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1979/01/30 第91回国会 参議院 参議院会議録情報 第091回国会 本会議 第4号
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1979/01/30 第91回国会 参議院

参議院会議録情報 第091回国会 本会議 第4号

#1
第091回国会 本会議 第4号
昭和五十五年一月三十日(水曜日)
   午前十時三分開議
    ―――――――――――――
#2
○議事日程 第四号
  昭和五十五年一月三十日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(安井謙君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。鈴木一弘君。
   〔鈴木一弘君登壇、拍手〕
#4
○鈴木一弘君 私は、公明党を代表いたしまして、さきの政府演説に対し、総理及び関係閣僚に若干の質問をいたします。
 さて、二十一世紀への助走とも言うべき八〇年代に入った今日、内外ともに重大かつ深刻な問題がわれわれの行く手をさえぎっており、国民は多くの生活の不安を感じております。
 内にあっては、原油の値上がりを中心とした物価の上昇、公共料金のメジロ押しの値上げなど物価に対する不安、そして福祉後退が策され、養護老人ホームや特別養護老人ホームの入所者から巨額の負担を取るなど福祉に対する不安があります。
 また、一体エネルギーは今後どうなるのか心配でならないし、中小企業の倒産増加による仕事に対する不安があります。
 さらに、政府の財政対策、経済運営の失敗によるツケを増税や各種負担増で国民にしわ寄せしょうとしていることに対する不安があります。
 その上、国際社会は、ソ連軍のアフガニスタンへの侵攻、イランの米大使館人質事件など、まさに第二次大戦以来最悪の平和に対する不安にさらされており、二十一世紀への展望どころか、あすへの不安に駆られております。私は、この国民が思っている不安について政府に質問をいたすものであります。
 それに先立って、私は、昨日日本じゅうを驚かしたブラウン米国防長官の発表した国防報告についてお伺いしたいと思います。
 同報告の中で、アメリカ、西欧、そして日本の三者による軍事面での共同計画努力が必要と述べ、また、日本及び周辺の米軍事力は有事の際には世界の他の地域に出動する可能性が強まっているとも述べております。この共同計画努力で何を米国は日本に期待しているのか、その役割りはどうなのか。専守防衛の自衛隊がその中に組み込まれているとすれば、明らかに憲法を踏みにじるものであります。さらに、日本駐在の米軍が世界の他の地域に出動するということは、安保条約の適用範囲は極東に限定されているという政府の統一見解を崩すものであり、日本が米国の世界戦略に勝手に組み込まれているというもので、絶対に承認できないものであります。わが党は、米国の世界戦略と日本の安全保障政策は基本的に違うものであり、日本は絶対に従来の方針より踏み込むべきものでないと主張するものでありますが、これらの点について総理の明快な答弁をまず求めたいのであります。
 また、一昨日、わが党の竹入委員長が、ソ連のアフガン軍事介入に対する制裁措置として日ソ貿易、シベリア開発、漁業交渉、オリンピック問題の四項目の質問をしたのに対して、総理は全く抽象的な答弁に終始したのであります。これは国民の知りたいことを意識的に避けているものであり、こういう態度が政治不信のもとになるものであります。ここに改めて各項目について具体的に答弁を求めるものであります。
 次に、物価に対する不安についてであります。
 OPEC石油輸出国機構の相次ぐ原油価格の引き上げに加えて、昨年からの円安は、わが国の卸売物価を昨年一年間で一七・五%も引き上げ、先月はさらに上昇し、年率換算で二三・九%の異常な高騰をしております。これにつれて消費者物価の上昇も時の経過とともに激しくなってくることは明らかであります。それは、昨年の場合は景気の回復期間ということで仮需要が鎮静化しており、また円高差益の吐き出し、賃金上昇の鈍さなどの要素があって消費者物価の上昇はさほどではありませんでした。
 しかし、五十五年度の状況は大きく変わろうとしております。それは、卸売物価の高騰に加えて、昭和四十九年の第一次石油危機以来六年ぶりの公共料金の値上げラッシュが予定されているからであります。昨年一年間の一世帯当たりの公共料金関連支出は三十九万六千円、一カ月で三万三千円であり、五十五年度の公共料金の平均値上げ率は低目に見て約二〇%であるとすると、国民の一世帯当たりで年間に七万九千二百円、一カ月で六千六百円の負担増加になります。ことしの春闘の賃上げ要求は八%と言われ、賃上げ額で約一万三千円となります。したがって、春闘要求が全額通ったとしても、その半分が公共料金の値上げ分で占められてしまうのであります。これでは生活保護世帯などの人々の生活は破壊されかねません。
 石油製品の大幅値上がりに加えてこれら公共料金の値上げは、これだけで消費者物価への影響は二%、値上げの間接効果も含めると少なくとも四%も消費者物価を押し上げると言われております。果たして政府の言う消費者物価上昇率六・四%以内に抑えることができるのかどうか、総理の責任ある答弁を求めるものであります。
 次に、具体的にお伺いいたします。
 第一に、電力料金、ガス料金についてであります。
 今月の二十三日に、東京電力など電力八社は平均で六四・四%の大幅値上げを政府に申請いたしました。第一次石油危機の四十九年には、原油価格が一気に四倍にはね上がった中で、電力八社は平均で五七・三%の値上げをしたのに比べ、今回の原油価格の値上がりは第一次オイルショック後の価格に対して二・七倍と前回より下回っているのに、電力料金は前回を七・一ポイント上回る六四・四%もの値上げ申請とはいかなることでありますか、納得できないのであります。
 また、ガス料金についても、大手都市ガス三社は平均で五二・一%の値上げを申請しております。
 首都圏のモデル家庭の負担増は、一カ月で電力料金が二千八十円、ガス料金が二千六十三円となり、合わせて四千円を超えることになり、家計はますます圧迫されるのであります。
 これに加えて、電力、ガス料金の値上げは、鉄、アルミ、銅などの基礎資材を初め、工業製品などの商品コストを押し上げることは申すまでもなく、各種のサービス料金の値上げを引き起こすことは必至であります。
 このような影響をもたらす電力、ガス料金の大幅値上げ申請に対して、いかなる姿勢で対処するのか、具体的答弁を求めるものであります。
 第二に、石油製品、特に灯油価格の問題についてお伺いいたします。昨年末ベネズエラの首都カラカスで開催されたOPEC石油輸出国機構総会に相前後して再度の価格の大幅引き上げがされております。事実、灯油の価格は一年前の一月には十八リットルかんで東京都区部平均で七百二十六円であったものが、六月には八百八十七円、十二月には千三百三十八円と日を追って上昇し、ことしに入ってからは各地で千五百円前後の高値を記録しております。
 しかるに、政府は、石油の量的確保を最優先させ、灯油価格の上昇を放置したのであります。これは大企業や持てる者のみに味方する政策であって、国民生活を全く無視した政治と言わざるを得ません。単に市場メカニズムに任せるだけでなく、企業経営の実態、国民の家計負担の限界などを十二分に調査し勘案して、原油の値上がりの影響が石油製品価格に対してなだらかになるよう誘導して国民の先行き不安解消に努めるのが政府の責務であります。政府は、昨年十一月、物価問題関係閣僚会議において物価対策入項目を決め、その中に灯油の需給、価格などの安定を言っておりますが、事実は全く野放しのように見えます。その後具体的にどう進んでいるのか、示していただきたいのであります。
 第三に、法律などにより料金が決められているいわゆる政府予算に盛られている料金値上げについてお尋ねいたします。
 消費者米価は三・二%、同じく麦価は一四・一%、いずれも二月一日に値上げ実施、以後も軒並みにたばこは約二〇%、国立大学の授業料二五%、国鉄運賃五・四%、健康保険料の初診料は六百円から千円に、郵便料金も、はがきが二十円から当面三十円、五十六年から四十円、封書が五十円から六十円に、それぞれ値上げを政府は予定しております。まさに値上げラッシュ、生活圧迫の五十五年であります。
 国民の一世帯の家計でこれらの値上げによって一年間で二万二千円の負担増となるのであります。さきに述べた電力、ガス代を含めると、年間で約七万数千円の増加であります。
 このような状況から国民生活を守るために、郵便、国鉄運賃、たばこなどの公共料金の値上げはやめるべきであると要求するものでありますが、総理の答弁を求めるものであります。
 第四に、現在の公共料金の決定システムの基本的姿勢は、国鉄運賃、電力、郵便など、その企業体が独立採算的に受益者負担の原則で決定しております。
 これでは、生活保護世帯とか年金生活者などの弱い立場の人々の生活はますます苦しくなるばかりであります。これからの公共料金決定には、受益者負担の原則に加えて、所得に応じた負担の原則と生活必需的サービス最低保障の原則という三つの原則に基づいた総合的な公共料金システムに改めるべきであると強く求めますが、総理はどう考えておりますか。
 また、この新しい公共料金決定のための総合公共料金政策審議会といった国民の福祉充実という観点からの機関をつくるべきであると思いますが、総理の見解を示していただきたいのであります。
 第五に、私は政治の原点は家計の安定であると思いますが、その家計を現在一番悩ませているのが野菜の高値についてであります。
 この一月、東京都区部の野菜の価格を見ますと、白菜が一キロで二百二十八円、一把二個で千五百円、昨年一月に対して五倍の値上がりを初めとして、すべての野菜が大幅の値上がりとなっております。
 野菜の高値の原因は、昨年秋の長雨とか台風、病害の発生などによる供給不足によると言われておりますが、異常な高値としか言いようがありません。との野菜の高値の対策について、政府の答弁を求めるものであります。
 さらに、主要な野菜価格については、市場価格の暴騰を防ぐため、計画性のある生産と出荷の安定を図るため、野菜価格の補てん制度を充実させるべきであると思いますが、政府の考えを示していただきたいのであります。
 次に、福祉に対する不安についてお尋ねいたします。
 昭和四十八年を福祉元年と言い、厚生年金では五万円年金を確立し、各種年金に物価スライド制を導入し、さらに七十歳以上の老人の医療費が無料になり、健保の家族診療負担率が五割から三割へと、国民が安心して暮らせる福祉社会の実現へ向けていくと思っておったのであります。
 しかし、国家財政の赤字が大きくなるに従って政府の福祉に対する姿勢は後退し、五十五年度予算編成に対しては辛うじて現状維持はしたものの、五十六年度の福祉の後退の条件つきでありました。
 一体、国家財政を赤字にした責任はだれでありましょうか。政府の財政、経済の運営の失敗が巨額の借金を財政に残したのではありませんか。そのツケを、老人とか児童、さらには年金で暮らす人々という社会的に弱い立場の人々に回すとは、無責任もはなはだしく、国民の期待をまさに裏切るものであります。私は、そのような福祉後退、切り捨ては、断じて反対するものであります。
 第一に、五十五年度の予算編成の際に、厚生大臣は大蔵大臣との間に、老人医療と児童手当について五十六年度に見直すという覚書を交わしたと伝えられておりますが、事実でありましょうか。もし事実とすれば、国民の暮らしと健康を守り充実させるべき立場の厚生大臣として失格であります。その点、総理はどう判断しておられますか、明確なる答弁を要求するとともに、福祉政策の基本的姿勢も示していただきたいのであります。
 第二に、勤労所得者の一生の中で、比較的健康で働ける時期は給付に恵まれた組合健保、第二の職場の中小零細企業に転職すると赤字の政管健保、そして年金生活に入ると老人の負担にあえぐ市町村国保というように、年齢とともに健康が損なわれ、医療を受ける機会が多くなるにつれて、給付も悪い、保険財政も悪い健康保険に移行する不合理な制度になっております。これは改めなくてはなりません。さらに、差額ベッド料金の問題など医療保険制度の基本的問題の解決についてどうするのか、お伺いしたいのであります。
 第三に、年金についてお尋ねをいたします。年金制度での妻の年金権、共済組合と厚生年金の間にある官民格差、厚生年金と国民年金の障害程度の格差など、わが国の福祉制度には各制度間に全く整合性がなく、国民は大変な不満と疑問を持っているのであります。これら制度上の諸問題についてどうされるのか、明快に答弁をしていただきたい。
 八〇年代は高齢化社会が急速に進むことが指摘されておりますが、政府は、厚生年金の支給年齢の六十五歳への引き上げ、老齢者医療無料制度の見直しなどを打ち出しております。本来、定年で退職し、それに引き続いて年金支給が行われるべきであり、これが高齢化社会に適合した年金制度であります。しかるに、政府のやり方では、定年で退職した後年金支給まで数年間もあり、多くの人々が不安な毎日を送らざるを得ないことになります。まさに高齢化社会に逆行するものであり、政府は完全に誤りを犯していると言わざるを得ません。このような国民生活を無視した施策に対し私は断固反対するものでありますが、総理、厚生大臣の納得のいく答弁を願います。
 次に、中小企業対策の不安についてお尋ねいたします。
 政府は景気は回復したと言っておりますが、わが国の事業所数の九九・四%、従業員数で七八・四%を占めている中小企業にとっては相変わらず厳しい冬の連続であります。それは、昨年十一月の企業倒産は一千六百八十一件、十二月は一千六百六十六件と危険水準を大きく上回っており、その倒産の大部分は中小企業であることからもはっきりしております。特に、小売業、卸業の倒産増加が目立ち、これはその倒産企業に関連して卸の問屋、さらに中小の製造業の経営を困難にさせる危険があるだけに見落とせない点であります。
 しかも、今後は、石油の価格上昇など製品コスト上昇による商品価格への転換の困難さ、繊維、雑貨など開発途上国からの追い上げ、大企業の中小企業分野への一層の進出など、さらに厳しい経営環境になることは申すまでもありません。
 しかし、これからは、国民ニーズの多様化、地域経済の見直し機運の高まり、さらには中小企業分野における雇用機会の拡大の要請という時代の趨勢により、中小企業の役割りが一層高まると思うのであります。
 高度経済成長から安定成長へ、多くの資源エネルギー消費の産業から省資源・省エネルギー産業へと、わが国の経済、産業が大きく方向転換をされる中にあって、政府の中小企業対策も、従来の政策にとらわれることなく、時代の変化に対応して十分な対策を講じていかなければ、中小企業の存在も危うくなるのであります。
 以上の観点から、私は、今後の中小企業対策の中心となるものは技術と人材と情報であると考え、次の点について強く主張するとともにお尋ねいたします。
 第一に、技術開発に対する助成の強化として、技術改善補助金の増額、技術導入融資制度の創設。
 第二に、地場産業、産地産業の育成。
 第三に、小規模企業の経営基盤の強化として小規模企業向け官公需発注の拡大拡充を行うべきであります。
 第四に、最近の金融引き締め政策により、中小零細企業は資金不足のケースによる経営難がよく見られます。中小企業向けの経営改善資金及び運転資金の融資枠の拡大を行うべきであります。
 第五に、個人事業者の税負担の軽減対策として、事業主報酬制度を拡充させ、法人企業と同様に完全給与制にすべきであります。
 関係大臣の答弁を求めるものであります。
 次に、財政に対する不安について伺います。
 巨額な国債に依存した財政の改善が重要な政治経済の課題であることはいまさら申すまでもありません。いまや国債の残高は五十五年度で七十一兆円にもなり、国民一人当たり約六十一万円の借金を抱えたことになっております。この多額の国債のため、予算に占める国債償還や利子支払いのための国債費も多額になり、五十五年度予算では文教及び科学振興費より多い五兆三千億円となっております。数年後には社会保障関係費をも超すことは明らかであります。まさに国債のための国家予算になりかねません。
 政府は、赤字財政解決のために、口を開けば一般消費税などの増税しかないことをほのめかし、国民を不安へ陥れております。
 そこで伺います。
 第一に、政府・自民党は、経済社会七カ年計画並びに昨年の総選挙で一般消費税創設による増税型再建を主張し、わが党は、「福祉社会トータルプラン」改定版で適正な経済成長確保を図ることによって税収がふえる体制を整え、その中で財政再建を図るべきことを主張してまいりました。わが党の主張が正しかったことは、税収の増加によって五十四年度補正で一兆円の国債削減、五十五年度予算では四十九年度以来増発一方だった国債発行が一兆円減額されたことで明らかであります。これを可能にしたのは、五十四年度の二兆円を超す年度内自然増収と、五十五年度の約五兆円の自然増収であります。
 このことから見ても、今後の財政再建の基本方式は、わが党の主張である福祉拡充、国民生活関連の公共事業などを中心として、安定的な経済発展に伴う税収の増加を主軸とすべきと思いますが、総理の所見を伺いたいのであります。
 第二に、五十五年度予算はその規模抑制に努め、一般会計は二十一年ぶり、財政投融資計画は二十二年ぶりの緊縮型予算が組めたと政府は述べておりますが、その実態は、石油情勢、物価動向などからやむを得ず公共事業費を前年度横ばいに抑えざるを得なかった結果であって、必ずしも政府の政策努力の結果ではありません。予算編成当時政府が言っていた財政再建元年はどうなったのか、お伺いしたいのであります。
 第三に、五十五年度予算編成過程を見ておりますと、財政再建のビジョンと行財政肥大化への歯どめに明確な政府の指針が示されないため、老人医療費の一部有料化、児童手当の所得制限の引き下げ、教科書無償の廃止などをしようとした福祉予算削減の大蔵原案が出て、それに対して政治折衝によって再び福祉予算を復活させるといった茶番劇が演じられたのであります。また、行政改革も、数だけはそろえたものの、実行はほとんど五十六年度以降にわたる検討課題と後退したりするのであります。このような場当たり的な予算編成では国民は納得できません。この際、政府は、わが党が再三主張している中期財政計画を作成し、長期的な指針を国民へ示すべきであります。総理は前国会で提出に最善の努力を傾けると約束しましたが、中期財政計画はいつ提出されるのですか。どのようになっているのか、明確に御答弁を願いたいのであります。
 第四に、五十五年度予算は、昨年秋に行われた総選挙に示された国民の意思を政府がどこまで実行したかの試金石であります。選挙結果から見るなら、明らかに一般消費税なしの財政再建が国民大多数の声であります。五十五年度予算を見ると、この声を入れて、従来予定していた五十五年度から五十九年度にわたる九兆一千億円の増税方針は完全に放棄したやに理解できますが、確認をしておきたいのであります。
 第五に、五十五年度予算編成過程で、当初歳入増の柱であった法人税増税三千億円が、経団連資金部長の熱心な説得で取りやめられたり、また、土地税制の緩和措置などのやり方に国民の疑惑はつのるばかりであります。これではいつまでたっても税の漏れや不公平は直らないというのが率直な国民の声ですが、総理はこれらの点についてどのように考えているのか、また、具体的な措置をされる考えは一体あるのかどうか、伺いたいのであります。
 第六に、歳出面では、鉄建公団の不正経理を初め、行政官庁の慣習という名の不正不当な予算使用が昨年大問題となり、さらに補助金のむだ遣いも問題になっております。国民の財政再建に対する気持ちは、これらの不正不当はもちろん、不急の予算や効率の悪い支出の徹底的な洗い直しをまずやってほしいということでありますが、五十五年度予算でどこまで進んだのか。特に、項目の羅列でなく、具体的な項目と予算金額の節約額を御報告いただきたいのであります。
 以上で私の質問を終わりますが、八〇年代に入って内外ともに先行きは不透明であり、国民が不安を感じざるを得ないことは、いままで質問をいたしたとおりであります。総理及び関係閣僚においては、国民の納得のいく答弁をするように心から期待をして、私の質問を終わるものであります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(大平正芳君) 最初の御質問は、ブラウン国防長官の報告の中にソ連の軍事力の増強に対抗するためには米日欧の共同の計画努力が必要であると言っているが、これに対する見解を求められたわけでございます。
 鈴木さんも御承知のように、わが国は憲法のもと専守防衛を基本といたしております。安保条約も個別的自衛権の範囲を超えるものでないことは申すまでもございません。米国もよくこれを承知いたしておるはずでございます。ここに言われる、国防長官の言われた意味は、日本が自主的に自衛力を整備していく場合におきましても、米、西欧の行っている努力、方向を念頭に置いて同じ方向でやってほしいという一般的な願望を述べたものでございまして、具体的な特定の努力を日本に要請しておるものとは考えておりません。
 次に第二は、日本の施設区域の使用に関連いたしまして、安保条約の適用範囲についての御懸念でございます。
 日本の施設区域を使用することがある米軍が日本を離れまして単に他の地域に移動していくことが安保条約上何ら問題のないことは、随時申し上げているところでございます。なお、米軍が日本の施設区域から戦闘作戦行動のために発進するような場合には、申すまでもなく事前協議制度や御指摘の極東の範囲に関する政府の統一見解といった制約があることを申し添えておきたいと思います。
 アフガニスタンへのソ連の軍事介入に関連いたしまして対ソ措置について具体的に述べろということでございました。
 この件につきましては、目下鋭意諸般の状況を見守りながら検討をいたしておるところでございまして、さきに竹入委員長にお答え申しました以上に具体的にまだ申し上げられる段階に立ち至っていないことを御了承いただきたいと思います。
 次に、消費者物価についてのお尋ねでございました。
 政府は、五十五年度消費者物価を六・四%の水準に抑えたいという見通しを申し上げておるわけでございます。しかしながら、鈴木さんも仰せになりましたとおり、卸売物価の上昇がこのところ急ピッチでございまして、消費者物価そのものは基調として落ちついておりまするけれども、この卸売物価がどのような手順で消費者物価にはね返ってまいりますか、警戒を要するところであることは、私もよく承知いたしておるつもりでございます。
 政府は、昨年の十一月に定めました総合的な物価対策を踏まえまして機動的に対処して、いま申し上げました六・四%程度に消費者物価の上昇を抑えたいという努力を積み重ねてまいり、これはできない相談ではないと考えております。
 法定公共料金の問題について、国鉄その他についての法定公共料金制度を見送るべきでないかという御意見でございました。
 鈴木さんも御承知のように、国鉄につきましては、国鉄再建の柱といたしまして、国鉄自身の徹底した合理化、第二はそれを前提といたしました国の行財政上の支援、第三番目には運賃改定による増収、三つの柱によりましてこの再建を実現いたしたいという方針でいま取りかかっておるところでございます。このため、来年度予算案におきましては、物価と国民生活の動向に注意しながら、増収率四・九%、千百六十億円の運賃改定増収額を見込むことといたしておるわけでございます。
 なお、この具体的な内容につきましては、国鉄からの申請を待って検討することといたしておるので、御了承いただきたいと思います。
 たばこにつきましては、五十年度の改定以来据え置かれております。その間における葉たばこを初めとする原材料費の増高等がございまするし、最近の財政事情にかんがみまして財政収入の確保を図る必要もございます。このような事情にかんがみまして、今回約二〇%の定価改定をお願いしようといたしておるわけでございまして、こいねがわくは政府の原案どおりお認めをいただきたいものと考えております。
 それから公共料金政策といたしまして、かねてより公明党におかれましては所得応能負担の原則、それから生活必需的サービス最低保障の原則、それから受益者負担の原則の三原則を柱にして考えるべきでないかという御主張をされておることは、私もよく承知いたしております。
 これは一つの見識であると存じまするけれども、政府は経営の合理化と受益者負担の原則によって対処するのが現実的であると考えておりまして、所得応能負担とかあるいは生活必需物資に対する最低保障というような点は別途社会保障等で対応してまいるのが順序ではあるまいかと考えております。
 昨今の野菜の高値対策、その安定的供給対策についてお尋ねをいただきました。
 昨今の野菜の価格の高騰は、これは昨年秋の台風、長雨などの異常な事態に対する短期的な需給の不均衡に起因するものであると考えております。したがって、政府としては、価格の高騰品目について出荷奨励措置等を講じて供給の確保に努めておるところでございます。最近、おかげをもちまして野菜の方もだんだん供給が安定してくるようになってまいったわけでございます。今後とも、野菜につきましては、計画的な集団産地の育成、生産出荷の指導強化、それから野菜供給安定基金の適切な運用等に努めて、高値にならぬように配慮してまいりたいと考えております。
 厚生大臣と大蔵大臣並びに自由民主党の幹部におきましていわゆる福祉に関しての見直しに関する覚書が交わされたということに対して、これを取りやめるべきであるということの御要請でございました。
 御指摘の覚書は、社会経済情勢の変化を踏まえまして、長期的な観点に立ちまして、老人保健医療制度、児童手当制度等の基本的見通しを進めることが緊要な課題であるという認識を政府・与党の間で確認したものでございまして、私は時宜を得た措置であると考えております。
 中小零細企業対策につきましてのお尋ねでございました。
 中小零細企業を取り巻く経済環境は発展途上国の追い上げ等もございましてきわめて厳しいものがありますることは、御指摘のとおりでございます。政府といたしましては、経営指導体制の強化、金融助成制度の充実等中小企業対策に手厚い施策を講じてまいりまして、その経営力、その技術力の向上を図っていかなければならぬとせっかく努力をしてまいるつもりでございます。
 財政再建の基本的な考え方につきまして、福祉重視、国民福祉型公共事業の推進によって成長の持続を図り、それをベースにした財政の再建を考うべきでないかという御主張を踏まえてのお尋ねでございました。
 わが国の財政が公債に過剰に依存する体質にありますることは鈴木さんも御承知のとおりでございまして、八〇年代に向けてその対応力を回復する意味におきまして再建が急務であることも御理解いただいておることと思うのであります。
 このような事情にかんがみまして、政府といたしましてはまず予算の規模を圧縮し、歳出の節減合理化に格段の努力を傾けまして、公債発行額を減らしていく努力をいたしたところでございます。
 仰せのとおり、財政を支えるのは健全な経済でございます。そういう中におきましても、社会的、経済的に見まして真に緊要な政策につきましては重点的に財源の配分を行ったつもりでございます。
 財政再建は、しかしながら緒についたばかりでございまして、今後とも歳入歳出両面を通じまして広く各層の御意見を伺いながら、幅広い角度から財政再建の手だてを精力的に講じてまいりたいのが政府の念願でございます。御協力をお願い申し上げます。
 五十五年度は本当に財政再建元年となり得るかという疑問でございます。
 いま申しましたような手だてを講じまして再建の第一歩を踏み出したところでございます。しかし、まだこれは緒についたばかりでございますので、今後の努力によりましてことしの努力を生かしていかなければならぬと考えておりますることを御理解いただきたいと思います。
 中期財政計画の提出、その他予算、財政並びに税制についてのお尋ねでございますが、これは竹下大蔵大臣からお答えいたすことにいたします。
 最後に、行政改革についてのお尋ねでございました。
 行政改革につきましては、国民の行政に対する信頼を回復しなければならないという政治の強い要請にこたえまして、ことしはまず国家公務員について三万七千人を超える定員削減を行うことといたしました。特殊法人の統廃合、地方支分部局、付属機関等の整理合理化、各種行政事務の整理簡素化など、広範な事項を内容とする改革を行う方針を決定して、昭和五十五年度以降計画的にこれを実施に移してまいることといたしておるわけでございます。
 補助金につきましては、行政改革の一環としてその整理合理化に努めまして、特に五十五年度予算におきましては、その役割り、効果等を見直し、従来にも増して積極的に廃止、減額、整理を推進いたしました。
 行政改革の効果は、当面の五十五年度予算について言えば、補助金等の整理合理化千六百六十七億円のほか、定員削減等による節減効果、これは単年度では必ずしも大きい金額とは言えませんけれども、長期的に見まして各種経費の節減合理化に大きく寄与するものと確信をいたしております。(拍手)
   〔国務大臣佐々木義武君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(佐々木義武君) まず私に対する御質問の一番目は、電気、ガス料金に対する姿勢並びに各家庭に対してどういう影響を及ぼすかという御質問でございます。
 電気、ガス料金が仮に現在提出されております申請どおりに値上げされた場合、ただいま審議中でございますので、申請どおりに値上げされたということを仮定いたしまして、その場合の家計消費支出への影響は、大体次のとおりでございます。電気料金につきましては、全国平均一世帯当たり一・一先程度の支出増となります。ガス料金につきましては、申請のあった三つの大手のガス会社の地域の一世帯当たり〇・九%程度の支出増となります。
 二番目は姿勢でございますが、電力、ガス料金の値上げ申請につきましては、経営の徹底的合理化を前提といたしまして、原価主義の原則にのっとりまして、物価、国民生活への影響を十分配慮しつつ厳正かつ慎重に対処いたしたいと存じております。
 第二番目は、灯油の価格及び需給問題でございますけれども、灯油の価格の安定のためには、政府といたしましては、需要とバランスのとれた供給の確保が基本であると考えまして、需給バランスをとるということに対し最大の努力を傾注しているところでございます。
 供給面につきまして申し上げますと、十二月末の在庫は六百万キロリットル強と前年水準を大きく上回っておりますばかりでなしに、石油備蓄全体では九十九日分を持っており、また原油の輸入も順調に行われておることを考えますと、今需要期において供給に不安はないものと考えてございます。
 他方、価格に関しましては、原油価格の上昇は依然として続いておりますけれども、これらの要因によるコストアップにつきましては、市場を通じて適正に反映されることはこれはやむを得ないと考えておるところでございます。
 便乗値上げ等不当な行為につきましては、御指摘のございました昨年十一月の物価問題に関する関係閣僚会議の決定に沿って厳しく監視しているところでございまして、今後ともこの方針でまいりたいと考えてございます。
 第三の中小企業問題でございますけれども、技術改善費補助金の増額、あるいは技術導入融資制度の創設等に対し所信を問うということでございますが、第一番目の技術改善費補助金、これは主として研究開発段階に出す制度でございますけれども、この補助金につきましては、従来より中小企業の技術開発の促進を図るため増額を行っているところでございますけれども、五十五年度におきましては、特に省エネルギー技術、地域産業にかかわる新製品・新技術開発について補助率の引き上げ等制度面の改善を図ることとしてございます。
 また、融資制度、これは企業化段階に対して行う制度でございますけれども、この融資制度につきましては、現在、中小企業金融公庫の中小企業新技術企業化等融資制度によりまして、導入技術による企業化等に対し低利融資を行ってございます。
 さらに、五十五年度におきましては、新製品・新技術の企業化に際して、民間資金の調達を容易にするために新たな信用補完制度を創設することといたしてございます。
 四番目の、地場産業、産地産業について当面の対策を問うということでございますけれども、まず産地中小企業に対しましては活路開拓等につき積極的に対応できるよう昭和五十四年七月に御承知のように産地中小企業対策臨時措置法を施行したところでございます。五十五年度予算におきましては、産地指定要件の緩和、指定産地数の拡大、これは従来の七十七を百十産地に拡大する予定でございます、あるいは産地に対する補助金の充実等を行うところでございます。
 産地産業以外の地場産業、これは県内等の販路を中心にいたしました地場産業につきましては、その振興を図るため、昭和五十五年度特に新たに、今後の地場産業振興対策の基礎となる各種の実態調査を実施することとして、必要な予算措置を計上してございます。
 五番目の、小規模企業向けの官公需をもっと拡大すべきではないかという御質問でございますが、中小企業向けの官公需の確保につきましては、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律、いわゆる官公需法に基づきまして、毎年、国等の契約に関しまず方針を定め、その達成に努めるとともに、地方公共団体に対しましても国の施策に準じた施策を講ずるよう協力を求めているところでございます。
 特に、小規模企業向けの官公需の確保につきましては、個別事業者の受注が困難なものもございますので、そういう場合には事業協同組合等を通ずる受注の確保を図っておるところでございまして、今後ともこれらの方法を活用しつつ、小規模企業向けの官公需の受注の一層の拡大に努力を図りたいと考えてございます。
 最後に、経営改善資金、運転資金の貸付限度を拡大すべきだと思うがどうかという御質問でございまして、小企業等経営改善資金融資制度の発足当時、すなわち昭和四十八年の当時は、特に運転資金の貸出限度額は五十万円程度でございましたが、御承知のようにその後逐次限度額の引き上げを行ってまいりまして、今度の五十五年度におきましては二百五十万円から三百万円に引き上げることといたしてございます。今後とも改善に努力してまいりたいと存じます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣正示啓次郎君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(正示啓次郎君) 鈴木議員にお答えを申し上げます。
 総理、通産大臣から物価問題についてもお答えがありましたが、ただいま非常に具体的に御指摘をいただきました点につきまして、私からも補足をしてお答え申し上げます。
 まず第一に、十一月二十七日に総合的な物価対策を物価関係閣僚会議で決めまして、これを閣議において再確認していただいたのでありますが、これは現内閣の物価に対する非常な重要視した態度また行動のあらわれと、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
 まず、われわれは、インフレマインドを抑えるということに非常な重点を置いております。そのために、財政金融の政策につきましても基本的にその点を重視いたしました政策をやっておりますことは、五十四年度の公共事業につきましてこの年度末の五%を保留しておりまして、これからの情勢いかんによって適時適切なる執行をやりたい、こういう態度を表明しておるわけでございます。
 また、昨年は三度にわたりまして公定歩合の引き上げその他適切な金融政策が行われましたことも、いま申し上げたインフレマインドを防止するというところに主眼を置いた政策であることは御理解を賜り、私はいまやとのインフレ防止こそは全体の国民の皆さんと一緒になって総力を傾けてやっていかなければならぬということを先般の経済演説でもお願いを申し上げたわけでございます。一層の御協力をお願いしたいと思っております。
 電力につきましていま通産大臣からお話がございましたが、さしあたり北海道と沖繩分を先に――これは申請がわりあい早く出ておりますので、燃料費等につきましても若干現在の状況から見ると低目な申請になっております。これを急いで検討いたしまして答えを出したい、かように考えております。
 灯油につきましては、先ほど通産大臣が言われましたように、供給量を確保するということが一番大事な点でございまして、いままでの実績を見ますと、大体需要を上回る供給量を確保しておりますので、この点は重ねて申し上げておきたいと思います。
 また、灯油の元売価格が不当に便乗値上げ等が行われていないかということを監視するために、民間の調査員、いわゆるモニター、こういう方を含めまして、一万数千人の方々に監視をしていただいておるわけでございます。今後ともこれらの点については一層強力に国民の必需品について便乗値上げが行われないようにやりたい。鈴木議員は、市場メカニズムだげで大丈夫かという御疑問でございましたが、私どもは、今日の状況は市場メカニズムを中心にいたしましてただいま申し上げたような体制でやっていきたい、かように考えております。
 御案内のように、年首のかずのこの例を見ましても、やっぱり私は賢明なる消費者の行動というものがきわめて大事だと、こういうふうに考えておりますから、御理解を賜りたいと思っております。
 その他、野菜価格等については総理からも御答弁がございましたから、これらについても適時適切な政策を農林省その他と連絡をとりましてやっていきたいということを申し上げて、私の答弁にかえさせていただきます。(拍手)
   〔国務大臣野呂恭一君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(野呂恭一君) 鈴木先生にお答え申し上げます。
 まず、福祉政策についての基本姿勢はどうかというお尋ねでございますが、本格的な高齢化社会を迎えまして、国民生活の中における社会保障の役割りは今後ますます重要になってまいっておるわけでございます。一方、経済の低成長時代への移行に伴いまして国家財政はきわめて厳しい状況に直面いたしておるわけであります。また、将来に向かっても確実に増大するであろう給付の財源をどのように確保していくかという問題は、福祉行政にとってきわめて重大な問題であると考えております。
 このため、今後の社会保障をどのように進めていくか、私は幾つかの点に十分配慮する必要があると考えるものでございます。
 その一つは、社会保障及びその関連分野におきまする各種施策の有機的連携を図るなど、施策の体系的効率化を進めていくことがきわめて大切であると思います。また、給付と負担の両面において社会的公平を確保するということであります。また、長期的には、増大するニーズに対して社会保障がどのように対応すべきであるか、給付と負担の両面にわたって国民的合意を形成していくことがこれまた大切でございます。
 このような意味におきまして、単に財政的見地からではなく、長期的に将来にわたって社会保障を安定的かつ効率的に運営していくために総合的な見地から見直していく必要があると考えておるものでございまして、福祉行政にはいわゆる後退などあってはならないと考えておるものでございます。
 先ほど総理から御答弁をいただいております覚書についてでございますが、今日の社会経済情勢の変化を踏まえまして、いま申しましたように、負担の公平あるいは行政の効率化など、長期的な観点に立って老人医療制度あるいはまた児童手当制度などの基本的な見直しを進めることが緊急の課題であるという認識を政府・与党の間で確認したものでございまして、福祉の後退の姿勢を意味するものであるとは考えておりません。
 第二に、制度の分立に伴います医療保険制度に対してでございますが、医療保険制度の改革、特に制度の分立によって生ずる問題をいかに解決するかについてはいろいろの考え方があるわけでございますが、政府といたしましては、現行各制度の沿革、国民世論の動向に照らしながら、現行制度の存立を前提としながら医療保険制度全般にわたって平等な給付、公平な負担を実現する方向で改革を図ることが妥当であると考えておるのでございます。現在国会に提案いたしております健保法改正案もこの考え方に基づいて作成いたしたものでございます。
 御指摘の保険外負担の解消につきましては、従来から指導の徹底を図るように指示いたしておるのでございまして、その結果はかなり改善が進んでおると考えております。今後ともさらに改善に向かって努力をいたしたいと存じます。
 第三に、年金におきまする制度間の格差、妻の年金権の問題でございます。
 まず、いわゆる官民格差についてでございますが、年金制度は個々の制度ごとにそれぞれ沿革があることは御承知いただいておるとおりでございます。厚生年金と共済年金とはできる限り整合性あるものとしていくことが望ましいと考えておるのでございます。
 去る一月二十五日には公的年金制度に関する関係閣僚懇談会が開かれましたが、今後とも政府一体となりましてこの問題について検討を進めてまいりたいと考えております。
 なお、年金制度におきまする障害等級については、それぞれの制度の性格に応じて定められておるのでございまして、これらの制度の障害等級の違いについては必ずしも不合理なものとは考えていないのでございます。
 また、妻の年金をどのような形で保障していくかの問題は、公的年金制度全般の仕組みの基本にかかわる問題でございまして、引き続いて検討していく必要があると考えておるわけでございます。
 最後に、高齢化社会に逆行する厚生年金の支給開始年齢の引き上げに対しては反対であるということについての御意見でございますが、来年度の年金制度の改正においては、年金水準の引き上げや、各方面からきわめて要望の強かった遺族年金の改善など、給付の大幅な改善を行っておるわけでございまして、将来の人口の老齢化、あるいは後の世代の費用の負担を考えながら、今後老後生活の支えとなる年金水準を確保しながら年金制度の長期的な安定を図るということはきわめて大事でございまして、その立場において年金支給開始の年齢の引き上げに着手いたしたいと考えておるものでございます。これは二十一世紀における年金福祉の展開に備えなければならないと考えておるからでございます。
 その際、特に現在の高齢者を取り巻く雇用環境を考慮し、八年後の昭和六十三年に支給開始年齢を六十一歳に引き上げることとし、その後三年に一歳ずつ引き上げてまいりまして、昭和七十五年、すなわち二十一世紀に入りまして年金の支給開始年齢を六十五歳とするような長い経過的の取り扱いをいたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(竹下登君) 鈴木さんにお答えいたします。
 最初の御質問は、いわゆる中小企業税制におけるみなし法人課税方式の問題であります。
 この制度は、店と奥との経理区分を明確にしておる個人企業について、中小企業の近代化、合理化を推進する観点から認められたものでございますので、したがって青色申告の方々にのみ適用しておるわけであります。したがって、これから青色申告の方へとにかく移っていただきますように一層のお勧めをしようということであります。
 第二番目は、財政再建問題についての財政計画の取りまとめの問題でございます。
 確かに、竹入委員長からの御指摘そしてまた財政制度審議会からの御指摘がございまして、これに対して昨年の九月に総理から財政計画の取りまとめにトライするというお答えを申し上げたことはそのとおりであります。この財政計画の取りまとめというものは何分初めての体験でありますし、そして膨大な作業を要します。したがって、いま一日たりともゆるがせにしないつもりで作業に取りかかっておりますが、正直に申しまして、何月何日に提出をいたしますと言うだけの自信がございません。
 次に、いわゆる財政再建問題についての税の問題であります。これからこの税の問題について財政再建でいかに対応するかという御趣旨の質問でございます。
 これは、まず本院における財政再建の決議が一つあります。そしていま一つは税制調査会の御答申がございます。これらの趣旨を踏まえまして、今後とも歳出歳入を通じる財政構造の健全化を具体的にいかに進めていくかということにつきましては、まさに広く各界各層の意見を伺いながら十分検討して結論を出したい、このように考えております。
 さらに、税の不公正の問題についてお触れになりました。
 五十五年度におきましては、自然増収を背景に歳出規模の抑制と租税特別措置の大幅整理合理化等によって必要な財源の確保ができましたので、法人税率の引き上げ等の一般的増収措置は講じなかったわけでありますが、租税特別措置などはまさに五十一年から五十五年にわたりこれを行ってきたところでありまして、税制調査会等からも整理合理化はおおむね一段落したというような御評価もいただいておるところであります。しかし、何としても税の公正化の問題につきましては引き続きたゆまざる検討を続けてまいりたい、このように考えております。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(安井謙君) 宮本顕治君。
   〔宮本顕治君登壇、拍手〕
#11
○宮本顕治君 私は、日本共産党を代表して、政府の施政方針演説について質問いたします。
 いま、内外情勢の激動の中で、多くの国民は平和と生活の向上を願って日本の進路を見詰めております。
 まず、国際問題でありますが、総理は「受動的な対応から主体的なそれへ」ということを随所で強調されております。
 そこで、八〇年代を展望する前に七〇年代を見ますると、サミットに参加した諸国――独占資本主義諸国に共通する構造的危機の深まり、石油危機、スタグフレーション、こういう進行がありました。また、イラン、ニカラグア、韓国その他、アメリカがてこ入れしてきた独裁政権の崩壊や動揺がありました。さらに、非同盟中立の勢力が大きくなり、さまざまな国の革新勢力が前進した、こういう特徴があります。つまり、混迷と停滞の中に歴史を貫く進歩の光も強まった十年であると言ってよいと思います。
 同時に、七〇年代の特徴としては、大国による三つの大きな事件が起こりました。
 五十万余の大軍を動員して敗北したアメリカのベトナム侵略戦争について、カーター大統領は、昨年末の演説で、「われわれは、国の安全保障上の死活的な利害が直接かかわっていないときに、他国の内政に軍事干渉するのが誤りであるということを学んだ」と述べました。アメリカは東南アジアの軍事同盟を名分にしてこの戦争に踏み込んだのであります。
 中国が五十万の軍隊でベトナムに公然と攻め込んだのも、中国の盲従勢力であるポル・ポト勢力への援護が大きな動機でありました。
 ソ連軍のアフガニスタン介入については、わが党は、主権の尊重、独立の擁護、この原則と相入れないものとしてソ連軍の速やかな撤退をはっきり求めております。
 世界に軍事ブロック主義や軍拡競争が横行する限り、さらにそれに対抗する新しい軍事協力や軍事ブロックが生まれるのが今日の世界政治の悪循環であります。カーター大統領は、先日の教書の中で、ペルシャ湾岸をアメリカの「死活的利益」にかかわる地域とみなし、新しくこの地域の諸国との軍事同盟構想を打ち出し、武力行使も辞せずと表明いたしました。ブラウン国防長官は沖繩海兵隊の派遣を言明しております。また、報道されておりますように、新しく国防教書の中で、日本、ヨーロッパ、アメリカの共同軍備増強計画というものを提起し、日本の問題についてもいろいろ言及しております。情勢はきわめて重大であります。
 このような中で日本政府がとるべき態度はどうであるか。そこで、私は次の諸点について総理にお尋ねいたします。
 第一、総理は、今後の世界政治のあり方として、大国中心の軍事ブロックによる世界分割の進行を人類の進歩の方向と考えるのかどうか。それとも、軍事ブロックを必要としない世界を理想的に考えているのか。日本政府の「主体的対応」の基準はどこに置かれているか、これが第一であります。
 第二、総理が対米関係を第一義とされるのは、アメリカの内外政治を平和と民主主義の模範とされているからでありますか。それとも、日米軍事同盟を重視されているからでありますか。あるいは両者が不可分になっているということでありましょうか、アメリカがこれまで各地で武力侵略を繰り返してきた歴史から見まして、私はまさか日本がアメリカをモデルとしていると考えたくありませんが、この点についての見解をお伺いいたします。
 第三、すでに今日ではカーター大統領も無謀な内政干渉の戦争と認めているベトナム侵略戦争に当たりまして、自民党政府は、日本全土の基地を挙げてこれに協力し、内外の批判に耳を傾けず、ひたすらアメリカの行動を弁護してまいりました。今回の施政方針で主張している「世界の平和と安定」との関係で今日これをどう反省しておられるのでありましょうか。また、そのベトナムヘの経済援助の凍結をさまざまな口実で次々と延長しているのは、中国への経済援助と比べても不当ではありませんか。
 第四に、政府はアメリカとの共同歩調を軸として、犠牲を払ってもソ連に対する制裁的措置をとると断言しております。しかし、平和と公正の見地に立つのなら、ソ連のアフガンからの撤兵を要求するにとどまらず、以前からのアフガン周辺諸国でのゲリラの訓練・養成など、アフガンへの一切の外部勢力の介入停止を要求するのが当然であります。そのような「間接侵略」的介入を黙認し放置して、周辺国への援助を云々することは、大義名分に反すると思いますが、いかがでありましょうか。
 最後に、総理が受動的対応から主体的な対応へと言っていることは、世界の平和及び日本民族の安全、国際関係を律する諸原則の見地からの確信ある自主的選択を積極化するのではなくて、アメリカヘの追随を積極化する、そういう方向に行くのではないかと考えておりますが、いかがでありましょうか。
 総理、あなたは昨日カーター大統領のペルシャ湾戦略に賛成と言われましたが、園田氏の中東派遣はその側面援助ではありませんか。また、さきに述べたブラウン国防長官の計画の中で、スイング戦略について日本政府に通告し、了承済みと述べておりますが、そうですか。果たしてどういう形で説明され、了承されたのでしょうか。重大でありますので、この点をはっきりお伺いしたいと思うのであります。なお、この点は、わが党としては、予算委員会その他の委員会で重大問題としてさらに追及する予定であります。
 次に、環太平洋合同演習と環太平洋連帯構想について改めてお聞きいたします。
 今度の演習に参加する他の諸国は、それぞれの軍事条約で集団自衛権の行使を相互に約束している集団であり、この立場から演習に臨んでおります。ワイズナー米太平洋統合軍司令官は、米上院で、有事に即応するために「同盟諸国との合同演習に最大の優先順位を与えてきた」と述べております。これら五カ国の合同演習への参加は、決して個別的自衛権行使の範囲の演習などと言えるものではありません。
 政府が集団的自衛権の行使を前提としていない、などと幾ら弁明しても、実態は耳を覆って鈴を盗むのたぐいではありませんか。わが党はそもそも現憲法第九条は武力を持つことを禁止していると考えておりますが、今回の合同演習参加は、憲法が集団的自衛権の行使を禁じているとする政府の従来の解釈にすら明白に違反するではありませんか。また、これは、日米軍事同盟の国際化の地ならしではありませんか。御答弁を願います。
 総理は、環太平洋構想を強調しておりますが、この対象国はどこどこですか。韓国、中国も入りますか。それは、アメリカへの協調を第一義とするわが国政府としては、結局、太平洋沿岸諸国の単なる政治的経済的連帯の強化にとどまらず、軍事的提携と同盟を目指すものにならざるを得ないのではありませんか。そうでないと言うのなら、その歯どめの根拠をお示し願いたいと思うのであります。
 わが国のとるべき太平洋政策の根本は、特定国を仮想敵として軍事ブロック網をつくり、冷戦構造を強めるという方向でなく、平等互恵、平和と繁栄の太平洋地域にするということでなくてはならぬと思いますが、いかがでしょうか。
 また、今日の軍事ブロック網は、同時に核兵器の拡散ブロックであります。わが国もアメリカの核のかさのもとに置かれております。政府は、一貫して核兵器全面禁止を拒否しているアメリカに対する追従をやめ、国会決議の精神に立って、非核三原則の国内での法制化とともに、さらにその国際化、すなわち、世界の平和の公理として、世界のあらゆる地域に非核三原則を広げる運動の先頭に立って、国連に決議案でも上程するくらいの積極的姿勢をとったらどうですか。御所見を求めるものであります。
 なお、昨日、自民党の代表がここで混乱したマルクス・レーニン主義論議を長々と展開しておるので、一言触れます。
 日本共産党は、マルクス・レーニン主義という呼称はとらず、科学的社会主義と言っておりますが、これは言葉だけの問題でなく、過去の教条に機械的に縛られず、新しい現実に適切な対応をして、社会の合理的発展を図るという立場にあるからであります。自民党代表は、中国、ソ連の指導者の言論なるものをいろいろ紹介いたしましたが、わが党は自主独立の党でありまして、何らこれらの言論に拘束されるものでないことは当然であります。逆に、たとえば毛沢東の「鉄砲から政権が生まれる」というあの唯武器論なるものの日本への輸入に十数年来一貫してわが党は反対しているものであります。また、フルシチョフらのわが党への干渉に対しても断固批判を行ってまいりました。干渉もしない、干渉もされない、自主性の尊重、正しい国際連帯、わが党がこの原則的立場から一貫して対処していることはきわめて明瞭であります。
 なお、自民党代表は、「恐るべき惨害をもたらした第二次世界戦争」云々と言われましたが、日本人三百万人の命を奪い、近隣諸国にも二千万人に及ぶ犠牲を与えたこの無謀な戦争に日本を投げ込んだのは何であったか。それは恐るべき偏見に満ちた日独伊防共協定だったことを論者は反省すべきであります。
 次に、内政問題について、衆議院でのわが党代表の質問との重複を避けてお聞きいたします。
 政府演説を聞いても明日に希望が持てないという多くの声があることをまず御留意いただきたい。
 総理は、一九八〇年代を論じつつ、わが国が過去において「すぐれた対応力」を示し、諸外国にも誇り得る成果をおさめることができたなど、全体としては自民党政府の七〇年代への対応を自賛しておられます。
 ところが、去る総選挙で国民が大平内閣に厳しい批判を示したのは、自民党政治への根強い不信からでありました。一般消費税への批判があのように盛り上がったのは、その根底には根強い生活不安があり、これ以上の生活破壊を断固拒否するという空気があったのであります。
 一国の経済政策をどう評価するかは、国民生活の安定いかん、これがその最大の基準でなくてはならぬと私は考えるものでありますが、総理はこの点ではどうお考えか、承りたいと思うのであります。
 この立場から国際比較を見ますると、総理の言う「豊かな生活」は色あせたものになります。たとえばGNPを生計費指数で調整した一人当たりの購買力では、日本は東京サミット参加国中最低であります。政府はしばしば「福祉は欧米並み」と言っておりますが、社会保障費の国民所得に対する割合は、ヨーロッパ諸国の四割から六割にすぎないのが実態であります。住宅、下水道などの劣悪さに至っては、国際的に有名であります。
 こうした国民生活の状況に対して、日本の大企業のもうけは確かに大きくなりました。この期間、三井、三菱など六大グループの総資産は三倍になりました。世界的大企業の数はアメリカに次いで第二位であります。大企業の資本と利潤の太り方において総理の「上でき」論は確かに当たっております。
 しかし、こうした顕著な不公正の拡大こそ、高度成長政策がもたらした害悪であります。総理の日本経済論は、このととへの反省を欠いていると思いますが、いかがでありましょうか。
 総理は、八〇年代論として、技術革新、経済構造の改革、脱石油、日本型福祉社会、政治と行政の公正化を挙げられました。確かに、技術革新は進むでしょう。世界に冠たる大企業の競争力は強まるでしょう。減量経営は徹底されるでしょう。しかし、経済の全体から言えば、七〇年代から続いている特徴がどのように変化するでありましょうか。異常な労働強化、先進国内で依然として低い水準の賃金、中小企業の倒産の記録的進行、農村の引き続く衰退、高い家賃と狭い住宅、物価高と低福祉、これらに対する大多数の国民の不満の声は、高まりこそすれ、決して減ることはないだろうと言わざるを得ないのであります。そうして、八〇年代の日本は、七〇年代に続きまして日米軍事同盟の強化による対米従属、金権・腐敗政治、大企業本位の経済政策、財政赤字による国民の負担の増加、「聖域」とされている軍事費の増大、食糧、エネルギーの自給率の引き続く低下、こういう状態などが引き続くでありましょう。
 日本型福祉社会とか田園都市構想とかの美名は、こういう現実を覆うバラ色のむなしいスローガンとしか響かないのであります。政治と行政の公正化の約束も、全く信用できないということは、多くの国民が多くの実績から痛感しているところではありませんか。
 それだけではなく、こうした政治が必然的にもたらす支配基盤の弱まりを、四割の得票で八割の議席を占める、日本型ファシズムと言われる小選挙区制に求める策動が引き続き続けられようとしております。国民にとっては、そうした八〇年代は陰惨だと言わざるを得ないのは残念です。総理、そうでない方向への根本的な転換が保障されるなら、その道をお示し願いたいと思うのであります。
 しかし、私は、日本国民の英知と勤勉さを国民本位の政治経済路線のもとに結集するならば、今日の日本の経済力をもってすれば、十分明るい希望に満ちた八〇年代を建設するととは可能であると考えます。
 それは、少数者に富が集中し、少数の独占資本、大企業本位になっている現在の経済の仕組みを、財政、税制、金融を含めて徹底的に国民本位に改め、大企業の横暴を抑えて経済民主主義を貫くことであります。経済再建のさしあたっての二つの柱として、国民の購買力をふやすことと、特に生活密着型中心の公共投資をふやすことに置くべきであります。産業基盤一・五、生活基盤一という現在の公共投資の比率を逆にする、同時にそれによって着実な経済成長は可能です。インフレ、不況の同時進行がますます懸念されている今日、国民生活防衛と社会資本の充実という二つの柱をともに進めることが重大となっていると考えますが、総理の所見を求めます。
 さらに、民主的な行政改革によって安い効率的な政府をつくり、不要不急の膨大な軍事費、弾圧費、大企業への膨大な補助金等を整理して赤字財政を解決し、財政再建の道を開くべきであります。それによって、年金を初め、社会保障と福祉をヨーロッパ並みに近づけなければなりません。また、エネルギー産業の大企業は国有化し、エネルギー自給率を高め、さらに主要農産物の価格を保障して、減反の強制はやめ、農業自給率を高める必要があります。
 そうして、老人や子供の世話が結局現在では主婦の負担に任されている状況を軽視せず、保育所も足りないといった状況などを改めて、女性の社会的進出、真の男女同権を保障しなければなりません。一機百億円もするF15戦闘機一機分で、保育園二百カ所、高校二十校ができるのであります。
 これらは、わが党が「日本経済への提言」の中でも詳細な数字で裏づけている展望であります。
 総理、発想の転換をすればこのような展望は可能であるとお考えになりませんか、お尋ねする次第であります。
 歴代の政府は次々に経済計画を発表してまいりましたが、社会保障拡充の長期計画がないというのが特徴であります。総理、社会保障長期計画を含む国民生活安定の年次計画を策定したらいかがですか。お聞きしたいと思うのであります。
 次に、予算についてでありますが、わが党は、来年度政府予算についてはすでに組み替え案を発表して、政府にも申し入れました。それは、現在の予算規模でも国民生活防衛と財政再建を両立させることが可能であるということを明らかにしたつもりであります。詳細に触れる余裕はありませんが、国債発行額を政府案よりもさらに一兆円減らし、所得税減税を行い、老齢福祉年金を当面二万五千円に、年度内に三万円に引き上げるなどの福祉の充実、雇用対策、四十人学級十二カ年計画の五カ年計画への短縮、農林漁業の再建、地方財政の確立などにも予算をしかるべき額で振り向けることができます。
 政府の予算案は、残念ながら財政再建も国民生活防衛もともに果たし得ないというのがわれわれの判断であります。政府は予算案の修正に耳を傾ける気があるのかどうか、この点をお伺いしたいと思うのであります。
 次は、物価問題です。
 電気料金の値上げ申請問題が非常な衝撃を起こしておりますが、この申請の内容には重大な問題点があります。
 まず、燃料費の大幅水増しの疑いであります。東京電力につきましてのわが党の試算によりますと、原油、重油価格で二千七百億円、ナフサ、LNGで二千億円の水増しがあり、これを取り除くだけで二〇%以上引き下げることができます。
 減価償却費も新しい方式を取り入れてこれを機会に過大に見積もっています。また、九電力全体で一兆円以上に達する内部留保がありますが、これを適正に取り崩せば国民の負担はそれだけ軽減されるのであります。
 大企業本位の料金体系の是正も重要であります。東京電力で見ますると、現在、家庭用料金は大口電力料金より一キロワット時当たり八円八十九銭高くなっておりますが、改定後は十二円二十九銭と格差が一層開くことになっております。
 以上のような実態に厳しくメスを入れ、値上げを最大限に抑えることが政治の責任であります。ガス料金についても同様です。あわせて御答弁を願います。
 石油製品についても多くの問題点があります。私は、ここでは、一般家庭や農漁業用、中小企業用の製品価格、これと大企業向けのC重油等の製品価格との関係で、国民が使っているものが割り高になっている大企業本位の傾斜価格について検討を求めるものであります。現在、灯油とC重油の価格格差は、卸売物価で一キロリットル当たり二万余円になっております。しかし、各種石油製品は原油の蒸留過程で生産される一連の製品であることから連産品と呼ばれており、灯油が重油より高くなるという技術的、経済的な根拠のないものです。このことは石油産業自体も専門書の中で言っております。すなわち、「製品別原価を個別に計算することはきわめて困難」であり、「原理的にはどのような価格でも差し支えない」と明記しているわけであります。したがって、今日の大企業本位の価格体系を是正することは、原価を損なうことなく十分可能であります。わが党の試算によりますと、灯油価格を十八リットル当たり三百円値下げするには、C重油を八十七円引き上げれば可能であります。政府の所見を求めます。
 次に、社会保障に関連して障害者の問題をお聞きいたします。
 来年は、国際障害者年であります。国連は、障害者の「社会への全面参加」を中心スローガンに、世界各国に障害者のための諸施策の計画的推進を呼びかけております。政府は、速やかに障害者の生存権、教育権の保障を柱とする具体的目標を障害者自身の参加のもとで企画して実行すべきであります。総理の御答弁を求めます。
 このような施策の一つとして、障害者のための共同作業所への政府の助成の問題があります。
 共同作業所は、重度障害者の労働の場と社会復帰への道を保障する住民運動として全国に広がっておりますが、政府の助成はなお関係自治体よりもはるかに少ない、しかも対象が限定されている。非常に不十分であります。助成の金額、助成対象をさらに広げ、財政難に陥っている共同作業所を援助するよう強く求めるものであります。御答弁を願います。
 最後に、政権構想の問題であります。
 総理は、衆議院の答弁の中で、野党の政権構想論議に触れて自民党を大いに自賛されました。しかし、朝日新聞のことしに入ってからの世論調査を見ましても、いまの政治への不満を挙げた人は六一%以上あるのであります。この二十年間の自民党の歴史的退潮から見ても、いずれ自民党が過半数を割る時期は避けがたいというのが政治的常識となっております。
 自民党の願望いかんにかかわらずそうした時期が来たときには、潔く政権を投げ出すのか、それとも、自民党と基本路線で共通ないし近い政策を持つ他の政党の入閣を求めて、あくまで自民党路線の基本を守り抜くおつもりなのか、この点をお聞きしたいと思うのであります。
 しかし、いずれにせよ、こうした従来の路線での政権構想では、わが国の複雑な困難を国民本位に根本的に解決することは絶対不可能であります。真に革新の目標を堅持して広範な国民を結集する革新統一戦線をつくり、その上に立つ民主連合政府こそが日本を救うものであります。日本共産党はそのために全力を尽くすことを最後に強調して、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(大平正芳君) 宮本委員長の最初の御質問は、日本政府の国際情勢に対する主体的対応についてのお尋ねでございました。
 わが国といたしましては、すべての国が相互信頼に基づきまして、相対立することなく、その安全と繁栄を追求できるような世界が実現することを理想と考えております。しかしながら、外交は世界の現状を踏まえて現実的な政策として実施されねばならないとも考えております。
 政府といたしましては、日米友好を基軸といたしまして、世界の平和と国際経済秩序の安定に積極的に貢献してまいる考えであって、国際社会の緊張と不安定要因の除去のため主体的に対応し、わが国の国際的責任と役割りを果たしてまいりたいと考えております。
 第二の御質問は、対米関係を第一義とする理由いかんということでございました。
 日米間は、政治信条を共通にいたしておりまするし、経済的には大変濃密な相互関係にございます。その上に、日米安保体制はわが国の安全と繁栄にとって不可欠の要件となっておるからでございます。
 次の御質問は、ベトナム戦争並びにベトナム援助についてのお尋ねでございました。
 ベトナムをめぐる米国の政策は所期の目的を達成することができなかったが、わが国は米国の意図するところに理解を示したことは事実であります。
 わが国の対越援助とアフガン情勢とは直接関連づける考えはございません。
 それからさらに、ソ連のアフガンからの撤兵を要求するにとどまらず、ゲリラ訓練、養成などアフガンヘの一切の外部勢力の介入停止を要求すべきだ、そういう間接侵略的介入を黙認しての周辺諸国への援助は大義名分に反するではないかというお尋ねでございました。
 アフガン国内におきまして抵抗運動が続けられておりますけれども、これに対して外国よりの介入が行われておるとは私はまだ承知いたしておりません。わが国といたしましては、パキスタンを初め周辺諸国の安定を維持するため、それらの国の要請に応じまして、欧米諸国と協調して民生と経済の安定に資する協力については検討してまいる考えであります。
 園田君の中東派遣についてのお尋ねでございました。
 園田前外務大臣を中近東へ特使として派遣しようといたしますのは、最近の中東、南西アジア情勢を踏まえまして、関係諸国要人と中東和平、エネルギー問題等、国際政治経済に重大な影響を及ぼす諸問題をめぐって意見の交換を行い、さらに、わが国と中近東諸国との相互理解を深めようとするものにほかなりません。
 ブラウン国防長官は、スイング戦略を日本政府は了承済みと述べておるが、それは事実かということでございます。
 昨年十月ブラウン長官が訪日した際、日本政府に対しまして今般の国防報告に述べられておるような趣旨の説明がありましたことは事実でございますけれども、本件は日本政府として了承するとかしないとかという性質の問題ではないと心得ております。
 受動的対応から主体的対応へと言っておるのは、結局アメリカへの追従ということになるのではないかという御懸念でございます。
 わが国といたしましては、その国際的地位にふさわしい役割りと責任を果たす上におきまして、米国との友好関係を維持していくことはわが国の外交の基軸でありまして、わが国として主体的にこれを選択いたしたことでございます。これを追随というのは当たらないと考えております。
 リムパック参加につきましてのお尋ねでございました。
 リムパックの共同訓練への自衛隊の参加は戦術技量の向上を図るのが目的でございまして、これまで毎年実施されましたハワイ派遣の延長として米国との共同訓練を念頭に置いて実施することにしたものでございまして、憲法に抵触したり、日米軍事同盟の地ならしというようなものでは毛頭ございません。
 リムパック参加に当たりまして、防衛庁は、主催国でございまする米国に確認をいたしておりますが、この訓練は集団的自衛権の行使を前提として特定の国を防衛するというようなものではなく、単なる戦術技術の向上を図るためのものであるという説明を受けておるわけでございます。
 環太平洋構想についてのお尋ねでございました。
 環太平洋連帯構想というのは、太平洋地域諸国の協力関係を促進する方途について研究を始めたばかりのものでございまして、まだ十分固まったものではございません。しかし、私は、この構想といたしましては、経済と文化の領域におきまして関心を有するすべての国による開かれた連帯を目指すべきものと考えております。したがって、いかなる意味におきましても軍事同盟といったようなものを目指すものであってはならないと考えております。
 次に、わが国の太平洋政策の根本についてのお尋ねでございました。
 わが国の平和と繁栄は、太平洋地域を初め世界全体の平和と安定なくしては成り立たないものと心得ております。政府といたしましては、今後とも太平洋地域の平和と繁栄を達成するため積極的に貢献してまいらなければならぬと考えております。
 環太平洋連帯構想は、経済、文化面における太平洋地域諸国間の協力関係の促進を目的とする開かれた連帯を目指すものでございまして、それを通じて同地域の平和と繁栄に資することになるのではないかと考えております。
 非核三原則の法制化とその国際的なPRについてのお尋ねでございました。
 非核三原則につきましては、これまで国会におけるもろもろの決議により国会の意思も明確にされておりまして、これを改めて法制化する等の措置をとる必要はないと考えております。
 また、かかる原則は国連等の国際場裏におきましても表明いたしておるところであり、それなりに各国の理解は得られておるものと考えております。
 委員長は、次に、七〇年代の政治、経済政策の運営について重大な反省が必要でないかということでございました。七〇年代の実績をどのように評価するか、私の考えは余りに楽観に過ぎるのではないかという御指摘でございました。
 私は、七〇年代は大変試練の多かった時代であると思っております。ドル危機を初めといたしまして、たび重なる石油危機に逢着いたしまして大変な困難を味わったわけでございますけれども、わが国民の技術力、経営力はこれに耐えて他の諸国に劣らないりっぱな対応ができたことはありがたかったと思っておるわけでございます。
 石油の価格は十三、四倍に上がりましたけれども、去年の十一月末の卸売物価水準は十年前に比較いたしまして一・八倍のところに抑えております。消費者物価は二・三倍の水準に抑えることに成功いたしております。その間、われわれの所得は三倍を超えておると思うのでありまして、実質所得は相当改善の跡が見られると思うのでございまして、国民生活にそういう成果を上げ得たことはそれなりに評価されてしかるべきでないかと私は考えております。
 しかしながら、一方、企業の体質でございますけれども、いろいろの調査を見てみますと、自己資本力は不足をいたしております。たな卸し資産なるものの増加率は漸減いたしておりまするし、売り上げに対する人件費率はだんだん増高いたしておりまするし、企業の体質は必ずしも私は顕著な改善を見ておるとは言えないのでございます。さらに、財政はこの危機を克服するために犠牲になった関係もございまして公債に大きく依存しておるということは仰せのように大きく反省しなければならぬことであろうと考えておりまして、こういったことを反省しながら、八〇年代、これは恐らく大変な国際化時代に突入すると思いまするし、どういう困難、どういう試練に際会するとも限りませんけれども、われわれといたしましては、七〇年代を乗り越えた活力、英知、技術をもちましてこれに対応してまいりますならば、委員長も仰せになるように、明るい展望を開くことが必ずしも不可能でないと私は考えております。
 経済政策の運営についてお尋ねでございまして、国民生活の防衛と社会資本の充実の二つの柱を基本にして経済政策の運営に当たる必要があるのではないかということでございます。
 私も、国民生活の向上、社会資本の充実は、確かに経済政策運営の二つの大きな道標でなければならぬと考えております。政府も、国民の所得水準の着実な向上を図っていくために、まず完全雇用の達成と物価の安定を図らなければならぬと考えております。今後各般の施策を積極的にその方向に推進してまいる考えでございます。
 公共投資につきましても、新経済社会七カ年計画におきましては生活環境部門に対しまして従来の計画を上回る三割を超える投資を見込んでおるわけでございます。交通、通信、国土保全等の部門におきましても国民生活上密着した施設が多くございます。全体として国民生活に直接関係の深い分野への投資に焦点を置いた社会資本の充実を一層進めていかなければならぬと考えております。
 さらに、委員長は、行政、財政、産業、農業、福祉、教育等の観点から、日本共産党の「日本経済への提言」でお示しになっておられるように、発想の転換を主張されたのでございます。
 われわれは、まず行政改革を通じまして簡素で効率的な政府を目指して不断の努力をし、財政につきましては、公債依存にわたる体質を改めまして、その再建をなし遂げねばならぬと考えておりまして、産業構造、生活様式の転換を進めるとともに、農業におきまして、食糧自給率の向上を鋭意進めてまいらなければならぬと考えておりまして、一方、福祉の面におきましては、高齢者への年金や医療に関する制度の整備、婦人の就業条件の改善、児童に対する教育条件の改善等に配慮をいたしまして、個性と創造力を伸ばす環境をつくらなければならぬと考えておりまして、そういった方向でわが国としては国民のすぐれた創意と工夫を生かしながら経済の発展に貢献していかなければならぬと考えております。
 社会保障長期計画についてのお尋ねでございました。
 本格的な高齢化社会の到来を控えまして、社会保障の長期的観点に立ちました施策が必要であることは御指摘のとおりでございまして、経済社会七カ年計画におきましても目指すべき福祉水準を示しておりますことは御承知のとおりであります。御質問のように、国民生活の安定に関して数量的、年次的に計画を作成することは、個別的な制度のあり方などにかかわるので現状では困難でありまするけれども、七カ年計画に示した水準の実現に私は努力したいものと考えております。
 予算案を組み替える意思はないかということでございます。
 政府としては、せっかく野党各党の御意見も伺いながらつくり上げた苦心の作でございまして、修正する意図は毛頭ございません。
 電力料金、ガス料金につきまして、委員長の仰せになる水増しとか減価償却がどこから出てくるのか、根拠が私にはよく理解できないのでございます。
 私は、電力会社の内部留保は、前回の値上げ以来の燃料費等の増高によりまして底をたたいているように聞いておるわけでございますが、いずれにいたしましても、この値上げ申請につきましては、経営の徹底した合理化を前提といたしまして、原価主義の原則に立ちまして、物価、国民生活への影響を十分考慮しながら、厳正かつ慎重に対処してまいるつもりでございます。
 石油製品に対する価格政策についてのお尋ねでございました。
 これは、たびたびお話を申し上げてかみ合わないところでございますけれども、私どもは、基本的には市場の中で適正に価格形成がなされることが一番いい価格政策だと考えておるわけでございます。石油製品需給に悪影響を与えるような不自然な価格介入は避けるべきであると考えておるわけでございます。通産大臣からも御説明申し上げておりますとおり、石油製品の需給はバランスがとれておるわけでございますし、在庫も十分でございますので、便乗値上げを監視することによりまして価格の安定を確保し得るものと考えておるわけでございます。
 国際障害年についてのお尋ねでございました。
 このテーマは、「十分な参加と平等」とうたわれておるわけでございますが、その理念に沿いまして、実現すべき具体的な目標につき、国連総会の決議を踏まえて、福祉、教育、雇用等各般にわたりまして障害者の参加を得ながら検討を進め、今後の施策の推進に努めてまいりたいと思います。
 最後に、政権構想についてのお話がございました。
 わが党といたしましては、政権政党といたしまして国民から負荷された重い責任をみずからの力で果たしていかなければならぬと考えております。(拍手)
   〔国務大臣野呂恭一君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(野呂恭一君) お答え申し上げます。
 障害者の授産施設の助成についてでございます。
 障害者の授産施設は、一定の構造設備及び専門職員が確保されているものを対象として運営費について法律に基づいて補助がなされておるわけでございまして、障害者が授産施設に通う形で授産事業を行う施設のうちには、利用人員が少ないというために正規の施設として認可を受けられないものがあるのではないかと思います。したがいまして、これらの施設に対して正規の施設と同様に補助が行い得るようにいたしたいと思いますが、なかなか今日の情勢におきましては大変むずかしい問題があろうかと思いますが、できるだけ認可施設となり得るように指導いたしまして、その対象範囲も広げてまいりたいと考えております。(拍手)
#14
○議長(安井謙君) これにて午後一時まで休憩いたします。
   午後零時七分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時七分開議
#15
○副議長(秋山長造君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。国務大臣の演説に対する質疑を続けます。田渕哲也君。
   〔田渕哲也君登壇、拍手〕
#16
○田渕哲也君 一九八〇年代は、前途の多難を予測させる難問続出の中でその幕をあけました。私は、困難な八〇年代に対処する政府の所信について、民社党を代表して質問いたします。
 まず第一は、外交問題についてであります。
 八〇年代の国際情勢で注意すべき点は、いままでわが国の平和と繁栄を支えてきた基本的な条件が変化しようとしていることであります。
 その一つは、パックスアメリカーナ、すなわちアメリカによる平和の後退により、軍事面はもとより、政治面、経済面でもアメリカに頼るととができたいままでの状況が大きく変化しつつあることであります。
 もう一つは、自由、無差別を原則とした戦後の国際経済体制が崩壊しつつあることであります。
 このような状況の中では、いままでのような受け身の対米追随の外交から脱皮し、世界の平和と国際経済の安定のための新しい秩序づくわにわが国が主体的、積極的な役割りを果たしていくことがきわめて肝要になってまいります。
 大平総理は、施政方針演説の中で、わが国の国際的地位にふさわしい役割りと責任を果たす、さらには、国際問題に対する受動的な対応から主体的なそれへの脱皮が必要と述べられておりますが、私も全く同感であります。しかし、言葉だけでそのような外交が実現できるものではありません。主体性を説かれ、犠牲を覚悟の対ソ措置の表明をされた演説原稿そのものも、国際情勢の変化に直前まで揺れ動き、結局はどろなわ式に決められたと聞いております。
 また、現に対ソ、対イランなどで政府がとっている態度は、他国追随以外の何物でもないではありませんか。
 私は、主体的な積極外交を唱えられるならば、その前提として次の三つのことが不可欠だと思うのであります。
 まず第一は、外交についての理念と原則を確立し、行動の規範を明らかにすることであります。そのことにより、国際的な事件や情勢への評価、価値判断が明確になり、また機敏な反応が可能になると思います。わが国の政府責任者が、外交姿勢があいまいだと受け取られるような発言をしたり、また、アメリカが対イラン経済制裁で苦悩しているさなかにイラン原油を買いあさるという無原則な行動は、以上のことの欠如から起こるのではないでしょうか。
 第二の問題は、外交政策の現実的対応は決して情緒的であってはならず、冷徹な計算に基づくものでなければならないということであります。しかし、そのためには十分な情報の収集、管理能力を持つことが必要であり、また、外交行動によって生ずるかもしれないリアクションに対応し得る体制を防衛、経済両面において備えていることが不可欠であります。
 第三は、外交政策についての国民合意の形成が重要であり、そのための政治のリーダーシップを発揮することであります。
 しかし、ここに指摘した三つの事項は、いずれも現在のわが国には欠けていることばかりではないでしょうか。このような状態では、せっかくの総理の方針も単なる言葉だけで終わってしまうでありましょう。総理は、この点についてどのように考えられるのか、また、今後これらについてどのような具体的対策を立てられるのか、お伺いをいたします。
 次に、具体的な問題として、アフガニスタン侵攻に関連してのソ連に対する具体的措置についてであります。
 憲法に定めるごとく、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」するわが国にとって、国際世論を無視し、国連決議を無力化するソ連の行動は、断じて見過ごすことはできません。これを放置することは、わが国の平和主義のよって立つ基盤の空洞化にもつながる重大な問題であります。したがって、対ソ制裁については、可能な限りの協力体制をとるべきであります。総理は、犠牲もあえて避けないという強い意思を表明されましたが、具体的にどのような行動をとるのか。不快感の表明にとどめるのか、制裁に加わるのか。少なくとも、いままでのところは、国内的に影響のない措置だけを選んで様子見をしていると思われるのでありますけれども、いかがでしょうか。
 現在のところ、アメリカの最大の対ソ経済制裁は穀物の輸出削減でありますが、これはアメリカ自体も大きな不利益を覚悟しなければなりません。わが国がその削減分を購入することについてはどのように考えておられますか。
 また、政策構想フォーラムが外為会計を利用してのその全量購入を提言しておりますが、すでに戦略資源と化しつつある食糧の安全保障備蓄としても、あるいはパキスタン等の難民救済用としても、大きな意義があると思いますが、いかがですか。
 さらに、モスクワ・オリンピックについては、スポーツを政治に利用する、すなわち制裁の手段とするということではなくて、平和主義の国是に立脚したわが国の行動規範として、侵略当事国での開催には参加しない方針を自主的にとるべきだと思いますが、いかがお考えですか。
 次に、対イラン措置についてであります。
 イランの人質事件は、国際ルール違反であり、また人道的にも容認すべきではありません。しかし、わが国はアメリカ、イラン双方と重要な関係を持ち、米イ両国関係の正常化がわが国の国益に合致するとするならば、イランの不法行為をやめさせ、米・イラン関係の改善を図るための積極的な行動をわが国としてとるべきだと思いますが、政府はこれについてどのような具体策を持っているのか、お伺いいたします。
 次に、ブラウン米国防長官の八一会計年度国防報告に関連して質問をいたします。
 この中で、日本及びその周辺の米軍事力を必要な場合にヨーロッパその他の地域に振り向けるいわゆるスイング戦略について触れ、すでに日本政府に説明済みと述べておりますが、これについて政府はどのように考えておられるか。
 また、在日米軍がわが国防衛と関係のない他国の紛争へ出動する場合は事前協議の対象となります。しかし、いままでしばしばそれが無視されてきました。今後一層厳重な事前協議が必要と思いますが、いかがですか。
 また、これは、アジアにおける有事の際、日米安保条約が有効に機能しなくなるおそれがあると思いますが、いかがですか。
 さらに、それに関連して、アジアにおける米軍事力の肩がわりとしてわが国防衛力の増強の要請が強まると思います。国防報告の中で、アメリカ、ヨーロッパ、日本の三者の軍事力増強についての共同計画努力の必要性を強調しておりますが、これはそれを裏づけるものであります。これについて政府はどのように対応するのか、質問いたします。
 第二の問題は、財政再建についてであります。
 ことしは財政再建元年だとかイブだとか言われておりますが、五十五年度予算案を見るとき、四兆五千億円もの税収の自然増に助けられて、辛うじて一兆円の国債発行の減額ができたにすぎず、とても財政再建の一歩と言えるものではありません。現在、財政に問われているのは、単なる収支のつじつま合わせではありません。それは財政改革であり、行政改革なのであります。ところが、政府は、財政改革や行政改革にどのような思想を持ち、どのような展望を持って取り組もうとしているのか、全く明らかではありません。まず、この点について政府の考え方を示していただきたいのであります。
 次に、順を追って具体的課題につき質問をいたしたいと思います。
 まず初めに、財政改革と密接な関係にあり、その重要な部分を占める行政改革についてであります。
 第一次石油ショック以降、民間においては企業は血のにじむような合理化努力、減量経営を余儀なくされ、家計においては子供の教育費、食費まで切り詰め、骨身を削る思いで生活防衛を図り、不況と低成長への適応を図ってまいりました。
 ところが、国民の税金で賄われる官公部門は、高度成長下のふくれ上がった機構をそのまま持ち続け、加えてカラ出張、ヤミ給与など、不正経理による公費乱費の体質が今日に至るまで温存されてきたことは、まさに驚きであります。
 行政改革の意味は、このようなアンバランスをなくし、公的部門においても民間同様の努力を行い、官民ひとしく低成長時代に適応するわが国の体制を築くことにあります。ところが、政府が現在進めようとしている行政改革は、官僚任せの数字合わせに終始しており、きわめて不十分、不徹底、とても改革の名に値するものではありません。これでは増税を国民に押しつけるための前提として申しわけ的に行っていると言っても過言ではありません。
 民社党の主張するごとく、まず第一に地方出先機関は現業部門を除き廃止すること、第二に特殊法人は半分に減らすことを目標としてまず二割を削減すること、第三に公務員の定数削減について長期計画を樹立すること、第四に補助金は統合や時限化を図りまず総額の一割を削減すること、などの思い切った目標設定を行い、そしてその実行に着手すべきであると思いますが、いかがですか。
 次に、三K、すなわち国鉄、健保、米の赤字問題についてであります。
 これは、財政の赤字要因としては最大のものであるだけでなく、資源の最適配分、所得移転の合理性、政策効果などから見て現状に合わなくなり、改革を要するものばかりであります。三Kの赤字の改革についての展望を欠いた財政再建はナンセンスと言えましょう。政府のこれについての考え方を明らかにしていただきたいのであります。
 さらに、福祉の問題については、財政再建のためには福祉も聖域ではなく、限られた財源の中でいかに福祉を実質的に充実させるかという観点から、その効率化を図るための見直しが必要なことは言うまでもありません。しかし、そのためには総合的、体系的な立場から全体の調整を図るための改革案を提示すべきであって、場当たり的な所得制限や切り捨てを打ち出したにすぎない政府のやり方は納得できません。
 また、大蔵大臣の発言から見ても、政府は五十六年度には増税を図ろうとしているように見受けられますが、私がいままで申し上げた、第一に行政改革を徹底して行うこと、第二に三K赤字についてその改善への展望を明らかにすること、第三に場当たり的な福祉切り下げでなく効率と公平を考えた体系的な福祉改革案を示すこと、これが財政再建の大前提だと思いますが、いかがですか。
 また、以上のことなくして増税を行おうとするのは、財政や行政の欠陥や矛盾にふたをして、数字合わせのための負担を国民に求めるものであり、絶対に容認できません。この点について政府の見解を求めたいと思います。
 第三の課題は、高齢化社会への対応についてであります。
 今後、わが国社会の中で高齢者の比率が急増しますが、高齢者が生きがいを感じ、その能力が発揮され、あわせて福祉の増進が実現できる社会をつくることが八〇年代のわが国の重要課題と言えましょう。総理は、昭和六十年をめどに六十歳定年を実現し、あわせて就業機会の増大を図ると述べられておりますが、依然として五十五歳定年が半数近くを占め、しかも中高年齢者の就職はきわめて困難な現状を考えると、公務員はともかく、民間部門でのその実現は決して容易ではありません。政府は具体的にどのような対策を立ててその実現を図ろうとされるのか。諸外国の例に見られるごとく、雇用差別禁止法の制定により六十歳未満の定年を禁止するなどの措置が必要と思いますが、政府の見解をお伺いいたします。
 また、今回政府が行おうとしている厚生年金の支給開始年齢の六十五歳引き上げは暴挙としか言いようがありません。
 その理由の第一は、高齢者の雇用との連結を無視して、財政上の理由から年金がひとり歩きをしていることであります。政府は、少なくとも六十五歳までの雇用確保に自信が持てるような政策を用意してからでないと、このような提案を行うべきでないと思いますが、どのように考えられますか。
 また、第二の理由は、官民の格差があることであります。官民の間で年金の支給条件、支給額などに開きがあることが種々問題となっております。本来なら、格差を縮め、なくす方向で努力すべきであるのに、公務員共済制度の改正で支給開始年齢が民間と同じ六十歳に引き上げられる方向が決まった直後に、今度は厚生年金の方を六十五歳支給に引き上げるというのは一体どういうことですか。政府は支給開始年齢について官民で五年の格差があるのを当然と考えておられるのですか。もしそうだとするならばいかなる理由によるものか、その根拠を明示していただきたい。口では高齢化社会に備えて云々と言いながら、実際にはその生活を無視し、官民の不公平を容認する、このような試みには断固として反対するものであります。
 第四に、経済運営についてであります。
 今日直面している第二次石油危機は、今後のわが国経済の進路を一層厳しくかつ不透明にしております。そして、総理も述べられたごとく、昨今の原油の大幅値上げは、その分だけわが国から産油国に所得が移転することになります。問題は、その部分の負担をできるだけ適正な形で国民が分担すること、あわせて、公的部門と民間であるとを問わず、生産性向上と合理化によってその分を埋める努力が払われなければなりません。
 特に、インフレは国民の負担のアンバランスを生み出す最大の敵であり、インフレ抑止こそ当面の経済の最大の課題とすべきでありましょう。しかし、原油の値上がりを初めとして、昨年一年間の輸入物価の上昇率は七二・八%と、第一次石油ショック直後の四十九年を抜いて史上最高となっております。また、卸売物価は一月上旬の前年比で一八%の大幅上昇となっており、その消費者物価へのはね返りが心配されております。政府の五十五年度経済見通しによれば、消費者物価の前年度比上昇率は六・四%となっておりますが、本当にこれでおさまるのかどうか、また、その自信はあるのか、お伺いをしたいと思います。
 また、地価の高騰は国民所得の不均衡を生ずる最大のものと思いますが、これに対する抜本的対策を強く望むものであります。
 次に、国際収支と貿易問題についてお尋ねいたします。
 来年度は原油値上げによる支払い増だけで三百億ドル近くに達しますが、国際収支の均衡を保つためには、それに見合って輸出をふやさねばなりません。しかし、製品別に検討してその見通しはあるのか。また、それだけの輸出をふやせば諸外国との貿易摩擦が激化することは必至でありますが、どのような対策を政府は持っているのか、明らかにしていただきたいと思います。
 以上、諸問題について質問いたしましたが、総理並びに関係大臣の明快な答弁をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(大平正芳君) 田渕さんの最初の御質問は、外交の主体的な展開に当たっては、理念と原則を確立して行動規範を明確にしなければならない、冷徹な計算に基づいた現実的対応が必要である、それから国民的合意の形成が基礎になければならぬという趣旨の御発言でございました。
 私どももお説に全く同感でございます。こういう示されたような点に十全の配慮をいたしながら、外交の展開に慎重に当たってまいらなければならぬと考えております。
 第二は、アフガニスタン問題に関連して、ソ連に対する具体的措置でございますが、これにつきましては、今朝も鈴木さんにお答えいたしたとおりでございまして、まだ具体的に申し上げられるまでには至っていないのでございます。鋭意検討いたしておるわけでございます。しかし、これは力には力をもって対抗するという意味での報復とか制裁とかいうようなものではなくて、わが国の外交が言行において一致しなければならぬという姿勢を示すものとしての対応として検討いたしておるわけでございます。
 米国の穀物の対ソ輸出削減が言明されておりますが、その削減分の購入についてどう考えるか、また、政策構想フォーラムがこの食糧の購入について緊急な提言をしておるがどうかというお尋ねでございました。
 米国は、対ソ穀物輸出停止措置の結果生じた約千七百万トンに上る穀物の処理をめぐりまして、現在国内的にも種々の措置を検討いたしておると聞いております。わが国としても、日米関係から考えまして、この問題に関して無関心ではおられません。他方、わが国には、しかしながらわが国なりの事情もございまして、こうした国内的制約と外交上の配慮の双方を勘案しながら国際的協力の方途がないものかということを検討いたしておるところでございます。
 政策構想フォーラムの提言でございますが、これは平和国家日本の世界への貢献、日米関係の強化等、多角的な目標をもって広く問題意識を喚起するためになされたものとして評価いたしております。
 次は、モスクワ・オリンピックについての対応についてのお尋ねでございました。
 たびたび申し上げておりますように、オリンピック競技会はそれ自体政府の行事ではございません。けれども、政府といたしましては、国際情勢、内外世論も踏まえまして、日本オリンピック委員会と所要の協議を行って対処していかなければならぬと考えておりまして、まだ最終結論を出すに至っておりません。
 スイング戦略についてのお尋ねでございました。
 スイング戦略というものは、一般的にある地域での緊急事態発生の際に、その地域に他の地域から米軍兵力の一部を振りかえるという考え方であると承知いたしておりますが、かかる考え方そのものは何ら新しいものではなくて、また、その振替は、東から西へということばかりでなく、西から東へということもあり得ると承知いたしております。この点につきましては、今般の国防報告においても、ブラウン長官は、アジアを差別するものではないということも明らかにしておりまするし、政府といたしましては、有事の際に日米安保条約が有効に機能しなくなるというような懸念は持っておりません。
 米国側から日本防衛力の増強が強く要請されると言うが、米日欧三者の共同計画努力というものは何を意味するかというお尋ねでございました。
 国防報告はソ連の軍事力の増強に対抗するためには米日欧の共同の計画努力が必要であると言っておりますけれども、これは日本が自主的に自衛力を整備していく場合でも、米、西欧の行っている努力、方向を念頭に置いて同じ方向でやってほしいという一般的な願望を表明したものにすぎないので、特定の具体的な努力が日本に対し求められておるものとは考えておりません。
 先般発覚をいたしましたスパイ事件でございますが、本件は現在捜査当局においてその解明が進められておるところでございます。現段階でのコメントは差し控えたいと思いますが、私といたしましては、自衛隊の規律の振粛に努めますとともに、現行の秘密保全体制の総点検を行いまして、二度とかかる不祥事件が起こらないよう万全の措置をとることが緊急の課題であると考え、防衛庁を督励していま急いでおるところでございます。私としては、まず、自衛隊の守秘義務の規定は、一般の国家公務員について規定いたしました国家公務員と同様のものであることは承知いたしておりますが、守秘義務につきましては当面これによって対処すべきものと考えております。今回の事件は国の防衛にかかわることでもありまするし、内外の不信を招きかねない不祥事件であることは御指摘のとおりでございます。私としては、自衛隊の規律を振粛いたしまして、真相の解明を急ぎ、友好国との信頼に支障を来さないように万全の措置を講じてまいるつもりでございます。
 財政再建についてのお尋ねでございました。
 これはまさに公債過剰依存体質の改善に手を染めた第一歩でございまして、決して十分のものとは考えていないのでございまするけれども、歳出の規模を抑制いたしますとともに、公債発行額を減額いたして財政再建の第一歩といたしたわけでございます。また同時に、これと並行いたしまして行政の簡素化、効率化に努めまして、定員の削減、特殊法人の統廃合、補助金の整理合理化等を含む行政改革を五十五年度以降逐次計画的にこれを実施することにいたしておるわけでございます。これを通じまして財政の対応力を八〇年代に向けて回復いたしまして、緊急のいろいろの試練に耐えるだけの体質を回復しなければならぬと考えておるわけでございます。
 行政整理につきましては、大変厳しい御注文でございました。われわれといたしましても、行政の信頼をつなぐ意味におきまして、行政の簡素化、経費の節減に努力いたしますことは政治の一番大事なことであると全力を挙げているわけでございますけれども、行政改革そのものは、田渕さんも御承知のように、なかなか言うはやすく行うはむずかしいことでございまして、五十五年行政改革というものをいま計画いたしまして着実な実行に移したわけでございまして、政府は、これは不断の政治の目標でなければならぬという意味におきまして、来年度以降もこの行政整理には鋭意努力を精力的に続けていかなければならぬと考えておるところでございます。
 補助金につきましては、たびたび申し上げておるように、五十五年度予算におきましてはその整理統合メニュー化を推進いたしまして、千六百六十七億円のかってない合理化に成功いたしたわけでございます。しかしながら、補助金等の大宗は社会保障、文教、公共事業等の重要な経費によって占められておりますので、御提案のように総額を一割削減するというようなことに実際問題としてならないことは御理解をいただきたいものと思います。
 福祉についてのお尋ねにつきましては、厚生大臣からお答えしていただくことにします。
 次に、高齢者の雇用政策についてのお尋ねでごさいました。
 政府は、第四次の雇用対策の基本計画に基づきまして、昭和六十年度までに六十歳定年を一般化させることを目標といたしております。その実現に向けて、定年延長についての労使のコンセンサスを形成してまいること、定年延長奨励金制度の積極的な活用を図る、それから高年齢責雇用率の達成指導等を通じまして雇用機会の増大に努めてまいりたいと考えております。
 現在、雇用審議会において定年延長の実効ある推進策につきまして立法化問題も含めて御審議をいただいておるところでございまして、法制化問題につきましてはその答申を待って対処をいたしたいと考えております。
 次には物価についてのお尋ねでございました。
 政府は、五十五年度中、消費者物価を六・四%の程度に抑えたいという目標を提示いたしております。これまでのところ比較的消費者物価は落ちついた動きを示しておりますけれども、いま上昇中の卸売物価がどのように影響してまいりますか、非常に注目をいたしておるところでございます。われわれは、周到な財政金融措置その他各般の物価対策を総合的に機動的に展開してまいりましてこの実現に邁進いたしたいと考え、それはできない相談ではないと考えております。
 卸売物価の動きにつきましては、生産性の上昇、経営の合理化、省エネ等の努力によりましてその吸収に努めてまいって、ことしよりは相当低目にこれを抑え込んでいきたいと考えておるところでございます。
 公共料金につきましては、まず徴底的に企業の経営合理化を求めまして、厳正な原価主義に基づく査定を通じまして、国民の生活、物価への影響等も配慮しながら、厳正かつ慎重に決めてまいろうと考えております。
 土地政策でございますが、たびたび申し上げておるように、いまの土地経済、地価の状況というものは決して投機的に走っておるとは思われないのでございます。大都市、とりわけ三大都市周辺の宅地の需給において供給不足が訴えられておるというのが本質ではないかと私は見ておるわけでございます。ここに焦点を合わして各種の土地政策を集中いたしまして対応してまいらなければならぬと考えておるわけでございまして、法的手段を講ずるというような段階であるとはまだ考えておりません。
 自余の問題は関係大臣から御答弁いたします。(拍手)
   〔国務大臣大来佐武郎君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(大来佐武郎君) 私からお答え申します第一の点は、イランの人質事件についてのお尋ねでございます。
 イランはわが国と密接な相互依存関係を有しておりまして重要な国でございますが、テヘランにおける米大使館占拠事件は国際社会の基本的秩序を侵す不法行為でございまして、人質の拘束は人道的にも容認されないところでございます。こうしたわが国の考え方は、いろいろな機会にイランの外交当局に対しても繰り返し伝達してきておるわけでございます。わが国といたしましては、米・イラン関係改善のためにも、人質が一日も早く解放され、事態が平和的に解決されることを強く希望しておるわけでございまして、今後とも解決に資するための努力を続けてまいる所存でございます。
 その次の第二の御質問は、在日米軍がわが国の国防と関係のない他国の紛争に出動いたします場合は事前協議の対象となるのではないかという御質問でございます。
 この点につきましては、日本の施設区域を使用することがある米軍が日本を離れて他の地域に移動していくことは安保条約上何らの問題のないことだということを随時御説明申し上げてきたとおりでございます。
 なお、米軍が日本の施設区域から戦闘作戦行動のため直接発進するような場合には、事前協議制度や極東の範囲に関する政府統一見解というような制約が起こってまいりますことは当然のことでございます。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(竹下登君) お答えいたします。
 五十五年度予算は、社会的経済的に見て緊要な施策につきましては重点的に配意をしながら、全体として経費の節減合理化に努めてまいりまして、歳出の伸びを極力抑制いたしますとともに、公債発行額を前年度当初予算に比べ一兆円を減額して増加傾向に明確な歯どめをかけるなど、財政再建の第一歩を踏み出したと御評価いただければ幸いであります。
 なお、いわゆる三K問題につきましては、まず国鉄再建につきましては、昨年末の基本方針に基づきまして、要員の削減、地方交通線対策等の経営合理化を徹底するほか、適時適切な運賃改定を行う等の措置を講ずることといたしております。
 次は、食管問題であります。米需給の均衡回復に資するため、米の生産調整数量を拡大し、予約限度数量の圧縮を図りますほか、米麦の政府売り渡し価格の改定、管理費の節減等を図ることといたしております。
 次に、健保問題でありますが、人口の急速な老齢化、医療の高度化の進展等に対応いたしまして、給付、負担の両面にわたり医療保険制度の基本的改革をすることとし、まずその第一段階といたしまして健保法の改正の早期実現を期待をしておるということであります。
 いずれにいたしましても、今後三K問題を含めまして経済全般にわたる節減合理化をいかにして進めていくかにつきましては、広く各界各層の意見を伺いながら十分検討していかなければならない課題である、このように考えております。
 次に、増税については、行革、三K赤字、福祉の体系的効率化等のスケジュールが明確にならない限り行うべきではない、こういう御指摘であります。
 財政再建は緊急の課題でありまして、そのため歳出歳入の両面においてあらゆる手段を幅広く検討していく必要があります。この点については、昨年十二月の税制調査会におきましても、昭和五十五年度の税制改正に関する答申をいただきました際、「従来の検討の方向及びその後の経緯を踏まえつつ、財政再建の進め方及びその中における税制のあり方についてさらに検討を続けることとする。」と、このようになされております。そしてまた、本院においても財政再建の進め方についての御決議も賜っております。そのような趣旨を踏まえまして、今後、歳出歳入を通じて財政構造の健全性を具体的にいかに進めていくかにつきまして広く各界各層の御意見を伺いながら十分に検討して御趣旨にこたえたいと、このように考えております。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
   〔国務大臣野呂恭一君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(野呂恭一君) まず、福祉政策の基本的姿勢についてでございます。
 本格的な高齢化社会を迎えまして、国民生活における社会保障の役割りは今後大変大事になってまいりますが、一方、人口の高齢化に伴いまして社会保障給付費の一層の増大が見込まれてまいります。このため、今後は各制度の有機的連携を図るなどの体系的効率化を進めるとともに、給付と負担の両面にわたって社会的公平を図っていかなければならないと考えております。このため、社会保障の主要な分野であります年金、医療につきましては、それぞれ基本的問題についての総合的な判断、検討を踏まえ、必要な改正を行うことといたしておるのでございます。また、社会保障の所得制限についても、施策の目的、効果を勘案するとともに、一般納税者との公平を確保する観点から必要な見直しを行うものでございまして、場当たり的であるという御批判は当たらないと考えております。
 次に、厚生年金の支給開始年齢の引き上げの問題についてお答え申し上げます。
 午前中もお答え申し上げておりますとおり、来年度の年金制度の改正におきましては、年金水準の引き上げ、遺族年金の改善など、大幅な給付の改善を行うことにいたしておるのであります。一方、将来の人口の老齢化や後の世代の費用の負担を考慮し、今後とも適正な年金水準を確保し、年金制度の長期的な安定を図り、二十年後の二十一世紀における年金福祉の安定した展開のために、支給開始年齢の引き上げに着手すべきであると考えております。
 しかし、御指摘の高齢者雇用との関係につきましては、特に現在の高齢者を取り巻く雇用環境などを考慮しなければなりません。したがって、今後とも年金制度と雇用政策の有機的な連携を図るために労働省とも協議をし、十分連絡をとってまいりたいと考えております。
 なお、この支給開始年齢引き上げを含め、長期的な年金制度の安定化を図るための方策について今日関係審議会に答申を求めておるわけでありまして、この審議の結果を十分に尊重し、慎重かつ柔軟な姿勢で進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
 年金の支給開始年齢の官民格差についてでございますが、年金制度は個々の制度ごとにそれぞれ沿革があることは御承知のとおりでございますが、厚生年金と共済年金をできる限り整合性のあるものにしていくことが望ましいと考えておるわけでございます。
 去る一月二十五日には公的年金制度に関する関係閣僚懇談会が開かれましたが、今後ともこの問題については政府一体となって検討を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣佐々木義武君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(佐々木義武君) 私に対する御質問は、原油価格が非常に上昇しているので国際収支はどうなるのだ、無理にまた特定品目の輸出をふやせば貿易摩擦が激化するのじゃないか、こういうお尋ねでございます。
 政府の今年度の経済見通しは、貿易収支は輸出はIMFベースで二十九兆円、輸入は二十八・二兆円で、ほぼバランスする見通しになってございます。わが国の輸出は昨年秋以来主要商品を中心に回復基調にありますので、この貿易収支はほぼ達成可能だと考えてございます。
 また、貿易摩擦の面に関しましては、通産省といたしましては、特定品目の特定地域への輸出が急増することによりまして貿易摩擦を引き起こすことのないよう従来から関係業界に対し秩序ある輸出を行うよう求めているところでございますが、今後とも国際的調和に配慮しつつ秩序ある輸出を求めていく方針でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○副議長(秋山長造君) 松本英一君。
   〔松本英一君登壇、拍手〕
#23
○松本英一君 私は、日本社会党並びに心通う同志たちを代表して、大平内閣の政治における基本姿勢と、それに関連する社会福祉並びに人権と差別及び公共投資の問題にしぼって質問を展開いたします。
 言論の自由と三権分立とが保障されている民主国家の財政と予算とは、本来、国民生活、言いかえれば、生命と財産を守り、企業の防衛、経済の民主的安定的発展に寄与することがそのあるべき姿でなければならないと思います。
 六〇年代から七〇年代にかけて累積してきた政治、経済、社会のひずみは、国民の全くあずかり知らないところで行われた悪政を、国債の乱発によるものとして、短絡的に財政再建によって八〇年代を切り抜け得るとして、この赤字国債の解消を図るため、その財源として、総理、あなたが打ち出したものは、一億全国民に情け容赦もなく無差別に徴収する一律税、すなわち人頭税よりも悪質な一般消費税であったのです。賢明な国民は、あなたの言い分に共鳴、協力するはずはないのです。それは総選挙の結果によって歴然と証明されました。ならば、一般消費税導入による赤字国債減額ができなくなった今日、それを他の財源に求めるとすれば、歳出の思い切った削減、つまり行財政整理以外にないのです。これが、この予算案では、まことに不徹底きわまるものに終わっております。
 総理、一般国民のあなたに対する警戒と危倶の目は、一般消費税の導入を今年度は断念したが、来年度には再び国民生活を直撃するものと見通しているのです。そればかりではありません。たばこ、郵便料金、国鉄、米、麦等々軒並みになし崩し的に値上げが予定されていますが、これは実質的に値上げによって先取りをしつつ一般消費税導入の免疫効果をねらったものと一般国民は政府よりもその先を読んでいるのです。政府についての不信感を持つに至ったのは、政府が、政治が、国民を裏切り、だまし続けてきたためであります。
 イラン革命勃発によって石油危機の洗礼を受ける過程で、国民生活は言うに及ばず、企業の防衛に腐心しながらも、セメント、鋼材などの高騰が、建設関係資材、労務費や土地の値上がりに連鎖反応を呼び、それが回り回って庶民のささやかな夢であるマイホームづくりを直撃し、国民生活を脅かすというマイナス効果の方が強く出ているのです。政治変革待望論がささやかれるゆえんも、むべなるかな、ここにあるのです。
 さきの総選挙中から、内部告発によって、官僚機構の守秘の厚い壁を一気にぶち破って、国民の目の前に露呈した綱紀紊乱の宿弊、すなわち国民の目に余るような税金のむだ遣い、特殊法人の不法・違法・不正行為が一向に改まらない一方で、弱い者いじめを思い出させるような負担増を国民に一方的に求める無神経ぶりでは、国民の理解と協力を得ることは不可能なのです。政治、行政に対する国民の不信を一掃するためには、心情的になるほどと国民の共感、共鳴を得るような、誠意があり、かつ謙虚さ、側隠の情を呼び覚ますものでなければなりません。その早道は、一般国民は言うに及ぼす、野党、産業経済界が打って一丸となって大合唱している行財政構造の改革による歳出圧縮を徹底的に断行する勇気を持つことです。大臣の明確な御答弁を願います。
 総理は、施政方針演説の中で日本型福祉社会の実現を強調されました。国民の多くは、大平内閣が発足以来主張している日本型福祉社会とは、しょせん福祉の切り捨てのことであると受け取っているのです。
 乳幼児の保育について、政府・与党の基本構想には、家計が成り立っているのに乳幼児を保育所に預けて働きに出ている母親のあることを問題にし、さらには、保育所が親の育児放棄の道具にされるなどとの偏見をうたっているのです。こうした考え方は、今日における婦人の問題や家庭の問題を心から思うならば、有害でこそあれ、無益なものです。
 また、日経連調査の官民生涯賃金の比較によると、大学卒五十五歳退職者の場合、国家公務員の生涯賃金は、民間サラリーマンより八・六%高いのです。また、年金の支給開始年齢でも、民間は六十歳、公務員は五十五歳と、これまで五年の格差があるばかりか、支給金額、手取りなどについても官民の間にはなはだしい不当な格差があるのです。その是正の第一歩として公務員の支給開始年齢を民間並みに六十歳に引き上げることになった途端、民間サラリーマンのそれは六十歳から六十五歳に改悪するというようなことは、実に言語道断に尽きます。行政府がみずからあえて明治維新この方不死鳥のように生き続けてきている官尊民卑の露骨きわまる時代錯誤の格差を押しつけて恬として恥じないならば、無念しごくと言いたいのです。
 次に、高齢者福祉の改善について質問をいたします。
 高齢者の現状は、一九七五年、五年前に実施された国勢調査によると、五十五歳以上が総人口の一五・九%を占めており、この調査に基づき推計すれば、五十五年では一七%台となり、高齢者の割合はきわめて高く、また逐年増加の傾向にあります。一方、求職倍率は五十年以降急激に厳しくなり、この傾向は高齢者において顕著であり、特に終身雇用をたてまえとするわが国においては定年退職後の再就職はきわめて困難な状態にあります。
 また、厚生省の統計によってもわかるように、有病率を年齢階級別に見ますと、五十五歳以上において急激に高くなっており、定年退職者の大部分が再就職の機会に恵まれず、収入がない反面病気にかかりやすく、しかも医療費は自己負担を伴うという状態に置かれています。
 ところで、政府対策の現状を見ると、雇用については中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法を制定し、五十五歳以上の雇用率を設定するほか、五年後を目途として六十歳定年延長の推進を行ってはおられます。しかし、高齢者の医療については、医療の無料制度として七十歳以上を対象とする老人医療のほかは、任意継続被保険者制度による健康保険の被保険者期間の二年間延長と、療養中に被保険者資格を喪失した人に対する医療の継続給付があるのみであります。
 以上の現況にかんがみ、定年退職者の医療費負担の軽減について具体化を図るべきであり、在職中よりも退職後の方が病気にかかる率がきわめて高いという現状を踏まえ、定年退職者の任意継続被保険者期間を大幅に延長する等、再就職するまでの医療にかかわる負担を在職中と同程度とされるよう早急に制度の改善を図られるべきだと考えますが、総理並びに関係大臣の御所見を伺います。
 次に、国際人権規約について伺います。
 私の父松本治一郎は、炎のような八十年の生涯を「不可侵、不可被侵」の七文字を守り貫き通しました。私もまた「侵すべからず、侵されるべからず」を人間的信念とし、政治的信条に立って、一切の差別の撤廃を目指す国際人権規約の早期批准を求め続けてきましたが、昨年六月の批准、九月の発効を歓迎するとともに、さらにこの規約の完全な実施を、その精神が広く普及し現実のものとなることを期待するのです。そのためにも、政府が国際人権規約の精神にのっとり人権擁護基本法を制定し、人権の擁護にかかわる予算を抜本的に充実し、具体的施策に反映するとともに、少なくともスト権の原則的付与、高等教育の漸進的無償化、公休日の報酬などを着実に進めていただきたいと願うのであります。総理の御見解を伺いたい。
 次に、人権問題の重要な一つのかかわりとして再審問題を取り上げ、総理の前向きの御答弁を願います。
 一九七七年二月十五日弘前大学教授夫人殺し事件、米谷事件、加藤翁事件と、相次いで多年にわたる関係者の血のにじむ努力と闘いによって次々と再審開始が行われ、その結果、無罪判決が確定されました。また、昨年九月二十七日の免田事件、松山事件、財田川事件も、再審開始が決定されております。とりわけ各界各層の多くの人々が取り上げております狭山事件に代表されますような偏見と予断に基づく無実の罪に苦しむ人々の人権を守り、裁判への信頼を回復するためにも、仮出獄の早期実施、再審法の改正、並びに監獄法の民主的改正等に取り組まれる必要があると思いますが、御見解をお聞かせ願います。
 次に、わが国最大の社会問題である部落問題について問いただしたいと思います。
 一八七一年、明治四年八月二十人目発布されました太政官布告第六十一号によって一応部落民に対する身分制の解放令が部落の解放にとって何の切り札にもならなかったという事実があるのです。
 この解放令が布告された翌年、同じ太政官布告によって一つの問題が提起されております。太政官布告第三百五十八号によって、官幣大社以下各神社の儀式として神武天皇御陵遥拝式の布告が出されたことであります。実は、神武天皇御陵を見おろせる畝傍山の中腹に被差別部落があったのです。明治二十三年、官幣大社橿原神宮が建設され、日清戦争後、神武御陵拡張と橿原神宮の拡大の工事が進められ、ここに洞部落の移転が強制される事件が起きたのであります。
 最終的に移転地が決定され、山の中腹から神武御陵の東の方に追われたのが一九一八年、大正七年九月十三日です。県の計画は、移転にわずか六千坪の新しい村をつくり、ここに二百八戸のうち百三十戸を移転させるというのです。洞部落の全面積が三万坪であるのに移転地が六千坪、約五分の一に押し込められる。幾ら詰め込んでも二百八戸すべてを入れることができないのは自明の理であります。中腹の美しい場所から低い湿地帯に移転を強制されていったのです。
 洞部落の中に強制移転に強く反対する者がいたことは当然のことです。これは青年団を中心とした少数の人々であります。このことが奈良県を中心に、大阪、京都、兵庫、三重、和歌山の近畿の部落の人たちがみずからの手によっての解放を願い、大正十一年春三月三日、京都岡崎公会堂において、人の世の冷たさがどんなに冷たいか、人間をいたわることは何であるかをよく知っているわれわれは、心から人生の熱と光を願求礼賛するものである。――水平社はかくして生まれた。人の世に熱あれ、人間に光あれと宣言した全国水平社の創立に結びついていったのです。二万四千坪の土地を奪われたこの事実は、ただ単に奈良だけの事件ではありません。
 現在、部落民にとって死活をも意味する結婚の自由、就職の機会均等などの基本的人権を踏みにじる部落地名総鑑なる図書が出されておるのは総理御存じでしょう。地名によって差別がされていいのでしょうか。私は博多出身です。博多は鹿児島の坊津にもあります。長崎には二つあります。総理、あなたの出身地の香川にもハカタという地名は二カ所あります。
 さらに、昨年九月アメリカで行われました第三回宗教者平和会議において、日本を代表する人物が、日本には部落差別は存在しないと公の場で発言をしているのです。こうした無責任な発言はもうこれだけで結構です。
 こうした厳しい実態を直視するならば、さきに三年延長された同和対策事業特別措置法に基づく施策を十分に実行すべきです。特に、その際に全会一致で決議された三項目の附帯決議については、全く遵守されていないと断ぜざるを得ないのです。
 総理、先日の衆議院本会議の飛鳥田質問に対する消極的な答弁ではなくて、希望の持てる御回答をいただきたい。同時に、かかる深刻な部落差別の撤廃に向けて、同和対策事業特別措置法を強化改正するための取り組みの状況について、総理並びに総務長官の積極的な姿勢と決意をお聞かせ願いたいのであります。
 次に、本州四国連絡橋の問題特に兵庫県明石より徳島県淡路に至る鉄道併用橋について質問をいたします。
 十年前、本四公団法が国会に提案され、私は本会議場において佐藤総理に、建設委員会において保利官房長官、根本建設、橋本運輸両大臣に対し、工費及び構造の上から見る鉄道併用橋について、鉄道を廃し、道路単独橋にすべきだと質問をいたしました。千七百八十メートルのスパンを要する明石海峡長大つり橋は、今日世界のいずこにも千メートルを超える長大つり橋で鉄道を併用している実例はないからであります。道路橋であるときの水深と根入れ深度は八十五メートルです。併用橋の場合は九十三メートルです。深ければ深いほど海底での人体に及ぼす水圧による潜水作業の困難と発病の危険は当然考えられます。工費対効果比の点についての併用橋の工事費もまたしかりであります。ことに、道路を縁取りしている地覆、この高さに対する風の影響は、道路橋ならば地覆についての通風を研究すれば可能でありましょうが、併用橋の場合は、五・六メートルの側壁に与える風圧は不安全かつ恐怖の一言に尽きると申しました。果たせるかな、九年後の昨年七月二十七日、朝日新聞の小見出しに「本四連絡橋、徳島も「単独橋」」と出され、「本四連絡橋神戸−鳴門ルートの明石海峡大橋について、徳島県の武市恭信知事は、二十五日、徳島市内で開かれた四国経済連合会懇談会の席上、「徳島県としては、鉄道併用橋より道路単独の方がいいと思う」と述べ、これまでの「併用」の考えを方向転換した。」と報ぜられています。まさに、このわずかな十行の記事ではありますが、私には活字の勲章のようなものです。一兆円を超えるこのルートの巨大なプロジェクトです。政治的決断がおくれればおくれるほど国民の税金が、国費としてのむだ遣いが、大きくなるのは当然であります。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(大平正芳君) 松本さんは、弱い者いじめの政治はやめろ、老人、身体障害者、母子家庭、その他弱い立場にある方々に対する配慮が足らないということ、行政改革はもっと大胆に思い切ってやらなければ国民にこたえられないではないか、厚生年金の適用年齢延長はやめろ、それから老人対策、特に高年齢者の雇用機会の造成には努力しなければならないのではないかという御要求を兼ねての御質問でございました。
 私ども、いま財政の再建にかかっておりまするけれども、福祉問題はゆるがせにできない第一の課題であると心得まして、困難な中にも必要な財源は振り当てましてできるだけの配慮をいたしておるつもりでございまするし、今後もその努力はしなければならぬと考えております。
 行政改革は、必ずしも御満足がいっておるものとは私も自負いたしておりませんけれども、五十五年は行政改革といたしましてともかくもかつてない規模において実行に移ったわけでございますので今後御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
 厚生年金の適用年齢の問題でございますが、これは水準を維持しながら、後世代の負担の増強も考えながら、高年齢への急速な移行の状態も考えて、政府といたしましては、一定の期間を置きまして漸次その方向に持っていかなければならないのではないかという構想をいま持っておりますことは御案内のとおりでございまして、慎重に御審議を願いたいものと考えております。
 老人対策、とりわけその雇用対策でございますが、これは各御質問をいただきました方々にもお答え申し上げましたとおり、あらゆる手だてを講じまして全体として雇用は改善を見ておりまするけれども、老人、中高年齢層の雇用というものは大変厳しいものがありまして、その雇用機会の創出につきましてはあらゆる手だてを講じてこの要求にこたえなければならぬと考えておるところでございまして、立法化の問題も含めていま検討をいたしておるところでございます。
 ただ、私は一つ御理解をいただきたいと思いますのは、この国会におきましても石油値上げの問題が大変大きな論議を呼んでおりまして、去年の暮れの値上がりを計算してみますと、わが国といたしまして外貨にいたしまして約二百億ドルを超える負担になりそうでございます。二百億ドルと申しますと、一人当たり二百ドル、一家庭にいたしまして十数万円の負担増を結果することになりまして、これは何らかの形で国民に公正に負担していただかないと経済がもたないわけでございます。われわれはこの大きな厳しい試練に対しましてあらゆる施策をしつらえて国民の生活を守らなければいかぬと鋭意努力をいたしておりまするけれども、いかんせん国民に何らかの形で公正な御負担を願わなければならぬという事情にありますこともあわせて御理解をいただきまして、みんなでこの時代の試練については耐えていきたいものと念願をいたしております。
 働く母親に対する措置についてのお尋ねでございました。
 わが国の婦人労働者は千二百八十万人を数えて、全雇用労働者の三分の一を占めるに至っております。これはわが国の経済にとりまして大きな役割りを果たしておられることになるわけでございまして、その三分の二は既婚者であるということでございます。したがいまして、政府としては、婦人が就業する場合、その条件を整備することが必要であると考え、特に働く母親が家事、育児と職業との調和を図ることができますよう、保育施設の整備、育児休業制度の普及等の施策を一段と充実してまいりたいと考えております。
 福祉の問題につきましては、厚生大臣から答えさしていただきます。
 国際人権規約の批准に関連しての御質問がございました。
 国際人権規約の批准に当たりまして、わが国といたしましては、教育の無償、スト権、公休報酬を実施するための経過と見通しなどについて留保をいたしておりますことは御指摘のとおりでございますけれども、こういったことは今日の現状にかんがみまして慎重に検討した結果、留保することが適当と考えたものでございまして、現状におきましては留保を撤回するつもりはございません。将来、諸般の動向を注意していきたいと考えております。
 同和問題につきましては、その解決に向かって実例を挙げての切々たる御所見を謹んで拝聴いたしました。
 政府は、同和問題の早期解決を図るために、同和対策事業特別措置法に基づきまして各般の措置を講じておりまするけれども、その適用期限の延長の際、国会における附帯決議がございまして、この趣旨を尊重いたしまして、関係事業の一層の推進に努めてまいり、御期待にこたえなければならぬと考えております。
 再審問題についてのお尋ねでございます。
 再審につきましては、一部において現行制度よりも広く再審を認めるべきであるとする改正論があることは承知いたしております。現在、法務省におきまして、運用の実情、諸外国の再審制度、改正の必要性等につきまして研究を重ねております。この問題は、刑事裁判の本質、刑事訴訟制度の基本的な構造に影響する大きな問題でございますので、慎重に検討さしていただきたいと思います。
 自余の問題は、関係大臣から御答弁をいたします。(拍手)
   〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(小渕恵三君) 同和対策に関する御質疑に関しましてお答え申し上げます。
 ただいま総理から御答弁ございましたが、総務長官といたしましても、同和問題の早期解決を図るため、同和対策事業特別措置法延長の際の国会の附帯決議の御趣旨を尊重いたしまして、同和対策関係施策の一層の推進に努めてまいりたいと存じております。
 なお、施策推進のために、同和対策予算といたしまして、昭和五十五年は厳しい財政状況のもとではございまするけれども、昭和五十四年度に比して一一・五%増の二千五百二十四億八千二百万円を計上いたしておるところでございまして、こおした予算の取り組みに対しましても政府の姿勢のあらわれと御理解いただきとう存じます。(拍手)
   〔国務大臣渡辺栄一君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(渡辺栄一君) 本州四国連絡橋のことにつきましてお答えを申し上げます。
 まず、本州四国連絡橋のことにつきまして大変関心をお持ちをいただいておりまして敬意を表する次第でございますが、神戸−鳴門ルートの明石海峡大橋につきましては御承知のとおりで、世界に例を見ない超長大橋でございます。しかし、道路鉄道併用橋とすることの安全性の確保につきましては、現在までの調査研究を通じまして技術的に可能であるという見通しを得ておる次第でございます。しかし、その建設施工につきましては、大鳴門橋及び児島−坂出ルートの諸橋のつり橋建設の技術的成果を踏まえまして、さらに万全を期してまいりたいと考えております。
 また、本州四国連絡橋のうち、神戸−鳴門ルート及び児島−坂出ルートにつきましては、全国的な交通網体系から道路鉄道併用橋として計画をされておりまして、明石海峡大橋につきましては鋭意調査を進めておるところでありますが、御意見のような点を踏まえまして十分検討してまいりたいと存じます。なお、児島−坂出ルートにつきましては、鉄道道路併用橋といたしまして早期完成を図るようせっかく努力をいたしておるところでございます。
 以上でございます。(拍手)
#27
○副議長(秋山長造君) 答弁の補足があります。大平内閣総理大臣。
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(大平正芳君) 本四連絡橋の構造につきまして松本さんから御提言がございました。その件につきましては政府として検討さしていただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#29
○副議長(秋山長造君) 秦野章君。
   〔秦野章君登壇、拍手〕
#30
○秦野章君 時間の関係で一品料理風にお尋ねしますので、自由な気持ちで御答弁をお願いいたします。最初に、けさの新聞で、ブラウン国防長官の発言というか発表されたスイング戦略、これが大変問題になっておりますけれども、アメリカの立場からすればこれは当然なことと言っていいだろうと思う。これがあるために日本が戦争に巻き込まれるなどということはあり得ない、これは政府の答弁で結構だと思うのだけれども、このブラウン長官のこういった国際戦略の裏側にある問題で留意しなければならない点についてまず総理の所見を承りたいと思うのですが、これは外務省には資料が入っておりますと思いますが、当然入っているわけですけれども、キッシンジャー報告の中で、昨年の九月一日、キッシンジャーがブラッセルで西側諸国に言っていることなんです。これは私けさ清水幾太郎教授のところで入手されたキッシンジャー報告のテキストから拝見したのですけれども、キッシンジャーが、西側諸国に、アメリカの軍事力に余り期待してもらっては困ると、こういう発言があるわけです。キッシンジャーが日本に対してならどういうことを言うであろうか。言うまでもなく、ヨーロッパは血のつながった親戚であります。その親戚のヨーロッパにそういうことを言っている。日本は、アメリカとは異民族で、有色人種だし、まあ言うならば自由経済でつながっているにすぎないと私は思う。そういうことで、このキッシンジャーの言葉から、日本の独立と安全を守るための覚悟というか、そういう点について総理は一体どういうような所見をお持ちなのか。
 なお、関連して、安保条約というものがあるから日本は大丈夫だというような考え方はもう大変変わってきていると思うのです。安保条約が結ばれたときの米ソの軍事力といまの軍事力ではまるっきり変わってきておりますから、つまり安保はやはり変質しているというふうに見ることが正直な見方だと思うのです。そういう国際環境の中で日本が平和と安全の枠組みを維持していくということ、そのまた維持なくしては内側の豊かな社会を目指す日本の平和と安全が崩れてしまう、この辺のところを、安保があれば大丈夫だと、アメリカにおんぶをしているというような甘えの中では、自主外交も安全も危険なものだと私は思うわけですが、この点について総理の御所見を承りたい。
 それから次に、一月の二十二日でございますけれども、総理が日本記者クラブの会見の席でおっしゃったことでちょっと気になることは、「ソ連という国は防衛的なディフェンシブな国である」と。もちろん若干の修飾があって、「ソ連はジャイアントで計り知りがたいところがある、また、慎重な国で老練な国だ」と、こういうふうにおっしゃっています。しかし、防衛的でディフェンシブであるということを、慎重で老練で、ジャイアントで計り知りがたいという言葉で修正することにはならぬと私は思うのです。つまり、ディフェンシブだ防衛的だということが総理の御持論のようだけれども、果たしてそうであろうかということは、ソ連に隣する日本の対ソ認識として十分にこれは検討を要する問題ではないか。本当にソ連がディフェンシブな国だとするならば、私は北方領土返還の論拠を失うのではないかというおそれすら感ずるのであります。
 考えてみれば、ソ連がディフェンシブな国だという後に続く問題は、言うならばソ連の膨張主義というもの、膨張ということが後ろにくっついてきたというのがやっぱりソ連の歴史ではないですか。私はソ連が単純に侵略の国だとも言わない。しかし、単純に防衛的な国だとも言い切れない。そこに大変厄介な国が隣にあるという認識というものが対ソ外交にとっては絶対に必要なんだと私は思うのでございまして、歴史で言うならば、ソ連がそういう体質を持った、ディフェンシブとは言いながらそこに膨張してきたという理由は、ソ連の側に立てば、これはそれなりの理由があったでしょう。十三世紀にはモンゴル帝国の巨大な侵略、世界史の上にないようなロシアを制圧した侵略があった。十九世紀にはナポレオンの侵略がモスコー郊外まで行った。さらに二十世紀にはナチ・ヒトラーの侵略があって、レニングラードのようなああいう大変悲惨な国土戦を展開したというその歴史の体験というもの、これが特有の防衛意識をソ連につくり上げたというふうに見るのが常識であり、またそれが定説ではないのかと思うのです。
 したがって、ソ連が防衛と言った場合には、自分の国の防衛、祖国を防衛するためには、一生懸命衛星国をつくりたり、できるだけ国境線を広げるというようなことが出てきてしまう。北方領土もそれなんです。北方領土の軍事基地化もそれなんです。これを端的にディフェンシブだなんということはとうてい言い切れない問題だと思うのです。そういうような政治体質がソ連の風土と歴史の中でできてきた。人間は風土の産物であり、政治もまた歴史の産物だと思うのでございますが、そういうソ連の対外政策の政治体質というものをきちっと見据えておくことが、対ソ外交あるいは国際的にこれから日本が生き延びていくために大変必要なことであって、このことは国民とともに対ソ外交を考えるということの不可欠の条件だと私は思うので、いささか総理の発言には私は若干の釈明と修正が要るのではなかろうかというふうに思うのですが、いかがなものか、この点をお答え願いたいと思うのであります。
 それからいま西欧の首脳のソ連観というものが、たとえばアフガン侵略によってカーターは非常に変わったということを言っておりますけれども、これはカーターがソ連を知らないからそんなことを言っているので、もともとアフガン侵略はソ連にとっては防衛だという論理があるはずであります。そういう点については、西欧の首脳部は、少なくとも現時点においては、決してソ連がディフェンシブで防衛的だという単純な考え方には立っておらぬというふうに思います。そういう点では、この問題は、国家のリーダーとして総理にとっては非常に重要な、識見を聞かしていただかなければならぬ問題だと思うのでございます。
 それから一品料理風でございますからいろいろあるのですけれども、公共料金の問題について一つお尋ねしたい。
 公共料金の問題につきましては、施政演説でも、経営の徹底的合理化を図って、やむを得ない範囲で認めるというような考え方でございますが、どうもこの理念というものはやや経済主義的である。特に電気、ガスといったような独占的公共事業については、経済原則の延長線上にそろばんをはじいて決めるということは許さるべきではない。これは岩淵辰雄さんの言ったことですけれども、「公共事業の料金は国がつぶれる直前まで上げてはいけない」これは大変荒っぽい言葉だけれども、そこに何ほどかの政治哲学を感ずるのでございますけれども、一般的な経済原則の延長線上に重大な基本的な公共料金が決められないために、すぐれて政治的であり、経済原則よりもやはり政治の立場、企業原則よりも政治的なそこに思想が要る。経済よりも政治なんだ、そういう政治のまた工夫というものをそこに加えていくことによって可能でないことはないであろう。政治の世界では数字がそんなにものを言わない、ときには数字に目をつぶるということもあると思いますので、この辺の考え方、理念というものについて、その理念がしっかりしないとこの問題の対処の仕方が狂うと思うのでございまして、この点をお聞きをしたいと、こう思うのです。
 それから次に、これまた選挙制度の問題でございますけれども、施政演説でも政治倫理の確立ということを大変叫ばれておられます。確かに重要なことでありますけれども、政治倫理を口にする場合には、金のかかる選挙というものを放置したのではどうもこれはものにならぬ。やっぱり金のかかる選挙制度にメスを入れるということがむしろ政治倫理を確立するための一つの重要な前提条件だ、先決事項だと私は思う。ヨーロッパの例を見ても、たとえば下院の選挙なら、いまのような中選挙区はほとんどなくなっているんですよ。選挙区の問題、選挙区が広いということは金がかかる。もちろん比例代表制とかいろいろ加味することは可能なので、そういうことによって公平の原則を無視しないような選挙制度ができるはずなんです。
 この選挙制度の問題について政府の姿勢というのは、自民党の選挙制度調査会でやっているとか、国会が各党共通の土俵だからそこで相談すればいいというような態度で今日まで来たのだけれども、やっぱり選挙制度を本当に改革して政治倫理につなげるということなら、政府が自信を持った案をつくって国会に提案をする、それを国会が審議するというのが本格的な取り組みであり、もしそういう方法をとらないでいまのようなことをやっているのなら、ただ時間を引き延ばすだけの問題ではないのか。政治資金の明朗化とか、制裁法規の整備だとか、あるいは企業倫理の確立というようなことにまで及んでおっしゃっていますけれども、これはやや他を顧みてよそよそしい感じがするのでございまして、選挙制度の改革という問題については政府がしっかりとした自信を持った主体的な立場で取り組まれる必要があると思うのだが、この点についてのお考えを承っておきたいと思います。
 それから行政改革の問題でございますけれども、行政改革の問題については、大平内閣は、早くから、チープガバメント、そしてまた施政演説でも簡素で効率的な政府をつくるということで、無論財政再建を右手ににらみながらある程度の努力をしてこられましたけれども、この行政改革ということで私は若干欠落している部分があると思うのです。
 それはどういうことかと言いますと、行政というものはやはり国民奉仕の機関でございますから、国民奉仕の機関だということになると、国民の側から見ての行政改革、それは結局国民にとって親切な行政改革、そういうものがやはり柱としてなくちゃならぬ。つまり国民の側から見て大変手続が煩瑣だ、あるいはこの中間機関はなくても一遍に済むんだと。たとえば建設関係なんかの関係では中間機関で審査して同じことを本省でやる、これは大変不満があるんです。そういうような、国民の側から見て手続が煩瑣だ、あるいは国民の側から見てセクショナリズムと思われるような行政機構というものを変えるということについて、どの程度下からのそういう要求というものをくみ上げるような方法論がとられているか。知事会議なんかでもかなり行政改革については意見具申があるわけでございますけれども、そういう点の方法論について疑念があるし、欠落した部分があるのではないか。そして、まさに行政改革の目的がチープガバメントあるいは簡素で効率的だというやや経済主義的な目的だけでは画竜点睛を欠くというふうに私は感じますので、この点についてもひとつものの考え方といいますか、これが非常に大事だと思う。その点について補足すべきだと私は思うのです。
 それからこの行政改革と若干関連するのでございますけれども、要らなくなった法律というものを整理する。法律は全部行政が関与するし、法律があれば人も要るし仕事もつく。つまり、行政改革は、仕事減らし、補助金減らし、人減らしというそういう発想が優先する、これは当然だと思うが、そういうことのために、さっき言ったような角度と、いま一つ、要らなくなった法律を一遍たな卸しをするというそういう観点が必要ではないか。日本は近代化の中でいろいろな法律をつくってきた。つくることは一生懸命だが、一遍できたものはなかなか廃止しないというのが実際なんです。だけれども、これはいま言ったようにたな卸しを考えなければいけない。たな卸しを考える場合に、行政が考えるということは不可能なんですね。これはもう行政じゃなくて、ある程度の民間の各界各層、法律の対象になっているような人たちの集まったシステムみたいなもので答申をするような形にすれば私は出てくると思うのです。そういうことが行政改革と一連に関係した問題だが、こういう点について、こういう組織へは役人上がりなんか入れないで、本当の民間の声ということで反映させる、そういう考え方というものを持つことはできないだろうかというふうに思うのでございます。この点についての御意見を承りたい。
 それから農業の問題で、施政演説の中で食糧の安定的確保というものが国政の基本だというふうに言われた。これは当然のことなんだけれども、これは安全保障的立場もあるので農政がしばしばぐらぐらして農民が迷うような傾向が今日まであった。この食糧の安定的確保という問題について、いま少し具体的なめどですね。たとえば自給力の向上ということなら、どういう目標で何年にはどの程度のことをやっていくかというようなそういう具体的な目標をもう少し明らかにしてもらうことが必要だと思うのです。これは政府の部内では明らかになっているのか知らぬけれども、やっぱり国民に十分知らして、生産者の不安と、そしてまた広い意味における安全保障的な問題もあるので、国民のいささかの不安を解消するということは大変必要ではなかろうかと思うのでございます。この一点だけを伺っておきたいと思います。
 それから外交問題にまた返るのですけれども、中東の政策の問題で、中東外交のおくれというものは、一部の専門家に言わせると、日本は五十年アメリカよりおくれている。これは土屋清さんが言っているのだけれども、五十年おくれている。ヨーロッパからは二百年おくれている。もっともしかし、おくれていることは、日本が手を汚さなかったという裏返しの問題もあるから、いたずらに責めるわけにはいかぬけれども、しかしそのおくれを取り戻すというピッチは大変高くなければならぬ、こう思うのです。ところが、残念なことに、この点については、たとえば現状で言うならば、中東十八カ国の大使でアラビア語がわかる大使は二人しかおらぬとか、管理職以上では七人しかおらぬとかといったようなそういう現状の中で外交をやっていかなければならぬということです。特に文化経済協力協定、こういうのが十八カ国の中で五カ国しかできていない。いま、アラブ諸国は、非欧米といいますか、非西欧というような角度で自己主張をしている、そういう姿だと思うのですけれども、日本が非欧州であって近代化を遂げたということには一つの魅力を中東が感じている。手も汚れていない。私は、この機会に、中東の特に文化とか技術とかというものを中核にし、もちろん経済の相互依存度ということもありますから、そういう広範な立場で中東問題というものを見ていかなければならぬ。
 そこで、さしあたって園田特使が行かれますが、園田特使の使命というか、園田特使がどういうことをやってこられるか、まあ仕事ですね、そういうことについてお尋ねをいたします。
 中東問題は日本もいささか自主的な姿勢が必要になってきた。これは受け身から自主へという今度の施政演説の中にはこの中東問題が一つの課題として登場することは当然なわけでございますが、やはり東方文明の接触、イスラムにしても回教、この東方文明の接触でお互いに触発されるということは当然だし、それから岡倉天心が日本は東洋と西洋のかけ橋になれと言ったが、中東と欧米のかけ橋になるといったような役割りは日本にないであろうか。その辺のことまでの構想をにらんで長期に立って中東問題を考えることが必要だと思うのですが、これは外務大臣あたりどういうふうにお考えになりますか、お尋ねをしておきたいと思います。
 なお、総理では福田総理が二年前に行ったことがあるというだけなんだけれども、環太平洋条約も結構です、カニの横ばいのようなことで太平洋のことを考える、これもいいのだけれども、やっぱり中東を大陸の延長線上に、これはまあ大変知ったかぶって恐縮だけれども、世界最古の歴史学者ヘロドトスは、中東はアジアだと、こう言っています。そのときのアジアは、もちろん極東なんかは目の中に入っていないときですから、いまわれわれが考えているアジアとは違いますけれども、そしてかなり異種、違った文明を持っているということも事実でございますが、しかし、アジアの延長線上に一遍考えてもいいのじゃないか。いまの国際的経済会議ではOPECとサミットが重要でございましょう。しかし、昨年のサミットの会議で、OPEC非難の条項について日本がまあちょっとそれは削除してくれと言った態度があったが、押し切られてしまった。あのことを考えましても、やっぱり中東に向かっての自主外交というものは日本としてあるはずなんです。これはアメリカにも十分説得しなければならぬと思いますけれども、そこらに、言うならば共存圏というか、新たな国際機構を模索する。サミット、OPECの対立国際社会というものだけでは間に合わない。いま石油がありますから中東問題は日本の死活の問題だけれども、しかし、それよりももっとロングで見ての中東問題ということがこれからの日本の外交の一つの課題ではなかろうかというふうに思いますので、この辺についてのひとつ政府の考え方をお聞きしておきたいと思うのでございます。
 最後に、これは五十三年の三月でしたか、私は予算委員会で申し上げたのですけれども、国際的に生き延びるための日本の姿勢の中にやっぱり国際的な文化、教育の交流ということが非常に大事だから、その場合に、日本の国公立大学では外国人を正式に教授に任命するという制度になっていない。これは先進国では日本だけなんです。これはやっぱり改めた方がいい。それによって大学の門戸を開放し、学問、研究には国境がないといったような方向を打ち出すことが、広い意味で安全保障につながるであろうし、また学問の世界に国際競争の原理を導入することになって、科学技術をふるい起こすことにもなるのではないかという意味で質問をしたときに、法制局長官も、法律を変えればできると、こう言った。文部大臣も前向きにやろうと言ったのだけれども、何年たってもやらぬ。これはひとつ総理のリーダーシップでこういうことはやってほしい。日本の国公立大学も大変閉鎖的であります。非常に一生懸命やっている教授と、まあ定年までのんきにやってしまう先生とおって、これがかつての学生運動の一つの背景にあったということも私は認めなければならぬと思う。要するに、学問、研究がふるう民族でなければ長生きできないということも一つのポイントだと思いますので、この点については総理のリーダーシップがなければできそうもありません、これはまあ議員立法ということもあるのですけれども、私はある意味で重要なことだと思いますので、ぜひひとつ考えていただきたいと思います。
 以上、答弁を期待して終わります。
 どうもありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(大平正芳君) キッシンジャー氏のアメリカの軍事力にそう期待されてもらっては困るという発言をどう思うかとか、それからソ連の対外姿勢をどう見るかという見方でございますが、これは国会でございますので、私の立場でこういう問題について見解を具体的に申し上げることは必ずしも適当でないと思いますので、それはひとつ御理解をいただきたいと思いますが、ただ、日米安保条約は変質したのではないかという点につきましては、私はそう考えていないということを申し上げたいと思います。安保条約はアメリカの抑止力というものに対する期待を条約に制度化いたしたものと思っておりますが、その抑止力を構成する軍備の内容は時代の変遷とともに変わっておると思うのでございますけれども、これに対する相互信頼に基づく期待ということを本体とする安保条約の性質は少しも変わっていないと私は思うのであります。
 それから国立大学の閉鎖性の打破につきましての御所見を承りました。
 仰せのような方向に大学を指導してまいることの必要性は私も感じておりますので、そういう方向に努力をしてみたいと思います。
 その他の問題につきましては、各閣僚から御答弁を願いたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣大来佐武郎君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(大来佐武郎君) ただいま秦野先生から大変示唆に富むお話をいただきまして、中東問題につきましては私も先般の外交方針演説の中でかなりの部分を割いて申し述べたわけでございますが、御指摘のように、これからの将来の世界にとりまして、あるいは日本の将来にとりましてもきわめて重大な重要な地域だと考えております。
 外務省の方も、今度参りましていろいろこの方面の事情を聞いてみますと、アラビストもかなりふえてきております。中央におります者と出先公館等におります者と合わせて現在五十四名おります。先ほど御指摘のように大使二人もございますが、まだこれは少ないわけですけれども、数年前に私が旅行しましたときに聞いた話から比べれば、約倍になっておるように思います。この程度では足りないと思いますけれども、言葉のわかる人を養成するのには相当期間がかかる点もございますので、今後もさらにそういう努力を続けてまいりたいと思います。
 私も何回か中東地域に参りましたが、アラブの人たち、中東の人たちから言われましたことは、先ほど御指摘もありましたが、日本に対してかなりの親近感を持っておることは事実のように思います。一つには、先ほど秦野さんのおっしゃった、日本はクリーンハンドだということ、それからこれはよく言われることでございますが、日本人はわれわれと同じアジア人だと、これもよく向こうで言われることでございます。それから日本の技術というものは非常に信頼性が高い、工場をつくるのにも本気でやってくれるということを私も何度か言われたことがございます。こういった中東における日本のプレゼンスといいますか、いろいろな意味でプラスの面があるわけでございまして、従来石油というものはひとりでにどこかから流れてくるというような気持ちで多数の日本人は暮らしておったように思いますけれども、やはりその後の事態を見まして、この地域がいかに重要であるかということの認識はだんだん強まってきておると思いますし、政府としてもこの努力を続けていかなければならないと存じております。
 御提案のような地域的な連帯の機構、これは国連のESCAPというのがございますが、これはアジア太平洋地域経済委員会でございまして、東の方はウェスタンサモア、太平洋の島から西はイランまでということになっておりますが、中東はまた別にECWAという中東地域の委員会ができておりまして、必ずしも日本を含み、中東を含む地域的な機構はいまのところないわけでございます。一つには、中東はヨーロッパとの関係もいろいろございますが、これはあるフランスの人から言われたことでございますけれども、将来、ヨーロッパ、中東、日本の協力によって中東の開発計画の作成を手伝うようなことも考えられはしないかというような意見も聞かされたことがございます。いずれにしても、総理の施政方針演説にもございますような意味で、外交が単なる受け身のものから積極性を持ったものに日本の外交が変わっていかなければならない、そういう時期でもあると思いますので、御提案の点につきましてもいろいろ検討いたしてみたいと考えるわけでございます。
 それから園田さんに中東方面においで願うということになりまして、その目的はどういうことだという御質問でございましたが、これはいまのような中東の重要性にもかんがみまして、また、この三、四カ月にあの地域に起こりました各種の事件、動きというのは非常に重要な意味を持っておりますので、できるだけ早い機会にあの地域の指導者の人たちとお話を願いまして、ファーストハンドの意見交換、そういう広い意味での中東、あるいは場合によれば南西アジアの地域も含めまして、指導層との意見交換をお願いいたしまして、中東の和平問題、エネルギー問題その他を含めて広い立場でお話を願ってはどうかと、そういう御意向、これは総理の方にもありまして、今回園田さんにお願いいたしたわけでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣正示啓次郎君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(正示啓次郎君) ただいま秦野議員から公共料金の取り扱いについての御意見がございましたが、経済原則の延長線上だけで扱っては相ならぬからいろいろと工夫をすべきであるという御意見は、私も工夫をすることに異議はございません。ただ、原価主義、経済原則、これを踏み外してはまた公共料金は説得性を欠きますので、これをかたく守りながらいろいろ工夫をする。たとえば電力の値上げについて申し上げますと、今度の申請の中で原子力をやっておるところは大変上げ幅がほかよりも低い、こういうことになっております。これは原子力問題という非常に大きな政治的な問題がございますから、そういう点については、脱石油、省エネルギー、こういう大きな国家の重大な政策に対して各党ともにひとつ御協力を賜りまして、これからの日本の新しい進路開拓のために今回の公共料金問題を一つの転機にいたしまして、将来への大きな方向づけをしていかなければならぬ、こういう意味で私は秦野さんの御意見に大いに傾聴いたした次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣宇野宗佑君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(宇野宗佑君) 行革は国民の側に立ってやれという御趣旨、全く同感でございます。
 今回の行革におきましても、そういう御趣旨を体しまして、政府が民間あるいは自治体に過剰に介入することを排除する、そうしたたてまえで、地方出先機関の整理、あるいは許可認可の整理、あるいは報告の整理等をいたすことに相なっております。
 特に、許可認可の方等は余り目立たないわけでありまするが、非常に大切なことでありまして、去る暮れの国会で約千二百件整理することができましたし、また、報告に関しましても約千五百件今回整理をすることが大体できるように相なりました。報告のページ数から申し上げますと二百万ページ、これだけの書類が不要となったわけでございます。高さに積み上げますと二百メートルでございますので、私はかなりの整理ができたと存じておる次第でございます。
 いずれにいたしましても、仰せのとおり、判こ行政は極力これを廃止の方向へ私は持っていきたい、そして国民へのサービスを強化したい、かように存じて実のある行革を今後も進めてまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣武藤嘉文君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(武藤嘉文君) 秦野さんにお答えをいたします。
 いま私ども実は農政審議会にお願いをいたしておりまして、六十五年を目標にした自給率はどうあるべきなのかと、こういう議論をしていただいておるわけであります。農林水産省といたしましては、その検討をしていただくためのやはり数字を出さなければいけないということで、昨年の十一月に試算をいたしまして、それが公表になっております。たとえばその中で小麦の自給率でございますけれども、これを一九%と見込んでおるわけです。ところが、この間うちのアメリカのあの対ソ輸出停止というような形を見ておりますと、今後この食糧というものが外交の武器に使われる可能性はなきにしもあらずで、こういう点においては、いま秦野さんおっしゃいますように、やはり食糧の安定供給をしていくという意味においてはいわゆる国の安全保障という観点からもこういう問題は対処していかなければいけないのではなかろうか、そういう意味で私どもはできる限り自給率を高めていくような方向にやっていかなければならないと考えております。ただ、そうは言うものの、国民の理解を得るためには、やはり国際価格よりも幾ら高くてもいいというわけにもまいらないと思いますので、その点においてはできる限り経営規模の拡大だとか、あるいは適地適産に基づくいわゆる農業生産の再編成とか、こういうこともあわせて考えていきたいと、こう考えておるわけでございます。(拍手)
#36
○副議長(秋山長造君) 答弁の補足があります。大平内閣総理大臣。
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(大平正芳君) 選挙制度の改革についてのお答えを漏らしまして、大変恐縮いたしました。
 選挙制度の改革問題は、金のかからない選挙と無関係であるとは言えません。御指摘のとおりと思います。ただ、これの検討は各党の一つの共通の土俵でございますので、政府がイニシアチブをとるというよりは、やはり各党の間でお話し合いをいただくべき性質のものではなかろうか。国会の要請に応じまして政府はどういうお手伝いもいたしますけれども、政府の方から提案をするということは適当ではないのではないかというのが私の考え方でございます。したがって、いま自由民主党の選挙制度調査会におきましてこの制度も含めて検討が進められておると承知いたしております。
 それからもう一つ、公共料金につきましての政治姿勢の問題につきましては、正示大臣からお答えがございまして、そのとおりだと思いますが、私は厳正な原価主義を貫くということも一つの政治的態度ではないかと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#38
○副議長(秋山長造君) 福間知之君。
   〔福間知之君登壇、拍手〕
#39
○福間知之君 私は、日本社会党を代表して、現在わが国が直面しております多くの重要な問題のうち、エネルギー政策、技術開発のあり方、産業構造の問題、そして物価、さらには減税にしぼりまして、国民生活の将来展望との関連の中で政府の所信をお伺いするものでございます。
   〔副議長退席、議長着席〕
御承知のとおり、八〇年代は、国際的な政治・軍事緊張とあわせ、深刻なエネルギー問題をはらみながら幕あけしたと言えましょう。石油灯油価格の大幅な値上げを初め、原油、LNG等の高騰に伴う電力、ガス料金などの大幅値上げ申請がメジロ押しになっているなど、国民はいま深刻な負担に耐えかねているのが実情ではないかと思います。政府は、当面の対策だけでなく、わが国経済社会の中長期の展望を踏まえ適切な対応を急がねばならぬことは申すまでもございません。今日の大幅な原油価格の上昇――先ほど総理も、昨年一年間で二百億ドルの原油輸入の費用がかかった、一世帯当たり十数万円の大きな負担になっている、憂うべきことだ、このようにおっしゃいました。このような大幅な価格高騰が、二たび三たびわが国の経済と産業のあり方について根本から再検討を要請していることを思う次第でございます。
 私は、今日の原油、石油に関する情勢というものは、それを単なるエネルギー問題としてのみとらえるのではなくして、その真底に横たわっている課題は、現在われわれの社会を形成している基本的な枠組み、言いかえれば現代文明のあり方が問い直されているのではないかという感を深くするものであります。
 ちなみに、エネルギーの歴史を振り返るとき、数十万年続いた薪炭の時代、その後に百年ぐらいの石炭の時代、そして今日われわれは数十年間にわたる石油の時代の中におるのであります。現代は紛れもなく石油につかった文明の時代であり、戦後のわが国経済復興も、その後の高度成長から今日に至るまでも、この大きな流れの中にあると言ってもよいでしょう。一九三〇年代から四十年間にわたって低廉そのものだった石油は、一九七三年からわずか五年有余で十倍以上になりました。したがって、これからの時代は、石油の高価格化や量的不安に伴って、これに代替するところの新しい社会経済システムの形成というものが必要不可欠であると考えざるを得ません。
 私は、この新しい社会経済システムとは、生産と生活の便益の拡大をいままでのような巨大産業における資源の一方的な消費の拡大のみに依存して実現するのではなくして、資源のリサイクルや自然循環との共存する体系を徹底的に追求する中で実現すべきであると考えるのであります。そしてまた、画一的で大規模な生産から、地域の特色に依拠した経済を形成し、地域内で自給できる自然エネルギーたる太陽エネルギー、風力、水力、波力、地熱、バイオマスのいわば無限でなくならない非枯渇エネルギー源と、石油、石炭、天然ガス、アルコール、そして原子力など輸入を含めたいわゆる化石燃料型の外部エネルギー源との効率的な組み合わせを、工業、農水、輸送、民生各用途において実現していくこと、すなわち、エネルギー生産と同時にエネルギー消費のあり方に人間の英知が結集されることこそが重要な要件であると思うのであります。
 付言すれば、資源調査会は、昨日、大半がむだになっている今日のごみ焼却の熱でタービンを回せば、全国では八十九万キロワットに相当する原子力発電所一基分の電力を生み出すことが可能として、今後ごみ発電を積極的に進めるようにという建議を科学技術庁長官に行ったのであります。今日すでに電力の一部を電力会社に売っている東京都など二十五カ所でごみ発電の実績があるのを、今後全国的に広めていくべきだということであります。
 そこで、まず総理にお伺いをいたします。
 総理は、八〇年代を含めたわが国の将来は、これまでの発想の延長では解決できないという認識にお立ちになっておられるのかどうか、また、新しい発想が必要とお考えであるならばそれはいかなるものか、お伺いしたいのであります。
 今日、わが国のエネルギー政策を中長期の視点に立って検討いたしますと、その内容はまことに貧弱そのものと言わざるを得ません。政府の打ち出した七%節約は、単に国民に節約を迫るだけのものであって、わが国の将来の展望というものがそこには全く感じられません。官僚的発想による矮小化された知恵の寄せ集めにしかすぎないものではないかと思うのです。しかも、わが国の行政機関は縦割りのばらばらであり、エネルギー関係の閣僚会議も行政機構の上に乗った形式的なものと言わざるを得ません。今日、石油エネルギー資源はその七十数%が産業用と輸送用に供されており、強いて言えば企業競争の中で短期的な限られた効率追求のために消費あるいは浪費されているのが現状であります。
 総理は、わが国のエネルギー政策の策定過程を抜本的に見直して、制度の大幅な改革を行う必要を認識しておいでになっているか、御見解を伺いたい。
 さらに、わが党がかねてから主張しているように、早急に改善されなければならない幾つかの事項があります。
 その第一は、現在の通産、大蔵、文部、科学技術、運輸、建設、農林水産等の各省庁に分割されたエネルギー関連の政策立案機構を統合化し、さらには、行政だけでなく、大学や民間などの知恵を結集し、民主的な運営ができるようなエネルギー計画国民委員会のようなものを設置して、開発、消費、技術開発の内容を含めた総合的な体制を確立することが不可欠ではないかと思います。
 第二は、現在行政制度の中で退蔵しているエネルギーに関するさまざまな有益なデータや情報を公開して、国民各層の創意と協力を引き出す材料として積極的に提供するための充実したいわゆるエネルギー情報センター機構を設置すべきではないかと考えます。
 第三は、中央だけではなく、地方においてもエネルギーの開発調査、地域利用システムの形成などを促進するために、たとえば地域エネルギー開発促進法を制定し、自治体の主体性を尊重しながら、地方大学あるいは公設研究所などへの助成、支援を抜本的に強化すべきであります。総理は、行政改革を大きく掲げられておられますが、この改革こそ、将来を見通したきわめて重要かつ前向きの改革だと存ずるのでありますが、積極的にこの件に関して検討し実行する御意思があるかどうか、具体的にお答えを願いたいのであります。
 また、この点につきましては、通産大臣においても地域エネルギー開発促進法の法案を早急に作成し国会に提出すべきだと思うのですが、御見解を伺います。
 次に、私は、わが国の研究開発、技術開発の問題についてお伺いします。
 資源小国のわが国が国際社会の中でその活力を発揮、高揚していくためには、究極的には人間の頭脳に依存、つまり技術立国として自立することが肝要かと思います。また、国民生活の実情から見ましても、災害の防除や自然環境の保護、がんの制圧など難病対策、身体障害者のためのすぐれた補装具の開発などなど、生活のさまざまな不安を除去し、福祉増進のためにも科学技術の発展に多くの期待が寄せられているのであります。
 また、技術開発のテーマについて、すぐれた安全性に基づく原子核エネルギーによる発電技術、遺伝子工学など生物活動を利用した技術開発、窒素や珪素といった無尽蔵に近い資源を使って金属並みの強度を持ち耐蝕性にもすぐれたニューセラミックスの開発、省エネルギーを促進するエレクトロニクスの利用技術、さらには電力損失が少なくて加工性にもすぐれ、太陽電池の実用化をもきわめて促進するアモルファス金属などの新材料技術の開発は、今後の産業への波及が大きい多くの課題がそこにあります。通産省、なかんずく工業技術院でも、サンシャイン計画やムーンライト計画と称して努力をされているようです。だがしかし、わが国は久しく先進諸国が開発したものの応用や改良には大きな成果をおさめてまいったものの、独創的技術の成果は乏しいという批判がなされてきたのであります。しかも、最近、研究開発に投入する資金の割合は、対GNP比率で見ても、アメリカ二・二%、西ドイツ二・三%、イギリス二・一%、フランス一・八%でありますが、わが国は最低の一・七%になっておるのであります。したがって、わが国の科学技術政策について抜本的な見直しを行い、短期的な利益に結びつきやすいいわゆる二番手商品開発型の偏重から基礎研究重視型に改めることが特に重要だと考えるのであります。このことは、産業界においてもこれまでの反省を込めまして次第に強い意見となっていることは注目されるべきであります。国際的にも、他国がつくり出した技術の新しい芽を利用してわが国が開発するというそういうパターンはもう通用しにくくなっていることを知らねばなりません。
 総理にそこでお尋ねをいたします。
 第一に、わが国はこの際、基礎研究基金制度を実現して、いわゆる基礎技術研究分野の充実について政策的、財政的なてこ入れを行うべきであります。類似のものとして、西ドイツにおきましてはマックス・プランク研究所の機能が存在します。あるいはアメリカにおきましては全米科学財団などがあります。それぞれ高い評価を受けていることを想起してください。もちろん国の財政の問題もあります。したがって、幾つかの工夫が必要であります。たとえば、基金に民間が寄付をする場合に若干の税制上の不利にならない措置、あるいは一定の新たな財源措置などの検討が必要でありますが、基本的には、この構想を具体化することは、十年、二十年先、今日の八〇年代から二十一世紀におけるわが国の将来を考えた場合、きわめて重要と思われますが、総理の見解を伺います。
 第二に、地方の研究施設の充実についてであります。今後、新しい芽を育てることの重要性、さらにはエネルギー問題で指摘しましたように、地域的多様性、発想の多様性などが重視されなければなりません。さらに、これからの科学技術の発展の方向の一つとして、多角的分野での独創的な組み合わせ技術も重視されるべきでありますが、この場合、縦割り行政に制約されている中央よりも、地域という横断的な目で見詰めやすい地元研究諸機関については大きなメリットがあるのでございます。したがって、総理は地方の時代を強調されておりますだけに、それを実体あらしめるためには、地方の研究組織の能力の充実、自治体のリーダーシップによる地元の問題解決に対する相互の連携強化に努力すべきでありますが、その所信をお尋ねいたします。
 次に、文部大臣にお尋ねします。
 地方の大学の予算措置について見直しを行い、中央やあるいは旧帝国大学との格差をなくすべきだと思うのでありますが、どのようにお考えか、見解を求めます。
 また、通産大臣は、各県の公設研究所・試験所の能力を抜本的に強化すべきであると考えますが、その御意思があるや否や、お伺いします。
 以上、エネルギーや技術開発問題について幾つかの点をお尋ねしてまいりましたが、このことはこれからの産業構造の展望につきましても重大なかかわりを持つものであります。これからの産業構造は、先ほども触れました脱石油体質を定着させるとともに、産業の高度化、すなわち技術集約知識集約型の体質実現に向かって全力を挙げる必要があることはもちろんのことですが、いわゆる過去におけるようなリーディングセクター的な一部の突出産業によって全体が拡大発展するという時代ではないと思います。さまざまな機械器具やエレクトロニクス部門など多様な分業が成り立つことも必要であり、そのためにはまた一定の国際的水平分業がそれぞれ相応の役割りを持つ必要があると思います。いわゆる産業における分権化、分散化、個性化であり、地域的にも多様化が図られるべきであります。そのためには、中小中堅企業を中心とした地域産業の育成が必要となってまいります。重化学工業中心の在来構造でなく、高度の産業技術を導入した第三次産業の育成強化、いうところの川上産業から文化産業を含めた川中、川下産業の比重が高まっていく、こういうふうな視点が必要かと思うのであります。
 これに関して一、二点お伺いします。
 第一は、中小企業等への対策であります。現在、中小企業分野確保などの制度改善が課題となっておりますが、同時に、これからの展望として、種々のノーハウや技術の提供、人材や自主的開発能力の育成を積極的に推進し、地域産業の安定、地域社会の経済基盤の確立を図るべきであります。したがって、地域産業ビジョンの作成を促進し、技術開発等に財政や金融措置を強化すべきではないでしょうか。
 第二に、産業構造の多様化に関連した雇用の確保についてであります。大平総理が言う田園都市構想には地域の雇用確保について確たる内容が見られないということは多くの人々が指摘するところであり、今年度予算案を見ましても全く欠落していると感ずるのであります。地方における若年層の就職機会の拡大、さらには高齢者雇用の確保は地域社会の安定のために欠かすことはできません。わが党はすでに雇用創出計画を国の責任で実施すべきことを提案してまいりましたが、このような構想は、最近の有効求人倍率が若干改善されているということであるにしても、急速に高齢化社会に向かっているわが国社会にとってその重要性はいささかも減少しておりません。
 労働大臣にお伺いします。
 政府として、地方の雇用の増大確保について積極的な展望を明らかにし、それを実現するための具体的施策を示すべきであります。
 また、定年延長の促進や年齢による雇用差別を制限するための規制措置を講ずるとともに、現在のそれらの実態、海外諸国の実情などを調査し、国民に明らかにすべきと考えますが、御見解を伺います。
 最後に、インフレと物価、減税問題などについてお尋ねいたします。
 政府は、今年度の経済運営見通しの中で、特に卸売、消費者両物価をそれぞれ九・三%、六・四%と想定しておりますが、真にこの程度の物価水準で推移すると考えておられるのでしょうか。私の推測するところでは、この数字は全く当を得ないものではないかと思います。
 まず第一に、石油を初め、金、銀、地金その他の原材料の騰勢は依然として継続しているばかりでなく、円安基調も一向に改善の兆しがありません。さらに、最近の米・ソ、米・イラン問題の成り行き次第では、これらの量的確保自体も危ぶまれるのであります。このような環境の中で卸売物価九・三%を達成することは大変に困難なのではないでしょうか。
 さらに、問題は消費者物価であります。今年度税制改正の中で、政府は、所得税負担の公平化を名分に、高所得層の給与所得控除率の引き下げを図ろうとしておりますが、反面利子配当の総合課税化を先に延ばして、資産性所得者の優遇は温存したままになっております。さきの所得控除率の引き下げを、年収三百万円のいわゆる平均的サラリーマンに例をとりますと、今年度の賃金引き上げがささやかに八%程度上昇したと仮定しますと、所得税で二万二千六百円、住民税で五千七百十円、合計二万八千三百十円の税金の増額となり、その増税率は一一・八%となって、ベースアップ率をはるかに上回る実質増税となるのであります。したがって、可処分所得を大きく低下させるということになるのでありまして、これは今年度を含め三年間も物価調整減税すら見送ってきた政府の実質増税路線が招来した国民生活破壊の悲しい姿なのであります。このことは、適正な個人消費支出すら維持できず、マクロの経済運営をますます困難にすることにもなるでありましょう。
 次に、問題は、政府主導による各種公共料金の引き上げであります、消費者米価を筆頭に、大幅な電力料金や、国鉄、たばこ、ガス、郵便料金、医療、大学授業料などの公共料金や国民・厚生年金の負担増を合わせると、年間十九万円から二十万円の負担増になり、まさに国民生活に大きな打撃を与えるのであります。これでは、所得が一〇〇%捕捉されている勤労者は全くたまらないのであります。
 組合員五十数万人の電機機器産業別労働組合が過去七年間にわたって行っている家計収支実態調査を見てみますと、標準的な家庭で、その実収入、賃金収入、可処分所得などは、この間に七年間に毎年賃上げがあったにもかかわらず、昭和四十八年を一〇〇として、以後連続して五年間九五前後の指数を示し、昨年やっと四十八年水準を回復したものの、消費支出はいまだに九六程度にとどまっています。この間、わが国の経済規模、GNPは三〇%も拡大しているにもかかわらず、消費支出はマイナスかゼロ成長という深刻な事態になっているのであります。これをアンバランスと言わないで何と言いましょう。また、同じ期間、租税を初めとする公課負担率は一貫して上昇し、四十八年の一〇・九%から五十四年には一五%になっております。また、実収入が四十八年水準を回復したといっても、その中身は本人の残業増と家族のパートや臨時労働による収入増で、安定した将来的持続性のあるものではございません。
 以上のような労働と家計実態を直視したとき、勤労国民に対し安易な増税や大幅な税外負担などを課す姿勢はどこからも出てこないはずであります。むしろこの際物価調整減税をこそ行うべきだと考えるのですが、総理はいかがでございましょうか。
 また、本年はいうところのホームメードインフレがきわめて憂慮されるところでありますが、ことしの経済運営、特に先ほどの卸売、消費者両物価の見通しを変更する必要はないのかどうか、さらに、本年の経済運営に当たる御決意をも含めてお伺いをいたします。
 万一消費者物価指数が政府目標を超えることになれば、政治の責任を明確にするという意味からも、より負担増を強いられる中低所得層に対して速やかに物価調整減税を断行すべきだと考えますが、総理の御決意を重ね重ねお聞きしたいのであります。
 また、本年度は世論の総反撃で見送った例の一般消費税構想を、来年度以降もこれは断念すべきだと考えますが、大蔵大臣にこの点は所信を伺います。
 以上、当面の庶民の生活に根差した切実な問題と、やや中長期的展望の中での政策課題についてお伺いをいたしました。総理及び関係閣僚は率直かつ具体的な答弁をお願いします。単に役人の作成したメモを読むだけであれば、まさに官僚主義であり、国民のための行政改革は大平内閣のみずからの体質に向けられなければなりません。
 以上、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(大平正芳君) 福間さんは、 エネルギー問題を単なる経済問題、産業問題にとどまらない文明問題としてとらえられて、これに対する対策を広範な視野から提示されておりました。一つにはエネルギーの供給構造を石油依存型から脱却させなければならぬこと、二つには省資源的な産業の構造、生活の様式、消費の構造を考えていかなければならぬこと、三つには地域との関連を重視していかなければならぬこと、石油石炭エネルギーとそして非枯渇エネルギーとの組み合わせを考えるについて適切な組み合わせを考えていかなければならぬというような諸点について御所見を提示されました。
 私も新たな発想をもってこのエネルギー問題に対処しなければならぬと思いました。仰せになりましたような諸点は全く同感に存ずるのでございまして、そういう示された方向に沿いまして、エネルギー政策を組み立てて推進してまいらなければならぬと考えております。
 そのために、福間さんは、エネルギー計画委員会を設置すべきじゃないか、エネルギー情報センターを設けてはどうか、さらに地域エネルギーの開発促進法を制定してはどうかという具体的な御提案がございました。これらの御趣旨は一々もっともでございますが、こういった新しい仕組みを、機構をつくることなくても、現在われわれの持っておる機構でお示しのような方向に政策の展開ができるのではないかと私は思いますが、これはなお検討させていただきたいと思います。
 第二の御質問は、基礎技術の研究開発政策でございます。
 このために基礎技術の研究基金を設けるべきでないか、それから地方の研究機関の拡充を図るべきでないかというような御提言がございました。私どもといたしましても、御趣旨は全くそのとおりでございまして、政府としては、基礎研究の性格上、従来から大学、国立の試験研究所等におきまして推進いたしておるところでございますが、今後ともその充実を図ってまいりたいと思います。
 そのための税制につきましても、現に各種の優遇措置が講じられておるところでございますが、この活用についてもなお検討を重ねさしていただきたいと考えております。
 その次の第三の問題は、地域産業の振興問題でございまして、これにつきましては地域産業のビジョンを持たなければならぬじゃないか、雇用問題、雇用機会の開発を怠ってはいけないという御趣旨の御提言がございました。
 関係大臣からお答えしていただくことにいたします。
 経済運営につきましてのお尋ねでございました。
 物価抑制を中心といたしました経済運営に懸念を表明されながら政府の方針をお聞き取りいただいたわけでございますが、本年度のわが国の経済は厳しい国際環境のもとで景気の拡大テンポはやや緩やかになるものと思っておりますが、民間の最終消費それから設備投資は自律的に拡大基調をとっておりますことは福間さんも御承知のとおりでございまして、景気の底は相当かたいものがあるように見受けられるのでございまして、四・八%程度の成長率は確保できるのではないかと考えております。
 物価面では、消費者物価六・四%、卸売物価におきまして九・三%と推定いたしておるわけでございます。この程度の目標は、機動的な総合的な物価政策の推進によりまして不可能ではないと考えております。
 来年度のわが国の経済は着実な成長を続けるものと思われますけれども、政府といたしましては、景気、雇用の維持にも留意しながら、当面特に物価の安定を重視いたしまして、機動的な経済運営を図ってまいって経済の安定成長を確保いたしたいと考えております。
 物価調整減税についてのお話でございますが、今日財政が大変厳しい状況にありますことは福間さんも御承知のとおりでございます。わが国の所得税の負担水準は国際的に見て相当低いところにあると思います。課税最低限は主要国の中で最も高い水準にあるわけでございまして、わが国における有業人口に占める所得税の納税人員の割合は、また諸外国に比較いたしましてかなり低くなっておりますこともあなた御承知のとおりでございまして、こういう状況にございますので、所得税についての物価調整減税を行うことは適当でないと考えております。
 自余の問題は関係大臣から御答弁いたします。(拍手)
   〔国務大臣佐々木義武君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(佐々木義武君) 私に御指名ございましたのは、地域エネルギー開発促進法のようなものをつくったらどうかとか、あるいは地方の公的試験研究機関等の充実を図ったらどうか、あるいは地域産業のビジョンのようなものをつくって振興を図ったらどうかというお話でございまして、一部は総理からもお話がございました。私は補足的に申し上げたいと存じます。
 まず、地域エネルギー開発促進法の前に、政府は化石燃料のエネルギー開発のみに心酔しているのじゃないかというお話でございますけれども、そういうことはございません。自然エネルギーと申しますか、あるいは非枯渇エネルギー、あるいはソフトエネルギー等、たとえば地熱とか太陽エネルギーとか風力とか、こういうものに対しましても大変力を入れておるところでございまして、長い将来にわたりますと、水素エネルギーとか、あるいは海水を使う核融合とか、あるいは先ほどもお話がございました太陽光線そのものを利用するアモルファスシリコンの蓄電池とかというものに対しましても、今度の予算で新しい財源も求め、新しい機構もつくりまして並行して進めることにしておりますので、御理解いただきたいと存じます。
 本論の地域エネルギー開発促進法でございますが、私は、これは地方には地方の特色に応じました地熱とか風力とか火力とかあるいは小水力とかというものをやはり自治体で進める要があると思いますので、それはいまでも現在進めております。そういうところに対しましては大いに促進方をいろいろ支援してございますので、いまとりたてて法をつくるまでに問題が熟しておるかと申しますと、必ずしもそうとは思いませんので、しばらくいまのままで進めてみたいと思います。
 二番目の地方の公的研究試験所の充実問題でございますけれども、これはまさしく私は大変重要な問題だと思います。現在も、県等の試験研究機関に対しましては、設備の整備あるいは研究等に対しましてそれぞれ補助金等で助成しておるわけでございますけれども、さらにその研究の成果等で中小企業の技術指導、あるいは新産業の育成と申しますか、そういう指導をしてございますので、そういう面に対しましても政府としてはただいま助成いたして促進方を進めているところでございます。
 三番目の地域産業ビジョンでございますが、これはただいま各地域で進めているところもございまして、たとえば大阪通産局などはビジョンをつくりまして大変張り切ってただいま進めているように私はこの前に参りまして見てまいりました。やはり同じように各地区でこういう産業ビジョンのようなものをつくったらどうかということで、ことしは地場産業に対しましては調査費をつけまして、その調査の結果を待ちましてそれぞれの産業ビジョンのようなものをつくってみたらどうだろうかというふうに実は進めているわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣谷垣專一君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(谷垣專一君) 私に対しまする御質問は、地方大学を充実させて旧帝大との格差を是正しろ、こういう御質問でございます。
 旧帝大につきましては、開学以来の歴史的な経過がございまして、規模、予算等が他の大学に比しまして大きくなっておりますが、近年、国立大学に関しましては、教育研究上の必要性もございますが、さらに高等教育機関の地域的な配置のバランスの問題を考えましてやってきておるわけでございます。したがいまして、地方の大学の、ことにそれぞれ特色のある発展を図る必要があると存じまして、重点的に整備充実を図ってきておるわけでございますが、今後ともその方向で努力をさせていただきたい、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣藤波孝生君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(藤波孝生君) 地域の産業を振興して若年層対策や高齢者対策を含めて地域地域の実情に応じた雇用対策を展開することの重要性は福間議員御指摘のとおりでございまして、労働行政の中で最も大事な課題である、このように考えておる次第でございます。
 そこで、労働省といたしましては、第四次の雇用対策の基本計画におきまして、中長期の展望に立って地域間の労働力のアンバランスを是正するとか、あるいは地域の特性に応じた多様な雇用機会を創出をしていく、こういった努力を重ねていくことにいたしておるところでございます。
 特に、昭和五十五年度におきましては、地方雇用開発委員会を増設をしたい、このように考えておりますし、また五十五年度から出発をいたしますシルバー人材センターといった仕組みも活用いたしまして、地域社会の日常生活の中に密着をした短期的な仕事を組織的に提供することによりまして高齢者の雇用を創出していく、こういった考え方で取り組んでいきたいと思っております。
 さらに、職業安定機関をいままでよりももっと機能的に考えまして、安定所の窓口などをずっと再編成いたしまして、それぞれの地域に応じた雇用をつくり上げていく、こういった決意で臨んでいくようにいたしております。
 さらに、地域地域の福祉施設を充実いたしてまいりますとか、さらに地域のニーズに対応いたしまして地域の職業訓練センターなども設置をいたしまして議員御指摘の方向に向かって努力を重ねていきたい、このように考えておる次第でございます。
 なお、中央、地方の雇用開発委員会におきまして、新しい時代の雇用を創出をしてまいりますいろいろな基礎的な研究に取り組んでおりますので、こういったことも踏まえて今後努力をさらに展開をしていきたいと思います。
 いずれにいたしましても、労働省だけの問題ではなくて政府全体が取り組むべき課題でございますので、他の省庁とも十分連絡を取りまして力強く推進をしてまいりたいと存じておるところでございます。
 二番目に、定年の延長についての御指摘がございました。
 先ほど来の質疑の中で総理からもお答えを申し上げたところでございますが、政府といたしましては、昭和六十年度までに六十歳定年をぜひ一般化したい、このように考えまして、これも第四次の雇用対策の基本計画の中に盛り込みまして強力に行政指導を展開しておるところでございます。
 そのためには、業種別定年延長推進懇談会を開きましてコンセンサスの形成を図るようにするとか、あるいは定年延長の奨励金制度をもっと活用する、さらに高年齢者雇用率を達成するように力強く指導をしていく、また高年齢責雇用開発協会に対する助成措置を講じまして、事業主に対する相談や指導を積極的に進める、こういった施策を進めていくことにいたしておる次第でございます。
 お話のございました年齢による雇用差別の規制をしてはどうかという御指摘でございますが、日本の国のように終身雇用の慣行の上に成り立っております経済社会におきましては、定年延長を推進するその前提として労使の十分な理解のもとに年功的な雇用賃金慣行を見直していくことが必要である、このように考えておる次第でございまして、あくまでも行政指導で推進をしていきたいと考えておりますが、昨年の六月、雇用審議会に定年延長の実効のある推進策について立法化問題も含めて諮問したところでございますので、その答申を待って対処してまいりたいと考えております。
 外国の例はどうかというお話でございますが、米国には雇用における年齢差別禁止法がございますけれども、わが国とはやはり雇用の慣行が違いますので、アメリカはアメリカのようなやり方でやっているというふうにむしろお答えをしなければならぬと思うのでございます。それぞれの国でいろいろな例がございますけれども、わが国の慣行の上に立ちまして、より効果を上げていくというふうな方向で今後も努力をしていきたい。特に、定年の延長につきましては、いま申し上げてまいりましたような線で強力に行政指導を展開をしていきたい、このように存じておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(竹下登君) 福間さんの御質問は、五十六年度以降の財政再建の手だてについてのお尋ねであったというふうに理解をいたしております。
 まず申さなければならないことは、財政再建の進め方についての本院の決議が存在しておるということであります。それからいま一つは、五十五年度の税制調査会の答申をいただきます際、従来の検討の方向及びその後の経済情勢を踏まえながら財政再建の進め方及びその中における税制のあり方についてさらに検討を続けることとする、このようなことがなされております。
 いずれにいたしましても、それらの趣旨に沿って、広く国民各界各層の理解と協力のもとに、歳出歳入全体を通じて十分検討してまいりたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
#45
○議長(安井謙君) 藤原房雄君。
   〔藤原房雄君登壇、拍手〕
#46
○藤原房雄君 私は、公明党を代表して、政府の所信表明に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 最初に、総理に申し上げたい。
 ここ数年、予算編成の時期になると、財政当局は、財源がないということで、老人医療の有料化や児童手当、教科書の無償配布の廃止といった脅迫ともとれる福祉切り捨ての暴言を吐いてまいりました。しかも、そうした言動により関係国民を不安に陥れ、福祉関係の財政支出を減らすというやり方は、こそくな手段であり、断じて許せません。
 また、先般の総選挙における国民の審判は、一般消費税を否定し、財政再建のために不公平税制の是正を要求し、支出面ではむだ遣いや不要不急の洗い直しをまず行うべきだということでありました。
 ところが、政府のやっていることは、予算編成前に、法人税を引き上げ三千億円程度の増収を図るという動きがあったにもかかわらず、大企業擁護のためか、それを取りやめたり、利子配当に対する課税の措置も実施時期が四年も先のことだと一言われています。
 不公平税制の是正も実施せず、財源不足といっては福祉切り捨てを言い出し、社会保障の予算を一般会計の伸び一〇・三%より低い七・七%に押さえ込むというやり方がことしの予算編成の実態であります。大平内閣の弱い者いじめの政治姿勢が如実にあらわれたものと断ぜざるを得ないのであります。ここに、五十五年度予算案の修正を強く要求するものであります。
 加えて、減速経済と財政危機の中で、従来の肥大化した行政機構とその運営を簡素合理化し、かつ時代に適合した効率のよいものに改める行政改革を断行することは、いまや最大の政治課題であります。
 しかしながら、昨年末に閣議決定した中期行政改革を見る限りでは全く色あせたものと言わざるを得ません。
 明治維新の立て役者勝海舟は、「行政改革はよく気をつけないと弱い者いじめになる。大体、改革ということは公平でなくてはいけない。そして、大きいものから始めて小さいものを後にするがよい。言いかえれば、改革者が一番に自分を改革することだ」と述べております。これはまことに的を射た言葉であると思います。
 そこで、総理に伺いたい。大平総理自身に、官僚の抵抗を抑え、自民党内の意識を改革し、総理の政治生命をかけて国民の納得いく行政改革を断行する決意があるかどうか、明確にお答えをいただきたいのであります。
 次いで、順次当面する諸問題について具体的に質問いたします。
 最初に、エネルギー問題であります。
 わが国は、エネルギー確保のために、積極的な資源外交とともに、石油供給先の多角化、分散化に努め、また、中国原油等の重質油についても積極的な取り組みが必要と思うが、今後の見通しと対策について伺いたい。
 第二に、長期エネルギー需給の暫定見通しの中間報告によれば、現在、全エネルギーの七五%を石油に依存しているが、これを昭和六十五年には五〇%に目標を置いています。内容は、主として電力向けとなっている輸入一般炭を五十二年実績の五十六倍、また、原子力発電の出力を六・六倍に、さらに太陽熱利用など新エネルギー等は石油換算で百二十四倍の伸びを見込んでいます。この目標は、石油依存度を減らすための希望的なものとしか思えないのであります。
 政府は、五十五年度のエネルギー予算を三一・九%の大幅な伸びと宣伝していますが、総額四千二百四十一億円で、予算増加額に占める割合は二・六%でしかありません。いまこそ代替エネルギーの研究開発を初め、可能な限りの対策を講ずることによって、今後の具体的な計画と、それに伴う施策と、実行の決意があるのかどうか、総理の見解を求めます。
 第三に、石油の浦費節約であります。政府は、東京サミットでの五%から七%と省エネルギー対策を強化しました。そこで、さきの五%の目標は現在八五%程度の達成率と聞いていますが、七%達成についての見通しはどうか。
 また、恒久的な対策として、浦費量の七割を占める産業用については、産業構造の転換を強力に進めるとともに、民生用にも機器の開発など具体的な施策をとるための体制を確立すべきと思うがどうか。
 第四に、石油代替エネルギーとして見直されつつある石炭は、国内では最近年産二千万トンを割り、この体制の維持は困難になっております。さらに、炭鉱は、採炭現場の深部化など、生産コストの上昇に加えて、多くの貯炭をかかえております。電力用炭を中心に、需要の拡大、海外炭との価格差の調整問題など、石炭産業の保護育成並びに産炭地振興対策の強化拡充、鉱山保安技術の研究について政府は一層の努力をすべきであると思うが、所信を伺いたい。
 次に、家計への影響についてであります。
 このたびの原油値上げに伴い、電力、ガス料金や一連の公共料金の大幅値上げの動きは、国民生活に大きな打撃を与えようとしております。物価対策には、今後予想される便乗値上げ等に対する監視体制の強化を初め、きめ細かい財政金融両面からの総合施策を講ずべきであります。
 いま、本格的な寒波とともに灯油の需要期を迎えておりますが、北海道の旭川市では、一冬一所帯平均二千二百リットルの灯油を消費します。昨年の小売価格一リットル平均三十三円のものが現在は六十八円と二倍以上も高騰しており、この冬は各家庭とも七万七千円もの支出増で、十五万円の暖房用燃料費が見込まれているのであります。特に、量の確保は十分と言われながら値上げだけは続いている灯油に対しては、いまこそ国民生活安定緊急措置法に基づく標準価格、または石油業法に基づく標準額を設定し、政策的に価格を抑制すべきと思うがどうですか。
 また、給与所得者に対する燃料手当を非課税所得にするなど、寒冷地を考慮した税制改革を強く求めるものであります。
 地方の時代と言われる今日、三全総の位置づけから見ても、積雪寒冷地の経済発展のため地元中小企業向け官公需を拡大するなど地場産業の育成と、不況にあえぐ中小企業の救済策を早急にとるべきでありますが、総理の所信をお伺いしたい。
 現在の法律は寒さに対して何の配慮もないため、寒冷地では基盤の弱い地場産業や住民生活にはかり知れない格差を生じているのであります。一例として、かつて小学校の教室が朝零下十八度で、暖房を入れてもなかなか上がらないというところがありました。老朽度が改築基準に達しないため建てかえがむずかしいということでしたが、その後特例を設けたようであります。しかし、積雪寒冷地に対しては、このような一時的な処置ではなく、恒久的な諸施策を早急に確立すべきと思うが、総理の御所見を伺いたいのであります。
 次に、農林漁業についてであります。
 わが国農業は、まさに暗い嵐の中の船出とでも形容すべき一大危機に直面しております。政府は三カ年間固定として始めた大規模第二次減反政策を本年度からさらに強化しようとしております。しかし、減反政策十年の今日でも、生産農家が安心して転作する条件が整備されておりません。
 食糧問題には国民的合意が大事です。総理府の世論調査では、「できるだけ自給」が六九%、「安ければ輸入品を」が二一%となっています。しかるに、昭和五十三年の主要農産物の海外輸入量は約二千九百万トンで、国内の米の年間生産量の二倍を超えているのであります。
 食糧について、国際的には中長期的に見て緊迫することは必至と予測され、加えて米ソ間で戦略物資として利用されるなど、消費者の不安をつのらせております。
 そこで、お伺いいたします。
 いま政府が見通しを進めている主要農産物の長期需給見通しの結論はこれを的確に占う指標となるものであります。現在四〇%前後に落ち込んでいる穀物自給率は、昭和六十五年にさらに下がるのではないかと言われております。これが事実だとすれば、わが国食糧政策の大きな後退であり、その影響はきわめて甚大であります。今後の自給率をどの程度に維持される考えなのか、その具体的なプロセスはどうか、さらに、これまでの安易な食糧輸入政策を転換する考えがあるかどうか、あわせて明確な御答弁を求めるものであります。
 展望のない営農ほど農民を悩ませるものはありません。水田再編対策で大事なことの一つは、水田基盤整備と土壌改良、特に田畑輪換を進めることであります。しかるに、五十五年度予算では土地改良関係予算は実質的にマイナスとなっています。また、水田再編対策奨励補助金は財政難を理由に据え置かれていますが、物価上昇の中で農家に犠牲を強いるばかりです。いまこそ条件整備をより積極的に推進すべきであると思うが、お伺いしたいのであります。
 第二に、総理は、所信で今後の農業のあり方として「生産性の高い近代的農業経営を中核に」と申されましたが、しかし、従来政府が進めています大規模営農も当初の計画が大幅に狂い、その政策さえも破綻寸前であります。モデル農村としてスタートした秋田県大潟村に入植した農家も、激変する農政に耐えられず、わずか入植五年にして農地を手放さねばならないという深刻な問題が起きています。また、北海道の根室、宗谷地方の酪農家も、零下十数度の中、平均五十頭の乳牛を飼育し、二千万円の借金を背負いつつ、生産調整を余儀なくされているのであります。巨額の投資による国営パイロット事業は農政の中でいかなる位置づけであったのか、また、今後の対策についてお伺いをしたい。
 先人は、原始林を開拓するのに、その手にくわとおのを握り自然の猛威と闘ったが、未来の希望に燃えていたのであります。しかし、現在はトラクターを駆使しての営農とはいえ、政府の場当たり農政のため、すべての農家の苦悩ははるかに深刻なものと言わなければなりません。農林水産大臣みずから現状を視察し、所要の施策を講ずべきことを強く要求するものであります。
 第三に、漁業問題について伺います。二百海里時代に即応して沿岸漁業が強く見直され、中でも栽培漁業が期待されております。しかるに、栽培漁業は法制上いまだに整備されておらず、予算措置も場当たり的に対応しているにすぎません。
 わが党は、前国会に栽培漁業振興のための法律を提出しました。さきの国会で同僚の相沢武彦議員の質問に答え、栽培漁業育成促進法について検討すると約束しております。政府も立案作業に入ったとも聞いておりますが、今国会に提出されるのかどうか、検討結果を明らかにしていただきたいのであります。
 漁業についても関係国との水産外交の推進が緊要でありますが、特に今回の米ソ関係によりその影響が心配される日ソ漁業交渉について、政府の見通しと対策を明らかにしていただきたいのであります。
 次は、森林の持つ多様な諸機能を高めるため、地域林業と山村の活性化を目指し、林業の構造改善政策や山村振興法、過疎地域対策緊急措置法等が山村の整備や生産力向上に役立てるよう十分に配慮すべきと思うが、どうか。
 また、農山漁村及び離島における就労者の老齢化が言われております。生活環境整備と福祉対策の一層の強化と後継者育成の諸施策を講ずべきと考えるが、あわせてお伺いしたい。
 次に、福祉問題、特に高齢者問題と青少年育成等についてお尋ねします。
 総理は、昨年、高齢化社会に対しては「明確な展望のもと、計画的にその対応を進めていく」と明言しております。しかし、年金、医療、雇用等の諸問題のいずれも制度や環境の整備も行わず今日に至ったために、高齢者は病気や生活への不安がつのるばかりであります。そこで、長期的展望に立つ総合的な計画の作成のためプロジェクトチームをつくって検討すべきであると思うが、お考えをお伺いしたい。
 また、当面充実を急ぐものとして、寝たきりお年寄りの介護の問題ですが、特別養護老人ホームの農山漁村への設置と家族介護に対する援助を強化すべきです。
 さらに、ひとり暮らしのお年寄りに対する公営住宅の枠の拡大と、三世代向け公的住宅の建設についての見通しをお伺いしたい。
 次に、青少年の健全育成についてです。
 子供たちの心と体がおかしくなっているとの多くの先生や医師が指摘をしておりますが、教室できちんと座っておれない、肩がこる、また、近視や虫歯に加えて、貧血、腰痛、高血圧といった成人病と老化現象が一緒にあらわれている子供が多いとのことです。その上、児童の死亡原因を見ますと、昔は肺炎や腸炎が上位を占めていましたが、近年は心疾患や小児がんに変わってきています。これらの子供の環境には、都市化により遊び場が失われ、受験勉強や塾通いのため自由な時間のない生活を強いられ、加えて、公害や有害食品、食品添加物等の影響も無視できないと考えます。
 そこでお尋ねしますが、最初に、児童の心身の発達は学校教育から大きい影響を受けます。知的教育だけでなく、健全な人間づくりという立場に立って教育のあり方を見直すべきです。
 さらに、子供の心と体の変化を監視し、早急に対策を講ずる体制をつくるべきと思うがどうか。
 次に、学校給食における食品添加物の使用については、規制できる法的措置をとるべきです。また、児童の飲食物はもちろん、一般の加工食品について、その健康に与える影響から、塩分、糖分などの含有量明記について検討してはどうか、お伺いをいたします。
 第二に、情緒障害児に対する問題です。複雑多様化する現代社会の中にあって、不安定な今日の社会情勢を反映するがごとく年々増加の一途をたどる情緒障害児、いわゆる自閉症児などは、全国で約二万人と推定されております。これは、人間を軽視し、ただGNPを追い求めてきた政策の犠牲と言っても過言ではありません。診断基準も不明確で、専門機関も少なく、十分な治療や教育も受けられないまま行政の谷間に放置されているのであります。
 そこでお尋ねします。
 最初に、自閉症患者を診る診断基準を速やかに確立し、さらに身障者、特に自閉症児の指定病院あるいは治療的施設を全国に適正に配置して、安心して治療が受けられるように配慮すべきと思うがどうか。
 次に、自閉症児の養育のために専門教職員の増員と施設の配置を実施し、また、成人患者に対しては社会復帰を考え、その療育、訓練のための施設を設置すべきと考えるがどうか。
 明年は国際障害者年に当たります。政府としてもこうした問題について行動計画をつくって積極的に取り組むべきであると強く要望するものであります。
 以上、私は当面する諸問題についてお尋ねをいたしましたが、総理並びに各大臣の誠意ある御答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#47
○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、福祉に対する配慮が予算編成上において足らないのではないかということでございますが、政府といたしましては、厳しい財政事情のもとにおきましても、歳出規模を極力抑えた中におきましても、福祉予算につきましては極力配意いたしてございますことは、予算案を吟味していただいて評価いただきたいところだと考えております。今後も財政再建を続けてまいらなければなりませんけれども、福祉予算につきましては周到な配慮をしていかなければならぬと考えております。
 社会保障の制度は、しかしながら制度、水準とも相当なところへ来ておると思いまするけれども、何さま高齢化が進行いたしておりまするので、将来のことを考えますと、前広にいろいろの対応策を考えておかなければなりませんで、そういった苦心の跡は予算編成過程を通じまして読み取っていただきたいものと考えております。
 行革でございますが、行政に対する国民の信頼を回復するためには、簡素にして効率的な政府を目指していくことが不断にわれわれが追求しなければならない政治責任であると考えております。政府といたしましては、五十五年度を初年度といたしまして、定員の削減、特殊法人の統廃合、その役員の大幅な縮減、それから地方支分部局、付属機関等の整理合理化を初めといたしまして、各種行政事務の整理合理化、補助金の整理等、各般にわたりまして一連の行革計画を立てて、これから数年間の間、着実に実行してまいる手はずを整えたところでございます。これで不十分であるという御批判を各方面からいただいておりまするけれども、政府は誠実に決めましたことの実行に当たりたいと思いますが、一層の御鞭撻をお願いいたしたいと考えます。
 エネルギー対策につきまして藤原さんは四つのことを主張されまして、供給源の多角化、分散化の問題代替エネルギー開発の推進、節約の強化、機構体制の整備でございますが、これはいずれも仰せのとおり政府が重点を置いて施策しなければならない政策目標でございまして、仰せられたような線に沿いまして鋭意いま進めておるところでございます。
 石炭産業につきましては、国内石炭、これは貴重な代替エネルギーの資源でございまして、従来からその生産の維持に最大限の努力を払ってきたところでございますが、他方、石炭需要を確保するため、石炭火力発電所建設の推進、石炭引き取りの増加等に対する助成措置を講じてまいったことも御案内のとおりでございます。
 また、石油代替エネルギーとしての石炭の積極的利用を図る見地から、石炭の液化・ガス化技術の開発につきましても努めてきたところでございます。今後ともこうした石炭の利用技術の開発は積極的に推進してまいりたいと考えております。
 産炭地振興策につきましても、産炭地域における鉱工業等の総合的、計画的な振興を図るために従来より各種の措置を講じてまいりましたが、今後とも遺漏のないようにやってまいりたいと考えております。
 なお、輸入炭との調整につきましては、従来どおり国内炭の使用を優先するという原則は堅持してまいりたいと考えております。
 石油製品の価格政策でございます。
 これはたびたび本議場におきまして論戦になっておるものでございますが、政府といたしましては、たびたび申し上げますように、需給のバランスを保つことを第一義と心得ておりまして、現在需給はおおむね適正なバランスが保たれておると承知いたしております。
 海外の原油高につきましては、市場を通じて適正に反映されるのはやむを得ないと考えますけれども、その過程におきまして起きる便乗値上げ等につきましては、関係業界を厳しく指導、監視しておるところでございます。
 政府といたしましては、今後そういう態度で価格政策はやっていけると思いますけれども、現在のところ法律による介入というような段階に立ち至っているとは考えておりません。
 給与所得者に対する燃料手当の問題にお触れになりましたけれども、この問題は、燃料手当といえども一種の給与でございますので、これは税制上特別な扱いにするということは至難のことと考えております。
 過疎地域対策についてのお尋ねでございました。
 これは議員立法によりまして昭和四十五年以来過疎地域対策緊急措置法のもとで対策を講じて相当の成果を上げてきたように思われるのでございます。本年三月末でこの法律が失効することになっておりますけれども、その後もこの過疎地域に対しましては計画的な振興を図ってまいりたいと思いまして、これにかわる立法につきましては目下自由民主党で検討中と聞いております。
 穀物の自給率の問題でございます。
 現在、農政見直しの一環といたしまして農産物の長期需給見通しの検討を行っておりまして、この中で穀物の自給率についても検討を進めておるところでございます。
 食糧自給力につきましては、これを向上する方向で、国民食生活の今後のあり方、国民生活の安定の観点から、各界の意見を詳細に聴取しながら検討を進めてまいりたいと考えております。
 高齢化社会に対する対応、総合的な計画作成のためにプロジェクトチームをつくってはどうかという御提言でございます。
 高齢化社会への対応策はこれからの政治の一大眼目になってまいることはよく承知いたしております。そのためには政府全体でこれに当たらなければならぬと思いますが、プロジェクトチームをつくるかどうか、これは検討させていただきたいと思います。
 自余の問題につきましては、関係大臣から御答弁させていただきます。(拍手)
   〔国務大臣佐々木義武君登壇、拍手〕
#48
○国務大臣(佐々木義武君) それでは私から補足的に申し上げたいと存じます。
 一つは、中国原油等の重質油対策を積極的に進めるべきではなかろうかというお話でございまして、まことにそのとおりでございます。今後石油製品の適正な需給確保を図るためには早急に重質油対策を講ずる必要があることは、御指摘のとおりでございます。
 このため、石油、鉄鋼、電力等関連業界が一体となりまして、五十四年度から四カ年計画で総事業費約百八十億円の規模でこの対策技術の開発に取り組んでおります。政府といたしましても、ナショナルプロジェクトとしてこれを位置づけまして積極的に支援しておるところでございまして、五十五年度におきましては六十八億円を計上いたしましてこれらの対策を進行してございます。
 二番目は、長期エネルギー暫定見通しの中間報告について、その実現の見通しとそのための対策を問うという点でございますけれども、最近の厳しいエネルギー情勢に対応いたしまして、政府といたしましては、お話しのような暫定見通しに基づいて、石油の依存度を現在の七五%から十年以内に五〇%に下げたいということで、その二五%の分は新エネルギーあるいは代替エネルギーでこれをカバーしたいということでこの計画ができ上がってございます。
 そこで、まず省エネルギー問題でございますけれども、省エネルギーにつきましては、先般決定いたしました七%の石油消費節減対策の実現及びエネルギーの使用の合理化に関する法律の強力な運用等によりましてこれが達成を図りたいと存じております。
 代替エネルギーの開発につきましては、原子力、石炭、LNG、地熱、太陽熱等の開発利用を推進するわけでございますけれども、そのために新エネルギー総合開発機構を、この行革で非常にむずかしいときにもかかわりませず、大変な御理解をいただきましてこのたび設置することになりました。予算、財源等も確保していただきましたので、こういう新しい推進体制と財源をもちまして非常に積極的な推進を進めてみたいと思っております。
 また、石油の安定供給確保については、消費国間の国際協調を保ちつつ石油供給源の多角化に努めてまいりたいと存じております。
 次に、石油消費約七%の達成が可能なのかどうかというお話でございまして、御承知のように一月十一日に総合エネルギー対策推進閣僚会議でそれを決定いたしました。従来の五%の線をさらに二%上げまして七%にしようというので決定いたしましたが、その主たる内容は、暖房温度の引き下げ、生産分野の燃料の転換あるいは燃料の節約等を中心にいたしまして達成は確実なものとみなして、ただいま実行中でございます。
 それからその対策の一つとして御指摘がございました、大変ありがたい御指摘でございますけれども、産業別に省エネルギー構造への転換を進めるとともに、民生用省エネルギーの機器開発体制の確立を図るべきであるかどうかと、こういう御指摘でございまして、御指摘のように生産分野におきましての節減措置としましては、去年十月にエネルギーの使用の合理化に関する法律ができましたので、この運用によりまして、まず産業の生産部門の合理化対策を強力に推進いたしますし、同時に、電力とかあるいはセメント等石油を使っている企業を早急に、できますれば、石炭等に燃料転換いたしまして、これによって節約を図りたいということにしております。
 また、民生用機器、すなわちクーラーとか冷蔵庫とかいったたぐいのものかと存じますけれども、これに関しましては、エネルギーの使用の合理化に関する法律に基づきまして、ただいまガイドラインを各メーカー等に示して、これを遵守してそういう省エネルギー機器を開発するようにただいま指導してございます。
 石炭に関しましては、総理が申し上げましたので私からは省きますが、一つ地場産業の育成のため中小企業向けの官公需の拡大をすべきだと思うがどうかという御指摘もございましたけれども、これは総理がたしかお答えにならなかったようでございますから、私からかわってお答え申し上げますけれども、中小企業向け官公需の確保につきましては、御承知のように官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律、いわゆる官公需法という法律がございまして、この法律に基づきまして、毎年、国等の契約に関して方針を定め、その達成に努めておりますが、地場産業と密接な関係があります地方公共団体に対しましても、国の施策に準じてひとつ右へならえで協力してくださるようにということで、せっかくただいま努力中でございます。今後とも努力を継続するつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣武藤嘉文君登壇、拍手〕
#49
○国務大臣(武藤嘉文君) 藤原先生にお答えをいたします。
 まず最初は、食糧の自給力の問題につきまして総括的にはいま総理から答弁がございました。そのプロセスについてどうかという問題と、それに関連して輸入政策をどうするかと、こういう点を私の方からお答えをさせていただきます。
 先ほど秦野さんの御質問にもお答えをいたしましたけれども、今後の問題といたしましては、輸入政策については、可能な限り日本でできるものは極力自給をしていきたい、そういう考え方で進めてまいりたいと思っておりますし、また、国内の生産におきましては、たとえば小麦の品種改良あるいは土壌の改良といったような技術開発、あるいは生産性の高い近代的な農業経営の育成、あるいは、先ほど申し上げましたが、適地適産というような考え方から農業生産の再編成、これらの問題をそれぞれの地域の実態に応じてできるだけ推進をして、その結果総合的に自給力が高まっていくようにしていきたいと考えております。特に御指摘もございましたけれども、大体どのくらいというのは、先ほど総理の御答弁にありますように、まだ私どもこれから農政審議会でお願いをする点になっております。
 次に、水田利用再編対策につきまして、大変農民に御迷惑をおかけしておりまして恐縮に存じておりますが、条件整備の推進をしていかなければならないことは当然でございまして、そういうために先ほど土地改良の予算はどうも実質的には減っておるではないかと、こういう御指摘でございましたが、先生御承知のとおり、この水田利用再編対策に伴いまして、先生御指摘の田畑への転換も当然でございますが、とにかく排水対策については十分やっていかなければならないということで、ことしの予算におきましても、これは五十四年度が二百三十三億円に対しまして二百六十二億円の予定をいたしておるわけでございます。それ以外についても、地域農業生産総合振興対策の拡充強化とか、あるいは稲作から転換をされようとする農家に対する貸付金の制度とか、いろいろ条件整備を五十五年度においてもやってまいりたいと考えておる次第でございます。
 次に、大規模営農の問題について、いわゆる農用地開発事業、これについていろいろと御指摘がございました。私どもは、やはりこの事業は、今後とも食糧の総合的な自給力の向上、あるいは経営規模の拡大、そしてそれによって自立経営農家をより育成をしていきたい、こういうような考え方、あるいは農業を基盤とした地域の開発、こういうような観点からも進めていきたいと思っております。しかし、先生の御指摘の点につきましては、残念ながら私まだ現地を見ておりませんし、事務当局からの報告では全体的には経営はうまくいっておるという報告でございますけれども、せっかくの御指摘でございますので、私も時期を見てぜひ現地へ参りましてその事情を聞き、そしてそれはどこに問題点があるのかということをはっきりさせた上で今後の政策に役立たせていただきたいと考えております。
 それから日ソ漁業交渉の見通しにつきましては、この間うちから総理からも御答弁があったことでございますけれども、現段階ではまだ見通しをはっきり申し上げるような時期ではないと思います。いずれにいたしましても、私ども農林水産省といたしましては、北洋におけるわが国の漁業の維持安定には十分配慮していかなければならぬと考えております。
 それから漁業の問題でいま一つは栽培漁業のお話がございました。私どもも今後の日本の水産行政の中では栽培漁業は最も重要視していかなければならないと考えております。予算においてもそのようなつもりでより多くの予算を五十五年度では予定をしておるわけでございますが、ただ、御指摘の法制化の問題につきましては、まだその段階には至っておりませんので、この通常国会には提出をする予定はいたしておりません。
 次に、山村社会の整備拡充、あるいは森林資源の整備、林業の振興の問題でございますが、これはもう御指摘のとおり、当然そういう方向に行かなければならないわけでございまして、この五十五年度から新しく出発をいたします新林業構造改善事業、あるいは林業地域総合整備事業、あるいは第三期の山村振興対策事業につきましてもその方向で推進してまいりたいと考えております。
 農山漁村及び離島における生産環境整備と福祉対策の一層の強化、あるいは特に老齢者が多いということ、あるいは後継者の育成の施策というものにつきまして、よりやはり農村の方々がそこに定着していただくためにも今後努力をしていかなければならないことは当然でございまして、老齢者対策といたしましては、この五十五年度から農村高齢者活動促進特別事業というようなものも設けたいと思っておりますし、従来からございますいわゆる農家あるいは漁業の方の生活改良資金につきましてもそういう方向で充実をしてまいりたいと考えております。
 また、後継者の育成の施策につきましては、各県の農業大学校などいわゆる実践的研修教育の強化とか、あるいは自主的集団活動の促進、研修資金の援助の強化等、いろいろと進めてまいりたいと考えております。
 さらに、農山漁村を豊かで活力に満ちた地域社会とするために、生産環境と生活環境これを一体的に整備する事業などもより一層充実してまいりたいと思っております。また、新しく農林漁業構造改善村落特別対策事業を実施することといたしておりまして、極力御指摘のような方向で努力をしていきたいと思っている次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣野呂恭一君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(野呂恭一君) 第一点は、寝たきり老人に対しての福祉の問題でございます。
 寝たきり老人のための特別養護老人ホームにつきましては、従来からそれぞれの地域の実情に応じまして整備の促進を図ってまいったところでございますが、御指摘のように農山漁村につきましても需要に応じた適正な整備を図ってまいりたいと考えております。
 また、寝たきり老人を介護する家庭に対しましては、家族の方々に過重な精神的かつ肉体的な負担をかけることのない、住みなれた家庭、地域での生活を維持できますように、従来からの家庭奉仕員派遣事業、もう一つは寝たきり老人短期保護事業、デーサービス事業などの福祉施策を講じてまいったわけでありますが、今後ともこれらの施策の強化拡充に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 第二点の食品添加物についてでございますが、食品添加物は十分な安全率を見込みまして食品衛生法により規制を行っているととろでございます。天然添加物につきましては、これまでの製造、使用の実態について調査を行ってまいったのでございまして、その結果を踏まえまして安全性に関する試験を実施することにいたしておるのでございます。
 なお、すべての食品加工について塩分とか糖分の表示をさせる考えはないかということでございますが、いまのところ考えておりません。
 第三に自閉症児などの情緒障害者に対する治療並びに福祉についてでございますが、自閉症児は児童の精神発達障害として医学的にとらえて対応いたしまして、従来から心身障害研究費の対象といたしまして研究を進めておりますが、専門の研究会を設けまして診断基準の確立などに努力をいたしておるところでございます。その結果を踏まえまして、来年度からは自閉症児のための専門施設を設けましてこの対策を充実いたしたいと考えておるわけでございます。専門施設といたしましては、自閉症児の態様に応じまして、医療を中心とする施設と、もう一つは養護訓練を中心とする施設と両面を考えておるのでございます。逐次これが増設を図ってまいりたいと考えております。
 なお、自閉症などの成人患者につきましては、自閉症は成人に達しましてもその症状が続く場合があるのでございまして、こうした成人患者に対しましては今後前向きにその対策を進めてまいりたいと考えております。
 最後に、障害者の福祉向上についてでございますが、明年の国際障害者年のテーマでございます「十分な参加と平等の実現」を目指しまして、国連総会のいろいろの決議を勘案しながら、長期的な視野に立って、政府一体となって障害者の総合的な福祉の向上に努めてまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣谷垣專一君登壇、拍手〕
#51
○国務大臣(谷垣專一君) 第一点は、寒冷地の小学校、中学校の建てかえの問題でございますが、寒冷地におきます暖房の必要性は言うまでもございませんが、老朽した建物におきましては暖房効果が十分でございませんので、寒冷地におきまする改築の促進は従来とも特に意を用いてやってまいったところでございます。ところが、御指摘がございましたように、いまの法律のもとにおきます危険度は構造耐力の方に着目しておりますので、寒冷度という観点からは少しおろそかになっておるところでございます。そこで、豪雪寒冷地帯ということで判定基準につきまして五百点の緩和を行いまして、こうした地域におきます建物に対しての改築の促進に努めてまいっておるところでございます。
 それから第二点は、子供の心と体の状況がおかしくなっておるから、学校教育の場合これをどうするかという問題でございますが、知識の伝達に少し偏り過ぎておって調和的な発達がおろそかになる傾向があることについては指摘されたところでございますので、本年四月から実施されます新学習指導要領では、ゆとりのある学校生活の中で調和のとれた児童生徒の育成ということに十分配慮してまいりたいと考えております。
 具体的な施策として、学校におきましては、体育的クラブ活動の充実、あるいは体力つくり推進校の指定を行うなど、あるいは家庭や地域においては、母と子のいわゆる基礎体力つくり教室の開設でありますとか、自然の中でうんと遊ばすというような意味のグリーンスポーツ構想等を積極的に進めてまいりたいと思っております。
 それから健康診断体制の充実でございますが、これは養護教諭等の充実、増員の計画を今年度から進めてまいりまして、子供たちの健康状況につきましての養護を進めていこうと考えておるところであります。
 それから次の連関いたしましての御質問に学校給食の問題がございました。文部省といたしましては、給食用物資の購入に当たってはできるだけ良質なものを選択して、不必要な食品添加物が添加された食品でありますとか、内容表示、製造業者等が明らかでない食品等につきましては使用しないよう指導しておるところでございます。
 それから自閉症児の問題は厚生大臣の方からお答えがございましたけれども、御質問の中に専門の教職員の増員であるとか学校施設の問題についてのお尋ねがございました。これらは、こういう自閉症を含めまして情緒障害児につきましては特殊学級または養護学校で教育することとなっておるわけでありまして、これらの学校にかかわりまする教職員につきましては、今回の標準法改正によりまして、学級編制基準を引き下げてその改善を図ることといたしております。また、施設につきましても国庫負担にかかわります所要の予算措置を講じてまいりたい、かように考えております。
 なお、文部省といたしましても、この自閉症につきましての原因、治療方法あるいは教育方法につきましてはまだ十分に確立していない点があるわけでございますので、今後とも国立特殊教育総合研究所におきましてこれらの研究を進めてまいりたい、かように考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#52
○議長(安井謙君) 前島英三郎君。
   〔前島英三郎君登壇、拍手〕
#53
○前島英三郎君 私は、参議院クラブを代表いたしまして、心身障害者の福祉問題を中心に、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 私は、いま、この演壇に上がるために遠回りをいたしました。正面からの登壇を強く希望したのでありますが、残念ながら許されませんでした。それは、私が車いすに乗っているためではありますが、しかし、それだけではありません。昭和十一年に完成したこの国会議事堂の構造のためでもあります。大正七年、議事堂の設計に取りかかったとき、将来車いすで登壇する者があろうとはだれも予想しなかったでありましょう。当時としてはやむを得なかったかもしれませんが、しかし、この議事堂が健康で自由に歩ける人を標準につくられたことには間違いないのであります。だからこそ、私は自力で登壇することができないのであります。
 総理、健康で歩ける人を標準にしてつくられているのは議事堂ばかりではありません。公共物を初めとして、町や、一般の建物も、交通機関も、すべてがそうであります。というより、いまの日本の社会全体がそうした標準に従ってつくられ、運営されていると言えるでありましょう。そして、その底には、歩ける人、目の見える人が標準であり、ノーマルであるという暗黙の了解があるのであります。それは、裏を返せば、歩けない、目が見えない、聞こえない、知恵がおくれているといったハンディキャップのある人は、特殊な存在であり、少数であり、大多数の規格に合った五体満足と言われる人々のために多少の犠牲になってもやむを得ないという暗黙の了解であります。いや、暗黙ではなく、あからさまの場合もしばしばあるのであります。
 わが国のこれまでの福祉は、体が不自由なら、年をとったら、社会のお荷物として施設に入れる、つまり隔離することが大きな柱となっておりました。昨年から実施された養護学校の義務化も、ハンディキャップがあるという理由で普通学校で学ぶことが許されておりません。私は養護学校の存在を否定するものではありませんが、何でもかんでも養護学校という文部省の強硬姿勢は、障害児狩りだと決めつける人さえいることを指摘しておきたいのであります。
 しかしながら、総理、あなたが施政方針演説で述べられたように、一九八〇年代を迎えたいま、経済問題も財政問題も外交問題も発想を大きく転換しなければならないように、福祉もまたしかりであります。これまで当然だと思っていた標準を考え直すときが来ているのではないでしょうか。
 私は、今後の福祉政策のあり方として、ノーマライゼーションの考え方を基本に据えるべきだと考えております。ひとり歩きできないお年寄り、心身障害者、そうしたハンディキャップのある人は決して特殊な存在ではなく、むしろそういう何らかのハンディキャップのある人がいる社会こそ正常な人間社会である、こういう考え方であります。人間社会は軍隊ではありません。強い人も弱い人もおります。歩ける人も歩けない人もおります。目の見える人も見えない人もいるのであります。それがありのままの人間社会なのであります。こうした前提に立って、社会全般にわたってあらかじめハンディキャップのある人々への配慮をしておこうという考え方がすなわちノーマライゼーションであります。
 このような考え方に従って、世界約二十カ国で、公共的な建築物は障害者等すべての人が利用できるように設計施工することを法的に定めておるのであります。幾つかの国では、障害児が一般の子供と一緒に学ぶ、いわゆる統合教育を進めております。ある国では、紙幣に点字さえ打ってあるのであります。こうした配慮が行き渡れば、多くの障害者と呼ばれる人々が社会的には全く障害者でなくなるでありましょう。障害は、主として個人とその環境との関係としてあらわれてくるものだからであります。障害児・者の教育、就労、自立を進める対策も、このような観点に立って取り組む必要があると思うのであります。
 今後のわが国の福祉政策の基本姿勢の問題として、総理並びに厚生、労働、文部の各大臣がどうこれを受け取られるか、まず承りたいと思うのであります。
 さらに、その具体的な第一歩として、今後つくられる公共建築物をハンディキャップのある人も使えるように設計施工すべきことを法的に明文化する考えがあるかどうかもあわせて伺いたいのであります。
 さて、次に、来年一九八一年は、国連総会の決議による国際障害者年でありますが、これに対するわが国の取り組みについて私も重ねてお尋ねしたいと思います。
 第一に、総理の姿勢についてであります。
 前国会におきまして、総理は、国際障害者年につきまして、国連総会の決議を待って対処したいと述べておられました。私はそのような受け身の姿勢は残念でならないのであります。来年を国際障害者年とすることは五年前に国連総会で決議され、以後毎年この問題が論じられ、基本的な方向は相当以前から明らかにされていたのであります。それだけではありません。国際障害者年のもととなった障害者権利宣言を国連総会が決議したとき、わが国はその共同提案国だったのであります。にもかかわらず、いまもって明確な対応策が打ち出されていないのはどうしたわけなのでありましょうか。まことに恥ずかしいことであります。
 国際障害者年のテーマは「完全な参加と平等」であります。総理は、このテーマをどう受けとめ、どう理解し、さらに障害者権利宣言を世界に向けて行った責任をどう果たそうとしておられるのか、答弁を求めるものであります。
 第二に、これを機会に、障害者の問題は厚生省といった旧来の感覚から抜け出していただきたいのであります。
 たとえば、ハンディキャップを持った人々の多くは公共交通機関の利用がきわめて困難であり、このことが社会的自立を妨げる大きな原因の一つになっているのであります。これは福祉行政によって解決すべき面もありますが、また、一面では運輸行政の基本的なあり方の問題でもあります。運輸省が交通政策の対象から障害者だけを除外して考えてよいはずがないのであります。このように、厚生省と連携をもちながら、各省庁がそれぞれの分野で責任を持って取り組む態勢が今後はぜひとも必要でありましょう。昭和四十五年に制定された心身障害者対策基本法はこうした点をも考慮したものでありますが、残念ながら政府がこの法律を軽視してきたことは明白であります。総理の御意見を伺いたいのであります。
 そして、私は、国際障害者年を機会に、この基本法に基づいて福祉政策の見直しを図り、総合的かつ体系的な心身障害者対策を推進するために総理府内に新たな機構を設ける必要があると考えるのでありますが、あわせて見解をお示しいただきたいのであります。
 第三に、国際障害者年におけるわが国の国際的な立場についてであります。
 わが国に対してエコノミックアニマルなどの批判があるのでありますが、これはわが国の経済活動に対する批判ばかりではないと思うのであります。日本人というものは、弱い者を踏み台にし、べつ視してはばからない国民なのではないかという懸念がそう言わしめているのであります。障害者の人権が守られていないわが国の現状は、諸外国にそのように見られても仕方のない、対外信用の重大な問題でもあると思うのであります。こうした点を踏まえ、国際障害者年を機に、私は、強力に心のこもった福祉外交を展開すべきだと考えるものでありますが、総理並びに外務大臣の答弁を求めたいのであります。
 最後に私は申し上げたいのであります。
 障害を受けることは、それ自体は必ずしも不幸ではありません。それよりも、障害を受けることによって、ともに学び、ともに働き、そしてともに地域社会に平等に参加することが妨げられている現状こそが不幸なのであります。それは、障害を受けた当の本人の不幸ばかりではありません。そうした社会全体の不幸であります。なぜなら、弱い人々を切り捨てる社会は、弱くもろい社会だからであります。それに、だれもが一瞬にして弱き者となる可能性を秘めているからであります。障害を受けた人々が社会的にハンディキャップを背負わなくても済むような、さらに言えば、日本の社会から障害者という言葉が必要でなくなるように、いまこそ力強い歩みを始めるときだと思うのであります。そして、総理がたびたび言われる日本型福祉こそその精神であってほしいことを心から祈念いたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#54
○国務大臣(大平正芳君) 前島さんは、ただいまの感動的な御質問の中で、これまでの社会は健康な人を標準にしてつくり上げられてきた、その意味では、健康な人を標準とした社会が障害を負った人の権利を奪っておるのではないか、こうした社会のあり方を反省するときが来ておるのではないかという御指摘でございました。
 お説のとおり、今日わが国の社会はいまなお健全者を標準としてその仕組みができておると言わざるを得ないと思います。そもそも障害を持つ人々が現在の社会を構成する一員であることは仰せのとおりごく当然のことであり、これらの人々が家庭や地域社会におきまして健全者と同様に日常生活を営むことができるような配慮を政治、経済、文化各般にわたりまして行き渡らせてまいることが必要であると考えます。
 第二は、前島さんは、今後はノーマライゼーションの考え方を基本に据えて、障害者などのハンディキャップのある人たちが一般の人たちと同じように生きていける福祉社会づくりを目指すべきでないかという御主張でございます。
 障害を持つ人々が一般社会の中で自由に活動し、現代社会の各般にわたる生活を享受できるような社会を実現することが今後における政治の大きな課題だと考えます。こうした福祉社会の実現のためには国民各位の理解と協力が特に肝要でありますので、そうしたことに配慮しながら着実にその目標に向かって努力をしてまいりたいと思います。
 第三に、公共的な建築物は障害者等の利用を考慮して、設計施工の段階からその用意をしていくことを法的に明文化すべきではないかという御主張でございます。
 官庁施設におきましては、障害者等の利用を考慮いたしまして、施設の建設及び改修を実施いたしておるところでございます。その他の公共的な性格を持つ建築物につきましては、中央心身障害者対策協議会の検討を踏まえ、障害者等の利用を考慮した建築物の設計を促進するための所要の措置を講じてまいりたいと思います。
 国際障害者年に対する姿勢は受け身でないかという御注意でございます。また、同年のテーマ「完全な参加と平等」をどう受けとめておるかという御質問でございます。
 国際障害者年は、国際連合という場において、全世界が障害者の参加と平等という目標に向かって最善の努力をするという決意を表明したものであり、わが国といたしましてもその趣旨に即して最善の努力をいたしたいと考えております。
 なお、これが具体的な推進方策につきましては、目下関係機関相互において連絡調整を行っておるところでございます。
 障害者の参加と平等を実現することは、障害者が社会の通常の一員として社会、経済、文化等の活動においてその方向の決定段階から参加され、かつその発展に貢献され、またそうした社会の発展の結果を教育、雇用、社会保障、文化等の各部門において平等に享受され、同時に平等に責任を負われるような社会をつくることであると考えます。
 第五に、福祉は厚生省任せでは困るではないか、この感覚から脱却いたしまして政府全体で受けとめる必要がありますとともに、心身障害者対策基本法を軽視してはいけないじゃないかと、こういう御注意でございます。そして、これらを改善して、総合的、体系的な心身障害者対策を推進するため、国際障害者年を機会に総理府内に新たな機構を設けるべきでないかという御主張でございます。
 心身障害者対策は、各般にわたりまして、関係省庁においても心身障害者対策基本法の趣旨に沿い、それぞれの分野で心身障害者対策に取り組み、その責任を果たしておると思います。こうした対策の円滑な推進を図るために、心身障害者に対する基本的かつ総合的な施策の樹立とその推進のための必要な関係行政機関相互の連絡調整を行うことを目的といたしまして総理府に中央心身障害者対策協議会が設置されておりますことは御承知のとおりでございます。私は、御意見の線に沿いまして、こういう機関を通じまして鋭意努力をして御期待にこたえなければならぬと考えております。
 なお、国際障害者年への対応につきましては、今後とも関係省庁におきまして鋭意検討を加えて推進していきたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣野呂恭一君登壇、拍手〕
#55
○国務大臣(野呂恭一君) 健康な人を標準として、障害者はお荷物として隔離するというこれまでの社会の考え方の反省に立って、今後の福祉政策の基本姿勢について厚生大臣はどう考えているかと、こういう御質問でございますが、これまでのわが国の社会には、障害者を確かに特別扱いするという考え方があったことは否めない事実であると思います。これからの障害者の対策は、お説
 のとおりノーマライゼーションの考え方を基本にすべきであると私も同感でございます。
 このような反省の上に立って、厚生省におきましては、障害者社会参加促進事業の拡充、通所専門の授産施設の問題、重度障害者のためのデーサービス事業の創設などによりまして在宅障害者対策の充実を図ってまいりますとともに、障害者の住みよい町づくりを促進するための障害者福祉都市事業を推進しておるわけでございます。今後ともこの考え方を施策に反映しながら、国際障害者年のテーマでございます「障害者の参加と平等」の実現に努めてまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣谷垣專一君登壇、拍手〕
#56
○国務大臣(谷垣專一君) 心身に障害のあります児童生徒につきましては、その障害の種類と程度に応じまして、小中学校の通常の学級もしくは特殊学級あるいは養護学校において適切な教育を行う必要があると考えております。
 なお、盲・聾その他養護学校に在学する児童生徒につきましては、一般の小中学校の児童生徒等と交流を行うことは望ましいことでございますので、これらの学校の学習指導要領におきましても、小学校の児童または中学校の生徒と活動をともにする機会を積極的に設けるように指導をしておるところでございます。養護学校におきましても、地域やその学校の実態等を考慮いたしまして、学校行事やクラブ活動などの実施に当たりまして、可能な限り小中学校の児童生徒と交流をするように努めておるところでございます。
 御存じのとおり、昨年から養護学校養護の義務制が施行されました。今後いろいろな問題につきまして現場におきまする検討も進めてまいりたいと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣藤波孝生君登壇、拍手〕
#57
○国務大臣(藤波孝生君) 障害者の方々が社会人として社会活動に積極的に参加できるような社会を実現いたしますことは、政治の最も大きな課題の一つだと考えます。特に、働く場を得るということは、もちろんお働きをいただくことによって所得を得るわけでありますけれども、同時に障害者の方々の持っておられる個性や能力を発揮する場所を得られるということでもありますし、また同時に社会的に参加をする場を得られるということでもある、こんなふうに考えます。先日来、障害者の働いておられる工場の現場を幾つか拝見いたしましたり、さらにその方々といろいろな懇談をさせていただきまして、特にその感を深くいたしておる次第でございます。
 労働省といたしましては、従来も障害者の方々の一般雇用の場を確保いたしますために、身体障害者雇用促進法のいろいろな施策を中心にいたしまして努力を重ねてきておるところでございますが、先生の御指摘の線に沿って今後さらに努力をしてまいりたい、このように考える次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣大来佐武郎君登壇、拍手〕
#58
○国務大臣(大来佐武郎君) 先ほど前島さんから御指摘のように、この国連の国際障害者年は、一九七六年、全会一致をもってその設定が決議されたものでございます。この決議によりまして明年が国際障害者年になるわけでございますが、わが国としましては、福祉面での国際協力を促進するという観点から、この国連の決議の趣旨に基づきまして、今後とも国際障害者年事務局と密接な関係を維持いたしまして政府としての諸施策を積極的に進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
 なお、わが国は、この国際的努力を促進いたすために、昭和五十五年度予算政府原案に拠出金としてとりあえず十万ドルを計上いたしまして、国連に設置を予定されております基金への拠出をいたすことにいたしておるわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#59
○議長(安井謙君) 青島幸男君。
   〔青島幸男君登壇、拍手〕
#60
○青島幸男君 私は、第二院クラブを代表いたしまして、総理並びに関係閣僚に対しまして若干の質問を行いたいと思います。
 まず、大平内閣の政治姿勢についてお尋ねをいたします。総理は、施政方針演説の中で、経済の高度成長が今日さまざまなひずみを引き起こしておる、こう指摘されております。まさに国民はそのひずみの中で苦しんでいるのでありますが、同時にそれはまた政治不信をも生んでいるのであります。なせでありましょうか。それは、高度成長経済のひずみが強者と弱者の距離を広げる結果をもたらしているにもかかわらず、政治が強い者の方にばかり向いているからにほかなりません。ただいまもお話がありましたが、身体障害者の問題もまさにそのとおりであります。物価が上がっても、年金の支給開始年齢が遅くなっても、福祉予算が削られても、強い者はこたえません。しかし、弱い立場の一般庶民は、そのことによって苦しめられ、ますます弱くさせられているのであります。そして、なお一層強者に距離をあけられていくのであります。
 私は、現在の苦難を乗り切り、ひずみをなくすためには、基本的に強者と弱者の距離を縮めるという観点に立って政治が進められなければならないと考えるのでありますが、総理はいかがお考えか、御所見をまず承りたいと思います。
 また、総理は、政治と行政が公正かつ清廉でなければならぬと、こう言われております。きわめてあたりまえのことをわざわざ施政方針の中でうたわなければならなかったのは、政治と行政が公正かつ清廉でないことに対する国民の怒りをひしひしと感じられているからであると思います。しかしながら、お題目を唱えるだけで事が解決できるものではないことを国民はよく知っております。要は、どのように実行されるかということを国民は見詰めているのであります。期待しているのであります。そのためには、明らかとなった不正は厳しく追及されなければなりません。昨年一年だけでも、航空機汚職、大蔵省接待、KDD不正等々、さまざまな不正事件が明らかとなっておりますが、問題追及に対する政府・自民党の態度は、厳しく追及するというより、何とか事をおさめようという方向に終始していることはきわめて遺憾であり、国民の要望を裏切るものと言わざるを得ません。
 もし、総理が真に政治、行政の公正、清廉を考えておられるならば、自民党総裁としてKDD証人喚問等に関して実現方向への指示を出されるのが順当な措置と私は考えますが、総理はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
 また、国民は、汚職、不正事件の再発防止についても強い要望を持っております。
 汚職、不正の多くが、政治と行政の密室の中での癒着に起因していることを考え合わせますと、閉ざされた行政をより国民の前に開くことによって不正の大部分は抑止され得るということが言えましょう。開かれた行政づくりへの不可欠の要件として、私どももまた各方面から要望されております情報公開法の制定を強く望むものでありますが、総理並びに関係閣僚の御見解を承りたいと思います。
 次に、政治資金の問題について二、三質問を申し上げます。
 現行政治資金規正法は、検討事項といたしまして「この法律の施行後五年を経過した場合においては、新法の施行状況を勘案し、政治資金の個人による拠出を一層強化するための方途及び会社、労働組合その他の団体が拠出する政治資金のあり方について、更に検討を加えるものとする。」と、こううたっております。五年と申しますと本年いっぱいであります。なぜこのような検討事項が法律の中に書き込まれたか、私たちは改めて考えてみる必要があると思います。それは、企業よりなされる政治献金がともすれば政策、法案を金で買う結果になりやすいという当時の強い国民世論が背景にあってこそこの検討事項はできたのであります。国民の危倶は当たっておりました。預金金利引き下げと相前後しての銀行の政治献金の再開、税理士法改正案と時を同じくしての税理士政治連盟の大量の政治献金、さらに政府・自民党の法人税引き上げ断念後に行われた自民党の財界に対する参議院選挙に向けての数十億という政治資金要請等々、どれを見ても、政策、法案が政治献金の有無と密接なかかわり合いを持っているであろうことは否定できないところであります。企業、団体の政治献金が賄賂と紙一重であるということを国民は許せないのであります。
 このような状態が放置されるなら、幾ら総理が政治と行政の公正、清廉を訴えられても、これは絵にかいたもちにすぎません。国民の政治不信は一層つのるばかりであります。国民の政治不信増大は、すなわち民主主義の危機であります。総理が本当に議会制民主主義の発展を願っておられるならば、この機会に企業、団体の政治献金禁止に勇断をもって踏み切られるべきであると私は考えます。総理並びに自治大臣の御決意を承りたいと思います。
 次に、政治家個人に対する政治献金についてお伺いいたします。
 現行政治資金規正法は、政党、政治団体に対する政治献金についてはさまざまな規定を設けておりますが、政治家個人に対する規定は何ら設けておりません。政治家個人に対する政治献金は税法上の雑所得として扱われ、しかも政治活動に使った余りがあればそれのみを申告すればよいと、こういう一般庶民から見れば破格とも言える優遇措置が講じられているのであります。同じ雑所得にいたしましても、一般庶民の場合はまず雑所得としての収入を申告し、必要経費を詳しく書き出さなければなりません。また、その必要経費も税務当局の厳しい査定を受けるのであります。ところが、政治家個人に対する政治献金は、幾ら入ったか、どのような政治活動に使ったのか、一切申告する必要がないというのが現状であります。これは問題となっております医師の七二%控除をさらに上回るものであり、先ほど私が破格の優遇措置と申し上げたゆえんも実はここにあるわけです。
 私は、政治家個人に対する政治献血のこうした現状は、政治犯罪の温床であるからして是正しなければならないということを機会あるごとに過去何回も要望し続けているのでありますが、大平総理はそれは政治家のモラルの問題であるとして退けてこられました。しかし、総理、昨年の航空機汚職の際、松野氏の五億円で政治家のモラルがいかに当てにならないか、実証されたではありませんか。総理はいまもなお政治家のモラルの問題と言われますか。国民は、いまや、ある種の政治家のモラルに期待することに絶望しているのであります。
 私は、この際、政治家に対するかかる優遇措置を直ちに廃止し、政治家個人に対する政治資金、物品の供与に関して、強い規制と公開を原則とした法律を制定する必要があると考えますが、総理並びに関係閣僚の御決意を伺いたいと思います。
 最後に、参議院全国区の選挙のあり方について触れたいと思います。
 すでに本年夏の参議院議員選挙に対する各候補の動きは活発で、もはや八当七落、つまり八億円使って当選、七億円ならば落選かなどということがマスコミで散見されます。このまま事が推移いたしますれば、またぞろ金権選挙となって国民の指弾を浴び、ひいては政治不信が増大するものと、まことに憂慮にたえないところであります。
 申すまでもなく、議会制民主主義の基本は、議員が正当なる選挙で選ばれることにあります。ただ、現行選挙法で許されているポスター、街頭演説等の選挙運動を展開するならば、法定選挙費用を大幅に上回る選挙資金を必要とすることもまた事実であります。しかしながら、各機関の調査によりますと、有権者が投票を決める際に参考とするものは、ラジオ、テレビの政見放送、選挙公報、新聞広告、マスコミの選挙情報、これらが実に九〇%以上を占めております。つまり、有権者のほとんどは、候補者自身が金を使わないで済む公営の選挙運動の部分で投票の意思決定をしているのであります。マスコミの格段に発達した現今ではけだし当然のことと言わなければなりません。それに反しまして、一番金のかかる、手数のかかるポスターのみによって意思決定をする有権者はほとんどいないのであります。この事実からも明らかなように、金のかからぬ選挙は、やろうと思えばできるのであります。
 総理も金のかからぬ選挙制度を提唱しておられますが、まず参議院全国区のポスターなどをやめ、ラジオ、テレビの政見放送、選挙公報、新聞広告の現在公営化されている選挙運動のみにするという大胆な制度を採用し、これらの拡充を図るというところから始めてはどうかというのが私どもの主張するところであります。総理並びに自治大臣の御見解を伺いたいと思います。
 ただし、幾ら選挙制度を改革いたしましても、金をかけようと思えばかけられます。そのためにも、選挙制度の改革と同時に……
#61
○議長(安井謙君) 青島君、時間が超過しております。
#62
○青島幸男君(続) 政治資金の強い規制がなければならぬことを申し添えまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#63
○国務大臣(大平正芳君) 青島さんの最初の御質問は、政治の基本は弱者と強者の距離を縮めることでなければならぬと思うがどうかということでございました。
 私も仰せのとおりと心得ております。このためには、まずインフレを避ける最善の努力をしなければならぬと思います。失業を避ける努力をしなければなりません。社会保障の充実を図らなければならぬこと、申すまでもないことでございまして、こういう目的のために私も全力を傾けなければならぬと考えております。
 第二は、不正事件は厳しく追及されなければならぬ。KDD証人喚問等に関して自民党として積極的に対応しなければいけないじゃないかという御意見でございました。
 仰せのとおり、不正事件は厳しく追及、解明されなければならぬと思います。現在、KDD事件も捜査当局の手でいま解明にかかっておるわけでございまして、私どもはその結果をいま待っておるところでございます。
 KDDの証人喚問を国会でやられる場合の自民党の対応でございますが、これはたびたび申し上げておりますように、国会内の各党の御相談で公正な結論が出ることを期待いたしております。自民党といたしまして別に不当なことをやるというつもりは毛頭ございません。
 情報公開法の制定についてどう考えるかということでございます。
 この問題につきましては、たびたび申し上げておりますように、一般的な行政手続法の整備との関係がございます。また、わが国の行政機関における情報管理のあり方等との関係など検討しなければならぬ問題もございまするし、諸外国の制度、運用の実態等も幅広く検討さしていただいて、慎重に検討を重ねていくべき性質のものと存じまして、いまこれを直ちに法制化する意図を持っておるわけじゃございません。
 企業、団体の政治献金についてのお尋ねでございました。
 企業からの政治献金につきましては、企業も一つの社会的な存在である以上政治活動の自由を持っておる、政治献金が認められても不思議ではないと思います。ただ、これらの企業、団体からの政治献金も一定の節度がなければならぬことは当然でございまして、現行の政治資金規正法も、そのような立場を踏まえまして、寄付の量的制限、質的制限の措置を講じておるところと承知いたしております。たとえば、国から補助を受けている会社からの寄付、あるいは会社や団体からの同一の者に対する多額の寄付などは禁止されておるところでございます。
 自由民主党におきましても、企業献金から個人献金に移るように漸次努力を重ねておるところでございます。
 政治資金規正法の改正問題でございますが、これは青島さんも仰せのとおり、五年の間に見直すようになっておるわけでございます。すでにもう四年たとうといたしておるわけでございまして、われわれはもう一度これを見直してみる必要を感じて、党にもそのように要請いたしてあるところでございます。
 政治資金規正法は、仰せのように個人の政治資金につきましては触れていないわけでございますが、しかし、それでいいのかどうかという問題は確かに残された問題であると存じまして、政府におきまして、国会と御相談しなければならないと存じて、いま最初与党との間で検討を実はいたしておるところでございます。
 参議院の全国区の選挙の改善につきまして御提言がございました。
 貴重な御提言として参考にさせていただきます。(拍手)
   〔国務大臣後藤田正晴君登壇、拍手〕
#64
○国務大臣(後藤田正晴君) 第一の、企業献金をやめたらどうだという点につきましては、ただいま総理から詳しく御答弁がございましたので、そのとおりに私も考えております。
 二番目の、政治家個人に対する政治献金が、現在、報告、公表の義務がない、これを明朗化して国民的な監視のもとに置けるようにしたらどうかと、こういう御意見でございますが、この件につきましては、昨年、御案内の航空機疑惑防止等の対策協議会からの御提言があったわけでございます。その御提言の趣旨に従いまして、内閣の方から私の方に、事務的に案を検討して詰めてみるようにと、こういう御指示がございました。
 そこで、現在、私ども自治省といたしましては、この問題につきまして、この協議会の御答申というのが、個人の私経済というものと政治活動資金というものを二つに分けなさい、政治活動資金については国民的な監視のもとに置くようにと、こういう御趣旨でございますが、私どもの検討は、まず最初に、一体政治家の場合に私経済と政治活動経済の区別の基準をどこに置くか、それをだれが判定をするのか、あるいはまた、届け出、公表等をする場合に、それを政治家のどの段階まで、国会議員だけにするのか、あるいは都道府県まで下げるのかといったような問題、あるいはその届け出を受ける機関はどこにするか、あるいはまた罰則をどのように規定したらいいのかといったようないろいろと厄介な問題がございまするので、これらについていま事務的に詰めておる段階でございます。
 同時にまた、自由民主党の選挙制度調査会におきましても、この面について上私どもと御連絡をとっていただいて御検討をいただいておるさなかでございますので、これらの検討の模様を見ながら、私どもとしてはできる限り早い時期に案の取りまとめをいたしまして、成案を得た上は国会の御審議を仰ぎたいと、かように考えておるわけでございます。
 第三番目の、ポスターは余り効果がないので、こういうものはやめて、現在行われておる政見放送であるとか、経歴放送であるとか、あるいは選挙公報、新聞広告等、現在認められておる公営の範囲で全国区からひとつやってみたらどうだと、これは私は一つの御提言のように思います。しかしながら、私どもの検討では、現在、ポスターなんかも、案外これによって候補者と有権者の間の何というか、触れ合いとでもいいますか、それによってああいう人だなということがわかったといったようなのもたくさんおるわけでございますので、せっかくの御提言でございますから検討はいたしますけれども、これを一挙にやめるということは、私はまだこの時期では考えるわけにはいかぬのではないかと、かように思うわけでございます。
 同時にまた、公営の範囲を広げろということは、各方面からいままでいろいろな御意見がございますから、これはやはり検討課題にしなければならぬ、かように考えますが、全国区について公営一本でやったらどうだということについては、これはよほど考えないと、そうしますと公営以外の方法は一切いかぬということに逆になるわけでございます。こういったことになりますと、候補者の選挙運動の自由というものに対する規制の面が出てくる。同時にまた、すべての選挙運動を一律、画一的なものにしてしまうといったような面もこれは考えなければなりませんから、せっかくの御提言ですから検討はいたしまするけれども、いま直ちにそうするというわけにはまいらないのではなかろうかと、かように考えるわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#65
○国務大臣(竹下登君) 青島さんのいわゆる政治献金の個人に属する部分についての問題と、これの税法上の取り扱いの問題については、私もきょう初めて承ったわけではございません。何度か青島さんの話を聞いております。
 ただ、問題になりますのが二点ございます。
 一つは、税制上の特別な提出義務を付するということになりますと、税法そのものが国民一般に適用するというものでありますだけに、差別的扱いという問題が一つ生じてまいります。
 それから二番目の問題は、ガラス張りで示すことに意義があるではないかという考え方でありますが、一方、税務上の守秘義務を課せられております税務署への届け出ということになりますと、その守秘義務というものからしてガラス張りということを実現する結果にならないではないか、こういう問題点がいま一つあります。したがいまして、八十七国会の本院で総理が答弁しておりますように、政治資金規正法の領域の問題として検討していくべき課題ではなかろうか、このように考えております。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
#66
○議長(安井謙君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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