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1979/03/26 第91回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第091回国会 地方行政委員会法務委員会連合審査会 第1号
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1979/03/26 第91回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第091回国会 地方行政委員会法務委員会連合審査会 第1号

#1
第091回国会 地方行政委員会法務委員会連合審査会 第1号
昭和五十五年三月二十六日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
  地方行政委員会
   委員長 塩谷 一夫君
   理事 石川 要三君 理事 大石 千八君
   理事 中村 弘海君 理事 松野 幸泰君
   理事 小川 省吾君 理事 小濱 新次君
   理事 三谷 秀治君 理事 部谷 孝之君
      池田  淳君    亀井 静香君
      岸田 文武君    工藤  巖君
      丹羽 雄哉君    井岡 大治君
      加藤 万吉君    細谷 治嘉君
      小川新一郎君    吉井 光照君
      安藤  巖君    河村  勝君
      田島  衞君
  法務委員会
   理事 金子 岩三君 理事 中村  靖君
   理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君
   理事 楯 兼次郎君 理事 横山 利秋君
   理事 沖本 泰幸君 理事 柴田 睦夫君
      亀井 静香君    熊川 次男君
      白川 勝彦君    飯田 忠雄君
      長谷雄幸久君    岡田 正勝君
      河野 洋平君
 出席政府委員
        警察庁長官   山本 鎮彦君
        警察庁長官官房
        長       山田 英雄君
        警察庁刑事局長 中平 和水君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局調
        査統計官    浅野信二郎君
        法務省刑事局参
        事官      宇津呂英雄君
        外務大臣官房総
        務課企画官   杉山 洋二君
        外務大臣官房領
        事移住部領事第
        一課長     池田 右二君
        外務省条約局法
        規課長     鈴木 勝也君
        地方行政委員会
        調査室長    岡田 純夫君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 犯罪被害者等給付金支給法案(内閣提出第一八
 号)
     ――――◇―――――
#2
○塩谷委員長 これより地方行政委員会及び法務委員会連合審査会を開会いたします。
 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。
 内閣提出に係る犯罪被害者等給付金支給法案を議題といたします。
 本案についての提案理由等は、お手元に配付してあります資料によって御了承願うこととし、直ちに質疑を行います。
    ―――――――――――――
 犯罪被害者等給付金支給法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#3
○塩谷委員長 質疑の申し出があります。順次これを許します。横山利秋君。
#4
○横山委員 たとえば警視庁の前で赤軍派が爆弾を投げたとしましょう。そのときに死んだ人が日本人一人、日本人は該当者でありますから、これは適用されるといたします。それから、韓国人の国籍で日本に住所のある人、これは適用されますね。その次に、韓国人の国籍で日本の住所のない人、これは適用されませんね。アメリカ人で旅行に来ておった人、これは適用されませんね。この解釈に間違いありませんか。
#5
○中平政府委員 最初の爆弾のケースでございますが、そのとおりでございます。いずれもこれは生きている場合、障害者になった場合、これは本人でございますが、亡くなった場合には遺族の問題になるわけでございますから、遺族について日本に住所がない、こういうものが該当しない、こういうことになるわけでございます。
#6
○横山委員 障害の場合には私が申し上げたように適用する、適用しない、いまの例の場合こういう解釈に間違いありませんね。
#7
○中平政府委員 そのとおりでございます。
#8
○横山委員 そこでお伺いしたいのでありますけれども、警視庁の前で爆弾事件が起きて、たまたま日本へ旅行しておったアメリカ人が、アメリカ国籍で、また住所はもちろんない、それで同じように重傷を負った人で日本人には適用される、韓国人も住所があるから適用される、アメリカ人はお気の毒さま、あなたはだめですよ、こういうことが国民感情、国際世論からいって説得力があると思いますか。
#9
○中平政府委員 私どもがこの給付の対象といたしておりますのは、やはりこの日本社会の構成員として生活をなさっている方、そうした人たちに対しまして、そうした人たちがこうむった犯罪による被害、つまり故意の犯罪による死亡とかあるいは重障害に対しまして、本来は原因を与えた者が賠償するべきものをかわって国が公的な給付を行うものでございまして、そうした国民全体の放置しておくべきでないという連帯共助の精神に基づいてこの給付が行われるわけでございますので、したがいまして、やはり平生から日本の社会でともどもに生活をしている、そうした人たちに一応私どもは適用の対象を限った、こういうことでございます。なお、外国の立法例等を見ましても、中には、そうした自分の国以外の人に適用している国もあるわけでございますが、むしろ自国民に限っているところが多いように見受けられます。
#10
○横山委員 理屈を言わずに平たく国民的、庶民的に考えてくださいね。たまたま日本に来ておった、そして赤軍派のために爆弾を投げられて足一本なくしてしまった外国人。それで、同じように障害を受けた日本人はよろしい、韓国人はよろしい。たまたま来ておったアメリカ人、足一本なくなったけれども、あなたは御縁がございませんで、何も一文も差し上げませんということが新聞にぱっと出たといたしますね。あなたがたまたま警察においてアメリカへ行った、爆弾を投げられた、足一本なくした、そしてアメリカ人、その辺におる人はみんな適用された、そういうときにアメリカ政府なりそこの政府が、大変気の毒した、御旅行中であるが、わが国にはこういう法律がある、早速あなたに給付金を支給いたしますというふうになったときの感じ、どうですか。これは私は政治家として平たく考えて、そういうときのその国の温情といいますかその国の法律の適用といいますか、理屈を超えてこれはまずいなという感じがするのですが、山本さん、どうお考えになりますかね。これは考えた方がいいですよ。
#11
○中平政府委員 確かにおっしゃることも(横山委員「こともじゃありません。もっともなことだと私は思います。後で後悔しますよ」と呼ぶ)一つのお立場だというふうに考えますが、私どもはただいま申し上げましたような基本的な考え方でこの法律を提案しております。
#12
○横山委員 あなたの考えはわかっているのです。考え直す検討の余地はないかと言っているのだ。法律案としては私はわかっているのですよ。わかっているんだけれども、その現場の状況を考えた場合、これから幾らでもあることですよ。外国人が日本に百万ぐらいいるんじゃないですか。旅行者を含めたらたくさんの人ですよ。大都市で起こった問題、それらの問題にたまたま外国人がおった。おまえさん気の毒だけれども、この法律は適用できないのだ、日本に住所のある人はみんな適用される、たまたま日本に旅行してきたあなたはお気の毒ですということが一遍ぱっと新聞に載った場合に、それは外国人に対して翕然として同情が集まりますわな。たまたまその現場におった中で何でそういう差別をするのですか。これは日本国として、そこの現場におったら、そんなことはあたりまえにみんな適用さるべきだと思いますよ。一遍あとで検討してもらえますか、どうです。――首をひねっておってはかなわぬわ、問題はたくさんあるんだから。断るつもりなら返事せぬでもいい。後で検討するということなら次に移る。断るつもりならいいということです。検討するのかせぬのか。
#13
○中平政府委員 いま直ちにこの問題を検討する予定はございません。一応先ほどの私どもの考え方に基づいたことでひとつ御理解をいただければありがたいと思います。
#14
○横山委員 ありがたくないよ。私の言いたいことはよくわかるでしょう。感情的、人間的、国民的によくわかるでしょう。恐らくそういう事態があったときに、新聞の三面記事は一斉に、何と非人情な日本国だ、外国人が気の毒だ。たまたま赤軍派がやっただけで、そこでたまたま旅行中の善良なオランダ人、フィリピン人がけがをした。その人だけはこの法律の適用はない。むしろ逆説的にその人たちだけ給付をする。お気の毒でした、日本国のつまらぬ者がおりまして御迷惑をかけました、外国人がせっかく日本に御旅行くださったのにかかわらずこういうことでは申しわけないといって、その人だけ給付するという方が日本としては国際的美談ですよ。それが逆なんだから国際的に日本はダメージを与えるでしょう。
 これは恐らく法律案をおつくりになるときには皆さんお考えなかったと思います。私は一昨々日西ドイツとアメリカから帰ってきたばかりだ。西ドイツでいま日本大使館の諸君は戦々恐々です。そういう国際的なことをもよく考えて申し上げているのですから、あなたばかりに任せないで、いかぬならいかぬでしょうがないが、これは一遍首脳部で検討するということにして、後で御返事をいただけませんか。
#15
○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。
 ただいまの御意見について、われわれとしてはまだ至らない点もあると思いますので、将来の研究課題として……(横山委員「将来ではいかぬな。この法律案を審議しているのだから、この法律案に伴って御返事いただきたい」と呼ぶ)この法律案としては、ただいま局長がお話ししたような趣旨で検討したい。ですからその点については、諸外国の立法例等も十分検討しながら、その問題については改めて検討いたしたいと考えております。
#16
○横山委員 委員長も私の気持ちがよくわかるでしょう。ちょっと答弁もためらっていらっしゃるのです。日本は赤軍派の根拠地ですから本当にあり得ることだ。あり得ることについて、その場の雰囲気、その晩の夕刊で一斉に外国人は気の毒だと言われるに決まっておると私は思う。ですから、委員長にお願いしたいのですが、この法案が上がるまでに一遍政府に検討させるように委員長からもお願いできませんか。
#17
○塩谷委員長 理事会でよく検討いたします。
#18
○横山委員 二番目は、この法律の基本的な物の考え方なんですが、どうもあなたの方としては、この法律は要するに恩恵的な立場で給付金を出すのだ、こういうお気持ちのようですね。裁定があってから権利が生ずる、裁定があるまでは本人たちに対してやると決まっておらぬ、こういう考えですね。
#19
○浅野説明員 お答えいたします。
 この給付金の支給を受ける権利は、具体的には裁定後発生するという考え方をとっております。
#20
○横山委員 国は一体なぜ銭を出すのですか。この給付金は裁定があってから国民に権利が生ずる。よこせ、国は出す義務がある。人殺しがあった、それで加害者にかわって国が被害者に銭を出す。一体なぜ出すのですか。
#21
○中平政府委員 現在、故意の犯罪行為による重大な人身被害につきましては、遺族の方などの精神的な打撃というものが特に大きいにもかかわらず、現行の不法行為制度による救済も満足に受けられない、また、他の原因による被害の場合と異なりまして、法制度上全く考慮されていなかったのでありまして、いかにも不均衡である、こういう考え方でまいったわけであります。このような犯罪被害者の現状を放置しておくべきでないという社会全体の認識となっているように考えられるわけでありまして、この制度は社会の要請にこたえようとするものでございますが、国の施策という点から見ますれば、犯罪によって侵害された法秩序の回復を図ることによって、国の法制度全般に対する国民の不信感を除去しようとするものであります。この場合、故意の犯罪行為という性格上、責任保険などの原因者負担の原則にのっとった措置をとり得ませんことから、犯罪被害を社会全体の負担で緩和するという考え方、すなわち社会の連帯共助という考え方で全額公費負担の給付金の支給を行おう、こういうものでございます。
#22
○横山委員 長々とおっしゃるが、どういう意味かよくわからぬ。要するにこういうことですか。警察がしっかりしていなければいかぬものをぼんやりしておったために殺されてしまった、申しわけない、警察の責任だ、国家の責任だ、だからあなたに銭を上げますということですか。
#23
○中平政府委員 ただいま申し上げましたように、国には一般的には犯罪を防止する責任があるわけでございますが、しかし、では、直ちに犯罪が起こったからすべて国に法的な責任があるかということになると、そういうことではございません。そういう立場をとっている国は世界のどこにも、ほとんどといっていいくらいないわけであります。いま申し上げましたように、犯罪の被害というものを社会全体で放置しておくべきでない、そういう一種の連帯共助の精神に基づいて給付金を支給する、こういう考え方でございます。
#24
○横山委員 もう一つわからぬのです。AがBを故意に殺した、それで国が銭を出してB及び家族のめんどうを見るという理論は、わかりやすくいうとどういうことなのかということを聞いているのです。国に何でそういうことをしなければならぬ義理合いがあるか、その義理合いとはどういうものなのか、刑事事件だけに限られて国が銭を出す理由は一体何なのか、ほかにもあるではないかということなんですよ。あなたの言う刑事事件だけは銭を出すということならば、いまのスモン病もそうですね。それから道路のやり方が悪かったといって国の責任を追及しますね。それから戦争を起こした責任として国が銭を出します。いろいろあるわけです。国の責任というものはこの場合にどういうふうに考えたらいいのかというのが私の質問の焦点です。なぜ銭を出すのか。いま言ったようなほかの類例と引き比べてどういう意味があるのか。
#25
○山田(英)政府委員 ただいま刑事局長からも御答弁申し上げておりますが、お尋ねの点に一番直接お答えするポイントとして申し上げれば、法秩序への不信感、故意の犯罪によって被害を受けている方に社会連帯共助の精神から救済の手を差し伸べなければ、法秩序に対する不信感がみなぎっておる、それを看過できないという犯罪対策上の理由が、国がこういう給付をする場合の最も必要な理由だろうと考えております。
#26
○横山委員 わかりました。法秩序に対する不信感を緩和する。それなら、道路行政に対する不信感はどうなるのか、薬を認可する国の責任に対する不信感はどうなるのか、家屋の建築を認可するその認可行政に対する国民の不信感はどうなるのか。それらの不信感の中で警察行政に対する不信感だけが優先するのはどういうわけですか。
#27
○山田(英)政府委員 ただいまお尋ねの優先するという考え方は私ども持っておりませんが、他の救済制度、たとえば過失犯について申し上げれば、いろいろ加害者に資力をつけるという形での責任保険制度が発達してきているという周辺分野における救済の発達との見合いから、故意の犯罪に限っては、そういう意味の加害者に資力をつけるということは公序良俗に反しますので、そういう手段はとれない。したがいまして、いわゆる行きずりの殺人の被害に遭った方々の感情というものを現段階において考えますと、なぜ自分たちだけが放置されておるか。いろいろ労災の適用のある方もございます、他の分野で救済される方もございますが、故意の犯罪に限って固有の救済の手が差し伸べられていないのはいまの社会の現状において片手落ちではないか、そういう点が世論として盛り上がってきておる。そういう判断においてわれわれは、警察行政の分野で犯罪対策としてこの点の手を早急に打つことが必要である、こういうふうに判断しておるわけでございます。
#28
○横山委員 これは意見になりますから、余り時間をとられてもかなわぬのですけれども、本件は、警察がぼんやりしておった、しっかりしておれば見つかったかもしれぬけれども、直接的な警察の責任はないです。そうでしょう。ところが、薬を認可した国の責任とか、道路をしっかりしていなかった国の道路行政の責任とか、それは直接的ですな。だから責任を追及するなら、ほかの方にもっと国家責任というものが追及されてしかるべきであるのに、直接責任がない警察行政に対して、補償と言うとあなた方違うと言うかもしれぬけれども、しかし補償をするということは一体どういうことなのか、こういうことなんです。
 私の言っているのは逆説的に言っているんですからね、わかっているでしょうね。議事録だけ読んで社会党の横山、そんなものをやらぬでもいいというふうにお考えになったらそれはとんでもない話で、逆説的に言っているんです。つまり、国家責任というものが最近は明らかになりつつある。国がなすべき責任について、昔はお上は悪いことをしなかったという論理に明治憲法は立っておったが、いまは国の責任というものが強く指摘されるようになった。そういう国の責任をこういう委員会、国会で言うと、国の責任ありませんありませんと言うけれども、しかし、だんだん国の責任というものが判決でもいろんなところでもきわめて明らかになるようになった。そこへいまこの刑事被害者に対して、直接的責任がない国が補償をするということの意味は私は画期的だと思うのです。きょうはここに警察と外務省と法務省しかおりませんから、あなた方に言ったってしようがないんだけれども、この法律が日の目を浴びるという意味について、国家責任があるから出すとはなかなかあなた方おっしゃらないけれども、社会的には国家責任をここで明らかにする。治安国家として警察としてもっとしっかりすべきところを、ぼんやりしておったとは言いませんが、手が届かなかった、気の毒だ、だから全部出しましょうという意味というものはきわめて画期的だ。これによって他に影響するいわゆる国家責任論というものは飛躍的に大きなウエートを占めると私は思うのであります。
 長官、何か御意見ありますか。ありませなんだら次に移りますが、いいですか。黙っているということは私と同感になりますよ。
#29
○山本(鎮)政府委員 ただいま先生の御意見、非常に貴重な御意見であり、非常に画期的な御意見であるというふうに承知をいたしております。
#30
○横山委員 私のが画期的――まあいいや。
 外務省にお伺いしますが、先ほどの警察の前で爆弾事件があった例、西ドイツの大使館へ行きまして一晩ゆっくり話をしたのですが、いま在外公館は戦々恐々ですね。それで、西ドイツの大使館、一万坪ぐらいあるでしょう。警察から一人何とかという人が行っておられるのですが、警備はどうするのですかと言ったら、一生懸命やっておりますがお手上げです、襲われたらわやですわということを言っておりました。在外公館の皆さんはまさに戦々恐々だと思うのですが、たとえばある国の日本大使館なり領事館がイランのように襲われたといたします。そして死んだり家族が重傷を負ったといたします。そういう場合にはどういう補償制度がいま成っていますか。
#31
○杉山説明員 在外公館に勤務する職員に現在、国際情勢その他から職務に危険が伴うということは御承知かと思います。
 それで最近、コロンビアの事件とかイランのアメリカ大使館の占拠とかのような事件がありますものですから、私ども以前から、館員が外交領事事務に従事しておって災害に遭った場合にどういうような補償ができるかということをいろいろ検討してまいりました。そうしまして、御承知かと思いますが、一般公務員に対してはいわゆる災害補償法というのがありまして、これに基づいて公務災害で死亡したりあるいは不具廃疾になった場合には補償がなされます。しかし在外公館に勤務する場合、特に危険が伴って、場合によっては高度な危険が伴う場合にはそれじゃ補償が不十分ではないかという議論が以前からございまして、そういうことも踏まえまして五十二年に人事院といろいろ協議しまして、公務災害補償法の改正ということが人事院規則でございまして、特別公務災害という制度を設けました。特に高度な危険が予想される中で在外職員、また外務省の人が出張した場合も含まれますが、外交領事事務を遂行しておる中で不幸にして殺害されたとかあるいは危害を加えられた場合には、一般公務災害の場合に比べて五〇%増しの制度が設けてございます。
 もう一つは、それでもなお不十分だという議論が最近ございまして、私ども財政当局それから人事院当局とも協議しまして、たとえば警察官に、ここに警察の方おられますけれども、特に危険の中で仕事をする場合が多いわけでございます。それで、浅間山荘事件のときにいろいろ問題になったのでございますが、特に明らかに危険が予想されて、その中へ飛び込んで犯人を逮捕しなければいかぬとか、テロリストと戦わなければいかぬという場合に、いわゆる表彰制度の一環として賞じゅつ制度というのがすでに国内に設けられておりますけれども、これに見合った制度を何とか在外職員、特に危険地、エルサルバドルとかニカラグアとかあるいはいっとき前のテヘランでございますが、そういったところで勤務する職員に対して何とかそういう制度が設けられないものかということで財政当局といろいろ折衝しまして、昨年の四月にやっとそういう制度をつくりました。
 これはそういった高度の危険が予想される中で勤務をしていてなおかつ功労があったという場合に、よくやったということでほう賞金を差し上げるということになっています。これについてはいろいろな議論がございまして、そういった危険の中で仕事をするということについてどういう要件が必要なのかということについていろいろ議論がございましたけれども、私どもは危険な状況下で外交領事事務を遂行しなければいかぬという場合に、やはりそれだけの手当てをしなければ、在外職員のモラール、士気の高揚にも障害が起こるということで、そういう制度を設けてございます。
 それから最後に、家族については、特に在外職員の夫人につきましては、夫とともに外交領事活動の支援をするということで、全くの私人とは違うわけでございますから、これに対して何とか手当てをしなければいかぬということはわれわれも重々痛感しております。ところが現状では、夫人もやはり公務員ではないということでステータスの問題がございまして、法律上なかなかむずかしい面がございまして、何らかの補償が与えられるというような状況にまだなってございません。しかし今後、こういった家族についても何らかの手当てがなされるように検討していく所存でございます。
#32
○横山委員 公館の従業員は。
#33
○杉山説明員 公館の従業員と申しますと、現地の職員でございますか。――現地の職員につきましても、われわれとしましては日本側の法制上、いまのところ現状の制度では手当てをすることができません。そこで、たとえば保険に入れとかというようなことを盛んに勧めております。しかしながらこれについても、大使館なり領事館に勤務している者としてやはりそれなりの手当てをしていかなければいかぬということで、検討の対象にはしております。
#34
○横山委員 この法律案の責任者は警察庁ということになると思うんだけれども、在外公館勤務者は日本国内と見たらどうですかね。在外公館の大使なり公使をパクるよりも、奥さんをパクったり子供をパクってトンズラした方が影響力が強いような場合もある。大使館に乱入をされるということで、大使だけやるということはないでしょう。もうみんな十把一からげですよ。いまの話だと大使だけは保障してある、奥さんはいかぬぜ、子供はいかぬぜ、従業員はいかぬぜ、そういうのはおかしくはないですかね。せっかくいま画期的なことをやるとするならば、在外公館も日本領土内という解釈をとって適用したらどうですか。
#35
○中平政府委員 またおしかりを受けるかもしれませんが、確かにそういうお立場もあろうかと思います。しかし、いまのお話をお聞きしておりますと、在外公館はいま日本の国内よりもっと危険の度合いが高い状況でございますので、むしろ別途の立法政策の問題で措置なされるのがやはりよろしいではなかろうか。この法律というのは先生十分御案内だと思いますが、そうした日本国内で共同生活を営んでいる人たちの連帯共助の精神で一応給付金を差し上げよう、その額も、これはまたいろいろ御批判いただいているようでございますが、そうべらぼうに高い額は事柄の性格上出せないわけでございますから、むしろそうしたより危険の高いところは別の角度からの立法がなし得るのではなかろうか、こういうふうに考えております。
#36
○横山委員 この法律はある意味では、最低保障ですよね。別に法律のあるものは全部それにもたれちゃう、別の法律のないものはこれで差し上げます、こういうことでしょう。それならあなたの言うことは、別の法律なら別の法律をつくればいいじゃないか、それができるまではこれが最低保障です。いま一番危険度の高いのは在外公館ですよ。私は西ドイツで、西ドイツはそう治安が乱れているところではないけれども、それでもやはり西ドイツ政府のハイジャックに対する方針と日本政府のハイジャックに対する方針と比較をして、ずいぶん議論をしたのですよ。断固としてやると言うていますな。そうなると、断固としてやられる場合があるわけだ。そうだとすれば、二条をちょっと変えて、「(在外公館勤務員も適用する)」と書けばそれでしまいじゃないの、そうでしょう。なかなかいい提案でしょう、長官、どう思いますかな。いまやってやるべきですよ、一番大事なときじゃないですか。
#37
○山田(英)政府委員 先ほど外務省からお答えになられましたような救済の分野で検討していただくべきではなかろうかと思っております。この法律によって御指摘のように解決いたしますことは、やはりわが国の国法の適用の一般論を別途検討いたしませんと、被害の救済という観点からだけわが国の在外公館の区域を日本国内法令の適用区域と全く同じように評価していいかどうか、これは別途詰めなければならない問題があると思いますので、御質問の趣旨に満たない答弁で大変申しわけございませんが、別の角度からの検討によって救済すべき課題であろうと思います。そのようにお答えするしかわれわれの立場としてはできないので、大変残念でございますが、よろしくお願いいたします。
#38
○横山委員 警察庁がいろんなことを出しゃばってはいかぬとお思いかもしらぬけれども、これは本来は法務省がやるべきことだったんだな。私ども法務委員会でわいわい言ったら、いつの間にやらお株をとられて警察庁へ行っちゃった。警察庁はとんだことでわしの方が責任を負わんならぬというお気持ちがあるから、横へ羽を広げていろんなことを言ってもしかられると思っておられるかもしらぬけれども、きょうは本当は大臣が出てこられれば大臣に迫るところで、答弁される方がそういう責任を持たれる、全体をながめられる人がいないものだから、大変残念なんだが、この中で一番えらいのは長官だから、長官、ひとつどうですか、それは、考えられるべきことではないですか。あなた、どう思いますか。
#39
○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。
 やはり日本の法体系からいって、この法律に組み込むのはちょっとむずかしいかと思います。先ほど外務省の方からお話がありましたような別個の形で、そちらの方の立場から、特に在外公館の公館員、それからそういうところに執務しているような職員の救済、補償という立場から考えた方がすっきりする、これは一つの私の意見でございますが、先生の御意見は十分私もわかるのですが、私どもの意見はそういうことでございます。
#40
○横山委員 外務省は何をやっているんだね。この法律について相談を受けたのかね。受けたとしたら、何で自分のところの在外公館のいまの危険状況について一声出てこぬの。一声出てきたら、もしこの法律に組み込めなければ、同じように在外公館の職員及び家族並びにその従業員に関する法律というものが何で出てこぬ。何をサボっている。
#41
○池田説明員 お答えいたします。
 本件の法律につきまして相談を警察庁の方から受けたかどうかを、ただいまここに参っておる者の知識では承知しておりませんが、先ほど機能強化対策室長から御説明申し上げているとおり、われわれの同僚の安全の問題というのは最近、先生外国でごらんになったような情勢を反映して非常に切実な問題だと認識しております。それで、先ほど機能強化対策室長がお答え申し上げたラインに沿いまして外務省としては、事後の補償というものについて最善の努力をいたしております。
 なお私、領事一課長をやっておりますが、私どもの方では在外公館の警備、予防という点につきまして、先生海外でもごらんになっていらっしゃっているとおり、徐々にではありますが、施設の点で防弾ガラスとか強化とびらとか、あるいは人の面では警備官というものも一年余り前に発足させまして、海外重要公館に配属させるというようなことで、この問題はわれわれの問題として鋭意真剣に取り組んでおるところでございます。
#42
○横山委員 何かあなたの話は、俗にこじきのおかゆと言いまして、言うばかりで、いまの私の質問に対して何ら答弁になっていませんよ。いま国内における犯罪被害者給付が出されるときに、一番切実な危険にさらされておる在外公館に対する補償、家族、従業員に対する補償措置が、同時にここで提起されてしかるべきだということを言っておるのだけれども、そのことについて外務省はいま具体的な提案は何らないのですか。――所管外なら所管の者を呼んできなさいよ。
#43
○鈴木説明員 お答え申し上げます。
 先生の御質問に対して直接お答えすることにならないと思いますが、その前段といたしまして、なぜ在外公館の職員あるいは現地の従業員、家族等につきまして、この法律によってカバーするということになかなかならないかという点につきまして、一点ちょっと御説明させていただきますと、この法律の基本的な体系は、先ほど警察庁の方からも御説明になっておりますように、当然に日本の法令が適用されておかしくない地域というものが恐らくカバーされているということだろうと思います。そういう意味で、日本国の領域それから日本籍の船舶、航空機、そこまではほかのいろいろな法律でもわりと自然に出てくる発想だろうと思います。それに対しまして、それでは在外公館の敷地内あるいはやかたの中というものも同様に考えられるようなものであるかどうかということになりますと、これは国際法の問題になると思いますけれども、在外公館の敷地というものはその接受国の領域でございまして、決して派遣国の、ですから西ドイツの場合でございますと、派遣しております日本国の領域と考えられるようなところではないわけでございまして、その点はもう先生よく御承知のとおりと思いますけれども、そういう点で、対処の仕方につきましてもやや異質な面があるんじゃないかという気がいたします。
#44
○横山委員 それは答弁にならぬのです。私の質問していることについて答弁にならぬのです。委員長、これもまただめですよ、時間をとりますので。
 要するに私の主張は、いま一番危険にさらされておる在外公館の人たちについて、この法律をつくるというのならば、外務省も政府も何らかの具体的な提案をすべきであるということについて、だれも答弁ができないのであります。ですから、これも一遍理事会で御相談あって、責任者を呼んでお確かめを願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
#45
○塩谷委員長 横山委員おっしゃるとおり、検討いたします。
#46
○横山委員 この法律には幾らもらえるかちょっとも書いてないのでありますね。これはすべて政令にゆだねられることになるわけですが、政令はこの委員会の審議の中で一体お出しになるのですか、ならぬのですか。
#47
○浅野説明員 政令案として考えている内容については御説明いたしたいと思います。
#48
○横山委員 金額ばかりではありませんが、時間の関係でこの法律を全部言えるかどうかわかりませんが、裁定権が公安委員会に非常にゆだねられ過ぎている、そういう感じが私は免れがたいのであります。したがって審議をするに当たって、政令案を本委員会に提出をしなければ私はいけないと思うのでありますが、政令案を本委員会にお出しになりますか、なりませんか。
#49
○浅野説明員 政令案そのものはまだできているわけでございませんので、案の中身について御説明させていただきたいと思います。
#50
○横山委員 文書をもって提出をしてください。案であろうと要綱であろうと何であろうと結構ですから、少なくともこういうものは政令の内容になるというものを提出してください。
#51
○浅野説明員 相談させていただきます。
#52
○横山委員 何と言ったのですか。
#53
○中平政府委員 ただいま申し上げましたように、まだ成案ができておりませんので、骨子を一応出させていただきたいと思っております。
#54
○横山委員 本来ならば、その骨子ができてからでないと十分な審議ができませんけれども、少し中身に入るといたします。
 「当該犯罪被害の発生を知った日から二年を経過したとき、又は当該犯罪被害が発生した日から七年を経過したときは、することができない。」申請をすることができない。これは一体どういう意味ですか。要するにこういうことですか。おまえはそれを知っておりながら申請をしなかったからけしからぬ、だから二年過ぎたからおまえには申請権はない、こちらの方の人は、その発生を知らなかったから七年までは申請を認める。何でそんな区別をつけるのですか。
#55
○浅野説明員 お答えいたします。
 こういう申請についてはやはり一定の年限を限っているのが通例でございますが、この制度の対象となる事案は殺人事件が多うございまして、犯罪被害が起こりましても遺族の方がそれを直ちに知るということができない場合もあるわけでございます。そういうことで、その犯罪被害の発生を知った日から二年ということで一つの申請の時効を決めたわけでございます。ただ、被害の発生を知った日から二年ということで、犯罪被害が現実に発生してからいつまでたっても裁定の申請の対象になるということでは、法律関係の安定、それから適正な裁定自体も非常に古い事案になっては行いにくい場合も生ずるということから、七年という期間で発生してからの一区切りをつけるということでございます。(横山委員「何で区別をせんならぬかわからぬ」と呼ぶ)やはりこういう制度でございますから、できるだけ早く申請をしていただきたい。しかし、犯罪被害の発生を知らなければ申請ができないということで、知った日から二年という期間を設けているということでございます。
#56
○横山委員 あなた、自分で答弁しておっても、自分の言っておることわかっているんですかね。私の質問は、何で七年ではいかぬのか、全部七年に統一したら何でいかぬのか。恐らくあなたは、おまえは犯罪の発生を知っておったろう、いや実は知りませんでした、うそを言え、知っておった、おまえは請求権がない、こういうことを言いたいのか。どうしても言いたい理由は何だね。
#57
○中平政府委員 立法の趣旨はそういうことではございませんので、たとえば殺人事件等がありますと、なかなかこれは犯罪があったかどうかわからない、行方不明なんかになりましたらわからないわけでございますね。それである程度時間が二年なり三年なりたって、殺人事件があった、しかも故意の犯罪だったということがわかったら、やはりその時点から二年間くらいの間にひとつ申請者の側、被害者の側に立つ方ですから連絡をしていただいて、早く捜査を遂げて把握――そういう意味での申請の期間、要するに、犯罪の発生を知ってからやはり二年間の間にひとつ申請をしてください。それから七年というのは、これは一般的にこうした権利関係というものをある程度ある時期で区切って確定する必要があるわけでございます。したがいまして、失踪宣告なんか七年になってございますが、七年たてばあとは事実関係の確定もなかなかむずかしくなるわけでございますから、通常こういう法律制度をとるときに一応のくくる区切りでございますから、二年と七年ぐらいがよろしいのではないだろうか、こういう考え方で一応決めたわけでございます。
#58
○横山委員 要するに、何か犯罪が発生してから六年半たった、そのときに知ったという人のために二年を持っておる――そうすると、六年半たってから二年だから八年半ではいかぬぞ、それはもう七年でさようならだ、こういう意味かね。
#59
○中平政府委員 形としてはおっしゃった形になるわけでございますが、この趣旨は、犯罪の発生を本当に知るわけでございますから、知った日から二年もたてば、これは通常一応申請が願えるだろう、こういうむしろ制限する気持ちではなくて、犯罪の発生がなかなかわからぬ場合があるわけでございますから、最初から――たとえば証人の被害の給付なんかはその時効が、起こったときから二年ということになっておるわけでございます。つまり、犯罪の場合はわからぬわけでございます。犯罪が起こったかどうかわからぬから、むしろ四年も五年もかかるかもしれぬ、実際からいいますと。だから、犯罪の発生を知ったときから二年にした方が申請者の側にむしろ便宜になるのではないか、こういうむしろ制限するよりも申請者側に立った考え方で決めたわけでございます。それから七年にしましたのは、これはやはり先ほど申し上げましたように、こういう非常に古くなっていけばいくだけ事件の裁定というのはむずかしくなるわけでございます。だから一応権利関係は七年だ、こういうことでございます。
#60
○横山委員 これは意見でなくて法解釈を聞いているのですよ。私の質問は、犯罪があってから六年半たった後で知った、知った人は二年間は申請権がある、けれども一方では、七年たったらだめだから、おまえさんは権利がない、こういうことかということが第一。
 第二番目の質問は、おまえはうそついた、犯罪があったときに知っておったはずだ、それを知らなかったと言うのはけしからぬ、おまえには請求権がないと、こういう論理がこれにあるのか。
#61
○中平政府委員 前段はおっしゃったとおりでございます。後段はそういう気持ちはいささかもございません。
#62
○横山委員 後でこれは何か事案のときに非常に問題になりそうな気がいたします。
 それからその次に、前置主義がありましたね、二十一条。公安委員会が、おまえは請求権がないと却下した、それで、国家公安委員会に恐れながらと訴えると、こういうことですね。国家公安委員会へ恐れながらと訴えた後でなければ裁判をしてはいかぬと、こういう解釈ですか。
#63
○中平政府委員 先ほど先生のお話の中にもございました都道府県公安委員会の裁定には、いろいろ帰責事由、つまり、責に帰すべき事由があったかどうかという認定なんかの裁量的な要素がかなり多いわけでございます。したがいましてその判断は、やはり全国的に適正かつ斉一に行わなければなりませんし、それから行政の中で、そうした各県ばらばらでなくて全国的に斉一を図る上で……(横山委員「時間がない、簡単に言ってください」と呼ぶ)そういうふうにしておくことが合理的であると考えられますし、それから、こういう裁定の性格上、直ちに処分の取り消しの訴えを認めましても、必ずしも争訟の迅速な解決を図れるものではございませんし、むしろ統一的かつ適正な運営に責任を持っている上級行政庁であります国家公安委員会の判断にかからしめる方が争訟の迅速な解決の要請にこたえるものである、こういうふうに考えまして、前置主義をとっておるわけでございます。
#64
○横山委員 北海道の一番果ての地域でこの事案が起こったといたします。北海道の公安委員会がおまえの要求はだめだと却下する。却下されておもしろうないので、東京まで来て国家公安委員会へ恐れながらと訴える。いや、東京まで来ぬでもいいですよ、北海道の道の警察へお持ちくださればお取り次ぎいたしますと、こういうことだと思うのですね。恐らくそうでしょう。そんなこと言ったって、同じ穴のムジナじゃないか、そんなもの。北海道の公安委員会がだめだと言った。恐れながらと、おまえさんはだめだと言ったからおれは上級へ持っていく。おれのところへ持ってこなければだめだ。いや、わしは上級庁がと。そんなら勝手に東京に行ってくれ。東京で直接やるには汽車賃が要る、そんなことよりも北海道の裁判所へ持っていった方がわしはいいわい。それはあたりまえじゃありませんか。
 あなたの方が国家公安委員会の方がようわかっておると言ったって、私に言わせれば同じ穴のムジナだ。自分がいかぬと言ったやつを、上級官庁が下級官庁――下級とは言いませんな、これはいかぬな。県の公安委員会がいかぬと言ったやつをやったるというのは、よほどのことでないといかぬ、証拠歴然と。審査機関というのは全く第三者が望ましいのですよ。しかし言うならば、国家公安委員会へ持っていこうが地方裁判所へ持っていこうが、そんなもの本人の選択で自由じゃないですか。何で国家公安委員会へ持ってこなければ裁判所へ持っていってはいかぬと、前置主義をどうしてもやらなければならない積極的な理由がどこにあるか。ちょっといばり過ぎているよ、この法案は。
#65
○中平政府委員 国家公安委員会と都道府県公安委員会が同一の穴のムジナだというのは、ちょっと私どもいただけない言葉でございます。先ほど申し上げましたように、やはり全国的に斉一な、しかも迅速な判断を下すためには……(横山委員「迅速でない、北海道と東京は。地方裁判所の方が話が早い」と呼ぶ)そういう御意見もあろうかと思います。私どもの判断は、事実上はむしろ都道府県公安委員会で一応裁定いたしまして、それについていろいろ問題があるケースにつきましては速やかに国家公安委員会に持ってきていただく、国家公安委員会で全国的ににらみながら一つの統一的な見解を下していく、そういう方が私どもは住民、申請者の利便にもかなうし、適正な裁定にもなる、そういうふうに考えております。
#66
○横山委員 この法案は、まず警察が調べる。警察が調べて、本人は公安委員会に請求する。公安委員会が警察のやったことについて矛盾を感ずる場合がある。だれが殺したか、故意であったか故意でなかったか、公安委員会の調査の中で、警察のやったことについて間違いがある、矛盾があるという場合が容易に私は想像される。なぜならば、公安委員会はなるべく本人のために考えるであろうから、まず第一に。それはないとは限りませんよ、あなたは顔をしかめているけれども、あるですよ。そうしてその裁決についても不満がある。そこで今度は国家公安委員会へ持ってこい、こういうわけですね。警察で一遍やって、県の公安委員会でやって、国家公安委員会でやって、そこで裁判所へ持っていく。裁判所は地方裁判所でしょうね、そうですね。地裁、高裁、最高裁、もういいかげんにくたびれてしまう、金も要る。だから、北海道や沖繩で国家公安委員会へ持っていったその書面審査がどうなっているかわけがわからぬ、おれも言いたいことも言いたいという場合には、国家公安委員会へ持っていくか地方裁判所へ持っていくか、そんなことは国民として本人の選択に任したらどうですか。もし地方裁判所へ持っていかれて、そして公安委員会としての言い分があるというなら公安委員会で言えばいい、国家公安委員会が情報を欲しいなら幾らでもとる方法はある。この前置主義は請求者に対してきわめて不便な措置である、私はそう思いますが、これも常識的な長官の御意見を聞きたいと思います。
#67
○中平政府委員 この裁定は私どもは被害者、要するに申請者の立場に立って解釈をする、運用する、そういうことが基本でございます。
 もう一つ、ただいまの先生の御指摘の中で私ども大変残念に思っておりますのは、公安委員会制度というものについて御信頼をいただいてないような感じがございます。そこで基本的な見解の相違がやや生じておるわけでございますが、先ほどからるる申し上げておりますように、私どもは被害者の立場に立って、迅速に裁定を遂げ、そうして、その裁定の結果を上級行政庁たる国家公安委員会でさらに問題がある場合には審査にかけて、その上で争訟に持ち込む方が被害者の利益につながる、こういうふうに考えておるわけでございます。
#68
○横山委員 大変残念でございますけれども、時間が参りましたので、また別の機会に申し上げたいと思いますが、私の質問に対しまして十分な御答弁がいただけませんでしたし、かつまた、御検討願うことがずいぶんあるような気がいたします。いずれまた政令要綱ですか、出ましたら別途の機会を設けたいと思います。
#69
○塩谷委員長 沖本泰幸君。
#70
○沖本委員 時間が限られておりますので、十分意を尽くせないかもわかりませんが、私は法務委員会に犯罪被害補償法を提案している提案者でございます。先ほど横山先生のいろいろな御質問、お話の中にも出ておりましたが、法務委員会でこの問題をずっと議論してきた、そういう立場からこの法案に対する御質問をするわけでございます。
 まず最初に、警察庁からちょうだいしている「犯罪被害者に対する給付制度の創設について」の御説明の中にも、
  通り魔殺人、爆弾事件などの暴力犯罪によって死亡し又は重大な障害を受けた場合、被害者やその遺族は、大きな精神的・経済的打撃を被るが、加害者が無資力であるなどのため、民法上の不法行為による損害賠償の制度では、救済されない場合が通例である。
  特に、近年、自動車事故など他の原因により人身被害を受けた場合の救済方策が充実してきていること及び刑事政策思想の変化に伴って犯罪者の処遇の改善が行われてきていることから、暴力犯罪の被害者又はその遺族の立場は、不利なものとなってきており、社会全体としても、このような状態をそのまま放置しておくことはできなくなってきている。
  このようなことから、諸外国においても、イギリスをはじめ、アメリカ合衆国、カナダ、ドイツ連邦共和国、フランスなど主要国の多くで、暴力犯罪の被害について国が一定の給付を行う制度が実施されている。
  我が国においても、昭和四十九年の三菱重工ビル爆破事件以来この種の制度の必要性が国会、マスコミ等で大きく論議されてきた。
  このような情勢を踏まえ、気の毒な立場にある暴力犯罪の被害者又はその遺族の精神的・経済的安定を図るため、国が一定の給付を行う制度を昭和五十五年度から創設しようとするものである。
ということですが、この法律をおつくりになる場合に、諸外国の例を一応御参考になさったでしょうかどうなんでしょうか、その御参考になさった例の中からどういう点を主としておとりになってこの法律をおつくりになったか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。――それでは、いまの分はいまの分で、お調べになっていただきながら話を次に進めていきますが、諸外国の例でいきますと、補償の仕方の形の上で、イギリスの方は損害賠償型であり、ニュージーランドは労働災害補償のような型を使っておる、それからもう一つは国の方から上げるという恩恵型、こういう三つの種類に分類されるわけですけれども、この法案からいくと国家の方の恩恵型というふうに国民は理解していいわけなんでしょうか。そしてその場合、損害賠償型を採用しなかった理由、あるいは、労災補償のような形に持っていくにはどういう点に難点があったのかという点ですね。
 というのは、現在の自賠責の問題にしましても、上限は二千万に決まっておりますが、実際に二千万もらった人はいないわけですね、ほとんど最高で千七百万ぐらい。これも一時金であるというふうに御説明があるとおり、一回きりなんです。交通事故の災害の場合でも一回きりで千七百万ぐらいが最高度だということは、実際に被害で補償を受けた人のグループの中でそういうお話があるわけで、二千万全部もらっている人はいないわけです。相当苦労して交渉を重ねてその程度になってきている。法律の面では二千万になっているわけです。一回きりですから、現在の経済事情の中で果たして二千万円という金額が、一家の柱を事故によってあるいは殺害によって亡くして生活が困窮に追い込まれておる人たちを救うに足るだけの額であるかどうかということになると、その他の社会保障制度をうんと充実させない限りは、その人たちの生活保障ということにはならない。そのために一時資金であるとか、母子家庭を保護するとか、いろいろなものがだんだん積み重ねられてきておるということですね。
 そういうふうな現在の気の毒な人たちの立場をしんしゃくしながら、いまいろいろな社会保障が進められておるわけです。そういう全体の事態というものを考えていきながら、現在誕生しようとしているこの法律を当てはめて考えてみるときに、いまおとりになっている制度そのものが果たしてそれに合致するものかどうかというふうに考えなければならないと思うのです。だから、いわゆる補償の形というのは、諸外国を例にしたのかあるいは独自の考えでお進めになったのか、その辺どうなんでしょう。
#71
○山田(英)政府委員 お尋ねの点で、諸外国の制度につきましてはわれわれも十分に検討、研究いたしましたし、そういうことを御研究の学者の方の御意見も十分に研究したわけでございます。
 ただ、そこで感じましたことは、やはりその国それぞれに固有な事情で被害救済の動機があるわけでございます。したがって、先生の御質問にありましたように、人道的な理由の恩恵とか、あるいは社会の共同連帯とか、国が一定の責務を持つとか、いろいろな考え方があったわけでございます。ただ、制度の細かい中身の給付対象であるとかあるいは権利の除斥期間であるとか、細かい点についてはわれわれの案にも採用し得る点があったわけでございますが、制度の趣旨については、いま申し上げたような事情でございますので、わが国の学者の中でも説を異にしております。しかし最近においては、救済を求める世論の高まりが非常に高いために、制度の理由というものを議論しておったのでは始まらない、むしろ救済の手を差し伸べるべきではないか。学者の中でも、不法行為制度の実質化を目指すという方もおりますし、あるいは社会福祉政策として拡充せよ、犯罪対策として手を打てといろいろございますが、そうしたもろもろの趣旨というものを総合して救済の手を伸べるべきではないかということを唱える学者の方もございます。われわれとしてはどちらかと申しますれば、そうした総合的な考え方で制度の実現を急ぐべきであるという学者の意見に裨益されまして形づくっておるわけでございます。
 ただその場合に、やはり法秩序への不信感というものが根底にあるわけで、これを除去することが一番大きいと思っておりますので、恩恵的な給付、単なる見舞い金ということではいけない、一定の権利を形成的に裁定して、請求権という形で救済の制度をつくることが必要であろう、こう考えて案をつくった次第でございます。
#72
○沖本委員 国民的な立場からいきますと、第一線でこういう暴力事犯なり何なりに対応される警察の方が、より具体的な家族の事情なり家庭の事情なりいろいろなものに直接接触されるから、理論的なものよりもむしろその現状なり実情に応じたような内容のものができ上がるのではないかという期待感があるわけですね。だけれども、このことは、あらかじめ期待されておって、一番問題になってくるのは、さかのぼるかさかのぼらぬかという問題になるわけですけれども、さかのぼっている問題が一切ないというところに問題が出てくるわけですけれども……。
 そこで、時間もありませんから話を進めますけれども、おととい判決があったわけです。全くこの法案の審議をする前ぶれみたいな内容ですが、これは事件としては、大阪市の城東区で病的な酩酊の状態にある犯人が猟銃三十発を乱射して通行人三人を射殺し、数名に重傷を負わした事件で、中等少年院を出た病的酩酊の常習者がこの事件を起こしたということで遺族の方から、国の方の責任を問うための損害賠償の訴えがあって、これに対する判決が二十四日にあったということなんですけれども、この判決の理由の中に、憲法の十七条の国家賠償法は公務員の不法行為を要件としているが、国や公共団体が機関として国民に損害を与えたときも適用されるべきだ、特にこの猟銃の所持を安易に許可した大阪府公安委員会のずさんな許可手続や、猟銃の保管について警察の監視がきわめて怠慢であり、これは公共機関の不法行為とみなし、国と大阪府は損害賠償の責任があるという内容の訴えを起こしているということなんですけれども、ここで判決としては、「犯罪発生を完全に抑止することは事実上、不可能。国などが国民に対し、すべての犯罪から生命、身体などの基本的人権を擁護すべき義務はない」、こういう裁判長の決定があったわけですね。ですから、この問題に対して決定的な判決みたいに感じられるわけですけれども、これからのやはりいろいろ問題が起きてくる基本になるのはこの問題なんですね。
 それで、憲法上の問題からいわゆる護身用の銃砲刀剣等を持たさないわけですから、それにかわって国が国民の生命、財産を保護するというたてまえにある、そういうたてまえからいくと、住民がそのことによって事故に遭った、命をなくしたということになれば、当然その責任が国にあるじゃないか、これがいままで一般に言われているわけなんです。いまのこの判決に対して警察庁としてはどういうお考えをお持ちになっておりますか。
#73
○中平政府委員 一昨日大阪でそういう判決がありましたことは、私どもは新聞で一応承知をしておる次第でございます。私どもも国にそういう意味での落ち度はなかったと思っておりますが、被害者の方にとりましては大変お気の毒だ、そういう気持ちでございます。
 なお、判決の基本的な立場、いわば国にやはり犯罪の――私どもは国が犯罪を防止する上でのやはり責任は持っていると思います。しかし、この判決にいっておりますように、一人一人の個々具体的な犯罪の抑止、犯罪が発生したときの要するに法的な責任、そこまではやはり私どもは負っていない。しかし一般的にただいま申しましたように、犯罪を防止するという責務は警察としては持っておる。そういう責務を今後とも誠実に果たしていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
#74
○沖本委員 今度のこれは、国民の治安当局に対する信頼を十分に持たせるか持たせないかという点に重大な関係があるわけですね。国に最終的にはもう責任はないんだという判決なんですね。そうすると、では、武器を携行させない――だんだん世の中がおかしくなってきて、犯罪の度合いがひどくなってきておる。暴力団がどれぐらい銃器を持っているか、刀剣類を持って凶器を不法に所持しているかというような点、あるいは、暴走族なんかの鉄パイプとかいろいろな問題で、下手するとすぐとばっちりを食うようないまの社会情勢です。非常に不安なんですね。あるいは、覚せい剤であるとかシンナーを常用する青年の年齢もだんだん下に下におりてきているということになりますし、あるいは三つの子を七つの子が殺してしまうようなこと、あるいはテレビのチャンネルの奪い合いで自分の身内を殺す。それで社会情勢そのものは、善良な国民自体が自分の生活なり何なりについて安全な内容というものは非常に薄くなっている。それなりに治安当局に身辺の安全を図っていただく、信頼が非常に高まってきているわけですね。
 だから、そういうことに関して最終的には責任持てないのだ、何か起こって、あなた方が命をなくすような問題が起こってきても責任持ちませんよということになってくると、それじゃ信頼が持てないのなら、不法でもいい、おれたちも持とうかという事態になりますからね。ここで、いや重大な責任があって、最終的にも十分責任を持たなければなりませんということになれば、今度は逆のことが考えられるわけです。そういう点について、これからこの法案の扱い方というものに重要な意味合いが出てくるわけですから、この点を十分お考えになっていただきたい。こういう点で御発言いただきたいのですけれども……。
#75
○山田(英)政府委員 判決の趣旨はつまるところ、国が犯罪防止の一般的義務はあるわけでございます、われわれ治安機関もそのために責務を果たしておるわけですが、犯罪が起きたときに、その犯罪を抑止できなかったことについて国に責任があるということにはならないということだと思います。それは自由国家におきましては、特にそういう結論が出ることはやむを得ないことだと思います。国が絶対に犯罪を防止する義務が個々具体的事件についてあるとなれば、これは完全な権力による統制された国家でなければ、われわれ警察としてもその責任を果たし得ないわけでございます。自由主義社会であれば、国が一つ一つの犯罪の発生について責任を持つということにはならないのではないか。
 ただそこで、一般論はそうでございますが、そういった考え方があればこそ、それぞれの犯罪被害についてどういう救済をすべきか。これは学者の方の御意見にもありますが、みんなが犯罪の発生はやむを得ないということであるならば、社会全体が連帯して、個々人が分散してその被害補てんに当たるべきではないかという考え方をとられておるわけでして、われわれも、国が一々責任を持って補償するという筋合いのものでないからこそ、社会連帯共助の精神でこの給付金を支給して、被害者の精神的、経済的安定に資そうという制度を考えるに至ったわけでございます。
#76
○沖本委員 これは先ほど横山先生が議論なさったところへひっかかってくるわけですけれども、公安委員会で事件を扱って、申請を受け付けて審査をしていくということになるわけです。そうなった場合に、果たして事件解決に当たられた当事者であるところの公務員なり警察官なりいろいろな機構そのものが、この事件の予防的な役割りを十分果たしたのか、そこに責任があるのかないのかということは、第三者で議論しなければならない問題が多分に出てくると思うのです。そこの当事者そのものが今度は、あなた方は被害に遭って十分補償されるべき立場にありますという裁定をしていくということになれば、その辺に大きな疑問が出てくることになるわけです。国民全体がそこへ疑問を持ってくることになるわけですね。国家の方に責任がないのだというようなことは、問題になってくるわけです。その辺どうなんですか。
#77
○山田(英)政府委員 公安委員会が裁定することについての御指摘でございますが、これはこの給付請求権をいかなる機関が裁定するかということの検討過程でも十分議論し、検討いたしました。もちろん、第三者機関というもので構成するという案も理想的には考えられるわけでございますが、ただ、公安委員会と申しましても、警察の機関の一部ではございますが、御承知のように、警察の運営の政治的中立性、民主的運営を担保するための機関として政治的に公正に構成されました合議体であるわけでございます。そこで私どもとしては、新しい第三者機関をつくることが行政簡素化の趣旨からできなかったということだけを理由にして公安委員会を選定したわけではございません。むしろ公安委員会がかかる裁定にふさわしいのではないかということを考えておるわけです。
 と言いますのは、いろいろな法曹専門家で第三者機関をつくりましても、先ほどから御答弁申しておりますようにこの裁定については、責任の問題とか故意の問題とか非常に微妙に錯綜した事実関係というもの、あるいは、被害者の気の毒さの程度という非常に社会生活に密着した知識がないと裁定できない点があるわけでございます。その点、公正さが担保できるのは、公安委員会について見ますと、いま申し上げました公正に委員が選ばれている、住民代表、議会の同意を得て知事が任命しておられる公安委員であるということは申すまでもございませんが、日常の事務処理でこれは警察を管理しておりますから――個々の犯罪捜査を指揮しているわけではございません。他の警察行政、道交法とか風俗営業法とかそうした行政処分の聴聞を、他省庁の聴聞と異なりまして御自身が、委員会自身がいまやっておられる、そうした各般の社会生活上の事実関係というものをはだで触れてやっておられるわけでございます。そういった知識、経験というものは、この給付請求権を認定するのにむしろ適しているのではないかというふうにわれわれは考えております。
 ただ、捜査機関との混淆があるのではないかという御指摘に対しましては、この国家公安委員会、都道府県公安委員会の本法案における権限、これの補佐機関は、事件処理とはかかわりのない行政管理部門、警察では警務という用語を使っておりますが、警務部門で補佐することによって十分に担保できると考えておるわけでございます。
#78
○沖本委員 この議論ばっかりやっているとこれで終始することになりますから、向こうへ進めたいのですが、一番関心を持って心配なさるのはその辺ではないかと思うのです。だから、その辺はちゃんと歯どめのかかるような、安心して信頼できるような内容の中身を十分おつくりになって、心配するな、そういうことはないからと――言葉の上だけであったのでは、将来問題が起こったときにどうしようもないことになりますから、その辺をちゃんと、横山先生が言ったような同じムジナというような、ちょっとひど過ぎるとお答えがあったわけですが、そうとられないような内容のものにお詰めいただきたい、こう考えるわけです。
 そこでまず、給付という名称をおつけになった理由はどういうところにあるのでしょうか。補償という言い方があるのです。
#79
○中平政府委員 給付という名前をつけましたのは、これはまさに一時金を給付するのがこの法律の内容でございますから、一応給付という言葉を使ったわけでございます。しかも、なぜ補償という言葉を使わなかったかと言うと、補償というのは、やはり原因者があってそれが負担をする。適法な行為等の場合が多いわけでございますが、原因者があって、その原因を与えた者が相手方に償いの意味で金を出す、そういう意味でございますから、本法の性格は先ほどからるる申し上げておりますように、一種の連帯共助の精神に基づいて出す公的な給付金でございますので、給付という言葉を使った次第でございます。
#80
○沖本委員 そうではなくて、そのよって来るところは、いままで警察の捜査に協力をなさって身体に被害を受けた方に対する警察からの給付という名称をお使いになっておる、それに準じてできたのではないか。というのは、その人たちのいわゆる補償額を超えないようにという御説明がいままでありましたから、そうすると、同じような考え方で出てきているのではないだろうかということになるわけです。
 そこの問題で、ここで補償する遺族に対する補償額は、私たちは自賠責の二千万円ということをきちっと出しておるわけですけれども、その辺が八百万円であるとか、あるいは重障害をお受けになった方が九百五十万円であるとかというあれが出ておるわけですけれども、その辺のお決めになった基本を教えていただきたいのです。
#81
○中平政府委員 給付額をどういう水準で決めるかというのはなかなかむずかしい問題でございます。これは御案内のように原因者負担等のない、一応公費で賄う性格の金でございます。したがいまして事柄の性格上、一つには、やはり警察官の職務に協力援助した人、つまり、警察官にかわって警察官のなすべき仕事をされて亡くなられたりあるいは重障害を負われた方の額をその額が上回るということは、やはり一般的な常識からいってもやや適切ではないだろう。そういうことを一つの目安にしながら、他の公害の健康被害等に関する補償の法律等がございますがそういうものあるいは労働災害等の各種の法律の給付水準等を参考にしながらできるだけ手厚い額にしたい、そういう考え方で決めたのがこの給付の額でございます。
#82
○沖本委員 その辺が、最初に私たちが法務委員会で議論したこと、基本的な物の考え方、いろいろ議論し合った中身と違うところになるわけですね。法務省の方の要綱の点からいっても、八百万というような金額は大体お示しになっておった。その辺、頭の辺がそろったような感じを受けるわけです。いわゆる自賠責でも、これはいろいろ拠出制になるわけですからそれと違いがあるんだ、これは国の方から金を出すんだからそこに食い違いを起こした方がいいんだということかもわかりませんけれども、たとえて言うなら、警察の捜査に協力して生命あるいは身体、命を落としたあるいはけがをなさった方に対する補償という点で、それを超えてはならない、その辺の考え方自体が私はおかしいと思うのです。
 いわゆる原因者、犯人がはっきりしている、そしてそうでない場合もあるのですね。確かにだれかにやられている、そのことはわかるけれども、まだ捜査の段階でありはっきりしてないけれども、本人から申請があった場合は検討をやらなければならないわけですね。そういう点からいっても、その人たちだけでも最低二千万は補償してあげるべきだという考え方があるわけです。われわれはそう考えているわけですね。ところが、実際に自分から進んで危険な捜査に協力して命を落としたりけがした人たち、そういう人より警察の方の補償が低いというのは私たちはおかしいと思うのですね。むしろそれよりうんと高いところへ持っていってあげるべきだ。そういう点から考えていけば、私たちが言っている二千万というのも今度当然であるということになるわけです。そうでなくて、いまの決めていることが低いのでいずれこっちは上げるけれども、それに準じていくということになると、やはりその辺にお考えを合わせておつくりになったということになると、全然別のところでいろいろ議論してきたことと内容がいろいろ違ってくる。やはり警察庁なりのお考えでそういうふうになったのであって、これでは物のお考えになるそれそのものが食い違うのじゃないかというふうな感じを受けるわけですけれども、その辺はいかがなんですか。もっと片一方の方を上げるべきじゃないですか、自分から進んで命を亡くしているということなんですから。第一、自賠責が二千万円なら、それ以上のものを補償するように予算をもっと組むべきじゃありませんか。
#83
○中平政府委員 これはそういうお考え方も十分わかりますが、一応私どもは一つには、先ほど来るる申し上げておりますように、やはり警察官の職務に積極的に協力援助した者とは、それを上回るということはいかがなものだろうか、そういう考え方を基本的に持っております。しからば、それが低いではないか、もっと上げる努力をしたらどうだ、これは私ども努力をいたしておりますが、この警察官の職務に協力援助した者の給付の水準というのも、これは今度は要するに、警察官の給付の水準がまた一つ、これに準じているわけでございます。そういうふうに一つの法の体系の枠の中にあるわけでございまして、なかなか原因者負担のとれてないこの制度について、一挙に非常に高い額に持っていくことは制度的にも非常に困難だ、こういうふうに考えておるわけであります。
 法務省の御議論等、ずっと審議会の記録等も見ましたし、それもだんだんに、現在私どもが提案している額に近いような形が法務省の方でも提案されておった、こういうふうに一応理解をいたしております。
#84
○沖本委員 自賠責でも、自賠責の二千万円では足りないわけですね。足りないから任意保険というのができて、三千万から六、七千万、一億というような辺にまでいっているわけです。そういうことですから、一般社会ではそう考えているわけです。自賠責二千万円だけではとうてい交通事故によって命を亡くした方の遺族の補償にはならない、だからむしろ任意保険にもっと入るべきだという運動がいま起こっているわけですね。そういうことですから、任意保険に入っていないのは、親から頭金を出してもらってやっと車を買ってむちゃ乗りをやっている暴走族ぐらいなものなんですね。ほとんど任意保険にいま入っているような状況にあるわけです。ですから実際の補償額というのは、交通事故で命を亡くしたというような方々は、自賠責でもらっているのは二千万円ももらっていません。気の毒な状態です。保険会社のいろいろなあれがありますから苦心惨たんして、弁護士がついてやいやい言っても、結局千七百万ぐらいで頭打ちだと言っていますけれども、それでできないやつは任意保険の方へ求めていっているわけですし、任意保険に入っていないと現在のこの事故を起こした場合には、被害者の方の補償には当たらないという車に乗る人たちの考え方から、いま任意保険がずっと上がってきているわけですね。それがもう社会の現状なんです。
 そういう点から考えていくと、治安に当たって命を落とした警察官自体の補償すらそれは低過ぎます。そういう現在の社会的な物の考え方からずっとダウンしています。それは大蔵省の方が頭を抑えるからそうなるのかということになりますけれども、そういうものははねのけていただいて、警察官自体の生活の保障なり何なりというものを十分見てあげる、そういう観点から、いわゆるいわれなき事故にお遭いになった方々の遺族を補償する面の額というものはもっとフランクにお考えになるべきじゃないか、こう考えるわけです。
 それと、聞くところによると、年間の予算を大体十三億ぐらいにそろばんを置いていらっしゃるということなんですけれども、たしかイギリスでは十五億だったと思うのです。ですから私たちが考えたのは、人口が日本の場合は倍になりますから、そうすると約三十億ぐらい要るのじゃないかというふうに見ているわけです。その辺に私たちの考え方と警察の方で見積もられるあるいは基本に出される問題と大きな食い違いが出てきていますね。その辺はどうなんですか。
#85
○山田(英)政府委員 警察官の職務に協力援助した方々に対する給付をそもそも上げるべきではないかという御指摘でございます。これは警察職員の公務災害につながる問題でもございますので、その面の御指摘を受けて、努力は大いにいたさなければならないと思っております。ただ、この犯罪被害給付金につきましては、積極的な警察官の職務に協力する行為があった方への給付を上回るということは制度の趣旨からできない、そういう限界があることはあるわけでございます。ただ政令で定めます給付基礎額の算定方法につきましては、その骨子を後ほど配付申し上げたいと思っておりますが、考え方として、年齢階層別の労働者の平均賃金日額、それを基礎にいたしたいと思っております。したがいまして、いま遺族給付が八百万、障害給付九百五十万という最高額をそれによって算定しておりますが、物価水準なり平均賃金日額に変動がありました場合には、できる限りそれに合わせてこの給付基礎額も改定するように努めたいと思っているところでございます。
 最後に、十三億という積算でございますが、それは私いま申し上げましたように、労働者の平均賃金日額を基礎にしていろいろ計算して積算しました結果、それと、昭和五十二年度において実態調査をいたしました故意の犯罪による死亡、その統計実態とをあわせまして積算いたしますと、年間約十三億であろうというふうに推定している、その数字でございます。したがいましてこの額は、これから先制度を運用してまいります場合には、年々変動してくることになると思います。
#86
○沖本委員 年々変動するというお答えなんですけれども、一番最初の基準になっている算定方法自体が、いま私が申し上げたように国民的な感覚からいくとうんとダウンしてしまっているということになりますから、それが一足飛びにポンとはね上がるということは絶対考えられないということになると、いつまでたっても、いわゆる国民がやかましく言ってきた、世間が騒がしくなってきた、事件が多発してきている、そういう状況で、そういう事情に合ったように法律をつくったということではなしに、極端な言い方をしますと、お茶濁しにこの法律をつくって出してきているというように、非常に言いづらいことを言いましたけれども、そういうふうに見られやすい、実情に合わぬじゃないかということになるわけです。
 そこで、さかのぼるという問題なんですけれども、この前にも御議論がありまして、諸外国の実例を見ても余りさかのぼってないということなんですね。ところが、諸外国ではもうすでに早くからやってきているということと、それから諸外国では社会保障が充実しているのですね。だから失業した場合はどうなっていく、あるいは、何かの事情で生活が落ち込んだ場合に、それを支えるだけのいろいろな社会保障制度があるわけです。ですから困らないのですけれども、現実にいま犯罪被害に遭った方々の置かれている生活事情というのは、もう生活困窮に陥って生活保護を受けている人がたくさんいるわけです。だから、諸外国は参考にしたけれども独自のものをつくったというお話なんですから、独自のものをおつくりになったということになれば当然そこのところは、日本のそういう現在置かれている被害に遭った人たちにスポットを当てていただく必要があるということにもなりますし、そういう観点からいくと当然、さかのぼるべきであるということになるわけなんですが、なぜさかのぼらないか。
 ただ、さかのぼることにすれば、どのくらい被害を言ってこられて、予算がどのくらい要るかわからない、膨大なものになるんじゃないかという議論があるのですが、そうはいかないと思うのです。この法案の中からいっても、認定するためのものはいろいろいっぱいあるわけですから、そういう点をお考えになってみていただいて、なぜさかのぼらないか、その辺を御説明いただきたいと思います。
#87
○中平政府委員 きのうもこの遡及につきましていろいろな御意見をいただいたわけでございますが、一応新しい法律――私どもはこの法律をこうして提案さしていただくまでの間に、非常に遺族の方々が大変いろいろな意味での御活動をなさり、それが大きなバックアップになってこの法案の運びに至ったことは重々承知いたしておりますし、そうした方々がこの法律が生まれたときにその恩恵に浴さないということにつきましては、これまた大変気の毒に存じておる次第でございます。しかしながら、一般的に法律が一応新しく生まれましたときには、これは遡及しないのが原則でありまして、この制度に限って遡及をするという合理的な理由、他の諸制度とのバランスにおいて合理的な理由が、いろいろと考えましたが見出し得なかったということが、最大の理由でございます。
 そのほか、やはりさかのぼってまいりますと、そのさかのぼった時点の前後におきます不公平さというものが、何年までさかのぼるかという問題が起こって、その前後に絶えず不公平感というものが出てまいりますし、それから、さかのぼればさかのぼるだけ今度は、そうした適正な裁定という業務からいってもなかなかむずかしい問題も生まれてまいる、そういうことをいろいろと考えまして、こういうことになった次第でございまして、この法律に大変関心を持ち、この法律の実現に努力されていただきました方々にはまことにお気の毒でございますが、この法律ができることによって、そうした方々にもまた温かい目が注がれ、社会の関心が一層そうした方々に高まっていくことを私どもは念じておる次第でございます。
#88
○沖本委員 一応新しく法律をつくったら、法律をつくった段階から向こうを向いて前へ進むんだということでさかのぼらないんだということなんですけれども、その考え方はちょっと私はおかしいんじゃないかと思うのです。前にたとえば農地買収に基づき農地報償という名目で実質的に追加支給をしたという実例があるわけです。それからまたたとえて言うなら、公害の被害を受けた方々は原因が起こってから後になって補償していくという現実があるわけですね。こういう問題はすべていわゆる遡及しか方法がないということになります。だから現実には遡及されている問題はたくさんあるわけです。
 ですから、法律ができた後に前に向かって問題をやるだけだというのは、私はおかしいと思うのですがね。そういう問題もあるわけですから、絶対遡及しないというのは話にならない、議論にならないということです。それで、学者の人たちでもだんだんそういう話も出てきておりますし、日弁連でもそういう話が出てきているということになります。
 それで、被害者の人たちが考えておることはもっともだということになるわけですけれども、民法の七百二十四条で、「損害及ヒ加害者ヲ知りタル時ヨリ三年間」、「不法行為ノ時ヨリ二十年」という規定があるわけですね。それから、現在の憲法ができてから二十年になる。その憲法では個人の生命、財産というものは国が守らなければならないというふうにちゃんとしたものが出ておるわけですから、そういうたてまえからいくと、先ほどおっしゃったとおり国に責任があるんだという考え方から、二十年さかのぼることが好ましい、そうしていただきたいというのが、現実に被害者の人たちの訴えでもあり、そういう観点から私たちも出している法案の中で、二十年さかのぼるということをしているわけです。
 それで、被害者の人たちが述べていることも、現実にさかのぼったからといって、めったやたらにそう出てくるものではない、限られている、だからそんなにお金が要るはずはないのだ。ただ理屈の上では、法律ができてからさかのぼらないのだという理屈になるかわかりませんけれども、ここのところは一番、国の財政上の理由によってさかのぼらないということになるのではないか。そういうことになりますと、法律をつくるときは気の毒だと言う。気の毒なら、これから起こってくる気の毒な人よりも、いま長い間この法律がなくて――犯罪者自体は人権があっていろいろな面で、新しく犯罪を起こした者の人権はある程度のところでカバーされていきつつある、ところが、いわれなき事件に陥って突然、大変な目に遭わされて人生を苦しんでいかなければならない人たちに何の補償もない、そして長い間苦しんできた、そういうことですから、気の毒なのを対象にして、気の毒な度合いによって補償していく、給付金を出すという考え方なら、当然過去に苦しんできた人たちの方がより気の毒だということになるわけですから、その辺に対するお考え方はどうなのですか。
#89
○中平政府委員 長年大変苦しんでこられた方は、まことに私もお気の毒だと思うわけであります。しかし、これは繰り返しになって大変失礼でございますが、やはり遡及適用につきましては、先ほど申し上げましたような問題が基本的にございまして、単なる財政上の問題でなくて、基本的な問題があってさかのぼれないわけでございまして、そういう意味でひとつ御理解をいただきたいと思います。
#90
○沖本委員 先ほど横山先生からも話がありましたけれども、総理府なり総理大臣なりいらっしゃれば、さかのぼれないのなら、現実に苦しんできた人たちの現在の生活を何らかの形で保障できるようなほかの方法を考えてあげてくださいということが言えるわけですけれども、現実にこの法案だけ扱う警察庁はそのほかのことはできない、他の省にそういう点について進言しましょうということになっても、そこまではいかないと思うのです。
 その辺について、現実に御存じなんですからね。城東区の猟銃が乱射されて殺された方のお子さんが泣きの涙で訴えておられました。いいお父さんだった。それが突然殺されたということで、本当に涙なくしては聞けない現状なんです。この間判決を受けた方々も、被害者の会がありましてお見えになっていらっしゃいました。それで、この中心になった市瀬さんですけれども、自分の財産を捨ててこの人たちをまとめにかかったわけです。そして目が見えなくなって、奥さんに支えられながら運動を続けてこられて、とうとう参考人に出てこられて、法務委員会ではいろいろな点についてお訴えになりましたけれども、この方々は大家さんなんかの話によると、実際に行ってもすさんでしまって振り向いてもくれない。それから会を開いて呼びかけても、旅費すらできない困窮の底にあるわけです。ですから、旅費を出すだけで来てもらいたいけれども、被害者の会自体にはそんな金もないという現状なんです。集めた人たちは百何十人ですけれども、やっと出てきたのがそれだけだというわけです。
 ですから、全部をさかのぼって補償してあげても、そんなに金が要るとは私は考えられないわけです。ですから何らかの形で――この人たちがここでおっしゃっているとおり、この人たちが土台になってこの法律ができたんでしょう、法律ができたのに、その法律ではその人たちは救えない、こんなばかなことはないということになる。
#91
○山田(英)政府委員 国の制度として遡及することができないという結論に達して、遡及を法案にも盛り込んでおらないわけでございます。そういう結果、御指摘の過去に被害を受けた方のお気の毒な状態に対して救済の手が差し伸べられないことは、まことに残念でございます。ただ、特に過去の犯罪被害を受けられた方の中で、いま先生の御質問の中にございました遺児の方、児童生徒、こうしたお子さんがおられる状態というのは私ども特にお気の毒だというふうに思っております。その点、国の制度として遡及して救済の手を差し伸べることはできないわけでございますが、他のケースによる遺児の方、交通遺児とかあるいは漁船の海難の遺児の方という場合には、基金活動によって奨学資金制度というものが運用されているというふうに私どもも承知しております。したがいまして、こうした過去の犯罪の被害の影響を受けておられる遺児の方々についてのそうした面での救済は可能ではないか。これは財源その他の問題がございますけれども、そうした点については、この法案の提出に当たりましたわれわれといたしましても、できるだけのことは研究、準備して手を打ってまいりたいとも考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。(「具体案を示せ」と呼ぶ者あり)
#92
○沖本委員 だからいまお話があるように、具体的な内容をお示しいただきたいということになるわけです。おっしゃっているとおりに、交通遺児であるとかあるいは船舶で海難にあって不幸な家庭ができ上がっているということ、一家の柱を亡くした痛さというのは、犯罪被害者の家庭も交通事故で柱をなくした方も全部同じなんですけれども、ここのところだけが全然日が当たらない、そこに大きな問題があると思うのです。ですから横山先生もおっしゃいましたけれども、この法律を法務委員会でいろいろ議論するようになって、何とかしなければならない、法務省も法務大臣もそういうふうなお答えの仕方で、法務省自体も前向きで答えを出してこられましたのは、こういう方々のお気の毒なのが参考になってできたわけですし、警察庁の方でも同じことをお述べになっていらっしゃることになるわけです。
 日弁連の方でもいろいろ問題を指摘していらっしゃいます。いま述べたようなことに対しておっしゃっているけれども、最終的には何とか早く法律をつくってやってくれということなんです。この法律を早くつくってやってくれと言っていること自体は過去の人を見て言っているわけです。だけれども法律自体はこれから起こる人なんです。そこに私たちは大きな矛盾を感じますし、この人たちががっくりしてくるだろうという点も考えられるわけですから、何らかの方法でこの人たちに日を当ててあげる、ただおざなりのお涙で終わるようなことがあってはならないわけです。この人たちのとうとい犠牲が大きな役割りを果たしていき、この人たちに国自体の大きな日が当たっていくことを私たちは期待したいと思うのですけれども、その点いかがですか。
#93
○山田(英)政府委員 他の交通遺児あるいは漁船海難遺児、それから、私どもの内部のことになって恐縮でございますが、殉職者の子弟に対する警察の育英会、消防の育英会というものもございます。そうした基金の活動によっていま御指摘の遺族の方への救済が少しでも進めばということは私どもも考えておるわけでございまして、その点については、十分にできる限りの力を尽くして検討いたしたいと思っております。
#94
○沖本委員 それはいつごろ御検討になりますですか。
#95
○山田(英)政府委員 これは発起していただく方々がだれであるかというふうなことから始めまして、いま私が申し上げておりますのは、具体的に申し上げれば認可法人の問題になると思います。そうした作業、準備を伴うものでございますから、できるだけ早い機会に手がけたいとは思っております。
#96
○沖本委員 ぜひ早急にやっていただきたいわけですけれども、同時に、前評判だけでふたをあけてみたらお涙ということであってはならないと思うのです。
 もとへ戻って申し上げますけれども、国民が安心して生命、財産を国家にゆだねられるという内容を持ったような機構にしていただきたい。心配はないというお言葉ですけれども、ちゃんとした歯どめをつくっていただいて、その方向でしていただきたいと思います。私自身は現在も法務委員会の方に私なりわが党なりの考えを出しておりますから、態度としては私は不満足であるという態度を示しますけれども、大方のお考え方は、とにかく一日も早く日の目を見ることだというお考えも多分にありますので、その辺が十分ではないのですけれども、不幸な人たちが補償されていくような形にまとめていただきたい。
 以上で質問を終わります。
#97
○塩谷委員長 午後一時より再開することとし、休憩いたします。
   午後零時三分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時六分開議
#98
○大石委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。
 犯罪被害者等給付金支給法案を議題とし、質疑を続行いたします。柴田睦夫君。
#99
○柴田(睦)委員 最初に法務省の方にお伺いしますが、わが国において犯罪被害者補償の必要性があるという世論がずっと高まってまいりまして、これに対して政府が立法的に解決しなければならないと考えるようになって、そして法務省が最初その検討に着手されたわけでありますが、法務省とすれば、いつごろからどういうことがきっかけとなって、またどんな経過で検討してきたか、この点をまずお伺いしたいと思います。
#100
○宇津呂説明員 法務省刑事局におきましては、かねてから犯罪被害者補償制度につきまして関心を持っておりまして、資料の収集、基礎研究等に努めておったところでございますが、御承知の昭和四十九年八月の三菱重工ビル爆破事件が起こりまして、特にこれをきっかけとしまして国会、マスコミその他一般国民の間でこういう制度の新設を待望するという議論が強くなりまして、そこで刑事局におきましても、制度新設に伴ういろいろな問題点を検討を始めたということでございます。
 検討の中で主要な問題点として出てまいりました点は、こういう制度の必要性というものは認められるということでございますが、補償の要件とかあるいは補償の方式その他いろいろなたとえば補償の順序とか実施機関等、これらをどうするかという点、さらに、いろいろな社会保障制度との均衡の問題、こういった基本的な詰めなければならない問題があるということで、鋭意検討を続けたわけでございます。他方、犯罪被害者に関連します実態調査を全国の検察庁の協力を得まして行いまして、制度立案のための資料収集に努めたわけでございますが、また、非公式でございますけれども、学者の御協力も得て研究会を持つというようなこともございました。
 このような検討の結果、問題点として整理して出てきましたものが二点ございまして、一つは、現在の国家財政それから行政簡素化という強い要請のもとで、新たに多数の地方委員会の新設という問題は、大変理想的ではございますけれども、現実的でないというような問題がいろいろ出てまいりまして、既存の制度を利用する方法がないかという点でございます。もう一つは、既存の組織として捜査機関を利用するということの当否でございまして、この二点を中心としまして、各党において出されております要綱等、あるいはその他国会での御議論とか、そういったいろいろな問題点を参照させていただきながら総合的に検討いたしまして、いろいろな諸条件の中で最も現実的な実現可能な方策としまして、財政上新たな組織を設けることなく、住民福祉に密着しております地方自治体がこれを行うことによって、給付を行うほかにいろいろな相談等にも応ずるという細かい福祉の一環としてもなし得るという点、あるいは、捜査機関自体が実施機関となることに伴う懸念と申しますか、そういったおそれを免れるというような検討点もございまして、これらの検討の暫定的な結果と申しますか、結局いまの主要な二点を考えますと、主務官庁を法務省とするということは必ずしも必要でないということ、他方、従来警察庁においても本制度に大変関心を持って検討を続けておりましたので、むしろ地方自治に関係の深い警察庁が中心になって作業を進めることがこの制度の早期の実現のために相当であるという結果になりまして、昭和五十三年末ごろではなかったかという記憶でございますが、警察庁とも十分協議の上、同庁を中心にその後作業を進めることといたしまして、法務省はこれに協力するという立場で参ったわけでございます。
#101
○柴田(睦)委員 もう一点、いまの国家財政あるいは行政簡素化ということを理由にして、新しい地方委員会をつくるということについては考え直さなければならないという事態になったというような説明であったと思うのですけれども、本来は財政問題ということを別にすれば、やはり第三者機関をつくるということが正しいのではないか、このようなお考えであったわけでしょうか。
#102
○宇津呂説明員 ただいま答弁の中で申しました地方委員会と申しますのは、これは法務省での議論、検討の過程での一つの試案でございまして、省としての結論ということではございません。いろいろな検討を進める中でいろいろなことを考えたという過程でのことと御理解願いたいと思うのです。
 そこでお尋ねの、どのようなものがより理想的かという御趣旨に承りましたが、国が住民の福祉あるいは各種の補償制度というものを充実させるというその理想につきましては、これは理論的には際限のないものでございますので、そのような立場からいろいろな御発言があるということについては、貴重な御意見として耳を傾けるわけでございますけれども、ただ、新しい制度をつくるという際には、いろいろその現状における諸条件があるところでございまして、現在、この犯罪被害者補償制度といいますのは、犯罪被害者はもとより、一般国民が一日も早い実現を望んでおります現状にかんがみますと、国会に出ております警察庁御提案の案というものは、十分に合理性といいますか相当性を持っているものと私どもは理解しているのでございます。
#103
○柴田(睦)委員 法務省の参事官の藤永幸治さんが警察学論集二十八巻六号で、「犯罪被害者補償制度の問題点」という論文を発表されておりますが、これは法務省の参事官の論文で、書かれた雑誌から考えてみましても、単に個人的な意見ではないと思うのですけれども、この中では、第三者機関ということを言っておられるようですが、これは裁定の機関とすれば第三者機関の方がより合理性があるということを当時考えられていたわけではないのでしょうか。
#104
○宇津呂説明員 法務省の藤永参事官の論文と申しますのは、もちろん御当人の個人的な御私案、個人的な御見解であろうと思います。もちろん議論の中で、そういった議論が検討の中身として加えられていったということはあろうかと思います。
 そこで、お尋ねの何が望ましいかと申しますのは、大変むずかしい問題でございまして、結局、法律制度をつくりますときに制度の趣旨、特にこの法案でございますと、被疑者の側のいろいろな処遇というものについては一定の改善等が行われていくということと対比しまして、被害者側がいわば取り残されるということがあってはならないということから、刑事司法に対する不信感というものを何かの形で払拭することに寄与することは意義があるという、そういった面も制度の重要な面としてございましょうが、そういった法律の制度とか、それを実現します際の客観的な諸条件の中で評価するということになると思いますので、したがいまして、現在の警察庁の案についてそれなりの相当性があるというふうに私ども理解しているわけでございます。
#105
○柴田(睦)委員 午前中も出ましたが、三月二十四日の大阪地方裁判所でのいわゆる行きずり殺人国家賠償訴訟の第一審判決がありまして、これは遺族の方々は、国や地方公共団体は国民を犯罪被害から防護する義務と侵害されたときに被害を救済する義務があるということなどを理由にして、国や地方公共団体に国家賠償訴訟をやられたわけですけれども、裁判所は、その義務がないということで請求を退けたわけです。
 遺族の方は、理由なき犯罪の被害者の怒りはどこへ訴えたらいいのかとこの判決の後で言っておられますが、全くそのとおりだと思うわけです。犯罪による被害者補償制度を促進する会の皆さんの運動がずっと続けられてきたわけですけれども、犯罪によって肉親を奪われた人たちの気持ちというのは、被害者補償制度を法制化してほしいということとともに、また素朴な気持ちとして、犯罪者に対しては厳罰にしてほしいという気持ちも生じられる、これは自然であろうと思うのです。犯人は刑務所に行って社会復帰のための道を歩いているわけですけれども、被害者の側には、その生命を奪われている場合においてさえも何の補償もない。残された遺族は、経済的にもまた精神的にも大変な損害を受けながら何ら救済が講ぜられておらず、大変な生活をしなければならない。このことは国会の中でもいろいろ出てきているわけです。
 国は被害者の権利を守らなければならないということは、これは当然のことであると思うのです。もちろん被害者の人権を守るということで、被疑者、被告人の人権保障が軽視されたりあるいは無視されたりするようなことになってはなりませんし、また、被害者の権利を守るということと被疑者、被告人の人権を制限するということとは決して結びつくものでないことは、これも言うまでもないことであります。ともかく被害者の権利を守るために、国としてはどういうことをしなければならないというふうにこの法案の立案に当たって考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
#106
○中平政府委員 ただいまお話のございましたように、やはり犯罪に対しましては、これは警察法の命ずるまでもないことでございますが、私どもはこの予防あるいは捜査、検挙に当たってまいらなければならぬわけでございます。しかしながら、そうした手を尽くしてもなおかつ、やはり犯罪が不可避的に発生をするものでございまして、そうした犯罪の中でも特にお気の毒な状況にあるのは、通り魔殺人に象徴されるように故意の犯罪によって不慮の死を遂げられた方であるわけでございます。したがいまして、こうした方々については、先ほど御指摘がございましたように、他の諸制度あるいは犯罪者に対する処遇等が非常に進んでいる中で放置された形になっておる、これにつきましては、やはり国民全体として連帯共助の精神に基づいて何らかの形で手を打たなければならない、これはまさに国の犯罪の防止義務の一環でもある、こういうふうな角度でとらえまして今回、給付法案として提出をいたした次第でございます。
#107
○柴田(睦)委員 この点につきましては、近代福祉国家として、金銭による補償ということはもちろんのことですけれども、やはりいろいろな面から本当に国民の合意が得られるような刑事政策が進められなければならないというように考えるわけです。いまの大阪地裁の国賠訴訟でも結局は、遺族から加害者に損害賠償を請求しても何にも得ることができない、これが前提になって国家賠償請求に踏み切られたものだと思うのですけれども、現在、犯罪被害については不法行為制度があるわけですが、これがやはり十分に機能していないと思うのです。
 このことは、先ほどのように法務省も調査をされて、また警察庁の方でも調査をされてその実態を把握しておられるわけですけれども、結局、損害賠償の場合は、加害者がわからない、加害者に資力がないとか、あるいは話がつかなくて裁判をやらなくてはならないが時間がかかる、手数がかかる、費用がかかる、また加害者に対してもう会いたくない、そういういろいろな事情から訴訟をやれないあるいは損害賠償を得ることができないということで結局、泣き寝入りをする以外にないということになっているのが現状であって、これでは多くの被害者が不法行為制度では救済されていない、結局、不法行為の制度は形骸化されているということになると思うのです。
 しかしそういう中において、この損害賠償で間に合うものではないわけですけれども、それさえできない気の毒な被害者やその遺族を救済しなければならないということが、この犯罪被害者補償制度の前提になるものであろうと思いますけれども、この点はいかがお考えですか。
#108
○中平政府委員 まことに同感でございます。
#109
○柴田(睦)委員 全般的に言いますと結局、救済する必要のあるものは、いわゆる人的災害といいますかそういう犯罪被害だけではなくて、自然災害による被害者もあるわけです。自然災害の場合は、災害見舞い金の制度が死亡者についてあるわけですけれども、自然災害の場合は本来、請求する相手がいない。犯罪の場合は、犯人がわからない場合もあるわけですけれども、いずれにしろ相手がある。それにもかかわらず、相手からの償いを得られないとすれば、この不法行為制度が実際はその人にとっては有名無実になっているわけですから、こういうケースについては、国が犯罪被害者に対して犯人にかわって補償の措置を講ずるということを考えなくてはならないと思うのですけれども、こういう観点に立っておられますか。
#110
○中平政府委員 犯罪の被害者の中で、特に私どもが今回そうした給付の対象として一応考えておりますのは、やはり故意の犯罪による被害者でございまして、故意の犯罪によって死亡された方、重障害を負われた方、この制度の必要性が叫ばれましたいきさつから申し上げましても、やはりそうした人たちにまず救済の手を差し伸べるべきである、こういう観点に立って立法をいたしておる次第でございます。
#111
○柴田(睦)委員 犯罪被害者を救済するということは自然災害の場合と違った扱い、そういう見方が必要であるというこの犯罪被害者救済の固有の必要性、これは、犯罪者に対しては刑事政策として国費の使用がされるわけですけれども、被害者に対しては救済もされず悲惨な状態のままで放置されているという問題があるわけです。たとえば殺人犯が刑事政策の上に立って必要な国費を使用しているのに、命を奪われた被害者の方が何の救済もされていないというのでは、被害者側から見ると、裁判制度自体に対する不信感、そういうものも当然強まってくるわけです。被害者補償の国家的制度というものは、刑事政策という面からやはり取り上げるべきだと思うのですけれども、この法案というのはそういう立場を貫いているでしょうか。
#112
○山田(英)政府委員 ただいま御指摘の犯罪者の処遇との関連における刑事政策という角度ももちろんあると思います。しかし、私どもがそれよりも考えておりますのは、犯罪によって被害を受けた方、その精神的、財産的被害を含めまして被害が生じたということで、公共の秩序、法秩序というものがいわば破られているという状態があると思います。そういうことに対して補てんされないことについての法秩序への不信感、これがこの制度の根底にあるわけでございますので、そうした破られた状態を回復する、これが犯罪対策、御指摘の刑事政策の中に占める犯罪対策の重要な事柄であろう、こう理解しておるわけでございます。
#113
○柴田(睦)委員 被害者補償の根拠として理論づけ、いろいろと意見が出されているわけです。たとえば日本弁護士連合会では、わが国では憲法二十五条に示すとおり、国民は健康で文化的な生活を営む権利を有する、この権利は、国民全体の合意の上に立って国民相互の連帯共助の精神に基づくものであり、近代福祉国家はこの権利を国民にあまねく保障する責任があるとして、国民の権利であるということを明らかにしているのですけれども、今度の犯罪被害者等給付金支給法案、これでは、この国民の権利という面においてはどのような見解に立っておられるのか、お伺いします。
#114
○中平政府委員 今回私どもが提案しております給付法案の性格、目的というものについてお話を申し上げて、御了解を得たいと存ずる次第でございます。
 この犯罪被害者というのは、人身被害を受けながら、他の原因による被害の場合と異なりまして、法制度上全く考慮されてないのはいかにも不均衡であって、その是正を図る必要のあることを前提といたします点では共通しながら、この制度の性格づけにつきまして、一つには、やはり不法行為制度の実質化を目指すものである、こういう見解、あるいは刑事政策上の要請に基づくものであるという見解、それから社会福祉政策の充実を目指すものである、そういうふうないろんな見解が主張されておるわけでございます。これらの見解につきましてはいずれも、これは理由のあるものでございまして、私どもの今回の制度といたしましては、これらのいずれの見解のみによるというものではございませんで、これらを総合したものとして理解すべきものである、こういうふうに考えておるわけでございます。
 この制度はいずれにいたしましても、故意の犯罪行為による重大な人身被害があった場合の被害者等の現状を放置しておけない、こういうことから創設するものでございますが、これを国の施策という点から見れば、先ほど官房長からも話がありましたように、国の法制度全般に対する国民の不信感を除去しようとするものである、こういうふうにとらえておるわけでございます。
 こうした場合、犯罪被害者等の現状が、不法行為制度が十分に機能してないということを原因としているという点から見れば、その実質化という意味がございますし、国の法制度のうち、犯罪に関連する分野の問題としてとらえれば、刑事政策、すなわち犯罪に対する対策の一環と見るべきものでありますし、また、犯罪被害による経済生活の安定の阻害の防止の役割りを有する、こういう点では福祉政策としての効果を持つものである、こういうふうに理解し考えて提案をしておる次第であります。
#115
○柴田(睦)委員 以上のお答えを前提にしながら各論に入っていきますが、結局、国民から見ました場合に最も救済をしなければならないケースは、救済という面から見ると、一家の働き手を犯罪によって奪われた被害者の家族であるということは、これはみんな一致することだと思うのです。そうしてみますと、不具その他身体に重大な損傷が生じて、永続的機能障害や疾病にかかって、生活能力を喪失するか著しく減少した場合に補償をしなければならないものだと思うのです。
 政府の方では、労災法施行規則の十四条の障害等級表の三級までしか考えていないということでありますけれども、実際の生活能力の喪失や減少ということから見てみますと、やはり十級までぐらいの障害に対して適用する必要があると思うのですが、この点は、先ほど言いました藤永参事官などもそういったようなことを論文で言われているのですけれども、この点についてはどのようなお考えか。これは政令になるようですけれども、どうして現在の考えに立たれるのか、お伺いします。
#116
○中平政府委員 わが国におきまして従来、放置しておくべきでないということで常に問題になってまいりましたのは、通り魔殺人の例で見られるような被害者の死亡の場合、被害者が亡くなられた場合でございまして、この制度につきましても、死亡を対象とするものとして創設するのが適当である、こういうふうに考えた次第でございます。ただ、身体上の障害でありましても、労災等でいう三級までの方は、その被害の重大さにおきまして死亡と同様の評価を受けているものでございますので、このような障害につきましては死亡と同様に扱うのが適当である、こういうふうに考えられますので、これを重障害として一応対象に加えた、こういう次第でございます。
#117
○柴田(睦)委員 その点、実際上生活能力の喪失、減少というような問題があるので、そうした死亡またはそれに準ずるもの、こういうことではやはり本当の救済にならない。刑事政策の面から見てみましても、あるいは困窮している人の救済ということから考えても、そういうことではやはり現実に合致しないということを指摘しておきたいと思います。
 それから、過失犯の問題ですけれども、これは一律に否定されているわけです。なるほど、過失犯の最も多い交通事故の場合は自賠法がある、そのほか、過失犯の場合については特別法というようなものがあるわけですが、こうしたものはともかくといたしまして、救済をする法律が適用されない過失犯についても、立法論とすれば結局、別な法律で補償を受けた場合は除外するというふうなことで、過失犯についての被害の場合も可能であると思うわけです。というのは結局、過失犯といってもガスの爆発事故などの被害を考えた場合に被害が非常に大きい、それからまた、大変な被害である。多くの被害者があれば、過失を犯して爆発事故を起こしたというような人に支払い能力がないということが十分に考えられるわけでありまして、そういう意味では、被害者の面から見ると故意犯と何ら変わりがないわけです。こういうような点を考慮して、過失犯を一律に除くというのは、これは被害者の面から見るときわめて不公平ではないかと思うわけです。その点について御意見を承りたいと思います。
#118
○中平政府委員 この制度につきましては、故意の犯罪につきましては原因者負担の原則がとれない。要するに、こういう犯罪自体が公序良俗に反する行為でございますので、加害者側に資力をつけてそれに対応する道がない。しかし、過失犯の場合につきましては、自動車損害賠償法等に見受けられるように、相当部分はそうした原因者負担による救済の措置が講ぜられるし、現実の場合にはまた制度的に資力をつけさせる方法があるということ、あるいは現実には社会の実態としても賠償能力のある方が多い、そういうことでございまして、やはりこの制度は、一種の例外的な制度というふうに考えておりますので、故意の犯罪に一応しぼった、こういうことでございます。
 御指摘のように、過失の中にも確かにお気の毒なケースはあるわけでございますが、やはり制度として問題を考えてまいります場合には、そうした原因者負担の方策のあるものにつきましては、そういう方策を拡充してまいるという方向において検討していただくのが基本ではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
#119
○柴田(睦)委員 犯罪被害者の救済という点から最初の前提をいろいろお聞きしたわけですが、ただ、それらの面も踏まえても結局、殺人あるいは死亡というようなこと、故意犯に限るということに合理性がない。最初の前提に立てば矛盾が生じているということを指摘したいと思います。
 それから第六条で、「国家公安委員会規則で定めるところにより、犯罪被害者等給付金の全部又は一部を支給しないことができる。」こうあるわけですけれども、この国家公安委員会規則というのは何を定めようとするものでありますか、また、それはすでにできているものであるかどうか、お伺いします。
#120
○浅野説明員 この国家公安委員会規則におきましては、全部または一部を支給しない場合の基準を定めることとしております。その内容については、おおむね考え方を持っておりますけれども、まだ案ができているというところではございません。
#121
○柴田(睦)委員 規則で基準を定めるということは、たとえば特にこの二号、三号の場合、具体的な多くのケース、こういう場合は何割減にするとかこの場合は全部を支給しないとか、そういうことを相当細かい基準まで決めるということでしょうか。
#122
○浅野説明員 お答えいたします。
 おおむね現在考えておりますのは、被害者が犯罪行為を誘発したような場合というようなことにつきましては、たとえば加害者等に暴力を加えまたは加えようとしたこと、あるいは人に著しい怒りまたは恨みを抱かせることとなる行為等をするなど犯罪行為を誘発することとなるような行為を故意に行ったこと、こういう場合は全部を支給しない。それから、その他の事情等につきましては、覚せい剤の取引など著しく不正な行為で犯罪行為に関連するものを行っていたこと、あるいは暴力団その他集団的、常習的に暴力的違法行為を行う組織に属していたこと、その属していたことが犯罪行為と関連がない場合は除くわけでございます。それから、被害者または第一順位遺族が報復として加害者等の生命または身体に重大な害を加えたとき、こういうようなことを基準として定める。それに至らない程度で犯罪行為の原因となった行為があったようなときは一部を支給しない。それから、被害者と加害者との間に同居、同一職場など密接な関係があったようなとき、こういう場合についても一部を支給しない。おおむねこういうような考え方で定めてはどうかと考えております。
#123
○柴田(睦)委員 ちょっとまだイメージがわかないのですが、基準を細かく決めることになれば公安委員会の裁量の範囲がなくなる、大まかに決めれば裁量の範囲が大きい、こういうことになるのですが、公安委員会ではその基準に従って裁量する余地がもうほとんどないというところまで決められるのか、それとも裁量が中心になるのか、お伺いします。
#124
○浅野説明員 いろいろ被害を受けたときの事情というのは、大変具体的、個別的なものであると思いますので、裁量が全くないというところまで決めるという性格のものではないと思いますが、できるだけ客観的にして全国的に斉一に裁定が行われるよう、その面も考慮していかなければいかぬ。両方の面を考慮して具体的な妥当性を求めていくという考えでございます。
#125
○柴田(睦)委員 公安委員会で裁量しなければならないところが多いということになりますと、この裁量というのは実際上は非常にむずかしい問題が出てくると思うわけです。たとえば一つの大まかな基本的な基準が出されて、具体的なケースについてそれがどの程度減額をすべきかというような問題、いろいろ出てくると思うわけです。そうしますと、この裁量する公安委員自身がそういうことに精通した人で、そういう能力を持った人でなければならなくなるのではないかと思うわけです。
 いまの国家公安委員の職業を見てみますと、大学の名誉教授、弁護士、会社社長、団体役員、新聞社の論説委員、これは国家公安委員会ですが、たとえば地方公安委員会で私の千葉県の場合を見てみますと、歯科医師の方、団体役員の方、会社社長、こうなっているわけです。いままでの公安委員の方で、こうした新しい仕事がふえるわけですが、そういう裁量をするについて能力の心配はない、あるいは、今度はこういう仕事がふえるから、公安委員会の人選についてもそういうことも加味してしなければならないというように変わってくるのかどうか、お伺いします。
#126
○山田(英)政府委員 御指摘のように六条におきます裁量は、社会通念に基づいていろいろな事実関係について慎重な判断を要するわけでございます。それについて公安委員が適しているかどうかというお尋ねであろうかと思いますが、私どもはいろいろな合議体の中でもむしろふさわしい、適しているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 その理由でございますが、御承知のように、都道府県の公安委員について見ますれば、知事が人選上の責任者でございまして、議会の同意を得て人選しておる。それも、各般の社会生活上の具体的な事実関係について仕事を行っている警察の管理機関、民主的かつ政治的中立性を担保する管理機関の構成員としてふさわしい者を議会の同意を得て人選されておるわけでございます。
 それから、日常業務から申し上げますと、単に民主的な管理機関というだけでございませんで、御承知のように風俗営業等取締法、道路交通法その他警察関係諸法令によります権限を持っております。公安委員会の定例日の後にも、そうした各法令に基づく営業の停止、取り消しあるいは運転免許の取り消し、停止など、住民にとって大変深い利害にかかわっておる行政処分、これについての聴聞を毎週行っていただいております。各省庁の聴聞でございますれば、おおむね専決処分で下部の職員が行っているのが実態でございますが、公安委員会の場合には合議体でございますので、みずからが大変な時間をかけて被処分者の言い分を聞いておる。そういう日常の業務の中で、社会生活上の事実関係というものを調査することに習熟しておられますし、住民の利害にかかわる、これはまさに本法の六条の裁量というものがそういうことになろうかと思いますが、そういう利害、特に気の毒さにかかわる判断ということについてはまことにふさわしい立場にある、かように思っております。
 それから、その職業についての御指摘もございましたが、国家公安委員会について見ますれば、元最高裁判事をやられた方もございますし、あるいは大きな新聞社の論説委員をやられた方も現に入っております。地方の公安委員につきましても、各界各階層にわたって知事が県全体の人材の中からお選びいただいておるわけでございまして、職業経験、人生経験等において欠けるところは全くないと思っております。
#127
○柴田(睦)委員 裁量といっても結局、どう困っているかとか、そればかりでなくて、誘発の程度が大きいと見るかあるいは小さいと見るか、そうしたいろいろな問題が出てくるわけで、いわば裁判所の判断にも似たようなものが出てくるわけです。そういう意味では、この公安委員のいままでの本来の仕事ということから見ますと、やはり新しい仕事が出てくるというように考えるわけです。そういう新しい仕事に適さないあるいはそうしたことに習熟していない、つまり事実の見方、それに対する法的評価、そうした面から見てみましてそれに習熟していないというようなことになれば、結局はその事務を扱う警察官が実際上判断をするということになる。この事務を扱う警察官は捜査機関とは別だということを言っておられますけれども、やはりその間にはいろいろなつながりといいますか交流があるということも公知の事実であるわけですから、そういう意味で私は、こうした公安委員会での判断よりも、みんなが言っているように第三者機関というものを設ける、それによって本当の公正さが保たれるということを指摘したいと思います。
 それから、補償額の問題につきましては、いろいろ論じられているわけですけれども、一般の国民から見ますと、補償という場合に、いま全般的に自賠法の死亡の場合の最高二千万円、これが社会で生活する上においては一つの基準になっていると思うわけです。当局の方ではいろいろ考えられて、ほかの法律との均衡というようなことから、準ずる扱いをしているわけですけれども、国民感情からはせめてこの自賠法ぐらいはという気持ちが非常に強いわけで、そういう面から見まして、救済あるいは刑事政策、いろいろな総合的な観点に立っても、やはり自賠法の額程度まで引き上げるようなことが必要であるし、また、そのための努力が必要であると思うのですが、この点、簡単にお答え願いたいと思います。
#128
○中平政府委員 給付の水準をいかようにするかということは大変むずかしい問題でございますが、この制度というのは本来、加害者側がてん補すべき損害につきまして全額を公費で負担し支給しようという、きわめて例外的な制度であるわけでございます。したがいまして、損害賠償そのものでございます自動車損害賠償責任の場合と比較することはできないことはもちろんでございますが、損害賠償責任を根底に置いた原因者負担がある他の公的な給付制度、公害健康被害補償などを上回る水準とすることは、現行の体系の中では困難でございますし、また、積極的に社会公共のために尽力した結果被害を受けられた、警察官の職務に協力援助した者の災害給付を上回ることもまた適当でない、こういうふうに考えておるわけでございます。こういうことを勘案した上で被害者の救済にできるだけ効果のある額とする、こういうことで決めさせていただいた次第でございます。
#129
○柴田(睦)委員 ところが、福祉国家における犯罪被害者の救済という面、あるいは今日における刑事政策という面、いろいろな面から考えてみましても、いま予定されているような低い額では、これが最高限であってそれからまた裁量によっていろいろ減じられるというようなことから考えてみました場合に、やはり額の面からいっても納得がいかないのが国民の感情であるということを申し上げておきます。
 それから、この被害者あるいはその遺族の人たちは、仮にこの法律が通った後、来年から施行されて来年からの犯罪に適用するということですけれども、やはり国民の場合は法律を知らない人が多いわけです。自動車損害賠償につきましても、やはりあれが施行されて最初のうちは、請求の期間を徒過するとかいろいろなことがあって、知らない方が多かったわけです。こうした法律について、やはり国民の中に広く知られなくちゃならない。そういう点について、被害者やその遺族に個々的に知らせるということはやられるつもりかどうか、お伺いします。
#130
○中平政府委員 この法律につきましては、支給を受ける立場にある方には漏れなく支給を受けていただく、こういうことが大変大事なことでございます。したがいまして、そういう角度からの周知徹底させる方策を私どもの組織の内外を通じて強力にやってまいりたい、こういうように考えております。
#131
○柴田(睦)委員 それから、いわゆる遡及の問題ですけれども、私はやはり日本国憲法が施行されたそのときから日本の国においては、こういう犯罪被害者に対する補償制度というのは当然つくらるべき性質のものであるというように思うわけです。そうしたものがつくられなかったために、現実に被害を受けた人たちが中心になって運動が進められ、いま多くの国民に知られ、学者の間でもいろいろ論議を呼ぶというところに至っているわけですけれども、そういう点から見ますといま出てきた法律、これは内容においても非常に不十分なものであると私は考えますし、そういう中において出てきた法律が来年の一月一日以後の犯罪についてしか適用されないという問題、これについて午前中の議論を聞いておりますと、法律は遡及しないのが原則だ、こういうことを答弁しておられましたが、実はこれは刑事事件の罪刑法定主義というような観念とは違って、やはり政策の問題であると私は思うわけです。この法律を施行する、その法律をいつから適用するか、いつの事件について適用するかということは、いわゆる法律上の遡及の問題ではなくて政策上の問題であると考えるわけです。それは、公害被害者の補償法においても、やはり法律ができて、その公害の被害を受けた人を救済するということになっていることと同じであって、法律論の遡及しないのが原則だ、こういう考え方は間違った法律論だと思うわけです。この点についての見解をちょっと伺っておきます。
#132
○中平政府委員 この法律が来年の一月一日から施行されまして、それまでの間の方がこの法律によって救済されない、そういうことにつきましては私どもまことにお気の毒に思っている次第でございます。特にこの法案の推進に当たってこられた方々に対しては、ことさらにそういう感じを深くしておるものでございます。
    〔大石委員長代理退席、石川委員長代理着席〕
 しかしながら、特定の法律を遡及してまいるということになりますと、ただいま立法論、政策論ということでおっしゃったわけでございますが、これはあくまでも遡及しないのが例でございますので、やはり遡及をするに足りるだけの合理的な理由がなければならないわけでございますので、そういう点につきまして、立法の作業の中でいろいろな角度から検討いたしたわけでございますが、合理的な理由を見出すことができなかった、そういうことでございます。
#133
○柴田(睦)委員 新憲法の施行後、日本は福祉国家として出発するわけですけれども、そういう中でその理論というのは、福祉国家における犯罪被害に対するあり方という問題で、これはいま始まったことでなくて、そういう制度がいまの世の中においては必要なんだ、いまの世の中は憲法が施行されたときからそういう時代になっているんだということを考えなければならないと思うわけです。そして先ほど言いましたように、遡及という問題を単に刑事事件における不遡及の原則ということでなくて、あれは国民の権利を制限するから遡及が禁止されているわけで、国民に政策上おくれたというような場合はそれを実行すべきときからこれを適用する、それ以前の犯罪についても適用するということが当然必要である。いわば法律上遡及と言っておりますけれども、実際上は政策上の問題であって、政策上は決してこれが禁止されるわけではない、憲法に違反する問題ではないということであります。
 それから、何回も言われておりますが、ともかく気の毒だ、運動された人には特に気の毒だ、何とかしなければならない、しかしそれができないとおっしゃるのですけれども、何とかしなければならないということはやはり政策上の問題で、これからこの法律によっては救済されない人、こういう人たちに対しても政策の上でいろいろなことを、今後この法律の改正あるいは特別立法というようなことも考えるのが政治の責任であるというように思うわけです。
 午前中の議論で、交通遺児などと同じように犯罪被害者の遺児については検討したいということをおっしゃっておられましたけれども、交通遺児などに類する扱いを検討するという問題だけではなくて、全般的に過去の人についても救済をする。その救済の時期については、いろいろ民法その他の法律もあって、三年とか二十年とかいろいろ出てくると思うわけですけれども、いずれにしろ、気の毒である、何とかしなければならないという気持ちがあるならば、その問題についてなお、法律上どうすれば可能であるか、どういうことが可能であるか、またどういうことをしなければならないか、こういう問題が行政の上で検討されなければならないと思うのですが、最後にその点についての御見解を承って、終わりたいと思います。
#134
○中平政府委員 ただいまの御指摘にもありましたし、午前中申し上げましたように、この犯罪被害者の中でも特に私どもお気の毒だと考えておりますのは、やはり遺児を抱えられた方でございます。それにつきましては、交通遺児に対する基金制度がございますが、そういうものを私どもの立場でもこれから真剣に考えてまいりたい、そういうことでございます。
#135
○柴田(睦)委員 終わります。
#136
○石川委員長代理 岡田正勝君。
#137
○岡田(正)委員 市瀬さんたちの長年の運動が世論を喚起いたしまして、国といたしましても、その情に打たれて提案の運びになった。ただいま御提案になっております犯罪被害者等給付金支給法案は、その提案が私どもから言いましたらむしろ遅きに失したという感があるのであります。しかし、中身につきましてはなかなか問題のある法案でありますので、以下若干の質問をさせていただきます。
 まず第一番目でありますが、加害者にかわって国が補償することの根拠でありますが、いろいろと言われておりますのに、まず一つには、国の保護義務違反を根拠とするか、二つには、被害者援護義務に基づくとするか、三つには、被害者分散責任による保険論か、四つには、社会保障制度論か、いろいろと幾つかの論があると思いますが、私は犯罪者に対する不法行為を理由とする民事賠償制度の機能が不十分であります今日、これら被害者の深刻な困窮と苦痛を救済保護するために、単に被害者に恩恵を与えるというのではなくて、被害者の権利を認めて社会保障制度以上の国の責任というものを明確にすべきではないかと思うのであります。
 近代福祉国家におきましては、国民は健康で文化的な生活を営む権利を有することは御承知のとおりでございます。この権利は、国民合意の上に立ったものでありまして、国民相互の連帯共助の精神に基づくものであります。ということになれば、近代福祉国家はこの権利を国民のすべてに保障する責任があると私は考えるのであります。たとえば教育の国庫負担の問題、あるいは労働災害補償の問題、あるいは国家医療保障の問題、このいずれをとってみましても、生活に困っておるから、生活に困窮しておるからということを前提にしたものではありません。すべての国民が社会構成員の一人といたしまして、これに対応する権利を持っているということなのであります。
 そしてまた、国民は互いに健康で文化的な生活を営むことができるということはもとより、互いに他人の生存の権利を侵してはならないということもまた当然のことであります。しかるがゆえに、不幸にして被害を受けた場合は、お互いにこれを救済するための連帯共助を行うべきであります。ならばこそ国は、こうした国民相互の関係を国と国民の間の法関係にまで高め、これを国の責任として受けとめた結果、今回の御提案になったものと私は理解をいたしておりますが、いかがでございましょうか、お尋ねいたします。
#138
○中平政府委員 この制度は、他人の悪質な行為によりまして重大な被害を受けた被害者や遺族の方々を、救済されないままに放置しておくべきでないという社会全体の認識というものを根拠にして創設する制度でございまして、犯罪被害の緩和を社会全体で引き受けようとするものでありまして、ただいま先生の御指摘のありました、そういう意味ではまさに国民連帯共助の精神に基づくものであるというふうに考えるわけでございます。そして、この犯罪被害者救済対策としての給付金の支給を、まさに国の責務として実施しようとするものである、こういうふうに考えております。
#139
○岡田(正)委員 大変明瞭な御回答をいただきまして、ありがとうございました。
 次に、これは他の委員もすでにお聞きになったのでありますが、この際一応、法務委員という立場から確認をもう一度しておきたいと思います。
 本件につきましては、法務委員会でずいぶん長年取り上げてきた問題でございます。それが今回、主務官庁を法務省ではなくて警察庁にせられた。法務省では都合が悪かったという理由をごく簡単にお聞かせいただきたいと思います。
#140
○中平政府委員 先ほど法務省の方からもお答えになりましたが、この制度につきましては当初、法務省が中心になって、警察庁はこれに協力するという立場で検討を進めてまいったわけでございますが、いろいろと紆余曲折のあった結果、やはり都道府県警察、要するに警察庁の方が所管するのがよろしかろう、こういうことになりまして、既存の機関の中で、最もこうした要請にこたえ得る都道府県公安委員会が裁定の業務をやる、そういうことで話が決まりまして、それを受けまして私の方で、鋭意法案の作業をいたしまして今回の提案の運びになった、こういう次第でございます。
#141
○岡田(正)委員 それでは、中身に入らしていただきます。
 先ほども一部御質問に出ておりましたけれども、第一条のところで、死亡とそれから重障害を受けた者というふうに規定をいたしております。また、いままでの御説明では、労災で言うならば三級程度、これは死亡と同じぐらいの障害であるという関係から重障害と規定をしたと承っておるのであります。しかしながら、先ほどの御質問にもありましたように十級程度まで、障害を十級と私は言わないのでありますが、障害を受けた者、すなわち被害を受けた者すべてを含むべきではないのだろうかというふうに思うのであります。その点いかがでございましょうか。
#142
○中平政府委員 この制度におきます給付金の支給の対象というのは、この問題が提起された経緯からも御案内のように、そのまま放置しておきますと国の法制度に対する信頼が失われる、こういうふうに考えられる重大な被害に限定するのが適当である、こういう考え方に立っておるわけであります。
 ところでわが国におきまして、それでは従来放置しておくべきでないということで常に問題になっておりますのは、被害者が不慮の死亡を遂げられた場合、故意の殺人行為等によって死亡を遂げられた場合でございまして、この制度におきましても死亡を中心にして創設するのが適当である、こういうように考えまして、身体上の障害でありましても、その障害の重大さにおきまして死亡と同等の評価を受けている一級から三級にわたる障害につきましても、やはり重障害として加えるべきである、こういう考え方に立って提案している次第でございます。
#143
○岡田(正)委員 ちょっと補足してもう一度確認したいと思いますが、こういう場合はいかがでございますか。いまのは人身障害の関係でございますが、これは明らかにここに書いてあるのでありますけれども、たとえば暴力行為を受けましたときに、人間というのは心で生きている動物でございますから、大変なショックを受けますと、たとえば気違いになることがあります。それから、よく聞くことでありますが、余りに心配をし、恐怖感に襲われたら、人によって違いますが、二枚にして白髪になり、おばあさん、おじいさんみたいになってしまうことがあります。こういうものについてはどう解釈したらよろしいのですか。
#144
○中平政府委員 精神に異常を来した方等につきましては、それぞれの等級、たとえば一級の中に「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」とかいうふうな規定等がございますので、これに該当するのではなかろうか、こういうふうに私は考えております。
 後者につきましては、ちょっと研究させていただきたいと思います。
#145
○岡田(正)委員 それでは、次に進ませていただきます。
 故意か過失かということは、裁定の時点ではなかなかわかりにくい場合がたくさんあると思うのです。それをなぜ第二条で、故意の行為によるという字は書いてありませんけれども、過失をのけてあるわけでありますからそういうことになるわけで、故意の行為によると限定されたのでしょうか。いただきました資料の中で、スウェーデンなどでは過失犯は含まれておりますね。今回新しく、日本が一番遅くと言っては失礼でありますが、先進諸国の中では一番遅く立法化しようとする今回のこの案、恐らく世界でも注目されておると思いますが、なぜ過失をのけるのでしょうか。
 さらに、時間がありませんから一括して質問させていただきますが、過失は刑法第三十八条第二項では、過失といえども犯罪の結果の重さによっては処断する、こうなっております。この法律でいう過失の程度というのはどんな状態でしょうか、これをお知らせいただきたいと思うのであります。
#146
○中平政府委員 第一点の御質問の第二条の故意の行為の認定の問題でございますが、故意の犯罪であるという認定というのは当然、裁定のときにしなければならぬわけでございます。しかしながら、ここでいう故意というのは、刑事裁判でいうほどの厳しい認定を私どもは要求しているわけではございませんし、積極的に故意の行為である、こういうことを推認させるだけの資料があればできるだけ、厳正でありますが被害者の立場に立った形での判定をしてまいらなければならぬではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
 過失をなぜ入れなかったかという問題でございますが、過失の問題につきましては、午前中からるる申し上げておりますように、加害者に資力をつけて、そちらの方から賠償責任を追及する方途が制度的に残されている、したがって、そういう方策で基本的にはやるべきであって、やはりいかなる方策もとりにくい故意の犯罪、しかも、重大な犯罪に限定してこの制度を発足させるべきではないか、こういうことに考えております。
 それから、三十八条の二項ですね、過失はただいま除かれるわけでございますが……(岡田(正)委員「犯罪の結果の重さによっては処断するということになっていますね」と呼ぶ)これにつきましては、少し検討して御報告申し上げます。
#147
○岡田(正)委員 それでは、ちょっと具体的なことで教えていただきたいと思うのであります。今回の法律の精神をいろいろと各委員に対してお答えになっておるその状態からいって、他の法令で救われない非常にお気の毒な立場にある国民を救済しなければならない、拾い上げるんだということが大体、精神として一貫してずっと御回答の中にあったと思うのです。この場合はどうなるでありましょうか。たとえばプロパンガス自殺をされた方があります。隣の家でその飛ばっちりを受けちゃって死亡した。本人ももちろん、自殺したのですから死んでしまった。それで、こっちの方の被害を受けてだれかが亡くなったあるいは大けがをした、重大な後遺症が残ったというような場合はどうなるでありましょうか。
 それから、これは私が知り得た一つの小さな知識でありますが、警察におきまして猟銃の所持を許しておりますね、許可を与えておりますね。この猟銃を持っておる人が山の中に入った。そこで、人間をほかの動物と間違って、たとえばイノシシと間違ってばあんと撃ってその人を殺してしまったという場合には、これははっきりと千円以下の罰金に処す、こうなっておるんでしょう。私が聞いておる知識ではそういうことです。そうすると、警察が許可して与えた猟銃で間違って殺されても千円か、ひどく安いなという気がするのでありますが、この点はどうなるのでありましょうか。千円の罰金を払ったらこの法律ではもう救済しないということになるんでしょうか。本人に資力があるかないかは別としてというか、資力のない場合の話であります。
 それから次に、町を通っておりました。ビルの屋上からばんと飛びおり自殺をなさった方がある。その人はみごと目的を達した。ところが、下を通っておる人の頭の上へもろに落ちたんですから、その人も飛ばっちりを受けて亡くなったあるいは重大な障害を受けたというような場合は一体どのようになるんでしょうか。大変素人っぽい質問で恐縮でありますが、お教えいただきたいと思います。
#148
○中平政府委員 ただいまいろんな事例をお挙げいただいたわけでございますが、要するに、故意が認定される場合にはこの法律の支給の対象になりますし、過失の場合には対象にならない、こういうことになろうかと存じます。
 第一のガスの問題につきましては、やはりこれは自殺の手段としてガスを放つわけでございますから、刑法でいいますガス漏出致死傷ということになりますか、これは少なくともガスを漏出することについて故意が認められるわけでございますから、これは結果的加重犯で、私どもはこれは支給の対象というふうに考えておるわけでございます。
 それからあとの、鉄砲をぶっ放したという問題でございますが、これは打撃の錯誤ということにおいて一般的には過失になろうかと思いますが、未必的な故意が認識できる場合にはこれは故意犯ということになってまいりましょうし、ビルの上から飛びおりたものにつきましても、これも状況によりますが、たとえば下は銀座のいっぱい人が通っているようなところであれば、一種の未必的な故意も認定できる場合もあるわけでございますから、その態様によりまして、故意の認定できる場合は適用になりますし、過失になる場合には残念ながらこの法律は動いてまいらない、そういうことになるわけでございます。
#149
○岡田(正)委員 私は本当に素人らしい質問で恐縮なんでありますけれども、どうもわかりませんのは、一番最初のプロパンガスはよくわかりました。非常に明快です。ところが、二番と三番がどうもわからぬのですね。たとえば猟銃は、私が言っておるのは、あれは確かにイノシシだと自分は思い込んだ。思い込んで撃ったら人間だった。えらいことをしたということになるわけですが、その場合は、いわゆる千円以下の罰金で終わったのだからそれは過失だ、もう終わりだということで、本法では全然救済しないのかどうか。それで、そこらはいろいろと見方がありましてということになるのですが、私の言っておるのは非常に簡単な事例でありまして、イノシシと思い込んで撃ったわけです。鉄砲を担いでおってそのまま暴発して飛び出たというのじゃない。わざわざねらって撃ったのであります。これなんかははっきり本法の適用に入るんじゃないかと思うのですが、もう一度確かめるために御返事いただきたいと思います。
 それから、いまのビルの関係。下の方でわあっと雲霞のごとく人がたくさんおるところへおりたといったら本法を適用せねばなるまい、しかし人影がまばらであったらせぬのだというふうに聞こえたのですよ。これもちょっとおかしいですね。下を通っておる人はそんなことは知らぬですものね。だからこれにつきましても、本法の適用があるのだというふうにはっきりしてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#150
○中平政府委員 個々のケースの場合、事実の認定によるわけでございまして、故意犯ということになりますとこの法律が動いてまいりますし、純然たる過失ということになりますと一応この法律は動いていかない、こういうたてまえになっております。
#151
○岡田(正)委員 それではいま一つ、今度は火事の場合の例をお尋ねしたいと思います。
 たとえば赤軍派という人たちがある目的を持ってナイロンストッキングなんかで人相を隠して夜中に放火した。それによって死亡したあるいは重大な障害を受けたという場合。もちろんだれがやったかわかりません。
 もう一つの場合は、お隣に住んでいらっしゃる人が、極端なことを言いましたら非常なぼろ小屋に住んでおる。もう人生がいやになった、おれはこんな家に住みたくないと言って自分の家に放火した。ところが隣にあるのは、たとえば局長さんみたいなりっぱな家が建っておる。その家が類焼してきれいにまる焼けになった。そんなものは知っちゃいない、火災保険でもらえ。しかし、中におられた方がどなたか亡くなったあるいは重大な障害を受けたという場合にはいかが相なりますでしょうか、ちょっと教えてください。
#152
○中平政府委員 一つ一つの事実認定に係る問題でございますので、抽象的な法律論で申し上げますと、現住建造物放火、つまり人の住んでいる家に火をつけまして、あるいは、空き家でもいいのですが人のいることをある程度認識して火をつけて、その結果人が死んだ、こういう場合には当然、放火という火を放つというところに故意の行為があって、結果的に人が死んでおるわけでありますから、この場合は適用になるということでございます。(岡田(正)委員「失火」と呼ぶ)失火の場合は過失でございますから、一応この法律は動いてまいらないということになります。
#153
○岡田(正)委員 そこで私はお願いがあるのでありますが、さっきからくどいほど申し上げておりました故意による犯罪行為ということに限定されておられることは、せっかくつくられるこの法律が、仏つくって魂入れずの法律になるおそれがあると訴えておるのであります。いま言うように過失なんということは、この法律の中から削ったらいいと思う、そしてスウェーデン方式にされたらいいと思うのであります。いま申し上げるように、故意であるか過失であるか非常に裁定がむずかしいところでございますし、これの運用を過ちますとたちまちにして混乱を起こすようなことにもなりますので、私は民社党の立場からいたしまして、過失ということはのけたらいい、故意だ過失だというようなことを言わなくていいじゃないかというふうに思っておりますので、ぜひひとつ当局の御見解をお知らせいただきたいと思います。
#154
○中平政府委員 そもそもこの法律が生まれる背景になりましたのは、故意の犯罪行為による被害につきましては、遺族の方々の精神的な打撃が特に大きいのに、加害者から損害賠償を受けさせる効果のある方法というものが見出せないということで、国がいわゆる連帯共助の精神に基づきまして公費負担で一応給付金を支給しようという、一つの例外的、補完的な機能を持つ制度でございます。一方、過失犯による被害につきましては、いわゆる原因者負担の原則のとおり責任保険、要するに、加害者側に資力をつけるという方向で救済策が基本的、一般的にはとり得る分野でございますし、現にその方向で自賠責を初め各種の制度が整備されてまいっておるわけでございます。若干観点が違いますが、ガスなんかにつきましても、瓦斯協会等で見舞い金制度をつくるとか、いろんな方向でだんだんにそういう整備がされてまいっておるし、制度的にいってもそういう方策をとり得る道でございますが、故意につきましては、そういう適当な方法がないということで、やはり国の制度として、例外的に公費負担するということになれば、これは故意犯に限るべきではないか、こういう立場でございます。
#155
○岡田(正)委員 私が知っております中に、隣の方が失火をいたしまして、それは本当のぼろ家でありますが、その隣に建っておったりっぱな家がたちまちにして類焼して焼けてしまい、しかも、それに気のついたときには時すでに遅し、中におられた奥さんは、寝巻きのままじゃ外へ飛び出るのがどうかということを考えたのでありましょう、非常に慎み深い人で、着物をわざわざそこで着がえられた、そのほんの一瞬の手おくれのために子供さんは、女の子でありますが、頭も何も全部まる焼けになっちゃって、顔はお岩さんみたいになって、そしてだれからも何にも補償してもらえない。それで、小学校に進学するときになってとうとう死亡してしまいました。全く気の毒なことでありまして、いわゆる不意に襲った災難ですね。これなんかどこも助けてくれないのですよ。
 いまの局長さんのお話でありますと、これなんかまさに全然何にもならない、この法律では救われない。この法律をつくるというその趣旨は、他の法律では救えない人、たとえば自動車の損害賠償法、そういうようなものなんかで救えない人たちに対して、お気の毒であるから国が何とかしなければならぬではないかというのでこの法律が起きてきたものとするならば、そういうことに対しては救いの手を差し伸べてあげるべきではないか、やはりこぼれる者が出てくる法律のつくり方というのはおかしいと私は思うのであります。ですから、法律を提案された精神には私は大賛成であります。大賛成でありますが、どうも網の目が粗過ぎる。いわゆる過失をのけたというところに大きな穴があいちゃったような感じがいたしますので、ぜひともひとつ再検討をお願いしたいと思うのであります。
 また、障害の程度等につきましては、骨子をつくっていらっしゃるそうでありますから、後ほど資料でいただければありがたいと思います。委員長、よろしいでしょうか。
#156
○石川委員長代理 理事会で相談いたしまして、決定をいたします。
#157
○岡田(正)委員 それでは、次に移らしていただきます。
 第七条におきまして「労働者災害補償保険法その他の法令による給付等で」云々とある中で、「その他の法令」とは一体何を指すのでありましょうか、お教え願います。
#158
○浅野説明員 お答えいたします。
 これは労働者災害補償保険法を初めとして、業務上または通勤上の災害に対する補償制度でございます国家公務員災害補償法などでございますけれども、こういう法令、それから警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律、これと同種のものとして、海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律、証人等の被害についての給付に関する法律などがありますが、こういう公的給付を定める法令を考えております。
#159
○岡田(正)委員 それでは確認しておきますが、この場合、被害者が任意で加入をいたしておりました保険、たとえば生命保険とか傷害保険とかそういうものの給付を受ける場合は、減額も返還もしなくてもよいと理解をしてよろしいかどうか。
#160
○浅野説明員 そのとおりでございます。
#161
○岡田(正)委員 そこで、第六条にいわゆる給付金を支給しないという除外規定がございますね。これは時間がありませんので、私はここで御回答をいただこうと思いませんが、恐らく公安委員会の規則でおつくりになるんだろうと思うのであります。つくるのじゃないとおっしゃるのなら答弁をいただきたいと思いますが、つくられるのであるとするならば、いわゆる骨子はできておると思いますので、その資料をちょうだいいたしたいと思うのであります。委員長、よろしく。
#162
○石川委員長代理 資料については、前段同様に理事会で決定させていただきます。
#163
○岡田(正)委員 よろしくお願いします。
 そこで今度は、施行期日の問題でありますが、先ほど来遡及の問題がいろいろと言われておりました。私どももこの遡及をぜひしてもらいたい、その年数は二十年遡及せいということを申し上げたいのでありますが、不法行為のときより二十年間権利行使をしない場合消滅時効にかかるという民法第七百二十四条後段の規定の趣旨に基づきまして、この法律施行の際、現に被害者または遺族が存在する場合は、加害行為が施行のときからさかのぼって二十年以内であれば、本法の被害補償の請求権を有するとするべきではないかと思うのでありますが、この点についての御見解をお願いいたします。
#164
○中平政府委員 繰り返しになりますが、この制度は、加害者から満足な損害賠償を受けられないということを前提とするものでありますが、給付金の性格は、社会全体で被害の緩和を図ろうとするものでございまして、損害賠償請求権の問題とは直接に関連するものではございませんし、さらに、原因者の損害賠償責任を基礎としております他の制度、たとえば公害健康被害補償法あるいは労働者災害補償保険法等におきましても、こういうふうな遡及を行っていないところから見ましても、犯罪被害につきまして二十年の遡及適用を行うべきであるという考え方をとることは困難でないか、こういうふうに考えておるわけでございます。なお、古い事案につきましては、適正な裁定を行うことが困難であるという問題もあるわけでございます。
#165
○岡田(正)委員 先ほどから遡及をしないことが原則であるということをしきりに聞かされておるのでありますが、私の乏しい知識で、いままで知っておりますことを申し上げますと、たとえば税金なんかを取るのに遡及をしてはいけない、国民から税金を取り上げるのについて遡及なんかをしては絶対ならないという原則があることはよく知っております。しかしながら、国が国民のためによいことをしてあげようというために遡及をしてはならないとは、実は私は今日まで思っていなかったのであります。これはたとえが悪いかもわかりませんが、たとえば公務員の皆さん方のベアにいたしましても、四月に遡及ということはしょっちゅうとられておることでございますね。国会で堂々と行われておるのであります。それとこれとはまた別ですということになるのかどうか、ちょっとしつこいようでありますが、お聞かせをいただきたいと思います。
#166
○中平政府委員 遡及しないのがこれは原則でございまして、特定の制度が遡及するということになりますと、これはその制度だけが遡及することの批判に耐え得るだけの合理的な理由というものが要るわけでございます。この制度につきましても、いろいろと考えたわけでございますが、特に遡及するという合理的な理由というものが実は見出せなかった次第でございます。
#167
○岡田(正)委員 これは人それぞれでございましょうけれども、遡及する妥当な合理的な理由が見つからなかったとおっしゃるのでありますが、さすれば私はこう反論したいのであります。それでは、この法律はなぜ今回提案されることになったのでしょうか。これは、市瀬さんを初めといたしまして、実際に被害に遭われた方々が長い間、私財を投げ打ってまで一生懸命になってこの法律をつくるために、世論喚起のために懸命に働いてこられた、それが世論を動かし、当局の心も動かして、今日ついにこれが提案されるに至ったのではないでしょうか。ということになれば、いままで三菱重工の爆破事件だ何だと、ずいぶんたくさんの事例がありますが、そういうことを考えたら、その理由だけでも十分合理的な理由が成り立つじゃないか、人を納得せしめ得る十分な理由となり得るではないかと私は思うのでありますが、いかがでありましょうか、くどいんですが、もう一度聞かしてください。
#168
○中平政府委員 そういうお考え方もわからないわけではございませんが、やはり一つの制度を遡及してまいるということになりますと、他の制度との関連とかいろいろな問題が出てまいるわけでございます。そういう意味で、遡及するということは理論的にも非常にむずかしいという問題があるわけでございます。それから、遡及してまいりますと、先ほどもちょっと触れましたが、犯罪というのは昔からある社会事象でございますから、どの時点で切っても合理的な切り方というのは非常にむずかしいわけでございます。そういう諸般の事情があって、残念ながら遡及ができなかった次第でございます。
#169
○岡田(正)委員 私はぜひ遡及をしていただきたいということをお願いして、次に移らしていただきます。
 第十一条第一項の裁定は、具体的には一体どんな手続を踏まれるのでしょうか。それから、第十三条の裁定のための調査権限、これは一体何を考えていらっしゃるのか、この際明らかにしていただきたいと思います。
#170
○浅野説明員 お答えいたします。
 まず、この給付金を受けようと思われる方からの申請を受けます。その後、いまおっしゃいました十三条の調査権限、二項は捜査機関等への照会、この場合が多いと思いますが、こういう形で照会をする。さらに必要があれば、一項の権限でみずからも調査をする。そういう調査の結果、その事案が犯罪被害に当たるか否か、加害者と被害者の関係はどうなっているのか、被害者の責任度合いといいますかこれはどのようなものかという点を判断いたしまして裁定を行うというのが、全体としての裁定の手続であると思います。
 調査権限の内容はただいま大体申し上げたとおりでございますけれども、申請者に特に出頭を求めるという場合は、申請者と捜査機関への照会結果とが異なる、申請者の御意見とそういう結果が異なるような場合にもう一度意見をよくお聞きする、あるいは、申請者の身分関係等について確認する必要がある場合というような場合になろうかと思います。
#171
○岡田(正)委員 そこで私が非常に心配をいたしますのは、第十三条で被害者の捜査への協力義務。これは捜査に協力せぬのなら裁定しないよということに当然なってくると思うのでありますが、その範囲というものを特定して制限列挙をすべきではないかと思うのであります。が、いかがでしょうか。これがもしあいまいになってまいりますと、補償それ自体の決定権を捜査機関がお持ちになることになってしまうのではないでしょうか、なりかねないと思うのであります。これはたしか横山先生もちょっとおっしゃったかと思いますけれども、犯罪行為を知ってから二年以内に言ってこいよ、そうしなければ請求権は放棄だぞ、こういう問題なんかが起きてきたときに、あなた知らなかったと言うがうそだろう、知っておったろう、知っておったろうとくどく言われた場合に、一体だれが何をどこで歯どめをかけてくれるのでしょうか、そういう点が全然わからぬわけですね。それで、そのために請求権をみすみす失ってしまうというようなことがあってはならないというふうに思うのでありますが、いかがでございましょうか。
#172
○浅野説明員 お答えいたします。
 この十三条の調査権限というのは、裁定を行政として行う場合の権限でございまして、規定の仕方としては、労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法等においてもこういうような書き方にしているところでございますが、本来これは裁定という行政の仕事のために行う調査でございますので、直接捜査への協力義務という問題にはならないのではないかというふうに思います。
#173
○岡田(正)委員 非常に細かくなって恐縮でありますが、たとえばあなたの申請事項について、こういう問題についてあなたの意見を聞きたいから、何月何日に来てくれと言ったけれども、その期限が過ぎても本人は出頭しなかった。ところが、何かの都合でたとえば一週間おくれてきた、あるいは一カ月おくれてきた。そんな不誠意な者は調査に協力的とは思われぬ、そんな者には認めぬ、こういうようなことはないでしょうね、私はそれを心配するのです。そういうことなんかをちゃんと決めておかないと、飛ばっちりを受ける人がずいぶん出てくるのじゃないかというふうに思うのであります。いわゆる法律になじまない、警察に親しんでいない人たち、いままで全然無関係の人たちというものはとかく、警察署に行くといったらそれだけでも、何かしらん足がすくむというような人が多いわけでありますし、はがきが来ておっても、悪いことをしたから来たんだなというふうに近所の人から思われるというぐらい、警察というものの威力はなかなか絶大なものがあるのであります。そういう点ちょっとお答えいただきたいと思います。
#174
○中平政府委員 申請者に対します対応は、私どもできるだけやはり落ちのないように、しかも、基本的には申請者に有利になるように解釈し、運用していかなければならぬと思います。この被害者自体がいわれなき犯罪によって被害をこうむった方の関係者でございますから、そういう対応をしていかなければなりませんし、それから、これに基づきまして申請者に対する呼び出しだとか、内部のいろいろな手続的な規定が恐らく設けられると思いますが、そういう点を十分配慮しながら、間違いのないように運営していくような担保をしてまいりたいと思っております。
#175
○岡田(正)委員 続いてお尋ねいたします。
 第九条の給付額でありますが、これは外国に比べて遜色はない、こうおっしゃるのでありますけれども、日本の物価は非常に高いですね。いわゆる金の値打ちというものが全然違うと思うのです。ひとつ具体的な比較を教えていただきたいと思います。
#176
○浅野説明員 お答えいたします。
 国によりまして額の定め方もさまざまでありますので、一概に申し上げられませんが、全体として見れば、いま先生がおっしゃったように私ども考えております。
 まず、アメリカの各州について見ますと、最高限を一万ドルから二万五千ドルとする州が多いのでございます。いま手元に持っております資料を当時のレートで邦貨換算してみますと、二百四十万円ないし六百万円というところでございます。カナダの各州についても、同様の状況のようでございます。イギリスにつきましては、具体的な数字による上限は定められておりません。いま話に出ておりますように、事案によってはかなり高額になる場合があるようでございます。ただ遺族給付につきましては、遺族が被害者に経済的に依存していた場合というのに、スコットランドは別でございますけれども、限られておりまして、そういう形では、遺族給付全体とすれば私どもの案の方が手厚いという面もあるかというふうに思います。それからフランスは一九七九年におきまして、最高額が十七万五千フラン、約千五十万円となっております。その限りではこちらの案よりも高いという給付額が出てくるわけでございますけれども、この国におきましては、遺族などの生活困窮ということが要件にされておりまして、給付される場合がかなり制限されております。それから西ドイツは年金でございまして、ちょっと比較が困難でございます。
 以上でございます。
#177
○岡田(正)委員 いろいろ事情があろうと思いますが、先ほど来各委員の方々から言われておりますように、私もちょっと額が少ないんではないか。いま日本人の基準になっておるのはまさに自賠責、この金額が二千万が大体基準になっておりますので、できるだけ金額をひとつ近づけていただきたいという希望を申し述べまして、次へ進ませていただきます。
 第三条で給付は、日本人で、いわゆる日本国籍を持つ者で、日本国内に住居を有する者というふうに限定してあります。ところが、けさ一番バッターでお尋ねになりました社会党の横山先生のお尋ねの中で、韓国籍の者で日本に住居のある人は適用すると理解していいかと、こう聞かれましたならば、全くそのとおりでございますと、こういうお答えがありました。これは本当に間違いないんですか、それを答えていただきたいと思います。
#178
○浅野説明員 お答えいたします。
 この三条の括弧の中で除かれておりますのは、日本国籍を有しないという要件と、「かつ、」でございますからその要件と日本国内に住所を有しないという、この二つの要件がそろった方が除かれる、こういう趣旨でございます。したがいまして、外国籍の方でありましても日本国内に住所を有している場合は、給付の対象になるということでございます。
#179
○岡田(正)委員 そこでさらに、くどいようでありますが、日本国内に住居を有するという基準は何でございますか。
#180
○浅野説明員 日本国内に継続して住んでおられる、通常住所を有しているという考え方がありますが、そういうことで判断することになると思います。趣旨といたしましては、日本の社会を構成している人というものを含めようということでございます。
#181
○岡田(正)委員 もうちょっとはっきりさしていただきたいと思いますが、たとえば日本人でありますと、ここからこっちの町へ行った、そのときには、あるいは市町村役場へ行っていわゆる登録いたしますね。住民登録をしたら、それでそこへ住居を有しておる、こう見られておりますね。選挙権なんかの場合は、そこに住居を有して三カ月間という日にちがたたなければ投票権はないというようなことなんかがあるわけでありますが、この場合はそんなことじゃなくて、住居を有すればいいのでありますから、たとえばそれぞれの市町村役場に行って外国人登録法に基づく登録をしたら、たとえばその日に登録した帰りがけに災害に遭った、それも適用になると考えていいわけですね。まだ住居の錠もあけてないし掃除もしてない、だけれども役所には届けた、その帰りがけに災難に遭った、それはもう当然に、日本国籍を有せず、それからもう一つは日本国内に住居を有しない、その二つがそろわなければ排除しないというのでありますから、それは片方の条件を整えたことになりますね、いかがですか。
#182
○浅野説明員 継続して住む意思を持っておりましたら、対象になると考えております。
#183
○岡田(正)委員 その人は不幸にして死んだんですよね、いわゆる登録だけして、それで家まで帰ろうと思って死んだわけですね。そこへ住むのは、あるいはどこかの会社の事情で、そこの会社の出張員として来て、長期にホテルへ滞在するのはばからしいから会社の金でその家を借り切って、そして一カ月なら一カ月住もうと思った、それは長期というのですか、だれに確かめるのですか、それは。
#184
○浅野説明員 お尋ねのケース等につきましては、その会社に尋ねる、その他周囲の方に尋ねるということで、事実を確認していくことになると思います。
#185
○岡田(正)委員 長期の期限は何ですか、一日、一年、十年……。
#186
○浅野説明員 それは日本の社会を構成するというような形でお住みになっておるということで、具体的にどの期限ということはいまのところ考えておりません。
#187
○岡田(正)委員 どうもちょっと納得しがたいのでありますよ。こういうふうににわかにできた
 にわかにと言えば失礼でありましたが、ずいぶん研究はなさったのでありますが、初めての新法でありますから、いろいろ聞かれるとお答えに困ることもよくわかるのであります。それはよくわかるのでありますが、しかしこういうことは、住居を有する者となれば、それは一体どの程度のことを言うのかというようなことまで入ってくるでしょう。
 だから、私どもの言っていることは、たとえ旅行で外国人がお見えになっておっても、けさ成田に着いた、そしていま銀座を歩いておった、ところへ爆弾がどんと来た、そこでひっくり返ってもし亡くなったとしても、あるいは障害を受けたとしても、それは日本の国の責任です、お気の毒でしたと言って日本人と同等のものを差し上げる、こういうことがあれば、いま非常に外交が下手だ、貧弱だと言われておるこの日本が一躍世界の信用を集めるんじゃないでしょうか。私はいま大きな外交手段にもこれは使えると思うのですよ。だから、こんな住居を有するだなんていうような細かいことをおっしゃらないで、そんなことが起きることは万々まずそうあることはないのですから、そう予算のことを大蔵省を恐れないで、ひとつこの際この法案の三条の中から、日本国籍を有せずとか日本国内に住居を有せずとかそういうようなことは削除して、いわゆる内外人ともこの法律の適用を受ける、たとえ一旅行者であってもその適用を受けるというふうにされて、ひとつ大いに外務省に肩を持ってあげたらどうですか。いかがですか。
#188
○中平政府委員 午前中のときも御説明申し上げましたが、これはやはり日本の社会を構成しておる、そうした人について初めて連帯共助の精神に基づいてそうした給付をする、そういう考え方が出てまいっておるわけでございまして、午前中に横山先生から御指摘がありまして、一応そういう点からの研究といいますかそういうものはしておるわけでございますが、私どももともと基本的なそういう考え方で一応立法し、そうした人たちに対してやはり給付をする、基本的には、これは例外的な制度でございますから、そういう形で運用してまいりたい、こういうふうに考えております。
#189
○岡田(正)委員 この点は私どももう全く横山先生たちと同意見でありますので、ぜひこの際、まあ地方行政委員会でこれからいろいろ御審議に相なると思うのでありますが、この問題については、こういう内外人の区別なんということは取り去って――日本の社会を構成しておる者という言葉が私はどうも気になるのでありますが、日本の社会というのは一体、旅行者は一人も歩いていないというのが日本の社会なんでしょうか。全然国際空港も何にも要りはせぬ、そういうものはなくて日本の社会というものは構成されている、そんなものじゃないと思うのです。だからこの際、日本の社会を構成しておる一員に町の歩道を歩いておる旅行者も入るという考え方に立ったって私はおかしくないと思うのです。
 それからいま一つは、これはそんなことは入れぬでもいいじゃないかということを言われる人の意見の中に、よその国がそういう法律をつくってないのに、日本だけがサービスすることはないじゃないかということをおっしゃる方があります。しかし私は、これはそんな論理で片づけることではないと思っておりますので、ぜひ前向きで御検討いただきたいと思う次第でございます。
 さてその次に、これは先ほど沖本先生の御質問のときにお答えがありましたが、いままで市瀬さんたちとかいろいろな方がいらっしゃいますが、そういう方に適用にならぬ、適用にならぬけれども、しかし、残されておる子供はかわいそうじゃないか、そういうものについてはひとつ認可法人でもつくって、育英資金制度といいますかそういうものでもつくって、御期待に沿いたいというようなことをおっしゃっておりましたが、同じことが言えると思うのですね、これから後そういう被害を受けられた子供さんたちが将来、いわゆる義務教育あるいは高等学校というような教育をお受けになるときに、たとえばその認可法人でこれを拾い上げるつもりか、あるいは、それは別途にこの法律で幾ばくかのお見舞いを差し上げる気なのか、その点のけじめをはっきりとしていただきたいと思うのであります。
#190
○山田(英)政府委員 先ほど御答弁いたしました奨学資金制度といいますのは、民間の方の発起を待ちまして、有志の方の御提案に従ってつくられる財団であろうと思います。これにつきましては、私どももできる限りの力を尽くしたいと思っております。
 その場合には、財団の寄付行為、定款に係るわけでございますけれども、いま御指摘のように、その財団がつくられた以降の犯罪被害を受けた方の遺児に対して出すか出さないか、これはその財団の規模なり定款、寄付行為の定めによると思います。常識的に申しますれば、奨学資金支給を事業といたします限り、将来にわたっても出すのが通常の例だろうと思います。従来あります交通遺児、海難遺児につきましても、同じように支給しているわけでございます。
 この法律の枠内で申し上げますれば、一時金としての遺族給付金、障害給付金ということで制度を立てておりますので、いろいろな補償制度につきましても、貸し付け制度というもの、奨学資金制度というものを並行して立てておるのはないわけでございまして、将来の研究課題にはなりましょうが、法律の枠内においてそういう制度ということは、ただいまのところは考えておらないわけでございます。
#191
○岡田(正)委員 最後に御質問いたしますが、もし遡及することがむずかしい――いままでのお答えでは、それはひとつ御勘弁願いたいという御答弁が終始一貫続いておるわけでありますが、この法律は来年の一月からでしたね。これだけ世論の注目を集めておる法案が、私は地方行政委員会にくちばしを入れる気は毛頭ございませんが、参議院の関係もございますけれども、皆さん方の協力があれば五月一日施行とすることも不可能ではないと私は思うのであります。五月一日に施行したその公布の日から即日発効するのであるということにするべきではないか。何で来年の一月まで――よく言うじゃありませんか、来年の話をしたら鬼が笑うと。いささかふざけてはおらぬかと思うのです。
 いままでの御答弁を聞いておりますと、いやこれは新しい法律でありまして、各四十七都道府県の公安委員会でこれから事件を受け付けるわけでありますから、いろいろなことの教育も要るし、事前の準備も要るし、PRも要るしと、いろいろなお話がございましたけれども、PRに要るのだというならこれは話は別です。だがしかし、事前の教育が要る、備えが要るから来年の一月一日までというのは余りにもスローモーション過ぎる。こんなことをいまから勉強しなければならぬような役人がおるのですか、こんなことはみんなよう知っておるでしょう。まことに簡単なことなんです。恐らく大蔵大臣が締め上げたのだろうと思うのです。私はこの際、この施行期日というものを、遡及ができぬというのなら、少なくとも本会議で可決決定をいたしましたその日から即日施行すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
#192
○中平政府委員 この制度は何分にも、これは全く新しい制度でございますので、ただいま御指摘もございましたが、やはり諸般の準備も要りますし、それから、間違いのないような運営もしてまいらなければならぬわけでございますから、そういう諸般の状況を踏まえて一応、暦年の開始日である五十六年一月一日を目途に適用いたす、こういうことにしておる次第でございます。
 大蔵大臣が云々というお話もございました。確かにそれは現下の厳しい財政の状況が全く関係ないと言えば、これは正直な話でなくなるわけではございますが、何分にも新しい制度を非常に厳しい中から新規の政策としてせっかくまさにスタートしようとしているわけでございますので、この点につきましては深い御理解を賜りたいと思います。
#193
○岡田(正)委員 どうもありがとうございました。
#194
○石川委員長代理 以上で連合審査会は終了いたしました。
 これにて散会いたします。
   午後三時七分散会
ソース: 国立国会図書館
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