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1979/04/15 第91回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第091回国会 法務委員会 第15号
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1979/04/15 第91回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第091回国会 法務委員会 第15号

#1
第091回国会 法務委員会 第15号
昭和五十五年四月十五日(火曜日)
    午前十時二十三分開議
 出席委員
   委員長 木村武千代君
   理事 金子 岩三君 理事 中村  靖君
   理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君
   理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君
   理事 沖本 泰幸君 理事 柴田 睦夫君
      上村千一郎君    亀井 静香君
      熊川 次男君    白川 勝彦君
      田中伊三次君    井上 普方君
      金子 みつ君    楯 兼次郎君
      飯田 忠雄君    長谷雄幸久君
      岡田 正勝君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 倉石 忠雄君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 筧  榮一君
        法務省民事局長 貞家 克己君
 委員外の出席者
        大蔵省主税局税
        制第三課長   鈴木 達郎君
        最高裁判所事務
        総長      矢口 洪一君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  大西 勝也君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  勝見 嘉美君
        最高裁判所事務
        総局家庭局長  栗原平八郎君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十五日
 辞任         補欠選任
  下平 正一君     金子 みつ君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 みつ君     下平 正一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 民法及び家事審判法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第五八号)
     ――――◇―――――
#2
○木村委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所矢口事務総長、大西総務局長、勝見人事局長、栗原家庭局長からそれぞれ出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○木村委員長 内閣提出、民法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長谷雄幸久君。
#5
○長谷雄委員 今回の改正案の柱の一つは、夫婦の財産についてその帰属をどう定めるかということだと思います。
 それには、婚姻生活における法的規制において夫婦の実質的平等確保をどう図るか、そのためには配偶者特に妻の経済的自立のためにどう配慮すべきか、特に妻の家事労働や生産労働をどう評価するか、そしてそれらにより婚姻共同生活をどこまで重視するか等々、さまざまな問題があるところであります。
 そこで、まず夫婦の財産の帰属については、第一に、婚姻継続中において各配偶者に財産についてどれほどの所有、管理、収益を認めるかという問題、これは夫婦財産制の問題でありますし、第二に、婚姻解消に際して財産についてどれほどの寄与分を含めて配分すべきかという問題があります。これには離婚における財産分与と死亡における配偶者相続分の問題がございます。これらの場合について、婚姻生活をどう評価するかという基本的な考え方によって問題の取り組み方が違ってくるものと思います。
 そこで順序として、まず夫婦財産制のうちの夫婦財産契約について取り上げてみたいと思います。
 夫婦財産契約については、要件の厳格性と夫婦間で契約によって財産関係を定める意識が未成熟であるとの理由から、それほど多く行われていないと言われております。ところが、今日では夫婦間でも契約が行われる事例が次第にふえる傾向にあると言われております。これについてどのように認識をしておられますか。
#6
○貞家政府委員 夫婦財産契約は、ただいま仰せのとおり、わが国では従来非常にその利用度が少ない状況にあるわけでございます。したがいまして、この問題に対する国民一般の意識が必ずしも十分ではなかったように考えられるわけでございます。ただ、相続法等につきまして私どもが改正の作業を進めるに当たりまして、夫婦財産契約と夫婦財産制の問題につきまして問題点として掲げましたところ、かなり多くの示唆に富む意見があらわれておりまして、また私どもも外国の法制等を逐一調査いたしたわけでございます。
 ただ、夫婦財産契約というものをいかようにするにいたしましても、これに伴う法律的な手当てが相当要るわけでございますし、必ずしもまだ夫婦財産制についての意識というものが十分熟しているというふうにも実は考えられなかったところから、今回の改正におきましては夫婦財産契約につきましては従来の制度を維持するということにいたしておるのでございますが、これは外国にもいろいろ制度がございます。一長一短でございまして、将来、国民意識の変化とともに十分検討されるべき問題であろうかと考えているわけでございます。
#7
○長谷雄委員 そこで、夫婦財産契約も要件を緩和してできるだけ契約をしやすいようにすべきではないかと思いますが、まず民法の七百五十五条によりますと婚姻届け出前に締結することが要件になっております。届け出後については夫婦間の契約取り消しに関する七百五十四条を考慮したものだと思いますが、婚姻成立後においても締結することを認めてよいのではないかと思いますが、いかがですか。
#8
○貞家政府委員 夫婦の財産契約をいかにするかということは、実は夫婦間の関係にとどまらないわけでございまして、これにつきましては第三者に対してどういう影響を及ぼすかということを十分考慮しなければならないわけでございます。
 夫婦財産契約というものが結局において夫婦のすべての財産に対して制約となり得るわけでございまして、夫婦財産契約と申しますのは、一応現行の制度におきましては、夫婦財産関係に対して婚約当事者があらかじめ婚姻前に包括的な権利義務を明確に決めておいて取引上支障のないようにいたしておく、こういう仕組みをとっておるわけでございます。
 この点につきましては、契約の時期の問題それからそれを第三者に対して公示する問題、これが非常に大きな問題となってくるわけでございまして、なるほど夫婦相互間におきましては、これはさらに自由にすべきであるという要請もございますが、反面、第三者保護と申しますか取引の担保となる夫婦財産を不明確な状態に置くということは避けなければならない、こういう考慮から、夫婦財産契約というものを婚姻の届け出までに登記をしなければならない、婚姻の届け出前に財産について別段の契約をしなければならない、こういうような制約を設けているわけでございます。
 たとえば、フランス民法などにおきましても婚姻の挙式前に契約をするというようなことを定めておるわけでございまして、確かに、これを自由にする、もっと利用しやすくするということは一つの問題点であろうかと思いますけれども、やはり私どもは対第三者の関係を考えましてなるべく安定した姿に置く、そしてその変更等につきましても特別の場合を除きましてはそれを変更しないということが望ましいのではないか、かように考えている次第でございます。
#9
○長谷雄委員 法定財産制については民法七百六十二条は別産制の原則をとっておりますが、そこで現行の別産制を維持すべきかそれとも共有制に改めるべきかという根本問題がありますが、この問題に入る前に問題提起をしておきたいことがございます。
 その第一は、夫婦が共かせぎをしている場合の妻の立場についてでありますが、妻が外に出て働いている場合、とにかくその労働が価値を生むことは明らかでございます。財産形成に占める妻の寄与分の算定については、これまでの判例や調停または審判例の傾向としては必ずしも高い評価を与えていないと思われます。その主たる原因の一つに男女の賃金の格差が挙げられます。性別だけによる格差をなくすることは当然の要請であります。そのために当面まず民法の分野において、夫婦財産の形成に当たっては同等に評価する法的規制こそ必要ではないかと思います。
 第二の問題提起としましては、家事労働に専念する妻の場合でございますが、主婦業の評価については、妻が婚姻中に財産形成に寄与したとしても、それは七百五十二条による夫婦の協力義務に基づくものにすぎないとして格別に評価をしてない実例が多いように思います。それが判例のほとんど一貫した傾向でもございます。このように、妻の家事労働は夫の生産労働と同一の社会的評価を受けていないというのが実情であると思います。そのことが論理的にあらわれてくるのが離婚における財産分与の場合だと思います。何らかの措置は考えられないかどうかということでございます。
 そこで法定財産制について、現行の別産制を維持すべきかそれとも共有制に改めるべきかについてでございますが、別産制を維持すべきだとの考え方の根拠として、男女の平等はおのおのの経済的独立性を認める別産制を基盤として維持される、また共有制のもとにおいては債務も共有となるから必ずしも妻の経済的地位を向上させることとは限らない、さらに戦後の身分法の改正で別産制にしたのは、戦前からの家の制度の考え方を排除し、個人主義的原理を取り入れることにあった、しかし家の制度が払拭し切れていない今日、なおこの別産制は維持する必要がある、こういう考え方がございます。
 次に、共有制の根拠として挙げているのは、一つには夫婦の実質的平等確保や婚姻共同体の実体を反映させるには共有制がよい、また、夫婦財産の実体は合意による共有財産や帰属不明の財産の共有推定、民法七百六十二条二項による財産がほとんどを占めていること、さらに国民の意識は夫の収入及びこれによって得た財産が夫婦共同財産であるなどの理由が挙げられております。
 さて、戦後の新しい身分法ができてすでに三十年を経過した今日、時代も大きく変わってきております。そこで、新しい時代に相応した夫婦財産制をそろそろ検討してもよいのではないかと思いますが、この点についての御見解はいかがですか。
#10
○貞家政府委員 確かに、配偶者の内助の功ということを十分考慮する必要があるということはまことに仰せのとおりでございます。
 そこで、離婚の場合の財産分与の場合にも内助の功が十分反映されるような分与ということが望まれるわけでありますし、また法律はそういう趣旨でつくられているものというふうに考えるわけでございます。相続の場におきましても、配偶者の相続分の引き上げということは、実は婚姻生活における配偶者の貢献に対する評価というものを考えたからでございます。
 ところで根本的には、そもそも夫婦財産制について、これは共有であるべきではないかというような考え方もあるわけでございます。ただ、夫婦財産制を共有制にするあるいはそれ以外の折衷的ないろいろの制度がございますが、そういった制度に改めるということも十分法制審議会等におきまして検討はされたわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように確かに一長一短でございまして、メリットはございますけれども共有制に伴ういろいろなむずかしい問題がございます。そういった長所短所を比較いたしまして、国民の現在の意識というようなものも考え合わせた結果、夫婦財産制につきましては現行の一応別産制、それで婚姻解消の際には清算的にそれを還元するというような態度をとるのがむしろ望ましいのではないか、かような結論に達したわけでございます。
#11
○長谷雄委員 いまの御答弁とも関連をいたしますが、新しい時代に相応する夫婦財産制度の検討に当たりましては、まず、婚姻によって夫婦は一体になって妻が夫の人格の中に埋没をしてしまうということではなく、おのおの独立別個の人格であることは当然の前提としつつ、婚姻中の夫婦は通常共有であることを顕在化する必要はないので別産制を維持し、婚姻解消時に妻の地位を考慮して別産制から生ずる不合理を排除するために婚姻中に夫婦の協力によって取得した財産については共有制の構成をとる、こういうような柔軟な対応を望む声も大変強いように思いますが、今後の対応の仕方について法務省はどうお考えになっておりますか。
#12
○貞家政府委員 夫婦財産制につきまして御指摘のような問題点があることは確かでございます。
 この点につきまして、私どもは今回の改正におきましては、配偶者の相続分の引き上げという端的な方法を用いるのが現実的であろう、こういう考え方をとったわけでございますが、もちろん、この制度をどうするかという問題につきましては根本的にさらに時代の進展に伴いまして十分研究をいたす必要があるかと考えております。
#13
○長谷雄委員 配偶者の相続権についてお尋ねをいたします。
 配偶者の相続分が子との関係で従来の三分の一から二分の一に引き上げられる、この際、子供の有無、数、婚姻年数等に応じて配偶者の相続分をきめ細かに規定することも一つの方法かと思いますが、これらの妻の立場を強固にするということの要請に対して、三分の一から二分の一に引き上げられることによってある程度この要請は満たされると思うのですが、それでもなお残る問題はあると思うのですね。
 たとえば唯一の遺産が現住の土地建物だけというような場合です。こういう場合、配偶者の居住権との関係などでは深刻な問題が起きてくると思うのです。こういう場合について、なお二分の一に引き上げたということだけでは対応し切れないのではないか。これについては法務省はどうお考えでございますか。
#14
○貞家政府委員 配偶者の居住権を確立する、これは非常に重要なことでございまして、このために独自の対策を講ずべきではないかというような御意見もございまして、いろいろ検討したわけでございます。
 ただ、現在遺産分割をいたします場合にも、これは必ずしも現物を物理的に分けるということを民法が要請しているわけではございません。したがいまして、特定の財産についてある相続人がその所有権を承継する、そのかわりに他の相続人に対する債務を負担するという方法もございますし、ある一人の者が所有権を取得する、そうして他の者について使用権を設定するというのも、評の一つの方法でございますし、あるいは共有名義で単純な共有にするというのも一つの遺産分割のやり方に入ってくるわけでございまして、今回の改正によりまして配偶者の相続分は二分の一ということになっておりますので、いかような分配の方法によりましても居住権が脅かされるという心配はまずないのではないか。
 もちろん、何も財産がないという場合に、相続人全体が犠牲を忍ぶと申しますか困ったことになるという場合はこれはお互いさまでございますけれども、そういう特殊の場合を除きましては居住権を失うというようなことはまず考えられないわけでございまして、もし仮にこの居住権を特別の立法をいたす、特別の保護の規定を設けるということになりますと、これはその居住権の法律上の性質、相続分との関係というようなことにつきまして非常に厄介な問題が生じてまいりまして、いわば新種の用益権を認めるというような形にもなりかねないわけでございます。
 そういったことよりも、むしろ相続分を引き上げておけば事実上そういう支障がないであろうし、また遺産分割の基準といたしまして、いろいろ現行法でもございますけれども、さらにその趣旨をはっきりさせるというような改正をいたすことによりまして、そういった不都合が生ずることを避けるようにするのが現実的ではなかろうかというような考慮から、今回の改正案のようにいたしたわけでございます。
#15
○長谷雄委員 いま指摘しました配偶者の居住権について、法務省もかなり苦慮して今回の改正に踏み切ったという跡がいまの御答弁でうかがわれるわけでございますけれども、新しい用益権の問題についてもたとえば永久の居住権を与える、永代借地権というのが墓地の関係でございますけれども、そういうことも一つの構成としては考えられるのではないか。
 これがどうしてもむずかしいということであるならば、一挙にこの場合妻が遺産の全部を相続できるようにしたらどうかという議論があるんですね。ですから、そこまで踏み込んでいくのも一つの方法ではないか、こう思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
#16
○貞家政府委員 いろいろこの問題はむずかしい問題がございまして、立法例にも若干そういうようなことを考えている立法例もございます。しかし、それはきわめて少数の国でございまして、やはり新しい制度を設けるというよりは、端的に優遇措置を講じた方が現実的ではなかろうかということでございます。
 財産がきわめて少ないという場合に配偶者だけに相続をさせる、これも一つの非常に勇気の要る考え方でございまして、他の血族等が遺産を承継する権利を全く否定し去るということは果たしていかがなものであろうか、こういう気もいたすわけでございます。非常に不徹底なところがございますけれども、現実的な案としては今回の改正で不都合が生じないのではなかろうか、かように考えているわけでございます。
#17
○長谷雄委員 いまの問題提起とは逆に、農家の場合などでは、子供との関係で現行法の三分の一の相続分でも農業後継者のために妻は実質的には相続放棄をしている例が少なくない、こう聞いております。農業経営者の大変なお立場だと思うのですね。それにもかかわらず改正案では三分の一が二分の一に引き上げになるということで引き上げになっても、こうした妻たちの与えられた新たな二分の一という権利は、せっかく与えられながらも絵にかいたモチになってしまうおそれが多分にある、こう思うのですね。
 こういう心配については、やはりそうした立場の人たちにも何らかの配慮が必要ではあると思うのですが、この点についてはどのようにお考えですか。
#18
○貞家政府委員 確かに相続の放棄をするというような例はかなりございます。しかし、これは一概に放棄をするなとか放棄をすべきだということは言えないわけでございます。
 争いがあれば、これはやはり家庭裁判所で調停なり審判ということで解決されるべきだと思うのでございますが、確かに農業経営の場合には配偶者の問題とそれから家業に専念いたしました長男なり次男なりとの問題はございます。しかし、農業経営につきましては細分化を避けるというような要請があることは間違いのないところでございます。
 したがいまして現実の問題といたしまして、それを物理的に細分化するような遺産分割というものは、農業を経営する意図がある以上そういうことは恐らく協議でもなされませんでしょうし、家庭裁判所へ持ってまいりましても、そういうような審判はほとんどないのではないかと思うのでございまして、それは一人に経営をさせて他の者に対してあるいは債務を負担するとか、先ほども申し上げましたようないろいろな方法がございまして、現行法のもとでもそういう点は十分配慮されていると思うのでございまして、これは配偶者の相続分が二分の一になりましても同じような配慮のもとにそういうことが行われるのではなかろうか、かように推測するわけでございます。
#19
○長谷雄委員 配偶者の相続分について触れたところで、配偶者の代襲相続権について若干お尋ねをいたします。
 今回の改正案は、この問題については全く触れていないと思います。夫婦の一方、通常は妻でございますが、妻は他方を代襲して相続することができるようにしてはどうかという意見がかねてからございます。これに対しては、夫の親の遺産をあてにするということは家の制度への逆戻りにつながるとの考え方もございます。しかし、配偶者の一方、通常は夫がその父母よりも早く死亡したという偶然のために子の配偶者間で差が生ずるというのは不公平ではないか、この期待的利益を保護するというだけでは結局家の制度の復活ということにはならないのではないか、こう思うのですけれども、この点についてはどうお考えでございますか。
#20
○貞家政府委員 配偶者の代襲相続を認めるべきかどうか、この問題は実は法制審議会においても非常に熱心に討議をされた問題でございます。また、各方面の意見におきましても熱心な御意見がいろいろと寄せられた点でございます。
 ただ、これを結論から申しますと一般的に認めるということには問題が多過ぎる。それから、一定の要件のもとに認める、例外的な場合に認めるというようなことは、要件の定め方が非常にめんどうでございますし、必ずしも妥当な結果が得られないというようなことが主たる理由でございますが、そういう理由によりまして配偶者の代襲相続という問題は改正の内容に入れなかったわけでございます。ただ、その点に関しまして、そのような配偶者の位置づけをするということ、これはことに妻の場合でございますが、それは生存配偶者の自由を事実上拘束するというような意見もございまして、つまり、ただいまおっしゃいましたような家族制度の復活に結びつくというような感覚の御意見もあったことは事実でございます。
 ただ、私どもはそういうおそれがあるからというようなことをそれほど考えたわけではございません。むしろこういったものを一般的に認めるということは、いまいろいろな場合につきまして原則的には否定すべきだ、否定すべき場合が非常に多いというようなことから、相続の制度としてはこれをとらなかったということでございます。中には、ただいまおっしゃいましたような問題点も起こらないとは言えないと思いますけれども、その点よりはむしろこれは一般的には制度としては認めるべきではないという考慮からでございます。
#21
○長谷雄委員 いまの妻の場合ですけれども、この妻が遺産の増加に特に貢献したという場合に寄与分制度についての問題があります。
 今回の寄与分制度の新設によりますと、寄与分については、改正案によると非相続人については認められていない、つまり相続人に限定をされておる。そうしますと、いま言う問題の妻はこの寄与分制度による恩典も受けられない。しかもまた夫の父母と妻との間で、財産をその妻に与えるというような契約あるいは遺言、これがわが国の社会慣行としては通常行われていない、行われることは非常にまれだ。このことは前回参考人でこういう御意見を述べた方もいらっしゃいました。そうしますと、こういう妻の立場というのはまさに何も保護は与えられないことになるのではないかということも含めて、やはり配偶者の代襲相続権というのは再検討すべきことではないかと思いますが、いかがですか。
#22
○貞家政府委員 確かに御指摘のとおり、寄与分を受ける権利は相続人以外の者にはございません。と申しますのは、この寄与分の制度というものは、相続人を対象といたしまして遺産分割における取得額の調整のための制度というふうに構成をいたしております。
 したがいまして、第三者つまり相続人以外の者の寄与ということは、これは遺産分割に参加しない者の財産取得の原因とするということでございまして、その性質は補償請求権的なものになってくるわけでございまして、やや異質なものになってくるというところから、これは遺産分割手続との関係におきましても非常に困難な問題を生ずるということで、相続人以外の者につきましては寄与分という制度の対象にしなかったわけでございます。これも非常に議論のあるところでございまして、私ども、今回の改正案の中身を検討するにつきまして最も問題にして検討したところでございます。ただ、結論はただいま申し上げたようなことになってくるわけでございます。
 そうすると、それはそもそも配偶者に代襲相続を認めないからそういうことになるではないか、端的に配偶者に代襲相続権を認めたらどうかという議論にはね返ってくると申しますか逆戻りしてくるわけでございます。そこで、配偶者に代襲相続権を認めるべきかどうか。これは妻に対しては夫、夫に対しては妻ということになりますと、夫の代襲相続権はどうかというような問題もございます。また、妻が亡夫の親と同居をしているかどうか、あるいは再婚したかどうか、姻族関係終了の意思表示をしたかどうかというような問題が生じてくると思います。また逆の場合には、夫が亡くなった妻の両親と同居し、これを引き取っているという状況があるかどうかというような問題がありまして、それぞれ差別があるわけでございます。
 そういったそれぞれの状況に応じて代襲相続を考えるべきかどうかということになりますと、ケース・バイ・ケースで非常にむずかしい問題が起こってくるわけでございまして、余りにも例外が多くなる。もし原則として認めるとすると、きわめて多くの例外を認めざるを得ない。余りにも多くの例外を認めざるを得ないような原則というものは、原則としての資格を持たせるべきではないのではないか、こういうことは考えられるわけでございます。
 それに、そもそも代襲相続という概念は、後の世代の者が先に死亡した前の世代の者にかわって相続人の地位につくという制度でございますから、これを横の相続に持ってくることにつきましては非常に問題があるという点、いろいろな点から配偶者の代襲相続を認めるのは困難であろうという結論になったわけでございますが、その結果といたしまして、ただいま御指摘のような場合非常にお気の毒だということが起こり得るかと思います。この場合には、子供がありますとその子供が代襲相続をいたしますので、配偶者は間接的に利益を受けるということもあるかと思います。子供がないというときには、これは仰せのとおり、遺言をしてもらうあるいは生前の処分をしてもらうあるいは亡くなった夫の親との間に養子縁組を結ぶというようなことも考えられるわけでございまして、そういった方法によりませんと、その十分な待遇が得られないという問題があろうかと思います。
 遺言の点につきましては、確かに現在利用度が少ないのでございますけれども、これも比較をいたしてみますと、遺言の数は非常にふえております。また、今後いろいろな方面で遺言の――この相続法の改正を機にいたしまして、この法律の法定相続分だけによりましてすべての相続問題が解決されるということは、これはどうしても言えないわけでございまして、個々の実情に応じた解決というのはどうしても遺言とか自由な処分によらざるを得ないわけでございますので、そういった面の周知と申しますか関心を深めるための努力は私どももいたしますし、また各方面ともそういう努力をされるであろう、それに期待をいたしているわけでございます。
#23
○長谷雄委員 大変御丁寧な御答弁をいただきましたが、まだ詰めたい問題もありますけれども、時間の関係がございますので先に進めます。
 次に、兄弟姉妹の相続権について若干お尋ねをいたします。
 現行法では第三順位の相続人としての地位がございます。したがって、配偶者がある限り兄弟姉妹は配偶者と共同相続人の立場になります。兄弟姉妹に対して相続権を認める根拠として言われているのは、遺産の中にはもともと被相続人の親の財産であったものも含まれているのだから、兄弟姉妹は被相続人を通じて親の遺産を相続することができるんだ、できるべきだ、さらにまた、もし兄弟姉妹の相続権を否定した場合に、単独相続で遺産の全部を取得した配偶者が再婚し、その後再婚先で死亡した場合には、兄弟姉妹としてはやはりやり切れない、こういう気持ちがある、こういうことが主な理由として挙げられております。
 こうした感情は理解できないわけではありませんが、こういう場合にはむしろ被相続人と運命を共同にしてきた配偶者の地位こそ重視すべきではないか。このあらわれが今回の改正案においても配偶者と兄弟姉妹が共同相続人である場合に配偶者の相続分の引き上げがあったということだと思うのですね。そうであるならば、こうした場合にはなおさらのこと兄弟姉妹の相続権を否定すべきではなかったか、こういう考えがございますが、この点についてはどうお考えでございますか。
#24
○貞家政府委員 兄弟姉妹につきまして、そもそも相続権を与えるべきかどうか、また代襲相続をどうするかというのは確かに問題でございます。
 この点も十分検討いたしたわけでございますが、ただいま御指摘のとおり、遺産の中には婚姻中に形成された財産ばかりでなく、婚姻前に形成された財産、伝来財産というようなものも含まれている。これを全部配偶者に相続させるということについて疑問があるという点。それから兄弟姉妹の結びつきというものが、これは一面薄くなっているというような現象もございますけれども、なおその結びつきを重んずる国民感情というものは、これは立法上全く無視するということはいかがかと思うわけでございまして、つまり相続における血統というような点につきまして、やはり現時点ではこれを無にするということは行き過ぎではないだろうか、こういう考え方。それから兄弟姉妹が互いに扶養義務を負っているというような点もございます。そういった諸点を考慮いたしまして、これを否定することはいたさなかった。ただ、その相続分は配偶者に比べて少なくしたというのが今回の趣旨でございます。
#25
○長谷雄委員 兄弟姉妹の相続権を完全に否定した場合には、他に相続人がいない場合に、すなわち配偶者がいない場合に遺産が国庫に帰属をしてしまう。そこで、その場合だけ兄弟姉妹に相続権を与えるという案、つまり兄弟姉妹は配偶者の後順位の相続人とするという考え方、これについてはいかがですか。
#26
○貞家政府委員 その点につきましても、ただいまお答え申し上げたと同じお答えになるわけでございます。ただ、全く他に相続人がいない場合には特別縁故者として財産を取得する道は開かれているということがございます。
#27
○長谷雄委員 先ほどの御答弁の中に扶養義務の関係の御答弁がちょっとございましたが、兄弟姉妹の相続権を否定した場合、いまの扶養義務の関係で問題が生じるおそれが確かにあると思うのです。
 しかし、兄弟姉妹の相続権をいま指摘した方向で改正するのであれば、親族扶養に関する民法の八百七十七条の一項で兄弟姉妹は当然の扶養義務があることから、二項の審判による扶養義務者にするという方法も当然考えていいのではないかと思うのですね。今回の改正の検討に際して、この点まで含めて検討すべきではなかったかと思うのですが、いかがですか。
#28
○貞家政府委員 扶養義務について見直すということも、これは法制審議会の民法部会身分法小委員会においては、かつてそういう作業もいたしたことがございますけれども、この点につきまして、兄弟姉妹を当然に扶養義務の第二次的な順位に置くというところまではなかなか結論が到達しなかったような経緯になっております。
 これも国民感情の問題だと思いますけれども、兄弟姉妹の結びつきというものはいろいろな場合がございましょうが、その結びつきというものは国民感情の点からいいましてなお相当強く残っているのではないか、かように考えているわけでございまして、さしあたって扶養義務についてそれを第二次的にするというようなことは考えておりません。
#29
○長谷雄委員 兄弟姉妹の相続権について、代襲相続の関係を取り上げてみたいと思います。
 現行法では代襲相続の範囲に制限がないために、兄弟姉妹が相続人となるべき場合に、被相続人とは格別のかかわりのない者までが代襲相続人となるケースがございました。それを改正案では、その範囲を兄弟姉妹の子というぐあいに限定をした。この改正案についてはかなり前進で、それなりに評価ができるところでございます。
 しかし、被相続人の兄弟姉妹の子、つまりおい、めいにまでなぜ代襲相続を与えなければならないのか、残したことは不当だとの批判がございます。この点についてはいかがお考えですか。
#30
○貞家政府委員 現在の兄弟姉妹の代襲相続が被相続人と何のかかわりも持たないことが多いと思われるような先々にまで及ぶということは、これは確かに必ずしも適当ではないということでございますが、しかしながら現段階におきまして、おい、めいまでの結びつきと申しますか、それが社会生活上親族的なかかわり合いを持つ集団の範囲内であるというのがやはり一般的な傾向ではなかろうかと思われるわけでございまして、これも結局相続における血族の占める位置というような点を考えまして、現段階におきましては、無制限にということは是正いたしまして、おい、めいまでに限るということにいたしたわけでございます。
#31
○長谷雄委員 遺留分についてお尋ねをしますが、成人の子に遺留分を認める必要はないとの意見がございますが、この点についてはいかがですか。
#32
○貞家政府委員 遺留分と申しますのは、御承知のとおり、被相続人の意思による財産処分の自由に対する相続人の側の保障という線でございまして、これは相続人のいろいろな状況によって区別をするというのも法律関係の安定を害することになると考えられますので、余り細かく分けるということは適当ではないと思うのであります。
 成人した子にとって必ずしも保障しなくてもいいのではないかという御意見でございますけれども、相続人でございます以上、これはある程度の遺留分というものを認めるというのがやはり必要ではなかろうかと思うのでございまして、ただ、それによって遺留分に基づく減殺請求をするかどうかということは、これは全く自由でございまして、遺留分を侵害した形におきましても、それはもちろん現実には行われるということはあり得るわけでございます。
 しかも、現行におきましては直系卑属が加わっております場合の遺留分は二分の一でございますが、個々の直系卑属につきましては、二分の一に三分の二を掛けまして、それを子供の数で割ったものが個々の子供の遺留分になるわけでございますが、今度の改正によりますと子供の方が二分の一ということになりますので、二分の一掛ける二分の一割る子供の数、こういうことになるわけでございます。その意味から申しますと、これは数的にはその幅が減ると申しますか、そういう現象になるわけでございまして、遺留分という制度がございます以上、相続人としてのこの程度の保障は必要ではなかろうか、かように思う次第でございます。
#33
○長谷雄委員 次に、寄与分制度についてお尋ねをします。
 まず寄与分を受ける有資格者について、改正案ではこれを相続人に限定しております。この理由については、寄与分制度の創設が相続人間の衡平を図るにある、こう言われております。しかし、この衡平の原理を図るというのであれば、これは相続人間に限ったことではなくて、相続人以外との間にも、やはり現実に寄与をした者がいる限り、その者の寄与分を考慮しないと衡平の原理は貫かれないのではないかということが言われておりますが、相続人に限定をした理由についていかがお考えですか。
#34
○貞家政府委員 ただいま御指摘のとおり、寄与分制度のこの法律案における性格づけは相続人間の衡平を図るということでございます。
 第三者について寄与分を認めるということになりますと、これは先ほども申し上げましたように遺産分割に参加しない者の権利ということになりまして、いわば補償請求権、結局は被相続人に対する請求権、これが遺産分割とは別にあるわけでございまして、それを取り込むような形にせざるを得ないわけでございます。そこで性質が非常に違ってまいります。そこに契約関係とかあるいは不当利得返還請求権というような財産上の請求権があれば、これは無論いわば遺産分割の外におきまして相続債権として実現できるわけでございます。
 それは、現在でもまた将来においても可能でございますけれども、この寄与分のような、いわば協議で定めるあるいは家庭裁判所の審判によって権利を形成するというような形のものを取り込むといたしますと、遺産分割の際にそういった第三者の寄与分の形成ということが前提になりますと、たとえば一定期間遺産分割を禁止しなければならない。そこで第三者の申し立てによってその寄与分を形成するという手続を別個にやりまして、それを遺産分割に反映させるというようなことになりますし、また遺産分割と無関係にそういうことが行われますと、相続人同士による遺産分割というものの運命が非常に不安定になってくるわけでございまして、手続上やはり遺産分割の円滑が阻害される。
 むしろそういった第三者のものは、被相続人の自由な処分によって実現を図る、あるいは法律上の請求権、財産法上の請求権として別途に請求が可能であればその方法によらせるということの方が現実的であり、また手続の安定を害しないであろう、こういうような考慮からそういうふうにいたしたわけでございますが、基本的には寄与分制度が遺産分割の際における相続人間の衡平を図るということに主眼を置いた結果でございます。
#35
○長谷雄委員 寄与分制度から除外された者の中でも、一般第三者については、その寄与に際して明確に贈与する等の場合でない限り、ほとんどの場合には反対給付が寄与の際になされていると思われます。ところが、相続人ではないがさりとて純然たる第三者でもない場合には、寄与に際して必ずしも反対給付を受けていない。
 その例として、まず被相続人の子の配偶者ですね。これは見方を変えて言いますと、先ほどの配偶者の代襲相続権の問題として置きかえることができると思うのです。この場合の配偶者、通常は妻の場合でございますけれども、妻にとって最も期待的利益が大きいにもかかわらず、その妻の夫が偶然夫の父母よりも先に死んだために相続権がない。そしてその夫婦に子供がなかった場合には、残された妻は、被相続人において先ほど申し上げたように遺言やその他の処置がない限り、遺産の配分にありつけない。この妻の期待的利益は、夫の代襲相続権でもこの寄与分でも否定されている。妻は特別縁故者となる場合であっても相続人不存在の場合に残余財産についてだけだ。この問題は、この場合の妻つまり被相続人の息子の妻、内縁の妻、事実上の養子などの場合も同じだと思うのですけれども、せめて寄与分だけでも認める措置をすべきではなかったかという問題があります。この点についていかがお考えですか。
#36
○貞家政府委員 ただいまお答え申し上げたことと同じことになるかと思うのでございますが、やはり寄与分を広げるということになりますと非常に性格の違ったものを取り込むということになりまして、それは現在の遺産分割に取り込んでしまうということは非常に無理があるのではなかろうか、別途の請求あるいは別途の被相続人の自由意思による処分ということにゆだねざるを得ないのではないか、かように考えている次第でございます。
#37
○長谷雄委員 寄与分の清算につきまして、立法趣旨は先ほどからのお話のように相続人間の衡平を図る。そうであるならば、その衡平を貫く必要のあるのは、つまり清算を必要とするのは相続の場合に限らない。相続人となるべき者、その最も重要なのは夫婦の間ですけれども、夫婦間での清算を必要とするのは、相続の場合のほかに離婚による財産分与の場合もあります。さらに婚姻継続中の場合だってあり得ると思うのですね。たとえば被寄与者に強制執行や破産手続が開始された場合にも清算をすることとしないと衡平は貫くことはできないのではないか、こう思います。この問題がある。
 それからさらに、日常家事債務の連帯責任を規定している七百六十一条とも関連する問題について申しますと、たとえば夫が妻にないしょでサラ金に手を出して、あげくの果てに自己所有名義の現住土地建物を担保に供し、強制執行の段階でやっと妻に発覚をした、妻から財産の半分は妻のものだと責められても現実は大変厳しいという、こういう事例が最近に限らず大変多い。私の法律事務所にもこういう問題が持ち込まれております。
 こういう場合に、婚姻生活を継続するのに必要な居住の土地建物等の財産や離婚の際の財産分与に充てるのに必要な財産については、名義人である一方の配偶者が単独で処分することができることになっている現在の法制にも一つ問題があると思うのですね。これを制限する立法例も現にあるように思います。ですから、わが国でも、これらの財産等については他方の同意がなければ処分できず、同意がない処分については取り消しができる、こういう制度をひとつ考えてもいいのではないか、こう思うのですけれども、しょせん相続の場合だけでなくて生前における清算、これについてはどうお考えかということでございます。
#38
○貞家政府委員 確かに、生前におきまして何らかの清算の道を認めるということは、たとえばスイス法などにおきましては破産あるいは強制執行を受けたときにその清算手続に加入できるというようなことになっているようでございます。
 いわゆる寄与分につきましても、もしこれが契約あるいは不当利得返還請求権というようなはっきりした財産上の請求権であれば、これは無論被相続人の生前中におきましても配当加入が可能でございます。そうでない場合におきます寄与分というものは、協議で定めれば別でございますけれども、やはり請求をいたしました場合には審判によって形成されるというような性質のものでございます。
 そこで、その手続が必要になってくるわけでございますが、この生前の場合におきまして、これは離婚というような場合を除きまして、こういった性質のものにつきまして、被相続人の生前に破産とか差押えとかいう場合にその権利を主張し得るということは、現在のわれわれの国民感情と申しますか国民生活上果たしてそういうことが是認されるかどうかということになりますと、これは非常に疑問ではないかと思うわけでございます。明確な請求権の確認という構成をとらないで、いわば形成によって初めて具体化される権利というふうに考えますと、それは生前の何らかの機会において清算を認めるというのは行き過ぎではなかろうかと思うのでございまして、ドイツ法その他フランス法などにおきましても相続の場合を問題にしているようでございます。そういった考え方をこの改正案もとっているわけでございます。
#39
○長谷雄委員 生前の清算を認めることについて、いまおっしゃるように第三者に対する影響が心配であるというのならば、寄与分の清算について、寄与の時期を限定するとかあるいは随時に寄与分について対抗力を得させることなどの措置が可能ではないかと思うのですが、これをあえてせずに清算の時期を生前については認めなかった、相続の場合に限定したということの問題が残るところでございます。
 次に大蔵省にお尋ねしますが、寄与分についての生前における清算の一態様として、たとえば夫名義になっている財産を実質は妻が半分持っているのだということで夫婦の共有名義にすることを促進するために、配偶者間の贈与について、つまりもともと妻の持ち分が半分あるのだ、この半分について実質の持ち分を顕在化するために妻の単独名義あるいは分割はできませんから持ち分を平等に半分にする、各二分の一にする、こういう登記をした場合には現行の税法では贈与税がかけられると思うのですけれども、その辺についての贈与税の控除額を大幅に増額する、こういう配慮はできなかったものかどうかお尋ねします。
#40
○鈴木説明員 私どもは、税制は国民生活の一般的なルールを基礎として構成されるべきものだと思っております。と申しますのは、財産制度や相続制度を決めております基礎法でございます身分法、そういうものを離れて税法だけが出過ぎた形で規定を設けるということは不適当だと考えているわけでございます。
 今回、民法の改正に際しましていろいろ御議論がございましたが、最終的には現行の別産制を維持する、配偶者の地位の向上というものはその法定相続分の引き上げによって図るということで御結論をいただいて、今回の法律改正を御審議いただいているわけでございますから、そういう立場に立った場合には、別産制を維持する以上、配偶者間といえども生前の間の財産の移転というものについては贈与税を課さざるを得ないと考えているわけでございます。
#41
○長谷雄委員 寄与分の算定に当たって、相続人でない寄与者について、たとえば相続人の配偶者の寄与分についてはどう算定するかという問題があります。
 九百四条の二の二項には寄与の時期、方法、程度、相続財産の額その他一切の事情が考慮されることになっております。その際、相続人の配偶者については相続人と一体にあるものとして相続人自身の中に入れて算定することは可能だと思うのですけれども、同じ相続人の配偶者の場合でも、相続人たるべき本人が被相続人より先に死んでしまったということで寄与した主体がない、こういう場合にはどういう理論構成をとるにしても無理だろうと思うのです。こういう問題が一つ残ります。この点はいかがですか。
#42
○貞家政府委員 その場合にはやむを得ないという結果になろうかと思います。
#43
○長谷雄委員 まだたくさんの質問を用意してあるのですけれども、もう時間もないので別の機会に譲りたいと思うのですが、ひとつここで大蔵省にお尋ねしておきたいと思います。
 今回の民法及び家事審判法の一部を改正する法律案の中で、附則の五項に相続税法の一部改正が載っていますね。私がお尋ねしたいのは、税法の改正をこの中で一緒にやったというのはどうも私は納得できないですね。この相続税法というのは非常に重要な日本の財政制度の根幹をなすものの一環だと思うのです。これをこういう法律の改正の際にちょこっと端の方に載せて大幅に変更するということはいかがなものかと思うのですが、いかがですか。
#44
○鈴木説明員 今回附則でもって相続税法の改正をお願いしております理由を申し上げたいと思います。
 第一点は、現在の税法はやはり民法のたてまえと合わせまして通常の法定相続分までは課税しないというのが税法のたてまえでございますけれども、今回の改正はその税法のたてまえを別に思想的に変更するものではない。要するに民法の改正に伴って三分の一が二分の一になるという、いわば民法の改正に伴う税法の整備というふうに考えておりまして、こういう整備の際にはしばしば税法以外の法律でもって税法を改正するということをお願いしているケースがございます。
 第二点は、今回のこういった改正、これはやはり国民にとってわかりやすい形である必要があろうと思います。と申しますのは、現在民法の制度と税法の仕組みとが一体となって国民の間に定着していると思いますので、やはり両者同時に発足する必要があろうかと思います。そのためには、このような形で附則でもって相続税法を改正することが国民にとって一番わかりやすいし便宜であろうというふうに考えておりまして、法制局ともいろいろ相談の結果こういう形でお願いしているわけでございます。
#45
○長谷雄委員 ちょっとその理由が納得できませんね。この相続税法の改正が単なる字句の訂正であるものなら構わないと思うのです。いま指摘しました附則の五項の中で、たとえば漢字で「因り」と書いてあるのを平がなで「より」と変える部分だとか、漢字でただし書きの「但し」と書いてあるのを「ただし」と変える、こういう字句の修正ならあなたがおっしゃるように確かに整備なんですね。実質的なものは余りない。それはこれでいいと思うのです。
 ところが、そのことと関連しますけれども、今回はそういう単なる整備じゃないのです。えらい重大な改正になっておるのです。ですから私は、これを法務委員会で審議をしろというのは大変歓迎しますよ。ところがこれはやはり大蔵省の主管であり、大蔵委員会で審議すべきことだと私は思うのです。これは委員会制度のたてまえだろうと思うのです。
 また、税法の改正と民法の改正を同時にやるためにこれをやったのだ、こういう理由をおっしゃるけれども、同時にやるといったっていますぐやるわけではありませんし、この附則の第一項に書いてあるように、この法律は来年の一月一日から実施されるのですよ。そうしますと、この国会で同じように相続税法の改正案については大蔵委員会に提案すればいいのです。同時に実施できるはずなんです。何も理由がないのですよ。非常に奇怪な法改正の手続がなされた。今後こんなことのないように望みたいと思うのですが、いかがですか。
#46
○鈴木説明員 整備といいました場合に、単に字句の修正のみならず従来からも相当程度の、要するに他の法律と直接関連ある事項を修正するということは行われております。
 今回、五十年度の改正で現在の考え方ができているわけでございますが、その現在の考え方というものはあくまで変えておらないわけでございます。すなわち、配偶者と子が相続人である場合の法定相続分までは税を課さないというこの思想は全然変えておりません。そういう意味で整備と申し上げているわけでございます。
#47
○長谷雄委員 いずれにしても大蔵省の説明は納得しかねます。
 質問したいことはたくさんございますが、時間もございませんので最後に法務大臣にお尋ねしますが、これまでの質疑で明らかになったように、今回の改正案についてはかなり前進と私どもは受けとめておりますが、しかし、なお夫婦財産関係をめぐって解決が残された問題がたくさん残っていると思うのですね。これについてはやはりまた時間をかけて検討すべきことであろうと思いますけれども、いずれにしても、国民世論を背景にしながら納得のいく改正検討をぜひとも進めていただきたい、こう思うのです。この点について法務大臣の所見をお尋ねいたします。
#48
○倉石国務大臣 有意義な質疑応答が行われまして、その間私どももいろいろ感ずるところがございます。十分に検討いたしまいるつもりでございます。
#49
○長谷雄委員 終わります。
#50
○木村委員長 岡田正勝君。
#51
○岡田(正)委員 大臣、倉石さん、日本における婦人の立場、特に妻の立場というのは弱いものですね。(「強いよ」と呼ぶ者あり)強いというやじがありますが、私は弱いと思っているのです。
 特に昔からよく言われております、幼くしては親に従い、嫁いでは夫に従い、老いては子に従うという、三従といいますか、こういうのが日本婦人の美徳というようなことを言われておりますが、そのように常にその立場は弱いわけであります。そして不安定であります。また御承知のとおり、昨今の男女の平均寿命の関係から言いましても、男性の方が女性より約五年早く亡くなるというような状態でありまして、その比率というのは約七割だそうであります。したがいまして奥さんの方が後に残されるという率が非常に多いわけでありまして、この問題が昨今非常に問題となっておるわけであります。
 それで、昨年の十月の下旬から約一カ月間NHKで夜の連続ドラマで「幸せのとなり」というのが放映されました。これは、長男の亡くなった後、お嫁さんとしゅとめとその他のきょうだいとが骨肉の争いを繰り広げていくというドラマでありました。ちょうどこの時間は自民党におきまして総理の候補を二人もお立てになってわんさわんさの大騒ぎをやっている最中でありましたから、党においても重要な立場を占めておられる倉石法務大臣は恐らく見ていなかったのだろうと思いますが、ごらんになりましたか。このドラマの中で特に私の印象に残っておりますのは、この争いの中で揺らめいておる妻の座のことであります。わが党は、萩原幽香子参議院議員が出ておられましたその時代から、つとに妻の座の確保について尽力をしてきたのであります。しかしながら妻の座の確立は、このドラマに見られますようにいまだになされてはおりません。よって、妻の座の問題をめぐりまして大臣に御質問をいたします。
 このたび相続法の一部改正案が国会に提出されたわけでありますが、その中で妻の相続分は相当にふえ、また寄与分の制度も取り入れられていますが、これは、私たちの長年主張いたしております実質的な夫婦財産共有制の立場から見ても一歩前進であると考えております。わが党の萩原前参議院議員が昭和四十五年四月十一日から十年来主張していたところを法案にまとめて提出いたしましたのが昭和四十九年五月三十日のことであります。それがこれであります。大臣はもうお忘れになっておるかもわかりませんので、差し上げますから見てください。
 いまお手元にお渡ししましたその法案を当時の参議院法務委員会へ出したのでありますが、もののみごとに否決をされたわけでございます。しかし、これをきっかけといたしまして相続法を中心とする民法の改正の機運が全国的に盛り上がり、政府が今回法案を提出するまでになったということは大きな成果であると考えております。しかしわれわれは、政府の今回の改正案ではまだまだ不十分だと考えておるのであります。
 時間も限られておりますので、問題点をしぼりまして、政府のお考えと姿勢についてこれから順次お伺いをさせていただきます。
 まず最初に大臣にお尋ねをいたしますが、妻の内助の功ということについて大臣はどのような評価をしておられますか、お聞かせをいただきたいと思います。
#52
○倉石国務大臣 妻の内助の功は、相続におきましてこれにふさわしい相続分を受けることによって報いられるものと考えられますが、今回の改正案によりまして配偶者の相続分を引き上げることといたしましたのは、この内助の功を従前よりも高く評価いたしまして、これを相続に反映させる趣旨にあるものであると存じます。
#53
○岡田(正)委員 現在の社会の風潮というのは、婚姻中に得た財産というのは夫婦二人のものだという意識が大体国民の常識であると思います。この点についてどう思われますか。
#54
○倉石国務大臣 婚姻中に夫婦の協力によりまして形成いたしました財産につきましては、その協力を考慮すべきことは当然のことであると存じます。
 このような配偶者の協力は、離婚をするような場合にも相当な財産分与を受けることによって報いられ、それからまた相続におきましては、これにふさわしい相続分を受けることによって報いられることとなるわけでございますが、なお今回の改正におきましては、配偶者の協力を評価いたしまして相続分を引き上げることといたしたことは御存じのとおりでございます。
#55
○岡田(正)委員 これは要望として申し上げておきますが、大臣のそういう御意思であるにもかかわりませず、現行法は非常に大きな開きがあると思うのです。この法の欠陥を補うものといたしまして、先ほど来議論の中でもよく出てきますが、遺言制度の活用ということをしきりに言われますけれども、これは例が非常に少ないです。この問題の活用につきまして幅広くPRをして、弱い方々が泣き寝入りをしないように、泣き寝入りを防ぐように積極的にこれからも取り組んでいただきたいということを要望として申し上げておきたいと思います。それから次に寄与分の問題でありますが、まず大臣にお尋ねいたしたいと思いますのは、奥さん方の家事労働あるいは育児労働、まあ言葉が適切かどうかわかりませんが、家事の労働あるいは育児の労働というようなものは、寄与分ということを今回この法改正で出していらっしゃいますけれども、それがどう含まれておるのでしょうか、どう評価しているのでしょうか、そのことについてお尋ねをしたいと思います。
#56
○倉石国務大臣 民事局長から申し上げさせます。
#57
○貞家政府委員 今回の改正におきます寄与分というものは、一応相続人の中に被相続人の事業に関する労務の提供、財産上の給付あるいは被相続人の療養看護その他の方法によりまして被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたということをとらえて、それを寄与分として財産を取得させようという趣旨でございます。
 そこで、特別の寄与をしたということになりますので、たとえば夫婦間の一般の協力扶助義務の履行の範囲内あるいは親族同士の通常の扶養義務の範囲内と見られますものにつきましては、これは特別の寄与分の対象というふうにはいたしていないわけでございます。その限度を超えたもの、通常期待できない場合に初めて寄与分の制度が現実化するわけでございまして、それ以外の一般的な状況におきますそういった義務の履行というものに対しましては、これはやはり相続分の方で評価をする、こういうことになっているわけでございます。
 したがいまして端的に申し上げますと、家事に専従した場合のいわゆる内助の功というものは相続分の引き上げによって賄う。しかし、たとえば共かせぎによって財産形成に寄与したというような場合には、これは寄与分としてそれ相応の財産を取得させる、かような仕組みになっているわけでございます。
#58
○岡田(正)委員 私どもは、考え方といたしまして、たとえば奥さんが家の中で家事に従事する、それから育児に従事する、そういうことがあって初めて家のことを心配せずに外で働けるから主人の収入があるわけでありまして、それは切って離すべきものではないのであって、夫婦の共同でできたいわゆる収入であり財産であるというふうに考えておるのであります。
 そういう観点から考えまして、たとえば離婚をいたしました奥さんの取り分という問題になってまいりますと、私どもは、その際の財産の分与というものは二分の一に推定すべきものであろう、こういうふうに考えておりますが、いかがお考えでしょうか。
#59
○貞家政府委員 財産分与請求権というものの性質につきましては、いろいろ考え方があるわけでございますが、通常は、ただいまおっしゃいましたような夫婦共同生活中に得た財産、その財産の清算という意味、それから離婚後の相手方の生活についての保障、いわば扶養的な意味もございますし、中には、離婚を惹起した責任ある配偶者の離婚そのものに起因する責任と申しますか相手方に対する損害賠償的なものも加味して決められているというのが実情ではないかと思うのでございます。ただこの場合には、相続と違いまして夫婦の当事者間の問題でございますから、いろいろ場合に応じまして非常にきめ細かく考えざるを得ないわけでございます。
 そこで民法は、その額を定めるにつきましては、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める、かように規定しているわけでございまして、その間いろいろな要素が加味される。したがって、そこにおきましては、いわゆる内助の功というものも十分に評価されなければなりませんし、共同生活に費やされた財産はどれだけかという点も考慮されるわけでございます。また、婚姻期間の長短であるとかその他の事情も十分考慮されて、これはそれぞれの場合に応じた妥当な金額が決定される。
 相続の場合はある程度一律にこれを処理せざるを得ないわけでございまして、その点につきまして今度の改正案では、直系卑属とともに相続する場合には二分の一その他の場合に三分の二あるいは四分の三というふうに、大まかな推定と申しますかそういう算定をしているわけでございますが、財産分与の場合は個々の場合に応じて事情が非常に異なると思います。もちろんその場合に内助の功が十分評価されるべきであることは仰せのとおりでございます。
#60
○岡田(正)委員 説明は一応わかるのでありますが、大方のいままでの例を見ますと、財産の分与というのは余り大した役に立っておりませんですね。そういうことで、私どもの言う夫婦の財産共有制度をつくれという意見から言いますと大分離れた御意見でございまして、ちょっとがっかりするのでありますが、時間がありませんので次へ進ませていただきます。
 大蔵省の方にちょっとお尋ねいたしますが、この財産の分与あるいは寄与分の関係につきましての税は一体どうなっておるのか、どうなるのかということについてお答えいただきたいと思います。
#61
○鈴木説明員 寄与分につきましては税制上特別な配慮はしないということになっております。
 その理由を申し上げますと、あくまで今回の寄与分というものは共同相続人間の財産配分の衡平を図るということでございまして、相続財産であることには間違いないわけでございます。そういう意味で相続財産であるから課税する。第二点目は執行上の問題も実はございまして、寄与分が当事者間の協議によって決め得るということになりますと、それについて何らかの税制上の配慮をするということになりますと、そうでない場合に比べて非常に税の均衡を失することも考えられるというような事柄でございます。
 それから財産分与につきましては、現在所得税も贈与税も課税されておりません。
#62
○岡田(正)委員 国際婦人年でいま申し上げましたような問題が非常に重視をされてきております。いままで問題になってきておりますのに、この法文では、私どもの方から見ますと構成要件が非常に消極的であるというふうな感じを受けるのでありますが、いかがでございましょうか。
#63
○貞家政府委員 御趣旨は、寄与分を取得する場合の要件が厳し過ぎる、一般的な協力という程度では寄与分の対象にならないという点を御指摘かと思うのでございます。
 確かにそういう感じはいたすわけでございますが、先ほども申し上げましたように、一般的に寄与分という裁量的な要素が入るものよりは相続分ということで保障をまず第一にすべきであろう。そこで大まかな線というものを一律に出しまして、それの調整を寄与分で図ろう、実はこういう考え方でございます。そこでこのような条文になっているわけでございます。ただ、これが従来の家庭裁判所の実務におきましても、相続人間の衡平を図るためには、法律の根拠はないけれどもどうしても寄与分的なことを考慮せざるを得ない、そうでなければ衡平を図ることはできないというようなやむを得ないところから、いろいろ寄与分が実質的に認められた例があるわけでございます。
 ただ、そういう例をしさいに検討いたしますと、圧倒的に妻の寄与分、法律上の根拠はございませんけれども、いわば妻の寄与分というものを認めた例が多うございます。しかもその額の多いのはやはり圧倒的に妻である、こういうような現象が見られるわけでございまして、確かに、考え方として妻であれば当然寄与分が認められるというようなことにはなっておりませんけれども、実際上のこういった考え方というものはそう変わるものではないのではなかろうか。これは全くの予測でございますけれども、やはり配偶者の寄与ということが相当認められる結果になるのではなかろうか、かように考えている次第でございます。
#64
○岡田(正)委員 そこで、この寄与分の問題でありますが、寄与分の裁定というものを裁判所に任せきりということにつきましては、法務省としては無責任ではないでしょうか。
 というのは、一般の国民にはわからぬのですよ。大体法律そのものがむずかしい。むずかしくてしかも中身はわからぬ。裁判所へ出してみい、そうすれば結果がわかるわい、こういうことしかないのでは非常にさびしい気がするのでありまして、この寄与分の裁定ということにつきまして、ある程度のガイドラインというものを示すべきではないかというふうに思うのでありますが、いかがでありましょうか。
#65
○貞家政府委員 確かに今度の改正案は、この計算をどうするかというような点については全く沈黙をいたしておるわけでございます。
 これは、実は財産上の請求権でございますとそろばんをはじく根拠というものは非常にはっきりしてまいりますけれども、それではなかなかうまくいかない。やはりこれは、協議で決めれば別でございますけれども、家庭裁判所がある程度の裁量権を持ってやらざるを得ない事柄ではないかと思うのでございます。最低限という御意見も承ったのでございますけれども、余り多くし過ぎても困るじゃないかという御意見もあるわけでございまして、その辺は非常に迷ったわけでございますけれども、どうもガイドラインというのは逆に縛る結果といいますか不当な影響を与えるというようなことも考えられなくもございませんし、やはり家庭裁判所は、相続人間の衡平を図って、またその寄与はどの程度か、財産的に見ればどうか、しかし全体の遺産の額がこれだからこの程度に調整をしようというような細かい考慮でおやりいただくということ以外には、どうも妥当な結論を出せないのではなかろうか、かように考えた次第でございます。
#66
○岡田(正)委員 それでは次に、農業関係の場合につきましてひとつ詳しくお尋ねをしたいと思うのであります。本件につきましては、全国の農家の皆さんが大変心配をしておりますので、ひとつ丁寧な御答弁をいただきたいと思います。
 均分相続によります経営の細分化に対する不安、それから物価高騰によります経営規模の拡大の困難性など、農業後継者の将来に対して早急に解決を必要とする問題が山積をしております。このような情勢の中で、このたび農業後継者のただ働きの解消につながる寄与分を認める民法の改正案がこの国会に提出されたということは、長年の私どもの主張が認められたものとして評価をしておりますが、先ほどお尋ねしましたように、肝心なガイドラインがありませんので特にお尋ねをする次第であります。
 まず第一に、裁定分の認定に当たりましては、農業用の資産の維持、増加及び親あるいは弟妹の扶養などが相続のときにおきまして農業後継相続人の債権として取り扱われるように制度をはっきりしたらどうかというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
#67
○貞家政府委員 御指摘のような、いわば労務の提供についてこれを財産上の請求権として構成をするというようなたてまえをとると、その点は非常に明確化されるわけでございます。
 しかしながら今回の改正におきましては、もちろんその点には触れてないわけでございまして、本当に債権として請求できるものであれば、これは別途可能でございますけれども、そうはいかないもの、これはやはり家庭の中の問題でございますから、それほど請求権としてその立証ができるあるいはその積算ができるというようなものではないものにつきまして手当てをいたそうというわけでございますので、必然的にどうしても十分保障されないではないかあるいははっきりしないではないかという御批判があり得ると思います。しかし、これはやはりそういうはっきりした権利の形として認めがたいようなものについて調整のための手当てをしたということで御理解をいただきたいと思うのでございます。
#68
○岡田(正)委員 どうもちょっとはっきりしないのですがね。
 それではお尋ねいたしますが、ガイドラインがないわけですから、家事審判における寄与分の裁定ということになってまいりますね。この場合に裁定はどう行われるのでしょうか、どうやろうとしておるのでしょうか。
#69
○栗原最高裁判所長官代理者 農業の場合に限らず、家庭裁判所が法律上の明文の根拠なくして寄与を認めておりますのは、先ほど法務省民事局長から御紹介がございましたように、相続人間の遺産の分配の実質的な衡平を図ろうという見地からでございます。そうなりますと、特定の相続人が遺産の維持、形成にいかに寄与したかという、その実態を正確に把握するということが先決になるわけでございます。
 被相続人が農業の場合も全く同様でございまして、農業経営がいかにして維持されていたか、それについて相続人のうちのだれがその農業経営に寄与したか、その寄与の時期はどうだったか、実際にはどういう寄与の方法をとったのかというようなことをしさいに調査し、その実態を認めまして明らかにした上で、農業資産に対する寄与の割合というものを割り出しまして、それを遺産の分配の際に考慮するという扱いをしておるわけでございます。今回の改正によりましてその法律上の明文の根拠が与えられましたので、家庭裁判所の調停あるいは審判の場におきましても、従前より一層そのような点について家庭裁判所の裁量が十分に行い得るものではないかと私どもは期待いたしておる次第でございます。
#70
○岡田(正)委員 いまのようなお話を聞いてまいりますと、私はこうした方がいいと思うのですがね。
 経営がいかに維持されてきたか、あるいはいかに農業経営のために寄与したかということを認定する、いわゆる裁定していくわけでありますが、そういうことになってまいりますと、この裁定に当たりましては、その土地の事情に一番詳しい農業委員会の意見を聞くということを法文の中に入れたらいかがでしょうか。
#71
○貞家政府委員 家庭裁判所が調停なり審判をされる場合に、鑑定人の意見を求める等の方法によって調査をするということは自由にできるわけでございます。
 ただ、これは家庭裁判所が最も適切と認める方法によっていろいろ資料を収集するということになるわけでございまして、一律に、こういう場合にはこういう調査の仕方をすべきであるということを法律で審判手続につきまして制約するのはいかがかと思われるわけでございます。これは、やはり各家庭裁判所におきまして最も公正妥当な結論を得られるようにそれぞれ調査をされる、その自主性に任せるという方策をとるべきではなかろうか、かように考えたわけでございます。
#72
○岡田(正)委員 いまのお答えによりますと、裁判所が鑑定人を選んでその意見を聞くことは裁判所の自由であります、その上でよく検討して裁定をせられるがよかろうということをおっしゃるのでありますが、中小企業なんかの場合と違いまして、農業の場合になりますと、いかに加入脱退が自由である農業団体といいましても、農業委員会というのはその地域における一戸一戸の農家の中身についてまでもう非常に詳しく知っているわけですね。そういう点から、やはり参考人として意見を聞こうと思えば、当然農業委員会というものが農業経営に関する限り私は常に出てくるのではないかと思うのです。
 だから、そんなことだったら、はっきりこの法律の中に明文化しておくかあるいは最高裁の規則の中に入れておくことができないものですかね。どうしてむずかしいのでしょうか、その点をお答えください。
#73
○栗原最高裁判所長官代理者 いま議員の御指摘は、法文上明らかにしたらどうか、そういう御指摘でございますが、御参考までに運用の実情を申し上げますと、家庭裁判所特に農村地帯の家庭裁判所におきましては、調停委員の中にいま先生御指摘のような農業委員会などにお勤めの方を調停委員としてお願いしている場合が少なくないわけでございます。ですから、その種の事件になりますと、そういう農業の実態に詳しい調停委員さんに関与していただくというような扱いを現にとっております。もしそういう調停委員さんが関与しておらない場合におきまして、その地域において農業経営がどういうように行われておるかという実情が明らかでない場合には、御承知のとおり家庭裁判所には調査官というのがございまして、その調査官が関係者からその実態を詳しく調査をし、それを調停なり審判に反映させる、そういう扱いをしておるわけでございます。
 そのような観点からいたしますと、実務の取り扱いが明文化がされておらない現在におきましてもそのような運用がなされておるという実態に照らしますと、法律で明文の定めがなくしても実態においてはさほど変わりはないというように私は考えておる次第でございます。
#74
○岡田(正)委員 恐れ入りますが、もう一遍ちょっとはっきりしてもらいたいのですが、私どもの常識的な考えからいきますと、農業の経営に関する限り、日本で農業の問題あるいはそのそれぞれの家庭の内容につきまして一番よく把握をしておるものは農業委員会以外にないと思うのです。
 ですから、このことにつきましては、いま運用上調停委員の方々の中に農業委員会の人も入っている例もあります、こうなっておるわけですが、それが入ってない場合は先ほどおっしゃいましたように調査官がじかに行って調べてまいります、こういうことをおっしゃるのでありますけれども、やはり不安をなくするために農業委員会の意見を聞くということを最高裁の規則では入れられませんか。そしてそれができぬとなれば、たとえばいまの調停委員の中には農業関係者、農業委員会の関係者を必ず入れる、入っていることもある、入ってない場合もあるというのではなくて、必ず入れるということをはっきりお決めになって、その実質的な運用をしていただくということはできないものでしょうか。
#75
○栗原最高裁判所長官代理者 家庭裁判所の家事審判規則上そのような規定を設けることはできないか、そういう御指摘でございますが、農業資産の遺産分割の場合に限りそのような規定を設けることがいいかどうかということと、その必要性があるかどうかという、その二点に係るのではないかと思います。
 これまでその点について検討いたしておりませんので、いま先生御指摘の点につきましては帰りまして十分検討させていただきたいというように思いますが、私の感じといたしましては、従前の実務の運用その他から見ますと、それまでの必要性はないのではなかろうかというような感じがいたしておるわけでございます。
#76
○岡田(正)委員 これは法務省の方にも関係してくると思うのでありますが、現在農業委員会がタッチいたしまして実行している親子契約というのが実際にあるわけです。
 これは一つの例を言いますと、たとえば月十万円の給料を払おうということに決めておきまして、実際にはそれは遅払いである、払ってない、それで後ほどいわゆる後年になってまとめて支払うという制度、こういう制度をおとりになっているところがあちこちにたくさんあるわけでありますが、これは寄与分として考えてもいいのではないかというふうに思うのであります。そういうようなこともありますので、少なくとも農業委員会の意見を聞くということはこれから先々非常に重要なポイントになってくると思うので、しつこいようでありますが、もう一遍お尋ねをしたいと思うのであります。
#77
○貞家政府委員 その親子契約なるものが、やはり法律上はっきりした契約と認められて、それによって権利義務が発生するという性質のものでございますと、実はもう寄与分の問題以前に、これは当然被相続人に対する債権つまり相続財産が負担すべき債務になってしまうわけでございまして、これは別途そういう明確な請求権がございます場合には、それによる実現ということが無論可能であろうと思います。
 ただ、それがはっきりしない場合、立証できない場合、またそれを行使するのをいさぎよしとしない、家庭内の事柄でございますからこれを行使しないという場合に、相続分を調整するということになって初めて寄与分ということが問題になってくるわけでございます。ただ、その親子契約なるものの詳細を存じておりませんので、私この場ではっきりしたお答えを申し上げるわけにまいりませんけれども、はっきりしないもの、またそういう家庭内の問題として処理されるようなものにつきましては寄与分として問題になり、しかもその契約による金額というようなものも、寄与分を定めるに当たって非常に大きな要素をなすということになるのではなかろうかと思うわけでございます。
#78
○岡田(正)委員 それでは、これはひとつ研究してください。すでに日本のあちこちでこの親子契約を実行しているところがたくさんあります。
 それから、最高裁の方にさらにもう一度お願いをしておきたいと思いますが、いわゆる相続の関係でお互いに分配をしていく場合に、それぞれのきょうだいが寄って、関係者が寄って話しますと、みんな正直なところ言ってエゴが出てきますね。そういう場合に、本当の判断ができる、公平な判断ができるというのは私は裁判所だと思うのです。だけれども、裁判所がその判断をお出しになる最も信用のあるいわゆるネタといいますか、もとになるものというのは、やはりその地域その地域の農業委員会だと思うのですよ、第三者的な公平な機関としては。これは検討するとおっしゃったのですから、私これでこの質問はやめますけれども、ぜひ前向きに御検討いただきたい。私の希望といたしましては、できますならばひとつ裁判所の規則へでも入れていただいてはっきりした運用をしていただきたい。運用上の問題だけでやるというのではなくて、できれば規則に入れていただきたいということを強く要望いたしておきます。
 それから次の問題でありますが、農地の評価をいたしますときに、その時価評価をするというのではなくて、評価の方法はいろいろあるでありましょうが、農業の収益評価によってひとつ評価をしていただきたい、こういうふうに思うのでありますが、いかがでしょうか。
#79
○栗原最高裁判所長官代理者 いま議員御指摘のとおり、農地の評価につきましてはいろいろの方法があるわけでございます。
 と申しますのは、農地と申しましても純然たる農地つまり将来も宅地等に転用される可能性の全くない農地がございます。つまり、相続人がそれを承継して引き続き農業を相当長期あるいは未来永劫というとちょっとオーバーになりますが経営するであろうと考えられる農地と、それから都市の近郊地でございまして、すでに宅地の転用許可等を得ておる農地あるいは転用許可は得てなくても将来その蓋然性のある農地もあるわけでございます。
 いま議員御指摘のように、純然たる農地につきましては収益率というものがその評価に非常に関係が深いわけでございまして、従前の家庭裁判所の審判例などを見ましても、そのような農地につきましては収益のあれによりまして評価をしたという審判例が紹介されておるわけでございます。
 したがいまして、いま申しましたように農地にもいろいろございますので、一律に収益によって還元するというように決めることはかえって実態に合わない場合もございますので、これはやはり家庭裁判所がそれぞれの農地の実情をよく見きわめまして、それに応じた評価をするというような扱いにお任せいただきたい、このように考えている次第でございます。
#80
○岡田(正)委員 農家に不安を与えないために、今回法改正がありましたので、これを契機に農地の評価は、将来宅地化されるおそれがあるという場合も含めて一切現在の農業の収益で評価をする。
 これは、たしか大蔵省でもやっていらっしゃいますね。大蔵省は農業の収益評価でやりまして、生前一括贈与のときでも贈与税をかけることを猶予しておる。ちょっと私の記憶が間違いかもわかりませんが、二十年猶予してやる。二十年たってもなおかつ農業経営を続けておる場合だったら、それはもう贈与税は取らぬことにいたしましょう、しかし途中で放棄した場合には贈与税を取りますぞ、こういうやり方をたしか大蔵省はとっていらっしゃるはずですね。そのことも、そうであるかないかを大蔵省からもお答えいただければありがたいと思うのです。
 私はそう聞いておるのでありますが、今回の寄与分の裁定ということにつきましても、宅地化するおそれがあるから時価評価でいくとかそういうようなことをやらないで、とにかく宅地化するおそれがあるなしにかかわらず一切農地の評価というのはそのときの農業経営の収益評価によるものとするということにしていただいておかないと、下手をしてそのときそのときの裁定によって、たとえば時価で評価されますと、いまある農地は時価評価にしたら一億円だ、それをたとえば五等分したら本人に二千万円分が残って、あとの八千万円分が他のきょうだいにいくということになってしまいますと、そんな金はありませんから、結局は与えられた農地の五分の一だけを後継者が取って、極端な話ですが、あとの五分の四はほかのきょうだいが取って、もちろんサラリーマンなんかやっておれば農業経営をするはずもありませんから、右から左へ売り放して、そしてお金だけをふところへ入れてしまう。結局、言うなれば農地の零細化を招くことになるのではないか。
 現在、農林省におきましても農用地の拡大ということをしきりに言っておりますのに、いわゆる寄与分の裁定の場合に時価評価なんというようなものが入ってまいりますと、農業後継者の諸君は大変な不安を覚えるわけです。ですから、初めから収益評価でやるのだというふうにやっていただければ、農業後継者の皆さんも安心して従事することができるということになるわけです。
 その場合、そうやってまるまる後継者に土地がいった、今度はそれが二年か三年したら、もうおれは農業をやめたというのでばあんと売り放した、そうしたら後継者だけがいいことをするではないかということになるわけですが、それはいま大蔵省がおやりになっておる制度と同じような形をとって、そうやって途中で放棄をした場合には、当然他の方々に寄与分としてそれだけ分のものを出さなければならぬというようなことをつくっておけば心配は一つもないのでありまして、農業後継者の皆さんに不安を与えないためにも、私は農地の評価というのは収益評価一本にするべきであると考えるのでありますが、いかがでございましょうか。
#81
○鈴木説明員 いま先生お話しの土地につきまして若干訂正させていただきますが、現在、贈与税の納税猶予と申しますのと相続税の納税猶予と二通りございまして、いまの二十年間云々は相続税の場合でございまして、その場合に猶予の対象となりますのが時価といわゆる農業投資価格との差額でございます。贈与税にありましては、そういった区分なしに一応時価で評価されました農地を基準に算定されました贈与額を猶予するという形になっております。
#82
○岡田(正)委員 いかがですか、これは最高裁になりますか。
#83
○栗原最高裁判所長官代理者 確かに農業を承継する側の相続人の立場からすれば、議員御指摘のような不安感からそのような御提案がなされておるものと了解するわけでございます。
 しかし実際の遺産分割は、先ほど議員も御指摘のように、承継しない方の相続人は、もう戦後三十何年たちまして均分相続という考え方が非常に浸透いたしておりますので、その農業資産を正当に評価してほしい、そして長男が農業を承継するとしますと、長男の農業承継それ自体には異存はないけれども、承継しない自分たちにもそれ相応の相続分に応じた遺産の分配をしてほしい、そういう希望もまた非常に強いわけでございます。
 ですから、先ほど御指摘のように、本来農業が承継されていくのに、それを近隣宅地に準じた評価をいたしますと、その承継人が非常な負担を受ける、場合によっては農地を売却し農業承継がやっていけないというような事態になるわけでございまして、そこらのところは裁判所としてもこれまでの運用でも十分考慮いたしまして、現に農業経営を維持させるためにもどうすればいいかというようなことについては実務の裁判官が常に頭を痛めておるところでございます。
 ですから、農業承継者の立場からしますと、先生のような御提案も確かによくわかるわけでございますが、他方、承継しない側の相続人に対する均分相続のたてまえということもございますので、先ほど申しましたように、裁判所の方でその農地の実態をよくわきまえた上で遺産の分配といいますか相続人間の実質的な衡平を図っているという点を御理解いただきたい、このように考える次第でございます。
#84
○岡田(正)委員 どうも私の思うとおりの回答が出るのは無理かもわかりませんが、しかし、何といいましても日本にとりまして、どこの国も一緒ですけれども、一番大事なことはやはり食べることです。その食糧を確保するのが農業ですね。
 ということになりますと、この農業をやっていらっしゃる方々の、特にこのごろは後継者がなかなかできかねるという時代になってまいりましたね。これは非常に恐るべきことだと思っておりますので、農業後継者の皆さんがいささかも不安を覚えないように、不安を感じないように、ぜひともひとつこの運用の面におきまして大きな配慮を払っていただきたいというふうに思うのであります。できれば、私が先ほど申し上げましたように、農業の収益評価によって裁定するかあるいは農業の投資価格によって裁定するかというような方法をぜひとっていただきたい。もし農業を廃止したというような場合は不公平が出てきますから、それに対する是正の措置をとることは当然のことでありますけれども、たてまえとしては、私は農業の収益評価あるいは投資価格の評価というものによってやっていただくように強くひとつ要望しておきたいと思うのであります。
 それから次に、義理のお父さんが死亡したときの農業後継者、相続人の奥さんにも寄与分の先取りを認めるようにしてはいかがでしょうか。
#85
○貞家政府委員 寄与分の先取りというようなことでございますと、これまた遺産分割と別になるわけでございまして、非常に問題があるかと思うのでございます。恐らくこれは、夫が死亡した場合におきまして、夫の親からの代襲相続は認めないという点に根本の御疑問があろうかと思うのでございます。
 ただ、この点につきましては非常にむずかしい問題でございまして、法制審議会でもいろいろ議論を闘わせたのでございますけれども、配偶者の代襲相続ということを一般的に認めるということになりますと、これは問題が余りにも多過ぎるのではなかろうか、例外的な場合が余りにも多くなり過ぎはしないかというような考慮から、代襲相続ということは認めないという結論になったわけでございます。それと、寄与分の問題になると、これは遺産分割における相続人間の衡平の問題でございますから、寄与分権利者としてもこれは入っていくことはできないという結論になるわけでございます。ただ、これは今回の改正案のような寄与分の構成をとっておりますと、必然的にそういうような結果になるわけでございます。
 しかしながら、契約関係その他のはっきりした法律関係がございます場合には、先ほども申し上げましたようにその実現ということは別途可能でございます。しかし、家庭内の問題としてそういう用意がなされない、こういうことになりますと、子供がある場合には子供が代襲相続をいたしまして、事実上間接的に妻が利益を受けるという関係になります。しかし子供がない場合にこれは非常にお気の毒ではないか、この点は確かにございます。その場合に対処いたしますためには、先ほど申しましたはっきりした契約関係あるいは亡夫の親との養子縁組あるいは遺言でありますとか生前の処分というようなことに頼らざるを得ない。
 今回の改正が、決してこれによってすべての相続関係が過不足なく解決し得るものではないということは私ども十分自覚いたしております。そうなりますと、どうしても自由な処分でありますとか遺言であるとか、いろいろそういったものが必要になってまいります。それについての国民の方々の関心を高める、またその知識の普及に努める、そういうようなことは私ども十分心がけたい、かように考えております。
#86
○岡田(正)委員 ありがとうございました。
 義理のお父さんが自分の子供の奥さんが非常によくやってくれたというふうに認めた場合には遺贈するという制度もあるわけですね。ところが、先ほどおっしゃいましたように、なかなかこれが国民になじんでおりませんので、広く活用するということが非常にむずかしい。冒頭私が注文を申し上げましたように、こういう点のPRもしっかりやってもらわなければなりませんが、私どもが心配するのは、こういう問題はもっと前進的に考えていただかないと、ますます農村へ行く花嫁さんというのが行きにくい、やはり農村へ花嫁が行くという、いわゆる行っていただけるというような態勢をとるためにも、これから後重要な問題としてさらにひとつ御研究をいただきたいと思うのであります。これは注文を申し上げておきます。
 時間がなくなってまいりましたので、次に妻の代襲相続の関係でありますが、一つだけにしぼらしていただきます。実は今回の法改正におきまして、一つの例を取り上げて申し上げるのでありますが、お父さん、お母さんはおらない、夫婦だけが住んでおった、その場合に子供もないという場合は、いままでは御主人が亡くなったときには奥さんの取り分が三分の二で、そして亡くなった御主人のきょうだいが何人おってもその取り分は三分の一、こういうふうになっておりました。それを今度の法改正で奥さんの取り分が四分の三にふえ、そしてその他の亡くなった主人のきょうだいがお取りになる分が四分の一というふうに、これは大きな前進をしたわけでございますけれども、私がいまから訴えたいと思いますことは、これは実話によって申し上げるのであります。実はこういう例が非常に多いのです。
 これは一部恥ずかしい話でもありますから、名前は一切言わないことにいたしますけれども、実はこの御夫婦というのは終戦前まで満州におられたのです。満州におりまして、土地も家屋も財産をりっぱなものを持っておった。女の子が一人おったのです。ところが、御承知のあの終戦のどさくさのときに、日本赤十字の看護婦で従軍看護婦として出ておりましたが、それきりどこへさらわれていったのか行方不明というようなことになりまして、ついに子なしの夫婦となりました。そして終戦のために海外にありました財産一切を没収せられまして日本へ帰ってきました。
 帰ってきたときの年が五十五歳、両方とも年をとり過ぎてしまった。働こうと思っても働くところがありませんので、ある小学校の小使さん、いまの言葉でいう用務員ということで雇っていただいたわけです。自乗、学校の先生方の温かい援助によりまして二十年勤めたのでありますが、両足がもう立たなくなってきた。皿に水がたまるという状態になりまして歩行困難というような状態になったものですから、学校の方も大変気の毒ではあるけれどもやめてもらいたいというので、二十年目にやめた、こういう状態であります。したがって終戦後二十年たって学校の小使さんをやめたわけです。
 そのやめましたときに、もちろん海外に財産があったのですから、わが日本には土地もなく家もないわけです。学校の小使室に入って夫婦二人が生活をしておったわけですが、節約をどんどんいたしまして、最後に退職金を含めてその夫婦が貯金通帳へ貯金しておったお金がちょうど百万円ありました。それで、そのお金を持って学校を出たわけですが、出るともう住む家もなく、土地もないわけです。
 そこで、実は私どもの方の家に転がり込んできました。それで非常に狭い社宅でございますので、えらい私事で恐縮でありますけれども、子供が四人おる、妹がおる、そして夫婦がおる、そこへおじとおばと、合計九人の者が京間の四畳半と六畳の部屋にいっぱいになったわけです。寝るところがありませんから、私ども夫婦は玄関の土間のコンクリートへ、五尺角のコンクリートがあるのでありますが、そこへござを敷いて布団を置いて寝るというような生活を続けました。
 これはもう大変気の毒だというので、そのおじさんが、とらの子のように大事にしておりましたその百万円の通帳と実印を出しまして、見るに見かねるから、そのお金でスープが冷めない距離に自分たちの家を建ててくれということを申しました。探しまして、幸いにしてありました。そこで七十三坪の土地を買い、そこへ十五坪の平屋の家を建てました。そこに住んだら、非常にりっぱな家でありましたので、それで安心をしたのでありましょうか、自分のお金を出した、そして建てた、そのおじさんはころっと死んだわけです。
 そうなりますと、そのおばさんに登記を変えてやらなければいかぬ。私どもおいとしてはあたりまえのことでありまして、その登記を変えようと思って行ったら、いま言う三分の一は、亡くなった主人の財産であるから、そのきょうだいの人らの判がなければどっこいどうもなりません、こういうことになりまして登記ができない。やむを得ぬものですから調べましたら、きょうだいが九人おりました。そのうちの四人が死んでおって、そしてその子供がたくさんおるわけです、例の生めよふやせよの時代でございますので。その子供の中でもまた死んでおるのがおりますから孫ということで、合計いたしまして二十八個の判をいただいたのであります。これは東京から鹿児島までかかりました。
 それで一番最後に、現実に生きておる、その亡くなったおじさんのきょうだいの人のところへ二十八個目の判をとりに行ったのでありますが、そのときにどういう状態であったかといいますと、こうやって満州から引き揚げて小使さんをやって、自分たちでつくったお金で土地を買って家を建てたのだから、どうぞひとつ気持ちよく判を押してやってもらいたいと言いますのに、人のところへ物を頼みに来るのに空手で来るのか、何も下げないで来るのかと、大臣、こうおっしゃるのですよ。まことに情けなかった。仕方がないから、お酒を二本ほど買ってそこの家へ持っていきまして、失礼をいたしましたと言ったら、最後には判を押してくれましたが、もしそのときに二十八人目の人が判を押さなかった場合にどうなるかというのです。登記一切変えられないのですよ。こんなばかなことがあっていいでしょうか。
 それで、いま核家族の時代ですよ。みんな若い夫婦がそれぞれ共同して家を建てているでしょう。建て売り住宅を買っているでしょう。それは日本の国内でずいぶんたくさんの数だと思います。そういう人たちが、やはり私たちのおじとおばと同じような悲劇を味わわなければならぬのじゃないでしょうか。今度の法改正におきまして、サトイモの子のようにずっと何ぼでも行けというのではなくなった。おいとめいまででとまることになりました。なりましたけれども、一人でも合意しなかったら財産は登記ができないのですよ。こんなあほなことがあっていいですか。私は、何のために四分の一という制度を残したのだろうかと非常に実は憤慨をしておるのであります。この点につきまして、ひとつはっきりした御回答をいただきたいと思います。
#87
○貞家政府委員 確かに、兄弟姉妹のあり方というものは、現代のわれわれの社会においていろいろなニュアンスがあろうかと思います。
 非常に親族的なかかわり合いを持って同一の家庭生活集団に準じたような存在から、非常に疎遠になっている、めいめいがそれぞれに核家族ということでばらばらになっているという場合もございます。そこで、これはなかなか一律に言えないわけでございまして、今回の改正におきましては、全く兄弟姉妹の相続権を認めないとかあるいは兄弟姉妹の代襲相続も全部切ってしまうというところまでは徹底しなかったわけでございます。
 それは、この問題につきましていろいろ両方の考え方がございまして、一方では、もうすでに現代のわが国の国民生活においては、兄弟姉妹というのはかなり遠い存在になっているという認識に立つ意見と、そうではなくて、やはり兄弟姉妹の結びつきというものは国民感情の上でなお無視できない、相当血族として強い結びつきがあるという見方があるわけでございます。
 そこで、いろいろ世論調査の結果も見たわけでございますけれども、兄弟姉妹に対しましては相続権はそれほど認めるべきでないという意見もかなりございました。しかし代襲相続権について申しますと、やはりおい、めいぐらいまでは認めた方がいいだろうというような両様の結果が出ておるわけでございまして、私どもといたしましては、非常に不都合な場合があり得るということは、これは私どもも十分理解できるところでございますが、ただ、制度として一律にそれでは相続における兄弟姉妹の血統に基づく地位というものを完全に無視し去っていいものかどうかという点についてはやはり疑問がある、なお疑問があるという基本的な認識に立ったわけでございます。
 確かに、非常にお気の毒な場合があり得ると思います。そういった場合に、これはなかなかむずかしいことでございましょうけれども、生前にそういう場合を――当然これは自分でわかっているわけでございますから、そういった認識のもとに立って、生前にしかるべき登記をしておくあるいは名義をどうしておくというような、いろいろな問題はございますけれども、やはりそういった用意を十分にしておいていただくということが、そういう不幸な結果を防ぐ道ではないかと思うのでございまして、繰り返しのようになるわけでございますけれども、そういった問題に対しまして、遺言なりあるいはむしろ、先生の御指摘の問題でございますと、生前の処分なり名義変更の問題になると思いますけれども、そういった方法を十分御活用いただくよう、私どもあるいは各界において、そういった関心を高め知識の普及に努めるということが必要ではないか、かように考えている次第でございます。
#88
○岡田(正)委員 では、最後に希望だけしておきます。
 私は農業関係のことを中心に質問をしたわけでございますけれども、一つの例を最後にとらせていただいたのを聞いていただいてもおわかりのように、現在の日本におきましては、たとえば土地家屋に限って言いますならば、もうほとんど、恐らく八割が核家族の財産じゃないでしょうか。そういう場合に、平均寿命の関係から言いましても、どうしても奥さんの方が平均的に七割は五年遅くまで生き残るというような状態が多いのでありまして、そういうことから考えた場合には、もう大半が私がいま申し上げたようなケースにはまるのではないかと思うのであります。
 それで、私どもの住んでおります近所を見ましても、土地にいたしましても建物にいたしましても、もうひいじいさん、ひいひいじいさんというような人たちの名前のままで登記をされておって全然動いていない、こういう家がずいぶん多いのであります。だから、実際には実態に合っていないというふうに私は思うのでありまして、やはり私は、法律というものは時代に即して改正をしていくべきであるというふうに考えます。この点ひとつ厳しく注文を申し上げておきたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。
 以上をもって質問を終わります。ありがとうございました。
#89
○木村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。
    午後零時三十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時五分開議
#90
○中村(靖)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
#91
○稲葉(誠)委員 せっかく最高裁の事務総長がおいででございますので、家庭裁判所のあり方を中心としてといいますか、私どもは今度の法律の改正を中心として家庭裁判所にさらに一層大きな期待をかけておりますし、国民も非常に期待をしているわけでございますので、家庭裁判所の裁判官の充実あるいは調査官、書記官、それから医務室といいますかそうした問題、調停委員その他の充実、そういうふうな問題について、今後最高裁としてどういうふうに処していかれるかということを最初にお伺いをさせていただきたいと思います。
#92
○矢口最高裁判所長官代理者 家庭裁判所の充実強化の問題につきまして、御理解ある見地からのお尋ねであろうかと存じます。
    〔中村(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
 御承知のように、戦後家庭裁判所の制度が発足いたしまして、世界に例を見ない制度としておいおい充実されてまいったわけでございます。裁判所でございます以上、裁判官が中心であることは当然のことでございますが、地方裁判所等と異なりまして、これを支える二つの柱として、家事事件におきましては学識経験豊かな調停委員の方々、少年事件におきましては少年の保護育成という見地からどのような処遇をすることが最も好ましいかということを専門的に調査いたします家庭裁判所調査官という制度、加えて家事事件におきまし三双方の当事者に十分気持ちのあるところを言わしめるという観点から、これを支えます家庭裁判所家事担当の調査官という制度、この調停委員、調査官という二本の大きな柱というものを支えに持っておるわけでございまして、裁判官、調停委員、家庭裁判所調査官、このどれを欠きましても家庭裁判所の機能というものは十分に作動しないものでございます。
 そういう見地から、家庭裁判所が創設されまして昨年で三十周年を迎えたわけでございますが、これまでのいわゆる充実強化の時期から、さらに熟成の時期に突入するわけでございまして、私ども司法行政を担当する者といたしましても、そのいずれをも十分に充足していきたい、このように考えておるわけでございます。
#93
○稲葉(誠)委員 そこで、家庭裁判所の裁判官は数が非常に少ないということですね。普通裁判所と比べて数が少ない。
 したがって、調停などの場合でもほとんど出席をされない。出席をすることによって逆になる場合もなきにしもあらずかもわかりませんけれども、いずれにしても最終的にまとまってから呼びに行って、そして来て、このとおり決まったと読み上げる程度、これだけの場合が非常に多いですね。ですから、調停事件なり審判事件がふえているということから考えまして、家庭裁判所の裁判官をもっとふやすことを考える必要があるのではなかろうかと思うのですが、こういう点については実際問題としてどういうふうにお考えですか。
#94
○矢口最高裁判所長官代理者 主として家事事件の調停についてのお尋ねであろうかと存じますが、調停の根本は双方の当事者の言い分というものをじっくり聞いてやる、家事紛争が中心でございますが、夫なり妻なりの言い分がどこにあるのかということを聞いてやるということが第一でございます。
 そういう場合に、裁判官が必ずしもヒヤリングの段階で同席していないということは御指摘のとおりでございますが、むしろ調停委員の世なれた方々がゆっくりとひざを交えて時間を気にすることなく聞いていただくということが非常に大事なことではないだろうか。場合によりましては、その段階においては裁判官が必ずしもいない方が当事者がアットホームな気持ちになりまして、かえって打ち明けやすいといったようなこともあるのではなかろうかという感じがいたしております。
 ただいま御指摘の、裁判官が調停がまとまってから入ってくるのが多いのではないかという点でございますが、実はそういうことはないように私は存じております。と申しますのは、事件が参りますと、まず裁判官と調査官で相談をいたしまして、事前によく聞いてやった方がいいかどうか、調査官を使って調べてやった方がいいかどうかというようなことを検討するわけでございまして、物によりましては、調査官の事前の調査ということが十分に行われるわけでございます。
 その調査の結果を待ちまして、今度はどういう方向で調停をやった方がいいかということで、調停委員を交え調査官も入れまして大体の調停の方向というものを協議し、これは裁判で申しますと合議に当たるわけでございますが、その上で調停委員がヒヤリングに臨んでくれる、期日が終わりますれば、きょうはどういう状況であったかということを逐一裁判官に報告させ、調査が必要だということになれば改めて裁判官から調査官に中間の調査を命ずる、こういうふうなことをやっておりますので、調停の場に裁判官が立ち会っておりませんでも、調停の進行及びその結論の導き方ということについては、全責任を持って事に当たっております。
 御指摘のように、もう少し裁判官が出席した方がいいかどうかという問題はございますけれども、まとまるまでは何も関与しなくて、まとまってから形式的に出席する、そういうものでないことを御理解いただきたいと思います。
#95
○稲葉(誠)委員 当事者は、家庭裁判所というから裁判官が出てきてくれて話を十分聞いてくれるものだというふうに考えて来られる人が多いわけですね。
 いま事務総長の言われたのはきわめてレギュラーな一つのケースであって、そうあってほしいという願望はよくわかるのですが、実際にはその日の調停が終わって調停の結果を裁判官のところに調停委員がそろって報告に行く場合もあります。これは特に家裁の所長がやられる場合に多いですね。しかしその他の場合は、ただ書記官と連絡して期日を決めるというだけですね。東京家裁などでも、電話でその係の裁判官に聞いて次の日を決める、こういうのが多いように私は考えておるのです。
 いま言ったように、調停委員もゆっくり聞いてくれればいいのですけれども、なかなかゆっくり聞いてくれないですね。私はせっかちですから、調停委員はやらないように選任の方には入っていませんけれども、特に忙しい弁護士なんかは時間ばかり気にしていて、法廷の合間に調停委員をやっている形です。これは普通の民事調停の場合ですね。家事調停はそんなにないと思いますが、民事は多いですから。それで、ことに調停委員の研修などを十分やっていただくようにお願いしたいと思うのです。調停委員によっては、最初に聞いた方が頭に入ってしまうのですね。頭に入って、後から聞く方をなかなかよく聞いてくれないという方が、ことに素人の方に多いですね。こういう点などにも今後十分念を入れて調停委員の研修などをやっていただきたいというふうに思います。
 それから調査官の問題で、離婚事件でもそうですが、いま言われたように、ことに複雑な遺産分割事件でもそういうものは調査官が主にやるようですね。離婚事件などは離婚として扱わないで夫婦関係の調整という形で扱うのですが、そこでは調査官が両方を別々に呼んで詳しい事情を聞いてとっておるわけですね。ところが、その調査官の聞いたことが調停の中には生かされない、調停には出てこないわけですから。そこで調停委員がまた同じことを聞き直すわけですね。アメリカ帰りの日本人が同じことを二回聞かれたといって怒ったということが、これはジュリストですかこの座談会に出ていますね。
 そういうようなことがあって、せっかく調べた調査官の調べというものはもっとよく活用した方がいいのじゃないか、こういうふうに思うのです。特に調査官は非常に優秀な人が多いですね。率直に言うと裁判官より優秀な人が多い場合がありますよ、話してみても実に進歩的だし。進歩的だからという意味じゃありませんが、よく理解をしている方たちが多いのですから、そういう点をもっと活用し、その待遇その他の面についても十分理解を持って調査官に対して当たってほしいということを私は希望するわけでございます。
 もう一つは少年審判。少年審判というものは昔の少年審判所で元来行政手続でやっておったわけですね。それと家事審判というかそういうものが一緒になって家庭裁判所をつくっておるということ、これはどうも少しく理論的におかしいのではないか。戦後の混乱期で占領当時であったからこれができたのであって、そうでない時期だったら恐らくできなかったであろうということをどなたか言っておられますけれども。少年審判の場合は、率直に言うとほとんどが調査官裁判ですね、言葉は悪いけれども。ほとんど調査官の意見どおりというか、極端な裁判官になると審判廷へ出てきて記録を読んでいる人もいるのです。調査官から注意されて、違います、何ページですなんて言われて、何ページをひっくり返して読んでおる人もいる。これは私の経験からです。きわめて偏見に満ちた経験なんですけれども、そういうことがありました。
 これは誤解を招く言葉で私も注意してしゃべりますが、どうも家庭裁判所の裁判官は、率直に言って、家裁にいるよりも特に地裁の方へ移りたいという希望があるように考えられてならないのですが、そういう点は一体どういうふうにお考えでしょうか。
#96
○勝見最高裁判所長官代理者 現在裁判官になっておられる方々に仮に生の意見をアンケート風に聞いたとしますと、家庭裁判所の裁判官よりも地方裁判所の裁判官の方を希望するという方が、おっしゃるとおりあるいは多いかもしれません。しかし、家庭裁判所であろうと地方裁判所であろうと、私どもに与えられた任務は遂行しなければならないわけでございますので、人事の面におきましても十分考慮しているつもりでございます。
 先ほど事務総長からお話し申し上げましたように家裁が制度発足いたしまして三十年、実は昨年の秋に家裁の所長だけにお集まりいただきまして、三十年たった家裁を今後いかにますます発展させるかにつきまして、いろいろ御意見をいただきました。その中での重要な問題点の一つとして、家裁の裁判官のあり方、それに対する人事面での措置をいかにすべきかということにつきましても真剣に御討議いただきました。私どもは、家裁の本来の目的から考えまして、十分家裁に適した裁判官を配置してきたつもりでございますが、将来ともそのようにいたしたいと考えております。
#97
○稲葉(誠)委員 いま家裁の所長全部に集まってもらったと言いましたけれども、しかし独立の家裁というのは、いまはどのくらいでしたかね。地家裁兼務が多い、半分半分ぐらいですか。あるいは併任じゃない方が多いですか。
#98
○勝見最高裁判所長官代理者 いわゆる独立家裁と称しておりますのは二十六庁ございます。
 それから、昨年度お集まりいただきましたのは兼務の所長にも全員集まっていただいて御討議をいただいたわけでございます。
#99
○稲葉(誠)委員 そうすると、いまの二十六、それは将来どういうふうにするのですか。もっと独立家裁をふやすというのか。それから家裁と地裁が同じ建物にあるのを、大きなところは別な建物にありますね、将来は別な建物にしようというのか、そこら辺はどういうふうにお考えなんですか。
#100
○大西最高裁判所長官代理者 現在、家裁のいわゆる独立庁が二十六庁というのは先ほど人事局長が申し上げたとおりでございます。
 これは、稲葉委員御承知と存じますが最初はもっと少のうございまして、昭和四十年代前半ごろに逐次ふやしてまいりまして、現在の二十六庁になったわけでございますが、ここもふやさなくなってからもう十年近くたっておりまして、現時点におきましては、具体的にどこをふやそうとか減らそうという計画は全然ございません。ただ遠い将来の問題として、事件が飛躍的にふえるとか減るとか、そういう問題が生じましたときに検討するかどうかということはその時点で考えるわけでございますが、現時点としては具体的な考えはございません。
 独立庁の場合に建物が別かどうかというお話でございますが、これはちょっと私直接ではございませんので余り正確ではないかもしれませんが、大体独立庁の場合は、その後新営等の場合には独立した建物を建てるようにしておりますので建物は別でございますが、併設庁の場合に必ず一緒かどうか、つまり別の庁舎で所長が兼任しているところがないかどうかという点になりますと、ちょっと確信がございません。あるいはそういうところもあるかもしれません。そういう意味では、独立庁の場合に庁舎が別か一緒かということとがパラレルになっているという関係は完全に一致しているかどうか、そこはいまちょっとはっきりしたお答えはできかねるわけでございます。
#101
○稲葉(誠)委員 私が聞いているのは、地裁と家裁とが同じ建物にある、所長は違うわけですよ、そういうところの方がいまは多いのでしょうかあるいは全然別の建物の方が多いのでしょうか。いいですよ、別に大したことではありませんから。
 そこで問題は、一緒にいる場合に、いわゆる庁舎の管理権というものは地裁の所長が全部持っているわけでしょう。自動車の使い方まで家裁の方は地裁の方にお伺いを立てなければならないというので、なかなか不自由しているのだという話もあったのですが、これは昔の話で、いまはそういうことはないように思うのです。庁舎の管理権があるからということで家裁の方が不便をこうむるとか、自動車なんかはもうちゃんと地裁と家裁とではっきり分かれているわけですか、両方込みにして使っているのですか、どうやっているのですか実際は。
#102
○大西最高裁判所長官代理者 地裁と家裁とが同じ庁舎に入っております場合におきましても、それぞれ専用部分が違うわけでございまして、その部分に応じて管理権は別々になっておるはずでございます。
 それから自動車の関係でございますが、自動車も一応地裁用、家裁用というのが別にございまして、運転手もそれぞれ地裁の運転手、家裁の運転手ということになっておるわけでございますが、ただ、事務の繁閑等に応じてお互いに応援し合うというふうなことは行われておるものと存じます。
#103
○稲葉(誠)委員 この前の民法の改正によりまして人事訴訟法が変わったといいますか、離婚の訴えが、民事訴訟の場合には従来は被告の所在地でないと訴えを起こせなかったのでしょうが、それが原告の方でも訴えを起こせるようになったわけでしょう、人訴の場合は。
 ところが家裁の調停の場合は、いずれにしても相手方の所在地ということになっているわけですね。その方の場合には改正にならなかったのでしょう。そのことのために非常にその間のあれがパラレルでないということもあって、調停の場合も、相手の所在地だけでなくて自分のいるところでも、ことに細君が逃げ帰っている場合なんかよく――細君ばかりじゃない、このごろは男の方が逃げている場合がありますから一概には言えないけれども、逃げている場合、自分の実家なんかに帰っている。そこでも調停を起こせるように人訴を改正する、改正しなくても実際の運用としてそういうことができるようにできませんか。
#104
○栗原最高裁判所長官代理者 いま議員御指摘の点は、審判の管轄と調停の管轄が事件によって異なる場合があるではないかという御指摘かと思います。
 確かに、たてまえとしてそのように管轄の異なる事件があるわけでございますが、一般的には家庭裁判所の管轄は、その管轄によらなくても事件が処理できるように規則四条にそのような定めがございますので、現実におきましては、いま議員が御指摘のようなケースにつきまして、調停事件の管轄が規定されております相手方の住所地の家庭裁判所でなくても処理しておるような運用が多く行われておるわけでございます。
#105
○稲葉(誠)委員 私が言ったのは、この前離婚のときに三カ月以内に旧氏に復するとか自由になりましたね、そのときに人訴の改正があって、離婚の訴えは被告の所在地でなくて原告の所在地でもいいということにたしかなったように思っているのです。
 それと同じように調停の場合でも、相手方の所在地でなくて申立人の所在地でもやれるようにしたらいいではないか、こういう意見なんですが、いま家庭局長の言われたのは、確かに条文ではそうなんです。実際はそうではないのです。実際は取り扱わない。極端なのになりますと、本庁と支部とありますね。それで相談に行きますね。たとえば子供の認知の問題で相談に行った。相手方、男の方が支部の方に住んでいる。そうすると、相談に行っても本庁では相談を扱わないのです。支部の方へ行って相談をしてくれ、こういう具体的な例が実際問題としてあるわけです。
 ですから、ただ調停で申立人のところへ出されたのでは、相手方が来なければならないということもあるし、それから相手方のところでなければならないとなるとこっちから行かなければならないし、確かになかなかむずかしい点はある、こう思いますけれども、そういう点があなた方のお考えになっているのと実際の運用はずいぶん違いますよ。支部のものは支部でやってくれということで、相談すらも本庁で扱わないのですよ。実際問題として私らは体験しているんですよ。だから、本庁と支部の間は便宜的なものであって、相談ぐらい本庁でやったらいいじゃないかと言ったけれども相談すらもしない、こういう例があるんですよ。
#106
○栗原最高裁判所長官代理者 家事相談につきましては別に管轄等の定めはないわけでございますので、私は委員の御指摘のようなケースがあり得ようはずがないと思うわけでありますが、もしもそのようなことがありとすれば、それは係官の方で何か誤解をしておるのではないかというように考える以外はないわけでございまして、どこの支部、どこの本庁へ――遠方から来てたまたまそこに家庭裁判所があるということで門をくぐって訪ねられた方につきましても、家庭裁判所の立場といたしましては懇切丁寧に手続等について助言をするようにという扱いになっているものと私は考えている次第でございます。
#107
○稲葉(誠)委員 そういうふうにしていただきたいと思うのですが、実際はそうではない場合が往々にしてありますね。
 いずれにいたしましても、今度の民法の改正を中心としてさらに一層家庭裁判所の責任が重くなってくる。ことに寄与分の問題になってくるとなかなかむずかしいですよ。これは調査官がやるのか、調停委員が認定といったってなかなかむずかしい、調査官がある程度の腹案をつくらなければいけないということもあるしなかなかむずかしくなってきて、遺産分割の場合などはかえって非常に長引く可能性があるんじゃないか、こう思いますね。長引くことによってかえってまとまる場合もあるから、一概に長引くから悪いということは言えないんですが、いずれにいたしましても、家庭裁判所の責務の重大性にかんがみて裁判官、調査官、書記官あるいはほかのいろいろな方々の充実ということを今後も心がけて、家庭裁判所が国民から信頼されるような、家庭裁判所へ行けば相談に乗ってくれる、何とかなるという考え方が国民の間に非常に強くなってきました。これは私は非常にいいことだと思うのです。
 民事裁判というのは過去における事実を究明していくのだ、家庭裁判所というのは傷跡をいやすところのものだということを内藤さんが言っておられますが、そのとおりだと思うので、温かい気持ちで接して、そして家庭裁判所というものが今後ますます発展するというとあれですが充実強化をしていくように私から希望しておきます。
 お忙しいでしょうから、最高裁は家庭局長だけお残り願えれば結構でございます。
 そこで、条文についていろいろお聞きをするわけですが、この前聞いた中で私が疑問に思いますのは、帰化をした場合、外国人になりますね。外国人になった場合でも相続権があるというお話でした。しかし、外国人になるということによって認められない権利が相当ありますね。そういう場合にはそういう権利は相続をしないんじゃないでしょうか。たとえば船舶の所有権、鉱業権、飛行機の所有権、あるいは国家賠償法の六条の規定だとか、いろいろありますね。そういうものについては外国人になってしまえば相続の対象にならないんじゃないですか。
#108
○貞家政府委員 個々の財産については、そのような制約を受けて承継することができないという場合があり得ると思います。
#109
○稲葉(誠)委員 あり得ると思いますじゃなくて、現実にあるんですよ。それは教科書に書いてあるから、いっぱい並べてあるからこれ以上聞きませんが。
 そこで、胎児の問題がありますね。子というのは胎児も含みますね。胎児は、日本の法律では、不法行為の場合と相続の場合と遺贈の場合、この三つだけがそのとき生まれたものとみなされるわけですね。これはフランス民法、ドイツ民法の流れです。スイス民法などではそうでなくて、一般的に権利を取得するという考え方に立っておるんじゃないですか。そうすると、その三つだけに限定をしたということによって胎児が不利益をこうむるということはありませんか。
#110
○貞家政府委員 どういう場合がございますか、ちょっと考えつかないように思いますが……。
#111
○稲葉(誠)委員 この三つに限定すると胎児の場合には認知請求権がなくなるじゃないかというのが我妻さんの「民法総則」に書いてあるよ、括弧して。
 それはそれでいいのですが、いま三つでしょう。不法行為の場合と相続の場合と遺贈の場合でしょう。これは限定なのかあるいは例示なのか、どっちですか。解釈としてはむしろ例示的に解釈していいんじゃないですか。
#112
○貞家政府委員 これは民法一条ノ三の規定がございまして、その例外でございますので、類推の場合が全然ないかどうか、これは断言できませんけれども、やはり一般的に例示規定だと解釈するのは相当でないというふうに考えます。
#113
○稲葉(誠)委員 日本の民法の規定の仕方からすればそうですね、三つだけと。
 そうすると、どういうふうになるのですか。父親と母親と胎児がいる。ほかに子供がない場合にしましょう。それで父親が亡くなったという場合には、その時点において相続はだれとだれがすることになるわけですか。
#114
○貞家政府委員 胎児の相続上の地位についてはいろいろ考え方が対立しているわけでございますけれども、一般的に通説だと言われております停止条件説に従いますと、これは出生してその効果がさかのぼって相続開始のときから被相続人の権利義務を承継したことになるという考え方になると思います。
 その前提に立ちますと、胎児の間はいわば停止条件つきでございますので、完全な相続人としての地位は持っていない、法定代理人を選ぶということもできないのではないかという気がするわけでございます。そこで、まあこれは非常に疑問の多いところでございますので、一般的には、胎児の間は遺産分割等は差し控えると申しますか生まれるまで待つ、そういう扱いになっているようでございます。
 しかし、これは一応予定しましても後で死産の場合もございますし、双子の場合もあり得るわけでございます。そういたしますと、仮に遺産分割ができるといたしましても、その効力というものはまた否定されるということになるわけでございまして、そういった法律関係の混乱を避けるためからも、胎児が胎内にいる間は遺産分割の終局的な決定はしないというのが一般の扱いではないかと思うのでございます。この点につきましては私、判例、裁判にあらわれたものがないかどうか調べたのでございますけれども、残念ながら見つからないような状況でございます。
#115
○稲葉(誠)委員 そうすると、母親とそれから亡くなった方の直系尊属が相続するわけでしょう。
 それで胎児が生まれたときに今度はどうするのですか。胎児の法定代理人というのは母親である。母親は自分が相続人だから、利益相反だから、特別代理人を選んで相続回復請求権にするのかどういう形にかして、今度はそれを直さなければならないでしょう。それはどうやってやるのですか。
#116
○貞家政府委員 もしそういうことがありました場合には、これは正統な相続人でなかった者が加わり正統な相続人たるべき者が入ってなかったということになるわけでございまして、それは遺産分割を改めてやり直す以外に方法はないのではないかと考えております。
#117
○稲葉(誠)委員 だけど相続の場合は十四日以内に届けなければならないし、それから三カ月以内に相続放棄、六カ月以内に相続税の申告をしなければならないわけでしょう。結局は、相続を待つとかいったって待たないで一たん配偶者が相続しちゃうのじゃないですか。一たん税金も納めなければならないんじゃないの。胎児が産まれた場合には胎児の特別代理人を立てて遺産分割をやり直しするのですか。これはどうやるの。
#118
○貞家政府委員 学説も非常にいろいろあるのでございますけれども、やはり相続回復請求をいたしまして遺産を取り戻し、それをさらに加えて遺産分割をやるということにせざるを得ないと思います。
 そういう不都合が生じますので、そういったことは避ける、やるべきでない、少なくとも協議ではできないんだという説もあるわけでございますが、一般には実務としてはあわててそういうことをやらない、しばらく待っているということだろうと思います。
#119
○稲葉(誠)委員 それはドイツの場合は胎児の相続財産の管理人みたいな制度をつくってやっているわけですね。そういうやり方も一つあるわけです。
 そこでこの場合、条文にはいわゆる「配偶者」と「子」とありますね。その「子」というのは英語で言うとどういうふうになるのだろう。
#120
○貞家政府委員 英語で子の場合何と言うか私存じませんが、一般的に常識的な意味におきまして親子関係の親と子の子でございます。卑族といいますとその先まで入りますけれども、これは子だけでございます。
#121
○稲葉(誠)委員 子はわかったよ。だから、日本のいまの「子」という中にはいろいろなものが入っているわけでしょう。だからチャイルドではおかしいわけですね。その中には年とった子だって四十幾つの子だってあるわけでしょう、相続の場合。だからその「子」は何というのかと言ったのだけれどもはっきりしない。
 では「配偶者」というのは英語で何と言うの。配偶者と夫婦というのを英語では分けているのですか一緒に使っていますか。それを聞きたいわけですよ。
#122
○貞家政府委員 これも私は英語のことはよく存じませんけれども、配偶者といいますのは連れ合いでございますから、夫婦の一方から他方を指して言う場合の言葉だと思います。夫婦といいます場合には両方並べて一括して夫婦という場合が一般的であろうと思うのでございます。
 ちなみに申し上げますと、偶という字は二人が並ぶ意味だというふうに漢和辞典には書いてあるわけでございます。要するに、一方から他方を指して言うときには配偶者ということでございまして、これは法律には一般に使われておりますし、最近私がちょっと調べましたところでは、法律以外の小説などにも配偶者という言葉を使っている例があるようでございます。
#123
○稲葉(誠)委員 配偶者というのは条文にあるんだからそのとおりでいいのです。
 そこで、だんだん本筋に入っていくのですが、いま言った中で、たとえば子の問題で養子の問題がありますね。そうすると、イギリスなどではアダプションオーダーといっていろいろな裁判所なり何なりが養子を決めて、それでその実家との縁を切りますね、いわゆる断絶養子というのですか。そうすると、この実家の方の相続権というものはなくなるわけでしょう。イギリスはそうですね。アメリカは場所によって違うかもわからぬけれども、アメリカでもたとえばコロンビア区なんかはそういう行き方をとっておりますね。
 日本の場合も、養子相続の問題について、養家と実家と両方で相続できるというのはおかしいではないか、おかしいというと語弊があるけれども、ということで当然それは法制審の中で論議をされているはずだ、こう思うのですが、それはまずどういう論議があったわけですか。
#124
○貞家政府委員 養子の問題は非常にむずかしい問題でございまして、法制審議会も相当古く熱心に討議をされたわけでございます。
 御指摘のとおり、養子制度というものは、養子の目的をどう見るか、何に力点を置くかということによっていろいろ違ってくるわけでございます。日本は西欧諸国に比べますと養子の制度がかなり古くからわりと多く行われていたようでございますけれども、それは、どちらかといいますと家を継がせるとか老後のめんどうを見てもらうとか、そういった考え方が非常に強かったわけでございます。
 これに反しまして西欧では、養子というものは余り血縁のない者と親子関係を結ぶわけでございますから、それは必ずしもそんなに昔からあったわけではないようでございます。ただ孤児でございますとか悲惨な境遇にある幼い子供、これの福祉のためにというようなことに非常に重点を置かれて、そういう断絶養子あるいは完全養子とも言っておるようでございますけれども、そういう養子の制度をつくって実方の方とは断絶をする、もっぱら養親の方の血族に取り込まれる、こういうようなことが行われるようになったようでございます。しかも、そうなりますと、単なる親と子の身分契約的なものではなくて、国家の介入と申しますかそういった国家の制度として養子というものをつくっていく、こういうような傾向が最近は非常に強いようでございます。したがってわが国におきましても、そういった意味での養子制度をもう少し考えてはどうかというような意見がございました。
 そこで養子制度につきましては昭和三十四、五年ごろの法制審議会のいわゆる「仮決定及び留保事項」というのがございますけれども、これは法制審議会民法部会身分法小委員会における「仮決定及び留保事項」でございますが、その中にもいろいろ案が示されているわけでございまして、そういった実親の方との断絶をして養親の方との関係だけにする、そういう特別養子というような制度を考える、その可否については十分検討されたわけでございますが、これは結論を得るに至っておりません。留保事項の中に入っております。
 わが国におきまして、養子制度の目的はいろいろあるわけでございまして、家業を継がせる、あるいは自分の事業経営の後継者をつくる、あるいは老後のめんどうを見てもらうという意味であれば、これは必ずしも養子という制度でなければならないかどうかということは議論の余地はございますけれども、そういう目的のために養子制度が昔から存在するという現実も、これは必ずしも非難すべきことではない、またその現実を無視することはできないという点もあろうかと思います。
 特別養子というようなことにつきましては、なお相当これは慎重に考慮しなければならない点があると思うのでございますが、現在までのところでは、一応特別養子というようなものについて、これは一つの案であるということで議論の対象となり、これの可否についてはさらに検討するというところでございまして、これは相続問題とは非常に深い関係を持っておりますけれども、この問題はなお養子制度を全般的に見直す機会に考えるべきであろうということで、今回の改正ではそこまで手を伸ばさなかった、こういう経過でございます。
#125
○稲葉(誠)委員 養子というものが、断絶したといったって実家と全然縁が切れてしまったという意味ではなくて、相続権に限って縁が切れるという意味ですよ。それは行ったり来たりするのは自由ですし、血がつながっているのですからあれですけれどもね。
 そこで、私はよくわかりませんが、事実上の養子というのが何かあるのですか。これは何か書いたものをもらった。事実上の養子について寄与分を認めるようにしようとかなんとかということが書いてあるんだけれども、事実上の養子というのは一体何ですか。
#126
○貞家政府委員 事実上の養子と言われておりますのは、恐らく婚姻の内縁関係と同じような乙とで、実質的には養親子と同じような生活をしておりまして、ただ養子縁組をしていない、届け出をしていない、そういう状態の関係を指すのだろうと思うのでございます。
#127
○稲葉(誠)委員 そういうのは現実にありますか。ないわけないでしょうけれども、そんなにたくさんはないように思いますね。(「何ぼでもある」と呼ぶ者あり)ありますか、そうですがね。
#128
○貞家政府委員 事実上そういう状態が、しばらくたってから初めて縁組の届け出をするというような形で、あるように聞いております。
#129
○稲葉(誠)委員 それは結局、その人の性格とかいろいろなあれを見て、そして正式に縁組をするというのですね。そういうのはあるでしょうね。
 そうすると、そこでお聞きをしたいのは、それじゃ配偶者といいますか夫婦の問題で、日本の場合は法律婚主義をとっていますね。戸籍に対する届け出、これをどうして三文判で結婚の届け出や離婚の届け出を認めているのですか。どうして印鑑証明をつけてやるようにしないのですか。これだけ重要な問題をどうして印鑑証明をつけないのですか。だから人の結婚届を出そうと思えば出せるし、いま何かやっていますね、名前は言わぬけれども、あるし、それから離婚届だって、悪いのは人の離婚届だってどんどん出せますよ。どうしてこれは印鑑証明をつけないのですか。
#130
○貞家政府委員 届け出ということは、婚姻にしましても出生にしましても死亡にいたしましても、これは国民のすべてが経験することでございまして、とにかく早期に容易に届け出をさせるということが一つの大きな要請になっているわけでございます。
 もちろん、その真実性と申しますか人としての同一性を担保するという意味から申しますと、厳重な手続で審査をした方がいいということはございますけれども、しかし、厳格にいたしますことによって簡単にやってもらいたいところの届け出がなかなか励行されないということがどうしてもあるわけでございまして、届け出を早期に励行していただくというためには、きわめて希有な不都合が生ずることはございましょうけれども、それは別の道で是正をするということにいたしまして、容易にだれでもどこでも届け出ができるという要請ということを第一義的に考えて、そのような制度になっているわけでございます。
#131
○稲葉(誠)委員 それはアメリカとかイギリスとかというふうにサインが重視されるところ、重視というかサイン以外にないですね、そういうところはそれでいいかもわからぬけれども、日本の場合はだれが書いてもいいわけでしょう。あれは自分で書かなくたっていいんでしょう。それから証人なんかだれでもいいしね。人生の一番の重大事なので、それは簡単に行われた方がいいでしょうけれども、そこら辺のところは実際問題としていろいろ悪用しようと思うと、これはずいぶん悪用できるのじゃないですか。特にいなくなった人なんかの場合に、裁判をやるのはめんどうくさい、だからというので三文判でちょっとやってしまうという場合も出てくるんじゃないでしょうかね。それは一つの議論だとも思いますが……。
 そこで、いま学者と実務家との間で一番意見が違ったというのは、いわゆる寄与分を認めるか認めないかの問題で、相続人でない人に対しても寄与分を認めようというのが大体学者の意見ですね。それから実務家は、それはもう非常にめんどうくさいというかややこしくなるし、それから範囲が拡大して収拾がつかないからということで、これは法制審議会でその意見について家庭裁判所側が大分反対したようですね。そういう結果として相続人以外に寄与分は認めないということになったんじゃないですか。
 それは栗原さんがジュリストの昨年九月一日号の「相続に関する民法改正要綱試案」の座談会の中で、最初のところで
 相続人以外の第三者にも寄与分を認めるべきかどうかなど、学者の委員さんがたと私ども実務家との間でかなり意見が対立し、突込んだ議論の重ねられたものもありました。
こう答えておられて、これだけじゃどっちがどっちだかわからないわけです。それで後の方で言うと、栗原さんの言われておるこの座談会の中の二十八ページのところで
 確かに相続人以外の第三者に対しても寄与を認めてやる必要性のあるケースはありますけれども、事例としてそう多いわけでもない。だとすると、そのようないわば例外的なケースを救うために多くの遺産分割の手続が非常に遅延し、また裁判所の負担が非常に重くなるということはどうだろうか。できればこの際は外していただきたいというのが裁判所側から出た私どもの意見だったのです。この問題はもっと細かく実体法、手続法の両面にわたり、また立法技術の点についてもいろいろ検討した結果、最終的にはそれでは今回は外すという結論になったというのが経緯です。途中においてはむしろ学者の委員さんがたは取り入れるべきではないかというご主張が非常に強かったということです。
こういうことを言っておられますね。だから学者側はこれは相続人以外に寄与分を認めた方がいいということ、それから実務家というと語弊がありますが、そういう方々は、いろいろな実務上の意見から、これは今回はやめてほしいという意見があったというわけですね。
 そうすると、学者側の寄与分を相続人以外にも認めてくれ、認めた方がいいという意見は、どういうところが根拠でそういう意見が出てきておるわけですか。
#132
○貞家政府委員 実は、学者対実務家というような対立の形になったということは、これは事実ではございませんので、それは学者の中には両論ございまして、実務家でもそれは無論両論あるわけでございます。
 学者の中でも両論があるわけでございまして、学者の方々、これは比較的初期の段階といいますか――最終段階におきましては学者の方々もいま提案いたしておりますこの考え方に御同意願ったわけでありますが、その前の段階におきます相続人以外の者を加えた方がベターではないかという意見は、よく言われております実情論として、内縁の妻なりあるいは直系卑属の配偶者いわば農家の嫁というようなことが一般的に言われておりますが、そういった例で示されているような場合、こういう場合に、それを救済する方法として相続人以外の者を加え、少し幅を広くした方がよくはないか、こういう意見があったわけでございます。
#133
○稲葉(誠)委員 これは座談会ですから、論文ではありませんし詳しく聞いているわけじゃありませんから、家庭局長の言っていることが――これは家庭局長になられる前のあれですね。ですから、それはそれでいいのですが、そうすると、相続人以外の方で寄与分を認めろと学者あるいは実務家の一部から出た意見が今度は見送られた。見奉れたはいいけれども、それに対して今後立法的にあるいはいろいろな面で、事実上の問題としてどういうふうに対処をしていかれるという考え方なんですか。
#134
○貞家政府委員 これはきわめて抽象的に申し上げれば、そういう相続人になることが予想されないでしかも貢献をする、特別の寄与をするというような人々と被相続人との間に契約関係その他財産上の請求権というものがあれば、これは問題がないわけでございます。
 そうでない場合には、これは午前中から議論がございましたように、そういった人々に報いるという考えがありました場合には遺言の制度なりあるいは生前の贈与なり、そういった方法が、やはり生ずることあるべき不都合を避けるための方法ではないか、かように考えるわけでございます。
#135
○稲葉(誠)委員 遺言なり生前贈与ということは、それは確かにそうですけれどもね。遺言をどんどん日本でも進めようという運動がいま起きていますね。それは市川房枝さんたちが何か盛んにやっておられるようですね。それはそれで一つの考え方。生前贈与、しかしそれは税金がかかる、こういうことになりますね。いろいろな問題が出てくる。遺言の問題は公正証書の問題に関連して後でお聞きをしたい、こういうふうに思うのです。
 いま、日本の場合は法律婚をとっておる。しかし、事実上は法律婚でなくて生計をともにしている場合が相当ある。その場合に、たとえば相続の中でも、生計を一にしているというようなことで相続分がもらえる場合がありますね、特別縁故者の場合。相続人がない場合で国に財産が帰属する場合のもう一つ前の段階では、特別縁故者として、妻でない人、生計を一にするというのかな、そういう人に与えられていますね。九百五十八条の三、この前人見さんが言っていたけれども、前から問題になっていますね。これはやはり一種の相続分でしょう。これは相続財産じゃないのですか、違うのですか。
#136
○貞家政府委員 九百五十八条の三の特別縁故者への相続財産の分与、これはまさにいわば恩恵的な分与であるというふうに解されておりまして、相続であるというふうには解釈されていないと思います。
#137
○稲葉(誠)委員 そうすると、分与というのは恩恵的なものだという考え方ですか。そうすると、財産分与というのが使われているのは、普通の場合は夫名義の財産が離婚の場合妻に対して恩恵的に与えられるという考え方ですか。
 だから分与という言葉はおかしいんじゃないですか。この特別縁故者の場合は別として、そうでない場合に分与という言葉はおかしいんじゃないですか。分かち与えるというのでしょう。分かち与えるというのは、片方のものを恩恵的に片方に分かち与えるということになるんじゃないですか。分与という言葉は、これはおかしいんじゃないですか。
#138
○貞家政府委員 確かに、九百五十八条の三の分与とはかなり性質が違うと言わざるを得ないと思います。これは決して恩恵というような意味ではございません。
#139
○稲葉(誠)委員 いや、かなりじゃないですよ、全然違うのですよ、これはあなた。
 じゃ、夫婦の間で財産分与というのは何なのか。それは権利なんですか。一方の配偶者から一方に対しての権利なんでしょう。慰謝料の場合はこれは不法行為という形で出てくるんだけれども、財産分与というのはそうじゃないでしょう。これは事実上の財産の分割でしょう。そういうふうに理解すべきじゃないのですか。
 だから、財産分割という言葉を使った方がいいんだという議論がいま出てきていますよ。婦人弁護士の間ではそういう議論が非常に強い。分与というのはおかしいというのです、片方から分かち与えるんだから。分かち与えるんじゃないのだから、夫婦で両方が財産を形成したのを、それを離婚のときに分割するだけなんだから、自分のものを自分がもらうのだから、この場合税金がかからないでしょう。分かち与えるんだったら贈与税がかかるわけだ。
 だから分与という言葉はおかしいですよ。といって分割というのも、共有物の分割みたいでぼくもちょっとあれだと思うけれども。だから、そこら辺のところは、分与という考え方がおかしいと私は思いますね。
 そこで、いまの財産分与というのが権利としてもらうということになっているわけでしょう、離婚の場合は。だから、籍が入っていない妻に対しても、世間では妻と言っていますね、そういう人に対しても事実上相続分が与えられる場合が、いろいろな場合に徐々にふえてきているんじゃないですか。たとえば第三者の行為によって、妻のことで言えば夫が交通事故で死亡したという場合に、その慰謝料請求権というもの、夫が亡くなるときに持っていたそういう請求権なりあるいは逸失利益なり、こういうふうなものは事実上の妻に対しても相続分として与えられるのではないですか。あれはどういうふうに理解したらいいのですか。それは違うんですか。それは、その他労働災害でも全部あるでしょう。
#140
○貞家政府委員 内縁関係をどの程度保護すべきかという問題は非常にむずかしい問題だと思います。
 それで社会立法は、相当昔、工場法以来あるわけでございます。そういった面でございますとか、あるいは夫婦間の関係での権利義務というようなものは、大部分が類推ないしは準用ということでこれは認めて差し支えないのではないかと思われるわけでございます。現に、かなり広く財産分与につきましても内縁関係を婚姻関係と同じように取り扱っている審判例もあるわけでございますが、ただ相続の場合には、これは多数相続人間の問題で、夫婦だけの間の問題とはやや異なるのではないかと思うわけでございまして、ここは、事実婚というものを保護するにいたしましても、相続関係で届け出をした配偶者と同じに取り扱うということまでは行きかねるのではないかと思うのでございます。
#141
○稲葉(誠)委員 いや、行きかねるのは、いま言った工場法とかそれは昔の法律ですよ、明治何年かの。それはわかりますが、たとえば労働基準法とかいろいろ条文の規定がありますけれども、そういう場合に、内縁の夫が亡くなった場合に、内縁の妻にその人のたとえば逸失利益だとかが与えられる場合があるでしょう、三分の一なら三分の一。あるいは残念連呼説ややないけれども慰謝料請求権が発生し、その慰謝料請求権を相続する、これはやはり相続ではないのですか。内縁の場合は違うのですか、別のあれでいっているわけですか。不法行為の場合は民法の規定でいくわけでしょう、労働基準法や工場法や何かの場合は別としても。民法の規定というか、それを類推していっている場合はやはり相続として考えていいのじゃないですか。
#142
○貞家政府委員 いろいろな分野におきまして、これはいわば内縁の妻、婚姻の届け出をしていないけれども婚姻と事実上同一の状態にある者を含んで、そういった者にいわば固有の権利として相続類似、相続と同じような形で権利の取得を認めているという例がございますけれども、これはやはり相続とは別個の法律関係だというふうに一般に理解されているようでございます。
#143
○稲葉(誠)委員 それは固有の権利の場合はもちろんありますけれども、事実上生計を一にしているのだから、その人自身が慰謝料というものを、精神的な肉体的な慰謝をしなければならぬという場合もあるし、あるいは逸失利益というものも本人のあれだという場合もあるけれども、亡くなった人に発生した権利、直接たとえば慰謝料請求権なんかあるでしょう。亡くなった人が、すぐ亡くなるのじゃなくてしばらく生きていたという場合には、その人が慰謝料請求権というものを持つわけでしょう。それが後から亡くなった場合には今度は相続になるのじゃないですか。固有の権利とは別に、亡くなった方の持っていた権利というか、そういうものが相続によってあれされる場合もあるのじゃないですか。
#144
○貞家政府委員 具体的な例をちょっと思いつきませんが、相続として内縁の妻が直接承継をするという立法例はないのではないかと私は思います。
#145
○稲葉(誠)委員 いまは立法例を聞いているのではないのです。具体的に判例その他で実際に行われておるのはやはり相続としてやられているのではないか、こう言っているわけですよ。だから、七百十一条かな固有の権利もあるけれども、そうでないものもあって相続する場合もあるのじゃないですか、ありませんか。亡くなった人に直接発生した、たとえば慰謝料請求権というものがありますね。けがをした、けがをしてから亡くなるまでたとえば三日、四日かかった、その場合に慰謝料請求権が発生しているわけですね。それはその人が亡くなったときには内縁の妻も相続するというのじゃないのですか。固有の権利とは別にそういうものも考えられるのじゃないですか。
#146
○貞家政府委員 現在の相続法制のもとにおきましては、それは認められない、また認めていないと思います。
#147
○稲葉(誠)委員 実際はそれにちゃんと分けているのじゃないですか、それは見解が違いますね。
 そうすると、内縁の妻という言葉が悪いので変な印象を与えていけないのですが、いわゆる準婚的関係というふうに学者はこのごろ呼んでいますね。準婚的な関係というか、そういうものも事実上保護するということを今後立法の上で十分考えて、立法というかむしろ判例法上あるいは社会政策立法というか、そういう方向で今後考えるべき必要があるのではないか、それがまだまだ足りないのではないか、こういうふうに私は考えるのです。この辺は、実際に届け出をしないのが悪いのだと言えばそれは悪いかもわからぬから、そこまで余り保護し過ぎてしまっても問題になるかとも思いますがね。
 実際の遺産分割で問題になりますのは、いわゆる遺産分割をやって遺産分割が無効だという形が相当出てくるわけです。遺産分割無効確認。未成年者が何人もいて、それを母親なら母親一人が代理して遺産分割をやってしまうでしょう。そうすると利益相反だということで、あれは最高裁の判例が出たでしょう、形式説が出たから。それによってどんどん無効になっちゃうわけでしょう。だからそれを十分気をつけないと、遺産分割というのは無効になる可能性が非常に強いですね。そうすると遺産分割の場合に、未成年じゃなくても一人一人の利害が対立するというので、代理人だって一人について一人しかつけないということになってくるでしょう。そうすると、いつまでたっても全部が出てこないからということで遺産分割はなかなかできないのじゃないですか。その点について実際はどう扱っているのかということが一つ。
 それから、東京の扱いの例と大阪の扱いの例と、利益相反に対する考え方が東京は非常にきつく考えているけれども大阪はわりあい実質的に緩やかに考えているというか、そういう違いがあるんじゃないですか。
#148
○栗原最高裁判所長官代理者 いま議員御指摘の点は、利益相反する場合は特別代理人を選任いたしまして一人一人について代理人を立てませんと遺産分割の協議ができないわけでございます。
 しかしながら、調停の場面では必ずしも特別代理人全員が調停の場面に出席しなければ調停が進まないわけではございませんので、自主的に調停を進めまして、最後に調停成立つまり調書を作成するその段階で特別代理人全員に御出席いただいて、そこでその内容について合意が成立すれば調停を成立させる、こういう扱いにいたしておりますので、確かに一人一人について頭数がふえるということは、仮に未成年者の場合でなくても人数がふえればふえるほど合意の成立を得るということがむずかしい面のあることは事実ではございますけれども、一人一人について特別代理人を選任したことによって事実上調停の進行が著しく遅滞することはないというように考えます。
 それから、大阪と東京で実務において取り扱いを異にしているのではないかという御指摘でございますが、確かに最高裁の判例が出る前に、つまり父母がおりますような場合の例ではなかろうかと思いますが、父母の一方とその特別代理人とが共同してやるのか、それとも特別代理人が単独で代理権を行使できるかという点について前に争いのあったことがございますが、これは最高裁の判例で確定いたしましたので、その点につきまして現在実務の上において取り扱いを区々にするというようなことはなかろうと思います。
 また、議員が御指摘の未成年者について特別代理人の選任を要するかどうかにつきましては、実務上いままでそう争いがあるわけではございませんで、むしろ当然必要だという扱いをしておるものと私は承知いたしておるわけでございます。したがいまして、東京と大阪で取り扱いを異にするというのは、あるいは手続の途中の段階において、たとえば必ず特別代理人に出頭を求めるという扱いをする裁判官と、必ずしもそうでない扱いをする裁判官と、そういうあたりには多少の取り扱いの差異があるかもわかりませんが、それは東京と大阪との違いというよりかは個々の事件を取り扱う裁判官の調停を進める扱い方の相違ではあるまいかというように私は承知いたしておる次第でございます。
#149
○稲葉(誠)委員 それはわかるのですが、一番最後には全部出てこなければならないわけですね。ところが最後になかなか全部出てこられないわけですよ、遠くにいたりなんかしまして。そうすると、特別代理人の選任という手続がなかなかめんどうくさいものですから全部出てこられない、結局まとまらない、まとまる段階になって何回か延びてしまっておくれる、こういうふうな実際の例があるということをお話ししているわけです。いままで、いわゆる普通の場合の遺産分割で未成年者を一人の母親が三人分を代理してしまって、そしてその遺産分割、それに基づいて登記してしまったんですね。どうして登記を受け付けたのかわからないのですが、登記を受け付けて、そして後から遺産分割無効確認の訴えが出て、それが無効になってしまったという例もあるので、それは登記の関係でどうして受け付けたのかよくわかりませんが、そういうふうな例もあるんですね。
 そこで問題になってまいりますのは、公正証書の作成で非常にいろいろ問題が出てくる場合があるんですね、作成そのものについてはもちろんあれかと思いますが、内容や何かについて。ということは、このジュリストの九月一日号の座談会でも鍛冶千鶴子さんが言っておられるのですが、
  鍛冶 しかも、意外に思われるかもしれませ
 んが、公正証書遺言をめぐってのトラブルが少
 なくないのです。
  加藤 遺言の効力についてですか。
  鍛冶 それもありますが、内容的にみて非常
 に無理な遺言がなされているということ、それ
 に、証人の問題もありますね。こうあるわけです。
 そこで私思いますのは、公証人というもののあり方、選任ですね。これは具体的にどういうふうにされているかということが一つ。私の意見を言わしてもらえれば、これは権限が法務大臣にあるわけですね。これは司法研修所の問題を最高裁がとって、そして公証人の方は法務省がとった。とったという言葉は悪いですけれども、そうなったわけですね。その結果として、検事正なり何なりで肩をたたかれて早くやめた――六十歳を越えるとなかなか公証人にしないわけだ。そこで長い間検事をやっていた人がなるものですから、民事関係はよくわからないと言うと悪いけれども詳しくない。そのために変な公正証書ができ上がるわけですね。たとえばこれは利益相反があるわけだ。これは弁護士も悪いですが、贈与なんかするときでもやる方ともらう方との場合に、もらう方に自分の事務所の事務員をやって公正証書をつくったり何かしている場合も出てくる。公正証書の遺言の無効が出てくる場合が相当ある。
 これは民事に詳しい民事出身の裁判官をもっと多く公証人に採用すべきであって、検事正やあるいは支部長検事かそういう人の肩たたきの場に公証人が利用されて、公証人のここがあいだがら今度やめなさいよという形でいま利用をされておるということはいかぬと私は思うのですよ。裁判官とそれから検察庁あるいは法務局その他のあれをしますと、圧倒的に検事出身が多いのですよ。検事出身が百八十九人に対して裁判所が百十五人でしょう。これは逆でなければいかぬのですよ。法務省が公証人の任命権というものを握っているから、こういう形になっているのですよ。だから実際に公証人というものはよくわからなくて、ただ名前だけ書いて判こ押しているという形になるわけですね、それはちょっと極言だけれども。
 公証人連合会の役員のメンバーなんというものは、これは全部と言っていいくらい検事じゃないですか。ここに連合会の役員名簿をもらったけれども、これは全部検事じゃないかな。この中で検事は何人いて判事が何人いるか、役員名簿を調べてごらんなさい。ぼくの知っているのは中にいっぱいいるけれども。そういう点はやり方が非常におかしいのですよ。だから公証人制度が変なふうに利用されている。そこら辺のところは法務省としてはどういうふうに考えるのか。実際どういうふうにして公証人は任命されているのですか。
#150
○貞家政府委員 数字はいまお述べになったとおりでございまして、判事の出身は百十一人でございます。検事が百七十四人、それ以外に副検事でございますとか裁判所書記官というような者も入っておりますが、やはり検察官の方が多くなっております。
 これは、従来の役場の所在地とそれから公証人の任命を希望される方とのいろいろな都合によってこうなったのだと思うのでございまして、私どもが任命事務を行うに当たりましては、裁判所の方からの裁判官の方で公証人を希望する方を常時最高裁当局から伺ってやっておりますし、決してへんぱな、なるべく検事で埋めるというような考え方は毛頭持っていないつもりでぐざいます。
 なお、検事出身であるから民事の知識は不十分で公正証書の作成上不都合があるというようなことはあり得ないと思うのでございまして、これは十分いろいろな法務大臣の監督に服するわけでございまして、公証人からいろいろ問題があれば指示を求めていただくあるいは法務局長を通じて本省に照会をしていただくというような形をとっておりまして、具体的な事案につきましてもそれぞれ事務当局としてのお手伝いもしておるわけでございますし、また公証人会あるいは日本公証人連合会というようなものもありまして、公証事務の改善、統一、公証人の品位保持というようなことを目的にいたしておりまして、ことに日本公証人連合会におきましては、いろいろ法規委員会でございますとか書式の委員会でございますとか、そういった委員会の活動が非常に活発でございまして、いろいろ資料等も発行されているようでございます。そういったものを通じまして十分これは勉強されているわけでございまして、出身がどうであるから公正証書の作成上不都合が生じているというようなことは私はあるまいと考えております。
#151
○稲葉(誠)委員 あなたは民事畑出身の裁判官ですからね。あなたとしては非常に答えにくいだろうけれども、これは実際に公証人で裁判官ことに民事専門の裁判官出身の人がぼくの友達にもいますよ。それに会って聞いてみると困り切っておる。困り切っておるというと語弊があるけれども、ぼくの友達で検事正をやめて公証人になったのも一ぱいいるからね、ちょっと調子が悪いけれども。これは検事正の肩たたきに利用されておる。それでこれはいわゆる天下りよ。収入がうんとふえるから天上がりかもわからぬけれども、これはそうだ。
 もう一つは、判事の場合は簡易裁判所の判事になる道があるからね、七十歳まで。それとのあれがあるから裁判官の方もある程度少ないということは言えますよ。それは言えるかもわからないけれども、民事の親族、相続、土地の問題とか、いろいろの問題、細かいことを六十過ぎてまた勉強しろと言ったって無理ですよ。ぼくがこんなことを言うのはおかしいのだけれども、恨まれるかもわからぬけれども、裁判官出身で希望者があれば民事出身の人をもっと多くしなければ、公証人というものは、何か間違いというと語弊があるけれども、内容の違ったものや何かを起こしてあれしますよ。連合会の役員の中で裁判官出身というのは、ぼくも役員名簿をもらったけれども、この中で常務理事の下門さん、それから浮田さんがそうだ。そのくらいのものじゃないかな。あとだれがいるかな。影山氏も判事か。この中でこれだけいて三、四人じゃないか。ほとんど検事じゃないの。あなたとしては答えにくいかもわからぬけれども、検事だから民事がわからないということを言うのもおかしいけれども、わかる人もいますけれども、なかなか無理よ。これは直さなければいかぬですよ。検事正の肩たたきと支部長検事の肩たたきにみんな利用されておるのだよ。公証人の口があいだがら、いいところがあるからそこへ行ってあれしなさいと言ってやめさせては人事交流させておるわけだ。これはこれ以上言いませんけれども。
 そこで、もう一つの問題は、そういうようなことで非常に無理な遺言があるというのですね。ただ、遺留分の侵害の場合は果たしてこれを無理な遺言と言えるかどうかということはちょっと問題があると思いますよ、それに対する減殺請求権があるのですからね。ところが、無理ではないかもわからぬけれども、一切の財産をたとえば甲なら甲に死亡の際贈与するとかいう公正証書もあるわけです。これは決して違法ではないですね。違法ではないと思うけれども、遺留分の減殺請求権というものが近ごろ非常にふえているでしょう。家庭裁判所の調停の中で、遺留分減殺の請求が近ごろ目に見えてふえているんじゃないですか。これはどうですか最高裁、私どもはそういうふうに聞いておりますけれども。
#152
○栗原最高裁判所長官代理者 いま御指摘の遺留分減殺の請求は、それ自体を調停手続として申し立てます場合には一般調停事件として取り扱っているわけでございます。そのほかに、遺産分割の手続の進行中に遺言書が発見された。ところが、その遺言書によれば遺留分を侵害しているということで、遺産分割の手続の中において遺留分減殺の請求をする場合もあるわけでございます。
 しかし、いずれもそれを独立の事件として家庭裁判所の方で立件いたしておりませんので、つまり一般調停事件の中に含まれてしまいますので、果たして遺留分減殺の請求がいま議員御指摘のようにふえているものかどうかという点は定かではございません。ただ、私の実務経験から申し上げますれば、著しくふえているという印象はございませんけれども、遺産分割事件の中でときたま遺言書が出てきたというようなことで減殺の申し立てをするケースにぶつかったことがございます。
 以上でございます。
#153
○稲葉(誠)委員 私の経験というかあれでは、遺留分減殺の本訴もずいぶん起きていますよ。価額の鑑定なんかしなければなりませんし、非常にむずかしいですね。それで一年間でしょう、死亡したときから一年でしたか、これが非常に短いですね。これは早く確定したい、安定したいということから一年になっているんだと思うのですけれども非常に短いですね。それから、これは別ですけれども、不法行為の三年の時効もこれまた短いですよ、ちょっと知らない間にすぐ過ぎちゃうということでね。遺留分の問題なんか減殺の問題を知らない人が大分ありますからね。だからこのままになっちゃう場合もありますけれども、近ごろ非常にふえているということは私は事実だというふうに思うのですね。
 それからもう一つ、非常に困っている問題で、どうにも手の打ちようのない問題なのかどうかという問題があるのですが、それは、財産が夫婦の場合に主として夫の名義になっていますね。そうすると、夫が生前にその財産を自由に処分しちゃうということについて、妻は法律的に一体どういう手を打てるのかということなんですよ。夫と妻と逆な場合でもいいですけれども、まあ大体いま言ったような例でしょうね。夫名義の財産を、夫が自分のものだと言ってどんどん処分しちゃう、それに対して妻は一体どうしたらいいのか、どうやって防いだらいいのか。離婚のときには何もなくなっちゃうでしょう。どういうふうにしたらいいわけですかね。
#154
○貞家政府委員 これが名義のいかんにかかわらず実質的に共有であるという立証ができるものであれば、これは一般の共有物の処分をほしいままにしたということになると思いますが、そうでない場合、これは離婚が前提でございますと、離婚の訴えを提起して仮処分というのが人訴の規定から、これは疑問がございますけれども認められているようでございます。財産分与の裁判が付随的な裁判としてできるわけでございまして、その離婚の訴えを本案とする仮処分というようなことも考えられるかと思います。ただ、離婚も考えていない、ただ減るのが困るというのは、これはどうもちょっとむずかしいのではないかという気がするわけでございます。
#155
○稲葉(誠)委員 いや、むずかしいのではないかという気がするのですが、それはわかったのですが、そうすると、それはどうするのですか、ほったらかしておくのですか。そのままでいいのですか。これはもう法制審議会でずいぶん議論があったところじゃないですか。外国の立法例なんかもいろいろ問題がありますし、このままではいかぬのじゃないですか。現実にはどういうふうにしたらいいですか。
 それは、いま言ったように離婚の訴えを起こすわけにいきませんよ。離婚の訴えを起こして本訴で仮処分ということがありますけれども、それをやったらおしまいですからね。離婚ということはもう下げられなくなっちゃうから、そこまで行きたくないという場合が多いですね。その場合一体どうしたらいいのですか。立法例によっては、共有とみなせば妻の承諾を必要とするとか、共有ならば妻の承諾がなくたって片一方のやったものは無効になるけれども――共有だとはっきりすれば無効になりますかな。だけれども、そうなってくると、取引の安全ということも考えなければならないから、そう簡単にはいかぬということになるでしょう。だから、一方の承諾を必要とするとかあるいは同意なしにやった場合には取り消し権を与えるとか、準禁治産者の場合ならまた別かもわかりませんが、準禁治産者だって保佐人には取り消し権はないわけでしょう、本人しかないわけですからね。いまの日本の準禁治産制度というのは、ドイツと違って、やったところで全然意味がないですよね。そういうことでしょう。どういうふうにしたらいいのですか。これはみんな困っているのですよ。そこら辺のところは当然法制審議会でずいぶん論議があったはずなんですが、どうしたらいいのですか教えてくださいよ。
#156
○貞家政府委員 実は、この問題は結局は夫婦財産制というものを整備するということ、これ以外にはないと思います。
 ただ、夫婦財産制というのは、午前中からいろいろ御説明申し上げておりますとおり非常にむずかしい作業になるわけでございます。たとえばフランス民法あたりを見ますと、夫婦財産制のところだけで条文が約二百ございます。ドイツ民法も大体同じ程度ございます。しかも、その大部分がいわゆる夫婦財産共通制をめぐる条文が大部分を占めておるわけでございまして、これはしさいに点検はいたしておりませんけれども、かなり周到に、そういった場合の代理権がどうか、処分権がどうか、第三者に対する関係がどうか、強制執行に対して責任財産がどうなるかというひとを規定いたしませんと、夫婦財産共有制というものは実現しないわけでございます。
 そういった第三者との関係で実に複雑困難な問題があるということから見送ったわけでございまして、一つには、夫婦財産契約というものの登記が明治三十一年から今日に至るまで四百件に満たない、昭和五十二、三年ごろはほとんどゼロだというような実情も、これは一つの、安心をしたと言うと非常に申しわけないのでございますけれども、この程度の実情であるのに二百条もの条文をつくるというのはいささかバランスを失しはしないかという感じもいたしたわけでございます。
 しかし、いま先生御指摘のような問題は、ちょっと実際問題として解決が結局道義的な解決以外に道がないといたしますと、この点は確かに問題として残ることはもう何人も疑えないところだと思うのでございます。したがいまして、こういった面におきまして、夫婦財産制を根本的に改めるということがやはり問題があるにいたしましても、いかにしてそういった妻の共有の実質を具体的に実現していくかという点になりますと、これはなお工夫の余地が絶無ではないと思われます。したがいまして、こういった広い意味の夫婦財産制の問題を含めまして今後十分研究をしていかなければならない問題だというふうに考えております。
#157
○稲葉(誠)委員 夫婦の場合ならまだいいと言うと語弊がありますけれども、離婚の訴えを起こして仮処分をやればいいかもわからぬけれども、親と子の場合で、親がどんどん財産をみんなほかへ売っちゃって、相続分がどんどんなくなっちゃうという場合に、子供は親に対してどういうことをやったらその財産を保全できるのですか。
#158
○貞家政府委員 これは夫婦の間の財産に比べまして、より子供としてのいわば期待権でございますが、それを防ぎとめるということはちょっと無理なような気がいたします。それこそ道義的と申しますか精神的な問題になってしまうような気がするわけでございます。
#159
○稲葉(誠)委員 いや、それは多いですよ。それをやられた日にはどうにもしようがないのですね。相続分がなくなっちゃうんですもの。そうでしょう。親がどんどん財産をみんな売っ払っちゃうんですから。準禁治産者にして、親を準禁治産者にするのも逆だけれども、普通子供が準禁治産者になるんだけれども、親を準禁治産者にするのもおかしな話だけれども、準禁治産者にしたって、自分だけしか取り消し権がないわけでしょう。保佐人に取り消し権がないでしょう。あれは民法十一条か、あそこがおかしいんじゃないですか。だから我妻さんなんかも、当然保佐人にも同意権、取り消し権を与えろとずっと前から主張されておられるんじゃないですか。準禁治産者の制度というものを変えていかなければいけないんじゃないか。そこをどういうふうにお考えでしょうか。
#160
○貞家政府委員 確かに通説は――通説と申しますか、これは現在でも通説かどうかやや疑問がありますけれども、従来の多数の考え方は、保佐人の取り消し権まで認めるのは行き過ぎであろう、こういうことになっているわけでありまして、確かにこの点は十分議論の余地のあるところだと思います。保佐人の追認権の問題等も含めまして、これはやはり今後十分研究されるべき問題だというふうに考えております。
#161
○稲葉(誠)委員 保佐人の追認権はあるんでしょう。追認権があるのに取り消し権がないというのはおかしいという議論が出てくるんじゃないですか。それは我妻さんもそういうふうに言っていますね。ぼくもその方がいいと思うんだけれども、ドイツ民法もそういうふうになっているんだが、ここら辺のところなかなかむずかしいし、そう簡単にも言えないでしょうけれども、それはまた後の問題、別の問題にしましょう。
 これは本当に困っておるのです。親がどんどん財産をほかへ売っ払っちゃう。子供は期待権といったって、親が死んだら財産もらえるというのは期待権と言えるのか何と言うのか、権とまで言えるのかどうか知らぬけれども、なかなか問題があって非常に困るところですね。
 そこで、寄与分の問題について。寄与分についてはいろいろな考え方がありますね、法律的に議論というか理論が。たとえば相続分の変更によるもの、単純な相続分変更説とか、それから九百三条の類推適用による相続分変更説、特別受益の逆と考えるわけですね。これは人見さんが言っていましたね。それから財産法上の権利として構成する場合、一つは不当利得説、二つは未払い給料報酬清算説、三つは共有説、いろいろな説があるのだけれども、どういう考え方がこれは一番いいというか妥当であるというふうにあなた方はお考えになっておられるわけですか。
#162
○貞家政府委員 これは理論的にはいろいろ考え方があるわけでございます。
 現在の実務上、事実上寄与分を認めておりますのは、いわば組合類似の関係から共有になっている、共有持ち分を潜在的に持っているという考え方、あるいは不当利得返還請求権に近いものだというような考え方がどちらかといえば支配的ではなかったかと思うわけであります。中には、贈与を受けた場合に持ち戻しを免除するという考え方でやっている審判例もあるようでございますけれども、共有ないしは不当利得返還請求権、これに類似した性質のものであるというふうに理論構成をしているのがございますけれども、いずれも非常にはっきりしないのみならず、また無理もあるような気がいたすわけでございます。
 そこで、今回の法案におきます寄与分というのがどういう考え方かと申しますと、まず第一に、寄与者の被相続人に対する請求権だという考え方は、これはとっておりません。それから、相続分と明確に独立した財産取得権つまり相続分とプラス寄与分を承継するというような考え方でもないわけでございます。したがいまして、いずれかと言えば、割合としての相続分とは別個であるけれども、広い意味の相続分――相続分は広狭二義ございますけれども、広い意味の相続分の内側にあるものとして、いわば具体的な相続分を変動させる一要素である。具体的相続分の手直しと言ってもいいわけでございますけれども、それを形成的にそういった財産を取得する権利を認めていくといわば九百三条の裏返しというような関係になるかと思いますけれども、簡単に言えば、具体的相続分の調整の要素というふうにお考えいただくのが一番適切ではないか、かように考えておる次第であります。
#163
○稲葉(誠)委員 そうすると、寄与分の場合は時効の問題は起きるのですか、起きないのですか。どういうふうになるのですか。起きないですね、共有だという考え方なら。共有というか相続……。
#164
○貞家政府委員 時効の問題は起こらないというふうに考えております。
#165
○稲葉(誠)委員 そうすると、寄与分というのは全体の遺産の中から最初に取っちゃうのですか。取って、残りを相続の割合で分ける、こういう考え方をしておるわけですか。
#166
○貞家政府委員 端的に申しますとそういう結果になるわけでございます。
#167
○稲葉(誠)委員 そうすると寄与分というのは、ちょっとこの提案理由を見ると、配偶者の相続分を引き上げたことに関連して第一に述べているわけですが、婚姻生活における配偶者の貢献に対する一般の評価が高まった、こういうことで相続分を引き上げる、こういうのでしょう。配偶者の貢献というのは、寄与分と具体的にどういう関係になっているわけですか。配偶者の貢献と寄与分とはまた別個の問題なんですか。概念的に違うということなんですか。
#168
○貞家政府委員 一般的に配偶者の貢献と提案理由でも言っておりますのは、これはいわゆる内助の功といいますか、一般的に申してそういったものの相続面における評価を高くするということで、一律にそういったものを少なくとも二分の一というような考え方に立ったわけでございますが、寄与分のところにまいりますと、夫婦間の通常の協力扶助義務の覆行を超えると申しますか、それ以上に評価されるべき特別の貢献があった、典型的なものは農業や自家営業などで特別の労務を提供するとか資金を提供するとか、あるいは勤め人でございましても、夫婦それぞれ働くというような場合、これは通常の協力扶助というわけにはまいりません。
 その場合には、通常の相続分では評価され尽くしていないと考えざるを得ないわけでございまして、そういった特別の分につきましては、寄与分ということによってそれに報いるような待遇をしよう、こういうことになるわけでございます。
#169
○稲葉(誠)委員 そうすると、調停の場合はよくわかりませんが、審判の場合は、この部分は相続分、この部分は寄与分という形で審判するのですか。全部ひっくるめて審判するのですか。どういうふうにするのですか。
 それに関連して、今度は遺産分割で審判に対する本裁判のときに、寄与分なら寄与分の部分だけについて不服であるというふうな争い方ができるのですか。それだけが訴訟物になるのですか。これはどうなんです。
#170
○貞家政府委員 寄与分はいわば裁量的な要素があるわけでございまして、審判の場合には家庭裁判所が形成的に権利を具体化するということになるわけでありますから、それが出ませんと各相続人の取得分が決まらないということになるわけでございますので、審判の理由の中にはそれがどう評価したかということは出ると思います。ただ、最終的な審判の主文といたしましては、寄与分として何々を妻なら妻、長男なら長男に取得させる、そういう主文にはならないという結果になるわけでございます。
 それに対する不服申し立ては、遺産分割の一環として行われるわけでございますから、その遺産分割全体に対して不服の申し立てをする、こういう関係になるというふうに御理解いただきたいと思います。
#171
○稲葉(誠)委員 私が考えますのは、今後寄与分の制度が新たにできる、前にも実際には判例や何かで認めておったわけですけれどもね。
 そうすると、それに伴って寄与分の主張というのは非常に違いますね、各人によって。申立人の側と相手方との間で非常に違う。特に、この座談会でも出ているように、いま後妻の子供と先妻の子供との間の争いが非常に多いですよ。これがもめていて、感情をむき出しにして争っているというのが非常に多い。これは何か全体の四〇%ぐらいあるとどこかに書いてあったような気がしましたが、とにかく多いですね、継親子関係になってきた場合に。寄与分の認定をめぐって非常に混乱をしてきている。
 だから、よほど家庭裁判所の調停委員なり調査官なりがよく事実を見きわめ親切にやらないと、認定でお互いになかなか納得しないのじゃないか。ことに調停の場合なんかなかなかまとまらないですよ。審判になったらややこしくてかなわぬですよ、ざっくばらんな話、遺産分割の審判は。そうなってくると、調停の場合の調停委員なり調査官なり主任判事なりが、一生懸命やっているのですけれども、こういう場合にもっともっと力を注いでやってくれないといけないだろうというふうに私は思うので、家庭裁判所が本法改正によってさらに一層大きな仕事をしょったという形になってくると私は考えます。その点が一つ。
 もう一つは、第三順位の兄弟姉妹の相続権はなくなるというように法制審議会の議論が相当出てきたように私は聞いておったのですよ。そうしたらこれは残っておるし、どうも変だなと思ったのですが、全国の裁判所の意見を最高裁で聞きましたね。さっきの九月一日号のジュリストですが、栗原さんは
 裁判所の意見も都会地における裁判所の意見、つまり都会型の事件を扱っている裁判官の意見と、地方の農村地帯の事件を扱っている裁判官の意見とで差が出て来ているようです。全国的にみると、現状のままでよいというのが三六庁で、多数意見なのですが、東京家裁の裁判官の間では、むしろこの際配偶者を優先させ、配偶者がある場合は兄弟姉妹の相続権は認めないほうがいいという意見のほうが多数を占めているわけです。
こう言っておられるわけです。
 それで、実際に兄弟姉妹は血がつながっているのですけれども、きょうだいは他人の始まりということをよく世間で言うのですが、大きくなって相続のときには、もう兄弟姉妹は一家をなしている場合がほとんどじゃないですか。だから、これはもう相続分は与えなくてもいいのじゃないかと思うのです。なぜ都会型の裁判官は兄弟姉妹の相続権は認めないという意見なのでしょうか。東京家裁の方では、これは多いということを言っておられますね。なぜなんでしょうか。
#172
○栗原最高裁判所長官代理者 私の座談会での発言を取り上げられておるわけでございますが、都会型の事件を扱っております裁判官は、やはり自分が実際に扱っております事件を通して物を見る。農村地帯の事件を扱っている裁判官もまた同様にその種の事件で日々苦しんでおりますので、そういう実務体験からおのずから意見が出てくるということになるわけでございます。
 そういたしますと、御承知のとおり都会地の事件というのは、核家族化されておりますので、それぞれの遺産の維持、形成に兄弟姉妹がかかわり合うというケースあるいは生前被相続人と兄弟姉妹がつき合うということが次第に薄れているのが現状でございます。被相続人が死亡した途端に、余り生前につき合っていないような兄弟姉妹があらわれてくる。しかも、午前中もございましたように、兄弟姉妹が亡くなって、そのおい、めいあるいはさらに下の孫あたりがぞろぞろと出てきて権利を主張する、こういうケースを都会地の事件を扱う裁判官は目にいたしておりますので、むしろ配偶者がおります場合には兄弟姉妹を後順位にした方がいいのではないか、そういう意見に傾きやすいわけでございます。
    〔委員長退席、中村(靖)委員長代理着席〕
 ところが一方、農村地帯の事件を扱っております裁判官からいたしますれば、農村は必ずしもまだ核家族化されておらないわけでございます。農業経営その他につきましても、たとえば農繁期その他になりますと、近隣の兄弟姉妹が出てきて手伝いをする、そういう実態がございます。そういう実態を目にし、そういう遺産分割を扱っている裁判官からいたしますれば、しかもその財産は、本来夫婦が共かせぎで築き上げた財産ではなくして、先祖伝来の財産というものも含まれておるわけでございますので、その財産を、たとえば結婚後間もなくして被相続人が死亡した場合に、よそから嫁いできた妻に全部取得させて、いままで農業経営その他について兄弟姉妹の応援が得られて初めて維持された、そういう財産について兄弟姉妹に相続権を全く与えないというのは現段階ではやはり少し行き過ぎではなかろうか、恐らくそういうような考えに立たれるのではなかろうかと思いますが、一般的に見ますと、そういう農村地帯の事件を扱っている庁の意見としては、現状維持の方が相当だという意見の方が多いように私はその照会に対する回答結果から推察いたしまして、座談会で私の個人的な意見として、いま議員が御指摘のような紹介をさせていただいたわけでございます。
#173
○稲葉(誠)委員 いまの話の中に引いた例というのは、たとえばお嫁さんに来たらすぐだんなさんが亡くなっちゃったという場合ですが、そういう場合はありますよ。しかし農村では、そういう場合だって財産はだんなさんの名義になっていないですよ。ほとんど父親の名義になっておるわけですからね。いわゆる農家の嫁の立場というものは全然保護をされておらないというところに問題が出てきているわけなのですが、農村でも核家族化が進んでおるし、兄弟姉妹が入ってきますと非常に感情がもつれるのですよ。第三順位ですから、言葉は悪いけれどもいわゆる笑う相続人というふうにいまなってくるのですね。そこでもつれてくる。
 きょうだいというのは仲がいいときはいいのですけれども、だんだん年をとって一家を持ってくると、なかなかそうはいかないのですよ。そこでもつれてきて遺産分割が感情的になってまとまらないというのが、私どもが農村でも見ておる例なのです。ですからこの点は、ぼくは兄弟姉妹に対する相続権というものは与えなくてもいいのではないかというふうに考えてはおるのですが、いまのところは第三順位で与えられています。率が減っていますから、それはそれとしてあれですがね。
 全体を通じて見たときに、この相続に関する民法の改正案というのは、最初のときは、もっと基本的ないろいろな問題について分析をし、それを立法するのだというふうに、学者や実務家や何かが入って長い年月をかけてやられて考えておったわけですね。そうしたら出てきたものは、寄与分はありますけれども、これだって近来ずっと判例で認められているものですし、私などが選挙の公約としてもう四、五年前から言っているわけですから、これは大変結構なことで喜ばしいのですがね。全体として、いまの養子の問題にしても、いわゆる子の問題にしてもそうだし、いま言った父親が財産をどんどん処分してしまうような場合だとか、夫婦の場合の財産のあれだとか、いろいろな重要な問題、むずかしい問題はみんな避けてしまって、そして第一段的にこれでまとめておこうというような形の印象を与えるわけですね。このたくさんの質問の中に出てきておるいろいろな問題がまだ残されておるわけです。
 ぼくがおかしいと思いますのは、立法というが、こっちが立法府なので、そっちは行政府なのだ。立法というのはこっちがやるので、それを法務省に法案を出せと言うのは何だか逆だと思っているのですよ。こんなおかしなことはないと思うので、こういうことは改めなくてはいけないと思います。それはそれとして、そういうふうな問題は今後も続けていろいろ問題を提起します。これは国会の中で与野党を通じて立法していくというのがあたりまえですが、そういう形などもあれしながら、残されているいろいろな問題について、日本の歴史や世論の変化もずっとありますから、そういうふうなものを見ながら、さらに新しい、よりよき立法を目指して、婦人の地位の向上全体を通じて考えていきたい、こういうふうに思うわけですね。
 時間が来ましたので、私の質問はこれで終わります。
#174
○中村(靖)委員長代理 柴田睦夫君。
#175
○柴田(睦)委員 今回の民法改正案は、法務省民事局参事官室の「相続に関する民法改正要綱試案」これが基礎になってつくられたわけですが、この試案は五十四年七月十七日に法制審議会の民法部会身分法小委員会の議論を取りまとめたもので、それに見解が付されたものであるわけです。これらの一連の検討の過程の中で、相続人・相続分が一つ、夫婦財産制が一つ、それから寄与分、この三項目についてそれぞれ述べられているわけです。
 これは、この三項目がそれぞれ関連があるということから、こうした三つの柱になっているわけですけれども、この三項目の関連性についてどのような理解をされておるのか、まずお伺いします。
#176
○貞家政府委員 いまおっしゃいました三本の柱と申しますのが御指摘の三点であるといたしますと、実は昨年よりもさらに古く、昭和五十年八月一日に法務省民事局参事官室から「法制審議会民法部会身分法小委員会中間報告について」というものを出しております。
 これは、昭和五十年七月十五日に開催されました民法部会におきまして身分法小委員会が中間報告をいたしたものでございまして、その内容が、第一 相続人・相続分に関する審議内容及び問題点、第二 夫婦財産制に関する審議内容及び問題点、第三 寄与分に関する審議内容及び問題点、こういう三本の柱になっております。
    〔中村(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
この三本の柱と申しますのは、身分法小委員会における審議の経過についての中間報告でございまして、この三つの点を柱にいたしまして審議をしたということになるわけでございます。
 一番手っ取り早いのは相続人・相続分の問題でございます。そこには非嫡出子の相続分の問題もございますし、配偶者の代襲相続権もございますし、養子の相続権あるいは兄弟姉妹の相続権もございまして、それと並んで配偶者の優遇措置というものも当然問題になったわけでございます。第二の夫婦財産制の問題、これは実はこういった相続人・相続分の内容を決める前提といたしまして、ことに配偶者の相続分をどうするかという前提といたしまして、一体どういう財産制をとるかということがいわば先決問題になるという関係であるわけでございます。それと寄与分の問題。寄与分というのはやはりやや補充的な修正の問題ということになるかと思うのでございます。
 その後昨年の七月になりまして、法制審議会民法部会身分法小委員会での審議、民法部会での審議、こういった審議の経過を踏まえまして「相続に関する民法改正要綱試案」というものを出したわけでございます。それには配偶者の相続分、非嫡出子の相続分、兄弟姉妹の代襲相続、遺産分割の基準、寄与分、遺留分、配偶者の代襲相続、それから夫婦財産制、こうございまして、そのうち今回の改正では見送ろうというのが非嫡出子の相続分、配遇者の代襲相続、夫婦財産制、こうなったわけでございます。
 したがって、法制審議会として最終的に決定して答申をいただきましたものが配偶者の相続分の引き上げ、兄弟姉妹の代襲相続の制限、遺産分割の基準、寄与分、遺留分、以上の五つの点になったわけでございます。これが今回の改正案の内容になっているわけでございます。
#177
○柴田(睦)委員 今回の改正では、相続の前提として考えなくてはならない夫婦財産制の問題については現行法を変えないということになって、そういう形での提案になっているわけです。
 そのほかのいままで検討された課題も含めて今回の改正というのは、民法のいわば現在の時点において改正した方がいい中間的な改正であって、この身分法の関係についての将来の改正問題についてはなお検討が続けられるものであるかどうか、お伺いします。
#178
○貞家政府委員 実は昭和二十九年に法務大臣から法制審議会に諮問をいたしております。諮問の内容は民法全般に関するものでございまして、そのうち急を要する問題あるいは意見の一致を見た問題について、逐次民法の改正作業を進めているわけでございます。
 身分法につきましても、昭和三十七年に相当大規模な改正を行いまして、その後五十一年にもございましたけれども、今度相続を中心として改正を行うということになったわけでございますが、もちろん民法全般について検討するという私どもの考え方はいささかも変わっておりません。
 ただ、お断り申し上げておかなければならないと思いますのは、民法の改正ことに身分法の関係につきましては、決して単に理屈だけで割り切れる問題ではない。沿革とか国民感情というものをよくよく見きわめた上でやりませんと、必ずしもいい結果はおさめられないという事情がございますので、相当気を長くと申しますか、ある程度長期間にわたる十分な検討ということがどうしても――どの問題につきましても、問題が基本的になればなるほどそういう感じがいたすわけでございまして、その点はひとつ御了承をお願いしたいと思います。
#179
○柴田(睦)委員 今回の改正案の一番特徴というのは、配偶者の相続分の引き上げであると私は思うわけです。
 これは、妻の座の向上というような形で運動が進められてきておりましたし、そういう国民世論を受けての改正にもなると考えるわけですが、従来、子供と相続する場合に三分の一だったのが二分の一になる、それからそれぞれ三分の二、四分の三になっていくというような問題で、全体的に見ますと、従来の相続に関する考え方が血縁相続を重視していたところから、今度は婚姻家族型といいますか夫婦中心相続への考え方、そういう方向に転換してきている過程にあるというような見方もできると思うのですけれども、相続に対する考え方の転換ということも含まれているのかどうか、お伺いします。
#180
○貞家政府委員 確かに、御指摘のとおりいわゆる核家族化という現象がことに都市部を中心として非常に進んでおります。また、一夫婦当たりの子供の数が減少しております。
 そこで、そういった核家族化の現象によりまして、いわゆる相続についての家産といいますかそういった思想が薄れてきていることは否定すべくもないところだと思います。したがって、むしろ生活の資となる財産を承継させるというような面が非常に強く出ていることは間違いのないところだと思います。
 ただ、相続の本質が何であるかということは非常にむずかしい問題でありまして、血縁を基礎とする制度であるというのは伝統的な考え方でありますし、また被相続人の意思を推定したものだ、そういう意思を推定して配分を決めるという考え方もございますし、相続人の協力貢献についての清算あるいは先ほど申しました扶養の要素、いろいろな要素があるわけでございまして、現在では、この相続人の協力貢献についての清算あるいは相続人に生活の資としての財産を与えるという扶養的な要素が非常に強くなっている。しかし、血縁と申しますかそれを重視するあるいは被相続人の意思を推定するというような要素がなくなったかと申しますと、これは完全に否定するわけにはまいりませんので、結局程度の差だと思いますけれども、先ほど申し上げましたような主として対配偶者の協力貢献に関する清算あるいは残された配偶者の生活の安定という要素が非常に強くなっていることは間違いないところであろう、かように考えております。
#181
○柴田(睦)委員 被相続人に配偶者だけがあって、兄弟姉妹がある、そして子供がない場合、配偶者が相続するということにつきまして、いろいろな歴史的経過もあるでしょうけれども、現実の遺産分割に当たって、兄弟姉妹から余り嫁さんとして相続において待遇されない、いわば妨害を受ける。そしてまた配偶者の方も、特に妻の場合は本来法律で決めてある権利さえ十分に行使できない、これは一般的に知られていることですけれども、そういう事例の場合、兄弟姉妹にまで相続権を認めなくてもいいのではないかという意見も、先ほどからも議論されておりましたが非常に強くなってきていると思うわけです。
 そういう意見を排除した理由について先ほど説明がありましたし、また、そういう場合に兄弟姉妹が相続することについて、事件を通じて考えてきた家庭裁判所自体の意見の違いがあるという説明もありましたけれども、それらを聞いておりますと、結局、一方ではもう配偶者だけでいいのではないか、一方では、いや配偶者のほかにやはり兄弟姉妹も相続させなくてはならないという意見が出てきているわけです。
 そうすると、相続という観念をどういうところへ持っていくかということがこれもなかなか割り切れないということから、全般的に見ますと、いろいろな意見がある中でどれを断ち切るということができないので、では兄弟姉妹の相続分を減らして残しておこう、そして妻の方の相続分も引き上げよう、こういう足して割ったいわば中間的な妥協的な考え方のように見えるのですけれども、その点はいかがでしょうか。
#182
○貞家政府委員 御指摘のとおり、妥協といえば妥協でございます。
 つまり、基本的には相続というものについて、血族あるいは同一家族集団というものをどの程度重視するか、あるいは兄弟姉妹の結びつきというものを国民生活の上でどの程度に評価するかということでございまして、これは個々の状況によって非常に違うと思います。ですから極端な場合には、兄弟姉妹に配偶者と同列の相続権を認めるということがいま非常に不合理な場合もございますけれども、逆に認めないとした場合に不合理が起こる場合もあり得るわけでございまして、やはり現在の国民感情というものが、兄弟姉妹を全面的に排除はしない、また相続義務を負うという関係に置くのが平均的な国民感情の姿であろう、こう考えたわけでございまして、確かに妥協といえば妥協、認めながら減らしていくということでございますから不徹底な点はございますけれども、これは現在の社会生活における兄弟姉妹の地位自体がそういった状況にあるということではなかろうかと考えているわけでございます。
#183
○柴田(睦)委員 配偶者に対する相続分の引き上げということが決まるわけですけれども、この問題はやはり夫婦財産制の検討というようなことでの議論も踏まえてのものであるわけです。
 そうすると、離婚をする際の財産分与に当たって、具体的な裁判なりあるいは審判の中で、従来は三分の一の相続分という前提でやってきたものが二分の一になるということで、離婚の際の財産分与にも具体的な判断の上で影響があらわれてくるのではないかと思うのですけれども、この点はいかがですか。
#184
○栗原最高裁判所長官代理者 相続の場合も離婚に伴う財産分与の場合にも、言うならば夫婦財産の清算という面では共通する面を持っているわけでございます。
 しかし、離婚に伴う財産分与と相続の認められている基礎といいますか根拠はおのずから異なるわけでございますので、相続分が引き上げられたからといって、当然に財産分与の方にもストレートにはね返ってくるとは必ずしも言えないのではなかろうかと思います。
 しかし今回の相続分の引き上げは、家庭生活における配偶者の役割りを高く評価したという観点から引き上げられておるわけでございますので、財産分与の基礎をなしております婚姻中における夫婦の協力によって築き上げた財産の清算ということ、これを中核といたしております財産分与の面におきましても、やはり間接的には影響が生じてくるのではなかろうかというように考えているわけでございます。
#185
○柴田(睦)委員 もう一つ、寄与分の制度が今度立法化されることになるわけですけれども、この点も考えてみますと、離婚のときに、配偶者の財産形成に対する特別の寄与という問題がある場合に、そのことも具体的には配慮されることになると思いますけれども、この点については明文がないわけです。将来は、離婚の際の財産分与に当たって寄与分の評価を取り入れる、そういう立法化というのは検討される対象になるのではないかと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
#186
○貞家政府委員 財産分与の額を決める際におきまして今回の寄与分というものが考慮されることは、すでに現行法のもとにおきましても当然のことではなかろうかと思うのでございます。そこで財産分与についてももっと明確な基準を示し、もっと丁寧にその基準を定めるべきではないかというような意見もあるわけでございます。
 ただ財産分与請求権と申しますのは、離婚の際でございますけれども、相続の場合と異なりまして、夫と妻、その夫婦の当事者間の関係でございまして、他の共同相続人との関係というような第三者との関係が少のうございますので、おのずから非常にきめ細かく、また実情に応じた分与ということが当然要請されるわけでございます。そこで、現在の審判で決定される場合の基準というのは「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、」ということを民法がうたっているわけでございまして、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他ということで、この協力の態様と申しますか内容が例示的にまず第一番に示されているぐらいでございます。
 もちろん、この場合には内助の功というものも含むわけでございますけれども、それ以上に、この制度が婚姻中の夫婦の実質的な共通の財産の清算を目的とするという趣旨から申しまして、いわゆる寄与分的なものが十分考慮されるということは、いわば自明の理と申しますか当然予想されているというふうに私どもは考えているわけでございます。
#187
○柴田(睦)委員 いまの離婚の場合においては、財産分与というような問題が起きてきますと、結婚後できた財産をいかに分配するかということが中心になると思うのですけれども、結婚前から財産を持っている人がある。そうした結婚後できた財産でないものの分与という問題について、特別寄与分の立法化ということで、固有の財産についてもやはり分与の対象になり得る、そういう観念が強くなってくるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
#188
○貞家政府委員 財産分与というのは非常にいろいろな要素を考えた上での分与になるわけでございまして、御指摘のとおり、固有財産からの分与ということも決して否定されるわけではないわけでございます。
 主として実質的な共同財産の清算ということでございますけれども、その清算をするに当たりましては、固有の財産からの分与ということもあり得るわけでございまして、たとえば慰謝料的、損害賠償的な要素も含まれていると一般に言われておりますけれども、そういったものが固有財産の方からも分与されていくということは当然の帰結であろうと思いますが、そういった点から考えましても、財産分与につきましては、広くすべての寄与の事実を初めといたしまして一切の事情が考慮されて適正な分与がなされるはずである、こう考えております。
#189
○柴田(睦)委員 一般の人たちは、配偶者が亡くなった場合に、自分たちが住んでいた土地と家、それに大低ローンがあって借金がくっついている。そのくらいの財産が現在の一般的な人たちの相続財産であろうと考えるわけですが、そういう場合に、生存配偶者の生活保障ということを考えてみると、居住の問題をどうするか、亡くなった後、その建物を分割すれば行くところがない、そこに自分は住みたいというようなことがやはり一番多い重大な問題になると思うわけです。
 この生存配偶者の居住の問題について、居住権をどうするかという検討がずっと加えられてきているようですけれども、これがいろいろ理論的にむずかしいというようなことで、今回の段階においてはまだ結論に至っていないわけですけれども、住んでいる家から生存配偶者が出たくないけれども出なければならない、これに対して保護をするというための法理論の検討あるいは立法化、そうした問題についてはなお今後の検討課題として残っているのでしょうか。
#190
○貞家政府委員 配偶者の居住権の保護ということ、これは法制審議会においても配偶者優遇の一方法として十分検討されたわけでございますが、居住権自体の保護という形での立法措置を考えますと、いろいろ困難な問題が生じてくる。
 そこで、少なくとも二分の一の相続分を与えるというような方法で、端的に相続分の引き上げによった方が問題が少ないであろう。もちろん遺産分割の方法として現物分割に限るわけではございませんので、その相続人のいろいろな生活、心身の状況に応じまして、具体的に分割の方法は決められるわけでございますけれども、たとえば、そういった財産を配偶者に取得させるあるいは使用権を認める、使用権の価値と所有権の価値を分離させまして、配偶者には使用権というような形も無論可能でございますし、共有にいたしましても、共有物を使用、収益する権利といたしまして、少なくとも二分の一以上という権利を持っております以上、配偶者が居住に困るという事態は余り生じないのではなかろうかと考えたわけでございまして、端的に相続分の引き上げによって解決をした方が簡明であるという結論に達したわけでございます。
 もちろん、それでも賄い切れないという事態は無論ございます。しかし、それは相続法においてそれを考えるということよりも、もうちょっと広い視野で、居住の安定というようなことにつきまして将来検討を加える余地は十分あるかと思います。ただ相続の分野といたしましては、相続分の引き上げという簡明な方法による方がベターではなかろうか、こういう考え方に立ったわけでございます。
#191
○柴田(睦)委員 今回寄与分が法定されるわけですけれども、これは従来家事審判において積極的に特別寄与分を認める審判例がずっと、特に五十年の中間報告などが出てから積極的な意見が非常に多くなっているようであります。
 結局、いままでは九百六条の解釈運用というような形で審判がされてきたわけですけれども、これは従来家庭裁判所が審判で示してきた判断を明文化したということを意味すると思うのですけれども、そういう場合に、いままで家庭裁判所の審判で積極的に認めるのがずっとふえてきているわけですけれども、立法化した場合に、そうした家庭裁判所の判断が、いままで消極的な考えを持っていた裁判官が、この法律によって寄与分の問題を判断しなければならなくなるということで、申し立てがあれば当然法律に従って寄与分を認めた上での判断が示されてくると思うわけです。
 一面、相続人に限られた寄与分ということになってまいりますと、現実にいろいろな調停や審判の中で利害関係人として参加さして解決を図ってきた、そうした問題が、法律ができたことによって、これは相続人の中に入っていないから利害関係人として入れられない、被相続人に対する債権債務関係が認められない者については利害関係人として入れられない、そういうような今度は立法化によってマイナスの面が生じてくるんじゃないかというような疑念も持つわけですけれども、この点はどうお考えでしょうか。
#192
○貞家政府委員 現在の法律のもとにおきましても、ただいま御指摘のとおり、家庭裁判所の審判の実務におきまして、相続人間の衡平を期するためには寄与分ということを考えないで分割することは著しく衡平に反する場合があるというような観点から、次第に寄与分を認める審判例が多くなってきているようでございます。
 最近は抗告審における高裁段階の決定例も出ているわけでございまして、共かせぎの妻による家計に対する寄与でございますとか、農家において妻あるいは長男が労務を提供した、それによって農業資産の維持、増加を図ったというような例が数多く見られるようでございますけれども、これはいずれも法律上の根拠は一様ではございません。共有の思想に立つもの、あるいは不当利得返還請求権というようなものに類似した考え方をとるもの、あるいは端的に相続分を裁判所は変更し得るというような考え方に立っておるのもございますし、あるいは労務契約、請負契約というようなものを擬制するという考え方もあるようでございますが、いずれにしましても法律上の根拠がはっきりしておりませんので、その実現にはおのずから限度がございますし、理由づけにはそれぞれ問題があるわけでございます。
 そこで、今回のようにいたしまして法律上の基礎を与えることにしようとするわけでございますが、相続人間の衡平を図るという見地から、相続人の権利として寄与分の形成を求める請求を認めるという形をとっております。
 そこで御指摘のように、相続人ではない者、相続人に準ずると言われておりますような者につきまして、法律の上からは外れるわけでございます。ただ、これはいろいろ寄与分の構成という点、手続上の問題その他から相続人以外の者は別だというふうに考えざるを得なかったわけでございますが、これはもちろん調停の利害関係人として参加するということは可能であると思われますし、協議によって、いわばこれは遺産分割に伴う一種の贈与とでもいうべき法律関係になるかと思いますけれども、そういったことが行われることを決して封ずるという趣旨ではないわけでございまして、従来も、審判例におきましては相続人以外の者の寄与分というものを認めた例はないようでございます。非常にそれに近い例はございますけれども、遺産分割として相続人以外の者の寄与分を認めたという実例はないようでございます。
 ただ、調停あるいは協議で事実上そういうことが行われているということは十分あり得たことでございます。今後ともそういったことは決して否定するわけではございません。そういった点について足を引っ張るというような意図はございませんし、また、そういうような動きにはならないことを期待しているわけでございます。
#193
○柴田(睦)委員 家庭裁判所でこの遺産分割の調停や審判がなされるわけですけれども、遺産分割に当たって考えなければならない問題として、結局遺留分が侵害されないように、それから相続分を中心にしてどう配分するか、それから今度特別寄与分というものが出てくるわけですけれども、これは相続財産の中から寄与分をまず抜いてあとを見るのか、また遺留分を二分の一はまず抜いて、そして寄与分を抜いて、残った部分について相続分に応じた分配をするのか、その点どういう順序で計算していくのか、お伺いしたいと思います。
#194
○貞家政府委員 簡単に申しますと、寄与分をまず抜いていくのが最も適切ではないかと思います。遺留分につきましては、この寄与分との関係では、寄与分に対して遺留分減殺請求をすることはないという考え方でございます。
#195
○柴田(睦)委員 相続分を超える寄与があるような場合に、これは相続分のほかに特別寄与分を認めるというように理解しているのですけれども、この点最高裁判所の意見を聞きたいと思います。
#196
○栗原最高裁判所長官代理者 今回の改正によりまして、相続人中の一人が相続財産の増加、維持について特別に寄与した場合に寄与分が認められるわけでございます。
 ですから寄与の程度によりましては、本来相続人が持っております相続分を超える場合も理論的にはあり得るかと思いますが、これまでの実務の例等から見まして、つまり一番問題になりますのは妻の寄与が問題になろうかと思いますが、従前ですと、妻が子供と共同相続する場合は三分の一が相続分でございましたが、実際の例から見ますと、特定の財産についての妻の寄与を高く評価いたしまして二分の一まで寄与を認めた例がございます。しかし、今回は妻の相続分が二分の一まで引き上げられましたので、もしも二分の一の相続分よりほかにさらに寄与分として二分の一ということになりますと、計数の上では全部妻が相続する、こういう計算に相なろうかと思いますが、そのような事例は恐らく起こらないのではないかと考えておる次第でございます。
#197
○柴田(睦)委員 そうすると、特別な寄与をした場合に、二分の一が相続分であって、一〇〇%までいかないにしても九〇%までいく、こういうことはあり得るわけですか。
#198
○栗原最高裁判所長官代理者 理屈の上から申しますと、非常に高い割合まで認められる場合もあろうかとは思います。
#199
○柴田(睦)委員 それから、いわゆる準相続人に対する寄与分の問題ですが、これについてもやはり権利として認めるべきであるという意見が非常に強いわけです。この問題につきましてはいろいろな意見があります。しかし全般的な常識からいえば、何とかその点は解決すべきではないかというのが世論であると思うわけです。
 法務省などでは、結局契約だとかあるいは生前贈与だとかあるいは遺贈だとか遺言、そういう問題で解決することを期待されるということですけれども、実際問題として準相続人などに対して、そうした法律にはいろいろのやり方があるわけですけれども、被相続人が特別に寄与した相続人以外の者に対してどういう対処をするということは余り行われていないし、また寄与した人から要求するということは、日本の社会においては実際上なかなかできないことで、そうした社会風習の中では、裁判所の監督と裁判所の裁量で解決する以外にはないのではないか、現実にはそういうものであると考えるわけです。
 そういう問題で、いままでの説明を聞いておりますと、そういうものを認めると、非常に少ない事例のために多くの遺産分割が遅延するとか、あるいはいろいろな複雑な関係が出てくるというような説明をされているわけですけれども、遅延という問題について言えば、遺産相続が開始されるそのときから一定の期間を設けることで遅延を防ぐこともできるでしょうし、あるいは裁判所を通じないで分割がされたというような場合において、それを知ってから、そのことがあってから一定の期間内に寄与分についての要求を裁判所に出すとか、その場合も期間を設けるとか、それから分割する財産については、もう分割が終了しているものであれば相続人に対して価額の請求で間に合わせるとか、いろいろな法律技術の上での解決はあると思うのですけれども、問題はそうしたものについて、みんなが言われますように、ほうっておいて済ますべき問題ではないと思います。ですから、今後ともその問題についてはさらに検討を続けられるものであるかどうか、お伺いします。
#200
○貞家政府委員 相続人でない者、ただし相続人に準ずるような地位にある者、これをどう処遇するかという問題につきましてのただいま御指摘の問題点に対するお答えは繰り返して申し上げませんけれども、確かにこれは法制審議会でも非常に議論のあったところでございますし、現に各界の意見を拝聴いたしましても、その点になお問題が残っているというふうな御指摘をいただいております。
 私どもはこの御指摘は率直に受けとめなければならないと考えておるわけでございまして、確かに理論的に非常にむずかしい問題がございます。しかし、これをどう整理し、どう処遇するかという問題につきましては、一朝一夕にはまいらないかもしれませんけれども、改正後の運用の状況等によりましては、今後さらに検討を要する場合もあるかと思います。全般的に私どもは相続法の改正がこれで全部終わったというふうには考えておりません。今後とも十分研究いたしたい、かように考えております。
#201
○柴田(睦)委員 家庭裁判所の事務の問題ですけれども、家庭裁判所の調停係に行きますと、相談に来る人が非常に多いわけです。千葉の家庭裁判所の受付に行きますと、いすが十ぐらい並べてあって何人も座って、受付の人たちはそういう人々の相談に非常なエネルギーを使っておりますし、書記官の人に聞いてみますと、この相談で大体家庭裁判所でやる仕事の半分以上のエネルギーをとられてしまう、こういうことを聞いております。
 ところが、家庭裁判所における相談という問題については、別に定員あるいは予算の上で何ら対策が講じられていないわけですけれども、家庭裁判所は一般の裁判所と違って家事関係でいわば福祉型の仕事をやっているわけですから、そういうところにみんな相談に集まるわけです。新聞などで身の上相談なんか出ておりますと、回答者が、なおこれ以上のことは最寄りの家庭裁判所で相談なさったらいかがですかというような回答が出たりしているわけですけれども、そういうこともあって、単に書類を家庭裁判所に申し立てをするそのための相談ではなくて、家事事件全般についての相談が殺到しているわけです。
 そういう中で、予算上の定員が割り当てられておらない、予算措置も講じられないというような状況にあるわけですけれども、この問題はやはり家庭裁判所が抱える大きな問題であって、国民からの相談に応ずるという仕事は家庭裁判所はやはり捨ててはならないと思いますし、これはやらなくちゃならない。しかし一面ではそうしたものに手当てがない。この現実問題についてどういうように考えていらっしゃるか、お伺いします。
#202
○栗原最高裁判所長官代理者 御案内のとおり、家事相談につきましては法制上の根拠があるわけではございません。
 家庭裁判所が発足いたしましてから、いわば自然発生的に家庭のもろもろの問題について家庭裁判所の門をたたく、そういう相談者に対しまして、家庭裁判所がその手続その他につきまして需要にこたえてそれを教える、助言する、こういう扱いがだんだん広まりまして、最近では年間三十万件を超えるような相談件数を数えておるわけでございます。
 ただいま議員御指摘のとおり、その負担量は決して軽くないということは十分承知いたしておりますけれども、何せそれが法律上正規に定められた手続ではないために、予算上の措置がそのためにはとられてないというのが現状でございます。しかし家庭裁判所といたしましては、先ほど議員御指摘のとおり非常に重要な事務の一つだと考えております。言うならば、家事相談というのは家庭裁判所の窓に当たるわけでございますので、たとえば家事相談を担当する担当者にいたしましても熟練の職員をそれに振り向けるなど、家庭裁判所といたしましては、家事相談の事件処理体制の強化にはこれまでも十分配慮してきたわけでございますし、今後もその点につきましては努力を重ねてまいりたい、このように考えている次第でございます。
#203
○柴田(睦)委員 いまの点は、もう現実に相談ということが家庭裁判所の仕事になってしまって、それだけ担当者の方が犠牲を強いられるということになっているわけですから、やはり法律の上でも明らかにする、少なくともこの事実行為としての予算措置が講ぜられるように、これから努力していただきたいというふうに考えます。
 それから、家庭裁判所での仕事の特徴といたしまして、たとえば遺産分割の問題を見てみましても、この場合においては財産の評価は鑑定をやってそれによって価額を決めて、そしていかに分配するか、こういうふうにやるということを言われるわけですけれども、現実の弁護士がついてないような遺産分割の調停、審判などにおいては、さあ鑑定しようということになると、今度は鑑定費用を出してくれと言ってもなかなか出さない。じゃ現地調査をしようということになって現地へ行っても、当事者がなかなか出てこない。それから呼び出しても出てこないものだから、これを何とかして出させるために裁判所の職員がその人のうちまで行って勤めから帰ってくるのを待っている。待っていると酒を飲んで帰ってきて全然話にならなかったというような、いろんな普通の裁判所と違った苦労が非常に多いわけです。そういう中で、職員の人たちは家庭裁判所の任務だということを考えてそれぞれ努力されているわけですけれども、そうした問題についてもやはり具体的に実態を調べられて、それぞれそれに報いる対策が講ぜられなければならないというように考えております。
 そういう中で、また寄与分というものが明文化されますと、自分はどういう寄与をしたんだということで、寄与分の主張というものがやはり調停や審判の上においてもさらにたくさんいままで以上にふえてくるのであろうということが想像されるわけです。そうすると、それらの問題をどういう寄与をしたかという調査をする仕事というものが現実にやはりふえてくるということが想像されますし、あるいは審判法で仮の処分に強制力を付与するということになりますと、この活用ということもやはり現実にふえてきますし、それだけ事務担当者の仕事がふえるわけです。
 そうした今度の法律の改正によって家庭裁判所の仕事の量がふえることが想像されるわけですけれども、家庭裁判所全体のいろいろな実際上の予算措置が地方裁判所と同じように見えられているのじゃないかと思うのですけれども、そうした地方裁判所のあれと違った、地方裁判所にはまた地方裁判所のむずかしさもあるわけですけれども、この仕事の上で家庭裁判所が抱えている問題に、さらに今度の改正によってこの面においてもやはり仕事がふえてくると思うわけですけれども、これに対する対処策については何か考えていらっしゃるかどうか、お伺いしたいと思います。
#204
○栗原最高裁判所長官代理者 ただいま議員から家庭裁判所の仕事の負担量その他について非常に御理解ある御意見をいただきまして、まことにありがたく考えておる次第でございます。
 確かに、今回の改正に伴いましてある程度の事務の負担量というものは増加するのではないかというように考えられますので、予算上の措置その他につきましても遺漏のないように努力いたしたい、このように考えております。
#205
○柴田(睦)委員 終わります。
#206
○木村委員長 金子みつ君。
#207
○金子(み)委員 私は、今回の民法改正に関して幾つかの質問をしたいと思っております。
 初めに、御承知だと思いますけれども、一九七九年十二月十八日に第三十四回国連総会で採択された条約がございます。それは婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約、これは言葉は仮訳でございます。まだ本訳ができておりませんで仮訳ですので、言葉の上ではぎこちない点もあるかと思いますが、そういう婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約というのが採択されたわけでございます。これは、一九六七年の国連の総会で婦人に対する差別撤廃宣言が採択されてから十二年たった今日、昨年の暮れにいま申し上げましたような形で条約として提案され、百三十カ国の賛成で可決をしたものでございます。もちろん日本政府もこれには賛成をいたしております。したがいまして、賛成いたしておりますから、国内法の改正など準備をしながらこの条約の批准を取りつけなければならないということになるだろうと思います。
 この条約の第一条には、このようなことがうたわれております。
  この条約の目的のためには、「婦人に対する差別」なる用語は、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的或いはその他のいかなる分野においてであっても、男女の平等の基礎における、
 結婚しているかどうかを問わず、婦人による人権及び基本的自由の承認、享受又は行使を妨げ、又は、無効にする効果もしくは目的をもつ、性に基づく全ての差別、除外又は制限を意味するものとする。
そして第三条に
  締約国は、婦人に、男性と平等の基礎の上に、人権及び基本的自由の行使及び享受を保証するため婦人の最大限の発展及び向上を確保するように、全ての分野、なかんずく、政治的、社会的、経済的、文化的分野において、立法を含む全ての適当な措置をとることを約束する。
というふうにうたわれているわけでございます。
 そこで、こういうことがこれからの日本の国におけるあらゆる分野において男女の問題を全く平等な取り扱いをするような扱いが進められていかなければならないと思うのでございますが、元来日本ではいろいろな制度が、戦前戦後を問わず、婦人の社会的地位を性による差別に基づいて不当に低く評価したり、あるときは無視すらしている制度というのが決して少なくないという事実はお認めになるだろうと思うのです。徐々に改善されていっているということは認められるわけでございますけれども、今回の民法の改正などにつきましても、同じような趣旨から改正されるものであろうと私は想像いたしますけれども、こういうものがいまだに厳然として残っている。
 たとえば国籍法の場合でも、夫と妻という関係を男性と女性という関係に置きかえたような考え方で日本の国内法はつくられていっているということに気がつきます。それから労働基準法などでも、労働条件の男女の不平等ということがいま問題になっております。あるいはまた、生活保護法の保護基準においても男女の差別があるというようなことが現在あるわけでございます。
 もっとどうかと思いますのは、ただいま今国会で法律の一部改正を提案されている厚生年金保険法でございます。この厚生年金保険法の中におきましても、この問題が非常にはっきりと存在しているという点は非常に遺憾だと思います。もともと厚生年金保険法における妻の立場は非常に不利にできています。それで、いままでも離婚した妻は遺族年金が受けられない、無年金ということに日本の規定ではなっております。離婚した妻は、いままで夫と一緒に働いて財産もつくったでしょう。生活をともにしてきた人が何かの理由で離婚をいたしました場合に、先ほど来幾つもお話が出てきました寄与分のような考え方は全くなくて、妻は無年金です。このようなむごい制度は世界じゅうにございません。遺族年金の金額の多い少ないあるいは比率の多い少ないということの差はございましても、全く出ないというのは日本だけしかありません。それから今回の改正では、このことは直されておりませんばかりでなく、さらに四十歳未満で子供のない妻は遺族年金すらないのです、ゼロです、支給されません。こんなことがあっていいでしょうか。ここは法務委員会で、社会労働委員会ではございませんから、この問題をここでさらに深く話をしていこうとは思っておりませんけれども、こういう考え方がいまの日本の政治を進めていく基本的な観念の中に存在しているということは、私は非常に問題だと思うのでございます。
 現行の民法におきましても、夫と妻、それが男性と女性という観念が底に流れていると思います。そこで男女の平等を阻害したり、あるいは戦後廃止されたはずの家の制度ですね、この家の制度の残渣だと思われるような要素もまだ存在しておりますし、古い因習や観念と相まって婦人の地位の向上を阻害している点がないとは言えないと思います。
 今度の改正につきまして私は大臣の御意見をいただきたいと思うのでございますけれども、いままで民法には関係がないように感じられたかもしれませんが、夫と要すなわち男女の考え方の基本的な誤りを訂正しなければいけないと思います。このような不平等な実態を踏まえて今回民法の一部が改正されようとしているわけでございますが、今回改正されようといたしております民法の改正をする目的あるいはその趣旨というものがどの辺に置かれてなされたものであるのか、一言で結構でございますが大臣から御答弁いただきたいと思います。
#208
○倉石国務大臣 個人的な考え方を申し上げるというのは別段意味もありませんし、失礼でありますから……。
 このたびの法律の改正につきましては、やはり配偶者の地位というものをできるだけ対等にしてりっぱな社会をつくってまいりたい、そのために必要な大きな基本法であります民法についても法制審議会の検討を経た上で提出をいたして御審議を願っておる次第であります。
#209
○金子(み)委員 そういう御趣旨で法律改正が進められたものと一応解釈いたしまして、それでは、改正の案になっております法律の内容につきまして幾つかお尋ねをしてみたいと思います。
 今回の改正は、大臣いろいろといま御答弁いただきましたように、差をなくしていくあるいは妻の位置づけを高めていくというような前向きの姿勢で改正されているということも私どもわかります。しかし先ほど申し上げましたように、なおまださらに一歩進めて改善をしていかなければならないと考えられる点がございますので、それについての御意見をいただきたいと思います。
 まず相続分の問題でございますが、相続分につきましては、先ほど来もお話ございましたように、今回は確かに有利な、有利という言葉は適当でないかもしれませんけれども、当然と申し上げたらいいのかどうかわかりませんが、前回に比べれば妻は有利にと申し上げた方がいいかもしれません、改善がなされてきておりますことは結構だと思っております。
 ただ、この相続分の三つ目の場合でございます。子供も尊属もいない場合、妻と被相続人の兄弟姉妹だけの場合の今回の規定は、現行に比べますと、妻の取り分は三分の二であったものを四分の三に、それから兄弟姉妹は三分の一であったものを四分の一にというふうにして妻の取り分を引き上げたという点については評価できると思うのでございますけれども、この点について先ほど稲葉委員が御発言なさっていらっしゃいましたのを伺っておりましたけれども、私も大体同じような考えを持っております。
 と申しますのは、相続人という概念から兄弟姉妹はほど遠い感じがするのです。相続人という概念は、やはり妻あるいは子供あるいは尊属という縦の列が考えられるのであって、兄弟姉妹という横の列は相続人としての概念には当てはまらない、該当しないんじゃないかという気がいたします。兄弟姉妹にまで遺産相続をする必要はないんじゃないか。先ほどお話も出ておりましたように、すでにもうこの兄弟姉妹は社会人としてりっぱにやっているであろう、これも想像でございますが、そういうことがあるかないかは別といたしましても、私は、この場合は妻に現行三分の二ならば三分の三、全額相続分として与えられるべきではないかというふうに考えるのでございますが、この考えは間違いでございましょうか。
#210
○貞家政府委員 兄弟姉妹の相続権をいかに取り扱うかという点につきましてはいろいろ議論のあるところでございます。
 ただ、相続というものはいろいろな意味合いを持っておりますけれども、相続について、血統でありますとか同一家族集団というものを無視するというところまでは国民感情一般がなかなかいっていないように思われるわけでありまして、兄弟姉妹の結びつきというものが果たしてどういう位置づけに置かれるべきかということでございます。
 遺産の中には、夫婦が婚姻中に形成した財産もございますけれども、そうでない婚姻前から形成された財産あるいは伝来財産というようなものも含まれているということを考えますと、その全部を配偶者だけに相続させることについてはやはり問題があるという点から、今回の改正では、兄弟姉妹というものを完全に配偶者に劣後させるというところまでいくのは行き過ぎではなかろうか、しかしその程度につきましては、従来よりもさらに兄弟姉妹の相続分を減少させる、配偶者の分をそれだけ増加させるというのが適当であろう、こういう考え方に立って立案いたしたわけでございます。
 御指摘のとおり、兄弟姉妹というものが日本の国民生活においていろいろニュアンスの差はございまして、非常にいわば同一家庭集団の内部に近いような状態にあるものと非常に独立的な生活を送っている場合と、なおいろいろなニュアンスがあるわけでございまして、現段階においてこれを一律に割り切るということはやはり無理ではなかろうか、かような考慮に立ったわけでございます。しかしながら、この問題につきましてはいろいろ御意見のあるところでございます。今後の社会生活の発展に応じて、さらに将来の問題として考えざるを得ない問題ではあろうかと存じます。
#211
○金子(み)委員 わかりました。
 一つだけお尋ねをしておきたいのですが、婚姻する前から持っていた財産が遺産の中に一緒に入っている場合にはという御説明は納得ができるのですが、そのことが明らかにされることができるのならば、ケース・バイ・ケースということになって、婚姻前には何も財産はなかった、二人で築いたものだけであるということになれば兄弟姉妹は外すことが妥当であるというふうに考えられるのでございましょうか。
#212
○貞家政府委員 実質的にはさような議論も成り立つかと思いますけれども、この財産についての区分ということは非常にむずかしい問題でございまして、しかも、こういう場合には兄弟姉妹に相続権を認める、こういう場合には認めないというような制度はちょっと困難かと思われます。相続人たる資格というものはやはり一律に与えざるを得ない。そういう点から申しまして、現段階では兄弟姉妹の相続権を認めるのが相当ではなかろうか、かように考えるわけでございます。
#213
○金子(み)委員 それでは、将来の課題としてなお検討していただきたいと思います。
 次には寄与分の制度の問題でございます。この制度の問題につきましては、先ほど来伺っておりましていろいろとお話し合いが出ていたわけでございますが、私もこの点について幾つか疑問を持ちますのでお尋ねしたいと思うわけでございます。
 その一つは、今度の制度で決められておりますことは、財産の維持または増加に特別の寄与をした相続人、こうなっているわけです。
 そこでお尋ねしたい点が幾つかございますが、その一つは、相続人となっておりますが、相続人だけなんですね。相続人のほかに寄与した人もあるじゃないかという疑問が出てくるわけでございます。たとえば内縁の妻でありますとか、あるいは戸籍上ではないけれども事実上の養子であるとか、あるいは直系卑属の配偶者、お嫁さんですね、あるいは相続人でない兄弟姉妹、こういうような人たち、相続人という対象から外されている人たちですけれども、この人たちだって実際に寄与しているということがあるのではないだろうか。もしそれがあるならば、この人たちをも対象として考えることができるのではないだろうかというふうに思えるのでございますが、その点はいかがでございましょうか。
#214
○貞家政府委員 確かに相続人以外の人々が寄与しているということはあり得ることでございますし、その中でも相続人にいわば準じた立場にあるいま御指摘のような人々が寄与するという例もあるかと思います。ただ、今回の寄与分制度というものは相続人間の衡平を遺産分割において実現しようというねらいでございます。
 そこで、相続人以外の方々で労務を提供したとか財産上の給付をしたとかその他の方法によって寄与された方が、何らかの契約関係に基づいてこれを請求されるということでありますならば、これは現行法においてもまた将来改正後においても、財産上の請求権として相続財産からその弁済を受けることはできるわけでございます。
 ただ、そうでない場合が寄与分の問題になるわけでございまして、この法案では相続人間の衡平ということを考えているわけでございます。第三者の寄与ということを認めますと、これは遺産分割の審判における当事者にはならないわけでございますから、財産の取得を認めるということになりますと、これは非常に法律的な議論になって恐縮でございますけれども、やや違った性質のものになって、異質のものを遺産分割の中に取り込むという形になるわけでございまして、いろいろな問題点が生じてくるわけでございます。
 遺産分割手続との関係がまず問題になるわけでございます。契約その他で非常にはっきりしております場合にはその内容も決まっているわけでございますけれども、そうでない家庭あるいは家庭周辺の問題としての寄与ということになりますと、寄与分をどれだけに評価するかということをまず決めてかかる、つまり、形成作用と言っておりますけれども、家庭裁判所の形成によって権利を具体化しなければならないわけでございまして、その手続と遺産分割の手続とを時期的にまた論理的に一体どう関連させるかということが非常に問題になってくるわけでございます。遺産分割の際にどうしてもそれをやるということになりますと、その手続が別になりまして、一定の期間遺産分割はできないというようなことにもなるわけでございまして、別途まずそういった寄与分を形成してから遺産分割をしなければならない。あるいは遺産分割と無関係にやりますと、一たん遺産分割をやりましても、ほかの手続でそういう寄与分を決めまして、それによって遺産分割の結果がひっくり返るというような形にもなるわけでございます。
 確かに相続人以外の者についても寄与の事実はあり得ると思いますけれども、それを今回の寄与分制度の中に取り込むことは相当ではないのでないかという結論に達したわけでございます。内縁の妻、事実上の養子は相続人にはならないわけでございますが、これは相続における法律関係の安定という点からいきまして、法律婚主義、法律上の養子、そういう主義を貫くことが一つの大きな要請でございます。
 具体的に一番問題になると考えられますのは直系卑属の配偶者、つまり夫に先立たれた嫁でございますけれども、確かにお気の毒な事情がある場合も生ずるかと思います。この場合の対応策といたしましては、生前の贈与でございますとか遺言の活用でございますとか、あるいは亡くなった夫の親との間に養子縁組をするというようなことをしておきますれば、当然に相続権を取得するわけでございますので問題はなくなるわけでございます。そういった方法によって賄っていかざるを得ないのではないか。今回の寄与分の制度に即して申し上げますと、そういった第三者あるいは準相続人を取り込むということは非常に問題が多い。そういうようなことから、法制審議会でも長期にわたって慎重な検討を遂げられたわけでございますけれども、今回のこの改正にはそういった内容は取り込まなかった、かような経過でございます。
#215
○金子(み)委員 今回の改正には入らなかった事情はわかりました。
 申し上げようと思っておりましたことをいま局長もおっしゃったのですが、直系卑属の配偶者、嫁ですね、せめて嫁は同じに考えていいのじゃないかと私は思うのですが、どうして嫁を全然無関係ということにしてしまわれたのでしょうか。いまの御説明の中でも嫁の部分についてはちょっと納得できなかったのですが、何か特別のことがあったのでしょうか。
#216
○貞家政府委員 これは基本的には相続人間の衡平を図る制度でございますから相続人にすれば問題はないわけでございます。そこで、根本的には配偶者の代襲相続権を認めればすべてが解決されるわけでございます。また、それ以外には簡単にこれを取り込む方法はちょっとないと思うわけでございます。
 しかしながら、この問題も実は相当長期にわたって検討されたのでございますけれども、配偶者の代襲相続権を認める、つまり夫が亡くなった場合に夫にかわって配偶者が相続をするという制度をとることはやはりできなかったのでございます。これは、配偶者の代襲相続を一般的に認めるということになりますといろいろな問題が生じてまいります。妻だけに認めて夫に認めないのは片手落ちだということになると思います。夫が代襲相続をすることを認めるということになりますと、これは妻の親から夫が相続をするという関係になるわけでございますが、その場合にはちょっと一律に認めがたいであろう。もちろん、妻が亡くなりまして妻の両親を引き取って扶養しているというような状況にある場合もございます。けれども、そうでない場合もある。それから妻の場合におきましても、再婚している場合もございますし、姻族関係の終了の意思表示をしているというような、夫の親族といわば縁を切ったというような状況にあるものもございます。そういったいろいろな事情を考慮しませんと、これを一般的に認めることは明らかに不当であろうということになるわけでございます。
 しかしながら、一定の要件を認めるということになりますと相続関係は非常に複雑になるわけでございまして、そういった要件を合理的に定めるということも非常に困難が伴うわけでありますし、非常に多くの除外例を認めなければならないそういう代襲相続はそもそも無理ではなかろうかということになったわけでございます。
 なおその際に、そういうふうな妻の位置づけをすることが生存配偶者の自由を事実上拘束するという批判も若干はございました。
 それから、そもそも代襲相続というものの基本的な考え方は、後の世代の者が先に死亡した前の世代の者にかわって相続人の地位につくということで考えられている制度を、いわば横の相続であるところの配偶者に持ってくるということが非常に不整合であると申しますか問題が多い。また、立法例を見ましても妻の代襲相続、夫の代襲相続を認めている例がないようでございます。そこで今回、妻の代襲相続、配偶者の代襲相続は立法化するのは適当ではないのではなかろうかという結論になったわけでございます。
 そこで、繰り返しになりますけれども、夫が死亡して子供があります場合には、子供は、夫つまり子供から申しますと父でありますけれども、父の代襲相続をするということによりまして母親たる妻も間接的に利益を受けることが可能だと思います。子供のないときは非常にお気の毒な場合もあるかと思いますけれども、その場合には亡くなった夫の親との養子縁組あるいは遺言、生前の贈与処分というようなもの、そういったものによってカバーされるということを期待しているわけでございます。
#217
○金子(み)委員 審議の経過はよくわかりましたけれども、この問題はなかなか納得しがたい問題だと思います。
 それで、いまのお話もありましたように、夫と妻が同じ立場で相互になることがあるわけですね。そういうことがございますから、夫と妻というのはほかの人たちと比べては特別な関係にある人たちでございますから、相続人の中に妻を認めるとかあるいは逆に妻の方の親の財産だった場合には夫を認めるとか、代襲相続権というものをつくることがむずかしいというのでございますならば、ほかの人も入ってくる可能性があるからむずかしいということであるとすれば、夫と妻に限ってだけ相続人に該当させるというようなことは議論はあったのでしょうか、そういうものは全然話の外でございましょうか。私は専門でないのでよくわかりませんが、考え方として……。
#218
○貞家政府委員 おっしゃる趣旨は、夫に対して妻が代襲相続をするけれども、妻に対しては夫は代襲相続しない……。
#219
○金子(み)委員 そうじゃないです。お互いになり合うことが、いまの御説明の中にもありましたように、夫の親の相続の場合に妻は夫の代襲相続人、それから逆に妻の親の財産相続の場合は夫が妻の代襲相続人、こういうことになることがあり得るのじゃないかと考えたわけです。
 多くの場合は、今回の例にもありますように、夫の親の財産相続ということで、被相続人から見れば直系卑属である息子の妻ですから、これが対象にされていないわけですが、これを相続人の中に取り込むことをすれば問題はないのではないかと思うのですが、なぜ取り込めないかという問題です。
#220
○貞家政府委員 相続人そのものにいたしましても、やはり先ほども申し上げましたように、場合に応じて非常に不合理な場合が多いという結果になるのではないかと思うのでございます。
 ですから、もし強いて立法するといたしますと、非常に特殊な場合だけを拾うとかあるいは非常に多くの場合は例外として除外するというようなことにせざるを得ないのではないかと思います。そうなりました場合に、これは相続関係というものを非常に明らかでないと申しますか不明確でわかりにくい複雑なものにするというような弊害がどうしても伴うのではないかと考えるわけでございます。
#221
○金子(み)委員 いまの件につきましては、さらに検討していただきたいという要望を申し上げておきます。
 寄与分のところでもう一つお尋ねしたいのですが、今回の改正では、先ほども申しましたように、財産の維持または増加に特別の寄与をした相続人ということになっているわけですけれども、財産の維持または増加に対する特別の寄与ということだけでなくて、その他の事情という問題があるわけですが、その他の事情というのは何を指していらっしゃるのか不明確なので教えていただきたいと思います。
 あわせて答弁の中に入れていただければいいと思いますのは、財産をつくることだけに寄与したのではなくても、たとえば親が長年寝たきりの病人であった場合に、財産形成ではないけれども、その親の扶養から看護から一切の世話をして特別な寄与をしたという場合があると思うのですね。そういう人たちが今度は対象から外されているわけですね。ですけれども、そういうものを対象として拾い上げるために、その他の事情というようなものが生きてくるのではないかというような気がいたしますけれども、それはそうじゃないのでしょうか、そこら辺の御説明をお願いします。
#222
○貞家政府委員 特別の寄与というのはいわば一つの要件として厳格な感じを与えるわけでございますが、これはどういう考え方かと申しますと、一般的に夫婦の間では協力扶助ということをしなければなりませんし、また、その他の親族の相互間でも通常の扶養義務というものがあるわけでございます。
 したがって、そういうような親族としてあるいは夫婦としての義務の範囲内といいますか、通常期待されるという程度のものは特別の寄与とは考えない。つまり子供が親にいわゆる孝養を尽くすということは当然のことでございますし、妻がいわゆる内助の功として支えていくというのはむしろ相続分の引き上げという方で報いるということになるわけでございまして、その程度を超える、通常期待されないという程度、したがいまして、たとえば農家でございますとか自家営業の商店などで長年主人を助けてくる、それから助けてきた子供でございますとか、妻と夫と別々に、いわゆる共かせぎというような状況で財産形成に貢献したという者は当然入るわけでございますけれども、家事に専従した場合のいわゆる内助の功というものは、寄与分という方ではなくてむしろ本来の相続分の方でその貢献を評価するという考え方でございます。
 おっしゃいましたその他の方法で特別の寄与をしたという中には、単なる精神的なバックアップと申しますか、これは相続で財産を取得させる原因でございますから、それは考えていないわけでございますけれども、しかし、長年にわたって療養看護をしたということは、結局は、主婦なり娘なり息子なりがそういう付き添いをするということでは、家事やそのほかの仕事ができないわけでございますから、通常は本来ならば付添人と申しますか看護人を雇わなければならない。そうなりますと、それは被相続人としては出費を余儀なくされるわけでございますが、それを献身的な看病によってそういった出費を免れさせたということであれば、これは喪失すべかりし財産の損失を防いだというように評価されるわけでございまして、そういった看病というようなものはやはり寄与分として評価されると考えているわけでございます。
 その他一切の事情と申しますのは、これは寄与の内容自体ではございませんで、寄与分としてどの程度のものを与えるかということに際しまして、寄与の時期、方法、程度、それから相続財産の額は例示されておりますけれども、そのほか相続全体の、被相続人の債務がどのくらいあったとか、あるいは寄与をした者にすでに相当な生前贈与が行われていたかどうかとか、また遺留分、これは他の相続人が最低限として確保するという一応の基準でございますけれども、そういった遺留分権利者がどれだけあって、それがどの程度であるか、そういうような点も考慮して額を相続人間の衡平に合致するように決めてもらおう、こういう趣旨でございます。
#223
○金子(み)委員 大体わかりましたが、こういう例があるだろうと思うのですね。
 夫婦の関係はいま御説明がありましたとおりで、夫婦間の協力とか扶助とかいうのは当然のことなんで、どれだけやっても、それは夫婦の間の問題だから、妻として夫の親のめんどうを見るということは当然だというふうに考えてもいいかと思うのですけれども、夫婦間の問題ではなくて、きょうだいがあることが多いですね。
 夫婦でなくてどちらかのきょうだい、妻のきょうだいか夫の方のきょうだいかが親のめんどうを一生懸命になって見てくれていた、だから夫婦は家業に精を尽くすことができた、そしてめんどうな世話の要るお年寄りの世話はそのきょうだいが必死になってやってくれていたというようなことになりますと、これはいまお話しの職業的な家政婦とかあるいは付添人とかいうような人ではなくて無償奉仕ですね。全くただで奉仕したということになるわけなんですが、おかげで財産は減らないで済んだということにもなるのでしょう、賃金を払わないで済むわけですから。
 そういうことを考えると、この人は特別な寄与をしたというふうに考えていいんじゃないかと思いますが、そういうのがこのその他の事情の中で取り込まれていいんじゃないかというふうに思ってお尋ねしたわけだったのです。
#224
○貞家政府委員 妻のきょうだいということになりますと、これはやはり相続人間の衡平を図るというこの制度からはちょっと外れる結果になるのはやむを得ないのではないかと考えます。
#225
○金子(み)委員 そうすると、その他の事情についてもやはり相続人というのが前提になるわけですね。
#226
○貞家政府委員 御指摘のとおり、相続人間の衡平を図るための一切の事情、こういう趣旨でございます。
#227
○金子(み)委員 それでは、今回の改正は相続人に限ってのことだということを理解できましたが、これから先にまだいろいろと検討を加えていただかなければならない問題があるわけでございますが、その際に、相続人に限らなくてもいまのような場合が起こり得るし、非常に多いことだと思いますので、その点も寄与分を受ける対象として今後考えていただきたいというふうに要望いたしておきますので、お願いをいたします。
 それからその次には、夫婦財産制の問題、財産を別産制にするか共有制にするかという問題がいろいろとあるわけでございますけれども、実はどっちがいいかということは非常にむずかしいし、多分きっと審議会でもいろいろと議論がおありになったんだろうと想像いたします。
 それで、現在は別産制になっているわけでございますが、これについてどっちがいいかという議論がいろいろあります中で、総理府が調査をいたしましたものがございますね。五十四年の七月です。総理府の調査ですが、これによりますと、男性の場合は共同財産にした方がよいというのが五六%、いまの法律のままでよいが二六%。女性の場合は共同にした方がいいというのが七〇%、いまのままでよいというのは一七%で、女性の方がはるかに共同財産にした方がよいという意見を持っているようでございます。総数にいたしますと、共同にした方がいいが六四%で、いまのままでいいというのは二一%、これは男女合わせた総数でございます。いま申し上げましたように、女性は共同にした方がよいということの意見が七〇%もあるということになるわけでございます。
 この問題ですが、やはり女性がこのような数字を示しておるということは、言葉をかえれば、夫の収入やあるいはそれによって得た財産というのが夫婦共同の財産であるという意識が強くなってきているからだというふうに考えられるわけでございます。
 そこで、これを共同にした方がいいのかどうなのかということの議論の中で、いろいろなことが考えられるわけでございますが、共同にした場合の利害得失があるわけでございますね。いいことばかりでなくて、たとえば財産だけではなくて負債の場合も共同に責任を持たなければならないということもありますから、メリット、デメリットは両方にあるというふうに考えますので、これを決定するのはなかなかむずかしいだろうと思うのですけれども、私がここでお尋ねをして考えていただきたいと思いますことは、資料で拝見しましたら、別産制か共有制かについて、日本だけでなく外国にもいろいろと議論があって、諸外国もいろいろな形でこのことを実施しているようでございます。日本のように別産制を徹底的にやっているのはイギリスだというのですが、イギリスの理由は伝統にないということが理由なんだそうで、これはちょっとどうかなと思いますが、そういうふうに書かれております。
 そこでお尋ねしたい点は、諸外国では純粋にどちらかの制度のみをとるという国は余りない。別産制の国は共有制的要素、共有制の国は別産制的要素を何らかの形で併有させているところが多い、こういう御報告があるわけでございますね。御承知のことだと思います。そこで、そういう報告があるのだとすれば、そういうふうな形に、言葉をか見れば両方の要素を何らかの形で併有させるということになるわけだと私は思うのですけれども、そういうことが考えられるのかどうかです。日本の場合にそういうことは全然だめなんだというふうに考えるべきなのか、それとも日本でも将来そのことを考えてみることができる可能性があるのかどうか、その辺のことをお尋ねしたい。
#228
○貞家政府委員 夫婦財産制をいかにするかという問題は技術的にも非常に困難な問題が伴うのでございます。それで、これは御指摘のとおりメリット、デメリットがございます。
 しかし端的に申し上げると、共有制というものは妻の実質的な地位の擁護という点には大いに役立つと思います。ただ欠陥としては、現在の対第三者との関係において非常に複雑な問題を生ずる。これは第三者の犠牲において得られる公正さであるというような批評もあるわけでございまして、そういう点はどうしても一つの難点だと思います。
 別産制というのは、これは単純明快でございます。非常に単純明快でございますのと、それから婦人団体の中にも、これは非常に進歩的と申しますか進んだ考え方の中には、夫と妻との経済的独立ということを強調される、そういう考え方もございます。むしろ共通制というのはその辺をあいまいにするんだというような考え方も理論的にはなくはございません。非常に抽象的に考えれば確かにそのとおりでございます。
 いろいろあるわけでございまして、その折衷案的なものは確かにございます。非常に大げさに言いますならば、日本のいまのわれわれの制度も、一応別産でございますけれども、解消時には清算をするというような、実質的な共有制に着目して清算をするというような制度をとっているわけでございます。財産分与でございますとか相続分の引き上げとか、それは一種のそういった意味もあるわけでございます。
 折衷的な制度としましては、たとえばドイツの制度なども剰余共通制と言われておりまして、これは一応別産にいたしておきまして、離婚等の場合、婚姻解消の場合にそれを清算する、それぞれの財産の増加分を計算いたしまして、その差額の二分の一を少ない方が多い方に対して請求をするというような複雑な構成をとっているわけでございますけれども、ただ、こういうふうに非常に精緻なといいますか緻密な制度をつくりますと、現実の適用として非常にむずかしい問題があるわけでございます。
 たとえば西ドイツなんかは、こういった非常に理論的なすぐれた制度を持っておりますけれども、相続分につきましては、その計算の煩雑さを避けるために、ちょうど今回の改正と同じように相続分をその清算に引きかえて割り増しをするというような制度にしてしまったわけでございまして、なかなか理論がすぐれているからといって実際に行われるかと申しますと、必ずしもそうとも言えないわけでございます。
 ただ、いろいろ考えなければならない点はございます。そこで、夫婦財産契約についてはいま出ております議論は非常に抽象的な議論ばかりでございます。と申しますのは、夫婦財産制につきまして、これは夫婦財産契約というものができるわけでございますけれども、それがきわめて微々たるものだということでありまして、したがって、それは法定財産制である別産制を利用しているわけでございますけれども、この問題を本格的に検討するためにはもう少し具体的に、こういう場合にどうすべきか、こういう問題が起こって不都合であるというような積み重ねというものがございませんと、議論が非常に抽象的になるのではないかと私は思います。もちろん、夫婦財産制につきましては諸外国の立法例もあることでございます。さしあたり今回の検討では別産制を維持するということになっておりますけれども、これは将来の研究課題として十分考えなければならない問題であろう、かように考えている次第でございます。
#229
○金子(み)委員 財産の問題でたとえばこういうことが起こり得るので、そういう場合のことを考えてみたいのですが、結婚してから夫婦で一生懸命に働いて取得した共有財産があるといたします。一生懸命に働いた結果、たとえば耕地をふやしたとかあるいは山林を買うことができたとかというふうにして財産をふやしたといたします。
 これは二人で一生懸命働いた結果つくった財産だったのですが、多くの例は夫なのですけれども、その財産を妻には黙って勝手に処分してしまうということがあるのですね。こういうようなことを阻止できないかということです。これは、いま別産制だから勝手に処分してもいいという解釈になるのでしょうか。実際問題としてはこれは共有財産としてお互いが理解し合っているのですけれども、制度上は別産制だから構わない、こういうことになりますでしょう。もしそうだといたしましたら、そういうことがないようにこれを防止するような立法措置がとれるかどうか。
#230
○貞家政府委員 これはもし、実体関係が共有である、単に名義が夫名義になっているというような関係が立証できますれば、それは勝手に処分をするということで効力がないという問題にもなるかと思うわけでございますけれども、一般的にはなかなかそういった立証をすることはむずかしいわけでございまして、固有財産でございますと一応単独の所有は可能だということになるわけでございます。
 しかし、これを完全に防止するためには、共有財産とそうでない財産とを非常にはっきりと区別をいたしませんと、取引に影響いたしまして第三者が非常に迷惑をこうむる、不測の損害を受けるということになりますので、これは共有制をとった場合と同じようなむずかしさがあるわけでございまして、これは結局共有制に非常に近いわけでございます、接近しているわけでございます。でございますから、共有制をとった場合の問題点の検討とあわせてと申しますか、同じような検討を加えないといけないわけでございまして、それを避けるためには、あらかじめ名義も共有にするとかあるいは妻の名義にするというような方法によらざるを得ないのではないか、かように考えております。
#231
○金子(み)委員 それでは、次に妻の財産税についてちょっとお伺いしたいのですが、大蔵省の方お見えになっているでしょうか。
 今度の民法の一部改正で、妻の相続分が三分の一から二分の一に増加をいたしました。そうして相続税も二分の一までは非課税になったわけでございまして、これは相続人である妻のためには大変に有利になったということが言えると思うのでございますけれども、別の考え方もございまして、大体財産相続なんということは元来資産家の場合にだけ起こり得る問題であって、大方の一般庶民には余り関係のない問題だというふうに考えているわけでございます。
 そうだといたしますと、非課税分が有利になったということは、言葉をかえれば大資産家の財産保全のために役に立ったんだ、こういうふうにも言えないわけではないと考えます。しかも、現在はそのあり方が一定の限度がありませんから幾らでも決めることができる、いわゆる青天井と申しますかそういうかっこうになっておりますので、私が申し上げてお尋ねしたいのは、この場合に一定額の限度を設けることができるかどうかということなんです。たとえば一億円とかあるいは二億円とか、どうせそういう大きな金額の問題だろうと思いますので、そういうことができるかどうかということをお尋ねしたい。
 なぜかと申しますと、実は大分前、五年ぐらい前になりますが、これは新聞に出ておりましたから皆さん御存じだと思いますが、鹿島守之助さんの奥さんが当時三分の一の相続分を受け取られたわけなんですが、三分の一の法定相続として六十億円の節税ができたのだということが新聞に報道されていて、一般の主婦たちが非常にため息をついたということがあるわけなんです。ですから、そういうことで大資産家には大変に有利になった、大資産家を大変守ったような感じになるという考え方が一方にあるわけなんで、そういうふうなこともありますから、一定の限度を設けることができれば国民も理解できると申しますか納得できるんじゃないかしらというふうに思いますが、そういうことは可能なんでしょうか。
#232
○鈴木説明員 相続税におきます配偶者の負担軽減をどうするかという問題につきましてはかなり変遷がございます。
 四十七年度までは、先生御指摘のような一定の限度を設けまして法定相続分を軽減するという仕組みがございました。四十七年になりますとそれが少し変わりまして、婚姻期間の長さに応じて限度額を決めるというような思想も取り入れられてございます。それ以後いろいろ配偶者の軽減措置については議論がございまして、議論の方向は、大体配偶者と申しますか妻の座を強化する方向で税の面でも改善を図れということであったわけでございます。
 現在の制度ができましたのが五十年度でございますけれども、このときの考え方はどういうことかと申しますと、妻の相続というのは、いわゆる水平相続と申しましょうか同一世代での相続ということでございます。したがいまして、おっしゃいましたように、資産家の場合に膨大な金額が非課税のまま配偶者に移りますけれども、またそう長くない時期にもう一回相続が出るということがあるわけでございます。そういったものにつきましてはいわゆる縦の相続、やはり税負担というものは当然別に考えてもいいのではなかろうかというのが税の立場からの考え方でございまして、五十年度におきましてそういう思想が打ち出されまして、現行の制度でございますけれども、三分の一までは非課税、青天井というところに踏み切ったわけでございます。その後も税制調査会等でこの青天井の問題につきましていろいろ議論がなされたことはございますけれども、いま申し上げましたような水平相続という場合の特殊性ということで、現行制度をあえて改正する必要はなかろうというのが大勢を占めていたわけでございます。
 今回、妻の座優遇ということでもって法定相続分が二分の一まで引き上げられるに伴いまして、相続税法もそれにリンクした形で改正をいたすわけでございますので、やや後退した形でもう一回頭打ちを設けるというようなことは現段階では必要ないのではないかというのが私どもの判断でもございますし、今回の改正に当たりまして税制調査会で御議論いただきましたけれども、その際にもそういう御判断であったわけでございます。
#233
○金子(み)委員 もう時間になりましたのでやめることにいたしますが、いまの大蔵省の方、四十七年度に限度があったとおっしゃいましたね。そのときはどういうものだったか、具体的に一言でけっこうですから。
#234
○鈴木説明員 四十七年度の限度は、婚姻期間に応じますけれども、最高限度三千万円でございます。
#235
○金子(み)委員 いまの問題はまた別の機会にと思って保留いたしますけれども、きょうはもう時間になりましたのでこれで終わらせていただきますが、最後に一言、法務省の責任者である法務大臣からお考えを聞かしていただきたいことがあります。
 それは、現在は家庭で子供の数が平均一・七人になってしまっているわけです。二人を割っております。大変数が少なくなっておりますことですとか、あるいは平均余命が御承知のように大変延びております。したがって老後の生活不安がふえたという考え方にもなるわけでございますね。今日はそういうような事態になってきているわけでありますので、配偶者に対する措置というのは十二分に考えていただいていいのではないかというふうに思います。今回の法律改正がそういう意味合いにおきましていろいろと考慮を払われて有利に進めてきていただいていますことは結構なことだと思うのでございますけれども、先ほど来要望申し上げておりますようにまだ一〇〇%ではないという面がございます。したがいまして、これはこのままで終わるのではなくて、近い将来必ず再検討を加えてさらに改善されることが望ましいわけでございますが、それに対する大臣の御決意がございましたら伺いまして、質問を終わりたいと思います。
#236
○倉石国務大臣 いろいろ御好意ありがとうございました。よく理解いたしております。
#237
○木村委員長 次回は、明十六日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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