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1979/03/27 第91回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第091回国会 社会労働委員会 第7号
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1979/03/27 第91回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第091回国会 社会労働委員会 第7号

#1
第091回国会 社会労働委員会 第7号
昭和五十五年三月二十七日(木曜日)
    午前十時三分開議
 出席委員
   委員長 葉梨 信行君
   理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君
   理事 竹内 黎一君 理事 山崎  拓君
   理事 田口 一男君 理事 森井 忠良君
   理事 大橋 敏雄君 理事 浦井  洋君
   理事 米沢  隆君
      小沢 辰男君    大坪健一郎君
      瓦   力君    岸田 文武君
      北口  博君    斉藤滋与史君
      田邉 國男君    戸沢 政方君
      中野 四郎君    丹羽 雄哉君
      八田 貞義君    船田  元君
      牧野 隆守君    山下 徳夫君
      枝村 要作君    大原  亨君
      金子 みつ君    佐藤  誼君
      前川  旦君    村山 富市君
      安田 修三君    山本 政弘君
      谷口 是巨君   平石磨作太郎君
      伏屋 修治君    梅田  勝君
      田中美智子君    小渕 正義君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 野呂 恭一君
 出席政府委員
        内閣法制局第四
        部長      工藤 敦夫君
        外務省条約局外
        務参事官    山田 中正君
        厚生省公衆衛生
        局長      大谷 藤郎君
        厚生省社会局長 山下 眞臣君
        厚生省保険局長 石野 清治君
 委員外の出席者
        放射線医学総合
        研究所長    熊取 敏之君
        外務省国際連合
        局外務参事官  関  栄次君
        大蔵省主計局主
        計官      安原  正君
        大蔵省主税局税
        制第一課長   内海  孚君
        参  考  人
        (広島大学原爆
        放射能医学研究
        所所長)    大北  威君
        参  考  人
        (財団法人放射
        線影響研究所理
        事長)     玉木 正男君
        社会労働委員会
        調査室長    河村 次郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二十七日
 辞任         補欠選任
  小沢 辰男君     岸田 文武君
  前川  旦君     大原  亨君
同日
 辞任         補欠選任
  岸田 文武君     小沢 辰男君
  大原  亨君     前川  旦君
    ―――――――――――――
三月二十五日
 戦時災害援護法案(片山甚市君外五名提出、参
 法第三号)(予)
同月二十六日
 厚生年金保険法の改悪反対等に関する請願(市
 川雄一君紹介)(第二九四七号)
 同(安田修三君紹介)(第三〇八六号)
 社会保障、社会福祉の拡充等に関する請願(池
 田克也君紹介)(第二九四八号)
 医療保険制度及び建設国民健康保険組合の改善
 に関する請願(河村勝君紹介)(第二九四九号)
 同外二件(権藤恒夫君紹介)(第二九五〇号)
 同(坂井弘一君紹介)(第二九五一号)
 同外一件(柴田弘君紹介)(第二九五二号)
 同外一件(長谷雄幸久君紹介)(第二九五三号)
 同(伏木和雄君紹介)(第二九五四号)
 同(大内啓伍君紹介)(第三〇三〇号)
 同(高沢寅男君紹介)(第三〇三一号)
 同(伊藤茂君紹介)(第三〇六九号)
 同(大野潔君紹介)(第三〇七〇号)
 同(草野威君紹介)(第三〇七一号)
 戦後強制抑留者の処遇改善に関する請願(新井
 彬之君紹介)(第二九五五号)
 同(飯田忠雄君紹介)(第二九五六号)
 同(森田景一君紹介)(第二九五七号)
 同(小濱新次君紹介)(第二九五八号)
 同(斎藤実君紹介)(第二九五九号)
 同(坂口力君紹介)(第二九六〇号)
 同外二件(瀬野栄次郎君紹介)(第二九六一号)
 同外一件(長谷雄幸久君紹介)(第二九六二号)
 同(山田太郎君紹介)(第二九六三号)
 同(井上泉君紹介)(第三〇三二号)
 同(横山利秋君紹介)(第三〇三三号)
 同(草野威君紹介)(第三〇七三号)
 同(林孝矩君紹介)(第三〇七四号)
 原子爆弾被爆者等援護法の制定に関する請願外
 一件(池田克也君紹介)(第二九六四号)
 同(市川雄一君紹介)(第二九六五号)
 原子爆弾被爆者等の援護法制定に関する請願外
 一件(市川雄一君紹介)(第二九六六号)
 同(竹入義勝君紹介)(第二九六七号)
 同外三件(広瀬秀吉君紹介)(第三〇八五号)
 医療保険制度改善措置に関する請願(河村勝君
 紹介)(第二九六八号)
 新鮮血液の確保及び心臓病児者の内科的医療費
 補助に関する請願(河村勝君紹介)(第二九六九
 号)
 原子爆弾被爆者援護法制定に関する請願(権藤
 恒夫君紹介)(第二九七〇号)
 同(柴田弘君紹介)(第二九七一号)
 同(加藤万吉君紹介)(第三〇七九号)
 同(柴田弘君紹介)(第三〇八〇号)
 健康保険法の改悪反対等に関する請願(高橋高
 望君紹介)(第二九七二号)
 同(草野威君紹介)(第三〇七二号)
 良い医療制度確立に関する請願外一件(谷口是
 巨君紹介)(第二九七三号)
 同(横山利秋君紹介)(第三〇三四号)
 国立腎センター設立に関する請願(田中伊三次
 君紹介)(第二九七四号)
 療術の制度化阻止に関する請願(藤井勝志君紹
 介)(第二九七五号)
 同(有馬元治君紹介)(第三〇四〇号)
 同(橋口隆君紹介)(第三〇四一号)
 同(宮崎茂一君紹介)(第三〇四二号)
 看護職員条約批准のための国内法令整備等に関
 する請願(池田克也君紹介)(第二九七六号)
 同(坂田道太君紹介)(第二九七七号)
 同(村田敬次郎君紹介)(第二九七八号)
 同(長谷雄幸久君紹介)(第二九七九号)
 同(西中清君紹介)(第二九八〇号)
 同外一件(山田太郎君紹介)(第二九八一号)
 同外二件(渡辺美智雄君紹介)(第二九八二号)
 同(稻村左近四郎君紹介)(第三〇二七号)
 同外一件(近藤鉄雄君紹介)(第三〇二八号)
 同外二件(横山利秋君紹介)(第三〇二九号)
 同(加藤万吉君紹介)(第三〇八一号)
 同(林孝矩君紹介)(第三〇八二号)
 同外一件(山崎平八郎君紹介)(第三〇八三号)
 指定自動車教習所の労働条件確立等に関する請
 願(大橋敏雄君紹介)(第三〇〇〇号)
 医療保険制度の改悪反対等に関する請願外一件
 (大橋敏雄君紹介)(第三〇七五号)
 良い医療制度の確立に関する請願外二件(小川
 省吾君紹介)(第三〇七六号)
 同(藤田高敏君紹介)(第三〇七七号)
 同(安田修三君紹介)(第三〇七八号)
 民間企業における定年六十歳制度の実現等に関
 する請願(瀬野栄次郎君紹介)(第三〇八四号)
 医療費明細書の交付義務づけに関する請願外二
 件(横山利秋君紹介)(第三〇八七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 小委員会における参考人出頭要求に関する件
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律
 の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)
     ――――◇―――――
#2
○葉梨委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として広島大学原爆放射能医学研究所所長大北威君及び財団法人放射線影響研究所理事長玉木正男君に御出席をいただいております。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれ御専門のお立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。
 なお、御意見は質疑応答の形でお述べ願いたいと存じますので、御了承願います。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森井忠良君。
#3
○森井委員 今回の改正案は、年金等の増額を受けまして、被爆者の皆さんの諸手当を増額するという内容でございます。もちろん金額がこれでいいというわけではありませんが、年々物価の上昇等に合わせまして、諸手当の金額を増額をしておられます姿勢については、私どもも厚生省の御努力を多といたします。しかし、私どもは一日も早く被爆者援護法をつくってもらいたい。被爆者の皆さんやあるいは平和愛好家の皆さんと一緒に要求してきた立場からいたしますと、ことしもなお原爆被爆者援護法が制定されていないことにつきましては、きわめて遺憾であると申し上げなければなりません。しかし、昨年六月から、社会保障制度審議会やあるいはまた本委員会の附帯決議等によりまして、七人の先生方によります原爆被爆者基本問題懇談会が発足いたしまして、被爆者問題の基本的なあり方について鋭意御審議を煩わしているわけでございまして、その努力の結果をまちたい、私ども、こう考えておるわけでございます。
 具体的には後で御質問を申し上げますが、とりあえずお聞かせいただきたいのは、ことし本案を提出なさいますに先駆けまして、社会保障制度審議会に諮問をしておられるわけでございます。それを受けまして、社会保障制度審議会では、ことしの二月の一日に答申を出しておられます。きわめて短い文章でございますが、非常にはっきりとそこに制度審の意図があらわれておるような気がしてなりません。昨年の答申とかなり違っております。短い文章ですからざっと読んでみますと、「今回の改正案は、おおむね了承する。」「おおむね」に私はアクセントがついておると思うのでありまして、「おおむね了承する。」その理由が次の項から入っておると思うのでありまして、「昨年の本審議会の答申に沿って設けられた原爆被爆者対策基本問題懇談会の結論をまって、早急に制度の基本的な改正が行われることを期待する。」こう書いてございます。もう一度申し上げますと、「基本問題懇談会の結論をまって、早急に制度の基本的な改正が行われることを期待する。」制度の改正が行われることを期待するという明確な文章になっているわけでございます。ちなみに申し上げますと、このくだりになりますと、昨年の制度審の答申は五十四年一月二十九日に出されておりますが、そこでは末尾で「速やかに、この問題に関する基本理念を明確にするとともに」、単に「基本理念を明確にするとともに、現行二法の再検討を行うべきである。」申し上げましたような違いが出てきておるわけでございまして、「制度の基本的な改正が行われることを期待する。」厚生省の立場から言いますと、やはり基本問題懇談会の答申が出た上で具体的な対策を措置していきたい。これはせんだっての二月二十一日の厚生大臣の所信表明に対します私の質問にお答えを願ったものでございまして、直ちに必要な措置をとる、こうおっしゃっていただきました。ほぼ大臣のお気持ちも同じじゃないかと思うのでございますけれども、制度審が、制度の基本的な改正が行われるように期待すると具体的に述べておられます点についてはきわめて重要だと思うわけでございます。
 おれの胸はわかっておろうが、こうおっしゃるかもしれませんが、制度審の答申をお受けになりました厚生大臣として、まず所感を承っておきたいと思うわけでございます。
#4
○野呂国務大臣 森井先生、大変原爆被爆者対策に対しては御熱意を傾けられて、この問題の解決に私たちを叱咤勉励をされておることでございます。私どもといたしましても、大変その御意見に対しまして敬意を表しながらこの対策に取り組んでまいりたいと考えておるわけでございます。
 この社会保障制度審議会の答申についてお触れになっておりますが、「早急に制度の基本的な改正が行われることを期待する。」と、かなり積極的に、原爆被爆者対策がいかに大事であるかということに対しての政府に対する御鞭撻であろうかというふうにも受け取れるわけでございます。原爆被爆者対策基本問題懇談会の答申を待って政府としては今後対応してまいりたいと考えておることはすでに御承知のとおりでございます。
 この懇談会は昨年の六月以来七回にわたって開催され、鋭意検討がされておるわけでございます。私は、厚生大臣就任と同時にこの懇談会にも出席をいたしまして、私の意見も述べ、さらに七回目のせんだっての懇談会にも出席をいたしまして、早く結論を得たいということについて重ねて御要望を申し上げたわけでございます。なお、四月には広島、長崎の現地に全委員が参られて被爆者から具体的に意見を聴取するということも行う予定でございます。また、五月に入りますと、昨年十二月に意見聴取をいたしましたが、再度被爆者団体からも詳しく意見を聞くということでございます。そして、引き続いていよいよ基本懇としての取りまとめの検討がなされるものと期待をいたしておるわけでございます。したがって、その結論がどういう形のものであるのか、いま私どもは予期することはできませんが、十分な御熱心な審議をされておることでもございますし、私個人としては、この審議会の答申にありますような制度の基本的な改善、少なくも原爆被爆者に対してはおろそかにしてはならないという期待にこたえてくれる答申であることを願っておるわけでございます。しかしながら、答申の結果を待って、それがどういう範囲のものであり、どういう内容のものであるか、+分慎重にこれに対処し、意見を十分尊重して、政府としては適切に対処してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
#5
○森井委員 基本問題懇談会は非公開ということになっておりますから、立ち入って議論の内容についてお聞きすることは私も差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。ただ、改めて申し上げますが、七人の先生方はほとんど全員出席と聞いておりますけれども、終始熱心に議論をしていただいておりますことについては私も心から敬意を表するものでございます。いま大臣から、今日まで基本問題懇談会が七回行われたということが明らかにされました。実は、漏れ承っておるところによりますと、三月二十六日、昨日もおやりになる予定であったようでありますけれども、いま大臣から御説明がありました、来月広島、長崎の調査をなさるということで、これは恐らく振りかえになったのじゃないかという感じを私は持っておるわけでございます。いずれにいたしましても、今日まで七、八回事実上御審議をいただいたわけでございまして、非常に結構だと思うわけでございます。ただ、一日も早くこの結論を出していただきたい、いい結論を出してもらいたいという被爆者の願いは当然あるわけであります。
 そこで、まことに言いにくい質問でございますが、昨年の本委員会におきます附帯決議では、「一年以内の速やかな時期に」答申を出していただきたい、「一年以内」だけではございませんで、「一年以内の速やかな時期に」という文言が入っているわけでございます。しかし、昨年の六月八日に行われた第一回の基本問題懇談会で、当時の橋本厚生大臣は、単に一年以内を目途に結論を出していただきたいとあいさつの中で述べておられるわけでございます。国会の意思は、一年以内の速やかな時期ということで、若干のずれがございます。審議をしていただく以上、お願いする方が期限まで切るのは失礼に当たるということもあったと私配慮しておるわけでございますけれども、被爆者の方はできれば昨年内にも結論を出してもらいたい、中間答申を出してもらいたいという要望もあったわけでございますから、この点のずれがございました。
 それから、同じく昨年の本委員会におきまして、私が当時の橋本厚生大臣にこの基本問題懇談会の審議のあらあらした日程について具体的に質問申し上げているわけでありますが、その中で確認されておりましたのは二カ月に三回の割合で開いていただく、これはくどいほど念を押してありまして、実は委員会の締めくくりの私の確認の一問一答の中でも大臣の答弁があったわけであります。二カ月に三回というのは具体的に申し上げますと二十日に一遍の割合になるわけでございます。そういたしますと、先ほど申しましたように、非常に御熱心に審議をいただいておりますのにまことに失礼な申し上げ方をするわけでございますけれども、最近の状況では月一回のペースになっていまして、その点も残念ながら国会の意思が伝わっていないわけでございます。熱心にやっていただいておりますのにもつとやれとしりをたたくようで言いにくいわけでありますが、厚生大臣が一応お願いいたしました期限そのままといたしましても、昨年の六月八日から始まっておるわけでございますから、五月の末か六月のきわめて早い初旬でなければならぬのじゃないかという気持ちがするわけでございます。もう間もなく四月になるわけでございますが、次の御予定としては先ほど話がありましたように広島、長崎に御出張なさって視察をしていただくということでありますが、その回数も含めまして、できれば五月いっぱいに結論がいただけないものか、ずばり申し上げましてそういう感じがするわけでございます。
 月一遍のペースですともう一回しか開けないから無理だということになるわけでありますが、きょうせっかく社会労働委員会が具体的な原爆の法案を審議をしておるわけでありますから、新たな意思として大臣から特に御無理なお願いをしていただけないものかと考えるわけでございますが、いかがなものでしょうか。
#6
○野呂国務大臣 せんだっての会合に出席いたしました際にも、およそ一カ年をめどにして結論をお出しいただきたいということも再度にわたってお願いを申し上げたわけでございます。ところが、全員が出席して検討していきたいということもあって、御都合の悪い人もあるので、欠席があってもいいという簡単なものではないと思う、したがって二月に三度というのがどうしてもそうはいかなくなってきて、いまのところ月一回になりがちであることは大変申しわけないけれども、今後なるべく回数を重ねてまいりたい、こういうことをおっしゃっておられたわけでございます。なお、四月に長崎、広島にお出向きをいただくわけでございます。かなり時間もとっていただくことにもなります。さらに、五月に団体との懇談の機会あるいは意見聴取を求められるわけでございます。したがって、審議の内容については非常に御熱心にやっていただいていることに対して私は心から敬意を表しておるのでございます。森井先生御指摘のように、二月に三回といったように、回数が開かれれば開かれるほどいいんだというものばかりではないというふうに私は思います。ただ、一年をめどにということでございますので、できる限り六月の時点には結論が得たいものだというふうに期待をいたしておりますが、あるいはこれも若干延びるようなことも考えられるのではないかというふうに憂慮いたしております。したがって、次の機会に再度、さらに結論を早く出していただきますようにお願いを申し上げたい、かように考える次第でございます。
#7
○森井委員 結論をなるべく早く出すように大臣からお願いをしていただけるそうでございますから安心をしておりますが、大臣、私も政治家の端くれでございまして、その意味で申し上げるわけでございますが、国会の会期が五月十八日まででございます。しかし、世上言われておりますような参議院選挙の日程からいきますと、少なくとも二、三週間の会期延長はあり得るのではないか、これは投票日とそれから国会の終了を計算すれば法律上明らかになっておるわけでございますから、おのずと会期延長という問題が出てまいります。大平総理が縁起を担いで七月の十三日というのは別にいたしまして、七月の六日ないし十三日になるであろうということはもうすでに公知の事実になってまいりました。いずれにいたしましても会期延長は必至でございます。仮に二週間といたしましても六月の三日ないし四日、つまり六月にかかるまでこの通常会は会期があるものと理解をしなければなりません。そういたしますと、できることならこの国会の、申し上げました延長後になるかもしれませんけれども、会期中に、つまり橋本前厚生大臣がお願いをいたしました一年以内の時期とやや符合してまいります。これは間違いのないところでございます。したがって、何とかそういう時期に間に合わしていただけないものか、これはあなたからいま御答弁をいただくということは御無理だと思いますからあえて答弁は求めませんけれども、そのことを強くお願いをしておきたいと思うわけでございます。
 そこで、実は社会労働委員会の理事会におきまして、ある党から、被爆者援護法の制定について、あるいは国家補償に基づく被爆者の援護対策について国会で特別決議をしたらどうかという意思表示がございました。私どもは、昨年からの経過に基づきましてもう少しだから期日を待とうじゃないかという立場をとっておるわけでございます。これは先生方に対しましてもそれが礼儀でございますし、また国会決議ができるようでしたらこれは与野党が一致をしなければならないわけですから、すでに基本問題懇談会は不要という形になってしまうわけでございますから、それだけ国会の意思というのは重みがあると私は理解をいたしておるわけでございます。ですから私は、この時期にある党から本会議での特別決議をお出しになる真意をはかりかねておりますけれども、しかし申し上げましたように、仮に私どもが答申を受けて、これは理事会でも他の党の御賛成はほぼいただいたように私は理解をいたしておるわけでありますが、基本問題懇談会の答申を受けた時期が国会の会期内であった場合には当然本会議決議をしてしかるべきものであろうというふうに政治家の一人として理解をいたしておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては当然先ほど申し上げましたような理事会の空気から察知をいたしまして、各党で話し合いをいたしますけれども、それがまとまった段階では厚生省としてあるいは厚生大臣としてはよもや御反対をなさるようなことはあるまい、こう理解をするわけでございますが、いかがでしょうか。
#8
○野呂国務大臣 皆さんの御趣旨に沿って政府としては当然対処すべきものであると考えておるわけでございます。
#9
○森井委員 よくわかりました。
 そこで、七人委員会、基本問題懇談会の審議の中身については、先ほど申し上げましたように御質問することはもちろん差し控えさしていただきますが、ざっと経過をたどってみますと、最初は先生方のいろいろ御研究、御勉強から始まったようでございますね。そして、その後で、今度ははっきりしておりますのは、被爆者の代表でありますとか、あるいは八者協と呼んでおります広島、長崎の行政関係者の方々でありますとか、そういった被爆者問題に因縁の深い方々の意見の聴取をなさいました。それが済みました後で、私どもが漏れ承っておりますのは、厚生大臣が御出席なさいまして、言うなれば厚生大臣の腹のうちを聞かせ、こういう機会があったのじゃないかと推測をするわけでございます。
 先ほど大臣からちょっといままでの大臣のお考えをお述べいただいたわけでございますが、大臣がどんな発言をしたかということをいま聞くのは失礼ですから聞きませんよ。聞きませんけれども、いままで、たとえて申し上げますと二月二十一日に私が厚生大臣の所信表明に対しまして御質問申し上げておるわけでありますが、厚生大臣の立場はその節々で明らかにされております。したがって、厚生大臣のそういったお気持ちは七人委員会に伝わっておるのでしょうか。私は当然伝わっておるものと考えておるわけでありますが、この点についても一言でよろしゅうございますから御答弁をいただきたいと思うわけでございます。
#10
○野呂国務大臣 私はごあいさつという形で、早く結論をお出しいただきたい、さらにまた前橋本厚生大臣の意思を私は引き継いで、原爆被爆者対策というものは国として当面最大の課題の一つである、それには国は意を尽くしてこの対策に当たるべきである、したがって、そのためには基本理念を明らかにしなければいけない、一般社会保障か国家補償かという単なる問題でなくて、それらを含めて今後の被爆者対策に対する基本的な方針というものを政府としては打ち立てるべきである、そういう意味でその指針を皆さんによって明らかに願いたい、これが懇談会に期待するものでございます、どうぞそういう意味で原爆対策が政府として手落ちのないような、そういう方向づけができるような理念を速やかにお出しを願いたい、こういう意味のことを申し上げたわけでございます。言葉の表現は若干違いがあるかとも思いますが、気持ちとしてはそういうことでお願いをいたしておる次第でございます。
#11
○森井委員 これ以上の追及は差し控えさしていただきますが、一日も早くいい結論を出していただきますようお願いをしたいと思うわけでございます。
 きょうはお忙しい中を二人の参考人の先生方においでをいただきまして、私は非常に歴史的なと申しますか、感無量なのは、財団法人放射線影響研究所の玉木理事長が御出席でございます。改めて申し上げるまでもないわけでございますが、この発足は御承知のとおりアメリカの手によるものでございます。そして、五年ほど前にようやく日米折半によります、また国内法に基づきます財団法人として装いも新たに発足をされたわけでございます。そういう意味では放射線影響研究所、かつてABCCと呼んでおりましたが、初めてこの国会の場においでをいただいたわけでございます。
 まず、軽い御質問を申し上げますけれども、放影研を代表してお出になりまして、御感想はいかがですか。
#12
○玉木参考人 ただいま森井先生から、初め米国が設立いたしまして五年前に日米合同の研究所に移行したわけでございますが、そのことを御説明いただいた次第でございます。そうして、現在、その代表者としてどういう印象を国会へ出て持っているかというお尋ねでございます。
 ちょっと一言申し添えますと、私この放射線影響研究所の理事長職を仰せつかりまして勤務させていただくことになりまして一年九カ月になるかと存じます。一年九カ月前に就任いたしまして、この研究所の重要性を、かねて予測いたしておりました以上に重要な研究所であるということを身にしみて感じておった次第でございますが、本日、日本国国会の委員会に参考人として出席を求められまして、意見を述べるようにと言われまして、私非常に身の引き締まる思いをいたしている次第でございます。
#13
○森井委員 どうぞかたくおなりにならないで、普通に話すようにひとつお答えを願います。
 当初は、戦後いち早くABCCが広島にできまして、もう二十二年から調査活動等を行っていらっしゃるわけでございますね。率直に申し上げますと、日米合同の運営になります前までは、あるいはいまも残っておるかもしれませんが、被爆者がモルモットにされたのじゃないか、ずいぶんたくさんの人の検査をしていただきましたけれども、日本の被爆者にあのデータが一体どれだけ役に立ったのだろうか。どうもそういう意味では評判が悪うございました、まことに言いにくいことなのですけれども。これは要するにアメリカが進駐軍と同じような形で来たわけですから、それはやむを得ないと思うのですが、やはり日米合同の財団法人になりましてからはおのずとそういった評判の悪さといいますか、被爆者の皆さんが自分たちをモルモットにして、大げさな言い方をしますと、何ら自分らの治療に効果をもたらさなかったじゃないか。たとえばあのデータが原爆病院で使われただろうか。私の承知しております範囲ではほとんど使われていないのですね。資料は東京とワシントン、そして広島と、恐らく三カ所ぐらいに置いてあるのじゃないかと思うわけですけれども、ついぞそれが活用されたということは聞かない。間々論文等で私も拝見しておりますけれども、具体的な治療上の効果等も含めて考えてみますと、やはりいままでの悪評を何とかこの機会になくしていただくようにお願いしたい、こういう気持ちがあるわけでございます。この点についてはいかがでしょうか。
#14
○玉木参考人 ただいま私どもにとりまして、いままでもそうでございましたけれども、今後なお一層本当に心してこの私どもの仕事を行わなければならないと思いますその重要なことを、お話しいただいたと存じます。
 先ほどお話がございましたように、二十二年に発足いたしました。初めは、広島市内は御承知の状況でございますから、呉市にささやかな研究施設を持ってスタートしたのでございます。それから一年後に、これは厚生省あるいは日本の国がこの原爆被爆者についての医学的研究の重要性をよく認識されたためであると思いますけれども、御承知の厚生省の予防衛生研究所の支所を広島と長崎に置く、そうして一部の職員は、仕事をいたしますけれども、ABCCでなしに、厚生省予防衛生研究所の職員であるという立場になりまして、わが国、特に厚生省予防衛生研究所はこの研究に参画してまいったのでございます。
 それから、こちらの研究の成果について、まことに貴重な、今後なお一層私ども心しなければならないことをただいまお話しいただいたのでございますが、研究の成果は、純医学的な論文の形式をとったもの、あるいは年報のようなまとめた形式をとったもの、代表的なものをちょっとここにも持っておりますが、何でも昭和三十一、二年ごろから、英語と日本語と同じページに並べて印刷いたしたもの、テクニカルリポートと申しておりますが、それを国内の主要な医学研究所、大学、むろん厚生省の関係方面、それから米国方面に規則正しく送付いたしてまいりました。それから、ただいま森井先生お話がありましたように、国内、国外の専門の医学雑誌に、これは両方並記してないかもしれませんが、あるいは英文で、あるいは日本文でいろいろ報告されているのでございます。
 ついででございますが、地元に「広島医学」という日本語の医学雑誌がございまして、月刊雑誌でございます。過去十八、九年でございますが、私どもずっとABCC以来、いま放影研になりましたが、われわれが重要と思います代表的な研究の内容を、一部ほかに発表されたものと重複いたしますけれども、放影研欄、以前はABCC欄として平均して七、八ページないし一〇ページの論文を毎月日本語で発表したわけでございます。
#15
○森井委員 まことに恐れ入りますけれども、お聞きしましたことだけお答えいただけば結構です。与えられた時間が一時間しかございませんものですから、ひとつ御協力をお願いいたします。
 先ほど被爆者をモルモットにするんじゃないかということで評判が悪いということを申し上げました。心してこれからも改善をしてまいりたい、こう御答弁をいただいたわけでございますが、そういたしますと、広島の場合ですけれども、一体放影研は現在の比治山の位置でいいのかどうなのかという問題です。高台にございますけれども、なかなか近寄りがたいという感じが一つございます。それから、建物が御承知のとおりのかまぼこ兵舎でいまもって経過をしておるわけでございまして、私なんかもたまにお邪魔をいたしますけれども、どこかの兵舎に行ったような感じがするわけでございます。また長崎につきましても使い勝手が非常に悪くて、何とか改善をしなければならぬということで、いま鋭意努力がなされておるやに聞いておるわけでございます。広島市も比治山公園の一帯は、これから政令指定都市にもなることですし、芸術公園というふうなことできれいにしたいというお気持ちもあるようでございます。したがいまして、文字どおり民衆に溶け込んでいく、被爆者の皆さんの治療に役立てるような具体的な活動をしていただく。もちろん放影研にはいままで御確認になりました二世の問題だとか、そういった大事な研究項目もあるわけでございますが、何といいましてもいまの場所については移転をなさって、もう少し近代的と申しますか、市民や被爆者の皆さんが出入りがしやすい場所に変えていくべきだろうと思うわけでございます。この点につきましてどのようにお考えなのか、これは玉木理事長と、費用の半分を出しております政府としてもひとつ御答弁をいただきたいと思うわけでございます。
#16
○玉木参考人 ただいまお話しの比治山から町の中へおりたらどうだという地元の御要望があるということを以前からときどき承っておりました。ごく最近、広島市の当局から非公式にそういうお話もあったのでございます。いろいろの条件が整いますならば、研究所の事業に差し支えない、あるいはそれどころかなお一層仕事が能率よく行われるということを前提にいたしまして、関係方面にお願いしてこの問題を進めさせていただけるのじゃないかと考えている次第でございます。
#17
○大谷政府委員 そのような地元の要望があるといたしますれば、私どもとしても十分検討させていただきたいと思います。
#18
○森井委員 玉木先生、もう一つだけ聞かせてください。
 これは新聞にも報道されましたけれども、せっかくあれだけのデータをお持ちなのに、論文等はありますけれども、いま申し上げました第一線の同じ広島で原爆病院ととかく連絡がとりにくい。私は個人的な感じを言わせていただきますと、本当は放影研も治療まで入っていただきたいという気があるのです。もちろんいろいろ都合もありましょうけれども、本来研究と治療というのは、私はある意味で車の両輪だと思うわけです。そういった点で、できれば治療もお願いしたいと思っておりますけれども、すぐにはもちろんいろいろ制約もあるかと存じます。したがって、私ども聞いておりますのは、広島の場合で申し上げますと、原爆病院と放影研との関係をもっと密にしたらどうか、単に論文、これは新聞報道でありますが、その論文も行ったり行かなかったりというようなことがあるようでございますから、少なくとも定期的な会合をお開きになるとか、そういったことをおやりになる御意思があるかどうか。同じような意味で、広大の原医研からも大北先生にお見えをいただいておるわけでございますが、私ども見まして、それぞれ研究機関がばらばらなような感じもするわけでございます。そういう意味で、研究機関あるいは治療機関等がもっと密接に御連絡をしていただきますならば、御承知のとおり原爆に関します疾病というのはまだ未知の世界が多うございます、したがっていろいろな情報を交換する意味でもいいと思うわけでありますが、その点についてお考えを承りたいと思うのです。一言で結構でございます。
#19
○玉木参考人 なお一層ただいまの御趣旨に沿って努力させていただきたいと存じます。
 一例を申しますと、病理部の方では、私どもの幹部が定期的に全く随意的に、何と申しますか、ボランタリーに自分の考えで時間を割いてお伺いして、いろいろ病理の標本などについて討議会に列席させていただいているということもございますのですが、なお一層努力させていただきたいと思います。
#20
○森井委員 放影研について、恐縮ですがもう一点だけ聞かしてください。聞きたいことはたくさんあるのでございますが、時間がありませんから一点にしぼります。
 御承知のとおり、経費は日米折半でございますね。そして、最初の取り決めは、理事長さんも日本側とアメリカ側が交代に務める。これはいろいろな事情で日本側に現在もなっているようでございますけれども、どうも私見ておりまして、もともとが日本の被爆者のための研究と理解をしてもいい。当初ABCCができたときには、私どもはないと思うのですけれども、原子力の平和利用のためにもこれは役立てるのだというようなことがちょっと書いてありましたけれども、それは私どもの主張と相入れませんからさておくといたしましても、いずれにいたしましても、日米折半というのは、あなたは非常におやりにくいのじゃないかと思うのですよ。対象は日本人だし、それから職員の方も恐らく英語がわかる方ばかりじゃないわけでしょう。やはり何かにつけてやりにくい。できれば近い将来と申し上げたいけれども、きょう大蔵省も来ておりますが、すぐうんとは言わないかもしれませんけれども、フィフティー・フィフティーという運営費の割合についてはやはり徐々に日本側がふやしていって、将来は日本側オンリーの経費で、日本の判断に基づいてやるというシステムが私は正しいと思う。この点いかがでしょうか。
#21
○玉木参考人 現在のところは、この放影研というのは日米両国政府の合意に基づいて日本国政府と米国の政府と同じ額の年間の経費を支出して運営する、そういうことになっているのでございまして、二、三ただいま御指摘ありました点、ぴたりといいますか、本当に私、おっしゃる面が多分にあると思います点もございますけれども、私、理事長としての職を運営するについて、こういう形式がいまのところ大きな支障はないように感じておるのでございます。
#22
○森井委員 私が聞いておりますのは、被爆者の皆さんも日本だけで運営できないものだろうかというのはずいぶん聞かされています。それから、放影研に勤めていらっしゃる職員の方から、やはり将来にわたっては日本だけの運営でやってもらいたい、この声も出ておりますことは事実でございます。あなたのお耳にも入っていると思います。したがって、非常にむずかしい立場でしょうから、きょうはこれ以上はお聞きをいたしませんけれども、敷地や建物の移転とあわせて、+分御検討をいただいておきたい、こういうふうに思うわけでございます。
 そこで、厚生省にお伺いするわけでございますが、いま私はここに国立予防衛生研究所と原爆傷害調査委員会、当時のいわゆるABCCでございますが、「予研−ABCC共同研究」、題しまして「二〇年の歩み」というのを持っております。これは昭和四十四年に発行されたものであります。したがって、ざっと二十年に余ってABCCがいろいろな調査をなさったもののとりあえずの中間集約のようなものでございます。これを見ますとずいぶんショッキングなことが書いてあるわけでございます。たとえば大臣、白血病、これは血液のがんでございますけれども、白血病等についても、数字は余りにもショッキングなので申し上げませんけれども、要するに被爆者の中に白血病が多発しているということ、悪性新生物、いわゆるがんの患者が非常に多いというようなこと等々がここに書かれておりまして、しかも明確に結論じみた表現になっておるわけでございます。申し上げましたように数字は申し上げませんが、だからこそ、厚生省といたしましても現在医療法等でそれぞれ一定の措置はしていらっしゃるのでありますが、ちょっと読んで参考に供したい点がございます。
 その二ページに「おもな調査事項の要約」というのがあるわけでございます。これを見ますと、先ほど申し上げましたように、非被爆者よりも非常に病気にかかった人が多いという前提に立った上で、たとえば白血病について「被爆者は白血病をおこしうる他の原因には、職業としても、公害としても、」ちょっと意味がわからないのでありますが、恐らく英語を翻訳したからこうなったと思うのでありますが、「白血病をおこしうる他の原因には、職業としても、公害としても、個人の習癖としても近寄らない方がよい。」悪性新生物についても、「被爆者は、癌をおこしうる他の原因には、」同じように「職業としても、公害としても、個人の習癖としても近寄らない方がよい。」これは、いま申し上げました共同研究の結論になっておるわけでございます。
 ちょっとわかりにくかったと思うのでありますけれども、たとえば職業として被爆者は近寄らない方がいいというのは、たとえば放射線技師等にならない方がよろしい、こういうことだと私は理解をしておるわけでございます。あるいは「個人の習癖としても」、「習癖」というのは癖という意味ですね。「個人の習癖としても近寄らない方がよい。」こうなっておりますのは、これは要するに私の場合にたとえますと、たばこを吸うとか酒を飲むというのもいけないということになるのですかね、いずれにいたしましても、一定の制約をそこにはめざるを得ない状況にあるという結論がついておるわけでございます。
 公衆衛生局長、この論文は御存じですね。
#23
○大谷政府委員 実は、まことに申しわけありませんが、存じておりませんでした。
#24
○森井委員 やむを得ませんが、できればいずれ目を通しておいていただきたいと思うわけでございます。
 そこで、これからいよいよ七人委員会の結論が出るわけですけれども、私いろいろな文献を読んでみますと、いままで厚生省が被爆者援護法の制定を拒む理由として、一つは均衡論があったわけですね、一般戦災者との均衡論。被爆者をどうすると言ったところで、実際には一般戦災者もあるじゃないか、こういう言い方で断られてきておりました。なるほど一般戦災者も確かに救済をしなければなりません。しかし、いま申し上げましたように、もう被爆者は一定の職業につくなという警告がここに出されておる。言うなれば、憲法上の一つの基本的な人権というものを、そういう意味で、被爆者なるがゆえに阻害をされる、あるいはたばこを吸ってはいけないということも人によっては非常に苦痛なことでございますけれども、そういったことについても明確に資料に基づいて断定をしておる。したがって、たまたまいま時間の関係で一つしか申し上げませんでしたけれども、放影研の研究の成果が、具体的に、だからこそ一般戦災者よりもさらに優先をして急いで救済をしなければならぬというくだりがずいぶんとございます。ですから、私は具体的な御指摘を申し上げたわけでございます。
 したがって、私はこの際申し上げておきますが、せっかく放影研からもおいででございますので、七人委員会からの結論を当然待たなければなりませんが、きょうはくどくど申し上げておりますように、大蔵省からも出席をいただいております。したがって、やはり役所としてもぼつぼつ理論武装するころじゃないか。たまたま私は思いつきでこんな本をお見せしたわけではないわけでございまして、従来ともつるっとでも目を通しておく、でも局長はまだ新任でございますから目を通していないということでございますが、どうして被爆者を優先をして急いで国家が補償しなければならないかというふうな問題について、そろそろ理論武装をしていただく必要があるのではないか、こう考えるわけでございますが、これは事務当局の局長、いかがですか。
#25
○大谷政府委員 先生の御趣旨を体してできるだけ私どもとしても努力いたしたいと思います。
#26
○森井委員 もう時間がなくなりましたけれども、もう一問だけお伺いをいたしたいと思います。
 これも私、二月二十一日の本委員会の質問で申し上げたのでございますが、例の韓国人被爆者の問題でございます。時間がなくてちょっと詰められませんでした。
 現在まで明らかになっておりますのは、一つは、韓国から患者さんに日本に来てもらって、どうも広島の原爆病院でございますけれども、入院治療をしてもらうということ、それからお医者さんも向こうから来ていただく、こういったことが決まっておるようでございます。これは非常に結構なことだと思います。しかし、ただいまの計画が十人ですね、そして韓国の予算を拝見いたしますと、新しい年度で今度はもうあと五十人追加をするという形になっております。時間の関係で一度に質問するわけでございますが、ですからこれはいまのところそういう意味で足かけ二年分の計画が決まっています。これはいつまでお続けになるのでしょうか、これがまず第一。
 それから第二は、いまの計画ではっきりしておりますのは、合計六十人の方がお見えになるわけでありますが、せっかくこちらで治療をお受けになって、少しでもお元気になられることは間違いありませんけれども、退院をなさって、また韓国へ帰る、アフターケアをどうするかという問題があるわけでございます。治って帰ったけれども、向こうで、適確な治療が自分の住んでいるところですぐ受けられればいいですけれども、これはゆゆしい問題と思うわけでございます。したがって、日本に来るのは来るが後がこわいというのが率直な気持ちだろうと思うわけです。したがって、この点については、特に日本は被爆者の治療については進んでおるわけでございますから、医療器材というものをどうしても向こうに届ける必要があるのじゃないか。それから、韓国側の方は日本の原爆病院のようなものをぜひとも建設してもらいたい、そうしなければせっかく日本で治療を受けてもすぐ治るという性質のものではないですから、そういった点で向こうへの医療機関の設置、医療器材の搬出というものが必要になってくるのじゃないか、この点についてのお考えはどうなのか、承っておきたいと思います。
#27
○大谷政府委員 韓国人被爆者の渡日治療の問題につきましては、先生方のいろいろのあれによりまして、今回十二人を迎えて治療するということになっておりますが、これにつきましては、期限等も切っておりませんし、しかし、実態としてやってみてその経過を見まして、その後の渡日治療について検討いたしたいと考えている次第でございます。
 それから、病院あるいは資材の供与はどうか、こういうお話でございますが、この問題につきましては、対外協力の一環として検討すべきもので厚生省だけではちょっとお答えできかねる点もございますので、その点御了承いただきたいと思います。
#28
○森井委員 しかし、せっかくこちらで治療を受けて帰っても、向こうへ帰ってまた病気がぶり返すといういまのままでは困る、こういう点についてはお認めになるでしょう。
#29
○大谷政府委員 できる限り長期的な視点で治療申し上げるのがよろしいのではないかと考えております。
#30
○森井委員 それはそうなのですけれども、完全にはどうしてもできませんね。だから、アフターケアの問題についても、あなたは外務省じゃないのだから、厚生省としては、もちろんこれは外交ルートの問題がありますから、私は問題を理解しております。理解しておりますけれども、やはり何とかアフターケアの問題についても少なくとも厚生省としてはお考えになる必要があるのじゃないか、この点についてもう一度お伺いをしたいと思います。
 それから、さっきちょっと聞き漏らしたのですけれども、この計画は何年くらい続きますかというので、もしはっきりしておらなければある程度見通しを述べていただきたい、これはつい聞き漏らしたのでお伺いをしたいと思います。
 それから三つ目は、韓国の予算を見ますと、日本医師の滞韓経費というのが出ているのです。これは単位がウォンですか、かなりの金額で三千二百二万ウォンというくらい出ているのですけれども、この点について日本から行ったお医者さんが向こうで御迷惑をかけるのかどうなのか、かけないとすればこれはほかに予算を回せばいいのだろうと思うのです。その点についても、時間がありませんので簡単にお伺いをいたします。
#31
○大谷政府委員 渡日治療の問題につきましては、韓国側から要請のある限りできるだけ私どもとしても今後とも御協力申し上げたいと考えておる次第でございます。
 それから、治療の継続のために病院、資材等の問題でございますけれども、これはもちろんそれにこしたことはございませんけれども、何分外務省の対外協力という枠内の問題でもございますから、これにつきましては、私どもは希望としてはそういうことであるということを申し上げるにとどめたいと思うわけでございます。(森井委員「お医者さんが行く場合、費用は全部こっちが持つのですか」と呼ぶ)もちろんこれはわが方の費用でやっておりますので、向こうに御迷惑はかけておりません。
#32
○森井委員 わかりました。
 では、最後に大蔵省にお伺いしたいわけでございますが、原爆の諸手当も年々歳々金額がふえてまいりました。原案でいきましても特別手当は六万四千五百円になっております。被爆者の皆さんは税制上の心配をしていらっしゃいます。たとえば、奥さんが特別手当をもらっていらっしゃる。いままでは扶養家族に該当しておりましても税制上何ら影響がなかった。しかし、これは課税最低限は七十万でありますから、特別手当六万といたしましても昨年の八月から六万円になっていますから、年間七十二万で二万ほどオーバーをする形になるわけでございます。しかし、この点につきましては、原爆の特別措置法の第十三条で「租税その他の公課は、特別手当等として支給を受けた金額を標準として、課することができない。」公課の禁止がうたわれているわけでございます。特別手当等が金額がふえましても、いま申し上げましたような法の読み方からして当然税金の対象にはされないと理解をいたしますけれども、そのとおりでいいのかどうなのか。実は何人かの被爆者の皆さんから、特別手当をもらっておるが金額がふえると税金がかかってくるのじゃないですか、あるいは扶養控除が消えていくのじゃないかというふうな不安がございます。
 したがって、趣旨の徹底も含めて大蔵省の考え方を承っておきたいと思うわけでございます。
#33
○内海説明員 お答え申し上げます。
 ただいまお話しの被爆者特別手当に関しましては非課税になる限度というのは定められておりませんので、仮に今回改定が行われましてもこれは非課税でございます。したがって、被爆者を扶養される方の扶養控除というものも受けるのには何ら支障がないようにされておりますので、その点は御心配のないようにお願いいたしたいと思います。
#34
○森井委員 終わります。
#35
○葉梨委員長 次に、大原亨君。
#36
○大原委員 きょうは参考人といたしまして、広島大学の原研の大北先生、放影研の玉木先生、それから科学技術庁の放射線医学総合研究所の熊取所長の御出席をいただいておりますので、これらの皆さんに対しまして新しい立法の基礎的な資料の問題につきまして参考意見をお伺いいたしたい、こういうふうに思います。
 質問に入ります前に、いままで話がありましたように、社会保障制度審議会の答申を受けまして被爆者救済の基本的な理念を明確にする、こういうことで七人委員会が発足いたしまして、これはプライベートな委員会ですが、非常に良識を代表する方々である、こういうことは衆目の一致するところでありまして、いままでの国会の議論等を通じまして、厚生大臣も積極的な発言をしておられますし、大平総理もこれを正しく受けとめて対処したい、こういうことであります。これは私は一歩前進をいたしまして、国家補償か社会保障かという理念論争についてピリオドが打たれる、こういうふうに確信をいたしております。この点については厚生大臣もしばしば所信を表明されたわけであります。
 そこで、六月に出まして、いま質疑応答ありましたように八月からは予算編成に入っていくわけでありまして、財政的にも非常にシビアな状況の中でこの問題が取り扱われるというふうに思います。参議院選挙が済みまして内閣改造があるから厚生大臣はおられるかどうかわからぬけれどもという話ですが、そういうことであってはならぬ、いつまでも居座ってもらいたいと思うのでありますが、それは別にいたしまして、私は前の橋本厚生大臣のときに基本理念に関する問題で、国が補償すべきだという論拠はたくさんあるではないかということで、主に三つの点を挙げて、総合的に唯一の被爆国である日本が被爆の実態を正しくとらえて、それの非人道的な傷害作用に対する正しい救済方法を確立する、そういうことは世界に対して再びこのような惨禍を繰り返さない、これは野呂厚生大臣の最初の言葉でありますが、そういう決意の表明にもなっている。こういうことで議論を進めてきたわけですが、この問題は引き続いてわが党の山本委員の方から――私は毎年毎年厚生大臣がかわられるので、かわられるたびごとに基本的な議論について論争することを通じまして、大臣に新しい決意を持ってもらいたいというように思っておったわけですが、ことしはそれは譲りまして、山本委員の方から新しい観点でこの議論があります。
 私は、生存被爆者の救済対策、救援対策、それからいままで死没をされました方々の救援対策、こういうものと、医療と所得保障の面から総合的に新しい立法にアプローチをするのだと思うのですが、最初に大臣に率直にお尋ねしたいのですが、基本理念については七人委員会は一定の方向を出されると思うのですね。しかし、その内容、各論的な問題についてどのような期待をされておるのか、この点につきまして、大臣の各論的な七人委員会の答申についての期待についてお答えをいただきたいと思います。
#37
○野呂国務大臣 御指摘になりましたように、懇談会の結論を待って政府といたしましてはこれに適切に対処するということを申し上げる以外にないと思うのでありますが、その各論、具体的な対応に対しましては、あるいは社会保障政策の上からも考えなければならないというものもあるでしょうし、あるいは国家補償という精神から考えて、さらにその処遇なりあるいは救済方法についての充実強化を図る面もあるでしょうし、問題はやはり基本理念がどういう内容を持った形において明らかにされるものであるか、私はその結論を待つ以外にないと考えます。
 ただ、国家的な補償という精神が基本になるならば、その基本においてすべての対応が国としての責任ある処遇でなければならないというふうに思うわけでございます。その結論が私たちの期待する、国として当然なすべき国家補償的な立場に立つというような方向で出されることを期待はいたしておるわけでございますが、結論が出て、政府としてはこれに適切に対処するということを申し上げたいと思うのでございます。
#38
○大原委員 いまの点で、各論的な、内容的な問題にわたって答申を出していただくことを期待することは、率直に言ってむずかしいのではないか。厚生省としては出してもらって、こういう答申が出ましたということで大蔵省と渡り合って予算化をしたいと思うのですよ。しかし、実際はそういう各論的な問題については具体的に明確なものを期待することは、各制度との関係がございますから、私は余りできないのでないかと思うのですね。余り問題はたくさん持ち込まないようにして、基本的な理念について――茅座長さんを初め、あるいは前最高裁判事の田中二郎さん、それから大河内一男先生等がおられるわけですから、基本的な理念について明らかにすることがいいのではないか、それに基づいて措置をとるのが厚生省であり政府である、私はこういうふうに考えますが、いかがです。
#39
○野呂国務大臣 そのとおりであると思います。
#40
○大原委員 だから、余りたくさん具体的な問題について持ち込み過ぎてがたがた遅くならぬ方がいい。いろいろな距離の問題等がありますが、これは後で時間があれば私の考えを申し上げます。
 そこで、私は一番新しい理念に基づいて、厚生大臣が期待をされ、国会も期待をし、諮問機関でございますから、権威のある機関がこれを受けて国民的な合意を得るような基本的な理念を七人委員会が明確にされるというふうに期待いたしております。その基本理念を受けて、直ちに年内から予算査定、新しい立法の作業に入られるわけですが、その基本的なデータになるものが、重要なものが私は幾つかあると思うのであります。
 そこで、これは政府委員からでもよろしいわけですが、広島、長崎の原爆によりまして死没した人の数は大体何人だというふうに理解をしておられますか。
#41
○大谷政府委員 原爆投下時の死傷者数につきましては、広島で十万一千五百六十一人、これは行方不明、重傷者を含めまして、昭和二十年十一月の県警の調べでございます。それから、長崎につきましては、二十年十月の県調べで四万九千二十二人、こういうふうになっておりますが、二十年から三十二年に至る間の死亡の方の詳細についてはわかっておらないということでございます。
#42
○大原委員 いまのは、広島が約十万名で、それから長崎が四万名で、原爆による死没者で、いままでもそうですが、新しい立法でも対象となる死没者は合計約十四万人の死没者である、こういう考え方のようであります。しかし、これにはまだいろんな資料、データが出ておるわけですね。
 では、お尋ねいたしますが、政府としてこの中で具体的な氏名を把握しておられる点があるならば、これも明らかにしてもらいたい。大体何名ぐらいですか。
#43
○大谷政府委員 ただいま私どもの方としては正確に把握いたしておりません。
#44
○大原委員 ほかに、説明員でもいいからわからぬですか。――私の方から、時間もありますから申し上げますが、大臣、広島の原爆慰霊碑に死没者名簿があるわけですが、被爆の場所、もちろん死没者の氏名等が載っておるわけです。それによりますと、大体九万名というふうに言われておるわけですね。そうすると、長崎にも三万人余りあるわけですが、合計いたしましても大体十一、二万名の氏名が判断できる。これが直ちに援護の対象となるということではありませんよ。
 それから、これはこの際にお聞きをしておきますが、広大の原医研の方では、市の委託を受けて復元調査を進めてこられたわけであります。そこでは、ここから推定いたしまして、氏名を大体何名確認することができるでしょうか。それに匹敵する問題が長崎にあれば、厚生省の方から答弁をいただきます。
#45
○大北参考人 お尋ねの復元調査でございますが、御案内のとおり、復元調査の直接の対象は爆心地から二キロ以内ということで進めてまいりました。それで、二キロ以内に関しましては調査対象人員が約五万三千八百七十名、これは御氏名等わかっております。その中で現在までの死亡ということになりますと、はっきりした数字はございませんけれども、昭和二十年末までの早期死亡のお方は一万五千五百九十名、これは確認をいたしております。そのほかにも、御存じのように、広島の原爆による死没の方々の調査というのはたびたび行われております。復元調査等の経験も生かしまして、爆心地調査あるいは厚生省の被爆者実態調査に伴う復元補完調査等々の資料を合わせまして、現在七万五千八百八十五名の方の御死亡がわかっております。
#46
○大原委員 いまの広大の原研の大北先生の話では、補完調査を含めまして七万、こういうことであります。
 そこで大臣、一つの大きな基礎データを把握する問題は、昭和三十二年の四月一日からは原爆医療法が発足いたしまして、被爆者に対する給付が一定の条件でなされておるわけでありまして、現存対象者は三十七万ですか、あるわけであります。問題は、三十二年三月三十一日以前、昭和二十年八月六日、九日以降の間における死没者を、全部が全部政策の対象にするわけではないですけれども、これらを頭に置きながら、氏名まで含めてその実態をどう把握するかということが一つは大きな問題であります。これはまだ遺憾ながら、被爆の実相でありますが、御答弁のように、推定の死没者については、広島、長崎で十四万プラスマイナス一万、これは国連に両市長が報告をいたしておりますね。しかし、実際にわかっておるのは十一万七、八千であるというふうに統計上は氏名が出ておるわけでありますね。しかし、現在の二法案の対象となる被爆者手帳の所持者を頭に置きますと、なおこれもいろいろ問題があるわけであります。したがって、これから新しい制度をどうするかという場合に、その障害者の障害の特殊性、実態と一緒に、死没者の実態についてどういう考え方でこれを詰めていくかという問題があるわけであります。
 そこで、きょう限られた時間ですから、参考人の御出席をいただいておりますから、財団法人放射線影響研究所理事長の玉木先生、これは五年前まではABCCと俗に頭文字をとって言っておったわけですが、そのところに、これらの基礎データをつくる上においてかなりの資料があるのでないかということをかねてから私は思っておりましたので、その問題点につきまして最初にお答えをいただき、御意見をいただきたいと思うのです。
 昭和二十五年に国勢調査をやりましたときに、ABCCの要請によりまして駐留軍が、アメリカ軍が、占領軍が日本政府に要求をいたしまして、全国にわたって付帯調査をいたしたのであります。そういうことが歴史的に明らかであります。その資料が放影研にあるというふうに言われておったわけでありますが、その資料は放影研にございますか。
#47
○玉木参考人 お答えいたします。
 ございます。それは、昭和二十五年十月一日に全国にわたって国勢調査が行われましたその時点で、原爆被爆者生存者の氏名、それから生年月日、それから男女の別、それから昭和二十五年国勢調査の時点での現住所、それだけが記録に残っております。(大原委員「何名ですか」と呼ぶ)合計を申し上げます。全国で二十八万三千五百八名の方が広島または長崎、広島から長崎に移って両市で被爆された方がごくごく少数あるそうでございますが、そのうちで、長崎で被爆したとそのとき言われた方が十二万四千九百一人、それから広島で被爆されたと調査に載っておりますのが十五万八千五百九十七名です。両市被爆というのが十名おいでになるようでございます。
 以上でございます。
#48
○大原委員 それは昭和二十五年国勢調査で原爆を受けた人を調査しようといたしますと全国を調査しなければなりませんから大変な調査でありますが、その付帯調査で二十八万余りの、いまお答えのような資料がある、こういうことでありますね。その氏名は、これから人命や健康に対するいろいろな影響を調査する際における、たとえばそれをたどっていきまして死没者を探すということ等で昭和二十五年以前の被害状況についてもアプローチできる道があるわけですし、その二十八万名の方々が二十五年以後どういう経過をたどっておるかということを追跡すれば後障害の問題にもぶち当たるわけであります。ですから、この名簿は、これからのデータを整備する上において、あるいは援護の対象とする生存者、死没者の一定の認定の基準をつくっていく際におけるよりどころになるのではないかと思うわけです。
 放影研は日米双方で経営されておるわけですけれども、これは日本の方にお渡しをいただいて、これを整理するというようなことについてはアメリカ側も異議はないと思いますが、その点いかがですか。
#49
○玉木参考人 お答え申し上げます。
 先ほども放影研、ABCCからの学術報告、論文ということを申しましたが、その中には統計はございますが、あるいは特定のある病気についての例なら例があったということは出ておりますけれども、個人のお名前は一切出ていないのでございます。私ども、ABCC以来、現在も同じでございますが、調査の資料、特に個人の名前の出るようなそういう資料が外部に出るということについては、もう必要以上と思われるぐらいにプライバシーの保全ということに、特別の委員会を常時持っておりまして、慎重を期しているのでございます。一例を申しますと、恐らく原爆被爆者の健康手帳をお受けになる御希望の方でございましょう、ある証明を求められることがございますが、そういう調査の資料を部外に出すということについてはあくまでその個人のはっきりした御依頼が理事長あてにあるということ、そういう文書がついているということを前提としているわけでございます。一例でございますが、ちょっとそのことを申し添えたいと存じます。
#50
○大原委員 二十八万の方の現在の住所がわかっているということは氏名がわかっているということですからね。そうなんでしょう。そういう被爆者の方の氏名がわかってないですか。簡単に答えてください。
#51
○玉木参考人 氏名はわかっております。その住所は、先ほど私もしもはっきり申しませんでしたとすれば申しわけございませんが、昭和二十五年十月一日、全国で国勢調査が行われましたときのその方々の現住所でございます。現住所という言葉があいまいであったかもしれませんが、そのときの住所でございます。当然、調査員が回られたわけですからわかるわけでありますが、現在の時点での住所ではございません。
#52
○大原委員 これは本制度の、たとえば直接被爆者とか入市者とか、そういうふうないろいろな四号の被害者の方があるわけですけれども、そういうものをぴしっと概念、範疇を決めておいてやったわけではないわけです。しかし、当時は、救済の施策がないときにそういう全国にわたって被爆したかどうかということを調査されたわけですから、そのことはもちろんプライバシーにも関係いたしますけれども、被爆者の援護ということには役立て得るのではないか、そういう点は倉庫の中にしまっておく必要はないのではないかと私は思いますが、いかがですか。あなたの見解ですね。それは政府の方の受けとめ方ですよ。だれにもかれにも出すというわけじゃないですから。
#53
○玉木参考人 繰り返しになりますが、いまの時点では、調査の資料で個人の名前が出ております資料を研究所外に出すということについては、その御本人のちゃんと署名された御依頼がある、そういう形式の書類があるのでございますが、それを確認してその方にお渡しする、あるいは郵送する、そういう方式をとってまいっております。現在もそうなんでございますが、私、いまの時点で申せることは……。
    〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
#54
○大原委員 そこまでのことはいまのお話でわかりました。しかし、こればかりかかわっていくわけにいかぬわけですが、何のために二十八万名のそういう氏名を付帯調査いたしまして、活用されたのですか。
#55
○玉木参考人 それはその中から、特にその時点で広島、長崎、すなわち研究所の近くにお住まいになっている方を中心にしてこの調査の集団と申しますか、それを確立させてもらうという趣旨に出たものでございます。
#56
○大原委員 わかりました。ABCCが要請して、それから米軍が日本の政府に要求いたしまして国勢調査の付帯調査を全国にわたってやる、全国民やらないとわからないわけですから大変なことですが、それをやらせたわけです。その調査の資料というのは、あなたの在任中は関係ないことですけれども、当時の占領中の事情から言えば、アメリカはこのデータを分析いたしまして、原爆の影響がどうかということの資料に使ったことは間違いないわけです。今回のネバダの実験で十五万名のリストを挙げていますが、これだけじゃありませんけれども、これは使ったに違いない。そういうデータは、本人のためですから、被爆者救援とその前提となる真相解明のデータとして活用してもらいたい、こういうことを言っているのですから、この点についてあなたが非常に慎重に言っておられることについては十分了といたしますが、その点は、それを前提といたしまして処理をするということは当然だと私は思う。アメリカの意向を聞く必要はないと思うのですよ。この点は、ひとつ政府の方も聞いておいてもらって措置をしてもらいたい。
 それから、その前に、昭和二十年に、原爆直後に学術会議の調査団が入りまして、稲毛の放医研の前の御園生所長も、当時陸軍病院の病院長でしたから加わり、そして都築先生等も加わられたわけです。その調査のときに米穀通帳が、疎開をされておったのがABCCに行っておるのではないか、こういうことでございましたが、ABCCはそれを集めておいて活用した、そういう経過がありますか。それがわかりますと、当時、実際にだれがどういうところに住んでおったか、またその後の状況を追跡することができます。
#57
○玉木参考人 現在その資料が、私が調べましたところでは見つからないのでございます。
#58
○大原委員 それは自治体とも連絡をとって政府委員は追跡をしてもらいたいと思います。これがわかりますと、かなり当時の実在者がわかるわけです。長崎は比較的人数が少なかったわけで、わかっておるわけでありますけれども、広島が特にわからないわけですから。
 それから、放影研の玉木先生に重ねてお伺いいたしますが、広島、長崎でABCC時代から、特に戦争直後は疫学的な調査のために死体解剖をたくさんされておるわけですね。その死体解剖は何体ぐらいされましたか。そして、それは現在それぞれのところに保管をしてあるか、あるいは不必要なものは処分されたかということだと思うのですが、どうなっておりますか、簡単にお答えいただきたい。
#59
○玉木参考人 お答えいたします。
 集計いたしますと、私どもの方が解剖に関係させていただきましたのは五千体を少し出るという数でございます。それから、その資料は保存されております。特に記録とか部分的な重要な臓器の標本などですね。
#60
○大原委員 長い間放影研は疫学的な調査という、被爆者と非被爆者を対置して統計的にも影響を調査するという非常に総合的な、アメリカ独特の、日本ではやらないことをやっているわけです。逆の意味におきましては、これは被爆の実態の中心に触れる問題でもあるわけですね。
 私は、いまの解剖の経過、結果から参考になる御意見をお聞かせいただきたいと思うのですが、原爆を受けた人は、御承知の急性症状と慢性症状があるのです。急性症状というのは、脱毛したり、吐血をしたり、血便を出したり、発熱をしたりという症状を、距離によりまして激しいとかその他の差はありますが、繰り返したわけです。しかし、医師の診断書というものは、いままで恩給法とか援護法の審議のときにいつも議論をしたわけですけれども、死亡の認定等においては、原爆の傷害作用に起因するかどうかということについては、後障害の複雑性から非常にむずかしいわけですね。当時はまだ結核が非常に多くて、第一の死亡原因でございました。それから、赤痢とか腸チフスとか肺炎というのが多いわけです。そういう死亡診断書と解剖の経過、結果との間においては一定のギャップというか、一定の方向が出ておるのではないかと私は思うのですが、これを整理して出すことができますか。
#61
○玉木参考人 お答え申し上げます。
 病理解剖をいたしますと、これは全身の検査をさせていただくわけでございます。当然考えられることでございますが、特に被爆早期には爆風による力学的な影響、それから当時の日本人全体、特に被災地での栄養の状況、またそういうふうな状況では体の外から入りますいろいろな病原体、ばい菌などの感染が普通の人の場合よりはひどいということもございます。それからもう一つは、問題になっております原爆の放射線の影響、そういう幾つかの因子が絡み合っておりまして、個々のケースにつきまして明らかにこれは主治医と申しますか、最後に診断書をお書きになったお医者さんの診断は的を射ていないなと思われるようなケースもございますけれども、何とも決めがたいというケースも多分にある。これは被爆者に限らず、現在大学病院などで行われております病理解剖に、私たびたび立ち合うことがございましたが、その場合でもよく遭遇する事情でございます。いろいろなケースがあるであろうと思うのでございます。
#62
○大原委員 私はかつて、ABCCが日米の対等、共同の経営体になる、財団法人の放影研になる一年か二年前でありますが、科学技術特別委員会で、それぞれきょう御出席の広大の方は御出席でなかったのですが、科学技術庁の放医研を含めまして御出席をいただいて議論をしたことがあるわけでありますが、そのときのことを踏まえて申し上げるわけですけれども、大体ABCCは占領軍の命令によって出たわけですから、アメリカが原爆の影響について客観的に、疫学的に調査をいたしまして、そして自分の政策のために役立てようということでやったのが出発であります。それがだんだんと被爆者の要求や国民的な要求の中で五年前に共同研究、共同調査機関になった経過があるわけであります。その前に私は議論をいたしました。そのときに言ったのですが、ABCCがたくさんの権力を動員して資料をもって調査をした結果を全部アメリカへ持って帰って、日本の側には、いま森井委員の質問に対しましてありましたが、学術調査その他については文書で公表しておるという話ですね。これは前にも話がありました。しかし、大体重要なところはアメリカへ持って帰ったわけです。分析をしていろいろな点でデータとして活用しておるわけですね。もちろん死体解剖もそうです。文章的な記述もそうですが、標本的なものについても切断をしてスライドにして恐らく活用されているというふうに言われているわけですね。ですから、そのことは被爆の実相に迫る問題ですから、被爆者の援護のためにも、救済のためにも、実態の把握が中心ですから、あるいは認定基準が非常に大きな問題になりますから、その際には整理をして、これは日米共同経営になったのですから、積極的に日本の側の政策に、被爆者の側の援護の対策に役立つように活用すべきではないかというのが私の希望の趣旨であります。したがって、その点については、これに対応する日本側の意向もあるわけでありますが、この点は十分御理解いただけると思いますが、いかがですか。
#63
○玉木参考人 お答えいたします。
 調査の材料、特に解剖されたケースのその材料が米国へ持って帰られた、論文とか資料という文書でなしに、それはABCCがスタートします前後、それより以前のこと、少なくともその時期のものが大部分ではなかろうか。そして、それは私、ちょっといま思い返しましたのですが、新聞報道でその一部は日本に返還されたということも耳にいたしておりますのですが、調査中でございますが、それが私の放影研の方に返ってきたということはいまのところないのでございます。
#64
○大原委員 この前の科学技術特別委員会で二時間にわたって議論したときには、科学技術庁の所長の御園生先生は、これは現地へ帰った人で非常に詳しい人ですから、占領期間中のことはわからぬ、しかし占領以後は、アメリカ主導型のABCCであったけれども、しかし日本もこれについては内容的にも解明しているから、そういうことはないと思う、こういう答弁でありましたから念のために申し上げておきます。
 しかし、いずれにいたしましても被爆者の原爆による傷害作用というのは、爆風、熱線、放射能、三つがあるのですが、たとえば熱線の場合は爆心地、中心地の表面温度は四千度から五千度というのですから、その傷害作用は一体どうか。それから、放射能も一キロ前後のところが四百ラドというのですから、半致死量といわれているわけですね。放射能だけで半分は死のうという地点があるわけですから、至近距離があるわけですから、その傷害作用はいかなるものであって、後障害はどういうものであるかという人命、健康に対する観点から、私はこの際いままでの研究成果というものを役立てていただきたいと思うわけですね。これはすぐれて政治的な問題でもあるわけですから、厚生省側はいままでは予防研究所で対応しておりましたが、公衆衛生局がいまやっておるわけですけれども、こういう問題等については、このデータについては援護法をつくっていく基礎的なデータとしてこれの取り扱いは慎重を要するわけですけれども、その活用について遺憾なきを期してもらいたいと思いますが、政府側の答弁を求めます。
#65
○大谷政府委員 私ども大変貴重なものと考えておりますので、十分慎重にいたしたいと思います。(大原委員「慎重に何するのですか」と呼ぶ)先生が仰せのお話は、基本問題懇談会の結論が出ますときにその資料として活用せよというふうなことであるかと思いますが、私どもとしてもそれに対しまして十分対処いたしたいと考えているわけでございます。
#66
○大原委員 基本理念が出てからもそうですけれども、出る前でもそうですよ。いま共同研究ですから、被爆者のためにこれは生かしてもらう、活用するということは当然のことですかち。平和利用のために役立てるということだけではない、これも必要ですが。しかし、これは被爆者対策のためにこの調査を役立てる、こういうことからきちっとこの点を処理してもらいたいと思います。
 それから、放影研がいままでABCC時代からずっとやってまいりました調査の中で特徴的なのは、私は疫学的な調査だと思うのです。被爆者と非被爆者を対比いたしまして、原爆作用を一定の想定をされるのだと思うのですが、どういう影響を及ぼしているかということを統計的に研究される、こう思うのですね。その研究の結果として、これからいままで議論になりました被爆者援護法をつくっていく際における、あるいはいままでの死没者の認定、二十年からずっとこっちまで、そういう際における認定の一つのスタンダードをつくる際における参考となるべき諸点が、疫学調査の結果、ありましたらそれを明らかにしてもらいたい。これは若干の例で言いますならば、そういう傷害作用というものは明らかになればよろしい。というのは、一部の報告書の中には背丈がやはり違っておるというふうな問題等がございましたね。そういう問題等で長い間の研究をされたわけですから、わかっている面については活用していただくことが当然ではないかと私は思いますが、いかがですか。
#67
○玉木参考人 疫学的調査についてお答えいたします。
    〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕
 ただいま先生からお話がありましたように、多数の人数につきまして長年月にわたりまして近代的な統計数学を利用して、いろいろな疾患を追求しているのが疫学でございます。
 初めに申し上げますと、この原爆放射線の影響につきましては、ちょうど伝染病の場合と同じ言葉でやはり潜伏期という言葉がございまして、昭和二十年でございますから三十何年たっているわけでございますが、発病される方がいまなお少しふえつつある、そういうものもあるのでございまして、最終的な結論でなしに、この時点でのとりあえずの成績のまとめ、そういう性格があるのでございます。それで申し上げますと、先ほどお話がございました原爆放射線と関係が非常にはっきりしているものは、先ほどお話のありました白血病、それから目の水晶体、レンズといっていますが、文字どおりレンズのようなものがあるわけですが、そのレンズが少し混濁する。非常にひどくなりますと手術を要する白内障になるわけでありますが、そこまで行ったのは非常に少ないのでございます。それから、最近になりまして、血液をとりまして、そのリンパ球の染色体を調べますとやはり被爆と関係がある。それから、最近になりましてでありますが、数は少ないですけれども、明らかに被爆されなかった方との比較で違いますのが多発性骨髄腫、あちこちの骨の髄のあれがまだ少しふえつつあるという状況。白血病はもうずっと減ってまいりました。それから、これも最近になりまして甲状腺のがん、それから女性の乳がん、それから肺がん、恐らく胃がんも少し被爆者の方々にふえてきておりまして、対照に比べて関係があるというデータが出つつある、そういう状況でございます。
 一方、いまのところ原爆放射線と関係が確認できないものは、原爆の被爆者にその後生まれられましたお子さん方の死亡率、それから先天的な異常などはいまのところ見つからないのでございます。それから、妊娠受胎能力についてはどうもはっきりしたものが出ない。それから、放射線を受けると老化といいますか、老人化の現象が少し促進されるのではないかということにつきまして、これも関心を持っている方がありまして、かなり詳しい疫学的な調査が行われましたが、いまのところはっきりしないのでございます。それから、先ほど挙げました悪性腫瘍以外の原因による死亡率などでございます。がんといいますか、悪性腫瘍のうちでは慢性リンパ性白血病と皮膚のがんと骨の肉腫と頭の骨の中の、つまり脳腫瘍でございますね、そういうものは多いということが言えないのでございます。
 それから、いまお子さんのことがあれしましたので、先ほど後で申そうと思いましてあれしましたのですが、原因がはっきり放射線との関連のあることとして、原爆のときに母親の体内におられた体内被爆の方々につきましては、これは大変悲しいことでありますが、測定しますと頭が小さい、それから知能の発育が少し遅いというような成績、これはもうすでに公表されていることでございます。
 それからもう一つ、先ほど後に申しましたことで若い方々、若い年齢に関連したことで申すのでありますが、被爆された方々の背丈につきまして、これは研究所外の大学の先生にも一部御依頼している面があるのでございますが、いま再検討の段階に入っている、そういう次第でございます。
#68
○大原委員 医学的な、あるいは科学的な、統計的な研究ですから、客観的に明確になったことだけをお述べになるということは当然だと思います。しかし、一定の問題意識を持って幅広くやっておられることも事実でございますし、施策の場合にはわかってから政策を立てるということになりますと手おくれであります。したがって、疑わしい場合でも政策の対象にするということで今日までいろいろと原爆二法で努力をいたしましたし、そして今度は援護法ということになりますと、国家補償ということになりますと、もう少し別な観点でこれを整理する必要があるというわけですから、いままでABCC時代から放影研時代、お述べになりました経過をたどりまして調査研究が累積をされておるわけですから、このことを唯一の被爆国である日本として被爆国の立場に立って、救援の立場に立ってあるいは禁止の立場に立ってこれを生かすという観点で主体的にこれからもいままでの結果を生かしてもらいたい、こういう私の強い要望であります。
 この点につきまして、所長さんと玉木理事長さんと、そしてずっと予算を提出いたしましてこの調査について協力いたしました厚生大臣の側のいままでの質疑応答を受けましての御見解をお述べいただきたいと思います。
#69
○野呂国務大臣 いろいろの先ほどの議論を通しまして被爆者の実態調査がいままでに行われておるわけでありますが、今後懇談会の答申を得た場合において被爆対策をどのように進めていくかということについては、それに対応できるだけの調査をさらに十分推し進めていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。審議会の答申を期待するとともに、それに並行して厚生省といたしましても万遺憾なきよう調査を進めてまいりたい、かように考えております。
#70
○大原委員 広島大学の原医研の大北先生にお越しいただいておりますが、原医研は、御承知のように、おくれて発足したわけです。発足いたしましたのは私どもがいろいろ議論いたした経過があるわけですが、唯一の被爆国であるという日本自体においてやはり原因を究明しながら治療方法を探求していく機関が必要ではないか、ABCCだけに寄りかかっておるということは、情報をそこだけが持つということはいけないじゃないか、いまで言えばそういうことでありますが、そういうことで発足をしていただきました。しかし、日本の政府は研究などということについては非常にちゃちな考えを持っておるわけでありまして、科学技術庁もこれと競合する研究機関があるわけでありますが、しかし、これはある意味では幾らあってもいいわけであります。でありますけれども、非常に困難な中で、広大の原医研も長崎医大の方も研究と治療方法の探求をしてこられたというふうに思います。特に広大は、時間も迫ってまいりましたので結論的に参考意見をお聞きいたしたのですが、広大の研究機関はABCC、放影研とは違いまして、原爆傷害作用に基づく障害に対する治療方法について一定の方向づけをしておられるというふうに理解をいたしております。いままで研究を続けられました経過から考えて、新しい理念に基づく、国家補償の理念に基づく――社会保障か国家補償かの論議に高い次元から国として取り組んでいくということでございますから、そういう際における、申し上げましたように、人命、健康に対する被害、死没者、現存の障害者等の問題をとらえてその対象といたしましてこれらの問題の施策を進めていく上におきまして、いままで議論いたしてまいりましたが、大北先生の参考になる御意見をお聞かせいただきたいと思います。
#71
○大北参考人 私、広島へ参りまして十八年になりますが、原爆の問題、御存じのように、プレスコード等もございまして、参りましたときにそのアウトラインすら知らなかったようなところがございます。しかし、関係してまいりますと、その与えた影響といいますのは、身体的にはもちろん社会的にもまた精神的にも非常に大きいということが、だんだんと研究に従事するに従って非常に深刻な問題であるということが身にしみて感ぜられるのでございます。
 それで、先ほど森井先生からも御質問がございましたけれども、現在、広島を例に挙げますと、主として疫学的な仕事をなすってみえる放影研、それから第一線で治療に当たってみえます原爆病院、それから大学の医学部と並立いたしまして、実験的なこと、それから疫学的なこと、それから健康管理に関すること、それから大学病院でございますので治療の面ではやや専門化するところがございますけれども、そういった面で責任を負っておりますわれわれの研究所、この三つはやはり強い連携を持って仕事を進めていく必要がある、これは前から言われておることでございます。森井先生の御指摘というのは、われわれの努力が足らないところがあるわけでございますけれども、私の感想でいきますと、少なくともABCCから放影研になりまして以来、この三者の、ことにスタッフの間の研究上の連携というのは昔に比べて非常に改善されておる、いろんな研究上の連絡というものは常にとっておることを申し添えさしていただきます。
#72
○大原委員 大北先生、今度新しい立法ということになりますと、申し上げましたように、昭和二十年の八月六日、九日、被爆の直後から年内たくさんの人が亡くなりました。その後慢性症状、急性症状を繰り返しながら後障害が続いたわけであります。それが三十二年までは、言うなればその中で亡くなられた人については把握できていないということが問題であります。どういう基準で援護の対象にするかということをつくっていかなければならぬと思うのであります。というのは、施策をいたしますと、いまでもそうでありますが、申請主義でございますから、一定の条件に適合した人が申請するということになります。たとえば死没者の認定基準、こういうものをつくる上におきまして非常にむずかしい問題があるだろう。いままでの法律上の概念、援護法等の概念で言いますと、これは非常にシビアになってまいりまして、表面的な症状だけで判断をされてどんどんネグレクトされるという場合が多い。もちろん被爆した場所、放射能、熱線、爆風、総合的な被害、こういうものを明らかにしながらそれらの被爆の中で亡くなった人等について適正な施策が展開されるということは、現行法でも大切であります。現行二法だけでなしに、現在の援護法でも大切でありますし、現在の救済法でも大切でありますが、そういう点でぜひとも積極的にそういう行政面にも関心を持っていただきましていままでの研究の成果を役立てていただきたい、こういうふうに希望いたすわけでありますが、最後にひとつ御所見を大北先生から承りたい。
#73
○大北参考人 新しい施策の対象ということでございますけれども、基本的にこれは行政上の問題がございますのでやや私の立場からは出過ぎたことかもしれませんけれども、やはり基本的には現在の原爆医療法における被爆者の方というのが対象になるかというふうに考えます。
#74
○大原委員 科学技術庁の熊取先生、せっかくおいでいただいたのですが、短時間では失礼ですし、また熊取先生は政府部内の方でもございますし、科学技術庁でもございますから、また改めて。はなはだ失礼いたしましたが御質問申し上げません。その点お許しいただきたいと思います。
 厚生大臣、いま質疑応答いたしましたが、まだ原爆の傷害作用による人命あるいは健康上の問題は非常に深刻な重要な問題でありますし、他の爆弾等の場合でしたらそこが頂点でありましてだんだん治癒するという傾向にあるわけであります。毒ガス等は後遺症が残るわけでありますが、原爆の場合は熱線や放射能の後障害があるということ、あるいはその瞬間においても、それが原因で放射能をたくさん浴びれば即死するということ、あるいは短い期間に苦しんで死ぬということがあるわけですから、その傷害の実態を明らかにしながら、今日まで二法で積み上げてきました成果、これを踏まえながら、年金制度をつくるにいたしましても、障害年金や遺族年金をつくるにいたしましても、弔慰金を出すにいたしましても、現行二法を生かすにいたしましても、実態を踏まえることが私は非常に大切な点であるというふうに思うわけであります。ですから、各研究機関なり横の後障害研究会等もあるわけですが、横の研究機関の第一線の研究成果なり調査の結果なり、あるいは第一線の行政における実際にタッチいたしました経過、それらを十分吸収をされて、そして新しい理念に基づく各論的な各施策の展開においてはその実態に即して遺憾のなきを期してもらいたい、こういうふうに思います。各研究機関等の中心は、施策を公衆衛生局はやっておるわけですから、厚生大臣はやっておるわけですから、これらが施策の問題では中心でありますが、各機関の連携をとりながらこれらの問題については全部の成果を吸収するに遺憾のないようにしてもらいたい。こういう点につきまして、これからの問題を含めまして厚生大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
#75
○野呂国務大臣 先ほどもいろいろ御議論がございましたように、各関係機関のいろいろの成果を踏まえ、それらを掌握し、そして原爆被爆者の対策に万遺憾なきよう厚生省としては全力を傾けてまいりたい、かように思います。
#76
○大原委員 終わります。
#77
○葉梨委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
#78
○葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。谷口是巨君。
#79
○谷口委員 本日は、大北参考人、玉木参考人のお二人には大変御苦労さまでございます。私どもの党も、せっかくおいでいただきましたから、若干の質問をいたしたいと存じます。
 最初に、玉木参考人にお伺いいたしますけれども、現在までいろいろ追跡調査をなさってきているわけでございますが、その追跡調査の中で被爆者の特徴というようなものが何か出てきておるかどうか、お聞きしたいと思います。
#80
○玉木参考人 お答え申し上げます。
 原爆被爆者の医学的な調査で観察されます特徴というお話でございますが、けさほどもちょっと申し上げました私どもの研究所は、実質上動き出しましたのは原爆被爆後まず三年ないし五年以後でございまして、いわゆる急性の症状といいますか、被爆直後のものは大変重症の、むろん致命的なものがたくさんあったわけでございますが、そういうものは私どもの調査の対象に含まれないと言っていいかもしれません。スタートしたのが、先ほど申しました三年後ないし本格的には五年後だろうと思いますので、したがって、われわれ後障害研究、こう申しておりますが、後になって残っている、あるいは後になってあらわれる障害、そうして非常に重体なものはまず含まれていない。私どもの研究所の研究の内容は、そういう研究をやっていると申すべきかもしれません。
 それからもう一つは、全身に放射線は照射されましたので、そのあらわれますいろいろな病変を先ほど申し上げましたが、目の水晶体にあらわれますものは比較的放射線に特徴的なものであるかもしれません。これは原爆の放射線に限らないのでございますが、たとえばサイクロトロンの実験をおやりになる方に昔から観察されておるのでございます。それから、全身的なことになりますと、独特のものというのは余りないのでございます。したがって、先ほど疫学的な調査をやっているというお話がございましたが、多数の人数について長期にわたって私ども勉強させていただいて、統計的に放射線を受けた方にはこういう病変が多いというような、非特異的と私ども申しますのですが、そういうものが現在観察調査の対象になっている、そういうことでございます。一例を申しますと、先ほど多発性骨髄腫というものが最近ふえてきていると申しましたが、原爆の被爆者にあらわれましたものも、私ども学生時代に教わりました、そういう教科書の標本の写真などに出て教えられているわけですが、差がないのでございます。
#81
○谷口委員 ありがとうございました。
 大北参考人にお伺いしたいのですが、私は長崎でございますので、かつて長崎県で二世及び三世の問題を重視しまして意識調査をやったことがございます。やはり被爆者と認定された方の二世に、関連あるなしは別として、非常に病弱であるとかいろいろな障害が出てきたわけですね。それについてお伺いしたいのですけれども、二世への影響というものについて、いままでのいろいろな研究データからどのように考えておられますか。
#82
○大北参考人 けさほどお話もございましたように、二世に関する疫学的な調査の上では、特に目立った障害が現在までは認められておりません。
#83
○谷口委員 では、もう一つ戻りまして玉木参考人にお伺いしたいのですが、現在の残留放射能といいますか、長崎でも調査をやっているのですけれども、三十数年たちまして、どこが一番やられたのかとなると判然としない状態になっているわけですね。そういう状態の中で、いまいわゆる核爆弾その他の爆発試験が行われて、それに加わってずっといろいろな弊害が出てきたと思いますが、そういう問題について何か所見がありましたら、お教え願いたいと思います。
#84
○玉木参考人 お答え申し上げます。
 特に長崎では西山という谷合いの地区に放射性降下物が風に吹かれて落下いたしました。そして、それが他の長崎の地区に比べて、もう問題なしに計測しまして多いということがわかっているのでございます。その物質は放射性のセシウムなどでございまして、放射性物質の寿命といいますか、半減期が長いものですから、いまでも少し土壌など、植物などを調べると多いということを聞いております。それがあの程度でどれだけ人体に影響があるであろうかという問題でございますが、非常に量が多ければ、これはもう大変な問題でございます。しかし、長崎大学でお調べになりまして、ごく最近と聞きましたが、あの地区で白血病の患者さんが二人見つかったということを聞いておりますどれが統計的にそのほかの地区に比べて発生率が高いかどうか。何分人数が少ないのでありますが、それはいま長崎大学、それから私どもの方の疫学統計部の専門家が鋭意検討させていただいている、そういう段階と私は理解しております。
#85
○谷口委員 時間の関係がありますので、参考人に対する質問は終わります。
 ありがとうございました。
#86
○葉梨委員長 次に、大橋敏雄君。
#87
○大橋委員 私も、せっかく国会においでになりましたお二人の参考人に若干質問させていただきたいと思います。
 まず、被爆者及び被爆二世に対する放射能の影響についてどのような研究を行っておられるのか、簡単で結構ですから説明願いたいわけです。
 同時に、昭和二十九年、米国のビキニ水爆実験で多数の日本人が死の灰を浴びまして、その深刻な被害が大きな社会問題になったわけでございます。このビキニ関係の放射能影響については調査研究は進められているのかどうか、これもあわせてとりあえずお尋ねしたいと思います。
#88
○玉木参考人 お答えいたします。
 第一のお尋ねは、被爆二世について現在どういうような研究が行われているかというお尋ねでございますが、けさほどもお答え申し上げましたように、疫学的な調査では、いまのところ、先天性の異常と申しますか、生れつきの異常が、被爆されなかった集団に比べて発生率が多いという成績は出ておりませんが、なお検討を重ねております問題がいろいろあるのでございます。
 それから、これはいまのところ見つからないということだけでは安心がならないのでございまして、新しい遺伝学の領域でございますが、一つには、ごく少量の血液をいただいて、その中のリンパ球の中の染色体を追求していく。もう一つは、血液の液の方でございます。顕微鏡で見える細胞の方はリンパ球がその一種でございますが、血漿あるいは血清と申しますが、その中のたん白質で人間の遺伝物質を担っていると言われている幾つかのたん白の変異体について、ごく新しい化学的な方法で異常があらわれないかどうか、鋭意調査を来年も引き続いて続行する予定になっているのでございます。そんなことで、この二世の方々に、もしかして憂うべき影響があらわれはしないか。いまのところ科学的な調査ははっきりしたものが出ておりませんが、なお検討させていただきたい、そんなふうに考えております。
 それから、ビキニのことでございますが、これはABCC以来、私ども放影研の研究の対象外になっておりまして、ちょっとお答えします資料もないのでございます。
#89
○大橋委員 政府にお尋ねしますが、いまの放影研の先生のお話では、ビキニ水爆実験に関する放射能の調査あるいは研究等についてはやっていないということですけれども、これも大きな問題であったわけですから、政府として特に追跡調査等のことをやらせているのかどうか、お尋ねしたいと思います。
#90
○大谷政府委員 まことに申しわけございませんが、私どもの方は原爆二法に基づく関係の所管をいたしておりまして、ビキニの関係は科学技術庁の方の所管でございまして、ちょっと私の方からお答え申し上げる用意をいたしておりません。
#91
○大橋委員 科学技術庁の方では当然真剣にこの問題と取り組んでいると理解していいですか。
#92
○大谷政府委員 まことに申しわけございませんが、この点ももう一度確かめさせていただいて御答弁させていただきたいと思います。
#93
○大橋委員 この問題は、確かに原爆とは事情は異にしておりますけれども、放射能の影響ということについてはやはり深刻な問題でありますし、確認の上、もし中途半端な状態であれば、これもあわせて政府として徹底的に調査研究を進めるという方向で行かれますよう、大臣の方から手を打っていただきたいと思うのですが、いかがですか。
#94
○野呂国務大臣 現行の原爆二法は、御承知のとおり、広島及び長崎に投下された原子爆弾の被爆者に対して、その健康を保持すると同時に、福祉の面において対策を講じていくというのが目的でございますから、ビキニで被災した船舶の乗務員をその二法において扱うことは、法のたてまえから申しましても不可能であると思います。しかし、それに関連をしておる、こういう点でございますから、科学技術庁がどういうふうな判断を下しているか、これは政府といたしましてどういう考え方を持っておるかを明らかにいたしてまいりたい、かように思うのでございまして、いまのところ、これに対して、政府はこうあるべきだということに対しての私どもの考えは持っておりませんので、大変恐縮でございますけれども、私も国務大臣の一員として関係機関と十分話をしてみたい、かように考える次第でございます。
#95
○大橋委員 放影研の玉木先生にお尋ねしますけれども、このビキニ水爆こそアメリカの手によって行われたわけであります。放影研は幸いにもアメリカと日本との共同作業であるわけですね。当然放射能の問題を研究、追求なさっているわけですから、むしろ日本側から放影研でもこの問題を取り扱っていくように意見具申をなさるお気持ちはないかどうか。
#96
○玉木参考人 お答えいたします。
 私どもの研究調査の対象は、いまのところ、広島、長崎で被爆された方々を無論中心にいたしておりまして、手いっぱいとも言えるかと思いますけれども、この問題につきましては、一つには、けさほどおいでになっておりましたが、科学技術庁の放射線医学研究所の熊取先生を私どもの専門学術評議員にお願いしているのでございます。日本側五人、アメリカ側五人おられるのでありますが、熊取先生にもこの問題について御意見を承り、それから無論日米双方の関係者にこういう問題について検討の余地がないかということを諮っていくことはできると思いますが、いままでのところ放影研といたしましては研究の対象になっておりませんでしたので。
#97
○大橋委員 また、ビキニ被災者の中で、後遺症といいますか、後障害と申しますか、いま問題になりつつあるというふうに私は理解しておりますので、ぜひとも前向きで取り組んでいただきたいと御要望申し上げておきます。
 そこで、皆さんの研究されたその成果というものは公表されていくのかどうか、また、どのようにそれを活用なさっていくのか。
 もう一つ、研究員の交流というものはお互いになさっているのかどうかということです。ということは、研究調査に当たっては研究所相互間の連絡を十分行うことが大切ではないかと私は思うわけでありますが、この点についてどのようになっているのか、お尋ねします。
#98
○玉木参考人 お答え申し上げます。
 研究の成果の公表につきましては、けさほども簡単に御報告申し上げましたが、純医学的な論文の形式をとったもの、あるいは年報という形式のものを、日本国内、それから外国では主に米国の医学研究関係の機関、それから申すまでもないことでございますが、日米の私どもと関連深い行政機関、厚生省関係の方面に定期的にお届けしております。そのほか日本国内あるいは諸外国で発行されております専門の雑誌に投稿、専門の学会での講演、発表というようなことを重ねてまいった次第でございます。
 それから、研究の交流、研究者の交流ということは非常に大切なことであろうと思います。いまから五年前に日米合同の医学の研究所として発足いたしましたときに、両国に関連がありますので、形式は財団法人という形式になったのでございますが、その法人の寄附行為と申しますか定款に、この研究所の行う事業といたしまして、大学その他の研究機関との共同研究を行う、日本国内だけではございませんが、そういうことが事業としてうたわれているのでございます。現実にはその寄附行為、ここにございますが、読みますと、来所研究員という制度がございまして、ある期間を定めて、ある特定の研究のテーマについて広島あるいは長崎に移っていただいて研究を一緒にやっていただく、そういう来所研究員なるものも一項を設けてしているのでございます。
 それからもう一つは、純学術的な面につきまして顧問の先生方を合計三十人毎年御委嘱申し上げているのでございます。それだけでなしに、純学術的なことについて専門学術評議員というのがございまして、それは日本側五人、アメリカ側五人、その中には、先ほどのビキニの被爆者、いわゆる第五福竜丸の事故のときの被爆者を最初から御診察になって、あの問題について一貫して研究を行ってこられました科学技術庁の放医研の、けさほどおいでになりましたが、熊取先生も私どもの専門評議員になっていただいているということで、この研究者の交流ということにつきましては、いままでもそうでございますが、なお一層御趣旨に沿って努めさせていただきたいと存じます。
#99
○大橋委員 とにかく皆様の専門家というものは非常に貴重な存在だと思います。お互いの知識あるいは技術を十分交流なさって、それが国のために十二分に発揮されることを期待する次第でございます。
 最後に、この際ですから、お二人の先生それぞれ、研究所がいま抱えている懸案といいますか、問題がありましたならば、この際ここで言われてお帰りになったらいいと思いますが、いかがですか。
#100
○玉木参考人 お答えいたします。
 懸案と申しますと、最初に一番これだけは申し上げたいと申すべきでしょう、申し上げたいことは、やはり先ほどの国内、国外の研究者の方々との交流でございます。それにつきましては地元の広島大学、それから長崎大学の研究者につきましては、もう大北先生には絶えず御厄介をかけておりまして、先生の研究室での研究会議、夜なんかのカンファレンス、研究についての御討議会などがございますが、行き来させていただいているのでございますが、それ以外の研究施設、特に国立、公立の研究所あるいは大学にお勤めの方をフルタイムの研究職員として広島あるいは長崎に来ていただきたいといいますような、そういう方をずいぶん私どもねらいをつけていると言っては失礼でございますが、あるのでございますが、そういう場合に身分が切れるといいますか、公務員としての身分が切れてしまう、それから後でまた復帰できるかというような、そういうことについて、つまりそういう先生方の処遇の問題につきまして絶えず頭を悩ましております。私、懸案として一番申し上げたいことはそれでございます。
#101
○大北参考人 現在抱えている問題を忌憚なく言えという機会を与えてくださいましたので、一つだけ申し上げますと、われわれのところは文部省所管でございますけれども、一番頭が痛いのは定員削減の問題でございます。
 それで、先ほど午前中のときにもお話が出ました被爆直後のいろいろな被災の全体像といいますか、そういうものはなかなかいまもってつかめておらないわけでございます。手始めに研究所が爆心地から五百メーターの復元調査というのを始めたわけでございますけれども、予算もございますけれども、主として調査員等の手不足のためにどうしてもその仕事が進まない。広島市の御援助も得まして、その後は被災復元調査委員会、広島市の委嘱ということで二キロまで進めてまいりましたけれども、そこから先はまだ進まないというふうなことがございます。われわれの方には原爆被災学術資料センターというのがございますが、そういうところの定員増ということを毎年お願いをいたしておりますけれども、全体的なわが国の情勢からいきますと、削減はあっても定員増はないという現状でございまして、その辺が一番頭が痛いというふうに思っております。
#102
○大橋委員 いまお二人の参考人は、初めて国会においでになっていろいろと質疑応答を交わされたわけですけれども、最後に要望があればということでお話し申し上げたら、お二人とも率直にいま述べられたわけでございますので、大臣、ひとつこの点を十分理解された上で、いまの要望が実現するように一層の努力をお願いしたいと思います。
 参考人の方、どうも御苦労様でございました。ありがとうございました。
#103
○葉梨委員長 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
 それでは、どうぞ御退席ください。(拍手)
#104
○大橋委員 大臣、お尋ねします。私も国会に参りましてかれこれ十三年になろうかとするのですが、その間社労を離れたのは昨年科技特にちょっと関係したときに離れただけで、あとずっと社労の委員の一人として働いてまいりました。毎年のように法改正が行われて、その都度被爆者の代表の皆さんと懇談したり、いろいろと相談に乗るわけでございますが、とにかく皆さんがおっしゃるには、死んでからでは遅過ぎる、われわれ議員が一生懸命皆さんの要望をひっ提げて働いているわけでございますが、それはわかる、わかるけれども、もう当然いわゆる国家の責任のもとでやってもらうはずなんだから、われわれの要望は当然のことだということで実現しない方がおかしいのだというような憤りにも近い気持ちが、死んでからでは遅過ぎるという言葉に私はあらわれていると思うのですね。要するに、昭和三十二年原爆医療法が制定されるまでの十二年間というのが、実質的に被爆者は放置されていたと言っても私は言い過ぎではないと思いますね。いかに初めての体験の原爆とは言え、放射能の人体への影響度、その基礎的研究に乏しく、治療法もなく、国の施策も全くなかった。被爆者にとっては、あらゆる面でこの援護を一番必要とする時期に放置された。国は見るべき対策をとらなかった。これに対する皆さんの思いというものは、当事者でなければわからぬほどのものがあるのではないかと私は思うのでございます。
 こういう点について、被爆者のこうした思いについて、大臣はどのように感じられるか、まずその点を聞いておきたいと思います。
#105
○野呂国務大臣 原爆被爆者対策は、政府といたしましても原爆二法制定以来つとにこの問題に努力をいたしてまいったわけであります。遅きに失した感はもちろんございます。しかしながら、さらにこれを推し進めるためには、たびたび申し上げておりますとおり、原爆被爆者対策基本問題懇談会においてその基本理念というものを明らかにして手落ちのないように、そして唯一の被爆国であるわが国がその惨禍というものを再び繰り返すことのない責めをわれわれはここに受け取って、その犠牲になられた方々に対しては十分過ぎるほど十分に対応してもしかるべきではないだろうか、こういう考え方で今日まで対処してきておるわけでございます。まだ不十分な点はあろうかと思います。基本懇の方で結論が出ますならば、その基本理念に従って現在の原爆二法を改正し、あるいは被爆対策に対しては万全の対応をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。当面する厚生行政、いろいろの問題がございますが、スモンの問題もあり、あるいはこの原爆被爆者の問題もあり、いろいろ、われわれは繰り返してはならない。こうした犠牲者のために国は全力を傾けるべきである、こういう考え方で厚生行政を進めてまいりたい、かように考えておる次第であります。
#106
○大橋委員 私どもは、原爆投下というのは国際法違反である、アメリカはその損害賠償の責任があったわけですけれども、講和の際に日本政府はその損害賠償請求権を実は放棄をした、そうなれば当然日本政府がそれにかわって被爆者に対して補償責任があるのじゃないか、こういう認識に立って、そういう理由から、いままで政府に国家賠償に基づく援護法の制定をと叫び続けてきたわけですね。当然のものだという認識なんです。野党はそれぞれにいろいろと考えを持っておりますけれども、小異を捨てて大同団結しまして共同提案をいたしたわけですね。いままで国会に何回も実は出してきました。衆議院では第七十二国会が初めての共同提案であったわけですけれども、七十二国会にも提出し、それが八十三国会、八十四国会と継続されまして、この後の分は単なる理想的な法案ではなくて、これならば実現できるぞと思われるほどに詰め寄った内容の案でありまして、もちろん参議院の方でも七十四国会に提出されて七十五国会に継続され、七十六国会にまた提出されて七十七国会に継続された。
 こういうふうに野党は団結して一丸となって政府にその実現を迫っていったわけでございますけれども、政府と自民党の壁は非常に厚くていまだに実現ができていないわけです。しかしながら、この前の国会の審議あるいは社会保障制度審議会の答申に沿いまして、いまお話がありました被爆者対策基本問題懇談会、いわゆる七人委員会が設置されたわけですね。私たちは、私たちはというよりも被爆者の関係の皆さん、もうみんなこの委員会に対して絶大なる期待を寄せていると言いますか、正直言って被爆者の皆様の運命をここが握っておるんだといっても私は言い過ぎではないのではないかと思うくらいに期待が寄せられております。いよいよこの七人委員会の皆さんが長崎、広島へ現地調査に乗り出されるという報道がなされていたわけでございますが、その状況について説明願いたいと思います。
#107
○大谷政府委員 先生御指摘のように、昨年来御審議をお重ねいただきまして、昨年の末には各団体の御意見を御聴取になりまして、またその後審議をお重ねになっておりますが、四月に長崎、広島の方へおいでいただいて現地を実際にごらんいただく。また、五月には各団体においでいただいて御意見を伺われて、その後恐らくおまとめの作業にいっていただけるのではなかろうか、こういうふうに期待しているわけでございます。
#108
○大橋委員 午前中にもお話があっておりましたが、この前の国会審議の際に、「一年以内の速やかな時期に」ということで話がまとまったということでございまして、恐らく私も今国会中には結論が出るのではないかなという期待を込めていたわけです。いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、原爆被爆者の要望している援護法ができるかできないかの瀬戸際だと私は思うわけですね。七人委員会の皆さんがこうして長崎あるいは広島へと現地に乗り込んでの調査、お帰りになると、当然積極的な審議がなされて結論が出るだろうと思うわけでございますが、きょう大臣のお話の中で、この結論が出ればそれを尊重して十分それに対応していきたいという答弁があったように思うのですけれども、仮にその七人委員会の皆さんの結論が予算的にいまよりかなり大幅に上回る内容になったとした場合、大臣はそのつもりで尊重してやりたいと思うけれども、財政的に無理だということになって実現できないということになれば、絵にかいたもちに等しいわけでございますが、気持ちの上では尊重するけれども、実態的には無理だなんということにはならぬのでしょうかね、そういうことはありませんか。
#109
○野呂国務大臣 基本懇の結果を待たなければこのことを言及するわけにはまいらないと思います。ただ、基本懇の結論を得まするならば、それに対しまして政府としては十分尊重をして、直ちに実施できることについてはそれこそ五十六年度の予算からでも取り上げなければならぬ問題もありましょうし、あるいはまたその他のいろいろな関連の問題もございますから、それらも十分調整しながら随時実施に持っていくといったようなものもあると思うのでございます。仮に基本懇の結論が出たから、直ちにすべての問題の処理に当たるということは困難な問題もあろうかと思います。しかし、その趣旨を踏まえまして、政府としては原爆被爆者の対策に対してはそれこそ全力を傾けていかなければならない、こういうことでございます。単に財政的な問題に対して、私どもはいまどうこう言うべき問題ではない、かように考えておるわけでございます。
#110
○大橋委員 結論的に申し上げますと、国家補償に基づく援護法というものに結論的におさまっていかねばならぬ。そうしないと、いかにそういう専門的な先生をこうして擁してみて研究さしてみても、そこにいかない限りは終止符は打たれないと思いますので、その点は十分要望しておきたいと思います。
 時間の関係もありますので、次に移りたいのですが、被爆者二世の健康調査についてでございます。
 先ほどの参考人のお話によれば、二世にはいまのところほとんど影響はないように思えるという話でございましたけれども、厚生省としては具体的に健康調査をやっているわけでございますけれども、その実情はどうなのかということ。私の考えとしては、この健康調査というものは一般的には大変喜ばれているのではないかなと思うのですけれども、反面、単なる調査だけならばわれわれが被爆者の子供であるということを世に宣言するだけではないか、医療にもあるいは生活保障にも何にもつながらない現在の調査のあり方はナンセンスだという反対の声すら起こっているわけでございますが、こういう点をあわせて答弁願いたいと思います。
#111
○大谷政府委員 被爆二世の方の中には、健康面での不安を訴えて健康診断を希望される者が多いというようなことから、本年度健康診断を実施いたしておりますが、これは順調に進捗いたしておりますが、まだ統計数字にまではまとめておりません。
 それから、健康診断の結果どういうふうになるのか、いままでのところは、朝ほど来、放射線影響研究所あるいは広大の原研の先生からもお話がございましたように、いまのところ二世に健康上の影響が及ぶような徴候は認められないということでございますが、私どもの方でも今後の健康診断の結果を慎重に見守りまして検討いたしたい、かように考えている次第でございます。
#112
○大橋委員 被爆者二世の皆さんは、いま専門家のこうしたお話を伺ったり、あるいは実際に健康調査をされて大丈夫だと言われると本当に安心なさると思うんですね。しかし、もしかして自分に何かあるのじゃないかという不安を何となく抱いている人々ばかりじゃないかと思うのです。そういう意味でこの健康調査はもっと積極的に実施すべきであろうと私は思います。しかし、先ほども申し上げましたように、医療にも生活保障にもつながらないこうした現在の調査は全くナンセンスだといって、厚生省の前にすわり込みまでなさった方がいることが新聞に報道されていまして、私もこれはある意味では考えさせられたわけです。現になければ問題ないわけですけれども、実際にあった場合は、何かそれに関係してもし手当てをしなければならぬということが起これば、当然原爆二法の中で救済の対象として措置されるのかどうか、その点をちょっとお尋ねしておきたいと思います。
#113
○大谷政府委員 先ほど申し上げましたように、ただいまのところは直ちにその医療に該当させるという考え方は持っておりませんが、この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、健康診断の結果を分析いたしましてそれによって検討いたしたい、かように考えている次第でございます。
#114
○大橋委員 要するに、実態に即した救済措置は当然考慮されてしかるべきであるということです。
 長崎、広島の特に指定された地域には、土壌中にはかなりの残留放射能があるぞということで、第二回目の調査が厚生省の手によって五十三年度に実施されたはずでございますが、その結果はどうだったのか、あるいは結論的に言ってどのようになったのか、お尋ねしたいと思います。
#115
○大谷政府委員 昭和五十一年度及び五十三年度の二回にわたりまして残留放射能の調査をいたしましたが、結論的に申しますならば、各地域間に有意の差を認めることができなかった、こういう結果になっております。
#116
○大橋委員 確かに私もその資料の一部を見させていただきましたけれども、核分裂生成分が残留しているとは言えないと結論的に述べていますが、これは要するに、二回も行ったということは、確かにあるぞという不安の中から行われたと思うのですけれども、結果的にはシロであった、このように理解していいですね。
#117
○大谷政府委員 そのように理解いたしております。
#118
○大橋委員 ということは、こうした放射能というものは時がたてばむしろ自然に消滅していくのだなというふうに考えていいのでしょうか。
#119
○大谷政府委員 私も放射線の専門家ではございませんが、やはり雨に流されたり、いろいろそういうようなこともございますし、長年の間に半減していくわけでございますから、それはやはりだんだんと消滅していくというふうに考えるわけでございます。
#120
○大橋委員 では、次の問題に移らせていただきます。
 午前中にも質問が出ておりましたけれども、日本と韓国との間に、政府間ベースによる韓国人の被爆者に対する治療等について、かなり具体的なお話が進んでいるように伺うわけでございますが、何か二月二十五日ですか、厚生省の方からも責任者を韓国に派遣をしたということを聞いておりますけれども、そういう点、具体的な説明をお願いしたいと思います。
#121
○大谷政府委員 二月二十五日から二十八日まで、原爆病院のお医者さんとわが方の事務官を韓国に派遣いたしまして、約十名のこちらへ来ていただく方を選定いたしまして、近く来日される、そしてわが方の病院で治療をお受けになるというふうにいたしたわけでございます。けさも御質問ございましたけれども、その後の状況につきましては、私ども、紙の上ではいろいろ計画を立てられるわけでございますけれども、実際にどの程度治療でどういうふうになっていくかという問題につきましては、この十名の方をとりあえず治療をいたして様子を見まして、そしてその後の問題も考えていきたい、かように考えている次第でございます。
#122
○大橋委員 これは新聞報道でございますけれども、韓国被爆者協会の会員は六千人だというふうに載っているのですけれども、六千人すべてが治療を受けなければならぬような状況の方とは思えませんけれども、いまのお話では十名程度の人を日本に呼んで治療する、その結果においてまた新しく考えていくのだなんという話ですけれども、大体の基本的な方針といいますか、考えといいますか、計画といいますか、そういうのは全くないのですか、それとも大体こういうことではないかという方針は決まっているのですか、その点をお尋ねします。
    〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕
#123
○大谷政府委員 これは韓国側の方でもいろいろ計画があるものでございますから、私どもといたしましては韓国側とできるだけ打ち合わせをいたしまして、向こうの御希望に沿った形でやっていきたいというふうに考えておりますが、国内の方の医療の事情もございますから、これは全部入院していただくわけでございますが、病床等の問題もございますので、先ほど申し上げましたように、当面この十名の方に入っていただいて、一体どういうふうになっていくのか、それによって今後の計画を立てたい、かように考えているわけでございます。
#124
○大橋委員 大臣、原爆二法は国籍に関係なく適用される、これは原爆の特異性からとられた措置であろうと思います。そういう立場から、韓国の被爆者に対する手当てというものが今後は大きな問題として浮かび上がってくると思いますので、大臣の考えもちょっとこの際聞いておきたいと思います。
#125
○野呂国務大臣 先ほどお答え申し上げておりますとおり、韓国の方で被爆を受けた方々が数多くあるわけでございますが、そのうちテストケースとして十名の方が日本に来られて治療を受けられるということでございます。今後韓国政府の方からもこの問題についていろいろの要請があろうかと思います。そういう要請は二国間で十分話し合って受け入れるべきものは受け入れ、また韓国の原爆被爆者に対する治療問題についても積極的に取り組んで、こちらから医師を派遣するなりあるいはまた治療のために来日される方々をたくさん受け入れていくというふうに、より具体的にそのケース、ケースによって問題の解決を進めていきたいというふうに考えております。
#126
○大橋委員 午前中の質問の中で、原爆の諸手当等の増額が図られるけれども、それは税金の対象にはならぬのだろうなという質問に対しては、非課税でございますという話が出ておりました。このたび社公民の三党による予算修正の闘いが行われまして、最終的には千四百十四億円の合意がなされ、その関連で原爆被爆者の諸手当がさらに引き上げられることになったわけでありますが、税金の方は非課税だということでわかったわけです。いずれにしましても、五十五年度において政令の改正によって医療手当等の増額及び各種手当の所得制限の緩和が図られると聞いていたわけでございますが、どの程度の緩和をなさるのか、お尋ねいたします。
#127
○大谷政府委員 所得税額で、従来四十三万を四十九万に限度額を上げるということになっておりますが、しかし、これはいわゆる九六%ラインということで、パーセントといたしましては前年並み、金額としては限度額を引き上げた、こういう形になっております。
#128
○大橋委員 国家補償に基づく援護法ということになると、所得制限云々が大きな問題になってくると思うわけでございますが、いずれにいたしましても、この所得制限ということは七人委員会の結論を得て、われわれは当然これは撤廃すべきだという基本的な考えを持っていたわけですが、それに譲ることにいたします。
 もう時間が参ったようでございますので、最後に一言お尋ねしたいのですが、日本弁護士連合会から、五十四年十二月十五日付の被爆者援護法に関する報告書というものが私の手元に届いたわけでございますけれども、これは野呂厚生大臣にも手渡したということが報道されておりましたが、大臣、お受け取りになったかどうか、それだけちょっと聞いておきたいと思います。
#129
○野呂国務大臣 受け取っております。
#130
○大橋委員 要するに、これは第一回が五十二年七月に調査報告書が発表されて、国家補償の原理に基づく援護法を提唱したわけですね。要するに、現行二法の不十分さあるいは不徹底さを指摘していたわけでございますが、今回のはその第二段とも言うべきものだということのようです。先ほど私も申し上げましたように、従来原爆投下は国際法違反である、米国への損害賠償請求権を講和の際に放棄したわが国政府に補償責任があるという理由づけがいままでなされてきた。私たちもそれをもって追及してまいりました。しかし、今度の報告書は、国が戦争を開始、遂行したことが違法かどうかは別にして、その結果国民に重大な被害を生じたのだから補償の責任があるという、つまり結果責任の問題が非常に強調されているわけですね。結果責任に基づく国家補償の法律がいままでに幾つも制定されてきているわけでございますけれども、またその範囲も拡大されてきているわけでございますが、この日弁連の報告書第二段の内容について大臣はどのような感じを持たれたか、お尋ねしたいと思います。
#131
○野呂国務大臣 結果責任として国家補償の責任があるではないか、こういう御指摘でございます。これはいろいろ解釈によって、その考え方もあるいは異にするものもあろうかと思うのでございますが、この趣旨はこの趣旨としてわれわれは十分そういう考えについて理解をしなければならないと思うからこそ、今日、基本問題懇談会において、いわゆる国家補償たるべきものであるかどうかということを含めて基本理念というものを検討願っておるわけでございます。その結論を待って私どもはこれにどう対応していくかということであると思います。
    〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕
 ただ、申し上げたいことは、一概に国家補償と申しましてもその範囲、対象、内容、それぞれ対応の仕方があるのではなかろうか、理念的には国家補償といいましても具体的にその問題問題に応じた対応の仕方というものがあるのではないか。ただ、原爆というものが今日まで特殊な事態でございましたために、国としては特別な社会保障の観点から二法を制定し、その上に立って手厚い処遇をしてまいったつもりでございますが、まだ十分でないとするならば、それは一体問題点がどこにあるかということは、この理念がそこに明確になった上においてさらに対応し、被爆者皆さん方の生活の上に心配のないようにしていく必要があるというふうに考えておりますので、十二分に前向きに取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
#132
○大橋委員 最後に、原爆被爆者に対して国家補償に基づく援護法をつくるべしという意見に対して否定的な意見を述べる人の中には、たとえば軍人軍属などとは違って、要するに国と被爆者との間には身分がないということをよく言う人がいるわけですね。ところが、身分があるとかないとかというのが責任の本質ではなくて、要するに国がこれらの者、ここでは被爆者に当たるわけでございますが、その方々を危険な状態に置いたことこそが原因行為である、その結果責任になることが本質なんだぞということが日弁連の中にとうとうと述べられておるわけですね。私たちはやはりこうした理論を見てまいりますと、なるほどなという、率直にそのように感ずる次第でございます。いずれ七人委員会の中で十分これも論議されるでありましょうし、また日弁連のこうした参考資料も十分生かされるであろうということを期待しながら、時間が参りましたので、質問を終わります。
#133
○葉梨委員長 次に、岸田文武君。
#134
○岸田委員 委員長ほか皆さんの御配慮によりまして質問の機会を与えていただきましたことをまずもってお礼を申し上げたいと存じます。
 私、広島に生まれた者としまして、この御審議中の法案についてはかねてから大きな関心を寄せてまいったものでございます。今回この法案が改正されるというこの機会に幾つかの点についてお尋ねをさしていただきたいと存じます。
 なお私、午前中他の委員会に出ておりましたために、ほかの方の質問とあるいは重複する点も出てまいろうかと思いますが、その辺のところはお許しのほどをあらかじめお願いを申し上げます。
 まず第一にお尋ね申し上げたいのは、原爆被爆者対策基本問題懇談会、この進行についてでございます。昨年の法案審議以来の大きな出来事でございますし、それだけではなくて、むしろこれからの被爆者対策の方向を決める大切な課題である、こういう感じで私どもも受けとめておりますので、まずこの点からお尋ねをさしていただくわけでございます。
 昨年の六月に各界の権威の方にお集まりをいただいてスタートしたこの基本問題懇談会、今日までどういうふうに審議が進められてこられたか、また、これからどういう方向で審議をおまとめになろうとしておられるのか、まず大筋のところをひとつお聞かせをいただきたいと存じます。
#135
○野呂国務大臣 基本問題懇談会は、仰せのように昨年の六月以来今日まで七回にわたりまして開催され、特に基本理念というものを中心にいたしまして、今後の原爆被爆者対策をどう進めていくかということについて鋭意検討が進められておるわけでございます。内容はどういうふうな形であるかということは、非公開でもございますのでいま定かに申し上げるわけにはまいりませんが、いずれにいたしましても、原爆被爆者に対してより対策を十二分に進めていくためにどうあるべきかということについての御審議であることは言うまでもないことでございます。昨年の十二月に被爆者団体から意見を聴取されまして、さらに最高裁の判決を初めとしていろいろな事態が出てまいっておりますので、それらの問題について具体的に御審議を願っておるわけでございます。この四月には長崎あるいは広島に七人委員の方々全員がお出ましをいただきまして、現地での被爆者からのいろいろな意見を聴取し、いろいろの情勢を調査する、そしてお帰りになって、五月にはまた被爆者の団体の御意見を再びお聞きになるといったような作業を進めながら、昨年六月から一年をめどに審議を進めていただいておる、こういうことでございます。
#136
○岸田委員 ただいまのお話で、近く広島、長崎において被爆者から直接事情を聞かれますとのこと、これは広島にとっても大きな期待であろうかと存じます。私は原爆被爆者の問題といいますのは、まずもってはだ身でこれをわかっていただくということが何よりもスタートではないかという気がいたしておるわけでございます。誠実に家庭を守り、あるいは仕事に励んでおった方々が一瞬の被爆によって一生の重荷を負った、こういう方々の本当の心をぜひ基本問題懇談会の委員の皆様にしっかりとおくみ取りいただくように万全の御手配をお願いを申し上げたいと思います。
 また、いま伺いますと、五月には、昨年の十二月の調査に引き続いて再び被爆者団体から意見を聞かれる。実はいま初めてお伺いをしたことでございますが、委員の方々、大変お忙しい中にもかかわらず御熱心に審議をやっていただいておる一つの証左のような感じがいたしまして、大変ありがたいことだというお礼をまずもって申し上げたいと思っております。
 ただ、そうは申しますものの、この審議、御熱心にやっていただいておりますことはありがたいものの、スタートしてからかれこれ相当の月日がたっておるわけでございます。もうそろそろ大筋の方向ぐらいは見えたのではないか。先ほど非公開というようなお話もございましたけれども、せめて大筋の方向ぐらいでもこの席でお漏らしいただくことはできないものであろうかどうか、ひとつこれは大臣の方にお願いを申し上げる次第でございます。
#137
○野呂国務大臣 私も二回にわたりましてこの懇談会に出席をいたしまして、早く結論をお出しいただくようにお願いを申し上げ、また私ども政府としての原爆被爆者対策としての考え方、あるいは姿勢の一端なども述べたこともあるわけでございますが、いろいろ問題は大きな問題でございます。理念というものを決めていく場合に、たとえば国家補償とは一体何なのか、あるいは国家補償の対象というものはどういう方面にあるべきものなのか、またどこまでが国家補償なのか、私は、理念と一口に申しましても大変大きな問題であると思います。今日までなかなか基本的な理念というものが簡単に打ち出し得なかった、そういうところにおきましてもこの理論を明確にするためにはかなりの時間が私は必要ではないか、かように考えるわけでございます。いま外からどういう考え方でいられるのかどうかということを察知することも大変できがたいわけでございます。われわれはとにかくこの問題に御熱心に取り組んでいただいておる先生方に対してむしろ敬意を表しながらその結論の出ることをお待ちを申し上げておる、こういう状態でございますので、およそ懇談会がどういう方向に向かって検討されておるかということについては定かにできない、こういう事情であることを御理解賜りたい、かように思います。
#138
○岸田委員 いまの大臣の御答弁の趣旨、私どもにもわからないでもないような気がするわけでございますが、ただ一つだけ私確認をさせていただきたいことがございます。この基本問題懇談会、そもそものスタートが、社会保障審議会の答申を受け、さらにまた最高裁の判決を踏まえた上でスタートをしたものである。その判決においては、被爆者に対する援護の問題はまさに国家補償的配慮が制度の根底にあることは否定できない、こういう理念が貫かれておる。私どもは、そういう理解のもとでこの懇談会を見、また期待も持っておるところでございます。委員の皆さん方がいまのような点について十分腹に入れ、考え方をそろえていま御審議を賜っておる、この辺の理解は私どもの理解として持ってよろしいかどうか、この辺を改めて確認をさせていただきたいと思います。
#139
○野呂国務大臣 七人の先生方も、いろいろの背景があり、同時にいままでの経過もございますから、十分その意を含んで検討されておることだ、かように私どもは考えておるわけでございます。
#140
○岸田委員 私、昨年の国会の審議の議事録を振り返って読んでまいりましたが、その折に、審議の経過の中で、この懇談会の答申はおおむね一年で何らかの答えを出したい、少なくとも大筋の方向だけでも一年のうちには明らかにしていきたいということを御答弁になっておると記憶をいたしております。まさにいよいよ一年が近づいてまいっておるわけでございますが、六月からスタートしたとすれば、ことしの六月、そのころには大体答えが出される、こういうふうに考えてよろしいのかどうか、この辺についてお答えをいただきたいと存じます。
#141
○野呂国務大臣 答申の時期はいつかということは基本懇自身のこれからの作業によることでございまして、いま外から明確にいたすわけにはまいらないかと思いますが、先ほど申し上げましたように、五月には原爆関係団体の意見を聴取されることにも相なっております。したがって、六月には大体のいままでの調査の作業の最後の取りまとめに入られることではないだろうかというふうにも期待いたしておるわけでございます。しかし、先ほども申しましたとおり、大変重大な問題なだけに、七人委員会におかれましても、慎重にその理論を詰めていく場合、そう日時を切って結論を出せというようなこともなかなかむずかしい問題ではなかろうか、かように思いますけれども、まあ秋までにはこれは何とか結論が出るものだと私どもは考えるわけであります。しかし、二回にわたりましての懇談会に速やかにひとつ結論を出していただきたいということを私は出向きましてお願いを申し上げておりますので、あるいは六月に結論を出していただくことになるかもわかりません。したがって、いま私の口から同月には結論が出るだろうということの推定はできないのでありますが、厚生省としては皆さんと御同様に一日も早く結論を出していただきたいということを重ねて今後ともに要望をし続けてまいりたい、かように考えております。
#142
○岸田委員 恐らくこれだけの問題でございますから御審議を願わなければならない問題も多々ございましょう。また、それぞれの委員の方々の意見の一つの取りまとめということだけでもずいぶん大変なことであろう。それだけに、拙速をするよりはやはり十分納得のいく答えを得るようにしていきたい、こういうお気持ちは私どもも十分理解できるわけでございますが、片方で、被爆者の方々が大きな期待を持ってこの答えを見守っておる、正直に申しまして一日千秋の思いで答えが出るのを待っておる、このこともぜひ頭の中にしっかりと入れていただきたい、こういうことをまずお願いをするわけでございます。
 いまのお話で、六月には取りまとめに入る、順調にいけばわりあい早目にいくかもしれないし、そうならない場合にも秋までにはというような感じのお答えがございましたこと、これは私一つのめどとして大変大切なお答えをちょうだいしたような気がいたしておるわけでございます。
 実はそうなりますと、またよけいな心配かもしれませんが、来年度の予算との関係がどうなるのか、この辺をひとつあらかじめお聞かせおき願わなければならないのではないかという気がいたします。当初の予定どおり六月にある程度の方向が打ち出されるということであれば、それを受けて作業が進められ、通常の八月末の大蔵省に対する概算要求には新しい考え方に基づいた新しい予算要求が行われる、こういうことが可能ではないかと思うわけでございますが、それが延びてしまった、仮に秋になったというようなときに一体どうなるのだろうか、もうバスが発車しておるからことしは間に合わぬ、その次のバスまで待ってくれというのではやはりこれはおさまるものではないという気がいたします。そういう場合に、仮にの話で恐縮でございますが、秋にでもなった場合には、予算の追加なりあるいは予算の組み替えなり、それは私どもに任せてもらいたい、こういうようなことをおっしゃっていただけるものかどうか、これはひとつ大臣からお答えをいただければと存じます。
#143
○野呂国務大臣 基本問題懇談会の結果が出なければいま仮定の上でお答え申し上げることは大変むずかしいことではございますが、仮に五十六年度から少なくも懇談会の結論に基づいて速やかになすべきことでありますればこれを具体的に取り上げていかなければならないと思います。あるいはさらに検討を重ねていかなければならぬ問題もあろうかと思います。それはいろいろの問題に対し、適切に政府としては処理してまいりたい、かようにお答え申し上げる以外に、いまのところ仮定の問題としてこれ以上お答え申し上げることはお許しを願いたいと思います。
#144
○岸田委員 それでは、法案の内容に入ってお尋ねをさせていただきます。
 今回の改正案は、基本懇が別途に進行しておるというような事情から、法案の内容としては、手当額の修正を中心とするわりあい簡素な内容に要約をされておるかと存じます。恐らく来年は非常に実りの多い審議をすることになることを期待をしながら、ことしはこういう形でお取りまとめになったものだと理解をするわけでございます。
 まずもって、今回の手当額引き上げ、考え方を一通り御説明いただき、それについていろいろお尋ねをさせていただきたいと存じます。
#145
○大谷政府委員 健康管理手当の額につきましては、国民年金法に基づく老齢福祉年金と同額というのを基本といたしておりまして、特別手当のうちで、認定疾病の状態にある者に支給する特別手当の額というのを健康管理手当の三倍、また認定疾病の状態にない者に支給する特別手当の額をその半額、つまり健康管理手当の額の一・五倍というふうにしております。さらに、保健手当につきましては、健康管理手当の半額というふうにいたしておりまして、今回は老齢福祉年金の引き上げに準じまして、これに連動して手当の額の引き上げを行う、こういう考え方に立っております。
#146
○岸田委員 いまのお答えに関連をしまして、私、かねがね疑問に思っておることなんでございますが、なぜこの法律に基づく健康管理手当と老齢福祉年金というものが横並びになっているのか、また、ならなければならないのか。少なくとも論理的にはそういう必然性はないのではないだろうか、こういう気がするわけでございます。そしてまた、事実過去の例をひもといてみましても、健康管理手当が老齢福祉年金を上回っていたこともかつてあったように記憶をするわけでございます。私は、原爆被爆者の特殊性からしますと、そういうふうな上回るという考え方をとってもおかしくない、そういう議論も当然あり得ると思います。こういう点についてどうお考えなんでしょうか。やはり横並びでは不十分だというような声も私は聞くものでございますから、ひとつ御見解をお聞かせをいただきたいと思います。
#147
○大谷政府委員 健康管理手当がどういう性格のものであるか、いろいろ過去に経緯がございます。大変むずかしい経過がございますが、昭和五十一年度以降、一応老齢福祉年金と横並びということで全体を整理いたしまして、先ほど申し上げた連動の形をとるようになっておるわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほどから大臣も答弁申し上げておりますように、手当をどうするかという問題は、まさに制度の基本的なあり方から発する問題でございまして、私どもといたしましては、原爆被爆者対策基本問題懇談会の結論をいただいた上でこの問題については考えてまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。
#148
○岸田委員 いろいろな経緯があってとおっしゃいました。理屈はともあれ、今日においては健康管理手当と老齢福祉年金が同額というルールで予算編成が行われ、また法案が用意をされておる、これは事実でございましょう。
 ただ、その事実の上に立った上で、また新しい心配が出てくるわけでございます。御承知のとおり、今回の予算成立の経過で、老齢福祉年金の修正という合意が成立を見た。そうなると、老齢福祉年金が修正をされる場合に、原爆手当の方もやはり修正しなければおかしいということになろうかと思うわけでございます。政府として、そうなれば当然修正も受ける用意あり、こう理解するものでございますが、この辺のお考えのほどをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
#149
○野呂国務大臣 これは私からお答えした方がいいかと思いますが、政府といたしましては、国会で原爆特別措置法の一部改正案をいま御審議を願っておるわけでございます。今後本委員会におきまして御審議の中でその内容が固まった段階で、国会での御意見に基づきまして誠意を持って検討し、適切に対処したいと考えておるわけでございます。
#150
○岸田委員 それでは次に、従来から問題になってまいりました、また先ほども質問の中に出ておりました所得制限の問題についてお尋ねをさせていただきます。
 従来は、この特別措置法は社会保障立法だというような頭の整理のもとに手当の所得制限が付されているんだ、こういう説明を受けてまいったわけでございますが、これについてどうも二、三お尋ねをしておかなければならないことがあるような気がしてなりません。
 まず、そのお尋ねの前に、所得制限の実態について概要をお聞かせをいただき、それに基づいてお尋ねをさせていただきたいと思います。所得制限の基本的な考え方、あるいはいまどういう範囲が所得制限にかかっているのか、また、かからない人というのが全体としてどのくらいあるのか、まずその概要を御披露をお願いいたします。
#151
○大谷政府委員 原爆特別措置法に基づきます各種手当につきましては、被爆者の方のうち、被爆によりまして一般の方々と異なる出費が余儀なくされているのではないかというふうな、経済的に特別の需要のある方に対して支給するというたてまえをとっておりまして、経済的に余裕があってみずからの力でこれらの需要を満たし得る方につきましては所得制限を行う、こういうたてまえで所得制限を実施しているわけでございます。
 支給制限に該当するかどうかは、前年度の所得税額というものを基準にいたしまして、毎年六月支給分から見直しを行うこととなっております。五十四年度では、支給率九六%のレベルで、標準四人世帯の所得税額四十三万六千八百円というものを限度といたしております。五十五年度予算におきましては、四十三万六千八百円の限度額を四十九万二千六百円に引き上げるというふうにいたしておりますが、これは支給率につきましては九六%そのままということになっているわけでございます。
#152
○岸田委員 いま所得税額で御説明がございましたが、私どもにもつとわかりやすく理解をさせていただくために、所得の額で言えばどのぐらいになるのか、五十四年度、五十五年度それぞれお教えをいただきたいと思います。
#153
○大谷政府委員 年収で申しますと、年額六百二十二万四千二十六円というのが四十三万六千八百円の所得税額に該当するわけでございます。四十九万二千六百円に五十五年度は上がりますが、それにつきましては、六百五十六万六十五円という年収の方が該当するわけでございます。
#154
○岸田委員 いままでは余裕のある人は自分でやっていたらよかろうという考え方であったかもしれませんが、これからは基本問題懇談会でその考え方の根底から議論を願うわけでございましょう。その答えに私どもは大きな期待を持っておるわけでございますが、ただ私感じておることを率直に申し上げさせていただきます。
 いま所得制限がある、そのことのためにずいぶんむだな手間がたくさんかかっているということを痛感するわけでございます。三月の納税申告を済ます。そうするとすぐ納税証明をとって、今度は特別措置法の手続に備えなければならない。しかも、先ほどのお話でございますと、九六%は所得制限にひっかからない。問題は四%である。その四%に該当するかどうかということを調べるためにたくさんの人がそれぞれの手続をしなければならないということは、正直に申しますと、行政の簡素化という今日の時代からいいますと、何か割り切れないものがあるような気がいたします。もちろんこれは従来から厚生省としては撤廃したいというお考えをお持ちのように私ども聞いておりますし、そういう御努力も願っておるかと思うわけでございますが、どうもその辺のところについてもう少し割り切った考え方はとれないものだろうかというのが素朴な感じでございます。もし、御意見があればお聞かせ願いたいと思います。
#155
○大谷政府委員 確かに先生御指摘のような点があろうかと存じまして、かつて厚生省でも予算要求をいたしたことがあるわけでございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、所得制限の問題、たてまえ論になりますと、これは制度の基本的なあり方に関連するということになりますが、先ほどから何度も申されております基本懇での御審議の結果を待って考えたいと思っておる次第でございます。
#156
○岸田委員 もう一つ、私いまの所得制限の問題に関連をしてお考えを聞かしておいていただきたいことがございます。それは先ほど所得制限による支給率九六%とおっしゃいました。従来は毎年少しずつ改善が図られてまいったわけでございますが、なぜことしは足踏みをしなければならなかったのだろうか。恐らくお答えとしては、基本問題懇談会で議論しているからというお答えになるのかもしれませんが、私は従来の考え方とこの基本懇と必ずしもそう結びつけて考えなくてもいい問題ではないか、こういう感じもするわけでございます。恐らく来年になれば大きな新しい発想の転換があるのだから、ことしくらいはとりあえずはそうごたごたせずに、そういうお考えならそれで結構なのですが、お考えのほどをひとつ聞かしておいていただきたいと存じます。
#157
○大谷政府委員 今年度の予算要求で、私どもといたしましてもできるだけ被爆者の方々に手厚くいろいろ措置いたしたいという考え方でやってまいったわけでございますが、そういう意味で所得制限の問題につきましては、いま先生御指摘のような点もございまして、九六%という線でそのままになったというような経緯でございます。
#158
○岸田委員 それでは、少し話題を変えまして、被爆二世の健康診断の問題についてお伺いいたしたいと思います。
 五十四年度に実施されました健康診断、まずもってその目的、内容、簡単に御報告を願いたいと思います。また、全体の二世の中でどのくらいの方が調査の対象になったのかというような点もあわせて御報告をお願いいたします。
#159
○大谷政府委員 被爆者二世の方々には健康面でいろいろ不安があり、また健康診断を希望される方が多いという現状にかんがみまして、被爆者二世の方々の健康実態を把握するとともに健康管理に資するということを目的といたしまして、希望者に対しまして健康診断を実施するというふうにいたしたわけでございます。診断事業につきましては各都道府県、広島市、長崎市ごとに協会が委託します医療機関で現在実施いたしております。
 検査につきましては一般検査と精密検査を行うことにいたしておりまして、精密検査につきましては、一般検査の結果、さらに精密な検査を必要とする方々につきまして行っているわけでございます。まだ詳細の正確な統計数字を把握しておりませんので、実施状況についてはちょっとまだ御報告申し上げる状況ではございません。見込みといたしましては、大体一万八千件の一般検査の受診者というのを予想いたしております。
#160
○岸田委員 そこで、いまのお答えに関連をして一番問題になってまいりますのは、二世における放射能の遺伝的影響、これがどういう答えが出るのだろうかという点が恐らく一番気になることでもありますし、また心配される向きの多い問題でもあろうかと感ぜられるわけでございます。この問題についてはむしろもう内々にしてしまった方がいいというお考えの方もありましょうし、あるいはまた、もう心配ないなら心配ないではっきりさせた方がいいんじゃないかという御意見もあろうかと思います。そういういろいろな意見もお踏まえになった上で、今日までお調べになった結果からくみ取れること、可能な範囲でお答えをいただきたいと思います。
#161
○大谷政府委員 被爆者二世の方々の遺伝的影響の問題につきましては、私どもとしても重大な問題として受けとめておるわけでございまして、従来動物実験をもとにいたしまして人の場合に放射能の遺伝的影響として予想されると言われておりますのは、一つは、先天性奇形の頻度が上昇するのではないか、二番目には、自然流産が上昇するのではないか、三番目には、自然死産が上昇するのではないか、四番目には、周産期死亡率、新生児死亡率の上昇があるのではないか、五番目には、新生児の発育低下があるのではないか、六番目には、新生児の性比、つまり男女比の問題でございますが、性比が変動するのではないか、こういうふうな六項目について動物実験で言われているところでございます。しかし、この問題につきましてはけさほど来、放射線影響研究所の理事長さん、あるいは広島大学の医学研究所長さんのお話にもありましたように、ただいままでのところでは、いろいろ人間について直接調べました結果では、そういうふうな影響は証明されていないということでございます。
#162
○岸田委員 今日まで調べたところでは、影響らしいものがそう顕著に見当たるものでないというお答え、私にとっては大変うれしいことのように感ぜられるわけでございますが、と申しましても遺伝的影響と一口に言われながら、恐らくその内容というのはずいぶん幅の広いものではないか。これは私の素人の感じでございまして、いま五項目か六項目かお挙げになりましたが、果たしてそれだけで十分なものなのだろうか。もっともっといろいろ幅の広い視野から考えなくちゃならない問題があるのではないか、そういう感じもぬぐえないような気がするわけでございます。したがいまして、せっかく遺伝的影響の調査に着手されたわけでございますが、これからどういうふうにお進めいただく予定であるのか、お心づもりのほどをひとつお聞かせいただきたいと存じます。
#163
○大谷政府委員 何分人類初めての悲惨な経験でございまして、この問題については慎重に対処しなければならないというふうに考えております。従来からも放射線影響研究所におきましては研究が行われるよう、私どもとしても研究費を準備いたしましてお願いしているわけでございますが、今後ともこの方面についてはそういった不安の点についてはっきり解明する研究を促進いたさなければならないというふうに考えている次第でございます。
#164
○岸田委員 次の質問は、韓国人被爆者の渡日治療、この問題についてでございます。私も先般原爆病院へ参りましていろいろ話を聞いておりましたときに、このことが新しい話題として皆さん非常に関心の的になっておったわけでございます。従来からいろいろの話がこの問題については積み重ねられてまいったわけでございますが、なかなか具体的に進行しない、そういう中にあってわが党の木野代議士が現地に赴いて政党ベースで新しいこの問題についての道を開かれた。私は大変画期的なことではないかなという気がするわけでございます。との新しい道に沿って先般調査団が派遣され、また現地でいろいろの打ち合わせが行われたように聞いておりますが、これはほかの方の質問とあるいは重複するかもしれませんが、その間の経過及び今後の見通しについてお聞かせをいただきたいと存じます。
#165
○大谷政府委員 諸先生方の御努力によりまして在韓被爆者の方々の渡日治療が実現するようになったことは、まことにありがたいことでございます。二月二十五日から二十八日までの間に原爆病院の医師とわが方の事務官が韓国に参りまして、十名の患者さんを一応テストケースという乙とで来ていただくことにいたしました。この方々を近くわが方の原爆病院初め医療施設に迎え入れまして治療を行う。これにつきましては私どもの方で原爆医療法、原爆特別措置法によって措置をする、こういう考え方に立っておりますが、そういった実態を踏まえまして将来どのように持っていくかという問題については韓国側等の要望等も受けまして十分相談し合いながら進めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
#166
○岸田委員 本件は政党ベースという形で新しい窓口が開かれたような形ではございますが、その意味で画期的なことでございましょう。ただ私、これは一つのスタートであってこのスタートを受けてこれから外務省なり厚生省なりがいかに実務面でフォローアップされるかということが一番大事になってくるように感ずるわけでございます。せっかくの新しい道が十分な成果を上げられますように心から切望する次第でございます。この点についてはお答えは必要ございません。
 以上、いろいろなお尋ねをいたしてまいりました。なおまた、私この問題に関連をして、恐らくはかの方々からいろいろ御質問もあったか、あるいはあろうかとも思いますのであえて細かく触れませんでしたけれども、対象地域の拡大の問題がやはり一つの大きな宿題として残されておる。このことは広島におります者からしても大きな関心の的になっておるところでございます。私はやはりあくまでも科学的根拠がなければならないということはよくわかっておるつもりでございます。しかし、従来の考え方に余りこだわってもう身動きならないのだということでなく、やはり諸般の事情をよく踏まえながらみんなが納得のいくような答えを出す、こういうことのために引き続き御尽力、御配慮のほどをぜひお願い申し上げたいと思う次第でございます。
 私、毎年八月六日を迎えるたびに思うのでございますが、広島の町は年を経るごとに新しい装いに変わってまいります。しかしながら、その広島にとって原爆の思い出というものは決して消えることはございません。いや、むしろこれを消すことなく、語り伝えていくということがわれわれの大切な務めではないか、こういう思いでいっぱいなのでございます。どうぞ今後とも国の格段の御協力、御支援を心からお願い申し上げたいと存じます。
 最後に、大臣からこの原爆者援護の問題についての御決意を承りまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
#167
○野呂国務大臣 たびたび申し上げておりますとおり、当面する厚生行政の大きな課題は、原爆被爆者に対し、手厚い処遇をし、そして一日も早く少しでも御安心いただけるような国の方針を明らかにし、その対応をしていかなければならない、こういう決意でございます。皆さんのいろいろの御要望は当然のこととして厚生省としても全力を傾けてまいりたい、かように考える次第でございます。
#168
○岸田委員 終わります。
#169
○葉梨委員長 次に、山本政弘君。
#170
○山本(政)委員 被爆者が何を望んでおるかということはもう大臣も御承知だと思いますけれども、被爆者の人たちは人並みの生き方をすること、これを望んでおるのだと私は思うのです。もう一つは、これまで生きてきた、正確に言えば生き残ったという言い方が正しいかもわかりませんけれども、そういうことの意味を考えながら平和というものを訴えてきておる、少なくとも私はそう理解しておるわけです。
 そこで、きょうは国家補償について、いままで多くの委員の方が質問してまいりましたし、そしてきょうまた恐らく質問があっただろう、こう思いますけれども、おさらいの意味で政府の見解をお伺いしたい、こう思うわけでありますけれども、その前に二月十八日、日本原水爆被害者団体協議会、被団協の人たちが政府・与党に対して陳情したと思うのです。そのときに、もちろん国会へも請願をしたわけでありますけれども、衆議院の灘尾議長は、援護法案提出時には誠意を持って当たりたい、こうおっしゃっている。それから、与党自民党の櫻内幹事長は、援護法の趣旨はよくわかった、政府と緊密な連絡をし、御趣旨に沿うように努力をする、こうおっしゃっている。また、田村予算委員長は、私も被爆者で原爆手帳を持っている、被爆者の苦しみは一般戦災者のそれとは同一視することはできない、被爆者は国の犠牲になったことを忘れてはいけない、こうおっしゃっている。そして、そういうことについての仲立ちをした自民党の代議士の方がこうおっしゃっているのです。いままで援護法の請願書の提出受理が拒否されてきたことを思えば画期的な前進である。私は自民党が援護法の請願受理をいままで受け付けなかったということについてちょっと意外でありました。しかし、二月十八日の時点では援護法の請願の受理を受け付けるように自民党の態度も大きく変わってきたというふうに私は理解をしているわけでありますが、そのときに野呂厚生大臣に対しても被団協の方々が陳情なすったと思うわけであります。被団協の新聞によれば、野呂厚生大臣は戦争が起きないための努力はやはりしなければならぬ、そして基本懇の答申を尊重しなければならぬ、こうおっしゃっているというふうに私は理解しておるわけでありますが、与党の態度が大きく変わったということに対して、そして、いま私は議長、幹事長、予算委員長の言葉、そういうものを申し上げましたけれども、いま改めて大臣の感懐をひとつお聞きしたいわけであります。
#171
○野呂国務大臣 原爆被爆者対策につきましては、その特殊な事情を配慮いたしながら、社会保障制度とは言いながら国家補償的な配慮をいたしながら、今日まで原爆医療法及び原爆特別措置法を制定してその対策を推進してまいったわけでございます。したがいまして、今日国家補償の精神に基づく援護法を制定してはどうかという大きな動きに政府としては対応すべきときが来たのではないかというふうに考えるわけでございます。それは言うまでもなく、五十四年一月の社会保障制度審議会の答申においても、また八十七国会におきまする各党一致の附帯決議にお示しを願っておる方針に従って考えることができるわけでございます。したがって、厚生大臣の諮問機関でございます原爆被爆者対策基本問題懇談会、これにおいて鋭意御検討を願っておるわけでございまして、この対応が大変遅きに失した感があろうかと私は思うのでございますが、いまお話しのとおり、政府といたしましてはこの懇談会の結論を待って適切に対処し、被爆国としての、日本だけがこうした大きな犠牲を受けたわけでございます、この犠牲の方々に対して遺漏のなき対応をすることが国の責任でもあろう、かように考えるわけでございます。われわれは結論を待ち、それに対して適切機敏に対応してまいりたい、かように考えている次第でございます。
#172
○山本(政)委員 附帯決議というのは「国家補償の精神に基づく」ということが明文としてうたわれていますね。そのことは御承知だと思うのですけれども、私はきょうここに質問に立つときに、大変失礼な言い方かもわかりませんけれども、厚生省の方は基本懇待ちだというお答えをするに違いないというふうに思ったのですが、いまやはり私が予想したような御返事をいただいたわけであります。繰り返し申し上げますけれども、衆議院の決議というのは、いま申し上げたように「国家補償の精神に基づく」ということなんです。
 そこで、私は政府がなぜ制定しないのか、こう思うのですね。国がその責任において戦争を開始し、遂行した、そしてその戦争によって大変大きな被害を受けた原爆の被害者が、終戦後三十四年たっているのですね。そしてなお、きわめて不十分な手当を受けるにとどまっている。私は、政府が速やかに国家補償の原理に基づいた被爆者援護法を制定すべきであるという考え方に立つのですけれども、どうもそういうふうではない。
 そこで、これは日弁連の方からもありましたけれども、結果責任としての国家補償というのがある。つまり、原爆の被害というのは、米軍機の原爆投下行為によって生じた、それは日米両国間の戦争そのものがなければ起こらなかったんだ、そしてその戦争は日本政府が開始し、遂行した交戦行為によって起こった、したがって、国の交戦行為の結果もたらされた被爆者の被害については国家が補償しなければならない責任がある、私はそのとおりだと思うのです。そこで、今度は原爆の投下が米国に損害賠償責任を生じさせる、ところが講和に当たって日本政府が米国に対する請求権を放棄したことは、日本政府が被爆者に国家賠償の責任を負わなければならないはずなんだ、論理的に言えばそうなるのだ、私はこう思うのですけれども、どうもそういうふうになっておらない。そして、要するに、その口実として実定国際法上原爆投下が国際法の違反であったということについて明言はいたしかねる。こういうふうな答弁が政府としてはある。国際法というのは、本来は、特に交戦法規においては人道主義というものが基本にあるべきだ、こう思うのですけれども、その精神から言えば、どうもそれに違反するものであると考えるというふうに、これは前の藤山外務大臣も答弁しておるけれども、そのときに、ただ実定法上明確に禁止をしていないからということだけで、何といいますか、私は法律というものはよくわかりません、しかし、そのことだけで免罪されるんだろうかどうだろうかということに対して私は非常に疑問を持つのです。つまり、いわゆる原爆二法が存在することを理解した上での発言かどうか。国際実定法ができておりませんので、何とかそのような立法については努力をしてまいりたいというふうに外務省の方はおっしゃっておるのですよ。
 もう一遍繰り返しますと、実定法にないから、要するに判断いたしかねる、だから何とかそういう立法については努力をしてまいりたい、こういうふうにおっしゃっているわけですね。そうすると、原爆二法というものがいまある。その上に立って何とかそのような立法については努力してまいりたいというのが出てくるとすれば、要するに援護法以外にないはずではないかというふうに私は理解するわけです。
 その辺についてまず外務省の方の御意見をひとつお伺いしたいと思うのです。
#173
○山田(中)政府委員 御答弁申し上げます。
 いま先生から御指摘ございましたように、この問題での御議論の過程におきまして、昭和三十四年の十一月に、当時の藤山外務大臣より、結論的に申しますと、外務省としては広島、長崎の原爆投下は非常に遺憾なことであったと考えておりますが、まことに残念なことではあると思いますが、純粋に法律論をいたしました場合には、原爆投下を禁止する実定国際法があったとは断言できない状況であったというふうに理解いたしております。ただ、先生もおっしゃいましたように、国際法、特に交戦法規は人道主義をその基本原則とすべきものでございまして、そのような観点からいたしまして、原爆投下というものは国際法の精神に違反するものと考えておりまして、外務省のこの考えはいまも変わっておりません。私どもといたしましては、残念ながら現在におきましても原爆投下を禁止するような実定国際法がございませんが、何とかそれを禁止するような実定国際法を一歩一歩努力を積み重ねて行なっていきたい、こういうことで努力をいたしておる次第でございます。
#174
○山本(政)委員 私は、大変前向きな御答弁だろうと思うのですけれども、ただ、決して言葉じりをとらえるのじゃありませんが、たしかあなたの御答弁だったと思うのですけれども、前段はあなたのおっしゃるとおりなんです。もう一遍繰り返しますと、あなたのおっしゃる言葉をそのままあれしますと、ただ現在におきましてもまだ実定法上明確に禁止する国際実定法ができておりませんので、何とかそのような立法について努力してまいりたいということで、いま努力をしようというお話があったわけです。私は別の観点から、これは所管が違うかもわかりませんけれども、いま原爆二法というものがあるけれども、これが不十分だということになれば、要するにそれ以外の立法措置というものが必要じゃないだろうか。それは、あなたがおっしゃったような考え方から類推していけば、仮に国際法でいま直ちにということはいまのところ無理であっても、国内法的に考える余地というものはないのだろうか。それは外務当局であるから私の関知するところじゃないというふうにあなたはおっしゃるかもわかりません。しかし、国際法の問題についてそれだけの問題があるならば、外務省としてはそういうことについての御意見というものはどういうふうにお考えなのか。つまり、これは藤山外務大臣がかつて政治的な問題であるというふうに答弁をなさっているからぼくは申し上げているのですが、これはあなたでもいいし、引き続いて大臣のお答えでも結構です。
#175
○山田(中)政府委員 御答弁申し上げます。
 外務省といたしまして立法に努力いたしたいと申し上げましたのは、主として国際法の分野での努力でございます。現状におきましても、この分野での成果は非常に不満足な状況でございますが、戦後の諸種の交渉におきまして、わが国も原爆の被災国としての立場からの主張をいたしまして、たとえば南極条約でございますとか部分核停条約、宇宙条約、核兵器拡散防止条約、海底軍縮条約等の分野におきまして、核兵器の配備、保持の制限を徐々にではございますが、努力いたしておる次第でございます。現在も、地下核実験をも禁止するような包括核停条約を何とか早期に実現させたいということで、努力いたしておる次第でございます。
 それから、先生の御指摘ございました国内立法の話でございますが、藤山外務大臣は、当時国務大臣として、政治家として、何とか考えたいという御答弁をされておるわけでございます。私は事務当局でございますので、そのような形での御答弁は、やはり主管の、担当の厚生大臣よりお願いいたしたいと思います。
#176
○山本(政)委員 原爆被害というものの特徴的なことを言えば、奇襲性、大量性、無差別性、持続性、この四点が非常な特色になっておると思うし、そのことによって環境のすべて、生物のすべてというものを破滅させるものだ。そういう意味で、いま外務省の方がおっしゃったように、国際法的にも何とかしたいというふうにお考えになっておるというふうに私は理解をしておりますが、それでいいでしょうか。
#177
○山田(中)政府委員 仰せのとおりでございます。
#178
○山本(政)委員 いままでの政府側の言い分の特徴というのは、これは桑原訴訟にしても、石田原爆訴訟にしても、それから孫振斗訴訟にしても、その過程を見ますと、あるいは国会論議を通じて見ますと、政府側の言い分の特徴といいますか、それは社会保障と援護、特に戦争犠牲者の援護とを区別をして、そして原爆二法は社会保障法に属するもので、国家補償の観念に立つ援護法に属するものではない、そういうふうに言っておっただろうと思うのです。ただ問題は、古い話になって恐縮ですけれども、昭和三十二年に当時の神田厚生大臣は、アメリカ、ソ連、イギリスの原水爆の実験の結果日本人が被害を受けた場合に、政府はこれにどういう治療と補償の措置を考えるのかという質問を当時の社会党の木原委員からしたのに対して、大臣はこうおっしゃっているのです。「相手方がそういうような暴挙をあえてする結果、そこでわれわれ民族が人体に非常な被害をこうむる、こういう際にはこれは政府といたしましては相手国に対しまして、ビキニの例等もございますので、十分な補償を要求することは私は当然のことと思います。同時にまた相手国の補償があるまで放置する、そういうことは人道上断じてできない」と、こういうふうにおっしゃっている。これは昭和三十二年三月二十五日の委員会で、会議録の二十九号です。その後昭和四十年には、四十八回国会の参議院社会労働委員会で、政府委員の当時の若松栄一公衆衛生局長はこうおっしゃっている。「アメリカの原子爆弾によって被爆の事実が起きたということは、これはもう疑いないことでございますが、その被爆者を援護し、救済していくということは、これは日本国政府の義務」「特に講和条約等におきまして実際の取りきめがすでになされまして、そういう賠償その他の請求はしないということになっておりますので、これはどこまでも日本政府の責任」でありますと、こう言っているんですね。ところが、これを類推をいたしますと、やはり国家補償という観念というものが基本にある、あるいはあったんだというふうにぼくは理解をしているのですけれども、どうもそういうふうにはなっておらない。
 政府の言う援護法というのは、戦傷病者戦没者遺族等援護法から未帰還者留守家族等援護法に至るまで、軍人軍属との身分に基づいた立法が中心になっているような気がいたしてならぬわけですね。しかも、軍人軍属などのような意味での直接的な身分関係に立つものとは言いがたい引揚者について引揚者給付金等支給法というものを制定なすっている。よしあしは別であります。ですから、そういうことを考えますと、どうもやはり私は、軍人軍属といいますか、職業的な軍人というものを中心としてなすっているような気がする、そういう気を強くするわけですね。
 そこで、これは公衆衛生局長に聞いた方がいいかもわかりませんが、社会保障というのは一体何でしょうか。あるいは援護法というのは何でしょうか。その概念といいますか、定義というものをもう一遍聞かしてほしいと思うのです。
#179
○大谷政府委員 現行の法体系というもので考えますならば、国家補償の精神に基づく立法と申しますのは、国との間に一定の使用関係にあった者等について、国が使用者としての立場から国家補償の精神に基づいて援護をする。それから、社会保障法の方は、憲法第二十五条の精神にのっとりまして、国民の福祉の維持、増進を図ることを目的とする、こういうふうに理解いたしております。
#180
○山本(政)委員 社会保障というのは、通常は、現代国家において、勤労者の生活や健康を脅かすような生活事故が起きた場合に、生活困窮やハンディキャップが存在する場合に、金銭給付とか医療サービスをしていくということですね。そういうふうに理解していいですね。援護法というのは、戦争などのように、国家が特に責任を負うべき事態によって被害を受けたというふうに理解していいでしょうか。
#181
○大谷政府委員 やはり私どもは、国との間に一定の使用関係があったということを前提に考えておるわけでございます。現行の法体系はそういう考え方ではないかというふうに考える次第でございます。
#182
○山本(政)委員 もう一つお伺いいたしますけれども、そうすると、戦争犠牲者というのはどういうふうに定義づけたらいいのでしょうか。
#183
○大谷政府委員 大変むずかしいお尋ねでございまして、戦争犠牲者といってもいろいろな場面があるかと思いますので、一概に私から申し上げるだけの学識は、まことに残念ながらございません。
#184
○山本(政)委員 厚生省が三十一年に厚生白書に書いているのですよ。「太平洋戦争はすべての国民に多大の惨禍をもたらしたが、中でも軍人軍属として動員をされて戦没したる者、傷痍を受けて不具廃疾になった者は最大の戦争犠牲者と言うべきである。」こう書いてあります。
 私はなぜそんなことを申し上げるかというと、厚生省が従来慣用的に用いてきた戦争犠牲者という言葉は、主として軍人軍属を中心に考えられていたのではないかという気がするから私は申し上げたわけです。これは厚生白書ですから、一時の気分的なもので書かれたのではないでしょう。そうすると、私は大変その点で不公平だということを感ぜざるを得ないというのは、軍人軍属を中心とした戦死者、戦傷病者については、サンフランシスコ条約発効を待ちかねたように、その直後から手厚い援護が実施されているんですよ。それはいまさっき申し上げました諸立法です。ところが、戦争の反省の上に立って新憲法下の行政府である政府が考えることは、少なくとも軍人軍属だけを中心としたものではなくて、いわゆる戦争の被害をこうむった国民全般を考えるべきではないだろうか、こう私は思うのですね。私は、当然そうなるんだろうと思うのです。ところが、あなた方のおっしゃることは、いま申し上げたように、軍人軍属を中心にされておる。しかも、そのことに対して、国家補償というのは、一つは国の責任というものがあるということが一つあるだろうと思うのです。もう一つは、いまおっしゃったような身分関係があるということだろうと私は思うのですね。そうすると、身分関係ということになれば、これは前国会、それからその前の国会でもわが党の大原委員がお伺いしたように、身分関係というのは、大方の国民が一つの身分関係というものがあったんではないかというふうに言われているのです。それは義勇兵役法であります。これは昭和二十年六月二十二日に制定、即日公布になっているのです。
 そこで、私がお伺いしたいのは、厚生大臣も東京高師を出られて、法務政務次官をおやりになったのですから、法律的なことは多少御存じになっていると私は思うのですが、法律の効果というのは一体何か。効力を生ずるというのは、制定、実施されたときじゃないでしょうか。制定、実施されたときに法律の効果というものは発生するんじゃないでしょうか。そして、そのときにいわゆる身分関係というものも発生するんじゃないでしょうか。私、そのことに対して御見解を聞きたいわけなんです。
#185
○大谷政府委員 そのとおりだと考えます。
#186
○山本(政)委員 そうですね。そうだとすれば、要するに、局長のおっしゃったように、身分関係というものがないことはないわけですよ。大方の国民は身分関係があるじゃありませんか。特に原爆の被爆者の人たちは、私は身分関係がないということは言えないだろうと思うのです。
 それは、これは総理府の資料なんです。ちゃんとここに印刷されているのです。用紙も総理府なんです。とすると、ここには多くの閣議決定があります。国民義勇隊組織ニ関スル件、国民義勇隊組織ニ関スル件、状勢急迫セル場合ニ応ズル国民戦闘組織ニ関スル件、国民義勇隊ノ組織運営指導ニ関スル件、国民義勇隊協議会ノ設置ニ関スル件、国民義勇隊協議会及ビ国民義勇隊事務局設置ニ関スル件、国民義勇隊ニ関スル件、そして閣議決定の積み重ねの上にできたのが昭和二十年六月二十二日制定、そして即日公布の義勇兵役法なんです。そして、この条文の中には、国民の大方の人たちがこれによって拘束をされるんだ、参加をされるということになっている。とすれば、身分関係がありませんか。しかも私は、これに法的な拘束力がないというようなことの前に、もう一つつけ加えておきますと、あるなしのことに関して、終戦になった直後に、昭和二十年八月二十一日に国民義勇隊ノ解散ニ関スル件、国民義勇隊は現下の実情にかんがみこれを解散するというのが閣議決定で出ているわけです。ですから、これは法律として制定され、即日公布されたのですから、法的な効果というものはあるはずなんです。どなたかが、発動しなければ効果はないんだというふうなことを前の質問に対して御答弁なされているのですけれども、そういうことはないはずですね。
 そうしたら、身分関係がないと言えますでしょうか、要するに広島の原爆の被災者に対して。政府のおっしゃるように、身分関係がないということが言えるだろうか。――ちょっと待ってください。これは私は厚生大臣にひとつお伺いしたいと思うのです。
#187
○野呂国務大臣 これは大変むずかしい問題だと私は思います。先ほどお答え申し上げておりますとおり、いわゆる戦争におきまする身分関係、これはすべて当時戦争に参加をしたということは、本土にあった場合においてもこれは必然的に戦闘参加という解釈も成り立つ。つまり、それは身分関係において国との関係が成り立つではないかという理論もあろうかと思います。一体戦争におけるところの身分関係というものをどのように判断するか、ここはまだ十分解明されていないのではないだろうか、それが一つ。
 もう一つは、いわゆる戦争の原因があって、そこに国としての責任体制というものがあるでありましょうし、また原因がない、そういう使用上の原因、国とその人との間における使用関係という原因なしに、結果的に戦争というものによって結果的責任というものがまたここにもあるのではないか。したがいまして、その国家補償というものは一体どういうものなのだろうか。戦争における身分関係及び国家補償というものは一体どういうものであろうか。これはまだまだいろんな理論の分かれるところではないだろうか。しかし、いま山本先生の御意見をいろいろ承りながら、常にこれは、たとえば恩給の問題を検討する場合、あるいは恩給に準ずべく処遇すべきものであるにかかわらず、いまだにその身分関係が明確でないというので国家補償の対象外に置かれておるといったような問題、いろいろの具体的な事実を前にしながら、私ども、これに対しては明確にお答えできないような現状であることは大変遺憾に思います。しかし、いま山本先生の言われる戦争における身分関係、こういうものは一体どうなのかということもなお究明をする必要がある。あるいは原因による国家的補償あるいは結果から来る国家補償、これもやはり国家補償とは一体何なのかということについても検討しなければならない問題であると考えるわけでございます。
 なるほど、現在の法体系におきます戦没者あるいは戦傷病者、あるいはその遺族に対する援護法というものは、国との間におきます一定の使用関係、一定のということをわざと明らかにしたその者に対する国家補償の精神に基づく援護措置をいままでとってきたんだ。さて、一定とは一体どういう関係なのかというところに区分が生まれてきておるのではないかというふうに私は考えるわけでございます。
#188
○山本(政)委員 皮肉じゃありません、大臣、東京高師を出られて、政務次官をおやりになっただけに、要するに一定のだなんという解釈をぼくは出されて、ほむべきか嘆ずべきかわからぬわけですけれども。
 それじゃ、これは法律論じゃありません、大臣に直接お伺いいたします。辞令の出し方が、そういう辞令の出し方かどうか知りませんけれども、任 厚生大臣 野呂恭一と言ったときに効力を発生するのか、あるいは厚生省に登庁して実務をお始めになったときに効力を発生するのでしょうか、どちらでしょう。
#189
○野呂国務大臣 それは、任じられたときに効力を発生するものだと考えます。
#190
○山本(政)委員 私の解釈じゃないのです。これはことしの第一分科会で五十五年の三月五日に法制局長が答弁をされているのです。それはわが党の山口議員が、もうすでに御承知だと思いますけれども、要するにもう現在存在価値のない法律があるだろうと、だから、そういうものはもう法律としてなくしてしまった方がいいんじゃないかという、そういう質問があったことは新聞で御承知だと思うのです。その論議の過程の中で大井法制局長は、法律が制定された、その制定されたということは法律の実効性を持つものだと、こう書いているのですよ。これは書いているのです。そうしたら、義勇兵役法というものは制定されたときに実効を持つのじゃないでしょうか。参加をされるとかされないということじゃないだろうと思うのです。法の実効性というものはそういうものだろうと私は思うのです。そのことについてのお伺いをまずしたい。
 第二番目には、国の補償責任について原因論があり結果論があるとおっしゃるけれども、原因は、日本が戦争を起こしたという、そういう原因でありませんでしょうか。そのことによって、要するに結果的に原爆が落ちた。したがって、原因とか結果とかいうことでなくて、要するに戦争を起こし、そして原爆投下をされるに至ったというところには私は一貫したものがあるだろうと思うし、そして、その結果としての責任というものはやはり政府が持つべきではないだろうかと、私はそう思えてならぬわけです。
 この二点についての御見解をお伺いしたいのです。
#191
○野呂国務大臣 法が制定される場合において、あるいはそういう命令発動がなされたときに、それは効力が発生するからこそ行動がとられたわけであろうと思います。国家補償の問題について、先ほど原因とかあるいは結果とかということを申し上げましたが、私が申し上げた原因というのは、たとえば軍人として国が使用関係を持ったという、そういう関係が生まれたところに、戦争の被害に対する国家的な責任というものがそこから生じたものである。そういう場合でない場合においても結果的に戦争の参加において非常な犠牲をこうむった、これは結果、国が起こした戦争の結果なされた犠牲である、こういう意味で申し上げたつもりでございます。
 いずれにしても、国家補償というものが一体何なのであるのか、私はこの国家補償という定義がなされても、やはり問題は中身の問題、それこそが大事でなかろうかというふうに考えるわけでございまして、原爆被爆者に対しての国の責任は、そういう点から考えても大変大きなものがあるというふうには考えておるわけでございます。
#192
○山本(政)委員 私は、現憲法の前文それから第九条から考えると、太平洋戦争において戦争指導部の犠牲となった一般市民こそが真の戦争犠牲者であると思うのですよ。繰り返しますけれども、戦争指導部の犠牲となった一般市民こそが、私は真の意味の戦争犠牲者だと、こう思うのですが、政府の戦争犠牲者への態度というのは要するに逆立ちをしているのじゃないかという気が私はするのです。いまお話を聞いておりますと、国家との身分関係というものは、要するにその濃淡に基礎を置いて考えなければならぬというふうに私は理解をするわけです。どこに線を引いていいかということは、一体そんな考え方が許されるでしょうか。少なくともいまの憲法のもとでは、私はそういう考え方というのは国民の間に矛盾だというふうにしか受け取れないんじゃないだろうかと思うのです。もし、大臣のおっしゃるように濃淡ということをお決めになるならば、一体どういう点に濃淡を置かれるのですか。あるいはどういう点で一体線を引かれるのですか。具体的にそれを検証してみなければわからぬというわけではないでしょう、すでに三十五年たって、それまでの間に国家補償についてはいろいろな議論がなされているわけです。この特別措置法の一部改正についての法律改正案が提案されるごとにこの問題は出てきたと私は思うのです。もし、いまの段階になって一定の線をどこに引くかということを考えなければならぬ、つまり私の言葉で言わせれば、国家との身分関係というものは濃淡を基礎にして考えるのだということになったら、これは非常に政府の怠慢だというふうにしか思えないのですね。そうじゃないでしょうか。具体的にどこに線を引くのですか。三十年たったいま、それは基本懇の答申を待つほかはないというふうにお考えになるのですか。
 どうも私はその辺理解ができないのですが、もう一遍御見解を聞かせていただきたいのです。
#193
○野呂国務大臣 国家補償の責任の分野というものはどういう範囲のものであるのか、そして、それに対して具体的にどう取り組むことが国家補償の責任を明らかにすることなのか、いろいろその事態事態に対応して国は措置をしてまいったものと私どもは考えておるわけでございます。しかしながら、すべてこれにおいて法体系の上からも十分整備されておるものとは考えておりません。したがいまして、国家補償の精神に基づいて、原爆被爆者に対しましても当然その処遇がなされるべきだという考え方に立ったからこそ、いろいろ国会の御意見等も判断し、基本懇に対して、どうすべきであるのか、その理念をまず明らかにしたいということで答申を求めておるということでございます。どこで線を引くのか、線の引き方はない、戦争の犠牲者というのはすべてに及んでおるというお考えに対しては、私は同感でございます。
#194
○山本(政)委員 戦争の被害といいますか、犠牲というものはすべてに及んでいる。同時に、先ほど私が申し上げましたように、特に原爆の被害者というものは大変だったと私は思うのですね。だからこそ政府も医療法、特別措置法をおつくりになったと思うのです。ただ、その段階で国家補償的な考え方というものが入ってきたのは、私の記憶に間違いがなければ四十九年ですよ。齋藤厚生大臣のときだったと私は思います。つまり、社会保障的な、あるいは国家補償的な考え方の中間的なものであったというふうに私は理解するわけです。
 しかし、繰り返し申し上げますけれども、国が起こした戦争であるのです。同時に、この義勇兵役法というのは国家総動員法第四条との関連があるわけですね。兵役法、つまり軍隊に行っている人たちとそれ以外の人たち、これをもう戦争末期においては込みにして考えておるわけです。兵隊さんも一般市民も、この当時の大日本帝国の存亡に関してはもう区別はないのだ。そして、それは避けることのできない状況下に置かれておったことも事実でしょう。つまり、何らかの形で国の強制措置が働いているということは否定できないと私は思うのです。あるいは旧憲法の中のなんじ臣民という形の中には、追求していけば戦争前から身分関係ができていると私は思うのです。しかも、それが戦争になってからは、今度は兵役、義勇兵役ということで、国民というものは軍人も市民も込みにしてしまって、いわゆる国家の危急を救わなければならぬということになったわけでしょう。そうしたら、そこに軍人とか軍属ということと一般市民ということに差別がないはずじゃありませんか。大臣のお年であれば、あの当時の政治状況下というものについては理解ができると思うのですよ。たとえば、兵役あるいは義勇兵役に行かないということが、あのころ通常の市民として言えたでしょうか。大臣、あのころそういうことを言えましたか。私はそういうことに対して否定できなかったのです。だから、私はいま大変後悔しているのですよ。あなたがあの当時そういうことに対して否定的な態度をおとりになれるような政治状況下であったでしょうか。私はそのことをお聞きしたいのです。
#195
○野呂国務大臣 私も赤紙召集で兵役にありました。私は、私の自由な立場でいろいろ考えは持っておりましても、限られた兵舎の中、置かれた環境の中でそういうことを考えること自体も許されなかった、こういうことは事実でございます。いろいろ苦悶をいたしたことは確かでございます。
#196
○山本(政)委員 そうしたら、それは身分関係になりませんか。要するに特別な権力関係という、あなた方がいままで言い続けてきたそのことは、一般市民の間にも言えるのじゃないでしょうか。あなた方は、国の責任と身分関係、特別な権力関係があるから、これを一緒にしなければ国家補償というものは成り立たぬと言っていた。そういうことが言えないでしょうか。
#197
○野呂国務大臣 国の責任ということから言いますと、戦争におきまするすべての犠牲者、それは国家が戦争を遂行したことに基づくその責任というものはあると思います。しかし、それを具体的に国家が補償すべきだという範囲になりますと、おのずからその範囲を限定しないと、つまり国家補償というものは一体どういうことなのか、これは非常に大きな問題であると思います。責任はあったとしても、それは国家が補償すべきものだという場合に、一体補償とは何なのか、その内容等もいろいろ実態に応じた国の補償というもののあり方があるのではなかろうかと思うのでございます。
 先ほどお話しになりました、たとえば義勇兵役法という法律は公布された。政令も施行された。法としては効力を発生したが、事実、編成の命令は下されなかったのではないか。つまり、そこに実態が動かなかったのではないか。とするならば、その実態論に対して一体どう考えるべきか、これは非常に論議を呼ぶところであると思うのでございます。一般論的には私はそういうふうに考えるわけでございます。
#198
○山本(政)委員 どうもおかしいのですよ。大臣は、いまのお話では、国の責任があるということをおっしゃいましたね。それから、身分関係もやはり否定はできないとおっしゃったのです。しかし、その身分関係には濃淡がある、あるいは実態があるのだ、こうおっしゃったわけですね。
 そこで、国の補償というのは、いままでの議論から言えば、国の責任と身分関係というもの、この二つが合わさらなければ純粋な国家補償とは言えない、そうおっしゃったのだけれども、いまは国の責任も身分関係も、この兵役法について申し上げれば承認されたような気が私はするのです。ただ今度は、残されたのは実態だ、こうおっしゃっているのですね。実態的にどうなのか。
 率直にお伺いいたしましょう。財政的な問題があるからできないとおっしゃったのだろうかということなんです。本来なら、国が責任を負えば、その責任というものは範囲がどうあろうととらざるを得ないのです。しかし、大変皮肉な申し上げ方になるかもわかりませんが、原爆被爆者の方に対して援護法というものを措置をとれば、今度は一般の戦争犠牲者にまで事が及ぶからいやだとおっしゃっているのだろうかどうだろうかということなんです。率直に聞かしてください。
 もう一つ申し上げたいのは、一般の国民というものは法律を知らないでも法律の適用を受けるんですよ。法というものは、知らないからといって免れることはできないわけなんです。逆に政府の方は、あなた方のおっしゃっていることは、法律が制定、実施されたにもかかわらず、今度は中身の問題がある、実態があるというふうにお逃げになっている。矛盾しませんか。いまの憲法のもとでそんなことが許されるだろうか。あなた方のおっしゃっていることは、御自分に都合の悪いところについては旧憲法を適用なさっているのですよ。あるいは、有利というふうに申し上げた方がいいかもしれない。ぼくに言わしたら、軍人軍属を中心としたら、援護については旧憲法なんですよ。そして、一般市民に対しては新憲法の適用をなさろうとしないのですよ。こんなばかなことないんじゃありませんか。
 ぼくの最初の問題、それならそれで一つの理由にはなり得るでしょうから、ストレートに聞かしてください。
#199
○野呂国務大臣 先ほど申し上げたように、一般論的に国に責任がある。ただし、国が法律を定め、そして国家補償をする場合においては、おのずからその実態に応じて対象が決められていくのではないか。すべての国の責任はどんなところにも影響するんだ、しかも、それは国のすべての責任において解決すべきだということにはならないのではないだろうか。少なくもこれは国民の合意の上に立ったあり方というものが、それが国家補償としての責任ある姿ではなかろうかと考えるわけでございます。いろいろの実態を考え、そして国会のいろいろの議論を通しながら、その中で法律が制定され、そしてその法律を政府としては忠実に実行していく。したがいまして、現在の法体系が十分でないというところにおいて、特に原爆被爆者に対しての援護というものを一層考えるべきではないかというところでそういう援護法の制定の必要性が高く叫ばれてきたという現時点の姿ではないだろうか、かように思うのでございます。
#200
○山本(政)委員 もう時間がなくなってまいりましたけれども、大臣、ぼくはすべてのことについて国が責任を負えなどということを申し上げてはいないんですよ。大臣がそういうことをおっしゃるんだったら、二十年八月十日に政府は新型爆弾に抗議しているでしょう。抗議をしているのです。「交戦者、非交戦者の別なく、また男女老幼を問はず、すべて爆風および輻射熱により無差別に殺傷せられ、その被害範囲の一般的にして、かつ甚大なるのみならず、個々の傷害状況より見るも末だ見ざる惨虐なるものと言ふべきなり、抑々交戦者は害敵手段の選択につき無制限の権利を有するものに非ざること及び不必要の苦痛を与ふべき兵器、投射物その他の物質を使用すべからざることは戦時国際法の根本原則にして、」云々と書いてあるのです。そして、その後に「米国政府は今次世界の戦乱勃発以来再三にわたり毒ガス乃至その他の非人道的戦争方法の使用は文明社会の輿論により不法とせられをれりとし、相手国側において、まづこれを使用せざるかぎり、これを使用することなかるべき旨声明したるが、」云々と書いているのです。「而していまや新奇にして、かつ従来のいかなる兵器、投射物にも比し得ざる無差別性惨虐性を有する本件爆弾を使用せるは人類文化に対する新たなる罪悪なり、帝国政府はここに自からの名において、かつまた全人類および文明の名において米国政府を糾弾すると共に即時かかる非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求す」と書いているのです。だから、大変ひどいものだということをお認めになっているわけでしょう。それを要するに請求権を放棄しているのだったら、話は元に戻りますけれども、日本政府がその被害者に対して責任を負うべきは当然ではありませんか。私は大臣の言うように無制限にやりなさいなどと言っているのではありませんよ。どうもその実態というようなことの中であいまいもことして責任をお逃げになっているような気がしてならぬわけですね。そのように、私は本当にまだ理解がつかないのですよ。
 繰り返して申し上げます。兵役法、義勇兵役法、ここで総体としてくくってしまっているのです。身動きならぬようにしているのです。その中で身分関係というものができているのです。これは身分関係があるということを御承認になっている。今度は身分関係の中身が問題だとおっしゃっているのです。どこまで行ったら国家というものがそういうことに対して責任をお考えになるのか。結果的には、ここまでおいでということで、ここまで来たらまた次のところへ行って、ここまでおいでというのがいままでの政府のあり方ではありませんか。初めは国家補償という考え方があったのです。それがある時点から以降なくなってしまって、いま申し上げたように、四十九年に国家補償と社会保障の中間的なものになってきたということを認めてきた。それについては今度は、身分的な問題がある、国の責任の問題がある、この二つが重なったときに初めて純粋な国家補償となるのだ。そして、きょうのお話では国の責任はお認めになった。身分関係もお認めになった。それは法制局長官のお答えがあったかもわからぬですけれども、身分関係をお認めになったら、今度は身分関係の中身だということになってくる。どこまで行ったら私どもは、私どもというよりか被爆者の方々は納得できるような御答弁がいただけるか、どうもその辺が、入っていけば入っていくほどだんだんと政府の御答弁というのは、あれこれと本論ではなくてわき道に入った、あるいはいちゃもんと言った方がいいかもわかりません、そういうようなところをおつけになってお逃げになっているのです。
 ぼくは、まだお答えとしては満足できませんが、次の機会があればもう一遍このことに対して復習をさせていただきたいと思うのですけれども、少なくともきょう国の責任はお認めになったということは理解していいですね。そして、身分関係もお認めになったことは理解をしていいですね。問題は、今度は実態というだけですね。いままでは身分関係という非常に抽象的なものでお逃げになっておったのですけれども、身分関係というものについては確認されたわけですから、今度は実態論として私は機会があればお伺いをさしていただきたいと思うのです。そして、その中で一定の線と言われるものが、一体何が一定の線なのか、あるいは私の言う濃淡というものについてのお考えというものをあなたに聞かしていただきたいと思います。
 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
#201
○葉梨委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後三時五十分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時二十三分開議
#202
○竹内(黎)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 委員長所用のため、その指名により、暫時私が委員長の職務を行います。
 質疑を続行いたします。谷口君。
#203
○谷口委員 きょうは法制局からお見えいただいておりますので、法制局の意見もただしてみたいと思います。
 単刀直入に言いますと、国家が国民に責任を負って国家補償、これをしなければならないという場合について、実定法の上からいくとその実態はどのようになっておるか、簡単にひとつ御説明願いたいと思います。
#204
○工藤政府委員 お答え申し上げます。
 国が、行政行為によりまして国民がこうむりました損害につきまして国家補償を行うというような場合の実定法につきましては、現在大きく分けて三つあろうかと思います。第一は、いわゆる国が不法行為に基づきまして損害を起こし、これを償うといういわゆる損害賠償、国家賠償と言われるカテゴリーがあると思います。それから、第二番目には、違法行為ではございませんで、適法な行為によりまして、しかし結果として損害が出るというような場合がございます。これはいわゆる損失補償と呼ばれる規定でございます。それから、三番目として、これは必ずしも学説上固まりましたグループではございませんが、国がいろいろな行為をやりまして、その結果、いま申し上げました第二のグループのように直接の損害ではございませんけれども、間接に、結果として損害が発生する、こういうふうな場合にいわゆる結果責任というふうなグループを設けまして、これでやっている例もございます。
 これが三つの大きなグループだろうと思います。
#205
○谷口委員 いま大きく分けて三つ、あるいは細かく分けて四つになるかもしれませんけれども、この三つ、いわゆる行政上の不法行為、憲法第十七条ですか、それから適法行為に伴う損失、これは憲法二十九条三項、それから結果責任に基づくいわゆる行政上の間接補償責任、これがあるわけですね。
 それを踏まえましてお尋ねしたいのですけれども、特に三番目のいわゆる結果責任についてです。これに基づく補償というのが事象としてはどういう場合に発生するのか、いまの国の現状に合わせて答弁を承っておきたいと思います。
#206
○工藤政府委員 実定法におきましては、いまの第三グループ、いわゆる結果責任に基づきますものとしましては、たとえば土地収用法の九十三条、これは第三者補償などと呼んでおりますが、そういったようなものとか、あるいは警察官の職務に協力したような者に対しますものがございますが、いずれも国の行いました、故意、過失などというところは問いませんで、先ほども申し上げましたように、国の行為に随伴して間接的に結果が生じた、そういう損害が生じた、こういうふうなものでございます。
#207
○谷口委員 いわゆる結果責任に基づくいわゆる補償として現行法制上これはどんな法律が存在しておりますか。
#208
○工藤政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま申し上げました一つの例としましては、土地収用法の、これは本来の土地収用はいわゆる第二グループ、土地収用に基づきます正当な補償を払ってということで第二グループでございますが、その土地収用法の中にも第三グループとしての第三者補償、これは土地収用法の九十三条でございますが、それですとか、あるいは本来警察官が行います職務に協力しまして、それで災害をこうむったという場合の災害給付に関する法律、あるいは学者によりましては、文化財保護法の中のいわゆる文化財の修理、国宝の修理といったようなことに伴いまして損害を受けた者、これに対する損失補償といったようなのが実定法上の規定として存在するわけでございます。
#209
○谷口委員 いろいろな説がやはりあるわけでございますが、学者の説の中には、原爆医療法は戦争災害補償であり、結果責任に基づく補償であると認識している学者も相当いると私は思います。これについては法制局の見解としてはどのように持っておられますか。
#210
○工藤政府委員 確かに学者の中にはそのような説があることは私も承知しておりますが、現在の原爆二法につきましては、五十三年でございますか、最高裁判決におきましても述べられているところでございまして、もう先生当然御承知のとおり、いわゆる特別な社会保障立法である、特殊な戦争被害に対して国が救済を図るという意味で国家補償的な配慮が制度の根底にあるということはございますけれども、特別な社会保障立法であるというふうな最高裁の判決もございます。そういうふうな趣旨で私どもは考えております。
#211
○谷口委員 また後ほどお尋ねをしたいと思います。
 厚生省の方に戻りますけれども、厚生省の考え方を尋ねたいのですが、この原爆二法に対する憲法上の位置づけとしては第何条にあるとお考えですか。
#212
○大谷政府委員 憲法二十五条の規定に基づく社会保障法であるというふうに考えております。
#213
○谷口委員 そうなってくると、少しく変わった問題が出てくると私は思うのですね。憲法第二十五条、社会保障の精神といいますと、これに基づくものはいろいろありますが、たとえば結核予防法、こういうのもここに入りますね。そうすると、この原爆二法は結核予防法みたいなものと同列に位置するとなると私は問題だと思うけれども、同列に位置するとお考えですか。
#214
○大谷政府委員 原爆二法につきましては、各種の公的年金制度でありますとか、医療保険制度あるいは生活保護制度等の一般の社会保障では十分ではないという観点に立ちまして、被爆者の方々が放射能を多量に浴びて健康上特別の配慮を必要とされているという特殊な事情に着目いたしまして特に現在の原爆二法というものを制定しておるわけでございまして、その意味では通常の社会保障制度に特別の事情を勘案しているというふうに私どもとしては理解しているわけでございまして、多少他の社会保障制度よりは特別な見地があるというふうに考えているわけでございます。
#215
○谷口委員 私も法律の専門家じゃありませんから、なかなかむずかしいところでございますけれども、もうとにかくほかの問題ではずいぶんこの委員会でも論議し尽くしまして、なかなか進展しないわけですね。しかし、いまの解釈を聞いていると、たとえば先ほどお話しになりました最高裁の判例ですね、私に言わせればこれから言ってもちょっと違うと思うのですね。一般の二十五条による社会保障では十分でない、したがって特別な事情を勘案した上だとおっしゃるわけですが、これは憲法第二十五条では十分でないという問題があるわけですね。ほかのものとは同列ではないということになるわけです。したがって、特別な事情を勘案して云々、こういう言葉が出ると思うのですね。後にもいろいろお聞きしたいと思いますが、その言葉を聞いておきます。
 それでいきますと、単刀直入にお聞きすると、大臣、この現行二法は国家補償の考え方の枠の中にあるのか外にあるのか、特別な事情というのは一体中か外か、ひとつ大臣の見解をお聞きしたいと思います。
#216
○野呂国務大臣 被爆者対策につきましては、政府といたしましては、一般の社会保障では十分でないという観点に立ちまして、特別の社会保障制度という立場に立って原爆二法を制定してその対策を推進してきたわけでございますから、外とか中という議論でなくて、この現行制度で果たしていいのかどうか、ここは皆さん方のいろいろの御意見のあるところでございます。したがいまして、このことについて国家補償の立場に立って考えるべきかどうかという点について、基本懇にいま答申を求めておる、こういうことでございます。
#217
○谷口委員 いまのお話の中の特別な社会保障という意味ですね。この特別というのは、憲法二十五条でうまくいかないからいわば別のものをこしらえたということになるわけでしょう。だから、私が先ほど言った問いにお答えにならぬのはちょっとおかしいと思うのですけれども、いわゆる二十五条の範囲を超えるのか超えないのか、もし超えないとすれば、ほかの方にもいわゆる所得制限とか何かつけない方が正しい姿だと私は思うのですけれども、どうでしょう。
#218
○大谷政府委員 たとえば原爆の医療法につきましては、通常の社会保障の考え方でありますと所得制限を課するということもございますけれども、これにつきましては所得制限も課さないで、すべての方に認定疾病の医療をやっていただく、こういうことをやっているわけでございます。
#219
○谷口委員 どうも明確な言葉にならぬという感じが私はするのですね。たとえば憲法二十五条、これの社会保障の枠組みの中であるとするならば、基本的な考え方は私はそうであろうと思う。だけれども、一歩乗り越えたほかのと違う特別の部分、これについて考慮してこの二法ができたということになるならば、これは解釈のしようが非常にあいまいになると思うのです。二十五条によると言いながら、二十五条には実際は基本的によっているけれども、それ以外のものが、たとえば超法律的なものの解釈をすることになると思うのですが、それはどういうことですか。
#220
○大谷政府委員 基本的には憲法二十五条にのっとっているわけでございますけれども、原子爆弾、放射能という非常に特殊な傷害をお受けになったということに着目いたしているわけでございます。
#221
○谷口委員 蒸し返しになるわけですけど、じゃ放射能だけがなぜ枠を超えるのですか。放射能だから、いままでなかった爆弾だから、あなた方は枠を超えるとおっしゃる。ということは、先ほどから論議されているように、日本としても抗議をした、しかし敗戦ですから無条件で皆向こうの言いなりになったし、賠償の権利を放棄した、したがって、そういうものの含みがあるから、いわゆる放射能だ、何だかだと理屈をつけて、アメリカが本当はやるべきはずなのを日本の政府が、まことにまだ不十分だけれどもそういう面での補完をしていると私は解釈するけれども、どうですか。
#222
○野呂国務大臣 憲法第二十五条に基づいての立法措置であることは先ほどから答弁しておるとおりでございます。つまり、憲法第二十五条は、「すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を管む権利を有する。」しかも「國は、すべての生活部面について、社會福祉、社會保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」この観点に立ってやっておるけれども十分でない、したがって特別にやはり国家補償的な観点に立っての配慮が必要であるということで最高裁のある考え方も出たわけでございますから、今後その実態に即してどうあるべきかということをやはり根本的に考え直す必要が出てきたのではないかということを私も理解するわけでございます。
 いずれにしても、二十五条に基づく社会保障法による立法措置でございますけれども、これが足りない面を補い、そして国家補償的な立場に立ってその実態に応じた原爆被爆者に対する対応を示していかなければならないのではないか、かように考えるわけでございます。
#223
○谷口委員 それは、私に言わせれば、物事を明確にしないで、そしてある程度正確にしなければならぬのをあいまいもことしてやっているような気がするのですね。あなたも法律の専門家じゃない、私も専門家じゃないけれども、たとえば最高裁のあれは明確に言っているわけですね。その中に、原爆医療法は「実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることは、これを否定することができない」、否定することができないということは肯定するということになると私は思うのですが、どうでしょう。
#224
○野呂国務大臣 最高裁の考え方は、いま御指摘になりましたように、社会保障であるとしながら国家補償的配慮が根底にあるのではないか、こういう認識であると考えるのでございます。
#225
○谷口委員 くどいようですが、いわゆる国家補償の精神に基づきという部分は、これは重大だと私は思うのです。ほかの問題とは関係なくて、この二法だけ、いわゆる国家補償の精神に基づかなければならない根本は、現在苦しんでいることは当然ありますけれども、私の家内も被爆者でありますし、私の母と弟二人、合計三人、これは原爆でやられたんですから私も一番よくわかるのですが、もう被害者の皆さん方が、本当に心の中にたまっておるものを吹き出せない。とにかくあなた方に言わせれば、言葉は悪いけれども、歴代の人たちが皆ああだこうだと言って、結局明確にしないわけですよ。もうみんな腹が立ってたまらないわけですね。だから、いつになったらこれを明確にするのか。
 私は、この国家補償の精神に基づきという部分が、いわゆる国家賠償、責任賠償ということになると思うのですけれども、大臣が無理ならば、局長どうぞ。
#226
○野呂国務大臣 被爆者対策につきまして、これまでも政府としては、一般の社会保障では十分でないという観点から、特別の社会保障制度として原爆二法を制定してそれに対応してまいった。しかしながら、最高裁のお考えの中にもありましたように、いわゆる被爆者の健康面に着目した社会保障であるけれども、しかしやはり根本的には国家補償的な配慮があるのではないか、こういう認識でありまして、それは行政におきますその対応の仕方を最高裁は判決に言い、そういう認識を示しておると私どもは考えておるのでございます。それならば、社会保障でない、国家補償という憲法の条文があるのかと言えばないわけであります。どこまでもこれは行政の問題ではないか。行政姿勢としてそうあるべきではない、あるいは今日置かれている現行二法についても、そういう配慮の上に立った特別な社会保障制度であるという裁判所の認識ではないか、私はかように判断するわけでございます。それがいいか悪いかは、行政府として考えなければならぬ問題はまだたくさんあると思います。
#227
○谷口委員 解釈の仕方は、それはいろいろ自由であります。しかし、いままでずっと論議されてきた経過を見ると、要するに国民の世論にだんだん押されてきて、一歩一歩結局後退している。いい意味で言えば、一歩一歩拡充してきた、このようにとれるわけですね。
 大臣にちょっと基本的なことをお聞きしておきたいのですけれども、いま諮問されていますいわゆる基本問題懇談会ですか、七人委員会、これはどういう法的根拠が背景にあるのですか。
#228
○野呂国務大臣 法的根拠と申しましても、これは厚生大臣の私的諮問機関として、やはり原爆被爆者の対策をより進めていくためには根本的な理念というものを検討する必要があるのではないか、そして今後の方向を明白にし、大きな犠牲を背負われた原爆被爆者に対して、政府としては責任ある立場をとるべきである、こういう観点から、その根本である理念を御検討願いたいという意味で諮問をいたしておるわけでございます。
#229
○谷口委員 先般来の質疑応答を聞いておりまして、大臣は、要するに七人委員会の結論が出たらできる分から早急に手をつけていきたい、できない分は、結局ある程度遅くなってもその方向に向かって進むというふうな意味の発言をされましたね。もう一度重ねてひとつ、簡単でいいですから。
#230
○野呂国務大臣 基本懇に答申を求めております中心になるのは、理念の問題でございます。つまり、あえて申し上げますならば、社会保障かあるいは国家補償か、あるいはそれ以外の何であるかといった基本的な理念についての答申を求めておるわけでございます。
 その答申に基づきまして、それならば政府として今後原爆被爆者に対してどういう対応をすべきであるのかということは、各論の問題になってくるでありましょう。行政上の問題でございましょう。したがって、その中でいち早くとらえなければならない問題があるとするならば、これは速やかに実行に移したい、また、いろいろ検討しなければならぬ問題についてはそれぞれ検討していく。やはりその結論が出てから、われわれはそれに対してどういうふうにやっていったらいいのか、十分に意見を尊重しながらそれに向かって対応してまいりたい、かように考えているわけでございます。
#231
○谷口委員 では、その答申が出てきたら、厚生省としては都合のいいところはとる、都合が悪いところはとらないというようなことがありますか、どうでしょう。
#232
○野呂国務大臣 そういうことはありません。当然なすべきことは厚生省は積極的に進めてまいりたい、かように考えております。
#233
○谷口委員 では、大臣にもう一回基本的なことを聞きますが、最高裁の判例の中に、いわゆる国家責任というものは否定できないとあるのですね。これは最高裁というのは、日本の法律解釈の一番の最高のところではないのですか、大臣。そういたしますと、いいですか、よく聞いておってくださいよ。あなたが個人的諮問機関である七人委員会にいま諮問されている。私はそれを責めているのじゃない。だけれども、もし七人委員会で答申が出てきたら、日本の法律の最高の権威機関であり、判例となっているこの否定できないという問題をいままで問題にしないで、国家賠償じゃない、責任賠償じゃないといままで言ってさておいて、そして七人委員会でもし同じようなことが出てきたら、これは個人の諮問機関、大臣の諮問機関として、余りに結果の重大さというのか、恐ろしいぐらいに考えられるわけですね。幸い、たとえば被害者の方々、関係の皆さん方が要求されているような結果を出してくれればいい。しかし、先ほどから大臣の話を聞いていると、出てきた結果は尊重しますというのでしょう。尊重すると言っているのですから、私がちょっと恐ろしく感ずるのは、大臣が素直に出てきた結果を尊重なさると余りおっしゃるから、私もちょっと思うけれども、関係者はちょっと疑問を持つかもしれない。もしかしたらわれわれが期待しているような結果が出ないのかもしれないなという恐れも抱くわけです。そうなってくると、大臣のいわゆる諮問機関でありますこの七人委員会というものの責任の重大さというものは最高裁よりもはるかに上だというふうに素朴な考え方で受け取れる面があるのですが、どうでしょう。
#234
○野呂国務大臣 いま谷口先生の御発言の中で二つの問題があると思いますが、一つは、最高裁の判断が、実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることは否定できない、こう申しておりますのは、原爆医療法、現行法に対しての最高裁判所の判断でございまして、いわゆる原爆被爆者に対するすべての責任が国家補償的な配慮が必要であると申しておるのでないのでございまして、現行法、特に原爆医療法に対しての最高裁の解釈の言葉であるということが第一点であります。
 それから、厚生大臣の私的諮問機関、これは私個人のものでなくて、厚生大臣としての諮問機関として公式に七人の先生方に御意見を承っておるわけでございまして、私的と申しながら、これは公的諮問機関でないとはいいながら、その実態は同じである。したがって、その七人委員会はそれぞれ専門の方々、権威のある方々にお願いを申し上げておるわけでございます。また、きわめて御熱心にこの問題に取り組んでいただいておるわけでございますから、権威のある結論をお出しいただけるものだと私は期待をいたしておるわけでございます。
#235
○谷口委員 これ以上詰めても恐らくどうにもならぬでしょうから、もう法律論を詰めるのはやめますけれども、大臣、よかったですね、七人委員会に諮問しておいて。その結果が出るまであなた方は何も考えないで、すべてあっち任せでございます、結論が出るまではほっておいてくださいというような感じまではいかぬにしても、非常に御安泰で結構でございます。私は関係の皆さん方が望まれるような結果が一日も早く出ることを切に希望して先に話を進めます。
 法制局に戻りますが、最高裁判決に言う「国家補償的配慮」というのは、原爆医療法は結果責任に基づく一つのいわゆる措置であると解釈してよろしいのか、全く関係がないと解釈するのか、どうですか。
#236
○工藤政府委員 最高裁判決に書かれました内容でございますので、私がこの場でこれはこう解するなどと申し上げるのは大変僭越でございますし、そういう意味で、私がこれを読みました印象を申し上げた方がむしろ適当かと思うのですが、「実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることは、これを否定することができない」ということでございまして、国家補償的、しかも配慮ということを私は強く感ずるわけでございます。しかも、それが制度の根底にある、根底を流れているというところを私は強く感ずるわけでございます。
#237
○谷口委員 もう一度、明文化されなくても要するにその背景には国家責任というものを国は感じているからあえて第二十五条を乗り越えた特別の手が打たれてあると私は考えるのですが、どうですか。
#238
○工藤政府委員 お答え申し上げます。
 先生そういう御意見でございましょう。私どもの方としましては、これの判決から見ましても、その前提としまして、いわゆる社会保障法としての性格を持つものであると言うことはできるということはこの中でも明らかにされている上で、そこで「しかしながら」という受け方をしてございます。そういう意味で特別の社会保障であるという性格は、やはり先ほど厚生省の方からお答えございましたように、私もそうではなかろうかと思っております。
#239
○谷口委員 これ以上詰めるのはやめます。どうもありがとうございました。
 では、質問を先に続けます。
 所得制限について尋ねたかったのですが、先ほどちょっと出ましたから一応これは省きます。
 特別手当について生活保護の収入認定から外すことについては、厚生省は予算編成に当たって努力をされたと思います。これはどのように、努力された結果が出たのでしょうか。
#240
○山下政府委員 原爆特別措置に基づく各種手当の中で、特別手当につきましては、生活援護的要素があるということで、生活保護におきましてはこれを収入認定をいたすというたてまえをとっておるわけでございます。
    〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕
 御承知のとおり、認定患者には各種の経費等もかかるということ等も考慮いたしまして、放射線の障害者加算という形で五十四年の八月から二万六千円の加算を行っておるという形でございます。
 明年度につきましては、この特別手当が、現在の予定といたしましては五十五年八月から引き上げられるという予定になっておりますので、もしこの法案が通過いたしまして手当の額が八月に引き上げられることになりました場合には、その時点におきまして私どもといたしましては被爆者の置かれております実態というものを踏まえまして、かつまた他の障害者加算との均衡を考えまして、この額をさらに改善することについて努力をいたしたい、かように考えております。
#241
○谷口委員 さらにひとつ努力をしていただきたいと思います。
 医療給付についてはいわゆる所得制限がないのですね。そして、今度は特別手当については制限を設けることになっているわけですが、これは私は少し矛盾があるのじゃないかと思うのですが、どうですか。
#242
○大谷政府委員 先ほども申し上げましたように、原爆医療法につきましては被爆者が原爆による放射能を多量に浴びられたという健康上の問題を第一義的に考えて、そのようにしておりまして、先ほどからも何度も御説明申し上げたような次第でございます。特別措置法の方は、被爆者のうち、被爆により一般人と異なる出費が余儀なくされる等経済的に特別の事情のある方に対して支給するという考え方に立っておりまして、経済的に余裕があり、みずからの力でこれらの需要を満たし得る方につきましては所得制限を行う、こういうふうにしているわけでございます。
#243
○谷口委員 時間が大分迫ってきましたので先へ進みますけれども、被爆者の医療というものは、たとえば例を挙げると、直接に被爆した広島、長崎、これは相当たくさんいらっしゃるわけで、ほかの県も若干ずついらっしゃるわけですけれども、この人たちの医療費というのは他の都市に比べたら相当違うものがあるのですね。たくさん要るわけです。それについてはいろいろな調整をなされているようでございますが、国保の特別調整交付金がどのように考慮されているか、伺っておきたいと思います。
#244
○石野政府委員 先生御案内のとおり、原爆被爆者でございます個々の被保険者に対します医療費につきましては、一般的な定率の国庫補助のほかに特に特別調整交付金というのを計上いたしておりまして、これが、ちなみに五十三年度で申しますと四百八十一億、その中に特に特別事情による交付金という形で原爆被爆者のための医療費については計上いたしておりまして、その額が七十七億という数字でございます。これは五十三年度の数字でございますけれども、五十四年度ではまだ確定いたしておりませんけれども大体十億増の八十七億ぐらいを考えておるわけでございます。
#245
○谷口委員 いろいろ配慮されてきていることは私もよく存じております。この点はひとつ一層の考慮がなされるよう、これは希望にとどめておきます。
 最後に、大臣に一つお伺いしたいのですけれども、政府のいろいろなとっている施策が、国民の私たちから見ると、あるいは関係者から見るとどうも遅きに失するという感じがあるのです。たとえば大臣にしても、何か考えておっても一、二年たったらどこかへぽっと行ってしまう、言ったことが何にも自分のおる間には実現できないということがあり得るわけですね。国民の方から見ると積極的な発言をしてくれたと喜んでいるけれども、なかなかそうはいかない。たくさん例があるわけです。たとえば環境庁に今度分科会でも質問をいたしましたけれども、たとえば長崎県の対馬の厳原町に対州鉱山というのがありまして、カドミウムの汚染が相当ひどかったのです。私も手がけたときは県会におりましたけれども、「隠された公害」という本に書かれたとおりのことが現実に行われている。ところが、いま関係者がどんどん年をとって苦しみながら亡くなっているわけです。それをいまだに公害病に認定できない、しないのですよ。これは原爆被爆者にとっても全く同じことが言えるのですね、大臣。やるやると言いながらも、あるいはその精神でやっているというけれども、もう被爆者はだんだん老齢化していって、本当の話、もう希望も何もないという方もいらっしゃるわけです。そうなってくると、これは本当に積極的に速戦即決で急がなければならぬのだけれども、どうしてもやることが遅い。そして、後手後手という感じを国民の皆さんも持っているし、私もそう思います。したがいまして、七人委員会の結果がどう出るかはそのときを待たなければなりませんけれども、願わくは希望するような結果が出て、そして大臣の手でその方向に一日も早く進めるような努力が私は欲しいと思います。努力なさると思う、私は信じている。だけれども、そういうことを含めて大臣の決意を伺って、そして私の質問を終わりたいと思います。
#246
○野呂国務大臣 私、厚生大臣に就任いたしまして、いろいろ当面する厚生行政のうちで大変大事な問題がたくさんあると思います。とりわけ原爆被爆者に対する対策は必ずしも十分であるとは考えていないのでございまして、しかもこれが今日まで十分になされていなかったという国の責任を感じながら、基本懇の原理についての答申が出るならばこれを十分尊重いたしまして速やかにその対応をしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
#247
○谷口委員 じゃ、大臣以下関係の皆さん方の積極的な、そして誠意のある今後の取り組みを期待して、私の質問を終わります。
#248
○葉梨委員長 次に、田中美智子君。
#249
○田中(美)委員 大臣、この間、一週間ぐらい前ですが、三月の二十日と二十一日のお彼岸のときに、大阪に住んでいられる方で広島で被爆をした人たち八十五名が広島に里帰りしたというニュースがありました。これはテレビで私も見たわけですけれども、早速この人たちの声を聞いてみたわけです。里帰りという言葉はテレビが使った言葉で、別に自分の家族が住んでいるとか親戚がいるとかというのではなくて、広島で被爆していま大阪で住んでいる方たち、この人たちを大阪府が百六十万円の補助金を出して広島に里帰りをしていただいた。慰霊塔にお参りをしたり、昔つき合っていた近所の方やお友達や、また中には家族で亡くなった方、こういう墓参りをする。そして、原爆病院で、全員じゃないようですけれども希望者だけが健康診断をするというようなことをなさったようです。
 私、テレビを見ましてこれはいいことだなというふうに思ったものですから早速いろいろ声を伺いましたら、思ったよりも反響がすごい。非常に評判がよかったということのようです。それで、この八十何名の人たちのほとんどの人たちが、三十何年一度も広島に帰ったことがないというんですね。それで、希望者五十名が原爆病院で健診を受けた。その中で新しく要注意というような方もあったようですけれども、健康だと言われて原爆病院の医者に大丈夫だといって背中をぽんとたたかれたというようなことで非常に安心したというんですね。これは患者心理として私はよくわかるわけですけれども、たとえば指定の医療機関でちゃんと診察を受けたり何かして大丈夫だと言われていても、やはり本当に医者が専門的な知識をちゃんと持っているんだろうかというような、お医者さんに対してはちょっと失礼な感情ですけれども、患者の心理というのはそういうものがあると私は思うわけです。
 私も戦後栄養失調の中で結核の手術をしまして、右の肺がいまもうほとんどありません。その若いころに、手術をしたりしたころには、ほとんどの内科医といえば胸のレントゲンの写真というのはベテランですので、小さな影も発見してもらえるという安心感があったわけですね。しかし、最近は、若いお医者さんたちがほとんど胸のレントゲンを見る力がないというふうなことをうわさで言うわけです。実際はどうだか、私も専門家でありませんからわかりません。私の主人も片肺がありません。ですから、どうしても定期的に健康診断をしてもらうというとやはり結核予防会に行くわけなんです。予防会へ行きますと、そこには胸のレントゲンを撮る専門の医者がいつもそれをしているのだということで、果たしてそこのお医者さんの方がよくて、一般のお医者の方はそうではないのだということではないのだけれども、やはり専門医に診てもらいたい。そこで大丈夫だと言われれば安心だ、再発はしていない、こう思うわけです。
 それと同じように、私は被爆者にはそういう心理があるというふうに思います。私が愛知県の愛友会という方たちのお話を聞きますと、彼らが言いますのは、たとえば腰痛とかヘルニアとかいう診断書を書かれますと、健康管理手当がもらえない。しかし、それが変形性の脊椎症だと書かれれば管理手当がもらえる。私も医者じゃありませんから、腰痛やヘルニアと変形性の脊椎症とがどう違うのかということはわかりませんけれども、素人から見ますと、自分は被爆者なんだ、そうすれば腰痛ではなくて脊椎症じゃないか、こう思うわけです。そういうふうに診断してもらえれば健康管理手当が出るのだ。だから、専門の医者に診てもらえば、そこは専門の医者になっておるわけですけれども、広島の原爆病院で診てもらえばまた違った診断が出やしないか。元気だ、大丈夫と言われても安心するし、そこでまた新しいものが発見されるかもしれないというような気持ちも持っている。これは患者心理として私は非常に理解できるというふうに思います。科学的な考え方かどうかわかりませんが、わかります。
 先ほどから盛んに、被爆者が老齢化しているのだ、だからいろいろな点で急がなければならないし、特別の配慮というのが要るのではないかというお話がたくさんありましたけれども、一度も広島に帰ったことがない、一度も長崎に帰ったことがない、こういう人たちが今度広島に帰られて、大阪では五十五年度は長崎で被爆をした大阪に住んでいる方たちを里帰りしていただくようにするそうですけれども、この人たちの声というのは広島の復興に驚いた。それはあの地獄のときの広島しかその人たちの目には残っていないし、それは実に終生忘れ得ない強い印象として目の裏に焼きつかれているわけです。それが本当にすばらしい復興をしている。そして、しみじみと生きてきてよかったというふうに言われたり、平和というのは本当にとうといのだということを口々に言っておられるわけです。私は非常に感動してこの反響を聞いたわけです。
 せめてこういう方たちに対して国が何らかの里帰りの検討をしていただけないだろうか。大阪の被団協の人にどうなんだというふうに聞きましたら、大阪などは被団協の力も強く、人数も多いからいろいろな運動もできる。しかし、あちこちに一人とか二人とか三人、十人、二十人というふうにしかいない県などでは、ほとんどそういう夢さえも持てないというようなことを言っているわけです。
 そういう点で、何とか国でこういう人たちに対して、地方自治体がやるならばそれに対して補助金を出すとか何らかの検討をしていただけないだろうかというふうに思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
#250
○大谷政府委員 確かに先生からお話しいただきましたように、大変結構なことだと思いますし、大阪府の方が補助金をお出しになっていることも聞いて、私ども非常に喜んでいるわけでございます。ただ、残念ながら、いまのところ私どもとしては予算措置をいたしておりませんものですから、国として補助するあれがないという、非常に残念なことでございますけれども、そういう状況でございます。
#251
○田中(美)委員 予算措置をしていないからということですけれども、やる気になればこれを検討する、いますぐあした里帰りにと、こう言っているわけではありません。こんなにすばらしい反響がある、涙ぐましいような反響がある。これは永遠に被爆者が後から出てくるわけではないので、老齢化していますので、のんびり考えていたのではあれです。たとえば、いまソ連の墓参の問題なんかも出ていますし、またフィリピンなどにもいままで墓参などをやっているわけですね。そういうことを考えれば、日本の国の中で行くわけですから、費用の点からしても外国に墓参に行くということよりもはるかに安いことですし、やろうとすれば予算化をするということはできるのではないか。それでぜひ検討をしていただきたい、できるだけ早くこの検討をしていただきたいということを大臣と公衆衛生局長にお願いしたいわけです。
#252
○野呂国務大臣 この被爆者対策に対してはやることはいっぱいあると思うのです。何をまず優先すべきか、あるいは特に基本懇の結果が出てさらに新しい制度をつくるべきであるというような結論が出たとするならば、基本に戻ってこれからの被爆者対策というものの行政上の処置というものを速やかに打ち立てなければならないと思うのでございます。ただこのことが優先されるべきものかどうか、いろいろ全体の被爆対策の中で検討をしてもらいたい、しなければならない、こういうふうに考えますので、いまそれをやるべきであるとかないとかということについて意見を申し上げることは差し控えさせていただきたい。しかし、大阪がやられたこのことが大変効果をもたらしたということは承りましたので、参考にさせていただきたい、かように考えるわけでございます。
#253
○田中(美)委員 先ほどの議員が、じゃ厚生大臣は基本懇の結論が出るまでは何もしないでいいなというような発言をしていらして、私はそれを聞きまして少し言い過ぎではないかというふうな感じがしていたのですけれども、言い過ぎではなかったかなといまここでまた思い直しているわけです。いま基本懇の問題は総合的な広い観点からということで、一番の中心は国家補償の立場に立つかということが中心なわけですので、別に基本懇の結論が出る、出ないは問題でなく、やはりそれが出るまでは何もしないんだというのではなくて――実は私もこれはテレビを見るまで気がつかなかったわけですね。やはり本人になってみなければ――被団協の人たちからこういう要求があるということは聞いておりましたけれども、テレビを見て非常にその要求というのは本当に切実なものだし、人間性を感ずるような、喜びを感ずるやり方であったというふうに思うわけです。ですから、これは国家補償の立場とかそういうふうな問題でなくて、ヒューマニズムの立場からやはりこれぐらいのことは国がしてさしあげるのが、どういう立場に立とうとも検討の余地があるのではないかということを言っているわけです。ですから、基本懇の結果がどうのということではなくて、いますぐやるとかやらないとかということは出ないと思います。しかし、大臣も局長も大変いいことだと言っていられるわけですから、ぜひこの問題を国としても何らかの形で検討をしていただきたい、これをぜひお願いしたいと思います。
#254
○野呂国務大臣 検討させていただきます。
#255
○田中(美)委員 ではその次に、これは愛知県の愛友会の方たちに伺った一つの事例ですけれども、私は被爆者の相談体制がいままでの対策の中ではやはりおくれているんではないかという感じがしているわけです。いま愛知県の場合は百二十万の年間補助金が出ております。それから、名古屋市から六十万円の補助金が出ております。これで百八十万円出ているわけですけれども、この相談活動をどれくらいやっているかというのを見てみますと、昭和五十二年度が、述べ人数で千三十八人の相談に乗っている。費用が約三百二万五千円。それから、五十三年度は延べ千百二十六人で、その経費は約二百七十万五千円というふうにかかっているわけです。そうすると、県には担当の職員がわずか三名ぐらいしかおりませんし、またことしは被爆二世の健診なども行われて、そういう相談などもあるということになりますと、小さな相談をしているところでも百万なり百何万なりの赤字が出ているということは大変なことなわけですね。県と市でやっているわけですので、せめてこういう小さいところにすべてと言わないにしても、ブロック別くらいに、国が県や市のやっていることに対する奨励という形ででも何らかの相談の援助をすべきではないか。私は、この相談体制がいままでの中で非常におくれているように思いますけれども、その点はどのようにお考えになりますでしょうか。
#256
○大谷政府委員 確かに相談事業は大変重要でございまして、現在、広島と長崎両市が実施いたしております相談事業に対しましては、保健婦一名の運営費を国として補助をしているわけでございます。また、全国の都道府県で被爆者の相談に応じられるように厚生省で相談業務の講習会というのも五十三年度から実施いたしておりまして、受講者もだんだんふえている状況でございます。また、日本被団協が行っております相談事業は全都道府県で行われているわけでございますが、これについては日本自転車振興会から補助金が出ておりましてやられているわけでございます。
 そういうことでございますけれども、先ほどからも申しておりますように、私どもとしてはいろいろ原爆被爆問題について手を尽くしていきたいというふうなことで、その全体のあれを見ながら先生の御趣旨も体してやっていきたいというふうに考える次第でございます。
#257
○田中(美)委員 何か余りはっきりしないようだったのですが、大臣、その相談体制に対してもうちょっと国が責任を持っていただきたいと思うのですが。
#258
○野呂国務大臣 五十五年度におきましても、原爆被爆者相談事業運営費の補助も増額をいたしておるわけでございます。あるいは先ほどお答え申し上げましたように、こういう相談に応ずるための方々の講習会などもやっていくということでございます。したがいまして、今後この相談事業を大事に考えながら、なおいろいろ方法があれば、国としてこれに積極的な対応を示してまいりたい、こういうように考えます。
#259
○田中(美)委員 ぜひ、自転車振興会だけに頼るのではなくて、国としても、いま大臣言われたように、積極的なやり方でしていただきたいと思います。
 次の質問は、厚生省と外務省の方に伺いたいわけです。
 一九七八年、昭和五十三年ですが、五月に国連の軍縮特別総会がありました。これにはニューヨークに日本から五百名ぐらいの方たちが参加したということで、ニュースなどを見ましても、大変な成果を上げたように私は思います。私も、愛知県の平和委員会がそのときのスライドをつくられまして、これを見せていただきまして、そのときの情勢を、部分的ではありますけれども、そのスライドを見て大体の様子などを感じ取ったわけです。
 そのときに参加した人たちの話なんですけれども、参加した人たちは、特別総会がすばらしかったかどうかというだけでなくて、世界の人種の違う人たちが、言葉も通じない人たちが、ともに手を組んで、世界から核兵器をなくそう、核戦争をなくそうという形で手を取り合って、心を通じ合ったということに非常に感動して帰ってこられているわけです。帰ってきて、国連の創設記念日の十月二十四日から一週間というものを軍縮週間というふうに決められたということで、そのときの特別総会で、当時の園田外務大臣が演説をしていられるわけです。これを見ますと、「わが国は、核兵器のもたらす筆舌に尽しがたい惨禍を体験した唯一の国であり、このような悲劇は二度と繰り返えされてはなりません。これが日本国民の一致した強い念願である」というふうな演説をしているわけですね。唯一の被爆国の外務大臣がこうした演説をしていらっしゃる。これは外務省からいただきましたこれにもこの演説の中身が出ているわけです。こういうことを見て、日本から行った人たちというのは、日本の政府も本腰を入れてやるんではないかというふうに期待を持って帰ってきた。しかし、その後何年たってもその話が日本では何も行われてない。自分たちが、こうだったんだよ、こうだったんだよと話しても、新聞にも載らないし、ほとんど国民が十月二十四日から一週間軍縮週間になっているんだということさえ知らない。一体どうしたんだろうということが私のところに来ているわけです。
 それで、まず外務省にお伺いしたいわけですけれども、これについての日本国民に対する報告やPRというのは、一体どうなっているのでしょうか。
#260
○関説明員 お答え申し上げます。
 外務省といたしましては、特に核兵器を中心といたしました軍縮が非常に重要であるということで、これが日本の外交政策の重要な一環をなしているわけでございまして、そういう基本精神に沿いまして、軍縮問題の重要性につきましては、平素からいろいろな手段を通じましてできるだけ広報活動に努めているつもりでございます。たとえば、軍縮委員会での日本政府代表の演説等が行われますと、できるだけ早くこれを国内にも公表して、できるだけ新聞あるいは雑誌、テレビ等を通じまして国民の皆さん方に提供されるようにしていただくというようなこと、あるいは各方面、学術研究団体あるいは個人の方々から軍縮問題について御照会等があります場合にはそれにお答え申し上げるとか、あるいは外務省職員あるいは適当な民間の方々に委嘱いたしまして軍縮問題についての講演会をいたします等、そういう手段を通しまして、平素から軍縮問題につきましての啓発活動ということはやっているわけでございまして、ただいま先生が御指摘のように、確かに七八年の軍縮総会で、十月の二十四日、これは国連の記念日でございますが、この日から一週間は毎年軍縮週間とするということが決まっておりまして、昨年、一昨年とその軍縮週間があったわけでございますが、特にこの軍縮週間におきましては、外務省といたしましては、通常の広報活動以上に、大臣談話を発表するとか、あるいは新聞、テレビ、ラジオ等に特別に資料をつくりまして提供さしていただいたり、あるいは講演会をさらに頻繁に開催したり、あるいはその講演会には日本人のみならず外国の軍縮の専門の方に来ていただいて各地で講演会をやっていただく、そういうようなこともやっているわけでございます。
 ただし、予算等いろいろな制約もございますけれども、外務省といたしましては、その範囲内でできる限りのことはやっておりますし、今後ともこの軍縮の重要性にかんがみまして努力を続けてまいりたいと思っております。
#261
○田中(美)委員 平素からと言われておりますけれども、私が質問しておりますのは、平素から非常に弱いというふうに思っているわけで、平素のとおりでは、これはろくにやってないんだというふうに感ずるわけです。問題は、やはりこの七八年の軍縮週間というものが決められたということを、いま新聞やテレビや言っていますが、各紙に政府広報などを載せるというようなことをやるなり、婦人週間などでは相当PRされておりますけれども、一番大事なこの軍縮週間というものはまだ国民がほとんど知らないわけですから、外務省としてはやっている、やっていると言いますけれども、問い合わせがあってからそれに答えているなどというのはやっている中に入らないので、当然の仕事であって、これを積極的に政府の広報を各紙に載せるとか、そういうふうなPRを積極的にやってほしいわけです。
 過去のことをとやかくいま責めても仕方がないことですが、ことしは何とかこの軍縮週間、十月二十四日から一週間はそうなんだぞということをいろいろな意味でのPRをする、それはテレビ、各新聞に政府の広報として載せていただきたいと思うわけですけれども、その点はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
#262
○関説明員 御指摘の点は、私どもとしても十分了解するつもりでございます。今後とも、予算等いろいろ制約ございますけれども、特にこの情報過多の時代におきまして、政府主導型のそういう啓発活動というものはなかなか食い込む余地がないというような客観的な現実もございますし、私どもとして、微力ではありましても、できるだけこの軍縮週間というものを国民の皆さんにわかっていただいて、そして民間のいろいろな団体の御協力を得て、さらにそれを国民の間によく、広く理解していただくというふうに努力してまいりたいと思います。
#263
○田中(美)委員 ちょっと具体性がないのですけれども、何となくということではなくて、各新聞などに載せていただきたいということを言っているわけです。どうですか、抽象的じゃなくて、もっと具体的に。
#264
○関説明員 従来も軍縮週間等に当たりましては、記事資料等をつくりまして、外務省の記者クラブ等を通じまして、できるだけ記事になるように努力はいたしておりますけれども、そういう努力は今後とも努めてまいりたいと思っております。
#265
○田中(美)委員 記者に記事になるようにというだけでなくて、それはただでやろうという、それもいいですけれども、ただでやるということは、やはりPRは徹底いたしませんね。やはり政府がきちっと広報として新聞に広告を載せていくというようなやり方をぜひやっていただきたいと思います。
#266
○関説明員 内閣広報室の方とも相談申し上げまして、先生が御指摘のような手段につきましても今後十分に検討いたしたいと思います。
#267
○田中(美)委員 厚生省の方も、やはりいままで一番厚生省がこの被爆の問題については政府の中ではがんばってこられているわけですから、そうしたいままでやってこられたことは単なる被爆者を援護するというだけでなくて、再びこういうことが起きないようにという観点からやっているわけですから、同じ政府の中で外務省に対してももうちょっとしっかりやれという態度で、厚生大臣もしっかり、こうした国連で世界の人たちが決めたことなんですから、日本の国民一人残らず知ってもらうような、そういう努力をやっていただきたいと思います。
#268
○野呂国務大臣 厚生省といたしましては、わが国が唯一の被爆国でございまして、こういうことが世界にあり得てはならない、断じてそういうことのないように、私どもはそれがために今日のお気の毒な被爆者に対しては、法律の問題でなくて人道的立場に立って被爆対策を進めてまいっておるわけでございまして、いま御指摘の点につきましては外務大臣及び総理府総務長官など関係機関に御趣旨の点は十分伝えて、また厚生省としても協力をいたしたい、かように考える次第でございます。
#269
○田中(美)委員 最後に、基本懇の問題は先ほどからいろいろ同僚議員が言われていまして、この結論が出ない限りはどうしようもないというふうな御返事でしたが、ぜひ国家補償の立場に立った被爆者援護法を制定するように強く厚生省及び厚生大臣にお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
#270
○葉梨委員長 次に、浦井洋君。
#271
○浦井委員 去年のこの改正案の昨年度の通常国会での審議のとき歌心私、原爆医療法制定時から現在までの認定疾患が約八千件あるということで、その疾病の名前であるとかあるいは被爆距離なんかを整理すべきだというふうに申し上げた。当時の田中公衆衛生局長は、五十四年度中に事例集をつくるということを約束されたわけですが、その作業進行状況はその後どうなっていますか。
#272
○大谷政府委員 先生御指摘の、過去に認定疾病として認定されました事例につきましては、過去の台帳を整理しまして四十八年から五十四年までの約六年間にわたる五百例につきまして一応の集計を終わっておりまして、現在内容の精査を行っているところでございます。また、その結果につきましてはできるだけ早い機会に都道府県等にお送りしたいというふうに考えている次第でございます。
#273
○浦井委員 五十四年度の仕事でありますから、年度内に届くわけですか。
#274
○大谷政府委員 できるだけ早く整理いたしまして、そういうふうにいたしたいと思っております。
#275
○浦井委員 それともう一つ、いま四十八年から五十四年の六年間の五百例、こういうことでありますが、やはり死亡された方も含めると約八千件、こういうことになって、聞くところによりますと、初期のころの認定の仕方と現在の認定の仕方ではかなり微妙な違いもあるように思えるわけで、そういう点の点検もできるわけですし、できるだけ全数調査をやっていただいて、そして整理をこの際しておくべきだと思うわけですが、この点についてはどうですか。
#276
○大谷政府委員 昭和三十二年に原爆医療法が制定されましてから今日まで、先生は約八千件とおっしゃいましたが、約七千五百件でございますが、認定されておりますけれども、当時の古いものにつきましてはこのような立場からの台帳の整備が行われておりませんので、被爆距離等につきましても現時点ですべての事例を正確に分類するということは非常にむずかしい状態でございます。
    〔委員長退席、住委員長代理着席〕
しかし、先生も御指摘のように、非常に大事な問題でございますので、できるだけ過去の認定事例につきましてはさかのぼって分類作業をいたしたい、かように考えている次第でございますが、何分そういうわけで多少資料の不備があるようでございます。
#277
○浦井委員 きわめて正確にとは、それは無理な面があるだろうと思うので、いま局長の言われたことを確実に実行していただきたいというふうに思います。
 それから、その次の問題は健康管理手当を支給するための診断書の問題でありますけれども、まず最初は、御存じだと思うのですが、疾病の名称ということで、その注釈というような形で、疾病の名称の欄の「疾病が原子爆弾の放射能の影響によるものでないことが明らかである場合はその旨の意見」、こういう欄があるわけです。これは健康管理手当が支給される十一疾患と、ちょっと読みますと放射能との関係があるのかないのかということの判定を求めているように第一線の医師は受け取るわけですね。そうしますと、これを患者さんの方から書いてくれというふうに持ってきた場合に、医者の方は、自分は放射能の専門でもないし原子爆弾のこともようわからぬ、まして放射能の影響によるものであるかどうかということを判断することはできないので診断書はよう書かぬというような言い方で断られるケースが多いというふうに私は聞いておるわけです。実情を聞いてみますと、やはりそうだと思います。
 この文章は非常にわかりにくいので、それでいっそこの項は診断書から削除すべきではないかというふうに思うわけですが、どうですか。
#278
○大谷政府委員 この点につきましては、健康管理手当の支給要件といたしまして被爆者に対する特別措置に関する法律の第五条で「原子爆弾の放射能の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。」というふうにはっきりと書いてあるわけでありまして、この点について医師の判断を診断書に記載していただきたい、こういうふうに考えているわけでございますけれども、しかし先ほどから先生御指摘のような点で問題があるといたしますれば、これは私どもとしても今後検討させていただきたい、かように考える次第でございます。
#279
○浦井委員 いまの話でもわかるように、条文のとおりがこう書いてあるわけですね。そうすると、普通の医者が見て何かわけがわからぬようになってくるらしいのですよ。だから、少なくとも削除するか、あるいはもっとだれが見てもわかるような表現にして、そして医者が診断書が書けるような、そういうふうにしてほしいと思うのですが、それはよろしいですか。
#280
○大谷政府委員 検討させていただきます。
#281
○浦井委員 検討というたら、検討したけれどもあかなんだということになりますので、やはり何かほかに表現はないですかな。
#282
○大谷政府委員 検討の結果をまた御報告申し上げます。
#283
○浦井委員 それからもう一つ、この診断書の問題で混乱が起こっておることがあるわけなんです。私はここへ兵庫県の診断書の用紙と、これは先ほど厚生省にもらった東京都の診断書の用紙を持ってきてあるわけですが、これはおもては様式が決められておるので、法律に基づく様式であるわけで一緒なんですが、裏が違うわけですね。
 その前に一つ尋ねますけれども、十一疾病の中で、1の「造血機能障害を伴う疾病」ということですが、その中で、健康管理手当の支給が一年であるのは鉄欠乏性貧血だけであるわけですね。
#284
○大谷政府委員 先生の仰せのとおりでございます。
#285
○浦井委員 そういたしますと、厚生省がかつて参考資料のようなものとして出された厚生省令で定める障害を伴う疾病名というのを兵庫県の場合まる写しにしておるわけですよ。これが非常に混乱を起こしておる。私が県の相談室に行って実情を調べてみますと、県の医務課の方ではこの厚生省の指示に基づいて、胃酸欠乏性から鉄欠乏性から全部これは一年だというふうな言い方をして、とにかく貧血であれば一年というようなかっこうになっておるわけなんです。ところが、東京都の場合であれば、わりに明確にその点は書いてあるわけなんです。しかし、そうしたら、これも厚生省の指示どおりかと言いますと、白血球減少症であるとか、出血性素因であるとか、紫斑病であるとか、血小板減少症であるとか、多血症であるとか、こういう病名が「造血機能障害を伴う疾病」の中にずっと書いてあるわけなんです。だから、都道府県によってこうまちまちでは、全国的にかなり混乱が起こっておるんではないかというふうに思えるわけで、この診断書の裏に、どういう病気であれば健康管理手当が受けられるかということを書く必要はあると思うのですよ。ここへ書く必要はあると思うのですけれども、もっと統一された、しかも診断書を書く側にとっては理解し、書きやすいようなやり方を、やはり厚生省は工夫をこらして、整理して、指導すべきではないかと思うのですが、どうですか。
#286
○大谷政府委員 確かに現場の先生方にとっては非常に煩わしい表現法になっておりますから、私どもとしても、この点については、先生方にできるだけ御迷惑をかけないような表現方法を検討いたしたい、かように思う次第でございます。
#287
○浦井委員 どうも検討ばかりなのであれなんですが。
 それともう一点は、9の項の「呼吸器機能障害を伴う疾病」、これが東京都の分によりますと「肺気腫、その他の慢性間質性肺炎」こういうふうになっておるわけですね。厚生省の出された文書では、「肺気腫」と書いて、また、だあっと何やややこしいかっこうに書かれて、「その他の慢性間質性肺炎」、これはWHOの疾病分類をそのまま写しておられるんだろうと思うのですけれども、こうなってまいりますと、一つの問題は、これは大谷さんよく御承知だと思うのですけれども、第一線の医者は肺気腫という病名はまだ余り使わないのですよ。それと、御存じのように、この医療法は健保と相乗りでしょう。保険と相乗りですから、国保の本人、家族あるいは健康保険の家族のような自己負担のある分について公費医療で支給する、こういうことになるわけですから、健康保険や国保の方では治療上気管支ぜんそくであるとか慢性気管支炎と書いて、こちらの診断書には肺気腫と書かなければならぬというような混乱、あるいは神経を使うというようなことがあるので、一番よい方法はこれは肺気腫と、それからもう一つレベルを落として、慢性気管支炎なりあるいは気管支ぜんそくというようなものでもよいんだということをここで許容すればいいと思うのですが、どうですか。
#288
○大谷政府委員 この点につきましては、私ども原爆医療審議会の専門家の方々の御意見を伺って実はこういうふうにしてきているわけでございますけれども、これにつきましてもこれはなかなかむずかしい問題だと思うのです。ですから、これについては一応私どもも原爆医療審議会の先生方の御意見を一遍伺ってみたい、かように思うわけであります。
#289
○浦井委員 いままでの私の質問を前向きで検討していただけると確信はしておるのですけれども、ただ、認定審議会の話が出ましたけれども、確かに権威者だし、オーソリティーだと私は思います。しかし、なるほど被爆当時現地に行かれたりはしておるだろうと思います。その他必要に応じて現地に、長崎や広島に行かれていることもあるでしょうけれども、実際に広島、長崎を初めとして全国に散らばっておる被爆者の三十五年間の経過をずっと第一線で診ておる人とはやはり私は感覚がずれておると思うわけなんですよ。これは医学論争になりますから私言いませんけれども、原爆ぶらぶら病であるとか、あるいは中には低線量症というような、現在の医学ではわからないような病名があるのではないか。低い線量を浴びて、いま障害がずっと残っておるんだというような主張もあるわけなんですよ。だから、低線量被曝といいますか、そういう点は認定審議会という場ではなかなかテーブルの上に上らないし、実際はその狭間で苦しんでおられるのは被爆者の方である、こういうことになるわけなんです。だから、第一線で被爆者の医療を担当しておる医師というのは広島、長崎を含めまして、数えてみても、両手の指をちょっと出るくらいしかないと思うのですよ。ほかのお医者さん、ほとんど知りません。もう一遍被爆者医療のあり方というものについてそういう人を思い切って一度集めるなりあるいはそういう人の意見を聞くなりする、認定審議会の先生方は先生方としてがんばってもらわなければいかぬですけれども、そういう試みはやるおつもりはないですか。
#290
○大谷政府委員 ただいま原爆医療審議会の先生方は、たとえば先ほどおいでになりました理事長のおられる放影研あるいは広島大学原医研あるいは長崎大学原医研というふうに、実際に現場で被爆者の方々を診療しておられる先生方を網羅しておるわけでございますけれども、先ほど田中先生からもお話がありましたけれども、今度実は実際に診療をおやりになっている先生方の研究会を、五十五年度から長崎で研究会を実施するようになっておりますので、そういう機会にでもぜひ現場の先生方の御意見も伺うようにしたらばどうかというふうに思いますが、先生にお言葉を返すようでございますけれども、原爆医療審議会の方は必ずしも現場を離れてしまった先生方というのではなしに、現在そういうふうに実際に大家でもあり、かつ現場でおやりいただいているというふうに私ども理解しているわけでございます。
#291
○浦井委員 そこを大谷さん、よく考えて、よく実情を見ていただいて、実際に被団協を初めとした被爆者団体の側からも、先ほど私が申しましたように、とにかく老化が早いんだ、それから疲労しやすいんだ、あるいはぶらぶら病的なものなんだ、これは低線量の被曝ではないか、これは現代の医学ではわからぬのと違うかというような素朴な疑問も出るし、その意見に賛同するお医者さんもおるわけなんですよ。現場でも悪戦苦闘しておるわけなのです。被爆三十五年、そういう人の意見を厚生省としては一度じっくりと聞いてみる必要がある。いま長崎ですか、五十五年度で四百万円でしょう。大したものはできぬのではないかと思うのですけれども、そういう人を呼ぶような、あるいは研修会ということであれば一度そういう人たち何十人か会してディスカッションをやるとか、そういうことをひとつやっていただきたいと思うのですが、どうですか。
#292
○大谷政府委員 長崎の研究会はことし初めての試みでございますので、できるだけ先生の御趣旨も盛り込むようにいたしまして、いろいろ考えてみたいと思います。
#293
○浦井委員 次の問題は、ずっときょう審議をされておるので簡単にいたしますが、所得制限の話です。
 所得制限の話で、健管手当でも今度改正をされて税額四十九万二千六百円ですね。だから、いま大谷さんのあれでは九六%主義だということでありますけれども、私、兵庫県へ行きまして、ここ数年健管手当所得制限でもらえなかった人は一体どれくらいなのだというふうに聞いてみますと、現在健康管理手当をもらっている人が千二百二十二名、それで数年間で所得制限にひっかかった人はわずかに数人だというのですね。だから、九十六以上ですね。こういう数人の人を支給対象から外すためにすべての対象者が一々税務署へ行って税額証明書をもらわなければならぬ。これは何とかならぬだろうか。もちろんこれを外すということになれば、果たして原爆医療法なり原爆特別措置法の性格がどうかという本質論になるわけですけれども、これは本当に何とかならぬですか。
#294
○大谷政府委員 毎回同じ繰り返しの答弁でまことに恐れ入るわけでございますけれども、所得制限の撤廃問題につきましては、制度の基本的なあり方に関係する、こういうふうな観点で、それも現在すでに基本問題懇談会の御答申もだんだん近づいているというふうな状況の折でございますので、私どもとしてはその結論を待った上で対処いたしたい、かように考えているわけでございます。
#295
○浦井委員 大臣、いま所得制限の話に移ったのですが、もう一つケロイドの問題なんかもいまの原爆二法の限界性を示しておるわけですよ。御存じだろうと思うのですけれども、ケロイドがある方というのは非常に心身ともに苦痛をなめてきておられるわけですね、結婚しておられてもそのことが原因で離婚を余儀なくされたり、あるいは結婚というチャンスに恵まれなかったりというようなことでね。ところが、現在の特別手当あるいは健康管理手当、いずれも対象にならないわけですよ、いまの原爆医療法の精神でいくならば、たてまえでいくならば。しかも、今度はケロイドを治療するのだということで手術をすることになれば特別手当がもらえる。もらえる、支給されるということはよいことなのですよ。それで、治癒すれば特別手当が半額になるわけですね。だけれども、そのまま残っておる人は、七十にも八十にもなっていまから手術せぬでもよいわというふうにあきらめておられる方は手当がもらえない。せいぜい二キロ以内であれば保健手当がもらえるだけだ、こういうことになってきわめて不合理ですね。
 ですから、大臣は特別な社会保障であるとかいろいろなことを言われておるわけでありますけれども、そういう点からもこれは何とかしなければならぬということになりますね。一遍大臣の御意見を聞いておきたいと思う。
#296
○野呂国務大臣 私も医療関係の専門の立場でございませんので、果たしてそれをどういうふうにしていくことがいいのか、いま即断をいたしかねますけれども、いろいろ原爆の医療審議会などの専門家の御意見もあろうかと思います。そういうものも十分聞きながら、手落ちの点については何とか対応するということが当然でなかろうかと思いますので、あえて基本懇の理念の結論を待ってどうということでなくて、御指摘の点については十分厚生省として考えていきたいというふうに思うのでございます。きょうどうするかということについてよりも、今後関係の者とよく相談をしていきたい、かように思います。
#297
○浦井委員 この問題はもう法改正のたびに議論されておる問題で、大臣はいまそう言われたのですが、ひとつ公衆衛生局長から。
#298
○大谷政府委員 現在は医療を行う場合に特別手当を出すという法の立て方になっているものでございますから、そういった先生の御指摘のような問題点があるわけでございますけれども、大臣も申されましたように、私どもとしましてもこの問題については全体ひっくるめて今後のあり方の検討の中に入っていくのではないかというふうに思って、現行法ではとてもそういうわけで無理だと思うわけでございます。
#299
○浦井委員 大臣は、基本懇の答申を待たなくても、そういう不備な点はやらなければならぬというふうに言われたわけですよ。だから、その考え方でひとつ前向きに検討していただけますか。
#300
○大谷政府委員 この問題は、私、事務当局といたしましては法律問題に絡むものでございまして、要するに医療を受けているときに特別手当を出すという立て方になっているものでございますから、その点については大臣のお話はございますし、ひとつ勉強させていただきたいと思いますが、大変むずかしい問題でございます。
#301
○浦井委員 検討から勉強にちょっと後退したような感じで頼りないのですけれども、大臣や公衆衛生局長が在任中に勉強もし、検討もし、前向きにひとつよい対策を出していただきたいというふうに思います。むずかしいことは私もよくわかっておりますので、真剣に努力をしていただきたいというふうに思います。
 そこで、原爆二法の論議ということになりますと、けさ方来いろいろ議論になっておる問題がやはり出てくるわけですね。
 御承知のように、原爆医療法の目的では「原子爆弾の被爆者が今なお置かれている健康上の特別の状態にかんがみ、」云々、それから原爆特別措置法の方は「原子爆弾の傷害作用の影響を受け、今なお特別の状態にあるものに対し、」と、いずれも「特別の状態」という表現が使われておるわけですが、これは一言でお答えいただくとしたら何を指しておるわけですか。
#302
○大谷政府委員 やはり放射能の特殊な状態というふうに解釈いたしております。
#303
○浦井委員 そこが公衆衛生局長、立場上言えないのかもわかりませんけれども、非常に幅が狭い。放射能だけではないわけでしょう。いまの医療法、特別措置法の被爆者対策のあり方というものが、どう言いますか、トータルの原子爆弾被害の特徴のきわめて一部分しか指しておらない、それしか対象にしておらない。きわめて限定されておるのだ。そこに私は根本的な対策の不十分さの原因があるというふうに思うわけです。
 大臣、私少し読んでみますけれども、三年前ですね、一九七七年の国連のNGO被爆問題シンポジウムの報告では、次の五点について原爆被害の特徴を集約しておるわけです。これはもう大臣も御承知だろうと思うわけです。一つは「瞬間奇襲性」ですね。「原爆被害は攻撃される側の民衆の同意もなく、民衆に逃避の余裕も与えず、奇襲によって瞬間的に生じた。そのため市民は日常生活継続中の状態で生活を破壊された。」これが一です。それから二番「無差別性」「定地域の住民を老若、婦人、子ども、人種、戦闘員、非戦闘員、階級を問わず無差別に殺傷した。軍事目標や要員に的をしぼって使用される在来兵器と根本的に異る。」それから三番「根絶性」これは「人間のみならず、あらゆる生物および環境を破壊しさり、人間生活の根底を形成する自然、社会、文化環境を破壊した。」四番「全面性」「生き残った被爆者には人間生活のいのち・くらし・こころの全面にわたって被害を与え、それら相互の悪循環のなかで人間から人間らしく生きることを奪った。」五番「持続拡大性」「被害が生じて以来今日まで、被爆の全容がつかみえず、つぎつぎ新しい被害が発見されている。とくに核軍拡競争や政府の被爆者対策の立ちおくれが新しい加害となりつづけている。」これが五つに要約された原爆被害の特徴であると国連NGO被爆者問題国際シンポジウムで報告されておるわけなんです。
 この中には、いま質疑の中に出てきましたように、当時の日本の政府が、そんなことを言うのはおかしいわけでありますけれども、とにもかくにも、無差別性とかあるいは残虐性とか文明に挑戦するものであるとかいうような抗議をその当時アメリカの政府にしておるわけでしょう。だから、これがやはり五つの、原爆被害をトータルにとらえた特徴だというふうに私思うわけでありますけれども、大臣どう思われますか。
#304
○野呂国務大臣 御趣旨の点は私も十分理解させていただきます。
#305
○浦井委員 少なくとも、そうではないんだというふうに全く否定し去ることは野呂厚生大臣としてもできないでしょう。
#306
○野呂国務大臣 できません。
#307
○浦井委員 しかも、先ほどから言われておるように、日本政府はサンフランシスコ条約で賠償請求権を放棄したということであります。だから、そういう事情が、実害とそれからいままでの経過があるんだという認識に立つならば、それとさらに先ほどから申し上げておるように、所得制限の問題であるとか、ケロイドの人たちには一向に救済といいますか、あるいは補償の手が差し伸べられておらないという矛盾も生んできているわけなんです。
 そして地方へ行きますと、ついこの間、神戸市の原水協の人たちが、原爆手帳を持っている被爆者に、あなたは原爆二法を知っておりますかという、そのほかずっとアンケートを出した。すると、アンケートのとり方、設問の仕方にもよるんでしょうけれども、やはり半分しか知らぬわけです。被爆者手帳だけは持っておるんだけれども、こういう原爆医療法あるいは特別措置法があるということさえも知らない人が五〇%くらいあるわけなんです。そういう対策の不十分さを生んでおるわけなんです。
 だから私、最後に大臣に強く要求したいのですけれども、やはり国家補償の立場に立った被爆者援護法、この制定をとにかく急がなければならぬ、このことを強く要求をしたいわけなんですが、ひとつ最後に大臣の御意見を聞いておきたいと思います。
#308
○野呂国務大臣 私も、わが国が世界における唯一の被爆国である、そういう観点に立って、いかに恐ろしいものであるかということをわれわれは被爆者に対しての対応において十二分に示していくことが、それが国家補償であると考えるのでございます。したがいまして、ある意味においては遅きに失した感があることは言うまでもないと思います。いま基本懇で、その基本理念についての御意見を承っておるわけでございます。政府といたしましては、その理念に基づきまして十二分に対応し、そして被爆者の方々に対して十分国は責任ある対応をしていくということに急ぎ努力を進めてまいりたい、かように念願をしておるわけでございまして、厚生行政のうちこれは大きな課題である、その課題の解決に向かって国として十分対応してまいりたい、かように存ずる次第でございます。
#309
○浦井委員 もう終わりますけれども、私、別に基本懇を否定するわけではないのですが、基本懇というようなものをいまさら設けなくても、当然もっと早い時期に国家補償の立場に立った被爆者援護法というようなものが制定されなければならなかったわけなんです。その点を十分に認識をしていただいて、被爆者の実態に見合った対策を早く立てていただきますことを要求をして、私の質問を終わりたいと思います。
#310
○住委員長代理 次に、小渕正義君。
#311
○小渕(正)委員 私は、本日は、被爆者援護対策についてのいろいろ考え方その他についての論議はもう申し上げるつもりではございません。ただしかし、先ほどからいろいろお話を承っておりまして、どうしても基本懇といいますか、七人委員会といいますか、これの結論待ちのような印象を受けざるを得ないわけなんです。したがいまして、私としては、この原爆被爆者対策というものが戦後処理の中でいまだにこういう関係の中に置かれている。これはやはり、国が平和憲法下の中において戦後処理をどのような形でどういうふうにしていくかという一つの系統的な整理がされてないままにそういった問題を個別にいろいろと処理してきた結果が、いまこういう問題が発生してきておるんじゃないかと思うわけでありまして、そういう点で厚生大臣としては、私的諮問機関でありましょうけれども、ここらあたりで一つのきちっとした整理をするための一つの諮問機関として設けられたという意味においては、私は十分理解いたします。しかしながら、私は、ただそういった基本懇の結論は確かに大きな柱、骨組みの中では国家補償か社会保障か、いろいろ論議があるでしょうけれども、ともかくそういうことを抜きにして、国としてやらなければならないということがまだたくさんこの原爆被爆者対策にあると思います。
    〔住委員長代理退席、竹内(黎)委員長代
    理着席〕
 そういう意味では、ぜひひとつ基本懇の結論待ちじゃなしに、いまからでもどんどん厚生省当局としてやるべき、国の責任としてやるべき事項等については、もっともっと問題を整理されながら、そういう中で基本懇の結論が出るときにはもう同時にいろいろそれに付随する問題の整理がされて実施できるような、そういう体制をとっていただきたい、こういうふうに私は意見として申し上げるわけであります。
 特に、厚生省当局には行っておると思いますが、原子爆弾被爆者援護措置に関する陳情書として、長崎県、広島県、それぞれ広島、長崎市を挙げて、幾つかの現在の状況の中における項目をそれぞれ厚生省に達しておると思います。だから、この中で、もちろん基本的にはそういう国家補償に立つかどうかという問題がありましょうけれども、しかしそういうことを抜きにしても、やはりやらなければならないというものが私はかなりこの中にあると思いますので、そういう意味でひとつ基本懇――何か先ほどからお伺いしておりますと、結果的には基本懇の結論待ちということで、それからまたいろいろスタートするような感じもなきにしもあらずでありましたので、先ほどの委員の質問に対する厚生大臣の決意もお伺いいたしましたけれども、あえて再度この点だけはぜひ厚生大臣にお願いしておきたいと思います。
#312
○野呂国務大臣 厚生省といたしましては、基本懇に責任を転嫁したり、あるいはその結論待ちだということでは決してございません。いろいろ御論議されたことを一つの転機として新しい対応を展開さしていかなければならぬ、そういう意味で基本懇の七人の先生方に真剣に取り組んでいただいておるわけでありまして、このことは十分尊重しなければならない。そこで、私どもの間違いなりあるいは不十分な点の御指摘もいろいろあろうかと考えておるわけでございます。基本懇を隠れみのにしたりあるいは基本懇待ちであってわれわれはそれに対して対応を鈍っているということでは決してないと思うのでございます。国民のいろいろの御要望に対してどこまでもわれわれは十分こたえてまいりたい、かように考えております。
#313
○小渕(正)委員 本日は、そういったものを抜きにした実務的な問題点の二、三を中心にしてひとつ御質問したいと思います。
 まず第一は、現在健康手帳を持っておられる人たちの年に二回の健康診断に対して、厚生省としては、一件当たり千九百円ちょっとだと思いますが、診療費が出されておるわけですね。それから、要精密検査ということで精密検査した場合については一件当たりたしか四千四百何がしかの診療費が国から出されておると思いますが、これらの根拠といいますか、現在一般健診は項目的には大体四つか五つやられておりますが、それが果たして千九百円のいまの診療費で妥当かどうか疑問なしとしないわけであります。
 そういう意味でお尋ねをするわけですが、それぞれの単価の根拠といいますか、そういったものをお示しいただきたいと思います。
    〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕
#314
○大谷政府委員 検査には一般検査と精密検査がございますが、一般検査につきましては、私どもの方で項目ごとに保険診療の点数を積み上げて、そのとおりに予算として出しているわけでございます。
 それから、精密検査につきましては、これは一般検査の結果必要とする検査を行うことになっておりまして、A、B、Cとおられますと、Aの人は安い場合もあればBの人は高い場合もある、こういうふうになるわけでございます。私どもの方としては、毎年平均単価を計算いたしまして、実績に応じて予算を積算しましてお流ししておるということで、先ほど先生御指摘の四千四百六円というふうになっているわけでございます。
 実績では、たとえば長崎の原爆被爆者対策協議会の例で申しますと、五十三年度で三千九百四十二円、五十四年度で三千九百五十六円ということになっておりまして、私どもの予算単価を下回っておるわけでございまして、恐らく先生御指摘の点は個別の方の非常に高い部分についてお話しになっているのじゃないかと思うわけでございます。平均といたしましては、現在健康診断につきましては実態に即してお払いしているという形になっているわけでございます。
#315
○小渕(正)委員 保険の点数ですか、そういうものを積み上げて単価が出されておるようでありますが、この単価の中には、こういう業務をやる運営費的なものも含まれているのかどうか、その点はいかがですか。
#316
○大谷政府委員 これはたとえば病院とか診療所でもそうでございますけれども、そういう事務費とか診療費というものすべてを積算して単価に計算し直して払っているわけでございまして、一応私どもは全部含まれておるという解釈になっているわけでございます。
#317
○小渕(正)委員 長崎の場合、実績を言われて、精密検査の場合でも平均値が低いということでありましたが、現在の診療費の単価は全部一緒だと思います、健康保険で診療費の報酬が上がらない限りはいま同一の基準でとられていると思いますが、まあ実績がこういうことですから現在無理はないとお思いでしょうけれども、現実に見ましたら、県下で十万近くの人が手帳保持者で、そのうち市内が約八万、そのうち従来ずっと健診を受けている人が大体八割で六万幾ら、七万近く、私ちょっと調べたのですが、そのうち年間三万人近くの方があの長崎の検診センターに行って精密検査をやられているようであります。精密検査のフォームを見ますと四十九項目までずっとどれをやるかということがあるわけでありまして、精密検査をされる場合には、個々の状況によって違いますが、最低でも八項目から十項目ぐらいやっておるわけです。そういうことを考えますと、いまの診療費の中でそれくらいのものをやってこれくらいの金額で済むのかどうかという素朴な疑問が素人として出てくると思うのです。そういう点でどうしてこんなに平均が低い形になっているのか、私はいま疑問視するわけです。少なくとも私が実際に検診センターの人たちと――私も対象者ですから実際に受けたこともありますが、そういうことで見た場合には、とてもじゃないがこんな三千幾らくらいの医療費で済むような検査じゃないのです。これはまことに不思議だと思いますが、その点については何も疑問をお持ちになりませんか。
#318
○大谷政府委員 これは恐らく胃がんでありますとかいろいろな検査をやる方と、そういう必要がない方との間でやはり相当な差があるのではなかろうかと考えるわけでございます。
#319
○小渕(正)委員 そういう違いは確かにありましょうけれども、私が申し上げますように、最低の方でも七つか八つの精密検査の診療を受けているということですから、幾らそれがやさしい検査であったとしても四千円以内におさまることはないと私は思います。
 ただ、一つだけちょっとお聞きしたいのですけれども、広島では一般健診のときに精密検査に準じた形で二つ、三つのものを、二つ、三つではないかもしれませんが、何かそういう一般健診と精密検査のちょうど中ごろみたいな形の精密健診をやられている傾向があるような話も聞きましたけれども、その点はよそのことですから知りませんけれども、少なくとも長崎ではいまほとんど健診は原爆センターにみんな見えられてそこでやられていて、一般の医療機関でやられる例はまれです。そういうことを見ますと、実質的にこれは非常に無理なことがやられているのじゃないかという気がするのです。私はこの実績を見てちょっと驚いたわけであります。そういう意味で、早く診療費の引き上げか何かをやってやらないことには、とても本当の意味での被爆者の期待する精密検査ができぬのじゃないか、実はそういう懸念を持ったものですからお尋ねしたわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
#320
○大谷政府委員 あるいは保険点数の関係でそういうことがあり得るかとも存じますが、私どもの方としては、そういうわけで保険点数で積算された分については現在予算で十分お払いできている形になっておりますので、先生御心配のような点があるとすれば、今後とも私どもとしてもできるだけ予算の確保に努力いたしたいと思う次第でございます。
#321
○小渕(正)委員 お伺いしておりますと、実績主義といいますか、もちろんある程度そういうものを基準にしないといけない面もあるでしょうけれども、結果的に平均で厚生省のあれより低くなっておりますけれども、これが高かった場合に赤字をどうすることもできないですね。そういう場合、もし平均的に見て赤字になるような状況になったときには、厚生省はそういう赤字だけはすぐ補てんするという考え方がおありですか、その点いかがですか。
#322
○大谷政府委員 予算単価につきましては毎年増額を図っておりまして、そういうことのないように努力いたしているわけでございます。
#323
○小渕(正)委員 毎年増額を図られているということでございますならば、ちょっと参考までに五十二、三年ごろからの状況、実績はこうだけれども私のところはこれだけ出しているぞということがおありであれば出していただきたいと思います。
#324
○大谷政府委員 五十年度が三千六百八十五円でございまして、五十一年度が四千二十円、五十二年度は前年度どおりでございますが、五十三年度に四千四百六円、こういうふうに改善してきているわけでございます。
#325
○小渕(正)委員 実績との対比はいかがですか。
#326
○大谷政府委員 実績は、ちょっといま数字を持ち合わせておりませんが、前年度の予算単価に一六%の増ということで予算を決めているわけでございます。
#327
○小渕(正)委員 いま精密健診の点だけ取り上げて申し上げましたが、一般健診の分についてはさほど問題がないかどうか、その点はどうお考えですか。
#328
○大谷政府委員 一般検査につきましては、先ほどから申しておりますように、検査項目をびっしりそのまま、もう点数で決めておりますので問題はございません。
#329
○小渕(正)委員 それでは、この点の最後になりますが、運営費といいますか、そういうものはこのうち何%ぐらい入っているのですか。
#330
○大谷政府委員 これは保険の単価の積算の問題でございまして、ちょっと私どもでは中身がわからない次第でございます。
#331
○小渕(正)委員 そうすると、一般保険でやられている運営費がそのまま入っているわけですか。
#332
○大谷政府委員 そのとおりでございます。
#333
○小渕(正)委員 それでは、その中身はここではわからぬけれども、後でお示しいただけますか、その点いかがですか。
#334
○大谷政府委員 保険局の方に尋ねますけれども、保険局の点数単価の設定もなかなかむずかしいと聞いておりますので、簡単にわかるかどうか、ちょっと保証いたしかねますが、私どもの方で聞いてお伝えをいたします。
#335
○小渕(正)委員 先ほどから私が申し上げましたように、私の感じではかなり無理をした運営をしているのではないかという懸念がなきにしもあらずなものですから、この点質問したわけであります。私もなお、実態が果たして本当にそういうことなのかどうか、いろいろ状況を把握しながらまた機会があったら申し上げたいと思いますが、やはり実際の状態からいきますならばこれはかなり無理をした形の中でやられているのじゃないかという気がいたしてなりません。したがって、そういう意味では、ただこういう現状に甘んじることなしに、そういう私からの問題提起もあったということを頭にとめていただきながら、これからもひとつ検討の中の対象にしておいていただきたい、かように思う次第であります。
 次に、これも実務的な面ですけれども、原爆医療費の公費負担のあり方についてであります。御承知のように、現在の原爆医療費の中においては、厚生大臣の指定を受けた方たちと、そういう指定を受けない、手帳を持たれた方の一般の医療費との二つがあるわけでありまして、要するに全額が厚生大臣の認定する患者による公費負担という対象者と社会保険優先という形での一般対象者、こういう二本立てで今日やられているわけであります。実態といたしまして、特にこれは社会保険関係で申し上げるわけでありますが、健康手帳を持っているという立場からだけ見ますならば、手続が繁雑で、厚生大臣の認可を受けていろいろするよりも、手帳保持者であれば、どちらにしても医療費については本人の自己負担分は一切ないことになりますから、そういう意味で手帳保持者の人たちがどんどん一般疾病による診療を受けているというケースが非常に多いわけであります。
 これを少し具体的に申し上げますと、長崎における私の健保の組合の人でありましたけれども、健康保険組合の中において医療費が、事業主と被保険者が負担した保険料を支払いながら運営されていることは言うまでもないと思います。しかしながら、実際においては、長崎市内に健康保険組合が九組合ありますが、その中で原爆被災者の診療費、手帳を持った人たちの診療費がざっと二十億円程度と推定されるわけです。これは健康保険組合関係からの資料を私ここにいただいているわけですが、この九組合が支払っている総診療費の中で本人の分としては一六%程度、家族分が三一%、手帳を持っておられる被保険者とその家族というふうに分類しますとそういう割合になっておるわけです。そういう割合の中で、実は手帳保持者の被扶養者の診療費というものがいろいろ調べられておるわけでありますが、受診率は大体二・一倍、要するに手帳を持った健康保険の家族の人たちの受診率は非常に高い。これは九組合の中の話でありますが、家族診療費の総額の中に占める割合が約四五%、こういう状況になりまして、現在の長崎における健康保険九組合の財政はこれによってきわめて大きな圧迫を受けつつあるという現状に置かれておるわけです。
 そういうことでございますので、長崎の健康保険組合の中で非常に問題になっているのは、公費負担の分の一部を結果的には健保が負担している。この点については、当然国として負担すべきものを健保が肩がわりして負担しているということが財政の大きな圧迫要因の一つになっている。御承知のように、現在まで民間の健康保険組合その他はほとんど、こういう不況下の減量経営の中で最高とも思えるような料率をとりながら運営しているわけであります。そういう点で、これは非常に大きなウエートを占めておるわけでありますので、この点についての改善方といいますか、厚生省当局の方にも陳情で行かれたと思いますが、この点についての当局のお考えをお伺いしたいと思います。
#336
○大谷政府委員 認定疾病につきましては全額公費負担いたしておりまして、一般疾病につきましては、先生御指摘のように、保険優先、あとの自己負担分を公費負担という形をとっているわけでございます。しかし、一般疾病につきましては、原爆に起因しているかどうかということに関係なしに、たとえば外傷を受けました場合とか、あるいは交通事故を起こされた場合につきましても、すべてこれは自己負担分について公費負担をしておる、こういうことで、私どもの方では、こちらの一般疾病につきましては、被爆者の方々の医療費負担の軽減を図るという考え方でやっているわけでございまして、いまのところこのシステムを変えるという考え方は実はいたしておりません。
#337
○小渕(正)委員 いまちょっと申された中で、健保でも交通事故関係は一切その中で処理していませんから、そういう間違った認識だけはひとつ改めてください。明らかに交通事故とわかった分については一切保険で扱っていませんから。
 いまのところ、そういうことを考えてないということでありますが、費用負担の状況について少し申し上げたいと思います。
 実は、昭和四十八年だったと思いますが、高額療養費制度ができましてから非常にそれが顕著になっているわけでありますが、家族の場合健保で七割が給付でありまして、三割が本人負担、その場合の本人負担の分が現在は国が公費負担、こういうことになっているわけであります。これを具体的な数字で申し上げますと、診療費が十三万円のときは大体七対三、九万一千円が健保で出し、本人負担の三万九千円の分がそのまま公費負担、こういう形になります。したがって、そういう意味で比率は七対三で、自己負担分の三がそのまま公費負担になっているわけであります。これが診療費が十五万円に上がったときには健保で負担するものが十万五千円、本人が負担するものを公費負担で肩がわりするのが三万九千円、残りのオーバーした分についての六千円は健保が高額療養費として負担することになるわけです。したがって、診療費が上がっていけば上がっていくほど健保が負担しなければいけない率が多くなるわけですね。いまの制度のたてまえからやむを得ぬと言われるかもしれませんが、これをもう少し申しますと、しからば診療費が三十万円のときはどうかということになりますと、二十一万円を健保が負担する、三万九千円を自己負担の分として公費が肩がわりして負担する、五万一千円はまた健保が高額療養費として負担する。要するに、診療費が高くなれば高くなるほどいまの制度の中では健保がその分をどんどん負担していくということ、これは健保制度そのものから見るならばやむを得ないことだと思います。したがって、公費が負担するのは自己負担分だけということになっていますから、いまの制度からいけばやむを得ないと言われるかもしれませんが、ちょっと病気にかかって少しぐあいが悪くなると、そういった意味の診療費の実態からいきますならばどんどん高額療養費の中に入っていく、その分の対象者がたくさんふえてくる、そういう意味で健保財政に大きな圧迫を加えて赤字を大きくつくり出す要因になっているということは否めない事実なんですよ。
 そういうことだから、せめて公費負担分についての何らかの配慮というものができないものかどうか。しかも、長崎の健康保険組合だけがこういう負担を強いられること、強いられるという言葉は悪いですけれども、そういうことになるわけですから、そういう点でここらあたりに対する何らかの善処策を講じてほしいというのが、長崎市内における健保九組合の大きな切なる要望として国にお願いがあったと思いますけれども、そういう実態にあることだけは当局は十分御理解されているかどうか、この点をお尋ねいたします。
#338
○石野政府委員 昨年の十一月に長崎支部の健保組合の方から陳情が参りました。いまおっしゃるようなことで、十分事情の説明を受けたわけでございますが、その中の対策といたしまして、いま先生おっしゃいました一つは、原爆医療費の中で一般疾病医療分については公費負担を優先してほしい、そういってもなかなかむずかしいと思うので、それが制度化されるまでにつきましては現在国民健康保険でやっていると同じように特別調整交付金を国の負担で交付できないか、こういう陳情がございました。
 前段の問題につきましてはいま公衆衛生局長から述べたとおりで、公費負担医療のあり方そのものの基本的な問題でございますので、なかなかこれは容易な解決ではないと思うのです。
 そこで、しからば健保組合に対して国保と同じように特別な交付金みたいなものを考えられないかという点でございますけれども、御案内のとおり、健康保険組合というのはそもそも政府管掌健康保険の方から独立いたしまして、本来自主的に健康保険事業を運営するということで認可されておるわけでございます。したがいまして、そもそも国庫負担という制度にはなじまないものでございますけれども、制度創立後におきましていろいろな経済事情もございますので、そういうことから特別に財政が悪化した場合につきましては特例として財政窮迫組合に対して補助を行う、こういうことを行っているわけでございます。したがいまして、原爆の問題に着目いたしまして特別の交付金を出すということについては、これは健保組合そのものの制度のあり方とも関連いたしますと非常にむずかしいというふうに私ども考えておるわけでございます。
#339
○小渕(正)委員 健康保険組合の制度のあり方からいったら、そっち側からだけ見れば確かにそういう問題になるでしょうね。しかし、原爆被爆者対策という側から見た場合どうなのかという問題を、こちら側からのあれを一つ忘れられているのじゃないかという気がするのです。だから、原爆手帳を持っておられる、要するに全国にも一部おられますけれども、ほとんど大半が長崎で、市内に約八万おられる人ですね、そういうものの中における健康保険組合というのは、私はほかの一般の健康保険組合とまた違った角度から問題を見てもらってもいいのじゃないかという気がする。これは私たちがそういう立場から言えば得手勝手と言われるかもわかりませんけれども、同じ長崎の市民の中のそういう側から見ますならばやはりこの問題は出てくるし、またこれは至極当然だと思うのですね。
 したがって、そういう意味で確かに当局は健保制度の本来の趣旨からいって国とは無関係で――それなら政管健保でどうですか、健保をやめてしまえ、この間ここの担当の人たちがちょっとそういうことを言ったのですけれども、私は長崎に帰ってからこのことを健保の人たちに話して、政管健保に、お互いやめていくかどうかということも一回相談したらどうかということも申し上げますけれども、いまの場合には政管健保の保険料率も健保の保険料率もほとんど変わらないくらい健保の人たちが可能な限りの負担をしながらやっているわけです。したがって、そういう意味で、ささやかな要求として、せめて国民健康保険の中に政府が特別調整交付金として見てやっている分に相当するぐらいは、何らかの国としての原爆被爆者対策の一環としての角度からこの問題を見てもらってもいいのじゃないか、こういう陳情が出たと思いますね。したがって、その点については確かに制度の面からだけ見ると、いま当局が言われたようなものがありましょうけれども、事原爆被爆者対策の中のこれも一部を結果的には背負っておることになっておるわけですから、したがって、その点を忘れられては困るし、そういった角度から検討をしてみるようぜひお願いしたい、かように思うのですけれども、いかがでしょう。
#340
○石野政府委員 先生のおっしゃること、非常によくわかるのです。私もこの内容を見まして原爆の患者を抱えております健保組合の苦しさというのも資料の上でも十分理解できるわけでございます。私が申しましたのは、非常に冷たいようでございますけれども、原爆というものに着目した交付金というのは出せない、しかし、原爆を抱えていくことによって結果的に医療費が相当伸びて、そして一般の保険料ではなかなかやれないというような、財政窮迫組合になるわけでございますが、そういう場合については私どもも国庫補助をいたしておるわけでございます。
 これは結果論の問題でございまして、先生がおっしゃるように、相当な医療費の伸びがあって本当に保険料で賄えないとなれば、当然これは国庫補助の対象になってきますし、同時に私ども特にお願いいたしたいのは、健保組合、自分で独立いたしたものでございますから、できることならば健保組合間でお互いに財政調整をやる、なおどうしてもできないものについて国が助成をするという基本原則が必要ではないか。そういう意味で、健康保険法の改正を提案いたしておるわけでございます。そういう中で御論議をしていただいて、必要であるとするならばそういう問題についての対策を今後考えていかなければならないというふうに考えるわけでございます。
#341
○小渕(正)委員 これは健保組合の中で相互に調整し合うという大きな制度については健保の中でもありますね。現にもうやられています。長崎の九組合でやっているかどうかは別ですよ。健保の中でもそういう関係で財政力の弱いところに何らかの形で見ていこうという制度はもう導入されてやられていますから、この点はわかっております。いまの長崎の九つの健保のそれぞれの中で見ましたら、そういう調整する余裕を持つような組合、どこもないんですよ。これは資料を見てもらって結構だと思います。それぞれ被扶養者の手帳を持たれた方のウエートが七〇%から八〇%占めておるのです。そういう点で、前まで余り健保としてはこの問題を提起しなかったけれども、ここまで逼迫してきたからこそ初めて、もう自力ではちょっとむずかしいということから、ぜひ政府としてもそういう原爆対策の一環という角度から見るならば何らかの配慮があっていいんじゃないかということからの相談というか、お願いがあったと私は思います。したがって、いまお話を聞いておりますと、要するに赤字をつくっていけば出るような感じもしますし、だから、そういうことでありますならば、いかに赤字をつくり出すかということで健保にもう少し研究しろと私は帰ったら報告でもしたいぐらいの感じがするわけです。やはりそういうことではなしに、原爆被爆者対策の中の一つに、これは付随的ですけれども、どうしてもこれとのつながりの中であるわけですから、そういう意味ではほかの都道府県の健保組合とこれは違うのですから、長崎における健保組合なるがゆえにそういう医療費の増が出てくるわけですから、広島もそうだと思いますけれども、そこらあたりでひとつ何らかの研究、検討をぜひお願いしたいと思います。もし、それがどうしてもできないなら、これはまたお互い知恵をしぼって、政府からいかに――私は余りこんなことを言うことはよいことじゃないと思いますよ。いかに操作して赤字をつくっていくかということの中で国の補助金をもらうような、そういうやり方は私は少なくともしてはいかぬと思います。だから、前向きな意味での御検討をひとつお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
#342
○石野政府委員 せっかくの御提案でございますので、検討しないというわけでございませんけれども、実は長崎市に所在します健保組合でも大変経営状態のいいもの、同じ原爆被爆者を抱えながらよいもの、悪いもの、約半々になっておるわけです。そういう実態を見まして、それではいい組合についても同じように考えなければならぬのかということも出ますし、私どもの基本的な考え方は、健保組合は健保組合としてみずから運営をするという基本原則に立っていって、なおかつその後の事情変更によってどうしても健保組合として成り立たないというものについて政府がてこ入れをするという考え方は、保険のサイドから見ますとどうしてもそれにこだわらざるを得ない。原爆対策そのものとしていろいろお考えになるのは、これは私どもよくわかりませんけれども、少なくとも医療保険一般としてとらえた場合に、その問題だけに着目して行うということもなかなかむずかしいという気持ちでございます。
#343
○小渕(正)委員 保険制度という立場からながめればそういうことしか言われないということでしょうけれども、長崎の場合に、確かに財政的に逼迫してない組合も一、二あります。規模が少さいんですよ。話にならぬのです。そういうところは助け合うような能力もないのです。まず、被保険者の数から言っても、そういうところと比較したら問題にならぬわけです。同じ九組合の中で一部ありますよ。しかし、それは二百人か三百人の集団の組合でありまして、三けた以上ですか、そういうところのほとんどがみんな、七割、八割以上がそういう大きな影響を受けているわけでありますので、そういう点で申し上げたわけであります。したがって、私もこの点についてはまた健保の関係者の皆さんとも今後いろいろ御相談したいと思いますが、ただ政府は余りかたくななことで、どうしてもそういうことだけであるならばまたそれなりの対応を考えなければいかぬと思いますけれども、少なくとも長崎という被爆地域における健保組合の一つの悩みとしてこういう問題が出されている。健保は自前でやるべきだからどうだこうだということだけで、余りにもそういう冷たい姿勢だけで果たしていいのかということを私は問いたいわけであります。制度の立て方、中身だけから見るならば、確かにお役所ですからどこを突いても絶対不備がないような形でしかできないという意味はわかりますけれども、被爆者対策という特殊な状況の中でこういう問題が発生しておるわけでありますから、その点は角度を変えた形での検討方をぜひお願いしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
#344
○野呂国務大臣 健保組合に対しましてのあり方は、局長が答えております立場をとってまいらざるを得ないと思います。しかし、原爆対策の立場から、何かそういう非常に財政的な圧迫が加わっておる、それに対してはどういう対応をしたらいいのかというのは別途の問題として検討していかなければならないのではないか、こういうように考えるわけでございます。
#345
○小渕(正)委員 いまの大臣のお話に期待いたしまして、この問題は終わらしていただきたいと思います。
 あと一つ最後に、これも実務的な問題ですが、先ほどの委員の御質問の中にもあったと思いますけれども、健康管理手当の支給対象になる場合の診断書が非常にむずかしい。一般の医者と専門的なあれと、むずかしいからもう少し平易にすべきではないかとかなんとか先ほど出ておりました。長崎の例を挙げますならば、あれは地方自治体が指定するのですかね、確かに指定医療機関の証明をもらって出すようになっているわけですが、その中に非常にむらがあるのですね。どちらかというと、こういうものを専門的に取り扱っているところとそうでないという意味でのむらならまだわかりますけれども、特定の病院とそうでない病院とのむらが非常にあるのです。これは非常に特異な現象として長崎で出ているのです。だから、指定されたこちらの病院に行ったときは、まだそれに該当するかどうかということで書いてもらえなかった、ところが、こっちの病院に行ったらすぐ書いてもらえた、そういう現象が非常に特徴的に集中して出てきておるのがあるのです。まして、先ほど言われましたように、全国的に見たならば、診断書を書く項目が何かむずかしいようでありますけれども、少なくとも開業されている指定病院であるならばそれがさつと書けるような状態に様式、中身をしていくということも大事だと思いますが、こっちの病院では書いてもらえぬけれどもこっちの病院なら書いてもらえる、そういう不均衡は余り好ましいことではないと思います。したがって、長崎の場合にはこういう問題を専門に扱っている原爆医療センターがあるわけでありますから、そういう――確かに地域性を考えるならばそれぞれの地域における指定をしていく必要があると思います。しかし、そういうことになると、余り扱っていない医院と、しょっちゅうそういう人を扱っている医院とのアンバランス、むらがまた出てくるのではないかという気もしますけれども、やはりそういう意味ではでき得る限り公立的な、地方公共団体の公立病院みたいなところをどこか指定して、手帳を持たれる人によってそういうむらが出てくるようなことだけは好ましいことではないので、そこらあたりはこれからの検討課題として、ぜひこれも運営の中の一つとして考えておいていただきたい、かように思いますが、いかがですか。
#346
○大谷政府委員 確かに全国的なむらの問題は困りますので、先ほども申し上げましたように、ことし初めて長崎で研究会を開催して先生方の御意見等も調整いたしたい、また、様式等につきましても、これからできるだけ原爆医療審議会の御意見も聞きながら、そういうことのないように努力いたしてまいりたいと思います。
#347
○小渕(正)委員 終わります。
#348
○葉梨委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#349
○葉梨委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 医療保険制度に関する小委員会において、医療保険制度に関する件調査のため、来る四月九日、参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#350
○葉梨委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
 なお、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#351
○葉梨委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
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