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1979/03/18 第91回国会 参議院 参議院会議録情報 第091回国会 予算委員会公聴会 第1号
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1979/03/18 第91回国会 参議院

参議院会議録情報 第091回国会 予算委員会公聴会 第1号

#1
第091回国会 予算委員会公聴会 第1号
昭和五十五年三月十八日(火曜日)
   午前十時三分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月十七日
    辞任         補欠選任
     神谷信之助君     小巻 敏雄君
     井上  計君     柳澤 錬造君
 三月十八日
    辞任         補欠選任
     穐山  篤君     小柳  勇君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山内 一郎君
    理 事
                亀長 友義君
                下条進一郎君
                桧垣徳太郎君
                安田 隆明君
                栗原 俊夫君
                山崎  昇君
                原田  立君
                沓脱タケ子君
                栗林 卓司君
    委 員
                井上 吉夫君
                金丸 三郎君
                北  修二君
                熊谷  弘君
                鈴木 正一君
                玉置 和郎君
                成相 善十君
                林  ゆう君
                降矢 敬雄君
                町村 金五君
                八木 一郎君
                山本 富雄君
                大木 正吾君
                坂倉 藤吾君
                松前 達郎君
                村沢  牧君
                安恒 良一君
                馬場  富君
                渡部 通子君
                市川 正一君
                小巻 敏雄君
                柳澤 錬造君
                秦   豊君
                下村  泰君
   政府委員
       大蔵政務次官   遠藤  要君
       大蔵省主計局次
       長        禿河 徹映君
       大蔵省主計局次
       長        西垣  昭君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        道正  友君
   公述人
       株式会社日興リ
       サーチセンター
       理事長      宍戸 寿雄君
       法政大学教授   鷲見 友好君
       日本労働組合総
       評議会副事務局
       長        内山達四郎君
       亜細亜大学経済
       学部長      藤田 至孝君
       全国地域婦人団
       体連絡協議会事
       務局長      田中 里子君
       財団法人産業研
       究所理事長    稲葉 秀三君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○昭和五十五年度一般会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和五十五年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和五十五年度政府関係機関予算(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山内一郎君) 予算委員会公聴会を開会いたします。
 昭和五十五年度一般会計予算、昭和五十五年度特別会計予算、昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
 本日は、昭和五十五年度総予算三案について、お手元の名簿の六名の公述人の方々からそれぞれの項目について御意見を拝聴いたします。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 宍戸公述人及び鷲見公述人におかれましては、御繁忙中にもかかわりませず、貴重な時間をお割きをいただきまして本委員会のために御出席を賜り、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。本日は、忌憚のない御意見を承り、今後の審査の参考にしてまいりたいと存じます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度の御意見を順次拝聴し、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 それでは、順次御意見を承ります。
 まず、経済、景気動向について、宍戸公述人にお願いをいたします。株式会社日興リサーチセンター理事長宍戸寿雄君。
#3
○公述人(宍戸寿雄君) 公述人といたしまして、経済、景気の見通しについての若干の意見を述べさしていただきます。
 これまでのところ、五十四年度の日本経済の動きは順調な拡大をたどったわけでありますが、イランの革命を契機といたします原油価格の暴騰、それが、日本経済におきましては、国内の物価上昇並びに国際収支の悪化からくる円安、これらの問題を引き起こしておるところでございまして、政府当局におかれましても、これらのインフレを抑えるために四次にわたる公定歩合の引き上げを行われまして、金融引き締めを強化されております。さらにまた、きょう、あすにも新しく公定歩合の引き上げが伝えられておるところでございまして、これらの経済政策がどのような形で日本経済に影響を及ぼしますかにつきましては、まだなお確実にわかっていないところがございます。その意味では、五十五年度の経済見通しをわれわれのような民間の調査機関として出します場合にはなお不明瞭なところが多い、不明確な前提のもとで行わなければならないという事情がございます。
 ただ、これまでの情勢から判断いたしまして、私の研究機関でございます日興リサーチセンターといたしましては、非常に端的に申し上げますると、イランの革命を契機にいたしました原油の暴騰その他の世界経済に大きな影響を与えました第二次石油ショックとも言うべき今回の大きな混乱は、どうやら峠を起したというような判断を下しておるのでございます。その点につきましては、なおまだ今後に不確実な要因かあるかとは思うのでありますが、原油の需給関係で申し上げますれば、すでに世界的な原油の需給関係は、需要か落ちつきましたこともありまして需給は緩和いたしております。いわゆるスポット価格と言います石油のやみ値のようなものは低下の傾向にある。二月におきます日本か輸入いたしました原油の平均価格は三十ドルという、いわゆる三十ドル原油になりましたけれども、これからさらに大幅な原油価格の値上がりはないであろうという予測をいたしております。その意味におきまして、第二次石油ショックが峠を越したという判断のもとに経済見通しをいたしておるわけであります。ただ、それは日本経済を取り巻きます厳しいエネルギー問題についての問題が解決されたというわけではございませんので、当面五十五年度というような一年限りのことでございますれば、どちらかというと、いままでのような緊迫感が薄らいで一時的な価格の安定が可能であろう、こういうことでございます。そのようなことを前提といたしましても、すでに卸売物価は前年同期比を二〇%上回るというような上昇を示しておりますし、また、原油の大幅上昇によります国際収支の悪化が続いておるわけでございますので、今後の日本経済に与えます影響はまだ後を引く、いわゆる第二次石油ショックの後遺症が五十五年度経済を支配するという点については否定できないわけであります。
 ただ、その意味におきましては、現在の政府の経済政策、特に金融を中心にいたします金融引き締め政策並びに高金利政策か、世界的な高金利、アメリカの高金利に引きずられて高金利政策がとられようといたしておるわけでございますので、このことか日本経済に不必要な不況をもたらすとか、あるいは不必要に景気を抑制することのないような配慮か必要なのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。言い方をかえますれば、今後の経済政策の運営に当たっては、物価と景気の両面を十分御配慮いただいた政策が必要であって、当面はインフレ抑制ということから非常に強い物価抑制策がとられておると思うのでありますが、それが行き過ぎた形にならないということも今後の経済運営にとって重要な視点であろうかと思います。
 これは、たとえばアメリカでございますれば、十三%の公定歩合の上に新たに三%の高率適用という形で選択的な高金利が適用される。このような事態を呼びましたのは、もちろんアメリカのインフレが非常に過激な異常な状態に入っておるからでございまして、一六%という高率の金利が適用されたといたしましても、基本的なインフレ率が一七、八%にも達しようという現在でございますると、この高金利か意味のある金利と申しましょうか、これまで上げなければならないという金利水準であったかと思うのであります。日本の物価はアメリカと違いまして、確かに卸売物価は非常に高騰いたしておりますか、卸売物価の中の大部分は輸入素原材料――石油、木材、非鉄金属というような海外から輸入されたものの大幅な値上かりか卸売物価の上昇の原因でございまして、われわれの言葉では最終消費財と呼んでおりますが、最終製品に近いテレビや自動車でありますとか、機械類のようなものの卸売物価指数を見ますと、前年に比べて五、六%という水準にまだとどまっておる。そのことか、また消費者物価にいたしますれば、現在二月の水準が七%台に上がりましたとはいうものの、基調的には五%台の物価上昇にとどまっておりますのは、結局、日本の製造工業の生産性が高くて、輸入された高い物価のものを生産する過程で吸収して、最終商品あるいは消費者物価というようなものには比較的穏やかな物価上昇にとどめておるという事実かあるからでありまして、その事実を無視して、ただ単に卸売物価か二〇%上がったから金利はアメリカ並みに上げてもよろしいというような単純な判断ではよろしくないのでありまして、日本の現在の真のインフレ率、われわれはファンダメンタルズと呼んだり基調的なと呼んでおりますが、そのような物価上昇率がどの程度のものであるか、それにふさわしい金利水準といったようなものを判断した上で金利政策がとられるべきではないかと考えております。単にアメリカが上げたから日本も上げなければならない、もちろん国際金融の立場あるいは円安を防止するという立場から見ますと、アメリカの金利が上がれば日本の金利も上げねばならないという事情はございますけれども、これらのことも、国内の事情も配慮した金利政策が必要であろうかと考えております。この点がインフレというものに対する現在の経済政策のあり方についての一つの考え方でございます。
 さらに、現在の経済を考えました場合、第一次石油ショックによって狂乱のインフレが起き、国際収支の悪化を呼びました状態に比べますと、国際収支の面におきましても、すでに輸出の急増という形で改善の気配を示しておるところでございますので、傾向的な推移から申し上げますと、私のような研究機関の予測値では、恐らく円は現状の一ドル二百五十円というのは過小評価であって、日本経済の実力――先ほど申し上げましたような、アメリカに比べればインフレ率が本当は低いんだ、生産性の向上テンポはアメリカに比べて非常に高いのである、このような実態認識から申し上げますれば、現在の一ドル二百五十円という円相場は不当に安過ぎるのでございまして、国際収支の改善が進みますれば妥当な水準に立ち戻る可能性が多い。妥当な水準というのは幾らであるかというのは、いろいろ計算の仕方がございますが、私の研究所では、大体、いまの場合でも一ドル二百十円ないし二百二十円かいわゆる長期均衡為替レートでございまして、国際収支の改善が基本的に進みますればそのような妥当な水準に立ち戻る可能性を十分持っておると、このような判断をいたしておるわけでございまして、この点につきましても、単に円安という現状だけにとらわれて極端な円安を防止しようという対策をとることにも問題があるのではないか、このような判断をいたしておるわけでございます。
 最後に、現在の日本経済の動向から判断いたしまして、このような経済政策をとることがやむを得なかったというふうに考えられます以上、当面の景気が若干の景気調整を受けて、第一次石油ショックの後は非常に大幅な経済成長率の鈍化と企業収益の悪化を呼んだのでございますけれども、今回の場合は、前回に比べれば軽微の景気調整に終わるとは思いますけれども、ことしの後半にかけましてやや景気調整期を迎えることは必至であろうかと考えております。私の研究所では、政府の経済見通しの四・八%とかいう数字に比べて若干低い三・八%の実質経済成長率を予測いたしておりますが、それの意味しますところは、このような金融引き締め政策、あるいは今後とられるでございましょうところの種々のインフレ対策あるいは財政の繰り延べのような諸政策が加わります以上は若干の景気調整を余儀なくされるであろうと考えております。しかし、先ほどから申し上げますように、軽い景気調整はこれだけの原油高が起きました以上は必至であり、かつ、やむを得ざるものであると考えますけれども、不当に成長率か低下するようなことは避けることが現段階においても十分配慮されねばならない政策であろうかと考えております。
 以上、今回の石油ショックの動向並びにそれに対する経済政策のあり方につきまして、インフレ並びに国際収支あるいは円為替の動向並びに景気の見通しの三点について私の私見を述べさしていただきました。
#4
○委員長(山内一郎君) どうもありがとうございました。
 それでは次に、財政、金融について、鷲見公述人にお願いをしたいと思います。法政大学教授鷲見友好君。
#5
○公述人(鷲見友好君) 鷲見でございます。
 私は、五十五年度予算について、第一に財政再建、第二に税制、第三に公共料金、第四に軍事費と、こういう四つの面から意見を述べさせていただきます。この四つは相互に関連を持っていることは言うまでもありませんが、一応四つの柱として問題にしたいと思います。
 第一の財政再建が現在の最も重大な財政問題であることは改めて申し上げるまでもありません。日本の財政はこのまま進めば破産であります。しかし、国家は個人や企業とは違いますから、財政が破産したからといって、活動を停止したり夜逃げや一家心中というわけにはまいりません。国は、その場合でもいろいろな手段を用いて、たとえばインフレーション政策であるとか増税を行うとかして、やりくりを行うわけであります。しかし、その結果は国民経済の混乱と国民生活の極度の困難の増大であります。財政再建が問題になるのはまさにそれだからであります。したがって、財政再建は、その筋道から言って国民本位のものであって、財政の収支の帳じりを合わせればいいというものでないことは明らかであります。こうした観点から見た場合、五十五年度予算はどうかということが問題であります。
 財政危機の最も端的なあらわれは、大量の国債が長期にわたって発行されていることであります。現在最も緊急な課題は、国債発行を可能な限り縮減することであります。五十五年度国債発行額は、四条国債六兆七千八百五十億円、特例国債七兆四千八百五十億円、合計十四兆二千七百億円であります。これは五十四年度当初予算十五兆二千七百億円より一兆円削減されております。しかし、五十四年度補正予算では一兆二千二百億円の減額が行われておりますから、これよりは二千二百億円の増となっていることは多くの方々によってすでに指摘されているところであります。さらに特例国債だけについて見てみますと、五十四年度補正予算では一兆一千三百八十億円が縮減され、六兆九千百七十億円となっております。これに比べれば五千六百八十億円の増となっており、最も縮減しなければならない赤字国債が六千億円近くふえているのであります。それだけではなく、財政法第七条による大蔵省証券及び一時借入金の限度額は、五十四年度の四兆三千億円に対して五兆三千億円と一兆円ふえているのであります。この額でありますと、年度間の借入額は十五兆円程度になることも考えられます。これは日銀引き受けが可能でありますから、インフレを促進する条件になるわけであります。これでは財政再建の第一歩とは言えないのではないかというふうに考えます。ともかく一兆円減らし、国債の増加に歯どめをかけたのであるから、財政再建の第一歩であるという意見もありますけれども、四兆六千億円の税の自然増収に助けられた五十五年度でこのような状態では、五十六年度以降の見通しは立たないと言わなければなりません。これでは財政再建の見通しは暗いと言わなければなりません。支出においても、公共事業費あるいは軍事費を初め削減すべきものが多くあると考えられます。公共事業費の五十四年度からの繰り延べ分に相当する額だけさらに減額するとか、あるいは補正予算で国債削減に向けるとか、そういう方策も当然考えられなければならないと思います。
 第二は税制の問題であります。
 財政再建のためには税制はその最も重要な構成部門であり、今後何らかの増税は不可避であります。政府も主要先進国の水準から三%から六%程度低い法人関係税のうち、法人税の一%引き上げを計画されましたが、財界の圧力で、自然増収が予想以上に見込まれることということを理由に取りやめとなりました。大企業が史上最高の利益を上げている現在こそ絶好のチャンスでありました。今後種々の特典を得ている大企業に対する増税なしには財政再建は不可能でありますが、一%の法人税率の引き上げ程度のことさえできなくて、今後の見通しが立つのだろうかと考えざるを得ません。また、法人税率については、八百万円から九百万円程度の所得の企業と二百億円を超える企業とが同じ税率ということは問題があり、法人税も累進税率にすることが必要であろうかと考えられますが、そのような点についても今度の予算では考慮されていないことも問題であろうかと考えます。退職給与引当金は四〇%に引き下げられましたが、実態から見れば一〇%程度でも十分であって、せめて二〇%程度への引き下げは必要ではないかと考えられます。それが四〇%程度で不公正税制は是正されたと言われるとすれば、国民は納得できないのであります。給与所得控除について一千万円以上は一〇%から五%へ引き下げられました。これは一千万円で頭打ちにすべきでないかと考えます。今後、大企業の税制上の特典をなくすると同時に、個人課税の場合にも高所得者にはかなりの増税は覚悟をしてもらわなければならないと思います。どこで線を引くかは十分検討しなければならないことでありますが、一千万円程度が一つのめどになるのではないかと思われます。不公正税制かすべて整理されたとき、また不急不要の経費が削減されてなお財源が不足する場合には、国民は必要な負担を拒否するものではないと考えます。しかし、現在では中低所得層に対する減税を行う必要があると考えます。五十五年度の自然増収のうち所得税分は一兆九千五十億円でありますが、この大部分は減税なしによる実質増税による部分であると推定されます。所得税の一般減税は過去五年間行われておりませんし、特にこの三年間はいずれの形での減税も行われておりませんから、実質的には大増税になっております。五十年度から五十五年度にかけて租税負担率は約三・五%上昇しておりますが、それはそうしたことの結果であると考えることができます。特に昨年末から消費支出の停滞があらわれ始めている現在、減税は重要であると考えます。西ドイツでは八一年一月から約百七十五億マルク、約二兆四千億円程度になるのではないかと思いますが、所得税を中心とする減税を決定しているのであります。また、今後減税の場合には所得控除ではなくて税額控除を考えるべきではないかと考えます。
 もう一つ、所得税に関してぜひ国会議員の方々にお考えいただきたいのは、課税最低限の問題であります。よく課税最低限が生活保護費よりも低いと言われております。住民税の課税最低限が引き上げられた理由もそうでした。しかし、この場合用いられる課税最低限は給与所得控除のある給与所得者の場合であります。個人の事業所得者の場合は二十九万円掛ける家族数でありますから、一人であれば二十九万円、月二万五千円あれば所得税が課税されるということになります。こうした事態がなぜ放置されているのかということは理解に苦しむところであります。所得の把握率が問題であるということであれば、この把握率がもし五割としても月五万円では低過ぎると考えますが、そのことは一応おきましても、所得の把握率が問題だということであれば、五割あるいは六割以上申告している者は必要以上に申告しているということになるわけでありまして、ぜひこの点を御考慮をいただきたいというふうに考えております。また、事実上の目的税を含めて目的税は廃止すべきであります。大型公共事業の効果が種々の点で問題になっている現在、特にこのことは重要であります。
 第三の公共料金につきましては、時間がありませんので一言だけ述べさせていただきますが、消費者物価、卸売物価ともに政府の見通しにおさまりそうにない状況でありますし、また、物価が上がればその結果としての買い控えの傾向というのが顕著になってきているわけでありますから、インフレを抑え、景気の安定を図る上からも、政府は蛮勇をふるってでも財政に関係する公共料金の値上げを凍結すべきではないかというふうに考えております。
 第四は軍事費であります。
 軍事費は対GNP比〇・九%が維持されました。対前年度伸び率は六・五%でありますが、国債費、地方財政関係費を除いた一般経費の伸び率五・一%より大きいだけではありません。ベアは二%に抑えられていますから、他の経費の伸びは大きくなっております。たとえば武器車両購入費は二三・一%、艦船建造費は二八%、研究開発費は一〇.六%となっております。これらは五十四年度も大きく伸びておりますから、二年間でそれぞれ七〇・九、四四・六、三〇・六の伸びとなっております。航空機購入費は前年度比四・二%の伸びでありますが、これは新規の国庫債務負担行為の歳出計上分が一・四%と少ないためであって、調達機数はふえており、この中には問題のP3Cのほか多くの欠陥が指摘されているF15の第二次分二十三機も含まれております。ファントムも事故が多かったのでありますか、調達以前からこうした欠陥が問題になっている飛行機に乗る自衛隊員は大変ではないかというふうに考えます。こういう問題も含めまして、自衛隊の少なくとも新規装備は取りやめ、その分の経費の圧縮を図り、国債減額に向けるというようなことが現在こそ考えられていいのではないかというふうに考えております。
 以上が私の意見であります。
#6
○委員長(山内一郎君) どうもありがとうございました。
 それでは、これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言をお願いします。
#7
○大木正吾君 宍戸参考人に最初にお伺いいたしますけれども、一つは、アメリカの総合インフレ対策か出されましたけれども、新聞等で拝見いたしますと、賛否と言いましょうか、意見が分かれている点もございますけれども、短期的には余り効果がない、しかし長期的には若干の効果があるんだと、こういう話もありますけれども、これについての御感想を一つ伺います。
 二つ目に、もしアメリカが物価対策に成功いたしますると、アフガン問題とかイラン等に関しましてドルが強くなってくるわけですね。それに関しまして、ドルが強くなることは円か弱くなることでございますから、先ほどお話ありました二百二十円前後が妥当という数字、私もそう思うんですけれども、円安に対する響きはどうなるか。このところをひとつ、二つの問題。
 第三点でございますけれども、ほぼ後半を強気で景気がいくだろうという意見が最近では物価問題との関係におきまして後半の成長がダウンする、こういうような意見が大分出始めていますけれども、先ほどいまのことをおっしゃったと思いますけれども、それについて後半の景気に対する見方ですね。政府はいま公共事業について前年度の繰り延べもやっているわけでございますけれども、いまの問題に関連いたしまして伺いますが、もし公共事業が二兆前後もし繰り延べがありますれば、財政的にはこれは赤字公債を、特例じゃありませんけれども、消してしまうということもあっていいでしょうし、同時に、将来の景気が心配ですから少し繰り延べて残しておく、こういう手もまたあるわけですが、その辺についてどちらの処方せんが好ましいか。
 以上、最後の方、関連いたしましたけれども、三点についてお伺いしたいんです。
#8
○公述人(宍戸寿雄君) 最初のアメリカの今度とられました総合物価対策につきましてでありますか、もとよりこれまでのアメリカのインフレ対策が少なくとも金融だけに偏り過ぎまして、公定歩合の再三の引き上げあるいは通貨供給量の抑制、このような金融に偏り過ぎた政策に対しまして、どちらかと言えば、今回は財政の縮減あるいは金融に対します量的抑制、こういうものまで含んでおります意味において、総合対策と呼ぶにふさわしい対策であろうかと思います。ただ、これは実を申し上げますと、私は三月の四日までニューヨーク、ワシントンにおったのでありますが、その当時すでにワシントンにおきましては、カーターか何らかの対策を打つはずだと、こういうのかいろいろ取りざたされておりまして、このような異常なインフレを抑えるためにはかなり強い対策をとらねばインフレの抑制には成功しないであろうというのが一般的見解でございましたけれども、閣内におきましても恐らくいろいろな議論が行われて結論を出すのに非常におくれたのではないか。二週間近く結論がおくれておりました結果から申し上げますと、いわば一種の中途半端なインフレ対策にとどまっておるのではないかと私は考えています。
 と申しますのは、二週間ぐらい前にアメリカで予測されておりました、あるいは必要と言われておりました総合対策の第一は、賃金、物価の思い切った抑制ないし凍結である。第二は思い切った消費者信用その他に対します貸し出し枠――日本で申し上げますると量的抑制でありますが――を行うこと。第三が財政の圧縮。第四がさらに金利の引き上げ。この四つの対策が考えられておって、一、二、三、四の順序に実は重要性があるわけでありますが、今回のことを申し上げますと、どちらかと言うと、三と四が行われたという程度でございまして、二の部分に一部手をかけたという程度のところでございまして、その意味では毎期的に大きな成果が上がるインフレ対策ではないと考えております。
 また、経済諮問委員会のシュルツ委員長の発言あるいはミラー財務長官の発言を見ておりましても、インフレをここで極端にストップさせるというような政策ではないのであって、来年にでもなればインフレの上昇率が一けたになるであろうと、まことにのんびりした話でございますけれども、そのような言い方をいたしておることから申し上げまして、政府自体もインフレがこのような対策で一気にとどまるということを考えていないと思うのであります。また、言い方をかえますれば、アメリカの現局面におきまして、インフレを完全にとめてしまうような、卸売物価でございますと二、三%あるいは消費者物価で五、六%というふうなノーマルな、正常な物価水準にまで現在のインフレをとめるといたしますれば、恐らく先ほど申し上げましたようなかなり厳しい政策をとらなければならないし、そのことが、当然のことでありますが、アメリカを極端なリセッション、景気後退あるいは不況に導く可能性がございますし、金融市場におきましても大混乱が起きる。一九二九年の大恐慌というようなことまでは考えられないにいたしましても、似たようなことが起きるのではないかという懸念が非常に強く支配いたしておるからでございます。大統領選挙を前にいたしましてのアメリカ政府のとり得た選択といたしましては、時間をかけてインフレを抑制するという、どちらかと言えば中途半端な政策しかとり得なかったというふうに私は判断いたしております。そのことが実はこの二番目のお答えになるわけでありますが、結局そのようななまぬるい政策でございます以上は、アメリカの景気後退が非常に深刻なものになるという予測をいたす必要はございません。
 アメリカ政府の経済見通しでは、ことしの経済成長率がマイナス〇・六%でございますが、マイナス〇・六%と言いますれば、アメリカといたしましては非常に軽微な景気後退でありますが、その程度のものになり、インフレ率も現在の二けた、一〇%を上回る物価上昇率が続くといたしますれば、世界経済は極端な景気後退を回避できるという意味においては望ましいことでございますが、ドルを強化するという基本路線につきましては十分なる対策ではない。依然一〇%を超えるインフレ率が続きますれば、ドルというものに対する評価はそう簡単に改まるわけにはいかないということになろうかと思いますので、大木先生のおっしゃったような、ドルが強くなり過ぎて、その結果円が安くなって困るということは余り心配する必要はないのではないか、こういうことでございます。
 そういう意味におきまして、先ほど申し上げましたように、アメリカのインフレ率がなお二けたであり、日本の消費者物価が政府の経済見通しによりまするごとく六・五%ですか、六・四%ですか、程度の物価上昇率の範囲内にとどまることはなかなかむずかしいにいたしましても、アメリカに比べますれば物価上昇率が落ちついたものでございますれば、結果的には円は強い方向になっていくというふうに私は考えておるわけでございます。
 三番目の御質問のこのままでまいりますと後半やや景気調整を受けるのではないかという認識につきましては、なおまだ強気の見方をなされる方もないわけではございません。政府の経済見通しが実現いたすといたしますれば、恐らく下期の経済成長率はそんなにスローダウンするということではないかと思いますが、ただ、可能性といたしましてはかなり大幅な金利引き上げが行われます。引き続いての第五次の公定歩合が幾らになるかわかりませんけれども、金利が高くなりますことが企業の設備投資意欲を削減することにもなるでしょうし、また今回の場合は、物価上昇率に比較いたしますれば労働組合の賃上げ要求も非常に穏やかなものでございます結果、恐らく賃金上昇率もわれわれの経済研究所では八%内外と考えておりますが、その程度の上昇率に終わりますれば、消費も実質的には伸び悩みが起きるというふうに考えざるを得ないわけでございますので、後半において輸出が伸びる形で景気を支える可能性はございますけれども、余りにも輸出が伸び過ぎて国際収支がよくなり、円が高くなるというようなことは、再び日米経済戦争のようなことが起きる可能性もございますので必ずしも望ましいと考えませんので、大木先生のおっしゃったような、公共投資の繰り延べも含みます景気調整策を前半と後半に分けて、景気の動向を十分判断しながら弾力的な財政の運用を行われることは最も適切なる政策であろうかと考えております。
#9
○大木正吾君 ただいまの最後のことと関連いたしまして、鷲見参考人にお伺いいたしますけれども、大変なこの赤字財政で、政府はことしは財政再建の年とは言っていないんですね。その前年の年と、こう竹下さんもおっしゃっていましたか、いまちょっと宍戸さんに伺ったように、公共事業の繰り延べがございまして、そしてこの委員会におきまする大蔵大臣の答弁によりますと、将来景気が危ないときに少し出しと、こういうふうにおっしゃっているんですが、私どもは、やっぱりいま国民から借りている借金を返すことが一番大事ですからね、むしろもう、一遍切って、少しでもこう赤字を減らしていくと、こういった処方をとったらどうかと、こういったことを言っているのですが、それについての鷲見さんの御意見をちょっと伺い、それから、大変勉強になりましたけれども、三年間も所得減税やっておりませんので、これは日本の言葉として非常に結構な言葉に聞こえますけれども、自然増収という言葉がございます。私は、むしろ三年間の状況というものは、所得税に関する限りは自然増税装置がありまして、階段が三百万、五百万前後の層は二%か三%という小刻みに上がっていますからね、むしろ所得税については自動増税装置ではないかと。ですから、四兆五千億円余りの自然増収、まあ増税装置が仕掛かっていますからね、そういうふうに考えるんですが、その辺についての御感想を聞きたいわけです。
 それから同時に、不公平税制の是正は当然でございますけれども、むしろ不公平是正をした上、どうしても税収が足りないというときに、ヨーロッパで富裕税が大分多いわけですね。ですけれども、日本にはありません。ただ、ことしの場合少しく高所得者の所得税を上げましたけれども、富裕税はないわけですから、結局、富裕税制度の創設は。法人税につきまして一時法人の特別利潤税という構想もあったんですか、むしろ擬制説問題にメスを入れるとか、あるいは配当軽課とか損金不算入とか、ああいったものを全部取っ払ってしまうとか、そういったことがあってしかるべきだと思っているんですけれども、もし増税するならばその方向、富裕税とか法人税の方向にいくべきじゃないかという感じ方なんですが、その辺についての御感触を伺いたいんですが。
#10
○公述人(鷲見友好君) いま大木先生のおっしゃったことは、私も大体そのとおりだと思うことでありますか、公共事業費は、確かに景気動向か必ずしも先行き明確でないということがあり、まあ機動的に財政を運用するためにという配慮もある面では必要かとも思いますけれども、しかし、先ほども申し上げ、大木先生もおっしゃったように、私も現在はとにかくできるだけ国債、特に赤字国債を減らすことに最大限の努力を払わなければいけない。そうしなければ、長期的に見れば結局あとの財政の機動性を奪うことになるわけでありまして、したがって、繰り延べ分は先ほど申し上げたような処置によって国債減額に充てるのが現在最も必要であろう。もしどうしてもそれで足りない場合には、やっぱりもう一度国会に諮っていただいて、その上で出すべきものは出すというようなことをされるのが筋道ではないかというふうに考えます。
 それから二番目につきましては、私の申し上げたのは、まさにインフレのもとではいまの所得税制はやはり増税装置になっていることは間違いないと思いますし、最近やっぱり物価上昇率を余り超えない程度の賃上げですから、そうしますと、どうしても物価上昇率と同じだけの賃上げをすれば、これはもう実質増税はかなりの実質増税になることは計算してみればすぐわかることでありまして、したがって、六十万円刻みの二%という税率の上昇でありますから、したがって、どうしてもそうならざるを得ない。これは一般消費税を導入しなくても、三年も減税をしなければ一般消費税を導入したよりももっと額としては多くなるんじゃないかというふうに考えられます。そういう意味では、一般消費税の導入は見送られましたけれども、やはり一般消費税を導入するという、ちょっと言葉は悪いですが、キャンペーンといいますか、ああいうのは増税を、少なくとも減税という要求を封殺するという意味ではかなり効果があったのではないかというふうに考えております。しかし、その結果、他の社会保険料の負担その他を含めれば実質的には生活がかなり低下してきている。ついでに申し上げますと、高度成長の過程では、いろいろ問題はありますけれども、所得が実質的に増加したことは、これは否定できないわけですね。そのことが現在の体制にある程度順応して、余りそれほど不満を感じなかったという一つの原因でもあると思いますけれども、今後、現在の予算に示されているような方向がずっと続いていくとすれば、当分はいままでの惰性か続くかもしれませんけれども、もう少し長期的に見れば、やはり国民はとてもそれは耐えがたいという状況になってくるのではないか。そうすれば政治的な緊張が高まってくるということから考えても、やはり一定程度国民の所得を増加させる政策はどうしてもとらざるを得ないのではないか、経済的に言ってもそうですし、政治的にもそうだというふうに考えます。
 それから増税のやり方としては、私が先ほど申し上げたいろいろな不公正税制を是正してもというのは、いまおっしゃいましたような受取配当の益金不算入であるとか、それからその他の問題を含めて不公正税制が是正されて以後という意味でありまして、現在特に問題にしなければいけないのは、やはりこういう事態ですから、キャピタルゲインの問題はぜひ取り上げる必要があるのではないか。こういう時期にこういうことがそのまま放置されていたんではとても一般的な増税なんというのはできるものではありません。
 それから富裕税というのは、実際に実行する場合にはいろいろ難点があるかと思いますけれども、やはり日本にはかなり金持ちの人もいるようでして、私は、統計でよくわからないものですから新聞の広告を見ているんですけれども、一億円の家が二十戸売り出されれば、即日十一戸売れるとか、そういうことがあるわけであります。その他にも大変いろいろそういうことを言えば切りがありませんけれども、そういう条件があるわけでありますから、そういうものをどういうふうに把握するかということは、これはもう真剣に考えていただく必要があるのではないか。これはただ単にお金の流れをとらえるだけじゃなくて、実際に物になっているものをどういうふうにとらえるか、いままでの物はかなりとらえるのはむずかしい、土地などとか、そういうものを除けば、美術品だとか宝石だとか、そういうものは非常にむずかしいと思います。しかし、今後はこれはやり方によってはかなりきちんと把握できるのではないか、そういうことも考えていく必要かあるのではないかというふうに考えております。
 以上です。
#11
○馬場富君 宍戸先生にお伺いいたします。
 一点は、インフレ抑制と物価上昇の対策として金融引き締めという傾向でございますけれども、この中で非常に金融引き締めが、窓口に行きますと、これが結局選別融資とかいう方向になって、これが一つの倒産の大きい原因になっておる、こういう点についてどのようにお考えですか。
#12
○公述人(宍戸寿雄君) 金融引き締め政策と申しますのは、過去においても常にインフレ抑制あるいは行き過ぎた景気過熱の状態においてとられた政策でございます。ただ、今回非常に特徴的なのは、金融引き締め政策が始まりました昨年一月から貸し出し枠の設定が行われ、かつ四月には公定歩合の引き上げが行われる、このようなことが起きたわけでありますが、そのときの景気情勢は、実を申し上げますと、どちらかと言うと景気は過熱していなかったわけでございまして、インフレは起きておりましたけれども過熱は起きないという非常に特殊な事態でございました。と申しますのは、輸入する物が値上がりする、石油が値上がりするという形のインフレは起きましたけれども、景気はむしろ五十三年度は落ちついた状態で推移いたしておりました。そのことが前回のインフレとはかなり意味の違う状態であったわけであります。そのような事態で起きました金融引き締めでございましたがために、過去一年間の推移をたどりますと、金融引き締めと言いながら、企業の手元流動性、企業の持っております金はちっとも足りないということにはならないという形をとってまいりました。そのことは、言いかえますると、昔のような引き締め政策が効果を奏しないということにもなっておるわけでございます。
 ただ、ことしに入りましてからは、何と申しましても金融引き締め、貸し出しの抑制が効果を次第にあらわしてまいりましたけれども、まだ大企業中心には金詰まり感が出ておりません。たとえば鉄鋼でございますると、まだなお借金を銀行に返しておるというような状態でございまして、金融引き締めなどとは全然縁故のない形になっております。にもかかわりませず、中小企業におきましては倒産件数が累増いたしておりまして、普通、月に千五百件以上の倒産がございますと危機ラインと呼んでおるのでありますけれども、すでに危機ラインを突破しておりまして、このままでまいりますると、恐らく五十五年は戦後最高の倒産件数を記録するという形になるかと思います。これはもちろん金融引き締めが浸透いたしましたということでございますけれども、内容的に申し上げますと、意外にいわゆる金詰まり倒産というものは少なくて、どちらかと申しますと原材料が値上がりした、しかし、製品価格は値上げができない、あるいは下請といたしましては下請代金の値上げが通りにくいというようなことからの企業収益の悪化がもたらしたものがございまして、銀行が確かに現在選別融資をやっておるという面もございますけれども、いわば金融引き締めの効果があらわれる場合に中小企業に偏り、かつ跛行的な形で産業によって非常に差のある金融引き締めがいま進行しておるというのか実態かと思います。そういう意味において、さらに今後金利が上がりました場合あるいは金融引き締めが強化されました場合に、どのような形でこの中小企業の倒産問題か起きるかというのはなおわからない面がございますけれども、いま申し上げましたように、今後もなお通常言われております中小企業の倒産が増大いたしまして、金融引き締めによる不況現象が強まるものと予測いたしております。
#13
○馬場富君 そこで、先ほど来両先生の説明を聞いておりまして、特にいまこの対策の中で景気上昇の要因というのは余り見当たらないというようにわれわれも考えるわけですが、そういう点でやはり原料高が製品価格に転嫁し切れないというようなことからして、結局、どうしてもやはり販売価格を抑えざるを得ぬと、こういうところで非常にいま苦しんでおるわけですけれども、こういう状況はどうでしょうか。
#14
○公述人(宍戸寿雄君) 現在、金融引き締めを強化しておられる日銀当局のお考え方は、現在でも景気は上昇局面にある、民間の消費は強い、設備投資意欲も強いと、だから金融引き締めをやっても景気はすぐには悪くならないと、こういうふうな御判断のようでございますけれども、いま申し上げましたように、今回の特色といたしましては、原材料の値段が上がる、あるいは部品の値段が上がると、しかし物によってはなかなか製品の価格の値上げができない、こういう形で企業収益が悪化する形のものが起きました場合、インフレという問題から申し上げますと、私は、公共料金が電気、ガス料金を初めとして、大幅に値上かりいたしました後にも、そう大幅な値上げはむずかしいという現状になるかと思います。その意味では、インフレ問題としてはよろしいのでありますけれども、結局、引き締め政策から中小企業の倒産が増大するというような、過去において起きました現象と同じような形のものか累増する可能性は十分持っておる、これをどういう形で経済政策として対処するか、中小企業対策といったようなものがむしろ昭和五十五年度の課題であろうかと考えております。
#15
○馬場富君 次は、金融の点でアメリカの高金利に触れられましたけれども、宍戸さんから、そういう点でアメリカの高金利政策に自由主義経済の国はどうしてもこれについていくと、いわゆる追従という傾向が非常に強いわけです。それで、日本もそういうような状況下にあるわけですけれども、そういう中で、やはり日本とアメリカの物価上昇等について非常に違いがある。たとえばアメリカが当初は、かつての第一次オイルショックのあったあの前後の危機のときに、やはり買わず損をした、買わなかったから損をしたという考え方がアメリカの中で強くささやかれておる。だが日本は、かつては買い損をしたという一つの支えがあるわけです。ここらあたりの食い違いが、金利上昇とその国の物価上昇あるいは景気との関係が非常にむずかしい問題になってきておるのじゃないかと、そのためにかえって日本はそういう点からして、一つは冷却効果が出てくるんじゃないかと、こういう心配があるのですが、この点どうでしょうか。
#16
○公述人(宍戸寿雄君) アメリカと日本の場合が非常に違っておるという御指摘でございまして、これまさしくそうでございまして、第一次石油ショックと呼びました昭和四十八年に起きましたあのときには、日本はむしろ景気過熱の状態でございました。昭和四十八年の狂乱のインフレは石油の値上がりのために起きたように言われておりますけれども、事実はそうでございませんので、すでに四十七年からインフレが始まっており、四十八年はもうかなり石油ショックがなくても値上がりが激しかった。そのような時期に石油ショックがございましたので、あわてて買いだめ、売り惜しみをなさった。しかし、先ほど馬場先生がおっしゃったように、買ってみたけれど損をした、買ったけど損をなさった部分もかなりございまして、そのことが、今回の場合は景気局面が違いますせいもございますけれども、逆に経営者の方々も消費者の方々も、非常に冷静にこの第二次石油ショックに対応いたしましたことがいわゆる狂乱のインフレを起こさずに済ませております非常に重要な事実だと思います。
 ところが、逆にアメリカの方は、前回の方はそれほど騒がなかったのでございますけれども、今回の場合はまだ十分石油の需給関係がゆとりがある昨年の三、四月において、すでにガソリンスタンドで自動車が列をしてガソリンを買いあさると、こういうような事態が生じましたことは、先生のおっしゃるように、今度は逆にアメリカ側が非常にあわてておる。それはしかし基本的にはアメリカがもうかなり強いインフレの中に巻き込まれてしまった後に起きた石油ショックだったからでございます。そういう意味におきましては、石油だけがインフレの原因だと考えるのは非常に間違いでございまして、その国の経済政策の結果、アメリカのような過度なインフレが起きたところへ石油が新たにつけ加わった、そのことがアメリカの経済政策の運用を非常にむずかしくしておる、そうして歴史始まって以来の高金利というようなことをやらざるを得なくなった、こういうことになっておるのだと思います。そういう意味におきまして、日本側はどちらかと言えば第二次石油ショックに対して対応が賢明に行われ、十分冷静にこれに対応いたしたと判断いたしておりますので、先生のおっしゃるように、ここでアメリカと同じような意味合いの金融引き締め政策をおとりになりますと、冷やし過ぎになる懸念は十分あるというふうに私たちは考えております。
#17
○沓脱タケ子君 私は、共産党の沓脱タケ子でございます。
 鷲見公述人にまとめて三点ほどお伺いをしたいと思います。
 五十五年度予算案というのは、国民生活の防衛と財政の国民本位の再建をどのように進めていくかという点が最大の課題でございます。私ども日本共産党は、総額三兆六千億の組み替え予算案を提案をいたしまして、この最大の課題に対処すべきであると主張をしてまいったところでございます。
 まず第一点としてお伺いをしていきたいと思っておりますところは、私ども提案をしてまいりました中にも、不要不急の予算というものの削減の課題の一つとして、防衛予算――軍事費ですね、先生のお話の中にもありました軍事費の分野でございますが、この防衛予算の削減の課題というのを一つの柱にしております。今日、国民の中では、ジェット機よりも福祉をと、あるいは軍艦よりも減税をという声というのが大変強まってまいっております。世論調査も、防衛予算に対して非常に国民の目が向いてきているということか明らかに数字が示してまいっております。しかし一方では、雇用の拡大のためには軍事費をふやせなどという論もございます。
 そこで私は、まず第一点お聞きをいたしたいと思っております点は、鷲見先生にお聞きをしたいというのは、防衛費の経済的効果についてひとつお伺いをしたいというのが第一点でございます。第二点目でございますが、先ほどのお話にもございましたけれども、今日の国家財政の危機を乗り切っていくためには、何らかの増税の問題というのがお話の中にもございました。私は思うのですけれども、昨年の総選挙の折、一般消費税の導入問題というのが一つの争点になっておったわけでございます。しかし、一般消費税に対する国民の批判というのは大変厳しくて、選挙の結果は大平内閣が敗北をするという結果が出たわけです。その後、その理由の一つとして、そういった点が国民に十分理解をされていなかった、PRが不足をして国民のコンセンサスが得られなかったのだという点、国会の論議の中を通じましても、国民の皆様方の御同意を得てということがしばしば総理の御自身の口からも語られておるわけでございます。私ども、国会審議の中でもしばしば思うのですけれども、なかなか国家財政に関するすべての全貌をつかむということは、資料提出等の問題も含めまして、なかなか全貌がつかみにくいというのが国会審議を通じても実は痛感をしているところでございます。
 そこで、お聞きをしたいと思っておりますのは、政府の側から国民に対するPR不足というのですが、コンセンサスを得るためにというふうにおっしゃっておられますけれども、国民の側から見て、国家財政あるいは国の政治の全貌というものをつかんでいくためにどういうふうにお感じになっておられるか、お考えになっておられるかという点か第二点でございます。
 第三点でございますが、私は、予算審議を通じてしばしば問題になって言われておりますのは、国際比較から見ましてわが国の租税負担率はまだ低いと、こういうことがしばしば言われておるわけでございます。したがって、諸外国特にEC諸国等と比べても租税負担率が低いからもっと上げなければということが裏打ちされているように感じてならないわけでございますが、これについては実際にはどうなのかという点についてのお話をお伺いしておきたいと思うのでございます。
#18
○公述人(鷲見友好君) ただいまの沓脱先生の御質問を順序を逆にしてお答えしたいというふうに考えます。
 一番最後の租税負担率が国際比較から見て日本は先進資本主義国の中では低いというふうに言われておりますが、数字を見る限りそれはもう否定できない事実だと思います。日本が五十五年度予算で二一・八%、それに対してヨーロッパ先進国は三〇%から高いところ四〇%ということは事実でありまして、その数字を見る限りではまだかなり増税の余地はあるというように見えますけれども、しかし、一般の国民から見ますと、必ずしもその数字だけで物を言ってもらっては困るのではないかということがあります。これはなぜかといいますと、日本はそれらの国々と違った幾つかの条件があるわけであります。たとえば住居費、これは特に都市周辺の住居費というのは、特に自分が家を持とうと、あるいは家がなくて借りて住んでいようと、とにかく非常に高いということはもうはっきりしている事実でありまして、これを差し引きますと、かなり自由になる所得が少なくなるということは否定できないと思います。
 もう一つは、これはよく新聞などでも出ますけれども、日本の生活費は基本的な生活に要する費用がかなり高い。要するに基本的な生活に必要な物資が高いというのがこれまた特徴でありまして、したがって、日本の国民はかなり生活がしづらいという状況に置かれていることも否定できません。それからその次の問題としましては、いままで繰り返し議論されてきております、不公正税制のために一般の国民大衆は租税負担率であらわされている以上に多い負担をせざるを得ないということになっているわけであります。それからその次の問題としては、貯蓄率が非常に高い、これもまた日本の特徴であります。アメリカなどは、現在は、先ほどのお話もありましたように、とにかく物をどんどんどんどん買って貯蓄率は非常に現在低くなっているということがありますが、こういう異常な事態を別にしましても、日本が貯蓄率が高いのはこれもまた周知のことであります。これは社会保障関係であるとか、あるいは住宅だとか教育に対する施策が必ずしも十分でないために、無理をしてでも貯金をしておかざるを得ないという状況に置かれているわけでありまして、したがって、こういうものを全部総合して考えますと、日本の国民の生活は、楽であってさらに増税の負担に簡単にたえ得るというような状況では決してないということを考えると、租税負担率の問題だけから増税の余地があるというような意見は私はとらないわけであります。
 それから二番目の問題ですけれども、財政民主主義というのは、言うまでもなく、国民が監視と承認をする中で財政運営が行われるということにあるわけでありまして、代議制におきましては国会がその役目を果たしていることは事実でありますが、しかし、国会だけじゃなくて一般の国民が財政の問題に十分関心を持つことが必要だと考えます。一般消費税などはかなりPRをされたような気がするんですが、あれは、PRが不足だから国民は拒否したのじゃなくて、私は、むしろ国民のかなりの部分が一般消費税というのはどういうものかということがかなりわかったから、それで拒否したのじゃないかというふうに考えているわけであります。したがいまして、PRの仕方の問題ではないと思いますが、しかし、財政の内容をできるだけ国民に知らしていただくということは、これはぜひやっていただかなければならないことでありまして、その点では不十分な点がかなりあると思います。たとえば税収見積もりでも、どういう根拠に基づいて計算してどうなったというようなことなどは、私などはいままで発表されたのを――不勉強かもしれませんけれども、見たことがないわけであります。したがって、政府の方でこれだけだということを言われるとそれに基づいて議論するしかないけれども、しかし、その見積もりが果たして正しいかどうかということは、われわれではちょっとこれ資料がないわけでして、その積算の根拠その他を示していただけば、ああその計算の仕方はおかしいじゃないか、本当はもっとあるじゃないかとか、そういう議論ができるわけでありまして、そういう意味でやっぱり国民に十分に政府がおやりになりたいことについてだけ、政府の都合のいいようなPRだけじゃなくて、本当に財政の実態を国民が十分知って、そうして議論する中で、やっぱりそこのところで落ち着くところへちゃんと落ち着くというようなやり方をとっていく必要があるのではないかというふうに考えます。
 それに関連しまして、私が常々不満に思っていることは、たとえば予算審議の場合には、こういう公聴会に出れば資料がいただけますけれども、公聴会に出ない場合には資料かなかなか手に入りにくいという事実があります。これは国会の先生方はそういうことはちょっとおわかりにならないと思います。なぜかと言えば、国会ではとにかくこれは資料を配らなければ国会審議ができないわけですから、すぐ配られますけれども、私ども、公述人として出ないときには、たとえばいまいただいた資料ですね、この程度のものかなかなか手に入らないんです。実は、「昭和五十五年度予算及び財政投融資計画の説明」「租税及び印紙収入予算の説明」というのは、これは一月の終わりには議員の先生方には手に渡っていると思います。それがいつ一般の市民の手に入るか、恐らく御存じないと思いますけれども、これが政府刊行物サービスセンターに入ったのはきのうの朝です。これは現在、きのうの段階でまだ入っておりません。したがって、予算が審議されているときに、国民がそれに参加して議論しようにも正確な資料がやっぱり手に入らないわけですね。したがいまして、この点はぜひ考えていただきたい。私が考えるには、印刷されているんだから、あとは輪転機を回せば部数は多くできるんだから、そんなにむずかしいことじゃないけれども、そういうふうになっているというのは、本当に国民に財政の実態を知らせて国民と一緒になって問題を考えていくという姿勢がちょっと弱いのではないかというふうに考えるわけであります。そういう点で、ぜひこれからも本当の意味でのやっぱり財政の議論をするに足る資料の公開ということをお願いしたいわけであります。
 それから、質問では一番最初ありましたか、最後の問題になりますが、これはまあかなり大変な大問題でもありますか、軍事費を増大した場合には、まず一番最初に問題になるのは増税であります。増税をすれば国民の購買力はそれだけ削減されるということになり、これは景気に対してはマイナスの作用を与えるということになります。ただ、それが政府の手を通じて軍需発注になるから、したがって、プラス・マイナス同じではないかというふうに考えられる側面もありますけれども、しかし、それであればその過程で軍需企業が利潤を上げることを結果として助けたということになるだけでありまして、そこに一つ問題かあろうかというふうに考えます。それからまた、増税でなくて、軍事費を次々と拡大していくためには国債の発行が歴史的に見ても伴うわけでありますが、それはやはり当然現在日本で一番問題になっているわけでありますから避けなければならないということになります。そうじゃなくて、やはり国民の消費力をふやして、景気を回復して安定させるという方向には軍事費の増大は向かないのではないかというふうに考えております。それにつきまして、いま、一九七七年の国連の軍縮総会に際して事務総長名で報告書か出ておりますが、それは軍備競争の経済的、社会的諸結果と、その世界の平和と安全に対する極度に有害な影響という報告書が出ておりますが、その中に出ているものを見ましても、たとえば雇用効果の点では、十億ドルを軍需に支出された場合には雇用は七万六千人増加するけれども、非軍需に支出する場合には十万人の雇用をつくり出す。これを減税に向けた場合には一万二千人かふえるというように、これはアメリカの労働省の数字だと思いますが、それを報告書の中で使って、そうした雇用に際しても軍需はきわめて少ない効果しか持たないんだと。またほかの研究によりますと、たとえばB1なんていうようなああいう途方もない飛行機をつくった場合には、同じ十億ドル出しても一万八千人程度の雇用効果しか生まないというふうに言っています。というのは、これは技術が極度に高度化しておりまして、したがいまして、お金はかかるけれども雇用はそれほど生まないということが述べられておりますしこれはここでは時間の関係上申し上げられませんけれども、幾つかの企業の実態を見ましても、軍需がかなり大幅にふえているのに雇用がふえているというのは、日本だけではなしに、西ドイツの例などもありますけれども、ここでは省略をさしていただきます。
 それからもう一つ、これは先生方にぜひ私は知っていただきたいのですか、これは去年の国連デーに向けて、国連でこういうポスターを出しているのです。これはどういうものかといいますと、先ほど言いました国連の報告書ですね。報告書に書かれている点でかなり重要だと考えられる点をここに要約して述べたものです。それによりますと、一資料を示す一ここの図でありますけれども、これはたとえば、去年の十月ですか、天然痘の撲滅宣言が出ましたけれども、この天然痘を撲滅するのに十年間で八百三十万ドルの支出でそれが実現できたんだと。これはまあ大変な人類の歴史にとって輝かしいことでありますけれども、その費用は爆撃機一機分だということで、これ、爆撃機が書いてあるわけですね。それからWHOは、その次の計画としてマラリアを絶滅する計画を立てているけれども、それに必要な費用は四億五千万ドルであると。その額は全世界の軍事支出の半日分にすぎないと。このときは三千八百億ドルというふうになっておりますが、現在では四千億ドルぐらいです。そうしますと、そのわずか一%そこそこの金を出せば――このマラリアは十億人の人が住んでいる地域で流行しているそうでありますけれども、そのためにその地域の発達が非常におくれている。そういうところが健全な発達をすれば、これは先進国にとっても、やはり平和的な意味での先進国に対する輸入の増大ということになり、平和的な発展が可能であるわけですけれども、そういうこともここに書いてあるんですが、恐らく先生方でもこういうのをごらんになった――国会には恐らく張ってないでしょうし、学校でも、私はたまたまこういうのを手に入れたものですからちょっと張っておきましたけれども、こういう現在われわれが日本の財政を考えるに当たっても非常に重要だと考えられるような問題がこういうふうに報告として出されているわけでありまして、したがって、軍事費をふやすというのは、経済的な効率から見ても、現在では一番悪いことに国連の報告書でもなっているという状況でありますし、それから人道的に見ても非常に問題があるのじゃないか。
 もう一つだけ申し上げますと、たとえば現在食糧不足に悩んでいる人口は五億人ぐらいだとやはりこの報告書は書いておりますが、そのうちの数百万人は極度に劣悪な状況にあると、栄養失調状況にあるというわけですね。しかし、そのためには、そうしたいわゆる発展途上国の農業開発をしなきゃいけない。そのためにはちょっとこれは金が要るわけでして、四十億から五十億ドルぐらい毎年要るというふうに言っておりますが、その食糧改善計画がやはり金がなくておくれているという状況であります。それに対して先進国、特にいわゆる強国は武器を売りつけておりますから、そういう国が農業機械を、資材を輸入するよりも武器に向ける金の方が大きいというのが現状であって、そういう面から見てもきわめて非人間的であるというふうに言わざるを得ない。そういうものじゃなくて、本当の平和的な発展をこれからわれわれは考えていかなければならないのではないかというふうに考えます。
#19
○柳澤錬造君 三点御質問してまいりますが、最初に宍戸さんにお聞きをいたします。
 先ほど、円の価値が現在二百五十円ぐらいだけれども、これは安過ぎる、二百十円から二百二十円ぐらいが妥当なところだというふうにお話がありましたんですけれども、私がお聞きしたいことは、円が幾らかということよりかも、最近の趨勢というものは非常に上がったり下がったりするわけですね。五十二年の十月が二百五十円だったのが五十三年の十月には百七十六円に上がっちゃった。そしてまた、昨年の十月は二百四十円に下がったという、こういうふうに、年間で四割前後も上がったり下がったりする、この大幅な変動がむしろ日本経済を不安にするのではないだろうか。そういう点につきましてどういうお考えをお持ちか、それに対する、こういう方法をとったらというお考えがあったらお聞きをしたいと思うのでございます。
 それから、次に鷲見さんの方にお聞きをしたいんですが、一つは国債の問題で、先ほど赤字国債が云々のお話がございました。この年度末で約五十八兆になる。五十五年度の予算でも国債費で五兆三千百億も出すということになっているわけなんで、確かに大きな問題なんです。鷲見さんのお考えだと、いまの日本経済力からいって、日本の国の国債というものがどのくらいのところが限度だというふうにお考えになっているかということ、それが一つです。
 それからもう一つは防衛費の問題なんですが、先ほど新規投資はやめろという御発言があった。これは、現在の日本の防衛力というものがこれ以上必要ないというならばもうそれでよろしいわけですけれども、もしまだ必要かあるんだということになるとするならば、いわゆるこの五十五年度予算に計上しておるのは、艦艇なり航空機なりか実際にでき上がってきて、それが使えるのは昭和六十年ぐらいになってしまうわけなんです。ですから、ことしの予算で、財政が苦しいからつくらない、景気がよくなってきたらそのときにつくればいいではないかと言って、いわゆるわれわれが背広をつくるようなわけに、この防衛力の問題はいかないわけなんで、その辺の点につきまして、どういうお考えでこの新規投資はやめろという御発言になったのか、以上三点をお聞きいたします。
#20
○委員長(山内一郎君) 宍戸公述人からお願いします。
#21
○公述人(宍戸寿雄君) 円為替の問題でございますが、日本の通貨が特にこのような事態におきまして大幅に変動をいたしておりますという事実は間違いないのでございまして、先進国の中では、一方的に強くなるマルク、スイス・フランといったようなものに比べますと、日本の通貨は非常に大幅に変動いたしております。最高は百七十六円、最低は二百五十一円にもなる、それも一年の間に。こういうことでございまして、確かに、現実に貿易をやりましてもあるいは経済を運営いたしましても、このように大幅に通貨か変動することは望ましいことではございません。しかしながら、これはまた日本経済の特質でもございまして、昭和五十三年には経常収支で百十九億ドル黒字になったものが昭和五十四年度には百三十億ドルの赤字になろうという、一年間に二百四、五十億ドル黒字から赤字へ転化すると、このようなことか起きる国もほかにはないわけでございまして、言いかえますると、日本の国際収支が、非常に石油の値段といったような日本ではコントロールできない、アラブの王様の恣意的な値上げではございませんでしょうけれども、いわば日本経済の中ではどうすることもできない条件によって大きく国際収支か変動いたします。こういう事実が円為替の変動をもたらしておるわけでございまして、単純なる、通常の通貨当局が為替市場に介入いたしますというような手段でこのような大幅な変動はとめることができないと思います。
 で、われわれは、ファンダメンタルズ、基本的な条件と呼んでおりますけれども、基本的な条件であります国際収支の安定的な推移が最も望ましい安定策でございますけれども、これは将来におきましても石油の大幅値上がりがもう二度とないという保証はございませんし、そういう意味におきましては、将来とも大幅な変動をある程度覚悟しなければならない、これが日本の経済の宿命であると、こういうふうに考えなければいけないのでございまして、ある特殊な人たちか投機を行って、ことさらに円を強くしたり、弱くしようとする場合に介入政策をおとりになることは正しいのでございますけれども、国際収支が大幅悪化して円が安くなることを無理にとめようとすることはかえって不都合なことが起きるのでございます。その意味におきまして、おっしゃるような大幅な変動にどう対処するかということは、基本的には、日本経済がそのような石油の大幅値上がりというような問題に対しまして弾力的な形でそれに対応できるような経済全体の弾力性を失わないこと、われわれは適応性と呼んでおりますが、経済が適応力を持って、一時は大幅な輸入超過になるけれども、円が安くなれば国際競争力を利用して再び輸出を拡大して均衡を回復する――まあ過去の四十八年の経験でございますると、そのような国際収支均衡を回復する力を持っておることは事実でございますので、こういった力を失わないでおりますれば大幅な変動に対処することができるという意味におきまして、非常に基本的な問題に関係いたしますので、小手先の対策でなしに、日本経済の活力を維持すると申しますか、日本経済の大幅な外的な環境の変化に対する適応力を高めることがこの基本的な為替政策だと私は考えております。
#22
○委員長(山内一郎君) それでは、鷲見公述人にお願いします。
#23
○公述人(鷲見友好君) お答えします。
 国債の限度はどの程度かという御質問だと思いますか、私はどの程度か限度というのはなかなか額としては確定しがたいと思いますが、少なくとも赤字国債はゼロにしなければいけないのではないかというふうに考えております。で、建設国債と赤字国債では、経済的な性質についてはこれはもう全く同じでありまして区別はないわけであります。そしてまた建設国債も、四十年度の補正予算までは公共事業も国債なしでやってきたわけですから、ただそれが足りなくなったから国債を発行するようになったという意味では、赤字を埋める、そういう性質のものでありますが、しかし、建設国債の場合では、やはり建設事業という一つの歯どめがありまして、私は経済効果から見て建設国債を肯定するのではなくて、国債はできるだけ少ない方がいいけれども、しかし建設国債であれば、これは当初建設国債を発行されているときに言われていたように、やっぱり歯どめになる。したがって、無制限な国債の増発ということにはならない。そういう意味において、せいぜい建設国債の範囲の以内にとどめるべきであるというふうに考えます。現実にはこれは国債費のために国債を発行しなければならない状況になっておりますから、現実的には非常にむずかしい問題あるかと思いますけれども、それにもかかわらず、やはりそういう赤字国債はもうあらゆる努力を通じて減らしていかなければならないのではないかというふうに考えます。
 それから、軍事費の問題ですけれども、これは先生と私と若干軍備に対する基本的な考え方に相違があるかと思いますけれども、私は現在の自衛隊は憲法から見てやはり是認することはできないという立場にあるわけであります。したがって、基本的にはもっと大幅な削減をしなければならないというふうに考えますけれども、しかし現実にあるものでありますから、これを一遍になくするというのは現実問題としてはできない。したがって、せめて新規装備でもということを申し上げたわけであります。
 軍事費は、先生も御承知だと思いますけれども、日本の軍事費は対GNP比では確かにまだ少ないことは事実でありますけれども、しかし、その絶対額を見ますとこれはもう相当な額なんですね。ミリタリーバランスによりましても八位ですけれども、しかしこの八位といいますと、日本の上にあるのは、米ソとそれから中国、それからイギリス、フランス、西ドイツ、それからサウジアラビアが以前は日本よりも下でありましたけれども、オイルダラーでたくさん武器を買い込むようになって日本よりも上がったということがありまして、まあサウジアラビアの場合はちょっと例外としますと、やはり世界の最強国と――西ドイツはこれもやや例外に置かなければいけませんけれども、それを例外として、核武装した最強国の軍事費にほぼ近づいてきているというのか現実であります。数字は時間がありませんから申し上げませんけれども。しかも核装備に要する費用というのは、以前の調査の報告を見たことがありますが、それを見ますと、大体極秘であるから正確にはわかりませんけれども、GNPに対して一・五%ぐらいはやはり要るのではないかというふうに言われておりますから、そうしますと、フランスだとかイギリスなどではその三分の一強ぐらいが核装備に向けられるとすれば、その残りは通常兵器ということになりますと、日本と余り大した差はないということに、そこまでもうすでに日本は来ているわけですね。しかし、軍備はどこまでやったらこれは安全であるかということは限界がありません。先ほどのこのポスターの中にもそれか書いてあるわけですね。これだけの破壊的な兵器を持っている国でも自分の国は安全だというふうに感じることはできないだろうということを述べているわけで、むしろそうした軍備競争をすることが世界の緊張をつくり出しているわけであって、それをぜひ削減しなければならないということを非常な熱意をもってこの報告書は訴えているわけでありまして、そういう国際的な緊張緩和に資するという意味でも、これからいろいろアメリカからの要請はありますけれども、しかし、日本としては、やはり世界の緊張の緩和、そして本当の平和的な発展に資するような方向での政策をとっていく必要があるのではないかというふうに思います。
 それから、もう一つだけついでに申し上げますと、日本は百一億ドルというのが昨年の数字でありますが、バングラデシュは人口約八千五百万人ぐらいですけれども、そこの国内総生産は八十億ドルですから日本の軍事費よりも低いんですね。これはもちろんその国がおくれているということがあるけれども、日本の軍事費はそれだけのやっぱり大きな軍事費にすでになっている、絶対額で見ればですね。しかも、これは最近国会でも問題になっておりますけれども、日本の軍事費の範囲がNATO並みに計算すればこれは一・五倍ぐらいになるというふうに言われておりますし、私も以前からこれは一・五倍から七倍というふうに見なければいけないんじゃないかというふうに言っているぐらいですから、そういうことを考えますと、すでに日本の軍事費はもう過大になり過ぎて――自衛隊の違憲かどうかということは別にしましても、過大になり過ぎていて、それが決して日本の発展と世界の平和的な発展にプラスにならないのではないか。少なくともこれからふやしていくことは避けなければいけないのではないかというふうに考えているわけであります。
#24
○秦豊君 お二人に一つずつ伺わせていただきたいと思いますが、最初に宍戸さんに御質問をいたしたいと思います。
 一、二週間前からヨーロッパの外為市場ではドル買いですよね。一ころのように円が魅力のある投機対象でなくなったようであって――幸か不幸か判別はむずかしいと思うんですが。しかし、アメリカと日本の通貨当局というのは、どうもそのコミュニケーションが非常に悪かった。最近ちょっといいように見えるのはむしろ例外的ではないだろうかとさえ思っています。しかし、穴戸さん、日本の円レートがどうなるかということは、もちろん非常にこれはグローバルな問題でしょうけれども、それこそファンダメンタルな要因としては、やっぱり日米間の経済相関関係というものがベースになっている。そうすると、例のカーター・ポリシーがややトータルに打ち出されて、ことしじゅうの効果は期待しないにしても、明年じわっと効いてくるという観測が大方だろうと思いますが、そうすると、言われました円レートが妥当な水準、二百十円から二百二十円という域を、まあ回復という言葉か妥当すると思いますが、そうなるためには、やはりかなりの時間の要素もあるし、具備すべき条件もかなり複雑に絡んでくる。私は来年にまたかるというふうな印象を抱いて仕方かないんですよね。その辺の御見解が一つ。
 それから、御専門のお立場からして、六月のベネチア・サミットかかなりエネルギーサミットであり、国際通貨サミットである。特にエネルギーについてはかなりリアルな下方修正を行うのではないかと私は見ているわけですけれども、しかし一方では、国際通貨問題というのがかなり大きな焦点になって浮かび上がるでしょう。その辺をどう見ていらっしゃるか、参考までに伺いたい。
 それから、鷲見さんに一つ伺いたいことは、実はきのうもこの予算委員会の総括で私か大平総理初め皆さんに伺ったところなんですけれども、まだ総論の入口でとどまっております。それはどうしてもこの国会の予算論議というのは一般会計に偏しがちである、偏る。どうしてもそうなんですね。ところが、赤字を単に減すとか公債発行額を減額するという視点だけではなくて、たとえば十数兆になんなんとする財政投融資がいま十全に機能しているのか。不用額、使い残しが今年度推定五兆円を超えているような現状の中で、ワンセットにして予算の総合機能をもっと調整すべきではないか、効率を。私、これ持論なんですね。
 それからもう一つは、例の神奈川方式と申しますか、長洲さんのもとでいまスタッフがプランニングをしているゼロベース、それからサンセット方式をコンビネートした一種のあの考え方、財務管理、科学財務管理、費用と効果を――防衛費じゃありませんが、費用対効果をシビアに見詰めるというあのアイデアですね、私はこれが国家財政に術曼するときに初めて日本の財政再建論議が本物になるのではないか。しかし、かといって当分、国会議員のビヘービアというか、あるいは有権者の心理、慣例、しがらみ、つまり物取り民主主義ですね、あるいは圧力団体型予算編成、この構造はそんな言うほど簡単に改まらない。ならば、いっそ財政再建特別措置法案なんというものをつくって、議員立法にするか政府提出にするか、それはそのときの情勢でしょうけれども、せめてそういうきちっとした準則に基づいて大胆に大なたをふるう、冷徹に処理する、これくらいでないと私は財政再建というのも絵そらごとになりかねないと思っているんですけれども、その辺の御見解を承りたいと思います。
#25
○委員長(山内一郎君) それでは、宍戸公述人お願いします。
#26
○公述人(宍戸寿雄君) 秦先生お話しのように、為替レートが幾らになるかと申しますのは、これはなかなか微妙な問題がございまして、われわれの仲間では、賢明なるエコノミストは株価と為替レートの予測はしないことということになっておりますので、そういう意味では、幾らとは申し上げかねますが、ただ先ほど申し上げましたように、カーターのこのパッケージになりましたインフレ対策がもし効果をあらわすにいたしましても来年以降であるというような――もちろん予算その他の問題も来年度予算の話でございますからね、この九月からの話でございますから、そういう意味では効果が出ても来年という意味におきまして、恐らく世界の国際通貨を扱っておるマネー・マネジャーの連中も、来年はともかくも、ことしじゅうはアメリカのドルがそんなに強くなるとは考えていないのじゃないかと、こういうふうに考えます。
 それから、ベネチア・サミットにおきます問題は何になるかというのは、これはわれわれの推察できないところでございますけれども、恐らく現局面におきましては、エネルギー問題もさることながら、国際通貨問題、特に世界的なインフレとそれに関連いたしました世界的な金利競争とも言うべき、アメリカの金利に追随してみんなが上げてしまうということが世界景気にどういう問題をもたらすかにつきまして十分な御検討をいただきたいとむしろわれわれは考えておりますし、恐らくその意味では、前回のBIS、前川日銀総裁が御出席になりましたBISの会議におきましても、高金利競争が議題になったようでございますが、恐らく五月、六月という局面は金利の問題がまだ残っておりますし、国際通貨の不安がさらに激化する可能性があるという意味においてはそのような問題が議論されるだろうと私たちも考えております。
#27
○委員長(山内一郎君) 鷲見公述人お願いします。
#28
○公述人(鷲見友好君) 先生のおっしゃった、一般会計だけではなくて他の会計、財政投融資も含めて議論をすべきであるという御意見は全くそのとおりでありまして、私なども普通財政学を問題にする場合にはそのことを絶えず強調しているわけであります。財政投融資関係では、先生おっしゃったように、使い残りも大変あるということで、かなり見直しをしなければいけないと思いますけれども、ただ一体として考えるという場合のことだけちょっと触れさせていただきますと、たとえば住宅関係などでもこれは非常に明確なことですね。一般会計では非常に少ない建設戸数しかない、そして財政投融資で非常に多いということで何とかいままで国の住宅政策が行われてきたわけでありますけれども、しかし住宅問題の基本は、やっぱり一般会計で優良な公営住宅を供給するということがかなり継続的に行われないとこの根本的解決はむずかしいのではないか。もちろん住宅戸数は、これはほぼ達成されているというふうに言われておりますけれども、先生も御存じと思いますが、建設省の調査によっても住宅困窮世帯というのはかなり多い。広い意味でとれば一千万戸以上あるというような状況で、狭い意味でも三百万戸近くあるというような状況の中で、それを解決していくためには、やはり一般会計で大量に優良な公営住宅を供給するということと同時に、その補完として財政投融資を考えなければならない。その場合に、住宅公団の場合でもやはり政府の資金を使うわけでありますから、やはり一般会計と連関を持った一つの住宅政策がとられていかなければならないのではないかと思いますけれども、やはりいま見ていますと、一般会計とそれから財政投融資が一つになって、一つの住宅政策であるには違いないけれども、一つのまとまった体系の中で両者が行われているというふうには考えにくいところがありまして、特に最近住宅公団では、いま正確な記憶をしておりませんけれども、分譲で三千五百万円ぐらいの分譲住宅をおつくりになりましたね。それが果たして――現在所得が三百万円程度だというのが、つい最近も平均の所得が出ましたけれども、そういう中で、三千五百万円を超えるような住宅を建てることが政府の行うべき住宅政策であるかどうかというような疑問もあるわけでありまして、そういう意味では確かに両方一緒にした住宅計画を十分練り上げて、そして運用していくことが必要であろうかというふうに考えます。
 それから、ゼロベースのことですが、これは正直に言いまして私は詳しくわからないわけでありますけれども、ただ神奈川県でとられているゼロベースというのも、本当にベースをゼロにしてやっているかどうかという点ではよくわからない点があるわけであります。ただ、考え方としては、いままでの増分主義に対して根本的にそれを洗い直すべきだという考え方としては肯定できる側面もあると思いますけれども、ただ財政の運営の基本的な方向がはっきりしていない場合にゼロベース予算をとりますと、そうすると増分主義である程度守られていた部分も削り取られてしまうというようなことも起こりかねないわけでありまして、そこのところが、ゼロベースが直ちにいいか悪いかというのは、そのときの具体的な状況のもとで考える以外にはないのではないかというふうに思います。
 それから、サンセット方式ですけれども、補助金については確かに一定の見直しをしなければいけないので、サンセット方式というのもこれは必要な側面もあると思いますが、ただ補助金について私が考えているのは、これはサンセット方式とは違いますけれども、一般的に補助金を削るというのはかなり問題があるのではないかというふうに考えます。というのは、ごくわずかの補助金でも、そこのもらっているところにとっては、かなり重要な役割りを占めているものもあり得るわけですね。そういうのを一律幾ら以下は削ってしまうとか、神奈川県でも一時そういうことが前に行われたことがありますけれども、そういうことであってはやっぱり困るわけでありまして、これは国の場合でも一律何%削るということが果たしていいかどうかということはかなり問題があると思います。したがいまして、補助金についてはやはり国ではちょっとなかなか全容がその実態までつかみ切れない、金額だけであっても大変つかみにくいものであって、私たちが予算書を見ても何が何だかさっぱりわからないというのが実態でありまして、したがって、国で扱う補助金というのはもうこれはできるだけ少なくして、そしてそれを権限を地方に移譲していく、できるだけ下の方へ移譲する。そうしていけば、下の方であれば実態に即してこれがどのくらいの意味を持っているかということをつかむことがやりやすくなる。そういうためには権限を譲渡すると同時に財源を移譲して、そういう中で真に効率的な意味のある補助金政策というのがとれるのじゃないか。そしてまた削減すべきところは削減できるのではないかというふうに考えております。
 それから特例法のお話ですけれども、これはそういう法律そのものが問題かどうか、法律をつくらなければできないのか、あるいは法律ができてもやっぱりなかなかその法律の趣旨どおりにはいかないというのが実態でありますから、むしろ法律よりも予算全体に対する取り組みの姿勢が一番重要ではないかというように考えております。
#29
○亀長友義君 私は、宍戸先生に二問、鷲見先生に一問お伺いをいたしたいと思います。
 最初の宍戸先生に対する質問は、すでに各委員から出た質問と重複することになるかもしれませんが、端的に二つほどお伺いをいたしたいと思います。
 一つは、相次ぐ公定歩合の引き上げでありますが、これがいわゆる物価抑制というものに直接的な効果があるのかどうかという問題であります。現在ああいう公定歩合の引き上げを国でやっておりますけれども、国内的に見る限りは、私は、全日本のかなり広範な産業分野に設備投資の意欲が非常に高まっておるというふうにはまだ考えられません。一部そういうものもありますが、そうでない、やっと既存の設備が稼働に達したという分野もかなりあると思います。ですから財界の一部には、実需なき金融引き締めと、まあ公定歩合の引き上げというのは国内的には金融引き締めと受け取られておりますからそう言うのも無理はないと思うのでありますが、実需のない金融引き締めだという声もあります。そういう点から、特にいま日本で物価の問題が取り上げられておりますか、そのよって来る原因は石油価格の上昇と輸入原材料の値上がりということであります。国内的に見る限りは、その背景がある限り金融引き締めが行われても物価に――もちろん、多少の抑制的効果がありましょうが、物価対策としては果たしてどの程度の効果を果たし得るかどうか、私は非常に疑問を持っているわけであります。もちろん、るる御説明がありましたように、短資の流出を防ぐとか、あるいはアメリカを中心として世界的な金融引き締めで需要の減退を図られるということによって輸入原材料の値上がりが防止できるというふうな間接的な影響はあるいはあるのかもしれませんが、直接的にいま日本の国民が受け取っている目では、いまの公定歩合引き上げ、金融引き締めというものは一体何を考えてやっているのだろうかという印象がありますので、その辺日本の物価対策としてのリバリュエーションをひとつお聞かせを願いたいと思います。
 それから第二点は、これも端的にお伺いをいたしたいのでありますが、先ほど余りレートのことはおっしゃりたくないということでしたが、一ドル二百四十五円、これは生産性も上がるし過小評価であるというお話がありましたが、二百四十五円がそれより下降に転ずるターニングポイントといいますか、あるいはモチーフ、モメントというものはいかなるものになるのでしょうか。現在は非常に投機性があるから、それがいずれなくなればあれするのだということではないとは思います。むしろそれは日本の輸入する原材料なり、あるいは生産性とのいわば追いかけっこだということも一応考えられますけれども、それ以外に何か具体的なモメントというものがどういうことで起こるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
 それから、鷲見先生にお伺いいたしたいのは、公共料金の値上げを凍結するということについての御意見を承りたいと思います。
 国債の減額あるいは税体系の問題、軍事費の削減等についていろいろお話がございましたが、もちろん、不必要な財政を縮小する、税の公平を図るということも必要でありましょう。防衛費につきましてもいろいろお話かございましたけれども、私は、ここで御説明がありましたように、防衛費というものが雇用効果を維持するとか、農業投資よりすぐれているとか、そんなことで考えている人はだれもいないと私は思います。やはり経済以外のある種の必要性を感ずるか否かということから発足するのでありますから、私はその問題はいま先生にお伺いしようとは思っておりません。
 公共料金の凍結の問題は具体的な問題でございまして、今年度予算でもいろいろそういう前提で考えられております。それで、公共料金といってもそれぞれ企業体でやっておりますので、結局、人件費あるいは経費等の面で現在の料金体系ではやっていけない。これを凍結した場合には、結局その赤字分というのはどういうふうにするのか。財政で見るということにするのか、あるいは後年度に送るのか。いずれにしても、後年度に送るということになれば矛盾の増大ということになりますし、さらに企業内の合理化、人件費の削減ということをやるとしても、これはかなり時間がかかる。凍結ということの意味、もちろんこれは物価抑制には効果があると思いますけれども、やはりその反作用というものについて、つまり今後の始末ということについてむしろどういうふうに現実的にお考えになるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
#30
○公述人(宍戸寿雄君) 亀長先生のおっしゃいましたとおりでございまして、公定歩合の引き上げが直ちに物価抑制策になるかならないかという点につきましては、なおわれわれエコノミストの間でも議論の分かれるところでございます。私は、少なくとも今回のインフレは輸入インフレである、輸入されたものが高くなったインフレである。同時に、言い方をかえればコストプッシュ・インフレである、コストが上がったインフレである、こういうふうに考えるわけであります。
 日本の戦後の過去何回かの金融引き締めの中で、皆デマンドプル・インフレでございまして、需要が強いから金融引き締めをやってそれで抑えるという政策がとられたわけでありますが、今回の場合はコストプッシュ・インフレに対して金利がどういう役割りを果たすかという初めての経験であると申し上げてよろしいわけであります。私は、極端な言い方をすると、金利も企業の立場で言うとコストでございまして、金利が上がるとコストが上がるわけでございまして、実は公定歩合の引き上げもコストプッシュ・インフレを加速するのである、こういう言い方をいたしておる。これはやや言い過ぎでございますけれども、しかし、少なくとも需要インフレのときは非常に効果があるけれども、コストプッシュ・インフレのときには効果がないと考えた方がよろしいわけであります。
 ただ、現段階におきましてもなお日銀当局のお考えになっているのは、いまは輸入インフレからホームメードインフレ、国産インフレになろうとしているのだ、だから危険な状態だからいま引き締めをやるのだ、こういう御見解だと思うのでありますが、その意味におきまして、もし金融引き締め、公定歩合の引き上げが効果があるといたしますれば、公共料金の引き上げを契機といたしますいわゆる便乗値上げ、心理的な値上げムードを抑制する。一般的に申し上げまして、公共料金の上がるときにはほかのものまで、いわゆるサービス料金までが上がる例が多いわけでありまして、そのような状態を避けるために公定歩合の引き上げが何らかの効果を持つというふうに、心理的効果のみを私は期待しておるものでございまして、極端な言い方をしますと、これからさらに公定歩合の引き上げをやり金融引き締めをおやりになりますると、インフレはそれほど急速にはおさまらないかわりに、景気が悪くなるという可能性の方が多いのではないかと思っております。
 第二点につきましては、円はどういうふうに動くかという問題に関連いたしてでございますけれども、さらに弱くなるかどうか、二百五十円を割るかどうかにつきましては、政府が二百五十円にかなり大幅な介入をいたしましたことから、恐らく余りなり得ないと思うのでありますが、じゃ強くなる理由はという御指摘に対しましては、一つは国際収支の基礎収支につきまして改善の方向になりましたときに初めて円が強くなるのでありまして、その意味では、二月の国際収支が、季節変動を除去いたしますると、基礎収支で黒字になりましたことは、すでに円が強くなる条件を与えておるとは思います。
 さらに、われわれといたしまして関心がありますのは、いわゆるオイルダラーと呼ばれておりますOPECにたまります金がどのような形で日本に流れてくるかでありまして、この点につきましては、なおいろいろな問題が残っておりますが、少なくとも前回、四十九年のときにはOPECに六百億ドルの外貨がたまりまして、それがオイルダラーのリサイクリングと呼ばれて、いろいろ金融機関の間で問題を起こしたものでございます。今回の場合は、五十五年度におきましては一千億ドル近くのオイルダラーがたまると予想されておりますが、これがこの前と同じような形でアメリカに還流するという可能性が非常に少ないものですから、イランとアメリカの対立を初めといたしましてドル離れ傾向が強まっておりますことから、われわれといたしましては、このオイルダラーが日本にも来る可能性が十分にある。もちろん条件といたしましては円が強くならなければ来ないとか、あるいは金利条件を考えるとか、いろいろな問題がございましょう。国際情勢の動向がこのオイルダラーの動向を決定いたしますが、日本の経済力から申しますと、大体世界の一割の規模でございますが、もし一割、百億ドルの金が入ってきた場合を考慮いたしますると、われわれが予想する以上に円が強くなる可能性もある、このように言っておるところでございまして、このような不確実要因がなお幾つか残っておりますが、先生のおっしゃるような形で、弱くなる要因よりも強くなる要因の方が多いという意味において、きょう私は円が回復する、妥当な水準に戻るという御説明をいたしたわけであります。
#31
○委員長(山内一郎君) それじゃ、鷲見公述人にお願いします。
#32
○公述人(鷲見友好君) 私が公共料金の凍結と申し上げたのは、公共料金と言いましても直接予算関連のものの凍結ということでありまして、電気であるとかガスであるとか、こういうものはやっぱり原油の値上かりによってある程度の値上げはやむを得ないというふうに考える。ただ、その場合にも、いままで国会でも議論されておりますように、これがもうぎりぎりだというところ、国民も納得できる範囲の値上げにとどめておいていただく必要があるのではないか。そういう場合に、配当などはやっぱり一定程度確保しないと資金調達に困難だとかいうようなことがありますけれども、こういう場合ですから、私は、物価については卸売物価が年率にして三六%、対前年比で二〇%を超える上昇を示しており、しかも卸売物価は去年の八月に二けたになりまして、それ以後連続して毎月上昇を続けて現在の状況に来ているわけですね。それがいままでの例で言いますと、半年ぐらいで消費者物価にはね返ると言われておりますけれども、これは先ほど宍戸先生からもおっしゃったように、なかなか末端では価格の転嫁がしにくいという状況がありまして、したがって、消費者物価の上昇にいままでと同じように直ちにはね返ってくるかどうかということは問題がありますけれども、しかし、東京都の消費者物価でもすでに一月から二月にかけて上昇の兆しを見せているというきわめて危険な状況のもとにあっては、公共料金はこれは大変蛮勇――先ほど蛮勇というふうに言いましたけれども、蛮勇をふるってでも凍結することが現在は必要であろうというふうに考えます。これはこういう種類のものを全部が全部財政でめんどう見ろということを申し上げるつもりはありませんけれども、少なくとも現在の段階ではやはり凍結するのが必要ではないかというふうに考えているわけであります。
 国鉄の場合で言いますと、日本は、同じ国鉄を持っている国ではかなり国鉄に対する助成が少なかった方ですね。最近はまあ多くなってきた。多くなってきたけれども、それまで助成か少なかったために建設費その他を従来自前で調達しなければいけなかった。その借金のツケが非常に大きいわけでありまして、先生も御承知のように、国鉄の赤字の正確な記憶はありませんけれども、七割ぐらいはやっぱりその借金の利子に追われているんじゃないか。一日に十五億円ぐらいの利子を払わなきゃいけないということにあるわけでありますから、したがって、助成をしなかったことがかえって今度は赤字をふやしているという結果にもなるわけでありますから、そういう点を勘案して政策を行っていく必要があるのではないかというふうに考えております。
#33
○委員長(山内一郎君) 以上で経済、景気動向及び財政、金融に関する意見聴取は終了いたしました。
 一言お礼を申し上げます。宍戸公述人及び鷲見公述人には、それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせをくださいましてありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、今後の当委員会の審査に十分役立つものと確信してやみません。ここに委員会を代表して重ねてお礼を申し上げます。
 午後一時から公聴会を再開することとし、これにて休憩いたします。
   午後零時十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時一分開会
#34
○委員長(山内一郎君) 予算委員会公聴会を再開いたします。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 内山公述人及び藤田公述人におかれましては、御繁忙中にもかかわりませず、貴重な時間をお割きをいただきまして本委員会のために御出席を賜り、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。本日は、忌憚のない御意見を承り、今後の審査の参考にしてまいりたいと存じます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度の御意見を順次拝聴し、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと思います。
 それでは、順次御意見を承ります。
 まず、雇用問題について、内山公述人にお願いをいたします。日本労働組合総評議会副事務局長内山達四郎君。
#35
○公述人(内山達四郎君) 内山でございます。
 きょうは雇用問題、それも中高年雇用問題にできるだけ焦点を据えながら意見を述べさせていただきたいと思います。
 御承知のように、景気の回復によって雇用情勢もかなり明るさを増してまいりましたけれども、しかし、率直に申し上げまして、高齢化社会への早い移行の中で中高年齢者の雇用問題はさまざまな施策か講ぜられておりますけれども、依然として厳しい情勢に置かれております。たとえば有効求人倍率について見ますと、全体としては〇・八倍前後にまで回復を見ておりますが、四十五歳以上は〇・三倍、五十五歳以上をとりますと〇・一七倍、統計的に申しますと、百人の求職者に対して求人はわずか十七人しかないということになります。求人は全体として増加をしておりますけれども、そのほとんどは青壮年層に集中をしておりますし、もちろん中高年への求人もふえてはおりますが、求職者数がそれを上回るわけですから、求職者数とのバランスでは依然として大幅な求職超過という状況が続いております。したがって、求人条件の内容は、賃金も低いし、あるいは労働条件も劣悪である。職を求める中高年労働者にとっては、安定した職場を求めるということはきわめて困難なのが実情であります。
 こうした中で、中高年の雇用機会をふやそうとすれば、やはり定年の延長が促進されなければならないと思います。六十歳定年か完全に普及すれば、少なくとも六十歳までの雇用不安はなくなります。御承知のように、昨年決まりました第四次雇用対策基本計画では、昭和六十年までに六十歳定年という目標を打ち出しましたけれども、私どもは、これではなおかなりの立ちおくれが生まれるのではないかというふうに思っております。できるだけこれを短縮しなければならないというふうに考えております。
 また、これも御承知のことと思いますけれども、昭和六十年までは五十五歳から六十歳までの階層が増大をするわけですけれども、これがそっくり昭和六十年以降に移るわけですから、昭和六十年以降になりますと、六十歳から六十五歳までの階層が急速に増大をする。したがって、一部ではすでに六十五歳定年という声も上がっておりますけれども、いずれにしても、こうした事態に対応しようとすれば、単に労使の自主交渉だけで定年延長を進めるということには、私どもはどうしても限界があるというふうに考えております。やはり制度とか慣行をかなり発想を大きく変えて根本的に改めていく、こういうことがどうしても必要ではないかというふうに思っております。たとえば日本の雇用なり賃金の制度、慣行から申しますと、雇い入れの場合にはできるだけ賃金の低い若い層を雇い入れる、そして、減量経営なり合理化を進める場合には賃金の高い中高年層から解雇していく、こういうのが実情でありますけれども、これは率直に申し上げるならば、年齢による雇用差別と言わなければならないと思います。
 高齢化社会への移行は国際的な趨勢でございまして、ILOもすでに数年前からこの問題に取り組みを始めました。昨年のILO総会では、中高年労働者の労働と引退について国際文書をつくる第一次の討議が行われました。ことしの総会の第二次討議を終わりますと、この中高年労働者の労働及び引退についての国際文書が条約もしくは勧告の形で採択されることになるわけですが、この中では、たとえば中高年労働者に対する雇用機会と待遇の均等について保障する、そういう条項が入っておりますし、あるいは老化を防止し健康を保持するための労働条件や作業環境についての保護措置を行わなければならないという規定も入っておりますし、さらにまた、一定の年齢に到達したことを理由にして退職を強制する法令については再検討しなければならない、こういう条項も含まれております。国際的にも高齢労働者問題についてこのような動きが進んでいるわけですから、雇い入れや解雇に当たって中高年労働者が差別をされないような制度をどうしても確立をしていきませんと、これからの中高年雇用問題の改善は進まないのではないかというふうに私どもは考えております。
 八〇年代は不安定、不確実、要因がきわめて多いと言われていますけれども、その中にあって高齢化社会への移行だけは、これはもうきわめて確実なことだろうと思うのです。いまの日本の現状では、この高齢化社会への移行がしばしば暗い重苦しいものとしてとらえられがちでありますけれども、それをそうではなしに、明るい活力あるものにするためには、かなり思い切った措置か講じられなければならないというふうに考えます。
 昨年の国会審議の過程で、定年延長問題は法制化を含めて雇用審議会で検討するということになりました。きょう午前中も雇用審議会の定年部会が開かれて検討を進めているわけですけれども、単にこの問題は雇用審議会に任せるというのではなしに、やはり積極的に年齢による雇用差別をどうやって制度的に歯どめをかけていくか、仮称ですけれども、年齢による雇用差別禁止法的な制度の制定についてぜひとも国会が積極的に取り組まれることを、これはすべての労働団体が切望しているところであります。
 次に、定年延長だけではなしに、中高年労働者の雇用機会を積極的につくり出していく措置もぜひ強化をしていただきたいというふうに考えます。高齢者雇用率の未達成企業の公表措置であるとか、あるいは身体障害者雇用率未達成企業に対するペナルティーの強化など数年前から私どもは強く要望してまいったのでありますけれども、残念ながらこの実現は遅々として進んでおりません。もちろん、それ以外のさまざまな措置、たとえば雇用保険法の四事業に基づく各種の奨励金、中高年雇用促進のための各種奨励金や給付金等の措置もやられておりますけれども、特に昨年の六月から大幅に引き上げられました中高年雇用開発給付金については、かなりの役割りを果たしているというふうに私どもも考えますので、この継続を強く希望したいと思います。同時に、雇用の促進や開発に関するたくさんの給付金、奨励金がありますけれども、率直に申し上げまして、基準や条件の厳しいために、必ずしもそれが有効に活用されてないという現状がございます。したがって、この問題についてもぜひ十分な検討を加えられまして、中高年雇用はもとより、困難な状況に置かれている労働者の雇用機会を促進する実効のある措置がとられなければならないというふうに考えております。
 さらに、私ども労働団体が非常に強く希望しておりますのは、地域的な雇用対策の強化でございます。低成長経済のもとでは、高度成長のときとは違って、雇用情勢に地域的な著しい不均等が生まれていることはすでに御承知のところだと思います。求人倍率は、先ほど申し上げましたように、全体では〇・八倍にまで回復しましたけれども、県によっては〇・八倍どころか〇・三倍、あるいは〇・二倍というような状況にとどまっているところもございます。これも御承知のように、造船などの構造不況産業業種か非常に高い比重を占めていたところであるとか、あるいは二百海里の影響を受けたところ等々、いろいろございますけれども、こうしたところで発生する離職者の多くは、これまた中高年労働者でございます。住宅であるとか、あるいは子弟の教育などの制約から求人の多い遠隔地への就職はきわめて困難な状況に置かれております。特定不況業種離職者臨時措置法あるいは特定不況地域離職者臨時措置法などの法律も成立をし一定の対策は講じられておりますけれども、しかし、率直に申し上げまして、依然として情勢は厳しいものがあります。こういった地域で積極的に雇用創出を図ろうとしますと、どうしても国だけではなしに、地方公共団体あるいは経営者団体、労働組合か一体となって取り組みを強めなければ、なかなか雇用を確保するということは困難な状況に置かれております。
 これも昨年の国会審議の過程で、北海道初め五つの県に地方雇用開発委員会が国の援助を受けて設置をされました。しかし、私どもは、この設置県を、いまの情勢から考えますと、少なくともあと十県ぐらいはぜひふやしていただきたい、あるいは国の補助はいま一委員会当たり五百万円にとどまっておりますけれども、これもできるだけふやしていただきたい、さらに運営要綱等を整備をいたしまして、単なる調査研究だけではなしに、具体的に雇用機会をつくり出していくため、たとえば公共事業に関連する各省庁が協力をしてその地域における総合的な雇用対策を推進できるような、こういった措置についても検討していただくことを強く希望するものであります。
 また、中高年雇用という立場から、今年度の予算で労働省は高齢者能力活用事業に対する国の助成措置を打ち出しました。私どもはこれについては賛成でございます。ただ、しかし、いま申し上げましたような中高年雇用あるいは特定不況地域における厳しい実情を考えますと、労働省はこれを生きがい対策に重点を置いたものにしようという意向のように聞いておりますけれども、それにとどまらずに、雇用とか所得保障にまでそれを広げることが必要でないだろうか。あるいは現在すでにこの種事業団はできておりますけれども、助成対象範囲が限定をされたり、あるいは助成か中途半端なものに終わっては、せっかくの措置も実効を十分に上げられないのではないか。すでに取り組まれている各地の実情を十分に把握をされ、積極的な対応策を望むものであります。
 以上の措置は、民間の活力を生かしての雇用創出が主体となるものでありますけれども、それだけでは今後に予想される中高年の厳しい雇用情勢には対応し切れないものがあるのではないかというふうに考えております。原油の値上げなり、あるいは電力・ガス料金の大幅引き上げによって再び中小企業の倒産か増加をし、あるいは減量経営に踏み切るところも出てくるかもしれません。そうした状況になりますと、民間の活力を生かしての雇用創出はどうしても一定の限界に突き当たる。したがって、民間ではどうしても吸収し得ない失業者、その多くは中高年齢者でありますけれども、それを公的就労事業によって雇用機会を与えることも検討しなければならない問題ではないかというふうに考えます。もちろん、現在の失対事業には老齢化の問題とか滞留の問題とか、効率の問題等で多くの問題点があることは私どももよく承知をしておるところでございますけれども、しかし、どうしても民間に雇用機会の場を求めることのできない高齢失業労働者は生活保護で救済をするということが果たして前向きの対応であるかどうか。現在の失対事業を単に延長するということだけではなしに、抜本的な見直しを行い、地域社会にもプラスになるような経済的な効率を考えて、公的就労事業による雇用吸収という問題についてもぜひ検討していただきたいというふうに考えます。
 最後に、労働時間の短縮、週休二日制の問題でございます。
 労働時間の短縮が果たして雇用機会をふやすのかどうかという問題についてはいろいろな論争かございますけれども、しかし、私たちはやはり労働時間の短縮が間接的には雇用機会を拡大するというふうに考えております。これはいわゆるワークシェアリング的な考え方と結びついて、すでにヨーロッパの先進国では積極的な取り組みか進んでおります。最近発表されました労働省の調査結果を見ましても、日本の年間総労働時間は他の先進国よりも長くなっております。したがって、今国会で公務員の週休二日制の問題あるいは銀行法を一部改正して金融機関の週休二日制を実施をするという問題についても、ぜひ雇用の観点から積極的な対応を要望するものでございます。
 いずれにしましても、高齢化社会への急速な移行という現実を直視をいたしますと、中高年雇用政策は当面する雇用政策の最重点課題でありますし、その見地に立って雇用、失業にかかわる制度の全般的な見直しを行い、整理や統合すべきものは統合し、総合化が必要ではないかというふうに考えるものでございます。特に雇用にかかわる国際的な基準、これはILOの条約なり、勧告があるわけですけれども、この条約と勧告についても、わが国の実情に照らして十分な検討を行い、批准すべきものは批准をするという前向きな姿勢をぜひとも私どもはやっていただきたいというふうに考えております。
 以上です。
#36
○委員長(山内一郎君) どうもありがとうございました。
 次に、社会保障について藤田公述人にお願いをいたします。亜細亜大学経済学部長藤田至孝君。
#37
○公述人(藤田至孝君) 藤田でございます。
 昭和五十五年度の社会保障福祉関係予算並びにそれに関する事項に関しまして意見を申し上げさしていただきます。
 初めに総括的な意見を申し上げまして、それから個別的な意見を申し上げ、最後に今後の高齢化対策について触れさしていただきたいと思います。
 今年度も昨年度に引き続きまして、社会保障・福祉関係支出予算が一般会計支出予算の総額の伸びを下回りましたのは、福祉の重要性が社会的に認識され、福祉国家の将来をとるわが国にとりまして、私といたしましてははなはだ残念に思うものでございます。ただ、非常な財政逼迫の中で、財政再建の中で年金、医療、児童手当、諸福祉年金あるいは生活保護費などが物価の過年度の上昇率を若干上回る改善がなされたことは、これは評価しなければならないと思うのであります。
 社会保険料の引き上げ率を見ますると、かなり大幅なものがあるのでございまして、勤労者の可処分所得にとりまして少なからぬ影響を及ぼすというふうに考えられるわけでございまして、これからの春闘におきましても、かなりの影響を及ぼすのではないかと心配をされるのでございます。すなわち、これからわが国にとりまして最も心配すべきことは、あのオイルショック時に見られましたスタグフレーション、特に非常にあのギャロッピング・インフレーションが心配をされるのでございまして、そのような中に当たりまして、この賃金と物価の関係もきわめて慎重に対処をしなければならないのであります。あのときのインフレの対処を考えてみまするというと、賃金がいち早く物価の安定の要因になるような決定がされたということをわれわれは評価をいたしておるのでありますけれども、あのときのことを考えてみまするというと、かなりの所得税の減税があり、そして社会保険の給付の引き上げが見られたのでございまして、そのような減税や社会保険の給付の改善とあわせまして賃金上昇率を決めた、いわゆる社会契約的な賃金決定であったように思われるのでありますけれども、もしことし、これからあのオイルショックのときのような大幅なインフレが起こるといたしまするというと、それは大変なことでございまして、そういう際にこの社会保険料の引き上げということが労働者の可処分所得に影響いたしまして、賃上げをかなり大幅なものにするおそれがあるということは十分御配慮をいただかなければならない問題ではないかと思うのでございます。したがいまして、私は、社会保険料の引き上げは一挙に今回のようなかなり大幅なものとしてはならず、段階的になす必要があったのではないか、こういう意見でございます。
 それから社会保険につきまして、給付の改善は必ずしもその負担増に十分に対応してはいないという点も若干見受けられるのでございまして、たとえば健康保険におきまする傷病手当の普及、この手当の引き上げがこの負担増と連関をしておらないというような点につきまして私は問題があると思うのでございまして、財政対策上の制度改正に陥っている点がやや見受けられると思うのでございます。高齢化社会の進行を踏まえまして長期的な視点に立ちまして、それから公平と効率の社会保障の原則に立ちまして今後社会保障を見直していかなければならないと思うのでございます。
 また、自助を奨励するいわゆる日本型福祉の創造に向かいまして、これから福祉政策を見直すべきではないかと思うのであります。その際、特に私は学校教育における福祉教育ということと、それから地域と並びまして職域における民間の福祉を助長するような政策を進めるべきである、このように考えるのでございます。
 以上が総括的な意見でございますが、次に個別的な意見について申し上げたいと存じます。
 まず健康保険、主として組合健保、政管健保について申し上げたいのでございますが、今回の初診料の引き上げ、あるいは薬剤費等の本人、家族の平等的な半額負担という点につきましては、これは評価されるのでございますけれども、ただ、この本人の半額負担ということになりますと、やはり労働者に対する負担がかなり大きいのではないかと思うのでございます。また同じ半額負担といいましても、重症患者と軽患ではかかる費用の額が違うのでございまして、そういう重患、軽患に申しますというと、必ずしも公平の負担を守っているとは言えないのではないかと思うのでございます。もちろん高額負担限度額の引き下げがございましたけれども、そういう点を考慮いたしましても、やはりその点に一つの問題があるのではないかと思うのであります。
 それから入院料の引き上げにつきましても、これは一日当たりの食費相当分の料を徴収すると、本人負担にするということでございますけれども、これもまたそのような重患、軽患別にかなりの負担が違うのではないか、たとえば同じ食費といいましても、ほとんど一日食事も食べられないようなそのような重患もおるのでございまして、そのような場合に一日千円を平等に取るということは、果たして問題はなかろうかと思うのでございます。
 それから先ほども申し上げましたが、保険料率を千分の八十から賞与も含めまして千分の七十にするということでございまして、現在賞与が標準報酬の約二六%くらいに当たりますので、それを考えてみまするというと、今回は実質的には千分の八十から約千分の九十を若干超える程度に引き上げられたのではないかと思うのでございます。この賞与から健康保険料を取るということにつきまして、私は日ごろそうすべきであるという主張を持っておるものでございまして、昭和三十年から五十三年までの賃金と賞与の伸びを比べてみまするというと、賃金は十一倍でございますけれども、賞与は二十三倍と約倍伸びておるのでございます。これは健康保険料も厚生年金料も取られないという意味でのいわば脱社会保険料行為ではないかと思うのでございまして、そのような点から賞与からも保険料を徴収するという今回の措置は大変な前進であると思うのでございます。
 それから、時間がございませんので早口になりますが、老人医療の体制につきましては、これはちょっとした老人の病人でも入院させるということになりますと大変な医療費の負担になりますので、デーホスピタルあるいはデーケア、あるいはホームヘルパーなどを派遣いたしまして、在宅療養、看護を強化するということが方向であり、そしてその際ボランティアを育成するということが重要であろうと思います。
 二番目に年金でございますけれども、特に今回改善をされました遺族年金につきましてでございます。これは寡婦加給を増額するということで対処いたしたのでございますけれども、老人の七割は婦人でございまして、特にむしろ本人の年金よりは遺族年金が世界各国で重視をされておるのでございまして、いつまでこのような寡婦加給というようなことで対処できるのであろうか。私は、やはりこれは基本年金の現在五割でございますけれども、これをたとえば六割とか七割に引き上げるという、そのような明確な対処が必要であると思うのであります。
 それから、社会保険料も引き上げられたのでございますが、私は、賞与からも厚生年金保険料を徴収すべきである、そしてこの賞与の分も給付の改善の基礎にすべきである。すなわち、日本の労働者は働いているときは賞与がありますのでかなり生活の水準が高くなっておるのでありますけれども、それは厚生年金とは全く無関係に置かれておりまするので、老後か大変不安であるということになっておるのでございます。
 それから今後の問題は、現在は物価スライドでございますけれども、だんだんと物価分さえも賃金を上げることがむずかしいというような経済状態が予想されるのでございまして、そうしますと、働いている者と年金生活者の逆格差が拡大するおそれもありまするので、私は賃金スライドに変えるべきであるという意見を申し上げたいのでございます。
 それから、六十五歳の年金受給開始年齢の引き下げは今回は見送られたのでありますが、次回の改定のときに見直すということのようでございますが、そのときには、私は、スウェーデンで行われておりまするような部分雇用、部分引退、あるいは部分賃金、部分年金という、そういう制度を導入いたしまして、年金と賃金あるいは退職と雇用というものを一挙に、急にやめるのではなくて、少し働いてその時間が減った分あるいは労働日が減った分を年金で補完して、そして徐々に退職をする。そうでありませんと、急にやめますので急に年をとったり、急に死んでしまったりする人が多いのでございまして、ぜひともそのような制度を導入していただきたいのでございます。
 最後に、これからのわが国の最も重要な課題は高齢化対策でございまして、私はこの国会におきましても両院合同総合高齢化対策委員会というようなものを設けまして、総合的に長期的に全国的な立場から政策を立てていきませんと大変なことになると思うのでございます。具体的に、これからは物、金の時代から心、思いやりの福祉の時代でございまして、そういう意味でわが国が先進工業国になりましたのは学校教育におけるそのような技能教育が進んでいたからということと関連いたしまして、やはり福祉国家には学校教育から福祉を教育するということがどうしても必要でございまして、そのような意味で学校教育に福祉科というような科目をもう小学校から導入するということが必要である。
 それから、これからは地域あるいは個人の自助を助ける、そういうことの福祉が重要でございますが、同時に福祉の分権化を進める必要があるのでございまして、特にわが国では企業のそのような福祉に占める位置が非常に重要でございますので、私は、たとえば企業年金などの充実ができるように政策をお願いをしたいと思うのでございます。
 以上でございます。
#38
○委員長(山内一郎君) どうもありがとうございました。
 それでは、これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#39
○安恒良一君 それでは、内山公述人と藤田公述人、二人の方に大変御苦労さまですが、時間の関係がありますから一括してお二人にお聞きしますので、どうぞお答えを願いたいと思います。
 まず最初に内山さんにお伺いしたいんですが、私も高齢者問題というのは非常に大変な問題だと思うのです。そこで、内山さんも言われましたように、政府は行政指導で六十歳定年を六十年までにやると言っていますが、私は、なかなか行政指導だけでは片づかないのではないかと、こう思うわけです。そこで、ヨーロッパ各国におきまして高齢者の雇用及び生活安定のための方策としましては、一つはあくまでも高齢者の雇用維持安定を期する方法、これはたとえば内山さんか言われたような年齢差別法をつくるとか、その他解雇制限法をつくるとか――これは西ドイツですが、そういうやり方が一つあるわけですね。いま一つの方法は、やはり高齢者の雇用維持が非常にむずかしい。特にヨーロッパの場合には若年の労働者の失業が多いものですから、その改善を図るために高齢者にはできるだけ早く引退をしてもらう、それがために年金なんかの支給開始年齢を繰り上げる、こういうやり方をやっているところがあるわけですね。それから第三番目は、いわゆる両方の折衷的な方法として、一つは高齢者を安易な作業もしくは時間を短縮して働かせる。そして雇用を継続する一方で、本来ならば賃金減額を行うところを行わないなどというようなやり方で、たとえばいま藤田先生から話されましたような、スウェーデンの部分年金制度などというやり方もあるわけですね。ですから、率直に言って、わが国の場合には、私も労使だけで任しておったのではできないと思いますが、どういう方法がいいんだろうか、このことについて内山さんのお考えを聞かしていただきたいと思います。
 それから第二点目ですが、内山さんから言われましたように、やはり地域的において雇用確保が必要だということで、地域雇用開発委員会、これは北海道、新潟、愛媛、広島長崎の五県につくられていますが、あと十県ぐらいと、こう言われましたね。あと十県ぐらいというのはどういうところをお考えなのかということと、それからいま一つは、国庫補助がわずか五百万だと、これじゃ大した仕事もできないと、少し大幅にと言われましたか、大体どのくらいのことをお考えなのか、これも参考のために聞かしていただきたいと思います。
 それから第三点目は、やはりいわゆる中高年齢の公的就労ということで、いまの緊急失対の問題その他いろいろ言われましたね。それに対して、労働省も失対事業についてはこの際一遍見直したいと、こう言われているんですが、内山さんも言われました。恐らく中身は違うと思うのですしいろいろ言われましたが、どういう意味の見直しを考えられているのか。
 それからいま一つは、御承知のように積寒労働といって季節労働――北海道に三十数万人が冬季にありますね。この問題についても大蔵省は打ち切るということで、うんと運動しまして、とりあえず三年間延長しましたが、これらの問題も兼ねてお考えがあれば承りたいと思います。
 それから最後になりますが、私もやはり週休二日制度というのは非常に重要だと思うのです。このことも国会でしばしば議論してきているんですが、とりあえずまず金融機関を週休二日にする、それから公務員を週休二日にすればほとんど民間は一挙に進むだろうと、こういうふうに思うのですが、その点どうなのかということと、金融機関の労使においてはすでにかなり合意しているんじゃないか、それがなかなか国会の中において実現できないというところの隘路がどこにあるのか、これはおまえさんたちのやり方が悪いということかもわかりませんが、そういう点について、以上四点を内山さんに質問をいたします。
 次に、藤田先生に御質問を申し上げたいのですか、まず先生もおっしゃいましたように、どうもわが国の社会保障というのは、そのときの財政によって左右される、一般財政の伸び縮みによって。これでは私はいけないと思うんです。そこで、わが国の社会保障制度を主要諸国と比較してどんな欠点があるというふうに藤田先生はお考えなのでしょうか。
 私はまあ四つぐらいあると思います。一つは、制度が縦割りでありますから非常に複雑に分立し過ぎている。たとえば年金とか健康保険八つありますね。それから、それがために首尾一貫をしていない、整合性がありません。給付の中身もばらばらになっている。それから一番問題になるのは、どうも場当たり的ではないか、計画性がないのじゃないかと思います。それから第四番目には、民間によるところの公共サービスに対するコントロールかないのじゃないかと、こんなようなところか欠陥じゃないかなという気かしておりますが、そういう点についてどうお考えか、これが第一点であります。
 それから第二点目は、いまことしの健康保険制度の改正問題について触れられましたが、一番大きい問題は、いまや医療費がたとえばもうすでに十一兆超えています。昭和五十八年に二十兆になる、年率一五%で伸びている。ところが物価、賃金の上昇は藤田先生かおっしゃったとおりですね。そこで、もうヨーロッパ各国では、アメリカや西ドイツそれぞれ医療費の伸びそのものを法律によって抑制するということが大胆に打ち出されてきておりますが、すでにわが国もそういう段階が必要じゃないだろうか。でなければ、健康保険制度をいま先生が言われたようなことで改正しておっても、たとえば医療費を一%上げますと二百四十五億ぐらい金が要る、また来年も赤字になりますが、そこの医療費抑制について、この際、もうヨーロッパ各国、アメリカを含めて大胆に打ち出しておりますが、どういうふうにお考えか、これが第二点。
 それから第三点目は、ちょっと細かくなりますが、健保も年金も賞与を保険料率に入れるべきだと、こういうことを言われました。そうしますと、保険料率に入れれば当然給付として、たとえば傷病手当にも反映してくると思いますね。それから年金の支給金額、ところが御承知のように、わが国の賞与というのは非常にアンバランスがあるわけです。最低と最高が非常に開きがある。景気、不景気によって非常な変動がある。そういうものを、所得再配分的な考えの中で、健康保険料なり賞与をいわゆる年金の料率に入れるということについてちょっと私はいささか異見を持っているところですが、いま申し上げたように、非常にアンバランスがあるものを保険料率の中に入れて給付水準にも反映するということで、社会保障の考えからいいのだろうかどうか、この点が第三点目であります。
 それから最後に、第四点目については、私はかねがねこう主張しておるんですが、今日のように低経済成長になりまして、国家財政は赤字だと、しかも高齢化社会というのが控えておる、こういう三重苦を背負っております。そういう場合における日本の社会保障、社会福祉のあり方というのは、もうぼくは中長期計画を持つべきじゃないだろうか、そしてそれに基づいて給付内容の改善、それから負担増、また国民も、そう中長期計画がはっきりして、こういうふうに自分の将来が設計されるんだということになれば、ある程度の負担増もやむを得ないという考え方を持つと思いますが、なかなか政府は中長期計画を出してこないというところに、そしてやや場当たり式に赤字になれば保険料率を上げるとか一部負担、このやり方について藤田先生としてどうお考えか、以上お伺いします。
#40
○委員長(山内一郎君) それでは内山公述人からお願いします。
#41
○公述人(内山達四郎君) 定年延長を含めて高齢者雇用対策は、先ほど申し上げましたように、私どもは労使間の自主交渉によって、たとえば定年延長は促進をするという見通しが確実であれば、あえて法律や制度による強制ということは考える必要はないと思うんです。しかし、率直に申し上げまして、労働組合の組織率が三〇%そこそこという状況ですから、労働組合があるところは自主交渉によって定年延長等について一定の合意に達することができますが、労働組合のないところで幾ら労使間の自主交渉といっても、これは行政指導をかなり強めても、これはたとえば労働時間などの実例をとってみても、どうしても一定の限界に到達をしてしまうということを過去数年間の私どもの経験からは言えるのではないかと思うんです。もちろん、何といいますか、強制的に実態を無視して、たとえば定年延長すれば企業にとってはかなりの負担がかかるわけですから、実態を無視して一律的に定年延長を強制するような、そういった制度については、これは率直に言って、幾らつくられても逆の反発が起きますから、先ほど年齢による雇用差別禁止法というふうに申し上げましたけれども、たとえば三年なら三年の経過措置を置く、法律ができても、その三年の間に法律に基づいて行政指導も進めていく、あるいは労使間の自主交渉も進めていく。一つの目標を掲げて、そして実際に法律が発動しなくても、その法律が制定されたことによっていろんな機運が高まっていくというようなやり方がぜひとも必要ではないだろうかというふうに思います。
 それから安恒先生言われましたけれども、これは先ほど藤田先生も触れられましたが、やはり単に定年を延長するだけではこれからの高齢化社会への対応はやはり片手落ちだと思うんですね。やはり職場の実情によっては、六十歳なり六十五歳まで働くことのできないような状態に置かれている労働者もたくさんいますし、あるいはそれぞれの生き方によって、定年まで働くのではなしに、できれば途中でやめて新しい人生を歩みたいというふうに考えている労働者もいるわけですから、その点では、先ほど言われましたように、やっぱり早期引退についての制度的な保障、減額を条件とした年金の支給等についてもぜひ検討していく必要があるんじゃないだろうかというふうに考えます。
 それから二番目の、地域の地方雇用開発委員会の設置の問題ですけれども、これは率直に言って労働団体の内部でもいろいろ論議がございます。一律的に有効求人倍率が低いところだけを指定していいのかどうか、たとえば有効求人倍率は高いけれども、その求人の内容を見ると、不安定雇用といいますか、常用雇用が非常に少なく、臨時工とか社外工とか。パートタイマーというような非常に不安定雇用の多いような地域もありますし、あるいはこれは大都市の場合なんかでも、大都市は一般的に求人倍率は高くて求人は多いわけですけれども、たとえばサービス業を中心とした第三次産業はこれからの雇用機会創出の新しい分野であるというふうに言われていますけれども、そうしたところで、いま言ったような立場から雇用創出を検討するようなことも必要ではないだろうか。したがって、ここでどこそこというふうに名前を挙げますと、これは労働団体の内部でもいろいろ差しさわりがありますので、考え方としては、全体として地域的に、量的な面だけではなしに、質的な面についても問題があるところには設置をして、そこで雇用創出のための積極的な活動を展開していくことが必要ではないだろうか。
 それから国の補助ですけれども、先ほど五百万円。年間五百万円ですから、これでは、もちろんこれは地方公共団体も一定の支出をやっていますけれども、単に調査とか研究だけではなしに、本格的に雇用創出をやるということになると、とてもこの五百万円ということでは対応できないと思うんです。労働団体としては、四団体が共同して少なくとも年間五千万円ぐらいを一つの雇用開発委員会にぜひ補助をしていただきたいということを労働省に申し入れましたけれども、何とかこれぐらいの金額は国として支出をしていただけないだろうかというふうに考えます。
 それから、三番目の失業対策事業、公的就労事業の問題ですけれども、これはどうも労働組合の内部でも、失対事業というと、いわゆる屋外の土木作業、非常に効率が悪くてというような悪いイメージがこれは率直に言って労働組合の内部にもあります。したがって、私は、この失対事業を見直しをする場合には、単に失業者を働かせればいいということだけではなしに、その失業労働者の持っている能力とか経験とか、そういうものを生かしていくような事業内容、ですから、これは屋外作業だけに限定をするのではなしに、たとえば最近ではホワイトカラーの中でもやっぱり年輩労働者で失業している人はたくさんいるわけですから、いろいろな事務的な作業とか、あるいは地域の社会福祉といいますか、公共福祉に係わるような事業も含まれないものかどうか。あるいは滞留の問題から考えますと、やっぱり職業訓練、職業技術教育、中高年労働者の能力を再開発するための職業訓練などもこの失業対策事業の中に入れて、受け身の消極的なものではなしに、もっと地域社会、地域の経済開発といいますか、地域社会のさまざまなニーズとも結びついて積極的な側面をもって失対事業というものを見直すことはできないものだろうか。できれば名称なんかも思い切って変えてイメージチェンジを図ることも必要ではないだろうかというふうに考えています。
 それから、季節労働者に対する積雪寒冷地給付金の問題は、これは三年間延長することが決まりまして、私どもは非常に喜んでおります。ただ、この機会にちょっと申し上げておきたいのですけれども、この三年間給付の条件の中で、いままでは十日以上の就労が条件になっていたのがこれは二十日以上に引き上げるという諮問が中央職業安定審議会に出されまして、これはかなり論議がありました。労働省側の主張では、いまの季節労働者の就労状況でいくと、二十日以下の就労者は十数%というのであるからこれは余り問題がないということでしたけれども、現実には二十日働かないと切り捨てられる労働者が出てくるわけですから、これについてもぜひ検討を加えていただきたいというふうに考えておりますし、また、通年雇用の問題についてもいろいろ対応策は講じられていますけれども、なかなか現実化しない問題についてどうするかということも検討をしていただきたいというふうに思います。
 それから最後に、週休二日制の問題ですけれども、これは先ほど安恒先生も言われましたように、いろいろ論議はありますけれども、金融機関と役所が週休二日に踏み切れば、これはやっぱり社会的な影響といいますか、社会的な慣行そのものが変化をしていくわけですから、中小企業を含めて週休二日制というものは非常に普及をしていくであろう。すでに金融機関の場合には、これも御指摘がありましたように、労使間の合意はすでにできているわけですから、最大の隘路と言えば、政府自身かそれに踏み切らない。これも労働団体はすべて一致してこの要求をしているわけですから、ここではやはり政府自身の決断というものが求められるのではないだろうか。隘路と言えば、それか最大の隘路ではないかというふうに考えます。
#42
○委員長(山内一郎君) それでは、藤田公述人お願いします。
#43
○公述人(藤田至孝君) 安恒先生から四つの御質問をいただきました。その前に、安恒先生、大変失業者の問題を御心配でございます。その点に触れさしていただきたいと思います。
 社会保障の目的は、ある面から言いますと、生涯生活保障ということになるかと思うのであります。失業のときも、年をとったときも病気のときも、いつでも最低生活は保障される、あるいは医療は保障される、そういうことであろうかと思うのであります。ところが、わが国の社会保障におきまして、その生涯生活保障の中で一つだけ欠落している時点があるのでございまして、それは最もそのような保障を必要とする失業のときでございます。失業いたしますと、健保、組合健保にいたしましても政管健保にいたしましても、被用者ではございませんので、もう適用にならない。あるいは年金の拠出の継続もその点で分断をされるということでございまして、わが国の社会保障で最も急を要する体制・制度整備の点は、この失業者に対する健康保険、厚生年金、その他の保険であろうと思うのでございます。アメリカなどにおきましては、レイオフ者に対しましても雇用の籍が継続をいたしまして、そして企業がそのような一時解雇者に対しましても社会保険料を負担してその資格が継続するということになっておるのでございまして、この点はぜひ御配慮をいただきたいということをお願いを申し上げます。
 さて、第一の御質問でございますけれども、日本の社会保障は諸外国と比べまして基本的な欠陥を持っているのではないかという御指摘でございます。私も大体安恒先生と同じような意見でございまして、特に医療にいたしましても年金にいたしましても、大体、給付の水準そのものは、アメリカとか、スウェーデンですとか、西ドイツですとか、日本より若干上回るところでございますけれども、その給付水準そのものにつきましてはそんなに格差がない、もうほとんど格差がないと言ってよろしいのであります。ですけれども、おっしゃいましたように、その制度は、健保にいたしましても年金にいたしましても、非常に制度が分かれておりまして、統一を欠くということでございます。たとえば老齢年金にいたしましても、公務員、公企体労働者は、よくここでも議論されましたように、五十五歳からの支給開始である、厚生年金は六十歳である、国民健保は六十五歳であるということでありまして、十歳の差があるわけでございます。それだけではなくて、実は在職老齢年金におきまして、厚生年金などでございますと、これはアルバイトで働いた程度の所得をとっておりましてもその年金額は半額あるいはほとんど支給されないという、こういうことでございまして、国家公務員などの場合にはその所得制限はほとんどないというような、このような公平を欠くという問題。それは支給開始年齢にいたしましても給付水準にいたしましても、あるいは保険料率の負担にいたしましても、国家財政の負担にいたしましても補助にいたしましても、それぞれ違うのでございまして、まさにそういう公平、公正が問われる時代になってきておる。恐らく国民はこのようなことを承知しないと思うのであります。
 それから、二番目でございますけれども、必ずしも効率的ではない。私ども社会保障、社会福祉を見ます際には、公平という観点と効率という観点から見ているのでございますけれども、効率という点につきましても、必ずしもそのような社会保障を必要としないような人々にかなりの給付が行われましたり、あるいは非常にそれを必要としている、たとえば老齢福祉年金などがそうでございますけれども、そのような人には実際には生活を維持するにはほど遠い額しか出ていないと、こういう問題がございますので、そういう点から言いましても、社会保障制度審議会などが答申をいたしておりまする基礎年金というものをやはり導入すべきではないかと思うのであります。
 それから、三番目には、制度のたとえば支給ですね。老齢年金の計算にいたしましても遺族年金の寡婦加算にいたしましても、非常に計算式が複雑でございまして、おれは何年働いて何歳になったら幾らもらえるのかということを外国の労働者は楽しみにして年をとるのでありますけれども、日本の場合は、一体どれくらいもらえるのかということが専門家に聞いてもわからないということでございまして、もっともっと単純で、だれにも納得されるような、そういうものにしていく必要があると思うのでございます。
 それから、医療や所得保障の給付水準は欧米に比べまして、先ほど申し上げましたように、接近をいたしましたのでございますけれども、社会福祉サービスにつきましてはおくれているということを申さなければならないのでありまして、すなわち社会保障はだんだんと医療、所得からサービスに移ってきておるということが申せるのであります。その中でも特に老人福祉につきましておくれておるのでございまして、先ほども申し上げましたように、これからはいろいろなデーホスピタル、デーケアですね、あるいは何といいますか、ホームヘルパーあるいは派遣看護婦というふうなことを考えまして、効率的な社会福祉サービスを充実をしていかなければならないと思うのでございます。
 その次の健保改正でございます。欧米は確かに医療費の増等に悩みましていろいろ抑制策をとっておるわけでございます。日本におきましても、社会保障費全体に占める医療費の割合といいますのは大体四割近くになっておるわけでございまして、これは今後ますます高齢者の罹病率の高い人がふえるということでございますので、恐らく今後ますますふえていくのではないかと思うのであります。
 一方では、いままでこのような医療保障中心の社会保障かなぜやってこられたかといいますと、年金の成熟が浅かったものでございますから、年金をもらう人が少なかったためにそのような分を病人の療養費の方に回せたという点があるわけでございますけれども、これからは年金もどんどん成熟してまいりますので、なかなか両立的にこの費用をふやしていくということは非常に困難で、これは大変な時代を迎えるのでございます。ただ、よく考えてみますと薬づけでございますとか、そういう問題もございまして、かなり医療費が高くなっている点がございますので、このような点を厳重にチェックをすることによりまして、かなり日本では医療費の節約というものはできるのではないかと思うわけでございます。それからもう一つ問題でございますのは、日本におきましては差額ベッドなど保険外の負担が非常に高いのでございまして、ここにむしろ問題があるのではないかと思うのでございます。
 それから三番目に、健保や厚生年金の保険料拠出の基礎に賞与を入れることについて、賞与は変動がございますし、格差も大きゅうございますので問題ではないかという御指摘でございますけれども、この点につきましては、私先ほど申し上げましたように、賞与からはそのような社会保険料が取られないので、賃金を抑えて賞与をふやすという、そういう脱社会保険料行為が起きていることは明らかでございます。そこで私は、この費用の何と言いますか、財源という意味からも、あるいは賞与にそのような格差があればあるだけ高額のそのような給与所得者から低額の所得者に所得を配分するという、そういう意味におきまして、社会保障における所得再配分効果というものをむしろ賞与によって一歩前進させることができるのではなかろうか、そのような考えを持っておるのでございます。それは給付の方のたとえば基礎額を引き上げるとか、そのような方法も必要かと思うのでございます。
 それから、最後になりましたが、これからは高齢化と低成長が一緒に来る、したがって、場当たり的ではなくて社会福祉を長期計画でやる必要があるということでございますが、全くそのとおりでございます。もちろん、政府も年金基本構想懇談会などでかなり中期的な展望を持っておることは言うまでもないのでございますけれども、やはり国民の立場、働く者の立場から見て、社会保障制度か、あるいは年金がこういうふうになっているから自分としては将来どれだけのものが期待できるのか、そしてどれだけどの分が足らないのか、だから自分ではどのような点に自助の努力をしなければならないかというようなことがわかるように、社会保障の諸制度を毎年毎年少しずつ変えるということに私は先生と同様に反対でございまして、やはりこれは長期的な制度を確立して、そしてそれを漸進的に進めていくという、そういう方向でいくべきであると思います。
#44
○原田立君 本日は大変御苦労さまでございます。
 まず最初に、藤田公述人にお伺いするわけでありますが、八〇年代の初年度は財政再建が課題とされたわけでありますが、膨大な国債を抱えたわが国の財政が不健全なことは言うまでもないことであります。五十五年度予算編成に当たり、政府は福祉関係予算の削減、福祉制度の見直しに力点を置いたのでありますが、結果においては衆議院段階において総額千四百十四億の実質増額修正がなされ、懸案の児童手当制度、老人医療の無料化制度は存続をされたものの、いわゆる覚書なるものが政府と自民党の間で交わされて、昭和五十六年度予算編成においては見直しをする構えを崩していない。
 そこで先生にお伺いするわけでございますが、このわが国の社会保障は、制度的フレームは整ったとはいいながら、中身の充実が今後の課題であると思うのでありますが、その点はいかがでしょうか。また、経済状態と福祉の関係をどうとらえるべきなのか。財政再建はどのように行うべきなのか。――時間の関係もありますから、まとめて申し上げてしまいますのでよろしくお願いします。
 それから年金問題についてでございますが、先生は企業年金に対してどのような御見解をお持ちでございましょうか。また、いわゆる公的年金制度の整備、すなわち統合による基本年金制度の創設でナショナルミニマムの確立を急ぐべきであると私は考えるわけでありますが、すでに年金の官民格差、民間相互の格差が大きな問題となっておりますが、企業年金は一層相互の貧富の格差を助長することになりはしないか、こういう心配があるわけでありますか、その点はいかがでございましょうか。
 また、厚生年金における保険料負担において労使折半となっておりますが、むしろ企業負担をもう少しふやしてもよいのではないかと、こう考えるのでありますが、いかがでしょうか。
 それから、高齢化社会での医療、特に寝たきり老人の在宅における介護が大きな社会問題となっておりますか、悲しいことに、ここ一、二週間の間にもう二、三人のお年寄りが亡くなっているという事実があります。そこで老人医療のあり方、在宅老人の対応について制度的にどうあるべきか、国、自治体の責任について。
 以上のことについて先生の御所見をお伺いしたいと思うのであります。
 また、内山先生にお伺いしたいのでありますが、現在定年延長については、先ほど来お話がありますように、六十歳定年延長を目指して、公務員では国家公務員法の改正案を今国会に提出しておりますし、民間でも鉄鋼を手始めに私鉄、自動車が六十歳延長に向かって労使の協議か続けられておりますが、そこでまず一つには、国家公務員の定年延長についてどうお考えでしょう。いわゆる官民格差の是正から見ての判断ということをお伺いしたいのであります。
 二番目に、総評及び四団体から政府に申し入れのされております年齢による雇用差別禁止法の法制化の要請が出されておりますが、本来、労使協議により推進されるべきであるとの政府の考え方もありますが、この両方の調整をどう図るべきか。また、企業では法制化についてどのように考えておられるか、内山先生御存じであったらお教え願いたいと思うのであります。
 三番目に、六十年に六十歳定年、こういうふうな話もありますし、または六十四歳ぐらいに実施すべきだというふうな意見もありますが、これらについてどうお考えでございますか、お伺いしたいのであります。
 以上、まとめて長々と質問しましたが、よろしくお願い申し上げます。
#45
○委員長(山内一郎君) それでは、藤田公述人からお願いします。
#46
○公述人(藤田至孝君) お答え申し上げます。
 ことしの予算におきまして、結局、御指摘のように、福祉関係予算は千四百十二億円、約七・数%でございまして、予算総額の八・数%の伸びに対しまして若干下回ったということは、確かに福祉の充実ということが叫ばれておりまする点から、そして一般予算総支出を福祉、社会保障関係予算が上回りましたのは、大体四十九年か五十年ころで終わっておるのでございまして、そういう点から言いますと、国民一般の生活の改善に比べまして、そのような弱い立場にある人たちの生活が低成長のもとでだんだんとおくれてくるようになってきておるということはやはり放置できない問題であろうと私は考えるのでございます。
 そこで、確かにおっしゃられますように、この社会保障諸制度、社会福祉諸制度はほぼ欧米並みになったと思うのでございますけれども、その実際の中身について見まするというと、まだまだ、たとえば先ほど触れられました寝たきり老人の対策でありますとか、あるいは身体障害者の福祉の問題あるいは母子の問題、あるいは特にこれから福祉の中で最も重要性を増しまする寡婦、遺族の所得保障や医療の問題あるいは欧米で問題になっておりまする女性の年金権、特にわが国におきましても離婚かふえておるのでございまして、いまのような女性の年金権がない時代には、離婚はなかなかできないというのが現実でございます。あるいは遺族年金にいたしましても、わが国におきましては、本人が生き残りまして妻が死亡いたしますと、現行の制度では、妻に対する扶養家族付加給付六千円が減るだけでございますけれども、奥さんが生き残りまして、本人の夫の方が死亡いたしますと半分になってしまうという、そういう不公平がございまして、奥さんが死ねばいまの日本の年金では大変得だけれども、本人が死んじゃうとえらい損だというような、そういう中身になっておるわけでございますね。ですから、先ほど私か申し上げましたように、寡婦付加給付というようなことでその場をしのぐというのではなくて、やはりどっちか生き残っても、アメリカでありますとか、そのほかのヨーロッパの一部でありますように、どっちが生き残っても生き残った方が七割をもらえるというふうな、そういう制度にすべきではないかということであります。すなわち、年金に両性年金の概念を導入すべきではないかと思うのでございます。
 それから、もう一つ問題でございまする老齢福祉年金、二万二千五百円に上げられたのでございますけれども、これではやはり飯が食えないと。この人たちが一番いわば日本の福祉の谷間の人たちでございまして、今回もこの年金改善によりまして六百数十万の人がこの恩恵にあずかるわけでございますけれども、まだまだそれでは飯が食えない。そして大体十年でこの老人福祉年金の受給者はいまの三分の一に減るわけでございますね、二十年後にはほとんどいなくなる。いま七十歳の人たちは九十歳になるわけでございますから、そういう点でこれはそう長い期間の負担ではないのでございますから、やはりこの人たちには生活保護の最低生活分ですね、この二人または単身のそういうナショナルミニマムを確保する必要があるのではないかと。これが失業者に対する社会保障の継続と、それから妻に対する継続と、それから三番目の最も急を要する対策ではなかろうかというふうに私は考えるのでございます。
 なお、そのようなものには金がかかるのでございまして、この経済状態と福祉あるいはその予算の関係をどう見るかということでございますが、ここで国民は四十九年以降の福祉と予算の関係を見まして、やはり成長がどうしても福祉の充実のためには前提として必要なんであるということを理解がされたと思うのでございまして、そういう点でやはり福祉の基礎は成長であり、そして物価安定であるということが申せると思うのであります。
 それから、年金につきましてでございます。この企業年金についてどう思うかということでございます。現在、御承知のように、企業年金は調整年金と適格年金と、それから任意年金があるわけでございます。高齢化が進みまして退職者数が急増いたしまして退職金が払えないという、そういう深刻な問題を抱えるおそれがあるわけでございますが、労働省は賃金等債権確保法によりまして、この保全措置を行政指導いたしておりますけれども、これはなかなかその程度のことでは債権が確保されることはむずかしいのではないかと思うのでございます。そうしますと、結局、いまたとえば定年退職で大卒が大企業におきましては千八百万、高卒では千六百万、義務教育卒で千二百万だというふうになっておるのでございますけれども、これは本当に空手形になりまして、大きな社会的な問題になるおそれを秘めておるわけでございまして、これはまさに日本の福祉における時限爆弾であるというふうに考えられるわけでございます。そこで、退職一時金の年金化ということがどうしてもこれから進めなければならない国の指導の方向であろうと私は思うのでございます。
 そうすると、なぜ一時金が年金化されないかといいますというと、退職一時金でもらいますと、三十年勤続で一千万まで無税なんでございます。ですから、いまどきサラリーマンにとりまして一千万円以上の金が無税でもらえるというのは、実は退職一時金しかないわけでございます。ところが、これを年金化してずっと将来にわたって受け取りますと、給与所得税、働いて得た所得と同じ税金がかかるということでございますので、たとえ年金化をいたしましたところでも、現実には九割五分までが一時金で受け取ってしまっているということになるわけでございます。そこで、政府といたしましては、そのような社会問題を未然に防ぐということのためには年金化を促進させる措置をとらなきゃならない。そして、その第一の対策は、一千万円相当までの――三十年で一千万という、そういう退職給与所得特別税、この分までの年金現価を年金にした場合には、その受け取る年金を無税にする、あるいは特別に税を軽減するという、そのような措置が必要であろうと思うのであります。たとえば、大体一千万を年金化しまして、六十歳で終身年金でありまするというと大体七万五千円くらいになるわけでございまして、そういうことを進めてはどうか。これはやはり国の年金についても、私は、国の年金受給者は低額所得者でありますので、このような年金に対しては特別な税の軽減措置ということがどうしても必要であろうと思うわけでございます。
 特に企業の年金につきまして申しますというと、適格年金と調整年金の格差の問題があるのでございまして、たとえば調整年金でありますと、その保険料は社会保険料控除でありまして、大体まるまる控除になるわけでありますが、適格年金の方は生命保険料控除になっておりますので、これは五万円が限度でありますので、個人で生命保険を掛けておりますので、ほとんど適格年金の保険料控除は個人としては受けられないという、そういう格差の問題もございますし、それから積立金に対しまして特別法人税がかかる。あるいは調整年金の場合には遺族の給付に対しましては相続税がかからないのに適格年金の場合にはかかるという、そういういろいろな格差の問題がございますので、このような格差、年金の官民格差だけではなくて、民民格差というものもやはり正当な理由がない限り、そして私は正当な理由か認められないと思うのでありますが、是正をすべきではないかと考えるのでございます。
 ところで、御指摘のように、企業年金というのは貧富の格差を招くのではないかという御指摘でございます。その点は一つの問題点ではございますけれども、やはり退職金倒産ということ、あるいは退職金が払えないということの方が社会的にはもっと直接的な大きい問題でございますので、私は、当面、まずこの問題を重視すべきではないか。そしてこの企業年金による貧富の格差の拡大ということについては、これは別途措置を講ずべきではないかと思うのでございます。
 それから次に、社会保険料をわが国では労使折半をしておるのでございますが、これはもっと企業に負担をふやさせてはどうかという御指摘でございます。これはよく調べてみまするというと、現実にはかなり健康保険料などにつきましては企業の負担分が多うございますし、特に組合健保の場合、それから厚生年金の負担につきましても、かなりの企業におきまして使用者の負担割合が多くなっておるわけでございます。欧米などを見ましても、大体スウェーデンなどは法律によりまして国が全部負担をしておるわけでございますが、かなりの国におきまして使用者の負担が労働者の負担を上回っているのでございます。ただし、そういう国におきましては、社会保険料が改定されまして引き上げられる、あるいは労使の負担の割合は使用者を多くするということのときには、これは賃金を上げたとみなすのでございますね。ですから、たとえば日本では今度の春闘で八%、一万三千円という闘いを労働組合は展開しておるのでございますが、この場合、欧米でございますというと、現金の賃金を上げるのは八千円だけにしよう、あとの五千円は社会保険料の使用者の負担の割合を上げたり、あるいは国の社会保険料が上がったのでそれを賃金とみなすという、こういう賃金と福祉のパッケージということを進めておるのでございます。そして、大体、欧米の賃金とそのような福祉あるいは時間短縮、有給休暇などへの原資の配分を見ますというと、むしろ賃金よりは、そのような時間短縮とか有給休暇とか、企業年金とか公的年金保険料とか、そういうものに回す分が多いのでございます。日本は、二万三千円全部賃金に上げてしまいますので、そうすると、そのような福祉に回す金が少なくなりますので、そこで賃金は上がるけれども、老後の福祉とか病気のときの福祉とか、そういうものに回す金がどんどんどんどん減ってしまって、いわばタコが自分の足を食うような形で賃金を上げてきたということは否定できないであろうと思うのであります。それは余りにも不幸なことでございまして、余りにも先楽後憂型でございますので、これをだんだんと先憂後楽型に高齢化社会に対処して改めていかなければならない。政府はそういう点においてそのような方向でやはり労使を指導していく必要があるのではないか。すなわち、年金保険料の労使の負担を使用者により多くするということにつきましては、私はそういう方向に進むであろうと存じます。ただ、その際は、その負担の割合の増加分に伴う費用負担分を賃金とみなして、賃上げとしてこれを計算するという、そのような慣行が必要ではないかと思うのでございます。
 最後に、寝たきり老人の在宅ケアはよいけれども、たとえば最近でも火事で亡くなった老人が二人も出ている、気の毒ではないかということでございます。おっしゃられるとおりでございまして、やはり福祉は必要としている人に必要とするものを与えるということにあるわけでございまして、いま、寝たきり老人でそのような病院あるいは特別養護老人ホームで保護を受けておりまする人は全体のきわめて限られた人にすぎないのでございまして、このような人たちは、全員を病院なり、そのような特別養護老人ホームで施設ケアをすべきである。そして入院している人の中には、もうかなり元気でおられる老人もあるのでございまして、そういう人たちには出ていただくということが必要なんではないだろうかということを申し上げたいのでございます。
 なお、最後になりましたけれども、そのようにいたしますと、また医療費がかさむわけでございますが、それにつきましては、やはりそのような支出と同時に効率化ということを図らなければなりませんので、効率化を図るというためには分権化ということが必要でございまして、お互いに医療費の支出についてチェックをするというような体制をとることが必要なんではないだろうか。そういう点から見まして、現在、政府が組合健保の設立を抑えているということは、そのような医療費の財政の負担という点から言いましても、やはりおかしいのではないかと考えるわけでございます。
 以上でございます。
#47
○委員長(山内一郎君) それでは内山公述人にお願いいたします。
#48
○公述人(内山達四郎君) 民間の方の労働者については、定年制のこの法制化を労働団体は要求して、それから今度の国会に上程される公務員の定年制ですね、これは率直に言って労働団体は、同盟も総評も反対をする、こういう一見矛盾した状況が生まれています。
 これはもっと突っ込んで申し上げますと、定年制は基本的には私どもは撤廃をさるべきものなんだと。いまの労働組合で定年制撤廃という要求を掲げているところは非常に少なくなりました、雇用問題が非常に厳しくなりましたから。しかし、基本的には、先ほどもちょっとILOの例を引いて申し上げましたけれども、一定の年齢がくれば強制的にやめなければならないという考え方は、これは日本独特の考え方ではないかど思うんですね。ヨーロッパの場合には、いわゆる定年ということではなしに引退ですね、リタイアメントということであって、これは先ほども藤田先生が言われましたけれども、たとえば年金の支給開始年齢、つまり年金の受給、年金をもらう資格が六十三歳なり六十五歳になると発生をする、その場合に労働者はやめて職場を去って年金生活者の道に入るか、あるいは健康で働く意欲と能力がある場合には引き続いて会社にとどまって働くのか、その選択をする年齢がいわゆる年金の資格を取得した段階に来て、そしてもう体も弱ったし年金生活者になりたいという場合には年金生活者になっていく。しかし、まだ働きたいという労働者は引き続き職場にとどまって働いていく。したがって、そこでは年金は当然加算をされるという仕組みになっていると思うんです。したがって、日本で言う定年という考え方、つまり強制退職を意味する定年ですね、これはやはり基本的にはこれからの高齢化社会への移行の中では再検討を加えらるべきではないだろうか。しかし、これはかなり中期的な目標になるのではないかと思うんです。当面、先ほど申し上げましたような中高年雇用の厳しい情勢ですから、強制退職の年齢か五十五歳ではどうにもならぬ、したがって、これを六十歳にしてくれという要求か民間の場合には出てくる。私は民間の出身ですから、公務員の場合には率直に言って六十を過ぎても、あるいは七十近くになっても働けるということはうらやましいことなんですけれども、できれば民間もそういう状態になることが望ましいと思うんですけれども、官民の格差という観点から言えば、公務員の六十歳定年制について、もちろん官公労働者は強く反対していますけれども、検討しなければならない問題が含まれているのではないだろうか。
 ただ、問題は、これは官公労の組合の諸君も言っていますように、やはり労働基本権とのかかわり合いですね、これが当然生まれてくるんじゃないだろうか。つまり団体交渉によって決められるという基本的な原則が確立をされないままに、一方的に強制退職をもたらす定年制が公務員に対して適用されるということについては、これはやはり問題があるのではないだろうか、そういうことをお答えをしておきたいと思うんです。非常に歯切れは悪いんですけれども、この点は。
 それから、二番目に、いまの問題ともかかわりますけれども、法制化については、これはもうずいぶん経営者側ともいろいろ論議をしてまいりましたけれども、いわゆる経営者側は、定年の問題というのは経営権に属することであるから法律によって強制するのはなじまない、したがって自主交渉でやるべきであるというのが経営者の主張なんですけれども、しかし、私どもが経営者といろいろ話をしてみますと、言葉の上ではそうではないんですけれども、やはり定年延長に伴うデメリットですね、人件費負担が増大をするとか、あるいは人事管理上にさまざまな問題か起きるとか、デメリット部分だけか強調をされて、きょう午前中もやったんですけれども、全くメリットがないというようなとらえ方をされる経営者が非常に多いんじゃないか。
 しかし、最近では、全体の動きの中で定年延長問題というものを、もうやむを得ないから、しようがないからということでとらえるのではなしに、消極的受動的にとらえるのではなしに、もっと積極的にとらえようという動き、これも経営者側の中には大分出始めてきているように思うんです。たとえば熟練労働者が引き続き定年延長によって働くことによって技能、技術か温存できるというメリットもある。あるいは年輩労働者は統率力を持っていますから、そうした労働者が職場にとどまることによって職場全体の勤労意欲というものが高まるというようなメリット、そういうメリットを指摘する経営者側もかなりふえ始めてきているように思うんです。したがって、私は、法制化の問題については、やはり機械的にぶつけるのではなしに、つまり定年延長というものが具体的にどういうメリットを持っているのか、そのメリットを増大させるような指導、特に政府の行政指導ですね、こういうものを強めていく、あるいはメリットを増大させるような条件というものをつくり上げていく。そういうものをつくり上げることによって、先ほど申し上げましたけれども、定年延長、たとえば年齢による雇用差別禁止法ですね、これは定年だけではなしに雇い入れにおける差別も禁止するという内容を含みますけれども、そういうものを国会で決めていただいて目標を掲げていく。そしてその目標に向かってさらに三年なら一二年、法律はできても、それは直ちに発効するのではなしに、三年間なら三年間という期限を置いて、いま申し上げましたような条件の整備をこれは政府もあるいは労働組合も経営者団体も積極的に進めていく。そういうような合意というものが形成をされるならば、経営者側も必ずしも法制化には反対をしないのではないだろうか。つまり条件ができてから法律をつくるというやり方はもちろんありますけれども、逆に法律なり制度をつくることによって、そこに向かって条件整備を全体がこうやっていくというようなやり方をぜひ検討していただきたいというふうに思っております。
 それから、最後の六十五歳定年の問題ですけれども、もうこれから先の十年なり十五年の情勢を考えると、六十歳定年では私は対応し切れなくなるんじゃないだろうか。ですから、やはり六十五歳定年、つまり六十五歳まで働ける条件というものを、雇用機会を確保するということがやはり目標にならざるを得ないんではないだろうか。ただ、その場合にやはり問題になりますのは、職種によって六十五歳まで働ける職種ももちろんありますけれども、しかし、もう六十歳ぐらいになると気力、体力ともに衰えてしまって、とても働けないという職種的な相違もやはり出てくるだろうと思うんです。あるいは若いうちは個人の能力差というものは余り出ませんけれども、やっぱり年をとるに従って個人の能力差がかなり顕著に出てくるんじゃないだろうか。そういう点を考えますと、六十五歳まで働けるという基本的な原則を打ち出しながらも、やっぱり六十五歳まで働けない人についてはどうするのか。たとえば、これは安恒先生も言われましたけれども、減額を条件とした早期引退年金をつくるとか、あるいは重筋労働の職場で働いておって肉体的にはたえられない場合に、それにかわる新しい中高年労働者の雇用機会をたとえば第三次産業分野の何かでどういうふうにつくり出していくのか、つまりかなり多面的な対応策というものが講じられませんと、六十五歳に定年を延長すれば高齢労働者の問題はすべて解決をするということにはならないと思うんです。やはり引退をする権利といいますか、働く権利と同時に引退をする権利についても制度的に保障していく、あるいは条件をつくり上げるということがこれからはやはり追求されなければいけないんじゃないだろうかというふうに思います。
#49
○沓脱タケ子君 それでは、内山公述人にお伺いしたいと思います。
 中高年の雇用問題というのは依然として深刻であり、先ほどからのお話でもよくわかりますように、現在審議中の五十五年度予算案でもなかなかその対策は十分ではない。そういう中で、定年制の延長の問題あるいは雇用の創出機会をどのように拡大していくかといった点の総合的な対策が緊急に必要だという点をお述べいただいたわけでございます。
 私は、そういう点で、定年制の延長をいかに実現をしていくかという具体策、この点についてもいろいろといまお話がございましたように、むずかしい点があろうと思いますけれども、せめて六十歳まではできるだけ早く実現できるということが何よりも大事であろうというふうに考えておりますし、同時に、雇用機会の創出の問題でございますけれども、内山公述人もお述べいただきましたように、ILO等国際的な状況あるいは労働環境というものと日本との違いの問題というのが一つ非常に大きな問題点としてあろうと思うわけです。
 そういう点で、私、かねがね非常に不思議でもあり、また残念だと思っておりますのは、ILO一号条約の批准がいまだになされていないわけですね。あれは六十年前にできた条約ですけれども、先進資本主義国と言いたいですけれども、世界じゅうでILO一号条約さえも批准ができていない国というのはわが国ぐらいですね。その点で非常に残念だし、また恥ずかしい思いもしているわけですけれども、そういった点で、せめてILO一号条約が批准をされるというふうなことを前提にいたしまして、労働時間の短縮あるいは年休にいたしましても、諸外国、先進資本主義国と比べましても非常に少ないわけですし、しかも実質取得率が大変短いというふうな実態、あるいはいま問題になっております週休二日制の制度化という問題を含めまして、実質的な労働時間の短縮というものをやっていくということが今日の労働界における雇用創出の上できわめて重大な課題であろうと考えるわけでございます。そういう点で、その問題についての御見解をお伺いしておきたいと思うわけです。それが第一点。
 第二点は、先ほどからの御論議の中では、年齢における雇用差別の問題が中心に出てまいったわけでございます。私は、雇用差別の問題でもう一つ大きなのは、性別による、男女による雇用差別というのか今日の大変な課題の一つだと思うわけでございます。御承知のように、今日雇用における労働者の中で婦人労働者というのは三分の一を超えておりますし、しかも六〇%以上はすでに既婚者であるという、まさにかつての腰かけ的な婦人労働の実態ではないという今日の状態でございます。ところが、そういう中で依然として採用差別はもちろん、賃金差別、昇任昇格差別、定年差別という形が非常に続いてきておりますし、あちらこちらで社会問題化するという事態が起こってきているわけでございます。国際婦人年を契機にいたしまして、それらの問題の男女差別、特に、雇用における男女平等を要求する運動や、あるいは要求というのは非常に強く起こってまいってはおります。
 しかし、一方では、御承知のように労働大臣の私的諮問機関であります労基法研究会の報告などに出ておりますように、平等を保障すると、確保するというために、婦人の特別保護、これは見直すべきだという意見なども出されてまいりまして、いわゆる保護抜き平等論と言われているような論も起こってきておるわけでございます。そういう中で、特に雇用における男女平等を保障していくという上での内山公述人の御見解をお聞きをしたい。二点です。
 それから藤田公述人にお伺いをしたいと思いますことは、お述べになられました中でも、社会保険料が一挙に上がるということが、今日の給与生活者にとっては大変負担になるということをお述べになられました。確かに今日の給与生活者にとりましては税負担というのが大きな重圧になっておりますと同時に、社会保険料の掛金というのが年々かさんできておるのが家計を圧迫している大きな要因の一つになってまいっておるわけでございます。そういう点で、先ほどお述べになられました中での賞与を掛金の中に算入するという点につきましては、これは私も意見のあるところでございます。私は、賞与の問題を加算するという以前に、先ほど同僚の原田委員からも御提起がありましたけれども、わが国が労使折半の掛金になっておるという点がやはり一つの大きな険路になり、そうして家計を圧迫する重圧になってきているという点から見まして、どんどん掛金が上げられていくという今日の事態では、やはりヨーロッパの先進資本主義国の比率というのは見直すべきだと。そして、労使の折半ではなくて、雇用主の方が大きな負担を持つべきだと思うんですが、せめて二対一ですね。少なくとも、二対一に改善をされるべきではなかろうかという考えを持っておりますけれども、先ほどのお話では、それもいろいろなやり方があってという御経験のお話がございましたけれども、私は、日本で制度として、折半制度というのを改めて、ヨーロッパ並みに少なくとも雇用主の方が負担率を高く定めるという制度化がさしあたり必要ではなかろうかというふうに思いますが、その点についての御見解をお伺いをしたい。
 それからもう一つは、健康保険の問題に関しまして、一部負担金導入についての細かい区別を付していくということが必要ではないかという御見解をお述べいただいておりました。
 私は、医療費を抑えるという点について考えていかなければならないというのは、少なくとも一部負担金を導入していくという、あるいは拡大していくということが中心ではなくて、やはり医療というのは、国民の命と健康を守っていくという立場から見まして、貧富の差にかかわらず、だれでもが疾病にかかったときは医療を受けられるという状態を確保するということが第一だと思うわけでございます。
 そういう点で、今日の医療費の増高の理由、原因というのがいろいろあろうと思いますけれども、日本の医療というのは、まさに治療費そのものがずばりになっておるわけでございます。そういう点で、医療費全体を少なくしていくために、これは国民あるいは病人を犠牲にして医療費を抑えるというんではなくて、むしろ国民の健康を守り増進をさせるという立場で医療費全体の絶対額を減らしていくという立場ということを考えるべきではなかろうか。そのためには、今日健康保険法では疾病以外は治療の対象になっておりませんけれども、そういう点は疾病にかかわらず予防の段階から、そして治療から、そしてリハビリからという疾病の前後ですね、そういう点をも含めて国民の健康増進対策をやりながら医療費全体を圧縮していくということがきわめて大事ではないかという考えを持っております。そういう点での御見解をひとつお伺いをしておきたいと思います。
#50
○委員長(山内一郎君) 内山公述人からお願いします。
#51
○公述人(内山達四郎君) 御指摘ありましたように、日本の場合にはILO条約についての批准の件数がやっぱりほかの先進国に比べて少ないわけですね。労働省に言わせますと、批准の面では中進国ではあるけれども、一たん批准した条約について守るという点では先進国だからというようなことを言っておられるんですけれども、私は、いま御指摘ありましたように、特に労働時間についてのILO一号条約の批准などをまだしていないということは、これはもう日本の労働者の労働時間、労働条件にかなり大きな影響を与えているだけではなしに、やっぱり国際的な批判を浴びる一つの原因にもなっているというふうに思っています。したがって、特に労働時間問題はいろいろ論議はありますけれども、日本における長時間労働というのは国際的にも指摘をされることですし、できれば一号条約については早期批准を行って、そしてやはり労働団体が要求をしておりますような労働基準法の改正に踏み切っていただくことを強く国会段階でも促進方をお願いをしたいというふうに思います。
 それから、実は男女の雇用差別の問題ですね。これも、もう私か詳しく申し上げるまでもなしに、いろんなところで大きな社会的な問題になっています。その点では私がきょう申し上げましたのは、中高年男子労働者に限定をしたような印象を与えていますけれども、これはやはり男女の平等ですね、平等に関する制度的な保障というものもぜひ確立をしなければならないと思っています。先ほど申し上げましたILOの高齢労働者の労働及び引退についての論議の中でも、これがかなり大きく問題になりまして、特に高齢の婦人労働者の雇用機会ですね、これが先進国でも、あるいは開発途上国でも非常に悪化をしている。そういうところから、一九七五年のILO総会で採択をされました婦人労働者の機会及び待遇の平等に関する宣言ですね、この「想起」を前文に入れました。恐らくことしの第二次討議では、単に前文ではなしに、高齢婦人労働者の雇用平等についてどうするかということが論議のかなり課題になるであろう。したがって、そういう立場に立ちますと、私どもは、例の労働基準研究会報告が指摘しております平等と保護を引きかえにするようなやり方は、これは日本の実情から言ってどうしても賛成できないということを申し上げてお答えにかえさせていただきたいと思います。
#52
○委員長(山内一郎君) それでは、藤田公述人お願いします。
#53
○公述人(藤田至孝君) 時間がございませんので、簡単にお答えさせていただきます。
 御質問は、大きく分けまして二つに分かれておると思いまして、一つは、社会保険料の引き上げが勤労者の家計を圧迫しているということでございます。私も同じ考えでございまして、したがいまして、やはりこれを引き上げなければならないということは認めるのでございますけれども、その上げ幅をもっと年月をかけまして段階的に、負担を急にふやさないような形で実施すべきであるという意見でございます。
 それから賞与につきまして、賞与の算入につきましては、先ほど申し上げましたように、現実に大体賃金の二倍の速さで賞与が上がっていくということは、やはりこれは一つには労使とも社会保険料の逃げの対策であるということが考えられまして、これが社会保険財政を圧迫することになりまするし、それから不時の場合と働いているときの生活の格差を大きくいたしまして不幸なことであると思いますので、また、所得再配分の意味からも、私は、健康保険につきましても、厚生年金につきましても、むしろ賞与は積極的に保険料徴収、給付、両方の基礎にすべきであるという考えでございます。
 それから社会保険料の労使負担を現在の五対五から二対一くらいに持っていくべきではないかという御指摘でございます。確かに、先ほども申し上げましたように、欧米の一部の国ではそのようになっておるのでございます。ただ、ドイツなどは大体日本と同じような形のようでございますけれども、欧米の場合におきましても、法律でそういうふうになっておりますのはスウェーデンくらいではないかと思うのでございまして、大体労使の交渉によりまして、団体交渉でそのようになっておるのでございます。今後、経費が医療におきましても年金におきましても高齢化とともにかさむわけでございまして、そういう意味では労働者も連帯の精神でこれを支えていくという精神が必要だと思うのでありまして、これを企業や政府に任せるということは、社会保険の相互扶助という精神から言いまして、やはり問題ではないかと私は考えるのでございまして、そういう点からは、法律ではなくて、そのような負担の分担の割合の変更というものは労使交渉で進めるのが望ましいのではないかと思うわけでございます。
 それから健康保険についてでございますけれども、これはおっしゃられるとおりでございまして、貧乏人だから医者にかかれないとか入院できないとか、そういうことであってはならないのでございまして、そういう意味で、保険料の保険外負担というようなものをもっと真剣に対策を考えていかなければならないと思うのでございます。
 それから、おっしゃられるように、疾病以外にも予防やリハビリについてこれを保険給付に入れるということは賛成でございます。
#54
○柳澤錬造君 時間がございませんから簡潔に三点ほど質問してまいります。
 お答えの方も要約された御答弁で結構ですからよろしくお願いいたします。
 内山さんの方に最初にお聞きしたいのですが、先ほど、民間の活力では雇用の回復はなかなかむずかしいではないか、これはどうしても公的機関を設けてやった方がという御意見を述べられたのです。私がお聞きしたいのは、公的機関を設けると雇用の安定には役立ちますが、一番いい例が国鉄ですね。いまもう国でも手に負えなくなっているようなああいう状態になってしまうので、そういう点から考えると、雇用を安定させるというメリットはあったけれども、それ以上のデメリットが出てくる。結果的に日本経済全体で考えたら果たしてそういう方向がいいのかどうなのか、若干疑問になりましたのでお聞きしたいことが一つ。
 それからもう一つは、定年六十歳延長を急がなくてはいけない、私も賛成ですし、それから年齢による差別禁止法、これも早くやはりつくらなければいけないと思うので、これも賛成なんです。ただ、途中から御答弁の中で、定年制、本来は撤廃が私の考えていることだということもありましたので、若干その辺が私にはよくわからないのです。そして、六十歳にすることは私も賛成なんですが、地方に参りますと、特に地方公務員が定年制がなくて相当な高年齢者が高い賃金をもって働いている、そのためにもう地方自治体がどうにもならないで困っているということをよく見受けるわけなのです。そういう点からいきますと、やはり一定の線を引いて定年制度実施ということをすべきだと思うのです。ですから、定年六十歳を急げということは、いま定年制のないところも含めてそこに線を引いて、ある意味での雇用安定を図るというお考えなのか、それとも、いやそれ以上に定年制は撤廃の方がいいのだというのか、どっちかにそこら辺を区別をして御意見をお聞きしたいと思います。
 それから、藤田さんにお聞きしたいのは、日本の社会保障制度、いろいろ私は不備があると思うのです。不備があるから世界の中でも有数な高い貯蓄率、いまでもまだ二二%も貯金をしているということになってしまうので、私どもも何とかして社会保障制度をよくして、せめて西ドイツの一二%並みの貯蓄で済むようにしていったならば、収入の一割か消費に回ってそれが景気の回復にも役立つのではないかという考えを持っているわけなので、それでお聞きしたいことは、先ほどの中に民間福祉もやれという御意見が入ってきたのです。具体的にどういうことを指すのか、それらも含めまして、いまの日本の社会保障制度の中で特に急いでこことこことと、二つぐらいでいいですから、重点的にここを改善しなければいけないのだという点を取り上げて御説明いただきたいと思うのです。
#55
○委員長(山内一郎君) 内山公述人からお願いします。
#56
○公述人(内山達四郎君) 私は、基本は民間企業による雇用吸収といいますか、雇用拡大、これがやはり基本に据えられなければいけないと思うのです。ただ、いまはかなりいいわけですけれども、たとえば再び不況がやってくると大量の失業者が発生するわけです。その場合に基本は民間の活力を生かしての雇用拡大ではあっても、どうしても吸収し得ない失業者がやっぱり生まれてくるのじゃないか、それはある意味では緊急避難的といいますか、公的就労事業によって吸収することも考えておきませんと、結果的には生活保護というようなことになってしまう。生活保護、働く意欲と能力がある人が生活保護を受けるよりも、たとえ一時的緊急避難的ではあっても公的就労事業によって雇用機会を確保する。ただ問題は、柳澤先生指摘されましたように、やはり滞留することが一番大きな問題になるのじゃないか、このことがいまでもありますけれども地方財政の負担を増大をさせる、したがって、そこでは滞留という状況を打開するために、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、たとえば技能のない労働者については新しい職業訓練等を施して、それによって民間への雇用ができるような対応策も考える必要があるのではないか。ですから、基本としては民間の活力を生かしての雇用機会の拡大が中心に置かれなければならないというふうに考えています。しかし、緊急避難的な対策としての公的就労事業もこれは否定するわけにはいかないのではないかというふうに思っております。
 それから二番目は、ちょっと私の申し上げましたことが矛盾をしていることは私自身も承知をしておるのですけれども、つまり、いまの役所なんかでかなりの年輩の人が、率直に言って民間の立場から見れば実際に仕事が十分にできないにもかかわらず働いておられる。これは確かに官民格差と言って差し支えないと思うのですね。ですから、その点について全体の整合性を考えて一定の線を引くという必要性はこれは十分にあると思うのです。ただ、私どもが危倶をしますのは、そのことによっていわゆる強制退職の傾向が労使間の十分な協議もなしに一方的にどんどんどんどんやられるということになりますと、これは公務員労働者といえども労働者ですし、労働基本権というものは尊重されなければなりませんから、私どもは一方的な実施ということはどうしても賛成できない。労働基本権とのかかわり合いというものを十分に考慮していただきたい。そういう状況の中で中期的な目標と言えば、一定の年齢が来ればもう何でもかんでも強制的に退職をさせられてしまうのだということについては別の角度から、先ほどヨーロッパの例を出しましたけれども、検討が加えられなければならないのではないか、これは恐らく中期的な目標あるいは政策になるのではないかというふうに考えます。
#57
○委員長(山内一郎君) それでは藤田公述人お願いします。
#58
○公述人(藤田至孝君) 民間福祉をこれから進めていくという際に、どういう点が問題であるかという御指摘でございます、あるいは方向であるかということでございます。
 これからは高齢化が急速に進みまして、社会保障財政負担もふえていくわけでございますけれども、そのような中にありまして、しかも年金水準その他の点について欧米とそう違わない点まで改善された今日におきまして、今後の福祉の充実ということになりますと、民間福祉をかなり援助させていく必要があるのではないかと考えるわけでございます。そこで欧米などの例を見まするというと、たとえば国から十万円の年金をもらいますと企業からも十万円の年金をもらうというような形になっておるわけでございます。わが国におきましては、国の年金は欧米と近づいてまいりましたけれども、企業の年金というものがまだ普及もおくれておりますし水準も低い。そのかわり退職一時金があるわけでございますけれども、これがこれから払えなくなるという、退職金倒産でありますとか、そういうことが問題であるということでございますので、やはり企業の年金というものを充実をさせていく必要があるのではないか、それによりまして福祉の分権化と自己責任化を図りまして、いわゆる高齢化になりまして活力のある社会というものが維持されるのではないかと思うのであります。
 そこで、では何をやるのかということでございます。まず一番目には、現在の企業福祉の中でも通勤補助でありますとか給食補助でありますとか、そのような働けるときをなお一層豊かにするような企業福祉がございますので、その分をなくしまして、それをたとえば企業年金の掛金にして掛金をつくっていくと、こういうことが一つあろうかと思うのでございます。要するに、働けるときの資源を働けなくなったときに回すということでございます。たとえばアメリカなどでありますと、三千万人企業年金に入っておりまして、二百兆円の資産を持っておるわけでありますが、日本は人口も労働者数も半分でありますけれども、年金に入っておりまする人は一千万人でございまして、その積立資産五兆円というふうにおくれておるわけでございます。
 それから二番目には、やはりこれからの福祉を必要とする人は高齢者であり、そして特に寡婦でございますので、企業年金も終身年金化を図ると、そしてやはり遺族年金を設けるようにするということが必要であると思います。
 それから三番目には、労働者が転職をいたしましても企業間で年金が通算されまして、いわゆるポータブルペンションという形をとる必要があるのではないかと思うのでございます。そして、先ほどの御指摘のように、確かにそのような企業福祉は不平等を拡大するおそれがありますので国が援助をすると。たとえば現在中小企業退職金共済会に対しましては、加入の企業に対して国の補助があるわけでありますけれども、このような補助を、企業年金を導入した場合に、やはり国も援助を与えるというようなことが必要ではないかと思いますし、それから不平等を防ぐという道はやはりほとんどの労働者がその企業年金に加入するという、そのような促進をとることによって不平等の拡大を防げるのではないかと思うのであります。
#59
○委員長(山内一郎君) 以上で雇用問題及び社会保障に関する意見聴取は終了いたしました。
 一言お礼を申し上げます。内山公述人及び藤田公述人には、それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせくださいまして、まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、今後の当委員会の審査に十分役立つものと確信してやみません。ここに委員会を代表して重ねてお礼申し上げます。御退席をいただいて結構でございます。ありがとうございました。
    ―――――――――――――
#60
○委員長(山内一郎君) それでは、一言ごあいさつを申し上げます。
 田中公述人及び稲葉公述人におかれましては、御繁忙中にもかかわりませず、貴重なお時間をお割きをいただきまして本委員会のために御出席を賜り、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。本日は、忌憚のない御意見を承り、今後の審査の参考にしてまいりたいと存じます。何とぞよろしくお願いします。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度の御意見を順次拝聴しまして、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 それでは、順次御意見を承ります。
 まず、物価問題について田中公述人にお願いをいたします。全国地域婦人団体連絡協議会事務局長田中里子君にお願いします。
#61
○公述人(田中里子君) 田中でございます。
 私は、物価問題について公述ということで、きょうこの席に立たせていただいております。
   〔委員長退席、理事安田隆明君着席〕
 私は一般の消費者として最近の物価問題をこういうふうに考えております。いま私どもの消費者が非常にその物価の安定に力を尽くしているのは、むしろ私ども消費者ではないかというふうに考えております。なぜかと言いますと、確かに卸売物価が高騰しまして、御存じのように、三月の卸売物価は前年比でも二六・三%高騰しておりますし、この傾向は昨年の七月、八月ぐらいからその傾向があらわれておりますが、消費者物価の方はまだ一けた台ということで推移しております。これは二月の末の東京都区部の消費者物価は七・六%と非常に心配される方向には行っておりますものの、まだ一けた台ということでございます。ことしの一月、私どもお正月商品のかずのこを買うのの買い控えが、これは消費者団体が旗を振ったわけではなくても、一人一人の消費者が生活防衛のためにかずのこを買い控えるという現象から北商が倒産し、大手の商社もその責任を問われるという、そういう一幕があったわけでございます。そういうことを考えてみますと、卸売物価がいままでのように半年たつと消費者物価に影響するというところを食いとめているのは消費者の一人一人の生活防衛の意識ではないだろうかと思います。それにこたえるのが政府であり国会の議員の皆様だと思います。そういうことで考えてみますと、私どもが唯一の一つの数字として持っておりますのは、これは私どもも、それから政府自身も認知しているものでなければならないというところから、消費者物価の五十五年度の見通しの六・四%というのを私はぜひ大切にしてほしい。政府はこれを公約してほしいと思いますし、それを公約される力にぜひ国会議員の先生方になっていただきたいと思います。そういう意味で消費者もこれだけがんばっているのに、それにこたえるものがないとしたらば何のために政治があるのかというふうに思わざるを得ないわけでございます。
   〔理事安田隆明君退席、委員長着席〕
そういう意味では、いま値上げの横綱格である電力料金、電気料金の問題に触れさせていただきたいと思います。
 確かに電気事業法による原価主義ということがうたわれておりますし、これは法律に「適正な原価に適正な利潤を加えたもの」というふうに書いてあります。日本は法治国家でございますから、当然、電気事業法が生きるということに私も異論はございません。しかし、私はそれよりも優先するものに憲法の二十五条があると思います。最低で文化的な生活を保障するという生存権は電気事業法に優先するものだと思います。そういう意味から、私どもの所得の上昇を上回るような物価の上昇が起きるということは異常な事態だと政府みずからが強い認識を持っていただきたいと思います。そういう意味で、私は電気料金の引き下げ、申請の値上げ率を引き下げるという努力が、私ども消費者がこれだけ生活防衛をし物価の安定に力があるところから推しても、非常に不十分だというふうに思います。それはなぜかといえば、私の言います憲法二十五条の生存権を優先するとして、電気事業法による原価主義と接点があるはずだと思います。原価主義といいましても、申請額というのは電力会社が見た適正な原価に適正な利潤を加えたものであり、私ども国民が見た適正な原価に適正な利潤を加えた原価主義というものか全く言われないままに、最近の新聞、テレビなどでもすぐに値下げをするといえば政治料金かと、政治電価かという言葉さえも生まれているというのは、これは参議院選挙というのを前にした思惑というとらえ方というのは、全く私どもから言うとおかしいものであって、生存権に基づく当然の消費者の権利として、私はこの原価主義の中でも内容が見直せるものだというふうに思います。すでにいろいろな場所で発言していることが通産省の査定にもやや生きているように思いますし、経済企画庁等でもかんばっているということは、いろいろな報道で目にし耳にしております。私どもも燃料費を確保した――はっきりこれは値上げを確定されたものについては燃料費の値上げを認めざるを得ませんけれども、それ以外のものについては認めるわけにはいきませんということも申しましたし、資本費の中で、減価償却方法に定率法の導入はいまは時期ではないと申しております。定率法の導入というのは五十四年の三月に電気事業審議会の料金制度部会で答申をされたものではありますが、それはあくまでも物価の情勢も勘案することが書いてございます。そういう意味から、定額法に定率法を一部導入するということでなしに、定額法で従来どおり査定をしていただきたいと思いますし、事業報酬率にしましても、これが八%が妥当かどうかということについて、私も、先日、衆議院の物特のときに自民党の議員の先生から、事業報酬率がもっと引き下げられるのではないかという御発言がございましたことを、その先生か大蔵事務次官もなさった方であるなら、相当重視してもいいのではないかと、むしろ私どもはそういうふうに考えておりましたところの一つの裏づけがあったように思っております。配当率にしても、八%という線が出ているようでございます。一〇%まで算定していることについて、私どもは、資本費の中で配当の一〇%を織り込むということには問題があるということを言っておりますし、どうやら八%ぐらいには落ちつく見通しだと思います。
 そういうことで少しずつ変わってはきているわけでございますが、実際に需給の見通しなり設備投資をどうするかという、そういうところには消費者は全く発言をする場を与えられておりません。そういう意味で、そちらが押し寄せてくる中で、私ども防ぎようのない原価の問題が出てきていることを考えていただきたいと思います。ある意味では設備投資のモラトリアムがあってもいいのではないかと考えているわけでございます。
 最近、料金の中に生活保護世帯、社会福祉施設の電気料金の据え置きの問題が出ております。過去二回の石油ショック以後の値上げのときに据え置きが出ていたという実績はありますが、私も初めは電気料金制度の中に福祉料金がなじむとは思えませんでしたが、最近いろいろな角度から考えますときに、当然しわ寄せられる部分が低所得者なりそういう福祉施設にあるとするならば、これは料金制度の中で考える時期にきているのではないだろうかと思います。実は電気料金制度の見直しが行われました四十九年のときにナショナルミニマムが導入されております。これは私から言えば、先ほどの憲法二十五条に基づく私ども生活者の権利だと思います。標準的に使っているところは低価格でということが、私たちの中の物資の中で命を支えるのにどうしても必要な電気とか水とか、そういうものには当然使われていい問題だと思います。そういう観点から見ますときに、生活保護世帯や社会福祉施設の電気料金が値上げの時期に予算が組まれていないとしたらば、物価スライドされていない時期に、その値上げが行われるときのひずみを是正するだけのその考え方というのは料金制度としても決してそぐわないものではないというふうに思います。私たちがこういう電力料金の問題を民間査定という形でも、民間団体でこうなるのではないかという査定を出すようになりましたのは一歩前進だと思います。一歩前進ではありますが、それを聞くチャンス、実際に査定をする当局との話し合いのチャンスも正式な場では全くございません。料金制度のあり方を見直す時期ではないかと思います。料金制度のあり方の中では、いま電気事業法の中に公聴会がございます。公聴会では一方的な公述ということで、大変われわれの仲間でも不評を買っております。せめて公述した者にどういう結果か、その査定内容と、それからどこを聞き入れ、どこがこういう理由で聞き入れられなかったというところを、査定できなかったかというところの理由を知らせるのは当然の義務ではないだろうか、責任ではないだろうかというふうに思います。
 それから、もう一つの場として物価安定政策会議というのがございます。消費者委員として私も物価安定政策会議に入っております。総理大臣の私的諮問機関になっております。この私的諮問機関である物価安定政策会議の何と頼りないことかということを言わざるを得ないわけでございます。なぜかといいますと、ちょうど八電力、三大手ガス会社の料金問題について二月二十五日に協議をいたしましてまとめを出しました。まとめの中には、まず第一に、実施時期についても慎重に検討すべきであるということが書いてありながら、結局、明くる日の新聞を見ましたときには、物価安定政策会議の記事よりは四月一日から実施を決めたという総理大臣の方針の方が大きく出ているというわけで、どれほど物価安定政策会議が空洞化しているかということを見せつけられたわけでございます。実際に実施時期を一日おくらすということと、それから値上げ率を引き下げるということの両方のにらみ合いでこうなったと思います。それならば値上げ率の引き下げにもつと真険に取り組む余裕があるのではないかと、そういうふうに思います。四月一日というのが余りに安易に決まったということにどう政府は答弁をしてくださるかというふうに私は思っております。
 物価安定政策会議のことについては、そのほかにもう一つ触れておきたいものがございますが、実は国際電信電話料金の値下げ、円高差益の問題か出ましたときに、五十三年の四月にこの料金の値下げ問題について協議はしましたが、そのときは事務当局、行政側からの説明はいとも簡単に、料金収入を発信国と着信国で折半して精算することになっているから、円高になった場合にも相手国との関係でわが国から支払いになるものについては差益が生ずるが、逆にわが国の受け取りになるものについては差損が生じ、わが国の発着信が等しい場合は全体として問題はないという、そういう説明であったことを思い返しまして、私ども消費者のもっと中身に至る発言がなかったということを反省するとともに、行政当局にもこの問題について強い反省を求めたいと思います。現在こういう問題が出たときに値下げが発表されるということを大変遺憾に思っております。
 私どもが買い控えで抵抗できないその他の公共料金以外の物資について、私は独禁法の運用をぜひお願いをしたいと思います。せっかく強化改正かできた独禁法の中で同調的値上げの理由を報告することになっております。政府の物価対策の中でも、緊急対策の中に同調的値上げの問題を取り上げておりますが、それを国会に報告するだけでは、これが年次報告とすれば、非常に私どもはその理由を明らかにされることがないままに、ある時期非常に大事な時期が過ぎていくものでございます。ぜひ私は、四十条、四十一条、四十三条の独禁法の公表権を活用しまして、これは同調的値上げの場合にこの報告によってこの権利は侵害されるものではないということを独禁法の改正のときに国会審議でいたしておりますので、ぜひ御活用いただきまして公表をするということをやっていただきたいと思います。
 続きまして、買い占め売り惜しみ法の活用もあわせてお願いしたいと思います。権限委任が都道府県にできるはずでございます。ぜひ立入調査権限は都道府県に委任して、たとえば灯油の問題で品不足が懸念された昨年あたりそういうことかもっと敏感に行われていれば価格をこれまで上げなくても済んだのではないかと思います。消費者にとって買い控えで対抗できないものに対する物価対策を真剣にお考えいただきたいと思います。
#62
○委員長(山内一郎君) どうもありがとうございました。
 次に、エネルギー問題について稲葉公述人にお願いをいたします。財団法人産業研究所理事長稲葉秀三君。
#63
○公述人(稲葉秀三君) 御紹介を受けました稲葉でございます。
 予算案全体について意見を申し上げるべきではございますが、すでに公述も行われていることでございますから、エネルギーの分野について見解を申し上げます。
 御存じのように、昭和四十八年、一九七三年に石油危機が起こりまして、わが国といたしましては非常に大きな経済的、社会的影響を受けました。ですけれども、昨一九七九年の初めにイラン革命を転機にいわゆる第二次石油危機が発生をいたしまして、これが今日まで続いております。これによりましてさらに大きな影響を受けねばならないことになっていることは皆様方も御存じのとおりでございます。私は、第二次石油危機の方が第一次に比べまして構造的、長期的な要素を多分に持っている。そして世界並びに日本の経済を大きく揺り動かしていると思っております。特にエネルギーの中の石油依存率が全世界の五〇%強に比べまして、日本では七五%に達しております。そのほかのエネルギーもあわせまして九〇%弱のエネルギーを私たちは輸入依存をしております。したがって、わが国といたしましては、国民経済全体の立場から真剣な基本認識と対処策かぜひとも必要であると、このように思っている次第でございます。
 エネルギーは、われわれの国民生活、産業活動そして輸送などを賄う源泉であります。第一次石油危機後はもちろんのこと、特に第二次石油危機以降は特にシビアな政策をとることかわが日本でも要請をされるようになってまいりました。その一つは、省エネルギーを積極的に推進をしていかねばならないということであります。その二つは、石油にかわりまするエネルギーを積極的に開発をしていくことであります。昨年の東京サミットを契機に他の先進経済国は今後石油の輸入を増大をしていかない。日本も一九八五年に一日六百三十万バレルにこれを制限しなければならないということになりました。しかし、ことしに入りまして、これからのIEAの理事会や閣僚会議、またイタリアで開かれまするサミットでは、明八一年についても、八五年につきましてもその輸入目標がさらに下げられるだろうということが言われております。また、石油一バレルの輸入価格は一九七〇年、昭和四十五年ごろでは一ドル七十セントでございました。それが昭和五十三年の暮れには十三ドル八十九セントとなり、その後また大幅に上昇して、いまでは平均輸入価格がFOB建てで三十ドル強になっております。また、事態を放置をしておきますると八五年には現在のドル価格で三十八ドルから四十ドルに、また九〇年になりますと四十五ないし五十ドル見当に上昇していくだろうというのか世界のほぼ専門家の共通の見解のように思われます。平均三十ドルになるということはわが日本にとりまして石油の輸入量を従来ベースでやるだけで六百億ドルの外貨を払わねばならないということを意味いたします。輸入力の半分を石油だけに割いていかねばならないと、こういうことになりかねないのであります。したがって、代替エネルギーの開発はさらに積極的にこれを推進していかなければならないと考えます。
 政府は、第一次石油危機後、昭和五十年と五十三年と二回にわたりまして、新しい局面に対処しての総合エネルギー政策を閣議で決定あるいは了承をされております。私もこの仕事に御協力申しました。しかし、昨年の新事態に即応いたしまして、事態の緊迫化に対処をして、さらに新しい暫定需給見通しと、これに基づく諸政策を推進しなければならないことになり、これに基づいてのエネルギー関係予算案が今議会に提案をされ皆様方の御審議にゆだねられております。また、これと並行いたしまして、石油代替エネルギー開発のための新エネルギー総合開発機構その他の法律案か上程をされているのであります。時間の関係上、予算案の各項目についての私の見解表明は省略させていただきます。しかし、このエネルギー関係予算案並びに法律改正には私は賛成をいたしたい所存でございます。では、これで日本のエネルギー対策は軌道に乗って国民は安心してよいのか、こういうふうに認識をしてよいのかということになりますと、決してそのようには思わない次第でございます。
 今後のこともございますので、いささかこれについて私の所見を申し上げまして皆様方の御参考に供していただきたいと思います。
 その一つは、私の思いますのに、このような二重のむずかしい情勢変化にもかかわらず、エネルギー、特に石油の数量の制限が行われたり、価格が大幅に上昇をしているということがわれわれの社会や産業活動、また国民生活にどのような影響を与えるのかということにつきましての基本的認識というものが遺憾ながらまだ十分確立をされていないのではないかということであります。私は、政府や各界のエネルギー問題や政策のお手伝いをいたしております。また、国際的にもエネルギー問題や政策について若干のお手伝いもいたしております。一九七四年から七六年まで、世界の十五カ国を代表する専門家が足かけ三年かかりまして、この地球の上のエネルギーがどうなっていくのか、二〇〇〇年を過ぎた後までどのようなことになるのか、これにどう対処をしなければならないかという研究組織を設けました。私も日本の代表の一員としてこれに参加をいたしました。このWAESの報告の重要な点は、世界のエネルギーの半分強を占めている石油が一九八五年から九五年ぐらいの間に供給の限界点に達するであろうということでありました。しかし、第二次石油危機を前提として考えますと、われわれは、その時期はもっと早まりそうだと、事態はもっと深刻になりつつあると思わざるを得ないのであります。そのためにはもっとはっきりした対処策を、世界もそうですし、わが日本もとっていかねばなりません。この点、日本の各界の認識はまだ甘いと、このように申し上げねばなりません。
 その二つといたしまして、日本では昭和三十年以降エネルギーの消費が急速に伸びております。つまり高度成長に伴ってエネルギーの消費が急速に伸びたということであります。そして昭和三十年から四十八年まで平均の拡大の年率は一一%ぐらいでございました。つまりこの間に七倍弱のエネルギーがたくさん使用されております。しかし、その後エネルギーの消費量はおおむね横ばいで現在に至っております。その間、産業用、特に製造工業用のエネルギーが減りまして、国民生活用と輸送用と農業用、水産用のエネルギーが相当の勢いで伸びていることは御存じのとおりでございまして、これによっておおむね横ばいという状況になっている次第でございます。しかし、この間、二十年とちょっとの間に、エネルギーの使用量は過去において七倍、電力の使用量は驚くなかれ九倍弱ふえているのでございます。これを今回の場合、政府は十五年後の昭和七十年、一九九五年までエネルギーの需給を想定をされまして、一七%弱エネルギーを節約をする、そして石油の供給を余り増加させないでいても、その間エネルギーの供給量は実質倍にしなければならないと言うのでございます。電力の供給量は倍強にならねばならないと言うのであります。国民の望んでおりまする一年平均五%強の成長を確保するためには、そのようなバランスでなければならないと言われるのであります。これが今回の暫定需給見通しの背景となっております。そのためには、実は石油以外のほかの国産並びに輸入エネルギーというものは、おおむねこれから十五年間に四・五倍にせねばならないということになるのであります。それ自体に私は反対はいたしません。先ほどお話がございましたが、不可能とは申しませんけれども、私は、著しくそのような状態を実現をしていくことは困難だと、このように思わざるを得ないのでございます。
 今後のことを考えまして、私が先生方にお願いを申し上げたいのは、経済や国民生活はこうならねばならないから、エネルギーはこれだけ必要だということからだけで物事を考えていただきたくはないということであります。エネルギーの需給いかんが社会や国民生活の大きな制約でありとするならば、エネルギーの節約をまず積極的に行っていく、そして石油以外の供給増加を講じていく、これがより効率的に進めることができるかどうかということに私たちの社会活動、国民生活、つまり経済成長がかかっている次第でございます。つまりいままで行われている推算は、むしろ逆さまの推算だと、このようにも言えるわけであります。こういう形で事をこれから進めていかねばならないと思うのであります。遺憾なから日本には、まだそこまでのエネルギーに対する基本認識というものが確立をしていないと、このように思う次第でございます。
 昨年、私が世界のエネルギー専門家会議で印象を受けましたのは、ほとんどの先進各国が、経済成長はこれを推進しなければならない、このように考える。しかし、エネルギーの制約を考えると、二〇〇〇年ぐらいまでは、自分たちの国は二ないし二・五%の成長がせいぜいではなかろうか。しかも、エネルギーの節約は、これから日本がやろうとしているよりももっと強くやっていかねばならない、こういう雰囲気がきわめて強かった次第でございます。このように考えますと、私は予算案あるいは法律改正案に賛成をするものでございますけれども、これで決して日本のことが解決をしていると、このようには考えない次第でございます。
 最後に、これからのエネルギーに対処をしていくための費用というものが、実は政府の場合、まだ公式に算定されておりません。私が副委員長をいたしておりまする民間機関であるエネルギー総合推進委員会の中で、先ほど申しました政府の暫定の需給見通しか実現をしていくための費用を各種関係団体と連絡をとりながら推算をいたしました。それによりますと、五十四年度価格で約百五十兆円ということになった次第でございます。過去におきましては、一昨昭和五十三年の政府の推算では、十年間で六十六兆円でございました。また実績では、昭和四十年代は全部で十七兆円であったのでございますか、それがそのような金額になるわけであります。その百五十兆円の六〇%は電力関係でございます。
 このように考えますと、今回の予算案は、まだそのベースに入っていない、このように申さねばなりません。しかし、一挙に大きくしていくことはむずかしいと思いますか、これらの点を考慮しながら、実は今後のエネルギー政策と予算案について多元的な御配慮をしていただきたいと思います。恐らく経済成長がいまのテンポで続きますると、五、六年先にはエネルギーの制約のゆえに何事もできないという時代が訪れてくるのではなかろうかと思います。しかも、今回の電力料金、ガス料金の査定からいたしますると、私はこのように積極策をとっていくということはむずかしくなるのではなかろうかと思います。何しろ電力の場合八〇%の値上げ要因というものが石油の値上がりからきているわけであります。ですから、一応円を値下げをするとか、あるいは投資を縮小するとかいうことをいたしますると、当然先になって私たちはそのひずみを受けねばならないと思っております。そのことを私は、田中さんも含めまして、消費者代表とそれから各界を代表される方々によくよく御認識を賜りたいと思う次第でございます。
 どうもありがとうございました。
#64
○委員長(山内一郎君) どうもありがとうございました。
 それでは、これより質疑を行いますが、稲葉公述人は御都合により午後四時三十分には退席されねばなりません。つきましては、稲葉公述人に対する質疑を先にお願いをいたします。
 質疑のある方は順次御発言をお願いいたしますが、御発言の際は、要点をまとめられ、簡潔にお願いをいたします。
#65
○松前達郎君 先に稲葉さんにそれじゃ御質問申し上げます。
 ただいまエネルギーの需給関係、これについて全般的なお話を伺ったわけなんですが、その需給見通しというのを政府の見通しとして発表いたしておりますけれども、私は、これに対する考え方か、まず石油の量から、手に入るであろう量をまず算定して、そしてその他の制約事項を入れながら新エネルギー、代替エネルギーを最後に突っ込んでいくというやり方なんで、それと同時に、また最初に経済成長のパーセンテージが入ってしまう、そういうことでちょっとおかしいのじゃないかと前にもこの委員会で御質問申し上げたんですが、確かに経済を左右するのはエネルギーの需給である、ですから最終的に経済成長は決まる、こういうことは私も同感でございます。これらのエネルギー需給見通しについて、もう何回もこれは修正しなきゃならぬような内容になっているし、しかも新エネルギー、代替エネルギー部分で、いまから考えても、もうできないことがはっきりわかっている部分があるわけですね。こういう問題についてどういうふうにお考えなのか、それが一つ。
 それからもう一つは、石炭エネルギーですね。これをやはり見直さなきゃならぬという声が出ておるわけですが、この石炭のエネルギーについての見直しについてどういうお考えをお持ちなのか。
 この二点だけにしぼってお伺いをいたしておきます。
#66
○委員長(山内一郎君) では、稲葉公述人お願いいたします。
#67
○公述人(稲葉秀三君) それでは、御質問に対しましてお答えを申し上げたいと思います。
 先ほど私ちょっと御紹介を申し上げましたが、現在日本が使っておりまするエネルギーの総量は四億キロリットル石油換算強でございます。そのうち輸入の原油と石油製品が約三億キロリットルを占めているということは、先ほど申し上げましたように、七五%のエネルギーというものが私たちは遺憾ながら石油に依存をしているということでございます。ところが、方向として私は是認をいたしまするけれども、政府の推算をされましたあり方は、昭和七十年、一九九五年に四億キロリットル強のエネルギーは省エネルギー以前の需要としては九億七千万キロリットルでなければならない。それから一七%の節約というものを引きますると、現実に調達をしなければならないエネルギーは八億キロリットルということになります。しかし、その場合サミットの申し合わせに従いまして石油は現状よりも一五%アップにしかならない。こういうふうにいたしますると、石油以外のエネルギーというものが現在の一億キロリットル石油換算強から、昭和七十年には四億六千万キロリットル石油換算のエネルギーまで増幅をしなければ、それだけのエネルギーが供給できないということになります、そのようなことから、すでに先生方も御存じだと思うのでございますけれども、その間原子力発電を七千八百万キロワットまで持っていく。昭和五十二年度では八百万キロワットでございますが、現在は千四百万キロワットでございまするけれども、そこまで持っていかねばならぬ。それから、さらに石炭の発電というものにつきましては、これを約七、八倍まで伸ばしていかねばならぬ。そのほか地熱を約百倍近くまで、あるいは新燃料、新エネルギーその他は二百倍近くまで持っていかねばならないと、このような数字が出ている次第でございます。
 私はそのこと自体に実は反対はいたしませんけれども、ぜひ先生方に御認識を願いたい点は、仮に発電所をとりました場合、現在どのくらいの日時が必要かと、こういうことを平均算定をいたしますると、地元の市町村の誘致決議をいただきまして電調審の認可を受けるまでにその石油火力あるいは石炭火力は六年ぐらいの日時がかかっております。原子力については七年ぐらいの日時がかかっております。さらに電調審が認可を終えまして発電所が完成をされるというまでの間に火力は四年、原子力は八年というのがいまの数字でございます。そういたしますと市町村の誘致決議をいただきまして、実は火力が完成するまで十年、原子力が完成するまで十五年と、こういう日時がかかるといたしますと、メインなこれからのエネルギーの供給は原子力あるいは石炭に負うところが多いと、このように思いまするけれども、なかなか四・五倍まで石油以外のエネルギーの供給を上げていくということがいかにむずかしいかということは、このような事実からも御認識をしていただけるのではないかと思っております。しかし、同じようなことがたとえば地熱の発電所でございましても、LNGの発電所でございましても、新しいものでございましても行われております。そのようなことを考えますと、いかにそのような期間を短縮をしていくのかという問題が一点。第二はもっと少ないエネルギーの間で効率的な産業や国民生活、社会生活をしていくというためにどのような有効利用や節約の手をしていくのかということがやはりこれからのエネルギー政策の骨格でなければならない。そして、参議院では私たちが多年熱望しておりました総合エネルギーの委員会をおつくり願いましたことに対しまして私は非常に敬意を表しておりますか、ぜひそのような問題も取り上げて御検討を賜りたい。
 もう一つ大きな問題は、実は第一次石油ショック前に完成をいたしました発電所と、最近完成をいたしました発電所の実は単位設備当たりのコストというのが非常に高くなっているということであります。これは数字の取り方でいろいろ問題があるでしょうけれども、簡単に申しますと、火力発電所並びに原子力発電所におきましては、大体この六、七年の間に驚くなかれ三倍から三・五倍と、これだけの建設コストの値上がりというものがあり、今後も値上がりをしていかざるを得ないと。そのように考えますと、日本は現在でもエネルギーがわりあい高い国、特に電力が高い国であり、第一次石油危機後、私たちは通産省のお手伝いをいたしまして、アルミニウム産業でありますとか電気製鉄でありますとか、肥料産業でありますとか、そういったようなものの縮小をするということすらいたしました。しかし、これからは恐らくもっと大幅に上がるでございましょう。そのようなことにどのように対処をしていくのかということは、実は価格と数量の面におきまして私から言わしていただきますと、本当に国民が生きていけるかどうかという大きな問題でございまして、この点につきまして、でき得る限り詳しい御審議をお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
 次に、石炭でございますけれども、私たちは、先ほど申したWAESが発表いたしまして、石油の限界というものをいたしました後で、去年からまた十五ヵ国の人間でこの地球の上でエネルギーがもう一遍どうなるか、石油がどうなるか、さらにそれと結びつきまして石炭をどのようにしていくのかという検討をして、いままで五回ほど世界で会合をいたしましたが、この五月にその成果を発表いたしたいと思っております。ちょっと申し上げたい点は、日本はこれから五〇%ぐらいの電力を値上げをしなければなりませんけれども、恐らくアメリカやヨーロッパの電気の値上げは一〇%ぐらいで済むんではなかろうかと思っております。これは何かと申しますと、はっきり言えば、日本は一億キロワット強の発電設備の中で、石油の発電設備あるいはLNGの発電設備が七千万キロワットある、それに対しまして石炭の発電設備はたった四百万キロで、石炭から出ていく電気は三%ぐらいにしかならない、しかも現在の時点では石炭の価格がカロリーベースで計算をいたしますと石油の半分以下と、こういうことになっております。これに対しまして、アメリカやヨーロッパでは五〇ないし六五%の電気が実は石炭から供給をされているという事実がございます。そのことがやはりこれから日本のエネルギー並びに電気というものを非常にむずかしくするのではなかろうかと思っております。しかも、私たちの見るところ、先ほど申し上げましたように、よほどそれに対するはっきりした政策を世界で打ち立てられなければ、石油の価格がまだ値上がりをしていくだろうという情勢がなかなか回避できないように思います。ですから、私たちは石炭の活用というものをどのようにするかということをしていかねばなりません。その意味におきまして、簡単に申しますと、現在石油に比べまして確定埋蔵量は石炭の場合六倍から八倍あると思います。そしてまた、石油に比べましてそれほど強力なカルテルは実施はされないだろう。と申しまするのは、石炭の場合は、オーストラリアでありますとかアメリカでありますとか、カナダでありますとか、それから中国でありますとか、そういうところにあるといたしますと、また日本もいま二千万トンの国内生産は維持をしていく、このようにいたしますと、まあ将来のことで確定的には申せませんけれども、カロリーベースで石油に比べて半分ぐらいの値段で入る。そういうことを推進をしていくのがやはりこれからのエネルギー政策でなければならぬ。しかし、何もそのことは原子力をやらなくてもよいということを意味するものではございませんが、やはり石炭で発電をしていくとか、そういうことをしていかねばならぬ。幸い最近になりまして国内的に電力以外にも非常に石炭の需要がこれはやっぱり活力とマーケットメカニズムで出てきているわけでございまして、原料炭は約五千万トン強いままで輸入をしておりますが、一般炭につきましても、五十四年度の百万トン強に対しまして、今回需要要請をとりますと七百万トンぐらいは輸入をいたしたい。しかも、その輸入をされますのは、発電所がまだ完成をしておりませんが、セメントでございますとか、さらには紙パルプでございますとか、それから一般の暖房炭にも需要が増大をしつつある。こういう趨勢を考えますと、やはりこれからは多元的に石油代替エネルギーを開発をしていかねばならぬ。その中でやはり私は一つの大きなウェートが石炭でなければならないと、このように考えております。
#68
○馬場富君 稲葉先生にお尋ねいたします。
 私は、政府の出した長期エネルギー需給暫定見通しについて。その参加者の一人としてるる御説明がございましたが、いわゆるその中心が経済中心よりももっとやはり生活を中心とするところにポイントを置くべきだというような説がございましたけれども、そういう点については非常に私も賛成でございますが、やはり先ほどの質問にもございましたように、やはり政府の需給見通しについてはそういう点で非常に、先ほど御説明のように、省エネルギー率を高めつつもやはり総体的には大きい伸びを示しておるという点やら、あるいは原子力等の問題についても非常に過大な一つは推計をなされておるという点、それから新エネルギー等についてもまだ研究段階のものか相当あるけれども、計画の中に大きく盛り上げられておるという点等について非常に現実性を欠くこれは政府の需給見通しであるというように私どもは考えるわけです。そういうわけで、先ほど来その点についてるる御説明もございましたが、その中で特に先進各国のひとつ会議に出られた中で、やはり各国がそういう点についての成長率の一つは非常に低い見通しと、それからその中でやはり節減を厳しくポイントにしておる、節減を厳しく見ておると、こういう点についての評価をなさっておりましたけれども、こういう立場から、いまの暫定見通しの中で、やはり原子力とかあるいは新エネルギー等の予測につきまして非常に私は現実性を欠いておるという点を指摘するわけですが、この点に対する先生のお考え方と、それから、そういう先進国並みの考え方でいった場合に、やはり先生が国民生活を中心に考えられたそういう立場から、先進国の考えとか成長率やら、あるいは結局そういう節減の問題等について日本もやはりこうすべきではないかというパーセントや、そういうものがございましたら、参考までに聞かしていただきたいという点。
 それからもう一つは、私は先般ヨーロッパのエネルギー状況を視察いたしまして、その中でやはり第一次前後からヨーロッパにおいてはそういうエネルギー政策の大きい転換をしてきておる。第一次オイルショックが非常に大きい教訓となって中東依存を避け、あるいは代替エネルギーの開発とかあるいは需給の関係についても非常に考慮をしてきておるというようなことで、その点がやはり第二次危機を迎えたときの日本とヨーロッパの先進国との違いではないか。こういう点で非常にそこら辺の一つはまずさが問題ではないかという点をひとついろいろとお聞かせいただきたい。
 それからもう一つは、こういう中で対策は対策といたしまして、近い意味での需給見通しの中で石油に一つは限界かかなりきておるという点。そういう中で一つは石炭もありますけれども、ヨーロッパの第二次の石油危機を救っておるのは、北海油田の開発が大きい役目を果たしておるということなんです。その中でやはり日本はそういう立場からいくと、中国やあるいは中国大陸だな等、こういう関係の石油資源に一つはもっともっと力を入れるべきだという点と、それからヨーロッパの北海油田の中でも、半分くらいは天然ガスが出るということがこれは通則ですし、ヨーロッパの北海油田の中でもほとんどオランダ側が一〇〇%ガス、オランダのエネルギーを救っておるのは天然ガスによっての力が圧倒的だ。そういうような考え方から、日本がやはり中国や中国大陸だなの石油を一つは焦点とした、やっぱりそこから多量な天然ガスか発掘される、そういうものに一つは近い意味での日本のエネルギー対策を私は考えていくべきだ、こう考えておりますが、先生の御意見をお伺いしたい。
 以上でございます。
#69
○公述人(稲葉秀三君) お答え申し上げます。
 非常にむずかしい問題をお出し願いましたので、直ちに責任を持ってお答えをするということができかねるかもしれませんけれども、先ほども申し上げましたように、エネルギーが経済、産業、国民生活に対して最大の制約要素であれば、節約とエネルギーの供給をどのようにしていくかということが将来の日本を決定をするものだという見方、考え方をいたしておりまして、その問題は政府のいろいろな委員会でもいろいろ御主張申し上げておった次第でございまするけれども、遺憾ながら私の説得力が小さいためになかなかそこまではできない。しかし、私自身はやはり経済とか国民生活はできるだけ高まっていくのがよいんですから、成長率を高めていくということ自体には別に反対はいたしません。しかし、どうもそれが実現困難かどうかということになりますと、先ほど申し上げましたような形にならざるを得ない。
 そこで、私自身は、むしろ最小限日本はどうしても必要なエネルギーといたしまして一おおむね石油以外のエネルギーをこれから十年間に二・五倍ぐらいにはしていくというのがやはり国の生存の最小の目標として確立をするということを、やはりできるなれば政府と国民と国会と双方において是認をしていただきたいと思います。それを是認をしていただくということは、やはり先ほども申しましたように、エネルギーのための投資とか建設というのは実は五年、十年単位でございまするから、やはりいまからそれをやってまいりませんと後でとんでもないことになると思います。
 それで、政府のおっしゃるように、高いことが望ましいんですけれども、どうも資金の面とか環境の面とか、あるいはいろいろなことからいってむずかしいと思いますと、せめてその四・五倍に石油以外のエネルギーをするという、その半分か三分の二ぐらいはやはり一国の生存の最大目標として、できるなれば私は超党派的にこれを確立をしていただきたいと思う次第でございます。それが一点でございます。
 じゃ、その場合一体どういうことになるのかということについて、先ほど私がちょっと御報告いだしましたが、アメリカ、ヨーロッパその他の国際的な討論の会議で得ました印象というものを御報告をいたしますと、第二次石油危機が起こりました結果と第一次石油危機が起こりました後とは、大分そのエネルギーに対する国際的な見方、考え方が変わっておるという印象を受けます。つまり、第一次石油ショックの起こりました一九七四年から七五年ごろにかけましては、やはり日本だけではなくて、ほとんどの先進国で原子力というものがこれを補ってくれるものだというふうな共通認識がございました。たとえば、アメリカは一九八五年には一億八千万キロワットから二億キロワットの原子力発電設備を持つんだ、あるいはEC九カ国では共通のエネルギー政策を議論をしておりまして、その前の石油の輸入増加を横ばいにいたしまして、むしろ節約と原子力にこれを置きかえる、さらに天然ガスの開発を急ぐということによって、ほぼその経済の発展に対してエネルギーは制約的ではないだろうという見方、考え方があったように思います。ところが、現実はやはり日本もそうでございましたけれども、アメリカもヨーロッパも第一次石油危機以降は、エネルギーの消費量全体が横ばいみたいになりました。そのようなことと今回のその第二次石油ショックというものが非常に大きな問題である。そのようなことからいたしまして各国が、これは政府の見解ではございませんが、専門家が二〇〇〇年まで五年刻みでそのエネルギーの需給バランスを持ち出しまして、いろいろ検討いたしました場面では、どちらかと申しますと、つまりエネルギーの生の消費というものを小さく見ざるを得ない、これが一点でございます。
 それから、いままでに比べまして原子力の拡大計画を下方修正をする、そして節約とそのほかのエネルギーによってやはり二・五%、また国によりましては三%の成長を確保する、このようなパターンがほぼ共通でございまして、それに対しまして私どもは政府や産業界の御意見もございまして、五%ぐらいの成長は日本としては二〇〇〇年までやっていきたい、こういう形でエネルギーバランスを持っていった次第でございますけれども、やややはり先進各国と日本の場合とは違う、このような点を強く感じました。
 それからいま御質問のございました北海の石油でございまするけれども、これがやはりだんだん開発をされまして、まあ二百万バレル・パー・デーぐらいのところまでにはいくだろうと思います。二百万バレル・パー・デーと申しますと、北海の石油だけで一億キロリットル強が年間に生産をされるということになります。
 ただ、ここでちょっと申し上げたい点は、恐らく一九九〇年代になると北海の石油というものは下がっていくだろうと、こういうことをやはりイギリスもヨーロッパも想定をしておりまして、したがって、そのことから、つまり北海に石油や天然ガスができたということからエネルギー政策は大丈夫だというふうには基本的には考えていない、そして、やはり電力は石炭発電を増強していこうと。さらにイギリスでは、天然ガスが非常に北海から出てまいりますので、都市ガスはその天然ガスに依存をしていこうとか、そういうパターンに変わってきております。この点、日本の場合は果たして、いまおっしゃいましたように、何とか日本の近海で石油を開発をしていくということが主たる眼目でございます。できれば中国と一緒になりましてその地域で開発ができればよいと思いますが、これはなかなかやってみないと当たらないものでございますが、方向としては日本はそれを推進すべきだと、このように考えます。しかし、やはり考えてみますると、日本のエネルギーバランスは数量と価格の面におきまして非常にむずかしい問題に逢着をしておりますので、結局におきましては、私は産業構造を漸次修正をするということが日本としてはあるべき方向ではなかろうかと思っております。その意味は何かと申しますと、すでに環境問題公害問題というのもございまするから、昭和三十年代のように私たちはエネルギーをたくさん使いまするキーインダストリーというものをどんどん増設をするということはできません。したがいまして、むしろ付加価値の高い産業をしていくし、また日本の必要とする素材、キーインダストリーをでき得るならば発展途上国に技術輸出をする、資本輸出をして、そしてそこから将来は輸入をすると、こういったようなことも二十年、三十年先の日本を考えますと、やはりやっていかねばならぬことではなかろうかと、このように思っております。ただ、先ほども申し上げましたように、まあ六十年か七十年たちますると、再生産のきくエネルギーとか、世界のエネルギーというのは何とかならねばならぬし、なりそうだと思っております。いわばその五十年、六十年を一体、世界もそうですけれども、日本でどのように乗り切っていくかということになりますと、やや非常的な手段として、最低限のエネルギーを賄うためにもつと意欲的な政策をとっていかねばならぬ、またそういうふうな基礎認識を日本の各界の方々にぜひとも御認識をしていただきたいと、このように私はここ数年いろいろ考えもし、行動もしておりますけれども、遺憾ながら十分な成果が上げられなかったということに対しましてはまことに申しわけなく思っております。
#70
○柳澤錬造君 稲葉先生、時間が先ほど四時半と聞いたものですから、その範囲でお答えいただいてもいいんです。先ほどもいろいろお話があったんですから、もうダブらないで聞いてまいりたいと思いますが、結局、昭和三十一年には、私が知る限りでは石炭五〇%、水力二〇%で七〇%の自給率を持っていたと思うのです。
#71
○公述人(稲葉秀三君) 八〇%。
#72
○柳澤錬造君 八〇%、それが石油ばかり頼っても、石油ショックのときは七七%が石油になってしまった。石炭も一五%ぐらいあったけれども、輸入が多くて国産は三・二%ぐらい、原子力が二・二%出てきたけれども、水力も五・六%になって、結果的に自給率は一一、二%と、こういうふうなわずか二十年間でこれだけ変化したというのは余りにも経済性の追求をし過ぎたんじゃないか、エネルギーの価格ばかりに。そういう点でもって、いまぶつかって、先ほどからお話があるように、石炭も七倍から八倍に今度はふやそうと言うんですけれども、そこでお聞きしたいんですが、国産も計画ではふやすようになるのかどうなのか、輸入ばかりふやしておったんではこれまた自給率の問題がどうにもなりませんので。それからいま油を使っている中で農業が相当使っているはずなんで、どのくらい使っているものかということ、農業に……
#73
○公述人(稲葉秀三君) 五百万キロリットルと言われております。
#74
○柳澤錬造君 それから日本は温泉が出るんで、地熱でもってこれをエネルギーにかえていくということの開発というものは比較的容易であったと思うのです、ニュージーランドと同じように。そうすると、この地熱を開発をしていったらどのぐらいの能力といいますか、開発ができるかということ。
 それからもう一つ、大変気が遠くなるようなことでお聞きするんですがもう先生はエネルギーの大家だからお聞きしたいんですが、水素エネルギーというものをどの程度研究なさって日本でやっているのか。外国でやっているはずなんで、いつごろになったらこれが実用化というか、そういう見通しか立ったのかどうなのか。その辺をお時間がございませんので簡単にお答えいただいて結構です。よろしくお願いします。
#75
○公述人(稲葉秀三君) 第一点の御質問に対しましては、私は次のようにお答えを申し上げたいと思います。私は、戦後三年ばかり政府の中で経済を廃墟からどのように再建をするかという仕事に関係をさしていただきましたが、その一つといたしまして、日本はまず石炭を掘っていかねばならないという政策を推進をいたしましたことは御存じのとおりであります。それで、太平洋戦争中はガソリンの一滴血の一滴と、こういうふうに言われた時代もございました。しかし、日本が戦争に負けた後では、日本では原油を輸入して石油精製工場を動かしていくということは許されませんでした。まあやはり国内の石炭とそれから水力で何とかかんとか賄っていかねばならぬという時代でございました。ところが、この石炭というのは、太平洋戦争中は約五千万トンぐらい一年に生産をされておりましたが、それを主として掘っていただきました方は実は半島の方と捕虜の方でございました。その人たちかだんだんおいでにならないということになりますと、途端に石炭は生産が縮小いたしまして、二十一年では恐らく五百万トンぐらいの年産しか期待できないと、こういうことになりました。そこで私たちは、日本再建の一つの柱といたしまして、どうしても日本人が石炭山に入って三千万トン石炭を掘って、それからエネルギーを充実して鉄をつくり、肥料を増産をするというところから再建の仕事を進めていこうと、このような政策をとりました。また、それは私は当時の事情から言えばやむを得なかった措置だと思っております。しかし、昭和二十四、五年ごろになりまして、電力が不足をするということになりましたので、その次には水力電源開発というものも推進する。その次には石炭火力を推進するという措置をとりました。日本は、昭和二十七年から、細々ではございますけれども、石油が輸入できるということになった次第でございますが、大体何とかかんとか日本が一人前で動き出すことができましたのが二十年代でございまして、三十一年はむしろ日本はより躍進をしていかねばならぬという時代になりました。そういたしますと、どうしてもエネルギーが多量に必要となってまいります。ところが、ちょうど一九五〇年から世界にエネルギー革命が起こりまして、いままで石油が出るはずがなかった中東やアフリカの砂漠の下や周辺の海に石油や天然ガスがあるということがわかりまして、それが多量に世界に供給することになり、そこでいわゆる一種の石炭時代から石油時代へ世界的に移ってまいりましたので、どうしても日本としては、これから経済や産業や国民生活を上昇するためには、石油に着目をいたしましてこれを推進するという措置をとらねばならぬと、こういうことになりまして、政策は石油中心に動いてきたのではなかろうかと思っております。そして、第一次石油ショックが起こりまする昭和三十年と四十八年の間に驚くなかれ石油の輸入量は二十七倍に増大をしております。エネルギーの使用量は七倍弱に増大をしております。
 そこで、最近石炭と関連していろいろ言われるわけでございますけれども、もしも日本が国内の石炭を使って、そして高くてもそれでかまんをしているということになれば、実は今日の経済や産業や国民生活というのは成立しなかったのではないかと、私はこのように思っております。よく石炭を見殺しにしたのが――日本はいま大いにやっておられますということをおっしゃる先生方もおられますけれども、私は自分の気持では、何も自己弁護をする意味ではなくて、石油を使ってこそ日本もこうなったし、世界もエネルギー革命以後一九七〇年までは大いに発展をしたのだと思っております。しかし、OPECの攻勢でその石油が四十八年時代では四十五年に比べて五倍にはね上がってくる。さらに、石油に先に限度があるということになりますと、むしろそれに合わせて日本のエネルギー政策をやっていかねばならぬということになったのではなかろうかと思います。ですから、はっきり申し上げますと、日本がとったエネルギー政策が間違いであったという見方、考え方には私は同調はいたしません。しかし、間違いだとおっしゃる方もたくさんおられますから、私は少数意見かもしれませんけれども、そのことだけは申し上げておきたいと思います。
 それでは一体これからどうしていくのかということになりますと、先ほど申し上げましたように、石油の値段は、限界があり、非常に高くなっていくということになりますと、私たちは何とか多元的に節約をしながらエネルギーを開発をしていくということをしていかねばならぬ。その節約の対象として、私は、農業用も国民生活用も、それから輸送用のエネルギーも、いかに節約をするかということを本格的にやっていただかねばならぬと思っております。農業用で使われておりまする石油が換算をいたしますと、現在大体五百万キロリットルと言われております。昭和十六年に日本が運命を賭して太平洋戦争が勃発したときには、軍需も含めまして日本の使いました石油が五百万キロリットルと言われるわけですが、それだけの石油を農業だけで使っております。水産だけでも六百何十万キロリットルの石油が使われております。また、昭和三十年に対して昭和五十二年に使われておりまする民生用の石油というのは、驚くなかれ五十七倍に増大をしております。
 しかし、どうも私の思いまするのに、よく日本で、石油というのは大産業が使っているんだから大産業さえやめたら何も影響はないじゃないかというふうなことを――私はパブリックアクセプタンスをいたしておりますので、よく御婦人方からしかられております。しかし、ちょっと不思議なことは、そのような印象はアメリカやヨーロッパでは実は私は余り受けないわけであります。と申しまするのは、大産業で使われておりまする鉄といい機械といい、そういうものがなければ雇用も成立しないし、また中小企業でも材料がなければ活動できない。こういうことを考えますと、私は何も産業用は節約しなくてもよいとは申しませんけれども、やはり普遍的にこの貴重なエネルギーというものを何とかめどがつくまで多元的に各方面で分担してやっていくという政策が先行すべきではないかと思っております。
 さて、最後の水素エネルギーということになりますけれども、はっきり申しますと、石油に比べて石炭が六倍から八倍、また石油に匹敵するほどウランやそれから天然ガスがあると言われております。また石油の倍以上にオイルシェールやタールサンドがあると言われております。そのほかにバイオ、つまり生物的にエネルギーをやるという手もございます。しかし、それだけのことがございましても、この地球の上で人口がさらに数十億ふえ続けまして、そして生活程度も上がるということになりますと、やがてそういうものが枯渇をする。そういうことに備えまして、再生産のきくエネルギーを五十年後、百年後を目指してどのようにつくっていくかということは、地球の人類の一番大きな課題だと思っております。その一つに実は先生のおっしゃいました水素エネルギーというのがございます。現在のところ水素のエネルギーの利用について各方面からいろいろ検討が行われております。それで、この間私たちは、世界の一番権威者であるというヒューストン大学からハング博士という方に来ていただきましていろいろ検討もいたしました。日本でも水素エネルギーを検討されておりまする方がおります。水を分解すれば水素は出てくるわけであります。ところが現在の段階においては案外水素をつくり出すコストというのはわりあい高い。こういうことでございますが、やがてそれをどのように克服をしていくかということが問題だと思っております。最後の再生産のきくエネルギーというのは、私は核融合が一番有望だと思っております。核融合も一種の水素の利用ということになります。早い方は、二十一世紀になれば核融合が物になると、こういうふうにおっしゃいますけれども、私の現段階の勉強では、恐らく早くて二〇三〇年ごろ、恐らく二〇五〇年ごろではなかろうかと思っております。ですから、水素はあくまでこれから私たちがきわめて貴重なエネルギー資源としてやっていかねばならぬものだと、このように思っておる次第でございます。
#76
○秦豊君 お時間が切迫というより、もう来ているんじゃないんですか。だから、ちょっと気にしながら伺っておったんですが、稲葉さん、だめじゃないですか、お時間が。
#77
○公述人(稲葉秀三君) いいです。
#78
○秦豊君 よろしいですか。じゃ私は一つだけ伺いたいと思います。
 さっきお話しの中で、一九八五年バレル当たり多分三十八ドルから四十ドルであろうという推測をお述べになったんですが、それはどちらのデータなんでしょうか。それが一つ。
 それから並木さんたちが主宰していらっしゃる例の日本経済研究センターが、同じ一九八五年をとってバレル当たり九十ドルという、これはなかなか刺激的な予測をはじいていらっしゃるんですが、去年私UAEでオタイバ氏と少し時間をとって話をしたときに、彼自身が全く一人の個人として述べた八五年の予測値は五十ドルなんです。中間的なところを言っているわけなんですが、九十ドルはどうもついていけないと。稲葉さんか言われた三十八から四十ドルというのもやや下の方に見過ぎてはいないだろうかという一点だけにもうとどめます、時間が時間ですから。
#79
○公述人(稲葉秀三君) ちょっと私の先ほど申し上げましたのか誤解を生んでおりますので、私が申し上げました数字は現在価格で三十八ドルということでございます。実際の場合は、国際的なインフレとか物価上昇ということがございますので、恐らく私の言うとおりにいたしますと、四十五ドルから五十ドル見当に恐らくドルの値段が上がっていくのではなかろうかと思っております。
 私がそのようなことを申し上げましたのは、国際会議で、七八年価格で八五年、九〇年、二〇〇〇年の石油の値段がどうかということを各国から持ち寄ったことがございます。そのときに一番最高の数字が現在価格で五十ドルという数字でございました。そうすると、現在価格で五十ドルということは、恐らく九十ドルとか百ドルになるだろうということでございまして、その点、私の先ほど申し上げました言い方がちょっと誤解を生むようになりましたので、その点修正をさしていただきたいと思います。
#80
○委員長(山内一郎君) 稲葉公述人には、御繁忙中のところにもかかわりませず、御出席の上、貴重な御意見をお聞かせをくださいましてまことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、今後の当委員会の審査に十分役立つものと確信してやみません。ここに委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。御退席していただいて結構でございます。
 田中公述人には、大変お待たせしまして申しわけございません。引き続き田中公述人に対する質疑を行います。
 順次御発言を願います。
#81
○松前達郎君 大分時間も経過したようですが、田中さんにお伺いいたしたいと思います。
 ことしの賃金に関する労働団体の要求が約八%前後、中心として八%ということで、かつてない統一要求を掲げて完全実施を目標にされておる、私はこういうふうに思うんですけれども、これは委員会の中でも、政府側としても、立場が違うから、どういうふうな解釈で申されたのかわかりませんが、高く評価をするという発言が何回かあったわけです。しかし、これも物価の上昇が六・四%を超えてしまえば、この値というのは非常にまた問題を起こしてくるのじゃないか、こういうふうに思うわけで、先ほど六・四%にぜひ押さえ込みたい、押さえ込んでいきたいという御意見がございました。私も全くそのとおりだというふうに思うんです。
 またもう一つは、最近の原材料の上昇、いわゆる卸売物価とそれから消費者物価の差が――卸売物価が上がったにもかかわらず消費者物価がそう上がっていない。これについて消費者が非常に賢明になったから、最終値段のところで相当賢明な選択をしているのだということをおっしゃいました。これもまさにそのとおりだと私は思うので、最近消費者運動その他を通じて大変効果が出てきているのじゃないかというふうに判断したいと思うんです。
 それともう一つの考え方として、最終消費者が非常に賢明になったということを踏まえて考えますと、原材料の上昇を生産段階が吸収せざるを得ない、こういうふうに説明をされる方も非常に多くなってきておるわけです。こういうふうになりますと、今度さらに電力料金が上がってくれば、これがやはり生産コストの上昇にもつながってくる。そういうふうに考えていくと、先ほどの冒頭に申し上げました八%で労働団体が要求をしているこれも、逆に言いますと、先ほどの生産段階でコスト上昇を吸収するとすると人件費にその圧力がかかってくるのじゃなかろうか。そういうふうなことで堂々めぐりみたいなことになりますが、この電力料金値上げというのは非常に大きな影響力を持つのじゃないか。特に物価、それからさらに、それに関連した生活上の問題に非常に大きな影響力を私は持つと思っております。そういう意味から、この電力料金、いわゆる公共料金の値上げというもの、これが消費者側から見て、広い範囲かもしれませんが、非常に大きな影響を持つということについてのお考えといいますか、たとえばこれを値上げすると、私のところも、私は大学病院等の委員もやっておりますが、たとえば医療費にすぐはね返ってきたり、いろいろな面で生産費の膨張ですとか、あるいはサービス部門の料金が上がってくるとか、もう数限りなく影響力があって、最終的には消費者個人が受けとめなければならぬ。こういうことになるのじゃないかと思うものですから、その点について一つだけお伺いを申し上げたいと思います。
#82
○委員長(山内一郎君) 田中公述人お願いいたします。
#83
○公述人(田中里子君) 私も松前先生がおっしゃいましたように、確かに波及効果、とにかくどうしてもコストアップしなければならないというところが非常に広範囲に出てくると思います。商売をしているお菓子屋さんでも八百屋さんでも、魚屋さんにも出てくる、その場合に実際最終消費者がどうそれを受けとめるかということは、結局はね返り分をわれわれの生活費の中から、赤字を出しても、貯金をおろしてもやっていかなければならないというところに非常に大きな問題がありますので、何とかもう――最終段階にいま電気料金が来ているわけでございます。何といっても大きいのが電気料金でございますので、これをできる限り低く抑えるということを最後の最後までやって、先生方にがんばっていただきたいと思います。最終決定はきょう、あすとか、そういうふうに言われておりますので、ぜひきょうの、私もせっかくここに参りましたのですから、その公述をした者のその発言というものをぜひ生かしていただきたいというふうに思います。
 便乗値上げの問題について、われわれとしては買わないという運動が便乗値上げを抑えるものになると思いますが、どうしても製造業で上げなければならないものはどうしても転嫁されると思います。ただ、あくまでも便乗値上げを抑えていくというのに私どもの購買行動がいまの時点では大変役に立っておりますか、これが価格が協調的に上がったり、一緒になって値上げをしたりというようなことが行われてくれば、もう私どもなかなか歯が立ちません。その点はひとつどうぞ先生方の法律を動かしていただいて食いとめていただくということをお願いしたいと思っております。
#84
○馬場富君 田中公述人にお願いいたします。
 先ほど公述人の意見の中で、特に物価安定政策会議ですね、それに参加していらっしゃるという形で、いわゆる四月一日の発表という点について、安定会議の中のいろんな参考人皆さんの意見が非常に無視されて期限だけが大きく発表されたという点は、新聞発表等を見ましてもそういう点が出ておりますけれども、そのときの田中公述人か出されたこれに対する意見を簡単に要点だけでいいから御説明願いたいという点と、先ほど料金の考え方の中で、ナショナルミニマムを中心としたいわゆる福祉料金体系ということは、われわれもそういうことを早く推進すべきだということを考えておるわけですか、これについてどのような考え方を持ってみえるか御説明願いたいと思います。
 以上です。
#85
○公述人(田中里子君) 物価安定政策会議が二月の二十五日に開かれましたときに、私は意見としていまさっき述べましたようなことを実は申しました。政府の六・四%の中で電気料金の値上げが幾らならおさまるという試算を持つのかという問題をまず物価対策の面から追及しながら、それで個別の原価についての意見を申しました。その中では、燃料費の問題と、資本費の中での減価償却法の問題と、事業報酬の中での配当率の問題それから実際に設備投資の問題についてどう考えたらいいか、現在そこまでどうしても必要な投資かあるのかどうかという点にも触れました。
 大体そういうようなことと、もう一つは料金制度の問題、制度の見直しという点で、いま現在行われております料金制度の中での消費者の意見の反映というのは、一つは公聴会である、だから公聴会か一つと、それからもう一つがその物価安定政策会議での場なんですね、それ以外にはないわけでございます。ですから、民間団体が一緒になりまして、民間公聴会という形で電力会社の社長さんなりガスの社長さんを呼んで話し合うチャンスというものを私どもみずから設けておりますが、それは非常に不十分じゃないだろうか。その物価安定政策会議も、一日だけの時間で八電力、三ガスまでやるなどということはとうていできませんし、それに非常に問題は、経理の公開、情報の公開が不十分でございます。これは申請書の分厚いものを取り寄せて見ましても、それを読み取る力というのは私どもになかなかございません。そういう意味では、専門家を交えながら、私どももそれに対しての意見が交換でき、私どもの意見が反映できる場でございますね、政府も責任を持ってそれを聞くという、そういう場がぜひとも欲しいと思います。それと同時に情報の公開が必要でございます。それは電気の場合は特に独占企業でございますので、当然情報公開はあるわけなんですが、それが非常にわかりにくいというところに問題がある。せめて一年ごとに申請と査定とそれから実績ですね、どのくらい乖離があるかということを公表してもらいたいということもそのときに要求いたしております。
 それからその次にもう一つお触れになりました点は福祉料金の点でございますが、これは私は現在では年度内据え置きをぜひいたしてほしいというふうに思います。で、福祉料金という形で将来これから以後電気料金制度の見直しの中で考えられる分野ではないかというふうに思います。まあ限定されることは当然必要だと思いますが。
 以上でございます。
#86
○沓脱タケ子君 それじゃ、時間かございませんので簡単にお伺いをしたしたいと思います。田中公述人は消費者団体の本当に先頭に立って実践的に御奮闘くださっておりますことに心から敬意を表しております。時間があったら幾つかお聞きをしたいと思っていたのですけれども、ごく端的にお伺いをしたいと思います。
 いま国民生活というのはインフレと物価高で大変な重圧を受けております。いま審議をしております五十五年度予算案、これがこのまま通りますと、さらに国民生活に大きな負担がかかるということを私ども心配をして実は審議をしているわけでございます。そういう中で電気料金の値上げ問題をとらえまして消費者団体として大変御奮闘いただいて、一つ一つ事態を明らかにし、また民間査定を出したとおっしゃられたわけでございます。私どもは物価を抑えていく上でやはり独占価格を抑えるということか一番大きな問題点の一つだと思っております。そのためには、独占価格を抑えていくためには、いわゆる独占企業、大企業の利潤を民主的に規制していくということですね、そういうことが実際には消費者団体として実践的に進められてきていると。まだ民間査定がかみ合うというところまでいっていないという先ほどの御報告はございましたけれども、これを一歩進めていくという点ではどうしたらいいかという点での御感想というんですか、御見解をお伺いしたい。
 それからもう一つは、物価高を押し上げる要因としては公共料金の問題かございますけれども、いまの予算案でも、すでに御承知のように、法定制緩和の問題がたばこだとか郵便料金等で出ております。公共料金の値上げの問題法定制緩和の問題そういう点についての御見解を、もう端的で結構でございますので、あわせてお伺いをしたいと思います。
#87
○公述人(田中里子君) まず第一番の、大企業なり独占的な寡占企業も入ると思いますが、その対策につきましては、一つは私は、需要と供給で値段か決まっていく場合に消費者の買い控えというのが一つ有効に作用すると思いますし、これは消費者の権利でございますから、私ども不当な値上げか末端価格で行われたときには今後もその買い控えの消費者の権利をみんなで発動し、これは一人一人の消費者かその気にならなければなりませんが、かつてのカラーテレビ買い控え運動のときのような形で対抗していくというのは私どもの本来的な運動だと思います。しかし、それでどうにもならない問題があります。そのときに原価の公開をということを独占禁止法の改正の時点で入れてほしいという要求をしましたか、これは入れられるところではありませんでしたが、私どもは今後も、実際にこの品物かこういう原価の構成だということを、まあ内部告発かあれば大いに歓迎でございますか、私どもの力によっても、専門家を交えて、そういうわれわれから、消費者から見た原価の公開もしていきたいと思っております。そういう意味では、ぜひまたいろいろ先生方にもお知恵を拝借したいというふうに思っております。
 二番目の公共料金の法定制の緩和の問題は、国鉄の場合も私どもは反対の意向を示したわけです。それは上げる側から見れば、非常に時間もかかり、値上げ時期がおくれることによってよけいに後でコストアップになるとか、いろんな理由はありますけれども、私も実は現在はチェック機能が働かなさ過ぎていると思います。そういう意味ではぜひ国会での審議に期待したいと思います。ぜひ良識ある論理的な議論の展開をしていただくことに私は賛成をしております。
#88
○秦豊君 田中さん、大変お待ちを願いましたし、時間かかなりまたがりそうなので一問だけにさせていただきます。
 あなたがお述べになった御意見の中で、たとえば憲法二十五条は電気事業法に優先すると。これは公共料金の値上げに優先すると置きかえても運動全般のりっぱな明快なテーゼになると思うんですよ。同感です、これは。
 あなたの言われたことの中で、ぼくが確かにそうだなとみずから問い直したのは、いまいろいろな法律があるじゃないか、独禁法初め買い占め売り惜しみ法、石油二法、いろいろある、これを十分に活用しておればかなり早い対応かできるのに、何となく日を送っている、見過ごしているのではないかという指摘は、これはもう私たちも分かち合うべきだと思います。
 それから、私はきのうの予算の総括でも大平総理その他に申し上げたんですけれども、もしも私どものデモクラシーか、大平総理によればデモクラシーになるんですけれども、それがもし完熟に近づこうとするならば、さっきあなたがおっしゃった情報公開法、それから環境アセスメント法案、さらに私がきのう提起したのは――行政が主権者との距離をぐっと縮める、あるいは行政の硬直化や肥大化から起こるさまざまな有権者の被害を軽減するための行政手続法というのもある、こういうものを次々に完備していくことがデモクラシーを完熟していく道筋ではないかというふうな問題提起をしたんです。きょう田中さんの話を聞いて、ぼくがこれが残っていると思いましたのは、コンシューマーですか、ユーザーと言いますか、つまりわれわれ、奥さん方、田中さんたち、この人々とたとえば独占企業あるいは巨大な生産会社との間に何らかのダブルの回路が設定できないか。つまりフィードバックと言いますかね、アクセスというか、これが立法化したときに私は消費者運動というのは一つの完結を迎えると思うんですよ。もちろん一〇〇%ではないが、一つの過渡期の完結を迎える。だからあなた方の運動が、薬品公害とか薬害や食品公害、添加物、それから悪い製品と闘ってきた長い歴史をひとつ完成に押し上げるためには、ぼくは消費者運動の大きな次の目標として、つまり申し上げた独占企業や巨大メーカーに対するアクセス権の確立、これは一つの法律をつくってもなかなか網の目が大き過ぎますから、一つ一つつくっていく。こういうことについてどうお考えかちょっと御意見を伺いたいと思います。
#89
○公述人(田中里子君) 先生がおっしゃいましたように、確かに消費者運動も一つの転期を迎える八〇年代だと思います。そういう意味で、確かに大企業なり寡占企業とのアクセス権か確立できるということは一つの方法かもしれませんが、実は私どもまだまだいろいろな面でいいなあと思うことか全然裏返って現実に出現してくるという思いに最近特に駆られております。その一つが環境アセスメント法案でございます。私どもはアセスメントをやってほしい、法律でぜひというふうに願っておりましたのに、法案を拝見しますと非常に問題が大きい。条例制定権も侵されるし、事業者かみずからやるという、自分の首になわをつけることはまずあるまいというような、そういうような問題で事業者に環境調査もゆだねられ、意見は聞くだけというような、そういうものが何か国民の中でやってほしいというその大義名分に名をかりた形で出てくることに先生方ぜひひとつ監視の目を光らせていただきたいと思います。そういう意味で情報公開法もまた同じ形で情報がかえって制限されるのではないかという心配を持っております。
 私どもの力もまだまだ足りませんので、大企業なり寡占企業に向かったときにどこまでお互いが話し合うことができるのか、対等の立場でできるかというと、これまた非常に疑問がございますので、当面の八〇年代の初めは、あくまでも私どものその権利を行使しながら、中身を突き詰めていくという問題が一つ残されているのではないかと思います。
#90
○委員長(山内一郎君) 以上で物価問題及びエネルギー問題に関する意見聴取は終了いたしました。
 田中公述人には、御繁忙中のところにもかかわりませず、御出席の上、貴重な御意見をお聞かせをくださいましてまことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、今後の当委員会の審査に十分役立つものと確信してやみません。当委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。
 明日は午後一時から委員会を開会することとし、公聴会はこれをもって散会いたします。
   午後五時七分散会
ソース: 国立国会図書館
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