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1978/06/01 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 科学技術振興対策特別委員会 第13号
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1978/06/01 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 科学技術振興対策特別委員会 第13号

#1
第087回国会 科学技術振興対策特別委員会 第13号
昭和五十四年六月一日(金曜日)
   午後二時十五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月三十一日
    辞任         補欠選任
     北  修二君     中山 太郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         塩出 啓典君
    理 事
                源田  実君
                長谷川 信君
                松前 達郎君
                藤原 房雄君
                佐藤 昭夫君
    委 員
                岩上 二郎君
                上條 勝久君
                後藤 正夫君
                望月 邦夫君
                山崎 竜男君
                森下 昭司君
                中村 利次君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)       金子 岩三君
   政府委員
       科学技術庁長官
       官房長      半澤 治雄君
       科学技術庁原子
       力局長      山野 正登君
       科学技術庁原子
       力安全局長    牧村 信之君
       資源エネルギー
       庁長官官房審議
       官        児玉 勝臣君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        町田 正利君
   説明員
       労働省労働基準
       局補償課長    原  敏治君
       労働省労働基準
       局安全衛生部労
       働衛生課長    林部  弘君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(塩出啓典君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨三十一日、北修二君が委員を辞任され、その補欠として中山太郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(塩出啓典君) 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は去る四月二十七日聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○森下昭司君 まず最初に、わが国の原子力発電所が営業を開始いたしましたのが昭和四十一年だったと思いますが、それ以来順次ふえてまいったわけでありまして、今日までのいわゆる事故件数が現在どの程度になっているのか、それをまず最初にお伺いをいたします。
#5
○政府委員(児玉勝臣君) 原子力発電所が運転開始いたしまして一番最初の事故が起きましたのが昭和四十一年の八月でございますが、その昭和四十一年八月以来、五十三年の三月三十一日までに百十件でございます。そのうち原子力設備に関連するものは六十三件でございます。
#6
○森下昭司君 原子力関係の設備に関しましては六十三件といういまお答えがあったわけでありますが、この六十三件の故障というもの、事故というものはどういうものが一番多かったのか、その分類についてお尋ねいたします。
#7
○政府委員(児玉勝臣君) 六十三件の内容について逐一申し上げるのは、ちょっといま資料がございませんが、主として機器の故障としましては、バルブの漏洩、それからポンプの漏洩、そういう漏洩関係の事故が最も多いわけでございます。
#8
○森下昭司君 資料がないというお話でありますが、私は本会議でも御質問申し上げて、このことをお尋ねすることは実は通告をいたしておったわけでありますから、いささか答弁が不満足であります。
 バルブの漏洩だとか、ポンプの漏洩というようなお話がございましたが、たとえば過去の実態等からまいりますと、美浜におけるたとえば燃料棒の溶融があったのかどうかというような大事故もございましたように、単なる漏洩だけではなくて、いろいろな機器系統の中における弁でありますとか、あるいはその他各般の部門に相当数の事故の件数があったと私は思うのであります。
 もう一つお尋ねいたしておきますが、私は、この間の本会議で、村主さんの「原子力発電所における異常事象の概況」、これはアメリカの原子力規制委員会等に報告されましたものを、実際にその報告書に基づいて調査をなさいましたことに基づいて報告が実はなされたわけでありまして、その中でも、たとえば故障の分類といたしましては、運転中にどういうものがあったとか、あるいはまた、故障発生時におきましてはどういう状態のときに発生したものが多いのか、あるいは系統別に異常事象報告書の中ではどんなものが多いのかというようなことが実は詳細に述べられているわけであります。したがって、日本のいわゆる原子力発電を監督なさる通産省が、こういった資料をお持ちになっているのではないかと私は思うのでありますが、その点についてはどうですか。
#9
○政府委員(児玉勝臣君) ただいま先生のおっしゃいましたような、いわゆる原因別、それから事象別、そういうような事故解析のデータは持っております。
#10
○森下昭司君 これは後ほど資料として御提出いただけますか。
#11
○政府委員(児玉勝臣君) 内容につきまして、先生とよく御相談して提出したいと思います。
#12
○森下昭司君 さらにお尋ねをいたしておきますが、これらのいわゆる事故によりまして、不幸にして人あるいは物――物の中にはその他いろんなものを含むのでありますが、こういったいわゆる原子力の損害賠償に関する法律の対象になった事例があるのかどうか、そのことをお尋ねします。
#13
○政府委員(山野正登君) わが国におきまして、原子力損害賠償法の賠償対象となった事例は過去に一件もございませんが、この原賠法に関連するものとしまして損害賠償の請求というのが一件起こされておりまして、この事案をちょっと申し上げますと、原告は日本原子力発電株式会社の下請従業員でございます岩佐嘉寿幸さんという方でございまして、被告は日本原子力発電株式会社でございます。事案の内容は、四十六年の五月に被曝事故発生ということで、四十九年の四月に大阪地裁に原賠法による提訴を行っておりまして、四千五百万円の請求をしております。これは五十四年一月現在、大阪地裁で係争中でございます。この係争中の案件が一件あるだけでございまして、賠償対象となった事例というものは過去にはまだ起こっておりません。
#14
○森下昭司君 これはまた、時間があれば後ほどお尋ねいたしておきたいと思うのでありますが、この機会に、関西電力の大飯発電所の再開をめぐりましていろいろ問題が出ているわけでありますが、現在どのような状態になっているのか、現状をひとつお尋ねいたします。
#15
○政府委員(児玉勝臣君) 大飯原子力発電所につきましては、停止した問題については省略いたしますが、ECCSに関する安全解析の結果につきましては、五月の十九日に安全委員会がその結論をお出しいただきまして、その後、通産省と科学技術庁と相携えまして、福井県並びに大飯町に説明に行っております。
 具体的に申し上げますと、五月二十四日に福井県、それから二十五日には大飯町で説明をいたしておりまして、さらに二十八日に福井県におきまして環境特別委員会の全員協議会にその安全性の問題と、県から御要望のありました防災計画の問題につきまして御説明しております。したがいまして、その後福井県並びに大飯町におきますいろいろな防災関係等の手続か進められていると聞いております。
#16
○森下昭司君 後ほどこの防災計画についてはまたお尋ねもいたしますが、伝えられるところによりますと、大飯町におきましては、国が何らかの防災対策を明示しない限り再開には応じがたいというようなことが言われておるわけでありまして、これはマスコミ等を通じ、あるいはテレビ等を通じましていろいろと報道をされておるのでありますが、そういった点については通産省としてはどういう見解をお持ちになっておるのか、お尋ねいたします。
#17
○政府委員(児玉勝臣君) 所在市町村といたしまして、その防災計画が十分でなければならないという意味はよく私たちも理解できるところでございまして、そういう所在市町村並びに県の防災計画の作成に国としては全力を挙げて御協力申し上げるという姿勢でございます。大飯町並びに福井県につきましては、先ほど申し上げましたような二十四日なり二十五日の機会に十分にお話し申し上げておりますので、御理解いただいておるのではないかと、こう考えております。
#18
○森下昭司君 最初に通産省の解析が行われまして、後に安全委員会等でこれが認められましたときに、一部にはこれで法律的な問題はすべて解決をしたというような強い態度の意見の表明があったとも実は言われておるわけであります。
 そこで重ねてお尋ねをいたしておきますが、福井県並びに大飯町当局の了解がなければ運転の再開は強行しないという理解をしていいのかどうか、重ねてお尋ねいたします。
#19
○政府委員(児玉勝臣君) 先生おっしゃいましたように、今度の大飯の再開につきましては、法律上の問題といたしまして特に工事計画の認可とかいうようなものは必要なかったわけでございます。しかしながら保安規定の再点検をいたしましたので、その内容につきまして保安規定を改正するということを指示いたしました。そういう意味で電力会社から保安規定の改正の申請が出まして、その認可をいたしております。そういうことで法律上の手続は一応終わっております。ですけども、先生おっしゃいますように、運転するにしても、建設するにしても、これは地元の理解と協力がなければならない問題でございます。これは法律以前の問題と言ってよろしいのではないかと思いますので、その点については十分御納得を得ながらやっていきたい、こう考えております。
#20
○森下昭司君 そこで、これは科学技術庁にお尋ねをいたしておきますが、一部の人々の間では、原子力安全委員会が立証資料不十分のまま、通産省の出した解析を安全だという形で、いわば追認という形になったのではないかというきらいも実はあると言われているのであります。そういう点について、いわゆる原子力安全委員会が設けられた趣旨、それから原子力安全委員会の言うならば任務等々を考えますと、こういったことが伝えられることは非常に私は残念なことだと思うのでありますが、原子力安全委員会といたしましては、通産省が提出をした資料以外に、みずからの手で安全を立証すべき資料を検討して五月十九日に結論を出したのかどうか、このことをお尋ねいたします。
#21
○政府委員(牧村信之君) 今回の解析に当たりまして、安全委員会の立場は、先生もよく御存じの、行政庁と離れて、行政庁の行った行為につきましてダブルチェックするという立場で生まれた委員会でございますので、当然通産省からこういたしたいという案が出てきたわけでございます。で、今回の審議に当たりましても、その通産省の案をバックアップいたします資料につきましても、なお相当の件数の追加の要求をし、それを審査の参考にしております。また、同様の解析を日本原子力研究所に安全委員会から依頼いたしまして、原研の別の解析コードによりまして検討して、通産省の検討の結果と対比いたしまして、ほとんどそれが定性的に合っておるというような確認もした上で、専門家の御議論を経て安全委員会が決定した、審査会の議を経て、その上で安全委員会が決定したというふうな次第になっておりますので、決して通産省の言いなりになったというようなことはないと私どもは確信しておるところでございます。
#22
○森下昭司君 吹田委員長はしばしば、われわれは純粋に科学技術的立場から判断を下すということを言明されていたわけであります。同時に、この原子力安全委員会のもとにおける発電炉部会が通産省の解析を受けて、一応専門的立場で、このいわゆる解析を検討いたしたわけでございますが、一部の報道機関の記事によりますれば、この解析をされたものに対しましてイエスかノーかを答えるのが立場であって、この解析に対し、こういった点が不足しているのではないか、あるいはこういう点についてもう一度検討する必要があるのではないか、言うならば何らかの注文をつける立場ではない、したがって通産省の解析はそのまま原子力安全委員会の発電炉部会がうのみにしてしまったというようなことも実は言われているわけでありますが、この点については、そういったことは絶対ないと言えるかどうかということが一つと、もう一つは発電炉部会が通産省の解析をただ単に検討するだけであって、つまりイエスかノーかということを言うだけであって、こういった点についての検討の協力を求めたり、あるいはこういった点についての資料の提出を求めるというようなことが権限としてでき得ないのかどうか、その点をちょっとお伺いします。
#23
○政府委員(牧村信之君) 今回の場合につきましては、解析の問題につきましては確かに答えはイエスでございました。しかしながら、このイエスを出すまでに、先ほども申し上げましたが、当初通産省が持ってきた解析結果を説明する資料では不足であるということで、通産省にさらに相当の解析データの提出を求めておるところでございます。したがいまして、従来から私ども安全委員会設置のときにも申し上げておりましたけれども、ダブルチェックの実効を上からせるためには、通産行政当局に資料の追加、あるいは先ほども申し上げましたような日本原子力研究所等での別のチェックの結果、こういうものを参考にいたしましてダブルチェックの効果を上げていきたいと考えておりまして、今回の場合におきましてもそういう線で審議が行われた次第でございます。
#24
○森下昭司君 また、この解析に対しましていろいろと学者間で意見が実は出ているわけであります。たとえば限定した条件のもとだけを前提といたしまして解析を行った、これによって安全であるという結論を出すことは非常に危険ではないかというような意見に、簡単に言えば集約できるのではないかと思うのでありますが、こういう解析に対する学者間の意見というものをどう見るのか。あるいは今後そういったものを評価していく気持ちはあるのかどうか。この点をちょっとお尋ねいたします。
#25
○政府委員(牧村信之君) 今回の解析に当たりましても、いろいろな方々からの技術的な意見を安全委員会はいろいろ承っております。その承りました結果は安全審査会の検討の場に御披露いたしまして、その御検討をいただいておりますので、その時点までにいただきました御意見についてはすべて検討していただいたと思っております。
 それから、解析が非常に限られておるという御指摘に対しましては、確かに限られた解析でございます。と申しますのは、今回の事故におきまして外国の事故は、逃がし弁が噴きっ放しになって、相当長期間従業員が気づかずに約二時間噴きっ放しにしておった。そこで、ECCSが入っておるにもかかわらず、そのECCSの作動がどうも考えてみますと余りうまくなかったというようなことも重なった非常に特殊な事例を解析したわけでございます。すなわち日本の炉におきまして、逃がし弁がいつまでも噴きっ放しになっておるというようなケースを想定した事象でございます。その事象が起きますと、水位計の指示が実際の炉の水位の指示を示さない、こういうような解析が実は日本になかったわけでございます。
 で、ウエスチングハウス並びにNRCは、水位計を見ないで圧力が低下すれば手動でECCSを動かせばいいではないかという指示を国内のメーカー並びに外国のユーザー等に連絡をしてきたわけでございますけれども、日本の安全審査のたてまえから、手動でやる場合には、相当期間人間がミスしてほっておいても十分安全に動くという、これは一応十分以上となっておりますけれども、そういうような解析がない限りは手動を認めないというのが現在の方針でございます。残念ながら大飯の場合にはその解析が当時ございませんでした。したがいまして、通産省の行政指導でとめたということでございます。そういう限られた事象の問題に対しての問題点でございましたので、今回の解析も非常に安全度をとりまして、ほとんど起こり得ない事象を相当積み重ねた上でどうなるかという解析をいたしまして安全であるという判断を下した次第でございます。
#26
○森下昭司君 これは日本の原子炉の持つ共通性でありますが、工学的ないわゆる理論を中心にいたしまして研究が重ねられておりまして、言うならば、実証炉に基づいて、あるいは実用炉に基づいた研究によっていろんな事故を想定するというものが非常に不足をいたしているわけであります。したがって、そういった観点からまいりますと、安全解析を行うに当たっては、いわゆる慎重な態度、それから広範なことを前提といたしまして、限られた条件の前提ではなく、幾つかの現在可能な限りの想定を前提といたしまして安全解析を行うべきではないだろうかというような感じを実は持っているわけであります。
 そこで、時間がありませんから細かいことはお尋ねいたしませんが、たとえばここに、「沸騰水型の異常事象」と題しまして鍋田さんの実は記事が載っているわけであります。これはアメリカの原子炉規制委員会に報告されましたものを中心にいたしまして解析なさったわけでありますが、その中で、緊急冷却装置のECCSの問題につきまして、やはり二年間で二十件のこういった異常事象が出ておると。その中の原因の多くは、点検後の措置が不適当であるとか、操作手順書きの不備、機器への給油プログラムの不良など人為的な実はミスが目立っているということをちゃんとお書きになっているわけであります。通産省の行いました解析の場合でも、ケース二つを前提といたしましておやりになっておりますが、ECCSを手動で動かす場合があるということを想定しておみえになるわけでありますが、そういったことは、いわゆるこの鍋田さんの記事から、アメリカの原子力発電の実態からまいりましても、操作が適確に行われるかどうか非常に疑問があるわけであります。そういう点で、安全解析というものは、ただ単に今回限りの解析ではなくって、将来やっぱり十年でも二十年でも、いろんなことを想定しながら解析というものを絶えず前進をさしていくというような考え方が実はなければいけないのではないだろうかというふうに私は思うのでありますが、そういう点についてはどうお考えですか。
#27
○政府委員(牧村信之君) その問題につきましては、今度の事故が機器の設計上のミスも若干あるようでございますし、人為的な問題もあるように言われておるわけでございます。
 そこで安全委員会といたしましては、あれは三月三十日でございますけれども、通産省並びに科学技術庁が所管しておりますすべての原子力施設に対しまして再点検をするようにと、その点検の内容は、いままで安全審査でいろいろな基本的な安全上の考えを示しておりますが、その上に立って建てられた施設に対して、それが十分機能しているかどうか、あるいは運転マニュアル等が十分整備されているかどうか、あるいは決められた点検を実際にやっておるかどうか、また、そういう点検につきまして不備な点はないか、あるいは運転員の教育訓練が十分かどうか、こういうような事柄につきまして再点検を指示した次第でございます。で、原子力発電所の場合におきましては、通商産業省がその点検を行いまして、その点検結果を安全委員会の方に逐次報告がなされております。
 そこで、大飯の発電所の場合には、解析結果と同時に点検の結果も報告されまして、安全委員会といたしましては、通産省が電力会社に指示する事項を中心に検討をいたしまして、若干の追加意見を出しまして、それを通産省に受け入れていただきまして、再度修正した指示案というものについて、最終的に通産省の措置がよろしいということで指示をしておるところでございます。したがいまして、先生御指摘のように、今回の事故の教訓を受けて、現在もすべての原子炉について検討が進められております。
 なお、向こうの原子炉の事故の原因につきましては、必ずしも一〇〇%現時点でわかっていないわけでございますので、そういうような問題、あるいは将来改めなくちゃいけないような問題につきましては、安全委員会にこの問題に関します特別委員会をつくっておりまして、今後の安全規制に反映すべき事項あるいは今後の安全研究に反映すべき事項等々につきまして検討を加え、所要の対策を立てていこうという姿勢で臨んでおるところでございます。
#28
○森下昭司君 現在の原子力安全委員会が設けられましたのは、昭和五十一年七月三十日の原子力行政懇談会からの「原子力行政体制の改革、強化に関する意見」というものによって実は設けられることに相なったわけであります。
 そこで、その中で「可能な限り民主的な手続を機能させて原子力開発の必要性、安全性について国民に十分に説明を行い、あるいは国民と粘り強い対話を続けて国民の意見を原子力行政に反映させていくことが必要である。以上の条件が満たされてこそはじめて原子力行政は国民の信頼と支持とをかちとり、円滑な原子力開発の推進を図ることができるのである。」と実は書いてあるわけであります。その前提に立ちまして公開ヒヤリングを行うことが妥当だというようなことが実は述べられているわけであります。したがって大飯原発の再開に当たりましては、この強化意見の趣旨にのっとって公開ヒヤリングを行って、広く国民に安全性を言うならば理解せしめるということが必要ではないかと私は思うんでありますが、こういった公開ヒヤリングを再開に当たって行う考えがあるのかどうかお尋ねをいたしたいと思います。
#29
○政府委員(児玉勝臣君) 公開ヒヤリングにつきましては、ただいま先生おっしゃいますように、行政懇の精神にのっとって行うように考えております。通産省といたしましても、五十四年の一月に通産省といたしまして省議決定いたしまして、第一次公開ヒヤリングというのを実施したい、こう考えております。これは、原子力発電所の設置に際しまして電源開発調整審議会に付議する以前に行うということをたてまえとしております。今回の問題は、そういう発電所の立地ということとは変わりまして、また法的手続におきましても電源開発調整審議会にかけるとかいう性質のものでもございませんので、そういう意味で公開ヒヤリングを行うということはいまのところ考えておりません。
#30
○森下昭司君 強化意見は、いま御答弁がありましたように、電調審にかける前に原則として行えということが実は書かれているわけであります。したがって、私もその言葉どおりに解釈をすれば、確かに公開ヒヤリングを開くことは妥当性がないということも理解をするのでありますが、やはり強化意見というものは、原子力行政について、あるいは原子力発電というものについて国民の理解と共感を得るという趣旨でありまするから、そういった趣旨を理解をいたしますならば、やはり電調審以前に開くその公開ヒヤリングを、今回の大飯原発の再開についても同じように開いていくことの方が、より将来国民に理解を得るためには必要ではないだろうかというような感じが私はいたすのでありますが、重ねてお尋ねいたします。
#31
○政府委員(児玉勝臣君) 先生がおっしゃるいわゆる地元のコンセンサスを得るための方法として、公開ヒヤリングなりそういうものが開かれるべきではないかとおっしゃる趣旨はよくわかるのでございまして、地元の理解と協力がなければならないわけでございますので、そういう意味では事案に沿って適した方法を採用してよろしいのではないかと思います。したがいまして、私たちといたしましては、いわゆる省議決定いたしましたような公開ヒヤリングというものはやはり電調審に付議する前の問題として考え、今度の大飯の発電所の問題のようなものについては、地元での県主導または町村主導型の説明会に出席してその説明をする、そういうことで事が足りているのではないか、こう考えております。
#32
○森下昭司君 私は、そういう御答弁を聞きますと、たとえば先ほど申し上げた強化意見というのは五十一年なんですね。したがって、原子力基本法の改正が行われ、そして原子力安全委員会が設けられましたのが五十三年の六月であります。いわゆる強化意見に基づいて電調審前に公開ヒヤリングを行うことは五十四年一月の省議でお決めになったという実はいま御説明があったわけであります。現実に五十三年の六月以来、五十三年の十一月の電調審では、いわゆる東京電力の福島第二、それから九州電力の川内第二、それから中部電力の浜岡3号機、あるいは日本原子力発電の敦賀第二、この四つが五十三年の十一月の実は電調審で認められているわけであります。いま審議官がおっしゃるように、強化意見の趣旨を尊重し、そして公開ヒヤリングは趣旨のとおり電調審決定前のものだという原則をおとりになるならば、五十三年十一月の電調審でこの四立地点をお決めになるならば、この四カ所において少なくとももうすでに実施をしていなくちゃいかぬのではないか。むしろ半年間おくれたということは、私は通産省がこの強化意見をやや重視をしていなかった一つの証左ではないかというような感じがいたしますが、この点どうですか。
#33
○政府委員(児玉勝臣君) 去年の六月に国会におきまして基本法の改正をしていただきまして、安全行政の一貫化というのをお決めいただいたわけでございます。その行政庁の具体的な発動というのは今年の一月四日に実施をされましたので、したがいまして、その実施後の行政庁の判断としてやらしていただいたわけでございます。したがいまして、一月四日以降の電調審に原子力発電所を付議する場合には公開ヒヤリングをしたい、こう考えております。
#34
○森下昭司君 そういたしますと、今後のいわゆる電調審決定前では、この強化意見のように、五十四年一月の省議で決定いたしましたように、公開ヒヤリングを必ず行うということはお約束できますか。
#35
○政府委員(児玉勝臣君) 電調審に付議いたしまして立地されるような案件につきましては、公開ヒヤリングを実施いたします。
#36
○森下昭司君 そこで、過去では、いわゆる公聴会制度というものは一応実施細則なりあるいはまた開催要領というものがつくられておりまして、柏崎原発を初めといたしまする二、三の公聴会に実はこれが適用されたわけであります。この内容でまいりますと、少なくとも公聴会は開催予定日の六十日前に公示をしなければいけないとか、あるいは発言は十五分以内でなければいけないとか、超えた分については書面で提出をするとかいうようなことが、過去においては開催要領なり実施細則で実は規定されているわけであります。今回のこの五十四年一月の省議の内容によれば、一体公開ヒヤリングというのは決定前何日前に開催することが望ましいとお考えになっているのか。また、この公開ヒヤリングは言うならば対話方式というものを取り入れて、できるだけ多くの意見聴取ができるような運営を行うことが必要であるというようなことと、地元で開催をすることが適当であるということが実は強化意見の中にあるわけでありまして、そういった細部の点について、過去の開催要領、実施細則等と照らし合わせて、どういうようなことをお決めになっているのかお尋ねいたします。
#37
○政府委員(児玉勝臣君) 電調審に付議する何カ月前という、たしか具体的な月数は書いてないと思います。しかしながら、常識的に考えましても、やはり付議する数カ月前に実施するということであろうと思います。それは実際に実施するのに、まず案件を参加される方々に周知していなければいけませんので、その周知する期間というのをどれぐらいとるべきかということも実は議論になっておりまして、その辺は特に何カ月前というような数字をまだ入れるほど制度がよくならされていないということもございまして、特にその辺は数字が書かれてないかと思います。いずれにしろ、公開ヒヤリングに参加される方々にその案件を十分に理解していただいた上参加していただくということを考えております。
 それから対話方式でございますが、これは議長は通産省がいたしまして、電力会社がその案件を説明し、地元の方々がいろいろと御質問をすると、そういうことでできる限り対話方式でやりたいと思います。そのやり方につきましては、一件につき一つずっという対話ではなくって、一つの説明なり意見をずっと集約した上で幾つかの対話といいますか、問題に分けまして回答をさせ質問してもらうと、そういういうようなかっこうも考えております。そういう対話方式を採用するということであります。
#38
○森下昭司君 そういたしますと、昭和四十八年五月二十二日につくりました原子炉の設置にかかわる公聴会開催要領あるいは四十八年七月二十四日の実施細則、こういうものは一応廃止をされまして、新しいいまの五十四年一月の省議の決定に基づきまして公開ヒヤリング開催要領なりあるいは公開ヒヤリング実施細則なり、そういったものをおつくりになっていくということでいいですか。
#39
○政府委員(児玉勝臣君) おのおのの案件につきまして、その実際の案件に適応した実施細則はつくって公示するということでいきたいと思っております。
#40
○森下昭司君 本年の十一月か、あるいは十二月になるかもしれませんが、少なくとも電調審が開かれることは確実であります。したがって、それまでにきちっとしたものをつくって、前のような公聴会の公示でさえも少なくとも六十日前ですから、逆算しますと、もうこの国会が終わるまでぐらいには実施細則なり開催要領ができておりませんと、ここでいまお約束をされても実現できないというようなことになるわけであります。
 私は、もっと細かいことを、対話方式はどういう形でやるのが対話方式だとか、いろいろなことを聞きたいんですが、時間がありませんから、早急にそういった関係の細則なり要領の整備をされまして、ことしの電調審で決められる原子力発電関係の問題については、必ずこの強化意見に示される公開ヒヤリングが開催できるように積極的にひとつ行政を進めていただきたいということを要望して、いまの問題にまた戻りますが、いま公開ヒヤリングはどうしてもだめだというような実はお話があったわけでありますが、この強化意見の中には「原子力全般に共通する安全性に関する問題」その他について「専門家による公開のシンポジウムを開催する。」という意見が実は述べられているわけであります。少なくとも公開ヒヤリングが電調審決定前の問題についてのことであるならば、公開シンポジウムは、「原子力全般に共通する安全性に関する問題」であるという具体的なやはり提示がなされているわけでありまするから、大飯原発の停止は安全性に対する疑問から停止が行われたわけでありまするから、再開に当たっては少なくとも専門学者による公開のシンポジウムを開催をした上で大飯町なり福井県なりの説得に当たる、あるいは了解を得る行動をするということの方がこの強化意見の提言からいけば筋道としては妥当性があるんじゃないかという感じがいたしますが、どうでしょうか。
#41
○政府委員(牧村信之君) 公開シンポジウムの開催につきまして、安全委員会が設置されてから一つの重要な案件としてかねてから議論をしておるところでございます。で、このシンポジウムの開催の仕方等、何遍か実は審議をしてきたわけでございますが、そうこうしておりますときに米国のスリーマイルアイランドの事故が起きて、その作業が非常におくれておることは残念に思っておるところでございます。私どもとしては、早ければ八月ごろにでも開きたいと思っておったわけでございます。先生の御指摘では、シンポジウムを先にやって大飯の再開を図れというお話ではございますが、大飯の問題というのは、確かにアメリカの事故を契機にしておりますけれども、きわめてまれなと申しますか、非常に特異な事象についての解析でございます。したがいまして、それを待たずにも日本の原子炉では十分安全を保たれるという判断を原子力安全委員会がしたわけでございますが、この事故全体の問題につきましては、これは日本の今後の安全規制のあり方あるいは安全研究のあり方等に非常に参考にしなければいけない問題であろうかと思います。したがいまして、こういうようなことについての専門家の間の検討というものがきわめて大事ではないかと考えられるわけでございます。委員の中にも、こういうことを一つのテーマにして学者間で議論するシンポジウムも考えていいのではないかというふうなことを言っております。ただ現在、安全委員会のサイドにおきましても、この問題の原因の究明、対策等の議論が始まったところでございます。米国におきます検討も、聞くところによりますと夏ごろまではなおいろいろ解明に時間がかかるというようなことでございますので、アメリカの事故解明等が済み、日本の安全委員会の議論等が相当進んだ段階で、その上でそれらの資料をすべて公開した上でいろいろ御議論をするというふうな運びにした方がいいんではなかろうかというようなことを安全委員会ではフリーディスカッションの場で内々検討がされておると。したがいまして、近く恐らくそういう意味で公開シンポジウムが行われる際には、この事故の問題というのは一つの有力テーマではなかろうかと私ども事務局では考えておるところでございます。
#42
○森下昭司君 強化意見が、公開のヒヤリングでありますとか、シンポジウム、説明会、いろいろなことを制度的に定着をさせよう――これはさっきも何遍も希いましたように、原発に対する国民の理解と合意を得たいという趣旨であると私は思います。しかし、実際問題といたしまして、原子力の安全行政というものは、安全審査から電力会社による環境モニターまで、すべて当事者に自己規制のたてまえか実は一貫しているわけであります。これはぼくらは原子力基本法の際にも申し上げたのでありますが、たとえば原子力委員会の体制強化というものは、ただ単に安全委員会を設けることではない、むしろ原子力委員会なり原子力安全委員会なるものか行政委員会的性格を持つことも必要ではないかというようなこと等も実は言ったわけであります。確かに強化意見の中にも、行政委員会の独自の事務局を持つべきであるという意見もあったが今回は云々と、原子力安全局が事務を行うということに実は落ちついたわけであります。言うならば、第三者の機関あるいは住民によるチェックルールというものがないというところに、先ほど私がいろいろ申し上げたような疑問なり疑惑なりうわさが飛ぶわけであります。そういうものをなくして、安全審査というものが、本当に手続の問題におきましても、あるいは実際の内容につきましても、疑惑の一点もないというような結論を出すためには、いま申し上げたような体制の強化ということが必要でございますが、とりあえずこういったヒヤリング、シンポジウムあるいは説明会等を行えということに私は変わってきたのではないかと、こう思うわけであります。そういう点につきまして公開シンポジウム、一応八月に開きたいという御希望があったようでありますが、いまのお話を聞いておりまするとややまだ不定期のようでありますが、ぜひひとつ、強化意見の尊重というたてまえに立って十分お考えをいただきたいと私は思います。
 次に、時間の関係もありますので、従事者の被曝問題についてちょっとお尋ねをいたしておきたいと思うわけであります。
 公表されておりまする発電用原子炉施設における従事者の被曝状況を見てみますと、年々増加の傾向が実は顕著であります。昭和五十二年度の各発電所の被曝実績は総合計二万五千三百六十二名、平均被曝線量は〇・三二レムであります。昭和五十一年度の各発電所の被曝実績は総合計で一万九千七百九十六名、平均被曝線量〇・三二レムということになっておりまして、この二年間の相対比較だけをながめてみましても、非常に被曝者数も増加いたしておるということが実はわかるわけであります。こういったことは何が原因で従事者の被曝者数がふえておるのか、このことを最初にお尋ねいたします。
#43
○政府委員(児玉勝臣君) 先生おっしゃいますように、原子力発電所におきます作業員の被曝人数並びに被曝線量が増加しておることは事実でございます。これは、昭和五十一年度におきましては原子炉の基数が十四基でございましたけれども、昭和五十二年度におきましては十九基と、原子力発電所がふえておりますので、定期点検等の対象工作物が増加したということが一番大きな原因ではないかと、こう思っております。
#44
○森下昭司君 まあ私はあえてそのことを反論はいたしませんけれども、いわゆる新しい原子炉の、言うならば被曝の実績、あるいは平均被曝線量というものは非常に僅少であります。従事者はいま申し上げたようにやや新しいところでもございますけれども、私はそれだけがいわゆる増加した原因ではないというふうに実は思うわけであります。これは逆にいえば、要するに、いま点検・検査ということをおっしゃいましたように、原子炉の周辺というものはかなりいわゆる放射能によって汚染されておる。中には、極端な表現をされる方は、今後ネジ一つ外すぐらいの軽作業でも相当被曝するものが出るんじゃないだろうか、こういうように実は言われておるわけでありまして、この問題は、ただ単に原子力発電所あるいは原子炉の数が多くなったということだけではすべてを理解することが非常にむずかしいのではないだろうかと、こう私は思うんでありますが、この点についてはどうですか。
#45
○政府委員(児玉勝臣君) 先生の御心配もごもっともでございますし、また、われわれといたしまして、原子力発電所の作業員の被曝の増加ということについて非常に関心を持っておるところでございます。したがいまして、先ほど先生は五十一年度、五十二年度の比較をされましたけれども、一人当たりの被曝線量といたしましては〇・三二ということで両年度とも同じレベルにおるわけでございますので、そういう意味では、個人的な被害といいますか、ダメージというのはふえてないわけでございます。ただ、発電所がふえれば従業者数がふえる、それに伴って被曝線量が本当にふえていいのかという点につきましては、先生の御心配も、まさに私どもも同時に非常に心配しております。
 そういうことで、今後の原子力発電所の運営それから設計ということについては、作業のしやすい、メンテナンスのしやすい原子炉をつくらなければいけないということで、改良標準化ということにいま一生懸命になっております。改良標準化の一つの目安といたしましては、現在の発電所の作業の被曝線量を少なくとも半分以下にしたいというふうに考えております。そういうことで、そういうような対策をとりつつ、なおかつ、遠隔操作とか、それから保修作業の自動化、それから機器の配置、遮蔽の見直し、それから原子炉給水中の腐食生成物の減少対策、そういうようなことも既設の原子炉について逐次対策を立てながらやっていきまして、最小限の被曝ということにしたいと思っております。
#46
○森下昭司君 この実績表からまいりますと、たとえば昭和五十二年、日本原子力発電所の敦賀発電所は、いわゆる一人当たりの被曝線量は〇・五二レムです。あるいは東京電力の福島第一は〇・四六レム、あるいはまた関西電力美浜発電所は〇・二四レムというように、比較的高い放射線量が出ているわけであります。古いものに多くて新しいものには少ないということは一応数字の上では出ておりますけれども、たとえば中部電力の浜岡発電所におきましても、この浜岡は比較的最近つくられたものであります。しかし、最近の五十一年、五十二年の実績表等をながめてみますると、非常に一人当たりの被曝線量というものが増加しつつある。したがって、新しいものには少なくて古いものには多いという、この従来の定説もやや問題が残るのではないかというような数字が実は出ているわけであります。いまお話がありましたように、遠隔操作でありまするとか、あるいはまた保修のやり方を変えるとか、遮蔽の見直しをするとか、いろんな改善策はお考えのようでございますが、私はこういった点についてさらに努力を払っていただかなければならぬのではないだろうかと思うわけであります。
 そこで、労働省の方御出席であると思うんでありますが、労働安全衛生法の二十条と二十二条の関係でちょっとお尋ねをいたしておきたいと思うんであります。時間がありませんから結論的にもう趣旨だけ申し上げておきます。
 労安法で第二十条の第一項三号で「電気、熱その他のエネルギーによる危険」という規定で危険の防止、二十二条の第二号で「放射線」ということで健康障害の防止という二点が取り上げられておりますが、労働安全衛生法はただこういった規定をしただけであって、原子力関係の言うならば危険防止並びに健康障害の防止というものはすべて科学技術庁または通産省の諸規則、諸規定に任せてしまっておるというふうに言っても過言ではないと思うんでありますが、この点について、原子力発電所に働く労働者のいま申し上げました危険防止と健康障害の防止という点についてはどういうふうにお考えですか。
#47
○説明員(林部弘君) 私どもの方、いま先生が引用されましたのは安全衛生法でございますが、いま先生引用されました二十二条のもう少し下の方に二十七条というのがございまして、「第二十条から第二十五条までの規定により事業者が講ずべき措置及び前条の規定により労働者が守らなければならない事項は、労働省令で定める。」という条文がございまして、その省令の委任によって電離放射線障害防止規則といものの定めがございまして、そこに安全衛生の立場からの定めがいろいろと設けられているわけでございます。したがいまして、安全衛生法並びにこういう特別規則というのは、事業場の実際に電離放射線の被曝を受ける労働者の職場におきましては、こういった法律、規則の適用は全部受ける形になっております。
#48
○森下昭司君 しかし、私もちょっと省令をざっとながめてみまして、いろんな有害な物質だとかの規定がございますが、原子力の持つ危険ないわゆるガスの問題でありますとか、あるいは液の問題でありますとか、一言にして言えば死の灰という表現でありますが、そういったものの規定を実は見出すことができ得ないと思うんでありますが、省令でその死の灰の内部について有害物質として定めてありますか。
#49
○説明員(林部弘君) 死の灰とおっしゃる意味か――この中に個々の物質について別表かございまして、それぞれの物質ごとに濃度を定めているというようなことがお答えになるのでございましたら、物質ごとに放射能を持っている物質については別表で定められているということでございます。ただし、これは事業場の中の話でございます。
#50
○森下昭司君 たとえば「名称等を表示すべき有害物」という項があります。政令の第十八条です。これはずっと書いてあって三十九項まであるんですよ。この中に死の灰は含まれていますか、死の灰は。規定されていますか。
#51
○説明員(林部弘君) 政令の……
#52
○森下昭司君 一項の「アクリルアミド」ですか、それからずっと三十八まで具体的に書いてありますね。――いいですよ、わかりました。後で説明聞きます。
 そこで、いまお話がありましたように、審議官の方からは先ほど遮蔽物を変えるとか製法を変えるとか遠隔操作をするとか、いろんなこういうことを実は考えているんだということでありますが、これは労働安全衛生法に基づく保安というよりも、危険を防止するというよりも、むしろ電気事業法の立場に立った保安という観点からこういったことをお考えになっているんじゃありませんか。
#53
○政府委員(児玉勝臣君) いまわれわれが発電所内のいわゆる線量を定めておりますのは、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する省令に基づきまして告示をさらに定めております。そこにおいてその核種別のレベルを決めているわけでございますけれども、このレベルを決めるに際しましては、これは放射線審議会の議を経てやっております。したがいまして、これは労働省の方におきましても私たちの方にいたしましても、各省の定める放射線のレベルについては全部放射線審議会の議を経なければならないことになっておりますので、これは全部同じでございます。
#54
○森下昭司君 そうすると、労働衛生課長にもう一点だけお伺いしますが、第二十九条で「元方事業者の講ずべき措置等」というのがあるんです。これは電気事業者と置きかえていただきゃいいんですが、この関係といま審議官がお答えになったことと同一的なことを述べておるんですか、ここは。
#55
○説明員(林部弘君) 事業場における安全衛生の管理というものをどういう形でするようになっているかという、責任体制の明確化というようなことか安全衛生法の冒頭の方に出てまいりますから、そういう意味では先生がいま御指摘になりました二十九条のような条文は、現実の事業場の中での安全衛生の管理体制というものがどういうような仕組みの中で担保されるかという関連の条文でございますから、その限りにおきましては、いま先生が御指摘されました条文は、まさに安全衛生法独特のものだというふうに考えています。
#56
○森下昭司君 時間がありませんから、最後に科学技術庁長官にお伺いいたしておきますが、一応国が防災の暫定指針といたしまして一応八キロという線をお出しになっているんです。これはアメリカがスリーマイル島の原子力発電所の事故のときに、州知事が八キロ以内の住民に避難命令を出したというのが一つの前提になっているとか、あるいは福井県の地域防災計画が八キロということを想定しておったというようなことが言われておるのでありますが、私どもといたしましては八キロというのはいかに何でも範囲か小さ過ぎるのではないか、特に日本のような過密な人口、しかも、原子力発電所の周辺には相当数の中小都市が散在をいたしておるというようなこと等を考えましたときに、八キロという問題は私はさらに検討をする必要があるのではないかというふうに思います。現に科学技術庁が派遣なさったスリーマイルアイランドの原子力発電所の事故調査団が、先日お帰りになりまして報告書を発表されました。その報告書の解析もまた発電所を中心にいたしまして十六キロごとに描きまして、それを幾つかに分断をしてあらゆる数字をお出しになっている。少なくとも事故原因調査に行きましたときに、十六キロを単位に判断をなさっているというようなこと等も考え合わせましたときに、私はさらに検討する必要があるのではないだろうかと。そして、この防災対策というものは、各原発所在地の県市町村は国の制定を一日も早く待ち望んでおる。安全委員会におきましても専門の委員会が、五月二十一日から諸会合を開いて検討を始めたようでありますが、一体いつごろまでに防災対策というものを確定なさるんですか。これは通産省やあるいは自治省との御相談もありますが、関係省庁と御相談なさって、いつまでをめどに防災対策をお出しになるお考えなのか、この二点だけお尋ねいたしておきます。
#57
○政府委員(牧村信之君) 確かに福井県で、何か暫定でもいいから考え方はないかということでの御相談があったわけでございます。現在福井県は八キロというのを定めて防災計画を立てておると、当面の措置としては八キロでいいんではないかということを申し上げたことは事実でございます。これを諸外国の例で見ますと、先生御指摘のように、いろいろな数字がございましてまちまちでございます。非常に範囲の狭い国から、先生御指摘のようなアメリカのように十六キロ、十マイルというようなところもございます。このような問題を日本にどう当てはめるかということにつきましては、先生も御指摘ございましたが、安全委員会の専門部会で、どの範囲を整備したらいいかというようなことは専門家で議論していただきまして定めていきたいということで考えておる、したがって、暫定的にはとにかく八キロでやっていこうということを申し上げた次第でございます。
 その審議の予定でございますが、可能な限り早くやっていただきたいと、少なくとも夏ごろまでには中間的な考え方でも出してほしいというような考え方で、どんなに遅くなってもことしの秋までには結論を出してほしいというふうに私ども事務局は希望しており、会議の運営に努力していきたいと、かように考えておるところでございます。
#58
○森下昭司君 終わります。
#59
○藤原房雄君 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、若干の質問を申し上げたいと思います。
 このたびのこの法案につきましては、原子力事業従業員にかかる損害賠償、それから賠償措置額の引き上げ、適用期間の延長、こういうことが骨子になっておりますので、現時点におきまして私どもはこれはこれなりの評価をいたしております。しかしながら、この法律のできた当時、そしてまた途中で一部改正になりました時点でいろいろな経過があったわけでありますが、本年に入りましてスリーマイル島の事故がございまして、これは起きるであろうとか、そういう問題についてはいろいろ処置をしなきゃならないということではなくて、現実味を帯びてきたといいますか、そういうことで、この法案につきましても限られた時間ではございますが、何点かお尋ねをしておきたいと思うんであります。
 最初に、同僚委員からもいろいろ御質問がございましたが、これは法に定められておることではございますが、よりそれを具体的に原子力損害というこのことにつきまして、あってはならないことではございますが、この事故に対しまして原子力損害という、法律上はこういうことを規定しておるわけですけれども、この法律の、少なくとも考えておりましたときと、現在といいますか、法律制定時点において想定しておった事故といいますか、このぐらいのことは考えなきゃならぬぞというものが恐らくあったんだろうと思うんですけれども、まさかその当時スリーマイル島のようなあんな大きなことは考えてはいなかったろうと思うんでありますが、法制定時、または今日までのいろんな一部改正がなされましたけれども、この法律を制定するに当たりましての考えの中には、どんなことを考えのもとに置いてこの法律を制定されたかという基本的なことをちょっとお尋ねをいたしておきます。
#60
○政府委員(山野正登君) 申し上げるまでもなく、原子力の利用を進めるに当たりましては、規制法による厳格な規制というのが大前提になっておるわけでございますが、このような厳格な規制のもとにおきましても、万々一何らかの事故が起こった場合に備えまして、いわば伝家の宝刀とも言うべきものがこの原賠法でございまして、原賠法律案に当たりまして、先生御指摘のような特に具体的な事故というものを想定しておるわけではございません。
 しかしながら、原子力事故による損害でございますれば、いかような態様の事故の損害でございましても原賠法による賠償を受けられるということになっておるわけでございまして、先ほどちょっとお触れになりましたように、原子力損害の範囲ということでこれが決められておるわけでございますが、法律の二条にございますように、「原子核分裂の過程の作用による損害」、「核燃料物質等の放射線の作用による損害」、「核燃料物質等の毒性的作用による損害」というふうに規定されていますが、これを立法当時の文章を見ますと、「原子核分裂の過程の作用による損害」と申しますのは、「原子核分裂の連鎖反応に際して発生する放射線による損害及びその際発生する熱的エネルギー又は機械的エネルギーによる損害」。次に、「核燃料物質等の放射線の作用による損害」と申しますのは、「核燃料物質、原子核分裂生成物等の放射線による損害」。最後に、第三点としまして、「核燃料物質等の毒性的作用による損害」と申しますのは、「核燃料物質等の物質そのものの性質による毒性的作用による損害」でございまして、「核燃料物質等の摂取・吸入等による内臓の障害等」を指すと、このようになっております。
#61
○藤原房雄君 先ほど同僚委員からもお話ございましたが、今日までの原子力発電所を中心といたします原子力損害という、この法の二条に規定しております「原子力損害」という、こういう規定されたものの事故というのは、一体この法制定後今日までどういうようになっているか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
#62
○政府委員(山野正登君) 先ほど森下先生にもお答え申し上げたところでございますが、まず、わが国におきましては原子力損害賠償法の賠償対象となった事例というのは過去に一件もないわけでございますが、原賠法による請求例というのが一件ございます。これは現在係争中でございますが、日本原子力発電株式会社の下請従業員でございます岩佐さんという方が原告になりまして、日本原子力発電株式会社を相手取って現在大阪地裁で係争中という案件が一件ございます。
#63
○藤原房雄君 今日まで原子力発電所では、この前の委員会でもいろいろ安全性の追求ということと、また事故、故障、こういうことについていろいろ申し上げたわけでありますが、いまの答弁ですと、確かにいろいろなトラブルといいますか、事故、故障、こういうたぐいのものはあるけれども、いわゆる原賠法の適用になるものはなかったということですね。しかし、安全性を確保することが第一でありまして、それに伴って住民に対しての不安感を除去するという上から、万全の措置を講ずるという上からこの法律の重要性というものは私どもよくわかるわけでありますが、この設立当時から原子力事業の従業員の適用をどうするかということもいろいろ論議になっておったわけでありますが、この法のたてまえからいいますと、従業員は従業員で労災法の適用ということで、一般住民やまた下請やこういう方々のことを第一ということでこの法律の目的もあったんだと思いますが、この労災法にもいろいろ規定はされておりますけれども、やっぱりいろんな審議の過程の中で、特に五十三年の十二月二十六日ですか、「原子力損害賠償制度問題懇談会報告書」でいろいろ報告になった、これを受けてこのたびの改正になったのだろうと思いますが、今日、法制定の三十六年当時にもやっぱりこの従業員の問題についてはいろんな論議があったろうと思うのでありますが、今日までの論議の経過と、そしてこのたびこういう答申があって改正することになったろうと思うのでありますけれども、そこに至るまでの関係当局のお考え方、経緯と、これをこの中に組み入れることになったいきさつ、ちょっと御説明いただきたいと思います。
#64
○政府委員(山野正登君) 当初原子力事業者の従業員損害を法の対象から除いておりました理由でございますが、まず、原子力事業者の従業員の業務上受けた損害につきましては、いま先生がお触れになりましたように、この立法に当たっては、一般第三者のこうむった原子力損害に対する保護をまず優先させるという考えに立ちまして、従業員については労働災害補償保険制度があるのでその方にゆだねれば足りるではないかというふうな考えで当初立法されたものでございますが、これを今回原賠法の対象といたしましたのは、本件につきましては、国会の両院におきまして過去二回にわたりまして従業員の業務上受けた損害も法の適用対象とするようにという附帯決議をいただいておるわけでございまして、その線に沿いまして私どもいろいろと原子力委員会の中に専門部会を設けて検討してまいったわけでございますが、ただいま先生もお触れになりましたように、五十三年の専門部会の検討の結果に従いまして、今回、労災ではカバーし切れないものにつきまして、同じく従業員も原賠法の対象に入れまして労災補償でカバーし切れない損害について賠償を受けられるようにした方がよかろうという結論に達したものでございまして、これを受けて今回の法改正にしたわけでございます。
 いま申し上げました間の審議の過程でございますが、十年以上、十数年、非常に長期にわたってこの検討を行ったわけでございまして、これは非常に時間的に長くかかり過ぎたではないかという御意見もあろうかと思いますが、この改正に当たりましてはいろいろむずかしい点がございます。たとえば他産業とのバランスをどう考えるかという問題がございますが、これにつきまして、原子力産業に従事するものだけ無過失で損害賠償を受けられるようにするということは、ほかの産業の従業員よりも有利となってバランスを失することはないだろうかといったふうな問題、あるいは従業員災害は労災にゆだねるということに従来なっておったわけでございますので、その労災給付の方が充実されれば、つまり労災給付が増額されていけば、実質的にはそれで、あえて原賠法の対象の方に取り込むという必要性は乏しくなるではないかといったふうな問題さらに法律技術的な問題としましては、労災給付と損害賠償の調整をどうするかといった大変むずかしい問題がございまして、こういったふうな問題を詰めますために、過去、昭和三十七年、昭和四十年、昭和四十五年、昭和五十年さらに昭和五十三年と、たびたび原子力委員会の中に懇談会なり専門部会を設けましていろいろ御検討願って、そのたびに報告をちょうだいしておったわけでございますが、今回ようやくそれが実を結ぶ運びになったと、こういうふうな次第でございます。
#65
○藤原房雄君 今回のいきさつについてはいろいろお話がございましたが、これは当初労働省が――労働省の方いらっしゃいますね――今日までこの従業員については、所管といいますか、そういう形で来たわけでありますが、この十八年の間労働省としてもいろんな討議はなされたんだと思いますけれども、この件については今日までどういう討議をなさっていらっしゃったか、労働省の立場でこれの考え方をお伺いしたいと思うんです。
#66
○説明員(原敏治君) 労災保険は、一般の民間の労働者の災害補償を保険するという制度で、二十二年に労働基準法制定と同時に発足をいたしまして、労働者の補償の万全を期してきておったわけでありますが、補償の内容、水準の改善につきましては、その後数度の改善を重ねてまいりまして、現在では、ILOの条約の水準からさらに進みまして、ILOの勧告の水準まで到達をいたしまして、諸外国の制度と比較しまして遜色のない水準になってきているわけでございます。労災保険の性質上、労働者一般につきまして補償の水準はすべて差がなく均衡を持った形で補償する体系をとっておりまして、従来からそういう方式で進んできておりました関係から、原子力関係の従業員についてのみ手厚い形の規定については、規定をする方向での意見合意が得られなくて現在に至った次第でございます。
#67
○藤原房雄君 先ほど来もお話に出ておりますように、いままでの労災適用を超えるものという言葉があったわけでありますけれども、具体的にはこれを労災でいままでずっとやってきておったわけでありますけれども、超えるというと具体的にはどんなことが考えられるんでしょうか。
#68
○説明員(原敏治君) 労災保険は、発足当初から無過失損害賠償保険として発足いたしまして、しかも給付の迅速確実な実施ということを眼目にしておりました関係から、損害のてん補につきましては一定の制限を持っておったわけでございます。
 これを大きく分けてみますと二つの面から制限をしておったと言えると思います。その一つは、給付の対象となっております範囲から外れるものとして、苦痛とか悲しみのような精神上の、いわば慰謝料的な損害は除外されることになっておりまして、それからもう一つ、物的損害、財産的損害、こういうものは従業員の労働災害の面からの補償ということから対象外にされておったわけです。このような給付対象からはずしておった慰謝料というような面と物的損害の面の点から一般民事の損害賠償から見まして含まれていないという点の一つでございます。
 第二番目は、迅速な給付ということから、逸失利益を補償する上で、個別に具体的に算定するという方式をとらずに、一定の算定方法で特定された補償額が算出できる方式をとっております。このために、民法等で逸失利益を一〇〇%計算をして、具体的な逸失利益との関係で全額を補償さしていくというところから見ますと一部分しか補償されてない、こういう形になっておったわけです。これらの補償の範囲外になっておりました点につきましては、今回御審議いただいておりますこの原子力損害賠償法によって改正された場合にはてん補されるということになるわけでございます。
#69
○藤原房雄君 それから労災における放射線障害の認定基準、これを具体的に御説明いただきたいと思います。
#70
○説明員(原敏治君) 電離放射線障害にかかりました場合の業務上外の認定につきまして、具体的な認定の要件を定めたのが認定要件でございますが、電離放射線障害の関係の認定基準につきましては、以前、昭和三十八年に認定基準をつくっておったところでございますが、その後、医学の進歩等に基づきまして改定をする必要が出てまいりましたので、昭和五十年に専門家会議を開いていただきまして、その当時の最新の情報を収集し、それをまた評価していただきまして新しい認定基準をつくっていただいたわけでございます。その専門家会議の結論に従いまして五十一年の十一月に認定基準を定めて地方の機関に通達をいたしておるわけです。
 その中身の概略を申し上げますと、放射線障害を類型化いたしまして、それぞれの症状、障害に関係して業務上と認定される具体的な要件を定めているわけです。
 その障害の種類といたしましては、通達で挙げておりますのは、急性放射線障害関係では急性放射線症、それからもう一つございまして急性放射線皮膚障害というのがございます。それから慢性的な放射線障害といたしましては慢性放射線皮膚障害、それから放射線造血器障害、それから放射線による悪性新生物、がんのようなものでございます。それから白内障、白血病、これらの疾病が挙げられておりまして、急性のものから慢性のものにつきましてすべての放射線障害について迅速かつ公正な認定が行われるように基準を明確化しておるわけでございます。
#71
○藤原房雄君 原賠法の認定基準というのは一体どうなりますか。
#72
○政府委員(山野正登君) 原賠法はただいまの労災と違いまして、本来民事賠償制度について定めたものでございまして、あらかじめ損害の評価基準を決めておくという性格のものでもございませんし、また多種多様な損害の態様が考えられるわけでございますので、なかなか定型化した基準というものが定め得るものでもないといったふうな実情にあるわけでございます。しかしながら、実態としましては、今回法の改正の対象となっております従業員損害につきましては、労災保険給付を先行するというふうに今回法律で調整することにいたしておりますので、それによりまして実質的には身体的障害については労災の認定基準というものを参考にし得るというふうに考えておりますし、また物的損害、財産的損害についてはほかの分野の損害保険等の賠償事例もあるわけでございますので、そういったふうなものの算出根拠といったことも参考として活用し得ると考えております。
#73
○藤原房雄君 この懇談会の答申の中にも、「認定に関する問題」、「被ばく線量の記録の問題」とか「補償体系について」、こういう問題についていろいろ問題があるがということで、認定問題については労働省の通達、これによるというお話があるようでありますが、いまお話のように、これは起きてはならないことでありますけれども、実際こういう問題が起きたときにはこういう認定ということが非常に問題になるんで、労災そのほかこれありということのようでありますけれども、その時点で考えられた障害と、後になって問題が起きるということ等もございまして、いまお話のようなことで、後々トラブルが起きないのかどうか、その辺をちょっと危惧する面もあるんですが、そこで、民事ということになりますと示談とか裁判とかということで決着をつけるということになるのかもしれませんが、やっぱりこれは科学の発達といいますか、研究の成果によっていろんなことが進められるんだろうと思います。こういうことで、放射線に関します基礎的な研究とか、こういう問題についての、より人体に対する影響というものについての研究開発ということが非常に大事なことだろうと私は思うんです。
 現在まで原賠法を適用した人はいないということでありますが、しかし、いろんなトラブルはありながら原賠法の適用になる者がいないということは、ある程度示談なり何なりで話が進んだのか、被曝した人が一人もいないということではないんだろうと思います。まあ被曝線量が少なかったとか、いろんなことがあるのかもしれませんが、こういうことで、認定基準ということにつきましては、労災法とはこのたてまえが違うとは言いながら、今後の鋭意研究努力、そしてまた人体への影響に対するもっと綿密な検討というものが必要ではないかと私は思うんであります。
 次に、それからもう一つは被曝線量、この答申の中に、「被ばく線量の記録の問題」というのがございますが、これも「五十二年十一月科学技術庁が一元的な登録管理制度を発足させ」云々とございますが、これは長々申し上げるまでもなく、生物、これは濃縮の作用を持っておるということや、また年間とれたけの被曝をしたか――一時期とれだけの被曝をしたかということじゃなくて、やっぱり半減期等の長いものにつきましては年間を通じてどれだけかということで、科技庁でもそれに対してはいろいろ対策を講じて、被曝線量の中央登録、こういうことで手帳の交付とか所持とか、こういうことを義務づけるとか、こういうことをいろいろなさっているようでありますが、これは従業員の方に対しては比較的こういうことについてはきちっとなさっているんだろうと思いますけれども、下請の方々、そこでお仕事をなさってそこで受ける被曝量というのは、一日当たりは少なくても、やっぱりそれが年間通しましてどういうふうになるのか、その方の仕事に応じて、その現場での仕事によってどれだけの線量を受けたかという、こういうものがやっぱり一人一人きちっとチェックをされなければならない。何か事故があったときにどれだけ受けたかということだけでは見られない、総体的な総合的に見なきゃならぬということで、やっぱりこういうものはもっと厳格にしなきゃならないんじゃないか。いろいろそういう手だてはしているんですけれども、もう少し厳密にする必要があるんじゃないかという気がするんですが、どうでしょう。
#74
○政府委員(山野正登君) まず、一般の民事賠償制度のあり方につきましては、あくまでも因果関係を立証するというのが基本的な考えでございますので、先生御指摘のように、今後できるだけ賠償がスムーズに行い得るように、この因果関係の立証を容易にする努力をする必要があるということはまさに御指摘のとおりだと思うわけでございまして、先生がお触れになりましたように、低レベル放射線の人体に与える影響の研究といった、ふうなものも鋭意進めておるわけでございますが、これに加えまして、ただいまの被曝線量の記録の問題でございますが、低線量の放射線を長期にわたって被曝する可能性のある従業員につきましては、ふだんの健康管理に加えまして被曝線量等のデータの把握というのが重要でございますので、法令上これを義務づけております。
 それから下請の従業員につきましても、一貫して被曝線量の把握を可能にするために、五十二年の十一月に放射線従事者中央登録センターというのを発足させておるわけでございまして、いろいろと因果関係の立証を容易にする努力というのも私どもの立場としてもいろいろやっておるという実情でございます。
#75
○藤原房雄君 先ほどちょっと申し上げましたが、仕事に従事した方々、そしてまた下請等の、こちらでお仕事をしてまた別な方でという、そういう可能性のある方々についても厳密にやっておきませんと、後になってから――こういう民事的なことで事を運ぶというのは往々にしてトラブルの起きやすいことでありまして、そしてまたこの放射線による被害というのは、その時点で急性といいますか、多量に浴びたときはすぐあらわれるでしょうけれども、後になってからいろんなトラブルが起きやすい。そういうことでやっぱり強制といいますか強行といいますか、やっぱりきちっとした体制をつくることが大事じゃないかと思うんであります。
 それから、この原子力損害賠償責任の三条の原子炉の運転のことでありますが、ただし書きで、「損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたもの」云々とありますが、今日各発電所で、また再処理工場等におきましても、過日の委員会でいろんな審議がございましたように、いろいろトラブルが起きております。それは大きな事故には結びつかないといたしましても、事故が起きておるわけでありますが、それは材質がどうとか、機構上どうだとか、今回のスリーマイル島の事故につきましても、原子力そのものではなくて、逃がし弁の機構上のこと、ポンプの弁がどうだったということでありますが、そういうことで、事故はないにこしたことはありませんが、しかし、不測の事態が起きたときには、やっぱり万全の補償体制というものがあってしかるべきだと思います。こういうことで、原子力発電というのはまだまだ完全に成熟したとは言えないいろんな弱点を持っているような気がいたしますが、そういう点では、これからそういう面の研究開発やまた改善が進められていくんだろうと思いますけれども、この法律では「異常に巨大な」という言葉になっているんですけれども、設計上はいろいろ地震を中心としまして震度どのぐらいのものということが考えられてるんだと思いますけれども、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」ということは具体的にはどういうことを指しているのか、その辺御説明をいただきたいと思います。
#76
○政府委員(山野正登君) これは日本の歴史上余り例を見ないような大地震、大噴火あるいは大風水災等を指しておるというふうに考えておるわけでございまして、たとえて申しますと、関東大震災と申しますのは、巨大ではございますが、異常に巨大とは考えていないわけでございまして、こういったふうなものを相当程度上回るものというふうに考えております。
#77
○藤原房雄君 そういう、これが巨大であるとか異常に巨大かどうかというのは、だれが判断するのかという、これはまた、ただこの天変地変の問題云々だけではなくて、支払い能力との関係もあるのかもしれませんが、そこらあたりはどうなんですか。
#78
○政府委員(山野正登君) この判断の問題は、まあ社会的な通念、常識に当初従うわけでございますが、最終的には裁判によって決着がつけられる問題というふうに考えております。
#79
○藤原房雄君 このたびのアメリカにおきますスリーマイル島の事故の周辺環境に及ぼす状況等については、アメリカの原子力規制委員会等でこういうことであったという実態がほぼ発表になったようでありますが、今回のアメリカにおけるこういう事故等を勘案しまして、それは周辺に及ぼす影響が非常に少ないと、こういう形でのことが、私どもは新聞を見てすぐそういう面だけは目に映るわけでありますが、このたびの事故については、正式にわが国としても、状況の報告等周辺へ影響を及ぼすこういう問題についての公式の発表だと思いますけれども、科技庁としてもこの実態については、報告を受けてまたいろいろ検討なさっていらっしゃるのかどうか、それはどうでしょうか。
#80
○政府委員(牧村信之君) 今回のアメリカの事故におきます周辺環境への放射線の影響につきましては、アメリカの規制委員会等から各種の発表がございます。当初はいろいろな機関からそれぞれ異なったような情報も出ておりましたけれども、最近に至りまして、大体アメリカにおきましても、その影響する線量というのを各関係省庁がいろいろ連携をとりながら推定をしていくというような作業も進んでまいりました結果、比較的安定した現在の状況における推定値を最近出してきております。
 そこで、今回の事故におきましては、放射性の希ガスと沃素などが、主としてガス類が周辺の環境に放出されたわけでございます。この放射性希ガスあるいは沃素等は非常に半減期の短い放射性核種でございますが、その放射性物質の放出によります影響といたしまして、仮に原子力発電所の敷地境界の屋外に連続的に人がいた場合の個人の被曝線量は、三月二十八日から四月の七日までの累積で最大八十五ミリレム程度であろうというふうに推定しております。これは自然放射線による人間が受ける年間の被曝線量と同じ程度であります。したがいまして現在ICRP、国際放射線防護委員会が一般人の年間許容被曝線量は五百ミリレムという線量を言っておりますが、それの約五分の一以下であったということでございます。また、五十マイル以内に居住する住民の集団の被曝線量はどのくらいであったかという推定がなされておりまして、先ほど申し上げました三月二十八日から四月七日までに三千五百五十人レムと推定されております。これは一人平均当たり一・八ミリレムでございます。したがいまして、平均値といたしましては、日本人が自然の放射線を年間受けている約百ミリレムに比べますと相当少ない、五十分の一以下と推定されておるわけでございます。それから、地域住民の中に、その地方で生のミルクなどを飲んでおる方が中心の人々に約七百名の人々の全身カウンターによる検査が行われましたけれども、バックグラウンドを超える値は検出されなかったと言われております。
 大体以上のような測定の結果あるいは推定の結果になっておるところでございます。したがいまして、現在におきましては、NRCは、今回の事故で相当量の放射性希ガス等が周辺に拡散されたわけでございますけれども、周辺の公衆に障害を与えるようなものではなかったというふうに見込んでおる発表をいたしております。
#81
○藤原房雄君 第十八条に原子力損害賠償紛争審査会のことが出ておりますが、さっきの、民事的な労災法とは違う面で話を進めるということですから、調停ということであるんだろうと思いますが、具体的にはこれはお互いの和解の仲介を行うという条文になっておりますけれども、要するに訴えがあって初めてこれが機能することになって、そこで原子力損害の賠償に関して紛争が生じた、それを仲介するという役割りだろうと思うんですけれども、この審査会の体制といいますか陣容といいますか、どういう手順で、どういう体制のもとにこういうことが進められるのか。現在いままでこういうことをやったことがないというんですけれども、一応考えていらっしゃる現状を御報告いただきたいと思うんです。
#82
○政府委員(山野正登君) この十八条の紛争審査会の内容でございますが、この法律にうたわれておりますように、必要に応じて政令の定めるところによってこれを臨時に設置するということになっておるわけでございます。先生御指摘のように、絶えず起こる問題ではないわけでございますので、実際に原子力損害が発生した場合に政令をもって設置し、また政令をもって廃止するというふうに考えておるわけでございまして、この政令の内容につきましては私どもの部内におきまして現在検討中でございまして、この紛争審査会の組織でございますとか運営、あるいはいま御指摘の和解の仲介の申し立ての手続といったふうなことを盛り込むべくいろいろ検討しておるという段階でございます。
#83
○藤原房雄君 いろいろ検討しているということですから、具体的にはまだ問題がないし、また機能したこともないからなのかもしれませんけれども、あらあらの、どのくらいのメンバーで、どういう形でどうするかということについては御検討いただいているんだろうと思いますが。
#84
○政府委員(山野正登君) これはまだ部内検討の段階でございますので、余り細かく申し上げるのはいかがかと思いますが、現在検討しております政令案の内容は、まず、この審査会と申しますのは紛争の和解の仲介及びこれに必要な損害の調査、評価といったふうなことを行うわけでございますが、委員として十数名の者を置く。委員の互選によって委員長を定め、この委員の中には、これは国会の方でも御指摘をいただいておりますが、損害の調査及び評価を行うことのできる特別委員も含めるといったふうなことを考えております。これらの委員というのは科学技術庁長官の任命ということで考えておるわけでございまして、その庶務は原子力局が行うと、こういったふうなことを内容にした政令案というものを検討しておるところでございます。
#85
○藤原房雄君 そういう点をいろいろ検討なさっていることだと思いますけれども、いまお話を聞きましてわれわれわかりましたが、これはほかのものとのいろんな関連があるんだろうと思いますが、手を折ったとか足を折ったとかという外傷的なことについてはすぐその場でまた診察をし、また見ればわかることだと思うんですけれども、放射線の場合にはそれだけではない、どうしてもいろいろと紛争が後に尾を引くことの多いことが予想されますので、そういう形のものをきちっとしなきゃならないということで申し上げておるわけであります。
 それから、原子力発電所はどうしても都心というより人里離れたところにある、当然のことでありますけれども。こういうことから、こういう事故が起きたときの医療体制、またその事故に対処する体制、これはそこに携わる従業員の場合ですとそれなりの体制があるのかもしれません。これは過日来当委員会におきましても、本案審議の中で避難体制とか医療体制とか、防災体制の中の一環として強調されてきたことでありますが、そういう専門的な方々がいらっしゃる――従業員の方ですとある限られた人かもしれませんけれども、住民ということになりますと相当な対応が必要になってくるわけでありまして、そういうことについては過日の委員会でもいろいろ質疑があり、御答弁もあったわけでありますが、いまさらこういう原賠法ということを考え合わせますと、いままでこの法の適用がなかったということで安易に考えておられない現状、スリーマイル島の事故のようなことが勃発したということから、非常に住民の不安感がつのっておるわけでありまして、こういうことから、こういう緊急の医療体制とか、従業員はもちろんのこと、周辺住民に対してもやっぱりこういう体制の確立というものは急がれるだろうと思いますし、また不幸にしてこういう事故があったときには、やっぱりそれに緊急に対応のできるようなことが大事だろうと思います。そういうことで、防災体制の一日も早い検討が急がれるだろうと思うんです。これはこの前いろいろ御質疑ありましたんでありますか、要望として申し上げておきたいと思います。
 ほかの外傷と違うことから、そして人体に及ぼす影響というのは個人差がありますので、医学的にはそれほどでもないという見方かもしれませんが、その人の体質上非常に敏感といいますか、医学的にはこうだと言っても、必ずしもそうだと言い切れるかどうか。こういう医学的な問題がかかわりますと、公害問題等におきましてもいろいろ紛争が長引くということが非常に多いわけでありまして、そういうことから、相当な専門的な方々が中に入って、そしてこういういまお話のございました審査会等においても、厳正公平にこういうものを進めなきゃならないということを私は申し上げたかったわけでございまして、要望として申し上げておきます。
 それから、今回の法律の改正の中には賠償措置額の引き上げがあるわけでありますが、当初これは五十億、六十億、今度は百億にということで、六十億から百億というのは相当なインフレ、オイルショック等を踏まえての引き上げだろうと思います。当初これを定められたときにはどういう基準で定められたのか。私どももいままでですと、六十億、百億という数字を見ますと、それはそれなりのことがあったんであります、評価といいますか。しかし、今日アメリカにおけるスリーマイル島の事故等、こういうことを考えますと、環境には大きな影響はなかったと、そういう結果としてはまことに結構な話ですけれども、起きてはならないことではありますけれども、しかしながら、そこから引き出されていろんな総点検をいたしまして、一歩手前といいますか、非常に心胆寒からしめるようないろんな問題が起き、ボルトが欠損しておったとか、調べましたらいろんなことがあったという、それは大きな事故には結びつかなかったかもしれませんけれども、確かにそういう可能性は秘めておったというような事例が何度かありました。こういうことから、六十億から百億に引き上げというのはそれなりのことは言えますけれども、現時点で考えてみますと、この百億という金額が、非営に過密化しております日本の国でもし事故が起きたときに、十分に一般住民の方々、周辺の方々に対しての措置がとれるかどうか。当初これを定めたときはどういう考え方から始まったのかということを素朴に感ぜざるを得ないんでありますけれども、三十七年ですか、この法律ができるときに当初考えておりましたことから、今日のこういう時点で考えまして百億というのは妥当であるかどうか、ここらあたりのことをちょっと御説明いただきたいと思うんです。
#86
○政府委員(山野正登君) この原賠法を制定いたしました当時、賠償措置額の水準というのは、これは当時におきます諸外国の立法例というものを参考にしながら、あわせて民間の責任保険の引き受け能力、これは国内損保会社の消化能力と外国保険会社への再保険の可能額といったふうなものから決まるわけでございますが、こういったふうなものに基づきまして五十億円という補償措置額を決めたようでございます。その後、物価の値上がりでございますとか、あるいは民間の責任保険の引き受け能力といったふうなものを総合的に勘案しまして、四十六年にこれを六十億円にいたしておるわけでございますが、今回百億円という数字を出しましたのは、これは前回の改正時は昭和四十六年でございますか、それから現在までの消費者物価の値上がりというものを見ますと二倍強の値上がりになっておるわけでございますから、それだけで単純に考えますと六十億円の二倍で百二十億円というところか物価水準からいきますと妥当なところということになる面もあるわけでございますが、一方、保険会社の引き受け能力ということを考えてみますと、これは石油危機以降、ドルとかポンドといった外貨の価値が下落しまして、海外の再保険、これは円建てで行うわけでございますが、この外国の再保険の引き受け能力というのが相対的に低下をいたしております。原子力委員会の中の専門部会でこの点につきましても慎重に御検討を願ったわけでございますが、わが国の保険プールの考え方からしまして、現時点におきましては、海外への再保険ということを頭に置いた場合にせいぜい百億円というのが精いっぱいの限度であるといったふうな事情もございましたので、先ほどの物価の問題等をあわせ考えまして賠償措置額を今回百億円にしたというわけでございます。
 で、この賠償措置額と申しますのは、あくまでも原子力事業者が賠償を行います際に、これを確実、容易にするための措置、これが賠償措置でございまして、これ以上のものは賠償の責めに任じないというわけではないわけでございまして、あくまでも無制限の賠償責任というのを原子力事業者は持っておるわけでございますから、今回賠償措置額を百億円と定めましたけれども、しかし、百億円を超える損害につきましても当然のことながら原子力事業者というのは賠償責任を持っておるということでございますから、これによって被災者の保護に欠けることはないというふうに考えております。
#87
○藤原房雄君 いま諸外国の例を引かれてお話もございましたのですが、西ドイツですか、外国の例を見ますと、これは単純には比較できませんから、こういうことだけでどっちがいいとか悪いとかと言うわけにはいかないのかもしれませんが、時間もありませんからあれですが、日本の国の制度と――外国にもそれぞれの制度かつくられておるわけてすけれども――比較をいたしまして、日本のものと諸外国のものとの比較の上で、まあ確かにそう劣っておるとは私ども思いませんけれども、物によっては日本の方が有利に見ているということもあるし、それぞれあるだろうと思いますけれども、これは科技庁では諸外国のものと比較してどういう認識をしていらしゃるか、ちょっとその辺。
#88
○政府委員(山野正登君) 欧米諸国の原子力損害賠償制度と比較して基本的な三、四点について見ますと、まず、無過失責任という原則につきましては、米、英、仏、独、いずれもわが国と同じように無過失責任という原則によっております。それから原子力事業者への賠償責任の集中という原則でございますが、これにつきましても英、仏、独がわが国と同じように賠償責任の原子力事業者への集中ということをやっておりますし、米国におきましても、これは経済的に原子力事業者に集中するという制度になっておりまして、実質的にはわが国とほぼ同様と考えてよろしいかと思います。それから賠償責任の制限でございますが、これにつきましてはわが国は非常に特徴を持っておりまして、米、英、仏、独ともいずれも賠償責任の制限がございます。つまり青天井でないわけでございますが、わが国の場合は先ほど申し上げましたように賠償責任の制限はないということでございます。それから今回改正の中に盛り込んでおります従業員の損害の扱いでございますが、米国、ドイツ、これは除外をいたしております。一方、イギリス等はこれを対象といたしております。
 ざっと見まして諸外国との比較はそのような状況でございます。
#89
○藤原房雄君 いろいろ何点かについてお聞きいたしましたが、時間も来たようでございます。いずれにしましても原子力関係につきましては、事故が起きるとそのときだけではなくて後々にその人命にかかわる、そしてまた子孫末代にかかわるという放射能の恐ろしさといいますか、そういうものがあって私ども厳しく見ているわけでありますし、また国民も非常に厳しい眼で見ているわけでありまして、事故は絶対起こしてはならない、こういうことで安全ということに対しての手を緩めてはなりませんし、一日一日技術革新がなされていかねばならないということを前提として、万が一のときに対しましても、まあこれからまた建設途上のものもございまして、大きく原子力発電問題、いろんな意見が沸騰するでありましょう。そういう中で原子力発電所は稼働するわけであります。地域住民に対しての不安を除去するという上から万全の体制でなければならないだろう、こういうふうに思うわけでありますが、最後にひとつ大臣から一言御所見をお伺いして終わりたいと思います。
#90
○国務大臣(金子岩三君) 御指摘の点まことにもっともなことでございまして、今後もひとつ大いに安全性を確立するとともに、この賠償措置につきましても大いに検討を続けて万遺憾なきを期したいと考えております。
#91
○佐藤昭夫君 まず初めに法案の関係で若干お尋ねをいたしたいと思いますが、いまし方の藤原委員の質問でもありました、いずれにしても、今回の法改正で原子力事業の従業員の業務上原子力災害を受けた、その場合の補償の適用の範囲を広げるという、この点については従来よりも一歩前進であるというふうに評価をしておりますが、国民の立場から大切な問題は、補償の内容が真に改善にふさわしい補償の内容になるかどうかという問題と、それから実際に補償をめぐっての紛争が起きました場合に、その他の各種いろんな公害裁判、公害の紛争でも同様でありますが、因果関係の立証の困難さというような問題が多くいろいろ議論になっている点だと思うんです。
 そこで、先ほどの藤原委員の質問にもありました、今回の法の第十八条に基づいて原子力損害賠償紛争審査会というものを政令によって設置をしていくんだということでありますが、この審査会の内容について、多少さっき御説明がありましたけれども、さらにお尋ねをしたいと思いますのは、この審査会が本当に被害を受けた者の利益を守る立場で正しく機能し得るような組織を考えておられるかどうかという点で、使用者と被使用者、労使といいますか、対等の構成でこの審査会をつくるということでなくちゃならぬと思いますけれども、その点についてはまだこれからつくる問題ではありますけれども、原則的にどういう考え方でおられますか。
#92
○政府委員(山野正登君) この紛争審査会につきましては、法定されておるようなきわめて専門的な問題も扱うわけでございますので、そのような専門的知識を持った学識経験者であり、またできるだけ公平な方に委員になっていただくというのが大原則であろうかと思います。で、具体的な組織なり選考の方式あるいは任命、これは先ほどちょっと触れましたが、そういったふうなことにつきましては、今後、私ども部内で現在政令案の検討を進めておりますので、その中で決めてまいりたいというふうに考えております。
#93
○佐藤昭夫君 いや、それは先ほども専門の学識経験者を特別委員という形で含めた審査会を考えておるんだというお話はありましたけれども、使用者と被使用者との関係という点で見ればどういう組織原則でいくのか、その点をお尋ねしておりますので。
#94
○政府委員(山野正登君) ただいま直ちに労使といったふうな考え方で、双方から一名ずっとかいったふうなことを具体的にまだ考えているわけではございませんで、先ほども申し上げましたように、全体としまして専門的にもバランスのとれた、また人材的にも公平な方というのがこの選考の基準になろうかと思いますし、また必要に応じていろいろな職域の方々というのもあるいは選考の過程で必要な考慮の条件になるかもしれません。その辺は今後決めるべき問題であると考えております。
#95
○佐藤昭夫君 繰り返し申すようでありますけれども、学識経験者を含めて構成をするというのはこれは当然のこととしながら、御存じと思いますけれども、この種放射線を扱う事業に携わっておる働く労働者の皆さん方の労働組合の連絡会なんかもあるわけですね。で、いろいろ実際のそういう労働を通しての体験を交流をしながら、かなりすでに年月をかけていろんな研究会をやったり、シンポジウムのようなものをやったり、それなりのそういう研究なんかも積み上げておるという実情もあるわけでありますし、ぜひそこらの経験交流に基づく本当に正しい補償のあり方はどうすべきかというような問題についての意見が反映できるような、そういう見地から、もし何がしかの労使の代表を含む審査会を組織的に構成していくという場合には、それは対等に扱うということでぜひ考えてもらう必要があると思いますけれども、重ねてお尋ねしたいと思います。
#96
○政府委員(山野正登君) 現在考えておりますこの紛争審査会の構成と申しますのは、たとえば法律とか原子力工学、放射線医学あるいは保険、損害の評価、労働災害、そういったいろいろな分野についての学識経験者、専門家、しかも先ほど来申し上げておりますように公平な方といったふうな方を選定しようというのが私どもの頭の中にある構想でございまして、使用者代表とかあるいは労働者代表といったふうな形での選考といったふうなことにはならない、先ほど申し上げたような専門の分野の方々が結果的に各職域から出られた方というふうになることは、これはあり得ると思いますけれども、選考する考え方としまして、先生が御指摘のように、労働界代表、使用者代表といったふうなことにはならないんじゃないかと考えております。
#97
○佐藤昭夫君 そういうことであれば、しからばお尋ねするわけですけれども、そういう学識専門家をこの審査会の委員として委嘱をするという場合に、どういう専門家にお願いをするかというその人選に当たっては、一定程度さっき申しております労働組合の意見も聞くということをぜひ考慮に入れてもらいたいというふうに思いますが、どうですか。
#98
○政府委員(山野正登君) これは非常に重要な問題でもございますので、これは科学技術庁の付属機関として置くわけでございますが、当然原子力開発利用の重要事項として原子力委員会等の意見も徴して進めるといったふうなことになろうと思いますし、この原子力委員会というのは、先生御承知のように、国会の御承認を得て任命された委員で構成されておるわけでございますから、きわめて民主的な方向で選考されるというふうなことにもなると思います。また、私ども具体的に行政府として委員等を選考する場に臨みましては各界の御意見というのは謙虚にお聞きしまして、できるだけ配慮しながら進めていく、このように考えております。
#99
○佐藤昭夫君 各界の御意見を謙虚に聞くということでありますから、ぜひひとつそういう精神で、原子力委員会の責任者は長官でありますから、ぜひ民主的な人選に努めていただきたいというふうに思います。
 それから、この政令はいつ公布するんですか。この法案が公布をされてもう直ちに政令に基づいての審査会が設置できるということで準備は進んでおりますか。
#100
○政府委員(山野正登君) 先ほど申し上げましたように、ただいまは科学技術庁の内部で検討しておるさなかでございますが、私どもとしましては、現在の改正法案が成立しました暁には、至急に関係省庁とも意見の調整を図って政令案を固めていきたい、こういうふうに考えております。
#101
○佐藤昭夫君 冒頭の森下委員の公開シンポジウムの問題が出ていましたけれども、昨年の原子力基本法改正に当たって、今後国民的合意のもとに原子力行政を進めるという立場から、法案説明の段階では繰り返し政府側からは公開ヒヤリングを積極的にやっていくんですということを言われながら、しかし実際にそれが実施に移されていくのには相当の計画期間が、空白ができているという形が現に起こっているわけですね。もちろんこの審査会の事案になるようなそういう損害賠償紛争というのが頻発をするということは極力避けなければいけないわけですけれども、いつ何どきそういう事案が発生をしないとは限らないということで、この法が成立をすればできるだけ速やかに、万が一という場合に備えて政令とそれに基づく審査会設置、これが速やかにできるように万全の準備をしてもらうということをぜひやってもらう必要があると思いますか、よろしいですね。――
 それからもう一つは、さてそういうことで、審査会でいろいろ紛争になる、そこでどうしても意見の一致に達しない場合には裁判までいくというケースもあり得るかと思うんです。ところが実際に被害を受けた者というのは、因果関係を立証するという点で働く労働者として専門的知識にも乏しい、そういう点で、因果関係の立証責任を請求者側にだけ求められるということになった場合には、紛争の解決というのは困難が大いに予想されると思うんです。そうした場合に、政府としては、単に、もう審査会なり裁判なり、そういうところへ問題が移ったんだから私どもは第三者でございますという立場ではなくて、本人の過失には帰せられない原因によって、原子力事業に従事をしたがために一定の損害をこうむったというこの人たちの立証について、できる限りの協力援助をしていくということで対処をしていただく必要があるだろうというふうに私は思うんですけれども、ここの政府としての基本的な立場はどうでしょうか。
#102
○政府委員(山野正登君) もともと原子力損害賠償というのは民事上の問題でございますので、先生がただいま指摘されましたように、最終的には裁判に持ち込める問題というふうなことでもございますので、行政府として因果関係の立証ということに深く本来立ち入るべき問題ではないとは考えておりますけれども、しかし、一方、因果関係の立証を容易にするための努力ということについては、政府も単なる傍観者というわけではなくて、容易にするためのできるだけの援助をするような努力をすべきであるという点については、私どもも全く同感でございまして、先ほど出ました紛争審査会もこの一助でございますが、それに加えまして放射線障害、特に低線量の放射線による人体への影響というのは非常に因果関係の立証は困難な問題があるわけでございますが、そういったふうなものにつきましても、ふだんの健康管理であるとか、あるいは被曝線量のデータの把握といったふうなことに努めまして、従業員、下請従業員を問わず、認定と申しますか、立証が容易になるように私どももいろいろデータをそろえる、また、放医研等における研究の成果というのも公開しまして、この研究の成果も因果関係の解明に役立たせるといったふうな努力をしなければならぬというふうに考えております。
#103
○佐藤昭夫君 ぜひひとついま御答弁をいただいたようなそういう立場で、いわば弱者救済という立場で積極方向で対処をしてもらうということでお願いをいたしたいと思います。
 そこで、もしも事故が起こり被害をこうむった場合の救済をどうしていくかというのが今度の法案の問題でありますけれども、何といっても望ましいことは、身体被曝を伴うようなそういう事故が起きない、そのための万全の措置を講じていくということが、これがもう言うまでもないことですけれども、お互いに望んでおることであるのは間違いないと思います。
 そこで、いままでの委員会でも何回か話は出ておりますが、もう一回この機会にお尋ねをいたしたいと思いますが、会社の従業員――正規の従業員であるか、下請あるいは出向の職員であるかを問わず、そういう働く人たちの人身被曝をいわば根絶をするといいますか、絶対にそういうことが起こらないように万全の方策をどう立てていくかということで、原子力発電所、それから動燃再処理工場、この二つを例にいたしまして、どういう方策をさらに今後とも強化をしていこうというふうに考えておられるか、少し項目的に、こういうことが方策として考えられるということを述べていただけませんか。
#104
○政府委員(児玉勝臣君) 放射線従事者に対する被曝低減の問題でございますが、これにつきましては法律でもうすでに定められております。すなわち、原子炉等規制法第三十五条、これに基づきます実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規制の第九条によりまして、「被ばく放射線量等に関する措置」というのが定められておりまして、設置者はこれこれの数値以下に従事者を被曝の条件に置かなければならないというふうに決められております。そういうことで設置者に対しての義務は決められておりますし、さらに国といたしましても、それの運用について適切なアドバイス、または命令というのは、原子炉等規制法第三十六条においてその設置者に対して命令を出すことができることになっております。そういう法律の仕組みにはなっておりますが、実際この被曝の問題については、先生も御存じのとおり、実用可能な限り低くするといういわゆるALAPの精神が生かされていかなければならない、こう考えております。そういうことで、従来の被曝の問題にさらにそういう努力をどのようにするかということになろうかと思います。
 それには一つは保修作業の自動化、それから円滑化ということで、なるべく作業員がその保修する対象の機器の放射線から防護されるようにしなければならない、こう考えられます。また、運転中の機器の点検の場合にも、たとえばロボットを使うとかいうようなことでの作業をすることによって被曝の線量を少なくするということが考えられると思います。それから機器の配置、それから遮蔽の見直しというものがやはり考えられます。これも新設の場合には設計書どおりつけるわけでございますが、実際に運転してみますと、その機器のいわゆる分解点検というものが非常にしにくいとか、そのために点検の時間が長く、さらにそれが被曝の時間を長くするというふうなこともございますので、そういうような機器の配置の改善、それから遮蔽の増強というようなことも考えられるわけでございます。
 それから最も最近いま考えられておりますのは、時間がたつにつれまして、やはり原子炉の給水中の腐食性生成物というものが多くなってまいります。おもに水あかとかさびというようなかっこうでその給水の中に入ってまいりますので、その原子炉給水中のそういう腐食生成物をいかに少なくするかということで、いろいろなフィルターというような工夫をしております。そういうことで、最近の発電所におきましては、従来、作業の時間数とともに被曝が多くなるというような点もございましたけれども、こういうような工夫によりまして一人当たりの被曝線量というのもそう大きな増加がなく進んでおるという現状であろうかと思います。
 それで、今後とも施設及び作業の標準化等も含めまして、なお一層の改善の推進ということでまいりたいと思っておりますが、そういう意味では軽水炉の改良標準化調査というのも第二次目といいますか、第一回目の研究報告は出ましたんですが、それはコンテナの中の問題について一応の報告を出しておりますので、あとはそのコンテナ以外のところの作業のしやすさとか、被曝の軽減化ということにかんがみまして、第二次の作業がただいま進行中でございます。それによってさらに一層被曝の軽減を図っていきたいと、こう考えております。
#105
○政府委員(牧村信之君) 再処理施設におきます個人被曝の管理について申し上げますが、当然放射線を扱う施設でございますので、放射線の管理区域に立ち入る、特に機器の修理等でセル内に入って作業をするというような場合に、再処理施設で働いておる従業員の方がある程度の被曝を受けるということはやむを得ない実情にあることではございますけれども、動燃事業団におきましては下請の従事者も含めまして、すべて従事者が仕事を始める前に、それまでにその方々が受けた被曝歴を必ずチェックすること、それから、就業する前に健康診断書を提出されて、健康な者であるということを確認した上で放射線下の作業をするたてまえをとっております。また、外部被曝線量の測定器といたしましては所要の測定器、具体的には熱螢光線量計を用いておりますが、そのほか異常な放射線の被曝を受けないようにアラームメーター、それから補助的な線量計といたしましてポケット線量計もあわせて使用しておるところでございます。また、何らかの原因で内部被曝を受ける可能性もあるわけでございますので、全身カウンターによりまして従事者がそのような仕事をする前に、また、した後、定期的に内部被曝の有無をチェックしておるところでございます。また、そのような作業を行うに当たりましてはできるだけ被曝の線量を低くする必要がございますので、法律による許容線量被曝を下回る管理基準を定めましてその管理をしてまいるというふうなことによりまして、従業者の被曝の低減化を図っておるところでございます。
 なお、再処理施設は現在試運転を中断しておりますけれども、試験運転を行っておりました五十三年の時期、これは年間ではございませんけれども、約七百人の方が働いておりますが、一人当たりの平均被曝の線量は〇・〇三四レムという数字が出ております。これがこれからどういうふうな推移を示していくかは、今後の被曝管理を十分行うことによってできるだけこういう低い線量でおさめるように努力をすべき事柄と考えておるところでございます。
#106
○佐藤昭夫君 すでにいろいろと講じておる方策、またこれから一層改善、工夫をしていこうという方向ということで幾つかの方策をそれぞれお述べいただいたわけでありますけれども、しかし、私が問題にいたしたいと思いますのは、児玉審議官の先ほどの答弁によりますと、いわゆるこのALAPの考え方といいますか、これこれの被曝線量の数値以下にするという考え方、あるいは牧村局長の表現によりますと、ある程度の被曝はやむを得ないという言い方をされておりますけれども、どうなんでしょうか、これから改良改善を目指していく方向というのはゼロを目指していくと、働く人たちの人身被曝はゼロが望ましい、ゼロへの到達を目指していろんな改善をひとつやっていこうというこのことなのか、いや一定程度の、ある程度のことはもうやむを得ぬのだと、ゼロというようなことは考えません、それは到達目標ではありませんという考え方なのか、その点はっきりしてほしいと思うんですが、どうですか。
#107
○政府委員(児玉勝臣君) 先生のおっしゃるとおり、理想的にはゼロにしたいとは思っております。しかしながら、実際上放射線のあるもとでやはり作業をするということでは、とてもゼロにするということは現実には非常に不可能だと思います。したがいまして、できるだけということのいまのところの改善対策といいますか、私たちが考えております軽水炉の改良標準化の目標といたしましては、現状の被曝線量を半分にするということを目標にしてやっております。
#108
○佐藤昭夫君 安全局長の方、どうですか。
#109
○政府委員(牧村信之君) 再処理の作業の特殊性から、通常のセル外にいて作業をするような通常作業の場合には、これは、先生おっしゃるように、ゼロに近づけるように努力できると思うんでございますが、機器の故障等によりましてセル内に入りましてその機器を除染したりあるいは修理したりする作業が当然あるわけでございます。そういう方々をゼロにするということはきわめてむずかしいと思いますので、今後の問題点としては、先ほど通産省が述べたと同じように、操作しやすい機器、遠隔的に操作しやすい機器が可能であれば一番望ましい。また、作業するに当たりましては、できるだけ被曝を受けないような合理的な遮蔽構造物をあらかじめつくってそれから作業をする、あるいは一人当たりの線量をできるだけ少なくするために、ある時間を区切る、あるいは作業をするに当たりまして事前にモックアップで試験をして、それによって合理的に作業をするような訓練をまずしてから作業をするというようなことで低減化を図っていくというのが、現状における低減化の合理的な線ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
#110
○佐藤昭夫君 理想とすればゼロを目指すという表現をされているんですけれども、しかし、実際にこの現状を見ますと、私もこの委員会でいつの日でしたか取り上げましたけれども、たとえば除染作業をやっている、その仕事をしている方が頭のところに帽子もかぶってなかったという例やら、それからマスクもしていないために鼻の穴から吸い込んだという、こういう例というのがかなり多く発生をしているわけですね。ここらの問題は別に大変な技術的蓄積が要る、研究が要るという問題でもない。それから原子力施設の経済性を破壊をしてしまうような大変な出費を必要とするという問題でもない。本当に人命を大切にするという思想に立てば、もっといろいろやれることがあるはずじゃないかというふうに思うんですけれども、そういう点については監督官庁として極力指導をする方向をとっているんですか。
#111
○政府委員(児玉勝臣君) 先生おっしゃいますように、確かに設備の改善だけを私申し上げましたけれども、実際上従事者のいわゆる教育ということ自身考えなければいけませんし、これは自分自身を守ることでもございますので、それを徹底しなきゃいかぬ、どうも息苦しいのでマスクを取ってしまうというようなこともあろうかと思いますけれども、そういうことのないようにしなければいけませんし、それからまた、管理区域へのいわゆる出入管理、それから退室時の放射線量の測定、それから、放射線に対する教育訓線、それから被曝管理台帳の整備とか、そういうような、まず放射線下において作業する基礎的ないわゆる条件といいますか、そういう基礎となる環境をきちっとつくるということが非常に大事なことでありますし、その上に立っていろいろな設備の改善ということがあろうかと思います。そういう意味で、今後ともそういうところでの従事者に対する指導と、それから管理を徹底してさしていきたいと、こう思っております。
#112
○佐藤昭夫君 そこで話を進めますけれども、まくら言葉として、理想としてという、ゼロが望ましいというそのまくら言葉がつくかどうかというこれ自体も問題でありますけれども、しかし、一気に行かないにしても、極力ゼロを到達目標にしていろんな努力をやっていくんだというこの方向については、これはもう通産省も科技庁も否定なさらないところでありますけれども、そうした点で、これまたかつての質問の際に、長官も御確認になったと思いますけれども、マイナーなトラブルであっても、やはりそれはきちっと報告もとり、またこの公表もするというこのことか本当にあらゆる方策を尽くして人身被曝を伴うような、そういう事件をなくしていこうという上で大切なことにつながっていくんだという確認を当局も今日までになさってきたというふうに思うんです。
 そこで、前回お尋ねをした際に少し中途半端に終わってしまったので、再度お尋ねをしておくわけですけれども、現在、発電炉の場合は通産省、それから研究炉や再処理工場の場合には総理府でいくという、まあ科技庁というところの規則になっていますけれども、この規則に基づいて事故、トラブルの報告義務をおおよそ五つほどの指標によって報告義務を定めているということでありますけれども、この定め方が依然として許容量を超えたものについてということになっているわけです。で、私思うんですけれども、本当に人命を大切にするという見地に立つならば、受けた被害が大きいか小さいか、それにかかわりなく、どんなささいなものでもきちっと報告をさせる、また、それを公表をしてお互いに戒め合っていくというこの行政上のルールをぜひとも確立をする必要があるんじゃないかというふうに思うんですが、この点についてどうですか。
#113
○政府委員(児玉勝臣君) 被曝に対する報告に関してでございますが、この報告に関しましては、通産省といたしましては、原子炉等規制法に基づく実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の二十四条に基づきまして、設置者から三カ月ごとに、また一年ごとの被曝線量を従事者数について報告することでとっております。これは全被曝の従業員のいわゆる数としてとっているわけでございまして、それから二十四条の第二項におきまして、許容被曝線量を超えるかまたはそのおそれのある被曝があったとき、そういうときに、それはこの都度報告をとるということになっております。
 それで先生おっしゃるように、この定期報告によってとっておるものをもう少し詳しくとったらどうか、こういう御趣旨ではないかと思いますが、現在とっております三カ月ごとの様式は、確かにわれわれが内容を分析するにしては非常に完全だとは思っておりませんので、そういう三カ月ごとにとりましたときには、その内容について会社からヒヤリングいたしております。それを若干砕いた形で一つの表にしておりますので、そういうことで内容の分析をしておる次第でございます。
#114
○佐藤昭夫君 これが法律の場合には国会の承認を得るという手続が必要ですけれども、規則でありますから、監督官庁といいますか、通産省なりあるいは科学技術庁、ここが一定の報告義務の決め方については、変えようと思えば変えられる問題ですね。
#115
○政府委員(児玉勝臣君) 先生おっしゃるとおり、確かにこれは通商産業大臣の責任においてつくれる規則でございますので、そういう意味では……、しかし、科学技術庁にも関連もございますので、そういう関連の省庁と相談いたしまして、とった情報が十分に活用できるようなかっこうでいずれ改善したい、こう思っている次第でございます。
#116
○佐藤昭夫君 科技庁の方はどうですか。
#117
○政府委員(牧村信之君) 従業者に対しましての被曝状況の把握につきましては、科学技術庁も通産省と同様な方式をとっておるわけでございますが、先生すでに御存じのように、一年または三カ月ごとにとっておるわけでございます。私どもの方も通産省と同様の報告を、従来もしておりましたが、これからもしていくつもりでございます。ただ、従業員の個々の被曝の記録を私どもが握るのは果たしてどれだけの意味があるかどうか、これは問題がある。むしろ、事故等によって被曝を受けた者がいるということについては、これは事故等の原因によってそれを減らす究明もできるわけでございますので、その努力は当然行政庁として、規制を担当する者としてやらなければいけない問題だと思います。したがいまして、現在の制度といたしましては、設置者が従業員の個々の被曝の記録を常に持っていなければいけないことを義務づけておるわけでございます。これはその職をかわるときにはその従業者にその記録を渡さなければならないことになっております。渡すと申しますのは、一応その記録――この期間この施設に働いたらこれくらいの被曝をあなたはしているよということを渡さなければいけないことにしております。そういうようなことで、従業者がいろいろ渡り歩きましても、その従業者個人がどのくらい自分が被曝しておるかということは法律的にはわかるシステムになっておるわけでございますけれども、特に下請の方々などにおきましてはその管理がずさんになるおそれがあるというようなことで、実は放射線従事者中央登録センターというものを官民の協力によりましてつくりまして、発電所の従業者のみならず、下請の従業者も含めまして統一的に全国的に登録制度をつくった次第でございます。これによりまして、たとえばAという会社か放射線下の作業のために、ある従事者を雇おうとするときに、新しい方であれば必ずこの中央登録センターに問い合わせまして、この方の前歴上どのくらい被曝をしているかということを確かめた上で、その確認のもとに作業をさせる、また、その作業が終わった後はそこの登録センターにその者の被曝はこの期間幾らぐらいであったかということを報告させるようなシステムをつくっております。この登録センターの事業は本年度から順調に稼働しております。したがいまして、個々の従事者の方々がどのくらい受けたかという記録は今後一元的に管理できるようになりましたので、先生の御疑問のような多数の従業者の方の個々の記録かこの登録センターにおいて十分把握できるような体制がとれたわけでございます。
 しかしながら、私どもの今後の努力としては、この登録センターに集められておりますのは、規制法で規制されておる事業者並びにその事業者に参画しておる下請の企業の方々でございますので、私どもとしては、RI事業者等にこの登録センターを広げていくという努力を今後いたしたいと思っておりますが、そういうことによりまして当面私どもは個人の従業者の被曝状況を十分把握できる状態になり得たというふうに考えておるところでございます。
#118
○佐藤昭夫君 いま御説明なさってますように、個々の労働者の被曝の度合いについては、これは会社が記録をとって、それを登録センターに保管をするということで、その労働者がいろいろ職場を変わっていく場合に、その被曝の蓄積がどういうふうに一体推移をしていくか、それがアプローチできるような、そういう体制はとれているということで、それはそれで大事なことだと思うんです。しかし、それと同時に、何も私は電力会社をやっつける意味でこのことを言っているんじゃないんです、本当に目指すべき方向としては、人体被曝、人身への被曝のゼロを目指していくという立場から、どうやってあらゆる手段を講じて技術的な改良、また、いろんな仕事の上での改良、これを加えていくかという意味で、言うなら毎月、月ごとにだんだんそれが改善の方向へ全体として進んでいるかどうかということを監督官庁としても把握できるだろうし、また、国民の側からもそういう点でその問題について目を向けていくことができる、そういう全体の、会社、監督官庁、国民のトータルのいろんな知恵と力で本当に人命を尊重するという見地からゼロを目指していく、それに向けてのいろんな改善をどうやって方策を尽くしていくか、こういう意味で、どんなささいなものでも報告の義務づけをする。このことは会社をやっつける意味ではなくて、技術の改良を目指していくという、こういう点で大切なことなんじゃないかということで私は一貫して言うておるつもりなんです。
 さっきの御報告でマイナーなものは三カ月ごとにまとめて報告をとり、多少内容的には、ときにはいろいろ突っ込んでヒヤリングなんかもやっているという御説明であります。先ほどの御答弁でも、現在の報告義務に関する規則というのは、政府として判断をすれば多少いろいろ手は入れられるわけです、国会の承認行為という複雑な手続が要るという問題ではありませんから、ぜひそういう点で、現在の報告義務を定めておるこの定め方の内容について、さらに少し改善すべき点がないかと。私の意見としては、どんなマイナーなものでも人身に被曝を受けたというものは全部報告をさせるということにするのが、技術の改良を目指すという点でそれが有効に働くんじゃないだろうかということで申し上げておりますので、ぜひ長官、主務大臣としてお出まし願っておるわけでありますが、通産、科技庁、双方にかかわる問題でもありますけれども、ひとつ音頭を取ってぜひそういう方向の検討をやっていただきたいというふうに思いますが、長官どうでしょうか。
#119
○国務大臣(金子岩三君) 御指摘の点は全く同感でございます。被曝ゼロを理想とし、目安として、これから数十年の間研究が、つまり科学技術の進歩によってあるいはその被曝ゼロを目指すことも可能である、このように考えております。したがって、御指摘のとおり、大いにこの問題はひとつ国民に本当に原子力行政を信頼してもらうために御指摘の点を十分踏まえて検討を続けていきたいと思います。
#120
○佐藤昭夫君 あと十分余り残っておりますので、もう一回スリーマイルアイランドの事故にかかわっての最近の動きの問題で少しお尋ねをしておきますが、一つは、まず新聞報道の内容を確かめるという意味でお尋ねをいたしますけれども、私が手元に持っていますのは、五月二十四日付の読売新聞でありますが、ワシントン発二十三日の時事通信の報道でありますが、NRCのデントン原子炉規制部長が二十三日、アメリカの下院科学技術委員会で次のような証言を行っている。「スリーマイルアイランド原子力発電所の放射能漏れ事故に伴い、アメリカにあるすべての原子炉について、なんらかの修正を加えねばならないと言明した。」という報道になっておりますが、この報道内容について当局はどういうふうに確認をされておりますか。
#121
○政府委員(児玉勝臣君) 五月二十三日に開催されました米下院の科学技術委員会エネルギー研究生産小委員会におきまして、NRCのデントン部長が証言したわけでございます。スリーマイルアイランド事故の発生と拡大の原因といたしまして、設計上の欠陥、機器の作動失敗、それから運転員の判断ミスが複合したものとなっております。
 さらに、スリーマイルアイランド事故の経験にかんがみまして、幾つかの改善策を検討すべきであると言っております。その主なものといたしましては、スリーマイルアイランド事故と同種の予期しない過渡現象、それから小破断、LOCAについてのより厳密な解析評価を行うこと、及びこれに関連して、すべての炉型の原子力発電所について応答の確認を行うこと。二が運転員の資質の向上を図る。三といたしまして、緊急時連絡体制を整備する。四といたしまして、設計、運転管理面での改善をさらに検討していくことなどを挙げております。
#122
○佐藤昭夫君 私もさっき引用しました新聞の、「アメリカにあるすべての原子炉について、なんらかの修正を加えねばならないと言明した。」という、ここのくだりですね。日本の原子力発電にはアメリカ型が多数でありますから、こういうことであれば影響するところ大と判断されるわけですけれども、この部分についてはどういう確認ですか。「すべての原子炉について」という言い方になっていますから。
#123
○政府委員(児玉勝臣君) 公電の内容を見ましても、現在のNRCのスタッフの活動は、当面TMI炉のそのものに対するサポート活動をやっておりますけれども、それとB&W炉に対する同種事故を再発させないための検討ということがいままで重点でございましたが、B&W炉以外のPWR、BWRについての検討に移るというふうにも書いてありますので、すべての原子炉についてということを意味していると思います。
#124
○佐藤昭夫君 そうしますと、わが国の原子炉についても、これをもちろんうのみにするわけでないにしても、一定の検討が必要になってくるという一つの素材になるんじゃないか。
 もう一つの新聞報道でありますが、五月二十六日付の読売新聞ですけれども、二十五日、原子力安全規制に関する日米専門家会議というのが開かれまして、そこにS・ローロスキ、M・プレセットの二人のアメリカの原子炉安全諮問委員会委員、これが次のような記者会見をしておるということでありますけれども、まずお尋ねしますけれども、この日米専門家会議、これには日本からはどなたが参加をされておるか。この記者会見には同席をされておるか。その点どうでしょうか。
#125
○政府委員(牧村信之君) この会議は定例的な日米の規制情報交換会議として、今回は向こうの先生方が日本に参ったわけでございます。これに参加いたしましたのは、通産省、科学技術庁並びに安全委員会の審査会の先生あるいは通産省の顧問の先生等の原子力の専門家が参画して討論を行っております。
 記者会見につきましては、ちょっと私、行政庁の者が立ち会ったかどうか聞いておりませんので、いまお答えできかねるところでございます。
#126
○佐藤昭夫君 この記者会見において、こういうことが言われている。問題の「関西電力大飯1号炉と同じメーカー製で、全く同じECCS装置を持つ米国内原発では、すでにECCSが、原子炉圧力容器の圧力計の指示だけで作動するシステムになっていることを明らかにした。」というわけです。要するに今日までのこの委員会の質問の中でも、大飯1号機というのはUHIという――これについては私はいろいろ意見を出しておりましたけれども、そういう特別の装置がついているので、アメリカと同じような事故が仮に起こってもECCSは有効に働くんだと、こういう説明がされてきたわけです。ところが、この大飯1号炉と同じメーカー製、同じECCS装置を持つアメリカの国内原発について、言うなら設計変更をやって、回路変更をやって、圧力計だけでECCSを作動させるような改善勧告をやったのですということをこの記者会見で発表しているわけですけれども、この二十五日の日米専門家会議でそういう話が出たということを御確認になっていますか。
#127
○政府委員(牧村信之君) この記者会見には私どもの方の原子炉規制課長が立ち会っていたようでございます。そこで、当人は本日ここに参っておりませんが、プレセットの記者会見の趣旨は、NRCの回路変更指示につきましては、NRCとしても電力会社にこれで即座に改良をしろと指示しているのではない、慎重に対処する必要があるというふうなことを特につけ加えておったというふうに言っておったようでございます。また、いろいろな記事の中にはそういうふうな書き方をしておるところもあるようでございますので、私のただいま受けました報告では、先生がおっしゃられたようなきめつけた言い方ではないように考えておるところでございます。
#128
○佐藤昭夫君 いずれにいたしましても、この大飯1号機の安全性解析については、いろいろの経過はあったわけですけれども、五月十九日に原子力安全委員会として大体よかろうという判定が下された。で、しばらくして五月二十五日、日米のこの合同の専門家会議でこういう話が出ているということで、私はやはり一つの重大な問題が提起をされているんではないかというように私としては見るわけです。
 もう質問の時間も終わりになりましたので、出席をされておった規制課長ですか、当日の発言の、特に記者会見の記録のようなものがあれば正式に御提示をいただきたい。それをよく、さらに見せていただいて、引き続き今後いろいろ意見を述べたいというふうに思いますので、その点どうでしょうか。
#129
○政府委員(牧村信之君) 向こうの人が来られての記者会見でございますので、記録があるかどうかは私、非常に疑問に思いますが、もしあれば、先生にごらんに入れるように努力したいと思います。
#130
○佐藤昭夫君 本日はこれで終わります。
#131
○委員長(塩出啓典君) 本案に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会をいたします。
   午後五時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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