか疑わざるを得ないのでありまして、如何なる理由の下にこの十億円が転用されたのか、而も冬季中と雖も連合軍の好意によつて高砂丸の入港を見、又更に二月八日には二千五百名を乘せて高砂丸が入つて来るわけでありますが、逐次帰還実現が考えられておりますときには失業保險、退職手当等を棚上げにしてかような処置をされたかを明らかにされると共に、今後失業保險の適用はどのようにされるのかお伺いしたいのであります。
 次に未復員者給與法による本人の給與は今回三百円に増額されましたが、この給與は本人が帰つて来たとき支給されるようになつておりますけれども、旧海軍関係のみは留守家族に毎月支給され、陸軍関係のみに支給されていないということは誠に了解ができないのであります。飽くまでも法は一本であり、公平な取扱があつて然るべきかと考えるのであります。又運用の面におきましても政令により解決が付く問題でありますが、直ちに実現される意図をお持ちか、この際明らかにして頂きたいと思うのであります。
 次に在外公館借入金につきましては本年三月までに申告を完了するよう告示されましたが、この金は、言うまでもなく終戰後政府出先機関が最も非常の用に役立たせるため苦しい中から醵出させたものでありまして、政府も又一刻も早く返済する道義的観念あつて然るべきにも拘わらず、二十五年度予計に計上されていないということは如何なる理由でありますか。又政府は現在この問題に関し今後支拂方法及び時期等を如何に考えておられるのか、お答え願いたいのであります。
 次に厚生大臣にお伺いいたしますが、最近よく、社会保障制度の確立によつて民生の安定という言葉を政府は使つておられるようであります。併しながら社会保障制度なるものは現在の日本には未で何ら具体的には存在していないのでありまして、政府が「てい」のいい煙幕として使われているということは誠に遺憾至極であります。現在の日本の社会事情は、戰争の犠牲による犠牲者が余りにも多く、而も生活は極度に窮しているのであります。勿論これらの対策として生活保護法がありますが、これは單なる生活の困窮に陥つた者を持つて初めて起用される消極的現象のみに辛うじて役立つているのでありまして、現在の社会現象は戰争という一つの事態によつて生活面に大きな打撃を蒙むつておるのであり、その犠牲の幾分でも補うことができますならば、再起更生できる人が大多数なのであります。故に政府は生活保護法のごときものを以て足りるというような消極的姑息な手段を改めて、保護法の対象者とならざる前に救護する途を真劍に考える必要があると存ずるのでありますが、大臣の所信を明らかにして頂きたいと思うのであります。
 次に遣族補償のごときも、一般邦人が間違えられて強制收容され而も労役中死亡せる者等は、当然二十年十一月二十四日のAG二六〇のスキヤツピンの趣旨とはその性質を異にしていることは明白であります。又終戰後における強制労働による数多くの死亡者等に対しても、同様にその趣旨はおのずから異なつているのでありますが、これらの遺族に対しては当然補償の途が講ゼられて然るべきであり、この点に関し政府の見解を明らかにして頂くと共に、一般遺家族及び未亡人等に対する今後の福祉対策についても構想を明らかにして頂きたいのであります。
 次に帰還者等の支給品については、旧軍人の軍靴、軍服等を與えて、如何にも復員者のレツテルを貼つて満足しておるかのごとき感を抱かしめておるのでありますが、かかる残飯給與は、終戰五年目を迎える今日、真に政府の親心ある処置とは肯定できないものであり、この際このような残品は速かに処分し、その予算において帰還者がどこでも歩けるような服裝を整えてやるという処置を切望するものであり、改善の意図があるか伺いたいのであります。
 次に最近に至りまして引揚業務の縮小に伴い、佐世保、函館と援護局が閑散となつて参りましたが、これら援護局関係の従業職員等は、その目的とするところが特殊なる業務であり、特に復員局のごときは、いずれの日か整理がなされるものと考えられるのでありまして、中央はもとより地方世話課に至るまで、默々としてその任務を果して今日に至つておられるのでありますが、政府はこれらの人達の任務の困難さを十分理解して、荀くも將来に不安の念なからしめるための責任ある処置を考慮せられんことを強く要望いたすものでありますが、この点、大臣の所信を伺つて置きたいと思うのであります。
 次に建設大臣に伺いますが、二十五年度住宅対策として五十億円の住宅金融公庫設立の趣旨が明らかにせられました。先程も述べました通り、引揚者等の住宅問題は誠に深刻なるものがあるのでありまして、二十四万に余る寺院、学校、橋の下或は穴居生活等の者に対して優先考慮される意図があるのか。又引揚者等に対しましては本院に多数の請願が提出採択されておりますけれども、特別枠を考慮される用意があるのか。又住宅金融組合等の処置を強化される意図があるか、明らかにして頂きと共に、公庫の運営については、地方にあつては一般銀行とありますが、国民金融公庫、信用組合、無盡会社、殖産無盡等にも取扱をせしめる意向を持つておられるのか、この辺も併せてお答えが願いたいと思うのであります。これは大蔵大臣からも共にお答えが願いたいと思うのでありますが、見返資金の一百億円はどのような方法で建築資金に廻されるのか、この際明らかにして頂きたいのであります。
 以上で私の質問を終りますが、最後に、只今申述べました問題は、全国戰争犠牲者の切実なる関心事であり、又必死の叫びであることをば政府当局は十分に銘記せられまして、誠意と親切を以てお答えあらんことを心より願う次第であります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。海外に今尚残留しておる諸氏の状態については、政府も終戰以来常に非常に憂慮と何心を持つて極力その帰還の完了に努力たいしておるのでありまするが、不幸にしてお示しの通りソ連には、尚不明の数ではありますが、相当残争留しておる、これに対して如何なる処置をしておるかというお尋ねでありますが、この海外捕虜の問題又引揚げるという問題は、これは講和條約の如何に拘わらずポツダム宣言において声明せられておるところであつて、当該の国家の義務に属する事項であります。日本との間の講和條約によるのではなくて、ポツダムの声明において明記せられるところであり、又これを日本に送り返すということは関係国の国際的業務であるのでありまして、これは講和條約と何らの関係はないのであります。従つて残留者の犠牲において單独講和云々ということは、これはお取消し願いたいと思います。全然関係はない、講和條約の形式とは関係はないことであつて、その講和條約が存在する如何に拘わらず、ポツダム声明において関係国の義務となつておるところでありますから、我々としてはその遂行を求めざるを得ず、又遂行するため総司令部が極力盡力いたしておるのであります。又残留者の状態如何、どうなつておるかという調査があるか。これは日々始終調査いたしております。例えば帰還を了した人について、或いは残留者の家族についてとか、各種の方法を以て正確なる数を確かめんとして、政府も総司令部も常に非常な注意を以てこの調査に当つております。又これに対して国勢調査をしてはどうかというお話がありますが、果して国勢調査がその目的を達するかどうか多少疑いを私においては持ちますが、各府県において相当額の予算を以て、国庫から相当額の費用を各県に配付してその調査を依頼しておりますというような方法で、その調査については決して怠つておるわけではないのであります。尚併し不十分な点があつたならば、政府としても無論その調査の完璧を期するために努力いたします。(岡元義人君「一万円では調査できません」と述ぶ)又在外資産についてのお話でありますが、この資産の処分は結局講和條約の内容をなすものであり、この調査についても政府としてはできるだけのことをいたしておりますが、如何にこれを処分するかということは結局講和條約の際に決定するところであります。政府としてはその関係者の利益のために十分努力する考えでおるのでありますが、然らばこういうふうにしてということは、今講和会議も始まつておらぬことでありますから、ここに申述べることはできません。その他の問題については所管大臣がお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣殖田俊吉君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(殖田俊吉君) お答えいたします。
 岡元さんのお話の中に捕虜の取扱に関する問題がございましたが、捕虜の取扱に関する国際條約といたしましては、一九二九年及び一九四八年のジユネーヴ條約があるのでありますが、右のうちに一九四八年の條約によりますると、政治的信念によつて捕虜を差別的に取扱うことを禁ずる趣旨の規定があるのであります。この條約にソ連が加入しておりまするかどうか、はつきりしたことを申上げられぬのでありますが、そのいずれにいたしましても、国際政治道徳の普遍的の原理から申しましても、世界いずれの国といたしましても、この條約の精神に反するがごときことは許されないものと信ずるのであります。従つてお尋ねになりまするようなことがありまするならば誠に遺憾に存ずる次第でありまして、この点につきましては外務当局におきましても、関係方面とも十分連絡の上善処しつつあるのでございます。
 次に刑法の問題がございましたが、日本の刑法によりますれば、日本国外において起された日本人の犯罪のうちで、内乱罪であるとか殺人罪等、一定の犯罪につきましては、日本国内においてもこれを処罰することができることになつておるのであります。従つてお尋ねのような行為につきましても、それが犯罪を構成し、我が国内において処罰し得る場合には、これに対して適当の処置をとる方針であります。これは勿論であります。
   〔国務大臣林讓治君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(林讓治君) 所管に関係いたしました点につきましてお答えをいたします。
 未亡人福祉の問題でありますが、母子家庭、特に遺家族の援護につきましては、第五国会におきましても衆参両院でなされまして御決議の御趣旨に副いまして、その援護にできる限りの努力をいたしまして、扶助の徹底と居住環境の整備、生業資金の貸付、職業補導等による生活自立を図つておるのでありますが、特に母子家庭の兒童の福祉の問題につきましては十分考慮を盡しておる次第であります。将来の問題といたしましては、生活保護法を改善いたしまして、扶助の内容を充実をいたして、被保護者の立場を強化するように努力いたしたいと考えておるわけであります。昭和二十五年度には母子寮を百ケ所ばかり増設いたしますし、又母子家庭に適当な居住環境を與える計画を立てておるような次第であります。又更生資金の貸付も、未亡人その他の緊急止むを得ぬ需要者につきましては適切な運用を図つて行きたいと考えておるわけであります。
 次に未復員者の給與で、海軍の方々には留守宅に対して行い、陸軍では行なつておらないではないか、こういうお話でありますが、未復員者の給與法において規定されました俸給の支拂につきましては、法律制定以前に本人がいわゆる俸給の留守宅渡しをしていた人々に月々の家族渡しを認めまして、然らざる人々につきましては帰還時一時拂をするようにいたしたのでありまして、従いまして海軍の関係では終戰後殆んど全員が俸給を留守宅渡しするようにいたしておりましたために、只今岡元議員のおつしやいましたような次第になつておるわけであります。尚この点につきましては将来研究をいたしたいと考えます。
 生活困窮者に対しての保護法を適用する以前において適切な施策を講ずべきではないかというお話でございますが、御尤もでございます。従いまして生活保護法を適用する以前におきまして適切な施策を政府としては考慮しておりまするうちに、例えば消費生活協同組合の普及奬励、公益質屋の運営改善、それから更生資金貸付事業の運営強化というようなことを積極的に防貧施策として進めて努力をいたしておるわけであります。各種の保險制度の問題も整備をいたしますが、尚、将来におきましては、社会保障制度審議会から遠からず答申があることと考えますので、この点を考慮いたしまして諸般の準備を進めて参りたいと考えておるわけであります。
 それから終戰後外地にあつた軍民で、強制收容されて労働に服したために死亡した者の遺族に対しましては、軍事行動によるものではないから、これに対して当然何らかの補償の途を講ずべきではないかというお話でありますが、終戰後、現地におきまして死亡せられた方々又は御遺族の方々に対しましては、誠に御同情に堪えないのであります。併しながら現状におきましては、これらの方々につきましては、生活の困難な方々に対しましては、生活保護法を十分に活用するということによつて保護を申上げるという程度しかできないことを甚だ私共も遺憾に存じておるわれであります。
 それから帰還者に対する物品の給與の問題でありますが、この現在支給いたしております被服、軍靴のようなものは、終戰時に、旧陸海軍保有物資を特に引揚者支給用として連合軍から返還をされたものでありまして、彌来六百万余の人々に支給をして参つたのであります。その品質は一般国民に配給のものよりも遥かに堅牢でありまして、長時間の使用に耐えるということによつて一面喜ばれておるような実情になつておるわけであります。又品種につきましては、申すまでもなく今後におきまして逐次改良すべきものは改良いたしまして、新規購入品又はその他の問題につきましては、十分考慮をいたしまして、御満足の行くようにいたしたいと考えるわけであります。
 それから各地の世話課であるとか引揚援護庁の職員の問題でありますが誠によくお働きを願いまして、私共も喜んでおるわけであります。従いまして、将来これらの機構が変革をいたすような場合がありました場合につきましては、厚生大臣といたしましては、これらの方々に対して職を失わしめないように、他の官庁とも転換、転職の斡旋に対しましては極力努力をいたしておりまするし、又今後につきましても責任を持つてこれが転職、転換をお世話申上げたいと考えております。尚、退職手当の問題につきましては、法規の定めるところによりまして、できるだけの努力をいたしたいと考えておるわけであります。
 又帰られる方々の遺骨につきましての無縁塔の問題でありますが、これを建設することは如何かと考えまするが、将来これらの霊を慰めるような方法を考えたいと思つております。(拍手)
   〔国務大臣鈴木正文君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(鈴木正文君) 岡元さんの只今の御質問にありました引揚者の援護措置で、失業保險の対象とするという問題は、御指摘のように相当古い問題でありまして、私もこの点に関しましてこの議場におきまして、労働省といたしましては検討をいたしますというお答えを、誠意を以てお答えしたことも記憶しておる次第であります。事実その後種々の検討を重ねました。ただ御承知のように現在の失業保險法は、一般の経済界の従業員の人達が経済的な変動によつて離職したときと、そういうときを対象として組み立ててあるということは御承知の通りでありまして、これはそういう御要望を最初から持つておる皆さん方の方でも、その点の難点というものは相当技術的にむづかしいけれども、非常に重要な事項であるからして更に検討を重ねたらどうかという御要望で、私共も重ねて参つたわけであります。例えば今申しましたように失業保險というものは根本的な性格を持つておるとか、或いは給付というような場合に、普通の会社の場合と違つて、どういうふうにして給付の計算の基礎を置くかとか、或いはすでに早くから帰つて来られた方々と、今後例えば今三十何万というような数字が概括的に挙げられておりましたけれども、そういう人々との結び付きをどうするかというような、技術的な極めて大きな難点があるのであります。と同時に、財政的にも相当困難であるということはこれは勿論でありますけれども、併し主として私共労働省といたしましては、財政的の問題は難点であつても、この問題の重要性に鑑みまして、例えば援護的な方式の充実に関しましても、或いは只今厚生大臣から申しました救護法等の改正等にいたしましても、これは問題の重要性という意味から考えまして、財政の問題も考慮して充実して行くべきであるという考えは持つておりますが、只今失業保險法と直接的に結び付けるという御指摘の問題につきましては、今尚幾つかの難点があるのでございます。私共は現在において而も職業安定行政の方は二十四年度よりも倍額近い活動の資金或いは人の充実も進んでおりますので、引揚者の方々に対しましては先ず優先的に、従来もそうでありましたけれども、二十五年度におきましては量的にも相当大量に優先的に先ず就職の方を御斡旋申上げるという方法をとりながら、今申しましたような社会保障の制度というものも検討が進んでおりまするからして、そういつた国全体の考え方の上に結び付いてこの問題を解決して参りたい、現在においてはそう考えております。
   〔政府委員鈴木仙八君登壇、拍手〕
#15
○政府委員(鈴木仙八君) 建設大臣に代りましてお答えをさせて頂きます。
 昭和二十五年度は住宅金融公庫を設置をし、住宅難に悩む国民大衆に対し長期低利の建設資金の貸出を行う予定になつております。明年度は百五十億の事業資金を予定をしておりますが、これにより約八万戸の住宅が建設されることと思います。この資金は主といたしまして住宅に困窮をし而も低利長期資金を必要とする国民大衆に対して貸付けられるものでありますが、引揚者各位の多くは現在かかる資金を最も必要としていると考えられます。御質問の第一点であります引揚者各位に対して特に優先的の枠ということは、目下考えてはおりませんが、但し本公庫の設置は、引揚者各位の住宅対策といたしましても大いに役立ち得るものと堅く信じております。
 次に第二点の御質問でございますが、運営取扱について地方の銀行の代りに国民金融公庫、信用組合、住宅金融組合、無盡会社、殖産無盡等に取扱いさせる意向を持つているかというふうな御質問でございますが、一応これは対象としてこれらを考えてはおりますが、これも愼重に考慮研究中でございます。本公庫の設置に運営上最も肝要なことは、本資金が住宅に困窮をし而も償還能力の確実な人々に対しては嚴正公平に貸付けられることでありまして、目下その具体的な処置について考究を進めている次第であります。その配分等につきましても、住宅不足の実態に、十分即応するように、各種の資料によりまして検討をいたしておるような次第であります。
 第三点の御質問に対しましては、先程申上げました通り、百億は交付金として公庫に入れ、これを資本金として百五十億として一応これを取扱いたいと思います。(拍手)
#16
○議長(佐藤尚武君) 先刻の小林勝馬君の質疑の場合も同樣でありますが、大蔵大臣の答弁は後刻出席まで留保されております。
 これにて午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時二十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五十二分開議
#17
○議長(佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。寺尾博君。
   〔寺尾博君登壇、拍手〕
#18
○寺尾博君 私は緑風会を代表いたしまして、農業政策に関する問題について政府の所見を質したいと思うのであります。
 最近の我が国の国内並びに国際の情勢から考えて見ますると、我が日本農業は今や正に重大なる危機に追込められそうな感じがいたすのであります。そういう感じが段々と深くなるように思わざるを得ないのであります。戰時中から食糧問題というものが国家並びに国民の最大の関心事であるました。それがために代々の政府は非常に苦労もし、又大いに努力もされて来たのでありますが、その際におきまして、その食糧を生産する農民に対する農業政策というものは、食糧政策の蔭に隱れて、農業政策自体、あるもののような、ないような、判然としない感じがして来たのであります。本来我が国のような場合におきましては、農業政策は同時にそれが食糧政策、同時にそれが適切なる農業政策でなければならないという面が相当に大きいのであります。即ち農業の生産と農民の生活とに十分なる考慮を拂いつつ、国民全体に対するところの食糧を生産し供給する、そういう政策でなければならないわけであります。それで、その農民が全人口の約半数を占めており、而も最近一段と零細農化して弱体となつた農業経営を以て、世界経済の動搖の前に立たされておるのでありますからして、この農業政策は單なる産業政策ではなくして、多分に社会政策的の性格を持つた、いわば農民政策とでも言わるべきところのものでなければならぬと思うのであります。そこで今現実の問題といたしまして、全国の農民は今日の状態の下に、農業の将来というものに対して非常なる不安の気持に駆られておると思うのであります。私は最近の社会諸般の事情が幾分の落着きを見せて来た今日におきまして、政府はこの点をよく考えて、この際正しく力強いところの農業政策を確立して、以て政府施策の一転機を画すべきものであると信ずるのでありますと共に、この点を強く政府に要望をいたすのであります。この問題は私の質問の全部をカバーするところの根本的、総括的の問題といたしまして、先ず冒頭にこれについての政府の所見を質したいと思うのでありまして、総理大臣、経済安定本部長官並びに農林大臣が、それぞれ誠意と熱情を籠めたお答えをして下さることと期待する次第であります。
 次に、過日の総理大臣の施政方針の演説の中に現われておりますることにつきまして、二つの点について質問をいたしたいと思います。
 総理大臣は、政府は能う限り国内食糧を増産し、自給度の向上を図るべき根本方針は飽くまでこれを堅持するというふうに力強く声明されておるのであります。併し今まで政府がとり来たつたところの施策、又現にとりつつあるところのものは、この総理大臣の声明とは大分に違つた感じを我々に抱かせると思うのであります。即ち政府は国内食糧を能う限り増産ではなくして、能り限り供出させようとする施策に非常なる努力をして来ておるという感じを強くしておるのでありまして、これを全国の農民の立場から見たら、ただただ農民は供出攻めに会つて来ておるという感じだけしかしないのじやないかとさえ思われるのであります。最近食糧事情が大分に好転して来たと言われておりまするが、それにはガリオア資金によるところの年額二百万トンという輸入食糧、これを米に換算しますと約千三百万石であります。非常に大きな数量の外国の援助によつて今日の食糧が好転して来たということになつているわけでありますが、私は最近農業技術の研究の進歩、又一部の農家或いは地方によりましてこれらを取入れたり、或いは農家自身が農業経営上の研究などしているところを見ますと、地方により、農家によつて、従来一反歩に六俵か七俵しか取れなかつたものが十俵も或いは十二俵以上も、反当五石、こういうような増産を挙げているものも決して少くない。私は反当十俵取るということは大変に珍らしいことのように従来考えておつたのでありまするが、近頃は必ずしも珍らしくない。段々考えて見まするというと、よく普通には日本の米作というものは行詰りで、これ以上の増産の余地はないというようなことを経済学方面の方なんか言うことをしばしば聞きまするが、私は技術上から考えても、この輸入食糧二百万トン、米に換算しまして千三百万石、これどころじやない、もつとこれ以上の増産が技術的の見地から確実であり、ここに政府がしつかりしたところの農業政策らしい農業政策を立てて、その気になるならば、必ずできる、こういう信念を持つているのであります。而して前国会の終り頃に政府は突如として来年度の輸入食糧は三百六十万トンに達するということを公表された。恐らく全国の農家はこれを聞いて愕然としたろうと思うのであります。すでに農村インフレの当時においてさえも、やがては南方などの安い外米が多量に輸入されることによつて農業恐慌が押し寄せて来るだろうということを、その当時でさえも農民は心配しておつたのでありまするが、その後のインフレなどのために忘れられておつたのが今俄然それが現われて来たような感じがするのであろうと思うのであります。尚その上に最近伝えられるところによるというと、我が国も遠からず国際小麦協定に加入を許される、そうなると今よりも安い小麦の或る一定量が我が国に割当てられる、こういうことは今日の日本の国際情勢の上から止むを得ないことでありましよう。併し止むを得ないことであるが故に、そのことが一段と大きくなり脅威にならざるを得ないと私は思うのであります。かような現実のことを目の前にして、それを胸に抱きながら、総理大臣の食糧の自給度を高める根本方針は飽くまでもこれを堅持するという御声明、この声明そのものに対しましては非常に賛成でありまして、強力に遂行して頂きたいのでありまするが、ここにどうも胸の中に割切れないものがあるような感じを抱かざるを得ないのでありまして、この点に関して総理大臣が親切に又よく納得の行くような御説明をこの機会にして下さることをお願いいたしたいと思うのであります。これが第一点であります。
 第二点の問題といたしましては、先程も小林議員の御質問にもありましたが、総理大臣は只今お話しました三百六十万トンの輸入食糧の問題が発表された直後におきまして、この問題について深くお考えになつておりまして、農政審議会を作られることになつて、農地の改良保全、或いは農産物最低価格の維持、その他農業諸施設に関するところの施策について万全を期しよう。このことはすでに昨年末以来実施され、今回の施政方針の上にも現われておるのでありまするが、ここに特に私がお伺いしたいのは、只今重要な問題の一つは、伝えられておりまするところの農産物の最低価格の維持という問題であります。将来この問題の必要が起る可能性があるかと思うのでありまするが、そういう場合に処して政府はその面の政策をとろうというお考えであるのかどうか。このことは、これから食糧の自給力を高める増産を農民がやろうとするに当つては、農民の心理の上に非常な影響をもたらすことであります。先のことであるから、それはそのときのことという御答弁が或いはあるかも知れませんが、これは非常に心理上大切なことであると思いますので、特にこの点に対する政府の所見を承わつて置きたいと思うのであります。尚この農政審議会について、学識経験者その他の方々によつて重要問題の審議されることは誠に結構でありまするけれども、願くばこれが單なるいわゆる農政問題の評議に終ることなくして、実際に日本の農業の生産力を強化し、農民の生活を確保するのに実質的に十分なる役割をする農業政策を立案する、こういう重大な使命を感じてその成果を達せられるように希望したいのでありまして、ややともすると、かくのごときことが、政府がその場合に処して一つのゼスチユアをしたに過ぎないという結果になることがしばしばあるのでありまするが、願くば政府のゼスチユアとなり終ることに対して特に御留意をされんことを希望いたすのであります。
 次に、経済安定本部長官が御出席になつておらないのでありまするが、これは後から直接に長官からお答えを願いたいのであります。安本長官は過日の演説におきまして、一時農村インフレによつて蔽われていた我が国の農業生産基盤の脆弱さが輸入食糧の増加によつて表面化して来たということを率直に認められまして、その対策として、耕地その他の災害復旧、水利、土地改良等、その他農業諸施策を国力の許す限り促進したいということを説かれておるのであります。勿論これらの問題はいずれも重要な問題でありまして、敢えて言うに及ばないところでありまするが、要はこれらの施策を如何なる程度において具現化しておるかという点にかかわるのであります。併し私はここではこの問題に深入りしようと思わないのでありまするが、この機会に私が特に述べたいことは、国の総合的の計画を立てる経済安定本部としては、日本農業の生産力強化のためには、尚一段と大きな広い構想を以て処して頂きたいということを切望するものであります。と言うのは、明治時代以来、我が国の農産物の生産というものは著しく増加したのでありまするが、これには化学肥料、即ち硫酸アンモニアであるとか、過燐酸石灰であるとか、こういう化学肥料の製造を主たる事業とするところの日本の化学工業というものが著しい発達をしたということが、一つの重大な原動力になつておるのであります。で、この化学肥料という今まで日本の農民諸君が全くあずかり知らなかつたところのものを、農業に関する科学と技術の進歩によつて、それを有効に活用するところの途を示されたのでありまして、その結果として古来のいわば働くばかりの、労働するばかりの農業に対して、この原始的の農業に対して飛躍的の進歩を與えたのであります。最近外国からいろいろの卓越した性能を有する新らしい農業薬剤が我が国の農業にも導入されて、又この方面におけるところの農業の生産手段を飛躍をさしておると言つてもよろしいのであります。又我が国の農業経営に適合して農業の機具、機械その他農業用資材、こういうものの改良と、その製造の発達の如何が、日本の農業の興廃を決定する重要要件であることも明らかであります。而してこれらのものはすべて農家、農業それ自体のうちにあるものではなくして、その外側にあるところのものでありまして、その農業の外側にあるところのものが農業を飛躍的に進歩させるところの原因になるということでありまして、近年アメリカの農業生産が非常な増加をしたということも、この農業そのものの外にある科学と工業の発達によるところが甚大であるのであります。今や危機に陥らんとするところの日本農業に対して、いわゆる起死回生の活力を吹き込まんがためには、かように農業と直結するところの工業の発展に対しても、政府は周倒にして確乎たる積極的の国策を立てて、これを強力に実現せんとする気慨を持つことが是非必要であると思うのであります。で、この方面において、経済安定本部は如何なる構想、又は意図を持たれるやを伺いたいと思うのであります。
 まだありますが、飛ばしまして、今度は農林大臣に一つお伺いしたいと思います。
 農林大臣は昨年末に篤農家を招待されておるのでありますが、農民の模範であるところの篤農家をかように重んぜられることは誠に結構と思います。そういう農林大臣でありまするから、特に私は一つお考えをお願いいたしたいと思うことがあります。今日までの農業の改良或いは農産の増殖に対して、農業技術者が非常に貢献をしておる。実に優れた貢献をしておる農業技術者が幾らもあるのであります。今一例を引いて見ますと、目下新潟県その他の地方で水稻農林一号という稻の品種を作つておる。二十数年来作つておる。この恩恵に浴しておる農民は数十万あるわけであります。この尊い品種を作つて呉れた元新潟県の農事試験場技師であつた故並河技師の遺族が、今日非常な悲惨な生活に陥つておるということを農民諸君が聞いて、並河氏遺族救援の寄附金を募集する大運動を起した。農民をしてそれだけ感激させるだけの仕事をしておる農業技術者の遺族が、さような境遇にあるのです。工業方面の発明家であれば、恐らく物質的な報いもありまするが、農業技術者はかような状態にあるのであります。で、私はひとり篤農家を重んずるだけでなしに、こういう尊い農業技術者に対して、国としての表彰制度を設くることが適切ではないかと考えるのであります。ソ連ではあの農作物の改良に大貢献をしたミチユーリンの死に対して、国葬を以てこれを弔つたということであります。で、これからの農業を大いに振興せんとする政府としては、この種の問題を等閑に付すべきではないと私は信ずるのであります。この点に関するところの農林大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。
 それから尚いろいろありますが、農林大臣に対するものは委員会その他の機会に讓りまして、ただ一つ、最近農業改良助長法というものができて、農村にも技術員が配置されて、非常に農民をして明るくさしておる。農民に対して科学と技術を注入さして、農民も非常に喜んでおり、又農業改良上非常に有効であるが、この予算上の内容が頗る不足である。従つて農民は思わざる寄附金を出さなければならぬというような立場にもなつておるし、これを地方に施行させた政府の責任としても、又日本農業の振興のためには、積極的にお考えを立てて、尚これを強化拡充するような方針をとつて頂きたい。で、これに関連しまして、最近農事試験場その他の農業の試験研究機関の整理統合が行われた、いわゆる再組織、再編成ということになつておりまするが、この理想は非常に尊い、いい理想であります。併しその実体、実質を見まするというと、農業改良の助長にあらずして、農業改良の縮小になりそうな点が非常に多い。私は甚だ残念だと思う。これについてはもう少し考え直して頂きたいと思うのであります。尚それと連関しまして、これからの日本農業の生産力強化、実質的の発展を期するためには、ここに農業技術審議会というようなものを設けて、その完璧を期することにいたしたいと希望するのであります。
 終りに尚一点だけ農業教育につきまして、文部大臣並びに農林大臣にお伺いいたしたいと思うのでありまするが、従前から各府県には相当数の農業学校がありまして、これが農村の農業教育に非常に貢献し、又その秩序、組織が整つて来たのでありまするが、最近の学制改革によりまして、これらの農業学校の大部分が高等学校になり、或る一小部分が農業学校になつておるが、これらの学校におけるところの農業的教育の内容実質について見ますというと、以前に比べて非常にその範囲が縮小され、程度が狭まつておる。のみならず最近の農家のいわゆる零細農化のために、これらの学校に就学をさせることのできる家が減つて来ておる。で、これは農業教育上に相当大きな欠陥をやがて来すべきものであると思いまして、私は憂いに堪えないのでありまするが、私は先程来申しました農業改良助長法を更に強化すると共に、農業技術方面、それから農業教育方面、農業に限りません、教育方面、即ち農林省側、文部省系統、これらが協力し融和して、かような農業教育の上に現われそうな結果について適切なる措置をとることを希望するに堪えないのであります。この点に関する農林大臣及び文部大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。政府の農業政策は今日供出にのみ力を用いるというような御趣意のようでございましたが、御承知のごとく今日日本の国民食糧は足りないのであります。戰前においても千五百万石内外輸入しており、更に戰後において海外から七百万以上の人口が増加いたしております。即ち日本国の現状において国民食糧が甚だ貧弱な状態にあるのであつて、この国民食糧を確保することは政府として正に努めなければならぬことでありまするから、或いは米国からして食糧の輸入を図り、その他の方法で僅かに今日に至つたのでありまするが、とにかく現在において食糧は足りないとすれば、成るべく安い食糧を輸入するという外に方法はないのであります。そのためには小麦協定に入つて、そして協定による最低の価格、即ち普通よりも安い価格において食糧を輸入するという途を講ずるより外ないのであります。のみならず、その協定に入るにいたしましても、協定国、協定国と申しますか、とにかくこの食糧協定に入つておる国からの希望よりも、最低の数量を輸入する、そして最低の価格で以て日本に輸入するというために、情勢に応じて日本政府がこれに入ろうといたしたわけで、決して余計なものを買うという考えは毛頭ないのであります。国民食糧確保のために協定に入ることが利益なりと考えて協定に入る途を講じつつあるのであります。又国民食糧の確保せられた後において、日本の食糧自給の程度を、自給度をますます高める、これは政府としていたさなければならない方途と考えます。
 聞くところによりますと、アメリカは戰後、戰時中に農事の改良を図り、又灌漑、疏水等によつて、戰前における食糧の四倍乃至五倍の増産が図られたということを承知いたしております。即ち日本の現在においても食糧の増産そのよろしきを得れば、必ずしも方法のないことはない。即ち治水なり灌漑なりにますます努力いたして現在の自給度を高めるということは、政府としては考えなければならないところであると考えますので、然らばどうしたらいいか、これは当局においておのおのすでに考えておるところもありましようが、更に学識或いは経験に富んだそれぞれの專門家の意見を聽いて、政府が、自給度を高める政策或いは農業肥料その他の進歩を図るために、実に経験のある識見のある人、或いは又学術の素養のある人、それぞれの経験者、学者について政府の研究を進めるために、農事審議会を設けて現に研究を進めさせております。いずれそのうち成案を得て具体的政策として政府が施行いたしましようが、これは決して一時の思い付きでもなければ形式だけでもないのであつて、政府は真劍にこの問題を研究いたすつもりで設けたのであります。御承知の通り日本国において人口の半ば以上が農民であり、而も食糧の不足だという自給自足の状態にない日本としては、農業問題は真劍に取上げるべき問題だと考えて、政府は真劍に考えておることを御承知願いたいと思います。その他については主管大臣からお答えいたします。(拍手)
#20
○寺尾博君 この農業に関係した工業の発達に関して、私は安定本部長官と通産大臣の両方にお伺いしたかつたのでありますが、先程時間を急いだので、つい通産大臣にお願いすることを落しました。どうぞ御答弁を願います。
   〔国務大臣稻垣平太郎君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(稻垣平太郎君) この農村関係についての機械の問題、或いは又肥料の問題についてのいろいろお話を承わつたのでありますが、この点はお説の通りにこれが農村の行政政策と全然別な産業政策の面でありまするけれども、これは渾然一体をなして行われて行かなければ、今後の日本の農村の基礎が確立されないと私は信じておるものであります。従つて例えば肥料の問題にいたしましても、最近硫安換算におきまして漸次その生産量を挙げておるのでありまして、本年度でも大体硫安換算二百万トンという程度にまで我我は考えておるのであります。又過燐酸は百五十万トン程度でありますが、現に肥料につきましてはいろいろの計画が今日行われておのでありまして、例えば塩安の製造の計画、これについてはいろいろ通産省が相談相手になつて始終これが推進を図つておる。或いは又新らしい電源開発と関連いたしまして、化学工業を起す場合に塩安を主としたところの事業を起すと、こういつたような考え方もいろいろあちらこちらにあるようであります。尚その外新たな硫安製造工場の計画もあるようでありまして、この点については十分我々の方で推進をいたして行きたいと考えておるのであります。
 尚、農機具の改良、農機具に対するところの新らしいいろいろな創意工夫といつたような点につきましては、業者におきまして最近非常にこれに対するところの技術的な改善が行われておるように存じておるのであります。この点につきましても我々は十分これが促進に当りたい、かように考えております。
   〔国務大臣森幸太郎君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。第一に農業技術者の優遇方法についてどう考えておるかという御質問でありましたが、農業技術者のうちにおきましては、例示されましたごとくに、いろいろ過去におきまして特別な国家的貢献をされた方が相当あるのでありまして、これは品種の改良或いは農業科学の面におきまして広汎に亙つておるのでありますが、而もこういう功労者に報いる途が甚だ少いことを遺憾に存ずるのでありますが、御承知の戰後褒賞規定によりまして、こういう各般の功労者に対しまして、緑綬章が二名、紺綬章が四名、藍綬章三名の表彰をいたしておるわけでありますが、今後におきましても、この隠れたる功績者に対しましては、国家として十分なる表彰、顯彰の途を考えて行きたいと存ずる次第であります。
 農業改良助長法についての御意見を第二にお述べになつたわけでありますが、御承知の通り、昨年来この農業、農業試験場を総合統一をいたすことにいたしまして、農業改良助長法を御決議願つた結果、著々この面に進捗をいたしておるのであります。殊に農業技術員の配置のごときも現在は相当数の不足をいたしておるのでありますが、二十五年度におきましては、四ケ村に三人という今定員になつておるのでありますが、今後一村一名ということに増加いたしまして、本当に農民の相談相手となり、指導者となるようにいたしたいと思います。又一面には生活改善の面にも携わりまして、農民の生活を幾らかでも年々向上させて行く、いわゆる基準を高めて行くことの相談相手にもいたしたいと考慮をいたしておるのでありまして、決してお述べになりました通り農業改良の退歩である、後退であるというようなことは考えておりませんので、ますますこの組織を活かしまして、改良助長法の精神を具現化いたしたいと考えておるわけであります。
 次に、農業教育に対しての御意見でありましたが、誠に御説御尤もでありまして、今回教育制度の改正の結果、地方にありました甲種、乙種の農学校が廃止されまして、農業子弟はいずれに農業を学ぶかということが今日の問題になつておるのであります。この各地における、各府県におきますところの農業研究所等に子弟を送りまして、そうして農業の基礎教育を受けるわけでありますが、それに対しましても、その中等教育を受けないところの農家の子弟はどうするか、こういうことが更に問題になつて来るのでありまして、四H協会も相当全国的に発達いたしまして、これら若人が農業に対する本当の精神的な修練を積むように政府といたしましても指導して参りたいと、かように考えておるわけであります。
   〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(高瀬荘太郎君) お答えいたします。新らしい教育制度の実施と関連いたしまして、今までありました旧制の中等学校である農業学校が、新制高等学校に総合される傾向が相当顯著に現われておりますことは、御説のように農業教育の水準を低下させる結果になる虞れがあると私も考えておるのであります。併しこれは文部省が実行いたしておるのではございませんで、地方の教育当局が実行いたしておるのであります。併し文部省といたしましては、そういう総合化の傾向というものが農業教育に甚だ好ましくないという考えを持つておりますので、成るべく、止むを得ざる必要のある場合を除きましては、そういうことにならないようにしたいという方針で実は指導をしておるわけであります。それから地方の農村の文化とか地方の農業技術の進歩について、文部省として協力をするようにというお話がありますが、文部省も無論そういう必要は十分に認めておる次第でありまして、高等学校なり或いは大学なりの校外教育その他を通じまして、できるだけそういう方面に努力を今後も盡して参りたいと考えております。
 それから尚、去る二十八日に中野議員から質問を受けましたけれども、当日止むを得ない差支がありまして欠席をいたしましたので、この際お答えをいたして置きたいと思います。
 御質問の第一点は、コア・カリキユラムの例を挙げて、文部省の教育方針がぐらぐら変つておる、こういう御批判であつたと思います。併しコア・カリキユラムと申しますのは、御承知のように生徒の生活を中心課題とした総合的な教育計画でありまして、全く新らしい進歩した教育方法でありますけれども、これが十分に効果的に実施されるにつきましては、十分の準備と研究が必要であります。若し十分の準備と研究がなくして、これを実施いたしますと、却つて教育を混乱させる結果になるのであります。ですから文部省といたしましては、若しこれを実行するならば、十分研究をし、十分準備を整えた上でやるべきである、若しそれだけの準備がないならばやらない方がいい、こういう指導をしておるのでありまして、それが誤まつて伝えられ、誤解されたものと考えております。
 それから第二の点は、現在の日本の教育が劣等民族意識を植付けるような誤まつておる教育ではないか、こういうような御批判であつたと思いますが、戰時中のようなあの超国家主義的な或いは国粹主義的な誤まつた民族優越意識というものを全く拭い去ると同時に、民族平等の立場に立ちまして、平和主義、民主主義に徹底した強固な民族意識を確立するということを今日の教育の基本としておるのであります。従いまして、敗戰に伴つてややもすると生じ易い劣等民族意識というものは、これを排撃をすることこそ、現在教育の重大な役割と考えておるのでありますが、これを助長するような教育方針というものは決してとつておらないのであります。(拍手)
#24
○議長(佐藤尚武君) 青木国務大臣の答弁は他日に留保されました。岩本月洲君。
    ―――――――――――――
   〔岩本晴洲君登壇、拍手〕
#25
○岩本月洲君 私の御質問申上げたいと思いますことは概ね文教文化の問題についてでございます。その第一主題といたしまして、凡そ六点について文教の諸問題を、又第二主題といたしましては、国立国会図書館並びに文化財の問題に関してお尋ね申したいのであります。質問の要点はすべて実態に即した具体的で切実な問題でございますので、その点十分にお含みの上、適切な御答弁をお願い申上げたいのであります。
 無謀なる太平洋戰争が戰史未曾有の惨敗に終り、我が日本は有形無形の莫大なる犠牲を拂つて苦酸を嘗めたわけでありまするが、爾来上下を挙げましての深刻なる反省が初めて平和と文化とを基調とする新憲法となつて実を結ぶに至りまして、我が民族と我が祖国の歩む前途を照らす一大炬火としての国是がここに確立されたのであります。人類有史以来実に最初の原子爆彈の洗礼を浴びました広島市、長崎市、その広島から出て参りました私は、この平和と文化を強調する新らしい国是に対して、單に言葉だけの共鳴ではなく、実に悲痛な、血の滴たるような衷心からの叫びといたしまして、その聖なる理想の実現に遇進しておるものでございます。かかる平和と文化とを基調としてこの新らしい国是が、我が全国民の心の奥底まで、生活の隅々にまで滲透するには、勿論相当の時間を必要とすることと存じます。なかんずく忌わしき戰争を放棄し、文化国家を建設し、而して世界平和の確立に寄與せんとするこの新らしい憲法、この世界に誇るべき国是をこの国土に打立つべきがためには、我々は次の世代を背負うところの青少年の諸君に最大の期待をかけねばならないと思うのであります。ここに文教の問題が、我が国家百年の大計として、否、新生日本が世界平和の確立に寄與するという世界史的意義において、何よりも先んじて取り上げねばならぬ重大問題であることは、何人と雖も異議はないことと信ずるのでございます。この意味におきまして、私は総理大臣、文部大臣、大蔵大臣に対して、適宜に次の諸点につきまして御答弁を願う次第であります。
 先ず第一の問題は教育の根本精神に関してでございます。第一回国会以来、文教に関する法律は教育基本法以下少からず制定を見まして、なかんずく基礎的国民教育に関しましては、六・三制の実施、教育委員会の創設というがごとき、我が国教育制度の上に画期的な変革を閲するに至りました。而して更にその目的達成のために、敗戰後の国費極めて窮迫の際なるにも拘わらず、乏しきを割いてその形式の完備に対する歴代政府の関心は決して少いものとは言えないのであります。併しながら教育の真の完備とは、申すまでもなく決して形式の完備ではないのでございます。教育の本質はその形式の完備よりも精神の充実が肝要であります。そこで総理大臣及び文部大臣にお尋ねしたいことは、教育の根本精神を那辺に置くかということでございます。凡そ教育の根本精神なるものは、單にこれを普遍的な兒童心理学的な把握に基くところの教科のみに置くべきでありましようか。はた又かかる心理学的把握を参考となしつつ、正しい歴史的伝統を批判的に攝取し展開する新らしい民族的、国家的の立場に置くべきでありましようか。伝えられるがごとき講和会議の開催も近きに予期せられ、独立の用意を期すべき際に、正しい歴史的伝統を批判的に攝取展開する新らしい教育精神の樹立こそは、国家独立準備の不可欠な前提條件と確信するものでございます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 ところが現下の教科課程その他を案じて見まするのに、歴史や伝統を無視し、或いは民族や国家を等閑に付したような非常な気兼ね、遠慮に陷つて、真の日本人を作り上げるのに必要な教育が欠けているのではないかということであります。併し私が只今申上げました真の日本人というのは、科学を無視し、独善に落ちた偏狹な戰争前までの日本人を言うのではないことは勿論でございますが、昨年年頭におきまして、マッカーサー元帥は日本国民に対して、日本を象徴する国旗を再び無制限に掲揚することを許されましたが、そのときの言葉に、「国家主義なるものは成文律と不文律とを問わず、各国民相互の義務責任を確立する普遍的国際法に対して高い義務感を持つべきである」と述べられたのであります。かかる世界平和に寄與し、道義に立脚する新らしい国家主義に対しまして、私は深い共鳴を感ずるものでございます。このマツカーサー元帥の申されまする新らしい国家主義を体得した日本人、それを私は真の日本人と申したいのであります。教育の問題もここに着眼をすべきであると存ずるのでありまするが、かかる日本人を作り上げることこそが、憲法において世界に向つて誓約した我が日本の国民教育の基本的精神であると信ずるものであります。総理大臣及び文部大臣はこの点について如何なるお考えをお持ちでございましようか。とかく教育精神の重点がぼやけていることの重大性を案じまして、敢えてお尋ね申上げる次第でございます。
 第二は、具体的ないろいろな科目の問題であります。これを端的に申せば、社会科授業のごとき末梢的知識收集の傾きが大変にございまして、倫理道徳の根本を等閑に付している点でありまするが、文部省が指導し検定を與えております教科書、及び文部省が府県教育委員会事務局に対し送付しつつある教科課程の指示等を拜見いたしますると、学生生徒の單なる心理学的把握、若しくは当座の実用的教育のみに偏し、或いは又学生生徒の興味、関心を重んじている傾向が強いようでございまするが、これは末梢的知識の習得には役立つかも知れませんけれども、最も大切な道義的躾けを殆んど顧みず、実行によつてのみ自覚体得される倫理的又は情操的な角度を等閑にしている大いなる欠陥であると思うのでありまするが、この実情を政府は如何にお考えでございましようか。私は又敗戰による経済的遍迫の結果とは言いながらも、不遇なる待遇に甘んじ、默々として聖なる職責を自覚しつつ、次の時代の国民の教育に没頭されている全国幾十万の教育者諸君に対しまして、深甚なる敬意と感謝を表するものでありますが、併しながら又一面におきまして、一般的な社会道義の頽廃は延いては教育界にもそれが瀰漫しているという実情を大変に遺憾に思うのであります。数日前の新聞紙上に伝えられる彼の大阪に発生しました校長を殴打した事件のごとき、若しこれが調査の結果、事実といたしまするならば、かかる没道義的な暴力行為が、教育者にして、而もそれが神聖なる学校内において行われたことは、誠に寒心に堪えないところであります。政府においても祖国再建における教育の重大性に鑑みて、これに従事する教員の質的向上、或いはこれが再教育に万全の策を講ぜられることを要望いたしたいのでありまするが、同時に又重大なる職責に対しまして十分なる待遇を與えるために、国庫補助金の増額を考慮せられているかどうか。この点、大蔵大臣、文部大臣の御意見を承わりたいのであります。
 第三に、六・三制の予算の配分についてでございます。内閣の提出されました予算案を拜見いたしまするに、二十四年度補正予算、二十五年度の本予算、地方起債を含めまして百二十億の校舎建設費が計上されておりまするが、そのうち二十四年度補正予算十五億円は、果して既往に遡つて配分するものであるかどうかということをお伺いを申上げたいのであります。と申しまするのは、すでに、六・三制の完全実施を見越しまして、多大の犠牲を拂つて校舎の復旧新築を断行した府県が多くあることは御承知の通りでございまするが、予算の配分がないために非常に経済的苦境に陥つている実例が少くないのであります。一方におきましては、積極的な建築を怠つていた府県が却つて比較的豊富な配分を受けているという奇現象がございます。かくのごとく、政府の方針に積極的に協力したものが不利な結果となつて、いわゆる正直者が馬鹿を見たというような形になつているがごときは、誠に遺憾千万であると存じますが、かかる現状に対しまして、二十五年度予算四十五億円配分の際に、実情調査の上、かかる矛盾を是正解決する如何なる御方策があるかということであります。又配分に関しまして実情調査をいたして頂きたい点について、特に考慮を煩わしたいことは、その一例といたしまして、高等学校の強制的統合によりまして校舎を新制中学に供出せしめたために、新制中学校は、形式的には生徒一人当りの基準量でありまする〇・七坪に達していますけれども、内容的には高等学校はその生徒の收容に著しい困難を来たして、入学難を来たしているような反則的な現象がございます。このようなことにいたしましても、十分調査の上に配分に考慮をする必要があると思いますので、申し添えて置きたいと思います。以上、これ又大蔵大臣及び文部大臣にお尋ねを申す次第でありまするが、重ねてここに重要な問題といたしまして、六・三制施設の整備について、今後の逐年実施計画をも文部大臣にお伺いを申上げたいのであります。
 第四は定員制と僻陬地手当についてでありますが、定員定額制実施の結果、山間部、島嶼等、僻陬の地における一学級の兒童数は三十人にも満たない学校に対しまして、これが教師の配置に極めて困難を感じている実情に鑑みまして、政府はこれについて特例を認める御意思があるかどうかということをお尋ね申したいのであります。又右のごとき山間僻地、交通不便の島嶼にありましては、文化的水準が低く、教育に必要なる教科書一つさえ求められないという所もございまして、従つて優良教員の配置も意のままにならず、学校施設の不備と相待ちまして、学童の質的低下は目に余るものがあるのでございます。この実情を打破する一助といたしまして、僻陬地手当の復活はどうしても必要と信ずるのでございまするが、政府はこの復活に同意するものであるかどうかということであります。この点、大蔵大臣、文部大臣の御意見を承わりたいと存じます。
 第五につきましては、教育委員会の指導助成の具体策についてでございます。府県教異委員会の実情の多くは如何でございましようか。先ず教育方針の確立、教職員の任免、更には教科書の選定など、教育上の死活的権限を掌握するところの教異委員会なるものが、その委員の選出に当りまして、その当を得ないため、地方的、日常的な政治上の利害関係乃至は実情に疎い空論に左右され、従つて日々直接教異指導の任に当る教員をして、その方針においては帰趨に迷わしめ、その人事においては進退に苦しましめるという事例が決して少くないのでございます。或いは又教育委員会制度の立法の精神を没却いたしまして、教異委員の地位を以て更に新らしい公職への踏み台に利用せんとする傾きも見受けられております。特に昭和二十七年度に市町村教異委員会制度が実施されることに決定を見ている今日、かかる弊害はますます多くなる見込であります。これらは教育の神聖、教権の独立という立場から考えまして、新制度創設の意義を減却する憂いが十分にございます。政府はこれら委員の選出と、選出に際しての一般国民への啓蒙に関して、如何なる具体的にして且つ又建設的なる方策をお持ちでありましようか。文部大臣の御所見をお伺い申上げたいと存じます。
 第六に、府県教育委員会の権限強化の問題でございます。周知のごとく府県教育委員会は、予算上においては府県会の決定に左右され、事務上については事務局、なかんずく教育長を通じてなされる文部省の内面指導に左右されまして、当初の目的と背反するところが多いのであります。政府は教育委員会の設置の目的に鑑みまして、この権限の強化に如何なる方策をお持ちであるか。この点も文部大臣にお尋ねを申上げたいと存じます。
 文教問題に関する総体的な質問は以上を以て打ち切りまして、第二の主題といたしまして取上げたいのは、国立国会図書館の充実整備の問題でございます。
 国立国会図書館が日本の民主化と世界の平和に寄與するために如何に重大な使命を持つているかは、今更縷々する必要はないのでありますが、国会が国権の最高機関として完全なる使命を遂行し、十分なる機能を発揮するためには、国会図書館の持つ使命は極めて重且つ大であることは今更申すまでもないと思います。法案の分析、評価に対する考査業務、法律起草の奉仕、法案の審査上必要なる資料文献の蒐集調査をする。進んでは実施された法律及び政府の諸施策に対する影響の調査など、国立国会図書館が国会に対して行うべき最も重要なる奉仕でありますが、現状は甚だ不完全な状態にあります。その最大にして唯一の原因は、御多分に漏れず、重大なる任務の遂行に必要なだけの予算の裏付けのないことでありまするが、我々国会議員が国民の御期待に添う完全なる立法活動を行わんがためには、内外古今の図書文献が蒐集されねばならぬのでありまするが、現在国会図書館の自由に用い得るところの所蔵資料は三十万冊に過ぎません。而もこれらの図書が人員の不足によりまして未だ十分に整理されず、納本制度に伴う図書の増加はますます未整理数を増加しておるのであります。又必要なる図書資料購入のための費用は極度に減らされまして、昭和二十五年度予算に計上いたしました額は僅かに八百万円に過ぎないのであります。これでは全くその目的を達することはできません。況んや戰争によつて中断されましたる文化的ブランクを埋めるためにも必要なる外国図書の購入などは考えることもできないのであります。なかんずく我々国会議員にとつて最も必要である調査業務は、これ又人員の不足によつて全く貧弱にして劣悪なる状況であります。この国会図書館の充実は、国会議員挙つての要望であることを信じて疑いません。又、我が文化史上におきまして画期的なる立法とも言うべき公共図書館法が近く国会に上程される運びになつておることは、私の欣快とするところでありますが、我が国立国会図書館がこれによつて対内的には唯一の国立図書館として我が国文化センターの役割を果すことになり、対外的には日本を代表する書図館といたしまして国際文化交流の中枢とならねばならぬのでありますが、政府におきましては、国会図書館の重要性を更に更に認識して、我々国会議員挙つての要望に応えるべき国会図書館予算の全面的増額を要求するものでありますが、特に大蔵大臣の御所見を承わりたいと思います。
 次に、国宝及び重要美術品の文化財の問題でありまするが、国宝その他の文化財が尊重されましたゆえんは、主としてその学術的若しくは芸術的な価値に対して重点が置かれておつたのでありまするが、これは政府や国民一般の間においても通念となつておるところであります。併しながら私は、只今申しました学術的価値と芸術的価値の外に、又そこに経済的価値の一層重要なることに着目をしなければならないと存ずるのであります。そもそも国宝やその他の美術品は、ただ徒らにこれを保護保存するだけでは決してその価値のすべてを発揚することはできないと存じます。これを公開展示して世人の観覽に供し、一人でも多くの人がこれを鑑賞して、これによつて啓発されるところに真の意義があると思うのであります。外国の観光客も、その目的の大半がむしろ東洋的、日本的の香り豊かなる我が国の国宝や美術品の観覽に期待しておることが多いと思いまするが、戰時中から戰後にかけまして荒廃その極に達しておりまするこれらの国宝や美術品を修理保繕いたしまして、その完璧を期して頂きたいと思うのでありまするが、それに対しての政府の予算についての御意見を特にお伺いを申上げたいと存じます。
 これを以て私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(吉田茂君) 岩本君にお答えをいたします。
 新教育の重点をどこに置くかというのが私への御質問でありますが、新憲法が制定されました当時、吉田内閣としては直ちに六・三制の教育制度採用に着手いたしたのであります。その趣意は、新憲法にいわゆる民主主義を徹底せしむるためには、教育方面において新らしい主義方針によるべきものであり、又民主主義を徹底せしむるためには、国民に民主主義の何ものであるか、民主教育を十分に徹底せしむることが、憲法の趣意とするところを国民の間に植付けるにおいて必要欠くべからざるものと考えて、六・三制の制統を採用いたしたわけであります。即ち政府今日の考え方は、先ず日本の教育において民主主義教育を実施いたしたい重点は、ここにあるのであります。先程午前の会議において、私が日本の安全保障はどこにあるか、安全保障の中核をなすものは民主主義を徹底せしむる、民主政治を徹底せしむるということである。この日本の民主主義に対して国際的に信頼が高まると共に日本国の安全は保障せられるのであると申しましたが、これ又一つの表現の仕方でありますが、今日、日本の最も要いるところは、民主政治の何ものであるか、みずから自由を尊重し、人格を尊重し、人権を尊重すると、この趣意を日本の国民に徹底周知せしむることそれ自身が、日本の安全を保障するゆえんであり、又日本の進歩を助くるゆえんと私は確信いたします。故に今日新教育の重点はどこにあるか。先ず私は強調いたしたいことは、日本の国民の間に、民主政治の何ものであるか、民主教育は、どういうものであるかということを当局者が十分了解せらるるのみならず、国民自身もその趣意を十分了解せられて、民主教育が徹底するように御協力願いたいと思うのであります。その他の点につきましては主管大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇〕
#27
○国務大臣(高瀬荘太郎君) お答えいたします。教育というものが、ただ單なる心理的な原理に基礎付けられてのみ行われてはならない、こういうお説につきましては、私も全く同感でありまして、現在お話のありましたような点については、民主的な国家としての健全な国家意識或いは国民精神というものについては、これに十分重点を置きまして、それの涵養確立にはできるだけの努力をいたしておるのであります。けれども御承知のように、敗戰による国民精神の動搖とか、或いは新らしい制度の転換期の特殊な事情というようなものがありまして、その目的を十分まだ達しておるとは言えないのは甚だ残念に思つておるのであります。併し今後は新らしい憲法、又社会科の教科などを通じまして、平和主義、民主主義に徹底した国民の国家意識、或いは国民精神というものの高揚に対しましては、十分努力をして参りたいと考えております。
 次に、教科課目の内容についてのお話がありましたが、特にその中の倫理教育についてのお話がありました。御承知のように、現在倫理教育というものは、曾てのような修身科による教訓的な、教説的な教育というものを廃止いたしまして、社会生活の実際に即して倫理的な情操を高めるとか、或いは社会道義を自覚せしめる、こういうような方法で倫理教育を実行しておるわけであります。従つてその方法としては、岩本さんのおつしやるような根本方法によつて現在実行しておるわけであります。ただその効果が十分に現われておらないというところに欠陷があると私は考えておるのでありまして、今後は一層その社会科教育等の改善を図りまして、御指摘になりましたような欠陷を是非とも除去して参りたいと考えております。
 次に、教員の資質の向上、待遇の改善等についてのお話がありました。教育は人が一番大事でありまするから、教員の資質向上は最も大切と考えておるのでありまして、教員養成教育については特に文部省としては重点を置いていろいろと施策を考えております。現職の教員の資質向上につきましては、いろいろの再教育計画を立てて実施しておりますし、又教員養成の学部の教授の方々に対しましては、特に昨年五十名、外国留学をして貰うということになりました。又今後の教員養成につきましては、二十五年度予算におきまして育英会の予算を約六億増額いたしましたので、その中から学芸大学学芸学部、教育学部の学生で、将来義務教育に従事しようという学生に対しましては、相当額の毎月奬学金を交付できるということにいたしましたので、それも一つの資質向上、将来への向上策になるかと考えております。待遇の問題につきましては、無論今後十分これを向上せしめて行く必要はあると考えておりますが、現在は一般公務員とほぼ同樣の待遇になつておるわけでありまして、特によくはなつておりません。併し仕事の性質から申しまして、一般公務員とは大分違うところがありますから、俸給表等につきましても特殊な考慮をしたいと考えて、人事院とも相談をしているというわけであります。
 次に新制中学の建築費予算についての御質問がありましたが、二十四年度の補正予算と二十五年度の予算で六十億の建築費補助が計上されたわけであります。で、これを使用するにつきましては、お話にありましたように実際の事情はできるだけ取入れまして、適当な調整をするという方針で行つております。二十二年度、二十三年度に完成されたものにつきましても何らかの考慮もいたしますし、又実際に相当の余裕教室があるということに統計上なつておりましても、その場合いろいろの條件の違いがありまして、非常にひどいバラツクでやつておるという場合もありましようし、又高等学校の教室を借りているというようなことで非常な不便なこともありましようし、いろいろ特殊な事情もあります。又地理的な條件の違いもありますので、それらは十分考慮の上で配分は考えて行くつもりでおります。それから今後の建築費補助の計画について話せというお話でありましたが、これは臨時国会のときにお話いたしましたように、この六十億を以ちまして、緊急整備を要するものについては、ほぼこれを完了できる。従いまして今後これを充実して行く必要は無論あるのでありますから、それは今後の財政状態回復に応じてできるだけの範囲で毎年やつて行きたい、こういう方針でやつております。
 それから定員定額制の地方事情の考慮、特殊事情の考慮ということについてのお話がありましたが、勿論この点も文部省は今までも考慮いたしておるのでありまして、定員定額と申しますけれども、決して全国画一的にこれを行なつておるわけではありませんで、地方の特殊な地理的な状況等は考慮して、各県にそれぞれ違つた割当をしております。で、今後も無論その方針で参りますし、二十五年度予算ではこの定員定額制に当るような予算が二十数億増額される予定になつておりますので、今までこの制度によつて地方事情のためにいろいろと故障のありました点も必ず除去されることになると信じております。それから僻陬地手当を考えておるか、こういうお話でありましたが、教員の需給状況から考えまして、僻陬手当というようなものも実際必要であるということは私も認めておるのでありますが、まだこれを制度化するというところまでは考えておりません。
 それから次に教育委員会の問題についてのお話がありました。この制度は御承知のように日本にとつては全く画期的な新らしい制度でありますために、非常によい制度で、教育を民主化し、地方分権化するのにはよい制度ではありますけれども、まだ慣れておらんとか、軌道に乘らんとかいうようなところから、いろいろの欠陷のあるということも免れない状況であります。併し何とかこれをできるだけ早く整備する必要があるということは考えておりまして、司令部の援助を得まして、アメリカから著名の学者とか教育行政家を招いて、教育委員会の運営の中心になります教育長とか教育主事の講習会も一昨年以来たびたび開いております。それから今年度は教育委員とか教育長、教育主事というような人達も選ばれてアメリカに視察に行くことになつておりますので、それらのことによつて今までの欠陷も漸次除去されて、教育委員会の運営も軌道に乘つて参るのではないかと思つております。それが軌道に乘りまして機能を十分に発揮してその効果が認められるということになつて参りますと、自然、一般国民といたしましても教育委員会に対する認識が改められ、或いは明確になるということになつて、御心配になりましたような選挙につきましても今後は改善されるのではないかと思つております。
 それから国宝その他の文化財保存の予算についてのお話がありましたが、戰時中すつかり荒廃に付せられておりました国宝等を完全に修理いたしますと、非常に莫大な金がかかるのであります。従つて急速にこれを完成するということは到底できませんが、できるだけ早くやらなければならないという方針で予算の計上も無論努力をいたしております。無論十分ではございませんけれども、昭和二十四年度はこの予算が一億でありましたが、二十五年度はこれを倍額にいたしまして二億に計上されております。倍にいたしましたので、十分とは申しませんけれども、現在の財政の実情から申しますれば我々としては相当重点的に考えて努力いたしたつもりであります。(拍手)
#28
○副議長(松嶋喜作君) 大蔵大臣の答弁は保留されております。鈴木憲一君。
   〔鈴木憲一君登壇、拍手〕
#29
○鈴木憲一君 吉田首相初め所管の大臣に二三の点について質問をしたいと思います。
 吉田首相の施政方針演説によりますと、日本はなかなかよい国になつたようであつて、我々が心配しておるところと大変違うようであります。政治も経済も何も彼も安定したように言われますし、隣の国々が非常にごたごたしておる際に、ひとり我が国だけはその中で復興再建の曙光が見えて来たとか、邦家の慶びと申すべきであるというようなことをおつしやつておりますが、こういうような手放しな喜び方、天下泰平論というようなものは、深刻な国際情勢の下にあつてどうかなというふうに私は考えるのであります。併し首相がかく言われるには何か強い信念のあることと思うのであります。その拠りどころ等についてはなかなかおつしやらないと思うのでありますが、(笑声)私はこれからいろいろ質問いたしまするが、それらの問につきまして、首相が誠意を以てこの私達の了解に苦しんでいるところをお答え下されば大変光栄に存ずる次第であります。
 先ず第一に私がお尋ねしたいのは、参議院の性格、在り方というようなことにつきまして吉田首相に御意見をお伺いしたいのであります。勿論我々は参議院でありますから、自分としてはよく承知しているのでありまするが、この参議院の性格と使命をどう考えられているのか、それをお伺いしたいのであります。なぜかと言いますと、最近心ある人々及び新聞等で、これでは参議院無用論というものが将来起つて来るのじやないかということを頻りに言われるのであります。というのは、どういうところから来たかと詮索して見まするというと、或る有力な政党では、参議院議員選挙の結果は直ちに政局に大影響があるというようなことを言つて非常に党員を激励されている、そうして過半数を参議院において獲得しなければならないのだ、そういうような運動があちらこちらで非常に強烈に展開しつつあるようであります。参議院本来の在り方、その性格というものを、そういうお考えの方達は、次第にレールから外してしまつて、そうして参議院の使命と性格というものを混乱に陷れて、そうして自分の意のままに衆議院、参議院、両院を運営したいというような考え方から来ているのじやないかなというような心配も、おのずからここに起つて来るわけなのであります。で、私は参議院というのはどこまでも強い中立性というようなものを持つておらなければならんのだ、政党よりは人なんだというように考えるのでありまするが、やはり人よりも政党というような実勢力が、ひしひしと今度の六月選挙をめぐつて迫りつつあるように思われるのであります。その際、首相はこの本院の選挙を控えて、参議院の在り方はかくあるべきものであると思うというような所見を発表されますなれば、我々は非常に幸いと思うのであります。ややもしますれば、この結果、参議院無用論が起り、その存在理由を失い、参議院の不安定というようなものが起つて来る可能性が非常に強く窺われるのであります。二院制度に対するお考えをお伺いしたいと思うのであります。
 次は文教の問題でお伺いするのでありますが、首相は昭和二十二年二月十四日の演説におかれて、南原博士の質問に……南原博士はこう質問しております。「本日の総理大臣の演説を承わりますと、産業、労働、それらのことにつきましては委曲を盡して政府の立場としての説明でありましたけれども、教育については僅か一言、教育刷新のことを意図しつつあるというお話でございました。政府は一体、文化及び教育の問題に対して如何なる方針と態度とをお持ちになつておるか。」こう聞きましたところが、時の吉田首相は答えて、「南原博士にお答えいたします。議会におきましては先般御承知の通り教育優先の原則を確立する決議案を可決いたして、政府もその方向に向つて努力いたしておることも御了承下さることと思います。教育の問題はただに本年度の問題でなく、久しきに亙る数年度或いは数十年度の将来を見通しての計画を立てる必要がありますので」云々、尚、二十三年十二月四日、第四国会では、吉田首相は「尚、特に附加えたきことは文教の刷新、民生教育の徹底であります。これが国家再建の根本であることは今更申すまでもございません。(中略)政府は能う限りの熱意を以ちまして、その実質的完成を期したいと思つておる次第であります。」こう述べておられまするし、第五国会二十四年四月四日には、「文教の刷新、科学技術の振興、道義の高揚等盡く皆重要な問題であります」と簡單に言われております。第六国会二十四年度十一月八日には、「文教の基本を確立いたしまして、民主国家を担当するにふさわしい国民を育成することは、今日において最も重要な国務の一つであります。政府は特に初等教育に力をいたし、健全な思想と円満な常識を涵養せしむるに必要なる施設を充実せんといたすものであります。」次は第七国会でありますが、この第七国会にはどこを探しても文教に関する御意見はないのであります。これで吉田首相は毎会ごとに相当文教に対して熱意を見せられ、教育優先の原則確立に向つて大いに努力をする、又能う限りの熱意を以ちましてと言われておりますし、最も重要な国務の一つであるとまで言われておるのでありますが、第七国会、本国会におきましては何とも触れられない。これは何かお考えがあつてのことか。とにかく今までのそういう非常に教育尊重のことを言われておるが、その裏付けとして、御承知のように二十一年度の文部省の総予算は政府総予算の僅か二・八%しか出ておらないというような状況であつて、以下同じように進行しておるのであります。これが武備を撤廃いたしました文化国家として立つて行かなければならないところの我が国の僞りなき実態なのであります。これで果して文化国家が立派に育ち上がるであろうかどうか。首相が絶えず言われるところの民主主義の徹底、或いは外国に信頼を得る民主国家を作るのだという基礎がどうして打込めるかということを考えると、首相は非常に楽観しておられまするが、国民はいよいよ悲観して来るのではないかと私は思うのであります。(拍手)いろいろのことにつきまして、岩本議員や、その前からもたびたび文教問題について意見がありましたので、詳しいことは言いませんが、それらについて非常に地方を廻つて見ますると、もう地方では非常な、これに対して信用をしていいのか悪いのか、大いに信用して掛つたところがペテンに掛つたというようなことを相当の人達が盛んに言きておるのでありますが、今も正直者が馬鹿を見るということを岩本議員もおつしやいましたが、その通りだというふうに私も思うのであります。六・三制の新制度が実施されて以来、それらのことについてはいろいろ前者からも質問がありましたから省きまして、私は大学についてお伺いしたいと思うのであります。
 四年制の新制大学が沢山日本の国にできました。非常に沢山できましたこの大学が、果して将来日本の立派な大学になりおおせるであろうかどうか。それ程沢山な予算を以て完成の域にまで到達せしむる見通しがあるのかどうか。戰災を受けた各地の大学に行つて見ますると、范々たる曾ての軍部の跡のバラツクの家に大学の門札だけは掛つておりますけれども、内容はまだいつのことやら、地区の人達が一生懸念で寄附金を集めておりますが、これはこういう経済状態で容易に集まらない。国立大学と銘を打ちながら、いつ国立の面目ができるのかということの見通しについてお伺いしたい。今度本年度からジユニア・カレツジ、二年制短期大学が大いに方々にできるようでありますが、これらについて文部大臣はどういう考えを持つておられるか。一体、新制度の教育が布かれまして、上の方の大きながん首、大学は沢山できました。下の方では一般教養のコースをずつと辿つて大学に行くようになつておりますが、本日の国の、曾て今までに非常に中堅になつて大事だと思われた專門学校が今度なくなつて二年制短期大学に転換するのでありますが、これを大いに充実しませんというと、各会社などは社長や取締役だけできて、現場監督、工場長という階級の者が非常に不足をして、一軒の家にしましても、一つの農家にしましても、或いは商店にしましても、同じような傾向ができて来るような教育制度になつてしまうのじやないかという心配がありまするので、この辺などの見通しを文相にお伺いしたいのであります。(拍手)
 その次は、教育者の優遇とか教育内容の充実というようなことは、文化国家建設のために非常に必要な問題でありまするが、今年度衡交付金のために、義務教育費国庫負担法というもの或いは定員定額制というようものが非常に問題となつて、そのために文部省では標準教育費の法案を作る、こう言われておるが、この標準教育費の法案の中に、高等学校或いは社会教育、幼稚園等も当然含むべきだと思うが、その点どうか。又この件は地方自治庁と非常に対立する傾向ができて来るのじやないか殊にそれが地方へ移管された場合に、地方庁と地方教育委員会と又ここで対立ができるじやないか、そういう点をどういうふうにしてコントロールされ、教育優先の実績を挙げられるつもりか、その点をお伺いしたいのであります。
 次は職業教育でありまするが、極く簡單に述べますというと、とにかく貧乏な日本の国の教育が、青年時代に至るまで職業技術或いは生産体験、そういつたような実業教育を非常に軽視する現在の教育制度でありまして、もうすでに学校の新制度も内容を検討すべき段階に来ておると思いますので、この辺において我が国の青少年の頃から貧乏に噛み付くような教育を打ち立てるような考え方を、文相及び総理大臣は全面的に推し進める考えはないかどうか。貧乏に尻込みするような国民ができ上つたときに最も我が国が心配になるのじやないか。貧乏に挑戰する勇気を十分に押立てるような教育をこの際やつて行かなければならない。そうするには、職業教育、生産の教育、実業の教育、技術の教育、体験の教育を小さいときからぶち込むことが最も大事だと思うのでありますが、予算を見ますと、職業教育には一銭の予算さえもないのであります。(拍手)こういう点について全国的に、而も岩本議員から言われたような高等学校の再編成というようなことによりまして、実業教育は農商工いずれも一つコースになつて端の方に片付けられておる、こういうようなことで我が国の実業というようなものが、将来青少年の間にはつきり入つて行くかどうか。このところを大いに考えて頂きたいと思うのであります。(拍手)
 次は農業対策について少しお伺いしたい。
 これは私の方の小川議員が農相に尋ねましたときに、農相は食糧対策につきましてこういうことを言つておられる。食糧の自給というのは、工業生産物の輸出によつて、外国よりその輸出した実力によつて食糧を輸入するのだから、これをも食糧の自給だという、全部じやないがこれをも食糧の自給だという、実に珍らしい意見だと私は思うのであります。森農相は農政家であるとおつしやいますが、珍らしい創案であります。こういうような世界に類のない農政上の新表現を用いられたのでありまするが、併しながら農民はこれについて納得をしないのであります。やはりこれは單なる物としての食糧対策であつて、農業政策じや決してないというふうに私も思うのであります。農民のためにのみ考えているのが農林大臣ではないかも知れませんが、併しながら農民、農村の上に足を置いて行かなければならない。森農林大臣の立場が、やはり何か單に消費者の立場というようなことを強く取入れての上の食糧対策の食糧自給論だというふうに考えるのであります。それらをいま少し明らかにして頂きたい。何故かといいまするというと、由来我が国の農民というものは、御承知のように国家主義、軍国主義等の犠牲となつて、富国強兵、殖産興業というような言葉の下に鞭を打たれて、できるだけの搾取をされて、曾ての軍国主義ができ上り、資本主義ができ上り、帝国主義ができ上つたとまで言われるのであります。こういう時に又そういうような傾向が起つて来るのではないかというようなことがはつきりこれで分るのであります。御承知のように農村は人口の溜池であります。こういつた窮乏の中に喘ごうとしている農民のために、はつきりとした態度を農相は示して頂きたい。
 次は、続きまして農村工業のことでありますが、これも先日農林大臣は、農村工業については、農村に余剩労力があれば適当の技術指導をするというように答えられております。これでは実に熱心でない証拠だと思うのでありまして、非常に落胆をしたのでありますが、いま少し農民の実態を見られて、そうして農村工業を如何にするかということを、ここではつきりと見当を付けて頂きたい。
 最後に、私は小水力の発電を全国に大いに起したらどうかということを考えている一人であります。奧只見のような、ああいう大発電を計画されておるようでありますが、あれは十年もかかると言われております。そういうようなものはさて措きまして、改良局あたりで計画している小さくて簡單にできる発電というようなものを、農業用は勿論のこと、地方の小工業、中小企業の助成とか、産業の復興とか、或いは生活文化の向上なんというようなものを目指して、全国的に至る所に小さな水力発電を沢山起して、直ちに本年度より利用できるというような行き方によつて、我が国の特殊な工業形態、特殊な農業形態というものを助成して行かれるというような熱心さはないのかということをお伺いしたい。大蔵大臣は特に建設費には大いに金を出す、こういうことを言われていられるが、国内至る所にこういう施設をしまして、国民全体が競い立つて、小さな中小工業を目途として我が国独得の方向に行こうというような気勢を起させるというようなお考えを、安本などでは計画をされないのかどうか。それでも尚、相変らずそういうようなことはしない、大資本、本企業で今後十年間もかかつて大いにやるのだというような行き方をされるのかどうか。それらについてお伺いしたいのであります。
 非常に急ぎましたが、以上で終ります。
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 参議院の性格をどう考えるかというお尋ねでありますが、二院制度を設けたゆえんは、国政を愼重審議するために二院制度があるのであつて、中立ということは、気持は分りますけれども、直ちにその言葉が当るかどうかということは私は疑問を持たざるを得ないのであります。飽くまでも二院制度を置くゆえんは、国政の愼重審議をする、そうして一院の過ちを直ちに他院がこれを是正するということができる愼重審議の機関と私は考えるのであつて、従つて中立云々ということは私において首肯できないのであります。又すでに議院政治がある以上は、政党の存在はこれは否むべからざることであり、すでに政党がある以上は、参議院においても、政党が自分と策を同じうする多数の人を得たいということは、これは普通であり、又自然のことであると思います。(拍手)
 次に私の施政の演説の中に教育に触れておられない、こういうお話でありますが、私の施政の演説において、すべての重要な問題を限りある時間のうちに含むのであり、すべて含有せしむるということはできないのであります。故に私は私の施政の演説の中には、教育費はこれだけ計上してある、財政において窮屈であるにも拘わらず、これだけの費用を計上している、而もこれは前年度よりも多いのであるということを示すために数額をお述べしてあるのであります。決してこれは教育に言及しないのではない。計数によつて政府の意のあるところを御承知が願えると思つて、特に施政の演説の中に言及いたしたのであります。
 その他は主管大臣からお答えいたします。(拍手)(「首相の演説に時間の制限があるのか」「怒りなさんな、まあまあ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(高瀬荘太郎君) お答えいたします。
 鈴木さんの只今の御質問の中に、現内閣が教育を余り重要視しないということをお挙げになつて、予算の上でパーセントをお挙げになりましたが、今まで二%ぐらいでずつと続いて来ておる、こういうようなお話がありましたが、これは事実と非常に相違しておりますので、御訂正を願いたいのであります。二十四年度は約五%でありました。併し二十五年度は約七%に急に上昇をいたしております。最近ここ十年或いはそれ以上以来、そこまで上つたことはないのでありますから、この点はよくお考えを願います。(「了解」と呼ぶ者あり)それから大学を余り作り過ぎておる、これが将来完成できるのか、こういうお尋ねでありました。御承知のような新らしい国家の再建、大きな高い目標を掲げた再建を図るにつきましては、何とかしてできるだけ日本の教育水準というものを高く維持したいということは、全く御同感だろうと思います。無論、今日の非常に窮乏した財政から申しますというと、相当多数の大学を完成するということはなかなか容易でないということも事実でありますけれども、今日のような衰弱し切つた状態を土台にして、そのできる程度の教育水準ということを考えることは、国家将来のためにとるべき策ではないと思うのであります。従いまして将来日本の経済が正常状態になつた場合にどの程度の教育水準の維持ができるだろうか、こういう大体の推定の下に考えるべきであると思うのであります。ですから経済状態が正常化されるまでの間は、自然そこに無理が当然ありますし、困難もあります。けれども、思い切つてこれを作つて置きまして、できるだけ工夫をしながら、我慢をしながらこれを育てて行つて、正常状態の下で完成するというのが私はとるべき策だと考えておるのであります。(「六・三制をもつち思い切つて実行すべきだ」と呼ぶ者あり)それから二十五年度の予算で考えて御覧になると分りますが、御質問にありましたように、大学というような上の方の教育だけを重要視して、下の方の余りそれ程重要視しないというようなことを言われましたが、これはまるで事実と反対であります。大学の予算につきましては、十数億しか遺憾ながら増額できませんでした。併し義務教育の予算につきましては八十億以上の増額ができておるのであります。ですから、その点はよきお考えを願いたいと思います。尚、短期大学についてどう考えるかという御質問でありましたが、私はやはり一つの学校の体制といたしましては、短期大学は特殊な地位を持つべきものでありまして、一つのはつきりした体系の筋の中からは外れるべきものであろうと思います。けれども、これはやはりお話にありましたような実情から申しますと、相当必要がありのでありますから、無論これの必要な程度の完成は必要とは思いますけれども、国立の大学といたしましては、これを建てない方針で行つております。
 次に標準教育費の問題とその内容についてのお尋ねでありましたが、この標準教育費を平衡交付金の中で如何に取扱うかということについて細かい検討をいたしております。近く法案としてこの国会に提出いたしますので、そのときに御承知を頂きたいのでありますが、御指摘になりました高等学校、幼稚園についての教育費と、それから小学校、中学校の教育費とは、地方教育費ではありますけれども、義務教育であるということと、そうでないということで、やはり相当の違いがあるということは認めなければならないかと思つております。併しできるだけ地方教育の水準が維持されるようにしたいという方針で以てこの問題を準備いたしておりますから、いずれ詳しくは御覽を頂きたいと思います。
 次に職業教育を重要視する必要があるというお話でありましたが、無論私も全く同感であります。現在の新らしい教育制度というものは、御承知のようにアメリカの制度を倣つたものでありまして、元来は今までよりも非常に職業教育を重要視する建前になつているのであります。で、今までやつておらなかつたような職業教育的な課程を小学校、中学校等にも取入れておりまして、今までよりも重要視することにはなつておるのでありますけれども、まだそれが十分に実際上は効果を挙げ得ないという状況にあります。ですから、これは今後教育の方法なり資料なりについて十分検討改善を加えまして、今の学校教育の制度でも今までよりも実業教育の振興ができるのであります。その効果を挙げるようにして行きたいと考えております。その外に学校教育以外で以てやはり職業教育、実業教育振興についての何らかの補助助成の方法を講ずる必要も無論あります。それについては相当の予算も必要なわれでありますが、現在それらはまだ十分にできておらないというわけで、これは今後できるだけ努力いたして参りたいと考えております。
 それから最後に、先程もお話がありました実業学校の高等学校への併合、総合化ということが、職業教育の見地から甚だ憂うべきであるというお話がありましたが、これは全く私も同感でありまして、先程も申しました通り、私としてはこれには賛成をいたしておりません。それで地方教育当局に対して、できるだけそういうことをしないようにということを指導してやつておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣森幸太郎君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。私の言葉の表現が不十分であつたので誤解を受けたようでありますが、今、日本は限りある国土と限りなく増加する人口に対しまして、どうしても食糧が現在不足いたしておることは御承知の通りであります。而もそれは今日占領治下の国民といたしまして、占領国から恩惠的に食糧を貰つておるわけであります。私といたしましては一日も早くこの食糧問題だけでも独立がしたい。この気持を持つて食糧増産の政策を進めて行かなければならぬと、かように考えるわけであります。即ち、日本内地におきまして生産し得られる全能力を発揮することは勿論であります。併しこの日本の生産力におきましても、相当これは限度に達しつつあると考えられるのであります。而も日本は非常な天災を受ける地でありまするが、昨年度の食糧全体、総額を何パーセントこれを向上して行くかということに努力をいたすことは勿論でありまするが、そのパーセンテージたるや、決して外国から輸入を受けなくても行けるということは、将来なかなか容易ならざる問題でありますので、国内の食糧を自給する力を全部、全能力を発揮することは、これは勿論であります。併し、どうしてもそれで足らんのであります。今は恩惠的な食糧を輸入しておるのであるから、この食糧の輸入よりも、むしろ、工業原料に乏しい日本としては、工業原料の輸入をいたしまして、そうしてその力によつて食糧を確保する、外国より確保する、こういうことを将来考えなければならぬのではないかと、こう思うのであります。それで食糧の自給度と申しますか、自給力と申しますか、そういうふうに広義に御解注願えれば、決してこれは、この私の申上げた表現が少し不十分であるから誤解を受けたようでありますが、そういう気持で私は食糧政策に臨んであるのでありまして、日本のあらゆる食糧をできるだけ増産するということは申すまでもなく第一の要件である、かように御承知を願いたいと存じます。
 尚、農村工業の問題につきまして、手間が余つたらそれを利用するというような不徹底なことを考えておる、こういう御質問でありましたが、申上げるまでもなく農村の労力というものは非常に繁閑の差が甚だしいのであります。忙しいときは一日十七時間も活動せなければなりません。又暇なときには殆んど仕事がない。これが今日の農村、殊に單作地帶における農村の労働の状況であります。こういうふうな状況でありまして、過去においてはともかくも、今日の経済界におきましては、到底こういうふうな状況では農村の経営というものはなかなか困難である。そこで、この余剩労力、いわゆる暇にあるところの労力をうまく周年的に利用して行く、ここに農村工業の狙いがある、かように考えておるのでありまして、暇があつたらそれを利用するという簡單なものでなしに、その農村に遊んでおる労力を有効に使う、而もそれは共同の力によつて、小さい力が集まつて大きくするということによつて、その地方の農村工業化を図つて行きたい。勿論地方々々によりまして如何なる工業をその森方に持つて行くかということは、その地方の四囲の環境によつて支配されるわけでありまするが、工業と申しましても何百種という大きい種類があるのでありまして、その地方に適切なる工業を取入れ、而もこの余剩労力を、繁閑の甚だしい農村の労力をうまく利用して行くということに指導して行きたい。かように考えておるわけであります。(拍手)
   〔国務大臣稻垣平太郎君登壇〕
#33
○国務大臣(稻垣平太郎君) 小水力の発電所の開発の必要なることにつきましては、鈴木議員と全く同感に存ずる次第でございます。どうしてもこの小水力の発電所の開発というものは、大発電所の開発と並行いたしまして至急に実施いたして行きたいものだと、かように存じておる次第であります。現在開発地点の申出がありますのは六十一ケ地点でありまして、大体これが三千三百八十キロワツト、一ケ地点当り五十五キロワツトに相成つておると存じております。そのうち今日まで許可を與えましたのが三十六ケ地点でありまして、二千二百十二キロワツトに相成つております。これは地方の農業協同組合又は産業組合から申請を受けまして、それぞれ地方の我々の方の通産局或いは県の当局の指導の下に、これが斡旋もし又促進もいたしておる、こういうような次第でありまして、これが今後の促進については我々尚十分の努力をいたしたい、かように考えております。(拍手)
#34
○副議長(松嶋喜作君) 本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○副議長(松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。時事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十七分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第六日)
ソース: 国立国会図書館
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