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1979/04/18 第91回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第091回国会 法務委員会 第17号
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1979/04/18 第91回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第091回国会 法務委員会 第17号

#1
第091回国会 法務委員会 第17号
昭和五十五年四月十八日(金曜日)
    午前十時十五分開議
 出席委員
   委員長 木村武千代君
   理事 金子 岩三君 理事 中村  靖君
   理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君
   理事 沖本 泰幸君 理事 柴田 睦夫君
   理事 中村 正雄君
      上村千一郎君    熊川 次男君
      田中伊三次君    井上  泉君
      楯 兼次郎君    飯田 忠雄君
      長谷雄幸久君    木下 元二君
      岡田 正勝君    田島  衞君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 倉石 忠雄君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 筧  榮一君
        法務省民事局長 貞家 克己君
        法務省刑事局長 前田  宏君
        法務省矯正局長 豊島英次郎君
        法務省保護局長 稲田 克巳君
        法務省入国管理
        局長      小杉 照夫君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局捜
        査第一課長   加藤  晶君
        警察庁警備局外
        事課長     鳴海 国博君
        国税庁直税部所
        得税課長    西内  彬君
        国税庁直税部法
        人税課長    四元 俊明君
        郵政大臣官房郵
        政参事官    塩谷  稔君
        郵政大臣官房建
        築部長     清水 達朗君
        建設省計画局総
        務課長     川合 宏之君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十八日
 辞任         補欠選任
  下平 正一君     井上  泉君
  河野 洋平君     田島  衞君
同日
 辞任         補欠選任
  井上  泉君     下平 正一君
  田島  衞君     山口 敏夫君
同日
 辞任         補欠選任
  山口 敏夫君     河野 洋平君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務行政及び検察行政に関する件
     ――――◇―――――
#2
○木村委員長 これより会議を開きます。
 法務行政に関する件及び検察行政に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
 速記をとめて。
    〔速記中止〕
#3
○木村委員長 それでは速記を始めてください。
 郵政省塩谷郵政参事官、清水建築部長は、当委員会から定刻に出席するように要請してあったはずです。それにもかかわらず遅刻するということは、当委員会としましては郵政省の出方はまことに遺憾であります。これからこのようなことのないように委員長から厳重に警告いたしておきますから、さよう郵政大臣に申し伝えてください。
#4
○稲葉(誠)委員 時間の関係もありますので、まず郵政省の方に要点をお聞きをいたします。
 それは、服部安司大臣が政務次官になった日にちが三十九年の十一月九日で四十年の六月二日まで、それから大臣になられたのが五十二年の十一月二十八日で五十三年の十二月六日まで、それからKDDの板野社長が社長に就任したのが五十年の五月三十日で五十四年の十月二十五日まで、このことは間違いありませんか。
#5
○塩谷説明員 間違いございません。
#6
○稲葉(誠)委員 そこで郵政大臣の職務権限、ことに国際電信電話株式会社に対する関連で聞くわけです。
 まず料金については、公衆電気通信法の第六十八条第二項によって、法定料金以外の料金は郵政大臣の認可を必要とするというふうに定められておることが間違いないかどうか、これは条文にありますから間違いありませんが、それと、郵政省設置法第四条二十二号の二以下において国際電信電話株式会社を監督するということになっておりますし、国際電信電話株式会社法の第十一条で取締役及び監査役の選任及び解任については認可事項となっておる。
 料金と取締役の選任、解任が大臣の認可事項になっておるということは条文の示すところで間違いがないし、設置法においては一般的な監督権がある、こういうふうに理解してよろしいですか。
#7
○塩谷説明員 いずれの点におきましても先生御指摘のとおりでございます。
#8
○稲葉(誠)委員 そこで、まず一つお聞きをいたしたいのは、奈良県に村本建設という株式会社がある。これが郵政省の指定業者として登録されるようになったのは三十九年四月一日からですか。これは間違いありませんか。
#9
○清水説明員 お答えいたします。昭和三十九年度四月一日からでございます。
#10
○稲葉(誠)委員 そこで、服部さんが郵政大臣になってからの村本建設に対する発注の関係、向こうから言わせれば受注の関係ですが、これは具体的に、古いのはわかりませんから、昭和四十九年度、五十年度、五十一年度、五十二年度、五十二年度、五十四年度だけでもわかっているのは何件で、どのくらいの金額があるかお示しを願いたいと思います。
#11
○清水説明員 お答えいたします。
 昭和四十九年度におきましては二件発注しておりまして四億四千三百万でございます。昭和五十年度は一件、一億七千五百万。五十一年度はございませんで、五十二年度は五件、合計いたしまして十五億六千三百万。五十三年度は三件ございまして十六億九千百万。五十四年度は一件でございまして十二億六千万でございます。
#12
○稲葉(誠)委員 五十二年度、五十三年度に金額が非常にふえておるわけですが、その内訳はどことどこが中心になっておりますか。その日時と金額をお示し願いたいと思います。
#13
○清水説明員 五十二年度の内訳を申します。
 これは近畿郵政局の発注でございますが、王寺郵便局が三億九千九百万、五十二年八月の着工になっております。次は東海郵政局でございますが、木曽川郵便局というのがございまして、五十二年十二月の発注でございますが、これは一億二千九百五十万でございます。それから水沢郵便局、これは東北郵政局の発注でございますが一億九千七百万、五十三年三月の発注でございます。熊野郵便局、東海郵政局の発注でございますが一億四千八百万、五十三年三月の発注でございます。近畿郵政研修所寄宿舎新築工事というのがございまして、これは近畿郵政局の発注いたしたものですが七億九千万、五十三年三月の発注でございます。
 五十三年度になりまして、先ほどの近畿郵政局の寄宿舎に関連する工事でございますが、近畿郵政研修所外構工事といたしまして近畿郵政局から発注いたしまして、金額は三億一千万、五十三年九月の着工でございます。城東郵便局、東京郵政局の発注でございまして七億九千百八十万、五十三年九月の発注でございます。千隅郵便局、これは九州郵政局の発注でございまして五億九千万、五十四年三月の発注でございます。
 なお、五十四年度は奈良郵便局、これは十二億六千万、五十四年の十月の発注でございます。
 以上のような状況でございます。
#14
○稲葉(誠)委員 そのほかに電電公社のものが五十二年十二月、第二都岡というのですか三億三千四百万、それから新庄の北町の社宅新築が五十三年一月、一億一千五百万、簡易保険事業団、これは熊野保養センターですか五十三年九月に五億五百万、こういうのがあるのは大体おわかりですか。
#15
○清水説明員 ただいまのお話でございますが、郵政省の建築部の所掌以外のことでございまして、ちょっとわかりかねます。
#16
○稲葉(誠)委員 それではきょうでなくていいですから、電電公社それから簡易保険事業団ですか福祉事業団に照会して、この次までに調べていただきたい、こういうふうに思います。
 これを見ますと、いままでなかったもの、非常に少なかったものが五十二年度、五十三年度に非常に大きな金額に上っておる、こういうのは何か特別な事情があるわけですか。私は不正があったとかなんとかということを言っているわけではないのですから、それは誤解しないで下さい。五十二年度、五十三年度非常にふえているわけですね。これは何か特別な事情でもあったのですか。
#17
○清水説明員 御質問でございますが、五十二年度、五十三年度と申しますのは、私どもの工事が大変ふくそうしておる、急に大きくなった事情もございますが、先生御指摘の点につきましては特段のことがあるとは考えられません。と申しますのは、指名競争入札でございまして、御存じのようなことでございますので、指名の回数というような状況を見ますと、特段ほかの同程度の業者に比べまして回数が多いといったことはないように見受けます。
#18
○稲葉(誠)委員 法務省の刑事局長にお尋ねをするわけですが、このKDDの事件については現在警視庁が中心になってやり、東京地検でも特捜部がやっているわけですけれども、これは現在の状況はどういう状況であるかという点について、それと同時に特捜部の取り組み方を御説明願いたいと思います。
#19
○前田(宏)政府委員 いわゆるKDD事件につきましては、御案内のとおり、当初佐藤社長室長のいわゆる密輸事件から始まりまして、それから業務上横領事件、また一方で元郵政省幹部二名に関する贈収賄事件というふうに進んでまいったわけでございます。現在は、これも御案内のとおり板野元社長についての業務上横領事件、これが捜査中でございまして、勾留期間が十日を過ぎまして延長に入ったところ、こういう状況でございます。
#20
○稲葉(誠)委員 東京地検の取り組み方についてお聞きをしたわけですが、お答えがありませんでした。これは副部長になった山口悠介君が主任か何かでやっているようですね。被疑者、被告人両方ありますが、数も多いからということでしょうが、相当な人数を使ってやっているようですね。
 そこで、たとえば板野氏に対して勾留延長した。これは依然として証拠隠滅のおそれがあるからというので接見禁止を続けているわけですね。これはどういうわけですか、具体的に。業務上横領の場合なんかで接見禁止というのは普通ないのじゃないでしょうか。
#21
○前田(宏)政府委員 接見禁止というのは、一般的に罪証隠滅のおそれがあるという場合に行われることが多いわけでございまして、めったにないというわけでもないように思うわけでございます。いずれにしても、事案の内容に応じて裁判所の許可を得てなされる措置でございます。
#22
○稲葉(誠)委員 後でだんだん聞きますけれども、業務上横領では、証拠書類を全部押収しているわけですから、接見禁止、証拠隠滅のおそれがあるというのは普通ないわけですね。
 そこで、新聞紙上伝えられておることで、たとえばおととし五月二十五日の夜に、板野氏が社長で服部氏が郵政大臣当時に二人で赤坂の二丁目の「山崎」というところに行った。行ったけれども何とかいうことでまた別のところ、「口悦」というところですか、ぼくは行ったことがないから知りませんが、そこに行っていろいろ話があったというようなことが伝えられておるわけですね。一時間くらいおったとかなんとかいうことが伝えられておるわけですが、この五十三年の五月二十五日というのは円高問題をめぐる料金の改定の問題でもっと料金を下げろということが一部において問題になって、おる時期であり、同時に国際電電の人事の問題で非常に内部的にもめていた。それで、某氏が社長になり板野氏が会長に祭り上げられるとかいうことが伝えられておった時期でもあるわけですね。それで、六月に株主総会がある。五十三年六月二十九日に板野學氏は取締役社長に再任をされているわけです。再任じゃないな、四選かな。とにかく再任されているというかするわけですね。そこで、株主総会を前にした五月の末に板野氏が、佐藤陽一の仲立ちか何か知りませんけれども、二人で会っていろいろ話があったということが新聞で報道された。単に報道されているというだけではなくて、具体的な日時、場所、時間までが指定をされておる。こういうことを考えますと、単なる風評、単なるうわさという程度ではなくて、そこに相当な具体的な信憑性というかそういうふうなものがあったと考えられるわけですね。いま事件としては業務上横領だ、なるほど業務上横領に関係がないかもわからぬと言えるかもしれませんが。
 そうすると第一の質問は、業務上横領で勾留を延長して接見禁止までをしておるということは、進み方によっては単に業務上横領だけではなくてほかの犯罪に進展をするかもわからないということがあるということは普通世間的にも理解されることだ、こういうふうに思うのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
#23
○前田(宏)政府委員 先ほどもお答えしたところでございますが、一般的に業務上横領と言えば単純じゃないかというような御趣旨もあったように思いますけれども、すでに御案内のとおり、今回の業務上横領事件は額も多額に上っておるようでございますし、またその内容的にも細かいものの積み重ねというような面があるようでございます。
 したがいまして、その事実の確定、またそれにはいろいろと関係者もあるようでございますので、普通のというと普通かどうかわかりませんが、単純な単発的な横領事件とは大分違う内容と申しますか複雑な内容であるというふうに理解しておるわけでございます。したがいまして、取り調べにも時間がかかっておるし、また関係者との問題もあって接見禁止になっているということであろうと理解しております。
#24
○稲葉(誠)委員 普通、業務上横領の場合にはわざわざ特捜部が扱う必要はないのではないですか。これは副部長を中心として、被疑者の数にもよるかもわかりませんけれども、大体十人の検事が専任しているんじゃないですか。そういうことから考えると、この事件が業務上横領だけで終わるのかあるいはほかの方に発展をしていくのか、そういうことについてこれはわからぬ、何ともそのときの状況いかんによって言えることであって、業務上だけで終わるかどうかということについてはこれはわからない、こういうことですか。
#25
○前田(宏)政府委員 御案内かと思いますが、東京地検のいわゆる特別捜査部では、検察庁独自で捜査をやることももちろんございますが、警視庁の捜査二課の事件、これから送られてくるものも常時扱っておるわけでございます。今回の場合は警視庁の扱いといたしまして、当初は別といたしまして、その後は捜査二課で扱っているという、ふうに理解しているわけでございますので、そういう類型として特捜部が扱っているという面ももちろんあるわけでございます。
 それから、相当な数の検事が担当しているじゃないかということでございますが、これはさっき申し上げましたように、佐藤室長の問題あるいはその他の郵政省の幹部の問題、いろいろと縦横に広がった面がございます。そういう経過を経てここに来ておるわけでございますから、当初から出だしとして十人投入しているというわけでもないわけでございます。
 それから、同じことの繰り返しですけれども、今回の板野氏の業務上横領事件というのは相当複雑であるということもそれに関係がある、かように御理解をいただきたいわけでございまして、今後のことは、いろいろと先ほど御指摘のような新聞等の報道もあるわけでございますし、それについていま捜査をしているとかしていないとかいうことは別といたしまして、広い意味で疑惑があるというふうに言われておるわけでございます。その中で犯罪の疑いがあるというものについては当然やらなければならぬという立場にあるわけでございますので、そのように御理解をいただきたいわけでございます。
#26
○稲葉(誠)委員 いまいろいろ言われておるということの中に、たとえばいま私が指摘をした五十三年五月二十五日の夜ということ、これは時間的に言うと、いま言ったように料金の改定の問題が郵政大臣の職務権限にありますね、決定の問題が。そういう中で、国会の中でそれが問題となってきて、いわゆるトーンダウンした時期ですね、第一が。それから第二が、この役員の人事について、国際電信電話株式会社法の十一条によって取締役の選任及び解任が郵政大臣の認可を要するということになっておる。その六月に株主総会があってかわるかもわからないというその前の時期で、しかもその会社の中では、別の人が社長になるかもわからない、こういうような時期であったということ、このことは事実として間違いないというふうに思いまするし、さらに第三の問題として、これは犯罪になるとかならないとかということで聞いているわけではございませんけれども、いままで建築関係が出ておらなかった国際電電との関係についての受注が、その後に六月から、国際電電からこの村本建設に発注になったという状況ですね。客観的な事実。これはまた調べればすぐわかりますが。しかし、ただ、すぐ国際電電から村本へ発注という形でなくて、住友商事を仲に入れて発注をしたり、その後別のところは、これはどこでしたか、直接別に発注になっておる。こういうような三つの事実関係が絡まった時期でもあるわけですね。
 そういうことから考えますと、この五十三年五月二十五日というのは――あとKDDが直接村本にあれしたのは軽井沢の保養所の改修工事ですね。これが五十三年五月二十五日ごろから、KDDから直接請け負うような形のものを形を変えて住友商事を仲に入れたのがしばらくおくれて、それが終わってから今度は軽井沢の保養所を直接KDDから村本に請け負わせるという形になってきた。こういうような三つの面から見ても非常に重要な時期である。しかもその中で、世上言われておるのに、いわゆる現金が授受されたとかあるいはごちそうになったとか物品がどうとかかんとか、そういうようなことが言われておる。
 こういうことを考えますると、この五十三年五月二十五日に両者が果たして会ったか会わないか、会ったとすればどういうような趣旨で会い、その中でどういう話が出てどういうふうな、仮に授受があったかなかったかとか、いろいろなことについて当然検察庁としては、その業務上横領の発展の過程の中で注視をして場合によったら調べなければならない、こういうようなことになってくるのではないでしょうかね。必ず調べろと言うわけにもいきませんけれども、捜査の進展によっては調べなければならないし、それだけの非常に疑惑に満ちておる、重要性のある日時の会談であったのではなかろうか、こういうふうに思うのですが、その点について法務省当局としてはどういうふうに考えておるか、それからどういうふうにするつもりかということについて御説明を願いたい、こういうふうに思います。
#27
○前田(宏)政府委員 ただいま稲葉委員がいろいろと御指摘をし、また分析もされたわけでございますが、そういう関係につきましては前々からもいろいろと言われておったところでございますし、ただいままたさらに詳細な御指摘があったわけでございます。そういうことで、先ほどもお答えいたしましたけれども、広い意味での疑惑と言えば疑惑であろうかと思います。
 ただ、よく申しておりますが、疑惑即犯罪というわけでもないわけでございまして、捜査当局といたしましては、その中で犯罪の疑いがあるものについては当然取り組まなければならないということでございますので、先ほどのお答えと同じことになるかもしれませんが、いろいろと新聞報道があるのみならず国会でも御論議になっているということは、私のみならず検察当局としても十分承知しておるところであろうというお答えでございます。
#28
○稲葉(誠)委員 法務大臣、いま言われたようなことなんですが、そうするとあなたとしては、このことに関連をして、そして指揮権発動というのもおかしいけれども、そんなことはもちろんないと思いますが、国会議員が関連をしているとかどうとかということで、捜査に対して手心を加えろというようなことを指示したりなんかすることはもちろんないでしょうね。そこら辺のところのあなたのはっきりとした決意を、あなたの声はちょっと低い声でよく聞こえないから、胸を張って大きな声で言ってください。お願いします。
#29
○倉石国務大臣 私、就任当時ごあいさつをいたしましたときも申し上げたと思いますけれども、私は、わが国の検察については全面的な信頼感を持っておるわけであります。ことに、この法務委員会でも申し上げたと思いますけれども、検察庁法十四条、ああいう精神でやってまいって、おりますので、それは今日も依然として変わらない態度でございます。
#30
○稲葉(誠)委員 わかりました。いずれにしても、私どもも国民も検察庁を信頼をしておりますので、悪いものは悪いのだから、いいものはいいのだから、これはもうはっきりさせてもらいたい、こういうふうに思います。
 そこで、ちょっとこれは何か間違っておるらしいのですが、建築請負の件で東京郵政局の世田谷郵便局の庁舎新築、十八億七千五百万、五十二年十二月ですね。これについてはいま言った説明の中に入ってはいないのですが、これはやけに金額が多いので、村本が請け負うというのもちょっとあれだというふうに思いますが、これは何か間違いですか、あるいは下請のような形で請け負ったということになるんですか。ここのところはどうなんですか。
#31
○清水説明員 お答え申します。世田谷郵便局新築工事でございますが、これは契約の相手は大林組でございます。
 それで、その村本建設の関係につきましては、どうも私どもよくわからないというのが実態でございます。なお、さらにちょっと調べてみますと、いろいろな書類の中でどうも間違えた記載があるのではないか、それがまた新聞報道などの基礎になったのじゃないかというふうに理解しておりまして、いろいろ調べておるところでございます。
#32
○稲葉(誠)委員 いまあなたの言われた中で、何か書類の中で間違っていたというその意味がはっきりいたしませんけれども、いずれにいたしましてもこの次までによく調べておいてください、金額も大きいし。
 それから、いま村本建設が請け負ったのを見ると近畿に非常に多いですね。奈良県に多いかな、王寺は奈良県でしょう。それから何か奈良の郵便局もありますね、奈良に本拠があるからあたりまえかもわからぬけれども七それから熊野。熊野は東海郵政局だけれども、これは和歌山県ですか。和歌山県の熊野、これは近畿には入らないで東海に入るのですか。まあいずれにしても近畿地方に非常に多いということで何かちょっと不思議な感じがするのですが、それはそれとしておきましょう。
 こういうことも伝えられているのです。五十三年五月二十五日の問題は、人事の問題であれして板野氏を会長に祭り上げようとしたのだけれども、そこで話がついてそうでなくなった、そうしたら、次の日の閣議で福田総理から服部氏が何かかれこれ言われたというような話まで伝わっているので、これは真偽のほどはよくわかりませんけれども、私の方もよく調べてみたいというふうに思っております。なぜ福田さんがそのことを知っていて次の日に服部氏に注意したのか、ちょっとよくわかりませんが、これは私の方もよく調べてみたいというふうに思います。それで、このKDDの問題はまたしばらく日を見て質問をしたいというふうに思います。
 それから、ちょっとこれは通告文には載っていなかったのですが、例のこの前から問題になっております、議院証言法違反でK・ハマダの問題が問題になっていましたね。これは冒陳の補充訂正が出ているわけですが、私の通常の考え方では、捜査の常道では、冒陳を出す場合には、冒陳というのは、証拠によって証明すべき事実ですね、だから、その証拠をすでに調べて、そしてそれによって冒陳を出す。だから、冒陳を出すときにはすでにそこに挙がってくる氏名については事実上の事情聴取が終わっておる。そうでないと冒陳というものは書けないし、書いたところで権威がないですね、証明できなくなってしまうのだから。だから結局、冒陳に出てくる名前の人たちというのは、冒陳の申し立てをする前に――これは補充ですが、その前に事情聴取が行われておるのが通常だ、こういうふうに理解をしてよろしいでしょうか。
#33
○前田(宏)政府委員 技術的なようなことになりますが、やはりその冒陳で証明すべき事実、それとそれを証明するための証拠との関係であろうと思います。したがいまして、その証明すべき事実について必要があれば人も調べるでしょうし、必要がなければ調べない、こういうのが一般論であろうと思うわけでございまして、やはり中身というか具体的な場合によって違うということであろうと思います。
#34
○稲葉(誠)委員 いや、具体的場合によって違うのはわかるけれども、それは通常の場合は、冒陳を出す場合には、証拠によって証明すべき事実が冒陳なんですから、証拠を調べて検察官が手持ちしていてそして冒陳を出すというのが普通ではないですかと聞いているわけです。
#35
○前田(宏)政府委員 もちろん提出予定の証拠がありまして、それに基づいて冒陳を書くということでございます。
 ただ、その手持ちの証拠が何であるかということになりますと、さっき申しましたように、立証すべき事実との関係で、たとえば極端に言えば物証だけでよければ物証でもいいわけでございますし、それぞれ違うでしょう、こういうことを申したわけでございます。
#36
○稲葉(誠)委員 ここに、小佐野が「同行者と共に」云々ということがわざわざ書いてありますね。これはぼくはわからないのですよ。何も同行者のことなんか書かなくたっていいんじゃないですか。小佐野が行ったということだけ書けばいいので、なぜ「同行者と共に」とここに書いてあるのですか。これが第一点。
 それから、「同行者と共に」というのだから、同行者の名前なり何なりというものは、ここで発表しろというのじゃないですけれども、すでに冒陳を出す前に検察庁としてはわかっていたのではないですか。こういうことが第二点ですね。発表しろと私は言いません。いいですか。
#37
○前田(宏)政府委員 いま御指摘の「同行者と共に」というところでございますが、これは今回の冒陳の補充訂正の中ではなくて、従来からの部分であろうと思います。ということがまず一つでございます。
 それから「同行者と共に」と書いてあるわけで、書かなければよかったじゃないかと言えばそれはそうかもしれませんけれども、まあ書いてあるわけでございます。したがいまして、それが問題になるとすれば立証しなければならぬということに相なると思いますけれども、冒陳で書いてあることの事実、いろいろな事実が含まれておりますけれども、その中で事情的なものとそれから当該立証事実的なものといろいろとあるわけでございます。それから、それが逆に被告・弁護人側の争い方との関係で浮いてきたり浮いてこなかったりするというようなことであろうと思います。したがいまして、それが今後必要になれば当然明らかになると思いますけれども、私の見たところでは、これは当時としましては情状的といいますか事情的な事実という程度の理解であったのではないか、かように思います。
#38
○稲葉(誠)委員 いや、事情的な理解かどうか知らぬけれども、小佐野はこれは否認していたのでしょう。否認事件でしょう。否認事件だから、この同行者というものが何らかの検察側の立証に役立つからこそ同行者と出てきているのではないですか。そうでなければこれはわざわざ書く必要はない。
 だから、ぼくは同行者の名前を言えと言わないというのですよ。この冒陳の過程ですでに同行者というものは検察側にわかっていたのでしょうということが第一点ですよ。そんなことあたりまえのことですよ。まあここだけにしましょう。
#39
○前田(宏)政府委員 先ほども申しましたように、この同行者ということが出てまいりましたのは当初の冒陳の段階でございます。
 さらに、その「同行者と共に」の前には寸例の二十万ドルの授受のいきさつといたしまして、同行者があったのだけれども、一行の中から離れてクラッターから小佐野氏が受け取った、こういうくだりになっているわけでございます。したがいまして、事実関係の一部に入っていると言えば入っているわけでございますから、それを検察庁として把握しているということは当然であろう、かように思います。
#40
○稲葉(誠)委員 だから、検察庁は同行者がだれであるかということを把握しているというのはあたりまえの話ですよ。そうでなければこれは冒陳に書くわけはないので、同行者がだれだということも検察庁はわかっていて調書ができておる。だから小佐野が否認した場合には、否認を覚悟しているわけだから、当然この同行者の調書が法廷に出てくるというのはあたりまえの争訟技術なんで、そんなことをかれこれ言うのは、これは質問する方もおかしいし、あたりまえのことなんだよ。あたりまえのことなんだけれども、あなたの方としてもなかなかそうとは言えないらしいから、ぼくも困ってしまうんだけれども。
 それと同じ理屈で、K・ハマダというのもだれであるかは当然検察庁は冒陳前にわかっておったし、それに対する事情聴取も行われておったのだ、これが普通じゃないですか。K・ハマダという人は検察庁で事情聴取を受けたということを言っているのでしょう。だから、当然補充訂正の前に事情聴取を受けておった。だからこそあなたの方の証拠が固まってきているのでしょう。そんなことはあたりまえの話ですよ。そこまで隠さなくたっていいですよ。もう議員を辞任してしまっているんだし、もうそれはいいよ。
#41
○前田(宏)政府委員 先ほど冒頭のお尋ねで、冒陳をやる場合にはそこに出てくる人の名前があればその人は当然調べているだろう、こうおっしゃったわけでございますが、それを必ずしも肯定しなかったわけです。
 と申しますのは、今回の冒陳の補充訂正におきましてはむしろK・ハマダということを使う方が証拠に即した表現であるわけでございます。具体的に言えば、証拠申請をしております中にK・ハマダに対する勘定元帳であるとかというようなことが表示されておりまして、これはその証拠申請書等から見ます限り、いわゆるサンズホテルでのいろいろな帳簿上の処理というようなことでK・ハマダという名前が使われておるということでございますので、それを別な人の名前で表示することの方がかえって証拠に即さないことになるわけでございます。
 それから、今回の冒陳はそういう証拠との関係におきましてホテルに百二十万ドルの債務というものがそういう帳簿の上であったというところから出発しておるわけでございまして、そのもとになることはさしあたっては問題ではない。もちろん、今後の公判の推移によってはいろいろと出てくることもあるかもしれませんけれども、要するに二十万ドルの授受の事実とその使途、つまりそれが裏づけになるという意味での使途、これを明らかにすることが一番の問題でございまして、その二十万ドルの支払いというものがどこに充てられたかということをさかのぼっていくとサンズホテルの債務であるということで、それを冒陳で述べ、その冒陳で、先ほど来委員もおっしゃっておりますように、取り調べ請求する証拠との関係でこういう表示になったということでございまして、いわば物証的なもので、もちろん証拠物たる書面というような理解になると思いますけれども、むしろ証拠物というような形での冒陳が組み立てられている、かように御理解をいただきたいわけでございます。
#42
○稲葉(誠)委員 証拠物たる書面ですから、相手が訂正に異議があればK・ハマダという人を証人申請しなければならないんじゃないですか。そんなことあたりまえの話じゃないですか。
 それと、アメリカから四人呼ぶんでしょう。呼んで来なかった場合には、そのK・ハマダという人を検察側は証人申請しなければ立証できないでしょう。否認している以上、それ以外道はないでしょう。四人が来るか来ないかわからぬけれども、恐らく来っこない。そのときにはK・ハマダの調書を出さざるを得ないじゃないですか。出して、それが不同意だったらK・ハマダを証人申請する以外に道がないでしょう。これは今後の訴訟の進展だから、あなたの方も答えにくいところだから、ぼくもその点わかるので余り詳しく聞きませんし、ちょっとニュースも古くなったから余りあれしませんが、いずれにしても四人は来ないですよ。
 四人が来ないときに、一体検察庁としてはどうするのかということです。検察庁はK・ハマダを証人申請する以外にはない。そのための調書を出す、不同意だ、本人を申請する、これ以外にないんじゃないですか、訴訟の進展によっては。
#43
○前田(宏)政府委員 訴訟の進展によってどういうことが起こるかと言われればそれまでのことでございますけれども、私の理解している限りではそういうふうには進まないんじゃないかというふうにむしろ思っているわけでございます。
#44
○稲葉(誠)委員 そういうふうに進まないというふうに自信があるように言うのはどういう意味ですか、よくわからぬけれ、ども。
#45
○前田(宏)政府委員 先ほども稲葉委員が、アメリカからの証人は来ないのではないかとおっしゃいましたが、その四人が来ないことのかわりとして、先ほど来御指摘のような調書あるいは証人というふうにはならないんじゃないかというふうに申したわけでございます。
#46
○稲葉(誠)委員 アメリカからの証人が来るとか来ないとかというのは、いまここで論議するのはちょっとおかしいので、早いし問題を起こすから、あなたの方も来ないというぼくの質問を受けて、まるで来ないのを前提にしたような答えをしてはいかぬ、それはあなたまずいよ。裁判に対する介入になる。
 いずれにいたしましても、それは余り価値のある論争でもないかもわからぬから。いずれにしても、それは調書はとってありますよ。とってあって、その調書を最終的に出さなければ、それはK・ハマダがだれであるかということとの人間との結びつきが、ただ物証だけではわからぬでしょうが。ことに書面の意義が証拠になるのだから、だれだかということをわかって検察庁は調べておるのに違いないわけですけれども、それはまあいいですよ、ここでやるほどの問題ではありませんから。
 あと時間がありませんから、もう一つ問題があるのですが別の機会に譲ります。いずれにしても、いまのKDDの問題については国民の注視の的ですし、いろんな面から、さっき大臣なり刑事局長が言ったような形の中でしっかりやってもらいたい、こういうふうに思って私の質問を終わります。
#47
○木村委員長 横山利秋君。
#48
○横山委員 この国会に、借地上建物賃借人の保護に関する請願書が私ども法務委員を中心にして出ております。
 簡単に事実を引用しますと、請願したのは神戸市生田の関一雄さんら店子九人、支援の法律学者、弁護士。
  関さんらの話によると、店子九人は戦後間も
 ない二十四年ごろから国鉄元町駅南側にある木
 造二階建ての共同店舗を借り、飲食店や雑貨店
 などを営んできた。ところが、四十一年になっ
 て家主が地代を四、五年間も滞納していたこと
 から、地主が家主と関さんら店子を相手取り土
 地の明け渡しを求める訴えを神戸地裁に起こし
 た。結局、五十一年に原審どおり判決が確定、敗訴になったわけです。
  しかし、この訴訟とは別に、同じ建物にネオ
 ンサインを設置している酒造会社と地主との間
 で新たな訴訟が起きたことで、今のところ関さ
 んら店子は立ち退きの強制執行を免れている。
  この間、関さんら店子は「借家人同盟」を結
 成。現行の借家法では、地主と家主が異なる場
 合、地主と店子との法的な契約関係がなく、地
 主と家主との間でトラブルが起こると最終的に
 は店子が犠牲を強いられる、と昨年六月から神
 戸市内の同じような立場にある商店主らにも請
 願の協力を呼びかけ八日までに約三万八千人の
 署名を集めた。署名の請願の趣旨はこういうことであります。
 店子を、家主の地代不払の犠牲にすることのな
 いようにするため、請願人らは、地主が家主の
 地代不払を理由に、借地契約を解除する際、事
 前に、地主が店子に対して、事情を通知するこ
 とを義務づけ、店子をして、不知の間に借家権
 を被奪喪失せしめられるが如き、不当不法の事
 態の発生を防止する旨の立法措置を求めます。
 こういうことであります。
 つまり、家主が地主に地代を払わないために地主は契約を解除する、ところが、家の中に住んでおった店子はこれによって強制立ち退きを突如として言い渡される、そういうばかなことのないようにしてもらいたい、こういうことであります。法務省にもこの請願の趣旨は訴えられておると思うのでありますが、まずこの件につきまして政府の考え方を伺います。
#49
○貞家政府委員 最近私どももその請願の趣旨を承知いたしております。問題は借地法、借家法の基本に触れる問題でございますので、十分問題の点について研究をいたしたい、かように考えております。
#50
○横山委員 本件はただに神戸市生田区のみならず、この報道が伝えられますや、梅田三番街、明石の駅前、尼崎の駅前、国鉄元町駅前等にもやはり大なり小なり大同小異の問題があり、またマスコミで聞いて、大牟田、佐世保または大阪の方面でもこの問題についての多大の関心を持つという関係者の照会があった模様であります。
 したがいまして私は、現行法におきましては判決で借家人の主張が敗訴になりましたが、この事情もっともと思うのでありますから、少なくともこの問題について何らかの賃借人、借家人の保護が、法律改正が必要ならば法律改正によってなさるべきだと考えるのであります。法務省はいかがお考えですか。
#51
○貞家政府委員 この問題はいわば庶民の居住の権利に関する問題でありますから、きわめて重要な問題であるという認識を持っております。ただ、先ほど申し上げましたように、この問題は現在の借地借家関係の基本にかなり影響を及ぼす問題ではないかというふうに考えているわけでございます。
 根本的には、現在の借地権、借家権いずれも、地上権によるものは別といたしまして債権関係つまり貸し主と借り主との問の債権契約ということになっているわけでございまして、地主と借地人たる家主、家主と店子と、それぞれの契約関係によって規律されているわけでございます。その間におきまして、つまり地主と店子との関係はいわば契約外の第三者に対する関係ということになるわけでございまして、その点をいかに構成するかという点はまさに借地借家関係の基本に触れる問題であるというふうに考えるわけでございます。
 また、請願にございます地主は借家人に通知をするということにつきまして、具体的な問題といたしまして通知の相手方の範囲はいかように考えておられるのか、建物の賃借人に限るのか、使用貸借上の借り主あるいは間借り人、同居人というようないろいろなものがあるわけでございますし、また建物に抵当権等を設定している、そういった者も第三者として当然浮かび上がってくるわけでありますが、範囲はどういうふうにお考えであるのか。
 あるいは地主がその相手方をいかにして知り得るのか、借地人はその借地上の建物を他に賃貸するということは自由でございますので、地主にとっては必ずしも何ぴとがそういう関係者になっているかを知り得ない場合もあるわけでございますが、いかにしてそれを知り得るか。また知っている範囲でよろしいということになりますと、知っていたか知らなかったかということをめぐっていろいろ紛争が起こるということも考えられるわけでございます。
 また通知をしなかった場合の効果をどうするのか、単に通知をしなさいというだけでは実効性は上がらないわけでございまして、通知を怠った場合に一体解除権が制約されるのか、つまり解除が無効になるのかどうかという問題もあるわけでございまして、この場合に解除が無効だということになりますと、これはきわめて重大な制約になるわけでございまして、借家人の保護の必要性とのバランス等々について十分慎重に考慮しなければならない。
 ざっと思いつくだけでもかような問題があるわけでございまして、これらの問題はやはり借地借家関係の基本にさかのぼって相当慎重に検討しなければ結論が出せない問題ではなかろうか、現在のところかように考えている次第でございます。
#52
○横山委員 おっしゃることはもっともな点がございます。法律上は地主と店子とは関係がない、したがって地主にそこまで、まず第一に通知義務を課することが法律上適当であるかどうか。あるいはおっしゃるように第二番目に、通知相手がするとしても確定しがたい。第三番目に、いまのお話によれば、それを義務づけた場合における解除無効ということになれば法律上の紛争が起こる。まあこの三点をおっしゃったと思うのであります。
 しかし現実問題として私どもが市井にあって、地主と家主と店子、この種の紛争については、おおむね時間はかかっても、地主はおれは知らぬ、店子がだれであろうとおれは知らぬ、全然関係ないことだということで済んでおらないわけですね。実際問題として済んではおらない。その現実問題を、法律問題としてあなたがおっしゃるように地主は店子のことはおれは一切関係ないと言うておられるかどうか。あなたは法理論でおっしゃるけれども、現実問題としては地主、家主、店子の関係は、時間がかかろうとも、そこに存在する店子を無視して地主と家主だけで話がつかぬということはあたりまえのことなんでありまして、法理論だけで済むものではないのでありますから、現実にそれを合わせるにはどうあればいいかということは法務省としても考えてもらわぬといかぬ、私はそう思うのですよ。それはよくおわかりのことだと私は思うのでありますが、法律に厳しく拘泥するの余り、かくもたくさんの問題の山積しているときに、研究だ研究だと言っておってなすべきことをお忘れになってはいかぬと思うのであります。
 御存じのように、昭和三十八年第一小法廷の建物退去土地明け渡し請求事件の判決によれば、「土地賃貸人と賃借人との間において土地賃貸借契約を合意解除しても土地賃貸人が特別の事情がない限りその効果を地上建物の賃借人に対抗できない」こういう判決が出ていますが、私がいま提起している問題とはちょっと違って、地主と家主とが合意で契約を解除してもその効果を直ちに店子に対抗できないという判決です。いま問題を提起しているのは合意の解除ではない。
 要するに、店子は自分の建物の借り賃を払っておる、もらった家主がその中に含まれる地代を地主に払っていなかったというところから生じた問題ですから少しケースは違いますけれども、その最高裁の判決をもってしても、その精神というのは地主が店子のことは一切おれは知らないんだということが言えるかどうか、その点どう思いますか。
#53
○貞家政府委員 店子が第三者と申し上げましたのは全く形式的な法理論を申し上げただけでございまして、社会の実態といたしまして横山委員御指摘のとおりの状況が大多数であろうというふうに考えるわけでございますけれども、この三者の関係はいろいろ態様があり得るわけでございます。
 そこで、ただいま御指摘がございました最高裁の判例、これはほぼ確立しているのではないかと思うのでございまして、地主と家主とが合意解約をするあるいは家主の方が借地権を放棄してしまう、こういうことを勝手にやりましてもこれは借家人に対して対抗できない、こういうことは解釈上ほぼ間違いのないことであろうと思います。
 また、これは転借人の場合でございますけれども、若干違いますが精神は同じだと思いますが、転借人の方がもとの賃借人の賃料が不払いのときは自分で支払いをいたしますということを地主に申し入れて念を押していたのにもかかわらず、地主の方が家主との間の契約を解除してしまったという場合は、信義則上転借人に対しては対抗できない、これは下級審でございますけれどもそういう判例がございます。
 これらはいずれも、いわば地主と家主との間の通謀と申しますか店子に対する害意があるというような場合、あるいはせっかく店子の方が払いますというような態度を示しているにもかかわらずそれを無視してやってしまったという場合は信義則上その解除が無効だというようなことによって、現行法におきましてもある程度の救済が行われているわけでございまして、その場合に問題となりますのは、やはり立証の困難という問題であろうかと思うわけでございます。
 さらにもう一点、救済さるべき方法といたしましては、これは法理論にこだわるというおしかりを受けるかもしれませんけれども、店子の方はあくまでも家主との間に契約を結んでいるわけでございまして、家主の方がそういう不始末をしたために自分が損害を受けるという場合には、まさに家主に対して債務不履行、履行不能による責任を追及するということはもちろん可能になるわけでございます。
#54
○横山委員 あなたのいまおっしゃったお話の中に二つの問題が提起されておるのですけれども、一つは地主と家主がぐるであった、本件がそれに該当するかどうかは議論の余地がございますが、仮に合意で契約をパアにしたという場合には店子には対抗できないが、今回のように地代不払いということで地主が契約を解除した、それが表に出ていることなんでありますが、仮にそういうことを暗々裏に地主と家主とがぐるになって認めていけば、このやり方でいけば店子を法律上無条件に追い出せるということを悪用したとすれば、これはどうなんですか。
#55
○貞家政府委員 これは立証の問題になると非常にむずかしいかと思いますけれども、賃料不払いというのがいわば仮装といいますか、ためにする賃料不払いという場合もあり得るわけでございます。その場合には、理屈から申しますと、合意解約あるいは借地権のほしいままなる放棄と全く同視できることになるのではないかというふうに考えております。
#56
○横山委員 もう一つ問題提起をされましたが、代払いの意思を表明し、そして何らかの措置をとっておったならば、それを無視するわけにはいかないという趣旨のことをおっしゃいました。
 この代払いということなんですが、店子は家賃を誠実に払っておった、その中にはもちろん地代が含まれておると解すべきである、店子としては、自分たちは紛争があってもなおかつ誠実に家賃を払っておったんだから、誠実な店子としての立場というものは社会的に認められる、したがって、地主が店子に無条件で出ていけという点については公序良俗に反するではないか、こういう論理は人間的、人情的には店子の事情は大変もっともである、しかも、もし必要ならば、契約が破棄されるということが明らかであるならば自分たちは地代の代払いをする必要性、可能性は認め実行をしていたかもしれないのに、突如として契約を解除して出ていけとは何事であるか、こう言うておるわけであります。
 その代払いについて法律時報の三十二年十月号には、東京地裁判事の古山さんを初め大学教授それから最高裁判所調査官の長谷部さん等も含んで「借地借家法改正の動向」として「第三者に滞納地代を代払する機会を与えること」、話題の問題点としては「借地権の消滅によって影響をうける第三者に滞納地代の代払を認める必要があるか。」という問題提起の中で皆さんがかなりコンセンサスを得ておることは、「第三者に代払の機会を与えることは適当であるが、更に代払した第三者の利益(たとえば介入権を認める)を保障することを考慮されてよい。」こういうことをこの座談会で六人ばかりの人がコンセンサスをしておる。こういう第三者に滞納地代を代払いする機会を与えることはどうお考えですか、この種の問題について。
#57
○貞家政府委員 ただいまの御指摘の座談会は私も読んでおります。
 少しこの経過を申し上げたいと思いますが、昭和三十二年の五月に当時借地借家法の根本的改正の準備をしていたわけでございまして、その内容は借地権というものに一般的な譲渡性を認める、そして借地権を債権関係ではなくて物権にして、物権に強化するという基本的な構想のもとにいろいろ案を考えていたわけでございます。
 その際に、一つは借地権消滅の場合に建物を当然土地所有者に帰属させてしまう、現在は買い取り請求権によってそうなるわけでございますが、当然に地主のものにしてしまって――もちろん地主は対価を支払うわけでございますが、地主のものにしてしまって、そうしますと、店子の方は、現在の借家法によりましても対抗力を持つわけでございますが、引き渡しを受けて居住しておりますから対抗力を持つということで保護すると同時に、ただいま御指摘のように、借地権が消滅する場合には、消滅すべき物権その他の権利がある場合に、かわって地代を支払って借地権の消滅を防止するという道を開く、そうしてはどうかというような考え方を当時の改正の問題点として発表したわけでございます。
 それで、それを基礎にいたしまして、ただいまお読みになりましたような学者その他実務家が座談会をして、その中にそういう意見が出ているわけでございまして、これは第三者の介入権まで認める方がいいじゃないか、借地権は結局代払いした者に譲り受けさせることにしたらどうかというようなことにまで発展しているわけでございます。
 これは、結局はその当時の問題点の指摘の仕方が、借地権を物権化する、譲渡性を持たせる、自由に第三者に譲渡することができるという基本的な考え方に即応してこういう議論も出ているわけでございますけれども、ただ、この第三者つまり消滅すべき物権その他の権利の範囲が必ずしも明確ではないし、し得ない場合もあるというようなところからこの案が多少変わってまいりまして、昭和三十四年の段階では、借地権の消滅によって消滅すべき物権があるときには、その物権を持っている者に対して催告を通知するというような構想にまた変わってきているわけでございます。
 したがいまして、この場合には店子、借家権を持っている借家人に対しては、通知ということはその後消えていったという経過になっておるわけでございます。
 ただこの問題に関しましては、学者の中には現在でも、転借人の場合それから借地上の建物の借家人、これもいずれもあらかじめ催告をする必要があるとした方がいいのではないかという議論をされている学者もあるわけでございますが、ただ、その具体的な内容、効果について十分詳細に、私どもとしてはまだ学者の議論からもそのヒントを得るというまでには至っていないという状況でございます。
#58
○横山委員 昭和三十四年といえばもう二十年も前、この種の問題が課題となって私の手元に「借地借家法改正要綱試案」というものがあるのですが、その中の十六に「借地権又は借地権者の有する建物が他人の権利の目的である場合には、借地権者は、その権利を放棄し、又は土地所有者との合意によりその権利を消滅させることができないものとすること。」
 こういう放棄の項目もあって、いまの話の代払いの制度についても、この座談会でもきわめて前向きにコンセンサスがある。そして現実は、先ほど申したように全国各所でこの種の問題が山積しておるのに、いまもって法務省としてこれに対する解決の前向きの方途も何ら満足すべきお答えがないということは、私は大変残念なことだと思うし、遺憾千万なことだと思うのであります。
 問題を先に戻しますが、この請願書による「地主が店子に対して、事情を通知することを義務づけ、店子をして、不知の間に借家権を被奪喪失せしめられ」ないようにしてもらいたいということにこたえるためにはどうあればいいのか。地主に義務づけるということが、先ほど三点お挙げになったのだが、まず第一に非常になじまない、異例だというような趣旨のお話がございました。
 借地法、借家法というのは、私ども戦後の経過を見ましてもきわめて強行法規で厳しい立場をとっていた。その厳しい立場をとっておる借地法、借家法にこの種の通知義務を課することは決してなじまないことではないと私は思うのであります。問題は、その通知義務がなされなければ解除が無効であるということにすることによって、一体通知を受け取った、受け取らぬ、通知の相手がおるかおらないか、それが新しい紛争の種になるというお話はごもっともだとは思います。ごもっともだとは思うけれども、この種の問題はほかにもあり得ることであって、地主が善意の最善の努力をしたということが立証されるならば、契約無効ということにはならないのではないかと思うことが一つであります。
 それから一歩譲って、法律上地主と店子とは関係ないとおっしゃるならば、少なくとも家主は地主に対する法律関係があるわけでありますから、家主にこの通知義務を課する。店子に重大な犠牲を強いるあるいは権利関係が消滅するおそれがあるという場合には、地主にどうしても通知義務を課することができないとするならば、家主に通知義務を課する、こういう立法の必要性はいかがお考えですか。
#59
○貞家政府委員 確かに家主と店子との関係は直接の契約当事者でございますから、そういうことも考え得るかと思います。ただ、その効果といたしましては、結局債務不履行による損害賠償ということがはっきりするという程度の効果ではないかと思うわけでございます。
 でございますから、その債務不履行というのは現行法でも家主と店子との間では十分責任の追及は可能であろうと思うわけでございますが、果たしてそれがこの請願の趣旨に十分こたえ得るような方法になるかどうかという点につきましては、私ははなはだ疑問に思っておるわけでございまして、それは確かに考え得る方法であろうかと思います。
#60
○横山委員 この請願者は地主と家主との間に多少の紛争があったということは恐らく承知しておったと思うのであります。おったけれども、自分たちとしてはまさかそれが転じて無条件で、一銭の立ち退き料も払わぬ、出ていけということになるとは思わなかった。これは世間の常識だと私は思うのであります。
 大体、立ち退くというには立ち退くような条件を整備するか、あるいはそこに新しく建物をつくるならば新しい建物への入居条件を緩和するか、何らかの既得権を尊重して円満解決を図られるのが当然であります。本件のように、地主が家主との契約を解除したんだからおまえたちは上に乗っかっておっても何らの法的根拠もない、一銭も払わぬ、出ていけと言って、最高裁もこの地主の主張を現行法では法律上の解釈として入れてしまう、そして執行官がやってきてくいを打つとかなんとかという騒ぎになる。だから、まさにびっくり仰天ということであります。何と最高裁の判決は実情も考慮しない冷たいものであるかといって嘆いておる。最高裁が悪いんじゃないよ、現行の法律が悪いんだよ、こういうことになってきたわけであります。
 そうであるとするならば、この請願にございますように、店子をして、不知の間に借家権を被奪喪失せしめられた。私は百歩も千歩も譲ってでありますが、家主に通知義務を課す場合、家主が通知した、それが大して効果はないのじゃないのでしょうかとあなたはおっしゃるけれども、しかし、ほうっておけば地主と家主の間の契約は解消されるということが十分予期されるならば、店子一同地主に対して交渉を行ない、代払いの方法を考え、そして双方の円満解決ということが可能である、正式にそういうことが義務づけられれば可能なのであります。また、もしそういうことが可能であるならば、その過程で地主と家主とがぐるになって現行法を悪用して店子を無条件に一銭も払わずに追い出そうとしておったことが実態であったとしたならば これはわかりませんよ、私は本件がそうだと言っておるわけではありませんが、もしそういうことが根底にある実態であったとするならば、それについても防止の方法が実効上あり得るのではないか、こう考えるのでありますが、重ねて御答弁をいただきたい。
#61
○貞家政府委員 この店子の方々の事情というものは十分理解できるわけでございます。社会的現象として、私は、十分この点に対する方策というものを検討すべきだというふうに考えております。
 借地法、借家法、これは先ほど申し上げましたように、古くかなりドラスチックな改正を目指しての作業も検討されたわけでございますが、御承知のとおり結局昭和四十一年の法改正という限度にとどまっているわけでございます。この問題につきましては、局部的に一つの現象だけを取り上げて対処の方策を検討するということでは足りないのではないかと思います。関連する問題も含めまして、私どもはなお慎重に検討をさせていただきたいと思うのでございます。
#62
○横山委員 昔と違いまして、日本列島改造論あるいは都市計画、最近の経済の非常な発展の中で、都市周辺におきましては地主と家主と店子の関係は日常茶飯事随所にある問題でございまして、戦後の状況からも変貌しておる。この三者の関係は、その力関係も多少の変更をしておることは私も認めます。私は、何も地主が悪で店子がすべて善という立場に必ずしも立っているわけではありません。しかしながら、本件を契機といたしまして各地で、そういうような問題はおれのところでも同様な問題だということで、ハチの巣をつっついたようにあちらからもこちらからも、このケースをモデルといたしまして私の方へも要望が来ておるわけであります。
 いま民事局長の最後の御答弁によりますと、これだけで議論するわけにもいかない、この際総合的な判断をして慎重に考える、こうおっしゃるのでありますが、事はこの問題に限ってでも緊急性がある問題ではなかろうか。いまあなたの御答弁のようなことであるならば、三十四年からこの問題が俎上に上って、なおかつ二十年たっても解決しない問題が、あなたがこれから慎重にやろうというようなことではまた十年もこのまま放置されるというような感じがしてならないのであります。当面緊急性のあるものとしてこの提起された請願にこたえるような検討をしていただけるかどうか、これを最後にお伺いいたしたいと思います。
#63
○貞家政府委員 確かにそういたずらに時間をかけて法律の検討をするのが能ではないことは重々承知しております。でございますから、できる限り速やかに、しかしながらこれは慎重に検討することにさせていただきたい、かように存じます。
#64
○横山委員 大臣、法律家にかかるとああいう答弁になってしまうのですよ。私は、くどく申しますけれども、この種の問題はあっちにもこっちにも起こっておる問題なんでありますから、この際、地主と家主と店子に関する現行法が必ずしも十全の効果をもたらしておらない、最高裁で敗訴になった、だからそれなら解決したかというと、今度は看板の問題で事実上執行を停止させるという対抗手段も行われておる。それが判決、控訴、またということになりますと、地主が、おれが勝ったと思っておったら大間違いなんであります。やはりそこには何らかの現状に合わせた法改正が行われて、この三者の関係をもっとうまくやるような改正がどうしても必要だと思うのであります。
 法務大臣から、こっちの方を向かずに向こうを向いて、一生懸命にやりますというふうに命令をしてもらいたいと思いますが、いかがでしょう。
#65
○倉石国務大臣 住居の問題は御指摘のごとく庶民の生活にとって非常に重要なものでございますから、私どもにいたしましても、先ほど来いろいろ御意見の交換がございましたが、ひとつ慎重に努力しなければならぬと思います。(横山委員「慎重はいかぬ」と呼ぶ)日本語では慎重というのがいいのではないか。(横山委員「慎重というのは後ろ向きだ」と呼ぶ)そうではないのです。そういう意味ではなくて勉強をしてみたいと思っております。
#66
○横山委員 終わります。
#67
○木村委員長 飯田忠雄君。
#68
○飯田委員 本日は、ただいま御質問がございました借地借家法に関する問題、それからスパイ犯罪についての立法の問題、難民認定等の法案の問題、それから死刑の執行猶予に関する問題、四点について時間のある限りお尋ねをいたしたいと思います。
 まず最初に、民事局長おいででございますので借家法の問題からお尋ねをいたしますが、新聞の記事につきましては、ただいま同僚議員からお話があったとおりでございますので申しません。この借家法の立法目的につきまして、借家人の賃借権の保護というふうに私どもは理解をしておったのでございますが、この点について政府の御見解はいかがですか。
#69
○貞家政府委員 立法の趣旨は仰せのとおりだと考えております。
#70
○飯田委員 借家人の賃借権は家主との関係であることは当然でありますけれども、借家人はただ賃借権の関係だけが存在するのではなくて居住権とか営業権も存在することが多いのであります。賃借権は確かに家主との関係でありますが、居住権とか営業権は市民的権利であります。したがいまして、この市民的権利の保護という点からは公平の原則によって解決するのが正しいのではないかと思いますが、この点についての御見解はいかがでございますか。
#71
○貞家政府委員 確かに、借家権自体は債権関係でございますが、対抗要件につきまして特別の規定を設けている点等を初めといたしまして、いわゆる居住権の擁護それから間接的には居住権のみならずそういった営業権その他の借家に基づくもろもろの活動の擁護という点が含まれていることは御指摘のとおりだと考えるわけでございます。
#72
○飯田委員 憲法十三条によりますと「公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」とあります。この場合の「國政の上で」の「國政」には立法、司法、行政全部含むと解釈いたしますが、いかがでしょうか。
#73
○貞家政府委員 そのとおりであろうと考えます。
#74
○飯田委員 地主と家主との間の契約解除、そのことから直ちに店子の責めに帰すべきものがないのに居住権、営業権を侵害することは、現在の立法からも認められ得ないことではないかと解されますが、いかがでしょうか。
#75
○貞家政府委員 利益衡量からいたしますと、地主の方もそれ自身の権利を持っておりますし、家主あるいは店子についてもそれぞれの権利を持っているわけでございまして、要するにその調和の問題であろうかと思われます。地主が借地人に対して契約解除した場合の効果、これが店子に及ぶということ自体は最高裁判所の判例が終始認めているところでございまして、これが直ちに憲法上問題があるというふうには理解されないと考えております。
#76
○飯田委員 確かに借家人の賃借権は家主との間であり、また借地法による地主と土地を借りておる人との間の問題というものもあると思います。
 しかしここで問題にすべき点は、地主と土地を借りておる人との間の権利関係のために、土地を借りておる人がつくった家に住んでおる賃借人、この人たちの権利を害し得るかどうかという問題でありますが、先ほど申しましたように、賃借権から直ちに居住権、営業権を侵害できるという解釈をとる、そういう解釈から行われた最高裁の判決そのものに、私は憲法十三条の精神を踏みにじったものがあるのではないかと思うのであります。特に借家法の精神は借家人の権利の擁護でありますが、そのことを考慮されていないというところで最高裁の判決そのものに疑問を抱くものでありますが、この点について政府の御見解はいかがでしょうか。
#77
○貞家政府委員 店子の権利あるいは転借人の場合でも同様だと思いますけれども、借地上の建物について持っている店子の権利は、家主が持っております土地の賃借権、その基礎の上に立っているわけでございまして、そのもとの権利が消滅すれば店子の方の権利がその存在の基礎を失うことになる、こういう考え方に最高裁判所の裁判例は立っているのだと思うのでございまして、この場合に、転借人あるいは店子である借家人の権利をさらに強いものにするかどうかということは立法政策の問題であろうかと思うわけでございまして、憲法上直ちに最高裁判所の裁判が問題があるというふうには私、どもは考えておりません。
#78
○飯田委員 憲法第二十二条の権利、自由権、これによりますと、職業の自由が保障されておりますし、それから居住の自由も保障されております。居住の自由、職業の自由を保障されておるということは、居住権、営業権を当然認められるべきものとして憲法が承認しておる、私はこのように理解すべきであると思います。
 そのように理解いたしました場合に、居住権、営業権は賃借権の下位にあるという説明はどうも納得しかねるわけであります。賃借権が根拠になって、その上に居住権、営業権が成り立つという考え方はどうも承服できないと思います。つまり、国民としてどのようなところに住み、どのようなところで営業するかという問題は憲法が保障した問題であります。それをやるために、もちろん賃借権によって家を借りることはあるでしょうが、賃借権と居住権、営業権というものは別個の権利でございまして、賃借権のゆえに居住権、営業権を踏みにじっていいということにはならないと私は考えるわけであります。特にこの場合、地主とそれから土地の賃借人との間のいざこざから、何の罪もないいわゆる店子はその責任を十分果たしておるのでありますから店子の責めに帰すべきものはないのでありますが、にもかかわらず、その店子の居住権、営業権というものを抹殺するという法解釈が一体正しいかどうか私は疑問に思うのですが、この点は特に憲法の十三条が「國政の上で、最大の尊重を必要とする。」と言うておるその「國政」には司法も含むのだから、私はそういう点からも細かい配慮をした判決が必要であったのではないか、このように思うのであります。判例がどうあろうとも店子の責めに期すべきでない、にもかかわらず居住権、営業権を押さえてしまうという今日の行き方に対して政府はどうお考えになっておるのか、どうでしょうか。
#79
○貞家政府委員 御指摘のとおり、憲法も居住、職業選択の自由というようなものを保障しているわけでございますが、これはあくまでも自由権でございまして、本件と申しますか最高裁の判例が出ておりますケースにおきましては、直接自由権を侵害するという問題ではなくして、店子の方の生活を営む権利をどうするかという問題になってくるかと思うのでございますけれども、この場合には、やはり契約関係によってもとの契約が解除される、その基本を失えばそれから派生する権利が消滅するという考え方は、それ自体としては十分合理的な解釈であろうと思うわけでございまして、ただ、両者の関係者のバランスということを考えまして、いろいろ通謀であるとか仮装であるとかあるいは特に害意をもってする、そういった状況の作為というようなものに対して、これはいたずらにもとの権利がなくなったから先の派生的な権利がだめになるというような解釈をいたしませんで、裁判所は、そういうようなケースにつきましては店子の方の利益あるいは転借人の方の利益というものを図っているというのがいまの裁判例の現状でございまして、これ自体憲法上問題があるというふうには私どもは考えていない次第でございます。
#80
○飯田委員 それでは質問を変えますが、借家法の六条に、借家人に不利な特約はないものとみなされる、こういう規定がございます。
 そうしますと、地主と土地を借りた人との間で地代を滞らせた場合には契約を解除するという契約があったにしましても、その契約はいわゆる店子には影響を及ぼさないという意味に解されることができないかということであります。つまり、借家人に不利な特約はないものとみなされる。だから、特約というものは法律上決められた特約であろうと何であろうとないものとみなされる、こう書いておる。この点についていかがですか。
#81
○貞家政府委員 借家法の六条で言っております特約というのは契約当事者間の特約でございまして、たとえば地主と家主たる賃借人との間、これは借家法ではございませんけれども、家主とそれを借りている借家人、その間の関係について規定しているわけでございまして、契約上第三者である場合についてこの規定が触れているわけではないと思います。
#82
○飯田委員 おっしゃることは一つの形式論理ではそうですが、借家法の法の精神からいきますと私が申したようになるのではないか、こういうことでございます。
 ところで、時間の関係で先に進みますが、この借家法につきましてぜひ必要な改正をしていただくことが大切だと思います。もし地主が、だれが借りておるかわからないといったようなことを論拠として反対されるのであるならば、借家権の登記制度をおつくりになったらどうか。それから店子の異議申立権を認めるということも必要であろうと思います。このことは、市民的権利である居住権、営業権の保護、憲法が保障する自由権の保護の上からぜひ必要であろうと思いますので、政府の方においてそのような措置を講ぜられることができないかどうかお尋ねいたします。
#83
○貞家政府委員 問題は庶民の居住に関係するということで、きわめて重大な放置すべからざる問題であるというふうに考えますが、一方、借地法、借家法というものの基礎にも触れる問題でございますので、十分慎重に検討をいたしたい、かように考えております。
#84
○飯田委員 ただいまの問題、これは重要な問題でありまして、大臣の御決意が必要であろうと思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうかお尋ねいたします。
#85
○倉石国務大臣 局長が申し上げましたように、それからまた私先ほどお答えいたしましたけれども、やはり庶民の生活にとって大変大事な問題でございますので、いろいろな御意見を拝聴しながら慎重に検討してまいりたいと思っております。
#86
○飯田委員 これは慎重に検討ではなくて、ぜひ早急に改正の方向で進んでいただきたいと私は要望いたす次第であります。
 では次の問題に移ります。
 次は、最近の新聞によりますと、これは毎日新聞の論説でございますが、「超スピードのスパイ判決」ということで論じておられます。つまりこの論調は、スパイの犯罪に関する限り非常に裁判が早過ぎるということであります。三月十七日の初公判の日にたった一日だけ事実審理をやって、二回目の公判日の四月二日には、午前中に弁護側の情状証言、午後には検察側の論告求刑、弁護側の最終弁論と、型どおりの手順を経てスピード結審をした、このことを書きまして、こういうやり方はどうも納得できぬというわけです。こうしたスパイ事件について、実相はどういうものであるかということを裁判の過程において国民の前にもっと明らかにすべきではないか、にもかかわらず、これは伏せてしまおうというようなことで早く行われた判決に思われるといったような論調でございます。
 この問題につきまして、政府では、こういう被告人が初めからもう検察官の言い分を全部承認してしまい、裁判所のいろいろの手続についてもできるだけ簡略に、また判決も頭から承認してしまうというような被告人のあり方について、どのような御見解をお持ちでしょうか。
#87
○前田(宏)政府委員 御指摘の毎日新聞の社説にいまおっしゃいましたようなことが書かれていたことは承知しておるわけでございます。
 一般論的なお答えになるかもしれませんけれども、裁判は迅速に行われるべきものである、もちろん被告人の利益を害してはならぬわけでございますが、そういうことがない限り迅速に行われることが望ましい。むしろ従来の裁判は長過ぎるのじゃないかというような御議論が多いくらいではないかというふうに思うわけでございます。
 現在の刑事訴訟法のたてまえでは、これは飯田委員に申し上げるまでもないと思いますが、極端に言えば被告人が争わなければ簡易公判手続という手続も特に設けられておって、一日で結審するということもないわけではないわけでございます。したがいまして、新聞の論説でいろいろな見方があることは、それはそれなりのことでございますが、私どもの立場といたしまして、それがいいとか悪いとか、むしろ迅速な裁判という面からいけばいいというか適当だというか、そういう感じもするわけでございまして、早過ぎてけしからぬということはないのではないかというふうに思います。
#88
○飯田委員 スパイ組織の防衛方法といたしまして、逮捕されたときには犯罪事実はできるだけ早く認めて他の方へ波及しないようにすべきだ、そういう方法があるということを私はある人から聞いたことがあります。結局、ソビエトのスパイ網がわが国に張られておる、そのスパイ組織の暴露を恐れての行動ではないかという一つの疑いでございます。この点につきましての御見解は政府の方はいかがでしょうか。
#89
○前田(宏)政府委員 いまのような見方もあるいはあり得るのかもしれませんけれども、本件に関します限り、被告人が三名おったわけでございまして、その被告人の方が争わなかった理由というのは、御本人の考え次第と申しますか気持ちのことでございまして、それが何か特段の理由があるということでもないのではないかと思います。
#90
○飯田委員 国家公務員法とか自衛隊法には秘密漏洩禁止の規定がございまして罰則もございます。今度のスパイの件につきましては、それで十分任務を果たされたというふうに一般的に言われております、これも新聞に書いてあったのですが。
 そこでお尋ねいたしますが、内閣の大臣とか政務次官のような国家の枢要の地位にあられる方の秘密漏洩禁止規定はございましょうか、お尋ねします。
#91
○前田(宏)政府委員 技術的なお答えになるかもしれませんけれども、先ほど来おっしゃっておりますように、国家公務員法違反ということでございますと、特別職、一般職というような区別がございまして、いまおっしゃいました国務大臣というものは特別職になるわけでございますので、そういう意味では公務員法の適用がない、こういうことに相なります。
#92
○飯田委員 自衛隊法では、自衛隊の職員は特別法による職員ではないかと思いますが、そうしますとそれには秘密漏洩禁止の規定があるが、内閣の閣員にはないというのは片手落ちではないでしょうか。いかがでしょうか。
#93
○前田(宏)政府委員 公務員法の問題でございますので私からお答えするのが適切かどうかと思いますけれども、公務員のいろいろなランクといいますか種類に応じまして一般職と特別職という扱いがなされておって、いろいろな規制もそれによって区別があるということは、公務員法の立場から見て合理的な扱い方ではないかというふうに思っております。
#94
○飯田委員 国家の枢要な機密というものは、私どもの認識からすれば、内閣の大臣とか政務次官とかそういう枢要な人あるいは官庁でならば局長クラスにあるのであって、それ以外には余りないように私どもは思います。そういう人たちが国家の機密を厳重に守っておれば、それで秘密漏洩ということは起こらないのではないかと思いますが、その点についてはいかがでしょう。
#95
○前田(宏)政府委員 秘密といいましてもいろいろと幅のあることでございまして、一番トップ的な秘密ということになりますと、いま御指摘のような、地位に応じて高級公務員といいますか上級の者しか知らないという場合もあろうかと思いますが、最近のようにいろいろと行政の組織もまた内容も複雑になっておりますから、すべてトップクラスの人だけが知っているというわけにもまいらないことが多いだろうと思います。したがいまして、それぞれの秘密に関与する者について、一般の職員も含めてその取り締まりといいますか秘密漏泄を防がなければならぬという考え方は当然必要であろうと思います。
#96
○飯田委員 外国では大統領を弾劾する制度がございます。大統領がもし国家の機密を漏らすようなことがあれば弾劾されるわけです。
 わが日本の国では、内閣の閣員が漏らしても弾劾制度もないし処罰されることもない、下級の職員が漏らせば処罰される、こういうところにどうもざるの中に水を流すような状態ではないかと言われるゆえんがあるのではないかと思いますが、この点について政府はどうお考えでしょうか。
#97
○前田(宏)政府委員 同じようなお答えになるかと思いますが、それだけが一つの理由ではないと思いますけれども、閣僚とかそういう地位にあられる方がそう軽々に漏らすようなことを想定すること自体がまず問題でもあろうかと思うわけでございまして、現在の公務員法の上ではやはり扱いを区別しておるということで、当然行政処分とかまた一般の国民の批判とかいうものは受けるわけでございますから、必ずしも処罰しなくてもそれなりの責任は問われるということであろうと思います。
#98
○飯田委員 スパイという問題は、秘密をとられてしまえばそれでもう終わりなので、秘密をとられてからどうこう言っても、これは後の祭りだと思います。問題は、そうした国の枢要の地位にある人が漏らさないということが必要だと思います。
 このたび、実は新聞によりますと、この新聞は五十五年四月十五日の読売でございますが、新聞によりますと、自由民主党でスパイ防止法の制定を企画しておられるような意味にとれる記事がございます。これにつきまして、こういうのは議員立法でおやりになるのかそれとも政府の案としておやりになるのか、政府の方ではどのように聞いておいでになりますかお尋ねいたします。
#99
○前田(宏)政府委員 新聞等でも報道されておりますように、自由民主党の内部でいろいろと御論議といいますか御検討が進められていることは承知しておるわけでございますが、その案自体もまだ確定的でないように漏れ承っておるわけでございます。したがいまして、その立法形式と申しますか提案形式と申しますか、つまり政府提案でいくのか議員提案でいくのかというようなことにはまだ至っていない段階であろう、かように理解しております。
#100
○飯田委員 最近、情報公開法をつくるとか機密保護法をつくるとかいうことが盛んに新聞その他で出ておりました。こうした問題につきまして、私ども国会議員が一番物を知らない状態に置かれております。政府では、こういう情報公開法とか機密保護法について案をおつくりになって国会に提出される御意図はあるのでしょうか、お尋ねいたします。
#101
○前田(宏)政府委員 いわゆる情報公開法につきましては、私どもの方では直接携わっておりませんのでよくわかりません。また秘密保護法的なものにつきましても、いまお尋ねがあってお答えしたような状況でございまして、私どもの立場で特に用意をしているというようなことはございません。
#102
○飯田委員 このスパイ犯罪についての規定というのは、私は慎重にやりませんととんでもないことになりかねないと思うわけであります。これこそ慎重に慎重を重ねていただきたい。そう軽々しく法をつくられるということは問題であろうと思いますので、この点につきまして大臣の御見解はいかがでしょうかお尋ねいたします。
#103
○倉石国務大臣 お説のとおり慎重にやるべきものであると考えております。
#104
○飯田委員 実はスパイにつきまして警察の方にいろいろお話を聞こうと思いましたが、きょうは時間を削られまして、まことに警察の方には申しわけないのですが、質問いたしませんのでよろしくお願いいたします。
 次に、難民の認定法案につきましての質問をいたしたいと思います。これも二月二十二日の東京新聞に載っておった記事でございます。難民受け入れへ新しい法律をつくるというわけで法務省が成案を急いでおいでになる、ことに在留資格の認定という問題についていろいろ決めておいでになるということが載っております。
 そこでお尋ねをいたすわけでございますが、難民に対して上陸拒否、退去強制を緩和される御意図と思いますが、それはどの程度に緩和されるのでございましょうか。
#105
○小杉政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま先生が御指摘になりました東京新聞の記事、これは若干先走り過ぎておる感じがございます。私ども、現在、難民条約を批准した場合に備えまして、法務省所管の事項に関する立法について検討を進めておるわけでございますけれども、現在の難民条約の中で法務省にかかわりのある条文を簡単に挙げてみますと、二十六条の移動の自由であるとか、二十七条に書いてございます身分証明書の問題、二十八条にございます旅行証明書の問題、三十一条にございます違法に避難国にある難民の処分の問題、さらに三十二条の追放、三十三条の追放または送還の禁止の条項あるいは三十四条に書いてございます帰化の促進に関する規定というようなものについて、どの程度手当てをすべきかという検討を進めておるわけでございます。
    〔委員長退席、沖本委員長代理着席〕
 先ほど先生の御指摘になられました退去強制に関連いたしましては、三十三条のいわゆるノンルフルマンの原則を明文化する必要があるだろうというのが第一点。さらに退去強制事由につきましても、追放の条項が三十二条にございますので、これとの整合を図る意味での手直しというものが必要であろうというふうに考えて目下検討しておるところでございますが、現時点で御披露申し上げられるような成案は得ていないというのが現状でございます。
#106
○飯田委員 それでは、在日韓国人または朝鮮人の最近五カ年間における不法入国の状況についてお尋ねをいたします。どのようになっておりましょうか。
#107
○小杉政府委員 昭和五十年から昨年五十四年末までの数字を申し上げますが、これは、それぞれの年に現実に不法入国してきてその年のうちに検挙したという者ではなくて、過去の一定の期間内に入ってきていた不法入国者であってその当該年に検挙された者の数字を申し上げます。昭和五十年は千八十三名、五十一年は九百五十四名、五十二年は八百四十六名、五十三年は六百四十六名、五十四年は六百十九名、以上のとおり傾向としては漸減傾向にございまして、この五年間の検挙者を全部足しますと四千百四十八名になります。
#108
○飯田委員 昭和五十四年に密入国をしてきた人はどのぐらいあるでしょうか。それから、ことしに入ってから密入国をしてきた人はどうでしょう。
#109
○小杉政府委員 五十四年に現に密入国を行いかつ検挙された者の数は三十一名でございます。
#110
○飯田委員 最近、韓国とか朝鮮からの密入国者が大変減ってきたことは事実であろうと思います。過去において不法入国をしてきて現在もなお日本におられる韓国人あるいは朝鮮人の実態は把握されておるでしょうか、お尋ねいたします。
#111
○小杉政府委員 総数が具体的に把握できる状況に相なりますれば、私どもとしても在留管理上非常に好ましいわけでございますけれども、いずれも潜在しておるわけでございまして、その実数を把握する手段、方法というものはないわけでございます。
#112
○飯田委員 韓国及び朝鮮からの不法入国者、この人々は実は前には日本人であった人が多いようでございます。一たん朝鮮あるいは韓国には帰ったけれども、そこでの暮らしに困るので、現在は日本の方へ知人を頼り仕事を求めてやってきた人たちであるということを私どもは聞いております。こうして今日まで十何年も日本に住みついておられる、しかもその間平穏無事に住んでおられ、近辺の人に迷惑をかけていない、こういうような人たちが多いということを私は聞いております。
 こういうように、不法入国をしてから十年以上も経過してなお平穏である、そういう在留者に対して、ことさらにこれをあばき出して処罰するとかあるいは強制送還する、そういう処置自体が大変むごいことであろうと私は感ずるわけであります。時効というものがあります。いろいろの時効で取得時効、普通は十年間おとなしくして暴露しなければ成立してしまいます。あるいは他人の土地であっても二十年間自己のものにする意思でこれを占有しておれば取得時効ができる、こういうこともございます。日本の国へやってきて日本の社会を乱さないで平穏に暮らしておる、そういう人であるなら、それをわざわざあばき出す必要はないのであって、むしろそういう人たちに対して時効を認めたらいいのではないかというふうに私どもは考えるわけであります。
 いわゆる在留の取得時効の制度を設けられることが必要ではないか、そしてそれをやれば、現在潜在しておる韓国人、朝鮮人は皆名のり出て外国人登録ができるはずであります。そこで外国人というものをはっきり知ることができるのに、現在はそういう平穏に暮らしておる者も見つけ出して送り返してしまう、そういうことをおやりになるために隠れて出てこないのではないかと思いますが、この点についていかがですか。
#113
○小杉政府委員 ただいま御指摘の問題は、実は入国管理制度の基本にかかわる問題を含んでおる事項であろうかと思います。不法入国者は国外に退去させるということが世界各国の出入国管理法令の基本的な原則でございまして、国際的な慣行、原則もそうなっておるということではなかろうかと存じます。
 しかしながらわが国におきましては、現実に戦後の混乱の際に離散した親族を頼ってわが国に不法入国してきた韓国人等につきましては、在日韓国人の法的地位に関する協定を署名いたしました際に、法務大臣の声明という形で、このような人たちの在留を安定させるため好意的な取り扱いをするということをすでに明らかにしておるわけでございます。
    〔沖本委員長代理退席、委員長着席〕
 さらにまた、その後におきましても、このような潜在密入国者の個々の事案につきまして、不法入国者のわが国における居住歴であるとか家族の状況等諸般の事情を慎重に検討して、人道的な配慮を要する場合にはその在留を認めるという、いわゆる在留特別許可という制度を維持しておるわけでございまして、このような考え方、このような取り扱い方針というものを私ども今後とも引き続き堅持してまいりたいと考えておるわけでございます。
 ただいま先生がおっしゃられました在留資格取得時効というような考え方、これは恐らく現在の私どもの所管しております入管令のたてまえと申しますか立て方それ自体になじまないのではないかという感じがいたします。
#114
○飯田委員 すべて法律関係というものは、もしそれが社会にとって平穏であり害を及ぼさなければ、それをそのまま認めるというのが法律の根本理念ではないかと私は考えるわけであります。
 入国するときは確かに不法入国であったかもしれませんが、十年以上もたっておれば入管令の公訴の時効はもちろん消滅しておりますし、検挙の対象にはならない。ただ問題は、外国人登録法だけの問題として違法問題が存在するにすぎないのではないかと思われるわけであります。外国人登録法だけの問題であれば、これは外国人を把握するという目的なんですから、在留しておる在留者の把握の問題ですから、これを一日も早く全部把握できるようにするのが法の目的にかなっておるのではないか、こう思うわけであります。したがいまして、在留の取得時効を認めていけば全部名のり出るのですから、しかもその人たちは平穏にいままで暮らしてきたのだから、そういう人たちに対して何らか今後安住の日が送れるようにしてあげるということは、人道上から言うて大変重要なことではないか、このように私は思うわけです。
 出入国管理令は密入国をした者を捕らえて送り返すのが目的だから取得時効はなじまない、こういうのはおかしいのでありまして、私がいまここに申しておりまする在留の取得時効は外国人登録法に関係しての問題であります。前の出入国管理令じゃないのです。出入国管理令の場合ですと、これは公訴の時効がありますので、公訴の時効期間中はもちろん捕らえて強制送還するということが起こるでしょう。しかし、その公訴の時効の期間を過ぎてしまったものについては外国人登録法だけの問題だから、在留の取得時効制度を設けるのがいいのではないか、こう考えるわけです。
 この点について、ひとつ法務省におかれましても前向きの法制を設けてくださることが私は望ましいと思います。それによって、わが国に在住する外国人を全部はっきりと、どういう方々がどれだけおられるかがわかるし、それとともに在留しておる方の戦々恐々としておる毎日を救うことができる。どうぞその点についての御考慮をお願いしたいのですが、重ねて政府の御見解及び大臣の御見解をお伺いいたします。
#115
○小杉政府委員 ただいまの先生の御意見、非常に貴重な御意見として拝聴いたしたわけでございますけれども、現在の私どもの所管しております入国管理令ないしは外国人登録法そのものの考え方、立て方、基本原則というようなものに照らして、必ずしも先生の御要望のような方向での処理が可能かどうか、私はいささか疑問を持つものでございますが、一応検討させていただきたいと存じます。
#116
○倉石国務大臣 ただいま入管局長が申し上げましたように、慎重に検討いたしたいと思います。
#117
○飯田委員 あとまだ質問事項がありますけれども、きょうは時間がございませんので、この次に延ばします。
 本日御質問申し上げました内容はすべて非常に重大な問題点を含んでおりますので、政府におかれましてはぜひ検討していただいて、どうか実現の道を図っていただきたいと思うものであります。これをもって終わります。
#118
○木村委員長 楯兼次郎君。
#119
○楯委員 私は、中国と日本の二重国籍について三月五日に質問をいたしましたが、なお腑に落ちない点あるいはある点については私の舌足らずといいますか申し上げられなかった点、多少誤解もございますので、この点について質問をいたしたいと思います。
 まず第一に、国籍法第八条、自己の志望で外国籍を得たときは日本の国籍を失う。この「自己の志望」とはについて私が三月五日に質問いたしましたときに、法務省当局は次のような答弁をいたしております。
 もちろんこれは本人の志望によりというわけでありまして、本人の意思に基づかない、真正な意思が中国の国籍を取得するということはなかつたというふうに認められる場合には、これは入籍とそれによって日本国籍を喪失するというふうには必ずしも認定できないわけでありまして、極端に申しますと、中国への入籍手続が何らかの強制でございますとか意思を抑圧された状態でそういう意思表示が行われたというような場合には、もちろん事実を調査いたしましてさような認定をいたさなければならない場合もあると思うのでございます。
こういう答弁をいただいておりますが間違いございませんか。
#120
○貞家政府委員 ただいまお読みいただきましたのは私が御答弁申し上げたことでございまして、現在でもそのとおり間違いないと思っております。
#121
○楯委員 そういたしますと、自己の志望でないと認められる場合とは具体的にどのようなことが代表的に例示することができるか、お伺いをしたいと思います。
#122
○貞家政府委員 例と申しますと非常にむずかしいのでございますが、要するに意思を抑圧された、無理やりにという場合がもしあるといたしますれば、そういう場合がこれに当たると思います。
#123
○楯委員 私は十五日に担当課長さんともこの問題について話をしたのです。
 課長さんと私の当時の話を簡単に申し上げますと、一体強制的とはどういう場合があるか、いろいろ話をいたしましたが、私のこういう問いに対して、いま局長さんが言われましたように、たとえば両手をつかんで無理やりに拇印を押させられる、そういう場合等ではないか、そう言われるわけです。そこで私は、では本人が、つまり中国籍のあるその本人が中国からそうやられましたと言えばそれでいいのか、こういうことを言いましたら、担当課長さんは、いやそれはだめだ、では一体だれがその強制的であったかどうかということを判断をするのか、こういう話をいたしますと、無言で最後は退席をされた、こういうことがあったのですが、一体だれが判断するのですか。
#124
○貞家政府委員 事実認定の問題でございますので、本人しかそういうことを証明すると申しますか人を納得させるに足る資料を持ち合わせないという場合には、その本人のおっしゃることを信用するかどうかということにならざるを得ないと思うのでございます。
 だれが認定するかということになりますと、これは行政上の問題といたしましては法務大臣がこれを認定する、その補助としてそれぞれ担当が決まっておりますが、国籍事務処理者が認定するということになるわけでございますが、もちろん法律問題でございますから最終的には裁判所の判断ということにもなるわけでございまして、現にそういう裁判所の判断をいただいているというケースも若干はございます。
#125
○楯委員 私は、本人の申し立て以外に判断のしようがないと思うのです。それは説明のうまい人あるいは下手な人いろいろあると思いますが、こういう場合には、素直に本人の申し立てを聞いて好意的な判断を下すのがあなた方の任務であり責任である、こういうふうに解釈をしておるのでありますが、三月五日以来の法務省とわれわれの話し合いにおいては、私は冷酷無比という言葉をこの前使ったのですが、それはちょっと極端かもわかりませんが、何といいますか、受け付けない、だめだという前提に立ってこういう人たちの話を聞いておる、こういうふうにしかとれないわけです。
 それでは、時間も制約をされておりますので、具体的に自己の志望でないと判断をして日本国籍を取得した例がいままでに何件あるか、説明していただきたいと思います。
#126
○貞家政府委員 現にそういう認定をいたした件数はございます。これはきわめて微々たるものでありますがございます。
 それで関連して申し上げますけれども、本人の供述と申しますか本人の御説明しか材料のない場合もございますし、また当時の、これはそこに居合わせた人がいるというような運のいいケースはまた例外的でございましょうから、その時期に接着して同じような行動をとった方に伺ってみるとか、そういうような周辺的な調査ということは可能でございますし、そういうようなことによって、これは自己の志望によって中国国籍を取得したとは認められないという判断をいたした例も、非常に少数でございますがございます。
#127
○楯委員 私は、認められない判断をした場合を聞いておるわけではないのです。認めた場合をお聞きしておるわけですから、この次答弁をしていただきたいと思います。
 そこで、三月五日に複数の人を並べましたが、もう一回柘植秀人という人の場合を簡単に復習して判断を仰ぎたいと思います。意見を聞きたいと思います。
 柘植秀人は昭和十六年に生まれまして日本の国籍を取得しました。一九六二年、日本流に言いますと中国の小学校の教師となりました。私は三月五日には、教師となるために中国国籍を取得した、こういうことを言いましたが、これは誤りです。一九六二年に中国の小学校の教師となった。それから一九六六年、昭和四十一年に文化大革命が起きたわけです。教職にある者は強制的に中国籍に入籍をさせられたわけです。そこで一九六六年立場上中国国籍に入籍、昭和五十一年日本に帰国をいたしました。昭和五十三年六月九日中国籍を除籍したわけです。
 この前私は、ちょっと中国語がわかりませんので、これは資料を持っておったわけでありますが、はっきりと、五十三年六月九日中国籍を日本流に言いますと除籍をいたしました、こういう中華人民共和国日本大使館の証明があるわけです。これをちょっと見てください、そっちへ上げますよ。一九七八年六月九日中国の国籍除籍ですよ。それから昭和五十三年七月二十八日日本国籍の除籍があったわけですね。したがって、六月九日から七月二十八日まで約五十日間は日本の国籍しか存在しなかったわけなんです。ところが、その日本の国籍を除籍したのでだめだと本人が法務省との話し合いで言われておる、こういうことです。
 それで私は時間の関係上簡単に言いますが、すでに中国国籍除籍の証明がある、それから中国の強制入籍の事実が想定をされる。と言いますのは、私は一九六六年八月にベトナムのハノイへ行ったのです。中国経由で中国の国土を約一カ月間往復しました。そのときはちょうど中国の文化大革命が突発をした年であり、ちょうどその月もそういう、何といいますか、にぎやかなときであったわけです。私どもは細かい点はわかりませんけれども、皮相的な表面的な見方をすると、あの文化大革命が、デモ等を中国の本土で見たのですが、いかにすさまじいものであったかという感じがした。しかも、あの文化大革命というのは教育面から入っていったといいますか着手をした、こういうふうに記憶をしておるわけです。
 もしこの柘植秀人が、四年間小学校の先生をやっておって、あの文化大革命の最中に中国の入籍を拒否したならばどういうことになったであろうか。私は、他国のことでありまするから、この国会の場で自分の想定で物を言うことはできませんが、それこそ両手をつかんで拇印を押させられたということではなかったか、こういうように私はまず想定をしておるわけであります。
 これらの点を考えますと、日本の国籍取得を希望しておる柘植秀人に対して、これは温かい取り扱いじゃない、これは法務省としては常識的な対処の仕方をしなければいかぬのじゃないか、こう思います。
 すでに中国国籍除籍の証明がある。文化大革命のときに四年間先生をやっておったけれども、教育者は全部中国籍に入籍をせよという強制命令によって入籍させられた。それから日本政府の、これは責任はどこにあるかわかりませんが手続上の誤りがあります。柘植秀人が昭和二十年に死んだというので死亡除籍をされておるのです。ところが昭和五十年、裁判の結果として戸籍を回復しておるのです。そうして中国籍除籍後には、残るのは日本の国籍ただ一つ、そういう状態に置かれながら、なおかつおまえはだめだ、こういう判断を下すというのはまさに、冷酷無比とは言いませんが冷酷無情の取り扱いである、こういうように私は考えまするので、この点十分考えていただきたい。
 本会議がありまするので、私はもうこれで質問を終わりますが、民事局長それから法務大臣の柘植秀人に対する考え、私のいままでの質問の結果からどういう気持ちであるか答弁してもらいたいと思います。
#128
○貞家政府委員 実は、非常に弁解がましいことでございますけれども、本人のお宅へ伺いあるいは本人に来ていただきまして私どもの方で担当者が調査をいたしましたその事実調査によりますと、いろいろな事情が必ずしも出てないようでございます。就職や一般生活上何かと不都合や差別などがあったから申請したのです、自分たちから申請をしたことは相違ありません、そういう調査の結果になっておるわけでございまして、その程度にとどまっているわけでございます。
 そこで、本来自己の志望によって外国の国籍を取得したという認定に当たりましては、外国官憲の受理した帰化の事実、本件で申しますと中華人民共和国許可入籍証書というような形式があるわけでございます。そこで、外国の官憲が権限を持ってそれを受理し許可したということを、私ども行政の立場から、頭からこれを無視しまして白紙に返って初めがら審査をするということはやはり態度としては必ずしも適切ではないであろう。こういう外国の官憲の出しているものがあれば、これは一応通常の意思に基づいてやられたものであるというふうに推定されるわけでございまして、そうではない、これは特殊の事情だというような特別の事情を御説明いただいて、もしそういう事情の御説明があれば、それによって判断をする、かようになると思うのでございます。その事情が必ずしも私どもの方には、これは真実わかりませんけれども、ただいまおっしゃったような事情があらわれてはいないということでございます。
#129
○楯委員 私も柘植秀人君には二、三回会って話を聞いたのですが、確かに向こうで育っておりますので、発音といいますかなかなか理解しがたいところがあるわけです。私は二回、三回会ってこれだけに時間がないので問題を整理したわけですが、私も初めはいまあなたの言われたようなふうになかなか全部をよく理解することができなかったわけです。
 したがって、本会議が始まりまするからこれ以上問答はいたしませんが、再度よく本人の話を聞いて善処をしてもらいたい、こう要望いたしまして、約束でありますので質問を終わります。
#130
○木村委員長 午後三時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午後零時五十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時三分開議
#131
○木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。柴田睦夫君。
#132
○柴田(睦)委員 一番最初に刑事局長に伺います。
 先ほどK・ハマダ問題の答弁をされておられましたが、結局、小佐野賢治の事件に関しまして浜田幸一、K・ハマダは証人に出ることになるのですかどうなんですか。
#133
○前田(宏)政府委員 先ほどの稲葉委員のお尋ねの際に申したことでございますが、まだ検察官が取り調べ請求をいたしました証拠のごく一部が同意されただけでございまして、一部については不同意ということで証人尋問の請求をした、その他のものについては意見が留保されている、こういう段階でございまして、これからの公判の進行というものは現時点では予測しがたいような状況でございます。したがいまして、どういう人が証人に出るかということもまた予測しがたいところでございます。
#134
○柴田(睦)委員 ということは、今後弁護人側が書証に同意するか不同意するかということによって決まることだけれども、それによってはK・ハマダなる者が証人として出る、そういう可能性はあるということですね。
#135
○前田(宏)政府委員 何分にも可能性のことでございますから、全くないというわけにもいかないかと思いますけれども、先ほど稲葉委員のお尋ねで、アメリカのホテルの役員、これらの証人尋問が予定されておりますが、その人が来るか来ないか、これもわからないわけでございます。
 ただ稲葉委員のお尋ねは、来ない場合には当然浜田氏が証人になるのではないかというようなお尋ねでございましたので、そういうつながりは直ちには出てこないのではないか、かように申したわけでございます。したがいまして、可能性といいますか、今後のことでございますから全くないということもないかもしれませんけれども、先ほどのようなお尋ねの趣旨では当然にはならないというふうに思っているわけでございます。
#136
○柴田(睦)委員 債務の保証をしたということが冒頭陳述にあって、それは証拠によって証明すべき事実になっているわけですけれども、証人あるいは同意される証拠がないということになって、そうすると、保証を受けた人が保証をしてもらったかどうかということについて立証するために証人に出るということはあり得るのではないですか。
#137
○前田(宏)政府委員 率直に申しまして、保証をされた人のことは直接の問題ではないように思うわけでございます。
 つまり、保証という形をとっておりますから、その保証された、したというような関係が出るわけですけれども、いわゆるサンズホテルと小佐野被告人との関係では、直接的な債務と言ってもいいわけでございます。したがいまして、そこから事が出発すればその前のことは問題にならないというふうになるわけでございまして、その辺も柴田委員の御指摘のように、どういう争い方をされるかということは予測できませんから、それも全くないかどうかということも言い切れないわけでございますけれども、少なくとも現在の検察官側の方針といいますかそういうことから見ますと、とりあえず現在証拠調べ請求をしている証拠、それが一部書証が証人にかわるということはございますけれども、それで何とかいけるのではないか。さらにそれ以上の証拠申請の必要が起こるかどうかということは、いまの段階では余り考えられないのじゃないかというような感じを持っているということでございます。
#138
○柴田(睦)委員 では、その点はその程度にいたします。
 次に、これは昨年ですけれども、エル・モロッコの法人税違反事件というのがあったわけですが、これはどういう事件でしょうか。
#139
○前田(宏)政府委員 お尋ねの事件は、株式会社エル・モロッコという店がございまして、いわゆるナイトクラブということであろうと思いますけれども、そこの代表取締役の幸英二郎という人がその会社の業務に関しまして法人税を免れたということで、いわゆる脱税でございますが、そのことでいまの幸代表取締役とそれから会社そのものが起訴されまして、それぞれ有罪判決になっている、こういうことでございます。
#140
○柴田(睦)委員 申告に当たって隠した所得とそれから脱税をした金額についてお答え願いたいと思います。
#141
○前田(宏)政府委員 いまお尋ねのように、申告の際に過少申告をしたことは間違いなく、それが手段でございます。その額自体はちっといまはっきりいたしませんが、結論的に逋脱額つまり脱税額は、五十年三月から五十三年二月末までの三事業年度にわたりまして合計で一億四百十六万余りでございます。
#142
○柴田(睦)委員 この所得を秘匿するために、この会社はどんな手段をとったのですか。
#143
○前田(宏)政府委員 特に変わったことではないようでございまして、いわゆる売り上げの一部除外というのが主たる手段のようになっております。
#144
○柴田(睦)委員 除外した金額は、脱税額が三年間で一億四百万ですから二億円を超えるわけですけれども、この除外した金はどのように使われたか、あるいはどのように保管されたか、その点をお伺いいたします。
#145
○前田(宏)政府委員 どうも事件の内容の詳しいことを把握しておりませんで申しわけございませんが、当然のことながらその会社としての簿外の使途に使われたもの、かように考えます。
#146
○柴田(睦)委員 この事件と同時に木倉功という人が逮捕されているわけですが、この木倉功という人はどういう人物ですか。
#147
○前田(宏)政府委員 木倉という方は、いま御指摘の事件の際に、いまもお話ございましたように先ほど申し上げた幸という人と同時に逮捕されておるわけでございますが、そのときの事件での立場といいますか見方は、木倉氏も実質的な経営者の一人である、こういうような理解で被疑者として扱われた、こういうことでございます。
#148
○柴田(睦)委員 この木倉功という人は、浜田幸一元代議士の私設秘書であったということは認められますか。
#149
○前田(宏)政府委員 そのことがいわば犯罪事実そのものと関係があるということでありますと厳格な証拠で確定されておるわけでございましょうけれども、そういうことではないのでありまして、ただその事件の一部の調書の中に、木倉という人が浜田氏の私設秘書をしていたという話であったというような一種の伝聞のようなかっこうかもしれませんが、そういう供述をしている者があるということでございます。
#150
○柴田(睦)委員 ナイトクラブのエル・モロッコは、最初四十七年三月に設立された浜倉商事が四十八年の四月から経営したということがこの事件での検事調書の中から知ることができるわけですが、浜倉商事という名前はどうしてつけたのか、検事調書ではどうなっておりますか。
#151
○前田(宏)政府委員 これもそのこと自体を証拠によって確定しているというわけではないわけだと思いますけれども、いまの事件の中で証拠として調べられました一部の調書によりますと、浜田氏と木倉氏という二つの名前の中からそれぞれ一字ずつを取って浜倉という名前をつけたのだというような話が出ておるようであります。
#152
○柴田(睦)委員 それから、このエル・モロッコに対して浜田氏が五千万円出資をした、木倉氏も出資をして、木倉は毎月二百五十万円以上の裏金を入手してきたということは調書の中にありますか。
#153
○前田(宏)政府委員 お尋ねの点も調書の中の記載の一部としてあったようでございます。
#154
○柴田(睦)委員 月に二百五十万以上となれば一年間に三千万以上になる金であるわけですが、この木倉が受け取った金は浜田氏に流れたかどうか、その点は調べておりますか。
#155
○前田(宏)政府委員 要するに、いまお尋ねの事件は株式会社エル・モロッコそのものとその代表取締役である幸氏が被告人ということでございまして、事件もいわゆる法人税法違反つまり脱税事件ということでございますから、さらにその流れの先のことまでは、いわば事件としての本体ではないということだと御理解いただきたいわけでございます。
#156
○柴田(睦)委員 いまの点国税庁はいかがですか。調べましたか。
#157
○西内説明員 お答えいたします。
 税務調査の過程におきまして、あるいは資料、情報等の収集等によりまして措置すべきものが生じました場合には、適正に処理をすることといたしております。
#158
○柴田(睦)委員 この木倉功が金を受け取ったということ、そしてその金がどのように流れたということは調べたのですか調べないのですか。国税庁どうですか。
#159
○西内説明員 個別の事案でございますので、調査の有無等その内容については答弁を差し控えさせていただきます。
#160
○柴田(睦)委員 先ほど検事調書について言われましたが、結局検事調書によりますと、浜田氏はエル・モロッコのオーナーである、そしてそのエル・モロッコには浜田氏も出入りをしていたということが出ているわけです。
 報道によりますと、このエル・モロッコというのは企業の社用接待に使われることが多く、ロッキード事件のクラッター元ロ社日本支社長、故福田太郎ジャパンPR社長、シグ・片山氏が通うなど、同事件の舞台の一つとなった、こうしたことが毎日新聞、朝日新聞あるいは週刊誌などで報道され、夜の空中商戦の舞台になったというように書かれているわけですが、このロッキード事件についてクラッターやコーチャンの日本における行動というものをやはり調べをされていると思うのですが、この点はどうですか。
#161
○前田(宏)政府委員 ロッキード事件で出てくる重要な人たちの行動というものも、もちろん事件との関係においては調べておるわけでございますけれども、いまの報道にありますようなこと、これは私的な特に夜の話であろうと思うわけでございまして、そういうナイトクラブで遊ばれたかどうかということまで事件に関係が、もちろんある場合もあるでしょうけれども、一般的には間接的といいますか直接関係がないことであろうと思いますので、その点まではっきり突きとめておるかどうかということは承知しておりません。
#162
○柴田(睦)委員 私的なことではなくて、やはりこういうところで話が行われたかどうかということも調べるのが普通であると思うわけです。
 そういう面で見てみまして、浜田前代議士が出入りをしていた、オーナーであった、そしてロッキードのコーチャン、クラッターという人が出入りをしていたということになりますと、浜田氏とクラッター氏はロッキード事件当時面識があったのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
#163
○前田(宏)政府委員 私の理解しております限りでは、いわゆるロッキード事件の捜査過程において浜田氏が登場してきたということは明らかにされていないように思います。
#164
○柴田(睦)委員 ところで、小佐野賢治の事件に対する冒頭陳述の補充訂正の問題ですが、ここでは、小佐野がK・ハマダの百二十万ドルの債務について支払いを保証していたということ、それからロサンゼルス空港においてクラッターから受け取った二十万ドルをサンズホテルの残債務の支払いに充てたということが補充されたわけですけれども、エル・モロッコにおける面識の関係、また債務の負担者がK・ハマダなる者であって、これはもう浜田前代議士であることは裁判問題を別にしてだれでもいまの状況では知っていることですが、そしてこのときに浜田前代議士も小佐野に同行しているということから見た場合に、小佐野がクラッターから金を受領したとき、またサンズホテルにおいて支払い行為をやるとき、K・ハマダも小佐野と一緒に関与してやっているのではないかと思うのですが、この点はいかがですか。
#165
○前田(宏)政府委員 お尋ねの点は、いま御引用になりました冒頭陳述の補充訂正の上では出ていないわけでございます。逆に、強いて言いますと、クラッターから二十万ドルを受け取ったときには小佐野氏が同行者の一行から離れて受け取ったというふうに従来から述べておるところでございます。
 後の方でどうだったかということになりますが、その点は、いま申しましたように、冒頭陳述の補充訂正の面におきましては、要するに受け取った二十万ドルをホテルヘの支払いに充てたということを記載しているだけでございまして、その他の事情については現段階では全く触れていないところでございます。
 それと、冒頭陳述の補充訂正の趣旨は、すでに御案内と思いますけれども、クラッターから受け取ったと言われている二十万ドルの使途がどこであるということに問題があるわけでございまして、それが払われたか払われないかということが一番の問題でございます。したがいまして、その際に横にいたとかいないとかということは、検察官の主張から見れば特段の事柄ではないという理解でやっていると思います。
#166
○柴田(睦)委員 しかし、その点がロッキード事件については争いになっているという場合において、結局自分が債務を背負って、そして保証をしてもらった、保証人が一緒にラスベガスに行って払ったというような場合において、その当の名義上の主債務者になっているK・ハマダなる者について争いになっている段階において、これは冒頭陳述も補充されたことでありますし、そういう意味でこれから補充捜査の対象事項になり得るのではないかと思いますが、いかがですか。
#167
○前田(宏)政府委員 もともと二十万ドルの受領自体が争いの種でございまして、それを被告人としては全く否定しているということで今度のようなことにも相なったわけでございます。
 ところで、今回の補充訂正で主張しようとしておりますことについて、弁護人側、被告人側がどういう応待をするか、いわばどういう争いをするかということはまだ全然態度の表明がないわけでございますので、いまお尋ねにありましたようなこともこれからの問題であるということしか申しかねるわけでございます。
#168
○柴田(睦)委員 もう一つの事実ですが、この当時すなわち昭和四十八年の四月ごろ富津市金谷字栗坪二千五番地の土地等十三筆の土地ですけれども、通称砲台山と言われておりますが、ここで二十五万平米という大規模な土地の登記が行われたわけです。
 この謄本を見てみますと、最初国有地から昭和四十七年十一月二十日に東産業株式会社に所有権が移転され、四十八年四月十一日に株式会社富洋物産に移転され、そして同じ十一日に今度は新星企業株式会社に移転される、こういうことになっているのですが、これは新星企業に対する事件であらわれてくるわけですが、この事実は知っておられますか。
#169
○前田(宏)政府委員 そういう形で土地の移転が行われたということは当時の事件の中で出ておったと思います。
#170
○柴田(睦)委員 この新星企業の宅建業法違反事件の検事調書を見てみますと、この土地は輝伸興産という会社が中に入っているわけです。
 起訴状においても輝伸興産から新星企業が買ったことになっているのですが、記録を見てみますと、新星企業の買い値は十五億七千二百六十八万円、それから富洋物産の売り値は十二億二千二百六十八万円、ここで三億五千万円の差が出てくるわけですけれども、この三億五千万というのは輝伸興産という会社に入っていると見られるわけです。この輝伸興産という会社は、社長はだれか、どういう会社かお伺いします。
#171
○前田(宏)政府委員 輝伸興産の代表取締役は木倉氏であったと思います。
#172
○柴田(睦)委員 木倉氏というのは、先ほど出ました浜倉商事の木倉功氏と同一人物であるわけですか。
#173
○前田(宏)政府委員 名前が全く同じでございますし他に疑うこともございませんので、同氏という認定ができると思います。
#174
○柴田(睦)委員 国税庁に伺いますが、この輝伸興産が受け取った三億五千万円については国税庁は掌握しているのですか。
#175
○四元説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘の土地売買が当時行われたのは、先生おっしゃっておりました訴訟事件等を通じても当時から明らかでございましたし、税務上もそういう事実を踏まえまして必要な課税処理をしていると思います。
 ただ、大変申しわけないのでございますが、もうかなり以前の事案でございますので、現段階では税務資料その他が廃棄されておりますので改めて確認はできないのでございますが、いろいろな周辺の事情から推測いたしまして、多分必要な処理を行ってきているものと考えております。
#176
○柴田(睦)委員 輝伸興産の登記簿を見てみますと、この設立が五十一年十月十八日ということになっているわけです。
 そうしますと、この新星企業に砲台山の土地を売った当時は輝伸興産株式会社という登記はないわけで、そういう場合は、これはその仕事をやった個人の仕事になるし、税務上もやはり個人として扱われると思うのですが、まず、この輝伸興産が宅建業をやっているわけですけれども、輝伸興産が宅建免許を受けたのは一体いつであるか、これは建設省にお聞きします。
#177
○川合説明員 お答えいたします。輝伸興産は四十七、八年当時は大臣免許、知事免許とも受けておりませんでした。
#178
○柴田(睦)委員 そうしますと、この新星企業などが宅建業法違反で挙げられた当時、輝伸興産の行為もやはり宅建業法違反ということになるものではなかったですか。
#179
○川合説明員 宅地建物取引業法の無免許営業に該当するかどうかは、先生よく御承知のとおり、宅地であるかあるいは業であるか等のいろいろな構成要件の問題がありますので、いまの事実から必ずしも業法違反ということは言えないように存じております。
#180
○柴田(睦)委員 この輝伸興産というのは宅建業をやる会社でしょう。それが当時免許を受けないでやったということになれば、やはり違反になるのではないですか。
#181
○川合説明員 私ども、御質問の通告を受けましてから、先ほどお話しの木倉さんを呼びまして事情を聴取いたしたのですが、それによりますと、当時の輝伸興産は名称を変えまして日伸興産という名前になっているようであります。現在あります輝伸興産というのは、その名称変更のときに新しくできた会社でありまして、これは宅地建物取引業法の免許を持っております。
#182
○柴田(睦)委員 もう一遍国税庁に伺いますけれども、これは要するに、記録がないから確認ができないけれども、輝伸興産あるいは木倉功あるいはその関係者、こうしたものについての税務処理はしたと思うという推測なのか、この問題について調べたかどうかも一切わからないのか、その点もう少し詳しく伺いたいと思います。
#183
○四元説明員 お答え申し上げます。
 いまも建設省の方から御説明がありましたけれども、先生御指摘の輝伸興産は現在は日伸興産というふうに名称変更をしておりまして、旧輝伸興産自身は昭和四十六年十月に設立された会社で、現在の代表者は木倉誠氏になっておるようでございます。
 私、先ほど答弁させていただきましたのは、その不動産の取引につきまして一筆ごとの確認を行う資料は、原本につきましては焼却といいますか廃棄されておりますので確認ができないという点をお断りした上でございますが、当時のいろいろな関係者の状況等を伺いますと、当時いろいろこの事案が社会的にも問題になっておりましたし、税務処理は了しているのではないかというふうに推測しているわけでございます。
#184
○柴田(睦)委員 先ほど言いました砲台山の土地というのは元国有地であったわけですけれども、この国有地を払い下げた実際の時期及びその払い下げ代金をお伺いします。
#185
○四元説明員 お答え申し上げます。
 いまも申し上げましたように、現在の税務資料の中から本件につきまして幾らの金額でどの時期に行われたかというのを直接確認するすべがございませんので、税務からのお答えといたしましては答弁を御容赦いただきたいところでございます。
#186
○柴田(睦)委員 これはいただいた資料ですけれども、国有地の売り払いについて資料をいただきましたけれども、これによりますと土地が七万八千六百四十九坪、売り払いは昭和三十九年三月三十一日、売り払いの相手方は東産業株式会社、売り払い価格は五千七百八十二万一千九百七十二円、こうなっておりますが、これは間違いないですね。
#187
○四元説明員 先生のおっしゃった数字は、多分私どもの大蔵省の国有財産の担当課の方の御説明ではないかと思いますので、税務の立場ではちょっとそのとおりであるかどうかを申し上げる立場にございませんので、御了承いただきたいと思います。
#188
○柴田(睦)委員 それでは、いただいた資料を基本にしますと、昭和三十九年三月当時というのは田中角榮氏が大蔵大臣をやっていた当時であるわけです。このときから、この新星企業が買うとき、最初は五千七百八十二万円、それが新星企業は十五億以上で買うわけですから、実に三十倍の値上がりになっているわけです。
 そして、この土地につきましては昭和四十八年八月二十七日、宅地開発の事前協議の申請が富津市に出されまして、五十年の九月五日に説明会が行われました。そして十月三日に市から県に進達をいたしましたところ、県の方では、千葉県の方を調べてみますと、これを受け付けてはいないということであるわけです。五十年当時は新星企業の裁判中であったわけですから、どうしてこうなったか、いろいろ憶測も飛ぶわけですけれども、手続を進めたけれども、結局やめてしまっているということです。
 実は、この申請をしたのが日本電建の名義でなされているわけですが、この新星企業が日本電建に合併されたのは昭和五十四年で、ずっとその後のことになるわけです。その当時から日本電建が実際上この土地を支配していたという関係になるのですけれども、こういう場合に土地転がしというのがその中に入った人たちの間での裏金づくりになるのではないか、こういう疑念を持つわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
#189
○前田(宏)政府委員 いわゆる土地転がしということが言われておるわけでございますが、そういうことになりますと、いまのような見方といいますかそういうことも成り立つかと思いますけれども、土地の売買でございますから、時期のずれによっていろいろと値段も変わってくる。当時いろいろと値上がりもしておったようでございますから、直ちには不当な売買であるかどうかということも言い切れないのじゃないかということでございますので、いまのような一つの見方はあろうかと思いますけれども、そうきめつけることもいかがかと思います。
#190
○柴田(睦)委員 ところで時期的に見まして、エル・モロッコが開店をした時期そして新星企業が代金を払った時期、これが時期的に接近しているわけですけれども、そうしますと、このエル・モロッコに対する法人税違反事件の検事調書にあります浜田氏が五千万円を出した、それから木倉氏がまたそのほかにも出した、さらに木倉氏が不動産でもうけた金を出してくれたという調書部分があるわけですけれども、そういう点から見てみまして、浜田氏なり木倉氏がエル・モロッコに出資した金というのは、この土地で得た三億五千万円という浮いた金があるわけですけれども、その中から出ているのではないかと思うのですが、この点は調べてありますか。
#191
○前田(宏)政府委員 先ほど来申しておりますように、エル・モロッコ事件はいわゆる脱税事件ということでございまして、その会社の設立がどういう経違であるか、またその出資の内容がどうであるか、その出資額の金の出所がどうかというようなことまでは事件の内容にはなっていなかったようでございます。
#192
○柴田(睦)委員 いまの点は国税庁は調べてありますか。
#193
○四元説明員 個別事案の話になりますので、一般的に答弁を差し控えさせていただきたいのでございますが、そのこととはまた別に、エル・モロッコにつきましては私ども質問通告を受けておりませんので、そのこと自体、申し上げる申し上げないは別といたしまして、きょう意識して出向いてまいりませんでしたけれども、その点お許しいただきたいのでございます。
 ただ、一般論として申し上げますと、法人がいろいろな取引をして損益が生ずる、それは当然法人に帰属する損益といたしまして必要な法人の課税処理をいたしますが、さらに二次的にその法人の利益が配当ですとかあるいは賞与ですとかあるいは――実態はそういうことになりますが、その他の名目で特定個人に流出しているようなことを税務調査等におきまして把握いたしました場合には、税務処理のルールといたしまして、それを資料化いたしまして当該特定個人の課税の確認を行うということを実施することにいたしておりますので、仮にそうした御指摘のような事実が、すなわち会社の利益が特定の役員、株主等に流出していることが明らかになっていたとすれば当然税務処理を行っていたものと思われますが、いずれも一般的な推測でございますので、ひとつその点お許しいただきたいと思います。
#194
○柴田(睦)委員 その点はまた別な機会に聞くことにいたしまして、ここで、浜田元代議士の秘書をやっていた木倉功、この二人の名義で大きな金が動いているわけです。
 土地の問題を見てみますと、新星企業の裁判であらわれましたいまの砲台山の土地、これも現在小佐野賢治が主宰する日本電建が持っておりますし、起訴状あるいは判決の中にあらわれております君津興産株式会社、これは浜田元代議士が主宰している会社であるわけですけれども、ここからもやはり新星企業を経て現在日本電建が持っている土地、これは印旛郡四街道町成山字浮矢二十八番地、山林等百八十七筆、三十二万二千九百五十三平方メートル、新星企業が買ったときの値段でも二十六億八千六百二十九万二千円、この新星企業の判決の中にあります物件についても、浜田氏が関与したと思われるものがこのほかにもあるわけです。
 いずれにいたしましても、小佐野賢治と浜田元代議士の関係は、いろいろ言われておりますけれども、この土地の問題を見てみましても、サンズホテルでの四億五千万円の保証をする、そういう土地取引の関係があるわけですから、そして現在もその土地を持って、これはその後もずっと値上がりをしているわけですから、そういう意味で浜田氏を通じて小佐野氏が財産をふやしているというような二人の関係を見てみました場合に、やはりサンズホテルの四億五千万円について小佐野氏が保証をする立場に立つことになる。保証したわけですけれども、それはこういう土地取引で十分な利益がある、こういうことも関係しているのではないかと思うのですが、この点はいかがですか。
#195
○前田(宏)政府委員 お尋ねは冒頭陳述のK・ハマダが浜田幸一と同一だということを前提にしてのお話になるわけでございますので、そういう前提でのお答えということになるかもしれませんが、いまいろいろと御指摘がございました。しかしその点は一つの見方でございまして、そういうこともあり得るということであろうと思います。さしあたりこの冒頭陳述の補充訂正の上では、その保証をするに至ったのはなぜか、何か特段の理由があってそういう関係にあるかということは、前提事実としてはあるかもしれませんけれども問題にしていないわけでございます。
 つまり、先ほど来何回か申しておると思いますが、サンズホテルに対してK・ハマダ氏が百二十万ドルの債務があって、それを小佐野被告人が保証したということ、そこから事が始まっているわけでありまして、なぜ保証したのだろうか、また保証するような特段の理由があったのかというようなことは、この議院証言法違反事件の争点というわけではないわけでございまして、つまりそのことはこの冒頭陳述の補充訂正には載っていない、まあ今後どういうことに相なるか、それはまたわかりませんけれども、さしあたっての問題ではない、こういうことでございます。
#196
○柴田(睦)委員 保証したこと自体も否認しているという場合に、今度は保証したということを冒頭陳述で補充され、それを証拠によって証明されるというわけですから、否認されている中においては、やはり保証をするような動機があるんだということも間接事実として立証する対象になるし、そういう意味でこういう問題についても捜査をすべきであると思いますが、その点の見解を承って終わります。
#197
○前田(宏)政府委員 その点はたびたび申しておりますけれども、この冒頭陳述の補充訂正で述べておりますこと、つまり今後検察官が主張しようとしていること、立証しようとしていること、その冒頭陳述の補充訂正につきまして小佐野被告人の方でそれ自体を否認するとか認めるとかいう意思の表明がまだないわけでございます。
 否認をしているというのは、申すまでもなく大もとの二十万ドルの授受を否認していること、これは明らかでありますけれども、今回の三月六日の冒頭陳述の補充訂正つまり検察官の主張に対しての弁護人側、被告人側の意見はまだ出ていないわけでございますので、そういうことを仮定した前提でお答えするのもいかがかと思います。
#198
○木村委員長 井上泉君。
#199
○井上(泉)委員 私はまず最初に、私が平沢氏を守る会の副会長をしておる関係で、さきにも法務大臣に平沢さんの早期釈放を要請したわけでありますが、その後相当な時間も経過したわけですが、いわゆる帝銀事件の平沢さんの現在の健康状態はどうであるのか、そのことをまず承りたいと思います。
#200
○豊島政府委員 お答えいたします。
 平沢は、現在八十八歳という高齢でありますために、全般的には老化現象があるわけでありますけれども、食欲は十分ございまして、給与されております、これは五分がゆなんでございますが、五分がゆを喫食しておりますし、それから副食は官の支給の副食のほかに自費でコンビーフとかアスパラガス、めん類、果物を購入して喫食いたしております。
 体重は、このところずっと変わらないわけでございますが、大体三十六キログラムを維持しておりまして、特に健康状態に異状は認められないという状況でございます。
 それから、目は老人性白内障の初期の症状だという診断を受けておりますが、点眼薬、内服薬が投与されておりまして、彼の趣味であります絵画の制作などの日常生活には支障がないという状況でございます。
#201
○井上(泉)委員 現在そういう状態であるということですが、聞くところによると、幾つかの病気にかかって獄舎で耐えられないような状態である。私が二月十八日に面会に行ったときにはそういうようなことは感じなかったわけでありますけれども、その後の話でそういうことが伝えられたので、どういう状態だろうかということでお聞きをしたわけですけれども、何分八十八歳、これは昔風の数え年で言えば九十歳という老齢であるし、そういう状況にあるから、いつどういう事態が起こるかもわからないということは想像されるわけです。
 そこで、一番私どもが願っておる中央更生保護審査会の審査の結果を待っての早期釈放の件でありますが、保護審査会としては、その後委員長も任命をされたということも承知をしておるわけですが、この平沢さんの問題について審査をなされておるのかどうか、どういう状況にあるのか、その点で可能な限りの御説明を願いたいと思います。
#202
○稲田(克)政府委員 平沢の恩赦の出願に対しましては、御承知のとおり、過去二回にわたりまして中央更生保護審査会において恩赦不相当の議決がなされまして、現在三回目の出願について審理中でございます。先般中更審の委員長の更迭ということもございましたけれども、この平沢の恩赦の出願に対しましては引き続き現在審理中でございます。
 もっとも、この死刑事件の恩赦につきましては、事案の重大性とか社会に与える影響といったような点にかんがみまして、一般の事件に比べまして非常に慎重かつ綿密な調査、審理が必要でございます。そういったような点から現時点におきまして、審理中ではございますがまだ結論を出す段階に至っていないように承っております。
#203
○井上(泉)委員 これはおよそどれくらい先に審査の結論が出されるようになるものでしょうか。これは不安でたまらないわけですから、およそのめどというのは立ててその案件を審査をされておるのではないかと思うわけですが、そういうことについては、いつごろというおよその見当もまだつかないでしょうか。
#204
○稲田(克)政府委員 中更審といたしましては、平沢の関係した事件がもうすでに相当経過しておること、それから年齢的にも高齢であるといったような点を十分に念頭に置きながら、適正な結論を導き出したいということで鋭意審査に当たっておられるわけでございますが、もちろんその審理内容は非公開でございます。したがいまして私どもといたしまして、いつごろ結論が導き出されるかというふうなことを申し上げる立場にないわけでございます。
#205
○井上(泉)委員 そこで、これは大臣にお願いをするわけですが、こうした社会的にも大きな関心の高まってきておる今日の段階におきまして、大臣がせっかくどうするかということでレールへ乗って、そこで一つの審査の機関の中で審査をされておるわけですが、それをできるだけ早く審査をしてやってほしい、私はそう思うわけなんで、そのことを大臣もひとつ意にとめてしかるべき措置をとっていただけないものだろうかどうだろうか、その点を主管の大臣としてお聞かせ願いたいと思います。
#206
○倉石国務大臣 いま担当者からお答えいたしましたように、それぞれ専門家たちが検討いたしておるわけでありますが、御要望のございましたことはいま担当者も承っておりますので、そういう御趣旨を伝えることは伝えたいと思います。
#207
○井上(泉)委員 そこで私は、これは別な問題で、恐らくもう世間の耳目からは大方忘れられておる事件ではないかと思うわけですけれども、しかしこれは大事な人権問題でありますので、たとえ裁判所において法的な決着がついておるといっても、やはり疑問な点は疑問な点としてあくまでもそれを解明し、死者といえども人権を守っていかねばならないと思うわけです。
 そこで水本事件でありますが、その水本事件というものがあって、それがいまどういうことで係争中であるか、どういう問題が問題として残されておるのかどうか、そのことを警察庁当局は御承知をしておるでしょうかどうか、その点をひとつ警察庁に。
#208
○加藤説明員 お答えいたします。
 いわゆる水本事件でございますけれども、兇器準備集合罪の被告として公判開催の期間中にこの被告人が死亡したということで公訴棄却の決定がなされたということでございます。その公訴棄却の決定は、昭和五十三年の三月二十七日に東京地裁で本件公訴棄却の決定がなされているというふうに認識しております。
#209
○井上(泉)委員 そこで、その公訴を棄却する決定がなされた、なされたけれども、そのときはこの決定というものはいわばもうこの死体が水本君のものであるということによってその決定を下してきたわけです。
 ところが、いま問題は、果たしてその死体が水本君のものであったかどうかということにかかっておったわけですけれども、そのことも十分な審理もされずにそういう決定をされて、いまお母さんが、この死体は私の息子ではありません、そう言っておる。そのお母さんは、私が生んで育ててきた子供では全然ないということで死体が違うではないか、その死体が違うのにもかかわらず、これが水本の死体だ、こういうふうにきめつけられたことによって非常な精神的な苦痛、悲しみを日々味わわされていることに対して、今度は慰謝料請求の国家賠償の訴訟を起こしておるということ、そのことについては御承知をしておるでしょうか。
#210
○加藤説明員 本件に関しまして国家賠償請求の訴訟が起こされておるということは承知いたしております。
#211
○井上(泉)委員 その死体が本人のものでないというお母さんの主張というもの、これをあなたは検討されたことがあるのでしょうか。それとも、もう自分には関係のない事件だから一切そういうものには関知したくはない、こういうのでしょうか。どちらでしょう。
#212
○加藤説明員 お答えいたします。
 先ほど申し上げました東京地裁の決定の中におきましても、この水本の死体が市川の江戸川のところで発見されたものと同一であるかどうかということにつきまして双方で争いがなされておるわけでございます。その判決を見ますると、本来この公訴を棄却するのに、双方が被告人の死亡については認めておる、したがって必ずしも争っていない、だから双方の主張自体から被告人は死亡したことが認められるのであるから、本件は前掲法条に基づき公訴棄却は免れないところであるとしながらも、ただ死体甲――死体甲といいますのはその江戸川において五十二年の一月六日午後発見された死体でございますけれども、その死体甲と被告人との同一性につき検察、弁護双方の主張が対立しているので、この点についても必要な限度で判断をすることとするということで、この決定の過程でいろいろそれぞれの主張をなさしめて、それでその件についても判断をしておるわけでございます。
 したがいまして、私どもの方といたしましてもそれにつきましての証拠資料というものは裁判所の方にも提出してございますし、私どもの方でも若干そういう検討をしたということはございます。
#213
○井上(泉)委員 いまあなたそう言われるわけですけれども、普通そういう変死体が発見された場合には、それをこれが他殺であるのか自殺であるのかそういう認定をするためにも解剖に付したり、あるいはそれが身元不明であった場合にはその者の写真撮影、特にその中での歯型、もう体が腐乱しておっても歯の型とかいうようなものは残って特徴のあるものですから、そういうものを撮影をするとか、あるいはつけておった衣類というようなものはそのまま保存をするとかする。そういういわば溺死者、自殺であろうが他殺であろうがそういう死体があった場合にはそういうのをするのが犯罪捜査上の一般的な、しかもきわめて原則的なやり方ではないでしょうか。そういうことがなされてないというのは、どういうことでしょう。
#214
○加藤説明員 犯罪ありと思料する場合に刑事訴訟法にのっとりましてやるのが犯罪捜査でございますけれども、本件の場合は、これは最初から申し上げますると、身元不明死体が発見されたわけでございますけれども、そこで戸籍法の第九十二条一項の規定を受けた死体取扱規則第九条第一項の規定に基づきまして、警察官は遅滞なくその死亡地の市町村長に死亡報告をすることになっておるわけでございます。本件の場合、五十二年の一月六日の夜、身元不明死体といたしまして市川市役所にその死亡報告の手続をいたしまして、遺体も引き渡しておるということでございます。
 そこで、これが自殺なのかあるいは犯罪に基づく他殺死体なのかということでございますけれども、私ども、その点につきましては十分な見分調査をいたしました結果、これは自殺死体であるというふうに判断いたしたわけでございます。
 それで、その際に歯の写真を撮っておるかという御質問でございますけれども、おっしゃるとおり、死体の特徴の一つとして歯牙の状況というふうなものは重要なものでございます。それでそれにつきましては、見分いたしました者が、写真は撮っておりませんけれども、一人が開口、口を開きまして、そしてその歯の状況というものを口述する、それをいま一人が、歯列図、歯の並びを書いた図でございますけれども、それにそれぞれの形状、特徴というものを順次記載をしていくということをやっておるわけでございます。
 自殺というふうに認定いたしましたのは、これは付近の状況それから死体の状況、そういうふうなものをきわめて綿密に見分調査いたしました結果、総合的に見まして、これは溺死、自分がみずからやった溺死であるというふうに判断をいたしたわけでございます。
#215
○井上(泉)委員 その見分をして、それでその歯の形がこうなってこうなっておるということを、口をあけて見て書くといっても、色やどういう入れ歯をしておったのかというようなこともわからないし、そういう歯牙という一番人間の特徴的なもの、体が腐乱しておっても歯の治療痕があれば、この関係者の歯医者にすればすぐわかるわけなので、そういうところからも、死体を処理するのに、死体取扱規則の第六条では「死体の見分を行うに当っては、特に人相及び全身の形状並びに歯がの形状、傷こん、いれずみ等特徴のある身体の部位・着衣、所持品等の撮影及び記録並びに指紋の採取等を行い、その後の身元調査等に支障をきたさないようにしなければならない。」となっている。
 こういう死体取扱規則というのをちゃんと決めてあるのに、その取扱規則どおりになぜやらなかったのでしょうか。その点疑問に思わないですか。
#216
○加藤説明員 御指摘のとおり、死体取扱規則の第六条にそういうふうなことが書いてございます。
 これの趣旨といたしますところは、そういう死体の見分を行うに当たりましては、そういう身体の各特徴というものをよくつかんでおけ、そしてそれによって、その後対照資料を得たならば厳正な対照を行いまして同一人であるかどうかの認定をしなさい、こういうことでございまして、その特徴を掌握することの細かいことにつきまして、たとえば歯の場合、必ずしも写真を撮っておかなければならないということではないわけでございます。
 そのために、一人が観察をいたしまして、一人がそれをそのまま歯列図に書き込んでいくということでございまして、そういうふうなことによりまして、十分歯の特徴というものも掌握できるわけでございます。それで、実務的にもそういうふうなことをやってきておりまして、写真を撮らなかったからということのために特段の支障を来したということはないわけでございます。
 また、これは歯が身元同定の重要な資料であるということはおっしゃるとおりでございますけれども、そのほか、ここに書いてございますような、歯の形状のほかに傷痕であるとかあるいは入れ墨であるとかそういうふうな特徴あるいは指紋であるとか、そういう同一人としての同定をやる場合に非常に重要であるというものをここに列挙しておるわけでございます。
 本件の場合につきましても、そういう列挙されたことにつきまして漏れなくやりまして、指紋によりまして同一人であるということが確定されたという経過でございます。
#217
○井上(泉)委員 それはあれですか、そういうことをする必要はないというけれども、この死体取扱規則というのはちゃんと「きたさないようにしなければならない。」こう書いてあるけれども、そういうのはどうでもいいということになるのですか。警察官の考え方によってどうしてもいい、こういうことですか。
#218
○加藤説明員 御指摘のとおり、警察官の考えでどうでもいいということではもちろんございません。それにふさわしい方法、手段を講じまして後の身元の判定に支障の来さないようにしておきなさいということでございます。
 したがいまして、先ほど以来申し上げておりますように、非常に苦労をいたしまして指紋をとるとかあるいはそういう人体の傷痕、盲腸痕がどうであるというふうなことを記入しろ、あるいは歯につきましても、ただいま申し上げましたように誤りのないようにということで、そういう特徴というものを記録化しておったところでございます。
#219
○井上(泉)委員 私は、その当時の捜査官がこういう歯であったということを示したものを、歯型にとったものを持っておるわけですけれども、それとこの水本君の歯を治療した歯医者さんのカルテと照合すると全く違うわけなので、そういう点からもお母さんは、これは自分の子供ではない、こういうことを言っておる。
 それからまた、そういう者のまとっておるものを細切れに切って、それへアイロンをかけて保存をするようなことになっておるのでしょうか。やはり死体につけておった衣類というものは証拠物件としてそのまま残すというのが、犯罪捜査のためあるいはそういう死体を見分する、検証するに当たって、そしてまた特に身元不明の者のこういう死体に対しては、そういうようなことはちゃんとしておかなければいかぬのじゃないでしょうか。なお、解剖というものもせずにそのまま一週間たって焼くとかいうようなことは、ちょっと先走ったやり方じゃないでしょうか。
#220
○加藤説明員 お答えいたします。
 死体の着衣や所持金品等でございますけれども、これは死体取扱規則の第九条の第二項によりまして、いわゆる身元不明死体を発見した場合でございますけれども、そういう死体は着衣、所持金品等とともに速やかに前項に規定する市町村長に引き渡さなければならない、その場合には、ここで死体及び所持金品引取書を徴しておきなさいというふうな規定でございます。したがいまして、警察でそういう死体を発見いたしまして身元不明であるという状態になりましたときには、これは当該事案の場合には市川の市役所に死体とともにその衣類を引き渡さなければならないということでございます。
 その際に、その衣類の一部を切り取っているのはおかしいじゃないかという御意見でございますけれども、ただいま申しましたように、その当時はこれは身元がわからない死体であったわけでございます。したがいまして、後日さらに身元を判明させるための努力をしなければいけない。そういうことになりますと、市役所に全部引き渡してしまって警察の方に全然そういうふうな同定するに足るものの資料がないということでは、これまたその目的を達成することはできませんので、その一部というものを切り取りまして身元不明死体票と一緒に保管をしておいて、そういう疑いのあるといいますか可能性のあることが出てきた場合に、その身につけておりました衣類等を活用いたしまして身元を明らかにしよう、こういうことでございます。
#221
○井上(泉)委員 そういうふうにやって、それを親にこれがあなたの子供ですよと言うてやったけれども、親は、それは私の子供ではございません、その子供は持っておったものも着ておるものもあるけれども、やはりこれは自分の子供でない、こういうことで母親はいまなお、水本君が死んでおる、こう言っても死んだ水本君に対して祀るとかいうような気がいささかも起こらないということは、やはりこれは私は母親の心情としては当然だと思うわけですが、その水本君の死体が発見されたときの状況というのはどういう状況であったとあなたは把握をしておるでしょうか。してなければないでいいですから。
#222
○加藤説明員 母親が自分の子供ではないということで死体あるいはそれを焼きました遺骨をお引き取りにならないということでございますけれども、もちろんそれにつきましてはしばしば御説明を申し上げておるわけでございます。ただ私どもといたしましては、万人不同、終生不変という一大特性を持っておりますその死体から取りました指紋、それによりまして水本潔であるということを確認いたしておりますので、これが最大の動かすことのできない確認方法であるというふうに感じておるわけです。
 それで、死体が発見されたときの状況いかんということでございますけれども、五十二年の一月六日午後一時十五分ごろ、市川市の大洲三の二十一の一地先の江戸川の川岸から約五メートル離れました水中に、うつ伏せになって浮いておりました死体が発見されたわけでございます。
 そこで所轄の市川警察署の刑事官以下七名が現地に赴きまして、死体を川岸に収容いたして見分をした。死体は着衣等に乱れや損壊もなく、溺死特有の膨満した巨人様相、何といいますか体全体が非常にふくれ上がるという形でございます巨人様相を呈しまして、腐敗の初期的現象と見られる表皮の剥脱等が随所に見られた。全身に外傷は見られなかったということでございます。死体の特徴としては、後頭部に十円硬貨大といいますかそれくらいの大きさの毛髪の脱落部というものがありましたし、右下腹部には長さ四・五センチ、幅一センチ程度の手術痕と推測される痕跡が認められたということでございます。歯の状況につきましては、先ほど申し上げましたように詳しく調べております。
 死体は、その当時身元を確認する手がかりとなるべき所持金品等が全くございませんで、身元は不明であったということであったわけでございますが、これを先ほど言いましたように、死体の状況、その置かれておりました付近の状況というものを見分調査をいたしまして、これは自殺による溺死であるというふうに判断いたしまして、先ほど申し上げましたような手続をとったわけでございます。
#223
○井上(泉)委員 警察が判断をしてやった、そういうことをするのは権力といいますか権利があるからされるわけですけれども、これは警察庁科学警察研究所の捜査課長であった渡辺孚さんというあなたたちの先輩の方が、「法医学のミステリー」という本の中でこの水本事件のことを詳しく書いてあるわけです。
 これをお読みになっていただいて、やはりどうも誤りがなかったかどうか、そういうふうなことをお考えになると思うわけで、いまそれを読めとは言わないですけれども、渡辺孚という人は警察庁の科学警察研究所の捜査課長であったということは、これは間違いないでしょうか、なお念のために聞いておきます。
#224
○加藤説明員 ただいま御指摘の人がある期間、科学警察研究所の科学捜査部長、課長ではございませんが、科学捜査部長として在職勤務しておりましたことは事実でございます。
#225
○井上(泉)委員 日本の科学警察研究の、これは私は課長と部長とどれだけ身分の違いがあるのか知りませんけれども、そういう人が書いた本の中でも、コンクリートを抱いたり手を縛ったりなど異常な所見が見られる。
 少なくともそういう場合に、一応は他殺の疑いでこれに取り組むべきなのがやはり警察官としての一般的な教養ではないか、そういうふうに考えられるわけだし、この渡辺孚さんもそのことを言っておるわけですが、他殺ということに思いをいたさなかった、いま思いをいたしておったら当然捜査はしておったでありましょうけれども、こういう場合には他殺の疑いもありはしないか、あるいは指紋といってもシリコンラバーという指紋のやり方というのは、この本によっても本当にまれにしかシリコンラバーによる指紋の採取はやってないし、水本君の死体であるとしてシリコンラバーで指紋の採取をやったということも、そこに幾多の疑問点というものがあるわけで、私は自分が専門でないからこの本による知識以外にはないわけなんですけれども、やはりそういうシリコンラバーという、つまり余り使ってない、これは指紋をとるためのものでなく、普通かたい物体につけられた小さな傷を写し取るためにやるものであって、何かの機会に指紋をとることに使用ができるということはわかっておるけれども、しかしそれは本当にまれにしかシリコンラバーは使用してないが、それをことさらに水本君の場合には、写真撮影もすべきである、こういうふうにやっておる歯の型も全然とらずに指紋が唯一である。その指紋もシリコンラバーによる指紋であるということで、これを水本君と認定したからこそ、お母さんは幾ら言われても警察の調べた歯の型とも全然違うし、持っておった衣類の一部については本人のものであるということは認めるけれども、その他のものについてはこれが本人のものであるというようなことはなかなか言えない、こうお母さんが言っておる。
 その場合でも、これは身につけておるものですから遺族に返さねばいかぬ。返さねばいかぬものであるにもかかわらず、これを返さずに焼却処分にしておるでしょう、焼いておるでしょう。その当時の遺留品は遺族に返さねばいかぬのに遺族が受け取らないから焼いたというのですか、それともこれは返すべきものでないからそのまま焼いたというのですか、どっちですか。
#226
○加藤説明員 いろいろ御指摘いただいたわけでございますけれども、他殺の疑いを持って捜査すべきであったのじゃないか、こういうことでございますけれども、先ほど申し上げましたように、本件に関しましては死体及び周囲の状況等につきまして十分な見分調査等を行った上で、その結果を総合して自殺と判断したものでございます。そして、その後の措置も含めまして誤りはなかったと私は思っておるわけでございます。
 自殺であるかどうかというのは、その反面から言いますれば、当然他殺であるかどうかというふうな判断を含んで、成心なくして厳密にこれを見るということでございまして、その結果自殺であるということがわかったわけでございますので、自後他殺としての捜査はやらないのが当然であろうと思います。
 それから、シリコンラバーによる指紋採取というふうなことはきわめてまれである、もともと物体の痕跡をとるためのものであるというふうに渡辺元科学捜査部長がおっしゃっておられる。なるほどその本の中にその意味のことが書いてあるのは私も承知いたしておりますけれども、実は実態はそういうふうなものではございません。シリコンラバーによる指紋の採取法というものは決してごくまれなというものではございませんで、むしろ方法とすればごくありきたりの方法でございます。そして、当該事案の場合になぜシリコンラバー法を用いたのかということでございますけれども、発見当日とその翌日の二回にわたりまして、本件の死体につきまして、普通のインクを使いまして指紋採取法を試みたわけでございますけれども、これはインクがうまくつかなかったということでございます。これは死後一週間ないし十日は水中にあっただろうというふうに推定される死体でございまして、その指が非常にかたく凹凸ができるような状態になっておりまして、しかもそれは、いわば死体の中の脂の浸出等もございまして通常のインクを塗ったのではその指にインクがうまくつかないのは当然のことでございます。しかし、普通の方法も試みなければいかぬということで、二回にわたりましてインクを使いまして指紋採取を試みたけれども、いずれもインクがうまくつかなかったために断念せざるを得なかったということでございます。そこで、大切な指紋でございますので、しかも時期を失してはいかぬということで、シリコンラバー法でこの死体から指紋を採取したというわけでございます。念には念を入れた指紋の採取をやっておると私は思うわけでございます。
 それから、身につけておるのは返さなければいかぬじゃないか、それを返しもせぬで焼却したというふうに御指摘でございますけれども、先ほど申し上げましたように、死体とともにその所持金品、衣類等は市川市役所に引き渡しをしておるわけでございます。したがいまして、それから後の措置として焼却処分にいたしたかどうかは、衣類その他市役所の方に引き渡しておりますので、これは市役所の方がなさったことであろうと思うわけでございます。
#227
○井上(泉)委員 警察官というものは絶対自分の過ちを認めない、いい癖か悪い癖か、それは別としても。まず、そういう身元不明の死体が上がった場合には、身元不明の死体が出たからどうだ、こう言ってそこの自治体が公告するなり何なりして一般に周知をさすようなことになっておるけれども、それをやらずに頭からこれは水本君だというような認識のもとにやっておるから、この死体の取り扱いというものも、それを解剖することもしない、あるいはそういう大切な体の特徴をあらわすような写真撮影もしない。こういうことでいま考えて、みると、あのときに写直を撮っておったらよかったかなということくらいは思うのですか。
#228
○加藤説明員 そういう身元不明死体につきましては、それぞれの身体の特徴あるいは所持品、衣服等の特徴等をよく記録いたしておきまして、後日この人でないかというふうなあれがありました場合に同定に役立てるということは、先ほど来申し上げておるところでございます。それで本件の場合につきましても、そういうふうなことを私どもの方で、戸籍法それから死体取扱規則の定めに従いまして手順を踏んでやっておるわけであります。
 それで、この死体が頭から水本君であるというふうな認識のもとにいろいろやっているから、やらなければならないことをやらなかったのじゃなかろうかという御指摘でございますけれども、これは頭から水本君だというふうにきめつけてやっておるわけではもちろんございません。といいますのは、指紋を採取いたしまして、それを県本部に照会いたしまして水本潔の指紋と合致するということがわかりましたのは、一月六日に発見されましたものにつきましてその指紋が合致するということがわかりましたのは一月十七日でございます。そこで初めて水本潔の死体であるということが確実になったということでございまして、決して当初から先入観を持って、この死体が水本潔であるというふうなことを考えていろいろの措置をやったわけではございません。
#229
○井上(泉)委員 その指紋採取をした場所は火葬場でやったのと違うのですか。
#230
○加藤説明員 先ほど申し上げましたように、六日に発見いたしまして死体をすぐ市川市役所に引き渡しておるわけです。その後、火葬場の棺の中にその死体がおさめられておったということでございます。したがいまして、そこに出向きましてその指紋を採取いたしたというのは事実でございます。
#231
○井上(泉)委員 それでは、市役所に連絡をしたときには、これは水本君であるということではなしに、一般的な溺死人として市役所に通報したものと理解していいですか。
#232
○加藤説明員 おっしゃるとおりでございます。身元不明の死体、水死人として当初引き渡しをいたしたわけでございます。
#233
○井上(泉)委員 そういう身元不明の死体としてやった。その段階でもなお体の特徴をあらわすようなものを撮らずに、シリコンラバーを使って指紋を採取した。
 そのシリコンラバーで両の手の指紋を採取するには、私が聞くところによると相当な時間がかかるのですけれども、そういう時間もかけずに二時間ぐらいでやったということは、やはりいいかげんな――あれが固まるまでやって、それを一つ一つ切ってやるわけですから。これは私がここで説明するまでもなくあなたたちは詳しいのですから、私はそのシリコンラバーによる指紋採取の仕方等はあえてここでは申し上げませんけれども、そういうので、一般死亡人ということで渡しておいて、それで火葬場へ行ってから指紋の採取をする。
 それなら、お母さんにこれは水本君であるという話をしたのはいつですか。水本君ではないか、こう言ってお母さんに照合したのはいつになるのですか。焼いた後でお母さんに見せたところでしょうがないでしょう。
#234
○加藤説明員 先ほど来重ねて申し上げておりますように、指紋はそういうことで普通のインクで採取したのではインクが乗らないという状態だったわけで、したがいまして、若干乾燥というふうなことも考えられますので、指紋を取る必要があるので、それまでは焼かないでおいてということで翌日出かけていきまして、棺の中に納められてありました死体について指紋を採取いたしました。そういうことでございます。そして、その後市役所の方で恐らく火葬に付されたということでございます。
 母親のよしさんに連絡いたしましたのは、これは一月十七日に母親のよしさんと弁護士の方とは市川警察署を訪れておるわけです。そのときに、先ほど御指摘ございましたように、着衣のともぎれなどを見せまして説明をいたしたわけでございます。そのときに母親のよしさんは、見覚えがあるがまあはっきり言えない、指紋があったということなら息子の潔に間違いないと思うけれども、どうしていいかわからないので、また後で見せてくれという意味のことをおっしゃったということでございます。それで、一見いたしまして直ちに息子の潔とは違うというふうなことは言わなかったというふうに聞いております。
#235
○井上(泉)委員 それでは、そういう身元不明人として市役所へ引き渡して、そしてその後火葬場でもう焼く寸前に指紋を採取をして、その採取した指紋が水本君であるということから、その水本君のつけておった着衣その他をお母さんに見せた、ところがお母さんは、いろいろ疑問は提出をされたけれども、それははっきりと違うとは言わなかった、こういうことですか。
#236
○加藤説明員 死体を火葬に付しましたのは、これは先ほど来申し上げておりますように市役所の方の措置としてやられたことでございます。
 そして、事実そういうふうな死体が火葬に付せられた後で、水本潔の保管原紙の指紋と死体の指紋が合致したということで、それで先ほど申し上げましたようにお母さんにも来ていただいて、こういうふうなものもございますし、指紋も合致いたしたことですが、あなたの息子さんでありましょう、どうですかということで見ていただいたということでございます。
#237
○井上(泉)委員 これは私非常に不思議に思うわけですけれども、いまもうちょっとしたことでもカメラでさっささっさ写すわけですが、その死体の状況というものを写真に撮って、それを水本君のお母さんに見せるとか、そういうことはしなかったのですか。
#238
○加藤説明員 その死体につきましては数十枚の写真を撮っております。そしてお母さんにも顔の部分等につきましてはお見せいたしておるわけでございます。
#239
○井上(泉)委員 それが、せっかく写真を撮ったけれども、その顔の特徴をあらわすような、もう全体が腐乱をしてきておりますから、顔はふくらんできておる。それで、死体と水本君の写真と見比べられたときに、これが水本君であるか、水本君の死体であるかどうかはわからぬくらいの状態ですけれども、そういうときに死亡者に対して、自殺者であろうが他殺で殺された者であろうが、これはやはり警察としては万全を期する意味において死体取扱規則に定められたような写真を撮らなかったということは、やはりいま考えてみると残念だというような気は起こらないですか。撮っておったらよかったのに、撮っておれば、こういうふうにこの委員会でこんな話が出ることがなかったのに、こういうふうに思わぬですか。
#240
○加藤説明員 死体そのものといいますかその死体につきましては、いま申し上げましたように数十枚の写真を撮っておるわけですね。
 それで問題は口腔内の歯の写真をなぜ撮らなかったかということでございますが、それはそういうことで撮っておけばなおさらよかったということは確かに言えるわけです。ただ、死体の口をあけてそこのところを撮影するということになりますと、それだけの準備なりあるいはときには機械を使うなりということがやはり必要であろうかと思うわけです。
#241
○井上(泉)委員 あなた、もっと率直に問題は対処しなければいかぬ、ああやこうやと言い逃れのような答弁をせずに。
 歯の型がどうだったかということを口をあけてやって記録にとったんでしょうが。記録にとれば写真くらい撮るのは簡単だと思うのですが、これは法務省の方の刑事局長は警察官も指揮する場合もたくさんあるわけですが、どうですか。こういうふうな死体の取り扱い、身元不明の死体の取り扱いは、いまの警察のやっておるようなことで十分だったと思うのですが、ひとつ刑事局長の御見解を聞いておきたいと思います。
#242
○前田(宏)政府委員 結果論からいたしますといろいろな御批判もあろうかと思うわけでございます。ただ、警察庁の方からるる御説明をしておりますように、当時といたしましては、担当の者としては最善の措置をとったつもりであったのだろうというふうに伺っておるわけでございます。
 なお、つけ加えるようで恐縮でございますが、いまのような御疑問あるいはお母さんがいろいろ納得しておられないというようなことは私どもも承知しておりますけれども、先ほど冒頭に警察庁の方で御説明がありましたように、東京地裁で五十三年の三月二十七日に決定があったわけでございますが、それにつきまして弁護人の方から、なお同一性について問題があるということで即時抗告の申し立てがなされております。そして東京高等裁判所で同年の六月二十七日にその抗告の申し立てが棄却されております。しかし、それに対してまだ不服があるということで最高裁に特別抗告の申し立てがあって、それがまた同年の十月に棄却されて、そして当初の東京地裁の公訴棄却決定が確定している、こういう経過と承知しているわけでございます。
 したがいまして、その裁判の過程、高等裁判所、最高裁判所に至る過程におきまして、いまのような問題も裁判所の御判断の中で十分検討されたものというふうに私どもとしては理解しておるわけでございます。
#243
○井上(泉)委員 時間がありませんので、この問題について日弁連の人権擁護委員会が、いわば自分の子でない者をこれはおまえの子だ、こういうふうにきめつけられて、親にとっては、あなたたちはきめつけではないかもしれぬけれども、きめつけられておるわけです。それではいけない、それでは何ぼ死んだ者といえども人権というものを考えた場合に、母親に対しての人権、死者に対する人権、こういうものを考えた場合にも大事なことだということで、これは日弁連の人権擁護委員会が取り上げておる事件である。
 その日弁連の人権擁護委員会というものは権威のある人権擁護委員会であると承知しておるわけですが、それが取り上げておるということは、これは刑事局長なり捜査課長なりは御承知でしょうか。
#244
○加藤説明員 日弁連の人権擁護委員会で検討中であるというところまでは私は知っておりますが、その後具体的にどういう取り上げ方をしておるのかまだ承知いたしておりません。
#245
○井上(泉)委員 具体的にどういうことか承知してないということなら私が承知しておる限りのことを言うわけですけれども、その日弁連の人権擁護委員会が市川署に行ってもなかなか調査に応じてくれない。これではせっかくの日弁連のそうした大事な機関というものが任務を果たせない。これは弁護士会の公正な機関ですから、だからそのことに対しては市川署が積極的な協力をするような姿勢があってこそ、初めて人権を守る国家としての体面が発揮できるのじゃないかと思うわけですけれども、これはもっと協力をするようなことを指導なされたらどうでしょう。
#246
○加藤説明員 先ほど申し上げましたように、また法務省刑事局長の方からもお話がございましたように、昭和五十三年三月二十七日にそういう異同のことを含めまして東京地裁で裁判をやりまして、多数の証人、もちろんその中には取り扱いました警察官も証人として出廷いたしております。また歯の治療をやられたような歯科医師さんも多数出ておられるわけです。あるいはそのほかの証拠物というものもたくさん相互に提出いたしまして、それを裁判所が慎重に調査、判断いたしました結論といたしまして、この死体は水本潔本人であるという結論が明確に出されておるわけでございます。
 したがいまして、私どもはそういう裁判所の判断に従う、しかもそれはもう確定しておるわけでございますので、法治国の公務員でございますので、裁判で確定したものは何としても尊重しなければいかぬ、そういうことでございます。そして、そのことにつきまして新たに市川警察署に来て協力をと言われましたところで、最も権威ある最も公正な裁判所がそういうふうな判断をすでに示されておるわけでございますので、私どもの方といたしましては、それ以上の御協力というふうなことはちょっとできかねるということでございます。
#247
○井上(泉)委員 日弁連の人権擁護委員会というものの権威はそんなものでしょうか。
 私は、そういう会のことは余り詳しく知らぬわけですけれども、そういう国民の人権が一部侵害された事件について調査をする、こう言っておるから、あなたらも、そのやったことが正当な法の手続を踏んで、そうしてきちっとした証拠が出そろって、どこからどう言われても裁判の結果が適正であったということなら、日弁連がなお調査をしたい、人権擁護委員会が取り上げてやるというなら、その点の調査に応じても別段不都合はないでしょうが。何かそんな調査に応ずることが不都合でしょうか。これは刑事局長どう思いますか。
#248
○前田(宏)政府委員 日弁連の人権擁護委員会の調査についてどういうふうに警察の方で対応しているか、私じかに承知しておりませんけれども、先ほど来の警察のお答えは、私が聞いております限りでは、最高裁まで行って、特に一審の東京地裁で担当の警察官あるいはお医者さんその他いろいろと調べられたので、それをもう一度改めて調べられても全く新しいものはないということで、調査に来られても特に申し上げることもないというような気持ちで応対しているのじゃないかというふうに理解しているわけでございます。
#249
○井上(泉)委員 それはないかもしれぬ、あるかもしれぬ。
 しかし、これは人権擁護委員会として取り上げるべきものだ、日弁連と言えば何も思想的に色があってどうこうする団体じゃないのですから、あるかないかわからぬけれども、せっかくそういうふうな国民が頼りにするところの在野の機関がひとつ調査をしよう、こういうことですから、それはやはり法の秩序を維持していくためにも、そういう在野の機関の申し入れに対しては快く受け入れて調査する、いまここでしないとかするとかいうようなことではなしに、そのことをひとつ検討されたらどうですか。もう一遍検討していただきたいと思いますが、どうですか。
#250
○加藤説明員 私ども何も、日弁連の人権擁護委員会の調査活動等につきまして協力をしないということではございません。
 ただ、いまの場合には、出すべき証拠あるいはその経過というふうなものは第一審の公判廷でそれぞれが全部出されておるわけでして、弁護人側からの反対尋問というものも十分に尽くされておるわけでございます。そういうことになりますと、本件につきましてはそれ以上のものは全く出てこないのじゃなかろうか。そうすると、それを承知の上でお見えいただいても新たに提出すべきものも余りない、こういうふうなことでございます。
 ただ、おっしゃるとおり、そういう日弁連の人権擁護委員会がその社会正義の実現という立場からいろいろ調査をなさるということにつきましては、これは一般論といたしまして協力すべきところは十分に協力をいたしたいと思っております。
#251
○井上(泉)委員 私は一般論として扱ってもらっていいわけです。
 せっかく日弁連がそういうことを取り上げておるし、どういうことをどうするのか、それは日弁連の調査の方でなければ、私は承知してないから言えないわけで、やはり在野の機関でありましょうとも、せっかく国民の人権を守るために弁護士会がつくっておるわけですから、調査に来られた方に対して、これはこうだからこうだ、こういうふうにいまあなたが言われるような説明をして、そこで、もうこれ以上の調査に応じられないなら応じられない、これはこうですというように、そういう方の申し入れについてはそれに受け答えするものがないと、私が聞くところによれば門前払いで全然お話にならぬ、こういうことを聞いたわけでありますから、あえて私はそのことを申し上げておるようなわけでありますが、最後にぜひそのことについて、この日弁連の人権擁護委員会の調査についてのお考え方をもう一回承って私の質問を終わりたいと思います。
#252
○加藤説明員 日弁連の御活動、その中で人権擁護委員会の御活動のみならず、それぞれの弁護士会で弁護士法の規定に基づきましていろいろ御照会なり調査なりが参りましたときには、これは私どもの方としてもできるだけの御協力をしておるわけでございます。そういうことでございまして、いま先生の御意見がございましたように、できるだけの協力というのは警察の立場からもいたしていきたいと思います。
#253
○井上(泉)委員 どうもありがとうございました。
#254
○木村委員長 次回は、来る二十二日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後四時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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