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1949/03/03 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 法務委員会 第5号
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1949/03/03 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 法務委員会 第5号

#1
第007回国会 法務委員会 第5号
昭和二十五年三月三日(金曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○商法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○公聽会開会に関する件
○検察及び裁判の運営に関する調査の
 件
  ―――――――――――――
   午前十一時十一分開会
#2
○委員長(伊藤修君) それではこれより法務委員会を開きます。商法の一部を改正する法律案につきまして、昨日に引続き政府委員に御説明をお願いいたします。
#3
○政府委員(岡咲恕一君) 昨日は要綱の三十まで御説明申上げましたので、本日は三十一以降について簡単に御説明申上げます。
 三十一と三十二は取締役の責任に関する要綱でございまするので、一括して御説明申上げます。取締役は法令定款の定め、及び株主総会の決議を守りつつ会社のため忠実に職務を執行する責任を負うのでありますが、この外新法におきましては、改正法案におきましては、特別に二百六十八條の規定を設けまして、個別的に取締役が責任を負うべき場合を定めたわけでございます。即ち一といたしまして、不法配当の議案を総会に提出して、これがため総会は不法な配当をいたしたという場合に、株主はその配当額を会社に返還いたさなければならないのでありまするが、株主の返還すべき配当額につきまして、取締役に責任を認めたわれでございます。
 第二は、会社が取締役に対しまして金銭の貸付をいたしました場合に、弁済期が参りましてもその弁済を得ない額、言い換えれば、貸金の未済額につきまして取締役に連帶して弁済すべき責任を認めたのであります。
 第三は、取締役が株式総会の認許を得ませんので、自己又は第三者のために会社の営業の部業の部類に属する取引をした場合及び取締役が自己又は第三者のために会社と取引をした場合に、これによつて会社に蒙らせた損害額を連帶して支拂う義務があるのでございます。ただ商法上の行為につきまして、取締役会の決議によつてこれらの行為が行われました場合には、この決議に反対した取締役は免責されるということにいたしておるのであります。現行法におきましては、取締役の責任が一般的、包括的でありまするのを、改正法案におきましては、具体的に、明確にしたというのが特徴でございます。尚現行法では取締役の責任につきましては、総会の特剔抉議を以てこれを免除することができるということになつておりまするが、現行法で申しますると、二百四十五條の第一項の第四号でございまするが、この免除につきましては、設立における発起人の責任と同様に、株主全員の同意のある場合の外は免除を認めないということにいたしております。二百六十六條の第四項がその規定でございますが、尤も自己取引につきましては、あとに述べまするように例外を認めております。
 以上が取締役の会社に対する責任でございまするが、取締役の第三者に対する責任につきまして、現行法が責任原因を法令定款違反に限定しておりましたのを、改正法案では任務一般を責任原因といたすことにいたしまして、ただ主観的要求を、悪意又は重大なる過失に限ることといたしたのであります。これは二百六十六條ノ三の規定でございます。
 尚第三者が不測の損害を蒙る場合の多い、例えて申しますると、株式申込証、目論見書、附属明細書等に虚偽の記載をした、或いは虚偽の登記、公告をしたという場合につきましても特に規定を設けまして、その責任を明らかにいたしております。二百六十六條の第三項の後段がそれに該当いたすわけであります。
 取締役の競業及び自己取引に関する改正点は次の通りでございます。即ち取締役が自己又は第三者にために会社の営業の部類に属する取引をするには、総会の認許を要するものといたしまして、その認許は発行済株式の総数の三分の二以上の多数を以てすることといたしております。若し認許を得ないで取引をした場合には、従来通り、株主総会はこれを会社のためになしたものと見なすことができることは従来の通りでございます。條文は二百六十四條でございます。申上げるまでもないと思いますが、この認許の形式は発行済株式総数の三分の二以上の多数でなすということになつておりまして、これはいわゆる特別決議よりももつと要件が加重されているということに十分御留意を賜わりたいと存じます。又自己取引につきましては二百六十五條の規定でございますが、取締役会の承認を要するということにいたしております。そうしてこの承認を得ないで独断で取引をしたという場合には、先程申しましたように二百六十六條によりまして、会社に損害を與えた場合には会社に対して賠償責任を負うということになつておりまするが、この責任につきましては二百六十六條の第五項によりまして、発行済総株数の三分の二以上の多数を以て免除するということを特別に認めているわけであります。言い換えますれば、その自己取引が極めて妥当であるし、そのときにおける会社の需要に対して極めて適切な措置であるというふうな場合には、取引の重要なる事実を株主総会に開示いたしまして、そうして発行済株式の総数の三分の二という多数を以て、それではよろしいということになりまするならば、かかる場合には責任を免除してもよろしいものと考えまして、特にこのときだけに限りまして免許の規定を設けたわけでございます。
 次は三十三でございます。現行法で申しますと二百六十八條でございまするが、株主総会で、取締役に対して訴えを提起することを否決した場合において、初めて少数株主の権利として取締役の責任を追及するために、監査役に対し取締役に対する訴えの提起を請求することを認め、この場合には会社は必ず訴えを提起しなければならないことになつておるのでありまするが、改正案では株主として、その資格において、何らの條件なしに当然会社に対して訴えの提起を請求することができるということにいたしますと同時に、若し万一会社が訴えを提起いたさなかつた場合、又は会社に請求していたのでは時機を失して回復すべからざる損害を生ずるというふうな特別な場合には、株主がみずから会社のために訴えを提起することを認めることにいたしたのであります。二百六十七條の條文がこれを規定いたしております。これはいわゆる代表訴訟と呼ばれておるものでありまして、会社や株主はこの訴訟に何時でも参加いたすことができます。これは二百六十八條の規定でございます。この訴えは、株主が原告となつて提起する訴えでありますが、会社のために提起する訴えでありますので、その判決は民事訴訟法の第二百一條第二項の規定によりまして、会社に対しても効力を有するということになろうかと考えます。原告と被告、言い換えれば、株主と取締とが通謀して会社の権利を害するような行為をするということが、必ずしもなくはないものと考えまするので、かかる場合に、判決を得ました場合には、会社又は株主はこの判決に対して再審の訴えを起すことができるということにいたしております。これが二百六十八條ノ三でございます。尚勝訴した株主は、弁護士に支拂うべき相当なる報酬額を会社に請求できますし、株主が敗訴した場合には、悪意あるときに限りまして、会社に対して損害賠償の責を負うということにいたしております。二百六十八條ノ二がその規定でございます。
 次に第三十四の説明を申上げます。これは取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令又は定款違反の行為をして、会社に回復すべからざる損害を生する慮れがある場合には、株主は取締役に対してその行為の差止めを請求することができるというのでございまして、アメリカにおきましてインジヤンクシヨンと呼ばれておりまする訴えを認めようとするわけでございます。條文で申しますると二百七十二條でございまするが、これは訴えで行くのか、それとも非訟事件手続として取扱われるのか、規定の上では必ずしもはつきりいたしておりませんが 立案いたした者の考え方といたしましては、一応訴えにしよう、さうしてその権利保全のために差止めの仮処分を認めるという行き方が適当ではないかと考えておりまするが、これは本委員会におかせられまして十分御検討を願いまして、若し仮処分手続を認めることが適当であるというふうな御意見でございまするならば、非訟事件手続法におきましてその必要なる措置を立法的に講じたいと考えております。
 次に要綱の三十五年から四十四年までは、新株の発行に関する事柄でありまする故に、これを一括して御説明申上げようと思います。授権資本制度を採用いたしました結果、定款に定められました会社の発行すべき総株数、言い換えれば、授権資本のうち未発行分の発行は、会社成立後は原則として取締役会において、定款の枠内で随時如何なる種類の株式……額面株か、或いは無額面株か普通株か優先株か転換権附の株であるか、然らざるものであるかを何株、如何なる価額で拂込期日をいつに定めて発行するか、或いは拂込剰余金を如何ように定めるか、又は現物出資がある場合に、それに対して如何なる数の株式を與えるかというふうな発行に関する事項は、取締役会が決定いたすのでございます。発行の価額を取締役会が決定するに当りましては、株式の市場相場や会社の資産、内容、収益力等から判断いたしまして、公正な価額を定めなければならないのは申すまでもございませんが、発行価額その他の発行の條件は、原則として各発行ごとに均等でなければならないということにいたしております。只今申しましたのは、條文で申しますると二百八十條ノ二及び二百八十條ノ三でございます。若し取締役会が文当に低い発行価額で株式を発行すれば、これは旧株主の権利を害することになるのでありまして違法な発行でございます。又取締役が自己の利益を図るために、或いは株主総会に多数者たる地位を維持し、又はこれを獲得するために、自己又は第三者に対して株主を発行するというふうなことがありますると、これ亦違法な発行でありまして、かかる法令、或いは定款違反、又は不公正な株式の発行に対しましては、株主は取締役に対してその発行の停止を請求できることといたしております。これは二百八十條ノ十でございます。又取締役と通謀して、不当に低い価額で株式を引受けて株主となつた者は、その取締役と連帶して、公正な価額との差額を会社に対して損害賠償として支拂わなければならないということにいたしております。これは二百八十條ノ十一の第一項でございます。本来株主は対価を支拂つて株式を取得した以上は責任を追求されないのが建前でございますが、取締役と特に通謀して不当な低い価額で株式を買受けたという場合に、免がれて恥がないというのでは、他の株主の権利を害することが甚だしいように考えますので、この場合に限つて実質的には追出資を認めるのが相当ではないかと考えまして、かような規定を設けたわけでございます。この場合には取締役と通謀して、発行しているという関係上、取締役がその追出資、法律的に申しますと、損害賠償の義務を履行せしめないという慮れもありますので、この場合には株主を相手取つて他の一般の株主から代表訴訟を提起することを認めるのが相当かと考えまして、二百八十條ノ十一に第二項の規定を設けたわけでございます。それから新株の発行につきましては、設立の場合の株式発行の場合と異りまして、拂込をした新株の引受人は拂込期日から株主となるということにいたしました。従つて若し拂込期日に拂込を怠つたときには当然、失権する、そうしてその引受けた株式は未発行株となり、従つて株式発行の登記も改正案のもとでは新株発行という特別の登記がなく、一般の原則によつて変更登記をいたすということになつております。これは二百八十條ノ九でございます。新株発行につきまして最も重大な問題は、新株の引受権と現物出資の問題であろうかと存じますので、この二つの問題について簡単に御説明を申上げておきたいと思います。新株の発行は、旧株主の議決権、或いは利益配当、残余財産分配等に関する割合的権利を害するものであるというふうに考えられまして、通常株主総会におきまして、増資の決議をする場合には、旧株主に多少の新株引受権を認めるということが実際の慣行のように承つております。併しこの旧株主の引受権というものを無制限に認めまするというと、会社といたしましては 資本を一般市場から最も有利な條件の下に調達するという途が封ぜられてしまいますので、実際におきましても旧株主には一部の引受権のみを認めて、残余は公募しているという実情のように承知しておりますが、この点も考え、他面一般には普通株しか発行されておりませんで、新株引受権の処理は比較的簡單かと思いますが、この改正案に従いまして数種の株式が設立の当初から盛んに発行されるというふうになりますと、新株引受権の割当をいたしまする場合に、計算技術的にも相当の困難が伴うかと考えまするので、法制審議会の商法部会におきましてはいろいろ御検討がございまして、結局答申といたしましては、株主は法律上は当然に新株の引受権を有するものではない。会社は定款又は特剔抉議を以て株主又は第三者に新株引受権を與えることができるというふうなことを御答申になりまして、要綱では三十七にその趣旨の要綱を掲げておるわけでございます。一応この線に沿つて立案いたしたのでございますが、いろいろ検討いたしておりまするうちに、新株引受権というものはアメリカにおきましては非常に重大に或いは神経質に取扱われておりまする関係上、株主が新株の引受権を有するか否かということを必ず定款に記載せしむる、而も原始定款にこれを記載せしむることが適切であるというふうな関係方面の強い示唆もございましたので、新株引受権の処理が如何ようになされるかということを原始定款に記載せしむるということにいたしまして、百六十六條ノ第一項の第五号に特に規定をすることになつたわけでございます。
 それからこれは逐條説明のときに細かく御説明申上げたいと思いまするが、原始定款に掲げまする新株引受権は授権の枠の範囲における株式の発行に関して與えられる新株引受権でございまして、若し将来定款を変更いたしまして授権の枠を拡げて行くという場合には、又その際に当然新株引受権が、拡張せられた未発行株について如何ように取扱えるかということを定めなければならない、従いまして総会の特剔抉議においてこれが定められました場合には、又その決議の内容を定款に記載しなければならないということにいたしたいと考えております。これが三百四十七條ノ第二項の規定でございます。
 次に現物出資でございますが、現行法では現物出資は会社設立の場合に発起人に限つて認められておるのでありまするが、新株の発行につきましては何人も自由に現物出資を認めるということにいたしました。併し現物出資はとかくその評価の上で不正が行われまして、いわゆる株式の水増しの弊害を伴い易いことに鑑みまして、発起人の現代出資の場合に準じて裁判所の選任する検査役による嚴格なる検査を行わせることにいたしました。但し現物資に対して與える株数が発行済総株数の二十分の一を超えないときは検査を要しないということにいたしたのであります。二百八十條ノ八がその規定でございます。
 次に新株の引受又は取消の問題でございますが、新株の引受も意思表示の一般原則に従いまして、錯誤の場合は無效であり、詐欺又は強迫による場合には取消し得べきものでありまして、又株式申込書の要件に欠があれば無效なわけであります。併し改正案では引受のような団体的な行為はなるべく劃一的に取扱いまして、不要の紛争を防止することが適当かと考えましたので、設立の場合におきまする百九十一條と同趣旨の規定を設けることにいたしました。二百八十條ノ十二がその規定でございます。設立の場合とはつきり同趣旨のような規定を設けることにいたしました。ただ設立の場合と異なりまして、登記の後一年を経過した後は無效の主張又は取消をなすことを得ないものといたしました。それは新株発行の場合には、引受後登記までの期間が設立の場合に比べまして短いので、そこに一定の猶予を置く趣旨でありまするがはこの菊間を要綱で六ヶ月としておりまするのは、引受人保護の見地からやや短きに失すると考えましたので立案の際これを改めまして特に一年といたしたのでございます。
 次に新株発行の場合における取締役の填補責任でございまするが、この点につきましては、改正案は設立の場合における百九十二條に傚いまして規定を設けております。二百八十條ノ十三がそれでございます。ただ百九十二條におきましては引受人のない株式について取締役に引受権を認めることに止めておりまして、この義務の不履行の場合が考えられ、必ずしも適当でございませんので、改正案は百九十二條を改めまして、引受人のない株式は取締役が当然引受けたものと看做すということにいたしております。百九十二條ノ第一項にその多少の修正を加えております。尚新株発行の場合におきましては 設立の場合と異りまして拂込未済の株式は当然引受人のない株式となりますので、二百七十條ノ十三では拂込未済の株式というものを省いております。
 最後に新株の発行が授権資本の糾外で行われる、或いは全然取締役会の決議のないにも拘らず新株の発行が行われたというふうな場合には、新株の発行は無效であると考えております。併しこの無效を訴えによらないで、何人でも、如何なるときにも、これを主張し得る、而もその無效は遡つて效力を生ずるということになりますと、株式の引受、拂込、讓渡、その他の移転、議決権の行使、利益配当等が遡つて無效となりまして、広範囲の人々に不測の損害を及ぼすという点に鑑みまして、無效は必ず訴えを以て主張しなければならない、而もその訴えは発行の日から六ヶ月内に限つて許されるということにいたしますと同時に、株式発行の無效を宣言する判定が確定したときは、対世的な效力を生じ将来に向つて新株の発行が無效となるということにいたしたのでございます。それは二百八十條ノ十五から二百八十條ノ十八までの規定でございます。
 次に第四十五の御説明を申上げます、これはいわゆる資本に関する定めでございます。債権者の会社に対する信用の担保は会社財産しかないことは申までもありませんので、現行法でも、又アメリカにおきましても、会社の純資産が利益配当等によつて一定額以下に至ることを防止する意味におきまして特に資本というものを定めておるわけでございます。かように定められました一定額は経済学上の資本と区別する意味で、法律上の資本又は表示資本と呼ばれておるものでございます。この資本を如何ように構成して行くかということは一つの重大な問題であろうかと思いまするが、現行法では株金額の総額を以て資本といたしております。この度の改正では原則として一応この建前を踏襲いたしまして、額面株式にあつては株金額の総額、無額面株式にあつては発行価額の金額の総額、額面株と無額面株とを発行しておる場合には只今申しました金額の合算額が資本を構成するという原則を採つております。これは二百八十四條の二の第一項でございます、併しこの資本の構成につきましては、アメリカの制度に做いまして相当重大な変更を加えておることに御留意を願いたいと思います。その第一は、拂込剰余金というものの性格でございます。これは要綱で申しますると第四十六でございます。無額面株につきましては 昨日申上げましたように、一定の金額に限りましてこれを拂込剰余金として留保いたしまして資本に組入れないということのあることを申上げて置きました智、條文で申しますると、二百八十四條ノ二の第二項に規定を設けまして、無額面株式につきましては発行価額中四分の一を超えない額を拂込剰余金として資本に組入れないことを認めたのでございます。尚設立の際におきましては、定款に最低発行価額というものを規定いたすことになつておりまするが、特に設立の際における会社の資本の充実を図る意味におきまして、この拂込剰余金は最低発行価額を超ゆる部分であつて且発行価額の四分の一を超えない額に限つて留保し得るということにいたしたのでございます。
 次に要綱の第四十七でございます。新株発行のために要した費用につきましては、その額を貸借対照表の資産の部に計上して、一定期間内に均等償却することを認めたものでございます。これは現行法におきまして、設立費用について認められておりまする取扱いを新株の発行にも認めたものでございます。償却のための一定期間を三年といたしました。これは設立の際とは多少異にいたしましたけれども、新株の発行の性質上三年が適当かと考えましてさようにいたしたわけでございます。二百八十六條の二でございます。
 尚改正案では現行法の二百八十八條の二項を削りました。これはプレミアム付で額面株を発行した場可、又は無額面の発行価額の一部を拂込剰高金とした場合には、発行価額はプレミアム又は拂込剰余金より控除しないで均等償却をいたすことにいたしたのでありまして、会社の健全化を図るためでございます。
 次に要綱の四十八から五十まででございまするが、これは準備金に関する問題でございます。便宜一括して御説明申上げます。改正法律案では、健全なる経理を実現するという要請に応ずるために、準備金に二種類の区別を設けたのであります。一つは利益を財源とする利益準備金でありまして、他はプレミアム或いは拂込み剰余金、評価純益、減資剰余金、合併剰余金を積立てまするいわゆる資本準備金でございます。利益準備金は、現行法のように資本の四分の一に達するまで、毎決算期の利益の二十分の一以上を積立てることにいたしました。これは二百八十八條の規定でございます。資本準備金は、改正法律案の新設するところでありまして、プレミアム等の金額を、特にこの資本準備金として積立てることにいたしたのであります。この二つの準備金は、相互に無関係に積立てられるのでありまして、且つ両方の準備金とも資本の欠損填補以外にはこれを使用することができないということにいたしてあります。これは二百八十九條の第一項でございます。欠損填補の場合には、利益準備金を先ず先にいたしまして、利益準備金を以ても尚填補し能わないときに、資本準備金を充てるということにいたしております。資本準備金に関する規定は二百八十八條ノ二でございます。
 次に要項の五十一でございまするが、これは会社の特剔抉議を以まして株式による配当というものを認めたものでございます。條文の二百九十三條ノ二がこれに当るものでございます。二百九十三條ノ二でございます。即ち会社は特別決議を以まして、利益の全部又は一部を株式を以て配当することを認めたものであります。これは現金配当に替えまして、株式による配当でありまするが、会社に、社内に現金を保留することができるという点、株式の市価が余りに高いために 株式の市場性がないという場合に 株式配当をいたしまして市価を低落せしめると同時に、株式に市場性を與えるというふうな目的のために行われるように承知しております。これは株主の実質的権利には影響がないわけでありまして、ただ株数が殖えるだけでありますをが、配当は株主の固有権に属するものであるという見解も相当有力でありまするので、取締役会で決めませんで、特に特別決議によらしめたことであります。申上げるまでもないと思いまするが、現行法では、配当は株主総会の決議によるということになつておりまして、その建前は改正法律案においても認めたわけでありまするが、アメリカにおきましては、配当は前締役会の専権に属している。株主配当も、従いまして取締役会限りでやつておるわけでありまするが、これを現行法との調和を考えまして、特別決議によつてのみ株主に配当を認めたということであります。尚株式による配当は額面株式につきましては額面額、無額面株式につきましては株式による配当の特別決議で定めた発行価額で行うということにいたしまして、又配当すべき利益の額が券面額、又は発行価額に充たない端数があるときは、その部分につきましては株式による配当をいたさないで、現金を以て配当するという取扱をいたしまするのが会社にとつて便宜かと考えまして、第三項の規定を設けたわけでございます。
 それから等五十二でございます。これは準備金の資本組入れでございます。改正案では新たに準備金の資本への組入れを認めまして、資本構成に彈力性を與えたという点が大きな特徴であろうかと考えます。この組入れは準備金の全部又は一部について取締役会の決議を以て行うのでございます。條文で申しますると二百九十三條ノ三でございます。この場合には、原則といたしましては、株式を発行いたさないかと考えまするが、株主の株式に対する期待も相当強いかと考えまするので、取締役会は特に必要があると認める場合には、その決議によりまして、旧株主に対しまして、その持株数に応じて株式を発行することができるということにいたしまして、取扱上の多少の便宜としまするか、取締役会が株式に対して適当な措置を講ずるということを認めたのでございます。
 第五十三は、株式の分割に関するものでございまするが、これは株式の市場価額が余りに高きに過ぎるという場合に、適当数量に株式を増加することによりまして、株式の市価を下げ、或いは取引所上場の前提とするために行われるように承知しております。改正案では取締役会にこの権限を認めまして、会社は取締役会の決議によつて株式の分割をなし得るというふうにいたしたのであります。六百九十三條ノ四がこれに関する規定であります。分割によりまして株主の実質的権利に変更を来たさないことは、株式による配当或いは準備金の資本組入れによる株式の発行の場合と同様でございます。ただ額面株の分割は、当然定款の変更を伴いまするので、取締役会の決議のみでは行われ得いのでございます。従つてここに掲げておりまする株式の分割は、無額面株の分割に限ることになるわけでございます。
 次に、第五十四と五十五でございまするが、これは社債に関する規定でございます。従来は社債の募集は株主総会の特剔抉議事項とされておつたのでありまするが、改正案ではこれを改めまして取締役会の決議によつて社債を募集し得ることといたしました。これは二百九十六條でございます。これは余り論議のないことかと思いまするが、新株の発行というふうな重大な権限が取締役会に與えられたこと、社債に依らざる借入であるならば如何に多額の金額でありましても取締役会で決定し得るという関係との権衡も考えまして、本来は業務執行に属する事項でありまするが故に、社債の募集はむしろ取締役会の決議によることが適当であると考えるわけであります。次にこの社債の発行限度の問題でございまするが、現行法では社債の総額は資本の額を超ゆることができないということになつておりまするが、改正案ではこれを改めまして資本の類と法定準備金との類との合算類を超えて社債を募集することはできないということに改めたのでございます。法定準備金は社債発行の基礎としては資本と同視して毫も差支ないと考えたからでございます。尚財産額による社債募集の制限は現行法と同様でございます。これは逐條説明のときに触れるかと思いますが、現行法では社債の総額は資本の類を超えることができないということに なつておりますのを改めまして、総額を超えて募集することはできないというふうに改めたのでございます。これはよく問題になりまするオープン・エンド・モアゲージの取扱を便宜ならしめるために 現実に発行する際に社債が資本及び準備金の総類を超えておらねばよろしい、社債発行の決議をすること自体は毫も差支がないということにいたしまして、社債募集に相当広い彈力性を與えたためでございます。
 次に第五十六でございます。これは転換社債の問題でございます。現行法では転換社債の発行については社債発行の株主総会の決議において、資本増加の決議をすることを要するのでありまするが、この度の改正では転換社債の発行は株主に重大な利害関係を有しまするので、定款又は特剔抉議を以て転換の條件及び転換によつて発行する株式の内容等を定めることを要するものといたしました。三百四十一條ノ二の第一項第二項でございます。そうしてこの定款の定め又は特別決議に基きまして、取締役会の決議によつて転換社債発行の細目を決定するわけでございます。転換によつて発行する株式の数は、定款所定の授権資本の枠内にしなければなりませんので、必ずこれを留保いたすことといたしました。又転換社債の発行価類を以て転換に要する株式の発行価類といたしております。これは現行法の趣旨と同様でありまして、資本維持の原則を貫くわけでございます。
 次の五十七でございますが、これは転換社債の效力発生時期に関する改正でございます。これは先に申しました転換株式に関する第十一において述べましたところと同様でございます。ただ転換株式の場合と異なりまして、株式の利益又は利息の外に社債の利息についても定款を以て特別の定めをなし得るということにいたしたのでございます。
 次に要綱の五十八でございます。これはいわゆる特別決議の議決方法に対する改正でございます。現行法が株主の頭数及び資本の双方によつて定足数を設けておりますのを改めまして、定足数を規定いたしませんで、発行済総株数を決議の基準といたしたのでございます。即ち出席した株主の議決権の三分の二以上であつて、且つ発行済総株数の過半数に当る多数を以てするということに改めようとするものでございます。三百四十三條の第一項でございます。現行法では特剔抉議につきまして仮決議を採用いたしまして、発行済総株数の過半数の多数を得られないというときに、出席した株主の議決権の三分の二以上の多数で仮決議をすることができる。この場合には各株主に対して仮決議の趣旨を通知し、無記名株券が発行されております場合には、その趣旨を公告して更に二月内に株主総会を招集し その総会において承認を得るならば、その承認のときに特剔抉議がなされたものと看做すということにいたしたのであります。尤もこの承認は重要な事項でありますが故に出席した株主の議決権の三分の二以上の多数でするということにいたしております。
 第五十九は別段申上げるまでもないことでありまするが、授権資本制度を採用いたしました結果、現行法の資本増加に関する規定は不要となりましたのでこれを削除いたしたわけであります。
 次に第六十でありますが、資本の減少は、資本の類は登記事項ではございますが、定款の記載事項ではありませんので、資本を減少すること自体必ずしも特別決議による必要がないものと考えまするが、株主、債券者の権利に重大な影響を及ぼしますので、現行法通り特に特別決議といたしたのであります。
 次に六十一でございます。現行法は会社の整理の申立をなし得る株主を三月前より引続き資本の十分の一以上に当る株式を有する株主としておりまするが、株主の権利強化の見地から改正案は発行済総株数の百分の三以上に当る株主にこの申立権を認めるわけでございます。三百八十一條の第一項でございます。尚第六十五の清算人の解任の申立及び第六十六の特別清算の場合における検査命令の申立につきましても、右と同様の趣旨で、申立権を有する株主の有すべき株式数をそれぞれ資本の十分の一以上から発行済総株数の百分の三以上に引下げたわけでございます。
 次に、第六十二を御説明申上げたいと思います。これは、株主に会社の解散判決を求める権利を認めたものでございます。会社の業務の続行が不能又は不適当な場合、例えて申しますると、会社が業務執行上著しく難局に逢着して、業務を続行するならば会社に回復すべからざる損害を生ずるという虞れのあるような場合、又は会社財産の管理が著しく失当で会社の存立を危くするというような場合に、株主が他に認められたあらゆる救済方法、例えば、取締役の行為の差止 代表訴訟、取締役の解任等、あらゆる救済方法を講じましたけれども、結局効を奏しなかつたという場合に、株主に、会社から離脱して、資本を回収し得る途を拓いたものでございます。で、この解散請求の申立は、ときに濫用の虞れがあろうかと考えましたので、発行済総株数の十分の一以上に当る株式を有する株主に資格を限定いたしたわけでございます。この解散命令は、判決を以てなされることが適当と考えております。
 次に六十三は、これは買取請求でございまするが、前に申上げましたので、省略いたしたいと存じます。
 第六十四でございまするが、これは受権資本制度、及び無額面株を採用いたしました結果、吸收合併及び新設合併の場合に作成すべき合併契約書の記載事項に必要な改正を加えたものでございます。
 第六十五、第六十六は先に簡單に申上げましたので説明を省略いたします。
 次に第六十七でございます。株式合資会社は沿革的に見ましても変態の会社でありまするし、その構造が複雑で、企業形態として必ずしも実用性があるとも考えられませんし、又現在その数も非常に少いということに鑑みまして、これを廃止することといたしたのでございます。尤もこれは改正法律案の施行法の問題として研究いたすべき事項かと考えられまするが、現に存在する株式合資会社は固よりその存在を認めまして、将来に向つて株式合資会社の新設を拠えていくというふうな取扱い方をいたしたいと考えております。
 次に第六十八でございます。要綱の第六十二の解散が株主の私益的立場から認められておりまするのに対しまして、公益維持の立場から解散請求権を認めたものが五十八條乃至六十條でございます。現行法によりますると、裁判所にない会社の解散命令は利害関係人、若しくは検察官の請求によるか、又は裁判所の職種によつて行われるのでありまするが、改正案ではこの請求権者の中検察官を法務総裁に改めまして、尚請求の事由に変更を加えて、これを明確にし、利害関係人の請求につきましては、担保を必要としないということにいたしたのであります。尚要綱では解散請求権者を法務総裁に限つておりましたが、この後いろいろ研究いたしまして、又関係方面の示唆もございまして、現行法通り利害関係人をも公益維持に参與せしむることが適当と考えましたので、利害関係人も現行法通り請求権者に加えたわけでございます。
 次に第六十九の要綱を御説明申上げます。株主、債権者が会社編に規定する訴を提起するにつきまして、会社の請求によつて担保を提供せしむるという現行法の規定は、株主、債権者の訴えの自由を事実上奪う虞れもございまするので、この規定を削除いたしたのでございます。又裁判所の裁量による請求棄却に関する規定、現行法の第百七條或いは二百五十一條等でございまするが、この裁判所の裁量による請求棄却を求めるという規定の表現は、多少的確を欠く点もありまするし、裁判所による裁量を甚だしく広く解せられる虞れもありまするので、むしろこれを削ることを妥当と考えたわけでございます。併し、これを削りましたのは、裁判所の裁量権と申しまするか、この法規を適正に解釈して、その事案について公平妥当な裁判をするという意味における裁量権を否定したものではございませんので、裁判所におきまする個々の事案につきまして諸般の事情を十分検討し、合理的な判断を下される余地は十分留保されておるつもりでございます。又現行法における株主総会決議取消しの訴えの出訴期間が一ヶ月とされておりまするのはやや、短きに失しまするので、株主の保護の見地からこれを三ヶ月に伸長いたしたわけでございます。
 次に七十から七十二までは外国会社に関する要綱でございます。現行法によりますると、外国会社は日本に支店を設けた場合に限つて登記を必要とし、その登記あるまでは第三者は会社の成立を否認することができることになつております。その結果はその間の法律関係が錯雑し取引の安全を害する虞れがありまするので、この点を改正いたしたわけでございます。尚、要綱の七十二は外国会社の法律上の地位を明確にいたしたものでございます。條文で申上げますると、四百七十九條四百八十一條、四百九十八條ノ三、四百八十五條ノ二でございます。
 第七十三でございまするがこれは以上のような改正に伴いまして会社編の中に所要な改正を加えたわけでございます。又罰則につきましては、他の刑罰法令との権衡も考えまして罰金額を約五十倍に引上げた外、規定を整備いたしたわけでございます。誠に簡單でございますが、大体要綱に関する説明をこれで終りたいと思います。
#4
○委員長(伊藤修君) では本案につきましては来週の火曜日から一般質問に入りたいと思います。
 本日はこの程度にして置きます。
  ―――――――――――――
#5
○大野幸一君 世上いわゆる佐藤事件ということが伝えられておりますが、これは国政調査の一部として取上げようとして否決されたようでありますが、そもそも検察に当つて検察が公平に行われているか、権力に屈していやしないかということを調べることも、この参議院の法務委員会において、裁判、検察に対しての特別調査の範囲内に入つて、むしろこれは参議院の方で取上げらるべきものであると考えておりますが、何分にも世人はまだ疑惑を持つておりまするし、衆議院の取上げなかつた理由については、多分に政党的情実があつたようでございますから、私は本日午後から開かれる理事会に対して、衆議院が考査委員会にも法務委員会にも取上げようとして取上げられなかつたこの事件を、この法務委員会において取上げるかどうかということについて、一つ御審議を煩わしたいと思う次第であります。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(伊藤修君) 民今大野君の申出に対しましては、専門調査員室におきましても夙に研究はいたしておるのであります。只今のお申出に対しまして、午後の理事会において協議して御回答申上げることにいたします。委員会は午後一時半から再開することにいたしたいと思います。それまで休憩いたします。
   午後零時二十三分休憩
   ―――――・―――――
   午後二時八分開会
#7
○委員長(伊藤修君) それでは午前に引続きまして法務委員会を開きます。
 只今理事会において商法の調査のために、名古屋、大阪、福岡、この三ヶ所におきまして各業界の実情を調査するため、衆議院と同調いたしまして緊急打合せをいたしまして、出張することにいたしたいということを理事会において決定いたしました。尚当委員会におきまして十六、十七日商法に関する公聴会を開きたいとこういうふうに理事会において決定をいたしました。理事会の決定通りこれを催すことに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○委員長(伊藤修君) ではさように決定いたします。
 次に午前の委員会において御発言のありました五井産業事件についての建設及び裁判の運営に関する調査をすることにつきまして、理事会におきましては、満場一致これを調査すべきものであるというふうに決定をいたしましたが、この件に対しまして御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○遠山丙市君 ちよつと……今大多数まとまつておるということでありますので、強いて不承認というのでもございませんが、この件に関しましては、裁判所でも大分進行しておるようでもあり、まだその中途にあるということも聞いておるのでありますが、そういうような道程においてこれを取上げるというのは、その時期の点においてどうかと考えるのであります。今すぐ取上げてやるということは反対いたしたいと思います。
#10
○委員長(伊藤修君) 他に御意見ありませんか。
#11
○大野幸一君 進行中の事件というお話ですが、これは適当な調査と共に、委員長及び委員会において考慮しつつ進行されれば差支ないものと思います。
#12
○委員長(伊藤修君) では本件調査につきまして、御賛成の方は御起立をお願いいたします。
   〔起立者多数〕
#13
○委員長(伊藤修君) 多数と認めます。よつて本件は、当委員会におきまして適当に調査をすることに決定をいたします。では外に御発言ありませんか。では本日はこれを以て散会いたします。
   午後二時十一分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           宮城タマヨ君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           遠山 丙市君
  政府委員
           松井 道夫君
           松村眞一郎君
   検     事
   (法制意見総務
   室第一局長)  岡咲 恕一君
ソース: 国立国会図書館
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