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1978/06/04 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号
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1978/06/04 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号

#1
第087回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号
昭和五十四年六月四日(月曜日)
   午後一時五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月四日
    辞任         補欠選任
     熊谷  弘君     増岡 康治君
     山崎 竜男君     岡田  広君
     森下 昭司君     大森  昭君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         塩出 啓典君
    理 事
                源田  実君
                長谷川 信君
                松前 達郎君
                藤原 房雄君
                佐藤 昭夫君
    委 員
                岩上 二郎君
                岡田  広君
                上條 勝久君
                後藤 正夫君
                永野 嚴雄君
                増岡 康治君
                望月 邦夫君
                大木 正吾君
                大森  昭君
                吉田 正雄君
                中村 利次君
                柿沢 弘治君
                秦   豊君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)       金子 岩三君
   政府委員
       科学技術庁長官
       官房長      半澤 治雄君
       科学技術庁原子
       力局長      山野 正登君
       科学技術庁原子
       力安全局長    牧村 信之君
       資源エネルギー
       庁長官官房審議
       官        児玉 勝臣君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        町田 正利君
   説明員
       労働省労働基準
       局補償課長    原  敏治君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(塩出啓典君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、熊谷弘君、山崎竜男君及び森下昭司君が委員を辞任され、その補欠として増岡康治君、岡田広君及び大森昭君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(塩出啓典君) 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 前回に引き続き、これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○松前達郎君 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案に関して若干の質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、今日まで原子力産業、原子力事業従事者の従業員が受けた損害、あらゆる損害ですね、これについてのデータは前にも同僚の議員の方から御質問があったと思うんですが、死亡した例があるんじゃないかと思うんですが、そういうものも含めてどのぐらいあったのかお知らせいただきたいと思います。
#5
○政府委員(児玉勝臣君) 原子力発電所におきます事故におきまして、従来、昭和四十一年以来五十三年度末までに百十件の事故がございました。そのうちに原子力関係の事故が六十五件あるわけでございますが、それで身体に関係いたしましたのは原子力の関係で法定の放射線量を浴びた事故、すなわち三カ月三レム以上浴びた事故が一件ございまして、それは四十六年の七月にあった事故でございますけれども、それだけが身体に対する問題でございまして、あとの原子力にかかわらない事故におきまして感電死の事故というのがございます。ちょっと件数はいまのところわかりませんが、そういう感電による事故というのがございます。
#6
○松前達郎君 いまの事故のデータの対象となっているのは原子力発電所ということをおっしゃったと思うんですが、そうじゃなくて、原子力産業、いわゆる原子力事業といいますか、たとえば燃料の製作とか、そういうふうな分野も含めてどの程度ございますか。
#7
○政府委員(牧村信之君) 核燃料産業並びに動燃事業団が核燃料の研究開発等を行っておるわけでございますが、核燃料施設におきましての放射線による事故で、先生御指摘の死亡事故はもちろんございません。また許容量を超えて被曝するような事故の報告はございません。特に再処理につきましては、かねてから試運転に伴いまして若干のトラブル等がございまして、数件のトラブルによりまして従業者が障害を受けたり、あるいは体内被曝をしておりますけれども、放射線を受けたという観点からは、いずれも法律に定めます、あるいはその施設の内規におきます基準量を大幅に下回った被曝で推移しておるところでございます。
#8
○松前達郎君 いまのは動燃事業団その他最近の事故のことを言われているんじゃないかと思うんですが、私のところに実はこういうのが来ているんです。これは大分前ですが、昭和三十八年三月十五日、当時住友電工におられた藤井光興さん、この方が二十歳の若さで亡くなったわけなんですが、この藤井さんは住友電工の伊丹研究部第四研究課で炭化ウランの製造に関する研究を行っておられた。従事されたのが約十四カ月問。天然二酸化ウランと黒鉛の混合体から核燃料をつくる作業に従事しておられた。こういう仕事をやっておられて亡くなって、医師の診断書は急性骨髄性白血病と、こういう診断書が出されたわけなんですが、これについて会社側は、放射線管理は完璧であったと、ですから藤井さんの亡くなった原因というのは藤井さんの体質によるものだと、こういうことを言っていたというふうな報告が入っておるわけなんです。これもまた非常に問題になりまして、労災の適用とかそういう問題でいろいろと運動もあったように聞いておりますけれども、この件を御存じでしょうか。
#9
○政府委員(牧村信之君) 申しわけありません。ただいま資料を持ってきておりませんので、ちょっとお答えしかねるのでございますが。
#10
○松前達郎君 これは大分古い話ですから、前もってこのことを申し上げておかなかったものですから資料がないかもしれませんが、こういうふうな死亡された例がかってあったということです。この場合も、放射線の被曝量がどれだけ以下だから管理上問題がなかったんだと、こういうふうなことで片づけられているというふうな状況だったというふうに私は理解をしておるんですが、本法案が今後こういったような数値的な放射線被曝量だけで適用されるかどうかの判断が行われるということになると、微量の放射線に関する問題というのは非常にこれは重要な問題になってくるんじゃないか、こういうふうに私は思うわけなんです。
 そこで、原子力事業従事者の損害の認定について、どういったところで認定をし、またどういう基準で認定をするのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
#11
○政府委員(山野正登君) 原賠法を適用するに当たりまして、いまの認定の問題と申しますのは、もともと原賠法自身が民事の問題でございまして、被害を受けた方と加害者、つまり原子力事業者との間の話し合いによって決着をつけられるべき問題、それで決着がつかない場合には最後は裁判に持ち込まれるという性格のものではございますけれども、しかし当事者同士が認定をするについて、先生御指摘のように、低レベル放射線の場合等は相当因果関係の立証等がむずかしいわけでございますので、そういった問題につきまして、政府といたしましても立証が容易になるようにこれを援助する努力というのは従来ともやっておるわけでございまして、一つは法定されております原子力損害賠償紛争審査会の活用の問題でございます。それから、第二は低レベル放射線の影響についての研究というものを進めまして、このような立証が技術的に容易になるようにするということ。また私どもとしましては、政府関係機関の、たとえば放射線医学総合研究所といったところには、専門の医師とかあるいはこの方面での専門家といったふうな方もいるわけでございますので、そういう方々の知見も活用する。そういったふうなことを動員しまして、できるだけこの立証が容易化されるようにという努力は政府としても進めたいと思っております。
#12
○松前達郎君 先ほど私例を申し上げましたけれども、この藤井さんの例の場合も、会社の方ではなるべく表に出したくない。ですから、亡くなる寸前に名前を変えてくれとか、そんなようなことまで言われたということが報告されておるのですけれども、やはりそこが一番問題だろう。たとえば、被曝を受けたり何かいろいろな損害を受けた、それに対して認定する場合に、企業側の意見というものが非常に大きなウエートを占めるというふうになりますと、やはりなるべくこういうふうなものは表面に出したくないと、そういったような考え方が当然そこに出てくるんじゃなかろうか。ですから、せっかくこの法律ができましても、その認定ですとか、その処理の問題について非常に大きな問題が残っていくんじゃないかというふうに私は考えておるわけなんです。企業側の意見が大きな判断の基礎になるといういままでのいろんな例があると思うのですが、そういう点について、公平に客観的にこの判定をしなければいけないんじゃなかろうかと思います。そのために、どういうところでどういうふうな資料を出して判定をするか、こういう問題が手順として非常に重要な問題として残るのじゃなかろうかと私は思うわけですから、そういう意味でいま御質問申し上げたわけなんです。
 先ほどの藤井さんの例にしましても、大分古い話です、三十八年の十二月の四日に請願が出ておりまして、その中にも、原因の認定を公平に客観的に行うよう措置をするということとか、あるいは専門的学識経験者がない、たとえば労働基準監督局その他の公共機関、そういうものが判断をする場合に、各原子力関係事業場の意見による判定に任されがちである、だからこういうことがないようにしてくれというふうな請願が大分前に出ておるわけなんですが、これはその後大分時間も経過して、やっと今日本法案が提出されたわけなんです。こういうふうな過去の例を十分踏まえていただいてこの法律の適用に当たっていただきたい、こういうふうに私は念願するものですから、そういう質問を申し上げました。
 要望として、最後に、その原因の認定を公平、客観的にできるような何らかの処置をしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
#13
○吉田正雄君 今度の改正案では、従来、原子力損害賠償の適用除外になっておりました原子力事業に従事をする人たち、これが新たに対象になるわけなんですが、その中に核原料物質、燃料物質及び放射性廃棄物の輸送に従事をした人たち、こういう人たちは私当然含まれるというふうに思いますが、この点どうなのか。さらに、従来、輸送に従事した人たちの人数であるとか、あるいは個人的には回数、被曝線量の総量がどうなっているか等、そういう実態というものが把握をされておるのかどうか、まずお聞きをいたしたいと思います。
#14
○政府委員(山野正登君) まず、輸送の問題が原賠法の対象となるかどうかという点について御答弁申し上げますが、原賠法は、先生御指摘のように、原子炉の運転等により生じた原子力損害の賠償について決めた法律でございますので、結論から申し上げまして、輸送中に生じた原子力損害というのはすべて対象になるということでございまして、原子炉の運転等ということの定義の中に、原子炉の運転、加工、再処理あるいは核燃料物質の使用、並びにこれらに付随する核燃料物質または核燃料物質によって汚染された物の運搬、貯蔵、または廃棄という表現が法律でも明記されているわけでございますので、この輸送中に生じた原子力損害というのも対象になるわけでございます。
 また、この輸送に携わった労働者の方でございますが、まず輸送業者の従業員と、それから同乗しておる可能性のあります原子力事業者の従業員、二つの形が考えられるわけでございますが、輸送業者の従業員というのは従来とも原賠法の対象になっておったわけでございますし、同乗する可能性のある原子力事業者の従業員というのも今回の法改正によりまして原賠法の対象になるということでございますので、その点は先生御指摘のとおりでございます。
#15
○吉田正雄君 この法改正をめぐって、たとえば放射線医学研究所等、そういうところに従事しておる人たちと差が出てくるのじゃないかというふうなこと等で、同じ放射線という概念からするならば、広くそういう人たちもこの原賠法の中に含めるべきではないかという意見も一部にあるわけなんですが、そういう意見なり考え方についてどのようにお考えになっているのか、あるいは将来さらにそういう人たちも原賠法に含めるということでの検討をお考えになっておるのかどうかをお聞きいたします。
#16
○政府委員(山野正登君) 原賠法はもともと原子力利用に伴いまして万一発生するかもしれない大規模かつ集団的な損害というものを類型に考えまして立法されたものでございまして、こういった場合に、無過失責任、責任の集中あるいは賠償としての強制といったふうなことを特に法定したわけでございますが、御質問の放射性同位元素による損害と申しますのは、このような大規模かつ集団的な損害といったふうなものを起こすというふうには、それと同じ類型に属するというふうには考えていないわけでございまして、確かに放射線による損害というのはあり得るわけではございますけれども、現在、法の対象に考えておるものとは類型を異にするというふうに考えておるわけでございまして、その分野の損害に対しましては、現在の労災制度並びに民法の一般原則による救済というもので処理できると考えておるわけでございます。将来このRIの利用というものが格段に進みまして、何らかの理由で同じこの原賠法の対象にする方がよかろうといったふうなことでも出てまいりますれば、その時点で改めて検討したいというふうに考えております。
#17
○吉田正雄君 労働省から見えておりますか。――労働省としては、いま言ったような問題については、従来は、今度法改正になるまでは労災法で全部扱ってきているわけですね。いま話があったように、いまのところでは広くそこまでは考えていないということですが、労働省側としてはそういうことについてはどういう御見解をお持ちなんですか。
#18
○説明員(原敏治君) 労災保険の適用につきましては、従来から全産業の全労働者に保険を適用するという形で従業員の労働災害の補償を行っておるわけでございます。今回のこの原賠法の改正がございましても労災保険の方の仕組みは変更になりませんので、従来どおりアイソトープ等を扱う人々の放射線障害につきましては、労災保険によって補償をいたしてまいります。
#19
○吉田正雄君 ちょっと質問が、悪かったんですが、もちろん労災法の適用でいくわけですけれども、片や今度は原賠法になるわけですね、部分的には労災になりますけれども。そういう点で差が出てまいりますので、統一的に処理をされないことになるわけですね。今度は、片や原賠法適用者と片や従来どおりの労災法ということになるので、そういう点では、同じような放射線という点から考えて同一の法律で同一で取り扱うべきではないかというのが私の、そういう意見もあるということで皆さん方の考えはどうですかと、こう聞いたわけなんです。――いいです、時間がありませんから。それはそのくらいにしておきます。
 そこで、次にお伺いしたいのは、現実に原子力損害が発生した場合、一体スムーズに事が進行するのかどうかという点できわめて疑問があるんです。これは同僚議員もいままでその点の指摘をされたんじゃないかと思うんですが、皆さん方の方から配付をされた資料の、改正後の従業員損害の補償体系図というのが半ピラにずっとこうなっているんです。これは要するに労災法との関係をここに述べてあるんですよ。ところが、労災法との関係以前の問題として次のような諸問題が出てくるんではないか、これをどのように解決をしていくのかということが具体的な法運用上一番問題になると私は思うんです。
 それは、被害者が損害賠償請求を原子力事業者に対して行うことになっておるわけです。ところが、従来のいわゆる公害問題で見られますように、水俣病だとかイタイイタイ病だとか四日市ぜんそく病であるとか、あるいは各種の薬害訴訟があります。スモン病に対するキノホルム説とか、いろいろなものがあるわけです。この過去の実例からわかるように、とにかく事実損害が出た、被害が出たということははっきりしているわけです。また原因もはっきりしているんです。しかし、なかなかその損害を与えた企業が賠償に応じないということで、延々十年以上も訴訟が今日まで長引いてきておる、まだ未解決だというふうなことで、被害を受けた方や患者にとってはこれはもう生活上重大な問題になっているわけです。そんなこともありまして、次のような点ですね、たとえば原因あるいは因果関係あるいは損害額の算定のあり方、さらに労災保険の給付との関係、そこから生ずる支払いの方法、内容、そういう点で両者の話し合いがついたとしても、さらに具体的な約束履行をめぐってトラブルがまた尾を引いていく、さらに話し合いが長引いたことによって結局訴訟に持ち込まれていくというふうなことになって、この法律が通ったからといって、私は簡単にこの問題が解決するとは思えないわけです。先ほど松前理事の方から指摘もありましたように、企業側としてはなるべく認めたくない、損害額をできるだけ低く抑えていこうという動きが出てくるわけです。ところが、残念ながらこの法案の中には、これをだれが判断をしていくのか、審査機関というものが明確にあって、そこで算定の基準であるとか、そういうものがきちっと行われていくのかということになると、策定の基準すらここにはないわけなんです。あくまでも被害を受けた人が電気事業者に対して損害を請求していくというだけのことなんであって、そういう点で全く内容が不明確なんです。
 そういう点でお尋ねをしたいのは、時間もありませんから、要するに、そういう問題が発生することはもう火を見るよりも明らかなので、それを解決するための第三者、公正中立な審議機関というものを設置をして、そしてその審議機関なりが一定の基準のようなものをつくっていくのかどうなのか、あるいはそこに仲介的な役割りを果たして解決――調停者的な役割りもそういう審議会のようなものがやっていくのかどうなのか、その辺もこの法案の内容は非常に不明確になっているわけです。その点についてどういうふうにお考えになっておるのかお聞かせ願いたいと思うわけです。
#20
○政府委員(山野正登君) 先生御指摘のような、公害訴訟といったふうな場合に裁判が非常に長引くということは御指摘のとおりだと思うわけでございまして、これについては、大変むずかしい問題について私人間の権利義務関係というものを最終的に確定するということでございますので、ある程度の時間の必要があるということはやむを得ない面もあるわけでございますが、いずれにしましても、これは裁判の迅速化という司法制度上の問題かと思います。
 ただ、このような裁判に持ち込まれます前に、早急かつ円満に当事者間の話し合いがまとまるということが最も望ましいということは、これは先生の御指摘のとおりだと思うわけでございまして、因果関係の立証を容易にするとか、あるいは損害の策定について何らかの参考の具を供するといったふうなことで、政府もできるだけの努力はしたいと考えておるわけでございますので、それがこの原賠法の十八条で言っております原子力損害賠償紛争審査会という制度でございまして、この審査会は必要に応じて政令で臨時に設置するという付属機関になっているわけでございますが、原子力損害の賠償に関する紛争についての和解の仲介とか、あるいはこの事務を行うために必要な原子力損害の調査及び評価といったふうなものを行うことになっておるわけでございますので、この機能を最大限に活用しまして、政府はもちろん当事者ではございませんが、当事者間の話し合いが円満裏にかつ早く妥結する方向で動くように援助をしてまいりたいと、こう思っております。
#21
○吉田正雄君 その審査会の機能をきちっと充実をして、従来の審査会がとかく企業寄りだという批判を受けないような、そういう審査会にひとつ強化をしていただきたいと思うんです。
 次に、この原子力損害賠償措置額を六十億円から百億円に引き上げることになったわけですけれども、私はこれでもきわめて低額だと思います。今度のスリーマイルアイランド原発事故を見ても、もう住民の提起した訴訟額というものが三千億円にも上るというふうなことが言われておるわけでして、従来余り大事故がなかったということでは六十億でも五十億でも、これはないに越したことはないんですが、一たん大事故が起きると、とても百億では問題にならないわけです。
 私が聞くところでは、これは財産保険と違うんだということがあるらしいんですけれども、私はそういう考え方自体がおかしいと思うんです。財産保険ならば二千億、三千億を保険会社も認めるけれども、こういう事故によって生ずる損害の場合には、保険会社も、どうもそういうものには契約に応じがたいとか、いろんなあれがあるらしいんですが、時間がありませんから、私は資料として、いわゆる財産損害保険ですね、火災だとかその他そういうものによって起きた場合の災害保険の額が各事業者と保険会社の間でどういう契約が結ばれておるか、これをひとつ資料として出していただきたいと思うんです。
 それから、私が最も心配をいたしますのは、百億というふうに非常に低いことによって、損害の認定に当たって企業側が損害額をとにかく抑えていこう、あるいは先ほどの指摘にありましたように、因果関係というものを認めないということになってくるのではないかと、この点を最も恐れますので、この点どういうふうにお考えになっているのかということと、それから、この額を超えたものについては国の――この額を超えたというのはおかしいんですが、この額を超えても無限責任があるはずなんですよ。しかし、どうしても百億という一定の額を設けますと、事業者としては百億を超えたら国の援助を期待するというきわめて安易な考え方になり、また国側も、百億を超えたらめんどうを見ましょうということにどうもなりがちになるんじゃないかという、そのことが逆に言うと事故に対する安全性の確立という面での事業者の責任を怠るといったらいいんですか、軽く考えるというふうなことになっても困るんじゃないかというふうに思いますので、国の援助とは具体的にどのような場合どのようなことを行おうとしているのか、この点も明らかにしていただきたいと思うんです。
 労働省の方、来ていただいたんですが、時間がありませんから結構です、どうもありがとうございました。
#22
○政府委員(山野正登君) まず、賠償措置額百億円というのは低過ぎやしないかという点でございますが、現在の原賠法によりますれば、賠償措置額の百億円を超えて損害が発生した場合でも原子力事業者は無制限の賠償責任を持っておるというのは、これは先生御指摘のとおりでございまして、そういう意味で賠償措置額というものは、損害を賠償するに当たりましてその賠償が確実になるようにというために設けられた措置ではございますが、これを超えた場合にももちろん原子力事業者は無制限の賠償の責任を持っておるということでございますので、その面におきましては直ちに被害者の保護に欠けるといったふうなことにはならないかと思うのでございます。原子力事業者が賠償措置額が低いために、できるだけその範囲内に賠償を抑えようということで被害者との間にいざこざが起こるといったふうなこと、これはまあないとは思いますが、もしそのようなことがございますれば、これは最終的には裁判の問題ではありましても、その前に、先ほども申し上げましたような紛争審査会という場も活用しまして、原子力事業者が力で被害者を押さえつけるといったふうなことのないように、これは私どもも十分に配慮したいと考えております。
 それから財産保険の実態につきましては、これは可能な限り資料を先生の方に御提出したいと思っております。
 さらに、百億円以上の損害があった場合に国が援助をするという規定があるわけでございますが、これによって電力会社が安易に国に依存しないかという点でございます。この点については、もし百億円を超えるような損害がありました際、かつ国の援助の必要があるという場合には、政府としましては、この損害の中身それから原子力事業者の資力、そういったもろもろの事情をよくよく調べまして最もふさわしい援助をするということになっておるわけでございますので、原子力事業者が十分の賠償余力があるのに国がこれを援助するといったふうなことは、これはあり得ないわけでございますから、その点、原子力事業者の方が安易に国に依存しようとしてもこれはできない相談であろうかと考えております。
#23
○柿沢弘治君 それでは一、二質問をさせていただきます。
 今度の原賠法の改正については、四十六年に次いででございますけれども、この改正によって諸外国の賠償制度と比較してわが国のレベルがどのくらいになるのかという点をまずお聞きしたいと思います。
#24
○政府委員(山野正登君) わが国の原子力損害賠償制度を諸外国の制度と比べてみますと、幾つかの原則につきましてほぼ諸外国並みの制度になっておるというふうに考えております。
 すなわち、まず無過失責任の点でございますが、これは英国、西独、フランスといったふうなところが同様に採用しておるわけでございます。
 また賠償責任の集中という点につきましても、英国、フランス、西独といったふうな国々が同じような制度をとっておりますし、米国では、賠償責任を負うべき者はすべて原子力事業者の講じた賠償措置からの補てんを受けるということになっておりますので、そういう意味でも実質的には米国も同じような制度であろうかと思います。
 また、賠償措置額の強制という点につきましても、米国、英国、西独、フランスといった国々がわが国同様に採用いたしております。
 一つ大きな相違というのがこの賠償責任の制限でございまして、これにつきましては、米国、西独、英国、フランスといったふうな国々が賠償責任の制限をいたしておりますが、わが国では制限額を設けませんで無限の責任というのを原則といたしておりまして、この点が大きく違うところでございます。
 いま一つ、国家賠償、国家補償という制度を取り入れておる国もあるのでございますが、この国家補償を採用しておる国というのは逆に責任の制限を設けておるわけでございます。
 そういうふうなことで、全体を総合しますと、わが国の場合は原子力事業者の責任を無制限にした上で、かつ十分に賠償ができるように必要に応じては政府も援助するという制度をとっておるわけでございまして、そういう意味で、諸外国の制度に比べてむしろ進んでおるというふうに評価してもよろしいのではないかと私どもは考えております。
#25
○柿沢弘治君 わが国の原子力平和利用を推進する上でも、世界で唯一の原爆被爆国として、国民に対する安心感を高めるという意味でも、この原子力損害賠償法による損害賠償、もしくはそうした措置というものが、世界のレベルを超えるといいますか、一流のものになるということが必要だろうと思います。被害が起きてはいけないわけですけれども、そういう点で今回の改正というものは私は評価ができるというふうに考えているわけでございます。
 国際的に見て決して遜色のないものだという御説明がありましたけれども、その国際的なレベルというのが果たして原子力事故の現状に対応して十分なものと言えるのかどうか。この間のスリーマイルの事故が現実に起こってさまざまな損害賠償請求が出ているわけでございますが、そのスリーマイルの事故に関するアメリカの原子力損害賠償請求の額の見通しとか、それが現在の法律で対応した場合には一体どうなるか、その辺十分な対応ができるのか、その辺をお聞きをしたい。もしあれと同じような事故が日本で起こった場合、今度の改正法案でどこまで救済ができるのかという点についてお伺いしたいと思います。
#26
○政府委員(山野正登君) 米国におきます今回のTMI事故に関連しての訴訟の問題でございますが、アメリカの原子力保険プールからの情報によりますと、五月十一日現在提起されております訴訟の中身と申しますのは、これは全部で九件ございまして、集団訴訟が七件、その内訳としまして、連邦ペンシルベニア地裁に五件、連邦ニューヨーク地裁に一件、それからペンシルベニア州裁判所に一件でございます。それから個別の訴訟が二件ございまして、ペンシルベニア州の裁判所に一件、治安裁判所に一件ということになっております。合計九件でございます。
 これらの請求は、その根拠としまして、メトロポリタン・エジソン社並びにバブコック・アンド・ウィルコックス社の過失、重過失、あるいは高度危険行為といったふうな責任を挙げておるわけでございます。
 損害の内容としまして、不動産の価格の低落、収益の減少、賃金の喪失、避難費用といったふうなものを挙げております。
 損害額としまして、五億六千万ドル以上のものとしておるものが三件、具体的に損害額を算出しておるものが三件、それから損害額を明らかにしていないものが三件というのがその内訳になっております。
 こういったふうなことがもしわが国に起こった場合にどうであろうかという点でございますが、これはもちろんそれが原子力損害と認定されるかどうかということによって決められるべき問題でございまして、その点は因果関係によるわけでございますが、額の点につきましては、先ほども申し上げましたように、わが国の場合は無制限の責任というものを原子力事業者が持っておるわけでございますので、相当因果関係のある限りにおいてはすべてわが国においても賠償されるというふうに考えております。
#27
○柿沢弘治君 まだ事故が発生したところですし、損害請求の訴訟がされたところですから、その推移を見なければ何とも言えませんけれども、しかし、これからの原子力の平和利用といいますか、原子力産業の推移に対応して、ああした不測の事態というものが起こってこないとは限らないわけです。その場合、どこまでを原子力損害の対象とするかという点については、いろいろ微妙な問題があろうかと思います。今度も原子力事業者の従業員の損害を対象として加えておりますけれども、被曝による障害の認定、これは従業員だけではないと思いますね、事故が起こったときの周辺の住民についてもあると思うんですが、非常にむずかしい問題があります。特に低レベルの放射線の影響というものをどうこの法律上損害として認定していくか、この点についてはこれからいろいろな意味で技術的にも未開の分野といいますか、未知の分野がある、開発をしていかなければいけない。それが対応して進められない限り、法制上整備されても、実際上そういう被曝者といいますか、の被害が救済されるということはないわけですから、並行的にその辺も進めていく必要があると思うわけですけれども、その辺についての政府の心構えといいますか、そして具体的にどういうことをしようとしているのかという点をお伺いをいたしたいと思います。
#28
○政府委員(山野正登君) 原子力損害の中で放射線障害というのが非常に因果関係の立証がむずかしい場合が多いというのは、まさに御指摘のとおりでございまして、そういう意味で低レベル放射線の影響についての研究というものを、まず一つは放射線障害を防止するという意味において、また一つはただいまの障害の認定の際の資料に供するという意味において、私どもとしましても最も重点的な研究項目として挙げておるわけでございまして、ただいまのところ放射線医学総合研究所等におきまして放射線障害の発生に関する研究というのを推進いたしております。
 将来、この研究成果を活用して因果関係というものの立証の容易化というものに役立たせようと考えているわけでございます。
 現在そのような研究の現状と見通しといったふうなものはどうなっているかということをちょっと申し上げますと、この放射線医学総合研究所を中心に行っておりますものは、低レベル放射線の発がん及び遺伝的障害等に対する影響についての定量的な推定のための研究、そういったふうなことを鋭意進めておるわけでございまして、これまでの成果としまして、放射線量と発がん率との関係、放射線による発がんにおけるウイルス等の役割り、さらには放射線量と染色体異常発生率の関係といったふうなことにつきまして、大変有益な知見というものが従来も得られておるわけでございますが、またさらにそれに加えまして、白血病の発生のメカニズムに関する研究、あるいは霊長類に関するデータからヒトの遺伝的危険度を推定するための研究といったふうなものが実施されております。これはいずれも相当長期を要する研究でございますが、まあできるだけこの研究を加速する努力をいたしまして、できるだけ早い機会にこれらが活用できるように努力していきたいと考えております。
 御参考までにこの予算を申し上げますと、これは放医研並びに関連の国立の研究機関の予算でございますが、昭和五十三年度は十億程度であったものでございますが、本年度におきましては、五割増しの十五億程度のものを予定いたしておりまして、今後とも格段の力を入れていきたいというように考えております。
#29
○柿沢弘治君 審議に協力するという意味で二時ごろまでには終わりたいと思いますが、いまの低レベル放射線の障害の研究というのは、おっしゃったように大変長期を要するものだと思うんです。私どもそれに余り長い時間をかけていたんでは、なかなかやっぱり被害者の救済というものはできないという意味でジレンマがあると思うんですけれども、いまの研究は大体ワンサイクルで何年ぐらいで完結をするという感じなんでしょうか。つまり、いまの発がん性の検証もしくは遺伝子への影響、そうしたものについては、どのくらいの時間をかければ大よそのめどがつくか。研究のプログラムというのはあると思うんですけれども、その辺、専門家の方がいらっしゃったらお伺いしたいと思います。
#30
○政府委員(山野正登君) ただいま行っております低レベル放射線の影響研究についての状況から、ちょっとその関連の情報を申し上げますと、放医研で行っております研究のうち、血液幹細胞動態より見た放射線誘発白血病発症機序の研究と申しますのをやっておりますが、これが四十八年から五十七年度という予定でございます。まあ大体十年程度。それから免疫機能に対する放射線の晩発効果に関する基礎的研究、これも同じく四十八年から五十七年度にわたる研究でございます。さらに霊長類における放射線誘発染色体異常の低線量効果の研究、これが五十年から五十七年度でございまして、八年間でございますが、以上を見ましても大体十年ぐらいはかかるという研究ばかりでございまして、この十年間の研究が済めばすぐにこの情報で因果関係の解明は明確になるかというとそうでもない。まだまだ期間のかかる問題かと思いますので、鋭意努力をしてまいりたいと考えております。
#31
○柿沢弘治君 その問題でもう一つ追加して伺いますと、現在の日本の研究レベルといいますか、十億を十五億にしたという努力をしておられるというのはわかりますけれども、国際的に見てどのくらいの水準にあるわけでしょうか。
#32
○政府委員(山野正登君) 低レベル放射線の人体に与える研究といったふうなことにつきましては、これはわが国のみならず各国とも鋭意力を入れておるわけでございますが、わが国の場合は、きわめて率直に申し上げまして、たとえばプルトニウムを内部被曝をしました際の人体に与える影響といったふうなことにつきましては、実はただいまから実験棟を建設してその研究を本格化しようといったふうな段階にある一方、米国等においては相当その分野でも進んだ研究が行われておるわけでございまして、そういう意味におきましても、正直申し上げまして世界の第一線級にあるという評価はしがたいかと思います。
#33
○柿沢弘治君 その辺について、やはり政府が本腰を入れて取り組んでいく、そして国民に安心感といいますか、被害を最小限にとどめながら原子力の平和利用を図っていく、わが国の基幹的なエネルギー源として育てていくという姿勢がなければいけないと思います。そういう点では科学技術庁の一層の御尽力といいますか、御努力もお願いをいたしたいというふうに思います。
 最後に、長官においでいただいておりますのでお伺いをしたいと思いますが、原子力損害賠償法、これをこの機会に整備されるわけですけれども、こうしたものが本来発動されるということがあってはいけないわけでございまして、そういう意味では法制の整備とともに、やはり原子力災害の未然防止といいますか、安全の確保、そしていまのような放射能障害その他の研究による事前防護というものを十分意を尽くしていただかなければいけないと思います。その点について大臣の御所見をお伺いをして私の質問を終わりたいと思います。
#34
○国務大臣(金子岩三君) 御指摘の点全く同感でございます。私が原子力行政、特にアメリカの事故以来、非常に慎重過ぎるという批判も受けておるようでございますけれども、やはりかねがね申し上げておりますとおり、資源のないわが国が代替エネルギーをまず原子力発電で補っていこうとするならば、やはり国民に協力を求めていかなければならないことですから、国民の協力とは何ぞやというと、やはり国民に信頼をしていただくということで、その信頼はやはり国の原子力行政が非常に慎重であるということが私は最も大事なことであるという考え方で、慎重な上にも慎重を期しておるわけでございます。まあ、いろいろ特に発電所建設の場合なんかには、二回、三回とずっと、建設の許可を与え、あるいは建設設計の認可を与え、あるいは事前の検査を厳重にし、たびたびチェックをして、そして保安規制も非常に厳しい規制をいたしておるのでございます。私はこれをもっと厳正に、厳重にひとつ厳しい規制を続けて、そして、きょう議決していただきます原賠法の適用が全く皆無で、将来とも原子力の行政が推進されることを期して、慎重な原子力行政に取り組み方をしていきたいと思います。
#35
○委員長(塩出啓典君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方は挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#36
○委員長(塩出啓典君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 松前君から発言を求められておりますので、これを許します。松前君。
#37
○松前達郎君 私は、ただいま可決されました原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、日本共産党、民社党、新自由クラブ及び社会民主連合の七会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行にあたり、原子力開発利用における安全の確保に万全を期するとともに、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
 一、賠償措置額については、今後一層の引上げに努めること。
 二、原子力損害の原因の認定が客観的かつ公平に行われ、迅速な被害者救済がなされるよう現行諸制度の弾力的運用を図ること。
 三、下請従業員も含め原子力事業従業員の被ばく対策に万全を期し、特に、被ばく線量の中央登録管理、放射線管理手帳の交付については、それらの義務付けのための検討も含め強化、整備を図ること。
 四、低レベル放射線の人体に対する影響に関する研究等を強力に推進すること。
 五、不則の事態に対処するため、速やかに原子力損害賠償紛争審査会の体制整備を図るとともに、緊急医療対策、防災対策等の充実、強化を図ること。
  右決議する。
 以上であります。
 委員各位の御賛同のほどをお願い申し上げます。
#38
○委員長(塩出啓典君) ただいま松前君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#39
○委員長(塩出啓典君) 全会一致と認めます。よって、松前君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、科学技術庁長官から発言を求められております。この際、発言を許します。金子科学技術庁長官。
#40
○国務大臣(金子岩三君) ただいま原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、慎重御審議の上、御可決いただきましてまことにありがとうございました。
 私といたしましては、ただいま議決をいただきました附帯決議の趣旨を十分尊重いたしまして、原子力行政の遂行に全力を尽くしてまいる所存でございます。
 何とぞよろしくお願い申し上げます。
#41
○委員長(塩出啓典君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#42
○委員長(塩出啓典君) 御異議ないと認め、う決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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