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1979/12/05 第90回国会 参議院 参議院会議録情報 第090回国会 公職選挙法改正に関する特別委員会 第2号
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1979/12/05 第90回国会 参議院

参議院会議録情報 第090回国会 公職選挙法改正に関する特別委員会 第2号

#1
第090回国会 公職選挙法改正に関する特別委員会 第2号
昭和五十四年十二月五日(水曜日)
   午後一時十分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         中村 禎二君
    理 事
                原 文兵衛君
                宮之原貞光君
                多田 省吾君
                内藤  功君
    委 員
                小林 国司君
                郡  祐一君
                竹内  潔君
                中西 一郎君
                中村 啓一君
                片岡 勝治君
                藤田  進君
                村田 秀三君
                青島 幸男君
   国務大臣
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    後藤田正晴君
   政府委員
       警察庁刑事局長  中平 和水君
       自治省行政局選
       挙部長      大林 勝臣君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        高池 忠和君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○公職選挙法改正に関する調査
 (第三十五回衆議院議員総選挙の執行状況及び
 選挙違反取締り状況に関する件)
 (政治資金規正に関する件)
 (選挙運動の拡大に関する件)
 (選挙制度改革に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(中村禎二君) ただいまから公職選挙法改正に関する特別委員会を開会いたします。
 公職選挙法改正に関する調査を議題といたします。
 まず、先般行われました衆議院議員総選挙の執行状況並びに選挙違反取り締まり状況につきまして報告を聴取いたします。後藤田自治大臣。
#3
○国務大臣(後藤田正晴君) この機会に第三十五回衆議院議員総選挙結果の概要について御報告を申し上げます。
 御承知のとおり、過般の総選挙は、九月十七日に公示をされて十月七日に執行されました。選挙当日の有権者数は約八千十七万人で、前回の総選挙より二百二十四万人増加しております。
 立候補の状況について申し上げますと、今回の立候補者数は八百九十一人で、前回の総選挙に比べ八人減少し、その競争率は戦後最低の一・七四倍でございます。
 次に、投票の状況でございますが、投票当日の天候は、北海道、中国及び九州を除き、台風の影響で終日風雨という悪天候でございまして、その投票率は、前回の総選挙七三・四五%を五・四四%下回る六八・〇一%となっております。
 次に、当選人の状況について申し上げます。党派的に申し上げますと、自由民主党は二百四十八人、日本社会党は百七人、公明党は五十七人、民社党は三十五人、日本共産党は三十九人、新自由クラブは四人、社会民主連合は二人、無所属は十九人となっております。なお、自由民主党は無所属から九人を追加公認いたしましたので、これによりますと、自由民主党は二百五十七人、無所属は十人となります。また、婦人の当選人は十一人で、前回に比較して五人増加いたしております。
 次に、党派別の得票率について申し上げますと、自由民主党は全有効投票の四四・六%、日本社会党は一九・七%、公明党は九・八%、民社党は六・八%、日本共産党は一〇・四%、新自由クラブは三・〇%、社会民主連合は〇・七%、諸派・無所属は五・〇%となっております。なお、自由民主党の追加公認を含めますと、自由民主党は四五・七%、諸派・無所属は三・九%となります。
 次に、選挙違反の状況について申し上げますと、投票日後三十日目の十一月六日現在の集計におきまして、検挙件数七千三十七件、検挙人員一万三千百五十八人で、これを前回の総選挙に比較いたしますと、件数で二〇・一%、人員で二八・六%の増加となっております。
 最後に、最高裁判所裁判官国民審査の状況について申し上げますと、今回の国民審査は八人の裁判官について行われたのでございますが、その結果、罷免を可とする投票は、いずれも有効投票の九・三%ないし一〇・九%程度でありまして、審査に付されました全裁判官が国民の信任を受けたのでございます。
 以上をもちまして、過般の衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査の結果の御報告を終わります。
#4
○委員長(中村禎二君) それでは、次に中平刑事局長。
#5
○政府委員(中平和水君) 去る十月七日に施行されました第三十五回衆議院総選挙に関する違反行為の取り締まり状況について御報告申し上げます。
 現在のところ、当庁としての最終統計がまとまっておりませんが、選挙期日後三十日、十一月六日現在で仮集計をいたしました数字は、お手元に資料としてお配りしてあります表に示したとおりでございます。
 まず、検挙状況でございますが、総数で七千三十七件、一万三千百五十八名となっておりまして、前回総選挙、昭和五十一年十二月五日施行におきます同時期の五千八百五十九件、一万二百三十三名に比べますと、件数で二〇・一%、人員で二八・六%の増加となっております。
 罪種別に主なものを申し上げますと、買収が六千三百三十三件、一万一千九百三十一名、自由妨害が七十四件、六十名、戸所訪問が二百四十二件、四百五十二名、文書違反が三百二十八件、六百三十三名、その他が六十件、八十二名となっておりまして、買収が検挙事件のうち件数で九〇%、人員で九一%と最も多くなっております。
 次に、警告の状況を申し上げますと、総数で二万二千七百四件でございまして、今回と同じ解散による総選挙でありました前々回、昭和四十七年十二月十日施行の一万九千七百五件と比べますと、二千九百九十九件、一五・二%の増加となっております。なお、警告事案のほとんどは文書関係についてのものでございまして、総件数の八八%を占めております。
 以上、簡単でございますが、概略を御報告申し上げる次第でございます。
#6
○委員長(中村禎二君) 以上で報告の聴取を終わります。
 次に、本調査に関し質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#7
○宮之原貞光君 ただいまの報告にありました選挙違反の検挙の件数、中身の問題ですが、全体的には前回の衆議院選挙よりも件数並びに人員が二〇%強ふえておるという報告でございますが、きわめて肌寒い感がするわけでございますが、その中でお聞きしておきたい点は、この買収の件数、人員が前回の選挙に比してどうなっておるか、そこをちょっと伺いたい。
#8
○政府委員(中平和水君) 前回総選挙の同時期におきます買収事件の検挙は、五千七十六件、八千九百七名でありましたが、今回は千二百五十七件、三千二十四名、件数で申しまして二四・八%、人員で三四%それぞれ増加いたしている次第でございます。
#9
○宮之原貞光君 いまの報告は、特に買収の方は、先ほどの平均から見ると三〇%以上も件数においてもそれから人員においてもふえておると、こういうことを意味すると理解してよろしゅうございますね。
#10
○政府委員(中平和水君) さようでございます。
#11
○宮之原貞光君 なお、関連をいたしまして、昨今新聞紙上をにぎわしております千葉の二区の宇野亨代議士の三億円買収問題ですか、あれはいまどういう状態になっておりますか。
#12
○政府委員(中平和水君) 宇野議員派の違反事件につきまして、現在まで警察が検挙し、送致いたしました件数、人員は、二百九十二件、二百九十八名になっておりまして、そのほとんどが買収でございます。また、現在までに立件をいたしました買収の基本金額の合計は六百六十二万円に及んでおります。
 なお、本件につきましては、検察庁の方においても捜査をいたしておりまして、現在警察もこれとともどもに捜査を行っておりますので、今後さらに事件が発展するものと考えられるわけでございますが、現になお捜査を継続中という次第でございます。
#13
○宮之原貞光君 そうすると、いままで判明した金額で六百六十二万円というのですが、言われておるところの三億円云々というのはまだ明確になっていないわけなんですね、大分数が離れておるようですが。
#14
○政府委員(中平和水君) 現在捜査中でございます。今後若干の進展はあるだろうというふうに考えておる次第でございます。
#15
○宮之原貞光君 いま刑事局長から報告いただきました一連の選挙違反問題ですね、特に買収が非常にすさまじい勢いでふえておるということは、私は、日本の民主主義と申しますか、民主政治の非常な危険な面がこの面に端的にやはり象徴されておるような気かしてならないのです。まだ依然として、選挙に勝てば官軍だという物の考え方か非常に強く出ておるわけであります。
 いまもお尋ねいたしました千葉二区の問題だけでなくて、たとえば新聞紙上にあらわれたところの山形一区の問題を見ますと、豚肉と清酒がきわめて安い会費の中で供応されておるという事件、あるいはまた群馬の二区で閣僚を経験されたところの人が、原価で百十円しかしないところの包丁を正価千八百円というラベルを張って三千丁も配ったというのが出ておるのですね。
 こういう事件などは、まさにこれは選挙民を愚弄するもはなはだしいと思うのですが、受け取る方も、罪の意識といいますか、悪いことをした、こういうことをやったらいけないという気持ちが大分薄れてきておるのじゃないか、こういう感がしてならないのです。私はきわめて憂慮すべきところの一つの状態が出つつあると思うのですが、どうしてもこういう金の力でもって政治が動かされていくという体質を選挙の場合でも根絶するという方法を講じない限り、私はやはり日本の民主政治というものは国民の期待するところの方向に発展しないと思うのですが、この点、取り締まり当局としてはどういう方策を講ずればそういうのが防止できるのか、その点、所見があったら、まず刑事局長の方の所見を承りたいと思うのです。
#16
○政府委員(中平和水君) 私どもは現行の法制のもとで取り締まりをする機関でございますので、今後とも選挙の公正の確保を目指しまして、厳正公平な取り締まりをより徹底していくことを通じまして選挙の公明化に寄与してまいりたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
#17
○宮之原貞光君 私は単に取り締まりを厳正にしただけではこの問題は根絶できないと思うのですね。これはあなたの守備範囲じゃないですから、私は大臣に聞きたいのですが、こういう状態はどうなんですか、大臣。大臣の所見をまずお聞かせ願いたいと思います。
#18
○国務大臣(後藤田正晴君) 仰せのように、今日、選挙違反、ことに買収事犯がふえておることはまことに残念に思うわけでございますが、これはやはり一つは候補者側に問題がある。何といいますか、先ほどおっしゃったように勝てばいいんだといったような風潮が一つあると思います。もう一つは、有権者側の受けとめ方の問題にもあると思いますが、しょせんは、国民全体の、ことにまた候補者自身の厳しい政治倫理といいますか、道義といいますか、そういう問題が是正せられないと、なかなか選挙違反がなくなるという事態にはほど遠いのではないかと、かように考えるわけでございますが、同時にまた、選挙の制度の問題であるとか、あるいは規制のやり方の問題であるとか、そういったような側からも、今日の事態にかんがみて、こういった事犯がだんだん減少していくように対処していかなければならぬのではなかろうかと、かように思うわけでございます。
 先ほど警察庁の方からの御報告にございましたように、今回非常に買収事犯がふえておると、こういう報告でございますが、これも私は一つは今回の選挙が少数激戦といったようなこともあったと思いますけれども、しかし選挙運動の実態が国民世論の期待とは反した方向にいっておるのではないかという点が一点。もう一つは、国民世論はそういった選挙を正しくやらなきゃいかぬじゃないかという機運が盛り上がっておるわけでございますので、それに対応する捜査の取り締まりの方の側の力の入れ方、こういった相関関係で、今回の選挙の際に三〇%も買収事犯がふえておると、こういうように思うわけでございますが、こういった点については今後とも取り締まりの力を高めると同時に、選挙運動の実態について、先ほど申しましたように、候補者の側と、もう一つは受けとめる側の政治倫理の確立、啓蒙運動、こういうようなことを強力に展開をしていかなければならぬと、かように考えておるような次第でございます。
#19
○宮之原貞光君 私は、後藤田自治大臣・国家公安委員長から、もっと積極的な意欲のほどを実は期待をしておったのですがね。というのは、あなた自身もこの問題については、前科と言うと語弊がありますけれども、率直に申し上げて四十九年のあなたのいわゆる後藤田派と言われるところの皆さんの選挙違反はすさまじいものがありましたですね。当時これは新聞紙上を大変にぎわしたところの問題なんです。
 特に、この問題については、当時の参議院の決算委員会でわが党の和田静夫君からの質問に対しまして、当時の町村国家公安委員長は、後藤田派のようにかつて警察の最高首脳部にあり、ことに取り締まりの総元締めだった者の関係者がこのような違反を起こしたことはまこに遺憾だと、こう述べておられるわけですよね。その方が、年変わり月移って、今度はその取り締まりの総責任者になっておられるわけですからね。かつてのあなたの運動者の皆さんの買収事件というのは莫大な数に上っておりますだけに、単にいま御答弁いただいたように取り締まりの力の入れ方云々ということぐらいでおざなりの答弁で済まされていいんでしょうか、どうでしょうか。率直に申し上げて、この点についてもっと積極的な大臣の意欲というものを見せない限り、いろいろマスコミに宣伝されておるところの一抹の不安、疑念というものは私は取り去れないと思うのですが、再度聞きますけれども、どうなんですか。
#20
○国務大臣(後藤田正晴君) 先ほどは私は選挙違反の数がふえておるということについての一般的な問題としてお答えをいたしたわけでございますが、私自身の問題につきましては、先般の本会議でもお話がございましたように、私自身のこれはもう全く不明不徳のいたすところでございまして、この点は深くおわびを申し上げなければならぬと、かように考えておるわけでございます。
 ただ、こういう過去の苦い経験もございまするので、私自身は、この苦い経験を踏まえまして、選挙違反の取り締まりを担当しておる警察当局の管理について厳正な態度で今後臨んでまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
#21
○宮之原貞光君 しかし、取り締まりの厳正を期すだけでこういう問題は根絶できるのでしょうかね。私は、現在の公職選挙法なりあるいは政治資金規正法もやっぱり問題があると言わざるを得ないんですね。この点、自治大臣はどうなんですか。選挙関係を今度扱われるところの最高の責任者ですから、単に取り締まりの厳正を図りますと言うなら、何かあたかも前の話はおたくの方にだけに取り締まりが不平等にいったみたいな感じさえ受けるんですよ、言葉じりではございませんけれども。私は、そのこともさることながら、もっともっと本質的な問題があるような気がするんですけれども、大臣はどうお考えになりますか。
#22
○国務大臣(後藤田正晴君) その点は、最初にお答えいたしましたように、候補者みずからと国民全体の政治倫理を確立していくということが基本であろうと思いますが、御案内のように、航空機疑惑問題等防止対策協議会からの総理に対する御答申もあって、それを受けられて総理の方からそれについて自治省としてひとつ事務的に検討をし、詰めてもらいたいと、こういう御命令があって現在作業を進めておるのでございますが、あの中にございますように、一つは、金のかからない選挙のあり方について正すべきところを正せと、こういうことで、その中に、個人本位の選挙からできるだけ政党本位の選挙の方にひとつ検討をしてみたらどうだといったようなこと、あるいはまた、政治資金の明朗化について、個人の経済というものともう一つは政治活動経済というものの区分けを明確にして、政治活動経済の面については規制の対象として届け出をし公表をしたらどうだと、こういう御提言があるわけでございますので、そういった提言を受けて現在検討を進めておるわけでございます。
 なおまた、選挙法につきましてはいろいろな問題点が今日までございます。選挙区制の問題であるとか、あるいは定数是正の問題であるとか、あるいは選挙運動のあり方、規制の問題これらについても従来からいろいろな御指摘がございまするので、こういうような点についても私ども自治省の担当者の方でいろいろと勉強し、詰めておるような次第でございます。
 したがいまして、こういったことについて結論が事務として出ますれば、いずれにしましても、選挙制度の問題というのはやはり各政党に関係のあることでございまするので、各党でもひとつ御検討を願い、そして各党間の御協議もしていただいて、そしてあるべき選挙制度についての改正もやらなきやならぬと思いますが、いずれにしても選挙という問題は各政党の選挙についての土俵づくりの問題でございますので、私どもとしては、こういう点については各党間でぜひひとつ御検討を賜りたいと、かように考えているわけでございます。
 政治資金の方につきましては、先ほど申しましたように、私どもの方で事務的には詰めておりまするので、その結果いかんによって各党にまた御相談もさしていただいて、そして各党間でもひとつお打ち合わせを願った上で、成案ができますればそれに従って御審議を願いたいと、かように考えておるわけでございます。
#23
○宮之原貞光君 非常に抽象的なお答えですか、具体的にもう少しお尋ねしてまいりたいと思うんです。
 あれですか、先ほどちょっと私聞き間違いなら訂正していただきたいと思うのですが、政治倫理の確立は具体的にはどうしていくかという問題の中で、個人本位の選挙活動を強めていきたいと、こういうことですか。
#24
○国務大臣(後藤田正晴君) いいえ、それは反対です。
#25
○宮之原貞光君 いわゆる政党本位の選挙の方向に個人選挙云々というのを持っていきたいと、こういう意味ですね。
 大臣の話を聞いておる限りにおいては、それぞれの政党がこれはやってもらわなきゃ、まず出してもらわなきゃ困るという話では、私はまたこれも心もとないと思うんですよ。やはり、物の考え方というのは、素案なら素案の段階で出しておいて、各党の合意を得るように詰めていくんだというなら話はわかりますけども、まず各政党が出しなさいでは、私はやっぱり政府の姿勢としてどうなのかと言わざるを得ないんですよ。たとえば、先般の大平さんの所信表明を聞いておっても、具体的に政治倫理の確立の問題で三つほど出しておりますね。けれども、どうもやっぱし積極的にこれをやろうという気がない。少なくとも通常国会に出していくということになるとすれば、もう相当詰めたところの作業が行われていなけりゃならないと思うのですがね。そういうものも、作業の進捗状態というのは、通常国会の冒頭にでも出せるような態勢にあるんですかないんですか、まずその総括的な話を聞かせてください。
#26
○国務大臣(後藤田正晴君) 政治資金の方の問題につきましては、内閣の方からの御指示がございましていま鋭意事務当局で詰めております。できるだけ早く成案を得たいと、かように考えておるわけでございます。
 選挙制度の方の問題につきましては、これはやはり選挙についての土俵づくりの問題でございますので、これについてはひとつ各党間で十分に御検討をしていただきたい。私どもとしてはそれに対してできるだけのもちろん御協力といいますか資料等十分提出をさしていただいて、そして各党間で意見の合致したところで法律案の作成にかかる、こういうことか一番実現の可能性があるのではないのかと、かように考えているような次第でございます。
#27
○宮之原貞光君 この制度の問題で、たとえば新聞で一部伝えられておるように、衆議院の小選挙区比例代表制とか参議院の拘束性比例代表制とかというそういう問題は確かに御指摘のようにこれは各党間の合意を得るように最大限努力してもらわなけりゃならぬ問題ですがね。しかし、選挙制度の問題であるにしても、公職選挙法のやはり基本的な問題――たとえば前の第一次大平内閣の九月に航空機疑惑問題等防止対策に関する協議会から答申が出ておりますね。それで、官房長官から自治大臣の方にちゃんと来ておるわけです。要請がね。その中に、いわゆる政界の浄化に関するところの問題で、基本的な問題以外のところでも、選挙運動の規制のあり方の問題、さらにはまた選挙の公営化を拡大していくという問題とか、さらには政治家の資産公開の問題という問題は、これまたすべて各党間の合意を得るまで待つということであったら、何のために行政府があるかと聞きたいぐらいなんですよね。こういう種類の問題についてもいまの大臣のお考えとしては各党間の意見が出そろってからやられると、こういう意味なんですか。
#28
○国務大臣(後藤田正晴君) 私がお答えを申しておるのは、選挙制度に関係する問題については各党間でひとつお話し合いを願って、おおむねの合意を得た段階で処理をしていきたい。政治資金の個人経済と政治活動経済区分の問題については、私どもの方で各党に御相談も申し上げながら案をつくって、成案を得次第皆様方の御審議を仰ぎたいと、かような意味合いでございます。
#29
○宮之原貞光君 またこの問題は後から尋ねますがね。ただ、端的に言わしてもらえば、政治資金の問題だけは私どもの方はやるんです。選挙のあり方にかかわるところのいろいろな問題については各党間というのは、私は無責任もはなはだしいと思いますよ、端的に申し上げて。先ほど申し上げたところの選挙のあり方の問題ですね、いわゆる小選挙区とか、比例代表とか、そういう基本の問題は、それは各党間にとってはきわめて大事な問題だけにそういう態度でやってもらわなきゃなりませんけれども、その他の公職選挙法のあり方で矛盾点というのはたくさん出ておるでしょう。また、各町村なり特別区でやっておるところの選挙管理委員会からはたくさんの要望事項が出ておるのですよ。そういう問題もみんな各党間の云々ですから、何のために一体所管官庁があるかと言いたいんですよ。これは後からまた具体的にお尋ねしますけれどもね。
 関連してお聞きいたしますが、これは決して皮肉のつもりで申し上げているのじゃないのですが、この総選挙前、解散前の七月下旬のころ、おたくの党の長老の三木さんから、選挙浄化の問題について、物の考え方、三木私案というのが示されましたね。そのことに対するところの大臣の御見解はどうですか、まずお聞かせいただきたい。――大臣に聞いておるのですよ。
#30
○国務大臣(後藤田正晴君) まことに申しわけありませんが、私自身その当時その案を実は見る機会がなかったわけでございます。ただ、御趣旨は、恐らくは政治倫理の確立、金のかからぬ選挙、こういうような意味合いの中身であったのではないかなと、あるいは連座制の強化の問題とか、こういうことであったと思いますが、この点につきましては、これは党へお出しになったわけでございますので、党の方でそれを受けとめられまして党で御審議をしていただいておるのではないかと、かように私自身は考えておるのでございます。
#31
○宮之原貞光君 よく知っておられるじゃないですか、あなた。あなたも自民党に党籍を置かれて、それぞれの派閥の――私は何派か知りませんけれども、有力な方で、それで三木さんから出されたものをおたくの党の選挙制度調査会は検討されて一つの案をまとめたんでしょう。いわゆる選挙浄化特別措置法案というのをつくったわけでしょう、法案を。それを前の解散のときの臨時国会では出さなかっただけの話なんです。おたくの党の方針としてこれを基本にしたものをまとめ上げているということは事実なんですよ。それを、大臣、今度あなたはしなくなられたかどうか知りませんけれども、その与党でなさっておるところの中身を知らぬということでは、私、いかがかと思いますよ。これは、確かにあなたが指摘されたように、選挙公営部分の拡大ということと、それから寄付行為あるいは罰則の強化という問題と連座制の強化という問題なんです。それを、自民党の皆さんは、明確にその寄付の規制の強化と連座制の強化、ここを中心にしたものの浄化法案というのをつくられておるじゃないですか。それは記憶がないと言うならそれは仕方がございませんけれども、私は、おたくの与党の党の方針として決めておるわけなんですから、少なくとも所管大臣は一番御存じだと思ってお尋ねしたんですがね。まあいいでしょう、御存じなければ。
 選挙部長、この問題に対するところの所管庁としての意見をちょっと聞いてみたい。
#32
○政府委員(大林勝臣君) 仰せの浄化法案、いわゆる三木私案というものが総選挙前に党の方へ提出されまして、党の担当の調査会でいろいろ御議論を賜ったところでございます。
 ただ、ちょっと経過を申しますと、御案内のように、内容が、「公営の拡大」、それから「寄付の禁止の強化」、あるいは「連座制の強化」と、非常に重要な部門にわたりまして具体的な提案がなされておるわけでありますが、これはこれらなりに党の方においても慎重にかなり審議をされたと承っております。もちろん事務的にもいろいろそれぞれの問題について私ども検討をしてまいりましたし、また今後も検討をしてまいるつもりでございます。
 ただ、ああいった状況でございまして、前回の臨時国会では提出をされなかったというようなことにもなりましたけれども、この浄化法案の内容につきまして、あるいはその精神につきましては、今後も一つの検討課題というつもりを持っております。ただ、具体的にいろいろ実現する場合の問題点というのもまたいろいろあるようでございますし、それはそれなりに今後とも継続して検討いたしたいと、こういう気持ちでおります。
#33
○宮之原貞光君 ここに盛られておるところの問題、あるいは今日世論になりつつあるところの問題と関連をして、法案全体じゃなくて具体的に個々の問題について聞きたいと思うのですがね。
 金のかからない選挙――今日の選挙は金かかかり過ぎて困る。それを金のかからないような選挙に持っていくという一つの重要な手だては、何といっても選挙公営の拡大だと思うんですよね。たとえば、三木さんは、政見放送の拡大とか、新聞広告あるいは公費負担の拡大と、こういうことを言っておられますね。もちろん私どももあの中身は皆いいと言っているのじゃないんです。たとえば、あの中には、ビラの頒布を禁止しようとか、個人の演説会を禁止しようとか、およそ逆行するところの問題がありますけれども、しかしながら、この政見放送拡大にせよ、新聞広告云々と、これはもっともな妥当な話なんですね。こういう問題については自治省当局としては前向きに検討する用意がありますか、どうですか。
#34
○政府委員(大林勝臣君) 仰せのとおり、選挙公営の拡大の一番の重点は恐らくテレビの政見放送の回数の増加にあるのではないかと拝察しておりますけれども、このテレビの政見放送の回数の増加につきましては、先生も御案内のとおり、相当以前から国会においても議論され、また要望されてきたところでございます。昭和五十年でございましたか、選挙二法の改正を契機としまして、一分ほど政見放送の時間を延長したことがございますが、その時点で国会でも回数増加という御要望が非常に強くて、私どももNHKあるいは民間放送といろいろ協議をしておったのでございますけれども、最終的に委員会の方にNHKの会長あるいは民間放送連盟の会長さん、こういう方を参考人としてお呼びになりまして、そこでいろいろの詰めをなさっております。そのときにNHKなり民間放送連盟の方から出ました意見の要点は、確かに御要望の点はよくわかるけれども、技術的に見てさらにこれ以上回数を増加するということは非常にむずかしい、一つにはまだいわゆるUHFと申しますかその地域をその地域だけでカバーするカバリングの問題がなお残っておりまして、あるいは選挙放送の公平を期するためにはあらゆる候補者について公平平等にやらんといかぬわけでありますけれども、そのための回数をふやすということになりますと、非常に全体の時間が長くなりまして、特に民間放送連盟といたしましても、その都度数カ月前からスポンサーが決まっておる、そういうものに対するいわゆる断り、放映の延長、こういった依頼というのが非常な大きな問題になっておる、したがって回数の増加というのはとてものことではないけれども現状では無理なんであって、まあせいぜい国会の大変な御要望を踏まえて時間を少し延長いたしましょうというところに実は落ちついた経緯がございます。
 仰せの関係につきましては、今後も私ども努力をするつもりでございますが、一方におきまして放送側のそういった特殊の事情というのもございますので、その点もお含みをいただければありがたいと思います。
#35
○宮之原貞光君 時間の制約がありますから、余り経過は要りませんから、前向きに検討するならする、しないならしないと、こういう問題点がありますならありますと、はっきり言っておいてください。
 これは、私、大臣にお聞きした方がいいと思いますが、連座制の強化という課題、これは現行法では総括主宰者、出納責任者ときわめて限られておるのですが、三木さんのは、いわゆる五人以上の運動員が買収した場合にも連座制を適用せよと、こういう私案です。ところが、おたくの党の方で最終的にまとめたのは、五人以上を十人以上というふうに修正してまとめていますね。しかし、この連座制の強化ということは、方向性としては私は当然だと思うのですが、具体的にどうだということは聞きませんけれども、大臣としてはどうですか。これはこういうものでもきちっとして、とにかく先ほど金権政治じゃだめだと言ったんだから、やっぱりそういう立場からこの問題は担当大臣として前向きに、中身まで聞こうと思いませんけれども、検討すべき課題だと思うのですが、どうなんですか、こういう問題については。
#36
○国務大臣(後藤田正晴君) 現在の制度は、御案内のように、候補者本人と意志が通じているとでも言いますか、候補者本人が関連をしておるといったような場合に大体連座制を適用しようというたてまえになっておると私は思うんですね。ところが、運動員から五人以上の逮捕者が出た、あるいは十人でも結構ですが出た場合にそれを失格にするということについては、私はこれはよほど慎重な構えでないと非常な暗い選挙運動になるおそれを感じるわけでございます。したがって、検討すべき課題ではありまするけれども、いまにわかにそれに賛成するというのはいかがなものであろうかと、私はかように考えておるわけでございます。
#37
○宮之原貞光君 大臣のお話を聞きますと、きわめて後ろ向きの姿勢ですわね。これは端的に申し上げて、たとえばおたくの四十九年の選挙違反のときには、御承知のように二百六十五名が検挙されておりますね。これは当時の全国区の糸山氏と双壁ですよ、当時のワーストの。けれども、御本人は、私は全然知りません、運動員がやりましたんですというかつこうです。しかし、国民の常識から見れば、これだけの問題があっても本人は全然関知しなかったかどうかということになると、これはやっぱり疑問を持つのは私は無理ないと思いますよ。
 たとえば当時のあなたの選挙報告の収支を見ますと、支出が六百三万円と出ている。これはおたくの支出出納責任者が明確にそうだと言っているんだから間違いない。ところが、あなたの選挙違反関係のいわゆる後藤田グループと言われるところの皆さんの保釈金とか、弁護士費用、いろいろなものを換算すると、当時の徳島新聞は三千万円を下らないだろうと報じているんです。それもみんな、あれは後援会が集めたんです。皆さん勝手にやっているんですと、こう言ってみたって世の中が通るのだろうか。今日の買収事件のいろいろな問題がウナギ登りに上っているところの要素は私はここにあると思うんですよ。総括責任者さえつかまらなけりゃ、出納責任者さえつかまらなけりゃ本人と全然関係ないんだと。現行法では通るかもしれませんが、国民は政治に対するところの不信を増大するばかりですよ。本当に政府が政治倫理の確立を名実ともにやりたいと言うならば、あなたのそういう過去の暗い――あなた自身は別にいたしましても、あなたも後援者を持っているだけに、後藤田さんの時代にこれをやったというならば、大臣は本物だ、世間ではとやかく言われているけれどもやはり違うんだと、こういうあなたの身のあかしにもなるのじゃないでしょうかね。それを、暗い選挙になるからどうもこの問題については私は消極的で、検討することはしますけれども余り積極的ではありませんということでは、一体どこに今日言われているところの問題点の国民の政治に対するところの不信、政界浄化と言われているところの問題を払拭するところの要素が出てきましょうかね。私は重要な要素だと思いますけれども、やっぱりこれは暗い選挙になるからイメージが悪いですか、そこらの点をもう一回私は聞かしてもらいたいと思う。
#38
○国務大臣(後藤田正晴君) 私は、だんだん選挙をよくせにやなりませんから、だから理想的な選挙が行われておるという前提に立つならばいま御意見のようなこともあり得るかなと思いますけれども、現実の選挙の実態を見ました場合に、仮に五人以上あるいは十人以上とかといったようなことになりますと、一つは、御承知のように今日摘発班というのがあるわけでございます。こういったような横行を許す。もちろんそれは悪いのがなけりゃ摘発班があったって一向差し支えないわけですけれども、現実の選挙運動の実態を見た場合に、うっかりするとこれは摘発班の横行を許して非常な暗い選挙になりはしないのかという点を実は私自身恐れるわけでございます。そういったようなことから、先ほど言いましたように、検討すべき課題ではあるけれども、いまにわかにそういうわけにはいかぬのではないのかと、かように考えておるわけでございます。
#39
○宮之原貞光君 これではますます後藤田さんに対するところのイメージを損なうことにしかならないのじゃないかと私は心配するんですがね、老婆心ながら。暗い選挙云々というのは、その取り締まりが問答無用で必要以上に取り締まっていくというところに暗い云々という問題があるのであって、政治資金あるいは選挙を浄化しようという考えの中で、運動員の相当数がぱくられたときには全然本人は関知しませんという法に言い逃れのザル抜けをつくっておいて、悪いことをする者を弁護しようということでは、私は本質的に違うのじゃないかと思いますよ。
 もう一つお尋ねをしますが、いわゆる政治家や公職選挙法に基づくところの候補者の寄付行為の禁止あるいは罰則強化の問題ですね、これは自民党の皆さんが最後にまとめたのは、明確に、「当該選挙に関し」云々というこの「選挙に関し」というのを削除した。言うならば、通常一般の社交の程度を超えた寄付云々というふうに常識的にしぼりをかけた方がいいのではないかと。言うならば、現在は「当該選挙に関し」とあるから、かねて選挙じゃないときにばらまくのは一つもかかりませんよということになる。言うならば、ここに金権政治と言われるその大きなゆえんがあるんです。私はこれもまた一つの妥当性のあるところの意見だと思うのですがね。こういう問題については、大臣としてはどうなんですか、お考えを聞きたい。
#40
○国務大臣(後藤田正晴君) 寄付の禁止につきましては、私はそれは検討させていただきたいと思います。
#41
○宮之原貞光君 検討は検討ですが、どういう方向性で検討されるおつもりですか、もし中身があったら聞かしてください。
#42
○国務大臣(後藤田正晴君) これはもちろん私が申しておるのは、前向きに検討さしていただきたいと、かような意味合いでございます。
#43
○宮之原貞光君 関連してもう一つお聞きいたしますが、実は前の通常国会の後半にわが党は国会議員及び内閣総理大臣その他国務大臣の資産の公開に関する法律案というのを国会に提出する準備をしたんです。これはまた先ほども申し上げたところの航空機疑惑問題等防止協議会の答申の中にもありますわね。総理も、何かわからぬような、国会と相談をしてやりますと、きわめてかっこうだけいいけれども、あとはしり抜けのようにやっているんですがね。私はこの問題も積極的にやらなけりゃならない課題の一つだと思うんです。国民の負託にこたえなけりゃならない。これは国会議員として身をただすためにはきわめて重要だと思っておるんですがね。この点に関するところの問題点はどうお考えですか。
#44
○国務大臣(後藤田正晴君) こういう資産公開の問題は、アメリカとか西ドイツ、あるいはイギリスですか、こういったところ、それぞれのお国柄によって国会の中の自主規制といったようなやり方もあれば、法律によってやっているという国もございますが、私は、この問題は資産公開することがベターであると、こう思います。しかしながら、それは法律でやるという筋合いよりは、やはりこれは国会みずからの手において自主的な規制というのがいいのではないのかというふうに私自身は考えておるような次第でございます。
#45
○宮之原貞光君 法律でない云々というのは、申し合わせでいいという意味ですか。
#46
○国務大臣(後藤田正晴君) 国会の中における単なる申し合わせという意味合いでもありませんけれども、国会の中において議員相互の自主規制のあり方ということでお決めになるのが適当なのではなかろうかと、かように思うわけでございます。
#47
○宮之原貞光君 大臣にいろいろお聞きしておりますと、やりますと言ったのが、だんだん具体的にお聞きしますと、総論はいいけれども具体論はどうも一つも中身がないというかっこうですね。本当に後藤田さんにそこはかとなく期待をしておったところの問題が一つずつ薄れていくんですかね。
 それで、さっき大臣が言ったところの政治資金の問題については早く結論を出したいと、こればかりは大臣は前向きの言葉で言われておったのですが、じゃひとつ具体的にお聞きしますが、御承知のように、附則第八条には五年後には見直すと出ておりますね。もう見直す時期です。次の通常国会あたりには見直していただき、いろいろ議論をしていただいて、五十六年度から見直した実効を上げてもらわなけりゃ困る。それはどの程度検討されておりますか。
#48
○国務大臣(後藤田正晴君) 現行の政治資金規正法は五年後に見直すということになっておりますが、いま私どもが検討しておりますのは、先ほど言いましたように、防止対策協議会の御提言を受けて、個人の経済と政治活動経済を分ける、そして政治活動経済の方は規制の対象として報告もし、公表もすると、こういうあの御提言の中身を受けて検討しておるわけでございます。もちろんできるだけ早く結論を出さなければならぬと思っておりますが、その検討の過程で、現行のそれ以外のたとえば企業献金をだんだん減らしていって個人献金の方に重点を移すようにといったような御趣旨のものがございますが、そういったような点も出てくるならば一緒にやってもいいかな、一緒にやらざるを得ないようなことになるのかなということを考えておりますけれども、しかし、いまの段階ではっきり申し上げられることは、先ほど言いましたような個人の経済と政治活動の経済の区分け、その点を中心に検討をしておると、こういうことでございます。
#49
○宮之原貞光君 再々三木さんの話を出して済みませんが、何も皮肉で言っておるのじゃないですから、素直に聞いておってくださいよ。
 実は、この政治資金規正法を改正したときの総理は三木さんですわね。三木さんは、当時、この問題についてはこういう国会答弁をしておるんですよ。党運営は、五年後にはみずから企業献金を辞退し、個人献金と党費で賄う、こういう方向でいくと言うんです。したがって、五年後に見直すという問題の焦点は、企業献金の問題がこれでいいのかどうかということですよということを私どもには国会答弁でされておるんですよ。あなたのいまの御答弁とは全く逆なんですよ。あなたは、個人献金の問題について検討するものは検討したい、もし出てくるならば企業献金の問題についてという第二義的の物の考え方。われわれから見れば、当時の政府の最高責任者が出してそれを審議したところのものは、今日自民党・政府は内部でいろいろな派閥紛争があるようですけれども、自民党というものがある限りは、自民党の総理が言ったことは自民党の方針だと理解せざるを得ないんですが、あなたのお話を伺う限りにおいては、この企業献金の問題についてはきわめて消極的だと受けとめざるを得ない。むしろ、今日いろいろな一連の疑惑事件を見てごらんなさいよ。たとえばあなたか盟友と言っておるところの田中元総理のロッキード事件の問題にしても、これは企業献金と深くかかわるところの問題でしょう。あるいはその後出たところのグラマン問題にしても、それは形の上ではなるほど個人献金のあり方の問題にも関連をするけれども、もともとはやはり企業が企業の利益のために何かやろうということから発生したところの問題なんです。言うならば、言われておるところの政治の浄化、政治倫理の確立というのは、大企業の利益のために多額のものをやっていく、いま騒がれているところのKDD事件にしてもそうじゃありませんか、ここのところの問題のネックをゆるくしておいて、それにはきわめて消極的であって政治倫理の確立を図りますとは、これは聞こえませんよ。やっぱりあくまでも第二義的で、さっきのお話でも、出てくるならば検討するにやぶさかではないと。これは常識的に日本語で考えれば、第二義的な問題できわめて消極的でありますという物の考え方なんです。依然として、自民党のというよりも、大臣はこういう考えなんですか。
#50
○国務大臣(後藤田正晴君) いまの仰せのところは、現在の法律で五年後に見直すと書いてあるから、その時期に当然見直さなきゃならぬ問題でしょうと。しかしながら、個人経済と政治活動経済を分けるといういまの問題を検討する過程において、現行の政治資金規正法の問題であるいは改善を要する点があるということで一緒にやるということも一つの方法かもしれません。しかし、いま私が検討しているのはそうじゃないんですと、個人の経済と政治の経済を分けるという問題を検討しておるんですと、こう言っておるのであって、あるいは御理解願えなかったかもしれませんが、五年後の検討すべき個人献金、企業献金云々というのは、出す方の問題でございます。私がいま検討をしておるのは、受ける方の立場の者、つまり個人が受けた寄付をどう扱うかという問題で、そこは区別をして私自身はお答えをいたしておると、かようなつもりでございます。
#51
○宮之原貞光君 しかし、この問題は、受ける方だけやったって問題はあるでしょうが。出す方も受ける方も両方規制してやってこそ初めてきちんとなるんですよ。私から言わしめれば、大臣は個人献金の受け取り方のところにみんなその問題をすりかえておられますよ。それはそうでしょう。個人で受けるものの仕分けの問題だけかと言いたいんです。だから、続いて質問しますところの個人献金の受け取り方の問題しかあなたは考えておらないんです。これではしり抜けもはなはだしくなりますよと言っておるんですよ。もし政界の浄化ということを本当に真剣に考えるとするならば、党派を離れて考えなきゃならぬ問題なんですよ。これではきわめて消極的だとしか受けとめられませんよ。
 たとえば個人献金の問題にしてもそうじゃございませんか。確かにいまの政治資金規正法では政治家個人の受ける献金は野放しですわね。だから、そこだけ手直しすればいいというお考えかもしれません。そこだけではやっぱり問題は解決しないのじゃないでしょうか。個人献金の問題をいろいろ考えてみる場合に、個人にやるときには百万円以下は申告しないでいいとなれば、たくさん後援会をつくらせて、それぞれにみんな入れさせてふところへがっぽり入れておる、こういうような問題点もある。しかしながら、また出すところの方も、個人は百万円以下なら明らかにしなくてもよいのに政党に出すものは一万円からみんな明らかにせにゃいかぬでしょう。個人の方はそうじゃない。そこからもやはり問題が出てくる。したがって、この種の問題は総合的な問題として私はやはり検討してもらわないことにはこれは困る。あるいは、今日一つの盲点と言われるところの、あなた方がよくやられるところの政経パーティーの問題ですよ。これも発起人会方式でやればごっそり自分のふところに入れられる。恐らくそれも先ほどの大臣の答弁は考慮に入れての答弁だと善意には解釈したいと思いますけれども、私が言いたいのは、それだけではおさまりませんよ。問題は団体で献金をする方、受ける方、個人でどうする方、そういう総合的な政治資金の規制のあり方という問題を積極的に所管官庁としてやらない以上、言われておるところの政治倫理の確立ということはただ空念仏に終わってしまうのじゃないかということを恐れるのですが、そういうやはり総合的な検討ということをやらなければならぬ段階に来ておると私は思っておるのですがね。出てきたところの中身はまだ私はわかりませんが、しかしそういう意欲を持って事務当局に作業を命ずるべきだと私は思うのですが、いかがでしょう。
#52
○国務大臣(後藤田正晴君) 出す方につきましては、ともかく、現在のは五十二年の改正でございましたか、あの改正で質的にも量的にも一応規制の網がかぶって、そしてその結果、ひとつ五年後に見直そうではないかと、こういう附則になっておるわけですね。ところが、あの規正法で一応抜けておるのが受ける側の個人の場合ではないのか、そこについて防止協議会から提言等もありましてそこを今回私どもで事務的に詰めてできるだけ早く成案を得たいと、かように申しておるわけでございます。もちろん政治資金全般についてこれは明瞭化を図らなきゃいかぬことは当然でございますから、方向としては漸次そういう方向に当然向かっていくのであろうと、こう思いますが、いま検討しておるのはそういう段階でございますと、こうお答えを申し上げておる次第でございます。
#53
○宮之原貞光君 これ以上質問しようとも思いませんけれども、漸次では心もとないんですよ。百年河清を待ちますよ、これは。あなた即刻総合的に洗い直すぐらいの積極さを持たなければ、大平演説が泣きますよ。また、国民は大平さんの中身というものは全然ねえんだなということにしか思いませんよ。もう一回やってもらいたいですね。
 それで、時間もありませんからはしょって次にお尋ねしますが、これは事務当局でいいんですが、昨年十一月指定都市選挙管理委員会連合会からたくさんの要望書が出ておりますね。実際の選挙の具体的な実務を扱っておる。その中で、選挙公営の拡大に対するところの要望書がたくさん何項目かにわたって出ておるのですが、その中で皆さんがこれとこれはひとつ改正していこうというものがあるとすればそれはどういう中身なのか、聞かしてもらいたい。
 もう一つ、時間がありませんから申し上げますけれども、十月に全国市区選挙管理委員会連合会からまた要望書が出ていますね。これはいわゆる不在者投票の便宜を拡大してもらいたいというものが大部分あるのですが、そこらあたりの問題について現在まで一つの検討されておるところの方向性があるとするならば、それを一緒にあわせて御報告願いたい。
#54
○政府委員(大林勝臣君) 御指摘の指定都市からの要望につきましては、選挙公営の問題あるいは不在者投票制度の拡大の問題が中心をなしております。従来、指定都市につきましては、御案内のように、国会議員あるいは知事の選挙以外は任意制の選挙の公営というような制度づけになっておりますが、国会議員あるいは知事のいわゆる義務制の選挙公営並みにひとつ選挙公営を運営してもらえないかというのがこの選挙公営の拡大の趣旨と承知しております。これは従来のいろいろな沿革的な問題もございまして、公職選挙法の制定以来、国会議員と知事につきましては大体義務制の選挙公営ということになっておりますが、指定都市あるいはその他の地方選挙につきましては任意制の選挙公営で長年の間運営してまいっております。特に指定都市におきまして政見放送の実施などについてはどうしても義務的な公営としてやってもらいたいという御要望もございます。この問題につきましては放送局ともいろいろいままで御協議申し上げてきておるところでありますけれども、なおやっぱり指定都市の地域、あるいは放送エリアの問題そういうものもございますし、指定都市における、あるいはその他の地方選挙におきましてもそうでございますけれども、それぞれの地方選挙におきます選挙運動の実態と、国の選挙、知事選挙の実態というものがある程度違いがあるからこそ、こういった取り扱いが違ってくるのであろうとも思います。これは引き続き一つの検討課題とは考えております。
 なお、不在者投票の拡大につきましては、御承知のように、いわゆる当日投票所投票主義、つまり投票日を一定の期日に定めまして一斉に投票するんだという原則の例外として位置づけられております関係上、選挙の公正を期するという観点からは、その対象者であれ、手続であれ、こういうものを厳正に保持していかなければならないという要請が一方でございます。ところが、一方に、当日用務のためその他不在事由のあるような人についてもできるだけその選挙権の行使に便宜を図るという要請もございます。そういう二つの要請をどう調和させるかということで、従来いろいろ工夫をしてまいったところでありまして、漸次若干ずつこの手続面の簡素化なり不在者投票事由の拡大なりを図ってまいったところでありますが、今後ともいろいろ実情を伺いながら真剣に検討を続けてまいりたいと考えております。
#55
○宮之原貞光君 いろいろ問題点はあると承知していますよ。けれども、できるだけ有権者を選挙に参加させていく、それでできるだけ金のかからぬ選挙をするということであれば、ある程度のいろいろな悪条件を積極的に克服して広げていくという姿勢が私はやはり皆さんの中になければ、いつまでたっても、何回同じことを要望しても、毎年同じことを繰り返すということにしかならぬと思うんです。たくさんの問題点、険路があるということは承知をしておりますよ。しかしながら、基本は、不在者投票の便宜を拡大する中で有権者に積極的に各種の選挙に参加してもらうところの場をつくっていく、あるいはまた公営を拡大していくというこの基本を踏まえた中での問題解決、打開という姿勢が私は確立すべきだと思うのですがね。その点は当然だろうと思いますが、大臣、どうですか、物の考え方としては。
#56
○国務大臣(後藤田正晴君) 考え方としましては、宮之原さんおっしゃるように、すべての有権者にあらゆる便宜を図って投票の機会を失わさないようにするということは、これはもう私は基本であろうと、その点についてはいささかも異論はございません。部長が答えたのは、恐らくいろいろな技術上の困難もありますからということであったと思いますが、基本の物の考え方にはいささかもあなたと食い違っているところはございません。
#57
○宮之原貞光君 時間の関係でもう一点だけお尋ねをしておきたいと思います。
 これは今度の総選挙のときに出たところの問題ですが、いわゆる選挙人名簿登録制度の不備の是正の問題ですね。今度の九月十一日から十月十日まで選挙人名簿の変更が行われない、そのために新成人が十五万人も投票できなかったという一つの問題点が出ている。自治省のいろいろな説明をお聞きしますと、いわゆる選挙時登録がたまたまそういう時期に当たって運が悪かったんだという話ですけれども、それはまた有権者から権利の発生した者から見れば、それでは済まされぬ問題なんですよね。ぼくはやはりこういう問題についても積極的な打開策というものをやらなきゃならぬと思いますし、これは選挙時に大平さんは選挙が終わりましたら検討しますと、こういう話を談話で発表されておったけれども、それからその後何の進展もしない。もし法律的にできないとするならば、少なくともその期間総選挙を延ばすとかいろいろな工夫をして、やっぱり有権者本位に皆さん考えてもらわなければどうも困ると思うんですよ。ここにもまた今度の選挙がいわゆる派利派略に基づいたところの総選挙であったと言われるところの声を倍加したと私は思うんですよ。この問題はどういうふうな方向で打開策を講ぜられるのですか、ひとつ最後に聞かしていただきたいですね。
#58
○政府委員(大林勝臣君) その問題につきましては、確かに、九月の十一日から十月の十日までの間におきましては、その間に選挙が行われます場合には、いわゆる選挙時登録は行われないことになっております。現在の登録制度は、いわゆる定時登録と、選挙が行われるたびの選挙時登録と、この二つの仕組みになっておりますけれども、九月一日現在で一斉に定時登録をした直後一カ月間というものはその後始末にも追われますという関係で、できるだけ選挙人名簿の正確性を保持いたしますためには、定時登録が行われた後さらに選挙時登録を行うということにいたしますと、定時登録の事務と選挙時登録の事務、あるいは選挙の管理執行の事務、こういうものが重複をいたしまして名簿の正確性を損なうおそれがあると、こういう趣旨から、現行法では定時登録後一カ月間の選挙につきましては改めて選挙時登録は行わないという制度になっております関係上、御指摘のような事案が出てまいったわけでありますが、これにつきましては、一つは、現場の市町村の選挙管理委員会の事務処理の仕組みであるとかあるいは事務能力の問題にかかわってくる問題、それから二つには、いわゆる定時登録との関係、選挙人名簿登録のシステムそのものにも関係してくることでもございますが、要は、選挙管理委員会側の実際の事務能力、事務処理の仕方、そういうものがスムーズにいけるような方法が考えられるかどうかという点にかかってくると思います。こういう問題につきましても、選挙管理委員会の方といたしましても一つの大きな問題意識というものを持っておるということを伺っておりますが、関係の委員会側と実務的に今後新しい手法が考えられるかどうか、検討してまいりたいと思います。
#59
○多田省吾君 私は、まずお伺いしたいのは、先ほども宮之原委員からも質疑がありましたように、後藤田自治大臣・国家公安委員長は、過去の昭和四十九年の参議院選挙におきまして関係者が多数選挙違反で摘発されました。そして、今度の組閣に当たりましても、果たして自治大臣・国家公安委員長として適切なのかどうかという疑惑が広く論議され、また職務の公正な執行が大丈夫なのかどうかという危倶を持たれたわけでございますが、後藤田自治大臣・国家公安委員長はこのことに関してどのようにいま決意されているのか。また、今回の衆議院総選挙でも違反が非常に多く、特に買収が多かったわけでございますけれども、今後どういう態度で臨まれるのか。この二点をまずお聞きしたいと思います。
#60
○国務大臣(後藤田正晴君) 私自身の問題につきましては、先ほどもお答えを申し上げましたように、私自身の不明不徳の結果でございまして、その点は厳しく反省をいたしております。この反省の上に立ちまして公正な選挙事務の執行ということに当たってまいりたいと、かように考えておるわけでございまして、私が就任したことによって選挙の公正がゆるがせられるといったような御批判に対しましては、十分私自身戒心をして事に当たってまいりたいと、かように考えている次第でございます。
 選挙違反が相変わらず多いという点につきましては、先ほどもこれまたお答えいたしましたが、候補者自身の問題と、選挙民自身の政治道義といいますか倫理の問題で、これは粘り強くやはり啓蒙活動を展開をして倫理の向上に努めてまいらなきゃならぬ。同時にまた、選挙制度の問題、あるいは選挙運動の規制のあり方、こういうような問題を相関連させながら検討していかなければいけないのではないのかと、かように考えておるような次第でございます。
#61
○多田省吾君 私は、今回の衆議院総選挙のような組織的な買収候補者の問題につきましては、やはりイギリスの選挙浄化法のような厳しい候補者また当選者自体の当選無効まで持っていくようなものにしなければ効力がないと、私はこのように思います。
 さきの総選挙の違反件数は、先ほど報告がございましたように、前回よりも件数で二〇・一%、人員で二八・六%も増加していると聞きます。また、三十八年総選挙以来違反の摘発件数は減少をしてきたにもかかわらず、今回は大変な増加でございまして、しかも違反の九〇%以上が買収事犯であります。前回と比べて買収件数でも二四%、人員でも三四%増加しているという状況です。新聞報道によりますと、千葉二区の自民党候補の場合は、買収資金が二億五千万円ともあるいは三億円とも言われております。最終的な逮捕者は二百名近くになると言われております。このような大規模なそして組織的な買収が行われておりましても、千葉二区の場合のように裏選対によって行われる場合は、当選人の選挙犯罪や連座規定につながらない、当選無効まで請求することはむずかしいという姿になっております。
 先ほど質疑がございましたように、私はそれには一つには連座制を強化するという問題があると思います。これに対して先ほどは大変消極的な御答弁でございましたが、連座制強化によってこの買収を防ぐということを大臣はどのように考えておられるのか、もう一回お聞きしたい。
 それからもう一点は、一つの方法といたしまして、裁判例でもありますように、買収資金というものは法定費用額に含まれるのだということですから、このような連座規定にかからない買収事犯につきましては、法定額超過は当選無効だと、こういう一条を新しく設定すればよろしいのではないか。このような大規模な組織的な計画的な買収という事実があるのにもかかわらず、連座規定にかからないという理由だけで選挙の公正を害した当選者が責任を全然問われない、議員としての地位も安泰だというのは、まことに不合理きわまるものでございます。当選無効の手続は別に検討するといたしましても、この点につきましても自治大臣の見解を承りたいと思います。この二点をお伺いします。
#62
○国務大臣(後藤田正晴君) 連座制強化の問題につきましては、先ほど宮之原さんから御質疑がございましたが、確かに連座制強化というのは選挙を正しくするという上において私は一つの方法ではあると思っておるのです。しかしながら、選挙も大事ですからもちろんよくしなければいけませんけれども、選挙の現状を踏まえました場合には、これは何といいますか、選挙運動が暗いものになる、実は私はそのおそれを感じているのです。というのは、選挙運動は運動としてやりながら、同時に今度は違反摘発班というものの横行を許すということになりますと、これまた逆な面で選挙自身をゆがんだものにしてしまうのじゃないのかというようなおそれがありまするので、私はにわかにはこれに賛成をいたしかねるのですと、こういうお答えをしておるわけでございます。
 もう一つの法定額を超過した云々の点については、選挙部長の方からお答えをさせまして、その上で私お答えしたいと思います。
#63
○政府委員(大林勝臣君) もう一つの方法といたしまして、確かに従来の判例は買収費も選挙運動費用に含まれるという判例がございます。したがって、出納責任者の報告の金額に買収費もプラスして法定費用を超過したということになれば、当然に当選無効の効果を与えればいいではないかという御趣旨かと存じますが、この問題につきましても、出納責任者自身が買収を行った場合であるとか、あるいは出納責任者と意思を通じた第三者が買収を行った場合だとかいう場合は格別といたしまして、全く出納責任者と意思を通じないでそういった買収が行われたという場合に、出納責任者の報告義務に加えまして法定費用超過として連座の対象とするという問題につきましては、前段の連座自体をどうするかという問題とどうしてもやっぱり関連してまいります。先ほど大臣がお答えされましたような問題点がやはりこの場合におきましても出てくると思いまして、確かに一つの御意見かとは思いますが、本質的には同じ問題であろうかと思います。
#64
○国務大臣(後藤田正晴君) これもまたいま部長が申しましたように、やはり選挙運動をやっておる者と出納責任者との相互の関係、位置の問題、もう一つは私は今日のこの選挙費用の決め方にも一つの問題点がありはしないのかと、かように考えておるような次第でございますが、いずれにいたしましても、検討課題であるというような考え方でございます。
#65
○多田省吾君 私は大変失望したわけでございますが、千葉二区の例を見ましても、私は詳しくずっと見ておりますけれども、衆議院選も、また町議会選挙も、まことに目に余るものがあります。今度の千葉二区の場合だって、総選挙の前にすでに朝日新聞を初め各新聞が、千葉二区の前回のすなわち昭和五十一年十二月の衆議院総選挙においても大変な買収が行われた、そして公明選挙を行ったと買収側が言っている。その内容を突きとめたならば、各人に平等に金を渡したから公明選挙なんだと、こういうばかげたことを答弁している、そういうことまで報道されておりましたよ。市町村選挙なんかに行きますと、またその買収が国会選挙にならって大変なものです。そしてしかも今回のこういう自民党候補者の大買収事犯が起こっているじゃありませんか。
 ですから、その候補者は、たとえ二億円、三億円、あるいはもっと多いかもしれません、そういう買収を行ったとしても、候補者自体が知らないで通せば当選無効にはならないだろう、そういう国民をばかにした考えで平気で買収をやっているんですよ。それが一番暗い選挙じゃありませんか。そして、平気で買収される側もそれに乗っかっているわけです。ですから、そういう選挙は大変なんだと、イギリスの事例にもありますように一たび買収選挙をやったならばもう当選無効につながるんだと、そういう姿でなければ、私は買収はやまないと思います。残念ながら。
 ですから、ここでやってみたらいいじゃないですか、連座制の強化を。先ほども大臣・国家公安委員長は、あの昭和四十九年の参議院選挙における関係者の選挙違反というものを非常に反省されているようだし、そしてまたそれによってこれからの執行に公正さを失わないでいくんだという決意を先ほど述べられたわけでございますから、その決意がおありならば、その反省の実を示される上においても、ここでこの組織的買収に対する連座制の強化というものをはっきりと打ち出してごらんになったらどうですか、もう一回お尋ねします。
#66
○国務大臣(後藤田正晴君) 確かに、おっしゃるような事案につきましては御意見のようなお考えは当然出てくると思います。私もそれを否定するつもりはいささかもないわけでございますが、それを直すという意味合いから今日の選挙の実情と違ったやり方を取り入れた場合の今度もう一つの大変なマイナス面というものも、今日の選挙の実情からいたしますと考えておきませんと、にわかに踏み切りにくいのだということを私自身は申し上げておるような次第でございます。
#67
○多田省吾君 それじゃ、連座制にかわる買収をやめさせる対策というものは何かお考えがありますか。
#68
○国務大臣(後藤田正晴君) それは、先ほどお答えを申し上げましたように、一つは政治倫理の問題であるし、あるいは選挙制度そのものの問題でもありますし、あるいはまた同じ規制をするにしてもいまおっしゃったような規制の方法でない方法も私はあり得るのではないのかと、かように考えるわけでございます。
#69
○多田省吾君 あり得るのではないかということで具体的なことを申されませんけれども、たとえば、あれですか、連座制のようなものをしなくて、それに似たような何物かというのは、たとえばどういうものですか。
#70
○政府委員(大林勝臣君) 御質問の件につきましては、かつて選挙制度審議会におきまして、いわゆる減票制――とにかく買収等の悪質な事犯か起こりました場合にはその候補者の得票数から一定の得票を差し引くと、こういう減票制というものを導入したらどうかという御意見がございました。これもいろいろ議論をしていただいたわけでありますけれども、確かに一つの考え方ではあるにしても、一体その減票の仕方、どういう差し引き方をするか等、またいろいろ付随する問題も論議されまして、一応選挙制度審議会では結論を出すまでには至らなかったという経緯はございます。
#71
○多田省吾君 大臣はその点いかがですか。
#72
○国務大臣(後藤田正晴君) ちょっと聞きそびれましたが……。
#73
○多田省吾君 いま選挙部長がおっしゃったことはどう考えるんですか。
#74
○国務大臣(後藤田正晴君) 私、その点についてはまだ深く検討をいたしておりませんが、それもまた一つの方法かもしれませんが、いずれにせよ、それだけにはとどまらず、どのような形で選挙を正しくするために手段、方法があるのかといったようなことはもう少し検討さしていただきたいと、こういうことを申し上げているわけでございます。
#75
○多田省吾君 まあ検討させていただきたいとは言っても、そんなに悠長なものではありませんし、具体的なことを示されないでしまうということは非常に残念です。
 それから次の問題に移りますが、選挙制度につきましては改革を要する重要な問題が山積しております。一つは衆議院と参議院地方区の定数不均衡の問題です。これも何回も神奈川、千葉、埼玉方面から、あるいは東京から告発も出ております。また、最高裁まで行っている問題もあります。この問題をどう考えるのか。二番目に、選挙運動の自由化、たとえば戸別訪問を制限を設けて許すとか、こういった問題もあると思います。それから三番目には、こういった問題を解決するために第八次選挙制度審議会の発足を全然考えていないのかどうか、この三点を新自治大臣の抱負としてその基本方針を伺っておきたいと思います。
#76
○国務大臣(後藤田正晴君) 定数是正の問題につきましては、従来から各党間で合意を見た点につきましてその線に沿った是正を今日までいたしておるわけでございます。御案内のように、定数是正の問題というのは、結局は衆参両院とも同じだと思いますが、総定数を一体どう決めるかという問題がございます。総定数をふやすのか、総定数の中で是正をするのかという問題、同時にまた、選挙区の区画を一体どのように考えていくかといったような基本的な選挙制度に関連する問題があるわけでございます。したがいまして、こういう点については、これまた土俵づくりの問題だと私は思うのです。そういうような意味合いから、各党間でぜひこれは御協議を願いたいと、かように考えるわけでございます。
 もう一つの戸別訪問の問題でございますが、これまた選挙運動のやり方の問題をめぐりまして、一方ではこれはもう自由にしなさいという御議論がございます。諸外国自由になっているところが多いわけでございますので、日本もそうしたらどうだと、こういう御議論がある。もう一つの方からは、これは日本の選挙法の長い歴史的な沿革もありまして、何といいますか、やはり買収等を誘発するチャンスが多くなるのではないかなというような問題あるいはまた有権者自身がその煩わしさにもうたえられなくなるのじゃないかといったような問題もございまして、同時にまた選挙をする方の人にとってもこれは大変な負担ではないのかと、いろいろ御議論がございまして、やはり戸別訪問というのは現状のままでいいのではないかといったようなことで、この方法をめぐっても過去いろいろ御協議等も願ったのですか、なかなかこれはその結論か得られないというのが実態でございまするので、これもあわしてひとつ各党間で御協議を賜れればありがたいと、かように考えているようなわけでございます。
 選挙制度審議会の問題でございますが、こういった選挙法の改正の問題につきましては、自由民主党でもいろいろ御検討していらっしゃるようですし、同時にまた各党でも御検討をしていただいておると思いますので、そういった作業とにらみ合わせながら、必要なことになりますればその時点で私どもの方としても選挙制度審議会を再開したいと、かように考えているわけでございます。
#77
○多田省吾君 先ほど宮之原委員からも御質問がありましたが、新有権者の名簿登録と投票の問題であります。
 さきの総選挙で投票日が十月七日であったために、昭和三十四年の九月三日から十月八日までに生まれた新有権者十数万人が二十二条二項の規定で選挙時登録が行われないために投票できなかったわけでございます。これは二十二条二項の規定で、定時登録、九月十日直後または選挙時登録直後の選挙について、選挙経済の観点から選挙時登録を省略した便宜的な措置のためにできなかったわけでございますが、新有権者の選挙権はこの規定とは別に選挙期日現在で選挙権が確定するわけでございますから、私は当然公示の日に二十六条による補正登録がなされるべきであると思います。この問題で検討中ということでございますが、どうですか、もう来年の九月までにはっきりと、今後来年から九月、十月にもし選挙が行われるようなことがあっても、新有権者は必ず投票できるという措置を講ずべきだと思いますが、それまで大臣として必ず次の通常国会等においてこの法律をつくると、また新有権者に登録漏れなんかないようにしたいと、こういう御決意がございますか。
#78
○国務大臣(後藤田正晴君) その点は、基本的な方向としては有権者すべてに投票の機会を与えるようにするというのがこれは基本の物の考え方であろうと思います。ただ、先ほどお答え申しましたように、何といいますか、選挙の登録についての定時登録と選挙時登録の問題、それとその間における選挙執行の問題、これらの事務処理の問題がございます。したがいまして、私どもとしては、現実にこの選挙管理事務をやっていらっしゃる各地の選挙管理委員会、こういった方々等との意見も十分ひとつ交換をさしていただいて、その方々の御意見も踏まえながらやっていかなきゃならぬと、かように考えておるわけでございます。来年の選挙でさしあたりはもう決まっておるのは参議院の選挙でございますから、これは七月にございますから、そういう御心配はないわけでございます。
#79
○多田省吾君 ですから、来年の九月までにこの問題を処理するという御決意がありますか。
#80
○国務大臣(後藤田正晴君) 第一線の選挙管理委員会の意見を聞きまして、その結果によって判断をいたしたいと、かように考えております。
#81
○多田省吾君 大変消極的な御答弁で失望しましたけれども、最後にお聞きしたいのは政治資金規正法の改正の問題です。五年後の見直しもいよいよ昭和五十五年度と迫りました。私はやはり企業献金の禁止をはっきりと打ち出すべきだと思います。これが一点。
 もう一点は、大臣が先ほどから言っていらっしゃる政治家個人の政治資金収支の届け出と公表問題につきまして、いわゆる航空機疑惑問題等防止対策協議会の提言の具体化をいま自治省で検討されているわけでございますが、その素案づくりの基本方針と成案の見通しについて簡潔にお答え願いたいと思います。
#82
○国務大臣(後藤田正晴君) 企業献金の問題につきましては、これはやはり漸次個人献金の方に移していくというのが一つの方向であろうと思いますが、私は、企業といえども今日独立の存在として社会的に経済的に活動をしておるわけでございますので、企業献金を全面禁止ということについては私は消極意見でございます。ただ、この点につきましては、いずれにせよ現在の政治資金規正法の五年たった後での見直しということにも相なっておりますので、その際検討をしたいと、かように考えておるわけでございます。
 もう一点の、献金を受け取った側の個人の政治活動面での収支の明朗化といいますか、この点については、内閣からの御指示もありまして、できるだけ早くひとつ結論を得たいということでせっかく私どもの事務当局でいま研究をしておる次第でございまするので、早く結論を得るように努力をして、その上で御審議を願うということになろうかと、かように考えておるわけでございます。
#83
○多田省吾君 じゃ、その政治家個人に対する収支の公表問題、この法案は、来年の通常国会冒頭において法案が出され、それを国会で審議できるようになりますか。
#84
○国務大臣(後藤田正晴君) できるだけ早く成案を得たいと、かように考えております。
#85
○多田省吾君 じゃ、最後でございますが、政治家のパーティー券か官庁にも押しつけられ、そこから関係公社、公団、協会、団体、企業などに下請されているのは大変問題です。国家公務員法百二条、人事院規則一四−七の政治的行為の制限違反はもちろん、公社、公団などもこうした支出は政治資金規正法からもできないはずでございます。後援団体が主催する場合は事業収入になるでありましょうが、政治家個人が主催する場合は寄付の受領となるのではありませんか。いずれにしましても出す側は寄付となります。この政治資金規正法の個別規制や量的規制に触れるものもあるのではないかと思われますが、自治省はこの実態をどのように把握しておりますか。
#86
○政府委員(大林勝臣君) パーティー券の問題につきましては、政治団体が行うもの、あるいは第三者が行って政治団体あるいは政治家個人に贈るものと、いろいろ行われておるようでありますが、私どもといたしましては、パーティー券の価格がまあ社会常識の範囲内であり、かつ当然出席することを前提として引き受けられたものについては、これは寄付という考え方はとっておりません。ただ、政治団体が主催するものにつきましては、これは御指摘のように政治団体の事業収入欄に書いて報告をし公表されることになります。それから第三者か主催をしたかっこうにいたしまして政治団体あるいは政治家個人に寄付をした場合には、これはいずれも寄付ということでありまして、寄付を受けた政治団体は寄付を受けた旨を報告し、それが公表されるということになります。もちろん社会常識の範囲内と考えられないような売りつけというようなものが行われました場合にいわゆる寄付という問題が新たに起こってまいろうと思いますけれども、私どもといたしましては、このパーティー券の購入あるいは販売の仕方、そういうものについての具体的な実態を実は承知する立場にないわけでございますので、御了承賜りたいと思います。
#87
○内藤功君 まず警察庁にお伺いしたいのですが、衆議院選挙での千葉二区の宇野派の買収資金に充てられた総額は、報道によりますと、三億円にも達するというふうに言われておりますが、さっきのお話で二百九十二人、六百六十二万円という御報告でございました。これはいま捜査進行中であって、いわば氷山の一角、全貌はもっと大きなものだというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
#88
○政府委員(中平和水君) 現在千葉地方検察庁が中心になりまして捜査が続けられている次第でございますが、そういうことだというふうに理解していただいて結構だと思います。
#89
○内藤功君 大臣に伺いますが、こういう千葉二区というのは三区とともに金権選挙区の代名詞のように言われておるところですね。それで、宇野派だけでも現金を受け取った人が二百九十二名。いま局長のお話しのようにもっと広がると。そこで、大臣は、同じ自由民主党所属の同僚として、こういう宇野代議士ですか、こういう大量の選挙違反者を自派から出した人に対して、同僚として、どういうふうに責任をとったらいいか、もしあなたがアドバイスするとしたらどういうふうにアドバイスをされるか、お聞かせ願いたいと思います。
#90
○国務大臣(後藤田正晴君) 私は国家公安委員長でもございますししますので、いまこういった問題について宇野さんにそういったアドバイスをするという立場にはございませんので、お答えはひとつ差し控えさしていただきたいと思います。
#91
○内藤功君 大臣であるという立場じゃなくて同僚としてというふうに答えやすいようにお聞きをしたわけなんですが、何としても歯切れの悪い感じが私は否定できません。
 そこで、率直にそこまできましたのでお尋ねいたしますが、今回のあなたの選挙で、つまりいわゆる後藤田派での逮捕者は何名ございましたか。
#92
○国務大臣(後藤田正晴君) 今回のは逮捕者は六人だと思っております。
#93
○内藤功君 宇野さんの方に比較すれば今回の六人は数は少ないかもしれませんが、この前のを合わせるというと、四十九年七月の徳島地方区のときは、私どもの調べによれば、元警察署長二、三人を含む二百六十八人の選挙違反者を出したと、こういうふうに報道されております。そのときに、あなたは、元警察庁長官として申しわけない、今度出るとしたら違反は出しませんと、こういうふうに公言されたように記憶しておりますが、今度出したですな。この点について、政治家の言った言葉は非常に重いものでありますから、その点の責任はどういうふうにお答えになりますか。
#94
○国務大臣(後藤田正晴君) その点につきましては、しばしばお答えいたしておりますように、私の不明不徳の至りでございまして、深くおわびを申し上げる次第でございます。
#95
○内藤功君 起訴された人は、いずれも無罪を主張されたのですか、あるいは情状を主張されたのですか。あるいは情状も主張されず謙虚に処分、判決を待つという態度に出たのですか。起訴された人はいるのですね。
#96
○国務大臣(後藤田正晴君) 四十九年のお話でございましょうか。――逮捕者は二十八人でございます。その際は。多くの人がほとんど略式であったと考えています。数名の人が裁判になったと、かように記憶いたしております。
#97
○内藤功君 その起訴された人は無罪を主張したのですか、あるいは情状がこういう情状だということを主張したのか。あるいは情状も主張しないで検察側の起訴事実を認めるという態度をおとりになったのですか。
#98
○国務大臣(後藤田正晴君) 詳細記憶にいまございませんが、記憶にないと言えば間違いでございますか、事情が私わからない面があるのでございますが、一、二高裁まで争った人があるように聞いております。あとは第一審で決定をしておる、かような記憶でございます。
#99
○内藤功君 無罪を主張した人はいないですか。
#100
○国務大臣(後藤田正晴君) 恐らくその控訴した人はそうであったのじゃないかなと思いますけれども、そこまでは記憶いたしておりません。
#101
○内藤功君 不徳不明ということをあなたはずっと言われるわけですが、不徳不明というのは、選挙法もよく知らない、選挙のルールなどもよく知らない、選挙もまるっきり素人で初めてである、知識程度も高くない、非常識な人間である、また厚かましい人間である、世の中の人かどう見るかということも自分でわきまえない人が違反をしてしまって、突っ込まれて、ああ、そういうことであったんですか、私は不徳不明でありましたというときに使う言葉だというふうに私は思うのでありますな。
 転じてみますというと、元警察庁の位をきわめた最高の長官をやられた方で、知識能力とも申し分のないお方である、しかも再犯である――二度目ですな。再犯と言うと失礼ですが、自派から出された中では二度目である。しかも、前回は、今度出るとしたら違反は出さないと選挙民に公約されたという場合の御反省のお言葉としての不徳不明というのはどういうことでございましょうか。一回目でも同じ言葉を使われたと思うのです。これはもう少し不徳不明ということをこの三つの点にかんがみてあなたの反省の態度を御説明願いたいと思います。
#102
○国務大臣(後藤田正晴君) もちろん、選挙をする身にとりまして、私は一番厳しいのは、それは落選も厳しい状況になります。しかし、同時に、選挙違反を出したということぐらいつらい苦しい思いをすることはございません。したがって、こういう席で御質問があれば、それ以外答えのしようがないのじゃないでしょうかね。私はそういうつもりで反省の上に立ってお答えをしておるつもりでございます。
 同時に、参議院の選挙の際には、実は私自身は文字どおりこれは不明不徳であったと思うのです。私自身が、どのような選挙がどこで行われておるのか、正直言いましてなかなかわかりかねる。まあ言葉は適切でないかもしれませんけれども、いわばおみこしに乗ったような選挙になってしまったというような実態もあったわけでございます。
 そういったような厳しい反省の上に立ちながら、毎回私は選挙違反だけは出さぬようにしてもらいたいということだけは私どもの運動員には強くお願いをしておるのでございますが、再度また今回も逮捕者を出したということについて、私自身申しわけないという気持ちで反省をいたしておると、かような次第でございます。
#103
○内藤功君 一回目は確かに候補者というのは初めてだから、どこでどういうことがやられているかわからないと。まあそのとおりであろうと思います。ただ、あなたは選挙の素人じゃないんです。候補者は初めてなんでしょうが、警察庁の幹部ですから、選挙を取り締まる方にいたわけなんですね。それがおみこしで全くわからない、全くぽっと出の初めての候補者と同じだ、右も左もわからないということは言えない。選挙違反はやるなよと言うだけじゃなくて、どういうふうにして買収などをやらせないかということの方法はおのずから知っているはずなんです。
 そこで、お伺いしたいのですが、あなたは今度大臣に就任になった。しかも国家公安委員長で自治大臣だ。みんなびっくりしたわけですね。私もびっくりした。実は十一月十日の東京新聞という新聞に、元警察出身の国会議員であるある方がこういうふうに言っているんですね。名前を言えというなら私は言いますが、警察畑出身のある国会議員は、「うーん、ほかの閣僚ポストもあるだろうに、大平首相も鈍っているなあ。こんどの抗争劇と同じように、世論なんてどうでもいいというのかな。下の者がかわいそうだよ。日本の警察は、なかにはエラーもあるが、国際的にも水準は高い。それだけに、国家公安委員長という象徴的ポストには、公正な人材を据えることが大事なんだよ。トップがどうなろうと現場は変わらないが、世間の見る目が違ってくるからね。選挙違反があるから、かわいそうだよな。腕のある人なんだから、どんなポストだって存分に力を振るえるだろうに。自治大臣と国家公安委員長のポストを切り離すとか、公安委員長に民間人を起用するとか、できなかったのかなあ」と、こういう発言なんですがね。私も、これと全く同じじゃないが共通の感じを持つわけなんですよ。あなたはどういうふうにこれについてはお考えになりますか。
#104
○国務大臣(後藤田正晴君) もちろんそういうお考えをお持ちになる方もそれは当然いらっしゃると思います。ただ、私自身も、これまた先般衆議院でございましたがでもお答えしたのですが、実は組閣の日に総理官邸へ来いというお呼び出しを受けたときに、率直に、私はまだ政治の場に入って三年にならないんですよ、それだけに、これは大変だなという気がいたしました。ただ、その際に、自治大臣・国家公安委員長をひとつ担当してもらいたい、こういうお話がございまして、私自身ただいまお読み上げになったような方がいらっしゃるであろうとは思いまするけれども、私自身は、そういった担当を命ぜられました際に、私自身の経歴は地方自治行政とそれから治安行政というものに約三十年余り携わったわけでございます。したがって、そういった面についての知識はございますし、同時にまた、それだけに、短い期間ではございましたけれども、政治の場に入ってからも、私自身のこれは生涯の仕事だなというようなつもりで今日まで努力もしてまいっておりましたので、こういったポストであるならば、政治経歴は短いけれども、また微力ではありますけれども、努力をすればお役に立つこともできるのではないかなと、かような心組みでお引き受けをしたわけでございます。それだけに厳しい批判があることは十分承知をいたしておりまするので、そういう点を踏まえまして、公正な警察の管理、同時にまた地方分権の推進といったような面で努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
#105
○内藤功君 いまのお考えの発想は、失礼ですが、役人の発想なんですよ。つまり、自分は経験がある、自分は知識がある、お役に立ちたいと。それは役人の発想なんです。自分はこのポストを与えられればそれについて事務の方は処理できると。大臣というのは事務じゃないですからね。事務のトップじゃない。大臣というのはその役所の代表ですよ。国民はその大臣の顔をもってその役所と見るわけです。ですから、いま私が読んだこの国会議員の方の批判の中で一番大事なところがあなたはわからないんですね。この中でぼくが一番大事だと思うのは、あなたに聞いてもらいたいのは、「世論なんてどうでもいいというのかな。下の者がかわいそうだよ」それから「世間の見る目が違ってくるから」と、ここのところです。自分が大臣に就任していいかどうかということを考えるときに、自分が大臣として仕事をしていいかどうかというときに、自分がついたらばこの役所は世間からいろいろ見られるだろう、非常に誤解されて部下はやりにくくなるだろうということは考えなかったのですか。それは考えたけれども、大したことはないと思ったのですか。
#106
○国務大臣(後藤田正晴君) いろいろな面を考えながらお引き受けをしたわけでございます。
#107
○内藤功君 こういうようになりますと、買収をやって自派から二十八人起訴される、二百二十何人検挙される、そういう買収事件を自派から出しても、昔から一将功成り万骨枯ると言うけれども、大臣になれるということになりますと、買収はやみませんね。自派から買収を出しても勝ったら得だ、勝てば官軍だ、あとはうまくいけば大臣になれるというような風潮が政界にもし広がったとしたら、これは買収はやまりませんです。買収はやり得だということになります。そういうことを日本の政界のために考えれば、ここは自分の立場として国家公安委員長・自治大臣はお断りする、ほかのポストはまた考える。国家公安委員長・自治大臣というポストはこれはお断りする。警察の人間や自治省の人間が一番上にいただく者はこういう買収で検挙されたその候補者だということになりますね。私は、どうしてお断りになれなかったのか、またお断りなさる気持ちは全然なかったのかということをお伺いしたい。
#108
○国務大臣(後藤田正晴君) いろいろな点を考えましてお引き受けをした次第でございます。
#109
○内藤功君 これからは、買収事件やその他の選挙違反で起訴されたりなんかした人の弁護人、あるいはその起訴された人、逮捕された人は、何言っているんだ、おれのこれくらいの違反は。国家公安委員長はこれだけの違反をやったけれども、自派からこれだけの違反を出したけれども、大臣になったじゃないか、警察庁の一番上に立っている公安委員長がこうじゃないかということになりますね。これは弁解の言葉がどんどん出てきます。恐らくいろいろな裁判で弁護人は情状の弁論の中で、いまこの被告人の事件はまだ小さいものである、微細なものである、国家公安委員長であり警察の総元締めはこういう大きな事件をやっているということがあらゆる機会に引き合いに出されてくるのじゃないでしょうかね。私はそういう弁護の仕方が決してフェアだとは思わないけれども、弁護人というのはあらゆる方法を通して被告をかばおうとするものですから例をどんどんどんどん出してくる。そうすると、大臣の例なんか一番いいんですね。いまの大臣はこういう人だということになって、天下にこれがびまんをして――あなたは大臣室におられますから、国会でいまのよりに、私はいろいろなことを考えまして就任した次第でございますと、それで済むかと思っているかもしれないけれども、あなたの下の国民と接触する警察官、事件を処理する警察官、あるいは現場で公正な選挙の指導に当たる自治省のお役人というものは非常に困る。これがこの国会議員の方は苦労している人だと思って、「下の者がかわいそうだよ」という言葉で出てきたのじゃないでしょうかね。そういう点はお考えになったことはないですか。
#110
○国務大臣(後藤田正晴君) その方の文章を読んでおりませんけれども、私は、先ほどお答えしましたように、選挙をやる者の身にとって一番つらい思いをするのは選挙違反なんですと、これは私の率直な気持ちなんです。あなたの御質問の中に、まさに一将功成り万骨枯れると、こういったことがあるわけです。これは大臣になったから云々というのじゃなしに、当選すればやはり国会議員になるわけですね。そういうようなことを考えますと、一番つらい思いをいたします。そこで、私自身は、そういう過去の反省の上に立って、ひとつ一生懸命に微力でありますけれどもやっていこうと、こういうことでお引き受けをしたような次第でございます。
#111
○内藤功君 大臣、参議院選挙が近づいてきて、この前の三年前、六年前の選挙のことを考えると、大企業から金をどんどん出す。それからいろいろ選挙で汚い金の動きがある。買収が始まる。選挙違反の中でも買収は一番悪質なものですから、今度の参議院選挙は買収をもうなくそうじゃないか、買収を絶滅しようじゃないかという宣言を自治大臣として天下にお呼びかけになるお考えはありますかありませんか。
#112
○国務大臣(後藤田正晴君) もちろん選挙の公正を図らなければならぬ立場でございますので、どういったものになるかは別として、公明選挙を推進していただきたいということは、これは当然お願いしなければならぬことであろうと、かように考えております。
#113
○内藤功君 後藤田正晴大臣の名前で呼びかけましても、みんなついてきませんよ。そういう大臣の言うことはみんな言うことを聞かないです。それで買収をやめましょう、公明選挙をやりましょうと言っても、大臣かそういう態度で、おれは経験と知識があって大臣になって仕事ができるから就任したんだ、いろいろ考えたけれどもやっぱり就任することにしたんだ、こういう新聞で紹介した国会議員のようなお考えもあるけれども自分はそういう考えで就任したということできょうの答弁のように言い張られるのでは、これから引き続いていろいろな機会に、私は余りこういうことで時間を使いたくはないですけれども、御意見をその都度申し上げ、また皆さんからも出てこざるを得ないだろうというふうに思いますですね。私は、十一月第二次大平内閣成立以来、あなたの御就任について、政治家のあり方として、また大臣の御就任をなさるかどうかのあり方としてかねがね疑問に思っていた点をいま率直に申し上げたわけであります。
 あなたは、あれですか、どうしてもこの自治大臣・国家公安委員長に就任せざるを得ない、そういういろいろなかかわり合い、どうしても就任しなければならないというかかわり合いがあったわけですか。むしろ自分で就任をしていったのだということなんですね。自分で積極的に、よし、このポストをやってみようということでやられたということですね。違うですか。
#114
○国務大臣(後藤田正晴君) 違います。私は、先ほどお答えしたのは、私を自治大臣に任命せられたのはこれは総理からのお話がございまして、先ほど申したような気持ちでお引き受けをいたしましたということを申し上げておるのであって、私は別段何も自治大臣でなければならぬ、公安委員長でなければならぬなんということはこれは毛頭考えておりません。
#115
○内藤功君 これは、天下の人が、たとえばあなたの例と全然別ですが、たとえとして申し上げるのですが、裁判官がある刑事事件を裁いておったときに、その裁判官が過去においてその被告と同じような事件をみずから犯したことがある、それがどういう理由にせよ。そういう場合に、その裁判官の言うこと、その裁判官のやることを国民は大いに信頼しますかね。これはしないですよ。ですから、昔から李下に冠を正さずと言って、裁判官なんかの場合にはその人がどういう事件についてのかかわり合いを持つかということは非常に重大なことなんですね。警察の最高の長、あるいは公明選挙の最高の長というのは、裁判官ほどじゃないですが、公正、厳正中立が要求される人なんです。ですから、自分は、おれは知識がある、おれは経験がある、おれは厳正にやると、そう思われるでしょう。そう思っても、世間というものはそうじゃない。世間というのは国民世論はどう見るか。そういう国民世論はどう見るかというのは感じの問題じゃない。国民の信頼というものの上に民主政治というものはつくられるのです。そういうものなんです。ですから、そこがわからない人は民主政治のもとで大臣にはなれない。天皇から任命されるかつての大臣や大将にはなれるでしょう。他がどう見ようとおれは任命される。つまり上向きの、上に責任を持つ大臣ならそれでよろしいでしょう。いまは下に責任を持つというか、国民に責任を持つ大臣ですから。これは私ごときが説教がましく申し上げるまでもないと思います。私はいつまでやっても切りがありませんから、このぐらいにとどめておきます。
 私の聞きたいことがきょうは実はあるわけです。これは選挙部長で結構です。戸別訪問の問題ですが、先ほども公明党の多田理事の御質問などもありました。戸別訪問の問題について最近ずっと判例の傾向を見てみますと、昭和四十二年から四十四年の間に、下級審ですが、憲法違反、戸別訪問禁止違憲、無罪という判決が四件ございまして、そうして四十四年四月二十三日に最高裁判所で憲法違反ではないという判決が下って、それからどういうわけか約九年ぐらいの間は憲法違反だという判決はなかった。ただ、憲法違反ではない、有罪だけれども、いまのこの法律は立法的に再検討すべきだということを判決の傍論で言うような判決はかなり出てきた。しかし、昭和五十三年昨年の三月三十日の西条支部の判決、ことしの一月二十四日の出雲支部の判決、九月七日の柳川支部の判決、いずれも地裁の支部でありますが、こういう支部の判決であるが、下級審でずっとまた憲法違反という判決が出てきているわけですね。これは下級審の動向というものは、最高裁よりは審級は低いけれども、下級審というのは実際に被告なり証人なり、生の人証、書証でもって調べますから、非常に事実に即した判断ができるという面を持っている、フレキシビリティを持っている。ですから、下級審といえどもこの動向というのは無視することはできないと私は思うのですね。最高裁では書類の上だけで判断しますから。そういう点では、これらの判決の動向が、一つ二つならともかく、これだけの動向がある。一たん最高裁判決で打ち切られたかに見えたその違憲、無罪の傾向がまた最近三件続けて出てきておる。ここらあたりの動向については十分注意を払っておられると思うのですね。
 それで、私はこういう前提に立って、しかも、最近自由法曹団という法律家の団体が、これは新聞にも出ましたが、アンケートを衆議院総選挙の前に候補者全員に出したんです。回答者は二百八十二名であって、内訳は約九〇%に当たる二百五十二名の候補者から戸別訪問自由化は賛成だという回答が出ております。そうして、各党の政調、政審、あるいは選挙制度関係の責任者は、ほとんど賛成されております。それから選挙の一方の当事者である候補者から戸別訪問自由化への圧倒的意思が示されているということは非常に重要なことだと思うのですね。
 賛成理由を見ますというと、大体三つありまして、一つは候補者や政党の政策について有権者と直接意見交換ができる、二番目はだれでもできる身近な選挙運動であって政治参加のよい機会になる、三番目は政治に対する国民の関心を高め言論中心の明るい選挙になると、大体そういう三点に要約できるのであります。これは国民からもおおむね共感の得られることだと私は思うのですね。
 それからさっき触れました松江地裁出雲支部の憲法違反の判決に対して、島根県における各党、特に自民、社会、公明、民社及び共産、この各党はいずれも島根県の県連あるいは県本部は判決支持というコメントが地元紙によると報道されております。
 こう見てくると、大勢としては戸別訪問自由化ということが大きなやっぱり流れだと思う。いろいろな意見があることはわかりますけれども、それが多い少ないというのはここで論ずるあれではないんで、流れとしては戸別訪問を自由化するという大勢に裁判所の考え方も変わってきているし、それから各党の考え方も変わってきているし、ということになると思うのですが、ここらあたりの大勢についての認識はどうか、自治省の解釈論をいま聞くんじゃなくて、こういう大きな流れについては、どうです。選挙部長、お認めになりますか。
#116
○政府委員(大林勝臣君) 戸別訪問についての意見につきましては、賛成論、反対論は昔からあるわけでありますが、選挙運動の自由化の問題と関連をしながら、特に選挙運動の中では一番効果的な選挙運動であるという観点かち、戸別訪問の自由化論がだんだん多くなっておるということは私どもも感じております。
#117
○内藤功君 それで、これはこれからの委員会で私も大いに論じ、世論が喚起されることを期待するわけなんですが、今度は警察の立場でも、いままで選挙制度審議会などで警察庁の現役の人が戸別訪問の自由化賛成論を言っていることが非常に多いわけです。たとえば、これは少し前ですが、四十一年七月の四次審で、当時の現役の刑事局長である日原さんが、私としては賛成です――賛成ですというのは戸別訪問自由化に賛成です。形式化が取り締まり対象から外れることによってわれわれの力が実質犯に集中していけば、買収犯そのものの検挙も伸び、自然、そういう弊害もおさまっていくのではないかと考えますと、こういうふうに発言をしております。そのほか、私はきょう詳しい発言の一字一句は手元に実はないわけですが、その後昭和四十三年に、当時の新井警察庁長官ですね、この人が、新聞紙上のインタビューに答えて、警察官が選挙に際し物差し片手にポスターをはかっていては買収事犯なんかを処理することはできない、全国で少なくとも十万人の人が戸別訪問をやっていると思われる、そういう細かい形式犯を追っていたんじゃ実質犯の取り締まりはできないという言い方ですが述べておられますね。それからさらに柏村さんという長官も、少しそれより前ですが、やっぱり選挙制度審議会の中で、さらに国民の政治的自覚の高まりがこういうものを禁止すれば害されるというそういう論をもって戸別訪問というものの自由化に賛同する意向を言われている。
 私どもは警察が直接この戸別訪問を検挙する立場にある現象だけ見ていますか方、こういう首脳部の方の意向というのは読むと意外に思うのですが、選挙違反全体に限られた警察の人員を有効に投入して実質犯中心の検挙というたてまえでいくとすれば、この形式犯によけいな貴重な警察の方の人員をつぎ込むのでなしに、もう戸別訪問は自由化して、そして買収ですね、金権買収選挙、検挙者二十何人とか、略式二十何人とか、全国で二百人とかいうのをもっともっと検挙していく、早く検挙していくというふうにしていった方が、これは国の予算の範囲内での予算の有効な使い方だし、民主政治の害を早く掃除していくにはいいと思うんですよ。
 私の方の調べでは、東京を例にとっても、この間の総選挙で連日約四千名ぐらいの専従捜査官が配置されたと言われていますが、この数はあなたがもし知っていれば答えてもらいたい。最終の二日間には一万七千人も動員している。私も幾つかこの戸別訪問違反事件の生の記録を担当の方から見せてもらいましたが、一人の戸別訪問を検挙するのに、四十人も警察官を使って、参考人の聞き込みや、持ってきた文書はないかと取り上げてみたり、こういう不見識なことをやっているんですね。戸別訪問というのは、こういう警察の使い方もずいぶん――いや、あなたは笑うけれども、これはある公判での反対尋問で警察官から引き出した証言の中にあるんですよ、四十人、こういうようなことですね。私は、こういう意味で、この間も警察庁に行ったときに本庁の最高幹部にも言うたんですよ。これでは警察の力というのは本当に使えないじゃないかということを言ったのです。これは立法の問題でといって彼は国会の先生方がやっていただくならと言っておりましたので、ですからまあわれわれがやるべき問題なんですが、警察の実態としてどうですか、いま言ったような点は否定はできないでしょう。そういう面もあるんでしょう。
#118
○政府委員(中平和水君) ただいまお話がございましたように、警察のかなりの幹部の立場にある人が戸別訪問のやや自由化について議論をしたことは一応承知いたしております。しかし、ただいまの席におきましては、私どもとしましては、一応公選法の改正の立法にかかわる問題につきましては、公式の意見を述べることを差し控えさしていただきたいと思います。
 私どもの実務の第一線の扱い方といたしましては、これはあくまでも重点といたしましては、買収だとか、あるいは選挙自由妨害だとか、そういう要するに選挙の公正を実質的に害する事犯に捜査力の重点をかけておることも事実でございまして、そういう方向での指導をしておるわけでございます。
 なお、戸別訪問あるいは文書違反等の問題につきましては、組織的計画的な違反につきましては、これまた現在の選挙の実態から見まして選挙の公正を害する面があるわけでございますので、その点につきましては取り締まりの重点としてやっているのが現状でございます。
#119
○内藤功君 基本的に私の指摘した点は否定なさらなかった、立法論についてはあなたのお立場上差し控えられたようだと、そういうふうに理解をして次の質問に移ります。
 時間が来ましたので最後の質問になりますか、大林さん外一名の書いた「逐条解説 公職選挙法」という本があるわけです。この大林さんはいまの部長だろうと思います。買収、利害誘導などの自由公正を害する犯罪の温床になるというのが一つと、二番目は、候補者、選挙人ともにその煩にたえないという、大体この二つが戸別訪問を禁止するとすれば、根拠だというふうに書いてありましたね。
 それで、まず買収、利害誘導等の温床論というものについてですが、これは戸別訪問が温床じゃないということを私は申し上げたい。むしろ企業組織、特に大企業組織や組合組織を通じての票集め、つまり官庁ぐるみや企業ぐるみの選挙活動、そういう選挙活動の方が金銭の絡む実質犯の温床になりやすい、そちらの方が問題だというふうに私は思うのです。少なくとも戸別訪問がすぐ買収に結びつくということはない。これは日本で言いますと、明治から大正、昭和初期にかけて、いわゆる選挙ブローカーというのが非常に横行した。また、国民の民主主義という政治意識も率直に言って低かった。帝国議会の衆議院議員というのは何をするのかということが当時の日本の民主主義の意識では十分でなかったというところにやっぱり発生した。戦後三十四年間で国民の民主的意識は高まっていますから国民はばかにできないですよ。この間の総選挙だってそうなんですね。これはどこの党が伸びた、どこの党が減ったという以上に、国民はクールにやっぱり物を見るということになってきた。こういうときにはもうないんです。だから、戸別訪問が買収の温床だというのは五十年ぐらい前の認識なんですね。この点を私は特に強調したい。
 それから二点目は、戸別訪問を禁止するという考え方は、選挙運動は候補者や運動員が行うものだという前提に立っている。反対に憲法の精神から見れば、選挙運動というのは戸別訪問を含めてだれでも参加していいものだ。一般大衆は、自分が宣伝を受けるだけじゃない、自分も宣伝をする立場でいろいろな人の家へ行って政治のことを論じ、候補者のことを論じていいんだと、そういうことになると、一般国民による戸別訪問というのは買収などとは本来無縁なものだというふうに私は思うわけなんです。
 それから第二の煩にたえないという議論ですが、この議論は候補者にとっての利便の問題にすぎない。運動員や選挙人の戸別訪問を禁止する理由にはならないと思いますね。
 それから選挙人への迷惑論ですが、これはもう迷惑だと感じる人は自由に訪問者を断ればいいし、迷惑を感ずるやり方はその政党あるいはその候補者に対する支持を失うだけだ、迷惑をかけたということでその候補者がマイナスを選挙の結果受けるだけだ、私はこう思うので、これらの議論というものは今日非常にもう古くなっていると思います。
 イギリスでは、私が専門家の方から聞くところによると、十九世紀の七〇年代から八〇年代にかけて不正腐敗防止法の審議をめぐって約十数年間イギリスの国会で議論されたようです。いま私もこれをずっといろいろ文献で見ておりますけれども、その中で、やはり戸別訪問を禁止すべきだとか、あるいは各戸に戸別訪問してある候補者を支持する署名を求めるように訪問することを禁止すべきだとか、いろいろな修正案が議員提案で出たらしいんですが、いずれも当時激しい議論の結果否決をされているというような文献もあるようです。これはいずれ私は詳しく本委員会でも指摘をして論じたいと思うのですが、すでに百年前のイギリスで、一八七〇年、八〇年代のイギリスでこれはもう少数意見で否決をされているという実態もありますね。やはりこれは議論済みの問題だ。
 こういう面から言って、日本のいろいろな選挙制度を変えるべき点があるけれども、まず国民を信用して自由な選挙活動、政治参加をさせる方向に持っていくべきである。これは自由法曹団のアンケートでいみじくも自由民主党を初め各党の方が非常に賛成して、たとえば自民党では三十八人が賛成で九名が反対というふうなあれになっています。これは与野党を問わない傾向になっていると思う。ですから、こういうような動きを頭に置いて、自治省も、さっき大臣は非常にかたい御返事であるかのように聞こえたのですが、ここはやっぱり柔軟に戸別訪問を自由化の方向に頭を切りかえて、ただ国会で各党がやってくれと言うだけじゃなくて、自治省もそういう意味での資料は提供しましょう、自由化についての資料を提供しましょうというような形で、意見を賛成しろ反対しろというのじゃなくて、われわれのそういう方向に行くような役所としても方向を出すべきじゃないかというふうに私は思っておるのですが、部長、御見解はどうですか。
#120
○政府委員(大林勝臣君) 御指摘のように、戸別訪問の問題につきましては従来からいろいろ議論がございます。その議論のほとんどについて先ほどおっしゃったようなことになりますけれども、まさにそういう点で従来戸別訪問の自由化に賛成される方々は議論を展開されてまいりました。過去七回の選挙制度審議会におきましても、自由化論をおっしゃる方はほとんどすべていま御指摘のような点を強調されて論議を展開されてきたわけでありますけれども、さて最後にどう結論づけるかということになりますと、さすがにやはり選挙運動の最も効果的な手段であると、こういうことを皆様方がお認めされておるからこそ、いざとなるとなかなか御意見がまとまりませんというのがこれまでの実情でございます。
 もちろん、私どもとしましても、いろいろな御論議にはできるだけ協力してまいりたいと思いますし、また、国会におきましてもおっしゃいましたような点を踏まえていろいろまた御意見の調整を願えれば私どもとしてもありがたいと思います。
#121
○委員長(中村禎二君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十分散会
ソース: 国立国会図書館
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