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1949/03/10 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 法務委員会 第9号
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1949/03/10 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 法務委員会 第9号

#1
第007回国会 法務委員会 第9号
昭和二十五年三月十日(金曜日)
   午後一時五十分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○商法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) ではこれより法務委員会を開きます。商法の一部を改正する法律案を議題といたします。昨日に引続きまして第四章株式会社、第二節株式、第百九十九條から逐條御説明をお願いいたします。
#3
○政府委員(岡咲恕一君) 現行法の第百九十九條の規定によりますと「株式会社ノ資本ハ之ヲ株式二分ツコトヲ要ス」と規定されておりまして、これは改めて御説明申上げるまでもないと存じまするが、現行法におけるこの資本は、株式の金額、いわゆる株金額の総計されたものが資本になる、言い換えれば、資本と株式との密接な関係を表参現規定いたしているものでございます。ところが改正法案におきましては、あとに資本のところで御説明申上げるつもりでおりまするが、株式と資本との関係が一応遮断された形になりましたので、現行法のような資本を株式に分つたというような規定は削除いたしたわけ容でございます。でこれに換えまして、「会社ハ額面株式若ハ無額面株式又ハ其ノ双方ヲ発行スルコトヲ得」という規定を定めたわけでございます。
 次に第二百條でございまするが、これは昨日簡単に御説明申上げましたように、株主の責任が株式の引受価額を限度とする有限責任であるということを明らかにいたしたわけでございます。現行法の建前によりますると、株主の責任は株金額を限度とする有限責任であつて、これに対する唯一の例外は、額面超過額を以て株式を発行した場合に、この超過額について責任があるということを唯一の例外といたしておるわけでありますが、この度は額面株式、無額面株式相方に通じまして、すべて引受価額を限度として責任を負うということを明らかにしたわけでございます。
 第二項の「相殺ヲ以テ会社二対抗スルコトヲ得ズ」ということは、現行法にございます規定をそのまま踏襲したわけであります。これはアメリカの法制によりますると、株主は必ずしも相殺を以て会社に対抗することができないという原則は取つておりませんで、会社が支拂可能である状態においては会社に対する反対債権を以て拂込債務と相殺いたすということを聞いておりますし、会社が支拂不能の状態となり、或いは清算の過程に入りました場合はこれを許さないというのが原則のように承わつておりますが、強いてこれを改める必要もないかと考えまして、現行法通りを受継いだわけでございます。
 次に二百條はこれは字句の整理でございまして別段申上げることはございません。二百二條も昨日確か御説明員会会議申しましたので省略さして頂きます。
 二百三條でございますが、この第一項は新設の規定でございまして、「共同シテ株式ヲ引受ケタル者ハ連帯シテ拂込ヲ為ス義務ヲ負フ」、現行法によりますると、この二百三條の末項に、「共有者ハ会社二対シ連帯シテ株金ノ拂込ヲ為ス義務ヲ負フ」、株式の共有者につきまして連帯の義務を認めておりまするが、引受人が株式を共同して引受けた場合は、その拂込の義務は分割債務として、多数当時者の債務として分割債務になるのか、或いは二百三條の三項の規定から類推いたしまして連帯債務になるのか、多少疑問がございまするのでむしろ項目を設けまして、共同して株式を引受けた者は連帯拂込をなす義務を負うということを明らかになすことを適当と考えまして、第一項を新設いたしたわけでございます。その外の規定は現行法通りでございまして、別に変つているところはございません。
 次に第二百四條でありまするが、これは相当重要な変更を考えております。先般総括的な説明をいたす際に大体の御説明を申上げましたが、株式の譲渡制を株主に保障いたしますることは、株式会社における株主の保護上欠くべからざるもののように考えまして、現行法におけるように、定款によつてこれを禁止したり或いは制限するということは一切認めないことにいたしたわけでございます。これはいろいろ問題があろうかと考えますので、いずれお尋ねによりまして詳細に説明をいたしたいと思います。
 二百四條の第二項は「株券ノ発行前ニ為シタル株式ノ譲渡ハ会社ニ対シ其ノ効カヲ生ゼズ」という規定は現行法にありまして、立法的な措置といたしまして多少問題があるのではないかと思います。言い換えれば株券の発行前の株式の譲渡というものを制限する、少くとも会社に対する関係において効力を生じないというふうな規定が、株式の譲渡制を保障する法律との建前上多少問題ではないか、有力なる学者はむしろ発行前の譲渡に対しても効力を認めるべきであるというふうな説を強く主張される方もあるのでございますが、一応現行法の建前を踏襲いたしまして、「株券ノ発行前ニ為シタル株式ノ譲渡ハ会社ニ対シ其ノ効カヲ生ゼズ」という規定をそのまま存置いたした次第でございます。言い換えれば、株式の発行前における譲渡方式について明確なる結論を得ることが困難でございまするので、一応このままにいたしたわけでございます。
 次に二百五條でございます。これも現行法に対しまして相当重要な修正かと考えます。現行法の建前によりますると、記名株式の譲渡は株式の裏書によつてするか、或いは単なる意思表示によつて行うかという建前を取りまして、会社に対する関係におきましては、いずれも株主名簿の名義書換をなすことを要件とし、第三者に対する関係におきましては株主名簿に名義書換をなすと同時に、株券に取得者の氏名を記載するということを対抗要件といたしておるわけでございます。ところが、この方式は会社に対する関係におきましては一応合理的でございまするけれども、意思表示によつて直ちに当事者間において譲渡の効力を生ずることにつきましては、記名株式の譲渡が有価証券として転々される実状と又極めて簡便に転々することを必要とする経済上の理由のある点等から考えまして、成るべくこの移転関係を明確にするということを特に必要と考え、又その場合に善意の取得者に対して法律上十分の保護を與えて行くということが適当ではないかということを考慮に入れまして、二百五條のような改正をいたしたわけでございます。即ち記名株式の譲渡は株券の裏書によつてこれをなすか、或いは株券に株主として表示せられてあるものの署名ある譲渡証書を交付することによつてこれをなすというふうにいたしたのでございます。併しこれは飽くまでも当事者間の譲渡方式でございまして、会社に対する関係は第二百六條の規定によるわけでございます。従来は意思表示によつて株式の譲渡を認めましたことに対しまして、一種の要物契約といたしたわけで、株券と譲渡を証する書面、この二つのものを譲受人に交付しなければ譲渡をすることができない。その株券と書面の交付が譲渡の要件をなすわけでございます。そういたしますると、株券の裏書、或いは株券の譲渡証書の交付というものに対して相当強い効果を認めませんと、譲受人が不測の損害を蒙るということに相成るわけでございます。そこで株券の裏書につきましては裏書に資格授與的効力を與える、譲受人が裏書の連続によりまして権利を証明いたしました場合には、その譲受人を正当な権利者とすることができるというふうな規定を設ける必要がありますので、二百五條の第二項に従来から問題でありました手形法の十六條の第一項の規定を準用することにいたしたわけでございます。この手形法の十六條の第一項は申すまでもなく裏書に資格授與的効力を認めたものでございまして、現行法に十六條第一項の準用を落しましたことは、立法上の寝癖であるのではないかと考えておるわけであります。裏書にさような資格授與の効力を與えました以上は、記名株券の他の讓渡方式即ち株券と譲渡証書の交付というものにも、同様の効力を與えることが当然に必要と相成るわけでございまして、二百五條の第三項にその趣旨の規定を新設いたしましたわけでございます。
 二百四條の規定の説明でちよつと申落した点がありまするので、恐縮ですが附加えさして頂きたいと思います。現行法では裏書による譲渡を定款を以て禁止するということを言つておりますが、これは元より許さない次第でございます。会社法におきましても記名一株式は手形と同様に法律上当然指図証券でありまして、裏書による譲渡は当然認めらるべきものであるというふうに言われておりますし、又実際上の取扱いにおきましても、むしろこの裏書による譲渡というものが本則的な譲渡方式ではないかと考えます。二百四條で譲渡禁止或いは制限を許さないことになりました関係上、現行法には百七十五條の五号におきまして株式申込証又百八十八條の六号におきまして登記事項、二百二十五條の六号におきまして株券の記載事項にそれぞれ譲渡制限或いは禁止に関する事項を掲げることにいたしておりますが、この禁止、制限を認めないことになりましたので、只今申しました株式申込証、登記事項、それから記載事項全部を削除いたしておる次第でございます。
 次に二百六條でございまするが、「記名株式ノ移転ハ取得者ノ氏名及住所ヲ株主名簿ニ記載スルニ非レバ之ヲ以テ会社ニ対抗スルヲ得ズ」これは別段申上げることもございません。大体現行法の規定を踏襲したわけでございます。ただ現行法は二百六條の二項の規定がございまして、株券の名義書換をなすことも又会社への対抗要件にいたしておるわけでございます。株式名簿の名義書換のみならず株舞の記載をも改めなければ会社に対して対抗することを得ずということになつておりまするが、株券は本来株式を表徴するものでありまして、むしろ譲渡人から譲受人との関係におきましては株券というものが意味を持ち、又対第三者の関係におきましても意義を持つわけでありますが、会社に対する関係におきまして株券の名義書換だけを対抗要件とする必要は全然ございませんので、改正法律案ではその要件を落しておるのでございます。
 それから二百六條の二項におきましては、第三者に対する関係におきまして、株式名簿の記載と株券に名義書換のなされることを譲渡の対抗要件といたしておるわけですから、この度の改正によりますると、裏書と先程申しましたように、この株券及び譲渡証書の交付というものを譲渡の要件といたしました関係上、第三者関係に対する特別の配慮を必要とすることはないわけでありまして、株券に必ずしも記載をいたすことを必要としないと考えたわけであります。
 次に二百六條の第二項でございまするが、これは後程御説明申上げまするように、会社が定款を以て名義書換代理人を置くことができることにいたしましたので、この名義書換代理のところには、後程御説明いたしまするように、株主名簿か或いはこの株主名簿の複本を備えて置くわけでございますので、株主名簿そのものに名義書換をいたせば、二百六條第一項の規定によりまして、その株式の移転が会社に対、抗し得るわけでありますが、この外に株主名簿の複本に名義書換をなした場合の効力を定める必要がありますので、第二項を新設したわけでございます。即ち名義書換代理人が取得者の氏名及び住所を株主名簿の複本に記載いたしましたときには、名義書換があつたものとみなすということにいたしたわけでございます。
 次に二百八條でございます。これは質権の効力といたしまして物上代位に関する規定を設けておるわけでございまするが、現行法の認めておりまする消却、併合、転換の場合のみならず、二百九十三條の四におきまして株式の分割、それから二百四十五條の二及び四百八條の二におきまして株式の買取り、それから二百九十三條の三におきまして準備金より資本に組入れられることを認めると同時に、この場合に株式を発行するということを認めておりまするので、このような場合に新たに発行せられた株式、或いは株主が株式に代えて受取るべき金銭に対しまして、当然質権の効力が及ぶということにいたしたわけでございます。準備金より資本に組入れられました際に、株式を発行いたすことがあるのでございますが、その場合の株式というものは、株主の権利には実質的な何らの影響を與えるものではありませんで、ただ株主の持つている持分に対して、更に附加的に株式が発行せられたに過ぎないわけでありまするから、これに対して質権は当然効力を及ぼすのは勿論のことと考えます。その外の関係につきましては、改めて御説明を申上げるほどのこともないと考えます。
 次に二百九條でございます。これは第三項が新設されたものでございまするが、これは二百九十三條の二によりまして、株式による配当を認めましたので、その配当として受取つた株式に対して、登録質権者の権利が及ぶということを明らかにしたわけ餐ございます。併しこれは登録質権者の質権が、配当として受取りました株式について設定されるというだけでありまして、質権者はその配当として受取りました株式を直ちに弁済にあてることができるわけではございません。第四項は質権者が前條、即ち二百八條、或いは前項の規定によりまして、株主の受けるべき株券の引渡を、質権者として請求し得るということを明らかにいたしたわけでございます。
 二百六條のところで、恐縮でございましたが、第三項に「会社ハ株券ヲ登録スル為定款ヲ以テ登録機関ヲ置ク旨ヲ定ムルコトヲ得」という新らしい規定を設けましたことにつきまして、説明を落しましたので附加して御説明申上げて置きたいと思います。この名、義書換代理人と登録機関につきましては、先般の総括的説明の中で大体触れて置いたと思いますが、アメリカの実例を見ますると、会社の株式の名義書換人は多くその会社自体で行いませんで、別に名義書換代理人トランスフアー・エージエントというものをおきまして、その名義書換代理人をして名義書換を行わしめて行くというのが一般のようでございます。名義書換代理人をおくと同時に、又実際上の取扱を見ますると、別に登録機関というものをおいているようでございます。名義書換代理人は普通銀行若しくは信託会社がこれに当てられるのでありまして、登録機関も同様銀行若しくは信託会社がその任に当るようでございます。併し同一の銀行若しくは信託会社が、同一の会社の名義書換代理人であると同時に登録機関であるということはございませんで、名義書換代理人たる銀行或いは信託会社と、登録機関である銀行若しくは信託会社は、それぞれ別個の会社で穿るというのが実際の取扱いでございます。登録機関は一般的な説明のとき申上げたと思いまするが、株券の発行を登録いたすものでございまして、かようにいたしておきますると、株券オーヴアー・イツシユーと申しまするか二重に株券を発行する場合、或いは授権資本の枠を逸脱して株式が発行されるというようなことが、直ちに明らかになるのでありまして、登録機関を設置すると同時にこの名義書換代理人があるということになりますると、名義書換代理人は名義書換に先立ちましてその当該株券の状態を登録機関に通報いたしまして、そうして登録機関の方でその株券は有効な株券であるという確認を得て、名義壽換を行うというふうな取扱になるわけでございまして、株式の譲渡に対しまして非常な公正を保証することになるわけでございます。で、信用を重んずる会社は多く名義書換代理人を置くと同時に、この登録機関を設置いたしまして、自己の会社における株券の信用を保持することに努めておるのでございます。で、この度の改正法におきましては、この名義書換代理人を置くと同時に、この登録機関を置くことができるということにいたしたのでございます。この名義書換代理人がございますると、單に名義書換事務を行うのみでありませんで、株主総会招集の手続をやるとか或いは配当の支拂をやるとかいつたような、会社の業務、プロパーから考えますると、多少離れました事務は、挙げて名義書換代理人に委託されるのが通常でありまして、会社の事務の能率度を高める上におきましても、又会社の名義書換事務を敏速に行いまする上におきましても、大いに役立つ制度ではないかと、こう考えております。
 次に二百十條、それから二百十一條でございまするが、これは二百四十五條の二、四百八條の二におきまして、会社の営業権の譲渡、或いはこれに準ずる場合、又は会社の合併の場合に反対投票した株主に、株式の買取を認めておりましたので、会社がその自己株式を取得する場合が殖えたわけであります。で、この自己株式取得の追加されましたことに伴います規定の改正でございます。
 次に二百二十二條でございます。これはいわゆる種類株に関する規定でございまするが、現行法によりますると、利益、又は利息の配当又は残余財産の分配について、種類株を発行することができるということになつておるわけでございまするが、これに加えまして利益を以てする株式の消却について種類株を発行することを附加加えたものでございます。で、その第二項は、一昨日御説明申上げましたように、現行法の百六十八條の第一項の第二号にありましたものをこちらに移しただけでございます。第三項は別段実質的な変更はございませんで、現行法の第二項の規定を整理いたしただけでございます。
 次に二百二十二條の二から二百二十二條の七までは転換株式に関する規定でございます。現行法におきましては転換株式は増資の場合に限りまして認めるということになつておりまするが、この度の改正法におきましては会社の設立の当初よりこの転換株式を認めるというひとにいたしたのでございます。この場合は必ず定款に転換株式を発行する旨、そうして転換の條件、転換によつて発行すべき株式の内容、それから転換を請求し得べき期間を定めなければならないということにいたしたわけでございます。で、転換の言葉は諄く御説明申上げるまでもないと思いまするが、数種の株式が発行せられていることが前提でございまして、一つの種類の株式から他の株式に転換することを請求し得べき権利を附加されている株式を転換株式と申すわけでございまして、その転換の請求によりまして、当然旧株式がなくなりまして新株式ができる。新株式について株主と相成るわけでございます。それにつきましては別段会社の承諾等の意思表示を必要としないものでございます。言い換えれば株主の一方的の請求によつて当然転換の効力を生ずるわけでございます。で、転換の請求がありますると、元の株式は消滅いたしまして新らしく転換によつて株式が発行されるわけでございますので、その発行せらるべき新株は当然授権資本の枠の中になければなりませんので、二百二十二條の二の二項におきまして、その転換によつて発行すべき株式の数は、必ず転換請求期間内これを留保しなければならないという規定を設けたわけでございます。
 それから二百二十二條の三でございまするが、これは現行法の三百六十五條の二項と同趣旨でございまして、資本充実の原則を貫くための規定でございます。即ち転換によつて株式を発行する場合には、転換株式言い換えれば元の株式の発行価額を当然転換によつて発行する新株式の発行価額とするということにいたしまして、新株の発行によりまして資本充実の原則が破られることのないようにいたしたわけでございます。
 次に二百二十二條の四でございまするが、これは株式申込書に、転換株式については特別な事項を掲げる必要がありまするので、この規定を置いているわけでございます。これは現行法の増資の場合の転換株式における株式申込書の記載と同様でございます。
 二百二十二條の五は転換の方式の規定でございまして、請求書を株券に添付して会社に提出してこの転換の請求をするということ、その請求書の記載事項を定めたものでございます。
 第三項は二百二十四條の二の第一項の規定によりまして、株主の名義書換を停止する期間を定めておりますので、その期間内には転換の請求を許さないことといたしたわけでございます。これは利益、利息の配当、議決権の行使をなすべき株主を確定いたしまするのに、若し株主名簿の閉鎖期間内に転換を許すごとにいたしますと甚だ錯雑した事態になりまするので、この閉鎖期間内は転換を許さないということにいたしたわけでございます。
 次に二百二十二條の六でございまするが、これは総括的な説明のときにも申上げましたように、現行法の三百六十二條におきましては、転換の効力は、転換の請求をなしたる時の属する営業年度の終にその効力を生ずるということになつておりましたのを改めまして、転換の請求の時に効力を生ずるということにいたしたのでございます。尤もこの原則を貫きますると、利息の支拂或いは利益の配当等につきまして会社経理上不便な事態が生ずる場合がありまするので、この不便を除去する意味におきまして、定款を以て特に請求をなしたる時の営業年度の終又は前営業年度の終において、転換の効力を生じたものと取扱うという便法を認めたわけでございます。この転換を請求の時に効力を生ぜしめますることといたしますると、転換請求の時におきまして直ちに新株の株主になるわけでございまして、新株について與えられました株式の引受権或いは議決権を当然行使し得るわけでございますので、株号主の権利を保証し得ることと考えるのでございます。
 次に二百二十二條の七は登記に関する規定でございます。転換は只今帯しましたように請求の時に生ずるのでございまするが、請求のあるごとに直ちに登記をいたさなければならないということになりますと、会社の事務の取扱上相当の不便と申しまするか、煩瑣に堪えないことであろうと考えられまするので、変更の登記だけは転換の請求がありました月の末日現在におきまして登記することにいたしまして、その末日から本店所在地においては二週間、支店の所在地においては三週間内において登記すればよろしいということにいたしたわけでございます。
 次に二百二十三條でございまするが、これは株主名簿の記載事項でございまして特に説明を申上げることもないと思います。
 次に二百二十四條の二でございます。これは一般的説明のときにも申上げましたように、現在実際上行われておりまする株主名簿の閉鎖期間、名義書換の停止期間に対する規定を法律上取上げましたわけでございます。法律上取上げました意義が第二項にございまして、この停止期間は法律上六十日を越ゆることを許さないということにいたしたのでございます。それから更に新らしい制度といたしまして、登録日という制度を認めたわけでございます。即ち二百二十四條の二の第一項にありまするように、「一定ノ日ニ於テ株主名簿二記載アル株主若ハ質権者ヲ以テ其ノ権利ヲ行使スペキ株主若ハ質権者ト看倣ス旨ヲ定ムルコトヲ得」即ち定款によりまして登録日というものを定めることができる、登録日の当日株主名簿に記載されてあるところの株主若しくは登録質権者を以て権利を行使すべき株主若しくは質権者とみなすということにいたしたのであります。この登録日は二百二十四條の二の第三項にありまするように、権利を行使すべき日の前六十日以内にこれを定めることを要するのであります。そうして名義書換の停止期間又は登録日は必ず期間若しくはその日の前三十日内に公告をすることを要するものといたして、あります。一般に公示をする必要がありますのでそのようにいたしたわけであります。但し定款の中に特に期間又は日を指定する旨の定めがあります場合は、公告をいたしませんでも定款で明瞭でありますので、公告を必要としないということにいたしたわけであります。登録日は新らしい制度でございますが、相当、活用せられるの容あろうと想像いたしております。登録日を取りますると、実際上登録日における株主名簿を整理いたしますために、登録日の前数日の間は株主名簿の記載の変更を停止する、名義書換を停止するということはあり得るかと思いますが、原則といたしまして株主名簿の閉鎖をいたすことはそれ以外におきましては行われません関係上、株主は自由に株式を、譲渡いたしまして、そうして直ちに会社に対して名義書換を請求し得るという非常に大きな授権を提供いたすわけでございます。
 次に第二百三十五條は株券の記載事項でございますが、これは特に申上げることもないかと考えます。
 二百二十六條の第一項は新設の規定でございます。即ち「会社ハ成立後又ハ新株ノ押込期日後遅滞ナク株券ヲ発行スルコトヲ要ス」、これは従来株主に株券の交付請求権があるのかどうかということが論議せられたこともございますし、株主の株式の譲渡を確保するという法律の建前を貫こうとするならば、株券の発行なくしては株式の譲渡が不可能でありまするが故に、法律上株券の交付請求権があることを明らかにいたしますと同時に、会社は成立後又は新株の拂込期日後におきまして、この株主ができるわけでございまするから新株の拂込期日後遅滞なく株券を発行する義務があることを明らかにいたしたわけであります。第二項はこの現行法にありますのに修正を加えただけでございまして、即ち新株の発行が新らしく認められました関係上、株券は新株の拂込期日後でなければ発行できないという旨の新らしい規定を加えたわけでございます。
 次に二百二十九條を御説明申上げます。
 現行法の二百二十九條の第一項の規定によりますると、無記名株又は裏書ある記名株の場合には、小切手法第二十一條の規定が準用されることになりまして、善意の取得者を保護することになつておるのでありまするが、この度の改正によりまして裏書による株式の譲渡の外に、株券と譲渡証書を交付することによる譲渡方式を認めましたので、株券及び譲渡証書の交付による一善意の取得者の保護をいたす必要がありまするので、かような規定に改めたわけでございます。第二項を削除いたしておりまするが、これは現行法でも相当論議せられた問題でありまして、実際上の取扱を見ましてもこの株式の譲受人がわざわざ会社に掛けて、そうして株券の裏書が真正であるかどうか、言い換えればその裏書に捺印しでありまする印鑑が果して真正の印鑑であるかどうかということを一々会社に照会いたしまして、会社の印鑑簿と照合するというようなことは誠に期待し難きことでございまするし、又理論の問題といたしましても大いに論ぜられておつたところでありまするので、善意の取得者を保護するためにこの要件を緩和いたしまして、理論と実際の要求に適合いたさせることにいたしたわけでございます。簡單でございましたが一応御説明申上げました。
#4
○委員長(伊藤修君) 以上の点に対する御質問をお願いいたします。
#5
○鬼丸義齊君 ここで私はお尋ねいたしたいと思いまするのは、この株式の定義でございますが、株式の実体について法律上の定義を御説明願います。尚後は一応それの説明を承わつてからにいたします。
#6
○政府委員(岡咲恕一君) これは非常にむつかしい問題でございまして、将来学問上相当論議をみる問題ではないかと考えます。従来は資本と株式との間に密接不可分なる関係がありましたので、株式というものの定義付が極めて簡單であつたのでありまするが、新法律案によりましてこの関連を遮断されるということになりますると、一体そもそも株式とは如何なるものであるかということは相当むつかしい問題になろうかと思います。私の現在了解いたしておりまするところにおきましては、株式会社は申すまでもなく資本団体ではございまするが、同時に社団でございまして構成員であるところの株主というものがあるわけでございます。従いましてこの株主が会社に対して如何なる権利を持つておるかその権利、これが一つの株主権と言われるものでありまして、株式は株主権を現わすものであると同時に、株式は会社に対する権利でありまするが故に、会社の総資産に対する一つの割合的権利を現わす、言い換えれば財産権的な面を相当持つわけでございます。利益配当或いは利息配当或いは残余財産の分配というものに対する、割合的な権利を現わすという面もあろうかと思います。それから株主権と申しまするとそういう権利を言うのみでありませんで、共益権とか議決権とか、或いは解散した場合の機関的な地位における監督権といつたようなものも入るわけであります。要するに社員として会社に対して持つておるところの共益権と、社員として持つております会社に対する財産的権利、そういうものの割合的権利を現わすものというふうに了解されるのではないかと思います。と同時にその株式というものは、結局株主の出資を離れては成り立ち得ないわけでございまして、株式を取得するための対価というものが又一つ関係を持つわけであります。つまり現行法におきましては対価の総積と申しまするか、総額が一応資本になるという建前をとつておりまするが、新法ではその対価と資本との関係は切離されることに相成るわけでございます。又日本の現状におきましては、普通株が一般の原則になつておりまするが、これに償還株、優先株或いは転換株、後配株と各種の株式が発行されまして、而もその発行価額というものがそれぞれ変つて参りまして、而もその発行価額というものの一々資本に組入れる額というものがそれぞれ異なつて参りますと、実は株式というものの性質というものが相当むずかしくなるのではないかというふうに考えておるわけでありますが、まあ一般的に申しますると、只今申しましたように株主として会社に対して有している共益権的な権利、それから財産権的な権利を表わすものが株式である。こういうふうに了解してよろしいのではないかと現在は考えております。
#7
○鬼丸義齊君 只今の御説明によりまして、株式の効用についての概略の御説明のように承わつたのでありますが、株式自体というものの本体としてはもとより有形財産的なものでなくして、やはり無形財産的なものであることは間違いないのでないかと思いますが、そこで従来の株式に対しまする私共の考えておりました場合とは、新法によりまする場合におきましては著しく違う場合が生じて来るのではなかろうかと思います。従つてこの株式の本質如何によりましては、いろいろとこの法規上の解釈についても動いて来ると思います。例えば株式の譲渡については要物行為であつて、株式の株券若くは株式を証する証書の交付という一つの有形的事実がない限りは、譲渡行為が成立たないのでありますが、やはり例えば記名株式の場合におきましても、従来よく用いられておりました白紙委任状附の譲渡というものは、今度は明白にこれを禁止することになることだろうと思います。一つの財産権である限りにおいては、当事者の意思表示のみによつてその財産の移動というものは一応この法律行為として有効のものでないかと思いますが、この点の関係がどういうふうになるかということが先ず一つ概にやはり要物行為とのみそれを見てしまつてよいかどうか少し疑問に思います。これは譲渡はそうなのです。そこで正当なる株主ということになりまするについては、やはり会社に対する株主権自体が株式の本体ではないかと思いまするが、只今の御説明では、財産権的とか或いは一つの総合的株主権とでもいうのであるか、そこのところが私もちよつと理解しがたいのですが、只今私の伺いまする要物行為というような点に対する限りは白紙委任状等も許されるのではないか。又は一つの財産権とするならばこれは当事者の意思表示のみによつて、いわゆる所有権自体を移転できるのではないかと思いますが、その関係は第三者関係は別といたしまして、当事者間における効用についてどういうふうに考えておられるか、その点を一つ。
#8
○政府委員(岡咲恕一君) 現在慣行として認められております白紙委任状附の記名株式の譲渡というものは、もとより認めるのでございまして、現在行なつておりまする白紙委任状附の形式だけで、直ちに足りるかどうかということはちよつと疑問かと思いますが、白紙委任状は譲渡を証する書面と認められる場合が多いのではないかと思います。そういたしますると株券と白紙委任状を交付いたしますると、譲渡が有効に成立いたすわけでありまして、当事者間及び第三者間としては完全なる効果を生ずるわけでございます。一般に財産の移譲は、形式を伴わない当事者の意思表示のみで、少くとも当事者間には効力を生ぜしめてもいいのではないかという御趣旨のお尋ねと承わつたのですが、一般的にはもとよりそれでよろしいかと思いまするが、特別な法律によりまして或る一定の方式を優先することを法律行為の成立要件にいたすことは一向差支ないことと考えまするし、株主権というものを分析いたして考えまするとるとなかなか法律的にむつかしい説明もあるわけでありますが、平たく申しますると一定の金額を会社に醵出いたしまして、そのためにその対価として獲得いたしました一つの権利でありまして、而もそれは株券というものに簡単に表象されまして、株券というものが譲渡されて転々するという実情にあることは又否定し難いところであろうと思います。そういたしまするとドイツのルドルフ・フイツシエルというような学者は、株式会社における諸原則を株式譲渡の自由というものから演繹して説明いたしておるようでございます。株式譲渡というものを法律的に十分保障することは非常に重大なこととなるわけであります。譲渡を保障する方法といたしましては、先ず株主は何どきでも自由に株式を譲渡し得るということを保障すると同時に、転々流通の過程に驚きまして不測の損害を生じないように、善意の譲受人を保護するという点につきましても、法律的な手配を加えなければならぬということになるわけでございます。善意の譲受人を保護すると同時に、第三者関係も保護するという点を考えますると、意思表示のみによつて効力を生ずるといたしますると、必ず第三者の関係において相当複雑な関係も伴いますのでこれを制禦する意味から申しますと、株券を渡さなければ駄目なんだ、裏書がなければ駄目なのだということになりますと、もう第三者関係は極めて單一に相成るわけであります。譲受人の方から申しますると、筍くも一応の形式上の要件を備えておておる株券であれば、恰も手形と同様に全桁的に信頼して取得した場合には、取得者の権利が保障されるということになるのが適当の措置だと考えまするので譲渡につきまして一定の方式を定めた言い換えれば株券の裏書か、或いは株券とこの譲渡証書の交付というものを要件にいたしまして、裏書の場合には裏書の形式上の要件、それから譲渡を証する書面の場合にはその要件の整備している書面によりまして、譲受人が権利を証明する場合には、正当な権利となるということが適当ではないかと考えまして、二百五條のような規定にいたしたわけでございます。
#9
○鬼丸義齊君 そういたしますると、株券の裏書というものが譲渡に対しまする一つの必要條件といたしましたならば、裏書若しくは譲渡を証するすき書面の交付がない場合であつて、当事者のみの意思表示によつて株券の移動がある、こういうことからいたしますれば、いうまでもなく株式というものと株券というもの、或いはこれを証すべき書面とは必ずしも一体をなすものではないと解していいじやないかと思います。そこで若しそういうことであるしいたしましたならば、善意の株券の所持者或いは善意の譲渡証書を所有する所有者でありますれば、これはもう議論はありませんが、若し善意にあらざるものの株券所持者、いわゆる不正に株券を所持する者、不正の譲渡証書を所持する者、これは勿論それに対する対外的にも又対内的にも権利の、移動が不正であるというものはないものと解していいのですな。尚その場合に株券が裏書によつて移動いたしまするが、その株券とか或いは譲渡証書というものが紛失した場合と雖も、株式自体には聊かも傷はつかない、こういうふうに解してよろしいのでございますか。
#10
○政府委員(岡咲恕一君) この所持人が悪意であつた場合には、もとより権利を取得いたすわけではございませんで、言い換えればその株券なり或いは譲渡を託する書面が盗まれたものであるということを、十分承知しながらその株券譲渡証を受取つたものは、もとより権利者になるわけではございません。ところが今鬼丸委員のお尋ねのように、若し株券と譲渡証書が何人かに盗まれまして、つまり盗まれないでおき忘れてもよろしうございますが、のうちに誰か悪意の者がそれをどこかへ持つて行つてしまつた、そうしての株券と譲渡証を讓受けたというもがありまする場合には、その善意の譲受人は権利を取得いたしましてその株券を紛失いたしました元の株主は盗利を失うという結果になるわけでございます。
#11
○鬼丸義齊君 ただ今の御説明によることは私も正しいと思いますが、それにいたしましてはこの條文の書方に余すところなしと言いがたい、多少足りない点がありはしないか、いわゆる善意の第三者に対抗する場合の何らかのそこに規定を明確にして置く必要がありはしないかと思います。これで十分とお思いになりますか、その点を一つ何か……。私も全体のまだ條文を渉猟しておりませんからしつかりしたことは分りません、その点一つお教え下さい。
#12
○政府委員(岡咲恕一君) 二百二十九條におきまして小切手法の二十一條を準用いたしておりまするので、鬼丸委員のお尋ねになる点は一応手当が出来ているのではないかと思います。
#13
○松井道夫君 二百四條の株式譲渡の禁止に関する條文でありますが、これは現在の制度を検討されているかと思いますが、こういう点については、一つ資料がありましたらこれは少し集めようと思うのでありますが、例えば現在の株式会社におきまして、定款において言渡を禁止している株式会社がどのくらいあるか、こういうことは是非一つ資料を頂戴したいと思うのであります。まあ想像するところによれば大企業のようなものは、これは勿論禁止しておるところはない筈であります。併し又その大企業、取引所で扱うような株が一体全株式会社で何割くらいなりておるのか、そういうような関係からこの今の二百四條の改正というものが現在の実際に與える影響、実際に與える変更というものを窺い知ることができるかと存ずるのであります。勿論もう調査済であると思いますが、そうしたら数字だけでもいいからお聞かせ願いたいと思います。
#14
○政府委員(岡咲恕一君) 松井委員のお尋ねの点は私共非常に関心を持つておりまして、折角資料を蒐集いたしておりますので、集まり次第御参考に供したいと思つております。で、現在ありまする日本の営業の中心をなしているような大会社も、以前は譲渡制限を定款で規定せられておつたのもあるようでございまするが、漸次大会社になるに従いまして、その定款の規定を落されまして、殆んど譲渡制限はないようでございます。尤も家族的な会社或いは小企業におきましては、会社の承認だとか或いは取締役会の承諾を得なければ譲渡ができないというような規定をしたもの、或いは中にはこの譲渡禁止をしたものも小会社、家族的会社などにはあるように承わつております。比較的大会社で譲渡制限をいたしておりますので私の手許にありますのは新聞会社、新聞の経営を致しております大会社は殆んど例外なく譲渡制限をいたしておるようでございます。これは新聞における経営の自立を確保するという意味におきまして、原則として従業員でないと株主になれないという建前を採つておるようであります。理論的に申しますと人的会社におきましても大体脱退の自由を認めておりまするし、株主と致しましても折角会社に投資しながら予想に反して会社が経営が良好でないというふうな場合、或いは将来を見透して適当な時期にその株式を譲渡して投下資本の回收を計るという途を講ずることは、株主に與えられた権利の中では非常に重大なものである。それであるから少くとも株式の譲渡ということを原則として保障しなければならないということは言えるのではないかと思います。併し実際の問題を考えますと、株式会社の中でも千差万別でございまするので、一様に絶対的に譲渡というものを保障しなければならないのかどうかという点は、私も多少の疑問があるのではないかと思つております。或る程度又は会社の自主に任せても差支ないのではないかと思う点もなくはない次第でございます。アメリカにおきましては、一応はこの譲渡制限というものは認めない建前になつておりますが、合理的な理由のある場合には譲渡制限必ずしも違法ではないというふうに解釈いたしておりますので、或いはこの解釈の問題で異なつた解釈が成立つかも分りませんが、余り徹底した譲渡の保障は場合によつては行過ぎであるという場合もあるのではないかと思つております。尚この資料は、集まり次第お手許に届けまして御検討を煩わしたいと存じます。
#15
○松井道夫君 この二百四條の條文が出て来た根本の理由ですが、これは單に今のように、株主の企業からの脱退ということを認めることが自由だといいますか、株主の地位に基本的な性質のものであるという單に理論的の問題からか、或いは今の企業の所有と経営の分離、そういつた理論的の問題から出ておるのか、或いは多少株主会社に対する政策的な考え、例えば今の家族的の会社といつたようなものは、本質は有限会社的な或いは合名会社的な存在であるからして、今の譲渡を制限したり禁止することによつて、そういうものは有限会社乃至外の会社に組織を変更いたす、少くとも将来はそういうように導いて行くといつたような政策的な見解が多少でも入つて行くのか。その他何らかの理由があつてこういうことが出て参つたのか。その点をお尋ねしたいと思うのであります。元来現行法におきましても原則的には勿論譲渡することができるので、特殊な場合に定款を以てその譲渡の制限を定めることができるということで妥協いたしておるのでありますが、これをこの改正案のように改めなければならん、そういつた理由が出て来たその根本が分らないところがありますので、その点をお尋ねしたいと思います。
#16
○政府委員(岡咲恕一君) 言葉が足りませんで、松井委員の御疑問に十分お答えできなかつたのは遺憾でございますが、もとより理論だけの問題ではございませんで、立法といたしましてはその理論よりも実際の必要ということの方がずつと重きを置かなければならないかと思つております。現行法の「定款ヲ以テ其ノ譲渡ノ制限ヲ定ムルコトヲ妨ゲズ」というのは、ただ單に制限をいたしておるだけではありませんで、中には禁止することもこの規定の解釈として認められておるわけでございます。そういたしまする、第一番に企業集中排除、或いは独占禁止法というふうな関係がこの譲渡制限から逆に妨げられるということもあり得るかと思いまするし、又他面現況におきましては株式が非常に広く分散しておりまして、あらゆる階級の者に昨日も申上げましたように分散されておる情況は、果して健全な投資が行われておるのか、或いは專ら株価の値上りを目標にいたしまして利鞘を稼ぐだけの目的で投機的にいたしておるのでありまするか、非常に疑問だと思うのでございます。後程資料をお手許に届けまして御覧を願いたいのですが、非常に株式が分散されておる。そういう工合に若し譲渡制限が行われますると、その株主は極端に申しますると、他に適当な換価すべき資産がないという場合には、永久にとは申しませんでも相当の期間とにかくその株式と結びつけられなければならないということは、これは実際問題として堪え難いのではないかと思います。従つてその緊急な必要がある場合には、株式を売却いたしまして投下資本を回收するということを認めますことは、現在の株式を分散いたしておりまする状態におきましては、必要不可欠なことではないかと思います。ただ例外として考え得られまするのは、先程申しましたように極く家族的な小人数で、殆んどギルド的と申しまするか組合的な、同志的な会社で、成るべく信頼関係で全株主の協議によつて事業をやつて行こうというような会社が、一人の株主の反逆者がありましてそれが株式を譲渡をして、思わざる第三者がその会社の中に介入して来るということを防げないというのは、これは行過ぎではないかと思います。それ以外の株式会社というものを考えまするならば、株式の譲渡を確保することは、株主の権利を確保する上におきまして欠くべからざる措置ではないかと、かように考えております。理論の問題はむしろ従でございまして、どこまでも現況における企業のあり方、株主の財産権的な地位を保護するということを考えますと、株式の譲渡を保障することは当然のことと考えます。
#17
○鬼丸義齊君 今日の御説明頂きました点ではありませんが、会社の成立は登記を要することになりまするので、これは第三者関係だけであつたのであるか、或いは名実共に会社の成立というものは登記によつて初めてこういうふうに設立されるのであるか、その点について登記なくては一切会社というものは成り立たぬというふうになつております。そういうふうに改めましたる利弊。尚私はその改正について慨して勇敢な立案であると思いまする点は、只今松井委員よりお尋ねになりました譲渡禁止制限の規定並びに二百五條の譲渡に対しまする要物的規定を設けました、これらに対しまする利弊のあらまして結構ですから、この際お聞かせ願いたいと思います。と申しますのは、非常に大胆な改正には相違ありませんけれども、大きなその利益を犠牲にしなければならぬ点が多々あるのじやなかろうか。殊に要物行為になつておりまする関係からして、やはりこの貨幣との関係等の点も、丁度こういつた制度を設けましたことと並べて見まして、この貨幣のいわゆる公信用との関係と睨み合せて考えますれば、非常な大胆な改正だと思いますので、この際できれば一つ利弊の大要だけでようございますから、その観点について伺いたいと思います。
#18
○政府委員(岡咲恕一君) 今のお尋ねの第一点の、会社の設立が登記によつて成立するという点の利弊に関するお尋ねでございまするが、会社は本店の所在地に於て設立の登記をなすによつて成立するという五十七條の規定は、元からある規定でございまして、旧法におきましては確かに鬼丸委員御指摘のように、第三者に対して対抗するために登記が必要であるというふうに相成つておつたかと思いまするが、会社のような集団的な、而も個人的会社にいたしましても、とにかく相当な財産というものを持つておる会社が而も社会的には相当巾のある活動を、その存在が第三者関係と当事者関係とにおいて存在が否認せられたり、或いは認められるというふうな関係におきますることは適当ではないと考えまして、一律に登記、言い換えれば公示方法を備えた時期において成立したということに相成るかと思いますが、これは合理的な改正でありまして、私は詳しく存じませんが、相当旧法時代に問題がありましたのをこれによりまして解決いたしたのではないかと考えております。
 それから第二点の記名株式の譲渡方式について、裏書或いは株券譲渡証書の交付といつたような非常に狭い方式だけを認めまして、広く意思表示による譲渡を禁止するということは果して適当であるかどうか、それに伴う不便不自由というものはないかというお尋ねと承わつたのですが、私も実は余り証券界のことは存じませんけれども、大体現在におきましても、この意思表示だけで譲渡を行うというふうなことは、株式においては稀ではないか、恐らく証券業者が介在して行われることが多いかと思いますが、大体株券と、白紙委任状というものを持つて参りましてそうして譲渡する、勿論こういう株式を買いたい、或いは売りたいというふうな意思の表示がありまするけれども、むしろこれは予約とか單なる買付の申込の程度ということでありまして、現実の譲渡というものは株券というものを離れては行われてはいないのではないか、従いまして譲渡方式をかように限定いたしますことは、必ずしも取引当事者或いは証券業者に取つて非常に不自由を来たすものではないのではないか、むしろこういう方式を確定いたしますることによつて、第三者関係を統一するということ、それからこういう方式を取りますると、譲受人の保護を講ずる点におきまして、非常に便宜であるという点から考えまして、むしろ合理的ではないか、弊害を除去する点は多くても、迷惑を與える点は殆んどないのではないか、かように考えている次第でございます。
 この点は証券界の方々にも意見を確めたのでございまするが、もう殆んど異口同音に賛成でございまして、従前のような意思表示による譲渡、意思表示によつて当事者間に行為の生ずるようなやり方は、むしろ好ましくないという意見が強かつたのでございます。実はもつとこれに関連いたしまして、多少細かいかとも思いまするが、御説明を申上げますと、二百四條の二項の規定でございまするが、株券発行前の譲渡につきまして何らかの方策がないか、むしろこれについては、できれば株券の交付と同じように、例えば権利証とか受取証というようなものの交付によつて、或いは裏書によつて、株券発行前の株式の譲渡を、なんとか便益な方法を規定して貰えないだろうかという希望すらございましたのでして、第二百五條の規定は、私共の承知いたしております範囲では、証券業界では非常に賛成されておる規定のように考えているのでございます。
#19
○鬼丸義齊君 先程政府委員の例示されました、例えば新聞或いは印刷会社とかというふうな特殊会社等については、譲渡禁止の会社が多いという話でありましたが、今度改正されまする会社につきましては、株主としての権利が従来とは異なつて、少数株主でなくして、或いは個人としても、いろいろ訴の提起とか、その他随分権利の主張について大きな新らしい株主としての権利を認めて参るということになりますが、共同経営によつて事業を遂行して参まする上において、やはり家族的の会社は余り他人を入れずして、そうして資本を集めて一つの事業を営むというような場合などに、他の富裕株主等が入つて来ますことを非常に恐れて、それがため却つて会社設立に対して非常に危惧の念を抱く人が出て来るようなことはあつてならないと思います。定款において譲渡禁止いたしておりまする従来の会社としては、やや封建的の感はございまするけれども、それが即ち会社の本質であつて、心を安らかにして事業を遂行して行くという面において、特殊な会社事業、特殊な経営方法等を好んで経営をいたしておりまする会社等もかなりある、これらが結局新らしい制度によりましては非常な不安を抱いてその設立に望んで躊躇するような結果になりはしないか。これは極く卑近な例でありまするけれども、これらを併し犠牲にして尚且つ株式の譲渡性、移動性を特に強調しなければならないという趣旨というものが、理論はとにかく実際的であるという御意見は、少し実状とそぐわないのじやないかというような感もいたします。これは絶対的にするというだけの必要がないということについて、尚私は一抹の危惧を持つて曲るわけであります。重ねてもう一度質問します。
#20
○政府委員(岡咲恕一君) 鬼丸委員のお話になりましたようなことは、特殊な信頼的な同志的な結合を持つた企業体を作られるということ、勿論株式会社機構でございますが、株式の譲渡が自由になるために、そういう同志的の結合で出発した会社が、富裕株主を迎え入れなければならないという事態が生ずるのは、非常に困る場合であろうというお尋ねと考えまするが、そういう会社を設立されます場合には、それを避けようとすれば有限会社として出発せられるという方が安全かと思いまするし、仮に有限会社よりも一般の産業界の感じから申しまして、株式会社の方が企業として好ましいという場合には株式会社をお作りにならなければならないのですが、どうしても譲渡を制限したい、或いは禁止したいとお考えになりまするときには、これは当事者間の約束として譲渡禁止の特約をなさることは、法律上差支ないのではないかと考えます。ただその定款で禁止、或いは制限することを認めないということになつておるわけでございます。この二百四條一項の解釈問題ですが、或いは極めて合理的である場合、アメリカで申しまするリーゾナブルな場合には譲渡禁止、或いは判例の解釈として有効だという解釈をする余地が私は全然ないのではないと考えまするが、この点多少疑問もありまするので、実際同志的な結合として出発するという場合にはむしろ定款外の当事者の約束として譲渡禁止、若しくは制限に関する契約を締結なさるのも一つの方法ではないかと考えます。どうも誠に不十分なお答えで恐縮でございますが、一応二百四條は原則といたしまして株式の譲渡性を保障するということにいたしたのであるということを御了承頂きたいと思います。
#21
○松井道夫君 まあ二百四條によつてこういう質問を申上げるのもどうかと思うのでありまするが、尚一、二ちよつと確めたいと思うのであります。先程の御説明で株式が非常に広範に分散されておる。これは敗戰後の集中排除、独占禁止その他財閥解体その他の措置によりまして株式が非常に分散された、これは頗る結構な傾向であるのでありますが、その際に、そういう状態におきまして株式譲渡が禁止、或いは制限されるということであると非常に困るという、このことも又了解することができるのでありまするが、果してそういつた過程で分散されたその株式についてどの程度一体その譲渡禁止の株があるのか、これらは今持株委員会その他調べれば直ぐ分ると思いますが、概してこれは今持株会社のようなものは或いはないものであるか知れませんが、それはやはり大企業に属するものが相当あるのでありまするし、存外譲渡禁止などというものはないかも知れません。或いは三井、三菱といつたようなああいつた家族的な結合の強い会社で、或いは存外譲渡禁止があるか分らない。その辺は資料を見せて頂かないと分らない。併しそれは大体において過去のものであつて、而も今政府委員が述べられたように経済界の推移によりまして、そういつた株式分散というた推移によりまして会社側においても自発的にそういつた譲渡の禁止を解くということも当然予想される、又実例もあるのであります。それで分散した特殊の株式におきまして、それをみずかち株式を譲渡しなければ今の株主が立つて行けない、株式の基本的人権にかかわるといつたような場合には、それは当然会社の実績がよくなくてその株が下落しつつある、下落するというような状況であると思うのでありまして、そういつた特殊の会社でありまするから、会社によりましてはもうすでに立つて行けないというようなものがあるかも知れないのであつて、分散といいましてもこれは勿論私など考えておるものよりも遥かに、一株、二株じやなく一千株、二千株の状態で分散されて行く、もつと多数の場合もあるかも知れませんが、そういつた場合にはおのずからその株式譲渡が許されておるということのために、その苦況を免れるということの方法は幾らもあるだろうと思うのであります。又それによつて方法がないような場合は、株式の譲渡が許されておつてもどんどん下がるような株を買う人はありはしない。又それは屁理屈になるかも知れませんが、併しながらそれは結局過去の問題であるのでありまして、これから設立する会社につきましては勿論そういうことも十分考慮に入れて設立されることだと存ずるのであります。
 それで先ず伺いたいのは、この二百四條の規定ができて商法が来年七月なら七月から実施されます曉におきまして、現在すでに株式の譲渡を禁止いたしておりますそういつた会社規定はどういうことになるか、やはり過渡的にそういうものを認めておるのか、或いは施行法でそういうものも禁じて、そういう株式の譲渡禁止の規定は無効になるのか、そういうことを第一にお尋ねしたいのであります。
 それから仮にそういう場合に無効となるということになりますると、今までの多くのそういつた会社に対して非常に大きな衝撃を與えることになる。これは勿論政府委員の考えておられるような会社は非常な結構なことに相成るのでありまするが、現在の二百四條の規定によりまして安んじて禁止乃至は制限をしておるような会社は、非常に大きな衝撃を受けることに相成ります。又これは将来設立する会社につきまして、こういつたことになればよろしい、改正法で行くんだということになれば、今政府委員の言われたような現在困つている、この改正案を出したいという根本の理由が生きて来ないと存ずるのであります。施行法を制定いたしまするにおいて特段の御考慮がそこに要るんじやないかと存ずるのであります。その点は如何考えておられますか。
#22
○政府委員(岡咲恕一君) 二百四條のこの規定の実施につきまして、現存の会社に若し定款で禁止制限の規定が置かれておる場合に、これをどういたすかということは、松井委員の御指摘のように非常に重大な問題だと思います。例えて申しますと、二百二十四條の二で名義書換停止期間を六十日以内と法定いたすことにいたしておりまするが、二百二十四條の二の第一項のような規定は、当然施行も同時に適用されることになりまして、これをこういう期間を單に定款で定めておる場合には、これを六十日と定めたものとみなすという規定を置くのが或いは適当ではないかと考えておりまするが、譲渡禁止の定款がある場合に、その定款の定めが新法の施行において、当然定めのないものとみなすというふうな規定をやつていいものかどうか、この点は率直に申上げますと私も十分確信がないわけでございます。むしろ仮にこの規定がこの原案通りお認めを頂くということになりましても、施行関係においてどういうふうな措置を講ずるか、或いは既存の会社については無條件に禁止を認めるというのでは、今御指摘のように二百四條の規定の趣旨の大半が失われると思いますのでこれは許し難いと思いますけれども、少くともこの定款変更によつてこの程度の時間的な余裕を與えまして、会社が自主的に定款変更の手続をせられる、その期間内に若し定款の変更がなければ、当然従前の定款の禁止制限規定は失効いたすというようにした方がいいのか、これは現在承わつておりますところでもいろいろな事情がございまして、非常に取扱が困難であろうと思つております。十分お智慧を拜借いたしまして、若し私共の方で施行法を立案いたすという際には、十分御意見を承わらさせて頂きまして、いい施行法を作りたいと考えております。
#23
○松井道夫君 改正案におきまして、いろいろと新しい制度を取入れておるのでありまするが、又大いに結構なことだと存ずるのでありまするが、この二百二十二條によりますると、第一項に利益を以て株式の消却をするという制度が認められておるのであります。これは現行法においても確かそれと同じような規定がないわけじやなかつたと存じておるのでありまするが、こういう株式を設立乃至は創立の場合に認めまして、その取締役或いは発起人に腕を十分に振わせる、こういう意味なのでございましようが、この利益を以て消却する償還株式というんですか、これは違つておりましたら訂正願いたいと思いますが、こういう制度を認めまする実益がどういうところにあるのか、立案者におかれてはどういうような場合に、こういつた償還株式といつたものが利用され、歓迎されるということを予想しておられるか、伺いたいと思うのであります。
#24
○政府委員(岡咲恕一君) 松井委員の御指摘のように、現行法でも株主に配当すべき利益を以て株式を消却するということは認めておりまして、條文では二百十二條にその規定がございます。この二百十二條の規定は、株式消却の一つの方式といたしまして利益でその株式を消却できるというのにとどまるわけですが、今度の改正法律案によつてこの利益を以てする株式の消却と申しまするのは、今仰せになりましたように償還株式を認めるわけでございます。これはどういう実益があるかというお尋ねでございまするが、昨日もちよつと触れたかと思いますが、会社の資金を集めることが相当困難であるというような場合には、相当有利な條件をつけました優先株式を発行するわけでございます。併し、その優先株式の優先的内容というものが、非常になんといいますか、アトラクテイブであるということは、半面会社にとつては非常に負担でありますが故に、資金は非常に必要であると、だからうんと優先的配当を條件とするような株を発行すると、併しこれは若し会社の資金が適当に運用されて、大いに事業が発展して行つて会社が收益を上げるようになるならば、その際は成るべく優先的配当をすることの経済的負担から解放されたいということは、会社としても当然でありますので、この場合にいわゆるレデイームと申しまするか消却して無くしてしまう。言い換えれば、非常に火急な必要に対して資金を調達するという方便から申しますると、優先株を発行したい、併し会社における将来の長い負担を解放する意味においてはこれを早く消却すると、こういう必要に応ずるために認めたものでございます。で、法文の規定の上には何もございませんけれども、恐らくこれは優先株でなければ消却をいたさないと思いますし、アメリカの実例から見ましても、殆んどこの優先株について消却の條件を付けているようでございます。これを新法におきまして取入れまして、株式の種類として償還株式を認めるということにいたした次第でございます。
#25
○松井道夫君 ちよつと話が又前に帰りますが、二百五條の鬼丸委員から質問のあつたところでありますが、これは現在の白紙委任状付の記名株式の譲渡、あの習慣をそのまま認めるというのか、要するに、白紙委任状付の記名株式の譲渡の習慣、これを認める趣旨であるか。あの方式でよろしいのだというならば、大変経済界は喜ぶでありましようし、あの白紙委任状だけでは足りないのでその外に更に譲渡証書がなければいかぬとか、或いは委任状がなければならぬとか、これらのことがこの商法の二百五條だけでは分らないのであります。その辺はやはり立案当局の御解釈というものをはつきりしておかれると、非常によろしいのではないかと思うのでありますが、如何でございましよう。
#26
○政府委員(岡咲恕一君) 現在行われておりまする、この白紙委任状付の譲渡というものを、大体認める建前で立案しておるわけでございます。誠に足りないことを申すようですが、現在この、白紙委任状の記載がどうなのか、私ははつきりと確信を持つて、その記載がそのまま譲渡証書になるということを申上げるだけの知識がございませんが、いわゆる委任状に、何と申しますか、受任者の名前が記載してない、言い換えますると譲渡証書に譲受人の記載がないような形式のものが多いのではないかと思いますが、そういうような譲受人の記載のないような譲渡証書、或いは白紙委任状というようなものを勿論有効とする趣旨でございます。それはこの二百五條の第三項の後段にありますように、譲渡証書は「譲受人ノ氏名ノ記載ナキ場合ト雖モ亦同ジ」と、こういう規定がございまするが、これは譲渡を証する書面は必ずしも譲受人の氏名を明記する必要はありませんで、それを白地にして置くということを認めておるわけでありますから、やはり白紙委任状付の譲渡というようなものが法律上有効視されておるわけであります。従いまして、現に行われておるようないわゆる白紙委任状というものが、譲渡を証する書面として恐らく有効になるであろう、又有効と考えて差支ないものと考えております。
#27
○松井道夫君 今日は株式の節を御説明願つたのでありまするが、ちようどまあ適当な機会であるかと存じますので、多少條文に即していないのでありまするが、お伺いしたいと思うのでございます。株主平等の原則というものが株式会社には通用いたしておるわけでありまするが、株主平等の原則が何ものであるかということにつきましては私現在十分の知識を有しておりません。それで額面株式と無額面株式との間に、その株主平等の原則の適用があるのであるかどうかということをお伺いしたい。無額面株式の特性からいいまして額面株式との間におきまして、株主平等の原則を貫徹いたしまする上におきまして、非常に困難があるのではないかというようなことを私想像するのでありまするが、こういつた点について伺いたいと思います。
#28
○政府委員(岡咲恕一君) 額面株式と無額面株式との間におきましては、会社からの取扱上、いわゆる平等の原則は適用されるかどうかというお尋ねでございますが、これは完全に平等の取扱をいたすわけでございます。このような取扱が額面株と無額面株との間においては事実上困難ではないかというようなお尋ねでありますが、無額面株式の説明が不十分で徹底を欠いていたのであろうと恐縮に存じておりまするが、これはまあ全然そういう不平等はあり得ないと思います。例えて申しますと、会社の業績が優秀でありまして額面が仮に五十円の株が七十円で市場に販売されているというような状況でありますならば、これを額面株として発行してプレミアムを十円なり十五円つけるということは可能でありますし、その場合に無額面として六十円で発行することはもとよりいいわけでありますから、その間に何らの差別がないのであります。ただこの問題はしばしば御指摘になりますように、証券市場の景気が甚だ振いませんで粗当優秀な株式でも市場価格が額面を割つている、例えば五十円の株が三十円しかないという場合に、会社として是非自己資金を調達したいというときには、額面株の発行が全然不可能でありまして、無額面株で二十五円でもむしろ出さざるを得ないのであります。併しこの場合参には二十五円で一株取得したわけでありまして、苛くも株主になつてしまえば額面であろうと無額面株式であろうと対等の取扱を受けるのであります。株価が会社の実情或いは証券界なり経済界の状況によりまして、高低多少の変動があることはこれは止むを得ませんので、額面以上の株につきましても例えば普通株が千円を超えているというような会社があつて、新株を発行する際に数百万の多数を発行される、ところがそれから一年も経ちませんのに、その株式が急に下落いたしまして五百円を割る、その場合に新株を発行するには三百円でなければ発行し得ないということは、実業界にしばしば見るのでありますが、どうせこれは株価の変動が経済上うまく行きません以上止むを得ませんので、筍くも公正なる代価を以て株式を取得いたします以上は他の株式と完全に対等の取扱を受ける、議決権におきましてもその他の権利におきましても、或いは配当におきましても同様の取扱を受けるのであります。現在は拂込額面額を基準といたしまして配当額の算定をいたしておるようですが、無額面株を採用いたしますと、そういうことは許されない関係になりますので、無額面株と同時に額面株を発行しておりますような会社におきましても、或いは無額面のみをしております会社におきましては、尚更のこと、総株数との関係におきまして配当金額を総株数で割つた金額、言い換えますと一株について金幾ら配当するというような決め方になることと思います。配当の面におきましても、額面株と無額面株との間には何ら差別を設けないで取扱わなければならない、かように考えております。
#29
○松井道夫君 無額面株というものを認める以上は、その実情は今の株主平等の原則という点からみて、只今御説明のように解することは一応止むを得ないのであります。
 私共さような解釈になるだろうことは、勿論政府委員の以前からの適切なる御説明によつてさよう考えておつたのであります。尤も先頃から風邪を引きまして必ずしも政府委員の御説明を悉く聞いておりたともいえませんので、その点甚だ残念なことと思いますが、併し私の申しておりますことは、要するに経済界のいろいろな状況で無額面株が安く取扱われると、額面額が五十円にいたしますれば、まあ二十円なら二十円、十円なら十円で、例えば税金でありますとかその他の関係で緊急に必要だということで、早速取扱上使い易い値段で緊急の売に出すということがある。無額面株を発行するそういつた時代が、少くとも只今の経済界が本当に安定いたしますのがどのくらい先か分りませんが、見通し得る相当先までそういつたことが免れないのかも知れんのでありますが、そういつた場合を考えて見ますると、以前はそれは額面以下で発行することができないというのでございまするから、大体株主平等の原則というものが少くとも合理的の働きをなし得たのでありまするが、無額面株を発行いたしますると、少くとも日本の現状におきましては株主平等の原則として作用いたしまするのが、実際は甚だ不平等不公平な結果を生ずるのであります。そこにこの株主平等の原則なるものをそのまま適用しにくい実際上の、法律上でなくて実際上それを活用しにくいものがあるのではないかという点をお尋ねいたしたのであります。例えば配当にいたしましても、分配にいたしましてもその通りでありますが、多少野心的な者が現れますると、会社の金融の必要に乗じまして取締役を窮地に陷れ安く発行させる。そうして会社の実権を握つてしまう。その場合に従来の旧株主ば五十円拂つて片方は二十円なら二十円で買うというようなことで、これは頗る不公平な状況になることは明白なのであります。それでお尋ねしたいことはそういう場合に手当する何らかうまい方法は考えておられたかという点をお伺いしたいのであります。
#30
○政府委員(岡咲恕一君) 松井委員の、お尋ねになりましたような事柄を考えているものと思いまするが、アメリカにおきましては旧株主の新株引受権というものが非常に重く見られまして、苛くも取締役が授権資本の枠内で新株を発行する場合には、とにかく旧株主に一応引受権を與えなければならないということが、極く最近まではアメリカの株式界の原則であつたというふうなことであります。言換えれば新株の発行、殊に無額面株の発行というものが不当に低廉に発行されますならば、旧株主の権利、アメリカ流に申しますといわゆるエクイタブル・ライトと申しますか公益上の権利を害すること甚だしいということで、直ちにインジヤンクシヨンでやらなければ、言換えれぱ発行を差止める処分をしなければならない。これを非常に敏活に且つ有利に活用いたしますために、アメリカでは新株の発行につきましては取締役は非常に注意を拂つておるというふうなことを申しております。と同時にブルー・スカイ、日本の証券取引所のように発行については公けの官庁に届出を必要とする、そういたしますると不正なこと、或いは不当なことをやろうと思う取締役の計画全部が、ガラス張の中に入れられて公開されるという関係になりますので、大いにこれはチエツクされるという両方の面かちいいまして、新株の不当な低廉な価格による発行というものが抑制されるというふうに承わつておりますが、日本におきましても証券取引法の活用によりまして証券委員会が経済界の実状をよく御覧になりまして、適当なる監督をなさるならば、松井委員の御指摘のようなあまりに不当な、如何にも私腹を肥やすような新株の発行方法というものは将来は鎮圧されるであろう、少くとも非常な制禦を受けるであろうというように考えるのであります。
 それから商法自体の規定といたしましては、今申しましたインジヤンクシヨンの規定を置きまして二百八十條の十でございますが、「会社が法令若ハ定款ニ違反シ又ハ著シク不公正ナル方法若ハ価額ニ依リテ株式ヲ発行シ之ニ因リ株主が不利益ヲ受クル虞アル場合二於テハ其ノ株主ハ会社二対シ其ノ発行ヲ止ムベキコト求ムルコトヲ得」という規定を設けておるわけであります。これは著しく不公正なる方法、只今御指摘になりましたように特に縁故のある特定の者に対して莫大な株式を割当てて、そうしてその縁故者には必ずしも不公正ではないけれども、相当の価格で株式を引受けさせる、その引受人と取締役との間の黙契によりまして、自分は君を長く会社が支持するというようなことで或る特定の者に株式を引受けさせるというようなことを、アメリカでは最も不公正な発行の一つとして典型的なもののようにいわれております。この場合には株主は直ちに発行停止を請求することができる。況んや時価が二百円になつているという株式がありまして、多少の経済上の変動を見越して例えば百二十円とか百三十円の発行ならこれはよいのでありますが、特に或る者の利益のために六十円乃至七十円というような価額で発行するということになりますと、言い換えれば十分のプレミヤを付けないで株主になるわけでありますから、株主の権利が不公平になるわけですかち、他の株主はこれを不当として発行停止の処分をなすということにいたすようでございまして、二百八十條の十條に認めております株主の権利を誠実に公正に行使いたしますならば、取締役の無額面発行というものは大いにチエツクされるだろうと考えております。
#31
○委員長(伊藤修君) それでは本日はこれを以て散会いたします。
   午後四時十五分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           宮城タマヨ君
   委員
           遠山 丙市君
           松井 道夫君
           羽仁 五郎君
  政府委員
   法制意見長官  佐藤 達夫君
   検    事
   (法制意見総務
   室第一局長)  岡咲 恕一君
ソース: 国立国会図書館
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