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1979/04/22 第91回国会 参議院 参議院会議録情報 第091回国会 地方行政委員会 第7号
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1979/04/22 第91回国会 参議院

参議院会議録情報 第091回国会 地方行政委員会 第7号

#1
第091回国会 地方行政委員会 第7号
昭和五十五年四月二十二日(火曜日)
   午前十時四十三分開会
    ―――――――――――――
  委員の異動
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     戸塚 進也君     郡  祐一君
     野口 忠夫君     丸谷 金保君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         後藤 正夫君
    理 事
                衛藤征士郎君
                金丸 三郎君
                佐藤 三吾君
                神谷信之助君
    委 員
                加藤 武徳君
                金井 元彦君
                郡  祐一君
                鍋島 直紹君
                山内 一郎君
                志苫  裕君
                丸谷 金保君
                阿部 憲一君
                上林繁次郎君
                江田 五月君
   衆議院議員
       地方行政委員長
       代理       石川 要三君
   国務大臣
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    後藤田正晴君
   政府委員
       警察庁長官    山本 鎮彦君
       警察庁長官官房
       長        山田 英雄君
       警察庁刑事局長  中平 和水君
       自治省行政局長  砂子田 隆君
       自治省財政局長  土屋 佳照君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        高池 忠和君
   説明員
       警察庁刑事局調
       査統計官     浅野信二郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○犯罪被害者等給付金支給法案(内閣提出、衆議
 院送付)
○行政書士法の一部を改正する法律案(衆議院提
 出)
○地方行政の改革に関する調査
 (昭和五十五年度の地方財政計画に関する件)
○地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(後藤正夫君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。
 犯罪被害者等給付金支給法案を議題といたします。
 本案の趣旨説明はすでに聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○佐藤三吾君 まず、理由なき殺人、傷害の被害者の皆さんが、本法の制定の請願をされましたのが四十二年の十二月二十二日だったと思うのでありますが、以来、十三年間を費やしておるわけです。この請願を受けて、稻葉元法務大臣が、文明国の恥である、政府の道義的責任でもある、こういうことを法務委員会の中で強調されてから約四年たっている。そういう本法がおくれた経緯は一体どういうことなのか。政府としての責任をどのように大臣としては感じているのか。まずそこから聞きたいと思います。
#4
○国務大臣(後藤田正晴君) この制度を国会で御審議を願うという段階に至るまでの間には、十年余りの時日が経過をいたしたことは事実でございます。したがいまして、こういった長い間放置しておったのはいかなる理由かという御批判、これは政府としても素直にそういった御批判は受けなきゃならぬと、私もさように考えるわけでございます。ただ、何といいましてもこういった制度は、今日の学説等でも御案内のようにいろいろな見方がある。性格はいかなるものであるか。つまり、公的な制度によってこういった被害者救済という新しい制度をつくるわけですから、その性格は一体どのようなものであるかといったようなやかましい問題がございます。同時にまた、それを取り扱う場合に、どの程度の犯罪被害にとどめるのか、扱う機関はどうするのかといった大変厄介な問題が、こういった新しい制度をつくるという場合には背後に伏在するわけでございます。そういったことで十年余りの時日がかかった。
 しかし、三菱の企業爆破事件等凶悪犯罪で、行きずりの犯罪の被害者がふえてくるといったようなことで、いろいろな議論はあるにしても、このまま放置するわけにはいかぬではないかといったようなことで、法務省、警察庁中心で審議をしまして、結論として警察でお引き受けをして、この際、何とか皆さん方の御理解を得て実現をしたいと、まあこういうようなことで、今日ようやく制度化について御審議を仰ぐということに立ち至ったわけでございます。
 当初申しましたように、こういった長い期間がかかったということは、その点についての御批判、これは素直に私どもも感じなきゃならぬと思いますけれども、何分にもこういった制度は大変厄介な事情が背後にあるんだということを御理解を賜ればありがたいと、かように思うわけでございます。
#5
○佐藤三吾君 この法案の当初の窓口というのか、準備というのか、こういうのは法務省が中心になってやられておったんですね。それが途中から警察庁の方に変わってきた。この経緯はどういう理由ですか。
#6
○国務大臣(後藤田正晴君) これは法務省で当初御審議をしておられたんですが、その際いろいろ検討をしておる過程で、一体、法務省がやるという場合には、それを扱う機関として地方に支分部局をつくらなきゃならぬだろうというような議論、あるいはまた、裁定の機関を検事正にしなきゃならぬとかいったいろんな問題がございました。そういった際には、まあ行政簡素化の一方の要請もございますし、同時にまた、検事正ということになると、裁定機関と捜査機関というような関連がある。いろいろ事情がございまして、結局被害者の便宜等も考えてみれば、やはり都道府県の機関で扱ってもらうのがよかろうと、こういうようなことになって、ならば、警察を管理はしておるが捜査機関ではないといったような都道府県の公安委員会等を活用するのがいいんじゃなかろうかといったようなことで、警察庁でこの法案を扱ったらいいんじゃなかろうかと、こういう結論になって、警察の所管ということで御審議を仰ぐということになったように私は報告を聞いております。
#7
○佐藤三吾君 実は、四月一日に法案が参議院に回ってきて、私ども、この法案の審議に当たっていろいろ議論を理事懇を通じてやってきたわけです。まあこの法案というのは、御存じのとおりに、突然犯罪に襲われて被害者になった家族の皆さんが、当初は六名の遺族の皆さんが中心になって、何とかしてこういう遺族の腹立ちと同時にまた救済を国に求めて運動をしようじゃないかということで、まさに私財をなげうって、全国の悲嘆に苦しんでおる被害者の皆さんに結集を求めて、それが国会に取り上げられて政府を動かして今日の立法になっておるということがこの法案の作成過程の中には歴然としてあるわけです。ところが本法の場合には、新しい制度としてつくられるということが一つの前提になっておると思うんですけれども、そういった御尽力をいただいた方々については何ら顧みられないというか、報われないと、まさにそういった法案の趣旨になっておるわけです。
 確かに衆議院段階の議論を聞いてみますと、法律の不遡及の原則であるとか、他の法律制度の関連であるとか、前後に不公平が生まれるとか、いろいろ答弁をされております。しかし、この立法政策の過程を見たときに、そういうことで律すべきかどうか。私どもとしては、いわゆる衆議院段階における参考人の学者、先生の方々の御意見等を調べてみましても、そういう不遡及の原則というのはあるけれども、しかしやはり本法については、大変遺族の皆さんの血のにじむ御努力の結果国が取り上げた経緯等を考えて、財政の許す限り遡及すべきであるというのが五十年七月二日の衆院議の法務委員会における三名の参考人のそろった意見にもなっておるわけです。
 そういう点を考えてみますと、これは衆議院でも全野党がこの点を強く求めておったのでありますけれども、結果的にはそれが入れられないまま参議院に来ている。これは参議院の良識にかけてもぜひひとつ実現せにゃいかぬじゃないかということで、与党の理事も努力をしてきたと思いますし、また、委員長も大臣にそのことをわざわざ申し入れて、やってまいりましたけれども、結果的にはそこら辺に対する血が通ったような答えが出てこないというのがいまの実態だろうと思うんですが、これはひとつ大臣、衆議院段階の答弁の模様を私は聞いておりますけれども、私は、そういうもので律すべき性格のものじゃないという前提に立って、この遡及についてどういう考えなのかまず聞いておきたいと思います。
#8
○国務大臣(後藤田正晴君) この制度が実現するまでの問、いまおっしゃったようないろんな方が大変熱心に運動をせられた、その成果がこういった法案となって結実するまでの大きな原動力であったということは、これはそのとおりでございます。私どももこういった制度をつくる際にはできる限りそういった方々の御努力にも報わなきゃなりませんし、同時にまた、できる限り幅広く救済の網を広げるというのはこれはもう当然のことでございます。ただ、何といいましても、こういう制度を新しく設けるという場合には、いろんな他の制度との関連の問題であるとか、あるいはまた、そもそも遡及は認めないというのがこれはもう原則でございます。そういったいろんなむずかしい問題がございまするので、過去のそういった方々の努力にそのまま報いることができなかったということは私自身としてもまことに心苦しいという思いはするわけでございます。しかし、そういった方々の御努力があって初めてこの制度ができて、今後そういった方々がなくなるんだということによって、過去の運動をしていただいた方も気持ちの上ではひとつ満足感を味わっていただきたいと、こう思います。
 しかし、われわれとしては、何とかこういう方々に対してやはり救済の手は伸べなきゃなるまい。ならば、こういった、法律の制度にはなじまない、だとすればやはり何らかの、民間の団体といいますか、財団法人とでもいいますか、そういったような民間の方々の団体等をできればつくる努力をして、そして別の形でいささかでもお報いをすることができるようにしたいというのが私の今日の気持ちでございます。したがって、この法律の対象としては、残念ながらやはり遡及効を認めるというわけにはいかないんだと、この点を御理解していただきたいと思います。
#9
○佐藤三吾君 しかし、同じような法律が各国でも先にできておりますけれども、たとえばオランダとかオーストリアだとかは遡及を認めておりますし、またわが国でも、たとえば公害被害者の補償とか災害給付だとか、また薬害、これは若干違いますけれども、いずれにしても、現在かかっておる皆さんについては事実上の遡及を認めておる。この法律だけがどうしてそれが認められないのか。いま大臣は気持ちとしてはということを盛んに強調しておったけれども、それがこの法律に限ってどうして認められないのか、ここら辺がどうしても理解できない。いかがですか。
#10
○政府委員(中平和水君) ただいま御指摘のございましたように、外国の立法例、スウェーデンとかオーストリアとかオランダ等の幾つかの国あるいは州の中では、遡及適用をしている例もあるわけでございます。しかしながら、イギリスとか西ドイツを初め多くの国ではやはり、外国の立法例を見ましても、施行期日後の適用が多いのが実は例でございます。ただ、遡及しているところにおきまして、私どもいろいろ調べてまいったわけでございますが、立法の立て方といたしまして、生活困窮とかあるいは経済生活が現実に悪化した、そういうことを条件として一応被害者あるいはその遺族、そういうことで給付制度をしておるわけでございまして、わが国の制度のように、被害者とか遺族の精神的な痛みの緩和、こういうところに重点を置いておるわが国の制度の立て方とはやや違った、ただいま申し上げましたように、やや生活困窮的な要素を見ての遡及でございまして、わが立法というのは、どちらかといいますと、いわれなき殺人の被害等に遭った方々の精神的な痛み、こういうものについてやっぱり手厚く見てまいると、そうして立ち直っていただきたい、基本的にそういう気持ちでこの法律をつくっておるわけでございます。したがいまして、外国に遡及の例があるから直ちにわが国も遡及するべきだと、こういうことにはならないではないだろうかと、こういうふうに考えたわけでございます。
 それから、わが国の立法の例におきまして、過去の原因による被害を対象とするものがあるではないかと、こういう御指摘でございますが、ただいま御指摘になりましたようないろんな制度と、今回のように、昔からあるこうした犯罪というものに対して、さかのぼって適用するという問題とはやや観点が違うような感じがいたしますので、直ちにそうした立法例というのは今回の遡及適用の理論的な根拠にはならないではないだろうかと、こういうのが私たちの気持ちでございます。
#11
○佐藤三吾君 確かに精神的な面もあると思うんですが、警察庁がこの法案の基礎資料で調査した五十二年調査を見ても、四二%が経済的に打撃を受けておる、事件によって。そして、たとえば親類の援助を受けたり、また生活保護に転落したり、保護を受けなきゃならないような状態に陥っている。また、精神的な面を見ると、やっぱり四二%、千五十名の皆さんがその点を訴えておる。そのために仕事や学校をやめて家事援助に変わったり、離婚したり、老人や子供の場合には施設に入ったり、自殺などを引き起こしている。こういった実態を警察庁の調査でも、まあこの内容の信憑性というか、言うならば調査がどの程度精密を期しておるかどうかは別にしましても、少なくともこの法案作成の基礎資料として集めた中では明瞭に出されている。そういう実態にあることは明らかな上で立法に踏み切ったんだと私は思うんです。それがどうして、諸外国では生活困難があるから遡及をしたんだけれどもわが国の場合には争うでないという理由になるのかどうなのか。いかがですか。
#12
○政府委員(中平和水君) ただいま御指摘のございましたように、私どもで五十三年の四月から六月にかけまして全国的に、昭和五十二年におきます殺人等の故意の犯罪によって死亡した被害者についての調査をいたしておる次第でございます。そのときの被害者が千五百二十七人あるわけでございますが、その遺族が二千五百二十九人ございまして、生活保護を受けている方は百四十二人、五・七%であったわけでございます。そのほか、この犯罪の被害の後に転退職をしたり、職業につくなり、パートとかアルバイト、内職、あるいは親戚で生活の扶助を受けて減収の分を賄っていただくと、そういうふうな何らかの経済上の影響を受けた方は四百八十八人、一九・三%ということになっておりまして、それに広い意味でその他のいろんな生活上の影響を含めますと、ただいま先生から御指摘がございましたように全体では四二%に上っておる、こういうことになっておるわけでございまして、確かにそういう意味では犯罪の被害によって生活の諸条件が変わってまいっておると、こういう方の多いこともこれはまた事実でございます。
 ただ、わが国におきまして、こうした被害者に対する救済の手を差し伸べるべきであると、こういう議論の起こりました背景は、先生御案内のように、通り魔殺人のようないわれなき殺人等の被害に遭って亡くなられたり、あるいはこれは殺人未遂等のことだと思いますが、重障害になられたり、そうした方々が非常に、民法上の不法行為制度がありながらそれが全然機能していない。そうして他の諸制度、たとえば同じように亡くなっても交通事故で亡くなった方々につきましては自賠責等で救われる。それから一方、犯罪者の処遇、害を加えた側の処遇につきましても、だんだん行刑が改良されて非常に処遇がよくなっておる。したがって、こういう人たちをやはり放置しておいてはいけないと、こういうことが背景になってこの法案ができてまいったわけでございますので、したがいまして、やはりそうした通り魔殺人のように、いわれなき殺人に遭った人たちを何とかして救わなきゃならぬ、それを社会連帯共助の精神で公費をもって賄うと、こういうことで生まれてきたというふうに私ども理解しております。
 したがいまして、制度の立て方といたしましても、故意による殺人とかあるいは重障害ということを中心に法制度というものを立てておりまして、ねらいといたしましても、そうしたいわれなき殺人等の被害を受けた方々の精神的な痛みというものに重点を置きつつ、経済的な条件につきましてもあわせて考慮していくと、こういう考え方で実は法案を立てておると、こういうことでございます。
#13
○佐藤三吾君 いや、私どもも、この法案については賛成なんです。むしろ遅きに失したと、そういう立場に立っておるわけです。
   〔委員長退席、理事金丸三郎君着席〕
それだけに何とかして、この被害者の皆さんは、本法が施行された後の被害者も本法の施行前の被害者も被害者については同じなんですから、それについて同時に何らかの措置ができないのかという気持ちがいっぱいなんですね。
 本法の趣旨というのは、自由社会を前提に、自由の保障と引きかえに生ずる犯罪被害を国民相互でこの救済法によって補てんするというのが私は趣旨だと思うんです。だとするなら、なお一層、先ほど大臣がいろいろおくれた経緯を言っておりましたけれども、それにしても十三年間も――明治の初めならともかく、なかなか外国もわからぬと、そういう資料がないということもいろいろあるでしょう。しかし外国の場合にしても、日本よりずっとおくれてこの問題に取りかかったところでも、二、三年で全部成立させて適用しておる。こういう実態の中で、私はやはり政府の責任というのは非常に大きいと思うんですよ。
 ですから、せめて少なくとも国会で請願が採択された時期とか、仮に譲っても、時の法務大臣がこれは文明国の恥だと、政府の道義的責任だと、こういうことを国会の場で強調しておる時期までとか、何らかの形でこれはやはり報いるべきではないか。こういうのが私どもが理事懇の中で強く主張してきた点なんです。第一、昨年警察庁が予算要求を行った際も、これはことしの四月を前提にしておるのじゃないですか。四月実施を前提にして予算要求をしておる、八月の予算要求にしても。それをさらに来年一月まで延ばす、こういう法律になったところに非常に不満を持っておるわけです。そこら辺、いまの局長の答弁ではどうしても私は理解できない。いかがですか。
#14
○国務大臣(後藤田正晴君) まあおくれたということについては、先ほど言いましたように、私もそういう御批判は甘受しなきゃならぬと思います。しかし反面、こういった制度がこれだけ長い時間がかかるということ、その背景には、こういう制度というのはなかなか理論的な面あるいは現実の面、いろいろとむずかしい問題が背景にあるんだということもぜひ御理解を賜りたいと、私はさように考えるわけでございます。
 で、当初の要求は四月実施であったわけです。確かにそのように聞いておりますが、これも私は、それが一月一日に延びたということは、まあ予算という問題がないと言えばこれはうそになります。確かにございます。しかし私は、やはりそれだけではなかった。つまり、予算要求の段階というのは、必ずしも私は詰めた議論というものが十分に行われてない。だんだん詰めた議論ということになってくると、これはなかなか四月一日実施ということはできないんだと。どうしても準備期間というものを十分見て、間違いのない踏み出しをしなきゃならないといったようなことで、私は一月一日やむを得ないと、これは私自身が最後の折衝をいたしましたから、判断をしたような次第でございます。
#15
○佐藤三吾君 いま大臣は、詰めた議論をしていくとおくれざるを得ないと、こういう言い方をしたんですが、いやしくも警察庁が予算要求をしていくというのは、そう当てっぽかの、無計算の、見通しも何もない要求をするとは私は考えられない。そんないいかげんなものじゃないと思う。ですから、予算要求をしたということは、逆に言えばかなり詰めて確信を持ったから予算要求をしたのであって、また、予算を決めるときにそんないいかげんな資料で決めるはずはない。ですから、問題はそこにあるのじゃなくて、いまいみじくも大臣が言ったように、予算の制約で施行期日を延ばしたり予算の制約で立法をおくらしたり、そういうところにこの基本的な原因があるのじゃないんですか。いかがですか。
#16
○国務大臣(後藤田正晴君) こういう制度をつくる際に、もちろん当該主管官庁としては十分検討をして出すことは、これはおっしゃるとおりです。しかしながら、主管官庁がそう理解をしておっても、いろんな相手方との論議の過程で、これはもう少し詰めなきゃならぬという面が出てくるのもこれまた事実でございます。そうでなければ予算査定ということはありようもありませんし、また議論の詰めようもないわけですから。だんだん詰めていけば、やはりこれは一月一日やむを得ないじゃないかと、こういう議論が私は出てくると思います。まあそういうことが一方にある。
 同時にまた、御質問の、予算でそうなったんじゃないかと。これはそんなことありません。この予算はわずか二億足らずの予算でなかったかなと思いますが、これ一年間見たところで今日の全体の予算の中では微々たるものですから、これは予算だけの都合で一月に延びたというような事情はございません。
#17
○佐藤三吾君 いや、さっきの法務省から警察庁に変わった問題とも関連するんですけれども、稻葉法務大臣が発言しておるのは五十年ですね。それが五十二年ですか、警察庁、法務省にそれぞれ調査費がついたのは。ところが五十三年度は予算要求をやっていませんね。こういうようなことは一体どういうことなんですか。
#18
○政府委員(山田英雄君) ただいま御質問にありましたように、警察庁といたしましては、この和罪被害給付制度につきまして調査費を五十二年曲から五十三年度、五十四年度と三カ年度にわたって要求いたしまして、予算上年間約千六百万から千七百万程度ついてございます。この中身は、外国資料の研究でありますとか、国内の犯罪の被由実態を調査するということに内容があるわけでございますが、五十二年度、五十三年度、この両年の調査費によりまして、先ほども答弁で申し上げております五十二年度における犯罪被害実態というものを全国的に調査いたしたわけでございます。そうした資料がございませんと、被害対象なりあるいは支給金なりという制度の根幹をなす要素が把握できないわけでございますので。主として五十二年におきまして二カ年間の調査費によりましてそのデータをそろえることができたわけでございます。そこでおおよそのめどをつかみまして、制度の細部の点を煮詰めて、五十四年の八月に至りまして、五十五年度予算の概算要求にこの制度についての必要な予算を要求する段階に至ったわけでございます。
 そこで、先ほど大臣から申されました点を補足して申し上げますと、当初の概算要求では、私ども、いずれの者に支給すべきか支給すべからざるかの基準についてはできるだけわかりやすい仕組みをつくろうということで、たとえば暴力団相互間の犯罪あるいは極左暴力集団相互間の内ゲバの犯罪等、一義的に態様別に除いていく。親族相互間の犯罪についても、支給対象から一義的に除いて、除いた部分がこの制度の支給対象になる気の毒さ度というものの残るものではないかというふうに立てておったのでございますが、やはり予算折衝の過程あるいは法案作成の過程で詰めてまいりますと、この法案の六条に規定してございますように、具体的な過去の事実関係を集積して気の毒さというものを、そうした暴力団相互間の犯罪とかいう一義的な除外でなしに、被害者の責任の度合いというのをさらに詳細、具体的に吟味して支給すべきである。減額支給すべき場合にもさらに詳細に、減額すべき程度を吟味すべきであるという議論に到達したわけでございます。もとより、その最終的に到達しました議論は、私ども公正であり、納得のいくものであり、被害者の立場に立った考え方であろうと思っております。そうなりますと、やはり、いままで調査いたしましたデータをまた基礎にいたしまして国家公安委員会規則の中身をつくっていく、そういう作業も必要になってきたわけでございます。
 したがいまして、五十五年度できるだけ早い時期に実施いたしたいという意欲で臨みましたけれども、公正な制度をつくっていくためには必要な準備期間というのは設けざるを得ない、こういう結論になりまして、一月一日施行という法案を作成するに至ったわけでございますので、よろしく御理解を賜りたいと思います。
#19
○佐藤三吾君 結果的に言えば、二年間にわたって調査をしてデータをそろえたけれども、予算査定の面でそこら辺に不備があったと、こういう理由のようにお伺いするのですが、しかし、それにしても私は余りにもちょっと、十億の要求をして二億に削られたということは、それだけじゃないような感じがするんですね。これは大臣がいみじくも、予算でないと言うたらうそになるということを言っておったのが本音じゃないかと思うんですが、また答弁のし直しの中で大臣はそれは否定しましたけれどもね。結果的には、予算が先に決まって、そうしてやむを得ず実施時期を、施行日を延ばさざるを得なかった、これが本音じゃないんですか。
#20
○国務大臣(後藤田正晴君) 率直に私お答えしたいと思うんです。私は、実は公安委員長就任の前に、この法案についての説明を議員として警察庁から聞いたんです。そのときに私が発した第一の疑問は、これは君、金額が安過ぎやせぬかということを言ったんです。ところが、だんだん説明を聞いておりますと、無理ないと、これでよかろうと、十分わかったと、こう言わざるを得ない、他の制度とかいろいろな関係があったんです。それから公安委員長に就任をしまして、予算の折衝あるいは――予算だけでありません、法律案の作成、こういったような段階のときにも、遡及効がないということは、これはもうやむを得ない、よくわかった。それはやむを得ぬだろう。しかし、遡及効がない以上は、できるだけひとつこれは早目にその法の施行ということはできぬのか。その準備はよくわかるけれども、何とかせめて九月なり十月ということはできぬのかという疑問も私は持ったんです。そこで事務当局にその点の説明を求めたところが、いや、これはやはりいろいろな準備がございまして五十六年一月一日にしてもらいたいんです。そのつもりでひとつ今後大臣としては各方面との折衝をしてもらいたい。まあこういうような事務当局の話がございまして、そこで私も、準備その他の内容を聞いてこれはやむを得ぬということで、五十六年一月一日施行やむなしと、こういう最終の私の決断をしたわけでございます。
#21
○佐藤三吾君 私もいま大臣が言ったように、仮に遡及が不可能ならばせめて――私も野党の皆さんと一緒になって要求したように、法律が成立して、施行期日を繰り上げるべきじゃないか、時日を早くすべきじゃないか、こういう主張をしてきたんですけれども、これは私はやっぱりこういう法律であるだけになおさらだと思うんですよ。
 ところが、それが衆議院ではもう通ってきたとか、予算はもう成立したからとかいうことで、ああでもないこうでもないということで、なかなかあなたの方がかぶりを縦に振らない、こういうことにきょうまでなっておるわけですけれども、これは私は、いまあなたがそこまで気持ちを率直に言うなら、仮に二億という予算があっても、三月までの件数で二億が余る場合もあるし、逆に言えば二億では足らない場合も出てくるだろうし、そうこだわることはないんじゃないか。そうすれば、準備その他から見ても、法律が成立してから六カ月もあれば十分施行準備はできるはずだし、十月なら十月まで繰り上げるとか、そこら辺の誠意というものは私はあっていいんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
#22
○国務大臣(後藤田正晴君) 私もいま率直にお答えしましたように、私自身も佐藤さんと同じような実は疑問も持って、事務当局に法律施行の時期――遡及効は初めからこれはもう私もよくわかったのですが、金額の問題とか過失犯の問題とかいろいろ実は聞いたんです。ところが、私自身の疑問というものは、事務当局の説明を聞いておると、これは無理ないと、しょうがないと。ことに施行時期について、どうしても一月一日にしてもらいたいというのは、これは事務当局の私に対する要望であったんです、最後になりましてね。ならばいたし方があるまいということで、佐藤さんと同じような疑問を私も持っておったのですが、これは事務当局が、準備その他の観点から、正確な、確実な第一歩を踏み出したいんです、したがってこの際一月一日ということでぜひお願いをしたいというのが私に対する最終の説明でございました。したがって、私はそれを受けて最後の大臣折衝で、これはどうしても一月一日に当方としてはやりますということを申し上げたのです。私、これが予算だけの問題だったらがんばります。そんなわずかな五億や十億の金額、それが大臣折衝で取れないなんということは全然考えていません。しかしながら、私は、そういった事務当局の準備その他の意見に耳を傾けて、事務当局がそう言うならこれはいたし方があるまいと、これが私の最終の判断をした根拠でございまするので、その点はひとつぜひ御理解をしていただきたいと、かように思います。
#23
○佐藤三吾君 大臣の説明を聞いておると、理事懇における与党の方からの回答とは大分違うように思いますけれどもね。与党の皆さん方のあれは、もう衆議院を通ったから、予算が通ったからと、こういうことが終始一貫聞かれておったんですけれども、いま大臣の説明を聞くと、今度はまた違った理由を――その間に知恵づけができて方向転換をしたんじゃないかというような感じもしますよ。しかし私は、やっぱりいまの説明はどうしても釈然としません。時間がございませんから先に進みますけれども。
 だとするなら、心情的にはやっぱり何とか早くしなきゃならぬし、また、この法案の成立に向けて本当に血のにじむような努力をしてきた方々に報わなきゃならぬ。それは具体的にどのような形での方法を考えておるのか。衆議院段階の附帯決議では、被害者の遺児に対して育英資金という方法をもって救済していく、そういうことで具体的な構想も出しておられるようでございます。理事懇のやりとりの中では、それ以外に、被害者に対する中で、たとえば重障害者の皆さんにどういう措置をとるのか、こういったこととか、このために努力してきた方々に対して国としての責任の一端もしくはまた、何というのですか、いま大臣が気持ちはあるんですけれどもと言う、この気持ちを具体的にどのように考えているのか。これをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
#24
○政府委員(山田英雄君) 先ほど来御答弁申し上げておりますように、この法案について遡及の制度は立てられておらないわけでございます。その結果、過去の犯罪被害を受けました方の遺族の方々にお報いすることが、法律の段階ではできないわけでございます。私どもも、その方々のお立場は大変お気の毒であるということを感じておる点については、委員のお気持ちと全く同じでございます。
 そこで、何が現在お気の毒な状態であるかということを考えてみますと、遺族に児童生徒、そういう遺児の方が残っておられる、この方々の生活というものはお気の毒な状態の最たるものであろうと考えるわけでございます。特に、他の制度を見てみますと、漁業に従事中海難等の災害により亡くなられた方の遺児、あるいは交通事故により亡くなられた方の遺児、これにつきましては、いずれもただいま申し上げたのと同じような考えに立って育英奨学資金制度というものが公益の財団法人によって行われているようでございます。そこで、私どもとしましても、民間の方々の発起によりまして、この犯罪被害遺児の場合にも同様の財団というものがつくられていくということは検討に値するのではないかと思いまして、法案提出の行政機関としましても、その間できるだけの努力を尽くしてその実現に寄与してまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
 また、現在の段階において、犯罪の被害を受けられた方の気の毒さというのは、いまの遺児の方と同じように、重障害を受けられた方も、いまだに病床に伏せっておられる、そういう状態は大変お気の毒であろうと思います。
 ただ、前に申し上げました奨学資金制度自体につきましても、これから民間の方の発起を待ちまして、浄財を募って一定の寄付行為により事業を行っていくということでございます。奨学資金制度について申し上げましても、漁船海難遺児育英会の例をとりますと、小学生三千円、中学生三千五百円、高校生一万円という月額の給・貸与をしておるわけでございますが、同じレベルで犯罪被害遺児について考えるといたしました場合、五十二年の実態調査によりますと、年間百五十七人程度の児童生徒の方が遺児でおられるということになります。これを通じて見ますと、年間約千人の児童生徒に奨学資金の給・貸与をしなければならない。ただいま申し上げました漁船海難遺児育英会の給・貸与レベルで試算いたしますと、年間六千八百万円を要するわけでございます。これは一定のファンドで、金利八分で回すという――大変細かいことを申し上げるわけですが、果実で運営していくということを考えますと、約八億六千万円の基金、ファンドが要るわけでございます。奨学資金制度を維持していくためだけでもそれだけの金額が要る。これは現在の社会情勢のもとでは、そうした資金を集めることだけでも大変困難であろうと思いますが、御趣旨もございますし、私どもも全く同意見でございますので、一同御援助を賜りまして財団法人の設立には努力いたしてまいりたいと思います。
 その基金の額いかんによって、また、御指摘の重障害の方への見舞い等もできるかと思います。前向きに基金の額をふやしていくということによってそうした検討もできるかと思っておりますので、ただいま私どもが考えておりますこと、努力の方向を以上申し上げたわけでございますのでよろしくお願いいたします。
#25
○佐藤三吾君 この奨学資金というのは、いまお伺いしたんですが、財団をつくってそれに八億六千万の資金を、浄金を集めてそして金利で運営するという内容だったと思うんですが、それはいつをめどにしておるんですか。
#26
○政府委員(山田英雄君) これからの問題でございますので、自信を持って、責任を持ってお答えするわけにはまいりませんが、私どもの努力目標としては、法の施行期日が五十六年一月一日でございますので、それに著しくおくれない時期にめどをつける必要があると考えております。法案成立後におきましてはできる限りの努力を尽くしてまいりたいと思っております。
#27
○佐藤三吾君 著しくおくれないということは、施行日と大体同じにスタートを切ると、こういうふうに理解していいんですか。そこを努力目標に置いておると。いかがですか。
#28
○政府委員(山田英雄君) できれば、ただいま御指摘の期日に間に合わせることが一番望ましいと思いますが、これはこれから資金を集めるわけでございますので、目標には置きたいわけでございますが、自信を持って申し上げる段階ではないことを御理解いただきたいと思います。
#29
○佐藤三吾君 この重障害者についての見舞い金というのは、これは該当者を大体どの程度予測をして、また現実には、被害者の中の重障害者というのは、生命が存在しておるという前提だろうと思うんですが、生きておるということが前提だろうと思うんですが、それをどの程度までさかのぼっていくわけですか。
#30
○政府委員(山田英雄君) この法案の支給対象であります犯罪被害を受けて重障害になられた方と申しますのは、労働災害の場合の一級、二級、三級を考えております。といいますのは、三級以上の方は労働能力を喪失する程度の重い障害でございます。死亡と同程度に評価されるという級別を考えておるわけでございますが、これは五十二年の実態調査で見ますと、六十二人の方がこの一級から三級までに該当する犯罪被害を受けた方でございます。法案によりまして支給対象となるという数を推計いたしますと、約四分の一が除外されまして、四十六人程度と五十二年の実態調査では考えております。
 これをいつまでの被害の重障害者に対して考えるかということは、将来設立されます財団の寄付行為の定め方いかんにもよると思いますが、私ども、現在何人ぐらいの方がおられるかという実態調査をしておりませんので詳細は申し上げにくいわけでございますが、年間約四十六人ぐらいずつ重障害の方がおられるという状況でございます。
#31
○佐藤三吾君 いや、私が聞いておるのは、その四十六人の数字は私も把握しておるわけですが、それは五十二年度の場合が四十六人ですよ。五十二年度に起こった事件による重障害者が四十六人、この法案の適用に該当する者が四十六人ということであって、それ以前の方でもいらっしゃると思うんですね。警察庁でつかんでおる、生存者の中における重障害者というのは大体何名つかんでおるんですか。
#32
○政府委員(山田英雄君) この点につきましては、五十二年度の実態調査以外にはまだ調査しておりませんし、データをただいま持ち合わせておりません。したがいまして、年間四十六人ぐらいの方がこの法案の支給対象の重障害者であるということは調査の結果で確かめられておりますので、その数を基礎にして考えていくことになろうかと思います。
#33
○佐藤三吾君 基礎に考えていくとすれば、大体どのくらいの予測を持っておるんですか。私が聞きたいのは、被害者の中で重障害になっておる人、これは重障害であったけれどももう亡くなったという人は対象外になるでしょう、逆に言えば。そうすると、いま生存しておる重障害者というのは何名を大体予測しておるのですか。
#34
○政府委員(山田英雄君) これは改めて調査いたさなければ正確な数字はわからないといま考えております。したがいまして、こうした方々に財団による一時的なお見舞いをする場合につきましても、先ほど申し上げましたように、奨学資金制度に加えてやるとなりますと、資金の額との見合いもあると思います。そうした見合いと、改めて調査した場合の数との見合いでお見舞いの程度もおのずから固まってくると思いますが、大ざっぱに申し上げれば、やはりこの四十六人にどれだけお亡くなりになられた方がいるかということは調査しなければわからないわけでございますので、年間四十六人、それで何年分ならば何人おられるというようなことで試算するより、いまの場合はつかみようがないと考えておるわけでございます。
#35
○佐藤三吾君 私は、これは何年前とかいう議論じゃなくて、たとえば四十六年以降に重障害者になった者であるとかね、こういう考え方では意味がなくなるのじゃないか。これこそやっぱり重障害者で現在生存している方々全員にこの際ひとつ見舞い金を出すと、こういうことでなきやならぬと思うのですが、そういう考えではないんですか。まあそれは寄付金の集まりぐあいの問題いろいろあったとしても、重障害者の中で、これこれについては見舞い金を出すけれども、同じ重障害者のこれこれについては出さないと、年数で区切るんですか。
   〔理事金丸三郎君退席、委員長着席〕
#36
○政府委員(山田英雄君) 私どもの気持ちとしては、ただいまお尋ねにありましたように、法施行時に重障害で伏せっておられる方、この法律案の支給対象になって伏せっておられる方ということに対してお見舞いを財団からすることがベターではないかというふうに考えております。
#37
○佐藤三吾君 まあ言うならば、生存しておるこの重障害者に国として誠意を示したいと、こういうことというふうに理解していいわけでしょう。
#38
○政府委員(山田英雄君) 国としてと言われた点でございますが、法律によって遡及はできない、そうした状態を考えた場合、公益財団法人としていろいろいまお尋ねの御趣旨に賛同される方々の発起を待って、その法人の事業にそうした重障害者のお見舞いを検討していくということでいかがであろうかと考えておるわけでございます。
#39
○佐藤三吾君 ぜひそういう点は私もお願いしたいと思うのですが、その際に、この寄付金の浄財の状況等も勘案して、いわゆる見舞い金の中身というものが吟味されると私は思うのですけれども、しかし、おおよそのめどというのはどの程度を考えておるのですか。見舞い金について。
#40
○政府委員(山田英雄君) いま、具体的なめどというのは、特に私どもの頭の中にあるわけではございません。これは先ほど申し上げましたように、基金の集積の度合いによると思います。
 それから、特に責任を持って申し上げられないのは、奨学資金につきましては、先ほど申し上げましたように、他の制度というものが、そのときどきの物価状況に応じてつくられてきているモデルがございます。したがいまして、一応試算というものをいたしまして先ほど御答弁を申し上げたわけですが、こうした重障害者への一時見舞いというのは、他の法人の例にございませんものですから、やはりこれからつくられる財団法人の寄付行為を設定する場合の資金の額との見合いによると思います。そういう意味で、できるだけ手厚くすることをわれわれも期待いたしますし、努力したいと思っておりますが、具体的に幾らかということはいま責任を持って申し上げられないわけでございます。
#41
○佐藤三吾君 これはやっぱり警察庁だけではどうにもならない部分が出てくると思うし、大臣が本腰にならなければ、本当に被害者の皆さんが、何というのですか、いろいろあるけれどもしようがないわと言うて納得するというか、そういうところの額というものは出てこないのじゃないかと思うので、大臣にもこれはひとつ強く――遡及ができればもうこういう議論はしなくていいわけです。遡及がどうしてもできないとするならば、それに見合うものとしての策でありますから、努力をしてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
#42
○国務大臣(後藤田正晴君) できるだけの努力をいたしたいと、かように考えます。
#43
○佐藤三吾君 それでは、大臣にこれは直接聞いておきたいと思うのですが、先ほどあなたがおっしゃった中で、たとえば市瀬さんとか、この問題に生涯をかけて十数年にわたって努力をなさった遺族の会の皆さんですね。市瀬さんの場合などは子供さんが殺されたわけですから。そうなると、結果的に、逆に言えば遺児もない。殺されたわけだから重障害じゃない。障害者じゃない。しかし、この息子を殺された憎しみ、いろいろあったでしょう、それを新たに起こる人たちにまでさしてはならぬということで全力を挙げてがんばってこられて今日日の目を見るということになるわけですけれども、こういう方々に対して大臣はどのように考えておるのか。もうこれは法律ができたことで喜んでもらいたい、後は、御苦労さんでしたと、こういう考え方なのか、それとも、こういう方々に対してもやっぱり何とか、国としての、大臣としての、誠意というか、こたえるというか、そういうものについては一体どういう考えなのかお聞きしておきたい。
#44
○国務大臣(後藤田正晴君) まあ法律としての制度としては、こういう新しい救済制度が生まれたんだということで、ああいった長年御努力した方々には御満足をしていただく以外方法がございませんが、しかし、それだけでいいというものではございません。したがって、ああいった御努力を重ねられた方には何らかの措置は考えてみたいと、かように考えておるのです。
#45
○佐藤三吾君 ぜひひとつ誠意を示していただいて――確かに市瀬さんもこの法律ができれば、御主人と息子に早速墓参りをして報告したいということを言っております。恐らく遺族の皆さんはその心境じゃないかと思うのです。遺族の、特に会のために全力を挙げてきた方々は。ただ、しかし、そうはいっても、皆さん言われることは、やはり遡及しない、何らかの形となった国の措置が出てこないということに対する言いようのないさびしさ、不満というのは私はあると思うのですね。そういったものに対して、やっぱり当然誠意を持ってこたえていく、これはひとつぜひこの機会に私からもお願いしておきたいと思うのです。
 そこで、時間がございませんから先に進みますが、本法の中身の問題ですが、第二条で過失犯が除かれておりますね。たとえばガス自殺が起こった。よくやりますね、ガス自殺を。マンションとかアパートで。それから十階、十一階の屋上から飛びおりて自殺した。ところが、たまたま通りかかった人が、何の恨みもないのに自殺の道連れに遭う。ガス自殺した隣の家がそのためにやられる。こういう事例はたくさんございますが、こういう場合は、一体本法の場合にはどういうふうに考えておるのですか。
#46
○政府委員(中平和水君) この制度につきましては、法案で御案内のように、故意の犯罪行為による被害につきまして、遺族などの精神的な打撃が非常に大きいのに何らの救済がない場合が多いし、こういう気の毒な現状をそのまま放置しておくべきでないという社会の意識にこたえて創設をしようとするものでございまして、故意の犯罪行為というのは、これまた御案内のように、これは原因者負担による方策がとり得ない分野でございますので、こういうことから全額公費の負担による給付金の制度というものを例外的な制度として創設をしておると、こういうことでございます。
 ただいま御指摘のありました過失犯による被害につきましては、基本的に私どもは原因者負担の原則のとおり、ちょうど自賠責の保険に見られるように、責任保険などの諸方策によってやっぱり救済の方策がとられるものである。それから、過失に基づくものは、一般的にこれは不注意な行為による被害でもありますことから、これをだんだん広げてまいりますと、自燃災害とか不可抗力による事故等々も区別して、全額公費負担という例外的な制度をぜひとるべきだと、こういう社会の意識があるかどうかということについては疑問があるではないか。こういうことから、過失の被害によるものにつきましては適用の対象としなかったものでございまして、この制度の対象としましては故意の犯罪行為による被害に限る、こういうのが適当であると、こういうふうに考えて立法した次第でございます。
 ただいま御指摘のありました中でガスの問題でございますが、これは、ガス自殺ということになりますと、ガスを放つというところにこれは故意の行為があるわけでございますから、この法案の二条の故意による犯罪行為ということに該当してまいるわけでございます。つまり、ガスを放つ、そして当然ガスを放てばガス漏出という結果が出るし、その結果人が亡くなったということになりますとガス漏出致死傷ということで人を――ガスを放って自分が自殺をして人を殺した場合でございます。そうでなくて、過失でガスの火をつけ忘れたとかという場合になりますと、これは過失ということになりましてここに故意行為が認められない。こういうことで本法の適用にはならないと、こういうことになるわけでございます。
 それから飛びおり自殺の問題ですが、これも非常に法律的に純粋に申し上げますといろいろと問題があるわけでございますが、一般的には、飛びおり自殺で下を通っておる人が巻き添えになったという場合には、大変お気の毒でございますが、この法律では過失ということになりますので、直ちには適用にならない。しかし、これまた法律的に申し上げますと、下を大勢の群集が通っておって、下へ飛びおりればだれかに当たるだろうと、そういうふうな犯意が見受けられる場合には、これは未必の故意というものが見受けられるわけでございますから、その場合には一応故意による殺人ということになるわけでございまして、そういう場合は一応故意行為ということで該当してまいることになろうと、こういうことに考えておるわけでございます。
#47
○佐藤三吾君 その判定は何で――まさかね、下をだれか通るからまぐれで当たるだろうと思って飛び込むだなんて、そんなことは考えるわけないじゃないの。どうなんですかね、それは。
#48
○政府委員(中平和水君) ただいま、私抽象的な法律論で申し上げたわけでございます……
#49
○佐藤三吾君 実際の問題となるとどうなんだということを聞いておるわけです。
#50
○政府委員(中平和水君) 事実問題といたしますれば、一般的には、自殺しようとする者が人を積極的に巻き添えにしようなんというのは、これは通常は考えられないわけでございますから、通常はこれはやっぱり過失による行為ということになるだろうと、こういうふうに考えておりまして…
#51
○佐藤三吾君 そうすると除外になるんですか。
#52
○政府委員(中平和水君) したがいまして、そういう場合にはやっぱり本法は動いてまいらないと、こういうことになるわけでございます。
#53
○佐藤三吾君 これは大臣、問題じゃないですか。それはあんた、通っておる人はまさか人間が降ってくるなんて思いもせぬわ。また今度は、自殺する人は、だれかに命中しようと思って飛びおりる人もおらぬだろう。そのために本法の適用がされぬということについては、これは問題があるんじゃないですか。
 また、ガス自殺にしてもね、いま言うように、自然発火とか故意とかね、まあ自殺する人は大体故意でガスはやるのが普通ですわね、自殺しようと思うわけですから。ところが、その隣の部屋がそのために巻き添えを食っているというのがたくさんいま出ておるわけです、現実に。この場合に、適用除外ということにはならぬじゃないですか。いかがですか、これは。常識的に考えぬとね。
#54
○政府委員(山田英雄君) お尋ねの過失の問題につきましては、立法政策の問題だろうと思いますが、諸外国でもイギリス、アメリカ、西独などは本法案と同じように敵意の犯罪に限定しております。その趣旨は、他の制度によって救済されないもの、そういうぎりぎりのものを救済しようというのがこの犯罪被害者等給付金支給法案の趣旨だろうと思います。これは被害者のお立場からすれば、いかなる制度の適用も受けない。しかも行きずり殺人で殺されておる。そうした者に、社会が、国家が、救済の手を差し伸べないのはまことにもってけしからぬではないかということで、法秩序への不信感がみなぎっておる。自分の精神的経済的損害が補てんされないままに放置されているということで法秩序への不信感がみなぎっている。われわれは、その不信感というものを除去することが国の責務であるということでこの法案を検討してまいったわけでございます。
 そういう点からしますと、過失犯につきましては各種保険制度、過失の原因者があらかじめ入っている保険制度で相手方の損害を、被害者の損害をカバーするということが近代社会においては発達してきております。そういう点。それから、被害者の感情の問題はやはり故意犯とは本質的に異なると思います。故意に殺された場合と過失が介在して殺された場合ということでは被害者の感情が違う。それから、やはり救済の緊急性というのが、実態調査によりましても、過失犯の場合には不法行為制度の機能している程度が故意犯よりははるかに高い。そういう各種保険制度の救済の可能性とか被害者の感情あるいは加害者の賠償能力、そういうことで、学者の方でも過失犯の救済の緊急性は乏しいということを言っておられます。
 それから同時に、責任保険制度の発達ということも申し上げましたが、現在賠償責任保険というのがわが国においても非常に発達しておりまして、要するに偶然な事故によって他人を傷つけたり、物を壊したりした場合、法律上の賠償責任、過失による賠償責任を負担するわけですが、その場合に保険ということでてん補するという賠償責任というのが非常に発達しております。個人賠償責任保険あるいは生産物賠償責任保険、施設所有管理者賠償責任保険、そしてLPガス業者賠償責任保険、大変細かいものがございまして、受託者賠償責任保険とか請負業者賠償責任保険あるいは昇降機、エレベーターの賠償責任保険、原子力保険、旅館賠償責任保険、自動車管理者賠償責任保険と数限りなく制度としては発達してきております。こういう責任保険の制度の発達によって救済されるという可能性がある分野についてまでこの法律制度によって救済の範囲を拡大すべきかどうか。そういうことを検討いたしまして、法律案の原案といたしましては過失犯を入れないという立法政策をとったわけでございます。
 御見解は十分にわかるわけでございますが、私どもの立場はいま申し上げたことで御理解をいただきたいと思います。
#55
○佐藤三吾君 だから、いまあなたがおっしゃったような各種の保険制度、被害者の方がそれに入っていない。それから加害者の皆さんも賠償能力もないという事態だってあり得ると思いますね、こういう場合に。そういう場合に救済するのがこの制度の趣旨じゃないんですか。だから、それを過失犯ということで割り切っていくんじゃなくて、過失犯の場合にはそういう意味での厳重な審査をするけれども、それでもなおいま言ったような保険制度その他の適用がかかってないと、こういう判定が出てくれば、それについては当然本法を適用すると、こういう理解をすべきじゃないんですか。いかがですか。
#56
○政府委員(山田英雄君) 過失の問題に限りませんで、犯罪による被害は、けがをした場合あるいは財産を盗まれた場合、財産を棄損された場合とかいろいろあると思いますが、およそ犯罪による被害を全部救済すればそれ自体はいい制度になるという考え方もあろうかと思います。しかし、この制度の動機づけになりましたのは、何といいましても一家の大黒柱を失って即日一家が路頭に迷う。あるいは重障害を受けてその日から働けなくなるというような被害に対して、国がどうして救済の手を差し伸べないかということが大きな動機づけだったと思います。そして、先ほども御答弁申し上げましたように、他の制度によって救済されないからこそその被害の程度が大きく目立ってきたわけでございます。そういう意味からしますと、他の制度によって救済されるものも包摂した広い保険制度にするということについては、他の制度との交錯がそこで出るわけでございますので、私どもとしては、制度をつくることの動機となりました、最も気の毒な状態というものをまずもって救済するのが法律案をつくる場合には必要な考え方ではないかという立場で検討をいたしたわけでございます。
#57
○佐藤三吾君 これは大臣、いま言うように、ガス自殺や飛びおり自殺の場合に、現実にはまさにこれは言うならばいわれなき殺人ですわね、どっちも。ただ問題は、過失犯であるかどうかが適用の分かれ目になる。しかし、いま官房長が言ったような、諸種の保険制度なりもしくは加害者の原因者負担という立場から補償能力があるとか、そういう前提があるならいいですよ。しかしそれがない場合に、これはやっぱり当然運用上、過失犯であるからということで除外するというわけには、私は実際問題としてまいらぬのじゃないかと思うのですよ。いかがですか。
#58
○国務大臣(後藤田正晴君) この制度は、実際考えれば考えるほどむずかしいのです。そこでやはり法の制度としては、過失犯というものは、何といいますか、原因者負担といいますか、それで割り切ると、故意犯だけに限らざるを得ないというのは、これは立法の経過における結果こうなったわけです。しかし御説のように、いまの飛びおり自殺で下を歩いておって死んでしまったとか、あるいはガス自殺の巻き添えを食ったとか、これたくさんあるわけですね。そこらは一体どう扱ったらいいのかというのは、これは実際問題としては運用上の問題にかかってくると思います。
 それだけに、裁定機関の責任は私は相当に重いと思います。むやみに広げるわけにいけない。さればといってしゃくし定規というわけにもいかぬ。ならば、たとえばいまのような飛びおり自殺、これは確かに飛びおり自殺する人は、おれが飛びおりたときにあいつを巻き添えにしてやろうなんというのは余りないかもしれません。しかし、現実に銀座のビルの上から飛びおりるということになれば、これは場合によれば未必の故意があるじゃないかというような認定だって私は不可能ではないと思いますね。そういったいろいろなことを考えて、裁定の際にはよほど考えなければならない。ならば、その裁定をする機関が、それだけの法律的な知識もあるし同時にまた社会的な常識的な判断のできる人でなければならぬといったようなことで、この制度には、法曹界の人であるとかあるいは学者であるとかあるいはまた犯罪実務に明るい人とかといったような専門的な人を置きまして、そこらの人の意見を十分考えて具体的な妥当性のある運用を図っていくことができるようにしたいと、かように考えておるのです。一応たてまえ上は、どうしてもこういう割り切り方をしなければ割り切ることはできない大変むずかしい制度であるということも御理解をしていただきたいと思います。
#59
○佐藤三吾君 そういうことで、ここら辺の運用というのは非常に慎重な配慮もあろうと思うのですが、私は、いま大臣が答弁したように、そういった慎重な審議の上でしょうけれども、ひとつぜひ法の趣旨に照らしてこれらの方が救済できるようにこの機会にお願いしておきたいと思います。
 そこで、裁定委員会ですね。これは八十四国会を見ると法務省の刑事局長が答弁しておるのですが、いわゆる捜査機関が実施機関となるということは誤解が生ずるので適当でないということを言っておるのですね。これは、行政委員会か何かを設置をして、そこで、いま大臣が言ったように、法律にも明るい、同時にまたそういった運用に誤りないような人選をしていくということの方がいいのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
#60
○政府委員(山田英雄君) お尋ねのように、この法律による裁定機関といいますのは、被害者救済のためでございますから、その被害に係る犯罪の捜査機関とは区分けした方がいいということは一つの前提だろうと思います。また同時に、非常に錯綜した事実関係の中で被害者の気の毒さということをよく判定しなければならぬ、そういう意味で、合議体でなければならないというのも一つの前提だろうと思います。そうした観点からいろいろ法務省とも協議してまいったわけでございますが、一つの理想的な案としては、独立の行政委員会をつくるということであろうかと思います。しかし、新しい行政機関をつくらなくても、現在の行政機関の中でその裁定するにふさわしい行政機関があるならば、それにゆだねた方がいいということも現実の行政の面では特に必要な観点だろうと思います。
 そういう意味でいろいろ検討してまいりましたところ、公安委員会というのは大変ふさわしい機関ではないかという結論に到達したわけでございます。これは警察の組織の中の機関ではございますが、御承知のように、警察運営の民主性、政治的中立性、これを担保するために本部長以下を管理する民主的な機関としてつくられておるわけでございますし、その構成も警察法によりまして政治的な公正さを担保するようにつくられております。しかも知事が議会の同意を得て任命するということでございます。それから、管理といいますことの意味は、個々の事件を指揮監督するということではないわけでございます。警察運営の民主性、政治的中立性を担保するために、方針、大筋を示して監督していくということでございますので、そういう意味でも個々の捜査からは離れておるわけでございます。
 それから、さらに申し上げますれば、気の毒さの程度を見るということは、必ずしも法曹専門家でなければならないということではないと思います。むしろ、社会生活上のいろいろな事実関係に通じておる、いわゆる良識ある知識人であるという方が適しておるのではないか、こう思いますが、そういう点で公安委員会の日常の事務を見てまいりますと、これは犯罪捜査ということではなくて、警察が所管している道路交通法とか風俗営業等取締法、いろいろな各法令の行政処分、これを行いますときに公開による聴聞を行うわけでございますが、これは各省庁の聴聞でございますと、たとえば大臣が行うという場合でも内部の専決規程で局課長が実際に行うというような運営になっておりますが、公安委員会の場合は、それに与えられた行政処分権というものに着目して、御自身が定例の公安委員会の後で個々の被処分者の言い分というものをじっくり聞かれて、それで日常の運営でも事務当局がそのときの公安委員会の指示を受けて処分を軽減するとかいうことは枚挙にいとまがないわけでございます。そういう際に、大変現在の社会生活上の事実関係に通暁しておられますし、住民の権利にかかわる処分ということにも判断がなれておる。そういう点からしますと、この法律の被害者救済の実を上げるために気の毒さをどう見ていくかということには一番適しているのではないかというふうにわれわれ思っておるわけでございます。
#61
○佐藤三吾君 次に行きますが、第九条の、額が非常に低いということについては大臣がさっきも言ったとおりだと思うのですが、私はその意味では同じなんですが、仮に、とにかく早く成立して適用させなければいかぬという観点から言うとやむを得ないとしても、これは他の制度もそうでしょうけれども、やっぱり当然物価とかいろいろなものを見合いながら引き上げていかなければならぬ性格のものだと思うし、将来の方向としては自賠責ぐらいのところまでは引き上げていくと、そういうものでなければならぬと思うのですが、この点についてはいかがですか。
#62
○政府委員(中平和水君) 御案内のように、この法案では遺族につきましては最高八百万、それから重障害の人につきましては九百五十万ということになっておりまして、ただいま御指摘のございました自賠責等に比べますと、これはかなりそういう意味では低い額になっておるわけでございます。しかし、これもまた御案内のように、自賠責というのはそれぞれの自動車の利用者の掛金によって成り立っておる制度でございますから、これを全額公費負担であるこの制度と直ちに比べてまいるわけにはまいらないだろうと思います。それから、こういう制度につきましては、私どもは、例の警察官の職務に協力援助した者に対する給付等もございまして、これは警察官に成りかわって仕事をしたために亡くなられたり重障害を受けられた方々でございますから、こうした方々を上回るわけにはいかない。したがいまして、他のこうしたことを勘案しながら、できるだけそれに近い額にしたいと、こういうことでこれに落ち着いたわけでございます。
 しかしながら、これの額につきましては、私どももこれは、必ずしも十分ではないというような御指摘、いろいろな立場からの御批判もあろうと思いますが、まだまだ努力していく余地のある問題であると考えておりまして、今後、物価の上昇とかいろいろなものとのにらみ合いの中で、ほかの諸制度とのつり合いを見ながら額の向上には努力してまいりたいと、こういうふうに考えております。
#63
○佐藤三吾君 ぜひひとつそういうことで、大臣も含めてお願いしておきたいと思います。
 それから六条の、給付の支給除外についてお聞きしておきたいと思うんですが、親族の中で、たとえば別居中の妻の場合、これはどうなるのかということが一つ。
 それから、二号、三号の具体的な事例は一体どういうことなのか。
#64
○説明員(浅野信二郎君) 国家公安委員会規則で内容を定めることになるわけでございますけれども、配偶者でありますれば別居しておりましても一応対象外という考え方をとるべきではないかというふうに思っておるわけでございます。
#65
○佐藤三吾君 別居中でも。
#66
○説明員(浅野信二郎君) 別居中でございましても。まあ別居の事情をどういうふうに具体的に反映さしていくかという問題はございますが――配偶者問の犯罪の場合でございますね――原則的にはやはり、別居しておるという場合でありましても対象外というふうに一応考えるべきじゃないか。ただ、いずれにしても具体的事情により判断するという方法は最終的には残しておくというふうには考えております。
 それから、二号、三号の具体例でございますけれども、二号は、被害者が犯罪行為の発生等について責任のある場合でございます。犯罪行為を容認した、あるいは犯罪行為を一緒にやっておって被害を受けたというような場合。それから、ここに書いておりますように、犯罪行為を誘発するような行為を故意に行ったような場合。自分の方から暴力をふるった、凶器を先に出したというような場合は支給の対象外というように考えております。それから三号につきましては、著しく不正な行為、たとえば覚せい剤の取引というようなことに絡んで犯罪被害を受けたような場合。二号に当たらないような場合でも、そういう場合であれば支給するのは適切ではないのではないか。それから暴力団の対立抗争、内ゲバ等で被害を受けたような場合というようなのが例でございます。
#67
○佐藤三吾君 時間がございませんからこれで私の質問を終わりますが、大臣、やっぱり先ほどの話に戻りますけれども、われわれは、こういった法の趣旨からいっても、被害者の皆さんに法の成立前と成立後に差があるわけじゃないんですから、できるだけひとつ遡及をすべきだということで努力してきたんですが、結果的にはどうしてもそれができない。ならば、さっきの財団法人ですか、をつくって措置する。被害者の中の重障害者であるとか育英資金の問題であるとか、さらにはこの立法のために本当にすべてをなげうって努力してきた方々に対する何らかの報いを、誠意を持ってひとっこたえていく。そしてこの法律がなお一層、成立したかいがあったという、こういったものを私は強く望んでおきたいと思いますが、ぜひそういう観点から、法律が通ったらもうこっちのものだという考え方でなくて、この機会にひとつ強く求めておきたいと思います。
#68
○国務大臣(後藤田正晴君) この制度は、先ほど申しましたように大変むずかしい制度でございます。そこで、国会における審議等を踏まえまして、この制度を生きた制度として運用をしていくように努力をいたしたい。同時に適用外の方々あるいはまたこの制度を生み出すために大変お骨折りをいただいた方々、こういった人に対しても、公安委員長としてはできる限りの処置を講ずるように努力をいたしたいと、かように考えております。
#69
○委員長(後藤正夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。
   午後零時十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二十二分開会
#70
○委員長(後藤正夫君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、犯罪被害者等給付金支給法案を議題とし質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#71
○上林繁次郎君 どれだけかお尋ねをしてみたいと思いますが、この法案につきましては、参議院にこの法案が参りましてから、理事会あるいは理事懇談会、こういった中でいろいろと論議を交わしてきました。そして、何とかもう一歩前進したものをということで話し合ってまいりました。もちろんこの法案の問題点といいますか、最も多く議論をされた論点といいますか、これは私が申し上げるまでもなくおわかりのことですね。そういったことが具体的にいろいろと話されてまいったわけでありますけれども、けさの審議の中でも具体的にいろいろな問題が提起されました。しかし、論議を聞いておりますと、具体的な問題については、われわれが考えるようなお答えは何一つとしてなかった。ですから、これは衆議院段階から始まって参議院に来たのでありまして、その論点についてはそれぞれの立場から論議をしてきたわけですね。ここでもって改めて私が具体的な問題を取り上げてお尋ねをいたしましても、これはやっぱり同じことを繰り返すのではないかという、こういう心配があるわけですね。その心配を除いてくれるというならばこれはまた別でありますが、まず政府のかたくなな壁はまことに厚い。ですからちょっと崩せそうもない。だから私は具体的なお尋ねは努めて避けよう。それで、いままで理事会、理事懇、あるいはこの委員会での審議を通して、どうもここのところは納得できないな、矛盾があるなと。大臣の言うことと官房長の言うことどうもちぐはぐなところがあるのじゃないか、いままでずっと話し合ってきた過程の中で。そうすると、そのまま見逃しておきますと、当地方行政委員会における野党は何をやっておったんだ、あんなごまかし的答弁で目をつぶったのか、こういうそしりを後々に受けるようなことがあってはいけない。そういうようなことで、そのちぐはぐと考えられるようなところを努めてお尋ねをして、その点を明らかにしていっていただきたいと、こう思いますので、そんなつもりでお尋ねをまず申し上げます。
 そこで、いわゆる一番焦点になった問題点ですね。これは何といっても遡及の問題です。この遡及するということについては、与野党ともにそれは当然であると。しかし、いろんな事情があってそれができない。そのできないということに対する一応の――いままでの話し合いの中で、できないということについての一応の理解はしたわけです。ですからしつこくこの問題についてお尋ねする気はありませんけれども、大臣としては、やはり大臣の考え方の中には、これはいろいろそういう被害を受けた遺族の方たちの努力のたまものによってここまできた。ですから、できることならば遡及をしたい、当然遡及をすべきなんだと、こういうふうにお考えになっているのかどうか。この点ひとつ大臣のお考えを聞かしてもらいたい。
#72
○国務大臣(後藤田正晴君) 午前の審議でもお答えしましたように、この制度実現のためにいろいろ運動なさった方のお気持ち、同時にまた、こういう制度ができればできる限り広く適用をしなきゃいかぬということは、十分気持ちとしては私も持っておるわけでございます。そこでこの制度は、いま御質問の遡及効の問題、それから適用範囲、つまり故意、過失の区分の問題、金額の問題、それから同時に施行期日の問題ですね、それから裁定機関のあり方、同時に裁定機関の裁定実務をめぐる問題、こういったようないろんなむずかしい問題があるわけでございますが、私は、気持ちとしては、先ほどお答えしたような気持ちでずっと臨んだつもりでございますが、実際問題になりますとこれは非常にむずかしい問題があるわけでございます。
 そこで、遡及の問題については、これはやはりこういう制度をつくる以上は、私は、遡及はできない、これはまあやむを得ない。そこで、ならば、何らかの措置を考えてあげなきゃいけない立場の人もおるじゃないか。それについては行政上の措置で何らかのお報いをしなきゃなるまいと、こういう点を考えておるような次第でございまして、気持ちは十分、上林先生とそう変わらぬつもりでおるわけでございます。
#73
○上林繁次郎君 大臣、遡及はできないということが結論なんです、いまのお話は。遡及ができないということはいやというほど聞かされたんだ。それにはいろいろな事情がある、その事情があるために遡及というのは無理であると。われわれとすれば、ではあろうが何とかならぬかというので、次の便法というか、それを考えてきたんだ。そういうことであって、いま私がお尋ねしたのは、基本的に大臣の立場で、心情的にこれは本当は遡及をすべきなんだと、そして、こういう被害を受けた人たちのいわゆる精神的な、まあ物質的という問題は余り強くうたってなかったですね、精神的なそれを慰めたいという考え方が基本的に大臣にあるのかどうかということをお尋ねしたわけです。大臣のお答えは、いろいろな事情がある、だから遡及はできないんだと、こういうわけです。ですから、もう一歩先の問題――もう一歩手前というかな、それを論ずる前のいわゆる基本的な考え方とすれば、当然遡及ということはすべきであろうと、こういうふうにお考えになっているのかどうかということなんです。その点を、一言で結構です。別にこれは、おれもそうだよと言ったって差しさわりないですよ。
#74
○国務大臣(後藤田正晴君) 法律の制度としては、遡及は私は実際問題としてはむずかしいと思います。そこで、公益法人なり財団法人ですか、そういうものをつくるなり、あるいは感謝状の問題であるとかいろいろございますので、できる限り、この法の適用外の方々について何らかの処置を講じていきたいと、かように考えております。
#75
○上林繁次郎君 大臣、一言だけ言っておきますね。答えになってないんですよ。われわれも、心情的にあるいは問題の性質からいって、これは遡及すべきじゃないかと。しかし、いろいろ話し合っているうちに、なかなかむずかしい問題も確かにあるだろう。だから、その全体に向かっての遡及というのは、これは困難である、こういうふうに理解した。だけれども基本的には、心情的には、これは遡及すべきが筋である、こういう考え方で話し合いを進めてきたわけです。ですから、私も人間であります。大臣も人間であります。その大臣としての基本的な考え方、また人間としての心情、そういう立場からこれはどうお考えになっておりますかと、こういうわけなんですよ。大臣は盛んに、非常にこの問題はむずかしゅうございましてと言う。むずかしい、だからこそ一応こっちは引き下がったようなかっこうになっているわけですけれどもね。そういうことではなくて、もっと基本的にどうお考えになっているのかということです。
#76
○国務大臣(後藤田正晴君) 私も、心情的にはできるだけ広く網をかけたい、これは心情的には間違いございません。ただ、法律制度として考える場合にはそれができないんだと、こういうことでございます。
#77
○上林繁次郎君 けさほどからの審議を聞いておりますと、大臣は、予算的な面から一月一日施行ということにしたんではない、ごらんになってごらんなさい、たかが二億じゃないか、おれの力からすれば――そんなことは言わなかったですね、まあたかが二億や三億と言わんばかりの御答弁であったと私は思うんです。そこで、これは予算面からの問題ではない、いろいろな手続の問題が非常にむずかしい、そういったことからこれが一月一日施行ということはこれはやむを得ないと、こういうふうなお話であった。この点を私はやっぱりはっきりしておく必要があるだろうというふうに思うんですね。
 そこで、これは午前中の審議の中で出てきた問題ですけれども、当初考えていたのは四月実施ということですよね。それで十億の予算を要求をした。ところが、要求したけれども、査定は当初はゼロでしょう、これは。ですから、二億取るのにこれはもう当局は四苦八苦したんじゃないですか。恐らく官房長もがんばっただろうと思うんです、当初ゼロだから。それで、がんばった結果それじゃまあこの程度、一月、二月、三月と三カ月分、事件件数このくらい、だから予算は二億、これでがまんしろと、こう言われましてね、それで、がまんはできないけれどもいままでになかった制度をとにかく発足できるんだから、そっちの方が先だと。二億で満足ではないけれども、それで一応出発しようというようなことでこれは始まったことではないかというふうに思うわけです。そうなると、これはあくまでも予算というものが中心になった物の考え方ではないか、こう私は理解せざるを得ないんですね。その辺のところを大臣から――大臣は先ほど予算じゃないよと、二億や三億の金が何だと言わんばかりでしたから。私は、そういう事情を踏まえて考えるならば、これはあくまでも予算上の問題でこうならざるを得なかった、こういうふうに理解するわけです。ですからその点をひとつ。
#78
○国務大臣(後藤田正晴君) その点は、午前中お答えしましたように、予算とは全く関係ないんだと言えばそれはうそになりますと、こういうことをお答えしたつもりでございです。したがって、予算だって背景にあったことはもちろん事実でございます。ただ、それだけであるならば、そんなものは金額的に見れば、予算全体の中で占めるごくわずかなものですから、問題なしに私はやれたと思うと、こうお答えしたんです。
 そこで私は、遡及効ができない、ならば、これは施行時期をもう少し繰り上げるわけにいかぬのかということを事務当局にも十分確かめ、検討もしてもらったんです。ところが、立法作業なり予算の作業等を通じてでしょう、事務当局としては、準備の点がございます、そこで本案の発足は一月一日にしてもらいたいんだと、こういう説明がございましたので、ならば、それで折衝しようということにいたしたわけでございます。したがって、事務上のいろんな問題点については官房長からお答えをさしたい、かように思います。
#79
○上林繁次郎君 官房長はいいや。官房長の話はもううんと聞いているから。ばかにしているんじゃないんですよ、いままでもうさんざんばら話し合ってきましたからね。
 そこのところはこちらには納得できないんです。ということは、当初は四月をめどに実施ということで考えていたわけなんです。四月をめどにということはどういうことなんだ。四月実施ということを当初考えてそれに向かって準備を進めてきたわけです。準備を進めてきたけれども、いわゆる予算上の都合でどうしても二億しかつかない。二億しかつかないならば、一月にやる以外ないんだと。その辺のつじつまを合わせるために諸準備諸準備と言う。それは諸準備の期間ですと、こう言うけれども、四月実施をめどに進めてきたわけですからね。考え方がそうであり、四月実施をめどにということは、当然その前から実施されたときの準備というものはなされていなくちゃいけない。粗々の準備ができてこそ初めて発足できるわけですからね。そこで、そういったことを考えると、諸準備諸準備で一月一日になったんだというそのお話はこれはどうもつじつまが合わない、こんな感じがするんです。その点のところをひとつお伺いをしておきたいんです。
#80
○政府委員(山田英雄君) 予算折衝なり法案作成のプロセスについて御説明申し上げなければならないと思いますので、私から御答弁いたしますが、確かに私どもは、五十五年度早々の実施ということを考えまして、五十四年八月の予算の概算要求の段階では、年間積算いたしました十二億円の経費を要求したわけでございます。ただ、その際には、支給対象、それから支給を除外する場合、あるいは減額する場合について、法律において明確な基準を定めまして、適用のための準備というものを法律段階において明確にして、時日を要しない、そういう形で当初考えておったわけでございます。いわば裁定手続についても、できるだけ迅速に、技術的にも簡便にできるように考えておったわけでございますが、新しい制度をやるだけに、予算折衝の過程あるいは法案作成の過程でいろいろな議論が出てまいりました。その際にはやはり明確に暴力団の抗争とか親族間の犯罪、そういうものを一義的に除いてしまったんでは、一体どういう者に支給するかという基準が遂に明確でないではないかという反論、本当に気の毒な場合を救済するという趣旨が達成できるのかと。これは非常に技術的なことで恐縮でございますが、制度の根幹について、立て方について、いろいろな議論が出てまいりました。その結果われわれも、本当に気の毒な方に公平に支給できるようにするためには、やはり犯罪の実態に即していろいろな事例を集積して、その中から基準を求めていくということが正しいという結論にも達しまして、本法案の六条でございますか、「支給しないことができる」場合、これを「国家公安委員会規則で定める」という制度の立て方になったわけでございます。そうしたことの経緯が、やはり法の施行についていろいろな準備をしなければならないということになったわけでございます。
 それから、もとより各制度間の調整というものも図らなければならないわけでございますが、これは政令に委任するように制度を立てておりますが、これはいろいろな各制度を所管しております官庁問の折衝というものに時間がかかるわけでございます。これは私ども、法が制定施行されました場合には、本当に準備が大変だと考えております。そういう意味で新しい制度につきましては、従来、公害健康被害につきましてもあるいは薬害副作用被害救済基金法につきましても、十一カ月あるいは七カ月という準備期間を経て施行日が定められております。このような新しい制度については通常そうした準備を要するわけでございますので、いろいろ予算折衝過程、立法過程で新しい問題が出てきたために施行期日の設定が変わってきたということを御理解いただきたいと思います。
#81
○上林繁次郎君 一応あなた方の理屈とすればそういうことが言えるでしょう。われわれからすれば、いわゆる四月をめどに実施をしたいという考え方と同時にそれだけの予算を要求したということね、当然それじゃ、何もなくて四月実施ということになった場合、そちらが考えていたように四月実施ということになったということになると、これはもうそれこそ、実施にはなったけれども全くめちゃくちゃな状況の中で実施ということになったんだということになりますね、そうなると。どういう根拠で四月実施、そのための予算を要求してきたんだ。そんなことじゃ、われわれとすれば、ばかにいいかげんな物の考え方で取り組んできたんだなというふうに思わざるを得ないわけですよ。だから、そういった考え方からすれば、こんなふざけた話はないだろうという考え方からすれば、言うならばずさんと言う以外にないんでね。ところが、さっきから言っているように、予算的にとにかく取れなかった。まあ二億は何とかがんばって取った、しかし二億では一月からしか発足できない。そこで、そのつじつまを合わせるために準備だ準備だと言う。そういうふうにしかこちらは感じられないわけですよ。そういう諸般の情勢を踏まえた場合に。だからお尋ねをしているわけでして、その辺、ごまかしみたいな形でうやむやにして私は終わりたくない。やっぱりきちっと筋の通ったものにして、委員会で筋の通った論議が行われた、結局はこうだったんだという明確なものを私は残しておきたい。みんなもそれならば納得できるんだというものを残しておきたいからこそそういうふうに――われわれからしてみれば、まことにその辺はずさんであり、矛盾だなという感じを持たざるを得ないんですよ。
 まあこう言ってみたところで、また返ってくる答弁というのは、そのつもりでおりましたけれども暴力団の関係がどうであったとか、最も気の毒なケースというのはどうであったとかという話でね、これは容易なことじゃない、やっぱり一月一日まで準備にかかるぞと、こういうふうに理屈を取ってつけたような感じの答弁しか得られないと思うんです、私は。だからこれ以上言いませんけれども、私はそういう矛盾じゃないかという点をまず指摘をしておきますよ。――答えは要らない、同じになっちゃうからね。同じ答えしかできないでしょうからね。
 そこで、遡及が無理ならば、せめて早くこれが実施できるように何とかできないか。法律は制定された、法律はもうでき上がった、国会も通った、いつでも効力が発揮できるようになった。だけれども、それから八カ月後でないと施行にはならないんだ。それで、この問の人たちを何とか救えないか。四月、いまもう制定されるわけです、法律が。それが施行されるのが一月一日。そうすると、その問の八カ月の間にこういう問題が起きないとは言えない。この問題は予測できませんからね、この問題だけは。もう思わぬときに事故が起きてくるわけですね。ですから、その起きたときに、法律はできた、だけれどもまだ施行されていないからその人たちは救えないんですよということになると、これは言葉じりをとるわけじゃないけれども、さっきから、気の毒な対象、気の毒な人、どういうのが気の毒かなんて、盛んに気の毒気の毒という話をしているけれども、これほど気の毒なのはないんだよ。法律はできちゃっている。だけれども、いわゆる効力は発してない。もともとそういう人たちのために法律によって何らかのいわゆる救済措置を考えていかなければならないということでできたのがこの法律なんですからね。
 だから、私から言わせれば、当然この法律が制定された段階からそれが実施されるというのが一番いいことだし、また、この法律の趣旨にのっとることだと、こう思っているわけです。だけれども、その辺のところがどうしてもうまくいかないんです。あるときには、そうなりますとやはり予算の編成も変わってくると。二億ということじゃ足りない、だから予算の関係もある、準備の関係もあると、まあいろいろな話がありました。だけれども、法の精神から言えば、いわゆる薬害とか公害とかという問題というのはこれは一遍には出ませんね。積み重ねでじわじわ出てくる。それでそれが公害とかなんとか認定される。この問題はそんなんじゃない。いま何でもなかったかと思うと次の瞬間にもうこの法律が適用されるような事故が起きてくるわけですね。ですから、そういう内容的に考えてもこの問題は、法が制定された段階で効力を発揮するという、だれが考えてもそれが当然のことではないだろうか、こう思うわけですね。幾ら言ってもなかなかがんとしてその点についての明快な答弁がなかったんですけれども、その点についてはどういうふうにお考えになるか、この点ひとつ考え方をはっきりしておいてください。これも前の質問と同じですよ。いま私が申し上げたように、そういう考え方の方が当を得ているんではないか、こういうことを言っているわけですからね。その点についてもう一度、事情がこうだああだでなくて、考え方について、どういう考え方を持っているかお聞かせを願いたい。
#82
○政府委員(山田英雄君) この制度は、わが国の法律体系にとりましては全く新しい制度でございまして、その発足に当たって定めました施行期日、これは申し上げておりますように、施行の準備のために必要な期間をとったために来年の一月一日となっておりますが、施行期日が定められております以上、私どもといたしましては、制度のたてまえとしては、施行期日前に発生しました被害、これにつきましては適用ができないと思うわけでございます。その間に被害を受けられた方につきましては、この法律にとりましてはいわば過去の被害、過去において被害を受けられた方と同じ立場に立たれるわけでございまして、御指摘のように、そうした方の気の毒さをどのように評価するかという問題は当然あるわけでございます。しかし制度といたしましては、同種の法律につきましても、準備のための期間を置きまして施行期日をきめて、その間に起きました被害なり事実につきましては、お気の毒な状態は同様でございますけれども適用しない。これが法律論でございまして、心情的には、ただいまの御質問で述べられた事柄、私ども全く同様でございまして心が痛むわけでございますが、制度論としてはやむを得ないものというふうに考えております。
#83
○上林繁次郎君 だから、まあ心情的には質問した内容はそのとおりである、だけれどもいろいろな事情でそうはできないんだと、こういうことですね。
 それで、もうとやかく言う気はありませんが、先ほど過失について、過失による事故、ガス爆発だとか飛びおり自殺だとかいろいろ例が出ました。そこで、この法律の趣旨はいわゆる犯罪被害者というんですね。犯罪被害者というふうに限定された法律だとするならば、私は、ガス爆発だとか飛びおり自殺というのは、それは犯罪に入るかどうかという問題ありますね、論議が。だから、その点は私は明確にどうだとは申し上げられませんけれども、まあそういういわゆる不慮の災難ですね、それに似た不慮の災難。そういった不慮の災難に遭われた方たちについては、やっぱりこの法律の適用を何とかしてなされないものかなという考え方はあります。そんなことでね、これは余り枠にはめちゃって決められないと思うんですね。ですから、やっぱりこれからもっと研究する余地があるだろうということね。盛んに官房長がこの前から言っているんですけれども、いま研究中でございます、気の毒な人の定義を一生懸命考えましてそれでいま盛んに検討しているというわけですから、今度は検討して、一月一日から施行になったとしてもそれは完璧なものとは言えないわけです。また是正していかなきゃならない問題もあるだろう。だからこの点は、私はやっぱり幅を持たしていく考え方が大事だと思うんですよ。
 大臣もさっき言いましたが、この問題については故意であるか故意でないかということ、これが非常に一つの重点になっていますね。そうなりますと、故意か故意でないかということは非常にむずかしい問題ですよ。さっきの飛びおり。それが故意であるとか故意でないとか、それはばかげた論議だというんだ。そんなのは飛びおりた人に聞かなくちゃわからないんだからね。そんなばかげた話ないんでね。それで、故意ということになりますと、まあガス心中するのは、何も人をあやめるために心中したわけじゃないんで、そうすると、隣の人がその被害を受けたからといってこれは故意ではないということになる。だけれども気の毒なことは気の毒だ、これは。心中であろうが、ガス漏れであろうが。だけど、それは故意に相手を殺傷するためにやったことではないということ、それだけは間違いないでしょうね。同時に、たとえばあいつを殺してやろうと思う。それでばあっと、何だかわからないけれども、何かでやるんだ。そうしたら間違って隣の人をやっちゃった。どうなるんだ、これ。隣の人がそういう災難を受けちゃう。ところが、犯人に聞いたら、あの人をやるつもりじゃなかりたんだ、こっちの人をやるつもりだったんだと。そうすると、これはやられた人は大変な状態になったけれども、しかし故意ではないんだということになる。――こんな理屈成り立たないですか。笑い事のようだけれども、しかしあり得ることです。そういうのはどういう判断をするかという問題ですね。
 ですから、そういうふうに取り上げていくと非常に幅の広いものになってくる。だから、これはやはり運用面では相当幅を持った物の考え方をしていかないと、法律ができたからそれの枠にばちっとはめちゃうんだということだけでは済まないだろう、こんな感じがいたしますね。その点どういうふうに考えていますか。
#84
○政府委員(中平和水君) この制度の趣旨につきましては、午前中に官房長の方からも詳しく説明がありましたように、この制度は、本来加害者によって償われるべき犯罪被害を、ほかに有効な手段がないことから、社会全体で被害を緩和しようという例外的な制度でございまして、したがって、この給付金の対象というのは、放置しておくことによって国の法制度に対す信頼の根幹が揺らぐと、そういうものに限って一応支給の対象として定めたわけでございます。しかし、先ほどお話がございましたように、何分にもこれは全くわが国にとって新しい初めての制度でございます。これからいろいろ運用をしてまいりますと、またいろいろな問題が出てまいろうかと思っております。いずれにしろ、この法律は被害者の気の毒な状態を救済するということを本来のねらいとする法律でございますから、したがって、その運用につきましてもできるだけこれは、法の筋を曲げるわけにはまいりませんが、やはり被害者の立場に立って運用ができるような弾力的な配慮をしなければいかぬ、こういうことは全く同感でございます。
 それから、運用の適用の対象等につきましても、過失を入れるか入れないかというのはこれは一つの立法政策の問題でございます。したがいまして、今後のいろいろな運用を通じまして研究を重ね、問題が出てまいりましたらまたその段階でいろいろとさらに被害者の立場に立った検討を進めてまいると、こういうことになろうかと思っております。
 それから、ただいま御指摘のありました具体的なケースでございますが、Aという人間だと思ってAに殴りかかったらBであってBが死んでしまったと、こういうのは、法律的に言いますと、要するに、打撃の錯誤ということになりまして、やはりこれは故意が認められる。Aを殺そうと思って間違ってBを殺してもやっぱりこれは殺人罪になるわけでございますから、この場合には当然Bの遺家族の方は適用の対象になってまいろうと、こういうことに考えております。
 繰り返しになりますが、先ほどの先生の御趣旨のように、弾力的な運用をしてまいるということは今後とも努めてまいりたいと、こういうように思っております。
#85
○上林繁次郎君 いまの適用の問題で、運用の問題でお話がありましたけれども、AとBに分けてお話があった。それは殺人罪だと。殺人罪だというのはそれは私にもわかっているんですよ。だけども、この法律の論議の中では何が問題になっているかというと、故意か故意でないかということが問題になっているんだ。そうすると、それは故意ではないんじゃないかということだ……
#86
○政府委員(中平和水君) 故意でございます。故意犯でございます。
#87
○上林繁次郎君 池のコイじゃないよ、あんた。いや、これは一例だけれど、本当にそれを厳密に話し合っていくと、この人じゃなかったんだと言えば、間違ってやられた方に対してはいわゆる故意ではないんだから。変な理屈を言うようだけれど。私はやはりそういう意味で運用面というのは、法を厳格に当てはめれば――前からずっと話し合ってきたんです。ところが、そういうようなことでなかなかかみ合わない。かみ合わないからそのまま行っちゃうと、がちっと一つの枠にはめられて、そしてそれは故意ではありませんということになる。だからこの法律の対象になりませんと。こういうことであってはまことにお気の毒だということです。ですからこんなことを言っているわけなんです。もっともっと運用面では幅を持たしてやる必要があるだろう、こういうことを申し上げているわけでしてね。これでもう私終わりたいのです。大臣も本会議においでになりますから、それに合わせてぼくの質問をやれと言うものですから、一生懸命それに合わせたわけでしてね。
 大臣、最後に、そんなようなことを含めて締めくくりの御答弁をお願いしたいと思います。
#88
○国務大臣(後藤田正晴君) 上林さんから御質問のように、この制度の運用に当たっては、いろいろな問題点も出てこようかと思います。具体的ないまの設例については、それは故意が成立する犯罪ですから問題ないんじゃないかと思いますが、ほかにも幾らでもボーダーラインみたいなものが出てくると思いますので、いずれにいたしましても、私としてはこの法律が生きた運営になるように十分配慮してまいりたいと、かように考えております。
#89
○上林繁次郎君 ありがとうございました。
#90
○委員長(後藤正夫君) 午後二時四十五分から再開することとし、休憩いたします。
   午後二時四分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時五十六分開会
#91
○委員長(後藤正夫君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、犯罪被害者等給付金支給法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#92
○神谷信之助君 この法案につきましては、先ほどから同僚議員の方もしばしば触れておりますように、私どもは遅きに失したと言わざるを得ないわけであります。それだけに、この法案をつくる上で大きな役割りを果たした市瀬さんを初め多くの運動をなさってこられた方々の期待を裏切らない、そしてまたそれを支えてきた多くの人々の期待にこたえる、まあ一〇〇%とはいかないにしてもできるだけそういった世界の範たる法律としてつくり上げると、そういう責任が政府にも与党にも野党にもあるというふうに私は思うんです。したがって、そういう見地から、参議院に送付されて以来、当委員会の理事会あるいは理事懇で、これは与野党を問わず、少しでも改善することができないかと、こういう努力を今日まで重ねてきたわけです。残念ながら、政府というのはなかなか岩のようにがんこで、われわれの一念だけでは貫き通すというところまでいかないできょう審議を開始するということになりました。きわめて遺憾なわけですが、しかし、そういう状況の中でも、私はやっぱり不十分な点についてはいまもなお改めてもらいたいし、あるいはすぐ改めることができなくても、近い将来にさらに一層りっぱなものに改善をしてもらいたい、そういう立場から若干主要な点だけ質問をさせてもらいたいと思います。
 まず、この法案の名称が、犯罪被害者等給付金支給法となっています。これがすなわち、言いかえると見舞い金的性格ですね、そういうことになっていで、犯罪被害者補償法案となってない。したがって、目的に、犯罪被害者に対して補償を行って保護救済を図るという趣旨も明記されてない。先ほどからの議論から言いますと、お気の毒な方に対してれんびんの情をもって何らかの救済の措置をとるという、そういうところから超えていないという感じを先ほどの答弁を聞きながら私はますます強くしているんですけれども、あえて給付金支給法案というようにして被害者の補償法案としなかった理由ですね。運動をされてきた方は、犯罪被害者等の補償法あるいは補償制度、これをつくってもらいたいということで運動をずっとしてこられたですね。そういう点についてまずお伺いしたいと思います。
#93
○政府委員(中平和水君) この制度というのは、犯罪の被害者の置かれておる気の毒な立場につきまして、いわゆる社会連帯共助の精神をもとにしまして、国の一種の責務として被害の緩和を図ろうということで実施するものでございます。そしてこの金銭の性格は、被害の発生に原因を与えた者またはこれらの者の集団の費用によってその損害のてん補を図ろうとするものでないわけでございますので、したがって、補償金という言葉は必ずしも適当ではない、そういうように考えられますので、金銭を交付する場合に一般に用いられる給付金という言葉を使ったわけでございます。したがいまして、あくまでもこれは連帯共助の精神に基づく国の責務として行う仕事でございます。
#94
○神谷信之助君 これは五十年の二月十八日の参議院法務委員会の議事録ですけれども、当時の法務大臣の稻葉さんは、「国家賠償的なものに考えるべきものだ、憐愍よりは責任論」という、そういう立場だった。「国家の責任という立場で被害者補償制度を、そこに基本の原理を置くべきもの」だという趣旨の答弁をなさっています。いまの局長の答弁は、だからそういう意味ではこの趣旨を貫いているというわけですか。
#95
○政府委員(中平和水君) 国といたしましては、犯罪から国民を守ることはその責務でございます。私どももできる限りの努力を日夜やっているところでございますが、そのことから直ちに、発生した犯罪の被害について国が法的な責任があると、こういう立場はとっていないわけでございます。各国の立法例等を見ましても、国におよそ賠償の責任があるというふうな立場は、まずほとんどの国がとっていないわけでございます。ただいまも申し上げましたように、私どもには犯罪から国民を守る責務がある、その責務から直ちに法的責任は生ずるものではない。しかし、これはあくまでも国の責任としてやるものであると、こういうことでございます。
#96
○神谷信之助君 いや、だから稻葉さんも、何も賠償責任という言い方はしていないんですね。国の責任としてこういうような補償制度を考える、そこに基本の原理を置くという趣旨ですから。その点は間違いないわけでしょう。いま何だかんだおっしゃっていますけれども。
#97
○政府委員(中平和水君) 恐らく稻葉法務大臣も、私がただいま申し上げましたと同じような趣旨で御発言になったものだというふうに理解いたします。
#98
○神谷信之助君 そして、いま言いました法務委員会の前の二月十二日の衆議院法務委員会では、先ほどからもちょっと引用されておりますが、稻葉さんは、「犯罪の被害者救済制度が今日わが国にできておりません。すでにできておってしかるべきものだというお考えには同感であります。文明国の名に恥じるという気持ち」だと、「れんみんよりは政府の道義的責任としてやるべきものだ」と、そして議員各位も「衆知を集め、万機公論に決して、世界にも範となるようないい犯罪被害者救済法をつくりたい」という御答弁をなさっている。さらにこのときのをずっと見てみますと、いつまでその任にあるかわからぬけれども、任期中にはぜひつくりたいと意気込んでおられたわけです。私はこのときの稻葉さんの立場というのは正しいと思います。また、恐らくそれで努力をなさったんだろうと思う。また、この答弁によって、それまで運動を進めてこられた人は、本当にいよいよ自分たちが報われるときが近づいてきたということで、さらに元気を出して、そして今日まで運動をしてこられたと思います。非常に大きな期待を与えられたろうと思う。
 ところが、現実に今度法案として出てきますと、先ほどから問題になっているように、その期待感を大きく裏切られるという状況になってきている。私は、行政府の責任は申すに及ばず、それよりも一層政治の責任というのはどうあるべきなんだろうか。確かに先ほどの答弁にもあるように、いろんな法律の理論的な問題もあったでしょうし、財政的な問題もあったでしょうし、新しい制度をつくるわけですから予想しないいろんな問題が起こったであろう。しかし、そういう問題があろうと、現実にそういう制度がないことが文明国の恥だということを大臣が答弁をし、そして任期中には何とかしてこれを立法化したい、さらに、単に行政府だけではなしに、与野党を含めて衆知を集めてひとつ万機公論に決して世界に範となるようなものをやろう、だから与野党を問わず国会を挙げてひとつ協力をしてもらいたいということまで言われながら、それができなかった。その責任というもの、これは政治家としては一体どういうようにこの問題を考えていったらいいのか、あるいは具体的にどう対処したらいいのかという点について、公安委員長の所見を承りたいと思います。
#99
○国務大臣(後藤田正晴君) 稻葉さんも恐らく、こういった事態に対処する何らの法的な制度がない、これはやはりぐあいが悪いではないか、何らかの措置を早急にやらなきゃならない、それがまた国としての道義的な責任でもあろうというような意味合いで御発言をなさっておるものと私は理解をいたしております。
 そこで、そういう稻葉さんの御発言等も踏まえながら、とにもかくにも今回御提案申し上げているような制度を新たに設けさしていただいて、そして、国としての最小限の道義的な責任はこの際果たさなきゃなるまい。理想を掲げればいろんなこともございましょう。しかしながら、とにもかくにもこういった制度を発足させることによって、従来放置されておった気の毒な方に対して措置ができるということになるわけでございまするので、それなりの責任は果たしておると、かように考えておるような次第でございます。
#100
○神谷信之助君 まあおくれたけれどもつくったんだから、だからそれで責任を果たしたというのは、私から言わしたら居直りですね。おくれたこと自身ね。だからこの法律が廃案にしなきゃならぬような悪い法律だと私どもも言っていない。いままでなかったんですから。新しいこういう救済制度ができるということは私ども非常に賛成をするわけです。しかし、それがなぜそれだけおくれたんだろうか。それはいろんな理由はあるだろうと思う。しかし、運動を進めてきた方々やあるいは被害を受けた方々の責任ではないはずです。一にかかって行政府と立法府、あるいは両方に責任を持つわれわれ政治家の責任ではないか。この点について一体どうしたらいいのか。それはおくれたけれどもつくったんだからそれで責任を果たしたということでは、これは不満を持っていくところがないわけでしょう。こういう点についてどうお考えかということです。
#101
○国務大臣(後藤田正晴君) これはもうただいまお答えをしたとおりでございます。この制度でとにもかくにもお気の毒だという人に対する処置はできる。ただ先ほど来御質疑のように、との制度の前の人にどうするかとか、いろんな問題がございますから、それらについては別個の処置によって何らかのお報いはしなければなるまいと、かように考えておるわけでございまするので、私としては、とにもかくにもこの新しい制度、大変これは複雑な背景が実はございます。そういったことをここまで提案をさしていただくことができたということで、一応のけじめはこれでつけたい。ただし、この制度の生きた運営ですね、これだけは心がけていかなきゃならぬと、かように考えているような次第でございます。
#102
○神谷信之助君 私はそれでもなお納得できない点は、先ほど議論ありました、一つは法律の不遡反の原則というんですか、遡反できない、そういう点から盛んにおっしゃっています。まあ刑法なんかを遡反すればこれは大変な混乱を招きますね。しかし、本来国が何らか考えるべきであったのが、そういう制度ができていなかったために救済をされなかった、そういう問題について、絶対に遡反してはならないというのは私は納得ができないと思う。法律はどこかで別につくられているのじゃない、原則というのは別にあるのじゃなしに、人間が人間社会の間でつくるんですから、特にこういう問題については遡反をしてもいいではないか。そこのところに立てないところに、私は本当にこれらの人の置かれている立場を御理解いただいているのかどうかということを非常に疑問に思うんです。
 この間、警察庁の人々にいろいろお話を聞かしてもらったりしました。そのときも率直におっしゃっていたんですけれども、この問題が映画化されましたね。映画になったのを警察庁の担当の方が、相当の人がごらんになって、本当にやっぱり気の毒なことだと、何とか早く立法化をやらないかぬということを、まあ映画は非常に刺激が強いですから、強烈ですから、したがってそういうことを本当に痛感をしましたという述懐をなさっていました。それまでは、そういう法律が必要だということは思いながらも、しかしやっぱり人ごとで、実感をもって何とかという気にならなかった、やっぱり本当に被害を受けた人々のそういう立場なり気持ちなりを、わかっているつもりでもわからなかったけれども、あの映画を見て、警察庁の関係者の方々が相当見られたようですけれども、見た上で、本当にこれは大変だ、気の毒だ、一日も早く何とかしたいと、そういう述懐を漏らしておられましたけれども、私もそうだと思うんですね。
 だから、そういう立場に立ち切れないままに、特にわれわれ政治に関与する者が、そういう点からどうしても遠く離れているために、いろんな支障があったにしてもそれを乗り越えて早くやっていくということができない。また現に、先ほども話がありましたように、もう市瀬さんは失明をし、ついには命までなくされた。後を奥さんが継いで運動をされて、そういう運動によって支えられてやっと日の目を見るということになってきたとすれば、これは何とかして遡反する方法はないか。また、私は、遡反する根拠というものを理論的にも確立をするということをどうしてもやって、初めておくれたことに対する政治責任を果たしたと言うことができると、こういうように思うんですよ。だからそれを現行の法体系の中でどういう根拠に基づいてどこまで遡反するか。これは学者の中にもいろいろ意見があります。とにかくいまの日本の法理論から言うとなかなか遡反する理論を確立するというのはきわめて困難ないろんな問題があることは知っています。
 しかし、それでもなおかつ、そういう何といいますか、何の責任もない、理由もないのに命まで奪われるようなことについて、本来ならばそういう通り魔的殺人事件というのは、法治国家である日本で、治安の維持に当たる警察なりまた国民的な社会的監視なり何なりでなくさなきゃいかぬ。あってはならない事件なんです。それが十分にいかないためにそういう犠牲者を出したということに対して何らかの方法を考えるというのは、特に私は政治家の責任ではないかということで、私どもは民法の七百二十四条の損害賠償請求権の時効の部分を根拠にして二十年遡反適用というそういう意見を出しているんですけれども、それが私はそのままでなくても、いろいろなのっとる根拠というのはあるだろうと思いますが、そういうものをやっぱり積極的に立法に当たって――恐らく検討されたんだろうと思うけれども、検討もし、それを貫いてもらうということが必要ではなかったかと思うんですが、この点について意見を聞きたいと思います。
#103
○政府委員(山田英雄君) 遡反できないということにつきましては、いろいろ御答弁申し上げておりますように制度論でございまして、いま述べられましたような過去の被害者の方々に対します思い、気の毒さの感じ方というのは私どもも全く変わらないわけでございます。そういう心情を私どもも持ちましたからこそ、この法律案について早期に提案するように努力してきたわけでございます。
 ただ、申し上げるまでもないことでございますけれども、わが国のいろいろな法律制度の中で、新しい制度をつくりましてその制度自体を同種の過去の事案に適用した、いわゆる遡及というのは原則的にないわけでございます。これは悲惨な状態というのは、公害健康被害の場合につきましてもあるいは薬害の副作用の被害の場合につきましても、まことに悲惨な状態というものが過去にあるわけでございます。そういう状態に刺激され、同じことを繰り返してはいけないという立場から新しい制度が生まれてきたと思うわけでございますけれども、その場合にも法の適用は施行期日以後の事案について適用しているわけでございまして、その適用を過去の同じ被害にさかのぼってはおらないわけでございます。そういうことからいたしますと、私どももこの制度に限って遡及する特別な理由というのを見出せない以上は遡及できないわけでございます。
 特に、犯罪による被害ということを考えますと、犯罪というものは昔から行われております。殺人というのは古典的な犯罪でございます。そういう意味で、仮に過去の被害の救済というものを実現するように考えるといたしましても、合理的な線引きというのは不可能であると思います。いま御指摘のように、二十年遡及はいかがかということでございますが、これは前にも申し上げておりますように、国家賠償的な立場からの給付ではございませんので、損害賠償請求権の消滅時効ということをわれわれもとよりとり得ないわけでございますけれども、仮にお尋ねのように二十年と限った場合、それでは二十一年前の方と十九年前の方とどこに差があるか。そういう際に、国民全体の立場を考えますときに、公平さというのが常に担保できないと思います。二年前と三年前でいかがであるかと。いろいろ遺族会の方々のお立場も私も拝聴いたしましたが、それぞれ被害を受けられた年月というのは、古いもの新しいもの異にしております。同じ遺族会の方の中で、どなたに適用があるか、どなたに適用がないかということを線引きすることは、合理的な理由は見出しがたいわけでございます。そういう点で、全体の諸制度と均衡ということを打ち破って遡及するということの制度は立てられなかったわけでございまして、この問の事情については何とぞ御理解いただきたいと思います。
 ただ、そういう過去の被害者の方に給付金を支給することができなかったということにかんがみまして、すでに御答弁申し上げておりますように、そういう方々に何らかの措置がとれないかということを十分に検討いたしまして、民間の方の発起を待って財団による事業というものができるものならば、そうした事業によってお報いすることができるのではないか。われわれとしても、そうした点についてはできるだけの努力を尽くしてみたいと、かように存じておる次第でございます。
#104
○神谷信之助君 官房長にせっかくいろいろおっしゃってもらいましたけれどもね、十九年と二十一年で、何で片一方は受けられるのに受けられないかと、そういう不平等が起こるということであれば、今度この法ができて、五十六年の一月一日とことしの暮れ大みそか、十二月三十一日に殺された者と同じように不平等です。あしたに殺してくれと、きょう殺してもろたらわしもらえへんのやというようなこと言ってられないでしょう。同じことですよ、そんなことは。それは理屈にならないですよ。だからどこかで切らなきゃならぬということはもうどうしたって、それにかかる人、かからない人ができます。だから、どこに線を引くかというのは――これは理事懇の中でもあったけれども、どこまでさかのぼって事実を確認できるかという事実行為の問題もあるでしょう。あるいはさっき私が言ったそういう根拠もあれば、あるいは刑法上の根拠もあるでしょうし、あるいは事案によって時効の年限の差がありますから、そういうもので区切るとかいうようなことは、これはそれがもう絶対的に正しいということじゃなしに、一つのよりどころとして存在はするということだと思うんですね。
 先ほども、たとえば外国の例を引き出したりして遡及が困難だということも説明をされておりました。私は、いまの答弁も先ほどの答弁もずっと聞いておって、聞いている側の立場から言うと、遡及ができないという、そういう否定的な理由を一生懸命説明をされておるんですよね。だから、私はそこのところ本当に何とか救済する方法はないのかということで――もちろん研究された上であかんということだったから、そのあかん理由をお述べになっておるんだろうけれども、聞いている側から言うと、率直に言ってそういう感じを持たざるを得ないわけです。しかし、これはなかなかうんとおっしゃらないわけですから、したがって、この点については修正案で委員各位の判断を仰ぐというより仕方がないというように思うんです。
 そこで、次善の策といいますか、少しでも救済をするということで理事懇の中でも非常に問題になったのは、少なくとも法成立の日から施行してはどうかという問題ですね、来年の一月一日ではなしに。さかのぼるのが無理やったら少なくとも法律が成立をしたときと。これについて先ほどからの御答弁では、予算の問題ではない、事務的な準備が整わないんだというのが公安委員長の御答弁で、五億や十億の予算が取れぬような大臣じゃないと言わんばかりのお答えもありましたから、そうすると財政上の問題じゃない。単にそういう公安委員会規則その他周知徹底を含めていろんな準備手続をやるのに八カ月間かかって、一月一日以降の施行しかできないということであるならば、私は、法律ができたときから以降犯罪によって死亡もしくは重障害を受けた人、これは適用する。しかし実際の支給は来年の一月一日以降にする。準備手続がありますから。だから、そういう公安委員会規則をつくり、申請様式をつくり、あるいは判断の基準をつくりと、そういうのがありますから、そういうのが整ってから申請をしてもらい、実際にお金を差し上げることができるのは来年の一月一日以降。法律の対象になるのは法案成立以降の事案の被害者について適用する。こういうのは私は実際問題としてできるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
#105
○政府委員(山田英雄君) この制度は、わが国にとって全く新しい制度でございます。そういう制度の施行運用につきましては、私ども完全な準備を経て円滑に適正な運営をいたしたいと考えております。そういう意味で相当な準備期間が要るということを申し上げたわけでございますが、その準備が完了をしない以前において制度を動かすということは、私は公平な運営が期しがたいのではないか、かように思っておるわけでございます。
 ちなみに、準備に八カ月を要すると申し上げておりますが、その中身について申し上げたいと思いますけれども、私ども本当に法律が制定公布されました場合、準備に大変忙殺されるということで覚悟しておるわけでございますが、その一つは、法律施行のための政令、それから国家公安委員会規則、そういうものの制定作業でございます。これは本法律案の七条におきまして他の給付との調整、あるいは第九条の額の定め方というのは政令事項でございますが、これは一応骨子というものはもちろん私どもただいまの段階で用意しておりますし、その詰めを急いでおるわけでございますが、法令の形で整備していきます場合には、やはり関係省庁との協議あるいは他の制度との均衡等、大変細かい作業の詰めをしなければならないわけでございます。そういう意味で、一応私どもそれに必要な期間として考えておりますのは二カ月でございます。
 それから国家公安委員会規則でございますが、すでに答弁申し上げておりますように、この制度の根幹でございます被害者の責任の度合い、これを法案の第六条によって定めるわけでございます。それから裁定の手続その他裁定に関し必要な事項は法案第十四条によって規則で定めるということになっておりますが、これにつきましてはすでに答弁いたしておりますが、従来の制度には全く見られない新しい事項でございます。それで、その定め方によっては被害者が給付金を受けられない、あるいは一部減額されるという結果を生ずる重要な事柄でございますので、これは寄り寄り準備いたしておりますが、最終案を固めますためにはやはり相当の、一カ月以上の期間が要ると考えております。
 裁定手続につきましても、これは被害者に過重な負担をかけないように、しかも効率的な手続で裁定給付ができるようにきめ細かな規定を用意しなければならないと思っております。そういう意味で、こうした二つの規則をつくるだけでやはり二カ月は最低限かかるといま見込んでおります。
 それから、そういった諸法令の整備ができた後、これは全国四十七都道府県において斉一を期した運営が必要になるわけでございます。そのためには体制の整備、指導教養、こういうものを全国の公安委員会またはそれを補佐する――警務部門で補佐するように予定しておりますが、そうした補佐する事務当局にも徹底する必要がある。国会での御議論を踏まえていろいろな心構えを徹底する必要がある。これは何分事務担当者も未経験のことで、多人数にわたります講習会なり会議なり、いろいろ段取りを心づもりで考えてはおりますが、やはりそういうことに四カ月程度の期間が必要である。
 従来のこの種のいろいろな準備についての経験則からそうした期間を読んでおくことが必要であろうと、こう考えておりますので、そういう意味で来年の一月一日と。遅いではないかという御指摘がございますが、新しい制度の発足のためには、それがわれわれとしてはやむを得ない期日の設定と考えておるわけでございます。
#106
○神谷信之助君 それじゃ、こういう点はいかがでしょうか、官房長。いま言われた体制が全部できて、そして実際にこの給付金支給業務が進み出した、そういう状況のもとできょう行きずり殺人に遭った、被害者が発生したと。そして実際に裁定機関で裁定をしてもらってその給付金を受け取るのは一体いつになるんですか。
#107
○政府委員(中平和水君) この支給はできるだけ早くやることが被害者の救済にかなうわけでございます。事務的には私ども一カ月ぐらいで何とか支給をするようにしたいと、このように考えております。
#108
○神谷信之助君 そういう被害が発生する、そしてそれがいわゆる通り魔的殺人であるかどうかというのは、まあ事案によってはすぐわかるやつもあるでしょう。しかしなかなかそう判断できないやつもあるでしょう。それで一カ月なり二カ月なり捜査がかかって、そして結局行きずりであったというやつが出てくるかもしれぬ、そういう状況も起こりますね。ですから、その上で今度は加害者と被害者の関係やその他の減額に該当するかどうかという調査もしなければいかぬでしょうし、まあそれはある程度進んでいるかもしれませんけれども。だから、事案によっては私は相当長期にかかる場合もあると思う。それから、この間の富山や長野の女性が殺害をされたああいう事件なんかですと、行方不明にはなっておるけれども死体が発見されるまでというのはこれはなかなかわからぬわけですね。これは宮崎なり北野なりの犯人はつかまえたにしても、まああれは死体がやっとわかりましたけれども、これがなかなかわからぬということやったら、どうもくさいけれども確認はできないだろうと思うんです。いろいろな事案によってそう簡単には、私はいく場合といかない場合があるだろうと思う。
 そういうことを考えますと、先ほど官房長が、いろいろな整備をするのに八カ月ばかりは少なくともかかるんですということを一生懸命おっしゃったけれども、それはかかっていいですよ、やってもらって。しかし、この法案が成立した以後にそういう事件が起こった、それは行きずり殺人かどうかわかりませんけれども、あるいはそうであるということがもうすぐわかる事案もあるかもしれぬ。それは一月になってから、制度ができて整備がされてから申請をする。そうして審査手続とか裁定手続をやって支給をするというようにしたら、一体どこに不都合が起こるんですか。私はどうもその辺が解せないんですよ。全部整備をせぬことには法律はできても適用をするわけにいかぬというのは、なぜそういうことをしたら不都合が起こるのか、どうもちょっとその辺がわからないんですがね。いかがですか。
#109
○政府委員(山田英雄君) これは、法律の運用につきましては、やはり新しい制度をつくりました場合には、それについて完全な運用ができると、そういう準備のもとに施行期日の定めをするのが通例だと思います。この制度の場合には特に、従来の法体系にない体系的にも新しい制度でございますので、そうした準備期間を読んで施行期日を決めたという経緯もございますので、そうした準備のもとに運営いたしたいと、かように思っております。
#110
○神谷信之助君 だから、いろいろ経過規定として附則のところで、ぼくはその辺をどう書いたらいいのか知りませんけれども、たとえば法は法案成立の日に即時施行として給付金の支給は、いわばそれに伴う申請手続及びその他の実際の執行は一月一日以降というようにするのか、あるいは、いまの一月一日施行のままにして、それで、対象は法案成立の日以降の事案も含まれるというようにするのか、その辺はぼくは知りませんけれども、何でそうしたらいかぬのかということです。その理由がちょっとわからぬのですね。そういう法律もあるじゃないですか。
#111
○政府委員(山田英雄君) 御提案しております原案につきましての考え方を先ほど来答弁しておるわけでございますが、新しい制度であってその実施に責任が持てません場合にはやはり運営できないわけでございまして……
#112
○神谷信之助君 すぐ運営せいとは言ってないんだよ。
#113
○政府委員(山田英雄君) これは、従来の他の制度との関連をも十分に勉強いたしまして、必要な準備期間を見込んだ後の施行期日、それ以後の事案について適用するように立てておるわけでございます。
#114
○神谷信之助君 いや、あなたの答弁は私の質問の答弁になってないですよ。たとえば五月の三日なら三日に被害が発生した、だからすぐ運用しなさいと、そう言っているんじゃないんです。法の適用対象にはする、実際の法の執行といいますか、手続をとるのは一月一日からで結構です、そうすれば少なくともその問の人たちは救済されるではないかと。だから私は、幾らその点の説明を聞きましても納得できない。
 だからそれはぼくは、去年の八月の概算要求のときは十三億の要求をなさった、それは、五十二年度の調査をやったときから見て、一年間なれば大体十三億ぐらい要るだろうと、四月一日施行であれば。ということで概算要求をされたんでしょう。公安委員長は盛んに否定をされているけれども、結局一億九千万、約二億の予算しかできなかった。しかし、新しい制度はもうつくらない、認めないという政府の方針のとにかく一画をつぶして一月からでもできる、そういうことになったんだからもう一月からやと。それで、それだけ事務手続や準備にかかりますと、こうおっしゃってつじつまを合わそうとなさっているけれども、私はやろうと思ったらできると言うのですよ。適用の対象には入れます、しかしその実際の執行は来年の一月一日からですよ、事務手続おくれるので申しわけでございませんがそれまでお待ちくださいというだけのことですわ。そこで不都合が起こるのは、十三億見込んでいたのが二億しかありませんから、その場合に財源不足が起こる可能性はある。だからこれはその点では、公安委員長は五億や十億の予算取るのぐらいは私は何でもありませんと、こうおっしゃっているんですから、だから法律の対象者の適用範囲についてはいま言ったようにして、足らぬ分については、いずれにしても秋ごろにはまた補正があるんでしょうから、五億や十億の金はちゃんと持ってきてもらえるのだから事務当局も御心配要らぬと、こうなるでしょう。だからやろうと思えばできる範囲です。
 何とかそういう気の毒な人に救済の手を差し伸べたいという点では一致しているんですね。皆さんもそうだしわれわれもそうだ。その点で一致をしていれば、あと問題はそういう事務的な障害左どうしたらいいか、それはいままでの法律でもあるじやないですか。適用対象は法律施行の日にして実際の執行はおくらせる、事務手続後にする。そういうような法律もいままであるんじゃないですか。だからそういう方法をしても救済をする。そうしてぼくはやるということは可能なことだしやれるんじゃないかと思う。問題は、だからその点ではもう政治判断の問題です。国家公安委員鳥に私はその点で本当に誠意を持ってやってもらいたいと思うんですね。与党の理事さんも後藤委員長もその点で非常に苦労なさったんですよ。われわれもそのぐらいのことはできるはずじゃと。たとえば委員長が閣議の前に公安委員長に会われたらしいが、その時間は短時間ですからね、そこまでは突っ込んでやっておらぬやろうと言うてまたわれわれから大分文句言われたのですよ。地行の委員長さんは。だけど本当にやる気ならば、私はそこのところを工夫をしてもらえば、行政実務的にもあるいは法案作成の点でもベテランの人ばかりですから考えてもらえばやれる。やれることをやらぬかったらそれこそひどいものだと私は思うんです。口では何とかお気の毒な人を救済をしたいと言いながら、やれることをやりもせぬかったらそれこそひどい、口先だけではないかと言わざるを得ぬですよ。この点ひとつはっきり私はしてもらいたい。官房長の説明で全然納得できないですよ。できないことないんだから。いかがでしょう。公安委員長ひとつ。
#115
○国務大臣(後藤田正晴君) まあ法律ですから、憲法に反せぬ限りはそれは書いて書けないことはございません。しかし、神谷さんのお話をじっと伺っていますと、それは結局四月一日施行だと、実施だということに……。
#116
○神谷信之助君 いやいや、法成立ですから、四月一日はもう過ぎてますよ。
#117
○国務大臣(後藤田正晴君) いや、実態はそうなるんです、それは。というのは、準備も何にもできてないのにその事案だけはやるんだと、こういうことでしょう。だから、その場合だともう私は法の施行が四月一日と同じになりはせぬかなと、こう思うんですよ。やはり準備も何にもできてないのに四月一日から起きた事件は全部やるんだと。しかし実際は、支払いの時期は一月一日以降だと、こういうことになるわけですからね。それは支払い時期をそう書くだけの話で、実態の適用、法のあれは四月一日からになるのでね。私は、一体そういう立法の仕方というのは、やってやれないことはないんだけれども、あり得ることかな、少しやり方としては無理なんじゃないのか、それはやっぱりこういう制度はきちんとした準備体制を整えた上で初めて施行するというのがあたりまえのやり方ではないのかなと、私はさように考えるわけです。
 お気持ちはわかるんですよ。できるだけ気の毒な場合が少なくなるようにしろという、これはよくわかるんだけれども、やはり実際の立法ということになってきますとね、どうしても準備にそれだけ日が要るんだということを事務当局が言う以上は、やはりこれは一月一日やむなしと、こう判断せざるを得ぬのではないかなと私自身も考えて――実際は先ほど言いましたように、私はこれはもう少し早く法律の適用をしたらどうだいと言って事務当局の意見を聞いたんですよ。ところが、どうしても準備でどうにもなりません、だから一月一日で談判してくださいとこう言うから、私も、余り無理をしたところでこれはどうにもならぬなということで、じゃあ五十六年一月一日施行ということで談判しようと、こういうことになったわけです。その点はひとつ御理解をしていただきたいと、かように思います。
#118
○神谷信之助君 まあ委員長のいまの答弁でも納得できないですね。遡及でないんですからね。とにかく法案成立の日というのは、もうきょう四月の二十二日、あしたが本会議ですから二十三日以降ですよ、対象になる人は。それで、その後実際に二十四日にそういう被害が出るか、六月まで一人も出てこないか、それはわかりませんよ、そういう事案が起こるのは。しかし、その事案が起こった、それで事案が起こっても、その人が、実際には一月一日以降にいろんな体制できて裁定にかかるか、適合するかしないか、これもわかりません。しかし、まあ警察当局が捜査をいろいろしている中で、この場合は大体かかるであろうとか該当するんではないかということはわかったりするでしょう。だから、一月一日以降にそういう手続整備ができればあなたのやつはこういう救済の方法がありますよと言うて教えてあげれば、そういう申請手続をするということになるでしょう、一月一日以降に。そういうことが可能になるでしょう。
 現に、災害の被害者の弔慰金、死亡弔慰金ですね、改正したときは、できたときよりもその前の台風の被害者までさかのぼったですからね。それは年度内ですけれども。これも年度内ですからね。そういうことも――それは制度があったからさかのぼれたんや、これは新しい制度やと言えばそれだけです。しかし、さかのぼることはできたんや。適用している。その法律の中にちゃんといつから以降にというやつを附則につけたから入ったわけですね。だから、そういうことをやろうと思えば私はできると思うんです。だから委員長はそう思われて、もっと早うできぬのかとおっしゃって、そうしていろいろ事務当局の報告を聞かれて、なるほどというようにお考えになったんでしょうけれども、私はもっとそこをよく考えてほしいんですよ。
 何でなら、先ほどから官房長なりがずっと答弁されているけれども、こういうのが整備しなければあきませんのでと言うだけであって、なぜ、五月、六月のときにそういう被害を受けた人を救済をするわけにはいきません、不合理になります、それは理屈が通りません、というような理屈は何もあらしません。さかのぼるのは不遡及の原則やからあきませんと、こうおっしゃった。これ、異論があるけれども、一応それは理屈がある。しかし、さかのぼるんじゃない、法律が成立したらそれの恩恵を受ける、そのことだけははっきりと先にしようじゃないか。それがいかぬと言うのなら、憲法のどこに違反するのか。日本の法体系のどこに違反するんだとはっきりしてほしいというんですよ。
#119
○国務大臣(後藤田正晴君) 御意見は拝聴しましたが、どうも神谷さんの御意見のとおりやると、結局それは法の適用を四月の二十三日ですか、そういうことにならざるを得ないのでね、これはもう準備も何もできてない事案に適用するということで、これは私は新しい制度としてはあり得ないと思いますね、そういうやり方は。やはり準備はきちんとして法が完全に動くという体制をせざるを得ないんじゃないですか。これは判断の問題ですけれども。なかなかそうあなたのおっしゃるようには私は、新しい制度つくるときに、理屈はわかるけれども、それはちょっとむずかしいんじゃありませんかね。それはわからぬわけではないが、現実にそれじゃそれで新しい制度をつくれと言われても、それはできますとはちょっと言いにくいのが私は現実ではなかろうかと、こう思いますよ。
#120
○神谷信之助君 私は、だから政治家としての公安委員長の決意の問題だと思う。だから、これはもうあと同じことを繰り返しても仕方がありませんから、私はその答弁自身に、本当にそういう被害者に対して、こういう制度をつくるのがおくれたことについて政治家として申しわけない、少しでもより多くの人々に喜んでもらえるような、そういう制度にしたいと。そのために私が言うのは遡及しなさいというんだけれども、仮にそれができないにしても、少なくと法律ができた以上はその日から救済ができるというようにするのがあたりまえだ。それは先ほどからおっしゃっているようにいろいろ理屈はあり得るでしょう。そこをどう積極的に、そういう理屈に対して立ち向かって実現をするかと、そういう立場に立っていくのか。もう衆議院も通過してここへ来ているのやから、いまさら言うてもろうても始まりません、衆議院で答弁したのと参議院で答弁したのと違うようなことになったら困りますから。ということだけでおっしゃっているはずはないと思いますが、やっぱりそれもあるでしょう、大臣の立場としてはね。しかし、私はそういうかたくななことではなしにひとつ、それこそまだありますから検討してもらいたいというように思うんですね、考えてもらいたいと。
 もう一つは、その上で先ほどからも話が出ています過去の人たちに対する救済の問題です。まあ一応寄付を集めてそうして財団法人をつくってということで、育英制度の問題、それから重障害者に対する問題、こういった問題が出てきました。これは実際どれだけ寄付が集められるか、それからその財団の寄付行為をどこまで拡大できるか、その財源基金にもよるでしょうけれども、そういうことでいろいろまだ不確定部分がきわめて多いわけです。したがって、これからこれをこの点については努力もし、検討もし、それで改善をする余地が十分ある範囲ですから、その点でひとっこれは要望的意見として申し上げておきたいと思うんですけれども、私は、やっぱり現に生きておられる重障害者の方のみならず、さらに一層拡大をして、命を奪われて、そして残された家族が苦労なさってきた、そういう方々にもそういう点での、何というか、せめてもの援助を与えることができるようにという方法をひとつ考えてもらいたいと思う。これは私はその気になれば、これはこれからずっと必要な財源ではありませんから、一遍払えば、一時金的なもので終わっちゃうんですから、その必要な財源を、仮にその財団ができたときにそれだけの必要な財源が集まっていなくても、借り入れをしてそれに対する救済を行って、以後、この寄付をさらに拡大をしていってそれによって返済をしていくという、五年なり十年なり長期の返済にしてそして償還をするという方法も含めて考えれば、相当広い救済事業をその財団にやらせることができると思う。
 さらに私は、何もそれは民法上の財団でなくても、こういう国の責任という点を考えるならば、これは警察官なりあるいは警察庁なり、そういう治安機関にわれわれは信頼をして、まさに行きずり殺人なんかが起こらないことを期待しているわけですからね。そういう国の責任を十分に果たし得なかった、そういう点で国の立場も考慮するなら、私は特殊法人かなんかにして国の出資金もほうり込めるような制度にしてもおかしくないというように思うんです。しかしこれは、できるだけ特殊法人を減らすと、そういう状況もあっていまのような構想になっているんだろうと思いますけれども、しかし私は、何もかも特殊法人をつぶしてしまえということじゃなしに、国民の側から必要なものであればそれは遠慮なしにつくればいい、そういう性格のものですから。この点も含めて検討をしてもらいたいというように思うんです。この点ひとつお考えを聞かしておいていただきたいと思います。
#121
○政府委員(山田英雄君) 民間の財団法人の件につきましては、いまだ寄付行為も何もできていない段階でございますので、詳細な内容を確定して申し上げるわけにはいかない、このことを御理解いただきたいと思うのでございますが、奨学資金制度につきましては、前から申し上げておりますように、海難漁船遺児、交通遺児、あるいは警察官の職務に協力援助した方の遺児の方々、そういう民間の基金による奨学資金制度がございますので、少なくともそうした制度はこの犯罪被害遺児についてもつくらるべきだろうと、こう思っておるわけでございます。
 ただ、重障害者に対するお見舞いの点につきましては、これもできる限り基金を集めることによって努力いたしたいということもすでに御答弁申し上げておるわけでございますが、そのほかの方々に対する措置についてのお尋ねでございますが、これは民間の財団法人でございますので、国の政策と同質のものを肩がわりして行うということはむずかしいのではないか。それは警察官の職務に協力援助した方の、それでお亡くなりになられた方についての奨学資金以上の事業というのは現在ないわけでございます。他の原因による被害によって亡くなられた方につきましても、私ども調べました限りでは同様のことが言えるわけでございまして、民間の基金に過去の被害について一切の救済を行うように働きかけるということも、納得ということでいかがかという点は考えております。
 奨学資金だけにつきましても八億余のファンドが要るという状況でございます。交通遺児については損害保険協会とかいろいろあるわけでございますが、犯罪被害に直接かかわりのある団体というものもないと思います。基金を集めることはきわめて困難な情勢にございますが、できる限りの努力を尽くして奨学資金なり重障害者へのお見舞いは実現していきたいと、そういうふうに努力いたしたいと思っておりますが、その他の問題につきましては、いま申し上げた事情をおくみ取りいただいて御了解いただきたいと思います。
#122
○神谷信之助君 確かに大変なことはよくわかるのですよ、いまおっしゃるように。損害保険協会とかいろいろあるところはいいですけれども。犯罪被害者の場合、犯罪の団体がちゃんとあるわけじゃありませんからね。これはわれわれが寄付を集めるにしてもむずかしいだろう。ですからそれだけに、なるほどその人たちだけではなしにやっぱりわれわれにも非常にこれは大事な制度だということが十分理解されないと寄付も集まらないわけですね。したがって、その趣旨を明らかにし、少しでもみんなで助け合っていこうという点を明らかにする意味からも、私はさらに検討課題として検討してもらいたいということを申し上げておきたいと思うんです。
 あと、もう時間がありませんから、最後に結論だけひとつお聞きしたいと思うのですが、これは犯罪行為による被害者に対する救済の措置ですわね。その犯罪行為による被害者なんだけれども、結局、犯罪行為を故意犯と過失犯に分けて、それで故意犯に限ると、こうなっているわけです。過失犯を除いた理由として先ほど幾つかおっしゃておりましたね。保険制度でカバーできるとか、感情の問題それから救済の緊急性、まあそういった点をおっしゃっているわけです。しかしこれは、故意犯の場合でも損害賠償がされればそれだけ差っ引くということになっていますね。だからそういう点で言えば、過失犯も含めて総括して、そういう保険制度なり何なりで、あるいは過失致死罪を犯した人の財政能力によって損害賠償する人もあるでしょうから、そういうのはそれによって控除していく。外せるものは外すというようにして、まあ余りめったに起こらぬであろうそういう過失による障害について、どこにも救済できない人は少なくともこれで救済できる余地を残す。
 先ほど、盛んに運用の面でいろいろやるということをおっしゃっていますけれども、これはそうなりますと、今度は捜査機関と裁定機関が非常に近いわけです。まあ裁定機関は公安委員会であって警察は直接関与しませんとは言いましても、実際には事務当局は警察になるわけですから、だから、そういう点では捜査に協力するかどうかということを裁定に持ち込んではならないということはやかましくいままで議論もされて、衆議院でも、きょうでも議論出ていますからあえてもう言いませんが、そういう問題ですから、それだけにわかるわけですね。にっちもさっちもいかぬ、どこにも救済できない、そういう過失による致死あるいは重障害を受けた方というものは。少なくともそれは救済できる。あるいは先ほど挙げられたようなほかにいろいろな救済措置があればそれはそれでいく。私はそういうことを考えないと、たとえば飛びおり自殺の問題もある、あるいは高いところで仕事をしている人がたまたま上から物を落とす。そうしたら業務上過失致死になった。これはそこをたまたま通った人がいかぬのじゃとこうなりますね。だから加害者の条件の問題ではなしに、やっぱり犯罪行為によって被害者がどこにも救済をしてもらえない、あるいは怒りを持ち込めない。そういうことによって生活が大変な困難を受ける。被害者のそういう状態を救済するというところに着目すれば、これは故意犯であろうと過失犯であっても同じだ。
 その場合に、過失の場合はその行為を犯した加害者にいろんな能力がある場合もあるでしょうし、いろいろな条件があるかもわからぬ。先ほど賠償責任保険ですか何かがあるといろいろおっしゃいましたけれども、しかし、あれでも私は入っていませんからね。ここにいる人でも入っている人がどれだけおるか知りませんけれどもね。だから、それは制度としてはあったって、その保険にかかるかかからないかというのは別ですからね。だから、そういうもので救済できない人というのは相当数出てくるんじゃないか。あるいは数が少なくてもあるはずだろうと思う。せっかくつくるならばそれらを含めて救済できるようにして、そして救済をする必要ないのはそこから除外をするというように運用でやった方が、いわゆるそこの点で主観的判断によらざるを得ないというようなことをしなくてもいいんじゃないかというように私は思うんですが、この辺は、いまさらなかなかうんとおっしゃらぬでしょうが、見解だけは聞いておきたいというように思います。
#123
○政府委員(中平和水君) 先ほども御説明しましたように、私ども制度の立て方としては、放置しておくことによって国の法制度に対する信頼感が損なわれるようなそうした事犯について、これで故意と、あるいは重障害に限ったわけでございますが、そういう問題について、これは原因者負担の原則が働いていかないわけでございますから、やはり例外的な制度として給付金を支給しようということで制度として立てておるわけでございます。
 ただいま御指摘のような、過失も含めてやると、そういうお立場の議論も私どもよくわかるわけでございますが、私どもの理論の立て方というのはそういう立て方を一応いたしておりまして、さらにこれを故意から過失に広げてまいりますと、さらに過失の中の気の毒なやつも加わる、だんだんにこれ広げてまいりますと、自然災害とか不可抗力による事故だとかそういうものの方にだんだん広がってまいるわけでございます。たとえばニュージーランドの事故補償法なんというのは、最初犯罪がだんだんだんだん広がっていって、いまはあらゆる人身事故に広がってまいっているわけでございますが、そして過失を広げますと、過失致死だけじゃなくてこれは過失障害も入ってきましょう、理論的に言いますと。しかし、さらに今度は、いや故意の傷害だってもっと一カ月の重傷だって、たくさんあるじやないか、そんなものも入れるべきじゃないかということで、そこに目を置きますと、気の毒さの程度がだんだんだんだんに広がってまいるという、当然そういう帰結になりがちなものでございます。
 それから、過失に広げてまいりますと、故意と過失というのは、故意があったか故意がなかったかというのは比較的認定はやさしいわけでございますが、過失があったかなかったかということは、非常にこれは、まだ現在の裁判制度等でもいろんな問題になっておりまして大変判定がむずかしい。そうなってまいりますと、一つには迅速な裁定というのもなかなか期し得なくなる。それから、損害賠償を全部取り立ててそのこぼれの部分についてめんどうを見ればいいじゃないかと、こういう御議論のようでございますが、そうしますと、いまの制度では相手方の資力についての調査などもせずにできるだけ早く迅速に給付をしようという考え方でございますが、過失が入ってまいりますと、これは当然相手方に資力のある場合が多いわけでございますから、したがって相手の資力調査というものも、この裁定の前提にならざるを得ない。それからさらに、広げてまいりますと、たとえば民事の紛争の手段にこの裁定が使われる、そうしたこともだんだん出てまいるわけでございます。
 しかし、これは先ほど申し上げましたようにいずれにしろ大変新しい初めての制度でございますし、一番現在緊急性のある、要するに一番国民のコンセンサスの得られる故意による死亡と重障害にしぼった、そこでこの制度を運用してまいりたい。そうして、当委員会でも御議論がございましたように、だんだん今後の運用を通じましていろんな問題が出てまいりますればまた柔軟に検討、研究を進めてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
#124
○神谷信之助君 終わります。
    ―――――――――――――
#125
○委員長(後藤正夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、野口忠夫君が委員を辞任され、その補欠として丸谷金保君が選任されました。
#126
○江田五月君 衆議院の法務委員会で当時の稲葉国務大臣が、犯罪の被害者救済制度ができていないと、「文明国の名に恥じるという気持ち」だと、「政府の道義的責任としてやるべきものだ」ということを述べられたのが昭和五十年の二月十二日ですから、それからもう五年たったわけであります。昭和五十三年の十月十九日には、参議院の法務委員会で瀬戸山法務大臣が、何とか次の通常国会には出したいと準備を進めているのだと。また、伊藤刑事局長は――これは法務省の。通常国会に提案するという覚悟で最後の詰めをしていると。それがついにまた一年延びてやっとここまで来ましたが、とにかくこうやっていま成立の直前までこれたということは嬉しいことだと思います。
 さてそこで、それでも遡及ができないとかあるいは過失を除いているとかいろいろ不十分なところがあるわけで、考えてみれば、この制度を実現にまで持ってくることができたのも、いままでの犯罪の被害者の方々のこれまでの御努力が大きくあずかって力あったわけで、その人たちに何も報い得ないというのは、やはり何とも残念なことと言わなければいけないんです。いま稲葉法務大臣の言葉を引用しましたが、文明国の名に恥じる状態がこれまで続いていたわけでありまして、私は前に参議院の法務委員会で、社会のいわば倫理的な水準がどの程度にあるかということをテストする一つの制度なんじゃないかということを申し上げたことがありますが、いまやっと文明国としての道義的、倫理的な水準にわが国が達しようとしているわけで、ここまで持ってくることに大きく力があった、これまで運動を、この法案を推進されてこられた方々に、お気持ちはわかると言うだけでなくて、もう少し政府の方から、大臣からねぎらいとか感謝の言葉があってしかるべきじゃないかと思うんです。たとえば、いろいろ社会に御努力くださった方々に叙勲というようなこともありますけれども、どうも叙勲はしてみても後でいろいろ都合が悪かったというような事例もときどき聞かれるわけですが、こういう人たちこそ社会全体で感謝をしなきゃならぬ人たちだと思うのですが、まずその点について、大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
#127
○国務大臣(後藤田正晴君) 江田さんの御意見どおり、私自身も感じております。
 そこで、いままで御努力をなさっていただいた方に対してどういう処置をするかというようなことで、いま具体的にこうだと言うのは差し控えたいと思いますが、たとえばその人たちに感謝状なり何なりを差し上げて、そして長い間の御労苦に心からの私どもの謝意を表したいと、かようなことも実は考えておるのです。ほかにもいろいろ、この法律の運用に当たりましても、これは乱に流れちゃいけません、どんどん広がりますから。しかしながら、やはり私どもとしては、被害者を救済するといいますか、そういう基本の物の考え方に立って運用に当たるようにやってまいりたいと、かように考えております。
#128
○江田五月君 法律の中身に入ってまいりますが、第二条では、「「犯罪被害」とは、」「人の生命又は身体を害する罪に当たる行為」で、括弧して、刑法のこれこれは含みこれこれは除くと、そして「過失による行為を除く。」となっているわけでありまして、過失を除いているわけですが、この過失を除くことの理由ですね、論理的な理由が何かあるのかどうか。
#129
○政府委員(中平和水君) 過失を除く論理的な理由――どういうお立場からの質問か、ちょっと私十分に理解できないわけでございますが、この制度はあくまでもこれは原因者負担の例外でございまして、したがって、やはりこの問題の起こりから考えましても、通り魔殺人に象徴されるように、何らのいわれのない方が被害にかかって、そして何らの救済の手段がない、現実に民法の不法行為等の制度がありつつもこれが全く機能していないような状況にある。そうして、これはそのまま放置できないという一種の社会のコンセンサスといいますか、それに基づいて、連帯共助の精神に基づいて例外的な制度として打ち立てた制度でございます。したがいまして、そういう観点からいたしますと、やはりこれは故意による犯罪、しかもそれが死亡と重障害というふうな犯罪に限るべきではないか。つまりこのことによって国の法制度に対する国民の信頼感というものを確保してまいると、こういうふうに基本的には考えて犯罪の対象についてまとめたものでございます。
#130
○江田五月君 おっしゃることは、過失を除かなきゃならないという理由にはならないわけで、過失による生命、身体を害された被害の場合でも、本当に気の毒な結果が起こることはもちろんたくさんあるわけでありまして、しかも、この法案だけを見ても、ある程度これ実は過失が入っておると読めなくもないんだと思うんです。「人の生命又は身体を害する罪に当たる行為」で、過失を除く、その部分に、たとえば刑法百八十一条あるいは刑法二百四十条ですか、こういうものによって生命、身体を害される場合もこれは含むわけですね。
#131
○説明員(浅野信二郎君) そういう場合も含むという考えでございます。
#132
○江田五月君 これは結果的加重犯、結果的加重犯というのは故意の場合ももちろんありますが、結果として起こった人の生命または身体の被害について、あるいはそういう人の生命、身体に対する加害について過失、がなければならぬというのがいまの刑法の考え方ですね。
#133
○説明員(浅野信二郎君) 結果的加重犯、結果について故意でない場合というのを当然予期しているわけでございます。
#134
○江田五月君 その限度で過失というのはもう初めから論理的に省かれてしまっているんだというほどのことはないような――あるいは百八条もこれも含まれるわけですね。
#135
○説明員(浅野信二郎君) 百八条、「現住建造物等放火」だったと思いますが、含む考えでございます。
#136
○江田五月君 百八条の行為で人の生命、身体が害された、これはもう一度その人の生命、身体の安全が害されたこと自体はさらに改めてどこかの条文に該当するということにしないというのが普通の考え方ですが、この場合にも、やはりそれでもそうしたことに全く無過失の場合には果たしてそこまで刑法的に評価ができるのかどうか。やっぱりある程度過失的なことが必要だと普通は考えられているんじゃないでしょうか。どうなんでしょうかね。
#137
○説明員(浅野信二郎君) この無過失の場合、過失の場合という御質問でございますけれども、現在建造物放火でそれによって人が亡くなったと、それについて、殺人が成立しない場合もこの対象になるという考えでございます。
#138
○江田五月君 このいま御提案になっている法案の中にもすでにある程度過失というようなものが含まれているんだということをいまちょっと考えてみたわけですが、さて、実際のこの運用ということになりますと、故意と過失、そんなにいつも明瞭に区別できるわけじゃないんで、未必の故意と認識ある過失というようなことをいろいろ議論するわけですけれども、どこで線を引くかというのがこれはもう非常にむずかしい。ある意味では、捜査官の供述を得る技術によるようなところもあったり、非常に微妙なことだと思うんです。
 同僚委員の先ほどの質問の中に、たとえば、Aをやろうと思ったらBに行っちゃったということがありましたが、Aをやっつけようと思ってピストルを撃ったらBに当たったという場合、Aを撃とうと思ったら実はBであったという場合、ちょっとこれ違うわけですが、いずれもこれは故意犯でいいんだと思いますが、Aを撃ったらAにも当たったけれども同時にBにも当たっちゃったというような場合もあって、このような場合にはこれは非常にこんがらがることになって、一方は故意で一方は過失だというようなこともあるんですけれども、しかし、AでもBでも構わぬやと思えばこれは両方が故意になって、Aしか当てないと思ったのにAも当たったけれども実はBにも当たっちゃってというと、片方が過失になってとか、その辺の人の気持ちというのはそう簡単にはかり知ることはできない。やはりそこは外形上から見て、たとえばこんなに人がたくさんいるところで散弾を撃てば、それはねらった人以外の周辺の人にも当たるのは当然だというようなそういうケースならば、たとえその本人の、加害者の供述の内容がいろいろなものがあっても、そこは客観的に見て、こういうケースは故意と考えて処理していいんじゃないかとか、いろいろとあると思うんですね。
 ですから、余り故意、過失を厳重に、加害者の心のあり方でどっちかに動くというようなことを、ある意味では加害者の胸算用一つでどうにでもなっちゃうというようなことはやめて、そこは常識に従って、むしろ事実を外から見て、この場合はやはり補償すべきだと普通考えられるようなケースは補償していくという、つまり刑罰を追及する場合の厳格な証明というのではなくて、本当にかわいそうな被害を補償していくんだという立場から、過失とか故意とか刑法の要件、刑法の言葉をいわばかりてきてここで議論しているんですから、あくまでそれは刑法の概念であって、ここではもう少し違った観点から故意だ過失だというような言葉も議論をして実際の運用をしていった方がいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
#139
○政府委員(中平和水君) ただいま御指摘のとおりでございます。これは必ずしも刑事責任を追及する場ではございません。ただ、刑事責任を追及していく場合でも、本人の供述いかんで決めているわけではなくて、客観的な証拠を積み上げ、初めてこれは刑事責任を追及するわけでございますので、その辺はひとつ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
 そこで本論に返りますが、ただいま申し上げましたように、やはりこれは被害者を救済するという観点から、刑罰の法令を執行するような厳格な証明は必要としない、こういうように考えております。そういう気持ちで私ども運用してまいりたいと思っております。
#140
○江田五月君 さらに、これは給付金を得ようと思うと、三条では、「犯罪被害を受けた者があるときは、」「給付金を支給する。」となっておりますが、これだけでは実は給付金は出ないんで、十条によって、「裁定を受けなければならない。」というわけですね。しかも、先ほどからのお話を伺っておりますと、犯罪被害があったからといって、すぐに国に給付金を支給する民法上の債務が発生するわけではなくて、裁定があって、十一条二項で申請者が権利を取得して、初めて国が義務を負うということになるんで、そうすると、申請ということがどうしても必要なわけですが、申請する側の者は、当該行為が故意によるものだと、過失を超えて故意によるものであるということまでをきちんと申請の際には立証できるような、たとえば書類を添付するとかというようなことが必要なんですか。それともそこまでは別に要求されないんですか。どうですか。
#141
○説明員(浅野信二郎君) この制度によります裁定は、犯罪被害者の救済という観点から行う行政措置でございまして、そういう観点から被害者の方々あるいは遺族の方々の申請に基づき裁定を行うわけでございます。したがいまして、申請に当たりましては、いつ、どこで発生した事案であるということの特定は当然必要になると思いますけれども、それが故意の犯罪行為による被害であるという証明書等を添付するところまで要求することは考えておりません。
#142
○江田五月君 三条の、「被害者又は遺族」の、括弧書きの、「行為が行われた時において、日本国籍を有せず、かつ、日本国内に住所を有しない者を除く。」と。これは日本国籍を有しないし、同時に、日本国内に住所を有しない。その二つの要件を満たす者を除くんだという、そういう趣旨でよろしいんですか。
#143
○説明員(浅野信二郎君) はい。いずれも消去条件で、国籍を有しないという消去条件、国内に住所を有しないという消去条件、その両方が重なったときに初めて除かれるという趣旨でございます。
#144
○江田五月君 金額についてお伺いをしますが、先ほどから準備準備というようなお話がございましたが、もういまの段階ではこの九条の政令は用意をされておりますか。どうですか。
#145
○説明員(浅野信二郎君) 政令の骨子をつくっております。
#146
○江田五月君 そうすると、その骨子によると、これは試算になるのか、最高額、最低額それぞれ遺族給付金、障害給付金、幾らぐらいになっておるんですか。
#147
○説明員(浅野信二郎君) 遺族給付金の最高額が約八百万円、それから障害給付金の最高額が約九百五十万円ということでございます。最低は、遺族給付金にありましては二百二十万、障害給付金につきましては約二百六十万ということが試算されております。
#148
○江田五月君 この額ですが、大臣、命の値段というわけですが、これは非常に算定するのはまず無理だという考え方もあるんです。しかし、まあ無理だと言うなら、それじゃゼロなのかというと、ゼロではいけないから、どうしても算定をしなきゃならぬ。そこでいろいろ無理をして算定をするわけですけれども、大体いま命の値段というのが、非常に大ざっぱなお話で結構なんですけれども、どのくらいだというふうに思われますか。
#149
○国務大臣(後藤田正晴君) それはちょっと私もお答えができないので、ただ率直に言いますと、私大臣になる前ですけれども、この制度の説明に、長官がお見えになったのですけれども、私、安過ぎると、これは。もう少し何とかならぬのかという、実は少し厳しい質問をしたのです。しかし、いろいろ説明を聞いてみますと、われわれの頭には自賠責のことがすぐに出てくるのですけれども、あれは保険ですからこれとはまるっきり違う。そうしますと、具体的に言いますと、いま、警察官の職務の執行の際にこれに積極的に手助けして重傷を負ったり亡くなったりする方がいらっしゃいますね。これに対する給付制度があるわけです。それとの絡み合わせでこの程度が適当だと、こういう説明を聞きましてね。ならばそれでやむを得ぬのかなということで一応了承をしたのです。これは大臣になる前の話です。しかし、私の気持ちとしましては、少しこれは安過ぎるなという気持ちを本当はいまでも持っていることはもう間違いございません。
#150
○江田五月君 この制度の給付金としてはいろいろ考えなければならぬ点がそれはありますが、命の値段というのはいま一千万下るようなことはこれはとてもないですね。命の値段というのが仮に算定できるとしてですよ。自賠責でももう二千万ですか、無過失で死亡の場合には何千万。もう小ちゃな子供だって何千万ということになっているわけで、この額ではやっぱり安い。それはほかの制度との均衡その他いろいろあるでしょうけれども、ほかの制度とこれが均衡した額であるならば、それじゃほかの制度もやっぱり安いわけです。
 そこで、この給付基礎額は賃金統計を利用して定められるということを伺っておりますが、その場合の賃金統計はいつの賃金統計をお使いになるのか。被害を受けたときなのか裁定をするときなのかという点をお伺いしたいのです。
#151
○説明員(浅野信二郎君) まあ最高額、最低額はいろいろ物価水準等により変えていくことになると思いますけれども、基本的にはやはり被害を受けられたときの収入をもって、最高、最低の問では収入をもって基礎額を算定することになりますから、最高、最低につきましても同様な扱いにするのが自然ではないかというふうに考えます。
#152
○江田五月君 ところが、たとえば交通事故の損害賠償の算定のような場合には、これもいろいろ説があってどれとはっきりは確定はしていないのですが、通常いま裁判の場合には裁判時というのが多いのですね。余りにも物価がどんどん上がるものですから、事故時のやつを使っていたんでは、裁判が何年もかかったらずいぶん古い話になってもうどうしようもない。それでいろいろ理屈をくっつけて裁判時の賃金の水準を使って額を計算しようじゃないかというようなことがあるのですがね。この額がやはり全体として低いというような印象があるならば、なるべく高い水準に持っていくために、裁定時の賃金統計をお使いになるということは十分検討に値することだと思いますが、いかがですか。
#153
○説明員(浅野信二郎君) この制度の裁定は、できるだけ早くして給付をいたしたいということは先ほども答弁しているとおりでございますが、確かにおっしゃるように、死亡されたことが発見されるのが大変時間がかかったというようなケースも全くないということではございません。ただいま先生がおっしゃったことを考慮して、どういう取り扱いをするか、よく検討してみたいと思います。
#154
○江田五月君 この給付金は国家賠償のような性質のものではない、いわばお見舞いといいますか、慰謝料的な、被害者の方々の気の毒な精神的な苦痛をお慰めするんだというようなお話だったと思いますが、しかし、やっぱり損害賠償と損害賠償の一部に充当されるものにはなるわけですね。八条の一項、二項によりますと、損害賠償を被害者が受けているときにはその限度で給付金を支給しないとか、あるいは給付金を支給したらその額の限度で国が損害賠償請求権を取得する、つまり求償ができるという、そういう規定があるわけですから、やはり損害賠償に充当される性質を持つ金であることはこれは否定できないわけですね。
#155
○説明員(浅野信二郎君) この制度の趣旨は、先ほど局長の方からも御説明しておりますように、社会の連帯共助に基づく給付金でございますけれども、この制度をそもそも行います前提といたしまして、こういう故意の犯罪による被害者の方々が加害者等から損害賠償を受けられないということを前提として、そういう場合を救済するという考え方をとっております。そういう意味でこの八条のような規定が設けられております。その結果、先生おっしゃるように、損害賠償と互換性があるといいますか、そういうような関係も結果的に出てきておると思います。
#156
○江田五月君 そこで、八条の損害賠償ということのこの中身ですが、この給付金はいわば慰謝料的な性格を有するものだと。八条の「損害賠償」と書いてあるこの損害賠償は何かということで、たとえば治療費とか治療のための交通費であるとか、あるいは障害が固定するまでの休業補償とか、こういうものは、これは恐らく犯罪被害による死亡または重障害の結果起こった損害ではないということですから、それは入らないということですね。
#157
○説明員(浅野信二郎君) この制度による給付金は、先生いまおっしゃったように、実損害というものを直接てん補しようということを目的とするものではなくて、いわばこの損害賠償と対置するときは、慰謝料と逸失利益というものと相対して考えてみるべきものじゃないかと思います。そういう点で、いまおっしゃいましたような療養費、交通費等のそういう積極損害というものは入らないと考えております。
#158
○江田五月君 私は、慰謝料にとどめることはできないんだろうか。逸失利益として受けた場合に、その分までこの犯罪被害者等給付金の支給をストップする必要はないんじゃないかと言いたいんですけれどね。お気の毒な人の被害の精神的な苦痛をお慰めするんだということならば、逸失利益として受けたものまで支給をストップしたりする必要があるんでしょうか。
#159
○説明員(浅野信二郎君) 先ほども御説明いたしましたように、この制度は損害賠償が受けられないということを前提として創設するものでございます。そうしました場合には、損害賠償の中にもいま先生いろいろおっしゃったものはございますけれども、慰謝料、逸失利益、これは実務でもどういう割合で分けるか大変むずかしいものだと思いますけれども、そういう損害賠償の額につきまして、やはりこの制度で考えております一定限度額を超えるものを現実に受け取られた方は、この制度がそもそも予定していたような状態でもないというふうにも考えられますから、やはりこういう考え方をとっていくのがこの制度自体では合理的ではないかというふうに思っております。
#160
○江田五月君 大臣、つまりいまのところはこういうことなんですね。この金額自体が、命の値段とかあるいはもう労働能力を完全に失ってしまった人に対する補償としては非常に安きに失するものではあるんだと。だけれども、ほかの制度の関連上この程度しかいまはしようがないんだというような、その程度の金額しか出ていないのに、ちょっと加害者の方が多少財産があったからとか、あるいは自分の家屋敷を売って補償するとか、あるいは少し働いて何十万かたまったからといって持ってきた。それを持ってきたら、今度はその部分は国からの支給の分から引いちゃうというわけですね。八条一項が。あるいは二項の方は、国が先に給付金を出しているから、その出した限度において加害者に対して国は損害賠償請求権を取得する。だから、加害者の方があれこれ工面をして被害者に多少払える余裕ができたというときには、国がぱっとその分を取ってもいいよと、そういう制度になっているんです。制度としてはそれはそれで、これがだめだというところまでは言いにくいと思いますけれども、運用の点で、そういう血も涙もないようなことはやらないようにひとつ考えてほしいと思うんですが、これで質問を終わりますが、ひとつ温かい答弁をお願いします。
#161
○国務大臣(後藤田正晴君) しばしばお答えをいたしておりますように、この制度を生きた制度として運営をしていきたいと、こう考えておりまするので、いずれにいたしましても、衆参両院での審議の経過をよく吟味いたしまして妥当な運営を行っていきたいと、かように考えております。
    ―――――――――――――
#162
○委員長(後藤正夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、戸塚進也君が委員を辞任され、その補欠として郡祐一君が選任されました。
    ―――――――――――――
#163
○委員長(後藤正夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#164
○委員長(後藤正夫君) 御異議ないと認めます。
 神谷君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案を議題といたします。
 神谷君から修正案の趣旨説明を願います。神谷君。
#165
○神谷信之助君 私は、日本共産党を代表いたしまして、ただいま提案をされている政府提出の犯罪被害者等給付金支給法案に対する修正案につきまして、その提案理由を説明いたします。
 すでに本委員会において明らかになりましたとおり、政府案は、犯罪被害者を真に救済する立場から見れば、その目的、犯罪被害の範囲、補償額あるいは過去の被害者等の救済その他において、まことに不十分な内容となっているのであります。本案が、犯罪被害者とその団体の長年にわたる粘り強い要求運動によってようやく政府において制度創設に至った経過を考えるならば、その内容は関係者の期待を裏切るものと言わざるを得ないのであります。私は、本制度が真に国民の切実な願いを反映したものとして確立することが国の責務であるとの考えに立って、政府案の弱点のうち、最低限の範囲において修正を加えようとするものであります。
 次に、修正案の概要について御説明申し上げます。
 まず第一は、本案の性格に関する修正でありますが、政府案が、その名称のごとく給付金支給法案、すなわち見舞い金的性格となっていることに対して、法律の名称を犯罪被害者補償法案とすること、並びに目的として、犯罪被害者に対して補償を行い、保護救済を図る旨の修正を加えることにより、補償制度としての性格を与えようとするものであります。
 第二に、犯罪被害の範囲についてでありますが、政府案以外に過失による犯罪被害者等も含めようとするものであります。
 第三に、給付金にかえて補償金とし、その額の最高限度額を遺族補償金の場合で金二千万円にしようとするものであります。これは自賠責による補償額に準じたものであります。
 最後に、政府案で認められておらない過去の被害者を救済するための措置として二十年間の遡及適用を認めようとするもので、この根拠は民法七百二十四条の損害賠償請求権の時効に求めております。また、この場合の補償金の支給を交付公債にかえることができるものとするものであります。
 以上で日本共産党の修正案の提案理由説明を終わります。
 何とぞ、慎重御審議の上、御可決くださいますようお願い申し上げます。
#166
○委員長(後藤正夫君) ただいまの神谷君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。後藤田国務大臣。
#167
○国務大臣(後藤田正晴君) 犯罪被害者等給付金支給法案に対する修正案については、政府としては賛成しがたいのでございます。
#168
○委員長(後藤正夫君) それでは、本修正案に対し質疑のある方は順次御発言を願います。−別に御発言もないようでありますから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようでありますから、これより犯罪被害者等給付金支給法案について採決に入ります。
 まず、神谷君提出の修正案を問題に供します。
 神谷君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#169
○委員長(後藤正夫君) 少数と認めます。よって、神谷君提出の修正案は否決されました。
 それでは次に、原案全部を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#170
○委員長(後藤正夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 佐藤君から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤君。
#171
○佐藤三吾君 私は、ただいま可決されました犯罪被害者等給付金支給法案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、日本共産党及び参議院クラブの各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
   犯罪被害者等給付金支給法案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行に当たり、当委員会の審議の経過をふまえ、次の事項に留意すべきである。
 一、犯罪被害者等給付金の給付水準については、被害者等の実情に即し、また他の諸制度との均衡、物価水準の変動等をも参酌し、所要の改善が図られるよう配慮すること。
 二、給付金の裁定に当たっては、被害者等の捜査協力の有無等刑事手続上における事由によって影響を受けることのないように配慮すること。
 三、公安委員会の裁定のための調査に当たっては、公正を保つよう配慮するとともに、国家公安委員会に置く専門委員の構成については、刑事学、社会学、犯罪捜査実務等の専門家を加えるなど公正な調査審議が行われるよう配慮すること。
 四、被害者の帰責事由、申請手続等政令及び国家公安委員会規則で定めることとなっている事項については、被害者等の救済の趣旨が全うされるよう十分に留意すること。
 五、本法施行前に犯罪被害を受けた者及びその遺族に対しては、別途、奨学金制度、重障害者見舞金などの救済措置について、実現に努めること。
 六、被害対象等については、本法施行後の運用実態を分析・研究し、その検討に資すること。
  右決議する。
#172
○委員長(後藤正夫君) ただいま佐藤君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#173
○委員長(後藤正夫君) 全会一致と認めます。よって、佐藤君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、後藤田国家公安委員会委員長から発言を求められておりますので、この際、これを許します。後藤田国家公安委員会委員長。
#174
○国務大臣(後藤田正晴君) 政府といたしましては、ただいまの附帯決議の御趣旨を十分尊重いたしまして法律を運用してまいる所存でございます。
#175
○委員長(後藤正夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#176
○委員長(後藤正夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#177
○委員長(後藤正夫君) 行政書士法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、提出者から趣旨説明を聴取いたします。衆議院地方行政委員長代理理事石川要三君。
#178
○衆議院議員(石川要三君) ただいま議題となりました行政書士法の一部を改正する法律案の提案理由並びに内容につきまして御説明を申し上げます。
 現在、行政書士は、官公署に提出する書類等の作成を業としておりますが、最近における行政事務の複雑化、高度化等により、書類作成のみならず、書類の提出手続を代行し、書類作成についての相談の依頼にも応じているのが実情であります。また、現行法では、行政書士は社会保険労務士の書類作成業務をもあわせ行うことができることになっておりますが、行政書士と社会保険労務士のそれぞれの資格制度及び業務分野は独自性の強いものであります。
 このような事情にかんがみ、今回行政書士法を改正し、行政書士の業務として新たに官公署に対する書類提出手続の代行業務及び書類作成についての相談業務を加えるとともに、行政書士の業務と社会保険労務士の業務とを分離することにより、行政書士の業務の実態に合致せしめ、ひいては国民の利便及び官公署の事務能率の向上等に資することとしようとするものであります。
 また、罰則の規定につきましても経済情勢の変動等にかんがみ、所要の改正を行うものであります。
 これがこの法律案を提案いたしました理由であります。
 次に、その内容について御説明いたします。
 その第一は、行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類等を作成するほか、新たに官公署に対する書類の提出手続を代行し、または当該書類の作成に限り相談に応じることを業とすることができることとしております。
 第二は、行政書士の業務から社会保険労務士の業務を除くこととしております。ただし、この法律の施行の際現に行政書士会に入会している者については、当分の問、従前どおり社会保険労務士の業務を行うことができることとしております。
 第三は、罰則の規定を整備し、罰金及び過料の金額を引き上げることとしております。
 以上が行政書士法の一部を改正する法律案の提案理由及び内容であります。
 なお、この法律案は、衆議院におきまして、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党・革新共同、民社党・国民連合及び新自由クラブの六党の合意に基づき、地方行政委員会提出の法律案として提出され、衆議院を通過いたしたものであります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたしまして、御説明を終わります。
#179
○委員長(後藤正夫君) これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。――別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 行政書士法の一部を改正する法律案を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#180
○委員長(後藤正夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#181
○委員長(後藤正夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#182
○委員長(後藤正夫君) 地方行政の改革に関する調査を議題といたします。
 昭和五十五年度の地方財政計画について、政府から説明を聴取いたします。後藤田自治大臣。
#183
○国務大臣(後藤田正晴君) 昭和五十五年度の地方財政計画の概要について御説明申し上げます。
 昭和五十五年度の地方財政につきましては、昭和五十四年度に引き続いて厳しい状況にありますが、おおむね国と同一の基調により、現下の社会経済情勢の推移に適切に対応しつつ、財政の健全化を促進することを目途として、歳入面におきましては、住民負担の合理化にも配慮しつつ、既存税制における地方税源の充実を図る等収入の確保を図るとともに、昭和五十四年度に引き続き見込まれる巨額の財源不足については、これを完全に補てんする等地方財源の確保を図る一方、歳出面におきましては、経費全般について徹底した節減合理化を行うという抑制的基調のもとで、住民生活に直結した社会資本の整備を図るために必要な地方単独事業の規模の確保に配意する等限られた財源の重点的配分と経費支出の効率化に徹し、節度ある財政運営を行うことを基本といたしております。
 昭和五十五年度の地方財政計画は、このような考え方を基本として策定しておりますが、以下その策定方針について申し上げます。
 第一に、現下の厳しい地方財政の状況等にかんがみ、個人住民税の各種所得控除を引き上げるとともに、その減収に対処するため所得割の税率適用区分に所要の調整を加えるほか、事業所税及び個人住民税均等割の税率を引き上げ、非課税等の特別措置の整理合理化を行い、自動車取得税の暫定税率の適用期限を延長し、ガス税の免税点を引き上げる等地方税源の充実と地方税負担の適正合理化を図ることとしております。
 第二に、地方財源の不足に対処し、地方財政の運営に支障が生ずることのないようにするため、
 (一)昭和五十五年度の地方財源不足見込み額二
  兆五百五十億円については、地方交付税の増
  額と建設地方債の増発により完全に補てんす
  ることとしております。
   なお、建設地方債の増発は、昭和五十四年
  度より縮減を図っております。
 (二) また、地方債資金対策として政府資金及び
  公営企業金融公庫資金の増額を図ることとし
  ております。
 第三に、抑制的基調のもとにおいても、地域住民の福祉、教育の充実及び住民生活に直結した社会資本の計画的整備等を図るための諸施策を実施することとしております。このため、生活関連施設等の計画的な整備の推進を図るため地方単独事業の所要額を確保するとともに、社会福祉施策、教育振興対策等の一層の充実を図ることとし、また、過疎地域に対する財政措置等を充実することとしております。
 第四に、地方行財政運営の合理化と財政秩序の確立を図るため、国庫補助負担基準の改善を図り、あわせて年度途中における事情の変化に弾力的に対応し得るよう配慮するほか、地方財政計画の算定内容について所要の是正措置を講ずることとしております。
 以上の方針のもとに昭和五十五年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は、四十一兆六千四百二十六億円となり、前年度に対し二兆八千四百十二億円、七・三%の増加となっております。
 以上が昭和五十五年度の地方財政計画の概要であります。
#184
○委員長(後藤正夫君) 次に、補足説明を聴取いたします。土屋財政局長。
#185
○政府委員(土屋佳照君) 昭和五十五年度地方財政計画の概要につきましては、ただいま自治大臣から御説明申し上げましたとおりでございますが、なお、若干の点につきまして補足して御説明いたします。
 まず、規模でございますが、明年度の地方財政計画の規模は、四十一兆六千四百二十六億円で、前年度に比較しまして二兆八千四百十二億円、七・三%の増加となっております。
 次に、歳入について御説明いたします。
 まず、地方税の収入見込み額でありますが、道府県税七兆一千七百十五億円、市町村税七兆八千九百八十三億円、合わせて十五兆六百九十八億円でございます。前年度に比べて道府県税は一兆一千二百九十九億円、一八・七%の増加、市町村税は一兆五十七億円、一四・六%の増加、合わせて二兆一千三百五十六億円、一六・五%の増加となっております。
 なお、地方税につきましては、住民負担の適正合理化を図るため個人住民税の各種控除の引き上げ、ガス税の免税点の引き上げ等により九百五十四億円の減収を見込む一方、現下の厳しい地方財政の状況にかんがみ、住民税の課税最低限の引き上げ等による減収に対処するため、税率適用区分に所要の調整を加えることとし、また、個人住民税均等割の税率の引き上げ、事業所税の税率の引き上げ、非課税等の特別措置の整理合理化等により二千百二十二億円の増収を見込むこととしております。
 地方譲与税の収入見込み額は、四千四百七十六億円となっております。
 次に地方交付税でございますが、国税三税の三二%に相当する額に一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れる臨時地方特例交付金三千七百九十五億円及び同特別会計の資金運用部からの借入金八千九百五十億円等を加算し、借入金償還金三千六百二十億円を控除し、さらに前年度からの繰越分六千百九十七億円を加算し、総額八兆七百七十五億円を確保いたしました結果、前年度に対し三千八百八十億円、五%の増加となっております。
 国庫支出金につきましては、総額十兆四千四百三十一億円で、前年度に対し四千三百三十七億円、四・三%の増加となっております。これは社会福祉関係国庫補助負担金及び義務教育費国庫負担金の増などが主なものであります。
 次に、地方債でございますが、普通会計分の地方債発行予定額は、四兆四千二百七十六億円でございまして、前年度に対しまして、四千七百三十一億円、九・七%の減となっております。この中には、地方財源の不足に対処するための建設地方債一兆三百億円が含まれております。
 地方債計画全体の規模は七兆三百七億円で、前年度に対しまして、三千七百三億円、五%の減となっております。これは財源対策債を昭和五十四年度より六千百億円減額したためでございまして、財源対策債を除くと前年度に対して二千三百九十七億円、四・二%の増となっております。
 地方債計画の基本方針といたしましては、住民福祉の充実を図りつつ、魅力ある地域社会づくりを推進するため、生活関連施設等の整備を推進するものとし、そのために必要な地方債資金の総額を確保するとともに、地方財源の不足に対処するための措置を講ずることとし、あわせて地方債資金の質の改善を図ることといたしております。次に、使用料及び手数料につきましては、公立高等学校授業料等の単価是正及び最近の実績等を考慮して計上いたしております。その結果、歳入構成におきましては、地方税が前年度の三三・四%に対し、二・八%増の三六・二%となり、これに地方交付税及び地方譲与税を加えた一般財源は前年度の五四・三%から五六・七%へと上昇し、反面、地方債は前年度の一二・六%から一〇・六%へとそのウエートが低下しております。
 次に、歳出について御説明いたします。
 まず、給与関係経費についてでございますが、総額は十一兆七千九百六十九億円で、前年度に対しまして七千二百二億円、六・五%の増加となっております。これに関連いたしまして、職員数につきましては、教育、警察、消防、社会福祉、社会教育等施設関係、清掃関係の職員を中心に約二万八千人の増員を図ると同時に、国家公務員の定員削減の方針に準じ、約六千七百人の定員合理化を行うこととしております。
 なお、五十五年度におきましては、職員数について、地方の実態を考慮した所要の増加措置を行うこととしております。
 次に、一般行政経費につきましては、総額九兆七百六十三億円、前年度に対しまして、六千五百九十六億円、七・八%の増加となっておりますが、このうち国庫補助負担金等を伴うものは四兆五千四十四億円で、前年度に対しまして、三千七十四億円、七・三%の増加となっており、この中には、生活扶助基準の引き上げ等を図っている生活保護費、児童福祉費、老人福祉費などが含まれております。国庫補助負担金を伴わないものは四兆五千七百十九億円で、前年度に対しまして三千五百二十二億円、八・三%の増加となっております。この中では、社会福祉関係経費を充実するほか、高等学校以下の私立学校に対する助成経費として一千八百七十三億円、年度内及び年度越え回収貸付金として一兆三千六百八十六億円、災害等年度途中における追加財政需要等に対する財源留保として三千五百億円等を計上いたしております。
 なお、内部管理的な一般行政経費は、極力抑制することといたしております。
 公債費は、総額三兆七百六十六億円で、前年度に対しまして四千三百七十四億円、一六・六%の増加となっております。
 次に、維持補修費につきましては、各種施設の増加及び計画的補修の必要性等の事情を考慮し、前年度に対しまして三百三十七億円、六・五%の増額を見込み、五千五百二十一億円を計上いたしております。
 投資的経費につきましては、総額十五兆九千二百五十三億円であり、前年度に対しまして六千九百九十八億円、四・六%の増加となっております。このうち、直轄、補助事業につきましては、明年度におきまして、公共事業関係費が総額として前年度と同額程度とされた結果、二・三%の増加にとどまることとなっております。
 一方、地方単独事業につきましては、地方団体が身近な生活環境施設等の計画的整備を推進することができるよう所要の事業量を確保することとし、前年度に対しまして、五千九十億円、七・五%増の七兆二千九百六十二億円を計上いたしております。
 また、公営企業繰出金につきましては、地下鉄、上下水道、病院等、国民生活に不可欠なサービスを供給している事業について、総額八千百五十四億円を計上いたしております。その結果、歳出構成におきましては、給与関係費は二八.三%で、前年度に対し〇・三ポイント、投資的経費は三八・二%で前年度に対し一ポイント低下している反面、公債費は前年度の六・八%から〇.六ポイント上昇し、七・四%となっております。
 以上をもちまして、地方財政計画の補足説明を終わらせていただきます。
#186
○委員長(後藤正夫君) 以上で説明の聴取を終わります。
    ―――――――――――――
#187
○委員長(後藤正夫君) 次に、地方交付税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。後藤田自治大臣。
#188
○国務大臣(後藤田正晴君) ただいま議題となりました地方交付税法の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨について御説明申し上げます。
 最近における地方財政の状況にかんがみ、地方交付税の総額の確保に資するため、昭和五十五年度分の地方交付税の総額の特例を設けるとともに、各種の制度改正等に伴って増加する地方団体の財政需要に対処するため、地方交付税の算定に用いる単位費用を改定する等の必要があります。
 以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。
 次に、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 まず、昭和五十五年度分の地方交付税の総額については、現行の臨時地方特例交付金を除く法定額に、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れる臨時地方特例交付金三千七百九十五億円及び同会計において借り入れる八千九百五十億円を加算した額とするとともに、借入額八千九百五十億円については、昭和六十一年度から昭和七十年度までの各年度に分割して償還することとしております。
 さらに、後年度における地方交付税の総額の確保に資するため、地方交付税法附則第八条の三第一項の規定に基づき、昭和五十五年度における借入純増加額の二分の一に相当する額三千七百七億五千万円を昭和六十一年度から昭和七十年度までの各年度において、臨時地方特例交付金として一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れ、当該各年度の地方交付税の総額に加算することとしております。
 次に、昭和五十五年度の普通交付税の算定方法については、教職員定数の増加、教育施設の整備等教育水準の向上に要する経費及び児童福祉、老人福祉対策等社会福祉施策の充実に要する経費の財源を措置することとしております。また、公園、清掃施設、下水道、市町村道等住民の生活に直結する公共施設の計画的な整備及び維持管理に要する経費の財源を措置するとともに、過密対策、過疎対策、消防救急対策、公害対策等に要する経費を充実することとしております。
 さらに、昭和五十五年度において、財源対策債を減額することに伴い、これに対応する投資的経費を基準財政需要額に算入することとするほか、昭和五十四年度において発行を許可された財源対策債等の元利償還金を基準財政需要額に算入することとしております。
 以上が地方交付税法の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#189
○委員長(後藤正夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ります。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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