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1979/05/13 第91回国会 参議院 参議院会議録情報 第091回国会 農林水産委員会 第11号
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1979/05/13 第91回国会 参議院

参議院会議録情報 第091回国会 農林水産委員会 第11号

#1
第091回国会 農林水産委員会 第11号
昭和五十五年五月十三日(火曜日)
   午前十時九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月九日
    辞任         補欠選任
     伊江 朝雄君     宮田  輝君
     高橋 圭三君    久次米健太郎君
     石本  茂君     熊谷太三郎君
     永野 嚴雄君     坂元 親男君
 五月十三日
    辞任         補欠選任
     宮田  輝君     成相 善十君
    久次米健太郎君     野呂田芳成君
     案納  勝君     穐山  篤君
    目黒今朝次郎君     勝又 武一君
     藤原 房雄君     矢追 秀彦君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         青井 政美君
    理 事
                岩上 二郎君
                片山 正英君
                北  修二君
                川村 清一君
    委 員
                坂元 親男君
                田原 武雄君
                成相 善十君
                野呂田芳成君
                初村滝一郎君
                降矢 敬雄君
                三浦 八水君
                穐山  篤君
                勝又 武一君
                栗原 俊夫君
                村沢  牧君
                原田  立君
                矢追 秀彦君
                河田 賢治君
                下田 京子君
                喜屋武眞榮君
   衆議院議員
       農林水産委員長  内海 英男君
   国務大臣
       農林水産大臣   武藤 嘉文君
   政府委員
       農林水産政務次
       官        増田  盛君
       農林水産大臣官
       房長       渡邊 五郎君
       農林水産大臣官
       房審議官     塚田  実君
       農林水産省経済
       局長       松浦  昭君
       農林水産省構造
       改善局長     杉山 克己君
       農林水産省食品
       流通局長     森実 孝郎君
       食糧庁長官    松本 作衞君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        竹中  譲君
   説明員
       農林水産省構造
       改善局農政部農
       政課長      若林 正俊君
       農林水産省農蚕
       園芸局普及部長  山極 栄司君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○農地法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
○農業委員会等に関する法律等の一部を改正する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農用地利用増進法案(内閣提出、衆議院送付)
○砂糖の価格安定等に関する法律第五条第一項の
 規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについ
 ての臨時特例に関する法律の一部を改正する法
 律案(衆議院提出)
○地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づ
 き、農林規格検査所等の設置に関し承認を求め
 るの件(内閣提出、衆議院送付)
○米の政府買入価格改善等に関する請願(第六〇
 号)
○「釣り人課」(仮称)新設に関する請願(第二
 一六号外七件)
○養豚農家の経営安定に関する請願(第三二八
 号)
○過剰米の解消に関する請願(第五二八号外一
 件)
○蚕糸業の振興に関する請願(第五二九号)
○農業基本政策の確立等に関する請願(第五三〇
 号外一件)
○果樹共済制度の改正に関する請願(第五三一号
 外一件)
○畜産農家の経営安定に関する請願(第五三三号
 外一件)
○水田利用再編対策に関する請願(第五三五号外
 一件)
○肉豚価格対策に関する請願(第五六五号)
○水田利用の再編対策に関する請願(第一二七二
 号外二件)
○農林年金制度に必要な国庫補助予算の確保に関
 する請願(第一四〇五号)
○農林年金制度改善に関する請願(第一四〇六
 号)
○農林年金制度の改善に関する請願(第一六四二
 号外一件)
○農業改良普及事業及び農業試験研究機関に関す
 る請願(第一七二六号外三件)
○昭和五十五年度基準糸価の引上げに関する請願
 (第一七六二号)
○昭和五十五年度畜産物の安定価格引上げに関す
 る請願(第一八二八号)
○長野営林局の存置に関する請願(第一八二九号
 外一件)
○昭和五十五年度畜産物政策価格並びに畜産経営
 の安定強化に関する請願(第一九三五号)
○東京営林局存置に関する請願(第一九三六号)
○農事用電力制度の適用範囲拡大等に関する請願
 (第一九三七号外一件)
○乳製品の需要拡大に関する請願(第二三九三
 号)
○食糧・農業基本政策の確立に関する請願(第二
 三九四号)
○繭価の確保と蚕糸振興対策の強化に関する請願
 (第二三九五号)
○公共用地の取得推進に係る農地法改正に関する
 請願(第二九五二号外一件)
○農林水産業対策の確立に関する請願(第三二六
 一号)
○農業改良普及事業に関する請願(第三五八六
 号)
○韓国漁船操業規制の即時実現と被害漁業者に対
 する救済措置の実施に関する請願(第三六〇〇
 号)
○秋田営林局の存続等に関する請願(第三七〇六
 号)
○飼料用稲を転作作物の対象に加えること等に関
 する請願(第三七〇九号)
○継続調査要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(青井政美君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る九日、伊江朝雄君、高橋圭三君、石本茂君及び永野嚴雄君が委員を辞任され、その補欠として宮田輝君、久次米健太郎君、熊谷太三郎君及び坂元親男君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(青井政美君) 農地法の一部を改正する法律案、農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案及び農用地利用増進法案、以上三案を一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○川村清一君 八日の委員会で各委員会から相当詳細に質問され、論議が交わされましたので、私はできるだけ基本的な問題について質問をしたり、あるいは意見を申し上げたいと存じます。
 まず最初にお聞きいたしたいことは、今回御提案になっておるのは農地三法と言いまして、一つは農地法の一部改正案、いま一つは農業委員会の改正法案、そしてもう一つは新しい法案として農用地の利用増進法案、この三つの法律案が提案されておるわけでございますが、政府としましては、この三つの法律というのは並列なものなのか、まああえて軽重をつけるとどれが一体一番重要なのか、いわゆるメーンとなる法案はどの法案なのか、それをまずお聞かせいただきたいと思うんです。
#5
○国務大臣(武藤嘉文君) いまお話しのように、三つとも、非常に関連をいたしておりまして重要なものでございます。私どもは三つとも切り離すことはできないものだと思っておるわけでございますが、強いてどれが一番中心か、こういう点においては、私どもは農用地利用増進法案を中心として考えているわけでございます。
#6
○川村清一君 農用地利用法案を提案されておる趣旨につきましては、まあこれはお聞きしたんですが、私の理解によれば、いろいろ理屈はありますけれども、端的に申し上げれば、要するに農地の流動化をもっと図って、そして中核農家にその農地というものを集積して、いわゆる農家の規模を拡大することによって生産コストを下げていくというところにねらいがあると、端的に言えば思うんですが、これはどうですか。
#7
○国務大臣(武藤嘉文君) 端的に言えばそういうことでございます。
#8
○川村清一君 そういうねらいのもとに、過去においてはいわゆる農振法という法律が出されて、さらにそれが改正案を出されて、その農振法に基づいて現在相当農地の流動化が図られておる。そしてこの過去二回審議した農振法でございますが、これには農地法というものはかかわっておらないわけですね。農地法をいじくってはいないわけですよ。今回のこの新法には農地法をかかわらせたというその意図は何ですか。
#9
○国務大臣(武藤嘉文君) 前の農振法のときも、その適用除外その他の関係では農地法の関連も結果的には改正になっておるわけでございますが、農地法そのものの改正というものはそのときには出していなかったわけでございます。今回、農地法そのものの改正をお出しをいたしましたのは、農地の流動化を促進する上において、いわゆる小作料の金納制というものも一つのやはり農地の流動化を阻害する要因になっておるのではなかろうか、こういうこともございましたので、そういう面で物納も認めるという方向が農地の流動化を促進するのに役立つのではないか、こういう考え方もございまして、それを中心として農地法の改正もお出しをいたしたわけでございます。
#10
○川村清一君 いままでの農振法の中においてもその他の法案の中においても、農地法そのものには手を入れなくても――もっとも農地法そのものの改正が二回もなされておりますから、農振法等においては、農地法そのものには手を入れなくても相当農地法にかかわるものはその法律の中で処理されておる、これは私も理解しているんです。しかし、今回は特に農地法そのものに手を入れた。それはどういう根拠かと言えば、いま大臣のお答えによれば、さらに農地の流動化を積極的に推進するためにたとえば金納制を物納制に改めるような措置もした、こういうことですね。ですから、今回の農地法の改正における一番大事な柱はそこであったと思うんです。ところが、衆議院の段階で農地法そのものが大幅に修正されてしまった。いわゆる金納制というものが金納制を原則とすると。政府案は金納制をやめて物納制を本体とすると、これが改められて、金納制を原則として物納制もある場合においては認めるというふうに、まあ簡単に言えばそういうことになったわけです。したがって、政府のねらった農地法の改正というものは全く意味をなさなくなってきたと私は思うんですが、このように大幅に農地法が衆議院の段階で修正されたことに対するこの法案を提案された政府の見解はどうですか。
#11
○国務大臣(武藤嘉文君) 衆議院の修正におきまして、いわゆる農業委員会が承認をすれば物納が認められることだけは残ったわけでございまして、私どもといたしましては、非常にこの修正は物納そのものを否定されたわけではないと承知をいたしておるわけでございます。また、現実にいま小作料におきましては相当、四〇・六%というような数字が出ておるわけでございますけれども、結果的にはすでに小作料が物納によって行われておるというのが実態のようでございまして、そういう点から考えましても、私どもは、やはり物納というものが法律的にもそういう制約はあるにせよ認められるということは、やはりこれは大変大きな前進ではなかろうかと思っておるわけでございまして、ただ、私どもの説明と申しますか、答弁がどうも誤解を受けた点もあるのではないかと思いますが、何か物納を物すごく推進するというふうにおとりになってああいう修正がなされたのであろうと思っておりますが、私どもとしては、物納をより強力に進めるということではなくて、現実にすでに物納が半分近くあるということ、それからやはり農地をお出しをいただける、貸そうというお気持ちを持っていただける農家が、やはり自分のところでとれた飯米を自分のところでは食べたいと、こういう気持ちも相当あると聞いておるわけでございまして、そういう点で、それが可能である範囲であれば私ども衆議院の修正はそれはそれなりに評価すべきである、こういうふうに考えておるわけでございまして、全く私どもの最初の考え方がこの修正によってもうだめになってしまったと、こういうふうには私どもは考えていないわけでございますので、御理解をいただきたいわけでございます。
#12
○川村清一君 いや、その議論はまたやりますから、物納制そのものの議論はまたやるといたしまして、農地法を改正しようとした意図は、現在これは行われておるところの物納、これを認めるんだと。これは物納そのものは認められていないわけですから、それを法的に認めるんだと、その認めることによって農地の流動化はさらに積極的に進むんだと、こういう御見解、判断のもとに法律の提案をなされてきたわけです。ところが、物納そのものはまるきり消えたわけではないですよ。だけれども、いわゆる金納制を原則としておる。そして補完的に物納もある条件のもとには認めると、こう変わったんですから、大幅な私は修正だと思いますし、また、政府のいわゆる提案されたところの意思というものは、相当衆議院において、衆議院においてということは国民の声によって抑えられてしまったと、こういう事実に対して、提案をされた政府としてはその程度のお答えしかできないのか。私は政府にとっては相当な痛手であったと思うんですが、大臣はそうお思いになりませんか。
#13
○国務大臣(武藤嘉文君) ただいまもお答えをいたしましたように、私どもこのいわゆる金納制でなければならないというものを廃止をするという御提案を最初申し上げましたときも、それは物納を原則にするといいますか、逆のことを言っておったつもりはないわけでございまして、金納もできれば金納でも結構、物納でも結構と、こういうつもりで私ども提案をしたわけでございます。でございますから、確かに農業委員会の承認を要するという制約はございますけれども、物納が一切認められないということではないわけでございますので、私どもといたしましては、今後の運営において物納も認められるということにおいては、最初の私どもの提案をいたしましたときのことが非常に制約を受けることになったと、こういうふうには判断をいたしていないわけでございます。
#14
○川村清一君 まあそれはそのくらいにしておきましょう。
 そこで、私どもの見解をはっきり申し上げますが、私どもとしましては、昭和二十七年に制定されたいわゆる農地改革に基づくところの農地法の制定ですが、この農地法というものとそれから食管制というものは、日本の農政の根幹をなすものであると、かような見解を持っているものであります。昭和二十七年に制定された農地法は、言うまでもなく農地改革による自作農創設の成果を堅持し、さらにそれを発展させていくいわゆる自作農主義に立脚しておるものであります。これはあくまでも守っていかなければならないという見解をわれわれはとっております。
 しかし、時代の変遷とともに、その農地法がいろいろと変わってきたんです。そして、特に最近に至っては、いわゆる農業の構造政策が強く進まないという一番の原因はどこにあるか、それは農地法にあるんだ、いわゆる構造政策を阻害しておる最大のその元凶は農地法である、だから農地法を、これを改正していかなければならないという声が強く行われておると。現に農地法はだんだんだんだん変わってきておるわけでありますが、その農地法を制定した昭和二十七年ころにおいては、構造政策、構造改善というものについては余り論議されておらなかったんですが、昭和三十年代に入って経済が高度成長になるに従っていろいろ問題が出てきて、そこで昭和三十六年に農業基本法というものが制定された。
 大臣御承知のように、農業基本法については社会党は反対してまいりました、政府提案の農業基本法には。党独自の対案を出して国会の中で闘ったんですが、敗れて政府のいわゆる農業基本法というものが制定されてあります。これは三十五年に農林漁業基本問題調査会から答申が出て、それに基づいて、いろいろ農地法でいきますというと経営が非常に零細であるというようなこと、そして経済の高度成長時代を迎えて他産業との格差が非常に出てきた。そこでその格差を是正するために生産政策あるいは価格政策、構造政策を総合的に推進して農業の近代化を実現したいと、こういうことで農業基本法が制定されて今日に来ておりますが、もう言うまでもなく農業基本法でねらったことは現実の問題としてそれは実現しておらないと、こう言っても過言でないと思うのでありますが、大臣の御見解はどうですか。
#15
○国務大臣(武藤嘉文君) 確かに農業基本法の制定、その以後の昭和三十七年の農地法の改正、これは農地の規模拡大、そして農地法そのものの考え方でございますいわゆる先生の御指摘のございました自作農主義と申しますか、耕作者が農地を所有し、そしてそれによって農業の生産の拡大を図っていくと、こういうことであったと思うのでございます。ところが、昭和四十年代に入るころから日本の経済が高度経済成長時代に入りまして、そのために結果的には地価の上昇をもたらしましたし、また雇用関係においても大きく農業の中に変化を来してまいりました。これが兼業農家が非常に多くなり、そしてまた中には農地を、農業を主体におやりにならない方でも、農地というものは一つの資産としてやはり持っておりたいと、こういう気持ちを強く農家の方に起こさせたことも事実であろうと思います。それがやはりいわゆる農地を取得をし、そしてそれによって農業の規模の拡大を図り、農業の所得も増大をするというような方向に必ずしもいかなかったことではなかろうかと、私はこう判断をいたしておるわけでございます。
#16
○川村清一君 そこで、農業基本法で意図したものがなかなかうまくいかないので、それを助長して農業基本法の意図したものを実現するために、数次にわたって法律の改正だとか新法の創設とかやってきたわけですね。まあちょっと私考えただけでも、昭和三十七年、いわゆる基本法ができたその次の年に第一次農地法の改正をやっております。それから、これは私が昭和四十年に出てきたわけですからよく記憶にあるんですが、昭和四十一年、四十二年、二年間にわたって農地管理事業団法、これは二年続けて参議院で廃案になっておるわけです。これもやっぱりこの規模拡大というものをねらった法案であったわけですね。それから、昭和四十四年になって農業振興地域の整備に関する法律、いわゆる農振法が制定されておるわけですね。ねらいは同じだと思うんです。そして、昭和四十五年に第二次の農地法の改正を行ったわけです。
 それでそのほかに、この農林水産委員会には出ておらないで、ほかの委員会で論議されておりますが、四十三年の新都市計画法であるとか、四十九年には国土利用計画法、これは皆農地に関連している法律です。そして、昭和五十年には農業振興地域の整備に関する法律案の改正、いわゆる農振法の改正、ざっとこういう経過を経てきておるわけでありますが、そのほかにも、今度はたとえば農業者年金基金法の制定であるとか、農村地域工業導入促進法の制定であるとか、地域農政特別対策事業の新設等、制度の面においてあるいは予算面において政府はそれなりの努力をしてきた、こう言って差し支えないと思うんです。しかし、こうした努力にもかかわらず一向に成果が上がっておらない、これが実情ではないかと思うんです。
 そして、そういうような経過を踏んまえて今回の農地三法の法案提出と、こうなってきたと考えるわけでありますが、それで現在の農業の実態を考えると、農業基本法が制定されて以来、農業の就業人口というものは半減しているんです。事実半減している。農業基本法制定当時、われわれ社会党が反対したいわゆる大きな根拠としては、これは農民切り捨てであると、特に零細農民の切り捨てである、農地法の精神に反するものである、こういう見解に立って反対したわけです。現に農業人口、就業人口というものは半分に減ってしまっておる。半分に減ったけれども、それじゃ農家そのものは減ったかというと減らないで、二割強しか減っておらない。農地の流動化というものはさっぱり進んでいかない。特に、第二種兼業農家は全農家の七〇%も占めておる。依然として零細経営、零細土地所有のままで残っているのが実態でございましょう。
 それから、農業経営の基礎である働き手について見てみると、若年労働等基幹的な労働力の流出によって老齢化、そして女性化し、きわめて脆弱化しておる、これが実態でございます。
 構造問題につきましては現在農政審議会でも検討されておるし、全国農業会議所も先般中間答申を行ったようなぐあいに活発な論議が行われておるわけです。
 そこで、先ほど大臣もちょっと触れられましたが、一体このように、昭和三十六年の農業基本法制定以来今日まで、私がいま挙げましたようにいろいろな法律を出されておる、そして予算面でも政府は努力してきた、これは認めます。認めるけれども、構造政策が残念ながら成果を上げないままに今日にきておることはこれは認められると思うのであります。
 こういう実態の中で、先ほど大臣がおっしゃったところの農用地利用増進法、これは新法ですが、この法案を出された。そしてこれを側面から援助してこの法律を即、進めていくために農地法にも手をつけた、農業委員会法にも手をつけた、そして側面から援助してこれをずっと進めていこうというお考えだと思うのでありますが、果たしてこれでいくのか。いままでずっとやってきてできなかったのが、この法律によって政府の意図するものがりっぱに成果を上げることができるのかどうかというところに私どもは大きな疑問を持つわけです。
 そこで、政府は政府なりに思い詰めて持ってきたと思うのですが、ここでいままでの二十七年の農地法、そして三十六年の農業基本法、数次にわたるこの法制定をやってきたこの経過を踏んまえて、これは成功するのだと、りっぱにできるのだと確信を持って出されておるのかどうか、その点を明確にしていただきたいんです、これが一番大事なことですから。
#17
○国務大臣(武藤嘉文君) いろいろと過去の分析については私も大体先生と同じような分析をいたしておるわけでございます。先ほども触れましたけれども、高度経済成長によって、農家を取り巻く雇用環境と申しますか、こういうものが変わってきた、また非常に高度経済成長によって地価が上がった、そのためにそれは農地の地価にも影響した、こういうようなことが結果的には農業人口は減ったけれども農家戸数は必ずしも減らなかった、そして二種兼業というような農家が七割にもなってきたと、こういうことではなかろうかと思うのでございます。
 しかし、それではますます農業というものが脆弱化していくわけでございまして、やはり農業の体質を強化をしなきゃいけない。そこで、昭和四十五年の農地法の改正によりましても、十年間という期間を限っての賃貸借をできるようにした、しかし、それは必ずしも成果が上がらなかった、そして、昭和五十五年の農振法の改正によりまして、これは農振地域の農用地だけを対象にして貸し借りをできるだけいままでの十年と限らないで、いろいろ農業委員会などの協力も得て、ひとつもう少し簡単にと申しますか、もう少し楽にその農地の貸し借りができるようにということで農用地利用増進事業というものを考えたわけでございます。それをやってまいりますと、わりあい従来よりはこの五十年の農振法の改正によりましては農用地の利用の増進が進んだと申しますか、流動化が従来より多くなってきたわけでございまして、こういう実績を踏まえて、私どもは今後はやはりもっとこの地域を拡大をいたしまして、そして市街化区域の、原則として市街化区域は別といたしましても、その他においてはどこでも農地として貸し借りが幾らでもしていただけるというようにするならば、そしてこの農用地利用増進事業の実績を踏まえて、農業委員会なりが中へ、あるいは市長さんが中へ入ってやっていただく場合には、ある程度貸し手も安心して貸すのではなかろうか、こういう考え方で今回の提案をしたということでございまして、私どもはこの法律を通していただけるならば、相当期待は従来より持てるのではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
#18
○川村清一君 現在農振法があって、農振法のもとに貸し借りが行われておるわけです。それをさらに進めたい、この新しい法律の制定によってそれがさらに発展していくだろう、そういう御見解のもとに出されたと、こういう御答弁なんですが、まあそれはそれなりに意味があると思うんですが、その程度ですわね、その程度。現在の法制下においても進んでおる、画期的なものを出したことによってさらに一段とこれが飛躍していくというふうにはとうてい私どもは考えられないですね。なぜ現行法の中でも流動化が進まないのかと。いわゆる構造政策だけでいいのかどうかという問題、その辺はお考えになっておるんですか、どうですか。
#19
○国務大臣(武藤嘉文君) これは私、決してこれだけで農家の体質が強化されるとか、非常に農地が流動化していくとかいうふうには考えておりません。やはり生産政策、価格政策、構造政策、あるいはもっと大きな意味においては農村における社会政策、こういうようなものが一体となって総合的に行われるときに、初めて農地の流動化は図られるであろうと考えておるわけで。ございまして、当然そういう政策についても今後極力強力に進めていかなきゃならないと、こう考えておるわけでございます。
#20
○川村清一君 そこまではおわかりになっているんですね。だから、これ一本ではだめだということもこれは御理解になっているわけですね。ですから、そのほかのいわゆる価格政策であるとか、あるいは農村の、いわゆるいろいろ農村が持つところの社会政策であるとか、福祉政策であるとか、あるいは流通政策であるとか、それから特に土地の価格政策とか、いろいろお考えになっていると思う。これもあわせて積極的にやらなければならないと、こうおっしゃっているわけですね。積極的にやらなければいけないということはわかっておりますが、それはできるんですか。これはいまさら始まったことでなくて、いわゆる三十七年の農業基本法制定以来この問題がずっと来ておるわけですが、できないんですね。むしろ高度経済成長時代には逆行するようなことが起きてきて、それが農村に強く覆いかぶさってきてかえってこれを進めなかったという大きな要因をつくっているわけですね。こんなことを考えてみたときに、大臣はおわかりになっていますが、それを一体どうして実現させることができますか。また、農林水産省だけでもできないことでしょう。この辺を総合的に考えて、もう一回大臣のしっかりした信念といいますか決意といいますか、そういうものを披瀝していただきたいと思うんですね。
#21
○国務大臣(武藤嘉文君) いま農政審議会でも御議論いただいているところでございますけれども、たとえば生産政策といたしましては、できる限り国内で自給できるものは極力国内で生産するという方向でこれからの農業生産を私どもは考えていきたいと思っております。これは先回の国会の決議にもございましたように、やはり日本の農業においてより食糧の自給力を高めていくということをしなければならないと、こういう御決議もいただいておるわけでございますし、また、将来の世界の食糧の需給関係を見ますと、なかなか将来は食糧の需給関係はタイトになっていくであろうと、こう言われておるわけでございまして、そういう点を踏まえましても、日本の農業の力を強め、それによって生産力を高めていくということは非常に大切なことであると思っております。
 ただ問題は、その生産政策の中で従来多少問題でございましたのは、必ずしも国民の――これはまあいろいろ御議論があろうと思いますけれども、やはり国民の食生活は多様化してきておる。これはなかなか強制ができないものでございますから、国民の食生活が多様化してきておる、それに必ずしも順調に対応し切れなかったという点は私はあったのではなかろうかと思います。そういう面において、これからの農業生産の中では、需要に合ったような形での供給、やはり需給関係を常に考えた形でいかなきゃならないのではなかろうか。もう一つは、やはり地域的な、地域農政の考え方で、ある程度適地適作的な考え方も私どもはもっと考えていかなきゃならないのではなかろうかと思っておるわけでございます。
 そういうものを踏まえながらいかなきゃならぬわけでございますけれども、同時に、国民に理解を求めるためには、やはり農業生産において、日本の場合耕地面積が非常に小さいものでございますし、とにかく零細な規模が多いわけでございますから、国際価格より農産物の価格が高くなることはこれは当然でございますが、しかし、幾ら高くなってもいいということではなかなか国民の理解が得られないのではなかろうか。やはり高いは高いでいいけれども、ある程度しかし農業としても努力をしておると、こういう姿を国民に見せなきゃいけないのではなかろうか。そういう点から考えますと、従来施設利用型農業では相当生産性が高まってきておりますけれども、土地利用型農業においては依然として生産性が低いわけでございまして、そういう点においてある程度規模拡大を図っていきたい。そうすると、やはり農地の流動化を図るということが生産政策からいってもこれは必要であるということではなかろうかと思います。
 価格政策につきましても、やはり規模の拡大を図ることによって生産性が高まり、それによって収益が上がることによって結果的には私は農家の所得もふえていくと、こういうことになるわけでございまして、いまの価格をもし維持した場合に、規模が思い切って拡大をされれば当然その収益は上がり、そしてそれだけ農家の手取りはふえるということにもなるわけでございまして、私は価格政策というのは、ただ単に価格を上げるというだけではなくて、やはり生産性を高めてそれによって収益を上げ、それによって農家の所得の増大を図るということがやはり大切ではなかろうかと考えておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、生産政策、価格政策というものとこの構造政策というものは、非常にそういう点で私は関連があると思っておるわけでございまして、その辺を総合的に今後より強力に進めていきたい、こう考えておるわけでございます。
#22
○川村清一君 そのおっしゃっていることはようわかるんです。要すれば、いま大臣のおっしゃっているようなことは、いままでの農振法の審議のときにも、あるいは農地法の審議のときにも、歴代の大臣が大体それに近いことをおっしゃっているわけですよ。おっしゃっておるけれども一向にそれが実現しないというところに問題があるわけですよ。ですから私が言うのは、農林水産省だけでできる問題ではないと。しかし、日本の行政は縦割りで、農水省だけでやっているものだから、これにはいろいろ、まず内閣そのものが、総理大臣がその見解をしっかり持って、そうして各省庁がやらなければ、要すれば国土庁も関連してくるし、それから通産省も関連してくるし、みんな各省が関連してくるわけですね。そうしてそれに対して大蔵省がきちっとやらなければ、これは農林水産大臣一人で一生懸命そのことを言っておったって、内閣自体がそういう気持ちでやっていかなかったら実現しないわけだ。その大臣がおっしゃっているようなことは歴代の大臣みんなおっしゃっているんですよ。これはだれでもわかることなんだ。要するにそれが実現しないんです。それをどうして実現させるかということを聞いているわけです。
 そこで、いま農政審議会のお話が出ましたからちょっとそれに触れますが、農政審議会が五十年五月に策定したところの、昭和六十年を目標年次にした「農産物の需要と生産の長期見通し」、そういう見通しが現在あるわけですが、現在その農政審議会において、昭和六十五年度を目標年次とする「農産物の需要と生産の長期見通し」の改定作業が進められておる。これは大臣がおっしゃっておるとおりでありますが、そこで、その農政審議会が昭和五十四年の八月の三十日に、「農政の今後の検討方向」ということで一つの論点を整理して言われておるものがある。その中で言われておることは、「「長期見通し」は、単に作目別の需給見通しにとどまらず、農地面積、農業就業人口等を含め、今後の我が国経済社会の中での農業の位置づけを明らかに出来るよう農業の全体像について将来のビジョンを明らかにするものとする必要がある」、こういうふうに述べておるわけです。したがって、六十五年度における農用地の面積であるとか、その利用の形態であるとか、担い手農家の経営構造、こういったようなものも当然出てくるものと考えておるわけでございます。私はそう考えておるんですが、大臣はいかがですか。
#23
○国務大臣(武藤嘉文君) 大体その方向でいま農政審議会でお願いをしておるわけでございます。
#24
○川村清一君 そこで問題があるのですが、いまは昭和五十五年。六十五年は十年先です。十年先に日本の農用地面積がどのくらいになっておるのか、その利用形態はどうなるのか、その農業を経営している担い手の農家の経営構造はどうなっているのかといったようなものが出てくるわけです。そういうものの上に立って、今度は作目別にこの需要と生産の長期見通しというものが出てくるわけでありますが、これは十年先のことだ。これをやっぱり頭に描いていまの法案を用意をされておると、こう思うんですが、そういう理解でいいですか。
#25
○国務大臣(武藤嘉文君) まだ農政審議会の結論というのは出ていないわけでございまして、いろいろ議論していただいておりますが、これは大体この夏ごろまでには答申を出していただけるものと期待をいたしておるわけでございまして、その答申が出てまいりますれば、それを尊重して私どもは今後の、先ほど申し上げましたように、生産政策、価格政策、構造政策、それぞれ考えていかなきゃならぬわけでございますので、当然その出てきたものは尊重しなきゃならないと思っております。私どもこの法案においても、この法案を提出をいたします前においても、構造部会と申しますか、構造政策関係の農政審の中での部門におきましては、経営規模の拡大を図っていかなきゃいけない、こういうことをおっしゃっておられるわけでございまして、そういう方向でこの法律も出さしていただいているわけでございますから、方向としては同じ方向を私どもは考えておるわけでございます。
#26
○川村清一君 先般、国会としては画期的な日本の食糧自給力強化に関する決議案が衆参両院において全会一致で採択されております。これは国会では、食糧自給力強化に関する決議案なんというのはこれは初めての決議ではないかと思っておるんですが、こういう決議案が出た以上、当然その決議の趣旨に沿って強力な農政を展開していく御決意はあると思うんです。したがって、それは農政審議会の方にも影響があって、農政審議会としてもその決議案の趣旨というものを、精神というものを十分認識していろいろ議論を進められていると思うのでありますが、そこでそのビジョンは一体どうなんだということを、これは衆議院においてもまた参議院においても、わが党の村沢委員なんかから強く指摘されて質問されておるんですが、出てから出てからということで、政府は農政審議会を隠れみのにしてなかなかおっしゃらないわけです、明らかにされないわけなんですね。
 そこで私があえて申し上げたいのは、先ほどから、六十五年を目標にしたこれから十年間の農政の進み方というものを出すわけで、六十五年のときにはこういう形のものだということが今度出る答申の中に明らかになるわけですが、さて、それが出たからといって、六十五年にはどうなるかわからぬでしょう、これは。というのは、とにかく三十六年に農業基本法が出て今日まで約二十年間きている、二十年間。二十年きたけれども、そしてその間にそれを進めるためにいろんな法制定なんかもやってきたけれども、現状はいまのこの姿です。この姿が十年後には果たしてそうなるという保証はこれはつけられないでしょう。どうなるかわからない。それを強力に推進するためにこの法律をつくるならば、この法律が、本当に法律のねらっているものが生かされていっているかどうか。十年たってもう一回これを反省してみる必要があるんではないんですか。
 そういう立場から私はあえて申し上げるのですが、この法律は十年たったら見直すのだと、あえて十年間の時限立法とも言わぬけれども、十年後にはこの法律はあるいは廃止することもあり得ると。実際にあり得ると私は思うんですが、これは衆議院でもだれかが質問している。会議録を読んだらそんなことを質問しておったようですが、十年間でこれを改めるということを、どうですか、そういう意思はありますか、ありませんか。衆議院ではないと言っていますが、どうですか。
#27
○国務大臣(武藤嘉文君) 私ども衆議院でもお答えをいたしておりますのは、時限立法にする気持ちはないということをお答えをいたしておるわけでございます。それは先生おっしゃいますように、確かに十年の間にはどういう変化が起きるかそれはわからないわけでございまして、全くこの法律が一切十年の間改正する必要がないということではないと私は思うのでございます。しかし、私どもといたしましては、これからのこの農地の流動化を図っていくという方向は、構造政策として当然日本の農業の体質を強化するためには必要であると、こう考えておるわけでございまして、その方向は私ども間違いないと思っておるわけでございます。それで、その仕事というものは一年や二年で短兵急にできるものではないわけでございまして、相当期間私どもはこれはかかる仕事であると、こう考えておるわけでございますので、どこで期限を切るかと。いまお話しの十年で期限を切るか、そのことは私は将来になってみないとわからないわけでございまして、そういう面で私ども時限立法という考え方はとれないのだと、こう衆議院でもお答えをしたわけでございます。
 今後において、十年の間にあるいは十年後にいろいろのやっぱり時代の変化もありますでしょうし、農業を取り巻く環境も変わってくるかもしれません。私はそういう意味において、一切これは見直しをする必要がないと、こういうことは申し上げないわけでございますけれども、この農地の流動化を図っていくという方向だけは間違いがないと思っておりますし、この仕事は相当長期にわたって私は必要であると、こう考えておりますので、そういう点で法律に時期を限るということは、これは私は適当ではないと、こういうふうに考えておるわけでございます。
#28
○川村清一君 大臣は叙勲の方の何かお仕事で退席されるようですから、少し、今度は大臣でなくても結構ですから、局長からでも御答弁ください、大体基本的な問題は議論しましたから。
 先般公表された農業白書についてちょっとお尋ねしますが、農業白書も農業構造の分析に相当力を置いております。それによると、全農家戸数の七〇%まで達している第二種兼業農家に農地の貸し手としての大きな役割りを期待しておるわけであります。そこで、このような第二種兼業農家のあり方というのは、現在のような厳しい農業情勢においては、農民として一番適切な対応の仕方ではないかと私は考える。というのは、農家をやっておれば、とにかく自家飯米については心配ないと。余ったらそれを売ればいいのであって、農業所得がうんとあってそして生活がある程度楽だというようなことであれば、手放す、いわゆる貸し手というものが多くなると思うんでありますが、現在の日本の経済情勢の中では情勢が変わってしまいまして、いわゆる経済そのものが減速経済になってきたと。したがって農外の仕事といったってだんだんなくなっていくわけですね。雇用不安がある。そして、農外の職場においても定年制というものがしかれていく。そうするとそう簡単に土地を手放せない。これが二種兼業の農家の方々の気持ちではないかと。その気持ちは私は十分わかるわけです。そしてまた、いま一回は都市に出てきた農民の方々も、特に中高年者は農村への還流が非常にふえてきておる、こういうような状態。
 そこで、これらの二兼農家が混住化している農村社会において、この二兼農家という方々をどういうふうに農村社会の中に位置づけるのか。こういう方々を、政府の考えているような方向にひとつ賛成してもらう、そういうふうに行動してもらうためにやはり誘導していかなければならない。その誘導していくにはどうするか、そういうことについての基本的な方針、これを持っているのかどうか、これをお聞きしたいんです。そして、白書が予定しているように、二兼農家の土地が中核農家に集まるのかどうか。これは集まらないのでは法律をつくったってしょうがないので、法律はそれをねらってつくっているわけですから、そういうふうに進んでいくためにはどういうような処置をなされようとしておるのかどうか、これをお聞きしたい。
#29
○政府委員(渡邊五郎君) 農業白書の二兼農家の問題についての御指摘でございます。
 第二種兼業農家の多くは安定した兼業に従事いたしておりまして、実態から申しますと、農外所得によって家計費を充足いたしておりまして、それなりに高い生活水準を維持しているというのが現況だと思います。ただ、私どもとしては、これまでの構造政策の進展から申しまして、土地利用型の農業が進展しないという問題がございます。こうした第二種兼業農家からの土地を中核的農家なりがお借りしていくという形での規模の拡大というのがこれから図られなければならない。当然ただいま先生がおっしゃったような混住社会の状況でございます。したがいまして、一般論で申しますと、こうした方々の理解と協力を得ていかなければならない、また、そういうふうに誘導していかなければならない、そういうことで、五十年の農振法改正によります利用増進以来、地域農政あるいは各種の事業等を通じまして、集落等の段階、地域の段階におきます話し合いによりまして、お互いに納得し合うという形での流動化を図ると同時に、これらの人々の就業対策、具体的には農村地域の工場導入等のこともございましょうが、同時に、地場におきますそれぞれ高齢者等の、これらの第二種兼業の場合に高齢者等の方もたくさんいらっしゃいます。こうした方々への生きがいの対策、あるいは中核農家を中心としました生産の組織化等へそれぞれ御協力をいただくというような形で、それぞれの地域に即した現実的な方法でこれらの人に対応をいたしたい。また、こうした方々の理解と協力を得るということは、単に一般の生産対策的な問題だけではなくて、地域におきます環境対策、その他総合的に地域全体のレベルアップをしていくということで御理解と協力を得ていきたい、このように考えておるわけでございます。
#30
○川村清一君 いや、これは大臣にも先ほど申し上げましたように、いまの官房長の御答弁は、それはまあ作文に書けば優等生の作文になるわけです。全くそのとおりなんですね。それを私は否定したり批判する考えはありませんし、全くそのとおりだと。ただ、そういうことができるかどうかということなんですね。それはあなたがそうおっしゃってもなかなかできないところに問題があるのですね。だから、二兼農家の方々がなかなか農地を手放さないそれなりの理由があるわけですよ。その理由は先ほど私が申し上げたとおりなんです。それから、一番土地の流動を阻害している要因、その二兼の方々が自分の土地を放さないその最大の要因は何だと思いますか。
#31
○政府委員(杉山克己君) 理由はいろいろあるかと思いますが、一つだけ最大の理由は何かと聞かれれば、やはり私は地価問題、地価が高いということが一番大きな理由だというふうに考えております。
#32
○川村清一君 私もそう思うんです。最大の理由は地価です。したがって、構造問題を考える場合、地価を考えないわけにいかないわけですよ。規模拡大をしようとする農家の希望というものは残念ながら地価の高騰によって打ち砕かれておるわけです。このことによって農家所得の向上や生産性の向上が阻まれているのです。現在農振法によって農用地区域が設定され、面的な規制はなされておりますが、地価に対するコントロールは現行制度では何もないわけですね。今後この農地価格についてどういう見通しを持っていらっしゃるのか。それで、今後このまま地価がぽんぽんぽんぽん上がっていくようなことであれば、せっかくこういうようなことを考えたってなかなか実現できませんし、それから官房長がおっしゃったように、話し合いで市町村長やあるいは農業委員の方々が入っていろいろあっせんに努力されても、この問題がきちっとならなければ、こんなものは放すよりも持っておった方がいいと。それもねらって、所有権移転はなかなかむずかしいから、せめて利用権の設定というところでこれをやろうという考えだと思うんですが、利用権の設定といっても、これは借り手の方にはまた問題があるように、貸し手の方も地価という問題があればこれはなかなか放さない、この問題によって。それから借り手の方も、やっぱり地価というものは借りるときの大きな要因をなしますから、容易に話し合いがつかない。中に入った市町村長さんや農業委員の皆さん方は大変苦労をなさると、こう私は考えておるわけですが、何とか地価はならないものですか。農林水産省としてはどう考えているんですか。最大の要因は地価である、しからば、この地価対策をどうするか、これは当然出てくる論議なんですが、これに対する局長のお考えをお聞きしておきたいと思います。
#33
○政府委員(杉山克己君) 農地の価格も、これはやはり一般の宅地等の地価の動向に影響を受けることは、これはやむを得ないと思います。ただ、一般の地価については、これは需給関係が、きわめて供給が限られているということで、従来上がってまいっていることは事実でございます。農業の世界では、そういう一般の需給関係とはできるだけ遮断していく。農業は農業本来の収益性の観点から農地の価格を決めるようにできるだけ持っていくべきであるというふうに考えております。
 もちろん、一般的な地価対策も必要でございますし、そのことについては農林水産省だけでできる問題でもございませんので、御承知のように土地対策に関する関係閣僚懇談会も設けられて、国土利用計画法の適確な運用を中心といたしまして、当面の土地対策の推進について、種々検討あるいは申し合わせがなされているところでございます。
 農林水産省といたしまして、できるだけ一般の地価動向の影響を受けないように、農地本来の地価のあり方を守っていくということの具体策としては、一つはやはり農振法による線引きということの厳格な運用であろうかと存じます。それからもう一つは、農地法による厳格な転用規制ということであろうかと思います。せっかく農地を何らかの他転の目的を持って入手いたしましても、それがほかの住宅用地等に転用できないということであれば、おのずとその間に秩序が保たれて地価抑制に役立ち得るものというふうに考えるわけでございます。現実に私ども、現在の農振法なり農地法の厳格、適正な運用が、農地については一般地価の影響をかなり遮断しているといいますか、防いでいるという面は大きいと思っておるわけでございます。今後とも一層その厳正な運用に努めてまいりたいと考えております。
#34
○川村清一君 局長の御答弁の骨子は、一般地価と農地価格とは遮断すると。遮断できればいいんですが、いや、それは農振法によって線引きをしましたから、市街化区域と農用地とは線引きされておりますが、しかしやっぱり工場の進出であるとかあるいは住宅を建てるとかといったようなことから相当転用されて、その転用されている土地の価格がべらぼうに高い。そうすると、その価格というものは農地の方にもこれはやはりつながってくるわけで、反映して農地の価格をつり上げておる、これが実態なんです。
 そこで、一般の地価と農地とを遮断すると。遮断するということをあなたおっしゃったけれども、遮断するといったって、これはなかなか容易なことではないと思うんですが、本当にできますか。どういう方法でやりますか。これ局長も、官房長も、おっしゃっていることは全くそのとおりのことをおっしゃっているんですわ。何もそれを否定することはできないのです。先ほども言いましたが、全く優等生の作文なんですよね。りっぱなことをおっしゃっているんですよ。ただ、問題は、そうおっしゃってもできないところに問題があるんであって、そのできないところをどうするかということをお聞きしているんですから、りっぱなことをずっとおっしゃらなくてもいいんです、私の聞いていることをひょっと言ってくださればいいわけですから。
   〔委員長退席、理事片山正英君着席〕
#35
○政府委員(杉山克己君) 確かに困難な事情はいろいろございます。考えているとおりには実行できないということはございますが、ただ、全く効果がないというわけではなくて、私やはり農振法による線引きを適正に行う、そのことによる開発規制の効果はそれなりにあると思いますし、それから農地法の転用規制、これもそれなりの効果は十分あるというふうに考えております。そういったことを通じて、困難な問題ではありますが、もちろん完全遮断というようなことはできませんが、できるだけ一般地価の高騰の影響を受けないようにしていくということで努力してまいる、このことが最善の道であるというふうに考えております。
#36
○川村清一君 とにかく、農振法によって規制されておる農用地区域内における農地を守るという、それを転用なんかさせないという、そういう転用制限措置といったようなことをやっぱり厳重にやってもらわなければならないと思います。
 で、この法律による対象農用地というのは非常に対象が今度拡大されましたね。しかし、何と言ったってやっぱり優良農用地を確保するということ、これが大事だと思うのです。この優良な農用地というものが高度成長期を通じてこれがずいぶん壊滅してしまったわけですね。あるいは工場の進出であるとか、道路であるとか、住宅用地であるとかいうようなことで、本当に優良な農用地が転用されていった。農業を振興する生産農家にとっては、やっぱり農地がりっぱであるということですよ。優良な農用地を確保するということ、ここにやっぱり大きな政策を向けていかなければならないと思うのです。農地転用については、農地法では一筆ごとに許可を要することになっています。それが今度は変わるわけでしょう、農地法では一筆ごとなんですが。農地法はやっぱり後退してくるわけですね。ですから、農用地区域というふうに今度はひとつ広がってくるわけですが、これに対してはやっぱり厳しい転用制限措置をすること、そういうようなことによって優良地の転用というものをできるだけ防止していかなければならないと私は考えておるわけですが、そこでお聞きしたいのは、優良地がほかの方に転用されないように厳重にこの制度というものを守って、そして優良地の保全を図ってもらいたいというのが私の考え方なんですが、これに対する御答弁をいただきたい。
#37
○政府委員(杉山克己君) 今回のは、利用増進法の問題もございますが、優良農用地の確保は、農地制度本来の基本的な使命であるというふうに考えております。やはり国土が狭くてこれだけ人口密度が高いわが国において将来の食糧の安定供給ということを考えます場合、優良農用地の確保を十分に図ってまいる必要があるというふうに考えることは当然でございます。
 そのために、まず、優良農地の農用地区域への編入ということをしっかりやることが第一であろうかと考えております。
   〔理事片山正英君退席、委員長着席〕
それから二番目には、農地法による転用規制の厳正な運用による農用地の壊廃の抑制ということ。それから三番目には、農振法による農用地区域内における開発行為の制限。それから四番目には、農地保有合理化法人の土地買い入れ等の機能を活用すること。それから五番目には、これは単に現在あるものということだけでなしに、今後とも優良な農用地を確保していくという意味で、土地改良長期計画に基づく農用地の開発の推進、そのほかにも項目としては挙げられるかもしれませんが、以上申し上げましたようなことが主要な項目として考えられるわけでございます。これらの措置を一層強力に推進して優良農用地の確保に努めてまいりたいと考えております。
 なお、農用地の転用規制について、一筆ごとの原則が変わるのかという御質問がございましたが、今回の農用地利用増進事業の中におきましても、転用ということを一般的に考えているわけではなく、農用地施設に農地を充てる場合、具体的には転用の問題も出てまいるわけでございますが、その場合も従来の一筆ごとに許可をするということの基本は変わっておりません。計画上これは一筆ごとに取り扱う、農地法本来と同じように厳正に取り扱っていくということでございます。
#38
○川村清一君 それではいまの御答弁ですね、私は農地法の一筆ごとのやつがこれは変わるんではないかというふうに危惧しておったんですが、それは変わらないということで、それで安心したわけですが、それは厳重に守ってもらいたい。
 それから、農水省の中に農地制度研究会というのがございますね。この農地制度研究会においていろいろ検討が進められてきた、それが今回の改正案に大きな影響を与えたと言われておりますが、その内容について、若干、ひとつ説明していただきたい。
#39
○政府委員(杉山克己君) 農地制度の検討につきましては、役所だけでなく、いま先生の言われましたように、農地制度研究会の御意見もいろいろ拝聴しているわけでございます。
 検討の経過、いろいろございますが、五十四年の十二月二十日に、「農地制度の検討について」というのが文章として出されております。この研究会の一応の取りまとめでございます。
 それらの内容を全部申し上げますと非常に詳しいものになりますが、それの第二項目のところに、「農地制度についての検討事項」というのがございます。検討事項の柱だけを申し上げますと、「農地の流動化及び有効利用の促進方策について」というのが大きな柱で、その中で、「小規模土地所有の下で経営耕地が分散している我が国農業構造の改善を進めるためには、一定地域の農地が集団的に利用されるようにするとともに、地域農業の担い手たる農業経営の育成を図ることが重要である。」というような指摘がまずなされております。「この場合、農地の流動化については、農作業の受委託・共同化の促進や所有権の移転と併せて、特に賃貸借に重点を置いて促進することが必要である。」ということが指摘されておるわけでございます。
 それから、小さな柱の二項目といたしまして、「賃貸借による農地の流動化を促進するためには、貸し手・借り手の双方が安心して貸借できるように、両者間に市町村その他の公的機関が関与することにより、貸し手農家に対し、あらかじめ定めた期間が終われば離作料要求なしに自動的に返還される保証を与える一方、借り手農家にとっては、当該農地については、その一定期間以上には借入れの保証はないものの、当該農地の借入れの更新あるいは他の農地の借入れ等による経営の安定が期待されるような仕組みが必要である」、そういう考え方を示しまして、小さな項目の三といたしまして、農用地利用増進事業のさらに一層の拡大推進ということが必要ではないかというようなことを意見として出しております。
 それから、大きな二の柱といたしまして、「農地の賃貸借に関する農地法の規制について」。まずその小柱の一といたしまして、「現行農地法は、農地の賃貸借に関し、賃借人の経営の安定を図る観点から小作料、賃貸借の終了等についての規制が行われているが、これらの農地法による賃貸借規制の緩和について、農地の流動化及び有効利用を促進する観点に立って検討する必要がある」。そして、「上記の観点から、次のような事項についての検討を行う。」ということで、「小作料に関する規制」「賃貸借の終了に関する規制」「小作地の所有制限について」というような各項目について検討を行うという意見を出しているわけでございます。
 ただいま申し上げましたことで御理解いただけますように、大きな柱の一の方の御意見の大部分が今回の農用地利用増進法の提案の内容に生かされておるわけでございますし、それから後者の大きな二の柱の内容の相当部分が農地法の改正案の提案の中に生かされているというような状況になっているわけでございます。
#40
○川村清一君 ただいまの御説明によって、農林水産省に設けられている農地制度研究会で検討されて、そしてまとめられた事項というものが今度の法案制定に当たって大きなウエートを占めておるということがわかったわけです。
 そこでお尋ねしますが、今回の農用地利用増進法案によりますれば、これの適用対象地域でありますが、これは市街化区域を除いてほとんどの地域に適用されると、これはわかりました。さらに賃貸借権だけではなく、いわゆる利用権だけではなくして所有権まで含む、さらに未墾地や混牧林地も対象になる、農業用施設用地への転用もできる。
 今日までの農振法による農用地利用増進事業においては、農地法のバイパスとして一般に認識されておったが、今回の法案のように拡大されてまいりますと、農地法との関係がどうなっていくのか。冒頭私が申し上げましたように、われわれは農地法と食管法というものが日本の農業を守り、農家の経営、生活を守る、これが日本農業の根幹であると、こういうような認識を持っておるわけです。したがって、農地法を改正する法律案の審議、採決に当たっては、社会党は従来ずっと反対を続けてきておるわけです。
 したがって、このように今回の法案の内容によって対象の区域というものが拡大されていくというと、農地法そのものがもう形骸化されてしまったんじゃないか、こういう懸念があるわけです。そこで、ここが重大なんであって、農地法の存在理由は何か、ここを明らかにしてもらいたい。これは重要な点ですからひとつはっきりお答えいただきたい。
#41
○政府委員(杉山克己君) 農地法の存在理由は何かということになりますと、いろいろな項目も挙げられますが、今回の三法の提案と関連して一番大きな基本は、一つはいわゆる自作農主義の考え方であろうかと思います。いま一つは、優良農用地の確保という観点からの開発、あるいは投機・投資目的での土地取得の防止ということであろうかと思います。
 その点から申し上げますと、まず第一の自作農主義の問題でございますが、現行の農地法の、「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認め」ているこの農地法の目的は、現在においても、今後においても私どもは望ましいことであると考えておりますし、変えることは毛頭必要ないというふうに考えておるわけでございます。今回はむしろ、いま先生がバイパスという表現でおっしゃられましたが、そういう一般的な自作農主義の考え方のもとに、規模拡大を図るために、新しい実態に即応した、付加的なといいますか、そういう考え方が加わってきたんだということでございまして、基本の考え方は変わっていない。しかも、実態的に見ましても、一般に借地農が広範に成立するというのではなくて、やはり自作農、自分の持っているたんぼや畑でもって耕作をするというのを基本にいたしまして、それをさらに借地によって積み重ねて規模拡大を図っていくということが実態であろうというふうに考えておるわけでございます。借地農一般を奨励して自作農主義を否定するというようなことは、法律的にもそうではございませんし、実態的にもそうでないというふうに考えております。
 いま一つは、投機・投資目的での土地取得の圧力防止ということでございます。農地法の検討に当たりましては、各方面からの従来からの御意見もございます。中には、農地法はすでに役割りを終えている、農地法の抜本的な改正、さらには廃止まで考えてもしかるべきではないかというようないろいろな御意見もあったわけでございますが、私どもはやはり今日の農業を取り巻く情勢からいたしますと、農地法の規制というものを外しますれば、やはり外部資本が大幅に進出して、優良農用地の確保は困難になるというふうに考えるわけでございます。そこで、依然として、耕作を目的としない者の農地の権利取得についてはこれを厳しく規制する、それから同時に、耕作者の権利を保護してその経営の安定を図るという農地法が現に果たしている役割り、これはきわめて大きいと考え、そのために一層運営に努力するというふうに考えているわけでございます。
 そういうことで、確かに今回の農用地利用増進法が大幅に拡充されて相当広範に普及するような形になっておりますが、私どもとしては、農地法との従来の関係は維持されておる、農地法本来を否定するものでは何らないというふうに考えております。
#42
○川村清一君 ただいまの局長の御答弁は私は満足しました。それを絶対後退させないように、そこが大事ですから、どう変わっていっても、やはり農地法のいわゆる精神、農地法のねらっているもの、これは守ってもらわなければ、農業はあくまでも耕作者の農業、農地は耕作者のためにある、いろんな農業政策は、農業をやっている耕作者のためにその農業政策が行われるんだというその基本線を忘れないでひとつやっていただきたいと思いますね。
 そこで、この農振法が行われてからまだ五年しかたっていないから実績はそうないわけですが、しかし、それでも年々、資料を見ると――いまここで数字を挙げることは時間がかかるからやめますが、やっぱりふえていっているわけですね。そこで、一概には言えないことであるが、ふえていっていることはふえているけれども、全農地の面積に比べるならば微々たるものなんですね。そこで、それをもっとうんと広げるためにこの法律案を出してこられたわけでございますけれども、この法律を制定することによってどのくらいふえるか。いまの農振法による流動よりもどのくらいふえていくかといったような見通しは持っていらっしゃるんですか、どうですか。
#43
○政府委員(杉山克己君) この事業の性格は、従来の農用地利用増進事業を発展させて、地域の実情に応じて、市町村が農業委員会、農協等の協力のもとに、地域全体として農地の流動化と有効利用を促進するというたてまえといいますか、仕組みになっているわけでございます。この考え方からいたしますと、何か目標を具体的に決めてそれを実現するために強力に指導していくということではございませんので、むしろ条件の整ったところでできるものからやっていくというような面があるわけでございます。そういう意味で、目標は立てておりませんが、ただ、じゃ見込みとしてどうなのかということになりますと、私ども、いま先生もおっしゃられましたように、従来の事業の実績を見ますというと、五年間で約二万四千ヘクタールの利用権の設定が行われております。特に最近後半になりまして、その伸び方が著しく大きいというような実情がございます。私どもはその傾向は今後とも続く、かなりな水準の農用地の利用権の設定というのは見られるのではないかと。もちろん全体の面積から比較いたしますとそんなに大きい数字ではございませんが、事柄の性格上、やはり、できるまた対象としてしかるべきだという性格のものを相手にといいますか、対象に行っている事業でありますから、それほど大々的にということは考えておりませんし、それからかなり時間がかかって逐次ふえていくというふうに思っているわけでございます。
 それから面積的にどうかということになりますと、これはやはり直接は兼業農家で、労働力事情、他に長時間安定した兼業の機会を得ているとか、それから主要な労働力が老齢化しているというようなことで、むしろみずからの力では農耕ができなくなってきているというような農家、そういった農家が一番対象として考えられるだろうと思います。その意味では、五十歳以上の男子の世帯主のところで後継ぎなし農家、まあこれに準ずるものも含めて考えますと、これは二百万戸、それからその経営耕地は百三十二万ヘクタールということになっております。これらの農家それからこれらの農地が対象全体としてとらえられ、そのうちの可能なものから逐次流動化が実現されていくというふうに考えているわけでございます。
#44
○川村清一君 いろいろ御説明がありましたけれども、私は端的に言えば、やっぱり土地を提供してくれる方々の信頼性、これを確保するということが一番私は重要ではないかと思うんですね。提供する方に喜んで提供していただけるような、いわゆる提供者の不安というもの、これを積極的に解消していくというのが最大ではないかと思うんですね。もちろんこの点を、中に入ってあっせんされる今度は農業委員だとか市町村長さんが一生懸命やるわけですけれども、農林水産省としてもいろいろと誠意を尽くして、そしてその提供される方々が何ら不安なく信頼性を持って喜んで提供していただけるような、そういう環境をつくっていくということが最大のことだと思うんです。ひとつそれに対する決意を述べていただきたいわけですね。具体的な方針があれば具体的な問題を述べていただきたいわけです。
 さらに、今回のこの利用権設定等促進事業について区域を拡大したことはさっき申し上げました。その区域の拡大のほかに重大なものは、先ほどの御答弁の中にも若干あったんですけれども、いわゆる貸し地、賃貸借、いわゆる利用権だけではなくして、所有権の転用まで加えるということですね。いままでの農振法には所有権の転用というものはなかった。今度は所有権の転用も加えたということは、これはどういうことなのか。これはやはり重要だと思うんですね。それで、今度この法律ができて所有権の転用の手続をする場合において、これは所有権の転用ですから、賃貸借とは違って相当慎重な手続が必要だと思うんです。農地法に比べてどうなのか、安易にこれをやられてはかなわぬと思うんですが、その辺に対する御見解をいただきたいと思います。
#45
○政府委員(杉山克己君) 前半の御質問、兼業農家が安心して貸せるようなことを仕組んでいかなければいけないではないか。まことに御指摘ごもっともで、そのとおりに考えております。そういうことを考えて、それが一番現実的に実現し得る方法は何かということで、私ども今回の農地三法を提案して、そういうことが実現できるようにしてまいりたいということを考えたわけでございます。今後ともその考え方にのっとり、この法律が御承認を得て成立をいたしました暁は、十分心して運用してまいりたいというふうに考えております。
 それから、今回の農用地利用増進事業におきまして、利用権のみならず所有権を対象に含めたことはどういう意味か、またそのことについてどう考えていくかというお尋ねでございますが、これにつきましては、従来の農地法との関係につきましては、私ども農地法を特段に緩めるとかいうようなことは考えておりません。農用地利用増進計画の内容におきましても、所有権の移転については農地法と同様の――全く同じということではなくて、法律上規定しているのはその主要項目についてでございますが、規制を課している、当然厳重な農地法の運用の一環として利用増進計画も定められるということに考えているわけでございます。運用の細部につきましては、市町村なり農業委員会にゆだねられる点がございますが、これらについては厳正な運用を図るよう十分指導してまいりたいというふうに考えております。
 それから、なぜ今回そういうことを考えるようになったのかということでございますが、一つは、これは政策の理念といいますか、考え方といたしまして、農地の流動化は本来なら所有権の移転を一番主体にすべきでございますが、それが現実地価等の問題からなかなか所有権移転は困難である。そのことから、従来の農用地利用増進事業の中で所有権の移転はうたっておらないわけでございますが、逆にこれは現に衆議院等でも御質問があったわけでございますが、もう農林水産省は所有権の移転ということについてはあきらめたのか、今後は賃貸借だけでいくというような考え方なのかという御指摘もございました。私ども、そうではない、やはり所有権の移転はできるところはこれはできるようにしてまいりたい、そしてそのための促進の対策もとってまいりたいということで、そういう姿勢を出すということもありまして所有権をひとつ対象に含めるというふうに考えたわけでございます。
 それから、実際問題といたしまして、地域としての全体の農地の有効利用を考えます場合、利用権だけでなく、所有権の問題もあわせてその移転等について検討をする必要もある。むしろ交換というようなことを通じて所有権の移転が相当程度行われることの方が実態的に望ましいというような場合もあるというふうに考えておるわけでございます。そういったことを市町村が介在して地域全体として有効に進めるということから、所有権も対象として今回取り上げるということにいたしたわけでございます。
#46
○川村清一君 この事業の推進に当たって、今度は借り手の方の耕作者なんですが、この耕作者が土地改良事業等の有益費を投下した場合、それが農業経営の安定的発展を保ち得るような方向で返還が行われないと、耕作者の農業に対する資本投下の減退になるわけですね。それはひいては農業の衰退を招くことは明らかでありますが、特に、現在水田利用再編対策を行っております。結局田畑の転換でありますが、一番大きな問題は、土地基盤整備を行う、この機会が多いわけでありますが、この有益費についてはどのようにお考えになっているのか。では法制的にこれはどういうふうになるのか。これは今後このような、ことにこの法案の事業を進めていく間に、まあ貸し手、借り手の間に紛争等が起きた場合に、これに対処してどうしていくのか。この点は大事な点ですから、これをひとつ明らかにしておいていただきたい。
#47
○政府委員(杉山克己君) 利用権の設定を受けた農用地について、借り手が投資をすることによってその農用地の価値が増加する場合、まあ土地改良事業などがその一番端的な場合でございますが、借り手は民法それから土地改良法の規定に基づいて貸し手に対して有益費の求償をなし得るということになっております。法律的には、ですから民法と土地改良法が根拠であるということになるわけでございます。有益費の求償につきましては、これは基本的には当事者間の話し合いで処理さるべき問題と考えますが、貸し手と借り手双方が安心して利用権の設定を行うためにも、それから土地改良事業を有効に推進するためにも、この問題が公正確実に処理されることが必要でございます。そこでこのため、利用権設定等促進事業の実施に当たりましては、農用地利用増進計画におきまして、利用権の条件として有益費に関する事項を定める、そして所有者と利用者の間で十分に協議して明確化しておくということにいたしております。そして、その償還額について両当事者間で協議が調わなかった場合、これは市町村または農業委員会がその処理に当たるということを定めるなどの指導をするということにいたしております。
 それから、実際の有益費の償還のやり方、ルール、これは各地域、それからどういう形で投資が行われているかというようなパターン、類型に応じまして、両当事者間の話し合い等を通じて形成されておりますし、今後一般的にそういうことが形成されてくるだろうというふうに考えておるわけでございます。現時点でこれを余り画一的に決めるということではなく、いま申し上げましたように、利用増進計画の内容において、これらについての指導的な規定を基本として定めるということに考えておるところでございます。
#48
○川村清一君 いろいろそれについて議論したいところがありますが、時間がありませんのでやめますが、これはやっぱりいろいろ土地改良なら土地改良の問題一つ考えてみても、むずかしい問題が法制的にもあるような気がするわけですがね。ですから、こういう点につきましては十分配慮されまして、紛争の処理、それがびしっとなっておらないと、先ほど申し上げましたような信頼性とか何とかを確保するということは非常にむずかしいわけですから、この点は十分配慮してもらいたいということを申し上げておきます。
 それから、いよいよ利用権が設定されるに当たりまして実施方針ができるわけですが、その利用権の設定に伴う借賃または所有権の移転の対価、これの算定の基準は一体どういうことになるのか。その実施方針を受けて農用地利用増進計画ができるわけですが、その利用権の設定に伴う借賃または所有権の移転の対価がここで明確に決まるわけですが、それから今度は支払いの方法、こういうものも明記することになっておりますが、借賃の算定基準はどのようにして決めるのか、それから標準小作料はどのような役割りを持つのか。
 そこで、これは衆議院で修正になりましたが、最初は物納というものを出してきたわけですね。で、物納は本体でなくなって金納が原則であって、そしてある条件によっては物納も認めるということになったわけでありますが、その場合の算定基準はどういうことになるのか。それから所有権移転の対価の算定基準については、農地の売買価格については何にも法的な規則がないわけですね。そういうような状態の中で、どのような基準でもって算定していくのか、この辺をひとつ明確にしていただきたい。
#49
○政府委員(杉山克己君) 所有権移転の場合の対価の方から先にお答え申し上げます。
 これは農業上の利用を目的とする近傍類似の土地の売買価格、そういったものに比べて適正な時価を基準として当該土地の生産力等を勘案して定められることというふうになるものと思いますが、ただ、先生もおっしゃられましたように、実際の取引価格について法的にこれを規制する根拠はございません。そこで、いま申し上げましたようなことを念頭においての市町村なり農業委員会の指導ということになろうかと思いますが、基本はやはり当事者の間での話し合いということを基礎にしてということになろうかと存じます。そういう考え方、法体系のもとで、一般的な地価問題等も念頭に置きながら、やはりこれを適正な農地価格に保つように指導していくということであろうかと存じます。
 それから、借り賃につきましては、これはいま先生がおっしゃられましたように、標準小作料との関係があるわけでございます。これは、標準小作料という制度がそれなりに安定して機能を発揮しております。当然農用地利用増進計画の中におきましても、小作料の問題につきましてはその標準小作料を基準として、あとは当該農地の生産条件等を勘案して定められるということになろうかと考えております。
 それから、農地法の改正の関係で、小作料が金納でなく物納になる場合、その標準小作料の関係はどうなるのかというお尋ねでございますが、これは金納であれ物納であれ、標準小作料の機能はそれなりに働くというふうに考えております。物納の場合は、やはりこれを一遍金銭に換算し直す、そして標準小作料に比べてどうかということで考えられるべきだというふうに思うわけでございます。その換算の仕方について、どういう米を――まあ米の場合でございますが、どのような評価をするかというようなことは、これは農産物検査法の検査を受けた規格を基準にして定めるというようなことが考えられるわけでございます。いずれにいたしましても、物納の場合でも標準小作料の機能は十分働くと、働かせるということで考えております。
#50
○川村清一君 いろいろまだまだ問題がありますけれども、あとは栗原委員がまた質問されることになっておりますので栗原委員の方にお譲りしまして、最後に一、二聞いて終わりたいと思いますが、とにもかくにも初めて今度は農用地利用増進法というものが制定されるわけでございます。従来農振法でやってきたことを、これを改めてさらに積極的に進めて、そして農用地の流動を図り、中核農家に集積をいたしまして、そしてこの「規模の拡大」、これは衆議院で修正されて「改善」ということになりましたが、いずれにしても経営の改善、そして生産性の高い農業を志向していくと、こういうことなんですが、先ほど大臣がいらっしゃるときに申し上げましたように、この法律を制定することによってその流動化というものが目立って行われるのかどうか、それに対する見通しはどうかと。それから、いま農政審から出される六十五年度を目標年次とする一つのビジョン、こういうものとの関連はどうかということをお尋ねいたしましても、具体的には御答弁がないわけで、ただ、こういう決意を持っておるという決意だけが抽象的に述べられておるわけでございます。
 そこで、私はこの法律が制定されたならば、この法律のもとに実施されていった事項というものがこれだけの成果が上がったと、そして来年はさらにこうやると。その年が終わったら、ことしはこれだけの成果が上がったといったようなことを、毎年農業基本法に基づいて国会に提出される農業白書の中にこれはやはり書いて公表することが必要ではないか、こう思うわけです。
 それから、第二点として、先ほど有益費の問題について申し上げましたが、これはまたやはりいろいろの基盤整備の事業をやらなければ、借りた方だって生産性の高い農業はやれないわけですから、相当有益費の投下があるわけです。それをやっぱり耕作者は回収しなければならない。この問題について、この貸し手、借り手の中に適切な指導をしておかなければこれは問題にならない。せっかく意図したような農業振興にはつながらないと私は考えますので、この点はしっかりよくやってもらいたいということを重ねて希望するわけです。
 それから、農用地利用増進事業というものがある。利用促進のほかに利用増進事業がありますね。それで、このことについては地域農業の振興、そのために地域農業の組織化が進んでいくと思うんですが、これに対する国の財政、税制上の措置がきちんとなされなければなかなかこれも思うように進んでいかない。それから、農地を取得するための資金融通いわゆる金融の問題、こういうものをきちっとしていただかなければ、つまり融通が、金融が円滑に行われ、そして充実されるようなそういう努力をしてもらわなければいかぬと思うのですが、こういう点に対する御見解。
 そして、これも大臣がいらっしゃるとき質問申し上げましたが、現在の日本の経済の中において、この農外雇用条件の整備、これは非常に大事なことなんです。二種兼業者は農外の収入が多い。農業収入よりも農外収入が多い。ですから、実際に農業をなさっていらっしゃる方々よりもむしろ生活がよろしい。だから、そういう方々から土地をひとつ提供してもらう、利用権の設定、こういうことを考えていらっしゃるんですが、しかし、現下の経済状況というものはそれと相反する方に進んでいるのではないかと思うわけです。したがって、農外雇用条件の整備、それから農村地域工業導入促進法に基づく工業導入、こういったようなことにやはり相当努力しなければ、意図したものの実行というものはなかなかできないと私は考える。こういうことにひとつ努力してもらいたい、こういうことであります。
 それから、農業経営の改善に占める農業基盤整備事業、これは非常に重要なわけですね。先ほど優良地の問題などについても申し上げましたが、それからいまの水田再編の政策のいわゆる遂行といったような点から考えてみましても、土地改良であるとか、その他基盤整備の問題、これが大きな問題であり、大きな事業になるわけであります。
 そこで、私が特に強調したいことは、農業基盤の整備でも、非常に充実しておるところと、至ってまだ進んでおらない地域があるわけですね。その進んでおらない地域、この地域に対して特に力を入れてやってもらわなければならないと思うわけです。非常に農地の流動が行われておるりっぱな農村、これにつきましては、衆議院においても参議院においても、実地調査ということで、そういう点がうまくいっている農村は行って調査しているわけです。こういう地域というのは、もう早くからこういうふうに進んできたことと、そして市町村長さんあたりの努力等もあり、また農民一体になってそういうことを進めてきておりますので、非常に基盤整備とかというものが進んでおるんですね。ですから、わりと利用権の設定もよく進んでおるし、流動化も進んでおる。しかし、まだそれが、基盤整備なんかが余り進んでおらない地域はなかなかこれがむずかしい。
 そこで、この事業実施に当たって特に局長に私申し上げておきたいことは、いろいろそれを促進するための特別な予算がありますね。ことし百四十六億ほどの予算がありますね。こういったような予算の費用あるいは基盤整備事業、公共事業ですが、こういったようなものの配賦は、あなた方の言うことをよく聞いてどんどんどんどん進めていっている、こういういわゆる優良農村と思われるようなところに傾斜的にどんどんどんどんそれを配分して、なかなかその事業が進まない、利用権の設定の事業も余り進まないといったような地域に対してはなかなかそういう予算を配賦しない。こっちの方にはあめをやる、こっちの方にはむちをやると。そしてあめとむちでの操作によって行政措置によってあなた方の意図するものをどんどんどんどん進めていくといったような行政措置はぜひやめてもらいたい。むしろ、おくれた方を早くその方に向けていくような、そういう行政措置、そういう温かい政策というものを特にやってもらいたいということを強く要望して、時間になりましたから、これで私の質問を終わります。答弁だけやってください。
#51
○政府委員(杉山克己君) 非常にたくさん御意見を承ったわけでございますが、一つ一つ御答弁申し上げておりますと長くなりますので、ごくかいつまんで申し上げたいと思います。
 まず、農用地利用増進事業に基づく農地流動化の実績について、これを国会に白書で報告せよとの御意見、これは私どもそのようにしたいと考えております。
 それから、有益費の回収については、私ども、優良農用地を確保するという観点からも、必要な農業投資は行っていくべきである、そのためにも有益費の取り扱いについては適正に行われるよう十分指導してまいりたいと考えております。
 そのほか、地域農業の組織化、この育成のための助成について考えるべきである、あるいは金融についても考えるべきである、さらには農外雇用対策についても十分な措置を講ずべきである、最後にまた基盤整備、特に開発といいますか、整備のおくれている地域に対して配慮すべきであるというような御意見、いずれもごもっともでございます。私ども、これらはいずれも従来からも心がけてまいったところでございますが、今後ともさらに一層御意見も念頭に置きまして努力してまいりたいというふうに考えます。
#52
○委員長(青井政美君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分再開することとし、休憩いたします。
   午後零時七分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十五分開会
#53
○委員長(青井政美君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、農地法の一部を改正する法律案、農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案及び農用地利用増進法案、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#54
○栗原俊夫君 農地三法についての最後の質問者になるわけでございますが、時間の制約もありますので、要点のみかいつまみながら質疑を続けさしていただきます。
 今回の三法は、農用地利用増進法、これが中心で論議が進められておるわけでございますが、その態様は、一方では、第二種兼業というような方々がふえてどうも農地の効率が一〇〇%に上がっていない、一方には、いま少しく規模を拡大して本格的な営農をやりたいという方々がおる、これをどう組み合わせて持っていこうかというところに中心があると思うのですが、そこでお尋ねしますが、第二種兼業といってもすべての耕地に草を生やしておるばかりではなく、第二種とはいいながらまじめにやっておる農家の方もおる、こういうことを認めておるようでありますが、こういう法律ができて、それではひとつ農地を貸しましょう、借りましょう――いろいろ質問がありました。なかなか具体的な説明は今日までないわけなのですが、しかし、これは決して、これだけの恒久立法をつくってそして大事業をやろうというのですから、農林省の官僚の遊戯などであるはずはないと思うのです。したがって、この法律ができれば、具体的な数字は出ぬけれども、おおむねそれなら貸そうというのがどのくらい見込まれるのか、貸してくれるなら借りて規模拡大してしっかり営農を進めていこうという希望は大体どのくらいあるのか、こういうことについて全くめくらでやっておるとは思いません。暗やみで鉄砲撃てば鳥がいるはずだから何羽かは落ちるだろうなんていう、そんなことじゃないと思うのです。ある程度よりどころがあるのだろうと思うけれども、そうした見通しについてひとつ御説明を願いたいと思います。
#55
○国務大臣(武藤嘉文君) 私ども、どうも何かやみの中で鉄砲撃ったら少しは当たるというような考えもないのでございますけれども、そうかといって、具体的に大体この程度という目標も実は正直持っていないわけでございます。ただ、たとえば五十歳以上の方で後継者のない農家という方が約二百万戸私どもの統計ではあらわれておるわけでございまして、たとえばそういう二百万戸の農地がたしか百三十二万ヘクタールあるわけでございます。こういうものが一つのやはり、何といいますか、鉄砲でねらうところになると申しましょうか、やはりそういうようなところが、ある程度資産化しても後継者がいないために貸してもいいと、こういうお気持ちを持っていただける一番可能性の強いところではなかろうかと、こういう感じは持っておるわけでございますけれども、まだいずれにいたしましても、幾らにするのだという目標はないわけで、これはもう農家の方あるいは農業団体などが自主的にお考えをいただくべきことでございまして、何回も繰り返して恐縮でございますけれども、施設利用型と比べますと、土地利用型農業の場合には大変生産性が低いわけでございまして、そういう点で規模の拡大を図ることがやはり今後農家のためにも私はなるんじゃないか、こう考えておるわけでございまして、そういう点で、意欲のある方ができるだけそういうところとお話し合いになって、より多くの農地が流動するということが望ましいと思っておるわけでございます。
#56
○栗原俊夫君 いま貸し方の方だけの説明があったんですが、借り方の方についても少しは見当があるんだろうと思います。ここ数年来、専業農家から一兼に落ち込むというのもかなりぱらぱら見えるんですが、統計的には専業農家はふえているんですか、減っているんですか。減っているとすればどんな調子に減っているんですか。
#57
○政府委員(杉山克己君) 全農家のうち、これは裏返しの数字になりますが、兼業農家率を見てみますというと、たとえば古いところから申し上げますと、三十五年六五・七、したがってその裏三四・三が専業農家ということになるわけでございます。これが四十年になるというと、兼業農家率七八・五、四十五年が八四・四、五十年が八七・六、そういうように兼業農家率は高まり、逆に専業農家率はその裏返しの数字として下がってまいっているわけでございます。最近時点五十四年になりますというと、兼業農家率はほぼ五十年当時と横ばいで八七・五、したがって、その裏返しの専業農家率は一二・五と、こんなような水準になっているわけでございます。
#58
○栗原俊夫君 だから聞きたくなるんですよ。専業農家がだんだん専業からおりていくという傾向の中で、貸し手があれば借りて本格的に農業にいそしもうというのがどのくらい見込めるのか、見込んでおるのか、専業者が落ちていっているさなかですから、ぼちぼちでも専業者がふえていくと、こういうことで農業に対しての熱意というものが上向傾向にあるというなら、貸し手が見つかればぐっと食いついてくるぞ、こういう説明はきわめて説得力があるんですよ。しかし、専業農家がぱらぱらと一兼に落ちていく、そういう中で、貸し手があったら、そうか、それじゃ一丁借りて大いにやろうと、こういう形になるのかどうか、この点についてひとつまず構造改善局長が説明し、それに対する大臣の認識をお伺いしましょう。
#59
○政府委員(杉山克己君) 農地の借り手はどういう階層かということになりますと、専業農家の中にかなり多いというふうには考えられますが、私どもむしろ中核農家という考え方で対象をつかまえております。これは六十歳未満で年間百五十日以上就労する農家ということになるわけでございますが、そういういわゆる中核農家は、専業農家に限らず、これは兼業、一種兼、二種兼農家にもある程度おるわけでございます。要は、しっかりした労働力を持って、労働意欲を持って農業経営にいそしむというところが対象になるかと考えておるわけでございます。専業農家とややずれる把握の仕方でございますが、そういったところが受け手になるのではなかろうか。
 じゃそういった受け手は全体の数としてはどうかということでございますが、これも絶対数としては逐次減ってまいっておりまして、最近では五十四年九十九万一千戸というようなことになっております。百万を切るという絶対数でございます。ただ、数字としてはいままでも減っておりますし、今後も減ることになるとは思いますが、こういった農家は経営規模は拡大しておる。そして経営の規模だけでなしに、全体としての農業生産なり、それから農地の保有という状況において占めるシェアというのは、これは拡大してまいっておるわけでございます。したがいまして、私どもそういう中核農家の数がふえなければ流動化の受け手が見出せない、流動化が進まないというふうには考えておりませんで、規模拡大ということを念頭に置けば、むしろ数はある程度減りながら流動化の実績は今後上がっていくというふうに考えているところでございます。
#60
○国務大臣(武藤嘉文君) 問題は、いま中核農家という局長がお答えをいたしましたが、たとえば中核農家の農業生産におけるシェアを調べてみますと、たとえば養豚とか養鶏とか、これはたしか九割ぐらいいっているわけでございます。あるいは施設野菜にいたしましても約九割ぐらい。ところが稲作になりますと約三割というような形になっておるわけでございまして、やはりそういう点からいくと、中核農家は相当収益が上がるというか、少なくとも粗利益があるということになりますと相当やはり農業をやっていただけるんではなかろうか。稲作がなぜ三割かというのは、やろうにもやる土地がないということがやはり大きな原因ではなかろうかと私どもは分析をいたしておるわけでございます。そういう点において、中核農家が、農地がそこへ集積化していくならば、そういう稲作なども含めてもっと思い切ってやっていただけるんではなかろうか、こういう判断でいるわけでございます。
#61
○栗原俊夫君 中核農家という言葉を前面に押し出しているわけですが、農基法をつくったときに自立経営の農家を百万戸つくるというようなことで、これはまあみごとに失敗しましたね。その後農振法でもどうも余りうまくいかない。なぜうまくいかないかということについてはっきりと論議し、まあこうだったからうまくいかなかった、それじゃこうしようと、こういうことが出てしかるべきだと思うんですが、この点はどうなんですか。
#62
○国務大臣(武藤嘉文君) これはやはり私は率直に言いまして、日本の農業基本法ができて以来、非常に農地の規模の拡大も図っていこうという考え方であったと思うのでございます。ところが、そのときには、まだどちらかと言えば貸し借り上りは所有権の移転の方が私は中心であったのじゃないかと思うのでございますが、昭和三十六年の農業基本法制定、三十七年農地法の改正、それ以降において、日本の経済というものが非常な高度経済成長を遂げた、これが結果的に地価の上昇につながった、その地価の上昇が農地の地価までもどうも上げてしまった、それがどうも農地を資産として保有したいという気持ちが強くなったんではなかろうか。また雇用関係におきましても、自分の農地は持っておってなるべく収入の多い他の職場へ転換する農民の方が多かった。こういうことが私はどうも必ずしもうまくいかなかった大きな原因じゃなかろうか、こう判断いたしております。
#63
○栗原俊夫君 農基法時代の自立農家がうまくいかなかったのは農基法が少しく障害になったという説明も一応納得がいくんですが、農振法によって農地法の十九条の適用を除外してもなおかついかなかったということは、まあ地価の問題等もありますけれども、率直に言いますが、もっと所得の多い方へと流れたと言うけれど、いま一つ言ってもらいたいのは、確かにそうなんだけれども、農業では食えないから動いたんだと、こう言えませんか。実態そうなんですよ。もっといい方へ移ったということもそれは確かにそうなんだけれども、農業では食えない、このことが結局一兼、二兼へと落ち込んでいく最大の原因だったと、こう思うんですけれども、この辺の認識はどうですか。
#64
○国務大臣(武藤嘉文君) やはり食えないというのが、これはいろいろ考え方があるわけでございまして、私は、日本の農業が全く生活ができないというような低価格政策では必ずしもないと思うのでございますけれども、これは相対的な問題でございまして、いわゆる農業基本法では、他の産業と比較して所得が落ちないようにしなきゃいけないということがうたわれておるわけでございますが、そういう点においては、相対的には確かに私は必ずしも農業生産による所得が多いとは言えないと思います。しかし、その食べられる、食べられないというのは、これはまだ生活水準の問題にも絡んでまいりますので、私はそういう点からいけば、農業も含めて全体に生活水準が上がってきた。しかし、どうも農業以外の方がまだ生活水準が上がっちゃった、こういうことではなかろうかという感じがいたしておるわけでございます。
#65
○栗原俊夫君 確かに所得問題は相対的な問題ですから、食えぬといって翌日餓死するわけでも何でもないことは事実ですけれども、少なくとも農業者がせがれに、おまえ後を継げと胸を張って言えないことは事実なんだな、これは。それが後継者難につながると、こういうことだと思うんです。だからそういうことを、とにかくこうした土地利用増進の法律をつくって農業をこれから進めようと、こういうんですが、その点をしっかり構えてもらわぬというと、これまた失敗の歴史を繰り返す、こういうことになろうかと思うので、この点はしっかりと頭にとめておいてもらいたいと思うんです。
 そこで問題は、中核農家を中心にして耕地面積の集積によって大いに農業を発展させようと、こういうんですが、農業の営農のあり方の問題にこれは関連してくるわけですけれども、いわゆる中核農家といっても、どういうものを中核農家と言うか、私には実はぴんとわからぬのですが、身分関係で農家の子弟は必ず農家を継ぐというようなこともございませんし、まあまあ、率直に言うと、中核農家らしいかなり所得のあるところでは、息子を遊学させて他に出そうという傾向もかなり強いことは現実に私は見ております。したがって、今後どういう形で日本の農業というものの経営をやっていくのか。言うならば、中核農家というのは家族営農、こういうことになろうと思うんです。生産法人という形になれば、これは集団でやっていくという形になるんですが、五年、十年、またさらに先を展望して、日本の農業のあり方、中核農家だと思っておったら、現在の一生懸命農業をやるお二人の後継ぎが、物理的に子供がいない場合もあるだろうし、あっても後を継がない場合もある。大変流動的な形なんで、日本の農業の営農のあり方というものについて、ひとつ、これも農政審なんということでなしに、いま少しく農水省として、ある程度の、こういうことで行きたいんだと、行くんだというようなことがありましたら、ひとつ説明をしてもらいたい、このように思います。
#66
○国務大臣(武藤嘉文君) 端的に申し上げまして、やはり私どもは農業生産というものをより拡大をしていく、しかし、その拡大をしていくのは、需要のあるものをやはりつくっていかなきゃいけないんじゃなかろうかという考え方と、もう一つは、適地適産と申しますか、みんなが同じものをつくっちゃうのじゃなくて、ある程度需給に見合ったものをその土地に適したところでつくっていただくという、この二つの考え方をうまくかみ合わせていかなきゃいけないというのが全般的な私は営農の考え方であろうと思います。
 それから、個々の営農のあり方といたしましては、中核農家という言葉をいま私ども使っておりますけれども、いずれにしても、そういう形である程度規模の大きい農業と申しますか、相当粗生産額の多い農家と申しますか、こういうものも育てていかなきゃならぬことは当然だと思っておりますが、あわせて、しかしある程度規模が小さくても、どうしても農業をやりたいという方も相当いらっしゃるわけでございますから、そういう方々の場合は、できるだけ協業化といいますか、共同化と申しますか、そんなような考え方で地域ぐるみで農業生産の組織化を図っていただく、こういうようないろいろの形で営農というものを考えていくべきではないかと、こう思っておるわけでございます。
#67
○栗原俊夫君 そこで、まあまあ中核農家も一生懸命に農にいそしむと。そこで問題は、それでは中核農家はどのくらいの耕地面積を適当と考えるか、こういうことであります。これを審議を通じていろいろと説明は聞いておりますよ。したがって、具体的な数字が幾らでいいとかというようなことはなかなか、地域によって、またいろいろ耕作する品種によって変わることはわかりますけれども、基本的にはこういうものだと。たとえて言えば、具体的に農に従事する従事労働力の範囲内であるとか、こういうような一つの規範といいますか、そういうものについて何か考えがありましたら説明を願いたいと思います。
#68
○国務大臣(武藤嘉文君) 正直、農政審でやっていただいていることがそういうようなことでございますので、農政審でと申し上げますとまたおしかりをいただきますので、農政審でやっていただいていることはやっていただいているものとして、私どもの、だから農政審でまだどういう議論になるかは別といたしまして、われわれが農政審にいろいろ申し上げておるその基本的な考え方ということでお許しをいただきまして御答弁をさせていただきますけれども、私どもとしては、相当、先ほどから申し上げておりますように、施設型農業についてはすでに中核農家というものはもう相当の域に達しておると、こう思っておるわけでございますが、土地利用型についてはまだまだ非常に生産性も低いし、また生産量も少ない。そこで、どの程度まで持っていきたいかということでございますが、もちろんいま御指摘ございましたように、作物をどういうものを扱うかということでも違ってまいります、あるいは地域によって地域の事情がいろいろ違いますから一概には申せませんけれども、できるだけ土地の利用は効率的にやっていただくということにいたしまして、それを前提にした場合には、内地の場合には三ないし五ヘクタールぐらいの規模になっていただくと、どうにか収益も上がってくるし、農業として農業に十分希望を持ってやっていただけるようになるんではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
#69
○栗原俊夫君 耕地面積のことについていま質問しているわけですが、具体的な数字というのは、先ほども言いましたとおり、なかなかむずかしいので、なぜこういうことを言うかというと、たとえば夫婦なら夫婦でもって中核農家を形成しておると。どんどん耕地を集積して、自分たちでは耕し切れぬ、労働力を購入して経営しなきゃだめだというところまで規模拡大という枠の中に認めようとするのか。この辺をはっきりしてもらいたいから特に質問をしているんです。つまり、きざな言葉で言えば、資本主義的な経営形態にまで持っていく耕地集積を許すのかどうかと、こういうことを聞いておるわけです。
#70
○政府委員(杉山克己君) 今後とも日本の農業経営は家族経営が中核といいますか、基本になるということは私変わらないと思います。ただ、今日のように共同して相当規模の経営をやっていきたいというような人たちもある程度おるわけでございますし、現に後継者等の中にはそういったことを強く言われる向きもあるわけでございます。そういうことを考えますと、一般的には、先生おっしゃられるように、夫婦の家族労働力を中核として考えました場合、おおむね、地域差あるいは作物差等がございますが、三ないし五ヘクタールということは言えますが、共同化してあるいは協業化して経営をやっていく場合には、これは雇用労働力を一概に否定するわけでも、ございませんし、相当程度の規模の農業経営も営まれ得ると思うわけでございます。じゃ、そういう経営が一般化するかと言えば、従来の農業生産法人の実績を見ましても、数は三千そこそこで頭打ちの状況となっておりますし、なかなか日本人の意識の中には共同化になじみがたいという面もございますから、そういう道をふさがない、そういう協業化、共同化して規模拡大を図る道も残しながら規模の問題は考えていくということではなかろうかと存じております。
#71
○栗原俊夫君 いま、家族経営の場合のほかに共同してやる、こういうことですが、基本的には要するにお互い営農に従事しておる人たちの常識的に耕し得る、営農し得る範囲、こう理解したいのです。拡大した方がいいということにかまけて、法人なら法人で、常時従事する人たちではとてもだめなのでいわゆる農業労働者を相当入れて経営せざるを得ないだけの面積になってしまったとか、あるいは家族経営という形で出発をしたが、銭があるからあるいは貸してくれたからということで面積を拡大して、いわゆる労働力を常用する中でやらなければならぬところまで範囲を拡大してもいいという姿勢で事業をやるのか。そうではなくて、やはり農業に従事する者、これが営農の主体である、そして余り踏み出しはせぬ、こういうたてまえなのか。この辺の姿勢について御説明願います。
#72
○政府委員(杉山克己君) 御質問の趣旨に必ずしも沿わないかもしれませんが、私どもの実態の認識としては、先生おっしゃられるように、基本はやはり家族経営であるというふうに考えております。ただ、経営形態につきまして、雇用労働力をある程度使って農業経営を営む者、これを抑制したり否定する必要はないのではないかというふうに考えますし、すでに四十五年の農地法改正で、農地の保有の上限面積制限を家族労働力の限定でもって画すというようなことはやめておるわけでございます。そして、こういう経営がほかの農業経営一般を圧迫するような事情にもないと思いますので、私ども基本には先生のおっしゃられたようなことを考えておりますが、雇用労働力を使うものは一切だめだというような、そういった抑制をする方向、方針はとっておらないところでございます。
#73
○栗原俊夫君 私がしつこくこういうことを言うのは、後からもちょっと聞きたいのですが、たとえば畜産をやるのにまさに輸入飼料をすべて使い、畜舎だけ使って莫大な資本経営をやる、こういうことがいま行われております。これが農業であるかどうかについては、私は工場だと思うのですけれども、そういうような形にいわゆる本来的な農業が移っていくのではないか、そして資本と本格的な競争を許すということになればこれは勝負は初めから明らかで、資本の方が勝つに決まっているのですから、そんなことになっては大変だ、そこに一つのやはり歯どめというものが必要ではないか、このように考えるわけです。だから、何町歩でなくてはいかぬとかそういうことではなくて、基本的には自家労力をもって耕作できる範囲が一応の拡大の目安である。それは時期的にちょっと手伝いを頼んでやるなどということがいかぬというわけじゃありませんよ。基本的に、購入労働専門でいわゆる企業経営という形に農業がなってしまっては大変だという心配からこういうことをくどく言っておるので、その辺、後から私の方でも修正的な考え方を提出しますが、ただ単にだめだと言うのではなくて、省令等で一応考えられる自家労働の範囲、こういうことなどを考えて歯どめにしたらどうか、こんなぐあいに考えておるのですが、御所見はいかがでしょう。
#74
○国務大臣(武藤嘉文君) 私どもも、たとえば養豚であるとか養鶏であるとかいうものにおきまして、いわゆる飼料メーカーあたりが、あるいはもっと言えば商社あたりが、相当養鶏なり養豚で資本を投下してやっておる姿も決して否定するものではございません。そういう姿というのは望ましいものであるかどうかと言えば、私は決して望ましいものであるとは思いません。やはり規模の拡大は必要であるけれども、農外資本によって農業が押さえられるというようなことは極力抑えていくべきであるという考え方に立っておるわけでございまして、できるだけそういう点は今後、特にこれはもう耕地面積の拡大ということは農業の基本的な問題でもございますので、その点については十分意を用いてやっていかなければならない、こう考えております。
#75
○栗原俊夫君 少しく禅問答みたいな質問になりますが、農林大臣は農業とは何であると心得ておりますか。
#76
○国務大臣(武藤嘉文君) 農業というものはその国の国民の食糧を極力安定して確保して供給をするという役割りを持つと同時に、農用地という非常に広い面積を持っているわけでございますから、国土を保全するという役目も持っておると思いますし、また、農業というものは昔から国のもとと言われておるのは、国の健全な社会を維持するという役目も私は大いに持っておるのではないか、こういうふうに判断をいたしております。
#77
○栗原俊夫君 農業についての認識が述べられたわけですが、それでは農民、農業者はどういうものであるという認識ですか。
#78
○国務大臣(武藤嘉文君) 農業者というのは、私は農をすることによってなりわい、生計を立てておるのが農業者である、こういうふうに考えております。
#79
○栗原俊夫君 畑をつくるから農業者でなくて、農を業として生活をする、これが基本的には農業者である、こういう見解でございます。
 そこで、近ごろ農業者の中に、統計的に一種兼業、二種兼業というようなものが分類されてきましたが、一種兼業はどういう認識ですか。二種兼業はどういう認識ですか。まあ扱いですね。
#80
○国務大臣(武藤嘉文君) 一種兼業とか二種兼業というのはこれは時代の一つの流れの中で出てきたものでございまして、私はどうも、これから勉強して世界の国々の農業の実態を見てみたいと思っておるのでございますけれども、先ほども申し上げましたが、昔のようにある程度生活水準がそんなに変わらない時代はよかったと思うのでございますけれども、このごろはお互いに生活水準も変わってまいりますし、そういう中でお互い自分の生活は少しでも高めていきたいという気持ちがあるわけでございまして、それが農業、いわゆる先ほどの農だけでなかなか生計を立てていくということがうまくいかない点もございまして、二種兼なり一種兼というものが私はふえてきたのではなかろうかと。そういうものはそう私は望ましいことではない。一種兼なり二種兼というものがふえるということが私は農業政策として望ましいとは考えていないわけでございまして、だから、それはどういう見解かと。これは結果的に出てきたものでございますので、なるべくならば私はそういうものはなくて、農業はやはり農業専門の方々がおやりになるのが一番いいのではないかと思っております。
#81
○栗原俊夫君 大臣の衆議院本会議の方へ出かける時間が近づいてきましたから、最後に詰めのような質問をしますが、先ほど川村理事からもお尋ねしたのですが、先般、衆参両院で珍しい食糧自給力の向上についての決議がなされました。これをどのように受けとめておられますか。
#82
○国務大臣(武藤嘉文君) この間はアメリカのソ連に対する穀物輸出停止ということがございましたし、またFAOの二〇〇〇年の長期見通しが非公式に報道されておるわけでございますが、そういう中においては、やはりいまより五割増産をしなければ二〇〇〇年のときの二十一世紀初頭における農産物の需給はなかなか保てない、こういう見通しも出ておるわけでございますし、私はそういう点を踏まえれば、大変時宜に適したものであり、私どもとしては今後極力日本の農業によって日本の国民の食糧の自給力を高めていかなければならない、こう受けとめておるわけでございます。
#83
○栗原俊夫君 新聞の報道をするところによると、あの決議を受けて、大臣を中心に農水省ではいろいろと食糧の海外依存が危機にさらされる場合を中心に食糧需給の見直しを始めておる、こういうように伝えられておりますが、これは私自身は、食糧は軍事防衛に先立つやはり国の防衛の重要課題であると、このように思うわけでありますけれども、アメリカから大変日本の国防力の増強を要請され、中期何やらの一年繰り上げとかいうような話の中で、新聞報道では海上防備力の増強、ここへ死力を尽くすんだというようなことが言われておるようですが、やはり何か万が一には海上の輸送が絶たれる危険がある、こういうことが考えられると思うのです。そういうことを、言には出さぬけれどもやはりお互い与野党とも皮膚で感じてああいう食糧需給の決議になったんだと思うんですけれども。
 そこで、問題は自給率を上げるということなんですが、どういう形で自給率を上げようと。米は余っている、生産調整、減反だと、こういう中で自給率を上げると言うんですが、どういう形で自給率を上げようとなさっておられるのか。この増進法でこれで自給率が上がるんだと、こうつなぐのも少しく無理があるので、また別途の施策を考えておられるだろうと思うのですが、ありましたらひとつ御説明願いたいと思います。
#84
○国務大臣(武藤嘉文君) 私どもいろいろといまケースを想定いたしまして、これから事務的にも詰めさせていただき、そして農政審議会にもいろいろ議論をしていただくということで進めていきたいと思っておるわけでございますが、たとえば自給率の向上という点におきましては、現在の輸入しておりますものが半分になった場合、あるいは三分の二は一応確保できるとした場合、そういうので試算だけはいたしたわけでございます。その試算もまた、耕地面積を現状程度と見るか、あるいはもう少し耕地面積を大きくして六百十万ヘクタールぐらいと見るかというケースと、二つに分けておるわけでございます。これによりまして、たとえば耕地面積を現状程度と見た場合にはカロリーがある程度落ちてくると。たしか昭和三十五年か七年だったと思いますけれども、そのときのカロリーに落ちてきて二千三百五十カロリー程度と。それから六百十万ヘクタールまで伸ばそうというのは、カロリーを大体二千四百五十カロリーくらい――これは四十五年水準でございますが、そのくらいまでは、いまが二千五百カロリーでございますから、大体いまとそう変わらないカロリーを維持しようという考え方でございます。
 そしてそれぞれにおきまして、たとえば米でありますれば、米の面積は昭和五十二年と同じ程度の面積を稲作においては確保していきたいという考え方を持っております。ですから、生産調整以前のところへやっぱり米の生産は持っていきたいという考え方でございます。小麦につきましても、例の私どもが最初農政審議会に御提示いたしました第一次試算では、小麦については三十五万ヘクタールぐらいの面積で考えておりますということを申し上げたわけでございますが、これが大体百万以上のやっぱり面積で小麦はつくっていただかなきゃいけないだろう。それから飼料作物につきましては、これはなかなかむずかしいので、思うようにふえないだろうという考え方でございます。ですから、カロリー計算からいきましても、どちらかと言うと殻物の方にウェートが置かれた形になるということになるだろうと思っております。そういう点で、ブロイラーとかあるいは豚とかいったようなものは、相当程度私どもが第一次試算で出しましたものよりは落ちると、こういう考え方でいるわけでございます。それで、それによって主食用の殻物自給率は大体八〇%前後、飼料自給率については五〇%前後というような形になるであろうというのが一応とりあえず試算をしてみたものでございます。
 しかし、これはこれからのいろいろたたき台としてまずとりあえず試算したものでございますので、これをもとに農政審議会においても議論いただき、私ども事務当局においてももう少し詰めさせていただきたいとこう考えておるわけでございます。
#85
○栗原俊夫君 いまなぜ食糧関係に触れていったかというと、農地利用増進法も、農業自体が引き合うような営農ができなければ、幾らこういう法律をつくったってこれは成功するはずはないと思うんですよね。仮に貸し手があっても、借り手の方が、一丁規模を拡大して大いにやろうと言えるだけの条件を与えてやらなければ、幾ら貸し手があったってそれはそうはなっていかない。そして農業の、営農の何とかなる、ひとつがんばってやろうということの一番の指標は、やはり日本では稲作農家というものの経営というものが成り立つようにしてやることがやはり一番の中心であり、大黒柱だと思うのですよ。そこで、これは予算委員会の繰り返しのようになりますけれども、日本の主食はお米であると、何と言っても米だと、こういう答弁を大臣いたしましたね。いまでも変わりはございませんか。
#86
○国務大臣(武藤嘉文君) 私どもは、やはり日本の農業の土地その他から見ましても、一番適したものは米でございますし、また幾ら米の消費が落ちてきたからといったって、やっぱり主食の地位は米でございますし、日本人にとってやはり米というものが食生活の中心であるということは今後とも変わるはずはないし、また変わるべきではないと、こう考えております。
#87
○栗原俊夫君 そこで、ちょっとこの法律とは縁が遠くなる話なんですが、いま一度、やはり私もこれが国会における最後の発言になると思いますから、いま一遍だめ押しにひとつ質問をさしてもらいたいと思うのですが、きょう直接関係はございませんけれども、やはり食糧管理法の問題なんですね。
 主食は米であると、そして世界的に二〇〇〇年代には五割の物理的な不足が――不足というか需要増が出てくると、そういう中でやはり日本も不足の線にさらされることがより大きくなるし、さらに国際関係から言えば、大変緊迫感があって海上波高しと、外国依存の食糧の安全度も大変低下してくると、こういうことになれば、勢いやはり食糧は国内でいざとなればゼロになってもお互いに生き延びるという方途をとらなきゃならぬ、そういう責務を負っておるのが私は農林水産省だと思っておるんですよ、これは。外国から買い付けるのが農林省の役目じゃないと思うのですよ、やはり。生産して何とかしていくというのが農水省の本務であろうと、このように思っておるわけなんです。
 そこで食管法は、足らないときにお互いに分けて生き延びようと、こういう段階でできた法律であることは間違いありません。したがって、足らぬものだから、しっかりつくれと作付まで強制する、とれた物の強権供出も強制すると、こういうことをやったわけですが、やはり食糧自体が世界的にきわめて問題であるというときには、どうしても国内で生産できる体制を維持していかなきゃならぬ。これを単に国にそういうことを言っても無理だと、こういうことなんですが、基本的には国民全体の責任で生産を守っていくと。で、よくお互いの嗜好の関係で食生活が大変化をしたと。確かにしていますよ。農基法をつくったときに、米麦が多過ぎる、やはりいま少し粉食をしろと。粉食の相手には動物たん白だ、畜産三倍だと。そういう食事の後には果物が要るんだと。畜産三倍果樹二倍だと。こういう選択的拡大の方向なんていうような話をわれわれはされたわけなんですが、しかしやはり生きるための食糧ということになると、国民の嗜好だということだけには任してはおけぬのではないかと私は思うんですよ。やはりそこには食糧政策というものがあり、政策という限りにおいては時には強制も当然含まれてくる。こういう意味合いにおいて、やはり食管法が生産に対して強制をするならば、消費についてもある程度の強制もやむを得ないのじゃないかと私は思うんですよ、食糧自衛のための食糧政策の中で。
 したがって、食管法で言う消費者米価というものをいま少しく合理的にして、食管赤字だから値上げをするなんていうべらぼうなことではなくて、家計に見合った消費者米価を決めた以上、やはり全国民に生産を守るために買ってもらうと。食うか食わぬかは、本人がきらいらはこれはその時点ではしようがない。しかし、本当に詰まれば、あの鳥のえさのトウモロコシまで食ったんですから必ず食うに決まっておるんですが、そのくらいのことをやはり政策として政治として打ち出すべきじゃないかと。したがって、国内で本当にできる米は筒いっぱいつくると。私も農民運動者の一人として、バルクライン八〇などと言って、これからも生産者米価の闘いは起こるわけなんですが、これらについてはやはり相当配慮をして、一部の人たちが左うちわだという部分は残さぬような政治的な配慮の中で、全量が買えると。そして買った全量は全国民に買ってもらう。こういうようなやはり食糧政策、農政というものがあってしかるべきだと私は思う。さもなかったらこれはとんでもない問題に逢着するのではないかとずっと思い続けて、予算委員会でも第一回、第二回も同じようなことを言い、いままた三たび同じようなことを言うんですが、ひとつ、農林大臣もなかなか大変だとは思うけれども、国の食糧政策として政治的にいかにあるべきかについて大胆率直に、大臣の段階ではすぐ実行できなくても、あるべき方向等についてひとつ所信が明示できたら、しかも私の意向にやや沿える答弁がいただけたらまことにありがたいと思うんですが、いかがでしょうか。
#88
○国務大臣(武藤嘉文君) まあなかなか世の中はむずかしいのは、これ、緊急どきになれば先生の御指摘のようなことは私ども相当やれるんじゃないかと思うのでございますが、平和どきにおきまして国民の皆様方の合意が果たして得られるか。私ども、やっぱり民主政治でございますので、強制というわけにはなかなかまいらいわけでございまして、国民の合意が得られれば、もちろんもっと米を使ってくれ、食べてほしいということは言えるのでございますけれども、その辺のところが私はいま日本の国情からして非常にむずかしいと言わざるを得ないのではないかと思うのでございます。
 ただ、一つの考え方といたしましては、常時の消費はそういうことでございますけれども、たとえばスイスその他、国々のいわゆる食糧の備蓄という点から見ますと、ヨーロッパの各国においては、それぞれの家庭に常にある程度の量を備蓄しておると、これが義務づけられておるわけでございます。これは私は一つの考え方として、これからの農業政策の、大きい意味の農業政策といいますか食糧政策の中で、当然、万が一という緊急のときを考えるときに、やっぱりそれぞれの家にある程度の備蓄を持つということはこれは必要なことではなかろうかと思っておりまして、これは今後農政審議会の中でも私は議論していきたいと、こう考えておるわけでございます。
#89
○栗原俊夫君 大臣が衆議院の方へ出席で退場されますので、あと数点、ひとつ残った方々にお尋ねをしてまいりたいと、このように思います。
 先ほど大臣も食糧問題について話があったんですが、先般、わが方の村沢委員の質問に対して、「平時の場合と不測の事態が生じた場合の自給率等一現在試算中)」という、こういう表を出したのをそちらはお持ちですか。――それで、現状では平時の耕地面積が五百四十九万ヘクタールだと、輸入食糧が二分の一から三分の二になった場合にはこれをひとつ六百十万ヘクタール程度にふやすんだと、こういう数字が書かれてあるんですけれども、農林当局は、耕地というものが、机の上なら幾らでも鉛筆を動かしゃ書けるんですけれども、かくも簡単に何十万ヘクタールもふえたり減ったりできるものだと、そんな簡単にお考えなんですか、どうなんですか。
#90
○政府委員(杉山克己君) ここ数年来の農地の増減状況を見てまいりますというと、高度経済成長時代は壊廃が非常に大きゅうございまして、十万ないし十一万ヘクタール毎年減ってまいったわけでございます。それに対して造成面積は二万ないし三万、多くて四万ヘクタールといったような水準でございました。最近は幾分壊廃がテンポを落としまして、大体年間四万ヘクタール程度というようなことで、ほぼ造成と見合ったような状況になっておりますが、農地面積全体ははかばかしくふえるというような状況にはないわけでございます。これはいま申し上げました壊廃があるということと、それから農地として開発していくのに適地がどのくらいあるか、またそれを開発していくのに費用がかかる、財政負担、予算規模からしてどの程度実行可能かということになりますと、先生がおっしゃられるように、数字を描くことは簡単でも、実際にそれを造成していく、農地面積を増大させていくということはきわめて困難でございます。そして、私ども将来のいざという場合の不測の事態を想定いたしますと、農地面積あるいは農地として利用し得る農地に準ずるようなものの面積、これをどう把握しどう管理していくかということは、これはまさに農政審議会でも御議論をいただきながら、まだ私ども役所のレベルでも詰め切っている問題ではございませんので、今後検討していかなければならないというふうに考えております。
 御指摘のように、六百十万ヘクタールというような高い水準の農地を直ちにいま、もちろん十年なら十年という期間を置いての話ではございますが、造成にとりかかるというようなことを考えましても、実行上きわめて困難なたくさんの問題があるわけでございます。
#91
○栗原俊夫君 昨日当委員会は、大部分の人たちが省の案内で山梨県の白州町へ出かけ、現地を見せてもらいました。ミニ農場とかいうような新しい構想のもとに幾つかの農場も見せてもらいましたけれども、こういうもので本当に法の言うところの農業の発展ができるだろうかと、この程度のことで。まあ一生懸命やっているあの熱意にはそれは感服をし、まあ称賛の声を送ってきたわけですけれども、あれで本当に農業の振興になるんだろうか。まあこう実は一方では落胆して帰ってきたわけです。一方では美田がどんどんつぶれていく。確かにああいう荒廃になった土地を再び復活させるということは悪いことではありませんけれども、いうところの農業が活発に復権するんだというような気持ちにはとてもなれぬのですけれども、この法律が成立したら、ああいう部分も全体のごく一部であって、ほかではもっといいところがずでんとあるんだ、こういう答えをもらいたいんですけれども、見通しはどうなんですか。
#92
○政府委員(杉山克己君) まあ農業生産の状況というのは地域によってかなり格差がございます。私もお供をいたしまして昨日山梨県の白州町へ行ってまいりましたが、全般的に傾斜地で耕地面積も小さく非常に基盤整備もおくれている、生産条件の悪いところだと思います。まあ一番悪いかどうかは存じませんが、まあ日本じゅうの平均から見てもかなり悪い方に属するというふうに考えられます。しかし、それとは対照的に、平地でもって耕地面積もかなり大きい、条件に恵まれたところもそれなりにあることは事実でございます。ただ、私ども日本の農業経営のあり方として、条件が悪いからそれを放置するとか、それは見捨てられていいんだというふうには考えておりません。農業は、全体として国民に対する安定的な食糧確保ということももちろん使命として担っておりますが、同時に、地域農民の生活の場、生活の手段でもございます。現実一挙にそれがおとぎ話のような経営拡大を図って、規模拡大を図って、生産性の著しい高いものをそのまま実現し得るとは考えておりませんけれども、苦しい中でも、今日政策的に種々措置いたしておりますところの各種の措置を重ね合わせまして、できるだけ前進を図ってまいりたい、農業生産の振興を図ってまいりたいというように考えているわけでございます。農用地利用増進事業も、あのような地域でもそれなりに効果を発揮し得るものというふうに考えております。
#93
○栗原俊夫君 とにかく農地が荒れておる、荒れておる農地を手入れをして復活させる、その方向については全く異議はございません。ただ、やり方について少しくいろいろ議論もございますので、後ほど私たちはこれに対して修正案を提出いたしますが、この法を実施するに当たっては、せっかくやることですから、また失敗したりということのないような、りっぱなひとつ法運営をやって進まれることを強く希望して、質問を終わります
#94
○原田立君 それでは時間の都合もありますので進めたいと思いますが、わが国農業は、農業基本法の制定以来、経営規模の拡大を農政の基本的方面として位置づけてきたわけであります。この基本に沿って農地制度も進められてきたところでありますが、しかし、その結果として、農業就業人口は半減したにもかかわらず、農家戸数は二割強しか減少しておらず、規模拡大に伴い流動化、すなわち第二種兼業農家の大幅な増加ということで、政府の目指している農地の流動化に伴う規模拡大、あるいは自立経営農家の育成は、実質的に断念せざるを得なくなってきておるような状況ではないかと思うのであります。またその上、労働力を見ても、若年労働者は他産業に流出、ために農家労働力は老齢化の一途をたどり今日に至っております。これが日本農業の実態であります。このような実態を踏まえ、今後の日本農政をどういうふうに位置づけしていくのか、方向づけていくのか。これは本当は大臣に聞きたいところなんだけれども、留守なのでこれは官房長、答弁をお願いいたします。
#95
○政府委員(渡邊五郎君) 御指摘のように、戦後の特に高度成長の過程におきまして、兼業化が非常に伸展しているということは事実でございます。農業基本法以来、自立経営その他規模の拡大に努めてまいりまして、たびたび御説明申し上げますように、そうした結果といたしまして、現在の中核農家の姿におきましても、畜産とか施設園芸というような部門においてはかなりの規模拡大等が達成されたのでございますが、問題は土地利用型農業におきまして、稲作等を中心にいたします土地利用型農業におきましては、規模の拡大等がはかばかしくないことは事実でございます。そうした意味で、やはりこれからの農業を中核的な農家を中心に進めてまいろうとするならば、やはりこうした農家の規模拡大を、兼業農家との関係においてこれを進めてまいらなければならない。先ほどお話がございましたように、現在の地価とか各種の条件から言いますと、これを利用権の拡大というような形で進めてまいりたいというのが今回の農地三法なりの趣旨になるわけでございますが、同時に、あわせて第二種兼業等、農村に相当定着しております第二種兼業農家は、やはりそれなりの社会的安定層と私どもも評価いたしまして、そうした人たちが特に高年齢になりまして、一つの生きがいとしての農業を持ちながら農村に定住し、かつそれらの中核的農家の規模の拡大と、いわば共存できるような、積み上げできるような地域をつくり上げたい、このような考え方をもってこれから進めたいと、このように考えておる次第でございます。
#96
○原田立君 八〇年代における日本農業は、過剰と減少の不規則な構造政策を強いられております。すなわち、米や畜産物、ミカン等の過剰の顕在化の一方、外国からの農畜産物の輸入拡大要請、食糧自給率の低下等、完全に行き詰まりを見せ、農業の見直しが強く叫ばれているのが実情であります。これら生産、価格など適切なる構造政策の対応が必要であると思うのでありますが、この点についての基本的見解をお伺いします。
#97
○政府委員(渡邊五郎君) 確かに御指摘のとおり、生産の問題は、たびたび申し上げますように、過剰と不足との共存しておるという姿におきましては米に最も象徴的にあらわれております。やはり需要と供給とがマッチするような姿といたしまして、特に不足しております麦、大豆、飼料作物のような基本的な作物の拡大をいたしていかなければならないと同時に、供給が過剰となっているものにつきましてはそれなりにセーブをしていかなければならない。したがいまして、第一次試算という形で昨年の十一月に農産物の長期見通しの試算をお示しいたしましたが、さらにまた最近の情勢等も踏まえて、第二次試算ということでこの見通しの改定ないしこれをさらに実態に合うように検討を続けておるところでございます。
 同時にまた、中核的な農家を育成していくというような立場から、こうした農家の再生産が確保されるような姿におきまして、生産の方向づけとあわせて価格政策におきましても新しい観点から見直しをしなければならないということで、需給の調整問題、こうした中核農家を中心にしました再生産の問題ということをこれからの価格政策全体の中で考えてまいらなければならないだろうと、こう考えております。
#98
○原田立君 現在政府は、昭和六十五年を目指しての「農産物の需要と供給の長期見通し」を策定中でありますが、基本的には、十年先あるいは二十年先の中長期見通しを前提としての位置づけ、方向づけが先であり、その前提に立っての構造政策でなければならないと思うのであります。この点については、昨年八月の農政審議会の中間答申を初め、農業団体等からも積極的に提言されているのでありますが、政府の予想が思うように実績としてその成果を見ないのも、このような中長期的見通しというものがないための結果ではないかと、こう指摘するのでありますが、政府はこの計画のずれというか、それらについてはどうお考えですか。
#99
○政府委員(渡邊五郎君) いろいろ長期見通しにつきまして従来からも作業をいたし、また公表もいたしてまいっております。残念ながら現状とぴったり合ったという形になれない部分があったことは御指摘のとおりでございますが、現在私どもも、六十五年、十年後を目標年次に作業をしておるわけでございます。
 ただ、全体的に申しますと、経済全体の成長あるいは最近のような資源制約をめぐる諸条件ということが必ずしもすべて十年後において予測し得るかどうかという問題点はございますが、しかし、全体の方向といたしまして、これからのわが国の進むべき農業生産の方向についての国民的合意と申しますか、関係者の合意を得る目標を設定し、その方向に向かって農政を進めていくことは非常に重要なことではないかと、このように考えておりまして、現在もそうした意味で、第二次試算を中心にいたしまして長期見通しをさらに検討をし、充実したものをいずれ公表いたしたいと、このように考えておるわけでございます。
#100
○原田立君 ことしの初めごろから世界各地で異常気象が相次ぎ、すでに農作物の一部に被害が出始めているとの報道がなされております。アメリカ中西部では百年ぶりの高温、東南アジア、アフリカ、オーストラリアの干ばつ、ソ連の大雨など、かなりはっきり目立つ異常気象と言われておりますが、このまま推移すれば、一九七二年、七三年並みの世界的な食糧危機にまで発展する可能性も十分考えられるとの報道であります。
 農林水産省としては、これらの実態をどこまで把握し、今後の対応を考えておられるか。
#101
○政府委員(松浦昭君) 私どもも各種の情報を集めておりまして、その情報によりますれば、確かに次のような天候不順とその作柄への影響が見られます。
 一つは豪州でございまして、二月から四月中旬の東南部の干ばつによりまして、春まき小麦への影響が懸念されるということがあります一方、牧草の不足で牛の屠殺が増加しているという状況が把握されております。
 それから第二は、東南アジアの米作地帯でございまして、特にタイがひどいわけでございますが、タイ、ベトナムそれにカンボジアがひどいということを聞いております。これは干ばつで不作の模様でございまして、特にタイは二期作米の減産で輸出力がかなり減少するという見通しでございます。そのほかインド北部、東アフリカ、南アフリカの一部でも干ばつが伝えられております。
 このような干ばつの被害が伝えられておりますけれども、世界全体の穀物生産といたしましては、本年の作柄は今後の気象状況によるところが大きゅうございまして、現段階ではその影響を評価することはなかなか困難でありますことと、アメリカの農務省が発表いたしました見通し、これは五月の九日でございますが、世界全体の穀物生産としては昨年並み程度ということが言われております。
 また、穀物価格の動きを見ましても、米は確かに上昇の傾向にございますが、小麦、トウモロコシ、大豆等は現在なお弱含みでありまして、現時点で食糧確保に不安があることは考えておりませんが、いずれにいたしましても、今後の状況を十分見きわめなきゃならないわけでございます。わが国といたしましては、穀物の大きな輸入国でもありますので、今後の世界各国の穀物生産の状況につきましては注意深く推移を見定めてまいりたいというふうに考えております。
#102
○原田立君 今後の動向を十分把握するとともに、国内への影響等についてきめ細かな対応が必要だと思うのであります。いまも局長の答弁もありましたので、その点を十分踏まえていただきたいと、こう思うのであります。
 ところで、この異常気象とあわせて、最近食糧が外交上の武器として使われる可能性が高まってきておるわけでありますが、世界の食糧需給の長期的逼迫の方向への強まり等々を考え合わせた場合、国内自給度の向上と強化がますます重要であります。わが国の総合自給率を見ると、昭和三十五年九〇%だったものが四十年に八三%、五十三年には七三%と低下の一途をたどっております。農水省は六十五年長期見通しを作成中でありますが、その試算では、五十三年の水準と同じ七三%としております。また、摂取カロリーから見た場合、一日一人当たり二千五百カロリー必要と言われておりますが、しかし、現在国内で自給しているのは、安静時の水準と言われる千五百カロリーにしか過ぎない。世界的な変動等を考え合わせた場合、少なくとも六十五年見通しに際しては八〇%以上の総合自給率の引き上げを試算するなど、強力な推進策が必要だと思うのでありますが、いかがですか。
#103
○政府委員(渡邊五郎君) 自給率の問題につきましては、先般も国会の衆参両院でも御指摘をいただきまして、私どもも第二次試算におきましてもいろいろ検討をいたしておりまして、現在の私どもの考え方を申し上げますと、少なくとも米、野菜については完全自給をすると。果実なり畜産物につきましても八割程度の高い水準を確保したいと。さらに不足しております小麦なり大豆等につきましては、できるだけ国産品の品質を向上させながら自給に努めることにいたしまして、小麦でありますれば五十三年に比べ三・三倍、大豆については二・二倍程度まで増産をするというようなことで試算をして、現在七三%という六十五年の見通しを得ておるわけでございます。率直に申し上げまして、こうした非常に自給度を高める努力をしない、いわば趨勢的なこれまでの推移というものでまいりますと、かなり低下し、現状のままの推移をたどれば六二%程度にも落ちかねないというのが現況でございます。ただ、私どもといたしましては、現在の日本を取り巻いております開放経済のもとである程度の成長を国民経済的に維持していくという状況におきまして精いっぱいの努力をしてまいった場合には、総合自給率としては七三%程度は低いという御批判はございましても、相当意欲的なものと私どもは考えるわけでございます。
 ただ、問題は、先生も御指摘になられましたように、いろいろ食糧の需給状況等、今後困難な状況等も予想されるということも事実でございます。そうした意味で、大臣からも指示がございまして、先ほど申し上げましたように、輸入食糧等が削減等あるいは現実に入手できないような事態をやはり想定した場合における食糧の自給確保体制というのも十分検討をいたして、そうした不測の事態にも備えていくということが重要なことじゃないかと、このように考えておる次第でございます。
#104
○原田立君 だから官房長、要するに三十五年度のときに総合自給率が九〇%だったのがだんだんだんだん低下しているわけですよ。その低下している五十三年と同じような目標を掲げて、それで一生懸命やっていますだなんとはちょっと言えないんじゃないですか。三十五年の米にしても一〇二、四十年が九五、五十三年が一一一、これを六十五年では一〇〇と、こうするというんで、米が多いからというふうなことは理由にはならない。五十三年度の七三という数値と同じ目標でやるのでは、ああ一生懸命やっていますと口では言うけれども、これ実際には余り一生懸命じゃないという証拠としか言えないじゃないですか。もっと自給率を高めるような努力をすべきだとぼくは思うのでありますけれども、いかがですか。
 ちょうど大臣も来たから、途中で話を切って、まず一番最初官房長が答えて、そのあと大臣ひとつ。
#105
○政府委員(渡邊五郎君) 多少繰り返しになりますが、御指摘は十分私どもとしてもわかるのでございます。ただ、現状におきますわが国の農業の置かれている状況、農産物の状況等を踏まえて、私どもなりに米、野菜についての完全自給あるいは果物等を八割程度、大豆、小麦あるいは飼料作物について相当意欲的に伸ばしていく、しかもこれらの伸ばし方自体も、やはりこれからは規模の拡大によりまして国際的な競争力という観点も考えなければならない。完全に国際競争力を持つということは非常にむずかしいことではございますが、やはり大きくかけ離れたものとするわけにもまいりません。こうした経営的な視点各般を考えて、低下しやすい現在の自給率の状況をできるだけ高目に持っていくという形で、現在私どもが第二次試算におきましても検討しておるのは七三%という水準でございます。なお、今後いろいろ審議会なりの各般の各階層の皆様方の御意見も十分拝聴して、やはり必要な自給率は確保するというふうに検討を進めたいと考えております。
#106
○国務大臣(武藤嘉文君) 自給率の問題は、いまいろいろと官房長がお答えしたことと思いますけれども、問題は、要は米であるとかあるいは野菜であるとか果実であるとか、こういう関係のものはほとんど自給ができる形になっておるわけでございます。また、酪農あるいは養鶏、養豚といったようなものも相当程度高くなってきておるわけでございます。ところが、その酪農、養鶏、養豚にいたしましても、そこで使われておる飼料穀物、これはもうほとんど海外に依存をいたしておるわけでございまして、そういう点が結果的には総合自給率が低くなっておるということであろうと思うのでございます。この点については、私はいつも申し上げるのでございますが、結局外国から入っておるトウモロコシがトン三万円ぐらいで買えると。そうすると日本でやはりトン三万円ぐらいでできるものはいまのところないわけでございまして、今度この農地の規模拡大をやっていただいてもなかなかそこまではいかないわけでございます。そういうものをそれではトン幾らぐらいならば一体国民の皆さんは御理解をいただいてそれを畜産に使ってもいいとおっしゃるのかどうか、あるいは畜産農家もそれでいいとおっしゃるのかどうか、こういう点が正直私どもまだはっきり自信が持てないわけでございます。
 私は、たとえばこの間うちからこの委員会でも御議論いただいておりますが、飼料米、飼料稲というのがございます。たとえばこの飼料稲がトン七、八万あるいはまあ六、七万と申しますか、十万以下ででもできるようなことになれば、これまた私は一つの考え方だと思うんでございますけれども、まあ私もこの間秋田へ行ってきただけでございまして、まだあちこち回っておりませんので的確にはつかみ得ておりませんけれども、いまトン七、八万ぐらいにしようと思えば反収千五百キロぐらいまでしなければ、いまの一応米の価格を想定をいたしまして考えるとそのくらいにならなきゃならぬわけでございますけれども、この間秋田でのいろいろな話では、とてもそこまではいかないという話でございまして、そうすると、それにかわるべき何かほかにあるかというとなかなかないと、そういうところが非常に結果的に総合自給率が低くなっているところでございますので、その辺国民が、いや、もう畜産は幾ら高くてもいいと、国内でえさの飼料穀物も幾ら高くてもいいから――まあ幾らというわけでもございません、できるだけ安くはしてほしいけれども、相当国際価格より高くてもいいという国民的コンセンサスが得られれば、私ども喜んで総合自給率を高めるためにそのような形での農業生産もできるだけやっていただくようにしていきたいと思いますけれども、その辺のところがやっぱり一番この問題を議論する大きな問題点ではなかろうかと、こう考えておるわけでございまして、いま現時点においてはなかなかその辺が国民の合意が得られにくいので、やむを得なくこういう数字を出しておると、こういうことで御理解をいただきたいわけでございます。
#107
○原田立君 この計画が出されたときに、与野党やあるいは農業団体などから、低過ぎる、あるいは自給力向上の努力が織り込まれていないなどの強い批判があったはずだと思うんです。
 ところで、今国会で成立させようとしている今度の農振法等にしても、何らか知恵をしぼって総合自給率を高めようとしてつくられたんだろうと思うんですよ。ところが、十二年たってもまだ総合自給率が同じだというのでは、せっかく努力しているとは受け取りがたい。
 それからまた、高いものでもいいというのならばそれは幾らでもできますよだなんて大臣は言うけれども、そんなことあなた言っちゃいけませんよ、やっぱり安いものがいいに決まっているんですから。そこら辺あわせて答弁願いたい。
#108
○国務大臣(武藤嘉文君) この農用地利用増進事業をお願いをしておりますのも実はそこにあるわけでございまして、私どもやはりこれ、先ほど米の例をとりましたが、稲作の反当たりにかかっておる費用と申しますか、生産コストをずっと見ておりますと、結果において規模が大きければ大きいほど実は生産コストは安いわけでございます。そういう面において、いま御指摘ございましたように、私ども幾ら高くてもいいというわけじゃないということは国民もそう思っておると思いますので、できるだけそれを安くつけるような形にして飼料穀物を日本の国内でつくるということになりますと、どうしても規模がある程度拡大をしなければだめではなかろうかと思っておるわけでございます。現にアメリカは、四百ヘクタールから五百ヘクタールぐらいでトウモロコシはつくっておるわけでございまして、日本ではとてもそこまではいかないにしても、たとえば北海道はいま平均が一二・五ヘクタールでございますから、北海道あたりでも農用地がもっと拡大をしていくならば、私はある程度生産コストが安くつくものができるのではなかろうか。やはりこういう努力をどうしてもこれからしていかないと、なかなかこれはむずかしい問題であろうということ。
 もう一つは、たとえば小麦の例をとりましても、小麦の自給率をもう少し高められないかということでこの間うち大分やっておりますけれども、結果的には日本のどうもめん類の小麦はほとんどこれで一〇〇%近く自給する計画で立てておりますが、どうもパンの方は硬質小麦を日本の場合使っておるようでございまして、日本ではどうしても硬質小麦はなかなかとれないようでございます。そういう技術的、品質的な問題が一方に現実にあるわけでございまして、まあパンなんかもう食べなくて、みんなめん類を、小麦を食べるんだからめん類用の小麦をもっとつくれということになれば、これまた話は別になってくると思うのでございますが、そういういろいろ仮定の、いまの現実の事態よりも全く別の仮定の事態を想定して自給率をつくれということであれば、これは大変私どももっと高いものができるんでございますが、なかなかいまの国民の食生活というものはやっぱりある程度認めていかなければいけないだろう、こういう前提に立ってまいりますと、非常になかなか思うような数字が出てこないというのが実情でございます。
#109
○原田立君 実情の説明ばかりして、総合自給率の向上に努力しますという一言はとうとう出ませんでしたね、大臣。もう一言。
#110
○国務大臣(武藤嘉文君) 私どもといたしましては極力自給率は高めていかなければならないと思っておるわけでございます。ただ、国民のある程度コンセンサスが得られない形で幾らつくっても、それがまた売れないんじゃこれいけませんので、そういう点で苦慮いたしておるということで、気持ちといたしましては、自給率は極力高めていく必要があり、それで緊急の場合には、先ほど官房長からも答弁があったかと思うのでございますけれども、私ども緊急の場合には、やはりある程度カロリー計算からいくと相当違ってまいりますし、またそのカロリーの基礎となる分についても、畜産よりは主食である米などによってカロリーを補う、こういう食生活の変化も緊急の場合にはしなければならないということを前提にすれば、高い八〇%前後の食糧自給率は私ども確保しなければならないと、こういうことをやっておるわけでございまして、その八〇%以上の自給率もやれないことはございません。しかし、それは本当に緊急の場合であって、なかなかそういう緊急の場合というものを一般の場合に、それと同じことを国民の理解のもとにやるということは大変むずかしかろうという判断をいたしておるわけで、決してこちらは努力をしないということではなくて、できるだけ高めていきたいけれどもなかなか国民のコンセンサスまで得られる努力が大変であると、こういうことでございますので、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
#111
○原田立君 それは理解しがたいですね。
 ところで、その方をもう少し話を進めますが、農地法の改正は、農業基本法の精神にのっとって農地の流動化の促進、さらには農業構造の改善を進めるべく行われてきたところでありますが、つまり全農家戸数の六八・六%、約七割に達する第二種兼業農家の農地の流動化を促進し、規模拡大による中核農家の育成を図るべく努力を重ねたようでありますが、しかし、昭和五十年の農振法の改正による農地利用増進事業によって強力に推進してきたにもかかわらず、五ヵ年間で実施区域内の農地面積の〇・九七%、約二万四千五百ヘクタールしか利用増進事業は進んでおりません。この推進状態は、政府の当初見込みから判断してかなり低いものであったと思うのであります。それはいかなる原因でこのような低い成果しかおさめることができなかったのか。当初の見込み計画とあわせて明らかにしてもらいたい。
#112
○政府委員(杉山克己君) 現行農振法に基づく農用地利用増進事業につきましては、これは数量、面積につきまして特別な目標を立てておったわけではございません。実績をどう見るか、高いと見るか低いと見るかということでございますが、もちろん全体の面積から見ればまだそれほど大きなものではございませんが、従来進めてまいりました各種の流動化施策、それらと対比しますとき、私はこの五年間で二万四千ヘクタールの利用権の設定を見たということは、相当程度の成果であったのではないかというふうに考えます。特に五年間のうちでもだんだん後半に至るに従って伸びが大きくなってきて、五十四年度は一年度、単年度で、これも十二月末まででございますが、一万七千ヘクタールの利用権の設定を見ておるわけでございます。そういう意味では、私どもとしては、これはもう一つ拡充してこれを伸ばせばさらに実績を上げることは可能であるというふうに見ておるところでございます。
 一般的に流動化がなぜ進まないのかということになりますというと、この事業だってもっと伸びた方がよろしいには違いないわけですから、そういう観点からその理由を洗ってみますと、それは一つはやはり基本的には農地価格が高い、農家の資産保有的な考え方というのがかなりまだ広く行き渡っておる。そして、この農用地利用増進事業でできるだけそういった不安感を除くように、市町村なり農業委員会が間に立って安心して貸せるようにということを図りましても、その趣旨の徹底がいままで必ずしも十分ではなかったということが言えるかと思います。そういう意味で今回内容的な拡充も図り、さらには一層諸般の政策もそれに向けるというようなことでこの普及を図っていけば、相当実績を今後上げていくことは可能であるというふうに考えております。
#113
○原田立君 いま局長は、利用権設定を別段これといって目標は立てていなかったという御発言があったんだけれども、本当に目標は立てていなかったですか。この資料の二十四項に、「農用地利用増進事業の実績」として、実施区域内農用地面積二百六十五万四千五百六十三ヘクタール、これは実際は二万四千四百三十九ヘクタールしか利用権が設定されていないわけです。これは先ほど数字で言ったとおりなんですけれども、五年前に決めたときにはこれといった目標を立てていなかったというのは、それは本当なんですか。
#114
○政府委員(杉山克己君) 利用増進事業を行います場合、市町村が利用増進規程というものをつくります。その利用増進規程では、その実施区域内に農用地面積がどのくらいあるか、またその内訳は、農地はどのくらいで採草放牧地はどのくらいかというような、そういう内訳をきちんとさせて対象面積を把握するわけでございます。その数字かと思いますが、規程を設けましたところの各市町村の対象農用地の面積を合計してみますというと、全国で二百六十五万四千五百ヘクタールということになるわけでございます。これはいま申し上げましたように、そういう事業を行うところの全体の農用地面積でございますので、その中で出してもいいという農家があり、受け入れたいという農家があれば、その面積のうちの一部が流動化するということになるわけでございます。規程なり何なりの上で特別そういう流動化をさせなくちゃいけない、させたいという目標面積を決めたということはないわけでございます。
#115
○原田立君 今回の法改正に伴う農地の流動化については、どのような計画に基づいて流動を推進するのか、五ヵ年あるいは十ヵ年計画等々の明確なる数字を示して明らかにしてもらいたい。
#116
○政府委員(杉山克己君) 現行の農用地利用増進事業におきましても、ただいま申し上げましたように、対象となる地域の全体の農用地面績の把握というようなことはございますが、その中でどれだけ年次的に流動化を実現していくかということについては目標は定めておらないところでございます。
 年次的にどんなふうに考えているかということでございますが、私ども五年間やってきた実績、これが一つの参考になるかと思いますが、今後この実績を上回るような流動化の実現が年々図られていくだろうというふうに考えております点が一つと、この利用増進事業の全体の成果というのは、そう短兵急に短時間のうちに出るのではなくて、むしろ、だんだんその普及が図られる、皆さんが安心して貸せるという気分になっていただく、そういう意味でかなり期間を要する。ある期間を経て、八〇年代の後半になるというような時期になれば、相当程度進むんじゃないか、後半にドライブがかかるというようなことを考えてみているわけでございます。
#117
○原田立君 いろいろ聞いていてどうも矛盾を感じるんです。私は、自作農主義はこれは当然堅持しなきゃいけない、前々からの主張であります。また、大臣もそうだと言っているんです。それで、総合自給率を高めるために今回の農用地利用増進法もつくったと。じゃこれをつくったからには目標はどうなんだと、こう聞けば、五ヵ年間やってその間に浸透して少しは前進するだろう、またそれを基礎にして十年のやつをつくるんだなんて、とにかく何か非常にあいまいな感じを持たざるを得ないと私は思うんです。それだけ指摘しておきます。
 農林水産省は、前回の委員会の答弁の中で、第二種兼業農家をどう位置づけるのかという私の質問に対して、社会的安定層と位置づけるというふうに答弁がありましたけれども、具体的にはどういうことですか。
#118
○政府委員(渡邊五郎君) 農業白書の方でも本年指摘しておるわけでございます。第二種兼業農家の多くは安定した兼業に従事いたしておりまして、統計的に平均的に見ましても、農外所得によりましておおむね家計費を充足して、それなりに高い生活水準を維持して、どちらかといいますと相対的に比べれば専業農家よりも比較的恵まれた条件にあるわけでございます。こうした第二種兼業農家は、農地を所有しつつ、安定した社会階層としてまた農村に定住していることも事実でございます。今回の利用増進なりの考えから、こうした農家がまた高年齢化してやはり農地の出し手となる、同時にまた、こうした方々がその生きがいとしての農業の中に従事されるというようなことを想定しながら、やはりそれなりの評価をして社会的安定層として考えていくべきではないか。現実にこれまでの利用増進の実績等から見ましてもそういう傾向もあらわれておりますし、第二種兼業農家の所得に占める年金なり恩給等の収入の状況等を見ましても、これからはそうした第二種兼業の状況と中核的担い手となるべき農家というものが地域的に共存できるような社会、地域社会というのを想定して考えていかなくちゃならない。そのときに、第二種兼業農家をなお社会的な安定層と評価すべきではないかというふうに考えておるわけでございます。
#119
○原田立君 わが国の農地法は、農地改革に伴い自作農主義に立脚したものであります。その後、法改正により、農業経営の規模拡大に伴う中核農家の育成に力を入れてきたのでありますが、これが昭和四十五年の農地法改正であります。しかし、農地の流動化は思うように進まないのが現状であり、自作農主義から借地農へと方向転換せざるを得なくなって、今回のような処置がなされたと思うのでありますが、今後の日本農政の推進に対して最大のネックとなるのが地価対策だと思うのであります。この農地抑制策、地価対策について農林水産省はいかなる対策で臨むのか、具体的対策をお示し願いたい。
#120
○国務大臣(武藤嘉文君) 地価対策というのは農地だけというわけにはこれいかないんじゃなかろうかと私ども思っておるわけでございます。現にやはり高度経済成長によって地価がどんどん上がってまいりまして、その結果農地も上がってきたわけでございまして、総合的な地価対策というものがやはり考えられていかなきゃならないと思っております。私ども政府といたしましても、土地対策閣僚懇談会なども開きましてやっておるわけでございますけれども、国土利用計画法、遊休地の利用、あるいは都市再開発法の改正、あるいは今度この国会に国土庁から提出をいたしました、私どもも共管でございますが、農住組合法案といったようないろいろのことをやって極力地価を抑えていきたいと思っておるわけでございますが、将来にわたってもなお一層、たとえば人口がもう少し分散するような形で国全体の開発計画を考えていくとか、あるいは公共用地などについてはもう少し極力何かこう地価が抑えられるようなことができないかとか、いろいろ研究をより進めております。それから、私ども農林水産省といたしましても、一つは農振法、またいま一つは都市計画法、こういうような法律によって土地の区分をいたしておりまして、これによって極力やはり地価の抑制を図っていく、あわせて農地法によって少なくとも農業以外に農地が転用されることは極力抑える、こういう方向で努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
#121
○原田立君 この農地の価格対策は、大臣が言われるように農林省サイドだけのものでできるわけでないと思うのであります。関係省庁が一体となって市街地における都市的利用地と農業的利用地とをまず明確に区別し、農業的利用地については農業以外の転用はできないよう厳格な歯どめをし、農地については当分の間地価の凍結をするくらいの措置が考えられると思うのであります。前回の答弁で、凍結できる処置がとれるかどうか等を考えてみたいというふうな答弁であったと思うのでありますが、重ねてお伺いします。
#122
○国務大臣(武藤嘉文君) それは検討は私どもしなきゃいけないということを申し上げておるわけでございますが、なかなかこれはむずかしい。正直個人の私有財産でございますからなかなかそういう点がむずかしいということで、前も、たとえばそういう土地というものはほかのものと区分して考えられるような思想が出てくれば、これは私ども地価というのは凍結できると思うのでございますが、なかなかいまの場合には普通の財産として見ておるわけでございますので、その辺が何とか抑えたいけれども非常にむずかしいというのが実情であるわけでございます。しかし、今後とも土地の価格というもの、あるいはもっと大きく言えば土地というもの、こういうものをどうすべきかということはわれわれ政府部内でも真剣に今後とも検討を進めていきたい、こう考えておるわけでございます。
#123
○原田立君 国土庁で全国の土地の公示価格を毎年発表しておりますけれども、農林水産省でも、農業の用に供する農地価格の公示制度を確立する等の積極的対策を考えてもしかるべきではないかと思うんです。何か内部でしっかり研究するというふうな御答弁がいまあったわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
#124
○政府委員(杉山克己君) 一般的な地価対策と並んで農地の地価対策、さらに基本的に今後検討を進めていくということは必要でございます。それはそれとして検討するのでございますが、一般の土地価格の公示制度と農地価格の場合、やや異なる事情がありますのを申し上げますと、農業経営にとって支払い可能な農地価格の水準は、その経営規模だとか栽培作目、そういったことによってかなりの格差が出てまいります。それから、どうしても農地を転用するケースが近間にある程度出てくる、そういう転用価格の影響を受けるというようなこともございます。そういたしますと、同一地域における現実の地価水準も格差が出てくるというようなことがありまして、耕作目的での農地取引の指標としての価格を公示することには、実際問題としてきわめて多くの問題点、困難性があるわけでございます。
 私どもはむしろ農地価格の価格安定を図るためには、先生も先ほど申されましたが、現在の土地利用区分、各種のゾーニング、計画法があるわけでございます。いわゆる農振法、この線引きをきちんとやるというようなこと、さらには実際の騰貴を防ぐために農地の転用の規制を厳正に行うというようなことで農地価格の安定を図ってまいりたいというふうに考えております。
#125
○原田立君 農地価格の凍結と農地価格の公示制度、これらについては、大臣どうですか、農政審議会等専門的機関に諮問して見解を求めるのもこれも一つの方法だと思うのですけれども、御所見はいかがですか。
#126
○国務大臣(武藤嘉文君) なかなか先ほど申し上げるように、この地価は、私どもも地価を抑えていくべきだと思いますし、ほかの、生産ができて量のふえていく問題ではなくて、土地というものは限定されたものでございますから、極力何か考えなきゃいかぬという気持ちは持っておりますけれども、いま先ほど申し上げましたように、やっぱり一つの個人的な財産として認められておる限りにおいては、正直なかなかむずかしい問題が一面にあるわけでございまして、まだ私ども農政審議会に具体的におかけしてこれをどうするかという考え方はいまのところ持っておりません。
#127
○原田立君 優良農用地の確保についてでありますけれども、だんだん減少しているわけでありますが、昭和五十二年度に二万二千ヘクタール、五十三年が二万三千ヘクタール、五十四年が一万八千ヘクタールと減少しております。また、宅地等への転用が中心となっているわけでありますが、農地の壊廃についても昭和五十四年には一万七千ヘクタールも減少しております。このような優良な耕地面積の減少あるいは農地壊廃についての減少は重要問題であると私は思うのであります。農地確保の面からも重要課題であるのでありますが、こういうような優良農用地の確保について実際問題と今後の方策についてお伺いしたい。
#128
○政府委員(杉山克己君) 全体面積の減少、これは特に高度経済成長以来転用が多かった、また壊廃が進んだということで、残念ながら今日まで減少を続けてまいっておるわけでございます。昭和五十四年現在で、先生が言われましたような年々の減少の結果、五百四十七万ヘクタールという状況になっております。
 ただ、減ってまいっております状況の中でも、壊廃そのものは今日ではかつてのような十万ヘクタール、十一万ヘクタールというようなそういう高い水準ではなく、おおむね四万ないし五万というような水準に落ちついてまいっております。それから造成面積の方も、若干ずつではありますが増加してまいりまして、四万二、三千ヘクタールというような水準になっております。こういうような状況からすれば、若干希望的な観測もございますが、今後は減少は食いとめ得る。できるだけ造成についても積極的に展開を図っていくということで農用地の確保ということに努めてまいりたいというふうに考えております。
#129
○原田立君 要するに優良農用地の確保には万全を期すると、こういうことであろうと思うんでありますが、市街化区域内における農地の宅地並み課税について政府の基本的見解は一体どうか。あるいは、優良農用地の壊廃の中心は宅地等への転用でありますが、宅地並み課税は優良農用地確保に逆行するものであり、断じて行うべきではないと、こんなふうに思うのでありますが、いかがですか。
#130
○政府委員(杉山克己君) 現在、市街化区域内の現存農地につきましては、生産緑地として指定を受けたものなどを除いては、おおむね十年以内に市街化すべき区域内の土地だということで位置づけられております。こういうところは、一般的には都市施設の整備につれて逐次宅地化されていくというふうに考えております。
 市街化区域内農地に対する固定資産税の宅地並み課税の問題でございますが、当面この問題につきましては、昭和五十六年度までは現行制度を維持するということにされております。具体的には、三大都市圏の特定の市のA、B農地を対象にし、かつ所要の特例措置を講ずるということが維持されることになっております。
 昭和五十七年度以降の取り扱いについてどう考えるかということでございますが、これは昨年末の税制調査会の答申等もございます。これらも踏まえまして、私どもも今後十分検討してまいりたいと考えておるところでございます。
#131
○原田立君 要するに宅地並み課税というものについてどう評価なさるんですか。
#132
○政府委員(杉山克己君) 税制の問題は、これは税制全体の問題、それから市街化区域については住宅用地の確保というような、別途、土地政策の観点もあって検討さるべきかと存じます。ただ、市街化区域内にある農用地について宅地並み課税の問題をどう考えるかということでございますが、私どもできるだけ生産緑地として指定を受けて、今後農地として存続するものについては宅地並み課税の対象から除外されるようにすることがいいのではないかというふうに考えるわけでございます。宅地並み課税の具体的な取り扱いについては、今後さらに、各省との関連もございますので検討を続けてまいりたいと、かように考えております。
#133
○原田立君 要するに優良農用地確保という面から見て、宅地並み課税というのは市街地から農地を追い出すという政策でしょうが。これはもう都市区域内の人はそういう気持ちがあるかもしれないけれども、少なくとも農民の味方である農林水産省がこれをよしだなんてすべきではないと思うのでありますけれども、この点いかがですか。
#134
○政府委員(杉山克己君) 市街化区域というものの性格でございますが、優良農用地の確保という点にはそれなりの調整、配慮をいたして線引きということが行われているわけでございます。そういう意味では、私ども市街化区域内の農地につきましては、生産緑地として今後とも農地として残されるような対象のものは別として、およそ一般的にすべてが優良農用地の対象になるのだから、宅地並み課税はこれは拒否するというようなことではない。やはり生産緑地として考えられるものを除いては、方向としてはやむを得ないのではないかというふうに考えているところでございます。ただ、この調整問題につきましては、具体的なそれぞれ深刻な事情を抱えているわけでございますから、今後とも慎重に検討してまいりたいと考えております。
#135
○原田立君 結論は慎重に検討というところで、どうもそれ以上出ないようでありますが、現在残っている近郊の農地は、優良農地の確保とあわせて昭和四十年代から五十年代前半ですでにふるいにかけられて残った優秀な農地であると同時に、近郊都市への重要な野菜供給基地でもあります。さらには、災害防止の立場からもきわめて重要な土地であろうと思うのであります。このような近郊農地については明確なる位置づけが必要ではないかと思います。具体的対策として、現在、農地所有者または農業委員会等の話し合いで転用が可能とされておりますが、優良農地の確保、野菜供給基地あるいは災害防止等々を考え合わせて、市街化区域内の農地については地元市町村全体で協議し、方向づけを考える等の対策が必要なのではないかと、こう思うのですが、いかがですか。
#136
○政府委員(杉山克己君) 御存じのように、市街化区域というものは、十年以内に市街化すべき区域内の土地ということで性格づけられているわけでございます。そういう区域の設定につきましては、農業との調整を図った上で、これは建設大臣と農林水産大臣との協議というような手続がとられるわけでございますが、そこで線引きが行われているわけでございます。
 それから、御指摘の点につきましては、確かに防災上の観点から効用のある農地というものもございますし、そういうものについては、生産緑地の指定を受けるということで今日すでに宅地並み課税の適用除外の措置が講じられているところでございますし、この制度の活用で対処できるものというふうに考えております。
 また、生鮮食料品の供給というような観点につきましては、これは長期にわたる営農継続の条件、それからその意思のある者に対する配慮、都市施設の整備状況、こういったことを考慮して、先ほど来申し上げておりますように、今後関係省庁と十分検討を続けてまいりたいというふうに考えております。
#137
○原田立君 大事な点を聞くと何でもかんでも慎重に検討しますという、そこでみんな終わりになっているんですけれども、余り実のない答弁で質問する気がだんだんうせてくるような気持ちがするんですけれども、もう少ししっかりとした方向づけというか、答弁をしてもらいたいと思います。
 次に、有益費についてお伺いするのでありますが、衆議院の附帯決議の第二項目に、「利用権の設定に当たっては、耕作者の経営の安定が期されるよう利用権の存続期間及び継続設定等につき十分配慮するとともに、投下した有益費の公正確実な回収が図られるよう指導すること」、こういうふうにあるわけでありますが、これはどのような配慮、指導を政府としては考えておられますか。
#138
○政府委員(杉山克己君) 利用権の設定を受けた農用地について、借り手が投資をすることによって価値が増加した場合には、借り手は民法と土地改良法の規定に基づいて、貸し手に対して有益費の求償をなし得るということになっております。これについてその徹底を図るためにということで、衆議院の附帯決議もちょうだいしているわけでございます。私ども、基本的には有益費の求償の問題は当事者間の話し合いによって処理されるべきであると考えております。しかし、貸し手、借り手の双方が安心して利用権の設定を行うためにも、土地改良事業推進のためにも、この問題は公正、確実に処理されることが必要であると考えております。
 そこで、このため利用権設定等促進事業の実施に当たりましては、農用地利用増進計画におきまして、利用権の条件という項目で有益費に関する事項を定めまして、所有者と利用者の間で十分に協議してはっきりさしておくということにいたしております。そして、その償還をめぐりまして当事者間で協議が調わない、要するにトラブルになったときは、市町村または農業委員会がその処理に当たるということを定めるなどの指導をするということにいたしております。そういった措置によって附帯決議の趣旨に沿ってまいりたいというふうに考えております。
#139
○原田立君 恒常的過剰傾向にある稲作から他の作物に転換するために、水田利用再編対策が強力に進められておるわけでありますが、これら水田利用再編対策に伴い、水田の構造改善、基盤整備など土地改良事業の強力な推進が必要であろうと思うのであります。しかし、農地の流動化に関する今回の法改正において、果たしてどの程度実施されるか大変疑問視されるのでありますが、残存価値の適正な補償にしても、これら諸事業の積極的な実施にしても、貸し手、借り手の双方とも不安があるために進まないというのが実情だと思うのであります。この点に対して政府はどう対応するのか。いまの答えでは、何か農業委員会等を中に入れて、そんなことはないように十分手厚くするというふうな答弁があったんですが、重ねてお伺いします。
#140
○政府委員(杉山克己君) 本来的には当事者の問題でありますが、これを当事者の問題だと、民法なり土地改良法に根拠規定があるからお互いで相談して決めなさいということだけでは、確かに十分な対策とは言えないと思います。
 そこで私どもは、先ほど申し上げましたように、市町村が農用地利用増進計画を決めます場合、その中に利用権の条件という項目を設けまして、有益費に関する取り扱い、どういうふうにこれを処理するかということを決めて、そして具体的には所有者と利用者の間で十分に協議してはっきりさせておきなさい、そしてその償還額について当事者間での協議が調わないときは、市町村なりあるいは農業委員会がその処理に当たるということを決めるように指導したいと思っておるわけでございます。
 こういう利用増進計画の中でその方法といいますか、方途をはっきり示しておけば、私は有益費の償還をめぐるトラブルというものは避け得るというふうに考えております。そういうことによって基盤整備に対する投資も安心して行えるというふうになってまいるというふうに考えているわけでございます。
#141
○原田立君 貸し手の方は高く取りたいと思うし、借り手の方は安く借りたいと思うし、それで内々でよく話し合って円満に話が解決すれば大変結構な話なんですけれども、これが円満に話がいかない。そして農業委員会等が中に入っていろいろ話すとなると、やっぱり角が立っちゃうんですね。そんなようなことがないように、別に私がこうしたらという名案があるわけで言っているわけじゃないんですけれども、そんな角が立たないで、しかも表面化しなくてもある程度のところできちっと手が打たれるような、それでいて貸し手も借り手も大体満足するような、そんな方向になってもらいたいと思うんですよね。最終的には農業委員会が出てぱっと広げちゃってやるようなことになっちゃうんだろうとは思うけれども、その前に、何らかそんなことをしなくても済むようなそういう指導というものが当然必要だと思うんですけれども、どうですか。
#142
○政府委員(杉山克己君) 貸し手と借り手の間の経済的な取引関係といいますか、負担関係等につきましてはいろんなものがあるわけでございますが、先ほどお尋ねの有益費については、いまお答え申し上げたとおりでございます。そのほか一般的な賃借料の水準なり支払いの方法なり、そのほか条件をどういうふうに決めていくかということでございますが、小作料、まあ賃借料の水準につきましては、現在標準小作料の制度があるわけでございます。私は農用地利用増進計画の中でも、この賃借料の水準は標準小作料を基本として決めるということになろうと思いますので、その点はかなり明確に指導できるというふうに思っております。そのほか、支払いの条件等当事者間の問題につきましては、お話しのように、トラブルを起こすことのないよう事前に十分双方が納得できるように指導を図ってまいりたいと考えております。
#143
○原田立君 ちょっと私質問の要点が間違ったような感じがしますので、再度お伺いするんですけれども、この有益費の補償、これについてはどう対処なさるんですか。
#144
○政府委員(杉山克己君) 有益費につきましては、保障ということになれば、これは法律上の根拠、やはり民法の規定なりあるいは土地改良法の規定が最終的な保障ということになると思います。それを根拠にして、有益費を投下した借り手はそれを貸し手に請求できるということでございます。ただ、それだけではなかなか問題が起こってうまく解決できないというようなこともあり得るので、先ほど来申し上げておりますように、農用地利用増進計画の中でそのことに関する基本的な取り扱いの原則というか、考え方を示す、同時に、仮にトラブルになったときは、これは市町村なり農業委員会が間に入ってその調停を図るというようなことを決めるということにいたしておるわけでございます。そういうことによって有益費をめぐる問題は相当程度解決できるのではないかというふうに思っておるところでございます。
#145
○原田立君 心配されるのは、借り主が主張するような積極的土地改良等の投資が行われるのかどうか、はなはだ疑問であります。たとえば小作人が土地改良のために暗渠を入れたい、そういうふうに申し出た場合、どうせだめに決まっていると判断されるのがわが国農業では圧倒的と言われております。これでは小作人の目的とする土地改良は不可能だと思うのであります。このような場合、政府はいかなる対策を考え、実施しようとしていきますか。
#146
○政府委員(杉山克己君) 一般的には、投資効果が長期に及ぶような基盤整備の投資は、これは所有者が行う方が普通でございましょうし、問題が少ないと思います。ただ、場合によっては借り手がそういう投資を行うことも出てくる。その投資を借り手が行うようなケースというのは、これは契約期間の長短にもよると思います。契約期間が長くなって安定した経営が見込まれるということなり、かなりな投資負担もあえて行うということになろうかと思うわけでございます。そこでいますぐに、確かに借り手が安心して相当の投資を行い得るというような条件はまだ成熟いたしておりません。しかし、私、この農用地利用増進事業がだんだん定着するに伴いまして、そういうルール、慣行というものも一部では現に確立されているところもありますし、全国的にも普及していくものと考えます。それからまた、そういう慣行といいますか、扱いにつきまして、市町村等が事前にこれを指導してはっきり決めさせておくということならば、それはそれで事態の解決に貢献し得ると考えているところでございます。できるだけそういう方向で指導してまいりたいと存じます。
#147
○原田立君 要するに、地主の方が手を加えればいいと、こういう意味ですね、いまの局長の答弁は。それとまた、その町で市で、そういうふうな方法というものを確立するようにしておけばいいというような答弁のように思うんですが、それで確認してよろしいですか。
#148
○政府委員(杉山克己君) 重ねて御説明申し上げますが、私ども一般的には、地主というか貸し手が投資をするのが通常であると考えております。しかし、短期の場合でも借り手が投資することもありますし、それから借り手が賃借期間が長期になれば、そして経営上の安定が見込まれるということならば、相当程度土地改良投資等も行うことが出てくるだろう。私ども、できるならば借り手がそういう安心して投資ができるような条件をつくっていくことが望ましい。そういうことについて、あらかじめ市町村なり農業委員会が指導するということによって慣行的なルールをつくっていけば、借り手も投資するような条件が生まれてくるんじゃないか。今日なかなかすぐにはそういう条件はできませんけれども、だんだんにそういうものをこしらえていきたいと、こういうことを申し上げたわけでございます。ですから、そこは両当事者間の話し合いが一つ基本にありますけれども、絶対的にというか、あるいは原則的に農地の所有者が投資をしなければいけない、それがまた一番いいんだと、ここまで言っているわけではございません。だんだん借り手も安心して投資ができるような条件をつくっていくことの方がまた大事ではないかというふうに考えております。
#149
○原田立君 諸外国では、かなりきめ細かに残存価値の補償について法的規制に基づいて実施されていると聞くのでありますが、イギリスに例をとってみた場合、借地農が土地の改良に投下した資本の残された価値に対する補償を有益費の補償と言い、借地農のつくった建造物や排水溝はもちろん、彼らの使用した購入肥料や購入飼料等も補償の対象とされ、法的に明確に決定されております。わが国においても、ただ単に農地法を改正すれば事足りる方式ではならないと思うのであります。より日本的な適正耕作の準則的なものを明確にし、農地法に明文化する等、具体的対策を考える必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
#150
○政府委員(杉山克己君) イギリスの場合の例を先生は言われたわけでございますが、それはわが国の場合は民法に一番根拠の規定があるわけでございます。民法百九十六条第二項というのがございまして、
 占有者カ占有物ノ改良ノ為メニ費シタル金額其
 他ノ有益費ニ付テハ其価格ノ増加カ現存スル場
 合ニ限リ回復者ノ選択二従ヒ其費シタル金額又
 ハ増価額ヲ償還セシムルコトヲ得但悪意ノ占有
 者ニ対シテハ裁判所ハ回復者ノ請求ニ因リ之ニ
 相当ノ期限ヲ許与スルコトヲ得
ということで、ほぼイギリスの場合と同じような明文の民法上の規定が存するわけでございます。そして、これを土地改良、基盤整備の投資の場合に、さらに具体的に、「償還すべき有益費」ということで土地改良法第五十九条の規定がございます。
 土地改良事業に費された有益費を民法の規定に
 より償還する場合には、償還すべき額は、同法
 第百九十六条第二項本文の規定にかかわらず、
 増価額とする。と、こうあるわけでございます。したがって、先ほど来御指摘のありましたような不安だとか当事者間のちゅうちょを避けるためには、土地改良事業の参加者、それから投資費用の分担方法、それから利用期間終了後の債務の承継の仕方等について、利用権を設定する前に所有者と利用権者で十分に協議しておく必要があると考えております。そういうことを考えながら、地域各投資類型に応じた土地改良投資の円滑な方法等の実態を見きわめて指導してまいりたいと考えるわけでございます。
#151
○原田立君 残存小作地における統制小作料は、ことし九月いっぱいで五千六百六十四円から標準小作料として新しく二万四千六百二十一円、水田については実勢小作料として約三万二千円支払うことになっておりますが、この水準は妥当な小作料と考えられるのか。政府の答弁では、十ヵ年の間で徐々に改善されているので大丈夫というような答弁がさきにあったのでありますが、実態は違っているのではないかと思うのですが、いかがですか。
#152
○政府委員(杉山克己君) この九月で統制小作料の制度のみならず、実態も完全に消滅することとなります。
   〔委員長退席、理事北修二君着席〕
その後、小作関係は解消されるものもありますが、全部が全部解消されるわけでなく、やはり小作として残されるものは相当あるわけでございます。そういったところにつきまして小作料をどういうふうに考えていくかということでございますが、すでに十年間の経過期間中に私はかなりその間の調整は図られてきている、特別に大きな混乱はないというふうには考えておりますが、ただ一般的には、従来の統制小作料がなくなりますと、新しい小作料水準はおおむね標準小作料を基準として定めるというようなことが一般的になってまいろうかと思います。統制小作料が非常に低い水準でございましたから、これが改定されるとなれば、いずれにしてもある程度の引き上げということにならざるを得ないわけでございます。ただ、このことに伴って、私、特別むずかしい問題が生ずるというふうには考えておりませんが、ただ、趣旨の徹底等不十分のため混乱が起こってもいけませんので、そういった混乱の起こることのないよう、農業委員会そのほかの団体等にも十分その指導に努めていただくということを考えておりますし、そのために必要な事務的な経費についても予算措置を図っているところでございます。
#153
○原田立君 残存小作地の自作農化について、政府は融資制度を確立すると答弁しているようであります。その具体的内容は、二戸当たり最高額七百万円まで貸し付けるとしているようですが、全国農業会議所が昨年一月一日を調査時点として実施した調査によると、残存小作地は約十万ヘクタール、そのうち都市近郊農地が二八%となっているわけでありますが、高地価の現在、果たして七百万円の融資で農地が取得できるかどうか大変疑問であります。融資制度のみしか対策がないことも私としては納得できない点でありますが、融資制度とあわせて他の政策を講ずることにより、農地取得ができるよう対策を考えるべきだと思うんですが、この点はいかがですか。
#154
○政府委員(杉山克己君) 残存小作地そのものは、今日まで各所の指導も行ってまいりました結果、かなり減ってまいってきているところでございます。面積で、これは農業会議所の調査でございますが、六万七千ヘクタールというのが農業会議所の調査の結果として五十四年に残存するということになっております。この借入農家の数を見てみますというと四十一万八千戸ということでございます。この四十一万八千戸でいまの六万七千ヘクタールを割ってみますと、二戸当たりの平均面積は十六アールということになるわけでございます。まあ一般の場合、農地等取得資金の貸付限度額は二百万円でございます。それに対しまして残存小作地の解消のための農地等取得資金につきましては、これは本年度、五十五年度から七百万円に引き上げるということにしたわけでございます。これで足りるかという話でございますが、いま申し上げましたように、平均は十六アールというそれほど大きな規模ではないということ、それから単価も、小作地取得一般の場合は十アール当たり五十六万円程度であるというような実績も出ておりますところを見ますというと、私ども特別にこの七百万という金額が低いというふうには考えておらず、まずおおむねの場合はこの範囲内で残存小作地を解消するに必要な資金は賄い得るというふうに考えているところでございます。
 それから、そういう融資制度だけで確かにそういう残存小作地が解消できるかということになりますと、そこは一つは関係者間の意識の問題というようなこともかなりあると思います。やはり当事者間にもそういう理解を進めていただくために、市町村や農業委員会等からそういった点についても十分趣旨の徹底を図るような指導をしてまいる必要があわせて必要と考えております。
#155
○原田立君 十六アールだから七百万円ぐらいでいいんじゃないかと、こういうふうな話でありますけれども、ぼくは七百万円では少ないんじゃないか。あるいはまた他に方法を講ずべきではないかと、こうぼくは思うんですよ。一千万やそこいら辺ぐらいにすべきじゃないか。というのは、これは残存小作地の話ではありませんけれども、きのうあなたも一緒に行った白州町においては、水田の売買、もし売買するような場合については、坪当たり四、五千円だと、こういうふうに言っている。大変な金額になる。残存小作地とあそこのきのう言われているのとはちょっと違うと思いますけれども、やっぱり七百万円ぐらいでは少ないんじゃないか、もう少し増額すべきではないか、あるいはまた他の方法をもっと講ずべきではないかと、そんなふうに思うんですがね。どうですか。
#156
○政府委員(杉山克己君) 十六アールというのは平均でございますから、それより面積の大きい方もかなりあるわけでございます。それからいままでの小作地取得の場合の実績の十アール当たり平均五十六万円というのも、これは全国平均でございますから、これより高いものもあるわけでございます。ただ、そういうことをいろいろ考えてまいりましても、特に残存小作地については耕作権というものを評価して、実際の売買に当たってはその分が差し引かれた金額で売買されるということになりますと、それほど高いことはない。これは先生も御指摘になりましたけれども、それほど大きなものにはならないというふうに見ているわけでございます。そこで私どもは七百万円あれば足りるというふうに思うわけでございますが、これは確かにやってみて実績がどうなるかというようなことも見ていかなければならない話かと思います。まあ二百万円の一般の枠を七百万円に引き上げたというところでございますので、当面私どもはこれで運用してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#157
○原田立君 必要に迫られてくれば七百万円を超すようなことも考えの中にはあると、こういうふうにとらえていいですか。
#158
○政府委員(杉山克己君) 今後の問題としては、実績等について十分それは検討していかなければならないというふうに考えます。
#159
○原田立君 政府は五十五年産米の米価をこの七月に諮問決定することになっておりますが、米価算定の基礎に統制小作料が使われております。この統制小作料はこの九月いっぱいで廃止されることになっているのであります。当然標準小作料で換算することになると思うのでありますが、どの程度のアップが見込まれるか。その点はいかがですか。
#160
○政府委員(松本作衞君) 統制小作料につきましては、従来米価算定の自作地の地代として織り込んでおるわけでございますが、これが本年九月末で廃止されました場合、今後の米価算定に自作地地代をどのようにして取り扱うかということにつきましては、目下検討を行っておる段階でございますので、現時点で具体的にどれだけ上がるかというようなことについてはお答えしかねる段階でございます。
#161
○原田立君 現在検討中であるから公表できないということは、アップすることは間違いないですね。
#162
○政府委員(松本作衞君) 米価の算定自体につきましては、その算定の内容等も含めて現在検討中でございますので、いまの段階で上がるかどうかということをはっきりお答えすることは困難でございます。
#163
○原田立君 全国農協中央会等で算定している実納小作料から計算した場合の試算では約二千七百十二円、一五・九%のアップが見込まれるわけでありますが、政府としてはどのように判断しているのか、見解を伺いたい。また、今後の米価の算定基準はどのように改定するつもりでいるのか、これもあわせてお伺いしたいのです。何かまだいまのところは発表しにくいやなんて言っているけれども、そんなこと言わないで、もっとはっきり言ってもらいたいと思う。
#164
○政府委員(松本作衞君) 米価の算定につきましては、はなはだ恐縮でございますけれども、現在検討中の段階でございますので、この段階で内容にわたってお答えすることは困難でございますので、御容赦いただきたいと思います。
#165
○原田立君 一部の特定の場合に限り小作料の物納制度を認めることとしておりますが、その理由及びメリットはどういうふうに考えておられるか。物納による米については食管法の買い入れ対象となるのか。その点はいかがですか。
#166
○政府委員(杉山克己君) 小作料につきまして物納が認められた場合、食管法上の取り扱いにつきましては食糧庁の方からお答えいただきますが、なぜそういう改正を行うことにしたかという趣旨でございます。
 これはやはり農地の流動化を図るという場合、いろんな抵抗というか、心理的に逆らう要因があるわけでございますが、その一つの大きな理由として、現在農地法では定額金銭納ということで、小作料については金銭でもって定め、かつ金銭で授受しなければいけないということにされております。そうなりますと、自分のたんぼでつくった米を自分の家で食べたい、せめて自分の家の食べる米くらいは現物で確保したいという農民的な希望にこたえられないという点がありまして、そのために貸し出すことを、ほかのことは理解できても、その点で渋るというような向きがないわけではございません。そこで貸しやすくする条件を整備する一つといたしまして、小作料につきましては定額金銭納でなくてもということを考えたのが一つでございます。
 それからいま一つは、これは現行法を守る立場からいたしますと、きわめてお答えしにくい問題があるのでございますが、現実、農家の慣行といいますか、一つの行き方といたしまして、農地法の規定とは離れて、実際に現物、米でもっての小作料納付ということが相当程度行われているという実態があるわけでございます。そういったことの違法性をこれはまあ取り締まるというよりは、現実に即した今日の社会的実態を考慮した法改正でもって対応をするということが必要であろうということで、定額金銭納という現在の小作料の決め方について、あるいはその実際の授受をしなければならないという規定について、これを外すこととしたわけでございます。御承知のように、衆議院の修正を受けまして、この点については原則の定額金納制というものは残されることになりましたが、耕作者の経営の安定を害しない範囲内で農業委員会が適当と認める場合は、これは例外的な扱いということになっちゃうわけでございますが、物納も認められるということになったわけでございます。私どもの趣旨は、その意味でやはりこれは貫くことができるということで現在考えているわけでございます。
#167
○政府委員(松本作衞君) 小作料について物納が認められました場合には、米の場合につきましては、米の流れといたしましていわゆる耕作者から地主に米が譲渡される場合、それから地主が飯米以上の米を取得いたしました場合にこれを販売する場合とが考えられるわけでございますが、ただいま構造改善局長からのお話にございましたように、自分の水田で取れた米を食べたいというような比較的量の限られた飯米用というようなものに近いものになろうかと考えられますので、これを食管法上認めていくということは、食管法の大きな支障になるとは考えておらないわけでございますが、そのためには、食管法上そのような流通の道を開くことが必要に相なります。現在の食管法におきましては、そのような譲渡の特例につきまして農林大臣が指定することができることになっておりますので、ただいまの耕作者から地主に米を譲渡する場合及び地主が自家飯米以上の小作米を販売する場合につきまして、それぞれ道を開いて食管法上の規定を明確にしてまいりたい、取り扱いを明確にしてまいりたいというふうに考えております。
 しかし、地主が取得をいたしました飯米以上の米を販売いたします際には、これを政府が直接買い入れるということは考えておりませんで、これは限度超過以上の余り米の場合と同様のルートを通しまして販売されるという道を開いていきたいと考えておる次第でございます。
#168
○原田立君 まあいまいろいろと話があった。たとえば五反の水田を貸した場合、反当たり二俵で約十俵の米の物納が考えられる。この場合、夫妻、子供二人の標準家族と計算して、半分の五俵が自分の家で消化できるが、残り半分の五俵は配給計画に入らずやみ米となる。すると、政府のやり方では、やみ米発生の後押しをするような政策をやることになるんじゃないかと、こう私は思う。余り米としてそっちの方向に向けるようにすると言うけれども、あんまりいい方策ではないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
#169
○政府委員(松本作衞君) ただいま御指摘のような場合の、いわゆる土地所有者が飯米以上の米を取得いたしましてこれを販売する際に、政府がこれを食管の物資として買い入れる、直接の国の管理の物資として買い入れるということはいかがかと考えておりますが、しかし、それがいま御指摘がございましたようなやみ米に流れるということを避けますために、流通ルートを食管法上明確に規定をしてまいりたいと考えておるわけでございまして、正規の指定集荷業者を通じまして販売業者に販売させるという範囲内で流通を定めてまいりたい。このような流通の仕組みは、先ほど申しましたが、現在も限度超過米につきまして同様な取り扱いをしておりまして、
   〔理事北修二君退席、委員長着席〕
限度超過米につきましては決してこれはやみ米ではございません、正規の流れの米として取り扱っておりますので、そのような形でルートを明示をいたしまして流通をさせたいというふうに考えております。
#170
○原田立君 昭和四十五年の農地法で統制小作料が決まり、ことしから標準小作料となるわけでありますが、近年の小作料の実態からすると、標準小作料すらかなり低水準にあり、一般的には標準小作料にある程度上乗せした実勢小作料が使われているのが現状であります。その場合、小作料率はかなり高い水準に落ちつくのではないかと心配するが、見通しはどうか。また、政府は標準小作料の水準を守っていけると考えているのかどうか。その点はいかがですか。
#171
○政府委員(杉山克己君) 現在の標準小作料、すなわち昭和五十二年度に改定されましたところの標準小作料の全国平均の額は、田十アール当たりで約二万五千円となっております。それに対して実勢小作料は、これは米生産費調査によりますところの全国加重平均ですが、三万二百円ということになっており、単純に比較いたしますと相当程度の差があるわけでございます。しかし、標準小作料では土地改良維持管理費は借地人負担を前提としている。そういう実情を考えますと、この分を控除して算定するということになりますのに対しまして、実勢小作料では土地所有者が負担しているという現実があるわけでございます。そういう土地改良の維持管理費を小作料に含めている場合が多いので、これを差し引きますと、両者の間にはそれほどの乖離はないのではないかというふうにも思われます。ここら辺は実態分析をもう少しやらなければいけないのかもしれませんが、若干は実勢小作料の方が高いかもしれない、しかし、それほど大きな差ではない、一般的にはそう言えるかと思います。
 それから、そうはいいましても、個別の問題として本当に幾ら出しても借りたいんだという農家があるという場合には、かなり大きな開きが出る場合もあり得ます。しかし、これは土地生産力だとか借地人の経営規模、そういった点から見て、生産性が高いとか、あるいは収益性が高いとか、特殊な作目であるとか、そういうもろもろの事情が反映すると思われます。そういう地域や経営の事情に応じて個別には相当の乖離も出てくる場合があるというふうに考えておるわけでございます。
 そこで、標準小作料自身を適正に今後決めていくことができるかということでございますが、標準小作料は、御承知のように、その農地の粗収益から各種の経費、つまり労賃でありますとか、農用機械の償却等の物財費、そういったものを差し引いて算定されるわけでございます。こういう標準小作料の算定につきましては、五十五年度がちょうど改定の時期にもなりますので、私ども、ちょうど統制小作料が全くなくなるという事態にもなりますので、適正な標準小作料を算定するよう農業委員会に十分指導をしてまいりたいと考えております。
#172
○原田立君 適正な標準小作料を農業委員会等に指示するということでありますけれども、その改定の基準ですね、これはどんなふうに指導するのですか。
#173
○政府委員(杉山克己君) 現在でも、通達を出しましてかなり詳細な算定基準といいますか、考え方の基本をお示しいたしております。私ども、当然耕作者の経営の安定を図るということで、先ほども申し上げましたが、労賃でありますとか、農用機械の償却等の物財費でありますとか、そういったものが適正な水準で確保されるように算定してもらうというようなことを中心にいたしまして、改めてまた通達によってこれを指導してまいる、相当程度具体的な算定基準をお示しするということを考えているわけでございます。
#174
○原田立君 農用地を小作人以外の者に転用を目的として売り渡そうとする場合には、その販売価格の五〇%ぐらいを耕作権の保障という形で小作人に払うことが慣行化されていると聞いております。このような離作料の発生は、農用地の流動化を阻害する原因だとして、昭和五十年の農振法改正で、農用地利用増進事業の措置により離作料防止が行われてきたところでありますが、本来農地法上に特段の規定もなく、事実上発生しているのが現実であります。実態はどうなっているのか。また、政府は離作料についてはどのような位置づけをしているのか。やはり禁止規定を明確にするくらいの措置が必要ではないかと思うのでありますけれども、この点はいかがですか。
#175
○政府委員(杉山克己君) これは何といいますか、当事者間の経済行為でございまして、一種の慣行化した実態があるわけでございます。離作料の支払いは農地法の賃貸借の解約等の規制とも関連いたしますので、地域的な差でありますとか、解約の事由などでもって差がありますが、いま申し上げましたように全国的な慣行となって行われております。小作地の解約のうち離作料の支払いのあったものは、農地移動実態調査、これは五十二年に行ったところでございますが、これによりますと、耕作目的の解約で二二%、それから転用目的の解約で六二%ということになっております。解約されたもののうち、つまり耕作目的の場合は二二%が、転用目的の場合は六二%が離作料支払いの対象となったということでございます。
 農地価格に対する離作料がどのくらいの割合を占めているかということを見ますと、いま先生は半分くらいではないかというようなことも言われましたが、まあおおむねの見当としてはそういうことも言えますが、少しこれを分けて見てみますというと、全国農業会議所の調査でございますが、田の場合は、耕作目的の場合は、地価の三割未満の支払いがあるものが四二%、それから三割ないし五割水準のものが五六%ということになっております。それから転用目的の場合は、これが若干高くなりまして、地価の三割未満の支払いがあるものが三六%、それから同じく三ないし五割のものが六〇%ということになっております。
 離作料は耕作権保護の法規制も関係いたしまして、本来離作の際の耕作者に対する立毛補償でありますとか、中途解約の場合の損害補償でありますとか、あるいはかかった有益費の償還として処理さるべきものがその中に含まれるとか、種々の経済的な関係が渾然として中に込められているというような性格を持っておるわけでございます。
 今後こういった離作料の問題についてどう考えるかということでございますが、確かにまあ新しい農用地利用増進事業で考えておりますところの利用権の設定の場合は、こういったものがあれば利用権設定そのものが十分に行われないということがあるわけでございます。そのことが不安でまあ貸し出しもできないというような農家も出てくるわけでございますので、今後の問題につきましては、私どもはそういうことなしに、その点は耕作権保護という点と若干うらはらの話になってくるわけでございますが、離作料の支払いというものはなくしていくということで考えております。そのことは農用地利用増進計画の中でも示されるということで考えております。
#176
○原田立君 税制上から見ても、耕作権が資産として評価されております。現実に離作料の裏づけがある以上、間違いとは言えないと思うのでありますが、小作人の相続に関する課税、税制上の実態はどのようになっているんですか。おわかりになりますか。
#177
○政府委員(杉山克己君) 御指摘のように、小作人の耕作権は、これは現実、慣行として離作料が支払われるというような実態が反映されまして、資産価値として評価されると、課税上の取り扱いはそうなっております。
#178
○原田立君 だから、小作人の相続に関する課税、税制上の実態はどうなっているかと聞いているのです。
#179
○政府委員(杉山克己君) いま申し上げましたように、財産として評価されるということの取り扱いを受けているわけでございます。もう少し細かく申し上げますと、その評価基準は、基本通達によりまして二分の一で評価すると。耕作権についてはその耕作権割合を百分の五十ということで評価するということになっております。
#180
○原田立君 農地法第二十条によって、小作地が貸し主によって引き上げられるような場合、離作補償を伴った引き上げがどの程度の割合を占めているのか、その実態をお伺いします。
#181
○説明員(若林正俊君) 実態の数字でございますので御説明いたします。
 お話しの賃貸借の解約の際、二十条の解約等の際の離作料のあるものの割合でございます。耕作目的の解約の場合にありましては、四十五年九月以降の権利設定されておりますのは五・八%でございますが、全体平均で見ますと二一・八%、転用目的の解約につきましては、四十五年九月以降のものについては二四・九%でありますが、平均で申し上げますと、先ほど局長御答弁申し上げましたが、六二・三%でございます。
#182
○原田立君 離作補償のあり方として、一般的には耕作目的と転用目的の場合とでは著しく異なると言われておりますが、その実態はどうか。また、離作補償はいかなる水準で決められていくのか。その点はいかがですか。
#183
○説明員(若林正俊君) その耕作目的の場合と転用目的の場合に、現実においてかなりの差異がございますのは、ただいま御説明を申し上げたとおりでございます。この場合、現実の一筆ごとに当事者がどの程度の割合を離作料割合として収受しているかにつきましては、一つはその地域の慣行によって定められておりまして、地域ごとに大変に異なっているわけでございますし、またその当事者の契約関係にはそれぞれの経過がございます。それらの経過によって異なっているのが実情でございます。
 なお、全国的な割合がどういうふうに分布しているかにつきましては、先ほど局長から御答弁したとおりでございます。
#184
○原田立君 大臣、もう時間でありますから、お伺いするのですけれども、今回の農用地利用増進法案で自作農主義の持つ意味を十分尊重していきますと、そうしてただし借地もできるように道を開いているのだと、こういうことで自作農主義時代から借地農主義時代と、こういうふうにずうっと進んできたというふうに私は見るわけでありますけれども、これは非常に不安に思う点であります。やはり所有権の移動による農用地の有効利用策等を十分重視していかねばならないと、こういうふうに私は思うのでありますけれども、その点の御見解をお伺いしたい。
#185
○国務大臣(武藤嘉文君) 農地法の精神でございます自作農主義というものは、私どもは今後も貫いていきたいと思っておるわけでございまして、この農用地利用増進事業によりまして農地の流動化が図られ、借地がふえてまいりましても、やっぱりそのもととなる自分の土地、農地は持っておるわけでございますから、私はやはりそういう点において、今後とも自作農主義というものは貫いていけると、こう考えておるわけでございます。
 また同時にもう一つの、日本の場合農用地というのは少ないわけでございますので、できるだけ農用地を有効的に活用していくということは、今後の農業として当然の姿であると思っております。
#186
○原田立君 大臣、有効利用増進、それはわかるんですよ、否定をしているわけじゃないんですから。だけれども、自作農主義というその基本の考えは当然変えない方向で進めていくんだということを、あなたは前段では言っているんだけれども、後段で、何かもやもやっとしたような言い方をなさるんで、どうも私は理解しにくい。もう少しはっきり御答弁願いたい。
#187
○国務大臣(武藤嘉文君) 基本的には、自作農主義、いわゆる耕作者が自分の土地を持って耕作をするという基本的な考え方は今後とも推持をしていきたい、こう考えております。
#188
○下田京子君 まず、農用地利用増進法に関して質問いたしますが、本法は、そもそもその大きな目的といいますのは、利用権の設定等を促進するということにあるわけですね。そういう点から見れば、賃貸借のみならず、今度は所有権の移転ということも含めて農地の流動化を図るんだよと、こういうふうにこの法案は述べていると思うんです。私は、賃貸借の場合で申しますと、確かに貸し手が貸しやすくなるという点での一定の条件は見られる。つまり、これはいままで農振法の農用地利用増進事業でやってきたことで一部明らかになっておりまして、農地法の第六条、小作地所有制限の適用除外をするというふうな点でのメリットも考えられますし、それからこれが一番大きいと思うんですが、第十九条ですね、更新時のときに、期間が過ぎればもうこれは一方的に解約できるということで、農用地利用増進事業なるものが、本当に貸し手が貸しやすくなってきた、それを今度の単独法案の中で盛り込むという、それは一点わかるんですが、所有権の移転をこの中に入れたということ、これが政策的な目的から言って、果たしてより積極的な意味を持つんだろうか。つまりは、所有権レベルでの流動化という点で、農地法というものが決して邪魔に――邪魔というか、その阻害要因になっていたとは言えないわけですね。とすれば、それをあえて入れたという点で、本当にその積極性がどこにあるんだろう、こう思うわけなんですが、この点は大臣いかがでしょうか。
#189
○政府委員(杉山克己君) 法律的な取り扱いの問題でございますので、若干、私から御説明申し上げます。
 確かに、農用地利用増進事業の中核は、利用権の設定というところにございます。ただ、農用地利用増進事業もほかの農地流動化各種対策と同様に、農地の流動化ということを考えているわけでございます。流動化というふうに広く解します場合、所有権もその対象として、流動化の一つのむしろ基本的な姿でございますので、これを促進するということは、これはあってしかるべきだというふうに考えます。
 それから利用権の設定の場合、先生おっしゃられたように、確かに法律上の効果がはっきり、農地法の適用について緩和が行われる、あるいは除外が行われるということで、その点ははっきりしておるのでございますが、所有権につきましては、農地法上の規制の問題は特段変わったメリットがあるというわけではございません。ただ、農用地利用増進事業は、法律上の規制が除外されるとか、あるいは緩和されるということのほかに、むしろ当事者が安心して貸し借りできる、所有権の場合は売買できるというような、そういう全体の体制づくり、そういう組織づくりというものが一つ基本になってまいると思います。
 それから同時に、そういう個々の権利の設定なり移動ということだけでなしに、地域全体としての農地の有効利用ということが対象になってまいると思います。そういう意味から、新法では所有権の移転も含めまして、むしろ全体としての農地の有効利用、それから流動化の促進ということを考えて対象に含めることといたしているわけでございます。
#190
○下田京子君 局長にお願いしておきたいのですけれども、時間がございません、限られています。質問したことに端的に答えていただきたいわけです。
 その一つの、所有権レベルでの農地の流動化という点では、これは積極的なメリットはございません、こうはっきり申されましたね。そうしますと、なぜあえて入れたのか。その後段部分で説明されました、つまり集団的な農地の利用だとか、所有権についてのあっせん事業もと。こういうことを私たち全然否定していないわけです。これは現行農地法上でできるわけです。なのに、いまいみじくも御答弁ございましたように、この増進法の中に所有権レベルでのというこの利用権設定を入れた積極的なメリットはないのに、なぜ入れるのですか。これは外してしかるべきではないか、こう思うわけなんです。大臣、どうでしょう。
#191
○国務大臣(武藤嘉文君) やはりもう一つ所有権の移転がない場合、貸し借りの場合の利用権設定もありますけれども、所有権を移転することによって、それを利用権設定等促進事業に含めることによって、よりそれが効果が上がっていく、農地の流動化が促進をされるということにおいて、私は入れることは決してマイナスではない、こう考えているわけでございます。
#192
○下田京子君 現在の農地法で、農民的な土地所有を否定していないのですよ。大前提なんです。しかも明らかになったことは、この増進法の中に、所有権の移転によって流動化という点では特別なメリットはないと、こう局長から答弁があったわけなんです。とすれば、全体としてのあっせん事業がどうであるとか、あるいは土地の有効利用がどうであるとかいうのは、これはもう当然私たち否定すべきものではなくて、行うものでありますから、増進法の中に所有権の移転をも入れたと、つまり所有権の移転ということによっての農地の流動化ということを図ろうとした政策目的は、これは積極的な意味が何らないということが証明されたと思うのです。
 それで、次に移りたいと思うのですけれども、第二番目には、農地法の三条の問題ですが、農地法三条のいわゆるコントロールがより強化されるのかどうかという問題であります。この農地法の三条の意味というのは、四条、五条の転用規制と一体になって、農地を耕作目的に供して、その権利の取得者を規制して、農民以外の取得を排除するというところに大きな目的があるわけですね。とすれば、今回のこの増進法の中に所有権の移転を入れたということが、この農地法三条のコントロール強化という点でより積極的な意味を持つというならわかるわけなんですが、それがどうも見えないんですね。
 そこで第一にお聞きしたいのが、今度の政府原案の方ですけれども、修正された部分じゃなくって。第三条の二項二号ハ、ここに、「移転される所有権の移転の対価の算定基準及び支払の方法」というのが書かれておりますが、この際の対価の算定基準というのは何をして算出されるのか。まずこの点についてお聞かせください。
#193
○政府委員(杉山克己君) 実施方針で定める所有権の移転の対価の算定基準といたしましては、農業上の利用を目的とする近傍類似の土地の売買価格、これに比べまして、適正な時価を基準として当該土地の生産力等を勘案したものを定めるということになると考えております。このことによりまして、耕作目的での通常の取引価格を著しく上回る農地取引は、この利用増進事業に乗せられないということになりますので、農地法、農振法の厳正な運用や、本法による自主的な土地利用秩序の形成と相まって、一定の抑制効果を持つことを期待しておるところでございます。
#194
○下田京子君 農業用のということがついておりますが、近傍類似の価格と、こういうことですね、
 具体的にお尋ねしますと、農水省では、農地二法の参考資料の中で、これは全国農業会議所調べのものですけれども、耕作目的の農地価格が示されておるわけです。四十四ページに載っているんですけれども、中田で昭和三十五年当時十アール当たり十九万八千円だった。それが五十四年になるともう三百六十二万四千円と、実に十八倍にもなっているわけなんですね。こういう状況の中で、さらに私が福島県の会津地方に調査に入りましたことは過日の質問でも申し上げましたけれども、その中で明らかになったことは、河東町というところで、ことしの三月に十アール当たり四百七十万円だった。それが四月に五百万円になって、最近五百四十万円。それから、そのお隣の北会津村というところ、これは三十アールがなんと二千万円で取引された。十アール当たりにしますと、なんと六百七十万円相当にもなります。これらの価格はいずれも耕作目的、いま局長答弁のとおり、いわゆる農業用としての土地価格としての売買の実態であるわけなんです。これが対価の基準とすれば、高価格もオーケーと、こういうことになりはしないかと大変心配であります。この点どうでしょう。
#195
○政府委員(杉山克己君) いまの全国農業会議所の調査の数字でございますが、全平均でとりますと三百六十二万四千円というのは御指摘のとおりでございます。ただ、実際の農地の移動というのは、都市計画地域といいますか、市街化区域がかなり大きな割合を占めると思うわけでございます。そういう都市計画の線引きのない旧市町村の農用地区域内の金額は百二十万二千円となっているわけでございます。
 それからいま先生御指摘の、会津の地域での、四百七十万が五百万になり五百四十万になる。それから、特殊な事例かもしれませんが、二千万円という事例もあったということでございますが、これは明らかに農業用の収益をベースに置いての価格ということでは高過ぎると思います。それは何らかの特殊事情が反映しているものと思われるわけでございます。
 そこで、先ほど私、近傍類似の取引の実績を基礎にするということを申し上げましたが、それは、そういう特殊なものをわざわざ取り上げるというようなことではなくて、一般的に農業用の収益、農業生産ということを考えての適正なそういう取引実例を参酌するということが当然基本になるべきだと考えております。そういう特別に高いものを、たまたま例があったからといって、それを例にとることは妥当でないと考えます。
#196
○下田京子君 農業会議所の方は区域外のことも入っていると、それから会津の例はたまたま特例だと。ですけれど、この会津のいまお話ししたところは水田単作地帯です。純農村地帯なんです。特殊な例じゃないんです。もう例を挙げれば、その近辺、これは会津若松市という人口十万ちょっとの市なんですが、そこを中心とした近郊農村地帯の町村がすべてこういう状態になっているんです。仮にここでこの事業を仕組んでいって、所有権の移転売買がなされたときのこの対価基準ということは、近傍類似ならこれが入るんじゃないですか、いまのことは。ですから、そういうことでいけば、これはもう高価格の追認ということをはっきり逆に言うかっこうになってしまうと思う。それとも、なんですか、そういう価格について何か条件がつけられる、あるいは指導ができるというふうなことを前々からちょっと言っておりますようですが、実際に法律的には、これは二十七年の施行通達でですか、許可条件として価格については価格統制を行っていない以上はやれないのだと、こういうふうに言っているわけでしょう。とすれば、一体こういうふうなものが全くのたまたま珍しいケースでなくて、現実に起きているわけですね。とすれば、どういうふうになさるおつもりなんですか。
#197
○政府委員(杉山克己君) それは、まさしくいま言われましたように、農地価格の統制、これを行っているわけではございません。直接幾らの価格で取引しなければならないというような規制はできないわけでございます。むしろ私ども考えておりますのは、基本はやはり当事者間の話し合いで決められるわけでございますが、それが全くの野放しでいいかということになりますというと、これはまさにどこまで上がるかわからない。やはりそういったことについての一つの目安というものをお示しする。その意味では、賃借料の場合の標準小作料と同じでございますが、そういうことで適正と考えられるものとして、近傍類似の農業目的のための土地の売買についての実績をとるということを申し上げたわけでございます。
 ただ、御指摘のように、それが種々の事情からむしろ高い実績になって、それを追認する、あるいは悪い影響を与えるというようなことがあるということは、これはあり得ると思います。
 そこで、その問題についてはむずかしい問題がいろいろございますので、農業委員会、全国農業会議所等とも十分相談して、慎重に、どういう基準でそれを決めていくかと、たとえ目安とはいえ、一つのそれがよりどころになるわけでございますから、そういう点について検討してまいる必要があろうかと考えます。
#198
○下田京子君 二つの問題があると思うんです。
 一つは、近傍類似の価格で決めると言っておりながら、それはたまたま特例だとおっしゃっていますが、その地域にあっては特例じゃないです。それは通常価格になってしまう。そういう点で一つ問題がある。
 それから二つ目の問題というのは、全国農業会議所と関係団体といろいろと協議をしてと、こうおっしゃいますけれども、この増進事業を、増進法という法律に基づいて一回限りの公告という行政的な行為でもって取引をしてしまうというふうな問題であるだけに、もしその近辺の価格よりも低いということになったら、むしろそれは増進事業に乗っかるどころか、それはいろいろな土地の集団的な効率利用という話には乗るでしょうが、取引そのもの、いわゆる所有権の移転そのもの、その行為そのものは農地法の中でやられるというかっこうになると思うんですよ。そうすると、増進法に乗っけてきた、それで逆に言えば三条のコントロールというふうな、いわゆる農業と称しての所有権移転の云々で特別なメリットが何らないということがはっきりしたと思うんです。
 その次にまた問題があるんですけれども、いまのお話で、取引の問題ですが、農業用であるかどうかという点で、取引していく段階でどんなチェックができるんだろうかなという問題なんです。これもいまのお話の続きで申し上げますけれども、会津若松市が百二十一号バイパスを建設するわけですね。その用地、その周辺の用地買収がされるわけなんですが、その用地買収を実は会津不動産と会津土地開発とそれから東武不動産と若松ガスという四つの不動産業者が、坪七万円、反当二千百万円で農地を取得しております。そして、その取得のかわりといって、農地を移譲した農民に代替地というかっこうでもってまた別なところに求めていくわけなんですね。そのためにばんと農地価格がひとつの呼び値みたいになって上がってしまうんですね。
 いずれ本当に農業用としてやっていくならばどのぐらいの価格が適当なのかということで、その地域の皆さんにお聞きしましたらば、粗収益の十年分がせいぜいだ。どのくらいになりますかって聞きましたら、お米一万七千円として十俵で、だから十年と計算すれば百七十万、ぎりぎり二百万。二百五十万となると、これはとてもじゃないけれども農業用として土地は取得できない、こういうふうなお話をされております。
 こういう問題について、その取引の段階で現行農地法の第三条の二項の八号、ここの部分で厳密に運用してチェックすることができないだろうかという問題なんです。これは四十五年の農地法改正の通達のときに出ているんですね。どういうふうに通達されているかという点で、ちょっと読みますと、農地法の「第二項第八号の規定は、」云々とこうあるんですが、
 転用目的で売却をした農地の代替地をその住所
 から遠隔の地に取得し、その取得後非効率的な
 耕作や耕作放棄をする等の傾向がみられること
 にかんがみ、そのような農地等の権利の取得は、
 その土地の農業生産の低下をもたらすのみなら
 ず、その地域における農地等の効率的な利用を
 妨げることとなる場合もあるので、このような
 農地等の権利の取得を抑制するために設けられ
 たものである。こういうふうに言っております。ですから、いまのようなことの例からいけばこの適用ができないものだろうか、こう思うんですが、この点はどうでしょうか。
#199
○政府委員(杉山克己君) まず前段の代替地取得の問題でございますが、確かに公用公共施設用地を提供した場合、代替地の取得が認められております。このことが一般的な農地価格をつり上げることになるのではないかというその御指摘、確かにそういう面もあると思うわけでございます。その点につきましては、農地法三条の許可の要件、農用地利用増進法の農用地利用増進計画の受け手の要件といったようなものを市町村農業委員会が厳しく審査するというようなことによって、投機的な、ないしは投資的な取得を防止するということに努めていく必要があると考えるわけでございます。
 それから、そういうこととの関連で、農地法第三条第二項第八号の規定があるわけでございますが、その規定の運用についてどうかということでございますが、これは農地の効率的な利用を確保するという観点からの規制の規定でございます。この規定につきましては、いまお読みいただきましたように、四十五年改正によって現在の規定になったものでございますが、わが国の経済の高度成長に伴う地価の高騰、転用期待の全国的拡散といったようなことによって農地の資産的保有傾向が強まって、農地が投資目的によって取得される傾向が出てまいったものですから、当時、そのような農地取得を抑制するということで出されたものでございます。取得者の現在の経営状態がその保有農地を効率的に利用していない場合、それから転用売却に伴う代替地取得等でその通作距離が通常の通作距離に比べて著しく遠い、そしてその農地の立地条件、取得面積、道路事情等から見てその経営条件が著しく低下している場合など、取得農地を効率的に利用して経営することはできない、認めがたいというときは許可しないということにいたしております。
 まあそういう考え方でございますが、具体的な判断基準になりますと、これは当該地域における農地取得の状況、通常の通作距離、立地条件、それから道路、土地基盤の整備状況、こういった条件によって差が出てまいります。全国画一的な基準は定めがたいのでございますので、各地域の実情に即してあらかじめこれを決めておくように農業委員会等に指導しているところでございます。この号につきましては以上のように運用しておりますので、その取得農地が住所地外の市町村でも通常の通作距離と変わらない場合はともかく、その取得農地が住所地から遠隔地にあって、投資的な目的で取得し、効率的な利用ができないと認められるような場合には、この号の運用によってその農地取得は抑制できるというふうに考えております。
#200
○下田京子君 いま私ちょっと言葉足らずのところがあったんですが、その例の代替地取得とされたのが、いわゆる遠隔地に相当するのではないかという、若松市のバイパスを抜くための代替地として近隣の町村の農地が買われているという状況なんですよね。そうすると、いまのような点での第三条二項の八号というものの運用ができるだろう、こういうふうに私は質問したわけですね。それは地域地域にあるけれども、そのためにこそこれがあるんだと、こうおっしゃっております。とすれば、今回の増進法でこういう、たとえばいま言った代替地の取得で非常に遠隔地云々なんという非効率的な農地取得、こういうものはどのようにチェックできるんですか。
#201
○政府委員(杉山克己君) 私御答弁申し上げましたのは、三条二項八号の規定は、これは代替地取得に限らず一般的に適用される規定でございます。ただ、こういう規定が実際に働く場面は代替地取得の場合などにはかなりあるんじゃなかろうか、そういう意味で一緒に込めて答弁いたしました。
 それから、具体的に実際にこれをどう運用していくかということでございますが、これは一律に決めますとなかなか現地の実態と合わないというようなことも出てまいります。普通は距離ということでございますが、道路事情が特別によければ距離も大して苦にならないというような場合もございます。全体の営農がどういうふうに行われているか、労働力や技術の問題がどうであるかというようなことも含めまして、総合的に判断していく性格のものであろうかと考えております。こういった点については、これまた農業会議所なりあるいは農業委員会等と十分慎重に相談していく必要があるというふうに考えております。
 その考え方について、今回の利用増進事業についてはどう考えて取り扱っているかということでございますが、その点は農地法一般の場合と全く同じに考えております。
#202
○下田京子君 農地法一般ということですが、具体的にこの条文のどこに出てくるんですか。
#203
○政府委員(杉山克己君) 農用地利用増進法案の第六条第三項第二号に規定する利用権等の受け手の三つの要件、これは農地法の第三条第二項の許可要件のうち、全部ではありませんが最も根幹的なものと考えられる第二号、第四号、それから第八号に掲げる要件と同じ趣旨でございます。
#204
○下田京子君 違いますよ。私、原案で言ってほしいんです。原案でしてください、原案で聞いていますから。
#205
○政府委員(杉山克己君) そういたしますと、第五条の規定でございます。その第三項をごらんいただきますと、農用地利用増進計画の要件がございます。三項でございます。その三項の二号の、これは長い規定でございますが、イ、ロ、ハとあるうちのハでございます。もう一遍申し上げます。当初原案の法第五条の第三項、その二号のハでございます。読み上げますと……
#206
○下田京子君 結構です。どこに入っているかということはわかりました。ただ、そうしますと、農地法の規定のところよりも非常に抽象的になっているということはもうはっきりしておりますね。これは第三条の二項の中で、農地法の場合には一号からずっと八号までいろいろと詳しく出していて、その運用規定等も出しております。問題は、いま言ったような代替地取得等なんかを含めますと、市町村外居住者の権利取得というものが出てくるわけですね。そういう許可は非常に今回の農地法の場合だって知事ということにはっきり言っているわけなんです。ところが、増進法の場合では、市町村が計画を決めたら、公示したらそれでおしまいよと、こうなるわけなんです。しかも、いまのお話のように、非常に抽象的に一項でぽんと書いてあるだけですね。
 とすれば、私がいままでずっと主張してきておりますが、農地法上から見るよりもより抽象的になっている。私は、より積極的なコントロールする意味があるならわかると、こう言ったわけなんですが、そうじゃないということが明らかになりましたね。
 三番目の問題なんですが、さらに違反事例の内容なんです。違反があった場合どうするかということで、いまの市町村外居住者の問題なんですが、転用売却した農地の代替地を取得して購入したんですけれども、実際にはみずからが耕作しないで、もとの所有者に耕作をさせているというふうなこと、これは現行農地法でいけば、明らかに農地法第三条二項二号等に示すような点から言って違反だと、こういうふうに思いますし、とすればその許可は無効もしくは取り消しというようなことになるんではなかろうかと思うんですが、この点はどうですか。
#207
○政府委員(杉山克己君) そこは、考え方としては農地法の場合と同じ判断でございます。農用地利用増進計画の作成、それからその公告、それが農用地利用増進法に定める要件または手続に違反しておる、それから、かつその瑕疵、傷が重大かつ明白であると認める場合は、その公告は無効な行為として市町村は取り消すことができるということになっておるわけでございます。
#208
○下田京子君 いま私いろいろとこうお話をしてまいりました。一つ一つこれは問題があるという点で、今回の増進法の単独法の中に、いわゆる政策目的である利用権等設定事業によって農地の流動化を図るという点での所有権の移転を含めるということが、何ら積極的な意味を持たないということが非常にはっきりしてまいりました。
 残るのはまさにこれは農地法の三条を穴抜きした、形骸化、それだけが残ると思うんです。ということは、いろいろとそれは今回の増進法を進めてほしい等々の御意見をお持ちの方も含めて、農地法の三条の適用が一体どうなるんだろう。それからまた、過去の経緯を見まして、農地法が五年おきぐらいずつにいろんな形で部分的にこういじられているんですね。いまは三条だけだよと言いますけれども、より積極的な意味のないものをあえて増進法の中に入れたというそのことは、やがてまた三条というのが四条、五条との関連で運用されるという点があるとすればなおさらのこと、これはまた次の段階で四条、五条というふうなところに手をつけられる、そういう危険があるんじゃないか。みんなが心配されているのはこれは同じだと思うんです。私はその問題をこの際はっきりとして指摘をしておきたい。幾ら大臣並びに局長が、農地法の精神で、農地法はいじらないでと、こうおっしゃっておりますけれども、増進法の中に含む所有権移転の促進事業の中に入れるということの意味が何もない。なのにかかわらずそれを入れるということの目的は何なのか。残るは農地法の形骸化という問題だけだということを繰り返し私はここで指摘しておきたいと思います。
 次に、農業委員会の制度の問題に入りたいと思うんです。
 農業委員会の制度の問題で、私やはり農振法の中の利用増進事業をやられている皆さんの苦労をこう見てまいりまして、あれは本当に大変だなというのが尽きるところです。特に増進事業を進めていく上での農業委員会のあり方というのが際立って重要だということを一つ感じているんですね。今回の増進法によれば、農業委員会が確かに一つの計画を立てる段階で、「農業委員会の決定を経て」と、こういうふうになっておりますけれども、二つのタイプが考えられるんじゃないか。つまり、実質的に市町村が定めて、それを農業委員会が形式的に決定をするというタイプの市町村もあるだろうし、あるいはまた実際に、市町村というのは農地を守ることだけじゃなくて、農業的農地の守り手という点と同時に、いろんな施策も進めておりますだけに、これはもう自治体というんじゃなくて、農業委員会が責任を持つという形で農業委員会自身が増進計画をつくるところもあると思うんです。
 いずれこういう二つのタイプがあると思うんですけれども、そういう点からして、会津の高田の農業委員会、これは非常にしっかりしているんですが、長いことやっているということもあります。それで、いろいろもう個別にも実施しておるんですが、ここではこんなことを言っていました。増進事業でいきますと、とにかくばーっと耕作時期に合わせなきゃならないから、もう一括して短期間に処理をしなきゃならない。ですから、よっぽど専門的な知識と事務能力があるか、でなかったらば適当に処理するかのいずれかなんだと、こういうことも言っておりました。
 そうすれば、さっきの所有権の方になりますが、たった一回のしかも公告ということで終わるという問題がそれで処理されたらとんでもないという御意見も当然出てきますが、とにかく、増進事業を進めていく上で農業委員会の事務局体制といいますか、これが非常にまた大事だなということを改めて痛感した例なんですが、具体的には、第二十条の関係で農地主事を置かなければならないと、こう規定していると思うんですけれども、実際に全国を調べますと、全部が全部農地主事を置いているということになっていないんですね。やはり農地主事というものがもう少し、身分的な保障はあるけれども、いわゆる仕事の上での具体的な裏づけを持たせることはどうなんだろう。つまり、第二十九条や三十条と関係づけまして、立入調査だとか公簿の閲覧だとか、そういうものをやっていく上で農地主事の果たす役割りというものは非常にまた大きくなるだろう。そういうものをきちっと位置づけますと、単に二十条で置かなければならないだけじゃなくて、もっと体制が強化されるだろうと、こう思うんですが、この点はどうでしょうか。
#209
○政府委員(松浦昭君) 農地主事の未設置の事情でございますが、中央農政局等を通じましていろいろと調べてみますると、制度に対する認識が希薄であるという点もございますが、市町村との人事交流の際に知事が承認等の手続きをとらなかったというような場合とか、あるいは他部局への異動がなかなか困難になるというような事情から職員が余り希望しないといったような事情、あるいは身分保障の点につきましては、確かに法二十条におきまして規定があるわけでございますけれども、現在の情勢では、必ずしも、トラブルが少ないために身分保障を必要としないというようなことから未設置の状況にあるというのが大半の理由であると聞いておるわけでございます。私どもとしましては、農業委員会等に関する法律の第二十条におきまして農地主事を置くということが決まっておるにもかかわらずこれを置かない農業委員会が多いということははなはだ遺憾でございまして、今回の制度の改正を機会に、強力にこれを設置するように指導いたしたいというふうに考えております。
 最後に先生がお尋ねになりましたところの権限の付与がこれに関連しているかどうかという点でございますけれども、この点につきましては、農業委員会等に関する法律の第二十九条と三十条をごらんになっていただければ、職員につきましては立入調査権がございます、もちろん委員もございますが、それから帳簿閲覧権も規定されておりますので、法の上ではきちんと整備されているという形になると思います。
#210
○下田京子君 承認手続と、それからまた職員が希望しないとかいろいろあるが、これから極力体制づくりのために指導する、これはそう言えば、それだけのしっかりした裏づけというものが大事だと思うのです。これは事務局体制の確立と同一のものであるとも考えられますだけに、いま一・何人か分だけは出しているというような状況なのですが、もう少し資金的な裏づけが、これはもちろん財政的なことを伴うわけなのですが、当然あってしかるべきだろう。特に集団的な農地の有効利用と、本当に農民的な農業の農地の賃貸等を考えていけばもう当然の話じゃないか、こう思うわけなのです。
 それから、二十九条と三十条の話は、そこにはあるけれども農地主事等は別に明記もしてないので、いまの答弁で広く解釈して農地主事もあるよというふうなことなのでしょうが、特に農地主事がというふうなことでも入るとまたちょっと違うかしらと思ってこちらの方から提案をしたという経緯がございますが、財政的な裏づけの問題と、事務局体制全体の強化とあわせた、あるいは一部法律の運用上の問題等も含めた指導という点でもう一度答弁いただきたいと思います。大臣、これは財政的な問題はいろいろ大蔵とも絡みますので、大臣の決意を聞かせてください。
#211
○国務大臣(武藤嘉文君) 農業委員会のこれからの役割りというのは、この農用地利用増進法案が成立いたしますと相当いままで以上に重要なものであるわけでございまして、その意味において、従来も私どもは農業委員会に対しては相当財政的に負担をしてきたつもりでございますけれども、今後、より一層財政充実については私ども国が責任を持ってやっていかなければならない、こう考えております。
#212
○下田京子君 次に、今度の農業委員会法の一部改正の政府原案の方ではなくて修正案の方なのですけれども、修正案というか、これはもう修正で出されてきたわけですが、その修正案のところでいわゆる定数の問題が出ております。定数のところで、特例として「市長が都道府県知事の承認を受けたものについては、四十人」というふうなことが規定されるわけなのですけれども、この適用を受ける市は全国でどのくらい考えられるものでしょうか。
#213
○政府委員(松浦昭君) 農業委員会等に関する法律の第七条の改正規定につきましては、さきに衆議院におきまして、選挙による委員の定数の上限を農林水産大臣が定める基準に該当する市においては四十人とすることができるというふうに修正がなされたところでございまして、恐らくその趣旨は、広域の市におきまして、各地区の実情を反映しまして適切に農業委員会の業務を執行し得る体制を確立するようにということにあるというふうに私どもは考えており、受けとめておる次第でございます。したがいまして、もし修正どおり法案が成立したという場合におきましては、このような御趣旨を当然尊重いたしまして、具体的な基準を検討してまいらなければならないというふうに考えております。
 具体的にはどのように考えるかということでございますが、農業委員会の選挙による委員の定数は、現行法上も農地面積あるいは基準農業者数を勘案いたしましてその上限を定めているところでございまして、今回の改正法案におきましても、特例を認めるという場合が出ました場合には、当然基本的にこのような農地面積あるいは基準農業者数を前提にいたしましてその一定の要件というものを決めまして、これを超える広域な市につきまして適用を除外するということを考えてまいりたいと思います。
 なお、具体的にどのような市かということでございますけれども、この点につきましてはまだ目下検討中でございますので、明確な基準をここで申し上げる段階に至っておりませんけれども、少なくとも広範な合併等のありましたきわめて広域な市につきましては当然これを含めるというふうに配慮したいというふうに考えておりますし、少なくともこのようなところで農業委員会の活動に支障が生ずるというようなことはないようにいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
#214
○下田京子君 具体的には数字は挙げられないけれども尊重すると。そうすると、広域な合併市は考えられる。すると、福島県の場合は、その最たる広域合併市といえば御承知のいわき市なんです。これはもう当然入りますか。
#215
○政府委員(松浦昭君) 具体的に市の名前を申せとおっしゃられましても、現在の段階でまだ基準を決めていない状態でございますのではっきりと申し上げることはできませんが、いわき市はたしか十四ヵ町村の合併だったと思います。このような大きな市は当然該当することになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
#216
○下田京子君 日本一と言っては語弊がありますが、そのぐらい広域合併なんです。十数ヵ町村合併なんです。だから、いわきが入らないとしたら一体どこが入るのだろうかと思うのですね。とすれば、さらに福島県の場合には福島市と郡山市がまた該当してくるのです。これはいわきが入るとすれば当然郡山と福島が入らなければおかしいのです。つまり、どういうことかと言いますと、農家戸数ではいわき市が一万二千四百五十二戸、農地面積で言えば一万一千ヘクタールなのです。福島市の場合にはいわきよりも農地面積が広うございます。郡山市も農地面積も広いしなおかつ農家戸数も多いです。で、もし仮に福島、郡山等が入らないというような特例だとすれば非常にまた問題である。同時に、特例という点での問題点は、特例ですからすべてが認められるということにはないわけです。少なくとも半数だとかそれ以下だとかというようなことになる心配が非常にはっきりしているわけです。とすれば、これは、いまさっき本当に農業委員会の事務局のあり方とそれから農業委員会全体の体制強化等々を考えていって、非常に重要だと言ったことからはっきりと矛盾する、逆行することを示していると言わざるを得ないわけなのですが、大臣、この点はどういうふうに御認識されますでしょう。
#217
○国務大臣(武藤嘉文君) いま局長から答弁いたしましたように、まだこれから基準をつくるわけでございますから、具体的なことはともかくといたしまして、従来から農地面積あるいは農家戸数、こういうもので基準を決めてまいりましたし、これからもやはりいままで決めてきたルールというものは尊重していかなければならないと思っておるわけでございます。たしか、三十人以上の農業委員のいらっしゃるところは七十五と聞いておりますので、七十五を大体頭の中に描いて、いまの基準をそれではどういうふうに持っていくかというところでこれは決めなければならない問題ではなかろうか、こういうふうには思っております。具体的には、先ほど局長が答弁いたしましたように、なかなかまだはっきりしたことは申し上げられないわけでございます。
#218
○下田京子君 私は、農業委員会体制の弱体化になる、いままで言ってきたことと逆行するんじゃないか、その御認識はどうかという点も含めて聞いたつもりでしたが、それはもう私、時間が本当に限られております、どう答弁いただこうと、これは事実がはっきり示しておりますから、問題であるなということを私は指摘しておきたいと思います。
 次に、公選制の問題が非常に議論になっております。これは今後とも公選制を維持していくというふうに言明いただけますでしょうか。
#219
○国務大臣(武藤嘉文君) 知事会とか町村会とか、いろいろ自治省関係の各団体から、公選制を廃止して任命制にしたらどうかという声があることは私ども承知をいたしておりますが、やはり農業委員会の性格からして、今後とも公選制を維持していくことが望ましいと、こう考えておりますので、極力その方向で公選制を維持してまいりたいと考えております。
#220
○下田京子君 大臣、くどいようですけれども、いまの御答弁で満足したいところなんですが、望ましいとか、極力その方向でとか、としか言えないような状態でもあるんでしょうが、しかし、それはいままでの状況から言って、とにかくいろんな中で公選制維持という立場でやるという決意をもう一度はっきりお答えいただきたいと思います。
#221
○国務大臣(武藤嘉文君) 私どもとしては、いま申し上げたように、極力公選制を維持していくと、こういう考え方で今後とも対処してまいります。
#222
○下田京子君 さっきの答弁よりもっと後退しちゃったみたいな感じがしますね。だって、対処していくだとか、極力その姿勢でだとかなんてことになると、これは問題です。せっかくやると言っているわけですから、私は積極的にそれを理解しまして、いまのことをしっかり受けて、あのときはそう言ったけれどもいや後でこう違ったんだよなんというようなことがないように、篤と御要望しておきたいと思います。
 次に、農地法の一部改正の方について質問を移らせていただきますが、この中で、特に農業生産法人の役員の緩和ということが議論の一つの争点になるかと思うんですね。
 そこでお尋ねしたいんですが、衆議院でうちの党の議員が具体的に北海道清水町の生産法人のことを例にしていろいろとお聞きしているのは御承知のとおりだと思います。その中でも、特に藤田観光という資本が十勝ペケレベツ農場というものを経営している。それから、大日本印刷が大日本畜産農場というものを経営している。この生産法人について特にしぼって質問もしてきたその中で、大臣も局長も、これはまれに見るケースだと、いわゆるレアケースだとこう言いつつも、最終的には調査をしてみたいと、その上で、農地が農業に使われていないというのであれば公示し、処分する手続をとるのにやぶさかでないと、これは四月二十三日、衆議院で大臣がお答えになっているところであります。
 そこで、私がお聞きしたいのは、農業生産法人の場合には四つのタイプがあって、大きく三つの要件が農地法の第二条七項の中で一号、二号、三号とはっきりと規定されているわけですね。一つはその事業の限定で、いわゆる農業をやっているか、あるいはその付随の事業ですよと、それ以外はだめなんだと、こうはっきり言っているわけですね。それから二つ目には、構成員の資格のところで、農地の提供者かあるいはその法人に常時従事している人なんですよと、こう言っていますね。三つ目に、法人の役員の資格としては、法人に農地の提供者であり、なおかつ常時従事者である者が半数を占めていることと、この三つの要件が農業生産法人の大事なポイントですよと、こう言っているわけなんです。ですから、せっかくそういうことで大臣も答弁されましたので、その後いまのような三つの観点から調査されたのかどうか、結果等を含めて御報告をいただければと思います。
#223
○政府委員(杉山克己君) まだ期間もそれほどたっておらず、十分な時間的余裕もなかったわけでございますが、北海道庁を通じて私ども報告をとりました。
 清水町の九法人についての調査を依頼したわけでございますが、そのうち、いま御指摘の二法人について申し上げますと、これはちょっと九法人全体のことを書いてありますので、二法人のところだけを申し上げますと、藤田観光株式会社が関係すると思われるところの有限会社十勝ペケレベツ農場、これは経営農地等として二百三十七ヘクタールを持っておりまして、その畜産部門におきましては現在肉用牛四十一頭を飼育しております。そして畑作部門におきましては、昭和五十四年度にはバレイショ、スイートコーン、豆類、それから牧草等百十一ヘクタールに作付生産をしたということでございます。
 それから大日本印刷株式会社が関係すると考えられます有限会社大日本畜産農場は、これは経営農地等として百四十五ヘクタールを持っておりまして、畜産部門だけということでございますが、現在、肉用牛百三十一頭を飼育しております。そして昭和五十四年度には牧草三十八ヘクタールを栽培生産したと承知いたしております。
 現行の農地法による農業生産法人の要件は、いま先生もおっしゃいましたが、法人の形態が農事組合法人、合名会社、合資会社または有限会社であるということがまず第一にありまして、そのほかに三要件があるわけでございます。三要件については、先ほど質問の中でも触れられたことでございますので省略いたします。
 そして有限会社十勝ペケレベツ農場、それから有限会社大日本畜産農場とも、いずれもこの要件を備えているということを北海道庁から報告してまいっております。もちろん、将来これらの農業生産法人が農業生産法人要件を欠くような場合は、その法人が一定期間内に再度生産法人の要件を充足しないで、かつその所有農地等について譲渡あるいはその借り入れ農地等について返還をしないというようなときには国が買収することとされておるわけでございます。今後そのチェック及び指導を十分行うよう、北海道庁それから農業委員会を指導してまいりたいと考えます。
#224
○下田京子君 道からの報告を別にどうこうということをいま私申し上げるつもりはありません。ただ、これは衆議院の議論の中でも明らかになっていることだと思うんですが、一つは大日本印刷の場合には、肉牛百三十四頭飼っているなんと言うけれども、畜舎もないんですよ、サイロもないんですよ、牛の姿も見えないんですよ。どうなんでしょう。
 それから藤田観光の場合、それは二百七十ヘクタールで四十一頭飼っているということなんですけれども、これは私どもの調査では乳牛五十頭と、こうなっているんですが、ことしの秋にはもうやめたいと、こう言ってます。
 こういうことからいきますと、大日本印刷の場合にははっきりと第一の事業の要件からもう満たしてない。三要件というのはいずれを満たしていなくたって、これはもう農業生産法人として認められるものでないことは私が言うに及ばずですね。さらにちょっと言いますと、大日本印刷の場合には、もっとひどいのは構成員の要件も満たしていないんです。構成員六人なんですけれども、三人は離農開拓農民で、あと三人は農外者です。しかも不在村者が三人もいらっしゃる。実際に仕事をしているのはたった一人。その一人も、さっき言ったように百三十四頭の牛を飼っているなんてとんでもありません。本当に農地転用までの土地管理ということだけで、銀行マンをしていた方らしいんですけれども、お一人いらっしゃる。これだけです。
 それからさらに役員の要件の問題も見ますと、この大日本印刷の場合に、六人の構成員のうち五人が役員というのもこれまた珍しいんですけれども、二人がもともと東京と千葉の方なんですね。こういうふうな状況なんです。
 ですから、時間がないとおっしゃいました。それはまあいろいろその間にありましたでしょうが、調べれば三週間以上の余裕もございました。全く調べぬではなくて、道庁等に問い合わせもなさっておりますけれども、せっかくこの前大臣が指摘もされておりますし、しかも、いまも局長がお話しになりましたが、いわゆる国で買い上げることもできるんだよということなんですが、国で買い上げる措置云々というのは十五条の二で規定しているわけですね。法人が要件を欠いた場合にはというかっこうであるんですが、いろんな段階があるのですね。四段階ぐらいに分かれていると思うのですが、第一段階は、まず農業委員会がその法人が所有あるいは借り受けている農地の買収を公示をするんだ、第二段階で公示日から三ヵ月以内に要件を満たすための措置を講じさせるんだ、それで第三段階では、要件が満たされない場合に、公示日から六ヵ月以内に法人がだれかに所有権を譲渡するんだ、それから四段階で、六ヵ月以内に所有権譲渡が行われない場合に国が買うと、こういうふうに言っているんですね。ところが、私ども調べてみましたら、何とこの十五条の二の規定が決められて以来、三十七年から十八年間にわたってただの一度も発動されたことがない。まさに伝家の宝刀と言われる、しかしそれを抜いてみたら竹光でないかと言われるような状況にあると思うのですね。いままさに、この大日本印刷等の問題等を調査し、そして事実であるとすればこの問題は発動すべきだと、こう思うわけなんですが、この点にあっては大臣いかがでしょうか。
#225
○国務大臣(武藤嘉文君) どうもわれわれまだしっかり調査をしていないで、いまの道庁で調べていただいた結果を聞いている範囲ですから、どちらが本当なのか、私もよくわからないんですけれども、これは衆議院でもお答えをいたしておりますように、十分これは調査をいたしまして、とにかく事実関係をはっきりさせた上で法律に基づいて処置をしたいと、こういうことをお答えをいたしておるわけでございまして、そういう考え方はいまも変わっておりません。できるだけ早く実際の事実関係をはっきりさせて、所定の手続をきちんとやらなきゃいかぬ、いいかげんなことをしてはいけない、こう思っております。
#226
○下田京子君 大臣の決意、大変結構なんですが、いいかげんなことをしないということは、つまりそういう事実が明らかになれば、なおのこと、いまの伝家の宝刀と言われておりますが、十五条の二の規定、こういうことの運用ということも考えて、含んでというふうに解してよろしいでしょうか。念のためにもう一度お聞きしたいと思います。
#227
○国務大臣(武藤嘉文君) 当然そういうことも含めて私は処置をしたいと、こう思っておるわけであります。
    ―――――――――――――
#228
○委員長(青井政美君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、案納勝君、目黒今朝次郎君、藤原房雄君が委員を辞任せられ、その補欠として穐山篤君、勝又武一君、矢追秀彦君が選任せられました。
    ―――――――――――――
#229
○下田京子君 それから念のために、言葉を返すつもりはありませんが、衆議院段階でのいまの件についての話のときに、レアケースだということがあったので、この御認識は非常に甘いという点でちょっと御紹介したいんですが、北海道であっていろいろと開発に絡んで資本が農地取得に繰り出していった、その経緯なんですけれども、一つは開拓行政が行き詰まっていたいわゆる一九六九年から七一年当時なんです。開拓離農者農民にねらいをつけられていたというようなことがあるんです。それから道知事だとか市町村長、副議長、場合によっては金融機関まで仲立ちにさせられているという事例があるんです。しかも地域開発や観光開発ということで、バラ色の夢が非常にばらまかれてやられたということが事実なんです。そのやり方というのが、農業生産法人をまず設立してという手口でやられているんです。ところが、進出後は全く土地投機的なものがはっきりとむき出しになってきているというのが事実なんです。
 こういうケースにも似たものが、実は北海道以外の他都府県にも見られる。私が住んでおります福島県の西郷村というところでも実際にこれがありました。東亜相互企業株式会社というところなんですけれども、これは東亜農興園という生産法人を申請してきたんです。しかし、そこの農業委員会や議会の皆さんがしっかりしていまして、これはもうだめだと言って許可しないんで、いまも許可しないで延々と続いているんです。で、細々と牛何頭かちょろちょろいるということなんですが、ほとんど農地等は現況確認できないような荒れ地、開拓農家七十七戸のうち六十三戸の所有地二百五十二ヘクタールが買い占められて、いま言う生産法人の認可がとれないものですから、仮登記のまま、こういう実態なんです。こういうところに目をつけた今度はロッテだとか西武不動産だとか、いろんなところがいろんな形でいままさに入ろうとしているんです。
 ここが大事なんですが、そういう状況の中でその生産法人の役員の要件をなぜに緩和しなきゃならないのかということなんです。非常に問題だと思うのです。この点で申し上げますと、四十五年当時のいわゆる農地法の一部改正の議論がいろいろされたときに、当時の中野――いまの構造改善局長ですが、当時は農地局長でしたね、中野局長がこういうふうに言っているんですね。
  法人の中核をなします農家というものを頭に
 描きまして、この農家は少なくともその法人に
 土地を提供して、かつ、農作業にも常時従事す
 る、そういう者がその執行機関の過半数を占め
 でなければならないという原則を貫いておりま
 すので、これが先ほど申されましたような擬装
 法人というようなことで使われるということは
 万ないと思っております。そう言ってつくられた要件なんです。この規定があるんだから「万ない」という、その大事な規定をいま外そうとしている。
 これは非常に問題であると思うんですけれども、いま言った、北海道の問題は二件だけしか言いませんでしたが、それが全くのレアケースなんだという御認識を改めるべきではなかろうかという点。そしてまた、四十五年の農地法の一部改正等のときに、せっかくつくられた、つまりこの生産法人の三つの要件の中の役員の問題のところをきちっと含めて、だから擬装法人なんていうものを取り締まることができると、こう言って答えたわけなんです。これに対してどういうふうにお考えでしょうか。これは歴史的な経緯もありますから、大臣から御答弁ください。
#230
○国務大臣(武藤嘉文君) どうもこれは物の考えようだと思うのですけれども、私どもはやっぱり善意の人を考えておるものですから、今回のこの農業生産法人の要件緩和にいたしましても、たとえば農地の権利を持っている親がそれを提供してなったけれども、実際にはその農業法人の中で実務はその子供がやるという場合に、そういう子供はやはり権利者ではないわけですけれども、そういうものもやっぱりいいじゃないかと、こういうふうに私どもは善意に解釈して今度は条件緩和を考えているわけでございまして、どうも法律の裏をくぐって悪いことをしようというような人のことまで実は考えていないものでございますから、その辺が非常にあれなんですけれども、私どもはですから、そういうものはその都度、ケース、ケースでやはりよく的確に調査をし、そういうものが見つかったときには厳正に対処していくということをやっていかないと、そういう悪いことをするかもしれないからといって条件緩和をしないということでは、私はやっぱりいけないのではないかと思っているわけでございまして、今度の条件緩和もぜひそういう形でやっていきながら、しかしその条件緩和を、その裏をくぐってというか、それを利用して悪い人が入ってくるものはやはり排除するようなことを私どもがしっかりそれはやっていかなきゃならない、こう考えているわけでございます。
#231
○下田京子君 善意に考えることは結構なことなんです。私たちも善意に考えたいんです。ところが、たまたま善意に考えてまじめな人がばかを見ているんですよね。そこが問題なんですよ。
 それからもう一つは、悪いことをすることを前提として云々で緩和するのを規制するのはなんてみたいな話がありましたが、後継者の問題を言っているような気もするわけですね。後継者の問題でしたら、私は後継者というかっこうできちっと位置づけたらいいと思うのですよ。しかしその後継者にしたって、現在のことでやろうと思えばできなくないんですよね。現にちゃんと農地を持たない人が農業をやりたいということならば、まずその手続をきちんと踏んで、五十アールのものをやったらば農民として認めるよというふうなこともやっておるわけなんですよ。その後継者の問題だって、おしなべてというかっこうになりますと、たとえば善意善意でいって、農家の長男あるいは次男の方がいろんな企業に勤めていた、合理化等で首切られる云々ということで、それは表向き。そして今度は、悪用しようと思えば、そういう後継者が、ダミーと言っては失礼ですけれども、というふうなかっこうで帰ってきて、その地域に有限会社のようなものをつくって、実際にはもうつくるときはそれで、後はもう農業に従事してない、農地の提供者でなくて役員が半数占めたっていいというようなことになれば、実際に資本がばっともうやっていく、こういうかっこうになるのが目に見えているんです。
 それで、あれば規制するとおっしゃっておりますけれども、それは弁解でしかないですよ。あればって、いままであったじゃないですか。そして、あったものについてその都度きちんとした指導はできなかったんじゃないですか。しかも、国が買い上げると言っている十五条の二だって、ただの一度も適用したことがなかったじゃありませんか。そういう状況の中でこれを緩和するということは、本当に農業の効率的な発展につながるというふうには、私はどんなに譲って解釈したっても考えられない、こう思うわけです。再度、この問題を、生産法人の役員の要件緩和、これを撤回する気持ちはないかどうか。
 それから、もう時間が間もなく来ますので一緒にお聞きしたいんですが、きのう私も白州町に行ってまいりまして、町長さんが当時――当時といいますのは合併当時という意味なんですが、六千六百からいた人口が五十一年当時で四千四百余人になってしまったと、実に三分の一ほどもの人口の流出減。しかも、その当時――五十一年という意味ですが、遊休地、荒廃地が百五十ヘクタールもあったと。これでは何とかしなきゃならないということで、県のモデル事業の指定を受けて、町長さんを先頭に、人づくり、土づくり、基礎づくりと三づくり運動に取り組んできたというんですね。これは他の委員からもさっきお話ありましたけれども、まあまあ私も見に行きまして、本当に血の出るようなというのはこのことかなと思いました。もうにこにこ笑って――皆さん本当に苦労なさってるでしょうと、こう言ってきましたけれども、私は胸いっぱいで見てまいりましたし、聞いてまいりました。そういう状況を、幾ら農用地の公的な利用だとか、あるいは農地の流動化だなんて構造政策だけを幾ら言ったとしたって、それはもうとうてい農民の生きる道というのは見出せないと思うんです。農地の流動化、集団的な利用、農業的な土地利用、大事です。しかし同時に、いまの日本の農政が本当に希望の持てるような――いろいろ他の委員からも言われてきましたけれども、それに付随することもあわせてやるんだと言っている。そのあわせてやる方は付随じゃないんです。基本的なことは構造政策、農地の流動化云々じゃない、農地を流動化して、本当に生きる希望が持てるような、そういう農政を確立してほしい、こういう点でのきのうの御認識も踏まえて、ひとつ局長からも御答弁いただき、最後に大臣から御答弁いただきたいと思います。
#232
○政府委員(杉山克己君) 私、先生方のお供をして、昨日白州町を私自身もじかに見てまいったわけでございます。若干御質問の趣旨、私の所管を越えるところがございますが、きのうお供して行ったということで、若干私見も入りますが、申し上げさせていただきます。
 確かに、白州町は非常に条件は悪うございます。基盤整備はおくれております。傾斜地でもって非常に生産条件、労働力条件の悪いところでございますが、そういう中にあっても、町長さん以下、関係者の皆さん非常に地域の合意づくりに努力されて、おおむねそれには成功しておられる。かなり農地の流動化についても条件の中では実現し得られて、それはそれとして成果を上げておられるというふうに見てまいったわけでございます。ただし、先生おっしゃられるように、ああいう条件のところでは、その構造政策をよほど上手に仕上げてみても、それだけでもって十分に成り立っていくというわけには私自身もまいらないと思います。やはり今後の一般的な生産対策、それから価格対策、構造政策も、何も流動化だけではございません、そういったものを総合的にやっぱり及ぼして、希望を持って農業が営んでいけるように、全体としてのてこ入れば当然必要であるというふうに感じて帰っております。
#233
○国務大臣(武藤嘉文君) まず第一点の先ほどの条件緩和の問題ですけれども、私は一つの例として、後継者、特にお父さんが土地を持っているあるいは権利を持っておるそういう息子さんが、その法人の中で活躍をしたい場合を一つの例として申し上げましたが、あるいは非農家子弟を含めた後継者グループでやる場合もこれは考えてやらなきゃいかぬわけでございますから、そういう点から言って、やはり悪い場合もあるだろうということだけでこの条件緩和をやめるということは、私はやはり適当ではないんではないかと。確かに御指摘いただいたように、私どもも十分目が届かないものでございますからそういういろいろなケースがあるようでございますけれども、今後はひとつそういう点はきちんきちんと、やっぱりそれぞれ御指摘をいただいたらなるべく早く調査をし、そして事実関係をはっきりさせて、それぞれの処置をしていくということをきちんとしていかなきゃいかぬと、こう思っております。
 それからいま、きのう御視察に行かれたことについてのお話でございますが、これはもうけさほど来私お答えいたしておるとおりでございまして、農地の流動化を図っていくという構造政策上のこの問題も必要であるけれども、これだけで将来の日本の農業がバラ色の農業であるとは私は全く考えておりません。当然、いま局長からも答弁をいたしましたように、生産政策、価格政策、また広い意味における農村の社会政策、こういうものが総合的に勘案されていかなければならないわけでございまして、しかし、その生産政策を進めていく上にも、やはり国民の合意を得るような形で、国民の求めておるものを、それぞれ適地適産の考え方でつくっていく場合には、やはり土地利用型農業のいまの生産性の低い現実からすれば、どうしても耕地の規模を拡大をしていかなきゃいけないというのは私は当然ではなかろうかと思っておりますし、また価格政策からいたしましても、規模が拡大をしてくれば、稲作その他の従来の実績から見ましても、結果的に生産性が高まり、コストが安くなるわけでございまして、たとえばいまの同じ価格で今後推移したといたしますれば、当然農家の手取りは相当多くなってくるわけでございまして、そういう点においても、価格政策という、そういう農家の所得の確保という点から考えても、この経営規模の拡大は必要である、こう考えておるわけでございます。
 いずれにしても、それらを総合的に、しっかりした政策をつくり上げていくところに初めて日本の農業の将来の発展があると、こう考えておりまして、それはいま農政審議会にもそういう考え方でいろいろと御相談申し上げておるわけでございまして、農政審議会の答申も踏まえながら、なるべく早く、ことしのなるべく早い時期にしっかりした将来の農業のビジョンを私は打ち出していきたいと、こう考えておるわけであります。
#234
○下田京子君 終わります。
#235
○喜屋武眞榮君 今回の農業三法と申しますかこの改正は、農業経営の規模を拡大するあるいは農業生産力の増進、そして農業の健全な発展に寄与すると、こういうことが言われておるのでありますが、私はそういう前提に立って視点を沖繩農業の発展に当てて、まず第一に大臣にお聞きしたいことは、八〇年代における農業の長期的ビジョンとよくおっしゃるのでありますが、その中における沖繩農業のあり方をどのように考えていらっしゃるか、それをまずお聞きしたいと思います。
#236
○国務大臣(武藤嘉文君) 沖繩というのは、わが国におきましては非常に少ない亜熱帯性気候の地帯でございまして、そういう面から言って、その特性を生かした農業振興をひとつ図っていかなきゃならないと考えております。具体的には、この冬においても相当野菜が内地で困りましたときに沖繩から供給をいただいたわけでございまして、そのような冬・春野菜と申しますか、そういうものあるいは花卉、こういったようなものの生産をより高めていく。また、一方においては畜産関係が最近非常に進められておるわけでございますので、私どもは畜産基地としても将来考えていかなきゃならないんではなかろうか、そういう形で沖繩の農業を位置づけていきたいと思っておるわけでございます。
 それからサトウキビ、まあ今度も、きょうでございますか、糖価安定特例法の延長が議員立法でなされるやに承っておるわけでございますが、将来ともに、特にこの間も私ども農政審議会の重立った先生方とお話をいたしましたときに、砂糖資源というものもやっぱり緊急な場合には大変大切であると、こういう御指摘もいただいておるわけでございます。その点を踏まえて、甘蔗等についてもその生産地として十分位置づけを考えていかなきゃならないと思っております。
#237
○喜屋武眞榮君 そうしますと、いまの大臣の発想と申しますか、姿勢と申しますか、いわゆる亜熱帯産業地域としての沖繩の開発というのは、国土開発の一環として沖繩をとらえると、こういう立場であると理解していいんですね。
#238
○国務大臣(武藤嘉文君) もちろん、沖繩もわが国の一部でございますから、当然沖繩を含めた全体の国土開発の中で進めていかなきゃならない。特にやっぱり特性を生かして、内地ではできないものを補完的にしていただけるという、大変私は特性を持っておられると思いますので、そういうところに重点を置いた沖繩の農業振興というものをやっていかなきゃならぬと、こう考えているわけでございます。
#239
○喜屋武眞榮君 いまの発想の転換と申しますか、姿勢と申しますか、これは非常に重要であると私は思っております。ということは、沖繩のために開発してやろうと、結果的にはそうなりますが、しかし、亜熱帯地域における沖繩の開発は即国民の生活を支えていく唯一の亜熱帯地域であると、こういうとらえ方に立たなければ本当の沖繩の開発にはならぬと、こう私は常日ごろから思っておりますので、そういった観点に立ってぜひひとつ沖繩の農業開発を一貫して進めてもらいたいと、これを要望いたします。
 次に、わが国の農業の健全な発展を図る、こういう立場からこの総合的な施策ということが非常に重要視されておるわけなんですが、そういった総合的な施策の展開という立場からどのように考えておられるか、具体的にどのように取り組んでおられるか、それをお聞きしたいんですがね。
#240
○国務大臣(武藤嘉文君) 全体的には、私どもはやはり今後の農業の体質を強化していくためには、農業の需給に見合った生産性の向上を図っていくということ、需給に見合うわけでございますから、農業の生産の再編成を進めていく、こういうことが一つの考え方としてあるわけでございます。それからそのためには、しかしできるだけ生産性を高めていくということにおいて、中核農家を中心とすると申しますか、やはり生産性の高い農家を中心としてやっていかなきゃならない。それから、やはり農業を取り巻く環境というものはその農家を取り巻く環境もあるわけでございまして、生産の基盤整備とあわせて生活の基盤整備もやはりよくやっていかなきゃならないだろうと考えております。このようなものを総合的に進めていくのが今後の生産対策であろうと、こう考えておるわけでございます。
#241
○喜屋武眞榮君 生産性を高めていくという前提には、この質と量の問題があると思いますがね。それで量をふやし質を高めていくというこのまた前提には、何としても価格の安定という、いわゆる食っていける、生活していけるというその価格の安定が前提条件でなければいかぬと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
#242
○国務大臣(武藤嘉文君) 価格政策はしっかりしていかなければならないということは当然であると思います。そこで価格政策をしっかりしていくにはどうするかということでございますけれども、一つには、やはり需要に合ったものをできるだけうまく供給をしていただくような形に生産をやっていかなきゃならないだろうと思います。それからそのためには、やはりある程度適地適産という考え方、先ほど、沖繩ではやっぱり内地でできないものができるとか、あるいは北海道ではどういうものをつくっていただくとかというような形で、私は将来適地適産の考え方を相当強めていかなきゃならないんではなかろうか。いまそこで長期的見通しを農政審議会でやっていただいておりますが、ことしの夏過ぎにその長期見通しを出しました後においては、たとえば北海道では一体そのうちのどの程度を分担すべきなんだろうか、あるいは沖繩ではどの程度分担していただくべきであろうかという地域分担の考え方を私はやっぱりしっかり持っていかなきゃならないだろうと思っております。これもやはり価格政策に非常に私はいい影響を与えるのではないかと思います。
 それから、この経営規模を拡大することによって、すでに施設型農業においては相当生産性は高いわけでございます。この規模の拡大で土地利用型農業も生産性が高くなってくるという点においては、相当結果的には農家の収入はふえるということになるわけでございまして、価格政策という面から言っても、私は農地の規模の拡大を図るということはそういう面で大変重要なものであると、こう考えておるわけでございます。
#243
○喜屋武眞榮君 次にお尋ねしたいことは、農地の流動化の前提には、何と申しても基盤整備の充実ということが大事だと思うんです。そういう立場からしますと、沖繩の農業基盤整備は大きく立ちおくれておりますことは沖繩の特殊事情から十分認めていらっしゃると思います。この沖繩の基盤整備の充実についてどのように考えておられるか、またどのように具体的に進めてきておられるか、このことをひとつお聞きしたいんです。
#244
○政府委員(杉山克己君) まず沖繩における農業基盤整備が全国に比べて非常におくれているという実態がございます。その実態を簡単に申し上げますと、農道については完備しているのは全国の場合一五・二%でございますが、沖繩の場合は一・七%ということになっております。それから畑地灌漑施設の整備、これは全国は三・三%でございますが、沖繩は二・六%ということになっております。それから区画整理が行われているもの、これは全国は四六・九%であるのに対し沖繩は五・〇%というようなことで、いずれも著しく沖繩の基盤整備はおくれております。ただいま申し上げました数字は、これは昭和五十年三月三十一日現在の土地利用基盤整備基本調査によるものでございます。その後若干詰まってはおりますが、依然としておくれているということは事実でございます。
 そういう前提のもとに、沖繩の農業基盤整備につきましては、私ども沖繩振興開発計画の基本方針に沿って、特に基幹作物であるサトウキビその他畑作振興に資するということで農業用水源の開発、それから灌漑排水施設の整備、農道や圃場の整備といった畑地基盤の整備を積極的に進めているところでございます。昭和五十五年度においては総額百九十五億六千三百万円ということで、全体の公共事業予算がほぼ前年横ばいという中で二・九%の増額をいたし、若干の沖繩に対する重点的な配慮をいたしているところでございます。
 それからなお、沖繩の事業の実施をやりやすくするということで、採択条件なりあるいは補助率等につきましても、全国一般の条件に比べまして、それぞれ一つ一つは申し上げませんが、かなりな優遇措置を講じているところでございます。今後ともこういった考え方に沿って、沖繩の基盤整備については十分進めてまいりたいというように考えております。
#245
○喜屋武眞榮君 いま数字的に挙げてくださったわけですが、ゼロから出発した沖繩ですから、年次上昇しておることは、これ当然です。問題は、本土と比較してどれだけ格差があるか、落ち込んでおるかという、復帰の目標も本土並みということが大前提でしたですからね。だから、格差がだんだん縮まってきつつあることはこれは認められます。しかし、いつまでたったら本土並みになるか、ここに重大な問題があるわけでありますので、ただパーセントで本土はこう、沖繩はどうだと言われても、これはあたりまえのことであって、なおぐんと上げてもらわなければ本土並みに近づかないと。言いたいことはそれなんです。どうか、その点ひとつ強く要望いたしますよ。大臣、いかがですか。
#246
○国務大臣(武藤嘉文君) われわれといたしましては、沖繩の過去において置かれておられた立場を考えますれば、当然沖繩の社会が本土並みに一日も早くなるようにすることが私ども国の政策として当然であると思っておるわけでございまして、基盤整備につきましてもそういう考え方で、非常に財政的に苦しいこれからであろうと思いますけれども、極力沖繩については圃場整備その他の事業について予算をつけるように私どもは全力をふるって努力をしていきたい、こう考えております。
#247
○喜屋武眞榮君 次に、いままで申し上げたハンディにさらに輪をかけた事実は、復帰の前後、そうして海洋博の時点に関連して、沖繩における本土の企業人を含めて土地買い占めが行われておることは御承知と思います。ただでさえも立ちおくれておる狭い沖繩の耕地を企業人が買い占めて、しかも、その買い占めた土地を今日までそのままほうってある。それに関連して離農者もふえてきておるんですね。それから遊休地がふえておる。この現状を把握しておられると思いますが、それに対してどのような一つの計画を、対策を持っておられるのか、また、具体的にどのような対策を打ってこられたのか。そのことについてひとつ政府の立場をはっきりお聞したいんです。
#248
○政府委員(杉山克己君) 沖繩県におきましては、復帰前には農地の売買が自由でございました。そういうこともあって、特に復帰前後膨大な土地の買い占めが行われております。そのような土地買い占めの動きは四十九年以降は鎮静化しておりますが、沖繩総合開発事務局が行った土地取得状況調査によりますと、取得面積は、全体で約一万二千ヘクタール、そのうち農地が約三千ヘクタールということになっております。
 それから、沖繩県における耕作放棄地は、五十年の農業センサスによりますと約一千九百ヘクタールということになっております。
 これらの土地が農業的利用に供すべき土地であるという場合には、農業的利用に供されるよう必要な対策を講じているところでございまして、すなわち農振法の農用地区域内にある土地である場合には、農用地として確保するため、農振法の開発許可制の厳正な運用を図るということで乱開発を防止することにいたしております。
 それから、農地保有合理化法人がその機能、具体的にはその農地を買い戻して農業用に充てるということでございますが、その買い戻し機能を活用するというようなことも講じておるところでございます。
 それから、これらの土地が農業適地ではあるけれども農用地区域外にある場合には、これはまず農用地区域に含めるように線引きをしてまいる必要があるわけでございます。そのように指導してまいりたいと考えております。
 そこで農地保有合理化法人による買い戻し、これはある程度進んでおりまして、五十三年度までには不動産会社等から六百九十二ヘクタール、三十七件の買い戻しを行っておるわけでございます。これを今後とも有効に活用してまいりたいというふうに考えております。
 それから沖繩一般の有料農用地の確保ということにつながるわけでございますが、私ども、先ほど申し上げましたように、基盤整備とあわせて新しく農用地に供される農地開発といったことも推進してまいりたい。その場合、畑地基盤整備あるいは農用地開発を行う場合に、遊休土地を一体として事業地区に含めるということが適当な場合には、あわせてこれら事業の対象に含めて開発を進めるということにいたしております。
 それと今回御提案申し上げております農用地利用増進法案の利用権設定等促進事業の活用についてでございますが、これらの土地が農業上の利用の増進を図ることが適当である場合には、土地所有者の同意を得まして、できるだけ利用権の設定等促進事業に取り込んで農業経営の改善を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
    ―――――――――――――
#249
○委員長(青井政美君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、宮田輝君、久次米健太郎君が委員を辞任され、その補欠として成相善十君、野呂田芳成君が選任されました。
    ―――――――――――――
#250
○喜屋武眞榮君 いまの問題に関連してもっと具体的に突っ込んでお尋ねしたいんですが、いま沖繩でこの買い占め土地をめぐって非常に大きな問題あるいは農業従事者の大きな要望となっておりますものは、その土地の買い戻しをして早く生産の土地にあてがってくれと、こういった切実な要望が非常に強いんです。そのことは御存じだと思うんですが、それに対して具体的な計画を持っておられますかどうか。
#251
○政府委員(杉山克己君) 買い戻しを行って、それを有効に農用地として提供してもらいたいという要望のあることは承知いたしております。沖繩県農業開発公社というのは四十八年の八月に設立されておりますが、これによります農地等の買い戻し実績は、四十九年から五十二年までが二十八件、五百八十五ヘクタール、五十三年度が九件、百七ヘクタールということになっております。合計が、先ほど申し上げましたように、六百九十二ヘクタールでございます。その所要の資金金額は十二億九千八百万円ということになっております。買い戻しでございますので、やはり買い戻しの単価とか位置、条件等いろいろ問題がございますが、私ども今後ともこの沖繩県公社の買い入れ、買い戻しによりまして農用地を確保、そして農業者に提供できるように努力してまいりたいというふうに考えております。
#252
○喜屋武眞榮君 この点は、単なるこう考えておるとか、計画ということじゃなしに、それをぜひひとつ実現に結びつけていただきたい。そうしませんと、これは絵にかいたもちにしかなりませんので、その点特に大臣の所信をお聞きしたいんです。
#253
○国務大臣(武藤嘉文君) いま局長が答弁いたしましたことを極力実行するように私も指示をいたしまして努力をいたします。
#254
○喜屋武眞榮君 次に、農用地利用増進法案による利用権設定等促進事業、これは現行の農用地利用増進事業をどのように拡充していかれるのかという問題についての具体的な見解あるいは計画、それをお聞きしたいんですが。
#255
○政府委員(杉山克己君) 現行農用地利用増進事業に比べまして、今回の御提案申し上げておりますところの農用地利用増進法に基づく事業は、大きく言って四点についてこれを拡充するということにいたしております。
 その第一は、事業の実施区域を従来は農用地区域に限定しているわけでございますが、これをそれ以外のところにも拡大するということ。それから二番目に、事業の対象となる土地を農用地だけでなく、これは従来は農用地だけに限定しているわけでございますが、そのほかに混牧林地でありますとか農業用施設用地、それから開発して農用地とすることが適当な土地、こういったところにまで拡大することにいたしております。それから三番目に、事業の対象となる権利といたしまして、賃貸借及び使用貸借による権利、こういった権利のほかに、新たに所有権及び農業経営の受託による権利を加えることといたしております。四番目には権利の受け手として、従来は農業者だけでございますが、そのほかに農業経営の受託を行う農協、それから農地保有合理化法人、こういったものを認めるということにいたしております。
 以上四点が拡大の主要点でございます。
#256
○喜屋武眞榮君 いまの四点もぜひひとつ実効が上がるように進めてもらわなければいけないと思うのでございます。
 次に、今回の農業生産法人の要件の緩和、これは先ほども話がございましたが、企業による農地買い占め、いわゆるその面に悪用される懸念は十分予想されると思いますが、起こったらそれに対策をとるのだと、そういう御答弁もあったわけですが、起こらない前にころばぬ先のつえという立場から、それに歯どめをする、起こったらこうするのだ、あるいは起こさぬためにこうするのだ、こういった歯どめがありますかどうか、お聞きしたいんですが。
#257
○政府委員(杉山克己君) 農業生産法人につきましては、趣旨の説明でも申し上げておりますように、たびたびこの委員会でもお答えしておりますように、後継者でありますとか若い人で意欲を持っている農業従事者、そういった人たちがある程度協業化して規模の大きな農業経営を営みたいという場合に、それに力をかすということで要件緩和を図っているところでございます。そのことが企業資本の進出を託すようなことになりかねない、それをチェックすることは可能かということでございますが、農業生産法人につきましては、当然農業委員会または当該市町村以外の他の市町村にあるときは都道府県知事の許可を受けるということが必要になっております。その許可につきましては慎重な審査判断を行う、そしてその要件について幾つかあるわけでございますが、まず当該法人の事業が農業及びその付帯事業に限られているかとか、それから構成員のすべてが農地の提供者もしくは当該法人の事業に常時従事する者であるか、それから三番目には、業務執行権を有する構成員の過半が常時従事者であって、かつ、当該法人の事業に必要な農作業に主として従事する者であるかというようなことを慎重に判断することといたしております。こういったことを厳正に判断して農外資本による土地買い占めの進出というものを防止してまいりたいというふうに考えております。
#258
○喜屋武眞榮君 失礼ですけれども、よく役人のすることは役人のすることはということが国民の間ではあるわけですがね。事実が起こっていつも後から追っかけていく、事実は先行しておる。そこをできるだけ先取りをしてそういうことのないように歯どめをしていくということは最も大事なことだと私は思うんですよ。そういう立場から、私は後手を打つことがないようなこういう姿勢と具体的な対策が最も必要だと思うんですがね。そういった見解に立って、ひとつ大臣の決意をお聞きしたいんですが。
#259
○国務大臣(武藤嘉文君) 先ほどもお答えをいたしましたのでございますが、私はやはり善意を信じて法律をつくらなきゃいけないと思っておるわけでございまして、そういう法律の網をくぐってやるようなものはできるだけ早くそれを見つけ、そして早く事実関係をはっきりさせ、それに基づいて早く行政的な処分をするというのが私はやはり正しい姿であると思っておるわけでございまして、まあ確かに従来そういう点においてはどうもおくれておるんじゃないかという御指摘かと思うのでございますけれども、できるだけ私どもはやはり悪いことをする者は厳しく対処していくという姿勢でなければいけないわけでございますので、できるだけ今後はそういう考え方で努力をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
#260
○喜屋武眞榮君 その姿勢をぜひ徹底していただきたい。
 次に、今回の農地法制の改善整備において、農業委員会並びに都道府県農業会議の位置づけをどのように考えておられるか。
#261
○政府委員(杉山克己君) 一般的な農業委員会の組織あるいは体制の問題については経済局の方の所管でございますが、私どもの今回の農地法制の改善整備との関連で申し上げますならば、農業委員会は今回の法案におきまして、市町村が農用地利用増進計画を定める場合に農業委員会の決定を経るものとするということで非常に重要な役割りを担うことになっております。そして、農業委員会等に関する法律上このことを法例に基づく事務としてはっきり記載する、法文上明記するということにしております。それからまた、農業委員会が農地事情の改善等の事務を行うに当たりましては、利用権設定等促進事業の推進に資するように行うということにいたしております。
 それから、都道府県農業会議につきましては、都道府県知事が市町村の定めた農用地利用増進事業に関する方針を承認するときにはこの都道府県農業会議の意見を聞かなければならないということにいたしております。
 農業委員会それから都道府県農業会議についてそれぞれ法制上その役割りを明らかにしたわけでございますし、これらの組織が農地の流動化に前向きに取り組むということを期待しているわけでございます。
 それからまた、今回の農地法の改正案におきましては、まず耕作目的での農地の権利移動の許可は原則として農業委員会が行うということにいたしておりますし、それから市街化区域内の農地の転用の届け出は農業委員会にするということにいたしております。従来、都道府県知事が行っておりましたところのこれらの権限の一部を農業委員会におろすということにしたわけで、農業委員会の役割りはこの面でも重要なものとなってまいってきているわけでございます。十分農業委員会がその責任を自覚して適正に対処できるように期待しておりますし、そのように指導してまいるということにいたしております。
#262
○喜屋武眞榮君 いまの関連ですが、農協と普及組織との位置づけはどのように考えておりますか。
#263
○政府委員(杉山克己君) これもまた経済局と相補う立場に私どもの局はあるわけでございますが、今回の農用地利用増進法との関連で申し上げますと、市町村が農業委員会や農協等の協力を得て、地域全体としての農用地の流動化、それから農用地の有効利用を促進するということを考えているわけでございます。農協系統組織としても、八〇年代における農業の課題と農協の対策というような方針を示しておりますが、この中で、このような地域農業の組織化を通ずる農業の発展について積極的に取り組むということを明らかにしておるところでございます。今回の法案による新しい農用地利用増進事業の推進に当たっては、農協自身が積極的、主体的に取り組むということが要望されているところでございます。
 特に、新法による農用地利用増進事業は、利用権の設定等促進事業については農協が行っておりますところの農業経営の受託事業と直接関連するところのものでございます。それから、新たに追加いたしました農用地利用改善事業や農作業の受委託を促進する事業につきましては、農協が推進、指導しているその地区内の農作物の作付の改善でありますとか、農作業の受委託のあっせん、これらの営農指導活動、それらとの関連が深いところでございます。
 そういう観点から、この事業の実施面において農協系統組織の意向が反映されるように、これはまた衆議院の修正によりましてその点が法文上も明らかにされたわけでございますが、都道府県知事が、市町村長が立てる実施方針を承認しようとするときは、都道府県の農業会議のほか、都道府県農業協同組合中央会の意見を聞かなければいけないというようにして、この点を法文上明記いたしまして、農協の役割りを示しているところでございます。
 そのほか、この事業の実施に当たりましては、市町村段階、都道府県段階で、それぞれ行政機関、農協等で構成する推進上の協議の場を設けるということが考えられております。そのほか、市町村が実施方針を定める場合及び市町村が農用地利用規程の認定を行うに当たりましては、省令等によって農協の意見を聞く、そういうことを通じまして農協との連絡、協調を密にしてまいりたいと考えております。
 なお、普及の問題については、別途担当の者が来ておりますので。
#264
○説明員(山極栄司君) 農業改良普及組織におきましては、現行の農振法による農用地利用増進事業につきましても、その重要性にかんがみまして、市町村とか農協と協力しまして、農用地の効率的な利用を促進するために必要な技術の普及とかあるいは生産の組織化なり集団化等に努めているところでございます。
 特に今回の農地法制の改善整備につきましても、普及組織としましては、これに積極的に対応するという観点から、農用地利用増進法に基づく農用地利用改善事業の推進に当たっては、特に一般的な普及活動のほかに、五十五年度から発足する予定でございます集落の自主的な活動を促進するための地域農業組織化総合指導事業というのがございまして、これが十一億七千三百万の予算が計上されているわけでございますが、こういうものを十分活用いたしまして、今後とも作付地の集団化なり、農作業の効率化等に関しまして普及活動に一層努力するようにいたしたいと思っておるわけでございます。
#265
○喜屋武眞榮君 これで終わります。そのかわりまとめていたしますので、明快にひとつ御答弁をお願いいたします。
 第一点は、政策を遂行していく上において一番大事なことは、それを受け入れる母体の組織の強化がなければいかぬと、こう思うのですね。そういう点から、農業委員会の事務局体制の強化についてどのように考えていらっしゃるか。
 第二点、構造政策の推進に当たって、農業委員会と市町村との関係、これがスムーズにいかないというとまた行き詰まってまいると思うのですね。地方行政との調整の関連はどうか。
 最後に第三点、委員の定数の改正ですね、上限四十名から三十名になっていますね。民主的な運営という面からすると、減ずることは民主的な運営に反するのじゃないかと、こう思うのですが、四十名が三十名に減じられたのは一体どういう理由なのか。以上お尋ねして、最後に大臣の所見を承って終わります。
#266
○政府委員(松浦昭君) 今回、農用地利用増進法案及び農地法の改正案によりまして、構造政策の推進に当たりまして農業委員会が果たすべき役割りは一層重要になるという御指摘はそのとおりでございます。このために、今回農業委員会につきましては、その組織の整備を図るべく改正法案をお願いをいたしたわけでございますが、事務局の執行体制の整備につきましては、特に法制上これを規定するというようなことはいたしませんでしたけれども、しかしながら、要はその体制を具体的に内容的にどう整備していくかということであろうというふうに考える次第でございます。この点につきましては、先ほど農林水産大臣の方から、特に財政基盤の強化の面につきまして今後とも一層努力をしてまいりたいという御答弁を申し上げた次第でございますし、また、農地主事といったような職員の設置につきましても、さらにこれを充実すべく努めてまいりたいというふうに考えておりまして、事務局の体制整備につきましては、具体的にその内容につきまして、さらに一層努力いたしまして整備をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
 しかし、このような農業委員会の活動が適確に行われるということのためには、何よりもその委員の方々にその責任と自覚を高めていただきまして、また、職員の方々に一層今後活動をいたしていただくということが重要であるというふうに考えておりまして、今後とも業務の適正な執行につきましては、私どもといたしましても十分指導してまいりたいというふうに考える次第でございます。
 次に、御質問の、市町村との関係でございますが、農業委員会は、農民の代表機関といたしまして、農地等の権利関係につきまして、自主的な調整を行うということによりまして農民の声を直接かつ適確に反映するという行政組織でございまして、それなりの重要な役割りを果たすわけでございます。一方、市町村におきましても、その部局が農業のための諸施策を展開するということに努めているところでございまして、両者相協力しまして農業者の利益を図っていくということが重要であると考えます。今回の農用地利用増進の事業につきましても、この点は十分配慮されておるところでございまして、法案の第六条におきましても、「第四条第六項の承認を受けた市町村は、農林水産省令で定めるところにより、農業委員会の決定を経て、農用地利用増進計画を定め」るということになっておりまして、両者のバランスを図っていくというのが今回の法律案の趣旨でございます。
 このように、市町村と農業委員会とが唇歯輔車の関係でうまく農用地利用増進事業を推進していくということが今後の重要な課題でございまして、両者の協力体制が非常に重要であるということは御指摘のとおりでございます。要は、市町村、農業委員会あるいは農業協同組合等の農業団体が、立場立場を生かしながら一体となって農用地の流動化の推進に寄与していくということが肝要であろうと思います。
 最後のお尋ねの点でございますが、今回政府の原案におきましては、選挙による委員の定数を、四十名でございましたものを上限を三十名ということに改めるように御提案を申し上げた次第でございますが、その趣旨は、やはり、今回の農用地の流動化というものに資するために農業委員会が機動的に活用されるということが必要であると考えまして、そのためには、できるだけ、その人の数も重要でございますが、その質も重要ではないかということで、上限の引き下げを御提案申し上げた次第でございます。しかしながら、衆議院におきまして、御審議の過程で、特に広域な市等におきましては、人数が下がることによりましてかえってその活動に支障を来すのではないかという御指摘もございまして、御案内のような修正案が御提案されておるわけでございまして、その点で私ども、農林水産大臣の定める基準に従いまして、その基準に該当するような市につきましては四十人という例外的な規定の適用をするという修正案につきまして大臣の方から御答弁を申し上げたとおりでございます。したがいまして、さような衆議院におきますところの修正案が実現されるということになりますれば、御心配のような点も避けられるというふうに私どもは考えておる次第でございます。
#267
○国務大臣(武藤嘉文君) いま大体局長から御答弁いたしましたけれども、いずれにいたしましても、農業委員会が、この法律が通りまして農用地利用増進のお仕事をしていただく上においては大変重要な役割りを果たしていただくわけでございますので、私どもはその組織強化などにつきましては十分われわれがお手伝いをしなきゃならない、特に財政的に、先ほども答弁をいたしておりますけれども、より一層充実した財政基盤になるような形に国としても援助をしていかなきゃならないと、こう考えております。
#268
○委員長(青井政美君) 他に御発言もなければ、三案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#269
○委員長(青井政美君) 御異議ないと認めます。
 右三案に対する討論、採決は、議事の都合により後刻行います。
    ―――――――――――――
#270
○委員長(青井政美君) 砂糖の価格安定等に関する法律第五条第一項の規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについての臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、提出者から趣旨説明を聴取いたします。衆議院農林水産委員長内海英男君。
#271
○衆議院議員(内海英男君) ただいま議題となりました衆議院農林水産委員長提出、砂糖の価格安定等に関する法律第五条第一項の規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについての臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。
 この特例法は、昭和五十二年、内外の砂糖の需給事情等の激変に対処して、砂糖の適正な価格形成を図ること等を目的として制定されたものでありますが、本年九月末日にその期限が到来することになっております。
 特例法の施行後におきましては、国内市場の改善に伴い、市況もおおむね安定的に推移する一方、製糖業界では、構造改善等残された問題はありますが、累積欠損を抱えていた企業の財務体質は徐々に改善され、また、国内産糖の取引の円滑化も図られるなど、一応の成果をおさめてまいったところであります。
 しかしながら、最近の国際糖価は、不安定な需給事情等を反映して大きく変動してきており、昨年秋以降の乱高下とこれに続く反落が深く懸念されております。
 このように大幅に変動する国際糖価の動向のもとで、この需給調整措置を廃止した場合には、国内の砂糖の需給や価格は、再びきわめて不安定な状況に陥ることが予想され、国内産糖企業の経営及び原料生産農家にも深刻な影響を及ぼすおそれがあります。
 本案は、このような状況にかんがみ、この特例法を昭和五十七年三月三十一日まで存続させ、引き続き同法に基づく需給調整措置を通じ、砂糖の需給の適正化と価格の安定を図り、もって国民生活上の重要物資である砂糖の長期、安定的な供給に資することとしようとするものであります。
 何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#272
○委員長(青井政美君) これより質疑に入ります。――別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#273
○河田賢治君 私は、日本共産党を代表して、本法案に対し反対討論を行います。
 精糖業界の健全な発展を図り、国民に砂糖を安定的に供給するためには、大商社による精糖業界の不当な支配にメスを入れ、規制することなしに解決できるものではありません。
 本法案に反対する第一の理由は、大手の商社、精糖メーカーの投機的商法による経営の失敗をみずからの責任と努力によって解決させるのではなく、消費者、国民と、中小精糖メーカー及びそこに働く労働者の犠牲によって救済するものだからであります。五十二年以降、二年間だけでも大手精糖十一社に対して六百九億円もの赤字救済をしております。
 第二の問題は、本法により、輸入糖の需給調整を図り、砂糖価格を引き上げ、メーカーの生産費を補償しようとするものですが、その方法が民主的でないだけでなく、価格高騰の際には、その規制措置が何もとられていないことです。
 第三の理由は、砂糖の価格が容易に引き上げられることにより、需要の八割を占める菓子や清涼飲料などの食品加工物の値上げにつながり、国民生活に大きな影響を与えることになるからです。そのことは、五月九日の衆議院農水委員会での本法採決により、砂糖相場がキロ当たり三十円も上がり、取引所始まって以来の記録的な高値になったことにもあらわれております。
 第四の問題は、精糖企業のシェアが固定され、中小精糖企業の健全な経営拡大もできない現状で、本法の継続は、この状態をさらに固定化し、大商社、大精糖企業本位の構造改善が進められ、中小精糖企業と精糖労働者に一層の犠牲を強いようとしていることであります。
 以上、これに尽きるものではありませんが、本法に反対する要点のみを申し上げ、討論を終わります。
#274
○委員長(青井政美君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 砂糖の価格安定等に関する法律第五条第一項の規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについての臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#275
○委員長(青井政美君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#276
○委員長(青井政美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#277
○委員長(青井政美君) 次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、農林規格検査所等の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。武藤農林水産大臣。
#278
○国務大臣(武藤嘉文君) 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、農林規格検査所等の設置に関し承認を求めるの件の提案理由につきまして御説明申し上げます。
 政府におきましては、現下の重要課題である行政改革の一環として、横浜及び神戸に設置されている生糸検査所を整理し、その業務を農林規格検査所に吸収することを内容とする農林水産省設置法の一部を改正する法律案を別途提案し、去る九日、成立を見たところであります。
 農林規格検査所は、日本農林規格による格づけの表示を付された農林物資の検査等を行う機関として、農林物資に関する消費者保護対策等の実施に重要な役割りを果たしておりますが、生糸検査所の吸収統合に伴い、その配置の適正化等を図ることとしております。
 この案件は、横浜生糸検査所及び神戸生糸検査所の整理等との関連において、東京農林規格検査所横浜支所及び静岡農林規格検査所名古屋支所を本所に、静岡農林規格検査所を支所に変更することについて、国会の御承認を求めようとするものであります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、御承認くださいますようお願い申し上げます。
#279
○委員長(青井政美君) これより質疑に入ります。――別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、農林規格検査所等の設置に関し承認を求めるの件を問題に供します。
 本件に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#280
○委員長(青井政美君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#281
○委員長(青井政美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 この際、暫時休憩いたします。
   午後六時十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後六時二十一分開会
#282
○委員長(青井政美君) 農林水産委員会を再開いたします。
 農地法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 下田京子君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案の趣旨説明を聴取いたします。下田京子君。
#283
○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、農地法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を説明いたします。
 本修正案の趣旨は、第一に、農業生産法人の役員に関する要件について、本改正案のような全面的緩和をやめ、同法人に農用地の権利移転をした構成員の後継者が役員になる場合に限って要件を緩和することです。
 第二は、許可権限等の委譲について、一つは、農業生産法人への権利移動にかかわる許可については、現行どおりすべて都道府県知事の許可とすること。二つは、市街化区域内農地の転用等の届け出に関する権限委譲をやめ、現行どおり都道府県知事への届け出とするものです。
 以上が修正案の概要であります。
 委員各位の御賛同をお願いいたしまして、説明を終わります。
#284
○委員長(青井政美君) それでは、ただいまの修正案に対し、質疑のある方は順次御発言を願います。――別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#285
○河田賢治君 私は、日本共産党を代表して、農地法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。
 そもそも、歴代自民党政府の農業破壊政策のもとで、穀物自給率が一九六〇年の八三%から七八年には三七%に半減し、さらに、専業農家戸数は二百八万戸から六十二万戸へと三分の一に減ってしまうなど、日本農業は重大な危機に直面しているのであります。
 とりわけ、農地は、六〇年以降の十八年間で総面積の二割以上にも当たる百三十八万ヘクタールがつぶされ、耕作目的で売買される農地価格も、全国農業会議所の調べによれば、中田平均で十八倍にも高騰しているのであります。
 したがって、農地の所有と利用を大企業の侵食から守る役割りを果たしてきた農地法の基本を守ることの重要性は、幾ら強調しても強調し過ぎることはないと考えるのであります。
 しかるに本改正案は、大企業の土地投機と農業進出の一手段となっている農業生産法人の役員にかかわる要件を全面的に緩和し、資本の進出を一層容易にするものと言わざるを得ないのであります。
 また、衆議院においてわが党を除く会派の賛成でなされた修正も、この基本問題を何ら解決していないのであります。
 したがって、本改正案に反対の態度を表明して、討論を終わります。
#286
○委員長(青井政美君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより農地法の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 まず、下田君提出の修正案を問題に供します。
 下田君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#287
○委員長(青井政美君) 少数と認めます。よって、下田君提出の修正案は否決されました。
 それでは、次に原案全部を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#288
○委員長(青井政美君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、川村君から発言を求められておりますので、これを許します。川村清一君。
#289
○川村清一君 私は、ただいま可決されました農地法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、民社党及び第二院クラブ共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    農地法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たつては、農地法の基本理念にのつとり次の事項について適切な措置を講ずべきである。
 一、定額金納制の例外規定の運用に当たつては、耕作者の経営の安定に十分配慮した指導を行い、また小作料として譲渡される米穀については、食糧管理法の規制に関して問題の生じることのないよう措置すること。
 二、標準小作料については、地域の実態をふまえ農業経営の安定に資するよう設定し、それが十分生かされるよう努めるとともに、統制小作料の撤廃に当たつては、農業経営を不当に圧迫することにならないよう適切な指導を行うこと。
 三、農業生産法人の業務執行役員に係る要件の緩和については、農業委員会等による監視体制の強化とあいまつて農外資本による農地取得等を招来することのないよう適切な指導を行うこと。
 四、農業委員会等に対する権限委譲に当たつては、農地法の適正な運用が確保されるよう研修、指導等を強化すること。
  右決議する。
 以上でございます。委員各位の御賛同をお願いいたします。
#290
○委員長(青井政美君) ただいま川村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#291
○委員長(青井政美君) 全会一致と認めます。よって、川村君提出の附帯決議案は全会一致をもって当委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。武藤農林水産大臣。
#292
○国務大臣(武藤嘉文君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努めてまいりたいと存じます。
#293
○委員長(青井政美君) 次に、農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします
 下田京子君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案の趣旨説明を聴取いたします。下田京子君。
#294
○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を説明いたします。
 本修正案の趣旨は、農林水産大臣が定める基準に該当する広域な市を除いて農業委員の定数の上限を四十人から三十人に削減するとの規定を削除するものであります。
 以上が修正案の趣旨でありますが、委員各位の御賛同をお願いして、説明といたします。
#295
○委員長(青井政美君) それでは、ただいまの修正案に対し、質疑のある方は順次御発言を願います。――別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#296
○河田賢治君 私は、日本共産党を代表して、農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。
 現在、農民の土地と経営を守るための行政委員会である農業委員会の強化が求められていることは多言を要しません。また、広範な農業委員会が要求しているように、その事務局、職員体制を充実することも緊要の課題であります。
 しかるに、本改正案は、この課題にこたえるどころか、農業委員会の公選制の廃止や、権能の弱体化につながるおそれが強い公選による委員の定数削減を重要な内容としているのであります。また、衆議院においてなされた修正によって、部分的に定数削減を免れる委員会があり得るとはいえ、制度改悪の基本には変更はないのであります。
 したがって、本改正案に対し、反対の態度を表明して、討論を終わります。
#297
○委員長(青井政美君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより、農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 まず、下田君提出の修正案を問題に供します。
 下田君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#298
○委員長(青井政美君) 少数と認めます。よって、下田君提出の修正案は否決されました。
 それでは、次に原案全部を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#299
○委員長(青井政美君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、原田君から発言を求められておりますので、これを許します。原田立君。
#300
○原田立君 私は、ただいま可決されました農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、民社党及び第二院クラブ共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
   農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
 政府は、今回の農地法制の整備に伴い、農用地の有効利用、農業経営の健全な発展に資するため、農業委員会制度の今後果すべき役割の重要性を十分考慮し、その組織体制の整備、業務運営の充実が図られるよう、次の事項を検討し、その実現を期すべきである。
一、農業委員会は、農地等の権利関係の調整等を行う業務はもとより、今後、構造政策関係業務が一層重要となることから、集落との結びつきに配意し、これに積極的に取り組むよう十分指導すること。
二、構造政策推進に当たり、重要な役割を担う農業委員会の的確な業務の遂行のためには、農業委員の責任と自覚を高めるとともに、職員の資質の向上、事務執行体制の整備強化を図るほか、今後とも助成措置の改善を図り、また、農地主事が未設置の委員会に対しては、この設置につき早急に指導すること。
三、農業委員会と都道府県農業会議の連携強化を図るため、農業委員会を代表する農業会議の会議員については、極力、農業委員会会長を充てることとし、農業委員会会長以外の者を指名する場合においても、農業委員会の総意が適切に反映できる者で、かつまた農業に関する経験、見識の豊富な者が指名されるよう指導すること。
四、都道府県農業会議については、農業委員会の業務の整備に対応した業務運営がなされるよう指導するとともに、その業務活動を充実させる観点に立つて財政基盤の強化に努めること。
  また、都道府県農業会議の常任会議員の構成については、農業委員会を代表する会議員の代表性が確保されるよう十分配慮すること。
  右決議する。
 以上でございます。
 委員各位の御賛同をお願いいたします。
#301
○委員長(青井政美君) ただいま原田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#302
○委員長(青井政美君) 多数と認めます。よって、原田君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。武藤農林水産大臣。
#303
○国務大臣(武藤嘉文君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努めてまいりたいと存じます。
#304
○委員長(青井政美君) 次に、農用地利用増進法案を議題といたします。
 栗原俊男君及び下田京子君から委員長の手元にそれぞれ修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、両修正案の趣旨説明を順次聴取いたします。栗原俊夫君。
#305
○栗原俊夫君 ただいま議題となりました農用地利用増進法案に対する修正案につきまして、日本社会党を代表して、その提案理由及びその概要を御説明申し上げます。
 わが国の農業は、この二十年来にわたる政府の農畜産物の輸入拡大政策と国内における低農畜産物価格政策によって、専業農業が大幅に減少し、第二種兼業農家が全農家の七〇%を占め、農業後継者も育たないまま、農家の農業生産に対する意欲を急激に失わせているのであります。しかも、この兼業農家は、不安定兼業が多く、低賃金、重労働、社会保障制度の不備な中で、不況による首切りの不安など、兼業をめぐる条件はますます悪化しているのであります。
 同時に、いま農村では米過剰による米の強制的な生産調整が強化拡大され、しかも、かつて政府によって生産拡大の対象となっていた牛乳、豚肉、ミカンなど果樹、葉たばこも生産過剰で減産を強制され、どのような農産物をつくったらいいのか具体的な展望も示されないまま、農家は生産規模拡大の意欲を放棄せざるを得ないのが現状であります。
 こうしたわが国農業を取り巻く厳しい環境の中で、政府は農用地の流動化を図るため農用地利用増進法を制定し、農用地の集積利用を進めようとしていますが、これは本委員会の審議で明らかにされたように、地域農政の振興、中核農家の育成、農業生産力の増進の名のもとに、多くの第二種兼業農家を話し合いという強制で農業から追い出すおそれがあると断ぜざるを得ないのであります。したがって、農業外資本の農業への進出を防ぎ、農業の継続を希望する兼業農家が安心して営農できるよう、本修正案を提出する次第であります。
 次に、本修正案の概要について御説明申し上げます。
 修正の第一点は、農用地利用増進事業の実施に当たっては、国の強制的な事業実施とこの事業に伴う各種補助事業等の差別をなくすとともに、農業者の営農の意思を尊重するため、第三条一項に、「市町村が必要があると自主的に認める場合に行う」という規定を設けるとともに、二項において、「農業者の営農の妨げとならないこと」を明記しました。同時に、補助事業等と深いかかわり合いのある第十五条を削除し、農業施策上の差別をなくしました。
 修正の第二点は、農業外資本等の進出を防ぎ、正常な農業経営が営まれるよう、第六条第三項第一号に次の一号を加えました。「前項第一号に規定する者が保有し、又は利用することとなる農用地の面積が、利用権の設定を受ける個人及びその世帯員又は農業生産法人の構成員のうち常時従事者の数を考慮して政令で定める基準を超えてはならない」としたことであります。
 修正の第三点は、附則第一項に次のような一項を加えました。「政府は、農用地利用増進事業の実施状況等を考慮して、この法律の施行日から起算して十年を経過する日までに、この法律の改廃等必要な措置を講じなければならない」とし、本法案を十年間で見直すこととしました。
 以上が本修正案の概要でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#306
○委員長(青井政美君) 下田京子君。
#307
○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、農用地利用増進法案に対する修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 修正の第一点は、「目的」及び「実施方針」の要件などを改め、農用地利用増進事業を、農用地の有効利用を図り、農民の農業経営の安定に役立つものとする趣旨の規定を明記するものです。
 第二点は、「農用地利用改善事業を行う団体」が、利用権の設定等の事業により積極的に関与し得るよう、「農用地利用増進計画」を定める場合、あらかじめその「団体」の意見を聞くことを義務づける規定を追加するものです。
 これは、農民による農用地の集団的な管理の方向に一歩でも近づけようとするものであります。
 第三点は、農地法の許可が不要とされる権利移動の範囲から、所有権移転にかかわる部分を除くことであります。
 所有権の移転は、賃貸借等とは違い、一回限りの行為であり、それだけに、農民的土地所有を守るため、より厳重な農地管理が必要と考えるからであります。
 第四点は、農地転用を厳重に規制するため、農業用施設用地について、農地法四条、五条の転用規制の適用除外とする規定を削除するものです。
 第五点は、耕作者の経営を不安定にし、あいまいな権利である、「経営の委託を受けることにより取得される権利」にかかわる部分を削除し、経営の受委託については、農用地利用政善事業を行う団体が調整することとするものです。
 第六点は、市町村が「実施方針」を定める場合、あらかじめ農業委員会の意見を聞くこととする規定を明記するものです。
 以上がわが党の修正案の内容であります。
 委員各位の御賛同をお願いして、修正案の提案といたします。
#308
○委員長(青井政美君) それでは、ただいまの両修正案に対し、質疑のある方は順次御発言を願います。――別に御発言もないようですから、これより原案並びに両修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。河田賢治君。
#309
○河田賢治君 私は、日本共産党を代表して、農用地利用増進法案に対して反対の討論を行います。
 今日の深刻な農業、農地問題を解決するためには、農民経営の安定と食糧自給を目指して農業を基幹的生産部門として再建し、また、大企業本位の土地政策をやめて土地利用の民主主義を確立し、農地の拡大と農業的利用を保障することが重要であります。
 こうした裏づけの上に、農地法の基本原則を貫きながら、農民の運動で、農地の農民的所有と利用を守りつつ、農地の有効利用を図るための民主的な秩序を確立することが求められているのであります。
 本法案は、耕作放棄地の増大や、農地賃貸借の広がりのもとで、農地の有効利用を求める現実の動きを反映したもので、一定の活用の可能性があることを否定するものではありませんが、以下のような無視し得ない問題点を持っています。
 その第一は、農地の所有権移転を本法案に取り込み、農地法三条の規制の適用除外としたことであります。
 これは、農地法の空洞化を進め、農地転用規制も含め、農地法廃止に一歩足を踏み出すものと言わざるを得ません。
 第二は、本法案は、選別的な構造政策の推進に対する歯どめが不十分であることです。
 第三は、賃貸借における貸し手と借り手の権利の調整を、双方の生活と経営が安定する方向で、農民間の自主的で集団的な調整を行うということが、本法案に十分位置づけられていないことであります。
 したがって、本法案のままではとうてい賛成しがたいものであり、さきに提案したわが党の修正案の実現こそが、農業生産の発展と、農地の有効利用を真に保障し得るものであることを重ねて指摘し、反対討論を終わります。
#310
○委員長(青井政美君) 他に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより農用地利用増進法案について採決に入ります。
 まず、栗原君提出の修正案を問題に供します。
 栗原君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#311
○委員長(青井政美君) 少数と認めます。よって、栗原君提出の修正案は否決されました。
 次に、下田君提出の修正案を問題に供します。
 下田君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#312
○委員長(青井政美君) 少数と認めます。よって、下田君提出の修正案は否決されました。
 それでは、次に原案全部を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#313
○委員長(青井政美君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、片山君から発言を求められておりますので、これを許します。片山正英君。
#314
○片山正英君 私は、ただいま可決されました農用地利用増進法案に対し、自由民主党・自由国民会議、公明党、民社党及び第二院クラブ共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
   農用地利用増進法案に対する附帯決議(案)
 最近のわが国農業をめぐる、農畜産物の需給不均衡、農業労働力、農地利用のぜい弱化等の厳しい諸情勢に対処するため、政府は、生産、価格、構造等の各般にわたる施策を整備し、食糧の総合自給力の向上をめざすとともに、本法施行に当たつては、農地法の基本理念を堅持しつつ、農業委員会制度の機能の充実とあいまつて、農用地の有効利用の促進と農業経営の改善に資するよう次の事項の実現に努めるべきである。
一、農用地利用増進事業については、市町村、農業委員会、農業協同組合、農業者等地域関係者の十分な理解と合意のもとに実施されるよう万全を期するとともに、本事業の実績等については、農業白書において公表すること。
二、農用地の利用権設定等に当たつては、耕作者の経営の安定に資するため、利用権の存続期間、継続設定及び借受人の投下した有益費の回収につき適切な指導を行うこと。
  また、自作農の育成の観点から利用権の設定とあわせて所有権の移動による農用地の有効利用にも配慮すること。
三、農用地利用増進事業において、農地保有合理化促進事業が十分に活用されるよう指導及び助成に努め、また農事組合法人等その実施団体の育成強化と、その地域農政推進上の位置づけを明確にするとともに、農協による農業経営受託事業等従来からの農地流動化施策についてその充実に努めること。
四、農用地利用増進事業等今後の農地流動化施策の推進に当たつては基幹的農家の育成及び農用地の有効利用とあいまつて地域農業の組織化等に資するよう、国の財政・税制上の措置を拡充するとともに、農地取得のための資金融通の円滑化と充実を図るよう努めること。
五、地価対策の確立、優良農用地の確保及び地力の一層の増強に努めること。
六、農外雇用条件の整備に努めるとともに、農村地域工業導入促進法に基づく工業導入に関する基本方針の改定に当たつては、農業経営の改善とその安定に資するよう配慮すること。
七、農業経営の改善に占める農業基盤整備事業の重要性にかんがみ、本事業の推進に努めるとともに、特に農業基盤の整備が他地域に比して低位にある地域についてはその促進を期すること。
  右決議する。
 以上でございます。
 委員各位の御賛同をお願いいたします。
#315
○委員長(青井政美君) ただいま片山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#316
○委員長(青井政美君) 多数と認めます。よって、片山君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。武藤農林水産大臣。
#317
○国務大臣(武藤嘉文君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努めてまいりたいと存じます。
#318
○委員長(青井政美君) なお、三案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#319
○委員長(青井政美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#320
○委員長(青井政美君) これより請願の審査を行います。
 第六〇号米の政府買入価格改善等に関する請願外五十件を議題といたします。
 速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#321
○委員長(青井政美君) 速記を起こしてください。
 本委員会に付託されております五十一件の請願につきましては、先刻理事会におきまして協議いたしました結果、第二一六号「釣り人課」(仮称)新設に関する請願外十二件は議院の会議に付するを要するものにして内閣に送付するを要するものとし、第六〇号米の政府買入価格改善等に関する請願外三十七件は保留とすることに意見の一致を見ました。
 つきましては、右のとおり決定することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#322
○委員長(青井政美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#323
○委員長(青井政美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#324
○委員長(青井政美君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。
 農林水産政策に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#325
○委員長(青井政美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#326
○委員長(青井政美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。本日はこれにて散会いたします。
  午後六時五十六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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