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1979/05/13 第91回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第091回国会 法務委員会 第23号
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1979/05/13 第91回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第091回国会 法務委員会 第23号

#1
第091回国会 法務委員会 第23号
昭和五十五年五月十三日(火曜日)
   午前十時十分開議
 出席委員
   委員長 木村武千代君
   理事 金子 岩三君 理事 中村  靖君
   理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君
   理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君
   理事 柴田 睦夫君
      上村千一郎君    亀井 静香君
      熊川 次男君    白川 勝彦君
      田中伊三次君    二階堂 進君
      井上 普方君    北山 愛郎君
      下平 正一君    長谷雄幸久君
      木下 元二君    横手 文雄君
      田島  衞君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 倉石 忠雄君
 出席政府委員
        法務政務次官  平井 卓志君
        法務大臣官房長 筧  榮一君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 枇杷田泰助君
        法務省人権擁護
        局長      中島 一郎君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総局民事局長  西山 俊彦君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十三日
 辞任         補欠選任
  岡田 正勝君     横手 文雄君
  河野 洋平君     田島  衞君
同日
 辞任         補欠選任
  横手 文雄君     岡田 正勝君
  田島  衞君     河野 洋平君
    ―――――――――――――
五月十二日
 利息制限法の一部を改正する法律案(横山利秋
 君外五名提出、衆法第五二号)
同月十日
 国籍法の改正に関する請願外二件(土井たか子
 君紹介)(第五六三九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 民事訴訟費用等に関する法律及び刑事訴訟法施
 行法の一部を改正する法律案(内閣提出第六二
 号)(参議院送付)
     ――――◇―――――
#2
○木村委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所西山民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○木村委員長 内閣提出、参議院送付、民事訴訟費用等に関する法律及び刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長谷雄幸久君。
#5
○長谷雄委員 民事訴訟費用等に関する法律及び刑事訴訟法施行法の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。
 まず、法律案の改正理由について伺っておきたいと思います。この法律案を提出する理由として「最近における経済情勢の変化等にかんがみ、」とこうされておりますが、余り理由は明確でないと思うのですが、具体的に述べていただきたいと思います。
#6
○枇杷田政府委員 この民事訴訟費用法は昭和四十六年に制定されたものでございまして、それ以降改正をいたしておらなかった次第でございます。
 その間、御承知のとおり諸物価が高騰し、また賃金その他も上がるというふうに経済変動が著しく行われております。それに費用法の関係は実費主義をとっておりませんので、必ずしも直ちに連動しなければならないというものではございませんけれども、余りにもこの九年の間に制定当時の事情とは違い過ぎたということがございます。そういう面で改定をしようという趣旨でございます。
#7
○長谷雄委員 いま御答弁の経済情勢の変化については、これは最近に限ったことではないと思うのですね。
 この民事訴訟費用等に関する法律の制定は資料にも書いてございますように昭和四十六年。それから刑事訴訟法施行法の前回の改正の時期も同じくやはり四十六年。昭和四十六年以来今日までの九年間に、経済情勢の変化というものは相当回数多くあった。それにもかかわらず今日まで改正に手をつけないで、いまになって改正しようとする意図は十分理解しがたいところだと思います。経済情勢の変化を改正の理由とするのであれば、あの狂乱物価と言われた時代にこそ改正すべきではなかったかと思うのでございますが、この点についてはどうですか。
#8
○枇杷田政府委員 御指摘のように、昭和四十九年、五十年ごろに著しく変動があったわけでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、裁判所に納める手数料というのは、ほかの行政手数料と違いまして実費主義をとっておらないという点が一つございます。
 それからもう一つは、物価が上がりますと、それにあわせまして訴訟物の価額も自然に上がる。そうしますと、訴えの場合に張る印紙代というものはそれに伴って上昇を見るということがございますので、したがいまして、すべての手数料がそういう要素を持っておるわけではございませんけれども、主たるものがそういう要素を持っておるということが第二点。
 それから最後に、実は数年前から昨年御審議いただきました民事執行法の制定というのを考慮いたしておりまして、その際にかなり手続が変わるということが予想されておりましたし、したがいまして、その新しい民事執行法に基づく手続というものを見定めた上で改正をするのがいいのではないかということで、実はそれを待っておったという事情がございます。
 そういう関係で、九年間という間改正しなかったというのは少し間隔があき過ぎたというきらいはございますけれども、やっとことしの十月一日から民事執行法が施行されるということになりましたので、その時期にあわせて従来の懸案を一挙に整理をしたいということに相なったわけでございます。
#9
○長谷雄委員 いま民事執行法の制定を期待をしておったという御答弁がございましたが、民事執行法の制定と同時に改正したいという、この意向については十分理解できますけれども、この民事執行法の制定作業については、前回の民事執行法案の審議の際に、私のこのときの記憶からしますと、たしか法制審議会の審議だけでも、昭和二十九年七月から始まって合計二十三回昭和五十二年の一月まで審議をなされたというぐあいに聞いております。そして同法制定まで二十五年間も経過をしておりました。この間、同法の制定作業あるいは制定そのものを断念したのではないかと思われるような時期もあったということも一部言われておりました。それに、せっかく民事執行法案をさきの通常国会に提出されたにもかかわらず、この法案は御承知のように参議院で修正をされる、こういうハプニングが起きた。法務省としても予想外の事態ではなかったかと思うのですね。
 したがって、民事執行法の制定を待っていま提案されているこの法案を改正するというのであれば、こうした民事執行法の制定経過などから見まして、今回この法案を改正する必要性は、差し迫った理由というのはなかったのではないか、こういうように思われるのですけれども、その点についてはいかがですか。
#10
○枇杷田政府委員 先ほど来申し上げておりますとおり、裁判所に納めるべき手数料というものは実費主義をとっておりませんので、直ちに物価変動に連動するというふうな性質のものではないという意味では、私どもはそれほど差し迫ったという感じは持っておりませんけれども、余り年を追うごとに、アンバランスというものが乖離をしていくということがやはりだんだん深刻になっているという印象は持っておるわけでございます。したがいまして、ことしの十月一日から改正をするというのがぎりぎりの線ではないかという感触を持っております。
#11
○長谷雄委員 次に、今回の改正案の内容について若干お尋ねをいたします。
 改正案の内容は手数料の改正を図るものでございますが、その問題の第一は、民事訴訟費用等に関する法律第三条、第四条関係の別表第一の訴えの提起に関する一項及びこれを準用した各項、それから借地非訟事件等の申し立てに関する一二項、それから民事調停の申し立てに関する一四項の手数料について、この算出基準を改定している点についてでありますけれども、具体的に言いますと、訴額等から見て手数料のアップ率はまちまちになっております。
 たとえば訴えの提起について見ますと、法務省が出された資料から見ても、訴額等が二百万から四百万までの範囲ではいずれも二〇%を超えております。具体的には訴額等が二百万の場合は二〇・九%のアップ、二百五十万のところが二四%のアップ、三百万では二六・三%、四百万では二〇・五%、それぞれアップになっておりますね。それからまた民事調停申し立て事件について見ますと、やはり二百万から四百万のところではいずれも四〇%を超えております。そうして三百万円のところでは何と五四・七%のアップになっておりますね。この訴額が二百万円から四百万円の範囲は、いずれも庶民が裁判所を利用する場合に最も利用度の高いところだと思うのですね。
 そうしますと、今回の改定はこういう点から見て、一部の意見には庶民に焦点を当てた引き上げだとの見方が強いわけでございますけれども、この点についてどうお考えになりますか。
#12
○枇杷田政府委員 御指摘のように、今度の改正におきまして訴えの場合で例をとりますと、二百万から四百万のところが二〇%以上の上昇率ということに相なっておるわけでございますし、またそこら辺が庶民の重要な財産、不動産等の訴訟の場合にこのところに当たるという可能性が多いところでございます。しかし、私どもといたしましてはそこをねらってやったという意図は毛頭ないわけでございます。
 これは先ほど申し上げましたように、この訴えの関係につきましては、物価の上昇等に伴いまして訴訟物の価額それ自体が上がってきておるわけでございます。したがいまして、その率を上げるということは必要ないわけでございますが、ただ訴えの場合には現行法では、三十万円までの場合には訴額の一%、三十万から百万円の部分は〇・七%、百万円以上は〇・五%という刻みで、いわば逓減的な定率方式をとっておるわけでございます。その刻みの仕方が少し不合理になってきたということでございますので、物価その他の経済事情の変動が大ざっぱに見て三倍だというふうに見ますと、この刻みの一%の部分を三十万から九十万ないし百万円に上げるというのが一応の計算になろうかと思います。
 そういうふうにいたしますと、〇・七%の部分が一挙に一%に上がりますから四二、三%の上昇ということに相なってしまいます。それでは余り上がり過ぎるということで、従来は三段階方式であったものを、その点を考慮いたしまして〇・八%という段階を一ランクこしらえるということによって、なるべくここら辺の上昇率が上がるのを抑えようということに努力いたしたつもりでございます。
 なお、御指摘の点につきましては日本弁護士連合会の方でも強く指摘をいたしました点でございますので、いろいろと知恵をしぼりましてそういう四段階方式にして、ここら辺におさめたということでございます。ちなみに金額的に申しますと、三百万円のところで一万七千九百円から二万二千六百円の上昇でございますので、金額的には四千七百円ということでございます。もちろん低くあった方が望ましいことは当然でございますけれども、その程度の金額ならごしんぼういただけるのではないかという結論に達している次第でございます。
#13
○長谷雄委員 問題の第二は、その他の民事事件等に関する申し立ての手数料の額の改定の点でございます。
 この中で特に指摘しておきたいのは、他の部分がほとんど一律三倍のアップになっているのに、別表第一の一一の強制執行については、五百円であったものを三千円つまりちょうど六倍ですね。それから一二項の破産については三千円であったものを一万円にということで約三・三倍、こういう高い引き上げ率になっております。この理由についてお尋ねをいたします。
#14
○枇杷田政府委員 ただいま御指摘のように、定額制のものにつきましては原則として三倍にするという線でこの改正案はつくられておるわけでございますが、例外として、ただいまお話しございました強制執行関係については六倍、五百円から三千円という例がございますし、それから破産の申し立てとか会社更生の申し立てについては三千円を一万円に、三倍プラス千円という例外をつくっております。
 この理由と申しますのは、まず強制執行の関係につきましては、従来からほかの手数料と比べて非常に割り安といいますか均衡がとれていないという指摘がございました。と申しますのは、訴の関係に引き直して申しますと、五百円の手数料というのは訴額五万円の訴訟に該当するという金額になるわけでございますが、それに引きかえまして不動産を中心とする強制執行については少しアンバランスであるという指摘があったわけでございます。
 それからもう一つ、今度は民事執行法の改正によりまして不動産の強制執行を中心としてかなり改善策が講ぜられることになりました。その結果、たとえば物件明細書の作成というふうに裁判所側の方でもかなり手間がかかるものが幾つか出てまいったわけでございます。そういう機会にアンバランスを少し是正をしたいという気持ちで、ほかのものは三倍なのにここだけは六倍にしたということでございます。
 ちなみに、不動産執行よりもいわば簡単な執行というふうに考えられております動産執行の関係につきましては執行官が行うことになっておりますが、この執行官の手数料というのは執行官手数料規則で定まっておりますが、これは執行官の実際の生活を支える収入ということになりますために、百万円程度のものでも六千円とか八千円とかという金額にせざるを得ない、そういうこととのアンバランスを一方で生じておるというふうな要素がございますので、あれこれ勘案いたしまして、このものにつきましては六倍にしたという経緯でございます。
 それからもう一点の、破産の申し立てとか会社更生の申し立てとかというのも現在は三千円でございますが、これも従来からほかのものと比べて少し安いのではないかというふうなことが言われておりました。ことに最近の破産とか会社更生の場合には、御承知のとおりかなり大口のものが多うございまして、裁判所も普通の訴訟に比べますと大変な手間がかかるというふうな内容になっております。したがいまして、六倍ということはちょっと行き過ぎかと思いますけれども、そういう大きな事件については九千円というよりは一万円という丸めた単位にすることが望ましいのではないかということで、一万円という数字にいたしたわけでございます。
#15
○長谷雄委員 第三の問題は、法務省は今回の改正の理由として、法務省が出されたこの資料の中に、昭和四十五年と比較して国民総生産、給与・所得、全国手形交換高、それに不動産売買登録免許税等がいずれも約三倍に上昇していることを挙げておりますが、そもそも裁判所の手数料をこれらの上昇に伴って増額すべきものと考えているのかどうか、この点は若干疑問があるのではないかと思います。
 その点については先ほどの御答弁の中にもちょっと出ておりましたけれども、問題点の第一のところで指摘しました定率による手数料の引き上げにつきましては、物価が上昇すれば訴訟物の価額等も当然増大してまいります。そうしますと、それだけ裁判所の手数料は貼用印紙額の増大という形で増加してまいるのでありますから、定率の引き上げということについては、国民に物価上昇以上の負担をかけることになって不適当だとの指摘もございますけれども、この点についてはいかがお考えでございますか。
#16
○枇杷田政府委員 確かに物価が上昇いたしますと訴訟物の価額が上がりますので、それにスライドして手数料の金額も上がるということは当然のことでございます。しかしながら、先ほどもちょっと申し上げましたように、三段階の定率を使っておりますために訴訟物の価額が上がりますと逓減していくということがございます。
 たとえば例をとって申し上げますと、三十万円までの第一審の訴訟事件が昭和四十五年におきましては五六%、要するに過半数が一番基礎的な定率のところでおさまるというふうなものであったものが、五十三年には三九%程度に減っておるというようなことでございます。したがいまして、訴訟物の価額が上がったに伴っていわば定率の刻みの金額も改定しなければバランスがとれなくなるであろうということで、この訴えのところで申しますと第一の項のところを改正したということでございます。したがいまして金額的には、私どもの試算によりますと、総体の歳入増と申しますものが一七%程度でございますが、定率のところで申し上げますと八%若干超えるという程度の是正という結果になっております。
#17
○長谷雄委員 今回の改正案によりまして、手数料額の年間収入額は現行の約五十二億円から六十一億円にアップされると伺っております。つまり、アップは約九億円を見込んでおるようでございますね。これを裁判所の推計によりますと、このアップは正確には八億九千六百九十一万二千百三十二円、こういう数字になっておりますね。
 この手数料収入は印紙収入として郵政省所管の歳入予算に繰り入れられてまいりますけれども、昭和五十五年度の歳入予算のうち印紙収入は八千百六十億円、この八千百六十億円から見ますと、手数料収入の総額は一%にも満たないということになります。しかし、この約九億円のアップは手数料収入額全体の五十二億円から見ますと一七%のアップになる。こういうことであるのにかかわら、ず、今回の改定によりましてアップされるものの中で、先ほど指摘しましたように二〇%を超えておるものもあれば、さらに三〇%、四〇%にもなるものもありますね。こういうところから、もう少し検討されてこのアップの調整をすべきでなかったかと思うのですけれども、この点についてはいかがですか。
#18
○枇杷田政府委員 確かに一律でないという点は問題があろうかと思います。
 一番典型的な三十万円未満のものについては全然改定がないということでございますが、技術的な面で逓減方式をとらないで一律の率がかかるというふうなことですと、またそれなりに考えようもあろうかと思いますけれども、現在のやり方を一応前提にいたしますとなかなかうまくいかないということで、その刻みの関係につきましてもいろいろなことを考えたわけでございます。いろいろなことをやってみた結果、この原案が全体から見て一番影響が少なくておさまりがいい形になるであろうということでしたわけでございますが、なお今後とも、そういう問題については私どもも研究課題としては問題意識を持っておる次第でございます。
#19
○長谷雄委員 この手数料は結局当事者の負担となるものでありますので、引き上げの理由の明確でない増額は適当でないことは当然だと思います。しかし、増額がやむを得ない場合であっても、当事者の負担を軽減する措置は必要だと思います。そうでないと国民の訴訟離れを来し、裁判の機会均等の保障を奪うことになるという心配も出てまいります。その意味で、訴訟救助や法律扶助の制度の健全な運用はきわめて大切なことだと思います。
 そこで、まず訴訟救助の点についてお尋ねをします。この訴訟救助については民訴法の百十八条以下に規定がございます。百十八条によりますと、この救助の要件として無資力の者であるということが第一の要件、それから第二は勝訴の見込みなきにあらず、こういう規定がございます。しかも、この救助の要件二つとも疎明をしなくてはならぬ、こういう規定が百十九条の二項にございます。そこで、救助の実態がどうなっているか、その点について若干御説明いただければと思います。
#20
○西山最高裁判所長官代理者 訴訟救助の要件といたしましては「訴訟費用ヲ支払フ資力ナキ者ニ対シテ」与えられるという点が一つございます。それからもう一つは「勝訴ノ見込ナキニ非サルトキニ限ル」ということがございます。この点につきましての審理が必要になるわけでございます。
 まず問題になりますのは訴訟費用を支払う資力があるかどうかという点でございますが、これは訴訟費用を支払ったことによって本人及び家族の生活が困窮を来すというおそれがある場合に言われることでございます。この点の判断といたしましては、資産と収入を一方に考えまして、それに対して訴訟において必要と見込まれる費用を対応させて考えていく、その比較考量のもとに検討していくというのが実務のやり方であろうというふうに考えられるわけでございます。そういたしまして、その実情といたしましては、これは訴訟救助を許与するかどうかという一つの裁判でございますので、裁判官の判断に任せざるを得ないことではございますが、一般に標準勤労者世帯の収入等を勘案してその資産状況を判定するということが実情ではなかろうかというふうに考えております。
#21
○長谷雄委員 この無資力の者という要件ですけれども、いまも御指摘のように、無資力を何と定義づけるかという問題になると思います。
 生活保護を受けていればまず問題なく適用になると思うのですけれども、そうでなくて、生活保護は受けてないが自分で生活するのが精いっぱいだ、しかしたまたま住むだけの不動産、自分が住むところの土地建物は自分名義のものがある、しかし預金は全くない、日常生活が手いっぱいだ、ときどき赤字家計にもなっているというような場合に、この百十八条の規定にいう無資力の者という場合の無資力に当たらない、つまり不動産があるからだ、こういうことなんですね。そういう扱いが非常に多いのではないかと思うのですけれども、これは一体どうなっておりましょうか。
#22
○西山最高裁判所長官代理者 ただいまのお尋ねの点も、現実の裁判でどういうふうにやっているかという点は個々の裁判の内容でございますので、私どもとしては何とも申し上げられないわけでございますが、私が先ほど申しました資産というものも、ただいま長谷雄委員が御指摘になられましたような、ふだんそれを居住の用として使っているというものは、直ちにそれを換価して費用を捻出する財源にはなり得ないものでございますので、そういうものはこういう資産の中には計上していないのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
#23
○長谷雄委員 訴訟救助の方につきましては、本人、当事者が救助してほしいということで、ある程度の疎明があればその救助を与えることが望ましいと思いますけれども、なおやはり実際は個々の裁判官の判断にゆだねられていることでございます。これからの運用が適正になされることが望ましいと思いますので、運用の活用化について今後どのように最高裁としては臨まれるか、お尋ねをいたします。
#24
○西山最高裁判所長官代理者 個々の訴訟救助に関する決定を当局の方で集めておるわけでございませんので、どういうことになっておりますか、その点は正確に把握しておりませんが、判例集その他の公刊物に載せられております裁判例によって見ますと、多くの例といたしましては、標準勤労者世帯の年間収入とか家計調査報告書によります全勤労者の平均年収、その中での可処分所得あるいは平均の消費支出、こういったものを考慮しながら、大体年間収入三百万円あたりが救助を付与するかしないかという線として考えられているようでございます。恐らくそういったような運用が今後ともなされていくのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
#25
○長谷雄委員 次に、法律扶助について若干お尋ねいたします。
 法律扶助について、この原資になるものについてはほとんどが法務省の扶助費で賄われているように思います。これまでは運輸省からも若干補助がなされておったようでありますけれども、資料によりますと、昭和五十一年以降は運輸省からの補助がなくなっておりますが、これはどういうことでございましょうか。
#26
○中島政府委員 お答え申し上げます。
 昭和四十二年から昭和五十年まで、ただいま御指摘ございましたように運輸省関係の補助金が合計で約一億二千五百万ほど出ておるわけでございますが、これは当時交通事故の訴訟が数多く発生いたしまして、そのうち法律扶助を要する事件が多いということで、主としてこの方面に使う目的で運輸省関係の補助金が出たという事情でございますが、五十年以降その関係の事件が非常に減少いたしまして、従来の補助金の償還金をもってその分は賄い得るという実情になってまいりましたので、五十一年以後は運輸省関係の補助金がなくなったということになっております。
#27
○長谷雄委員 法務省、運輸省のほかには国からの補助というのは現実にはないと聞いておりますが、そういう理解でよろしゅうございましょうか。
#28
○中島政府委員 そのとおりでございます。
#29
○長谷雄委員 この法律扶助の制度の運用につきましては、弁護士会の方でもかなり苦慮しながら乏しい原資の中で運用いたしておるようでございますけれども、中には有志の弁護士等から資金の援助を仰いだりなどしてやっておりますけれども、決して十分な状況ではないというのが実態でございます。
 そうしますと、先ほど指摘しましたように、やはり紛争というのは不可避的に起きてまいります。その不可避的に起きてくるものについて訴訟制度によらざるを得ないということからするならば、その費用の負担は、本人が負担できるものは結構ですけれども、そうでない場合については、やはり何らかの形での国庫補助というものが当然必要ではないかと思うのですね。現在の国庫補助のあり方から見ると、弁護士会等の意見ではもう少し欲しい、こういうような御意向のようですけれども、この点については今後検討の課題になると思うのですけれども、今後どういう御努力をなさるおつもりでございましょうか。
#30
○中島政府委員 法律扶助事業につきましては、先ほど来御議論ございましたように、財団法人法律扶助協会の事業でございまして、事業主体は法律扶助協会ということになっておりまして、国はこれに補助金を交付するという立場でございます。
 昭和三十三年から補助金の交付を始めまして、五十四年度までに合計十一億千八百方法務省関係の補助金が出ておるわけであります。その補助金の増額についてという御要望が日弁連あるいは扶助協会からあるということを十分承知をいたしておりまして、その御意見の中には傾聴すべきものも含んでおるわけでございまして、何分にも財政事情厳しい折からではありますが、扶助事業の重要性ということは十分にわかっておりますので、真に扶助を要する国民が扶助協会の資金不足のために扶助を拒まれるというようなことのないように、予算要求その他につきましても適正な額を補助できるように最善の努力をしてまいりたい、このように考えております。
#31
○長谷雄委員 予算要望でぜひとも法務省はこの法律扶助については前向きに、いま御答弁のありましたように、その御努力が実るように今後ともしていただきたいと思いますので、その点について本当ならば大臣がおれば大臣からも決意を聞いておきたいのですけれども、もう一歩突っ込んだ検討をぜひともお願いしたいと思うのです。
#32
○平井政府委員 ただいまの御質問でございますが、法務省としましては、要するに貧困者に対する訴訟援助を行う法律扶助制度、これは大変重要でございまして、真に扶助を必要とする者が救済されない事態が生じないように、これが一番重要なところでございますが、本制度の充実に努めてきたわけでございますが、御指摘のように、今後とも特に予算措置を含めましてその安定と発展を図りたい所存であります。
#33
○長谷雄委員 大臣がお見えになるかと思ってお待ちしておったのですが、なかなかお見えでないので、最後にお尋ねいたします。
 民事訴訟等の費用については、国民にとって社会生活から生ずる紛争解決の制度として裁判所を利用するものでございますので、費用の一部を制度の利用者がある程度負担すべきものとすることは、これはもう当然だと思うのですね。しかし、裁判の機会均等の保障という点から見ますと、費用が大幅に引き上げになるということは決して好ましいことではないと思います。いま指摘をしました訴訟救助の制度やあるいは法律扶助の制度がそれぞれ充実をしまして、これらの制度の利用者あるいは利用希望者が十分に制度を活用できるようにすることはきわめて重要な問題だと思います。しかし他面、これらの制度の利用者が増加するということは新たな別の社会問題の存在を意味するものであるということの認識も必要であろうと思います。そういう意味から、民事、刑事を問わず、訴訟費用をどう定めるかということにつきましては、単に訴訟費用そして司法制度のあり方としての問題だけでなく、もっと広く社会問題としての関連の中で適正に把握し、対処していかなければならない問題ではないかと思います。
 このような観点から、今後とも十分な対応が望まれるところでございます。ちょうど大臣がお見えでございますので、一言大臣からその点についての所見を伺えればと思います。
#34
○倉石国務大臣 ただいまのお話でございますが、法務省といたしましては、貧困者に対する訴訟援助を行う法律扶助制度の重要性にかんがみまして、真に扶助を必要とする者が救済されない事態が生じないように本制度の充実に努めてまいったのでありますけれども、今後とも予算措置を含めその安定と発展を図りたいと考えておる次第でございます。
#35
○長谷雄委員 終わります。
#36
○木村委員長 木下元二君。
#37
○木下(元)委員 今回の民事訴訟費用等の値上げは、経済事情の変化や物価上昇を理由にいたしております。しかし、訴訟費用を物価と同視するべきではありません。物価が上がるから訴訟費用も上がるんだという考え方は妥当ではないと思うのです。
 裁判は商品ではありません。また財政上の観点からしましても、訴訟費用などによる印紙、手数料収入は毎年上昇しておりまして、値上げをせざるを得ない事情にあるとは考えられません。結局、各種手数料が値上げをされたことに便乗をして訴訟費用も増収を図ろうというものではないか、これは一種の便乗値上げではないか、こう思われるのでありますが、どうでしょうか。
#38
○枇杷田政府委員 先ほど長谷雄委員の御質問に対してもお答えしたところでございますけれども、御指摘のように、裁判所に納める手数料と申しますものは、これは実費主義で考えるものではありません。したがいまして、当然物価の上昇に連動して上げなければならないという性質のものでないことはもちろんでございます。なお、現在非常に財政難に陥っておりますために、そういう面から幾らかでも手数料を上げたらいいじゃないかというふうな声が財政当局にないわけではございません。しかし私どもの方では、従来から裁判の手数料というのは一般の行政手数料とは性格が違うのだということで話をしておりまして、その点の性格については財政当局の方も理解をいたしておるところでございます。
 今回の改正案は、現行法が四十六年に制定されました当時から経済事情が変わっておることは間違いがないわけでございまして、その結果、手数料の制度自体の中に一つのアンバランスが生じておるということがございます。それは、訴えのところで申しますといま三段階に刻んでおるわけでございますけれども、その刻んでおるところが少し実情と離れてきたという点がございます。それからもう一つ、その手数料制をとっております一つの理由、これは主たる理由ではございませんけれども、一つの理由として、いわば乱訴、乱申し立ての防止というふうな要素もあるわけでございますが、そういう観点からいたしますと、少し低額になり過ぎておるという要素もないわけではございません。
 そういうふうなところから、先ほどもお答えいたしましたように、民事執行法の施行に伴いましてその新しい手続を織り込んだ費用法の改正というものが必要でございますので、その時期にその是正を図ろうとしたものでございます。
#39
○木下(元)委員 便乗値上げではないと言われるのですが、しかし私は、客観的にはこれは前に昭和五十三年に成立をしました各種手数料等の改定に関する法律に右へならえをしたものではないか、こう思うわけであります。しかも、昭和四十六年以来裁判に要する国の費用の方は、五十四年度でありますが、二十九億から六十億円へと約二倍にしかなっていないのです。それに対して他方貼用印紙による収入は、四十六年度十八億九千万円から五十四年度五十億六千万円と二・六倍以上に上がっておるのです。収入の増加率の方がずっと高いのです。だから私は、これはいま値上げをしなければならない必要性というものはないと思うのです。
 いまちょっと乱訴のことを言われましたけれども、では最近乱訴がふえて困っておる、そういう問題でも具体的に起こっているのでしょうか、そういうことはないと私は思います。私は、いま値上げをする必要性というものはない、こう思うのですがどうでしょう。
#40
○枇杷田政府委員 乱訴の点につきましては、最近それが顕著であるというふうなことは私は聞いておりません。ただ制度としてはそういうふうなことも、主たる理由ではございませんけれども一つの理由としてある。そういう面から申しますと、たとえば別表第一の一七項にあります百円というのが、現在の貨幣価値から考えまして手数料を取るにしては少し少ないという感じは否めないという感じでおるわけでございます。
 それからなお裁判所の予算との関係でございますけれども、実費主義ではございませんので、必ずしも裁判所の予算が幾らだから一件当たり割り戻して幾らというふうなこととして私ども手数料制度を考えておりませんので、あくまでも四十六年の制定当時の状況というものを基礎として、その後の変化をここで是正するという立場で考えた次第でございます。
#41
○木下(元)委員 実費主義ではないということを言われますが、そのことはよくわかりますが、私は、しかし非常に問題があると思うのですね。
 国が裁判制度を設けて国民の裁判を受ける権利というものを保障しておるこういう民主主義の社会におきましては、国民一人一人に保障された裁判を受ける権利というものは、何らの制約もなく容易に行使できるものでなければならないと思うのです。その実効性が担保されていなければならないと思うのです。そういう意味で、裁判に要する手数料というものは、それを提起する国民の負担にできる限りならないように考慮される必要があると思うのですね。大きな負担がかかっては困ると思うのです。
 もとより裁判を運営していく費用が要ります。それをすべて税金で負担をするというのは適当でないことももちろんであります。だから、裁判費の幾ばくかを手数料として訴え提起をする国民が負担をする、これも当然でありましょう。しかし、裁判費をずっと上回るような手数料などの収入が裁判で上がるということになってくると、これはきわめて問題だと思うのですね。それはもうまさに裁判で収益を上げるような結果になるので、そういうことは好ましくないと思うのです。この点は一般論としましては当然だと思うのですが、どのように考えられますか。
#42
○枇杷田政府委員 おっしゃるとおり裁判制度というものは、これはその制度それ自体を確立しておくということが国家の非常に重要な使命でございますので、事件があろうとなかろうと裁判制度というものは確立しておかなければならないという点については、全く御指摘のとおりだろうと思います。したがいまして、今度の手数料の値上げの関係で、いわば国がもうけるというふうな考え方でやるということは許されないと思います。
 ただ、その点につきまして、御指摘の数字はいわば裁判費、直接的な費用についての計算でございますが、これはいろいろの考え方があろうと思いますけれども、裁判所全体の経費というものはもっと多額のものでございます。したがいまして、そういう直接費だけで比較をしてやるのが適当かどうかということは問題なわけでございますので、ただいまも委員がおっしゃったような、一部はいわば訴訟当事者が負担してもいいではないかという、その一部というのは、従来からそれは裁判所のかかる費用とは別平面で、いわば訴額というものを中心として、負担に応じられる段階をつけながら一部を負担するということで、従来から訴えの場合には最高訴額の一%という線を維持しておりますので、そういう観点からいたしますと、特にこれで裁判所がもうけることになるからいけないというような結論には数字上もなりませんし、また、私どもの考えもそのようなところにないということでございます。
#43
○木下(元)委員 そこで、裁判から上がる収入というものはどのようなものがどのくらいあるかということを聞いておきたいと思うのですが、まず貼用印紙額ですね、これは私の法務省から聞いたところによりますと、五十四年度で言いますと六十億一千六百八十八万五千円あるということですが、そのほかに刑事事件の関係ですね、この方からは一体どういうものがどのくらいあるのでしょうか。
#44
○枇杷田政府委員 刑事事件につきましては、有罪の判決が出ますと被告人に訴訟費用が負担されるということに相なります。その訴訟費用につきまして徴収されました金額が、昭和五十三年度におきまして五億三千九百万円ということになっております。
#45
○木下(元)委員 五億三千九百万円の収入があるということになると思いますね。
 それから罰金また没収はどのくらいあるのでしょうか。
#46
○枇杷田政府委員 罰金の収入は昭和五十三年度におきまして五百十九億円余でございます。それから没収金の関係、これは追徴金も含めてでございますけれども、昭和五十三年度におきまして三億九千三百万円余ということになっております。
#47
○木下(元)委員 大体わかりましたが、ついでに聞いておきますが、保釈金はどのくらいあるでしょうか。もちろん保釈金というのは返す金でありますが、一たん納入された保釈金を国の方が使っておると思うのですね。これはどのくらいあるのでしょうか。
#48
○枇杷田政府委員 私どもの方で保釈金が年間どれくらい納められるかということについては、申しわけございませんが統計をとっておりませんので、その数字はお答えいたしかねます。
#49
○木下(元)委員 私の方で聞いたところによりますと、五十三年末の残高が、これは保釈金とそれから民事の競売代金も含めたものでありますが、ざっと約五百億円というように聞いておりますが、その程度でしょうか。
#50
○枇杷田政府委員 これは裁判所で保管している金額でございますので、裁判所からのお話では大体いまおっしゃったような数字のものが保管金としてあるというふうに伺っております。
#51
○木下(元)委員 その保釈金の関係だけでも、五百億というのは普通に預金をすれば相当な利息がつく金ですね。これは年末に五百億ですが、大体常時その程度の額はあると思われるのですが、相当な金であります。
 その保釈金は別といたしましても、貼用印紙額のほかに罰金、没収分や訴訟費用徴収分を合算しますと、裁判から上がる収入というのは裁判費をはるかに上回っておるわけですね。罰金だけでも五百億あるということですから、裁判費六十億の比ではありません。一方で、裁判を運営することによってそんなに収入があるわけですね。もうける気ではないと言われますけれども、収入があるのですよ。そのほかに印紙額をなぜ上げなければならぬか、こういう問題があるわけですね。この点はどうも私は納得がいかないわけであります。
 貼用印紙を初め裁判から上がる収入の方が裁判費よりもはるかに多い、この現行の仕組みと運営自体がきわめて問題であると私は思うのですね。国民の裁判を受ける権利の実効性を担保する上からも、訴訟費用の負担はより軽くするというのが当然の要請ではないかと思うのです。それを軽くしないで、より重くしておいて、そして裁判から上がる収入をより一層ふやそう、これは私はもう改善ではなくて改悪だと思うのです。この点いかがでしょうか。
#52
○枇杷田政府委員 先ほど御指摘の没収金並びに追徴金とかあるいは罰金とかという関係につきまして、裁判所の収入になるのじゃないかというふうなお話でございますけれども、これは私どもの考え方としますと、刑罰として科すものでございますので、これを裁判所のいわば経費に見合うような要素として考えるのはちょっと問題ではないかという感触を持っております。
 しかし、それはさておきましても、裁判所の方のいろいろな経費というものとの比較からいろいろ申されましたけれども、一般論として、なるほど裁判というものはみんなが負担にならずに裁判を受けられるという状況にすべきだという原則は、私どもももちろんそのとおりだと思っております。したがいまして今度の改定の際にも、いろいろな要素をにらみながら、またこの制度について一番関心の深い弁護士会などの御意見も伺いながら、なるべく低目に抑えて、そして四十六年当時からのいろいろな変化並びにその間生じたアンバランスというものを是正するという態度で是正措置を講じた次第でございますので、特に便乗値上げ的にやったというつもりは毛頭ない次第でございます。
#53
○木下(元)委員 罰金を裁判とは別だ、刑罰だと言われますが、まさに刑罰を科するのが裁判所なんでしょう。裁判所というものが動いて、そして刑事裁判をやって刑罰を科する。そして刑罰としての罰金が納付される。こういうことなんですから、やはり裁判からそういう収入が上がっている。そういうものといろいろな出費というものとを比較考量するといいますか、やはりそこに均衡といいますか、少なくとも私言えることは、そういうふうに上がる収入がある、裁判費よりもそういう収入の方がずっと多いという裁判制度にはきわめて問題があるというふうに思うのですよ。その点は指摘しておきます。
 それからもう一つ指摘をしておきますが、今度の値上げだけでなくて、訴訟費用制度全般に受益者負担的な考え方が一つひそんでおるのではないかと私は思うのです。この点はどうでしょうか。
#54
○枇杷田政府委員 受益者負担という言葉の意味が必ずしもはっきりいたしませんけれども、直接何かによって自分の利益になる、いわばその対価的な意味での負担というような意味での受益者負担性は、これはないかもしれません。
 ただしかし、いわば手数料というのを裁判所に納めます趣旨は、現実に裁判を受ける者も一部その裁判制度維持のための経費を負担するのだという点では全然つながりがないわけではありませんので、そういう面では受益者負担的な要素があると言えると思いますけれども、しかし、直接自分が何かの利益を受けることの対価的な意味での受益者負担というものはこれはない。したがいまして、敗訴になっても、何も得られなくてももちろん負担はしなくてはならないということでございます。ただ、制度を全部税金で賄うのではなくて、その制度を現実に利用するといいますか、その制度に乗って訴えを起こすという者に負担をさせるという意味では受益者負担的な要素はあることは否定できないと思います。
#55
○木下(元)委員 訴訟を起こす者を受益者というふうに見るのは、これは適当ではないと私は思うのです。何らかの利益を得るというふうな言い方もされましたが、そうではなくて、やはりこれは裁判を受ける権利を行使しておる、こういうふうに見るべきだと思うのですね。
 私は、受益者負担的な考え方が一番あらわれておるのが訴え提起の貼用印紙額だと思うのです。訴訟物の価額に従って印紙額が決められる。これはたとえば保全処分の場合はそうでなくて定額制で、一億の価額でも百万の価額でも同じ定額制ですね。ところが、そうでなくて民事裁判そのものは定率制で、そういう訴訟物の価額によって決まる。ここに非常に受益者負担的な考え方、色合いが強いと私は思います。基本的にこういう発想ではなくて何よりも裁判を受ける権利の実効性を担保する、これが眼目でなければならないように私は思うのですが、この点はいかがでしょうか。
#56
○枇杷田政府委員 訴えの場合の定率制というのが受益者負担性をあらわしているのじゃないかという御指摘でございますけれども、これは外国の例を見ましても定額制のところもあるようでございます。
 しかしながら現実問題といたしまして、五万円の貸し金の請求の訴えと一億円の売掛金代金の請求とを起こしたときに、同じ金額の印紙の方が皆さん方に納得いただけるかどうかというところに一つ問題があるように思うわけです。結局、裁判にかかる費用を原則的には税金で、国家の財政で負担するのだけれども、一部を実際に訴訟を起こされる方に負担していただくということを前提にいたしますと、その負担をどのような形で分担していただくのが適当かということになりますと、定額制で割り切ってしまうというのもいかがかなということがございます。したがいまして、その中間をとりまして、いわば定率制の逓減方式というものをとっておる次第でございます。
 考え方といたしますと、あくまでも裁判制度というものは財政で負担するのが原則なんだけれども、民事訴訟については私人間の紛争の問題でもございますので、これは一部その裁判制度を利用される方に負担をしていただくという考えで貫いておるつもりでございます。
#57
○木下(元)委員 いや、私は何も定額制にせよとは言ってないのですよ。ただ、いまの印紙額の定め方というものが、訴訟物が五万円、十万円、そういうふうに小刻みに上がるごとにそれに従って印紙も増額するというのは、いかにも受益者負担的な考え方があらわれてはいないか、こう言っているのですよ。だから、もう少し大枠で決めるという方法だってあるんじゃないか、こういうことを指摘しておきたいと思います。
 要は、裁判を受ける権利というものが絵にかいたもちにならないように十分に配慮していくことが必要ではないか、そして裁判の負担を軽減していくことが必要ではないか、こういうふうに私は考えておるのです。そういう観点から見まして、いまの裁判所のやり方、法務省も共通でありますが、そういう国民の側に立った考え方がどうも定着していないように私は思うのです。
 一つ申しますと、たとえば非財産権上の訴えで原告多数の場合、これは以前私自身体験したことがありますが、訴訟物は一つとして印紙を貼用しておったのです。ところが、いまはそうなっておりませんね。最近は原告の頭数に応じて印紙を貼用しております。非財産権上の請求ですから、いまは三十五万円、三千三百五十円ですか、それを頭数に応じて一人ずつ張らしていく、こういうことをやっていますね。たとえば砂浜の埋め立てを差しとめるいわゆる環境権訴訟の場合なんか、訴訟物は一つだと私は思うのです。だから、一人でも十人でも百人でも千人でも、原告が少なくても大ぜいでも、争点はほとんど変わりはない。事件の難易とか手数もほとんど同じことであります。ところが、以前は訴訟物一つとして非財産権上の請求ということで印紙をいまにすれば三千五百円張ればよかったのを、頭数に応じて印紙をとるということをやっていますね。これはきわめて不合理な話ではないかと私は思うのですよ。実際にこれが障害になって訴訟を取りやめたケースもある。これはどう思われますか。
#58
○西山最高裁判所長官代理者 ただいま非財産権上の訴えというお話を前提にされておられるようにお聞きいたしましたが、非財産権上の訴えと申しますのは、訴訟物の価額の算定できないものといたしまして、通常は人事訴訟とか会社法上の訴えとかそういったようなものが挙げられておるわけでございます。
 ただいま木下委員御指摘になりました公害訴訟の関係の事件は、私どもとしては財産権上の訴えであるというふうに考えておるわけでございます。それは財産権上の利益を目的とするということでございますので、その訴訟物の算定の仕方としては、各人の受ける利益を基準にして決めるという算定の原則になっておるものでございますから、公害訴訟の場合でも争点は、大きな点では共通の面がございますが、最終的には各人のこうむる被害に対する損害賠償といったようなことが問題になるということでございまして、そこが各人ごとに算定をしていく根拠になろうかというふうに考えておるわけでございます。
#59
○木下(元)委員 時間がありませんので、私も詳しく反論しませんが、そんなことを聞いているんじゃないのですよ。損害賠償を請求するんだったら、それは当然各人の損害額を合算して計算する。あたりまえのことですよ。
 そうでなくて、いま私が問題にしておるのは、損害賠償ではなくて環境権破壊ということで差しとめを求めておる場合の請求というものは、非財産権上の請求として扱われておるか、もしくは、財産権上の請求として扱われておっても、それは非財産権上の請求に準ずるものとして取り扱われておる。そういうことで結局各人に印紙を張らせる、それが現実にはそういうふうな多数訴訟というものを抑える役割りを果たしておる。そういう点で、これはもっと国民が裁判を受ける権利というものを国民に対して保障するという見地に立って、こういう問題についても善処されるべきではないかということを私は指摘しておるのであります。その点は時間の関係でもう私は詳しく聞きません。
 法律扶助の問題を少し尋ねたいと思います。法律扶助協会から法務省に対して昭和五十五年度関係の補助金等についてどういう要望がなされたでしょうか。
#60
○中島政府委員 お答え申し上げます。
 扶助協会に対する補助金の増額については従来から御要望が出ておるわけでありまして、五十五年度につきましては、特に補助金額として約二億二千万程度の補助金額の御要望があったと承知いたしております。
#61
○木下(元)委員 そして法務省として大蔵省に要求した額は幾らですか。
#62
○中島政府委員 当初約一億円の補助金の予算要求をいたしたわけでございます。
#63
○木下(元)委員 大蔵省が認めた額は幾らになったのですか。
#64
○中島政府委員 扶助費及び調査費を含めまして七千四百万でございました。
#65
○木下(元)委員 法務省は協会の要求にもかかわらずこれを大幅にカットしたようでありますが、その理由は一言で言うとどういうことですか。
#66
○中島政府委員 協会の御要望を参考のために私ども拝見したわけでございますが、二億二千万のうち、その内訳といたしまして、約一億七千万は扶助費の要求でございます。それから三千万は調査費の要求でございます。それから約二千万は未済事件の整理費でございます。それで私どもの方は、扶助費について約九千万、それから調査費のうち約一千万という要求をいたしまして、未済事件の整理費については補助金の対象としていかがであろうかということで、これは要求をいたしませんでした。
 以上でございます。
#67
○木下(元)委員 いや、カットしたその理由を聞いているのですよ。扶助協会の要望と、あなた方の方で大蔵省に要求した額とに大きな格差があるでしょう。どうしてそのように減らしたのかと聞いているのです。
#68
○中島政府委員 扶助費につきましては、件数それから一件当たりの所要経費の数字が問題になってくるかと思うわけでありますが、その数字のとり方にいろいろな推計の方法がございます。扶助協会の方の推計の方法も一つの方法ではございましょうが、私どもの方は、その推計方法によらないで別の推計方法によったために違った金額が出てきた、こういうふうに理解いたしております。
#69
○木下(元)委員 結局、あなた方の扱いとしても、扶助協会の要望を大きく抑えるということをやっておられるんですね。抑えられておるから、結局少ない件数として出ておる。
 これはあなた方の方も御存じだと思いますが、要望書を見ましても、資金の不足のために「扶助決定にあたっては資金量を考慮し、緊急性、重要性の高いものから順次決定する。」こういう方法をとったとか、あるいは「保証金は原則として支出しない。」とか、こういう措置をとっておる。また「扶助決定を見送ったものは、五二件であるが、各支部の窓口で申込を規制したものはこの数倍にのぼるものとみられる。右の措置に対しは依頼者、受任弁護士から苦情が相次ぎ、各支部の扶助決定にあたる審査委員、事務担当者の事業意欲にも影響している。」というふうに、扶助協会の方から法務大臣に陳情、要望が出ておるでしょう。結局あなた方は抑えているわけですよ。しかも、件数が少ないということがありますけれども、これは予算の枠が決まっているから、各支部で扱うのに要件を厳しくして抑えにかかっておる、こういう問題が一つあると思います。
 もう一つは、やはり宣伝不足であります。PRがものすごく不足しておる。この制度がまだまだ国民に知られていないわけですね。その点は、たとえば扶助協会が出した「法律扶助制度概観」というのがありますね、これの六十四ページにも出ておりますが、「昭和四十年十月に総理府が全国で調査した大権擁護制度に関する世論調査」によると法律扶助制度を正確に理解している者は、わずかに二・八%にすぎない。」それから「さらに昭和四十六年二月に総理府が全国の二十歳以上の者三千人を層化二段無作為で抽出し、法律扶助制度の周知度に関する調査を行った。その調査結果は法律扶助制度を正確に理解している者はわずかに三%であるという極めて低い数字を表わしている。」と書いてあるのです。
 だから私は、法務省がもっと裁判を受ける権利なりあるいは法のもとの平等あるいはまた訴訟における社会保障といった考え方をよく踏まえて、法律扶助というものに本腰を入れて抜本的な取り組みをしてもらいたいと思うのです。五十六年度にはひとつ協会や日弁連ともよく協議をして、その要望を生かした要求を大蔵省にしてもらいたい、こう思うのです。よろしいでしょうか。
#70
○中島政府委員 法律扶助の仕事の重要性ということは、私ども十分に認識をしておるつもりでございます。
 個人的なことを申し上げて恐縮でありますけれども、私、以前二十六年間裁判所におりまして、その大部分を民事の裁判官として過ごしてまいりました。そのことから申しましても、扶助事業の充実安定を願う気持ちにおいては人後に落ちないつもりでございますが、それを実際に予算等の上に反映するということにつきましては、ただいま問題になっておりますような事件数をどう見るかあるいは一件当たりの所要経費をどう見るかというようなことが関連をいたしてまいります。私どもも、現在の状況ですべて十分かというと決してそういうふうに思っているわけではございませんので、実情を十分に扶助協会、日弁連からも伺いまして、裁判を受ける権利の実質的な保障につながるこの制度の充実発展のために最善の努力をしてまいりたい、このように考えております。
#71
○木下(元)委員 私はいま当面の問題を聞いたつもりでおるのですが、私が聞いたように五十六年度の予算問題というのがいますぐに起こるわけですよ。
 ここでもひとつがんばってもらいたいと思いますが、さらに、幾らか時間をかけましても、私はこの法律扶助制度やあるいは訴訟救助制度というものを抜本的に見直す必要があるのではないかと思うのです。これは識者からもよく指摘をされておるところですが、こうした訴訟救助なりあるいは法律扶助制度というものが欧米先進諸国と比べて余りにも見劣りがする、余りにも貧弱であります。これはもう私がここでくどくど言うまでもなくよく御存じだと思うのです。一年間の補助金はわずか七千四百万円、昭和三十三年以来二十二年間にわたって補助してきたその補助総額はたった十二億余りですか、これでは戦闘機一機分にも足らぬじゃないですか、二十二年間でですよ。資本主義国では世界第二位の経済大国を誇りながら、しかも憲法では法のもとの平等や裁判を受ける権利を保障していながら、もうアメリカやイギリスの何十分の一あるいはそれ以下かもわかりませんね。これは私、法務省としては恥ずかしいとお思いにならぬかと思うのです。
 もう時間が来ましたので詳しくは言いませんが、この法律扶助事業というものは何よりも国の責務であり、国の資金によって賄われるということ、これが第一です。しかし、国が資金を出すけれども、事業の管理運営というものは協会のような政府から独立をした団体によって民主的に行われるということ、これも大事なことであります。そして、裁判費用であるとかまた一定の基準によって明確にされた弁護士報酬というものは原則として給付金とすること、こういうふうな点を定めた法律扶助基本法とでもいうべき法律をつくるべきだと思うのです。そういう方向でぜひ検討してもらいたいと思います。いま局長が言われましたが、私は、この法律扶助問題について局長は大いにやる気でおられると思っておるのですが、ひとつ所信を最後に伺っておきたいと思います。
#72
○中島政府委員 当面の問題につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、将来のわが国の法律扶助のあり方につきましても、外国の制度なども参考にいたしながら検討を進めてまいりたいと思っております。外国の制度は、国情なり制度なりの違いもございますので直ちにもってお手本にするというわけにいかないかと思いますけれども、十分にそういった点も検討いたしまして、改善、充実、安定に努めてまいりたい、このように考えております。
#73
○木下(元)委員 いま私が法律扶助基本法の制定ということを言いましたが、その中身をざっと言いましたけれども、私は、これは一々検討してもそう反対をされる余地はないように思うのです。そういう法律制定についてもよく考えていただきたいと思うのですが、どうですか。これはいますぐということでなくてけっこうですが、なるべく早い方がよろしいが、ひとつ長期展望に立って検討をいただきたいと思う。
#74
○中島政府委員 将来の問題を検討する上におきまして、ただいま御指摘のような点についても十分に配慮してまいりたいと考えております。
#75
○木下(元)委員 もうこれで終わりますが、大臣、ずっとお話を聞かれておわかりと思いますが、いまの法律扶助問題について、長期展望に立って法律の制定といったことも考えることを検討するという答弁があったわけですが、大臣としてもその点積極的に進めてもらいたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
#76
○倉石国務大臣 大事な問題でございますので、ただいま局長からお答えいたしたとおりでありますので、法務省といたしましてもそのような方向で努力してまいるつもりであります。
#77
○木下(元)委員 終わります。
#78
○木村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#79
○木村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#80
○木村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#81
○木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
#82
○木村委員長 次回は、明十四日水曜日午後一時理事会、午後一時十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時三十分散会
ソース: 国立国会図書館
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