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1979/01/28 第91回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第091回国会 本会議 第3号
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1979/01/28 第91回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第091回国会 本会議 第3号

#1
第091回国会 本会議 第3号
昭和五十五年一月二十八日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和五十五年一月二十八日
    午後一時開議
  一 国務大臣の演説に対する質疑
    …………………………………
 第一 日本専売公社法等の一部を改正する法律
    案(第九十回国会、内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員白浜仁吉君に対し、院議をもつ
  て功労を表彰することとし、表彰文は議長に
  一任するの件(議長発議)
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時四分開議
#2
○議長(灘尾弘吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 永年在職議員の表彰の件
#3
○議長(灘尾弘吉君) お諮りいたします。
 本院議員として在職二十五年に達せられました白浜仁吉君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 表彰文を朗読いたします。
 議員白浜仁吉君は衆議院議員に当選すること十回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
    〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
    ―――――――――――――
#5
○議長(灘尾弘吉君) この際、白波仁吉君から発言を求められております。これを許します。白波仁吉君。
    〔白波仁吉君登壇〕
#6
○白浜仁吉君 ただいまは、本院に在職すること二十五年のゆえをもちまして、私に対し御丁重な決議を賜り、院議表彰の栄誉に浴しました。まことに身に余る光栄でありまして、感激にたえないところであります。(拍手)
 これひとえに先輩、同僚議員諸賢の温かい御指導、御鞭撻のたまものでありまして、衷心より厚く御礼申し上げます。(拍手)
 さらにまた、多年にわたり私を励まし助けていただきました全国の有志の方々並びに長崎県民の皆様、わけても地元長崎県第二区の皆様の一方ならぬ御芳情に対し、心から感謝を捧げるものであります。
 顧みますれば、私が五年余の長崎県議会議員を経て本院に初めて議席を得ましたのは昭和二十七年十月でありました。わが国が戦後の占領時代を終わり、独立を回復した年であります。それは混乱と飢えと廃墟の中から祖国新生の曙光を求めた再生第一歩の時代でありました。
 私は、長崎の原爆により妻子を失い、焦土と化した瓦れきの中に立って、みずからと、この国の再生復興に思いをめぐらしたことを、いま、きのうのごとく思い起こします。(拍手)
 再生への暗い、長い苦難を通じて手にした安定成長の時代、そして今日、この平和と繁栄の日々にありまして、過ぎし日を思い、帰らざる者をしのびますとき、感慨ひとしおなるものがあります。
 いまや、わが国の岸辺を洗う波は日増しに高まりを見せ、来るべき二十一世紀への胎動とも申すべき新たな試練に直面しております。
 この内外多事のときに当たり、私は、一九八〇年代の幕あけとともに賜りました本日の光栄と感激を深く肝に銘じ、諸賢の驥尾に付して最善を尽くし、なお一層の精進を続ける覚悟であります。(拍手)
 何とぞ変わらざる御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、御礼の言葉といたします。ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#7
○議長(灘尾弘吉君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。飛鳥田一雄君。
    〔飛鳥田一雄君登壇〕
#8
○飛鳥田一雄君 私は、日本社会党を代表して、大平総理の施政方針につき、国民が感じ、恐れ、願っていることを伺いたいと存じます。(拍手)
 激動と転換の時代と言われる八〇年代は、国際的にも、国内的にも種々の問題を含んでおります。
 いま、イラン、アフガニスタン、インドシナ半島、韓国などの情勢とその背景にある米国、ソ連、中国、西欧などの動向は、いずれも短期的尺度ではかれるほど単純なものではありません。それは資本主義諸国において、戦後史的転換であると言われておりますし、社会主義諸国にとっては、ロシア革命以来の最大の矛盾の露呈であると言われております。また、イスラム教諸国にとっても、実に、七世紀以来の転換期だと言われておるのであります。核問題を初め、資源・エネルギー、食糧、環境問題など、個別的に考えてみましても、世界諸国民がいまや文明史上の一大転換期を迎えていると言っても過言ではありません。すなわち、従来の惰性によって私たちは物事を処理するのではなく、現実を見詰めなければならないのであります。
 しからば、この激動期に当たって、私たちはいかに平和と安全を求めるべきであるか。
 政府は、従来一貫して、この点について、対中協調、安保堅持を基軸とした外交路線を続けてこられたのであります。しかし、六〇年の安保条約締結当時と現在を比べてみて、アメリカの国際的地位も影響力も大きく変わったのではないでしょうか。否、それだけではなく、国際政治と軍事戦略の構造そのものが大きな変化を遂げているのであります。
 私は、最近のイラン、アフガニスタン問題にいたしましても、それらの背景には、アメリカがベトナム戦後一度自国内に戻ったものの、ここ二、三年産軍複合体の突き上げによって、再び積極的に世界の同盟者を再編成しつつ、対ソ世界戦略の前面に立つという舞い戻り傾向に動いており、他方、それに脅威を感ずるソ連の過剰なまでの反応が示されたことを感ずるのであります。
 もちろんわが党は、理由のいかんを問わず、ソ連のアフガニスタン武力介入には断固反対であり、その即時全面撤退を要求するものでありますが、この情勢によって生ずる緊張が、NATO地域にも、極東地域にも、危険な波動を伝えつつあることを痛感いたしておるところであります。しかも、米ソの核戦略は、すでに従来の抑止力という位置づけではなく、最近は軍事技術の向上によって、先制第一撃による敵のせん滅を目標としたものに転じつつあると言われているのであります。こうして今日の国際政治の情勢は、もはや大国の力の論理だけでは処理できなくなってまいりました。世界戦争の危機を真に阻止する力は、大国の軍備増強によってではなく、逆に、非同盟諸国や世界の平和を愛する諸国民の力を結集して、平和を積極的につくり出すということによってもたらされるのであります。(拍手)
 総理、あなたは、こうした八〇年代の新たなる危機の構造のもとで、日米安保条約とは一体何であるかをお考えになれませんか。それを堅持することの今日的意義は、過去に比べてさらに危険なものになりつつあります。沖繩駐留の米海兵隊二万人は、いち早く中東の戦略配備に編入されました。先ごろ来日せられたブラウン長官は、自衛隊の海空軍戦力の増強を求めたと伝えられております。本年度の予算案を見ましても、F15やP3C購入分だけで国庫債務負担は三千百億円もふえておるのであります。
 総理は、前国会における私の質問に対して、リムパックへの自衛隊参加が日米安保の機能拡大とは無関係であるとお答えになりましたが、いまや現実の情勢は極東の範囲を超えて、その効果が中東、中部太平洋にも及ぶことになり、私の危惧、すなわち日本が戦争に巻き込まれるおそれを具体的につくり出しているのではないでしょうか。(拍手)
 カーター大統領は、この二十三日、米上下両院合同会議で、ソ連に対し、ペルシャ湾地域を支配しようとするいかなる試みも米国の基本的国家利益に対する攻撃とみなし、軍事力を含む必要なあらゆる手段を行使して撃退すると言明せられておるのであります。米国の立場や国家利益のために、日本が戦争に引きずり込まれることはないでしょうか。合同演習はその導入部とならないとおっしゃられるのでしょうか。(拍手)
 私は、八〇年代においてこそ、日本国憲法に基づく非武装、積極中立政策の意義がますます強調されなければならないと考えております。(拍手)小さな部分戦争が、時として大きな米ソの対立と衝突に発展していく危険はないでしょうか。
 この立場から、私たちは日米安保条約の廃棄を目指し、軍事基地撤去、自衛隊の増強に反対して、その縮小、改組を要求する運動、アジア・太平洋地域における非核武装地帯設置の運動などを進めてまいりました。
 こうした国民的運動が、世界各地に広がりつつある核兵器禁止、軍縮推進の運動と深いかかわり合いを持つのは当然であります。政府は、わが国の平和憲法に忠実であるならば、まず口火を切って、米ソの果てしない核軍拡競争の悪循環に歯どめをかけ、軍縮への具体的な道を提起すべきではないでしょうか。(拍手)
 軍縮の課題は、もはや単なる理念や理想ではなく、今日、人類が生き延びていくための絶対的な条件であり、生々しい現実のテーマであります。総理の安保廃棄、軍縮についての御意見を伺いたいと思います。
 まずその具体的な第一歩として、米中ソ三大国を含めたアジア軍縮会議の提唱をお考えになれませんか。このことによって日本の軍縮の意思を明らかにし、アジア各国民に、米軍の先兵としての日本といった印象を払拭することができるはずであります。もし総理が環太平洋連帯構想を平和へのステップとお考えになっているとすれば、これがその第一歩であり、その基本理念をアジア諸国に示すものであるはずであります。ここからお始めになるべきではありません。
 また、軍縮の具体策を国民とともにつくり上げていくために、北欧諸国に見られるような平和研究所を設けるとか、各大学に平和問題講座を設置するなど、すぐにも着手できる幾つかの方法があるはずであります。わが国民の間では、原水禁を初め、多くの国際的平和会議の経験が豊かに蓄積されていることは御存じのとおりであります。いまこそ積極中立の態度を明らかにすべきことは一時もゆるがせにすることのできないことであるはずであります。国民の戦争への不安に対して総理はお答えを願いたいと思います。
 なお、報道によれば、政府はソ連のアフガニスタン侵入に不快感をあらわすために、ソ連との文化交流協定締結を無期限に延期するとのことでありますが、文化の交流、人民間の相互理解は平和の基本であるはずであります。不快感の表現に文化を用いるということは本末転倒もはなはだしいものと言わざるを得ません。断じて平和を進める手段を対抗の具に供すべきではありません。また、アメリカに追従してイランやソ連に対する経済制裁に加わることも慎重であるべきであります。総理の御所見を伺いたいと存じます。(拍手)
 最近、朝鮮半島の自主的平和統一の機運が復活したように見えますことは、わが国の平和にとっても非常に喜ぶべきことでありますが、総理はこの機会に、朝鮮民主主義人民共和国とわが国民との交流の窓を積極的に広げ、また、金大中氏事件の完全解決を目指して努力せられるお心持ちは為りませんか。総理の御所見を伺いたいと思います。(拍手)
 次に伺いたいのは、こうした平和への努力とともに、そのために日本が経済的にいかなる自己改造を遂げるべきかということであります。御承知のように、六〇年代、七〇年代を通じて、わが国は資源・エネルギーの供給源を海外に求めつつ、工業製品の輸出を中心として経済の成長を図ってまいりましたが、もはや従来のような集中豪雨的輸出は限界を迎えつつあります。とりわけ第二次石油危機の展開のもとで、先進国、発展途上国の双方から経済大国日本への反発が強まり、その強引な進出に対して、ますます高い障壁が立ちふさがりつつあるのであります。また、いわゆる中進国の追い上げも急であります。総理はこの手詰まり状況をどうごらんになっているのでしょうか。まずこの点を伺っておきたいと思います。
 私は、通産当局が今後も国際競争力を発揮できる分野だけに産業構造を特化させ、さらに輸出を増大し、これに見合う輸入と援助を図る方針だということを伺っておりますが、このことは、すなわち巨大企業中心の輸出至上主義であり、国内での産業淘汰を一層進める結果となることは明らかであります。これはわが国の農業、中小企業の大半を冷酷に切り捨てていく道ではありませんか。しかも、特定産業や巨大企業だけを選別、育成して世界市場で覇を競うという特化路線は、わが国の産業構造をいびつにするばかりか、外国との経済摩擦をさらに激しくし、結果として、わが国の孤立を致命的なものにしてしまうおそれが強いのであります。
 国際平和を進めていくためにも、中小企業、農漁民のためにも、一部の突出部分優遇ではなく、広範な産業分野で均衡のとれた経営の近代化、共同化、技術開発などを一層積極的に助成し、バランスのある安定した生産、流通のシステムをつくり出すことがこの際必要であります。そうした国際社会で生きていくためにも、福祉型成長経済、内需拡大経済への転換を遂げなければならないのでありますが、総理の御所見を、この点でも伺いたいと思います。(拍手)
 第二に、八〇年代の根本問題としてお尋ねいたしたいのは、総理が国民生活と社会の運営をどのようにお考えになっているかであります。
 いま、国民のだれもが、何よりも心を悩まし、不安を感じておりますのは、仕事や生活の見通しがはっきりしないことであります。もはや高度経済成長の時代があり得ないとすれば、国民一人一人は何を求め、どんな目標を掲げて努力をすればよいのか、真剣に知りたがっているのであります。
 いま、私たちが直面している問題を挙げただけでも、スタグフレーション下の不況と物価高、エネルギー危機、福祉と雇用の停滞、都市問題、環境問題の悪化、食糧自給体制の崩壊、教育の荒廃など、枚挙にいとまがないのであります。
 これらの重要問題については、予算委員会で同僚議員から徹底した質疑があるはずでありますから、私は一々これを申し上げませんが、一言で申し上げれば、それらはすべて巨大資本優先及びそのための中央集権という、これまでの政策原理の破綻から生じてきているのだと存じます。小手先の対策で解決できることではないのであります。生産の原点である職場や、生活の原点である家庭から国民一人一人の意欲や考え方をくみ上げ、組織し直すことを考えなければならぬはずであります。
 私たちは、すでにこの点について、人間復権、自立と連帯、平和の積極的創出という八〇年代の根本理念を提出いたしました。経済、社会のあらゆる格差、不平等をなくし、インフレ、不況のない福祉型成長経済の実現、食糧、資源・エネルギーの安定的確保、人間尊重の教育、文化、科学技術の振興など、すべては大資本支配に対して民主的改革を考えない限り解決いたしません。(拍手)
 たとえば、食糧の自給体制でありますが、民族将来のために、穀物自給率六〇%以上を達成しなければならないと言われておりますが、これも上から貿易との見合いで決めるのではなく、生産の原点にある農民、生活の原点に立った消費者との間に広範な討論を起こし、生産と経営の形態、すなわち、システムについて民主的改革の方途を探るべきではないでしょうか。生産、経営の原点を一人一人の国民の中に移していかない限り、国民の不安も消えませんし、生産の意欲を沸き上がらせることもできないのであります。自分が参加し、手ごたえのある改革なしに人々の不安は消えません。
 教育の問題についてもしかりであります。前国会における全会一致の決議に従って、小中学校の四十人学級を至急実現すべきは当然でありますが、それだけで教育の荒廃が完全に救えるものではありません。荒廃をもたらしている最大の原因は、憲法と教育基本法に定められた民主教育の本義、すなわち、国民一人一人の参加がなおざりにされ、逆に企業社会、官僚社会の必要に従属した手段になっている点にあります。格差、不平等、金権志向の社会的風潮とシステムが温存されたままでは、子供たちは、いまの管理社会の階段の中で順位争いだけを至上目的とするエリート教育によって苦しみ続けなければなりません。
 総理は一体この現状をどうお考えになるのでしょうか。
 まず、文部省の上からの教育支配を絶つことであります。教育委員会制度を改めて、教育制度を国民に開放することであります。この点、東京都中野区の区民の運動は高く評価され、今後日本全国に及ぼすべきものであると存じますが、いかがでしょうか。特に、この提案が市民の中から出てきたということを私たちは大切なことだと考えます。すなわち、国民一人一人の参加と納得なしには、すべての制度は、どんなにきれいな文言によって飾られていようとも、いつしか支配者に便利なものとなってしまい、国民のものではなくなってしまいます。八〇年代の指標として、私は、ここに改めて国民参加の提案をいたしたいと存じます。
 つけ加えて申し上げれば、量的に大きくふくれ上がっている現状に対して、現在の大学制度についてかなり抜本的な見直しの必要が生じていると言ってよいと思います。教育を社会の文化状況の中でとらえる立場から、大学を地方文化センターとして開放し、それぞれ個性のある自由な大学制度をつくり出すべきではないでしょうか。これはすぐにでもできることであります。総理の御見解を伺いたいと思います。(拍手)
 私は、この八〇年代ビジョンについて、総理から官僚作文風のお答えをいただくつもりはつゆさらありません。全部でなくてもいい、一つでも二つでも国民のために、国民が願っている参加の方式をやろうという御決断が欲しいのであります。
 どんなに言葉が整っていても、年金や医療の福祉政策が国民の知らないうちに後退してしまっていたり、地域住民の不安や抵抗を押しつぶして原発建設が強行されたり、あるいは環境アセスメント法案の国会提出が、業界や与党の手で四回にもわたって押しつぶされるなど、こうした強引な態度こそが国民の不安をつくり、政治への不信を増大しているもとになっているのであります。(拍手)管理社会下における民主主義の危機がいまほど激しいときはありません。
 ここ十数年来、わが国でも住民運動、市民運動が目覚ましい成長を遂げてきました。これは、管理社会における中央集権に対する抵抗であると同時に、市民の主体的参加、分権、自治を成熟させ、新しい形の民主主義としてわが国の風土に定着しつつあるものであり、八〇年代はまさに国民のものでなければならないことを指し示しているのであります。
 ところが、総理は逆に、田園都市国家構想を唱え、他面では地方の時代の尊重や家庭基盤の六実、日本型福祉などを口にしておられますが、本当に民主主義の形骸化や空洞化を自覚され、その再構築を目指しておられるのか、それとも、行財政破綻の穴埋めを家庭や地域や自助の努力に押しつけようと意図されているのか、疑わざるを得ないのであります。いかがでございますか。
 また、内外世論の高まりの中で、昨年国際人権規約の批准、発効を見ましたことは、わが国の人権擁護史上画期的な出来事でありますが、ストライキ権、教育無償の権利、公休日に報酬を受ける権利等について政府が留保したことは、時代の流れに逆行するものと言わざるを得ないのであります。
 さらに、ここ数年来、実に百六十一社もの有力企業が八種類の部落地名総鑑を隠し持ち、さらに昨年来新たに二十五社がひそかに購入していた事実があります。部落問題の完全解決には環境改善事業だけでは不十分であり、教育、啓発、雇用、産業等の対策の充実、国の責任による自治体負担の軽減等が必要であります。
 一昨年末、同和対策事業特別措置法三カ年延長の際、全会一致で決議されたとおり正確に事態を把握し、法の総合的改正を図り、幅広い民衆参加の積極的対策を検討すべきでありますが、総理の御所見をここに伺いたいと存じます。(拍手)
 第三に、私は、本年度予算案に対してお尋ねいたしたいと思います。
 詳細は同僚議員の質問に譲ることといたしまして、私は、主要な若干の問題点に限って質問をいたしたいと存じます。
 申し上げるまでもなく、破綻に瀕した国の財政を再建のレールに乗せることは目下の急務であります。政府も、本年度を財政再建元年としてこの課題に取り組まれたはずでありますが、本年度予算案の内容を見ます限り、それは国民の期待する財政再建の方向から大きく外れ、むしろ逆行したものとさえなっております。
 国民は、福祉や医療や教育費など民生予算を手当たり次第に削減するという財政再建を求めたのではなく、大企業や資産家や高級官僚あるいは軍事費などに偏った現行税財政の改革を断行して、それを通じて国民のための財政再建を推進することに期待してきたのであります。
 この場合、われわれにとって必要な財政再建とは、生活安定を基本目標に設定した財政構造を確立し、そのための税財源の再配分を実施することであります。すなわち、税財政の質的転換を行うことでありますが、政府が国民の期待にこたえるためには、したがって、従来の、まず経済成長あって初めて福祉、生活向上といった発想ではなく、福祉の充実、生活向上のための諸施策が同時に経済の発展をもたらすという新しい発想に転換しなければなりません。(拍手)しかしながら、本年度予算案からはそうした発想転換の片りんすら感じられず、むしろ、財政再建を大義名分とした福祉切り捨て、大衆負担増による国民生活圧迫の予算と断定せざるを得ないのであります。(拍手)
 本来なら、五十五年度予算案は、不急不要の偏った歳出を整理削減し、不公正税制の改革によって増収を図り、また、物価安定策やエネルギー対策などを柱に組み立てるべきものでありますが、そうしたことに対して、総理、あなたは万全を尽くしたと思っておられるのでありましょうか、ここにお伺いをいたします。(拍手)
 たとえば、大法人に対する課税強化を政府の諮問機関である税制調査会でさえ答申しておりますのに、法人税率の引き上げを見送りとされたのはいかがでしょうか、どういうわけでしょうか。その経過をたどってみますと、一時は法人税率三ないし五%の引き上げが打ち出され、次いで、税制改正の具体的な作業が進むにつれ一ないし二%となり、あるいは〇・七五%と次第に低下し、ついには政府施策から消えてしまったのであります。一体これは何としたことでしょうか。最近、自民党は財界首脳に対して、参議院選挙のために六十億円の政治献金を要請したと伝えられておりますが、大法人課税を見送ったことがその見返りではないかと国民は疑いを抱いているのであります。(拍手)
 また、土地税制緩和の措置によって大土地所有者に大幅な減税をしたこと、これによって宅地供給がふえるなどと本気になってお考えになっていらっしゃるのでしょうか。私たちは、むしろ不動産業界への不当な過剰サービスだと批判をせざるを得ません。総理はどうお考えになりますか。国民は、またまた土地大資本と政府の癒着を疑わざるを得ないのであります。(拍手)
 さらに、財政再建のためには、国債の整理、縮減を急がなければならないことは当然であります。ところが、五十五年度の国債発行高は、前年度補正後の見込みよりも二千二百億円多い十四兆二千七百億円となっております。総理はまた、これまで、五十九年度には必ず赤字国債発行高をゼロにすると何回も言明せられました。しかし、本年度の予算にその苦心の跡が全く見られないのであります。いかがなものでしょうか。ここで、私たちは、総理に五十九年度までの年次別国債減額目標を示していただきたいと考えます。
 御承知のように、国債の累積額はすでに今年度末に七十一兆円に達し、五年後には百二、三十兆円にもなろうとする情勢であります。しかし、総理はそれまでに赤字国債の償還を約束しておられるのでありますが、どういう方法でおやりになるのでしょうか。たとえば、国債整理基金の積み立てによって確実な償還が可能だとお考えになっていらっしゃるのでしょうか。責任のある御見解を伺っておきたいと思います。(拍手)
 また、さきの総選挙で最大の争点となりましたのは一般消費税の問題であり、国民はその導入を拒否して、そのかわりに歳出の思い切った削減を要求いたしました。政府はそれを受けて行政改革の断行を約束し、総理みずから各閣僚に号令をかけられたはずであります。これを受けて、行政管理庁長官も、百十一の特殊法人を十五減らすと息巻いておられましたが、結局は四つだけの統廃合のしりつぼみに終わってしまったのであります。補助金もまた大幅整理を言明をせられておったのですが、これは一体どうなっているのでしょうか。行政改革の効果とあわせて、本年度予算案にどれだけの節約になってあらわれているのか、国民は非常に疑問にしております。明確にしていただきたいと存じます。(拍手)
 いま国民が非常に憤激しておりますのは、一般に物価高の傾向が強まっているのに、国の予算案によって国民の負担がさらに増大する傾向にあることであります。相次ぐ公共料金の値上げで追い打ちをかけられることに不安を感じております。政府の消費者物価上昇見通し六・四%は甘過ぎるのではありませんか。現に、民間調査機関は、そのほとんど全部が政府見通しよりも高いインフレ率を予想しているのであります。特に公共料金については、原価を国民に公表し、適切な抑制措置を講じない限り国民生活は守れません。わが党の試算によると、現状を野放しにいたしておきますと、国民は二兆円以上もの負担増を強いられることに相なります。
 総理、どうぞ試みに八百屋さんの前に行ってみていただきたいと思います。きっとあなたは、白菜一個八百五十円と数カ月で倍以上に上がってしまった価格に驚かれるに違いないのであります。それはあなたにとっては驚きにすぎないかもしれません。が、しかし、主婦たちにとってはもはやそれは恐怖ですらあります。このことを知ってほしいのであります。これを台風の一時的影響だと言ってしまってよいでしょうか。消費者物価は、この一月、東京都区で、前年比六・二%も上がっているのであります。物価について、政府は少なくとも機を逸せず、金融の引き締めや公共事業の抑制といった目前の手段を機敏にとることは当然でありますが、しかし、もっと根本的な抑制のプログラムを立て、事前に公表しておくべきであります。たとえば、原油値上げによる石油製品の便乗値上げに対しては、国民を交えた監視機構をつくっておくとか、あるいは、産業界における市場占有率が一〇%を超える寡占商品へのカルテル規制とか、異常な土地投機への規制とか、いろいろその手段はございますが、少なくとも総理の毅然たる決意がここに必要なときとなってまいりました。その所信とプログラムを伺っておきたいと思います。(拍手)
 総理は、前国会において私の質問に答えて、わが国にはスタグフレーションのおそれはないと言明されました。確かに現象的な景気回復の徴はあります。しかし、そもそもスタグフレーションそのものが、単に一国規模の一時的な景気動向によって判断されるような問題ではなく、七〇年代半ば以降、資本主義世界の構造的矛盾としてあらわれているものだということを認識すべきだとすれば、物価の問題についても、それとのかかわり合いをいかに処理されるのか伺いたいと存じます。いずれにせよ、主婦たちはかたずをのんであなたの処置を待っていることをお忘れにならないように、ここにお願いをいたす次第であります。(拍手)
 一方、本年度予算では各項目が軒並みに削減されているのに比べて、防衛予算だけは聖域扱いを受け、GNPの〇.九%、二兆三千億円が計上されています。わが党はここに、国民の生活を守る願いよりも、アメリカの要請に顔を向けた大平内閣の軍事優先の姿勢を見るのでありますが、総理はどうこれを説明なさるのですか。(拍手)一体どういう理由で、大蔵省の抵抗を押し切ってまで〇・九%の軍事費を確保しなければならなかったのでありますか。明確にしていただきたいと存じます。(拍手)
 本年度予算案は、当初の大蔵原案の段階において、高齢者医療有料化の拡大、児童手当制度の縮小、結核患者措置の有料化、義務教育教科書の有料化拡大など、福祉、文教関係の予算削減を盛り込んでおられたのでありますが、野党の反撃によって現行どおりに食いとめることができました。私は、このことを、予算案編成段階における野党の一致協力の大きな成果であり、国民の勝利だと考えるのであります。(拍手)
 しかしながら、その際、自民党幹部と大蔵大臣、厚生大臣、内閣官房長官の間で、五十六年度から削減を実行するという合意文書が取り交わされたことは重大であります。自民党総裁であり総理である大平さんの立場で、このような予算の事前決定にも等しい申し合わせば無効であると言明をなさるべきではありませんか。(拍手)不当な合意文書の破棄を約束されるように、ここに議会制度の名において強く求めておきたいのであります。(拍手)いかがでしょうか。
 もちろん、私たちも、現行の社会保障関係費、特に医療費のあり方については洗い直す必要があると考えております。現在の薬づけ、検査づけの医療は改革しなければなりません。しかし、これに対して、利用者の負担によって医療費を削り、国庫の負担を軽減しようという考え方は、医療そのものの本質に逆行すると言わざるを得ないのであります。
 さらに、社会保障関係費のうち、社会福祉関係の職員及び看護職員、保健婦、家庭奉仕員などについては、公共サービス充実のための人員確保の計画化が必要弧ありますが、政府予算案にはいまだにその萌芽すら見られません。また、深刻な雇用不安の中で、特に中高年齢層の雇用保障の対策のないまま、厚生年金の給付開始年齢を六十歳から六十五歳に延長するなど、まさに冷たい政治そのものであります。(拍手)
 こうして、政府の社会保障政策は、高齢化社会の福祉のあり方に逆行するものであり、不要経費の洗い直しの手段も逆行していると言わざるを得ません。
 私は、以上、国民の願いに基づく幾つかの質問をしてまいりましたが、最後に、綱紀粛正に関して申し上げますと、わが党は、政治家、高級官僚の資産公開法、情報公開法を定め、第三者斡旋収賄罪を設け、政治資金規正法を改正するなどを目指して積極的に努力をしております。ところが、与党・自民党は、唐突にも、小選挙区制の採用を前提としてこれを検討する態度だと報道されました。自民党総裁として、国民の民主政治への願いに背くこのような誤った態度は、速やかに改むべきであることをここに指摘しておきたいと思います。(拍手)
 私は、八〇年代の初頭に当たり、以上、わが国民の生存と繁栄をこいねがい、戦争のない平和で安心して暮らせる日本の建設のために努力することを表明いたしました。政府の誠意ある見解を求めて私の質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(大平正芳君) 飛鳥田委員長の最初の御質問は、今日、あらゆる立場から見て一大変革期にあり、既存の考え方をもって処理できないような事態であるということを前提にされまして、日米安保条約の今日的な意義についてのお尋ねでございました。
 飛鳥田さんは、米ソの核戦略は、従来の抑止力から、最近では先制的な第一撃による敵のせん滅を目的とするように変わってきているように思われる、こういうときに、依然として日米安保条約を堅持することは、これまでよりもさらに一層危険なものにそれはなるのではないか、八〇年代こそは非武装積極中立の政策の意義が改めて強調されなければならないという御主張でございました。
 政府といたしましては、外交、とりわけ安全保障問題は、世界の現状を踏まえて、現実的な政策として実施さるべきものであると考えております。
 日米安保体制につきましては、米国の世界史的な地位に変動が見られないわけではございませんでしたけれども、紛争の抑止力として、また、アジアの平和と安定のための枠組みとして有効に働いてきたと評価いたしております。事実、この安保条約締結以来三十年近くの間、日本は戦争に巻き込まれることもなく平和を享受してまいりました厳然たる事実がこれを証明いたしておると思うのであります。(拍手)
 わが国といたしましては、引き続き安保条約を含む日米協力を軸といたしまして、世界各地域にわたる友好国との協力を強めながら、世界の平和と繁栄に積極的に寄与してまいりたいと考えております。その軸心である日米安保条約は、引き続き堅持してまいりたいと考えております。(拍手)
 委員長は、軍縮問題についてただされたのであります。米中ソ三国を含むアジア軍縮会議を提唱してはどうかという御所見でございました。
 軍縮分野における米中ソ三国を含む検討は一昨年開催され、また、一九八二年に再度開催が予定されておりまする国連軍縮特別総会等で鋭意なされておるところでございます。また、二月初旬より開催される予定のジュネーブにおける軍縮委員会には、中国も参加する予定でありまして、米中ソ三国を含む軍縮審議の場は、すでに確保されておると思います。
 平和憲法のもとにおきまして、軍事大国への道を選ばないことを決意いたしておるわが国といたしましては、あらゆる場を通じまして、核軍縮を中心とする軍縮の進展を強く訴えてきたところでありますが、今後ともかかる努力を一層積極的に推進してまいる所存でございます。
 もちろん軍縮の訴えは、環太平洋諸国ばかりでなくあらゆる場面を通じまして行うべきものであると心得ております。
 次は、北欧に見られるような平和研究所のようなものを設ける考えはないかというお尋ねでございました。仰せのとおり、北欧におきまして、スウェーデンのSIPRIを初めといたしまして、権威ある平和研究所が活発な活動を展開いたしておりますることは御指摘のとおりでございます。すでに、わが国にも幾つかの平和の研究機関があり、平和問題を含む国際問題の調査研究に携わってきておりまするけれども、政府としては、これらに対しまして、今後とも極力支援をしてまいるつもりでございます。
 大学に平和問題講座を設けてはどうかという質問でございます。
 大学におきましても、平和問題は、講座に関連いたしまして研究がなされていることと思いますけれども、講座を設置するかどうか、大学の意向も勘案いたしまして検討をいたしたいと思います。
 ソ連との文化交流協定締結を無期限に延期することの由であるけれども、不快感の表明に文化を用いることは本末転倒ではないかという御指摘でございます。
 現下のアフガン情勢等にかんがみまして、日ソ間の交流全般につきまして、現在いろいろの角度から検討いたしております。日ソ文化協定につきましても、延期する方向で検討いたしておりますことは御指摘のとおりでございます。しかし、両国政府間の実務的な文化交流の現状は何とか維持することが適当であると考えますので、昭和四十七年一月に締結いたしました日ソ文化取り決めの有効期間を、一月二十五日にさらに二年間延長することにいたした次第でございます。
 イランやソ連に対する経済制裁に加わることは慎重たるべきではないかという御意見を交えての御質問でございました。
 イランにおける米外交官人質事件及びアフガニスタンに対するソ連の軍事介入につきましては、いずれも国連の場において取り上げられ、人質の早期解放、外国軍隊の速やかな撤退が国際社会の大多数の一致した見解として決議されておりますることは、委員長も御案内のとおりでございます。わが国がこうした国際的努力を積極的に支援し、友好諸国と協力してその是正のため適切に対処してまいることは、国際社会の責任ある一員として当然な任務であると考えております。
 朝鮮半島の問題につきましてのお尋ねでございました。
 朝鮮半島の南北双方間におきまして、現在、統一問題に関する対話再開に向けての動きが見られておりますけれども、わが国といたしましては、今後、双方が各種の困難を克服されまして、実質的な対話が実現することを望んでおります。
 かかる状況のもとで、北朝鮮との関係につきましては、貿易、文化などの分野における交流を漸次積み重ねて相互理解を深めてまいる考えであります。
 金大中事件につきましては、日韓関係の大局的な見地から、すでに外交的決着を行った経緯がありまするけれども、その後も事件の真相解明のため、可能な限り関係資料の入手並びに関係者に対する照会等を行っており、今後ともかかる考えをもって対処してまいるつもりでございます。
 次に、経済問題につきましてのお尋ねの第一は、今日、わが国の経済が外に向かって手詰まりの状況にあるのではないか、工業製品の輸出は限界に達しておる、第二次石油危機の展開の中で、先進国、発展途上国の双方から日本への反発が強まってきておる、その上に中進国の追い上げも急ではないか、この手詰まり状況をどう打開するかというお尋ねでございました。
 現在、世界経済は失業とインフレ、国際収支の悪化など深刻な問題を抱えておることは御指摘のとおりでございます。経済大国であるわが国のれ動に対しまして、国際的に大きな関心を呼んでおることもまた事実であると考えております。他方、仰せのように、近年中進工業国の台頭が見られますとともに、先進国による保護主義的傾向が高まりを見せるなど、わが国をめぐる国際経済情勢は決して容易なものではないと考えております。
 このような状況のもとにありまして、わが国といたしましては、今後とも各国に対しまして、保護主義に傾斜しないで、自由貿易体制を維持するように働きかける、技術革新を通じまして産業構造の高度化を進め、経済協力の展開等を通じまして、わが国の国際的な責任を果たしながら、通商貿易環境の円滑な開拓に努めてまいりたいと考えております。
 次いで、委員長は、産業政策について、わが国の産業政策は福祉型成長経済、内需拡大型経済への転換を道標としなければならない、一部の突出部分、巨大産業あるいは特定産業に傾斜することでなくて、広範な産業分野で均衡のとれた経営の近代化、共同化、技術開発を積極的に進めて、バランスのある生産、流通システムをつくり出す必要があるのではないかという御意見を含めての御質問でございました。
 わが国が産業政策を推進してまいる場合に、仰せのとおり、内需を中心といたしました経済成長を図りまして、その成長経済の中身を国民生活の質的な充実に結びつけていくことが必要であることは、全く私も同感に存ずるのでございます。
 同時に、わが国といたしましては、資源・エネルギーに乏しいわけでございますので、技術革新を通じまして国際分業の進展に備えて雇用の機会を造成するように、産業構造の転換を図っていかなければならないと考えておるわけでございます。こういう厳しい状況のもとにおきまして、こういう環境に耐えるだけの中小企業政策、流通部門の効率化を急がなければならぬと考えております。
 次に、委員長は、国民生活と社会の運営について、食糧問題、教育問題についてのお尋ねがございました。
 食糧問題は、国策の最重点問題であることは仰せのとおりであります。国民食糧を安定的に確保するために、食生活の動向や地域の実態に即しまして、生産性の高い近代的農業経営を中核といたしまして、農業生産の再編成を推進して食糧自給力の向上を図ってまいりたいということは、私は、すでに施政方針で申し述べたとおりでございます。このため、農政の問題につきましては、御指摘のように、あらゆる機会を通じて農民を初め一般国民の理解と協力を得るように努めてまいることは、当然の政府のなすべき任務であると心得ております。
 教育の問題につきましての御質問でございますが、教育は、企業社会、官僚社会の手段とされないように、格差と不平等を生まないように、民主教育の本義に徹しなければいけないという御指摘の御主張がございました。そのために、現行の教育委員会制度を改むべきではないかという御主張でございました。
 現行の教育委員会制度は、地方自治の理念のもとに、住民の意思を反映しながら、教育、学術、文化に関する地方行政を遂行するものとして定められておりますことは、委員長も御案内のとおりでございます。教育委員会におきましては、今後とも一層充実した行政運営が行われるように努めてまいるべきであると心得ております。
 文部省は、教育支配の役所ではなくて、あくまでも奉仕の役割りを終始果たさなければならないと存じて、懸命に努力をいたしておるものと承知いたしております。
 自由な大学制度をつくり出すべきではないか、大学を地方の文化センターとして開放して、それぞれの個性を生かすべきでないかという御主張でございました。
 仰せのとおりでございまして、大学は、それぞれの教育研究を行いますとともに、その特色を生かしまして、地方文化の中核としての役割りを果たしてまいることが必要であると思います。各大学では、公開講座の拡充、体育施設の開放などの事業が進められておりまするけれども、政府としても、種々な形で大学と地域との交流が一層深められるよう大学の努力を促し、これを助けてまいりたいと考えます。
 私の田園都市国家構想、地方の時代、あるいは家庭基盤の充実、あるいは日本型福祉社会の建設等、私が主張いたしておりまする嚮導理念についてのお尋ねがございました。
 これは委員長もお触れになりましたように、管理社会の陥りやすい弊害を正すために、今日行われておる行政を是正する嚮導理念として提唱いたしておるものでございます。すなわち、現に行われておる行政は、こういう理念に照らしまして、足らないところがあれば足す、外れたところがあればこれを正すということをいたすつもりで提唱いたしておるものでございまして、明年度の予算案をしさいに御検討賜りますれば、その苦心の跡も若干御理解がいただけるのではないかと考えております。
 次に、委員長から同和対策についてのお尋ねがございました。
 現時点における同和問題の実態の把握につきましては、関係各省庁におきまして鋭意努力いたしておるところでございます。同和問題の早期解決を図るために必要な施策の方向については、所要の検討を続けてまいる所存であることは申し上げるまでもございません。
 次に、福祉の明年度の予算案につきましての御批判を込めての御提言がございました。委員長は、福祉の充実、生活向上のための諸施策が同時に経済の発展をもたらすという新しい発想の転換が必要である、財政再建を大義名分とした福祉の切り捨て、大衆負担増による国民生活圧迫の予算になっておるように思うがどうだ、こういうお尋ねでございました。
 五十五年度予算は、財政の大幅な公債依存体質を改めるとともに、国民の負担の増高をできるだけ避けるということを念願としながら、全体として経費の節減合理化に努めまして、歳出の伸びを極力抑制したところでございますが、社会的、経済的に見まして真に必要な施策については、重点的に財源の配分を行っておるところでございます。
 特に福祉の分野につきましては、遺族年金等の給付改善を図ると同時に、老人、心身障害者等、社会的に弱いお立場にある方々の福祉向上にきめ細かく配慮をいたしてあります。福祉切り捨てなどという非難がどこから出てくるのか、理解に苦しむところでございます。ただ、財政再建の必要に対する委員長の理解につきましては、私もありがたく存じます。
 次には、税制についてのお尋ねでございました。
 法人税率の引き上げは税制調査会の答申もあるではないか、それをやめたのはどういうわけかということでございます。
 法人税の負担でございますが、わが国の経済が厳しい国際場裏にある以上は、諸外国の税制との公平を見ながらやっていかなければなりませんので、若干のまだ負担の増加を求める余地はあるということで、昭和五十二年度の中間答申で「今後適当な機会をとらえて法人税に若干の負担の増加を求める余地がある」そういう答申があったことは事実でございます。ところが五十五年度は、幸いにいたしましく景気の立ち直りの結果、予想を超える自然増収を確保することができました。また、大幅の税制の整理合理化によりまして若干の財源を確保することもできましたので、法人税率の引き上げ等一般的な増税措置は講じないことにいたした、私は、これは善政であると心得ておるわけでございます。
 しかし、自然増収は毎年必ず予想以上に確保できるという保証はないわけでございます。財政、予算の編成は大変厳しいわけでございますので、五十六年度以降、われわれはまた財政再建に真剣に取り組んでいかなければならぬことは事実であると考えております。
 土地税制についてのお尋ねでございました。
 私は、現在の地価問題というのは大変投機的に流れておるとは考えていないのであります。大都市周辺、とりわけ三大都市周辺につきまして、需給関係から宅地の価格が上がりぎみであるということは無視できないわけでございまして、いまの土地政策の重点は宅地の供給を確保するということになければならぬと思うのでございます。したがって、今日までとってまいりました税制措置におきましても、その見地から若干の改定を試みることは決して無理な改定ではないと考えて、国民の理解を得られる、今日の需要に適した改正であると私は評価いたしておるところでございます。
 次には、国債についての御心配でございまして、これをどのようにして償還するかという目標を示せということでございました。五十五年度以降、毎年度公債発行額をできるだけ圧縮しなければならないことは当然でございますけれども、毎年度における具体的な公債発行額をいま予定することはとうていできない相談でございます。したがって、今後における公債削減につきましては、五十九年度までに特例公債依存から脱却するという基本的な目標を達成するため、毎年鋭意真剣な、予算編成に当たりましてその基本的目標を達成したいというのがわれわれの気持ちでございます。
 国債の償還でございますが、国債の償還は、もとより委員長も御承知のとおり、百分の一・六の定率繰り入れというものが第一でございますし、その次は国庫剰余金の繰り入れという手段がございますが、第三に、必要に応じて行う予算繰り入れという三本の柱を軸といたしましていまの減債制度ができておるわけでございます。
 私は、今後とも、歳出、歳入両面にわたりまして幅広い角度から財政再建の手だてを考えまして、引き続き財政再建に努力してまいる所存でございますが、これによりまして、国債整理基金への繰り入れを通じまして、国債の償還に支障のないように万全を期してまいりたいと考えております。
 次には、行革についてのお尋ねでございました。
 行政改革につきましては、すでに定員の削減、特殊法人の整理、地方支分部局、行政事務など、広範な事項について改革方針を決定いたしました。
 定員につきましては、御承知のように三万七千人を超える定員を向こう五年間に削減することにいたしております。特殊法人につきましては、五十五年度末までには五法人を減らすこととしていますが、全体として数カ年の間に全部で十八法人の数を約束どおり減らすことにいたしてあるのであります。補助金につきましては、行政改革の一環として計画的に整理合理化を推進しております。特に五十五年度予算におきましては、厳しい財政事情にかんがみまして、この見直しを厳しくやってまいりまして、積極的に廃止、減額等の整理合理化を推進いたしたところでございます。
 この行政改革の効果でございますが、当面五十五年度について申しますと、補助金等の整理合理化は千六百六十七億円になっておりまして、定員の削減による節減効果等をあわせますると、長い目で見まして今回の行政簡素化の効果は相当なものになるのではないかと考えております。しかし、この行政整理、行政改革というのは五十五年度の改革でございまして、われわれは、国民の強い要請にこたえて、引き続き、不断の政府の仕事として行政整理には取り組んでいかなければならぬと考えております。
 次に、物価問題についてのお尋ねでございました。
 政府の消費者物価見通し六・四%というのは甘過ぎるではないか、民間調査機関などはほとんどそれより高いインフレ率を予想しておるではないかということでございますが、消費者物価は、これまでのところ、基調としては比較的落ちついた動きを示しておりまして、卸売物価の増高が急でございますので、今後それがどのように響いてまいるか、非常に注目をいたしておるところでございます。
 そこで、政府といたしましては、公共事業の適正な執行、通貨供給量の適切な調整、それから石油製品に対する需給の安定、価格の監視、それから、公共料金につきましては、必要最小限度にこれを抑え、企業の合理化の徹底を促す、それから生活必需物資等につきましては、需給の安定、輸送の確保等に最善の注意を払って、この物価対策に対処をいたしたいと考えております。
 去年一年の消費者物価、つまり委員長の言われるインフレ率でございますが、先進諸国の例を一言つけ加えて申し上げさせていただきますと、アメリカは一二・八%、英国は一七・二%、それからフランスは一一・八%、ドイツは五・四%で、わが国は五・八%というところになっておりまするので、わが国の物価政策も諸外国に比肩いたしまして相当評価されていいものではないかと考えております。(拍手)
 次には、国防費についてのお尋ねでございました。
 国防費につきましては、わが国は従来から国力、国情に応じまして、自衛のため必要最小限度におきまして、効率的な防衛力を漸進的に整備するということを方針としてまいっておるわけでございます。そしてその場合、主要な装備については、量的な拡大よりは質的な充実を図ることを目標といたしておりますることも御案内のとおりでございます。かたがた、平時における自衛隊の維持運営に必要な教育訓練経費や基地周辺対策等にも所要の配慮をいたしてきておるわけでございまして、決してわれわれはこの国防費の計上につきまして、不当に多くの財源をしむけたというようには見ていないわけでございます。
 ちなみに、先進諸国に比べまして一番低い国防費の負担になっておることも、数字を挙げるまでもなく御理解いただいておることと思うのであります。アメリカの要請に向けた軍事優先の予算であるなどという非難は当たらないものと考えております。
 それから、公共料金でございますが、これにつきましては、いま申し上げましたとおり、原価主義にのっとりまして、厳正に必要最小限度に査定してまいるとともに、関係企業に徹底した合理化を求めてまいるつもりでございます。
 それから、自民党幹部と大蔵大臣、厚生大臣、官房長官の間で、五十六年度から福祉予算の見直しの合意文書が交わされたが、これはいかがなものだろうかという御指摘でございました。
 財政の現状にかんがみまして、今後とも財政全般の見直しを進めて、歳出の節減合理化のため厳しい努力を払わなければならぬことでありますことは、委員長も御理解いただいておるところと思うのであります。
 わが国の社会保障でございますけれども、制度的にも水準的にも、決して私は欧米に遜色があるものとは思っていないのでございますけれども、考えなければいかぬことは、今度高齢化の進展が厳しゅうございますので、従来の水準、制度を維持してまいりますにつきましても、多くの財源が一挙に必要になってまいるという状況のもとにおきまして、また、五十六年度以降における厳しい財政事情を勘案いたしますと、必要な公的福祉を適正な形で重点的に保障していくという見地に立ちまして、児童手当でございますとか、老人保健医療制度であるとか、社会保障施策の所得制限全般につきまして検討を加えていくということは、政府・与党の当然の義務であろうと思うのでございます。別に国会を拘束する性質のものではございません。われわれといたしましては、そういう方針を改めるつもりはございません。既定の方針で見直しを実行していかなければいかぬと考えております。
 それから最後に、綱紀粛正に関連いたしまして、自由民主党内で審議されておる小選挙区制度につきましてのお尋ねがございました。
 綱紀粛正につきましては各方面から強い要請が参っておりまして、金のかからない選挙制度、選挙運動、それから政治資金のあり方等につきまして厳しい要請がありますることは御案内のとおりでございます。自由民主党におきましても、こういう要請を踏まえて、党の選挙制度調査会を中心といたしましてそういった問題の検討を重ねておるところでございまして、私は、公正で実効ある成果が出てまいることを期待いたしておるわけ外ございます。
 しかしながら、選挙区制は各党と共通の土俵界ございますので、各党との間の十分の話し合いが行われることを期待いたしておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(灘尾弘吉君) 安倍晋太郎君。
    〔安倍晋太郎君登壇〕
#11
○安倍晋太郎君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、大平総理の施政方針演説に対する質問を行いたいと存じます。
 まず、現在の国際情勢に対する認識について、総理は、明暗二つの要素が複雑に絡み合った姿を見出すと述べておられます。すなわち、一方に国際緊張の異常な高まり、通商上の摩擦と通貨不安、資源・エネルギーの制約、インフレと失業の脅威などが存在する反面、地球社会を一つの共同体としてとらえ、国際協調による連帯を一層強固なものとして、人類共通の課題を克服しようとする真剣な努力のうかがえることを指摘しておられます。まさしくそのとおりであります。
 そこで私は、現在の世界が当面している暗い側面をもう一歩掘り下げてみたいと思います。
 イランにおける米国大使館員の人質事件、アフガニスタンに対するソ連の軍事介入は、国際通念から見てきわめて異例の事態であります。この二つの事件は、性質こそ異なっておりますが、いずれも戦後三十五年間にわたって維持されてきた世界平和が重大な危機にさらされているものと言えましょう。ことに、ソ連軍のアフガニスタンへの進駐は、全世界に大きな衝撃を与えました。われわれはこの暴挙を容認することはできません。(拍手)国連緊急特別総会は、去る一月十四日、圧倒的大差をもってアフガニスタンからの外国軍隊の撤退決議案を採択いたしましたが、このことは、国連の権威を高めたのみならず、国際世論がかかるソ連の行為を厳しく糾弾していることを端的に示したものであります。(拍手)
 また、自由国家群の中には、早くもモスクワ・オリンピックに不参加の意思表示をしている国が幾つかあります。事態がこのまま推移すれば、わが国としても、早晩モスクワ・オリンピックに参加するのかしないのかという重大な選択を迫られることは必至であります。私は、オリンピックとは、世界諸国民の友好と平和を推進し、人権尊重の精神のもとに開催されるべきものであると理解しており、したがって、自由主義陣営の国々が足並みをそろえて参加するのでない限り、わが国としても参加しないとの決意を早急に表明すべきたと思います。(拍手)
 そこで、私の質問の第一点は、現在わが国の中には、米ソ関係の悪化がこのまま高ずれば新たな戦争の危機を迎える懸念があるのではないかという見方がありますが、総理はこの点どのように見ておられるのか。
 わが国の隣国たる韓国は、朴大統領暗殺事件という悲劇にもめげず、種々の困難を克服して秩序ある変革に向けた努力を行っております。私は、かかる困難な時期における韓国のよき隣人として、わが国としても朝鮮半島における平和の維持と緊張の緩和をもたらすための国際的な環境づくりに特段の努力を行うべきではないかと考えます。(拍手)いまこそ国際間の緊張緩和と世界の平和維持のために、わが国はあらゆる努力を傾けるべきときではないかと思いますが、総理の御所信を伺いたいと存じます。
 次に、わが国の総合的安全保障政策について、幾つかの角度からお尋ねしたいと思います。
 われわれは、国の安全を確保するために日夜あらゆる努力を積み重ねなければなりませんが、その第一は、わが国の国家政策の基本理念を今後さらに一段と国際社会に理解せしめなければならないということであります。いずれの国とも仲よくし、国際紛争は武力によらず、話し合いで解決するというわが国の基本政策をわれわれは熱意を持って広く国際社会に訴え続けるべきであると思います。
 かかる観点から、北方領土問題についても、ソ連との間に粘り強い交渉を続けていくべきであると考えます。また、北方領土におけるソ連軍の軍備増強といった事態は、わが国として決して看過し得ないところであります。政府は、ソ連に対し、このような不法行為を厳に慎み、事態を速やかに是正するよう強く要求すべきであると存ずる次第であります。(拍手)
 国際紛争の平和的交渉による解決と同時に、われわれはあらゆる事態に対応できるよう万全の備えを講じなければなりません。防衛力の整備、国際社会の動向の把握、資源の備蓄、食糧自給力の向上、核融合、太陽熱など新しいエネルギー源の研究開発、さらには政府開発援助などを通じて国際社会に溶け込んでいく努力など、具体的な措置について国力を傾注しなければなりません。
 まず、国土の防衛については、自分の国は自分の手で守るという国民的気概を養いつつ、国力、国情に応じて自衛力を整備し、その足らざるところを日米安保条約によって補うという基本線は今後とも変わることがあってはならないと思います。(拍手)
 すなわち、対外的にはあくまで日米安全保障条約を基軸としてわが国の安全保障を確保していくとの立場であります。そのためには日米友好関係を当然視することなく、これを確固不動のものにするための不断の努力が必要であると考えますが、総理の御所見を伺いたいと思います。(拍手)
 また、国際社会の動向を的確に把握することは、総合的安全保障の眼目であることは申すまでもありません。しかし、残念ながら、わが国の現状は自由国家群の中で比べると著しく見劣りがすることを認めざるを得ません。特に最近、各省庁の権限意識が災いして、適時適切な外交が展開できにくくなっているということは明らかであります。また、わが国が情報の総合的分析機能に欠けていることはっとに指摘されているところであり、速やかに是正しなければならないと思います。
 このような問題を抱えながら、七〇年代までは何とかしのいできたわけでありますが、八〇年代もこのような姿でやっていけるのかどうかということを私は深く憂え、危惧しております。長期的展望に立った国家戦略を築き上げ、国家利益を追求するためには、大平総理みずからが主導的立場に立って、時代の要請に応じた諸政策を推進されることが肝要ではないかと存じますが、総合的安全保障政策についての総理の御所信をお伺いしたいと存じます。
 私は、この際、最近発覚した自衛隊の元陸将補と現職自衛官によるソ連スパイ事件について遺憾の意を表明するものであります。ソ連や北朝鮮のわが国に対するスパイ事件はこれまでもしばしばありましたが、わが国の防衛の責任を担う自衛隊の内部にまでソ連の手が伸びたことはかつてなかったのであります。しかも、陸将補という高級幹部で、防衛情報の中枢に地位を占めていた者が祖国の信頼を裏切り、ソ連に高度の国防機密を売り渡すなどということは、わが国においてかつて例を見ない一大不祥事件と言わざるを得ません。
 わが国は、他国のスパイ活動に対しては全く無防備の状態であり、スパイ天国とまで言われております。私は、このようなことで、果たしてわが国の安全と国益を守れるかどうか疑わざるを得ません。国家の機密を保持するためには、まず防衛外交当局などの内部から機密の漏れることのないよう万全の措置を講ずる必要がありますが、それとともに重要なことは機密保持制度の整備を検討すべきだと思います。(拍手)総理の御所信を承りたいと存じます。
 次に、私は、わが国経済運営の基本は、自由濶達な民間の活力の発揮による経済成長と、その前提としての物価、雇用の安定にあると考えます。このような観点から、まず行財政改革についてお伺いをいたします。
 今回、国会に提出された昭和五十五年度予算は、八〇年代の政治が正常な姿で発展するか、あるいは財政の行き詰まりで停滞するか、その行方を決する重要な意味を持った予算でありますが、私は、この予算が財政再建へ明確に方向づけ、その第一歩を踏み出したものとして評価するものであります。しかも、その中において、八〇年代の最も緊要な課題であるエネルギー対策には、特別会計を含めて純計七千四百億円、約三一%増という飛躍的な予算の増額を行いました。
 さらに、経済協力については、政府開発援助の三年間倍増を達成すべく一七・五%という大幅な拡充を図り、長年にわたり文教政策の重要課題であったいわゆる四十人学級については、その実現を見ることとなりました。
 また、高齢化社会における福祉増進のため、厚生年金の一九%引き上げ、老齢福祉年金月額千五百円の引き上げ、その他各種年金、恩給の改善を図るなど、財政再建と重要政策の実現とを両立させているところに大きな特徴があります。
 さらに、歳入面においては、租税負担の公平化を図るために、租税特別措置などの大幅な整理合理化を行っております。
 しかし、財政再建はまだ緒についたばかりであります。わが国の企業は労使双方の血の出るような合理化と経費節減の努力によって経営体質の改善を図ることができましたが、私は、国としても財政再建のためにさらに思い切った歳出の削減、合理化に努めるべきであると思います。
 国鉄、健保、食管のいわゆる三K赤字対策、抜本的行政改革、補助金の大幅整理など、今後の課題は重く厳しいものがあります。従来、政府のこのような問題に対する取り組みは、ややもすれば短期的視野のもとで行われがちでありましたが、今後は長期的な展望に立って取り組む方向を確立すべきものと思います。言うまでもなく、これらの問題は関係者の利害が厳しく対立するものでありますが、私は、内閣の強力な指導のもとで政府が十分時間をかけて、国民の納得のいく根本的解決策を示されることを強く期待するものであります。総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 政府は、すでに行財政の制度、機構及び特殊法人の整理、簡素化の具体策を進めておりますが、直接に財政再建に結びつくものは、高度成長時代に急速に肥大化し、現在五百万人と推定される国、地方を通ずる膨大な公務員と特殊法人職員を削減するとともに、行政事務の抜本的な整理を実行することであります。(拍手)昭和四十二年以来五十三年までの十一年間において、地方公務員は警察、消防、教育など、やむを得ないものがあるとはいえ七十四万人の純増、国家公務員は一万人の純減、特殊法人職員は六万人の純増となっております。要は、簡素にして活力ある行政機構をつくり上げることであります。人員の削減と行政事務の抜本的整理を実行するかしないかは、総理の決断いかんにかかっております。私は、大平内閣が強い政治力を発揮して、世論にこたえて、思い切った職員の削減と行政事務の大幅な整理を断行するよう強く望むものであります。(拍手)
 行政改革に関連して私が特に強調したいのは、行政に対する国民の信頼の回復であります。昨年来の一連の不祥事件を通じて、国民に与えた行政不信の念は容易にぬぐい去られるものではありません。全公務員は、国民全体の奉仕者であるという原点に立ち返り、およそ、その行動について世間の疑惑を招くことのないよう、綱紀の粛正に努められるよう要望するものであります。行政改革と綱紀粛正に関する総理の御所見をお伺いいたします。
 次に、経済政策についてお尋ねいたします。
 まず、景気の維持についてであります。
 第二次石油ショックは、世界経済にもわが国経済にも深刻な影響を与えました。わが国経済が再び困難な時代に直面することは避けられないと思わなければなりません。現にわが国経済は、国際収支の大幅赤字、円安、卸売物価の高騰など、従来とは一変した様相を見せるに至っております。すでにアメリカ経済を初め、世界経済には景気鈍化の傾向が見られております。
 このような厳しい環境にあるわが国経済の運営に当たり、政府に課せられた最大の課題は、国民生活の充実と雇用の安定を可能にするだけの経済成長をどのようにして持続させるかということであります。
 ことしは、特に政府に、景気の動向に即した機動的な経済運営が求められる年であると思います。たとえば、公共事業支出計画の弾力的執行とか、財政投融資の弾力的運用とかによる財政面からの景気調整に十分配意する必要があります。現在、日銀は金融引き締めを行っておりますが、今後の経済の推移によっては、財政と金融が呼吸を合わせて、時宜に適した方策がとられなければならないと思う次第であります。
 景気の維持によって自然増収を確保することは、財政再建にとっても重要であります。五十五年度一般会計予算が公債依存度の引き下げと重要政策の実現とを両立させることのできた一つの理由は、景気の好況によって四兆六千億円という空前の自然増収を見込むことができたからであります。
 もとより、経済政策は、景気対策などの全般的な対策で足りるものではなく、個々の経済分野の実情に即したきめ細かな対策が要求されるものであります。特に、農林漁業、中小企業はわが国の礎であり、厳しい経済事情に直面するいまこそ、その対策に最大の努力を払うべきであると存じます。(拍手)
 次に、国民生活にとって最も重要な物価問題についてお尋ねいたします。
 政府は総合物価対策を推進しておりますが、特にこの際申し上げたいことは、電気、ガス等公共料金問題の慎重な取り扱いであります。
 私は、真にやむを得ない公共料金の引き上げについては、供給の安定的確保という見地から、これを否定するものではありません。しかし、引き上げは、一般民間企業に見られるように、肉を切り、骨を削った結果、なお吸収できないコストの上昇分に限られるべきであります。やむを得ない値上げをする場合であっても、産業や民生に及ぼす影響を最小限度にとどめるような措置を講ずべきであると思います。(拍手)
 また、便乗値上げなどの不当な物価のつり上げに対しては、監視を厳重にするだけでなく、効果的な行政指導もためらうべきではないと考えます。総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 次に、総理は、施政方針演説の中で、八〇年代の道標の一つとして、産業構造の改革と生活様式の大胆な転換をお取り上げになりました。
 確かに、現代は変革の時代であります。制度や慣行のみならず、価値観の中にも変化を遂げたものもあります。資源や技術の制約に伴って、わが国の産業構造が質的な転換を遂げなければならないことは申すまでもありません。政府並びに自由民主党として、今日まで多角的な施策を講じているゆえんでもあります。私は、わが国の国民生活の様式が一つの転機に来ていることを痛感するものであります。
 一九七〇年代を通じて日本人にショックを与えた言葉の一つに、「ウサギ小屋に住む働き中毒」という外国人による風刺がありました。これは確かに耳の痛い言葉であります。自由世界第二の経済大国と言われ、衣食は足りても、国民の住宅事情は先進諸国に比べ大きく立ちおくれております。しかもなお、狭い国土の中で土地問題は社会的不公正の元凶となっております。
 政府は、今回、土地供給の促進を目的として、譲渡所得税の軽減などの税制上の措置を講ずることとしましたが、最近の地価には再び高騰の兆しが見られています。私は、税制のみならず、低廉かつ優良な宅地を供給するための土地政策の実施並びに時機に即した地価抑制のための強力な行政措置をとられるよう強く求めるものであります。
 また、住宅購入に対する公的援助の拡大、住宅高層化の促進措置、省エネルギー住宅建設に対する優遇措置など、国民の住宅環境を整備するためになすべきことは数多くあります。居住環境の改善は家庭基盤の充実のもとであり、国民の新たな活力の源泉であります。
 私は、かかる観点から、住宅問題改善に関する総理の御所見を承りたいと存じます。
 次に、国民生活の安定という見地から大変重要な社会保障問題についてお尋ねいたします。
 八〇年代の基本的な政治課題の一つは、急速に進む高齢化社会において、国の財政事情と調和する福祉社会をどう構築するかということであります。
 総理は、二十一世紀へ向けての国づくりの理念として、日本型福祉社会の建設、高齢化社会に備えての対策を述べられましたが、その中核となるものは何といっても社会保障であります。
 政府は、五十五年度予算において、厚生年金支給年齢の段階的引き上げや健康保険薬剤費の一部患者負担などを図ることとしておりますが、私は、これを社会保障制度の合理化、公平化の第一歩として受けとめております。
 今後さらに、過剰診療と言われる医療保障制度を合理的なものに改め、負担と給付の均衡化と村政負担の適正化を図ること、さらには、時代に即応した定年制を実施することなどが、高齢化社会に対応する社会保障制度確立の条件であると思うのであります。(拍手)
 私は、今後の高齢化社会に対応する社会保障の整備は、現在の複雑で公平を欠く社会保障制度を合理化、体系化することによって行うべきであると信ずるものでありますが、総理の御見解を承りたいと存じます。
 次に、エネルギー対策についてお尋ねいたします。
 五十五年度予算における財政措置によって、石油代替エネルギーの開発導入の促進、石油供給の安定確保、省エネルギーの徹底等、広範にわたってのエネルギー安定対策が財政的に裏づけされたのでありますが、これが期待どおりの実効を上げるためには、この予算を適切かつ効果的に運用しなければなりません。
 特に大事なことは、新たに設けられることになった新エネルギー総合開発機構を、それにふさわしいように構成し、運営することだと思います。民間、学界などを通じて優秀な人材の参加を求め、それらの人々が能力を十分に発揮することのできるよう各般の措置を講ずべきであると思います。そして、代替エネルギーの開発対象の優先順位を明確にし、限られた資金を最も効果的に活用するよう配分することであろうと思うのであります。
 さらに、当面のエネルギー対策で最も必要なことは、石油消費の徹底的な節約であります。
 政府は、すでに石油七%節約の具体策を着々として進めていますが、これを確実に達成するには、国民の理解と協力を得て、政府、民間が一体となり努力することが不可欠だと思います。(拍手)
 同時に必要なことは、石油輸入の安定確保であります。わが国といたしましては、産油諸国の動向を見きわめつつ、今後は多角的な石油供給源の確保に努めなければなりません。
 以上、エネルギー対策について総理の御所見を伺います。
 次に、わが国においては、近年、婦人の地位向上はまことに目覚ましいものがあります。また、各界、各分野における婦人の進出によって私どもの社会生活は一段と充実をしてまいりました。
 ところで、ことしの夏にはデンマークで「国連婦人の十年」会議が開催されることになっております。わが国は世界に先駆けて、このための国内行動計画をすでに策定しておりますが、政府としてこの会議にどのように取り組まれるのか。また、青年に夢と希望を与える政治を展開しなければなりませんが、あわせて総理の御所見をお伺いしたいと思います。(拍手)
 最後に、私は、一九八〇年代の政治について総理のお考えをただしたいと思います。
 最近、野党各党間で話し合いが活発化している連合政権構想について、野党各党がこの問題に真剣に取り組んでおられることについて、その熱意のほどはわかりますが、しかし、その内容、実態はきわめて不透明で、現実と遊離し、とうてい国民の信頼を得るに足るものではありません。(拍手、発言する者あり)
 一九八〇年代は、世界の諸国民にとって、これまでに経験したことのない激動と混迷の時代であると思われます。特にわが国にとっては厳しい時代であることを覚悟しなければなりません。その間にあって、経綸の過ちなきを期すべき政治の責任の重大さは申すまでもありませんが、私は、国民に対しその任を果たすべき政党は、わが自由民主党をおいてほかにないと信ずるものであります。(拍手、発言する者あり)そのためにも、わが党は姿勢を正し、速やかに党改革を断行して、国民の期待にこたえなければなりません。(拍手)総理は、この難局に対処するため、広く国民の理解と協力を得られるようリーダーシップを発揮されることを強く強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(大平正芳君) 安倍さんの最初の御質問は、米ソ関係の悪化が高まれば新たな戦争の危機を迎えることになるのではないかという懸念があるが、政府はどう考えておるかというお尋ねでございました。
 アフガニスタンへの軍事介入がございまして、米ソ間のデタントにも微妙な変化が見られますけれども、米ソ両当局とも、これまでの基本的なデタントの枠組みを維持する旨述べております。核戦争の危険を回避するという点につきましては、米ソの基本的考え方に変化はないものと私どもは考えております。私は、ソ連の反省と自重を強く求めますとともに、世界の平和と安定のため、わが国といたしましても、その国際的な責任を主体的に果たしていかなければならないと考えております。
 第二の御質問は、韓国の動きに対しましてどのように対処していくかというお尋ねでございました。
 わが国といたしましては、韓国内において平静が維持されますとともに、国民融和のための秩序ある変革が成果を上げることを期待いたしております。政府としては、米国等関係諸国との意見交換を通じまして、朝鮮半島の平和と緊張緩和のための国際環境づくりを進めるため努力をしておりまするし、今後もその努力を強めていかなければならぬと考えております。先般、私の訪中の際も、中国首脳との間にかかる見地より話し合いを行った次第でございます。
 北方領土につきましては、安倍さんの言われますとおり、粘り強く返還の努力を重ねなければならぬと考えております。
 北方領土におけるソ連の軍備強化につきましては、きわめて遺憾に存じまして、政府といたしましては、昨年二月と十月にソ連側に抗議を行ったところでありますが、今後とも情勢の監視を怠ることなく、ソ連側に対しまして、事態の是正をもたらすべく適切な措置を講じてまいるつもりでございます。
 次は、総合的な安全保障政策についてのお尋ねでございました。
 わが国は、戦後軍事大国への選択を退けて平知国家の道を選んだわけでございますけれども、これは、国の安全保障をないがしろにしていいということを意味するものでは決してございませんどころか、国の安全保障につきましては、一層緊張した、一層周到な配慮が必要であるということを意味するものと私は心得ておるわけでございます。したがいまして、国の安全保障は、外交、防衛、内政全般にわたりまして、総合的見地から周到に進めていかなければならぬと考えております。
 外交面では、日米安保条約を軸といたしまする日米協力をいよいよ確かなものにするように、彼我の間にいささかの不信も醸すことのないように注意していかなければならぬことはもとより、日米安保条約の運用につきましては、誠実にこれに当たらなければならぬと考えております。資源の多くを外国に依存しておるわが国といたしましては、経済外交ばかりでなく、全体の外交努力を精力的に展開いたしまして、世界社会における名誉ある生存を確保するために、一層緊張した外交努力を続けてまいらなければならぬと考えております。
 国内におきましては、秩序ある民主体制を堅持し、活力のある経済体制を堅持いたしまして、侵すことのできないわが国の威厳を堅持して、わが国の安全保障に備えていかなければならぬと考えております。
 次に、安倍さんは、国際社会の動向に関する情報の総合的な分析、評価の機能を整備しなければならぬじゃないかという御指摘でございました。
 仰せのとおりでございます。近来の国際関係、相互依存を深めつつも、ますます緊張の度を増しておるわけでございます。御指摘のとおり、国際情勢の総合的な分析と評価、これに必要な情報の収集機能の重要性がいよいよ増してきております。今後とも情報収集機能の整備、強化に一層努力してまいるつもりでございます。
 第二は、機密の保持の制度の整備を検討すべきではないか、こういう御意見でございました。
 今回、現並びに旧自衛隊に関係した者が起こしましたスパイ事件に関連いたしまして、私ども機密の保持ということについて、緊張した周到な配慮が改めて見直されなければならぬことをしみじみ痛感いたしておるところでございます。こういう事件を起こしまして、まことに申しわけなく存じておるわけでございます。
 かかる不祥事件が生じたことは厳しく受けとめ、防衛庁における規律の振粛に努めますとともに、機密保全に万全を期するため、ただいまその総点検を行って、その再発を防ぐべく最善の努力をいま傾注いたしておるところでございます。
 なお、外交当局につきましても、秘密保全に万全を期してまいらなければならないといま注意を喚起いたしておるところでございます。
 情報の管理、機密の保持に厳正な態度が必要であることはもとよりでございますが、これを法的措置に訴えるかどうかという点につきましては、慎重に検討しなければならない課題であると私は考えております。
 予算につきましてのお尋ねでございました。
 全体の予算案についての評価は安倍さんと私と軌を一にいたすわけでございますが、昭和五十五年度予算編成におきましては、財政再建の第一歩といたしまして、歳出の合理化に努めて公債発行額を減らすということをいたしますとともに、行政簡素化を一方において進めまして、経費の節減に努めたことは申すまでもないところでございます。
 われわれは、御指摘の三K赤字につきましても、サマーレビュー以来彫り深く検討してこの予算案に盛ったわけでございます。決して満足すべき成果を上げ得たものとは考えておりませんけれども、財政再建の第一歩として最善の努力を払ってまいったつもりでございます。今後ともこの検討は彫り深く行いまして、再建の実をいよいよ確かなものにしなければならないと考えております。
 行政整理についてのお尋ねでございました。
 安倍さんの御指摘のように、職員の縮減と行政事務の大幅整理、これが何といたしましても行政改革の第一の眼目であることは申すまでもございませんし、国民の強く要請するところであることも承知いたしておるところでございます。したがいまして、先ほど飛鳥田委員長にもお答え申し上げましたとおり、われわれは三万七千人に上るところの定員の削減、十八特殊法人の整理、その役員の一割減、地方支分部局等の整理方針の確定、それから千六百億円を超えるところの補助金の整理、向こう四年間に四分の一の補助金の整理合理化を目標といたしまして、本年度の分につきましてはそれを超えるところの補助金の整理ができたものと私どもは考えておるわけでございます。
 それから、綱紀の粛正でございますが、官庁間の綱紀の保持につきましては、従来から機会があるごとに徹底を図ってきておるところでございますが、一連の事件を契機といたしまして、政府の取り組むべき最重要課題の一つといたしまして、経理処理の厳正化、勤務体制の適正化、官公庁間の接遇の自粛等、綱紀粛正のための一連の具体的措置を講じていまこれを実行いたしておりますることは、安倍さんも御承知のとおりでございます。綱紀の保持こそは施政の原点でございますので、私は行政の規律を原点に踏まえて、みずからの内閣の姿勢を正しながら、国民の要請にこたえていかなければならぬと考えております。
 経済政策についてのお尋ねでございました。
 今日までのところ、幸いにいたしまして、内需の堅調に支えられまして、政府がもくろみました経済の成長、雇用の維持はほぼ目標に近く達成できましたことはありがたいことと思っておるわけでございますけれども、海外の原油高を初めといたしまして、卸売物価がこのところ急激な上昇機運にございます。このことは、われわれ経済政策のこれからの運営にとりまして大きな問題になってまいるわけでございまして、安倍さんの言われるように、財政、金融、経済政策全体の機動的な運営で、真剣に対処しなければならぬ問題と考えております。財政と金融のとりわけ協調的な展開が必要であることは、御指摘のとおりと考えておるわけでございます。
 農林漁業、中小企業等、こういう厳しい環境のもとにありまして、どのようにこの技術力、経営力の強化を図りながら対処してまいるか、われわれはこの重い政治責任に十分こたえていかなければならぬと考えております。
 公共料金につきましては、昨年来の石油、LNG価格の大幅な上昇、最近の円安傾向等によりまして、電力、ガス各社の経営内容が極度に悪化いたしております。こうした情勢のもとで、電力会社とガス会社は料金値上げの申請を行っておるところでございますけれども、政府はこのような値上げ申請につきましては、経営の徹底した合理化を前提として、原価主義の原則に立って、物価、国民生活への影響を十分考慮して、厳正かつ慎重に対処してまいるつもりでございます。
 それから、土地政策についてのお尋ねでございました。
 飛鳥田委員長にもお答え申し上げましたように、いまの土地経済事情、必ずしも投機に走っておるようには思いません。大都市中心の宅地の供給不足が地価の増高の原因であると承知しておりますので、宅地の供給を増す手段をあらゆる方向から促す措置を講じなければならぬと考えて、税制の一部にもその手直しを施してまいったことは御案内のとおりでございます。しかし、この地価が投機性を帯びるということのないよう、十分監視を続けていかなければならぬと考えております。
 住宅政策につきましては、仰せのように、住宅の質の向上、居住水準の向上が問題でございます。そういう国民のニーズにこたえる住宅政策をこの予算案には盛り込んだつもりでございますが、さらに一層そういう方向に住宅政策の推進を図っていかなければならぬと考えております。
 高齢化社会に対応して社会保障制度をどう持っていくかという意味の御質問でございました。
 わが国の社会保障制度は、すでに国際的に見ましても、制度といい水準といい、決して遜色のないものと私は自負いたしておりまするけれども、今後、人口高齢化の進展に伴いまして社会保障給付費の一層の増大が見込まれるわけでございます。このため、今後は各制度の有機的な連携を図るなどの体系化、効率化を進めますとともに、給付と負担の両面にわたりまして社会的公平を図っていくことが必要であると考えております。水準を落とさないようにどういう工夫が必要か、とりわけ医療保障については、増高しつつある医療費の効率化と、その負担の適正化を図るにはどうすればいいかというような重要な問題がございます。このため、給付、負担の両面にわたりまして見直しを行いまして、その基本的な改革を図ってまいらなければなりませんし、医療費の効率的な使用についても、各般にわたる行政措置を進めていかなければならぬと考えております。
 高年齢者の雇用対策、それに関連した定年制の推進等については一層努力をしていかなければならぬと考えております。
 エネルギー政策でございます。新エネルギー機構には民間の活力を十分使い切らなければいけないじゃないかという御指摘でございます。十分そういう心がけで新エネルギー機構の形成に着手したいと考えております。
 石油消費の節減につきましては、先般来、暖房温度の引き下げでございますとか、生産分野におけるエネルギーの節減の強化でございますとか、あるいは燃料転換でございますとか経済速度による走行の励行、マイカー通勤の禁止、自粛等の措置をお願いいたしてあるわけでございますが、この二月は省エネルギー月間に当たりますので、月間行事を通じて幅広い広報活動を積極的に展開してまいるつもりでございます。さらに、毎月一回省エネの日を設けまして、国民のエネルギー節約に対する理解を深めるための啓蒙を行うとともに、対策の周知徹底を図りたいと考えております。
 多角的な石油供給源の確保でございますが、インドネシア、中国、それから最近はメキシコ等で新たな供給源の開拓に努めておるところでございますし、今後も一層努力を重ねてまいるつもりでございます。
 「婦人の年」に備えての世界会議への取り組み方のお尋ねでございました。
 わが国といたしましても、本会議の準備のための討議には積極的に参加いたしますとともに、婦人のために行っている諸施策の具体的な成果を踏まえて、積極的な姿勢でこの世界会議には臨みたいと考えております。
 青年に対しましては、みずからの能力の開発の機会をできるだけ豊富に提供できるような施策を進めなければなりませんし、国の内外にわたりまして、ボランティア活動が展開できるようなことも十分考えながら、わが国の青年の夢と誇りを実現していくように、政府としてもお手助けをしなければならぬと考えております。
 最後に、野党各党の間に進められている連合政権構想についてのお尋ねでございました。
 野党がそれぞれのお立場におきまして連合構想を持たれることを、私は、とやかく批判しようとは思わないのであります。ただ、国民は、こういう変革期に臨みまして、国民の期待にこたえるだけの実力と見識を持った政治を求めておるものと思うのでございまして、私は、安倍さんが仰せのように、現実的に政権を担って国民の期待にこたえ得る力量を持ったそういう政党は、自由民主党以外に残念ながらないのではないかというように考えておるわけでございます。(拍手)
 もっとも、この自由民主党も重い責任を持っておりますので、野党各党の御理解と御協力を得なければ、政策の円滑な遂行はできませんし、みずからの体質の改善にも、万全の努力を必要といたしますことは申すまでもございません。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(灘尾弘吉君) 竹入義勝君。
    〔竹入義勝君登壇〕
#14
○竹入義勝君 私は、公明党・国民会議を代表、て、総理に対し、いま国民が直面する数々の不安と要求を具体的かつ率直に質問をいたします。総理におかれても、この国民の不安の解消のための方途を示し、また、その要求についてのお答えを明快に提示されることを望むものであります。(拍手)
 まず、複雑な国際情勢に対するわが国の外交姿勢についてでありますが、初めにアフガニスタン問題についてお尋ねをいたします。
 アフガニスタン問題は、アフガンをソ連圏へ引き込むための親ソ政権の樹立のために、ソ連が強力な軍事介入を行ったものであります。これが、軍事力による民族自決の圧殺、内政干渉の最たるものとして、国際法にそむくものであることは言うまでもありません。国連総会におけるソ連軍即時無条件完全撤退決議が、西側諸国のみならず、非同盟諸国の多くの支持を得、ソ連の行為を非難したことは、如実に問題の本質をあらわしています。
 ソ連は、軍事介入について、両国間で結ばれた友好善隣協力条約の援用を主張し、その行為を正当化しようとしていますが、それが逆に、この条約の本質的な疑問を世界に伝えている姿となっております。
 ソ連が、アフガニスタンを南西アジア、中東の外交的、軍事的拠点として固定化するならば、この地域の緊張の激化は、世界の軍事的、経済的危機の増大につながることは必至であると言わなければなりません。
 すでにカーター大統領は、今年度の一般教書において、米軍事力の強化など、ソ連との対決姿勢を明らかにし、また、モスクワ・オリンピック不参加の姿勢も明らかにいたしております。いずれにせよ、力による対決が国際的な対立、抗争を生み、再び冷戦に逆戻りすることになり、軍備拡張競争の激化に悪循環していくことは必至であります。
 また、テヘランにおける米大使館占拠事件は、国際法のみならず、人道上からも常軌を逸したものであることは言うまでもありません。
 アフガニスタン問題とイラン問題の解決のために、わが国政府は、平和と共存を念願する人類の願望と国際社会の正義を貫き、是は是、非は非と主張し、自主平和外交を展開すべきであります。
 イラン問題とアフガニスタン問題の発生は、その性格を異にするとはいえ、今後の国際政治の複雑さを示し、問題解決のむずかしさをあらわしていると言えますが、総理の施政方針演説でこの問題への日本政府としての対応を聞いて、国民の多くは、そこに八〇年代の世界の推移と展望とともに、施政方針の基礎となるべき洞察力、自主的な判断も見当たらないと失望したに違いありません。
 外務省の国際情勢の見通しでも、米ソ関係が大きく変化する可能性は少ない、また、デタント追求路線が継続されるものと考えるといたしておりますが、果たしてそうなのか。七〇年代から八〇年代のはざまで起きたこの二つの大きな衝撃との関係、その前途、八〇年代の展望について、総理の所信を明らかにされたいのであります。(拍手)
 さらに、私は、次の諸点について総理の所見を求めるものであります。
 一つは、アフガン問題に対するソ連への制裁措置として、日ソ貿易を今後どうするのか。日ソ共同のシベリア開発をどうするのか。オリンピック問題にどう対応するのか。今後の漁業交渉にいかような決意を持たれるのか。アフガン問題に関連し、政府はパキスタンに十億円相当の物資援助を決定しましたが、今後の対応をどうされるのか。また、米国から、わが国がイランに対する直接的制裁行為を求められておりますが、これにどう対応するのか。また、非は非としつつも、イラン石化はわが国中東政策の象徴的事業であることからも、打ち切るべきではないと思うが、この点についてどう考えるか。以上の点について明確な御答弁をいただきたいのであります。(拍手)
 さて総理、あなたは、施政方針演説の中で、八〇年代の道標、二十一世紀に向けての国づくりのために、国民の信頼と合意の重要性を強調されました。しかし、それを国民に訴え、求める前に、総理みずからが国民に信頼される姿勢を示すべきであります。
 昨年一年、航空機疑惑事件や鉄建公団を初めとする各省庁、公社、公団における空出張、空超勤、やみ賞与など、さらに、国際電信電話会社の密輸事件が次々と白日のもとにさらされ、政治や行政の腐敗、役人天国、公費天国に対する国民の激しい怒りの声が上がる中で、総理は、政治倫理の確立と綱紀の粛正、行政改革の断行を国民に公約され、しかも、肉を切って骨に達する行政改革を実施すると公言されたのであります。この公約の実践は、納税者であり、主権者である国民に対する政府の当然の責務であり、国の財政が膨大九赤字を抱え四苦八苦する中で、肥大化した行財政に深くメスを入れるのは、財政再建を主題とした五十五年度予算編成の何よりの足場であったはずであります。
 ところが、総理、今回の行政改革では、十八法人の縮減を図ろうとしているとはいえ、すでに大平内閣樹立の以前に廃止が内定していた特殊法人をただリストアップしただけで、財政的には何ら貢献しないものとなっております。しかも、五十五年度中に実施されるものはわずかに五法人だけで、この点でも、五十五年度に大半の統廃合を実施したいという総理の指示は全く実施されておらないのであります。
 また、国家公務員数の約八〇%が配置されている地方出先機関についても、ブロック機関は、一部を除き、今年三月末を目途に具体的な計画を決め、県単位の機関は、本年六月末までに計画を決める方針であるとされているのであります。
 昨年十一月の所信表明で、総理は、「特殊法人、省庁の付属機関及び地方支分部局等について統廃合に関する計画を年内に作成し、計画的にその実現を図っていく」と表明しましたが、この言葉を全くほごにした行政改革の内容であります。
 三十九年九月、臨時行政調査会が二年七カ月間を費やした行政改革答申以来十六年、歴代内閣の閣議決定はあったものの、何ら見るべき行政改革は行われておりません。大平内閣がやろうとしている改革も、結局臨時行政調査会で指摘されたものの一部をなぞっただけであります。
 このように腰砕けの行革に終わった原因は、何よりも計画をすべて各省の官僚に全面的にゆだね、総理自身が責任を持ってリーダーシップを発揮し得なかったことに由来するのであります。総理は、このような行政改革案について、どこで肉を切り、骨に達するとされるのか、しかと承りたいのであります。(拍手)総理が努めて強調される国民の信頼と合意は、行政改革の事例一つもってしても、その形成が不可能であることを明らかにしていると申し上げざるを得ないのでありますが、総理の率直な所見を承り、その決断を促すものであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 次に、エネルギー問題であります。
 エネルギーは、単に経済と国民生活を左右する基本的資源のみならず、それだけに戦略物資としてのウエートを高め、平和を左右する存在となっております。したがって、エネルギー問題の解決は、人類の平和と生存のための基本的課題として位置づけなければなりません。しかし、現状においては、第二次石油危機に象徴されるように、国際石油情勢はきわめて厳しいものがあります。特に慢性的な石油の供給不安定、価格の上昇、そこに液化天然ガスなどの価格上昇が急テンポになってきた状況からして、エネルギーの輸入代金がこの八〇年代の日本経済に加える重圧ははかり知れぬものがあります。
 そこで、省エネルギーの徹底、脱石油、代替エネルギーの開発、導入に全力を挙げなければならないのは当然としつつも、当面、石油が一次エネルギーの大宗であるとの事実は動かしがたいのであります。なかんずく、石油の安定供給確保の重要性は論ずるまでもありません。
 しかしながら、わが国の産油国に対する情報の乏しさ、対応のまずさはしばしば指摘されているところであります。欧米諸国が安いうちに買い付けを終わってからわが国は高い石油を買い付け、しかも、昨年末には米大使館占拠事件に絡むイラン原油を買い受けるなど、その対応のまずさが随所に見受けられるのであります。こうした不手際を今後繰り返さないための方策について、政府の見解をまず伺うものであります。
 さらに、欧米の政府要人が積極的に産油国を訪問し対話を重ねているのに比べ、わが国の政府要人の産油国訪問は格段の差があります。大平首相はみずから赴く考えはないのか。私は、早い機会に訪問するよう計画すべきであると思いますが、所信を伺うものであります。
 次に、政府の「長期エネルギー需給暫定見通し」、このことについては代替エネルギーの開発、導入計画、とりわけ石炭の液化、地熱発電、太陽エネルギーなどの新エネルギーの開発、供給量などについて、その計画達成が困難であるとする意見があります。その具体的な見通しについて、何が、いつごろ、どうなるのか、確信のある御答弁をしていただきたいのであります。
 また、政府が計画している新エネルギー機構については、思い切って官僚色をなくし、開発を担う民間の活力と創意を伸ばし、開発目的達成のための効率的な仕組みと運営がなされない限り、創設はなすべきではありません。政府の具体的な構想を伺いたい。
 原子力発電については、有力な代替エネルギーとして、その建設推進が先進各国政府の政策となっていますが、安全性において多くの問題点があることもまた事実であります。厳重な安全点検とともに、現在の原子力安全委員会を行政委員会に改組して安全審査に関する独立した権限を持たせるべきであると考えるのでありますが、総理のお考えを示されたい。(拍手)
 また、高レベルの廃棄物の最終処分の方法が確立されていないままで原子力発電所が次々と建設されていくのは問題であります。総理は、このことについてどのような見解と見通しを持っておられるのか、お伺いをいたしたいのであります。
 日本経済の前途に幾多の難問を抱える中で、いまわが国の景気は、一歩政策のかじ取りを誤るならば大変な事態を招くところにあると言わなければなりません。五十四年度のわが国経済は、原油価格が二倍となり、インフレを伴う厳しい環境のもとにありながら、個人消費、民間設備投資など民間需要による自律的な景気の拡大基調を示し得たのでありますが、これはひとえに国民の堅実な消費行動、企業の経営努力による結果であることが大方の一致した見方であります。
 今日の問題は、ここに続く五十五年度の経済の見通し、物価の上昇がどうなるかにあり、エネルギー問題の展望とともに目下最大の関心事であります。したがって、財政再建への大きな課題を抱えつつも、五十五年度予算がインフレを抑え、五十四年度に見られる景気の基調をぜひ支えてほしい、ここに国民の一致した願いがあると私は考えます。その観点から、経済運営、物価問題への政府の基本方針について質問をいたします。
 一つには、政府の経済見通し、経済運営についてであります。
 政府は、五十五年度の実質経済成長率を四・八%と見込んでおられますが、民間研究機関等の多くが三%台、中には二%台とする見通しもあります。総理は、この政府見通しを達成する自信がおありなのかどうか、まずお示しをいただきたい。
 私が、インフレ対策と同時に、景気の基調を維持することに重きを置く理由は、ようやく脱出してきた長期不況をいままた再現されることを全く恐れるからであります。なぜかならば、先ごろの長期不況を乗り切るために果たしてきた国の財政主導の景気回復策を、もはや繰り返すだけの財政的余裕が全くないことであります。同時に、そうした場合、未曽有の雇用不安に陥るでありましょう。私は、企業倒産件数が史上二位を記録し、雇用情勢の不安とともにその今後が憂慮される現在、景気の持続的回復のための政策努力をすべきであります。したがって、先行きに不安の持たれる個人消費、民間設備投資を堅調に推移させるところに経済運営の基本を置き、さらに公共事業の伸びがゼロはやむを得ないとしても、その中身について再考すべきことを総理に求めるものであります。
 特に、地価暴騰のときに、公共事業が地価上昇を先導することのないよう、高速道路を初め大型プロジェクトを後回しにして、土地購入とその関連経費を要しない国民生活の足元にある公共事業を優先して行うべきことを強く訴え、総理の英断を求めるものでありますが、しかとお答えをいただきたいのであります。(拍手)
 加えて、政府は、五十四年度公共事業のうち五%を留保しておられますが、この事業費ベースで一兆円にも及ぶ繰り延べ分を五十五年度でどのように使われようとされるのか、それとも三月末までに使うつもりであるのか、明らかにしていただきたいのであります。
 さて、具体的施策のもう一面は、インフレ抑制のための物価対策、金融政策についてであります。
 物価情勢は、原油の高騰と円安等の動向を中心にし、一段と深刻さを増しております。卸売物価の二〇%近くの上昇率に加えて、消費者物価も今年の夏ごろには二けた近い上昇率が懸念されているのであります。現在物価問題で重要なことは、原油価格高騰の影響を他の諸物価へ極力波及させない厳正な行政指導、インフレ心理を鎮静する対策をいかに講ずるかということであります。しかし、政府が実施しようとする施策は、電力、ガス料金のみならず、公共料金の軒並みかつ大幅値上げ、石油製品価格の野放しなどに見られるインフレ容認政策にほかなりません。こうした姿勢は、昨年十一月発表した「物価対策の総合的推進について」、五十五年度経済運営の基本的態度に掲げる「物価の安定は経済の持続的成長の基盤」に反し、消費者物価見通し六・四%の達成も困難になると考えますが、御所見を承りたいのであります。
 原油価格の高騰によるとはいうものの、電力、ガス料金の大幅値上げは、国民生活、国民経済に及ぼす影響がきわめて大きなものがあり、電力、ガス料金の値上げには厳しく対処すべきだと思いますが、値上げに対するお考えを重ねてお聞きをしたいと思うのであります。
 また、輸出の著しい増加は、国際収支の赤字を考慮に入れても、世界不況の中で、対外経済摩擦を引き起こすことは必至であります。政府見通しによる名目一九・六%の伸び率が実現した場合、こうした危険はないのか、総理の率直な見解を承りたいのであります。
 さて、景気動向によっては金融政策の機動的運用が特に重要でありますが、金融政策に関する政府の方針をお示しいただきたいのであります。
 さらに、景気の持続的回復に欠かせないものが中小企業への対策であります。現在、倒産の危機に瀕している中小企業の経営安定を図るための具体策と、政府の今後の中小企業政策の基本的方向を伺いたいのであります。
 二つには、五十五年度予算案と財政再建の問題について伺いたい。
 五十五年度予算政府案は、その掲げる財政再建元年の言葉とはうらはらに、財政再建を踏み出した内容とはとうてい言うことはできないのであります。不公平な税制の是正は中途半端であり、行政改革、補助金の整理もまさしくかけ声倒れというのが実際であります。その傍らで、財政再建の名のもとに福祉予算を大幅に後退させようとしているのであります。
 そこで、不公平税制の是正、補助金の整理の問題について、順次質問をいたします。
 財政再建に当たって、不公平税制の是正は、行政改革の断行、補助金の整理合理化とともに不可欠なものであります。しかし、政府の五十五年度税制改正案は、政府自身の予期せぬ税の自然増収に頼り、不公平税制の是正は、その増収額が過去三年間でも最も低く、内容も、法人税アップの見送り、利子配当所得の総合課税化の四年延長、土地税制の三年連続緩和など、現行税制で優遇されている大法人や有資産者の利益を守ろうとしていることが明白であります。
 したがって、私は、税制の改正においては、法人税の軽減税率適用区分を年所得七百万円から一千万円に引き上げることや、年所得一億円以下は現行の法人税率四〇%の据え置きなど、中小企業の経営に配慮しながら法人税の引き上げを図ることを初め、利子配当所得の総合課税の早期実施、原則非課税となっている有価証券譲渡益の課税強化の措置として有価証券取引税の強化、一方的に社会的不公正を拡大するおそれのある土地税制の緩和の見送りなどの実行を提案するものでありますが、総理の所見を伺いたいのであります。
 また、補助金について、政府は、五十五年度以降四年間で件数の二五%を整理することを中心とする整理合理化案を示しております。補助金の整理合理化は、過去に幾度となく提案され、毎年予算編成期に決まって言われてきたものでありますが、その実行はなされておりません。私は、今回の整理合理化案に対しても、竜頭蛇尾に終わったり、五十五年度の予算編成の過程に見られたように、福祉、文教関係の補助金の整理がことさら取り上げられ、いわば一般消費税導入のバネにされることを憂えるものであります。
 補助金の整理合理化が進展しなかった最大の理由は、いわゆる役人任せの密室で検討されてきたことによります。特に、中央官庁によっては、予算総額の六割−七割が補助金行政であり、地方行政を中央に従属化させる手段とさえ言えるのであります。補助金の整理合理化については、何よりも総理大臣が主導権を握り、さらに果断な補助余の整理合理化案を策定することを要求するものでありますが、総理の見解を示されたい。(拍手)
 次に、雇用問題について、とりわけわが国社会の急速な老齢化に対応する取り組みについて伺いたい。
 中高年齢者の求人倍率は依然として〇・一から好転の兆しは見えません。しかも、再び不況に落ち込むならば、真っ先にその犠牲となるのは高年齢者であります。その意味から、中高年齢者の雇用の確保は、社会的、経済的、財政的な面からもきわめて緊要な課題であります。
 したがって、官民を問わず、当面、六十歳を上限とする年齢による雇用差別を禁止し、それが定年の下限を六十歳とする中高年雇用差別禁止法を制定して、これを基軸として雇用の諸体制を整えるべきであります。
 六十年前、平和寿命が四十歳台であった時代に始まった五十五歳定年が、平均寿命が七十歳台となった現在において種々の矛盾を発生して、それが国民生活の老後の不安を深刻なものとしていることを真剣に考えるべきであります。中高年雇用差別禁止法制定についての総理の明確な御答弁を求めるものであります。(拍手)
 あわせて、法律で定められた高年齢者雇用率六%の未達成企業に対して課徴金を課するなど、政府は、その達成を促進するためいかなる決意がおありなのか、お答えをいただきたいのであります。(拍手)
 さらに、この際、婦人各層からの強い要望となっている雇用における男女平等法の制定が、婦人の社会的地位向上のためには不可欠でありますが、総理の所信を明示されたいのであります。
 老齢化社会へ急速に進む中で、中高年齢者の雇用と並んで重要な問題は、年金制度の充実と改善であります。
 年金支給開始年齢が定年退職年齢と結合することは欧米先進各国の常識であります。日本では、公務員だけは年金支給開始年齢が五十五歳、しかも、退職年齢は一般的に六十歳を超えて五年以上のゆとりを持っているのに対し、民間の勤労者は、厚生年金支給開始年齢が六十歳、定年退職年齢の多くは五十五歳であります。つまり、五年間は生存権の保障のない定年解雇のもとに置かれているわけであります。しかも、働いて六十歳を超えれば、年金受給額は所得額によって減額または支給されない。これに対して公務員は、五十五歳以降民間に就職すれば共済年金は満額支給される。ここに、公務員と民間勤労者の生存権にかかわる制度がいかに不平等であるかが明らかであります。(拍手)
 ところが総理、政府は、私たちが当面、定年の下限を六十歳とする法律をつくろうとすると、厚生年金の支給開始年齢を六十五歳にしようとしております。その一方で、公務員等については、二十年かけて六十歳を年金支給開始年齢として、これにあわせて定年退職年齢を制度化しようとしております。これは、現行制度の矛盾と公務員と民間勤労者との間の不平等を温存しようとすることにほかなりません。
 私は、このような厚生年金支給開始六十五歳への延長を先取りする暴挙を、直ちに撤回することを強く要求するものであります。(拍手)この要求に対する総理の明快な答弁を求めるものであります。
 さて、国民世論の厳しい批判を受けて、老人医療無料制、児童手当、小中学校の教科書無償配付制度は、五十五年度予算の政府案決定の段階で現状維持とされたものの、財政再建を理由に、政府は五十六年度においては所得制限の強化導入をもくろんでいるようであります。
 老人医療無料制、児童手当制度は長年にわたる国民的要求によって創設され、国民の中に定着してきたものであります。その制度の後退が許されないことは、五十五年度予算大蔵原案に対する国民の批判を見ても明らかであります。今後における所得制限の強化によって、これらの制度が後退することは決して容認できません。この際、総理のお考えを明確に承っておきたいのであります。(拍手)
 教科書の無償制度は、憲法二十六条の義務教育無償の精神に基づくものであり、義務教育の本質から論議され、創設されて、長年にわたって定着してきたことは言うまでもありません。もし、所得制限方式が導入された場合、それが児童心理に与える影響は甚大であり、教育の本質にかかわる問題として、すでに制度創設の当初に論議されたはずであります。
 総理が言われるように「子供は未来への使者である」とするならば、子供の心理を傷つけ、子供を財政再建の犠牲にする所得制限導入等は悪政の最たるもので、総理の発言は耳ざわりのよい詭弁となります。
 総理、教科書無償制度は、今後の財政事情にかかわらず存続することを、この際、明確にお答えを願いたい。(拍手)
 また、いわゆる四十人学級制の実施計画については、少なくとも九カ年計画でこれを実施することを要求するものでありますが、どのようなお考えでおられるのか、あわせてお答えをいただきたいのであります。
 さて、諸悪の根源と言われた地価の高騰が再びあらわれ、今後の経済と国民生活の上から見て憂慮すべき状態にあります。
 一方、建設省の「住宅需要実態調査」によると、千二百五十六万世帯が住宅困窮を訴え、前回の調査に比べ二百五十三万世帯も増加をいたしております。これは、政府の地価対策、住宅対策に根本的な欠陥があったためであると断ぜざるを得ないのであります。政府は土地譲渡所得税の緩和を進め、宅地供給を期待していますが、これまでの実績から見ても期待のできないことは明らかであります。
 この際、地価を抑制するため、国土利用計画法の規制区域指定の積極的適用を図るべきでありますが、これを含め、地価対策に対する総理の所信を伺いたいのであります。
 さらに、この際、住宅対策について、特に次の三点を提案申し上げたい。
 まず第一に、次の第四期住宅建設五カ年計画の策定に際しては、宅地供給対策を明確にするため、宅地供給五カ年計画も策定し、並行的に推進すること。
 第二に、わが党がかねてより主張しております住宅基本法を早期に制定すること。
 第三に、空き家増加傾向にある大都市地域の木賃アパートを、公的融資または一定期間の利子補給で、不燃建築のセミパブリック住宅へ計画的に建てかえて、適正な家賃を定めて、居住水準の高い住宅を供給すること。
 以上の三点について、総理の誠意ある答弁を伺いたいのであります。(拍手)
 良好な環境を総合的に保全することは、総理が施政方針でも述べられたところであります。
 その基本的な法律となる環境アセスメント法の制定が、政府の何度かの公約であったにもかかわらず、財界、産業界、政府内部の圧力でいまだに提案されていないことはきわめて遺憾であります。これは、政府の姿勢が依然として長期展望を持たず、国民や住民の利益よりも企業優先、公害放置の姿勢を示すものであります。環境アセスメント等を通じて地域住民の合意を得なければ、あらゆる開発行為が許されない時代であることを認識し、環境アセスメント法の早期制定を図るべきでありますが、総理の決断をお伺いするものであります。(拍手)
 国民に衝撃を与えた自衛隊スパイ事件は、自衛隊、防衛庁内のモラルの低下、規律の弛緩を示すものであります。具体的に漏れた情報はどのようなものであったのか。今回の事件による対米、対中関係への影響についてどう判断しておられるのか。重要なことは、今回のような不祥事の再発左防止することでありますが、一部には、この事件に便乗して、スパイ罪あるいは機密保護法の制定という過激な意見もあります。これらの諸点についての所見を伺いたいのであります。
 質問の最後に総理に申し上げたい。
 政府・自民党は単独政権終えんの危機感から、小選挙区制導入を柱とした選挙制度について検討を進めておられるようでありますが、これは、その理由を申すまでもなく、制度の改悪であり、総理が努めて口にする国民の信頼と合意とは全く相入れない民主政治への挑戦にほかなりません。速やかにその意図をやめ、衆参両院の定数是正にこそ努めるべきでありますが、この問題について特に答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(大平正芳君) 竹入委員長の第一の御質問は、アフガン、イラン問題を踏まえて、日本外交の展望を示せということでございました。
 イラン、アフガニスタンの問題、とりわけアフガン問題は、世界平和の立場から申しまして憂慮にたえない事件であると思います。米ソ両国とも、デタントの基本的な枠組みを崩す意図がない旨述べておりまするが、私は、そのことを強く希望するものでございます。
 わが国といたしましては、国の存立を国際環境に大きく依存しておりますることは御了承のとおりでございます。わが国の安全と繁栄は、国際社会の平和と安定がなくては成り立たないものであります。わが国は、平和国家としての立場から、日米安保体制を含む日米友好協力関係を基軸としつつ、世界の各国との友好関係を深めて、国際社会の繁栄と不安定要因の除去のために積極的に国際的責任を果たしていきたいと考えております。
 アフガン問題に対するソ連への制裁的措置に対して、対ソ貿易、日ソ共同のシベリア開発問題、オリンピック問題、今後の漁業交渉等についてどう対処するかというお尋ねでございました。
 アフガン問題に対する基本的な立場はすでに明らかにしたとおりでございます。その立場に立ちまして、わが国といたしましては、日ソ貿易及び日ソ共同のシベリア開発の問題も含めて、種々の問題につき、いろいろな角度から目下鋭意検討を進めておるところでございます。政府の具体的な対応ぶりにつきましては、いま申し上げる段階に立ち至っておりません。関係諸国の対応も見守りながら、慎重に考えておるところでございます。
 オリンピック競技会は政府の行事ではありませんので、基本的にはその参加、その賛否は政府の決定し得る問題ではございません。しかし、政府としては、国際情勢及び内外の世論を踏まえまして、日本オリンピック委員会と所要の協議を行ってまいりたいと考えております。
 現段階で今後の日ソ漁業交渉の見通しについて申し上げることは時期尚早であると思いますけれども、いずれにいたしましても、北洋海域におけるわが国の漁業権益の維持につきましては、政府として十分配慮してまいるつもりでございます。
 パキスタンへの物資援助についての今後の対応いかんというお尋ねでございました。
 わが国は、パキスタンに流入いたしておりまするアフガン難民の窮状を救うために、国連難民高等弁務官の呼びかけにこたえまして、去る一月二十二日、総額十億円相当の救援物資を供与する方針を決め、現在その実施につきまして国連難民高等弁務官と協議中でございます。今後のパキスタンに対する経済援助につきましては、パキスタン政府からの要請に応じ、対パ援助国会議参加諸国とも十分協調しながら検討してまいりたいと思います。
 イランに対する直接的制裁行為についてどうするのかということでございました。
 テヘランにおける米大使館の人質事件は一日も早く解決されることを念願いたして、わが国といたしましても、その国際的努力を積極的に支持してまいりたいと考えております。人質の早期解放を目途とした方途につきましては、事態の推移に応じて、わが国としても欧米各国と協調して適切に対処していく考えでございます。
 イランの石油化学に対する協力は、世界各国の理解を得まして継続したいと考え、そのために必要な努力をいま重ねておるところでございます。
 行政改革についてのお尋ねでございました。
 竹入委員長も御指摘のように、行革は本来大変むずかしい仕事でございます。これまでも幾たびか心がけて、なかなか成功しなかった案件でありますることは御案内のとおりでございます。それだけに、この成功を確保するためには、国民各層からの合意と支持が必要でありますが、幸いにいたしまして、今日、この行革に対する国民の支持と協力は非常な高まりを見せておるわけでございます。
 政府といたしましては、これにこたえまして、人員の削減、特殊法人、認許可事項、補助金その他につきまして、計画的に行革を進めてまいる方針を決めて、いま実行に移したばかりでございます。いま実行に移したばかりでございまして、この計画は順を追うて成果を上げてまいることと思うのでございまして、私は、国会を初め、各界の強力な支援と協力をお願いしてやまないところでございます。
 次は、エネルギーの問題でございます。
 米大使館占拠事件以来、イランの原油の確保につきまして、若干の問題を生じたことは残念でございますけれども、その後、この問題に対する誤解は解けまして、国際的な理解のもとに、イラン原油の長期契約は順調に成立をいたしておるところでございます。今後とも、わが国といたしましては、国際石油市場の動向を注視しながら、国際的な協調に十分配慮しながら、石油輸入の安定的、多角的な確保に努めてまいりたいと考えております。
 私の中東訪問の計画についてのお尋ねでございました。
 私も中東方面に訪問をしたいという念願はかねてから持っておりますけれども、まだ具体的計画を立てるまでには至っておりません。今後のスケジュールをも勘案の上、検討させていただきたいと思います。場合によっては、私にかわる特使を派遣する必要が生じる場合もあろうかと考えております。
 代替エネルギーの確保の見通しについてのお尋ねでございました。
 「長期エネルギー需給暫定見通し」を参考といたしまして、政府としては、輸入石油依存度を現在の七五%から十年以内に五〇%程度に引き下げることを目標といたしておりますることは、かねがね申し上げておるとおりでございます。そのため、政府は、環境保全に十分の配慮をしながら、御指摘の石炭液化、太陽熱、地熱等の開発利用のほか、原子力、LNGなどの代替エネルギーの開発に全力を傾注してまいる所存でございます。
 五十五年度予算におきましては、代替エネルギー対策に十分の予算を確保いたしましたし、また、新エネルギー総合開発機構を設置して、その推進体制を整備することにいたしております。
 新エネルギー機構について具体的な構想を述べろということでございました。
 新機構は、石炭液化、地熱発電、太陽光発電等の技術開発及び海外炭開発、地熱開発のための助成、調査等を行うことを任務とするものでございます。初年度の予算規模は百七十六億円でございます。
 業務の推進に当たりましては、先ほど安倍政調会長にも申し上げましたとおり、民間の有識者から成る委員会の設置によりまして、民間の活力を十分利用してまいりたいと考えております。
 なお、新機構におきましては、石炭鉱業合理化事業団の業務もあわせて実施することにいたしております。
 原子力安全委員会を行政委員会に改組してはどうかという御提言でございました。
 委員長も御存じのとおり、五十一年の七月の原子力行政懇談会の意見を踏まえて、五十三年六日に、原子力基本法の一部を改正する法律として原子力安全委員会ができたわけでございまして、その審議の経過によりますと、諮問委員会として、行政庁とは一線を画した立場から調査審議する方が、より厳正中立、かつ、客観的な審査を行い得るとの考え方に基づいて成立したことは御承知のとおりでございます。
 政府といたしましては、今後とも、この趣旨に沿いまして、その機能を十分発揮されるよう期待いたしますとともに、その意見を十分尊重いたしまして、原子力の安全確保に万全を期してまいるつもりでございます。したがって、これを行政委員会に改組するという考えは、いまのところ持っておりません。
 高レベルの廃棄物の最終処分の方法が確立されていないではないかという御懸念でございました。
 再処理施設から発生する高レベルの放射性廃棄物は、当面再処理施設において厳重に保管することとしておりまして、何ら問題はないと考えております。長期的な貯蔵及び処理、処分につきましては、動燃事業団及び原研を中心といたしまして、鋭意研究開発を進めまして、処理、処分技術の確立を図ることといたしておるわけでございます。
 次は、経済政策についてのお尋ねでございました。四・八%の成長には自信が持てるかという御指摘でございました。
 最近のわが国の経済は、内需を中心に着実な拡大を続けておりますことは御承知のとおりでございます。昭和五十四年度の実質経済成長率は六%程度と、おおむね当初の政府の見通しに近いものになっております。来年度におきましては、国際石油情勢が不安定、不透明であること、先進工業国の景気が鈍化傾向にあることなど、わが国をめぐる環境には厳しいものがございます。で、景気の拡大テンポはやや緩やかなものとなりましょうけれども、所定の原油の確保が行われ、われわれが所期する節約が行われてまいりますならば、実質経済成長率は四・八%程度となるものと見込んでおります。
 公共事業についてのお尋ねでございました。
 公共事業の中身については、委員長御主張のとおり、生活関連事業に重点をシフトすべきであるという御主張はかねがね伺っておるわけでございますが、私どもも、一般公共事業関係費の総額を前年度と同額に抑えておる中で、住宅と下水道、環境衛生等につきましては特に配慮をいたしてあるつもりでございます。生活関連投資が用地費が少なくて済むということは、必ずしも私は正確でないと思いますけれども、各種社会資本は、関連施設のバランスのとれた整備を行ってまいらなければなりませんので、用地費の割合だけで考えるわけにはいかぬと思います。公共事業の実施は総合的に判断していかなければならぬと私は考えております。
 公共事業の本年度の五%の繰り延べは五十五年度でどうするのか、五十四年度中に使うのか、明らかにせよというお話でございます。
 この留保措置につきましては、今後情勢が変化し、解除することが適当と認められましたときはこれを解除することといたします。だから、財政法上も、予算の執行時期の年度内調整でございまして、翌年度への繰り越しを前提としたものではございません。
 消費者物価六・四%の達成は困難でないかということでございます。
 消費者物価は、これまでのところ、幸いに比較的落ちついた動きを示しておりまするけれども、先ほども申し上げましたとおり、卸売物価の急上昇がどのように消費者物価に影響してまいりますか、注意を払っておるところでございます。そこで、公共事業の適正な執行、通貨の適正な調節、その他金融措置の機動的な対処、それから石油製品、生活関連物資などについての需給の安定、それから価格の監視、公共料金の査定を厳正にしてまいる、いろんな措置を講じまして、所定の目標をいかにかして達成すべく努力したいと考えております。
 電気、ガス料金の値上げ申請については厳しく対処すべきであると思うがどうだ。
 仰せのとおりでございまして、先ほどもお答え申し上げましたとおり、徹底した合理化を企業に求めることを前提といたしまして、原価主義の原則に立って、物価、国民生活への影響を十分考慮しながら、厳正に対処いたしたいと考えております。
 輸出の政府見通しが、名目におきまして一九・六%の伸びが示されておるけれども、これでは対外経済摩擦を引き起こす危険はないかということでございます。
 本件につきましては、飛鳥田委員長にもお答え申し上げたところでございますが、わが国の輸出は、五十四年の初期以来の円安傾向等を反映いたしまして、昨年秋以降、数量的にも回復基調にございます。当面この傾向は続くものと考えられますけれども、昨今の国際収支の状況に照らせば、全体的に特に問題があるものとは考えておりません。われわれといたしましては、国際的調和を配慮しながら、秩序ある輸出を求めるという政府の態度を貫きたいと考えております。
 金融政策についてのお尋ねでございました。
 金融政策は、金融当局を信頼してその機動的な運営に原則として任せたいと考えておりまするけれども、昨年以降三次にわたる公定歩合引き上げ等の措置が講ぜられたことは御承知のとおりでございます。今後も引き続き景気と物価の両面に細心の注意を払いながら、適時適切な金融政策運営を図ってまいりたいと考えております。
 中小企業政策についてのお尋ねでございました。
 このような厳しい環境のもとにおきまして、こういう環境の変化に対応することができる技術力、経営力を中小企業に持っていただかなければならぬわけでございます。そのためには、中小企業に対する融資の拡充、信用補完制度の拡充等の資金調達の円滑化、倒産防止対策の徹底、下請企業対策等に重点を置きながら、中小企業の経営安定のために施策の充実を図ってまいりたいと考えております。
 次に、税制についての若干の御質問がございました。
 第一は、中小企業に配慮した法人税率の引き上げの問題でございます。
 五十五年度におきまして、多額の自然増収を背景にいたしまして、歳出規模の抑制と租税特別措置の大幅な整理合理化等によりまして、予算編成に必要な財源は確保できますところから、法人税率の引き上げ等一般の税増収措置は講じないことにいたしましたことは、御案内のとおりでございます。なお、中小法人に対する軽減税率の適用を決める所得限度は、現在、私は十分配慮された水準ではないかと考えております。
 有価証券取引税の増徴問題でございますが、これは五十三年度の税制改正におきまして、株式、株式投資信託に係る税率を五〇%引き上げたばかりでございますので、今度の改正におきましては、その引き上げを見送ったところでございます。
 土地税制の緩和でございますが、この改正案は、現行制度の基本的枠組みを外すことなく、三大都市圏、特に首都圏における市街地の地価の水準、宅地供給の実態を考慮し、宅地の供給と土地の有効利用を推進するために、土地の長期譲渡所得課税に所要の見直しを行ったものであると御理解をいただきたいと思います。
 補助金についてのお尋ねでございました。
 毎年毎年、若干の補助金の整理合理化を進めておりますが、今度は、先ほども飛鳥田委員長に御説明申し上げたとおり、千六百六十七億円に相当する補助金の減額整理を行ったところでございます。かってない数字でありますことは評価していただきたいと思います。われわれといたしましては、今後四カ年の間に全体の補助金の項目の四分の一は整理しなければならぬという意気込みで、いまこれに取り組んでおるところでございます。御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
 中高年齢者の雇用差別禁止法の制定を図れということでございます。
 わが国のような終身雇用慣行のもとで高年齢者の雇用の安定を図るためには、基本的には定年の延長を推進することがぜひとも必要であると考えております。定年延長の推進は行政指導によることが適正であると考え、これを展開しておるところでございますが、法制化の問題につきましては公明党の強い御要請もございまして、昨年六月、雇用審議会に定年延長の実効ある推進策について、立法問題も含めて御諮問申し上げてあるところでございます。その答申を待って対処したいし考えております。
 高年齢者雇用率六%未達成の企業に対しまして、その達成の促進についてどうするかというお尋ねでございました。
 大企業中心に高年齢責雇用率の達成に関する計画の作成、その実施を促すなど、積極的に行政指導を展開しておりますけれども、今後一層これは強めてまいるつもりでございます。
 雇用における男女平等法の制定問題についてのお尋ねでございました。
 これは一昨年、労働基準法研究会から御提議がありましたお考えでございます。政府としては、この問題については今後婦人労働の実態を十分見きわめながら、関係審議会の審議を十分踏まえて対処してまいりたいと考えております。
 厚生年金の年齢六十五歳への延長の撤回を断行ぜよというお尋ねでございます。
 来年度の年金制度の改正に当たりましては、御承知のように年金水準の引き上げや各方面からの要望の強い遺族年金の改善など、給付の改善を行います一方、将来の人口老齢化や後世代の費用負担を考慮いたしまして、今後とも老後生活の支えとなる年金水準を確保しながら年金制度の長期的な安定を図るために、支給開始年齢の引き上げに着手したいと考えております。その際には、中高年齢の方々の老後の生活設計に十分配慮するとともに、現在の高齢者を取り巻く雇用環境等を考慮し、二十年かけて段階的に引き上げることとしたいというのが、政府の考えでございます。
 今後における所得制限の強化について、老人医療の無料化、児童手当制度の廃止など、後退は許すことができない、考えはどうだということでございます。
 老人医療制度、児童手当制度につきましては、関係審議会の意見も聞いて、制度のあり方、費用負担のあり方等を含め、その基本的な見直しを進めまして、今後における高年齢化社会の到来と社会経済情勢の変化に対応できますよう、所要の制度改正を図っていく考えでございます。
 教科書無償配付制度の存廃問題でございますが、義務教育教科書の無償給与制度につきましては、五十五年度予算においてこれを存続することにいたしております。今後におきましては、各界の意見に耳を傾けながら対処してまいります。
 四十人学級制の実施計画を、少なくとも九年計画に短縮してはどうかということでございます。
 厳しい財政事情を考慮いたしますとともに、学級編制の改善についても、できる限り既存施設の利用により円滑にその改善が実施できるようにとの見地から、児童生徒の減少期にこれを行うこととした等によるため十二年にいたしたものでございます。したがって、十二年計画をいま短縮する考えは持っておりません。
 地価の抑制をするため、国土利用計画法の規制区域指定制を積極的に適用すべきでないかということでございます。
 私は、たびたび申し上げておるように、いまの状況を土地に対する投機が盛んに起こっておるとは思わないのでございますが、しかし、委員長が御心配されるような事態になりました場合におきましては、機動的に規制区域を指定するということも考える場合があり得ると存じております。
 住宅政策につきましては、その質的改善、居住水準の向上等につきましては、御指摘のような趣旨で住宅政策を進めておりますることは、安倍会長にもお答えいたしたとおりでございます。
 環境アセスメント法の早期制定を図るべきであるがどうだということでございます。
 政府といたしましては、開発行為等の実施に当たっては、今後とも、わが国に適した環境影響評価のシステムを確立する必要を感じておりまして、その検討は進めていかなければならぬと考えております。環境影響評価法の制定につきましては、自民党と政府との間で目下審議が続けられておりまして、成案を得ましたら、国会の審議に供したいと考えております。
 自衛隊のスパイ事件に関連して、機密保護法の制定に及ぶ御質問がございました。
 自衛隊スパイ事件、まことに遺憾な事件でございます。現在、捜査当局がその全貌の解明に努めておるところでございますので、現段階でその具体的内容を答弁できる段階ではないことを御了承いただきたいと思うのでございます。対外的にも、今後の情勢を見きわめながら、要すれば、所要の措置を講じなければならぬと考えております。
 私としては、自衛隊の内部から発生した不祥事件であるとして厳しく受けとめておりまして、防衛庁における規律の振粛に努めますとともに、秘密保全に万全を期するため、その総点検をいま行って、その再発を防止することが緊切な責任であると考えておるわけでございます。
 なお、機密保護法の制定は考えておりません。
 最後に、小選挙区制の問題についてのお話がございましたが、この点につきましては、先ほど安倍政調会長にお答えしたところで御理解をいただきたいと思います。(拍手)
     ――――◇―――――
#16
○玉沢徳一郎君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は、他の日程とともにこれを延期し、明二十九日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#17
○副議長(岡田春夫君) 玉沢徳一郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○副議長(岡田春夫君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十六分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  大平 正芳君
        法 務 大 臣 倉石 忠雄君
        外 務 大 臣 大来佐武郎君
        大 蔵 大 臣 竹下  登君
        文 部 大 臣 谷垣 專一君
        厚 生 大 臣 野呂 恭一君
        農林水産大臣  武藤 嘉文君
        通商産業大臣  佐々木義武君
        運 輸 大 臣 地崎宇三郎君
        郵 政 大 臣 大西 正男君
        労 働 大 臣 藤波 孝生君
        建 設 大 臣 渡辺 栄一君
        自 治 大 臣 後藤田正晴君
        国 務 大 臣 伊東 正義君
        国 務 大 臣 宇野 宗佑君
        国 務 大 臣 小渕 恵三君
        国 務 大 臣 長田 裕二君
        国 務 大 臣 久保田円次君
        国 務 大 臣 正示啓次郎君
        国 務 大 臣 園田 清充君
        国 務 大 臣 土屋 義彦君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 角田禮次郎君
        外務省条約局長 伊達 宗起君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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