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1979/04/04 第91回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第091回国会 法務委員会 第12号
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1979/04/04 第91回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第091回国会 法務委員会 第12号

#1
第091回国会 法務委員会 第12号
昭和五十五年四月四日(金曜日)
    午前十時十四分開議
 出席委員
   委員長 木村武千代君
   理事 金子 岩三君 理事 中村  靖君
   理事 山崎武三郎君 理事 稲葉 誠一君
   理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君
   理事 柴田 睦夫君
      上村千一郎君    熊川 次男君
      白川 勝彦君    楯 兼次郎君
      飯田 忠雄君    長谷雄幸久君
      栗田  翠君    河野 洋平君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 倉石 忠雄君
 出席政府委員
        皇室経済主管  中野  晟君
        法務政務次官  平井 卓志君
        法務大臣官房長 筧  榮一君
        法務省民事局長 貞家 克己君
 委員外の出席者
        内閣総理大臣官
        房参事官    鈴木 昌雄君
        宮内庁長官官房
        審議官     勝山  亮君
        外務省国際連合
        局企画調整課長 小西 芳三君
        大蔵省主税局税
        制第三課長   鈴木 達郎君
        大蔵省銀行局銀
        行課長     足立 和基君
        自治省行政局振
        興課長     木村  仁君
        自治省税務局市
        町村税課長   浅野大三郎君
        最高裁判所事務
        総局家庭局長  栗原平八郎君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月四日
 辞任         補欠選任
  木下 元二君     栗田  翠君
同日
 辞任         補欠選任
  栗田  翠君     木下 元二君
    ―――――――――――――
四月一日
 国際捜査共助法案(内閣提出第八二号)
同月二日
 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する
 法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八三
 号)(予)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 民法及び家事審判法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第五八号)
 小委員長からの報告聴取
     ――――◇―――――
#2
○木村委員長 これより会議を開きます。
 証人及び証言等に関する小委員長山崎武三郎君から発言を求められておりますので、これを許します。山崎武三郎君。
#3
○山崎(武)委員 証人及び証言等に関する小委員会における調査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 この小委員会は、当初、第八十四回国会において、証人及び証言等に関する調査を行うため設置されたものであります。
 これより先、本院は、第八十一回国会において、アメリカにおける国政調査権の行使及び議院証言法の運用等の実情視察のため、法務委員六名をもって構成する議員団を派遣し、次いで、第八十二回国会本委員会理事懇談会において、アメリカにおける視察の成果を踏まえ、議院証言法改正について検討を行うため、各党の改正要綱を提出することを申し合わせたのであります。
 小委員会は、この申し合わせにより提出された各党の要綱及び小委員長私案として提出された「議院証言法等の改正要綱」を検討し、また、参考人として学識経験者、弁護士等から意見を聴取する等の審査を行い、さらに第八十七回国会においては、自民党案として小委員長から提出された「議院証言法等の改正要綱(案)」について、文書による各党の意見が表明される等審査を重ねてきましたが、結論を得るに至らなかったのであります。
 かくて本委員会は、今国会において証人及び証言等に関する調査をさらに進めるため、去る二月十五日、山崎武三郎君を小委員長とし、小委員、上村千一郎君、金子岩三君、佐藤文生君、白川勝彦君、中村靖君、保岡興治君、楯兼次郎君、横山利秋君、飯田忠雄君、柴田睦夫君、中村正雄君及び河野洋平君の十三名を構成員とする小委員会を設置したのであります。
 小委員会においては、さきに小委員長から提出された「議院証言法等の改正要綱(案)」を原案として、各項目ごとに審査を行い、一部を除いて合意を得ましたのでその経過並びに結果について御報告申し上げます。
 まず、合意を得ました点について申し上げます。
 第一は、「証人喚問の決定は、出席委員の過半数でこれを決する。ただし、理事全員の合意を得ることを要する。」とする原案の削除についてであります。本項については、不要とする意見、ただし書きについては理事会の慣行にゆだねるべきであるとする意見、ただし書きを削除し本文のみとすることは現行の慣行が消滅するおそれがあるとする意見等があり、協議の結果本項は全文を削除し、国会法第四十九条、第五十条及び理事会の慣行等の現行の手続によることとしたのでありま・す。
 第二は、「証人を召喚するに当っては、一定の猶予期間を置くとともに、あらかじめ尋問事項を通知しなければならない。」としたことであります。本項後段は、原案では「尋問内容を通知しなければならない」となっていたのでありますが、その「尋問内容」を「尋問事項」に改めたのであります。
 第三は、「証人は補佐人を選任することができる。1 補佐人は一名で弁護士を原則とするが、弁護士以外の者であっても許可することができる。2 補佐人は証人の証言に立合い、憲法及び法律上の権利について助言することができる。」としたことであります。本項については、補佐人は発言できないことを明らかにすべきであるとの意見がありましたが、原案のとおりとなったのであります。
 第四は、「1 宣誓前証人に、宣誓拒絶の権利及び罰を告げなければならない。2 宣誓した証人には、尋問前に証言拒絶の権利及び罰並びに偽証の罰を告げなければならない。」としたことであります。本項は原案のとおりであります。
 第五は、「議院証言法において引用している民事訴訟法の規定(第二八〇条ないし第二八二条)を刑事訴訟法の規定(第一四六条ないし第一四九条)に改める。」としたことであります。本項については、現行法の立法趣旨にかんがみ改正を不要とする意見がありましたが、原案のとおりとなったのであります。
 第六は、「証人の重要性、健康状態等を考慮の上、議院外に証人の出頭を求め又はその現在場所で証言を求めることができる。」としたことであります。原案では第二項において「委員派遣の決定については、委員の三分の二以上が出席し、その三分の二以上の賛成を要する。」となっていたのでありますが、これを削除し、現行の証人喚問の決定と同様の手続によることとしたのであります。
 第七は、「証人に対する保護措置として、1証人威迫に対する処罰規定を設ける。2 証人等の被害についての救済措置を講ずる。」としたことであります。本項は原案のとおりであります。
 次に合意を得なかった点について申し上げます。
 第一は、尋問事項の制限に関する事項で、その原案は「尋問が次の事項に当たるときは、これを制限することができる。1 喚問の趣旨に関連しない尋問、2威嚇的又は侮辱的な尋問、3 すでにした尋問と重複する尋問、4 意見を求め又は議論にわたる尋問、5 証人が直接経験しなかった事実についての尋問。」となっております。本項については、立法化すべきではないとする意見等があり、合意を得られなかったのであります。
 第二は、証人の告発に関する事項で、その原案は「証人を告発するには、委員の三分の二以上が出席し、その三分の二以上の賛成を要する。」となっております。本項については、定足数に係る部分を削除し、議員の除名等が、出席議員の三分の二以上の多数の議決によるとされていること等を考え、「証人を告発するには、出席委員の三分の二以上の賛成を要する。」と改めようとする意見が多かったのでありますが、一部に、三分の二の多数を法定すると党利党略的な告発・不告発を容認するおそれがあるとの意見があり、結局合意を得られなかったのであります。
 なお、日本社会党から、議院が国政調査権に基づき、院議で政府に資料の提出または説明を求め、政府がこれを拒否する場合は、証言法の定めと同様、政府は文書をもってその理由を明らかにすべきことを法制化する等四項目にわたる問題について、また日本共産党・革新共同から、証人の不出頭、書類の不提出、宣誓及び証言拒絶の罪の刑を三年以下の懲役とする等三項目の問題について改正すべきであるとの意見がありました。
 以上御報告申し上げます。
#4
○木村委員長 以上で小委員長の報告は終わりました。
 ただいま小委員長から報告のありました件につきましては、私から議院運営委員長に十分お伝えいたしたいと存じますので、さよう御了承願います。
     ――――◇―――――
#5
○木村委員長 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所栗原家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#7
○木村委員長 内閣提出、民法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎武三郎君。
#8
○山崎(武)委員 民法の改正についてまずお伺いいたします。
 配偶者の相続分を引き上げることとした理由及び引き上げ幅についての合理的根拠は何か、御説明願います。なお、配偶者の優遇措置については、夫婦の住居であった建物について生存配偶者に法定の居住権を認めるなどの別の方法も考えられたと思いますが、いかがでしょうか。
#9
○平井政府委員 お答えいたします。
 配偶者の相続分を引き上げることにした理由及び引き上げ幅についての根拠は何かということでございますが、最近一夫婦当たりの子供の数が非常に減少いたしておりまして、配偶者の相続分が子供一人当たりの相続に対し相対的に減少していること、また婚姻共同生活における配偶者の協力と貢献に対する評価が非常に高まりまして、これを相続に反映させるべきであるとする意見が国民の間に有力となってきたこと等を考慮いたしまして、外国の法制等も参考として、配偶者の相続分を、子とともに相続する場合は二分の一、直系尊属とともに相続する場合は三分の二、兄弟姉妹とともに相続する場合は四分の三に、それぞれ引き上げるものとしたわけであります。
#10
○貞家政府委員 ただいまの後段のお尋ねでございますが、たとえば、相続分の引き上げ以外に配偶者を優遇する措置といたしまして生存配偶者に居住権を与えるというような方法も確かにございます。
 このような方法についても、法制審議会におきまして十分討議をされたわけでございますけれども、居住権についての保護というような特殊な立法措置を講じますと、その居住権自体の法律上の性質はいかなるものであるか、その終期はいつまでであるか、それは一体相続分とどういう関係があるのかというようないろいろな法律上の問題が出てきたわけでございまして、もしこれを認めますと、いわば全く新たな用益物権を考えるというようなことにもなりかねないわけでございまして、そういった複雑な仕組みにいたしますよりは、むしろ相続分を単純に引き上げをする、少なくとも二分の一の相続分を持っておりますれば、居住建物の所有権を共同相続いたしましても、持ち分に応じて使用収益するその権能によりまして十分その居住の保護は与えられる、不都合は生じないであろう、むしろ端的にそういったものを含めて相続分を引き上げるというような立法の方がよろしいのではないか、そういう結論に達したわけでございます。
#11
○山崎(武)委員 兄弟姉妹が相続人となるべき場合の代襲相続人の範囲を兄弟姉妹の子までに限定した理由は何であるか、死別した配偶者にかわって相続人となるいわゆる配偶者の代襲相続権については検討されなかったのか、お伺いいたします。
#12
○平井政府委員 まず最初の、兄弟姉妹が相続人となるべき場合の代襲相続人の範囲を兄弟姉妹の子までに限定した理由は何かというお尋ねでございますが、現在の民法では代襲相続人の範囲は無制限でございますので、兄弟姉妹の代襲相続においては被相続人と何のかかわりもなかった者が相続人となりまして、しかもその相続人を探すために遺産分割がきわめて遅延する等の弊害を生ずる場合が少なくございませんので、これを是正するために代襲相続人の範囲を被相続人のおい、まためいまでに制限することとしたわけであります・
 いま一つ、死別した配偶者にかわって相続人となるいわゆる配偶者の代襲相続権についてはどうかということでございますが、この問題につきましては法制審議会におきまして審議されたわけでございますが、代襲相続権を一般的に認めますと、夫に先立たれた妻が再婚した場合のみならず、妻に先立たれた夫も妻を代襲して相続人となる等の不合理な結果を生ずる等の理由で、結局立法化は見送るものとされたのであります。したがって、今回の民法の改正法律案にはこの点の改正は含まれておりません。
#13
○山崎(武)委員 寄与分の制度を新たに設けた理由及びその内容について具体的に御説明願いたい。相続人以外の者でも、死別した長男の妻、内縁の妻、事実上の養子等の寄与について、この寄与分を認めるべき場合が多いと考えますが、いかがでしょうか。
#14
○貞家政府委員 相続人の中におきましても、たとえば被相続人である父を助けて農業に従事するあるいは商店の経営に従事をいたしまして、いわば特別の寄与をした、それによって被相続人たる父親の財産の維持、増加に著しい貢献をしたという者と、共同家庭生活から離れまして他で独自に仕事をしているというような者もいろいろあるわけでございます。
 配偶者にいたしましても、いわば内助の功にすぎないというものもありますし、またいわゆる共かせぎ、共働きということによってその得た収入を家計に入れるというような場合もあるわけでございまして、それによって被相続人の財産の維持、増加に貢献をした、そういうようないろいろなものがあるわけでございますが、そういったいわば特別の寄与をいたしました相続人につきましても、現行法のもとにおきましては法定の相続分以上の権利を主張することはできないわけでございまして、これを貫きますと、実質的な衡平に合致した遺産の分割というものが実現されないといううらみがあるわけでございます。
 そこで、最近の家庭裁判所におきます遺産分割の実務におきましては、いろいろそういった寄与分というものを肯定するような審判例もあらわれておりますけれども明文の根拠がございませんので、その理論構成なりその範囲についていろいろ無理があるようでございます。
 そこで、こういった事情を考慮いたしまして、いま申し上げましたように共同相続人に、たとえば被相続人の事業に関する労務を提供するあるいは財産上の給付をするあるいはまた被相続人の療養看護というようなものによる、その他の方法もございますが、そういった方法によって被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者がありますときは、その者に遺産分割に当たって協議で定めあるいは家庭裁判所の審判で定める額のものを与える、こういうのが寄与分の制度でございます。
#15
○山崎(武)委員 遺産の分割の基準について、新たに相続人の「年齢、心身の状態及び生活の状況」を加えた理由は何か、現行の「その他一切の事情」で賄えないのか、お伺いいたします。
#16
○貞家政府委員 確かに御指摘のとおり、現在の民法九百六条におきましても「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の職業その他一切の事情を考慮してこれをする。」ということになっているわけでありまして、一切の事情を考慮しなければならないわけでございます。
 ただ、一切の事情の中でも、相続人の年齢でございますとか職業あるいは心身、生活の状況というようなものを考慮しなければならないのは当然でございまして、それによって年少者あるいは心身障害者であるとかあるいはまた生活困窮者についてそれぞれその生活の実情に即応した遺産分割のやり方をやる、それに適した財産を取得させるということが必要であろうと思うのでございます。このことは当然のことと言えば当然でございますけれども、遺産分割の基準というのは、これは法律上は家庭裁判所の審判の際のよるべき基準という形になっておるわけでございますけれども、まず第一義的には相続人間の協議が行われます。その協議のよって立つ基準ということにも相なるわけでございまして、そういったきめ細かくそれぞれの相続人の実情に応じた遺産分割をするということが望ましいということを明らかに示す。もっとも、それによって当然に相続分の増減をするわけではございませんけれども、年少者には年少者に応じた財産を取得させる、心身障害者がございましたらそれに応ずるような財産を取得させるというような考慮を払って遺産分割をするようにということを、いわば法律で従来よりもより明らかにしたという趣旨でございます。
#17
○山崎(武)委員 遺留分を改定した理由及びその内容について説明されたい。
#18
○貞家政府委員 現在の民法千二十八条によりますと、直系卑属だけが相続人であるときあるいは直系卑属と配偶者が相続人であるときに二分の一、つまり被相続人の財産の二分の一は自由な処分を許さない遺留分ということになっておりまして、その他の場合は三分の一ということになるわけでありまして、その他の場合と申しますのは、配偶者だけあるいは配偶者と直系尊属、配偶者と兄弟姉妹あるいは直系尊属だけという場合にはいずれも三分の一になっているわけでございます。
 兄弟姉妹は本来遺留分を受けませんからこれは除かれるわけでございますけれども、そこで現在のたてまえは要するにどういう考え方で成り立っておるかと申しますと、直系卑属というものをいわば第一順位の相続人といたしまして、これが相続人に入っている場合には二分の一という財産を確保する、それ以外の場合、配偶者だけとか配偶者と直系尊属というような場合にはすべて三分の一ということになっているわけでございますが、今度配偶者の相続分を二分の一に引き上げるということにいたしますと、この相続分と少なくとも同等でなければならないというその均衡上、遺留分につきましても配偶者と直系卑属というものを同等に取り扱いまして、いままで配偶者だけ、配偶者及び直系尊属、配偶者及び兄弟姉妹という場合の三分の一を二分の一に引き上げたということになるわけでございまして、結果といたしまして、直系尊属だけが相続人になる場合におきましては従来どおり三分の一というふうに取り残されたかっこうになっているわけでございます。
#19
○山崎(武)委員 改正案は、非嫡出子と嫡出子の平等相続分の問題、夫婦財産制の問題などについては考慮されていないが、その理由は何であるかをお伺いいたします。
#20
○平井政府委員 昨年七月に公表しました「相続に関する民法改正要綱試案」におきましては、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分と同等とするものとしておるわけでございますが、これに対する各界の意見及び一般の反響においてかなりの反対がございまして、また総理府が実施しました世論調査においては、反対の意見が賛成の意見を大幅に上回っておるわけであります。そこで、これらの状況を考慮して今回は改正を見送ることとしたわけであります。
 また夫婦財産制につきましては、現行法を改めて共有制を採用すべきかどうかについて多くの問題がございますので、これについての改正をするよりは配偶者の相続分を引き上げることにより配偶者を優遇することといたしたわけであります。
#21
○山崎(武)委員 家事審判法の改正について二、三お伺いいたします。
 まず第一に、乙類の審判事項として新たに寄与分を定める処分を加えておりますが、調停なども考えますと、家庭裁判所の負担が相当ふえると考えられますが、どのような対策を考えておられるのかお伺いいたします。
#22
○栗原最高裁判所長官代理者 今回の改正によりまして、寄与分を定める処分が新たに審判事項として加えられ、寄与相続人の申立権が認められるようになりますれば、この種審判の申し立てが相当なされるであろうということは当然予想されるところでございます。
 しかしながら、これに伴う事務負担量について考えてみますと、これまでも実務におきましては寄与分に関する主張を当事者からなされるという例が少なくないわけでございます。また判例の傾向などを見ましても、原審である家庭裁判所が相続人の一部の遺産の維持形成に対する寄与の事実を認めながらこれを考慮しないで法定相続分に従いまして遺産を分割いたしますと、審理不尽であるとして取り消しする高裁の決定例が相次いであらわれておるわけでございます。
 したがいまして家庭裁判所といたしましては、調停手続といわず審判手続といわず、当事者がもし寄与に関する事実を仮に主張いたしませんでも、進んで寄与に関する事実があるかどうかを審理し、遺産の分割に関する実質的な衡平を図るということに現在すでに努力いたしておる次第でございます。今回立法されます寄与分に関する制度は、実質的にはこのような家庭裁判所の実務の取り扱いを裏づけていただけるものでございますし、その内容点におきましてもほとんど変わりがないわけでございます。
 したがいまして、今回これが法文上独立の審判事項として定められたからと申しましても、その審理の対象であるとかあるいはその程度に格別の差異は生じないのではなかろうかというように考えます。また他方、今回の改正によりまして、寄与分に関する法律上の根拠がはっきりと与えられる、その要件なり手続が整備されるということと相まちまして、これまでよりも審理の上において軽減される、審理がしやすくなるという面もあるのではなかろうかというように期待いたしておるわけでございます。
 このようにプラス・マイナスをあわせ考えますれば、審判事項として新たに加えられたことに伴いまして格別事務負担量が増大することはないのではなかろうか、全体としてはそれほど増大することはないのではなかろうかというように考えます。ただ、今回の改正案が発表されまして寄与分に関する国民の期待が非常に高まりつつある現状等をかんがみますれば、今後の審判の推移をよく見きわめながら、それに対して適当な対策を講じていきたい、このように考えている次第でございます。
#23
○山崎(武)委員 今回新たに審判前の保全処分の制度を設けておりますが、その理由及び内容について御説明願いたい。また、現行の仮の処分の運用の実情について御説明願います。
#24
○貞家政府委員 家事審判はその対象事項が関係人の日常の生活にきわめて密接な関係を有しておりますので、事件の迅速な処理ということが要請されるわけであります。
 しかしながら、近年生活関係の複雑化あるいは価値観の多様化というようなことを反映いたしまして、家事審判事件の内容について利害関係の対立が非常に激しくなる、いろいろ複雑困難の度が深まりまして審理期間がむしろ長期化する傾向が見受けられるのであります。そういたしますと、審判が確定することによって法律関係が形成されるのでありますが、それまでの間に関係人の財産に変動が生ずるとか、あるいは後日審判に基づきまして強制執行するということが困難になってしまう、あるいはまた審判手続の進行中において事件関係人たとえば子供の生活上の危険が生ずるというような事態も少なくないのであります。
 こういった事態が発生するのを防止するためには、審判の確定前に随時必要に応じまして一応の仮の処分によって財産の処分を禁止するとかあるいは生活費の仮払いを命ずるというような処分をいたしまして、これを強制力を持って実現する道が開かれでなければいけないと思うのであります。ところが、現在審判前の仮の処分というものが家事審判規則上ございますけれども、それについて執行力を認めがたいという解釈でございます。そこで、そういった家庭裁判所の実務家の方あるいは法律家その他の一般の方々から、何とかして審判前の仮の処分というものを法律上の制度に高めて強制力を持たせるようにしてほしいという御要望が非常に強くなっているのであります。そこで、今回仮の処分につきまして法律上の根拠を与えまして強制力を認めるようにしようというのが今度の改正の理由でございます。
 そこで、現在家事審判規則に基づいて行われております強制力を持たない仮の処分というものは、年間ほぼ四十件ないし五十件程度でございます。この件数が少ないのは、やはり効力について先ほど申し上げました消極説、強制力を持たないという説が定着しておりますので実効性が乏しいということもあるのではないかと思うのでございます。現在、各種の審判事項につきましてそれぞれ家事審判規則上仮の処分の規定がございますが、事件別に見ますと、遺産分割事件についての遺産管理者の選任であるとか遺産に属する物件の処分禁止というようなこと、あるいは夫婦の婚姻生活に要する費用の分担に関する事件につきまして仮に金銭の支払いを命ずるというような処分が大多数を占めております。そのほか禁治産宣告、準禁治産宣告におきまして財産の管理者の選任というようなものも比較的数多く見られるようでございます。
#25
○山崎(武)委員 遺産分割等の審判事件において、本審判に先立ち相続人に対し遺産の競売その他の換価を命ずることができるとする新たな措置を設けておりますが、その理由及び内容について御説明願います。
#26
○貞家政府委員 現在、遺産分割におきまして終局審判に先立って換価命令、換価処分をするという手続は家事審判規則にございますが、この規定は非常に抽象的な表現をとっておりますため、たとえばこれを根拠として果たして競売の手続にのせることができるのかどうか、換価のためにどういう方法をとることができるか、換価を命ぜられた者がどういう地位、権限を持つかというようなこと、あるいは不服申し立てができるかどうかというような点が非常に不明確でございまして、今回家事審判法の中に換価処分の根拠規定を設けまして、競売を命ずるということをはっきりさせることのほか、換価処分手続の整備を図る。もちろんこれは最高裁判所規則によって具体的に決められることになるわけでございますが、そういった手続の整備を法律の根拠を与えて図るという趣旨でございます。
#27
○山崎(武)委員 今回、過料及び罰金の額を相当引き上げておりますが、その理由及びその引き上げ幅の根拠について御説明願います。
#28
○貞家政府委員 今回家事審判法上の過料、罰金について引き上げをいたしております。内容は、事件関係人の不出頭に対する制裁としての過料、それから家庭裁判所のいわゆる履行命令等の不遵守に対する過料、それから調停委員会または家庭裁判所による調停前の措置として必要な事項を命ぜられた者が命令に従わなかった場合の過料。罰金につきましては、家事調停委員等についての評議の秘密を漏らす罪、参与員等についての人の秘密を漏らす罪、こういったものについてそれぞれ引き上げをしているわけでございます。
 これは、現在の過料、罰金の額は昭和二十六年に定められたままでございまして、今日まで約三十年間を経過しております。その間経済事情も非常に変動がはなはだしいわけでございまして、たとえば平均賃金をとりましても、その間二十倍程度の値上がりとなっているわけでございます。そういった状況のもとにおきまして、現行の額を維持するということでは過料及び罰金が制裁措置としての機能を十分に果たし得ないということが言えると思うのでございます。そのため、現に昭和二十八年には家庭裁判所関係の過料事件が百四十六件ございましたのが、最近数年間は三件ないし五件という程度になっているわけでございまして、これはやはり機能を十分に果たし得ないということから活用されなくなったというふうに考えられるわけでございます。
 そこで、今日の時点でその額を見直しまして、他の同種の、類似の制度等を考慮いたしまして、たとえば昨年成立いたしました民事執行法における事件の当事者の呼び出しに対する不出頭を理由とする過料が十万円以下及び五万円以下というふうにされているというような点にかんがみまして、今回の改正のように十万円以下あるいは五万円以下という金額を定めた次第でございます。
#29
○山崎(武)委員 終わります。
#30
○木村委員長 横山利秋君。
#31
○横山委員 民法の改正は遺産相続に関する問題でありますが、大変偶然とはいいながら政務次官がこの遺産相続の争いの真っただ中にいらっしゃるということを週刊朝日で拝見をして、偶然のことながら一番政務次官がよくこの種の問題をみずから体験をなさっているという感じを久しゅうしたわけであります。
 これによりますと「高松地裁で係争中の平井一族関連の訴訟を調べてみて驚いた。実に係争中の訴訟は民事事件だけで二十二件、刑事事件も含めると二十八件にのぼるのである。申立人と相手方の関係はあまりに複雑多岐で、とても収録できないが」「大ざっぱにいえば、卓志氏が佐代子さん及び義理の叔父たちと訴訟合戦をしている。片方が「カラ出張などで会社の金を横領した」と訴えれば、こんでは逆に誣告罪で訴えるといったイタチゴッコ」である。これがお気の毒にも選挙にも多大の影響をもたらし、カヨコさんですかサヨコさんですか、これが選挙に立候補するというのでありますか。「この訴訟の一審判決が四月二十四日に予定されている。」原告というのは佐代子さんでございますが、「もし原告側が、勝訴することにでもなれば、西日本放送の役員は総入れかえとなる可能性が強く、参院選の直前だけに卓志氏の受ける打撃は小さくない。」こういうふうに出ておるわけであります。
 一体、民法改正をいま私どもはしようとしておるのでありますが、その意味では実にいま係争の真っただ中でこの種の法律案について一番身にこたえていらっしゃるあなたの感想を伺いたいと思いますが、ございましょうか。
#32
○平井政府委員 ただいま横山委員、週刊誌を手にお持ちになっての御質問でございまして、ただこの席で私が申せますことは、いろいろな利害関係人含めまして数十人の関係者もおります非常にプライベートな内輪の話でございまして、事の是非善悪についてはこの場で私が感想なり見通しを申し上げるわけにまいりませんが、いずれにいたしましても大変皆さん方に御心配をおかけしたこと、私自身の不徳のいたすところではございますが、結果的に申しまして、すべて裁判所その他において、公式の機関において決着がつくであろうというふうに考えておるわけであります。
#33
○横山委員 私がお聞きしたいのは、今回法律を改正しようとしておる、改正点は政務次官御存じのとおりでございますが、この改正に際して、みずからの体験のうちで、こういう点がなければならないとか、この改正点については自分の体験上こう思うとかいうようなことはございますまいか。
#34
○平井政府委員 何分にも関係者が多うございまして、本席で私の個人的見解はひとつ御容赦いただきたいと思います。
#35
○横山委員 まあしかし、佐代子さんの言い分によれば、平井太郎氏の遺産をめぐって長年の争いが錯雑して、佐代子さんが「卓志側の遺産横取りの陰謀はいずれ法廷で明らかになる。係争中の裁判はすべて、こちら側が有利に展開している。卓志が平井の名を名乗っていなければともかく、父の後継者として、父の名声にドロをぬっていることが我慢できない。父の業績を継承できるのは私しかいない。」こういうひどい言い方がされておるわけです。
 これが事実かどうか私はよくわかりませんが、少なくとも週刊誌に法務政務次官の名前を挙げて、遺産横取りの陰謀はいずれ明らかになるということが天下に、週刊朝日に出ておりますから、私は、この法務委員会において民法改正のときに、あなたがいささかみずからの潔白といいますか正当性を述べる機会を国会議員として提供しようという気持ちも片りんにあるわけでありますから、そうでなければ、率直に言えば民法改正を政府側を代表して答弁する資格がないわけであります。そういう点では、いささかみずからの立場というものを弁ずる機会を上げて、あなたのお話を聞いて、それならば政府委員としてあなたは副大臣ですから、あなたに質問する価値はあろうと思うのでありますが、そういう点でお伺いしておるわけであります。
#36
○平井政府委員 何分にも係争中でございまして、具体的な事案について多くを申し上げる立場にございませんが、ただいま横山委員大変御好意ある御指摘をちょうだいしました点について、私も法務省の政府側の委員として御答弁いたします以上、私なりに明確に申し上げ得ることは、私自身についていささかの違法性、脱法性の一かけらもないことを御答弁申し上げておきます。
#37
○横山委員 それだけでは事実関係はわからないのでありますが、これはどうしても政府を代表して質疑にお答えになります政務次官として、一言この点に触れなければ、私どもは素直にあなたに御質問する気持ちが民法についてはなれないのではないか、そういう危惧がいたしましたので、大変あなたにとってはいやな質問ではあるかもしれませんけれども一言申し上げたような次第でございます。
 さて、民法の改正についてでありますが、時間の関係上九州大学の有地先生の一つの論文の引用を少しいたします。
  「家」制度は、「家」構成員が家長によって統
 率され、祖先から子孫へと「家」の超世代的な
 永続が予定されていたので、「家」の存立の基
 礎をなす家産、家業が長男子に一括承継される
 という仕組みをもった。したがって、「家」は
 家長を軸に家長権に服する構成員が一体感をも
 ってまとまり、男子優先の理念が支配し、ヨコ
 の婚姻関係よりもタテの親子関係が重視され
 る。「家」制度の下では、女性は婚姻により、
 嫁として夫の「家」に入り、家長の権限に服す
 る従属的地位におかれ、妻の地位は低かった。
 明治民法は第四編、第五編で、このような「家」
 を法定し、妻は夫権に服し、未成年者、禁治産
 者、準禁治産者と同様、夫の許可なくしては自
 分の判断で独立に有効な法律行為をなしえない
 無能力者として取り扱われる。その反面、夫は
 妻の財産についても管理、使用、収益する権利
 をもち、また、同居義務から貞操義務ならびに
 離婚原因にいたるまで夫の優越を認め、母の親
 権行使も父より劣位におかれる。さらに、相続
 においても、妻は他家から入った嫁ということ
 のために、亡夫に直系卑属があれば絶対に相続
 人になりえないなど劣位におかれていたのであ
 る。
  もとより、このような前近代的な男女不平等
 に立つ家族法は、現行憲法の第一三、一四条お
 よび第二四条などの基本理念に反する。そこ
 で、この憲法の基本理念に従い、戸主権、家督
 相続、「家」は法制度上完全に廃止され、あら
 たに婚姻は両性の合意のみで成立し、夫婦が同
 等の権利を有することを基本とし、個人の尊厳
 と両性の本質的平等の趣旨に従い、現行家族法
 が改正、施行され、妻は夫と同等の地位に引き
 上げられ、男女平等が法制上は実現されたので
 ある。この理論的な構成、考え方について、民法改正を提起されました政府は同感でございますか。
#38
○貞家政府委員 ただいまお読み上げの文献、私熟読いたしておりませんけれども、いま拝聴いたしました限りにおきましてはこれは全く同感でございます。
#39
○横山委員 私もそう思うのでありますが、それでは今日の家庭生活において家というものが崩壊をしてしまったと見るべきであるかどうかということなのであります。
 家族とは何か、家とはいま法制的にどういう条件にあるか、また、いまの社会現象は家及び家族についてどういう趨勢にあるととらえるのが正しいか等について御意見を伺います。
#40
○貞家政府委員 現実認識のみならず、それに対する評価を含む非常にむずかしい御質問でございまして、果たしてお答えになるかどうかわからないのでございますが、法律制度としての家というものはもはやないわけであります。もうあり得ないということは全く間違いのないところでございます。
 しかし、家族制度はなくなりましたけれども、いわば家庭の共同生活というようなものを否定するわけにはまいらないわけでありまして、たとえば夫婦とその間の未婚の子供というようなものはやはり一つの単位として考えざるを得ない。いろいろな面につきましても、そういったものは一体として考えざるを得ないわけでございます。ただ、現在の家族構成というような点からまいりまして非常な変化がございます。いわば通常の意味における家庭共同体といいますか家族共同体といいますか、その構成という点につきましてはかなりの変化があるようでございます。
 一つは、先ほど政務次官から御答弁がありました一夫婦当たりの子供の数が非常に減少したということ、これも一つの点でございます。それ以外に家族構成につきまして、いわば世帯の構成割合といいますか世帯の構成員についての顕著な変化がございまして、いわゆる核家族というようなものが非常に多くなっております。核家族と申しますのは、たとえば夫婦と未婚の子をもって構成する世帯、夫婦だけの世帯あるいは片親と未婚の子供だけの世帯、こういったものを核家族世帯と一般に言っているわけでございますけれども、現在は非常にそういったものの占める比率が高くなっております。昭和二十九年度におきましてはそういった核家族が四六・四%、それに対して三世代世帯、三世代と申しますのは、おじいさん、おばあさん、それから父親、母親、それと子供という世帯、これがその他を含めましてそれと同じぐらいの四四・六%ぐらいあったようでございますけれども、五十三年度の統計を見ますと、核家族世帯が六〇%、三世代世帯が二八・一%というように非常に変化をいたしております。この点で、いわば共同家族生活の単位が非常に小さくなったということが言えようかと思うのであります。
 これは一面におきましては、血統による連続体と申しますかそういったものに対する観念、家産というようなものに対する観念が薄らいできたということが言えるかと思うのでありますけれども、また一方では、一人暮らし老人の問題でございますとかいわゆる老人問題というようなもの、あるいは親子間の断絶というような別の点で大きな問題を投げかけているのではないか、私はそういうような感じがいたすわけでございます。
#41
○横山委員 統計的に見る限りにおいては、いまあなたがおっしゃったような二世代がふえて三世代が減っていくということを私も思うのでありますが、それではその流れというものは将来とも加速度がついていくのだろうかということは、ちょと私は疑問に思うわけであります。
 なるほど今回の提案は、子供が少なくなった、したがってお母さんの持ち分をふやすというのが衡平になるという立場であり、それはいわゆる核家族、二世代家族がだんだんふえるからというところに力点を置いておられるようでありますが、一方いまあなたのお話のように、親というものがだんだん家庭から離れて、一人暮らしあるいは別居、そういうようになっていくことが一体望ましいことであろうかどうか。一時私どもはおじいさん、おばあさんのために養老院なりそういう施設をつくることに一生懸命になった時代があるのでありますが、しかし、おじいさん、おばあさんにとっては孫と一緒に生活をしたい、あるいは同じ家庭の中に離れを設けて、少なくとも一緒に同居したいという気持ちが私はかなり強いと痛感をいたしておるわけであります。
 欧米と違いまして、日本における歴史的な慣習や親子関係というものは、必ずしも二世代世帯がどんどんこのままふえていって、そして三世代世帯というものが少なくなっていくのではないのではないか、両立していくわけではないか、両立するのではなかろうか、少なくとも三世代世帯というものは一定線では一定の日本的な状況を続けるのではないか、そういう感じがし、また施策としてもそうあるべきではないか、そういう分析に立ち、かつそのように施策を行うべきではないか、そう思うのであります。
 これは民事局長には分析の面でお伺いをするのでありますけれども、もっぱら政策的な面としては私はそうあらねばならないと思うのでありますが、政務次官どうお考えでございましょうか。私の話をお聞きになっておりましたか。
#42
○平井政府委員 ただいまの御質問でございますが、高齢者社会の問題、二世代、三世代の問題いろいろ含めまして考えましたときには、一応両立し得るのではないかというように考えております。
#43
○横山委員 民事局長、御意見ありますか。
#44
○貞家政府委員 私も恐らく予測としては両立していくのではないか。外国の制度はいろいろございますけれども、国情と申しますか国民感情というものは、それほど器用に外国の物まねをするあるいは一挙にして変わるということはないわけでありまして、従来の家族制度というものから来る抑圧と申しますか、そういった不合理な面を排除するというような方向で非常に速度が速かったわけでございますけれども、こういったものが極端に走るということは考えられないのではないか。これは個人的な感想でございますけれども、私はそういうような感じを持っております。
#45
○横山委員 そういう時期に総理府が、いわゆる家庭の日ということについて問題提起をされました。
 家庭の日についての賛否両論があって必ずしもまとまらなかったそうでありますが、鈴木参事官、家庭の日に関する政府部内の委員会の論争の焦点をひとつ御報告願いたいと思います。
#46
○鈴木(昌)説明員 国民の祝日といたしまして新しく家庭の日を設けるという問題につきましては、総理府におきまして各界各層の有識者による懇談会を設けて御検討いただきまして、三月十八日に総務長官に報告をいただいたわけでございます。
 しかし、この報告では、家庭の日それ自体につきましては賛成が多かったということでございます。これは、ただいま国民の生活が経済成長の結果物質的には一定の水準には達したというふうに見られるわけでございますけれども、また他方で家庭の崩壊と見られるような事象が頻発しているというようなこともあり、また、国民のゆとりとか暮らしの充実といったような価値観も見直されてきているというような状況の中で、国民の一人一人が改めて生活の基盤である家庭というものを見直して、そういう家庭の重要な役割りについて考えることはきわめて大切ではないかというようなことで、家庭の日それ自体については賛成が多かったわけでございます。
 しかし、この家庭の日を祝日にするということにつきましては、賛否両論があって意見の一致を見るに至らなかったということでございます。
 祝日にするということについて賛成する立場からは、家庭の日を祝日にすることによって国民の関心が高まって、家庭の日の趣旨を一層浸透させやすくなる、あるいは、休みということになりますので広域的な行事を行うことなどを通じて地域全体の連帯感を高めることが促進される、効果が期待できるというようなこと等の観点からの賛成でございます。
 反対の立場からは、健全な家庭というのは日々の営みの上で築かれるものであって、特定の一日だけを家庭の日とするのはおかしいのではないかとか、あるいは家庭というのは私事であるから家庭の日は祝日になじまないのではないか、あるいは週休二日制がかなり普及しつつある現状では、祝日を設けるよりもむしろ週休二日制を推進した方がいいのではないかというような観点から反対がございまして、賛否両論というような報告をいただいたわけでございます。
#47
○横山委員 家庭が要するに日本の社会生活の中の一つの重要な基盤であることは言うまでもありませんが、政府が言うところの家庭の日が、ともすれば家庭の中枢にある御婦人にことさら義務感を強調する結果になるのではないかということが心配されると私は思うのであります。
 あなたの方で昭和五十年七月に男女平等に関する世論調査をされたそうでありますが、これによると、家庭では男女は平等かの質問に対して、平等であると答えたものは男性四二%に対して女性は二九%、平均では三五%、平等ではないというものは男性三七、女性四九、平均四四、女性の方が不平等感は著しいが、それでも全体として四割以上は家庭内の妻の現状に対して不平等としているのである。職場においてはなおさらでありまして、職場では、平等であるとするものは一六%、平等でないとするものは五八%という統計が出ておるわけであります。
 家庭というものは、法律で家庭内における義務を押しつけるということであってはならないと思うのでありまして、今日の親子関係というものを考えるときに、ここで改めて民法の「親権の効力」を読んでみますと、八百二十条では「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」八百二十一条では「子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。」八百二十二条では「親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。」「子を懲戒場に入れる期間は、六箇月以下の範囲内で、家庭裁判所がこれを定める。但し、この期間は、親権を行う者の請求によって、何時でも、これを短縮することができる。」八百二十二条では「子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。」
 親権というものは成年に達しない者についてでありますが、いまの、未成年といいながら成年に達する直前の者たちに対して、民法による親権が空文化しているのではないかということを考えるわけでありますが、この民法の親権の監護教育の権利義務、居所指定権、懲戒権、職業許可権、財産管理権と代表権、これら民法が実効的な効果を示しておるかどうかという点については、民事局長どうお考えになりますか。
#48
○貞家政府委員 いまお読み上げになりました条文、確かに、いろいろ子供につきまして、子供を一人の社会人として養育すべき親の職分とでもいうべき事柄であろうと思うのでありますけれども、この権限が全く顧みられないで放置されているというふうには私は考えないのでございますけれども、やはりその度合いと申しますか非常に強力なものとして働いてはいない例が多いというような感じはいたします。ただ、この法律が無視されている、およそ親権に関する規定が無視された社会現象が一般的であるというふうには私は考えていないのでございます。
#49
○横山委員 要するに、気持ちはわかるけれども、民法は親権の効力というものを、居所指定権とか懲戒権だとか職業許可権というものをきわめて明白に断定しておるということなんです。許可を得なければならないというふうな明白な断定というものが、いまの世情に比べてみてそらぞらしく見えるではないか、こういう感じがするわけであります。
 これは、これに違反したらどうのこうのというわけではないけれども、いまの親子関係なり家庭を論ずるに当たって、このそらぞらしさというものはどうしたらいいのか。民法が少なくともこの社会の規範になるとするならば、遊離しておる事実をどう考えたらいいのかというのが私の質問の意味であります。
#50
○貞家政府委員 ただいまの御質問、まさに人の親であります私自身が御批判を受けているような感じがするわけでありまして、やはり親の方の自信と申しますか、これは調和の問題であると思います。
 親としてそういう権限を持ち義務を持つということでございますから、それを十分に果たさなければならない。そのためには憶することなく自信を持ってその権限を行使するということが確かに必要であろうと思います。しかしながら、未成年とはいいましてもこれは意思能力を持ち、一応成長過程にあるとは申しましても希望を持ち、それぞれの考え方を持っている未成年の子の意思を無視するということも親としては非常にやりにくい、また必ずしも妥当ではない面が多いわけでありまして、その調和であると思うのでありますけれども、私自身のことを、感じを申し上げて恐縮でございますけれども、確かに親権者というものの自覚、自信というものについて十分反省してみる必要があるのではないかという感じがいたすわけでございます。
#51
○横山委員 どうも納得できないのですけれども、別にあなたの家庭のことを言っているわけではないのですけれども、あなたも親として、また民事局長として、親との間に遊離感があるというような御趣旨でございますけれども、私は、今後民法の親権というものが、この民法の定めに社会情勢が適合をしていくから、だからこのままでいいんだという論理ならば納得できるのですけれども、この民法の親権の効力というきわめて明白な断定的な規定というものがますます社会から遊離していく可能性がある。この法律の気持ちはわかるけれども、断定的過ぎてますますそらぞらしくなっていく時代ではなかろうか。したがってこの点については今後検討に値するのではないか、そう思うのですが、いかがですか。
#52
○貞家政府委員 御指摘のとおり、親子関係の問題、これは親権に限りません。養子の問題もその一例でございますけれども、身分法の中におきまして、とかく従来は婚姻、夫婦の関係の面が非常に検討の対象とされることが多かったわけでございますけれども、親子関係につきましても十分検討をしなければならないと思うのでございます。
 ただ、こういった親子、夫婦という身分関係の法制というものは、伝統、国民感情、世界の趨勢、そういったいろんな要素がございまして、必ずしも財産法的な分野におけるような合理性というものだけではなかなか割り切れない面がある。したがいまして、そういったものの検討にはある程度気の長い研究検討を重ねなければならないという点をひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。
#53
○横山委員 もちろんそうだと思いますけれども、この親権についての問題点の指摘をいたしますが、そういう立場から言いますと、改めて総理府にお伺いをしたいと思うのでありますが、総理府はただ家庭を大事にしなさいということだけであったのではないんじゃないか。
 総理府は、家庭の日を設定をしたいという政治的意義といいますか、これをどうお考えになっておられるのでありましょうか。この親権があるということは、同時に親の義務がある。親の義務というものは子供に対して扶養の義務があって何から何までやらなければならぬといったところで、今日の社会現象というものはとうてい親だけでは子供を社会的にすくすく伸ばせるというわけにはいかぬから、施策をもって、政策をもって国は、幼稚園から託児所から学校からあるいは不良少年から、あらゆるものについて、このよき家庭へのバックグラウンドとして国の施策があると思うのでありますが、何か家庭の日というものが国のそういうような社会的責任――親の扶養義務と国の社会的責任とが相まって、よき家庭、よき子供ができると思うのでありますが、近代社会においては、昔と違って国の社会的責任の方が重視をされておる。そしてその施策がどんどん伸びておる。
 こういう事態に、もう一遍家庭の日というものが家庭内における責任を強調するかのごとき印象を与える、私はそう思う。さらにひいてはそれが妻、母の責任を重視をする、そういう結果になるのではないかと思うのでありますが、家庭の日を唱道する総理府としては、その点についてはどうお考えになっておられるのでありましょうか。
#54
○鈴木(昌)説明員 家庭の充実に関する施策につきましては多方面にわたっておりますことは先生御指摘のとおりでございまして、私から責任を持って全般にわたることを答弁できるような立場にはないと思うわけでございますが、ただ、祝日として家庭の日を設けるという場合につきましては、やはり今日の婦人の社会参加というようなことが進んでいる時代の趨勢に逆行するようなことがあってはならない、あるいは国の果たすべき責任ということにつきましてその分家庭に何か肩がわりをさせるというようなことがあってはならないという点は十分気をつけなければならないというふうに考えております。
#55
○横山委員 家庭の象徴として、また憲法による象徴として天皇及び皇室というものがございます。この皇室は特殊な立場にはありましょうとも、やはり皇室の御家族もまた家庭であることは言うまでもありません。皇室には皇室典範があり皇室経済法がありまして法律の一つの特別な枠内にありますから同一に論ずるわけにはいきませんけれども、しかし皇室というものの実情またありようは日本における一つのシンボルとなっておることも言うまでもないことだと思うのであります。
 宮内庁からおいでになりましたが、一体、皇室の財産、内廷と宮家における国の財産と皇室、天皇及び宮家の私有財産とはどういう区別、どういう状況になっておりますか。
#56
○中野政府委員 お答え申し上げます。
 皇室の財産でございますけれども、御存じのとおり、新憲法の施行と同時に憲法の規定によりまして皇室の財産はすべて国に属するという規定に基づきまして、内廷皇族、これは両陛下と皇太子殿下御一家のことについて申し上げておるわけでございますが、不動産というものは全く現在ないわけでございます。土地家屋というものは、内廷皇族に属する資産というものは実はないわけでございます。なお宮家の場合にはこれはちょっと別でございまして不動産を所有されておる、土地家屋をお持ちになっておる宮家もあるわけでございます。
 あと私有財産といたしましては、動産のうちで陛下また内廷の方々のお身の回りにある若干のものでございます衣服とかあるいは装身具、そういうようなもの、これらは私有財産としてございます。またそのほか若干の物品、これは皇室経済法にもございますが「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」こういうようなものがございます。それからそれ以外に資産といたしまして、これは先ほどの新憲法が施行されるときでのお話でございますけれども、不時の用に充てるという趣旨から当時の米軍の総司令部、占領下でございますのでいろいろ協議があったようでございますが、皇室の財産として千五百万円というものが預金という形で残され、先ほど申しましたように不時の用に充てられるという形でお持ちになっておるということでございます。
 資産といたしましては以上申し上げたわけでございます。
#57
○横山委員 天皇及び宮家の私有財産というものはいまのお話ではほんの少しだとおっしゃったのですけれども、評価に見つくろいまして、どのくらいになりますか。それが相続の場合にはどういうことに相なりますか。
#58
○中野政府委員 資産の評価のことでございますけれども、これは皇室に属する資産ということでございますので、私ども、それはどの程度あるかというのは私の経済の問題でもございますし、プライバシーにかかわる問題でございますので御遠慮させていただきたいと思います。
 それから相続の際の問題でございますけれども、先ほど申しました皇室におきます財産の相続につきましては、皇室経済法の第七条に「皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。」という規定が実はございまして、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、こういう「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」につきましては、これは一般財産相続に関する原則にはよらないわけでございまして、この規定によって伝わられるということでございます。しかし、こういうもの以外の財産につきましては、これは国民一般と同じように民法の一般原則の適用を受けるということでございます。
#59
○横山委員 宮家の場合には収益行為、収益事業はしては差し支えないのでありますか、何らかの制限がございますか、課税の適用はございますか。
#60
○勝山説明員 宮家の御活動、経済活動といいますかそのようなお尋ねであったかと思いますが、宮家はそれぞれ公的な特別なお立場がそれぞれの関係の法令で決まっております関係上、やはりその皇族たるお地位といいますか品位というものが公的な費用でそれぞれ決められて、毎年いわゆる皇族費という形で支出をされているということでございますので、基本的にはそういった経済的な御活動というのはなさっておられない、このように考えます。
 ただ、若干いろいろな御関係、御研究等の発表等で学校の先生を講師というような御活動をされておられたり、また若干の公的といいますか余り営利関係でないような御活動をされて若干のそういった必要な経費を収入としていただく、そのようなことはあり得るかと思いますが、全体的にそのような経済的な御活動はなさっておらないというふうに考えておるわけでございます。
#61
○横山委員 皇室経済法ですか、降嫁なさるときには国の予算の中からお金が出るはずでございますが、それは課税状況はどういうことになりますか。
#62
○中野政府委員 皇族費につきましては年額と定額がございまして、定額はこれは日常の生活の資に充てるために支出されるものでございまして、それ以外に、いまおっしゃいましたように降嫁されるような場合、身分を離れるような場合に一時金という形で皇族費が支出されるわけでございます。
 この所得税の関係につきましては、いま申しましたような皇族費の規定によりまして、この皇室経済法の六条の規定によりまして受ける給付につきましては所得税を課さないということに所得税法で定められております。
#63
○横山委員 ここに三月二十八日付の中日新聞の夕刊でございますが一ページになんなんとするオリエンタル中村百貸店の大広告がございます。この広告は天皇陛下喜寿、皇后陛下喜寿奉祝記念として純金製の小判の発売の大宣伝でございます。純金製で重量九グラムで十二万五千円、また十八グラムで二十五万の大変な小判でございます。大蔵省造幣局品位純度検定証明《極印入》とありまして、これはもう大変な宣伝でございます。
 これは一体どう考えたらいいのであろうかと思うわけでありますが、もちろん宮内庁がこの種のものについて了承を与えたのではないと私は思うのでありますが、しかし天皇、皇后の名前を使ってこの種の収益行為をしておるということですね。こういうことが一体好ましいことであろうか。これがもしたとえばタレントだとかなんとかということであるならば、そのタレントは膨大なお金をもらうでありましょう、これだけの大宣伝でございますから。天皇、皇后両陛下及び宮内庁が、この名前を引用されて、喜寿だから、奉祝記念だから、しかも天皇の喜寿は五十三年四月二十九日、皇后の喜寿は五十五年、ことしの三月六日、二年は違うけれども、両方あわせてやる。
 そして、いま金は幾らぐらいでございますかね。グラム四千円ぐらいでございますか。そうすると九グラムだと三万六千円ぐらいか、それを十二万五千円で売るというわけですね。収益としても、これだけのいろいろな模様もするのですから多少のあれもあるとはいいながら、ちょっと高いんじゃないかという気がいたします。加えて、大蔵省造幣局にちょっと聞いてみたのですけれども、この種の大蔵省造幣局品位純度検定証明《極印入》というのは、一つ一つ全部品位を鑑定をしたのかと言いましたら、それはよく調べてみなければわかりませんが、東京の造幣局としては、仮にやるにしたって全部が全部は、削ったり何かしなければならぬからとてもできませんから抽出検査でありましょう、こういうわけであります。
 まさかオリエンタル中村が自分のところで自分でつくったわけじゃないんだから、他に委嘱してつくらせたものを自分のところの名前で売るのだろうと思うのでありますが、どうも釈然としないような気がいたすわけでありますが、宮内庁は本件については、御連絡をいたしておきましたが、どういうお考えでございますか。
#64
○勝山説明員 それでは宮内庁からお答えをいたします。
 ただいま先生の御指摘の事案に関して宮内庁がどういう考えを持っているかというお尋ねだったと思いますが、皇室の御慶事というような際に、一般の業者がそのような記念メダル等を作製、販売しているというようなことでございますが、特に規制する法令というようなものは現在はないということは先生も御承知のことであると思います。したがって、こういったものはそのような法令に基づいて許可を要するものではない、このように理解をしております。
 業者が事前に宮内庁に関係があるということで照会してくるというようなこともときどきあるわけでございます。当庁としては、皇室がこのような営利活動、宣伝活動等に利用されることは好ましくないというふうに考えているわけでございます。そこで、原則として次のような指導を行い、また協力といいますか業者の道義心に訴えて協力を求めているのでございます。まず第一は菊の御紋章を使用しないこと、これが第一点、第二点は御肖像を使用しないこと、第三点は過度な宣伝活動などを行わないことということを基準にいたしまして指導をし、協力を求めているというのが実情でございます。
 このたび御指摘になりました天皇陛下喜寿の奉祝の記念小判等については、当庁でも事前にそのような計画といいますかそのような事実を知りましたので、事前ではなくてこれは事後に知りましたので、新聞等に大々的に宣伝することは差し控えるように指導をしたところでございます。ところが、ただいま先生の御指摘のような事例が今日でも、そのような中部日本新聞等であるということでございますので、当該業者、私どもで理解しております日美と申しますか、そこのところで作製をされたものであると思いますが、当該業者に対しまして先ほど申しましたように協力を求めて指導をして、今後も重ねて注意をし十分に指導をしてまいりたいというふうに考えております。
 そういうことで宮内庁としては、そういうことに了承を与えてはおらないということが第一点、それから天皇、皇后両陛下のお名前を使って収益行事を行うということは好ましいことではない、このように考えておるわけでございます。
#65
○横山委員 菊の御紋を使うなといったって、十六枚か十四枚か、そんなことはわかりゃしませんわね。それから、誇大な宣伝をするなというけれども、それだけの大宣伝はそれに該当しますわね。
 それから、行われた後に知ったから注意したとおっしゃるのですけれども、その広告が出てから注意なさったのですか、その広告の出る前に注意なさったのですか、どちらですか。
#66
○勝山説明員 お答えいたします。
 たまたまこの事例は中部日本新聞の事例でございますが、それ以外にも東京関係の新聞でそのような事例があるということでございますので、それに対しては事前に注意をし、それが行われなかったという事例も私ども存じておりますが、たまたま今回の事例につきましては事後に知ったので、それについて関係の部局から注意をした、このように存じております。
#67
○横山委員 天皇、皇后の名前を私も別に特別扱いをするつもりで質問を必ずしもしておるわけではございませんけれども、少なくともタレントなり一般人であったならば当然文句が出てくる問題で、天皇家といえども一般人としての権利義務、おれの名前をなぜ黙って使ったという一般的な文句を言う権利はあると思う。
 同時に、国の象徴としての天皇及び皇室の名前を利用して、喜寿だとかなんとか言おうとも、これは収益事業ですから、その収益事業について宮内庁が調べていけば余り好ましくないということを言うにわかっておる、いまのあなたの話でいけば。わかっておってなおかつこういうことをして、そして出てしまったものだから、当委員会で好ましくないと言うだけで結局はそのままになる、そういうことになるような気がするのですけれどもね。それは仕方がない、文句は言ったけれども向こうが聞かぬから仕方がないということに、これはそのままなってしまうのですかね。
#68
○勝山説明員 お答えいたします。
 御了解いただけるかどうかちょっと自信がございませんが、昨年のたしか元号のときの国会でも御同様な御質問が、菊の御紋章の利用、使用につきましてやはり出たわけでございます。
 それで、先ほどの宣伝得といいますか宣伝をされ得というようなことになるのではないかということにつきまして、従来宮内庁でも、このようなことについては事前に知った場合には十分に注意をいたしておりまして、その限りで事前の段階で取りやめにするという事例も多々ございます。たまたま今回につきまして、事前に知りましたということで御了承を得なかったといいますか、そのようなことで広告が行われた、このようなことになったのではなかろうかということでございますので、今後十分に注意をして指導を重ねてまいりたいというふうに考えます。何分にも、先ほど申し上げましたように法的な規制というものは現在ない、このようなことでございますので、そのような立場で処理をしておるところでございます。
#69
○横山委員 これは単に収益事業でございますけれども、私は、そのうちにこの種の問題がいろんな形で出てくる可能性がある、そう思いますよ。それは収益事業以外に、思想的にもイデオロギー的にもいろんな形で天皇、皇后の名前を引用するということはないわけではない、あり得ることだ、こういうふうに私は思います。天皇及び皇室が常に政治的にも経済にも中立的立場をとるということが必要であるとするならば、文句は言うけれども向こうがやるものは仕方がないというままで一体いいのかどうか、この点は御検討の価値がある、私はそう思います。
 時間がなくなりました。私は理事会で申しましたように、本法案の内容についてはいずれ同僚諸君の一番最後に締めくくりの質問をしたいと思うのでありますが、一つだけ民事局長にお伺いをいたします。
 寄与分の問題でございますが、「被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者が」と、ここに「財産の維持又は増加」ということに限定をされておる理由が私には納得ができないわけであります。たとえば長男は北海道へ行っておる、次男はアメリカへ行っておる、三男がそのお父さん、お母さんのめんどうを見ている。その三男がサラリーマンとしてお父さん、お母さんの財産の維持または増加に特別の寄与をしたわけではない。しかしながら非常に家庭生活についてめんどうを見て、きょうだいのいないところを自分が一生懸命に老夫婦の世話をしてきたという諸般のいろんな問題も一体なぜ参酌ができないのであろうか。
 「被相続人の財産の維持又は増加に」ということをどうしてここにつけなければならぬか。強いて言うならば、財産の維持または増加その他特別の寄与をしたということがあってしかるべきではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
#70
○貞家政府委員 実はこの寄与分といいますのは、法定相続分に調整を加えるという最終的な目的は財産的な特別の取得分ということになるわけでございます。
 それが一点と、いま一つ、夫婦は協力扶助の義務を負いますし、またその他の親族の間におきましても扶養義務というものを負うわけでありまして、そういった通常の夫婦あるいは親族として要求される程度の貢献については、これは特に相続について問題にしない。そういったものを超えた特別の寄与ということでございまして、たとえば夫婦で申しますと、配偶者がいわゆる内助の功として手助けをするということは、これは配偶者としての当然の務めであろう。しかし、その限度を超えて別に収入を得てそれを夫の方の営業に入れるというような場合、これは特別の寄与ということになるわけであります。
 これを、いわば精神的な協力というようなもの、確かにこれは非常に貴重なものではございますけれども、それを財産的に評価いたしまして相続分の修正ということにするというのはいかがなものであろうかと思うわけでございます。もっともこれが、たとえば誠心誠意被相続人の療養看護をするということは、これは一見被相続人の財産の維持、増加に貢献したとは言えないではないかというようにも考えられるわけでございますけれども、当然出費すべかりし費用を節減したというような観点から考えますと、これは財産的に評価をされるのは当然であろうと思うわけでございまして、そういった事情のない全く精神的な援助というものを評価するのは非常にむずかしゅうございますし、またこれを相続の面において相続分の修正要素として加えるということは、今回の寄与分という考え方には入っていない。また相続分の調整、相続の衡平を図るという見地から考えました今回の制度にそれを絡ませるということは必ずしも妥当ではないのではないかという考慮でございます。
#71
○横山委員 これは大変意見の分かれるところでございまして、私もいろんな判決を参考にしながら次回にいたすことにいたしまして、きょうはこれで終わることにいたします。
#72
○木村委員長 午後零時三十分委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午前十一時五十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時三十八分開議
#73
○木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。飯田忠雄君。
#74
○飯田委員 「相続に関する民法改正要綱試案」というのを実はジュリストの一九七九年九月一日号で拝見いたしました。
 実はこの雑誌で拝見する前は私は存じなかったわけですが、こうした改正に関する試案ができまして、法曹の方々とか学者の方々の間で議論がなされておるのを知りまして大変喜んだわけですが、こういうような問題が今後起こります場合に、結局は私ども国会で審議する者が知らずにおったのでは都合が悪いので、できればこういう問題、試案などをおつくりになった場合には、法曹関係、学者ばかりでなしに、法務委員会に属する私どもにも御説明を願えるとありがたいと思います。この問題につきまして、どのような御意見でございましょうかお伺いいたします。
#75
○貞家政府委員 私ども、民事関係の立法につきましては、一応のたたき台と申しますかそういうものができた段階でこれを公表いたしまして、なるべく多くの方々の御意見をいただくようにというふうに努めておるつもりでございますが、今後もそういった面におきまして手抜かりのないように、なるべく広く御意見をちょうだいするようにいたしたいと考えております。
#76
○飯田委員 それでは今度の法律案について二、三質問を申し上げます。
 現在の身分法では届け出主義がとられておりますが、この届け出主義をとります意味はどういうところにあるのでありましょうか、お伺いいたします。
#77
○貞家政府委員 一口に申しますと、合意で成立するというようなものにつきまして、合意の成立を確認いたしましてこれを登録公示するということによりまして、たとえば婚姻なら婚姻の及ぼすいろいろな法律関係について混乱を生じないようにする、いわばそういった公示という点に重点があるわけでございます。
#78
○飯田委員 公示主義はよくわかりますが、憲法の第二十四条によりますと「婚姻は雨性の合意のみに基いて成立し、」云々、こうございます。この条文からは届け出主義は出てまいらないのですが、問題は、届け出主義をとってもそれが悪いということではないのですが、そのために両性の合意のみによって行われた婚姻が法律的にいろいろ左右されるような事態が生ずるのであれば憲法の趣旨に反するのではないかというふうに実は思われるわけであります。いろいろと行政上の御都合はございましょう。その行政上の御都合で憲法の保障条項を制約するようなことになるならば問題ではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
#79
○貞家政府委員 御指摘のとおり、行政上の便宜によりまして合意以外に要件を加重するというようなことがあれば、これは憲法上問題であろうかと思います。
 ただ、たとえば婚姻に例をとってみますと、婚姻制度につきましては、歴史的に事実婚主義をとった時期や国もございますけれども、夫婦間には特別の権利義務の関係も発生しますし、他人や社会に大きな利害を及ぼすものでございますので、当事者に合意が成立しているかどうかということの要件を審査するとともに、これを登録公示するということが近代国家がおおむね採用しているところでございます。
 なお、その届け出自体が他人の意思によって受理されるとか受理されないとかあるいは障害があるというようなことになりますと、これは憲法の趣旨に反するということが言えようかと思いますけれども、少なくとも現在のわが国の婚姻の届け出の制度は、合意さえ成立しておりますればそれだけで容易になし得るわけでございますので、これは憲法二十四条で申しております「雨性の合意のみに基いて成立し、」という条項に違反するものではないだろうというふうに考えているわけでございます。
#80
○飯田委員 御趣旨はわかりましたが、たとえば離婚をする場合に、婚姻が両性の合意によってのみ成立するのであるならば、離婚もまた両性の合意によってのみ成立するはずでございますが、離婚の場合はなかなか合意がしがたい場合が多いわけです。
 そうしますと、個人の意思を無視した関係で婚姻関係が法律上続けられて、そのために迷惑を受ける人が相当出てくるのではないかということも考えられるわけであります。届け出がない婚姻つまりいわゆる内縁の関係ですが、こういうものについて従来から法的保護が制度上ほとんど加えられていないのでございますが、こうした制度上届け出のない婚姻について保護を加えないという方法をとっておる現行民法は、憲法の精神に反するのではないかという疑いがあるわけですが、この点はいかがでしょうか。
#81
○貞家政府委員 確かに届け出主義をとっておりますと、実際上社会的実態としては婚姻の事実がありながら、届け出をしないということによって婚姻と認められない、そういう場合がなお残っているということは間違いのないところでございますけれども、しかし先ほども申し上げましたように、現在の憲法下における婚姻届け出の制度はきわめて容易でございまして、他人の意思とか外的な条件たとえば旧民法下におきますような戸主の同意でありますとか跡取り娘は他家に嫁することができないとか、そういった制限は全くございませんし、当人の意思さえあれば届け出は直ちにできるわけでございます。したがいまして、これはもっと届け出が励行されていいはずでございますけれども、遺憾ながら届け出のない事実婚というものがなお残っているということは間違いのないところでございます。
 これについてどういう保護を与えるかということは非常にむずかしい問題でございます。御承知のことと思いますけれども、これは確かに法的な婚姻としては認められておりませんけれども、多くの社会立法では、昔の工場法以来婚姻と同様の関係にあるものと認められておりますし、また私法的な分野におきましても、例の内縁関係についての保護、婚約破棄の理論から、損害賠償請求というような判例が確立しておりますし、事実上の婚姻を解消いたします場合の財産分与につきましても、婚姻に準じた取り扱いというものが現在の家事審判の実務等について認められているわけであります。
 そういった意味におきまして、かなりの保護を与えられていると申し上げてよろしいのではないかと思うのでございますけれども、ただ、たてまえといたしましてやはり法律婚ということを捨て去ることはいかがなものであろうか。これは近代国家にほぼ共通した制度でございますし、全くの事実婚ということになりますと、いろいろ第三者にも関係いたします不都合が生じてくるということは否定できないところでございます。したがいまして私どもといたしましては、政策的には法律婚主義を維持しながら、可能な限りの保護を事実婚についても与えるという限度にとどまるべきではないか、かように考えている次第でございます。
#82
○飯田委員 現在の民法のたてまえからまいりますと、いわゆる内縁の配偶者には相続権がないとされております。
 そこで、その救済策としましては、民法の九百五十八条の三つまり特別縁故者に対する規定、こういうものを利用して保護するしかないというふうに聞いておりますが、事実上の夫婦関係にある者が特別の縁故者としての保護だけしか与えられないということになりますと、これは相続人がない場合の規定でございますので、相続人がないから相続財産は全部国庫に帰する、その前にやっと内縁の配偶者にそれについての相続を認めてもいいのだ、こういう程度の非常に弱いものなのでございます。このような弱い制度しか民法で規定できないというその根拠がどうも理解できないのですが、いかがでございましょう。
#83
○貞家政府委員 先ほど来申し上げておりますように、法律婚主義というものを維持しておりますたてまえ上、相続の面において他の相続人と同じ資格を持つ、あるいは若干劣後するにいたしましても、それと肩を並べて被相続人の財産を承継させるということは、これはやはりたてまえを崩すことになるのではないかということでございまして、これはもちろん相続の場におきましても財産の自由処分ということは否定されるわけではございません。
 したがいまして、本当に必要がある場合には生前の財産の処分ということによって内縁の配偶者を遇するというのも一つでございますし、遺言というような制度の活用によって、そういった人々の間の利益の調整を図るということが可能であろうと思うのでございます。しかし何と申しましても、きわめて簡単に届け出ができるのになおかつ届け出をしないというところに、私はやはり問題があるのではないかという気がいたすわけでございます。
#84
○飯田委員 実は私が法律相談を受けました件にこういうのがございました。
 ある御老人は、前の奥さんが亡くなりましたので、したがいまして身の回りのめんどうを見てくれる女性を雇いました。その女性との間に事実上の婚姻関係ができてしまったわけです。そして十何年一緒に暮らしましたところが、その御老人は亡くなってしまった。後に残された婦人は一生懸命にめんどうを見てきたんだけれども、実は遺言もなかったし籍も入ってない状態でございましたところ、見たこともない非常に縁の遠い人が遠くからあらわれまして財産相続を主張いたした。これは亡くなった方のきょうだいの孫に当たるような方ですね。そういう人が急にあらわれて財産相続を主張いたしたのですが、この場合に、その内縁関係にあった御婦人は家も追い出され何一つなくなるということで非常に悲しんで、何とか方法はないかということで御相談に来られた事件でございますが、こういうような事例は間々あるわけであります。
 こういうような、いわゆる内縁関係だから、届け出をしていないからけしからぬといったようなことでは済まされない問題が多いのではないかと思いますが、こういうような事件についての救済方法というものは現在の民法上ございましょうか。
#85
○貞家政府委員 現在の民法のもとにおきましては残念ながら救済する方法がないわけでございまして、これは先ほど申し上げましたように、そういった十何年事実上連れ添っているというような方に対しましては、遺言をするなりあるいは共同生活を始められますその時期に何らかの財産の処分をするとか、そういった工夫があってしかるべきではないかと思うのであります。そういうような事例があるから内縁の妻をすべて法律上の妻と同等に扱えというのは、これはやはり少し無理な話ではないかと思うわけでございます。
 ただ、先ほど仰せになりました相続人が兄弟姉妹の孫というようなことでございますと、これは今度の改正では兄弟姉妹の子までに限定しておりますので、相続人がないという状態になるわけでございまして、特別縁故者ということによって若干の利益を受けるという余地があるかと思うのでございます。
#86
○飯田委員 ただいまの例は孫だから都合が悪いのですが、もしこれが仲の悪い弟とか兄貴だったらこれは問題ですね、日ごろからけんかしている者だと。これはいいです。
 そこで、男女の結合につきましては、その形式がどうあろうとも表面から見た状況、表見上夫婦として認められておる、こういう状態であります場合には、婚姻届を出した夫婦と同等の保護を与えるのが至当ではないかというふうに憲法上思われるのですが、いかがでしょう。たとえば婚姻届を出した夫婦、婚姻届を出していない夫婦、これの違いといいますのは、婚姻届を出したか出さぬかというそういう身分による違いにすぎない。身分による違いにすぎないものに対して法律が同等の保護を与えないということは、これは差別に当たるのではないかというふうに法律上とれないかどうかという問題ですが、いかがでしょう。
#87
○貞家政府委員 これは法律上どういう場合に配偶者として認めるかという問題でございまして、身分によって違うと言えばそのとおりでございますけれども、妻たる身分、妻たる地位を取得するためには届け出が必要だ、こういうふうに考えれば、身分によって差別をしたというのは、いわば当然のことと申しますか妻であればこそ相続人になれるわけでございますから、別に問題はないのではないかと思います。
#88
○飯田委員 妻であるかあるいは夫であるかという問題は、事実上男女が同居しいわゆる夫婦関係を続けておれば夫であり妻であるというふうに解するのが正しいのではないだろうかと思われる理由は、歴史的な事実から言えばそういうことも理由になると思います。
 現在の法律がたまたま届け出主義をとっておるから届け出なければ配偶者でないというだけの話でありまして、本来的な人間関係における夫婦というものは法以前の問題として存在するのではないか、こう思いますがいかがでしょう。
#89
○貞家政府委員 確かに法律以前の問題として社会的に夫婦というものを考えるといたしますと、どういう要件なりどういう事実が備われば夫婦と見るかということは非常にむずかしいわけであります。
 どうも、アプリオリにこういう場合には夫婦である、本来夫婦であるべきだということは非常にむずかしいわけでありまして、結局、婚姻の合意が成立し婚姻としての権利義務の関係に入るということをはっきりさせるというところに届け出の意味もあるわけでありますから、それ以前の段階で、社会的にこれが婚姻だ、したがって同じものであるべきであるのが、片方は届け出がない、片方は届け出があるというふうに区別をするということはやはり問題ではなかろうか、一応そういうふうに考えるわけでございます。
#90
○飯田委員 届け出というのは市役所の帳簿に載っているだけですね。あれは一般の人は見ようとしたって見れないのです。
 別居しておる人は、たまたま届け出ておりましても、それが夫婦であるというのは表面上わからない。ところが、届け出をしていなくても、実際上結婚式を挙げたりあるいは同居しておって一緒に暮らしているということであれば、それは表面上夫婦だというふうに社会から見ることができるわけであります。社会から事実上認識される夫婦と事実上は全く認識され得ない届け出といったようなものとで区別をいたしまして、そして社会的には認識されない届け出に重点を置くという現在の民法の保護規定について、どうも疑問があるのではないかと思われるわけです。
 いま私が申し上げておりますのは、重婚でない内縁ですね、非重婚的内縁の問題ですが、こういうような場合につきまして、やはり普通の届け出た婚姻の場合と同じような処遇を与えるような法制をつくるのが憲法の第十四条に合致するのではないかと思われますが、もう一度念のためにお伺いいたします。
#91
○貞家政府委員 法制度として非常に基本的な問題でございますが、私は、やはり古来の世界の歴史を見ましても、宗教的儀式というものに非常に重きを置かれている場合には、届け出というものは第二次的なものになるということも考え得ると思います。しかしながら、同居あるいは同棲という点に重点を置くということになりますと、これは非常に社会的な混乱が生ずるのではないかという気がいたすわけでございます。
 確かに、日本の社会におきましては婚姻の儀式というものが慣習とはなっておりますけれども、しかしながら、これはかつてのキリスト教国におけるような宗教的なバックというものは持っていないと思われますし、そうなりますと、これは市区町村に届け出をするだけで全く形式的なことではないか、そうも見られますけれども、しかし、これはやはり一つの重要なポイントと考えるべきではないだろうか、いまの日本の社会ではそうあるべきではないだろうかという感じを持っているわけでございまして、やはりその意味におきまして法律婚主義というものが維持さるべきであるというふうに考えているわけでございます。
#92
○飯田委員 有名な最高裁の判例がございますね。昭和三十三年四月十一日の判例ですが、これが民集の十二巻五号七百八十九ぺ−ジに載っております、
 内縁を婚姻に準ずる関係としてとらえまして、その不当な内縁破棄者に対して不法行為責任を認めた最高裁判例でございますが、これはいわゆる法律婚でない者に対しても保護を加えるような思想によってできておるような気がいたしますが、このような判例の考え方を法律に取り入れるということは不都合があるでしょうか、どのようにお考えでしょうか。
#93
○貞家政府委員 そういった保護を与えるというのはいまの日本の社会の実情に照らしまして相当であろう、最高裁もそういった内縁破棄というようなことに対する損害賠償請求を認めるというような点で保護を図っているわけでございます。
 ただ、それを立法化するということになりますと、これはそういった保護を与えるということにつきましては、現在の不法行為の解釈なりその他の法律関係の解釈によってできるわけでありまして、これを届け出をした夫婦の間の問題と全く同じようにすべての法律関係を律しようという立法ということになりますと、これはやはりその両者の間の限界を無視するということになりまして相当ではないであろう、可能な限りの保護を与えるということはまさにそうあるべきであろうと考える次第でございます。
#94
○飯田委員 いままでは非重婚的内縁についてお尋ねしたのですが、今度は少したちの悪い内縁で重婚的内縁の問題でお尋ねをいたしたいと思います。
 重婚的内縁というといかにも重婚をした人が悪いように普通はとられますけれども、よくよくその内容を聞いてみますと、必ずしもそうでない場合もございます。
 たとえば、結婚をしてから夫婦仲が悪くなって別居をいたした。その別居の状態が十数年も続いて、その間に片方の人に別の内縁関係を生ずることになった、しかも別の内縁関係を生じた方には子供もできた、前の方の届け出ておる方の別居の相手には子供もない、こういうような事態がしばしば見受けられるわけであります。実際にこういう事件も起こりまして、私は法律相談を受けたのですが、このような問題につきまして、重婚だからけしからぬということで一概に葬り去って相談に乗らない、いつまでも苦しめておくというのはどうだろうかというふうに私は思うておる次第でございます。
 十年以上も実績があって子供までできておるのでありまするならば、時効制度というものが――これは時効制は関係はないのですけれども、物事には時効という問題もございますので、したがいまして、そういうような長年の場合には何とかこれを解決できるようにできないものだろうか。相手方の方は報復的な意味で離婚の判をつかない、もう一生涯判をついてやらない、こういうことでおるわけです。それかというて、縁をもとに戻す気があるかというと、それはない。もう報復的な意味しかないような場合がしばしばあるわけですが、こういうような場合に何らか救済する制度をつくることはむずかしいのであろうかと思いますが、何とかならないかということをお尋ねするわけですが、いかがでございましょうか。
#95
○貞家政府委員 確かに御指摘のとおり重婚的内縁関係でもいろいろあると思います。ただ、これは離婚法との関連において考えなければならない問題ではないかと思うのであります。
 現在の離婚というのは、わが国では諸外国に比べますと非常に容易にできる。そのこと自体の当否に問題はあるところでございますけれども、少なくとも日本の法制は、離婚というのは非常に簡単に――簡単にと申しますか必ずしも裁判所の手を経ないでもできるわけでありまして、また離婚原因としても破綻主義というような考え方を取り入れているわけでありまして、離婚がなくて他の異性との共同生活、それを全部一律にどうこうということはやはり非常に大きな問題ではなかろうかと思うわけであります。
 しかし子供の関係、これは認知の請求もできるわけでありますし、親子の関係、これはもうはっきりしているわけでございますから、子供の方からの父親に対する扶養請求ということはこれは無論可能でございます。そういった道を通じて保護を図っていくということは可能であると思いますし、また将来、この内縁関係につきまして裁判所がどこまで保護を考えるようになるかということは一概に予測できないところでございますが、ただ、原則的にこれを立法化するあるいはどうこうするというようなことになりますと、これは非常に問題があるわけであります。
 この点につきましては、御承知と思いますけれども、ヨーロッパのうちのラテン系諸国と申しますよりもカトリック圏内の国につきましては離婚というのは非常に不自由でございます。したがいまして、もう何十年も別居してそれで別の異性と同棲をしておりましても、これは正規の婚姻にはならない、事実上の重婚であるというようなこともあったわけでありまして、イタリアなどは離婚法が成立いたしましたようでございますけれども、そういったことも将来どう処理をされていくかというようなことも実態を十分研究をしてみたいとは思っております。ただ、一律にこれを立法化するということは非常にむずかしいのではないかというふうに思う次第でございます。
#96
○飯田委員 それでは、もう一つ別口の重婚的内縁の問題を御質問申し上げますが、これはいわゆる本妻とめかけという言葉を使っては悪いと思いますけれども、普通言われておりますのでそういう言葉を使えば、本妻とめかけのある場合、これは別に法律上の婚姻が破綻を来しておるわけではないので、男の方が少し色気が多いというだけの話ですから、本妻の方が納得しておられていわゆるおめかけさんを置くことを承知しておる場合もございます。
 この場合に、その本妻の方には子供がない、またあっても構いませんが、普通なくてめかけさんの方に子供さんがあるという場合に、この子供さんが本妻の方の子供と違いまして相続の率が少し悪いわけですね。本妻の子とめかけの子との間にそういうような差別をするということは一体いかがなものであろうかと思いますが、どうでしょう。
#97
○貞家政府委員 これはいわゆる嫡出でない子の相続分を嫡出子と同等にするかどうかという問題でございます。これは実は私どもも、それから法制審議会の民法部会におきましてもいろいろ議論のあったところでございまして、昨年法務省の民事局参事官室から試案として発表いたしました「相続に関する民法改正要綱試案」ではこれを同等化するという提案をいたしたわけでございます。
 ただ、この問題は非常にむずかしい問題でございまして、法制審議会で改正がそういうふうに決まったから試案として私どもが公表したというわけではございません。いろいろ議論がございました。この問題は、一夫一婦制に基づきますところの嫡出家族の保護と罪のない非嫡出子の保護という、いわば解くことのできないジレンマであろうかと思うのであります。これはなかなか理屈で割り切るわけにいかない問題でございまして、いろいろ各界の意見も尋ねたわけでございますけれども、各方面ともかなりの反対意見がございました。
 ことに、昨年の三月総理府に依頼いたしまして世論調査をしたわけでございますが、その結果によりますと、この点については現行法を維持すべきであるという意見が四八%を占めまして、同等化の一六%を大きく引き離したというような現象が見られました。なお、それ以外に新聞や雑誌等各方面にもやはり慎重論と申しますか、必ずしもそちらに断固として進むべきだというような意見ではなかったように承知しているわけでございまして、どうも私ども、この問題について同等化すべきだという国民的なコンセンサスが得られたとは言いがたいような気がいたしたわけでありまして、これが現在の国民感情に合致するかどうかということには非常に疑問があるという結論に達しまして、法制審議会ではこの点の改正はなお時期尚早である、今回は見送ることにしようということになったのが経過でございます。
#98
○飯田委員 内縁の配偶者との間の子供ですね、これは普通庶子と言われておりますが、庶子と嫡出の子供の間を区別するというのは結局身分による差別ではないかと思われますが、もし身分による差別であるということを認めるとするとやはり憲法の十四条に違反する、身分による差別を認める法制をつくること自体が憲法違反ではないかと思われますが、いかがでしょうか。
#99
○貞家政府委員 この点は形式的には確かに不平等だということが言えるかと思いますが、しかし、この点につきましては合理的な理由があると言うことは可能だと思うわけでございまして、いま憲法論をここで展開する自信はございませんけれども、男女平等をとっております法制のもとにおきましてもこの点については内容がさまざまでございまして、必ずしも嫡出、非嫡出によって区別をすることが法のもとの平等に反するのだというようには考えられていない、世界各国とも考えられていないというふうに申し上げることができるのではないかと思うわけでございます。
#100
○飯田委員 憲法では社会的地位だとか身分によって差別してはいけないとなっていますね。母親が違うというだけで父親は同じである子供の地位というものは、自然的に見れば同等のものでございますね。たまたま片一方が届け出をしておるかどうかというだけの話であって、子供から見れば同じ父親の種であって、たまたま母親が違ったというだけでございますね。
 そうしますと、この場合に相続にまで差別をするということになるとやはり憲法十四条に違反するのではないかと私は考えるわけですが、いかがです。
#101
○貞家政府委員 やはりこの問題は、理念的には正規の婚姻の保護という観点から合理的な区別をしているというふうに考えられる以上、法のもとの平等に反するものだというふうには考えておりません。
#102
○飯田委員 では次に行きますが、内縁関係というものを事実上の婚姻関係として認めることができないかどうか。
 もしそれができるということであれば、その解消をした場合についてのいろいろの保護規定を設けるべきではないか。たとえば損害賠償、財産分与、居住権つまり一緒に住んでおりまして夫が死んだ後に残された奥さんが内縁だという場合に、その家に住む権利は認めるべきじゃないか、あるいは自分の死んだ夫の財産について相続権を認めるべきではないか、こういうように思われますが、いかがでしょう。これは現行法の解釈を私は申しておるわけではなくて、そういう立法をするのが正しいのではないか、こういう質問なんでございます。
#103
○貞家政府委員 現在、いまおっしゃいましたような点につきましては、解釈として、相続その他明確な法律関係を必要とするもの以外につきましてはほぼ認められているのではないか、しかも徐々にその範囲が拡大しているのではないかと私は思うわけでございます。居住関係につきましても、これは判例もございますし、また相続人がいない場合の特別縁故者でございますとか借家関係の保護というようなものも一応法律上できているわけでございます。
 したがいまして、内縁関係というものを前提にいたしましてどの程度に保護を与えるべきかということ、どのような権利を持つかということを立法化することは非常にむずかしいのではないか。必要に応じて、現在の法律の解釈、それの精神解釈と申しますかそれによって保護を図るのが妥当な姿ではないか。これを法律に高めますといろいろ困難な問題が起こってまいりますし、具体的なケースによってそれは行き過ぎだとかそれは足りないという問題が多々起こってこようかと私は思うわけでございます。
#104
○飯田委員 質問を別の方面に変えますが、今度は家督相続制度の問題について御質問をいたします。
 旧憲法の当時は家督相続制度がございまして、普通は長子が相続するけれども、場合によっては長子でない者も相続するということがなされておりました。古い時代のことですから、相続をいたしましても財産の登記をいたさないという例が非常に多いわけです。今日に至りまして長子も次子も亡くなった。実は次子は親元に入ってそこで住んでおり、長子は別のところへ家をつくって住んでおった。こういう関係ですが、孫の代になりまして、現在の民法下になりまして争いが生じました。長子の方は、自分の親は長男だから家督相続しておるはずだから自分の家の財産だと、次子の住んでおるところの家も土地もみな返せという請求をする。次子の方は、いや私のおやじは父親、おじいさんと一緒に住んでおったので自分の方にこそ権利があるのだということで争ってきております。
 そこで、私は一つ御質問を申し上げたい。旧民法は現在効力がない。現在効力があるのは現在の新民法ですから、こうした家督相続が認められておる当時の問題でありましても、現在の問題を解決するには、旧法によるのではなくて現在の民法で解決する、処理するのが正しいのではないか。民法ができましてから現在まで、新民法になってもうすでに三十年以上になりますね。そうなりますと、その間平穏無事でやってきたものが急に家督相続を持ち出すのはおかしな話なので、そういう点からももう時効にかかっておる問題なんですから、この際、こういうような問題については旧法によらないで現在の新法で解決するという方法をとることができないかどうか、その方が裁判時法の方を重んずるということからいって正しいのではないかと思いますが、いかがでしょう。
#105
○貞家政府委員 旧法当時家督相続がありまして、その効力が恐らく問題になっているのではないかと思いますけれども、家督相続があったという前提に立ちますと、その効果はすでに生じてしまっているわけでございますので、いまそれを無視するわけにはまいらないと思うのでございます。
 ただ、たとえば時効取得というようなことを考えますと、これはまさに、仮に長男の系統が家督相続して、その財産がその方の子供さんに移っているとしましても、時効取得を主張して自分のものだと言うことは何ら妨げられないわけでありまして、家督相続があったことを現在に至って、いやそれはなかったことにして現行法で考えようというのは、これはちょっとむずかしいかと思うのでございます。
#106
○飯田委員 次の問題に入ります。
 いただきました法案の九百四条の二というのがございますが、そこの中に「共同相続人」という言葉が使ってあります。これは「共同相続人」という言葉は一体どういう意味なのか、実ははっきりわからないのです。同順位の相続人をいうのかあるいは持ち分を持って相続する数人の相続人のことをいうのかはっきりしないのですが、どちらの意味でしょうか。
#107
○貞家政府委員 九百四条の二、今度の新設でございますけれども、この「共同相続人」というのは現実に共同して相続する者ということでございまして、たとえば妻と子供であれば妻と子供全部、もし子供がなければ妻と直系尊属というふうに、具体的に当該事案において相続人となる者という趣旨でございます。
#108
○飯田委員 いまのような趣旨であるならば、九百条に「同順位の相続人」という言葉が使ってあるのですから、これは「同順位の相続人」という言葉で表現する方が妥当ではないでしょうか。
#109
○貞家政府委員 同順位と言えないことはないと思いますけれども、現実に共同相続人になる場合でございますから、あえてそういたしませんでも、具体的なケースに臨んでの相続人という趣旨に御理解いただけるのではないかと思うのでございます。
#110
○飯田委員 実は共同相続人という場合は持ち分を持っておる共同の相続人というふうにとれるわけなんで、つまり、財産を分割していないで同一の財産を持ち分で持っておる場合が共同相続人ということになりはしないかということなんですが、どうでしょう。
#111
○貞家政府委員 たとえば九百三条でございますとか九百五条といったものあるいは九百七条でございますが、これは今回の九百四条の二とほぼ同じような意味で使っているのではないかというふうに考えたわけでございます。
#112
○飯田委員 いまの問題は言葉の使い方の問題ですからこれ以上言いませんが、誤解を生じない言葉をぜひ使っていただきたいのです。同じ法律の中で、片方では「同順位の相続人」という言葉を使い、片方では「共同相続人」という言葉で同じことを意味するというのでは困るわけです。また共同相続人というのは大変誤解を生ずる言葉ですので御検討を願いたいと思います。これはこのままにしておきます。
 次の問題に移りますが、きょうだいの代襲相続は兄弟姉妹の子までで打ち切る、こういうふうに改正されるようになっております。しかしこの場合に、きょうだいの代襲相続は認める必要はないのではないか、むしろ兄弟姉妹については寄与分だけを認めればいいのではないか。つまり、この人たちが被相続者に対していろいろの寄与をした場合にだけ寄与分として相続を認める、そのほかは相続の対象としない方が今日の段階ではいいのではないかと思いますが、いかがでしょう。
#113
○貞家政府委員 確かにそのような意見もございます。
 ただ遺産の中には、婚姻中に形成された財産ばかりではなくて、婚姻前に形成された財産あるいは血統的に申します伝来財産というようなものが含まれておりますから、兄弟姉妹を全然否定するのもいかがか。つまり、配偶者と兄弟姉妹であれば配偶者へ全部行ってしまうということはやや疑問があるのではないか。兄弟姉妹というものがやはり扶養義務を負う関係になっておりますこともございますし、兄弟姉妹の結びつきというものを重んずる国民感情というものは、まだ完全にそれを無視するに足るほどそういう感情がなくなっているというふうなことは現段階ではないのではないか。そういった考慮から兄弟姉妹の子までは認めようということにした次第でございます。
#114
○飯田委員 兄弟姉妹の寄与分を認めた、兄弟姉妹まではやむを得ぬだろう、こういうことであることは了解いたしましたが、配偶者の寄与分というものは認めないのでしょうか。配偶者にも寄与分を認めて何らかの算定方法を決めたらどうかと思いますが、いかがでしょうか。
#115
○貞家政府委員 配偶者は寄与分が認められるということになるわけでございます。
#116
○飯田委員 ただいま配偶者の寄与分は認められる、こうおっしゃったのですが、私もそうあるべきと思いますが、その配偶者の寄与分の算定方法、どういうふうに算定するかということをお尋ねしたのですが……。
#117
○貞家政府委員 配偶者は一般的に協力扶助の義務を負うわけでございますから、普通の場合と申しますかいわば内助の功と言われる程度にとどまります場合には、これは特別の寄与をしたということでそれが認められるということにはならないわけでございます。
 いわゆる共働きによって財産形成への貢献をした場合は、家事に専従した場合の内助の功とは違いまして、それは特別に相続の面においてやはり考慮さるべきであるというのがこの案の考え方でございまして、算定につきましては、無論その働いた分を全部計算してそれを寄与分の額というふうに計算するということには必ずしもならないかと思うわけでございまして、この点は具体的な相続分の調整ということになるわけでございますから、協議で決め、協議で決まらないときには家庭裁判所が遺産分割の際の申し立てによりまして決めるわけでございますけれども、そういった寄与をした時期、期間、その程度を考慮いたしますし、もちろん相続財産の全体の額というようなものも考え、一切の事情を考慮してどの程度の額が相当であるかを決めることになるわけでございます。これを機械的に計算をするということには必ずしもならないし、またそれにはなじまない性質の相続分の調整というふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
#118
○飯田委員 寄与分の条文についてお尋ねいたします。
 今度の改正案によりますと寄与分を共同相続人にだけ認めております。先ほどぼくは共同相続人の意味を聞きましたが、共同相続人は同順位の相続人の意味のようでございますので、そう理解しておきまするけれども、ただ、それだけの人に寄与分を認める理由は一体何だろうかという疑問を持つわけです。
 たとえば内縁の配偶者の場合寄与分は認めないのか。あるい長男の妻、娘の婿、こういう者の寄与分は一体認めないのか。たとえば、長男が亡くなったが、その妻は里へ帰らないで一生懸命婚家のために働いて財産をつくった。にもかかわらず、その長男の父が亡くなった場合に一つも相続できない。といいますのは、長男の妻は子供ではありませんし、長男は死んでしまっておる、だから働いても寄与分が来ないということになってしまうわけですね。そこで非常に不公平なことが生ずると思います。ことに婿さん、養子には行くなということを言われますが、婿さんはまことにひどい立場に置かれてしまうことになります。このような家業に寄与した嫁だとか婿に対する寄与分は認めるべきではないか。
 それからまた家業に寄与した兄弟姉妹、これは被相続人に妻子がある場合には、どんなに家業に寄与しても兄弟姉妹には寄与分が来ないということになってしまいます。これは結局共同相続人に寄与分を限ったから、こういう不合理が生ずるわけでございますね。共同相続人に限らないで、実際にその財産をつくるのに力を尽くした人たちあるいは被相続人を一生懸命に看護した人たち、こういう者には寄与分を与えるという制度をつくるのが正しいのではないか、こう思われますが、いかがでしょう。
#119
○貞家政府委員 寄与分権者、寄与分を受け得る者の範囲をどうするかということは、法制審議会でも非常に長期間最も熱心に議論をされた論点の一つでございます。
 それが共同相続人間の問題にするという結論になったわけでございますが、まず第一にあらかじめ申し上げておかなければなりませんのは、労務の提供とか財産上の給付がはっきりした契約関係に基づく場合にはこれは相続債務になるわけで、別個請求ができるわけでございまして、これは問題が別でありますから、そういった契約上の関係があればよろしいわけでございます。
 そこで、それ以外の場合でございますけれども、寄与分制度は結局相続人間の衡平を図る調整の制度として考えられたわけでありまして、第三者の寄与分、相続人たる資格を持たない第三者の寄与分ということを考えますと、これはいわば遺産分割に参加しない者に財産を取得させるということになりまして、その性質はいわば一種の補償請求権を与えるというようなことになるかと思うのでありまして、その性質をどうするかということで、やはりこれは相続人間の衡平を図る調整の制度というふうにしたわけでございます。
 つまり、遺産分割手続との関係で申しますと、もし第三者、相続人以外の者の寄与分の請求、寄与分の形成というものを認めまして、これを遺産分割の際にやるということになりますと、一定期間遺産分割を禁止いたしまして、その間に申し出をさせるというような形になるわけでございまして、遺産分割もそれだけ遅くなりめんどうになるということになりますし、遺産分割と無関係にその手続を行いますと、独立に第三者つまり相続人以外の者の寄与分の形成手続をつくることになるわけであります。そういたしますと、ばらばらに行われますと、相続人同士の遺産分割というものの運命が非常に不安定になってまいりますし、手続的にも非常に煩瑣になるであろう、こういうことが考えられるわけでありまして、先生先ほどから御指摘の内縁の配偶者とか事実上の養子というような者につきましては相続権を認めておりませんので、これは不都合が生ずるではないか。確かにごもっともな点もあるかと思いますけれども、法律婚主義を貫くという点から申しまして、これを当然にこの中に加えるということにはならないわけでございます。
 それから、第二の問題といたしまして直系卑属の配偶者でございますが、たとえば農家の嫁であるとかあるいは反対に娘婿というようなことをおっしゃいましたけれども、こういった者についてやはりこれは相続人にはならないわけであります。また、特別に寄与分権者として認めていない。つまり、第三者の寄与分を受ける資格というものを認めておりませんので、こういった者も外れるということになるわけでございますが、この点につきましては、これらを一般的に認めるということになりますと非常に問題が多いわけでございます。
 夫が亡くなった妻の親の代襲相続をするというようなことになりますと、これは一般的に考えると非常に問題があるわけでございます。反対の妻の場合におきましても、妻が夫が死んだ後に再婚するかあるいは姻族関係終了の意思表示をするかどうか、あるいは夫の死亡後の年数というようなことによってもそれぞれ事情が違いますし、また反対の場合には、妻の両親を夫が引き取ったかどうかということも問題になるわけでございまして、いろいろな事情がございます。
    〔委員長退席、中村(靖)委員長代理着席〕
そういった事情を考慮しないで、すべてが代襲相続権を持つということは明らかに不当でございますし、また、要件を細かくいたしますと、要件を合理的に定めることが非常に困難でございます。非常に多くの除外例を設けなければならない、その除外例を定めるというのは非常に困難である。したがいまして、そういった配偶者の代襲相続ということは認めていない、認めないということにしたわけでありまして、相続人として寄与分を受けるということはできないわけであります。
 ただ、たとえば嫁の場合について申しますと、夫が生存して夫が寄与をしている場合には、妻が実際上寄与をしているという場合には、夫の履行補助者として夫の寄与分に算入すること、夫の寄与分として算定されることは可能でございますし、夫が死亡した場合にも、子供がございますと、子供はその代襲相続をいたしますから、嫁の方も間接的に利益を受けるということもございます。夫が先に死んで子供もないというときは、これは一番気の毒な場合でございますけれども、この場合には、残された方法といたしましては、亡夫、亡くなった夫の親と養子縁組みをするあるいはまた亡くなった夫の親の遺言あるいは生前の処分ということによってめんどうを見てもらうというような方法、これを活用するということになるのではないかと思うのでございます。
#120
○飯田委員 時間が参りました。
 あと一分しかないので家事審判法の方をお尋ねいたしますが、家事審判規則にある審判前の仮処分の制度を家事審判法に入れて今度は立法化しよう、こういうことだと聞きましたが、これはどういうわけでこれを立法化することになられたのでしょうか。
#121
○貞家政府委員 この実質的な理由といたしましては、家事審判事件が、これはやはり早期に解決されることが必要でございますけれども、最近の複雑な生活事情等を反映いたしましてかなり長期にわたる。そういたしますと、終局審判があるまでにいろいろ財産が処分をされるとか、あるいは現在の生活上の困難がある場合があるわけでございます。
 そこで、終局審判前に仮の処分として、そういった物の散逸を防ぐあるいは必要欠くべからざる生活の資を与えるということが必要な場合があるわけでございますが、現在、家事審判規則によりましてそういった仮の処分が定められておりますけれども、これにつきましてはやはり強制力を持たない、執行力を持たないというのが一般の通説であり取り扱いでございます。したがいまして、これを法律上の制度としてはっきり明定いたしまして強制力を持たせる、それによって家事審判の実効性を高めるというのがそのねらいでございます。
#122
○飯田委員 最後に一つ、この家事審判の件ですが、遺産分割の場合に換価を命令するということが書いてありますね。相続人に対する換価の命令ですが、これを法律で決めるということは、財産権の侵害として憲法二十九条に違反することにはならないでしょうか。
#123
○貞家政府委員 実は、遺産分割におきまして換価処分により遺産を換価させるということは現在の家事審判規則にもあるわけでございます。
 遺産分割の方法といたしましては、狭義の現物分割というのがございます。それからいわゆる債務負担による分割というのもございますし、あるいは使用権を設定するあるいは民法上の共有にするというのも広い意味の現物分割でございますが、そういった現物分割が適当でないときあるいは分割によって著しく価格を損ずるおそれがあるような場合におきましては、民法二百五十八条の趣旨によりまして、終局審判において一括競売を命ずる方法によって遺産の分割をするというのも一つの方法として認められているわけでございます。また、先ほども申し上げましたように、遺産分割の本審判をするために必要があるときは、あらかじめ本審判に先立って換価人による換価を命ずるということも現在の取り扱いとして認められている。家事審判規則にその規定があるわけでございます。
 今回の改正は別に新しいことを決めようというわけではございません。現在あります家事審判規則の規定のみによりましては、果たして換価人に競売の権能があるのか、競売の申立権があるのか、あるいは不服申し立てができるのかというような点で非常に不明確でありまして、現在のままでこれを強制力を持たせるというためには、やはり先生御指摘のようにいろいろ疑問があるわけでございます。
 でございますから、これを法律上の制度に高めまして、その手続の整備を定めていく、これは最高裁判所規則に細かいところを委任をしておりますけれども、手続の整備を図っていくということにとどまるわけでございます。遺産分割の本審判でやはりそういった競売をしてその換価代金を分割するというような処分が認められております以上、審判前の換価処分ということがございましても、これは私有財産権を侵害するということにはならないのではないかというふうに考えております。
#124
○飯田委員 最後に一つだけ。
 遺産分割の換価命令があっても遵守しない場合に、これは直接強制なさるのでしょうか、それとも間接強制の手段がありますか。
#125
○貞家政府委員 この点については強制方法はないように思います。
#126
○飯田委員 終わります。
#127
○中村(靖)委員長代理 栗田翠君。
#128
○栗田委員 私は、民法及び家事審判法の一部改正案については、かねがね多くの人たちが妻の座の向上という立場での配偶者の相続分の引き上げなどを要求していた点など組み入れられておりますので、そういう意味で改善の部分が非常に多いという立場から質問をしたいと思います。
 まず最初に、先ほど以来問題になっています法定相続人の寄与分の問題でございますけれども、この寄与分には今回は上限が決められていないように思います。ところが五十一年四月に最高裁判所が家庭局長書簡という形で出された文書を見ますと、その前年アンケートを家裁からとっていらっしゃるようですけれども、中間報告を見ると、上限を設けなくてもよいというところが十庁、設けた方がよいというところが四十一庁で、設けた方がよいという意見が非常に多かったようでございます。今回の寄与分の設定についても、これは家裁の実務家からの意見が非常に大きく反映しているということなのですけれども、上限を設けた方がよいという家裁の意見が圧倒的に多かったにもかかわらず、今度上限が設けられていないのはどういうわけでしょうか。
#129
○貞家政府委員 確かに今回の案には上限を設けておりません。
    〔中村(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
と申しますのは、この寄与の内容というのは非常にさまざまでございまして、また寄与分の額というものは家庭裁判所が一切の事情を考慮して定めるということでございますので、終局的には家庭裁判所が具体的な事例に応じた妥当な額を定められるということになりますので、あえて上限を求めることはむしろ必要がないのではないかというふうに考えられたわけでございます。
 これは遺留分を侵害しない、これを上限にするというような考え方もあったわけでございますが、遺留分というものは積極財産から消極財産を控除した純財産を基礎として計算されるものでございますから、遺留分を侵害しないことをいわば上限といたしますと、寄与分を定めるに当たって常に債務の総額を確定しなければならないということになりますが、これは積極財産のみを対象とする現在の遺産分割手続に新たな負担を課することになって、遺産分割を遅延させるにもなりかねないというような問題がございまして必ずしも適当ではないということでありまして、寄与分につきましては、終局的には家庭裁判所の健全な裁量によって一切の事情を考慮するということになりますれば、これは不当な結果は生じないというふうに考えた次第でございます。
#130
○栗田委員 そうしますと、たとえば配偶者と兄弟姉妹が遺産を分割したような場合、兄弟姉妹の中に特別に寄与した人がいた場合に、配偶者の遺産分がかなり大きく侵害されるということなんかも起こる場合もあるわけですね。
#131
○貞家政府委員 そういうことが絶対に起こり得ないかと言われますと、これは理論的には起こり得ると申し上げざるを得ないのでございますけれども、しかし本当に非常な寄与――、非常な寄与と申しますのは、まさにそれがなければ配偶者の今日もないというような寄与がございます場合にはこれはある程度やむを得ないことだと思いますし、またこの寄与分というものが共同相続人間の相続分の具体的な調整だということになりますと、これを判断する上において、寄与が非常にあったから配偶者の生活はどうなってもしようがないというふうに考えるそういう裁判は、これはないと言ってもよろしいのではないか。私は、そういったこともすべての事情を考慮して決めるということには当然入ってくるだろうと思うわけでございます。
#132
○栗田委員 一つは、配偶者と兄弟姉妹とが遺産を分割するということについてはいままでかなり問題があって、特に封建的なところなんかですと、奥さんの遺産分をきょうだいが出てきてずいぶん取っていったというような例もいままであったわけでございますね。これはかなり問題になっているわけです。
 ですから、今度の遺産分割の内容を決める場合にも、世論調査などでも、いまの法律のままでよいという数よりも亡夫の兄弟姉妹への相続はできないようにした方がよいという方がはるかに数が多いようでございまして、二七%がいまのままでよい、できないようにした方がよいというのが四四%もあるわけですね。
 先ほど伺っていますと、非嫡出子への遺産を嫡出子と平等にするかどうかということではずいぶん世論を重んじていらっしゃるようですけれども、この点については逆に、世論から言いますと、アンケートではできないようにした方がよいということになっておりますのに、まだ兄弟姉妹というのが残されたのはどういうわけですか。
#133
○貞家政府委員 確かに兄弟姉妹には相続権をおよそ認めないことにした方がいいという世論調査の意見はかなりございます。
 ただ、婦人団体を含めまして法律家の団体とかそういった方々の意見の照会に対する御回答を見ますと、やはり現在における兄弟姉妹に対する考え方というものは、完全に相続権を与えないというのは少し無理ではないかという御意見がどうも強いようでございまして、やはり私的扶養と申しますか扶養義務を負うということ、それから遺産の中に、婚姻中に形成された財産だけではなくて、いわゆる伝来財産というものがなくなっているということは言えないわけでございまして、まだそういう要素も残っているといたしますと、兄弟姉妹から完全に相続権を奪うというのはまだ少し時期尚早と申しますか、まだわが国の実情がそこまでいっていないのではないかということを考えたわけでございます。
#134
○栗田委員 いままでは法定相続人の寄与分というのが明文化はされておりませんで、その他の寄与についてもですけれども調停や審判などで配慮されていたと思いますが、いままでの調停例、審判例では寄与分というのは大体どの範囲だったのでしょうか。
#135
○栗原最高裁判所長官代理者 現在は御承知のとおり明文の規定はないわけでございますが、家庭裁判所の遺産分割の調停あるいは審判の場におきまして、共同相続人の一部から特別の寄与ありという主張がなされたケースにつきまして、そのような寄与の事実が認められる場合に、共同相続人間の相続財産の分配の実質的な衡平を図る、調整をするという、そういう見地から寄与分が認められているわけでございます。
#136
○栗田委員 額として全相続分のどの程度までが例としてございますか。
#137
○栗原最高裁判所長官代理者 ただいま手元に詳しい資料がないわけでございますが、従前、審判例等で紹介されております事例を見ますと、配偶者が共かせぎをしておる、しかもその婚姻期間が相当長いというようなケースにつきましては相続財産の五割まで寄与分を認めた事例がございます。これに対しまして、一般的には子供の寄与につきましては大体多くても二割程度にとどまっていたのではなかろうかというように考えるわけでございます。
#138
○栗田委員 そうしますと、今後も大体、先ほど常識的な範囲でというお答えがありましたけれども、額としてはその辺にとどまると考えていいのでしょうか。
#139
○栗原最高裁判所長官代理者 今回の法律の改正によりまして、配偶者の相続分が子供と共同相続する場合に三分の一から二分の一に引き上げられるわけでございます。
 そういたしますと、従前は配偶者につきましてただいま申しましたように一番多い割合で相続財産の二分の一というような寄与が認められておりましたけれども、このように配偶者の相続分自体が引き上げられますと、寄与分自体は少し従前よりもその割合は低くなるのではなかろうか。ただし、配偶者が取得する分につきましては従前とそれほど変わりはない、このように考えておるわけでございます。
#140
○栗田委員 いままで調停などの例を見ますと、法定相続人以外の者で大きく寄与した人、先ほど来問題になっていますたとえば内縁の妻などの寄与分も調停などでは配慮されていたと思います。
 今度このように明文化されて寄与分というものが決められますと、逆に、法定相続人以外で寄与してきた人、内縁の妻、事実上の養子、それから夫を失った長男の嫁、そういう方などについて、むしろいままでよりも配慮がしにくくなるのではないだろうかというおそれをちょっと感じておりますが、その辺についてはお考えになりますか。
#141
○貞家政府委員 これは原則的には、まず当事者間の協議が調わなければ家庭裁判所の審判ということになるわけでございますけれども、協議におきまして実情に応じた財産の移動と申しますか配分が行われることは妨げられないわけでございますし、また調停の場におきましては当事者の合意がもとになるわけでございますから、これは実情に応じた解決がされる、それは決して妨げられないわけでございます。
 ただ、家庭裁判所の審判の基準といたしまして当然にそれが入ってこないという結果にはなるかと思うのでございますが、この点につきましては、遺産分割の当事者は相続人間でございますから、その間の手続としてこれを構成せざるを得なかったわけでございまして、これはいろいろこの相続関係の制度というものは一応割り切らざるを得ないわけでございますけれども、それを補充するものといたしましては、やはり被相続人の自由意思による処分ということ、これがやはり大いに活用と申しますかそれによって処理をされるべき事柄ではなかろうか。
 したがいまして、現在では遺言というのは必ずしもそれほど普及していないようでございますけれども、これは十分将来、私どもは、遺言の制度を活用していただくあるいは生前の処分を活用していただくというようなことによって、これは寄与分制度に限りませんけれども、起こることあるべき不都合を避けるためには、そういった方法をある程度活用していただくということを期待しているわけでございます。
#142
○栗田委員 調停による寄与分の配慮、それから遺言の活用というお話でございますが、さっきから議論されているように、内縁の妻とか事実上の養子などの場合、実際に貢献をしていても調停でもなかなかうまくいかないという例も多いようでございますけれども、いまおっしゃいました例以外に何か救う方法はないのだろうか。そういう点でお考えになっていらっしゃることがありましたら伺いたいと思います。
#143
○貞家政府委員 これは、それでは解決にならないとおしかりを受けるかもしれませんけれども、いろいろ養子縁組というような方法、これは非常に人為的ではございますけれども、親子関係、相続関係というものを創設いたしますためにはそういった非常に明確な方法があるわけでございます。
 したがいまして、この内縁の関係というようなものは確かに問題がございますけれども、これは届け出ということを非常に簡易にできるわけでございますので届け出の励行、それからどうしても届け出ができないという何らかの事情があります場合に、その時期におきましてやはり生前の財産の処分というようなことをはっきりしていただくということが、そういった亡くなってから後非常に困った問題が生じるというのを防ぐ一番はっきりした道ではないかと思うわけでございます。
#144
○栗田委員 それでは次の問題に移ります。
 寄与分について農業団体などからいろいろな要望が来ております。その一つとして給与制を導入せよ、つまり寄与分の計算をするのに、長男などがお父さんと一緒に農業をやってきてずっと給与はもらわずに働いてきたけれども、給与制を導入して寄与分をはっきりと出してもらった方がいいのではないだろうか、こういう要望意見などが出ておりますけれども、この意見についてはどうお考えになりますか。
#145
○貞家政府委員 これは完全な財産法上の請求権、補償請求権のような構成をとれば別でございますけれども、私どもが今回御提案申し上げております寄与分というのは、やはりその程度には至らない――程度には至らないというのは必ずしもそれより程度の低いということを意味するわけではございませんけれども、家庭内で必ずしも明確ではない、契約関係等が明確ではない、証明もしにくいというような寄与がございます。それをやむを得ずと申しますか金銭的に評価して調整をしようというあれでございますから、これを賃金に計算するというのは確かに一つの非常に明確な手段ではございますけれども、どうもそういった単純な計算でこれだけは確保するというような仕組みにはなじまない点があるのではないか。
 先ほどの配偶者の立場をどう確保するかというような問題とも関連するわけでございますけれども、金銭的にこれだけかせいだと申しますか、かせいで家計を助けたからそれだけは返せという制度とはちょっと違うように思うわけでございます。また、そういった計算をすることがその方々にとって非常に有利になるかどうかという点も、これまた生活費等いろいろ細かい計算をやりますとこれは必ずしも断定できないわけでございまして、やはりある程度裁量的にやらざるを得ないのではないか、その方が実感に即した衡平な結果が得られるのではないかというのが私どもの考え方でございます。
#146
○栗田委員 給与制を導入した場合必ずしも有利ではないとおっしゃいますが、有利でない場合といいますとどんな場合が考えられますか。
#147
○貞家政府委員 寄与の仕方はいろいろございますので、賃金労働者というような観点で計算をするのか、それとも経営に対する評価を一般の業者の場合の経営者の報酬というふうに計算をするのか、恐らくそういうことにはならないのではないか。
 そういったいろいろな事情を細かく考えますと、これは果たしてどういう計算になりますか。いろいろあると思いますけれども、有利不利というのは私必ずしも自信があるわけではございませんが、いろいろ形態があって、その計算というものも単純にはいかないだろう。そういたしますと、非常に単純な労務というものの計算が結局浮かび上がってくるのではないだろうかというような感じがいたすわけでございます。
#148
○栗田委員 この農業団体の要望というのは、フランス法では農業を営む者の特別措置ということでこういう計算の仕方もあるようなので、恐らくそういうものを参考にして出されてきているのではないだろうかと思いますけれども、またそういう点についてもいろいろ御検討いただきたいものと思っております。
 それでは次の問題に移らせていただきますが、土地の評価について。これはやはり農業の問題、農家の問題ですが、遺産相続での土地の評価についてですけれども、地価そのものとして評価をしますと非常に高い評価額になる場合がございます。特に都市近郊などの場合には莫大な遺産になる場合があるわけですね。それをきょうだいなどで分けますと、長男が農業を営んでいると、あとのきょうだいに分割した分を現金で渡さなければならないというときに大変な負担になる例がよくございます。
 そこで、これはやはり農業団体からの要望ですけれども、これからも農業を続けていくような予定の土地については収益で評価をしてほしい、こういう強い要望が出ておりますが、この辺についてはどうお考えになるでしょうか。
#149
○貞家政府委員 これは一般に遺産分割の際にはその相続財産の評価ということで常に問題になるわけでございますけれども、評価の方法はいろいろございますし、また農業経営を維持するという点から言えば、まさに先生のおっしゃるような方法が合理的であるということが言えるかと思いますが、ただ、これは現実には宅地転用見込みの土地もあることでございますし、いろいろその具体的な状況に応じまして客観的な評価ということをせざるを得ないのでございます。
    〔委員長退席、中村(靖)委員長代理着席〕
これは当然に農業に従事すべきであり、従事する以上こういう評価をすべきだというふうに一律になかなかいきかねる面もあるかと思うのでございます。
 遺産分割の際に農地を評価するというような場合には、ほとんど例外なく鑑定人の鑑定ということになるのではないかと思いますが、これは家庭裁判所の中でおやりになることでございまして、私どもがどういうふうにすべきだという確たる意見を持っているわけではございませんけれども、これはやはり鑑定人の鑑定をもとにして家庭裁判所で妥当な評価をされるということになるのでございましょうし、またそれを信頼いたす以外にはないのではないかと思う次第でございます。
#150
○栗田委員 けれども、実際には矛盾が残るわけで、鑑定人の妥当な評価がされれば特に市街地に近い土地などは非常に高い評価になると思うわけですから、先ほど例を挙げましたような問題というのはどこまでも起こってくるのではないだろうかと思うのですね。
 また一面で、いままで農業をやっていて先祖伝来土地を受け継いできたけれども、数年後には農業をやめてしまおうというような場合もあるわけですから、そういうときには、もしほかのきょうだいたちが全部相続権を放棄して、長男が農業をやっていくだろうということで譲ってくれたりした場合、莫大な遺産を受けてしまうという例も出てくるわけで、いろいろな角度からの問題があるわけです。
 ですから、たとえば税金での緩和措置を考えていくということなどもしないと、農業経営を続けていくということで土地を相続した場合に非常に大きな問題があると思いますが、その辺などは今後検討の余地があるのではないでしょうか。いかがでしょうか。
#151
○鈴木(達)説明員 現在、農地相続をした場合に、いろいろな条件がございますけれども、たとえば二十年間農業を継続するというような場合におきましては、通常形成されます時価と、農業投資価格とわれわれ言っておりますけれども一種の収益還元価格のようなものでございますが、その差額に見合う税金につきましては納税を猶予するという制度がございます。それを利用なされば、税金の面から農業が維持できなくなるというようなケースはほとんどないものと考えております。
#152
○栗田委員 それでは次に、一般的に言いましたその寄与分の税制上の取り扱いについて伺いたいと思います。
 いままで、配偶者が遺産相続を受ける場合は優遇措置があったと思います。三分の一まで、それから上限四千万円までは相続税がかからないようになっていたと思いますけれども、この措置はどういう考え方から出ているものでしょうか。
#153
○鈴木(達)説明員 配偶者に対する税の軽減ということについての基本的な考え方と申しますのは、今回の民法におきまして法定相続分を三分の一から二分の一に引き上げるに際しての理由がいろいろ掲げられておりますけれども、そういう理由が大部分当てはまろうと思いますが、税の立場から一つ別個の問題といたしましては、配偶者への財産の移転というものは、いずれ近いうちにまた相続が生ずるということがございます。
 要するに、水平相続と呼んでおりますけれども、そういう場合に結果的には数年を経ずして相続税が二度課せられることにもなるわけでございますが、そういうものはある程度排除した方がよろしいという考え方もあるわけでございます。そういう点も含めまして配偶者に対する税の軽減がなされているわけでございます。
 それから、いま先生が最高保障というような意味で四千万円をおっしゃいましたが、これは最高保障ではございませんで最低保障でございます。したがいまして、仮に遺産が四千万円しかない場合にも、配偶者が四千万円を取得すれば、四千万円全額について配偶者の軽減が働くという意味でございます。
#154
○栗田委員 このたびは妻の相続分が二分の一に引き上げられて、それから場合によりますと寄与分も相続することが出てくるわけですけれども、先ほど、一度相続をして間もなくまたほかに相続をすることも起こるだろうというお話もありましたけれども、それ以外にも、配偶者で財産を相続する場合というのは女性の方が多いわけです。
 大体、女の人の方が長生きなものですから、妻が相続する場合が多いわけですね。そういうことで妻の生活の問題、その他いままでの貢献とかいろいろなことを考えての恐らく税の優遇措置だと思うわけですけれども、この優遇措置について、配偶者が受けた寄与分にまで広げることはできないのかどうか、寄与分まで優遇措置を講ずることはできないのかどうかという点ですが、いかがでしようか。
#155
○鈴木(達)説明員 今回、民法の改正案の附則でもってお願いいたしております相続税の改正の中身は、非課税の割合を三分の一から二分の一に引き上げるということのみで、寄与分についての税制上の措置を講ずるような形になっておりません。
 そういたしません理由は二つあるわけでございますが、一つはやはり寄与分の性格からきていると思います。すなわち、寄与分はあくまで共同相続人間の遺産の配分を衡平にするための措置であると考えております。したがって、それはあくまで相続分でございまして、たとえば共有財産の解消のような形のものではなく、あくまで相続分と理解しておるわけでございますので、そこには相続税が課せられるのはやむを得ないということでございます。
 それからもう一点は、これはむしろ執行上の問題かもしれませんが、今回の寄与分というのは第一義的にはあくまで当事者間の協議、それが調わない場合に裁判所の審判ということになっているわけでございます。したがいまして、当事者間で寄与分を適宜定めることができるわけでございます。その寄与分について税制上の考慮をするということになりますと、当事者間の意思によりまして、税の基礎となります相続財産そのものがいかようにでも変わり得るということになりまして、砕いた言い方をしますと相続人間の協議いかんによっては相続税を全く免れることもできる結果になってしまうわけでございます。ところが、そういう面につきまして果たして税務署が、本当に寄与分が幾らあったのか、本当に寄与したのかということまで調査するわけにはまいりません。そういうことから申しますと、ちょっと税のルールには乗りがたいということでございます。
#156
○栗田委員 このたび配偶者の相続分が二分の一になったのですが、四千万円という額については変わっていないようですけれども、これは今後もそのままなのでしょうか、それとも変えられるように検討していらっしゃるのでしょうか。
#157
○鈴木(達)説明員 四千万円につきましては今回手当てをお願いしておりませんが、今回の手当てはあくまで民法の改正に伴う相続税法の整備ということで単純に率だけを変えているわけでございます。
 四千万円の考え方と申しますのは、先ほど申し上げましたように最低保障的なものでございまして、これは五十年度の相続税法の改正に際して現行の制度ができたわけでございますが、その際に、それ以前の配偶者に対するいろいろな軽減措置との連続をどう保つとか、あるいはこの配偶者への軽減措置のほかに一般的に相続税の基礎控除的なものがございます。いま二千万円プラス四百万掛ける法定相続人の数というようなものもございますが、そういう一般的な相続税の課税最低限、そういうものとの関連において四千万円という数字が決められているわけでございます。
 すなわち、民法とは直接関係のない税の立場からの最低保障であると考えているわけでございますが、そういうものをどう処理するかということにつきましては、やはり現在の財政状況ですとか、あるいは現在相続税をお支払いになっている方は死亡者百人中三人未満でございますけれども、そういった相続税のあり方とか、もろもろの観点から検討すべき課題でございまして、今後未来永却にいじらないという意味ではございませんけれども、今回の民法の改正に伴って処置しなくてもいい事柄ではなかろうかと考えているわけでございます。
#158
○栗田委員 しかし、妻の取り分をふやしたという民法改正の立場から考えますと、その取り分はふえたけれども税金がかかってくるということも起こるのではないか。私、ちょっといまこの四千万円について誤解しているのかもしれませんので、その辺も含めてちょっとお答えいただきたいのです。
 いままでの三分の一が二分の一になったために遺産相続で妻がもらえる分がふえる場合、いわゆる課税最低限以上になった場合、税金がかかるわけです。だからせっかくふやしたのに税金かかってしまったのでは、ふやした意味がないのではないだろうかという、私非常に単純な考え方をしているのですけれども、この辺はどうなんでしょうか、ちょっと御説明をお願いしたいと思います。
#159
○鈴木(達)説明員 そういうことにはならないわけでございます。四千万円か遺産総額の二分の一のいずれか大きい方でございます。たとえば二億の遺産額がございますと、一億と四千万のいずれか大きい方まで課税されないということになります。
#160
○栗田委員 わかりました。私、少し誤解していた点がございます。
 次に、遺産分割の基準に関する改正がされておりますけれども、この中で考慮すべき事情として新しく年齢などが入っておりますが、この年齢について考慮するというのは、年齢のどういう状態についてどういうふうに考慮するということなのか、具体的にお教えください。
#161
○貞家政府委員 年齢と申しましても、これは年齢が少し違えば当然違ってくるというほどのことではございませんで、ただ非常な年少者である場合に、将来のたとえば学資が要るとかあるいは成人になるまでの継続的ないわば扶養料的なものが恐らく必要であろう。そういう場合には、現在の価額は多少低くても収益を生むような性質のものである方が都合がいいというような事情も、いろいろなケースの中にはあると思います。そういったいろいろな事情を考慮してきめ細かに遺産分割をやっていただきたい。
 これは、家庭裁判所へ参りますれば当然そのような考慮は現在でも払われていると思うわけでございますけれども、遺産分割の当事者間の協議の際にも指針としていただきたいわけでございますから、いういったいわば教育的と申し上げるとちょっと差し支えございますけれども、そういった意味合いもありまして、いろいろ具体的な事情を推測させるような要素を書き上げたという程度の改正でございます。
#162
○栗田委員 その次に「心身の状態及び生活の状況」というのがございます。大体これもどういう場合か予想はできますけれども、たとえば病気の方がいらっしゃったら、そのほかの方の分までも配慮してそちらに上げて療養ができるようにするとかいろいろあると思いますし、生活の状態というのもそういうことだと思いますが、いままで時たま起こっている問題で、たとえば配偶者つまり残されたお母さんと子供が遺産を分割する場合に、財産としては家ぐらいしかなかったというような場合、子供に何分の一かいくわけですが、お母さんがいままで住んでいた家を処分しなければならないといったような例も出てくるわけですが、この生活の状態の考慮などというのは、こういう場合に母親の住む家を保障するといったようなことなどが入ってくるわけでしょうか。
#163
○貞家政府委員 これは生活の基盤となるものを確保するというような、もちろんそういった趣旨で解釈され運用されるということがあり得ると思います。
#164
○栗田委員 次に、非嫡出子と嫡出子の問題ですけれども、試案にはこの両方を平等にするということが入っておりましたのに今度は抜けておりますが、その抜けた理由というのは何でしょうか。
#165
○貞家政府委員 この問題は非常にむずかしい問題でございまして、一夫一婦制と申しますか法律婚の維持とそれによる嫡出家族の保護という面と、非嫡出子本人に何らの罪はないから当然これに同等の保護を与えなければならないという理念がまさに衝突する場面でございます。
 そこで、多数の方々の意見を参考にしたわけでございますけれども、これは実にさまざまでございました。世論調査では、やはり現行制度を維持すべきだという意見が非常に多うございました。それに比べますと、法律家あるいはその他の有識者の方々の意見では同等化論がかなり強うございましたけれども、しかし非常に根強い反対論もあったわけでございます。そういったいろいろな御意見を拝聴し、また一般の雑誌等に出ております各方面の論調というようなものを主体に検討したわけでございますけれども、やはりまだどうも根強い反対意見があるようでございまして、この問題について国民感情に合致すると言い切るにはなお疑問がある、言いかえれば国民的なコンセンサスというものが得られているとはなお言いがたい面があるように感じたわけでございます。
 法制審議会でも相当議論されましたけれども、やはり時期がちょっと尚早ではないかということで、今回は見送ることにいたしまして、今後、世論の動向あるいは国民感情の推移というものを見守りながらなお検討しようということに落ちついたわけでございまして、今回の改正では見送らざるを得なかったという経過でございます。
#166
○栗田委員 先ほど以来そういう御説明を、私もほかの方の質問を伺っていて伺っているのですけれども、まだ私ちょっと釈然といたしません。
 それは、さっきもちょっと申し上げましたように、世論の動向といいましてもさっきの配偶者と兄弟姉妹の財産分割の問題では、世論の動向は兄弟姉妹に分けない方がいいというのがはるかに強かったのですけれども、それでもそれを採用していらっしゃるわけですね。しかも今度の非嫡出子と嫡出子の場合でも、世論調査をなさった段階の後で試案を出していらっしゃるわけで、十分世論調査の結果は考慮にお入れになった上で試案の中には入っていたと思うのですけれども、それがなおかつ削られたというそこのところですね、その辺の事情を伺いたいのです。
#167
○貞家政府委員 これは新しい制度をつくるか現行制度にするかという点については、どうしても若干の違いはあるわけでございまして、新しい制度を提案するということになりますと、やはり圧倒的に賛成が多数であるという状態になりませんと、余り先走ってはいけないのではないかという考えがするわけでございます。それに反して、現行法を維持するという意見が少数でございましても、これは絶対に現行法を変えろという意見が圧倒的多数になりませんと、逆に、これは非常に保守的なことを申し上げるわけでございますけれども、やはりそこはおのずから考えざるを得ないという点がございます。
 兄弟姉妹の問題につきまして確かにそのとおりでございますけれども、あのいろいろな相続人の範囲とかあるいは相続人の順位とかという問題に比べまして、非嫡出子の問題というものは非常にわかりやすい、だれにでもわかりやすい問題であるということから、私ども雑誌等を見ておりましても、非常に反応が鋭敏に出てくると申しますか、ストレートに出てくるというような感じが実は非常に強かったわけでございます。これも御参考までに申し上げておきたいと思います。
#168
○栗田委員 この問題は該当者というのが比較的少ないんじゃないかと思うのですね。
 ですから、どちらでもいいという人がかなりあって、直接利害関係を鋭敏に感じていらっしゃる方というのはわりあい少ないと思うのですけれども、そういう中で一般の世論調査でも改正せよというのが一六%出ているというのは、私はかなり多い数ではないかなと思ったのですね。しかも、一概に言えないが二〇%、わからないが一六%、合計しますと五二%で、いまのまま四八%よりはここらは多いわけですね。しかも、試案発表後の専門家や団体などの御意見でも、賛成の方が数としては多かったのではないんですか。いかがでしょうか。変えることに賛成という数ですね。
#169
○貞家政府委員 一般の意見――一般の意見と申しますか、これは世論調査以外の一般の意見では、御指摘のとおり同等か若干改正意見の方が多かったかと思います。
 ただ、私どもはそういった統計を見ておりまして感じましたことは、世論調査におきましても、非常に若い方あるいは子供を持たない方、独身の方というようなところに改正賛成者が多い。それに反しまして、家庭を持っておられるような方につきましてはそれが非常に落ちている、反対がだんだん多くなっているというような点もございます。それから世論調査以外の御意見によりましても、学問的、理念的にお考えになる方のグループは改正意見が非常に強い。それに反して、直接こういった問題をじかにお扱いになっているような法律家の集団と申しますか、そういった方の中には慎重論が強いというような傾向があったわけでございまして、私どもも、これはじかに扱うことをいたしておりません、頭の中だけで考えておるわけでございますから、これにつきましては、やはり非常に反省と申しますと大げさでございますけれども慎重に考えざるを得ないという気持ちになったというのが事実でございます。
#170
○栗田委員 国際的に見ますと、かなり平等になっているものが最近多うございますね。しかも日本の場合には、かなり早くから非嫡出子には同額じゃないですが相続をさせていたのに、途中から逆転して、いままでは全く認めなかった国で平等に認めているという例がずっと出てきているわけですけれども、そういう傾向の裏づけになっている理念というのはどうなんでしょうか。その辺のお考えをちょっと伺いたいのですが。
#171
○貞家政府委員 私も、この逆転現象と申しますか、いま御指摘になった現象を非常に興味深く見ているわけでございますが、ただ日本と諸外国と非常に違いますのは、非嫡出子の数が日本では非常に少ないというのはこれは大きな特色ではないかと思います。
 そこで私、いろいろ外国の事情よくわかりませんけれども、一つには離婚法との関係もあるのではないか。日本では事の当否はともかくとして離婚が比較的手続は容易に認められておりますのに対しまして、カトリック系の諸国では最近になってようやく離婚というものが認められる。そういうことになりますと、婚姻が事実上破綻しておりましても離婚はできない。そこで新しい男女間の生活というものは法律上はいわば姦通状態でありまして、そこから産まれて出てくる子は非嫡出子ということになるわけでございます。
 そこで、キリスト教の伝統から一夫一婦制ということが非常に尊重されまして、姦通子にはそんな権利を認めるべきではない、そういうあれが非常に強かった。ところが数は非常に多い。人道上もそういう極端な人格を認めない――人格を認めないというのは言い過ぎでございますけれども、財産上の権利を認めないということでは済まされなくなった。したがいまして、それはだんだん同等化すべきだということになっていったのではないか、こんな想像もしているわけでございます。
 また、日本では適度に庶子というものの地位も認められていたということが言えると思います。これは反面において家族制度を維持するというようなものとも結びついて、必ずしもこれはそれがいいとは申せないわけでございますけれども、少なくとも男であればこれはめかけの子でも地位を与えるというような空気が非常に強かったわけでございます。それが非常に国民感情の上で是認をされるといいますか、それがやむを得ないことということになって、比較的その意味では優遇されていた。そこでその地位がそのままに行きどまりになってしまっているという感じがするわけでございます。
 西欧諸国は非常にこういった急激な変化を遂げております。しかしそれにつきましては、たとえばドイツなどの制度を見ますと、完全に同等の権利を認めるということではなくて代償請求権というような形で家庭内の紛争といいますか心理的なコンフリクトを避けるというような立法説明をしているようでございますけれども、そういった配慮もあるわけでございます。でございますから、国民感情と申しましたけれども、国民感情のみならず外国のそういった非常な変遷、変転の結果というものももう少しやはり見た上でないと正確な判断ができないのではないか、これは私の非常に個人的な考え方かもしれませんけれども、そういうような気持ちを持っております。
#172
○栗田委員 確かに世論の動向というのは大切なもので無視できないものだと思いますが、さっきからお話がありましたように、たとえば日本が古くから非嫡出子の遺産相続の一部を認めていたということは、これは女性の地位が高かったからではなくて逆に低かったからだと私は思うのですね。つまり、正妻の子でなくても子供として認めるという主張に対して反対ができないという状態であったということだと思います。
 最近そういう該当する子供の数が大変少なくなっているということは、さっきお話のあったような離婚の自由にかかわるいろいろな問題もあると思いますけれども、もう一つは、日本では本当に産みたい子供だけ産んでいるということもあるのではないかと思うのですね。一般的にいいますと、正式に法的な手続をした妻の子供でない者に遺産相続を同じようにするのはけしからぬというようないわゆる一般的な感じ方というのはあると思いますけれども、しかし非嫡出子というのは必ずしもそういう子供ばかりでもないのですね。
 それからもう一つは、たとえそうであろうとも子供は法のもとで平等で、その子供が嫡出子になろうと非嫡出子になろうと、そんなことを選ぶ権利は子供は何も選びようがないわけですから、そういう意味では、たとえ少数であろうともそういう子供の権利というのを守っていくという方向は必要なのではないだろうかというふうに考えるわけです。さっきからお話がありましたように、若い世代がわりあい改正に賛成しているというのは、そういう点で平等の観念といいますか比較的割り切った立場に立っているということもあるでしょうし、専門家に改正に賛成が多いというのも恐らくそういう立場に立っているのだと思いますから、方向としては、今後次第に国際的な動向と同じように日本でも平等にしていくという方向に近づいていくべきではないだろうかと私は思うわけでございます。
 そこで、立法政策上の判断として世論を考えておやめになったわけですけれども、やはり世論をリードしていかなければならない、そういう意味で、こういう考え方があるのだということ、子供の平等という立場に立ったらばやはりこうでなければならないといったような世論をリードする努力ということも必要になってくると思いますけれども、その辺については今後どうなさっていらっしゃるのかということと、今後あるべき方向としてはどうなのかということなどを伺いたいと思います。
#173
○貞家政府委員 非常にむずかしい御質問でございますけれども、私は、一応法務省民事局参事官室の名前ではございますけれども、法制審議会の議論を踏まえましてこういう問題提起をしたということは決して意味はなくはない、非常に大きいと自負している次第でございます。
 これを確かにあるべき姿にリードするというのは結構でございますけれども、何分にもこの問題がやはり国民感情を支配する人生観とか人間関係のあり方に関する世界観的なものというものを含んでいるわけでございます。もちろんその中には個人としての尊厳、平等という要素も入るわけでございますけれども、そういうものも含めまして、家庭生活なり人間のあり方についてのいわばフィロソフィーというものがどうしてもこの問題については重要な意味を持ってくるわけでございまして、私ども浅学非才な者がリードをするということはちょっと御勘弁願いたいと思うのでございますけれども、問題を提起しそれについて論点を国民の前に明らかにする、考え方の筋道をいろいろ御紹介していくというようなことは大いに努力をいたしたいというふうに考えております。
#174
○栗田委員 試案として発表された御努力は高く評価いたしますし、今後の御検討も期待しております。
 それでは、次に家事審判法の改正の問題なんですけれども、審判前の保全処分の制度が設けられて執行力、強制力を持たせているわけですけれども、審判前だけでなくて、これは調停の前にもこういうものを持たせるべきではないだろうかと思いますが、いかがでしようか。
#175
○貞家政府委員 審判のみならず調停前、調停成立前、調停手続中でございますね、この場合にも現在の仮の措置、仮の処分というものが家事審判規則上は認められているわけでございますけれども、これについては家事審判規則において執行力を持たないということが明記されているわけでございます。民事調停におきましても同様でございます。
 確かに、大多数の事件が調停で解決をする、また調停に非常に国民の方々が期待されているという点はそのとおりでございまして、その中でやはり強制力を持つ処分ということも考えられないわけではございませんけれども、ただ何と申しましても調停というものは裁判所がみずからの判断によって事を決めるというわけではございませんので、当事者の合意を基礎とする紛争解決手段ということになっているわけでございます。したがいまして、他方の意見に反して保全処分を裁判所が下してそれに強制的に従わせるということが調停の本質にややなじまない点があるのではないかという考慮をいたしたわけでございます。
 どうしても調停手続中に何らかの強制力ある処分をしなければならないという場合、これは恐らく調停が成立の見込みが非常に少なくなっている場合が多いと思うのでありますけれども、調停が不成立になりますと審判に移行する、乙類事件については審判に移行します。その場合には無論保全処分、仮の処分ができるわけでございますし、また調停を申し立ていたしまして別途に審判の申し立てを重ねてするということも不可能ではございません。これはどうしても強制力を持った仮の処分をもらいたいという場合には、別途に並行して審判の申し立てをするというようなことも不可能ではございません。
 したがいまして、そういう例外的な場合にはあるいはそういうような手段によってそういう強制力を持った仮の処分ということが必要になる場合もあるかと思いますけれども、一般的に申しまして、調停で当事者の合意を基礎とするような解決を図ろうとする段階で強制力を持たせるというのはやはりいかがなものであろうか。任意の履行、もちろんこれはその措置に反した場合には過料の制裁があるわけでございますが、その程度で足りると申しますか、その程度が適当な程度ではないかというふうに考えておる次第でございます。
#176
○栗田委員 実際問題としましては、調停の対象になっているものが財産ということになる場合が多いわけですから、そういうときにやはり片方がどんどん処分してしまうと実際には効果がないような気もしますし、むずかしい問題だと思いますが、そして過料が今度引き上げられていますけれども、五万円、十万円ぐらいですと、財産を処分する立場の人にとってはその程度では痛くもかゆくもないという場合もあるのではないかな、こう思うわけです。いままでの三千円とか五千円よりははるかに効果ありますけれども。そういうことで、問題がまだ残っているのではないだろうかと思いますが、これはきょうはこの程度にしておきます。
 それから次に伺いますが、これは今回の民法改正とは直接関係ないのですけれども、いま諸外国で面接交渉権というのが明文化され始めております。これは離婚した夫婦の場合、一方が親権者になりますけれども、親権者にならない親が子供に会いたいというときになかなか会えない場合があるわけですが、面接交渉権というものが認められて、アメリカ、フランス、スイス、イギリス、ドイツなどではもうはっきり法文化されているわけですけれども、このような問題について日本ではどう考えていらっしゃるのでしょうか。明文化されるというような方向の御検討があるのか、また実際には明文化されなくてもよいのかということです。
#177
○貞家政府委員 親子の面接交渉につきましては、一応現在の実務では、家事審判の子の監護に関する事項という面で、いろいろ調停なり審判でそのような措置がとられているように承知しております。
 なお、この問題につきまして、いろいろ最高裁判所当局も御検討になっておるようでございまして、私は、現在のところは家庭裁判所の運用ということでほぼ目的を達しているのではないかと思うのでございます。
 この問題につきましては、子の監護権を守るということと監護者でない方の面接交渉権を保障することと、両方の面があるわけでございまして非常にむずかしい問題でございますが、実は、この問題は国内法だけの問題にとどまらず、ヘーグの国際私法会議におきましても国際的規模で検討されておりまして、子の国際的連れ去りに関する条約草案というようなもの、これも内容的にはいま申し上げた両面を持っているわけでございますが、私ども法務省としては、ヘーグの国際私法会議を通じまして、そういった国際的な条約草案について検討しているというようなことでございまして、これは大変重要な問題だと思いますので、十分検討いたしたいと思っております。
#178
○栗田委員 実際には、家裁などではかなりこういう問題が持ち込まれて、調停、審判などで取り扱われていると思います。
 最高裁に伺いますけれども、明文化はされていないとしても、実際こういうものの処理について最高裁はどう考えていらっしゃるのでしょうか。面接交渉権というものはあるという立場でお考えになっていらっしゃいますか。
#179
○栗原最高裁判所長官代理者 先ほど議員御指摘のように、諸外国の立法例ではすでにそういう明文の根拠があるわけでございますが、家裁の実務におきましても、昭和四十年ごろからそういった諸外国の立法例あるいは取り扱いを見習いまして、先ほど法務省の民事局長より御紹介ございましたように、家事審判法の九条の乙類四号の子の監護に関する事項といたしまして、現に調停条項中あるいは審判において面接交渉の条項を定めておるというのが実例でございます。
#180
○栗田委員 今後また明文化、法文化していくということについても御検討いただけたらというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#181
○栗原最高裁判所長官代理者 現在のところは、いま申しましたように、九条の乙類四号の規定に従いまして運用で何とかカバーできておるわけでございまして、実務の立場からいたしますれば、もう少し実務の積み重ねを待ちまして、果たして法律上の手当てが必要かどうかということを慎重に検討いたしていきたい、このように考えている次第でございます。
#182
○栗田委員 次に、外務省に伺いますけれども、昨年十二月に、婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約というのが国連で採択されているはずですけれども、そうでしょうか。それから、日本はどういう態度だったでしょうか。
#183
○小西説明員 昨年の国連総会で、いまお話のありました婦人の差別撤廃条約が採択されてございます。日本は本条約に賛成投票をしてございます。
#184
○栗田委員 概略で結構ですが、この条約の内容はどんな内容のものですか。
#185
○小西説明員 男女の差別をあらゆる分野で取り上げておりますので相当大部の条約でございますが、全部で三十条から成っております。
 主たる部分は、第一条に差別の定義から始まりまして、若干の男女差別撤廃に関する一般原則、それから具体的な問題といたしまして、政治的な権利、参政権等、さらには国際会議に政府を代表する機会について男女の平等を定める、さらには婦人及び子供の国籍の権利の問題がございます。社会、経済の分野でございますと、教育の権利、勤労の権利、さらには労働条件の問題、さらに保健関係、家族給付に関する権利、それから若干特殊でございますが、農村婦人の保護の問題、さらには私法関係における婦人の権利の問題、さらに婚姻及び家族関係の問題等が実質問題として定められております。
#186
○栗田委員 大変幅広く婦人の差別撤廃についての条約の文面があるわけでございますので、私たちは婦人としましてこの条約に大変関心を持っております。
 外務省はこの普及についてどんな努力をされていらっしゃるのでしょうか。
#187
○小西説明員 ただいま申し上げましたように、これは昨年の総会で十二月に採択されましたばかりでございまして、現在私ども正文のテキストを取り寄せまして鋭意その内容を検討しておりますけれども、この条約の重要性からいきまして、その内容の検討に従いましてしかるべくその広報等にも努めてまいりたいというふうに思っております。
#188
○栗田委員 外務省、まだこの全文を翻訳していらっしゃいませんね。
#189
○小西説明員 現在の段階ですと、外務省の国連局の試訳はつくってございますが、外務省の仮訳ができるのはさらに一週間ないし二週間先になるかと思います。
#190
○栗田委員 私はこの全文の翻訳を持っておりますが、これは民間の方が、ここへ参加された方が御自分でなさったので、外務省ちっとも翻訳を出さないからということで、御自分でなさっております。
 こういう重要な条約、特に国内の婦人たちの関心が非常に高いものですから、やはりこういうものは、翻訳をなさるのにはそう何カ月もかからないと思いますので、ぜひ全文の翻訳もされて普及に努めていただきたいと思うのですけれども、まあ本題に外れていますが、その点いかがですか。
#191
○小西説明員 条約の翻訳、しかもそれは外務省の名前で出すということになりますと、やはり一字一句につきまして相当慎重にやる必要がございまして、そういう意味でとりあえずできておりますのは国連局限りの試訳はございます。それから先ほど申し上げましたように、外務省の仮訳につきましては一、二週間のうちにできる予定になっております。
#192
○栗田委員 とにかく四カ月以上たっておりますので、そういう意味での能力のある方がなかなかそろっていらっしゃるはずですから、正確な翻訳であろうとも、その気になれば十分おできになる期間があったのではないだろうかと私は思います。
 それでは次に伺いますが、この条約の第二部九条、この中身をちょっと詳しく説明してください。
#193
○小西説明員 第九条は国籍の関係でございますが、九条一項、二項とございます。
 一項に書いてございますことは、国籍の取得、保持あるいは変更につきましての男女の平等、それが一つでございます。それからもう一点は、妻の国籍につきまして、夫の国籍からの独立性と申しますか、外国人たる夫と結婚する場合あるいはその夫の国籍が変わったような場合に、妻の国籍がたとえば無国籍になるとかあるいは夫の国籍を強制されるということがあってはならないということが二番目でございます。それから二項には、子供の国籍につきましては父親と母親が同等の権利を持つということが書いてございます。
#194
○栗田委員 実は、私は五十年の十二月に、やはり法務委員会で国籍法について取り上げたことがございます。
 日本の国籍法は非常に父系中心になっておりまして、女性が従属するという形になっているという問題を当時取り上げました。国際結婚の場合の妻の国籍、それから出生した子供の国籍などの問題なんですが、国籍法の二条では、出生による日本国籍取得の要件の第一を父の国籍というふうにしておりますし、それから法例の十四条を見ましても、婚姻の効力の準拠は「婚姻ノ効力ハ夫ノ本国法ニ依ル」それから十五条で「夫婦財産制ハ婚姻ノ当時ニ於ケル夫ノ本国法ニ依ル」それから法例の十六条で、これは離婚の準拠法ですけれども、これも「離婚ハ其原因タル事実ノ発生シタル時ニケル夫ノ本国法ニ依ル」とずっとなっておりまして、みんな夫が中心になっておるわけです。
 その五十年当時ですが、これは問題じゃないかと当時取り上げましたときに、法制審議会で法例の改正の検討がされているということをお答えになりましたが、その後これらのものについてはどうなっているでしょうか。
#195
○貞家政府委員 実は法制審議会の国際私法部会におきましては、法例の改正というものを前々から検討しておるわけでございますけれども、最近におきましては、主としてヘーグの国際私法会議あるいは国連の種々の会議の条約とそれに伴う国内法という点に重点を置いておりますので、実は法例の方の作業というものは少し中断の形になっているわけでございますが、御指摘の国籍法、これは国際私法とはやや性質が違いますけれども、国籍法で男系主義を御指摘のとおりとっております。それは、国籍決定の基準という点を父の国籍ということによっているわけでございます。
 したがって、これは憲法上の問題は起こらないと私は思うのでございますけれども、いろいろ最近の国際条約等との関連がございます。それで、この問題につきましては、先ほど御指摘の差別撤廃条約というようなものとの関連におきまして検討をいたしておるところでございます。もちろん法務省限りでこのすべての検討をいたすわけにはなかなかまいりませんので、外務省その他の関係省庁に御相談いたしまして、検討をしておるところでございます。
 ただ、この問題は御承知のとおり非常に困難と申しますか慎重に検討しなければならない問題、つまり二重国籍をどう処理するかという問題、近隣諸国がこの問題についてどういう態度をとっているかというような点をにらみ合わせながら慎重に考慮をいたしませんと、これはいろいろ紛糾の種になるような事態も起こるわけでございますので、そういった点につきまして十分配慮をしながら検討しておるわけでございまして、御承知のとおり、ヨーロッパ各国においては国籍法の改正作業というものはかなり進んでおります。ただヨーロッパ各国の状況を見ますと、それによって生ずる二重国籍あるいは兵役というような問題につきまして、相当慎重な配慮が国際間においてなされているようでございます。そういった配慮というものがわが国においても必要なわけでございまして、わが国は幸いに兵役はございませんけれども、兵役のある徴兵制度をとっている国とわが国との関係における二重国籍というような問題も十分考慮をしなければならない。したがって条約の解釈、趣旨というようなものについて勉強いたしますと同時に、近隣諸国の動向それからヨーロッパ諸国における手当てというようなものもにらみ合わせながら慎重に検討をいたしたいというふうに考えております。
#196
○栗田委員 確かに国籍法の改正というのは、いろいろな関係とぶつかり合いますからむずかしいと思います。
 それはよくわかります。けれども、このような条約が採択されて、いずれ一日も早く批准をしていただきたいと思っておりますけれども、この条約の第二十四条では「締約国は、この条約で認められた権利の完全な実現を目的とするあらゆる必要な措置を国内的にとらなければならない。」という一条も入っているわけでございますので、この条約が批准されて実施されていくということになりますと、国籍法ばかりでなくその他の問題も含めますけれども、当然やはり男女の完全な平等という立場でのさまざまな改正が必要になると思います。
 そういう立場で、この条約を採択されたというその意思を尊重して、父系中心の国籍法をできる限り早く男女平等の立場で改正を進めていただきたいと思うのですけれども、その辺についてのお考え、御決意を伺いたいと思います。
#197
○貞家政府委員 男女平等の理念ということは、国籍法のみならずすべての面において十分私どもは再検討し配慮しなければならないと思います。
 ただ、御理解いただけると思うのでございますけれども、非常に困難な問題がございます。周辺のいろいろな問題を解決いたしませんと、理念だけではなかなか責任を持った立案ということができないという点をひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
#198
○栗田委員 その御努力のお気持ちを伺いまして、ぜひそういう方向でやっていただきたいということで次に進ませていただきます。
 次に、世帯主の問題でございますが、実はこれもやはり前に法務委員会で一度取り上げておりますので、妻の座の民法での改正とあわせてその関連として伺いたいと思っております。
 この世帯主という言葉は、民法にはないわけですけれども、住民登録法とか住民基本台帳法だとか地方税法の中にありますけれども、この世帯主というものの概念はどういうものでしょうか。
#199
○木村説明員 お答えいたします。
 世帯主は、世帯を構成する者のうち、主としてその生計を維持している者であって、世帯を代表する立場にあると社会通念上認められる者を指しております。
#200
○栗田委員 一番問題になっているのは、夫婦が健在でいる場合でも、妻が所得の面などでもかなり多くて、そしていろいろな意味で妻を世帯主としたいという場合があるのですけれども、世帯主は男でなければいけないんだということを言われて世帯主になれない例が出ておりますけれども、自治省のお考えでは、妻が世帯主になるということは夫が健在であっても必ずしも妻はなれないのではないと考えていらっしゃるわけですね。
#201
○木村説明員 社会通念上考えまして、妻が世帯を主宰している者である場合には世帯主になるということでございます。
#202
○栗田委員 実際にはこの問題はいろいろな理解の仕方があって、具体的な問題になりますとかなり紛争も起こしているわけです。以前私が法務委員会で問題にしたときに、厚生省の保険局長、地方財政委員会税務部長の通達というのがございまして、それを問題にしたことがありました。
 この通達は、世帯主の考え方というのをまず第一に父親、そしてその父親が所得がなく所得税法上長男の扶養家族となっているときには長男、そして長男もまたそのような状態で世帯主と認められないときには次男というふうにずっとなってきまして、そしてその四番目か五番目に妻がやっと出てくるわけですね。しかもその妻は「夫が不具廃疾等のため無収入で、妻が主として世帯の生計を維持している場合は妻が世帯主」だということで、これを問題にしたことがございました。
 そのときの答弁を伺いますと「父親あるいは長男と書いてあるところが実質的に妻あるいは長女などが主な所得を得ている世帯においてはそれに準じて読むという趣旨がある」わけだ、こういう答弁をなさっているわけなんですね。「たまたま各種の分野におきましてこの世帯主の規定というものが影響を及ぼしているというようなこともあるようでございますので、これはひとつ十分に検討させていただきたい」と昭和五十年にお答えになっていらっしゃいます。
 それから五年たっておりますけれども、その後このようなことについて検討なさったことがありますか。
#203
○木村説明員 おただしの通達、昭和二十六年の文章でございます。そういう時代にそういう順番で物を書かれたという事実であろうかと思いますが、現在、市町村の窓口では住民基本台帳法に関しましては届け出主義をとっております。その届け出の中に世帯主が妻になっておりますればその意思を尊重して運用しておりますので、特に問題はなかろうかと考えております。
#204
○栗田委員 つまり市役所などの窓口では妻が世帯主として届ければ認められているということですね。ところが、実際には職場ではそうなっていないという例がたくさん出ておりまして、しかも年を経るごとに最近は女性を世帯主と考えるまた主な家計維持者と考えるということにむしろ以前より抵抗が出てきている傾向があるわけです。
 たとえば静岡県の清水市役所の例なんですけれども、夫が年間七十万くらいしか所得がなくて、本人だけが国民健康保険に加入していたそうです。妻は夫よりはるかに所得が多かったので、子供二人を社会保険の扶養家族としていたそうでございます。ところが、最近夫の収入が多少ふえて年間百四十万ぐらいになったのだけれども、まだ妻の方がはるかに多い。そして、いままでも妻が子供を扶養家族にしていたのでそのままにしていたら、だんなさんの収入も多少ふえたのだから、子供一人でも国保の扶養家族に分けてそっちへ入れろということでしきりに言われているというような例がありまして、これなどは、いままでそうしているのだし、いまでも生計の中心は自分なのだからそのままでいいじゃないかと言っても大変抵抗が多いということで、子供二人を扶養家族にしているということに必死になっている、こういう状態が出てきております。
 それから、公務員である妻、夫が民間会社にいるという例ですけれども、やはり妻の方が非常に給与が多い。毎年子供を扶養家族にしたいと申し出ているのですけれども、数年間拒否され続けてきたという例があります。やっと最近認められたけれども、その認めるためには民生委員が所得その他の調査に入ったという例がありまして、これはもう妻が世帯主であるという申告をするとかしないとかという簡単な問題ではなくて、いろいろな調査をされ、抵抗の中でやっと認められたという例も出ているわけです。
 それから、これは静岡銀行の例なんですけれども、御主人が職場をやめて失業をしまして、奥さんが家族手当の申請をしたわけです。ところがだめだというわけです。それでその奥さんは、だめならそのだめだということを文書でよこしてほしいということを言いましたところが、それを支店長が人事部部次長に請求したというその文書があります。こういう文書でございます。
 「甲賀ひろ子より家手申請の件 人事部部次長どの 五十二年八月三十日 島田東支店長」の名前で出ているのですが、「甲賀邦夫退職により(甲賀ひろ子申請によれば失業中)健保被扶養者及扶養家族移動届によりそれぞれの申請がありました。結論的には、当行規定ではいずれも許可対象にならないことは了解しましたが、その却下理由を文書にてほしいとの申入れあり、一応申請書をお送りします。」こういう文書が出されました。
 ところが、その人事部部次長はこんなものを文書で答えるわけにいかぬというので返してよこして、返してよこした文書がそのまま甲賀ひろ子さんのところに来たということで手に入ったのですけれども、これなどは、夫が失業中ですから全く収入がないわけです。奥さんは銀行に働いていてかなりの安定した収入を持っているから、子供を健康保険の被扶養者にしたい、それから扶養家族の移動届を出したい、夫から妻へ移動したいということを申請したけれどもなかなかだめで、却下されたという例でございます。これは後でさんざんもめたあげくにやっと扶養家族を認められたということですけれども、こういう実態があるわけでございますね。
 それから、はっきりと世帯主という名前で妻が権利を行使することを阻まれている例がございます。これは第一勧業銀行の例なんですけれども「厚生対策について」という中で「住宅資金貸付制度制度の内容(1)借入資格」として「原則としてつぎの要件をみたす世帯主が対象となります。」はっきり書かれております。この「要件をみたす」という要件というのは「従業員財形預金に加入していること。」とか「他に本人名義の土地・建物を所有していないこと。」とか「勤続三年以上」であることというのが要件でありまして、つまりこの世帯主の考え方というのは、完全に男性に限られているわけですね。
 これはなぜかといいますと、数年前にこれが改正されて世帯主という言葉が入ったそうですけれども、これを入れておかないと女でも住宅資金を貸し付けてほしいと言ってきてもめてしょうがないから、だから世帯主という言葉を入れたのだ、こう言ってこれを入れているそうです。
 そうなりますと、さっき自治省がお答えになった考え方とはかなりずれていて、女性はもう世帯主ではあり得ない、夫が失業中であろうとも世帯主ではあり得ない。それから住宅資金の貸し付けなどは世帯主が対象となりますといった場合にはもう男性に限る、こういうふうになっております。実際には運用の面では非常にこの世帯主という言葉は狭く使われて、しかも働く女性がさまざまな権利を行使したり、経済的な制度を活用するというときに障害になっていると思うのですけれども、この例について銀行局の関係の方、どうお考えになるかちょっと伺いたいと思います。
#205
○足立説明員 私ども大蔵省が銀行を監督する立場というものは銀行業務に関してでございます。したがいまして当局といたしまして、銀行に勤務しております職員の労働条件の問題は労働省の所管でございまして、私どもといたしましてはコメントすべき立場にはないと考えております。
#206
○栗田委員 しかし、実際にこのような例があるということはぜひ念頭に置いていただきたいと思います。
 それで、自治省にもう一度伺いますけれども、昭和二十六年に出された通達がさっき申し上げたように書かれていて、しかし考え方としては、妻が世帯主として申告すればそれを認めるというふうに窓口ではなっているわけですが、実際に運用の面でそれぞれの職場などではこういう扱い方がされているという事実がございます。そうなりますと、さっきお話のありましたような世帯主というものの概念を一度はっきりと通達か何かでお出しいただいた方が正確な運用がされるのではないかと思うのです。妻の座の強化、向上ということで民法の改正もされておりますけれども、あわせて職場その他での婦人の座の向上、こういうことがどうしてもいま必要だと思うのですが、いまの点について通達などお出しになっていただけるかどうか、そういうお考えを伺いたいと思います。
#207
○木村説明員 先ほども申しましたように、住民基本台帳上の世帯主の取り扱いについて現在特に問題はないものと考えております。これがほかの法律の解釈上あるいはほかの団体のいろいろな事業の運用上いかに使われるかということは、またそれぞれの法律なりそれぞれの団体の立場の問題でございますので、私どもの通達で片づく問題ではないと思いますので、国全体のそういう考え方を啓蒙していくということが必要でなかろうかと考えております。
#208
○栗田委員 しかし、一つの方法としてこの概念を文書ではっきりと書いて出されれば、それはほかでも活用できるし運用できるのではないかと思うわけで伺っているのです。そういうことでお書きになることについて差し支えはないと思いますけれども、いかがですか。住民台帳法上の概念をお書きになって差し支えないわけですね。
#209
○木村説明員 住民基本台帳上の世帯主の概念は全市町村において十分趣旨徹底されておりますので、特に通達を発する必要はなかろうかと考えております。
#210
○栗田委員 それは文書に書かれて徹底しているわけですか。
#211
○木村説明員 市町村の実務上徹底されていると考えております。
#212
○栗田委員 つまり文書でないということですね。
#213
○木村説明員 文書そのものに定義づけを書いたものはございませんが、徹底されていると考えております。
#214
○栗田委員 その徹底もなかなか問題がありまして、窓口でももめていることがあるのですよ。これは実態として、あなた、だんなさんいるんでしょう、だんなさんそんなに収入少ないの、どういうわけなんて言ってずいぶん奥さんがやられている例がありますから、決して私は十分徹底しているなんておっしゃるほど徹底しているとは思いませんし、また文書でお書きいただければ、それは他の運用に活用することも例として引くこともできて、言ってみれば、そういう世帯主という言葉が乱用されて婦人の権利などが狭められるということを防ぐことができるのではないかと考えているわけです。十分徹底されているとは決して思いませんので、できればそういう方向で御検討いただきたいと思いますが、いかがですか。
#215
○木村説明員 私ども、先ほど来申し上げておりますように、市町村においては世帯主の観念は周知徹底がきいております。窓口でいろいろ議論がありますのは、果たして世帯、家計を主宰する者であるかどうかというような問題につきまして質問等がある場合はあろうかと思います。いずれにいたしましても、御指摘でございますので、そういうことにつきまして私ども考えることはやぶさかではございません。
#216
○栗田委員 時間が来ましたので終わりますけれども、申請すればよいのだというたてまえがあるにもかかわらず、窓口でもめているということがあることもよくお知りおきいただきたいと思います。
 大臣、途中からおいでくださいましたけれども、きょうは民法の改正その他で妻の座の向上ということで大変よい改正案が出されているわけです。それと関連させた国籍法それから世帯主の考え方など、きょう私は質問いたしましたけれども、男女平等、妻の座を向上させるという立場で一層の御努力をお願いしたいと思いますが、最後に御見解を伺いまして私の質問を終わりにいたします。
#217
○倉石国務大臣 婦人の地位の向上を図るというようなことにつきましては、それからまたいまお話しの条約、そういうことについては私どもこれからなお努力を続けてまいりたいと思っております。
#218
○栗田委員 それでは終わります。
#219
○中村(靖)委員長代理 稲葉誠一君。
#220
○稲葉(誠)委員 この民法の改正は非常に重要な意義を持っておる法律ですから、少し時間をいただきまして十分やりたい、こういうふうに思います。きょうは第一回ですから、最初のことをお聞きしていきたいと思う。大変失礼なことをお聞きするかもしれませんが、これはお許し願いたいと思います。
 たとえば法務省の貞家民事局長は家庭裁判のことについていままでどの程度御関与されたわけですか。
#221
○貞家政府委員 私、家庭裁判所に勤務、これは兼務でございますけれども、兼務いたしましたのは三年半でございます。それから高等裁判所に在職いたしまして家庭裁判所の家事審判事件に対する抗告事件の処理に若干携わりました。その期間約一年七カ月程度でございます。
#222
○稲葉(誠)委員 余り失礼なことを聞いては悪いからこの程度にしておきますけれども、その三年何カ月の兼務というのも東京地裁で兼務だったのかどうかわかりませんが、辞令だけで実際は余りやっておられないのが普通だ、こういうふうに思いますし、たとえば地裁でタ号の事件をやっているところは民事一部だけでしょう、専属は。あそこは専門ですけれども、ほかでは余りやっておられないわけです。
 そこで、きょうは実は最高裁から総務局長か人事局長をお呼びしておけばよかったのですが、ちょっと私もあれしまして申しわけないのですが、一つお聞きをいたしたいことは、家庭裁判所の裁判官ですね、判事は、率直な話として家庭裁判の仕事に余り情熱を持っていらっしゃらない方が相当多いわけですね。何とかして早く地裁の方へ行きたいという方が、話してみればほとんどなんですよ、ざっくばらんな話。これはもう事実ですよ。栗原さんだって何も来たくて家庭局長になられたわけじゃないだろうしと言っては悪いから言わないけれども、それは別として、たとえばこういうのがある。
 同じところで家裁の所長から地裁の所長になるわけです。そうすると、いかにも家裁が下で地裁が上だという印象を一般の職員に与えるんですよ。これはよくないですよ。同じところで並立されているのに家裁の所長が同じところの地裁の所長に行くわけだから、これは実によくない。それから、たとえば庁舎の管理権は全部地裁が持っている。自動車に乗るんだって家裁ではなかなか自動車に乗っけてくれない、地裁の方が全部自動車をとってしまって、それでやってくれないというので家裁の方はぶうすか言っている。いまは大分なくなったかもしれませんけれども、そういう状態で、家裁は、実際は裁判官というものは、早くほかへ行きたい行きたいという考えの強い人が非常に多いわけです。
 調査官は一生懸命やっていますよ。調査官は自分の天職と心得てやっているわけです。調査官や調査官補の人、これは大学の社会学科を出たり心理学科を出たりして、ことに女性の人がおられますが、天職と心得て一生懸命やっておられるのですね。この前のあれみたいだ、橋田寿賀子の「離婚」三、四回やったでしょう。あれはなかなかおもしろかったけれども、ちょっと行き過ぎのところがありますがね。家庭へ訪ねていったり何かごちそうになったり、ちょっとおかしいと思うけれども、あれは音無美紀子かちょっとおかしいと思ったけれども、それはそれとして、非常に熱心にやっておられる方もあるわけですが、そういう全体の風潮を直さなきゃいかぬですよ。
 これは、今度最高裁の事務総長に来てもらいましょう、東京家裁の所長をやっていましたからね。東京家裁の所長というのは実に短い、ほかのところへ行くための腰かけなのよ。一番短い人が青木義人さん、これは六カ月ぐらいじゃないか、前に仙台高裁の長官に行ったでしょう。あれは六カ月いなかったかな、、六カ月ぐらいいたか。それからぼくが文句言ったものだから大分長くなって、矢口さんが一年何カ月か。矢口さんだって二年いなかったでしょう。今度は大内さんか。大内さんは最高裁の中で局長ばかり歩いていた人だから、これも余り長くなくて、今度ほかへ行くということになるでしょう。家裁の所長というものに対するいまの職員の見方が、どうせまたほかへ行っちゃうのだ、どうせ上へ行っちゃう、その腰かけに置いているんだということで、家裁の職員としちゃおもしろくない。こういう点、あなたに言うのは失礼だから言いませんけれども、言いませんからといって言っちゃったんだからしようがないけれども。これはいずれにしても事務総長や何かに言わなければならぬこと、基本的な問題ですよ。もう本当に家裁の判事というのはほかへ行きたがってしょうがないんだから。ここに最高裁の家庭局の人もおられるかもわからぬけれども、これは非常に大きな問題です。
 そこで、まず最初に歴史的に尋ねるというと、民法の改正が起きたのはいつごろで、だれが大臣のとき諮問したのか。だれがどこへ、どういうような形の諮問をいつごろしたのですか。
#223
○貞家政府委員 これは非常に古い話になりますけれども、昭和二十九年に、大臣の名前は忘れましたけれども、民法の改正全般について諮問を発したわけでございます。
 そこで、民法全般でございますから、たとえば財産法の面におきましては抵当権のところ、それから借地法でございますとか区分所有に関する法律、そういった面について審議をいたしました。それで、それぞれ立法化されているわけでございます。
 身分法の方につきましては、これは戦後急いでつくった法律でございますから、逐条的に見直しをしようということでずっと検討いたしまして、昭和三十七年に身分法関係の改正が行われたわけでございます。代襲相続それから同時死亡の推定等いろいろございますが、三十七年にかなりの規模の改正をやりまして、その後はまた財産法の方に主眼が置かれまして、根抵当関係の立法というものに精力を集中したわけでございます。
 ところで一方、昭和四十六年あたりに、身分法の方もやはりこれはほうっておくわけにはいかない、せっかく前に逐条的に検討した成果がございますので検討しようということで、昭和四十六年ごろからぼつぼつ始めまして、昭和五十年に身分法小委員会からの中間報告がございまして、それについて一般の意見を求めたという経過がございます。ただ、これに対しましてはそれほど世間の関心が強くはございませんようで、余りたくさんの意見が集まらなかったようでございます。
 そこで、本格的に審議を再開いたしましたのは昭和五十一年の七月からでございまして、その結果を踏まえまして昨年の七月に民事局参事官室の名前で「相続に関する民法改正要綱試案」というものを発表いたしまして、それに対してはかなりの意見が寄せられて、その結果が今回の提案ということになったわけでございます。
#224
○稲葉(誠)委員 そこで、その昭和二十九年の民法の改正の諮問は、よくわかりませんが、民法一般に対する諮問だという話がありましたね。それはどういう諮問の内容ですか。後でもいいですけれども、かかっている範囲内で。
#225
○貞家政府委員 これは非常に広範でございまして、諮問事項は、民法に改正を加える必要はあるか、あるとすれば、その要綱を示されたいということで、逐次問題点を選びまして答申をいただく。したがって、その答申はいずれも一部答申ということで、これは民法が完全にでき上がるまでは、この諮問がなお続いているという形になっているわけでございます。
#226
○稲葉(誠)委員 だから、その昭和二十九年の諮問の文書というものがあるはずですから、後で結構ですけれどもお願いしたい、こう思います。
 それから、いまの身分法の問題の中で、あなたが言われたのはもちろんありますけれども、それは法制審議会を通ってきた分の改正でしょう。そのほかに、四、五年前かな、離婚の場合に三カ月以内に旧氏に復するか否かの問題の改正がありましたよね。その立法経過というのは、あなた方よりぼくの方がよく知っている。法制審議会でどういう経過でその法案ができたの。そのときは、法制審議会の審議はどういうふうにしてでき上がったのですか。
#227
○貞家政府委員 実は私、その当時民事局に在職しなかったものですから詳細承知しておりませんけれども、中には事柄に応じまして、一部答申をいただいてそれを立法化するという形式をとりませんで、要綱について御了解をいただく、民法部会で一応検討していただいて、答申まではしないということもあったかと思います。そういうような立法過程を踏むものも若干はございます。
#228
○稲葉(誠)委員 だから、法制審議会の議を経ないで、あのときちょうど香川さんが民事局長、それから参事官で、やめて弁護士になってすぐ亡くなった人、だれだったかちょっとど忘れしたのですが、あの二人の人を中心として、これは事実上議員立法よ、知っているでしょう、三カ月以内に旧氏に復する復さないという、これはいろいろ反対があったわけよ。あの法案をつくったときに、後から家裁の御婦人の所長さんからひやかされたわけです。どうして三カ月に限定したのかとか、養子の場合なぜ含まないのかとか、いろいろ非難を受けたこともあるのです。あれは事実上議員立法だから、ここでは論議しません。
 そこで、身分法小委員会が発足したのはいつですって。そのときは中川先生が部会長をやっていたのですか、加藤さんが部会長をやっていたのですか。
#229
○貞家政府委員 昭和二十九年に民法部会ができまして、恐らく身分法小委員会もほぼ同時にできたと思いますが、当時は身分法も財産法も、亡くなりました我妻栄先生が部会長、小委員長でございますが、その後、我妻先生がお亡くなりになりまして中川先生、それから川島先生、加藤先生という順序で、身分法の方はそういう順序で交代をされております。
#230
○稲葉(誠)委員 だから、実質的に身分法小委員会の審議が始まったのは中川先生のときですか、あるいは川島さんのときか、それから加藤さんのときか。
 それは、なぜそういうことを聞きますかというと、中川先生の場合には中川先生のお弟子さんのたとえば島津一郎さんとか、それから泉久雄さんとか、ああいう人たちが中心となってやっているわけでしょう。それから川島先生のときは、またこれは川島先生の方は法社会学的な構成だし、ちょっと違ってきますね。加藤さんの方は不法行為が大体専門の方ですから大分違うと思うのです。
 いずれにしても、いつごろから始まって、どのくらいかかって答申に至ったのかということを聞きたいのですよ。だから実際には実質的に何月何日どのぐらい審議したとか、全部あなたの方で記録があるわけだから一覧表を出してもらいたいのだよ。何時間ぐらいかかったかということをぼくは聞きたいのだよ。それを、法案ができたからといって、三日や四日で上げるとか言って、法案上げろ上げろと自民党の諸君がまるで国会をてんぷら屋のように考えて、上げろ上げろと言っているから、だからそういうのはだめだと言う。何時間ぐらいかかって実際はやったのかということを聞くわけだから、実際にはどのくらいかかったのです。ちゃんと全部記録があるでしょう。いままでは法制審議会の記録も議事録として出したことがあるのですよ。だれが、どの先生がこういうことを言ったという意見は、これはちょっとまずいから省略しますよ。それを出してきたら、刑法の改正の中で団藤先生がどういうふうに言ったかというのがすぐわかっちゃうから、これはちょっとまずいから、ぼくらも知ってはいるけれども聞きませんよ。それはまずいからA、B、Cでいいですよ。前に出したことがあるのですよ。暴力行為のときか何かのときに出しましたよ。だから当然これも出していいはずなんですよね。法制審議会の身分法小委員会の議事録というものがあるわけでしょう。全部で何回ぐらいやりました。全部で何時間ぐらいかかったのだ。それはちゃんと計算してごらんなさいよ。
#231
○貞家政府委員 いま手元に資料がございませんけれども、四十六年から数えますと三十回ないし四十回の小委員会を開いていると思います。これはかなり途中で各方面の意見の集計をしたり、それについて内部で検討している、むしろ内部検討の時間が非常に長いわけでございまして、法制審議会の時間というものは、これはそれほど年数のあれに比べまして膨大な時間がかかっているということでもないような感じがいたします。
#232
○稲葉(誠)委員 それは法制審議会というものに幹事団体があって、その幹事団体というのは実際は法務省の民事局の参事官が中心となってやっていて、そこで原案をつくって法制審議会へ出すから、法制審議会というものは長い時間がかからないで多少形式的に流れておるということがあるからではないでしょうか。
 いずれにいたしましても、だから法制審議会で具体的にどういう論議があったかということをまず私はお聞きしたいわけですけれども、それはまた今度の法案の中に入っているものと入ってないものとがあるわけですね。あなた、それはわかるでしょう。だから、去年の七月か、法務省の民事局の参事官室名で各方面へアンケートを求めましたね。それは、どういう方向へ、どの程度のアンケートを求めたのか。そのアンケートについて弁護士会や何かにみんな求めました。婦人団体や何か求めたでしょう。その結果については発表されていないのじゃないですか。この資料には入っていないのじゃないの。
#233
○貞家政府委員 昨年の試案につきましては、弁護士会、大学、婦人団体、司法書士会、公認会計士の団体、税理士会とか裁判所調停委員というような非常に広範に意見を求めたわけでございます。この結果は発表はいたしておりません。
 この内容は、非常に意見は複雑でございまして、単純に賛成が何団体、反対が何団体というふうに割り切れないような非常に複雑な様相を実は示しております。団体としても、意見を決めかねているとかあるいはこういうような条件つきならいいとか、どちらでもいいというような、いろんなニュアンスの意見がございまして、なかなかこれを整理するのに手間取りまして、またその整理の結果が必ずしも発表できるようなうまく整理がされてないというような感じがいたしております。
#234
○稲葉(誠)委員 その民事局参事官室の各方面へのアンケート、これは法律雑誌を見ればわかることですからいいんですが、それに対する回答も一部分は法律雑誌にも出ていることでもあるわけですね。それから公聴会もやったのじゃないですか。公聴会はやらなかったかな。そこまではいかなかったかな。
 アンケートをとったその意見が、今度の法案の中に一体どういうふうに生かされているのかということをまずお聞きをしたいのですが、その前提として、アンケートをとったのはたしか六項目じゃないですか。何と何と何でしたか。六項目のように覚えていますが。
#235
○貞家政府委員 今回の提案いたしました法案に盛られておりますもの以外に、非嫡出子の相続分についての案の意見を加えたものについて意見を求めております。
#236
○稲葉(誠)委員 だから何項目にわたって、何と何と何についてそのアンケートを求めたかということを聞きたいのですよ。妻の代襲相続権の問題も含めてやったのじゃないですか。そのアンケートの要項をちょっと紹介してくださいよ。
#237
○貞家政府委員 これは世論調査のようにアンケートで細かく分けたわけではございませんけれども、内容は、第一に配偶者の相続分、これは今回の改正案と同じでございます。二番目に非嫡出子の相続分、これは同等化するかどうか、同等とするという案を示して意見を聞いております。第三番目は兄弟姉妹の代襲相続、これは今度の案と同じように限定をするという案を示して意見を聞いております。第四に遺産分割の基準、これも今回の提案のとおりでございます。それから寄与分、これはやや簡略な形を表現いたしまして、ほぼ今回の提案と同じような趣旨で意見を聞いております。六番目に遺留分、これも今回の案と同じでございます。それから七番目に配偶者の代襲相続権ということで、これは立法措置は特に講じないものとするという案を示しまして、これについてどうかという意見を聞いたわけでございます。八の夫婦財産制、これについても、現行法を特に改正しないものとするという案についての意見を求めたという経緯になっております。
#238
○稲葉(誠)委員 ぼくは六項目と考えていましたが、八項目ですね。そうすると、そのうちで法律改正しないというものが二つあるとすれば六項目、こうなるわけですが、どっちでもいいですけれども。
 そこで、いま言った妻の代襲相続権とそれからいまの夫婦財産契約、まあ財産制の問題ね、これが非常にむずかしいですね。確かに後の方は特にむずかしい問題があるのですけれども、妻の代襲相続権の問題について、これはどうして立法化をしないという前提でそのアンケートを求めたんですか。
 ということは、これは私どもは、特に農家の場合、世帯が三つ入っている場合が多いわけです。三つというか、おじいさんの次に子供夫婦と孫がいるという段階です、孫の方は世帯までいっていないけれども。そういう段階のときに名義はおじいさんのものになるわけです。ところが跡を取っている、実際にはやっている子供、これは妻もいるわけです。それが亡くなってしまうという場合に、代襲相続は孫が上に上がってくるわけでしょう。その場合に妻の代襲相続権というのが認められないのは不合理だから、妻の代襲相続権というのは当然認めるという議論が相当あって、その分もアンケートに入っておったというように思っていたら、立法化しないことを前提とするという条件だというのをいま聞いたのですが、私もそこまで十分あれしなかったのですが、その部分については立法化しない、妻に対する代襲相続権を与えないということを前提としてアンケートをとった、こういうわけですか。
#239
○貞家政府委員 昭和五十年に実は身分法小委員会が中間報告をいたしております。
 この際にも「配偶者の代襲相続権」ということでA、B、Cと分けて、Aは「現行法を維持すべきであるとする意見」Bとして「夫婦の一方は他方を代襲して相続することができるものとすべきであるとする意見」Cとして「例えば次のような要件のもとに、配偶者に代襲相続権を認めるべきであるとする意見 ア 夫婦間に子のない場合に限る。イ 再婚あるいは姻族関係終了の宣言をした場合及び配偶者の死亡後一定年数を経過した場合を除外する。」こういうような三つの案を並列的に書きまして意見を照会した。しかしながら、これに対して回答を寄せられる団体が比較的少なかったわけでございます。
 その後、これをさらに法制審議会の身分法小委員会で検討いたしまして、その審議の経過を踏まえて、これは審議会で決定したというわけではございませんけれども、審議会の多数意見と申しますか傾向を基礎といたしまして参事官室で案をつくって、これをたたき台として意見を伺ったという形になるわけでございます。
 この法制審議会の中間報告後の検討審議において、そういった問題についてはやはり問題があるという傾向と申しますか空気が非常に強くなったことを背景にいたしまして、こういった試案を作成したわけでございまして、この試案の説明というものは公表いたしまして意見照会の際にも利用したわけでございますけれども、それには「配偶者の代襲相続権」とありまして、これを読んでみますと
  夫婦の一方が父母より早く死亡した場合に、その死亡した配偶者が生存していて父母を相続する場合との均衡上、生存配偶者に代襲相続権を認めるべきかどうかについても検討された。しかし、配偶者による代襲相続は、代襲相続の本質に適合するかどうか疑問であるばかりでなく、夫婦の間でつねに代襲相続を認めることは、かえって衡平に反するおそれがあり、また、一定の要件の下に代襲相続を認めるべきかどうかについても、生存配偶者について、子の有無、再婚したかどうか、姻族関係終了の意思表示をしたかどうか、配偶者の死亡後の年数などさまざまな要素を考慮に入れざるを得ず、その要件を合理的に定めることが極めて困難であるから、配偶者に代襲相続権を認める旨の立法措置は特に講じないこととするのが適当であると考えられる。本試案は、このような意見によったものである。
このようになっております。
#240
○稲葉(誠)委員 それはわかりましたが、それは抽象的な文句なので、それに対して反対で、そういう場合に妻の代襲相続権も認めろという意見もあったのでしょう、それはBかCか知りませんが。それをなぜあなたの方の参事官室ではとらなかったのかということを聞きたいわけです。
 いまあなたの方でお読みになったのは抽象的なことであって、具体的には、では妻の代襲相続――妻というと言葉が悪い、配偶者としましょうかを認めることによって、どういうようなデメリットというかそういうようなものがあるわけですか。
#241
○貞家政府委員 その時点において私どもがこれを全く葬り去ったというわけではございませんけれども、消極の態度を出して意見照会をしたということにつきましては、やはりいま申し上げましたような点を考慮したわけでありまして、これを一般的に認めるということにいたしますと、これは配偶者について平等に考えますと、夫が妻に先立たれた場合にも代襲相続というものを認めざるを得ないのではないか。
 つまり、妻が亡くなって妻の親の財産を夫が相続をするというような関係も認めざるを得なくなるのではないか。
 それは、妻の両親を引き取って同居生活をしているというような場合には、あるいはそういうことが望ましい場合もございましょうけれども、一般的には必ずしもそうは言えないわけでありまして、その関係は、夫が先立ちました場合の妻についても同じでありまして、必ずしも夫の親と同居しているかどうかという点はわからないわけでありまして、再婚する場合もございましょうし、姻族関係の終了の意思表示をして離れてしまうという場合もございましょうし、いろいろな事情を考慮しないわけにはいかないわけでございます。
 しかしながら、その要件を一々どう決めるかということは非常にむずかしいことでありまして、また、そのような具体的な条件を相続人の資格に絡ませるということは相続制度を非常に複雑にすることになるわけでありまして、一般的な制度として認めることは困難ではないか。
 また一方、これは婦人団体だったかと思いますけれども、そういうような配偶者の位置づけをするということ、妻の位置づけをするということは、生存配偶者の自由を事実上拘束するように働きはしないか、妻の自由、夫に先立たれた後の妻の自由ということに対して事実上拘束するような悪影響を及ぼすのではないかという意見もございました。
 また、これは非常に学理的な意見でございますけれども、代襲相続の概念というものは、世代を異にいたしまして、先の世代から後の世代つまり後の世代の者が先に死亡した前の世代の者にかわって相続人の地位につくことであるから、先に死亡した配偶者にかわって相続人になるということは、代襲相続ということからは少し外れるのではないか、また、そういったような配偶者の代襲相続ということを認めた外国の立法例もないというような学理的な意見が有力であったわけでございまして、私どもといたしましては試案を可か否かという形で出すのも一つの方法ではございますけれども、一応どちらかの結論を出しまして、それについて反応をお聞きした方が手っ取り早いと申しますか非常に率直な意見が聞かれるわけでございます。したがいまして、この問題については一応消極、非嫡出子の相続分につきましては一応積極というような意見の出し方、そういう案についての意見を求めたという経過でございます。
    〔中村(靖)委員長代理退席、委員長着
    席〕
#242
○稲葉(誠)委員 いまの点は、一般的に代襲相続というものを一体認める必要があるのかないかというような問題もよくわかりませんけれども、それはそれとしておいて、それから、いまの嫡出子とそうでない場合との問題について、それは後でいずれ日を改めてゆっくりお聞きをするのですが、あなたの方は本当のことを言っていないね。
 本当のことは、法務省では同等の案をつくって自由民主党に諮った、自由民主党の法務部会は通った、政審全体会議も通った、自由民主党の総務会で日本の道徳論に反するからというのでひっくり返されて、そこで提案できなくなった、こういうことでしょう。そういうふうなことをもう少しはっきり言わなければ、事実なら言わなければいけないですよ。そうじゃないの。
#243
○貞家政府委員 いま仰せになりましたような経過は全くございません。
#244
○稲葉(誠)委員 じゃ、どういうふうにしたの。あなたの方は、いま言ったように、同等にするということの案を法務省としては省議として決定したんじゃないですか。決定して、与党である自民党のあれに諮ったんじゃないの。
#245
○貞家政府委員 これは法務省の省議として決定したというような経過はございません。これは、法制審議会での意見の傾向を踏まえまして、一応たたき台として案をつくったというごとだけでございまして、もちろん、与党にお諮りをするとか、そういった進んだ段階と申しますか現実化するような手続をとったことはございません。
#246
○稲葉(誠)委員 ちょっとはっきりしないですね。
 そうすると、法制審議会ではどうしたんですって、嫡出子とあれとの場合の意見を。法制審議会の意見書というのがあるわけでしょう。法制審議会の結論があるわけでしょう。それはどういうふうになっているの。それを受けて法務省はどういうあれを出したの。
#247
○貞家政府委員 法制審議会におきましては、参事官室試案発表後さらに検討し、また外部から寄せられました種々の意見を検討いたしまして、本年の一月二十九日に民法部会小委員会で要綱案を決定いたしました。それで、その中には非嫡出子の相続分の問題はございません。ただ、注といたしまして、非嫡出子の相続分と嫡出子の相続分の同等化についてはなお検討する、こういう決定をいたしたわけでございます。
 それで、二月十二日の民法部会でもそのとおりの決定になりまして、民法部会から法制審議会の総会に対する報告といたしましては、その分はとりまして、これは民法部会限りの問題でございますから、答申案といたしましては、非嫡出子の相続の分をとった第一から第五までの分、これを答申案として報告をいたしまして、二月二十五日の法制審議会総会では民法部会の原案どおり決定した、こういう経過になっております。
#248
○稲葉(誠)委員 それは、民事局の参事官室では同等にするというか相続分を同じにするという案を決めたというふうに私は聞いておったのですがね。決めて、そしてそのことを与党に諮ったというふうに聞いておったのですが、与党に諮るときにはその分は最初から全然出ていないのですか。いまのあなたのお話だとそういうふうになるわけですがね。
#249
○貞家政府委員 そのとおりでございます。これを外部に持ち出しましたときには、もうその分はございません。
#250
○稲葉(誠)委員 そうですか。じゃ、そのとおりにお聞きしましょう。新聞紙上なんかに出たのはそういうふうに出てないですね。自民党の法務部会でも了承して、そうして何か総務会でひっくり返ったというふうに新聞に出てたのですよ。選挙対策上不利だとか日本の道徳に反するとかなんとかいう議論が出てきてわあわあやって、そこでやったというふうに出ておったのですよ。これは私の方もよく調べてみましょう。じゃ、いずれまたその点についても改めてゆっくり聞きます。
 きょうは全体の総論ですから、遺産分割の問題に入る前に、民法で使っておる言葉、たとえば配偶者という言葉がありますね。これはどこから出てきた言葉なの。これはどういう意味なんです。
#251
○貞家政府委員 実は、配偶者というのはどこから出た言葉でございますか、ちょっとそこまでは私調べておりません。
#252
○稲葉(誠)委員 だって偶というのは家という意味だな。家というのは人べんがないのかな、どうなんだ。
#253
○貞家政府委員 まことに申しわけございませんが……家というのは寓ではないかと思います。偶というのが何を意味するか、偶数奇数の偶数などというのがございますから、あるいはそういうようなものと関連があるのではないかとも思いますが、なお辞典を引いてみまして研究したいと思っております。
#254
○稲葉(誠)委員 辞典を研究するのじゃなくて、民法のできたときのことを調べればわかるでしょう。これは民法ができたときに梅先生かだれか言った言葉じゃないの。きっとそうですよ。それはよく調べてください。
 それから直系尊属という言葉を使うでしょう。尊属というのはどういう意味なの。直系卑属という言葉を使うでしょう。片方は尊くて片方は卑しいのかい。字を読むとそういう意味に使われるね。法務大臣どうなの。そんな言葉を使っていいのかい。おかしいじゃないか。親の方が尊くて子供の方が卑しいなんて、そんな考え方はおかしいぞ。民法でその言葉を直さなきゃだめだよ。そんな言葉はどこから出てきたんだ。
#255
○貞家政府委員 尊属、卑属という言葉はどうもほかには余り使われない言葉のようではございますが、これは中国の宋の時代の文献から出ているようでございます。「家礼」という本に出ているようでございます。旧民法は尊属親、卑属親というような言葉を使っていたようでございます。
 この言葉が尊い者と卑しい者というような価値の上下というようなものを連想させるということになりますと確かに好ましくない言葉でありますが、それでは先属、後属というような言葉を使うかという案もあるようでございますけれども、どうもそれも余り評判がよくないと申しますか余り親しみを持てないような感じがするわけでございまして、疑問は持っておりますけれども、どうもこれにかわる適当な用語がなかなか見つけにくいというようなことでございます。
#256
○稲葉(誠)委員 先属、後属というのは何だかマラソンレースみたいでおかしいけれども、卑属という言葉がおかしいんだよ。尊属という言葉も中国から出てきたのかどうかわからぬけれども、尊属というのもおかしいですよ。尊属があるから属卑という言葉が出てきたのかもわからぬし、ことに卑属というのは意味が非常に変な言葉よ。
 それから、配偶者というのは夫婦じゃ悪いの。条文で配偶者と書かなくちゃ悪いの。夫婦と書いたんじゃ悪いの。ちょっと、条文ではどういうふうになっているの。
#257
○貞家政府委員 夫婦と同じことではございますけれども、配偶者といいますと、夫から見て妻、妻から見て夫という、そういう語感でわれわれ理解するわけでございますけれども、夫婦といいますと、通常は二人並べてそれを夫婦だという感じになるのじゃないかと思います。その点で、ただ夫婦と変えるだけではどうもちょっとぐあいが悪いんじゃないかと思いますが……。
#258
○稲葉(誠)委員 どうしてぐあいが悪いのですか、それは。はっきりしないじゃないか、どうしてぐあいが悪いのか。
#259
○貞家政府委員 七百五十条を見ますと「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」ということで、これは夫も妻もということでございます。
 ただ、配偶者も両方を言うときには、つまり、仮にこれを配偶者と言いかえますと、配偶者というのは夫から見て妻のことだというふうになるわけで、一人を指すときに使うのではないかと思います。ですから、どうしても意味がずれてくるんじゃないかと思います。
#260
○稲葉(誠)委員 配偶者なんという言葉は普通一般世間で使っていますか。配偶者の意味はよくわからぬけれども、配偶者の偶という字は住む者という意味で、同じ家に住むというような意味なのかな。とにかく家ということを前提として考えられているんじゃないんですか、それはよくわからぬけれども。それはおかしいよ、夫婦と普通使っているんだから。
 今度は、そこで氏という言葉が出てきましたね。一体、氏というのは何なの。なぜ氏というものを日本の民法の中に残さなくちゃいけなかったの。氏というのは一体何なんだ。氏というのはなくちゃいけないのか。
#261
○貞家政府委員 氏というのは非常に性格のはっきりしないものでございます。
 これは、一つには個人の識別の名称の一部だというふうにも考えられますし、また、夫婦とその間の子、婚姻しない子でございますね、それを一単位として、これは戸籍制度と関係するわけでございますけれども、そういった戸籍編製の単位、これがあわせて家族共同体といいますか、それの単位にも実際問題としては一致する、こういうようなことになるわけでございまして、確かにそういった性格の必ずしも明確でない、それぞれのイメージと申しますか考え方が氏に対してはあるわけでございますけれども、これもやはり日本のみならずどこへ行きましても、氏、家庭名と申しますかファミリーの名前というようなものがございまして、それに類したものとして存在しているのではないかという程度の知識でございます。
#262
○稲葉(誠)委員 もっと自信を持たなければだめよ、あなた。法務省の民事局長なんだから、もっと自信を持たなくちゃだめよ。
 そうすると、結婚した場合、夫または妻は一方の氏を称すると条文にありますね。一体どうしてこういう条文が必要なんです。結婚したってもとのままのあれでいいじゃないですか。なぜそういうふうにしなければいけないの。そこがまたおかしいんだ、日本の身分法というのは。そうでないところの身分法がいっぱいあるでしょう。結婚したってもとのままの名前のところがありますね。どうしてそう一方の氏を称さなければいけないの。
 しかもその場合に、妻は夫に従いつというのは、これは浪花節だけれども、ほとんどあれでしょう、夫の氏を称するのは九十何%ぐらいあるの。いまどのくらいあるの、家裁の方。九五、六%か、もっとあるかな。もっとあるね。だから、結婚をしたからといって妻が氏を変えなければならないという考え方自身がもうすでにおかしいのよ。それを基本的に直していかなければ、本当の妻の、婦人の地位の向上はないという一部有識者の意見もある。ぼくはそれは賛成しているわけじゃないですよ。そういうようないわゆるとんでいる女性もいるけれどもね。その条文はおかしいのよ。問題がある条文よ、それは。なぜ一方の氏を称さなければいけないの。アメリカはファミリーネームはあるけれども、ファミリーネームはあるといったって、あれはどういうふうになっているの。社会主義国はないね。そのままでいっていますね。それは個人というものの尊厳を基調とするからそのままいっているわけだ。だから、そこから氏というものは、いわゆる家が解体をしたけれども、家の属性というものを残しているんだという考え方が出てくるわけでしょう。どうしてそういう条文があるの。そういう条文はなくちゃいけないの。
#263
○貞家政府委員 この条文がなければどうしても困るかとおっしゃいますと、これはそうでない政策もあると思います。ただ、夫婦を社会生活の基本単位として、これに共通の呼称を冠するということは、やはり国民感情としてはかなり定着しているのではないかと思うのであります。
 異姓、つまり姓を異にする制度、これは若干の国では採用されております。近いところでは韓国それから中華人民共和国あたりはそうでございます。しかし一方西欧では、やはり夫婦の一体性ということがもとだと思いますけれども、ファミリーの名前は一つだというところが従来は多いわけでございます。たとえばドイツは、伝統的には共通の姓、婚姻姓を称するということになっております。ただ、その後の改正によりまして複合的な姓を定めることができるというような規定になっているようであります。あるいはまた婚姻前の姓を付加するということもできるようになっているようではございますが、基本的には婚姻姓、婚姻の際に協議だと思いますけれども意思表示によってこれを届け出るというようなことになっているようでございます。それからフランスは、規定はございませんけれども、通常は妻が夫の姓を使用するということが多いようでございます。スイスは、これはちょっと最近の調査はしておりませんけれども、夫の家族姓及び市民権を保持するというような規定があったようでございます。イギリスは成文法はございません。ソ連は一方の姓を選択することもできるし夫婦各自が自分の婚姻前の姓を保持する。それから東ドイツは西ドイツと大体同じようでございます。これもその後の改正があるかどうかわかりませんが、一応そういうことになっているようであります。
 法制審議会でも、先ほど申し上げました諮問の直後昭和三十年ごろに論議の対象になったようでございますけれども、どうもやはりまだ夫婦それぞれ異なった姓を持つということを支持する意見にはならなかったような経緯がございます。これにつきましてはやはり国民感情がどうかということを十分に見きわめる必要がありますとともに、夫婦が別々の姓を採用した場合には子供の氏をどうするかという問題があって、これも各国が異姓を認める場合には苦慮しているようでございます。
 そういうような問題がございますので、事実上妻が夫の氏を称するというのは九五、六%あると思います。これは御指摘のとおりあると思いますけれども、これは民法が押しつけているわけでもございません。これこそまさに、女性の実力と申しますか地位の発展に伴ってまたその比率は変わってくるかもしれないと思うわけでございまして、夫婦が別の姓でもよろしいという制度に踏み切るということに対しましては、どうも必ずしも現在の段階では賛成できないように思います。
#264
○稲葉(誠)委員 あなたの話を聞いていると、夫婦が別の姓、氏という言葉を使わないで、姓という言葉を使いますね。これはどういうわけなんだ。氏と姓というのはどう違うんだ。
#265
○貞家政府委員 別に違った意味で申し上げているわけではございません。
#266
○稲葉(誠)委員 法律ではどういうふうになっているの。
#267
○貞家政府委員 法律上は氏でございます。
#268
○稲葉(誠)委員 いや、別の法律ではどういうふうになっているの。戸籍法でもそれから旅券法でも何でも、男女の姓名を記載しろとか氏名を記載しろとかなっているのじゃないの。どっちになっているの。
#269
○貞家政府委員 氏名というのがほとんどすべてだろうと思います。
#270
○稲葉(誠)委員 それじゃ氏名が本当なんだね。氏名と姓名とは違わないんだね。同じでしょう。それはいいけれども……。
 そこで、もう一つ問題なのは、さっきのあなたの話を聞いていますと一夫一婦制のことが出ましたね。一夫一婦制というのは、日本では、どういう理由によっていつごろできたの。
#271
○貞家政府委員 それは私、歴史的に詳しく存じ上げませんけれども、本当に精神的と申しますか倫理として確立したのは比較的新しいことではないかと思います。これは外国でもそうであったと思いますけれども、やはりキリスト教の影響というものが国際的に見まして非常に強い要素をなしているのではないかというふうに考えております。
#272
○稲葉(誠)委員 それは、川島先生の「日本社会の家族的構成」という本があるでしょう。その本の中によく書いてあるよ。よく読んでください。あれはなかなか名著ですよ。川島先生の本では一番いいのじゃないかな。ただ、それはやはり侍、武家の伝統ですよ。武家が純潔をとうとぶというところから一夫一婦制ができてきたのじゃないですか。だから川島先生に言わせると、侍の間で行われてできた日本の法律と、町人の間で行われてできた日本の法律は違うのじゃないかというのです。非常に名著です。ことに忠孝の論理とかよく出ていますね。御恩奉公の解釈なんかもよく出ていて、非常におもしろいわけですけれどもね。
 いずれにいたしましても、そういうふうないろいろな問題があって、さっきフランスの話も出ましたね。それはカトリックの国では離婚を認めてない、神の教えによって結ばれたんだから。そうでしょう。それから堕胎も認めないということでしょう。今度イタリアが変わってきたでしょう。イタリアは離婚法ができて、それは変わってきましたね。いずれにいたしましても、いろいろ聞きたいことがいっぱいあるので、ぼくは十時間聞きたいということを要求しているわけですが、十時間でも足らないだろうというふうな説があったのですが、この次からまた日を改めてゆっくり聞きたいわけです。きょうは非常に楽しかったですね。
 せっかく最高裁においで願っているので、いろいろ聞きたいのですが、実際に遺産分割をやってみて何が一番困るかというと、一つは不在者の問題ですね。不在者がいる場合ですね。たくさん相続人がいるでしょう。そうして不在者がいるという場合、一つは外国にいる場合非常に困るということがありますね。それからもう一つは、不在者といっても失踪者なのか何だかよくわからぬ場合、失踪宣告は簡単にできるものじゃないから、そういう点困りますね。いろいろなことがあるのですが、たとえば不在者がいる場合、どこに行ったかわからない、生きていることはわかっているけれどもどこにいるかわからないというのを失踪宣告するわけにいきませんから、そうするといつまでたっても遺産分割できないということになる。そこは具体的にはどういうようにしているわけですか。
#273
○栗原最高裁判所長官代理者 いま議員が御質問のケースでございますれば、不在者の財産管理人の選任を求めまして、その不在者の代理人といたしまして遺産分割の協議または調停に関与させる。ただし、不在者の財産管理人は民法の規定によりまして処分権限を持っておりませんので、それによって分割の協議なり調停を成立させるためには家庭裁判所の許可が要る、こういう扱いになるわけでございます。
#274
○稲葉(誠)委員 その手続はそういうふうにやっているんでしょうけれども、実際は、不在者といっても最終的な住所がわかっている場合が多いんで、警察に捜してもらったり何かして非常によくやっている。何とかしているんですけれども、それはあなたのおっしゃるとおりなんですがね。
 そこで、もう一つ困るのは外国にいる場合に委任状が取れないんですよ。それは非常に困るんですが、外国の場合判こというのはありませんからね。日本の場合、委任状というのは名前を書いて判こ押すんでしょう。名前は記名でいいわけだから、だれが書いたっていいけれども、判こが必要でしょう。外国の場合は判こはないわけです。アメリカの場合なんか判こはない。そういう場合は、実際はどういうふうにしてやっているんですか。下から上げてきて最高裁を通して外務省に話して、外務省から外国へやって、外国の領事か何かの確認書みたいなものを取って、そしてやっているわけですか。実際はどうやっているんですか。
#275
○栗原最高裁判所長官代理者 遺産分割の当事者の一人が外国にいる場合でございますが、その当事者が日本人である場合は、その当事者に連絡をとりまして内地におる日本人と同様に委任状を取りまして、内地におります代理人を選任するという扱いをとれば十分でございます。その場合に委任状に格別の疑義がないというような場合には、内地におります者と同様特別の認証その他の手続をとっておるわけではございません。
 議員がいま御指摘の、司法共助の例を申されたかと思いますが、当事者の一人が外国におりまして、いろいろ取り扱いが異なっておりますので、わが国の普通の送達の方法を受け入れない外国があるわけでございます。そのような外国では、司法共助の定めに従いまして、外務省その他の取り決めの手続に従いまして、向こうの司法機関を経てそのような所定の手続をとる、こういう扱いをいたしておるわけでございます。したがいまして、それは当事者がどの国におるか、またその国とわが国との間にどのような取り扱いがなされておるかということによって、いま議員御指摘の取り扱いが変わってくるというように承知いたしておる次第でございます。
#276
○稲葉(誠)委員 私が取り扱ったのはアメリカの場合でしたけれども、テキサスにいまして、アメリカの市民権を得ているわけですよ。困りまして、結局委任状をもらいましたけれども、領事が何か署名してくれまして、もらったんですけれどもね。
 すると日本の場合は、外国の市民権――アメリカの場合は二重の、日本の国籍もまだあるかもわからぬですけれども、日本の国籍がなくて外国人として帰化してしまった場合でも、相続権は日本ではあるの。
#277
○栗原最高裁判所長官代理者 国籍の有無と相続権の有無とはパラレルなものではございませんので、日本の国籍を喪失いたしましても相続権はあるというように解釈いたしております。
#278
○稲葉(誠)委員 それは解釈はいいんですけれども、そこまでする必要あるのかな。日本の国籍を失った人に、日本のあれの相続というものを認めることの必要性まで。理論的にはいまあなたのおっしゃったとおりですけれども、そこまでの必要が政策上あるのかな、どうなのかな。帰化することによって日本人を離れた人は、すでに帰化するということによって日本の財産をもらわないという一つの意思表示をした、当然そういう意味を含んでいるというふうに見ていいのじゃないか、こう思いますが、そこは外国なんかどういうふうになっているのですか、その立法例なんかは。わからなければいまでなくていいです。後でいいです。きょうはぼくの方が勉強さしてもらったのだから、きょうはこの程度にしておきますから。
 じゃ、きょうはこの程度で質問を終わらしていただきます。この次にまたゆっくり、今度はこの法案の中に入って一つ一つ細かく聞いていきたい、こういうふうに思います。
#279
○木村委員長 次回は、来る八日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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