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1979/04/16 第91回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第091回国会 法務委員会 第16号
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1979/04/16 第91回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第091回国会 法務委員会 第16号

#1
第091回国会 法務委員会 第16号
昭和五十五年四月十六日(水曜日)
    午前十時十分開議
 出席委員
   委員長 木村武千代君
   理事 金子 岩三君 理事 中村  靖君
   理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君
   理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君
   理事 柴田 睦夫君
      井出一太郎君    亀井 静香君
      熊川 次男君    佐藤 文生君
      白川 勝彦君    田中伊三次君
      福田  一君    井上 普方君
      北山 愛郎君    楯 兼次郎君
      飯田 忠雄君    長谷雄幸久君
      木下 元二君    岡田 正勝君
      田島  衞君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 倉石 忠雄君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 筧  榮一君
        法務省民事局長 貞家 克己君
 委員外の出席者
        大蔵省主税局税
        制第一課長   内海  孚君
        大蔵省主税局税
        制第三課長   鈴木 達郎君
        農林水産省構造
        改善局農政部就
        業改善課長   鈴木 一郎君
        最高裁判所事務
        総局家庭局長  栗原平八郎君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十六日
 辞任         補欠選任
  河野 洋平君     田島  衞君
同日
 辞任         補欠選任
  田島  衞君     河野 洋平君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 民法及び家事審判法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第五八号)
     ――――◇―――――
#2
○木村委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所栗原家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○木村委員長 内閣提出、民法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沖本泰幸君。
#5
○沖本委員 御質問に先立ちまして、先輩のいろいろな御質問なりがあるわけですが、それと重複するものもあると思いますし、前後してお聞きしたりすることもあると思いますが、ほかの方と重ならないようにいろいろ考えてみたのですけれども、やむを得ず重なる場合もありますから、あらかじめ御了承いただきたいと思います。
 まず大臣にお伺いいたします。この法律改正によっていわゆる世間的に妻の座が大きくアップされてくる、こういうふうな現代社会に即したような形で法律改正が行われるわけです。それに伴いまして、社会福祉その他の諸制度の中に改めなければならない問題も多く出てきておるわけです。たとえば税金の面なり相続税の問題なり、いろいろと今後問題化していくわけです。法律は内閣の了承を得てお出しになるわけですけれども、そういう問題について意思の統一あるいはもろもろの改めるべき点は改めなければならないという観点のもとに、内閣の方で話のすり合わせなり意見の交換なりというものはあったのでしょうか、どうなのでしょうか。
#6
○倉石国務大臣 ただいま御審議を願っております民法の改正につきましては、政府部内においていろいろお話がございましたときにも、その趣旨においては皆さん賛成でございまして、この法律の成立することを待望いたしておるわけでございます。
 しかし、ただいまお話のございましたように、こういう民法改正等を中心にして、同じような方向でもろもろの施策について話し合いが行われたかというお尋ねでございますが、私になりましてから、そこまで改めてそういう御相談の会を催したということはございませんけれども、国際婦人年等いろいろ国際的にも催しがされておりますし、一般的にわが国の社会生活全体について、女権を尊重するあるいは妻の座をできるだけ安定したものにしようではないかという風潮が御存じのように出てまいっておると思いますので、私どもも、そういう点についてさらに検討していくべきではないか、こう思っておる次第であります。
#7
○沖本委員 今回の改正に当たって、それぞれいろいろな点が指摘されておるわけでありますが、そういう点について今後いろいろと検討を加えていただかなければならないわけです。
 それにつきまして法務省の方にお伺いするわけですが、総理府の広報室が相続に関する世論調査というものをいたしまして、妻と子が共同相続する場合、現行の妻三分の一に対して二分の一がよいとする者が二八%、三分の二がよいとする者が一三%で、アップ賛成派は合計で四一%、現行の三分の一でよいとする三九%をわずか二%上回ったにすぎない。それから妻と夫の父母が共同相続する場合、現行法では二分の一ずつであるのをこの法律では三分の二にしておるわけですけれども、世論調査では四九%がいまの法律のままでよいと答えている。しかし、二二%の人が妻が全財産を相続できるようにした方がよいというふうに言っているわけです。妻と夫の兄弟姉妹が相続する場合、妻が三分の二のままでいいとする二七%に対して、妻だけが相続した方がよいとする者が四四%を占めているということで、全体としては配偶者相続分の拡大志向と見ているのじゃないだろうかという点ですけれども、この点はどういうふうにおとりになっていらっしゃるわけですか。
#8
○貞家政府委員 実は、いま御指摘の世論調査は昭和五十四年でございますが、それより前に昭和四十二年にやはり総理府が実施しました世論調査におきましては、配偶者が子とともに相続する場合の相続分三分の一について、ちょうどよいという者は五五%、少な過ぎると答えた者は一四%でございました。それに対しまして、五十四年三月に実施しましたただいま御指摘の世論調査においては、現行法どおりでよいと答えたものが三九%でございますが、二分の一または三分の二に引き上がるべきだという者が相当多数に達しておりまして四一%ということになっております。
 その間の国民各層の意識の変化というものは非常に顕著であったという点がございます。なお、一夫婦当たりの子供の数というものも非常に変化をいたしております。そういった家族構成の変化と国民一般の意識の変化というものを勘案いたしまして、相続分の引き上げが相当であるというように判断いたしたわけでございます。
#9
○沖本委員 裁判所の方にちょっとお伺いいたしますが、家裁に持ち込まれた遺産分割事件は戦後どのぐらいの数になっておるのでしょうか。事件数として、たとえば二十年代は年間千件ぐらい、三十年代は二千件ぐらい、四十年代が三千件ぐらい、五十二年に至って四千六百九十一件、五十三年はどのぐらいあったのか実態は私の方ではつかめていないわけですけれども、こういうふうな肉親同士の相続争いあるいは相続戦争に近い実態が出てきているのじゃないか。
 また、年々増加しているこういう問題に対して、その争いの原因の主なものはどういうものであろうか。また、分割事件で問題が多いのは妻の相続分をめぐる争いであろうと言われてはおりますが、嫁としゅうとの争いが原因で別居しているときに、子供が法定相続分の三分の二を相続してしまう、残りの三分の一では未亡人の生活は成り立たない、こういうケースが多いとも聞いております。こういうふうな事件について、家裁ではどういうふうな判断を下していらっしゃるのか。また、調停がうまくいかないで不調に終わり審判分割に移った場合はどうなるのでしょうか。
 現在の法律では、審判分割における相続分の自由裁量の余地が否定されているために、妻の相続分は法定相続分の三分の一で審判されてしまっていることになるわけですけれども、こういう点についての妻の相続権利は、実際には生活していく上で苦しい状態になるわけですけれども、現在の配偶者、妻の側から今回の改正は前進したということは言えるわけですが、果たして二分の一に引き上げたということについて相続争いの問題はなくなるんだろうか、あるいはかえって多くなるんじゃないだろうかという心配もあるわけです。こういう疑問について、裁判所の方ではどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。
#10
○栗原最高裁判所長官代理者 数点にわたって御質問でございますので、順次お答え申し上げます。
 最初の事件の趨勢の点でございますが、司法統計年報によりますと、調停、審判に分けて御説明申し上げますが、遺産分割事件の調停件数は、昭和二十年代年平均千四百五十八件、三十年代が二千七百三件、四十年代が三千八百三十二件、五十二年は四千六百九十一件、五十三年が四千七百三十件、五十四年が四千八百三十九件となっております。つまり調停事件におきましては、多少の起伏はございますが増加の一途をたどっておりまして、昭和二十年代に比べますと、昭和五十四年には約三・三倍に達しておるわけでございます。
 一方、審判事件について見ますと、昭和二十年代は年平均三百六十三件、三十年代が六百六件、四十年代が七百三十四件、五十二年が八百三十九件、五十三年が八百八十一件、五十四年が八百七十六件を数えております。五十年代になりましてやや伸びが縮まっているといいますか横ばい傾向にありますが、全体として審判事件も増加の傾向にあると言えるかと思うわけでございます。
 次に、その原因の点でございますが、遺産分割がどのような原因で争いとなり家庭裁判所に持ち込まれるかにつきましては、統計上明らかにいたしておりません。ただ、東京家庭裁判所が昭和四十九年四月一日から五十年三月三十一日までの一年間に、横浜、浦和、千葉などの協力を得まして既済となりました六百四十三件について実態調査をいたしましたその内訳から見ますと、相手方が遺産を独占しているということを理由として申し立てたものが二三・一%、感情的対立から協議が困難であるとして申し立てたものが二二・一%、分配の方法について話し合いがまとまらない、争いがあるということで申し立てたものが二一・六%となっているようでございます。
 それから、相続人間でどういうような具体的なケースが多いかもう少し申しますと、ただいま委員御指摘のとおり、たとえば後妻と先妻の子というような間柄であるとかあるいは非嫡の子と嫡出子の争いであるとか、そういうような身分関係にある者の間で話し合いがまとまらないというケースが比較的多いようでございます。
 さらに、妻の相続分等をめぐっての争いが多いのではないかという御指摘でございましたが、確かに被相続人、夫が亡くなりましてから妻の老後の保障をどうするかという扶養の問題との絡みで遺産分割の申し立てを出されるケースがかなりあるわけでございます。そのような場合の多くのケースは、たとえば妻対先妻の子供という形をとるよりも、むしろ後妻の子供と後妻というグループと先妻の子供というようなグループ間の争いとなるような場合が多いように私は承知いたしております。そのような場合に、妻の相続分は現行法では三分の一にとどまるわけでございますが、自分自身の子供がある、その子供の相続分等を合わせて妻のたとえば従前の居住権を確保するというような扱いをし得るようなケースがかなり多いように見受けられるわけでございます。
 最後に、調停でも話し合いがまとまらずして審判に移行した場合に、現在の妻の法定相続分三分の一では妻の生活保障に十分ではないのではないかという御指摘があったかと思うわけでございますが、そのような点を実務では考慮いたしまして、多くの審判例で妻の寄与分が従前認められ、その寄与分と合わせまして妻の居住権その他生活の保障が成り立ち得るように審判がなし得るケースにつきましては、そのような扱いが見られるように承知いたしておる次第でございます。
 以上でございます。
#11
○沖本委員 法務省の方へちょっとお伺いいたしますが、老人を扶養した子とそうでない子と何の差別も設けてない。ですから、生存中は寄りつかなかった子が親の死亡後は権利だけは主張するという点でありますが、いまの民法の規定でいくと、これはどうしようもないという問題が一つ。それから最近非常に多くなってきているのは、老人が養護老人ホームに入って死亡したとき、生存中は費用負担はもとより見舞いにも来ないで葬式にさえ来なかった相続人が遺産相続のときあらわれて醜く争うことが少なくないようになってきているわけです。最近では、年金制度の普及などで医療費として老人たちがためた金が意外な額に上がっていることがあるわけですけれども、老人ホームにおける扶養者つまり国庫に対して費用弁償した後相続問題を考えてよいのではないか。この場合でも、遺留分として成人の子を保護する理由は乏しいわけです。
 法制審議会では、妻の重視や相続財産の形成に寄与した者に寄与分を認めるなど改正点を提示しているわけですけれども、いまのような理由から、この際、遺言自由の原則による相続制度が望ましいわけで、仮にそこまで踏み切れないにせよ、相続に当たり、それまで被相続人の生命、身体、健康を維持したいわば扶養分を考慮しないのはなぜだろうか。いわゆる寝たきり老人の多くは嫁や娘にめんどうを見てもらっているが、もし仮に付添婦さんや家政婦さんを雇ったと考えれば相当の支出が相続財産から行われるはずであり、寝たきり老人の世話をした嫁さんや娘さんは財産の形成に寄与したとも言えるわけです。こういう点、被相続人の声も十分考慮を払うべきじゃないかということがあるわけですけれども、その点についてはどういうふうにお考えですか。
#12
○貞家政府委員 本来、直系血族の間では互いに扶養する義務があるということでございまして、すべて平等に扶養義務を負うというたてまえになっているわけでございます。
 したがいまして、特定の扶養をした者がそれによって著しく損失を受ける、他のそれを免れて顧みないというような者に対して、財産上もちろん求償するという余地はあると思います。しかしながら、扶養ということ自体がきわめて道義的と申しますかなかなか法律上の強制になじまない性質のものがあるかと思いますが、法律的には、少なくともそういう扶養義務を事実上免れている者に対して財産的に求償するという余地は当然あるわけでございます。
 なお、そういった一般の扶養義務の履行につきましては対象にはならないわけでございますけれども、長期間もっぱら療養看護に努めて出費を免れたというような場合には、今回の改正案にございます寄与分の制度というものによって、その寄与が報われるという道もあるわけでございます。
 大体以上のように考えております。
#13
○沖本委員 それから養子の相続権でございますが、養方と実方の両方について相続権を持つと現行法ではされておるわけです。そして、養子は養った親に対しても実際の親に対しても、直系卑属として第一順位の相続権を持っているわけですが、養子に実親についての相続権を残しておることは、兄弟姉妹の相続権を残したこととあわせて、相続は血統によるとの考え方が強くあることのあらわれであることは否めませんけれども、養子の相続権について現行法のままになさった理由はどこにあるのでしょうか。
#14
○貞家政府委員 養子制度につきましては、かねてからいろいろ問題点が指摘されているところでございまして、諸外国の例にありますように、いわゆる特別養子と申しますか断絶養子と申しますか、いわば実方の方の相続の権利というものを断絶いたしまして、もっぱら養親の方の親族に取り込むというような制度も考えられているわけでございます。
 ただ、養子制度はそれぞれ国の歴史的な沿革というような事情もございまして、なかなか結論を得がたいところでございますけれども、養子制度につきましては、かねて法制審議会でいろいろ「仮決定及び留保事項」を発表いたしました際にも大きくクローズアップされているわけでございます。この問題は将来十分検討されるべき問題であると考えますが、今回の改正は、この養子制度の問題につきましてはなお将来の検討課題として残しておりますので、この点について特に現段階において改正を加えるということをしなかったわけでありますが、将来十分研究をいたしたい、かように考えております。
#15
○沖本委員 いまの点についてですけれども、これはいま社会問題になっているいわゆる仙台の菊田医師の実子特例法に係るいろいろな議論があるわけです。
 そういう点では甲論乙駁あるいは問題点がいろいろ社会的に出ておるわけで、そういうものに対しまして十分将来に向かって不安を除くことができるような方法もいろいろ検討していただきたいわけですけれども、そういう大きな課題に対してどういうふうな検討が加えられておるのか、あるいはこれからどういう検討をしていこうとお考えになっているのか、その辺をお伺いしたいのです。
#16
○貞家政府委員 ただいま御指摘の実子特例法と言われているものがございまして、この考え方は、いわゆる実方との断絶のみならず戸籍面においても他人の子を直ちに実子として記載するという内容を含んでいるようでございます。
 そういった面につきましても、これは非常に問題があるわけでございまして、こういった制度を考えますためには、養子の年齢は一定の年齢以下に制限しなければならないでありましょうし、また縁組の手続をどうするか、効果としてもっぱら養親との関係のみを認めて実親との関係を認めないというのは、こういった特別の養子の制度の共通点でございますけれども、一体離縁ということがあるのかどうか。
 それから最も問題になりますのは、縁組登録の方法をどうするのか、戸籍上どう取り扱うのかというような面につきまして非常に問題があるわけでございまして、もしこれが全く真実の血族関係があらわれませんと、婚姻障害等の点でいろいろ困難な問題を生ずるわけでございます。そういった面についての配慮を十分にいたしませんと、これを考えるわけにはいかないというような点もございます。
 それでは、戸籍面についてはまた別個あらわれるようにしまして、ただ相続の関係だけで実方との関係を断絶するというような方法も考えられるわけでございまして、これらの点につきましては、養子制度が実際にわが国の国情のもとにおきまして、どういう目的でどういう意図のものに行われているかというようなことも十分検討いたしまして法律制度を考えなければならないと思うわけでございまして、これは私ども古くから検討いたしている問題でございますが、なお十分にこの点につきましては時間をちょうだいいたしまして研究をしなければならない問題である、かように考えております。
#17
○沖本委員 これは相続に当たって妻の座を高めていくという前進の方法をこの民法改正でとるわけですけれども、あわせて、お父さんのわからない子を生む、それが中学生、高校生にだんだん広がっていっているわけですね。それが養子ということになると、親の方の身分、お母さんの方の身分をはっきりしないと養子縁組を組めないという壁があるわけです。そのために学校へ行っている結果から来るわけですけれども、お母さんの身分がわかってしまうと、そのお母さんの方の将来に大きな問題を残してくる、こういう問題点が広がってきておるわけですね。
 ですから、これはやはり同時に考えて、こういう点を救済する方法を同時に検討していただかなければならないと私は考えるわけです。そういう点から今後この点を、一方では従来からの概念を変えていきつつあるわけですから、この部分だけは昔なりの養子の制度があるわけですし、その辺に大きな物の考え方なり社会に即していないような混乱が起こっておるわけですから、この辺は十分整理して検討していただきたい、こういうふうに考えるわけです。
 それから非嫡出子の相続分につきましては、改正試案の段階では非嫡出子の相続分を嫡出子と平等にしておったように伺うわけですけれども、それが改正案では消えてしまっておるという点の経緯について、なぜ立法化されなかったか、その点を御説明いただきたいと思います。
#18
○貞家政府委員 昨年七月に公表いたしました「相続に関する民法改正要綱試案」におきましては、御指摘のとおり、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分と同等にすることという項目が一つございました。
 この要綱試案は、それまでの段階における法制審議会での審議の経過を踏まえまして法務省事務当局で作成いたしたものでございまして、これをいわば踏み台というような意味で各界に公表いたしまして御意見をいただいたわけでございます。ところが、各界の意見の中にはこの同等化に対してかなり反対の意見がございました。
 一方、昨年の三月に総理府に依頼いたしまして世論調査をいたしましたが、その結果におきましても、これは現行維持の意見四八%が同等化の意見一六%をはるかに上回っていることが判明いたしました。また、新聞や雑誌等の各方面の反響も注意して見たわけでございますが、やはりかなりちゅうちょすると申しますか現段階では賛成できないというような意見も多数見られたわけでございます。
 こういった観点、つまりこれはいずれも法律婚の保護、重視というようなことを理由にするわけでございまして、反対の意見がかなり根強いというふうに私どもは見たわけでございます。したがって、いま直ちにこの平等化の制度を打ち出すということが国民感情に合致するものと言えるかどうか、やはり疑問があると考えざるを得なかったのでございます。
 そこで法制審議会におきましても、そういった状況を前提とされましてやはり改正は時期尚早であろう、今回は見送るのが相当であろうという結論になったわけでございまして、法制審議会の民法部会身分法小委員会で最終的に案を決定される段階におきましても、この問題はなお検討することにしよう、こういうことになったわけでございまして、そういった経過を踏まえまして、今回の改正案にはこれを盛り込むことを見送るということにいたしたわけでございます。
#19
○沖本委員 この点についても議論はいろいろあるわけですけれども、ヨーロッパの国々では新しく社会生活に即したように法律を改正してきているという点もあるわけですから、こういう点からいくと、いまの民法改正の方が進んでいる、おくれているという言い方はおかしいかわかりませんが、大分社会情勢のつかみ方に問題点がいろいろあるんじゃないかという点もあるわけで、少ない現状に対応しろというわけではありませんけれども、夫が蒸発したり妻が蒸発したり、あるいは全然籍に入れないまま結婚生活だけはしているという、いろいろ生活がいま多様化しているわけですから、一概に決めつけること自体に問題点もいろいろあるわけですから、その辺はまた今後の課題として十分検討していただきたいと思いますが、この点いかがですか。
#20
○貞家政府委員 確かに御指摘のとおり、世界各国におきましてかなり同等化の傾向が進んでおります。もっとも、非嫡出子に対する保護といいますか処遇というものがわが国などに比べまして非常に劣っているような国が急激に同等化を進めるという、いわば逆転現象とも言えるような現象が起こっているわけでございます。
 この問題は、非常に解きがたい問題といいますか、結局、一夫一婦制に基づく嫡出家族集団の保護ということと罪のない非嫡出子の保護という要請が衝突するわけでございまして、非常にジレンマに陥るわけでございます。解決は非常にむずかしい問題でありますが、やはりこの問題は、国民感情と申しますか多数の人々の人生観や人間関係のあり方ということを離れて抽象的に理屈だけで割り切るわけにはいかない問題であろうかと思うのでございます。
 そこで、ただいまも申し上げましたように、法制審議会の身分法小委員会におきましても、この問題は今回は見送るけれどもなお検討することにしよう、こういう最終的な決定になったわけでございまして、私どもも今後、世論の動向と申しますか国民感情の推移というものを慎重に見守りながらなお検討を続けたい、かように考えている次第でございます。
#21
○沖本委員 それから配偶者の代襲相続権についてですが、農家、商家で、夫の死亡後も未亡人となった妻が夫の両親のために農業に継続して従事した場合、または商売を営む店において亡き夫の両親のために、その生活を支えるために店を切り盛りしてきた未亡人がある場合において、夫の親が死亡したとき、夫が生きておれば相続したであろう相続分を夫に代襲して妻に相続させる必要があると思うわけですけれども、これは妻の地位の確保、妻の献身的な労働に対する正当な評価、そして情義の面から見ても新設すべき制度であったと思うわけであります。
 それが新設されなかったために、夫の両親の生活維持に何の貢献もしてない、他に生活している亡くなった夫の兄弟姉妹が夫の親の死亡についての相続人として財産全部を横から、悪い言葉で言えばさらっていく、これは非常に不当であると考えられるわけです。なぜ妻の代襲相続権を認める制度をつくらなかったのか、また今回の改正では見送ったとして、将来この制度を設ける考えがあるのかないのか、この点はいかがですか。
#22
○貞家政府委員 配偶者の代襲相続を認めるべきかどうかという点につきましては、法制審議会でも非常に議論が闘わされたところでございまして、結局配偶者の代襲相続を認めないという結論になったわけでございます。
 その理由といたしまして、これを一般的に認めるということにいたしますと、いろいろな場合があるわけでございますけれども、妻に認めるということになれば夫にも認めるということになるであろう。その場合に著しく不合理な場合が生ずることはないか。また妻に認めるという場合に、その妻が再婚をするかどうか、あるいは姻族関係終了の意思表示をする場合もございましょうし、いろいろな事情を考慮しないで一般的にこれを認めるということになりますと、やはりきわめて不合理な面が生ずるということになるわけでございます。
 また、一定の場合にだけ認めるということになりますと、その要件を合理的に定めることはきわめて困難でありますし、相続制度を複雑なものにするわけでございまして、結局、非常に多くの除外例を認めなければならないような制度をつくることは必ずしも適切ではないのではないか、こういう考え方が非常に強かったわけでございます。
 なお、代襲相続というものが元来後の世代の者が先に死亡した前の世代の者にかわって相続人の地位につくということでございますので、配偶者が死亡した配偶者にかわって相続人となることが代襲相続の性質から見ましてもやや異質なものであるというようなことで、妻の代襲相続ということはやはりこれを制度化するには非常に無理な点があるということで、結局今回の改正には採用いたさなかったという経過でございます。
#23
○沖本委員 今回の改正の一番の中心は、相続分について妻が三分の一から二分の一になったという点で、これは各方面から非常に評価されているわけですけれども、これは配偶者である夫が死ななければ実現しない内容ということは言えるわけで、妻の地位を確保して妻の家庭内におけるもろもろの働きあるいは育児、家事労働等も評価していくときに、妻は婚姻後の財産形成について夫と同等なくらいの貢献を果たしている。
 現に、そういう実情について二年前に家族法研究会というのが調査発表した無作為に抽出したデータによりますと、夫婦財産の帰属意識についても七十数%の人が、婚姻後に形成された財産、預貯金、土地建物、家具什器等について、その名義のいかんにかかわらず夫婦の共有すなわち二分の一ずつの権利があるという意識を持っていたということが発表されているわけです。
 これが現在の夫婦財産制についての集約的な意見ではないかと思われますけれども、この際、死亡後にやっと取得できる相続分について二分の一とする改正だけでなく、むしろ生きている間に妻の権利確保を図る必要があると考えられるわけで、そのためにも財産の共有制はぜひ必要であると考えますが、今回の改正で行われなかったのはなぜなのか、あるいは将来においてこの制度を改正する点について条文化するようなお考えがあるのかないのか、その辺はいかがでしょうか。
#24
○貞家政府委員 夫婦財産制をいかにするかという問題につきましても、法制審議会でもまたその他の研究者あるいは一般の方々の間からも非常に議論がされた点でございます。
 共有制ということが、漠然と考えますと非常に実態に即しているというふうに考えられますところから、これを支持する、これを実現させたいというような意見が非常に多いわけでございますが、ただ法制的にこれを検討いたしますと、共有制それから別産制、非常に一長一短でございまして、共有制は確かに婚姻の実態に合っているという点は大きなメリットでありますし、またそれによって妻の財産的な地位がより高くなるというような点があるわけでございますが、法制的に見ますと、対第三者の関係それから債務の負担の関係、非常にいろいろ問題がありまして、これを解決するのは法技術的な問題が非常にいろいろ生じてくるわけでございます。一方、別産制は第三者との間において法律関係がきわめて簡明でありまして、単純明快と申しますかそういうような利点を持っているわけでございます。
 そこで、諸外国の例もこれはしさいに検討いたしたわけでございますけれども、非常に多くの条文を必要とするようでございます。それだけの手当てをしませんと、これが一般第三者との関係で非常に問題を起こすということだろうと思うのでございますが、そういった点もございます。
 それで、一方わが国におきまして夫婦財産契約というようなもの、これは現実に可能でございますけれども、財産契約の件数というのは明治三十一年以来きわめて少ない、微々たるものでございます。
 そういった状況も考えざるを得ないと思うのでありますけれども、今回は、夫婦財産制について非常に複雑煩瑣な組み立てを新たにつくるよりは、むしろ配偶者の相続分の引き上げという方法あるいは寄与分の新設という端的な方法によって実質的な配偶者の地位の改善を図った方がより実際的であろう。たとえばドイツなどの例によりましても、これは複雑な夫婦財産制をつくっておりますけれども、相続の際にはその清算にかえて相続分を修正するというような仕組みをとっているわけでございまして、やはり簡単な制度の方が利用しやすいという点もございますので、今回はそれに手をつけることなくして、端的に先ほど申し上げましたような方法によって改善を図ろうということにいたしたわけでございます。もちろん、この問題は夫婦間の婚姻の問題並びに相続の問題にも影響する基本的な問題でございますから、十分将来におきましてもこれを研究していきたいというふうに考えております。
#25
○沖本委員 大蔵省の方にお伺いいたしますが、夫婦の共有財産制についていまお話があった手を加えないという点なんですけれども、夫婦の一方の財産になっていても実質は共働きの結果であるということは言えるわけで、名前は夫の財産になっていても実体は妻の財産であるということは考えられるわけです。そういう点で、これを名義上妻に戻すのに相続税を課するのは過酷であるという点ですね。
 それで、今回の改正で寄与分として考慮される方法が講ぜられることになったとしても、寄与分が相続税の対象となったのではせっかく仏をつくって魂を入れないというそしりを免れない。それは配偶者以外の相続人の寄与分についても同じことが言えるわけではないかという点なんですけれども、この点についてどうですか。
#26
○鈴木(達)説明員 お答えいたします。
 税法は、やはり基礎法でございます身分法を前提として構成されるべきだと考えております。したがいまして、身分法におきまして夫婦別産制が維持される以上、やはり税法の面でもそういう考え方にのっとりまして、したがいまして共有制的な考え方すなわち夫婦間の贈与関係は一切非課税というわけにはまいらないと思っているわけでございます。
 それから寄与分につきましては、今度の寄与分を設けました趣旨が、再三御説明ございますように、共同相続人間の相続分の決定に当たりまして、その共同相続人間の衡平を図るという趣旨から設けられているものでございまして、あくまでこれは相続財産である、つまり相続分の一部であるというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、そこに相続税が課せられるということはやむを得ないことではないかと思っておりますが、ただ、配偶者の相続分につきましては三分の一が二分の一に引き上げられるに応じまして、相続税でもそういう措置をいたしました結果、配偶者の税の負担というのは大幅に軽減される、このように考えております。
#27
○沖本委員 こういう点につきましても、夫婦共働きということがいま一般的なことになってきているわけです。ただパートだけで働いているということよりも、むしろ社会的には女性が働く場合にパートという頭をつけているというような考え方の方が強いわけで、実際は男性と同じような労働時間を持っておるし、仕事の内容もほぼ近くなってきているということになるわけですし、だんだんお役所にも女性の幹部の方があらわれてきておりますし、あるいは保安庁の方とかいろいろな点に女性の進出というものが大きく変わってきているわけです。そういう点もあるわけですから、こういうふうな財産形成についてもあるいは税金の面についても新しい考え方が多く出てきているはずなんで、そういうものに即した考え方を持っていただかなければならないと考えるわけですね。
 いま一例だけを申し上げたのですけれども、いろいろ議論があると思うのですけれども、そういう点について、今回の改正に当たって、たとえば大蔵省と法務省等の議論をおやりになったことがあるのかないのか。そういう点についてはどんなお話し合いがあったかなかったか。
#28
○鈴木(達)説明員 特に法務省とお話し合いをしたということはございませんが、税法の立場からいたしますと、繰り返すようでございますけれども、やはり基礎法であります身分法すなわち財産制度、そういうものを超えて税法だけで出過ぎた措置をするということは適当でないと考えております。したがって、パート等の場合あるいは女性が主たる所得の稼得者等である場合には、そういう方の名義に財産をしていただければある程度事は解決するわけでございましょうし、そういう形で今後も処理していただければと思っております。
#29
○沖本委員 いまおっしゃったように、考え方とか取り扱いの方法で変わってくるという点があるわけですからね。だから大蔵省の方では、税金を多く徴収するという立場から考えて、黙っておればわからないで多く税金を出している、うまく説明してあげて上手にやっていけばいろんな点で軽減されていく、そういう点もあるわけで、法律というものが誕生するに当たっていろんな意見も出てきておるわけですから、それだけに待たれておったという点もありますし、それだけいろいろ変わってきているとも言えるわけです。御指摘もいろいろあったわけですけれども、結局家事審判についても町の家事審判が多いんですね、いまテレビでいろいろやっていますけれども。
 そういうことで、そういういろいろなことの一つの指標にもなっていくし、いろいろな考え方の基礎にもなっていくということにもなるわけですから、きのうもお話がいろいろありましたけれども、結果的には運用なり何なりというものからまた問題点が出てくるんじゃないかという点もあるわけです。議論すればもう切りがないということになりますけれども、ひとつ運用面についてもっと十分な検討を加えられて、実情に即するような方向で御検討いただきたいと思います。
 以上で質問を終わります。
#30
○木村委員長 横山利秋君。
#31
○横山委員 大臣を初め政府各位に申し上げたいのでありますが、すでに委員長から御連絡があったと思いますけれども、理事会の討議を経まして、締めくくりの質問または要望を申し上げたいと存じます。
 本来、これから申し上げます十五項目は附帯決議にしたらどうかという意見もないではなかったわけでありますが、問題がきわめて具体的な問題でありますことと、それから各委員のきわめて熱心な民法改正に関する質問の趣旨を総合いたしてありますので、この際お許しを得て、全部がこの委員会を代表しておるかどうかについてはあるいは議論があるかもしれませんが、一応理事会で配付をされました趣旨に基づきまして最終的な質問をいたします。どうぞ政府各機関とされては、もう説明はいいのでありますから、これからいたします締めくくりの項目につきまして、簡潔にそれから前向きに今後の考え方を含めて御答弁をいただきたいと思います。
 第一、配偶者の優遇措置として相続分の引き上げだけでなく生存配偶者の法定の居住権なども認めるべきではないか、こういう意見でありますが、いかがでございますか。
#32
○貞家政府委員 ちょっと御説明を申し上げたいと思いますが、この問題は法制審議会でも十分審議されたわけでございますが、特別の用益権というようなものを設けることについては非常に問題が多いので、問題の多い制度を考えるよりは端的に相続分の引き上げをしよう。それからいま一つ、遺産分割の基準の条文にその趣旨があらわれるように「心身の状態及び生活の状況」というような事情も考慮して遺産分割をするという、遺産分割のいわば指針のような規定を設ける、これによって御指摘の生存配偶者の居住権の確保という目的を実質的に達するようにしようというようにいたしたわけでございます。
 この問題は、もちろん今後における運用その他を見まして、これは必ずしも民法だけの問題であるかどうかわかりません、一般的にさらに研究をしなければならないということも考えられると思いますが、今回の改正では、以上に申し上げました理由によりまして、それはほかの方法によって実質を確保しようという態度に出たわけでございます。
#33
○横山委員 わかりました。
 第二番目、配偶者と兄弟姉妹の共同相続を改めて、配偶者があるときは兄弟姉妹は相続しないものとするかまたは兄弟姉妹は配偶者の後順位にすべきでなかったか。いかがですか。
#34
○貞家政府委員 この問題につきましては、遺産の中に婚姻中に形成された財産ばかりでなく婚姻前に形成された財産あるいは伝来財産が含まれているということもある、それから現在の国民感情において、兄弟姉妹の結びつきを重んずるということがまだそれを完全に無視するまでには至っていないというような観点から、兄弟姉妹の相続権を後順位にするということはなお時期尚早であろうというふうに考えたわけでございます。この問題は、今後における家族共同体あるいは血縁集団の実態の変化ということも考えられるわけでございますので、そういった状況に応じまして将来の研究問題となり得るものであろう、かように考えております。
#35
○横山委員 第三、内縁の妻、事実上の養子、直系卑属の配偶者等相続人に準ずる者についても、その寄与につき正当な評価をし、何らかの形で寄与分的なものを認めるべきではないか。この点はいかがですか。
#36
○貞家政府委員 相続人に準ずるような地位にある者について寄与分を受ける権利を認めるかどうかという点につきましても慎重な検討をいたしたわけでございますが、今回の寄与分の制度は、相続人間の衡平を図るという目的で、遺産分割の際にその財産の取得額の調整を図るという制度として考えるのが相当であるという結論に達したわけでございまして、相続人以外の者を加えるということになりますと、遺産分割手続との関係でいろいろ問題が多いということから、今回はこれを採用しないことにしたわけでございます。
 しかし、現実の事情に応じましていろいろ問題があるという御意見も率直に拝聴いたしておるわけでございまして、改正法施行後の運用状況等を見まして、その状況いかんによっては今後さらに検討を要する問題であろうかと考えております。
#37
○横山委員 わかりました。
 第四、農業後継相続人の寄与分の認定に当たっては、農業委員会の意見を聞くような家事審判規則の改正を考える余地はありませんか。
#38
○栗原最高裁判所長官代理者 運用の実態にかんがみますと、果たして御提案の趣旨のような明文化までする必要があるかどうか問題はないわけではございませんが、何せこの問題は実務の処理に非常に密接な関連のある問題でございますので、実務の現状なりあるいは実務家の意見を十分聞いてみたい、このように考えている次第でございます。
#39
○横山委員 第五、兄弟姉妹の代襲相続は残しているが、将来なくす方向で検討すべきではありませんか。
#40
○貞家政府委員 この問題につきましても、先ほど兄弟姉妹の相続権で申し上げたことと同じことが言えるかと思うのでございますが、なお現在の国民生活において、おい、めいまでの関係はやはりいわば親族的なかかわり合いを持っているというふうに見られるのが普通であろうという認識から、代襲相続をすべて廃止するというところまではいかなかったわけでございます。
 この点につきましても、先ほど申し上げましたように、家族共同体あるいは血族集団の実態が将来どのように変化するか、それに応じて将来さらに検討の余地がある問題であると考えております。
#41
○横山委員 第六、夫婦財産制については、妻の内助の功を考慮し新しい時代に即応した根本的改正を検討すべきではないかと思われますが、いかがですか。
#42
○倉石国務大臣 今回の改正に当たりまして、婚姻生活における配偶者の貢献を評価いたしまして配偶者の相続分を引き上げることといたしたわけでありますが、夫婦財産制につきまして改正すべきかどうかということにつきましては、将来そういう必要があるものである、今後なお検討の余地があるものと存じております。
#43
○横山委員 第七は、現行民法七百六十八条の離婚の際の財産分与の請求については「分与」でなく「分割」にし、その基準を設けるよう改正すべきではありませんか。
#44
○貞家政府委員 財産分与の態様は千差万別でございます。
 財産分与の内容といたしましては、共同生活中に得た財産の清算という意味もございますけれども、それ以外に、離婚後の生活についての扶養あるいは離婚を惹起した責任ある配偶者の相手方に対する損害賠償的な要素も含まれているわけでございます。したがいまして、分割と言った方がぴったりくる面もありますし、分与と言った方がぴったりとくる面もいろいろ混在しているわけでございます。そこで、より適切な表現がないということで「分与」という表現を維持しているわけでございますが、これがより適切な表現かどうかは今後十分研究したいと思います。
 また、基準を明確にするという点についてでございますけれども、これも千差万別でございまして、なかなか一律に基準を設けがたい。「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、」というような民法の条文になっておりますが、やはりこういった基準のもとにおいて家庭裁判所の適切な判断というものに期待することが望ましいし、もちろん協議で決めるということは、これは自由でございます。また、この問題は夫婦財産制の問題と密接に関係する問題でもございますし、いま大臣の答弁にございましたように、将来の検討課題として夫婦財産制の問題もございますので、そういった点ともあわせて今後十分研究を進めたいというふうに考えております。
#45
○横山委員 第八に、現行の場合、離婚の際の財産分与者に譲渡所得税を課していますが、そのことにより財産分与についての協議や調停の成立を困難にしているので、非課税とすることを検討すべきではありませんか。
#46
○内海説明員 お答え申し上げます。
 横山委員御存じのように、現在、財産分与の当事者の判断に当たりましては当然その財産は時価で考えるわけでございます。また、当事者間の協議が調わない場合には家裁の判断によるわけですが、これも時価によるわけです。仮に離婚の場合に、夫が財産分与いたしましたときにその時価に相当するものとして財産分与請求権の現象になるわけでして、判例でも示されておりますように、これはその価額で利益があったものということで譲渡所得が発生するというふうに考えざるを得ないように考えております。
 仮にそうでないといたしますと、今度離婚いたしました妻の方が離婚後にたとえば土地を売却したとしますと、その取得価額の引き継ぎという形で安い方の評価で引き継ぎますと、これはそこの段階で非常に高い譲渡所得税を取られてしまう、こういうことになりまして、はなはだ適当でないような結果になるという問題もありまして、この取り扱いは維持せざるを得ないのではないかと思っておりますので御理解を願いたいと思います。
#47
○横山委員 ちょっと議論がありますけれども、次に移ります。
 第九、配偶者の相続分を二分の一に引き上げ、これにつき非課税としたことは一般的に妥当であるが、しかし、ごく一部の資産家を利する結果にもなるので、そういうことのないよう免税について一定の限度を設けるべきではありませんか。
#48
○鈴木(達)説明員 夫婦間相続の課税の問題と申しますのは、詰めて言いますと、富の集中抑制という相続税の目的を同一世代間――きわめて短時日の間に再び相続が生ずるような同一世代間の相続について、どこまで富の再配分というようなことを期待するかという哲学の問題もあろうかと存じます。
 これにはいろいろ議論もございまして、長い経緯もあったわけでございますが、五十年度の改正におきまして、同世代間の財産移転という場合には、垂直相続の場合に比べて大幅な負担軽減があってしかるべきという御議論で、現行の三分の一までは青天井で非課税というふうになったわけでございます。
 今回、民法の改正が配偶者の、妻の座優遇という観点からの改正でございますので、この機会に改めて青天井をやめる、限界を付すというようなことをするのは適当でないと考えまして、単に三分の一を二分の一に引き上げるという形の改正をお願いしているわけでございます。
#49
○横山委員 これも議論がございますけれども、次へ移ります。
 十、配偶者の代襲相続権については、特に農業後継相続人の妻の立場を考慮して特別の取り扱いをすべきではありませんか。
#50
○貞家政府委員 配偶者の代襲相続権の問題につきましては、法制審議会において慎重な審議をされたのでありますが、代襲相続権を一般的に認めるということになりますといろいろ不合理な結果を生ずるということで、結局立法化は見送るものということになったわけでございます。
 したがって、農業後継者の妻の立場を考慮してこの点だけ改正するという点には問題があるかと思うのでございます。ただ先ほどもお答えいたしましたように、改正法の運用の状況をよく見まして、これは現在の寄与分の構成とは全く異なったものを考えざるを得なくなるわけでございますが、将来の研究課題とさせていただきたい、かように考えております。
#51
○横山委員 十一、嫡出子の相続分と非嫡出子の相続分とを同等にする方向で今後とも検討を続けるべきではありませんか。
#52
○倉石国務大臣 この問題につきましては、法制審議会におきまして、世論の動向等を考慮しながら今後もなお検討を続けられるものと存じております。
#53
○横山委員 十二、最高裁判所は、今回の改正を実効あらしめるため、調停制度の運用等に当たってはなお一段と配慮すべきではありませんか。
#54
○栗原最高裁判所長官代理者 この法務委員会の審議を通しまして、とのたびの改正によって家庭裁判所に寄せられる期待が非常に大きいということを痛感しておる次第でございます。そのような点にかんがみまして、御提案の趣旨を体し、調停制度の運用等についてなお一段の努力を続けてまいりたい、このように考えております。
#55
○横山委員 十三は家族協定農業でございますけれども、本委員会の審議に当たりまして、各種農業関係諸団体からたくさんの要望がございました。
 ここに群馬県の例をとりまして一文を朗読いたしますと「農業基本法第十五条(家族農業経営の発展と自立経営の育成)ならびに同法第十六条(相続の場合の農業経営の細分化の防止)の規定にかんがみ、下記のとおり寄与分制度の一層の充実を期するとともに、この際、かねてより農業委員会系統組織が主張し推進してきた家族協定農業の法制化を図られるよう強く要望」するとして、家族協定農業の登録による公認のくだりでは「家族協定書は農業委員会に提出し、農業委員会はその適否を確認したうえ登録することとし、この登録は、協定農家が農政上・農地法上・税法上などの特例または育成措置上の特典を受けるにあたって、それに値する協定であることの公認であるものとすること。」等を初め、数々の具体的提案を家族協定農業についていたしておるところであります。
 農林省は、この家族協定農業の現状についてどうお考えになりますか。
#56
○鈴木(一)説明員 家族協定農業の普及状況につきまして、農林省において直接把握した統計資料はございませんが、昭和五十四年一月一日現在で、農林水産省において専業的な農家の経営の継承移譲等に関する調査を行ったことがございます。その結果によりますと、専業的な農家八十五万七千戸のうちで、現在の経営主を調べますと、現在の経営主が先代の経営主と前もって約束した時期が来たために経営を継承したものは五万八千戸となっておりまして、六・八%ということになっております。また、全国農業会議所が昭和五十一年度に、自立経営を志向しておる農家の後継者三十五歳以下の者について三千百六十六名でございますが調査した結果によりますと、家族協定を行っておる者は一九・六%ということになっております。
 したがいまして、現在農村一般において家族協定が普及しているというふうには申せない段階にあるかと考えております。
#57
○横山委員 第十四に、相続の場合における農業経営の細分化を防止するため、農家の家族間の自主的な話し合いを基調とする協定に基づき、親から農業後継者である子に対して農地等を計画的に一括移譲できる制度(家族協定農業)の法制化を検討なさるおつもりはありませんか。
#58
○鈴木(一)説明員 相続に際しての農地の細分化を防止し、農業資産の後継者への承継の円滑化を図るための措置といたしましては、現在、農業者年金制度におきまして後継者移譲において一括移譲を要件とするということ、それから税制の特例におきまして、農地等の生前一括贈与の場合の贈与税の納税猶予制度あるいは農地等の相続税の納税猶予制度がございますし、自作農維持資金において相続の場合の資金の融通をするというようなことをやっております。また、今回の民法改正も農業後継者への農業資産の承継の円滑化に役立つのではないかというふうに考えております。
 いま一つの御質問でございます家族協定農業の法制化の問題でございますけれども、この趣旨とするところは、後継者の育成確保及び農業経営の近代化の見地からして望ましいものとは考えております。しかしながらその法制化につきましては、農業者の生活感情にかかわる問題でもございますし、また家族のあり方の基本にかかわる問題でもございます。現在の農村一般における普及の程度を踏まえて、なお慎重に検討しなければいけないというふうに考えております。
#59
○横山委員 大蔵省としては、この農地等の一括移譲について税法上の特例を認めるよう検討なさるお気持ちはありませんか。
#60
○鈴木(達)説明員 ただいま農林省から答弁がございましたように、現在農地の細分化の防止とか農業の後継者育成のための税制上の措置といたしまして、贈与税の納税猶予制度が設けられております。したがいまして、この制度を活用することによりまして目的はかなりの程度達せられるものと私ども思っておりますが、今後、いま先生御指摘の家族協定農業について法制化が進められるというような場合には、現行の贈与税の納税猶予制度との関連も含めまして勉強させていただきたいと思っております。
#61
○横山委員 以上、委員会で討議いたしました各委員の意見並びに質問を集約した形で締めくくりの質問をいたしました。それぞれ政府側から御答弁がございましたが、法務大臣に重ねて最後の御質問をいたします。
 以上、それぞれ政府側の意見によりますと、将来検討あるいは当面ちょっと困難というような御答弁がございましたが、十五項目につきましては、ウエートの差はありましても各党がコンセンサスをほぼ得た意見でございますから、法務大臣として、これらの問題について今後誠意ある御努力、御研究、実行をお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。
#62
○倉石国務大臣 本日は、大変有意義な質疑応答、御意見の御開陳等ございました。政府といたしましては、そういう建設的な御意見を胸に置きまして、なおこの法律案成立後も法を制定いたします目的に向かって精進、努力を続けてまいりたいと思っております。
#63
○横山委員 終わります。
#64
○木村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#65
○木村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#66
○木村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#67
○木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
#68
○木村委員長 次回は、明後十八日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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