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1979/04/02 第91回国会 参議院 参議院会議録情報 第091回国会 予算委員会第一分科会 第4号
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1979/04/02 第91回国会 参議院

参議院会議録情報 第091回国会 予算委員会第一分科会 第4号

#1
第091回国会 予算委員会第一分科会 第4号
昭和五十五年四月二日(水曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   分科担当委員の異動
 四月二日
    辞任         補欠選任
     坂倉 藤吾君     大森  昭君
     佐藤 三吾君     瀬谷 英行君
     塩出 啓典君     阿部 憲一君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    主 査         桧垣徳太郎君
    副主査         山本 富雄君
    分科担当委員
                北  修二君
                玉置 和郎君
                林  ゆう君
                八木 一郎君
                佐藤 三吾君
                坂倉 藤吾君
                瀬谷 英行君
                阿部 憲一君
   国務大臣
       法 務 大 臣  倉石 忠雄君
   政府委員
       法務大臣官房長  筧  榮一君
       法務大臣官房会
       計課長      石山  陽君
       法務省民事局長  貞家 克己君
       法務省刑事局長  前田  宏君
       法務省人権擁護
       局長       中島 一郎君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局経理局長   原田 直郎君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   柳瀬 隆次君
   説明員
       自治省行政局選
       挙部選挙課長   岩田  脩君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○昭和五十五年度一般会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和五十五年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和五十五年度政府関係機関予算(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○主査(桧垣徳太郎君) ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。
 昭和五十五年度予算中、裁判所及び法務省所管を議題といたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。佐藤三吾君。
#3
○佐藤三吾君 大臣、この前の決算で問題に供しました登記所の合併の問題ですね、とりわけ九重町の問題、時間がたっておりませんからきょうはこの問題は出しませんけれども、ひとつぜひ慎重に検討して住民の納得できる処理をお願いしておきたいと思います。
 きょうは、地名総鑑の問題について、限られた時間ですが、質問してまいりたいと思います。
 まず、御存じのとおりに、悪質な差別商法として世論の指弾を受けております地名総鑑、これは五十年に判明して第一から現在判明しただけで第九を数えておるのでありますが、就職差別、結婚差別を求める企業と、それを金もうけにしようとしておる探偵社、興信所を主体にしておるものが中心になって行われておるようでございます。この悪循環を断ち切ることなしには、私はいまの実態の中から見ると、次々にまた第十、第十一というかっこうで出てくる危険性を持っておると思うんです。この辺の究明が、法務省も努力はしておると思いますよ。しておると思うのですけれども、なかなかぴしゃっとした手が打たれていない、こういう感じがするわけです。この対応が一体なぜきちんとできないのか、そこのところをひとつ明らかにしていただきたい。同時にまた、五十二年の十一月ですか、当時の鬼塚人権擁護局長が、奈良、大阪の視察の際に、これはやはり法規制をする以外に絶滅することはできない、早急にひとつ検討してそれを行いたい、こういう発言をしておるわけでございますが、いつこれを法制化するのか、まずそこをお聞きしたいと思います。
#4
○政府委員(中島一郎君) お答え申し上げます。
 法規制の問題でございますが、法規制と申します場合に、二つの規制の方法があろうかというふうに考えます。
 一つは、図書の出版そのものを規制するという方向でございます。そういう面につきましての規制につきましても、法務省におきまして関係省庁とも協議いたしましていろいろ検討を続けてまいったわけでございますけれども、事柄は、憲法の保障しております表現の自由、あるいは罪刑法定主義と申しましょうか、適法手続の保障というようなことに関連してまいりますので、いろいろと問題点を含んでおる非常にむずかしい事柄ではないかというふうに考えておる次第でございます。
 もう一つの規制の方向といたしまして、こういう図書を出版いたしておりますのは、大体において興信業者あるいは探偵業者と呼ばれる業者でありますので、そういう業者を野放しにすることなく、これをあるいは登録制にする、あるいは認可制にするというような方向が考えられないかということで、この方の検討もいたしておるわけでありますが、業者と申しましてもいろいろな業態がある。規模も一人ぐらいでやっております業者から非常に大規模な業者まであるということで、その実態がなかなかつかめないということで、この問題につきましても実態をきわめながら法規制の可能性を検討しておるというふうなことでございます。
#5
○佐藤三吾君 大体どの程度にめどを置いておるんですか。
#6
○政府委員(中島一郎君) どうも事柄が事柄でありますので、めどというわけにもまいりませんが、何か有効適切な方向を検討しなければならぬということで、総理府その他関係省庁とも御協議をして進めておるというような状況でございます。
#7
○佐藤三吾君 いまあなたの話を聞く範囲では、結果的には、考えておるのじゃなくて、悩んでおる。私が言うのは、鬼塚さんが三年前に現地を回った調査の中で記者会見で発表しておる内容を見ると、回ってみてはだ身に感じた、これは何としてもひとつ法規制をしなければならぬ、こういうことを言っておる。ところが、いまあなたの答弁を聞いておると、規制をするためにどうするんだと。たとえば現在ある探偵社を全部一遍調査してみてその調査を把握しておるのか、そしてその上に立って具体的にどうするんだというようなことじゃなくて、机上プランで悩んでおるというような感じにしかとれぬのです。それでは、その中で差別がどんどん行われておるという実態の中で、許すことのできない事態が引き起こされておるという現実ですから、そういう意味でやはり対応していかなければいかぬのじゃないかと思うのです。
 特に第八の地名総鑑の中では「同和地区地名総覧 全国版」というやつですが、これを見ると、差別部落の調べ方まで掲載して悪質化しておるという実態が出ておる。こういうようなことがどんどんやられていきますと、これは大変なことになる。いかに啓発であるとかそのことをやったぐらいでは問題の処理ができない、そういうような感じがするので、そういう姿勢では私は事態は一歩も前進しないと思うんです。大臣、こういう中で大臣のやっぱり決断が必要だと思うのですが、いかがですか、法規制について。
#8
○国務大臣(倉石忠雄君) その前に、大分の登記所のお話がございましたが、私どもといたしましても、ああいう行政をやってまいりますのにできるだけ地元の方々の御協力を得なければうまくいかないのでありますので、そういうことに最善の努力をするように命じておりますことを御報告いたします。
 それからいま人権擁護局長が申し上げましたけれども、法務当局といたしましては、地名総鑑を利用して同和地区出身者を不採用にしている企業があるではないかというふうなお話でございますが、こういうことに対して、やはり局長から申し上げましたように、やっぱり意識の問題でありますので、そういうことについてはひとつ関係省庁よく打ち合わせをいたしまして啓発活動を活発にして、その面から取り除いていくということをしんぼう強くやることが必要ではないか、こういうことで申し上げておるわけでありますが、なかなか地域的にも地域によっても大分事情が違うところがあるようでありますけれども、粘り強く私どもといたしましては啓発活動に最善の努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第であります。
#9
○佐藤三吾君 大臣、啓発活動をやっていないかと言えばやっておるわけです、現実に。しかし、なおかつそれができないというのは何かと言えば、後ほど申し上げますけれども、企業側が金を出してでも買うわけだ。そうして、しかもそういうことで売れるという見込みがあるから、今度はそれをつくって売ろうとする者が出てくるわけですね。この二つをどう規制するかということなしにはこの問題の解決はできないんです。しかも、探偵社、興信所というのがそういうことをやっておる。第八地名総鑑の中身を見ると、これらの資料は、同対審の審議会ですか、並びに各県の同対室の資料に基づいてつくったんだと、こうなっておる。だから、この審議委員かだれかがやっておるわけです、それを業者に。やっていなきゃこんなことはできない。こういうことがちゃんとこの第八地名総鑑の中に、冒頭に編集者の何というんですか、田中というんですか、あれがちゃんと書いています。だから、そこに規制を加えるというなら一つの登録制もいいでしょう。登録制をやることによってきちんとするのもいいでしょう。それからこういうものに限っての悪質な差別をするようなものについての規制という方法もあるでしょう。いずれにしてもそこら辺に大臣そのものが踏み切ってやるんだと、法規制をやるんだと、これはもう許しがたいと、こういう確信が、まず大臣自体が決断をおろして、初めて事務当局は悩みから解放されてやる方向に走ると思うのですね。いかがですか、大臣。――いま大臣に聞いたんだから、あなたじゃだめだ。
#10
○国務大臣(倉石忠雄君) いままで事務当局はこの道で大変苦労をしてきておりますので、それらの見解もお聞き取り願いたいのでありますが、さっき私もちょっと申し上げましたけれども、全国同一ではありませんで、地域によって大分状況が違っておることは御存じのとおりであります。私どもといたしましては、やっぱり同和関係の人に対して特別な差別感情を持つというふうなことは許されざることだと思うのであります。そういうものをどういう形で改めてもらうようにするかというところにねらいがあるわけでありますので、時によってはまだるいように感じられることもございましょうけれども、法規制ということよりも、その前にやはり啓発活動でできるだけの努力をしてまいることがいいのではないかと、こういうふうな考えでいま進めておるわけであります。その実際にやっておりますことを一遍ひとつ事務当局から聞いていただきたいと思います。
#11
○政府委員(中島一郎君) 法規制の点につきまして補充してもう少し申し上げさしていただきますが、業者の登録制の問題でありますが、私どもの方で調べましたところ、やはりこういう興信業者の実態というものは信用調査というものが中心になっておるというようなこともわかってまいりました。そうなりますと所管庁というものがほかに考えられるのじゃないだろうか。戦前には警察が所管をしておったというような例もあるようであります。登録制ということになりますと一種の業界法というようなことになろうかと思いますが、そういうことになりますと信用調査の分野を所管する役所というようなものが登録制を所管するということが最も適切ではなかろうかというようなことで、関係省庁にもわれわれの意見を申し上げておるというような段階でございます。
 それから図書の規制そのものにつきましては、法務省が中心になって検討いたしたわけでありますけれども、非常にむずかしい問題があることは先ほど申し上げたとおりであります。幸いと申してはなんでありますけれども、この図書の出版は昭和四十五年ごろから五十年ごろにかけまして相次いで刊行販売された。それが昭和五十年の末に第一のリストが発覚いたしましてからわれわれが解明に努めました結果、相次いで古いものが出てきたということでありまして、その後に発覚といいましょうか、発行販売をされたのは第七の図書のみでありますので、その後相次いで起こっておるというような状態でありませんために、われわれとしては、先ほど大臣も申し上げましたように、しばらくは啓発ということで努力してまいるというようなことも考えておるわけでございます。
#12
○佐藤三吾君 まず第一にいまあなたが言ったこの関係の何というのですか、所管省というのかね、探偵社、興信所の、これは一体どこですか、政府では。
#13
○政府委員(中島一郎君) 現在のところそれははっきりいたしておらないという状態でございます。
#14
○佐藤三吾君 これは、大臣、そういうところも問題が一つある。探偵社、興信所の所管省がはっきりしていない。だから実態を政府全体が把握していない。それをまずどうするのか、これは、法務大臣、あなたの考え方をまず聞きたいんですがね。これは当然法務省の所管か警察か何かの所管になるんじゃないですか、いかがですか。
#15
○政府委員(中島一郎君) まず私から答えさしていただきます。
 その所管庁の問題を含めまして、登録制と申しましょうか規制の問題を現在関係の省庁で協議をいたしておるという段階でございます。
#16
○佐藤三吾君 関係省庁はどこですか。
#17
○政府委員(中島一郎君) 総理府の同和対策室というのがございます。それから業界に関係のある省庁といたしましては、あるいは通産省、それから警察関係、あるいは地方自治体なども問題になってこようかと考えています。
#18
○佐藤三吾君 これはひとつ早急に結論を出してまず明確にしてもらいたい。よろしいですか。どうですか。
#19
○政府委員(中島一郎君) その方向で関係省庁と協議いたします。
#20
○佐藤三吾君 そこで、もう一つ先へ行きましょう、いまの問題は別にしてですね。
 第五の「日本の部落」というのが出ていますね。これは法務省は昨年の六月ごろから調査をして、そして十二月の七日に人権擁護局長通達を出していますね。ところが、衆議院の山花議員の質問に対して、あなただと思うのですけれども、六月ごろから啓発を行っておると、こういう言い方、答弁をしていますね、議事録を調べてみますと。ところが、これはうそじゃないですか。関係の企業の証言によりますと、確かに六月ごろ法務省から来て、そしてこういうものがないかという話はあったと。守秘義務を守るから、秘密にするから資料を出してくれと、こういうことは言われたけれども、しかし啓発行為は一切受けておりませんと。啓発行為を受けたのは、十二月七日以後に一月ごろから受けましたと、こう言っておる。あなたの衆議院におけるいわゆる答弁というのは、まさに証言の中から見るとうそになっておる。これは一体どういうことなのか。
 それから二十五社が購入企業としてあなたのところで把握をしておる。この二十五社の責任者の方の証言を見ますと、たとえば田辺製薬、これは四十五年十二月十五日に申し込んで、そして四十六年の一月に購入しておる。それからそのほか住友電気ですか、それから豊中信金、中国電力、ダイハツ工業、これらも大体四十七年ぐらいまでに購入しておるわけですね。こういう事実が出てきている。それをあなたの方が昨年の六月から調査を始めた。そして昨年の十二月の七日の日に中島局長名における通達を出して回収並びに指示をしている、こういう実態になっておるわけです。この中で、証言によりますと、ダイハツ工業では、この資料に基づいて職員を三名不採用にした、そういう証言をしています。こういう事実がいわゆる証言によると事実として「日本の部落」という差別図書によって差別が厳然と行われておる。そういう事態について一体どういうふうに理解しておるのか。いかがですか。
#21
○政府委員(中島一郎君) まず私が衆議院で申し上げたことでありますが、昨年の六月ごろに、これは東京に発行者がおりましてそこで全国的に販売をされたということがわかってまいりまして、全国各地に嘱託して購入企業と目される企業に対して調査を始めたわけであります。われわれの調査と申しますのは、ただ調査をするだけではなくて、調査をいたしまして図書を回収いたしますにしましても、あるいは事実の供述を求めるにいたしましても、やはりこの図書のいかに悪質なものであるか、あるいはこの同和問題というものがいかに重要な問題であるかというようなことを何と申しましょうか啓発しながら任意の協力のもとに供述を得、図書の回収をするということでありますので、われわれは調査即啓発であるというふうに考えておるわけでありまして、昨年の六月ごろから購入企業に対して調査とあわせて啓発を行ってきたということを申し上げたわけであります。
 調査の結果調査が一段落いたしましてほぼ事件の全容が解明できました段階におきまして、この種の事件は法務局だけでなくて関係省庁と共同して啓発を行うということをいたしておりますので、その段階としての啓発を十二月以後に行ったというふうに御理解いただきたいわけであります。一応それで終わらせていただきます。
 もう一つは何だったですか……。
#22
○佐藤三吾君 「日本の部落」で現実に企業が差別採用をやっておるわけだ。
#23
○政府委員(中島一郎君) 「日本の部落」によって差別採用をしたということでありますが、こういう図書を購入して所持しておるわけでありますから、それは採用の際に利用したのではないかというような推定も私どもいたしております。結局、「日本の部落」その他の図書を発行、購入するということをわれわれが悪質な行為であるということで取り上げますのも、それが就職差別につながるということのためでありますから、そういうことの根絶を期して調査、解明、啓発に努めておるわけでございます。
#24
○佐藤三吾君 あなた、いま、推定じておるということを言いましたね。ダイハツ工業の当事者は証言しておるわけだ。あなたのところは調査はダイハツ工業もやったわけでしょう。調査をやったというのは何ですか、そういう不採用をやったということも、それも調査、把握できなかったんですか、推定してという言葉を使ったけれども。そういう感覚のところに問題がありはしないですか、人権局長として。あなたがいま言うように悪質だと、それでしかも不当な差別だと、だからこれはやっぱり何としても啓発してなくしていかなきゃならぬということを言っておる。しかし、現実にダイハツは不採用をしたということを人事当局者は言っておる。それを推定したというのはどういう意味ですか。
#25
○政府委員(中島一郎君) 調査の内容でございますので、特に個々の会社名を挙げてどうということはいかがかと思って一般的に申し上げましたわけで、どの企業が就職差別に利用したとかしないかということを申し上げるのではなくて、少なくともこういう図書を購入して所持していたということは部落差別あるいは就職差別ということにつながるおそれのある悪質な事犯であるということで申し上げたわけでございます。
#26
○佐藤三吾君 大臣ね、もう現実にそういうことであなたのところは十年間放置したために、ダイハツ工業では事実として三名この資料に基づいて不採用にしたということを証言しておるわけですね。証言しておるわけです、当事者が。こういう事実も挙がってきておる。そういう中で、先ほどの人権局長のような答弁では、私は事態が深刻であると思うんですね。問題は、啓発をやる、啓発をやるけれども、しかしもうそれでは事態が解決しないということを証明しておると思うんですよ。そうじゃないですか。こういうふうな事実がたまたまダイハツでは証言をした。しかし、中国電力であるとかその他二十五社の企業がそれをやっていないというところはまだつかんでいない。そういった事実をつかんで正していくのが法務省の立場じゃないんですか。だとするなら、これに対してどういう措置をとったのか。私がいま記憶する限りでは、十二月七日に人権局長名の通達を出した、そんなことで済まされる問題じゃない。たとえば日経連、経団連その他日本の企業を呼んで、それに対して大臣という直接そういうことのないように訴えるとか、もしくは大臣談話を出すとか、五十年のように各省通達を出すとか、緊急とるべき措置は幾つでもあると思うんですね。そういうものについてはだに感ずるような施策がとられていない。ここに私はこういう事態が広がっておるという原因があると思うんですよ。法制規定も大事です。しかし、当面行政的にとり得る措置は何ぼでもある。それをやっておらぬ。しかも、さっき人権局長の言うように、もうこれは四十四、五年ぐらいに出している。もう山は越えたんじゃないか、もうこれ以上出ないのじゃないかというような感覚を持っている。そこで様子を見るというのがいま局長の答弁の大要だと思う。こういうことではこの問題は一向に解決できないと思うんですが、大臣、どういう決意でこの事態に対して臨んでおるのか。現実にもう差別は行われているわけだ。いかがですか。
#27
○国務大臣(倉石忠雄君) いまお話しのようなことを前提にして考えてみますと、こういうものを発行いたしておる企業名など公表しまして、そして世論に訴えるという方法も考えられないわけではありませんけれども、法務省のずっと言っております要は間違った意識の問題でありますので、これはやはり粘り強く啓発活動をしてまいる方がいいのではないか。私どもはそういう差別意識というものを余り感じておらない人々に一体今度厳しくこういうことになるのはどういうことだというふうな新しい意識を持たせるということも警戒しなければならぬことでありますし、まずもちろん私どもはいまのやり方そのままが果たして効果の上がるやり方であるかどうかということについては各方面の御意向を徴したりまた関係省庁の検討をさらにしていくべきであると思いますけれども、ただいまのところでは、やはり粘り強く啓発活動をして、そしてとにかく差別意識を持つということは大変な社会悪であるということに徹底してもらうように努力をすべきときではないかと、こう思っているわけであります。
#28
○佐藤三吾君 私は啓発努力をしていくことを否定するわけじゃない。それは結構です。しかし、現実にもうこの図書によって就職差別が行われてきておる、その事実も挙がっておるわけですね。それでは、この就職差別された者は一体どうするんですか。もう現実に差別をされて、就職が不採用になった者に対してどう国は責任を持つんですか。そういう切実な問題なんですよ。だから、私はそういう啓発努力をするのは結構、しかし、同時に、そういう悪質な差別図書を三万も四万も出して、購入する企業は、これは率直に言ってもう内容を知っとって買いよるわけだから悪意と見なければいかぬ。この者をあなたたちがかばうという理由がどうしてもわからない。この悪意に対して、悪徳行為に対して、どうして法務省として毅然として措置しないんです。当然のことじゃないですか。現実に三人の人間がこのことによって差別を受けておる。わかっただけで三名ですよ、ダイハツだけで。中国電力もあるでしょう。豊中信金もあるでしょう。次々二十五社というのが全部、しかもそれはほとんど大企業じゃないですか。信越化学――この前まで経済企画庁長官をやっておった大臣が社長をやっておる信越化学、ここもやっておるじゃないですか。どうしてこういった問題を明らかにしないんですか。いかがですか。――大臣に問いとるんだ、あなただめだよ。
#29
○政府委員(中島一郎君) まず私から答えさしていただきます。
 就職差別ということになりますと直接の所管は労働省ということになろうかと思いますが、労働省では大変この点の解消に力を入れられまして、身元調査をしただけでもその企業に対しては新たに人を職業安定所によってあっせんしないというような制裁も事案によってはとるというようなことをおっしゃっておるようなことでございまして、だんだんにその点の認識が企業の間に正しく深まってきておるというふうに考えております。
 これも労働省が推進しておられるわけでありますけれども、企業内に同和問題の推進委員というのを設けられまして就職関係の差別をなくすという方向に進んでおります。法務省において取り扱いました事件などにつきましても、現実に就職を差別をされたということで法務局におきましていろいろと企業側を啓発、説得をいたしました結果、企業の方が悪かったと、それじゃ私の方で改めて雇用いたしましょうと、その人を雇用いたしましょうというようなケースになる場合もあるというわけでありまして、だんだんにいい方向に向かっておるというふうに私ども思っております。
#30
○佐藤三吾君 あんたね、人ごとみたいなことを言いなさんな。労働省はそういうことをやっておることは知っておる。しかし、あなたのところはこれを調査して把握したら、なぜこういう悪質な企業については発表しないんですか。そして、公表して、公表することによって労働省は対応ができるでしょう。あなたのところは、いま大臣が言うように、公表はいかがかと思うというような言い方をしよるじゃろう。しかし、現実にもうこういう不採用という差別を行っておる企業については、なぜ堂々と公表して世論の指弾を受けさせるような措置をとらないんですか。そういうことを自分の中で隠しておって労働省云々なんて言い方はしなさんなよ。大臣、どうですか。−大臣に聞いておるのだ。あんた、だめだよ。
#31
○国務大臣(倉石忠雄君) 事務当局の方がそういう点について私より実情をよく承知いたしておりますから、局長の申し上げることは私ども自体の責任でございますから。
#32
○佐藤三吾君 大臣ね、私も時間がゆっくりあれば、また決算委員会みたいに二時間も三時間もあれば、じっくりやりますよ。もうあと時間がないから、私は大臣に決断を求めておるわけです。
 こういう企業については公表するのかしないのか。これは悪意で、四万も五万も出して買うということは、そのことをやろうということは、中身を知っとって買うんですからね。こういう悪徳企業についてはきちっとする、公表する、これについて個別指導をやる、こういった点についてはっきりしなさいよ。
 それからもう一つ、こういう事態がどんどん行われておるということは、それはあなたは啓発指導をやると言うけれども、啓発指導でやるという期間中に、そのために差別的な採用で落とされておる事実があるわけだから、これを放置するわけにいかない。だから、そのためには一日も早く法規制をつくり上げる、この決意を私はいまあなたに聞いておるんです、大臣に。いかがですか。
#33
○国務大臣(倉石忠雄君) これは本当に大事な問題でありますし、同じ国民の中で一部の人を差別待遇するというふうなことは全く残念な社会悪であることは申すまでもありません。そこで、関係省庁ともなお打ち合わせまして、どういうふうにしてまいるのが妥当であるかということについて検討を進めてまいりたいと思っております。(「法務省の権限でやればいいんだ」と呼ぶ者あり)
#34
○佐藤三吾君 これはね、いま坂倉委員も言っておったように、法務省の権限でできるわけだ。できる部分はひとつ早急にやる、そういうふうに理解していいですね、いかがですか。
#35
○国務大臣(倉石忠雄君) これは先ほどもお答えの中に事務当局から申し上げましたけれども、関係する省庁が多いわけでありますから、十分政府としてそういうことをそういう人々にも意見を徴して対処してまいりたいと思っております。
#36
○佐藤三吾君 それでは、探偵社、興信所の実態把握についてはいつまでにやりますか。
#37
○政府委員(中島一郎君) 法務省として探偵社あるいは興信所に関係する部面と申しましょうか面は、いわゆる人権侵犯事件として上がってまいりました事件を通じて実態を把握するということでありますので、やはり全面的な実態把握ということになりますと、これは先ほど申しました省庁などで行うべきものであるというふうに考えておるわけであります。私どもの方は、日々取り扱います事件を通じて興信業者の実態の把握に努めておると、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
#38
○佐藤三吾君 それでは、時間がありませんから、最後に要求しておきますが、第一から九までの地名総鑑の法務省で把握しておる実態を資料としてぜひ出してください。
#39
○政府委員(中島一郎君) 従来法務省で把握いたしました実態につきましては、調査の終了いたしました段階で、国会の国政調査に基づく資料の要求には、守秘義務の関係から申しましても、また国益という面から申しましても、お断りをする理由はないということで応じておるわけでありまして、今回もそういう御要望がございましたら、提出するという方向で検討さしていただきます。
#40
○主査(桧垣徳太郎君) 佐藤君に申し上げます。
 ただいまの資料要求は、予算委員会の理事会において協議をいたします。
#41
○佐藤三吾君 終わります。
#42
○主査(桧垣徳太郎君) 以上をもって佐藤三吾君の質疑は終了いたしました。
 次に、坂倉藤吾君の質疑を行います。坂倉藤吾君。
#43
○坂倉藤吾君 私も、佐藤委員に引き続いて、同和関係について省の態度等についてお聞きをいたしていきたいと、こう思うのですが、ただいままでの佐藤委員とのやりとりを聞いておりますと、差別に対する認識自体が法務当局にきわめて欠如している、こういうふうに総括せざるを得ないんです、残念ながら。口先で幾らきれいごとを言われましても、それを本当になくしていくという姿勢がきわめて乏しい。ただいまの第八の地名総鑑の問題と、あるいはこれ九まで出ておるわけですが、この本がどれだけ悪書であるのか、こういう関係について認識が不足しているのじゃないのか、こう思うんですよ。たとえば、第八の総鑑の中で、著者はこう言っているんですよ。
    本書をご利用下さる方に(序に代えて)極秘のお取扱いを。
  就職や結婚に際して、身分差別をすることが、今日大きな社会問題となっていることは、
 皆さんが十分ご承知のことと存じます。
  部落解放同盟の解放運動の展開と、内閣同和対策審議会の同和政策などにより、同和教育が進められる一方、戸籍閲覧・交付の制限、履歴書などに本籍地詳記の省略など、差別に対する防御策がとられ、採用面接時に住所を尋ねたり、家族の職業を尋ねたりする事が禁じられ、不用意に話題がこれらの点に触れると、理由がどのようなものであったとしても、差別の意図があったものと解釈され、厳しい制裁を受けるのが現状です。
  しかし、大部分の企業や家庭に於いては、永年に亘って培われて来た社風や家風があり、一朝一夕に伝統をくつがえす訳にはまいりません。と、これはきわめて重要な問題ではありませんか。「(序に代えて)」だけの話ですよ。こういう中身の書籍が出回っておって、そうしてそれに対する感覚が、単なる啓発活動だけでできますか。やってはならぬということを承知の上でこれは出しているんですよ。どうなんですか、これは。これは、大臣、悪質な社会犯罪じゃありませんか。あなた方が社会犯罪だという感覚をお持ちになっているのかどうか、いまのやりとりを聞いていましてきわめて疑わしいと思うんです。いかがですか。
#44
○国務大臣(倉石忠雄君) いまお話しの総鑑等は、私は、ことさら同胞の間にこういう行為が行われますことは憎むべき社会悪であると思っております。これをどのように改めてもらうかということについてやはりみんなが真剣にならなければいけないと思っております。
#45
○坂倉藤吾君 みんなが真剣にならなきゃならぬって、あたりまえの話なんですよ。ところが、あなたは法務大臣なんでしょう。法務大臣なら、みんなと一緒でいいんですか。法務大臣は、法務大臣としての権限、責任、こうしたものが果たされていかなきゃならぬのじゃありませんか。現実に差別が行われるということは一体どういうことなのか。加害者と被害者があることなんですよ、現に。それに対して法務当局としては承知をしながらほうっておくんですか。そこの問題を明確にしてくださいよ。
#46
○国務大臣(倉石忠雄君) 決してほうっておくわけではありません。先ほど来お答えいたしておるように、関係省庁が寄り寄り集まりてこの対策を検討いたしておるということを申しておるわけであります。
#47
○坂倉藤吾君 それじゃ、もう一遍繰り返して聞きますが、私は悪質な社会犯罪だと、こう断言をするんです。あなたはどうお思いになりますか。
#48
○国務大臣(倉石忠雄君) 私が申し上げておりますのは……
#49
○坂倉藤吾君 いや、あなたの判断だけでいいです、判断だけで。
#50
○国務大臣(倉石忠雄君) 社会悪であると、これは改めてもらわなくちゃならぬと、こう考えております。
#51
○坂倉藤吾君 それじゃ、犯罪ではない、こういうことですか。犯罪ではないというふうな認識ですかと言うんです。
#52
○国務大臣(倉石忠雄君) その辺のところは私つまびらかにいたしておりませんのでお答えがむずかしいと思いますが、社会悪であることは間違いありません。
#53
○坂倉藤吾君 現にこの書籍が活用されて、採用されるべき者が採用にならなかった。こういう証拠が歴然としているのに、加害者、被害者の関係が明確に出てきておるのに、これが犯罪じゃないんですか。
#54
○国務大臣(倉石忠雄君) それらのことにつきましては事務当局からお答えいたしますけれども、とにかくそういうことのないようにということで啓発活動を法務省といたしましては努力してやっておるというふうに御理解願いたいと思います。
#55
○坂倉藤吾君 これから起こらないように啓発をし防止をしていこう、これはわかるんです。現に発生をしたものについては一体どうなるんですか。犯罪はすべて起こさないようにしていこうって皆さんがやっているのじゃありませんか。それでも犯罪は起こる、一般的にですよ。ところが、そういう犯罪があった場合に、加害者、被害者が出てきて、加害者についてはこれは法に照らして罰則が出てくるのじゃありませんか、審査をしまして。どうなんですか。
#56
○政府委員(中島一郎君) 大臣の言われた意味はこうであろうかと思うわけでありますが、非常に悪質な行為を犯罪と呼ぶならば、そういう意味では犯罪にも比すべき事柄ではあろうと。しかし、犯罪と刑罰というふうに言われておりますように、犯罪には刑罰がつきものであるという意味での本来の意味での犯罪ということで言うならば、これを犯罪と呼ぶには疑問があるのじゃないかと。しかし、犯罪にも比すべき社会悪であると、だからその絶滅を期していきたいと、こういう意味であろうかと思っております。
#57
○坂倉藤吾君 大臣、いまの答弁でいいんですか。
#58
○国務大臣(倉石忠雄君) よろしいと思います。
#59
○坂倉藤吾君 人権擁護にいま直接携わる職員数というのはどれだけあるんですか。昭和四十年から今日までにこれに携わる職員というのはどれだけふえましたか。
#60
○政府委員(中島一郎君) いわゆる人権職員としております者は、現在、法務局、地方法務局に二百二名ということになっております。それ以外に各支局において専任ではございませんけれども仕事の一部として人権事務を所掌しておる職員が支局二百五十四につきましてそれぞれ一名ないし数名おるということになっております。四十年以後の増加の人数は、ちょっと私手元に数字を持ってまいりませんでしたが、約十数名あるいは二十数名増加しておるのではなかろうかというふうに考えております。
#61
○坂倉藤吾君 人権擁護委員というのはこれは二万人の配置ができるというふうに聞いているんです。この二万人の根拠というのは一体何なのか。
 それから現実にいま一千百名と、こういうふうに聞いております。この辺、仮に二万人置けるとして、いま一千百名にとどまっているというのは一体どういう理由なのか、これを聞かしてください。
#62
○政府委員(中島一郎君) 人権擁護委員法において最大限の人数を二万名というふうに定めておるというふうに考えておりますが、現在はそのうちの約一万一千名余りが実際に定員化されておるというわけでございます。それは、各地の需要と申しますか、実情によりまして逐次予算定員化していっているという実情でございます。
#63
○坂倉藤吾君 啓発啓発ということで大臣盛んに言われましたね。法務省としての同和対策にかかわる柱が本来啓発にある、こうなっておるんですが、私は少なくとも人権擁護に直接携わる人々、これはただ単に申請があった、相談があった、こういうことに対処するだけではなくて、むしろその職務からいって啓発に最前線に立たなきゃならぬ、そういう人たちではないのか、こう思います。
 さらに、また人権擁護委員の問題につきましても、これは現実に擁護委員になっている方々のいろいろな資質の問題もあります。質の問題もありますが、現実問題としては、人権を守る立場から充実されなきゃならぬ、こういう課題だと私は思うんです。ところが、最大二万名配置ができるのに、その啓発活動に重点を置かれておる立場のところでなおかつそれが千百名でとどまっている。ここのところは、この省を担当する大臣として一体どういうふうにお考えになるんですか。あなたが言われている啓発に重点を置いてやっていますよと、こういう立場からいって陣容というのは一体どうなっているんですか、これを明確にしてください。これは大臣から。
#64
○政府委員(中島一郎君) 現定員が一千百名というふうにおっしゃいましたが、一万一千名というふうに御理解いただきたいと思います。
 確かに、おっしゃいますように「人権擁護事務の担当職員の数というものは、その職務の重要性あるいは事件数ということから比較いたしますと、必ずしも十分とは言えない面があるというふうに考えております。また、人権擁護委員の数も必ずしもこれで満足しておるわけではございませんで、厳しい財政事情のもと、また定員削減のもとにおきましてその充実については努力をいたしておるわけでございますが、逐年改善されてきておるというのも事実でございます。しかし、これで決して満足しておるわけではございませんので、なお一層その充実強化については努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
#65
○坂倉藤吾君 大臣、あなたは大臣に就任されまして、昭和四十年の同対審答申、この答申がいま一番底辺になってそしていろいろな事業が進められてきておる。法律的には特措法ができました。しかし、基礎になっているのは同対審答申ですね。この同対審答申というものはごらんになりましたか。
#66
○国務大臣(倉石忠雄君) 法務省に参るようになりましてからいろいろな報告がございましたけれども、その報告の中でございました。全部まだ読了はいたしておりません。
#67
○坂倉藤吾君 全部読まれなくても、具体的に法務省関係の分野についてはごらんになられたんでしょうね。
#68
○国務大臣(倉石忠雄君) まだ全部ほかの局のなどもそう読了はいたしておりませんが、大体は理解しておると思います。
#69
○坂倉藤吾君 大体ごらんになっているような程度だから、先ほどから繰り返すようなあなたの姿勢、こういうことになるとぼくは思うんです。私は、もっと毅然たる態度で差別に取り組む大臣の姿勢というものが出てこなきゃおかしいと思うんですよ。この同対審答申に法務省関係の分野というのはきわめて少ないんです。幾日もかかるものじゃありませんよ。しかも、肝心なところはごくわずかです。いいですか、いま私は人権擁護に直接携わる職員の問題あるいは人権擁護委員の問題を言いましたが、人権対策についてこう言っているんですよ。
  法務省及びその出先機関である法務局・地方法務局では「同和対策長期計画」に定められている計画の内容を
云々というところがありますが、具体的課題としては、まず「人権擁護制度組織の確立」ということで、
  基本的人権の擁護を法務省の一内局である人権擁護局の所管事務とし、しかも民事行政を主掌する法務局および地方法務局に現場事務を取扱わせている現在の機構は再検討する必要がある。戸籍や登記事務を扱っていた者が人権擁護の職務に配置されるという組織にも不適当なものがある。
  また、基本的人権の擁護という、この広汎で重要な職務に、直接たずさわる職員が全国で二〇〇名にも達せず、その予算もきわめて貧弱なことが指摘される。
これが第一なんです。第二は、
  人権擁護委員の推薦手続や配置されている現状や人権擁護の活動状況等からみて、その選任にはさらに適任者が適正に配置されるよういっそうの配慮が要望される。
  実費弁償金制度等についても、職能を十分にはたせるだけの費用が必要である。
と、こう出ています。これは人権擁護関係だけなんですよ。さらに、「同和問題に対する理解と認識」の問題で、
  委員の同和問題についての理解と認識は必ずしも十分とはいえない。
と。いいですか、携わる人権擁護委員や職員でもまだまだその理解が十分とは言えない。研修や講習等によってこれは強化されていかなきゃならぬだろうと、こういうふうに言うていますね。そしてさらに「人権擁護活動の積極性」がうたわれているんです。
 こういうことをなぜあなたが目を通してその立場に立っての検討を指示なさらないんですか。
#70
○国務大臣(倉石忠雄君) ごもっともでありますが、私どもといたしましては、法務省としての任務の重さを皆が痛感いたしておるわけでありますから、その職制について全力を挙げるのは当然なことでありますが、私どもといたしましては、当面総理府を中心といたしまして関係省庁がいろいろ先般のこの法律の延長等についても努力をいたしておるわけでありますので、担当者といたしましては、人権局長を中心にいたしまして省内においてもあとう限りの努力をいたしておると私は見ております。
#71
○坂倉藤吾君 私は、あなたとやりとりをしていますと、まるっきりのれんに腕押し、さっぱり具体的なものはおっしゃらない。これは一般質問のときもそうでした。そういう態度自体が、今日、差別をあってはならぬあってはならぬと言いながら容認してきている、こういうふうに私はとらえるんです。差別が現にあるのにそれを容認するということは、差別行為なんです。私はこういうふうに指摘をせざるを得ませんよ。もっとおっしゃっているあなたの姿勢が具体的に前進するようにきちっとやってくださいよ。
#72
○政府委員(中島一郎君) いまの問題につきましては、大臣の御指示を受けまして、人権擁護局におきましては、人権擁護事務担当職員の増員、あるいは人権擁護委員の増員、さらには同和関係予算の増額ということに従来も努めてまいったわけでありますけれども、今後も一層積極的に取り組んでまいりたいと、このように考えております。
#73
○坂倉藤吾君 法務関係としての人権を守っていく組織のあり方についても当然検討されて充実されていく、そのことでなければならぬと、こう私は思いますから、ぜひそれは肝に銘じてやってもらいたいと思います。
 ところで、倉石大臣、前大臣からお引き継ぎになった大臣の立場から言いますと、大変お忙しくて法務省にかかわる同対審答申も十分に目を通す暇がなかったと、こういうふうに言われるわけですから、大変御無理なところもあろうと思うのですが、やっぱり現地を視察をされて、あなたの目で一体どういう実態にあるのか、こういうことを把握されることが第一だろうと私は思うのです。いかがでしょうか、大臣は、現地に行かれまして視察をされるお気持ちというものはお持ちになっていますか。
#74
○国務大臣(倉石忠雄君) 古井前法務大臣からのお話でございまして、古井さんは大阪の方を御視察なさった。私も、時間の許す場合がありましたら、都合いたしましてやはり現地の実情等を見せていただきたいと思っております。
#75
○坂倉藤吾君 きのう、総理府の長官も、国会が終わったら早速私は現地視察に臨みたいと、こう言って言明をされておりました。ぜひひとつ大臣も実行してもらいたいと思います。
 ところで、いま大臣からお話がありました古井前法務大臣ですね、大阪の地区視察をされましたときに、現地の記者会見の中で特措法の問題に触れられて、特措法の延長が三年であったことについては、それは不足している、改めてその方策なり法律なり、これをやっぱり考えていかなきゃならぬと。これはまさに附帯決議そのものの表明であったと、こういうふうに私は思うのですが、この表明については御存じでしょうか。
#76
○国務大臣(倉石忠雄君) 同和問題の解決を図るために必要な事柄につきましては、先ほど来申し上げておりますように、法務省、総理府を中心にいたしまして関係省庁においていろいろ寄り寄り話し合いをいたしておるわけでありますが、その結果で進めていくべきものだと思っております。
#77
○坂倉藤吾君 どうも歯切れが悪いんですが、あなたのいままでの答弁ぶりから見ていくと、それ以上やりましても同じことの繰り返しになると思うのでやめますけれども、私は、いまあなたが古井大臣の視察の問題に触れられて言われておりますから、当然古井大臣が視察の上に立って記者会見をされたことも引き継がれておる、こういうふうに理解をするんです。したがって、引き継がれておればその意向を受けて事務当局でも明確にそのことの確認の上に作業がされているであろう、こういうふうに期待をしたいんですが、この辺は、局長、いかがですか。
#78
○政府委員(中島一郎君) 古井前大臣に随行いたしました前人権擁護局長から聞いておりますところでは、古井大臣は大阪のある地区を視察されまして、この地区は自分の知っておる鳥取の地区などに比べると整備がおくれておる、整備ができていない、何らかの措置が必要であろうというようなことをおっしゃたというふうに聞いておるわけでありまして、未整備の部分があるということは私どもの方で関係の省庁に御連絡をいたしております。
#79
○坂倉藤吾君 局長ね、現地で新聞記者の皆さんを集めてそうして話をされているんです。それは記事になって出ているんです、ここに持っていますけれども。その記事になって出ておることの中で一番の柱は、私がいま申し上げましたように、特措法延長に絡む衆議院での三つの附帯決議がございますね。その三つの附帯決議の第一項そのものずばりだと。現地を自分の目で見てみた、見てみた結果が、特措法の三年では処理ができないだろう、したがって法の問題も延長を前提にして考えていかなきゃならぬ、こういう立場の発言というものがお話をされている。あなたのいまの立場からいくと、いろいろな縛りがあってなかなか物の言いにくいところというのはぼくも承知しております。承知していますが、具体的に引き継がれておるという話をするとするならば、その辺のポイントを外して答弁されるというのはちょっと問題がある、こういうふうに指摘をせざるを得ません。したがって、当時の記者会見その他からいきまして、その古井大臣が行かれて話をされたことをすべてあなた方が引き継いで、それを基礎にしつつ法務省の態度というのは倉石大臣のときにさらに実現に向かって進んでいく、こういうふうにならないといけないと思うんです。もう一辺、私は、そういうふうに進んでいっていただけるのかいただけないのか、ひとつきちっとしていただきたい。
#80
○政府委員(中島一郎君) そのときの御発言につきましては、私が聞いておりますのは、未整備の部分がある、物的な面も大事だが基本的なことも考えなきゃならぬだろう、基本的な面というのは教育、啓発の問題である、これはまさに法務省の所管、所掌であるので、この点について法務省としては全力を挙げなきゃならぬ、こういう御発言であったというふうに聞いておりますので、私どもその指示どおりに全力を挙げてまいっておるというような状態でございます。
#81
○坂倉藤吾君 そこのところは押し問答になりそうですね。自民党の与党の関係の決定が大分あなたの方へも影響を及ばしている、こういうふうに言っておかざるを得ないんです。
 そこで、絶えず啓発の問題が、これは先ほども触れましたが、これが出ているんですが、あなたの方の啓発の理解は、たとえば人権侵犯事件が発生する。そうしますと、その発生した事件、これは申告、相談、いろいろな形でありますね。そうしますと、その関係者についての啓発、いままでの答弁の中ではその範囲を超えていないんです。私はそれでは不十分だと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
#82
○政府委員(中島一郎君) 法務省の仕事から申しますと、具体的な相談事件あるいは侵犯事件というものに関連いたしましてその関係者を啓発するということがまず先行いたします。しかし、それとあわせて、一般啓発と申しましょうか、一般国民を対象にした啓発教育というものも必要であり非常に有意義であるわけでありまして、われわれといたしましても、そういう個別的な啓発に加えまして一般啓発についても努力をいたしております。
#83
○坂倉藤吾君 まあ努力をしているということですから含まれておるとは思うんですがね。
 総理府が五十一年から五十二年にかけて一年間かけてやった意識実態についての調査報告書がある。これは五十三年の九月に発行されておりますね。これの「むすび」のところでこういうふうに記載していますよ。「特別対策として事業を行う場合には、その趣旨を地区住民だけでなく、地区外住民に対しても周知させる必要があろう。」と、こういうふうに結んでいますね。これは事業推進に当たっていろいろな問題が発生をするんで、そのことに触れてのまとめなんですがね。少なくとも差別をなくしていくというこういう観点は、これは国民全体に常に啓発を必要とするもので、そして啓発の一端を受け持っている法務当局は、もちろん発生した差別事件について的確に措置をしていく、この姿勢が必要である。ところが、そういう事件を起こさせない防止の対策というものはこれまた法務省として積極的に取り組んでいかなきゃならぬ分野だと、こう思うんですよね。そうなりますと、冒頭に申し上げましたように、法務当局の姿勢というのはまだまだきわめて弱い。そうして、一般のところまで啓発活動を広げていくというのは、これは実はうちの所管じゃなくて総理府ですよ、各省庁ですよと、こういう姿勢が見受けられるんです、現実の問題としましてね。したがって、私は法務当局として人権を擁護するという大きな立場からいきますと、それに見合うような組織体制というものが、先ほども言いましたが、当然検討されて、そうしてそういう組織が充実していって、その充実と同時に啓発活動というのが着実に地についてくる、こういうふうになっていかないといかぬと思うんです。現実と照らしますときわめて大きな差があると私は思うんです。この差を、特措法の期間が三年延長になりましたが、もう一年間経過してきてあと二年残っている、事業の方はそれで何とかしていこうと、こうやって努力をしている。その姿勢はわかるのですが、少なくとも総合的な観点からいくと、いまの啓発は文部その他全般的にわたりまして社会を構成しているもろもろの問題に関してあるわけですから、したがってそういう組織づくりに向かって一層速度を速めてもらわなきゃならぬし、具体的にいま検討検討で時間をかせいでおってもらったのではこれはとうてい先行きが心配でならぬ、私はこういうふうに思うのです。したがって、これはくどいようになりますけれども、もっとその辺積極性をきちっと出してもらえるのかどうか。そして、それに見合ったような組織の充実ということについて、これは関係する財布を握っている大蔵省の問題もありましょうし、あるいは行政管理庁の問題等もありましょうし、幾つかあるでしょうけれども、少なくとも同対審答申の報告に基づきまして、これを唯一の根拠にして主張する法務当局の旗印ができ上がっていると思っているんです。その旗印は少なくとも実行していくのが国民的課題であり、政府、地方自治体の責務だと、こうなっているわけですから、これやってもらわなきゃいかぬと思うんです。その辺の決意をもう一遍、大臣、さらには局長の方にも重ねてお聞きしたい。
#84
○政府委員(中島一郎君) 従来申し上げてまいりましたように、この同和差別は許しがたい社会悪である、その根絶を期して私どもは全力を挙げて取り組んでおるわけでありますが、ただいま御指摘のありました一般啓発につきましても、あらゆる広報手段を通じまして、座談会、講演会、あるいは新聞、テレビ――私も着任早々にテレビ対談に出演いたしたようなこともございましたが、そういうことでやっております。組織の充実、予算の増額等につきましても、現下の情勢のもとで許される最大限の充実、増額をお願いしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
#85
○坂倉藤吾君 大臣はどうですか。
#86
○国務大臣(倉石忠雄君) 人権局長から申し上げたとおりであります。
#87
○坂倉藤吾君 少し違った質問になりますが、曹洞宗の町田さんの世界宗教者平和会議の差別発言問題、これは衆議院でも取り上げられておるところですが、これの法務当局としての把握、あるいはその結果、それからどう対処するか、これを一遍きちっとしてもらいたいと思います。
#88
○政府委員(中島一郎君) 昨年の九月プリンストンにおきまして町田宗夫がただいま御指摘のような発言をしたということを知りまして、私どもといたしましては、人権侵犯事件に該当するかどうかということの情報の収集に努めておるというような実情でございます。
#89
○坂倉藤吾君 衆議院でも、人権侵犯事件として該当するかどうか検討中だと、それからもう一つは現在情報の収集中だと、それからこの発言というのは理解不足に基づく発言だから啓発に努力すると、こう三点を答えていますね。まあ参議院だから後の方は省略されたのかどうか知りませんけどもね。少なくとも、検討中ということ、情報の収集中ということ、これはあなた方が現実に差別発言が行われたその差別をなくしていくというんなら、もっと時間を速めて、そうしてきちっと掌握するという態度をとってもらわなきゃおかしいのじゃないかと、こう思うんですよ。あなた方の検討中、それから情報収集中、こういうのは、非常に長期にわたりますね。さっきの地名総鑑も一緒なんですよ。先ほども言いますように、差別ということがいかに社会的な罪悪であり不正義なのか、こういう観点から言ったら、もっと機関の総動員を、あなたのところになければ警察その他もあるわけでしょう、所管は違うか知らぬけれども。そこに手伝いをしてもらう。そこまでの決意をしてやっていくということです。しかも、この町田さんの問題というのは、現代の日本を構成している地位の問題から言えばきわめて影響力の強い大変なところですね。そういう社会の一つのトップに立つような人の差別発言だけにより重視しなきゃならぬ。それに対処する姿勢はもっと毅然たるものでなきやならぬ、影響が大きいだけに。そのことを私は指摘したいと思います。
 私は機会を改めてあなた方にこの問題についての姿勢と言いますか結論その他についてもまたお聞きをいたしますが、ぜひいま申し上げましたようなそういう姿勢を貫いていただく、そういう立場でこの問題にも対処していただく、こういうことを約束してもらいたいと思いますが、どうですか。
#90
○政府委員(中島一郎君) 人権侵犯の疑いがあるということになりますれば、私どもは人権侵犯事件として立件いたすわけでございますが、その前段階としていろいろ情報を収集するという段階がございます。何分この事件は海外で行われた発言でありますので、まずその発言の事実があったかどうかというような問題を確認することから時間をとりましてかなりの時間を要したというようなこともございますが、いろいろと情報を収集いたしまして、発言の事実の有無、あるいはその発言の真意、その周囲の状況、あるいは発言のいきさつというようなことについての情報を収集しておるようなわけでございますが、ただいまおっしゃいましたように、確かにその発言の場といい、発言者といい、影響力の非常に大きな事件でございます。また、微妙な問題もいろいろ含んでおりますので、十分に解明に努めてまいりたい、このように考えております。
#91
○主査(桧垣徳太郎君) 以上をもって坂倉藤吾君の質疑は終了いたしました。
#92
○主査(桧垣徳太郎君) この際、分科担当委員の異動について御報告いたします。
 本日、佐藤三吾君、坂倉藤吾君及び塩出啓典君が分科担当委員を辞任され、その補欠として瀬谷英行君、大森昭君及び阿部憲一君が分科担当委員に選任されました。
#93
○主査(桧垣徳太郎君) 次に、阿部憲一君の質疑を行います。阿部憲一君。
#94
○阿部憲一君 私は、まず、公職選挙法に関連しまして二、三の問題点を当局にお伺いしたいと思います。
 まず、さきの新聞の報道によりますると、昭和四十九年七月の参議院選挙で、某議員派の選挙違反事件で、某被告に対しまして連座制が適用される地域主宰者と認定され有罪となったと、こう報道されているわけですけれども、しかし、連座制の規定は当選議員の任期内にのみ有効とされているために、この事件に関連しまして連座制が適用される余地はほとんどない、こう思われるわけですけれども、これはこの裁判が長引いたためと思いまするけれども、この辺についての御見解を承りたいと思います。
#95
○政府委員(前田宏君) ただいまお尋ねの件は、先般判決がありましたいわゆる地域総括主宰者に関します有罪判決のことであろうかと思いますが、御指摘のように第一審で判決がありますまでに約五年余りを経過しております。また、当該事件につきましては、被告人の方から控訴の申し立でがございまして、まだ第二審の裁判所に係属中という状況でございます。
 まあこれに限りませんわけでございますが、いろいろと選挙違反事件で公判が結果的に長引いておる、そのためにいま御指摘のように連座制の規定が実質的に機能していないと申しますか、そういう事態にありますことは、私どもも承知しておるわけでございますが、それぞれ、事案が複雑でありますとか、関係者が多数でありますとか、いろいろな事情が基本にありまして、事件自体にそういう長期化する要因を含んでいると言えば含んでいるわけでございますが、一面、検察官側といたしましても努力はいたしておりますけれども、なおそういう長期化を防止するために努力すべき点もあろうかと思います。また、裁判の当事者のことでございますので、私どもの立場からとやかく言うことはいかがかと思いますけれども、被告人、弁護人側の方の御事情と言いますか、それもいろいろとございまして、それやこれやが重なりまして裁判が長期化しておるというわけでございます。まあ全部が全部長期化しているわけではございませんで、大半はわりに短期間に裁判が終わっているものが多いわけでございますが、一部目立ちます事件等につきましてそのような状況にございます。
#96
○阿部憲一君 いまお話があったと思いますけれども、裁判が長引いた原因ですね、いまおっしゃったように思いましたが、一部聞き取れませんでしたから、もう一度……。
#97
○政府委員(前田宏君) いろいろな原因が競合していると言えば競合しているわけでございます。先ほど御指摘の事件につきまして申しましても、事案が大変複雑でございますし、関係者も多いということがまず挙げられると思います。それ自体いま申しましたように内容が複雑でございますので、事件自体に長期化する要因があると言えばあるわけでございます。
 それから事実関係といたしまして金品を供与したり供応したりということが確定されます以外に、総括主宰者である、あるいは地域主宰者であるということが争点と申しますか問題になるわけでございまして、それ自体についての立証活動が検察官側、また被告、弁護人側から行われるわけでございまして、それにも時間を要するというようなことがあるわけでございます。
 先ほど申しましたが、事件そのものについて長期化の要因があるほかに、訴訟の進行につきまして関係者の努力が必要であろうと。その点につきましては、検察官側としてもなお努力を要する点があろうと思いますし、また、被告、弁護人側のことでございますから私どもとして直ちにどうこうと言いかねるわけでございますが、被告、弁護人側の方におかれてもいろいろとお考えいただく点があるのではないかということでございます。
#98
○阿部憲一君 裁判が長引いたということについていま御説明がありましたが、この種の裁判は、本件だけでなくて、非常に長引くような原因をたくさんに包含しているのじゃないかと、こう思います。したがって、いまお挙げになったように事案が非常に複雑だったとか関係者が非常に多いというようなことは恐らく今後も想像されるわけですけれども、この辺についてやはりそのようにお考えでしょうか。
#99
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 裁判所の側から公職選挙法違反事件の審理が遅延している原因について考えているところを申し述べさしていただきたいと思います。
 ただいま前田局長もお述べになりましたが、それに加えまして、公職選挙法違反事件、ことに百日裁判事件の審理が長期化する原因としましては、まず第一に、事件と申しましてもよろしゅうございますが、起訴される訴因の数が多いということ、それから第二番目に、通常の事件に比較いたしますと被告人の側において事実を徹底的に争うというふうなケースが多いということ、第三に、検察官及び弁護人の訴訟準備に事案の関係上多大の時間を要するということ、第四に、いま幾つか申し上げましたようなことからまいりますわけでございますけれども、公判におきまして多数の証人を取り調べなければならないということ、第五に、弁護人等の都合によりまして集中的に期日を指定することがなかなかむずかしいということ等が長期化の原因として挙げられるかと思います。
 そこで、こういった公職選挙法違反の事件、ことに百日裁判の事件の審理の促進を図るためにどういうふうなことを考え、また、どういうふうにこれを進めていくべきかということになるかと思いますけれども、これはただいま申し上げました遅延の原因とうらはらをなすようなことにもなりますけれども、促進を図るためには、まず百日裁判に適したように訴因をしぼるということ、次に検察官及び弁護人において審理開始後は集中的に審理が進められるように徹底した事前準備を行うということ、さらに期日をできる限り連続的に開延するということ、そしてその各期日においては争点を中心としたむだのない審理をすること等が必要だろうかと思われます。これらのことはいずれも百日裁判事件の審理促進を図るために必要であるということで、昭和四十二年の十二月に最高裁、法務省、最高検察庁及び日弁連の間で協議、確認されましたいわゆる四者間の申し合わせにすべて盛り込まれている事柄でございます。
 最高裁といたしましては、まず裁判所内部において会同、協議会等の機会を通じ、この四者間の申し合わせの趣旨を徹底するための方策などについて協議をしていただくとともに、法曹三者協議会等の場において、訴訟関係人、特に弁護人の御協力を得られますように四者間申し合わせの再確認とそれぞれの内部における周知徹底を求めるということで百日裁判事件の審理促進を図るための努力をしてまいっております。
 百日裁判事件だけでなく他の事件についても同様でございますけれども、特に百日裁判の事件にありましては訴訟関係人の御協力をいただくということが不可欠であるというふうに存じます。今後とも四十二年の四者間の申し合わせの線に沿った訴訟関係人の協力が得られるように裁判所の立場においても努力してまいりたいと、こう存じております。
#100
○阿部憲一君 ぜひ御協力をそれぞれが裁判所側の対処することにつきまして今後ともよろしくお願いしたいと思います、促進方について。
 これまでに連座制の適用によって失格した事例がありましたならばちょっとお知らせ願いたいのですが。
#101
○説明員(岩田脩君) 連座制によって当選人が無効になったケースでございますが、国の選挙、つまり国会議員の選挙に関して申し上げますと、たしか昭和三十二年ごろに一件あったというように記憶しております。
#102
○阿部憲一君 非常に適用がなかったということでありますし、また、失格した事例が、記憶程度のことでございますか、何か私らもあったような記憶があるのですけれども、これについてもう少し実情を御記憶でしたらば御披露願いたいと思います。
#103
○説明員(岩田脩君) ただいま申し上げましたケースは、昭和三十年の総選挙で、福島一区で当選されました鈴木議員が、その出納責任者の買収罪によりまして昭和三十二年の三月に当選無効の判決が仙台高裁であり、同年七月二十三日にその件に関する上告が取り下げられましたために判決が確定し、失格したというケースがあったと思います。
#104
○阿部憲一君 これと同じような例でお伺いしたいのですが、戦後から今日までみずから選挙違反に問われた当選国会議員はどのくらいいるか、おわかりでしょうか。また、同時に、そのうち当選人の選挙犯罪によって当選が無効になった例あるいはまた件数がおわかりでしたらお知らせ願いたいと思うのですが。
#105
○説明員(岩田脩君) 残念ながら何人起訴されたかということはちょっと私どもの方ではわかりません。
 それからその結果当選人本人の選挙犯罪によりまして当選が無効になった国会議員のケースはないと思います。
#106
○阿部憲一君 いまお伺いしましたこの二つの点について、議員の任期が近づいたために失格あるいは無効にならなかった事例と件数、これはどのくらいありますかどうか、お伺いしたいと思います。
#107
○説明員(岩田脩君) 大変不十分なお答えで申しわけございませんが、無効となったかどうかということは把握する場合もありますが、それが先ほども申し上げましたように当選した国会議員本人が本人の選挙違反によってどれだけ起訴されてその結果がどうなったかというところまで把握しておりませんので、果たしておっしゃるような任期の関係でというようなことがあったかどうかはちょっとお答えいたしかねます。
#108
○阿部憲一君 いまお伺いしているような件はどこでもって扱っておられるか、それはおわかりでしょうか。こういうことを取り調べあるいは統計をとっているというようなところを。
#109
○説明員(岩田脩君) どういう人がどういうかっこうで起訴されたというかっこうの資料は、これは私どものところに入ってきませんけれども、制度の上では、判決がありますと一通り私どもの方に情報は入ってくる形になっております。したがって、私どもの方の資料整備が十分であればあるいはお答えできた部分があるのかもしれませんけれども、そのことによって失格したという部分はわかるようにしておりますけれども、有罪になったが失格しなかったという部分はちょっとわからないのでございまして、その点はおわびをさしていただきとう存じます。
#110
○阿部憲一君 いまの件については裁判所の関係ではおわかりになりませんでしょうか。
#111
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 裁判所の関係におきましては、私ども刑事局でございますが、行政訴訟の関係もございますので、大変申しわけございませんが十分に把握しておらないという状況でございます。
#112
○政府委員(前田宏君) 関連いたしまして、私どもでわかっている限度でございますが、起訴した数ということになりますと検察当局ということになるわけでございますが、お尋ねのように戦後からとなりますと、大変古いこともございまして正確な数字がわからないわけでございます。とりあえず昭和四十二年以降でございますと、国会議員の方で御本人が選挙違反として起訴された方はつい最近の一例があるだけでございます。また、一方、国会議員の選挙に関しまして連座規定に該当するということで起訴された者が八名ございます。
#113
○阿部憲一君 公選法二百五十三条の二のいわゆる百日裁判ですね、この規定はこのような事態の発生を防ぐことから立法されたのではないかと思いますが、同条の立法趣旨についてお伺いしたいと思いますが。
#114
○説明員(岩田脩君) 御指摘の条文は、昭和二十七年に議員立法によりまして公職選挙法が大改正をされた際に挿入された条文でございまして、その趣旨は、当選人の当選に影響を与えるような刑事事件の処理を速やかに行う、そしてそのことによりまして選挙の結果を早期に安定させようとしたものであるというように承っております。
#115
○阿部憲一君 公選法二百五十三条の二の第一項ですね、この第一項の裁判の実情についてお伺いしたいと思いますが、いままで百日以内に確定した事件はどのくらいあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
#116
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 公職選挙法二百五十三条の二において百日裁判と百日をうたっておるわけでございますけれども、これは一審、二審、上告審、各審級においてそれぞれ事件受理から判決まで百日と、こういう規定の趣旨でございます。そういうことを前提といたすわけでございますけれども、百日以内に裁判が確定した事件につきましては、昭和五十年から五十四年まで最近五年間に言い渡しがありました事件は、これはいずれも第一審で確定した事件でございますが、合計二十五件ございます。
 これを選挙別に見ますと、県議会議員選挙の関係が三件、市議会議員選挙の関係が四件、区議会議員選挙の関係が一件、町議会議員選挙の関係が十三件、村議会議員選挙の関係が四件となっております。
 なお、付随して申し上げますと、確定とまではまいりませんが、それぞれその審級におきまして百日以内に判決がなされた件数を御参考までに申し上げたいと思いますが、昭和五十年から五十四年までの五年の間におきまして、第一審の関係では四十六名、控訴審の関係では三十名、上告審の関係では七十一名がそれぞれ各審級における百日以内の処理を終えております。
#117
○阿部憲一君 いまお話がありましたうちで上訴審にかかっているのもありますけれども、これは大体いま御報告の数は上訴審で判決が決まったわけでしょうか、それとも、まだそのまま延びているのも相当あるわけでしょうか、係属しているのが。
#118
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) ただいま申し上げましたのは、それぞれの審級において百日以内に判決がなされた数を申し上げました。そのなされた判決についてどれだけのものがそれぞれの審級において確定したかという数字をちょっと手元に用意してございませんので、申しわけございません。
#119
○阿部憲一君 以上いろいろお伺いしましたけれども、選挙裁判の長期化の原因は何か、先ほどもちょっとそのことについて最初にお伺いした事例については、事案が非常に複雑だとか、あるいは関係者が多かったというのでございまするが、このようなことが原因のすべてであるかどうか、もう一度お伺いしたいと思いますが。
#120
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 先ほど申し上げましたことに大体尽きるというふうに存じます。
#121
○阿部憲一君 この種の事件の審理の促進につきまして先ほど御意見もありましたが、裁判所それからまた法務省についてはどのような方策を講じられているのか、また、今後どのような方策を講じていこうとしておられるか、もう一度お伺いしたいと思います。
#122
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 先ほども申し上げましたとおりでございますけれども、法の趣旨に従って審理の促進を図るということを十分念頭に置きまして、昭和四十二年の四者間申し合わせにはかなりきめ細かく具体的な方策が盛り込まれておりますので、これを十分一つ一つの事件について徹底していくということがこれからも続けらるべき大事な点であるというふうに存じます。
#123
○阿部憲一君 大臣も同じようなお考えだと思いますが、念のために伺っておきます。
#124
○国務大臣(倉石忠雄君) こういう選挙事件というのは、その多くは、御存じのように事案が非常に複雑でございまして、関係者がまた多数あります組織的な買収事件だと存じます。そういう事件それ自体に公判が長期化いたします要因をはらんでいるとは思いますが、他方、法曹三者において公判の進め方等について必ずしも見解が一致しない場合がございます。そういうことで、迅速な審理につきましては十分な理解が欠けているなど、訴訟関係者側にも長期化の要因があるのではないかと思う次第であります。これをどのようにできるだけ早く縮めることができるかということにつきましては、ただいま各党においてそれぞれ選挙法等の改正についても検討しているようでありますが、そういうところの欠陥を除去することに努めてまいらないと、やはりこの種の案件というのはなかなか時間がかかるのではないかと、そういうふうに理解しております。
#125
○阿部憲一君 この問題につきまして自民党の選挙制度調査会の選挙制度小委員会で、選挙違反に関する訴訟をスピードアップさせるために、国会議員選挙違反をめぐる裁判に限って第一審を高裁からスタートさせる二審制を取り入れる構想について検討しておられるというように承りましたけれども、このようなことにつきまして何か法務省としてはお考えがおありでしょうか、もしあったらばお聞かせ願いたいと思います。
#126
○政府委員(前田宏君) ただいまお話のございましたように、自民党の関係調査会の中で選挙法違反事件の裁判を促進するという観点からいろいろ御検討がなされていることは、承知しておるわけでございます。その中で、いま仰せになりましたように、いわゆる二審制と申しますか、そういう考え方が出ておるようなわけでございますが、私どもといたしまして、先ほど来お話のありますように、この種の事件の公判が早く進められるということは喜ばしいと言いますか好ましいことだと思っておりますが、いろいろと法律的な面、まあ極端に申しますと憲法の問題もないわけではないと思いますので、その点は直接的には内閣法制局の所管であるかもしれませんが、私どもといたしましても、その点につきましてはなお検討を要する点があるのではないか、しかし全く憲法違反だというほどのこともないのではないか、その辺あいまいでございますが、そのような考えでございます。
#127
○阿部憲一君 大臣の立場から、いまの私の質問につきまして何か御意見があったらお伺いしたいのですけれども。
#128
○国務大臣(倉石忠雄君) 私、いま政府側でありますので、与党の当該政調会の検討について批判がましいことは申し上げかねるのでありますが、私は裁判を迅速にしてもらうということについて国会において検討していただくのは大変結構だと思いますけれども、ああいう事案だけに限って二審制というものをとる、そういう点からもいろいろ法律的にまだ検討を要する面が多々あるようでありますので、党としてもこの国会中にこれをまとめるというふうなところまではいっておらないのではないかと存じております。
#129
○阿部憲一君 公選法の百二十八条に規定されています戸別訪問禁止の違反事件につきまして、実態はどのようになっているか、お伺いしたいと思いますが。
#130
○政府委員(前田宏君) いわゆる戸別訪問事件の事務処理状況でございますが、最近の例で申しますと、昨年十月の衆議院議員総選挙におきましては、検察庁におきまして合計四百五十九人を受理いたしまして、その処理といたしましては、七人を公判請求、二百八十二人を略式請求ということで起訴しております。また、さかのぼりまして昭和五十二年七月施行の参議院議員通常選挙におきましては、合計四百二十人を受理し、うち三人を公判請求、二百六人を略式請求という形で起訴しております。また、昨年の四月のいわゆる統一地方選挙でございますが、その際には合計五百四十九人を受理いたしまして、四人が公判請求、二百三十六人が略式請求というような処理になっております。
#131
○阿部憲一君 公選法の百二十八条のいわゆる戸別訪問禁止の違反事件で下級裁判所でもって違憲判決が出されていますけれども、どのような内容なのか、お伺いしたいと思います。
#132
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 最高裁刑事局で知り得た限りにおきまして、下級裁における戸別訪問禁止規定を違憲とする判決は、昭和四十三年から本年三月までの間に八件出されております。その内容はそれぞれ事案に応じて判断がなされておるわけでございますけれども、要するに選挙運動としての言論の自由を最大限に尊重されるべきである、これを制限するについては選挙の自由と公正を確保する上に必要最小限度の範囲内でのみ許されるべきものである、そして戸別訪問禁止は合理性の認められる最小必要限度の範囲を超えている、したがって違憲であると、こういうことに大体要約されるのではないかというふうに思います。
#133
○阿部憲一君 これらの事件に関連しまして、憲法と表現の自由との関係から戸別訪問禁止規定について再検討するお考えがあるかどうか、お伺いします。
#134
○説明員(岩田脩君) 戸別訪問の禁止を解除したらいいではないかということにつきましては、従来からいろいろ議論があるわけでございまして、たとえば政府に設けられました選挙制度審議会におきましても過去何度も議論が行われてきたところでございます。たとえば、一定の範囲内だけに限ってでも自由化をしたらどうかという御意見もあったわけでありますけれども、反面、この戸別訪問が買収なんかの機会になるということ、また、候補者の側で必要以上に競争を余儀なくされるということ、また、さらには、選挙人の方もこれは大変だというようなこと、そんないろいろなことを挙げまして絶対に反対であるという御意見も非常に強く今日まで推移したような経緯がございます。
 戸別訪問の禁止につきましては、わが国の選挙制度の中で非常に長い歴史を持つものでございますし、また、戸別訪問ということを考えます際に人の家を訪ねるということだけを切り離しては議論できない側面もやっぱり持っておりまして、たとえば、そういう場合に文書の頒布というものを一体どういうように考えるのかとか、それから団地などで戸別訪問をやるということになりますれば、恐らく何チームもの方が一斉に各棟に散って戸別訪問をやるのでしょうけれども、そういう場合に、たとえば「ただいまから何々でありますが戸別訪問をしますのでよろしく」というような放送をするであろう、そういうことをどう考えるかといったような一連の問題を持っておりまして、ただ単に戸別訪問が家の中に入るか入らぬかというだけのことではないようにも思います。
 そういう問題もございますし、さらにはこういうことをいまのような候補者それぞれが中心になって選挙運動をやる制度の中でやってもいいものか、選挙がもっと政党本位の形になっていくことを考えるべきなのかといったような、選挙制度全般のあり方ともかかわる側面を持っておりますので、なお今後各方面の御意見を伺いながら検討さしていただきたいと考えておる次第でございます。
#135
○阿部憲一君 そうすると、戸別訪問禁止規定につきましては、直ちにいま再検討するというような段階ではないわけですね。
#136
○説明員(岩田脩君) 判決の関係で申しますと、先ほどのように第一審につきましては幾つかの違憲判決があったわけでございますけれども、また、判決全体としては、どう言いますか、違憲という態度が固まっているとも思えませんし、上級審の問題もございます。それから制度そのものがただいまお話を申し上げましたように深く選挙運動全般にかかわってその性格を変えてしまうほどの大きな内容を持っておりますので、なお慎重に検討さしていただきたいと考えております。
#137
○阿部憲一君 次に、問題を変えまして、登記のことについてちょっとお伺いしますが、登記の統合整理について、大臣は、所信表明の中で、
  第三は、民事行政事務等の充実についてであります。
  一般民事行政事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化の傾向にあります。これに対処するため、かねてから種々の方策を講じてきたところでありますが、今後とも人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織・機構の合理化、−事務処理の能率化・省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民の権利保全と行政サービスの向上に努めてまいる所存であります。
と、こう表明されておりまするけれども、具体的にはどのような計画で進められておりますかお伺いします。
#138
○国務大臣(倉石忠雄君) 法務局は、御存じのように、近年所掌事務は登記事務を初めといたしまして各事務が量的に非常に逐年増大いたしますとともに、質的にも複雑多様化の傾向にございますので、法務局における人員不足は深刻な問題となっております。したがって、当面の対策といたしましては、増員措置を講じてまいりますとともに、施設を整備すること、事務を合理化すること、機械化事務の部外委託及び職員の待遇改善等の諸施策を強力に推進することによりまして国民の行政需要にこたえてまいりたいと努力をいたしておる次第でございます。
#139
○阿部憲一君 登記の統合整理については、昭和四十六年に法務大臣から諮問がなされ、昭和四十七年に民事行政、審議会答申が出されておりますが、この答申の内容はどのようなものか、簡単に御説明願いたいと思います。
#140
○政府委員(貞家克己君) 答申の理由、結論というようなものをかいつまんで申し上げますと、答申は登記所の現状認識につきましておおむね次のようなことを申しております。
 全国にわたって多数分散配置されている登記所は行政機関のあり方としてきわめて不合理なものとなっている。そこで、これを現在の社会経済情勢に即応するように整理統合して登記事務の近代化、合理化を図る必要があるけれども、一方、登記所は地域住民の利便と深いつながりがありますとともに、明治以来地域住民に親しまれてきた古い歴史を持っておりますので、画一的にこれを整理するのは必ずしも相当ではないであろう。したがって、この数年間においては、地域住民の利便に十分な配意をしながら、特に整理統合の必要度の高い小規模の登記所、それから交通至便地域にある登記所、さらに同一市区町村内にある登記所というようなものについて整理統合を進めるのが相当であるという結論を出しまして、その具体的な基準、つまり事件数でございますとか距離でございますとか、そういったものにつきましても一応の基準を示しているわけでございます。
 また、「実施するに関して留意すべき事項」といたしまして、答申は、地域の実情に十分配意すること、登記所の施設環境の整備に努めること、地域住民が登記所を利用しやすいものとするための措置を講ずることが必要であるというようなことを述べているわけでございます。
#141
○阿部憲一君 この答申に基づいて具体的な計画が立てられて実施しているように伺いましたが、この実施状況が現実にどうなっているか、わかりましたらお伺いしたいと思います。
#142
○政府委員(貞家克己君) 昭和四十六年度から申し上げますと、昭和四十六年度から本年の四月一日現在までの間におきまして、合計五百六庁を整理いたしております。毎年多少の増減はございますが、四十六年が四十一庁から出発いたしまして、五十年が八十九庁、最後の五十四年度におきましては二十七庁というふうに減少いたしております。
#143
○阿部憲一君 庁の整理については、何といいましょうか、大分熱心に御実施なされたようでございますが、これにつきまして住民から反響は相当あったと思いまするけれども、特にいま問題になっているような事件がありましたらお知らせ願いたいと思います。
#144
○政府委員(貞家克己君) 先ほども申し上げましたように、住民に密着すると申しますか、住民に多年親しまれてまいりました登記所でございますから、地域住民の方の愛着と関心というものは非常に強いわけでございます。しかしながら、私どもといたしましては、民事行政の適正化あるいはサービスの内容の充実というようなことをるる御説明申し上げまして、できる限り十分な理解を得てやっているつもりでございます。したがいまして、また、もし整理いたしました後は、いわばアフターサービスと申しますか、整理をさせていただきますけれども必要に応じて登記相談には伺いましょうとか、いろいろ施設はこういうふうにりっぱに整備いたしましょうというようなお話を申し上げてやっているわけでございます。それで、過程におきましては、いろいろ統合されては困る、昔からの歴史が古いこの登記所を持っていかれるのは困るんだという御意見もございますけれども、できる限りの理解を得るだけの努力をいたしまして、統合いたしましてからは、特段、これを復活をしてほしいとか、あるいは反対運動のようなものが自後にまで尾を引いているというケースは幸いほとんどございません。
#145
○阿部憲一君 それは非常に結構なことだったと思いますが、それだけに御苦心なさったと思いますが、答申の中にあります「登記所の施設環境の整備に努め、地域住民が登記所を利用しやすいものとするための措置を講ずること」とありますが、この点については特にどのような改善をなさいましたか。
#146
○政府委員(貞家克己君) まず、庁舎の点でございますけれども、先ほど申しました五百六庁整理をいたしたわけでございますけれども、受入庁、つまりその庁を受け入れた庁が三百六十三庁でございます。これは一庁だけでなしに二庁、甲、乙という庁を丙に統合するというようなケースもございますので三百六十三庁ということになっているわけでございますが、その統合に当たりまして庁舎の新営あるいは増築をいたしましたものが二百四、五十庁に上っております。でございますから、全体に比べますと、新営の率と申しますか、統合すればやはりりっぱな庁舎で、そこで二庁分あるいは三庁分の仕事をしてもらうということになるケースが多うございます。また、新営の際には、これは地元の御意見として、最近の交通事情でございますから、駐車場の敷地を十分とってくれと、こういう御要望がございました場合に、これはできる限りの努力をいたしているということ。それから先ほど大臣のお答えにもありましたように、増員とあわせて事務の合理化、機械化ということを進めているわけでございますけれども、この機械、たとえば複写機というようなものを配置するにいたしましても、件数の少ないところではコストの関係もございましてそれほど高性能の大規模な機械を入れることができない。しかし、統合して事件数が多くなればまた基準に合致して、機械の導入についても便利な機械と言いますか高性能な機械を入れるというような点におきまして私どもは配慮いたしておるつもりでございますが、それ以外に、そういった庁舎、施設環境というようなもの以外の点につきましても、地域住民の方が統合後の登記所をより一層利用しやすくするための諸方策をきめ細かくやっているつもりでございまして、たとえば先ほど申し上げました定期的に出かけていって登記相談をする、あるいは謄抄本の交付について予約制をとる、あるいは申請書用紙を市町村役場へ備えつけておくというようなこと、これは統合の際いろいろ御相談を申し上げまして、そういったいわばアフターサービス的なこともやるように努めている次第でございます。
#147
○阿部憲一君 よくわかりました。今後の統合整理を進められるに当たりましても、十分国民の意見を聞いて民意が反映されるような方向でお進め願いたい、このようにお願いしてこの登記所の問題については一応打ち切りたいと思います。
 次に、政府の第五次定員削減計画でもって平均は四・二%削減を打ち出しておりますけれども、法務省関係ではどのようになっているか、また法務局職員はどのようになっているか、お伺いしたいと思います。
#148
○政府委員(貞家克己君) 最近の厳しい財政事情等にかんがみまして、行政の簡素化、効率化、定員配置の合理化等を一段と推進することによりまして行政コストの節減に努めるという大方針が出されているわけでございまして、これにつきましては、法務省はもちろん、法務局におきましてもこれに協力をいたしているわけでございます。
 そこで、私、全体的なことを申し上げる立場にはないのでございますけれども、第五次定員削減計画の初年度である昭和五十五年度の法務局の定員削減数は百十一人という予定になっておりまして、これは五十四年度の法務局の定員の〇・九三%に当たるわけでございます。この削減数につきましては、政府の方針どおり、これは特殊の職種を除きまして、法務省全体の削減率と一致している、もちろん一致するはずでございます。ただ、先ほど大臣がお答えになりましたように、登記事務を中心として法務局の事務が非常に膨張いたしております。したがいまして、削減はまあ一般並みにいたしますけれども、増員措置について別途考慮をするということで、五十五年度につきましては増員が百五十七名でありますが、削減が百十一名でございますので、純増――純粋の増加が四十六人ということに相なっております。なお、そのほかに部門間配置転換として三十六人を受け入れる、これは法務局でございますけれども、三十六人受け入れるという予定になっておるのでございまして、これは確かに定員削減は厳しゅうございますけれども、それをカバーするだけの増員ということを私どもは念願しておるわけでありまして、その努力を今後も続けたいと思っております。また、こういうふうに純粋の増員という結果を得ます職種とでも申しますか、そういう組織というものは非常に少ないわけでございまして、これは私どもの法務局の職場の実態というものを関係当局において十分認識していただいた結果だというふうに私どもは思っておるわけでございます。
#149
○阿部憲一君 現在、登記官はどのくらい不足しているか、わかりますか。
#150
○政府委員(貞家克己君) これは非常に計算の方法によりましてむずかしゅうございます。ただ、私どもが予算要求の資料等といたしましてはじきます場合には、相当多数の不足人員、非常にフルに見てまいりますと二千人というような数字も出ておるわけでございます。しかし、これを一挙に短期間の間に二千人の増員を認めてほしいというようなことは、これはとうていできるものではございません。したがいまして、五十五年度は、当初は約七百人程度の増員要求として話を始めたわけでございます。しかしながら、この点につきましては増員ということももちろん私どもは念願しているわけでございますけれども、増員だけに頼るということでは現在の財政事情のもとにおいてはそれはむずかしいであろうというようなこともあるわけでございます。したがいまして、もちろん増員が最も根本的な解決であるということはわかっておりますけれども、それにかえる措置と申しますか、その不足を補うための措置といたしまして、たとえば機械化、能率器具というようなものをできる限り入れる。あるいは乙号事務と申しまして謄抄本の交付のようなものにつきましては、一部事務を部外者に委託するというような方法、施設をさらに整備するというような方法によって人員不足をカバーしていくというような努力もいたしておるわけでございまして、そういった機械化、合理化というような面につきましてはかなり年々予算は増額が認められているという状態でございます。
#151
○阿部憲一君 状況はよくわかりましたけれども、二千人も足りないというようなお考えから見ますと、現実に非常にその充足はおくれていると、このようにも思われます。しかも、事務量はどんどんふえていく。だから、事務量の増加に従って人員もどんどんふやしていかなければならぬのに、現実においても見込みだけでもって二千人も不足しているというのじゃ大変なことだと思いまするけれども、これはとりも直さず登記所を利用する国民の不便というものにも今度は影響を及ぼすわけでございますので、できるだけ不便を来さないように今後もひとつ人員の充当にも力を入れていただきたいと、このように思いますが、この点よろしく……。
 最後に、公証人制度のことについて一言お伺いしたいと思いますが、最近公正証書によって遺言をする事例が増加傾向にありまして、その他の公正証書の利用もまた増加の傾向にあると聞いておりまするけれども、この利用状況はどうなっていますか。それからもし実態をよく把握していらっしゃいますならば簡単に御報告願いたいと思いますが。
○国務大臣(倉石忠雄君)公証制度は民事における紛争を未然に防止するための、いわば予防司法の役割りを担っておるものでございますが、その制度の内容が必ずしも国民各層に理解されていないようにも見受けられる次第でありますので、さらに広く国民の理解を深めるために措置を講じますとともに、公証事務の適正迅速な処理を図ることといたしまして一層国民の信頼にこたえることができる制度としていきたいと、このように考えておりますが、運営の現状につきましては局長から御報告いたさせます。
#152
○政府委員(貞家克己君) 公証人の取り扱い事件数でございますけれども、ここ十年間におきましてそれほど増加するという程度でもございません。ほぼ横ばい、ないし数としては多少四十五年あたりに比べますと少し減っているように見受けられるわけでございますけれども、中身といたしましていろいろ変化があるようでございます。いま御指摘のございました遺言なんかは多くなっているようでございます。ただ、消費貸借の公正証書などは少し減っているというようなことでございまして、これもどうも原因を十分分析するというところまでは至っておりませんが、まあ大した動きはない。五十三年度におきましては全部で六百三十一万件、これは非常に細かい事件も入りますのでそういう膨大な数になっておりますが、四十年代でも七百万件から六百万件というところでございます。
#153
○阿部憲一君 公証人法は明治四十一年に公布された法律で、国民にとって理解しにくい点がある法律であるようにも思うわけですけれども、この点についてもっと、いまのような利用度は全体としてはふえていないというお話でございまするが、特に私が指摘しました遺言等が大分世間的にも何といいましょうか騒がれてきている時期でございまするので、それについても国民に理解されやすいような法律に改正する意図はございませんか。
#154
○政府委員(貞家克己君) 確かに、公証人法は非常に古うございまして、かたかな書きになっております。ただ、法務省所管の法律は、基本法におきましてもまだかたかなが実は残っているわけでございまして申しわけないことでございますけれども、なかなかこれを口語文に書き直すとかそういうようなところまでいっていないわけでございます。
 ただ、公証人法というものの性質が、いわば公証人に対する職務規定あるいは組織法的な面を多分に持っております。もちろん手続的なこともございますけれども、どちらかと申しますと公証人のよるべき規範という面が非常に強いわけでございます。そこで、だからこれは後回しにしてもいいと申し上げるわけじゃございませんけれども、私どもといたしましては、いま御指摘のありましたような、たとえば民法の相続法の改正に伴って遺言についての遺書の普及というようなことをしたい。むしろその手続的な面で公証人を利用していただきやすくするようなそちらの方の周知と申しますか、そちらの方を急がなきゃいけないのではないか。公証人法自体も確かに古うございますけれども、これは広義の司法制度の一環をなすというような性質を持っておりますので、将来の課題として研究することにさしていただきたいと、こう考えております。
#155
○阿部憲一君 法務年鑑によりますと、公証人は、五十年に九名、五十一年七名、五十二年に二十名、五十三年に十四名選考されています。ところが、法律では公証人試験を予定しているけれども、この試験が行われたことがあるかどうかについてお伺いしたいと思いますが。
#156
○政府委員(貞家克己君) 最近では行っておりません。
 実は、この試験は、確かに法律上試験制度による任用ということがあるわけでございますけれども、いわゆる公証人と申しますのは、いわば準法曹と申しますか裁判官、検察官、弁護士と同じような知識というものがないといけないわけでございまして、そういたしますと、年々ごく小規模な人員を採用任命するのに、司法試験に匹敵するような試験を別にやるということもいかがかという感じもいたすわけでございまして、現在は、司法試験の合格者、それにかなう職歴を経た人ということになるわけでございますけれども、そういった方々を任用して、補充的にいわば選考任用をいたしているという状況でございます。
#157
○阿部憲一君 じゃ、重ねて伺いますけれども、試験はそれじゃやったことがないというわけでして、いままで、すると、全部何といいましょうか、選考任用だけでやってきたと、こう理解してよろしゅうございますか。
#158
○政府委員(貞家克己君) 選考と申しますか、これは公証人法によりまして「裁判官、検察官又ハ弁護士タルノ資格ヲ有スル者」、これは司法試験に合格いたしまして、司法修習を終えた者でございますが、こういった者が当然に公証人に任命される資格があるわけでございまして、この人等の中で希望者があれば法務大臣がそれを任命するということでございます。
#159
○主査(桧垣徳太郎君) 以上をもって阿部憲一君の質疑は終了いたしました。
 次に、瀬谷英行君の質疑を行います。瀬谷君。
#160
○瀬谷英行君 最初に、法務大臣が見えておりますので、私が特にここで取り上げます問題の概要をかいつまんで申し上げますが、これは昨年の七月に飯能市の市会議員が収賄容疑で逮捕されたという事件でございます。そして、その事件は新聞で大々的に報道されました。その報道は、農地転用の問題をめぐって業者から賄賂を受け取ったと、こういう内容になっているんです。したがって、この新聞を見た限りにおいては、読者は、それはひどい話だというふうに思うのであります。
 ところが、私どもも真相はわかりませんでした、当事者が逮捕されているわけですから。真相はわからなかったのでありますが、本人が釈放されて出てきてからいろいろと事情を聞いてみますと、まことにこの逮捕の理由というのもあるいはまた勾留状の内容というのもおかしいわけです。しかも、この逮捕に当たっては、何らの物的証拠がなかった。第三者つまりほかの被告が自白をしたことによって逮捕されたということになっているわけなんです。しかも、勾留期間が通算して百日を超えております。百十一日なんです。
 最初の逮捕状の内容にあった三十万円の収賄は、いろいろと事実調べを行った結果、アリバイが成立して、これがどういうわけか知らないけれども話がうやむやになってしまった。そして、追っかけて五万円とか十万円といったような収賄の事実ということが改めてここに浮き彫りにされてきたわけです。勾留状が二通あるわけなんです。最初の勾留状というのは三十万円と五万円になっているわけです。しかも、この冒頭に出てくるのは、五万円を賄賂として受け取ったと、こういうことなんでありますけれども、大体、贈収賄の場合、五万円とか十万円という単位の金額が贈収賄の対象になり得るのかどうか、これはまことに疑問なんですね。つまり、市会議員のような立場にある人が、わずか五万円や十万円を賄賂としてもらってその農地転用の問題について便宜を計らうなどという約束をするということがあり得ることかどうか、常識で考えてみてもまずこの点がおしいわけです。
 ところが、最初は三十万円で逮捕する、そしてその三十万円の話がどうも公判を維持できないといったようなことになってくると、今度は五万円と十万円の問題が出てくる。これは被告の罪状をむりやり形成して、そして事件をクロにしようといったような意図で行われたのではないかと、こういう懸念が多分にあるわけですね。あるいはまた、その背景としては、市議会における対立といったようなことがこの被告となった市会議員をこういう羽目に陥らしめたのではないかということも考えられるわけです。そういう背景を持った事件でございますので、その点についてやはり法が厳正でなければならない。この一つの政争をめぐって無実の罪をなすりつけるというようなことが仮にもあってはならないというふうに私は思うわけです。そういう事件であるということを前提にしてお聞きをいただきたいと思うんです。
 そこで、まず最初にお伺いしたいと思うのでありますが、最初の逮捕理由となった三十万円の件が一体どういう形になったのか、それから五万円と三十万円の賄賂という事実は物的証拠があったのかなかったのか、その点は一体どうなっておるのか、お聞きしたいと思うのですが。
#161
○政府委員(前田宏君) お尋ねの事件の概要は、ただいま仰せになりましたような大体そのとおりでございますが、その中でのお尋ねの二点につきまして申し上げますと、当初いまおっしゃいましたように三十万円という贈収賄の疑いで関係者を逮捕しております。その際に、いまお話に出ました五万円の事実というものも浮かんでおりましたので、その二つの事実につきまして当初勾留の手続がとられておったわけでございます。しかし、三十万円の口につきましては、捜査の内容でございますから詳しくは申しかねますけれども、証拠が十分でないということに相なりまして、五万円の方は認められると、こういう状態になったようでございます。
 そこで、五万円だけで起訴するかどうかということの処分を決めるのは適当でないということもございまして、また、一面、そのような捜査をしております過程で別な十万円という口がわかってきたということから、さらに改めましてこの十万円の口について逮捕し、また勾留して、全体を総合して捜査をいたしまして、その結果三十万円の分につきましては起訴しない、あとの五万円と十万円の分について起訴をすると、こういうような経過をたどっておるわけでございます。
 なお、この事件は、もう御案内と思いますが、当初警察から検察庁の方に事件が送られてきた事件でございまして、検察庁と警察とで協力しながら捜査をしたと、こういう状況でございます。
 なお、関係者で起訴されました人が何人かおるわけでございますが、うち四人の贈賄者につきましては略式請求という書面による公訴提起ということが行われまして、そのうち三名の方につきましては特に争いがなくて略式命令が確定しておる。他の被告人の方につきましては、公判請求した方々は公判でいろいろと御主張をしておられますし、また、略式命令で一応処理されましたうちの一人の方は正式裁判を申し立てられまして、これも正式な裁判でいま審理が行われている、かような状況でございます。
#162
○瀬谷英行君 最初の逮捕理由となった三十万円の件が起訴しないということに決まったその理由は一体何でしょう。
#163
○政府委員(前田宏君) 先ほど申しましたように関係者の供述からその疑いが出てまいったわけでございますが、御指摘の市会議員でもあり、また農業委員会の委員という立場での贈収賄でございますが、この農業委員会の委員である荒木氏が事実を認めておらなかったというようなこと、関係者の供述だけで十分公訴維持ができるかどうかということになりまして、いろいろな角度から検討した結果、公訴維持について証拠が必ずしも十分でないという判断になったように聞いております。
 それから先ほどのお尋ねでちょっとお答えを漏らしておったように思いますが、物的証拠があったかどうか、この点でございます。これも、いま公判中の事件のことでございますので、どれだけの証拠があるとかないとかいうことをこの段階では申しかねる点もあるわけでございますが、全般的に贈収賄事件は、あるいは選挙違反事件も似たような点がございますが、なかなかいわゆる物証というようなものがない場合がむしろ多いわけでございます。この場合に、全くないかということになりますと、先ほど申しましたように公判中のことでございますので御答弁を控えさしていただきたい面がございますが、その物証だけで事実が確定できるというようなものはなかった、こういうふうに御理解をいただきたいわけでございます。
#164
○瀬谷英行君 物証だけで事実を確定できるという事実はなかった。ところが、それじゃ関係者の供述で事実を推理するほかない。その関係者の供述そのものがあいまいだったために三十万円の件は起訴できないということになった。しかも、話を聞いてみますと、この関係者が荒木市会議員に金を渡したというときは荒木市会議員が北海道を旅行していて不在であった。この不在であった時期に渡したという供述をしたのでその話は崩れてしまったというふうに私どもは聞いているわけです。ということは、供述者の供述というものはいかにあいまいであったかということがまずこの段階でもってはっきりするわけです。にもかかわらず、警察がこの三十万円の件で事実を確かめもしないで逮捕、勾留したということは警察としての手落ちがなかったのかどうか、まずこの点だけでも明らかにしなければならないと思うのでありますが、その点はどうですか。
#165
○政府委員(前田宏君) 結果から見ますと十分でなかったという御批判は当たるかと思いますけれども、先ほども申しましたように特に贈収賄事件等につきましてはなかなかこれという具体的な証拠というものはなくて、関係者の供述等が主体になる場合が多いわけでございます。それだけに捜査当局といたしましてはその供述の真偽というものを十分検討してやらなければならぬわけでございまして、本件の場合も結果的には御批判を受ける点があろうかと思いますが、その当時といたしましてはそれなりの心証といいますか判断をもってやったものと考えておるわけでございます。
#166
○瀬谷英行君 関係者の供述があいまいだった、本人も事実を認めていない、したがって公判を維持できない、こういうような事実があるにもかかわらずずっと勾留していたわけです。しかも、新聞にはどんなふうに出てくるかというと、こんなに大きく出るわけです、あたかもクロであるかのように。これは特に議員にとっては致命的ですよ、こういうことをやられたのでは。こんなことが許されていいかどうかと言うんですよね。それからさらに、そのあいまいな供述をした本人が死亡しているわけですね。この宮寺という被告は十月に亡くなっております。そして、七月に逮捕されて、七月、八月と九月になるまで勾留されていて発病してがんであるということで防衛医大に入院をしたけれどもついに亡くなったということなんですね。そうすると、この荒木議員を逮捕するきっかけとなった宮寺被告の発言というものは病気で寝ている間の取り調べによって行われたのではないかという疑惑が出てくるわけです。この宮寺被告を尋問したり取り調べしたということ自体がかなり問題ではないかという気がするわけですね。とにかく、この人は間違いなく十月に亡くなっておるわけです。そういう重体の患者を勾留していろいろと責めているというふうにしか判断されない。その辺の事情が一体どうなのか、病名はどういうことであって病状はどうだったのか、その点もおわかりになっていることだと思うのでありますが、お答えいただきたいと思います。
#167
○政府委員(前田宏君) いまのお尋ねの前提でございますが、三十万円の件につきまして委員のおっしゃいますあいまいな供述というお言葉があったわけでございますが、その供述をしたのはいま仰せになりました宮寺氏ではどうもないようでございまして、別な人であるように思います。したがいまして、宮寺氏の供述によって三十万円の件が出てきたと、こういうことではないように理解しております。
 それはそれといたしまして、宮寺氏という方が亡くなったことは事実でございまして、まことに遺憾でございますが、宮寺氏につきましては七月の末に身柄が拘束されまして先ほど大体申しましたような経過で起訴されておるわけでございますが、その間、報告によりますと、一時微熱が出たというようなことがございまして、早速医師の診察を受けさした。そのときの診断では、取り調べには支障がないがなるべく気をつけてほしいというようなことでございまして、さしたる病気ではないのじゃないかというふうに見られておったようでございます。その後、九月の三日に起訴が行われたわけでございますが、その時点で熱が出たということで、重ねて医師の診断を求めましたところ、精密検査の要があるというようなことになりまして、直ちに同日勾留の執行を停止いたしまして、身柄を釈放した、その後約二カ月近くで亡くなったと、かように報告を受けております。
#168
○瀬谷英行君 さしたる病気ではないと判断をしたと、こういうことなんですけれども、御本人は十月に亡くなっているわけですね。さしたる病気ではないと判断される人がぽっくり死んだりするということはあり得ないわけです。そうすると、警察では、かなりの重体であったにもかかわらず、その事実をわざとまあ事実から顔を背けて、そしてこれは大したことがないんだというので勾留していたということになると思うのでありますが、その辺はやはり問題じゃないかという気がいたします。これはその間に特にまた取り調べ等が行われたということになりますと、本人の死期を早めたということも考えられるわけなんです。その辺、果たしてこの宮寺被告に対する扱いが妥当であったのかどうか、これはお調べになったでしょうか。
#169
○政府委員(前田宏君) 先ほども申しましたように、私ども検察庁を通じて調べたわけでございますが、八月の末ごろに微熱があったということで、早速警察の方で医師に来てもらいまして診断をしてもらったと。その際には、取り調べには支障はないけれども気をつけてくれというようなお話であったので、警察の方としては専門であるお医者さんの御判断でありますので、その程度のことというふうに理解しておったようでございます。その判断が誤っておったかどうかということになりますといろいろ見方もあろうかと思いますが、当時といたしましてはそのような理解であったようでございます。
#170
○瀬谷英行君 じゃ、その八月の医師の判断というのはどういう病状というふうに判断されたのでしょう。
#171
○政府委員(前田宏君) 先ほど来申しております以上のことは、どうも私ども間接でございましたので、きのういろいろ聞きました状況では、ただいま申し上げたとおりでございます。
#172
○瀬谷英行君 刑事局長の調べに対しては、そうすると警察の方の答えとしてはさしたる病気ではないという答えが来ているというふうに理解をいたします。しかし、事実は十月に亡くなっているわけですな。そうすると、亡くなっているということはすでにそのときからがんの症状が出ていたのじゃないかという気がするのでありますが、八月中の診断の結果というものが病名等については明らかになっておりませんか。
#173
○政府委員(前田宏君) さしたる病気ではないと言いましたのは、私がそういうふうに思ったのではないかという意味で申し上げたので、お医者さんがそういう言葉を用いられたかどうかは定かではないわけでございます。私どもの聞いておりますのは、先ほど申しましたように、微熱があって医師の診察を受けさせたところ、取り調べに支障はないが気をつけてほしいという診断であったということでございまして、そのことから、結果から言えば申しわけないことかもしれませんけれども、そういう重病だというふうな判断には至らなかったのではないかというふうに申したわけでございます。
#174
○瀬谷英行君 しかし、何と言おうとも十月に亡くなっていることは事実なんですね。そうすると、重病であったというふうに判断せざるを得ないわけです。かなりの重体であったにもかかわらず本人を勾留して、おまけに取り調べまでやった。その取り調べの過程において出てきた証言が荒木市会議員を勾留する理由になっているというふうに判断されるのでありますが、その点結局五万円と十万円の事実だけが勾留の理由になって残っているわけなんですけれども、その点は一体どのように判断されるでしょうか。
#175
○政府委員(前田宏君) 先ほどもちょっと触れたところでございますが、三十万円の件につきましては宮寺氏は関係していなかったように聞いておるわけでございます。一方、五万円と十万円の口につきましては宮寺氏が関係しておるというふうになっておりますが、宮寺氏一人ではなくて、五万円の件につきましてはほか四人の方の供述がありまして、現に四人とも起訴されておるわけでございます。また、十万円の件につきましては、宮寺氏を含めて別な三人、合計四人の方々が関係者となっておりまして、それぞれ起訴されておるという状況でございますので、単に宮寺氏だけの供述で認定をしたというふうにはなっていないようでございます。
#176
○瀬谷英行君 公判中のことだからと言われれば詳細は控えるということになるのかもしれませんけれども、荒木被告に対して京浜急行から金を贈ったということで被告となって裁判所に出て発言をしている人は、公判廷において事実を否認した。つまり、調書の中ではやったんだと言ったけれども、公判廷においては否認したということになるわけです。そうすると、荒木市会議員に対して金を贈ったという事実を肯定する人がこれではいなくなってしまうわけなんですがね。こういうふうに裁判所でもって進行している問題がどう展開されるかわかりませんけれども、いままで私どもがいろいろと公判の経過あるいは本人の話等を総合して聞いてみますと、物的証拠は出てこない、それから証言もきわめてあいまいである、こういうことになるわけです。そうすると、結果的にはこれは罪状というものは成り立たないという可能性が多分にあるわけなんです。そうなると、一体、仮に無罪の判決が出たとしても、無罪ということだけで片づけられたのでは政治生命というものを著しく傷つけられた荒木市会議員の立場というものはなくなるわけなんですね。こういったような事件についての責任はだれがどうとるようになるのか。これは結審を待たなければ結論は出てこないかもしれませんけれども、その点についてこれは重大な問題だと思いますのでお伺いをしておきたいと思うのです。
#177
○政府委員(前田宏君) お答えの前に、事実関係で若干補足さしていただきますが、公判中のことでございますから先ほども詳しくは申しかねると申しましたが、冒頭の御説明でちょっと触れたように思いますけれども、関係者が、贈賄側というふうに申した方がよろしいかと思いますが、宮寺氏を含めまして八名起訴されておるわけでございます。そのうち、冒頭に申しましたように、四名は略式請求という形で起訴されておりまして、そのうちの三名の方については略式命令が確定しておる、御本人が争っていないという状況でございまして、残りの方が公判で争っておられるといいますか、そういう状況になっておるわけでございます。
 まあそのようなことでございまして、今後の公判の推移はどのように相なりますかわからないわけでございますが、一般論として申しますと、無罪になりました場合に、その捜査なり手続の過程におきまして公務員としての故意、過失等がありますと国家賠償法の問題ということが起こり得るかと思います。
#178
○瀬谷英行君 この問題は、一番最初三十万円でもって逮捕した、勾留した。ところが、三十万円の件が怪しくなった。そこで、五万円と十万円という別件を引き出した。もっとも、五万円の件は三十万円のときに同時にありましたけれどもね。そうすると、起訴状に残っている問題は五万円と十万円の件しかないわけです、起訴状に残っている件は。この五万円と十万円の前の三十万円の件でもすでに捜査はきわめていいかげんであったということがまず一つ立証できるわけですね。そういういい加減な捜査でもって逮捕をしといて後でもって五万円と十万円の件を捜し出してきた、言いかえれば。しかも、重体の患者からその事実を引き出してきた。本人が死んでしまえば死人に口なしだから、今度は公判廷で事実を対決して確かめようがないわけですね。こういう問題はまあ大変困ったことだと思うのでありますけれども、警察あるいは検察側のとった態度に果たして落ち度がなかったのかどうかということは、やっぱり法務省側として厳密に取り調べをしていただく必要があると思うんです。下の方のたとえば出先の機関でもって報告したことだけをうのみにすると、大変な間違いを生ずると思うんですね。それらの点について十分な調査をしていただけるものかどうか、これは念のためにお伺いしておきたいと思います。
#179
○政府委員(前田宏君) 当該事件が公判中のことでもございますので、それとの関係もございますから、どのような方法でやるのが適当かどうかということはあると思いますけれども、先ほど来御指摘のような事実、まあ私の方から御説明しましたように若干補足さしていただいたような点もございますけれども、いわゆる落ち度と申しますか、手落ちがあった場合にはそれなりの措置をとらなければならないわけでございますので、方法につきましては考えさしていただきますけれども、それなりの措置は考えさしていただきたいと思います。
#180
○瀬谷英行君 それで大臣にお伺いしたいと思うのでありますけれども、いま申し上げましたように、この事件は飯能市の市会議員が収賄容疑で逮捕された。収賄容疑で逮捕されたけれども、一番最初の逮捕理由になった三十万円の件を調べてみると、どうもおかしい、事実がないということでもって、この三十万円は消えちまったわけです。それで消えてしまって、残ったのは五万円と十万円だけなんです。その五万円と十万円という件も、いま裁判の過程でありますけれども、どうも贈賄の立証がむずかしいというような状況になりつつある。裁判のことでありますから手間はかかりますので早急に結論が出ないかもしれませんけれども、こういう問題でもって一人の議員が、これは市会議員に限らないんですね、県会議員であろうと、国会議員であろうと、第三者の虚偽の証言によって百日以上も勾留されたり、あるいは取り調べを受けたり、新聞に罪人扱いをされたりということは、きわめて遺憾なことなんですね。これがクロである、どうも怪しいということであれば、私はあえて取り上げませんよ。しかし、どうもいろいろと起訴状を見ても、勾留状を見ても、この内容というものはきわめて怪しいですね。しかも、裁判の進行過程を聞いてみましても、犯罪事実を構成するようなことにはなりにくい状況にある。こういう問題について一体責任者としてどのような感じをお持ちになるか。こういう問題はやはり厳正に、もし警察側にあるいは検察側に手落ちがあったとしても、それをうやむやにしてメンツを立てるということをされたのでは大変なことになると思うのでありますが、どのようにしてこの事実を明らかにする、法の公正を期するという手だてを講ずるお考えなのか、その点を大臣にお伺いしたいと思うのです。
#181
○国務大臣(倉石忠雄君) 承っておりますと、ただいまこの事件は裁判が進行中のようであります。私は、法務大臣として検察の最終的責任者という立場にありますので、進行中の裁判についてとかくのことを申し上げることは御遠慮さしていただきたいと思います。
 ただ、私は、検察官は厳正公平な立場で真相を把握するために努力してくれるものであるということを確信いたしておりますし、先ほど来刑事局長も大変よく事柄の内容について検討しておられるようでありますから、私は、検察の行動を確信しておるということだけで、ひとつお答えは御容赦願いたいと思います。
#182
○瀬谷英行君 三十万円という逮捕理由となった最初の件が消えてしまったというのは、関係者の供述がいいかげんであったということ、それから事実を本人が認めていないということというふうに言われたんです。事実を本人が認めていないということは、あとの残された五万円と十万円の件についても事実を認めていないんですよ、本人は。あくまでも否認しているんです。そうすると、あと関係者の供述があいまいであったということが裁判の過程で明らかになった場合には、これは無罪にする以外に方法はないわけですね。そういうことは私は無罪になるということはあり得ると思っているんです。
 ただ、その場合のこれだけ政治的生命というものを傷つけられたという事実に対してどういう償いをすべきであるかということは、政治的にはやはり慎重に判断をしなきゃならぬと思うことなんでありますが、まずこれは大臣自身が考えてみても、五万円とか十万円というのが贈収賄の案件として成立し得ると思いますか。いま四月から新入社員がいろいろと職場につくけれども、初任給だって五万円なんていうのはありませんよ。仮にまた五万円を持っていったからといって、まあ謝礼として五万円いただきましたなんて書くばかはいないと思うんですよね。そうすると、物的証拠がないのはこれは当然だろうと思う。事実がなければなおさら書きっこないですよ。それをしかも勾留中の重病人から言わせた証言だけをもとにする、それを唯一の証拠にして起訴状に残していくというようなことは、きわめていいかげんな問題だと思うのです。
 私は、こういうようなことは、法の公平という立場からしてやってはならないことだと思うのです。法の厳正を期するという意味では、検察官のやることは何でも間違いないということはないと思うのであります。検察官だって間違えることはある。警察官だって間違えることはある。間違えたから三十万円の件は消えちゃったんですよ。五万円、十万円の件がわずかに残っている、容疑事実として。こういう問題に対して、公平を期するという立場を果たして関係当局としてとり得るかどうかということを私は心配しているわけなんですね。その点、そういう心配に対して、やはり検察側の面目だけではなくて、警察の面目だけではなくて、法の公正を期するということが一番大事なことなんだということを私は主張したいのでありますけれども、これらの点について大臣の見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
#183
○国務大臣(倉石忠雄君) 瀬谷さんのおっしゃることは、それなりに私も承っておりましてよくわかりましたけれども、それについて法務当局がどういう考えであるかというふうなことについては、裁判の進行中でございますので、申し上げることはお許しを願いたい、こう申しておるわけであります。
#184
○主査(桧垣徳太郎君) 以上をもって瀬谷英行君の質疑は終了いたしました。
 他に御発言もないようですので、裁判所及び法務省所管に関する質疑はこれをもって終了したものと認めます。
 以上をもちまして本分科会の審査を終了いたします。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#185
○主査(桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 これにて散会いたします。
   午後一時散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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